P政策ポータルPOLICY PORTALウォッチ
96回国会衆議院1982/07/07

法務委員会 第22号

発言数
358
登壇者
13
会派数
5
開催日
1982/07/07

会議録

羽田野忠文自由民主党

○羽田野委員長 これより会議を開きます。  お諮りいたします。  本日、最高裁判所小野刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

羽田野忠文自由民主党

○羽田野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————

羽田野忠文自由民主党

○羽田野委員長 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政に関する件、特にIBM問題について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。熊川次男君。

熊川次男自由民主党

○熊川委員 ただいま委員長からお話のありましたIBM事件に関しましては、すでに捜査もかなり進み、起訴もされた方もおるわけですが、聞くところによると、その捜査に関しては、いわゆるおとり捜査が行われたやに思われます。わが国においては、麻薬取締法第五十八条に、特に麻薬取締官、取締員、こういった方々が厚生大臣の許可を受けたとき、捜査に必要な要件を満たしたときに例外的に許されている行為である。裏を返せば、そのとき初めて、麻薬に関する犯罪のときだけ例外的に許される、それ以外の犯罪に関しては罪を構成しない、こういうふうに理解することができると思いますけれども、そのようなわが国で生活していた方々が、そういうような法意識のもとに行動していた。また、公務員としても、憲法が保障しているところのわが国の法律を誠実に守るという意味においては、このおとり捜査に基づく調べに関しては相当御関心もあろうかと思いますが、法務省の御見解を承れたらと思います。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 お尋ねのおとり捜査の問題でございますが、いわゆるおとり捜査と申しますのは、一般的に申しますと、捜査官がおとりを使うあるいは捜査官自身がおとりとなりまして他人の犯罪行為を摘発する、それでその者が犯罪行為を行った証拠を入手して検挙する、こういう捜査方法を言うわけだと思います。  そこで、熊川委員仰せのように、現在のわが国の法律では麻薬取締法の五十八条という規定がございますが、これは、その規定の表現からいたしますと、麻薬取締官は厚生大臣の許可を受けて、同法の禁止規定にもかかわらず、何人からも麻薬を譲り受けることができる、こういう規定でございまして、おとり捜査そのものを認めるという規定ではないわけでございます。この規定自体がおとり捜査を念頭に置いてと申しますか、やりやすくするといいますか、そういう効果を持つことは事実だと思いますけれども、こういう場合におとり捜査ができるということ自体を決めたわけではないわけでございます。そういう意味で、先ほどお言葉がございましたが、厚生大臣の許可を受けたときに限っておとり捜査ができるというのは、条文の規定からはすぐには出てこないわけだろうと思います。したがいまして、その反面的に、こういう場合に限っておとり捜査が許されるんだというところまでは、これからは出てこないんじゃないかというふうにも思うわけでございます。  そうなりますと、この規定がおとり捜査について考える場合の手がかりにはなりますけれども、おとり捜査を認めるかどうかということの決め手にはならないわけでございます。したがいまして、おとり捜査が許されるかどうかということになりますと、これは刑法あるいは刑事訴訟法両面からの理論的な解釈によって判断しなければならないことだというふうにも思うわけでございます。したがいまして、従来から学者の間でもいろいろな議論がなされているところでございまして、その説も一律ではないということでございます。疑問を呈する向きも少なくないわけでございますが、その理由づけについてもいろいろな考え方があるということでございますので、なかなか明確にはこういう場合はいい、こういう場合は悪い、なぜ悪いかということが申しかねるような実態になっております。したがいまして、本件の場合でも、いわゆるおとり捜査おとり捜査と言われますけれども、その実態がどういうことであるかということを見きわめませんと、それが果たして適当な方法であるのかどうかという結論が出ないわけでございます。

熊川次男自由民主党

○熊川委員 そうすると、学者並びに実務家の間においても、いわゆるおとり捜査に関してはわが国においては異論がきわめて多く、したがって実務的法の運用においてもいわゆるおとり捜査というのはわが国においては通用しない、こう理解してよろしいでしょうか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 これも先ほどのお答えの繰り返しになるかと思いますが、いま仰せのように問題があることはあると思いますけれども、直ちにそれでおとり捜査がいけないんだということにもならないわけでございます。おとり捜査ということ自体が何を指すかということは、先ほど申しましたように適当でないと思われるやり方もございましょうし、中には許される場合もあるということでございますから、一律に一言でおとり捜査だからいけないんだというわけにはまいらないと思います。したがいまして、いまの御質問に対して言いますと、実務的に通用しないやり方であるというふうに極言されますと、そこまでは言い切れないんじゃないかというふうに思うわけでございます。

熊川次男自由民主党

○熊川委員 そうしてみると、先ほど刑事局長の述べられたように、麻薬取締法第五十八条などはおとり捜査が例外的に、やるにしてもそういう局限された場合に、しかもその態様を十分勘案して初めて違法性が阻却される場合もあり得るかもしれない、この程度に理解することができるわけですね。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 そのおとり捜査ということ自体、先ほど来申しておりますようにいろいろな態様があるわけでございますから、それが具体的に適当でないものであるか、あるいは適当なものであるかということは、個々のケースを見ませんとわからないわけでございます。ただ、そのことと実際におとりならおとりにかかったといいますか、犯罪行為をした人について犯罪が成立するかどうかということとは、もちろん関係はございますけれども、事柄としては別なわけでございまして、それを実体法的、つまり刑法の面からどう見るか、あるいは刑事訴訟法的な面から見てどう見るかという問題が次に起こるわけでございます。  それから、なおつけ加えて申し上げますと、日本ではと、こういうお尋ねでございましたが、もちろん日本とアメリカの法制といいますか、あるいは運用も同じではございませんけれども、何かアメリカの方では非常に広くおとり捜査というものが認められておる、日本では非常に限られた場合であるというふうな理解があるように思うわけでございます。確かにそのような若干差はあるかもしれませんけれども、理屈の上の考え方とすれば、そう差異はないんじゃないかというふうに考えております。

熊川次男自由民主党

○熊川委員 IBM事件関係につきましては、時間の経過もかなりありますので、ある程度の御調査あるいは御連絡というものもあろうかとも推測しますが、現段階における調査の状況からしてみて、日本でいうところの調べ方と対応して、違法性を帯びるような捜査方法であったかどうかの点についてはいかがでしょうか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 新聞報道等でいろいろと言われておりますけれども、たとえばその報道自体を見ましても、必ずしも一律でないと申しますか、という面があるようにうかがわれるわけでございます。  私ども、昨日もお答えいたしましたけれども、アメリカの方から正式な関係者の引き渡し要求であるとかあるいは捜査共助の要請であるとか、そういうものが来ていないわけでございまして、そういう面から見た事実関係ということが明らかでない。つまりアメリカの方で、報道もされましたような形で関係者何名かが起訴されていること自体、またその起訴されている事実自体は把握しておるわけでございますけれども、私どもが何らかの措置をとるべきその前提となります事実関係というものは、必ずしもはっきりしないということでございます。  ただ、はっきりしないと言いますと、何かその事実関係が非常にあいまいであるとかうやむやであるとかというような印象にとられるおそれもあるわけでございますけれども、そういう意味ではございませんで、現在アメリカの司法当局が起訴しておりますのは、アメリカの刑罰法令に触れるという形で事件をとらえて、そしてそれなりの手続をとっているわけでございます。そのこと自体は明白なんでございますけれども、そこの中からあらわれている事実、これは私どもが具体的に何かしなければならない、あるいはそれについて論評するという面からいいますと、十分事実関係を把握できない、こういうことになっているわけでございます。

熊川次男自由民主党

○熊川委員 ただいまのお答えの中に、当事者の身柄の引き渡しの請求もまだないという話がありましたが、法務省当局あるいは政府としては、身柄の引き渡し請求があるのではないだろうか、あっても不思議はないというふうに理解しておるのでしょうか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 お尋ねのような表現と申しますか、には、直ちにそうだというふうにも申し上げかねるわけでございますが、非常に抽象的な可能性としては、アメリカ当局がどう考えるかということでございますから、全然あり得ないというわけにもまいらないかと思うわけでございますが、その程度のことでございまして、来るとも来ないとも、いずれともはっきりしないというふうに理解しております。

熊川次男自由民主党

○熊川委員 仮定の話でございますけれども、仮にそのような請求があった場合においては、あるいは逃亡犯罪人引渡法あるいは日米間におけるところの犯罪人引渡しに関する条約、こういうものに当然照らし合わせるのでございましょうが、その場合、現段階においては、裁量によって引渡しを拒むことが妥当という現状でございましょうか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 お尋ねの点、仮定の問題であるのみならず、先ほど来申しておりますように、関係者の引き渡し要求というものがないわけでございまして、その要求が仮にあった場合にその当否といいますか、これに応ずべきかどうかということを判断するに足りる資料というものも当然のことながらないわけでございますので、そういう現段階でそれを拒むのが適当であるとか応ずべきであるとかいうようなことは、事実問題として言えない状態にあるわけでございます。

熊川次男自由民主党

○熊川委員 通産省にお尋ねしたいのですが、七月五日付の通産省の文書によると、日立、三菱の「両社とも、米国の調査会社よりIBM関係の技術情報を入手したのは事実であるが、いずれも、その情報は合法的に入手されたものと考えていたとのことである。」こういうふうに結んでおりますが、これは間違いないという現状でしょうか。

関収通商産業省機械情報産業局電子政策課長

○関説明員 私どもといたしましては、通商産業省の立場と申しますのは、産業行政あるいは日米経済関係あるいは技術開発行政というような角度で、この事件が公表されました際に、日立、三菱の両社から事情聴取をいたしたことはございます。その際に各社から報告がありましたのは、いま先生の御指摘のとおりでございまして、なお同様の趣旨につきまして、各社ともプレス等で公表いたしておるところでございます。

熊川次男自由民主党

○熊川委員 聞くところによると、これは日米間の貿易摩擦に関しての米国のとった手段ではないか、こういうことを述べる方もおりますし、相当の新聞が、あるいは「二十一世紀への前哨戦」とか「日本の追い上げに危機感、米政府も動かす」とか「最先端技術あせる米」とか「ケタ違い新機種 開発遅れた日本」とか「甘かった日本式商慣習、ドライな裏切り」とか「電算機開発に打撃」「米政府・業界一体で対日反撃?」「繁栄、もろい基盤」「先端技術に〃警鐘〃」とか、ともかく通産に関係しあるいは通産の行政指導にも関係するやに思われるような新聞の、あるいは世間、ちまたにおける御意見がありますが、こういうものに対してどういうお考えをお持ちでしょうか。

関収通商産業省機械情報産業局電子政策課長

○関説明員 私どもも、先生が御指摘のような各種の報道がなされていることは承知いたしておるわけでございますが、私どもの考え方といたしましては、本件はあくまでも米国における刑事上の問題でございまして、日米間の経済関係とは別個の問題、かように考えておるわけでございます。この点につきましては、直接ではございませんが、私どもも報道等で承知いたします範囲では、本件を日米間の大きな問題とはしたくない、あるいは本件が先端技術やあるいは日米貿易摩擦問題とは無関係の事件であるといったようなことを述べておるようにも伝えられておりまして、私どもとしては先ほど申し上げておりますように、日米間の経済関係とは一応別個の問題と理解をしておるところでございます。

熊川次男自由民主党

○熊川委員 わかりましたが、やはり「おそまつな法的対応」とかあるいは「もっと弁護士の活用を」とかいろいろございますので、日本から外国へ行っての商社の活動あるいは営業マンに対する指導、こういうものの立ちおくれがありはしないかなという心配もないわけではないのですが、今後の取り組み姿勢などもちょっと伺えたらと思います。

関収通商産業省機械情報産業局電子政策課長

○関説明員 今回公表されました事件につきましては、先ほど来お話がございますように、今後、アメリカの法廷あるいは司法手続の場でいろいろ議論され、事実関係も明らかになっていくわけでございますので、私どもとしてはその推移を見守るという形で、現段階では、特段、今回の事件に関連をいたしまして具体的なアクションをとるということは、現在のところ考えておりません。

熊川次男自由民主党

○熊川委員 そうではなくて、この種先端技術に関して、その辺も含めて、もうちょっと外国に出向くについての法的制度の指導あるいはロビイストというか弁護士というか、そういった通産省内部におけるところの全般に対する姿勢が必要ではないでしょうかという期待ですが……。

関収通商産業省機械情報産業局電子政策課長

○関説明員 確かに、先生おっしゃるようないろいろな問題はあろうかと思いますが、私どもとしては、海外における企業の活動あるいは情報収集活動と申しますものは、それぞれの企業でやっておられるお話でございまして、それと別に、いま通産省としてこの件に関して何かアクションをとる方針であるかどうかというお尋ねであるとすれば、現段階では、この事件がアメリカの司法手続の中で解明されていくのを見守っていくという立場にとどまっておるわけでございます。

熊川次男自由民主党

○熊川委員 ちょっと食い違っておるようですが、要するに、一般にこの種、本件に関係せずに、もうちょっと通産におけるところの行政指導の適正が期待されるのではないか、こういうことですから、強く要望しておきます。  それから、この事件を契機に、日米の両国間の将来に悪影響を及ぼすようなことがあってはならないと思います。わが国の政府はアメリカの政府あるいは国民に対し、この疑問があるとすれば解明に対する努力をすべきだと思いますけれども、外務省のこの事件に対するところの姿勢、御意見を拝聴いたしたいと思います。

苅田吉夫外務省北米局北米第一課長

○苅田説明員 政府といたしまして、あるいは外務省といたしましても、本件は基本的には米国において起きました一刑事事件というふうにとらえておりまして、この刑事事件につきまして米側の司法当局が適正な法手続に従って問題を処理中であるという現状におきましては、むしろ本件を政治問題化しない、あるいは日米関係に悪影響を与えないということのためには、この司法上の手続を冷静に見守るということが非常に必要であろうかと思います。そういう見地から対応しておるわけでございます。  もとより、本件につきまして邦人保護というような見地から、向こう側の対応に遺漏がないかというようなことは十分にウオッチする必要がございますけれども、そういった趣旨で冷静にこれに対応するというのが基本的な立場でございます。

熊川次男自由民主党

○熊川委員 冷静に対応するに際して、当面一番心配であろうというものが何点かあろうかと思います。たとえば関係者の引き渡しの請求があったようなとき、こういう場合にはどのようにわが国の邦人を保護し冷静に対応するのか、お聞かせいただけたらと思います。

苅田吉夫外務省北米局北米第一課長

○苅田説明員 具体的に政府間の問題になってまいりますのは、捜査共助の要請とかあるいは引き渡しの要請、そういった問題で政府間の問題になってまいりますが、その際には、わが国の法令に即して適正にこれを処理するということが最も重要なことじゃないかと考えております。

熊川次男自由民主党

○熊川委員 具体的に事件当事者引き渡しの要求があるのは外務省じゃないかと想像するのですが、現段階においては、たとえばそういった要求もなしで済ませるような努力はしておるのでしょうか、どうでしょうか。

苅田吉夫外務省北米局北米第一課長

○苅田説明員 これは、具体的に要請がございますときには外交ルートを通じまして、国務省、外務省を通じて法務省経由でこの処理が行われるわけでございますが、現在のところ、米国では本件についてどうするかということについては、まだ決定をしていないというふうに承知しております。これについて、当方から現在の段階において、引き渡しが望ましいとか望ましくないとかというような判断は行うべきではないと思いますし、これはやはり一つの司法手続でございますので、その司法手続に沿って行われるのを見守るということであろうかと存じます。

熊川次男自由民主党

○熊川委員 見守るのは結構ですけれども、先ほども言ったように、邦人保護の見地から、来てから事後的に見守って適法に処理するという消極的な態度でなしに、聞くところによると、日本では必ずしも合法、適法ではないというような手続によって捜査が行われたやの濃厚な疑いもあるものに関して、アメリカから要請があったときにのみ対処すれば必要かつ十分、こう見ておるのでしょうか。

苅田吉夫外務省北米局北米第一課長

○苅田説明員 この引き渡しにはそれぞれ要件というのがございまして、これはあるいは法務省の方からも御説明あるかと思いますけれども、この要件を満たさないものについては、そもそも引き渡しの対象にならないわけでございます。したがいまして、本件引き渡しにつきましては、その要件を満たすか満たさないかということは、これははっきりした司法判断でございますので、もちろんその判断は行う必要があります。しかし、その引き渡しの対象になり得るものについてそれをやらないあるいはやるとかいうことは、事前に非常に処理しにくい問題ではないかというふうに思っております。

熊川次男自由民主党

○熊川委員 法務大臣にお伺いいたします。  お聞きのように外務省は必ずしも積極的でなしに、非常に司法判断を待ってというような、本来は第一に外務省に行くべきところを法務省にお譲りしているかのごとき姿勢あるいは若干心細い態度がありますけれども、何といっても一番人権の尊重あるいはわが国の司法の権威にかけても、新聞の一部によれば、不適切ではありますけれども「司法取引へ」というような不穏当な見出しもあるほどの本件でございます。聞き方によると非常に誤解を招く書き方にも見えないわけではありませんが、法務大臣のこの事件に取り組む姿勢、これを伺えたらありがたいと思います。

坂田道太自由民主党法務大臣

○坂田国務大臣 ただいま刑事局長から御答弁申し上げましたことに尽きておるとは思いますけれども、本件につきましては、米国から関係者の引き渡し請求や捜査共助の要請をまだ受けておりません。わが国といたしまして、何らかの措置をとるべきかどうかを判断する前提となる事実関係そのものがまだ把握するに至っていないわけでございまして、この点につきましては、今後の推移を冷静に見守っていかなければならないと考えるわけでございます。  将来、米国からわが国に対しまして、刑事手続上何らかの協力を求めてくる場合も考えられるわけでございますが、その際には、その請求または要請の内容、そしてその具体的な資料を十分検討の上、関係条約等国際間の礼譲及びわが国の法令に従いまして適切に対処し、日米両国民の納得できる公正にして妥当な結論を得たいと考えておるわけでございます。法務大臣といたしましては、当然ながら、日本の国益を踏まえて冷静に、そしてまた慎重に対処をいたしたいと考えております。

熊川次男自由民主党

○熊川委員 ありがとうございました。  憲法の保障するところのデュー・プロセス・オブ・ロー、適法に定められたルールに従ったときにのみ私たちの刑事問題が処理されるというこの精神にのっとって、どうか慎重に、かつ日米の間の円滑な友好関係を破壊することなく、かつ邦人を保護する適切な御配慮を心からお願いして、質問を終わりにいたします。

羽田野忠文自由民主党

○羽田野委員長 横山利秋君。

横山利秋日本社会党

○横山委員 まず、最初に通産省にお伺いをいたします。  今回この公訴事実を見まして、窃取、横領された電子機器、それが私ども素人にはよくわからないのであります。一体、問題となっておる窃取ないしは横領された書類、物品、それはどういうものであるか、技術水準はどうなのか、日本とアメリカの状況から考えてどう解釈するのか、長い時間は必要ありません、短く国民にわかりやすく説明してください。

関収通商産業省機械情報産業局電子政策課長

○関説明員 今回対象になりましたものにつきましては、私どもとしては、たとえばFBIの捜査報告書で対象にされているものということで申し上げる以外にないわけでございまして、それが事実かどうかは、また今後法廷等で明らかにされていくのだと思いますが、それに従います限り、私どもが聞いておりますのは、そこへ出ておりますのは、IBMが一昨年の秋に公表いたしました三〇八一シリーズという新しいタイプのコンピューターがあるわけでございますが、それに関連いたしますハードウエア機器のデザイン書、あるいは機械を動かすためのオペレーティングシステムと申しますかソフトウエア、あるいはそれに付随いたします記憶装置といったものに関連するということがうたわれておるわけでございます。  それから、こういったものにつきまして、三〇八一シリーズというのがどういうものかと申しますと、従来の機器に比べまして、世上言われておりますのが、性能が二倍ないし三倍高いレベルのものであるというふうに言われております。  なお、IBMと日本のコンピューターメーカーとの技術水準の格差はいかがかということでございますけれども、コンピューターというのはいろいろな技術を駆使してつくられ、また運営されるものでございまして、なかなか一概に比較することはできないわけでございますが、一例として申し上げれば、世界のコンピューターマーケットにおきまして、IBMがほぼ六割のシェアを占めておる。日本のコンピューターメーカーは六社ございますが、全部合わせましても世界のマーケットシェアの七%程度ということから、競争力にも相当程度差があるのではないかと一応推測される点でなかろうかと思う次第でございます。

横山利秋日本社会党

○横山委員 もう一つその点について伺いますが、日本のこの種の技術が飛躍的に伸びておる。現状では七%とおっしゃいましたが、ここ五年、十年におけるこの種の技術の展望については、国際比較はどうお考えになりましょうか。

関収通商産業省機械情報産業局電子政策課長

○関説明員 先ほど御説明申し上げました三〇八一シリーズと申しますのは、汎用のコンピューターの非常に大型なものでございます。これと同種のものにつきましては、国産メーカーもすでに一部発表し、あるいは一部マーケットに出ているものもあるやに聞いておりまして、その意味で、日本もそういうハードウエアにつきましてはかなりいいものが出てくるようになったということは申し上げられるかと思います。  ただ、世上よく言われておりますのは、その機械を動かします際のいわゆるソフトウエアにつきましては、なお欧米諸国に比べて経験の浅さと申しますか、あるいはマーケット規模の大小といったようなこともございまして差があるやに伝えられております。  なお、さらに超長期の十年ぐらい、たとえば一九九〇年代といったような時代には、これまでのコンピューターと全く思想体系を異にした新たなコンピューターが必要になってくるであろうと言われているわけでございますが、私どもとしては、この新しい世代のコンピューターにつきましては、むしろ世界の最高水準のものをつくるべく、この一、二年新たな研究開発に着手をいたしたところでございます。

横山利秋日本社会党

○横山委員 もう一つだけあなたに伺いたいのですけれども、不幸な今度の事件であります。情報化社会にあって、情報を入手するということは非常に重要な企業の問題でもあろう。けれども、それが過度に陥って、自分のところで開発しないで人の物をまねてということは、必ずしもオーソドックスな道ではないと思うのでありますが、日本のいまの技術が自己開発によって世界に比して劣らない、それにまさるという展望は将来ありますか。

関収通商産業省機械情報産業局電子政策課長

○関説明員 私どもといたしましては、今後各方面で多大の努力をしてという前提で申し上げたいと思うわけでございますが、国際的な水準あるいは世界的な水準になっていくポテンシャルを持っているものと考えております。現に、わが国のコンピューターメーカーの一部機器あるいは技術につきまして、欧米に輸出をしているあるいは販売をしている例もございます。もちろん、欧米から購入している例もございます。そういう意味で、技術の交流というのは相当程度進んでいるわけでございますが、今後多大の努力をすることによって世界的なレベルまで持っていくポテンシャルを持っていると考えておりますし、また、ぜひそういたしたいと考えておるのが私どもの立場でございます。

横山利秋日本社会党

○横山委員 法務省に伺いたいのですけれども、私ども、アメリカ法についてよく承知をしていないのであります。問題は、アメリカ法と日本法との違い、それによって生ずる理解の食い違いというものが本件については非常に重要だと思います。法務省は、アメリカ法について十分な知識を持っておられるだろう、日本ではそうだと思いますからお伺いをいたします。  この「公訴事実の要旨」、日本人十五名、「罪名及び罰条」では「連邦犯罪(贓物の州外又は国外移送罪)に係る謀議罪、連邦法典タイトル十八、三百七十一条(二千三百十四条)」とあります。この「謀議罪」というものの内容が、言葉どおりで見ますと謀議をしたということですね。そして公訴事実を見ますと、第一の林健治氏は、ギャレットソン及びキャラバンとラスベガスで一九八一年十一月六日に会ったを初め、「コピーを受領する」「手紙を送る」「会う」等々が列挙されておりまして、一番最後の河野貞夫という人は、一九八二年六月二十一日「キャラバンと電話で話をする」、河野貞夫氏は六月二十一日に電話で話をしただけだ、こういうことになっておりますね。  謀議罪とはどういうアメリカ法の解釈、つまり謀議をしただけで、電話で話し合いをしただけでも謀議罪が成立するのか、実行に加担をしなくても謀議罪は成立をするのかということをまず、あなたに解釈を聞くというのもおかしいが、勉強をされておるだろうから説明をしてもらいたい。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 アメリカ法のことにつきましては、もちろん勉強はしておるわけでございますが、果たして横山委員のおっしゃるとおり十分であるかどうかということになりますと、問題もあろうかと思いますが、それはそれといたしまして、本件の公表された起訴状を見ますと、横山委員仰せのように、アメリカの連邦法典のタイトル十八の三百七十一条、それに二千三百十四条というものが引かれておりまして、連邦犯罪に係る謀議罪ということで起訴をされているわけでございます。  この引用されております三百七十一条を見ますと、「二名又はそれ以上の者において、方法、目的のいかんを問わず、合衆国法令違反の罪を犯し、又は合衆国若しくはその機関を欺罔することを謀議し、かつ、一人又はそれ以上の者がその謀議の目的を遂げるため何らかの行為を行った場合、」という要件でございまして、そういう場合にそういうことをした者を一万ドル以下の罰金または五年以下の自由刑あるいはその併科、こういうふうに規定されておるわけでございます。そして二千三百十四条では、「窃取、横領され又は詐欺により取得された五千ドル又はこれを超える額の品物、器物、商品、証券又は金員を、その情を知りながら、州際通商又は外国貿易に付して移送した者」ということでございまして、その法定刑が一万ドル以下の罰金または十年以下の自由刑もしくはその併科、こういうふうに規定されているわけでございます。  いま申しましたように、三百七十一条というのは、平たく申しますと連邦犯罪についての共同謀議罪でございます。したがいまして、いわゆる日本で言う実行行為をいたしませんでも、謀議行為があることがまず一つの要件でございまして、それだけでいいかということになりますと、後段でありますように「謀議の目的を遂げるため何らかの行為を行った場合、」というふうにあるわけでございます。この後段の「行為」というのが、横山委員は何か実行行為ということではないかというような御疑問ではなかろうかと思いますが、日本の刑法で考えておりますような実行行為という意味ではどうもないわけでございまして、まず謀議があったというだけで本来は謀議罪、コンスピラシーといいますか、それが成立するわけでございますが、それだけではなくて、一種の条件といいますか要件といたしまして、その謀議の目的を遂げるための何らかの行為が行われなければならないということになっておるわけでございます。  そこで、先ほど御指摘のように、各人ごとに個別に何らかの行為をしたということに当たる行為を起訴状で摘示をしておるということに相なるかと思います。したがいまして、この謀議の目的を遂げるための何らかの行為ということで、あいまいと言えばあいまいな面もあるかと思いますけれども、先ほど御指摘のようなだれかに会ったとかあるいは電話で連絡をしたということも、その謀議を遂げるために向けての行為ということに当たるという認定で、そして謀議があり、そういう謀議の目的を遂げるための具体的な行為があったという両方の要件を満たすということで起訴をされたもの、こういうふうに理解するわけでございます。  したがいまして、いわゆる実行行為ということになりますと、その謀議をした内容の行為そのものを実行行為と言うわけでございますから、たとえば窃盗の謀議であれば、その謀議に従って窃盗するということになるかと思いますが、ここに言う行為というのはそういう意味ではないというふうに思います。

