法務委員会 第9号
- 発言数
- 197 件
- 登壇者
- 10 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1982/04/22
会議録
○委員長(鈴木一弘君) ただいまから法務委員会を開会いたします。 まず、委員の異動について御報告いたします。 去る十七日、関口恵造君、吉田実君及び岡部三郎君が委員を辞任され、その補欠として戸塚進也君、初村滝一郎君及び世耕政隆君が選任されました。 —————————————
○委員長(鈴木一弘君) 証人等の被害についての給付に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。 本案につきましては、前回の委員会において質疑は終局いたしておりますので、これより直ちに討論に入ります。 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。 証人等の被害についての給付に関する法律の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。 〔賛成者挙手〕
○委員長(鈴木一弘君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。 この際、寺田君から発言を求められておりますので、これを許します。寺田君。
○寺田熊雄君 私は、ただいま可決されました証人等の被害についての給付に関する法律の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党・国民会議、日本共産党及び一の会の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。 証人等の被害についての給付に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案) 刑事事件における証人等の出頭及び供述が、公正な裁判の実現に不可欠なものであることにかんがみ、政府は、証人等が被害を受けた場合の給付額の引上げについて格段の努力をすべきである。 右決議する。 以上でございます。
○委員長(鈴木一弘君) ただいま寺田君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。 〔賛成者挙手〕
○委員長(鈴木一弘君) 全会一致と認めます。よって、寺田君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。 ただいまの決議に対し、坂田法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。坂田法務大臣。
○国務大臣(坂田道太君) ただいまの附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重し、関係省庁とも協議して鋭意努力してまいりたいと存じます。
○委員長(鈴木一弘君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(鈴木一弘君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 —————————————
○委員長(鈴木一弘君) 民事訴訟法及び民事調停法の一部を改正する法律案を議題といたします。 本案の趣旨説明は去る八日の委員会において聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。 質疑のある方は順次御発言を願います。
○寺田熊雄君 ただいま質疑をいたすべき民事訴訟法及び民事調停法の一部を改正する法律案、これについてお尋ねをする前に、法務大臣にちょっとお伺いしたいことがございます。 それは、刑法の改正につきましては、法務大臣いままで所信表明その他におかれましていろいろな御抱負をお述べになっておられるわけでありますが、最近新聞紙上で見ますと、今国会における改正案の提出はもう断念なさったというような記事が出ております。これが事実かどうか、一応この法務委員会においてそのことを明らかに御説明いただきたいと思います。
○国務大臣(坂田道太君) この法案につきましては明治四十年以来の大法案でございまして、その内容も、また手続も十分尽くす必要があるというふうに考えまして、しかしながら前大臣の御意向もございますし、本国会に提出すべく努力をしてまいったわけでございます。 しかしながら、日弁連との交渉も数回やりました。そして、本年度に入りましてからわりあいに実質的な交渉ということに入っております。しかも、この四月の十六日に最近はいたしたわけでございますが、ここでこれを打ち切って見切り発車みたいにして法案を提出するのはいかがかというふうにも考えましたし、同時に、その前提条件でございまする相手方の厚生省、この法案を出すにつきまして治療処分等につきまして問題点が残っておりまして、日弁連との意見の調整がまだ尽くされてない。また、厚生省におきまして、やはりお医者さん方、精神医療関係の方々の御協力を得なければならない、あるいは施設をどうするかというような問題も実は残されておりまして、この点におきまして、厚生省とわが方と最後の合意に達しておりません。その辺を考えまして、今回は事実上提出することはできなくなったと。したがいまして、断念をしたということでございます。 なお、今後も日弁連との継続的な交渉は続けてまいりたい。また向こうの、先方さんの御了承も得ておるということでございます。 それから、また一方、厚生省等の関係におきましても、参事官レベルにおきましては協議を続けてまいったわけでございますけれども、今後正式に公の場で厚生省と法務省と協議に入るという約束も取りつけたわけでございます。 さらに、厚生省の御意見と、あるいは日弁連の御意見とわれわれ法務省の意見とがかなり対決しているというが、意見の相違を来しておるというような問題もあります。その問題点は非常に明らかになりました。したがいまして、この問題をどう考えたらいいかということにつきまして、国民一般の方々の意見も聴取してみたいというふうに思いますので、近く十五人ばかりの有識者の方々の懇談会、名称はどういうふうにするか別にいたしまして、そういう懇談会を設けまして、四月、五月、六月と、九月ぐらいまでの間に十分聴取をいたしたい。また、被害者等の方々についても意見を聞きたい、あるいは一般の報道関係の方でこの方面について造詣の深い方々にも意見を聞きたい。そういうことを経まして、ひとつ今後問題点を整理し、でき得べくんば三者の、つまり日弁連、私ども法務省、それに厚生省、コンセンサスを得たい、それからひとつ来年の国会に提出すべく努力を傾けていきたいというふうに考えておる次第でございます。
○寺田熊雄君 大臣のお考えはよくわかりましたが、その懇談会は、別段政令とか省令とかいうものによるのでなくして、これはどういいますか、便宜大臣限りでおやりになると、こういうふうに伺ってよろしいのでしょうね。
○国務大臣(坂田道太君) そのとおりでございまして、私的懇談会でございます。したがいまして、こういう大法案につきましては、法制審議会の意を得て、そして法案作成作業を進めておるわけでございまして、この法制審議会の御意見を踏まえてわれわれは法案を作成しておりますから、これと相矛盾するものだとは私は考えておらないわけでございます。
○寺田熊雄君 この委員会では、従来も、たとえば安楽死の問題でありますとか、あるいは死刑廃止の問題でありますとか、刑法学上、非常に興味のあるテーマについての論議がなされたわけでありますが、最近アメリカのインジアナ州の最高裁が、重症のダウン症候群と診断された生後一週間の男の赤ちゃんに死ぬ権利を認める判決をしたということで、アメリカの社会に大きな衝撃を与えているという報道が最近なされております。 この判決については、インジアナ州モンロー郡検察局のブローダー検事が最高裁に緊急上告を行った。ところが、連邦最高裁の審理が終わらないうちに赤ちゃんがもうすでに亡くなってしまわれたというような報道があるようであります。 そこで、最高裁の民事局長にちょっとお伺いいたしたいんですが、こういうような問題が日本の裁判所で審理されたことがあるのかどうか、まずその点からお伺いしたいんです。
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) ただいま御指摘のケースはわりあい最近のものでありまして、新聞報道以外承知していないわけでありますけれども、数年前有名なカレン事件というのがございまして、ニュージャージー州の最高裁判所が、生命維持装置を取り外すことを認めたというケースがございました。 これにつきましては、かなり法律家の間でも議論があり、その事件の経過とか判決等もいろんな文献で紹介されております。しかし、あのような形の訴訟が日本の法のもとでできるのかどうか、一体どういう実体的な請求権として考えられるのかという点、かなり問題があろうかと思います。現実にも、そういう形の訴訟が民事訴訟として起こされたというケースはないというふうに承知しております。
○寺田熊雄君 カレンさんの事件は、御承知のようにカレンさんはまだ何か呼吸し続けておられるということですね。これはたしか刑事問題でも扱われる課題だというふうにも思えますが、この問題は刑事局長としてはどんなふうに受けとめておられますか。
○政府委員(前田宏君) この問題は、いわゆる安楽死と申しますか、それを認めるべきかどうかと、こういう問題になるわけだと思います。 これにつきましては、いろいろな面で議論があることは寺田委員も御案内のとおりであろうと思います。法律学者におきましても、これが殺人罪になるかどうかというような観点からいろいろな御議論があり、賛成の議論もあるようでございますが、反対の意見も相当強いというのが現実であろうと思います。刑事事件におきましてまだその点が確定的に、判例なら判例の上で決められたというふうにはなっていないと思うわけでございまして、この問題につきましては、あらゆる角度から慎重に検討を要する問題がたくさん含まれているというふうに考えているところでございます。
○寺田熊雄君 最高裁の民事局長はこれは所管だというわけにもいかないけれども、あなたはこれは民事事件としても当然こういう場合に、たとえば仮処分で一定の医師に対して措置を求めるとか、それからそれが不幸な結果になった場合に損害賠償事件として取り扱われるとか、いろいろ民事事件にも発展する可能性というのはこれはありますね。法律問題としては局長はどんなふうにお考えですか、この問題。まだ余りお考えになったことはないですか。
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) 先ほどもちょっと申し上げましたとおり、わが国の法制度のもとにおいて、俗な言い方で言いますと、死ぬ権利を確認してくれというような訴訟、突き詰めて言いますとそういうことになると思うのですが、そういう形の訴訟が一体可能かどうかという、まず入り口の点でちょっとむずかしい問題があるように思われます。 ただいま御指摘のそのことを契機として、何か損害が生じたということで損害賠償請求ということになれば、これは十分可能なわけでありますけれども、先ほどの生命維持装置を外していいという裁判を求めるということ、そういうような形の訴訟になりますと、かなりむずかしい問題があるのではないかというふうに考えております。
○寺田熊雄君 たとえば医師が、もうこれはだめですよ、かえってなまじ手術をしたり何かすると子供にもかわいそうですし、それから親御さんもかえっていろいろなトラブルをしょって不幸な結果になりますよと言って手術を放棄した、あるいは投薬を放棄したというような場合に、医師に対して親が損害賠償の請求を起こすというようなことは考えられますね、これは。 ですから、そういう問題について、どういうふうにわれわれ考えていったらいいのか。これは非常に学問的にむずかしいので、将来の検討の課題でしょうけれども、そういう問題についてお考えがあれば聞かしていただきたいと、こう思ったわけですが、さらにまた最高裁の民事局長、それから法務省の民事局長、それぞれお考えがあれば聞かしていただきたい。 それから大臣は、これは非常に難病を背負った子供といえども、やっぱり生きる権利というのはあるものだと。したがって、親がトラブルを背負うことはもう自明の理だとわかっていても、やはりあらん限りの努力をしてその生命の維持に努むべきか、医師もまたその義務があると理解すべきか、そういう問題については大臣はどんなふうにお考えになりますか。これは大臣、よく御自分を非常に謙遜して、私は法律の素人だというふうにおっしゃいますね。私はそれで非常に結構だと思うんです。素人の方の常識的なお考えというのは尊重していかなきゃならぬと私ども思います。そういう意味で、大臣のお考えもちょっと伺いたいと思うんですが。
○政府委員(中島一郎君) 先ほど裁判所の民事局長が申し上げましたように、現在の日本の裁判制度におきましては、ただいま問題になっておりますような訴訟はやはり許されないというふうに考えざるを得ないのじゃないかというふうに思うわけでありまして、私どもこういうアメリカの出来事の記事を読みました場合の感想といたしましては、彼我の裁判所の果たすべき機能の違いというものを痛感いたしますとともに、ある意味におきましては大変うらやましい、裁判所がそういう問題にまで裁判権を持って、具体的な事件における妥当な解決をするという権限と義務を持っておるということに対して、非常にうらやましいというような気持ちも一面あるわけでありまして、将来のわが国の裁判所の果たすべき役割りを考える場合の一つの非常に貴重な参考になるのではないかというふうに考えております。
○国務大臣(坂田道太君) この件につきましては新聞で承知しておる限りでございまして、詳細がまだわからないわけでございます。私の乏しい法律的な知識では何とお答えしていいか実はわからないわけでございますが、しかしながら、私は人間の生命の尊厳ということを考えますと、にわかにこのようなことに賛成と言うわけにはいかないのが、率直な個人としての実は気持ちであるわけでございます。 この前ノーベル賞をもらいましたマリア・テレサさんの最近の行動、インドにおける最も貧困な人が亡くなっていく、その亡くなっていく人に対しまして最後の奉仕をするというか、人間としてのめんどうを見るという仕事に従事されておる、最後に息を引き取るまでどんなに苦しいことがあってもその最後の最後までそれをみとってあげるということが人間としての、あるいは同胞に対する務めじゃないか、そして最後に、いままで社会では本当に顧みられなかった、だれからも人間として遇されなかったその人が、マリア・テレサさんがその最後の期間に奉仕をされたそのことに対して、サンキューと言ったというそのことが、キリストがここに生きているという言葉を吐いておられることを私は何か読んだことがあるわけでございます。 私は、やはり人間の尊厳といいますか、あるいは生命の尊厳ということを考えれば、どんな苦しいことがあってもやはり最後の瞬間まで生き続ける、また生き続けさせてあげるということが非常に大事ではなかろうか、むしろマリア・テレサさんのような考え方あるいは宗教家の御行動ということに、私は深く敬意とそして尊敬を感ずるわけでございまして、その意味合いにおきまして、日本の国情あるいは伝統、習慣そしてまた、お互いの人間愛というようなことを考え、また現在の法体系のもとに果たしてこれがどうなのかということでございます。 この点になりますと、むしろ法律は素人でございますので何とも申し上げるわけにはいきませんが、個人としての気持ちをと強いてお尋ねになるならば、私の気持ちは、お答えになったかならないかわかりませんけれども、そういうような気持ちでおるわけでございます。
○寺田熊雄君 この民事訴訟法及び民事調停法の一部を改正する法律案、この改正の第一に挙げられております「訴訟が裁判によらずに完結した場合の証人調書等の省略」、これは法務省からいただいておる関係資料の一番末尾の方に、訴訟が裁判によらずに完結した場合と、その一番大きいものはやっぱり和解による解決ですね。それからもう一つは、訴えの取り下げによる解決というのがかなり多いことを知ったわけでありますが、ことに高等裁判所の段階では、和解による解決が判決による解決とほぼ肩を並べるぐらい多いということを知ったわけであります。 こういうような場合に、初めから証人、鑑定人の陳述を調書に記載しないでいいんだ、それから検証の結果も省略できるんだということになりますと、後日和解が無効であった、重大な事実の錯誤があって無効であるとか、あるいは代理人の資格が争われてこれが無効であるというような訴えが起きた場合、それから訴えの取り下げというのは、しばしば当事者間の示談が進行いたしまして、何らかの意味の事実上の和解が先行してそれによって訴えを取り下げるという事例が多いようでありますが、そういう当事者間の事実上の和解あるいは示談、そういうものをたとえば県会議員があっせんする、あるいは市会議員があっせんする、町内会の顔役があっせんする、ところが素人があっせんをしたために問題点が後に残ってしまう、そして一方がそれを履行しないというので、ああ訴えを取り下げるのじゃなかった、この示談はもうやめにするというような問題で、その事案が蒸し返される場合があるんですね。 私ども現実にそういう事例に遭遇しているわけですが、そうすると、せっかく訴訟が係属している間に重要な証人が証言をしておる、それが調書に記載されなかった。もう一遍その問題が蒸し返される場合に、あの証言があったならばこれはもう十分勝訴の見込みがあったというのに、それが失われてしまう。その証人はもう死んでしまう。それから、検証した場合に、この検証の調書があったならばその当時の実情というものが検証調書に記載されておったんだけれども、もうすでに年月がたってその原状が失われてしまった。たとえば土地の境界画定なんかの場合ですね、隣家との争いなんかの場合、そういうような事案もやはり現実にあるわけですね。 これはわれわれが弁護士の業務に携わっておる間に実際にあった事例でありますけれども、そうすると、こういうふうに和解したから、訴えを取り下げたからもう記録は残さぬでいいんだと言ってしまうことはどうだろうかという懸念を、われわれの実務経験から抱かざるを得ないのであります。この点、民事局長、どうでしょうかね、これで大丈夫かしら。いかがですか。
