法務委員会 第20号
- 発言数
- 91 件
- 登壇者
- 10 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1982/05/14
会議録
○羽田野委員長 これより会議を開きます。 内閣提出、外国人登録法の一部を改正する法律案を議題といたします。 この際、申し上げます。去る四月二十七日の委員河上民雄君の質疑に対する警察庁の回答が文書で提出されておりますので、念のため御報告いたします。 金大中氏事件捜査の過程で、写真面割りあるいは目撃者の証言等により、金東雲が本件に関係があるという重大な疑いが出た段階で、刑事訴訟法第百九十七条第二項の規定による公務所等(法務省)に対する照会をして入手したものである。 以上であります。
○羽田野委員長 本案につきましては、去る四月二十七日質疑を終了いたしております。 この際、本案に対し、安藤巌君から修正案が提出されております。 修正案について提出者から趣旨の説明を聴取いたします。安藤巌君。 ————————————— 外国人登録法の一部を改正する法律案に対する修正案 〔本号末尾に掲載〕 —————————————
○安藤委員 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となっています外国人登録法の一部を改正する法律案に対する修正案の提案理由を御説明いたします。 現行外国人登録法は、在日外国人の管理を強調する余り、運用上著しく人権を侵害する事例が多発しており、改正案で一定の是正をしていますが、なお不十分な点が多いと言わざるを得ません。 修正案は、在日外国人に対する警察官等による取り締まりの乱用、人権侵害を防止し、過重な負担を強いることを改めようとの趣旨に基づき、登録証明書の常時携帯義務及び指紋の押捺を廃止するとともに、本人出頭等の義務年齢を成人(二十歳)に引き上げ、確認申請や職業、勤務地の登録など不必要な制度をなくし、罰則の一部を軽減しようとするものであります。 修正案の各項の内容及び理由は以下のとおりであります。 第一は、登録、変更等各種申請の際の本人出頭義務、写真提出義務年齢について、改正案で十六歳となっているのを二十歳に引き上げます。 改正案が十六歳とする主たる論拠は義務教育年齢でありますが、民法、少年法等による成人としての義務年齢は二十歳となっており、各種の保護、権利の規定には十八歳あるいは十六歳などの規定もありますが、義務を課す年齢は外国人であっても二十歳が妥当であると考える次第です。 第二は、登録証明書の常時携帯義務を廃止します。 改正案は、常時携帯義務違反に対する罰則の懲役、禁錮刑を削除し、二十万円以下の罰金刑のみに軽減していますが、右改正だけでは、常時携帯義務を根拠とした警察官等による取り締まりの乱用、人権侵害事件はなくなりません。 常時携帯義務は、不法入国等の摘発に必要との理由で設けられていますが、当該外国人について、仮に登録証明書を携帯していなくとも、市町村並びに法務省に登録原票、同写票が保管、整理されており、直ちに照会できるので不都合はないのであります。 なお、登録証明書の提示義務は、関係公務員から提示を求められた際に適当な方法で提示できればよいものとし、その方法、期限等必要事項は別に法務省令で定めることとしました。ただし、二十歳未満の者は提示義務を免れることとし、提示義務違反に対する罰則も五万円以下の過料に軽減します。 第三は、確認申請の廃止であります。 改正案は五年ごとに本人(十六歳以上)が市町村に出頭して確認申請することとしていますが、これは一方で登録事項に変更がある都度変更申請義務が課せられているので不要であります。もともと期限つきの在留資格を有する外国人は、期限が切れる都度在留期間延長の申請が必要であるし、永住許可を有する外国人については、日本人に比べて特別に重い義務を課す理由はないのであります。 第四は、指紋の押捺を廃止することであります。 現在、各種申請の際に、登録原票、指紋原紙、登録証明書に指紋を押捺させていますが、外国人から罪人扱いで屈辱的との批判が強く、また市町村には鑑定者もおらず、現実にはほとんど利用価値がないのであります。諸外国の例を見ても、主要十九カ国のうち米国、インドネシア、フィリピン、韓国の四カ国しか指紋押捺制度採用国はありません。 第五は、登録事項から「職業」、「勤務所又は事務所の名称及び所在地」を削除する点であります。 在日外国人は、一般的に出入国管理及び難民認定法により在留資格そのものが厳格に規定されており、職業の選択自体一定の制約を受け、職業変更が在留資格の変更を伴う場合が多いのであって、あえて登録原票等に記載する必要はありません。また、永住許可者の場合は、本来いかなる職業につくのも自由であり、特に過重な負担を課する合理的理由はないのであります。 第六は、罰則の軽減であります。 改正案は、申請の不履行及び虚偽申請に対する罰則を一年以下の懲役、禁錮または二十万円以下の罰金とすると定めていますが、これは重罰主義に過ぎます。これらの行為は、本来行政秩序罰たる過料を課せば十分であるので、戸籍法、住民基本台帳法との整合性を勘案して、五万円以下の過料とすることとします。 以上が、外国人登録法の一部を改正する法律案に対する修正案提出理由の趣旨であります。 何とぞ、慎重審議の上、速やかに御可決いただきますようお願いをいたします。
○羽田野委員長 これにて修正案の趣旨の説明は終わりました。 —————————————
○羽田野委員長 これより原案並びに修正案を一括して討論に入ります。 討論の申し出がありますので、順次これを許します。稲葉誠一君。
○稲葉委員 外国人登録法の一部を改正する法律案、修正案を含めまして、日本社会党を代表して討論をさせていただきます。 最初に、委員長以下各位にお礼を申し上げるといいますか、本法案に対しましては非常に慎重に討議をいただきまして、しかも参考人まで招致して、そして本法案の持ついろいろな問題点というものが明らかにされました。私は、国会の審議として、かかるやり方こそが国会にふさわしいものであるというふうに考えてお礼を申し上げる次第ですし、同時に、この方法といいますか、審議のやり方と申しますか、こうしたものにつきましては、今後出てまいりまする各種のいろいろな法案につきましても、これを模範として、このよき伝統というものを当委員会においては守らせていただきたい、かように存ずる次第でございます。 本法案につきましては、外国人登録令の時代から、あるいは外国人登録法に至る制定の経過、そしてまた指紋の押捺制度が採用されました経過等全体を歴史的に眺めてみましたときに、それが在日外国人、特に在日朝鮮人を中心とする人々に対するいわば管理といいますかあるいは弾圧といいますか、治安立法的な性格を強く持って運営をされてきたことは、これは争いがないところであります。そのようなことを考えますと、との法案については私どもは多くの問題点がある、法案そのものというよりもむしろその運用面というか、それが意図すると意図せざるとにかかわらず、その運用に大きな問題点があるということを強く指摘をせざるを得ないわけでございます。 今度の改正案は、第一に、各種申請等に際しての本人出頭、新規登録等の申請に際しての写真提出、登録証明書の携帯等の各義務を課する年齢を十四歳以上から十六歳以上に引き上げる、これが第一でありますし、第二は、外国人は、新規登録を受けた日または前回確認を受けた日から三年を経過する日までに登録事項の確認の申請をしなければならないこととされておったのを、五年を経過する日までに確認の申請をすれば足りる、それから十六歳に満たない者については確認の申請を要しないことにした、第三は、登録証明書を携帯しなかった者に対する法定刑のうち自由刑を廃止することとする等罰則についての整備をした、こういうふうな大きく三つの点がその改正案の趣旨になっておるわけであります。このことにつきましては、非常に詳細に本委員会におきまして質疑が行われ、政府からも答弁がございました。 これに対する私どもの社会党の態度というのは十分おわかりを願っておるというふうに思いますが、私どもは四項目にわたりましてこの問題点を指摘し、その修正というか要綱を提示をいたしまして、たたき台として皆さん方にお示しをいたしたわけでございます。 その第一は、いわゆる確認期間というものを三年から五年にする、こういうことではありますけれども、本来ならば永住者、これは協定永住にしろあるいは一般永住にしろ特例永住にしろ、永住者というものについては確認というものは要らないのではないか、一方において永住を認めておりながら、その期間を限って確認するということはおかしいではないか、こういう基本的な議論があるわけですが、少なくとも現実的な問題としてこれを十年程度にするということも当然考えていいのではないか、永住者の場合には特にその点についてまた格段の考慮をしてもいい、こういうふうに考えたのが第一の点であります。 第二の点は、いわゆる基準年齢の問題で、十四歳を今度十六歳にするわけですけれども、元来十四歳にしたという理由が、率直に言って明瞭ではなかったわけですけれども、やはりこれは刑事未成年の限界というふうなものを考慮してされたのだと思うのですが、今度、案は十六歳ということですが、私どもとしては、これはもう当然のこととして、普通の少年法の適用その他からいっても成人というのは二十歳、民法でも二十歳ですから、二十歳というものを基準とするのが通常ではあるけれども、まあ現実的な処理として一応十八歳までということにしてもいいではないかということをお示しをいたしたわけであります。 そしてまた、指紋の押捺制度の問題につきましては、これは各国によってその歴史的な沿革、それぞれの事情がありまして一概には言えないかと思いますけれども、しかし、この日本における指紋の制度というものが、日本におきまする外国人に対してどのような心理的な圧迫を与えておるか。ことに中国の場合はこの指紋制度がありませんし、そしてそれは犯罪人扱いにされる。在日朝鮮人、在日の台湾人ですか、そういうような全体に対する問題を考えてみますと、将来の日本の友好を考えると、この指紋押捺制度というものは当然廃止をしていいものではないか。それにかわる方法としては、サインの方法もあるし、ほかにも方法があるわけですから、そういう方法を用いるということも考えられていいでしょうし、あるいはそこまでやる必要もないのじゃないか、いろいろな議論が出てくると思うのですが、私どもは、指紋押捺制度の廃止ということを第三の問題として取り上げたわけであります。 第四の問題点として、修正すべき項目として皆さん方に差し上げましたのは、外国人の登録証明書不携帯罪の罰則の問題であります。これは元来この法案ができたときに、あらゆる罰則というものを全部同じにいたしまして、一年以下の懲役と三万円以下の罰金というか、そういうような併科の規定を全部一緒にした、並列した規定にいたしておりまして、再三この問題については、どうもこれはおかしい、問題点が多過ぎるではないかということを指摘をしておきました。同時に、その外国人登録証明書を持っていないというふうな場合においても、ちょっとした過失といいますかあるいは不注意といいますか、そうしたことで持っていない例が非常に多いわけでありますから、これを今度二十万円以下の罰金にするということではなくて、条文を変えて、過料の方法で処理しても十分その目的は公正に達せられる、こういうふうに考えまして、外国人登録証明書不携帯罪の罰金というものを廃止して、そして過料にすべきである。 この四つの点を自民党を初め各理事の方にお示しをいたしたわけであります。 ですから、私どもは、いま申し上げました四点その他を中心といたしまして将来への展望というものを、国際人権規約の批准の問題があり、内外人平等の原則があり、そして日本における在日外国人がどのように処遇をされておるかということ、されるかということは、各外国からも、今後の日本の進むべき道、特にアジアの人々から見ると非常に大きな関心を持たれておるところでありますので、将来の展望ということについては、国際世論、国内世論、そしていま私どもが申し上げましたような点を中心として、さらに一層の改善を図ってもらいたいということを大臣に要望いたしまして、それに沿った大臣の答弁がありました。私どもはそれを信頼をいたす次第でありまして、そうした方向に今後外国人登録法が進むということ、さらに大きなその改善がなされることを期待をいたしてやまない次第でございます。 それでは、なぜこの修正案を出さなかったかということが一つの議論になってくるかというふうに考えるわけでございますが、前に申しましたように、四つの点について要綱を出し、たたき台としてお示しをいたした次第でございまして、それから審議の中で十分私どもの真意も酌み取れておる、こういうふうに考えますし、本案が、提案の理由の中にありますような面を含めましてそれを中心として考えましたときに、少なくともいまの案よりは前進的な改正であって、さらに前進的な改正というものが大臣の答弁その他から期待をされるということを信じましたし、それから本案にいま言った意味で賛成でございますので、本案に賛成をして修正案を出して、修正案が否決されて本案に賛成するというのはどうも私どもよくわからない立場でございますので、その点につきましては修正案を出さなかった、こういうことでございます。 いずれにいたしましても、結論といたしましては、本法案は一歩前進であることは認めます。一歩前進であるから、さらに前進することを期待いたしまして、本法案に対し日本社会党を代表して賛成の討論をいたす次第でございます。(拍手)
