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96回国会参議院1982/08/19

外務委員会 第14号

発言数
218
登壇者
17
会派数
6
開催日
1982/08/19

会議録

稲嶺一郎自由民主党

○委員長(稲嶺一郎君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  国際情勢等に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。

松前達郎日本社会党

○松前達郎君 きょうが延長国会最後の委員会ということで、ぎりぎりの委員会になったわけでありますけれども、最初に教科書の問題、これは、ただ字句の訂正とか、そういうふうな問題だけのことではなさそうでありますから、やはり今後の対応というものが非常に重要な意味を持ってくるのではないか、かように思うわけで、それについてまず最初にお伺いをいたしたいと思います。  「侵略」とか「進出」とかいう字句の問題でいろいろと議論をされておるわけでありますけれども、どうもこういった問題を、過去の歴史にさかのぼりながら見てみますと、文部省の考え方というのが、どうもわが国の過去の行動を正当化するための策略があるような、これはちょっと表現が悪いかもしれませんが、そういうふうに受け取られるわけであります。これについて、いままで「侵略」という言葉を「侵入」「進出」その他いろいろな面で、何といいますか激しい言葉を使わない、そういうことで修正をしてきたというふうにおっしゃるわけなんですが、これについて外務省の方で、一体どういうふうに受けとめておられるか、まず最初に外務大臣からお伺いしたいと思います。

櫻内義雄自由民主党外務大臣

○国務大臣(櫻内義雄君) 今回教科書問題を発端としての中国、韓国等での世論動向あるいはそれぞれ政府の申し入れからいたしますと、日本が中国との国交回復の際の共同声明の前文がございます。あるいは韓国との国交回復の共同コミュニケがございますが、それにのっとって日本政府の行動がされておるかどうかと、そういうことから関連して、教科書の記述内容についていろいろ御意見が出たものと思うのであります。  お尋ねの「侵略」については、政府は一貫して、国際間で日本の当時の行動について侵略であったのじゃないかという、そういう厳しい批判があって、また日本政府は、そういう批判を十分認識して今後処していこうということを言っておるわけでございまして、私もそのような見地に立っておるわけでございます。  また、中国、韓国等においては、検定制度の問題についてはそれは日本の国内の問題であると言いながらも、いまの国交回復当時の両国の合意、それにもとるようなことは困るというのが率直なところだと思うのでありまして、外務省としては、そういう中国や韓国の申し出とか、国内における世論動向であるとか、そういうものを関係省庁に忠実に伝えて、そしてまた国交回復当時の申し合わせが、これが履行されることを望んでおる、履行されるべきだと、こう思っておるところでございます。

松前達郎日本社会党

○松前達郎君 字句の訂正の問題で、するとかしないとかいろいろと議論をされて、しかもその議論の意見というものがどうも文部省、外務省の間で食い違いがあるような感じを私は抱いているわけなんですが、その背景にある歴史的な認識というものは、中国の問題で言いますれば、中国としてはその認識について非常に大きな何といいますか、関心を持っている。ということは、いま外務大臣がおっしゃったような戦後の処理の問題も含めて、あるいはその前に起こった日中戦争におけるいろいろな問題、さらにアジア地域における各国との関係、いわゆる大東亜戦争あるいは太平洋戦争といいますか、これを通じての侵略という問題についての認識というものが、やはり中国の方としては相当大きく懸念を持っている問題であろう。ですから最近の中国の報道機関の論調を見ても、これが次第に日本の右傾化に対する警戒警報であるというふうな感じの意見を出してきているわけですね。ですから、やはりここに国際問題としてあるいは外交問題として、歴史的認識というものをやはり踏まえた上でわれわれはこれに対処していかなければ誤ってしまうのじゃないかと、こういうふうに感じるわけなんです。また同時に、これから先のわが国の進路、これを左右していく大きな問題に対する警鐘が乱打されたという感じもいたすわけでありますが、この点について、先ほどもちょっとお触れになりましたけれども、認識等については外務省としてはどういうふうな認識をお持ちなのか、これについて外務大臣にお願いいたします。

櫻内義雄自由民主党外務大臣

○国務大臣(櫻内義雄君) 日本政府の認識は、これは相手国がわれわれの説明に応じて十分理解してもらえるものではないか。たとえば戦争の問題に関しましては、御承知のように平和憲法のもとに、今後国際紛争の解決は戦争手段に訴えない。戦争を放棄している。これはもう厳然たる事実であって、ただ日本は自衛隊を持って、日本に対しての問題があるときに専守防衛をする。これは一貫しておると思うんですね。だから、この辺は十分説明をして理解が得られると思うのです。  また、教科書の記述についても、記述内容の変更についてはそれぞれいろいろ意見があって、時に改善意見とか修正意見になっておるわけですから、これはこれでやはりよく説明をして、理解を求める必要があると思うのでありますが、もし仮に、たとえば中国の場合に、共同声明の中で、日本は戦争を通じて大きな被害を与えた、その責任を感じ反省をしておると、こういうことを明らかにして国交回復がされておるわけでありますから、それに何かもとるこういう事実があるではないかと、こういうことであれば、それは当然反省をし、正さなければならない。したがって外務省としては、中国側の意見に謙虚に耳を傾け、そして理解を求めるべきものは理解を求めておりますが、また同時に、先方のおっしゃっておることはこれを国内の関係方面に伝えて御検討を願うと、こういう姿勢をとっておる次第でございます。

松前達郎日本社会党

○松前達郎君 日中の共同声明あるいは韓国との共同コミュニケ等について、いま外務大臣がおっしゃったような精神でもって、発表されたものを踏まえて今後やっていこうと、これは当然な話だと私は思うわけでございますが、さて、そうなってきますと、話し合いを続けて、たとえば検定制度というのはこういうものだということを幾ら説明しても、それだけでは事が済まないのじゃないかと私は思うわけです。やはり行動するといいますか、何らかの態度――態度といいますか、言葉じゃなくて実際の行動としてこれをやはりあらわしていかない限り、何となくずるい日本だというふうな感じを受けるのじゃないか、また同時に、何か話でごまかしていくというふうな感じも相手に抱かせるのじゃないかと、かように思っているわけなんですが、そうなっていきますと、当然この字句の訂正、再修正といいますか、こういう問題にも触れなければならなくなるのじゃないか。ただ、その中で特にいま新聞等で報道されているのを見ますと、文章をつけ加えて、再修正じゃなくてそれにつけ加えて何とかこれを処理していこうという、こういうふうな非常に甘い考えがあるような気がするのですが、そういったような問題も含めてこれは非常に今後大きな問題、ただ字句の訂正という問題もありますけれども、同時にわが国の今後の態度というものですね、それからいわゆる過去の戦争に対する責任、こういう問題に対してわが国の態度をあらわす一つの大きな山になるのじゃないかと私は考えておるのですが、これは国際問題として取り扱うことだけでは済まないんじゃないか、わが国自身の民主政治の上からも、やはりわが国としても自分自身に最重要な問題だろうと私は思っておるわけなんです。  そこで今度は文部省に、この検定というものについてお伺いをいたしたいのですが、その前に、先ほど外務省の認識について、侵略の問題についての認識、これについてお伺いをしたんですが、文部省の方は一体どういう御認識をお持ちなのかお伺いいたしたいと思います。

藤村和男文部省初等中等教育局教科書検定課長

○説明員(藤村和男君) 「侵略」という言葉の問題について申し上げたいと存じます。  この「侵略」という言葉が「進出」という言葉に変えられたということが報ぜられたわけでございますけれども、私どもは教科書の検定に当たりましては、できるだけより客観的な用語を用いて表現をすることが望ましいという観点から、表記などの統一について意見を付すことがあるということでございます。  この「侵略」という言葉につきましては、たまたま十九世紀末におきますところの列強のアジア進出というような表現が通常教科書にございまして、その後の記述に出てまいります日中戦争の場合に「中国への侵略」という表記になっておりましたので、これはより客観的な用語である「進出」という言葉に変えてはいかがかという改善意見と申しまして、まあアドバイスと申してよいかと思いますが、そういう意見を付したものでございます。この戦争全体についての経過のようなものにつきましては、教科書の中にかなり詳細に記述されておりまして、これは全体を読んでいただければ、決して事実を隠蔽したり歪曲したりするものではないということがおわかりいただけるかと思うわけでございます。  さらに、日中共同声明の精神のようなものにつきましては、歴史の教科書の中におきましても、あるいは昨年度検定を終えました現代社会という教科書の中におきましても、中国を初め東南アジア諸国にこのたびの戦争を通じて甚大な損害を与え、このことについてわが国は深く反省をし、そして戦後の日本というものが始まってきているというような記述があるわけでございまして、教科書の記述は単なる一字一句ではなくて、全体を通してお読みいただければよくおわかりいただけるものではないかというふうに考えているわけでございます。  検定に当たりましては、特に歴史の教科書の場合には公正で客観的な記述になるように意見を付しているところでありまして、しかもこの記述は、日本における通説に従って書いていただくということで、記述について変更を求める場合には変更を求めるという形でやっておりますので、私ども間違った考えで歴史の教科書の記述内容の訂正を加えているというようなことは全くないということを申し上げさしていただきたいと思います。

松前達郎日本社会党

○松前達郎君 その辺が非常に大きな問題だと思うんですけれども、「侵略」というのは客観的表現じゃないとおっしゃるのですね。

藤村和男文部省初等中等教育局教科書検定課長

○説明員(藤村和男君) より客観的な言葉である「進出」に、表記の統一という観点から統一されてはどうかという改善意見を少なくとも十年以上前から社会科の教科書の場合には付しているということでございます。  本年度の検定の場合には日本史、世界史を通じましてそういった用語が出てきた個所は、日本史の場合ですと四カ所あったわけですが、私どもが意見を付して修正をしたという個所は一カ所だけでございます。世界史の場合には十カ所ございまして、私どもの意見に従って直したという個所が三カ所という結果になっております。歴史の教科書の検定冊数は十冊、十冊でございますので、それをお考えいただければほんのちょっとした字句の修正であるということがおわかりいただけるかと思うわけであります。

松前達郎日本社会党

○松前達郎君 ほんのちょっとしたということで済まなくなったわけですね、これが。そこが問題なんですね。私申し上げているのは、字句の修正というのが、これはそれだけの意味じゃないということを申し上げている。「侵略」と「進出」と同じ意味だとおっしゃるのですか。

藤村和男文部省初等中等教育局教科書検定課長

○説明員(藤村和男君) 違うというふうに考えております。

松前達郎日本社会党

○松前達郎君 そうしますと、やはりたとえば文部省のいろいろな御意見の中で「侵略」というのはどうも聞いたところ悪というものが最初に感じられると、こういうことであるから「進出」という穏当な言葉に直すのだと、そういうことも報道されておるわけですね。しかし悪といっても、戦争をして、たとえば中国に侵略をしそしていろいろなことやってきた。これはもう私どももその当時生まれておりましたから、その事実も後で聞かされておりますけれども、そういうことが悪でないというふうに切りかえていこうという、そういう意図があるというふうにとられてもやむを得ないのじゃないですか。

藤村和男文部省初等中等教育局教科書検定課長

○説明員(藤村和男君) 私どもは、表記のバランスという観点から、より客観的な用語である「進出」などの言葉を用いてはどうかということを改善意見として申し上げているわけでございまして、特に歴史の流れ全体についての記述についてとやかく意見を付しているということではございません。

松前達郎日本社会党

○松前達郎君 ですから、バランスとおっしゃいまずけれど、バランスですべて処理してしまっていい問題ではないということを申し上げているんですね。やはりこの侵略という問題は一つの大きな背景がある。まあある意味で言うと、戦略的というか何といいますか、いわゆる「進出」というのは行動ですね。行動ですが、「侵略」というのはそうじゃない、もっと深い意味があるんだというふうにとらえてしかるべきじゃないかと思うんですね。ですから中国の方も恐らくそういうふうに意味をとって、これは重大な問題であると、しかもその辺の改訂の経過からして、どうも再び日本が昔のような状態に返りつつあるような、あるいはそれを返させるような一つの大きな基本的な、何といいますか条件をつくりつつあるのだというふうに解釈されてもいたし方ないんじゃないか。その辺をやはり十分考えていただかないと、字句の訂正等、これは技術的にはどうということないと思うんです。意地を張る必要もないと思うんですね。しかし私自身は、それだけの問題じゃなくてもっと重要な問題が裏にあるんだというふうに私は思っておるのですが、その点いかがですか。もう一度お伺いしますけれども、バランスでやったということですね、あくまでも。

藤村和男文部省初等中等教育局教科書検定課長

○説明員(藤村和男君) 先ほど申し上げましたように、十九世紀末におきますところのヨーロッパの列強のアジア進出という表現が使われておりまして、日中戦争について「中国への侵略」というようなことが書かれております場合には、より客観的な用語である「進出」という言葉に統一されてはいかがかという改善意見を付したものでございます。

松前達郎日本社会党

○松前達郎君 そのアジア進出というのは、十九世紀末のアジア進出という言葉が使われておると言われたわけですね。これはどこが使ったのですか。これは、各国が植民地を持っていましたね。そういうふうな国々がそれぞれ使っていたのか。それとも、そのアジア進出という言葉があるから、それを基礎にしてバランス上「侵略」を「進出」にしたというのですが、そのアジア進出という言葉は一体どこがつくったんですか、そういうふうに書いてあるのですか。

藤村和男文部省初等中等教育局教科書検定課長

○説明員(藤村和男君) 教科書の検定に当たりましては、会社から白表紙本と申しまして検定前の教科書原稿が出てくるわけでございますが、その記述の中にいま私が申しましたように十九世紀末における列強のアジア進出とか、あるいはイギリスの「中国への進出」とかという言葉を使ってきているという事実がございますので、そういった場合に、日中戦争につきましても同じ中国大陸への戦争ですから、表記の統一を図って「進出」という言葉などに変えてはいかがですかという改善意見を付しているということでございます。

松前達郎日本社会党

○松前達郎君 そうしますと、列強のアジア進出ということをおっしゃいましたけれども、これはやはり大きな戦争をやって進出したのですか。大きな戦争をやって占領し、それで進出してきたのですか、列強は。

藤村和男文部省初等中等教育局教科書検定課長

○説明員(藤村和男君) アヘン戦争などもございますし、通常教科書の著者は十九世紀末におきますところのヨーロッパの列強のアジア進出という表現を使っているわけでございまして、そういう表現が使われている場合に、日中戦争のところだけ「侵略」という言葉を使っておりますから、より客観的な表現である、「侵略」ではなくて「進出」という言葉などに統一をしてはどうかという意見を付したということでございます。

松前達郎日本社会党

○松前達郎君 その言語の統一上やったというふうなことですね。そのときにやはりこういう問題が、たとえば先ほど外務大臣がおっしゃったような共同声明とか日韓の共同コミュニケ、こういったような一つの戦後処理といいますか、こういうものと絡み合いながら今後こういった問題が取り上げられる可能性があるということは全然お考えにならなかった。ただ語句の統一、ごろ合わせといいますか、そういうものだけしかお考えにならなかったというんですね。

藤村和男文部省初等中等教育局教科書検定課長

○説明員(藤村和男君) 当時どのような検討をしたかつまびらかには承知しておりませんけれども、日中国交回復の場合には、教科書におきまして、それまで国交が開かれない国という記述になっていたものを新たに国交が開かれたということとか、地名の問題とか、それから共同声明に関する記述とか、そういったものが新しくそれ以後盛り込まれるようになったというふうに承知いたしております。

松前達郎日本社会党

○松前達郎君 そうしますと、どうも伺っていますと比較的何といいますか、裏の背景となるべきいろいろな国際問題とは余り関係がなく、そういうものは記述の中に盛り込んだけれども、「侵略」という言葉を「進出」に直すということについては、これは以前に使われていた列強のアジア進出というものに合わせてバランスをとったのだと、こういうふうにおっしゃるわけですね。その程度であるなら、また「侵略」に直したらどうですか。どうってことないじゃないですか。

藤村和男文部省初等中等教育局教科書検定課長

○説明員(藤村和男君) 教科書の検定に当たりまして改善意見を付したものに従って著者が一たん表現を改めたと、それで次の改訂検定などの場合に、その表記をもとに戻そうと言ってきたような場合には、国内の訴訟との関連もございまして認めるわけにはいかないというふうに考えております。また検定制度本来の趣旨から申しましても、何らかの欠陥があって付すのが改善意見でございますから、それに従って著者の側で一たん修正がなされた以上は、その修正をもとに戻すことは認められないというふうに考えております。

松前達郎日本社会党

○松前達郎君 教科書の検定について、これもまたいろいろ問題が前から起きているんですね。この作業が一体どう行われているかというのは私も余りよく知らないんですね。どうも密室の中の検定などと言われている。それだったら密室の中で戻したってどうということないんですけれどもね。検定というのはそうなりますと、著者に対して改善勧告をするというんですね。要するに文部省の考え方と違う内容である場合、あるいは記述が違っている場合、あるいは記述を訂正したい場合は自主的に著者が直してくるように勧告をするということですか。それとも意見を出すと……。

藤村和男文部省初等中等教育局教科書検定課長

○説明員(藤村和男君) 教科書の検定に当たりましては、教科用図書全体を調査いたしまして、まず合格本と不合格本に分かれるわけでございますが、合格をします場合でも、通常二つの種類の意見が数多くつくという形になるわけでございます。  一つは合格の条件といたしまして付しますところの修正意見、これは、この修正意見の趣旨に従いまして記述を訂正してもらわなければこの本を合格とは認めないという、非常に強い義務的要素を持った意見が一つございます。それから「侵略」という言葉について付しました意見のように改善意見と申しまして、これはアドバイスというふうに御理解いただいた方がいいと思いますが、最終的には著者の側の判断にゆだねられるべき性格のものであるけれども、文部省としては直していただいた方がいいという考えをお伝えするものから成り立っているわけでございます。  で、社会科の教科書で歴史などの場合ですと、通常一冊の教科書につきまして二百カ所から六百カ所の修正意見ないし改善意見が付されるということになっているわけでございます。

松前達郎日本社会党

○松前達郎君 そうしますと、仮定ですけれども、改善意見の場合、改善意見を文部省の方から出される、アドバイスをする。もし著者が改善しなかったらどうなんですか。

藤村和男文部省初等中等教育局教科書検定課長

○説明員(藤村和男君) そのまま教科書として出版されるということでございます。

松前達郎日本社会党

○松前達郎君 たとえばいまの「侵略」とか「侵入」とかいう問題については改善意見だとおっしゃったわけですね。これについて何カ所かあっても、著者がそれじゃそうしましょうと言わないで、そのままでいくべきだという意見で改善しなかった場合も、必ずそれは採択されるわけですね。

藤村和男文部省初等中等教育局教科書検定課長

○説明員(藤村和男君) そのとおりでございます。したがいまして、ことしの春検定を終えました教科書の中にも、「侵略」という言葉が多数出てくるという形になっております。

松前達郎日本社会党

○松前達郎君 それには改善意見はまだ出していないわけですね。

藤村和男文部省初等中等教育局教科書検定課長

○説明員(藤村和男君) 日中戦争関係につきまして、日本史十冊、世界史十冊を通じまして、いま申し上げましたような個所について付しました意見の個所数は、総数で十四カ所ございますが、そのうち四カ所が直された。十カ所については「侵略」という言葉が残っておりまして、そのまま見本本として展示会に展示されているということでございます。

松前達郎日本社会党

○松前達郎君 教科書検定について、これは何も「侵略」とか「侵入」とかいう問題だけではなくて、いままでいろいろな問題が出てまいったわけですね。裁判まで行われている。ですから、これはやはり教科書というのは国民の教育の基本的な素材であるということになりますね。しかも、教科書そのものを選定しあるいは教科書の記述内容等について選択するのは国民側がするんですね。その辺は文部省としてもしっかりと認識しておいてもらいたいと思うんです。ですから、検定についても一体どういう状況であるかというのは公表してもいいのじゃないかと私は思うぐらいなんで、その辺の認識というものをやはり持っておいていただきたいのと、さっき申し上げたように外国との関係というのは非常に微妙な点もあるし、また同時に最近の傾向を見ますと、中国の言い分ではありませんが、たとえば靖国神社の問題とかあるいは軍備の増強問題だとか、そういう問題も絡めて中国の方は神経質になっているわけですね。それは侵略された国民でなければわからないことじゃないかと私は思うんです。日本の場合は本土を侵略されたことはありませんから、そういう意味ではシビアに感じないかもしれないんですけれども、やはりその点を踏まえて、せっかく検定をやるのだったらその辺まで考えて検定をしていただかないと、これから先、今回こういうような問題が起きたので恐らく反省されていると思いますが、この辺の問題を今後も十分踏まえてやっていっていただきたい。これを私要望するわけなんですが、教育そのものというのは基本的に国家百年の計とかいろいろ言われておるわけですけれども、非常に重要な問題だと私思うんですね。語句の訂正問題ということと分離しても非常に重要な問題だと、こういうふうに思うんです。  これは昔の歴史を振り返ってみればわかることなんですが、たとえば文部省ができたのはいつですか、一八七一年じゃないですか。明治に入ってすぐですね。それからどんどんシステムができ上がってくる。いわゆる封建制が変えられてそれで国家体制ができてくる。その中で民主的な試練を経ていない日本が一体どういうふうに動いてきたかということを、これを振り返ってみる必要もあるのじゃないか。恐らくその辺からずっと続く今日までの歴史の中で、中国は日本に対する見方を持っているのだと私は思うんです。中国というのは非常にロングレンジで物を見ますから、そういう意味で、非常に今度の問題というのはわれわれに対して大きな反省を促した一つの問題であろうと私は思うわけなんですけれどもね。文部省ができたり、その後陸軍ができたり兵学校ができたり、どんどんできてきまして、それから徴兵制度が行われる。あるいは師範学校、これもまたいろいろと師範学校も教育の基本としての問題点がありますけれども、こういうものができてくる。そして日本が一つの政治のシステムを確立する中で、今日のような状況にまで歴史を経過してきている。  私は教科書の検定官ではありませんから、そこから先申し上げませんけれども、こういった流れというもの、一つの歴史というものをやはり十分踏まえた上で検定をしていただかないとならないんじゃないか。これは大いに反省をする材料になる。いまでもそんなのんきなことを言っていられないんですよ、本当は。やはりこの問題というのは、何も中国とか韓国だけの問題じゃないんですね。これはフィリピンにしろ、たとえばかつて日本が領土権を設定したマレーですか、そういうところの問題にしろ、ビルマはちょっと違いますが、シンガポールにしろあるいはインドネシアにしろ、すべて関連のある問題になってくるだろうと私は思います。ですからこの際、この問題については、さっきのバランス上とかそういうことじゃなくて、もっと真剣に対応していかなければいけない問題じゃないかと思うんですが、さて、そこで文部省としてはこれを再修正する、そういうふうな意思がありますか。

藤村和男文部省初等中等教育局教科書検定課長

○説明員(藤村和男君) いわゆる再修正ということにつきましては、検定の趣旨にかんがみまして認めるわけにはいかないという考えを持っておりますが、検定制度を堅持しながら何らかの打開策がないかどうか、真剣に検討をしているということでございます。

松前達郎日本社会党

○松前達郎君 その打開策というのが、先ほど私が申し上げた文章を追加して内容をもっと理解させるような、そういう方向に持っていこうということなんですか。

藤村和男文部省初等中等教育局教科書検定課長

○説明員(藤村和男君) いかなる対応策が可能であるかどうか、さまざまな角度から検討をさせていただいているということでございます。

松前達郎日本社会党

○松前達郎君 これはそんなにないと思うんですね、答えは。幾ら中国に行って説明したってだめなんですよ。書いたものは残っているんです。ですから問題は、やはりこれをどういうふうに変えていくかという問題ですね。教科書そのものの内容をどう変えるかという問題が一つですね。変えるというときには、いわゆる中国側が言うような「進出」を「侵略」に変える、戻すというのが一つ。それからもう一つは、国会あたりでもよくやりますが、附帯事項的に何かくっつけて、意味はそういう意味なんだというふうなことをそれにつけていくということが一つですね。しかし、それはちょっと姑息な手段だと私は思うんですけれども、その二つか、あるいは全部削除しちゃう、教科書そのものを凍結しちゃう、出さない。こういう三つぐらいしかないんじゃないですか。