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) まず前提の問題として、この改正法が予定しておるところは、私の理解でございますけれども、たとえば、一回、二回弁論期日がありまして、第三回目に証人を調べた、第四回期日に本人を調べて、それで引き続き和解手続に入って和解ができたというようなケースを想定いたしますと、その第四回目の尋問調書は、これはすぐ和解ができたということでまだできておりませんから、これは省略する。第三回期日において尋問しました証人尋問調書は、次の期日が、もう第四回期日が来ておるわけでございますから、そのときまでには、第四回期日までには第三回期日の証人調書はでき上がっておるはずでございます。実務でもそうでございます。したがいまして、普通の場合ですと、その第三回期日における調書は省略の対象には実際問題としてはならないわけでございます。 例外的な場合もあって、和解ができたときにまだ第三回目の証人尋問調書ができてないという場合もあるかもしれません。これは継続審理といいますか、期日と期日との間を詰めて審理を行いました場合には、第三回期日の調書がまだできてない、そして第四回目の本人尋問をやって和解ができてしまった、こういうことで、第三回の証人調書もできてない、第四回期日の本人調書もできてないという場合があろうかと思います。こういう場合は両方ども省略の対象になり得ますけれども、そういうケースは非常に少なかろうかと思います。 この改正案が予定しておりまするのは、第四回期日における本人尋問調書の省略ということに実際上はなろうかと思います。それを前提といたしまして、和解あるいは取り下げの効力が争われて、また本来の本案の審理が係属続行されるという場合が確かに御指摘のようにないわけではないと思います。そういう場合には、省略をしておかなかった方がそれはよかったということになることは間違いないと思われますけれども、これは司法統計にはございませんので特別に調査した結果でございます。しかも、ごく一部の庁について調査いたしました結果をちょっと御紹介申し上げたいと思います。 調査いたしました庁は東京、大阪、名古屋の地裁の本庁でございます。この三つの本庁におきまして五十五年度に既済になりました和解件数は一万一千九十七件、取り下げによって終了いたしましたものが五千三百四件でございます。そして、同じ三つの裁判所で五十六年度中に和解無効とか期日指定の申し立てというような形で和解の効力が争われました件数が二十五件、取り下げの効力が争われましたものが十三件でございます。和解の効力が争われましたこの件数二十五件は、全体の中の〇・二%程度でございます。そして、この二十五件のうち和解の無効が認められて本来の訴訟がさらに続行されるようになった件数がどれだけあるか、これはちょっとわかりかねるわけでございますが、かなり少なかろうと思います。 こういうような実情でございますので、このような実情を踏まえた上でこの改正案を見ますと、その合理性は肯定されてよいのではなかろうかというふうに考えるわけでございます。
○政府委員(中島一郎君) いま川嵜局長から、主として和解無効の実情についての面からの御説明があったわけでありますが、私、今回の改正法案の条文の面から申し上げますと、確かに、ただいま御質問にありましたように、和解が無効になって再び実体についての裁判手続が進む、あの証言の調書さえ残っておればという、ところがその証人が死亡してしまったというような場合も、理論的にはあり得るだろうと思うわけであります。 そういうふうに再び得がたいような証言あるいは再び得がたいような検証の結果というようなものをこれは調書に残しておくことは、裁判長もその点は考えるでありましょうし、当事者もその点は考えられまして、裁判長の許可あるいは当事者の申し出ということによって調書に残すということは可能なわけでありますから、運用よろしきを得るならば、大変いい結果が得られるのじゃなかろうかというふうに考えております。
○寺田熊雄君 いまいろんな問題点がそこから、あなた方の御答弁からも出てくるんですが、まず川嵜局長の言われた和解無効ですね。これは和解無効確認というような形で出た訴訟ですか、それとも、請求異議で出る場合がありますね、この両方を含むのか、その点どうなんですか。
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) 先ほど和解の効力が争われた件数が二十五件というふうに申し上げましたが、そのうち二十件は期日指定の申し立てという形で出ております。それから和解無効確認の訴えという形が四件、再審の訴えというのが一件でございます。請求異議というのは調査ができかねたものでありますので、ちょっとその数字はわからないというところでございます。
○寺田熊雄君 むしろ実際問題としては、請求異議によって和解の効力を争う方が多いのじゃないかというふうに私、実務上の経験から思うんですよ。ですから、いま〇・二%とおっしゃったのが、請求異議の事件を入れますと、もっと多くなるのではないだろうか、これが一つの問題点なんですね。 それから、法務省民事局長のおっしゃった裁判長の許可を得て本人たちの希望で、当事者の希望で重要な証人の証言は証人調書をつくる、また検証の結果は検証調書を作成するということで保存できると。確かにそうなんです、理論的には。 ただ、私ども実際見ていますと、戦前と戦後ではずいぶん違うのですね、書記官と裁判官との関係が。私ども戦前に裁判官の実務をとっておるときは、私どもよりはるかに年の上の書記官の調書であろうと、それは悪いことだったかもしれないけれども、持ってこさしてずたずたに直した。これは違うよ、こういうふうに証人は言ったんだと言って、もう古参の書記官の調書でも完膚なきまでに直したことがありますね、刑事たると民事たるとを問わず。 ところが、最近の裁判官は非常に謙抑でいらっしゃる。書記官の調書を直すことはほとんどない、書記官を信頼していると言ってしまえば大変それはいいけれども。私がひどい目に遭ったのは、証人の証言がキロで言ったのを書記官が貫と書いたために、勝つ事件が負けてしまったことがある。あれは裁判官がメモをとって、証人の調書をキロと言ったんだといって貫をキロに直してくれればいいものを、そのままずうっと行ってしまう。われわれが書記官の調書を見て、これは違うじゃないかと思っても、裁判官の方がもうすでに承認していらっしゃるので、余りそうわれわれが書記官室に行って書記官に、これは違うぞと言って弁護士がそう文句ばかり言ったら嫌われてしまう。 そういう書記官と裁判官との関係がいまは戦前と違うんです。だから、書記官が調書をつくらなかった場合に、裁判官が書記官に、おい、これはつくれと言ってきつく命じ得るかどうか、いまの裁判所の空気の中で。書記官も大方の人はまじめな書記官でいらっしゃるけれども、中にはサボる人もある。その場合に、これをつくりなさいと言う裁判官が果たして何人おるだろうか、ちょっと懸念を覚えざるを得ない。 それから、当事者がそういう調書をつくってくれ、検証調書をつくってくれと言えばつくれますという民事局長のお答えは、確かにそのとおりなんだけれども、当事者も和解ができてもう大丈夫だと安心してしまいますからね。これでもう間違いないと思って、ことさらにあれは重要な証人だから、後日問題になるかもしれないから調書をつくってくれと、こう言うだろうか。私は言わないと思うんです。それで、よかったよかった、みんなこれで解決したというそういう空気の中で、後日のことを考えて調書をつくっておいてくれと言う弁護士が果たして何人おるだろうか。ことに若いなりたての弁護士なんかが、そういうことを裁判長や書記官に言うだろうか。私は言わないと思うんですね、実際の実務を見ていると。そういう意味で、これは民事局長の弁明は理論的にはそうかもしれないけれども、懸念を感ぜざるを得ないですね。 それからまた、仮にその〇・二%が、これが請求異議を入れたら〇・五%になるかもしれないけれども、数が少ないからどうでもいいんじゃないかということはちょっと言いにくいですね。やはり司法秩序というものが十全に守られているかどうか、それが裁判所によって守られ得るかどうかということは大切な問題で、数が少ないからどうでもいいんだということは、これは言えないと思うんですね。 一体、これを提案した趣旨は何なんだろうか。裁判官や書記官の労力を減らそうというのが目的なんだろうか。いま臨調その他で行政改革が行われているのは、国民に不必要な負担をかけるというようなことはこれはいけないと思うんですね。裁判官の労力を減らすと、これはむだな労力であれば減らしてもいい。書記官の労力を減らす、これもむだなればいいでしょう。この目的は何なんだろうか。まず、それからちょっと御説明いただきたいと思います。
○政府委員(中島一郎君) 訴訟が判決によらないで完結をいたしました場合には、その事件に限って申しますならば、通常の場合は調書は不必要になったと、こういうことは原則的には申せるかもわかりません。申せると思います。でありますから、その場合でもすべて調書をつくらなければならないということは、少し考え方がかた過ぎるのじゃなかろうかということであります。 それじゃ、全部省略していいかということになりますと、それはただいま御指摘になりましたように、和解無効ということもあり取り下げ無効ということもある、いろいろ別件との関係もある、関連事件にその証拠を書証に使わなきゃならぬという場合もあるわけでありますから、無条件に省略していいということにはならないだろう。また、調書は裁判所のためにつくるわけでありますから、裁判長が許可しない場合にこれを省略するということはこれはできないだろうということで、まず裁判長の許可がある場合に限ると、こういうことであります。 先ほど申しましたように、当事者の必要ということもあるわけでありますから、当事者にも調書をつくってもらうということの申し出権を認めるべきであろうと、こういうことになったわけでありまして、そういう裁判長の許可と、そして当事者の申し出という二つの条件といいましょうか、安全弁をつけることによって、調書を省略するということはこれは差し支えないのじゃないか。 でありますから、これは運用次第で訴訟が裁判によらない、判決によらないで完結した場合の大部分が調書が省略されることになるのか、あるいはむしろ調書が省略されるのは例外であって、大部分は従来どおりつくられるのか、これは今後の運用にまつわけでありますけれども、むしろそういった制度にしておく方が非常に具体的に妥当な結果が得られるのじゃないかというふうに考えるわけでございます。
○寺田熊雄君 どうもその説明だけではまだ納得しがたいものがあるね。結局、証人が証言した場合には証人の調書をつくる、裁判官が検証した場合には検証調書をつくるというその原則は、これは裁判の重要性にかんがみてこの原則を尊重していかなければいけない。その記録は残さなければいけない。ただ、和解になった場合には、もう上級審で争われないのだからもういいじゃないかという、それはそれなりの確かに合理性はあるけれども、しかし、何%にせよ、それが蒸し返される可能性というものを否定することはできないわけで、これがまず一つある。その場合には、司法秩序を守るという上から非常に困った結果が生ずるということもこれは否定できない。 それからもう一つは、民事局長のおっしゃった、裁判長の許可が必要なのですよ、当事者の希望があればこういうことはないことになるのですよ、運用ですよと、こう言われる。それもそうなのだけれども、さっきもお話ししたように、また最高裁の民事局長が言ったように、次回までにはもうこれはできているはずなんですと言っても、この事件は和解になるということが予想された場合に、書記官がサボってつくられないかもしれない。そういうときに裁判官が、おい、サボっちゃいかぬよ、つくっておけと言って書記官に厳として命令する裁判官だけのようには、いまちょっと私は裁判所の実情を見ておると、どうもそういうふうには思われない。そうすると、ずっと調書がつくられないこともいまの実情ではあり得るように思う。 だから、川嵜局長も言ったように、本人尋問のときに和解があったのだから本人尋問はいいでしょうというのは、これは私もいいと思う、ことに本人はね。もう一遍呼んでということも、死んでしまっちゃ困るけれども、もう一遍ということが十分あり得るからこれはいいと思うのだけれども、だから結局、裁判所の現実の執務状態ということがやはり戦前と多少違うからね。弁護士もそうなんです。やはり戦前と少し違いますね。もう非常に若い弁護士の方がいま多いですよ。それで、むしろ長い弁護士生活をした老練の人はどっちかというと追いやられてしまって、ほとんど弁護士会は若い人が牛耳っている。 こういう問題もあるし、それから結局民事局長の言われるのは、この改正をしたのは、目的はむだを除くということ、一言で言うとこの制度を改正をする目的はむだの排除ですか、それとも裁判官の労力を節減しようというのか、それとも少しでもむだを省いて訴訟の促進をしようというのか、その辺の目的をもうちょっと明らかにしてもらいたいのですが。
○政府委員(中島一郎君) 現在の実態でありますけれども、私どもの大分以前の経験あるいは人から聞いた話などによりましても、現在でも調書の省略、記載の省略ということは実際には行われておる。これは関係者に異議がないということを確かめまして、もちろん訴訟が判決によらないで完結した場合の話でありますけれども、調書の省略について関係者が異議がないという場合に、調書の省略というものは実際に行われておるという実態がございます。場合によると、証人を調べた以上は調書の省略はできないということで、証人を調べなかったことにしましょうというようなことで関係者が合意をしているというような例もあるというふうなことを聞いたことがございます。 もしそういう実態であるならば、それはやはり生活の知恵と申しましょうか、現実に訴訟に関与している人々の知恵によって出てきたそういう実態ではなかろうか。やはりそれは一面において、この限りある裁判所の力というものをより必要な方面に振り向けるというようなねらいもあるのじゃないかというふうに考えるわけでありまして、そういうことであるならば、これをむしろきちんとしたルールに乗せて、そして調書の省略ができる場合を要件をしぼって、そして規制するということの方が望ましいのではないかというふうに考えております。
○寺田熊雄君 どうもいまの民事局長の答弁では、ちょっと逆にそれは納得しがたいのですがね。つまり、法律に違反して裁判所の実務が遂行されてきた。その生活の知恵を是認するために、後追いするためにこの改正が必要なのだというんだったら、私どもはそれはとんでもないことだと。つまり、違法状態を是認するための改正だなんということだったら、これはとうてい承認しがたい。それはおかしい。そんなものはとても承認できない。
○政府委員(中島一郎君) 私の申し上げ方があるいは不十分であったかもわかりませんが、違法状態を承認するということではなくて、現在の実態を、そういう実態もあるということを御紹介したわけでございますが、その実態というものもそれなりに合理的な理由があって発生をしてきたものであろう。だとするならば、それは全く無視するということではなくて、むしろそれを十分規制をして、そして限定を設けて、それを逸脱しない限りにおいて調和がある制度として法律に定めるべきではないかということでございます。
○寺田熊雄君 裁判官がいま非常に負担が多いということもわかっているし、できるだけ裁判官の負担を軽減してあげたいと思うし、書記官も人数が足りないで苦闘しておられるから、できるだけ書記官の不要な仕事はなくしてあげたいと思うけれども、何か現実にいま許されない行為があるんだ、それは生活の知恵なんだ、合理性がある、だからそれを立法の軌道に乗せたんだというのは、ちょっとこれは承服しがたいですね。そういう改正であれば、それはむしろやめてもらわなければいかぬ。この百四十四条ただし書き、それから三百四十条後段というものはむしろこれは削除してもらいたい、私はそういうふうに考える。これはきょうだけではないからさらに論議を深めてみるけれども、どうも少し裁判の重要性を考えるというよりは、便宜主義に走っているような考え方のように思いますがね。 それは一応ペンディングにしておいて、二番目の簡易裁判所以外の裁判所で、最初の期日を除いていわゆる簡易呼び、出しができるようにしたいという制度、これは代理人がついておれば、実際問題としてはもう代理人に裁判所が電話をする。それで、代理人である弁護士が裁判所へ行って期日請書に判を押すということでこれはもう解決するので余り問題はないと思うんだけれども、この簡易呼び出しの実際の利用度というのはどの程度ありますか。
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) 御承知のとおり、簡易裁判所におきましては簡易呼び出しの制度が現行法上認められております。 ところで、ただいまの御質問は、それが認められていない地方裁判所でどの程度利用されているかという趣旨であろうかと思いますので、地方裁判所における利用状況を申し上げます。 これは調査をいたしました庁が高裁本庁の八庁、地裁本庁五十庁、地裁支部十六庁でございます。証人に対する呼び出しはもちろん正式の送達でやっているところが多いわけでありますが、そのほかに普通郵便で呼び出している庁あるいは書留郵便を用いている庁等が簡易呼び出しの主たるものでございます。それから、鑑定人に対する呼び出しにつきましては、正式の送達のほかに普通郵便、書留郵便、それから電話、こういう簡易の呼び出しを利用している庁がかなり多くございます。 大体、利用状況は以上のとおりでございます。
○寺田熊雄君 代理人のつかない本人だけでやる訴訟というのはどの程度あるものだろうか、これは統計をとっておられますか。とっておられたら、ちょっとお伺いしたい。
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) ただいま手元に資料がございませんが、司法統計で統計はとっております。 簡易裁判所の場合と地方裁判所の場合では大きな開きがございますし、またその中でも単純なる金銭請求訴訟と不動産訴訟とでは大きな差がございまして、簡易裁判所の場合、正確な数字はちょっと覚えておりませんけれども、金銭訴訟だけに限って申し上げますならば、弁護士さんがつく訴訟は数%であったと思います。不動産訴訟になりますと、いずれかに弁護士さんがつく訴訟は簡裁でも七、八〇%に達すると、こういうようなことでございまして、本人訴訟あるいは弁護士代理訴訟はおよそどのくらいかと申し上げることはできるわけでありますが、さらに訴訟の中身によって、いま申し上げましたような差があるというのが実情でございます。
○寺田熊雄君 それから「就業場所においてする送達等」の問題で、「送達を受けるべき者の住所、居所、営業所又は事務所が知れないとき、」これは当事者ではなくて主として証人について言う問題ですか、それとも被告の場合も含むのか。「知れない」というのはどういう場合に「知れない」と認定するのか、その辺ちょっと説明していただけますか。