○羽田野委員長 沖本泰幸君。
○沖本委員 私は、公明党・国民会議を代表して、日本共産党提出の修正案に反対、原案に賛成の討論を行うものであります。 現行の外国人登録法は、昭和二十七年、いまだ社会的混乱のさなかにあって、虚偽申請や不正登録等が続出し、不法入国者も後を絶たない状況にあった時代に成立したものであります。 自来、三十年を経過し、提案理由にもありますとおり、わが国に入国、在留する外国人の数は著しく増加し、また、わが国の国際的地位の向上、国際人権規約への加入等外国人登録行政を取り巻く諸情勢も著しく変化しております。特に、内外人平等の原則を基調とする国際人権規約への加入の意義は大きいものと言わざるを得ません。 また、外国人登録法を論ずる場合忘れてならないのは、いわゆる在日朝鮮人、韓国人、台湾人の方々の問題であります。資料によりますと、昨年末現在、外国人登録総人員は約七十九万三千人であり、そのうちの約六十六万七千人が朝鮮半島出身者であります。申し上げるまでもなく、その多くは終戦前からわが国に居住している者及びその子孫であり、現在では二世、三世の時代を迎えております。これらの二世、三世の方々は、日本で生まれ、育ち、日本語しか話せず、日本名を名のり、日常生活のほとんどを日本人として過ごしている人も多いと聞いております。 現行外国人登録法のもとにおいては、このような方々が十四歳、改正案では十六歳に達すると同時に、登録証明書の常時携帯義務及び指紋押捺義務等を課されているわけであります。 このような現状を直視するとき、本改正案は、不十分なものではあるが、現行法に比べ一歩前進であることは疑う余地がないのであります。 しかし、本質的には解決すべき幾多の問題が残されていることも事実であります。いまや先進国の中では少数派になりつつあり、国際人権規約上も問題とされる指紋押捺制度の廃止、並びに登録証明書不携帯に対する刑事罰の適否、各種義務の基準年齢の引き上げ問題、さらには、登録証明書不携帯に対する取り締まり等本法運用上改善すべき問題等々が山積しております。 以上申し述べましたように、残された問題は少なくないのでありますが、これらの問題に対しては、質疑の過程において法務大臣から検討する旨の確約を得ており、また、修正案を提出し、それが否決された場合は、論理の帰結として原案に反対せざるを得なくなるのであります。かような理由から、わが党は、残念ながら修正案の提出を断念したものであります。 したがいまして、日本共産党提出の修正案についても賛成することはできず、この際現実的選択を行うこととし、今回の改正案に対しては、一歩前進であるということを評価いたしまして、賛成するものであります。 以上で、修正案並びに原案に対する討論を終わります。(拍手)
○羽田野委員長 岡田正勝君。
○岡田(正)委員 私は、民社党・国民連合を代表いたしまして討論をさせていただきます。 今回の提案につきまして今日までいろいろと質疑を重ねてまいりましたが、大臣の考え方も十分理解ができますし、当局の姿勢もずいぶん前進があるというふうに評価をいたしておりますので、私どもの党といたしましては、以下申し述べますようないろいろな意見を持っておりますが、修正案は提出することなく、本案について賛成をいたしたいと思っておるものであります。 そこで、意見でございますが、重複をいたしまして恐縮でありますけれども、一応申し上げておきますと、まず第一番は、新規登録、それから常時携帯の義務年齢につきまして十四歳から十六歳に引き上げられましたことは確かに前進でありますけれども、質疑の中でも繰り返しましたとおり二十歳が適当ではないか、あるいは少なくとも、幾ら譲歩したとしてもやはり十八歳、当局で御説明のありました社会的自立年齢ということを考えると、やはり九四%から高校進学をしておりますので、高校卒業後の年齢十八歳ぐらいが適当ではないかという意見を持っております。 第二は、登録証の更新の期間でありますが、三年を五年にする、これも確かに前進であります。しかしながら、永住権者の人に関してはもう更新の必要は全くないのではないか、免除をするべきではないかという意見を持っております。 第三の意見は、常時携帯義務の問題でありますが、永住権者については免除すべきものではないであろうか、さらに、その他の人でありましても、運転免許証を持参しておる者については免除してもいいのではないかという意見を持っておるわけであります。 第四の意見でありますが、指紋押捺義務の問題であります。これは大変問題でありまして、まさに人権を逆なですると言われてもいたし方のないような問題でありまして、もしこれを百歩譲るといたしましても、永住権を取得するときだけ指紋を取るということでもいいのではないか、その他の場合はすべてサインでいいのではないかと考えておるわけであります。特に外人の記者あるいは学者の人たちからは悪評さくさくたるものがあります。この点もひとつぜひ御考慮をいただきたいと思うのであります。 第五の問題は、強制退去の問題でありますが、永住権者に対しましてはこれはもう廃止したらどうか、免除してはどうかということを強く申し述べておきたいのであります。 次に、第六点でありますが、登録事項を更新のときにやりますが、職業とか勤務先については、御承知のとおりあの方たちの就職の状態というのは、非常に気の毒ですけれども不安定であります。したがいまして、職業、勤務先の登録がえをすると言えば頻繁にやらなければならないのでありまして、この点については記載事項の中から廃止してもいいのではないかという意見を持っておるのであります。 次に、七番目の罰金の問題でありますが、これは今回三万円から二十万円に引き上げるということでありますけれども、これは上げ方も大変上げ過ぎでありますし、罰金なんということはやめて、金額は現状どおりで、そして過料とすべきものではないかという意見を持っておるのであります。 以上、七つの意見を申し上げましたが、近い将来、私どものこういう意見を取り入れられた法改正をされますように、この際強く要望しておきたいと思うのであります。 なお、個々具体の事件の処理あるいは法の運用につきましては、人道的な配慮を特に強く要請をいたしておきたいと思う次第であります。 最後に、本件の行方につきまして重大な関心を持っておられます韓国の国会議員の皆さん十数人と私はお会いいたしましたが、その人たちの言葉を収録しておりまして、前回一部御披露いたしましたけれども、討論の機会でございますので、再度御紹介を申し上げておきたいと思うのであります。 これは、外国人と住民という問題についてぜひひとつ考えていただきたい。韓国籍でありましても、日本社会の一部を構成している住民であることに間違いはないはずであります。住民なればこそ納税の義務を負っておるのでありまして、単なる観光客ではありません。それも特殊な過去の遺産として数十年前から住民とならざるを得なかった歴史があります。しかし、結局は住民として取り扱われてはいないというところに問題の本質があるのではないでしょうか。 住民というのはその社会で生きているということでありまして、その社会に貢献することであります。人間が生きる、生きていくためには、自由と平和と安全と生活などの基本的な要件が満たされなければなりません。しかし、永住外国人は別だよ、その限りではないよというのでは、在日韓国人は永遠のエトランゼでしかいられないということになるではありませんか。問題はここにあると思います。在日韓国人は永遠に行政上の対象からはぐれて、ただ管理の対象以外の何物でもないということになるのですか。非常に残念であります。 住民としてということになるならば、住民登録だけでよいのではないでしょうか。なぜ三年が五年の更新なのでしょうか。なぜそのたびごとに指紋の押捺が必要なんでしょうか。どうしてこんな発想が生まれてくるのでありましょうか。永住権を与えながら強制退去をさせるというのはどういう発想なんでしょうか。住民としての貢献度を無視して、繁栄と福祉は日本人だけで享受するということなんでしょうか。 内外人平等の原則がうたわれ、一九六六年の世界人権規約を批准し、難民条約に加入した真の民主主義の真価のためにも、永住許可の在日韓国人に対しては、永遠の観光客扱いはやめていただきたい。住民として扱っていただけませんか。そうなれば、金融、福祉、社会保障、教育、就職の差別も根本的に解決ができるだけではなく、いま一歩進めて、三年以上外国籍でありましてもその地に居住しておる者であれば、スウェーデンやスイスのように、地方自治体における選挙権、被選挙権の獲得も可能になると思うのであります。 そこで、仮称でありますが、外国人登録特別法を制定して、永住許可の出た在日韓国人を処遇していただけないものでありましょうかというようなことが大体要約でございます。 以上、私どもの党の意見と、そして韓国国会議員の方々の希望を申し上げたわけでございます。 以上で討論を終わります。(拍手)
○羽田野委員長 これにて討論は終局いたしました。 —————————————
○羽田野委員長 これより外国人登録法の一部を改正する法律案並びにこれに対する修正案について採決に入ります。 まず、安藤巌君提出の修正案について採決いたします。 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○羽田野委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。 次に、原案について採決いたします。 外国人登録法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○羽田野委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。 お諮りいたします。 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○羽田野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 ————————————— 〔報告書は附録に掲載〕 —————————————
○羽田野委員長 この際、暫時休憩いたします。 午後零時二十六分休憩 ————◇————— 午後三時九分開議
○羽田野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 お諮りいたします。 本日、最高裁判所梅田総務局長、大西人事局長、原田経理局長及び川嵜民事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○羽田野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 ————◇—————
○羽田野委員長 内閣提出、裁判所法等の一部を改正する法律案を議題といたします。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鍛治清君。
○鍛治委員 それでは、裁判所法等の一部を改正する法律案につきまして若干の質問をいたします。 本法律案につきまして、提出をされました理由及びその内容等についてまず御説明をいただきたいと思います。
