法務委員会 第5号
- 発言数
- 161 件
- 登壇者
- 13 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1982/03/31
会議録
○委員長(鈴木一弘君) ただいまから法務委員会を開会いたします。 まず、委員の異動について御報告いたします。 昨三十日、小笠原貞子君及び金丸三郎君が委員を辞任され、その補欠として宮本顕治君及び世耕政隆君が選任されました。 また、本日、宮本顕治君が委員を辞任され、その補欠として山中郁子君が選任されました。 —————————————
○委員長(鈴木一弘君) 昨三十日、予算委員会から、三十一日及び四月一日の二日間、昭和五十七年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、裁判所及び法務省所管について審査の委嘱がありました。 この際、昭和五十七年度総予算中、裁判所所管を議題といたします。 矢口最高裁判所事務総長から説明を求めます。矢口事務総長。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 昭和五十七年度裁判所所管予定経費要求額について御説明申し上げます。 昭和五十七年度裁判所所管予定経費要求額の総額は、一千九百八十一億九千三百二万六千円でございまして、これを前年度予算額一千八百八十億五千四百二十九万九千円に比較いたしますと、差し引き一百一億三千八百七十二万七千円の増加となっております。 これは、人件費において九十三億二千一百八十五万一千円、裁判費において一億三百十六万四千円、営繕費において六億一千七百五十四万八千円、司法行政事務を行うために必要な庁費等において九千六百十六万四千円が増加した結果でございます。 次に、昭和五十七年度予定経費要求額のうち、主な事項について御説明申し上げます。 まず、人的機構の充実、すなわち増員でございます。 特殊損害賠償事件、民事執行法に基づく執行事件の適正迅速な処理等を図るため、四十四人の新規増員及び沖縄の復帰に伴う特別措置に関する法律に基づく定員からの二名の振替増により、裁判所職員定員法上、判事八名、裁判所書記官六名、裁判所事務官三十二名、合計四十六名の増員をいたしております。 他方、定員削減計画に基づく昭和五十七年度削減分として裁判所事務官等三十八名、その内訳は、裁判所職員定員法の定員三十七名、沖縄の復帰に伴う特別措置に関する法律に基づく定員一名の三十八名でありますが、この三十八名の減員を計上しております。 次に、司法の体制の強化に必要な経費であります。 裁判官等の執務体制の確立のため、中堅裁判官等の研修を充実する経費として二千六百六十万八千円、裁判運営の効率化及び近代化に必要なものとして、庁用図書、図書館図書の充実を図るため、裁判資料の整備に要する経費として五億三千二百二十九万五千円、裁判事務の能率化を図るため、複写機、計算機等裁判事務器具の整備に要する経費として四億九千八百四十七万円、裁判費の充実を図るため、国選弁護人報酬に要する経費として二十一億七千三百九万円、証人等の日当に要する経費として五億一百四十万五千円、刑事一拘禁一補償に要する経費として五千六百四十一万七千円を計上いたしております。 次は、裁判所施設の整備充実に必要な経費であります。 東京高等・地方・簡易裁判所合同庁舎の新営に必要な経費として一百八億一千八百十八万五千円、その他の裁判所庁舎の新営、増築等に必要な経費として四十四億七千八十八万四千円、合計一百五十二億八千九百六万九千円を計上しております。 以上が、昭和五十七年度裁判所所管予定経費要求額の大要でございます。よろしく御審議のほどをお願いいたします。
○委員長(鈴木一弘君) これより質疑に入ります。 質疑のある方は順次御発言を願います。
○寺田熊雄君 本年中に、最高裁判所裁判官がどのような人事の交代を生ずるのか、ちょっとその点を御説明いただきたいと思います。できれば裁判官のうち七十歳の定年に達する方々のお名前とか、それからその定年に達する年月日、それからその方々の前職、できれば民事、刑事のいわば専門部門といいますか、そういうものがもしおわかりになれば御説明をいただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(大西勝也君) 昭和五十七年中に定年になられます最高裁判所の裁判官が四人おられます。 いまの御質問にお答えいたしまして順次申し上げますと、まず昭和五十七年の四月十一日限り環昌一最高裁判事が定年でございます。環判事は弁護士出身でございます。次が、五月二十六日限り栗本一夫裁判官が定年でございます。栗本裁判官は裁判官出身でございまして、刑事が御専門でございます。それから次が、八月十日限り本山芋裁判官が定年でございます。本山裁判官は弁護士出身でございます。それから、九月三十日限り服部高顯最高裁長官が定年でございます。服部長官は裁判官の御出身でございまして、民事が御専門でございます。 以上でございます。
○寺田熊雄君 長官を初め、環、栗本、本山と三裁判官が定年で退職をなさる。後任の裁判官も、恐らく弁護士の出身の裁判官がおやめになればまず原則として、時に例外もありますが、弁護士からこれは選任せられる。裁判官出身の裁判官がやめられれば、その後任は裁判官の分野から選定を受けるであろうとわれわれは考えておるわけですが、こういう人事が、ある意味で政治的な配慮で選定をされるというようなことがあると、非常に私どもとして憂慮にたえないわけで、これはアメリカ等におきましてもそういうような批判がないではなかったのであります。 できれば、最高裁長官の推薦が内閣総理大臣に対してなされ、内閣総理大臣がやはり最高裁長官の進言、提言というようなものを尊重して後任の人事を決定されることが望ましいわけであります。私は過去においても当法務委員会で井出官房長官、それからいまの通産大臣が官房長官でいらっしゃったときにその官房長官に対して、いずれも最高裁長官の進言を尊重してやるべきであるということを質問において要望したわけであります。答えは、大体そういう趣旨のようであります。それから、弁護士の分野から選定される場合には日弁連の推薦を最高裁長官が尊重をされる。また、内閣官房長官も日弁連の推薦を重く見てそれを尊重してもらいたいということをかねがね要望してきたのであります。 これは事務総長にお伺いをしますけれども、従来も歴代の長官はいずれも後任の大事について内閣総理大臣にそういう提言をしてきたであろうと私どもは見ております。そして、その提言が尊重されてきたであろうということも、大体において過去の長官から直接私自身も聞いたことがあって信頼はしておりますけれども、その辺の消息について、もし総長が御存じであればちょっと御説明いただきたい。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) ただいま寺田委員がお述べになりましたように、最高裁裁判官あるいは最高裁長官の任命人事は内閣がその全責任においてお決めいただくというのが根本義でございますけれども、実際の問題といたしましては最高裁長官が十分御意見をお述べになり、内閣はそれを十分御尊重いただいて御決定をいただいておると。 なお、弁護士御出身の方の後任であるような場合には、これに加えて日弁連の会長が御意見を最高裁長官のもとにお持ちになり、最高裁長官はその御意見を十分御尊重になって、その上で御自分の御意見として内閣にお伝えになると。内閣はこれを受けて、その全責任においてではございますけれども、長官の御意見は十分御尊重いただいておると、このように承知をいたしております。
○寺田熊雄君 この最高裁判所が所管をしております一般会計歳出予算各目明細書、これを見ますと、検察審査会の予算というものがかなりなウエートを占めておるようであります。 そこで、これだけの国費を用いております検察審査会がどの程度の現実的な機能というものを持っておるのか、検察権の行使が過ちがないように国民の要望なり期待に沿って公正に行われておるかどうかということを担保する重要な制度でありますので、この制度が遺憾なく機能を発揮しておることが望ましいわけであります。そこで、この検察審査会の現実的な機能の実態というものを比較的詳細に御説明いただきたい。
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 検察審査会法は昭和二十三年に施行されておりますが、それ以後今日までに審査いたしました件数は六万八千六百一件、これは五十六年まででございます。
○寺田熊雄君 五十六年で六万八千件ですか。
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 五十六年末までで六万八千六百一件でございます。 そのうち起訴相当、不起訴不当ということの意見を付せられたものが四千七百十九件、あと不起訴相当というものが四万六千十五件、その他となっております。 この起訴相当、不起訴不当となりました四千七百十九件のうち、これまでに起訴になりましたのが八百三十一件でございまして、この起訴相当あるいは不起訴不当の意見をつけましたもののうちの約一九%が起訴になっておる、こういうことでございます。
○寺田熊雄君 起訴相当が、六万八千六百件の中で四千七百十九件だと、こうおっしゃるわけですね。そうすると、検察官の不起訴処分に対する是正措置といいますか、それを求めておる件数はかなりあるということになる。昭和二十三年からというから、その間三十年以上の月日がたっておる、年月がたっておるということを考えると、これは一年に百五、六十件ということになりますか。そのうち八百二十一件、一九%を検察庁の方が採用して起訴をした。残り四千件近くは、検察審査会の意見が無視されたということになりますね。そうでしょう。
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 先ほど申し上げました四千七百十九件は、起訴相当という意見がついたものと不起訴不当という意見がついたものと両方ございます。その合計でございます。 いまその内訳はちょっとございませんが、それで起訴相当という分はこのまま起訴してほしいと、こういう意見でございますし、不起訴不当というのは、このまま不起訴したのではこれはまずいのじゃないかと、こういうことになるわけでございます。それを合計しまして四千七百十九件でございまして、そのうち八百三十一件が起訴された、こういうことで、起訴されなかったものが八〇%ございますが、それは検察官の方で十分その意見をしんしゃくして、さらに捜査をされた結果、そういう結論に到達したものだ、そういうふうに考えております。
○寺田熊雄君 なるほど、起訴相当という意見と不起訴不当という——それらの事件は三十年間に六万八千六百件ですか、これを取り扱われた。これは主として申し立てによるものですか、それとも職権によって審査した事件もあると思うけれども、その比率はわかりますか。
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) この内訳は、申し立てによるものが五万三千三百四十六件でございます。パーセンテージにいたしますと八三・九%。職権によりますものが一万二百五十五件、一六・一%ということになっております。
○寺田熊雄君 検察審査会法第二条第一項に検察審査会の使命が掲げられておるわけだけれども、いままでお尋ねしたのは第一号の場合でありますが、第二号の建議及び勧告機能というものは現実にどのように働いておりますか。
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 建議、勧告をいたしました件数は、法施行以来五百二十七件ございます。 どういうものかと申しますと、いろいろございますが、たとえば口頭による告訴というものを十分受け付けられるようにしてほしいとか、そういうようなことでございまして、そういう建議をいたしますと、検察庁の方では大体はそのように改善される、また、そういう結果こういうふうに指示したとか、こういうふうに改善したというようなことを御回答いただくというようなことで、かなり実績を上げているのじゃないかと、そういうふうに考えております。
○寺田熊雄君 その建議なり勧告というものを検察庁が十分これを尊重して対応しておるようですか、それともそうでないか、その辺はどうでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) ただいまも申し上げましたが、検察庁の方で、全部ではございませんけれども、検察審査会の方に、建議に従ってこういうふうに改善したとか、あるいはこういう扱いにしたというような回答をかなりいただいておるようでございますので、大多数は改善されているのじゃないかと、こういうふうに考えております。
○寺田熊雄君 私ども、検察庁の事務の実態をいままでわりあい長い間見てきた。優秀な検察官は告訴事件というものの筋を見て慎重に取り扱うけれども、余り優秀でない方はめんどうくさがって、告訴人をやたらにしかり飛ばして告訴を取り下げさせようとする、そういう傾向がある。そのしかり飛ばしている場面などというものを私ども検察庁に行って見て、何を怒っているのか、多分悪いやつがしかられているのだろうと思って後で聞いてみると、告訴人がしかられておるということでびっくりした。その検事の普段の行状を見ると、比較的凡庸な——やはり凡庸な人ほど、大衆の願望とか要望というものを真剣に受けとめないということを私ども経験したわけであります。 できるだけひとつ、そういう大衆の願望なり要望をあなた方が受けとめられて、検察庁に対して有効適切な建議及び勧告をこれからも果たしていっていただきたいと思うわけであります。 次に、財政法の第十七条を見ますと「歳入歳出等の見積」というのがありまして、「衆議院議長、参議院議長、最高裁判所長官及び会計検査院長は、毎会計年度、その所掌に係る歳入、歳出、継続費、繰越明計費及び国庫債務負担行為の見積に関する書類を作製し、これを内閣における予算の統合調整に供するため、内閣に送付しなければならない。」、こういうのが第十七条の第一項であります。これは、最高裁長官が第十七条第一項の規定に従って内閣に送付しておられるわけでしょう。
○最高裁判所長官代理者(原田直郎君) 仰せのとおりでございます。
○寺田熊雄君 さらに、第十八条の第一項「大蔵大臣は、前条の見積を検討して必要な調整を行い、歳入、歳出、継続費、繰越明計費及び国庫債務負担行為の概算を作製し、閣議の決定を経なければならない。」、それから第二項として「内閣は、前項の決定をしようとするときは、国会、裁判所及び会計検査院に係る歳出の概算については、予め衆議院議長、参議院議長、最高裁判所長官及び会計検査院長に対しその決定に関し意見を求めなければならない。」、こういう規定がある。 そこで、最高裁長官の作製したものと大蔵大臣の作製したものとは一致する道理がないわけで、これは大蔵大臣の職掌として削りに削ってしまう、骨まで削ると言われている。そこで、最高裁長官の提出したものと大蔵大臣の作製したものとはトータルにおいてどの程度金額的に違うのかどうか、これを御説明いただけますか。
○最高裁判所長官代理者(原田直郎君) 委員の仰せは、最初の概算要求額の関係とそれから最終的に閣議決定を経た予算要求額という趣旨のお尋ねかと思いますが、ただいま御審議中の五十七年度予算に関して申し上げますならば、概算要求額は千九百二十八億余でございまして、最終的に内閣で閣議決定をいただいたのは千九百八十一億余でございます。
○寺田熊雄君 そうすると、概算の方が低いわけですか。
○最高裁判所長官代理者(原田直郎君) 仰せのとおりでございまして、前年度予算に比べますと約百億ふえておるということになります。概算要求額に比べますと約七十六億余ふえた形になっております。
○寺田熊雄君 要求の方が査定よりも低いというのは、これはどういうわけですか。
○最高裁判所長官代理者(原田直郎君) この関係は、私どもの裁判所所管で申しますと、人件費というものがございます。人件費が総予算の中で八四%強を占めるわけでございますが、この人件費の義務的経費の増というのが非常に大きな部分を占めたわけでございます。これは財政当局の御理解で枠として認めていただいたわけでございまして、その関係が大きかったことと、それから、先ほど事務総長が御説明申し上げましたように、現在進行中の東京高・地・簡の工事費でございますが、その関係が大きな部分を占めておると、こういうことになるわけでございます。