藤村和男文部省初等中等教育局教科書検定課長

○説明員(藤村和男君) 初めにちょっと申し上げておきたいわけでございますが、教科書の検定制度の場合には一切が申請主義ということによって行われておりまして、文部省が書き直す原稿案をつくるということはございません。意見を付しましても、その趣旨に従って書く方法というのは幾通りもあるということでございますし、あるいはいろいろな手続にいたしましても、発行者側のあるいは著者側の申請によって行われるという形で検定の仕事が行われているわけでございます。制度自体がそのようなものになっておりまして、文部省が強力にこうしろということを具体的な内容について指導しますことは、これは実質的には、わかりやすく言えば国定に近い形になってしまう、そういうことはたてまえの上からも非常にむずかしいということなどを前提にした上で、一体どういう打開策が可能であるかどうか、現在真剣に検討しているということでございます。

松前達郎日本社会党

○松前達郎君 検定という言葉は、いま申請に応じて検定をし、それでアドバイスをしたりあるいは修正意見を出すということをさっきおっしゃったわけですけれど、これは文部省というのはそういった意味では教育のかなめですから、教科書を採用されようとする著者の方はやはり相当強力な意見として受け入れるわけですね。ですから、そういうふうに申請に基づいてやっているからということをおっしゃいますけれども、しかし私はそこでもって意見を言い、あるいは修正意見とかそれからアドバイスをするということは、ある意見では相当強力な指導だと思うのですよね。ですから、これはお上に対する一つの権力といいますか、そういうものを痛感しているのが恐らく著者だろうと私は思っておるんですけれども、そういう中で見てみますと、どうも今回のはやはりセミ国定的な要素が中に入ってきているのじゃなかろうかと思うのですが、そうしますとあれですか、著者の方からそれじゃこれをたとえば「進出」という言葉をどうも「侵略」に直した方がいいという申請などをいまからする余地はあるのですか、著者の方から。

藤村和男文部省初等中等教育局教科書検定課長

○説明員(藤村和男君) 教科書の検定というのは新規検定と改訂検定というものがございます。そのほかに制度としましては正誤訂正という制度がございまして、わかりやすく申しますとこの三つから検定制度が成り立っているということでございますが、著者の側からいろいろな申請がルールに従って行われるということは、それはそれでできるわけでございますけれども、ただ私ども改善意見を付したものについて、しかもその意見の趣旨に従って書き直されたものをもとに戻すということは、検定制度の趣旨から見てできないことだというふうに考えております。

松前達郎日本社会党

○松前達郎君 そうしますと、改善意見というのは絶討なものであるということになりますね。どうですか。

藤村和男文部省初等中等教育局教科書検定課長

○説明員(藤村和男君) 必要に応じて教科書の内容をより適切にするために付しているということでございます。

松前達郎日本社会党

○松前達郎君 できない。改善意見に従って修正されたものをもとへ戻すことはできないというのは絶対だということですね、逆戻りできないわけですから。ですから再修正に応じられないと文部省はおっしゃっているわけですね。加筆方式をとるということは、これは意見とはまた違うからこれなら認められるであろうと、私は思うのですけれどもね。その辺がやはりどうもぎくしゃくとして非常にかたくななところがあるんじゃないかと思うのですが、これは検定に携わる人というのはどなたが一体選考されて、どなたが任命されるのですか。

藤村和男文部省初等中等教育局教科書検定課長

○説明員(藤村和男君) 文部省の職員としましては、教科書調査官と申しまして、大学の教授、助教授、講師あるいは助手クラスの人を任用いたしているわけでございますが、これらの調査官は総勢で現在たしか四十六名になっているかと思いますけれども、初めにこの調査官が申請がありました原稿本――白表紙本といいまして、著者名とか会社名を書かずに出されてくる本があるわけですけれども、これについての調査をいたします。それと同時に、あわせまして調査員と申しまして一冊の本につきまして三名の人を委嘱するわけでございます。この調査員は、高等学校の教科書の場合ですと高等学校の教員二名それから大学の先生一名という構成で、調査官と同じようにこの白表紙本につきまして調査をするわけでございます。この調査官の意見並びに調査員の意見等を総合いたしまして、今度は、教科用図書検定調査審議会という審議会が文部大臣の諮問機関としてございますけれども、この審議会にお諮りをしまして、そこで同じように先生方もこの白表紙本をごらんいただきまして、事務的にまとめられた原案についていろいろ審議をし、最終的に合格、不合格、あるいは合格の場合には付すべき意見などについてその内容を決定し、これを文部大臣に答申するわけでございます。文部大臣はこれに基づきまして、調査官を通じて出版社なり著者にその内容を伝えるという仕組みになっております。

松前達郎日本社会党

○松前達郎君 その調査官を選考するときには一体どういう選考の仕方をされるのですか。

藤村和男文部省初等中等教育局教科書検定課長

○説明員(藤村和男君) これは文部省の職員として任用するわけでございますので、広く各大学に推薦等を依頼し、その中から学問的力量もあり、かつ教育的な識見もある方を選考によって任命するという手続を踏んで任命いたしております。

松前達郎日本社会党

○松前達郎君 ちょっと細かくなりますけれども、そうすると、大学に依頼するという場合は大学の学長に依頼して何名か出してくださいということですね。そして出てきた名簿の中からまた文部省の方の選考を行うということになりますね。

藤村和男文部省初等中等教育局教科書検定課長

○説明員(藤村和男君) 学長だけとは限りませんで、やはり専門に詳しい主任教授のところなどに適宜お願いをするという形でございますが、私どもの方でも、教科書の検定に当たりましてはまず学問的な力がベースとしてなければなりませんので、任用される候補者の論文などを何人かで読みましてその力量等について調査もするし、それから必要に応じまして面接等も行いまして、教育的な識見といったものについて調べた上で総合的に判断して、調査官としてふさわしい人を任用するということにになっているわけでございます。

松前達郎日本社会党

○松前達郎君 細かくなりましたからそのぐらいにしておきますけれども、その調査官のリストというのはいただけますね。

藤村和男文部省初等中等教育局教科書検定課長

○説明員(藤村和男君) 調査官の名簿でしたら文部省の正規の職員でございますから差し上げることができます。

松前達郎日本社会党

○松前達郎君 その名簿の中に調査官とか明記されていますね。

藤村和男文部省初等中等教育局教科書検定課長

○説明員(藤村和男君) はい。私ども役所で発行しますものの中にも調査官という表示がなされております。

松前達郎日本社会党

○松前達郎君 わかりました。  そこで今度は外務省にお伺いしたいのですが、最近この一連の教科書問題に関連して韓国あたりでも相当反日キャンペーンみたいなものが、まあキャンペーンと言っていいのかどうかわかりませんが、反日的な大衆行動というものが行われてきておるわけですね。大使館に石が投げられる、こういうこともあった。やはり韓国にとってみるとこれも非常に重要な問題だと私は思うんですね、歴史から見て。ですから、中国、韓国、これらについての侵略問題、これについてやはり外務省としては一体どういうふうな方向で解決をした方がいいのかというビジョンといいますか、こういうものをお持ちですか。

木内昭胤外務省アジア局長

○政府委員(木内昭胤君) 私どもとしましては、この問題をなるべく早く解決しなければならないと考えております。その場合の考え方の基本は、やはり韓国あるいは中国の国民感情というものを十分に謙虚に受けとめて、これを十分理解して対応しなければならないというふうに考えております。

松前達郎日本社会党

○松前達郎君 そこで、外務省はとにかく国際関係というか、相手の国の立場とかあるいは国民感情とかそういうものも当然踏まえた上でお考えになっておられるわけですね。これはもうあたりまえなことなんです。文部省は今度国内的な字句のバランスということでお考えになっているということですね。だからこれはもうかみ合わないわけですね。なかなかこの辺の調整がむずかしいんじゃないか、こう思うんですが、かつて新聞報道では、外務大臣が韓国のテレビインタビューにお出になったときのお話の趣旨を文部大臣の方から、外務大臣は文部省の立場を理解していると思っているというふうなことで報道されておるのですけれども、この辺、その理解している、これは外務大臣がおっしゃったわけじゃないんですが、理解していると思ういうふうに文部大臣がおっしゃったことは一体どういうことなのか、これは想像つきますか。外務大臣いかがでしょうか。

櫻内義雄自由民主党外務大臣

○国務大臣(櫻内義雄君) 中国でも韓国でも、検定制度は日本の国内問題としてこれに干渉するつもりはないということを言っておられます。それで、私もここで御答弁申し上げておるように、中国、韓国等いろいろ厳しい批判があることはこれを忠実に関係方面に申し上げ、また反省すべきことは反省する、そういう必要があるのではないか、こういうことは申しておりますが、ただ、いまそれぞれの国が申しておるように、国内問題まで外務大臣がその立場で云々をしない、こういうことで来ておりますから、その辺は文部大臣が外務大臣も理解しておると言われておることではないかと、あえて想像すればそういうことでございます。

松前達郎日本社会党

○松前達郎君 いま外務大臣がおっしゃいました、検定制度についてはこれは国内問題であるから、それについて外国から言うということは適当でないというふうなことをおっしゃったわけですね。これはまさにそのとおりだと思うんです。制度そのものについてがたがた言うことはないと思うんです。問題は結果なんですね。ですからいま問題になっているのはその結果であって、制度を変えろとかそういうことを言っているわけじゃない、中国、韓国が。その結果として「進出」という言葉が使われているのがけしからぬ、これはどうも問題があると。その問題というのは、さっき申し上げた背景、ずっと歴史的経過を見ても問題がある、こういうことを言っているわけなんで、どうもその辺が、さっきから伺っていますと、文部省の方では制度を説明して理解をしてもらうということをおっしゃったのですが、これは新聞等でもおっしゃっているのですが、これはもう意味ないと思うんですね、幾ら言ったって制度そのものは国内問題ですから。ところが結果として出てきたその字句について問題になってくるということなんで、その辺をひとつ十分踏まえた上で両省協議されて、これは速やかに、しかも明快に対処をしていただきたい、これをひとつ要望しておきたいと思います。  大分教科書問題が長くなりましたので、もう時間も迫ってまいりましたから最後に一つだけお伺いしたいのは、今度は経済制裁の問題でありますけれども、特にソビエトに対する経済制裁、日本としては経済制裁という言葉は使わないとおっしゃっていますが、経済的措置ですね。これについてアメリカあたりからのいろいろな要望も来ている。そこで西ヨーロッパ側との関連が今度出てきて、たとえば西ドイツとかフランスとかそういうところが、もうアメリカのそういう制裁措置というものについていけない、そういうふうなことを言っているわけですね。ところでそのアメリカそのものはどうかというと、たとえば食糧輸出に関する経済措置というものを標榜しながら、実は裏ではある程度の小規模の、三十五万トンとかその程度だったと思いますが、ちょぼちょぼと輸出をし、最近になってはそれを大っぴらにやるようになってきた。食糧等いわゆる軍事的な方面に利用されるであろう品物については別だと言えばそれっきりなんですけれども、しかしそういった経済制裁――これは制裁という言葉を私はあえて使うんですが、日本で言えば経済措置となるかもしれませんが、これらについて今後わが国としては、いわゆる貿易摩擦等も含めて考えた場合、やはり多角的な貿易をやる必要があるのだろう。それと同時に、たとえばシベリアとか樺太付近の石油開発あるいは天然ガスの開発にしても、これはある意味で言うと戦略的にやる必要があるのじゃないかということも考えられる。そういうすべての面から考えて、これから先、対ソ経済措置というものについて日本としてはどういうふうな方向で進んでいこうとされているのか、その点を最後にお伺いいたします。

櫻内義雄自由民主党外務大臣

○国務大臣(櫻内義雄君) 六月十八日のアメリカにおける国家安全保障会議で、ポーランド情勢との関連で、石油、ガス関連機材の輸出に関する制裁を検討した結果、この制裁措置を強化すると、こういうことで、わが国の大きな関連のあるサハリンプロジェクトに対しての米国製機材の輸出ライセンスについて発給が認められなかった。また、ヨーロッパ諸国はヤンブルグのパイプラインについてこれが認められないというようなことであったわけでありますが、ヨーロッパの問題と日本とはおのずからこれは別件のものだと私は認識をしております。  その後アメリカ政府は商務省規則改正を行って、これらの問題についてそれが法的にもライセンスの発給が認められないという、そういう行動に出られたのでありますが、既契約案件を対象とするということは妥当性を欠くのではないか、あるいは米国の管轄権の一方的な域外適用はどうかと、こういうことで、これらの点について七月二十日に大河原大使から米側に対して、それは妥当でないと、こういうことを申し入れて本日に至っておるわけでございます。  一方において、いま松前委員のおっしゃるような、穀物については従来の協定を一年延長する措置などをとっておって、これはヨーロッパ諸国も日本としても、アメリカとしては対ソ制裁をする、ソ連に対して、ポーランド問題等の経緯からできるだけ力をつけないようにするという上から、アメリカのとっておる措置はどうかと。これについては、食糧はアメリカが入れなくても、他の諸国から入れるので同じであるというようなことを言っておるわけでございますが、いずれにしてもこの日本の対ソ措置の中にサハリン問題が入るということは、日本自身が大きく髪響を受けるということ、またこの商務省の規則改正というものが妥当でない、こういうことは現にアメリカ側に申し入れて、何らかのアメリカの対応を期待しておるというのが現状でございます。

松前達郎日本社会党

○松前達郎君 質問を終わります。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 このたびの教科書問題が政治問題化したことは、問題が中国側にあるのでなくて、日本側における少なくともいまの鈴木内閣における閣内不統一と言ってもよろしいような、文部省は文部省のメンツにとらわれ過ぎ、外務省の意見というものにほとんど取り入れられないで、文教族と言われる人たちのウルトラ右翼的な考え方が外国を刺激すること非常に大きなものがあったと思うのです。このたびアメリカの「タイム」でも、やはり日本のいままでの残虐行為というようなことを南京事件その他を写真入りで引用して、日本がこの機会にアジア諸国から遊離するのをねらったような節まで感ぜられるようなすでにPRが行われておりますが、長引けば長引くほど迷惑するのは、世界の中における今後の日本というものの進路はいかなるものかという疑惑が増大するだけで、被害者は逆に今度は日本ということになって、日本が文部官僚のメンツにとらわれ過ぎている面から、アジアだけでなく、世界から袋だたきにならなければならないようなみじめさを私は露呈することがあるのじゃないかということを憂うるのですが、外務大臣は何とかなるというふうに漠然と考えておるのでしょうか。この危機感に対する鈍感性というものが、いまの鈴木内閣のタイミングを逸し、指導性と責任感の欠如している一つの証拠にもなりかねまじと思うのですが、いかようにこれを受けとめておられますか。

櫻内義雄自由民主党外務大臣

○国務大臣(櫻内義雄君) 戸叶委員のいまおっしゃられたことは、外務大臣としては非常に重要に受けとめておるところでございます。外務省としては、日本の周囲の諸国との間の友好関係を持続していく非常に大事なことでございますが、いま日本が教科書問題に端を発していろいろ批判を受けるというこの事態を速やかに改善しなければならないということは言うまでもないことであります。  またさらには、アメリカを初め国際的にもどうかと、こういう御指摘でございましたが、それらのことを考えまして、このような国際情勢、また国際世論動向を忠実に国内関係方面に伝えて対処する、それも速やかにしなければならないという認識を持っておるわけでございます。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 今日の外交というものはきわめてスピーディーに物に対処しなければならないので、タイミングを逸しては外交においてはその機会を失い、成果というものがなくなってしまうおそれがあるのです。文教族と言われる人の論議を拝聴していると、どこに風が吹いているのかわからないような形でのんびりとメンツ論にとらわれているようでありますが、こういうぎくしゃくした官僚的なかみしもをつけなければ物が言えない、ついでにちょんまげもほしいということになるんでしょうが、一体こういうような一つの文教のあり方というものが果たして文化に寄与するものかどうか、このことは日本国民自身において考えなければならない重大な問題であるが、いまの鈴木内閣、特に外務大臣はいかようにこれを受けとめておりますか。

櫻内義雄自由民主党外務大臣

○国務大臣(櫻内義雄君) 国際世論、特に今回の問題での中国、韓国等関係の深い諸国の世論動向を踏まえる必要があると同時に、また国内の世論動向というものをでき得る限り一致させていくということは民主政治の上で必要なことだと思うのであります。文部省関係で、検定制度そのものに対する御意見その他いろいろと御意見が出ておりますが、私としては、それらの意見が速やかに統一されて、そして今回の諸外国の批判に対して速やかに対処する必要がある、こういうことを痛感しておりまして、及ばずながらそういう見地で文部省等にお願いをしておるわけでございます。恐らくこれらの点については、鈴木総理あるいは官房長官等にも十分配慮をされておることと思いますので、おっしゃられるように、タイミングを失することのない、一刻も早い解決を望みたいと思っております。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 文化というのは生きているのです、流れているのです。固定化してぎくしゃくしたのは、文化という名を使ってそれを食い物にしている官僚的な一つの表現であって、もっとスムーズに心が伝達されるような方式が今日における文化ではないかと思うのでありますが、日本ではやはりプロシア流の法律、明治憲法によって培われた根が日本官僚の土壌の中にしみ込んでおって、何か法治国家思想というものがもっともらしく見えるが、われわれは法秩序というものを無視するものではないけれども、それより先に人間の持っているところの常識、人々の心、人々の生活、そこから問題をくみ取るだけのものがなければ、官僚国家の化け物のような存在に、非常に干からびた国家としてしか国家権力を受けとめることができないのじゃないかと思います。  櫻内さん、桜に関する本居宣長の歌にもあるように、おおらかな精神、屈託のない明るさ、なぜそういうものを日本の文化の中に流し込むことができないのか。特にこの鈴木内閣に入ってから、ぎくしゃくした官僚的な表現で、しかも時代錯誤的な憲法論で、二年間黙って私は聞いておりましたが、世界のどこで日本の国会におけるような権威のない、権威権威と言っているけれども、言葉は踊っているけれども、社会科学の世界において、経世の学において、国の基本法を論ずる上において、他国にあるいは後世までも大きな影響を与えるような権威ある言動がどこにおいてなされましたか。官僚的な手続によってあるいは議運族的な処理によって国会運営を名として国会を無視し、言論の自由、国会におけるところの十分なる国民の総意を反映しての討議というものは見られない。暗く、じめじめとしている。ゴキブリ政治家には住みよいかしれないが、やはり議会政治というものはこのような派閥や官僚や財界の人々の金や権謀術策の力のみによって空転しておっては議会政治はなきに等しいようなものであって、この議会制民主主義は、日本においては典型的な私は絶望的な危機をいま誘発していると思います。  機内さんは国会生活も長い方ですが、これに対して少し無関心過ぎはしませんか、どう見ておりますか。大勢に従い、あるいは国の最高機関は国会であるから、人民の意思によって、人民投票によって、人民の決意によって以外に憲法は変えられないという現行憲法を無視していろいろなことが取引されているかのように一般は受け取っておりますが、こんな暗い、こんな陰湿な政治をだれがつくり上げたのです。これが一つの最もこっけいな形であらわれたのが教科書問題です。そういう意味において教科書問題は、これからの日本をもっと明るい、もっと常識的な――コモンセンス、このことを重視するような方向へ持ち来すためには大きな私は試験台となり、世界じゅう挙げて注目の的となるようなことになってきていると思うのですが、あなたはこの問題の背景、今後におけるところのこの問題の流転、見通し、そういうものをどう見ておりますか。

櫻内義雄自由民主党外務大臣

○国務大臣(櫻内義雄君) 大きな長い歴史の流れを背景にしておる今回の問題だと、こういう点については戸叶委員も御認識を一にしていただけるものと思うのであります。三十六年にわたる日本の統治に対する批判というものがこの機会に噴き出ておりますし、また中国との関係では、非常に長い経緯がありますけれども、満州・支那両事変からの経緯を見ましても非常な問題を包蔵しておるわけでございますから、まあ私どももこういうような問題に対応する上には、おっしゃられるようにこの流れをよく把握して、そしてスムーズに事態を解決していく、その必要性は十分認めるのでありますけれども、ただいま申し上げたような大きな歴史を背景にしたところの問題である、こういうことから非常に至難ないろいろな要素が加わってくる、これは私はやむを得ないことではないかと、それにはどう対応していくか。われわれとしての責任とか反省とか、そしてまた冷静な処理というものが必要なのではないか。そういう点から現在大変苦慮をしておるということでございます。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 徳川時代の爛熟したときの文化人に蜀山人という方がありました。櫻内さんや私らよりもおもしろい方で川柳なんかもはやらせた方であります。この退廃文化の中におっても文化の流れというものをよく見つめていった方でありますが、腐敗政治を直すことに力点を置いて、庶民の中から川柳やその他を盛り上げていった方でありますけれども、いざこの退廃を改めようとして登場したところの白河楽翁公が幕府の実権を握るや、非常に窮屈で苦労を知らない殿様だから、文武、文武と言って非常に骨を折られたが、蜀山人は何か息苦しさを感じて「世の中に蚊ほどうるさきものはなし ぶんぶぶんぶと夜も眠れず」という句を残して大阪の方へ去ってしまったということであります。いま私は退廃した日本において、自分たちがふるさとと祖国の所在も忘れかけているようなときに、文部官僚の硬直した姿勢で力むのもよろしいが、現実の政治の中枢部はもうすでに腐っておるのであります。「世の中に蚊ほどうるさきものはなし ぶんぶぶんぶと夜も眠れず」と言うが、そのぶんぶはいずれも蚊のぶんぶ、ぶんぶであって、ゴキブリのすみかのようになっている。政治の中枢においてモラルが欠如し、金の力と権力の力、政府の圧力で物事は何でもできるというようなよこしまな政治がのさばり返っているところに、私は文教の世界においてもこのような偽善的な、およそ官僚の干物のような、デリカシーを持たない、文学も詩も人々の自由も理解しない人々によって、つまらない歴史観、つまらない独善が押しつけられるということは、もうすでに日本の病が膏肓に入ってきたという感じしか受けないのでありますが、中に住んでみればそれほどでもないのでしょうか、機内さん。その辺の自民党の御様子を承りたいと思うんです。

