文教委員会 第16号
- 発言数
- 212 件
- 登壇者
- 11 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1982/08/19
会議録
○委員長(片山正英君) ただいまから文教委員会を開会いたします。 まず、委員の異動について御報告いたします。 本日、小笠原貞子君及び吉田実君が委員を辞任され、その補欠として、佐藤昭夫君及び長谷川信君が選任されました。 —————————————
○委員長(片山正英君) 次に、理事の補欠選任についてお諮りいたします。委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。 理事の選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(片山正英君) 御異議ないと認めます。 それでは、理事に佐藤昭夫君を指名いたします。 —————————————
○委員長(片山正英君) 教育、文化及び学術に関する調査を議題とし、質疑を行います。 質疑のある方は順次御発言願います。
○宮之原貞光君 時間の都合で、まず官房長官にお伺いをいたしたいと思います。 今回の教科書問題は、単に中国やあるいは韓国ばかりでなく、東南アジア諸国でも侵略の歴史改ざん批判として非常に問題化しておることは御承知だと思うのであります。私は、このような東南アジア諸国の動向の背景には、日本に対するところの太平洋戦争時の大東亜圏づくりという名の武力侵略と、戦後の大々的な経済進出のダブルイメージがあり、これに加えるに、最近の政府・自民党の憲法改正の動き、防衛力の増強、さらには総理を初めとする閣僚の靖国神社への公式参拝化への既成事実づくりという動向の一環として、この教科書問題を敏感にとらえておるからではないかと思うのであります。このような東南アジア諸国の心情にお構いなしに、国際感覚、歴史感覚の欠如したままでの対策では私はどうにもならないと思うのでありますが、これらの問題をどう受けとめられておるのか、まず政府の御見解を承っておきたいと思います。
○国務大臣(宮澤喜一君) ただいまの御発言では、わが国の過去第二次大戦中における行動のほかに、その後のわが国の経済進出あるいは現在の政府の政治的な姿勢等についてお触れになっておられましたが、その中で、過去の第二次大戦中におけるわが国の行動がこれらの地域の国々にいろいろな迷惑をかげたということについて、今日これらの国々からいろいろの批判を受けておる、そのことは謙虚に耳を傾けるべきことだというふうに思っております。
○宮之原貞光君 謙虚に耳を傾けただけでは何にも意味ないでしょう。問題は傾けてどうするかということなんですが、そのことをどうしようという物の考え方なんですか、そこのところをもう少し具体的にお聞かせ願いたいと思います。
○国務大臣(宮澤喜一君) お尋ねの点が、ただいまわが国の教科書に述べられておることについての批判に関してのお尋ねでございますれば、それはただいま文部大臣、外務大臣においていろいろ検討中でございます。
○宮之原貞光君 検討中ですとして、肝心の政府自体が、総理並びに官房長官自体が任せっ放しというところに私はひとつ問題があるんじゃないかと思いますがね。 それは後ほどお聞きするといたしまして、これらの問題と関連をいたしまして、先般参議院の喜屋武眞榮君が内閣に対するところの質問主意書を出しましたですね。その質問主意書の第四項は、いわゆる東南アジア諸国のそういうような動向なりあるいは中国、韓国からのいろんな動き、こういうこと等を指摘をしながら、関係国との友好を損なうことになるのではないかと、こういうことに対していわゆる総理の答弁書は「教科書の検定においては、その記述が、客観的かつ公正なものとなり、かつ、適切な教育的配慮が施されたもの」であるから、そういう心配はないと、こう答弁をされておりますね。ところが現実はどうなんですか。ますます火の手が上がるばかりではありませんか。 私はこれ官房長官にお聞きしますが、政府の答弁書たるものというものは、すぐこのようにしりの割れるいいかげんなものなんですか。本当に閣議で検討して出されるものですか。それとも関係官庁に任せっ放しのものなんですか。一体こういういいかげんな答弁をしているところの責任はどこにあるとお考えなんですか、それをお聞かせ願いたい。
○国務大臣(宮澤喜一君) 答弁書は閣議で決定をいたしておりますものでございますので、政府が責任を持っております。
○宮之原貞光君 するとどういうお考えですか。いま申し上げたような答弁書を出しておいて、しかし、事態はそのようになっておらない。いまどういう反省をお持ちなんですか。あの答弁書のとおりでいいといまでもお考えになっておりますか。
○国務大臣(宮澤喜一君) この喜屋武議員の質問主意書の主たる部分は沖繩に関するものでございます。その沖繩との関連において、沖繩であのような書き方をするのであれば、朝鮮半島、中国に関する記述の中でも云々と、こういうふうに推論をして批判を受けることがあるのではないかと、こういうふうに問題を指摘しておられるわけでございます。この問題の指摘は、結果において今日われわれがいろいろな批判を受けるに至っておりますので、この御指摘、御推論に関する限り、私はこれは一つの見識をあらわしたものと思います。けれども、政府がお答えしておりますように、政府としては教科書の検定において、できるだけ「客観的かつ公正」、そして「適切な教育的配慮」が施されるものとなるようにしておりますので、わが国とそれらの国との友好関係が損なわれることはないと信じておりますと、こういうふうにお答えしておりますが、この点は、政府が客観的かつ公正にやってまいった、努力を尽くしてきたということは偽りを申しておるつもりではございません。 ただ、それにもかかわらず、なおそれらの国から批判を受けつつあるというのは事実でございますから、そういう事実に立っていかに対処すべきかということについて、ただいま両大臣が中心になって検討をしておられることでございます。
○宮之原貞光君 ですから、答弁書は「このことによって我が国と他国との友好関係が損なわれることはないと考えている。」ということは、事実と違うことになっちゃったんですよ。それぐらいに政府自体はこの問題を甘く見ておるし、また答弁書自体に対するところのものの、閣議で決定するところのものが、まさにずさんなものであるということを私は立証しておるところの何物でもないと思いますよ。 時間がありませんので、いま一点お尋ねいたしますが、去る十七日の毎日新聞は一面のトップに、「戦争への反省盛る 外務省案 対日不信の拡大防ぐ」と、こういう見出しのもとに、いわゆる政府見解の形で、「何らかの形で教科書記述の再修正に言及する」との基本方針を確認するとともに教科書問題はわが国の対アジア外交の原点である太平洋戦争の戦争責任に対する基本認識そのものが問われている、との立場から中国、韓国の対日批判に応えるだけではなく、広く太平洋戦争全体の戦争責任問題、過去の歴史に対する反省を盛り込む意向を固めた。」と報じておるのでありますが、私はこの記事は当然のことだと思っておるわけでございますが、一方その日の夕刊には、外務、文部省の意見調整のための協議の模様を各紙がみんな取り上げている。文部省はその中で、「両国の要求に応じて記述を修正することは、教科書検定制度の根幹を揺るがすことになるので応じられない」「検定制度の枠内で将来にわたって、両国との友好維持のため最善の努力を払いたい」と主張して平行線をたどっておると報じておるのであります。事実、その後の政府部内のいろんな動き、与党内の動きを勘案いたしますと、それぞれの立場でまさに百家争鳴の観がありますわね。 私は、この事態を放置しておきますと、ますます関係国との間の事態の収拾がこじれていくばかりだと思うのであります。それだけに、先ほど官房長官は、この問題については外務大臣と文部大臣に任してありますと。こういうもう段階でなくて、いまや総理自体がイニシアをとってこの問題を処理すべき段階に来ておると考えておるのでありますが、そのことについて官房長官はどうお感じになっていますか。 もし、だとするならば、一応その時期をタイムリミットというものをいつごろにおいてどのような努力をされるのか、あるいはその方向性というものはどういう方向なのか。もし明確にできる点があれば、この場でやはり国民に向かっても明確にしておいていただきたいと思います。それとも、いつまでも文部大臣と外務大臣任せですと、こう言い切るのか、明白にしていただきたい。
○国務大臣(宮澤喜一君) この問題は、文部省にとりましても外務省にとりましてもきわめて重大な問題でございますので、両省の意見調整にある程度の時間がかかりますのはこれはむしろ当然であって、やむを得ないと考えております。両大臣の御意見が一致したところで総理に報告があり、それに従って最終的には総理が対応を決定せられることになると考えておりますが、時期といたしまして八月いっぱいぐらい、九月になります前には何とか最終結論が得られないものであろうか。八月の末には外務大臣が外国に旅行される予定もございますので、できればそのころまでに結論を出せないであろうかと、私としては実は期待をいたしておるわけでございます。
○宮之原貞光君 今月末をめどに精力的に調整をして一つの見解をまとめたい、そのための努力をしたいというふうに受けとめてよろしゅうございますか。
○国務大臣(宮澤喜一君) 時期としてはそのくらいを考えております。
○宮之原貞光君 私は、この問題をいつまでも両省に任しておったんでは平行線だと思いますよ。それだけに、文字どおり鈴木内閣ですから総理なり官房長官がイニシアをとってこの問題の処理を早くしていただきたいということをこの機会に強く御要請申し上げておきたいと思います。 次は、この教科書問題解決をさぐるため中国に行かれたところの局長にお伺いをしたいと思います。きょうは外務省の担当局長もと思いましたけれども、ちょうど外務委員会が開かれておるようでございますので、大崎学術国際局長に聞きたいと思います。 文部大臣は、いままで衆参の本委員会で、再三にわたって日中共同声明は尊重する、批判には謙虚に耳を傾ける、誤解を解くよう誠意を持って努力をすると、こう言っておられたわけでありますが、恐らく局長もこの意を踏まえて私は中国に行ったのだと思いますが、その結果はどうだったか、まず概括的にお聞かせをいただきたいと思います。
○政府委員(大崎仁君) お答えを申し上げます。 先般、御命令を受けまして、外務省の橋本情報文化局長と御一諸に北京に参ったわけでございますけれども、私どもの目的といたしましては二つの点を命ぜられておりまして、第一点は北京の大使館——鹿取大使を初め大使館の皆様に教科書問題をめぐる事情及び私の立場で申しますと、本件に関します文部省の考え方というものを十分御説明を申し上げ、現地におかれて中国側と対応していただく場合の参考にしていただき、十分な対応がいただけるようにしてくるということが一つでございます。 それからもう一つは、この機会に中国側の関係の方とできるだけ意見の交換の機会を持ち、当方の真意を御説明申し上げますとともに中国側の御意見も承ってくるというのが私どもの参りました目的でございまして、その両面にわたりまして私どもといたしましてはできる限りの努力をいたしてまいったつもりではあるわけでございます。 中国側との話し合いにおきましては、私どもからは文部省が日中共同声明の精神に反するというようなことを考えているものではないということを誠意を持って繰り返し御説明を申し上げたわけでございますが、中国側としましては、教科書検定制度自体というものについて中国側として触れるつもりはないが、今回の検定にかかわる事柄については、さきに中国側から述べてある御意見あるいは御要請というものについて改めるということはないと、さきに申し述べたとおりであるという基本的な態度は変えられなかったというのが大体概況でございます。
○宮之原貞光君 大臣が再々おっしゃっておられたところの、誠意を持っていろいろお話し申し上げれば理解できるんだと、こういうようなことというのは、いまのお話を聞いても成果があったとはどうしても受け取れません。中国はあのような記述があくまでもやはり日中共同声明あるいは平和条約の基本認識が反映をされておらないと、こう依然として見ておると私どもは受け取っておるのでありますが、局長は行って帰ってきて、この問題の解決のポイントはどこにあるというふうにお感じになって帰国されましたか、そこのところを聞かせてもらいたい。
○政府委員(大崎仁君) 私の使命は、先ほど申し上げましたように、中国側との関係に限りますれば、中国側に教科書検定をめぐる状況、あるいは事実、それから文部省の真意というものを御説明をし、また中国側のこれに対するお考えを正確に受けとめて大臣にあるいは省内の関係者に御報告をいたしまして、さらに今後の対応を考えるということが私の使命でございますので、したがいましてその対応自体につきましての私の考え方を申し述べるということにつきましてはお許しをいただきたいと存じます。
○宮之原貞光君 あなたが権限を持って行かれたものではないということは承知をしております。ただ、あなたの感じですね、うん、これは文部省の従来の方針でいけるぞと、こう直観的に感じたのか、これはなかなかむずかしいぞと感じて帰られたのか、そこのところをざっくばらんにひとつお聞かせ願いたいんですが、せっかく大局長が行ったんだから。
○政府委員(大崎仁君) 先ほど申し上げましたように、私といたしましては、誠心誠意文部省が日中共同声明の精神に反するということは考えてもおりませんし、またいたしてもおりませんということにつきましては繰り返し御説明申し上げたわけでございます。 それにつきましてどこまで御理解をいただけたかということは、これは中国側の受けとめ方でございますので私から申し上げる自信はございませんが、ただ先ほど申し上げましたように、中国側の基本的態度を変えていただくということには至らなかったということでございます。
○宮之原貞光君 どうも御苦労さんでした。 そこで、大臣にお聞きいたしますが、韓国側の方はいわゆる中国と違って代表の受け入れを断りましたね。この真意は何ですか。
○国務大臣(小川平二君) 韓国政府の真意につきましては、私が申し上げますよりは、外務省から御説明を申し上げた方が適当ではなかろうかと思います。
○説明員(長谷川和年君) お答えいたします。 韓国側は、現時点では日本代表をお迎えするのに適当な時期でない、そのようにわが方に伝えてまいりました。
○宮之原貞光君 それはあれですか、そういう事態でないという意味は、もう来たって意味ないという強硬な態度というふうに受けとめてよろしゅうございますか。聞く耳を持たないという気持ちで断られた、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
○説明員(長谷川和年君) 先方のこの回答の意図につきましてはいろいろ推測することはできると思いますけれども、私たちは先方の回答をそのまま理解しておりまして、そのとおり現時点ではこちらとして関係局長を派遣しても先方としてはこれを受け入れる状態にない、そういった意向を反映した、それだけの先方側の意向の表明と受け取っております。
○宮之原貞光君 受け入れる情勢でないということは、いわゆる国民のほとんどの皆さんがこの問題に対する激しい憤りを持って、とてもあなた方が来たって責任を持てぬぞと、生命の方も、やはりこれくらいの気持ちだというふうに受けとめるのが常識的ではないかと私は思いますがね。 それで、大臣にお聞きしますが、十五日の韓国の第三十七回光復節ですか、ここにおきますところの全斗煥大統領の演説をどう受けとめられておるかということをお聞きしたいんです。 新聞は、教科書問題に直接言及しなかったものの、日本帝国主義の侵略の傷跡を強く述べたと指摘をしている、これは間接的に日本政府を批判をした、こう伝えておる。しかし、この問題の直接のきっかけが教科書問題にあったことは明らかなんです。それだけに文部大臣といえどもこの演説には無関心たり得ないと思うんですがね。大臣は新聞をお読みになって、どうこの問題を受けとめられましたか、大臣の感想をひとつお聞かせ願いたいんです。
○国務大臣(小川平二君) もとより無関心ではございません。全斗煥大統領の発言、直接教科書問題に言及をいたしておりません。長い間にわたる日本の朝鮮統治に対する韓国国民の強い批判、不満について述べられておるところと了解いたしております。
○宮之原貞光君 いま問題の教科書問題とのかかわりでこういう問題が提起されて、また指摘されたんだというその問題の重要性については何も認識しておられないんですか。ああ三十六年間のあの植民地政策の批判だなというふうに、単にそれだけと受けとめられたんですか。
○国務大臣(小川平二君) もとよりきわめて重大な関心を持って発言の内容を理解をいたしておるわけでございます。
○宮之原貞光君 じゃ、もとより重大な関心というのはどういう意味ですか、もう少しはっきりしてもらいたいんですよ。やはりこの問題には教科書問題が絡んでおるな、これは重大だなというふうにお感じになったんですか、どうなんですか。
○国務大臣(小川平二君) さような趣旨で申し上げておるつもりでございます。
○宮之原貞光君 その認識はわかりました。 続きまして大臣にお尋ねしてまいりたいと思いますが、文部省はこの問題は国内問題だから外国からとやかく言われるところの筋合いでないということを本音として考えておるんじゃないかと、こう思いますが、大臣、その点どうなんですかね。私どもが新聞を見る限り、たとえば先ほど中国に行ったところの学術国際局長からは中国の認識は大変厳しいものがあるというお話があったわけでございますが、どうも新聞紙上を見る限り、中国政府は検定が日本政府の主権に属することを理解してくれた、だから前進だ、あくまでも既定方針どおり突っぱっておるならばいずれはこの問題は解決をする、文部省はこういうふうに楽観視されておるのではないだろうか、こういう気がしてならないんですがね。だから、これはあくまでも国内問題だというふうに中国側も理解を示してくれたというふうに非常に自分勝手にとっておられるのではないかという気がしてならないんですが、そこはどうなんですか、大臣。
○国務大臣(小川平二君) 私は、かつてこの問題が国内問題であるという発言をいたしたことがございません。さようなことを強調いたしますことは、いかにもこれは国内の問題であり、日本の主権の問題であるから、要らざる世話をやいてもらいたくないというような高飛車な態度として先方の目に映るでございましょうから、さような発言をいたしたことはございません。 今回、教科書の問題は日本の主権の問題だ、さような趣旨の発言があったことは確かだと報告を聞いておりますが、格別楽観もいたしておりませんし、悲観もいたしておりません。
