公職選挙法改正に関する調査特別委員会公聴会 第1号
- 発言数
- 112 件
- 登壇者
- 13 名
- 会派数
- 6
- 開催日
- 1982/08/07
会議録
○久野委員長 これより会議を開きます。 参議院提出、公職選挙法の一部を改正する法律案について公聴会を行います。 この際、御出席の公述人各位に一言ごあいさつを申し上げます。 本日は、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございました。参議院提出、公職選挙法の一部を改正する法律案に対する御意見を拝聴し、本案審査の参考にいたしたいと存じますので、それぞれ忌憚のない御意見をお述べいただくようお願い申し上げます。 御意見を承る順序は、高須公述人、阪上公述人、西平公述人、高橋公述人、福岡公述人、松本公述人の順序でお願いすることにいたします。なお、御意見はお一人十五分程度でお願いすることとし、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。 それでは、高須公述人にお願いいたします。
○高須公述人 おはようございます。私が公述人の高須敏行でございます。 私は、日本大学経済学部の大学院及び学部において次の四つの科目を担当しております。社会政策、社会保障論、福祉国家論、それに産業社会学の四つでございます。 そこで、本日のテーマであります拘束名簿式比例代表制と私の研究分野とがどういう関連で結びつくのかという線からお話し申し上げます。 戦後、私の研究の主たる分野は、社会政策と福祉国家形成政策の研究でございました。敗戦によって近代大国の列より落後いたしましたわが国にとって、その更生の道は、小国ではあっても福祉と文化との充実した平和な国になることでありました。その意味での先進国としてデンマーク、スウェーデンなどの北欧諸国が私の研究対象となり、私は昭和三十九年に北欧留学より帰りまして後、またその後五回滞在、研究を重ねましたが、著作や論文などによって福祉国家の形成政策を世に訴えてまいりました。 そういう政策のうちの重要な線の一つに、デンマークで約百年前にスタートしました拘束名簿式比例代表制の意義に関するものが若干ございました。それがどなたかのお目にとまって私を今日の公述人として推薦くださったのだろうと思われます。 したがいまして、本日これから申し述べますことは、平素からの私の研究の結論でもあり、大学の教壇でも講義しておるところでありまして、特に私を推薦された政党のために都合よくつくった作文というようなものでは毛頭ございません。多年にわたる研究と学問的思索の一応の到達点でありますので、幅広い客観性を持っておるものとして、もろもろの政党の方々にもいささか聞いていただけるものかと存じておりますし、何らかの御参考に役立ち得るのであれば幸甚と思ってここに出てまいりました次第でございます。 さて、社会政策という分野は二つの面がございます。第一は、困っている個人を救うというのも社会政策でございますが、他方、社会全般が年代の経過につれて次第に動脈硬化してまいります。それを異質の要素を注入して活力ある社会に蘇生させる、そういうのも社会にとっての大事な社会政策でございます。そして、この個人を救う面と社会自体を生き生きと生き返らせる面、この二つは相互に媒介し合ってこそ初めてそれぞれが本物となる性質のものでございます。 たとえば個人を救う面として、失業保険金の給付によって失業者は当面の苦痛から救われます。これは、たとえば宵が痛いという患者を前にして、医師がさしあたり痛みどめの注射をして当面のマイナス現象を緩和する、そういう一時的、現象的治療のようなものでありますから、この種の社会政策は現象的社会政策と言われます。 ところで、医者は、この現象的な手当てを行いつつも、心の中では、この痛みは体質のどこかにがんがあるのではないか、そういうふうに推測しまして、エックス線その他の手段によってそれを確かめ得たならば、今度はそのがんの病巣の手術のことを考えます。手術が成功すれば、この患者は体質から健康を回復したということになります。それは本質的な治療でございましょう。 同様に、社会政策のそういう本質的なものとしましては、昭和の初めからスタートしました、初めは部分的でありましたが、健康保険というのがございます。当時、医療も含めましてすべての物の売買やサービスの提供は金の支払いが前提である、そういう生活慣習が近代という時代の基本的な特徴として既成の事実であったときに、命を直接左右する医療だけは金の持ち合わせのありなしにかかわらずサービスを行う、こういういわば市場、マーケットにあらざる非市場的な要素を注入しまして、大衆にとっては苦しかった当時の社会に清新な空気を送って蘇生の思いをさせたものでございました。これなどは体質から治癒させた医療にも似ていて、社会政策としては本質的社会政策、こういう部類に入るかと思います。 ところで、今日ヨーロッパ、アメリカのいわゆる先進諸国はどこも不況、失業、赤字財政、貿易赤字の四重苦に悩み抜いております。日本はやや程度が軽いと言えるかもしれませんが、周りの国々がそうなれば日本だけが貿易がいつまでも調子がいいというわけにはまいらなくなります。やがて同じ苦難の道に巻き込まれるでありましょう。 世界じゅうの先進諸国が病膏肓に入った感がありますが、その根拠はどこにあるかといえば、近代という時代、ヨーロッパでは二百年前から、日本では百年少し前から近代という時代に入ったわけですが、もうそういう時代が衰退の坂道を下りつつある。平家物語の冒頭で諸行無常、盛者必衰という哲学を掲げておりますが、これはどうも不滅の真理のように思われまして、近代という時代、ずいぶんと栄えた時代でありましたが、まさに衰えの道に入っております。そういう場合に、ただ経済面からの政策を施してみても回復の望みはございません。回復のためには社会全般のすべての面で近代のコースを、いわばらせん階段の線が上の方に向かってらせん状にターンしていくようなぐあいに社会自体が新しい要素を、いわば近代とは少し違った要素を入れてこないと社会が蘇生することができないでありましょう。 そこで、今日のテーマでございますが、拘束名簿式比例代表制の導入に私が賛成いたしますのは、近代という時代は政治の面ではすべて量が物を言う、一にも量二にも量、量に対する質というのはきわめて弱くて無視されがちだったのが近代の政治でございましょう。たとえば議員に出てくる人も投票の量ですべて決められてしまう。自分は質がいいんだと思っていても量に決められればもう万事休すでありましょう。国会の中では政党の所属議員の数の多い方が勝ちだ。こういう量がすべてを支配するのは近代の特徴でございました。 それは、近代以前の政治が何か武力のようなもので勝負が決まった。それに対して平和裏に勝負を決めるにはスポーツと同じように点の多い方が勝ちだというので量の勝負に切りかえた。これは近代としてはそうあるべきでございましたでしょう。また、近代民主政治が国民の成人全部に選挙権を拡充いたします。そういうことになったときに選挙権に質とかなんとかいうことは入れられませんから、すべて量が決めた。ですから近代においては量第一主義、それでよかったのでございましょうが、ここに来て近代がいろいろ末期現象を起こしてまいります。どうしても質を何とかして国会の政治に入れることが社会を蘇生させる道でございます。 この拘束名簿式比例代表制がスウェーデンとかデンマークなどの北欧の国々で早くから導入されたということも、そこに質を早くから入れたいという希望があったからでありましょう。それで拘束名簿式にしますとなぜ質が入るかと言えば、それはもう御存じのとおり名簿の順番に人の名前を書きますが、その名前の書き連ね方、これを書くときに当然質が入ってくるからでございます。そうしますと、この拘束名簿式によって、いわば近代の量第一主義になった国の政治の中に少しでも質が入ってくる。これは分量から言えば、拘束名簿式によって出てくる議員さんは数は少ないのでしょうが、そこに質の回復の端緒が開かれる。この制度の最初の間はまだ過渡期でいままでとの妥協や関連がありますでしょうから、最初から質の名簿ということはむずかしいかもしれませんが、(「最初の名簿は質が余りよくないのだ」と呼ぶ者あり)いや、これはどの政党にとっても同じことでございましょう。(笑声)いや、私は非常に公上平に客観的に申しております。とにかく今日の時点でこの制度を導入してすぐに効果ということは望めないかもしれませんが、世の中全般にわたって質が生き返ってくる、こういう方向に国の政策が持っていかれることが大事だろうと思います。 持ち時間終了でございます。(拍手)
○久野委員長 どうもありがとうございました。 次に、阪上公述人にお願いいたします。