横山利秋日本社会党

○横山委員 要するに、この三百七十一には三つの要件があると思いますね、あなたの説明にあったように。一つは、合衆国またはその機関を欺罔することを謀議した。つまり窃取ないしは横領の事実、それから謀議の事実、それから何らかの行為を行った事実、この三つが私は要件になっておると思うのです。  あなたも、そうまで詳しく自分の意見を言うわけにはいきますまいけれども、少なくとも横領し窃取をした事実というものは、この公訴事実の中に犯人が出てこないのですね、だれが窃取し、だれが横領したか。そうだとすれば、それはIBMとFBIとが相談して、おとり捜査にかけるからおまえのところの書類をくれ、おれが高い値で売りつけて、買ったらそこでパクるからということでありますから、窃取及び横領の事実というものが、「合衆国若しくはその機関を欺罔する」、そういう法律に違反する事実が、最初の犯人がいないんではないか。  それから、謀議とは何だ。謀議とは、この公訴事実を見ますと、会った、手紙を出した、書類をもらったと書いてある。一人一人書いてあるけれども、先ほど例証したように、一人の人は電話をかけた事実だけだ。これでも謀議と言えるだろうか。何らかの行為をした事実というものが、一体、いまもあなたも遠慮しいしい物を言っていらっしゃるけれども、われわれの言うところの実行行為とは違うんではないか。とにかく、関係者をみんな一網打尽というようなことが何らかの行為になるんではないか。まあこれは、ここでアメリカの法律の解説をお互いにやり合っても仕方がないけれども、これは裁判で争う価値のある問題がずいぶん残っているなという感じがいたしますが、どう思いますか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 先ほどの御説明があるいは不十分な点があったかと思いますが、三百七十一条について横山委員は、三つの要件があるというふうに御理解をお示しになったわけでございます。私どもはむしろそうではなくて、条文に即して申しますと、「合衆国法令違反の罪を犯し、又は合衆国若しくはその機関を欺罔することを謀議し、」でございますから、この場合にはその「欺罔」云々というところは該当するということを考えなくてもいいので、合衆国法令違反の罪を犯すことを謀議しというふうに読むといいますか、考えて当てはめていけばいいんではないか。  したがいまして、合衆国法令違反の罪を犯そうという謀議をした、そしてその謀議をしただけではなくて、その謀議の目的を遂げるために何らかの具体的行為をしたという二つの要件になるのだろうと思いますし、そういう意味で、実行行為があって、そのまた事前の謀議があって、さらに何らかの行為がある、こういう三つではないように思うわけでございます。  起訴状の方も、個々の人につきまして、だれと会ったとか電話をかけたとかいうことが掲げてございますが、その前文というか前の方に、被告人たちはいつからいつまでの間こういう場所で、連邦法典のタイトル十八の二千三百十四条に違反して窃取されたり横領されたりする五千ドル以上の物品を州外または国外へ移送することを謀議したということがまず書いてあって、そして以下に細かい個人別のことが書いてある、こういうふうに見えるわけでございます。  したがいまして、謀議というのはこれからのことでございまして、実際はその謀議に基づいて実行行為がある場合ももちろんございましょうが、理屈上からいいますと、謀議をした段階で、その後実行行為に至らなくても謀議罪は成立するわけでございますから、そういう意味では、謀議罪としてとらえる限りは、こういうことをしようという謀議をしたというそれだけで謀議罪が成立する、もちろん個別の行為は必要でございますが、そういうふうに理解すべきではないか。そういう謀議段階だけで処罰するというのは、日本の刑罰法令ではきわめて少数でございまして、ほとんどないと言ってもいいわけでございますが、アメリカにおきましては、本件のような場合に限らず、およそ連邦犯罪全部について、またはさっきのような横山委員御指摘の場合も含めて、いわゆる共同謀議罪というものがそれ自体犯罪としてとらえられているというところに差があるということになろうかと思います。

横山利秋日本社会党

○横山委員 「合衆国法令違反の罪を犯し、又は合衆国若しくはその機関を欺罔することを謀議し、」——一体、日立なり三菱商事は、そういう法令に違反する罪を犯す犯意があったのか、これをやることによって合衆国もしくはその機関を欺罔することについての犯意があったのか、認識があったのかとなりますと、これは争いの余地がずいぶんあることだなと私は思うのであります。少なくともギャレットソンなり直接タッチをした諸君は、金が要るけれども何とかする、もう少し金をくれということが如実に出ておりまして、これをやることによって、おまえは罪があるぞ、監獄へ行くぞ、おれも監獄へ行くぞということも端に多少はあったにしても、それほど日本側が犯意というものがあったとは思われない。要するに、合衆国を欺罔する、合衆国法令違反の罪を犯すという犯意があったとは思われない、そこが私は争いのあるところではないかと思います。  同じく、今度は関連被告人のレイモンド・J・カデット、バリー・サファイ、タバサム・アヤジ、この罪名が贓物の州外または国外移送、賦物の収受等になっておりますね。この三人と十五人との関係がどうもはっきりしない。公訴事実の中にも、ギャレットソンの告白というか陳述の中にも、この三人がはっきり出てこないのであります。そこのところはおわかりになっておられるでしょうか。同時に、この二つの公訴事実を通じて、私が先ほど言ったように窃取、横領、一番最初の犯人がない犯罪である。このことを一体どう考えたらいいのでしょうか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 まず第一の点でございますが、日立製作所を含む十五人といいますか、一社十四人になるかもしれませんが、その日本人関係者と外国人である三名の被告人がおるわけでございますが、そのグループというか、その関係がはっきりしないという点は、それ自体は御指摘のとおりでございます。ただ、これは日本の裁判でもそうでございますけれども、起訴状では、罪に当たる事実自体を簡潔に書くわけでございまして、より詳細にはいわゆる冒頭陳述で明らかにするとか、さらに立証の過程で明らかにするとかいうことになってくるわけでございまして、起訴状を見ただけではよくわからない場合があることは、この場合に限らない、日本でもあり得ることであろうと思います。  それから第二の点でございますが、先ほど来お尋ねを受けておりますが、基本となる窃盗とか横領とか、そういうものの事実がない、その犯人がはっきりしていない、そういうものについて犯罪の成立というものをどう考えるのか、こういうことであろうかと思います。  それは日本の頭で考えますと、いわゆる従犯ということになりますと、本犯といいますか正犯がございまして、それに対して教唆をするとか幇助をするとかあるいは予備をするとか、そういうことになってくるわけでございますけれども、先ほど申しましたように、今回起訴されております事実に適用されているいわゆる謀議罪、コンスピラシーという罪は、先ほども申し上げましたように、実際にそういうことをしなくても、する前の段階で、つまり事の流れからいいますと、何人かが寄り集まってこういうことをしようじゃないかという相談をする、それからいろいろ準備などをして実行行為に移るというのが時の流れであろうかと思いますが、その一番最初の段階でこういうことをしようじゃないかということを謀議した、そしてそれにプラスその謀議を実現するのに役立つような何らかの行為をするという段階ですでにこの犯罪は成立するということでございますから、結果としてその謀議に基づく実行行為がなくても、事前の段階でこういう形の犯罪としてとらえられている、こういうことになるわけでございます。

横山利秋日本社会党

○横山委員 あなたの意見に多少私も続いて意見を言いたいところでありますけれども、時間がございませんから次の問題で、日米の司法制度、特に裁判上の違い、体質の違いといいますか、やり方の違いというものが大分浮き上がってまいりました。  私も、証言法でアメリカへ行って裁判制度をいろいろ調べたのですが、一番最初に突き当たったのが免責条項。Aという犯人、Bという共犯、その共犯に、Aのことを話したら、全部ゲロしたらおまえの罪を軽くしてやるから全部ゲロしろという免責条項がきわめて活動しておる。アメリカの国会におけるいろいろな問題も免責条項が適用されている。日本のロッキードの問題でも、法務省、最高裁は免責条項をやったのではないと言うけれども、最高裁長官並びに検事総長の談話か何かで事実上それをやったのではないかと私は言っておるのですが、免責条項というのは日本に余りなじみませんね。  それから、刑罰で取引が行われている。十年の刑と六年の刑——おれは自白するからということで、そこで話し合いで六年にしてしまう。あるいはおとり捜査、あるいは自白、自白したら証拠調べは要らぬというような状況、そういう点が日本とアメリカの司法制度、裁判制度はずいぶん違うな、われわれが日本的な感覚で本件を議論しておったら大分認識が違うなという気がするわけであります。  そういう意味合いで一、二お尋ねしたいのですけれども、大陪審による起訴と検察官による起訴、これは一体どう違うのでありましょうか。それから、それが済んで最終的な判決前の陪審員による審理というもの、なぜ二回陪審というやり方になるのか、その辺の経緯をちょっと簡単に説明してください。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 まず、陪審のことでございますけれども、いわゆる大陪審というのは訴追機関と見た方がいいわけだと思います。いわゆる小陪審といいますか、本来の事件の審理をして有罪か無罪かを決めるという陪審はむしろ裁判機関というふうに、これは非常に粗い言い方になろうかと思いますけれども、そういうことでございますから、性格はおのずから違うわけでございます。それぞれ民間の方が陪審員になって、そして起訴するかどうかを大陪審で決める、また、有罪か無罪かを最後の陪審で決めるということになっておりまして、それはやはり国民性の違いなりいろいろな歴史の違いがもとになっているかと思いますけれども、そういう民衆関与による刑事手続というところから出てきているのだろうというふうに思うわけでございます。  なお、大陪審は、いま申しましたように、今度の事件でもそうでございますが、起訴するかどうかを正式に決定する機関であるということでございますが、そのほかにも捜査機関性も持っているわけでございまして、捜査の内容としての証拠の収集というようなこともできるわけでございますから、先ほど申しましたように、そういう意味では検察機能のようなものを持っているものというふうに御理解をいただきたいわけでございます。  大陪審の審査を受けるということは、アメリカでは国民の権利ということに理解されているように思うわけでございますので、その当該本人が大陪審による審査を要しないというふうに、権利の放棄と申しますか、希望しないということになりますれば、検察官そのものから起訴が行われる。しかし、やはり大陪審の判断を求めたいということになりますと、検事が提出した起訴状の案というものについて大陪審が審査をしまして、そして起訴、不起訴を決定する、こういう段取りになるわけでございます。

横山利秋日本社会党

○横山委員 わかりました。  日本居住中の九人がアメリカへ出頭しないということは事実のようであります。公判に出頭しない場合、米国法では一体どういうことになるのか。  一つは、ミストライアル、訴えの却下ということが法律上あり得るのか。  第二番目が、アメリカ検察当局は、出頭しないならあらゆる手段をとるということを報道でちょっと言っておるわけですが、法律上どんなことがアメリカ法ではできるのか。あるいは、召喚状は受領しても出頭義務はありませんわね。召喚状によって出頭しないとするならば、日本で言えば勾引ということになる。しかし、勾引するといったって、アメリカにおりゃせぬから勾引できないということになりますが、居住中の九人が公判に出頭しない場合、アメリカ法ではどんなケースが考えられるか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 十分なお答えができるかどうかと思いますけれども、アメリカの刑事手続の中では、日本ほど被告人の出頭というものが厳格に要求されていないように思います。しかし、私ども理解しておる限りでは、最初の法廷には出頭することが必要である、その後はむしろ、出頭することは権利といいますか、のような理解もあるわけでございますから、それを放棄するというか行使しないというか、そういう観点からそういうようなことが考えられているように思うわけでございます。したがいまして、全く最初から不出頭のままで裁判が行われるということは、どうもないんじゃないかというふうに思っているわけでございます。  そうなりますと、第二の問題といたしまして、出頭しない場合にどういうことになるかということでございますが、これも具体的にはどういうような措置がとられるかというようなことにもつながりますので、にわかにお答えしがたい点もございますが、非常に一般論的に考えますと、当然裁判所から召喚状が出る。それに応ずればもちろんいいわけでございますが、応じない場合には、いま仰せのように、日本で言う勾引状に見合うような令状が裁判所から発せられる、こういうことになるわけでございます。  ただ、その召喚状の送達の方法についてもいろいろなやり方が考えられるわけでございまして、あちらの裁判所から日本の裁判所を経由して送達するというような方法も可能だろうと思いますし、また、領事条約に基づいて、日本にいる領事を経由して当事者に送達させるということも制度としては可能なようになっていると思います。  それから、最終的に身柄を拘束するといいますか、勾引することについては、それはやはり逃亡犯罪人の引き渡しの問題につながることになろうかと思います。

横山利秋日本社会党

○横山委員 それでは、引き渡し問題の、今度は日本側の立場についてお伺いします。  条約では、三条ですね、日本の法令上犯罪を行ったと疑うに足りる相当な理由がなければいけない。五条では、自国民を引き渡す義務はなく、しかし、裁量によって引き渡してもいい、こういうことになっておりますが、五条による裁量をもって引き渡すとしても、三条による、日本の法令上犯罪を行ったと疑うに足りる相当な理由がなければ裁量は出ない、こう考えてよろしいでしょうね。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 ただいま御指摘のように、三条というよりも、引渡法で言えば二条のことではないかと思いますけれども、「引渡に関する制限」というものがあるわけでございまして、たとえばその四号で、「引渡犯罪に係る行為が日本国内において行なわれたとした場合において、当該行為が日本国の法令により死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮に処すべき罪にあたるものでないとき。」は引き渡してはならない、こういう言い方が引渡法の上でも書いてあるわけでございます。  ただし、一言つけ加えますと、いま問題にされておりますのは、先ほど来御議論のございますように、いわゆる謀議罪ということで起訴されておるということでございまして、それでは引き渡しの対象にならないじゃないか、したがって拒むべきである、こういう三段論法のような議論が出てくるわけでございますけれども、まずそのこと自体は間違いはございませんけれども、あちらで起訴されている事件は、現在の起訴の形としてはああいう形でとらえられているということであると思いますが、その実態、内容として、あるいはそれに関連して、日本の刑罰法令に触れる行為が含まれている、あるいは伴っているということも想定されないわけではございません。そうしますと、そういう行為をそういう面でとらえて、もし請求があれば、この要件を満たす場合もあり得るだろうということは、抽象的には言えるわけでございます。

横山利秋日本社会党

○横山委員 アメリカとの間には逃亡犯罪人の引渡し条約がありますが、条約に基づかないで、引渡法第三条で請求がある場合が日米間であり得るか。日米間には条約がある。しかし、その条約の個条をそれぞれ適用しないで、引渡法の三条で請求が行われることがあり得るかという質問です。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 非常に観念的な、法律論としてはあり得ると思いますけれども、現実問題としては、現にございませんし、まあ条約がある場合には、当然条約にのっとってやられるのが通常の形であろうというふうに思います。

横山利秋日本社会党

○横山委員 逃亡犯罪人引渡法を一遍熟読してみたのですが、九人の人は逃亡していないのですね。日本に現におって、別に逃げたとは思っていないわけですね。この逃亡には該当しない。これは常識的な言い方で法律上の言い方ではないのですけれども、どうも釈然としない。なるほど、第一条か二条に逃亡犯罪人の定義が出ておりますから、何も逃亡には関連しないとはいいましても、本人には逃亡犯罪人、しかも、犯罪人の疑いがあるかもしれないけれども、逃亡の意識なんて全然ないですね。これは、仕方がない、法律上の問題ですから、次の法律改正のときに……。この逃亡という言葉は適当じゃないと私は思いますよ。  それから、法律の第四条で、法務大臣が、引き渡し請求があったら、直接高等検事長に命令することになっていますね。なぜ、最高検を飛び越えて高検へ直接指揮命令をすることができるのか。同じようなことは最高裁でも言えますね。なぜ法務大臣は、最高裁を飛び越えて東京高裁へ直接指示命令があるのか。  私は、この法律の審議のときの経過はちょっと記憶に定かでないのですけれども、一体、東京の検事長や東京の高裁長官は最高検や最高裁の指示は受けなくてもいい、本件に関する限りは法務大臣の命令によっておれは動くんだということで法律体裁はなっているのですが、これはどういうわけですか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 御案内のとおり、一般の刑事事件の捜査処理でございますと、検察庁法の規定もございますし、大臣と検察庁との関係というものは明定されているわけでございますが、この引渡法に基づきます手続は、そういう本来の検察活動そのものではございませんで、要するに引き渡し請求を受けた場合の、言葉は適当でないかもしれませんけれども、一番ふさわしいといいますか、適切な手続というものを考える、そういう観点から決められておるわけでございます。  その場合には、当然迅速性の要求も大きな要素になるわけでございまして、そういうことから、事実上もちろん最高検には御連絡はすることになりますけれども、規定の上ではストレートに、東京高検の検事長に手続をとるようにという指示ができるというふうに制度を決めておるもの、かように理解しております。

横山利秋日本社会党

○横山委員 高裁が、引き渡すべき犯罪であるとか引き渡すべき犯罪ではないとかいう判断をしますね。それに対して、本人や東京高検がその高裁の決定に不満の場合にはどうしようもないのですか。  それから、法務大臣は十四条で、高裁が仮にそういう決定をしても、政治的には、おれは引き渡さぬ。引き渡すべき条件があるというふうに高裁が決定しても、法務大臣は、おれは引き渡さぬというふうに最終判断ができるわけですね。法務大臣にそういう最終判断を許しておいて、本人及び東京高検は不服申し立ての機能はない、これが最終決定である、そういうことなんですか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 その評価は別といたしまして、手続の仕掛けといたしましては、いま仰せのように、大臣から東京高検の検事長に手続をとるようにという命令をする、それを受けた東京高検の検察官が東京高等裁判所に対しまして審査を求める、そして審査をして、裁判所で決定が行われるということでございまして、それについては一般の刑事事件のような上訴制度というようなものは考えられていないわけでございます。  また、これも制度上の問題でございますが、そういう裁判所の判断があった後におきましても法務大臣の裁量の余地が残されておる、こういうことでございますが、それは、やはりこの手続あるいは事柄の性格が一般の刑事事件とは全く違うと言ってもいいぐらいのものでございまして、要するに、むしろ本来的には行政判断だけでやってもいいような性格のものでございましょうが、それだけではやはり適当でないということで、それを司法チェックにかかわらせる、こういう意味合いのものではないかと理解されるわけでございます。

横山利秋日本社会党

○横山委員 評価は別にしてとおっしゃるので、もうこれ以上やりとりしても仕方がないと思いますが、ここは問題が残るところ。いいように運用されておればいいのですけれども、それが政治的ないろいろな判断が加わったり、あるいはまた本人が、おれは引き渡しに応じない、そんな決定はおかしいという不服の道がない。東京高検は、その高裁の決定がおかしいと思っても、上訴の道がないというのはちょっとどうかと思いますね。  それと同じように、日立、三菱に米国法による判決が裁判所で今度出たとしますね。判決が出て、上訴できない理由は何でしょうか。私の承知するところでは、無罪のときには検察の上告権はない、有罪の場合にもどうも原則的に上訴ができないというような話を聞くのですが、どうでしょうか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 ただいまの御質問の前に、先ほどの質問に対しまして、検察官側は高等裁判所の御判断に不服の申し立てばできないわけでございますが、本人の方はいわゆる行政訴訟ができるということをつけ加えさせていただきたいと思います。  それから、アメリカで仮に有罪の裁判があった場合に上訴できるかどうかということでございますが、これは、まず結論から申しますと上訴はできないわけではないので、できるわけでございます。ただ、アメリカでは第一審が非常に重視されておりまして、特に事実認定につきましては第一審が重視されているということから、日本の控訴に当たるものにつきましては、厳格に法令違反とか判例違反とか、そういう法律問題に限られるというふうに理解しているわけでございます。

横山利秋日本社会党

○横山委員 共助法の問題ですが、これもやはり逃亡犯罪人と同じように、法務大臣は五条で地検の検事正に直接命令権があるということですね。これも地検の検事正は、高検や最高検くそ食らえ、おれは法務大臣に、本件に関する限りは直接おれがやるという独立した業務執行の義務を負う、こう見てよろしいのですか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 先ほどの問題と似たようなことでございますが、やはり事柄の性質によって、一般の刑事事件の扱いとは性格を異にするものでございますし、特に迅速性を要するということからストレートに検事正に捜査の指示をする、それを受けて検事正がしかるべき捜査をする、こういう制度をとっているわけでございます。

横山利秋日本社会党

○横山委員 領事条約ですが、先ほどあなたは領事条約の発動をちょっとにおわせましたが、現実問題として逃亡犯罪人引渡し条約を適用することはなかなか困難だから、領事条約十七条の発動によって日本に資料の調査だとかいろいろなことを依頼してくるという可能性があるでしょうか。  また、領事条約は、条約はあるけれども、それを基礎にする国内法はたしかないようですね。領事条約によってアメリカから要請が来た場合には、国内的にはどういう法律根拠によってそれを執行するのでしょうか。

苅田吉夫外務省北米局北米第一課長

○苅田説明員 御指摘のように、領事条約の十七条で司法共助以外の方法で捜査を行う方法が定められておりまして、「派遣国の裁判所その他の司法当局のために、その者が自発的に提供する証言を録取すること。」ができるというふうに定めております。御指摘のように、この領事条約が制定されたときにこれに伴う国内法はつくられておりませんけれども、これは、現行の法令と相対する問題は何もございませんでしたので、この条約だけですべて国内的には処理できるという判断に基づいたものと理解しております。本件につきましても、これは、この条約に基づいて米国の領事がこれを行うというものでございます。

横山利秋日本社会党

○横山委員 これは大分前の領事条約ですけれども、アメリカの立場としては、逃亡犯罪人引渡し条約ではむずかしくて、とても日本がうんと言わぬだろう、領事条約ならば、向こうも知っておりますからね、国内法はない、だからしかるべくうまいことやってくれるんじゃないかということで、十七条を適用してくる可能性なしとしないんです。いまあなたの話を聞きますと、国内法はないけれども適当にできる、適当とはおっしゃいませんでしたけれども、何か、できると思う。できる根拠は一体何ですか。何法によってやるのですか。法務省も警察当局も、領事条約があるから、きわめて簡単な十七条だけれども、それによってやるつもりですか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 領事条約の十七条では、いわゆる領事官、領事でございますが、それができることを列挙しているわけでございまして、先ほども御説明ございましたように、場合によっては関係者から証言を録取することができると書いてございますが、それは領事そのものがやるわけでございまして、その領事条約に基づいて日本の捜査当局とかそういうものがやるわけではないということが一点と、それから、領事そのものがやります場合も、その条文にも明らかなように「その者が自発的に提供する証言」ということでございますから、文字どおり任意に述べることをそのまま録取するということでございまして、強制力的なものを伴わないということで、この領事条約そのものが根拠として、そういうことが制度としては可能であるというふうに理解されるように思います。

横山利秋日本社会党

○横山委員 大分それは問題がありますよ。実際、領事条約十七条を発動してその執行をやるとなりますと、国内法及び本人の出頭義務からいけば、それについておどかされる、すかされる、そういう問題について官憲の介入の問題がなしとはしないとなりますと、領事条約十七条が国内法が何もない、そこがまた問題を生じてくるおそれがあると私は思われてならないところであります。これは検討を願います。  わなの理論ですが、ずいぶん私も見てみました。ソレルス事件だとかシャーマン事件だとかあるいはラッセル事件だとかカディス事件、アメリカにおけるわなの抗弁という問題についていろいろ検討してみました。  先ほど前田さんは、アメリカにおいておとり捜査が許されており、日本では完全におとり捜査をやったから無罪というわけにはまいらぬ、近似性があるのだという理論を展開をされました。しかし、アメリカにおける判断基準、わなの抗弁として主張ができ、それが無罪にできる要件、つまり判断基準というものをいろいろ考えて整理をしてみますと、結局は、ソレルス事件では、実行のため機会または便宜を提供したにすぎない場合は有罪だ。しかし、犯罪計画が政府の官憲によって作出され、かつ、潔白な人物の心中に犯意を植えつけ、実行行為を誘発した場合は別の問題、つまり無罪に近い。法の趣旨は、潔白な人を扇動してよいと言ったわけではない。被告人の犯罪性向と犯罪計画がこれに関連をする。被告人は潔白な人間での立証をせよ、いわゆる挙証責任が被告人に相当あるぞ。わなについては、問題処理の権限と義務は裁判所にあって陪審員にはない、こういう理論。  シャーマン事件では、自白の強要や非合法な捜索と同様に、秘密性と戦術は異論のある捜査手段。潔白な人を違反に誘う立法ではない。わなは官憲の創造的活動の産物である場合にのみ生ずる。つまり、官憲が創造的活動の産物としてやったわなについては無罪である、軽率な潔白者は無罪である、軽率な犯罪者との間に一線を画す。つまり、潔白者で軽率であったという人は無罪に近い。犯罪者で軽率なやつは、もう犯罪歴があるんだから、おまえはそうはいかぬぞ。要するに、わなにかかった人が、最初は拒否する、その次には逃げる、その次にはためらう、その次にはついに降伏した、こういう経緯があればわなの抗弁は成立する。つまり無罪に近い。  いろいろ補足意見がありますが、ラッセル事件では、詐術があっただけでは訴追は棄却しない。わなの理論が働くのは、政府の詐術が被告人の心中に犯罪計画を植えつけた場合のみだ。カディス事件では、潔白な人を誘発をした場合、あるいはまた、被告人が犯罪性向を持ち、すでにそれをやっておったというものと区別をしろ、こういうことで裁判官が陪審員に言う言葉が非常に興味を呼ぶわけであります。  この資料によりますと、「「わなの抗弁」に関し、裁判官が陪審員に説示する形式は、通常次のとおり。」「ある者が、既に、法に違反することにつきその意思を有し、行うつもりになっている場合においては、単に政府側の者が(当該犯罪が犯されるための)便利な機会と思われる状況を提供しただけでは、「わな」を構成しない。もし、被告人が当該犯罪を犯す事前の意図と目的を有していたのかどうか、そのような行為をしたのが政府の捜査官又はその代理者によって誘引され又は説得されたのかどうかについて合理的な疑いがあるときは、被告は無罪とされねばならない。」  こういうものと、それから日本における判決を比較対照をしてみますと、確かにあなたのおっしゃるように——私の手元にありますのは、最高裁の昭和二十八年の小法廷ですが、判旨は「他人の誘惑により犯意を生じ又はこれを強化された者が犯罪を実行した場合に、わが刑事法上その誘惑者が場合によっては麻薬取締法五三条のごとき規定の有無にかかわらず教唆犯又は従犯として責を負うことのあるのは格別、その他人である誘惑者が一私人でなく、捜査機関であるとの一事を以てその犯罪実行者の犯罪構成要件該当性又は責任性若しくは違法性を阻却し又は公訴提起の手続規定に違反し若しくは公訴権を消滅せしめるものとすることのできないこと多言を要しない。」  えらいむずかしく書いてあるが、要するに、麻薬取締法五十三条のごとき規定があってもなくても、おとり捜査をやった者は、警察官なり何なりは教唆犯または従犯として責を負う。負うか負わぬかは事実関係になるのですけれども、負うと思われる。けれども、捜査官をおとり捜査をやって処分はするけれども、犯罪やったやつはそれとは関係ない。簡単に言うとそういうことですね。  私は、この最高裁の判旨にちょっと疑問を持つのですよ。いろいろ理由が読んでないからわかりませんが、これだけの議論だったら、アメリカのいま読み上げたやつの方がいいではないか、極端に言うと。極端ですよ。潔白な者にいろいろやって、それでついに陥落せしめたというようなやり方をしたならそれは無罪だという論旨と、この最高裁の判旨からいうと、教唆または従犯した警察官は罪だ、けれども教唆されたあるいは加わった者がやったことについては罪を罰するぞ、簡単に言えばそういうことになります。アメリカの方が進歩的じゃないかとさえ思われる。私は、この最高裁の二十八年の三月五日ですか、これに対して疑問を生ずるわけです。  そこで、おとり捜査の論文、解説の最後にこういう文章があります。「最後に、麻薬取締法五八条が「おとり捜査」までを許容したものと解すべきかを問題にしなければならない。さきの憲法理念からすれば消極的に解するのが妥当であろう。」つまり、麻薬取締法五十八条がおとり捜査を許したと積極的に解すべきではないという論旨ですね。「麻薬事犯捜査の特殊性から捜査の端緒を得るために他に方策がない場合に限って、捜査機関に許容されたもので、他人の犯意を誘発することまでも許容する趣旨ではない。」私はこの結論に賛成でありますが、法務省の御意見はどうですか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 御指摘のように、アメリカではおとり捜査が比較的多く使われているという面もあるようでございますけれども、その反面、ただいまお読み上げになりましたようないろいろな判例がございまして、むしろ相当厳格な運用といいますか要件が考えられておりまして、特に全く犯意のなかった者を罪に陥れるというような場合は、そういうやり方は許されないというのが基本になっているように思うわけでございます。  一方、これも御引用の昭和二十八年の最高裁の第一小法廷での決定でございますが、これによりますと、いま御指摘のように、いわゆるおとり捜査的なことをやっても、そのことによって直ちに無罪になるとかあるいは公訴の手続が違法になるとか、そういうことにはならないというふうに言っておるわけでございまして、それだけを表面的に対比いたしますと、むしろアメリカの方が厳格であって、日本の方が緩やかであるというような印象をお持ちになることは、そのとおりであろうと思います。ただ、判例も具体的事案に即してのことでございまして、この判例の事案におきましては、全く最初からそういう犯意がなかった、いわば真っ白の人であったかどうかということになりますと、必ずしもそうではない事案のようでございます。  そういう点もございますので、表面的な対比だけではいかがかということが一つと、それからこの判例につきましては、これも先ほど御引用のように、学者の方から批判的な判例評釈といいますかがなされている、それのみならず、いろいろな賛否両論があるわけでございまして、その後下級審の判例等もあるわけでございますが、その下級審の判例いろいろとございますけれども、まあ非常に大ざっぱに申しますと、先ほど御紹介のあったアメリカの判例のような考え方を順次取り入れているというような印象も持つわけでございまして、少なくとも私どもの立場といたしまして、最高裁の判例が一応あるわけでございますから、それに特に異を唱えるということもいかがかと思いますけれども、やはり事案事案に応じて、またいろいろなその後の学説なり物の考え方なりというものを参考にして、事案に応じた適切な判断がなされるべきではないかというふうに考えるわけでございます。