○寺田熊雄君 あなたの御説明を伺うと、一応わかったようでもあり、また何か腑に落ちないようでもある。結局、人件費が非常に多くのウエートを占めると、これはわかる。それをふやしてもらった。 そうすると、概算要求というのは初めからそういうふえるべきものを見込まずに要求をしたのかという疑問が起きますね。それから、東京高・地・筒の問題も、これは要求しないのに大蔵の方がつけたという趣旨なのか、どうもよくそれがわからないので、もうちょっとわかりやすく御説明いただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(原田直郎君) 先ほどのをちょっと訂正いたしたいと思いますが、概算要求額は千九百二十八億余、最終的に閣議決定を見たのは千九百八十一億余ということでございますので、先ほど七十六億余ふえたと申し上げましたけれども、約五十三億余ふえたという形になるわけでございます。 人件費の義務的経費の増というのは、御存じのとおりの人事院勧告の関係などがはね返り分としてそれだけふえてきたという形になるわけでございます。
○寺田熊雄君 そうすると、それは概算のときには加味せずに出したというわけですね。そして、それは加味せずに出したのがプラスされたと。そのプラスされたものは一体どのぐらいだったんでしょう。
○最高裁判所長官代理者(原田直郎君) 失礼ですが、加味されたと申しますのは、人件費の義務的経費の増でございますか。
○寺田熊雄君 つまり、あなたの御説明ですと、概算要求よりも内閣で決定されたものが額が五十何億か多い。概算よりも内閣の決定の方が多いというのはどういうわけだろうかという疑問を私が提示しましたところ、あなたの御説明は、人件費のこれは義務的な増加があったためですと、それからもう一つは、何か東京高・地・筒の予算がついたからでありますという御説明だったでしょう。ですから、概算要求というものはそういう人件費の義務的な増というものは考慮せずに要求というものがなされたのですかと言ってお尋ねしているわけです。それは究極において、その人件費の義務的増加というものはどのくらいの額になるんですかという二つの疑問をあなたにお尋ねしたい。
○最高裁判所長官代理者(原田直郎君) 要求段階では、人件費の扱いは各省庁統一の扱いを受けておったわけでございます。この関係は八月三十一日現在での要求額でございまして、その後に人事院勧告の流れとかそのようなものがいろいろございまして、最終的に先ほど申し上げたような結果に相なったと、このようなことになるわけでございます。
○寺田熊雄君 それで、そのふえた額はどのくらいでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(原田直郎君) 失礼いたしました。約七十億と承知しております。
○寺田熊雄君 概算要求の時点ではまだ人事院勧告の取り扱いが決まっていなかった。したがって、その部分を加味せずに要求した。ところが、その後人事院勧告の扱いが決まったために七十億が総計でプラスされたと、こういうことですな。そうすると、物件費の面で大体二十億程度、二十億ちょっと足らずに削られたということになりますね、削減があったというか。 そして、この十八条の第二項で最高裁長官の意見を求められたはずだけれども、最高裁長官は内閣に対してどのような意見を述べられたのか。この十八条の二項に基づく意見というものの内容を、大体でよろしいから説明していただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(原田直郎君) 先ほど来お話が出ておりますように、いわゆる概算要求の提出後、財政法十八条の閣議決定がなされるまでのことでございますが、この関係は大蔵省との間で局長、次長、次官、各事務レベルでの見積もり事項についての協議が種々なされるわけでございまして、その間におきまして財政事情をめぐる諸事情というものも十分承りながらいろいろ勘案、見定めていくわけでございますが、その関係において見積もり事項の増減、修正等種々の調整を行うわけでございます。その都度最高裁判所としての意見を申し述べているわけでございますが、その間におきましては裁判官会議におきましてお諮りをいたしまして、御了承を得ながら話を進めておると、こういうことに相なるわけでございます。 最終的には、例年の概算閣議決定がなされるに当たりましては、各省庁ともいわゆる大臣折衝がなされるわけでございますが、最高裁判所といたしましては事務的な事柄でもございますので、長官の代理という形で事務総長が出まして大臣折衝を行って、最終的に最高裁長官の意見、最高裁判所の意見を十分にお伝えしていると、こういう形に相なるわけでございます。
○寺田熊雄君 なるほど、最高裁長官がみずから出馬して大蔵大臣に渡り合うというのではなくして、矢口事務総長が代理として折衝をすると。実際はそうなんでしょう。 矢口事務総長にお尋ねするけれども、そうなると、あなたは十八条の二項によって最高裁長官の意見として内閣に対して述べられた事項というのは、まとまったものじゃなくて、その都度言われたのか、それともやはり一定の見解というものをまとめてそれを内閣にぶつけられたのか、その辺はどうなんですか。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 概算要求あるいは予算概算要求の決定の段階におきまして、御承知のように非常にたくさんの項目、しかも細かな内訳等がございまして、トータルでどうというようなことはできないわけでございまして、これだけの金額を出すには細かな内訳があるわけでございます。したがいまして、一つの書面あるいは一回の折衝でもって申し上げるということはとうていできないことでございますので、先ほど来経理局長が申しておりますように、個々の細かい問題の全般にわたって、時間をかけて一つ一つこちらの意見を項目にわたって述べていくということでございます。 その間に、なるほどもっともだということで、極端なことを言えば、もう少しここは単価等をふやした方がいいのじゃないかという御示唆をいただくこともございますし、私どもの方でもう少し、そうはおっしゃるけれども、この点はわれわれとしては非常に重点を置いておるところだから十分しんしゃくしていただきたいと特にお願いをする点もございます。 そのようなことも、すべてこれはその規定にございます長官の権限から発することでございまして、率直に申し上げますと、非常に細かい問題まで一々長官に御報告して御了承を得ておるというわけではございませんけれども、重要な問題につきましてはすべて長官、裁判官会議に御報告をいたしまして、お許しをいただいた上で権限を持って折衝をいたしておる。ただ、その折衝事項いかんによっては、場合によっては主計課長段階の折衝もございますし、経理局長段階で折衝することもございますし、次長段階の折衝ということもあるわけでございます。 そういうふうにいたしまして、時間をかけて煮詰めてまいりまして、どうしても最後に煮詰まらないところ、そういうところは最終的に私が長官の命を受けて直接大蔵大臣にお目にかかって長官の御趣旨をお伝えし、それの実現に努力するという段階になるわけでございますので、全部の事項について一括した膨大な書面をまたぶつけるということはいたしておりませんけれども、その全体をごらんいただきますれば、その折衝の過程全部が、そこの規定にございます長官の意見を聞いてお決めをいただくということに当たると、このように考えております。
○寺田熊雄君 そうすると、この十八条二項の解釈として、あなた方最高裁事務局のつかさつかさが、そのつかさつかさは係長もある、課長補佐もある、課長もある、局長もある、次長もあると、そういう者が事務的に折衝をすることが、これは最高裁長官が結局内閣に意見具申をするというものの中に含まれておるのだ、そして決定を見ない事項については最終的には事務総長が大蔵大臣に会ってそうして意見を言うのであると、事務総長のおっしゃることをまとめるとそういうことになりますな。 そして、事務総長は、大蔵大臣に五十七年度予算の問題で直接に会って意見を述べられたのは何回ありますか。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 八月末日に概算要求を内閣に提出いたしまして、十二月のぎりぎりに閣議決定がなされますまでの間、先ほど来申し上げておりますような折衝がほとんど連日といっていいぐらいなされるわけでございますが、そのようにして個々の問題を一つ一つ片づけてまいります。それで、私どもが満足であるというふうに考えるものにつきましては、特段に改めて意見を申し上げるということはございません。 五十七年度概算要求で申し上げますと、内閣の増員抑制というような問題もございまして、この増員問題というのが最後までやはり決着がつかなかった問題でございまして、私どもとしては最重点項目として掲げておった問題でございますし、また大蔵省側としては、率直に申し上げれば最も認めにくい事項であるということでございまして、そこのところの話し合いが最後までつかなかったわけでございまして、その点、長官の命を受けて大蔵大臣に最終的な折衝をいたしましたので、私が現実に出かけてまいりまして折衝いたしましたのは、その前の事情の説明等は数回参っておりますけれども、正式な折衝といたしましては、いわゆる大臣折衝の際に増員問題につきまして折衝をいたしたのが一回でございまして、それで全体としての話し合いがついた、こちらの意見を申し上げ、その意見の御了承を得たと、こういうふうに相なっておるわけでございます。
○寺田熊雄君 私はこの財政法十八条の第二項の、内閣が最高裁長官に対して意見を求める、求める以上は最高裁長官が意見を言わなければいかぬ。それがどういうふうになされているのか、内容はどうかという点、疑問を持っておったのですが、いまの事務総長の御答弁をお伺いして実態というものがわかったわけです。その批判は後日に譲るとして、よくわかりました。 それから、法廷等の秩序維持に関する法律というものがありますが、私どもはやっぱり司法の分野で飯を食っておる者の一人として、裁判が公正かつ適正に行われるということはもう絶えざる願望であるわけでありますが、時として法廷の秩序というものが大変乱れるといいますか、私自身も相手方の本人からつけねらわれたことが一回あるんです。暴行を受けるかなと思ったけれども、まあまあそこまでには至らなかった。それから、被告である金融業者、これは金融業者の高金利に対して私どもがその高金利による支払いの効果を元本に及ぼそうとして訴えを起こした事件であったと思いますが、その証人に対して金融業者が法廷で暴力をふるわんとしたことがある。その証人が女性であったので、私がその金融業者をたしなめて女性に近寄ることをさせなかったというふうな経験がある。 ところが、裁判官に対して侮辱的な言辞をする当事者もないではない。ここで、五十六年の九月四日付の大阪朝日新聞であろうと思いますが、このスクラップの中に、原告が大阪高裁の裁判長に対して「おのれは判決を出すというといて、また引き延ばすのか」という暴言を吐いた、裁判長が退廷を命じたと、こういう記事があるんです。余り裁判官が法廷の秩序維持の権限を乱用してやたらに監置処分なんかやられたのでは困る場合もありますけれども、しかし、そういうむちゃくちゃな当事者に対しては、やはり退廷を命ずるだけじゃなくて、適切な監置処分というようなことをしてもいいのじゃないかという気もするわけであります。 そこで、この秩序維持に関する法律で、そういう裁判長の権限というようなものが発動されたような事例というものはどのぐらいあるのだろうか、この法律がどういう現実的な機能を営んでおるのか、そういうようなことをちょっと御説明いただければありがたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) ただいま手元にあります最近十年間の制裁の関係でございますが、制裁の総数は三百七十名でございます。そのうち監置の制裁を受けた者が三百三十七名、科料の制裁を受けた者が三十三名となっております。大部分は刑事事件でございますが、このうち五件は民事のものが含まれているということでございます。
○寺田熊雄君 それから、最近家庭内暴力、こういう事件が頻発しておりまして、親が子を殺す、子供が母親に暴力をふるうのを見て父親がその子供の首を絞めるというような事例がある。中には、そういう事例を起訴猶予処分にしたというような新聞報道もあるくらいであります。一体こういう事件がどの程度あるものだろうか。これは恐らく刑事事件として法廷で明らかになるものばかりでなくして、家庭裁判所の事件として処理されるものもあるであろう。 そういうような事件で、最高裁でおわかりになっている分だけでも結構でありますから、最近のこういう事件について御調査をなさっておられれば、ちょっと御報告をいただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(粟原平八郎君) いま委員御指摘の家庭内暴力と申しますのは、名前のとおり、家庭内で子供がその親やきょうだいに暴力をふるうというような事件もありますれは、また逆に、親がその子供に虐待をして暴力をふるうというようなたぐいのものもあるわけでございます。あるいはまた、母親に対して暴力をふるうのをとめようとして、父親が力余って子供を殺すというような悲惨な事件もあるわけでございます。ところが、こういう家庭内の暴力事件というのは、そういう殺傷事件にまで発展いたしますれば警察の手がそれに及ぶということに相なるわけでございますが、家庭内で肉親に暴力をふるうというような程度のものでございますれば、家庭ではそれを表にしたがらないというようなことがございまして、一般的には顕在化しないわけでございます。 御指摘の、家庭裁判所に送られてくる事件の中でいわゆる家庭内暴力事件がどの程度あるかというようなことは、統計の上でもとっておりません。ただ、普通の事件の調査の段階で、その子供が家庭内で両親等に対して暴力をふるっていたというようなことが調査段階でわかるというようなことはございますけれども一統計の上では必ずしも明確にされておりませんので、裁判所としては手元にそのような資料がないわけでございますが、私どもが承知いたしております、たとえば警察の資料の中に、その肉親等が少年相談だとか、あるいは補導を受けたその経緯の中に、どの程度そういうものが含まれているかということを調査した資料がございます。 五十五年度でございますが、たしか千二十五件数えられていたようでございますが、これはあくまでも表に出た件数がその程度であるということでございまして、顕在化されない、いわゆる家庭内でその種のたぐいでの暴力のために両親あるいは家族が困っておるというようなケースはかなりあるのではなかろうかというように私どもは想像しておるわけでございます。 以上でございます。
○寺田熊雄君 司法官の卵である司法修習生、私どもも戦前司法官試補といって卵であったのですが、当時は年俸九百円下賜、月給にして七十五円であったのですが、わりあいに楽であったというような感じを持っておるわけです。いまは一体この修習生というのはどの程度の待遇を受けておるのか。生活に困って勉強ができないというのでは困る。まあ楽をしておるということは恐らくいまの財政事情でないと思いますけれども、余り窮屈に締め上げたのでは、将来の司法官の卵が勉強するのに不自由であると考えますので、これをお伺いしてみたいんですが、ちょっと御説明いただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(大西勝也君) 司法修習生の待遇でございますが、まず給与といたしまして、現在月額十二万八千六百円の給与が支給をされております。そのほかに、一般の公務員と同様にいろいろな手当がございます。扶養手当でございますとか通勤手当でございますとか、期末、勤勉手当その他いろいろ手当がございますが、そういう手当を一般の公務員と同様に支給されております。