○千種政府委員 本法律案は、経済情勢の変化あるいは民事訴訟の実態に基づきまして、簡易裁判所で取り扱う事件をどのように改めるかということが問題になって提案された法律でございますが、具体的に申しますと、現在簡易裁判所の取り扱う民事訴訟というものは訴額によりまして定められておりまして、その上限は三十万円ということになっております。これが定まりましたのが昭和四十五年、いまから十年余前のことでございますが、今日までの間、物価上昇その他経済事情の変動によりまして簡易裁判所で扱う事件というのがだんだん少なくなっている現状がございます。そういたしますと、簡易裁判所は国民の身近にあって、少額、軽微な事件を簡易迅速に扱う、こういう使命を持っておりますから、国民の側からいたしますと、そういう利用価値がだんだん減るというようなことも出てまいります。そこで、経済情勢に合わせまして、この訴額の上限を上げる必要があるのではないかということが問題になりました。 これはしかし、いままで改定をするたびにいろいろな問題がございまして、昭和四十五年の改正の際にもいろいろと議論を呼びました。参議院法務委員会での附帯決議にもよりまして、そういう問題は法曹三者でよく協議をしろというようなこともございましたものですから、現在行われております法曹三者の間の協議会におきまして、昭和五十四年の秋、十月ごろに、この問題を取り上げるということを話題に供しました。その後、弁護士会の方ではいろいろと会内の調査もしておられましたし、私どももそれなりの調査をいたし、議論を重ねてまいりました結果、昨年、昭和五十六年七月にこれを三者協議会の議題に供しようということになりまして、昨年九月から集中的にこの問題を三者協議で討議してまいりました。 その過程で問題になりましたことは、確かに経済情勢は変わってきておるので訴額の上限を変更する必要があるけれども、以前に問題になった簡易裁判所の性格ということもやはり考えてみなければいけない。特に先回の当委員会での附帯決議にもございますけれども、不動産など困難な事件の取り扱いというものをやはりこの際考えるべきではないかというようなことが問題になりました。そこで、そういう問題を兼ね合わせて議論を重ねたわけでございますが、結局、ことしに入りまして、昭和五十七年三月でございますが、最終的にその話が合意に達しました。 その内容と申しますのは、訴額は三十万から三倍の九十万円に上げる。しかし、困難な事件を地方裁判所でやりやすくするために、まず類型的に困難と思われる不動産事件につきましては、九十万円以下の事件であっても地方裁判所と簡易裁判所の競合管轄、どちらでも訴えができるように、審理できるようにしたらどうか。それから、いままで簡易裁判所で取り扱っておりました事件につきまして、複雑困難なものにつきましては裁判所が相当と認めれば地方裁判所に移送できるという規定があったわけでございます。また、当事者が地方裁判所でこれはやってほしいということを要請しました場合は、要請受理と言いまして最初から地方裁判所で審理することもできたわけでございますが、こういうことが必ずしも実際に円滑に行われていないようである。そうであるならば、当事者が双方合意した場合には必要的に地方裁判所へ移送するような移送手続の強化といいますか、そういう手続を設けてはどうか、そういうような話が出てまいりまして、そこでまとまりました内容は、不動産につきましては競合管轄、また当事者が合意した事件についてはすべて必要的移送、それから競合管轄との兼ね合いでございますが、原告が簡易裁判所に訴えを提起したものにつきましても、当初の段階で被告が地方裁判所に移送してほしいというときには一方的申し立てにより移送と、大体骨子といたしましてこういう内容の話がまとまりまして、そこで早速法制審議会の審議をいただきまして、急遽この法案を提案した、こういう経緯でございます。
○鍛治委員 昭和四十五年のときの衆参の附帯決議、特に参議院の附帯決議では、法曹三者の協議を十分やるようにということで、それはいまお答えの中で、やってきた、こういうふうなことでございましたが、そこらあたりの内容を、たとえば訴額については、いろいろ報道されたものを読んでみましたりいろいろ聞きますと、経過の中で九十万に落ちつくまでには多少いろいろな議論もあった。当初最高裁の方で、事務当局で出されたのは百二十万ぐらいであったというふうにも聞いているわけであります。そういった訴額の内容を詰める経過等を含めて、もう少し立ち入ってお答えをいただければと思います。
○千種政府委員 訴額を幾らにするかという話の中には、いろいろな金額が出ておりました。当初物価指数その他の問題を見てまいりますと大方三倍ぐらいではないかというようなことから、新聞などには切りがいいので百万、こういうような数字が出ておりました。そういう雑談的な話はございましたが、正式に提案ということになりましたときに、裁判所の方では百二十万という金額が提案されました。これはまた御説明する機会があるかと思いますが、もろもろの経済指標などを見てまいりますと同時に、これから法律が施行されるまでの期間というものを見てまいりますと、将来またこれがだんだんと低額になっていくことも考えられますので、少し安全を期してよけい目に金額を提案された分もあるように思われます。 一方、弁護士会の方からいろいろと地方の実情を調査した結果出てきます意見というものは意外に低額でございまして、これは明確なる提案というわけではございませんけれども、向こうの話の中には、いや五十万ぐらいでいいとか、いや六十万、八十万、そういうふうにいろいろな意見があったようでございます。弁護士会にいろいろと照会しましたところでは、日弁連のお話でございますと、百二十万でいい、いや百万がいいと大変ばらつきがあるようでございまして、これを一言で申しますと、やはり地方によりまして経済的な感覚、そういうものがさまざまであるように見受けられるわけでございます。やはり都会ですと、物価に対する感覚というものも、また生活支出にしましても、地方よりは相当多いわけでございます。 ですから、これを全国的に一律に定めるということになりますと、どこがいいかということは非常にむずかしい。そこで、いろいろの考慮から二倍ないし三倍というところへだんだんと話がまとまってまいりました。それで、困難な事件をどうするか、それがいろいろと手配ができるのならば、それなら三倍ぐらいでもいいのじゃないか、最終的にはそういう感覚で九十万という線に決まったようでございます。
○鍛治委員 いま伺っておりますと、事務当局の方は百二十万。御答弁を聞いておりますと、何となく、どうせ妥協するのだろうから少しぐらい上乗せしておけというふうな、私どもから見れば、お聞きしていてどうも見識がないような気がしますね。最終的には、話し合いをしろということで立法府からの注文もついておって、その真剣な打ち合わせの中で九十万ということにはなったのでありましょうけれども、やはり私どもからすれば、百二十万というものを出されるのなら、それなりの根拠と確とした信念でやりとりをなさったのかというふうにも思ったのですが、そこらあたり、算出された確としたお考えというものはなかったのかどうなのか。また、百二十万ということについて、九十万におさまってはやはり余りうまくないというような考えがもしおありなら、そういった点も含めて率直に御意見をお聞かせいただければと思います。
○梅田最高裁判所長官代理者 実は、三者協議におきます簡易裁判所の民事事物管轄の引き上げの問題は、裁判所側からのテーマの提案でございました。昨年の十二月に私どもといたしましては百二十万円の提案をいたしたわけでございます。これは実は、裁判所法の改正の最も早い時期が昭和五十七年の秋であろうということを予測いたしまして、昭和四十五年から昭和五十七年の中過ぎに至ります各種の経済指標の動き、これは実は昨年の暮れの段階では、あるものは昭和五十五年、あるものは昭和五十四年時点のものしか出ておりませんでしたので、最近におけるそれらの経済指標の変動を昭和五十七年まで予測いたしまして、それで昭和四十五年を一〇〇とした数値が幾らになるかということと、もう一つ、昭和四十五年の前の改正であります昭和二十九年から経済指数を昭和五十七年まで持ってくるとすれば、各種の経済指数が千二百倍ぐらいにはなっているといったようなことから、百二十万円というのは昭和五十七年の後半では経済変動としては決しておかしくないという考えで提案いたしたものでございます。 しかしながら、三十万から百二十万となりますと四倍ということに相なりますので、弁護士会側の抵抗がなかなか強くて、その数字ではちょっと話し合いがつかないということになりましたので、まあこの際は三倍に引き上げて、やがては経済変動が将来起これば、今回のように十二年という長い期間放置することなく、もう少し細かに改定をしていただきたいというような趣旨で、今回は九十万ということで折り合いをつけたわけでございます。
○鍛治委員 私、いろいろ経済事情の変動というものを当たって見ておりまして、前回の昭和四十五年改正時におけるいろいろな資料と内容を比較をしてみると、今回の訴額は高額に過ぎるのじゃないかということを、九十万でもそういう感じを持つわけでありますけれども、どうも百二十万、それがしかもいま御答弁を聞きますと、今年度後半でそれぐらいが妥当な線まで行くだろう、これは物価が大変な値上がりしたり、いろいろな面で差が出てくるというような見解のようですが、どうもその点を含めて余り高額に経済事情の変動というものを決め過ぎているのではないかという気がいたしますが、再度この点について御答弁をいただきたいと思います。
○千種政府委員 経済変動の具体的な内容は、数字、統計で見てまいるのが一番かと存じますけれども、私どもが討議に使いました資料が、その一部はお手元の資料の中にも出ておりますので若干申し上げますと、本法律案関係資料の附属資料の3というところに、昭和四十五年から五十五年までのいろいろな指数が出ております。資料の三十ページでございますが、これで見てまいりますと、国民総生産が昭和四十五年を一〇〇とした場合、以下同じでございますが、昭和五十五年では三二一・二となっておりますし、一人当たり国民所得というものは二八三・六、一般職公務員の平均給与は三四一・六、勤労者世帯可処分所得というのは二九四・八、一人当たり個人消費支出というのは三一六・四、消費者物価指数というのは二三六・三、こういうことになっておりまして、大体は三〇〇を超える、あるいはそれに近い数字となっております。 先生のただいま御指摘のございました先回の改正のときの数字というのは、これらの数字を見てまいりますと、確かにその前の改正から四十五年までの指数の変化はこれよりも多い数字が出ているものもかなりあるのでございますけれども、重要でございます消費者物価指数というものを見てまいりますと、先回の場合は一・七五であったのに今度は二・三六倍になっておるというようなこともございまして、総合的に見てまいりますと大体三倍ということはいい線ではないか、こういうふうに理解しておるわけでございます。
○鍛治委員 どうも、最初からそういうところに落ちつくだろうということで上乗せしたんじゃないかという思いが消えませんけれども、どちらにしましても、この問題についてはそういう形で提案になっておりますので、これはそれなりに私どもも検討してまいりたいと思います。 先に進みまして、今回の競合管轄あるいは必要的移送の対象とされるところの不動産に関する訴訟の範囲、これをひとつお聞きいたしたいと思います。
○千種政府委員 不動産に関する訴訟、こういう言葉の中には実はいろいろなものが含まれておりまして、全部を羅列することはかなり困難でございますけれども、実を言いますと、現在民事訴訟法の十七条に同じ言葉がございまして、これは訴訟の管轄を定める場合の言葉でございますが、不動産に関する訴訟をその不動産所在地の裁判所で管轄する、こういう規定でございます。 大体範囲はそれと同じということでございますので、実務上さほど混乱は来さないと考えておりますが、具体的に申し上げますと、不動産、これは代表的なものは土地、建物でございます。この不動産そのものの引き渡しを求めるとか登記を求めるとか、こういうものが代表的なものでございますけれども、不動産に関する物権、所有権、占有権、その他民法に書いてあります地上権、永小作権、不動産質権、抵当権に関する問題、あるいは債権でありましても不動産の賃借権、そういうものはこれに全部入るわけでございます。 また、土地そのものの関係で、相隣関係の訴訟あるいは境界の確定の問題とか共有不動産の分割の問題、こういう不動産同士の問題も含まれてまいります。 そのほかに若干また問題が出てまいりますものは、法律によりまして不動産とみなされたり不動産の規定が準用されたものでございますが、たとえば立木のようなものは不動産と同じように取り扱われることになりますし、そのほか、特別な法律によりまして不動産とみなされます工場財団とか鉱業財団でありますとか漁業財団とか、いろいろな財団がございます。こういうものも不動産に含まれるわけでございます。不動産に関する規定が準用されるという鉱業権のようなものも、これまた不動産に関する訴訟という中には入ってまいります。 しかし、単に不動産に類似して抵当権の目的になるとか、強制競売のときには不動産に関する規定を準用するとか、そういった船舶であるとか航空機であるとか自動車であるとかいうものは、本来のものが不動産でございませんので、それは入ってこないということになろうと思います。 そのほか金銭債権、たとえば地代でございますとか、損害賠償請求権でございますとか、不動産の設置に関する瑕疵に基づく損害賠償請求、こういう金銭そのものを請求するものにつきましては、これは消極と解しております。 大体以上でございます。