櫻内義雄自由民主党外務大臣

○国務大臣(櫻内義雄君) 戸叶委員の厳しい御批判でございまして、まあ私どもはこういう御批判があることによって、また反省もし考えを正していくということになるわけでございますので、ただいまいろいろ御高見をちょうだいいたしましてありがとうございました。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 いや、別に感謝を受けるほどのありがたいものじゃありませんが、「良薬は口に苦し」と言うので、苦い方だけは幾らか感じたようですが、私は肖向前君とは一九六〇年(昭和三十五年)、安保闘争の際における安保条約改定阻止国民会議の十二団体のカンパニアの総団長として北京に訪ねた、彼が有名人でなかった時代からの知り合いですが、彼は大連に生まれ、日本の文理科大学を出、台湾生まれの外交官謝南光君の下におって非常に正確に日本の情報をキャッチしているのには私は驚いたのです。あのときも選挙に入る前の忙しい時代で、私が参議院で執行委員でしたから、中国に浅沼君のしりぬぐいと称して行ったのですが、浅沼君はしりなんかはぬぐう必要がないほどきれいな男でありました。彼は中国の本当に苦境に入っていることに――中国は二面作戦というのは絶対にやらないんです。孫子の兵法でも包囲せん滅戦というのはとらないのです。兵は凶器なりという考え方で孫子は教えているのであります。そういう意味において、兄弟党的ソ連が中国を無視してアメリカと密約を結んで、そうして中国をないがしろにしたという不信義な行為に対しては言うに言われない憤りを持っていたときであります。アメリカとも立場は違うが、本当に腹を割って話をしようといってダレスにも連絡し、ワルシャワにおいても長い間粘り強く話し合いを続けたのでありますが、すでに現実的にソ連以外に恐るるものはない。ソ連とアメリカが組めば、しかも密約を結んでおれば、それによってアメリカは安全であるとでも思ったのでしょうか、ダレスさんは応じなかったのです。そこに浅沼君に対しての切々とした周恩来氏の訴えがあり、素朴な大アジア主義的な夢を持っておった浅沼君としては、隣国中国の窮地を打開するためには一身を捨てても自分はこれに対応しなければならないと決意した模様であります。中国側は二面作戦を避けるという意味において、恐らくは米ソ両帝国主義ということは避けてもらい、浅沼さんの思ったとおりの考え方で中国をこの窮地から活路を見出してくれというようなことに応じて、盟邦のために私はやったのだと確信しております。一言も彼はその後言いわけはしませんでした。河上さんにも、学生時代からの親友の私にも一言も弁解をしなかったけれども、しなかったところに浅沼君の偉さがあり、そうして彼は体を張って、日中両国の結びをつくり上げるために一身を捨てていったのであります。  政治というのは官僚の字句の修正や解釈でなくて、体を張って相手の国々の人々の苦悩を打開するために全力投球をするのがこれが本当の政治家の任務であります。政治家と官僚とは違う。官僚に多くのことは言えない。問題を官僚だけに任せないで、政治家が、いつでも飛び込んで話をしようとする構えを持って、少なくとも総理大臣が北京に行く前に、官房長官の宮澤さんでもなんでも、行って本当に腹を割って話し合いをして、属僚の字句解釈的な修正のような小細工な外交でなく、腹を割ってお互いに今後の世界の平和共存の基礎をアジアから築き上げる共同責任を持つために、われわれも過ちがあったが、中国もいろいろな試行錯誤があったのを変えていこうという努力もしているし、それに呼応してわれわれも改めるべきものは改めるというぐらいの腹を割って話ができる政治家が自民党にはいないんでしょうか。いなければ貸してあげますよ。それぐらいな土性骨がなければ政治はやめた方がいいです。官僚に問題をなすりつけて、官僚はまた小細工をやって、いつまでそんなことがもつのです。  日本人というのは小細工はうまいが、西郷さんのように大きくたたけば大きくなるし、小さくたたけば小さくもなるというデリカシーも持ち、しかも相手の心を酌み取ることのできる、地下三千尺の水の心を酌み取ることのできる民族だというならば、日本は過ちを起こしてもそれによって改めることにやぶさかでないならば、中国はもう一度私はほれ直してくれると思うんです。どうもあいつは冷たくておもしろくない人間だから今後つき合いはいいかげんにしていこうと言われるのと――やはり日本人というものは率直であり簡明であり、そうしていつも明日を目指して明るさを求めているんだという新しい認識を勝ち得るならば、日本のためにも中国のためにもなるじゃありませんか。やるならけんかでもいさかいでももっとはでに、陰湿な、じめじめしたことしの夏みたいな、夏が来たのか何やらわからないような、こういう天候が悪いから、天勾践をむなしゅうするのかもしれませんが、私はもう少し気のきいた政治家が自民党の中にもありそうなものだと思いますが、櫻内さんどう思いますか。政治家と官僚の違いをどう思いますか。官僚が責任を持つのじゃなくて、一国の総理大臣なり鈴木内閣の枢要の人たちが体を張ってこの難問題をできるだけ早く解決するだけの前向きの姿勢をとらないうちはだめですよ。こんなことは何の価値もありません。そのことはすでに松前君も指摘しておりましたが、もっとさっぱりとした日本人になりましょう。これじゃだれも、どうも日本人というのは口先の言い訳だけうまくて、つき合ってみてもおもしろくないからよしなさいと、このごろはアメリカあたりまで「タイム」でそういうことを言って、自分のやったことは棚上げして、広島、長崎のことはそっちのけにして、日本が悪いのは事実であったが、南京事件だけをこの機会に問題をそっちの方へそらそうというような気配すら感じておりますが、何もかもしょい込みになったのじゃ日本もたまったものじゃない。一つ一つ明快に問題の解決をつけていくというだけの決断が政治の中にないときには、一国はそれによって滅びていくのです。魂が滅びていくんです。  人が行き倒れになったときに、行き倒れになったかどうか、息の根がとまったかどうかを見て、はらわたの腐ったところがら食いにいくのがインドのハゲタカです。ハゲタカのような日本人にはなりたくない。やっぱりもっとライオンのような、トラのような野性が日本人にはふさわしいのじゃないかと思いますが、ぶらぶら木にぶら下がって、人が息絶えるまで待っていて、はらわたが腐って食べごろだと思って、もう死んだというので骨だけ残して、むさぼっていくハゲタカのような日本人にはなりたくない。  そういう意味において、いままで私は非常に苦労人の集まっている鈴木内閣というものに期待を若干持っておりましたが、これではだれも期待が持てなくなったのじゃないでしょうか。こんなぶざまな状態で長期政権をやられた日にはたまったものじゃないという憤りが国民の中には満ち満ちてきております。私は一月おくれのお盆に田舎へ行って、昔ながらの生き残りの小学校の友達や何かと話してみたら、一般庶民の物の見方の方がはるかに明快です。何であんなことにこだわってこじらしているんだろう。役人には役人のそれなりの理屈はあります。理屈はあるけれども、政治は生きているのです。寸刻を争うような時代に、もっとダイナミックな決断が私は政治の中に躍動しなければ、日本の政治というものはもう夏だし腐り切ってしまいます。外科手術は間に合いません。どうぞお引き取りを願いますというような言い分きりしか言えなくなるじゃないですか、自民党みずから。社会党もその例に漏れてはおりませんが、お互いに反省して外科手術をやって、日本の議会政治をもう一度本物に立て直すというだけの勇気がなければ私は日本はこのまま滅びていくと思うんです。鈴木内閣には任せ切れないという憤りが国民の中から暴発すると思います。暴発寸前のところまで来ております。私の予言は大体当たることで有名なんですから。私だけが憂えているのじゃない。国民のすべてが、――人はいいかもしれないが、慎重かもしれないが、これじゃうだつが上がらぬといって未来に対して期待を持っておりません。  そういう意味において、教科書問題は何だかんだという窮屈な問題よりも、今後の民族に、子孫に受け継がれる問題として好個のこれは社会科学の中における、政治問題化した問題の中において、お互いのアジアにも世界にも反省を促す点において、日本の官僚みたいなばかなことをやるなといういい手本として私は今後試験材料になると思いますが、いい方の試験材料ならいいが、これは悪い方の試験材料になるのだから、なったやつが、人体実験と同じようだけれど、手術しても治らない手術ほどつらいものはないですよ。時はいま、いま思い切った日本におけるところの道義が退廃してどうにもならなくなったときにこそ外科手術がなされなければならないときに、外科手術もしないで頓服を飲ませている医者、ぐうたら医者、これと同じようなわれ国手でござるというような政治家がいるとするならば唾棄すべきであります。日本は救われません。その間にもっと早く手をくだせば何とかなったのに、どうぞ御臨終でございますという引導を渡されるより以外にないじゃないですか。よくもこれまででたらめな政治を政権欲しさに引き延ばしてきたものだ。後世から私は筆誅が加えられると思うのであります。  教科書問題は母親の問題であり、家庭の問題であり、青年の問題であり、未来に希望をつなぐ人々の問題であり、国際間においても重要な問題です。これ以上の政治問題はないのです。悪い意味において、政治問題化されているという事実認識を欠いているから、のんべんだらりんこのようなばかなことを毎日毎日繰り返しているのですが、これで一国の総理大臣が勤まりますか、こんなぶざまな態度で。鈴木総理大臣や苦労人のあなたのような人がい、宮澤さんのような何をやってもそつのない人もいながら、一番大切なものを忘れた政治家ばかりがよくも集まったものだと嘆かざるを得ないのですが、自分に関する問題だから自分で嘆くというわけにはいかぬ。結局、だれがやってみてもどうにもならないところへ来てしまったというような見方の上に立って、いまのような態度を依然として改めていくことをしないのですから、私はその辺をしかと、甘心してもらうだけでなく「良薬は口に苦し」、薬が効いたかどうかということをやっぱり試してみなければ、ヤブ医者ですから確認を持てませんけれども、御返事をひとつお願いしたいと思います。

櫻内義雄自由民主党外務大臣

○国務大臣(櫻内義雄君) いま主として日中関係に焦点を合わせての御所見を承ったわけでありますが、中国との関係は、昨年の十二月に日中閣僚会議を行い、また本年になって趙紫陽首相をお迎えし、その折に私としても外相会談を持つ機会を得たということで、しかも、これにこたえて間もなく鈴木首相の訪中を行おうと、こういう段階に教科書問題が起きたわけでございますが、この教科書問題が起きましてからも、目に見えない日中間の交流というものがいろいろあると思うのです。たとえば岡崎嘉平太さんが訪中されておるとか、今回万里副首相と会談をされた大阪経済界の代表の佐伯勇さん、こういう人もお出かけになっておる。そしてその間には有益ないろいろな情報が得られておるわけであります。国会がこういう終盤段階でありましたために、ここしばらく与野党の訪中使節というものがとだえてはおりますが、日中議連を中心として活発な動きのあることも戸叶委員が御承知のとおりであり、また、戸叶委員御自身が浅沼先生の折の肖向前さんとのお話し合いなども御披露があったわけで、私は、それらのことをすべて総合して日本の進路に過ちなきを期しておるわけでございまして、今回の問題も早晩結論を得る、そういう段階を迎えつつあると思うのでありますが、これだけの大問題であっただけに、やはり余り焦って処理をするというよりも、ある程度の慎重さというものが必要ではないか。日本の基本的な立場というものは、すでに繰り返し申し上げておるところでございまして、日中共同声明にのっとるその日本の立場というもの、これを踏まえまして反省すべきは反省する、責任を感ずるものは感ずる、そういうことで今回の問題の解決に当たっていきたいと思います。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 櫻内さんの言われることはよくわかりますが、先走って物をやるのでなく、慎重に問題をかみしめて間違いのないようにやっていきたいという配慮はごもっともですが、外交は政府の責任ですから、われわれ野党の者はいろいろそれに協力しながら、ときには反対論を展開しながら、警告をしながら、ある意味において広い立場から日本の意向というものを政府を通じて相手側にまで通じさせようという努力にやぶさかではありませんけれども、いまのような自民党内における文教族でごたごたして物がまとまらない、それが次期総裁選挙に絡みついた日本特有な陰湿な政争が舞台裏においては演ぜられているというようなやり方では、どこの国でも日本の政治はどうかしている、機械に故障ができているという見方よりかできないんじゃないかと思うのです。やっぱり近代国際関係学における方法論というものは、流れのプロセスの実証的なデータを基礎として問題が論ぜられるのであって、古いプロシア憲法的な、明治憲法的な条文解釈によってやっているような陳腐な法の取り扱いというものはもはや軽視されておる、軽視されておるというのでなく、学問的価値なきものと思われているのです。しかるに、この二年間にわたって、奥野前法務大臣なりあるいはいろいろな与野党の方々の主として衆議院段階の論議を見ると、一つも近代社会科学の方法論なり国際関係学といわれているところの、いまの国際法の理念追求に対する態度なりにおいて傾聴すべきものは一つもなかったと思うのです。依然として明治憲法によって高文を通った、あるいは裁判官になった人たちの観念的な法理論の空転であって、それから益するものは何もなかったと思うのであります。私は、日本のこの御用学者の醸し出している空気というものがこれが大学の教授だ、学者だ、国会議員だという肩書きの権威によって裏づけようとしているが、そんなものはコペルニクス的な真理追求の方式においても見られるように、いかなる権力によってもそれを圧殺することのできない真理は存在するのであります。  あるがままの事実をこれが正しいのだというふうに教科書なんかにおいても伝えていくのがこれが教育の根源であって、いろいろな小細工をして、日本としてはこういう表現を使った方が日本の主権を侵されないでよろしいなどという、何が主権か。こういうやからによって私は文教が支配されている限りにおいては、日本人は真理なり正義なり自由なりというものの価値を本当に追求できない、一つの学問的な古い低迷の中に埋没しておって、そこから脱出ができない状態にいるんだ。こういう発想力のない、時代とともにコペルニクス的な転換も可能でないような人たちと今後つき合っていけるかどうかということに対して私は非常な不信感を各国から抱かれることになると思うんです。日本には政治学がない。これが社会科学だといってマルキストのマルクス、エンゲルス、レーニン主義というものを押しつけたりするけれども、そういうのと同じような米ソのいまの権力的な押しつけというものは目に余るものがあります。  排他的な民族主義、自分だけ安全であればよいというような考え方、米英ソ三国のヤルタ協定を中心として原爆を持ったその後ではあるが、実力のある者たちの支配に世界をゆだねて国連の機能を弱体化させなければならない、それには国連憲章を母体として生まれたモデル国家と言われている日本の憲法も変えることによって、国際連合の機能をも縮小させていかなければならないというところにつながらないとも限らないのであります。いま国会が立法府で最高機関です。最高機関である国会で決めれば、主権者である人民をないがしろにしても憲法改正はできるというような条文が憲法のどこにありますか。現行憲法のもとにおいて、われわれは今日国連における機能を健全なものにしようとして努力し、非核三原則も国会においては決議し、そういう方向に世界をもっとまともな方向にやってヤルタ協定の軍事秘密協定を解消させるならば、北方領土などということによって騒がなくとも、おのずから世界の新しい新秩序のもとに領土問題を片づけることも可能である。この秋をごらんなさい。ポーランドはソ連に接近したと言うけれども、民族の完全な独立なしに、いままでのような奴隷国家的な仕打ちを受けているならば、自分たちの意思はどこからも生かされてこないという絶望感の上に立って飢餓に追い立てられながら私は飢餓暴動が起きると思います。飢えたるロシアを救えという叫び声の中に、ボルシェビキにあれほど反感を持っていながらも世界のヒューマニズムは、ロシア飢饉にあえいだときのロシア救済の運動が日本においても大きな一つの私は世界観を生んでいったと思うのであります。  いまわれわれは食糧の問題に対しても、ほかでもそうですが、通産省の幹部の優秀な人が、日本は資源がない、貿易によって日本の活路を開くためにはシベリア開発にも協力しなければならないと言ったら、アメリカから激怒を受けましたが、しかしながら、やっぱりアメリカの心ある人々は、日本なり中国をアメリカ本位で追い詰めていったならば、中国も台湾問題でアメリカを恨み、日本もまた貿易問題その他において、国内的に、あるいは海外との活路をも封じ込められていくならば、窒息するわけにはいかぬというやはり一つの憤りを発するであろうという忠告がアメリカの中からも沸いて出てきております。私は、アメリカの中における知識人も、これじゃだめだ、レーガンも恐らくはレーガンの周囲の人々もこれは何とか変えていかなければならないというところに、高金利政策でも、ある点に至って改めざるを得ないところまでは来た。はでに芝居がかってやろうとしても、芝居はうまくいきませんよ。その間に私は不幸なことが随所において暴発する危険性もある。  PLOの問題も片づきそうに見えておりますが、アラブの人心に与えた影響というものは深刻なものがあります。エルサレムのユダヤの人々の高金利政策は先祖以来の伝統的な風習になっておるけれども、それがためにユダヤの人々はエルサレムから去らなければならなかったのじゃないですか。PLOの人たちの憤激も、かつてはバルフォア宣言によってイスラエルの独立する前には同じ地域に同居できたのに、あのエルサレムの国家というものをユダヤ的な手腕に迎合するがためにつくり上げたことによって、かえってそこにおいてアラブにおける紛争の根源をつくり上げた。モーゼの十戒に背いたような高金利政策によって、そうしてヨーロッパにおけるやはりメディチ家を中心とする共和制をぶち破って、そうして植民地支配のカイザリズムを持ち出したところに、ヨーロッパの民族闘争激化の原因をつくったのも、私は高金利政策からもたらされたあの行き方にあったと思うんです。アメリカだけを私たちは言うのではないが、こういう形において庶民は痛めつけられ、大企業と官僚と財閥だけがぬくぬくと生きるような、こんなむごい政治は危ないです。資本主義とか社会主義とかにとらわれないで早く調整が必要です。イデオロギーじゃないです、宗教じゃないです、庶民の生活と未来に対する明るさを取り戻すための政治の役割りがきわめて重要です。  どうぞ教科書問題はそのきっかけをなすものと思いますから、まあ櫻内さんのように、全部わかっている人に言うほどつらいことはないけれども、わかっていてもどうすることもできない体質の党を背景にして、いまの議会の現状を背景にして、だれもどうすることもできないようなのた打ちしなければならない状態から、早く鈴木内閣は窒息を免れるような活路だけでも一歩でも二歩でも開いていただかれんことを希望し、期待し、危機感は想像以上に、私はタイミングを逸したらえらいことになるという警告の一語を添えて、とにかく危機はわれわれの足元にいま起きつつあるということを添えて、鈴木さんにも櫻内さんにも人ごとではないという形で、日本みずからが改めることによって他を変えていくだけの賢明な処置をとられんことを期待して私の質問は終わります。お願いします。  一言御見解があったならば聞かせていただきます。

櫻内義雄自由民主党外務大臣

○国務大臣(櫻内義雄君) 大変広範囲に御所見をちょうだいしたわけでございますが、官僚に対する御批判、憲法に対する御持論、ヤルタ協定に対しての御批判もございました。  ただ、ただいまの御質問の中で、アメリカの高金利政策についての御所見を交えて御質問でございますが、御承知のように、最近公定歩合の三回の引き下げ、そしてそれは短期長期ともに米国内の金利引き下げの効果にあらわれてきておると思うのであります。また、この財政赤字に対してヨーロッパも日本もその影響するところを懸念しておったわけでありますが、今回、十六日でございましたか、テレビ放送を通じて一千億ドルの増税ということを発表されまして、それらの効果が出てきておる。これは一言で言うと、レーガン大統領が現状に対処してのある程度の政策転換を考えておるのではないか、その一端ではないかと、このように把握をしておるわけでございまして、これが世界経済の沈滞した状況に好影響の出ることを期待してやみません。  なお、教科書問題について重ねて御所見がございましたが、私どもとしてはこの重要問題が早急に対処できるよう全力を尽くしてまいりたいと思います。

稲嶺一郎自由民主党

○委員長(稲嶺一郎君) 午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午後零時四分休憩      ―――――・―――――    午後一時開会

稲嶺一郎自由民主党

○委員長(稲嶺一郎君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、国際情勢等に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。

渋谷邦彦公明党・国民会議

○渋谷邦彦君 最初に、若干教科書問題について触れさせていただきたいと思います。  午前中にも同僚委員から、主として文部省を対象としたやりとりが行われました。そうした質疑応答を通して感じられますことは、果たして円満な解決と申し上げた方がいいのか、要するに中国側あるいは韓国側等から納得のいく回答が、あるいは日本政府の考え方が出せるであろうかと、そういう印象を実は強く持ったわけであります。  過般、外務省の情文局長等が中国へ参りましていろいろと折衝に当たられたわけでございます。情文局長の記者会見等の内容を拝見いたしますと、中国政府側と話し合ったその内容についてはいま発表できる段階ではない、一切落着した上でというそういう前置きがあったように思います。それはそれとして、ただ結論として言われたお話の中には、中国の姿勢が大変厳しいという点に集約されていたのではなかったろうかというふうに思うわけでございます。大変厳しいということは中国側、恐らく韓国側も含めてのことでございますけれども、いま要求というか要請というかされている問題について、明確に日本側の修正なり、あるいは改訂なりを明らかにしてもらいたいという趣旨が込められているのではないかというふうに思うわけです。しかし、午前中のやりとりを聞いている限りにおいては、外務省の姿勢というものと文部省側の姿勢というものが平行線である。となると大変解決までには時間がかかりそうな気配もいたしますし、非常にむずかしいのではないだろうかというのが私の率直な感じたままの状況であります。  そこで、せっかく中国側へ参られた情文局長にこの機会に、内容についてはともかくといたしまして、もし差し支えない範囲で述べていただければ大変ありがたいと思うのでございますけれども、いま私が触れたようなやはり印象であったのか、また同時に、日本に対してどういうことを強く期待しているのか、恐らく情文局長が中国へ参られる前に肖向前第一アジア局長ですか、が談話を発表しております。その談話の内容も私読ませていただいているわけでありますけれども、確かに中国側の基本的原則というものは変わっていない。話し合いの結果についても恐らく同じような状況ではなかったのか、そういったことを含めて最初にお伺いをしておきたいと、こう思います。

橋本恕外務省情報文化局長

○政府委員(橋本恕君) 中国側との、私ども、つまり文部省の大崎局長と私との話し合いにつきましては、これは外交接触が始まったばかりの段階で、その内容を外に発表すれば、いたずらに揣摩憶測を呼んで物事をうまくまとめるために妨げになるというような意見が出されました。そこで解決のめどがつくまでは発表しないでおきましょうという合意がございます。したがいまして、以下、中国側がこう言った、日本側がこう言ったということでなくて、私の率直な印象として先生方に御報告したいと思います。  ただいま渋谷先生御指摘のとおりに、私が受けました印象、つまり教科書問題に対する中国側の姿勢というものは、現在なお非常に厳しいということを確かに私申し上げました。この厳しいということの内容でございますが、これはすでに日中双方で発表いたしました肖向前アジア局長が渡辺公使を呼んで北京で話したその話し合い、そこにあらわれております。中国側の態度、それからその次に呉学謙筆頭次官が日本側鹿取大使を呼びまして、そこで開陳しました中国側の見解というものは基本的に変わっていないという意味におきまして、私は依然として厳しいということを申し上げた次第でございます。ただ、これもおまえの印象を言えということでございますと、大変厳しいのですが、中国側はこの教科書問題が、これは後で申し上げますけれども、日本政府の決める問題であるという前提は前提としまして、この問題を何とか日本側との話し合いにおいて円満に解決したいということを強く望んでいるという印象を私は持ちました。  そこで、中国側と日本側との話し合いの中身でございますが、これは先ほどのことで外には発表しないということでございますから、私の印象としてお聞きいただきたいと存じますが、この話し合いの最重点は、中国側は教科書検定制度そのものは日本の、つまり日本政府の問題であるということを認め、このことに干渉はいたしませんというのが中国側の基本的姿勢であるというふうに私は了解しております。しかしながら、後が続くのでございますが、しかしながら、中国側は教科書の具体的な記述そのものが中国に直接かつ著しく関与する部分については、これについて、しかも事実あるいは事実認識について日本側に重大な誤解、誤認があると中国側が認める部分について率直に重大関心を表明し、意見を申し述べ、何とかしてくれということを要求、要望――これは中国側は、いまだ抗議という言葉を使っておりません。要望、要求するのは、これは当然でしょうというのが中国側の基本的な姿勢である。こういうふうに私は理解しております。

渋谷邦彦公明党・国民会議

○渋谷邦彦君 いま相当言葉を選びながら慎重にお答えをいただいたわけでございますが、中国側の考え方あるいは姿勢というものの輪郭が私なりに理解できたというふうに判断をいたします。  そこで、重ねてでございますけれども、中国側としてはいわゆるいまおっしゃられた誤認という問題、中国側も、日本側に対していたずらな摩擦を起こすことを避けながら円満に解決できればという気持ちを含みつつ要望したのではないだろうか。しかしその背景には、やはり中国側としては可能な限りその誤認の事実については訂正をしていただくことが望ましいのではないだろうかというふうに判断もされるわけでございますが、その辺はいかがでございましたでしょうか。

橋本恕外務省情報文化局長

○政府委員(橋本恕君) この問題の本質でございますが、中国側も認めておりますとおり、教科書検定制度そのものはこれはあくまでも日本の問題である。したがってこのたてまえは崩すことはできないという一つの非常に重要な命題といいますか、要素が一方にございます。その一方におきまして、教科書問題をめぐりまして、特に教科書の具体的記述をめぐりまして、中国、それから韓国はもちろんのこと、その他の周辺アジア諸国においても重大関心を表明しておられる。しかもこれが周辺アジア諸国の国民感情そのものに立脚するところの無視するべからざる勢いになっているという事実、これは外交上一日といえどもなおざりにできないという要素といいますか要因、先ほど申しましたこの二つの要素をいかにうまく結びつけて解決していくかということが、現在政府に課されました教科書問題解決のための重要課題であろうかと存じます。そのためにこの二つの要素を何とか結びつけ両立させる手立てを講じたいということで、すでに先生御存じのとおりでございますが、文部省と外務省とが一体になりまして誠心誠意政府原案をつくるために努力しておるというのが現状でございまして、それができることを私は心から祈っておりますが、それができますれば政府の姿勢が明らかになった結果として、何とか中国にもあるいは韓国にもあるいはその他の周辺アジア諸国にも日本政府の、これはできた後の話でございますが、日本政府の誠意、誠実さのあかしをお酌み取り願いたいというのが私どもの率直な気持ちでございます。