○阪上公述人 私は、選挙制度の研究者として四つの点にしぼって個人的意見を申し述べることにいたします。 第一は、参議院の全国区制の改革というものは、日本の議会政治における第二院としての参議院のあり方というものを前提として考察しなければならないということでございます。現在国の財政危機で行政改革が叫ばれておりますときに、巨費を投じて参議院を維持する以上は、その存在理由と存在意義が国民に納得される形で示されなければならないと思います。 その存在理由として、衆議院に吸収されない国民意思の代表、それから審議の繰り返しにより慎重さを加え、衆議院と異なった視点から再検討する、それと同時に、法案に対する世論の形成と反映の機会を与え、衆議院のチェック機関としての機能を持つ、あるいは衆議院が解散等により活動不能になる場合に国会の機能を補充する、こういった存在理由が考えられるわけであります。 これによって参議院のあり方としては、衆議院と異質の代表、衆議院が政党を中心とした数の政治、力の政治というのに対して、参議院は理の政治、良識の府ということが当初から言われたわけでありまして、無所属の学識経験者あるいは職能代表をその中心に置きたいということが憲法制定当時金森国務大臣も再三強調された点であります。 憲法調査会におきましても、その報告書の中で参議院の異質性に基づいて改革をしていくという方向が示されております。 特にその中で、全国区制というものは、衆議院と異質の代表を、全国的知名度の高い無所属の学識経験者と、それから職能代表を確保する制度として案出されたものであります。私はこの初心を忘れてはならないというふうに考えるわけでありまして、今回の全国区制の改革はこの参議院の特色である無所属を頭から排除し、政党化を前提とする比例代表制案でありまして、参議院とそれから全国区制の創設の理念に逆行する、そういう案であるというふうに私は思います。 そういう意味で、参議院におきましては、政党化している現状を是として容認するのではなくて、参議院のあり方に反する非として改革の方向を模索するのが筋である。私は十数年前からこの参議院の政党化に反対して、このままでは参議院は第二衆議院化して参議院の無用論が出てくる、その前に参議院のあり方を再検討して改革案を進めるべきだということを主張してまいりました。今回の改革案は、その政党化というものを前提として、無所属議員をすべて排除するという案でありまして、参議院の存在意義そのものを否定するものというふうに私は考えざるを得ないのであります。 第二に、この改革案の理由として、現行制度では選挙に金がかかる、選挙区が大き過ぎて選挙運動が大変であるという点が挙げられております。私はこの意見は現行の公職選挙法を否定して冒涜する論理であると思う。 現在の公職選挙法は、巨額な国費を投じまして選挙公報とかあるいはテレビの政見放送、新聞広告、ポスター、ビラ、こういった選挙運動の公営化を進めております。公選法を遵守して選挙を行うということを前提としておりまして、この公選法をそのままきっちり守って行えばそれほど金のかかるような選挙はできないはずでございます。全国区制ができましたときに、そもそもこの全国区制というのは全国を選挙運動で飛び歩いて選挙運動をするということを前提としておりません。全国的に知名度の高い方が立たれれば選挙運動をしなくても当選できるあるいは全国的な組織で職能代表が確保できる、こういうことを前提としておるわけであります。したがって、金がかかる選挙ではなくて金をかける選挙が実態でありまして、現行の公職選挙法でも、それを守りさえすれば金のかからぬ選挙というものは十分実現できるわけであります。 そういう意味で、もし現行法で金がかかる選挙ということであれば、それは選挙法が実際には守られていないということを示すもので、それでは改革案が出ても公選法が守られるという保証はないわけでありまして、選挙法そのものの存在意義というものが否定されることになります。 現行の全国区制の問題点は、選挙法を守らない選挙という不当な現実を前提にしておりまして、選ぶ側の立場に立てば、金をかけずに選挙ができるというふうに私は考えるわけであります。 それから第三番目といたしまして、私は選挙制度の研究者として、最も代表的な選挙制度である比例代表制そのものに反対しているものではありません。衆議院に導入するということであれば私はむしろ賛成の方に回りたいくらいであります。参議院のあり方から見て、参議院へ比例代表制を導入するということに反対しているわけであります。 その上に、この改革案は次の点で憲法違反の疑いがあるということが言えます。 第一に、政党要件が厳し過ぎまして、一人一党はもとより、小政党の立候補も認められないということは憲法第十四条の法のもとの平等、第四十四条の議員資格の差別禁止あるいは第二十一条の結社の自由に関連する結社しない自由といったような規定に反する疑いがある。また、これを選ぶ側の有権者の立場から見ますと、大政党のみを投票の対象とせざるを得ないということは憲法第十五条の公務員の選任権を制限し、国民の政治参加を制限するということになります。それから、比例代表制の選挙で個人の選挙運動が一切禁止されているということは、これは憲法第二十一条の表現の自由に反する。 こういった憲法違反の少なくとも疑いがあると言われるこの法律案というものを違憲の疑義を残したまま拙速に法律化してしまうということは、唯一の立法府としての国会に許されることではありません。議会制民主主義を守るためにも、これらの疑点に対して国民の納得できる結論を示すべきであろうと思います。特に、法律家の集団である日本弁護士連合会が違憲の報告書をまとめているということに対しては、やはりこれに対する説得できる結論というものを国会は出すべきだろう。 最後に、改革案が厳しい政党要件のもとで無所属候補や小党派の立候補を排除しているということは、現在少なくとも三割は存在している無党派層を無視することになると思います。現在無党派層は増加する傾向にあり、政党政治の時代といえどもこれを無視することはできない存在となっております。政党本位の改革案はこれら二千万から二千五百万の有権者の意思を無視し、実質的に選挙権を奪うということになります。 そのほかに改革案には多くの問題点がありますが、基本的に改革案は参議院の本来のあり方から見て、参議院の特性を失わせ、第二衆議院化させることによって国民に参議院への不満をつのらせ、ひいては議会政治への不信を引き起こすことになろうかと思います。日本に議会制民主主義を確立し、真の両院制というものを機能させるために、私は本改正案がとりあえず本議会で撤回される、そして十分再審議された上で再提出されるように希望したいと思います。 私は、最後に、参議院のあり方というものから見て、この全国区の改革案というものを現在の形で引き起こすことは、これは参議院全体の性格というものを基本的に変えてしまう、創立当時の、またこの立案者が考えた参議院のあり方というものに逆行する、そうして政党化というものを前提として考えるこの改革案というものをこのまま推し進めるということは、うっかりすると角を矯めて牛を殺すということになりかねない、それくらい大きな両院制のあり方というものに関連してくると思います。 そういう意味で参議院地方区というものを見ますと、現在政党化が非常に進んでおります。参議院におきましても、全国区制が、無所属議員や職能代表あるいはタレント議員などユニークな政治家のわずかに残された窓口でありました。全国区制は参議院らしさの残された最後の聖域を確保するものであったわけでありますが、これが政党化という形で進められ、そして政党人を中心とした衆議院と同じような構成で参議院が構成されるということは、参議院の本質的なあり方そのものを変えてしまう危険性がある。そういう意味で、日本の議会制民主主義を確保していくためにも、確立するためにも、私はぜひこの改革案の再考を促したいと希望いたします。(拍手)
○久野委員長 どうもありがとうございました。 次に、西平公述人にお願いいたします。