○鍛治委員 では先に進みまして、昭和二十九年に改正されました民事訴訟事務の移転に関する規定のその後の運用状況ですね、これはどういうふうになっているのか、状況をお聞かせをいただきたいと思います。
○千種政府委員 運用という御質問でございますので、裁判所の方からお答えするのが適当かと存じますが、詳細は裁判所にお任せいたしまして、確かにこの規定は昭和二十九年の改正のときに暫定的な措置として設けられた規定でございまして、これは、簡易裁判所が扱う事件が訴額の上限を上げることによって非常に多くなりますと、地方の小さい簡易裁判所におきましては人的、物的な設備が十分でないために十分にそれを処理し得ない、そこで、それができるまでの間こういう措置を講ずることになったわけでございます。したがって、当時、当初は四十三庁ございましたものが、後に五庁はまた外されまして、現在三十八庁になっているというのが現実の運用でございます。 これをどういうふうに運用するかということになりますと、これは現実に個々の裁判所の状況、具体的に申しますと人口の移動でありますとか交通状況の変革ということによりまして、その裁判所がどれだけ忙しくなり、また過疎になったかというふうなこととも関連して運用の方針を定めていかなければならないという問題がございます。最高裁判所におかれましても、そういう状況をにらみつつその運用を考慮されていると理解しております。
○鍛治委員 重ねてお尋ねをいたしますけれども、いまも御答弁ございましたように、民事訴訟事務の移転というのは立法の趣旨からいっても暫定措置であろう、こういうふうにも思われるし、御答弁もそういうような内容でございました。これは速やかに原状に戻して充実強化を図るという方向にぜひ努めるべきであろう、こう考えるが、この点について再度お答えをいただきたい。
○梅田最高裁判所長官代理者 民訴事務の取り扱いを移転しております経緯につきまして、あるいは庁の数につきましては先ほど調査部長からお話があったとおりでございます。解除になりました五庁は、指定後事件数が相当増加し、それに伴ってその簡易裁判所の人的、物的な面での整備もされてきたといったようなことから解除したものでございますが、現在民訴事務を移転しております三十一庁につきましては、まだそのような事情にはなっていないわけでございます。 仮に民事訴訟事務を取り扱うといたしますと、多くの庁は十件に満たない民事訴訟しか提起されないようなものがほとんどでございます。ただ、多少ふえてきているところもございますので、そのような庁につきましては、今後事件数の推移を見まして、さらにふえていくというような変化が生じますれば、やはり指定の解除をしてまいるということを検討いたしたいというふうに思っております。
○鍛治委員 ここで簡易裁判所について若干お尋ねをしていきたいと思うのですが、本法案が提出され、これから採決され、実施されるということになりますと、簡裁における事物管轄の拡張に伴う事務量の増大ということが当然見込まれるわけで、どの程度それが見込まれているのか、これをまずお聞きいたしたいと思います。
○千種政府委員 この法案に関します関係につきまして申し上げますと、簡裁で取り扱う民事訴訟の件数がどのぐらいふえるかということになろうかと思います。この推計資料は、お手元にございます法案関係資料の一番最後の三十八ページにIIというものがございますが、訴額にしまして三十万から九十万までの訴訟事件の数が、統計等によりますと大体三万五、六千件ぐらいあるようでございます。ところが、今回の場合、不動産につきましては競合管轄ということにいたしまして、どちらかといえば地方裁判所でむずかしい事件はやるようにということになりましたので、そのうちの不動産につきましては六千件弱ございましょうか、こういうものの大体八割方は地方裁判所に行くと考えております。推計でございまして実際はわかりませんけれども、その二割ということを考えておりまして、その他の事件につきましては、要請受理などもございますから、地方裁判所に行くものも大体一割ぐらいはあるのではないか。あれこれ推測して計算いたしますと、二万件をちょっと超えるぐらいの事件が地方裁判所から簡易裁判所に移動するであろうと考えられております。 ところが、簡易裁判所の現状を見てまいりますと、大都会の大変忙しいところとそれから中小の地方の簡易裁判所とございまして、中小の簡易裁判所につきましては具体的にふえる件数というのはわりあいに少なくて、現在訴訟に関しましてはかなり余力があるので十分吸収できるのではないか。また、忙しいところにつきましてはそれなりの手当てをする。要するに、全体の事件はふえないわけでございますから、人員その他につきましては地方裁判所から移動をさせて手当てをする、こういう手当てを最高裁判所では検討しておられるようでございます。
○鍛治委員 いまお答えもございまして二万件ぐらいということでございますけれども、いただいている「第一審訴訟事件の新受件数及び地・簡裁別分担割合の推移」といった資料なんかの昭和三十年から五十五年までのものをずっと見させていただきましても、地裁における事件というものは確かに相当数ふえてきているというふうに思います。ところが、簡裁においては必ずしも減少はしていない。ということは、むしろ、ずっと何かで減ってきて、またふえてきつつありまして、当初三十年当時に比べますとほぼ同じ程度まできているということ、そういうことを考えますと、二万件ふえてきたとしましたときの処理をする体制というもの、これは簡裁の方が数において減ってきていない、ただ比率から言えば確かに簡裁の方がずっと減ってきている、全体の比率はそうでしょうけれども、数から言えば逆にそんなに減っているわけじゃない、むしろこの四、五年はずっと増加傾向にある、こう見てもいいようであります。地裁の方は比較にならぬくらい、倍程度は昭和三十年くらいから見るとふえているようであります。 だから、その分こちらに二万件移るということについては、それはそのままで考えていいのですが、実質内容的に見ると、これはいまおっしゃったような御答弁では納得しにくいところがあるわけでありまして、地裁は地裁でいろいろ国民の皆さんの中から声があって、裁判が渋滞しているとか、もっと早くやらないのかという素朴な要請もあるわけであります。そういう中で、むしろいまの体制は体制でそのまま地裁に置いておいて、簡裁の方はむしろ設立の趣旨からいっても体制をふやしていくという方向の方が本当のあり方ではないかというふうに私は思うのです。そういう意味で、受け入れ体制というものが簡裁サイドは十分なければいけないと思うのですが、その点、再度お答えをいただきたいと思います。
○千種政府委員 御指摘のとおりに、簡易裁判所も同時に地裁と同様に事件がふえているのではないかということがうかがわれるわけでございます。簡易裁判所も忙しいのであれば地裁から事件をおろせばもっと忙しくなるのではないか、そういう議論は三者協議の場におきましても出まして、いろいろと数字その他の実態を御説明して、私どもも実は裁判所から伺って討議をしたわけでございます。 ただ、確かに督促も調停もふえてはきておりますので、全体として簡易裁判所は暇になっていないのではないかということは言えるわけでございますが、具体的に見てまいりますと、かなり事件がふえておりますのは都会の、主として大都会のたとえばクレジットでございますとかサラ金でございますとか、そういった消費生活上の小さい少額の債権が多うございます。そういたしますと、事件一件の負担量というものは、地裁の事件の一件の負担量と比べますと同じではないわけでございまして、数の割合には仕事の忙しさというのはさほどでもないという面も一つございます。確かに受け付け事務などは件数によって決まりますので、かなり繁雑なところも出てくるわけでございまして、そういうことにつきましては十分な手当てをしなければならないだろうと考えられるわけでございますが、先ほどちょっと申しましたように、中小の地方の簡易裁判所におきましては事件のふえ方というものもそれほどきつくないし、まだかなり余力があるように聞いております。 そういうことをあれこれ勘案いたしまして、全体としましては簡易裁判所にもう少し事件をおろしてもいいのではないか。それに対する対処方針としましては、必要に応じてそれぞれ大は大なりに、小は小なりにすべきではないかというような話になってきたわけでございます。
○鍛治委員 ここで、私も裁判関係は素人でございますのでお聞きをしたいのですが、簡易裁判所の設立の趣旨といいますか、そういうものを一つ、それと簡易裁判所と地方裁判所の機能、性格、目的というものが違うわけでございますが、この違いについて簡単に御説明をいただきたいと思います。
○梅田最高裁判所長官代理者 御承知のとおり、簡易裁判所は比較的少額、軽微な事件を処理する第一審の裁判所として設立されたわけでございます。これは、戦後違警罪即決例の廃止等に伴いまして軽微な犯罪に対する簡易迅速な裁判機構が必要とされるに至った、また、捜査段階におきます身柄の拘束も、戦後司法官憲の発する令状によることとされ、近くの裁判所で令状の発付を受ける必要性が生じたこと、これが動機であったわけでございますが、裁判所を設置するなら民事事件についても取り扱えるようにしてはどうかということで、当初アメリカあたりの少額裁判所の思想にならいましてこの種の裁判機構を設けるべきであるとする意見が強く、比較的少額の民事事件と軽微な犯罪についての、任用資格を異にする裁判官も取り扱える、しかも簡易な手続で処理させようとする簡易裁判所の構想が持たれたわけでございます。 民事事件につきましてはアメリカの少額裁判所が模範とはされたわけではございますけれども、でき上がりました簡易裁判所は決してそのような特別の裁判所ではなく、比較的少額、軽微な事件を同じ第一審裁判所である地方裁判所と訴額の差を設けることによって分担し合う第一審裁判所ということで設立され、国民が身近なところで簡易迅速に紛争の解決を受け得るよう、数としては相当多くの、五百以上の簡易裁判所が設置されたわけでありますが、そのほか即決和解でありますとか調停、支払い命令あるいは刑事の略式命令といったような簡易裁判所にふさわしい事件を処理いたしますほか、民事訴訟事件について言いますと、当初五千円以下の訴額のものを取り扱うということでスタートいたしたわけでございまして、簡易裁判所はそのような目的を持った裁判所ということが言えようかと思います。
○鍛治委員 いま御説明のあったような形で簡易裁判所は発足したのだと思いますが、最近は、いろいろ聞いてみますと、当初の意図と違って小型地方裁判所化してきたとか昔の区裁判所化してきた、こういう批判が相当出ているようであります。これはやはり当初のそういう趣旨、目的から変わってきて、いわゆる簡裁に飛び込む人たち、地裁等を利用する方々の素朴な率直な声としてそういうふうに上がってきていると思うのですが、こういう点についてはどういうふうにお考えになっているのか、お尋ねをします。
○梅田最高裁判所長官代理者 委員御指摘のとおり、小型地方裁判所化してきたではないかとかあるいは区裁判所化してきたではないかという声があることは、私どもも承知いたしております。しかしながら、私どもは、設立当初の簡易裁判所の理念というのは今日まで変わることなく生かされ、持ち続けてきておると思います。確かに数次にわたって訴訟物の価額の引き上げが行われましたけれども、それは言ってみれば経済変動に応じた改定でございまして、もしそれをそのまま放置いたしますと、たとえば今日三十万のままで放置いたしますとすると、国民が身近なところで裁判を受けられるという範囲がきわめて狭くなって、かえって簡易裁判所の設立の目的に沿わないのではないかというふうに思います。今回の改正に当たりましては、先ほど来法務省の方から御説明がございましたように、複雑困難な事件はなるべく地方裁判所で取り扱えることとする制度も盛り込まれておりますので、簡易裁判所の性格というのはより国民に身近なものとなって実現するのではなかろうかというふうに考えております。