○宮之原貞光君 私は、いま大臣が答弁されたとおり、名実ともに文部省がそういうふうに受けとめておるかどうか、実は非常に疑念を持つんです、これは。だからして、この新聞に報道されておるような対応をとるのではないだろうかという感じがしてならないんです。これは確かに、教科書をどのように編集しようかということは、それはその国の主権の属することですから、他国から干渉されるところの筋合いでないということは筋としてはわかります。しかし、これはただし書きがあるんですよ。ただし、そのことが他国に著しく迷惑をかけない限りとか、そしてまた他国との条約、協定に反しない限りは全くそのとおりだと思う。ところが、今回の問題は御承知のように、指摘されておるのは一九七二年の日中共同声明あるいは一九六五年の日韓共同コミュニケの精神に反するじゃないかと、ここで指摘されておるのが問題点でしょう。それをまだこれは国内問題だと、こう受けとめるところが底流にあるというところに私は問題があるんじゃないかと思うんです。確かに大臣の一家は御尊父のときから非常に中国については御理解のあるところの代々の系統でございますから、私は大臣は、いま大臣が答弁されたように、深刻に受けとめられておるのではないかと思うのでありますが、肝心かなめのあなたの配下のこの官僚の皆さんはそうお感じになっておられないんじゃないですか、どうなんですか。そこは初中局長に聞いた方がいいと思いますがね。どうなんですか、これは。
○政府委員(鈴木勲君) 中国から申し入れがございましたときに、文部省の基本的な態度といたしまして、大臣の命を受けまして、私どもが記者会見で申し上げましたのは、日本の教育、教科書の検定につきましては適切に行われるように最善の努力をしているところでございますけれども、中国の申し入れにつきましては謙虚に耳を傾けてまいりたい。なお、日中友好、日中親善の精神につきましては、これは日中友好条約、日中共同声明の趣旨に沿いまして、わが国の学校教育におきましても反映されるべきは当然と考えている。そういう趣旨から会見申し上げましたし、また過般の王公使との会見におきましてもその趣旨をるる申し上げまして、なおわが国の教科書検定制度の趣旨につきましても御理解を求め、教科書全体の記述について、そういう精神に従って記述されているということをぜひ御理解いただきたいというふうな趣旨で理解を求める努力を重ねているところでございまして、大臣の御指示のように、これが内政問題であるから云々ということではなくて、虚心にそのお話を聞いて対応している、そういうところであります。
○宮之原貞光君 いま答弁を聞く限りにおいてはきわめて素直のようでございまして、虚心のようですわね。これはおいおいこれから具体的に、まず一体虚心にそういうように受けとめておるかどうかをお尋ねしてまいりたいと思います。 その前にお聞きしておきたいんですが、これは外務省とも関係あることなんですけれども、たとえば自分の国の記事が他国の教科書に掲載をされる。これが自国の国益に反したり、著しく誤認されているということがあれば訂正を申し入れるというのは常識じゃないでしょうかね。現に七月二十九日の本委員会におきますところのわが党の小野委員の質問に対して、エジプトの国定教科書が北方四島をソ連領としていることに対して日本政府の方針に基づいて在カイロ日本大使館がこの記載を訂正を申し入れ、エジプトの国定教科書の地図を改訂させたことがあると外務省の橋本情報文化局長が述べておるのでありますが、これは私はやはり当然だと思うんです。したがって、中国や韓国が共同声明や共同コミュニケの精神に反するから善処を求めてきておるということは、これは当然国際的には通用することなんですね。それを、いや国内干渉、内政干渉だなんて言うところの政府首脳自体が、私は物の考え方が誤りだと思うんですが、この点はどうですか、大臣。
○国務大臣(小川平二君) 政府首脳は中国政府あるいは韓国政府の申し入れを内政干渉だなどと申したことはかつてございません。
○宮之原貞光君 あれは、閣僚というのは政府の首脳じゃないんですか。首脳というのは総理大臣か官房長官を言うんですか。私どもは閣議に参列するところの国務大臣はみんな首脳だと理解しているんですがね。そういうような人は一人もおりませんでしたかね。どうですか、大臣。
○国務大臣(小川平二君) 個々の閣僚がそれぞれ政府の首脳であると、まあこのような使い方を通常いたしておらないと理解いたしております。
○宮之原貞光君 それならば、そういう閣僚がおるとすれば、それは非常識きわまる物の考え方ですね。それは確かでしょう、この間もそれを認められたんですから。
○国務大臣(小川平二君) 閣議における閣僚の発言につきまして、かつてこの委員会で意見を求められたことがございますが、私は私の意見を率直に申し上げまして、事態を円満に解決する上から見てきわめて遺憾な御発言であったと申し上げた、かように記憶いたしておりますし、その考え方にいまも変わりはございません。
○宮之原貞光君 閣議だけじゃありませんよね。ほかの記者会見でもあなたしゃべっておるでしょうが、二回も三回も。まあそれはいいでしょう。 それで、内政干渉だとか主権侵害だと、こう言うんですが、私は主権侵害と言うなら、金大中事件こそ明白なこれは主権侵害だと思っているんですよ。だって、九年前の八月八日、白昼堂々と首都東京のど真ん中から拉致されて韓国に連れていかれた。そのことは当時の官房長官の二階堂さんも談話で認めているんです。それを韓国との間の高度の政治決着だと称して、いわゆる主権侵害に当たるそのものをうやむやにしておる。今日そのことについては口を緘して語らないところの与党の皆さんの中に、事この問題は、新聞で見る限り、いろんな演説などで主権侵害だなんという発言があるようですが、私は理解できないもはなはだしいと思うんですよ。肝心かなめのことは何も言わぬでおって、これだけわんわんわめくという、こういうやり方は、どうですか、常識的に考えて国会議員としてとるべきところの態度じゃないと思うんですが、大臣はどうお感じになっておりますか。
○国務大臣(小川平二君) 主権の侵害である、あるいは内政干渉であるという発言は適切な発言だと思いませんし、事態の円満な解決に資するゆえんでもない、このことは先ほど来るる申し上げておるとおりでございます。
○宮之原貞光君 ここで改めてお聞きいたしますが、文部大臣は、八月六日の衆議院の文教委員会におきまして、わが党の木島委員の質問に対して、十五年にわたる日中戦争については弁護することのできない戦争であったと考えると述べられた。なお、再三にわたりますところの木島委員からの質問に対して大臣は、どうしても満足されないなら侵略であったと申し上げてよいと、こうお答えになった。続いて公明党の有島委員からの念押しに対しても、日中戦争はいわゆる侵略戦争であったと、こういう認識をお示しになっておられますね。そしてまた、今日の日中関係がいわゆる日中共同声明、友好条約、あのときの精神を起点として始まっておるということについてもそのとおりだという大臣の認識を示しておるのでございますけれども、このことは間違いございませんね。
○国務大臣(小川平二君) 仰せのとおりでございます。
○宮之原貞光君 私はそれだけに疑問に思うのは、なぜそれならばあの問題に対して素直に文部省側も対応できないのかと、こういうことに対して非常なやはり疑念を持つんですがね。いわゆる文部省の中国、韓国の要求に応じて記述を修正することは教科書検定問題の根幹を揺るがすことになるので応じられないと、こういう主張あるいはまた、検定制度の枠内で将来にわたって両国との友好維持のため最善の努力を払いたいというのがいわゆる文部省の現在の基本方針だと新聞は伝えておるのでありますが、もしこのとおりであるならば、いま申し上げたように、日中戦争なり、あるいはこの日中外交の基本を先ほど指摘されたようにお認めになっておいて、片一方ではこういうかたくなな姿勢をとるということはどうしても素直に理解できないんですがね。この私が申し上げたところの文部省の基本的な考え方というのは、これはこのとおり間違いないんですかね、局長。
○政府委員(鈴木勲君) 新聞等でいろいろ報ぜられているわけでございますけれども、たとえばこのお挙げになりましたような記述の修正に応ずることが検定制度の根幹を揺るがすというふうな、そういう発言をしたことはございませんが、それは教科書検定制度がわが国の教育制度の中で非常に重要な役割りを果たしているということからいたしまして、文部省といたしましてはこれまでも教科書検定制度の適切な運営によりましてより適切な教科書をつくることに最善の努力を傾けてまいったわけでございまして、ただいま問題になっておりますような個々の記述につきましては、それは教科書におきます、たとえば歴史の教科書でございますと歴史学習という見地からどのような記述をするかという観点からの問題でございまして、ただいま大臣が申し上げました日中戦争をどうとらえるかということと必ずしも同じように論ずる問題ではなくて、おのずから教科書の記述における一つの取り扱いといたしまして、その記述が事実をあらわすのに適切であるかどうかという観点から行っておるのが検定でございまして、そういう趣旨におきまして、検定における基本的な仕組みと申しますか、あるいはそういうものを支えている考え方と申しますか、そういうものが非常に大事であるのでこういうものはしっかりと考えていかなければいけないというようなことと私どもは考えていることをあるいはそういうことでお述べになったのではないかというふうに思います。
○宮之原貞光君 そうすると発言はしたことはないと。しかし、いまの話を聞くと、この日中戦争に対するところの認識、日中共同声明に対するところの認識とは教科書の表現というのは別なものであってもいいと、違うものであっても。違うというのは、異なるものであってもいいと。したがって、その物の考え方は、いま申し上げたように中国や韓国から言ったところのものを記述を変更するということは教科書制度の根本を揺るがすことになるからこれはできないんだと、こういう物の考え方だと理解していいんですか。そこのところをはっきりおっしゃってくださいよ、もうくどくど修飾は要りませんから。ノーならノー、イエスならイエスと言ってください。
○政府委員(鈴木勲君) ただいまの教科書検定制度の根幹を揺るがすというふうなそのもの、直接的な表現を使ったことはございませんが、仮に字句修正ということに現在の検定制度の枠内で考えるといたしますと、現在の検定制度の仕組みから申しましてそれはなじまないという観点からなじまないという表現で申し上げたことはございます。
○宮之原貞光君 しかし、あなたはそうきれいごとを言うけれども、そうするとあの新聞記事はみんな憶測で書いておるんでしょうかね。 たとえば今月の九日ですか、三角次官が局長をみんな集めて、戦後の検定制度の根幹を守るためには断固がんばろうという檄を飛ばしたという記事がみんな載っておるですよ。新聞、雑誌がみんな知っておるんですよね。そうすると、あれは全くのでたらめであってそんなことを言った覚えはない、ただなじまないと、こう言っただけなんだと、考えておることだけなんだと、こう理解してよろしゅうございますか。しっかり答えてくださいよ。
○政府委員(鈴木勲君) ただいま当該件に関します記述の修正という観点からお述べになりましたので、それについては国会でもたびたび申し上げておりますように、たとえば正誤訂正の手続とかあるいは改訂検定の手続はございますけれども、そういう手続によってこれをもとに戻すというふうなことは現在の教科書検定制度の仕組みから申しましてなじまない、できないということをたびたび申し上げているわけでございまして、そのことをたびたび私どもはいろんな機会には国会等を通じまして申し上げているということでございます。
○宮之原貞光君 だから、もう一つの、その検定制度の根本を揺るがすところの問題であるから絶対にだめだという方針だと伝えられておるんだが、それは間違いなのかね。いま答弁のように、なじまないというふうに考えておるということなの。そこをはっきりしておいてくれよ。
○政府委員(鈴木勲君) これは、結局はこの検定制度の仕組みを崩すことになりますので、その意味では教科書検定制度の基本となっている仕組みを崩すという意味では根幹にかかわるというふうな解釈あるいは考え方が成り立つかとも思います。
○宮之原貞光君 同じことじゃありませんか。何も違いますと言わぬでもいいじゃないか。素直に、それは各紙に載ったとおりですと、こう言えばいいじゃないか。どうもそこらあたりにまたおかしい問題があるんだね。 それはまたおいおいやりますが、あなた、なじまないと言うけれども、過去にやったことあるんじゃないですか。たとえば字句修正云々という角度で問題解決を図ったことはたくさんあるでしょう、何回も。確かにそれはいまの制度は部分改訂は三年ごと、全面改訂は六年ごとというのがあるんだけれども、いわゆる教科用図書検定規則の十六条の第四号を縦横無尽にあなた方は活用してきたじゃありませんか、いままで。 時間がありませんから私の方から申し上げますけれども、現に昨年中学の公民的分野の教科書の中身を、当時一連の自民党の、与党の教科書偏向キャンペーンの圧力に耐えかねて、その前の年検定を通したばかりの教科書を、形の上では教科書会社から自主的に書きかえの申請があったからとしてこれを認めて——字句修正じゃありませんよ、原子力発電所の問題の記述の仕方、あるいはまた公害企業等の問題について、大幅にあなた変更したじゃありませんか。こればかりじゃありませんよ。昨年の高校の社会科の現代社会の検定の中でいわゆる四大公害裁判の加害企業名を、これはだめだということで修正意見で削除させながら、後になって今度は他の教科書には載っておったんだから、これはやっぱり統一的には残しておいてもよろしいから名前を復活させなさいと、こう指導したところの例があるんでしょうが。こういうことはやっておいてだね、この問題にはなじまないと言う、これは世間様に通用できますかね。私から言わしてみれば御自分たちの都合のいいようなことは安易にどんどんどんどんそう変えさせている。やりたくないことは、いまの答弁じゃありませんけれども、なじまないとか根幹に触れるところの問題であると、こうあなた方は問題を処置しようとしている。私はここに非常に大きな問題点があると思うんですよ。 八月七日のある新聞の「今日のレポート」の記事の中にもありましたけれども、一度外国から言われてやると次またどういう難題が来るかもしれないから、ここでお互いがんばろうというのが文部官僚の気持ちだということを解説しておったんですが、そういうメンツとか先の先のことまで心配して、自分たちの都合のいいときにはやるけれども、こういうものはなじまないと、こう言ってあなた方やっているんじゃありませんか。どうもそうとしか思えませんがね。それでもなじまないんですか、もう一回聞かしてくださいよ。
○政府委員(鈴木勲君) ただいま宮之原先生がお挙げになりましたケースにつきましては、たとえば原子力発電の場合でございますと、確かに検定規則十六条の適用によりまして、客観的な事情の変更とかあるいは統計資料の更新の問題とか、そういう観点から正誤訂正の手続きに従って受理をしてその処理をしたということはございますし、また、公害企業につきましても、他教科における取り扱いとの不整合とかあるいは裁判におきまして公知の事実となったというふうなこととか、そういうような観点からこれを取り扱ったものでございまして、今回のケースのように改善意見を付しまして、それに従って同意をして記述が決定されたものをまたもとに戻すというふうなケースとは異なりますので、これは検定の趣旨から申しまして、また正誤訂正手続きの趣旨から申しましても該当しないということを申し上げているわけでございまして、恣意的に答弁さしていただいているわけではございません。
○宮之原貞光君 それはあなたどういうふうに弁明しようと、これはあなたやったんでしょう、中身を相当入れかえて。だって、原子力発電所の問題は温水がどうだとか海水の問題とか、みんなやられましたよ。これ単なる統計がどうだとか云々というんなら、何も四号じゃなくて二号でしょう。だから、去年はそう言われて、当時の三角局長は後に問題が残ると思って第何号を適用しましたととうとう言えなかったじゃありませんか。 大体客観的に見てみますと、そういうことがどんどん行われておるんだよ。しかも、あの昨年の自民党の偏向教科書キャンペーンの後でしょう。それが教科書会社から自主的にありましたから認めましたと言う。ところが、その教科書会社はどうですか。その教科書会社はみんな自民党の皆さん方に政治献金されておることが明らかになった。ここのこの癒着、そういうものとの兼ね合いであなた方変えたということは周知の事実なんですよ。それはあくまでもそうであって、これはなじみませんと、これあなた通用すると思いますかね。これは局長ね、いまのような答弁を、ああなるほどと、こう思うのは、恐らく私は与党の皆さんだって強引な言い方だなと、苦しい答弁だなとお感じになっていると思いますよ。あの顔色見りゃわかるんですけれどもね。これはあれですか、あれは国内で今度は外国だからという気持ちがあるんですか。 それで、私はお尋ねしますが、外国からいろいろ指摘をされて訂正したことはないんですか。あるのかないのか、それだけ聞かしてください。
○政府委員(鈴木勲君) 外国から指摘をされまして、直接的な指摘をされて直したというケースはございません。
○宮之原貞光君 これどちらが正しいんですかね。これあったじゃありませんかね。これは日中国交回復直後の昭和四十八年当時だと思いますが、検定を経て学校で使われた地図帳の中に「中華民国」と書いてあるのを中国から指摘をされて「台湾」というふうに修正をされたことがあるんじゃないですかね。そのときにも、たしかいろんな事情通から見ますと、文部省は現在と同じように、現実にあの台湾のことを中華民国とも言われておるんだからと、こうしてしばらく抵抗した。けれども、いろいろ言われて仕方なくなって、結局は教科書会社から正誤訂正を出させて修正をしたと、こういう事実は私はあるというふうに理解しておるんですが、こういうことはなかったんですか。これ事実無根ですか。
○政府委員(鈴木勲君) 御指摘の事例は、これは昭和四十七年の九月二十九日に日中共同声明が出されまして、日中の国交が正常化されたことに伴いまして、社会科の地図における「中華民国」の表示が正誤手続によりまして「台湾」と訂正されたことを御指摘になっているものと思われます。これは日中国交正常化という客観的事情の変更がございましたので、それによりまして自主的に教科書の表示を訂正するということが行われたものでございまして、指摘によって直したというものではございません。