渋谷邦彦公明党・国民会議

○渋谷邦彦君 文部省の方針としては、いまおっしゃられた大変御苦労なさったやりとりというものとうらはらに、やはり大変厳しい側面を持っているのではないだろうかと、それは午前中のやりとりにおいてもそういったことが裏づけられるような発言が文部省側からされました。つまり端的に言えばあるいは字句の修正ということになるのかもしれません。しかし文部省側としては、全体の文意を酌み取ってもらえれば決して事実関係というものを歪曲したものではないと、また同時に現在の検定制度というものが、またその再改訂あるいは修正ということになるとその制度自体が根底から揺らぐというその方針を崩していない、これが集約された文部省の方針であろうというふうに思うわけであります。  こういったことでずっと平行線をたどっていくと、どの時点で了解が得られるのかなという、そういう懸念をやはり抱かざるを得ない。いま御苦労なさっていることはわかるけれども、そこの接点というものはどこで一体うまく中国側あるいは韓国側と妥協点が見出せるのか。恐らく、これは私の推測ですけれども、文部省の局長も一緒に行かれた。その際に、文部省側としての考え方というものもるる説明がなされたというふうに私は思うんです。いま外務省と文部省は表裏一体になってと、いろいろと一つの結論をまとめるために作業もされたという経緯もあったようでございます。大きくその考え方が違うということはないとは思うんですけれども、やはり文部省の立場というものも中国側に理解をしてもらうということが大事な一つの要素であろうというふうに思うわけですが、その際文部省側の考えていること、いま述べられたお話の中にもあるいは含みがあると思いますけれども、明確に中国側に伝えられたのでしょうか。いま私が幾つかの点を申し上げました、再修正の考え方は全く持っていないという点等々、こういう文部省の方針というものについては明らかにされたのでしょうか。

橋本恕外務省情報文化局長

○政府委員(橋本恕君) 文部省にかわりまして私が答弁するというのは僭越でございますが、見渡したところ文部省の政府委員が出ておりませんので、私から御説明さしていただきますが、私は文部省の大崎局長と全く行動をともにいたしましたのでよく承知しておりますが、文部省、つまり具体的には大崎局長から中国側に対しまして、わが国の教科書検定制度の本質というものを十分に説明され、また中国が御指摘の、たとえば「侵略」を「進出」と直したというようなことは確かに中国側の御意見はちゃんと伺いました。それから十分理解いたします。しかし日本の社会科の教科書を、部分的ではなくて全体として何とかごらんになっていただければ、教科書全体として見れば、日本が中国との友好協力関係を現在、将来において真剣に考えているのだと。それからかつて日本が中国に迷惑をかけた、深く反省しているということは、全体として見ていただければおわかりいただけると思いますという趣旨のことで大崎局長が中国に説明したわけでございます。  それから、これは答弁を求められていないのかもしれませんけれども、いまの御質問の冒頭に渋谷先生が御指摘になりました文部省と外務省との関係でございますが、私はきわめて率直に申し上げますと、文部省がわが国の検定制度を何とか守りたいというお考えは、これは文部省として私は当然のことだと存じます。さればといって、私が先ほど申し上げました二つの要素の片側、つまり日本の外交上の利益、あるいは日本と近隣アジア諸国との友好協力関係が阻害されてはならないという意識も、私は文部省は当然のことながら強く持っていると確信いたしますし、私ども外務省としては、近隣アジア諸国ひいては世界諸国との友好協力関係の堅持ということはこれは至上命題ではございますが、と同時に私どもも日本人でございますので、日本の教科書検定制度がどうなってもいいというようなことはつゆ考えていないということで、文部省と外務省との間に意見の相違はないと私は思います。ただ重点の置き方があるいは違うかもしれないというようなことで御理解いただきまして、先ほども申し上げましたとおりに、できるだけ早く政府の考え方のもととなるものを、文部省と外務省とで何とかできるだけ早くつくり上げたいということで努力している最中でございます。

渋谷邦彦公明党・国民会議

○渋谷邦彦君 従来の政治的判断だとか考え方というものについては、妥協案だとかあるいは玉虫色だとか、日本語にはいろいろそういう便利な言葉がございます。しかし、今回の場合に限っては非常に鮮明な回答というものがやはり要求されるであろうし、また、それに対応できるための取りまとめというものが政府として当然望まれるのではないだろうか、こう考えますときに、やはり遅疑逡巡できない、右か左かというその辺を明確にすべき結論というものを出さなければならない、こんなふうに判断できるわけでございますけれども、その辺は中国側と折衝された際の印象として、あえて印象と申し上げますが、どんなふうにお感じになりましたか。

橋本恕外務省情報文化局長

○政府委員(橋本恕君) 私も中国側、具体的には中国政府でございますが、中国政府の考え方を隅から隅まで、奥の奥まで知っていると申し上げる自信は全くございません。しかし、全く私の印象でございますが、日本側、具体的には日本政府でございますが、日本政府が誠心誠意中国と、また韓国の場合は韓国でございますが、現在及び将来にわたって友好協力関係を堅持したいと考えているというこの誠意を十分に中国側に酌み取っていただけるならば、中国側においても原則がちゃんとしていれば、その具体的な適用についてはある程度の柔軟性を示していただけるかもしれない、こういう印象で、確信を持って申し上げられませんが、私はそういうふうに期待しておりますというふうに申し上げます。

渋谷邦彦公明党・国民会議

○渋谷邦彦君 大変含みを持った御答弁だったと思うんです。中国側としても大局的な立場に立って、先ほど冒頭に申し上げたように、これ以上この問題を通じて摩擦を起こしたくないという配慮もあるかもしれません。  もうちょっと細かくなるかもしれませんが、先ほども若干触れましたけれども、全体の記述の内容を通して理解をしてもらうという方法と、それから「侵略」「進出」という問題、これを明確にやはりしてもらいたい。恐らくそのどちらかに一つの結論というものがいくのではあるまいか、ここに非常に厄介な一つの解決への問題点が今後とも残されるのではないだろうか。要するに、中国は日本のその回答いかんによっては、国民感情が果たしてそれが納得し得るものと中国側としては判断できるのか、この辺もこれからの推移を見ていかないと、いま憶測を交えてあれこれせんさくするということは非常に危険性が伴うのではないかというふうにも感じられるのですが、中国側のそうした問題は非常にいま御答弁を伺っておりましても相当大局観に立った反応というものがあるんだなあ、そうすると解決の糸口も探せないことはないな、こういうふうに私が受けとめたのですけれども、その受けとめ方で間違いはないでしょうか。

橋本恕外務省情報文化局長

○政府委員(橋本恕君) 先生が御指摘になられました点をも含めまして現在、文部、外務両省の間で真剣に相談をしておる段階でございます。ただ、これも私の私見と申しますか、全くの私の印象をつけ加えさせていただければ、中国側もできるだけ早くこの問題を日本との話し合いによって円満に解決したいと考えていることは間違いないのではなかろうかというのが私の率直な印象でございます。

渋谷邦彦公明党・国民会議

○渋谷邦彦君 そこで、一つのめどといたしまして、総理の訪中がもうすでに決定をしているわけでございます。総理の訪中前にその円満な解決ができる見通しというものはあるのか。願わくはそうあってほしいというふうに思わざるを得ないわけであります。あるいは総理の訪中後になるのか。その辺のいま結論を求めるということも大変むずかしい問題かもしれませんけれども、しかし訪中という、しかも日中国交正常化十周年という一つの区切りを迎えた新しい出発を迎えるに当たりまして、これはやはり見逃すことのできない大きな課題であろうというふうに思うわけでございますけれども、その点はどのようにお感じになっていらっしゃいますか。

橋本恕外務省情報文化局長

○政府委員(橋本恕君) これは外務省の公式見解かどうか私存じませんが、私の率直な個人の意見を求められているのだというふうに解しまして私の個人の見解を申し述べさせていただきますが、私自身は、総理訪中の問題とそれから今回の教科書問題というのは全く別個の問題であるというふうに考えております。総理訪中は訪中として、日中国交正常化十周年をお互いに記念するという重要な相互訪問でございます。これの重要性は申すまでもございませんが、そのことと教科書問題とは別だ、つまり、総理訪中があろうとなかろうと、教科盲問題というものは一日も早く解決しなければならないというふうに私は考えております。  渋谷先生のお尋ねの、総理訪中までに解決の見通しありやという時間的な要素でございますが、率直に申し上げまして見通しが、絶対確実に解決してみせるというような、そういう気負いは全くございません。ただ一言、正直に申し上げますと、一日も早く解決しなければならないというのが私の率直な気持ちでございます。

渋谷邦彦公明党・国民会議

○渋谷邦彦君 外務大臣、いま情文局長が、個人的な立場でということをお断りになりながら述べられたわけでありますけれども、これはむしろ政治的な判断というものが当然求められるべきものであろうというふうに私は受けとめるわけでありますがいまのお話ですと、場合によると訪中後になることもあり得るというふうなことのニュアンスがそこに含まれているような受けとめ方ができるわけです。外務大臣としては、一日も早くというのは、これは願わしいことなんです。当然のことだと思います。私はやはり、総理訪中というものを一つのめどとして、願わくはやはり訪中前に何らかの結論、まだ日程的には若干あるわけでございますから、できないものか、こう思いますけれども、いかがでございますか。

櫻内義雄自由民主党外務大臣

○国務大臣(櫻内義雄君) 渋谷委員のおっしゃるとおり、総理訪中に支障のないように教科書問題を解決するのが外務省として当然やらなければならないことだと認識しておるわけであります。先般の両局長の訪中とその後の経緯、また現に国内におきまして検定問題は日本の問題として鋭意文部省中心で御努力を願っておるわけでございますから、私としては早急に日本の姿勢を打ち出して、そのことによって、仮に一切合財の解決ということがなくとも、やはりこの問題に対して中国側としても理解のできる見通しの立つようなそういうことは考えなければならない。もう一切きれいに解決ができればそれにこしたことはございませんが、いずれにしても誠心誠意この問題を鈴木訪中前に一段落つけたい、こういう心づもりでおります。

橋本恕外務省情報文化局長

○政府委員(橋本恕君) 国会という最も重要な場での発言でございますので、誤解をいただくと大変政府に御迷惑をかけますので、あえてよけいなことでございますが、先ほどの渋谷先生の御発言について一言だけつけ加えさせていただいてよろしゅうございますか。――私は総理訪中までに解決のめどがないということを申し上げた気持ちは全くございません。もう再三再四申し述べておりますとおりに、一日も早く解決しなければならないという私の願いを何度も申し上げましたけれども、私は総理訪中までに解決する見込みがないんだという趣旨で申し上げたのでは全くございませんので、その点誤解はないと存じますが重ねてつけ加えさせていただきたいと存じます。

渋谷邦彦公明党・国民会議

○渋谷邦彦君 その点了解しました。  さて次に、中国の問題もさることながら、やはり厄介なのは韓国の問題であろうかというふうに思います。これはちょっと中国側と違った雰囲気を感じます。  先日全斗煥大統領が演説をされました。大変激しい口調で述べられた内容がすでに報道されております。世論の盛り上がりといいますか、ちょっと中国側と韓国側の社会体制の違いというものもございましょうし、相当熱気を帯びている。むしろ韓国側の対応というものがまかり間違うとこれは大変な方向に向かいはしまいか。いま日韓経済協力の問題等々いろいろな問題が山積しているそういう状況の中で、この全斗煥大統領の意図というものが那辺にあるのか。具体的な問題点も取り上げて述べております。創氏改名の問題等を初めといたしまして、要するにけしからぬ、明らかに過去における日本の韓国に対するあり方というものは紛れもない侵略であり残虐行為であったというようなことになっているわけであります。そういった韓国側の全斗煥大統領の述べた内容について、外務省としてはまたこれは違った立場でお受けとめになっているのではあるまいかというふうに思うわけでありますが、その点いかがでございますか。

橋本恕外務省情報文化局長

○政府委員(橋本恕君) 全斗煥大統領の演説でございますが、日本による朝鮮半島統治時代の苦難を取り上げておられまして、日本の行為によりまして人間の最小限の象徴である名前と言葉さえ奪われたということを指摘されておりますし、例年になく激しい厳しい内容になっております。この全斗煥大統領の演説におきましては、教科書問題を契機としまして国民感情の高まりを踏まえまして全斗煥大統領は国民を代表してその真情を吐露されたものであろう、こういうふうに考えておりますが、政府といたしましては、こうした韓国の国民感情にも十分配慮を加えながら日韓友好関係の維持発展に努めていかなければならないというふうに考えております。  具体的にいま少し詳しく申し上げますと、昭和四十年の二月でございますが、当時の椎名外務大臣が訪韓されました際のいわゆる日韓共同コミュニケでございますが、ここに明確にされております過去の関係は遺憾であって深く反省している、こういう精神を常に念頭に置きながら、将来に向けて日本と韓国との間の揺るぎない信頼関係を構築していかねばならぬ、そのために努力すべきであるというのが政府の考え方であるというふうに理解しております。

渋谷邦彦公明党・国民会議

○渋谷邦彦君 そこで外務省としては、中国に情文局長等の派遣がなされたと同じように、木内アジア局長の派遣も考えておったようでございます。そういうことが伝えられております。やはり時間的に遷延いたしますと感情のこじれというものが残るだけでございまして解決を一層遅延をさせるというそういう事態になりかねないというふうに思うんですが、韓国側としては、日本側からそういう人が来てもらっても困るというようなそういう状況もあるやに聞いております。この点、努力をするという中に、中国側にとった対応と同じように、一刻も早く日本政府の考えというものを認識をしてもらう、理解の点は別問題であろうというふうに思います、まず認識をしてもらうという点の折衝というよのがやはり必要ではあるまいかというふうに思えてならないわけでありますが、その点は外務省としてどうお考えになっていらっしゃいますか。

櫻内義雄自由民主党外務大臣

○国務大臣(櫻内義雄君) 韓国へも理解を求めるために、またこの問題に接触しておる日本大使館の皆さんによく説明をするために局長レベルの派遣は考えておったのでありますが、韓国はこの八月三日に李外務長官からの申し入れがございまして、それは教科書問題そのものについての明白な回答を迫っておるわけで、中国の方の局長訪中後におきましては非公式に、閣僚レベルのだれかよこされないかとか、あるいはよこすについてははっきりしたことを回答してもらいたいとかというようなそういう状況がございまして、そこで、韓国のそれらの情報を正確に把握したい、こういうことで、逆にこの問題で接触をしておる後藤公使に日本に帰ってきてもらいまして、そして詳細いまの動きを聞き、またそれをもとに検討しておるという状況にあるわけであります。しかし、八月十五日の光復節を前にいたしましての韓国のこういう動きに何か日本としてこたえる必要があるのではないかと、こういうことから不肖私の所見を発表いたしまして、ひとまず韓国の動きに一応こたえるという姿勢をとったわけでございまして、先ほど情文局長からお答えをしたように、全斗煥大統領の演説は非常に激しいものである。しかし、その激しいものは日本側として受けとめてみますと、それがまた教科書の記述に関連しておるのではないかと、こう思える点が幾つかございます。  たとえば、韓国が日本の教科書に関連して申しておる中には、大統領の言われた、人間の最小限の象徴である名前と言葉さえ奪われたというその名前についての記述が、これが日本語を公用語として採用したとか、あるいは創氏改名の点については同化政策としてとかというようなそういう記述もございます。それらについても韓国側には相当厳しい批判があるのではないか。そういうようなことを踏まえますと、韓国については、基本的な姿勢というものは私の所見として申し上げておりますが、なお教科書の内容については今後よく韓国側の意見を聞き、検討する余地があるのではないか。しかし、これはそういう韓国の情勢というものは、韓国も検定制度そのものはやはり日本の問題であると、こういうふうに認めておりますので、私としてはこういう状況を忠実に関係者に伝えてよく考えてもらおうと、こういうことで本日に至っております。

渋谷邦彦公明党・国民会議

○渋谷邦彦君 いまの御答弁をさらに確認をさしていただきますと、場合によっては外務大臣御自身が訪韓する用意を持っていると理解してよろしゅうございますか。

櫻内義雄自由民主党外務大臣

○国務大臣(櫻内義雄君) 私の訪韓ということについては、それなりの用意がなくてはできないことでございまして、現在両局長が中国から帰られた後、また後藤公使に日本へ帰ってきてもらったその立場でいろいろ関係者と話し合いをしておるわけでございまして、これらの見通しがついて政府の姿勢が明白に打ち出されるということの方がまず第一ではないかと思います。

渋谷邦彦公明党・国民会議

○渋谷邦彦君 この教科書問題の締めくくりといたしまして、いま中国あるいは韓国の問題が表面化しているわけでございますが、ASEAN諸国に対してもいろいろな形で飛び火しているようなことが伝えられているようであります。こうなりますと、これは極論になると思うのですが、アジア地域の国をみんな敵に回すみたいなことになりはしまいかという心配すらもないではない。そういったようなことも場合によると考えられはしまいか。そういう対応についても当然お考えになっておられるというふうに思うわけでございますが、いま特定の国が火の手を上げたということではないにいたしましても、ASEAN地域においては、過去のいろいろな事実関係を通して日本のそういう考え方というものにやはりくぎを刺しておく必要があるという発想があるように思えてならないわけであります。そういう点について、外務省としてはどういう判断をいまお持ちになっていらっしゃるか、教科書問題の最後にこれを締めくくりとしてお伺いしておきたいというように思います。

橋本恕外務省情報文化局長

○政府委員(橋本恕君) 先生御指摘のとおりに、教科書問題が韓国、中国あるいは台湾、こういうきわめて近隣にある諸国からさらに飛び火いたしまして東南アジア諸国にまで広がっていくというような事態になりますと、わが国外交の原点でございまするわが国のアジア諸国との友好協力関係を堅持しなければならぬという観点から、私どもは深刻に事態を受けとめております。わが国は戦後平和憲法のもとで、二度と過去に犯した過ちは繰り返さないということで、国民のすべてが平和国家として生まれ変わるのだという重大な決意のもとに出発して、営々と戦後三十七年間今日まで国民各位が、政府ももちろん努力してまいったわけではございますが、この日本の真意がより正確に東南アジア諸国にも御理解がいただけるような努力、これは特に外務省の責任だと存じますが、努力を今後とも続けていかなければならないということを考えておる次第でございます。

渋谷邦彦公明党・国民会議

○渋谷邦彦君 いずれにせよ、いま中国あるいは韓国、ASEAN地域の諸国が描いているであろうというその考え方の中に、日本の右傾化あるいは軍国主義化というものに対する一つの恐れというものをやはり抱いているであろうということが推測されるわけであります。いずれにせよ、今後の友好持続という基本的な外交方針を考えてみた場合に、一刻も早く総力を挙げて円満な解決がなされることを強く私は要望しておきたいと思います。  次に、対ソ経済協力について若干触れさしていただきたいと思うわけでございます。  日ソ間の関係というものが冷え込んでからもう大変久しいことになるわけでございますが、対ソ経済措置と言った方が当たりさわりのない言い方であろうというふうに思います。日本は日本としての利益を守るための貿易を推進しなければならないという側面もございましょう。これはもう言うまでもございません。特にいままで問題になってまいりましたようにサハリンの開発等、あるいはシベリアの開発等にいたしましても、とんざをいたしまして先行きの見通しが全く立たない。いま一方においては軍拡の路線がどんどん強化されているような国際環境の中にあって、あるいは一つの歯どめになるかもしれない経済交流というものが、やはり今後日本の外交を進める上に一つの重要な要素になるのではないだろうかというのは、何も改めて申し上げる必要はないであろうというふうに思います。  そこで、現在とられているような経済措置というものを今後とも続けていくのか、あるいは日本はあくまでも独自の立場に立って道を開いていく、そういう方向にいまこそ決断をすべきときなのか、この点はどのように判断をされておられますか、お答えをいただきたいと思います。

加藤吉弥外務省欧亜局長

○政府委員(加藤吉弥君) 東西関係の冷え込みという先生の御指摘でございますが、確かにそういう現象が見られると思います。しかし、その原因を手繰ってまいりますと、アフガン、ポーランドへのソ連の進出、さらにはソ連の一方的な軍備拡大、こういうふうに、その原因をつくったのはやはりすべてソ連側であるというような認識を持っております。  こういう事態を一刻も早く解消するために、やはり経済制裁という措置をとっているわけでございますが、これを効果あらしめるためには、やはり西側の結束、西側の団結という行動、そういう団結のもとにこれを進めなければならない、それでなければ効果はないという点は先生も御案内のとおりでございます。  こういう措置をいつまで続けていいのかという御質問でございますが、やはり東西関係については安全保障の考慮を含めてやれという認識が西側に共通に存在しておりますし、西側の協調という原則のもとにこれを進めていくというのが日本の基本的な態度であると考えております。もちろん日本特有の国益あるいは日本の国情というものを踏まえてきめの細かい対応は必要でございますが、あくまでもそれはソ連に対する牽制という西側の団結のもとで進めていくべきものであると、かように考えております。

渋谷邦彦公明党・国民会議

○渋谷邦彦君 確かにいま言われたとおりであろうというふうに思います。  過日――先々月ですか、レーガン親書についての官房長官の談話発表という形で述べられた中にもそういう内容がございました。なかんずく、ソ連に先端技術などを供与してはならぬという明確な一つの方向というものが明示されておりますし、それ自体がいわゆるベルサイユ・サミットにおいて協議したことにつながるのであるという内容であったろうというように思うわけです。  しかし一方においては、いま西側陣営と申されましたけれども、イギリスのごときは、最近サハリンのパイプラインの建設をめぐって四つの企業がソビエトと契約を結んで、すでに実行段階に入っているということが実は伝えられているわけであります。ということは、裏返しにして考えてみた場合に、米国のそういう強硬な方針というものには従えないと。イギリスはイギリスのそういう国内事情があるし、それは、やはり推進することによってイギリスはイギリスの国益になるようなことにつながるという判断のもとにそれを進めている。あるいは、イギリス自体がそういうような状況の中で、西ドイツであるとかあるいはフランスであるとか、あるいはイタリアにも呼びかけて同調してもらいたい。恐らくそうした国々においても、西欧諸国とソビエト間における貿易の交流あるいは経済交流というものはこれからむしろ促進される方向にいま向いている。日本は逆にいつまでも凍結されたような状況のままに置かれているというような状況が、果たしてその西側陣営の考えていることとアメリカ側の考えていることと、いや西側と言うよりヨーロッパが考えていることと日本が考えていることと、あるいはアメリカが考えていることと必ずしも歩調が合っていないのじゃないかというふうに思えてならないわけであります。  恐らくそういう勢いというもの、流れというものは今後も強く進められていくような可能性すら十分判断される。そういう中にあって日本がますます孤立化していくような方向に置かれていくのではないかという心配が実はあるわけなんです。その点の心配は全くないと判断してよろしいか。もうすでに国鉄なんかについてはその技術協力を求められたけれども、それについては拒絶をした。いわゆる軍事転用化への心配があるという理由のようであります。そうしたことが一つ一ついまもう暗礁に乗り上げているというそういう状況が、果たして日本の国益を考えてみた場合にいいのかなあと、ソビエトですからいろいろなことを想定しながら、それは安全保障ということは当然大事でございましょう、それを大前提にしながらもイギリスはいま一人歩きをしている。何かもう足並みが全体的にそろわないという印象を強く受けるわけですが、そういう判断についてはいかがでございますか。