○寺田熊雄君 私どもが戦前この待遇を受けたときには、一般の公務員のうちでも初任給としては最高に近かったですね。そのときに学校の先生方や警察官の月給というのが、たしかまだ五十円ぐらいだったと思う。それから考えると、七十五円というのはわりあいゆったりしておったんですが、いまこの十二万八千六百円というのは、一般の公務員にするとどのぐらいのランクに位置されるんでしょうか。それから初任給としては、やはり大学出としては最高の部類に属しますか。
○最高裁判所長官代理者(大西勝也君) ただいま申し上げました月額十二万八千六百円の給与、この額でございますが、これは一般の公務員に比べてどの程度に当たるかということでございます。これは行政職の方の俸給表がございますが、行政職(一)表の俸給表の六等級の二号俸と三号俸の大体中間に当たるわけでございまして、これをもう少しわかりやすく申し上げますと、一般の公務員になられる場合、上級職の甲種の試験、一番程度の高い試験でございましょうか、その甲種の試験による採用者が大体採用後二年経過後ぐらいのところでおもらいになる給与に当たるというわけでございまして、それによって御推察いただきたいと存じます。
○寺田熊雄君 私も十分研究したわけではないので、さらにこれを研究してお尋ねすることがあるかもしれませんが、きょうはこの程度にして、できるだけひとつ、事務総長、これは将来の司法官の卵を優遇するというそういう気持ちで、待遇の是正にこれからも御努力いただきたいと思いますが、最後にそれについて総長のお気持ちだけお伺いして、きょうの質問を終わりたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 寺田委員の非常に御理解のある御発言でございまして、私どももよき後輩を得るために待遇については今後も最善の努力をいたしていきたい、このように考えております。ありがとうございました。
○円山雅也君 裁判所の五十七年度の予算を拝見いたしますと、司法体制の強化に必要な経費として裁判官等の執務体制の確立のためということで二千六百六十万八千円が計上されております。これは前年以前になかったことで、今度の全く新しい項目の御要求だと思いますけれども、これはどうして今年度に初めてこういうものが上がってきたのか、その辺まずお聞かせをいただきたい。
○最高裁判所長官代理者(大西勝也君) まず結論から申し上げますと、この二千六百万円ばかりの予算は、司法研修所で行います裁判官研修の中の新規予算ということになるわけでございます。 御承知のように、司法研修所におきましては修習生の養成をやっておりますほかに、従前からもいろいろな裁判官の研修をやっておるわけでございまして、それなりの予算もちょうだいしておるわけでございます。ただ、今回この二千六百万円という新規予算を新たにいただきました趣旨は、御承知のような昨年以来の不祥事もございました。それだけではございませんが、いわば直接にはそれが契機になりまして、司法研修所におきます裁判官研修というものをもっともっと充実強化したいというふうに考えまして、いままでの裁判官研修のほかに、主として中堅どころの裁判官の研修をもっとやらなきゃいけないのじゃないかというふうなことを考えまして予算要求をし認められた予算、こういうことになるわけでございます。
○円山雅也君 確かに裁判官のそういう資質といいますか、これは裁判の中心でございますから、幾ら裁判官が勉強しても勉強し足りない、それは大変結構なことで、これじゃ少ないぐらいだというふうに思うことなんですが、せっかくの税金でございますから、同じ二千六百万でもできるだけ有効に使っていただきたい。そういう意味で、きょうはひとつ私が日ごろ考えている裁判官の方への研修の方法について、私なりに一応疑問をぶつけさしていただいて、お考えを聞かせていただいて、一緒に考えていきたいという意味できょうは質問さしていただきます。 民、刑を問わず、何といっても裁判の中心課題はまず最初の先決問題として事実認定の問題、事実認定が誤ったら、その上にどんな精緻な論理が築かれたって裁判としては話にならない。そこで、事実認定の勉強でございますけれども、事実認定というよりも事実認定能力といいますか、これは私の経験からも、確かに大学の法学部で法律学の勉強はしてくる、研修所へ入ってかなり二年間しぼられて法律学の精緻な、それこそ重箱の隅をつつくような勉強もさせられる。そしてぼんと裁判官、判事補に任官して振り返ると、一体法律学に対してはおれは確かに一応一般の方よりもプロかもしれないけれども、事実認定についておれはプロだろうかという危惧を持ったことがございます。 たとえば、推理小説をたくさん読んだわけでもなし、探偵の仕事をしたわけじゃなし、そうすると裁判官として一番大切な事実認定については、法定証拠法則でもあれば、その法則を勉強することによって新任の判事補も十分に足らざるところをカバーできるかもしれない、御承知のとおり自由心証だから。そうすると、一番裁判に大切な事実認定について勉強をしなきゃいけないんじゃないかと思うわけですけれども、この事実認定能力についての教育と申しますか、そういうものはどういうふうにとらえておられましょうか。
○最高裁判所長官代理者(大西勝也君) 確かに円山委員御指摘のとおり、裁判におきまして一番重要なことはまず事実認定ということであろうかと思います。これはわれわれの経験に徴しましても、訴訟というものの大部分はいわば事実認定で決まってくるわけでございまして、いわば法律問題というものはそれほどたくさんあるものではございません。そういう意味では、もう圧倒的に事実認定で訴訟の帰趨が決まってくると申し上げても過言ではないというふうに思います。 もちろん司法研修所におきましても、従前から特に判事補の研修なんというものは、もう円山委員も御承知のように、十年間の判事補をやっております間に何回も研修所へ集めまして、それなりの事実認定の訓練というものもしておるわけでございますが、しかし、これはなかなか言うべくして、実際集めてみんなで研究してみたところでそう簡単にいくものでは実はないわけでございまして、究極的には各人の努力にかかるということでありますとともに、これは単に法律学の勉強とかいわゆる学問の研究だけではなくて、それぞれの人の人格、幅広い教養等からおのずからでき上がってくるべき能力でございまして、そういう意味では非常にむずかしいわけでございます。 われわれとしても、その事実認定の重要性というのは十分前から考えておりまして、研修所でもそれはそれなりの研修もやっておるわけでございますが、今後もますますそういう意味での実務能力の向上ということについて、研修所でも十分今後裁判官研修をするに当たりましては考えてくれるものというふうに理解しておるところでございます。
○円山雅也君 確かにおっしゃるとおり、恐らく事実認定の客観性を担保する方法があるとすれば、法定証拠法則を採用するか、それとも経験則しかないと思いますね。経験則を修得するというのは、これはもうあらゆる人間の、人生のあらゆるものの経験を体験する、知るのが一番的確なんでしょうけれども、そういう経験法則の勉強ということは、なかなかこれは言うはやすくして行うはかたしだから、言われるように恐らく広い視野を勉強するしかないんでしょうね。 そこで、私が判事補になりたてのころだと思いました。当時、裁判所でこういう考え方が支配的になって実行も一時されたんですが、いわゆる刑事訴訟法が新しく変わったためかもしれませんけれども、二審に行くともう事実認定の余地が、特に刑事裁判の場合少なくなってくる。つまり続審じゃないということ。そこで、だからやっぱり事実認定は結局幅広い人間的な視野を持つ人でなければならないとするならば、老練な裁判官を逆に第一線の地裁の方におろして、そして若手はむしろ逆に高裁の陪席がなんかでもって法律論をやる、そしてならすというような考え方があって、事実その当時、たしか東京地裁あたりは、むしろ老練な裁判官が進んで地裁の裁判官に配置転換でおなりになったことがあったように記憶しているんですが、これは現在はどうなっておりましょうか。
○最高裁判所長官代理者(大西勝也君) ただいま円山委員御指摘の、老練な裁判官が一審へ行って若い方が高裁に上がったというその問題は、いわゆる一審強化方策ということが昭和三十年代の初めのころにございまして、特にそのころは判事補の職権の特例のついた方々、判事でないそういう層が、たとえば刑事で申しますと刑事の単独事件をやっておるというふうな状況がございまして、一方においては高等裁判所では職権特例がついておっても判事は執務できないというふうなことがあったわけでございます。 そこで、当時たしか判事補の職権の特例に関する法律を改正していただきまして、職権特例判事補でも高等裁判所の陪席として一人は入れるという法律上の手当てもなされまして、そこで判事が地裁へおりてきて、判事補で七、八年以上ぐらいの方が高裁へ行って陪席をやるというふうなことが行われたということが確かにあるわけでございます。 それが現在どうなっておるかということでございますが、御承知のように、現在でもたとえば東京地裁の刑事の第一審の裁判長をごらんいただきますと、 〔委員長退席、理事小平芳平君着席〕 かなり老練な方がなっておるわけでございまして、当時に比べますと判事の増員もいただきましたし、非常に充員が進みまして、そういう意味での判事層というものが非常に厚くなってきたということが言えようかと思います。そういう意味で、いまそのときのように大量の異動が行われておるというようなことではございませんけれども、そういう精神そのものはいまも生きておるというふうに御理解いただいてよろしいのではないかと思います。
○円山雅也君 大変ありがとうございました。結構だと思います。事実認定が修得困難であるならば、何とかそういう制度的なもので少しでも解決をせざるを得ないんじゃないかと思いますので、ぜひその辺はなお今後もお願いをしたいと思います。 そこで次に、やはりこれも裁判官の教育の問題でございますけれども、刑事裁判の量刑の問題。御承知のとおり、刑事裁判は有罪無罪を争うのはもう百件に一件あるかないか、ほとんどの事件は有罪で、何とか刑を軽くしてもらいたいという量刑の問題が被告にとっては一番の最大の課題になってまいりますけれども、 〔理事小平芳平君退席、委員長着席〕そこで当然、だから適正公平な量刑が行われなければいけない。とすると、この量刑についても事実認定と似たように、量刑が適正公平に判断できるような裁判官にするそういう教育というのは、どういうふうにとらえておられましょうか。
○最高裁判所長官代理者(大西勝也君) 訴訟における事実認定の重要性とともに、特に刑事の裁判におきます量刑の重要性、まことに御指摘のとおりであると思います。 なお、これも円山先生には釈迦に説法でございますけれども、刑事事件の大部分はそれほど事実に争いがあるものではございませんで、むしろ刑の量定というのが一番問題になってくるわけでございます。その刑の量定を適正公平にやるということもこれは非常にむずかしい、事実認定と同じようにむずかしいことでございまして、これも事実認定と同じようになかなか修練というものはむずかしいわけでございます。刑事局長がそこにおりますので、刑事局長の方が専門で、むしろ私、刑事は余り存じませんのでよくわかりませんけれども、いろいろな工夫をしまして、たとえば刑事におきましては、量刑の資料なんというものを、それはいろんな事件の資料を集めてまいりまして、そういうものがわりあいに見やすいような形で集められておるというようなことも聞きますし、そういう意味でのいろいろな工夫はなされておるようでございます。 確かに、刑の量定は非常に重要でございまして、裁判官の修練の中にそういうことの研修が非常に必要だということは御指摘のとおりでございますし、今後も研修所の裁判官研修の中には、そういうことの重要性を忘れずに取り入れていくということは恐らくなされるのだと考えております。
○円山雅也君 刑事局長にお尋ねしますが、この量刑の教育というのはできる、つまり理論的に可能なものでございましょうかね。たとえば、よく量刑の相場なんという概念があります。あの量刑の相場については、牧野先生なんかは、そんなものは冗談じゃない、量刑なんというものは、そういうつまり類型化して分類して、この刑にはこれだけのものが過去に行われたから大体この辺だろう、そういうことはあり得ないんだ、理論的にそんなものはあり得ないんだというようなことの反論も出ておる。 そうすると、そういう量刑問題の理論的な手がかりがないと、最後は勘だということになっちゃう。すると、勘でやられたらこれはちょっともうたまらない。じゃ、その勘を裁判官はどうやって養うんだということになります。その辺は刑事局長はどういうふうにお考えですか。
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 非常にむずかしい問題でございますが、確かにこの量刑というのは考えて出てくるというようなものではございません。これは、結局は長い間の経験でございますとか、ほかの先例をいろいろ見て、それによって自分の事件と見比べて、そして大体こういう相場だということを体験して理解していくよりほかないのじゃないかというふうに考えるわけでございます。 それは、まず若い方が参りますと合議に入るわけでございますので、合議の中で、いろんな事件に遭います中で、初めはこう思ったけれども大体こうであるとか、あるいは各裁判所いずれもいままでの先例の判決がいつでも見れるように用意してありますので、そういう同じような判決をその中から見て、それで大体どういうものなのだ、こういう場合には、どういう点をどういうふうに考えて情状はどういうふうに見るのだというようなことを、大体そういう先例を通じて大体のことを体験していく。また、各裁判所では、その判決を一々見ないでもいいように、ある一定の情状の事項というものを分けまして、そういうものを各裁判官が判決するたびにそれを記載して各部に回すというようなことをやっておりますし、また私ども刑事局でも、できるだけいろいろそういう量刑の資料というようなものもまとめて、資料として各庁に配付してごらんいただくというようなことをしておるわけでございます。
○円山雅也君 さあ、そこでなんですが、最近こういうことを聞くんです。これは大変偉い学者さんも指摘をしているんですが、いま日本の裁判所は最近とみに刑事の刑が軽くなった。判決が軽くなった。確かに、たとえば死刑なんか見てみますと、もう年々どんどん減っていっちゃうんですな。ここ二十年ぐらいのをずっと拾っていくと、極端に死刑なんか減っていっちゃう。それから、判決の言い渡しの刑が、宣告刑が、法定刑のほとんど下限の辺をうろちょろうろちょろしている。ほとんど上なんか使ったことはない。 だから、どうもそういう数字上の傾向から見ると、現在の裁判所の刑の宣告が非常に軽くなったということは否定できないのじゃないかと思うんですが、そうすると、先ほどからお二人のお考えを聞いていると、量刑についてはそれほどの根拠もなさそうだし、じゃ、根拠がないのに何でそういうようにどんどん刑が軽くなる傾向にあるのか、この辺はどうなんでございましょうかね。
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) これも非常にむずかしいことでございまして、現実に軽いのかどうかということを私もはっきり申し上げられませんが、何しろ量刑というのは当該被告人にとりましては大変な関心事でございます。 裁判所も、ある部によって重いとか、ある部では軽いというようなことがないように、なるべく同じような事案については同じような刑が科されるようにというように心がけているわけでございまして、そういうことから、先例に従うというようなことで、あるいはそういう傾向があるかとは思いますが、そういうことがないようにいろいろ考えてやっているはずでございまして、先ほど御指摘の、死刑もなくなったというお話でございましたが、最近の新聞を見ましても、死刑がずいぶん最近も行われているということでございまして、果たして一概に昔と比べてうんと刑が軽い、明白にそういう事実があるのかどうかというところは、もう少し検討してみたいと思います。