○宮之原貞光君 それは事実と大分違いますね。これまた苦しい言いわけですよ。 僕はあなたが当時責任者だったかどうか知りませんけれども、中華民国とも台湾も自分のこと言っておるんだから、あるいはまたアメリカあたりもそう言っておるんだから、それでいいじゃないかと、当初あなた方は大分がんばったじゃありませんか。それを外務省から、いや日中共同声明の趣旨に沿って中国は一つだということになっておるんだからと言われて、あなた方修正したじゃありませんか。ここで私はその水かけ論をやろうとは思いませんけれども、これは事実としてこれははっきりしておることなんですよ。私は、もしあれは単に地図であるのだからこれと問題が違うという認識に立つとするならば、これは大変な問題だと思うんですよ。地図の修正にしても、これはやっぱりそのときの政治の問題が絡んでおるんだよ、いわゆる日中国交回復のあの原則に沿って変えたわけなんだから。それをあのときは別ですと、こういうことではこれはもう明確に通用しませんですね。あなたはあくまでもそれに固執するつもりなのか、私は非常にその点はきわめて遺憾に思いますよ。ただ与えられたところの時間が少ないんで、そのことだけやっているとあとできませんから先へ飛ばしますがね。私は、まだ文部省が、なじまないとかあるいはまた根幹を揺るがすところの問題だと、こう言ってこの問題について前向きの姿勢を示さないと。この理由ですね、これは八月十日前後各紙に文部省見解としてずっと出ておりました。ああいう文章をつくった覚えがないというのがあなたの十日のときの答弁でしたが、つくってない文章が何で各紙にずっと出されておるのかわからない。本委員会から求められていながら提出をされない、そこにも私は議会軽視のあなた方の態度があると思うんですよ。理事会では満場一致でみんな配るように言われておったんでしょうが。それを、見解をまとめたことはありませんと言う。けれども、各紙の新聞はきれいに皆さん一言一句載せているじゃありませんか。 それはそれにいたしましても、これを見ますと、いわゆる歴史教育では、史実に立脚して歴史をできるだけ客観的に考察し、判断しようとするところの態度を育てることが重要であるにかんがみ、これは客観的な表現でありますと、こういうふうにずっと言い切っていますね。こんなへ理屈であなた方は相手の皆さんを納得させ得ると思っているんですか。だとするならば、これぐらい甘っちょろい国際感覚のゼロな省は私はないと思いますよ。第一、加害者の日本人の一人であるところの私どもが理解できないことを被害国の国民の皆さんにこれはこういう意味だから理解してください理解してくださいと言うこと自体がこれは無理じゃありませんかね。しかも、先ほども大臣がおっしゃったように、侵略戦争だと見ている。日中の共同声明というのは、やったことを、互いに過去のことは不問に付しながらこれからやろうと、しかし、いわゆる日本があの戦争では大変御迷惑をかけました、中国の国民に重大な損傷を与えた、このことについては責任を痛感しておりますと、このことがもとになってあの国交回復なりあるいはまた共同声明というのができておるんですよ。そういうことを向こうと約束しながらそれに反するような表現をしておいて、それでもあなた方は話せばわかる、理解してもらえると、こう思っておられるんですか。どうなんですか大臣、これ。
○国務大臣(小川平二君) 私はかつての戦争を侵略的な性格の戦争である、かような認識を持っておるわけでございます。それであるからこそ、ことごとくの教科書が、たとえば平和主義という表題のもとで戦争に対する峻厳な反省、そのことに対する責任を痛感するということを書いておるわけでございますし、日中について申しまするならば、日中共同声明について叙述するくだりで同様の趣旨を書いておるわけでございます。このような基本的な認識の裏づけとなる歴史的な客観的な事実を教科書は記載すればよろしいのであって、教科書の中に価値判断を伴うような「侵略」という用語を使用しなかったからといって、私が戦争を基本的にどのように認識しておるかということと格別矛盾することではない、こう考えております。
○宮之原貞光君 それが詭弁だと言うんです。いま大臣がおっしゃったところの前段が名実ともそのとおりだったら、それに沿ったところの表現にするのが客観的には正しい記述でしょう。正しい記述でしょう、それが。常識ではそうですよ。客観的というのは共同声明に沿ったように書いておくのが客観的なんだ。それと違ったものを書いて、これが客観的でございますと言ったって、それはあなた方のひとりよがりなんですよ。私はここで非常に疑問を持つ者ですがね、これはその一番根幹の文部省の皆さんの歴史観の問題じゃないかと思うんだよ。これが底流にあるから、この問題についてなかなか本当のことを言わぬのじゃないかと思うんですがね。 実はこの問題に関連をして、そのことについて聞きたい。 私の手元に八月四日のサンケイ新聞の「正論」に掲載をされておりますところの筑波大学学長の福田信之さんの論文があります。御承知のように、同学長は一昨年の自民党の教科書偏向キャンペーンの中身に決定的な影響を与えたところのいわゆる筑波大グループ、教科書研究グループの総大将、総監督ですね。しかも、このグループに文部省は毎年五百万前後の研究費を出しておるんですよね、やれやれと言って研究費を、国費を、私どもの税金を。これは前の田中文部大臣時代からはっきりしておることなんです。 そういう団体ですがね、その団体でつくられておる、役割りをやったのは例のいわゆる偏向キャンペーンの種本と言われるところの「疑問だらけの中学教科書」ですね。この監修をされておるところの方で、文部省の教科用図書検定調査審議会のメンバーにも大きなやはり影響力を与える、その道におけるところの大家ですよね。しかも、これは戦前東大の国史学科の学生を中心に誕生をいたしましたところの国粋主義団体の朱光会の流れをくむところの皇国史観グループ、たとえば元検定調査官の村尾さんとか、あるいは神宮皇学館元学長の田中さんとか、あるいは現在中教審の教育内容小委員会の専門委員をしておるところの山口さん、このグループときわめて親交のある方なんですね、これは。 その方がこういう論文を書かれておる。今回の教科書問題を取り上げましてね、日本のマスコミが「外国の抗議は当然であり、」——マスコミの皆さん聞いておいてくださいよ——「抗議は当然であり、日本と中国などとの友好関係がくずれることを願っているような態度はいただけない。自主性を喪失したマスコミと左翼陣営の姿勢は、いつものことながら不快の限りである。」とマスコミ批判をするとともに、教科書のあり方について、「自国の歴史と社会を教える目的は、」愛国心を育成するもので、「そのため多少の自国びいきや恥部隠しは避けがたく、成熟した国際社会では、お互いにとがめ立てはしないものである。」とか、この次が大事だ。「日本の教科書のように、日本の歴史は恥辱に満ちており、今もみじめな国であると、自虐的に書き立てている例は他国では見られない。」とか、さらには「現行の教科書は、日本社会の欠陥をつとめて誇大に宣伝し、青少年になんとかして、日本は悪い国であるように思わせようとしている。」と批判をされている、現在の教科書の問題について総括的に。 そして結語として、「レーニンは「祖国に絶望させることが革命精神養成の道である」と説いたが、この意図に沿う勢力だけが歓迎する教科書では困りものである。現行教科書の改訂を阻止するために、今回の事件は仕組まれたのではなかろうか。」、いいですか。「現行教科書の改訂を阻止するために、今回の事件は仕組まれたのではなかろうか。」と、このように結んでおられるのであります。 私はこの皇国史観に連なったところのこの福田さんの物の考え方にはもちろん反対ですが、それはもちろん言論の自由ですからどのような主張をされようともそれは御自由です。しかしながら、先ほどもこの方の経歴を紹介したように、文部省もその人の主宰をしておるところの教科書研究会に補助金を出しておられるんですよ。しかも特に自民党の文教関係者の皆さんには影響力を持っておられるところの方なんです。私はこれは他のことなら不問に付しておきたいと思いますが、そういう経歴の持ち主とそういう影響力を持ったところのこういうものの結び、「現行教科書の改訂を阻止するために、今回の事件は仕組まれたのではなかろうか。」と、こう言っておるのでありますがね。これをどうお感じになりますか、大臣。同感ですか、それとも異議があるとお考えですか。まず大臣のお考えを聞こう、私は。
○国務大臣(小川平二君) この場で初めて承る意見でありまして、……
○宮之原貞光君 ありますよ、これは、新聞の切り抜きが。見たらわかるんですよ。
○国務大臣(小川平二君) 私、読んでおりませんので何とも申し上げかねます。
○宮之原貞光君 文部省はどう思っているの、これは。結構だと内心歓迎しておるんじゃない、わが意を得たりと。
○政府委員(鈴木勲君) この問題ができましてから、いろいろな新聞における論説あるいは情報等、私どもも注意して見ておりますけれども、やはりいろいろな、この件の持っている問題に関しましていろいろな立場からのお考えが述べられている。そういうものに接しまして、私どももいろんな意味で、その福田論文だけではございませんが、いろいろなものを読んでおりますが、問題のとらえ方につきましてはそれぞれ論者の考え方があると思いますけれども、いまこのお挙げになりました趣旨につきまして賛成とか反対とかということではございませんで、いろいろな述べられている問題をできるだけ広くあさりまして、そういう考え方もある、あるいはこういう考え方もあるということを参考にさしていただいているというところでございます。
○宮之原貞光君 大臣は仮定の上の答弁はできませんということですけれども、こう書いてあるの。これが事実ならば、大臣、その結びの言葉はどう思いますか。結構なことだなあと思われるのか、ちょっとこれは行き過ぎだなあとお考えになりますか。 それから、続いて初中局長も、それはいろいろな考え方があることは当然だよ。けれども今度の問題は、あなた方が考えているところの教科書の改訂を阻止しようとするところの仕組まれたこれは一つの戦術なんだ、そこのところにねらいがあるのだという物の考え方は同意できますか、同意できませんか。結語のことを私は聞いているんです。両方からきちんと答弁聞きたいね。それは何とも言えませんと、逃げるということであるならば内心賛成だと思われても仕方ありませんね。どうですか。
○政府委員(鈴木勲君) それが仕組まれたものであるということがどういう趣旨で述べられたものかは知りませんが……
○宮之原貞光君 いま読んだとおりだよ。
○政府委員(鈴木勲君) この件はいろいろな背景はあると思いますけれども、仕組まれたというようなものではないと私どもも思います。
○宮之原貞光君 大臣、一体どうなんですか。
○国務大臣(小川平二君) 仕組まれた云々ということは間違いだと考えております。
○宮之原貞光君 これは明白なんでしょう。それさえも口を濁して、何回も尋ねられなければ言えないというところに、すでにやはりこのグループの影響力が皆さんの中には隠然としてあるということなんだよ。だって、きのうの新聞に見る限り、いわゆる自民党文教関係者のいろいろな主張が新聞に紹介されている。見る限り、そういうのがあるじゃありませんか、軌を一にするのが。まことに厄介なことだと、こう思って私はおるんですよ。 それで、私は、もう時間がありませんから、次にはしょって申し上げますけれども、高校の学習指導要領と高校の世界史との関係なんですがね。私は、ここにその高等学校学習指導要領、文部省の解説も持っておるわけですけれども、ここにはなかなかりっぱなことを書いてあるんだ。 たとえば「目標」に、「世界の歴史に関する基本事項を理解させ、歴史的思考力を培うとともに、現代世界形成の歴史的過程と世界の歴史における各文化圏の特色を把握させて、国際社会に生きる日本人としての資質を養う。」とこうあって、その解説の、この目標の一番のポイントは「国際社会に生きる日本人としての資質を養う。」ことが世界史の学習の究極においてねらうものですよと記述に書いてある。私もそのとおりでなけりゃならないと思うんですがね。 そこでお聞きしたいのは、教科書は本来、私はこの学習指導要領というものが出されて、これを基準にして執筆者が書き、これを基準にして検定をされるものだと理解をしておるのでありますが、そういう理解に立つとするならば、教科書も大体この方向で編さんをされなけりゃならないということは、これは当然でございますね。どうですか、初中局長。
○政府委員(鈴木勲君) 大筋におきましてそのとおりでございます。
○宮之原貞光君 実は、ここに実教出版の「高校世界史」がある。これは五十七年一月二十五日発行ですから、恐らく今度まだいじってない以前のものだと思いますがね。これを見てみますと、この二百六十ページから二百六十四ページにわたりまして、日中戦争に関するところの記述があるんです。これは文部省から言わせれば優等生かもしれませんね、「侵略」の用語が一切ないんだ、このものは。「武力的解決」とか「戦火を拡大」という用語はある。ところが、この二百六十四ページから二百六十五ページにわたるところの、第二次世界大戦に関する記述には、「ナチスドイツの侵略」、「侵入」という言葉が至るところに自由自在に使われておる。余りにもこれは日本とヨーロッパとをうまく使い分けていますね。もし歴史が、学習指導要領の言うように史実に立脚をして客観的に考察するというなら、この記述というのも一貫性がなければこれはできないはずなんです。両者の違いを、先生、これは違うんですが、どうですかと説明聞かれたら、どう答えたらいいでしょうか、これ。鈴木先生にお教え願いたい。これは文部省の見解書のように、実はあれはヨーロッパのことですから、あれはあのままほっておきましたというわけにいきませんよ。文部省はこう言いましたといって教えるわけにいかないものです。この二つの違いはこうですと明確に言わなければこれは教えるわけにいかない。鈴木先生、そのことを教えてもらいたい。
○政府委員(鈴木勲君) 宮之原先生にお教えするというのは大それたことでございますが、いまのお挙げになりましたケースが、検定の結果そうなったのか、あるいは著者の一貫した考え方によってそうなったのかということにつきましてはつまびらかにいたしませんので、一般論として申し上げますと、歴史の教科書の記述につきましては、できるだけ客観的な表現で一貫して記述を行うことが望ましいということでございまして、これは歴史学習の基本でございます。 たとえば、ヨーロッパ諸国の中国大陸に対する進出ということがございまして、「日本の中国侵略」というふうな表現がありますような場合に、同一地域における比較的近い時代における出来事としての記述の一貫性という観点から改善の意見等を出しまして、それが記述が変わるというふうなケースがございまして、そういう個々の記述における表現の適合性とかバランスとか、そういうことから検定意見を付しているのでございまして、ただいまお挙げになりましたようなものにつきましては著者のまた考え方によってそのような記述がなされているというふうに私は考えます。
○宮之原貞光君 それは答えになりませんね。そういう答弁をしたらどんなできの悪い高校生でも笑いますよ。これは著者がそう書いたんだから先生はわかりません、著者に聞いてくださいと、こういうのと同じじゃありませんか。検定というものは、出されてきたものが、あなたも言ったように、一貫性があるのか、つじつまが合っているのか、それをみんな正すのがあなた方の仕事でしょう。 私、時間がありませんからはしょって言いますけれども、これは学習指導要領に書いてあるところの内容とその取り扱い、この趣旨からも明確に反しているよ。どう書いておるか。その内容とその取り扱いを見ると、「両大戦間の世界」の「全体主義の台頭と第二次世界大戦」についてと書いて、百三ページで、それはこういうふうに認識をさせなさいという指導をしておる。「まず、イタリアのファシズム、ドイツのナチズム、日本の軍部勢力などの全体主義」——これは一括して全体主義ですよ——などが「出現した背景を考察させ、同時に、全体主義に共通する独裁体制、強硬外交、個人の抑圧などの特質を明らかにする。」と、こう書いてある。この学習指導要領の指導方針のとおりで言うならば、イタリー、ドイツ、日本、当時のこの枢軸国は全体主義国なんだと、そういう立場に立って一貫して歴史というものは書かれておるんですよ。 ぼくが、いま指摘しているように、一方は「侵略」、「侵入」というもの、片一方は「進出」、「戦火を拡大」と書かなきゃだめだと。これ世の中に通用しますか、大臣。これをもっていわゆる客観性のあるところの物の考え方ですと幾ら文部省が言ったって、世の中の人はこれは理解できませんよ。これ日本国民の皆さんが理解できないのを、被害を受けたところの当事国の皆さんにやれと言ったって、これは無理な話ですよ。 こればかりではありませんよ、大臣。南京大虐殺の問題あるいは朝鮮におけるところの植民地政策の問題にいたしましても、この実教出版のものを例にとってみても、これはうんと変えさせておるんですよ。そして、おもしろいことには南京大虐殺のあの二十万人とも言われておるという問題については、一万から二万あるいは数十万というそれぞれの資料があるのでなかなか正確を期す意味でそれは削除させたんだというあなた方の見解でしょう。 ところが、御丁寧にその四ページ後のナチスのユダヤ人絶滅の記述を見てみると、実に明確に「ヨーロッパ各地に強制収容所をつくって、二十カ国をこえる四百万以上の人びとを殺した。」、こうあるんだよ。まことにぼくはまた検定委員というのは感心だと思うんです。ヨーロッパの二十カ国を回って一々調べて四百万以上と明確にあったから書いたと思う。片一方は不明確だからと、こういうことは常識ではありませんね。これまた、ヨーロッパのことだからこれは構わぬわと、ここだけに焦点を置いたというのがあなた方の本当でしょうが。こういうずさんなものをつくっておいて、検定は動かし得ません、いじることはなじみませんと幾ら言ったって、ちょっとこの教科書問題に関心のある人が見たらおかしいと思うのは当然じゃありませんか、大臣。それでもあなた方はなじまないと言ってあくまでも抗弁するつもりですか。一つの教科書の中にもそんな矛盾はたくさん出てきておるんですよ。 しかも、御承知のように、いわゆる中国やあるいは朝鮮だけじゃなくて、東南アジア——シンガポールでもフィリピンでも台湾でも、今度の問題について批判が厳しいじゃありませんか。 いま一番大事なことは、本当に教育におけるところの世界史のねらい、国際人としての日本、世界的な視野を広げたところの日本人をつくる、そのために世界を見てもらおうという教育観から見ましても、これはそういうところの人々も理解できるところの表現であってこそ、初めてそれが生きるじゃありませんか。それが先ほどの話じゃありませんけれども、特定の史観を持ったところのグループのいろんな突き上げとか、あるいは国内のいろんなところだけをおもんぱかって、こういう客観的でなければならない教科書の記述さえページごとに違っている。しかも、それは誤りと気づいても手直しをしない。こういうところから本当に今日のいわゆる日本人づくり、憲法なり教育基本法に言われたところの人づくり、国際人として国際社会というこんなところにも精通しなければならぬところの日本なんですよ。そういうことについても歯牙にもかけない、目も向けない、こういうかたくなな態度で、この問題が一体処理できると大臣はお考えなんですかどうですか。時間がありませんから私はそこのところを最後に大臣から聞いて質問を終わりますよ。