○西平公述人 私は、実は世論調査の研究をやってまいったのでありますが、これに広い意味での世論である選挙についても研究を広げまして、もっぱらそれを統計的に数字の上で研究してまいりました。主に日本と西ヨーロッパ諸国のそういうものについて研究してきたわけでございます。 比例代表制と申しますのは、一口で言いますと国民の意見の鏡を議会につくる、あるいは国民の意見の縮図を国会の中につくるということでございまして、原則的にはどなたも御容認いただけることだろうと思うのでございます。しかしながら、それを具体化する上で越えなければならないハードルといいますか、幾つかのむずかしい問題点がございます。したがいまして、私も比例代表制を採用するに当たっては具体的な案を考えなければいけないと思いまして、実は十数年来幾つかの提案をしてまいりました。幸い昨年は新書版の本を出すことができまして、広く世の中の方に訴えることができたのでございます。 その本の中にも書きましたことでございますが、第一院の衆議院を比例代表制にすることは賛成だが、第二院の参議院の方はむしろ、どの制度にも欠陥がございますので、比例代表制の欠陥を補うような方法を採用すべきだと実は書いているのでございます。たとえば衆議院の方でそういうことを採用いたしますと、どうしても人口の多い都会の代表、過密地帯の代表が大部分の議員になってしまいまして、過疎地帯の問題というようなものはなおざりにされるおそれがあるのであります。したがって、まず第一院の衆議院の選挙方法を決め、その欠点を補う方法を第二院で考えるべきだ、こう考えてきたのでございます。 しかしながら、今日ここで私が発言を求められましたのはそのことではないと思います。すでに提案されている公職選挙法の一部改正というこの法律案についての意見と考えまして、その点につきまして、いわば技術的な面から御参考になりそうな幾つかの意見を申し上げたいと思います。中にはすでに御審議済みのこともあるかもしれませんが、その点は御容赦願います。 いただきました資料の要綱というのに沿って問題点を述べたいと思います。 第一は名簿の提出要件というのでございましょうか、ア、イ、ウと三つの要件がございまして、議員五人以上、前回の選挙で四%以上、十人以上の候補者というようなことが名簿提出の要件になっているわけでございます。しかしながら、比例代表制と申しますのは、先ほど申しましたように国民の意見の縮図をつくるというところにねらいがあるのでありますから、なぜこのように大きな政党だけに有利で、小さい政党あるいは一人一党、無所属というような方の名簿提出を阻むようなことをお考えになったのでありましょうか。しかも、これが第二院で採用されるという場合に、第一院の方はある意味では政局の動きと非常に密接な関係を持つという意味で、たとえば西ドイツなどでも多少のこういう制限があるわけで、そういう点ではやむを得ないことかもしれませんが、第二院の方ではむしろじっくりいろいろなことを考えるというような意味で、少数意見が切り捨てられるような名簿提出の要件というのはどうも賛成しかねるのでございます。 しかし、すでにいままで存在している政党のためには、ア、イ、ウというのが条件だと、それは問題ないのでありまして、さらに私は次のような、いわばエ、オというような条件をつけ加えていただけないかと思うのでございます。 一つは、これは少し空理空論といいますか、余り実態的な意味はないかもしれませんが、工といたしまして、都道府県会議員あるいは市町村会議員というように公選された議員の方々の推薦する団体が名簿を提出できる。これも一定数と考えられますが、そういう点も一応御考慮願えないか。 それより私が大事だと思いますのは、オといたしまして、有権者の一定数の賛成が得られた名簿の提出は認める。特に参議院の場合は解散というようなことが急に起こるわけではございませんで、スケジュールが決まっておりますから、一定期間内に一定数の有権者の署名といいますか、賛成があればその名簿は認めるというようなことをお認めいただけないか。場合によりましてはそれは複数の県、たとえば四国というようなことをすぐぽっと考えまして、四つの県以上にまたがらなければいけないというような幾つかの制限は必要かもしれませんが、そういうこともお考え願えないかと思うのであります。 なお、ちょっとつけ加えますと、小党分立ということが政局の混乱をもたらすというようなことが言われることがあります。そういう場合に第一次大戦後のワイマール憲法下のドイツの例がよく引き合いに出されるのであります。しかしながら、それは小党分裂のゆえにヒットラーの登場を促したということではございませんで、むしろ大きい政党、中くらいの政党というような政党の間の混乱がそれをもたらしたのであります。さらにまた、あべこべに二大政党制と言われているイギリス、カナダ、オーストラリアというような国を見ますと、そういうようなところでは議会の解散が頻々と行われておりまして、決して政党の数が少なければ政局が安定するというものではございません。 それから次には、第二番目に名簿の構成といいますか、いわゆる拘束名簿制についてでございます。 私は、比例代表制の具体案を検討するに当たりまして、日本の政党の実情では、政党というより党員組織の実情では、拘束名簿をつくるのは非常に困難だろうと素人考えに思いました。かつまた経験豊かな議員の先生の御意見でも非常にむずかしいだろうということでございました。また、ヨーロッパ諸国などでも名簿をめぐるスキャンダルは数知れずささやかれております。しかしながら、これは私の書生論でありまして、政党の方々ができるというのであればそれはつくってみていただきたいと思うのであります。 しかしながら、そういう議員といいますか、政党の側だけではございませんで、有権者の側の意見もお聞きいただきたいのでございます。ヨーロッパの多くの国で、比例代表制が採用されているところでございましても、実は拘束名簿について有権者の方は個人が自分の意思、個人的な好みが出せないという点に不満がございまして、各国ともと言っていいと思いますが、有権者の意見が反映するような方法をつくることに大変な苦労をしております。このような大変な苦労が、ヨーロッパ諸国の間で統一的な比例代表制の制度でない、各国それぞれ別の制度を与えているということでございます。このような苦労は、議員の側と反対にあります有権者の側のことを考えると、十分お考え願いたいのでございます。西ヨーロッパ諸国の中で完全な拘束名簿式を使っているのは、民主的な選挙が始まって十年に満たないポルトガルとスペインだけでございます。 それから次は、第四番目に挙げられております供託金のことでございますが、ここで書かれておりますことは、個人中心の選挙からの発想ではないかと思うのであります。 比例代表制では供託金というものは本来なくてよい。名簿の提出というような場合にはなくてよい方法ではないかと思うのでございます。しかも四百万円とかを候補者ごとに出すというのは、どうもこれは名簿式の考えに反する。そしてまた、供託金没収という点につきましては、これもまた当選した人数について考えるというのは少しおかしいのではないか。 要するに、名簿というものについて、たとえばある名簿が何%以下しかとれなかった場合は、それは供託金を取るというのは一つの考え方かもしれません。要するに、供託金を取るというのはふまじめなあるいは売名的な候補者が選挙に立てないようにしようということにねらいはあるのだと思うのでありますが、そのためには、先ほど初めに申しましたように、名簿の提出政党がすでに既存の政党である、そのほかに全国民の中の、有権者の中の多数の方がこういう政党には、こういう団体には名簿を出させてもいいのではないかと考えられるようなものから出させればいいというようなことで、供託金の問題は解決するのではないかと思います。 なお、この点については、選挙運動のところでもちょっと触れたいと思います。 次は、投票の方法でございます。 投票の方法は、政党名といいますか、リスト名を記名するということになっております。しかし、現在の個人の選挙でありましても疑問票というものは多数ございまして、その処理は必ずしも明朗な方法ではございません。すでに得られたものに比例してというようなのは、実は余り明朗な方法ではないと思うのでありますが、名簿式になりますと類似政党というものが出てくるおそれが多分にございます。もしこれを記号式と言われている、印刷する投票用紙にチェックするというような方法にいたしますと、たとえば政党名のほかに括弧して略称をつけるとか、あるいは総裁、委員長というような方の名前をつける、場合によりましては、都道府県ごとに別々の用紙にして、看板候補と言っては失礼かもしれませんけれども、西ドイツでもすでにやられておりますように、都道府県ごとにそこへ書く候補者の名前は変えるというようなことがあってもよいと思うのでありますが、こういうぐあいにいたしますと、有権者の側からは、何党、しかも、ああ、あの方が委員長なんだ、あの方が党首なんだというので、しっかりわかって、責任ある投票ができる。そういう点において記号式投票を御採用願えないものかと思うのであります。 ちなみに、記名式投票というのは、日本と、現在の韓国はちょっと私存じませんが、十年くらい前の韓国だけだというぐあいに聞いております。少なくとも西ヨーロッパ諸国では記名式というようなものはとられておりません。 次に、当選人の決定、と申しますよりは議席配分の問題でありまして、それがドント式というのが提案されておるわけであります。比例代表制というものを一番簡単な規則で表現すればドント式になると思うのであります。ただし書きというようなものがまずほとんどない、全く要らないと言ってもいいくらいのものでございます。普通パーセンテージを、得票率を議席に掛ける、単純比例制とか言われているようでございますが、そういうような方式ですと、実は四捨五入とかその他についていろんなただし書きをつけなければなりませんし、かつまたアメリカで百年近く前にわかったことでありますが、妙なパラドックスが起こるのでございます。 そういう意味で、ドント式は大体単純比例制とほとんど同じ結果になるわけでございますし、そういう考え方からはドント式がよいと思うのでございます。 