○政府委員(中島一郎君) これは当事者の場合もあるわけでありまして、従来の住所はわかっておりましたが、その住所から転居してどこへ行ったかわからないと、文字どおり住居所が知れない場合であります。 現在の民訴法の百七十八条には「当事者ノ住所、居所其ノ他送達ヲ為スヘキ場所カ知レサル場合」、こうあるわけでありまして、この場合は現在の規定ではいわゆる公示送達をする以外に方法がないというわけであります。しかし、住居所はわからないけれども就業場所はわかっておるということがあるわけでありますから、今回の改正では、住居所はわからないけれども就業場所はわかっておるという場合には、就業場所において現実の送達をするという制度を設けようとするものでございます。
○寺田熊雄君 「支障があるとき」というのは。
○政府委員(中島一郎君) 「支障があるとき」と申しますのは、昼間不在のために住居所において送達することが困難である、夜間なり休日なりの送達という方法もあるわけでありますけれども、それは執行官の都合等ですぐにはできないと、こういう場合でありまして、そういう場合には就業場所がわかっておれば就業場所で送達できるようにしたいというのが今回の改正法案であります。
○寺田熊雄君 これは「支障がある」というのは、夫婦がともに働きに出て送達、特別送達をしようとしても受け取り手がないという場合が主だという、そういう御説明だったですね。これはいまちょっと局長が言われたけれども、夜間送達をせずにジャンプして就業場所にというのは、執行官の都合のためですか。どうして夜間送達によらず、ジャンプして就業場所に行くのか。その点の消息はどういうことでしょう。
○政府委員(中島一郎君) 夜間送達なり、あるいは休日送達なりももちろん可能でありますが、それが何らかの事情ですぐにはできない、困難があるというような場合を想定しておるわけでございます。
○寺田熊雄君 何かその点が、たしか日弁連でも、夜間送達を一応やってみて、それでだめならば就業場所というふうにした方がいいんじゃないかという意見がちょっとあったようだけれども、局長の言われるのは、夜間送達を省いても構わないというのでしょう。一応夜間送達をして、それでもできない場合に就業場所へ行くというのか、その点、何か少しあいまいだから、どうでしょうかね。
○政府委員(中島一郎君) 夜間送達等について、何らかの理由があって住所地における送達に支障がある場合、こういうふうに理解をしているわけでございます。
○寺田熊雄君 これは実際問題として、この法律ができ上がった場合に、裁判所が夜間送達をしてから、それもだめだということで就業場所へ行くでしょうか、それとも夜間送達なんかやらずに、ストレートにジャンプして就業場所に行くだろうか、この点は最高裁の民事局長はどんなふうにお考えになるでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) 現在の裁判実務、送達実務の実情から申し上げますと、被告に訴状を送達しても返ってきてしまう。特別送達で返ってくる。その次、もう一度特別送達いたします。そのとき書記官が、特別送達郵便を出しました、恐らく郵便局に保管してあるでしょうから受け取ってくださいというはがきを別に出して、受け取り催促をしておるのが多くの例でございます。それでも受け取ってくれないということで、十日間のとめ置き期間が過ぎてまた還付されてくる。その辺までなってきますと、原告側代理人も、もうこれでは何ともしようがないから何とか執行官の夜間送達をしてくれないか、夜いることは間違いないのだというようなことで夜間送達の申し立てがあって、それから夜間送達をやるというようなことに多くの場合なっております。 今回の改正は、核家族化あるいは共働きということで昼間の不在者が多いということでございます。それに対応する改正でございます。 執行官の夜間送達をやれば、夜間は必ずいるのだから、そういう必要はないじゃないかというお話になるかとも思いますけれども、実は執行官につきましては、四十一年に執行官制度が大改正されまして、執行官の地位の向上とか、執行官の職務の純化と申しますか、執行官は本来の執行事務にできるだけ専念して適正な執行をやるべきだというような方向で新しい制度ができ上がった。したがいまして、送達というような事務も当時相当数ございましたけれども、これはできるだけ執行官の職務の純化ということを図るためには、郵便送達の方に切りかえていくべきだというような考えから、執行官送達事件は昭和四十二年から比べますと五分の一くらいになっております。そういう方向といいますか、そういう流れの上に乗せているというのが実情でございます。 その上、最近の新しい民事執行法におきまして、執行官の事務が現況調査という非常にむずかしい大事な事務がふえました。そういうような実情にございますために、執行官による夜間送達でカバーすべきだということは非常にむずかしいといいますか、果たしてそれは望ましいことかということになりますと、私ども必ずしも望ましい方向ではないというふうに考えておるわけでございます。そういう実情を踏まえての改正だというふうに、私どもは理解しております。
○寺田熊雄君 恐らくほかの委員の方からもこの点は問題として指摘せられるだろうと思いますけれども、就業場所に訴状等を送った場合、日本の社会というのは、何か裁判所に呼び出されるとか裁判事件になっているというようなことを不名誉なことと感ずる空気が一部にありますね。そこで、ことにプライバシーの保護が最近非常にやかましく言われるようになりましたので、その送達を受けた本人からいたしますと、何もおれの勤め先に送らぬでもいいじゃないかという考えを持つ場合があると思うんですね。 それじゃ、いま川嵜局長が言われたように、非常に不誠意な被告などが実際あります。これは法務省においても、最高裁判所においても、そういう不誠意な被告なんかに対しては、もうぎゅっとつかまなきゃいかぬ、だから就業場所へやっても構わないとお考えになる、これは確かにそうだと思うけれども、何からの手違いで訴状の送達を受けなかった人が、いきなり就業場所、勤め先に送られた場合のその人のいろんな立場を考えますと、何かしぼりはかけられないものだろうかという気がするわけですね。ですから、夜間送達の問題でやかましく言ったわけで、夜間送達を一度やってだめだった場合に就業場所にやったらいいじゃないかと、そういう考えがあるわけですね。 いまのところは両局長のお答えも、その点は必ずしも夜間送達が先行して、なおかつだめな場合なんですというところまでは断定的におっしゃらぬから、書記官によってはそういう手続を省略していきなり就業場所に発送するということがあるかもしれない、若干の懸念を覚えるのがそういう点なわけであります。 これはちょっとまたさらに検討することにして、第四項を新設して、第二項で「送達を受けるべき者以外の者に書類が交付されたときは、裁判所書記官は、その旨を送達を受けた者に通告することを要するものとすること」という趣旨で規定がなされておりますね。この「送達を受けた者」というのは、法律上送達を受けたことになる者という意味ですか。つまり、送達を受くべかりし者という意味なのか、その点ちょっと説明していただきたい。
○政府委員(中島一郎君) 送達を受くべかりし者と申しましょうか、送達の効果が生ずべき者という意味でございます。
○寺田熊雄君 そういうふうに理解できるけれども、やっぱり「送達を受けた者」と表現することがいいのですかね、これ。ちょっとその点、疑問に思ったわけであります。 それから、それに通知するというのは、つまり就業場所で本人に出くわさなかったので、第三項で、その会社の同僚その他に渡したということを念のために送達を受くべかりし者に通知するわけですね。そうでしょうね。その通知の方法はどういう方法をとるわけですか。
○政府委員(中島一郎君) これは、いわゆる普通の郵便、封書と申しましょうか、その他相当と認める方法ということになるわけであります。 と申しますのは、昼間不在でありますから、書留その他の郵便によりますと、これは受領しない、できないと申しましょうか、わけであります。ところが、普通郵便でありますれば、郵便受けにほうり込んでおく。そうすると、昼間不在者である送達を受くべき者が、あるいは送達を受けたる者、この場合は就業場所における送達によって送達の効果が発生しておりますので、法律的には、「送達ヲ受ケタル者」という表現になるかと思うわけでありますが、その者が帰宅いたしましてその郵便を見る。でありますから、厳格に申しますと、これは簡易な方法ではありますけれども、実際問題として本人に届くという意味においては非常にいい方法であるということで、百七十一条の四項の規定を新設をしたということでございます。
○寺田熊雄君 その第四項を発動する場合は、この就業場所で本人に会わない場合、その書類を雇い主に渡した、あるいは本人の法定代理人に渡した、それはわかる。ところが、事務員もしくは雇い人に渡す場合もあるわけでしょう。この事務員もしくは雇い人というのは、本人の雇い主の事務員もしくは雇い人と、こう理解した方がいいのでしょうね。つまり本人の事務員、雇い人じゃなくて、雇い主の雇っている事務員または雇い人、つまり本人の同僚というか部下というか、あるいは上司の場合もあるかもしれないが、そういう者を指称するわけでしょう。
○政府委員(中島一郎君) おっしゃるとおりでございまして、百七十一条の二項は「同項ノ他人」という表現を用いでおります。雇い主等のことでございます。
○寺田熊雄君 問題は、雇い主に渡した場合は雇い主が本人に渡すであろうということはほぼわかりますね。事務員もしくは雇い人、それが雇い主の事務員、雇い主の雇い人ということであるから、本人の同僚である場合、あるいは本人の先輩である場合、あるいは本人の部下というか後輩である場合、いろいろあるでしょう。 それが「事理ヲ弁識スルニ足ルベキ知能ヲ具フル者」と、こうあるわけだけれども、これは従来もあった規定の表現だけれども、それがうっかり失念して本人に渡さなかった場合、そのことによって生ずる不利益というのは当然本人にかかる、これは送達の効果から当然予想されますが、そこで第四項で、念のために書記官が、だれだれに渡したということをはがきで知らせるということになるんだろうけれども、これはやむを得ないのですかね。何か、本人にそれが渡らなかった場合、本人が不利益をこうむるから若干不安があるんだけれども一はがきで知らせればもう大丈夫ですと、民事局長言い切れますか。
○政府委員(中島一郎君) 従来、住居所における送達の場合にもいわゆる補充送達というものはあったわけでありまして、本人の「事務員、雇人又ハ同居者」ということになっておったわけでありますが、今回、就業場所における送達の場合にも補充送達を認めるべきかどうかということは、法制審議会等におきましても一つの問題点ではあったわけであります。 しかしこれは、補充送達は認める、しかし余りにその範囲が広くならないようにということは考えるということで「同居者」というような表現は除いたわけでありますが、その場合は、住居所等の場合には本人の事務員、雇い人でありますから、その者に手渡すことによって本人の支配下に入った、こう見られるのに対しまして、就業場所における場合には、本人の雇い主等の事務員もしくは雇い人でありますから、まだそれだけでは、書類等が本人の支配下に入ったというふうに見られるかどうかという理論的な問題もありますために、この百七十一条の四項というものを就業場所における補充送達の場合に限って新設をしたというわけであります。 しかし、ただいまも御指摘になっておりますように、何らかの事情によってその者が送達を受けた者に書類等を手渡すことを失念したということもあり得るわけでありますけれども、その場合は送達の効果は生じておる、ただ、その送達を受けた者の責めに帰すべからざる理由によってその書類を受け取らなかった、あるいは百七十一条第四項の通知も何らかの理由によって見なかったというような場合には、百五十九条によって「訴訟行為の追完」という問題として考えざるを得ないというふうに思っております。
○寺田熊雄君 これは果たして、いま局長のおっしゃったようなことで救済が完全に得られるかどうか、さらにまた検討をさせていただくことにして、一応この問題はきょうは終わりといたします。 次に、判決書の記載の簡素化、こういう問題も実は私どもとしましては多少の懸念を感ぜざるを得ないわけであります。われわれが判決を見る場合に、理由によって裁判官の事実認定、法律の適用、これを知ることができるわけでありますけれども、どういう証拠によればということが当然そこにうたわれておるわけでありますが、その証拠なるものが記載がない場合、それはわれわれが十年間の記録保存期間中であれば裁判所に行って見ることができる。しかし、それは当事者であるか、あるいはよほどの研究者の場合は期待できるけれども、一々そういうめんどうくさいことをやらなければ、果たしてどういう証拠があったんだろうかということを判決によっては全くわからないのだ。それも、十年間ならば何とか記録を見ることによって補い得るけれども、十年たって記録が破棄された場合には、もう判決によっては全くそれをうかがい知ることができないということは、ちょっとやはり困るのじゃないかという気がするんだけれども、それは構いません、構わないじゃありませんかということを言い切れますか。
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) 寺田委員もう先刻御承知のことでございますが、現在の判決書は、まず主文がありまして、次に事実という欄がございまして、その事実欄に通常、第一当事者の申し立て、第二当事者の主張、第三証拠、こういうことになっておるわけでございます。問題のところは、その第三証拠というところでございます。 その証拠のところに何を書いているかということでございますが、原告は甲一号証から十号証までを提出し証人だれそれの尋問を求めた、乙号証の認否はこれこれである。今度、被告側は、被告は乙第一号証から第五号証まで提出し証人だれそれの尋問を求めた、甲号証に対する認否はこれである、これだけを書いているわけでございます。これは、いま申し上げました限りでは記録の中に証人等目録、書証目録というのがございまして、そこに表になって全部記載してあるわけでございます。これをいわば単純に書き写しているということでございまして、そういう意味では、その部分に関する限りは機械的な作業である。ただ法律、民訴の百九十一条の解釈上、「事実」の中には証拠関係も含まれるのだという解釈から、百九十一条の要請によってそういうことを書くのだということになっておるわけでございます。 こういうことでございますので、その部分が引用ということで判決書の上からは消えたとしても、それは結局双方がどういう証人を申請し、これが調べられたか、あるいは双方が何通書証を出したかということが判決の記載上はわからなくなるというだけでございます。ただいまの御指摘がございましたけれども、どういう証拠で、どういう認定がなされたかがわからなくなるということにはならないかと思います。 理由中で、争点につきましてはいろいろな証拠を挙示いたしまして、これらの証拠によってこれこれの事実を認めるのだというふうに詳細に理由を書くわけでありますから、その事実認定にどういう証拠が使われたかということは、判決の理由中で明らかだろうと思われます。したがいまして、これが引用という形で省略されたといたしましても、支障を及ぼすことは何もないのではないかというふうに私どもとしては考えておるわけでございます。
○政府委員(中島一郎君) お尋ねが、十年の保存期、間経過後のことに触れておられましたので、その点について私どもの考え方を申し上げたいと思いますが、確かに判決原本は保存されておりますけれども、そこで引用されておる文書である記録、したがって証拠目録はもう破棄されておるということでいいのかという問題点が一つございますので、そうなりますと、この証拠目録は判決原本の内容を明らかにするために必要な書類ということになるのではないか、そうしますと、それをも含めて保存する必要があるのじゃないかというような見解もあるわけでありますから、その辺のところは今後の検討課題としたいというふうに考えております。
○寺田熊雄君 川嵜局長も言われたように、理由が適正に遺憾なく名判事によって全部の証拠をしさいに点検して名判決であればこれは問題ないんだけれども、当然採用すべき書証などをめんどうくさいので見逃してしまう判決もあるわけだから、それは上級審の判決で救済されると言えばそれきりのものなんだけれども。 それからもう一つは、どういう証人を繰り出して防戦したかというようなことは判決ではわからない。理由でわかりますよと言ったって、理由は採用した証人だけを挙げてもいいわけだから、ほかのものはネグレクトしたって理由は書ける。だから、理由を見ればわかりますよということだけでは、ちょっとやっぱり言い切れないな。 それから、法務省の局長の言われる記録が十年で破棄されてしまいますので、その点判決に、結局判決を保存する場合に記録中の証拠の目録というものを判決にくっつけて保存した方がいいかどうか、そういう具体的な問題を今後検討しますというそういうお話だろうと受け取ったんだけれども、確かにそうしてもらえば後日の問題は解決すると思うけれども、これは結局裁判官の労力を軽減しようというのが目的でしょうね。そうとすると、これは書記官に記録の証拠関係目録の部分だけきちっとタイプさせて、証拠関係別紙のとおりというふうに判決にしてくっつけたって構わないわけだから、そういう方法で裁判官の労力を軽減する方法もあったんじゃないでしょうか。その点、いかがでしょう。
○政府委員(中島一郎君) ただいま御指摘のような方法もあり得るわけでありまして、現に行われておるかもしれません。それであれば現行法のままでもやれるわけでありますから、それは大いにやっていただいて結構だ。しかし、今回こういう引用という方法も認めることにしたらどうかというのが改正法案でございます。
○小平芳平君 先ほどの寺田先生の御質問で、訴訟が裁判によらずに完結した場合にはという点であります。 最初に、どうしてこういう改正をなさるかという趣旨、それでいまお話がありましたが、〇・二%くらいという御説明もありましたが、〇・二%でもそういう問題が起きるということがはっきりとしているときに、どうしてそういう改正をなさるか、その点についてお答えいただきたい。
○政府委員(中島一郎君) 現行法のもとにおきましては、証人の証言あるいは検証の結果というものは調書において明らかにすることを必要とされておるわけでありますけれども、訴訟が和解の成立あるいは訴えの取り下げ等裁判によらないで完結をいたしました場合には、その訴訟に関する限りは証人調書等は不必要ということになるわけであります。通常の場合であれば不必要ということになるわけでありますので、その場合に調書を省略できる方法といいましょうか、制度と申しましょうか、そういう手続と申しましょうか、そういうものを設けておくということは、これは十分意味があり合理的なものではないかというふうに考えたわけでございます。 ただ、問題は、その場合の要件をどうするかということであろうと思うわけでありまして、私どもは今回の改正法案の要件に規定しております要件のもとにそういう手続を認めるということは、これは特に民事訴訟の厳格性その他についての支障となるものではないというふうに考えておるわけでございます。