○国務大臣(小川平二君) 教科書は信憑性のある資料に基づいた事実を客観的に叙述すべきものでございましょうから、ただいま数字についての御指摘がございましたが、たとえば広島に原爆が投下されたことによる死傷者の数を一例に引きますると、これにつきましては広島市の組織的な調査があり、広島県の組織的な調査があり、さらにまた被爆者団体の調査がございます。しかも、この数字がほとんど一致いたしておりまするから、文部省は広島の原爆についてはこの三つの数字のどれをお使いになっても結構ですと、こう申しておるわけでございます。 これに反しまして、単なる伝聞に基づく数字というようなものは信憑するに足らないということ、これは学問としての歴史の世界のイロハでございましょうから、さような数字が書いてありまする原稿につきましては、何かこれは根拠をお持ちでしょうか、根拠があったらお示しください、根拠がなければ削除なさった方が適当でございましょう、かような改善意見を出しておるわけでございます。 いま御指摘のありましたナチスドイツの話は、私自身検定の衝に当たったわけじゃございませんから、調査官等がどのような判断で検定を行ったか存じませんので、これは答弁申し上げることができませんけれども、基本的にはただいま申し上げましたような考え方で検定を実行しておるわけでございます。
○委員長(片山正英君) 宮之原君、時間でございますから……。
○宮之原貞光君 わかっている、それは。だから、終わりだと言ったんだけれども、大臣が肝心かなめの今後のことを一つも話さないから、ぼくはあえて聞くんですよ。その答弁をしっかりしてもらわなきゃ、幾ら時間ですと言ったって、お人よしの私でも、はいそうですかと下がるわけにいかぬですよ。 私は、いま一例を挙げたのは、世界的にも通用しないところのものを使って、いわゆる教育のねらいの憲法なり教育基本法に示した平和と民主主義を志向するところの人づくりとかあるいは国際社会に生きるという人間づくりというのが一体できるものでしょうかということを聞いておるんです。 まあ私は、時間がありませんから申し上げませんけれども、ここに私はイタリーとか西ドイツの教科書を持ってきておりますよ。やっぱり自分のところの、ナチスドイツの恥部は恥部として出しておる。そして、やっぱり歴史に対するところの厳しい反省の中から、ひとつ、われわれはこれを踏まえてこうしなきゃならぬと、きわめて前向きなんです。ところが、先ほど来指摘されたところの問題についても、内心ではそうと思いながらも、いやできません、なじまないと言って強弁をして、これ一体国際間で通用しますかというんです。それだけに大臣は、いままでの私の質問なり意見を聞いて、一体どういうふうにお考えですかというのが私の質問の最後の趣旨なんですよ。そこのところをお答えいただかぬと、ただ隣の局長からの、ああ言いなさい、こう言いなさいでは、私は、大臣ね、いわゆる政治家小川さんの面目は出てこぬ。あなたのやはり信念に立ったところの物の考え方をちょっと聞かしてもらいたいんです。
○国務大臣(小川平二君) 外国の人々からも尊敬され、信頼されるような日本人をつくると、またそのような日本の国家をつくっていくということは教育政策の一つの眼目であると信じております。したがいまして、これからもそのような心構えでりっぱな教科書をつくっていくように努力をしていくつもりでございます。
○委員長(片山正英君) 次の質問に移ります。
○長谷川信君 時間が非常に制約をされておりますので、大臣から簡明率直にひとつお答えをいただきたいと思います。 なお、いま宮之原委員からもお話ございましたように、余り文部省の事務当局に左右されないで、鈴木内閣のトップ閣僚として大所高所からひとつ御答弁をいただければ大変幸せだと思っているわけであります。 大臣も中国関係あるいはアジア・ASEAN関係、非常に御専門でいらっしゃるわけでありますが、日本と中国の間あるいは日本と韓国の間は約二千年の交流の歴史がございますね。その二千年の交流の歴史の中で、争った時間というものはまず百年に満たない。中国におきましても二千年のうち、まあ恐らく七、八十年くらいがトラブルの時間であったのでありますが、あとは大体友好の歴史を存続いたしておったわけだと思うんです。韓国におきましてもやや同断のことが言えるわけであります。それで、戦争が終わって、日本があのとおり世界の袋だたきに遭って、それから刻苦精励をして、どうやら今日アジアの中の友好の基盤を大体取り戻したというか、築きつつあった。そこで、いまこの教科書問題が出ているわけでありますが、私どもは、この解決の方法は、やはりアジア諸国との友好を取り戻すということが解決方法の根幹であり基本でなければならぬと思うんです。 なお、いろいろ御意見にもございましたが、歴史というものはやはり真実をそのまま書いて、そして後世の諸君がそれに基づいて誤りなき正しい方向を模索できるようにするのが歴史でなければならない。 きのう、私はある新聞で見たのでありますが、西ドイツの教科書にはやはり戦争のことがもうかなりあからさまにみんな出ている。アウシュビッツのあの惨状など教科書の中に写真が何枚も出て、若い諸君はそれを見て、こういうことをやちゃいかぬなあというふうな教育をしている。そうだからといって、西ドイツの国が別に共産化したわけでもありませんし、あそこの教職員組合がえらい左傾をしておるというふうな傾向も出ておらないようでありまして、やはり歴史というものは正しいことを記述して、それに基づいて後世の諸君が正しい判断をするということが歴史でなければならない。まあそういう意味からも、この問題は慎重に考えなければならないと思っているわけであります。 しかも、戦争が終わって日中条約を結ばれたとき、私も当時の責任者である一人の先生からもお話を聞いたんでありますが、あのとき周恩来と田中角榮のいろいろの応答の中で周恩来さんがおっしゃるには、あなたの国は八年間でもって約一千万人の中国の人民を殺傷というか、そういうことをやった、しかも家を焼き、鉄道を壊し、橋を壊し、あらゆる惨状をやったわけでありますが、だからそれはあなた方の方はやっぱり陳謝をしなさいということをかなり重ねて言ったのでありますが、しかしその応答の間で、深く反省をするということでけりがついたと、しかも賠償は一銭も取らないで、過去のことは忘れましょう、新しい時点からこれから日中関係の友好を取り戻しましょうということで、まさにこれは歴史的な取り決めが行われたことは小川大臣よく御案内のとおりであります。韓国におきましても、御案内のとおり日韓共同コミュニケでやはり日本国は深く反省をするということでけりがついて友好の取り戻しをやった。ここで、そういう教科書問題で、日本の私どもが考えておるよりもはるかに韓国、中国あるいはASEAN諸国、アメリカ大統領までこの問題に言及を始めておるぐらいでありますから、かなりやはり深刻な様相を呈しておることは大臣一番よく御案内のとおりであります。きわめて憂慮すべき状況であります。 そういう中でいまいろいろなことが行われているわけでございますが、文部省のおっしゃるには、先ほどからるる御説明がありますように、私どもはこれから北京に参ります、そしてソウルにも参ります、そして検定制度についてるる説明をして、必ず了解を得るように努力をいたしますということが文部省の説明の骨子のようでありますが、向こうの方の国は両国とも、検定問題は日本国内の問題であるから私どもはそれは関知したことではございませんと言っておる。これはもう当然のことなんですよ。まあしかし、深く反省をしておれば、このような記述を変えるということがないじゃないかというようなことがいまの議論の中心になっていることも御案内のとおりであります。 この間、ある新聞を見たら、中国だか韓国だか忘れましたが、「進出」ということで、トヨタ、日産からアメリカに自動車が進出をすることと同じように思われたのでは、これは幾ら何でも私どもとしてはたまったことではないというふうなことを中国人、韓国人のどなたか言っていることを新聞に散見をいたしておったのでありますが、なかなか神経がとがっておる。そういう中で、いま文部大臣は、あなたがおいでになろうと思ったら、北京の方はちょっと来ぬでくれよと、これもまことにはなはだ私どもは遺憾に思うのでございますが、いまは非常に大切なときでありますが、いまのような状態で、韓国、中国の皆さんが、文部省のおっしゃるようなことで了解をするというようなことが考えられるか、あるいはそういうことが可能性があるかどうか、私はむずかしいと思う。この点、きょうここで大臣から御答弁されると、いろんな何といいますか響きもあり、またそれこそ全世界にその大臣の御答弁が電波で通ぜられるわけでございますが、いろいろお考えをいただいて、きわめて高い次元で……。 やはりきのうも自由民主党の教科書問題の会合があって、いまもお話があったのでありますが、いろんな諸君がいろんな意見を言いましたが、何とか取りまとめようという方向でいま進んでおるんですよ。あるいはさっき宮澤官房長官も、鈴木総理がおいでになるまでの間にこの問題は取りまとめられますとはおっしゃらなかったが、取りまとめなければならないし、また取りまとめるように最善の努力を払いますと言っておった。だから、大勢というか、国内の情勢も、これはやっぱり何というか、あれだけいろんなことが起こったのでありますから、少なくとも一千万人の中国人が死んだり、韓国でも三十六年間の間にあれだけいろんなことがあった。それに比べれば、字句の三字や四字直すことはそれほど難解なことではないじゃないかという意見も国民の間にかなり浸透しておる。 ひとつ大臣ね、車を捨てて町の中を歩いてごらんになれば、私も自由民主党の一員ではございますが、この問題に関しては文部省の意見は余り街頭の中では通用しないような形になっておると私どもは承知をいたしておるわけであります。まあそういうことで、きょうは文部大臣というか、小川国務大臣から、きわめて大所高所からの立場で、あなたのいまこれからおっしゃることは直ちに電波でもって北京、ソウルに通ずるわけでありますから、これは必ずその検定の説明だけで事が済みます、あるいは済まないからこの字句の修正等につきましても前向きでこれから文部省としても検討しなければならないようなこともあり得る、あるいはしなければならない、それは御答弁は大臣の主観に基づいてのことでございますが、明確にひとつお教えをいただきたいと思うわけであります。
○国務大臣(小川平二君) ただいま仰せのように、アジアの諸国との間の相互の信頼関係、友好関係というものは、わが国が今日の国際社会においてよって立つ基盤でございますから、この基盤が大きく揺り動かされるようなことになってはいけない、何としてでもこの問題を円満に解決しなければならない、かように考えていろいろ苦慮いたしておる次第でございます。 問題は文部省の行いました検定に端を発しておるわけでございますが、申すまでもなく、文部省は軍国主義を復活しよう、あるいは歴史を改ざんしようなどという意図のもとに検定を行ったわけではございません。問題になっておりますのは主として歴史の教科書の記述でございますけれども、歴史の教科書につきましては、先ほど局長からも宮之原委員の御質疑に対してお耳に入れましたように、歴史の教育に際しましては客観的な事実を考察し、判断する力を養うということを旨とすべきであり、したがって用語につきましても価値判断を伴わない客観的な用語を用いる方が適切である。概して申しますれば、かような判断のもとに検定を行ったわけでございます。半面におきまして、かつての戦争に対する厳しい反省、あるいはかつての戦争に対してわれわれが重大な責任を負わなければならない。ことごとくの教科書はそのような基本的な認識で貫かれておるわけでございますから、歴史の教科書はかような認識を裏づける歴史の事実を客観的に記述すればよろしい。必ずしも歴史の教科書において「侵略」という用語を使わないからといって、はなはだ適切を欠くとは私は考えておらないわけでございます。かようなわが方の立場、姿勢、一口に申しますならば真意について、誠意を持って十分説明をすることによって理解を得たい、こう考えまして、及ばずながら全力を尽くしてきたわけでございます。 先般、文部省からも北京に局長を派遣いたしましたが、その際におきましても当方の立場をるる説明をしたという報告を聞いております。それによってわが方の立場についても相当の理解が得られたという印象を私は持っておりますが、それにもかかわらず、なおかつ中国は当初の要求を撤回しておらない。これがただいま私どもの直面しておる事態でございまするから、その事態を踏まえてどのように対応していくか、ただいま外務省とも協議をいたしまして、鋭意検討しているところでございます。
○長谷川信君 きのう北京で万里副総理が、日本の総理も来ることでありましょうから、この教科書問題について早期解決が望ましいと、修正の約束が解決の道であるというような発表をされているわけであります。韓国におきましては全斗煥大統領は、さっきもお話しのように、いろいろ演説もやっておるわけでありますが、わが国におきましてはいまのところ鈴木総理も公式声明はしておりませんし、まあ文部大臣はいまおっしゃった修正はできないが理解を得るように最善の努力を払うということのようであります。 ところが、これは学者の字句の論争でもなければ、いわば何というか字句解釈の問題でもないんで、中国、韓国あるいはASEAN諸国、アジア諸国の皆さんから見れば、要するに「侵略」を「進出」と書いた。それはしかし、トヨタ、日産の進出と紛らうような、そういうことでは、私どもがあれだけ悲惨な目に遭ったのが、それは胸におさまるわけがないから、これはひとつ戻してくれよということを言っているわけなんで、検定の問題がどうだとか、これは日本的に解釈をすれば、前後、後先を読めば、これは「侵略」ではありません。——ありませんというか、「進出」と書いておっても前後、後先、一ページ、二ページを読めばその大意というものはわかると説明をしても、それは学校の先生とか教科書の専門家あるいは若干知識のある人の話で、全体の向こうの国民感情からすれば、直すか直さないかということが、これがやっぱり私は譲れない向こうの線ではないかと思うんですよ。それをかたくなにいまのような御答弁をなさっておると。これは本当にアジアの中で孤立をするかもわからぬ。日本のこれからの新しい世代を迎えて、これからアジアの中で日本がいろいろこれからやっていくことが、もうこれは大変な憂慮すべき状態に進まないとも限らない。したがって、私は小川文部大臣あるいは小川国務大臣からこの修正あるいはその改訂について、これはやっぱり一歩踏み込んだ、総理は——私はさっき宮澤官房長官のお話を聞いて、政府見解もかなり前向きで検討されておるんじゃないかと思うんです。きのう自由民主党の会議におきましても、大臣のところに報告がいっているかとは思いますが、かなりやはり柔軟な意見が多かった。そして小委員長、委員長に一任をして取りまとめはお任せをするということになった。そこからスタートをすれば、私は自由民主党のあの結論もかなり弾力性のある方向にいっていることは私は間違いないと思う。そういう中で文部省だけが、検定が大事だから、検定が崩れるからということでやられても、これはなかなか世界のあれに通用しないんじゃないか。いまのアジア・ASEANのいろいろな各国の考え方の中でそれを理解してくれるということが、これはなかなかむずかしいのではないかと思うんですよ。 それではもう一回お聞きをいたしますが、政府・与党の中でそういう話が仮にまとまったとする。私はまとまると思いますよ。鈴木総理もいろいろ時間——まああの人は時間をかけていろいろ慎重に審議をされる方でございますが、最終的には、さっき宮澤官房長官お話しのように、かなり前向きでこの問題についての処理をなされると思う。そうなった場合、小川文部大臣は、総理が何と言おうが、自民党の幹部が何と言おうが、文部省の親方だか手下だか知らないが、おれはもう頑としてそれは聞かないんだということで貫かれるのか。その辺はやっぱり真剣にひとつ考えていただかないと国の道を誤るもとになるかもわからぬ。その辺もう一回ひとつ御答弁をいただきたい。
○国務大臣(小川平二君) 一面におきまして中国あるいは韓国とアジア諸国との間の信頼関係にいささかでも傷をつけてはならない。半面におきまして検定制度のたてまえを崩すこともできない。しからば接点をどこに求めたらよろしいか。これがただいま私が苦慮しておる問題でございます。鋭意検討をいたしまして、円満に事態を打開できる方法を発見したいと考えております。
○長谷川信君 まあ非常に微妙な事態でありますので、歯切れのいい御答弁がいただけないとは思いますが、いまの大臣の御答弁を聞いておりますと、何となくやはり文部省の考え方、さすがはやっぱりアジアの理解者の中で育てられた小川先生のお気持ちも若干にじみ出ておるような感じがいたすわけであります。それを顕微鏡で拡大してみますと私どもも若干推察ができるのでございますが、これはやっぱりそういうことでひとつお考えをいただかなければならないと思っておるわけであります。いま大きくうなずいていらっしゃいますから、それが御答弁だということで承知をいたしておきたいと思いますが。 それから教科書の問題、私もかつて文教委員をやっておったことがあるのでございますが、この教科書の原本を大臣、ごらんになったことございますか。
○国務大臣(小川平二君) ございます。
○長谷川信君 私もあれを見たことがあるのでありますが、歴史とか公民とか、あの教科書の原本は百ページのうち七十ページぐらいは赤棒が引っ張ってある。それは七十ページだか六十五ページだかわかりませんが、少なくとも大半に赤棒が引っ張ってあって、その残ったものをつなぎ合わせるに苦慮するような形で教科書が編集をされており、それがまた検定にかけられるということなんで、私はいまの文部省のやっていらっしゃる教科書の作成の過程、それから検定の問題も、これは絶対の絶対の神様のつくったものであるから、もう何が何でも変更できない、これを変更したら日本の国が滅びるというふうな、そういう大げさな議論は文部省の諸君はこれからやめていただかなければならぬと思う。 それは、さっき申し上げたように、ほかの国だっていろいろなことをやっている国がたくさんあるし、何も百ページのうち、私が見たのはたしか公民——公民というのはいまあるかないかわかりませんが、昔で言えば公民の教科書、社会というのかもわかりませんが、見たら三百ページくらいのうち百五十ページ以上が削除してある。そういう削除したのを幾らつなげても、果たして納得のいく教科書が私はできるかどうかわからないと思っておる一人でございますが、そういう過程の中の教科書を絶対不磨の大典のごとく考えて、これはもう世界じゅうだれが何と言おうが絶対に変更できないなどとおっしゃる意見も、これも果たして通用していいのかどうか若干疑問もあるわけでございます。 これもちょっと手荒な話になるかどうかわかりませんが、ああいう原本を一遍ひとつ国会に全部提出をしていただいて、国会の中で文教委員会もしくは各党の文教関係の皆さんからもいろいろ見ていただいたり、御審議をいただいたりして、文部省の教科書制度について基本的に洗い直す必要を私どもは感じておるんですが、これは事務当局から御答弁いただくわけにいかないでしょうが、大臣のきわめて高度な立場から、この教科書についての見解をひとつお披瀝をいただきたいと思います。