○円山雅也君 それでは、死刑がどのくらい減っているかをひとつ御参考までに申し上げます。 終戦直後の昭和二十三年には百十六名、三十五年には十二名に減っちゃって、四十年には九名、四十六年には四名、四十七年には三名、四十八年には四名、もう間違いないです、減少は。 それから、ひとつお帰りになって確かめていただきたいんですが、法定刑の下限を宣告刑がうろちょろしている。それから傾向としては、数字上、執行猶予がものすごくふえているということも間違いない。そこで、犯罪が凶悪化しなくなっちゃって、そして非常に犯罪が軽微な犯罪になってきたというならこれはわかるんです。だけれど、逆に今度は犯罪は凶悪化するとか、少年事件のあれは凶悪化するとか、だからどうも何を根拠に裁判所の量刑がなされているのか。だから、その辺について、量刑についてもう少し、つまり小野さんおっしゃったように、量刑が余り何か根拠がないと、本当に極端な場合は、A裁判官にかかるとえらいものになる、十年だけれど、こっちは五年だとか、その辺が——そこで私、これは立法者として考えるんですが、日本の場合、法定刑の幅が広過ぎるからこういう問題が起こるのではないか。 たとえば、窃盗、詐欺だって十年以下から一カ月ですか、幅が広過ぎる。そうすると、幅を広く一方しておいて、下限ばかり裁判所が現実にお使いになるならば、立法技術的にそれはおかしいんじゃないか。つまり、十年としておくことがおかしいのじゃないか、もっと下げていいのじゃないかという問題が起こってくる、立法技術として。だから、たとえば刑法改正やなんかで刑を重くするかとか軽くするかとか大論議になっていますけれども、そんなことはナンセンスな問題になってきている。むしろ下限が問題なんで、多くの事件で上限はもう裁判所は実際上使わないとなるならば、重くするのは併合罪加重とか累犯加重とか、そんなのでもしていけばいいんだから、そうなると、どうも立法技術的に何か難点があるのではないか。 だから、法定刑の幅を狭くすることがむしろ刑のばらつきを少なくしていく。つまり、裁判官の裁量の範囲を少なくすることによって、極端に言えば同じ事件で差が出なくなるというふうに、つまり量刑の公平を担保できるのではないかというふうにもちょっと考えているんですが、その点どうでしょうか。 量刑の幅、つまり立法論的に何かとなると、われわれ立法府にいる者は法定刑を考える場合に、幅を狭くする。つまり、ちょうど立法府がばかにされているみたいですよ、全然上を使わないんだから。それならばもう下げた方がいいという、その辺になってくるのかなと思うんですが、その辺はどうでございましょうか。
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) もう少し深く検討いたさないとお答えできないことだと思いますが、私の感ずるところを率直に申し上げますと、確かに量刑の幅はございますが、やはりその罪によりまして千差万別と申しますか、いろいろございまして、一月から十年まであるという事案でございましても、十年の方で処断をしなきゃいけないという事案も確かにあるわけで、現実にそういうものもございます。 ただ、平均的なものが下の方にいっているということはもう間違いない事実でございますが、その幅を狭くすれば確かに、あるいは下限が高ければそれより下にはなかなかいかないということにはなるのだと思いますが、すべての事件で刑が最近軽くなっているわけではございませんで、たとえば覚せい剤の事件というようなものは最近ではだんだん重い方向で処罰されているというようなものもございますので、社会の状況というようなものも見ながら、やはり量刑というものは私どもとしては一応適正にやっていると思っておりますが、そういう御批判があることはよく承っておきたいと思います。
○円山雅也君 そのくらいにしましょう。 そこで、刑事裁判の場合、やはりこれも量刑の問題ですが、弁護人が無罪主張した場合には、情状論は当然の、ごとく矛盾するから出しませんわね、有罪を前提にしても。そうすると、無罪主張で無罪の弁論を終始一貫してやってきて、終結して裁判所が有罪とお考えの場合に、少なくとも弁護側からは情状証拠は一つも出ていないわけですから、そこで量刑をする場合に、情状証拠というのはどういうふうに裁判所は扱うのでございましょうかね。つまり、無罪主張であった事件を裁判所が有罪にして刑を盛る場合ですね。
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) これも事案によっていろいろだと思いますが、弁護人の方でどうしても情状の立証をなさらないという場合、裁判所がこれでは情状がよくわからないということであれば、あるいは職権で調べるということもあろうかと思いますが、ほかの関係証拠の中からいろいろその情状に関する資料というものは普通の事件では大体かなりあるものでございますので、それで足りなければ、先ほど申しましたように職権で調べることもあろうかと思いますが、情状、犯情その他は、すでに提出されているいろんな証拠の中にあちこちにいろいろ散在しているというようなことでわかる場合がかなりあるというふうに考えております。
○円山雅也君 量刑をする場合、恐らく裁判所だって、小野さんだって、きっと下の方に教育をしていると思うけれども、やれ犯人の前歴とかかんとか、いろいろ情状とか家庭状況とか、こういう一切の状況を勘案して情状を決めなきゃいけないんだと、こうやっているはずですよね、量刑をする場合の量刑の基準を。そうすると、無罪事件の場合は、弁護人がそんなこと出しっこないですから、じゃ裁判所が職権でやるとすると、職権で情状証拠調べ始めたら、それだけで有罪の宣告を事前にしているようなものですね。 だから、無罪主張している場合、職権で裁判所が情状証拠をあえてあさるということはないだろうし、かつまた弁護人が出す無罪主張の証拠だったらば、情状証拠で拾える、あなた拾うと言うけれども、拾えないんじゃないかな、とても足りないのじゃないか。つまり、きわめて不十分な情状証拠の段階で量刑することになるのじゃないかと思うんです、実際問題としては。 そこで、一時、何ですか、最高裁から二段階に分けるか、それとも情状証拠の調査をさせるとかというのでその制度をつくろうかというのがつぶれちゃった。それは、わが国の刑事訴訟法が有罪段階と情状段階とを審判手続の中で分けてないから、二段階にしてないから、だから矛盾しちゃうので、その調査機関、調査制度というのはやめようじゃないかということでつぶれちゃったというんですけれども、どうでしょう、事務総長、つまりいまの刑事訴訟法でいまのような場合ですね、確かに非常に先ほどから申し上げているように、量刑自体がそうやって非常にあいまいな、ましてや今度は無罪の主張をしていて、証拠も拾えない、きわめて少ない、これを解決するのは、有罪段階とそれから後は量刑段階と、二段階のあれをせざるを得ないのじゃないかなあと思うんですが、量刑についてもいまのままで十分にそれで足りるんだというお考えでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 刑事裁判制度の非常に根本に触れるむずかしいお尋ねでございまして、十分なお答えができるかどうか私も自信がございませんが、御指摘の制度はいわゆるプロベーションオフィサーというものを置いて、裁判所が有罪か無罪かということにまず刑事裁判の重点を定め、有罪ということになったときに改めてプロべーションオフィサーを使っていろいろの情状を職権で探知して、それをもとに量刑を定めると、こういうふうな方向へ持っていくことが好ましいのではないかということが真剣に議論をされた時期がございます。 ただ、この問題は、そういったプロベーションオフィサーというものを一体裁判所に置くのか、それとも、裁判所に置くとしても、いわば裁判所の準独立的な調査局といったようなところに集めておくのか、あるいはこれは行刑等の方も関連いたしますので、法務省的なところに置いて、有罪と見たときに改めて検察官の方がそういった情状を出すというふうにするのかということが、当時問題になったように記憶をいたしております。 また、このことは、裁判制度というものの民衆参加といういわゆる陪審あるいは参審といったものと密接な関係を歴史的には持ってきておりますので、そういったものと切り離して、いまの裁判所が全責任を負って事実を認定し法を適用し量刑を行うといういまのやり方とマッチするものかどうか、その辺のところが非常な議論を呼びまして、現在のところ、まだいずれとも結論が出ないまま今日に至っておるわけでございます。 問題の御指摘の所在というものは、私どもも決して理解していないわけではございませんし、確かに無罪を確信する被告側から、仮定的な抗弁として情状論を提出させるということは、ある意味で期待のできないことを期待するということになるわけでもございます。今後の重要な検討課題であることを失いませんが、きょうただいま明確なお答えをするに至っていないことは非常に残念なことでございます。
○円山雅也君 いま私は、事実認定の問題と量刑の問題をあえて取り上げましたのは、私の少なくとも修習生時代を振り返りますと、あの二年間、いわゆるドイツ観念論の法解釈学の、重箱の隅をつつくような物すごい細かい法律論の勉強をさせられました。だけれども、そういう細かい法律論のあれは学術論文を書くにはいいのでございますけれども、実際の裁判にぶつかった場合には、先ほどから大西さんも言われているとおり、ほとんど裁判官として頭を使うことは事実の認定と、刑事裁判へ行けば量刑の問題ということで、だから研修所に対しての、いまはもちろん変わっているかもしれませんが、あの当時、いわゆる大学で足りない法律学をもう一回ここで仕込むんだというようなお考え方が非常に強いのではないか。つまり、それに偏り過ぎているのではないか。 だから、いわゆる裁判官の幅というか、真実を見抜く、つまりAの証人とBの証人とどっちがうそを言っているのだというような、どっちが本当なんだろうかとか、それから、たとえば情状でもって法廷でさめざめと泣くと、ころっとだまされちゃって、それでもって執行猶予をつけたら、後で出てから被告人がお互いにおしりをつつき合って笑っていたなんというケースも出てくる。だから、むしろそっちの方がかなり今後の教育にウエートを占めて考えていただく。方法は私もわかりません。さようにむずかしい問題でわかりませんが、裁判所の裁判官に対する教育の方法として、ぜひひとつそっちの面も重視をしていただきたいという意味で、あえて事実認定と量刑の問題を例に挙げて御質問申し上げた次第でございます。 そこで、その結果、確かに私の裁判官の三年半ぐらいの経験でございましたけれども、そのころを振り返りまして、つまり判例をうっかり忘れて判決したために上でもって判例違反でひっくり返ったとか、または法律の理論構成を間違えたために上でひっくり返ったとか、これはもう裁判官としては致命的な間違いだというので、それについては恐れおののいて、もう間違いないような判決を書こうとする。ところが事実認定で、たとえば上へ行ってその事実がひっくり返ったとすると、いやあれは二審で新しい証拠が出たんだから、一審の段階での証拠だったら別にどうってことないんだ、二審の新しい証拠でひっくり返っただけなんだというので余り感じない。または、一審で懲役三年とやったのが二審で執行猶予がついても、つまり量刑が明らかに違ったといっても、いや量刑の問題は各自考え方があるんだからというので、余り裁判官は感じない。 それよりも、もっとこんなちっちゃい法律論、ちょこっとした理屈を間違えたことが、そこを指摘されると、もうまことに頭の悪い裁判官の最たるものみたいなレッテルを張られたようでもって恐縮する、どうもそういう発想。ところが、先ほどからここで論議しているように、一番大切なのは事実の認定なんだし量刑なんだが、その大切のところで敗れても大して気にしなくて、その上に乗っかるところの上層の二階、三階の方で敗れるとえらいこと気にするというのが、何か裁判官全体の雰囲気みたいなふうにその当時受け取られました。 そういうふうに育てたのは、結局はあの僕らの時代の司法研修所の重箱の隅をつつくような、そっちばかりがもう裁判官の——そのころ裁判官になるかならないかは、司法研修所の成績で左右されましたからね。しかも、その司法研修所の成績というのは、いわゆる重箱の隅をつつくような学問の優劣で決まったものです。しかも教官の採点でも、量刑の差とか、事実認定の多少のあれはまあそれぞれの考え方だと、法律論ででもあったらこてんぱんにやられちゃう。どうもそういう教育に偏重してはいないか。だから、いまでもそうあっては困るんだなあというふうに思いまして、この際こういう研修費がよけいについたときでございますから、ぜひともその点を御考慮をいただいて、その面にもひとつ御配慮をいただきたい、こうお願いをする次第でございます。その辺について、一言事務総長から伺いたい。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 御承知のように、司法修習生の期間というものは、月数で申しますと二年間、二十四カ月あるわけでございます。その二十四カ月のうち、研修所で教育を受けますのは初めの四カ月とあとの四カ月、八カ月でございまして、残りの十六カ月というものは、これは現地修習をいたすわけでございます。 もし理屈だけの修習であるならば、私どもも二年間何も現地までわざわざ行ってもらって、いろいろと裁判所あるいは検察庁、弁護士会というところで実務修習をしてもらう必要はないので、朝から晩までいわば教室で詰め込みをやればいいわけでございますが、やはり基本的には私ども、いま円山委員まさしく正当に御指摘になりましたように、裁判の実体に触れる、事件の実体に触れる、事件というものは生きたものだということを体得してもらうために現地の全国の裁判所に派遣いたしまして、現実に行われております事件を通じて民事なり刑事なり、検察なり弁護なり、そういったものを体得してほしいということでやっておるわけでございます。 ただ、学校教育のいわゆる新しい制度になったということとの関連もございまして、法律的にももう少し深く理屈を知ってほしいというような希望があるものでございますので、研修所におります期間中は、御指摘のように理論を優先させるという傾向はございます。この点は、それが私どもいいのだと完全に是認しておるわけでもないわけでございますけれども、この二年間の修習というものを広く見ていただければ、決してそういう詰め込み主義といいますか、理屈主義といいますか、そういうことだけでやっておるのじゃないのだという精神はおわかりいただけるだろうと思います。 ただ、そうは申しましても、まあよく御承知の苦い試験等が気になるようでございまして、その苦い試験のためには、事実認定よりも理屈の問題だというようなことがあるようでございますが、御指摘のところは十分私どもも自覚いたしておるところでございます。そのようにして、裁判官になったような方々については、もう理論ももちろん大事だけれども、円満な常識からくるその事実の認定、こういうものは下級裁の裁判官にとって最も大事なものであるということを折に触れて申しておりますとともに、その方向での研修といったことに力を注いでいきたい、このように考えております。
○円山雅也君 よくわかりました。 それじゃ、問題をがらっとかえまして、よくこういうことを聞くんです、私らは。依頼者とか一般の方からよく耳にするんですが、円山先生、裁判というのはわいわいと騒いだり、マスコミが取り上げたり、うんと弁護人をつけて騒ぐと裁判所は慎重に御審理をいただく。だけれども、一般の庶民がささやかな裁判をやると、証拠は、証人は、そんな証人そこまで要らないだろうと簡単にけられちゃったり、それから何か審理もパパッと簡単に済まされちゃう。裁判というのは、やっぱり騒いで裁判官を少しおどかし上げた方が裁判官も真剣になってやるんじゃないかというような声をよく耳にする。事実、私の経験でも、確かにもうまことに情け容赦なく、そんなにはたくさん証人要らないでしょうと言って、五人申請すれば四人けられちゃう。ところが、ワーワー騒いでいる事件はもう慎重に、そのけるかけらないかまでも事前に弁護人と相談なんかしてやっている、この差ですけれどもね。 少なくとも裁判というのは、マスコミが騒いだり弁護人の数が多かったり、となり上げて裁判官をおどかし上げるとかいうことによって、審理が低調になったり粗雑になったりするものではないと、これは信じたいんです。だけれども、実際問題としてはそういう声が耳に届いてきますけれども、この辺は重大事件とか何か理由があって、この裁判は慎重にやらなきゃいけないとか何かその根拠があるのでございましょうかね。どなたでも結構でございます。