加藤吉弥外務省欧亜局長

○政府委員(加藤吉弥君) 御指摘のとおり、西ヨーロッパの諸国、特にECの加盟諸国でございますが、それとアメリカとの間には対ソ経済制裁をめぐっていろいろな意見の相違のあることは事実でございます。西ヨーロッパ側の言い分に従いますと、アメリカの措置については事前の協議がなかったということが第一点。第二番目に既契約分をも含めて制裁の対象にしておるということ。それから第三点、これは一番大きな点だと思いますが、アメリカの国内法を自国の管轄権を超えて域外に適用しようとしておる、これは国際法違反であると、こういう主張をしている次第でございます。  このように米欧間にいろいろな意見の相違があるということは事実でございますが、しかしその根底にある考え方、これは先ほども触れましたけれども、東西関係を進めるに当たっては安全保障の考慮を含めなければいけない、それからソ連の行き方にやはり自制を求めなければいけないという、そういう基本的な考え方においては西ヨーロッパとアメリカとの間にはいささかも相違はないと、かように私どもは認識しております。現に西ヨーロッパの指導者もまたアメリカの指導者も、これは家庭内のいざこざである、同じ家庭にあるからこそこういういざこざが生ずるのだけれども、やはり一つのファミリーの問題であるから、これはいずれ解決ができるであろうというようなことも申し述べている次第でございます。  わが国の対応ぶりについての御質問でございますが、まずサハリンの石油・天然ガスの探査・開発計画、それといわゆるヤンブルグ計画――西シベリアの天然ガスの計画でございますが、この二つは、その性格においても規模においても、また歴史的な経緯においても非常に異なるものでございます。わが国といたしましては一刻も早くこのサハリンの案件の円滑なる遂行及び完成を実現したい。そのために、アメリカから輸入しております機材の輸入の許可を得たいということを一つの目的としております。この点については西ヨーロッパと事情を異にしますゆえ、日本側としては西ヨーロッパと違う対応をするということは、これは当然の帰結であると、かように考えております。  ただ、今回のアメリカの制裁措置、特に六月十八日に行われました対ソ制裁強化措置が国際法的な観点からするとやはり正当化されないものである。こういう点につきましては西ヨーロッパと日本とはほぼ見解を同じくしているわけでございます。かような観点から七月二十日わが方の在米大河原大使を通じまして日本側の要望及び見解を詳しく米側に伝えるとともに、その再考を求めている次第でございます。  かようにいろいろ案件というか目標に従いまして、ある点においては独自の行動、また別の点においては結果として西ヨーロッパとほぼ同じの行動という、そういうきめの細かい対応をアメリカに対して行っている次第でございます。

渋谷邦彦公明党・国民会議

○渋谷邦彦君 そこで、これからもいろいろな状況を踏まえて話し合われる場というものがあると思います。すでに外務大臣自身の外交日程の中に西南アジア地域あるいはロンドンあるいはワシントンというぐあいに予定をされているようでありますし、いま申し上げたような問題についても、これは深刻な問題でありますだけに、一つの明確な方向というものがそこに浮き彫りにされていくような結果が生まれることを実は要望したいわけです。  そこで、いま申し上げた問題に関連するのでありますけれども、十月にパリでココムの協議が開催される運びになっておりますね。それに目標を定めてアメリカはさらに規制品目の対象を拡大しようというそういう試みがいまなされているようであります。冒頭に申し上げたように、むしろ東西貿易の拡大ということがあるいは緊張緩和に役立つのではないだろうか、安全保障の上からいっても望ましいのではないだろうかという側面もあるかもしれません。しかしそれが逆の方向へいまいきつつあるということは、むしろ緊張激化の方向へ向かわないとも限らないということを非常に心配するわけであります。このココムに対してアメリカが非常に強い姿勢を持っていることについて、いま申し述べたように規制品目の対象を拡大するという点について、日本側の取り組むべき対応というものはどのようにいまお考えになっていらっしゃいますか。

妹尾正毅外務省経済局次長

○政府委員(妹尾正毅君) お答え申し上げます。  ココムでことしの秋からリストレビューを行う予定になっておりますことはただいま御指摘のとおりでございますが、現在各国の間でこのレビューに向けて準備を進めている段階でございますが、アメリカにつきましては、個々の具体的な点はともかくといたしまして、方向については現行規制の見直しに当たって必要なものは規制を強化すべきと考えているというふうにわれわれも受けとめているわけでございます。日本としてどう対処するかという点につきましては、ココムのリストには技術進歩の問題、それから安全保障という背景等でございます。関係国の動きを見きわめながら適切なリストレビューが行われるように慎重に対処をしていきたいと、こういうふうに考えております。

渋谷邦彦公明党・国民会議

○渋谷邦彦君 確かに慎重というのは大変気のきいた言い方なんですけれども、やっぱり日本はいろいろな国々の動きを見ることは必要であっても、日本としてはこう行くのだという一つの基本方針があってもよろしいのではないだろうか。先ほど申し上げたように、いま対ソ関係が冷え込んでいるそういう状況の中で、またココムの規制品目の対象が拡大されるということになる、それに日本が同調せざるを得ないということになりますと、ますます険悪というか緊張激化の方向へ行くことを実は懸念するわけであります。そういう点については外務大臣はどういう御判断を持っていらっしゃるのか。先ほど触れましたように、今後外交日程の中でいろいろな方とお会いになる、あるいは九月にサッチャーの訪日が予定されている等いろいろな話し合いの場というものがございますね。そういう点で少しでもやはりそこの緩和の方向へ向かう経済交流、経済協力というものが必要であるまいかというふうに思えてならないわけでありますけれども、どのようにお考えになっていらっしゃいますか。

櫻内義雄自由民主党外務大臣

○国務大臣(櫻内義雄君) この国会終了後にお話のようないろいろ外交日程を持っておるわけでございますが、二国間協議ということになりますと、いま御質問のココム問題とは離れて当面の両国間の問題について話をする、こういう姿勢でいくべきであると、こう思うのであります。  それで、ココムの場においてどういう日本が姿勢をとるかということはいま妹尾次長から申し上げたとおりで、日本は日本なりのココムリストに対しての検討はしておるわけでございまして、各国それぞれの立場で意見の吐露があって、仮に米側が規制強化の、あるいは見直しの点を強調されるといたしましても、それぞれの各国の立場は明白にしながら、やはり協議の上で結論を出すと、こういう筋合いのことではないかと、こう思います。

渋谷邦彦公明党・国民会議

○渋谷邦彦君 いずれにしてもこの問題は非常に奥行きの深い、幅の広い問題でありますので、これをまたさらに御質問申し上げていきますとあと限られた時間がなくなりますので、また次回に譲りたいと思います。  次に、先般行われました第二回軍縮特別総会、残念ながら失敗に終わったという印象をぬぐい切れません。そこで、このままにしておいたのでは、もうただただ何の歯どめもないままに軍拡が促進されるという心配があるわけであります。  そこで、これはもうまとめて申し上げる以外方法はないんでありますが、一つは、失敗したその反面に世界各国の世論が非常に高まったと、これはいい結果の一つであったと思うんです。あるいはこれが唯一の結果であったかもしれない、そう言った方が正確でありましょう。しかし、軍縮特別総会という一つの目標があったためにそういう一つの盛り上がりがありました。けれども、それが終わってしまうとまた急速に軍縮への熱というものが冷めていくのではないかという心配もございます。この問題は大変息の長い問題でございますから、この問題についてあれこれ突っ込むのは余りにも時間がなさ過ぎることを残念に思うわけでありますが、それで、いろいろな方法があると思うんですね。秋には国連総会も予定されておりますし、次回の特別総会をいつにするかという呼びかけも必要でありましょうし、具体的な要するに提言というものがなされなければ何にもならない。やっぱりわれわれが終わってから感じますことは、まあ国連で一生懸命いろいろな国の人が大ぜい集まって討議をするのですけれども、終わってしまってから大変むなしいという結果しかそこにあらわれないということが、もう毎回やはりこの特別総会に限らず言えるのではないか。フォークランド諸島の問題あるいはレバノンの紛争の問題を挙げましても、国連の無力というものが明確に証明されたような最近の事実を考えましても、この辺も何とかしなければならぬ。だから軍縮を進めるに当たっては一体何がいま必要なのか。何を一つの手がかりとして可能性をそこに考えながら道を開かなければならぬのか。あっちへ行ったりこっちへ行ったりして回りくどい言い方になってしまいましたけれども、これを総合的に簡潔にひとつ、せっかく門田さんおいでになっていますので述べていただきたい。それでいま述べていただいたことについての答弁を踏まえて、また次の機会にこの軍縮に限ってまとめてお尋ねをしていきたいというふうにしたいと思います。

門田省三外務省国際連合局長

○政府委員(門田省三君) ただいま渋谷委員仰せられましたように、先般の第二回国連軍縮特別総会の成果につきましては、一番期待されました包括軍縮計画というものについての進展がなかったという関連におきまして、これは私どもといたしましても心残りがする残念なことであったと思うのでございます。この点は率直に認めざるを得ないと存じます。  しかしながら、多数の国から最高指導の立場にあられる方々が国連総会に見えまして、それぞれの考え、立場、方針といったものを明らかにされましたこと、これは注目すべきことであったと存じます。  また、第一回特総の際に採択されました最終文書が再確認されて、その基礎の上に将来への展望についてはずみができたということ、これも正しく評価をすべき事柄であろうと存ぜられます。したがいまして、十分ではなかったけれども、まさに御指摘がございましたようにこれを祭り、一つの大きな国際行事という形でとらえるのではなく、フォローアップを十分していくということで努力を重ねていく、これは御指摘のとおりというふうに私ども存じております。  具体的には、すでに今月八月三日からジュネーブの軍縮委員会が開催されております。この委員会におきましては、核兵器の全面禁止、化学兵器の禁止と申します重要な課題を重点的に取り上げておりまして、わが国も積極的にこの審議に参加いたしておるところでございます。  なお、今回の特別総会における他の一つの重要な特色は、わが国を初め欧米諸国に見られました民間の軍縮についての運動、これが国連特総にも大きな影響があったということでございまして、これを受けまして特総におきましては、世界軍縮キャンペーンの開始をすでに宣言いたしております。具体的計画につきましては、ことしの秋の総会に国連事務総長が計画案を提出いたしまして、加盟国による検討審議の上結論を出すということになっておるのでございますが、この政府レベルのみならず民間レベルにおける軍縮への努力、これを大きく推進していくことが今後の軍縮問題に取り組む上での大きな要素であろうと、かように私ども考えるのでございます。この観点から私どもといたしましても、たとえば国連における原爆の貴重な資料の備えつけ等々の具体的な形での協力を含めまして、世界軍縮キャンペーンが実りあるような方向で進むこと、このための努力を惜しんではならないと、かように考えております。  最後に一つ申し上げたいと思いますのは、フォークランド諸島、あるいはマルビナス諸島と申すべきでございますが、その件に関しまして国連は十分な効果のある措置をとることができなかったのではないか、平和維持機能に関する国連の役割りについての無力化をさらけ出したのではないかというお言葉がございましたのですが、結果的に見まして国連での措置が有効適切な効果を生むことができなかった。これは現実であろうと存じます。しかしながらいち早く国連の安全保障理事会におきまして、決議五〇二というものを採択しまして進むべき方向を国際世論を反映する形で打ち出したこと、これは国際世論の所在が那辺にありやということを明らかに示し、少なくとも関係当事国にそれ相応の影響を持ったであろうこと、これはそのとおりであったのではないかというように存じます。  なおまた、当初行われましたアメリカの国務長官によります調停工作が行き悩んだ時点その以降におきまして、国連事務総長が数週間余にわたっての調停工作のために日夜を分かたぬ努力を傾けた、これは非公式に聞くところではあと一歩というところまでいった時点もあったということでございますが、結果は残念ながら成功ではございませんでしたけれども、そのような努力、これはやはりそれなりに評価されてよろしいのではなかろうかと存じます。そして仮に国連が十分その機能を果たし得ないといたしましても、それでこれを見捨てるというのではなく、むしろ不十分な点をどのようにして補っていくか、国連の平和維持機能をどのように充実強化していくか、こういった点で私どもも今後協力し得る余地があるのではないか、そういうようにしていくことが世界の平和と安全の維持という大きな目的に寄与していくゆえん、ではないかと、かように感ずるのでございます。

渋谷邦彦公明党・国民会議

○渋谷邦彦君 いずれにいたしましても、この問題については、もっといろいろな部分的な問題から掘り下げて外務省との間にやりとりをしたいことが残されたままになりますが、閉会中の審査ということもありますので、いま述べられた答弁を頭の中に描きながら、また次回に譲らしていただきたいと思います。  最後に、官房長せっかくおいでになっておられますので、今国会の外務委員会の締めくくりといたしまして要望を込めて申し上げたい。  いよいよ今国会が終わりますと、昭和五十八年度に向けての予算編成が行われるというふうに思います。これは毎回当委員会を通じて私述べてきた事柄でありますけれども、これは特に外務大臣また外務委員長、与党の理事の方に篤とこれはお願いをしておきたい問題であります。  それは現在の外務省の陣容、これはいつも言われることであり、もう外務大臣がだれよりも一番その苦衷の中に置かれているであろう。三千六百名じゃとてもやり切れません、はっきり申し上げて。一つの課でもって何カ国も持たなければならぬ、もうオーバーワークなんてものじゃないんですね、これは。人間の能力には限界があるわけですから、結局そういったところに破綻を起こす日本外交というものを心配するわけです。  まずその実態について、もう時間もありませんので簡潔に、どうなっているのか、十分対応し切れるというふうな状況に置かれていない、本省また在外公館を含めてそういう状況に置かれていると私は思います。これでは外交機能が麻痺してしまうということになります。これからますます問題がふえる一方で減ることはありません。陣容の強化拡充ということも必要でありましょう。機能的に麻痺しないようにとにかく取り組むということが今後一番大きな外務省にとっての課題であろう。その点について時間の許す限り、まとめてまずその実態から述べていただきたい。最後に外務大臣の所信を伺っておきたいというふうに思います。

伊達宗起外務大臣官房長

○政府委員(伊達宗起君) 外務省の人員の実態ということでございます。ただいま渋谷委員もおっしゃいましたように、三千六百人、正確には三千六百三十二人と申しますのが現在の実情でございます。これを内訳で申しますと、在外に二千六十七名、本省に千五百六十五人という状況でございます。御指摘のように、この三千六百三十二名という数字は、諸外国に比しましてもきわめて少なく、アメリカの四分の一、英国の五分の二、フランスの半分、ドイツやイタリアと比べましてもはるかに少ない人員でございます。  さらに、本省の千五百六十五人と申します人数は、昭和十五年に本省の人間が千六百九十六人おったという状況から照らしましても、非常にそれよりも減少しているというのが実情でございますし、また、昭和十五年に在外には千百十六人おりました。現在、二千六十七名でございますが、御承知のように当時の国際的な交際の幅というものと、現在の国際交流と申しますか、相手とすべき外国がふえているという状況からいたしますけば、もう格段の相違があるわけでございまして、現在の在外要員二千六十七名というのは、昭和十五年の倍にもなっていないという状況であるわけでございます。これに対処いたしますために、外務省としては、従来から機械化ということを進めてまいりましたし、人数をふやさないで機械によって処理すべきところは処理するということもやってまいりましたし、かつまた各省からのアタッシェ、これは定員の中に含んでいるものでございますけれども、しかし、各省からのアタッシェと申しますか、いわゆる出向者の人数をふやすということにも努力をしてまいりましたが、これにも限界があるわけでございます。したがいまして、現在の状況におきましては非常に厳しく、先ほども渋谷先生がおっしゃいましたように、一つの国についての深みに入った分析研究というものがなかなかできないというような状況にあるわけでございます。御承知のように、昭和五十五年度から六カ年計画ということで五千人までの目標を立てて、この定員の拡充に努めてきたわけでございますが、実績はなかなか上がっておらないのもまことに申しわけなく思うわけでございますが、しかし、これもまた行財政の改革もございますし、厳しい財政状況の中でなかなか思うに任せないというところでございます。しかし、今後とも私どもとしましては、諸先生初め関係方面の理解と協力を得ながら外交機能の強化を図るように努力してまいりたいと思っておりますし、五十八年度におきましても、まあ十分とは申せませんけれども、しかし外務省は、一般的には定員の要求枠すら五%削減という枠がはまっていたのを二、三の省庁とともに例外として去年並みの要求をしてよろしいというようなことも言われておりまして、百十六人の要求をいたしてまいりたいというふうに思っておりますが、今度の五十八年度予算要求におきましても、これを最重点事項中の最重要事項として努力をしてまいりたいと思っております。

渋谷邦彦公明党・国民会議

○渋谷邦彦君 ちょっと外務大臣の答弁を伺う前に一言最後の締めくくりとして。  いま官房長述べられたとおりだと僕も思うんです。それでいままで五年計画やなんか出された、それをそのまま踏襲するかあるいは見直すか、行財政改革という厳しい環境にあることは十分承知。けれども、いま外務省に期待される問題というものは非常に大き過ぎる。しかし、実質は余りにも厳し過ぎる。こういったことはもう十二分にわかっていることでございますので、政府部内においてそれを十分検討されて、その計画がスムーズに進むような方向でぜひ取り組んでいただきたいという願望を込めて申し上げておきます。最後に、その締めくくりとして外務大臣の答弁を。

櫻内義雄自由民主党外務大臣

○国務大臣(櫻内義雄君) ただいま渋谷委員から外務省の機能強化について率直に御意見を交えて御質問をちょうだいいたしましてまことにありがたく思います。  今回の概算要求におきましては、ただいま説明を申し上げたとおりの厳しい中で行うわけでありますが、しかしその概算要求についても外務省のODA予算、あるいは人員増加については他省とは違う扱いを受けておりますので、少なくともこれを厳守いたし、また、最後に御指摘のありました外務省自身の持っておる六カ年計画につきましては、いま財政状況が悪いために足踏みしなければならない状況がございますが、ぜひこれが達成のために努力をしてまいる考えでございます。

立木洋日本共産党

○立木洋君 まず、教科書をめぐる問題でお尋ねしたいのですが、これはもうすでに御承知のように外国から大変厳しい批判が寄せられております。これはまあ中国、韓国だけに限らないで、アジアのその他の諸国においてもそういう批判がありますし、また、ヨーロッパの新聞報道などを見ましても批判がなされておる。  最初に、こういう教科書をめぐる問題で国際的な厳しい批判が寄せられている、そういう点についてどのように外務大臣は受けとめておいでになるのか、まずその点をお伺いしたいと思う。

櫻内義雄自由民主党外務大臣

○国務大臣(櫻内義雄君) 国際間で日本に対する厳しい批判がある、私はこれを率直に受けとめて、日本として反省すべきは反省し、また検討すべきことは検討し、この批判にこたえていく必要があると思います。もちろん、こういう批判についての背景はいろいろ取りざたされておりますけれども、私は、この状況の中ではまず日本自身が反省すべきことは反省してこれにこたえていく、また、理解を求めるべきことは理解を求めるという、いわば筋の通った行き方で対処してまいりたいと思います。

立木洋日本共産党

○立木洋君 受けとめられる姿勢というのはほぼいま述べられたことでわかりますけれども、この批判の問題ですね、つまり、単なる教科書記述上の問題であるという受けとめ方をなさっているのか、この批判がどういう性質の批判であるというふうに受けとめておいでになられるのか、どういう問題として受けとめておられるのか。その、どういう問題として、という点をもうちょっと御説明いただきたいのです。

櫻内義雄自由民主党外務大臣

○国務大臣(櫻内義雄君) 現在、当面最も厳しく批判が行われておるのは、御承知の中国、韓国等の関係でございます。この両国の関係からいたしますならば、それは一言で言うなら、日本の姿勢が問われておるのではないかと思うのであります。したがって、両国との国交回復時の日中共同声明、日韓共同コミュニケにのっとりまして、それに沿って御批判の点をよく検討して、反省すべきは反省するし、また理解を求めるべきものは理解を求めよう、こういう努力を現にしておるところでございます。

立木洋日本共産党

○立木洋君 日本の姿勢が問われておるということ、これは、過去の日本が行った戦争の責任の問題あるいは戦争での犯罪に対する反省の姿勢という意味だろうと思いますが、これは決して、過去の戦争に対して現在の日本政府がどういう見解を持っているかという問題だけではなくして、今日のこうした問題にかかわる日本の政治姿勢が問われているというふうに考えていいのではないかと思いますが、その点いかがでしょうか。

櫻内義雄自由民主党外務大臣

○国務大臣(櫻内義雄君) 私は、今度の教科書問題から一斉にそれぞれの国の世論が喚起されておるということで、たとえば韓国の場合の、三十六年の日本の統治の状況とか、あるいは中国については、近くは満州事変、支那事変当時の日本の戦争行為等から出発する問題とか、これはいろいろございますが、私としては、この時点ではやはり、国交回復時に日本が両国にはっきり日本の今後のとるべき姿勢を申したのでありますから、それをもとに考えていく必要がある、こう思っております。

立木洋日本共産党

○立木洋君 つまり、この批判の本質的な問題がどういう問題であるかということの正確な受けとめ方がないと、事実上、小手先で、いろいろと受けとめたという形を取りつくろおうとしても問題の本質的な解決にはならないという点を私は強く感じるわけですが、この点についてはもう少し議論を進めて、後でお伺いすることにしたいと思いますが、事実関係で一つお尋ねしておきたいのは、今回ではありわせんが、これまで、いわゆる外国から日本の教科書の記述を訂正してほしいという意見やあるいは要請が寄せられた事実があるかないか、寄せられたとしたら、いつどういう形で寄せられたのか、それに対して日本の外務省当局はどういう対応をなさったのか、まずその事実をひとつ御説明いただきたい。

橋本恕外務省情報文化局長

○政府委員(橋本恕君) 私の承知しております限り、外交レベルでこういう問題が生じ、かつ外国から何か言われたということはないというふうに承知しております。

立木洋日本共産党

○立木洋君 ある報道によりますと、一九七三年当時、これは日中国交回復がなされて以後ですが、中学生や高校生の地図の教科書に「中華民国」という国名が明記されていた。これに対していわゆる「台湾」というふうに改めてほしいという中国の外交部担当者ですか何かからの話があって、それを受け入れて訂正したという経過があるというふうに述べられていますが、こういうことは事実なんでしょうか。

橋本恕外務省情報文化局長

○政府委員(橋本恕君) 当時、私、直接担当はしておりませんでしたので、ちょうど外国に在勤しておりましたので詳細は承知いたしませんが、先ほど申し上げました外交レベルあるいは公式レベルでの話ではないにしても、日中の友好的関係を発展させるという観点から、ただいま立木先生が御指摘になったような意思表示がなされて、そこで日本側がこれを受けて対応をした、つまり善処したということは聞いております。

立木洋日本共産党

○立木洋君 またいわゆる韓国ですね、この大韓教育連合の招待で韓国教育事情を視察に行ったときに日本の社会科の教科書検討意見書というのが提出されて、それが代表団のメンバーによって全会社に送られ、あるいは文部省にも提出されて、検定当局もそういうものが提出されているというのを参考にして教科書をつくった、メンバーにそういう参考内容として考えてほしいという提示をしたというふうな経緯があるのかどうか。  それから、ここに「JAPAN」という、これは韓国の文部省から、二冊にわたる膨大なもので一九七九年の教科書に対する意見書が寄せられたというのですが、こういうのを検定当局として利用されたという事実があるのかないのか、そういうことはいかがでしょうか。

橋本恕外務省情報文化局長

○政府委員(橋本恕君) 昭和五十一年の秋でございますが、確かに立木先生御指摘の大韓教育連合、これは民間の機関というふうに承知しておりますが、これがわが国の教科書五十二冊につきまして韓国に関する記述を調査して、その結果を調書にまとめまして日本側、具体的には社団法人教科書協会訪韓団に非公式に手交いたしまして、その訪韓団は日本に帰りました後、教科書関係会社に資料として配付した例があると、かように聞いております。  それから第二に御指摘の問題でございますが、つまり韓国文教部作成の「JAPAN」でございますが、これは昭和五十四年に韓国の文教部が作成いたしまして、在京の韓国大使館が日本で配付したものであると、こういうふうに聞いておりますが、この在京韓国大使館がこれをどこに配付したか、またこれに対して関係者がどのような対応を行ったかについては承知しておりません。