○政府委員(鈴木勲君) 長谷川先生からただいまお述べになりました教科書検定に関する問題でございますが、これは検定制度の仕組みがいろいろございまして、先生先刻御承知のとおりでございますが、教科用図書検定調査審議会に諮問をいたしまして、その答申に基づいて行っているというものでございまして、その過程において調査官の指示とかいろいろな問題があるわけでございますけれども、できるだけよい教科書をつくるために、学問的な立場あるいは教育的な立場からいろいろと検討をいたしまして、それに対する意見を付したりしているわけでございまして、そういう意味で、検定制度は民主的な制度といたしまして、自由な発行者のまず発意に基づいて企てられまして、それを国の立場から検定をするということでございまして、この仕組みはやはり自由主義の原則にかなっているというふうに思うわけでございます。これを不磨の大典というふうに思っているわけではございませんで、正誤訂正とか、あるいは改訂とかいろんな道があるわけでございまして、その道に従っていろいろな改善の道が図られているということでございまして、そのルールに従って検定の仕組みが行われますならばこれは問題がないというわけでございますけれども、ただいまのお挙げになりましたくだんの件につきましては、これはすでに調査会の議を経まして、教育的な見地から意見を付したものにつきまして記述の再改訂ということが問題になっているものでございまして、これを現在のルールの中で処理するということはむずかしいということを申し上げたわけでございます。 それから、いま御提案のございました原本を公開せよということにつきましては、これは教科書のできる過程でございまして、でき上がったものが見本本という形で初めて公にされるということでございますので、企業の問題あるいは採択の公正という見地から当委員会におきましても種々御提案がございましたけれども、その件については差し控えさしていただくということを従来から申し上げさしていただいておるわけでございまして、でき上がりました見本本、検定教科書につきまして御検討をいただければありがたいということでございます。
○長谷川信君 見せられないということ、あなたそうおっしゃればこれはしようがないことなんでしょうが、これは本当に私はちょっと一部を見せてもらったんですよ。なかなかこれは本当にいろいろ書いてあるのでありますが、そういうものをもとにして教科書をつくって、そして検定をしたものがこれはもう不磨の大典のごとく——いま文部省はそういう考え方じゃないですかな。韓国が何と言おうが、中国が何と言おうが、あんたらそんなこと言ったって、おれの方は検定制度がこれはもう最後の守る線なんだから、だれが何と言っても一歩もこれは動かすわけにいかないんだというのがいまの文部省の態度でしょう。いまのあなたのお話のように、いやこれは不磨の大典じゃございません、こんなものは何回も訂正もできますし、訂正をする機会もあるし、幾らでもありますということをおっしゃった。もしそれがそのとおりだとすれば、私はこの問題も、まあいろいろ手続があるからきょうあす直すというわけにはいかないでしょうが、約束さえしてくれれば私どもの方は了解をいたしますということを、この新聞報道が事実だとすれば万里副総理はそう言っているのだから、だからそれは文部省としてもやっぱり若干私は幅のある答弁を小川文部大臣からきょうあたりやっていただかないと、韓国は大統領が言っている、中国は万里副総理が言っている、日本は鈴木さんは黙して答えず、まあ文部大臣はうなずいてはくれたがはっきりともしないということであったのでは、それはやはり私は国際間の——私は外交のことはよくわからないが、外交常識からしても、向こうの総理や大統領が言ったら、少なくともわが方からも鈴木総理もしくは小川文部大臣がやっぱり見解の表明をすべきだと思う。そういう中で、いま鈴木さんおっしゃったように、これは不磨の大典でも何でもないので、こんなものは要請があれば変えられるし、変える機会も幾らでもあるし、また変えてもよろしいということをいま鈴木さん言ったでしょう。あなた言ったじゃないの、それは。
○政府委員(鈴木勲君) 検定の仕組みを申し上げまして、改訂検定とかあるいは正誤訂正の手続がある、そういうルールに乗ってくればそれはその道がございますが、いま先生が御提案になっているような件につきましては、このルールに乗らない、そういう趣旨になじまないということは再三申し上げているわけでございまして、そういう道は開かれていて、教科書をよりよく改善する道はございますけれども、いま、ただいまの御提案をこのルールに乗せてやるということにつきましては、先ほどから申し上げているとおり、この趣旨にはなじまないということでございます。
○長谷川信君 どうもちょっとわからないのでありますが、そんなにこれは固執しなければならない問題かということが一つと、私も一兵卒で戦争に行っていろいろ見てきた一人でありますが、あれだけのことを日本がやっぱりやったんだから、それに比べればこんな字句を直すなんということは、これは見方によっちゃ枝葉末節のことである、本当にささいなことであるかもわからない。それもできない、そう言う反面、また改正もできる、あるいは訂正もできると言う、また事実そういうことも過去にも何回もあったのでありますが、何でそんなに固執されるのか。私はさっき申し上げたように、こんなことをもう二週間も三週間も繰り返したら、日本の文部省はこれは本当に私は国民の中からやっぱり批判が出ると思う。また、ASEAN、東南アジアから袋だたきにならぬとも限らない。しかも小川文部大臣がアジア・ASEANにきわめて理解がある中で、いろいろいままでそうやってこられて、しかもそういう経歴の中でずっとおいでになって、これは小川文部大臣が、まあこれは事務の連中がいろいろ考え方もあるだろうがおれはこう思うのだということを、それははっきりでなくてもいいが、きょうあたりやっぱり少し言っていただかないと、これはもし今度政府で決まった、自由民主党でも改正についてかなり前向きに検討しなければならぬ、文部省だけ反対したら文部省が日本の国の中でも孤児になりますよ、そんなことしたら。だから、その辺はやっぱり高度の政治的な判断、感覚も含めて、文部大臣からきょうやっぱりある程度前向きの御答弁をいただかないと、これは文部省のためにも私は大変だと思う。 それからもう一つは、検定が崩れるとかいろいろ議論もございますし、専門的な文部省の考え方も理解できないことはない。理解できないことはないが、日本国はここまで成長して、民主主義がここまで定着をした今日、検定がたとえ多少の揺れがあっても、そんなことは今度国民が支えますよ。それはいまの検定制度なんというのは国民の中でだれもそんなことわかっている者は一人もいないもの。本当にこんなものは、まあ専門家はわかるかしらないが、国民の間では検定制度がどうだこうだということは一般的には恐らく通用しないことだ。通用しないことを中国や韓国やASEANに持っていって、おれのところは検定制度はこうだから、これはこうなって、それはだめだよなんて言ったって、それはもう通訳を使っても私は向こうは理解できないと思うんだな。そういう意味で、小川先生、きょうはひとつ——それ、もう本当に党もそうなるかもわかりませんよ。鈴木さんも私は考え方がそういう方向に来るかもわからぬ。宮澤官房長官もさっきそれらしいことを言っておられた。これはやっぱりそうなると思うんですよ、ちょっとくどくて悪いけれども。そういう中であなただけひとり文部官僚と、いや、おれのこの城は最後の城だから死なばもろともだなんて考えられたのではこれはたまったものじゃない。だから、これは先生、きょうはある程度ひとつ前向きな答弁をなさって、本当にこれは総理がおいでになるまで解決するかもわからぬ、大体いまいろいろ検討されている範囲内において。それはきょうあすとは言わないが字句の修正は約束することになるかもわからぬ、あるいは私はそうなると思う。そうなってもなおかつ、おれは文部大臣だからおれ一人だけでも守るなんて言ったのではこれは高度の政治判断とは言えないし政治家小川先生とは言えないかもわからぬ。ひとつ大臣、これは本当に真剣にお考えいただいて、時間でございますがもう一回御答弁をいただきたいと思うんです。
○国務大臣(小川平二君) 教科書の検定という制度が果たしておりまする意義、役割りにつきましては先ほど初中局長からお耳に入れたとおりでございます。非常にこれは重要な役割りを果たしておるわけでございますから、この制度のたてまえそのものを崩すということはこれはできません。これは私が文部省と心中するとかなんとかいう問題ではないのでございます。これはできないことでございますから、この際できませんとはっきり申し上げざるを得ないのでございます。同時にしかし、事態はここまでのことになってきておるわけでございまして、一歩誤りますときにはわが国が国際社会でよって立つ基盤そのものが取り崩される非常にむずかしい局面に直面をしておると考えております。 そこで私は、先ほどこの二つの要請の接点をどこに求めるかというような大変抽象的な簡単な言葉で申し上げたわけでございますが、ただいまどのようなことを考えておるかということにつきましては何分これは相手のある仕事でございますので、この場でしかじかと御説明申し上げるわけにはまいりませんけれども、外務省との間に鋭意問題を詰めていきまして必ず問題の解決ができるような具体案を遠からず公表できると、こう考えておるわけでございます。
○田沢智治君 昨今の中国、韓国の国情を報じたニュースを見ますときに、いまや教科書問題は過去の日本が行った歴史的事実に対する民族的国家的批判、抗議の運動へと発展しており、深刻な事態を招いていると私は認識しておるのでございますが、文部大臣の御認識をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(小川平二君) 中国あるいは韓国を初めといたしまする近隣のアジア諸国との目下の状況、憂慮にたえない問題と考えております。文部省としてもなお一層真剣に検討すべき段階に差しかかっておりますことは十分承知いたしておりますので、現行の検定制度のたてまえを崩すことなしに何らかの打開策を是が非でも最短期間に発見しなければならないと、こう考えて鋭意努力をしておるわけでございます。
○田沢智治君 きょうの各紙の報道を見ますと、教科書問題を早期解決して、九月末の鈴木総理の訪中については中国政府として歓迎すると報じております。文部大臣は、中国政府の要請があれば鈴木総理とともに訪中する考えがございますか。
○国務大臣(小川平二君) 要請がありますれば、もとより喜んで同行いたします。
○田沢智治君 ぜひそういう段取りをつけられて円満解決を早期に図っていただきたいと思います。 そこで、きょうは大崎局長お見えでございますが、八月の八日に外務省の局長さんと大崎局長が中国に行ったわけでございますが、帰国後の記者会見によりますと、相互の理解を進める上で一応の成果があったと、かつまた中国側もこの問題を円満に解決したいと、そしてさらに大崎局長さんは教科書検定についてまた文部省の考え方を誠心誠意説明できたというような談話が発表されておるのでございますが、理解ができたと、し合えたというような内容のニュアンスであると私は思うのでございますが、何を理解し合えたかという考えをお持ちでございますか。
○政府委員(大崎仁君) お答え申し上げます。 私自身がそのような表現を申し上げた記憶はございませんが、私自身のただいまの考えを申し上げますと、北京滞在中数回にわたりまして中国政府の関係の方々と話し合いの機会を持つことができまして、それらの話し合いを通じまして本件に関しまする事実の認識あるいは双方の考え方ということにつきましては理解を深めることができたというふうに考えております。
○田沢智治君 理解を深めたということでございますが、中国側は早期解決の糸口の中で円満にとにかく解決したいと、日本の検定制度については立ち入らないということを確認できたと言っておりますが、日本の教科書の検定制度の仕組みについて理解されたと御認識でございますか。
○政府委員(大崎仁君) 検定制度につきましては私から申し上げましたことは、一つは、検定制度のさきの説明が民間に責任を転嫁したというような受け取られ方をもししているとすればこれは全く文部省の真意ではないということを明確に申し上げました上で、しかしながら国定教科書と検定教科書というものの間の性格の相違というものは明瞭に御認識をいただくことが本件についての御理解をいただく上で非常に大事な点だということで重ねて説明をいたしますとともに必要な資料も差し上げてまいりましたので、この点に関しましては十分御理解いただけたというふうに考えております。
○田沢智治君 それは解決への一歩前進だと私は思うのでございますが、そこで中国が日本の教科書の中で一体何カ所訂正要請を申し入れているのかと。聞くところによりますと、七月の二十六日の中国のアジア局長から日本の渡辺公使に申し入れられたというのは三点あると、こう思っておるのでございますが、検定において歴史の事実の改ざんが行われていることには同意できないということ、たとえば侵略、満州事変あるいは南京事変に関する検定の例を引かれ、また日中共同声明、日中友好条約の精神に反すること、日本政府により教科書が正されることを切望するというような内容のものを私たちは認識しておるのですが、このような内容のことであったかどうか確認ができたでしょうか。
○政府委員(大崎仁君) 基本的にはさきに呉学謙外務部の副部長から鹿取大使に申し入れた内容というものに変化がないということでございます。
○田沢智治君 そこで外務省に私お聞き申し上げたいのですが、最近特に中国の高官の発言の中には日本国内に台頭してきた軍国主義者の実態等について報じておるのですが、外務省としてはこの実態とは何であるかという御認識に立たれておりますか。
○説明員(長谷川和年君) お答えします。 中国としてはわが国に現実にその軍国主義が復活しているとか台頭しているとか、こういうことを問題としているのじゃなくて、今回の教科書問題に関連しまして、教科書の表現ぶりなどをとらえて、将来軍国主義を復活させようと、こういった意図のあらわれとして問題にしていると了解しております。
○田沢智治君 まあ日本は再び軍国主義的な要素のもとに国運を図るなんていうことはだれしも考えていないと私は思うんです。外交関係の中でその姿勢というものをより徹底するよう努力していただきたいと御要望したいのでございます。 そこで、八月の十二日に櫻内外相が所信表明というものを行ったのでございますが、何か外相だけが先走って具体的な内容の所信はないと、こう批判されておる実態について、その時期に何の効果を求めてこういう所信表明を出されたのか、お聞きしたいと思いますが。
○説明員(長谷川和年君) 八月十二日に外務大臣が所見を述べましたのは、ちょうど外務省の橋本局長、文部省の大崎局長が中国を訪問しておりまして、また韓国では同日、外務省の崔亜州局長が在韓大使館の後藤公使を呼びまして、去る三日の日に李外務部長官が前田大使に手交しました備忘録に対する回答を督促すると、こういった動きがあったものでございまして、こういった重要な段階を迎え、外務大臣としての所見を明らかにしておくと、こういう必要があったと考えたわけでございます。
○田沢智治君 私はこの問題は所信を出せば収拾するということではないと思うのでございますが、多分外務大臣の考えの中には、中国、韓国の現状を見たときに、教科書問題はいまや高度の政治的判断のもとに教科書記述変更を含む解決策を具体的に検討する必要性があるとの認識のもとに出されたのではないかと、こう思うのでございますが、外務省としてはどのようなお考えでございますか。
○説明員(長谷川和年君) この教科書の問題につきましては、実態面では文部省の御所管でございますし、ただいま文部省と御協議しまして鋭意対策を考えているところでございまして、私たちとしましてもどのような対策をとるかということにつきましては文部省と御協議の結果出てくると思うのでございますけれども、いかなる対応ができるかということにつきまして、その実態的な内容は別といたしまして、現在いま鋭意考えておりまして、大臣もそのようなことを頭に置きましてあのような所見を発表したと了解しております。
○田沢智治君 私はやはり日本の姿勢というものが問われているという現実を見たときに、この際、政府は、日中、日韓問題を解決して悠久な友好的親善関係を確立するために、真に日本が過去を反省し、現在を顧みて自由を愛し、平和に徹した平和憲法を堅持すると鈴木内閣は言っておるんです。そういうような精神的な実態を明示して諸国民の信義に信頼した国づくりを行う決意を所信表明の中で行い、決して軍事大国にならぬという基本姿勢を持って政府間交渉を通じて問題の解決に当たるべき時期であると私は思うのでございますが、外務省としての考えがあればお聞かせいただきたいと存じます。
○説明員(長谷川和年君) 外務省としましては、本日の委員会の御審議でもいろいろ言及されました日中間の共同声明の前文にある基本的な認識、あるいは日韓につきましては日韓の共同コミュニケにあります同様な認識、こういったものを念頭に置きまして、同時に委員御指摘の憲法の精神とかこのようなものを念頭におきまして本件について文部省さんと御協議の上、鋭意解決策を検討していくという考えでございます。
○田沢智治君 次に、韓国の問題でございますが、これは韓国の問題の方がさらに深刻であり、政府からの派遣も見合わせてほしいというような現状の中では、韓国政府との打開策の道が開けてないんじゃないだろうかと私は心配するのでございますが、韓国関係の現状についてどのように認識され、どういう方法で打開していこうかというような決意があれば外務省として聞かしていただきたいんですが。
○説明員(長谷川和年君) 韓国におきましては、御承知のとおり、現在教科書問題を契機としまして、全般に日本の歴史教育につきまして大きな関心が持たれておりまして、最近では日本の統治時代の行為が改めて新聞紙上に紹介されるに至っておりまして、また抗議の集会、あるいは日本人のタクシー乗車拒否、あるいは日本商品の不買運動と、こういった動きが全国的に広がっておりまして、この問題に対する日本の対応につきましてやはり韓国側としても非常に真剣に見守っていると、そういうところでございます。外務省としましてもこういった事態を認識しまして、教科書問題そのものにつきましては文部省の御所管でございますので、文部省とも協議しつつ真剣に対応策を検討していくというふうに考えております。
○田沢智治君 文部省にお伺い申し上げたいんですが、このような現状の中での韓国に対する文部省は今後どのような対応策の中で解決の糸口をつかもうとしておるか、お考えがあればお聞かせください。
○政府委員(鈴木勲君) 中国、韓国全く同様な方針で対処いたしているわけでございますが、文部省といたしましてはこのたびの検定教科書をめぐる近隣諸国との問題につきましては、これによりまして友好関係が損なわれることがあってはならないという観点から努力をしてまいっているところでございますけれども、現在外務省と緊密な連絡をとりまして、現行の教科書制度のたてまえを堅持しつついかなる対応が可能かということを鋭意検討いたしているところでございます。
○田沢智治君 大臣が来ないと僕は質問できないから……。
○委員長(片山正英君) ちょっと速記をとめてください。 〔速記中止〕
○委員長(片山正英君) 速記を始めてください。