横山利秋日本社会党

○横山委員 ともかく憲法三十一条、十一条、刑訴法一条、これはもう厳然として捜査に当たっての遵守さるべき基本的な問題でございまして、日本国民は常識的にもおとり捜査は違法である、こういう感覚を持っておるわけであります。きょうここで、アメリカ法並びに国内の最高裁の判決を私は引用いたしましたけれども、末尾に申しましたような解説の最後の文、それが私は正しい解釈ではなかろうかと思いますから、業務運営上十分に注意をしていただきたいと思います。  最後に、いろいろきのうからきょうにかけてお伺いをいたしました。法務省、外務省並びに通産省、ともに国会でございますからきわめて慎重な答弁に終始をされたという感じがいたします。しかし、そうであろうとも、新聞を通じ、法務省的な見解、通産省的な見解あるいは外務省的な見解というものが漏れておるわけであります。この漏れたのはうそだとか、あれは正式な見解ではないという言い方があっても、国民は大体各省の見解というものがそういうことではないか、穏当なしかも法律判断をしたのではないかと、そういうふうに認識しておるわけです。  その認識はどんな個条があるかといいますと、政府は条約による身柄引き渡しには応じがたい。これは自国民だから引き渡さない、あるいは裁量権があっても裁量によって引き渡すようなことはしない。それから、日本国法では犯罪と認めがたい。賦物故買とか共謀罪とかおとりだとか、そういう点でこれは日本国内法では犯罪と認めがたい。第三番目に、自発的出頭は本人の問題ではあるけれども、政府が自発的出頭を慫慂することはしない。共助法による国内捜査は要求しないだろうけれども、要求があっても応じないだろうということが、大体何となく各省の見解として新聞、テレビに載り、国民はうんそうかというふうに理解をしておると私は思います。  これは言いっ放しになるのですけれども、議事録に残ることでございますから、何かこの四つの点について、それじゃ困る、一言言わなければいかぬという章がありましたら、どうぞ御随意に言ってください。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 特に異を唱えるわけでもございませんけれども、横山委員の仰せになるほどはっきり言っていいかどうかという点につきまして、若干疑問といいますか感じを持つわけでございます。  余り個別な点につきまして申しますと、それ自体がまた誤解なり混乱のもとになろうかと思いますのでいかがかと思いますが、たとえばきのうの当委員会におきましても、私はたとえば引き渡しの問題でも、応ずるとも応じないともいずれとも決まっていないというふうに申し上げたつもりでございますが、新聞報道によりますと、応じないというふうに大きな見出しで出ておるというようなことでございまして、そういう点が逆にいろいろな問題を混乱させるもとになるのじゃないかなという心配を持つわけでございます。  したがいまして、個々の法について申しますと、条約による引き渡し請求には応じないというふうに決めているかといいますと、それはまだいずれとも決めていないということでございますし、それから日本国の刑罰法には当たらないということも、それはあの起訴された事実それ自体としてはどうも当たりにくいということでございまして、先ほど申しましたように、その事案の内容に含まれている事実あるいは関連する事実がどのようであるかということはわからないわけでございますから、それがどうであるかによってまた対応の仕方も違うであろうというふうに先ほども申し上げたとおりでございます。  それから、私どもの問題点としまして、共助法の要請につきましてもいまと同じ問題でございまして、ああいう共同謀議罪という形で要請がありましても、なかなか応じにくい点が起こるであろう。しかし、こちらが要請に応じ得るような形の要請であれば、話はまた別であるということを前々から申し上げているつもりでございますので、その点をつけ加えさせていただきます。

横山利秋日本社会党

○横山委員 最後です。そうでも言わなければいかぬとは思いますが、私が先ほど申しましたように、何となく説得力のあるこの新聞並びにテレビの報道でありまして、私もいろいろ法律論をきょうここでやる前にいろいろ検討したわけでありますが、そのアメリカ法並びに国内法、条約あるいは法律を調べてみましても、この四つの問題、私が述べましたことは、まずまず正しい一つの見解ではないかと私は思います。あなたのここで決まっとりゃせぬとおっしゃる気持ちはわからぬではないですけれども、これは国民的なコンセンサスをほぼ得られつつある問題であるということを十分御認識を願っておきたいと思います。  以上で質問を終わります。