しかしながら、先ほど申しましたように、第二院というところでは十分少数意見も考慮すべきだというような点を考えますと、ドント式よりは、完全な比例代表制ではございませんが、サント・ラゲあるいはサン・ラグとも申しますが、そういうような方法、あるいはそれを修正した方法を使いまして、少数政党のみならず国民の中の少数の方の意見を十分お聞きになるようにお考えいただけないものかと思うのであります。 さらに、これは書生論かもしれませんけれども、少数意見の反映をするためには、名簿連合、アパランテと呼んでおりますが、縁組みとも言っておりますが、そういうような方法で、少数意見をさらに保護するということも、御審議だけは願いたいのであります。 六番目の項目の、選挙運動に関してでございますが、これもやはり何か名簿を中心の選挙でありながら個人中心に考えられている規定のように思われるのであります。 たとえば、二十五人の制限というようなことは、恐らくテレビに二十五人の方の顔を出すというような発想からなされていると思うのでありますが、名簿選挙になりました以上は、いわば政党の選挙でございますから、政党の方々がテレビに顔を出す——顔を出すというのは失礼な言い方ですが、御意見を出されるというようにすべきでありまして、そうすれば何も二十五人というような制限は要らないと思うのであります。 さらに、先ほどの供託金の問題にも関連することでございますが、選挙公営というのは、テレビやラジオにどうこうということよりは、別の方法が最近ヨーロッパでもどんどん採用されております。西ドイツでも、イタリアでも、スウェーデンでもすでに実行されておりますし、その他の国でも議論されていることでございますが、たとえば、そういうような新聞広告、ラジオ、テレビ、チラシその他の費用は、要するにこの場合、名簿ですから、相当大きな団体でありまして、その団体が負担する。そして選挙後、一定の得票を得た名簿に対しては、一定の額を国の予算から出すというような選挙公営というのを考えるのはいかがかと思うのでございます。 以上、細かいことをいろいろと述べ立てました。しかしながら、とにかく国民の方にとりましては、たとえば新聞などでも七月になりましてからやっと細かい議論が出てくるようになりまして、十分に理解をしていないのであります。できることなら、これは選挙でございますから、国民の側を考えまして、十分意見が、長所、短所、わかるような結果を踏まえて、それから審議されることを望むものでございます。 どうもありがとうございました。(拍手)
○久野委員長 どうもありがとうございました。 次に、高橋公述人にお願いいたします。
○高橋公述人 同盟の高橋です。公述の機会を与えてくださった貴委員会に感謝を申し上げたいと思います。 私は、現在審議されている公職選挙法改正案、拘束名簿式比例代表制について反対の立場でありますので、これからその理由を述べることにしたいと思います。 まず、この拘束名簿式比例代表制というのは、有権者、国民にとって、きわめてわかりにくいものであると思うのです。 その改正理由として、現在の参議院全国区制度は、選挙区が広過ぎで運動量は大変であり、候補者の選択が困難であること、また候補者にとって膨大な経費がかかり過ぎること等が挙げられております。 この改正案の理由の発想は、選挙される候補者の都合のみを重視し、有権者である国民無視の本末転倒なものと私は言わざるを得ないと思うのです。 本来参議院選挙制度は、現行憲法にのっとり、衆議院とは異なった性格と特徴を持つもので、衆議院に対する再審機関であり、行き過ぎた政党政治の弊害をチェックし、是々非々の立場で是正する機能を期待し生まれたものであるはずだと思うわけであります。 ところが、拘束名簿式比例代表制の導入は、参議院の政党化を確固不動のものに促進しようとするもので、参議院の存在理由と二院制をみずから否定する結果となることが最大の問題点であります。 また、拘束名簿式比例代表制は、国民代表及び平等選挙並びに自由選挙の原則をひずめ、個人の立候補を禁止し、候補者を通じて国民の意思を反映する選挙を不透明にするもので、選挙制度の根幹を揺るがす重大な問題でもあります。 社会党の改正案も、自民党案と比較すると若干の緩和策がとられていますが、本質的には全く変わりない制度内容であり、中小政党にとって全く不利になる一方で、大政党にとっては圧倒的有利な、そして都合のよい選挙制度であると言われてもやむを得ないものだと思うわけであります。 さらに、この改正案では、全選挙区に地方区候補を立てられない政党の場合は、従来の地方区の運動とあわせて全国的な選挙活動が必要となり、きわめて不公平になるばかりでなく、特に小会派、無所属候補を参議院全国区から事実上一切締め出そうとするものであります。 拘束名簿式比例代表制はまた、党議拘束が一層強化されることになり、候補者の選定順位をめぐって利益団体やまたは派閥などの争いを激化させることになるため、かえって国民の選挙意識の高揚と政治不信の解消を図ることに逆行するものだと考えます。 また、改正案の内実は一種の間接的な選挙であり、候補者の名簿をつくるということは国民主権の精神を反映することができなくなります。加えて、今日まで特に参議院議員選挙については党より人で投票している日本の政治風土の中で、政党への投票には抵抗が強く、棄権の増加を招く結果になると心配されるわけであります。 今日国民の中に無党派層が四〇%を超えているという実態から、この改正案ではますます国民の選挙離れを促進することになり、国民と政治との距離を拡大させることになりましょう。まして、拘束名簿であるがゆえに、その順序の変更は国民に許されるものではないため、国民の無関心は一層助長され、民主主義に逆行することが懸念されるわけであります。 拘束名簿式比例代表制が全議員のうち一部の全国区選出参議院議員だけに適用されるということは、候補者名簿の順位決定権を政党幹部が握ることになる以上、当選者は政党または派閥に対し忠実になりがちであり、選挙民、国民とは遊離し、主権在民という憲法の基本精神に反することにもなります。 選挙制度の根幹にかかわる改正は、現存する特定政党間のみでの問題ではなく、民主主義ルールの基本にかかわる議会制民主主義の土俵づくりの問題であり、きわめて重要な国民的政治課題であります。したがって、一党の多数を頼んで押し切ることは民主政治の基本ルールに反することであって、本来全政党の合意が必要であるはずです。 かつて、政府の選挙制度審議会においても、この問題が幾たびか取り上げられ、結論が得られないままになっているようであります。しかし、国民にとって重大な問題であるだけに、衆知を集めて慎重に検討するために、国民各層の代表者による第三者機関の設置などによって、参議院全国区制の問題点がどこにあるのかを明らかにし、国民の合意を求めて改正すべきと考えるものです。 最近、一般国民の中では、政党化が進み二院制の効用がすっかり薄れていることに失望しております。特に国会において国民生活にかかわる具体的な政策論議が少なくなりつつある中で、多くの国民が参議院本来の機能回復を強く求めているときだけに、政党本位の選挙制度導入は発想の逆転であると思うわけであります。 現行全国区制では経費がかかると言われていますが、改正案は必ずしも金がかからない制度と断定するのは誤りであります。全国区は政党への投票となれば、全地方区または多くの地方区に候補者を擁立しなければならず、地方区選挙は全国区とペアとなり、まさに大激戦を展開することになり、そのため地方区への資金投入が増大することになることは自明の理であると思うわけであります。 また、現行の全国区制度は、選挙区が広く運動量が過大であり、候補者名の周知徹底がきわめて困難であると言われていますが、次善の策として地方区制一本のみにするとか、またはブロック制の導入などによって改革することも可能なはずです。 この改正案の発想は、さきに述べたように、選挙される大政党の候補者側の都合のみを重視し、有権者である国民を軽視するものと言われてもやむを得ないものであります。一般国民は、衆参両院議員の定数是正と政治資金規正法を抜本的に改正し、公正にして公明な、そして金のかからない公営選挙を強化することこそが先決であり、その改正を強く求めていると思います。 今回の改正案によれば、名簿を提出できる政党などの条件として、国会議員五人以上、直近の国政選挙で得票総数四%以上、公認候補者を十人以上のいずれかであることが要求されています。無所属であった候補者あるいは新たに立候補しようとする有権者は、この三つ目の条件に拘束されることになります。したがって、新しく立候補する場合は政治団体を新たにつくらなければならず、政治結社を強要することにもなります。そして十人以上の候補者を擁立しなければならず、全員を全国区候補とすれば四千万円という膨大な供託金をそろえなければならないことになるわけです。さもなければ、政治信条に反してまで政党や政治団体に無理して帰属しない限り立候補ができなくなり、法のもとの平等、立候補の自由並びに個人に投票する自由も拘束されることになるわけであります。 よって、この改正案は、まさに法を曲げても大政党の党利党略による改正としか考えられないと思います。 