○田沢智治君 大臣ね、いま中国の問題はある程度解決の見通しというものが立ってきていると私は思うんですが、対韓国の問題については、学生が座り込んだり、休み明けの今度は韓国内における学生等の血気盛んなる抗議運動が展開されるということになると、ますますこう解決の見通しがむずかしくなると思うんです。そういう現実を踏まえながら文部省は外務省と連携して外交ルートを通じて円満な解決を図るという方法も真剣に考えなければならない時期に来ていると私は思うんですが、大臣としてはどういうお考えでございますか。
○国務大臣(小川平二君) まことに御同感でございます。そういうことを考えております。
○田沢智治君 そこで、中国、韓国政府の真意が理解でき、教科書記述の一部を再修正することによって両国との円満な解決ができる場合、記述を書き加えたり書きかえることについて教科用図書検定調査審議会に諮問する考えはございますか。
○政府委員(鈴木勲君) 私からお答えをさせていただきますが、この御質問が仮に正誤訂正手続に関するものでございますれば従来からお答えしているとおりでございますけれども、改訂検定ということでございますと、これは従来から三年ごとにすでに検定をいたしました教科書の改訂検定の機会を設けておりまして、その際にどのような申請を行うかということは申請者の方針にゆだねているものでございます。もちろん、申請があれば文部省におきましては検定に臨むわけでございますけれども、その申請が今回の検定におきまして改善意見に従って改善が図られた記述をもとのとおりに戻すというものでございますと、これは前に申し上げたことでございますけれども、いまの制度では認めるということにはできませんが、いま書き加えるとかあるいは書きかえるというふうなことでございますれば、これは改訂検定の内容に当たると思いますので、そういう申請がございましたときには教科用図書検定調査審議会に対しまして通常の手続に従って諮問がなされる。それに基づきまして検定を経るということでございますので、当然に審議会には諮問をいたすこととなるわけでございます。
○田沢智治君 私は、ここで出口が大体見えたと思うんです。三年後の執筆者及び出版社の改訂申請があれば応ずるというような局長の考えだと思うんです。これはこれで一つのルールの中での運用面における最大限の私は行き方じゃないだろうかと、私はそう理解します。 そこで、教育の中立性を維持するために現行の検定制度の運用は当然厳正に行うというのが私はあたりまえだと思うんです。教育が中立性を保つために検定制度というものをつくり、国家の不当な介入とかあるいは政党の不当な介入というものを教育の中立性は排除するのだ、教育は民族、国家全体のものであるというような次元の中でわが国の検定制度というものが確立され、しかももう二十数年来運用されてきているというような実態から見ると、この制度を全く変えて国定的なものにするということは私は誤りだと思うんです。 そこで、鈴木内閣が国際協調を図るために教科書記述内容の変更を求めたときに——よく聞いてください。現行検定制度の運用内でできない場合は、近く中教審の答申が出るということでございますので、中教審の答申を踏まえて改訂を含め検討する用意がございますか。中教審の答申を踏まえて早期改訂する考えがあるかどうか、これをお伺いしたいと思うんです。
○政府委員(鈴木勲君) 中央教育審議会に対しましては、初等中等教育の教育内容の基本的なあり方という観点から昨年の十一月に諮問をいたしまして、現在、教科書につきましては教科書小委員会において検討が進められております。これは、教科書制度全般にわたる検定もございますけれども、採択、発行、無償給与等も含めまして、教科書制度全般にわたる御検討をいただいておりますので、ただいまお取り上げになりましたような検定制度のもとの運用の問題とかそういうことにつきまして中教審が直ちにこのことに関連するような形の検定をするということではございませんで、それは制度の基本的なあり方についての検討ということでございますから、それに従ってどうこうというようないまの筋道にはなっていないということでございます。
○田沢智治君 大体文部省の考えも私は理解できると思います。 問題は、中国がどこの個所をどのように具体的に明記してここをこう書いてほしいとか、韓国においても同様な要望等についての具体的な内容の詰めがまだ行われてないんじゃないだろうか。国民も、一体中国が何を求め、韓国がどういう具体的な記述内容についての改訂要求をしておるのかということについて——もちろん日本は日本としての考えがあるわけでございますので、そういうような韓国、中国が具体的に変更要求が提示された場合に、文部省はみずからの見解を含めてその記述内容を互いに整理するため政府間交渉を積極的に進める用意があるかどうかお聞きしたいと思うのでございます。
○政府委員(鈴木勲君) 具体的な教科書の記述内容の変更につきまして政府間交渉をするというふうなことにつきましては、これは教科書の制度が異なりますし、また、国情も異なりますので、非常に困難であるというふうに考えております。
○田沢智治君 もう時間はございませんので、外務省と文部省に私はお聞きしたいんですが、今日の事態を招いたということにおいていままでの日本の外交姿勢がこれでよかったのか、あるいはいままでの文部行政がこれでよかったのかと、基本的な問題について私は反省する必要があると思うんです。 そこで、日中、日韓の真に友好関係を維持し、向上するためには日本として今後何をなさなきゃならないのかということをどのように今回の事件を通してお考えになられておるかお聞きできれば、こう思うんですが、外務省いかがですか。
○説明員(長谷川和年君) 外務省としましては従来世界じゅうの各国と幅の広い交流を行っておりまして、その中の一環としまして文化交流、人物交流等も行っているわけでございますけれども、たまたま先生御指摘の韓国、中国に関しましてはたとえば教員を招待するとか若者を招待するとか、このようなかっこうでもっていろいろな相互の間の理解を深める活動を行っているわけでございます。今回のこの問題に関係なく、あるいはこの問題があるからこそ、今後なお一層の日中、日韓その他の国々との間で、文化のみならず幅の広い広範な措置をとりまして、お互いの間の理解を深める努力をしてまいりたいと思います。
○田沢智治君 文部大臣にお聞きしたいんですが、私は日中、日韓関係は政治的、文化的交流だけではなくして、真の友好は両国民の間において文化的、教育的、学問的交流を密にするということが今後さらに必要になってくるんじゃないだろうか、私はこう思うのでございますが、文部大臣どうお考えでございますか。
○国務大臣(小川平二君) 仰せのとおりに両国の国民の相互理解を進めていく上におきまして教育、学術、文化の交流ということにはこれから先も一層意を用いていかなければならない、こう考えております。及ばずながらその努力もいたしておる次第でございます。
○田沢智治君 最後に、文部大臣に、私は日中、日韓の友好親善を図るために、先ほど申したような、あるいは文部大臣が申されたように、学問的、文化的、教育的な交流が必要なんだというようなお考えがあるとするならば、中国、韓国両国政府の合意があれば、教科書問題を含めて文化交流の推進について首脳会談の開催を私は適当な時期に申し入れるということも大事じゃないだろうか。そういう中で真に本当の友好親善を図っていくという姿勢が今後欠かしてはならない日本にとって大事な決定的なものになると私は確信するんですが、そういう意味では首脳会談等も将来における適当な時期に申し入れ、そうして実現するよう努力するということについての決意があれば、お伺い申し上げたいと存じます。
○国務大臣(小川平二君) 教育、学術あるいは文化の交流ということは、あらゆる機会をとらえて、またあらゆる方法でこれを促進していかなければならないと考えております。当面仰せの首脳会談ということについては考えておりませんけれども、そのことがその目的達成のために非常に有効だと判断をすべきときがまいりましたならば、その実現にも努力するつもりでございます。
○田沢智治君 ぜひそういう前向きの姿勢で取り組んでくださいますことを切に御要望いたしまして、私の質疑を終わります。
○柏原ヤス君 今回の教科書問題の一連の動きを見ておりますと、国の内外とも、その動きが鎮静化するどころかエスカレートする一方だと思っております。こうした状況を国民のだれもが憂慮しております。特に文部省の対応に不満を感じ、外国に対しては済まない、恥ずかしいというような気持ちでいるのが偽らざる心境であると思います。したがって一日も早い解決が望まれるわけですが、私はきょうこの場で、これまでの政府、また文部省の取り組み方に反省を促すとともに、今後どう解決に臨むべきかという観点から若干質問させていただきたいと思っております。 そこで、従来の政府の対応では鎮静しない、一層問題が大きくなる、この内外の不満はエスカレートする一方だと、こう申しましたが、その原因、文部省はこれをどういうふうに考えていらっしゃるか、またその責任をどうとろうとしていらっしゃるか、お聞かせいただきたいと思います。
○政府委員(鈴木勲君) 中国並びに韓国に対する本件に対する対応につきましては、外務省と協議をいたしまして対応してまいったわけでございまして、当初から申し上げておりますように、これを国内問題であるからということではございませんで、その申し入れに対しましては謙虚に耳を傾けて、わが国の教科書の制度あるいは教科書全体の記述等につきまして理解を求める努力をしてまいったわけでございます。この問題が、これまでの経緯につきましては私ども真剣に受けとめておりまして、この不満の原因がどこにあるかということは、私どもとしてはなかなか的確な分析、評価はできないわけでございますけれども、できるだけ誠意を持って対応することによりまして、こういう友好関係を損うことのないような事態を、できるだけ早く解決いたしたいという気持ちでいるわけでございます。
○柏原ヤス君 原因がなかなかつかめないというようなはなはだ頼りにならないようなお返事でございますが、それには国際関係の複雑性というものがあると、それだけに私は政府、特に文部省の認識は甘過ぎたんじゃないかと、対応も不十分だったのじゃないのかと、こう指摘せざるを得ません。 その第一は、まず問題解決の第一歩として、中国、韓国が具体的にどのような要求をしているかを的確に把握していなかった。まあ原因がつかめないという先ほどの局長さんのお言葉もありましたんですから、確かにそうだ。ただ、謙虚にとか誠実にとか、そういう言葉は繰り返しお聞きいたしましたし、その謙虚というのは中身が何なんだろう、誠実にということは一体どういうことなんだろうということはいまだに私は具体的につかめないんです。しかし、文部省が検定制度の仕組みを説明したと、これは確かですね。この検定制度の仕組みを説明すれば相手が納得するだろうなどという、こういう考え方に対してこの委員会ではどの方も、甘い、甘過ぎる、そんなものじゃないじゃないかと申し上げたわけです。この検定制度の仕組みを説明すればこちらは弁解になる、また責任転嫁にとられる心配が非常にあると、こう心配したわけですが、私は確かに結果的にそうなったんじゃないか。また、教科書全体を見てもらえば理解してもらえる、「侵略」を「進出」と言葉は直したけれども、その前後を見ていただけばわかっていただけるなどという、そういう甘い見通しはやっぱり相手を納得させられなかったという結果になったわけでしょう。むしろ問題をこじらせた。後手後手といってしまった。向こうから不満を持ち込まれたんですから、それに対しての切り返しと言おうか、まあ切り返しなんというとちょっと挑戦的ですけれども、それに対してどう手を打てばよかったかというその見通しと言おうか、そのけじめというものが余りにも認識が甘いために誤ったと。私は、問題がここまで来たその原因はこれだと、文部省の認識の甘さだと、こう言わざるを得ないんですけれども、その認識が甘過ぎたというそういう御反省、そういうものは全然ないんですか。
○政府委員(鈴木勲君) これは去る六月の二十六日にわが国の五十六年度の教科書の検定の結果が公表されまして、それが新聞に報道されてからでございますが、その報道を契機にいたしまして中国の新聞等が取り上げ、その結果、その筋道の中におきまして外交ルートを通ずる指摘があったわけでございます。したがいまして、これは外交ルートを通じて参りましたものにつきまして文部省はできるだけその真意を推しはかりながら外務省と相談をしてやってまいったということでございまして、その外交ルートを通ずる中国の申し入れの真意等につきましては、やはり私どもとしては、私どもの守備範囲でございます教科書検定制度、検定によりまして起こってまいりました結果でございますから、そういうものを十分に説明いたしまして理解を求めなければならないという対応をしたわけでございまして、その真意を推しはかると申しますか、その点につきましては外務省との連絡のもとにやってきたわけでございまして、私どもとしては、私どもの守備範囲の教科書の問題としてできるだけ誠実に対応してまいったという気持ちでいるわけでございます。
○柏原ヤス君 問題がここまでこじれてきたんですから、最初の考え、そしてその次の段階、そして現在というふうにこの問題の流れを考えた場合に、発端はこの「侵略」を「進出」にしたために起きた問題なんですから、もちろん文部省の責任。外務省外務省と言っていますけれども、甘過ぎたと思うという局長さんのお言葉が一言もございませんけど、甘過ぎてないということですか、それじゃ。
○政府委員(鈴木勲君) 外務省に責任を転嫁したわけでございませんで、事は外交ルートを通じまして外交問題としてなってまいったということでございますから、私どもはその関係におきまして教科書問題として対応したわけでございまして、いま御指摘がございましたけれども、結果としてたとえば責任を転嫁したというふうな受け取られ方をいたしましたのは、これは真意ではないということでございまして、これにつきましては、大崎学術国際局長が北京に参りました際にその真意をお伝えいたしまして、わが国の教科書検定制度の本当の意味というものについてさらに理解を深めるような努力をしてまいったわけでございまして、この点についての考え方は私どもは間違ってはいないと。ただ、このことが十分にまだ理解されていないという点につきましては大変遺憾でございますけれども、そういう観点からもできるだけ努力をしなければならないと考えているわけでございます。
○柏原ヤス君 努力するについても甘過ぎたと、いままでの考え方は甘過ぎたと思わなければ、それ以上の熱というんですか、力は出てこないと思いますよ、これでよかったんだよかったんだと言っていたんじゃ。悪くはなるかもしれないけれどよくはならないと思います。私は、そこに甘かったという、そういう反省というものが一つのバネになって、次の判断が適切になっていくと思うんですね。 そこで、鈴木総理、ここにいらっしゃいませんけれども、陰で言うわけじゃございません、文部大臣からもお伝えいただきたい。全くあの鈴木総理は拱手傍観、リーダーシップを発揮しなかったための結果ですよ。自分が任命した文部大臣が国から断わられるなんていうことを、残念に思ってはいるんでしょうけれども、自分はのこのこ行くんでしょう、それで。自分の片腕になる文部大臣が断わられて、自分だけ総理だから行くと。それはかっこいいかもしれませんけれども、向こうから文部大臣はどうしてますかって言われたときに何て答えるんですか、あの総理は。そういうことを考えると文部大臣も本当に立場上お気の毒だと、くやしいだろうと私は思いますね。私だったらそう思います。一体総理は本当に文部省を守ったのか、外務省を力強く叱咤激励したのか。何にもしてないじゃないですか。だから、外務省も文部省もへっぴり腰で、お互いの立場を守る以外にないじゃないですか、総理があんな態度じゃ。だから、一方では閣僚が思いつき発言をする、それを文部大臣がたしなめなきゃならない。政府の対応はばらばらだと。こういうだらしのない国の姿、それこそ私はみっともないと思いますね。松野国土庁長官なんて何ですか。内政干渉発言、数数の暴言じゃないですか。こういうことは関係諸国をいたずらに刺激するだけで何にもならない。私は、閣僚においてもこの点責任追及をすべきだと思うんですね。そういう立場に立たれるのは私は文部大臣だと思います。そういう点で、閣議という機会で、私はこうしたことを文部大臣は発言して、二度とこんなだらしない態勢で海外の問題に当たらないようにしていただきたいと思うんです。大臣、いかがですか。
○国務大臣(小川平二君) 総理が拱手傍観をしているというお言葉でございましたが、総理は外務省並びに文部省に任せて、よきに計らえというような態度でおられるわけではございません。近隣諸国との友好関係、どんなことがあってもいささかでも損なってはならない、そういう御認識のもとに、私どもも毎日のように督励を受けているわけでございます。 閣僚の発言につきましては、今日までしばしば御指摘をいただいておるわけでございまして、当初私は同僚の発言を真っ向から批判することは御容赦願いたいと申し上げておったんですが、たび重なる御指摘を受けましたので、はなはだ遺憾な発言であったということを公の場で申し上げたわけでございます。そこまでのことを申し上げたということはよくよくのことであるに違いないと御本人も受けとめていてくださると思いますので、この上御注意を申し上げるようなつもりはさしあたってございません。
○柏原ヤス君 文部省に対しては私は、この問題を国民の前にオープンにする姿勢が乏しかったと、これからオープンにしてもいいんではないかという感じをますます私は強く持ちました。 きょうの参議院の外務委員会で「侵略」の問題が出たようですけども、そのときに検定課長が、「侵略」というところを訂正した場所がたった四カ所だと、こういう発言をしてるんですね。それは確かに訂正した個所は四カ所です。けれども、改善意見をつけた個所は日本史、世界史合わせて十四カ所改善意見をつけてるわけです。その十四カ所つけた改善意見の中の四カ所が訂正された。どこがどう訂正されたかということも新聞を通してだけ見てるわけです。まあ新聞の報道はそれを取り上げているので私も了解いたしますが、わからないのは、この直さなかった十カ所、これは一体どうなってるのかと。まあこういう点でさきの委員会でも資料要求をいたしました。この十カ所というのは、どういう内容のところで、それに対する教科書調査官の改善意見がどういうふうに出されたのか、これを明らかにすべきではないかということを再度文部省に申し上げるわけです。
○政府委員(鈴木勲君) 検定課長が申し上げました趣旨は、この日中戦争に関する日本の侵略に関する五十六年度検定結果につきまして、日本史、世界史合わせまして、日本史が三点四カ所、世界史が六点十カ所、これは検定意見が付されたものでございますけれども、それに従って改められましたものが日本史一点一カ所、世界史二点三カ所ということを恐らく申し上げたのではないかと思います。 ただいま、その直されなかったものについてはどういうものがあるかということでございましたが、これは検定後の教科書でございますので申し上げますが、たえとば日中戦争の記述につきまして、「中国では北伐を終えた蒋介石が、中国共産党との対立や満州での日本の侵略に苦しみながらも統一の実を挙げていた。」というふうな、「日本の侵略」というふうな記述が残っている例でございます。 なお、検定前の教科書と検定後の教科書との対比をというお話がございましたが、これは先般の委員会におきましても、採択の公正という見地から、従来からの方針といたしまして差し控えさしていただきたいということを申し上げておりますので、御了解をお願い申し上げたいと思います。 なお、調査官の意見につきましては、これは先生御承知のように、教科用図書検定調査審議会の答申に基づきまして検定意見を伝達するという役目でございまして、その役目に従って指示をしているものでございます。この点につきましても、原稿本なり検定前の教科書に関するものでございますので、同様に公表は控えさしていただいてるというものでございます。