○小平芳平君 「裁判長の許可を得て、」という点と、それから「記載を請求した場合を除き、」という点でありますが、この「記載を請求した場合」とそれから「裁判長の許可を得て、」という場合、そういう場合をちょっと御説明いただきたいです。
○政府委員(中島一郎君) 通常の場合でありますと、証人調べ等を行いまして、その後で和解が成立する、あるいは取り下げが行われるということになろうと思います。 調書をつくるのは書記官でありますから、書記官が、訴訟が裁判によらないで完結をしたと、この調書は省略してもいいでしょうかということを裁判長に許可を得るわけであります。裁判長が許可しなければ、これは調書をつくらなければなりません。許可をいたしました場合にはその点の要件は満たすわけでありますが、今度は当事者が訴訟の完結したことを知った日から一週間を経過するまでに記載を省略してもらっては困る、記載をしてくれという申し出をすることができることになっておりますので、その申し出があれば記載を省略できない。もしこの申し出がなければ記載を省略してもよろしいと、こういうことになるわけであります。 この申し出は、これはどんな方法でもいいわけでありまして、書面を出して記載をするようにという申し出をしてもよろしいわけでありますし、口頭によって申し出をしてもいい、こういうことになるわけでございます。
○小平芳平君 それから、最近における裁判によらずに完結するという例、裁判によらずに完結した場合のこういう場合があるというのと、それから簡裁と地裁に分けてどういう傾向になっているか等について御説明いただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) お手元に配付されていると思いますが、この改正法案関係の資料の終わりの方に何枚かの表がございます。その表の4というのをごらんいただきたいと思います。「民事通常訴訟既済事件の終局区分別事件数」というものでございます。これは昭和五十五年度に終局したものの区分別の事件数でございます。 まず、簡裁でございますが、既済総数七万二千九百六十六件、そのうち判決によらないで終局したものが「和解」、「取下げ」、「その他」と三つに分けてございますが、和解で終局したものが一万三千五十六件、取り下げて終了したものが二万八百二十件、その他二千六百二十五件でございます。 それから地裁が、既済総数が十万二千三十三件、和解が三万二千五百四十件、取り下げが二万二千二百三十九件、その他が四千百八十七件、このような状況でございます。 その他の内訳といたしましては、請求の放棄、認諾等が含まれております。
○小平芳平君 いまの資料は五十五年度についてですが、過去にさかのぼりますと、たとえば三十五年と五十五年を比較した場合にはどうなりますか。
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) ただいま手元に対照すべき三十五年度の終局区分別の事件数を持っておりませんので数字を申し上げられませんけれども、先ほど御質問の、どのような傾向にあるかということについては、大まかなところは申し上げられようかと思います。 それは、ただいまの表をごらんいただきたいのでありますが、判決で既済になったもの、簡裁が総既済件数のうちの五〇%、半分が判決で終わっております。地裁は四二・二%というふうになっております。この判決率というものが、非常に最近高くなってきておるわけでございます。先ほどお尋ねの昭和三十五年ごろの正確な数字は持っておりませんけれども、大体われわれの感覚的なつかみ方といいますと、判決、和解、取り下げがそれぞれ三分の一ずつぐらいだというふうに見ておりまして、ところがその後、判決率が非常に高くなってきて、簡裁に至っては半分の事件が判決だということになっているということは、和解、取り下げが低くなってきているということを示すものでございます。 なぜかということでございますけれども、これは確かな推測はできかねますけれども、最近になって、特に五十年代に入って、クレジット関係の訴訟が非常に多くなってきております。簡裁におきましては特に多くなってきております。このクレジット関係の訴訟は、被告の方で争う余地がないような事件が多いようでございます。でありますので、被告は欠席をいたしまして欠席判決で処理される、これが数の上で大きなウエートを占めることになってきたものですから、この判決率が高くなってきているというようなこと、その反面において和解、取り下げが少なくなってきている、こういうようなことが言えようかと思います。
○小平芳平君 簡裁においては判決が五〇%を占めるようになった理由はいま御説明がありましたが、地裁においては和解が急激にふえておりませんか。
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) 五十五年度の地裁における和解件数の率は三一・九%となっておりますが、この数字はそれほど大きく動いてはいないと思っております。これもまことに恐縮でございますが、ただいま過去の表を持ち合わせておりませんので大まかなことしか申し上げられませんけれども、この三一・九%という数字はそれほど大きく変動はしていないものと思っております。
○小平芳平君 私がいま見ている表では和解がふえております。それで、いずれにしても三一・九%の和解があったということで、これは何によると思われているでしょうか。何が原因なんでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) ただいまの御質問の趣旨は、地裁の和解が三万二千五百四十件でございますけれども、この中身がどういうことかということでございましょうか。——訴訟にもいろいろな形がございまして、金銭を目的とする訴訟、それからその中にも交通事故の損害賠償とか貸し金であるとか、先ほど申し上げましたクレジット関係とか、さらに大型になりますれば薬害、公害といったような大型の損害賠償請求訴訟がございますし、さらに不動産を目的とする訴訟もございます。その他請求異議訴訟であるとか、いろいろな形の訴訟がございますが、和解が調うのはやはり金銭請求訴訟が多かろうと思います。御承知と思いますけれども、薬害訴訟の最たるものでありますスモン訴訟は、これは非常に大量に係属しておりましたが、順次和解路線に従って和解で終了しつつあるというような状況でございます。
○小平芳平君 当事者の合意が基礎となって和解ができると思うんですが、先ほど来の裁判所側の姿勢といいますか取り組みによりまして、和解が当事者の十分な合意を得ないまま進められていく、裁判所の都合によって進められていくというようなことがないかどうか。それで、スモン訴訟の場合の和解の問題は私も若干承知しておりますけれども、これなどは特別の例としまして、一般的に言ってそういうようなことがあるのかどうかということについてお伺いしたい。
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) 民事訴訟で、訴訟を裁判官がそれぞれ担当して進めていく上で、それぞれ個性が出てきますのは、法廷で言えば訴訟指揮権の行使という形でございます。これは十人十色のやり方といいますか、大枠は決まっておりますけれども、その中でどのような訴訟指揮をしていくかということは十人十色だと申し上げてもよろしいかと思います。 これを、訴訟が和解手続に入りました場合に、和解手続をどのように主宰していくかということも、ただいま申し上げました訴訟指揮と全く同じでございまして、その裁判官のいわば全人格がそこに出てくる、それによって和解ができたりできなかったりということになろうかと思います。和解の手続における主宰というものは、訴訟指揮権の行使と全く同じだろうと理解しておりますが、その際に、それぞれの人によってやり方が違うわけでありますが、第三者あるいは当事者から見れば、それはやや強引ではないかというような和解の運営をする人もありましょうし、またもう少し裁判所が腹を割って言ってくれれば和解ができるのにというふうな形で、不満を持たれる和解の運営というのもあろうかと思います。 これはいろいろでございまして、できるだけ和解による紛争解決というものが望ましい限りは、当事者を説得する技術といいますか、それからその土台になっております人柄というものが大事だろうというふうに思います。 一般的な傾向として、御質問にありましたように、何が何でも和解へ持っていこうという傾向があるかどうかということになりますと、これはそういうことはない。やはり十人十色の和解の運営をやっているというのが実情だと申し上げられるかと思います。
○小平芳平君 そして、先ほど御答弁のありました東京、大阪、名古屋地方裁判所の本庁の和解二十五件、それから取り下げで十三件の、和解等の効力を争う申し立て件数調査表というのがあるわけですが、こうなった場合には、先ほどの〇・一八%あるいは〇・二五%という場合の救済は全くないわけでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) 先ほど申し上げましたように、東京、大阪、名古屋三つの地方裁判所本庁の五十五年度の和解既済総件数が一万一千九十七件。それで、五十六年度におけるこの三庁の和解の効力を争う申し立て事件が二十五件で〇・二%だと、こういうふうに申し上げたわけでありますが、この二十五件が、和解が無効だという、和解の効力を争うというその争いが認められたのか認められなかったのかというところまでは、ちょっと調べがつきかねるわけでございます。 でありますが、私どもの一般的な経験からいきますと、その和解の無効が認められたケースはそう多くはないだろう。したがって、もとの訴訟が生き返ってさらに審理が続いていくという形の件数は、この二十五件のうちさらに少ない数であろうというふうに推測しております。
○小平芳平君 証人調べ等の調書の作成が省略された後、訴訟上の和解、訴えの取り下げ等が無効とされた場合には、裁判所はどのような対応をすることになりますか。
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) ただいま申し上げましたように、この数字で申しますと二十五件が和解の効力を争うわけでありますが、その和解の効力を争う過程といいますか、和解の効力があるのかないのかという点について、場合によっては証拠調べをしなければなりません。その証拠調べというものは、全くその点についての証人なり書証というものが出てくるわけでありまして、先に省略された証人調書あるいは本人調書、検証調書等がその証拠として使われる、和解の効力があるかどうかの判断に使われるということはまずないのではなかろうか。 省略された調書があればよかったなというのは、和解の効力が否定されてまだ訴訟が係属しておるのだと、もとの訴訟が係属していてその訴訟を続けてやっていかなければならない、そのときに初めて、前の調書を省略しておかなければよかった、二度手間にならなくて済んだ、こういうことになろうかと思います。そういうことになるケースというのは、先ほども申し上げましたとおり非常に少なかろう。和解の無効が争われるケースは、先ほども申し上げましたとおり〇・二%ぐらいございますけれども、さらに少ないだろうということでございます。
○小平芳平君 少ないであろうという御趣旨はわかりましたが、必要があれば証人調べをもう一度やるのかどうか。 それから、偽証問題が生じたような場合に、その省略されたことが支障がないかどうか、そういう点についてはいかがでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) 先ほど申し上げましたとおり、和解無効が認められまして、本来の訴訟の審理がさらに係属されていくことになりました場合には、先に証人尋問をして調書を省略してしまってあるという場合、どうしても必要ならばその証人について再度尋問をする必要が出てくるだろう、再度尋問することになるだろうというふうに思われます。 それから、偽証が問題になる場合も確かにないわけではないと思われます。そのような場合は、大体訴訟指揮をしている裁判長あるいは非常に利害関係を持っている当事者等が、その偽証の告発等をする考えがあるかどうかということ等の関連で、その訴訟手続内で大体わかるものだろうと思われます。そういう場合には裁判長は省略を許可しないという扱い、あるいは当事者が省略ではなくて作成してくれという要請が出てくるということになろうかと思います。
○小平芳平君 今回の改正によりまして、結果的に訴訟が裁判によらず完結すれば、証人調書及び検証調書、そういうような調書の作成は原則として省略されるというふうにお考えでしょうか。
○政府委員(中島一郎君) 百四十四条の条文は「省略スルコトヲ得」ということでありまして、省略するという手続を認めただけでありますから、この要件に当たる場合は省略されるでありましょうし、当たらない場合は省略されないだろう。 要件が、裁判長の許可とか、あるいは当事者の申し入れというようなことにかかっておりますので、どういう実際の運用になるかということはちょっとわかりかねますけれども、実際の訴訟を担当しておる裁判官なり、あるいは実際の訴訟に関与しておる当事者なりといたしましては、やはり自分たちの仕事に密接な関係があり、自分たちの利害関係に密接な関係があるから、その辺のところは真摯に考えて運用をするであろう。そしてまた、実際の運用の実績に照らして、省略されるべきケースが多くなっていったり少なくなっていったりというようなこともあり得るのではないかということを考えております。
○小平芳平君 寺田先生の御質問からずっと引き続きまして同じような質問をしたわけですけれども、ごくわずかだからいいじゃないかということは、裁判の場合当たらないんじゃないかと思うのですね。〇・二%と言っても千件に二件になるわけですから、ごくわずかだから問題なかろうということは当たらないと思うのです。その二件に自分が入ってしまったらどうするということになるわけですから、そういう点、法務省と裁判所はどう考えていらっしゃるのでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) お言葉を返すようなことになるかもしれませんけれども、民事訴訟では、御承知のとおり当事者は、訴訟の対象となっている本体である権利自体も自分の意思で処分できるというたてまえになっております。今回の法案は、そういう訴訟の本体をどうこうするという問題では決してありませんで、手続的にその取り調べた証人、原則は調書にして残すものだけれども、当事者は要らないと言っているし、請求してこないし、裁判所の立場から見ても必要ないという場合に限ってその調書の作成を省略するという手続上のものにすぎないわけでございます。 ですから、当事者が裁判を受ける権利を損なわれるとかいった大きな問題ではないわけでございまして、そういう意味におきましては千件に二件、さらに必要になってくるケースはあるかもしれませんけれども、その辺になりますと、手続上の問題でございますし、当事者の立場も十分配慮した上での新しい制度と思われますので、合理性は肯定されてよいのではないかというふうに裁判所としては考えておるわけでございます。
○政府委員(中島一郎君) 訴訟が裁判によらないで完結をいたしました場合に、この改正法のような裁判長の許可と、それから当事者の申し出のない場合という厳格な要件のもとに調書の記載を省略するということでありますから、これは制度としては許される制度であるというふうに考えております。
○小平芳平君 いまの問題はこのくらいにしまして、裁判長とそれから当事者の申し出を強調しておられますけれども、裁判長も当事者も予測できなかったことが起きた場合、そういう場合のことを言っているわけですね、私の方では。ですから、裁判長も当事者も、これはと思ったらちゃんと残しておくんですけれども、まずそういうことは万々一なかろうと思って省略したのが必要になったということが起きはしないかと思ったからお尋ねしているわけです。
○政府委員(中島一郎君) 記録をすべて保存するという面からだけ申しましたならば、すべての証言について調書をつくり、それをまた永久に保存するということが好ましいことであろうかと思いますけれども、現に、現在の民事訴訟の記録は十年で廃棄をしておる。それでは、十年の保存期間経過後にまたその調書が必要になる場合も全くないかと言われれば、これはあるわけでありますから、その辺のところの兼ね合いをどうするかということであろうかと思うわけでありまして、一方の面からだけ見ると確かにそういう問題があるわけでありますけれども、その辺の調整の問題であろうかというふうに思います。
○小平芳平君 次に、いただいた資料で順番に御質問したいのですが、簡易裁判所以外の裁判所においても簡易呼び出しの拡大をするという点についてお尋ねします。 初めに、簡易呼び出しというものは、先ほどもずいぶんお答えになっていらっしゃったんですが、ちょっとよくのみ込めないのですが、簡易呼び出しはどういうふうになされているかについてお答えいただきたい。
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) 先ほどもお答えしたのでありますが、簡易裁判所におきましては、制度として簡易の呼び出しというのが認められておりますから、もちろんこれに従って簡易の呼び出しをやっております。地方裁判所におきましてはそういう規定はございませんで、呼び出しは原則は送達という法律に従った形の呼び出しをやることになるということになっておるのでありますけれども、目的を達すればいいわけでありますので、地裁におきましても、この送達という方法ではなくて、いわゆる簡裁でやっております簡易の呼び出しを実際上利用しているところが多いということでございます。 それで、簡易の呼び出しというのは一体どういう方法でやるのかということでございますけれども、これは普通郵便あるいは書留郵便、あるいははがき、電話、そういう例はないかもしれませんけれども、だれか人に伝言をして頼む、伝えるということも可能ではあるわけであります。そういう方法が考えられるのでありますが、現実の問題として簡易の呼び出しは普通郵便で行う、封書でございますね、封書でやるというのが一番多いようでございます。弁護士さんに対する関係では電話でやるというのが多い、こういう実情でございます。
○小平芳平君 郵政省、いま東京江東区の大島四丁目団地というところでは、通常郵便物が着かないわけですね。全面的に着かないわけです。ちょっとその実情を説明していただきたい。