○鍛治委員 簡裁が小型地方裁判所化とか区裁判所化してきたという批判ですね、これはどういう理由によってそういうような批判が出ているというふうにお考えなのでしょうか、お尋ねをいたします。
○梅田最高裁判所長官代理者 昭和二十二年に発足いたしました時点と比較いたしますと、民事関係について言いますとやはり訴額を引き上げてきたという点と、あるいは刑事の方では、戦後間もなく、昭和二十五、六年でございましたか、スタート当初は罰金刑以下の刑に処する事件あるいは罰金の刑が選択刑としてあるそういった犯罪についてだけでありましたものを、多少科刑権の範囲を広げまして、窃盗罪、横領罪等につきましては懲役三年以下の刑に処することができるといったような改正が行われた、そういったことからの批判ではないかと思っております。
○鍛治委員 そういうことも理由の一つでありましょうが、本当にいわば素人の方々が簡易裁判所を利用する際の一番のメリットとして考えておられたのは、いろいろ書類をつくらずに口頭で持ち込めばちゃんと受理をしてやってくれるのだ、こういうところにあったと思うのです。ところが実際は、いまそれが地裁におけると同じようなかっこうで書類をきちんとつくって出して、間違えば、それはこうしなさいああしなさいといって出し直させたりするというような実例が多くなっているようです。したがって、そういうことがなくなってきたということが大きな批判の原因の一つにもなっているのではないかと思うのですが、この点についてはいかがですか。
○川嵜最高裁判所長官代理者 簡易裁判所が国民に身近な裁判所であるべきだという点は、規定上も明らかにされておるわけでありまして、その一番典型的なものが口頭による訴えの受け付けということになろうかと思います。確かにただいま御指摘のように、口頭による受け付けは昭和四十五年の事物管轄改正以前はほとんど行われていなかったのが実情であると申し上げても過言ではないと思います。いろいろの理由が挙げられておったしわけでありますけれども、四十五年の国会審議の際にいろいろな点が指摘されまして、私どもの方もこの点真剣に取り組むべきだということで、いろいろな施策を講じました。 その結果、四十六年から順次口頭による受け付けがふえてまいりまして、ここで申し上げます数字は、純粋に口頭受け付けというものと、私どもが裁判所の窓口で用意しております定型用紙による訴状の提出というものを含みますけれども、五十五年には一万一千件ばかりが口頭受け付けということになっておりまして、全訴訟事件の一四・一六%に達したわけであります。なおこの施策を進めてまいるつもりでございます。
○鍛治委員 そういう方向はぜひどんどん進めていただきたいと思うのですが、確かにそれに伴って、果たして簡裁の陣容なり待遇その他を含めていまのままでいいのかなというのは、大変疑問に思う点も多いわけです。これはひとつ真剣に取り組んでそういうふうに方向づけをしていただきたいと思うのであります。そういうことで御要望申し上げて、時間も大分たってまいりましたので、次に進ませていただきます。 簡裁における事務移転庁の中には、当初から開庁してないものもあるわけでありますけれども、現状は一体どうなっているのか、また、開庁の見通しないし整理統合について何かお考えは持っていらっしゃるのかどうか、この点についてお答えいただきたいと思います。
○梅田最高裁判所長官代理者 設立当初から開庁できずに事務移転をしております簡裁、いわゆる未開庁でございますが、これが八庁ございます。これらの庁はいずれも設立に当たりまして適当な庁舎あるいは庁舎の敷地の確保が困難であった、そういった理由で開庁できなかったわけでございますが、そういった事情が今日までなお変っていない、また、開庁しないまま三十有余年たちまして、それなりに一つの安定状態のようなものもでき上っているということも言えようかと思います。 事務移転を開庁後いたしました庁も相当ございますが、それらの庁は裁判所法の三十八条によりまして、庁舎が非常に老朽化してきて、国民の皆様方に裁判所として利用していただくには施設として非常に不十分であるといったようなこと、あるいは敷地の明け渡しを求められたというようなこと、そういったことから事務移転がされたわけでございますが、私どもといたしましては、現に事務のとられております簡易裁判所についての充実強化にまず力を入れるべきだというふうに考えております。 さらに、もう一点お尋ねの整理統合問題でございますけれども、裁判所の配置の適正化につきましては、昭和三十九年の臨時司法制度調査会の意見書にも取り上げられたところでございまして、私どもといたしましても古くから検討を続けてまいった問題でございます。行政の合理化、効率化につきましてはこれまでもたびたび閣議決定されておりますし、現在、臨時行政調査会におきましてもその検討がされており、調査会の昭和五十六年七月十日付の第一次答申によりますと、立法府や司法府においても自発的に合理化、効率化の努力をされることを強く要望するという見解も表明されております。裁判所といたしましては、裁判所に課せられました適正迅速な裁判の実現という重大な使命を達成いたしますために、これまでの努力に加え、より一層裁判あるいは裁判所の運営を合理的、効率的に行うよう努めなければならないと考えております。 そういった裁判所の合理化あるいは効率的な運用を図る上におきまして、裁判所の配置の問題も一つの大きな問題としてあるというふうに思っております。現行の裁判所法のもとにおきまして、簡易裁判所が設置されましてから今日までの間に人口の分布あるいは交通事情の変動等が生じておりまして、司法全体の機能を高めますためには、これらの状況の変化に応じた裁判所の配置が検討されるべき問題であるということは間違いのないところであろうかと思います。しかしながら、裁判所の配置は直接国民の権利保護に絡みますきわめて重大な問題でありまして、単に事件数の多い少ないといったような事務的なあるいは行政効率の観点のみからは律し切れない性質の問題であろうかと思います。言ってみれば司法の運営の根幹にかかわる事柄でもございますから、各方面のいわば国民的合意のもとに検討されなければならない問題だというふうに考えております。
○鍛治委員 昭和三十九年に司法制度改革に関する臨時司法制度調査会の意見書が出ているわけですが、この中での簡裁関係についての取り扱い、こういったものはどうなっているのか、お尋ねをいたします。
○千種政府委員 御指摘の臨時司法制度調査会の意見書では、法曹一元でございますとか裁判官の待遇の改善でございますとか、非常に根本的な問題との関連におきまして簡裁の問題も取り上げているわけでございます。 その直接簡裁に関係のあるところを拾ってみますと、大きくまとめて申し上げますと、簡易裁判所の仕事の範囲を大きく拡大しまして、それに対応する裁判官を充実する、その方法としましては、有資格者の裁判官をふやすとか、一定の年限、一定の考試を経た特任の判事につきましては判事補の資格を与えるとか、そういった抜本的な、現在の簡易裁判所と少し異なるような簡易裁判所というものを想定したいろいろな改善策を提言しているわけでございます。 そういう観点からいたしますと、現在はまだそうした根本的な性格を変えるような問題は手がついておりません。それは問題が多岐に関連しておりまして、簡易裁判所だけを取り上げて改善をするということも非常にむずかしい問題でございまして、裁判所全体、司法全体を通して検討しなければならないためにそのような状況になっているわけでございます。そういう意味から申しますと、臨司の意見はいろいろと検討しておりますが、それが現実にこの点はこう変ったという点は、特に申し上げるものはございません。 ただ、今回の改正の中にも盛り込まれておりますように、不動産のような困難な事件を地方裁判所で扱うような方法、こういうものも討議の中には出ておるようでございますが、そうした個々別々に取り上げるべきものを取り上げ、検討すべきものを検討しているのが現状でございます。
○鍛治委員 今回、臨司の意見の中で事物管轄の拡張だけを取り上げているような感じがするわけで、全体の関係から言えば大変バランスを欠くのじゃないかというふうにも思っております。 簡裁の関係について、またいずれ機会があればいろいろと御質問を申し上げたいと思いますが、いままでのやりとりを含めまして総括的に、今後簡裁というものはどういうあり方で、どのような考え方でやっていくようにお考えになっているのか、お答えをいただきたいと思います。
○千種政府委員 最初の御指摘でございますが、臨司の中で事物管轄だけが取り上げられたというような御認識の御発言がございましたが、今回の事物管轄の改定ということは、従前の金額が経済事情によって変更したものについてそれを修正するという範囲のものでございまして、臨司の意見書で指摘している事物管轄の拡張は、当時にいたしましても、三十万ないし五十万円に引き上げるという、性格を変えるようなものとして提言されているようでございます。そういう意味におきまして、今回事物管轄の改定をいたしましたことは、臨司の意見書というものに従ってその性格を変えるようなものを試みたというふうには実は認識していないわけでございます。そういう意味から申しますと、先ほど来最高裁判所の方から簡易裁判所のあり方なり性格について説明がございましたが、その基本につきましては現在も変わらないつもりでございます。 将来の理想といいますか、これからの考え方でございますが、現にございます簡易裁判所というのは、地方裁判所に比べますとやはり地域的にも庶民の生活により近い、密着したものでございますし、その取り扱う事件も、訴訟事件に限らず、督促手続でございますとか調停手続でございますとか、そうした庶民生活に近い、また素人でもなじみやすい性格のものでございます。こういった利用者の面あるいは国民の権利保護と言った方がよろしいかもしれませんが、そういう面から申しますと、やはり庶民に近い、庶民サービスと申しますか、そういった性格を維持していくべきものであろうと考えております。 ところが、先ほど来出てまいりましたいろいろな問題がございますが、行政の効率化とか裁判所運営の効率化、合理化というものとの関連から申しますと、やはりある程度の集約化ということも考えていかなければならない。その集約化が余りにも昔の区裁判所のようになるということになりますと、先ほど来御指摘のいろいろな批判がまた出てまいります。そういうことを踏まえつつ、やはり効率化、合理化、庶民サービスというものとの均衡を図りつつやっていきたいと考えております。
○鍛治委員 とにかく、簡裁設立の趣旨に沿った形で、今後とも努力をお願いいたしたいと思います。特に今度は、これが通ってもしそういう形で実施されると、先ほど申し上げましたが、簡裁に相当事務量が行く。それは別の面からいきますと、簡裁では、本人自体が訴訟を起こして、自分でいろいろと自分の主張をしていくというような形をとっているケースが多いようでありますし、そうなればなるほど、やはり簡裁の判事さんあたりは、むしろ専門家の弁護士がついているよりは非常に事細かに説明もし、納得のいくような話をしていかなければ、御本人たちが納得できないという形が残っていく。むしろ、地方裁判所なんかで弁護士さんが立ってやっている事件の処理だと一言でわかるものを、その十倍も二十倍もかけなければいけないという、こういうこともずいぶんあるだろうと思います。そういった意味もいろいろ含めまして、設立の趣旨にのっとってやっていただきたい。これは御要望でございます。 さらには、どうも簡易裁判所といっても、実際には国民の皆さんによく理解されていない向きがずいぶんあると思います。こういった点のPRも含めて、本当の意味での簡易裁判所のあり方というものを、もっともっと活用できるように国民の皆さんにも知らしていくのが必要ではないか、こういうふうにも思います。この点も御要望を申し上げておきます。 もう時間が参りましたので最後でございますが、これは関連の質問で一つだけお尋ねをしたいのです。 裁判所の競売関係、これを食い物にして談合入札を繰り返しているというふうな題で、去る四月に横浜地裁を舞台に、不動産競売会社社長と暴力団の談合行為というものが摘発されているわけですね。彼らはさらに東京地裁や東京地裁八王子支部、こういったところでも談合入札をした疑いがあるというふうにも報道されていたわけでありますが、これの捜査状況ないしは実情はどういうふうになっているのか。 さらに、まとめて御質問いたしますが、今回の事件は新しい競売方法が普及しつつある際に起きた事件でありますし、こういう事件がまた起きる可能性があるのではないか、それはどういうところに問題があるのだろうか。また、談合入札のできる余地のない方法、制度というものをもっと工夫してやれないのだろうか。さらにまた、郵送による入札制度、こういったものについて普及状況というものはどういうふうになっているのだろうか。 まとめて一遍に御質問申し上げますが、最後にこれを御質問申し上げ、お答えをいただけば終わりたいと思います。