○柏原ヤス君 このような問題になるような検定を行ってきた教科書調査官、あるいは検定審議会の委員、文部官僚の方たちの国際感覚、歴史感覚、これが欠如してるのではないかということがマスコミから一斉に指摘されております。この点、大臣はどういうふうにお考えでしょうか。
○国務大臣(小川平二君) 私は、検定の衝に当たりました調査官、あるいは審議会の委員各位、国際感覚においてはなはだ欠けておる、あるいは歴史感覚というお言葉をお用いになったと思うんですが、歴史感覚においてはなはだ欠けておる方々ばかりだなどとは決して思っておりません。申すまでもなく、絶えず豊かな国際感覚を養う、歴史感覚を培うということには大分御努力を願うべきものでございまするし、そのような御努力をなさっておることも信じております。
○柏原ヤス君 しかし私は、この問題は教科書調査官あるいは検定審議会の委員、こういうところにも問題があると、こう思っております。その点いかがでしょうか。
○国務大臣(小川平二君) 指摘を受けておりまするいろいろな用語の検定に際しましては、調査官なり審議会、それぞれ理由があって検定をいたしておるのでございます。はからずもかような誤解を受けておるわけでございますから、先方の誤解を解くべく今日までいろいろ努力も重ねてきた、かようなことでございます。
○柏原ヤス君 今回の記述内容に関する多くの部分は、今回の事件の起こる以前から日本の国内で執筆者やマスコミなどが問題として取り上げてまいりました。この段階で政府が善処していればここまで発展をしなかったと思います。政府は国内問題の段階では黙殺するという姿勢に終始していたと言えると思うんですが、その理由と責任、これをお示しいただきたいと思います。
○政府委員(鈴木勲君) 教科書検定につきましては、従来からわが国の自由な言論の機関でございます新聞を含めましていろんな立場からの御意見が種々あるわけでございまして、これはその検定の経過あるいは検定の内容等につきましてその聞くべき御意見がございますれば文部省としてはこれらの意見は意見として受けとめまして、また教科書検定制度を通じまして、この意見が適切な教科書づくりに反映されるように努力をしてまいっているわけでございますし、また教科書調査官、また教科用図書検定調査審議会のそういう委員等におきましても、いろいろな意見を受けとめながら教科書の検定に当たり、よりよき教科書づくりに努力をしているということでございまして、今後ともその方向なり努力については変わりはないということであろうかと思います。
○柏原ヤス君 そのように穏やかにお答えになっていますけれども、実際おやりになっていることは相当手厳しく、記述内容に対しては、文部省の姿勢は問題がある。国内問題の段階では黙殺してたと、こういうことは私だけの主観じゃないと思います。事実、私は黙殺してきたと。——理由に対してのお答えは納得いたしません。問題を後に残しておきたいと思います。 そこで、この際、最も大切なことは歴史的事実は何なのかと、平和な社会、国際社会を育成する人間を育てるためにはどうあるべきかという視点で考えていかなければならないと思います。少なくとも教科書をつくるという点において、そういう姿勢が私は原点だと思うんです。そして、文部省にとってはそれを根本にして考えなければならないところであるわけです。ところが、自民党文教族の顔色をうかがったり、検定制度を死守するということに固執している、こういうふうに思う以外にございません。その点、大臣いかがですか。
○国務大臣(小川平二君) しばしば申し上げたことでございますが、歴史の教育におきましては、信憑性ある資料の裏づけを持った事実を客観的に考察し、判断するという力を養う、こういうことを旨として教育を行うべきだと考えておるわけでございまして、今回問題になっておりまするのは、主として歴史の教科書の記述でございますが、さような趣旨から教科書の用語もできることならば価値判断を伴わない客観的な用語が望ましい、かような判断のもとに検定を行ってきておるところでございます。 反面におきまして、過去の戦争に対する厳しい反省の姿勢、これはことごとくの教科書がかような基本的な姿勢で貫かれておることでございますから、歴史の教科書はこのような認識のよってきたる歴史的な事実を客観的に記述すればよろしいのではなかろうか、かような判断から歴史の教科書におきまして、特定の場合において「侵略」という言葉を他のより客観的な表現に改めてはいかがでしょうかという改善意見を出した次第でございます。
○柏原ヤス君 いままでいろいろと政府の対応に関しての答弁をお聞きいたしましたが、不十分だと、不満だということに尽きます。 そこで、今後の対応についてお尋ねしたいのですが、新聞報道によるものなんですが、政府は二段階方式で解決策を考えるというふうに言われております。 中国、韓国に対する戦争責任の表明と教科書記述の変更についても含みを持たせた形で政府見解を打ち出すという第一段階、また第二段階には教科書の記述再改訂については国内問題として外交関係とは別個に扱う方針、これを固めているというような報道がされておりますが、これは事実なのか、そして事実とすれば、第一、第二のこの段階の施策をいつ打ち出すのか、この点をお聞かせいただきたいと思います。
○政府委員(鈴木勲君) 御指摘の二段階方式というのは新聞に報道されたことは承知しておりますが、現在本件に関する対応につきましては、大臣からもるる申し上げましたように、外務省と目下協議中でございまして、どういう形になるか、またいつごろになるかということにつきましては、これは先ほど時期等につきましては官房長官がお答えしたとおりでございますが、内容はまだ決まっていないということでございますので、御了承をお願い申し上げたいと思っております。
○柏原ヤス君 外務省と文部省とで政府の基本見解作成、これを進めているようですが、教科書記述の修正方法に関して考え方が違っている。外務省は教科書改訂の方向を明示する必要がある、一方文部省は現行検定制度の枠内で対処したい、これに終始している。この事実関係はそのとおりなんでしょうか。
○政府委員(鈴木勲君) まだ協議を始めたばかりでございまして、外務省には外務省のお考えもございますし、文部省には文部省の考えもございますが、それをつけ合わせましてこれから対応策を固めていくところでございますので、現在そういうことで、いかなる対応が可能であるかということで協議をしているところでございますので、現段階におきましてはそういう御答弁にかえさせていただきたいと思います。
○柏原ヤス君 中国や韓国の指摘はもっともなことだ、こう思います。文部省の検定には疑問を感じております。また、国民の大多数もそういう声である、こう受けとめているんです。国際問題がここまでこじれた以上、外務省の方がむしろ国民に支持されていると思いますが、文部省はその点どうですか。文部省がここまでかたくなな態度で終始していれば、結果的にはその責任を文部大臣がとらなきゃならないところへいくんじゃないかというふうに私は心配いたします。その点いかがですか。
○政府委員(鈴木勲君) 外務省の立場はわが国の外交という観点からの御判断であろうと思いますし、私ども、大臣を初め文部省の考え方は、国会を通じましてるる申し上げてまいりましたけれども、現在の教科書制度の基本でありますところの教科書制度のたてまえを崩すことなく、いかなる解決策が可能であるかという観点からやっているものでございまして、そういう考え方の中で、できるだけ友好関係を損なわないような解決策を見出すべく現在検討中ということでございます。
○柏原ヤス君 以上いろいろ申し述べましたが、要は、文部省が来年の教科書の訂正に踏み切らなければ問題は解決しない、こういうふうに私は思っております。したがって、教科書発行社、執筆者の自主性に任せて、正誤訂正に申し出があれば積極的に対処するとか、あるいは三年後に予定されている部分改訂検定の実施時期を文部大臣の権限による特別措置で繰り上げて実施するというような方法で、中国、韓国の要求どおり来年度使用の教科書の記述訂正に踏み切るべきである、それ以外にない、こう思いますが、大臣の御所見をお伺いしておきたいと思います。
○国務大臣(小川平二君) 改善意見等を受け入れまして原稿を改訂した教科書をもとの原稿どおりに直すということが現行制度のたてまえからしてきわめて困難であるということについては今日までるる申し上げてまいったところでございます。したがいまして、この制度のたてまえそのものを崩すことはなかなか実行するわけにはまいりませんけれども、しからばどのような形で当面のこの困難をきわめた事態に対応できるだろうかということにつきましては、目下外務省とも協議いたしまして、だんだん問題を煮詰めているところでございます。必ず円満な解決ができるような方途を発見すべく全力を挙げている次第でございます。
○柏原ヤス君 最後に、こうした中国との問題をもう一歩深く考えますと、確かに私たち戦争認識というものがまだ不十分だと、また中国に対する友好的なおつき合いはまだまだ真剣に考えていかなきゃならない。今後のことを思いますときに、私、政府が、またこの問題の解決に行かれた政府の代表の方たちが、日中友好の共同声明の精神、こういうものを篤と話して、それには変わりはないんだと、一層友好的な姿勢で中国とのおつき合いを固めていきたいと、こういうふうに努力されたわけですが、私、去年中国へ行きまして、ああこんなんでいいのかしらと思う場面にぶつかったわけなんですね。これは小さな問題ですけれども、東北師範大学がございます。あの東北師範大学に併設されている赴日留学生の予備学校、そこへ行ったんです。こんな説明は申し上げるまでもなく、あの予備学校の学生は全国から選びに選ばれた非常に秀才が集まって、百名猛勉強しているわけですね。しかも、日本に留学するということを大きな希望として勉強している。その勉強ぶりのすばらしさといおうか、熱心さといおうか、ああこういう学生が日本に来て、本当に日本を理解して、そして中国に帰り中国の人材として新しい中国を担っていくんだなあと、どんなことでもしてあげなきゃならないなあという感じでその授業ぶりとか、その他のところを見たわけなんですけれども、その冷たさ、私はこんなところに最も大事な日中友好の手が差し伸べられなければならないんじゃないかと思って、皆さんしっかりがんばってくださいよと、また、どんなことを日本に期待しますか、私たちでできることは何なんですかと、どんなことが困ってますかというようなことを個人的に話したんですね。そうしたら英語の辞典がないとか、いろいろと勉強するために必要なものが本当にないんですね。日本の学生だったら本箱にただ積んでおくようなそんなものが本当にほしがっているわけです。まあ中国の学生ですからほしいとは言いませんけれども、そういうものがないんだということを言っておりました。 また、その学生を教えている先生方が文部省から選ばれて行っているわけなんですね。先生方も文部省から選ばれて大いに希望を持ってそこで授業をしているわけです。そういう受け入れというか、予備学校にいろいろと手を差し伸べているのは外務省なんです。ですから、先生は文部省、その学校に手を差し伸べていろいろと細かく応援しているのは外務省と、それがもうばらばらなんですね。 それで、その先生から手紙が来たんですよ。その手紙の中に、何がほしいの、してあげたいことは何ですかとのことを尋ねられましたが、種々のことがありますが、この二点、光、明るさ、熱、温かさが一番足りないと感じておりますと、こういう意味のある言葉なんですね。その学校は冷たい教室であり、暗い教室であったんですけれども、何をしてあげたらいいのと、日本の私が言ったことに対して、明るさと温かさがほしいと、こういうふうに言っているわけなんです。その意味が何であるか、職員室へ行ってみますと、外務省から届けられたゼロックスの機械なんかが置いてあるわけです。だけど全然使われてないんですね。機械は来ているけれども紙がない。ゼロックスを何回かやったけどちょっとこわれちゃったと、もう修理もできない。こんな職員室の片隅にある外務省から贈られてきたいろいろなものが余り生かされてない。こういうような現場を見てまいりました。 文部省から派遣された先生は余り文句も言えないんでしょう。そういうことを考えたときに、ああ日本はこれでいいのかなとそのとき感じてきたわけで、今回こういう問題が日本の一つの大きな乗り越えなければならない問題としていまどうすればいいか、私は手先のことでこれを処理するようなことではまた同じことを繰り返すんじゃないかなと思って、政府の中国に対する温かさ、明るさ、それを私は切実に考えているわけなんです。 まあ時間がございましたので、何かお説教めいたみたいなことを言って文部大臣申しわけございませんが、その責任に立っていらっしゃる力のある大臣でいらっしゃいますので、そうしたささやかな一場面をもお心にとめていただいてがんばっていただきたいと、こういうふうに言わずにおられません。 以上です。
○佐藤昭夫君 七月二十九日の当委員会、参議院文教委員会以来、私の質問にも答える形で、文部大臣は、日中戦争、第二次大戦は弁護のできないものだと、そして渋々ながらではありましたが、侵略戦争と認識をしているというふうに答えられてきました。にもかかわらず、教科書の記述について、中国、アジア諸国への侵略行為をめぐる記述について「進出」を「侵略」に再訂正をするという問題については、きょうに至るも頑強に拒否をされている。当委員会、七月二十九日以来きょうを含めますと五回にわたって、時間の長短はありますが、各党の代表それぞれ議論をやってきている。五回連続をして同一テーマで議論をこれだけ集中してやるというのは国会史上も余り例のないことではないかというふうに思うんでありますが、文部大臣、文部省の態度というのはもうほとんどといっていいほど変化がない、前進しないというこのことが、文部大臣は口では侵略戦争だと思っています、反省していますというふうには言われるんだけれども、本心は一体果たしてあの戦争を反省されておるのか。侵略戦争であった、二度と繰り返してはならぬというふうに本当に心の底から考えておられるのか、このことをもう一遍まずお尋ねをしたいです。
○国務大臣(小川平二君) 申し上げたことを御信用願いたいものでございます。
○佐藤昭夫君 しからば、繰り返すまでもなく、侵略戦争として真に反省をしているというふうに小川文部大臣がおっしゃるならば、なぜ先日の八月十五日、あの日に、A級戦犯、戦争犯罪者を合祀する靖国神社に参拝をなさったのですか。
○国務大臣(小川平二君) 私は、八月十五日に靖国神社に確かに参詣をいたしましたが、個人の資格において行ったわけでございます。
○佐藤昭夫君 個人の資格であるのはもちろんでしょう、公的に参拝をするということは憲法違反のおそれありということで、政府見解では今日そういうことが言われてきた問題でありますから。 幼い児童や生徒を含めて多くの国民をあの戦争の犠牲者としてきた、アジアの人民を犠牲者としてきた、こういうことについての反省、そうしてそのような軍国主義政策を進めてきた指導者に対する批判、これが不十分だから、靖国神社への参拝というようなことでのこのこ行かれたんじゃないですか、というふうに私は思うんですけれども、本当に、あの侵略戦争への反省、それを推し進めた軍国主義戦争の指導者、これに対して批判を持っておられますか。
○国務大臣(小川平二君) 私がかつての戦争に対して反省をいたしておるということと戦争の犠牲者の霊を弔うということとは決して矛盾することではないと考えております。
○佐藤昭夫君 靖国を参拝するということは、特にまぎれもなく、肩書きを公人として行くかどうかはともかくとして、文部大臣小川平二、この名前をもって参拝をされるということは、単なる亡くなった方々の霊を慰めるという問題だけにとどまらぬというのがいままで何回となく国会で議論をされてきている問題じゃありませんか。 かつての侵略戦争を強く反省をされておるというのであれば、もう一つ聞きますけれども、文部大臣はかつて日本軍の軍事費を使った調査機関であった東亜研究所の香港支所の支所長という仕事をされてきました。当時あなたは、同研究所の所報第十四号、これにおいて、「日本の軍事的優位は、満州事変を起点として東亜における新秩序建設の運動にまい進することを可能にした」。もう一遍読みましょう。「日本の軍事的優位は、満州事変を起点として東亜における新秩序建設の運動にまい進することを可能にした」、こういう記述がこの論文の中に出てくるわけでありますが、これはもう読んで明白なように、満州事変というのを積極的に位置づけて日本の中国侵略を肯定、美化をするそういう文章だということは、私は指摘するまでもないと思うんですけれども、しからば、あなたは、この論文を初めとして、みずからの戦前の侵略戦争肯定のその問題について本当に反省をされていますか。
○国務大臣(小川平二君) いま御指摘のあった、私の論文と仰せでございますが、全く記憶がございません。どのような表題でどのような雑誌なり何なりに公表されたものか、お教えをいただきたいと思います。
○佐藤昭夫君 私は、この論文のこの引用については質問通告の形ですでに提起をしておりますので、全く記憶にありませんとかどうとか、そういう問題では済まないと思うんです。私は、文部大臣がそういうことで答弁をためらわれるのは、それなりの根拠があってのことだと思うんです。しかし、このことだけに時間を使うわけにはまいりませんから、一遍よく記憶を思い返して、ひとつ反省のよすがにしてもらいたい。 もう一つお尋ねしますが、今日この自主憲法期成議員同盟というこれをめぐって、この国会でも予算委員会初めいろいろ議論になってきたこと、御記憶のことと思います。侵略戦争を本当に反省をしているならば、当文教委員会でも「侵略」か「進出」かというこの用語をめぐってこれだけの議論をやってきた、これを機会に、憲法第九条の改正を含む憲法改正ですね、いわゆるこの自主憲法期成同盟、こういうものについては、これだけ侵略戦争の反省の問題をめぐって議論をやってきたのですから、小川平二さん、あなたはこれを機会にこの議員同盟を脱会をするお気持は生まれていませんか。
○国務大臣(小川平二君) 私はそのような同盟に入っておりませんので、したがって脱会ということは考えておりません。
○佐藤昭夫君 七月三十日のこの臨調基本答申は、従前の行革方針に一層輪をかけた形で、軍事費を聖域として膨張をさせ、教育、福祉などを切り捨てる方向を露骨に打ち出しているわけでありますが、即座に政府はこれを最大限尊重、実施に移したいというふうに発言をしているわけであります。今回の教科書検定問題に国の内外で大きな批判が巻き起こっている基礎にこういった軍事大国化路線、これへの批判があることは言うまでもありません。 文部大臣、あなたが、これも本当に侵略戦争を心から反省をし、平和国家の建設を決意をされているのであれば、こういった臨調の軍事費増大、教育切り捨て路線、これをやめるために一体どういう努力をなさるのか、念のために聞いておきたいと思います。