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 裁判官は、憲法で裁判官の独立ということで、その地位も身分も保障されておるわけでございまして、一切そういう圧力等によって左右されるということがあってはならないことはもう当然のことでございまして、裁判官各自そういうことがないように自戒してやっているところと思いますが、現実にそういうことがあるという御指摘でございますが、私、民事の方はわかりませんが、刑事に関して申し上げますと、たとえば、弁護人が強く言うとかなんとかということじゃなくて、仮に公訴事実を全面的に争うと、そういうような立場をとりますと検察官の立証に関しましてもことごとく事実の反証を出すということになりますと、起訴状一本主義ということで、裁判所は何も資料がないで裁判を始めるわけでございますので、勢い争点が非常に多岐にわたる。 その各場面に、争点についてそれぞれ証人が出て、それでいろいろ争うということになりますと、これは丁寧にやるとかやらないとかいうことじゃなくて、それをやらなきゃ事実の認定ができないということで長くなるということがあるわけでございます。しかし、事実の認定ができました上は、あとはたくさん証人を並べましょうとも、要らないものは要らないと言ってそれは調べないというようなことは、みんなやっているのじゃないかと思います。 これは一部を争うだけにとどめるとか、あるいは事実を全部認めるというようなことになりますと、検察官の出された証拠も、これも同意されて、それで十分犯罪が認められるというようなことになりますと、別にこれは簡単にやろうということじゃなくて、審理というものはそれで十分であると、こういうことで、刑事で特に支援団体がいてやかましいから、だから不必要なものを調べるというようなことはないのじゃないかと思っておりますが、先ほどそういう御指摘がありましたので、そういうことがないように自戒しなきゃいけないと、こういうふうに思っております。
○円山雅也君 多分そういうお答えだろうと思って当然に予期をしていました。ただ、やっぱり裁判官というのは確かに知性の代表みたいなものですし、インテリですから、往々にしてその知的な訓練を経た頭脳というか精神というものは、逆に、理論闘争には強いけれども、そうじゃなくてがむしゃらにバンバン机をたたいてというようなあれには弱いという欠点がございますよね。インテリのこれは共通の欠点で、何も裁判官に限らないと思うんです。民主主義だってそうですね。本当なら多数が集まって英知を集めれば一番いいんだけれども、ともすれば実際の民主主義の運営というのは多数決じゃなくて、声をでかくして机をぶったたくやつの意見に引きずられるというのも、これはもうやむを得ない、実際。 だから、裁判官だって人間だから、それはマスコミが騒いだりがんがんやってこられれば、やっぱりこれは普通の、一般のおとなしい人の事件だったら却下するのにというのはあり得るかもしれないけれども、そういう意味でも私が申し上げたかったのは、やっぱりある程度裁判官の教育問題に触れるんですが、かなり裁判官もこれからは強いたくましい精神といいますか、毅然とした訴訟指揮ができるようなたくましさというものを研修の一環に入れる必要があるんじゃないかなというふうに痛感をいたしまして、ちょっとこの質問で触れたんです。 時間が参りましたので、これで終わります。
○小平芳平君 初めに、先ほど事務総長の説明されました要求額の説明について一、二お尋ねいたします。 裁判運営の効率化及び近代化に必要な経費として(1)、(2)と挙げておられます。特に(2)の方の能率化を図るため複写機、計算機等裁判事務器具の整備に要する経費でありますが、これはどこの企業とか官庁でもそうでしょうが、近代化、能率化、機械化していこうという体制をとっているわけでありますが、裁判所としては事務の能率化を図るため機械化していこうといいましても、やはり限度があるんじゃないかと思いますですね。ですから、最高裁としては現在考えられる範囲においてこういうものが整備されればこういう能率化が可能だ、機械化していけばこういうふうに合理化していかれるということは十分検討なさっていらっしゃるわけでしょうね。
○最高裁判所長官代理者(原田直郎君) 委員御指摘の、裁判事務の能率化を図るための裁判事務器具等の整備の経費として四億九千万余を計上いたしております。これにつきましては、裁判事務をやっていく上につきましては大きな機械というものは余り必要がないわけでございまして、たとえば写真機でありますとか、あるいは屋外における検証の際に必要な器具であるとか、あるいは電卓であるとか、その他のもろもろの、たとえばリコピーの機械とか、そういうものがいろいろございます。その辺のところの整備の経費を目途としているものでございます。 一方では、現在のオートメーションシステムということになりますとコンピューターというようなことも入ってくるかとは思いますが、コンピューターの関係はいろいろと研究は重ねてはおりますけれども、たとえば判例をそこに打ち込んで手っ取り早く判例を集めたいというようなことになりましても、やはりいろいろな文字の使い方とかいうようなことでの難点があるようでございまして、なかなかうまくこれはルートに乗ってこないということでございますので、大変しみ狂ことではございますけれども、いま申し上げたようなことでの経費を計上したものでございます。
○小平芳平君 そういう裁判事務という特殊性からいたしまして、機械化できるものと、それからどうしても機械化できないものとあるんじゃないかと思いますけれども、大いに研究していただきたいと思います。 それから、もう一つ施設ですが、施設の東京合同庁舎が百億、その他が四十四億計上しておりますとなっておりますが、これは東京の合同庁舎が百億で大部分を占めているのですね。それで、四十四億でその他の整備をするとなっておりますが、老朽化した庁舎の建てかえが必要なものがどのくらいありますか。それからどういう計画でおやりになっていらっしゃるか。
○最高裁判所長官代理者(原田直郎君) 委員御指摘のように、東京高・地・簡裁の合同庁舎は巨額の経費を要するものでございますので、その完工を待ちまして逐次案件を片づけていきたいと、このようにいま大きく考えているわけではございますが、お尋ねのございます整備の関係を簡単に御説明申し上げますと、裁判所の施設数というのは全国で五百八十ぐらいあると承知しておりますが、そのうちで現在未整備になっておりますものが合計で百十一庁ございます。百十一庁の内訳と申しますと、地方裁判所で四庁、乙号支部で七庁、簡易裁判所で百庁と、こういうことで百十一庁というトータルになるわけでございます。 本庁、支部、簡易裁判所と、こういう順を追いまして概略具体的な計画など織りまぜて申し上げてみたいと思いますが、ただいま申し上げましたように、地・家裁、本庁の未整備四庁と申しますのは、横浜、京都、神戸、盛岡でございます。このうち横浜と京都につきましてはほぼ所要の大改修と申しますか、所要の手当ては施してあると私ども考えておるところでございまして、残るところは神戸と盛岡の整備でございますが、この関係も鋭意整備を進めていきたいと、このように考えているわけでございます。 御案内だと思いますが、五十七年度におきましては、ただいま申し上げました東京高・地・簡裁の合同庁舎のほかに、那覇家裁の本庁の庁舎及び函館地・家裁の庁舎につきましていずれも整備を進めている計画でございますが、函館の庁舎につきましては、本年度は敷地の調査費だけを計上さしていただいている次第でございます。 次に、支部の関係でございますが、支部の庁舎は甲号支部と乙号支部と合計いたしますと二百四十二を数えるわけでございます。このうち未整備の庁は、先ほど申し上げましたように七庁でございます。順に庁名を挙げさしていただきますと、常陸太田、沼田、掛川、飯山、木曽、杵築、三角と、これだけを数えるわけでございますが、この庁舎はいずれも土地問題の関係がございまして、つまり適地がなかなか見当たらないということでございまして、適地問題が解決いたしまして諸条件が整えばやはりこれまた逐次整備をしていきたい、このように思っているところでございます。 なお、五十七年度の計画といたしましては、神戸の姫路支部、それから秋田の本荘支部、この整備を考えておるところでございます。 簡易裁判所につきましては、先ほど申し上げましたような数字が出ておるところでございますが、施設面あるいは執務環境面の整備というものはこれは放置することはできませんので、いわゆる小修繕的なものは必要の都度随時手当てを加えていっておりますが、抜本的な庁舎の新築ということにつきましては、できるところから順次様子を見ながらやはり計画を進めていきたい、このように考えているところでございます。
○小平芳平君 施設の中にも、簡易裁判所の場合は戦前の施設が多いわけですね。全体として多いというわけではないでしょうけれども、数の上からいけば多いわけですね。ですから、余り手おくれにならないように手当てをしていかなくちゃならないと思います。
○最高裁判所長官代理者(原田直郎君) 簡易裁判所につきましては、戦後に新しく創設されたものでございますので、昭和二十年以降の建物ということになるわけでございます。いずれにいたしましても、もうすでに昭和五十七年でございますので経過年数もたっておるので、老朽化の建物は諸所にはあるということではございますが、先ほど申し上げましたような考え方で、目配りでもって順次考えてまいりたいと、このように考えておるところでございます。
○小平芳平君 次に、国選弁護人の報酬について伺います。 国選弁護人の報酬は、このいただいた資料に、国選弁護人の報酬を決めるのは受訴裁判所の裁量にゆだねられているものであり、報酬額を決定する際の便宜のために一応の参考として決めてあるんだということが書いてあります。それで、そういうことはわかりますが、最高裁判所で報酬の標準額を算定なさった場合にどういう作業をなさったか、要するに、最高裁としては大蔵省にどれだけの基準、標準額としようとして要求なさったのでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) この刑事訴訟費用法に関する法律では「裁判所が相当と認めるところによる。」ということになっておりまして、この相当の額というのが幾らであるかということは非常にむずかしい問題でございます。これは従前からのずっと経緯がございまして、当初、予算措置が講ぜられてそれ以後しばしば改正を重ねてきておるわけでございます。 最近の五年間で見ますと、五十二年が一四・九%、五十三年が一三・一%、五十四年が八・五%、五十五年が七・八%と、こういうふうに上がってまいったわけでございます。これに対応する人事院の勧告、公務員のベースアップでございますが、これを見ますと、五十二年が六・九、それの一四・九でございますから倍以上のパーセントで上がっている、五十三年が人事院の勧告が三・八、五十四年が三・七、五十五年が四・六ということで、かなりの高率で上げてまいったわけでございます。 これは、刑事裁判を適正に運営するためには弁護人の力に負うところが大きいわけでございますし、弁護人に活動していただかなければならないということで、こういうふうにしてまいったわけでございますが、昨今の財政事情というようなものを考えました場合に、国選弁護人の御努力はよくわかりますけれども、余り膨大なこともできないのじゃないか。昨年の人事院の勧告が五・二というようなことでもございましたので、それで大体六%強ぐらいのところと、そういうことで六・三%、これは三開廷の基準でございますが、そういうところが現在のところでは妥当ではないか、こういうようなことで予算の要求をしたと、こういうことでございます。
○小平芳平君 いま御説明のように、私がお話を伺った弁護士の方々も、そういうふうに大変努力をしていただいているということは言っておりましたですね。そう言われておりましたんですが、何%というふうにいまお挙げになったですね、御努力は感謝しておりますが、もとが低いわけですね。ですから、たとえば国選弁護人の評価が高まって国選でよいという傾向が強くなった。それで、これは国の人権に対する姿勢の問題であって、人権が確立しているという安定した社会のために必要ではないかということ、それから国選の報酬が、国選でついている弁護士さんが一生懸命やると、とてもこの額では足りなくなる。四万六千九百円に新しくなるわけですけれども、とてもこの額では足らなくなって、足らなくなってもなおかつ一生懸命努力してやりますと、今度国選の評価は高まるが、私選の活躍する分野がそれだけ狭くなるというジレンマがあるということです。ですから、国選で精いっぱいやればやるほど私選の道を自分で狭くしていることになるというジレンマがあります。 ですから、こういう点について、大蔵省としてもそういうふうに御努力なさったことは十分認めているのですけれども、そういう国の人権に対する根本姿勢の問題だという点から考えてみて、どうなんでしょうか。
○説明員(藤原和人君) 国選弁護人の報酬につきましては、先ほど裁判所の側からお答えがございましたとおり、国選弁護人の機能を十分に発揮していただかなくてはいけない。訴訟の円滑適正な進行をする必要があるということでございまして、その改善が必要であるという裁判所の御主張を私どもも了解をいたしまして、そして御承知のような苦しい財政事情ではございますけれども、先ほどお話のございましたとおり、国家公務員の給与の改定率を一%強上回る六・三%の引き上げを行うことが適当であるということで裁判所と私どもの間で合意に達しまして、これが現在の時点では最善のあれではないかということで予算に計上し現在御審議をいただいていると、このようなことでございます。
○小平芳平君 記録の謄写ですね、記録の謄写等の実費は請求すればいまでも支給されることになっているのですが、記録の謄写、旅費その他実費に関する部分は、もう少し合理的に請求する道があってもいいのではないかという点についてはいかがでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) ただいま謄写料は払われることになっていると仰せでございましたけれども、謄写料としてお支払いする方法は別にないわけでございまして、これは謄写料を謄写すれば全部払うという趣旨ではございませんで、あくまでも弁護活動をする上で必要性が非常に高い、どうしてもこれはなければ困るというような事案につきまして、必要な謄写料というものについては報酬の支給の際にそれはよく参酌いたしましょうと、こういうことでやっているわけでございます。 全部謄写したものは支払うべきじゃないか、こういうお尋ねかと思いますが、何しろこれは経済の伴う財政の問題もございますので、それからいまの費用法では謄写料というものを別に払うという規定もございませんので、これはまた立法の問題かと思います。そういう点で、今後の検討課題にさしていただきたいと思っております。
○小平芳平君 いまのお話のようなことでありますから、記録の謄写は必要な場合それは請求できるように決めてほしいということなんです。
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) この法の改正は所管は私どもではございませんで法務省でございますので、まだ私どもとしてはそれなりにもう少し検討さしていただくということを申し上げておきたいと思います。
○小平芳平君 大蔵省はいかがでしょうか。国選弁護人の報酬についてできるだけのことはやっております、人事院勧告を上回って改定をしてきましたと。しかし、必要な記録の謄写とか、そういうぜひ必要な経費はもっと合理的に請求できるような道を立ててほしいということについてはいかがでしょうか。
○説明員(藤原和人君) 先ほど申し上げましたとおり、国選弁護人の報酬につきましては私どもとしても従来から予算上特別な配慮をしてきたところでございまして、今後ともそのあり方につきましては最高裁判所と十分に御相談をしてまいりたいと考えております。
○小平芳平君 この報酬の支給の実情はどんなふうになっておりますか。最高額はどのくらい、最低額はどのくらいというようなことはおわかりになりませんか。