羽田野忠文自由民主党

○羽田野委員長 稲葉誠一君。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 私は、IBMというふうな問題を離れて、きわめて一般的な、そしてまたきわめて初歩的なことについて質問をいたしたいと思いますので、答弁はわかりやすくお願いをしたいというふうに思います。決してむずかしい質問をするわけではありません。答えにくい質問などはできるだけ避けたいというふうに思っております。そこへ行ってしまえばまた話は別かもわかりませんが、そういうふうに考えます。  そこで、アメリカの実体法の中で、さっきも問題にもなっておりますところなんですが、このアメリカの連邦犯罪のタイトル十八の三百七十一条の問題ですね。これは読んでみますといろいろあるわけですが、この三百七十一条というので二千三百十四条との関連ですが、これはこういうふうに理解してよろしいのでしょうか。これは三百七十一条に「合衆国法令違反の罪を犯し、」というところがありますね。その合衆国法令の一つの対応として、括弧して二千三百十四というものがここで書かれておるというふうに理解してよろしいですか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 おっしゃいますとおり、合衆国法令違反の罪という中に二千三百十四条が当然含まれるというか今回の場合は当たる、こういう理解だと思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 本件の場合といったって、何をあなたが言っているのか、別に僕はIBMのことを聞いていると言ってない、断っているんだから。あなた、本件の場合なんて何も聞いてないですよ。しかし、話はそこへいくのでしょうね。  そこで、二千三百十四条の場合によりますと、贓品であることがまず条件ですね。これはあたりまえの話。それから贓品たるの情を知っている、日本で言えば知情という言葉を使いますね、これが条件になっておりますね。これは当然のことです。そうすると、三百七十一条の場合には贓品であるということとか贓品であることの情、これは全く関係がない、そういうふうに理解をしてよろしいのですか。そこはどうでしょうか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 どのように御説明をしたらいいか、ちょっとむずかしい問題だと思うのですけれども、先ほど横山委員にも申し上げましたように、三百七十一条は謀議段階で成立する、謀議段階だけではございませんでプラスがありますけれども、基本的には謀議罪ということでございます。したがいまして、将来こういうことをする、つまり合衆国法令違反の罪を犯そうとすることの謀議ということでございますから、その将来犯そうとする行為の内容としては、たとえば二千三百十四条について言えば賦物の国外移送ということでございますから、当然、賦物であり、その情を知って国外に送るということをしようという認識は必要になろうと思います。しかし、そういうことをやろうという認識でございますから、その結果といいますか、具体的にどういうことが行われるかということは、そういう意味では関係がない、こういうふうになるんじゃないかというふうに思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 ちょっとわかりにくいのですがね。私の聞いているのは、だから、たとえば得られたというふうな物件が何だか知りませんけれども、それが臓物であるということがこの三百七十一条の場合必要かどうか、そういうことが第一ですね。それから、その知情というふうなことが三百七十一条の場合には必要であるのかないのか、こういうことを聞いているのですね。両方とも必要でないということではないのですか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 同じようなことになると思いますが、謀議の段階でございますから、今後の問題としてそういうことを認識しておるということでございますので、過去の事実として認識しているということではございませんから、そういう意味では関係がないという言い方が当たるかと思いますが、そういう賦物を国外に送ろうということを考えるという意味での認識ということは必要なんでございましょうということを申したわけでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 そうすると、自分のやっている行為が合衆国の法令に違反をしておるということの認識は、犯意としては必要なんですか、必要でないのですか。日本の場合には、普通そういうあれは必要ないですね。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 違反することをやろうという認識といいますか犯意といいますか、そういうことであろうと思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 違反することをやろうということの認識となると、それでは合衆国の法令ということで、どういう法令に違反しているかとか、あるいはどういう法令ということは別として、ある法令に自分のやっている行為が違反しているかしていないかということの認識が必要なんですか。そういう理解の仕方ですか。それは日本の場合はどうです。日本の場合は、それは全然必要ないんじゃないですか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 違法性の認識とか、そういう意味で言ったつもりはございませんで、違反する行為をする認識という意味で申したつもりでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 そうすると、私の言っているのは、違法性の認識の問題を言っているわけですね。違法性の認識はもちろん必要ない、これはあたりまえの話ですね。それで、いまあなたのおっしゃっているところは、恐らく非常に微妙に気を使いながら言っておられることは私にもわかります。その点が将来のいろいろな大きな争いになってくる可能性があるということを含めて、あなたとしては非常に慎重な言い回しをされておるのだというふうに私は理解をしておるのですが、そういう理解でよろしいでしょうか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 それほど深い意味で申したつもりもございませんけれども、やや技術的にと申しますか、そういう意味で、将来のことでございますから、その事実の認識として、そういう違反する行為をしようという犯意というか意識といいますか、そういうものを必要とし、かつそれで足りる、こういうことであるということを申したつもりでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 ちょっとよくわからないのですね。なかなかむずかしくてわかりませんが、じゃ、話をちょっと別のことにします。  一体、こういう三百七十一条のように、日本の法令と比較して非常に広い範囲のコンスピラシーというか、そういうふうなものを決めたのは、実行行為に着手していない段階ですから予備という言葉が当たるのかどうかちょっとわかりませんけれども、日本の場合は、たとえば殺人、放火、強盗、内乱の予備はなくなったのかな、いま言ったように、大体大きく分けて三つぐらいが、まだほかにあるかもわかりませんが、重罪の場合の予備ですね。ということは、アメリカの場合を見ると、あらゆる法令違反の、予備という言葉が当たるかどうかは別として、非常に広い範囲のものであって、あらゆる場合がこの三百七十一条にひっかかっちゃう。ひっかかると言うと言葉が悪いですが、そういうふうに理解してよろしいですか、日本と非常に違う法令のたてまえであると。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 その当否を含めて言うと適当でないと思いますけれども、形式的に申せば、非常に広い範囲に適用があり得るということだと思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 そうすると、結局三百七十一条というものは、俗に言うところの予備罪というか、何かそれを一般的な形で独立犯として取り扱っている立法の形式だ。当否は別ですよ。これはその国情によって違うのですから、そんなことを言ったって始まらない話で、予備罪を独立罪として取り扱っておるきわめてまれな、非常に広範囲なものを含む立法だ、こういうことが言えるわけですか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 御指摘のとおり、その実行行為を要件としない、予備的なといいますか、この規定で申せば謀議行為そのものを独立罪として処罰するという趣旨の規定であるというふうに理解されます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 少しく問題を変えていきたい、こう思うのです。  それは、私がいろいろ聞いた中でまずこういうことからお聞きしていった方がいいと思うのですが、FBIというものがありますね。FBIというのは一体何なのか、そこら辺からひとつ御説明を願いたい、こう思うのです。一体どういう役所で何をやっているのか、どういう人がいるのか、これをひとつ御説明願いたいと思います。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 私も詳細は存じておりませんけれども、性格的には司法省に属する連邦犯罪に対する捜査機関であるというふうに考えております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 そんなことはだれだって知っていることですよ。私の聞いているのは、一体FBIというのは、何人ぐらいいてどういう人がいて、そして何をやっているのがFBIですか、こう聞いているわけですよ。約一万人いるわけでしょう。一万人いて、公認会計士もいるし、ローヤーもいるし、とにかくいろいろな経歴の人があって、ホワイトカラー犯罪を中心として捜査に従事するためにできているものだ、こういうことは常識じゃないですか。そこまであなたの方で答えないのはちょっと変なふうに思うのだけれども、いま私が言ったことはどうですか、違っていますか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 別に何か隠すとかかばうとかいうようなことを全く考えているわけではございませんで、具体的な活動内容については詳細には知らないということを申したわけでございまして、相当な職員がおり、しかもいろいろな専門家がおって、特に、いまおっしゃいましたようにホワイトカラー犯罪といいますか、知能犯罪といいますか、そういうものを主として捜査をするという相当強力な捜査機関であると理解しております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 その司法省との関係ですね。いまあなたは直属というような意味のことを言われましたけれども、そこはどうなっているのですか。ワシントンへ行きますと、司法省があって、司法省の前にたしかFBIがあったと思うのです。FBIの方が建物が大きいですね。りっぱな建物があるわけですが、そうすると、その司法省との関係は、形の上では従属ではあるけれども、実際は必ずしもそうではなかった過去の経験というものもあったのではないんですか。  そこで、FBIの場合に何か審査委員会というのがありますね。これはどんなものなのですか、そしてどういう働きをしているのですか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 先ほど申しましたように詳細は必ずしも把握しておりませんけれども、御案内のとおりアメリカでは、日本と違いまして、司法省と最高検察庁とが一緒になっているというような面もあるわけでございます。そういうことから、日本の司法省といいますか、法務省ということを頭に置いて、そこに何かそういう直属の強力な捜査機関があるというふうに考えますと、若干奇異な感じがするかもしれませんけれども、アメリカでは基本がそういうことでございますから、そういう点ではやはり制度が違うといいますか、そういう意味で、日本の目から見た場合と違っても特におかしい点はないというような受けとめ方ができるのではないかと思います。  それから、審査委員会ということがございましたが、具体的にどういうことを指してのお尋ねかと思いますが、いろいろな捜査方法について行き過ぎがあってはならないということで、一種の準則的なものを決めるというふうな委員会があると承知しております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 これはしかし、アメリカの場合は法務省からいつもアタッシェが行っているわけですし、いろいろ研究しているわけですから、もっと詳しいことを知っているはずですよ。  それはいいですが、これは主として麻薬や連邦犯罪、組織暴力、銀行関係、そういうふうなものをやるので、約一万人ぐらいおりますね。いまのFBIの長官はウェブスターですか、司法省の長官はスミスですか、そういう中で、ここ二、三年急にこのFBIが仕事を始めてきたということは、もうあなたの方としても当然つかんでおるのではないですか。  大体私どもの聞いた範囲では、ここのところで二千名近くいろいろな逮捕があって——アメリカの場合、日本と違いますから無罪が非常に多いわけですね。日本の場合、無罪になると大変ですが、アメリカの場合、その点は余り気にしないところです、ドイツもそうですけれども。そういう関係で急にここ二年間ぐらいのところ、二年間ということにこだわるとまたあなたの方でいろいろな答えをしますから、近ごろ非常にこれがふえてきておる、こういうふうなことは事実としてあるのではありませんか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 以前と比べて具体的にどういう差があるかということになりますと、定かではございませんけれども、最近相当数の検挙者があるという話は承知しております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 そこで、これまたわからないのは、そうすると、FBIは一万人ぐらいいるということは認めるのですか、認めないのですか、はっきり答えないけれども。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 別に正確な数を把握していて特にお答えしないという意味ではなくて、相当数がいるという認識を持っておりますけれども、五千人であるのか一万人であるのかというような具体的な数字までは、実は承知していなかったわけでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 そこで、またわからないのは、こういうのがよくわからないですね。アメリカでUSアトーニーというのがありますね。これは一体どういうものなんですか。アメリカの検事のようなんですが、わかりませんが、全国で九十人ぐらいいるようです。それで、たとえば民主党から共和党にかわるとそれが全部、全部かどうか別として入れかえになってしまうとかなんとか、いろいろありますね。このUSアトーニーというものは一体どういうものなんですか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 日本と比べて申しますとあるいは誤解のもとかもしれませんけれども、御案内のとおりアメリカは連邦制であり、また州があるということでございまして、連邦の検事といわば州の検事といいますか、二種類あるわけでございますが、いま御指摘のUSアトーニーというのはその連邦検事の方に属するものでございまして、USアトーニーといいました場合には、連邦検察のいわば検事正とでもいうようなことになるわけであろうと思います。もちろん、その下にも職員がいるわけでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 そこで私がお聞きしたいのは、FBIの捜査の中で問題となってきておりますこと、いわゆるエントラップメントというのですかね、どういう言葉で言ったらいいのですか、その言葉をどういう日本語に訳したらいいのか、わなというのか、おとりでも何でもいいですが、その捜査のやり方についていろいろ問題があって、三つの事件があったのは御案内のとおりです。一九三二年にソレルス事件、一九五八年にシャーマン事件、一九七三年にラッセル事件、こういうようなものがあったわけですけれども、それはおのおの内容が違うし、それから少数意見もあるし反対意見もあるから、いずれにしても一つ一つ聞いておっても時間がかかりますが、大筋で流れておるこの三つのものが、いまのわなというかおとりというか、エントラップメントに関係をするということは間違いありませんね。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 俗に言うわなの理論という訳で使われている問題でございますが、その問題がいま御指摘の判決の審理の中で問題にされて、いろいろな意見がその判決の中で述べられているということはそのとおりでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 いや、いろいろな意見が述べられているのじゃなくて、そのわなの理論の問題が中心になった判決だというふうに、だれが見たってそういうふうに思うのですからね。そこら辺のところはもう少しフランクにお答え願ってもいいのじゃないかと思いますが、まあそれはどうでもいいことだ。  そこで問題になったわなの抗弁という問題、これは抗弁ですから、抗弁の問題は後でお聞きいたしますが、そのわなというのが有罪となり得るもの、無罪となり得るものと、アメリカの判例の中で確立されておるのは二つに分けられますね。こういう場合には有罪となり得る、こういう場合には無罪だ、こういうふうに分けられておるわけです。有罪となるという場合には、前からやっておる、犯意があったんだ、それを濃くしたんだ、あるいは確実にしたんだ、こういうような場合には有罪だ、それから、新たにその犯意を起こさせた、こういう場合には、国がやらせておいて、そして国が裁くのはおかしいという理論だと思いますけれども、新たに犯意を起こさせたという場合には、これは無罪だという形で一つの線が大体引かれておる、こういうふうに理解してよろしいでしょうか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 ただいまの御引用の判決を通じての考え方といたしまして、大きく分けますとそういう二つの区分といいますか、というふうに申していいと思います。表現的にはその判決でいろいろな表現が使われておりますけれども、それをまあ概括的にといいますか、そういうふうに分けました場合には、そういう言い方が可能であると思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 そうすると、これは率直な話、犯罪の素地というような言葉を使っている人もあるし、それからいろいろな言葉を言っていますね。網を落とし過ぎることは刑事司法に反するというような言葉をフランクファーター判事などは使っておるとか、あるいはロバーツ判事もいろいろな別のことを言っているとか、いろいろ細かい点はありますけれども、いまおっしゃったようなところだ、こう思うのです。  で、これを見たとき一番興味深く、わかりやすく思ったのは、たとえばウォーレン長官がこのシャーマン事件に関連をして言っている言葉として伝えられておるわけですが、通俗的に二つに分けていますね。罪を行っていないうっかり者、アンワーリー・イノセントというのですか、それからうっかり者の犯罪者、アンワーリー・クリミナルという言葉を使って、これは非常にわかりやすくて非常におもしろい表現だ、こう思うのですが、いずれにしてもいま私が申したような点で二つに分けられる、これは基本的に確立しておる。だから、学者なども一概に違法とは言えないという判例の解釈などをいたしておるということになるわけですね。  そこから出てまいりますと、さっきあなたがおっしゃったいわゆるわなの抗弁ということですね、これが具体的にどういうことかということが一つ問題になってくるというふうに考えられますね。これもきわめて一般的な、きわめてプライマリーな話ですよ。これは日本の訴訟の形態とアメリカの形態とは、形の上では当事者訴訟を日本でもとっているわけですけれども、実態はちょっと違いますね。すると、アメリカの場合だとわなの抗弁というのは、まずどういう形で、いつの段階ごろに通常出てくるというふうに理解をしてよろしいのでしょうか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 通常の場合は、公判の当初の段階で被告人側の主張として、それを抗弁ということが当たるかもしれませんが、被告人側がそういういわばわなにかかったんだという主張をするということになろうかと思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 これは抗弁という言葉が正しいかどうか、僕もちょっと疑問なんですね。抗弁というのは、ある向こう側の主張の事実を認めて、そして自分の方の主張をする場合が抗弁ですからね、普通の場合。だからこれはちょっと違うので、世間ではわなの抗弁、わなの抗弁と言っておるけれども、ちょっとこれはおかしいと思うのですが、それはどうでもいいのですがね。  そうすると、それを出すというのは、いつの段階でもいいわけですが、時期がおくれなければいいわけですね。出す出し方というのは、これはさっきお話をした、犯意をそのことによって新たに生じさせられたのだということを主張するというのが、これがわなの抗弁ですね、新たにというところですね。新たにそういう犯意が出てきたのだ、国家行為によって新たにそういう犯意を生ぜしめられたということが中心になってくる、それ以外にはほとんどないと思いますが、そういうふうに理解してよろしいですか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 具体的なその言い回しをどういうふうに言うのか、私もよく存じませんけれども、趣旨としてはそういうことを述べるのが、いまのわなの抗弁というか、わなの主張というか、そういうことに当たる行為であると思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 そうすると、これもきわめて一般的、きわめて常識的なことなんですけれども、そういうわなの抗弁が出てくる。そうすると、国家行為によって新たに犯意を生ぜしめられたということならば、今度は原告側は、いや、それは違うのだ、こういうことになってきますね。違うのだということは、新たに生じたのではない、前々からあったのだ、こういうことを原告側は、再抗弁というのか、それはちょっとよくわかりません、民事と違うからわかりませんが、そういう形の立証になってくる。これは立証責任の転換かどうかは別として、そういうふうになってくる、こう理解をしてよろしいでしょうか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 そういうことであろうと思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 そうすると、わなの抗弁を出すということは、結局、場合によっては過去の、新たに生じたのではない、前からあったのだということの立証を原告側にそのチャンスを与える、また原告側はそれをしなければならぬことになると思いますが、チャンスを与えるということ、そういう危険性も場合によれば伴うこともあり得るのだ、こういうふうに理解をしてよろしいでしょうか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 いまお尋ねのように、危険というかおそれといいますか、そういう言い方がいいかどうかとは思いますけれども、必要に応じて、被告の主張というか抗弁に対して、原告側がそれなりの立証をしなければならないという事態が起こることは起こるだろうと思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 それはあなたも、率直な話、いま現実に起きていると言うと語弊がありますが、起きつつある事件というか、これから起きるかもわからぬ事件というか、そういうのを頭に置いているから、あなたの答弁というものも慎重になるわけですね。私は最初に断ったとおり、IBMとは関係ありませんよ、こう言っているのですから、きわめて一般的な、きわめて初歩的なことを聞いているにすぎません、こう言っているのですから、だから、その点はそういうことになるのですね。それはあたりまえの話ですわな。  だから、今度は問題はその犯意ですね。犯意というのは、この場合に一体具体的に犯意というものを必要とするのか、あるいは一般的、抽象的な犯意でもいいか、ここにまた問題が、一般論ですよ、一般論として出てくるんじゃないでしょうか。それは具体的に、こういうふうなものをとりたいという犯意が初めて生じせしめられたというのが必要なのか、それはもちろんその場合でもいいわけですが、そういう場合と、いや、漠然とあるものでもいいというふうに、不特定の場合であってもそのものをもらいたいというか何というか、そういうふうなものの犯意でもいいというふうなことになるのですか、そこはどういうふうに理解をしたらいいんでしょうか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 あるいはお尋ねの趣旨を十分理解していないかもしれませんけれども、全く漠然としたことでは、何といいますか、どうにもならないということであろうと思いますので、ある程度の具体性は必要であろうと思いますけれども、特定したものというまでの具体性というものは一般的には必要でないのじゃないかというふうに思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 これは恐らく、いま言った、その国家行為によって新しく犯意を生ぜしめられたということの、新しいということが一つのポイントになってくるのですね。新しいか新しくないか、前からあったかどうかが一つのポイントになってきて、それから、具体的にその犯意というのは一体何か、何の認識を犯意というのかということが問題になってくる。これはあたりまえの話ですね。IBMのことじゃないですよ、何回も念を押しているように。一般的にそういうふうになってくるというふうに私も考えるわけです。  そこで、いろいろな問題があるのですが、アメリカでは、あなたも言われたように、FBIがここのところ、私は二年間と言いましたけれども、二年間でなくても何でもいいですわ、ある程度大きな活動をするようになってきた、こういうことですね。これはあなたもお認めになる。それは一体どこにその原因があるかということ、それはどういうふうに理解をされるか。  具体的に言いますと、私の聞きたいのは、例のミランダ判決がありましたね。ミランダ判決というものがあって、これは確定をしてきた。そうすると、弁護人のいない、付き添わないところで供述した被告人の調書というものについては、これは証拠能力がないといって無罪がどんどんアメリカで出てくる。そうなってくると、現実にいま言った、わなといいますか何といいますか、そういうふうなものをやっていかないと証拠能力がなくなってくるということで、証拠保全というか証拠収集という形でそういうふうなものが近来だんだん出てきた、こういうふうに理解していいでしょうか。あるいは、ミランダ判決とは直接関係がないというのか、あるいは間接的な関係だというのか、そこはどういうように理解していいですか。  まず、ミランダ判決はどういうものかということと、それといわゆるわなというものとの関係、捜査の関係ですね、傾向として。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 いわゆるミランダ判決といいますのは、いま稲葉委員が仰せになりましたように、取り調べに際して弁護人の立ち会いがないということについての証拠能力の問題ということでございますので、直接は関係がないと言えばないんだろうと思います。  したがいまして、最近のいわゆるおとり捜査的なものとの関係をどう見るかということになりますと、これはなかなか私の判断力では判断できないわけでございますが、要するに、漠として申しますならば、いろんな意味でなかなか事件の摘発が困難になっているということ、これは別にそういう判決があったこともあるいは一つの原因であるかもしれませんが、日本でもそうかと思いますけれども、犯罪それ自体が、手段なり方法なりが非常に巧妙になってくるということ、そしてなかなか関係者の協力も得られないということ、そういうことで、いわば秘密に行われる犯罪、特にいわゆるホワイトカラー犯罪等につきましては検挙が困難になっているということは、いわばアメリカに限らずどこでもそういうことが一般的にあるんじゃないかというように思うわけでございまして、その場合に、それを放置しておくわけにいかないという声も当然出てくるわけでございますから、捜査当局としても、法律の許される範囲内でいろんな知恵をしぼって捜査をするということは、当然に出てくることではないかというように思うわけでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 ちょっと横道にそれるかもわかりませんが、私は疑問に思っておりますことは、一つは、たとえばフランスで言われております例のアジャン・プロボカツールというものがありますね。それから、ドイツで言えば警察官の犬と称するものですね。こういうふうなものがありますね。こういうふうな場合には、教唆なら教唆した方、国家機関だけが処罰されたのですか、どうなんですか。それといまのアメリカで言われておるエントラップメントとはどういうふうに違うのですか。エントラップメントの方が範囲が広がってきているというふうに理解してよろしいでしょうか。そこはどうなんでしょうか。ちょっとそこまでよくわからないというなら、わからないでもいいですが、僕もよくわからないですから。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 いまおっしゃいましたヨーロッパにおけるいろいろな問題、またアメリカにおけるわなの問題、それぞれ国情なり歴史なりがいろいろあってのことだろうと思うわけでございまして、それの相関関係ということになりますと、とてもお答えできるようなことではないと思うわけでございます。  でございますけれども、まあそれらを通じて言えますことは、先ほどもお答えいたしましたように、捜査機関としては、もちろん適法な限度内でございますけれども、いろいろな知恵をしぼって捜査をしなければならない。その場合に、若干の行き過ぎがあると弊害も起こるというようなことが、当然のこととしてといいますか、自然に発生してきている。それがいろんな形であらわれているということで、それについて行き過ぎがあれば、行き過ぎだということで判例が場合によっては無罪にするというようなことも起こる。また、捜査当局としても、そういう行き過ぎがないように、内部的に基準を設けて適正な捜査をやるというような過程をそれぞれの国において経ているのではないかというように思うわけでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 余りよけいなことといいますか、そういうところに深入りしてもいけませんので、話をもとに戻すわけですが、アメリカの場合は、いわゆるワイヤタッピングというものが相当行われているのですか。具体的にどういうふうになっているのでしょう。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 ワイヤタッピングということ自体、秘密的に行われることでございますから、その実情につきましては外からはわからない面が多々あるわけでございますが、ワイヤタッピングにつきましてもその適否がいろいろと議論をされた。最近と言っていいかどうかわかりませんけれども、そのための特別な法律といいますか、それができまして、一定の条件のもとにこれを認めるというふうに、むしろいわば制度的に明らかにしたというような動きがあるように承知しておるわけでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 だから、アメリカの捜査のやり方というのは、日本人の物の考え方ではちょっと理解できないわけですね。日本人は、どうしても情緒的に物を考えますからね。だけれども、日本の刑事訴訟法ができたときに黙秘権を認めたわけですからね。黙秘権を認めれば、当然黙秘権を被疑者なり被告人が使うという前提でこれを認めたと思うのですけれども、実際にはそれを使っていませんからね。だから、日本の場合とアメリカなんかの場合とで、そこに非常に違いが出てくるというふうに思うわけですが、これはまた別の機会になると思います。  そこで、また別の話というか、たとえば日本国とアメリカ合衆国との間の犯罪人引渡しに関する条約というのがありますね。これはもちろんあるわけですが、それを見ますと、これは昭和五十五年三月五日号外条約第三号ですが、第二条を見ると、「引渡しは、この条約の規定に従い、この条約の不可分の一部をなす付表に掲げる犯罪」というふうになっておって、それから三条は「被請求国の法令上引渡しの請求に係る犯罪を行ったと疑うに足りる」、こうなっておるわけです。そこでこの表をずっと見てまいりますと、一番最後は付表の47ですね。「前記の各罪の未遂、共謀、ほう助、教唆又は予備」、こういうのがここにあって、それから18では「ぞう物に関する罪」というのがあるわけですね。  この47というのはどういう意味なのかということが一つと、アメリカの連邦犯罪のタイトル十八の三百七十一条との関係でそれがどういうふうになっているんですか。そこら辺のところをひとつ説明を願いたい、こういうふうに思うわけです。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 日米のいわゆる犯罪人引渡し条約でございますが、いま御指摘のように、二条で引き渡しの対象となる犯罪といいますか、それについて定めておりまして、ただその場合もその付表だけではなくて、「付表に掲げる犯罪以外の犯罪」というものも書いておりますから、そういう意味では、私どもが考えているような厳格な、法律解釈からいいますと、何で二重にそういうことを書くのかなという疑問も起こる面がございますが、これはやはり日米間の条約ということで、両方のわかりやすい表現ということからこのようになったものと理解されるわけでございますが、そういうことでこの付表は1から47まで掲げております。  これはいま申しましたように、これだけに限るかといいますと、後段の方で、「並びに付表に掲げる犯罪以外の犯罪であって日本国の法令及び合衆国の連邦法令により死刑又は無期若しくは長期一年を超える拘禁刑に処することとされているもの」というものについても行われることになっておりますから、全体を通じて言えば、いわば例示的なものというようなことに理解されると思います。  それはそれといたしまして、最後の47は「未遂、共謀、ほう助、教唆又は予備」ということで、いわゆる正犯に至らないものを包括的に例示しておるということでございますから、この面からいきますと、いま問題になっておりますような、御指摘になっておりますような連邦犯罪の共謀罪の規定もこの付表の上では当たるわけでございます。しかし、これはもう申し上げるまでもないと思いますけれども、日本国の法令によっても処罰される行為でなければ現実には対象にならないということでございますから、そういう意味で、この共謀罪が全部引き渡し犯罪になるということではない、それはいわば明らかであろうというふうに思うわけでございます。また、賦物に関する罪は賦物に関する罪ということでございますから、それも一応引き渡し犯罪の中に含まれるということを明示しておるということでございまして、その程度の意味というとおかしな言い方かもしれませんけれども、その程度の意味しか持たないと思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 ここで共謀という言葉が使ってあるわけですね。これはよくわからないのですよ。日本の場合は共謀というと、もうすでに共同正犯が成立してしまうわけです、普通の場合。俗に言う共謀による共同正犯という言葉を使うわけでしょう、普通は。おわかりのとおりですね。そういうような運用がいいかどうかは別ですよ。非常に広く解釈していますね。ここで言う、アメリカで言う共謀、コンスピラシーというものと日本で言う共謀というものとは——前に戻って恐縮ですけれども、一番大事なのはやはり三百七十一条の問題ですからね。これはどういうふうに違うのですか、ひとつわかりやすく説明していただきたい。アメリカの言うコンスピラシーというものと日本の言う共謀というものとは違うのか違わないのか、どうなのか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 これもどういうふうに御説明したらいいかなと思いますが、同じ共謀でございましても、たとえば連邦の三百七十一条というのは、先ほど来お話もございましたし、御説明もしましたように、共謀行為そのものをいわば独立犯としてとらえているということでございます。そういうものに類するものは、日本ではほとんどございませんわけで、一つの例として強いて申しますと、爆発物取締罰則の四条が例外的な共謀罪と言えるかと思いますが、そういうことがございます。そういう意味においては共通の概念かと思いますが、いわゆる日本の共謀共同正犯は、これは御案内のとおり実行行為があった場合のことでございまして、その場合に共同正犯として、どこまでのものが正犯として、共犯として処罰し得るかという観点からの共謀概念ということになるわけでございますから、実質的にまあそう差がないかと思いますけれども、面が違うといいますか、そういう点があるということは申し上げておきたいわけでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 また、こういう意見があるのですよ。その46のところで、「輸出入又は資金の国際移動の規制に関する法令に違反する罪」というのがありますね。これは一体どういうふうなことを言うのですか。ということは、これがアメリカの輸出行政法五十条との関係だというふうに言う人もいるのですね。そこでお聞きをするわけなんですが、これは外務省かな、法務省か、わかっておる範囲でお答え願いたいと思います。いますぐというわけでなければ、また後でもいいと思うのですが。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 先ほども申しましたように、この条約をつくるにつきましては、日本とアメリカとがいろいろと実体法的にもとらえ方が違うわけでございますので、この表の罪名の表示というものも技術的にむずかしい点があっただろうと思います。そこで先ほどのような、いわば包括的な表現ということも出てくるわけでございます。  日本で考えます場合には、この46は、いわゆる外為法違反とかあるいは輸出入取引法違反とか関税法違反とか、そういうものが当たるわけでございますし、アメリカでは、先ほどおっしゃいましたような法律がこの号に当たるというふうに、それぞれ抽象的な表現の当てはめの問題としては出てくるだろうと思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 余りそっちの話、日本に不利益と言うと語弊がありますけれども、そういうふうなことをここで聞くのもいかがかと思うので、その点は余り聞かないわけですが、そこで前の、一番重要なのはやはりわなの論理、おとりの問題にまたちょっと返っていきたい、こう思うのです。  もうさっきお話がありましたように、麻薬取締法の問題はありますが、それはそれとして、その後も昭和五十年に何かこういう判例があるわけです。五月に東京高裁が、銃砲店主が警察官に頼まれて、実弾を持ってくるようブローカーに依頼して、店に来たところを逮捕した事件で、おとり捜査であると認めながらも、違法という訴えには耳をかさなかった、こういうふうなことを言う人もいるわけですね。そうなってくると、さっき刑事局長も言われましたように、法律のたてまえの上では、これはちょっとしゃべりにくいことかもしれませんけれども、いわゆるおとり捜査ということは、たてまえの上では日本もアメリカもむしろ違わない、しかし実際の運用というものが非常に違うんだというふうに理解をしてよろしいんでしょうか。そこはどうですか、理解の仕方としては。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 私が申し上げたことをどういうふうに御理解いただいたかという心配もちょっとあるわけでございますが、私が申しましたのは、おとり捜査が何かアメリカでは非常に広く行われている、日本では麻薬取締法だけだというような理解も一面あるように思いますけれども、アメリカの場合でもいろいろな判例等もあって、そう無制限に自由にできるというわけではないということをもう一つ申したつもりでございますし、日本の場合も、麻薬取締法自体がおとり捜査の根拠というわけではないので、おとり捜査と言われるような捜査方法が適法かどうかということは、麻薬事犯に限らず、覚せい剤の違反であるとかあるいはいま御指摘の銃砲あるいは火薬類の取引であるとかいう場合にも、時として行われることはないわけではないということで申したつもりでございます。そういう意味で、運用が違うということではないかというお尋ねでございますが、ちょっとその意味が理解しがたいわけでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 いや、私の言っているのは、いわゆるおとり捜査というもの、わなの論理というふうなものが、アメリカでは相当広く現実にFBIを中心として行われておるのではないか、こういうことを言っているわけですね。ここ二年間ぐらいに、二千件以上FBIによって摘発されたものがある。それが全部わなだどうだということを言っているわけではありませんけれども、しかし、それはそういう面が、いわゆる凶悪犯罪というか、そういうようなものを中心として非常に広まって、日本よりは広く利用されておるのではないか、こういうことを私は言っているわけなんですね。そのことは、事実は事実としてお認めになった方がいいんじゃないですか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 そのことを否定する気持ちはございません。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 あなたの話を聞いていると、アメリカではそういう捜査がまるで——まるでと言わぬ、行われてはいるけれども、それがきわめてよくわからぬ。少ないような話をされるから、それはそれとして事実は事実なんだから。  ただ、いま言ったように、私は前からお話ししているように、アメリカの場合でもいろいろな判例や何かがあって、そこで新たに犯意を生じたかどうかという点が中心となっておるんだ、だから今後のいろんな問題、本件の問題ではなくて、いろいろな争いの中で新たに犯意を生じたか生じないかということの問題がそこに出てくるんだ、こういうふうに私は言っているわけです。これはあたりまえの話。通常の場合でもそうだし、わなの抗弁を出す以上はそこになってくるということを申し上げているので、これはあたりまえの話、こういうふうに思うのです。  そこで、アメリカの具体的な裁判の制度というものが、私どもには率直に言ってよくわからぬわけですね。さっきちょっと話が出ましたけれども、たとえばあなた方の方でグランドジュリーがどうとかかんとか言ったって、こっちはわけがわからぬ。ですから、グランドジュリーならグランドジュリーというものの前の段階で一体どうなるか。たとえば逮捕の場合に一体だれが逮捕状を請求して、どこで逮捕状を出すのか、そのとき疎明資料として一体何をつけて出すのか、こういうところから始めてもらわないとわからぬわけですね。そこはどういうふうですか、説明をしてくれませんか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 制度は違いますけれども、そう基本的に日本と違うわけでもないように思うわけでございまして、捜査官、これは一般の場合は警察であろうと思いますが、警察がいろいろな内偵等をしました資料、またその取りまとめた捜査報告書あるいは関係者の供述書というようなものを資料といたしまして、いわゆる治安判事と申しますか裁判官に逮捕状を請求して、その逮捕状の発付を受けて執行するということであると理解しております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 だから、その治安判事というのはいわゆるマジストレートというのですか、どういうのですか。そこで私がお聞きいたしたいのは、逮捕状を請求するときに疎明書類をつけるわけでしょう。疎明書類の中で、日本でよく言われているのは、宣誓供述書というふうなものがついていると言われているわけですね。いわゆるアフィダビットというのですか。ところが、私がわからないのは、宣誓といったって法廷で宣誓するなら宣誓かもわからぬけれども、警察の段階で宣誓供述書というふうなものがつくられて、逮捕の疎明資料になっているとかということが言われておるわけですね。これが率直な話、よくわからぬわけですよ。それは、FBIならFBIの場合の捜査報告書というものと違うのですか違わないのですか、どうなのですか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 先ほど申しましたように、捜査官の捜査報告書ももちろん疎明資料になると思いますが、そのほかにいま御指摘の宣誓供述書というものが、疎明資料の一つとして使われると聞いておるわけでございます。これは、日本の場合と同じように考えるとまた違いが起こってくるかもしれませんが、日本で言えば、強いて言えば公証人のような人のところで宣誓の上でつくられた供述書というものは、それなりに高く評価されるという制度があるようでございまして、そういう手続を経てつくられたものを指していると理解しております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 よくわからぬのですが、公証人ですか、保証人ですか、ちょっとはっきりしなかったのですが。宣誓という意味が、どういう意味なのですかというのです。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 ですから、日本の公証人と同じかというと、必ずしも同じではないかもしれませんけれども、似たような公証人という制度があってその前で、アメリカのことでございますから神に誓うというのでございましょうか、そういう宣誓の手続を経てつくられた供述書、こういうふうに理解していると申したわけでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 それは、逮捕状請求のときの疎明資料として使うわけですね。そうすると、恐らく治安判事が持っているのだと思うのですが、いい悪いは別として、日本の場合はその疎明資料が外部に出るということはあり得ないわけですね。アメリカの場合には全部、その報告書と一緒に宣誓供述書も出ているようですが、それは一体どういうわけで外部に出るのですか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 その辺の根拠になりますと定かでないわけでございますが、一般的に記録の公開とかそういうものに関しましては、法令の規定ももちろんございますけれども、アメリカの場合には当該裁判所の許可ということがよく言われるようでございますので、この場合もその一例ではなかろうかと理解されるわけでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 しかし、まだ逮捕の段階で、それで逮捕されてすぐ保釈になるのも、日本と違いますからよくわかりませんけれども、逮捕の段階で疎明資料が全部公開されるということが一般的に行われているのですか。あるいはこの事件について、事件と言うと語弊があるかもわからぬけれども、特例みたいな形で行われたのでしょうか。私、そこがよく理解できないのですよ。仮にそういうことで行われたとすれば、何らかの意図を持って行われたというふうにも考えられるので、そこは一体どういうふうに理解したらいいのですか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 その点は、率直に申しまして、どういう経過であるかということは承知しておりません。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 私の聞いているのは、どういう経過であるかあなた方が承知しないのは、それはあなた方としてはわからぬかもしらぬけれども、こういうことはアメリカとしては普通あり得るのですか、どうなのですか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 具体的な例として、本件と言うとまたどうかと思いますが、似たような例があったかといいますと、現在手持ちの資料でそういう具体的な例を持ち合わせているわけではございませんが、アメリカでは、世間の注目を引くといいますか、そういう事件の場合に、その内容をわりにオープンにするというような空気はあるように聞いております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 それは、アメリカの場合は日本の場合と情報公開制度が違いますから。しかし、アメリカの情報公開法でも例外があるわけです。ことに、こういうふうな書類を明らかにするというのは私には理解できないので、ある一定の意図を持ってやったのではなかろうかというような疑いすら生ずるのです。しかし、これはあなた方に聞いても意味がないというかあれなのですが、どうもああいうものを発表されるということについてはよく理解できないな、日本では考えられないことですからね。  そこで、またお聞きしたいのは、さっきも言った話なのですが、よくわからないのは、大陪審、グランドジュリーによる起訴、それから検察官による起訴と二つあるわけですね。ここら辺のところ。たとえば、検察官による起訴というのはインフォメーションでしょう。普通の場合、一年以下の懲役の場合ですけれども、本件の場合は——本件と言うと語弊があるな、本件のことを聞いていないのだから。調子が悪いな。何でもいいや、それは。  まず、大陪審というものの起訴ですね。起訴は、これはどういうふうな形にして行われるわけですか。陪審員は、普通定員が二十三名ですね。定足数十六ですね。これは、本人たちに選択権があるわけですか、どうも選択権はあるらしいけれども。どっちでもいいのですよ、本人が選べば選べるのだね。この大陪審というふうなものでやられる場合に、普通は一体何を決めるのですか。大陪審というのは、正式に言うとグランドジュリーという呼び方でいいわけですか、それから大陪審による起訴のことをインダイトメントと言うのですか。そこら辺はどういう仕組みになっているのですか、アメリカの場合には。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 いまお尋ねの中で、選択権というのは当事者の選択権、被疑者といいますか被告人といいますかそういう意味であるとすれば、大陪審についてはどうもないようでございまして、いわゆる小陪審といいますか、有罪、無罪を決める方の陪審についてはあるという、そこの差があるというふうに理解しているわけでございます。  それから、大陪審ではどういうことをするかといいますと、検察官から提出された起訴状、つまりインダイトメントの案を審査して、そして起訴相当ということになれば大陪審の決定として起訴するという決定をする、こういうことだと承知しております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 そこで、大陪審が起訴を決定するということになって、審理の場合にどういう審理の仕方をするわけですか。日本の場合と違って、審理の場合に「ギルティー オア ナット ギルティー」ということを最初に、起訴状を読み上げたり何か聞くわけでしょう。それに対して、「ナットギルティー」と言えばどういうふうになるのですか、また「ギルティー」と言えば通常の場合どうなっていくのですか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 いまおっしゃいましたギルティーとかノットギルティーとかいうことは、裁判段階になっての冒頭手続であろうと思います。いまもし大陪審のことでございましたら、大陪審はむしろ起訴する前の手続でございますから、そういう有罪、無罪の答弁ということは大陪審ではないことになるというふうに思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 よく私もわからないのですが、大陪審の場合には、起訴するかしないか本人たちの意見を聞くわけでしょう。本人の意見を聞いたときに、普通の場合は本人はそこでどういう意見を述べるわけですか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 先ほど申しましたように、いわゆる大陪審は起訴、不起訴を決定する前の段階でございますから、その起訴、不起訴を決定するための手続として証拠調べをする、場合によっては証人を喚問するというようなことがございますが、日本に当てはめてみますと、形は違いますけれどもやはり捜査手続のようなことであるわけでありますので、公判段階における被告人というような立場にはならないということではなかろうかと思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 そこで、無罪を主張したというふうによく出ているわけですけれども、それはどういう段階で無罪を主張ということになるわけですか。もちろん起訴になってからですね。そうすると、大陪審の場合は密行主義のように聞いているんですが、密行主義の場合、起訴事実についての認否というようなものは行われるわけですか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 先ほど申しましたように、大陪審は捜査手続でございまして、いわゆる認否というのは公判手続の陪審であるというふうに理解しておりますから、どうもそこは違うのじゃないかというふうに思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 そこで、結局問題は公判手続になるということになれば、「ギルティー オア ナット ギルティー」になるわけですね。「ギルティー」と言えば、あとはもう全部証拠省略して量刑問題だけ、「ナットギルティー」になって初めて証拠の問題が起きてくる、こういうことになる。これはあたりまえの話ですね、英米法で。  そこで、結局前に出てまいりましたいわゆるわなの論理というふうなものがそこに登場してくる可能性がある、こういうふうなことになるわけですね。そうすると、検察官側としては、立証の段階でこの三百七十一条の場合には何を立証しなければいけないわけですか。わなの論理というか、それはわなにがかったのだということを被告人側が言ってから、初めてその問題についてやればいいのですか。三百七十一条関係では、一体何と何を立証する必要があるのですか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 三百七十一条自体は、日本の罰則としては余り例のないような罰則でございますが、それはそれといたしまして、その罰則の要件をそれぞれ立証しなければいかぬということにおきましては日本の刑事裁判でも同様であるわけでございまして、したがいまして、この三百七十一条で規定されている要件、つまり先ほど来申しておりますように、二名またはそれ以上の者が、合衆国法令違反の罪を犯すことを謀議した、犯そうという謀議をした、あるいは合衆国もしくはその機関を欺罔しようとすることを謀議したということと、さらに一人または三人以上の者が、その謀議の目的を遂げるため何らかの行為をしたということが要件でございますから、その謀議をしたということ、それから何らかの行為をしたということ、大きく分ければその二つを立証するということは当然であろうと思います。  それから、いわゆるわなの抗弁といいますか、そういう問題につきましては、被告人の方からそういう抗弁というか主張が出た場合に、それを打ち消す立証をその段階でするということになるだろうというふうに思うわけでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 大体、この問題の法律的な点についてはどういう点が争点——この問題と言えば語弊があるかもしれぬが、一般的に三百七十一条を中心とした問題、それからわなの論理、こういうふうな問題についてはどこが法律的な問題点であるかということについては、私も大体がわかったわけです。  そこで、また一つの例になるのですが、アメリカで有名なアブスキャム事件というのがありましたね。これは下院が六名、上院が一名ですか、この議員が起訴されて有罪判決を受けたというようなことが言われています。このときには、一体どういうようなわなの論理が現実に捜査の段階なり何なりで適用されてきたのですか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 御指摘の事件につきましては、一部無罪になった者もあるようでございますが、大半の関係者が有罪になっているというふうに聞いております。その場合にも、わなの抗弁ということが正確に主張されたかどうか、詳しくは存じませんけれども、そういう点が問題になっていたということは聞いておるわけでございますし、有罪になった者につきましては、先ほどの御引用の判例等の考え方もあって、初めてというか新たにといいますか、そういう形で犯意を生じたものではないというふうな理解で有罪になったというふうに聞いているわけでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 聞くところによると、FBIか何かがアラビア人に扮して、何回も何回も金を渡そうとしたというわけでしょう。相手は要らないと断わったのだけれども、ついにもらってしまった。事実関係はそういうことのようですね。そういう場合でも、結局新たに犯意を生じたというものではない、前々からもらう意思があったというような認定をされて有罪になったのだということになるわけですか。そうすると、相当広くわなの論理というものが——新しく犯意を生じたというのじゃなくて、逆に前々からあったという方に力点を置いた審理というか判決というか、そういうものが現実には起きておるわけですか。そこはどうなっているのですか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 御指摘の事件につきましては先ほど申し上げた程度のことでございまして、具体的にそういう問題が争点になったというのは、全被告人についてではなくて一部の被告人についてであると理解しておりますが、その被告人に対する関係でその問題が判決の中でどのように判断されているかということまでは、実は詳しく承知していないわけでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 余り同じようなことを聞いていてもいたし方がありませんから、今度は一般でなくてこの事件に関連をして、法務省当局としては、ことに刑事局としては、どういう点に関心——法律的な関心あるいはその他の関心もあると思いますが、それを持っているというふうにお聞きしたらいいのでしょうかね。そこはどういうふうになっていますか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 先ほど来申しておりますように、この件につきましては、アメリカの方から犯罪人の引き渡しという形での請求もございませんし、捜査共助という形での要請も現に受けていないわけでございます。したがいまして、いろいろなことを頭に置きながら、及ばずながら勉強はいたしておりますけれども、その問題点というのは、まさしく本日いろいろと御議論になったような問題でございまして、それ以上特に法務省がどこに関心を持っているかということになりますと、そういう請求もない段階で、また、それが今後どうなるかよくわからないという微妙な段階でございますから、そういう点についてこの点が問題と思っていると申し上げることは、現段階においてはいろいろな意味で適当ではないのじゃないかというふうに考えるわけでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 いろいろな意味であなたの方で、大臣も仮に言ったとしても、具体的なことに関連するどういう点に関心を持っているかということでは、いま私が質問したような点について関心を持っている。そのことはそのとおりでしょう。それがまず第一点。しかし、それ以上のことは現段階においては言えない、こういうようなことだと理解してよろしいですか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 ただいまそのように申し上げたつもりでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 もう一つ、一般的によくわからないのは、こういう疑問があるわけです。たとえば日本人が日本にいる。そしてアメリカならアメリカ、その他の国で、その日本人を起訴することは、一体、証拠があればそのままの状態で、日本にいるのに起訴することはできるのですか。どうなっているのですか、外国にいるのに対して。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 きわめて抽象的な理論として言えば、不可能ではないということになると思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 不可能ではないですね。逆の場合も、もちろん不可能ではないわけだ。ただ、それはあとは証拠の問題だ、こういうふうになってくるわけですね。  いまさっき質問がありましたように、日本にいる日本人が、仮に外国人の中で起訴されて出頭を求められる。そうしたときに、それに応じない応じるの問題は、今後の問題として起きてくる可能性はもちろんありますね、これは。その場合に、日本はどういう態度をとるかというと、これはまた後の問題なんですけれども、アメリカのいわゆる陪審制度が、よく言われるように法律専門家の集まりではない、きわめて素人の集まりなので、エモーショナルに判断をするということも考えられるではないか。こうなってくると、そのことが一体陪審にどういう具体的な影響を及ぼすか、こういうことがいろいろと言われているわけですね。  その点については、まず第一にアメリカの陪審制度というのがどうもよくわからないのですね。どうやって選んで——抽せんで選ぶのですか、これはよくわかりません。日本の場合の陪審制度というのは、戦前のものはそれに拘束されなかった。アメリカの場合は拘束をされるということになるようですが、そこら辺は具体的にどういうふうになっておって、仮に出頭なり何なりということが来たときに、あるいは出頭を求められた者が向こうに行かないとかなんとかということになってきたときに、それがアメリカの陪審員に与える影響というふうなことはあり得るのですか、あり得ないということなのでしょうか。ここはどうなのですか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 最近の新聞報道等にも、いま稲葉委員が仰せのようなことを懸念するといいますか、そういう記事があったような記憶がございますが、陪審員がどういう判断をするかということは、日本の例に置き直しますと、裁判官、裁判所がどういう判断をするかということになるわけでございまして、そのことにつきまして法務当局というか、特に日本の法務当局において、アメリカの裁判所に当たるような陪審員の方々がどう思うかということを私から申し上げる筋ではないのではないかというふうに思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 いろいろお聞きをしてまいったわけなのですが、現実に問題となっていることですし、あなた方の方でもいろいろ微妙な問題が将来に影響するということもあるから、私も非常に聞きづらいところがあって、きわめて一般論としてお尋ねをしていったわけなんです。  そこで、大体わかってきたことは、この刑法の三百七十一条というのは、予備罪だけれども独立罪で非常に広いものである。だから、結論的に言えば、その次に、ここに条文として起訴状に何か援用してあるようですが、それは賦物罪であって、贓物であるということが前提である、あるいは知情が必要であるけれども、その三百七十一条の場合にはそれが必要がないというふうに理解していいということが第一点ですね。そこのところ、多少ニュアンスの違いがあるかもわからぬけれども、まずそういうふうに理解していいのでしょうね。それが第一点。  それから、いわゆるわなの論理というふうなものについての理解の仕方が、アメリカの判例法上大体確立しておるという中では、初めてというか新たに犯意を生じたということですね。それでいままであったものが強くなったとかなんとかということの場合には、わなの論理としてもこれは有罪になるけれども、新たに生ぜしめられたという場合には、これは問題点があって、無罪になる可能性というか、そういうものもあるのだというこですね。これはアメリカの大体の一つの流れである。三つの判例その他を通じての一つの流れであるということが第二点です。  それから第三点は、結局わなの論理というふうなものは抗弁として出てくるのだということになってくると、ある段階において出てくる。抗弁として出れば、その方では、初めてその犯意を生じたのだ、あるいは生じさせられたのだということを主張し、立証しなければいけない。それが今度は立証が転換をしてきて、逆にそうじゃないんだ、初めてではないんだ、前々からその犯意——犯意の内容はどの程度具体的なものを必要とするかについてはいろいろ議論があるし、いろいろ争いが出てくるかもわからぬけれども、初めてではなくて前々から、そういう俗に言う「犯意」でも、そういう犯意があったのだということが原告側の立証という形になってくるのだ。  こういうふうに、大きく分けて三つの点を私はまとめたつもりなんですけれども、最終的にといいますか、そういうふうな理解の仕方でよろしいでしょうか。この三百七十一条を中心とした、あるいはアメリカの刑事手続全体としての問題としてこの三つの点でまとめたのでどうですか、よろしいですか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 大体と言うと失礼かもしれませんが、おっしゃられるとおりであろうと思いますが、第一の点の贓物であるかどうかの知情といいますか、その問題については、まあ言い方の問題かもしれませんけれども、いわゆる贓物罪自体でございますと、すでに窃盗なら窃盗という行為があって、それを収受するということで、その段階でその物が贓物であるかどうかということを知っておったかどうかということになりますから、現にその物があるというわけでございますね。ところが、三百七十一条の場合は、これから盗品等の運搬をしようという意図といいますか、そういうことでございますから、将来のことについてであるので、その後、現にその謀議に基づいて入手し、国外に仮に送られたという物が客観的に贓物であるかどうかということとは直接関係がない、こういう意味においては関係がないということが言えると思いますが、知情の点というふうに言われますと、ちょっとどうかなという感じはするわけでございます。  その他の点は、ほとんどおまとめになったとおりに理解しておるところでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 いま私は、一般論として聞いたつもりですけれども、いろいろ問題があるところですから、具体的に余り細かいことを聞いて深入りし過ぎることも私としては避けなければいけない、こう思うのですが、私は、いま言った三つの点がやはり一つの問題で、特に第一の三百七十一条のいま言った点なんか、なかなかむずかしいというより、非常に微妙な問題を含んでおるというふうに理解をいたします。だから、なかなか単純に言えないのじゃないか、こういうふうに思うのですね。だから、いま言った第一の点はよくわからないですね。  たとえば、こういうことを言う人もいるわけですね。盗品移送の共謀罪について盗みの実行行為を犯していないこと、盗品としての認識はない、したがって犯意はない、こういうふうなことを言えば、そこへ重点が移ってくるのだということを主張する人もあるわけですね。そうすると、前の盗みの実行行為を犯してないとかなんとかいうことはいまおっしゃるように関係がないのじゃないか、こういうことになりますね。第二の盗品としての認識というのを、一体それをどういうふうに理解をするかというところに第一の問題はしぼられてくるのではなかろうか、こういうふうに私は考えているわけですね。  ここでいろいろ、ああだこうだ言っても始まりませんというか、余りあれですから、まだちょっと時間はありますけれども、私のいま問題としているところはそういう三つの点だということを申し上げさせていただいて、そして今後これがどういうふうに展開をしていくだろうか。これは余りしゃべると、こっちの手の内を見せるようなかっこうになって変なふうになりますから、ここら辺にしておきたいというふうに思っております。  それから、いわゆるわなの論理ということについても、これはアメリカでは相当行われておるわけで、ただわなだからけしからぬ、けしからぬと言うだけでは、なかなか通りにくい状況ではないか。国柄が違うわけですし、特に、私が申し上げたように、ミランダ判決にも関連すると思うのですが、アメリカのいわゆる重要犯罪というものがだんだん検挙しにくくなってきておるところから、FBIが非常に捜査を始めてきて、そのFBIがおとり捜査というか、わなの論理を活用してきたのがここ二、三年である。約二千人以上起訴されていますね、半分くらい無罪になっている者がありますけれども。わなだけではありませんけれども。  そういうことを考えてくると、いろいろな問題がそこに発生するわけなんで、ただ情緒的な反応だけではなくて、具体的にクールに分析をしながら対処していかなきゃいけないというふうに私自身は考えておるわけです。  きょうは法務委員会ですから、きわめて法律的、技術的なことしかお聞きをしなかったので不十分だとは思いますが、きょうの趣旨がそういう趣旨なものですから、私はほかのところはお聞きをしないで私の質問を終わらせていただきたい、こういうふうに思う次第です。