○国務大臣(小川平二君) 臨調の答申につきましては私は先生と認識をいささか異にいたしておるのでございまして、第三次答申は行財政改革を進めるための基本的方向を中長期的な観点に立って打ち出しておるわけでございまして、決して防衛費をいわゆる聖域扱いして、文教、福祉等を切り捨てよう、かような内容のものとは理解いたしておりません。
○佐藤昭夫君 日中戦争や第二次世界大戦を本当に二度と繰り返してはならない侵略戦争として反省をしておるというあなたのお言葉が、心からの反省に基づく言葉なのかどうかということを確かめるために、多少あなたにとってはつらい質問になったかもしれませんけれども、私幾つかの点でお尋ねをしたわけですけれども、お答えをずっと聞いておって、やっぱり侵略戦争としての反省が口だけじゃないかと、心からの反省がないあらわれじゃないかというふうに思わざるを得ません。であればこそ、侵略戦争として反省をしていますというふうに言いながら、教科書の記述を再訂正する問題についてはかたくなに拒否をされている。いままでの議論で、「侵略」という用語には価値判断が含まれておると、客観的な表現にするために「進出」という用語の方がいいんだといったようなことも言われてきました。しかし、繰り返しませんが、これは衆議院の委員会でも議論をされていますように、「侵略」という用語は、国連の一九七四年第二十九回国連総会できちっと定義づけをされたように、その戦争の性格、本質を正確に表現をする、いわばそういう意味では客観的用語の一つであるということは明白であります。この客観的表現にするために「進出」という言葉に変えるんだというような論法が通る問題ではいささかもありません。 そこで文部大臣にもう一つお尋ねをするわけでありますけれども、文部大臣としては、あの日中戦争、第二次世界大戦、これは侵略戦争として反省をしていると。それならば、教科書にどういう用語を使うかというのは次の問題にします。学校で子供たちにあの戦争は侵略戦争であったというふうに教えること自体は、これはいいことなのか間違っておるのか、その点については文部大臣どういう見解でしょう。
○国務大臣(小川平二君) かつての戦争が侵略的な戦争であった、弁護の余地なき戦争であった、これは間違いないと考えております。だからこそ、ことごとくの教科書が、戦争に対する責任を痛感し、これを厳しく反省しなければいけないということを、たとえば平和主義という見出しのもとで、あるいは日中共同声明を解説するくだりで書いておるんだと、私はこのように理解をいたしております。
○佐藤昭夫君 いまの御答弁を逆の立場から表現をして私もう一遍お尋ねをするわけですけれども、そうしますと、学校で子供たちに、あのかつて日中戦争、第二次世界大戦は侵略戦争であったと、二度と繰り返してはならぬ侵略戦争であったと、こういうふうに教えるというのは悪い戦争であるかのごとき価値判断を含む教育になるからそういうふうに教えてはならぬというふうには決して思っていないと。悪いものは悪い、侵略戦争だというふうに子供たちに教えてそれでよろしいんだと、またそのことがむしろ必要なんだと、これが文部大臣の見解ですか。
○国務大臣(小川平二君) 歴史の教科書の記述に際しましては客観的な用語を用いることが適切だと考えておりますが、過去の戦争をどのように評価すべきかということにつきまして「侵略」という言葉を用いても私は格別差し支えないと考えております。
○佐藤昭夫君 「侵略」という言葉を用いても差し支えないというそういう消極的態度でなくて、二度と繰り返してならぬということは自分の心を込めて教えることでしょう。二度と繰り返してならない侵略戦争だということで積極的に教える必要があるというふうに思っておられるのか、思ってないのか。
○国務大臣(小川平二君) かつての戦争がきわめて峻厳に反省をしなければならない性格の戦争であったということについては、これは教えることが適当であると考えております。
○佐藤昭夫君 さらに問題を進めますけれども、教科書検定の一番土台といいますか、準拠になりますのが学習指導要領であることは言うまでもありませんが、同僚委員の中でもこの指導要領の問題を取り上げておられましたけれども、私も少し指摘をしたいと思うのでありますが、近・現代史のこの高等学校指導要領です。この学習指導要領において、「近・現代史の指導に当たっては特に慎重な態度で臨み、客観的かつ公正な資料に基づいて、歴史の事実に関する理解を得させるようにすること、」こうあるわけですけれども、この「歴史の事実に関する理解を得させるようにすること、」、この内容について同じく文部省発行の学習指導要領解説ですね、これは概念的にとらえたり、評価を早急に下すことは避けることであるという説明を書いています。 そこでいま問題の、「侵略」を「進出」に改めた方がいいんだというこの見解は、かつてのあの戦争についての評価を早急に下すことを避けるというためなのか。そうしますと、文部大臣は、あの戦争は二度と繰り返してはならぬ侵略戦争だと、反省すべき戦争だと、こう言いながら、私、何遍も繰り返しお尋ねをして何遍もそういうお答えをされると。しかし、早急なそういう断定をしたらいかぬ、そういう評価をしたらいかぬというふうに学習指導要領解説に書いておられる。——これは用語の問題じゃないですよ。教科書の記述用語の問題、教える観点の問題について学習指導要領解説がこう書いておられますが、ここの矛盾はどうなるんですか、文部大臣。
○国務大臣(小川平二君) 同じことを何遍も繰り返すことになりますが、今日の教科書はかつての戦争が厳しく反省しなければならない戦争だという基本的な認識で貫かれている、私はこのように理解いたしております。そういう認識のよって来るところの歴史的な事実を歴史の教科書は記載をすれば足りるのであって、歴史の教科書の中で価値判断を伴う言葉を使うことは必要でない、のみならず、必ずしも適当でない、こう考えておるわけでございます。
○佐藤昭夫君 文部大臣は、私の一つ一つ順を追っていく質問ですけれども、かつての日中戦争、第二次世界大戦は侵略戦争と考えますかと、こう尋ねると、七月二十九日のあの答弁、相当時間はかかりましたけれども、最終的に侵略戦争だと。それからきょう、前段で、しからば教科書の用語をどう使うかにかかわらず、子供たちに、二度と繰り返してはならぬ侵略戦争だということで積極的に教えることについてどうかと、それは積極的に教えたらよろしいと。ところが、文部省の発行しておるこの学習指導要領解説は、侵略戦争と断定を早急に下すことは避けなくちゃいかぬと。しからば、日中戦争を日本の中国侵略だというふうに考えることはこれは早急な評価になるんでしょうか。これは初中局長に聞きます。
○政府委員(鈴木勲君) 近・現代史の歴史に関しては、いまだ評価が定まらず、後世の史家の判断にゆだねるべき事柄が多く、慎重に扱う必要があるということは、これは学習指導を行う場合の一つの基本でございまして、学習指導におきましては特に歴史学習においてはできるだけ客観的な資料に基づきましてその事実関係を理解させ、たとえば戦争については、その戦争のよって来る原因と結果を理解させることによって戦争の持っている教育的な意味と申しますか、歴史的な意味を理解させるということが必要なのでございまして、したがって、学習指導におきます指導のあり方と教科書における記述の仕方はおのずから異なってまいっているわけでございまして、教科書においては大臣がるる申し上げておりますように、できるだけその史実を客観的に表記をする、それに従って歴史的な事実を正しく認識するということがまず歴史学習の基本でございますから、そういう記述をもとにして歴史学習を進めていくということが必要なのではないかと考えています。
○佐藤昭夫君 私の質問に的を当てた答弁になっていませんね。私が言っているのは、高等学校学習指導要領解説、ここを読むと、高等学校における社会科の教育において、日中戦争や第二次大戦をあれは侵略戦争であったと、こういうふうに教えるような、それは避けなくちゃならぬ、そういう早急な評価を行ってはいけませんという戒めを書いておるわけですね。 ところが、文部大臣は私の本日の質問に対して、いや積極的にそれは教えたらよろしいと。矛盾をしているじゃないかということを言って、その点の答弁を局長に求めておる。
○政府委員(鈴木勲君) 指導要領の解説におきまして、いま御指摘の点がちょっと見当たらないのでございますが、要するに、歴史の学習において、歴史の学習の基本といたしましては、できるだけ客観的な事実を取り上げまして、それを主体的に判断をしていく、そういう歴史的な態度を養うことが主体でございますから、そういう見地から、この教科書における記述についての指導と申しますか、そういうものを取り上げる必要がある。 したがって、教科書の記述の中でいろいろな表現がございましょうが、たとえば「侵略」という用語につきましても、ある場合にはこれが武力的な侵略という表現を使っている場合がございましょうし、あるいは「進出」という用語につきましても、その文脈の中におきましてはその実態をあらわすような表現になっているということをやはりるるその記述に従って理解をさせるということが前提でございまして、そういう見地から、あくまでも歴史学習の基本を外すことがあってはならないという点では、これは指導要領におきましても、また、教科書の記述におきましてもそこのところは変わらないというふうに考えています。
○佐藤昭夫君 依然として私の質問点に対しての答弁になっていませんね。限られた私の持ち時間を空費するための答弁をやられておる。もうこれにこれ以上ひっかかることはできません。 今日、文部省の検定による教科書の中国、朝鮮への侵略の記述をめぐって内外からの批判が日とともに高まっておるそういう中で、最近、幾つかの教科書の著者の側から再度訂正をしたいという希望が表明をされているわけであります。新聞にも報道をされておる。昨日の十八日に学校図書の高校日本史で「侵略」を削除させられた著者、発行者が訂正申請を決めたという報道もあります。 ところが、きょうも同僚議員こもごも議論をしておられるわけでありますけれども、文部省令でみずからが決めた教科用図書検定規則、これを盾にして正誤訂正であろうと改訂検定であろうと認可条項を文部省が恣意的に解釈をして訂正というようなことは断じてできませんということで言い張っている。こういうかたくなな態度に、前回の委員会もそうでしたが、きょうの委員会でも自民党議員からも批判が出ている、与党の議員の方からも批判が出ている。こういう姿になっていると思うんです。 そこで確かめておきたいんですが、先ほど田沢議員の答弁に対して、田沢議員は三年後の改訂検定、この段階では直すことができるという文部省の意見と解したというふうにみずから理解をされておるわけですけれども、そういう文部省の見解を本日表明したということかどうか、これはちょっと事実問題としてまずその点、確かめておきましょう。
○政府委員(鈴木勲君) これは、先ほど田沢先生の御質問がございまして、記述の書き加えあるいは書きかえというふうなことについて教科用図書検定調査審議会に諮問する考えはあるかということでございましたので、改訂検定の趣旨を申し上げまして、改訂検定の趣旨に反するような、一度改善意見を付して直したものをまたもとに戻すということでございますればこれは趣旨に反しますけれども、そうでない、記述の書き加えあるいは書きかえ等につきましては、これは改訂検定という観点からこの要件に当たる、そういう場合にはおのずから通常の手続に従いまして教科用図書検定調査審議会に諮問することあるべしということをお答えしたことでございます。
○佐藤昭夫君 そうしたら、文部省の改善指導で訂正したものの再訂正というようなことは、これは依然としてできないというこの見解ですね。しかし、問題は、三年後を待つというような、そういう形でこの問題の解決にはならぬということは、これは中国や韓国からの批判もそうだし、当委員会での議論もそうだし、編集者、著者の大多数の意見もそんな三年後を待つというそういう問題ではないという、この点でいま直ちにどうするかという問題として文部省の決断が迫られておる問題であるわけですね。直ちに訂正できる道を開くためには現行の法律、規則のどこが障害になっているのか、どこをどう改めたら直ちに訂正の道が開けるんですか、理論上。
○政府委員(鈴木勲君) 直ちにというのがどういう時間的期間と申しますか、それを指しているのかつまびらかにしないわけでございますけれども、正誤訂正のことは、これは先生御承知のように検定規則十六条に書いてございまして、検定規則によりまして正誤訂正手続という道はあるわけでございますけれども、これはるる申し上げておりますように、検定調査審議会の議を経ないで軽便に客観的な事柄等についてこれを直す道を開いているということでございまして、それには本件の場合には該当しないということを言っているわけでございます。 もう一つは、先ほど御指摘のありました改訂検定については、これは三年後でございますけれども、そのとおりの字句をそのままもとに戻すということであれば趣旨になじまないということを言っているわけでございまして、現在の手続、規則等についてはいま申し上げたところが先生の御質問に答えることになるのかと思います。
○佐藤昭夫君 しかし、理論上は、この「侵略」よりも「進出」の方が適切だと、こう判断をしてそういう改善指導をさせてきたわけですけれども、これだけ議論が沸騰をしておる今日時点で文部省として「侵略」という言葉の方が適当だと、こういうふうに判断すればできる問題ですね、理論上。
○政府委員(鈴木勲君) 個々の記述の問題でございまして、それはるる申し上げておりますように、一般論としてのお話ではございませんで、たとえばこの上海事変、満州事変を扱った場合の記述についてどういう表記をするかという観点から「侵略」がよろしいかあるいは他の用語がよろしいかという観点の意見をつけているわけでございまして、そういう意見に対して改善意見を受け入れて記述が直ったということが問題の一つの御指摘かと思いますけれども、そういう経緯からいたしまして、それをもとに戻すという道はいまのところ改訂検定では趣旨に合いませんし、正誤申請にもなじまないということを申し上げているわけでございます。
○佐藤昭夫君 とにかく文部省としては、突き詰めた問題として、それが修正であろうと改善であろうと訂正をさせてきたものを、それをもとへもう一遍再訂正する、もとへ戻すと、こういうことは絶対にできない、こういう考えなんですか。
○政府委員(鈴木勲君) ただいま申し上げました検定制度の仕組みの中では先生の御指摘のとおりでございます。
○委員長(片山正英君) 佐藤君、ちょっと時間でございますので、もう一問ぐらいでお願いします。
○佐藤昭夫君 はい。私が改めて引用するまでもなく、とにかく文部省、あなた方が言う検定規則でも誤りの記載があった場合これは改めることができると、学習を進める上に支障がある、そういう記載が認められた場合には改めることができるということをみずから定めておきながら、しかしそれを文部省の恣意的解釈でかつて訂正をさしたものをもとへ戻すような、そういうようなことはこんりんざいできないと、こういう態度というのは、それはもうとにかく道理の通るものではない。そんなことを国民が、教育関係者が納得する問題ではない。どうしても文部大臣と文部省のそういうかたくなな態度を直ちに改めてもらう必要がある。このことを特に強調をして、時間である模様ですので、本日は終わります。
○委員長(片山正英君) 本日の調査はこの程度にとどめます。 —————————————
○委員長(片山正英君) これより請願の審査を行います。 第四号高校新増設費国庫補助増額等に関する請願外三百三十六件を議題といたします。 速記をとめてください。 〔速記中止〕
○委員長(片山正英君) 速記を起こしてください。 第八号私学の学費値上げ抑制、大幅な私学助成等に関する請願外九十四件は、議院の会議に付するを要するものにして内閣に送付するを要するものとし、第四号高校新増設費国庫補助増額等に関する請願外二百四十一件は保留と決定することに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(片山正英君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(片山正英君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 —————————————
○委員長(片山正英君) 継続審査要求に関する件についてお諮りいたします。 女子教職員の出産に際しての補助教職員の確保に関する法律の一部を改正する法律案及び学校教育法及び教育職員免許法の一部を改正する法律案の両法案につきましては、閉会中もなお審査を継続することとし、両法案の継続審査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(片山正英君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 なお、要求書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(片山正英君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 —————————————
○委員長(片山正英君) 継続調査要求に関する件についてお諮りいたします。 教育、文化及び学術に関する調査につきましては、閉会中もなお調査を継続することとし、本件の継続調査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(片山正英君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 なお、要求書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(片山正英君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 —————————————
○委員長(片山正英君) 委員派遣承認要求に関する件についてお諮りいたします。 教育、文化及び学術に関する調査のため、閉会中に委員派遣を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(片山正英君) 御異議ないと認めます。 つきましては、派遣委員、派遣地、派遣期間等の決定は、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(片山正英君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 本日はこれにて散会いたします。 午後四時五十四分散会 —————・—————