○川嵜最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘のような、不動産競売に暴力団等が介入するケースが後を絶ちません。まことに残念なことでございます。横浜地裁を舞台とする事件だけではなしに、全国各地に同種のケースが起きておりまして、新聞でも報道されているところであります。 これの対策につきましては、裁判所といたしまして、裁判所に与えられている権限を最大限行使し、また、新しい御承知のとおりの手続法ができまして、期間入札といったような制度ができました。この制度を活用していくということによって、暴力団の介入ケースをできるだけ防止していきたいということで努力しているところでございます。 何分、ただいま申し上げました期間入札の制度は新しい制度でございますので、全国にまだ行き渡っておりません。けれども、私どもといたしましては、ぜひこの制度を早急に取り入れることを各裁判所に要請をいたしております。恐らく今年度じゅうには、三分の二くらいの庁ではこれが実施されるだろうというふうに予測しております。 そういう実情でございまして、私どももさらに努力を進めていきたいと思うのでありますが、御指摘のような談合というのは、裁判所外で行われますと、どうしても裁判所の手の届かないことになってまいりますので、捜査当局ともできるだけ連絡できるものは連絡をして、捜査当局による法の厳正な執行というものも期待し、これによってそういうケースを排除していく、防止していく方向で進めていきたいというふうに思っております。
○鍛治委員 時間も参りましたので、これで終わります。大変ありがとうございました。
○羽田野委員長 岡田正勝君。
○岡田(正)委員 私は、今回提出されました裁判所法等の一部を改正する法律案につきましては非常に評価をしておるのであります。なぜかといいますと、昭和四十五年五月十三日の参議院あるいは四月十七日の衆議院におきますところの附帯決議のそれぞれ一つを生かしていただいておるからでありまして、今度の主な改正点の中の目的の価額の上限を改めるのは別問題といたしましても、不動産に関する訴訟の関係で、地方裁判所と簡易裁判所の競合管轄とすることができるようになり、また、不動産に関する訴訟というのは非常に複雑困難なものがありますので、一方から申し立てがあればこれを移送するというようなこともはっきり改正をしよう、また、審理中の訴訟につきましても、当事者の双方が地方裁判所の方に移送を希望するというような場合には、これを移送しなければならないということにしようという制度をそれぞれ新設されまして、私は非常にこの点評価をしておるのであります。しかし、以下若干の点、不明なところがありますので質問をいたしますから、明快な御答弁をいただきたいと思うのであります。 まず、冒頭にお尋ねをいたしたいと思いますのは、先ほど鍛治委員の質問の中にもありましたが、この簡裁制度をつくった必要性をひとつ簡単に説明していただきたいと思います。
○梅田最高裁判所長官代理者 戦後違警罪即決例が廃止されたことに伴いまして、軽微な犯罪に対する簡易迅速な裁判の機構が必要であるとされました。また、捜査段階においても、身柄を拘束する場合には司法官憲の発する令状によらなければならないということにされて、なるべく近くの裁判所でその令状の発付を受ける必要があるといった必要性から簡裁の必要性が出てまいったものでございますが、あわせて、どうせ事件をやるならば民事事件についても、比較的少額、軽微な事件は簡易裁判所で取り扱うことにしてはどうかといったようなところから、簡単に申しますと、そういった構想から五百以上の簡易裁判所が設置されたということでございます。
○岡田(正)委員 そこで、ちょっと私の聞き方がまずいのかもしれませんが、ちょっと気になるところがあるのです。 この簡易裁判所をつくったという主な目的というのが、どうも違警罪廃止に伴うところの問題のように私は聞こえたのです。それもそうでしょうけれども、そのほとんどのいわゆる理由というものが、何といっても裁判を民衆化しなければいかぬ、そのために、言うならば駆け込み寺的な裁判所が必要ではないかということからつくられたことの方が実際は主な目的ではなかったのかと思うのでありますが、いま私が承った範囲では、どうもそっちの方は何かつけたりみたいなもので、ついでにやっておこうかというふうに聞こえるのでありますが、聞き方が悪かったですか。
○梅田最高裁判所長官代理者 ただいまの点は、あるいは私のお答えの仕方がまずかったのかもしれません。民事につきましては、やはりアメリカの少額裁判所の理念というものがわが国においても生かされるべきであるといったような構想から、国民の身近なところで比較的少額な事件の民事の裁判も行えるということも大きな目的であったわけでございます。
○岡田(正)委員 ありがとうございました。 そこで、先ほど鍛治委員が質問をしていらっしゃった中で、私がお尋ねしたいと思ったことの答えが出ておりますから、確認の意味でお尋ねをしておきますが、いわゆる口頭による駆け込み訴えですね、こういうものに対する事件が五十五年の時点で一万一千件で、一四・一六%と答えられたと思いますが、その点、数字が間違いないかどうか。それで、これは将来に向けてこういうパーセンテージ、事件数といいますか、この予測はできませんけれども、おおむねこういう程度でいくものであろうかどうか。 それからいま一つは、訴額の金額を九十万円に上げることによりまして、約三万五千件くらい地裁から簡裁の方に移る、金額的にはそういう形になるけれども、そのうち不動産等の関係におきましては八〇%が恐らく地裁へ行くのではないかというようなことから考えて、かれこれ考えて約二万件ぐらいが簡裁の方に仕事量がふえるのではないか、こういうお答えであったと思いますが、間違いございませんか。
○川嵜最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げましたとおり、簡裁の性格を明確にあらわすものが口頭受け付けでございます。口頭受け付けの件数は四十六年以降毎年ふえておりまして、現在の統計の上では、五十四年度が一番多うございまして、一万三千四百十七件でございます。これは訴訟のその年度における新受件数の一九・一%を占めております。先ほど申しましたように、五十五年は若干実数が減りまして、一万一千七件でございまして、一四・一六%、こういう数字になってきております。この口頭受け付け、正確には、当事者が全く書面を出さないで裁判所の書記官が全部書く、訴えを書いて、それで訴えの提起があったというふうにするものと、私どもの方でいろいろな類型の訴訟のための訴状を書くための様式を窓口に備えつけております、それを利用して当事者が書いてお出しになるというもの、これを含めた数字でございます。 この数が将来ふえていくかどうかということは、やはり私ども裁判所の側の広報活動といいますか、そういうことに力を入れるかどうかにもかかってまいります。私どもとしてはさらに力を入れていきたいと思っております。したがいまして、この数はさらに伸びていくだろうと思っております。現に民事調停におきましては、これも口頭受け付けをやっておりますが、この数はたしか調停全件数の半分くらいになっていたと思います。 口頭受け付けの関係は以上でございますが、事件数のことでございますので、二番目の御質問にも私から便宜お答えをしておきたいと思います。 事物管轄が法案のとおり改正されますと、私どもの見込みでは、不動産以外の訴訟が二万六千六百三十七件簡裁に移りまして、その反面、土地競合ということが新しい制度として取り入れられることになりますので、この関係で六千五百八十二件簡裁の不動産事件は減少する、この差し引き二万五十五件でございますが、この件数がふえる、こういう試算でございます。あくまでもこの不動産競合制度によります事件の振り分けというものは全く新しい経験でございますので、どうして地裁八割、簡裁二割と計算したんだということになるかと思いますが、この点は一応不動産事件の弁護士選任率、当事者が弁護士を選任する率が不動産訴訟につきましては大体八割強でございます。でありますので、当事者が弁護士さんを頼む事件は弁護士さんが地裁の方へ持ってこられるのではないかということで、そういう試算をしてみたわけでございます。 以上でございます。
○岡田(正)委員 そこで、約二万の案件が今度簡裁にふえていくわけでありますが、簡裁の方は人的や物的にこの負担にたえていかれるのかどうかということであります。それをお答えください。
○梅田最高裁判所長官代理者 簡易裁判所は全国五百以上ございまして、事件数の非常に多いところから、民事訴訟事件を取り扱う庁においても年間民事訴訟事件がゼロあるいは一けたといったようなきわめて小さい庁まで、非常にばらつきがございます。私どもの考えでは、そういった小さいところあるいは中規模の庁につきましては、今回の改定によりまして九十万に引き上げられましても、何ら人的な手当てをすることなく十分賄い得ると考えております。 問題になりますのは、大都市の簡易裁判所あるいは大都市周辺のごく限られた簡易裁判所でございますが、これは先ほど民事局長が申し上げましたとおり、今回不動産事件を競合管轄といたしましただけに、どの程度本当に簡易裁判所の方に事件がいくかということが不確定でございますので、その様子を見守りながら、あるいは金銭債権等の事件、不動産訴訟以外の事件につきましてはほぼ何件くらい簡易裁判所には移るということは予測できますので、それらの点を含めまして必要なところには人的な手当てをしてまいりたいというふうに考えております。
○岡田(正)委員 刑事事件の取り扱いの範囲については、いかがですか。
○梅田最高裁判所長官代理者 刑事事件につきましては今回の改正には関係がございませんので、事件数等は一切関係ないというふうに考えております。簡易裁判所の刑事事件は、年々減少の傾向にございます。
○岡田(正)委員 簡易裁判所で取り扱いをいたしますとスピードアップになるということを期待する向きが多いわけですが、これは何かのモデルでも結構ですが、どのくらいスピードアップになるものだろうかという何かありませんかね、例示されるようなものが。
○川嵜最高裁判所長官代理者 ただいまの御質問に的確に答えられる数字であるかどうか、はっきりいたしませんけれども、私ども訴訟の審理にどれくらい日時を費やしているかということで平均審理期間というものをとっております。これが地方裁判所の民事事件では、昭和四十八年をピークといたしまして順次その所要日数が減ってきております。昭和四十八年に十七・四カ月でありましたものが、五十五年には十二・八カ月、それだけスピードアップしてきたということでございます。簡易裁判所の方は、昭和五十年が一応最近におけるピークでございまして五・六月、これが五十五年には四・一月というふうに短縮されまして、スピードアップが図られているということでございます。 でありますので、今度地方裁判所から簡易裁判所へ先ほども説明にありましたとおり二万件くらいが動くわけでありますから、それだけ地方裁判所は理屈から申しますと手がすくということになるわけでありまして、平均審理期間がさらに短縮されることが期待されるわけであります。 一方、簡易裁判所の方は、それではそれだけの負担がふえるから平均審理期間が今度は逆に長くなっていくのではないかという心配が当然出てくると思われますけれども、これは詳しく申し上げますと長くなりますので簡潔に申し上げますが、簡易裁判所の訴訟事件、現在七万件くらいございますけれども、その五割近いものがいわゆるクレジット訴訟でございます。それくらいクレジット訴訟が多くなってまいっております。このクレジット訴訟の占める割合が多くなりますと、これは非常に簡単に処理できる事件でございまして、大体被告側は争いませんで、欠席判決とか和解で終わりますので手数がかからないわけであります。こういうものがふえてきておりますために、平均審理期間も順次短縮しているという一つの大きな原因になっております。今度事物管轄改正によりまして地裁から簡裁へ落ちてまいります三十万円を超え九十万円以下の金銭訴訟の中に、多くのものはクレジット事件が含まれているものと推測できるわけでございます。でありますので、この審理期間が長期化することはないだろうというふうに見ております。