羽田野忠文自由民主党

○羽田野委員長 午後一時四十五分再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後一時一分休憩      ————◇—————     午後一時四十六分開議

羽田野忠文自由民主党

○羽田野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。沖本泰幸君。

沖本泰幸公明党・国民会議

○沖本委員 非常にむずかしい問題でございまして、日本の刑法なり刑事訴訟法というものも私たち素人にはなかなかわかりにくい問題に加えて、アメリカの制度の問題、司法上の問題がいろいろ出てきておるわけで、興味本位に見ていくという面と非常に心配な点、いろいろな点が出てくるわけでございますが、先輩の質問と重なる面も出てくるかと思いますけれども、それなりに御質問いたしますので、よろしくお願いいたします。  逮捕状と召喚状の関係はどういう関係になっているか、いずれも効力があるものかどうか。それから、召喚状の送達についてはどういうふうな方法とルートがあるのか。それから、召喚状の送達については、外国裁判所ノ嘱託ニ因ル共助法及び日米領事条約十七条によるほか、日立のアメリカの弁護人を通じ、あるいは直接郵送による等の方法が考えられますけれども、召喚がわが国の法律に照らしてみて必ずしも適当でない場合でも、これを断ることができないのだろうかどうだろうか、この点についてお答えいただきたいと思います。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 まず、いわゆる逮捕状と召喚状との関係ということでございますが、この点は新聞等でもいろいろな報道ぶりがあるわけでございまして、若干その事実関係につきまして不明確な点もあるわけでございます。  本件の場合にそうだというふうにすぐに言い切れるかどうかと思いますが、一応考えられますことは、逮捕状というのは、日本の場合でも同様でございますけれども、捜査段階で被疑者に当たる人を強制的に身柄を拘束する、こういうことでございますので、現在問題になっております事件では、すでに起訴の手続がとられているということのように承知しております。したがいまして、起訴後の段階でございますから、裁判所からの召喚状という事態にいま移っているんじゃないかというふうに見られるわけでございます。したがいまして、その効力いかんということになりますと、捜査のための逮捕状ということでございましたら、おのずからその必要がなくなっているというふうに理解されるように思います。  現在は、いま申しましたように、起訴されて裁判の手続に移ったわけでございますから、その最初の段階として裁判所から召喚状が出る、これを本人の方にどうやって送達するか、こういう手続の問題が生じておるわけでございます。  それにつきましては、ただいま沖本委員からもお話がございましたように、いろいろな方法が考えられるわけでございまして、裁判所間の共助法によります手続あるいは領事条約に基づきます領事の手続というものが法律的には考えられるわけでございます。  そのほかにも、おっしゃいましたように、関係の弁護士を通じてやる方法あるいは直接本人にやる方法ということも方法としてはあり得ないことではないと思いますが、そのいずれをとるかにつきましては、まだアメリカの裁判所の方でいずれとも決していないというふうに承知しているわけでございます。

沖本泰幸公明党・国民会議

○沖本委員 帰国中の日立の職員に対する召喚状は、強制力を有するものから強制力を有しないものに切りかえられているように思いますけれども、たとえば召喚期日に出頭しないような場合、アメリカの法律においては再び強制力を伴う召喚状に切りかえることができるのか、できないのかという点はいかがですか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 先ほどのお尋ねに対しまして若干お答えいたしましたように、当初は捜査段階でございますから、そういう意味での捜査のための身柄拘束ということで逮捕状、つまり強制力のある令状が出ておった、その後、逮捕状が実際には使われませんで、起訴の手続がすでに行われたということでございます。  そこで、先ほど申しましたように、裁判所から今度は召喚状というものが当然出ることになるわけでございますので、そういう意味で、強制力のあるものから強制力のないものに何か切りかえたとか、差しかえたとかいうような報道もあるわけでございますが、もともとそういう手続の流れによって行われることでございまして、もともと強制力のあるものを何らかの理由で強制力のないものに特に切りかえたんだというふうに理解するのはいかがかなというふうに思っているわけでございます。  それから次に、その召喚状によりまして本人が裁判所に出頭しない場合のことでございますが、その場合は、強制力を伴う召喚状という言葉がいいかどうかわかりませんが、むしろ日本の例に置き直してみますと、いわゆる勾引状というようなものがあるわけでございますが、そういうものに相当するような強制力を伴う令状というものが裁判所からは出されるという可能性といいますか、制度としてはそういうことがあり得るということでございますが、いずれにしましても今後のことでございまして、具体的にははっきりしていないわけでございます。

沖本泰幸公明党・国民会議

○沖本委員 きわめて素朴な質問になると思うのですが、これはロッキード事件のときに、いきなり起訴をしておいて、同じような逆の方法でコーチャン、クラッターを呼ぶことはできなかったのかどうか、あの辺のことを振り返りながら考えると、ずいぶんアメリカの方が強引だというふうな感じが出てくるのですけれども、この辺、私たちが理解する上についてどういう違いがあるのか、その辺を御説明いただけたらと思います。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 いまのお尋ねは、今度の場合は、本人たちを直接取り調べをしないでいきなり起訴をしたというふうに見れるわけでございますが、それと、日本で普通にやる場合には、本人も十分調べ、事情も聞き、また関係者の取り調べもした上で起訴、不起訴を決定するということで、どうも扱いが大分違うじゃないか、こういうようなお感じのお尋ねではないかと思いますが、形から見ますと、確かに違いがあることは事実だと思います。  ただ、これは一種の法制度といいますか、手続といいますか、の違いもありますし、また従来からのそれぞれの運用の仕方、その実績、あるいは慣行といいますか、そういうものがいろいろあるわけでございまして、日本の場合でも、非常に観念的には、取り調べをしないで、一応の容疑があれば起訴するということも全く不可能ではないわけでございますが、従来からそういうやり方はとられていないし、また、そういうことをすることは、必ずしも一般国民の納得しないやり方ではないかというふうに思われるわけでございます。  ただ、アメリカではむしろ、日本のような被疑者というか、そういう者の取り調べというものを必ずしも十分やらないで、関係証拠によって一応の容疑があれば、すぐに裁判所に持ち出すというやり方が多いといえば多いわけでございますので、本件に限らず、一般的な扱い方が従来から異なっているということでございますし、そのもとには、起訴というものに対する国民の評価というようなものも、国によって違うということも一つあるんじゃないかと思うわけでございます。

沖本泰幸公明党・国民会議

○沖本委員 そういう点から考えていきますと、単純な考えになりますけれども、国際的な刑事事件をアメリカで起こすより日本で起こした方が楽なような、いいような、軽いような感じを受けないとも限らないわけですけれども、そういう疑問を持つ人たちに対してどういうふうにお答えになっていただけるんでしょうか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 これはいろいろな面を持つわけでございまして、必ずしも一概に日本の方が手厚いというふうにも言えないんじゃないかと思います。と申しますのは、一面では日本の方がいろいろと証拠を十分調べまして、そして起訴するかどうかを決めるということでございますから、その点は手厚いといえば手厚いわけでございましょうが、起訴された場合のその評価というものは、逆に日本の方がはるかに重視されるというような面もあるわけでございます。  アメリカの方は逆に、先ほども稲葉委員からお話がございましたが、起訴されても無罪になる率も相当多いわけでございますし、そういうことは余り日本ほどには気にされていないというようなこともあるわけでございますので、そういうもとになる考え方といいますか、受け取り方が違うので、それを同列に置いて比較するというわけにもいかないんじゃないかというふうに思うわけでございます。

沖本泰幸公明党・国民会議

○沖本委員 もとへ戻しますが、先ほど稲葉先生もお聞きになっておられましたけれども、私も、重なるようですが、この刑法の三百七十一条の盗品運搬輸送共謀罪の構成要件と、それから法定刑はどういうふうになっているのでしょうか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 御指摘の三百七十一条でございますが、その要件は、「二名又はそれ以上の者において、方法、目的のいかんを問わず、合衆国法令違反の罪を犯し、又は合衆国若しくはその機関を欺罔することを謀議し、」つまり、合衆国法令違反の罪を犯すことを謀議し、あるいは合衆国等を欺罔することを謀議し、そして「かつ、一人又はそれ以上の者がその謀議の目的を遂げるため何らかの行為を行った」というのが要件とされているわけでございます。  したがいまして、合衆国法令違反の罪を犯そうという謀議を二名以上の者が行うということ、そしてその謀議をした者の中に含まれている者が、その謀議の目的を遂げるために何らかの具体的な行為をしたという二つのことが要件でございまして、法定刑といたしましては、一万ドル以下の罰金または五年以下の自由刑、あるいはその両方の併科、こういうふうに定められているわけでございます。

沖本泰幸公明党・国民会議

○沖本委員 召喚状が出されている帰国中の日立の職員に関して、アメリカの司法省と日本の大使館との間で、犯罪人引渡し条約、国際捜査共助法の適用について打診があったと新聞では報道されておりますけれども、どういう状況なんでしょうか。

苅田吉夫外務省北米局北米第一課長

○苅田説明員 お答えいたします。  現在までのところ、犯罪人引渡し条約あるいは捜査共助といったふうな問題についての申し入れば、一切参っておりません。

沖本泰幸公明党・国民会議

○沖本委員 犯罪人引渡し条約によりますと、自国民については引き渡しの義務はなく、引き渡すかどうかは裁量にゆだねられており、その二条は逃亡犯罪人の引き渡しについてでありますが、その条約の付表に掲げております犯罪で両国の法令により長期一年以上の拘禁刑に当たるものについて引き渡しを行うこととされておりますが、IBMのこの問題の場合は、付表のどの罪に当たるわけでしょうか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 そこが一つの問題点であるわけでございまして、現にアメリカで起訴されております事実は、先ほど申し上げましたような共同謀議という罪で起訴されているわけでございます。したがいまして、アメリカの法令によりますと、法定刑もこの要件を満たしているわけでございますが、一面、日本の法令に照らしてどうかということになりますと、いま起訴されているような形では直ちに日本の法令によって処罰されるような形になっていないということがあるわけでございます。  ただそれも、先ほど申しましたように、とらえられている形がそういう形になっているということでございまして、その事案の内容あるいはこれに関連してどういう事実があるかということになりまして、それがまたどういう罪に当たり得るかという問題はなお残っているわけでございますが、その点は少なくとも現在のところは把握されていない、こういうことでございます。

沖本泰幸公明党・国民会議

○沖本委員 五十五年に施行されました国際捜査共助法によります捜査共助につきましても、IBMの問題はわが国の法令により罪に当たるものかどうかという問題が出てくるわけでありますけれども、捜査共助対象としてどういうふうにお考えになっておるか、この点御説明ください。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 この点も犯罪人の引き渡しの場合と実質的には同様でございまして、その要請に係る犯罪行為がどういう犯罪であるかということ、それが日本の法令によって処罰し得るものであるかどうか、この場合には法定刑の限定はございませんけれども、少なくとも処罰し得るものでなければならないというふうになっているわけでございますから、そういう要件を満たすような事実があるかどうか、また、そういう事実があって、その事実について共助要請があるかどうか、こういうことが前提であるわけでございます。

沖本泰幸公明党・国民会議

○沖本委員 先ほどからずいぶん議論があるわけですが、おとり捜査につきまして横山先生もお聞きになっておられ、いろいろ質問なさったわけですが、わかりにくいのでもう少し……。  それから、最近のテレビなんかでよく隠し撮りなんかでおとり捜査の模様が具体的にのっておるのを見ることもあるわけで、盛んにこういうことが行われておるのではないかというふうに考えられるわけで、この問題もよくお調べいただいて、対応策なり何なり、具体的な判断なり研究をずいぶんしていただかないと、これからも類似事件がどんどん起きるんじゃないかという心配もあるわけです。  そういうことで、いただいた資料の中で、ソレルス事件のわなの理論にかかるわけですけれども、一番は「官憲又は政府に雇われた者が、単に当該犯罪の実行のための機会又は便宜を提供するにすぎない場合は訴追を妨げるものではない。麻薬犯罪、不法出版、郵便詐術、不法な謀議などの犯罪計画を摘発することが、上記の許された捜査行為の目的であり、この捜査行為は法執行のために応々にして枢要である。」「(しかしながら)当該犯罪計画が政府の官憲によって作出され、かつ、官憲が潔白な人物の心中に当該被疑犯罪を犯す犯意を植えつけ、訴追を可能とするためにその実行行為を誘発したものである場合には、別の問題が生ずる。」こういうふうにあるわけですけれども、そのための要件もお書きになっているのですが、どうも理解しにくいのですが、この点、わかりやすく御説明いただけたら……。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 ただいま御指摘のいわゆるソレルス事件と申しますかのアメリカの最高裁の判決でございますが、いまの御引用になりましたように、いわゆるおとり捜査といいますか、わなといいますか、そういうものがどういう場合に許されるかということの判断基準のようなものを示しているわけでございまして、まず第一段のところでありますように、捜査機関なら捜査機関が単に当該犯罪の実行のための機会あるいは便宜を与えたにすぎない、そういう場合には起訴しても構わない、つまり有罪とされてもやむを得ないということをまず言っているわけでございます。  そうかといって、第二段でございますように、その犯罪自体が政府の官憲によってつくり出された、しかも、もともとは潔白な人物であるのに、その官憲の手によって潔白な人物に新たに犯罪を犯す意思を生じさせたという場合には、その前の基本的な考え方はそのままには適用できないので、そういう場合には問題がある、むしろそういう場合にはわなの抗弁といいますか、おとり捜査としてむしろ捜査方法が不適法であるということを結論として述べているわけでございまして、裁判所の判断として、罰則を制定した国会の意思、つまり国の意思が、そういう官憲側が実行行為をことさらに誘惑して、そして処罰することを認めるということにはとても考えられないということを結論として言っておりまして、つまりそういうもともと潔白な人物にそういう犯意を起こさせたという場合は、その捜査方法は適法でないということを示しているものというふうに理解しているわけでございます。

沖本泰幸公明党・国民会議

○沖本委員 稲葉先生の質問の中にもおとり捜査の問題が出されておったわけですけれども、憲法の三十一条に反しないかどうかという見解もあるわけですけれども、このおとり捜査の限界はどの辺になるのか、この点についてお願いいたします。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 毎々申しておりますように、一言でおとり捜査と言われましても、そのやり方なり程度なりいろいろとあるわけでございまして、先ほどの判例でも出てまいりましたように、もともと潔白な人、そういうことを全く考えていなかった人に対して官憲側が働きかけて犯罪を実行させるというようなこともございますし、逆に、本人はもともとそういうことをやろうということを考えていた、ちょうどそういうことを考えていたところへ官憲側が働きかけたんでそれが具体化したという場合もあるわけでございまして、先ほど稲葉委員が大きく分けられましたように、前者の方は無罪とされるべきものであり、後者の方は有罪とされてしかるべきものであるというのが基本的な区別ではなかろうかというふうに思うわけでございます。

沖本泰幸公明党・国民会議

○沖本委員 日本ではこの問題は、おとり捜査というのは麻薬の取り締まり等に当たる人が主に言うことであって、それ以外はないのだという点でありますけれども、日本では非常にひきょうな手段であるとか、いろんな物の考え方がありますが、いま日本で麻薬とか覚せい剤とかいうものは以前にも増してどんどん入ってきているわけですし、こういうような類似事件もいろいろあるわけですから、日本のいまのおとり捜査的なものがどういう形でどの程度あり、問題化されてきておるのか、全然それはない方向に向かっていっておるのか、全然なじまないものであるのか、その辺はどうなんでしょうか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 御指摘のように、麻薬取締法に、麻薬取締官等は捜査にあたって、厚生大臣の許可を受けて麻薬を譲り受けることができる、こういう規定があるわけでございます。これはその規定自体いわゆるおとり捜査を認めているわけではございませんが、それを間接的に認めているといいますか、それに関連のある規定だということは言えると思います。しかし、いま申しましたように、その規定自体がおとり捜査を認める根拠ではないわけでございますので、一般的に申しまして、麻薬取り締まりの関係でなければそういうことができないというわけではないということがまず一つ言えると思います。  しかし、やはりこういうことをやりますのは、それだけの必要がある場合でございますので、麻薬であるとかそれに類似する覚せい剤であるとか、あるいは秘密裏に物の売買等が行われる法禁物、たとえばピストルであるとか、そういうようなものにつきましては、やはり捜査の必要というようなことから、麻薬の場合と同じようなことが考えられるわけでございます。  判例等も、麻薬の事件に関してだけではございませんで、覚せい剤の事件につきましても、下級審ではございますが、判例もあるわけでございますし、ピストルそのものではなかったかと思いますが、たしかピストルの弾薬について同じような問題があって、判例があるということもあるわけでございます。したがいまして、すべての犯罪について可能かと言えば、抽象的には可能でございましょうけれども、そういう必要性があるのは、犯罪の種類によっておのずから限定されてくるということであると思います。  また、麻薬につきまして最高裁の判例があることは、先ほども御論議がございましたけれども、その後もいろいろと下級審の判例もございまして、非常に抽象的に言えば、アメリカの判例とおおむね似たような基本的な考え方に立っているというふうに言ってもいいのじゃないかというふうに思われるわけでございます。  したがいまして、捜査機関といたしましても、必要がある場合に、その判例なり学説等の考えに基づきまして、適法と認められる範囲内でそういうことをやるということは、場合によっては許されるということでございましょうが、それがときに行き過ぎるということもあるわけでございますので、そういう点は十分戒心をしてやらなければならない。そうしませんと、行き過ぎになりますと、せっかく検挙を仮にいたしましても、それが処罰されないということになるわけでございますから、その点はむしろ捜査当局自体も十分心得て慎重にやるべきものというふうに考えておるわけでございます。

沖本泰幸公明党・国民会議

○沖本委員 そうしますと、こういう国際事件に刺激をされて、日本の捜査当局はおとり捜査的なことを捜査の一つの技術、方法、手段としていろいろ研究なさる、あるいは行使なさるという方針ではないわけですね。従来どおりでいくというお考えなんでしょうか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 特に従来から方針としてどうこうということもなかったと思いますし、今回のことがありましたからといって、特にこれを活発にやるというようなことも、当然のことながらないものと考えております。

沖本泰幸公明党・国民会議

○沖本委員 アメリカの陪審制度というのは、アメリカの映画とかテレビとか等ではいろいろ見るわけですけれども、いま陪審制度というものがわれわれの目の前に具体的に出てきつつあるわけですが、アメリカの陪審制度というのはどういう制度なのか、御説明いただきたいのです。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 アメリカで陪審制がとられているわけでございますが、沖本委員がおっしゃいましたようなテレビとかあるいは映画等に出てまいりますものは、いわゆる小陪審と呼ばれている方の陪審のことではないかというふうに思うわけでございます。いわゆるアメリカの陪審制には二種類のものがあるわけでございまして、大陪審と小陪審ということでございます。これを比較的わかりやすく申しますと、大陪審の方は捜査及び訴追機関的な性格のもの、小陪審の方は裁判所的なものというふうにまずお考えいただいたらいいんじゃないかというふうに思うわけでございます。  今回のように大陪審ということで陪審ということが表に出てきているわけでございますが、大陪審は、いま申しましたように起訴するかどうかということを決める機関でございまして、その構成といたしましては一般市民二十三名、定足数は十六名ということになっているようでございますが、そういう構成で長期一年以上の刑に当たる罪について裁判に付するかどうか、つまり起訴するかどうかを決定する。つまり起訴するかどうかについて民衆の関与といいますか、民衆自体が決めると言ってもいいような理解になるわけでございます。  一方、小陪審は、起訴されて裁判、つまり公判段階に入りました場合のそれを審理する機関でございまして、これはやはり裁判所に属するわけでございますが、裁判官の指揮のもとで事実認定を行って、そして有罪か無罪かを決めるという権限を持っているのが小陪審でございまして、一般に陪審制度と言いました場合には、むしろ後の方のことを考える場合が多いんじゃないかというふうに思うわけでございます。

沖本泰幸公明党・国民会議

○沖本委員 アメリカの裁判では、公判の前に司法取引の制度があって、検察側と弁護人との間で起訴された罪について司法取引が行われているということでありますが、このバーゲニングというのは一体どういうふうに見たらいいのでしょうか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 バーゲニングという言葉から、それを取引ということに訳すことにもなるわけでございますが、そういうことから、何か言葉は適当かどうかわかりませんが、汚らわしいというか、余り適当でないというか、そのような印象を与えている面があるんじゃないかというふうに思いますけれども、これはまあ国民の受け取り方の問題でもあろうかと思いますが、アメリカにおきましては、いわば裏で取引をするという意味ではなくて、むしろ刑事手続における一つの手続といたしまして、そういうものが現にあるわけでございます。それは連邦の刑事訴訟規則にも規定されているところでございまして、従来から伝統的に行われていたことであるというふうに理解されておりまして、裏取引というような感じではないということをまず御理解いただきたいわけでございます。  その具体的な内容は、被告人が裁判にかかりました場合に、有罪または無罪の答弁をするに際しまして、原告側である検察官と被告側の被告人または弁護人との間でいろいろな折衝が行われるわけでございます。さらに具体的には、被告人が有罪の答弁をするということによりまして、あとは量刑だけの問題というふうになる一種の訴訟経済という問題もあるわけでございますが、そういうことを背景にした有罪答弁をすることとの引きかえに、検察官の方がより軽い罪で起訴事実を構成し直す、あるいは起訴事実の一部を撤回する、あるいは被告人にとってより有利な刑を裁判所が言い渡すように勧告するというような、両当事者の話し合いというものがこのバーゲニングの内容でございまして、そういう話し合いができました場合には、その結果を裁判所に通知をする、そして公開の法廷でもその内容が明らかにされ、裁判所が話し合いの結果が相当であるという場合には、その話し合いの合意に従って裁判をする。もしその合意の内容が不適当な場合には、被告人に対しまして再考するように機会を与えるというような手続が、アメリカの刑事訴訟法におけるいわゆるバーゲニングと言われているものの内容でございます。

沖本泰幸公明党・国民会議

○沖本委員 もう一点伺いますが、その司法取引の後、罪状認否の制度から、有罪、無罪のほか、不抗争の主張もあるということでありますけれども、不抗争の主張というものはどういうふうなものなんでしょうか。この点も私たちには耳新しいものですから、ひとつ教えていただきたいと思います。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 いわゆる罪状認否というような言葉で呼ばれていることでございます。その場合に、有罪という答えをする場合と無罪を主張する場合と、大きく分ければ二つに分かれるわけでございますが、その中間といいますか、三つの場合といたしまして、いま御指摘のような不抗争の、つまり争わない、抗争しないという不抗争の答弁というものが認められているように聞いております。  これは有罪ともはっきり言わないわけでございますが、起訴事実を特に否定しないというか、その認否自体をしない、刑に処せられることは認める、こういう事実の認否を避けた答弁をすることができるということになっているわけでございまして、それは裁判所の許可があった場合に限って認められるというふうになっておりますが、これがいわゆる有罪答弁とどうして違うかということになりますと、有罪答弁をはっきりいたしますと、その事件に関連する民事訴訟でその有罪答弁が被告人の立場を拘束するというような関係がございますので、そういうことを避ける意味で、実質は有罪を認めたというようなことになるんだと思いますけれども、答弁の仕方としては明白に有罪を認めないで、争わないという言い方の答弁をするというやり方が可能だというふうになっていると承知しております。

沖本泰幸公明党・国民会議

○沖本委員 新聞によりますと、まだそのほかに事件がある、握っておるようなことが記事にも出ておりますし、日本の制度とアメリカの制度とはずいぶん違うわけで、私たちは報道されるものだけを見て判断していくということにもなるわけですし、そういう点もありますから、今後もやはり経済問題なりあるいは外国とのいろいろな問題の中からこの種の事件はいろいろと出てくるものだという点を考えていきますときに、ひとつ法務当局としても十分研究していただいて、いわゆる国民の疑問に応じていただくという形で検討を十分加えていただくようにお願いいたします。  質問を終わります。