立木洋日本共産党

○立木洋君 それじゃ、こうした問題との関連でもうちょっとお尋ねしておきたいのですが、つまり日本の教科書、これはとりわけ歴史だとか地理だとか社会科、こういう面での教科書ですが、その他の問題については別ですけれども、そういう問題の教科書に関して、自分の国の記述に関して、あるいは自分の国にかかわりのある記述に関して外国の教科書に意見を述べるということは、内政干渉になるのでしょうかどうでしょうか。

橋本恕外務省情報文化局長

○政府委員(橋本恕君) まず原則論を申し上げますけれども、私の理解は、それぞれの国がその国の子弟をどのように教育するか、この場合は教科書でございますが、ということは、これはその国あるいはその国の政府の責任においてなされることであって、あくまでもその国あるいはその政府の問題であると、こういう原則は私は国際的に確立していると思います。  ただ、いま教科書が問題になっておりますので、教科書の具体的な記述が、ある国に直接かつ著しく関係する部分について、しかもそのある国が、その記述内容について重大な事実の誤認があるというふうに判断した場合に、そのある国が、その教科書を発行されている国に対しまして重大関心を表明し、かつこれでは困るという意見を申し述べるということは、これも私は当然のことと、そういうふうに考えております。これは内政干渉かどうかというようなことにつきましては、これは私は国際法学者ではございませんが、常識的に私がいま申し上げましたのが普通の国際的に通用する考え方であるというふうに理解をしております。

立木洋日本共産党

○立木洋君 大臣、いまの見解でよろしいですか。何かつけ加えることはございましょうか。

櫻内義雄自由民主党外務大臣

○国務大臣(櫻内義雄君) これは一般的にそういう見解、いわば常識としてそういうふうに踏まえておってよいと思います。

立木洋日本共産党

○立木洋君 今度は日本側が、外国で記述されている教科書だとか、その他社会教育等に使われている文書に、日本の現状だとか日本の歴史なんかに著しく歪曲したと思われるような、あるいは誤認したと思われるような状態が生じたときに、日本側からそれを訂正してほしいというか、そういう意見を申し述べた例はありますか、ありませんか。

橋本恕外務省情報文化局長

○政府委員(橋本恕君) 外務省自身もやっておりますが、主としてこれは外務省がお願いしている海外教育情報センターという外務省認可の財団法人がございます。ここに多少の補助金といいますか援助金を提供いたしまして、この海外教育情報センターに委嘱をいたしまして、委嘱を受けた海外教育情報センターが先生御指摘の世界各国の地理でございますとか、あるいは歴史の教科書、あるいは参考書その他をできるだけ広く集めまして、そこでまさに事実の誤認あるいは明白な認識の誤りというようなものがありましたら、海外教育情報センターが相手方の出版元あるいは関係の団体に対しまして明確に指摘し、修正方、訂正方を要望しているということでございます。  外務省自体におきましても、当然このような外国の教科書記述について特別に重大な問題――一つの例を挙げますと北方領土に関する問題でございますが、これは外務省が在外公館を通じて各国に対しまして、北方領土の地図でございますとか、あるいは記述に重大な誤りがあると認めた例につきましては、外務省がみずからの手で各国に申し入れたことがございます。

立木洋日本共産党

○立木洋君 これはもう大臣十分御承知だろうと思いますけれども、歴史だとか社会なんかの教科ですね、これはすぐれて批判的な見地といいますか、批判的な知識、それから探究の精神というのが求められる教科だと思うのですね。日本なら日本の歴史を、過去を学んで未来をどうつくっていくかという、そういう問題ですから、これはもちろん立場の違いがあったにしても、そういう歴史を学ぶ考え方というのは同じとらえ方ができるだろうと思うのですね。そうした場合に、たとえば日本の歴史なんかの問題でも諸外国とかかわりのきわめて深い問題、そういうことを離れて日本が単独で存在するわけじゃございませんから、そういう問題に対しては諸外国との間で共同で研究するということなどは私はある意味では必要ではないか。たとえば西ドイツの場合ですが、ドイツ連邦共和国の場合は一九四七年から毎年のように歴史教科書をめぐる国際会議というのが開催されている。そこではどうかといいますと、御承知のようにオランダだとかイタリアだとかスイス、ポーランド、ユーゴスラビアだとか、そういうふうないろんな国が含まれて共同で研究して、そしてその歴史上の問題、表現上の問題、これもやはり正当に決めていくというふうなことがやられているということを聞いたのですが、こういうふうな歴史上の教科書を一つの国際的な問題として見る見方、こういう行い方、こういうことについてはどのようにお考えでしょうか。

橋本恕外務省情報文化局長

○政府委員(橋本恕君) 昨今のように国際間の交流が非常に盛んになってきているという状況を考えますと、教科書というような重要な教育手段につきまして、お互いに誤解があるあるいは事実の誤認があるというようなことは、これは国際親善あるいは国際的な理解を図るということにやはり大きな支障になるということだと存じますので、そういう観点から、国際的な場において専門家レベルの意見交換を行うということは、これは先生御指摘のとおりに一つの重要な御提案だと存じます。

立木洋日本共産党

○立木洋君 たとえばドイツの場合ですね、これは御承知のように第二次世界大戦あるいは第一次世界大戦、ヨーロッパにおける戦争の発祥地として――発祥地というふうな言い方がいいかどうかは別として、戦争が始まるとしたらドイツのかかわりが常にあったと。そういうドイツの歴史をヨーロッパの国々がやっぱり正しく規定するといいますか、表現なんかも正確にしながら、後世の人々に正確に歴史を教えていく、再びそういう戦争が起こらないような教育が必要だということが国際的にも話し合いされてやっていく、こういう見地というのは私は非常に大切なことだろうと思う。ですから、日本の場合でも侵略戦争をかつて起こしたわけですから、その被害を受けた国々との間でこの歴史をどう見るべきか、これはある意味で言えば、政府間の問題として言えば、あの日中共同声明などで「深く反省」しという表現で終わったというふうにお考えの方がおいでになるかもしれませんが、しかしそれは終わったのではなくて、これから日本の後世にどう伝えていくか、再び戦争を起こさないようにするために何を教えなければならないのかという問題は、これはひとり日本人の立場だけではなくして、それによって被害を受けた人々の考え方をもやはり後世に知らせる、こういう見地というのは私は非常に教育上必要なことだろうと思う。これは私は、日中共同声明でああいう署名をなされた見地からしても、当然そういうことがなされなければならないものだというふうに思いますけれども、大臣、そうした点はいかがでしょうか。

櫻内義雄自由民主党外務大臣

○国務大臣(櫻内義雄君) これはそれぞれの国にやはりそれぞれの意見があるのではないかと思います。いま立木委員のおっしゃるような御見解の方もあるでありましょうし、またそうでない場合もあるのじゃないか。なかなか国の体制などから考えて、その体制から出発する配慮などをしておる場合もあるのではないかと、こう考えられるので、これは御意見は御意見として傾聴いたしましたが、いまの御意見によればそれぞれ相手の国というものを考えなければなりませんから、したがって慎重にこれは検討さしていただきたいと思います。

立木洋日本共産党

○立木洋君 日本のこういう社会科の教科書なんか、たとえば歴史の教科書なんかを外国の人々に意見を求めるというふうなやり方をしていませんか、日本が。

橋本恕外務省情報文化局長

○政府委員(橋本恕君) 日本のたとえば社会科の教科書について外国の人々に意見を求めるのかどうか、実はこれは私率直に正直に申しまして文部省の御所管だろうと思うのですが、私自身は寡聞にしてまだそういうことを日本がやっているというふうには聞いておりません。

立木洋日本共産党

○立木洋君 日本の教科書を日米社会科教科書研究プロジェクトに提出しておるというのはどういう目的でしょうか。

橋本恕外務省情報文化局長

○政府委員(橋本恕君) 私、不勉強で、これから答弁申し上げるのと私の先ほどの答弁とがあるいは食い違っているかと存じますが、もし食い違っておるとすればこれから申し上げることの方が正しいのでございますが、先ほど私指摘いたしました国際教育情報センター、これは西独が主らしいのでございますけれども、西独それからアメリカなどとの間に学問的見地に立った意見交換の場を持っておりまして、これは民間レベルでやっておるのでございますが、今後、アジア諸国との間にもこういった意見交換の場を拡大していきたいというふうに考えるというふうに承知をしております。

立木洋日本共産党

○立木洋君 教科書の問題、これは自分の国の国民をどう教育するかということは、ある意味でこれは主権にかかわる分野ですから、何でもかんでも外国の言うとおりに受け入れるというふうなことがいいということを私は申し上げているのではないわけです。すぐれてその国とのかかわりの深い日本の歴史上の問題、あるいはその国のことそれ自身にかかわるような問題を日本の国民に教える場合にはやはり正しく知らしていく、そして意見の違いがあっても日本としてはこういう見解でやったけれども、外国からこういう指摘がありますというふうなことを客観的に知らせるというふうなことも、教育のある場合には意味を持つ教え方だろうと思うんですね。被害を受けた側の発言については一切抹殺して、そして耳を傾けないで、つまり日本が考えている立場だけで教育する。それがいいか悪いかという問題は度外視して私は言っているわけですよ。それがいい場合でも悪い場合でも、被害を受けた側がどういう見解を持っているかということを知らせるということは、ある意味では私は必要だろうと思います。だからそういう点では私は少なくともアメリカなんかとの、いわゆるこれは民間レベルにしても外務省が指導している、お金を出している国際教育情報センター、それが外国との間で教科書の問題をめぐって意見の交換をしている、その意見を受け入れて何らかの形で生かしていこうという考えがあるからこそそういうことがなされているわけです。そうすると少なくとも被害を受けた、日本が第二次世界大戦で被害を与えた国々、深く反省しなければならないといっている相手の国々との間ではそういう問題についてはよく話し合い、意見を求めて、そしてそういう国々の考え方や意見なんかがやっぱり反映される。何もこれは日本の主権を侵害してなんというようなことを言っているんじゃなくて、教育のあり方としてはそういうことも考えてもいいだろうというふうに思うわけです。このことは後ほどの問題になりますから、そういうふうなことも今後やはりよく検討していただきたい。  先ほどのことに帰っていくのですが、今度の根本問題というのはやはり日本の戦争、過去の戦争をどう認識するかという問題からもともと端を発してきていると思うんですね。過去の戦争に対してどういう認識をなさっておいでになるのか、外務大臣御自身の御認識はいかがでしょうか。

櫻内義雄自由民主党外務大臣

○国務大臣(櫻内義雄君) 私自身の認識もそうですが、日本の戦争行為について国際的に厳しい批判を受けておるということは事実なんで、そういう事実を十分認識して対処していかなければならないと、これが第一であります。  それから日本はどういう反省の実を挙げておるのかと、こういうことになりますと、平和憲法のもとに再び戦争はしない、戦争を放棄しておると、これが一番日本として国際的に反省の実を示しておるものだと思います。

立木洋日本共産党

○立木洋君 その反省という意味をもうちょっとお尋ねしたいんですが、つまり第二次世界大戦で行ったことですね、これは中国などに対して日本が加害者であったというふうな御認識に立って反省されるという意味ですか。

櫻内義雄自由民主党外務大臣

○国務大臣(櫻内義雄君) これは、日中国交回復の折に明白に前文で申し上げておるところでございまして、中国の国民に大きな損害を与えた、そのことについて反省をし、責任を感じると、こういうことでございます。

立木洋日本共産党

○立木洋君 加害者であったかどうかということ、これは非常に大切なことなんですね。つまり、日本にも被害があった、けれども、日本が与えた点については反省する、被害を与えた点については反省するという意味なのか、それともあの戦争自身において日本が加害者であったというふうな立場に立たれるのかどうなのかというのは非常にちょっと重要な点なので、加害者という御認識で反省するという意味なのかどうなのか、その点いかがですか。

橋本恕外務省情報文化局長

○政府委員(橋本恕君) 僭越でございますが、大臣のお考えを私がそんたくいたしましてお答えをさしていただきます。  日中共同声明で、「日本側は、過去において日本国が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省する。」と明確に書いております。しかもこれはその次に、日韓共同コミュニケにおきまして椎名外務大臣は、このような過去の関係は遺憾であって、深く反省していると述べたと。しかも最近の国会答弁で、立木先生御承知のとおりに、この認識はいささかも変わっていないということを何度も何度も繰り返し内外に明らかにしているところでございます。ここの言わんとするところの意味は、まさに立木先生御指摘の加害者であったと思うかどうかという御質問は、ここにこの二つの重大な文書を、現在なお日本政府がいささかもこの認識に変わりないと言っていることによってお酌み取り願いたいと存じます。

立木洋日本共産党

○立木洋君 橋本さん、なかなか回りくどい御説明をなさいましたけれども、加害者であったという意味に受け取っていただいて結構だというふうに理解していいですね。

橋本恕外務省情報文化局長

○政府委員(橋本恕君) 私の考え方も先ほど申し上げましたとおりでございまして、いま御答弁申し上げたとおりにお受け取りいただければ大変ありがたいと存じます。

立木洋日本共産党

○立木洋君 私の言ったとおりでなくて、局長の言われたとおりにということになると。つまりこれはなぜ大切かというのは加害者と被害者というのは、これは判然たる区別があるんですね。戦争において加害者であったということは、相手に対していわゆる武力によって侵略したことなんですよ。その戦争が行われた領土が中国の領土である限り、そこに何も被害者がそこで被害を受けるわけじゃないんで、加害者があって初めて被害者があるわけですから。そうすると、加害者であるということは侵略したということになるわけですよね。そういう見地に明確に立つかどうかということは、歴代の政府がこれは侵略戦争であったということを認めなかったという点に大変な問題点がある。だからこれは一番最初に言いましたように、つまり今日の批判の中心的な問題が一体何であるのかということを正しく受けとめるかどうかということは、これはただ単に教科書の記述をどう変えるかという問題だけではなくて、どう変えるかということ自身それは大切なことですよ、しかしそれだけの問題ではなくて、日本のやはり政治姿勢の問題として、これから隣国との関係をどうしていくかという問題としてすべて重大な問題であるということがあるので、このことを重ねて私は指摘したわけです。ですから、そういう加害者であり、侵略をしたということに対する全面的な反省という姿勢が明確にあるならば、問題の解決というのはぐっと開けていくと思うんですね。そのことにこだわる限り、これはなかなか本質的な解決には至らないということだと思うのです。その点大臣いかがでしょうか。

橋本恕外務省情報文化局長

○政府委員(橋本恕君) 先生の御意見、御質問の趣旨、何をおっしゃろうとしているかについては私自身正確に理解しているつもりでございます。  で、日本政府が一億一千万の日本国民のすべてを代表いたしまして対外的に日韓共同コミュニケ、また日中共同声明で深く反省しているということを言い、しかも現在なおこの認識はいささかも変わっていないということを何度も何度も明確にしているということで、お酌み取り願いたいと存じます。

立木洋日本共産党

○立木洋君 局長は日本政府の立場で話をしなければならないし、中国に行って大変御苦労なさってきたというのがいまの答弁にも大変にじみ出ているような感じを持ちながら私は聞いていますけれどもね。「侵略」という言葉を明確に述べることができない、そういう制約の中で一生懸命その意思を何とか知ってもらいたいと思ってお話をされているのだろうと思いますけれども、しかし、これは外交のテクニックということではなくて、やはり日本民族の本当の考え方、腹の底を打ち明け合って、これから再び戦争を起こさないためにということを願うのであるならば、それなりのやはり対応の仕方というのが私は必要になるだろうということだけを申し述べておいて次に移りたいと思うんです。  大臣も深く反省されていると、これは日本政府の立場としてお述べになった。そうすると、かつての戦争は日本が非常に深く反省しているという、そういう反省した見地は、いわゆる外務省としては諸外国にどういう形で知らしめていますか。

橋本恕外務省情報文化局長

○政府委員(橋本恕君) 初めに原則的な立場を申し上げますが、先ほどの渋谷先生の御質問にも私率直にお答え申し上げましたが、戦に負けたわが国が平和憲法のもとで平和国家に生まれ変わった、過去の過ちは二度と繰り返さない、こういう決意のもとで平和国家に生まれ変わったという、このわが国の全国民的な考え方、姿勢が十分に諸外国、とりわけアジア諸国に完全に御理解していただくに至らなかった結果、やはりさまざまの問題が出てきているという点をもし御指摘になるのであれば、これは私ども政府とりわけ外務省の責任、つまり十分に説明できなかったということについては、これは率直に反省いたしますし、今後ともなお一層の努力が必要だということをまず冒頭に申し上げさしていただきまして、そこで上は国連とかあるいは首脳会談とか、そういった大きな場において、または具体的には御承知のとおりの人物交流あるいは日本政府の行っておる招待外交その他を通じまして、平和的に生まれ変わった日本の姿というものについて御理解をいただくように従来も努力をしましたし、今後ともなお努力したいと、こういうことでございます。

立木洋日本共産党

○立木洋君 いままで十分でなかった点があるという指摘であるならば、その点は受けとめて改善したいという御意思だと思うんですが、一九七六年に「ザ・ジャパン・オブ・トゥデー」――「今日の日本」というのを外務省が出版されていますね。これで過去の日本の戦争に対しての記述を私読ましていただいた。だけれど、これはちょっと、深く反省しているなんと言われるようなしろものじゃないですね。これは何といいますか、あの日中戦争をどう認識するかというところに「支那事変」と書いてあるんですよ。「支那事変」という記述をするなんというのは、これは反省していないもう最たるものですね。「支那」なんという呼び方自身中国の方々が喜ぶかどうかということをお考えになってもわかる。それが「支那事変」と書いてある。  それから外務省が指導なさっているというこの国際教育情報センター、これも「日本の理解のために“日本史”」というのを出されています。これは一九七一年が第一版で一九八〇年が第三版ですよ。この中でも、「日本の歴史」という部分で、これを見てみますと、これも日中戦争については事変としての扱いですよ。この戦争によって激しい抵抗が中国側からあったからというふうな記述なんかが出てくる。これはまさにいま問題になっている点ですね。ですから私は、深く反省しているというふうなことが本当であるならば、こういう外務省自身がお出しになる文献、それから外務省が指導なさっている国際情報センターなんかの文献は、本当に日本が深く反省しているということが外国の人々にも理解されるような、そういう記述にすべきではないかと思いますが、そういう形で今後改めていくお考えがおありになるのかどうなのか、いかがでしょうか。

橋本恕外務省情報文化局長

○政府委員(橋本恕君) 立木先生がただいま御指摘になりました二つの文書、公刊物につきましては、これは私つまり情報文化局長が当然目を光らせていなければならない、まさに情報文化局の主管の仕事であるという意味におきまして、私確かに至らなかったという点を反省いたします。御意見を確かに承りましたので、今後改善を図っていきたいと存じております。「ザ・ジャパン・オブ・トゥデー」につきましては目下改訂作業をやっている途中で、二年ごとに改訂するそうでございますので、御指摘の点は改善を図りたい、このように考えております。

立木洋日本共産党

○立木洋君 十分に改善された結果を後で見させていただきたいというふうに思っております。  それで大臣、この問題の最後ですが、やはり深く反省なさっている、現在でもそれは変わらないという日本政府の立場ですね。だとするならば、つまりその反省の主要な点の一つというのは、そうした過ちを再び繰り返さない、そういう戦争を再び繰り返さない、侵略戦争を再び繰り返さないということが基本だと思うんですが、そうすると、そのためには何が大切かと言えば、後世にこの戦争が起こった原因だとか、戦争の責任の問題だとか、戦争犯罪の内容の点だとかというふうなことを正しく知らしめて、そしてそういう見地に立って、将来日本の民族がそういうことを再び犯さないようにするという姿勢が私は必要だろうというふうに思うんです。  たとえば、西ドイツの教科書なんかを見てみますと、これは戦争が起こったそのみなされてきた点について、東ヨーロッパのスラブ民族は下級人間であり、搾取、追放、肉体的抹殺の対象とされてしかるべきものとみなされてきた――これは西ドイツの教科書の中に書いてあるわけですね。そしてここでは生徒に対しては、戦争目的、戦争責任と戦争犯罪について認識し判断を下すことができるだろうという形でそう述べられている。また、民族虐殺の決算というふうな点では、アウシュビッツだけで二百万を超えるユダヤ人が殺され、全体では五、六百万人が虐殺された、ポーランドでは毎日三千人が殺され、五百五十万のソ連邦兵士捕虜のうち三百五十万がドイツの収容所で死体になった、こういうふうなことが述べられ、そして本当にそういう人命を殺戮するというふうな戦争が再び起こってはならないんだということを自分たちの後世の民族に知らせていく、そういう立場というのは私は非常に大切だろうと思うんです。  だとするならば、そのかつての戦争を再び繰り返さないという反省の見地に立つならば、こうした戦争の責任、戦争犯罪、またそういう事態を後世が正しく受けとめて、そういうことを再び起こさないとするような教育の姿勢というものが私は必要だろうと思いますが、この点について大臣の御所見を承りたいのです。

櫻内義雄自由民主党外務大臣

○国務大臣(櫻内義雄君) これは言うまでもないことでございまして、日中共同声明の中の特に前文にうたわれておること、あるいは日韓共同コミュニケの中で両国の関係に触れた点は、日本政府としてはこれを守ってこれに応ずる教育方針でなくてはならないし、また日本の各界各層においてこのことを常に念頭に置いての行動をすべきものであると思います。

立木洋日本共産党

○立木洋君 最後に、この問題はもう最初私の考えを述べましたから繰り返しませんが、今回の問題を外交的に解決していく、そういうお立場と見通しについて大臣自身どのような見通しをお持ちになっておられるのか、どういうふうにして解決していくというお立場なのか、その点を最後に伺っておきたいと思います。

櫻内義雄自由民主党外務大臣

○国務大臣(櫻内義雄君) 今回の問題が起きまして以来、終始一貫、外務省としてまたその責任の衝にある私として最も留意しておることは、中国や韓国を初めとするこういう厳しい批判の事実、そのことを間違いなく国内の関係方面に伝えるということが第一でございます。また、その後の世論動向を踏まえまして注意を喚起するということに努めておるわけでございまして、特に中国、韓国の関係については、先ほど来申し上げる共同声明あるいはコミュニケにのっとっての反省の実あるいは責任を感ずるという立場で教科書の問題についてもよく配慮をしてもらいたいということを繰り返し申しておるわけでございます。

立木洋日本共産党

○立木洋君 終わります。

木島則夫民社党・国民連合

○木島則夫君 教科書の検定問題が起こってからの外務、文部両省の見解が大分違っているように私ども受けとめているわけです。  そこで確認をしておきたいのでありますけれど、満州事変あるいは日中戦争を含めて昭和二十年までのここ近年の日本の歴史に対する根本的な基本認識というものが、外務省と文部省とで変わっている、違うはずはないというふうに考えているのだけれど、まず文部省に伺いたい。あなた方の基本認識をひとつ聞かしてもらいたいのです。

藤村和男文部省初等中等教育局教科書検定課長

○説明員(藤村和男君) 教科書におきましても、昭和六年に始まる満州事変以降の戦争におきまして、中国を初め東南アジアの諸国に対して重大な損害を与え、かつそのことについては深く反省をしておるという点につきましてはきちんと認識をしているという立場にあるわけでございます。

木島則夫民社党・国民連合

○木島則夫君 外務省に伺うまでもありませんけれども、外務省はどういうふうに基本認識としてお持ちでしょうか。

橋本恕外務省情報文化局長

○政府委員(橋本恕君) 先ほど文部省から御答弁したとおりでございまして、大臣初め私ども一同、日中共同声明の前文それから日韓共同コミュニケで椎名外務大臣がきわめて率直に、過去の関係は遺憾である、深く反省しているということをお述べになったこの認識につきましては、いささかも変更がございません。

木島則夫民社党・国民連合

○木島則夫君 きょうは、検定制度のあり方とかその運営、運用、その中での記述のあり方、こういうものについての細かい議論は私はいたしませんけれど、この問題が起こってからの外交的処理というものが必ずしも十分でなかったように私は思うんです。つまり、政府部内の意見の対立というものがそのままあらわになった形で外に出された。これは外交問題化してしまった教科書検定問題をいたずらに拡大、増幅、必要以上なオーバーヒートの結果を招いたことになってしまったと私は受けとめているのです。したがって、この問題が起こった発端からあなた方の――まあこれは主として外務省ですね――外交的処理に何か欠けるところがあった。つまり事態の認識というものに甘さがあったのじゃないだろうか。その辺を私はもう一度、反省を込めて聞きたいのだけれど、どんなものでしょうか。