○説明員(伊藤修介君) いま先生から御指摘がございましたように、大島四丁目の七棟の団地につきましては、郵便規則によりまして、高層建築物ということで郵便受け箱を設置することとされているわけでございますけれども、五十三年の十二月にこの規則改正を行いまして、それ以降、再三再四にわたりまして建物の所有者あるいは居住者、それから自治会などにパンフレットあるいはチラシ等を配付をいたしまして、また私どもの方からも説明会に出席するなどいたしまして、この郵便受け箱の設置協力ということにつきまして協力要請を行ってきたわけでございますけれども、本年三月三十一日、これが猶予期間になってございますけれども、これまでに受け箱設置のめどがつかないということで、不本意ではありますけれども、四月の一日から普通扱いの通常郵便物についてとめ置き措置をしているところでございます。
○小平芳平君 裁判所では、こういうような場合はどうなさるわけですか。
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) 先ほども申し上げましたとおり、簡易の呼び出し、封書とかはがきということになりますと、結局本人に届かないで裁判所へ戻ってきてしまうという事態に相なろうかと思います。そういたしますと、形は簡易でよろしいのですが、目的を達しませんので一その方法はいまのようなケースの場合に用いることができないということにならざるを得ませんので、そういった場合は簡易の呼び出しを活用しようとすれば、電話の方法をとるなり、あるいは当事者と連絡をとって、ほかにどういう連絡方法があるかということを聞いておいて、その連絡方法をとるなりするほかはなかろうというふうに考えます。
○小平芳平君 郵政省に伺いますが、パートで主婦などが配達しているような場合もあります。そういう場合もやはり郵便受けにしか配達しないという原則で配達されているように伺っておりますが、そういう場合、ますます通信の秘密が保たれなくなるおそれが出てくるんじゃないかと思いますが、いかがですか。
○説明員(伊藤修介君) いまの先生の御指摘の問題は団地の配達についての御質問かと思いますけれども、私どもパートの主婦の方に依頼する場合でも、郵政省の職員という形で採用し、また訓練をしてお願いをしておりますので、御指摘のような点はないと思います。
○小平芳平君 それで、簡易呼び出しを拡大するにつきまして、現在でも地方裁判所等では行っているという御説明がありましたが、それならあえて今回法制化する必要がないではないかという点はいかがでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) ただいま地方裁判所等で行っております簡易の呼び出しは、目的が達せられればいいということでやっておるのでありますけれども、その根拠を書くわけでございます。簡裁の場合のような法令の規定がございませんので、本当は八百六十円かかる特別送達でやるべきだということになっておりまして、その八百六十円かけた特別送達でやりますと、これは訴訟費用に組み込まれてくるわけでございます。ところが、経費節約のために、はがきとか郵便で目的を達せられるだろうということで事実上やっておる簡易の呼び出しの費用は、根拠規定がないために訴訟費用の中に組み込まれてこないのでございます。正式の訴訟費用の中に組み込まれてこない。 それはちょっとおかしいじゃないかということで、こういう根拠規定を置いていただきますと、地方裁判所でも簡易裁判所と同じように、はがきにしろ封書にしろ使った費用が訴訟費用として組み込まれてくるということにもなり、あわせて訴訟経済にもさらに役立つだろうということが言えようかと思います。
○小平芳平君 郵政省、結構です。 簡易呼び出しを拡大していけば、訴訟が迅速化するわけですか。
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) 正式の送達の方法で呼び出すのと簡易の方法で呼び出すのとでは、特にその訴訟促進という観点から申し上げますと差はないということは言えようかと思います。むしろ、訴訟経済といった面でメリットがあるというふうに見ております。
○小平芳平君 「最初ノ期日ノ呼出ヲ除ク」となっておりますが、これについて御説明いただきたい。
○政府委員(中島一郎君) 簡易裁判所の呼び出しにおきましては、第一回期日であってもそれ以外のものでありましても、すべて簡易呼び出しができることになっておりますけれども、今回は地方裁判所以上の裁判所における手続でありますから、第一回の期日だけは従来どおり呼び出し状の送達あるいは期日に出頭した当事者に対する口頭告知という正規の方法によった方がよかろうということであります。 まず、最初だけは正式な呼び出しをして、こういう訴訟が係属しております、あなたに対してこういう訴訟が提起されて、第一回の期日の呼び出しをしますということをはっきりと警告をするという、警告と言うとちょっと言葉が適当でないかもわかりませんが、はっきりと知らせるという意味においても、正式呼び出しをした方がいいのじゃないかという考え方でございます。
○小平芳平君 次に、送達手続について、この場合も先ほどの質問につけ加えて質問を進めますと、一番疑問に思うことは、勤務先へ送る場合には、先ほどあいまいにおっしゃっていたように伺ったんですが、勤務先に送る場合の条件をちょっと御説明していただきたい。
○政府委員(中島一郎君) 百六十九条第二項の規定でございまして、勤務先に対する送達ができる場合というのがこれは規定されております。 まず第一は、送達を受くべき者の住所、居所、営業所または事務所が知れない場合であります。氏名はわかっておりますけれども、住所あるいは居所、営業所、事務所が知れないという場合、しかし就業場所はわかっておるという場合であります。 それからその次が、住所、居所、営業所、事務所において送達をなすにつき支障があるときであります。通常の場合でありますと、住所、居所等においてまず一たん送達をいたしますが、その送達が住所、居所等においては送達することができなかった、あるいは改めて住所、居所等において送達をいたしませんでも、従来相手方の、たとえば原告が、内容証明郵便を住所、居所あてに何回も出したけれども、住所、居所では内容証明が届かなかったというような資料を持ってきたというような場合などが考えられるわけでありますが、住所、居所等における送達は支障があるという場合であります。 それから第三番目といたしまして、送達を受くべき者が就業する場所において送達を受くべき旨の申述をなしたるときであります。自分は住所、居所には不在がちだから、就業場所で送達をしてもらいたいということを申し出てきた場合であります。 以上が、就業場所において送達することのできる場合であります。
○小平芳平君 住所、居所、営業所または事務所が知れないとき、これははっきりしております。わかります。ところが、住所、居所へは支障がある、じゃ勤務先なら支障がないという意味ですか。
○政府委員(中島一郎君) そのとおりでございます。
○小平芳平君 どういう場合でしょうか。
○政府委員(中島一郎君) 先ほど申し上げましたように、住所、居所あてに送達をいたしましたが、特別送達でありますから、本人に会って書類等を渡す、あるいは補助送達ということで、本人の雇い主、事務員その他同居者に渡すということになっておりますが、全戸不在ということで書類を渡すことができなかったということでありますが、就業場所ならば本人もいるだろうし、あるいは本人の雇い主等の事務員、雇い人等もいるから書類を受け取ってもらえるだろうという場合であります。
○委員長(鈴木一弘君) 午前の質疑はこの程度とし、午後二時三十分まで休憩いたします。 午後零時五十一分休憩 —————・————— 午後二時三十二分開会
○委員長(鈴木一弘君) ただいまから法務委員会を再開いたします。 休憩前に引き続き、民事訴訟法及び民事調停法の一部を改正する法律案を議題とし質疑を行います。 質疑のある方は順次御発言を願います。
○小平芳平君 先ほどのお答えによりまして、「其ノ場所二於テ送達ヲ為スニ付支障アルトキ」ということについて、支障があるということはどういう場合なのかについてお答えがあったわけですが、具体的に支障があるということは、書留郵便ならうちにだれかいないと受け取れないから局へ保管してある、そのときに通知を入れておくわけですが、取りにこないとか、あるいは、普通郵便ならもうポストへ入れれば着くはずなんですが、そういうふうに具体的にどういう場合が支障ある場合か、お尋ねしたい。
○政府委員(中島一郎君) 通常の場合ですと、ただいま御質問にもありましたように、呼び出し状を送達するということになります。特別送達という方法によって送達をいたします。住居所に郵便集配人が参りましたところが全戸不在である、そこでただいまおっしゃいました連絡票のようなものをポストにほうり込んで、都合のいい日時を指定してもらえれば再送達もいたしますし、あるいは郵便局の窓口へ取りにきてもらえれば預かってあるものをお渡しいたします、こういう連絡票のようなものを置いて帰ってくる。十日間郵便局に置いておくわけでありますが、その間に取りにこない、あるいは再配達の日時も指定してこないということで裁判所に戻ってまいります。これが、住居所において送達をすることについて支障があるときの最も典型的な場合であろうかと思います。 では、そういう場合に限るのかということでありますけれども、その場合に限りませんで、それと同じように住居所において送達することが非常に困難であるという場合が含まれます。たとえば、裁判所としては改めて特別送達、呼び出し状の送達はいたしておりませんけれども、訴訟を起こす前に原告が内容証明郵便を被告に出した、何回も出したのだけれども昼間不在で住居所においてはその内容証明郵便が届かなかった、何回も返ってきたというそういう疎明資料を出してまいりました場合には、その後、日時が非常にたっておれば別でありますけれども、近い過去においてそういう事実があったということでありましたならば、それも住居所において送達することのできない、送達することについての支障のある場合という中に含まれる場合があるのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。
○小平芳平君 そうすると、後段の場合は、訴えを起こした人が言うことをそのまま信用してということになるわけですか。
○政府委員(中島一郎君) そのときには、原告が出しました内容証明郵便が返ってきたという証拠を持ってくるということになるわけでありまして、郵便局で配達したけれども不在のために配達できませんでした、とめ置き期間十日間の間に取りにきませんでしたという附せんのついた封筒と申しましょうか、そういうものを証拠に出してもらうという扱いになろうかと思います。
○小平芳平君 そういう場合はよくわかります。 その必ず書留なり内容証明なりを出したということ、出したけれども本人に届かなかったということがはっきりした場合において、初めて支障があると判断して勤務先へ送達をするということになるわけでしょうね。
○政府委員(中島一郎君) 私からお答えすべきかどうかわかりませんけれども、私どもの解釈といたしましてはそういうふうに考えております。
○小平芳平君 それから、午前中も御質問があってお答えがあったんですが、執行官による夜間及び休日の送達、これは執行官による送達を行ったけれども届かなかったという手続は必ずしもとらないようなお答えがあったんですが、いかがでしょうか。
○政府委員(中島一郎君) 執行官の配置でございますけれども、地方裁判所の各本庁や大きな支部の所在地には執行官はおりますけれども、支部なり、あるいは簡易裁判所の所在地ごとに必ず執行官がいるというわけのものでもございませんので、執行官による送達が必ず速やかに行われるというわけにもまいらないわけであります。 先ほど裁判所の民事局長からお答え申し上げましたように、執行官の仕事というのはやはり執行が中心ということになりますので、執行官の都合によって送達に時間がかかるというようなこともありますので、必ず執行官による休日なり夜間の送達を試みてみなければこの就業場所における送達ができないというふうには考えておらないわけでございます。
○小平芳平君 本来の筋としては、執行官による夜間及び休日の送達が本来の趣旨であるというふうにはなりませんですか。
○政府委員(中島一郎君) 住居所における送達が本来の筋である、原則であると。就業場所における送達は、そういう意味では補充的なものであるということは申し上げられるかと思います。そしてまた、住居所における送達でも、昼間の送達というものが原則であって、夜間なり休日なりの送達は補充的と申しましょうか、非常に例外的なものである。したがって、裁判長の許可が要るということになっておりますということも申し上げられるかと思います。 夜間送達を原則と考えるべきか、あるいは就業場所における送達を原則と考えるべきかということでありますけれども、やはり執行官による送達に支障があるかないかということによって考えるべきことであろうかと思います。
○小平芳平君 その場合の執行官の支障というのは、裁判所の方の都合によって執行官に支障がある。したがって、住所、居所へは届けることができないという判断なんですか。
○政府委員(中島一郎君) 裁判所の都合といいますか、それよりもやはり具体的な事案事案によって、執行官の送達が速やかに期待できるかどうかという事情が問題であろうかと思います。 それから、先ほどの私のお答え、訂正させていただきますが、夜間等の送達に裁判長の許可が要るというのは古い制度でありまして、現在は改められておるということでございます。
○小平芳平君 どうも支障があるということがよく理解できないのですが、そこに住所、居所があるという人が、書留郵便でも内容証明でも受け取らないというか届かないという場合、これははっきりしております。これははっきりしておりますが、執行官による送達をして支障があるということはどういうことになるか、執行官が住所、居所へ送達をした、しかし支障があって本人に渡すことができなかったということならわかりますが、必ずしも執行官の手を煩わせるまでもなく、執行官による送達に支障があるという場合はどういう場合でしょうか。
○政府委員(中島一郎君) 先ほどからも申し上げましたように、執行官の配置の問題もあります。あるいは執行官がどの程度の仕事の割合と申しましょうか、執行と送達とにどれぐらいの仕事の分担ができるか、送達にどれぐらい時間を割くことができるかというような問題もございます。そういった具体的な事情をあれこれ考えまして、具体的なケースごとに考えるということであろうかと思います。
○小平芳平君 そういう御説明ならわかりますですよ、御説明としては。つまり「支障アルトキ」という、この「支障アルトキ」というのは、受け取る人の支障だけを言っているのじゃないんだ、執行官の方の支障、つまり裁判所の方の支障も「支障アルトキ」になるんだということですね、いまの御説明は。
○政府委員(中島一郎君) 全部ひっくるめて、総合的に判断するということになろうかと思います。
○小平芳平君 この点はまた次の機会に譲ります。 それで、その支障があるというふうに総合的に判断するという局長の結論ですが、それはだれが確認することになりますか。
○政府委員(中島一郎君) 送達の事務を取り扱う者として、裁判所書記官が判断するということになります。
○小平芳平君 先ほどの郵便が着かない場合に比べまして、非常に主観的な判断になりますね。
○政府委員(中島一郎君) 主観的と言っていいかどうかわかりませんけれども、いろいろな事情を総合的に考えなければならないという意味において、着いたか着かないかという客観的な事実の判断とは異なる面があろうかと思います。
○小平芳平君 就業場所への送達は、この就業場所、就業先における人間関係なんかもありますので、封書が原則であるというふうなことはお考えになっておられませんか。
○政府委員(中島一郎君) 就業場所に対する送達は、これは特別送達でございますので、その場合の送達すべき書類はすべて封書と申しましょうか、外見から内容がわかるようなものではないということになります。
○小平芳平君 この昼間不在者が増加したということは、ごく最近起こった現象でもないように思いますが、この際に法改正を必要とするということはどんな事情でしょうか。
○政府委員(中島一郎君) 確かに、核家族化が進み共働きの夫婦がふえたという現象はここ二、三年ではございませんで、数年あるいは十数年以前から徐々にそういった傾向が強まってきたわけでありまして、それにつれましてこの昼間不在者による送達不能、昼間不在者に対する送達の困難さというものが問題になりまして、この点を何とか改善する方法はないか。たとえば、就業場所における送達は考えられないかということが問題になっておりましたのは、もうすでにかなり以前からのことでございます。 だんだんそういう声が強くなりまして、そんな方向での検討というものが行われておったわけでありますけれども、やはり新しい制度をつくるということになりますと、慎重な検討が必要であるというようなことで時間もかかっておりましたし、また民事訴訟法の関係で申しますと、民事執行法の改正というものが非常に大きな作業でありまして、民事訴訟関係の学者によって構成されております法制審議会の民事訴訟法部会あるいは強制執行制度部会というものは民事執行法の改正作業に手がいっぱいであったというような状態でございました。それが民事執行法の改正が五十四年から施行されたということになりまして一段落いたしましたので、今度は民事訴訟手続の面で当面改正を要する事項ということで、この送達手続の改正というものが議題になってきたわけでございます。
○小平芳平君 それで局長にお伺いしたいことは、準備の段階で法制審議会あるいは日弁連等の打ち合わせ、あるいは世論調査——世論調査とまでいかないまでも、何かしら国民の意思を参考にしようという御努力をなさったかどうか。 それから、法制審議会の民事訴訟法部会の委員の名簿などは発表なさっていらっしゃらないのかどうか。