○岡田(正)委員 次に、司法の民衆化ということをよく言いますが、その意味をひとつ具体的に説明していただけませんか。
○梅田最高裁判所長官代理者 司法の民衆化あるいは民主化という言葉は、私どもも時折耳にいたすところでございますが、具体的にどういうことを意味するかということになりますと、あるいは論者によって異なる面もございますようで、十分なお答えができるかどうか、自信ございませんが、私どもの理解いたしますところでは、戦前の司法制度との比較におきまして、司法、裁判が国民のために寄与するものでなければならない、そのようなものとして戦後の司法制度がつくられている。また、司法が国民の健全な常識からかけ離れたものであってはならないといったような内容を中心とした一つのスローガンとして使われていることが多いように思われます。 その意味では、戦後の司法制度が現行憲法のもとに設けられまして運営されていることは当然のことといたしまして、簡易裁判所との関係で申しますならば、簡裁の裁判官には法曹資格を必ずしも求めないで、豊かな社会経験と人格識見を重視して選考されます点、あるいは訴訟の手続について見ますと、地方裁判所に比べまして簡易な特別の手続によることが認められております点、また、民間の有識者の知識経験を裁判に生かすという趣旨で司法委員ですとか調停委員の制度が設けられている点、また、地方裁判所と比べましてはるかに数の多い五百以上もの裁判所が設置されておりまして、国民が身近なところで裁判を受けられるという点などが、戦前と比べまして、あるいは司法なり裁判所というものを国民により身近なものとするのに役立っているのではないかというふうに思っております。私どもとしましては、これらの制度をそれぞれの趣旨に沿って運用していくことが任務であり、今後ともそういった努力を重ねてまいりたいというふうに考えております。
○岡田(正)委員 これまた的外れの質問かもしれませんが、陪審制度というのは一体どうなっていますか。
○梅田最高裁判所長官代理者 陪審法がたしか戦時中に停止されまして、そのままの状態で現在まで至っております。
○岡田(正)委員 そこで、陪審制度が戦争中に中止されたことは私も承りましたが、いまあるところの調停委員とか司法委員さん、これは陪審制度のかわりと言ったら、ちょっとおかしいのですか。そういうような意味で、陪審制度の復活ということはいまのところさらさら考えちゃおらぬ、こういうことになるのですか。そこを教えてもらいたいのです。
○梅田最高裁判所長官代理者 陪審によりますと、事実の認定を全く裁判官でない陪審員が専権をもって行うというものでございますが、調停委員なり司法委員は、調停の場合ですと、調停主任という裁判官とともに円満な解決を図っていく。司法委員は、裁判官のやる裁判に、その審理に関与いたしまして意見を述べるというたようなことでございますので、陪審にかわるものでは決してないように思っております。
○岡田(正)委員 全くそのとおりだと思いますが、ということになりますと、これも教えてほしいのですが、陪審制度を決めておりますところの法律は、これは廃止された、いま日本にはないというふうに考えてよろしいかどうか。
○千種政府委員 法律的に申しますと、停止ということでございますから、ないというと少し違っておるかと思いまして、あるのでございますが、機能をとめているという状態であろうと思います。 なお、陪審の制度につきまして、やはりその司法の民衆化というようなことの中に取り上げられているような点もあるかと思いますが、それはやはり裁判所の判断というものが専門家だけに任しておいてはいけないというような観点から、一般の常識を反映する制度として陪審制度はどうかということがちょいちょいと言われておるようでございます。 この陪審制度というものが日本に取り入れられたのも、そういった外国の制度を見習ってのことかと思いますけれども、この陪審制度というのは、やはり歴史的、沿革的なものがございまして、その国の国民なり社会になじまないということになりますと、この利用価値が非常に減殺されてしまう。現に停止されたというのは、確かにそういう時期的な制約もあった、時代的な問題もあったかと思いますが、やはりなかなかそれが活用されない。また、特にこれは刑事事件の有罪、無罪というその事実認定でございまして、民事にこれを採用している国もございますけれども、具体的にそういう実情を見てまいりますと、これはやはり弁護士の立場から見ますと、民事の複雑な事件について陪審というのは非常にむずかしいというような批判もございます。 また、これを運用していく上におきましては、これは民主主義はコストがかかると申しますけれども、陪審員を毎週裁判所に何百人と集めて、それから選び出して幾つかの法廷をこしらえて缶詰にしてやるというようなことは、いまの時代には非常にむずかしい問題がございまして、現に採用している国におきましても、それをどうしようかということが一つの問題になっております。 場合によりますと、陪審員を、これは権利であるから棄権できる、したがって裁判官がうまくやれば陪審員制度を棄権させることができるというようなことを言っておる裁判官もございますし、また、陪審はそういう素人の判断によって同情を買うことができるというようなこともございまして、陪審を付する民事事件は圧倒的に不法行為とか交通事故の事件に偏っておる、そういったゆがんだ傾向も別に出てきておる。あれこれございまして、抽象的、理念的には非常に結構なことなんでございますが、いろんな問題があるように聞いております。
○岡田(正)委員 ありがとうございました。 それでは次に移らせていただきますが、民訴事務の移転に関する規定というのは、昭和二十九年の改正における訴額引き上げに伴うものでありますが、この措置は、立法趣旨からいたしまして、暫定的措置として速やかに原状に復し、その簡裁の充実強化に努むべきものと思っておりますが、現状はいかがでございますか。
○梅田最高裁判所長官代理者 仰せのとおり、昭和二十九年の改正の際に最高裁判所が規則で民訴事務の不取り扱いをする簡易裁判所を指定することができることとされたわけでございます。これは当初、当時の政府の原案が、簡易裁判所の訴訟物の価額を三万円から二十万円に引き上げようといたしたこととも関連いたしているわけでございますが、国会での御審議によりまして、三万円から十万円に引き上げるということになったわけでございます。ただ、やはり当時その程度の引き上げが行われますと、民訴事務を取り扱うに十分な人的、物的な体制がとれていない簡易裁判所もあろうということで、こういった措置をとる道が開かれたわけでございます。 当初四十三庁が指定されましたけれども、その後五庁について解除されまして、現在三十八庁ということに相なっておりますが、三十八庁のうち七庁につきましては民事訴訟事務以外の事務についても移転されましたので、純粋に民事訴訟事務の不取り扱い庁は、現在三十一庁でございます。 解除になりました五庁は、指定後事件数が増加し、それに伴いましてその簡易裁判所の人的、物的な施設が整備されてまいったということから解除されたものでございますが、現在の三十一庁につきましては、仮に民事訴訟事務を取り扱うとした場合の民事訴訟事件の件数はほとんどの庁が十件に満たないような庁がございます。ただ、一、二、多少事件数の伸びてきている庁もございますので、そういった庁につきましては、今後の推移を見て指定の解除ということも考えてまいらなければならないというふうに考えております。
○岡田(正)委員 次にお尋ねいたしますが、簡裁の民訴事件については、先ほど御説明がありましたが、民間人の立ち会いを認める司法委員制度があります。その司法委員の数及びその立ち会い事件の数など、運用状況はどうなっておりましょうか。それからまた、私、素人でございますので、司法委員の権限と待遇等は一体どうなっておるのか、あわせて御説明願いたいと思います。
○川嵜最高裁判所長官代理者 簡易裁判所の手続の特則といたしまして先ほど口頭受け付けを申し上げましたが、制度的な面で、司法委員の制度はこれは一つの特色でございます。 司法委員は、御承知のとおり和解の補助をするという役割りと審理に立ち会って意見を述べるという役割り、この二つの役割りを持つものとされております。 現在、司法委員の数でございますが、一番新しい五十七年、本年の二月一日現在で五千百四十九名の方が選任されております。 この制度の利用、活用状況でございますけれども、これは調停委員の場合と違いまして、その利用状況は微々たるものと言わざるを得ないのでございます。司法委員が和解の補助あるいは審理の立ち会いということで関与した件数が年間千件を上回ったことは、最近十年の中ではございません。五十五年の例で申し上げますと六百十四件でございます。この六百十四件のうちほとんどが和解の補助という役割りで関与しておりまして、審理に立ち会い、意見を述べるという役割りをもって関与したのは、非常に少ないと見られます。大体そういうような実情になっておるのでございます。 待遇の面は、日当を支払うことになっております。調停委員は手当を支給することになっておりまして、現在まる一日仕事をしていただきますと、最近の改定で一万一千六百円ということになっておりますが、司法委員の方には日当を差し上げるだけということになっておりますので、この日当額が規則で定められておりますのが三千数百円であったと思います。待遇は大体以上のとおりでございます。
○岡田(正)委員 もうちょっと聞きたいのでありますが、時間がありませんから次の問題に移らしていただきます。 昭和三十九年に司法制度の改革についての臨時司法制度調査会の意見書が出されておりますが、この意見書の取り扱いは一体どうなっておりますか。
○千種政府委員 この意見書は、臨時司法制度調査会が設立されたその目的でございます法曹一元、裁判官の待遇の改善といった主要な目的に絡みまして、当時いろいろと起こっております司法に関する問題を網羅的に取り上げまして、それぞれの問題についての調査、審議の上、意見を述べているものでございまして、具体的にこれをどうするということは、それを参考にいたしまして、あるものは運用上改善をし、検討をし、また、あるものは検討の結果、手続にのせた法改正をする、実はいろいろな問題が含まれているわけでございます。そこで、この意見書をどういうふうに取り扱うかということは、そのテーマ、テーマによりましてそれに応じた処置をしてきたというのが一言で申しますと現状でございます。 簡易裁判所につきましてまたいろいろな関連で意見を述べておりますが、一言で申しますと、簡易裁判所をもう少し権限も内容も強化してはどうか、名前も変えてはどうか、こういうような基調で意見が述べられております。 民事事件について申し上げますと、先回四十五年の改正のときに三十万円になったわけでございますが、三十九年の当時の意見書でございますのに、三十万から五十万に引き上げてもっとたくさん事件をやったらどうか、こういうような意見書になっております。そういたしますと、これを処理する裁判官の方も強化しなければいけない。そこで有資格の、要するに法曹資格のある判事をもっと活用しろというような意見も出ておりますし、一方、一定の年限、一定の考試を経た特任の裁判官については、特任判事補というようなものをつくって法曹資格を与えるような道も開いてはどうかというような意見も出ております。名称も、区裁判所あるいはそれに類したものにしてはどうか、また、いま五百以上の裁判所がございますけれども、これをもう少し統合して、あるものについては事務の移転もして集約してはどうかというようなことになっております。 以上のように、権限強化、集約というようなことからしますと、全体の基調は昔の区裁判所に近いものになろうというような読み方もできるわけでございます。 そういうことからいたしますと、これはまた各界の反論もございまして、たとえば法曹資格に関する問題になってまいりますと、特任判事補というのは法曹資格の一元的な制度には反する、また、特任の者に法曹資格、要するに弁護士資格を与えるようなことは好ましくない、質を低下させる、こういう反論ももちろん出てまいります。それから、集約化しようということになりますと、先ほど来出ております庶民に近づいた、庶民的なものでなければいけないのが遠くなるではないか、名称なんかも、区裁判所だと何となく昔のイメージになるとか、それぞれみんな反対がございまして、簡易裁判所のそれぞれの意見が現実にどう生かされておるかということになりますと、それぞれ検討を続けておりますが、そのとおりに実っているものは現在ないというのが実情でございます。