選挙制度は国民の権利にかかわる重大な法案であり、特に民主主義の基本ルールの原点であるだけに、改正は一時的な党利党略に走ることなく、慎重に審議されることを強く求めるものであります。 次に、改正案による選挙運動の面について意見を述べることにいたします。 自由民主党の改正案によれば、選挙運動には自動車、マイクの使用、文書図画の配布、街頭演説、個人演説会を禁止し、一党当たり一地方区に一つの選挙事務所、新聞に政党の広告、ラジオ、テレビによる政見放送、一回限りの選挙公報の発行、投票所における候補者の名簿の掲載に限定しようとしています。これだけを見る限りにおいては、確かに金は余りかからないように見えます。しかしながら、国民には候補者を知る権利があり、言論の自由は本来選挙において生かされなければならないもので、これまで規制することは決して許されるものではないと思うわけです。候補者の街頭演説などまで禁止されるとすれば、有権者である国民と触れ合う機会を失うばかりでなく、国会議員はだれのために働くことになるのか問われることになり、一層政治に対する信頼性を失うことになりかねません。 わが国は、今日内外ともにきわめて厳しい環境に立たされており、政治の役割りはかってなく重要な時期を迎えていると思います。それだけに、政党や政治団体は国家、国民のための諸政策、政治倫理の確立などを明らかにすることが重要です。そして、国民の判断によって投票されるものでありますから、候補者の数などによって選挙運動を規制することなく、公正な選挙実現のために制限緩和を図るべきであると思うわけであります。 以上をもって、反対の立場での私の公述を終わらせていただきます。(拍手)
○久野委員長 どうもありがとうございました。 次に、福岡公述人にお願いいたします。
○福岡公述人 駒澤大学法学部で政治学と比較政治学を担当しております福岡と申します。 いままで四人の方がいろいろな側面からお話をしてきましたが、各論的に申せば幾つかお話ししたいことがあるのですが、選挙制度というものを本来的に見ていく中で一つ感じるのは、選挙制度というものは長所も短所もあると言われていますように、かつて一九五八年フランスでドゴールが共産党を封じ込めるために二回投票制という制度を持ち込んで、それが今日左翼連合を生み、フランスのミッテラン大統領という逆の結果が出てきたという形になっております。選挙制度というもの、実用するにも悪用するにも、それは政治に携わる皆様方の御判断と良識にかかわっていると思うわけであります。 その中で私が一つ感じますのは、選挙の制度とその国独自の政治風土といいますか、最近の政治学の中では政治文化という概念を使っておりますが、その国独自の政治の風土、文化というものとかかわって検討していかなければならない。その意味で、スウェーデンでも二院制を一院制にしたという大改革がありました。日本でも現在、まさに革命的行為と言われております選挙制度の改革は、あくまでも実態に即してよりベターなものにしていくということが基本原則であろうと思っております。 その意見で、私は比例代表制というこの制度が、枝葉末節においては先ほど西平先生も御指摘にありましたようにかなり多くの疑問点がありますが、民意を鐘のように反映するという、議会政治の上で一瞬大事な国民の意見である民意の議会政治へのフィードバックを可能にするという意味ではきわめてすぐれた制度である。 もう一点は、比例代表制という制度を研究していく中で非常にむずかしい点は、比例代表制というのは比例代表制論者と比例すると言われるほど非常に数多くあります。その各国それぞれの研究をしてみますと、まさに党利党略であり、国策であり、いろいろな形でありますので、そのすべてを網羅することはここでは時間の関係上できませんが、私なりに考えました幾つかの点を披瀝していきたいと思います。 最初に、国民の意見を国政に反映するという意味で、比例代表制は確かにすばらしい制度でありました。しかし、それがかつての西ドイツといいますかドイツの戦前における、あるいは今日のイタリアにおいてあるいはデンマークがこの間ついに十党を超える、政党のシステムの破片化という言葉を使っておりますが、非常に政党が分散化していく。フラグメンテーションという、断片化、破片化という言葉を使われますが、これを起こしますと、今日政治問題が非常に山積をしているはずでありますが、山積をしている中で党利党略、政党間の交渉というものが非常に重要視されまして、政策とか行政が二次的、三次的なものになってしまう。そういうようなことを考えますと、政党システムの破片化ということは防がなければいけない。その意味で制限条項が、ヨーロッパの比例代表制を採用している国々では非常に多く採用されております。それは五%であったり、あるいはスウェーデンの四%であったり、デンマークの二%であったりというふうな形になっております。 今回、この公職選挙法の提案理由説明をちょっと見ていく中でお話をしたいのですが、先ほど後ろの各論のところは西平先生が御指摘をしましたので、私は前文に当たります「全国区制度の改正について」というところからお話をしていきたいと思うのです。 その中で、提案理由が四点について出ているわけですが、簡単なリピートになりますがお聞きくだされば、まず一点目が「参議院にふさわしい人」という概念が出ております。これは、参議院にふさわしい人がどういう人かは定かではありませんが、恐らく良識の府としてふさわしい人である、もうちょっと言うならば市川房枝さんに代表される出たい人より出したい人をという、いまの全国区とは全く逆の立場になると思います。 第二点目につきましては、「八千万人の有権者を対象とする個人本位の選挙となっているので、有権者にとって候補者の選択が著しく困難である」と書いてあります。ちなみに、前回の同時選挙での無効票の数は、全有効投票の七%を超えております。実に四百万票以上であります。四百万票をとれない政党もいくつかあるわけですから、そのことを考えますと、これはいまの全国区制度に対する痛烈な皮肉であると私は考えております。ちなみに、当日行われました地方区、衆議院の無効票の約二倍であります。具体的な数字はここにありますので、もしよければそれはまた後ほどお話をしたいと思います。 それから、投票日の当日になって決めるという人がどのくらいおるかというと、これも地方区や衆議院と比べると約二倍ありまして、投票日、すなわち投票箱の前でだれにしようかなというかなりいいかげんな人が前回八%、これは世論調査の結果ですが、ありました。明るい選挙の世論調査であります。 このような約四百万票以上という無効票の存在と、それから投票箱の前でどうしようかな、一番右の上に書いてあったのがどなたかわかりませんが、その人に入れてみようかという八%の人、このことを考えていくと、制限条項となりますたとえば全国区の票で直近の選挙で四%とかあるいは国会議員五人とか無所属十人集めなければいけないということが何と枝葉末節な陳腐なことであるかということを、まずもって考えなければいけないと私は思っております。 それから三番目の「膨大な経費」、これはまさに金権選挙の原因でもあるし、もう一つは永田町は圧力団体に席巻されてしまったと言われるほど、狂ったような選挙になると思うのですが、その意味で今回の比例代表制は、この点を改めるには最たるものだと思っております。 その次、四番目になるのが、個人本位から政党本位の選挙ということでございますが、やはり議会政治、議会デモクラシーが政党政治というものを大前提としなければ運営できないということは自明の理であります。確かに、国会にもろもろの意見を反映するために一人一党的な人が登場することは好ましいことであると同時に、まさに先ほど言いました政党システムの破片化を促す原因でもあります。ある意味では、自己満足で選挙に出てきて当選をしていくということもあると思います。 この四点の中で、今回の比例代表制名簿拘束式というものが、実を言うと二点目、候補者の選択をやさしくする、これは従来百人の中から選んできたのが、七党か、せいぜい八会派ぐらいから選ぶわけですから、かなり楽になります。そういう意味では、非常にいい制度であると私は賛意を表したいと思います。 三番目の「膨大な経費」、これはどんなことがあれ、数百億あるいは数千億と言われた前回、前々回、四十九年以降の金権全国区選挙を考えれば、これははるかに安い選挙制度だと思って、これも私は賛成をいたします。 それから「政党本位」、この問題と一番目にある「参議院にふさわしい人」ということを考えていったときに、政党要件の国会議員五人、直近の選挙での四%、それから無所属の人たちは十人の会派をということは余りにもきつ過ぎるのではないか。これは明らかに提案理由と自己矛盾を犯している大変大きな問題ではなかろうかと思います。従来の公聴会やあるいは参考人のいろいろな意見の中でも、これは自民党推薦の方でも恐らくその点を、私は新聞の示すところでしか理解をしておりませんが、政党要件の緩和ということをうたっておるわけであります。