○政府委員(中島一郎君) まず、審議の経過でございますけれども、昨年の九月十六日に法制審議会民事訴訟法部会における検討事項メモというものができております。それを日弁連にもお届けをいたしまして、この次はこういった事項を検討するということにしてはどうかというような御連絡をいたしております。そして、その後準備を進めまして、五十六年の十二月十六日に法制審議会の民事訴訟法部会というものが開かれておりまして、このときに昼間不在者に対する送達の規定の整備等を民事訴訟法部会の検討事項にするということが決定されております。そして、五十七年になりまして、一月二十日に一月二十二日付の試案というのを日弁連にお届けしまして検討を依頼しております。そして、一月二十二日と二月六日と二回にわたりまして準備会を行いまして、五十七年の二月二十三日に民事訴訟法部会の小委員会というのが開かれております。 この民事訴訟法部会小委員会におきましては、先ほど申しました一月二十二日付の改正案要綱試案というものと、それから準備会の討議の結果をもとにして小委員会の審議が行われまして、その結果、三月九日に民事訴訟法部会が開かれております。その三月九日の前に、日弁連から前回検討を依頼いたしました試案に対する意見書というのを届けられておりまして、その意見書を三月九日の民事訴訟法部会の委員の皆様にお配りをしまして御審議をいただいたわけでありまして、その際に改正案要綱試案というものを土台にして審議が行われまして、骨子において了承されておるわけであります。それを三月二十四日の法制審議会の総会において審議されまして、三月二十四日の法制審議会総会におきまして改正案要綱試案どおり改正案要綱が決定されて答申されたわけでございます。 この審議会の委員の名簿のことについてお尋ねがありましたけれども、これは非公開の審議会ということになっておりますので、委員の名簿を公表するということは従来からいたしておりません。構成は大学の先生あるいは弁護士さん、あるいは私どもも委員の一員になっておるわけでございますが、そういう意味におきまして訴訟関係者の大ぜいの方に御参加をいただいておりますので、今回の問題については特に案を公表して広く各界から御意見を聞くということはいたさなかったわけでありますが、新聞等におきましてこの改正の動きがあるということを取り上げてくれましたので、一般的にはかなり広くこの改正の動きというものは世間に知っていただいておったというふうに考えております。
○小平芳平君 最初に本来の送達場所において送達できなかった場合、就業場所へ送達をしたという場合ですが、第二回以降の送達は直接就業場所に送達することになりますか。
○政府委員(中島一郎君) 通常の場合でありますと、就業場所へ一回目の送達ができまして、本人が裁判所へ参りますと、聞くだろうと思うのです。あなたの場合は住居所へ送達できなかったので就業場所へ送達したのですが、これからどうしますかということを聞くだろうと思うのです。そうしますと本人が、あのときはたまたま留守にしていたのだけれども、ふだんは家にいるからこれからはひとつ家の方に送達してもらいたいと言えば、家の方に送達するだろうと思います。それから、そうでなくて、家の方は留守がちだからむしろ勤務先の方へ送達してもらいたいということを言えば、勤務先の方に送達するだろうと思います。 一回目の送達が、就業場所へ送達はできたけれども本人が出頭しなかったという場合は、ちょっと判断の材料がないので困るだろうと思うのですけれども、その場合は関係者から事情を聞くなり、あるいはもう一度念のために住居所でやってみようかということになる場合と、それから前回だめだったのだから支障があるということで就業場所でやろう、やはり具体的なケースごとに判断することになろうかと思います。
○小平芳平君 就業場所における送達を受ける旨を申述したときとありますが、これはいまのお話のように、事実上の意思が通じさえすればよろしいのか、それとも書面を提出するようになりますか。
○政府委員(中島一郎君) さきにおっしゃった方法でありまして、事実上そういう意思があらわれておれば結構でございます。
○小平芳平君 この運用に当たりまして、もしこれが成立した場合には、送達の事務取扱者、つまり裁判所の書記官が判断することが非常に重要になってくるだろうと思います。 それで、最高裁として指導、研修が必要だと考えられますか。特に、この送達をなすに支障あるときという問題は、郵便が着かないからというこの場合ははっきりしておりますけれども、裁判所の都合と、それから送達を受ける人の都合とを総合的に判断してということになると、そこに何か基準がないと判断がむずかしいのじゃないでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) 御指摘のように、この新しい百六十九条二項が制定されますと、これを運用していくのは裁判所の送達担当事務取扱者である書記官でございます。 この三つの要件が書かれておりますけれども、そのうち特に、支障があるときという要件を具体的な運用の場でどのように解釈していくのかということにつきましては、御指摘のとおり、会同、研修その他におきまして十分研究をし、遺漏のないようにいたしていかなければならないと考えております。実際に運用していきますと、いろんなケースが出てくるだろうと思われます。そういうようなケースを踏まえて、おのずから運用の基準といいますか、方針というものが生まれてくるものだろうというふうに考えております。
○小平芳平君 この「法律上ノ行為二基キ就業スル」ということは、どういう意味なんでしょうか。
○政府委員(中島一郎君) 最も典型的な場合は、その前に書いてございます雇用でございます。雇用関係に基づいて就業しておる場合、これが通常の場合であろうかと思います。 その次は、委任でございます。法人の理事者とか、たとえば会社の取締役などは会社と委任の関係にあると言われておりますので、取締役が会社で就業しておるという関係は、これは委任に基づく就業であるということになろうかと思います。 それ以外に、委任でない法律上の行為に基づいて就業している場合というのがいろいろ考えられるかと思います。たとえば、出向というようなものがございます。自分の使用者から出向を命ぜられて別の場所で就業をしておる。就業先とは雇用なり委任なりという関係はないわけでありますけれども、そこに何らかの法律上の行為に基づいて就業しておるのだと。それから、われわれ公務員でございますけれども、公務員の場合には任命行為によって就業しておると、こういうことが言えるかと思うわけでありまして、厳密に言うと雇用でもなければ委任でもないと、こういうことになろうかと思います。 そういったいろいろの法律上の行為に基づいた就業というものが考えられますので、それを一括して規定したのがこの規定でございまして、法律上の行為と言います以上は、事実上の行為は含まないということになるわけであります。
○小平芳平君 やはりある程度法律上の行為であって、しかも勤務している、働いているというその期間も必要じゃないかというふうに考えますが、一カ月にちょっと出るだけというような場合もあろうし、その辺はいかがでしょうか。
○政府委員(中島一郎君) 就業ということでありますから、やはり業についておるという実体がなければならないわけであります。 就業と言えるためにはどれくらいの期間あるいはどれくらいの頻度でそこに行っていることが必要かということになりますと、これまた具体的なケース、ケースで判断しなければならないわけでございますけれども、確かにただいまおっしゃいましたように、期間なり、あるいは一日のうちどれくらいの時間をそこにいるかというような点も重要な判断の要素になろうかと思います。
○小平芳平君 就業場所における補充送達で確実に本人に届くかどうかという、それはどうでしょう。依頼してきたけれども、本当に本人に届いたかどうかという確認はなされないでしょうか。
○政府委員(中島一郎君) 就業場所といっても、これまたいろいろな場合があるわけでありまして、非常に小規模な就業場所でありましたならば本人を呼んで渡す、あるいは本人がおらなくて補充送達をいたしました場合でも、本人というものを同僚たちが皆よく知っておりますから、これは渡してくれるだろうと思うわけであります。非常に大規模な就業場所、会社等で大規模なものにつきましては文書係とかそういった文書の接受の係がおりますから、そこで補充送達をすれば本人に渡してくれるということは十分に期待できるのじゃないかと思っております。
○小平芳平君 そういう期待されるとおりいけば問題は起きないわけですが、十分に期待しておりながらそうならなかったということがあり得るでしょう。そういうときにどうなさいますか。
○政府委員(中島一郎君) その場合などのことも考えまして、送達を受けた者に対する通知というものが百七十一条の四項に定められておるわけであります。
○小平芳平君 それから、今回「郵便集配人」を「郵便ノ業務二従事スル者」というふうに改めましたが、これはどういう理由でしょうか。
○政府委員(中島一郎君) 今回の法改正でいろいろと郵政当局と折衝をいたしました際に、郵政当局が言われますには、郵便集配人という名称は現在のいわゆる郵便集配人の仕事の実態を十分に示していない、機械的な仕事に限るような感じを与えて非常にイメージも暗い、もっと現在の郵便業務の従事者が扱っておる仕事の内容を十分に表現するような言葉に変えてイメージアップを図りたいというような御意見でありました。私ども必ずしもそうとは思わないわけでありますけれども、郵政当局の強いお気持ちでありますので、それを受け入れたということでございます。
○小平芳平君 これで時間がありませんので、あとはまた別の機会に譲りたいと思いますが、最後にひとつ刑事訴訟手続における送達、この点についてはどのように処置をなさるでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) 私どもの刑事局が所管しております事柄でございますが、便宜私から申し上げます。 刑事事件につきましては、民事事件とは別個にそのプライバシーの保護ということについては格段の配慮が必要であるというふうに考えられるわけでございます。現在この改正民事訴訟法どおりのことを刑事訴訟にも適用いたしますと、かなり問題が生ずるだろうというふうな考え方から、刑事訴訟規則の中で、民事訴訟法のこの改正法の就業場所への送達の規定の適用は除くというような手当てを考えておるようでございます。ただ、被告人その他の関係者が、就業先へ送達してもらっても結構だというような意思がはっきりしておる場合には、それはこの規定を使うこともできるというようなことにしようかということで、刑訴の規則の改正を検討中でございます。
○山中郁子君 先ほど小平委員の御質問に対するお答えが一部あったんですけれども、初めに、関連をいたしまして今回の改正案についての日弁連との交渉の経過ですね、それから中心的にはちょっと内容をお伺いしたいんですけれども、あわせて法務省としては日弁連の合意を得ているのかいないのか、その辺を明確にお示しをいただきたい。
○政府委員(中島一郎君) まず、最初に経過でございますけれども、先ほどちょっと申しましたように、九月の十六日に検討事項メモというのを届けて、こういう事項を今後民事訴訟法部会で取り上げることになろうと思われるがよろしくということを申し上げております。 それから、先ほど申しましたように、十二月の十六日には民事訴訟法部会が開かれておるわけでありますが、こめ民事訴訟法部会には、日弁連から御推薦をいただきました委員の方が東京からも何人か、あるいは大阪からも御出席をいただいております。幹事としても二名ですか三名ですかの方に御出席をいただいておるわけでありまして、そういうメンバーで審議をしていただきまして、これも先ほどちょっと申し上げましたが、一月の二十日に一月の二十二日付の試案を届けて日弁連での検討をお願いいたしております。それを日弁連では各単位会に送られまして、それについてのアンケートをおとりになったようでありまして、その結果、集約したものが三月になって意見書という形で出されております。 この意見書によりますと、一月の二十二日の試案についての意見でありますので、項目も当時は検討項目が十一項目ございました。でありますから、こういう事項についてはもっと慎重に時間をかけて検討した方がいいのじゃないかというような御意見でありますとか、あるいはこういった項目についてはいろいろと問題もあるのでこういう点を配慮すべきでないか、あるいはこういう条件をつけ加えるべきではないかというような御意見もあるわけでありまして、そういった御意見を参酌いたしまして、三月九日の民事訴訟法部会というものが開かれておるわけであります。 それで、最終的には三月九日の民事訴訟法部会で改正案要綱案というものが決められたわけでありますが、その際に、日弁連の推薦の委員もお入りになった部会において、この要綱案を総会にかけるということについては異議がないという結論を得たわけであります。 それで、さらに三月の二十四日の法制審議会の総会、これにもまた日弁連推薦の委員の方が何人かお入りになっております。これは部会とは別の委員の方でありますが、こういう委員の方がお入りになっておる総会において、全員一致でこの要綱案を要綱としてお決めいただいたというような経過になっております。 したがいまして、五十七年三月付の民事訴訟法の一部改正に関する日弁連の意見書というものは、一月の二十二日付の試案についての御意見でありまして、現在法案として提出しております内容については、日弁連としては御賛成をいただいておるものというふうに私どもは理解をしております。 それから、審議の内容でございますが、ごくあらまし申しますと、まず調書の省略の点でございますが、最初は、訴訟が裁判によらないで終結した場合に調書の記載を省略することができるということでありましたのですが、それにまず裁判長の許可を必要とすべきであるという御意見が出まして、それはそういうことになりました。それから、当事者から申し入れがあったときには調書をつくらなければならないという制度を設けるべきだということになりまして、それもそういう要件がつけ加わりました。今度は、当事者の申し入れといってもいつまでもできるということでは困るので、時間を、日にちを切ったらどうかということになりまして、それも期間が切られるというようなことになったわけであります。 その次に、就業場所における送達の点でありますけれども、まず最初、就業場所を住居所と並ぶ送達場所とすべきかどうか、どちらでも送達できるということにしていいのかどうかということが問題になりまして、この点は住居所等の送達を原則として、就業場所における送達は例外的、補充的なものにすべきだということになったわけであります。 それから、就業場所における送達の場合にも補充送達を認めるべきかどうかということが問題になりまして、それは認めてもいいということになったわけでありますが、その範囲は余り広くしないということで、雇い主等の同居者に対する交付は除かれたわけであります。それからさらに、アパートやマンションの管理人についての補充送達、これは認めるかどうかということが問題になりましたが、認めないということになったわけであります。 それから、その次に判決書の簡素化の点でありますけれども、事実の摘示は一切省略していいか、あるいは証拠の目録を引用するという程度はいいけれども、一切省略することはいけないというべきか、そういう点が問題になったわけでありまして、引用まではいいけれども一切省略はいけない、こういうことになったわけであります。 あらましはそういうことでございます。
○山中郁子君 御答弁ですと、実質的に了解を得ているものと判断しているということで、もう一つ不分明なところがあるというように理解もいたしますし、客観的にもその辺の問題について指摘だけをしておきたいと思います。 それから、今回の改正案が、一連の民事訴訟法改正の一部であるという見方もあるわけなんですけれども、その点についてはいかがでしょうか。つまり、あとどういう民事訴訟法関係の法改正を考えていらっしゃるのか、準備されていらっしゃるのか、お尋ねをいたします。
○政府委員(中島一郎君) 一連の改正の一部という言い方はちょっと実態と合わないかというふうに思いますけれども、先ほども申しましたように、今回の民事訴訟法部会で取り上げるべき事項として、ある時期には十一項目というものが挙がっておったことは事実でございます。そのうち、今回の改正法案におきましては四項目しか取り上げていない。そういう意味で、今回、検討事項あるいは検討事項の候補事項とされながら法案に盛り込まれなかった事項は幾つかあるわけであります。それを申し上げますか。
○山中郁子君 具体的な準備、お考えがおありならお伺いしたい。
○政府委員(中島一郎君) それを今後どうするかということは、民事訴訟法部会でお決めいただくということになるわけでありますが、私どもは今回の改正の経過から考えて、引き続きその残りの問題を取り上げるということはあり得ないのではないかというふうに考えております。今回で一段落、緊急必要なものについては手当てをするということになりますので、引き続きあとの問題を取り上げるということはないだろうというふうに見ております。
○山中郁子君 具体的な問題に入りますけれども、いわゆる昼間不在者対策ですけれども、この改正案の対象となる民事送達の中身というか種類というか、それはどのようなものがありますか。
○政府委員(中島一郎君) 民事訴訟法によりまして、送達という厳格な方法をとらなければならないというふうに定められておる書類が幾つかあるわけでありまして、それが送達の書類、送達書類として今回の改正によって実体的にも送達方法がつけ加わるということであろうかと思います。その具体的な書類でございますか。
○山中郁子君 はい。
○政府委員(中島一郎君) 送達すべき書類として民事訴訟法が規定しておりますのは幾つかございます。 まず、裁判手続の関係の書類と執行手続関係の書類がございますが、裁判手続関係の書類といたしましても、裁判所が作成した書類と当事者が作成した書類があるわけであります。 裁判所が作成した書類といたしましては、まず一番大きなものが判決正本でございます。それから期日の呼び出し状というようなものもございます。その他、訴訟手続の途中で裁判所がいろいろな決定をいたしますので、その決定の正本を送達するということになります。たとえば、特別代理人の選任及び解任命令の正本でありますとか、あるいはその他の決定正本というものが考えられるわけであります。それから、これは別の手続になりますけれども、支払い命令を出したときには支払い命令の正本というものを送達することになります。その場合には、仮執行制限つきの支払い命令の正本というものも前に送るということになります。 それから、当事者が作成した書類でありますが、これは一番代表的なものは訴状の副本であります。そのほかに、参加申し立て書の副本でありますとか、あるいは訴訟告知書の副本でありますとかいうようなものが送達の対象になります。それから取り下げ書、これも重要な書類でありますので副本を送達いたします。あるいは訴えの変更の申し立て書の副本、反訴状の副本、準備書面の副本、こういったものも相手方に送達をいたします。あるいは上訴権放棄書の副本、控訴状の副本、こういうものも送達をすることになっております。 それから、執行手続の関係では、債務名義となるべき裁判の正本または謄本、執行の前提としてこれを送達をいたします。強制競売事件におきましては、強制競売開始決定の正本というのを送りますし、あるいは差し押さえ命令の正本、転付命令の正本、こういった重要な命令の正本は送達するということになります。