○岡田(正)委員 ありがとうございました。それぞれ検討を続けておるが実ったものはない、まことに明確な御答弁でありまして、非常によくわかります。 そこで、この意見書におきまして簡裁に関するものといえば、先ほどお答えがありましたように簡裁の判事制度の改善、それから簡裁の名称の変更の問題、それから簡裁の整理統合、それから事務移転の促進の問題、それから事物管轄の拡張の問題というようなものが主に取り上げられているわけでありますが、司法委員の制度等の改善等もありますが、全部で主だったものだけで五つあるわけですけれども、それぞれあるが、検討しておるが実ったものはない。実ったものが一つだけあるわけですね。事物管轄の拡張だけ出てくるわけでありまして、この中で今回も事物管轄の拡張だけを取り出しておるわけですが、これだけを五つの意見の中から一つだけが先へ先へ走っていくというのはどんなものでしょうか。いわゆる全体のバランスが崩れるということになりませんか。
○千種政府委員 ただいま御指摘のような御批判もございます。私どもが三者協議の中でいろいろと議論をしてまいりました中にも、またそういう意見がございました。ところが、私どもが考えておりますところは実は少し認識が違いまして、今回事物管轄の改定をした趣旨は、臨時司法制度調査会の意見書で事物管轄の拡大を図ろうとしたことと、若干意味が違うように理解しております。 どういうことかと申しますと、私どもは今回大体三倍に上げたわけでございますが、これは経済指標といいますか、物価上昇、そういったものにスライドして、当初決まった簡裁で取り扱い得る事件の現状を物価スライドと申しますか、経済情勢に合わせてそのまま維持しようというのが目的でございまして、特段にその本質を変えてよけい事件ができるように権限を拡張するという趣旨ではないわけでございます。臨司の意見は、どちらかといいますと、物価スライドより超えてもっと権限を拡大しようというような意見のように理解しております。そういう意味におきましては、私どもは臨司の意見の中から事物管轄だけを取り出して、それに手当てをしたというふうには理解していないわけでございます。
○岡田(正)委員 それでは、次に移らしていただきますが、簡裁判事の任用別の構成を見てみますと、昭和三十九年には、有資格者は簡裁判事六百九十九人中三百七人で、四四%を占めていますが、五十五年現在では、七百五十一人中百六十八人で、二二・四%と減少しています。この傾向は臨司の意見にも反すると思いますが、その理由は何でしょうか。それからまた、判事定年退官者等の有資格者の任用は各年ごとに大体どの程度あるものでしょうか。
○大西最高裁判所長官代理者 簡易裁判所判事の前歴と申しますか、いわゆる有資格の簡易裁判所判事と選考任用の簡易裁判所判事の比率等につきましてただいま岡田委員が御指摘になりました数字はそのとおりでございまして、五十六年度におきましても、大体五十五年度と同じくらいだというふうにお考えいただいてよろしいのではないかというふうに思います。 そこで、臨時司法制度調査会の意見書によりますと、できるだけ有資格の簡易裁判所判事を多くするように、それから選考任用の簡易裁判所判事につきましても素質を向上するように努めろというふうに書いてあるわけでございます。ただ、実はこの臨司の提案は、先ほどの岡田委員の御質問、それから調査部長がお答え申し上げておることでございますけれども、臨時司法制度調査会の当時の意見書は、いわば簡易裁判所の性格を変えてしまうような大きな事物管轄の拡張、三十万ないし五十万、当時は五十万という意見がかなり強かったのを私、記憶しておりますが、物価のスライドとは全然違いまして大きな拡張を考えておったわけでございます。そういう意味で、簡易裁判所に大量の事件が来る、しかもむずかしい事件がいっぱい来るというふうなことが前提となってのそういう意見が実は出ておるわけでございます。 ただ、この問題につきましては、先般の事物管轄の拡張、昭和四十五年のときにも、臨司意見だけではございませんで、最初に岡田委員御指摘になりましたような同種の附帯決議というものがあるわけでございます。ただ、この附帯決議も実は当時はあくまでも物価スライドの管轄の改正ではございますけれども、今回の法案に含まれておりますような不動産事件の手当て、これは前回の参議院の附帯決議にあるわけでございますが、不動産事件というようなむずかしい事件を簡易裁判所がやる、そういう前提での附帯決議というわけでございまして、そういう意味で若干事情は違うわけでございます。 ただ、そうは申しましても、簡易裁判所の裁判等の担い手である簡裁判事の素質ができるだけいいようになるようにということは私ども常々考えておるわけでございますし、それなりの努力を一生懸命してきておるわけでございます。ただ、残念なことに有資格の簡易裁判所判事といいますものは、一つには判事の定年退官者が最近わりあい少ないというふうなことが絡んでまいりまして比率が落ちてきているということがございますけれども、ちょっとしばらくはまだ定年退官者が少ないので、なかなかそれをふやすようにここでは申し上げることはできませんが、できるだけそういう方向に持っていきたいというふうに考えておりますし、それから選考任用の簡易裁判所判事につきましては、これは少し口幅ったい言い方でございますけれども、最近は非常に充実してきておるというふうに自負しておるわけでございまして、全般的に素質はかなり向上してきておるというふうに考えております。しかも、研修も最近は特に強化いたしまして、試験で通ったからすぐやらせるというようなことではなくて、何カ月も研修をいたしますし、独立の簡易裁判所へ送ります前には大都会の簡易裁判所で先輩から十分に教わっていくというふうな手当てもしておりますし、そういうことで次第に充実しておるというふうに考えておるわけでございまして、このことは今後も簡易裁判所判事の素質の向上につきましては十分な配慮をしていきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。(岡田(正)委員「毎年何人ぐらい」と呼ぶ) 失礼いたしました。定年退官者は最近二十人弱ぐらいしかございませんので、大体それの六割ぐらいがなるという状況でございますので実は少のうございまして、十人ちょっと切れるぐらいの数でございます。
○岡田(正)委員 次に移らしていただきます。 簡易裁判所には事務移転庁二十庁、その中には先ほど御説明のありました当初から開庁していない八庁を含んでおりますが、民事訴訟事務移転庁が三十八庁、さらに裁判官が常置されていない庁が百五十庁あります。これらの状況から見ますと、簡裁を整理統合してその充実強化を図るべきではないかという意見がありますが、これについてどう思われますか。
○梅田最高裁判所長官代理者 仰せのとおり、未開庁を含めます事務移転庁二十庁、民訴事務の移転庁が三十八庁、裁判官の常置されておらない庁百五十庁、そのとおりでございます。数多くの簡易裁判所がございまして、その中には非常に事務量の少ないところもございますので、全国的な視野での限られた人数を有効に配置するといったような観点からは、百五十庁の裁判官不在庁もまたやむを得ないところかと思います。それらの庁につきましては、兼務あるいは填補で事務に支障がないようにはいたしております。しかしながら、簡易裁判所を充実強化させるべきであるという点につきましては全く異論がないところでございまして、あるいは委員御指摘のように、今日的な状況のもとにおきましては整理統合なり簡易裁判所の再配置というものを考えて、言ってみれば重点主義によって充実強化を図るということもあり得る方法だとは存じます。先ほど来問題になっております臨時司法制度調査会の意見はそのような立場もあるのではないかというふうに存じます。 しかしながら、事務移転といいますのは特定の簡易裁判所について特別の事情がある場合にとられる措置でございまして、必ずしも簡易裁判所の配置全体の問題を考える要因となるものではないわけでございます。と申しますのは、特別の事情が解消すれば事務移転はもとに戻すというたてまえであるからでございます。 民訴事務の移転にいたしましても、裁判官の常駐しておりません簡易裁判所にいたしましても、現に簡易裁判所の建物がございまして、そこで何らかの裁判事務というものが行われておるわけでございます。簡易裁判所が存在しないこととは本質的な違いがございます。簡易裁判所をどこにどの程度の数配置すればいいかといったようなことになりますと、これはまさにそれを利用される国民の権利の保護というような問題にかかわる重要な問題があるわけでございまして、単に行政効率的な観点だけでは律し切れない性質のものではないかと考えておりまして、いわば国民的な合意のもとに検討されるべき事柄であろうというふうに考えておるわけでございます。
○岡田(正)委員 最後の質問をさせていただきます。 副検事の方は、三年以上その職にあって考試を経た者は検事への昇進の道が開かれておることは御承知のとおりですが、簡裁の判事には昇進の道がないということが臨司でも指摘をされているわけですね。 そこで、副検事及び簡裁判事はその給源及び選考資格におきまして類似の関係にあるにもかかわらず、その処遇に相違が生じた理由というのは一体何でしょうか。
○大西最高裁判所長官代理者 簡易裁判所判事と副検事はほぼ類似の形で任用しておるということ、おっしゃるとおりでございますが、ただ、検察庁法の十八条では副検事について検事へのいわゆる昇進の道が開けておるのに、簡易裁判所判事についてはそれがない。これは御承知のとおり、裁判所法におきましては、判事補になるには修習生の修習を終えるということをその唯一の必須の要件にしておるわけでございます。経過措置等で若干例外はございますけれども、原則はそういうことでございます。 どうしてそうなったのかということにつきましては、私も自信はございませんが、恐らく、戦後新しい司法制度ができまして裁判官の地位というものを非常に高く持っていった。裁判官は何と申しましても紛争について最終的な判断をする人でありますから、できるだけ地位を向上し、いい素質の者でなければいけないということでございます。もう少し申し上げますと、戦前は、司法官試補を終えて判事になりますとすぐに一人で裁判ができたわけでございますが、戦後は、判事補ということですぐには裁判をさせない、合議体の一員としてしか入れないというふうなこともそういうことの一つのあらわれであろうと思うわけでございます。そういうことで簡易裁判所判事につきましては副検事と同様の規定が裁判所法に置かれなかった、そういう経過であろうと思います。 このことは、先ほど来たびたび御引用になっておられます臨司の意見書でも実はそういう意見が出たわけでございますが、それに対して、裁判官の素質をよくしなければいけないのに昇進というようなことを考えるのはむしろ本末転倒ではないかとか、そんなことをやったら裁判官の素質が落ちていくというふうな反対意見がかなり強く出ておるわけでございまして、そういう反対意見がその当時でもあったということが、当初からそういう制度ができなかったということを推測させる一つの材料であろうというふうに思うわけでございます。要するに、簡易裁判所判事と検事の二つを区別いたしました理由は、そういう裁判官の地位、裁判官の素質がよくあるべきだという考え方であろうというふうに考えるわけでございます。
○岡田(正)委員 時間が参りましたのでこれをもってやめさせていただきますが、いずれにいたしましても、この裁判という問題は国民の権利を保護してやるという大事な使命があるわけでございます。また、特にその中でも簡裁というのはその最前線のとりでみたいなところでございますから、国民が足軽く気安くそこへ出てこれるような運営が行われますことを心から切望いたしまして、私の質問は終わらせていただきます。 ありがとうございました。
○羽田野委員長 次回は、来る十八日火曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午後五時七分散会 ————◇—————