羽田野忠文自由民主党

○羽田野委員長 岡田正勝君。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 私は、今回のこのIBMにまつわる事件が、日米間の貿易摩擦の激化につながったり、あるいは日米友好関係にひびを入れたりしなければよいがと心配をいたしておりますし、さらに、このことが日本企業の海外進出に対する意欲を減退させるようなことにならなければよいがということをあわせて心配をしながら、質問をするものであります。  いままで私が新聞等で知り得ましたわずかな情報によって見ますと、本件は、八〇年の十一月ごろから本年の六月までの間のことだと聞いております。IBMから盗まれたというその情報が一番のもとでございますけれども、その盗まれたという肝心の物の盗まれた日時も犯人もいまだにわからない、不明であるという状態の中で、何にも知りません日立が、八一年の八月に東京におきましてNAS社のサファイ、カデット両氏から持ち込まれた情報をもとといたしまして、十年来長いおつき合いのありましたコンサルタントのペイリー社長に情報を新しく求めた。そのペイリー氏が紹介をいたしました人が、グレンマー社のハリソンという偽名を使ったFBIの秘密捜査官ギャレットソンという人だそうでありますが、その人から情報を提供されるというので、グレンマー社を訪れたところを、日立の関係者はその現場で逮捕された、これがこの事件の発端だと思うのであります。  しかもそのときに、そのグレンマー社におりました十年来のつき合いのあったペイリー社長も、そして偽名を使っておりましたギャレットソンさんも、その逮捕の状況をにやにや笑いながら見ておったという。このことを私ども見まして、どうも国民感情として割り切れないものを強く感じるのであります。  これをつづめて言うならば、これは私の単なる想像になりますけれども、IBMがFBIに情報を提供をいたしまして、それをおとりにして日立をわなにかけたとしか考えようがないのであります。国民感情としては、汚ないではないか、何ということをするんだというところが、偽らないところの日本国民の感情ではないでしょうか。  そういう私の感想の上に立ちましてまず冒頭にお伺いいたしたいと思いますのは、大臣がいまちょうどおいでになりませんのでその他の方で結構でありますが、法務省並びに外務省並びに通産省当局は本件についてどのようなお考えあるいは感想をお持ちであるか、まずお尋ねしたいと思うのであります。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 今回の件につきましてはいろいろな報道等もなされておりますし、ただいま岡田委員の仰せのような議論もあるわけでございますが、私ども法務事務当局の立場といたしましては、アメリカにおける刑事事件でございまして、その捜査のやり方の適否というようなものを直ちに論評するというような立場にもないわけでございますので、われわれの立場で、もしアメリカの方から何らかの要請等がありました場合には、その要請の中でアメリカ側のとった捜査方法等もおのずから明らかになる面もあろうかと思います。そういうものを十分検討の上で、日本国民のみならず、アメリカの国民の方々にも納得できるような公正な対応をいたしたいというふうに考えている次第でございます。

苅田吉夫外務省北米局北米第一課長

○苅田説明員 外務省といたしましても、本件がもちろん日米両国間の問題に影響を与えるようなことがあってはならないと思っておりますが、わが方といたしましても、この問題は基本的には米国で起こりました一つの刑事事件でございますので、その刑事事件につきましては、米国の司法当局において適正な法手続に従って事実問題が解明され、明らかにされていくものと思っております。現段階におきましては、これをいたずらに政治問題化することなく、日米関係に悪影響を与えることのないように、冷静にこれを見守るということでございます。

関収通商産業省機械情報産業局電子政策課長

○関説明員 通産省の立場でお答え申し上げたいと思います。  本件は、アメリカにおきます刑事上の問題といたしまして、今後法廷その他の場で事実関係等が明らかにされていくものと考えておりますので、その推移を見守ってまいりたいと考えておるわけでございます。  なお、私どもとしては、本件と日米経済関係全般というものは一応切り離して考えておりまして、今後とも日米経済関係の振興あるいはハイテクノロジー分野における日米協力の促進といったようなことについては積極的に推進してまいりたい、かように考えておる次第でございます。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 通産省の方にお尋ねをいたしますが、ごく簡単なことをまずお尋ねいたします。  今度対象になりましたコンサルタント会社、この協力者となりましたコンサルタントの会社でありますが、その会社のことを言うのではなくて、コンサルタントという会社の性格はどういうものでありますか。

関収通商産業省機械情報産業局電子政策課長

○関説明員 お答え申し上げます。  コンサルタント業という言葉、非常に幅広く使われておるわけでございますが、実は必ずしも概念が明確になっておるわけではございません。日本の産業分類ということで御説明申し上げたいと思いますが、総理府の方でやっておられます標準産業分類によりますと、情報サービス業という分類がございます。この中に四つございまして、一つはソフトウエア業、これはソフトウエアを作成することを業とする事業でございます。二番目に情報処理サービス業、これは他人から委託を受けまして情報処理を業とするような事業でございます。それから三番目に情報提供サービス業、顧客の注文に応じまして情報を提供するような事業でございます。それからその他の情報サービス業というのがございます。これはたとえば世論調査とか市場調査とかいうようなことをやる会社でございます。このような情報サービス業というもの、いま申し上げたように四つの分類があるわけでございます。  さらに、そのほかに経営コンサルタント業という業がございます。通常私どもが理解いたしておりますのは、コンサルタント業と言った場合に、いま申し上げました四つにこの経営コンサルタント業といったようなものを加えたものが言われておるもの、こう理解いたしております。アメリカにおきましてもほぼ同様の理解がなされておるものと理解いたしております。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 さて、いまコンサルタントの会社の分類といいますか、これを日本的に分類していただいたのでありますが、その中には、いわゆる情報の提供をもっぱら業とするというものもあるわけでございますね。  そこで、本件で問題となりましたこのペイリーさんの会社、これは一体どの種類に入るのでございますか。

関収通商産業省機械情報産業局電子政策課長

○関説明員 正直に申しまして、ペイリン社自体につきまして詳細な調査をいたしておるわけではございませんが、報ぜられておるところを総合いたしますと、いわゆる先ほど申し上げました中での情報提供サービス業、あるいはコンサルタント業的な機能もあるのかと思いますが、そのようなことを主たる業務にしておる会社ではないかと推測をいたしております。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 そこで、続いて同種の問題についてお尋ねをします。  日本国内におきましてはそのような会社はどのくらいの数があるのか、そして年商はどのくらい上げておるのか、従業員の数がどのくらいおるものか、米国内の同種のものはどのくらいあるものかという点を、概数で結構ですから教えてください。

関収通商産業省機械情報産業局電子政策課長

○関説明員 まず、日本から御説明申し上げます。  私どもでやっております特定サービス産業実態調査報告書というものがございます。その報告に従って御説明申し上げたいと思います。先ほど申し上げました情報サービス業のうちソフトウエア業と情報処理サービス業はややこのケースから外れると思いますので、情報提供サービス業とその他の情報サービス業ということで御説明いたします。  その報告によりますと、現在日本国にございます事業所数が三百九十二、従業者の数が九千人、売上高がトータルで九百五十七億円、平均いたしまして一事業所当たり年商二億五千万程度かと推測をいたしております。また、経営コンサルタント業につきましては、同じ報告によりますと、企業数が二千二十四、従業員数が一万四千名強、売上高が約九百億、一社当たりの平均売上高が四千五百万程度、こう推測いたしております。  次に、アメリカでございますが、実は私どものような形での統計はなかなか把握しにくいわけでございまして、一つの情報として申し上げる以外ないわけでございます。  いわゆるいま申し上げたようなコンサルタント業は、別の言葉でシンクタンクなどとも言われておるわけでございますが、その種の事業所がアメリカには約六千、研究員の数が二十万人、売上高が二兆円、すなわち一企業当たりの売上高が三億円強、このような報道があるわけでございます。御参考までに紹介させていただきたいと思います。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 次に教えていただきたいのでありますが、先ほどから情報情報ということがしきりに出てくるわけであります。この情報というのは一体何でありましょうか。

関収通商産業省機械情報産業局電子政策課長

○関説明員 大変むずかしい御質問でございまして、お答えしにくいのでございますが、先般出されました産業構造審議会の答申ではこのように定義をいたしております。人間が環境との相互作用において生成、加工、伝達、蓄積、利用する刺激の総体、こう言っておるわけでございますが、非常にわかりにくいわけでございます。  やや別の角度から申しますと、通信理論的な情報といいますたとえばモールス符号的なものも情報の一種と言われております。あるいはコンピューターに乗せるようなディジタルな情報、これも情報と言われております。それから三番目には、マスコミ等で新聞のような形で提供されるものも情報でございます。それからさらに、人間が何か目的を持ちました場合に、その最適行動を選択するに際し用いられるデータあるいは知識といったようなもの、非常に広い概念と理解をいたしております。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 ということになりますと、その情報とは、産業とも言え、商品とも言えるのではないかと思うのでありますが、いかがですか。

関収通商産業省機械情報産業局電子政策課長

○関説明員 情報の定義はいま申し上げましたように非常に幅広い概念でございますので、現実の社会においてこれが商品化している場合と、そうでない場合とがあろうかと思います。たとえば交通信号のようなもの、これも情報だと思いますが、これは商品化していないわけでございます。それに対して、たとえば新聞の紙上で提供されるような情報、これは商品化しているといったようなことで、二種類あるのではないかと理解いたしております。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 ということになりますと、そういう市場価値を持つような、商品価値を持つようなものが情報の中にあるとするならば、その情報の売買ということは正当なものであるというふうに思いますが、いかがですか。

関収通商産業省機械情報産業局電子政策課長

○関説明員 先生御指摘のとおり、商品的価値を持つものが商品として現に流通をいたしておるわけでありますから、その限りで正当な売買行為というのが行われ得るものだと理解いたしております。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 本件が発生しました後で、通産省といたしまして海外進出企業の状態を心配するのは当然のことでありますが、日立、三菱の両社につきまして事情聴取をされたことがありますか。もしあるとするならば、発表できる範囲の中で報告をぜひしていただきたい。

関収通商産業省機械情報産業局電子政策課長

○関説明員 通産省といたしましては、けさほども御説明申し上げましたが、産業行政あるいは日米経済関係、あるいはハイテクノロジー産業政策といったような観点から、本件の持つ意味合いというものを把握いたしたいと考えておりまして、事件が公表されました直後に両社より事情聴取いたしたことは事実でございます。  その結果明らかになりましたことは、これは実は同様の趣旨のことを会社側も外部に発表いたしておるわけでございますが、両社がアメリカの調査会社よりIBM関係の技術情報を入手したのは事実であるが、いずれもその情報は合法的に入手されたものと考えていたという報告を受けておるわけでございます。  なお、起訴状その他によりますと、事実関係についてなお詳細な記述がなされておるわけでございますが、その辺につきましては、今後むしろアメリカの法廷その他の場で司法的な手続のもとで解明されていくことでございますので、通産省の立場では、そういう点については事実調査をするという行動はとらなかったわけでございます。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 そうすると、通産省といたしましては事情聴取を行われたわけでありますが、今日現在の時点におきまして、本件をどういうように認識をしていらっしゃるか、お答え願いたいと思います。

関収通商産業省機械情報産業局電子政策課長

○関説明員 先ほどの御答弁の繰り返しになって恐縮でございますが、本件については今後アメリカの司法手続のもとで解明されていくということでございますので、私どもとしてはその事実の推移を見守るということでございます。  一方、通産省の立場といたしましては、日米経済関係あるいはハイテクノロジー産業の振興ということにつきましては、本件の個別事案とは切り離して今後とも推進してまいりたい、かような立場でございます。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 そこで、この機会にお尋ねをしておきたいのでありますが、これは本件のけりがついたわけじゃございませんから、質問するのがちょっと無理かもわかりませんが、現在の時点におきまして、本件を契機としてどんな反省をお持ちになっておるか、あるいは今後どのような指導を行おうとしておるか、このことについてお答えください。

関収通商産業省機械情報産業局電子政策課長

○関説明員 本件は今後アメリカの司法手続のもとで解明されていく事実でございますので、事実関係もまだ明らかでない部分も多々あるわけでございます。そういう段階で通産省といたしましてコメントを申し上げるのは差し控えたいというのが私どもの立場でございます。したがいまして、本件について今後も何か特別の行政指導といったようなことを、現段階では考えておりません。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 そこで、別の角度にもなるかと思いますが、通産省といたしましては、わが国のコンピューター産業というのは現在世界でどんな位置に置かれておるか、そして将来に対する展望というものはどういうものを持っていらっしゃるか、お尋ねをいたします。

関収通商産業省機械情報産業局電子政策課長

○関説明員 まず、コンピューター産業と申しますか、情報産業の将来展望について申し上げたいと思いますが、日本の見通しで恐縮でございますけれども、一例として申し上げますと、情報処理振興審議会が発表いたしました予測によりますと、昭和五十五年度末現在のコンピューターの設置金額が、これは大小ございますので金額で申し上げさせていただいて恐縮でございますが、金額が約四兆円でございます。それが昭和六十年度末には八兆三千億円ということで、この五年間に約倍増するという見通しが立てられておるわけでございます。  このように金額的に設置台数が非常にふえていくということだけではなくて、社会のあらゆる階層、これまでは、たとえば行政の一部でございますとかあるいは産業界の一部といったようなところでコンピューター利用が行われていたわけでございますが、今後は産業界、行政段階はもとより、社会、国民生活の隅々にまでコンピューター利用というのが広がっていくものと理解いたしておるわけでございます。そういう意味で、それに関する機器の提供を中心といたしますコンピューター産業というのは、非常に将来性のある、またわが国にとっても重要な産業である、かように考えておるわけでございます。  ところで、現在のわが国のコンピューター産業の力ということでございますが、一部の報道機関に伝えられておりますところによりますと、日本国内におきます国産メーカーのシェアは約五五%でございます。それから、外資系のシェアが約四五%ということでございまして、国内マーケットにおきましては、国内マーケットシェアの約半分を超すところまでいったという段階にあるわけでございます。  しかしながら、目を転じて世界のコンピューターマーケットということに視点を移しますと、先ほども御説明申し上げましたが、世界のコンピューター市場におきますIBMのシェアが六割でございます。それから、日本製品は全部合わせましても七%程度のシェアということでございます。したがって、このシェアだけで技術水準を云々することは当を得ないかもしれません。と申しますのは、コンピューター産業の技術力というのは多種多様な技術の総合の上に成り立っておるわけでございますので、一面的な比較はできませんが、いま申し上げましたシェアに象徴されるような、やはり相当力の差があるということを認めざるを得ない段階かと思うわけでございます。  なお、しかしながら今後も非常に重要性を増す産業でございますので、私どもとしてはぜひこの産業の育成、振興に最大限の努力をしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 いま一問、通産省に最後にお尋ねをしたいと思うのでありますが、本件のような問題が起こりまして、これから後、海外におけるわが国企業の活動にどのような影響が及ぼされるかという予測をしていますか。

関収通商産業省機械情報産業局電子政策課長

○関説明員 正直に申しまして、そのような予測をいたしておるわけではございませんが、私どもも海外における今回の事件の報道ぶり等についてはフォローいたしておるわけでございますが、アメリカにおきましてもヨーロッパにおきましても、概して冷静に客観的な事実を報道するということが中心であるというふうに承知をいたしておりますので、今後とも、わが国企業の国際活動と申しますか、こういうものについては可能な範囲で積極的に進めることが重要ではないか、かように考えておる次第でございます。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 ちょっと私の日本語が悪かったかもしれませんが、こういうような事件が起きまして、日本の企業が大変萎縮をして、海外活動において影響が出はしないかという、そういう心配をするのです。日本の感覚から言うたら正当だと思うような活動をやっておって、それがおとり捜査あるいはわなにはめられてどんどん引っ張られるというようなことになりましたら、企業というものはずいぶん考え方が変わってくるのじゃないか、影響を受けることは必至ではないかと私は思いますが、このぐらいのことでは日本の企業はさらさら影響はございませんか。

関収通商産業省機械情報産業局電子政策課長

○関説明員 なかなかむずかしい御質問でございまして、どうなるという予測はなかなかいたしがたいわけでございますが、私どもの見る限り、いま日本の経済というのはかなり国際化をいたしておるわけでございますから、いろいろな与えられた条件の中で、困難もございますし、いい面もあるわけでございますが、それらを十分踏まえて国際活動というのは今後積極化することを私どもは期待しておるわけでございますし、そういう角度の活動に対しては、私どもとしてもできるだけのことをやってまいりたい、かように考えております。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 大変しつこくなって恐縮であります。できるだけのことをやってまいりたいと思いますという、できるだけというのはどういうことなんでしょうか。

関収通商産業省機械情報産業局電子政策課長

○関説明員 一例を申し上げますと、最近、欧米先進諸国との間に、たとえば産業協力といったような活動が非常に活発化いたしております。産業協力と申しますのは、欧米諸国の企業との間で投資の交流をする、あるいは技術交流をする、あるいは共同研究開発をするといったような活動の総称でございます。このような産業協力活動というのは非常に活発化いたしておるわけでございます。  それに絡みまして、一部の国とたとえば日本とが政府間で意見交換の場を持っております。そういうところで、たとえば日本企業の海外投資なり共同研究開発をする上で制度上の障害があるとかあるいは環境上の問題があるといったときには、政府レベルで改善を依頼する、あるいは逆に相手国政府から日本政府に申し入れる場合もあるといったような、政府間の意見交換の場も徐々にできつつございます。私が申し上げましたのは、そのような場を通じて、日本企業が国際的に活動しやすいような環境をつくってまいりたいといったような趣旨を含んでいるわけでございます。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 外務省の方にお尋ねをいたしますが、本件の発生の前またはその直後におきまして、米国との間に本件についてどういう接触があったのか、お尋ねをしたいと思います。

苅田吉夫外務省北米局北米第一課長

○苅田説明員 事件発生の前には、いかなる意味でも連絡はございません。事件が起こった後におきましては、特にサンフランシスコにおきまして、サンフランシスコの総領事館は主として邦人保護という立場からその実情を把握しようといたしましたし、また、それぞれの容疑者の人たちにもインタビューしたり、そちらの方からの活動をいろいろしております。また、主として情報収集という見地からの接触というものは当然続けておるわけでありますけれども、それ以外に公的な申し入れなり接触、そういったものは政府間では行われていないということでございます。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 どうも私、素人でよくわからぬのでありますが、いまのおとり会社に情報をいただこうと思って三名の諸君が行きましたときに、FBIの捜査官がいきなり乗り込んできて、その場で、現場で逮捕した、こういうことでありますが、これはたとえば殺人をやったとか傷害事件を起こしたとかいうような問題とは違いますので、ここでひとつ念のために伺っておきたいのですが、こういうような状態のときでも、全然総領事館には連絡なしに逮捕勾留ができるものですか。

苅田吉夫外務省北米局北米第一課長

○苅田説明員 これは一つの刑事事件としてのアクションでございますので、必ずしも事前に総領事館に通報するということは要求されていないと存じます。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 現在の時点におきまして、アメリカからいわゆる犯人の引き渡しの要求はまだないと思うのでありますが、いかがでございますか。

苅田吉夫外務省北米局北米第一課長

○苅田説明員 仰せのとおり、現時点におきましては、先方より引き渡し関係の要求は一切参っておりません。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 アメリカからこの引き渡しの要求が出てまいりましたときには、外務省としてはどう対応されますか。

苅田吉夫外務省北米局北米第一課長

○苅田説明員 これは、日米間にございます犯罪人引渡し条約及びわが国の逃亡犯罪人引渡手続に従って処理をされることになると存じます。  すなわち、外務大臣が向こうの外交ルートを通じて引き渡し請求を受けました場合には、これが条約に適合する要求であるかどうかということをまず確認いたしまして、それからその案件を法務大臣の方に送付するということになります。法務大臣は、これを国内的な要件に照らしまして判断をされて、その手続を進められる、こういうことになります。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 その条約に適合しておるかどうかを確認するというところを、もうちょっと詳しく説明をしてください。

苅田吉夫外務省北米局北米第一課長

○苅田説明員 これは主として手続的なことでございまして、たとえばその引き渡し請求をやる場合には、引き渡しを求めている者を特定する事項を記載した書類、文書が必要であるとか、あるいは犯罪の事実を記載した書面等が必要でありますとか、そういったふうな種々の書類の要請がございます。そういったものを、きちんと書類が整っておるかどうかということの確認でございます。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 それでは、次に裁判所の方にお尋ねをいたしますが、本件の嘱託による共助の申し入れがありましたときは、どう対応なさいますか。