橋本恕外務省情報文化局長

○政府委員(橋本恕君) この問題が起こりましたときに、私どもつまり外務省は、この問題は中国、韓国を初め近隣アジア諸国の国民感情に直接響くところの重大な問題であるという認識を持っておったことははっきりと私申し上げられると思います。ただ、それに対してもう少し、それならそれなりの対応があったであろう、具体的に何もしなかったじゃないかという御批判があることも十分承知しております。その点は私は必ずしも国民の御期待に沿うだけの具体的な手が一〇〇%打ち得たかどうかについては、これまた謙虚に反省してみたいと思います。  ただ、ただいまの御質問、御意見の前段にございました文部省と外務省との世上うわさされております意見の相違という点でございますが、これは渋谷先生の御質問、御意見に対しても率直に申し上げましたが、この問題の解決につきましてどのように対応していくかにつきましては、どうしても二つの重要な要素、一つは、教科書検定制度は日本の問題でございますから、これは何としてもこの本体を傷つけることがあってはならないという要請と、それからもう一つ、教科書問題をめぐりまして中国、韓国初め近隣アジア諸国のきわめて多数の国々が重大関心を持っておられる、しかもこれに対して具体的に記述の訂正を要求しておられるという、この二つの要素をいかに結びつけて解決していくかということでございまして、そこで先ほど文部省からも御答弁がありましたが、文部省がこの二つの要素のうち検定制度について重大関心をお持ちになると同時に、先ほどの文部省の御答弁のようにわが国の対外関係にも十分配慮しておられると同様に、私ども外務省も、私どもは言うまでもなく対外関係を悪くしてはならない、これは重大問題であるという認識とともに、この教科書検定制度というものについてもやはり慎重な配慮を払わなければならぬ、こういう意味におきまして基本的には文部省と外務省との間に考え方の相違はない、原点は一緒である、かように考えております。

木島則夫民社党・国民連合

○木島則夫君 情文局長から非常に懇切丁寧な御説明がございましたけれど、いまの局長のお答えに対して文部省何か一言あるならばつけ加えておいていただきたい。それから議論を進めます。どうぞ。

藤村和男文部省初等中等教育局教科書検定課長

○説明員(藤村和男君) 外務省は外交上の立場からいろいろ物をお考えになる役所ですから、そういう立場で物をお考えになっておられますし、私どもは教育制度全般について扱っておる省庁という立場から物を考えているというふうに考えております。その間に緊密な連絡をとりながら調整をし合うということは、この問題が発生して以来とっているところでございます。

木島則夫民社党・国民連合

○木島則夫君 まあ私は余り国内の対立をあおるようなことを申し上げたりこの問題の拡大を願ったりするものでないという意味で、いまこれ以上この問題については申し上げません。  さてそこで、中国へは橋本、大崎両局長がおいでになった。そして相手側に理解を求めた中で、中国側が検定制度そのものについては、さっき局長もおっしゃったように、あくまで国内問題であるという理解を示されたわけですね。こうした理解の中から、これは局長の個人的見解でも結構、感触でも結構でありますけれど、問題解決への糸口を見出し得る、そういう感触、素地というものをお持ちになったのかどうか、そして、中国の真意というものが一体どこにあるのかという見きわめがそこでついたのかどうか、この点について御報告をいただきたい。

橋本恕外務省情報文化局長

○政府委員(橋本恕君) 話し合いの中身については一切外に出さないという約束になっておりますので、先生のおっしゃっていただきましたとおり私の個人的感触ということでお答えいたします。  私の理解に誤りがなければ、中国側におきましてもこの教科書問題をできるだけ早く円満な解決に持ち込みたい、円満な解決を図っていきたいというお考えであるというのが私の印象でございます。  それから、もう一つつけ加えさしていただきますと、この問題につきましては外務、文部両省が全力を挙げて対応策を考えなければならないきわめて重要な問題であるというふうに私自身は考えております。

木島則夫民社党・国民連合

○木島則夫君 大崎局長がこの場においでになりません。本当は直接私はお伺いをしたかったのでありますけれど、橋本局長は同席をされたわけでありますから、大崎局長の御発言も当然御存じであろうと思います。つまり日本は検定制度をとっている国なんだから、国定制度をとっている中国、あなたのお国とは当然違うのだということを納得のいくまで相手に説得をされたのかどうか。  そしてもう一つ、さっきの私の質問の中で、検定制度は国内の問題であるという相手側の理解の延長線上で何か解決の糸口が得られるという感触をあなたがおつかみになったかどうかということですね、この辺をもうちょっと足していただきたい。

橋本恕外務省情報文化局長

○政府委員(橋本恕君) 大崎局長にかわって私が答弁するのは僭越でございますが、終始一体となって行動したということで私の答弁としてお聞き願いたいのでございますが、大崎局長はわが国の検定制度そのもの、つまり検定制度の本質を十分に中国側に説明いたしましたし、それから中国側が問題にしている諸点がございますが、その中で、たとえば侵略の問題にしても南京虐殺の問題にいたしましても大崎局長は、日中共同声明のこの考え方、認識は日本政府は全く変わっていない、そこで、教科書全体を見てください、教科書全体を見ればこの日中共同声明の考え方は生かされていると思うということを中国側にるる説明されたと、こういうふうに理解しております。  それから第二の御質問の、おまえは中国へ行って教科書問題解決の糸口がつかみ得たかどうかという御質問でございますが、これも私のきわめて個人的な印象、自信はございませんが印象を申し上げますと、これは日中双方が話し合いをすることによって――この教科書問題そのものはあくまでも日本政府の責任において解決すべき問題であるという前提をまず置かしていただきますが、この問題は日中両国政府が話し合いによって円満に解決しなければならない。そこで私は、これは中国側がどう言ったということに全く関係ございませんが、重ねてのお尋ねでございますから率直に申し上げますが、日本側が誠心誠意対応するならばこれは解決は不可能とは私は決して思っておりません。

木島則夫民社党・国民連合

○木島則夫君 まあその場でのやりとりは外部に出さないということでございましたから、私の質問に対してはノーというお答えが返っても結構でありますけれど、それ以上、つまり検定制度は日本国内の問題であるのだ、したがって、誠意を持って話し合わなければならないという話はわかったのでありますけれど、その先の具体的な問題についてのやりとりというのはございましたのでしょうか。

橋本恕外務省情報文化局長

○政府委員(橋本恕君) まことに恐縮でございますが、そこから先のまさに先生の御質問の内容でございますが、これイエスともノーとも、まことに恐れ入りますがいまの段階では申し上げられませんが、ただ一つだけ明確に申し上げられますのは、現在文部、外務両省間におきまして何とか具体的解決、打開のために誠心誠意努力しているということだけは申し上げられると存じます。

木島則夫民社党・国民連合

○木島則夫君 御苦労された当事者であって、これからも大変であろうと思いますけれど、ひとつがんばっていただきたいと思います。  そこで、韓国に対しては正式な外交ルートでの突っ込んだ話し合いが行われたかどうか、私は定かには存じておりませんけれど、そういった中で、十二日、機内外相が韓国の要求を先取りするような形で、教科書の記述変更があり得るやもしれないことを示唆した所見が明らかにされました。これは私の受け取りようであります。この段階、つまり機内所見が発表されるまでの段階で、日本の真意あるいは主張というものが果たして十分に韓国側に伝わっておったのかどうか、この辺をまずお尋ねをしたい。いかがでしょうか。

木内昭胤外務省アジア局長

○政府委員(木内昭胤君) どのように収拾するかというような突っ込んだ話は韓国側とまだいたしておりません。ただ御案内のとおり、ソウルにおいてはわが大使館員あるいは李範錫外務部長官と前田大使とのやりとりもございますし、東京においては文部省の鈴木初中局長と在京韓国大使館の李公使、私とも同じ李公使とやりとりがございます。基本的な日本の対応する姿勢については十分お話ししておるつもりでございます。  それから、検定制度の仕組み等につきましては文部省から御説明があったわけでございまして、それから先の話というのは今後の問題かと思います。  ただいま外務大臣の八月十二日の御所見についての御判断がございましたが、これはわが方の基本的認識、すなわち韓国の国民感情というものを謙虚に受けとめていかなければならないというお気持ちを言われまして、そういった気持ちが十分反映されていなければいけないということでございまして、それが教科書の記述を云々するということではないわけでございます。

木島則夫民社党・国民連合

○木島則夫君 受け取りようによりましては突っ込んだ外交ルートでの話し合いをしないでおいて、何か先回りをした、先取りの感じすら受けたという感じを持った人も大分いたようでございます。機内所見をああいう形で出された背景、差し迫った状況というものが確かにあったのだろうと思います。この点についてのこういう差し迫った状況を判断されだからこそ、ああいった所見をお出しになったのだろうということですね。これは失礼な言い方になるかもしれませんけれど、ある新聞にはフライングという表現を使ってございました。私は、外交には外交つまり外務省のやり方というものが当然あってしかるうきだと思いますけれど、中国の場合には二人の局長がおいでになってとことん話をした結果、その中で、検定制度そのものは国内問題なんだというはっきりした意思表示を得られたという、そういうことへの努力をもう少しした上での所見であってほしいという意見もあるんですね。  したがって外務省は、いま木内アジア局長がお答えになったことで結構でありますけれど、もう一つつけ加えていただくと、少し先回りをした、あちらの要望を先取りをした形になったのではないか、こういう論に対してはどんなふうに外務省としてはお述べになりたいか。またそれを出した以上、出す上で韓国の国内事情、世論、そういうものの差し迫った状況というものを当然察知をされた、認識をされた上でのことであったとは私理解をするけれど、その辺についてもう少し説明をしていただきたい。

木内昭胤外務省アジア局長

○政府委員(木内昭胤君) 韓国との対応につきましては、韓国側からできるだけ早く日本の具体的な対応を承知したいという希望の表明がございます。しかるところ、中国には橋本、大崎両局長が赴きましていろいろ突っ込んだやりとりもあったわけでございますが、韓国につきましては双方の大使館と外務本省のやりとりにとどまるということで、何となく手当てが行き届いていないということもありましたし、それから差し迫ったというお感じを言われたのは、八月十五日の光復節に向けて韓国における事態がエスカレートするのじゃないかという判断から出てくる差し迫った感じかとも思いますが、そういったこともございましたし、ただ、はなはだ中間的あるいはそれ以前の説明にとどまるわけでございますけれども、やはりきちんと日本側としては韓国に対しても誠意をもって対応するということを、ある時点で申し上げておいた方がいいという判断でございます。したがいまして、具体的な内容にはもちろん入っていないわけでございますが、フライングというつもりは毛頭ないわけでございます。  それから、この検定制度の問題は日本の国内問題であるかどうかということについてはずいぶん詳しくやりとりがございまして、韓国も中国同様、検定制度そのものは日本の国内問題であって、これに対して韓国がとやかく口を挾むつもりはないということは韓国側の当局者から明言いただいておるわけでございます。

木島則夫民社党・国民連合

○木島則夫君 私がこういう質問をしましたのは、記述の変更とはどこをどのように直すというのか、あるいは同じように記述の変更を求めている国に対しても同様の方針で臨むのかどうかなど、こういった問題だけを取り上げてみても外交上の困難は目に見えているわけですね。ですから、対処を誤りますと、各地の反日運動に油を注く結果ともなりかねない。こういった問題をやっぱり包蔵しているからこそ、いま私が慎重にという表現は使いませんでしたけれど、多少相手に先回りをした感じでの所信というものではなかったかという意味での質問をしたわけでございます。これはお答えいただかないで結構でございます。  そこで、同僚委員も指摘をされていた鈴木総理の訪中の問題でありますけれど、基本的には、首相の訪中と教科書のこの問題とは私は別々に考えるべきだというふうに思っております。しかし、現実問題としては画然と割り切ることはなかなかむずかしい。そこで、外務省としては鈴木訪中と教科書問題をどう処理をされていくつもりなのか、具体的にお聞きをいたします。  中国側が首相歓迎を打ち出しているのだから、これにこたえる意味でも早急に教科書問題を首相訪中前にけりをつけておきたい。全く訪中とは別個に納得のいくまで国内問題を含めて時間をかけてこの解決を図るべきである。総理の訪中は既定の方針とはいえこの時期に日本の総理が訪中をするということになれば、当然韓国へのバランスという問題を欠くことになりはしないか。そして外相の訪韓はこういうバランスの上でと申し上げるのは表現上よろしくないかもしれないけれど、あり得ることではないだろうか。幾つかいま項目を挙げて私は具体的にお尋ねをしたわけでありますけれど、まず、中国側が首相歓迎を打ち出しているのだから、これにこたえる意味でも早急に教科書問題を解決をする、これとは別個に時間をかけてもいいから納得のいく話し合いの上に解決点を見出していく、そしてやはり中国に首相が行かれるのだから韓国に対しても何らかの形での外交上の儀礼というか、特使というか、そういうものを派遣をする必要がありはしないだろうか、こういう問題を含めてひとつお答えをいただきたい。

木内昭胤外務省アジア局長

○政府委員(木内昭胤君) この重要な問題につきましては鈴木総理の訪中が控えておるから急いで解決するということではございませんで、事態が刻々俗な言葉で申し上げればエスカレートしてきておる。これが韓国、中国にとどまらず東南アジアでも単なる事実の報道じゃなくて批判的な報道というものも出てきておることに見られますとおり、いろいろ大きく拡大するのをできるだけ早くおさめたいという気持ちがあるわけでございまして、一方では慎重に運ばなければならない御要請は当然のことでございますけれども、同時にいま申し上げた理由でできるだけ早く結着をつけたいということでございます。他方九月一日からは中国の党大会というものもございますし、そういう兼ね合いにおいてもできればそれ以前に片づけられればベターであろうということでございます。  それから、総理の訪中とは無関係であると申し上げましたけれども、昨日万里副首相が近鉄の佐伯会長に鈴木訪中を歓迎するということを言われたわけですが、恐らくそれにはやはりこの問題を解決した上でお越しいただきたいという気持ちもこめられておるということであるとすれば、やはり総理訪中の前に片づけた方がいい。したがいまして、あらゆる観点から見まして早い方が日本にとって好ましいのじゃないかということでございます。  それから、鈴木総理が訪中されるからには韓国とのバランスも考えた方がいいという御示唆でございますが、現在どのように収拾すべきか文部省とも慎重に御協議申し上げておるところでございまして、それが先決であって、その上での話になると思いますが、そのような必要性につきましては外務大臣とも十分御相談申し上げて取り運ぶべき事柄かと心得ております。

木島則夫民社党・国民連合

○木島則夫君 いずれにいたしましても外交的な処理というものはいま局長が言われましたようにこれは一刻も早く行われた方がいいと私も思っております。この場合大事なことは、中国、韓国を初めとする東南アジアの世論というものと日本国内の世論というものもやはり十分に酌み取った形での外交的な処理でなければならないというふうに考えております。お願いをしたいことは、教科書を直すとか直さないという点についてはこれはあくまで国内問題であって、その手続、方法、結論はあくまでも政府の自主的な方針で貫いていただきたい、こういうことであります。これは櫻内外務大臣にひとつ所信というか、お考えを聞いておきたいと思います。

櫻内義雄自由民主党外務大臣

○国務大臣(櫻内義雄君) 結論から申し上げますが、外交上の配慮からいたしますれば、一日も早く中国についても韓国につきましても何らかの解決策を見出さなければならないと思います。それから、検定問題についてはこれはあくまでも国内問題でありますから、こういう外国の特に中国、韓国の世論動向、申し入れ等を踏まえながら文部省の関係の方々の善処を期待しておるわけでございます。

木島則夫民社党・国民連合

○木島則夫君 この教科書問題の解決に当たって、これと並行して配慮をしていただきたいことは近隣諸国に残る、これはいまでも根深く残っているというふうに私は思っておりますけれど、反日感情なんですね。その原因はもう言わずと知れたかつての日本軍国主義の侵略にあることは論をまちません。戦後の日本の対応に責められるべき点がなかったかどうかといえば、これは大いに問題があったと思います。一つは、過去の反省と責任を素直に認めようとしない、それから国では近隣諸国との友好関係を述べながら、実態としてはどうも近隣よりもむしろ欧米指向というか、欧米の方に顔が向きがちであるというようなこと、経済大国になった日本が知らず知らずのうちにアジアの国々に尊大な印象を与えてこなかったかどうかなど、こういう点を一つ一つ反省をしてみますと、私はやっぱり今回の教科書の問題というのはもう一度日本の外交なり日本の政治、そういったものへの原点への反省というその点に立ち返る必要があると思うんですね。何もいたずらにこびへつらうこともない、これは私は日本の自主性というものはきちっと伸ばしていただきたい、伸ばしていただかなければならないと思うわけだけれど、この辺についての外務大臣の御所見ももう一度伺っておきたいと思います。

櫻内義雄自由民主党外務大臣

○国務大臣(櫻内義雄君) 教科書問題が発端で中国、韓国のみならずアジア諸国においても日本に対する厳しい批判があるということはわれわれとして反省もし、それらのことを深く認識しなければならないと思います。そういうことを考えてくると、やはり教育にかかわる問題というものは非常に大事だと思うんですね。過去の戦争のことについて、当時のことをよく認識しておる人はだんだんだんだん少なくなっていくわけで、この高度成長経済の中で育っていった若い方々がやはり日本の過去のことを踏まえて、そしてそれに対しての責任を感じながらの行動というものがこれが必要だと思うのです。それがただ単に経済大国である、自由主義陣営でも二番目の国であるというようなことだけで横行濶歩するというようなことになってくれば、おのずからそこに日本に対する批判も出てくる。そういうような将来展望の中からも考えなければならない点が多々あるわけでございまして、今回のアジア各国に見られるようなそういう批判というものを踏まえながら、これからどういうふうにこれを教育の面で考えていくか、われわれの時代の過ちというものをどう反省し、どう伝えていくかというようなもろもろの問題を含んできておると思うのでありまして、政治の衝にあるものとしては、これらの点も十分踏まえての行動をあるいはこれからの施策というものの必要があると思います。

木島則夫民社党・国民連合

○木島則夫君 別の問題に移ります。  アメリカの上下両院協議会が、一九八三会計年度国防支出権限法案において、日本やNATO諸国などが同盟国として防衛の約束を果たさない場合には、国防長官がその国に駐留するアメリカ軍の撤退の検討を行うことを義務づける条項を盛り込むことを正式に決めたという報道に接しております。この結果、日本の防衛費の伸びと在日アメリカ軍の規模の間には当然関連が生まれてくることにもなるわけで、見過ごすわけにはいかない問題だろうと思うわけでございます。この条項には、アメリカがNATOと日本に同盟国として公正な防衛分担の負担を実現をさせるために、一つは同盟国が防衛約束を果たしているかどうか、果たさなかった場合、その共同防衛力の不平等是正のためにアメリカ政府が何をしたかを毎年報告をして、その是正策の中に防衛約束を果たさなかった同盟国の駐留アメリカ軍の再配置、つまり撤退を検討することを義務づけるというものだというふうに私は受けとめております。こうなりますと、一つは鈴木総理が昨年の五月でございましたけれど、日米共同声明で公約をしたより一層の防衛努力をわが国がするというこの条項、それから首相が同じくワシントンで言明をしました一千海里のシーレーンの防衛、これもその防衛約束の基本としてアメリカ側は当然考えてくるだろう、ゆるがせにできない問題であろうと思いますので、これに対する外務省の見解を伺っておきたい。

淺尾新一郎外務省北米局長

○政府委員(淺尾新一郎君) いま木島委員の御引用になりましたのは、十七日の本邦紙の夕刊でございますけれども、それとの関連での御質問であろうかと思います。  御承知のとおり、アメリカの下院と両院の協議会が一九八三年度の国防省の支出権限法案を審議しておりますが、その過程において、アメリカとしては同盟諸国に対して公平な防衛の分担を求めるべきであると。仮に公平な分担を果たしていない場合にはアメリカとして、その公平な分担を求めるような措置をとるように大統領にさせるべきだと。その中には、もしアメリカがそういう同盟国に対してとっている措置の中に、同盟国に派遣している部隊の再配置、その検討が済んでいない場合には、なぜそういうことをしなかったのか、そのような説明を国防長官が議会に提出することを求めているというのが協議会の趣旨でございます。  御承知のとおり、昨年もアメリカの議会におきましては、行政府に対しまして、同盟国の防衛分担について定期的に同盟国の国防費ないし防衛費の支出がどの程度であるかということを報告しろということを求めまして、その結果本年になりまして各国の防衛の分担あるいは防衛費の負担について報告を出しておりますのは御承知のとおりでございます。  第二の点でございますが、それではアメリカ側は日本が防衛の負担を、あるいは分担を果たしているかどうかという尺度として昨年の共同声明、より一層の努力、及び総理の一千海里の防衛というプレス・クラブにおける演説、それを尺度として用いるのではないかということでございますが、ここで言っている防衛分担ということは、そのような具体的な共同声明あるいは総理の演説ということよりも、むしろ数字的な面等に力点を置いているかと思います。ただ、いずれにしてもアメリカ側が、日本が十分に防衛の負担を果たしているかどうかという尺度の中には、いま引用されました点が含まれるというふうに考えられるわけでございます。ただ、いずれにしても日本側としては、この共同声明で述べあるいは総理がプレス・クラブで述べたということは、あくまでも日本側の努力の表明でございます。その努力をどうしてやっていくかということは、日本側が憲法あるいは基本的な防衛政策の中で果たしていく問題であるというふうに考えております。

木島則夫民社党・国民連合

○木島則夫君 時間が参りましたので、これで結構です。

宇都宮徳馬新政クラブ

○宇都宮徳馬君 このたび、日本で子供に教える教科書につきまして文部省がいろいろな検定を行ってきているわけですが、その検定による改訂について中国、韓国、それからその他近隣アジアの諸国からいろいろ抗議が来ております。    〔委員長退席、理事鳩山威一郎君着席〕  本来、国内の教科書の問題ですから外国からとやかく言われる筋合いはないという議論もございまするけれども、しかしながら、そういうわけにはいかないということを外務大臣はよく心得ていらっしゃると思いますけれども、中国にしろ、あるいは韓国にしろ、あるいはその他のアジアの諸国家にしろ――正式の抗議は中国及び韓国でしょうけれども、それと同調するような世論が非常に強く起こっております。これは一体どういうことなんであろうか。日本はこれは真剣に考えねばならぬことなのか、国内問題として突っぱねていいことなのか、この辺についての外務大臣のお考えを承りたいと思います。

木内昭胤外務省アジア局長

○政府委員(木内昭胤君) これまで韓国、中国側双方とやりとりがございますが、中国も韓国側も、検定制度の問題はこれは日本の問題であって、これについて言及するつもりは毛頭ないということははっきり私どもの方に言っていただいております。ただし、この教科書との関連で取り上げられましたいろいろな事件につきましては、これが中国あるいは韓国と直接的な著しいかかわり合いがあると。そういう意味では日本の内政に口を出すということじゃなくて、それぞれの国のかかわり合いにおいて重大なる関心を抱かざるを得ない。そういう意味合いにおきまして重大な関心についての表明を韓国側、中国側それぞれからいただいておるというのが現状でございます。

宇都宮徳馬新政クラブ

○宇都宮徳馬君 事実はそのとおりなんですけれども、中国、韓国その他がなぜ非常に重要視して、こういう問題について日本人の相当な部分にはあるいは意外に感ぜられるような態度をとって抗議をしているかということについて、外務大臣のひとつお考えを承りたいですね。これは私、事件のやっぱりもっと本質的なことが大事だと思いますね。