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 各事件ごとのでございますか。——それは私どもの方では承知しておりません。相当長い一年も二年もかかるというような事件もございまして、それは相当の報酬を払っているのもありますし、いわゆる特別案件というようなものでかなり多額の金額を払ったものもあるかと思います。上がどれが最高かということは、いまのところ私どもではちょっとわかりかねます。また、最低とおっしゃいましたが、大体基準をそう下回らないところで処理されているものと思いまして、最低がどれぐらいということも的確には把握しておりません。
○小平芳平君 正確には把握できないでしょうけれども、おおよそどのくらいということはわからないわけですか。
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 最高額の方ですと、これはいわゆる特別案件というようなものは百万を超えるというようなものも少なくないかと思いますし、最低の方でございますと、大体この基準額を多少下回る程度というふうに考えております。
○小平芳平君 次に、被告人に訴訟の費用負担が命じられた場合の回収ですが、回収の実情はどのようになっておりますか。
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) それは法務省の方でおやりになっておりますので、私の方ではちょっとわかりかねます。
○小平芳平君 国選弁護人がその職務に関して身体等に危害を加えられた場合の補償制度、これも法務省ですか。
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) これも、法務省と日弁連とでいろいろ御検討なさっているということを聞いております。
○小平芳平君 考え方としまして、国選弁護人という制度がより充実し発展していく上において、報酬を裁判所が一方的に決めるのはおかしいではないかという意見があり得るわけです。弁護士会としては法制化して、少なくとも弁護人として弁護料をいまのように一方的な支給じゃなくて、意見を言って、少なくとも意見を出せるくらいのそういう制度でなくちゃおかしいじゃないかということについてはいかがでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) これも立法論でございますが、ただ、現在の普通の支給基準で行われます国選弁護事件と申しますのは、ごく普通な事件を想定しております。 非常に弁護人が御努力なさったような事件あるいはいわゆる特別案件というようなものにつきましては、現在でも弁護人の方からいろいろこういうふうな負担がかかったのだというような御意見が出まして、それを承って、なるほどそうであると、あるいはそういう疎明資料もそれじゃお出しいただきたいというようなことで、そういう御意見も十分しんしゃくして決定するというような運用をしているというふうに考えておりまして、普通何もしてないのはごくありふれた普通の単純な事件、何しろ自白事件が非常に多うございまして、九〇%くらいのものは自白事件でございますので、そういうものは特別のことはないだろうというふうにやっておりますけれども、特にあるものについては弁護人からそういう申し出がありまして、しんしゃくしているという実情でございます。
○小平芳平君 それじゃ、その制度化についてはいかがですか。
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) これも立法論でございますので、ちょっと私どもの意見は差し控えさせていただきたいと思います。
○小平芳平君 じゃ、先ほど御質問に出ておりました検察審査会についてお尋ねします。 全国検察審査協会連合会、これはどういう事業を行っておりますか。
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) この全国検察審査協会連合会と申しますのは、これは各地に現在百六十七の検察審査協会というのがございまして、これはそこの元検察審査会の審査員あるいは補充員であった方々がお集まりになって、検察審査会制度の普及あるいは親睦というようなことでお集まりになっている団体でございますが、そういう団体が集まりましてそれで連合会というものをつくっているわけでございます。 この連合会の目的と申しますのは「各協会との連絡を密にし、検察審査会制度の発展に寄与することを目的とする。」、こういうふうになっておりまして、事業といたしましては「検察審査会制度の広報活動」「検察審査会制度の調査、研究」「機関誌等の発行」「その他、本会の目的達成のため必要な事業」、こういうふうになっておるようでございます。
○小平芳平君 検察審査会の事務局ですが、この事務局は裁判所職員との兼任または併任ということが多いようですが、この実態についてはどのように把握しておられますか。
○最高裁判所長官代理者(大西勝也君) 検察審査会の事務局の職員は千人ばかりおるわけでございますが、それぞれの所属の地方裁判所で発令をいたしておりますために、いま御質問の併任発令が実際とれだけなされておるかという具体的な数字を私どもとしては把握をしていないところでございます。 ただ、検察審査会に係属しております事件数やそれぞれの事務局の事務量といいますのは、それぞれのところで非常にまちまちでございますし、同一所在地の検察審査会の事務局と裁判所の間で事務の繁閑が違うというところもございまして、ある程度の併任発令が行われているということは私どもとしても承知しておりますけれども、最初に申し上げましたように、具体的数字そのものはちょっと把握していないわけでございます。
○小平芳平君 このいただいた資料によりますと、相互に応援する体制をとるために併任発令を行っているというふうになっておりますが、またそれが有益であると考えているというふうになっておりますが、その場合の弊害もあり得るのじゃないでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(大西勝也君) ただいま御指摘の弊害という御趣旨、必ずしも十分理解できないわけでございますけれども、やはり忙しいときにお互いに助け合うということは役所側にとっても助かることでございますし、職員自身もいろいろな仕事の経験をするという意味ではよろしいのではないかというふうに思います。 恐らく御指摘は、組織が裁判所と検察審査会ということで違うわけだからそれぞれ違う仕事をする、つまりいわば相手の役所のことをやる、違う役所のことをやるという意味での弊害ということをおっしゃる趣旨かもしれませんけれども、そういう検察審査会の仕事そのものは検察審査員がやっておられるわけでございますし、そういう意味での弊害があるような兼任発令というのはやっていないというふうに私どもとしては考えております。
○小平芳平君 それから、この審査会の職員の待遇についてはどのように把握しておられますか。
○最高裁判所長官代理者(大西勝也君) 検察審査会の事務局の職員は、先ほど申し上げましたように千人ばかりおるわけでございますが、事務局長でございますとか、課長でございますとか、係長、いろいろのランクがございますけれども、一例をとって申し上げますと、事務局長でございますと二等級が二十人ぐらいおりますし、課長のランクでとりましても四等級が約五十人くらいということでございまして、この検審の事務局の組織の実態等を勘案いたしますと、裁判所職員と同一程度の待遇は確保されているというふうに考えておるところでございます。
○小平芳平君 終わります。
○山中郁子君 裁判所の速記官の問題について、初めにお尋ねをいたします。 裁判所速記官の設置とその職務権限につきましては裁判所法の第六十条の二に規定されておりますし、また裁判所法の逐条解説などを拝見いたしますと、その中にも職責の重要さが明記されています。要するに、私がごく初歩的に読ませていただいた範囲でも、速記制度は裁判の民主化と人権擁護にとってきわめて重要な役割りを果たしてきているという認識だと思いますが、この点はいかがお考えでございましょうか。
○最高裁判所長官代理者(大西勝也君) これは速記官に限りませんで、裁判所職員全体がただいま山中委員御指摘のとおりの職務を持っておるということであろうと思います。
○山中郁子君 特にこれが昭和三十二年に裁判所法の一部改正によって措置されているというところにも、そうした意義がうかがわれるわけですけれども、裁判所速記官は国会の速記の方の場合と異なって、ソクタイプというのですか、いわゆる速記機械でタイプをされる。そして、これは逐条解説を拝見しましても、原則として単独でやるということになっているようですし、実情も単独で行う、つまり一人で行っているということのように理解いたします。具体的な職務内容はどういう状況なのか、お知らせいただけますでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(大西勝也君) 具体的な職務内容と申しますと、法廷に立ち会いまして、証人等の訴訟関係人の供述をソクタイプで打ちまして、それを反訳いたしまして速記調書をつくるというのが、具体的な職務内容でございます。
○山中郁子君 私が伺っている範囲では、そうした職務内容が実際にどういう状況で行われているかということで、現実の職場の実情では一日一立ち会いということ、連続六十分、一日はこれを二回までということで、実際の職務の内容に照らして大体の仕事のウエートがそのように置かれているし、結局実際に六十分仕事をなされば、それの反訳、それから速記録の作成、そうしたものには大体最低でも十倍程度の時間を必要とする、そういう認識で行われているというふうに理解しておりますけれども、それはそのように考えてよろしゅうございますか。
○最高裁判所長官代理者(大西勝也君) 速記官がどれだけの時間どういうふうに立ち会ってという基準を決めているわけのものではございませんが、執務の実態ということで申し上げますと、ただいま山中委員御指摘のように、大体六十分ということで休憩しているという場合が多いようでございまして、速記の反訳の倍率でございますが、これも人によりいろいろで、供述の内容によりましてもいろいろでございますけれども、ほぼいま十倍程度というのが多いということは、そういうふうに申し上げられるかと思います。
○山中郁子君 大体いまおっしゃったように、中身にもよりましょうけれども、十倍から十五倍ということで理解をしているんですけれども、いま速記官が不足していて、実際に速記官が入れなくて、あるいは入らなくて、録音機でテープをとってというふうな状況もあるというように伺っていますけれども、この職務は、他の職務が大変じゃないという意味では決してありませんけれども、速記という特殊な中身に照らして、大変重労働というか、神経も使うし大変な仕事だと思います。 これは全司法の労働組合の方々からお伺いをしているんですけれども、速記官に、仕事の性質上でありますけれども、頸肩腕障害が出ているということで、やはり職員の健康上の問題として重要な点だと思っておりますが、この点についてはどのように考えていらっしゃるか。 あわせて、これまで公務上の認定の申請をされた方が速記官の中で何人ぐらいいらして、その中で何人の方が公務上の認定をされていらっしゃるか、お聞かせをいただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(大西勝也君) 速記官の制度ができましてから現在に至るまでの速記官の公務上災害の申請の件数でございますが、現在まで六十三件ございまして、そのうち公務上の認定を受けておりますのが三十七件、約六〇%でございます。
○山中郁子君 六〇%の認定がされているということは、やはりかなり公務上の障害ということがはっきりしているということですし、また、データはいま詳しくは私手元に持っていないのですけれども、最近は特にほとんどが公務上災害の認定を受けるという状況になっていると思います。こうした数もさることながら、公務上の認定を受ける人の率も高い。この背景には、やはりもっとたくさんの罹病者がいるということを考えなければいけないと思うんですね。これは限られた職場の幾つかでのデータを見ましても、相当多くの方たちが肩こりを初めとするそうした障害、苦痛を訴えておられるというデータもいろいろありますけれども、一つは、そういう潜在的な罹病者が相当たくさんいる、それからまた、病気だというレッテルを張られるということが嫌だというために、あえてそうした認定の申請をお出しにならないという方たちも一般的にはいらっしゃるということが推測できると思います。 いわば氷山の一角というんですか、頸肩腕障害の場合には、この速記者の方たちだけに限らず、他のタイピストだとか電話交換手だとか、それは裁判所の仕事だけではなくて、一般的にやはり潜在罹病者が多いということが一つの特徴だと言えると思いますけれども、そういう点でいまお聞かせいただいた数字もそうですけれども、その背後にある多くの人たちの健康破壊の実態というのはやはり大変重要な点だと思っておりますけれども、その点についてのお考えというか認識というか、お聞かせいただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(大西勝也君) この速記官とかタイピストとか、いまお話に出ましたようなこういう職種につきましては、手指の障害が起きやすい職種であるということは御指摘のとおりでございまして、そういう意味でいわゆる潜在的罹病者があるのではないか、そういうおそれがある職種であると、そのことは十分私どもも認識しておるところでございます。 職員全体の健康、大事なことではございますけれども、こういう方々はいま申しましたような意味で手指等の障害にかかりやすいということもございますので、たとえば定期健康診断等でも一般の定期健康診断のほかに、こういう特殊の職種に当たられる方につきましてはかなりしばしば定期的にそういう方面での健康診断も行いまして、病気は早目に発見できるようなそういう手当てもしておるところでございます。
○山中郁子君 仕事の性格からそうした病気が出るということだけでなくて、それが一つの大きな問題ではもちろんありますけれども、やはり労働強化つまり職員数が足りないということが、その重要なもう一つの問題だというふうに私は考えています。調べていただいたんですけれども、速記官の定員は九百三十五名、現在定員ですね。これに対して実人員が、これは昨年の十一月三十日現在の数字で七百四十九名、欠員が百八十六名あるというように把握をいたしました。そしてまた、この定員九百三十五名というのは、昭和三十九年に決められたままでその後定員が変更していないというようにも把握しておりますけれども、その点は間違いございませんでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(大西勝也君) 欠員数、ちょっといま手元に正確なところを持っておりませんが、およそ山中委員がいまおっしゃいましたような数字であろうというふうに思います。 この九百三十五人は、おっしゃいますように昭和三十九年までに書記官とかそういう職種から組みかえてつくった定員でございまして、その後増員がなされていないということもそのとおりでございます。 ただいま一番力を入れておりますところは、そういうできました定員、最初はもう空っぽだった定員でございますが、そういう定員を逐次埋めてきておるところでございますけれども、いまなお欠員があるということで、たびたび当委員会でも御指摘をいただいておるところでございまして、まず何よりもその定員を埋める、充員することが大事であるということで、これはなかなかむずかしい問題がいろいろあるわけでございますけれども、いろいろ工夫をいたしまして毎年毎年少しずつは充員ができてきておるわけでございます。 そこで、その欠員との関係で労働強化ということを申されましたけれども、これは特に反論するわけのものではございませんけれども、およそ執務の実態そのものは、欠員が多いからそれだけその人の分をよけいやっていただいているということではなくて、実態自体は大体週に二時間ぐらい立ち会って、先ほどおっしゃいました十倍というふうな倍率で、合計二十数時間速記の仕事が行われておるというふうな実態でございまして、欠員分を全部現在員にしわ寄せしているという関係では必ずしもないということを、ひとつ御理解いただきたいと思います。