小野幹雄最高裁判所事務総局刑事局長

○小野最高裁判所長官代理者 この点につきましては、外国裁判所ノ嘱託ニ因ル共助法というものがございますので、これは外交折衝によりまして個別的に合意がある場合でございますけれども、外務省から最高裁判所の方に依頼がございますので、そうしましたら、ただいま申し上げました外国裁判所ノ嘱託ニ因ル共助法に基づきまして、わが国の国内法によってそれを送達する、こういうことになるわけでございます。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 通産と外務と裁判所の方、ありがとうございました。  そこで、続いて法務省の方にお尋ねをするのでありますが、本件はおとり捜査でわなにかかったという疑いが非常に大きい。国民感情から見てそう思うのでありますが、当局としては、このおとり捜査でわなにかかったという点についてどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 御指摘の点が一つの大きな問題であろうと思いますけれども、いわゆるおとり捜査ということについて、一言ではそれが適法かどうかということは言えないということを、るるこれまでも申し上げてきたところでございます。それが適法なものであるかどうかということは、そのおとり捜査と言われる捜査方法の内容、やり方、程度、いろいろあるわけでございますが、その具体的な事実関係を確認いたしませんと、いわゆる適法でないおとり捜査であるかどうかということの判断がしがたいというのが現実でございます。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 一般にわかったようにおとり、わなという言葉が使われるのでありますが、法律的におとりとわなというのはどういうものだと理解をしたらよろしゅうございますか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 おとりといいますのもわなといいますのも、別に法律的な言葉といいますか、明文の規定があって、こういうものがおとりであるとかわなであるとかいうことが決められているわけではございませんで、いろいろな捜査方法の中で、おとり捜査というふうな名前で呼ぶのが適当な捜査方法があるということであろうと思います。  おとりというのは、御案内のとおり鳥を捕獲する場合に、それをおびき寄せる鳥をおとりと言うのだろうと思いますけれども、要するに犯人をおびき寄せるということから、おとりという言葉ができたのだろうと思います。これは先ほど来申しておりますように、犯罪を摘発する手段といたしまして捜査官が第三者をおとりとして使う、あるいはみずからおとりとなって犯人に接触をしまして、想定している犯罪行為をさせて、そしてそれを検挙するということになるわけでございます。  それが問題になりますのは、先ほど来御論議がございますように、全くそういうことを考えていない潔白な人間にそういう誘惑によって犯罪行為をさせるという場合と、もともとそういう犯罪行為をやろうという考えを持っている者に対してそういう現実の機会を与えるという場合と、大きく分ければ二つあるわけでございますので、その実態によってそれが適法であるかどうかということが変わってくるということになろうと思うわけでございます。  また、わなというのは、わなにかかったということを俗に言うわけでございますが、そういう捜査官側の一つのしつらえと申しますか、そういうものがあって、そこに犯人という形になる者がはめ込まれる、こういうことをわなにかかったというふうに言うのだろうと思います。  それもまあ実質は同じようなことでございまして、もともと犯罪を行う考えのない者が、わなと気がつかないでそれに誘惑をされてはまり込むという場合もございましょうし、もともとそういうことをやろうとしておりました者が、たまたまそのわなにはまり込んでしまったという場合もあるわけでございまして、その態様いかんによってその適法性が変わってくる、こういうことになるわけでございまして、おとりというのもわなというのも、実質的にはその捜査方法の適否に関する一つの問題点という意味では共通であろうというふうに考えております。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 たとえば今回の場合は、これは秘密捜査官というものの存在があるわけでありますが、一般に、麻薬犯罪なんかのおとりの捜査の場合でも、厚生大臣の認可を受けた捜査官でなければおとり捜査はできないというふうに聞き及んでおりますけれども、これが民間の中におきまして、たとえば相手を罪に落としてやろうと思っておとりをかけたりわなをかけたりというようなことは、これは許されるのですか、おとりやわなというのは官辺筋が行うときにだけ可能なのでありますか、いずれかお答え願いたいと思います。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 麻薬取締法の関係についてまず申しますと、先ほどもちょっと触れたところでございますが、法文の規定の上では麻薬取締官が麻薬を譲り受けることができる、その場合は厚生大臣の許可が必要だという形で規定されておりまして、厚生大臣の許可があればおとり捜査ができるというまでは規定していないわけでございます。  それから第二の問題で、第三者がだれかを罪に陥れてやろうということでそういう工作をする場合があるわけでございましょうが、そういう場合には、その本人が最初から犯罪行為をする気があったのかなかったのかということがまず一つの問題でございますけれども、場合によっては、そういう犯罪行為を現にさせたということにおいて、その陥れてやろうとした工作をした者が教唆犯になり、そして処罰されるということも理屈としては考えられるわけでございます。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 そういたしますと、これはちょっと横道にそれて恐縮でありますが、たとえばAという人を罪に落としてやろうと思って、かねがね金銭には汚い人だということを見込んで、その人の歩いていく前の方に札束をどかっと落としておくというようなことをいたしまして、その本人が拾ったものを警察に届けないで自分の家に持って帰ったことになれば、それがたとえばいわゆる公の立場に立つ人が仕掛けたものであろうが、BならBという民間人が仕掛けたものであろうが、その事実が成立すれば逮捕できるわけですか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 最後に逮捕できるかとおっしゃいましたその相手方は、仕掛けた方の人のことでございましょうか。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 両方です。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 そういたしますと、先ほど申しましたように二つの場合があり得るわけでございますけれども、一つの場合は、いまの例で申しますと占有離脱物横領といいますか、そういう犯罪になろうかと思います。それはそれとして犯罪になるわけでございますし、それをさせたという意味において、それが教唆犯なら教唆犯になる場合があり得る。両方とも犯罪になり得る場合があり得る。ただ、それはいろいろな事情、前提がございますから、すべてそうなるとも言いかねるわけでございますが、状況いかんによっては両方について犯罪が成立する場合もあり得るということも言えると思います。  ただ、民間人の場合は、そういう正当な理由がないということが通常でございましょうから、犯罪になる場合があり得るわけでございます。捜査関係の場合におきましては、もちろん違法なことは許されないわけでございますけれども、それが適法なやり方であるという範囲内でございました場合は、正当な職務行為ということで処罰を免れるといいますか、処罰されないという場合もそういう形で起こってくるということがあるわけでございます。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 ちょっといまの横道にそれましたのと関連して、いま一問お尋ねいたしますが、道ばたにわざと仕掛けて金を置いておった、それをついうっかり持った、調べてみたら金だった、それをそのまま派出所に持っていけばいいものを、ついうっかり家に持って帰った。それで、何日間置けば罪になるのですか。何日間ならうっかりなんですか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 具体的に数字で、何日間ならいい、悪いと言うわけにもなかなかまいらないのじゃないかと思います。要するに、通常の社会通念で考えまして当然手続をすべき期間内に手続をしないでいるというような場合には、おおむねそのことから本人がそれをふところに入れるといいますか、着服するという意思が推定されることになるのだろうと思いますが、それだけでもいけないわけでございまして、要するに本人がそれを自分のものにする、不正に領得をするということがはっきりしたという時点で犯罪が成立するということでございますから、時間なり日時というわけにも直ちにまいらないと思います。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 アメリカの例をいただきました資料で調べてみますと、たとえば国会議員がその国に企業進出をしたいということを陳情を受けた、その陳情に来た人に、それならよしおれが便宜を計らってやる、だから何億円持ってこいと言って要求をした、金を持っていった時点で逮捕というようなことが行われておるようであります。  これは日本の国ではなかなかなじまないことでありましょうが、よく言われることに、これはあるいは所管外だとおっしゃるかもわかりませんが、選挙にまつわる問題といたしまして利益誘導ということがあります。その中でも、たとえば国においてこうこうこういうことをやってもらいたい、それをやってやろうということのいわゆる裏づけといたしまして政治献金を要求するというような場合、受け取った金が政治献金の中へ入れられて、正規に帳簿を提出して公表するのであるからそれはいわゆる横領にはならない、あるいは収賄にはならないというようなことになるのかどうか。わが国の場合です。  たとえば、こういうものをつくってください。よろしい、おれに任しておけ。そのかわり今度は何ぼ金を持ってこい。それは個人でもらうのじゃない、政治献金だ。物の言い方は幾らでもあるわけでありますが、そういう場合は政治献金として届け出さえすれば、それは横領にも何にもならない、こういうことになりますか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 ただいまのお尋ねは、いわゆるおとりとかわなとかいう問題とは無関係の問題のように理解するわけでございますが、つまり収賄罪になるかならないかというような御趣旨ではないかと思います。そうなりますと、その金を受け取った方がどういう職務権限を持っているかということ、また、その受け取った金がそういう職務行為とどういう対価関係にあるのかないのかというようなこと、そういうことから収賄罪の要件を満たすかどうかということになるわけでございまして、政治献金としての帳簿の記載あるいは届け出ということがありましたといたしましても、それですべて賄賂性がなくなるという問題ではございませんで、やはり賄賂罪の要件を満たす行為であれば、手続が仮にきちっとしておりましても、理論上は収賄罪の成立の余地があるということでございます。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 本件に戻りますが、本件の場合、日本国民としての国外犯としての立件の余地がありますか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 お言葉に従って、立件の余地があるか、こういうお尋ねでございますと、全くないわけでもないというようなお答えになるわけでございますが、それだとまた誤解を受けるわけでございますので、若干補足して申しますと、少なくとも現段階で私どもが把握しておりますところでは、具体的に国外犯に当たるような事実関係というものをまだ把握していないということが、一番正しい状態ではないかというふうに思います。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 この問題を論じておりますときによく出てくる言葉は、盗品だ、贓物だ、いや故買だ、窃取だ、横領だ、謀議だというのがありますね。こういう言葉を一連に並べたわけでありますが、ごく簡単でよろしゅうございますから、その意味を教えていただきたいと思います。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 すでに御案内のことも多いかと思いますけれども、贓物といいますのは、広く申しましていわゆる財産犯、典型的なものは窃盗罪でございますが、その窃盗罪によって得られた物、取得された物、これを贓物というふうに言うわけでございますし、故買というのは、それを有償で取得することを言うわけでございます。窃盗はもう申し上げるまでもないと思いますが、俗に言う盗む行為でございますし、横領とは保管中の物を勝手に自分のものにするということであるわけでございます。  ただ、謀議というのが一番わかりにくいと言えばわかりにくいわけでございますが、当面問題になっておりますアメリカの罰則におきましては、先ほど来しばしば申しておりますように、ある一定の違反行為、違法行為をすることを複数の者が相談するといいますか、まさしく言葉どおり謀議をするということによってその謀議罪ということになる。その結果、その謀議に基づいて具体的に考えていた窃盗なら窃盗、あるいは贓物運搬、贓物故買ということを実際に行いませんでも、行おうという計画をした、相談をしたという段階で謀議罪が成立する。もちろん条件といたしましては、単なる相談だけではなくて、何らかのそれに向けた行為がなされるということが必要でございますが、目的である窃盗行為あるいは贓物運搬行為というもの自体はなされなくても謀議罪としては成り立つ、こういうことになっておるわけでございます。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 日米犯罪人引渡し条約によりまして要求が出てまいりましたら、引き渡しをいたしますか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 これは今後のことでございますし、いわば仮定の問題になるわけでございますから、引き渡すかとかいう明白なお答えはもちろんできない状態でございます。ただ、この場合には、先ほど来いろいろと御論議がございますように、まず条約なり国内法に乗る事案であるかどうかといういろいろな要件がございますから、その要件を満たすかどうかということが先決でございまして、そのためにはその要件を満たすような事実があるかどうかということを、仮に引き渡しの要求がありました場合には、当然資料等もあるわけでございますからその資料等を十分検討し、またわからない点があれば、先方にもよく問いただしてその点をまず明らかにする、その上でなければ、引き渡しができるかどうかということが決まらないということになるわけでございます。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 この条約にもありますように、最終的には引き渡すか引き渡さないかということはその国の裁量権がある、こういうふうになっております。  そこで、これは仮定になってまことに答弁がしにくいと思うのでありますが、いろいろな送ってこられた証拠あるいは書類その他のものが整いまして、これは当然その罪に該当するなということになっても、引き渡さないことがあり得ますか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 いまの御質問にもございましたように仮定のことでございますし、いまこの段階でそういうことがあり得るということを申しますと、すぐに、要求に応じない見込みであるというような報道をなされるおそれもございますので、少なくとも現段階でどういう結論を出すかということについてのお答えは、何とか差し控えさせていただきたいわけでございます。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 一つ教えていただきたいと思いますが、先方が逮捕状を出すと言っておったものを召喚状に切りかえましたね、十二名。これは一体どういう意味なんでしょうか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 具体的な経過は必ずしもつまびらかでございませんけれども、一応一般論的な頭で考えてみますと、逮捕状は捜査のための身柄拘束でございますから、そういう必要があって逮捕状というものが出ておったんだろうと思います。しかし、たまたまといいますか、本人がアメリカに在留していないということで、起訴し得るというような判断から起訴手続の方が行われたということになるわけでございますから、捜査のための身柄拘束という事態そのものがなくなって、裁判の方にすでに移ってしまったということで、裁判所に移りますと召喚状ということに当然のことながらなるわけでございますから、同じ事態について逮捕状が出ておったものをやめて召喚状に変えたというのではなくて、手続が移ったので、そういう手続がおのずから変わってきたということではなかろうかというふうに思います。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 一説によりますと、この召喚状を出すに当たりまして、本人たちがアメリカに来て保釈金を積みさえすれば、身柄を拘束するようなことはしないということを先方が言っておるそうでありますが、そういうことは信じられますか。逮捕しないということが信じていいものでありましょうか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 本件の具体的なことについてどういうことになるかということになりますと、それ自体問題もあるわけでございますし、先方の当局がどういうことを言ったかということも必ずしもはっきりいたしませんので、何とも申し上げられないわけでございますが、一般的に申しまして、逮捕状が出ておるという場合に、その執行といいますか逮捕行為が現に行われた後に保釈ということが普通行われるわけでございますが、それと同じ状態になっている場合に、保釈金を納めることによって逮捕されないで、結局保釈状態と同じ状態になるという扱いは、本件とは無関係にお考えいただきたいわけでございますけれども、そういう扱いはあり得るように聞いておるわけでございます。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 本件がどうなるかわかりませんけれども、十二名の人たちあるいは企業そのものも訴えられておるわけでありますが、企業である日立も十二名も含めまして、事の成り行きによりましては今後もう二度とアメリカには入国はできないというようなことがあり得るのでありましょうか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 ちょっと刑事手続の問題でないものでございますから、何ともお答えができないわけでございますが、要するに、本人の意向もございましょうし、またこういう場合にアメリカの方で入国を拒否するということになっているかどうかというそちらの、日本で言えば入管法の問題であろうと思います。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 アメリカの方から捜査協力の要請が参りました場合、それに応じられますか。また司法共助に応じられますか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 これも今後の問題でございますし、現段階ではいわば仮定の問題になるわけでございますが、捜査協力の場合につきましてもいろいろな要件が定められているわけでございますので、その要件に該当しない場合には、そのこと自体から要請に応じかねるわけでございます。しかし、要件を満たしております場合には、これはまた一般的な問題でございますが、国際的な犯罪について国際的な協力をするということはそれ自体は好ましいことであるわけでございますので、そういう観点も考え、また当該事案についてのいろいろな諸事情を考えて、適切に対応するということしか現段階では申し上げられないわけでございます。  また、司法共助の問題は裁判所の問題でございますので、私から申し上げるのもいかがかと思いますが、この場合にはいろいろな手続、要件というものが定まっておるわけでございますから、その実態に応じて対応ぶりが異なってくるということになると思います。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 これはロッキード事件のときの逆のことを言うのでありますが、ロッキード事件のときに、コーチャンあるいはクラッターの両氏に関しましては免責をいたしまして取り調べをしておりますね。調書をつくるのに協力をしていただいておりますが、それと同様のことについてひとつ協力をしてもらいたいというようなことがありましたら、これは簡単に応じられますか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 ちょっと前提の事実関係でございますが、いわゆるロッキード事件の場合には、免責と言って実質はいいのかもしれませんけれども、アメリカ法に言うところのいわゆる刑事免責を与えたわけではございませんで、日本の刑事訴訟法の枠内で日本側としての意向を表明をして、それによってアメリカの裁判所で証言が行われた、こういうのが前提でございます。そういうことでおわかりのように、刑事免責という制度はアメリカにはございますけれども、日本には制度的にはない制度でございます。したがいまして、ただいまお尋ねの趣旨が何か日本側で免責を与えるかということになりますと、そういうことは現行法のもとではできないわけでございます。  逆にアメリカの方で免責を与えて、免責を与えておるから証言をさせてくれ、こういうことに次の問題はなるのだろうと思いますが、その問題をお尋ねかと思いますが、その場合にも日本の法律では免責という制度がないので、したがってその効果ということも決めてないということになってくるわけでございます。したがいまして、その場合にどういうふうに対応するかという問題がなお検討を要する点があるわけでございますが、事はアメリカの方でそういう免責を与えて、日本の裁判所なら裁判所で証言をした場合のその証言をアメリカ側がどう受けとめるか、どう評価するか、こういう問題でございますから、そういうことについてはむしろアメリカ側の受け取り方というか、理解というものを十分聞かないとそれに対する適切な対応ができない、こういうことになるだろうと思います。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 アメリカで企業の刑事責任が追及されていくというようなことが出てきました場合、この扱いはどうなるのでしょうか、日立そのもの。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 扱いという仰せでございますが、どういうことを具体的に考えていいかということになりますが、アメリカに限らず、日本でも法人の処罰ということは、形は違いますけれどもあり得るわけでございます。御案内のとおり、日本ではいわゆる両罰規定という形を通して法人処罰が行われておりますが、アメリカの場合にはそういう日本のような考えを経ないで法人も処罰対象になる、こういう基本的な理解のようでございますから、それはそれなりにアメリカの法制で、アメリカ内で行われた行為でございますからアメリカ法の対象になる、逆に言えば、アメリカで企業活動をしているものはアメリカの国内法に従う義務がある、こういうことに基本的にはなるだろうと思うわけでございまして、そういうアメリカの刑罰法の要件を満たします場合には、それによって処罰されることも場合によってはやむを得ないというふうに言わざるを得ないのじゃないかというふうに思います。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 大臣がお見えになっておりますので、最後に大臣に一言お尋ねをして終わらしていただきますが、私、冒頭に申し上げたのでありますけれども、このIBMの問題をめぐりまして一連の事件というものは、われわれは新聞を通じて情報を知る程度でございますが、その範囲内で考えてみましてもどうも理解がいきにくい、納得がしにくい、国民感情からいってどうもおもしろくないというのが、私の偽らざる心境なんであります。  大体、IBMの方から資料が盗まれたというのが一体いつなのか、だれが盗んでいったのかというようなことが一切わからぬままに、長い間、十年間ぐらいにわたって日立がおつき合いをしておったというコンサルタント会社のペイリー社長を通じて、その人が紹介をしてくれた人がギャレットソンという秘密捜査官であり、ダミーの会社をFBIがこしらえて、その会社に導いていって逮捕に導いた、こういうような状態でありまして、いままで報じられたところの情報によれば、何度繰り返してみても、何かしらんはめられた、まさにわなにはまったというような感じがしてなりません。  日本人の国民感情に最もそぐわないおとり捜査でやられたという感じがするのでありますが、本件につきまして現時点において法務大臣としてはどのような御感想をお持ちであるか、お聞かせをいただきたいと思うのであります。

坂田道太自由民主党法務大臣

○坂田国務大臣 実は、先生も御指摘になりましたように、まだ事実関係というものを十分把握する状況にございません。したがいまして、事はやはり日米関係、特に大事な日米関係でございますし、また同時に、日本の国民の国益ということも十分考えてまいらなければならない問題であるということから考えまして、また、将来アメリカからわが国に対しまして刑事手続上何らかの協力を求めてくるということも考えられるかもしれませんけれども、その際にはよくその請求あるいはまた要請の内容、その具体的資料を十分検討いたしました上に、関係の条約及びわが国の法令に照らしまして適切に対処して、日米両国民の両方が納得できる公正にして妥当な結論を得たいというふうに考えております。  何を申しましても、法制度が日米関係において違うし、あるいは法習慣あるいは法意識等におきましても実は違っておる。この辺をまず法務当局といたしましては十分把握をした上で、冷静に、そしてまたかつ慎重に対処しなければならない課題ではないだろうかというふうに私は思います。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 最後に希望して終わりますが、大臣、この問題で将来あるいは近いうちに起こり得るかもしれないという問題は、日本の外務大臣、法務大臣はどう対処するであろうか、そういうことが起きなければいいのでありますが、問題が起きた場合には外務大臣と法務大臣は一体どういう対処をするかなというのは、これは日米両国民が大変な関心を持って見ておるところだと思うのであります。  それで、この資源のないわが日本におきましては、お互いに頭脳を働かせて、そして勤勉さに物を言わせて物をつくり上げていく、それを買っていただく、こういうことをやっていかなければ、全世界の陸地の中の〇・三%しか日本は土地がありません。人口四十三億人の中で三%も日本人は〇・三%の土地に住んでおります。比例で言うならば十倍の比率で人間が住んでおるわけでありまして、しかもGNPの関係から言えば、全世界を一〇〇%とすればわが日本は一一%も生産をしておるという、この実態から考えまして、日本人が資源がないのに、ありとあらゆる情報を適正に合法的に手に入れて、そして日本の産業を振興し、そして一億二千万の者がみんなでお互い仲よく暮らしていかれる、幸せになっていかれる道というものを、みんな懸命に求めているわけですね。  情報というものはいまや商品でありまして、産業でありまして、これは売り買いができるものでありますね。そういうものが盗品だなんということを、日本を代表するような日立が恐らく知っておって買ったとは思いたくないのであります。そういうことは絶対にあり得ない。十何年来つき合ってきたペイリー社長さんを固く信じて、その人から情報を求めようとしたことが、言うならばひっかけられたというような形になりまして、不幸な事件となって疑いをかけられておるわけでありますが、こういう問題が日本の企業に嫌な影響を与えないでほしい、そして日米友好関係に溝を深くしないでほしい、そして日米貿易の摩擦が激しくならぬようにしてもらいたい、そして日本の企業がこのことで萎縮をしてしまわないように、本件が正当な手続をもって穏健に処理されることを心から願っておるものであります。  何といいましても、もし相手国から要請があれば、イの一番に法務大臣、こうなるわけでございますから、受けとめ方もボールの返し方も、法務大臣の一挙手一挙動が重視をされる問題でありますだけに、強くその問題を要請をいたしまして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。

羽田野忠文自由民主党

○羽田野委員長 林百郎君。

林百郎日本共産党

○林(百)委員 いろいろの観点から本件が検討されたのですが、私は、政府の正式な態度、要するにアメリカから身柄の引き渡しや捜査協力等の要請があった場合にどう対処するかということがいま国民の重大な関心事でもありますし、当委員会でも論議されました。この点について、七月一日の参議院の予算委員会で鈴木総理が、これは法務大臣にお聞きしたいのですが、「米国から日本政府に容疑者の身柄の引き渡しや捜査協力の要請があった段階で、日本の法律、制度、国益その他総合的な立場から(どう対応するか)判断したい」という判断基準を示しておるわけですが、これは法務大臣、十分御存じだと思いますが、これはどういうことか。この「身柄の引き渡しや捜査協力の要請があった段階で、日本の法律、制度、」これはわかりますが、「国益その他総合的な立場」、これはどういう意味でしょうか、法務大臣なりの御見解を聞かしていただきたいと思います。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 大臣のお答えの前に、事務的なお答えで恐縮でございますが、法制的な面といいますのは、先ほど来御議論ございますように、条約あるいは引渡法の定める要件に合うかどうかという問題があるわけでございますが、そのほかにも、たとえば自国民の引き渡しについては裁量があるというようなこともあるわけでございますので、その法制面の問題も、単なる技術的な問題じゃなくて、それも帰するところは技術的な問題になるかもしれませんけれども、条文の表面的なことではなくて、その解釈、運用も十分見きわめなければならないということも含んでいるのだろうと思います。また、いま言ったような裁量権の働く余地もあるわけでございますから、そういう点を総合的に判断して慎重に検討するということをお述べになったものというふうに理解しております。

坂田道太自由民主党法務大臣

○坂田国務大臣 ただいま刑事局長から御答弁申し上げたようなことに尽きると思いますけれども、先ほどもお答えをいたしましたとおり、やはり日本といたしましては条約あるいは法令に照らしまして、それに合致する形できちんと慎重に冷静に対処したいという意味のことを申し上げたわけであります。

林百郎日本共産党

○林(百)委員 そうすると、今後法制的にも検討しなければならない問題がありますし、国益その他総合的な立場というものがありますので、裁量権でこれは絶対に引き渡さないとか絶対に捜査に協力しないということでもないし、また必ずやるという立場でもない、いまのところ政府はいろいろの点を検討して、慎重に両国民の納得するような処置をしたいということだと思いますが、それでいいでしょうか。

坂田道太自由民主党法務大臣

○坂田国務大臣 そのとおりでございます。

林百郎日本共産党

○林(百)委員 いろいろの点が出ておりますのであれですが、前田刑事局長、あなたは国内でこういう犯罪は成立しないと言っていますが、贓物に関する犯罪で、贓物についての運搬等の罪は国内で成立するわけです。  アメリカの検察庁から出た資料だと思いますが、法務省のこの資料を見ますと、日立関係の者はギャレットソンやキャラバンと謀議をした。これが一体罪になるかどうかということも問題だと思いますが、同時に、被告人レイモンド・J・カデット、パリー・サファイ、タバサム・アヤジに関しては、州内で運搬をした、あるいは日本へ持ってきたということがあるわけですね。そうすると、前半の謀議と二番目の被告人レイモンド・J・カデットやパリー・サファイ、タバサム・アヤジ、これらをやると共謀共同正犯の可能性も出てくるので、アメリカから物を言ってくるまで日本の国の捜査当局は全然動きませんということで通るのでしょうか。  やはり日本の捜査当局は日本の捜査当局で、刑法の贓物に関する犯罪の成否について、独自の捜査と言えばきつい言葉だとすれば、いろいろの調査なり検討をする必要があるのじゃないですか。何も身動きしないでいいのでしょうか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 御質問の前提でございますが、国内で犯罪が成立しないというような言い方をした覚えはないわけでございます。そういう御議論がありましたのは、いま現在起訴されている事実、ああいう形でのとらえ方で引き渡し要求に乗るか乗らないか、あるいは捜査共助に乗るか乗らないかという趣旨のお尋ねでございましたから、ああいう形のとらえ方では乗りにくいでございましょう、そういうことを言っただけでございます。

林百郎日本共産党

○林(百)委員 そうすると、国内法に触れる可能性がないといま捜査当局が言っているわけではない、こういうように聞いておいていいのですか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 先ほど御指摘のいわゆる共同謀議罪と他の三名の贓物運搬的な行為とこれがどういう関係になるかということは、先ほどたしか稲葉委員からのお尋ねでもあったかと思いますが、起訴状自体からは必ずしもその関係がはっきりしないということがまず一つあるわけでございます。それはいずれ、これからアメリカの裁判手続が進行するにつれて、ある意味ではわかってくる面もあろうかと思います。したがいまして、現在私どもが承知しておりますことは、起訴された外形といいますか、そういう外形だけでございますので、直ちにあの資料から国内犯的なものが成立するというふうにはなかなか言い切れないということはそのとおりだろうと思います。  ただ、いろんなことはもちろん考えなければならないわけでございますから、その点はできるだけ、今後の問題ではございますけれども、わかる範囲内で事実関係も把握をいたしまして、それに対応した措置が必要であれば、措置をとるというのは当然のことでございます。

林百郎日本共産党

○林(百)委員 国際的にこれだけの重大な問題になり、それからアメリカの検察当局の公訴事実の示しもあり、それによれば、解釈のとりようによっては共謀共同正犯も成立する可能性があるといえば、これは言うまでもなく捜査当局を動かす端緒となり得る資料だと思うのですよ。こういうものが出されたにもかかわらず、引き渡しの申し入れもないし、共助の申し入れもないから私の方は何もやりませんというような意味にとれることを答弁しているのですが、それでいいのですか。  そうではなくて、それは日本の捜査当局は捜査当局で独自の考えを持って対処していくつもりだ、しかし、いまアメリカから出された公訴事実のこの範囲をそのままとれば、日本の国内法としては犯罪の成立はやや問題があるのじゃないか、そういう意味ですか。そこをはっきりさせてください。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 何回も繰り返しておりますように、犯罪になりませんとか何もやりませんとか、そんなようなことを申したつもりはございません。

林百郎日本共産党

○林(百)委員 最高裁にもお待ちを願っているのですが、この共助の申し入れがあった場合に、裁判所がそれに応ずる場合もあり得るわけなんですが、裁判所としてはいまの段階ではどういうようにお考えになっているでしょうか、共助の申し立てがアメリカからあった場合ですね。

小野幹雄最高裁判所事務総局刑事局長

○小野最高裁判所長官代理者 外国裁判所から嘱託がありました場合には、外国裁判所ノ嘱託ニ因ル共助法というのがございますので、それに基づいて処理することになるわけでございます。  具体的に申し上げますと、外国の裁判所から外国の外務省、今回の場合ですと米国の国務省でございますが、それと日本の大使館とで折衝をして、結局外交折衝に、個別的な折衝でございますが、その合意が得られるということになりますと、外務省を通じて最高裁判所の方にそれが嘱託されてまいるわけでございますので、あとは裁判所の方としては、このただいま申し上げました共助法に基づきまして、国内法によって適正に処理する、こういうことになるわけでございます。

林百郎日本共産党

○林(百)委員 共助法の発動に該当する場合は共助の発動もする、そういうように聞いておいていいのですね。ちょっと正式に……。

小野幹雄最高裁判所事務総局刑事局長

○小野最高裁判所長官代理者 そのとおりでございます。

林百郎日本共産党

○林(百)委員 続いて、各省から呼んでありますので、最高裁はもう結構でございます。  それから、外務省にお尋ねしますが、先ほどから逮捕状が召喚状に切りかえられたという話があるのですが、そういうことは外務省はお知りになっているのでしょうか。切りかえられたとすればどこの機構が、あるいは陪審の小法廷、審理をする裁判所が審理をする必要があるから出てこられたいという召喚状になっているのでしょうか、どうでしょうか。あるいは、日本政府にはまだ何の連絡もないので、外務省としてはわかりませんという段階でしょうか。そこの辺の身柄の召喚状についての説明をちょっと願いたいのです。

苅田吉夫外務省北米局北米第一課長

○苅田説明員 この逮捕状、召喚状の問題は、先ほどからいろいろお答えがなされているとおりでございます。特に、こういうものが出ました場合に、外交ルートと申しますか、外務省の方に正式に逮捕状が出ましたとか、あるいは今度は召喚状に切りかえられましたというようなかっこうでの通報はないわけでございまして、そういう段階で公式にそういうことについて通報を受けているかということでございますと、それはないわけでございます。ただ、情報収集の一環として、こういうものは公になっておりますので、したがって、その範囲におきましてはわれわれも同様な事実を把握しているということでございます。

林百郎日本共産党

○林(百)委員 召喚状については、どういう情報を外務省としてはキャッチしているわけですか。ちょっと手続の点とも関係してきますので、場合によっては法務省の答弁とあわせてお願いしたいのですが、要するに、起訴をするかしないかを決める大陪審については、被疑者に対しては必ずしも召喚はない、これはもう捜査の段階であるから機密で行われる、要するに被疑者が立ち会わなくてもよろしいんじゃないかという先ほどからの前田さんの答弁もあったわけなんですが、審理が始まる公判に、召喚状も出さないで審理が進められるということもないと思うのですが、審理の日程も新聞などでは知らされているような段階でございますが、この段階でも外務省では召喚についての何の情報もお握りになっていないのですか。

苅田吉夫外務省北米局北米第一課長

○苅田説明員 わが方で情報で承知しておりますのは、召喚状が出ているということでございます。ただ、その召喚状はもちろん出ただけでは意味がないわけでございまして、本人の方に送達される必要があります。本人の方に送達される段階で、これは外交ルートを通るなり、あるいはアメリカの大使館の領事を通ずるなりの正式な手続をとられなければならないわけでして、現在までのところそういう手続はまだとられていないということは、御本人の方には召喚状が渡っていないということであろうと存じます。したがって、その召喚状が御本人の方に到達するときには、外交ルートを通じて、あるいは領事を通じて正式な手続がとられるわけでございまして、それは現在のところまだとられていないという現状でございます。

林百郎日本共産党

○林(百)委員 ちょっと審理の手続にも関係してきますのであれですが、あなたのいま言っている召喚状というのは、事実審理をする裁判所から被告人としての出頭の召喚状、こういうように聞いておいていいのですか、そこから出ているんだと。要するに、どこから出ているかわからないんじゃ、召喚状が出ている出ていると言ってもわからないんで、ただしそれは本人のところへは行っていない、また日本の外務省にもまだ来ておらない、そういうように聞いておいてよろしいのでしょうか。

苅田吉夫外務省北米局北米第一課長

○苅田説明員 そういうことでございます。

林百郎日本共産党

○林(百)委員 前田さん、この法務省の方から参考にいただいた「公訴事実の要旨」を見ますと、窃盗の謀議をしたとか窃盗の賦物を運搬したとかありますが、だれがどこから窃盗したのかという点はみんなブランクになっていますが、これはどういうように解釈したらいいのでしょうか。要するに、おとりがやったからそれは公訴事実の中には載せられない、こういうように解釈していいのですか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 再三お尋ねを受けてお答えしておりますように、現在起訴されております公訴事実というのは、実行行為以前の、つまり贓品を国外、州外へ移送しようという謀議という実行行為以前の段階のことをとらえて、それを三百七十一条に該当するという形で起訴されているということでございますから、そういう形の起訴ができるわけでございますから、その結果、どういう実行行為をしたということは、これはまた別問題といえば別問題でございまして、そのことをこの形で起訴する限りにおきましては記載する必要はないものというふうに理屈上なるのだろうと思います。

林百郎日本共産党

○林(百)委員 あなたは「関連被告人の公訴事実」というものをお読みですか。これを見ますと、カデット、サファイ、「一九八一年八月ころ、IBMから窃取された書類の写しを、その情を知りながらカリフォルニア州から日本へ移送」ということもありますし、それからカデット、サファイ、アヤジは「一九八一年六月一日ころから一九八二年六月二十二日の間、カリフォルニア州サンタクララ等において、IBMから窃取され、州外又は国外へ移送中であった書類等を、その情を知りながら収受、隠匿、寄蔵」とあるのです。贓物が移動しているわけですよ。ところが、贓物だということは書いてあるけれども、だれがどこで贓物としたのか、それが抜けておるのはどういうわけかというのです。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 先ほどのお答えは日立関係者について、日立製作所も含めて十五人の人についての起訴状について申し上げたわけでございまして、あとの日本人でない三人のことについての起訴事実のことではないと理解したわけでございますが、その三人のことについては確かにそういう記載の起訴状であるということは、そのとおりでございます。ただ、アメリカの起訴状のことでございまして、私の方でこれがいいとか悪いとか言う立場にはございません。