櫻内義雄自由民主党外務大臣

○国務大臣(櫻内義雄君) 私としては、中国、韓国等から寄せられておる重大な関心、またそれに基づく申し入れ、そういうようなものを受けとめて考えますときに、教科書の検定制度の問題は相手側も認めておる国内の問題ではありますけれども、その背景としては、日本が本当に国交回復時の中国の場合であれば共同声明の前文、また韓国との場合では日韓共同コミュニケ、これらに沿っての日本国内の各界各層の状況がそのとおりいっておるかどうか、こういうような点についての懸念をも持ちながら今回の教科書問題についての意見が出ておるのではないか、特にそういう懸念が国民世論的にほうはいとして起こっておるということを非常に重要視しなければならない、したがってそういう国交回復時のことについて政府としては、また外務省として反省が十分でない、責任を感じていないというようなことがあったのではいけない、外務省としては関係方面にこれらのことをよく伝えて、そういうことを念頭に置いての処理を望んでおるわけです。

宇都宮徳馬新政クラブ

○宇都宮徳馬君 韓国にしろ、あるいは中国にいたしましても、これが千年も前の歴史的な記述に関することとか、あるいは自分の国に関係のない記述に関することならば、これはもう当然言うはずもないことだと思うんです。    〔理事鳩山威一郎君退席、委員長着席〕 言うにしても全く学問的な立場から言うべきことでありまするけれども、国民感情というものが言わしているということは、やはりあの記述の内容が自分自身の受けた災害とか悲劇とか、そういうものに関連し、そしてその記憶がなお生々しい、だからすぐ国民感情とかそういうことになってくるわけでありますね。ですから、そういうものを背景にして、日本近隣の中国初めアジアの諸国家が非常に関心を持つということは当然なんですね。そこら辺の日本人全体の考え方の姿勢というものをやはり向こうは非常に問題にしているのではないかと、こう思いますけれども、外務大臣はどうお考えになりますか。

櫻内義雄自由民主党外務大臣

○国務大臣(櫻内義雄君) これは宇都宮委員のおっしゃるとおりだと私も思います。  特に教育の関係ですから、未来を背負う国民がどうしていくかということに関連をするわけですから、したがってわれわれの時代に起きた問題で、われわれは国交回復時に責任を感じ、反省もしておる、こういうことがよく次の世代を担う方々に伝えられていく必要がある。もしそれに欠くるところがあれば、それはただいまのような批判が起きる要素となってくるおそれがありますから、そういう点はよく考えて処理していかなければならないと、こう思います。

宇都宮徳馬新政クラブ

○宇都宮徳馬君 たとえば南京事件という事件がありました。南京で相当な数の中国の非戦闘員――戦闘員ももちろん相当ひどい目に遭ったのですが、非戦闘員が殺されたという事実があります。これなどはやはりもはや本当は弁解できないですね。当時の支那派遣軍の総司令官の松井石根さんという人がおりましたが、私はその人と知り合いであって、いろいろ聞いたことがありますが、日本軍の軍紀があのように乱れたことはないということを松井さんは言っておられましたけれども、確かに相当な行為が行われたことは間違いない、そういうような記憶というものは中国人の中に当然残っています。  私は日中国交回復その他のためにずっと努力してきたわけです。いまでも日中友交協会の会長をしておりますけれども、しかしわれわれが国交回復をする際にも、やっぱりそういう過去の事実について十分知り、当然国交正常化を考える以上は、そういうことに対する反省も十分して、たとえば周恩来首相等といろいろ話し合ったわけですけれども、しかし実を申しますと、日本の軍国主義復活ということに対しては彼らは当時は非常に警戒していました。軍国主義復活反対ということで意見が一致したということが話し合いの出発点になったようなものですけれども、この軍国主義というものは、これは当然侵略というものを伴うものでありますが、南京事件なんかも侵略、それに伴うつまり略奪とか非戦闘員の殺人とか、いろいろなことがあったわけでありまするけれども、しかしそういう事実については、たとえば私も南京に行ったことがありまするけれども、ほとんどいままで中国人というものはそういう悲惨な事実についてこっちが聞いても、案内人は、それは過去のことであるから忘れましょう、こういう態度であったわけなんですね。ここで、こういう教科書の問題で新しく問題が提起されて、言論機関なんかでそれが非常に声高く復活してきているということは、私らは非常に残念に実は感じているわけなんです。  やはり、これはいろいろな背景があると思いまするけれども、しかし日本の現在の軍拡傾向というようなもの、それは軍事大国化の傾向と一致するわけです。それから憲法改正などという動き、これはレーガン政権以前からアメリカからいろいろな要求があったことはわれわれ知っておりまするけれども、特にレーガン政権になってからそういう傾向が強くなってきている。台湾の問題なんかに対しても、最近一応解決しましたけれども、レーガン政権の姿勢というのは非常にある時期からおかしくなってきたわけですが、そういう何といいますか、最近の国際情勢から来る世界的な軍拡傾向、そういうものから来る日本の姿勢の中に何か不安を与えるものがあるというふうに私ら考えておりまするけれども、それについてはどうお考えになりますか。

櫻内義雄自由民主党外務大臣

○国務大臣(櫻内義雄君) 宇都宮委員の御懸念については、私は十分理解をいたします。いま中国や韓国の厳しい批判、動向の中で、外務省としては、仮に十分な理解なく言われておる面があるならば、それについての日本としての明白な筋道というものを説明をする必要があると思います。御懸念のことは御懸念のことでわかりますが、しかし日本は、基本的には平和憲法のもとで戦争を放棄しておる立場がある。非核三原則も厳守する。あるいは自衛隊を持っておるが、それは専守防衛のためということなんですが、仮にも御指摘のような軍拡ではないか、あるいは何か憲法改正が意図的に行われるのじゃないかというようなことであれば、それはそれに対して十分日本としては説明をし、理解を求める必要があると思うのです。いま政府がとっておる防衛の関係はあくまでも自主的な見地でやっておる。あるいは憲法についての意見はいろいろ出ておっても、その改正の現実的な動きにはなり得ないいまの国会の状況であるとかいうようなこともよく説明していけば不安感というものを払拭ができるのじゃないか。もしいろいろな御指摘のような不安感と現実のいまの教科書の問題とが複合されて、大変日本に対しての心配を持つということであってはいけない。これはこれで外務省としては、国内に対しても各国の情勢というものをよく伝えるが、またいまのような点は理解を求める必要があるかと思います。

宇都宮徳馬新政クラブ

○宇都宮徳馬君 この「侵略」という言葉、これを「進出」と変えたというようなこと、これについてどうお考えになりますか。  私はこれは大した問題じゃないと実は思っているのですけれどもね。しかし、むしろ日本の立場から言いますと、日本という国はこれから恐らく侵略することはないと思うんです、またできません。ですから、侵略するなんということは私はないと思うのですが、ただその「侵略」を「進出」なんというあいまいな言葉に変えることは私はよくないと思うんです。それは、日本だってどこかの国がやってきて、これは「侵略」じゃなくて「進出」だなんて言われたら困るんじゃないんですかね、これは。私はそういう外交的な用語というのはやっぱり正確に使うくせをつけないといかぬと思います。日本の教科書作成者が日本軍のやったことを、何でも「侵略」「侵略」と書くということに対して何らか抵抗を感じることはわからないことはないんですけれども、しかしこういう国際関係に関する用語というものは正確な用い方をした方がよろしい。つまり日本だって「侵略」されて「進出」なんて書かれたら困るんですからね、これは。どう思われますか。

木内昭胤外務省アジア局長

○政府委員(木内昭胤君) 確かに教科書の一部記述の訂正で「侵略」が「進出」になったということで中国側があるいは韓国側が問題にされておることは事実でございます。しかしながら、文部省当局の御説明にもありましたとおり、教科書全体をごらんいただければこれは日本が出かけていってやった戦争であるということは一目瞭然であり、そういう意味においては間違いないという御説明も別途あるわけでございます。しかしながら、そう言っているだけではこの問題は解決いたさないわけでございますので、教科書の検定制度そのものは日本の国内問題であり、これは日本側が自主的に日本政府の責任において解決すべきであるわけでございますけれども、せっかく中国側、韓国側が重大な関心を表明された事柄でもあるわけですので、これにどう対応するか、現在文部省当局とも慎重に御相談申し上げておる次第でございます。

宇都宮徳馬新政クラブ

○宇都宮徳馬君 私の申し上げたのは、まあ客観的に見れば明らかに「侵略」なんですね。しかし、自分の方の軍隊のやったことだから余り悪く言いたくないという気持ちはわかりますけれども、外交的用語というものは正確にしておかないと、自分の方が「侵略」されたときには「進出」なんというわけにいかないんですからね。ですからこれを、明確な「侵略」であるならば、それはもう当然「侵略」に直すべきだと思いますが、外務大臣はどう思われますか。

木内昭胤外務省アジア局長

○政府委員(木内昭胤君) ただいまの御指摘の問題を含めまして目下文部省当局とも相談中であるということは先ほど申し上げたとおりでございます。

宇都宮徳馬新政クラブ

○宇都宮徳馬君 この問題は文部省当局の中では、教科書検定という仕事は高い政治的な視野とか何とかいうのが目的じゃなくて、実際は教科書の技術的誤りを訂正するというきわめて事務的なものとして行われているんですね。ですから、これは大臣に報告が行っていないものです。それがいいか悪いかは別として、現実にそういう点があったわけですね。そういういわゆる事務的な何といいますか、官僚組織の中の習慣というものがありますし、習慣というものは案外強く守りたい人があるわけなんですけれども、そういう事務段階における習慣、行政の筋とかそういうものを、こういう問題になると一飛躍しませんと、これは官僚制度の中の細かい行政的なしきたりを守るために大きな国損を招くということになると思います。だから私はこの際、政治家の集団としての内閣の勇断が望まれると思いますけれども、外務大臣はどういうふうにお考えになりますか。

木内昭胤外務省アジア局長

○政府委員(木内昭胤君) この検定制度の具体的な仕組み、どのように運用されておるかにつきましては、けさほども文部省当局から本委員会で答弁があったわけでございます。どこまで内部的にクリアしてやっておられるか、その辺のことにつきましてはやはり御所管の文部省当局から御答弁申し上げる事柄ではないかと、かように考える次第でございます。

宇都宮徳馬新政クラブ

○宇都宮徳馬君 いや、私はあなたに聞いたのじゃないんです、外務大臣に聞いたのです。

櫻内義雄自由民主党外務大臣

○国務大臣(櫻内義雄君) 宇都宮委員御不在でございましたけれども、この「侵略」「進出」についていろいろ御説明がございました。たとえば日本史十冊の中で四カ所改善意見が出された、あるいは世界史の中で十カ所改善意見が出されたが、これは改善意見であるので、出版社あるいは著者の意向によってどのように取り上げられてもそれはいいのであると。結果としては日本史で一カ所、世界史で三カ所の記述変更があったのだと、こういうような具体的な説明が行われておって、この検定制度は国内の問題、それを主管するのは文部省、そしていまのような意見を聞いていきますと、だんだんこういう国際的な問題になっておる、特に中国、韓国の批判あるいは今度は日本政府自身が国交回復の時点から考えて反省すべき点、そういうようなことから、私は何らかの文部省自体といいましょうか、あるいは検定調査審議会自体と申しましょうか、それなりの意見というものが求められるようなそういう状況ではないかと判断をしておるわけでございます。

宇都宮徳馬新政クラブ

○宇都宮徳馬君 戦後外交の基本あるいは日本の明治以来の外交の基本に関係するといえばすることなんですけれども、こういう機会に質問することはどうかと思いますが、日本には明治の初頭以来、中国外交とか朝鮮外交とかアジア外交に対して、あるいは世界全体の外交に対して基本的に分けると二つ考えがあったと私は思います。一つは、当時欧米のいわゆる列強ですね、それがアフリカからアジアをそれこそずっと侵略いたしまして、そしてかろうじてアジアの東端で独立を維持していたのが中国、韓国――朝鮮半島、それから日本、こういうものであった。それで明治維新の当時の日本の政治家の中に、これはどうしても中国、朝鮮それから日本と組んで、欧米列強のアジア侵略を防がなきゃいかぬという意味でそういう外交方針でいこうとするのと、大体それは明治初期の外交の所信ですけれども、だんだん曲がってきまして、それで特に中国、朝鮮問題なんかでは列強の植民地主義と同じようなまねを始めたわけですね。それで現在教科書問題が起こっているような、そういう歴史的な行動を日本の当時の政府がとってきた、そういうことだと私は思うんです。  第二次大戦で欧米の植民地主義というものはほとんど少なくとも形式的には徹退いたしまして、それでアジアにおける独立国ができた。この人たちの一般的な感覚、共通の感覚というものはとにかく反植民地主義である。それからいわゆる帝国主義とかいう先進列強の侵略、経済的、軍事的、政治的侵略に対する非常なこれは反感といいますか、そういうもの。これが第二次大戦前からずっとアジア、アフリカを覆った傾向であるわけで、それで多くの独立国ができている。そういう国を第三世界というふうにいうのですが、今後日本の外交もそういう明治の初期の、初心に返って、第三世界というような反植民地諸国家の動きを非常に重視するか、あるいは中国なんかが覇権主義大国と言っている米ソを、かつては欧米列強としてアジアを侵略したそういう国々を中心にするか。両方とも大事だといえばそれまでですが、日本の外交はどちらに重心を置くべきだと思いますか、櫻内大臣。

櫻内義雄自由民主党外務大臣

○国務大臣(櫻内義雄君) これは現状を踏まえる場合と、私が所見をどういうふうに持っているかということとはおのずから違うことは御理解していただけると思います。私は現在外務省の責任の衝にあるのでございまして、いまの現状を踏まえては、やはりこの日米安保体制の中にあって日米外交というのが大きな外交の基軸であると、こう思います。しかし、日本がアジアにおける唯一の先進国の立場を持っておるわけでありますから、それなりにアジア諸国との善隣友好関係を深め、アジア外交というものが非常に必要である、このことは軽視することはできません。したがって、今回のようなことで近隣諸国からいろいろと批判を受けるということについては、速やかにそういう批判の解消のための努力をするということは当然のことではないか。特にその批判というものが、日本の過去における行為について果たして反省の実があるのか、責任を感じておるのかということであるならば、これは謙虚に受けとめていく必要がある、こう思っております。

宇都宮徳馬新政クラブ

○宇都宮徳馬君 今度の論議で中国、韓国が別に相談しているわけでもないし、くつわを並べているわけでもないでしょうけれども、とにかく日本の過去の軍国主義的侵略的行動に対する批判という点では同様な感情を持って対してきているということはこれは間違いない。同時に、それに対してそれと同調しまして、東南アジアの諸国からもそういう反感が出てきている。これは日本の戦後外交の大きな反省期に来ている。やっぱりこの問題の処理というものはそういう大きな観点からしなければならない。ただ事務的にごまかせばそれはごまかしはつきましょう。しかしこの際、大きな観点から戦後外交の反省をする、あるいは戦前外交の誤りをも含めて反省するという時期だと私は思います。これは日本の政治全体の問題だと思います。  それで韓国が、三・一事件を「暴動」と書いたということに対してこれは困るということを言っていますね。これについてはどうですか。これはアジア局長、答えてください。

木内昭胤外務省アジア局長

○政府委員(木内昭胤君) 三・一運動はこれを「暴動」というような記述にいたしましたために韓国側が大変重大な懸念を表明した次第でございますけれども、やはり私どもとしましては、朝鮮半島の統治が始まった初期の段階におきます当時の朝鮮の人々の独立を求める「集会」であり、そのための運動であったというふうに理解できるのではないかと思っておる次第でございます。

宇都宮徳馬新政クラブ

○宇都宮徳馬君 「暴動」という言葉は向こうは非常に強く困ると言っているんですよ、どうしますか、これは。

木内昭胤外務省アジア局長

○政府委員(木内昭胤君) もとのテキストにおきましては「集会・デモ」ということであり、まあ「集会」であるということは、すなわち独立を希求するための運動という色彩が強く出るわけでございますけれども、もし「暴動」という言葉だけに着目いたしますと、暴徒のデモ、暴徒の暴挙というふうにもとれるわけでございまして、このように彼らの運動が格下げになるのでは非常に不都合であるというのが恐らく韓国側の率直な気持ちではないかと思っております。

宇都宮徳馬新政クラブ

○宇都宮徳馬君 私は、中国のこの問題に対する批判は一体どこを言っているかというと、明らかに「侵略」なんだから「侵略」という文字に直すというような問題ももちろんあると思いますけれども、しかし基本はやっぱり南京事件、あそこで相当中国の非戦闘員というものをひどい目に遭わしている、そういう記憶があるわけですよ。殴った方は余りそういう記憶がないんだけれども、殴られた方は記憶がある。そういう記憶のあるはっきりしたものに対して、相当な大被害に対して、数字的に非常に少ない被害を出したり、大したことのないように出したり、それからまあ抵抗が強かったから残虐したというようなよけいな弁解で対するから問題をこじらせるのであって、それは日本人のモラルという点から言っても、そういうごまかしはだれがやったか知らぬけれども、いけませんよ、そんなものは。これは日本政府がきわめて積極的に訂正して、客観的事実をもう一度調べて直せというくらいなことを私は当然言っていいと思います、私はそれはすべきだと思いますよ。字句の細かいことはともかくとして事実を曲げている。それで非常に大きな彼らの、国民の受けた災害というものをわざと小さく書いている、これはいけません。これは書く以上は正確に書くということが必要だと思います。私は、この点はまず日本人の学問的良心というか、数字なんかごまかしたり、いいかげんに事実をごまかしたりしちゃいけません。それはやっぱりちゃんとやらぬといかぬですよ。それは外圧に屈したとかなんとかいうくだらぬ問題じゃないんですよ、そんなものは一要するに日本人の良心の問題、日本人の信頼、信用の問題としてこれはもうはっきり直すべきであると私は思いますけれども、まあ、これも満足な答えは得られないかもしれないけれども、ひとつこれに対してお答え願いたいと思います。

木内昭胤外務省アジア局長

○政府委員(木内昭胤君) 史実ができるだけ正確に記述されるべきであるというのは、文部省としてもそういうお立場であるということは私ども文部省の当局からも承知いたしておるわけでございます。  確かに今回の教科書問題につきましては、教科書問題のみならず原点に立ち返って、果たして今日私どもが考えておることが、ちゃんとした足の上に乗っかっておるのかどうか深く考えるべきであるという御指摘も私ども伺っておるわけでございます。したがいまして、この教科書問題を契機にしましていろいろ考えなければならない点があるわけでございますが、さしあたっての問題の処理につきましては、先ほど来御答弁申し上げておりますとおり、文部省当局ともただいまの問題も含めまして鋭意協議しておる段階でございます。

宇都宮徳馬新政クラブ

○宇都宮徳馬君 外務大臣にお答え願いたいのだけれども、別にこれは意地悪でも何でもないんですよ。とにかくお役所の機構の中にはごくつまらぬあれがあるわけですね、何というかこだわりがあるんですね。これはやっぱり民族の大問題ですからね、本当言いますと。ですから、そういうことを越えて処置しなきゃいかぬということを私は意見として申し上げます。  それから、いま木内局長からお答えがありましたが、事実はやっぱりきちっと書かなければいけません、書く以上は。事実で明らかな誤りのあるものは、これは直さなければいけません。「進出」だ「侵略」だということは、これはいろいろな言葉の解釈の問題だしあれだけれども、これはもちろん直した方がいいと思うけれども、事実――重大な被害を軽少な被害のように書く、これはやっぱり民族的信用にかかわりますし、いけません。こういうものは速やかに私は直すべきだということを鈴木内閣、外務大臣にお願い申し上げる次第です。どうですか。

櫻内義雄自由民主党外務大臣

○国務大臣(櫻内義雄君) 宇都宮委員からいろいろ御指摘がある点につきまして、私としても十分考えなければならない問題があると認識いたしました。  今回の問題は、言うまでもなく非常な重大な問題として、また諸外国との関係を持っておるわけでございますから、ただ単に外務省があるいは文部省がということで意見を交わしておる、そういう段階ではないのではないか。ただ、幸い両者間でいろいろ協議しておることが意見が一致を見て、この重大な問題に対応ができるということであるならば非常に好ましいと私もその努力を続けておるわけではございますが、しかし、ここまで来ておる問題でありますので、すでに御承知のように鈴木総理が非常に心配をされておって、総理自身のお考えも折に触れてちょうだいをしておる段階でございますので、私もその総理のお考えも踏まえまして、今度の問題の早期解決を文部省と相協力して努力をしたいと、こう思っておる次第です。

稲嶺一郎自由民主党

○委員長(稲嶺一郎君) 本日の調査はこの程度にとどめます。     ―――――――――――――

稲嶺一郎自由民主党

○委員長(稲嶺一郎君) これより請願の審査を行います。  第二号婦人に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の早期批准に関する請願外百六十一件を議題といたします。  まず、専門員から説明を聴取いたします。山本専門員。

山本義彰常任委員会専門員

○専門員(山本義彰君) 今国会中外務委員会に付託されました請願は、お手元の表のとおり全部で百六十二件でございます。  まず、二号、五一八号、五四〇号、次のページの一三九一号は、いずれも婦人差別撤廃条約を早期に批准されたいというものであり、四三一三号は、あわせて婦人の権利に関するILO条約を早期に批准されたいというものであります。  第三ページの九八五号は、朝鮮民主主義人民共和国の日本人妻の安否調査及び里帰りの実現を図るよう要望するものであります。  次に、二四七一号と二九八四号は、核兵器の廃絶と軍縮の実現のために努力してほしいというものであり、第四ページの三六〇〇号は、第二回国連軍縮特別総会が核兵器使用禁止協定の実現等のために時間を限って行動を起こすようにしてほしいというものであります。次の三九四三号は、世界軍縮を国是としてすべての国に訴えてほしいというものであり、四二四一号は、原子力は平和利用のみとし、核戦争防止のための最善の努力を払われたいというものであります。次の四二四二号は、世界の平和が核兵器を含む力の均衡によって支えられている現実を直視しつつ、究極的な核廃絶を核保有国に訴える等の措置をとってほしいというものであります。  第五ページの三〇七二号は、国連を強化発展させ究極的に世界連邦を建設することを国の基本方針とし、その早期達成を世界に呼びかけること、参議院において世界連邦建設に関する決議を行うこと等を要請するものであります。  第六ページの三五一〇号は、日韓首脳会談の開催中止、六十億ドルの対韓援助の取りやめ、金大中事件の政治決着の撤回等を要請するものであります。  最後の五八一一号は、日米安保条約の廃棄とアジア・太平洋非核武装地帯の設置について国会が決議するよう要請するものであります。  以上でございます。

稲嶺一郎自由民主党

○委員長(稲嶺一郎君) 以上で説明を終わりました。  これらの請願につきましては理事会において協議いたしましたところ、第二号婦人に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の早期批准に関する請願、第五一八号婦人に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の批准に関する請願、第五四〇号婦人に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の批准促進に関する請願、第九八五号朝鮮民主主義人民共和国へ帰還した日本人妻の安否調査等に関する請願、第一三九一号婦人に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の早期批准実現に関する請願外三十三件、第二九八四号核兵器の廃絶と軍縮の推進に関する請願、第三九四三号非戦、平和のための軍縮に関する請願、第四二四一号核兵器廃絶に関する請願は議院の会議に付するを要するものにして内閣に送付するを要するものとし、第二四七一号核兵器の廃絶、全面的軍縮に関する請願外百二十件は保留とすることに意見が一致いたしました。  この理事会の協議のとおり決定することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

稲嶺一郎自由民主党

○委員長(稲嶺一郎君) 御異議ないと認めます。よって、さよう決定いたします。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

稲嶺一郎自由民主党

○委員長(稲嶺一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――

稲嶺一郎自由民主党

○委員長(稲嶺一郎君) 次に、継続調査要求に関する件についてお諮りいたします。  国際情勢等に関する調査につきましては、閉会中もなお調査を継続することとし、本件の継続調査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

稲嶺一郎自由民主党

○委員長(稲嶺一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、要求書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

稲嶺一郎自由民主党

○委員長(稲嶺一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――

稲嶺一郎自由民主党

○委員長(稲嶺一郎君) 委員派遣に関する件についてお諮りいたします。  閉会中の委員派遣につきましては、その取り扱い等を委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

稲嶺一郎自由民主党

○委員長(稲嶺一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十五分散会      ―――――・―――――

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