公聴会が、あくまでも議案の慎重審議の要するにプレスティージづけということで終わるのならばそれは仕方ないところでありますが、もし、本当に委員会あるいは国会が国民の意見を代弁し国民を代表して話し合うということを考えていくならば、この政党要件の緩和という点はぜひお考えになってほしいと思います。 この中で、たとえば前回の同時選挙のときの全国区の票で四%ということに該当するのは、まあ多くの政党は該当するわけですが、その中で市川房枝さんと青島幸男さんの票を見ますと、これは四%の要件を超えております。二百七十八万票と二百二十五万票ですから、有効投票の四%というのは当選しております。この四%というのは、確かに個人でも可能な数字でありますが、先ほど西平先生も言いまし、た衆議院、第一院であるならば、大いに僕は四%か三%ということで御指摘をしていきたいわけですが、参議院、第二院である、そして全国区である、唯一の良識を代表すべきところである全国区の改正であるならば、これは社会党案の二%よりももっと少なく、たとえば前回、コロンビア・トップさんという方が五十六万票で落選をしておりますが、この五十六万票というのは有効投票の約一%であります。 僕は、全国区であるならば一%ぐらいまで一気に下げる。下げれば泡沫候補の出馬ということはチェックできるし、それでなおかつ、一人一党でも国民をある程度——先ほど西平先生が、ア、イ、ウという要件があって、オとして、一定の推薦を得た人はいいんじゃないかというお話がありましたけれども、私は全くそれと同じで、数字で言うならば前回の選挙での一%とか、あるいは全国区で四県にまたがって、たとえば五万人か十万人かある一定の推薦の名簿がついているならば、その人たちにやはり出馬の権利を与えなければ、これは法律、憲法上の問題どうこうではなくて、自民党の提案理由の第一にある「参議院にふさわしい人を」というこの第一要件を拒否するものであって、これほど自己矛盾の全国区改正というものはないだろう。この一点で、私はやはり党利党略という面に即した発想ではないかというふうに考えております。 それ以外に幾つかの問題点はあるのですが、選挙運動の件につきまして一点お話をしておきたいのです。 選挙運動のことにつきましては、先ほど供託金のことにも触れてお話が出ましたが、政党というものを認定して選挙を行う以上、改めてなぜ供託金を取るのかということは、これは非常にナンセンスである。政党本位の選挙にする以上は意味がないと思うのです。もちろん、改正の段階で一人一党が出られれば、これは考えなければならないわけですが、この点は非常に自己矛盾の論理展開であろうと思います。 もう一点は、選挙運動の問題ですが、確かにいま参議院の全国区でも、政党本位で選ぶ人の方が個人本位で選ぶ人よりも多くなっております。これは過去三回の例で見ても、四八%前後で政党を選んでいる人の方が多いです。ただ、この段階で、いままでの全国区でも、テレビの政見放送とかあるいは選挙公報とか、そういうようなことで選んでいる人が、何を有力にしましたかという中で上位の一、二、三位ぐらいを占めているわけです。 その意味で今度は、どのようにテレビの政見放送みたいなものをやるのかわかりませんけれども、たとえばスタジオの中で各党に時間割り当てで、一時間どうぞ好きに使ってくださいなんということを言わないで、もっとどこでもいいから好きなように時間を与えて、諸外国のように好きなようにおつくりください、時間だけはチェックするけれども、あとはもう御自由にということ、あるいは、政党本位の選挙というものは政策本位の選挙になるわけですから、政党の党首あるいは参議院の方の会長か団長かわかりませんけれども、その人が出てくるとか、あるいは候補者同士五人ずつで徹底して討論させて、その中で、ああこっちの方が能力があるなとかいろんなことを、国民に判断の材料を与えるならば、選挙公営の徹底した拡大をもってすれば、日本のこの非常にゆがんだ政党選挙システムというものが少し立ち直ってくる涼風を投げ込む一つの契機になると私は思いますので、その点は大いに声を大にしてお話をしていきたいと思います。 あと、繰り上げ当選のことは、余り私はよくわかりませんが、もし六年有効であるとするならば、あるいはその途中でもって、参議院に比例代表で受かった人が衆議院に転出をするとか、あるいは知事選に出てそっちで当選するとかいうような、ステップ台として比例代表を使うということも十分予想される範囲であります。それが予想される範囲であるならば、繰り上げ当選は六年というものはもうちょっと短くすべきではないかというふうに、幾つか問題点を御指摘してお話をしました。 どうも失礼いたしました。(拍手)
○久野委員長 どうもありがとうございました。 次に、松本公述人にお願いいたします。
○松本公述人 委員長から御紹介いただきました日本医労協の松本でございます。 私は、憲法の理念、意思を生かすために本委員会が設置され、さらにそこで審議されておられます委員の諸先生に対して、国民の一人として敬意を表したいというふうに思います。 私は、日本の医療労働者で組織をしております日本医労協という労働組合の責任者でございます。 その運動の中心には常に日本憲法の理念を置きながら、私たちの民主的な権利の拡大とあわせて国民、患者の命を大切にする、そのことを常に一体として追求をさせていただいております。まだまだ微力ではございますが、私たちの運動の中から、患者さんたちの自己負担、現金負担などをなくするという運動の成果に、マスコミなどもさわやかであるというふうな評価をいただいております。 そういう運動を進めております運動家としての視点、さらには一国民としての視点をもって、今回審議されておられます法案については、基本的な態度といたしまして、これは明快に反対であるという態度の表明をさしていただきたいというふうに思います。 あわせて、私は、いわゆる比例代表制という問題について、それが本当に国民の意思を十分反映できるような、そういうふうな合意がつくられた中での制度として発動していくならば、そのことについて反対をしているのではないということも意見を申し述べておきたいというように思います。 そこで、反対の理由でございますけれども、時間の制約がございます、したがって、私の立場として、主に二つの立場で反対の理由を申し述べさしていただきたいというふうに思います。 一つの理由は、この委員会に送られてまいりました前段の経過、参議院におきましての本法案の審議経過、これは、自民党さんのきわめて暴挙とも言えるような経過に乗って送られてきている。そのことについて私は、反対の第一の理由として申し述べておきたいというふうに思います。 二つは、いわゆる政党三要件ということで盛り込まれておりますが、このことについても、これは憲法の条文に明快に違反するのではないかという立場で、反対の理由を申し述べておきます。 その二点のうちの第一点の中の細目について発言をさせていただきます。 私は、本日の公述人として出るに当たりまして、参議院での特別委員会の議事録についても一通り目を通させていただきました。そこでは、参考人さらには公述人ともに、この法案に対しては反対、さらに賛成の立場はありましても、共通項としては何かというと、それはできるだけ政党間の合意、国民の合意を得られるように、そのことをぜひ努力をしてほしいということが、それぞれの出席者の共通した発言でありましたし、強い意思であったというふうに思います。 ところが、事態というのはどういうことになったのか。これは新聞報道などもされておりますし、あわせて私が繰り返す必要はないかと思いますけれども、この席でやはり一国民として、その経過について批判を含めて発言をさせていただきたいと思うわけであります。 それは、七月十六日の参議院本会議の強行採決、それに先立ちます七月九日の参議院特別委員会における自民党さんのいわゆる単独強行採決、これは前例のないものだというふうに言われておりますし、国会史上汚点を残すと言われておりますが、私はそのとおりであろうというふうに思っております。 特に、七月九日の委員会での三点の乱暴な審議の方法というのは、私は許されるべきものではないんではないかというふうに思っております。 その一つは、委員会開催定数に達していない状態で強行に採決をされているということでございます。 二つは、身体障害を持つ前島議員が入室できない状態で、そういう状態が明白にあるにもかかわらず質疑の権利を放棄さすような、そういうふうな運営をなされているということであります。 また、三点としては、上田委員長が表決参加の委員数の誤認をなさっておるという問題もあります。 その上に、事態収拾をするための参議院議長の議長所信という内容についても、これも二重の誤りをなさっているのではないかというふうに思います。そのことは、この委員会の成立前に参議院の議長が所信を述べられるという点では、この委員会さらには衆議院を軽視をなさっているという関係がございます。さらには、所信の中に六十一年の参議院通常選挙、その後に「必要により本制度に検討を加えるものとする」というふうなことでは、これはすでに欠陥がある法案をそういう所信で補おうという、二つの誤りをなさっているという、二重の越権行為というような内容があろうかと思います。 