林百郎日本共産党

○林(百)委員 別にあなたにいい悪いということを聞いているわけじゃないのですが、あなたも刑事畑で飯を食べた人ですから、窃盗の事実がないのに突如として贓物だというのが出てくるから、こういう公訴事実、一体だれがどこで窃盗したものか、だれがどこで横領したものかということがこの公訴事実にないということについてはあなたとしてはどうお考えか、こう聞いているわけですが、いい悪いなどと、そういう価値評価をあなたに聞いているわけじゃないのです。  私は、ここがおとりのわなの段階のものだから公訴事実に載らないのではないかということになりますと、この大事なところがわなだということになると、そのわなにいわゆるかけられた人たちだけが罪になってくるというのも、これも少しわれわれには納得しがたい点があるものだから、あなたに聞いているわけです。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 日本の起訴状のことでございましたら的確なお答えができるわけでございますが、アメリカの起訴状のことでございますので、いいか悪いかという表現は別といたしまして、これがおかしいとかどうも納得できないとかいうことも言う立場にないというふうに心得ております。

林百郎日本共産党

○林(百)委員 大分手がたい答弁で、何ともはや、お聞きしておきます。  それから、通産省にお聞きしますが、日立というのは、自分のコンピューターの事業の発展のために、IBMの三〇八一、三三八〇、三八八〇等の機械、これはどうしても必要で、これがなくては自分の企業の将来性に期待が持てない、だから、場合によってはこれは盗んでとまでは言えないでしょうけれども、場合によってはぎりぎりのところに行ってもこの情報はぜひとりたいものだ、こういうように前々から日立は考えていたのでしょうか。さっきの世界的なコンピューターのシェアからいって、どうしても日本がアメリカのIBMに追いつくには、この三〇八一以下三八八〇、三三八〇のソフトウエアを持っていなければ、自分のコンピューター事業のシェアを発展させることができない、不可欠のものだということだったのでしょうか。これは通産省にお聞きします。

関収通商産業省機械情報産業局電子政策課長

○関説明員 私どもといたしましては、現在アメリカの捜査当局等から明らかになっております起訴状に記載されております事実そのもの、これがまだ明確でないわけでございますから、それを前提に御議論申し上げるということはいささか行き過ぎではないかということで、本当に必要であったかどうかということについて申し上げることはできないわけでございますが、一つ申し上げられることは、日立のコンピューターと申しますのは、いわゆるIBMコンパティブルの機械であるということは申し上げられるわけでございます。実際に新しい機種の開発に本当に必要であったのかなかったのか、私どもからはうかがい知ることができないわけでございます。

林百郎日本共産党

○林(百)委員 それは通産省、十分御承知じゃないですか。これで余り言うと、わなの抗弁が成立するかしないかの微妙な点になるから言わないということであって、日立は欲しいことは欲しかったのじゃないですか。世界的にコンピューターのシェアを日立がこれ以上伸ばすには、何としてもIBMのソフトウエアの機能なり装置なりを十分知って、それと接続するようなものをつくるということは、日立がこれから伸びるためにはなくてはならないことではなかったのでしょうか、あなたは通産に通じている方ですからお聞きするわけですが。もし言いにくいなら言いにくいで結構です。いま微妙な段階だからちょっと遠慮させてもらいますというなら、それでいいですよ。

関収通商産業省機械情報産業局電子政策課長

○関説明員 確かに私どもコンピューター産業に関する行政に携わっているわけでございますが、個々の企業の意向ということについて申し上げることは、差し控えさせていただきたいと思います。

林百郎日本共産党

○林(百)委員 何についてはですか。

関収通商産業省機械情報産業局電子政策課長

○関説明員 個々の企業の意向でございます。意思、意向でございます。

林百郎日本共産党

○林(百)委員 意向ね、意図ね。まあそれはやむを得ないでしょう。  これは法務省に聞きますが、三菱電機の方は、いまアメリカの訴訟手続の段階ではどういう段階にあるのでしょうか。これは法務省の方にお聞きした方がいいと思うのですが、どうでしょうか。

苅田吉夫外務省北米局北米第一課長

○苅田説明員 三菱側につきましては、大陪審の手続が弁護人の方の要請によりまして延期されまして、まだ大陪審が開かれる前の状況になっているというふうに承知しております。大陪審がいつ開かれるかということはまだ決まっていないようでありますが、現地で報じられているところによりますと、今月の二十一日くらいまでには開かれるのではないかという、そういう状況だと承知しております。

林百郎日本共産党

○林(百)委員 その大陪審に対する三菱側の態度というようなものは、外務省ではおわかりにならないでしょうね。どのように訴訟に応訴していく方針かどうかということは、おわかりにならないでしょうね。それに対しては召喚状は来ているのでしょうか。

苅田吉夫外務省北米局北米第一課長

○苅田説明員 それはアメリカにおける一司法事件でございますので、それに対して日本の企業がどういうふうな対応をしようとしているかというところまでは、われわれは把握しておりません。  それから、三菱の方に対する召喚状についても、日立と同様にまだ手続がとられていないというふうに承知しております。

林百郎日本共産党

○林(百)委員 前田さんにお尋ねしますが、日立の成瀬主任技師が、ギャレットソン氏の手引きで三三八〇型電算機を、こっそり会社に忍び込んで、これはもちろんFBIの手引きがあったのですが、写真を撮った、そういう事実があるということは御承知ですか、あるいは新聞でごらんになったことありますか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 詳細には存じておりませんが、すでに公表された例の宣誓供述書と申しますか、その一部にそういうような記載があるように承知しております。

林百郎日本共産党

○林(百)委員 通産省にお尋ねしますが、日立とそれから三菱電機はいずれも通産省の電子計算機等開発促進費の補助を受けていると思いますが、これはどのぐらいの補助を受けておりますか、おわかりですか。とりあえず最近のものだけでもいいです。

関収通商産業省機械情報産業局電子政策課長

○関説明員 昭和五十四年度から五カ年計画で次世代電子計算機用基本技術の開発促進事業というのを実施しております。これに対して補助を行っていることは事実でございます。補助対象は研究組合に対して行っているものでございます。

林百郎日本共産党

○林(百)委員 金額は総額幾らですか。五十七年度予算でどのぐらいですか。  それとついでに、時間がありませんから、五十六年度の決算で日立は幾らの経常利益を上げているか、おわかりですか。

関収通商産業省機械情報産業局電子政策課長

○関説明員 数字につきましては、後刻御説明をさせていただきたいと思います。先生の御質問の時間中に御報告させていただきたいと思います。

林百郎日本共産党

○林(百)委員 法務大臣、最後の質問でお聞きしておきますが、日立にいたしましても三菱にいたしましても、この二十年間に約一千二百億円の情報産業といいますか、特別の補助金を政府が出して、これは一社年間二十億ぐらいになるわけですが、日立の昨年の経常利益が一千百七十七億円という、これは実に日本の大企業中の大企業なんですね。  本件についてアメリカのやり方も、これは国策に沿って、IBMが後から追っかけてくる日立をひとつひっかけて切り離そうという意図、あるいは軍事秘密も絡んでいるかもしれませんが、そのために手段を選ばない、われわれ日本国民から言えば実に汚いと言ってもいいような、おとり捜査と言うべきような手段をとっているように私は思うわけです。もっとも、アメリカの法体系だから、アメリカはそういうことは常識だと言えばそれまでですがね。  しかし同時に、日立が、先ほども言いましたように、人の会社にもぐり込んでそっと写真を撮るとか、それから大体客観的には、このIBMの書類は正常では出てこない書類ではないかというようなものを金を出して買い取るということも、日本の企業として余り好ましくないと思うのです。ことに外国の企業は別としても、日本の企業で国の補助を受け、年間一千億以上もの利益を上げている大企業は、やはりその企業の社会的、道義的責任、これは日本の国の面目にもかかわる問題ですから、そういう点は十分に企業のモラルというものは守っていくべきではないかというように私は思うわけです。  あなたは閣僚の一人ですから、あれもこれも聞いてなんですけれども、そういう企業の社会的、道義的責任、いやしくも国の恥にならないような、そういう企業のあり方をすべきじゃないかというように私は思いますが、法務大臣はどうでしょうか、閣僚の一人として答えてください。

坂田道太自由民主党法務大臣

○坂田国務大臣 まだ事実関係が明らかになっておりませんので、何とも申し上げようがございません。しかしながら、一般的に申しまして、日本の企業が公正な競争をやって正々堂々とシェアを伸ばしていくということが望ましいということは、はっきり言えると思います。  また、日本の工業というのは、どちらかといいますと、相手国のあるいは世界各国のいろいろな企業の情報を得まして、そしてそれを大量生産していく、製品化していく、その産業力というものは世界に冠たるものではないだろうか。また、それが日本の経済力をここまで培ったゆえんだというふうに思うのです。ちょうど日本の大学におきまして工学部というのが非常に大きくなってしまって、そしてクリエーティブな、創造的な学問、基礎的な研究を担当する理学部というものがそれに比してはか弱い。したがって、ノーベル賞級の学者というものが世界に比較すると少ないというのは、やはり日本のまだ未熟な点ではないだろうか。  これからは、日本の企業もクリエーティブなソフトウエアについてもう少し力を持つべきであるというように私は思いますし、その上に立って正々堂々と競争して、そしてりっぱに日本の企業が世界のシェアを広げていくということが望ましいことであるし、閣僚としてそういうことを私は期待いたすものでございます。

関収通商産業省機械情報産業局電子政策課長

○関説明員 先ほどお尋ねの数字について御説明申し上げます。  次世代電子計算機用基本技術の開発促進費として、五十七年度の予算額が五十六億一千六百万円でございます。

林百郎日本共産党

○林(百)委員 一社当たりですか。

関収通商産業省機械情報産業局電子政策課長

○関説明員 トータルでございます。これは研究組合に対して補助される額でございます。  もう一つのお尋ねの日立製作所の業績でございますが、五十六年度の決算額の経常利益額が、一千四百三億円強でございます。

林百郎日本共産党

○林(百)委員 結構です。終わります。

羽田野忠文自由民主党

○羽田野委員長 安藤巖君。

安藤巖日本共産党

○安藤委員 いろいろ質疑が行われてまいりましたので、私は、まず一般的に国内法の関係についてお尋ねをしたいと思うのです。  逃亡犯罪人引渡法という法律があります。そして、日本国とアメリカ合衆国との間の犯罪人引渡しに関する条約というのがあります。そこで、この日本とアメリカとの間の犯罪人引渡しに関する条約に従ってアメリカから日本政府に対して犯罪人の引き渡しの要請があったときは、この条約の中には細かいことは書いてありませんので、あったときは逃亡犯罪人引渡法の定める手続に従って引き渡しが行われる、こういうような関係になっておりますか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 現実に引き渡しに応ずるかどうかということは別問題でございますが、仮に引き渡しに応ずるという場合の手続といたしましては、御指摘のとおり、引渡法に定める手続によるということは当然でございます。

安藤巖日本共産党

○安藤委員 当然引き渡しの要求があったときの一般的な話として、応ずるかどうかは別の話です。  そこで、逃亡犯罪人引渡法の法理は、まず外務大臣を通じて引き渡しの請求があったときは云々というのが第三条。それから第四条で、法務大臣にこの旨の書面の送付があって、そこで法務大臣が措置をする。それから今度は、東京高等検察庁に引き渡すべきだということ、いろいろ要件が四条にありますね。東京高等検察庁に指示がなされる。それから東京高等検察庁は東京高等裁判所に審査の請求をする。そして東京高等裁判所が決定を出して、それから第十四条に「逃亡犯罪人を引き渡すことが相当であると認めるときは、」と「相当でないと認めるときは、」と両方ありますが、こういうふうに何回かにわたってチェックをする機会があるということになっておりますね。  そこで私はお尋ねしたいのですが、この日本とアメリカとの間の犯罪人引渡しに関する条約の第五条、ここで「被請求国は、自国民を引き渡す義務を負わない。」とちゃんと原則が書いてあるわけです。「ただし、被請求国は、その裁量により自国民を引き渡すことができる。」こうなっておりますね。そうすると、この「裁量により」というのは一体どの段階で、たとえばいま私が言いましたような逃亡犯罪人引渡法、この中で、たとえば東京高等裁判所が引き渡すことが相当であるということを認めたときでも、さらに法務大臣はいろいろ検討する機会があるようですね。だから、その段階でこの裁量というのが働くことになるのか。あるいは本件に関しては先ほど国益云々というような総理の答弁もあったようです。私は、本件とIBMとは一応離れてお尋ねしておるのですが、もっと高度な政治的な判断というのが行われるという意味でこの第五条の「裁量により」というのがあるのか、どちらだろうかと私はさっきから一生懸命考えておるのですが、よくわかりませんのでお尋ねをしたいと思います。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 逃亡犯罪人引渡法、すでにるる御指摘を受けているわけでございますが、その手続の中で、当初は外務大臣が、請求の方式が条約なら条約による場合には、その方式が条約に適合しているかどうかという審査が行われるわけでございますが、その後は法務大臣の方に手続が移ってくるということでございまして、そこで四条で「次の各号の一に該当する場合を除き、」というのが一つあるわけでございます。それで一号から四号までにございまして、それぞれそれなりに裁量権があるということは、この条文からも明らかになっていると思います。また、先ほども御指摘のように、高等検察庁、さらに高等裁判所の手続が済みました後で、最終的にまた法務大臣の判断ができるということでございますから、それぞれの段階に応じて法務大臣の裁量権というものが、その事柄に応じてではございますけれども、働く余地がある、こういうふうに考えられるわけでございます。

安藤巖日本共産党

○安藤委員 そういうことだけにこの五条の裁量というのがあるのだというふうに言い切っていいのかどうかということですね。手続的には逃亡犯罪人引渡法の中に、いま私が言いましたように、それから御答弁がありましたように、いろいろ検討する機会があるようです。先ほど私は、高等裁判所の決定があった後に法務大臣が、ちょっとそこの辺がよくわからぬですけれども、さらに法務大臣が検討する機会があるように思っていたのですが、いまこれを見ると、どうもそれはないようですね。一応やはり裁判所の決定があればそれに従う。裁判所は引き渡すことが相当でないと認めたときは、もうすでに釈放を命じなければならぬ、こういうことになっておるわけです。だから、この件はそれでもう一切落着ということになってしまって、あと十四条の三項も手続的な規定にすぎぬようですね。  そうしますと、高等裁判所の決定が出るまでの間、しかし裁判所は裁判所の独自の判断ですから別として、高等裁判所に審査を求めるまでの間の、法務大臣がいろいろ検討するあるいは外務大臣が検討するというのがこの日米間の引渡し条約の第五条の裁量だと言っていいのか。そうではなくて、やはりこれは、大臣もお見えですが、そういうようなものが高等裁判所に審査を請求する前の段階で、閣議ででもいろいろ御相談をなさることなのか、あるいは高等裁判所の決定が出た後で、なおかつ今度は逃亡犯罪人引渡法の手続以外に高度な政治判断というのが働く余地があるのかどうか、こういうことなんです。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 逃亡犯罪人引渡法の条文に即して申しますと、「法務大臣の措置」といたしまして第四条の規定があるということを先ほど申しました。各号が列記されておりまして、特に三号、四号辺がいまの御指摘の問題に関係する規定であろうと思います。ただ十四条には、高等裁判所の決定があった場合において、法務大臣は、引き渡すことが相当であると認めるときはという規定がまたあるわけでございますから、十四条においてもそういう裁量の余地があるということは、また規定の上から明らかであろうと思います。  ただ、その前提といたしまして、裁判所の御判断は、第十条の規定からもわかりますように、「逃亡犯罪人を引き渡すことができない場合に該当する」とかあるいは「引き渡すことができる場合に該当する」とかということでございまして、相当性の判断はそこには入っていないわけでございます。つまり、形式要件と言うと言い過ぎかもしれませんけれども、そういう要件に当たっているかどうか、要するに引き渡すことができるかできないか、そういう判断をされるというふうに条文の上でもなっているわけでございます。

安藤巖日本共産党

○安藤委員 そうしますと、高等裁判所の決定があった後でも、なおさらに法務大臣が検討をするということですね。そしてそういう余地が残されているというお話ですが、そのほかに、私が先ほど言っておる高度の政治的な判断というのがこの裁量という中に入っているのかどうかという点は、どういうふうに考えておりますか。前田刑事局長で少し荷が重過ぎるというのであれば、法務大臣にお答えいただいた方がいいんではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 いまお尋ねの言葉をかりて申しますと、高度な政治的判断と言いますと何か誤解を受けるような感じもないわけではないのでございますが、条文に即して言えば、要するに引き渡すことが相当であるかどうかということでございますから、政治的な判断ももちろん否定はしないわけでございますけれども、あらゆる事情を総合判断して引き渡すことが相当であるかどうかということでございまして、その中にはいろいろな要素が考えられるであろうということしか申し上げられないわけでございますし、いずれも具体的な事案に応じてのことでございますから、抽象的に申し上げるのもまた適当でないというふうに思います。

安藤巖日本共産党

○安藤委員 大臣、どうですか、御答弁いただけますか。

坂田道太自由民主党法務大臣

○坂田国務大臣 ただいま刑事局長が答弁したとおりに考えております。

安藤巖日本共産党

○安藤委員 私が高度なと力強く言うたもんだから、いろいろ慎重にお構えになったようですが、いま御答弁あったように、これは政治的な判断というのが入らなかったらおかしいんじゃないかという気がするのですね。  ところで、時間がないから国際捜査共助法の関係についてお尋ねをしたいのですが、この国際捜査共助法に基づく共助というのは、結局証拠を、日本の場合で言うと日本で集めてくれ、そして提供してほしい、こういうことですね。  ところで、この共助法に基づく共助の請求のときには、どの程度の資料あるいは犯罪事実、あるいは証拠が犯罪を立証するのにこうこうこういう点で必要だ、これは第二条の四号にありますけれども、どの程度のものが出るのだろうか。四号の関係はいいとして、一応書面がないときはだめだと書いてありますから、しかし、二条の二号の関係からいいますと、「共助犯罪に係る行為が日本国内において行われたとした場合において、その行為が日本国の法令によれば罪に当たるものでないとき。」これは共助することができないわけでしょう。だから、日本国の法令によれば罪に当たるのか当たらないのかということを判断することができるような事実関係を記したものがなければならぬと思うのですが、そういうことはちゃんとはっきりしておるのでしょうか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 規定の上では抽象的な言い方に当然ならざるを得ないわけでございますが、請求国といいますか、この場合は要請国でございますが、要請国から要請がある場合に、当然この法律にのっとって共助してくれということを考えてのことでございますから、その要件は十分相手方も知っているというふうに思われるわけでございます。  そこで、具体的なことは運用の問題になるわけでございまして、一応要請国の方で資料を整えて、これで共助をしてもらえるかというふうに言ってくるわけでございます。ですから、それで足りる場合もございましょうし、私どもがそれを拝見して納得できるかできないかということになりまして、足りない場合には、疑問があれば疑問を提起して、この点はどうなっておるか、こういう関係の資料が不十分ではないかということを言うことはもちろん可能でございまして、そういう過程を経て私どもがこの要件を満たすという判断ができましたときに、初めて実際に証拠収集の手続が行われる、こういうことになるわけでございます。

安藤巖日本共産党

○安藤委員 いま言われましたように、いろいろまだこういう関係の事実がはっきりしないとかも含めてやりとりをなさるだろうということも思うのですが、本件のIBMの事件の関係で言いますと、先ほど来刑事局長が答弁しておられるのを聞いておりまして、起訴状のいわゆる起訴事実、新聞に起訴事実と書いてあるのですが、日本で言う公訴事実ですね。この関係については、運搬、移送しようと現実に共謀したということですね。そして謀議を助長し、その目的を達成させるため幾つかの行為を行った。ということになると、これは日本の犯罪の構成要件に該当しない。ということになると、共助の申し立てがあっても、この段階では先ほどの第二条の二号によってこれはだめということを言うことになるわけですね。  先ほども議論がありましたが、これは日本人に関係するものですが、もう一つの、これはやはり起訴状なんでしょうね、アメリカ人三名に対する犯罪容疑、これは運搬が入っているわけです。盗品運搬、移送、盗品受領というのがあるわけです。両方の起訴事実を突き合わせて読んでみると、それからFBIの調査事実、私も一応ずっと目を通してみたのですが、この運搬、移送と、日本人が起訴されている起訴事実の中のいろいろな手紙を出したり、電話をかけたり、会合したりということとは、全く不即不離一体となって行動がされているわけですね。ということになると、実行行為者、それと共謀した人、いわゆる共謀共同正犯ということで、これは一体のものとして日本の国内で行われた場合には法令によって罪に当たる者と言い得る可能性も出てくるのではないかという気がするのです。  だから、そういった場合に、贓物関係の予備罪なんてないということでけ飛ばすことはできないというような事態になることもあるのじゃないか、そうすると、やはり捜査共助法に基づく捜査共助ということも出てくるのではないかと思うのですが、その点どうなんでしょうかね。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 その点はすでに一般的なお答えで申し上げたつもりでございますが、私が申し上げましたのは、ああいう起訴状に掲げられているような、特に日本人関係の分といたしまして起訴状に掲げられているような事実そのままでは、共助の対象にはなりにくいでしょうということを申しました。その際つけ加えまして、ただし、その事案の中身あるいは関連する事実として捜査共助の対象となり得る犯罪事実がないとは言えないでしょうということも申したつもりでございます。ですからそういうことが、一般論でございまして、具体的に本件についてあるということではございませんけれども、仮にそういうことがあるといたしました場合には、そういう形でアメリカならアメリカが整理をいたしまして、こういう犯罪で捜査の共助を要請するんだというふうになりました場合には、対象になることはあり得るということは当然でございます。  これは、国際捜査共助法で「共助犯罪」という定義が書いてございまして、要するに「要請国からの共助の要請において捜査の対象とされている犯罪をいう。」ということでございます。つまり平たく申しますと、自分のところではこういう犯罪、こういう事実について捜査をしておるので、その関係でひとつ協力してくれ、こういうことを言ってくることを想定しているわけでございますから、その前提となる捜査対象の犯罪というものがこういうものだということを言ってきました場合に、それが果たして二条の要件に当たるかどうかということが判断の対象になる、こういうことでございます。

安藤巖日本共産党

○安藤委員 最高裁からも来ていただいておりますのでお尋ねしたいのですが、いまの捜査共助法の第九条の関係で、これは関係人が「出頭若しくは取調べに対する供述を拒んだときは、検察官は、裁判官に証人尋問を請求することができる。」だから、拒んだ場合ですから、この証人尋問の請求というのは検察官の方ですが、これはやはり逮捕するとかあるいは勾留するとか、拘禁と言った方がいいですか、そういうような強制的な処分を要求することになるんじゃないかなと思うのですが、そういうときに裁判所の方で、この一連の捜査共助手続の中で、いまの日本の刑事訴訟法ですね、被疑者、被告人の防御権を保障するようないろいろな規定があるのですが、そういう規定、刑事訴訟法の準用とかなんとかということがどうもよう見ても見当たらぬのですが、その辺の取り調べられる人の基本的人権の保障の関係はどういうようなことにして扱われるわけでしょうか。

小野幹雄最高裁判所事務総局刑事局長

○小野最高裁判所長官代理者 国際捜査共助法の十二条に「刑事訴訟法等の準用」がございまして、大体必要な規定は刑事訴訟法を準用しているわけでございます。

安藤巖日本共産党

○安藤委員 はい、わかりました。いや、私の持っているのは十二条がちょうど抜けている。十一条から十三条に飛んでいる。私ももっともとに当たらなければいけなかったかもわからぬですが、そうですか。  そこで、法務省にお尋ねしたいのですが、この九条はやはり、先ほど私の方から言ってしまったのですが、これは強制捜査というようなことになる場合のことを言っておるのでしょうか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 先ほどちょっと聞き漏らしたかもしれませんけれども、安藤委員は、関係人が「出頭若しくは取調べに対する供述を拒んだとき」というふうにまずおっしゃったような気がいたしますけれども、その前に「共助の要請が証人尋問に係るものであるとき」というのが一つの場合としてあるわけでございます。これは要請国が証人尋問を最初から頼みたいということを言ってくる場合を当然想定しているわけでございます。というのは、裁判所の尋問でないと証拠として価値が薄いというようなことを要請国が考える場合が当然あるわけでございますので、そういう場合にも当然証人尋問が行われるわけでございますし、それから第二の類型として、捜査機関がいわゆる取り調べをする、それに対して応じないという場合に、日本の刑訴でも証人の裁判官尋問があるわけでございますが、それと同じような形で裁判所にお願いをして証人尋問をしていただく、こういう二つの類型をここで書いているわけでございます。

安藤巖日本共産党

○安藤委員 いや、それもわかるのですが、やはり私が気になるのは、前条第一項でしょう。前条第一項というのは、検察官または司法警察員が関係人の出頭を求めて取り調べるというようなときでしょう。その出頭もしくは取り調べに対する供述を拒んだときですから、出てこないあるいは出てきてもしゃべらないというようなときですね。出てこないときの出頭を確保するには、やはり逮捕状の請求をするとか何かしないと出頭を確保できない。裁判官の前に連れてくることができないんじゃないかと思うのです。だから、そういう点でこれは強制捜査が入っておるのかということを聞いているのです。

小野幹雄最高裁判所事務総局刑事局長

○小野最高裁判所長官代理者 裁判所といたしましては、まず召喚するわけでございますが、召喚に応じなければ、先ほど申しました十二条で刑事訴訟法が準用されておりまして、証人でございますので勾引ということに相なると思います。終わればすぐ帰っていただくということになります。

安藤巖日本共産党

○安藤委員 時間がなくなってきましたので、最後に一点だけお尋ねしたいんです。  先ほどの日米間の犯罪人引渡しに関する条約の第五条に戻りますけれども、私、どうも気になってしようがないのは、何度も言いますが、この第五条によると「被請求国は、自国民を引き渡す義務を負わない。」のですよ。「ただし、」と言って、先ほど言った裁量があるんです。先ほど来前田刑事局長は、その引き渡しの問題に関して、いまの事実の把握では、起訴状に書いてある事実では日本の犯罪構成要件に該当するというようにはどうも思えない云々ということをいろいろ言っておられるけれども、この原則で自国民を引き渡す義務はないのですと堂々と言ってしまっていいんじゃないかと思うのですが、何か言い切れないあれがあるんですか。先ほど言った裁量とか、何とかかんとかというのがあるんですかね。  第三条に「引渡しは、引渡しを求められている者が被請求国の法令上引渡しの請求に係る犯罪を行ったと疑うに足りる相当な理由があること」とあるんですね。これにかかずらわって、日本の法体系からすると、贓物の関係の予備とか共謀とか、実行行為のないのはどうも犯罪構成要件に該当しないから云々ということをおっしゃる必要もなくて、もし仮に請求があった場合、被請求国日本は、日本の国民を引き渡す義務を負わないと書いてあるのですよ。いまの段階であれこれ結論めいたことを言うのははばかるということは言わずに、堂々と書いてあるこの原則で行くんだというふうに言ったっていいんじゃないかと思うのです。どうもその辺のところが煮え切らぬで気になるのですが、その辺どうなっておるのですか。  それだけをお尋ねして、質問を終わります。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 別に特段の考え方で申しているわけではございませんで、この条約なり引渡法の立て方と申しますか、そういうことは、順序というと変でございますけれども、要件が決まっているということが先行するような理解をしておるわけでございます。もちろん安藤委員のように、それを飛ばして結論を先に出すということも不可能ではないと思いますけれども、五条自体が、すでに御案内のとおり、原則は義務を負わないと書いてございますが、ただし、被請求国はその裁量により引き渡すことができるということもあるわけでございまして、この本文とただし書きを一体として考えます場合に、何も前の事実関係をはっきりさせないで、この本文とただし書だけで勝負をするというわけにもまいらないんじゃないかというふうに思うわけでございます。そういう意味で、別に犯罪事実がどうこうということにこだわって言っているというつもりではございません。

安藤巖日本共産党

○安藤委員 終わります。     —————————————

羽田野忠文自由民主党

○羽田野委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政に関する件調査のため、来る十四日、参考人の出頭を求め、意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

羽田野忠文自由民主党

○羽田野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人の人選につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

羽田野忠文自由民主党

○羽田野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十九分散会

国会会議録検索システムで原文を見る ↗