○山中郁子君 しわ寄せがいくのは当然な話であって、それは余り理屈にならないので、しかも先ほどお認めになった大体そのぐらいだとおっしゃる九百三十五名の定員のうち、欠員が百八十六名ですよ。これはかなりウエートの高い、比率の高い欠員で、それが実際に働いている人にしわ寄せにならないなんて、そんな理屈はないですから、余りそういうことはおっしゃらない方がよろしいのじゃないですか。 それで、問題は、やはり当然のことながら国民の人権意識も広がるし、それから公害事件だとか薬害事件だとかさまざまな複雑な事件も時代の推移の中でふえてきている。こういう状況のもとで、三十九年といったら十七年前ですね、十七年前に決められた定員がそのまま据え置かれている。そして、なおかつまたそれにかなり大幅な欠員があるという状況は、私は何といったって、やはり最高裁の怠慢だと言わざるを得ないと思うんですね、要員問題について。それはもう少しがんばってやってもらわなきゃ困るので、それがしわ寄せにならないみたいなそんな受けとめ方をしていたらどだい話が違う。事務総長、そこら辺、もう少しちゃんと事実をきちんと踏まえた上での対策を考えていただかなきゃならないと思いますけれども、どうですか。——いや、事務総長に伺っているんです。あなたはそんなこと言ったってだめなのよ。それでしわ寄せになってないみたいなことをおっしゃるようじゃ、話にならないんです。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 当委員会で、先般、寺田委員からもその点については御指摘があったところでございます。 私も、かつて人事局長をいたしておりました。速記官の充員ということにつきましては、当時、春日委員が当委員会の委員でおありになったときがございますが、御質問をいただいて、早急に充員をするようにということで、全力を挙げていたしますというお答えをいたしたわけでございます。 ただ、この養成問題というのが非常に難点でございまして、しばしば御説明申し上げておるところでございますが、適任者を得て養成をしていく、その過程においてどうしても機械速記になじまない人たちが出てくる。そういう人をそのままやめてもらって、また新しい適格者を得られればいいのでございますが、そうはいきませんので、そういう方はそういう方で今度は事務の方に回して、そうして事務の方で使っていかなきゃいけない、こういうロスがございます。それから、せっかく養成をいたしましても、ある程度の年齢がたっておりますので自然減耗というものもございます。これをあわせましても、何とか私どもとしてはあとう限りの増員に努力をいたしてきたつもりでございます。 その実情というものは、いま私つまびらかにはいたしておりませんが、その努力の結果はお認めいただけるのではないかというふうに思っておりますが、現実に欠員がまだ相当数あるということも事実でございまして、これは今後も全力を挙げて埋めていくようにいたしたいと、こういうふうに思います。
○山中郁子君 それは全然努力してないと決めつけるつもりはありませんけれども、おっしゃるように現実にこういう状態があるということなんですね。それでいまおっしゃいましたように、養成人員の中で実際に最後に速記者として仕事につける人の数が少なくなってくるという御主張でしょう。いろいろデータなんか調べましたら、大体四十名の養成人員で卒業する人たちが約三十名だと、大体の見当ですよ。 そうすると、十名はほかの仕事に入るということなんですけれども、そういう実態を踏まえて、これも全司法の労働組合の方たちがいろいろ試算されているんですけれども、この調子でいくと九百二十五名に達するにはまだ九年かかると言うんですね。計算ですからそれはそうなるわけです。それだけじゃなくて、いま自然減耗とおっしゃった。私は自然減耗という言葉は嫌いなんですけれども、要するに退職されていって自然に減っていくわけですね。これは公務員の定年制の導入との関係で、大体いまの現職の速記官の方たちの年齢分布から照らし合わせますと、十数年後には大量にやはり退職するということになるわけです。ですから、そのこともあわせて考えていきますと、未来永劫いまの調子でいったら定員なんか満たないんですね。これは計算すればすぐおわかりになると思うのですけれどもね。 ですから、全司法労働組合も提案されていらっしゃるんですけれども、当面養成人員を六十名にするべきであるという提起をされていらっしゃいまして、それはもちろん御承知だと思いますが、私もそれはもっともな提起でもありますし、それから、そこでもし速記者にならない方の分をやはりどこかで受け入れるということについても、ほかの職種だって、いま裁判所関係は人が余ってよけい抱え込んじゃうという状態にはないわけでして、いろいろ忙しい。どこの職種を見ても忙しいわけですから、だからそういうことは理由にならないと思いますので、ぜひともそうした点での当面の養成人員をふやして、そしてこの状態を解決していくために最高裁としてもう一つ迫力のある、そしてまた職場の働く人たちの立場に立った対策をお進めになってしかるべきだと思っておりますけれども、いかがでしょうか。努力を全然してないとは決して申し上げるつもりばありませんけれどもね。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 毎年、相当募集については全国に努力をいたしまして応募を得ておるわけでございます。その採用に当たりましては、現在四十名でございますが、その四十名を超したところあたりの、たとえば十名あるいは二十名あたりのところのどの程度の、この辺のところなら質を落とさないでとれるかどうかというようなことは、その都度検討会をいたしまして、ふやせるのかどうかといったようなことも担当局において毎年検討いたしておるわけでございますが、山中委員の御指摘もございますので、そういうことができるならもうそれはそれにこしたことはございません。 現在のところ、御承知のようにこの養成はマン・ツー・マンの養成、ほとんどマン・ツー・マンでございます。それもかなりの時間をかけて養成をいたしておりますので、その養成する側の人間の確保ということも実は大変なことでございます。その辺のところもございますので、いま直ちにお約束はもちろんできませんけれども、できるだけ充員していきたいという気持ちというものは、これはひとつ御理解をいただきたいと思います。
○山中郁子君 ぜひ積極的に、先ほど御紹介いたしました労働組合の提起なども踏まえた上でお取り組みがいただけるものと思います。 もう一つ、速記官の人員不足の原因には、私はやはり待遇の問題があると思うのです。その待遇の問題の重要な一つは、やっぱり行政職(一)表の四等級の高位号俸にみんな多いんですね。これは速記官だけの問題じゃなくて公務員全体に共通する問題でもありますけれども、特に裁判所の場合には速記官のところにそれが出てきまして、データを見ますと、四等級の二十一が八十九名、それから二十二号が二十八名になっているんですね。ここの方たちは、大体四十五歳から五十歳という働き盛りの方でベテランのところです。そこの方たちがここで結局頭打ちになってしまうわけです。これはやはり労働意欲にも関係しますし、それから職務の評価ということについても大いに関係して、速記官全体の、平たく言えば士気にも影響する問題であるというように思います。 それで、やっぱり三等級への昇格の問題を枠を拡大して大幅に実現していくという以外に道はないわけですね、どう工夫してみたところで。そこのところはやはりかなり力を入れてやっていただかなければ、もうこれはいま現在二十二で頭打ち、二十二の頭打ちが二十八名いらっしゃるわけでしょう。これは一年、二年たったらもうここのところへ全部たまっていくわけですから、そこのところはぜひ三等級への昇格を本気でもって枠を破っていくということで処置をしていただく必要があると思っておりますけれども、いかがでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(大西勝也君) 確かに速記官につきまして、四等級の高位号俸者が非常に多いということはもう山中委員御指摘のとおりでございまして、私どもといたしましても本当に頭を痛めておるところでございまして、何とかその三等級の定数を取りたいということで、これは昭和五十二年に初めて主任速記官ということで、ごくわずかでございますけれども取れまして、それから毎年毎年そこのところを要求しておるわけでございます。 実は、昭和五十七年度の定数の要求におきましてもその主任速記官の、つまり三等級でございますが、この三等級のポストを一つでもふやしたいということをいわば最重点の一つといたしまして、大蔵省とも強力に折衝をしたわけでございます。力不足で必ずしも十分に取れたというふうには申し上げることはできませんけれども、二十幾つのポストが取れたわけでございます。 先ほど来御指摘のように、非常に四等級の高位号俸者が多いので何とかしたいという気持ちは十分持っておりますし、その努力もいままでもやってきておりましたが、今後もここのところは五十七年度と同様に、いわば最重点の一つとして今後も強力に折衝を続けてまいりまして三等級を取ってまいりたい、こういうふうに考えております。
○山中郁子君 十年、十五年頭打ちのまま推移するとなったら、それは本当にもう労働意欲という面でも、それから速記官の仕事という点でも大きな問題を生み出すことですので、ぜひその点はダイナミックにその枠を打ち破っていくということでもって御努力をいただかなければならないし、また最高裁の努力いかんに係るかなりの部分があるというふうに考えております。結局、このことが、速記官の待遇改善ということだけでなくて速記官の応募者もふえる、その職務の権威も上がるということと同時に、基本的なところで裁判の民主化、人権擁護、そういう点での一つの支えになる問題であるという認識が必要であると思っておりますので、その点はぜひとも御努力をしていただきたいと思います。 もう一つ、きょうは簡裁の問題についてちょっとお尋ねをしたいと思います。余りもう時間がありませんので、これはまた次のしかるべき機会にも触れたいと思いますけれども、簡裁の受理する事件数が増加の一途をたどっているということですけれども、最近、簡裁の民事の事物管轄をめぐっていわゆる三者協議が行われて、三月十八日には合意されたというように聞いておりますけれども、その内容を聞かせていただきたい。
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 従前、簡易裁判所の民事事物管轄は訴訟物の価額三十万円以下のものについて裁判権を持っておりましたが、それが四十五年に三十万円に改定されて今日まで十二年を経過いたしました。経済変動も非常に大きゅうございまして、これまで簡易裁判所で取り扱っておりました事件がどんどん地方裁判所の方に回るということに相なってまいりまして、このことは国民が身近な裁判所を利用しにくくなっているという面と、また地方裁判所の負担がふえているという点がございますので、三者協議におきまして半年協議を重ねてまいりまして三十万円を九十万円まで引き上げる。ただ、類型的に見て困難な不動産に関する訴訟はやはり地裁で扱うことができるようにすることも重要であろうというようなところから、簡裁と地裁との競合管轄、どちらへでも訴えを提起できることにいたしました。 と同時に、原告が、訴えの提起を選ぶのは原告でございますから、原告が簡裁を選んだ場合に、被告が地裁での審理を希望いたしますならば、地裁に必ず移すという措置も講じました。また、あらゆる訴訟について、簡易裁判所で審理中の事件、原告、被告双方の希望がありますならば、必ずまたこれは地裁に移そうという手当てもいたしました。 以上の点が、三者で合意の成立を見た概要でございます。
○山中郁子君 特に三十万から九十万に引き上げるというそのことによって簡裁の事件負担が過重されますよね、この点について言えば。この問題の手当てというのは、具体的にお考えになっておられますか。
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 不動産に関します訴訟を地裁と簡裁の競合にいたします結果、九十万円以下の不動産訴訟のどのくらいの事件が地裁に回るかという点で非常に不確定な要素がございますが、私どもの試算といたしまして、今回の措置によりまして約二万件の訴訟事件が簡裁に動くであろうというふうに一応考えております。 そこで、それだけの事件が簡裁に参るわけではございますが、簡裁は全国に五百庁以上ございまして、非常に事件数の少ない簡裁の方が多うございます。大都会の周辺の簡易裁判所になりますと、相当数の事件が流れることに相なると思われます。したがいまして、幾つかの、何十かの簡裁につきましては人的な手当ても必要となってこようかと思います。これらの点は裁判所全体における事件の地裁から簡裁への移動でございますので、それだけ地裁の方の手もすくということにも相なります。したがって、事件の動向を眺めまして、必要なところには人的な手当てをいたす所存でございます。
○山中郁子君 二万件という推計の根拠を、きょうはもう時間ありませんから、後ほど資料としていただきたいと思いますが、よろしゅうございますね。 いまおっしゃいましたように、要するにやっぱりふえるわけでしょう、簡裁の仕事は。そこのところは手当てをするとおっしゃるけれども、いま現在でもふえていくものですから、だから本来、簡裁の趣旨というのはいろいろな趣旨があるけれども、一言で素人風に言いますと、地域住民が気軽に利用できるそういうための機関なんだから、それが簡裁の事物管轄の拡張によりまして、そういう本来の趣旨が損なわれていくというところに重大な問題があるというふうに私たちは考えております。 やっぱり簡裁の充実強化、簡裁の仕事がふえているわけですから、それに対する充実強化というのがまず大事であって、それがなしに事物管轄の拡張ということで仕事がふえるという方法をとっていくということは、やはり簡裁の本来の趣旨を大きく損なうものであるというように考えますし、その点については、十分な手当てとおっしゃるけれども、その手当て自体だって、さっきずっと速記官の問題で申し上げていたように、なかなか要員が、定員を満たすことができないというような状況のもとでは、まず簡裁自身の充実強化の方が先決であるというように考えておりますので、その点を強く指摘をいたしまして、いまのことはダブらなくていいのですけれども、その点についてのお考えを伺って質問を終わりたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(梅田晴亮君) 御指摘のとおり、簡易裁判所は、最近、調停事件なり訴訟事件も確かにふえてまいっております。ただ、事件の中身を見ますと、サラ金関係、クレジット関係の事件が圧倒的に多うございまして、それはもう容易に処理できる種類の事件でございます。他方、地方裁判所におきましても、簡易裁判所以上の割合で民事訴訟事件がふえておりまして、地方裁判所に参ります事件はきわめて複雑困難な事件が多うございます。 総じて、民事訴訟事件につきましてはふえてまいっておりますので、これらはあわせまして、裁判所全体の充実という立場から今後も努力を重ねてまいりたいというふうに思います。
○山中郁子君 先ほどもちょっと申し上げましたけれども、国会でも簡易裁判所設立の趣旨を尊重しということで附帯決議をつけてきている経過もございます。それからまた、実際に民衆裁判所だとか駆け込み裁判所だとか、繰り返し言いませんけれども、そういう簡易裁判所の趣旨というものについて、それが変わったということではもちろんないわけで、一層その点が重視されなければならないときでございますので、その点についての最高裁の認識というものを改めて確立をしていただかなければならないだろうということを申し上げまして、質問を終わります。
○中山千夏君 きのう法務委員会で寺田熊雄さんから、逮捕令状を簡裁が出す場合のお話がありまして、私は素人でよくわからないので、なるほどそういうこともあるのかと思いながら聞いていたんですけれども、家宅捜索の令状についても同様なんでしょうか。家宅捜索というのは、令状については主にどこでどのような方が吟味をなすって出すのかということを、ちょっとお伺いしたいんです。
