法務委員会 第29号
- 発言数
- 13 件
- 登壇者
- 4 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1982/08/13
会議録
○羽田野委員長 これより会議を開きます。 公明党・国民会議所属委員に出席をお願いいたしましたが、出席がありません。やむを得ず議事を進めます。 内閣提出、参議院送付、民事訴訟法及び民事調停法の一部を改正する法律案を議題といたします。 本案につきましては、去る十日質疑を終了いたしております。 これより討論に入ります。 討論の申し出がありますので、これを許します。林百郎君。
○林(百)委員 私は、日本共産党を代表して、民事訴訟法及び民事調停法の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行います。 第一は、就業場所への送達手続の新設についてであります。 改正案は、昼間不在者への送達の困難さを理由に、受送達者の住居所への送達の原則を崩しまして、就業場所で送達できるようにしようとしています。これは、日本社会の現状から見て、受送達者が勤務先においてプライバシーを侵害され、ひいては信用評価を低下させられ、さらに債務者等受送達者に心理的圧迫を加える手段として利用される危険性もあるのであります。従来からわが党が要求している裁判所の人的、物的充実を図れという道理ある主張に耳をかさずして、訴訟促進の名のもとに安易に国民に犠牲を強いることは許されないと思います。事は国民の基本的人権にかかわる問題であり、夜間、休日送達などの実現に手段を尽くし、住居所への送達の原則を守るべきだと思います。今回の改正を許すなら、裁判所までがあの臨調路線に追随するものであり、現在の最高裁の姿勢から見て、なし崩し的に勤務先への送達が第一次的なものとなり、住居所送達の原則を侵す危険をはらむものであり、悪名高い臨調路線に司法が巻き込まれることになり、私たちは賛成できません。 第二は、就業場所における補充送達について、受送達者の勤務する営業所等の事務員にも交付できるとする点であります。また、場合によっては、正当の事由がないということを理由にして、ただそこに置くだけで送達が行われたということにもなります。 この場合には、さきに述べました以上にプライバシーの侵害が深刻となるばかりか、受送達者の相当期間の不在や、書類を受け取った事務員等の失念、紛失等不慮の事故により、受送達者本人に到達しない場合でも訴訟が進行してしまうという、きわめて重大な権利侵害をも予測されることになるのであります。政府側答弁では、遺漏を補完する通知制度を設けており、仮に外形的に判決が確定してしまった後でも民訴第百五十九条により追完できるのであり、権利侵害ではないとしていますが、裁判所が改正法の手続に従ってなされた送達が適法とみなされ、これを覆すことは並み大抵でないことは、わが党の議員の質問でも明らかになっておりますし、また、訴訟の追完の名のもとにかえって訴訟の件数が増加することも考えられます。国民は、不当にも訴訟上の権利を奪われたまま泣き寝入りせざるを得ないことともなり、わが党が、このような国民のプライバシーを侵し、権利を不当に奪う今回の改正案に賛成できないのは当然であります。 第三は、訴訟が裁判によらずして完結した場合の証人調書等の省略についてであります。 証人の陳述等は調書にとっておくことがあくまで民事訴訟の基本であります。事件が判決によらないで終了した場合でも、後に和解、取り下げ等が無効とされたり、当該証人調べ等について偽証などの問題が生じたときなどには、困難な事態となることは想像にかたくありません。裁判所が和解等を見越して調書の作成をおくらせたり、和解を半ば強制したりする危険が高まり、このことは日弁連などから出ているとおりであります。調書の省略は、民事訴訟法の基本に反することになり、問題がいろいろと起きることを想像せざるを得ないのでありまして、これに賛成することはできません。 第四は、判決書の記載の簡素化の点であります。 改正案は、判決書の事実摘示については、証拠に関する事項は訴訟記録中の調書の記載を引用できるものとして簡素化を標榜しておりますが、これは証拠裁判主義の大原則に反するものであり、この点でとうてい賛成できるものではありません。あくまで、裁判所の判断がいかなる証拠によって行われたかということは、明確に判決によって、証拠摘示の方法で示されるべきであります。 第五は、罰則の強化についてであります。 改正案は、証人の不出頭や虚偽の陳述等に対する過料の上限額を現行の二十倍に引き上げようとしています。これは諸物価の値上がりを勘案してもなお余りに大幅な引き上げに過ぎると言わざるを得ません。期日を守ることについて不安定な要素を入れた送達の裏づけとして、出頭しない場合に過料が現行の二十倍、約十万円というようなことになることは、これは国民の権利を不当に侵害することに通ずるわけであります。 以上五点のほかにも、簡易呼び出しの簡易裁判所以外の裁判所への拡大や、控訴に伴う執行停止また仮差し押さえ及び仮処分の際の保証供託をなす供託所の管轄の変更などは、国民、ことに債務者に大きな不便を与えることになり、また、債権者にも種々の困難を与えることになり、国民の権利を侵害し、不利益となることが多く含まれているものであります。 以上述べましたように、今回の改正は国民のプライバシーの侵害、訴訟上の権利にも影響を及ぼすとともに、裁判の根本原則である当事者主義、弁論主義をも後退させるものであり、侵すものとなります。最高裁判所による職権主義を大幅に拡大することに裏づけられており、訴訟促進の名のもとに、臨調の司法版というべきものであります。よって、本法案にわが党は強く反対するものであります。 以上、日本共産党を代表しての反対の討論とするものであります。
○羽田野委員長 これにて討論は終局いたしました。 ―――――――――――――
○羽田野委員長 民事訴訟法及び民事調停法の一部を改正する法律案について採決いたします。 本案に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○羽田野委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。 ―――――――――――――
○羽田野委員長 次に、ただいま可決いたしました民事訴訟法及び民事調停法の一部を改正する法律案に対し、熊川次男君外三名から、自由民主党、日本社会党、民社党・国民連合及び日本共産党の四派共同提案に係る附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。 まず、提出者から趣旨の説明を求めます。横山利秋君。
○横山委員 私は、提出者を代表し、附帯決議の趣旨について御説明申し上げます。 まず、案文を朗読いたします。 民事訴訟法及び民事調停法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案) 本法の施行に当たっては、次の事項について配慮されたい。 一 訴訟が裁判によらないで完結した場合における証人調書等の作成省略については、調書の速やかな作成を求める法の趣旨にかんがみ、その運用に遺憾なきを期し、当事者の訴訟上の利益を損なわないこと。 二 就業場所への送達については、あらかじめ住居所等への送達を試みた上で行う等その運用に慎重を期し、当事者のプライバシー保護に欠けることのないこと。 本案の趣旨については、すでに委員会の質疑の過程で明らかになっておりますので、省略いたします。 何とぞ本附帯決議案に御賛同あらんことをお願いいたします。
○羽田野委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。 直ちに採決いたします。 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○羽田野委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付するに決しました。 この際、坂田法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。坂田法務大臣。
○坂田国務大臣 ただいま可決されました附帯決議につきましては、最高裁判所に十分その趣旨をお伝えし、運用上遺憾のないよう配慮したいと考えます。 ―――――――――――――
○羽田野委員長 お諮りいたします。 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○羽田野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 ――――――――――――― 〔報告書は付録に掲載〕 ―――――――――――――
○羽田野委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。 午前十時二十九分散会