特に私は、そういうことについての抗議が広がっておりますが、あわせて、私自身は医療労働者の立場で、どうしてもその経過について強い抗議の意思を示しておきたいと思います。そのことは、前島議員の発言を実質的に封じてしまったという内容でございます。政府も、さらには自民党も、いわゆる国際障害者年については大々的に参加をし、またそのことのキャンペーン等も張られたということの事実については知っております。そういう内容と、しかし本当に身体に障害のある方が、そのことを押して議事に参加をしようとする方の意思を無視して運営をなさる。これは私は、憲法を超えたいわゆる非人間的な行為として許されないのではないかというふうに考えております。 そういう内容を前提とした法案であるとすれば、そのことの実行が果たして本当に民主主義を発揮できるでしょうか。私はできないのではないかというふうに思います。まさにそのことが、この法案の持っている内容を、あの参議院における暴挙というのは先取りして実践をされたのではないかというふうに思っております。その点では、新聞でも報じておりますが、自民党推薦の富田明大教授が新聞のインタビューに答えられまして、自分の発言そのものについてもあるいはセレモニーではなかったのか、本当の意思が反映されていないという抗議の批判等もなされております。こういう内容について、まさに国民がどういう立場で見ているのかという点を十分尊重しながら審議をお願いしたいし、またこの法案については撤回なさるべきじゃないだろうかというふうに思います。 第三点の問題でありますが、第二点は政党の三要件の問題でございます。これも先ほど来から、公述人の諸先生からも意見が述べられておりますから、その点については私は深くは論及をいたしませんが、しかし、無党派議員を制度的に一掃するというそういう内容であるということについては、これはファッショ的な暴挙法案ではないだろうかというふうに思うところであります。国民の選挙権、被選挙権については選別することができないとする憲法の四十四条の条項に明白に違反をするんではないかというふうに思っております。 私たちで組織しております労働組合は、できるだけ憲法の意思を大切にするという立場で、参加をいたしております組合員の思想、信条の自由については、これを完全に保障し、またそのことを実践をいたしております。さらには、政党の関係においては、政党とは要求に基づいて協力、協同をするという立場をとっております。日本の労働運動では、民社党支持とか社会党支持とか、そういう労働組合がまるごと政党支持関係を持っているという、私はこれは間違いだと思いますが、それがありますが、私たちは憲法を大切にする、憲法の意思を大切にするという立場で、個人の思想、信条の自由、政治活動の自由は保障をいたしております。 私たちの労働運動の次元の問題とこの国会における次元の問題とは、性質を異にするかとも思いますけれども、しかし共通する内容というのは、民主主義を大切にする問題、憲法を大切にする問題という点では、共通項があろうかというように思います。そういう意味で、私たちの視点で、すでに思想、信条を大切にする、さらには個人の政治活動の自由を保障するという視点また実践を通して見まして、この問題については大きく私たちの運動七からも疑念があるということをつけ加えさせておいていただきたいというふうに思います。 したがって、こういう本当に国会史上汚点を残すようなことを急がれるということの内容が何にあるのだろうかというふうに私は考えますと、それは私たちはこれにも明快に反対しておりますが、いわゆる第二臨調基本答申に見られます軍事費には手を触れず、私たちの医療とか教育とか、また公社を民営化するという、そういう内容の政治基盤づくりではないだろうか。 またさらには、もっと急がなければならない問題というのは、このことをこれほど急ぐのではなく、まさにロッキード判決に見られるようないわゆる金権体質と言われる政党の体質を改善されることだとか、また選挙の自由を拡大する問題だとか、そういうことが先議されるべきではないだろうかというふうに思います。さらには、こういう暴挙の繰り返しというのは、将来の小選挙区制だとか憲法改悪につながるという、そういう底流があるというふうに私は強く心配する立場からも反対をさしていただきたいというふうに思います。 最後になりますが、朝日新聞の三日付の記事の中にも、この国会で審議されます法案と関連をして、いわゆる比例代表のヨーロッパの問題を紹介をされておりまして、そこでは、個人立候補は保障をするという問題だとか、供託金をとらないということがほとんどの国の通例になっているというようなことも商業新聞で紹介をされていました。 いま基本的には私は反対でありますが、仮に百歩下がっていまのいわゆる比例代表制が実施されるとしても、しかしこの制度というのは、日本では全く初めての選挙制度の実行でございます。ドント方式だとか拘束比例代表制、このような問題についても、国民にとってはきわめて耳新しい言葉でございます。私ごととなって失礼ではありますけれども、ドント方式などというのはとんと承知いたしませんので、百科事典等で調べて最近ようやくその内容がわかったというふうな、そういう状態でございます。だといたしますれば、ほとんど多くの国民は、いまの自民党案として出されています法案の中身について、私は大きくは先ほど二点の問題で反対いたしましたが、それらの内容だとか、また参議院における強行採決の問題等についても承知していないのが実態ではないだろうか。そういう中において今回のようなことが急速に進められるということについても、まさにこれは憲法の意思を無視しているし、また私たちいわゆる選挙権を持つ者の意思も無視をされているのではないだろうか。ほとんどすべての公述人だとかさらには参考人が申しておりますように、政党間の合意だとか国民の合意が十分図られるような、少なくとも最低そのことは保障するのが、私は国会における諸先生方の憲法が要求いたします義務ではないだろうかということを強く発言をさしておいていただきます。 時間のようでございますので、これをもちまして私の公述人としての発言を終わります。どうもありがとうございました。(拍手)
○久野委員長 どうもありがとうございました。 以上で、公述人各位の御意見の開陳は終わりました。 午後一時から公聴会を再開することとし、休憩いたします。 午前十一時五十九分休憩 ————◇————— 午後一時二分開議
○久野委員長 休憩前に引き続き公聴会を再開いたします。 これより公述人に対する質疑を行います。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。住栄作君。
○住委員 公述人の皆さんには午前中大変貴重な御意見を拝聴をいたしました。私どもも、大事な制度でございますので、当委員会において慎重な審議をいたしておるわけでございまして、皆さんの意見が伺えたということは大変幸せでございます。 ただ、皆さんの意見発表の時間も限られておりますし、私の持ち時間も大変少ないので、いろんなことをお伺いしたいのでございますけれども、時間がございませんので、要点をしぼって御意見をちょうだいいたしたいと思います。 私ども自身も、明治二十三年選挙法ができまして、個人に投票をしておった。今度の改正案では、政党の提示する、あるいは政治団体の提示する名簿、それをもとにして政党に投票するということですから、これはいままでなれてきた選挙に対するノスタルジアもございますし、あるいはまた、将来これがうまくいくんだろうかという不安も実はあるわけでございます。一方におきまして、参議院の現状と申しますか、いろいろ言われておりますように、一体八千二百万人の有権者を対象にした選挙、これがうまくいくんだろうか、どうだろうか、こういうこともございますし、全国対象でございますから、大変な金がかかるということも言われておりますし、強健な国体であっても、選挙後不幸にして亡くなられる方も非常に多い、こういうことでございまして、参議院の良識の府としての、出たい人より出したい人、こういういろんな要請との兼ね合いで比例代表制というものを考え、そしてそれをやろう、こういうことだと思います。 そこで、比例代表制、制度そのものの問題としまして、参議院が政党本位になるのは、公述人の皆さんの多くはいろいろ危惧の念を持っておられるような意見とも私は受けとめられたわけでございます。しかし、先進国どこでもそうでございますけれども、政党政治というのは、議会制民主主義の本当の基本になっていると思うわけでございます。そして、政党が政策をもって国民に責任を持つわけでございます。小党派の皆さんがどうだこうだというのは、小党派の皆さんが政策の遂行に対して責任を持てるかどうか、こういうようなことも大変危惧の念を持っておるわけでございまして、参議院が政党化するということがだめなのかどうなのか。私は、いままでの現実から見て、そういう中にあってこの制度を生かしていくというのが必要なんじゃないかと思うのでございますが、そういう点について、阪上先生、高橋先生、松本先生の御意見をまずお伺いしたいと思います。