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) いま家宅捜索と仰せられましたけれども、捜索許可状という令状ということだと思いますが、これは刑事訴訟規則の二百九十九条というのがございまして、「検察官、検察事務官又は司法警察職員の裁判官に対する取調、処分又は令状の請求は、当該事件の管轄にかかわらず、これらの者の所属の官公署の所在地を管轄する地方裁判所又は簡易裁判所の裁判官にこれをしなければならない。」、こういう規定がございますので、令状につきましてはその所在地の地方裁判所と簡易裁判所、両方の裁判官に請求できる、こういうことになっております。
○中山千夏君 その令状を警察から要求がありますね。その場合に、出すか出さないかという判断は、どういう方が、どのくらいの期間をかけて、どの程度お調べになって、大変短いこともあるそうですけれども、その辺、ちょっと素人でわからないので、少し御説明いただきたい。
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) この判断をするのは裁判官でございます。これは地方裁判所の裁判官、簡易裁判所の裁判官、請求されたところの裁判官がするということでございます。 捜索令状ということでございましたが、一般には捜索令状だけということはまずないわけでございまして、捜索して物を押さえるということで、その二つの令状を一通の令状で出すということでございまして、普通は捜索、差し押さえということであろうかと思いますので、その例で申し上げますと、まずそういう請求がありましたら、その被疑者がだれだれについてのどういう証拠だ、それを押さえたい、こういうことでございますので、まず第一番目には、その疑われている被疑者の場合ですと被疑事実、もう起訴されていれば被告人ですけれども、その事実が認められるのかどうかということをまず判断するわけでございます。 それから、そういう物を押さえるということ、捜すということでございますと、その場所にそういう物が、捜索したり押さえたりするような物が果たしてあるのかどうかという点ですね、そういう点について判断をする。 それからもう一つは、物を押さえるために捜したり、あるいは押さえたりする必要性があるのかというような点を審査するということになるわけでございます。 これは、そういう三つの点を判断するにつきまして、その請求をする側は資料を持ってくるわけですね、それが認められるような資料を持ってくる。その資料がどういうものであるのか、完全なものであるのかによっていろいろ変わるわけでございます。 たとえて申しますと、いま殺人が起こって、被疑者がそのピストルは自分のうちに置いてきたと自供しているというようなことで、そのピストルを被疑者のうちから押収したいというようなことでありますと、被疑者がそういう自供をしていて、それが間違いないのだということが簡単にわかれば、それは数分ででも出せることでございます。また別に、これは詐欺ですとか、あるいは会社の犯罪でございますとか、非常にその被疑事実自体がむずかしいというようなもの。それで、いろんな人の供述調書というようなものがたくさんある、それがまず疎明資料である、そういうような場合になりますと、これは半日かかるというようなこともないではありません。ですけれども、そういうこともないではありませんけれども、大体は普通は三十分か一時間があれば出せるのが普通ではないか、こういうふうに思います。
○中山千夏君 大変よくわかりました。 実は、こういうことをお聞きするのは、これは家宅捜索の場合なんですけれども、令状を持って警察が来た、だけれども、その家宅捜索自体が非常に警察の行き過ぎではないかと思われるような、そしてその令状を出した根拠が大変薄いんではないかと思われるような事例をときどき聞きまして、そういう人たちが大変人権侵害だというふうに憤っているのを耳にするんですね。それで、どういうふうにして調査をしておられるのかなと思ったわけです。 それと、やはりそういう事例を聞いてみますと、私自身も非常に訴えている方たちの憤りに同意するものですから、これはもしかすると大変に人手不足であったり、それからその担当に当たられる方が勉強不足であったりして、十分にいってない、ちょっとぐあいの悪い部分があるんじゃないかなというような疑いを持ちましたので、その辺はいかがですか。
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) これは裁判官としての職務でございます。裁判官がいいかげんにやるというようなことは、私はないと確信しているところでございます。 どういう具体的な事例かちょっとわかりませんが、もしそういう裁判官の押収に関する処分が問題であるということになれば、場合によっては、それに関して裁判官について準抗告の申し立てというようなものもあります。
○中山千夏君 令状に基づいて捜索が行われますね。その以後の経過、令状を出した後のフォローというのは裁判所の方ではなさるんでしょうか。といいますのは、その家宅捜索なら家宅捜索に行って押収しますね。電話番号簿なんか押収しまして、それをもとにまたその先を今度は調査して歩く、捜査して歩くということが警察の方ではあるわけですね。 私などが常識的に見て、もともと出た令状自体が非常に根拠が薄いんじゃないかと思われるようなところで押収された電話番号簿に基づいてまた調査すると、もっと根拠が薄いんじゃないかと思われるような人たちのところに警察官が頻繁に取り調べに出かける、片っ端から出かけるというようなことが起こりまして、最初に家宅捜索を受けた人よりももっと関係がなさそうな人がびっくり仰天して、そして大変迷惑をこうむるというようなことにもつながってくるわけですね。もちろん、その先の警察の活動というのはこれは警察のことだと思うんですけれども、その令状を出したこと自体が適当であったかどうかということについて、その出した以後のフォローをなさるというような機構なり方法なりはございますか。
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 裁判官それぞれ独立てやっておりまして、そういう準抗告とかありますと、後、上級の機関が見るという機会はありますけれども、これは特に捜査官のする捜索、差し押さえというようなものは、これは裁判所のいわゆる命令ではなくて、捜査官にそういうことをしてもよろしいといういわゆる許可状なのでございます。ですから、それを出したからといって、捜査官が必ずやらなきゃいかぬというものではありません。ですから、やらないという場合もありますし、それがあればやれるということでございまして、後はもう捜査官にゆだねられてしまうということで、それ以後裁判所は、捜査官がどういうふうにやったというようなことについては別にどうすることもできない、こういうことになるわけでございます。
○中山千夏君 そうすると、考え方としては、令状を出してしまうと後は責任といいますか、そういうことについて裁判所はもう関係がなくなっちゃうわけですね。その令状を出しちゃった時点で。
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) その令状を出したということに関しましてはそうでございますが、たとえば物を押さえた場合に、その令状に記載されてないような物を押さえたかどうかというようなことになりますと、それはまだその押さえた捜査機関の責任の問題でございまして、それを押収してきたら、その押収が果たして正しいのかどうかということで、押収をされた方がそれに不服であれば、これはまだその捜査官の処分についての準抗告というようなことでそれを判断してもらうという道はあるわけでございます。
○中山千夏君 そうすると、不当であったかどうかということについて裁判所の方でもう一度考えてもらいたいと思った場合には、不当だと感じた者が裁判所へ訴え出るまではわからないわけですね、結局。
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) そのとおりでございます。
○中山千夏君 実地に捜査に当たられる警察などの方が、捜査に熱心な余りにちょっと行き過ぎたことをしてしまったり、それから余り適当だとは思われないようなところでも家宅捜索をしたいという望みを持たれるということはあり得るんだと思うのですね。けれども、そういう形で捜査をされてしまうと、非常に一般の人々にとって困ったことになるというところで、裁判所の方たちのチェックというものが大変重要なことになってくると思うんですね。 それで、こういう令状などというものがもし乱発されるというか、そういうことはないというお話ですけれども、いいかげんな形で出てしまうようなことになりますと、これは一つには、それによって動く警察の方たちの公費のむだでしょうし、労力のむだでしょうし、何よりも一般の人たちの人権の危機を招くことになると思うんです。 それからもう一つは、やっぱりお金や労力をこれだけ費やしたんだという警察のメンツみたいなものもあって、一たん誤った方向に進み出してしまったものを修正する機会を逃がしてしまって、誤った事件の解決方法なんかに導くような結果にもなるというふうに私は考えるわけです。 それで、ともかく令状の発行の判断というのは、うんと熟慮してし過ぎということはないんだろうというふうに思うのですけれども、それはいかがですか。
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 令状につきましては、裁判官は、いまおっしゃられましたようなことで慎重に審査しているわけでございます。 この捜索、差し押さえにつきましても、これは特に被疑者ではなくて、第三者のところを押さえるというようなことになりますと、その方の住居の平穏を害するとか、非常な御迷惑をかけるということでございますので、法も特別に捜索、差し押さえすべきものの存在を認められるかどうかというようなことも検討するように特に書いてあるわけでございまして、裁判官はそういう点も十分しんしゃくして慎重に判断しているというふうに考えております。
○中山千夏君 一人一人の方が大変誠実にやってくだすっても、やっぱり人間ですから条件というのはあると思うんです。この予算枠で、この定員枠の中で十分にやっていただけるものなんでしょうか。やっていけるという自信がおありですか。どうでしょう。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 差し押さえ問題一つとりましても基本的人権に関するきわめて重要な問題でございまして、裁判官としては十分に考えて判断をしなければいけない問題でございます。現在の実情におきましては、十分その点に配慮をいたしましてやっていける自信を持っております。 もちろん多いにこしたことはございませんが、やはり裁判官はそれにふさわしい方でなければ、かえって数が多いだけではいけませんので、そういった点、迅速性を要求されると同時に、確実性と申しますか、正確性というものはそれ以上に要求されますので、十分その点を配慮してやっていけるというふうに現在のところは考えております。
○中山千夏君 こういう捜索によって不利益を受けたとか人権侵害を受けたとかいうふうに感じた人々の回復手段というのは、確かにさっきおっしゃったようにあることはあるわけですね。だけれども、最初に不当なことをしておいて文句があったら法に訴えなさいというのは、やはり順当な法の精神じゃないのじゃないかと思うんですね。最初からそういうことがないにこしたことはないわけですよね。 そういう市民に負担をうんと与えるような方法で市民の人権を守るというより回復するというか、そういうことではなくて、最初から人権を安全に守っていく方向の努力というのが必要だと思うんですけれども、もちろん一生懸命やるということなんでしょうけれども、具体的にはそういう点でどういう配慮で臨んでいらっしゃるんでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 捜査機関のことは何とも私ども申し上げられませんが、裁判所部分に関する限りは、令状は慎重に出すということは当然でございますが、その出された令状が誤った執行をされないように明白なものを出さなきゃいかぬということがございます。 それから、令状問題といいますのは緊急性のある場合が非常に多うございます。いますぐやらないと証拠隠滅をされてしまうというようなことがありますので、またいろいろ最近は特に諸科学が発達してまいりまして、こういう場合にはどういう令状を出すべきかというような非常にむずかしい問題もございますので、裁判官は日ごろから研究しておきませんと、その緊急の場合に急にあわてて勉強するのでは間に合わないというようなこともございます。私どもは裁判官の会同とか研修とかいうような機会を通じて日ごろからそういう勉強もする、それからまた、そういう心構えも十分に養うように努力しているところでございます。
○中山千夏君 もしおわかりになったら、請求が大体何件ぐらいありまして、却下した事例はどのくらいあるのかということを教えていただきたいんです。
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 統計によりますと、これは捜索、差し押さえ、それから検証、これを全部合計したものでございますが、五十五年度に請求がありましたのが八万九千三百八十七件、それで発行されましたのが八万九千二百三十五件、却下されましたのが百五十二件でございます。 これから見ますと、却下が非常に少ないとお考えかもしれませんけれども、現実には請求がありまして、これは出せないよというようなことを言いますと、その請求を撤回するという措置が大部分とられている。そういうことじゃなくて出しっ放しにして、これは出せないというやつだけが却下になっておりまして、これは資料が足りないというようなことを言いますと、それでは撤回するというようなことで、請求がなかったことになっておりますので、それだけでは非常にたくさん出ているようでございますが、実際から見ますとそうではないということでございます。
○中山千夏君 私なんか素人の目から、普通の常識的な目から見まして、やはり憤慨している捜索を受けた人たちの話を聞きますと、これは怒るのがもっともだと思うような事例があるわけなんですよね。もちろん法律というものはまたちょっと常識とは違ったようなところがあって、本来は常識と一緒なのが望ましいと思うんですけれども、またそれはそれで、捜索令状を出したのは法的に見て正しいのだという見方があるのかもしれませんけれども、どうも私が目にしたり聞いたりした例の場合ですと、いろいろ御努力していらっしゃるだろうに、こういうことがあるのは本当に市民の例から言えば不当だなと思うようなことがあるんですね。 余り時間もありませんので個々の例に触れるのは、やはり裁判所は独立にやっていらっしゃるわけですから、またそれは別の問題だと思いますので、一つは、公表されていて「話の特集」という雑誌に載っている女の人の発言、それからもう一つは、家宅捜索を受けて電話番号簿を持っていかれて、事実その後その電話番号簿に基づいて、はたから見ているとちょっとこっけいになるくらい関係のないところまで調査をしている。そういう家宅捜索を受けた人が知人たちに、電話番号簿に名前が載っていただろうと思われる人たちにあてて、御迷惑をかけるかもしれないがという事情説明の手紙を書いて、そこに簡単ですけれども事情が書いてあります。そういうものをそちらの方にお渡ししますので、いまお伺いしたところでは、令状が出された後のことは余り御存じがないというような感じですので、ぜひこういうこともあるんだということをちょっと研究して、御検討いただけたらと思いますけれども、いかがでしょう。
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 十分参考にさしていただきたいと思います。
○中山千夏君 どうもありがとうございました。終わります。
○委員長(鈴木一弘君) 以上をもちまして、裁判所所管に関する質疑は終了いたしました。 本日はこれにて散会いたします。 午後五時八分散会