○山中郁子君 いま局長も言われたように、裁判に関してかなり重要な書類の送達ということになるわけで、これは関係者にとっても重要なかかわりがあるわけですけれども、昼間不在者がふえているために送達ができないということから問題が提起をされて法改正が出されているわけですけれども、法務省からいただきましたこの資料によりますと、「受取人不在の場合の送達実情調査表」というのが後ろの方についていますね。 ここで、五十六年十月及び十一月の間に差し出した特別送達郵便物のうち、受取人不在を理由として還付された郵便物が二千八百五十三通あった。それで、その還付された郵便物の配達回数は、一回が二千三百十通、二回以上が四百六十通、こういう数字になっておりますけれども、この二回以上の四百六十通、つまり、二回以上になるとぐっと少なくなるわけですね。一般的に昼間不在人口がふえているということはそれは言えるんだけれども、法務省に伺いましたら、それじゃいつの時点が幾らあって、そして今回、五十六年十月及び十一月の間を調査したらこうなって、一二・九%にふえている、こういう資料をお持ちでないんですね。 ですから、ふえているから手当てが必要だというふうにおっしゃるけれども、実際にどのくらいふえているのかということについては、客観的なデータが出てないんですよね。これがまず一つわからないんです。 それからもう一つは、これだけ還付されているんだといいますけれども、二回以上で返ってきているのが四百六十通で、こうしますとこのパーセンテージはぐっと少なくなって二%になるんですね。ですから私は、一般の日本の居住環境ないしは生活状況が、昼間の不在人口がふえているということはそれは否定するものではありませんけれども、後で申し上げますが、やっぱりかなりいろんな重要な中身を持っている法改正であるからこそ、そこに法務省として何ら比較すべき、つまりこういうふうにふえているんだというデータが示せないままに、しかも二回以上の還付というのはごくわずか二%だということですね。そういう事態のもとであえて提起されるということについては余り適切ではないと考えておりますけれども、その辺はいかがですか。
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) ただいま御指摘の資料のこの表は、実は私どもの方で調査をいたしましたものを表として出したものでございますので、便宜、私の方から御説明いたします。 まず、この表の上の方のDの欄「C欄の還付された郵便物の配達回数」、これは郵便局の方で何回行ってくれたかということでございます。一回行っただけでもう返してきたのが二千三百十通で、二回行ってまだいなかったものだから返してきたというのが四百六十通と、こういう趣旨でございます。 それで、昼間不在を理由に還付されてくる郵便物がだんだん大きくなっているというその統計的な数字は、確かに御指摘のとおり把握しておりません。おりませんけれども、これは裁判所の現場におきまして体験的にわかるわけでございます。たとえば、東京地裁の民事第五部というところの書記官室だけをとってみましても、だんだん不在ということで還付されてくる通数がふえているということはみんな体験的に知っていることでありまして、漸次ふえてきているということは間違いのないことだろうと思います。 これを統計的に、あるいは大量的にその調査をいたしますためには、非常な手数を現地の裁判所の方にかけるものですから、現在どのくらい不送達として返ってきているだろうかということを見たものがこの表でございます。そういうことで御理解いただきたいと思います。
○山中郁子君 私はやっぱりそういうことを、データを理由にしてこういうふうに法改正するんだ、しかもその法改正の内容というのはさまざまな問題があるわけですから、やはりそれは経験的にそうだということでは、それはちょっと無責任だと思うんですよ。一年前はどうであったと、一年前はたまたまとってないんだったら、いまこれをとったんだから、今度一年後を見て、それでこの間の推移はこうふえているんだ、したがってこういう手当てが、必要だとおっしゃらなければ、それは説得力はないし責任ある御提起だとは言いがたいと思います。 と同時に、一回の場合と比べて二回以上の場合にはうんと少なくなっているわけですね、数としては。そのことも私はさっき申し上げたんですけれども、そういう意味で後ほど申し上げますけれども、そうしたちゃんとした調査に基づいて提起をなさるということがやはり大事なことであるということだけを、指摘をしておきたいと思います。 それから、これはけさほど来からの御質問の中にもありましたのですけれども、端的にお尋ねしたいんですが、夜間送達の場合は送達率は大変高いですよね。関係者の方もおっしゃっている。そうすると、これでやはり目的を達成するということにもっと努力をしていただく必要があるのではないか。これも執行官制度の改正だとか民事執行法の改正だとか、いろいろ関連で御答弁がありましたけれども、たとえば執行官にはその補助者という方たちがついている。そういう部分を拡充する、充実するということによって夜間送達も行う、たとえばの話がそういうこともできるのではないか。 いずれにしても、大変送達率が高いという実績もある夜間送達によって、送達がいま現在できない部分を埋めていくという御努力はもっとあってしかるべきじゃないかと思っておりますけれども、その点はいかがでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) 午前中の寺田委員の御質問に対する私のお答えとやや重複する部分もございますが、まず執行官法が四十一年にできましたけれども、その前は執行吏、それからただいまおっしゃいました補助者というのは執行吏代理と言っておりました。 それで、この執行吏代理というのは、執行官の数ほどではありませんけれども、それに近い数がいていろんな補助をしておったわけであります。その中で大きな部分を占めていたのが送達でありました。執行吏代理の主要な職務は送達だったわけであります。ところが、執行官法ができ上がりまして、執行吏代理という制度はそのままの形では残りませんで、執行官臨時職務代行者というそういう形になりました。この数が四十二年当時二百数十名いましたけれども、現在二十六名になってきております。これは執行官が自分の費用で雇っている者でありますから、こういう職務代行者の数は減らしていくという方向になったわけであります。 そういうこともありますし、午前中お答えしたような執行官の職務の純化というようなこともございまして夜間送達というものも限度がある。それで、執行官はやはり本来の執行事務に専念して、公正適正な執行を実現していくように努力すべきであるという方向を私どもは打ち出しておることもございまして、夜間送達の方へエネルギーをさらに割いていくということは、逆の意味で望ましくないというふうにも考えておるわけでございます。そういうような実情でございますので、御理解をいただきたいと思います。
○山中郁子君 そうすると、いわゆる執行官補助者みたいなところでカバーしていくということはちょっと考えられないことだという御趣旨ですか。そこを、ちょっとはっきり聞かせてください。
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) 執行官の補助者ということになりますとそういう権限が全くございませんので、送達等の権限がございませんから補助者で送達をやるわけにはまいりません。できるとすれば、先ほど申し上げました執行官臨時職務代行者、これはやはり早晩なくなっていくものという想定でございます。ここをふやしていくというわけにはまいらない。そういたしますと、補助者というか、補助的な職員でもって送達の範囲をふやしていくということは、ちょっとむずかしかろうというふうに思っております。
○山中郁子君 夜間送達の送達率が高いという実績があって、わかっているわけだから、私はそこの面の努力というものはやっぱりあってしかるべきだと考えておりますので、その点だけ申し上げておきます。 それで、これもいま小平委員から御質問があってお答えがありましたので確認だけさせていただきますが、刑事訴訟への準用の問題ですが、刑事訴訟法の五十四条の「書類の送達については、裁判所の規則に特別の定のある場合を除いては、民事訴訟に関する法令の規定を準用する。」という場合に、今回は裁判所の規定を準用しないということで明記する、明確にするということをはっきり確認ができるでしょうね。
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) 先ほども申し上げましたとおり、このまま就業先送達の規定を準用するのは刑事においては適切ではないということでありますけれども、同意がある、異議がないというような場合には、就業先への送達の制度を使っていいのじゃないか。しかし、それ以外の場合、たとえば支障があるときというような場合は準用しないという除外規定を、刑事訴訟規則の中でつくろうという予定であります。
○山中郁子君 簡易呼び出しの件ですけれども、これも前にあった御質問と重複しないところで一点だけお尋ねをしたいんですが、簡裁の手続の特質ですね、これに基づいて認められた制度を一般化するということの持つ、何というんでしょう、危険性ですね、こうしたものがあると思いますが、この制度をどの程度採用なさるおつもりなのか、具体的にお示しをいただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) 地方裁判所では、先般も申し上げましたとおり、たとえば期日の呼び出し状を送る場合、これは正規の送達の方法しか法律には決めてありません。しかし、現実には、訴訟経済その他の関係から簡易な呼び出しを利用しているという実情であります。 これが簡易の呼び出しをすることによる危険性というものがどういうところにあるか、ちょっと私理解できないのでありますが、たとえばはがきなどでやりますと、どういう事件の期日の呼び出しだということが人の目に触れた場合にわかります。ですから、はがきはそういう意味ではまずいかもしれませんが、はがきで簡易の呼び出しをしている例は地裁の場合も簡裁の場合も、絶無とは申しませんけれどもほとんどないと思います。普通の六十円の封書でやっております。そういたしますと、その六十円の封書と八百六十円の特別送達、これも封書でありますが、との差というものは危険性というものは特に差はないわけであります、プライバシーその他の関係から言いましても。 でありますので、私どもとしてはその簡易の呼び出しを実施することによって危険性が増大するというようには考えてはいないのでありますが、果たしてどれくらい使うのかということでございますけれども、これは現実に何回のうち何回が送達で何回が簡易の呼び出しかというところまで調べておりませんのでわかりませんが、現実にかなりの数が行われて、おりますが、それが法的根拠を持って行われることになるだろう。現在は事実上行われておりますが、今度からは法的根拠を持って行われることになり、そのために簡易呼び出しの費用が訴訟費用として正式に組み込まれてくることになると、こういうふうに理解しております。
○山中郁子君 簡易呼び出しは、要するに簡裁における手続の特質に基づいて定められているもので、結局私はそういう本質に照らしてこれを一般化することは、訴訟手続の確実性、そういう点からの危険がある。したがって、どの程度採用なさるのかということでお尋ねをしておりますので、その趣旨は御理解いただけると思います。 それで、最も私どもが重要な問題だと思いますことは、この就業場所への送達ですね、このことが持つプライバシー、このこととの関連でのプライバシーの保護という点なんです。それで、これはいろいろ考えていきますとやっぱりかなり重要な問題がありまして、先ほども議論があった知れざるとき、支障があるとき、これがどういうケースなのかということは局長の御答弁があったんですけれども、知れざるときはそれはそれで御答弁は伺ってわかりましたけれども、支障があるときというのは、これも御答弁はそれなりにあったんですけれども、この点は私はやっぱりかなり幅の広い中身であって、それからもう一つ問題は、それがさらに拡大される、実際の運用に当たってかなり拡大される危険があるという性格のものだと受けとめざるを得ないんですけれども、この支障があるときというのをもう一度御説明をいただきたい。
○政府委員(中島一郎君) 先ほど申しましたように、送達は住居所において送達をするというのがこれが原則であります。でありますから、通常の場合でありますれば住居所あてに送達をするわけであります。 郵便集配人が行きまして呼び鈴を押すわけでありますけれども、全戸不在である。そこで、郵便書類を受け取ってもらうことができないわけであります。その場合が、いま最も典型的な場合であろうというふうに思います。その場合も、郵便配達人というのはその地域の状況というのは非常に詳しいわけでありますから、ここの家は昼間はだれもいないのだ、あるいはふだんは留守番の奥さんがいるのだけれどもいまはちょっと買い物に行っているのだというようなことを郵便配達人は知っておるわけだろうと思います。でありますから、ただ呼び鈴を押しただけでだれも出てこなかったからもうここで送達ができないということではなくて、先ほどの統計にもありましたように二回配達をしてくれた、それにもかかわらず送達ができなくて持ち帰ったというようなケースもあるわけだろうと思います。 それが原則なのでありますけれども、そういうことで送達ができなかった場合それではどうするのだということになるわけでありまして、あるいは夜間送達、休日送達というような方法もないわけではないのですけれども、その夜間送達なり休日送達については、いろいろと執行官の都合なりその他の事情によって速やかな送達が期待できないというような場合もあるわけでありますから、そういう場合には就業場所における送達ということも考えればいいのじゃないかというのが、今回の改正法案の趣旨でございます。
○山中郁子君 いまの御答弁でもそうなんですけれども、私も逓信委員をずっとやっていますけれども、そんな簡単にわかるというわけにもいかないのですよ。なかなかむずかしいことなんですよ。それは昼間不在者がふえているということも、そういう面からもそれは言えることなんですけれども、結局こういう道があるということによって、安易に就業場所への送達が行われる。ここの歯どめを何によって保障するのかと言えば、私はちょっとその辺がないと思うんですね。ないから、いろいろな意味でそこの拡大がされていって、プライバシーの侵害が起こるというところにつながる。 先ほども、外見から内容がわかるようなものではない、だからプライバシーの侵害は心配ないんだという趣旨の御答弁がありましたけれども、決してそんなことないんですね。私、実際どういうものかということで、ちょっとこれを入手したんですけれども、これは東京簡易裁判所略式命令係、東京地方裁判所民事第六部、幾つかいろいろありますわ。こういうふうにして送達するんですね。この後ろにこれがついているわけです。そして、これをホチキスでとめてあるんですよね。それで、受け取ってもらった人の受領印をもらって帰るわけです、確かに受け取りましたと。 これを見ますと、中身はわからないどころじゃなくて、郵便送達報告書と、こうなっていまして、いろいろなものを書くようになっているんですね。それで、たとえばこれで見ますと、書類の名称、口頭弁論期日呼出状、訴状副本、答弁書、催告書、それで名称、東京地方裁判所民事第六部、それでお名前を書いて、こういうふうになってこれを送達した、受領したということで判をもらって帰るようになっているわけですね。 会社にこんなものを持ってこられたら、これはたちまち会社の評判になるわけだわ。日本の会社の状況というのは、御承知の方も多いはずですけれども、たちまち人のうわさになる。それで、どうもあの人は御夫婦仲がうまくないといううわさがあったけれども、とうとうそれじゃ離婚かというような問題だとか、それから支払い命令なんというのが来るわけでしょう。そうすると、どうも最近少しおかしいと思ったらサラ金で首が回らなくなっているんじゃないかとか、そういうようなことはたちまちプライバシーとして、たとえば会社とかその就業場所に広がるという可能性が大いにある、こういう送達の仕方なんですよ。 私は、とても皆さんがおっしゃるように、外見から内容がわかるものじゃないからプライバシーの侵害には当たらないということは絶対にない。ここは私は大問題だと思って、絶対にだからこういうやり方を会社に持ち込むというようなことはすべきではないと思っておりますけれどもね。そうでしょう、中身がわからないわけじゃないですよね。ちゃんと支払い命令なら支払い命令とか、支払い命令正本と、こうありますから、そういうものでわかるわけだわ。どうですか、そういう点。
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) 特別送達の方式は、ただいまお示しのとおりでございます。 郵便集配人が送達を行いますと、外にホチキスでとめてある送達報告書を外して、そこに受取人の署名、押印をもらうわけであります。そこに支払い命令とか、あるいは訴状とか、送った書類の名称が書かれております。その限りでは、確かに知られたくないことが知られるということは、まさしくおっしゃるとおりであります。 私ども申し上げておるのは、訴状が来たって中身はわからないのだから、中身までわかったら大変だろうけれども、その書類の名称だけ、裁判所から来たというだけでも確かにうわさになるといえばうわさになるわけでありますけれども、その辺は送達の制度がこういうものであります以上はやむを得ないところでありますが、書類の名称だけはわかってもこれはやむを得ないものということが、この改正案の前提にあろうかというふうに理解しているわけでございます。
○山中郁子君 そのお認めになるように、裁判所から封書が来たというだけだって、これはいまの日本の社会の実情ないしは日本人の心理から言って、これはまたうわさにもなるし、心理的圧迫を加えようとして、たとえば悪質な債権者だとか、卑近な言い方をすれば飲み屋のツケだとか、そんなのだって利用されないとも限らないわけでしょう。 私はそういうことと、もう一つは、中身までは出てないんだと、こうおっしゃるけれども、これはホチキスでとめているのよね。こんなの、ホチキスを外して見ようと思えば見られるわけです、それでまたホチキスでとめておけばいいんだから。だから、それは私、実際これだけだってプライバシーの重大侵害で、どんな被害を受けるかわかりませんよ。実態を伺いましたらば、ホチキスでとめている、ホチキスどめだということですので、だとすればなおさらのこと、中身だってあけてみようと思えば見られるわけです。 さっきもお話がありましたように、大きな会社などに行けば、本人には渡さないで、結局受付や何かに渡すということになる。そうすると、いまの会社なんか見ますと、私も経験ありますが、そういう文書の授受というのはちゃんと授受簿があって、そしていつ何日の何時に本人に渡した、預かったとか渡したとか、こういうふうに授受簿にちゃんと記載されるようなことでもあるわけですね。それから、そういうような場合に、裁判所から何か支払い命令が来たとか、何が来たみたいなことがみんなその授受簿に記載されて、記録されていくわけでしょう。やっぱり私は、ちょっとこれはプライバシーの侵害という上では重大な問題があると言わざるを得ないと思います。 それから、ちょっとあわせてお伺いしたいんですが、たとえば家事審判や少年事件ですね、こういうものについては、たとえば封筒にもそうしたことを書かないとか、何らかのしかるべき配慮がされているというふうに承ってもいますし理解もしておりますけれども、そういう際の配慮は具体的にどういう方法をされているのか。さっきの、この中身だって保証の限りじゃないじゃないかということとあわせて、ちょっと御答弁をいただきたい。
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) いまお示しの方式による特別送達の場合に、本来封をしてその報告書をとめておくべきものであります。いま御指摘のようなことがありますと、これは特に就業先への送達の場合問題だろうと思われますので、さらに検討しなければならないことだろうと考えております。 なお、家庭裁判所における家事事件あるいは少年保護事件の関係での呼び出し等につきましては、御指摘のとおり、いろいろな配慮をしておるのが実情のようであります。たとえば、差出人が裁判所であることがわからないようにするために私書箱を使う、あるいは書記官、調査官が個人の名前でその書類を送るというような運用を、特にプライバシーその他少年の保護育成に必要だと考えるケースにおいては、そういう運用をしているというふうに承知しております。
○山中郁子君 日本人勤労者にとって、裁判ざたになっている問題が職場のうわさの種になったり、うわさだけじゃなくて、そうしたことが事実として事実裁判所からこういうものが行くわけですから、周囲に知れわたるということは、ある意味では致命的なことですよね、いまの勤労者、たとえばサラリーマンの仕事の場での実情から考えればね。私は、そこは本当にもうちょっと国民の人権を保護するという立場を真剣に考えていただかなければ困ると思います。 それで、特に勤務先でかわりの人に交付するという場合がまた一つは多くなるんですけれども、それで送達の効力は生じると、こういうことなんですけれども、紛失だとか失念、それから期限におくれた場合、十分あり得ますよね。そういうような場合はどうなるんですか、送達の効力という意味では。
○政府委員(中島一郎君) 就業先における送達、しかも補充送達ということで要件を満たしております場合、いわゆる百七十一条の二項の要件を満たしております場合には、それによって送達の効力が生ずるということになります。効力に関係はございませんけれども、百七十一条の四項におきまして、裁判所書記官はその旨を送達を受けた者に通知をする、これは住居所あてに通知をするということになっております。それには、あなたあての書類を会社のだれだれに渡しましたということが書いてあるわけでありますから、本人がその書類を見ることによって、その書類を現実に交付を受けた者に確かめるという可能性があるわけであります。 ただ、それにもかかわらず、送達されるべき書類も現実に手にしなかった、さらに本人あての通知も何らかの理由によって届かなかったという場合で、本人の責めに帰すことの全くできない事由で知らなかったという場合には、訴訟行為の追完が許されるということになるだろうというふうに考えます。
○山中郁子君 本人に別途通知するとおっしゃるけれども、本人に通知が行くぐらいなら、この送達自身が本人に行けばいいのであって、行くんだから、それはまた矛盾な話で、普通の通知だけ行くのだったら、本人がそこにいなくても、そのポストに入れてくれば、それで夜になって見ればいいんだと、こういうお話になるんでしょうけれども、本人に通知が行くんだったら、その何らかの努力をすることによって本人に、そこにいないわけじゃなくて、「知レザルトキ」じゃなくて、そこにいるということはわかるわけだから、そういう点でもこれは大変矛盾するお話であって、別途本人に通知が行くのだからいいんですということで本人が知るんだとおっしゃるならば、そのぐらいなら、何も会社に持っていかなくたって本人に行くわけですから、本人のいるところがわかっていることが前提になるわけでしょう。だから、そういう矛盾さえそこで生まれてくると言わざるを得ないんです。 いまお話ありましたけれども、どうですか、端的に言って、簡易裁判の場合でも本人が出廷しないままに、またもっとひどい場合は、知らないままに判決が言い渡されるという、いわゆる欠席裁判みたいなことがあるわけだけれども、このやり方をしていきますと、やっぱりそうしたケースはどうしたってふえざるを得ないんじゃないですか。
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) 訴えが提起されまして、被告に対して訴状と第一回の期日の呼び出し状を送るわけでございます。その送り方が住居所か、あるいは就業場所へもできるかといういま問題でありますけれども、いずれにしろ届かないことには訴訟を始められないわけです。届かないからもちろん被告は出席しません。その場合に欠席判決ということは法律上できないたてまえになっておりますから、この制度ができれば被告に届く件数がいままでよりは多くなる。しかも、届いたけれども出てこない被告がふえるということであれば、欠席判決がふえるということは御指摘のとおりであります。けれども、いま御質問のような意味においては、そういうケースがふえるというわけではございません。
○山中郁子君 勤務先でかわりの人が交付を受けるというその問題で確率が高くなる、本人に届かないという確率が高くなるだろうと、それとの関係で申し上げているんですけれども、おっしゃる意味はいまのはわかりましたけれども、私はそういう点でやはりその危険というものを指摘しておきます。 時間の関係がありますのでちょっと先へ進めますけれども、ここでひとつぜひ裁判所にも考えていただきたいんですが、裁判所と通じるいわゆる強権力というのか、そうした機能を持っている点では税務署があるんですよね。税務署の場合、国税通則法の第十二条で、郵便による送達または交付送達はそれを受けるべき住所または居所ということになっている。それで私も、同じような性格のものなので、国税庁にちょっと伺ってみたんですけれども、本人が住み込みで働いている勤務先兼住所というような場合は除いて、本人の勤務先へ、たとえば財産の差し押さえ調書だとかいうようなものを送達するようなことはない、まして本人以外の勤務先の関係者等に文書の交付を依頼するというようなことは絶対にないと、こういうことを言っておられました。 私、当然だと思うんですけれども、いま申し上げましたように、プライバシーに関する点では、そういう点で裁判所も税務署も共通する点があるというふうに思いますけれども、裁判所がこういうことをやっぱり率先しておやりになるというのはいかがなものかと思いますし、これはもうぜひひとつ考え直していただきたいと思っていますけれども、この国税庁との関係ではいかがですか、お考えは。
○政府委員(中島一郎君) 国税通則法の十二条でございますか、その第二項に「通常の取扱いによる郵便によって前項に規定する書類を発送した場合には、その郵便物は、通常到達すべきであった時に送達があつたものと推定する。」という、こういう推定規定を置いておるわけでありますから、到達したかどうかにかかわらず、通常到達すべきであった時期に送達があったという推定が行われるわけであります。 実は、それにもかかわらず現実には到達しなかったということは、これは書類の送達を受ける側で立証しなければならないということでありますから、書類の受送達者としてはかなり大きな負担を受けることにもなるわけでありまして、裁判所の場合にはこういう推定規定で処理できるかどうかということもございます。そういう点をあわせて考えてみなければならないだろうというふうに思います。
○山中郁子君 私、申し上げているのは、実際に就業先にそういうものを国税庁が配達するということはないということをいま申し上げているので、それはプライバシーという観点から言えば裁判所だって同じだし、裁判所が率先してそういうことをおやりになるのは困るということを申し上げておきます。 それでは次に、二、三簡潔にお伺いをいたします。調書の省略化の問題ですが、これもいろいろ御議論がありました。基本は、証人調書などはきちんととっておくというのが民事訴訟の基本だと思いますけれども、その点は御異見のないところですね。
○政府委員(中島一郎君) そのとおりでありまして、民訴の百四十四条もそういうことを前提に規定しておると思います。
○山中郁子君 それで先ほど、和解、取り下げ等が無効とされた場合にどうするのかということで、それが大変少ない数であるというふうなことなどをめぐって御議論がありました。この点について一つだけさっきの御答弁に関連してお尋ねしたいんですが、実務的には私、裁判所の実際の実務の方からお伺いすると、公判でその都度、その日ということではないけれども、次回の公判までの間にその都度調書をつくっておくということが必ず行われているわけではない。たまりにたまっていくというわけですね。さっき御答弁で、たとえば三回目まで、一からやり直すということにはならないで、途中までできているものはかなりあるんだから、一から振り出しに戻してもう一度やり直さなきゃならないということにはならないんだというお話がありました。だけれども、実際上はもうどんどんたまっているのが実情なんじゃないんですか。 そこのところは私、実態はよく、正直にと言うとあれですけれども、率直にお示しをいただいた方がよろしかろうと思います。すべてがすべてとは申しませんけれども、もうたまりにたまっていて、万一無効なんということになれば、やっぱり一から振り出しに戻して調書をつくるということにならざるを得ない方が実情だと理解いたしますが、その点はどうですか。
○最高裁判所長官代理者(川嵜義徳君) 民事訴訟の場合について申し上げますが、大体東京地裁の民事部の場合でありますと、証拠調べの期日というのは二カ月間隔あるいは三カ月、合議事件のむずかしい事件などになりますと三カ月間隔で入っていくのが通常でございます。したがいまして、当該期日における証人調べ等の調書は二カ月あるいは三カ月の間につくるということになるわけであります。大体主尋問だけ済ませて、反対尋問は次回というような場合も往々にしてあります。そういうような場合に、調書ができておりませんと反対尋問の用意ができないというようなこともございますし、いろんな要請から、大体その次の期日までには調書はでき上がっているのが通常でございます。 ただ、裁判官によっては、集中審理方式といいまして一カ月の間に数期日入れる、集中して調べて早く結審するというやり方をとる人もございます。そういうやり方をとった場合には、確かに次の期日に前の期日の分の調書がまだできてないということもあるかと思いますが、通常の場合はそのようなことはない。たまりにたまっておりますと、これはまあその書記官は破産せざるを得ないわけでありまして、とても通常の執務はできないはずであります。そういうようなことは例外的に、何か体の調子がおかしいというようなことで、ないということは断言するわけにはまいりませんけれども、通常の形がそうだというふうなことはないというふうに申し上げてよいと思います。
○山中郁子君 かなりあるというお話もあるんですけれども、御答弁ですので、さらに実態はお調べもいただきたいと思っております。 証拠の摘示の記載の省略の点についても、一点だけ御意見を申し上げたいんですが、先ほども御答弁で訴訟記録に残すように工夫してみたいというふうなお話もありましたけれども、やっぱり実際問題として、その点のいろんなむずかしさというのがおありだと思いますが、やはり判決書に記載しておくことの意義というのは大きいものがあると思いますので、そのことは指摘をするにとどめます。 この問題と関連して、これは先般当委員会だったと思いますが、わが党の近藤議員が下山事件との関連で、訴訟記録を保存してほしいということでお尋ねをしたと思います。重要な事件について、つまり下山事件もそうですし、これも歴史家や研究者の方たちから強い要望が出ている問題なんですけれども、十年たって廃棄するというのではなくて保存をしてほしいと。その他いろいろ歴史的に見ても重大な事件というのがあるわけで、現在のロッキード裁判、航空機疑獄なんかもその大きな問題の一つですけれども、そうした重要な事件については訴訟記録を全部保存するようにできないのかということを検討してもらいたいという趣旨の質問も申しましたけれども、この点について再度、ぜひ御研究をお願いしたいという立場からお考えを承りたいわけです。
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 民事事件の訴訟事件記録につきましては、最高裁判所の事件記録等保存規程というものに定めがございますけれども、基本的には記録の保存の必要性と保存に要します人的、物的負担等とのバランスを考慮して決めているわけでございまして、民事訴訟の記録につきましては、御承知のとおり十年という保存期間が定められているわけであります。 いわゆるいまお尋ねの重大事件、あるいは社会的な耳目を引いた事件といったものの記録の保存につきまして特別の扱いはできないかとの御指摘でございますけれども、重大な事件とか社会的な耳目を引いた事件という意味が必ずしもはっきりしない微妙な点がございます。記録保存という明確な基準を求められる事務につきましては、一般的にはそのような基準を持ち込むことはむずかしいように思います。 しかしながら、ただいま申し上げました事件記録等保存規程によりますと、例外的な取り扱いといたしましては、史料または参考史料となるべきものにつきましては、保存すべき庁の裁判官会議の議決によりまして特別保存という制度がございまして、裁判官会議の議によりまして特別保存すべきであるという決定がされますと、十年を超えて保存するということになっておりますので、大事件でありますとか、社会の耳目を引いた事件につきましては、その規程を活用すれば現行制度の中でも賄い得る。各庁それぞれそういった判断に基づいておやりになっているのではないかというふうに存じます。
○山中郁子君 やはり民事の十年ということですけれども、いま御答弁があったような点での保存の御研究もいただきたいところですし、私はやっぱり考え方によって、民事の十年の場合でも、十年たてばそれはおのずとその事件の時代的な歴史的な重要性というのはある程度判明してくる問題でもありますし、コンセンサスも得られる問題でもありますから、たとえば専門家になる諮問会議的なものを考えるという余地だってあるだろう。これは提起にとどめますけれども、そういう点から保存に努力をされるよう重ねて要望を申し上げておきます。 今回の改正の背後にあるものとして、よく訴訟促進政策というふうに言われていますけれども、やっぱりちょっと本末転倒していると基本的に思うんですね。事件数がふえている、あるいは事件そのものが大変複雑になっているということで裁判所の負担が大きくなっている。それから、一方では定員増は頭打ちである。定員法のときにも私いろんな観点から質問もいたしましたけれども、そういう事実がある。近い将来、大量の職員の退職、これはもうこの前のときにもちょっとお尋ねしましたけれども、定員法の問題で退職が予想される。そうした事態のもとで訴訟促進政策が進められ、その一環としてこれらの問題が、しかもプライバシーの侵害という重大な中身を持つ提起がされているということは、まさにこれは本末転倒であって、国民の権利を守る、そして公正で民主的な裁判の保障をあれするべき法務省、裁判所においての提起されるものとしては、すこぶる問題のある提案であるということを指摘をいたしまして、質問を終わります。
○委員長(鈴木一弘君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。
○委員長(鈴木一弘君) 船舶の所有者等の責任の制限に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。 政府から趣旨説明を聴取いたします。坂田法務大臣。
○国務大臣(坂田道太君) 船舶の所有者等の責任の制限に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。 現行の船舶の所有者等の責任の制限に関する法律は、千九百五十七年の海上航行船舶の所有者の責任の制限に関する国際条約に準拠して制定されたものでありますが、この条約は、成立後すでに二十年以上経過し、現在では必ずしも社会経済の実態にそぐわなくなる等の問題が生じております。そのため、国際的にも、船舶の所有者等の責任限度額を引き上げ、かつ、これを定める単位を国際通貨基金の定める特別引き出し権によることとする等を内容とする千九百七十六年の海事債権についての責任の制限に関する条約が成立を見るに至り、すでに英、仏等主要海運国がこの条約を批准しております。 そこで、政府におきましては、前述の千九百五十七年条約を廃棄して、この千九百七十六年条約に加入するため、今国会においてその承認方を求めているところであります。 この法律案は、千九百七十六年条約への加入に伴い、船舶の所有者等の責任の制限に関して所要の規定を整備する必要がありますので、船舶の所有者等の責任の制限に関する法律の一部を改正しようとするものであります。 この法律案の要点を申し上げますと、第一に、船舶の所有者等の責任限度額を引き上げるとともに、責任限度額の算定の基礎となる船舶のトン数を国際的に統一された基準によって算定することとしております。また、責任限度額の単位は、国際通貨基金の定める特別引き出し権によることとし、従来の金価値による定めを改めております。 第二に、責任の制限主体として、新たに救助者及び被用者等を追加することとしております。 第三に、制限債権を人の損害に関する債権、物の損害に関する債権及び旅客の損害に関する債権に分けて、責任制限の効力の及ぶ範囲及び責任限度額を定めるとともに、責任を制限することのできない債権の範囲の合理化等のため所要の改正を行うこととしております。 なお、責任制限手続につきましても、条約への加入等に伴い所要の改正をすることとしております。 以上がこの法律案の趣旨であります。 何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
○委員長(鈴木一弘君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。 本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。 本日はこれにて散会いたします。 午後四時十九分散会 —————・—————