○阪上公述人 いま現実的に政党化している、それをどういうふうに考えるかという問題でございますけれども、衆議院と参議院と両院あるわけでございまして、衆議院が現在の制度ではいろいろな面で優越しておるわけでございますね。したがいまして、参議院は、当初、両院制がつくられましたときから、衆議院と異なった形で、できるだけ審議をもう一度再審議するという、そういうことが創立当時からうたわれていたわけでございます。したがって、私は、ある程度政党化するのはやむを得ないにしても、基本的にはできるだけ衆議院と違った構成で、異質性を持った参議院、第二院の構成というものが必要だろうと思います。したがって、望ましいのは、できるだけ政党化を避けるという方向でむしろ考えていかなければならない。これは最初のころから金森国務大臣なんかも、衆議院の数の政治に対して、参議院は質の政治、理の政治である、そういうことを強調されたわけでありまして、したがって、その構成としては、できるだけ無所属の学識経験者とかあるいは職能代表といったような形の、衆議院の政党化に対して、何らかの形で別の視点から検討できる、そういう構成を参議院にはできるだけ求める、そういう趣旨でございます。 したがって、現実が政党化しておるから、それをもとにして無所属をすべて排除する、あるいは小会派をすべて排除するという形の今回の拘束名簿式比例代表制というのは、そもそも全国区制がつくられた、できるだけ全国的に知名度の高い学識経験者を集めるという、そういう趣旨に全く反するものであるというふうに私は考えております。
○高橋公述人 政党化は、私は否定する立場にはないわけです。しかしながら、二院制度の参議院における機能、独自性をやはり持たせるべきではないのかな、こういうことでありますから、無所属であろうとも、いわゆるそういう小会派であろうとも、平等に立候補ができるような、そういう方向にいくべきだろう。特に、私は、選挙制度の問題については、先ほども申し上げましたけれども、やはり選挙制度審議会というのがあるわけですから、そういうものにかけたり、また国民各層の代表の第三者機関みたいなものを設けて、全国区というのは、先ほど委員長からもちょっと聞いたのですが、全国区制というのは日本とグアテマラの二国だけだというわけですから、改革の必要性はわかるわけですけれども、やはり参議院の独自性が、チェック機能としてのそういうものが保たれるような院にしたい、こういう立場で申し上げているわけです。
○松本公述人 お答えをしておきます。 私も憲法の専門家ではございませんけれども、いまの議会の運営を見ますときに、議会制民主主義という立場をとる限りにおいては、政党本位というのが大きな流れになっていくという点は、そのことは否定をすべきではないであろうというふうに考えます。しかし、そのことを前提としながらも、参議院という、いわゆる議会が、日本のいまの民主憲法のもとで、三十年の経過の中でいわゆる手づくりと申しましょうか、日本人民が新しい憲法のもとでつくり上げてきたそういう流れ、輪郭、それから果たした機能、そのことを否定すべきじゃなく、その流れに沿いながらできるだけ民意を反映していく、そういう機能にすべきではないだろうか。そういうふうな立場に立つとすれば、先ほども私が公述させていただきましたが、今回の法案というのは手順においても全く唐突な感じがいたしますし、しかも審議をなさっておられます参議院における自民党の態度というのが、そういう流れについて、戦後の参議院の成立してきた流れ等についても、それを無視するような、そういうふうな内容ではないだろうか。先ほども御質問にお答えがございましたが、参議院の審議の中についての手順の大きな暴挙、間違いだと思いますし、先ほどもありましたように、審議会等の議を経るとか、そういう国民の合意を多く得られるような手順をなさるべきではないだろうかという点がございます。 それからもう一つは、いまの政党本位の体制としての比例代表制が仮にあったとしても、そのことと同時に、いまの憲法でございます結社の自由とか、思想、信条の自由とか、公務員の選定の問題等についての憲法の条文と矛盾しない形で法案が本当に審議を尽くせばでき上がっていくんではないだろうか。いまも先生の方からもございましたが、八千二百万の有権者のうちのかなり多くの方は、いわゆる無党派と言われる無所属の方たちを現実に投票し、選定をしているわけでございますから、それと矛盾しない形で法案を作成していただくとか、審議していただくということは、決して不可能ではないんではないかというふうに思うところであります。 したがって、最後になりますが、いまのままの進行と申しましょうか、そうすれば私はどうしても大政党の党利党略が優先しているのではないかというふうに思うところでございます。
○住委員 もう時間がなくなってあれなんですが、もう一点だけ。 実は参議院では大変憲法との関係が問題になったようでありますが、特に私は、この制度は合理的な理由もあるし、憲法に違反するものではない、こういうように考えておりますが、西平先生それから福岡先生等から、この政党要件あるいは政治団体の要件、そういうものについて建設的な御意見の開陳があったわけでございますが、そもそもこの制度と憲法との関係、いまもお話がございました十四条とか二十一条とか四十四条との関係ですね。御意見は、そういうような点でもう少しブレークダウンして緻密にやらないと憲法違反になるんじゃないか、こういうような前提なのかどうか、その点を西平先生と福岡先生にちょっと確かめさしていただきたいと思います。
○西平公述人 私は元来数学出でございまして、憲法のことは一市民としての知識しかございませんが、たとえば日本の憲法は民主主義の源流の憲法の嫡出子というようなことを初めに言われたのでございますが、そういうような民主主義憲法の流れに沿ったほかの諸国でこういうような方法が採用されているということで、拘束名簿式というものが憲法に抵触するものとは私は考えていないのでございます。
○福岡公述人 ただいま西平先生のお話にもありましたように、ヨーロッパの政治を見ますれば、その多くの国が、日本流にいまの御指摘のように考えれば憲法違反を犯しているような形になるわけですが、私は、絶対的に出られないというものではなくて、相対的な制限として政党要件の三つが出てくる以上は、憲法上の違反ということは一切考えておりません。先ほどの指摘は、あくまでも参議院の、提案理由の中にある、良識の府としてというような視点から見れば、五人であり、四%であり、十人というのは、余りにも党利党略的なものではないかということでございます。
○住委員 大変どうもありがとうございました。終わります。(拍手)
○久野委員長 沢田広君。
○沢田委員 諸先生には貴重な時間、また大変貴重な意見を承りまして、心から厚く御礼を申し上げる次第です。 まず最初に、高須先生は、原則的にこれが行われれば質がよみがえってくる、いまの参議院は余り質がよくないということなのかもしれませんが、そういうことで活気を入れていく、あるいはそこの中に新たな息吹を新近代社会ということで一いま質が悪いと言ったのは冗談で言ったのでありまして、ベターの議論ということなんだろうと思いますから、それは申し上げておきますが、そういうことの中で、いま他の阪上先生や西平先生、福岡先生、基本的に反対だという方は若干別といたしまして、制度の中で改善すべき要件はこれこれたくさんある、こういうふうに、列挙はいたしませんが、それぞれ述べられました。その辺については先生はいかがお考えになっておられるかお伺いいたします。
○高須公述人 高須でございます。 いま、半ば冗談で、参議院の質が悪いと言ったんじゃないだろうとおっしゃいまして、まことにそのとおりでございます。質はよくていらっしゃるのですけれども、選挙を直接経ますとどうしても選挙民に有利な約束を心ならずもせなくちゃならないですね。(「そういうことです」と呼ぶ者あり)そうですね。本当に私はそうだと思うのです。ですから、拘束名簿式で出てくる人、これが参議院の全員じゃもちろん困りますが、一部分なんですから、そういうところでは選挙民に対して、たとえば日本の経済はこんなにもう厳しくなって、ますます厳しくなっていくんだから、いままで約束した年金の金額も約束どおり伸びる、そういうわけにはいかないんだというようなことを言ってくれる政治家が出てきてくれないと、日本の将来はなはだ不安になると思います。そういう意味で、選挙民から見れば間接に出てくる政治家ですが、拘束名簿式比例代表制が採用されればベターになると思います。
○沢田委員 私が実はお伺いしたがったのは、われわれでも率直に物は言っているつもりなんですよ。片方は、自民党さんの方がかえって、まあここは議論してもしようがないですが、本音を言うという論理については、各政党ともこのごろはもうほぼ本音の議論ということをやるようになってきていますから、その点は心配ないと思うのです。ただ、私が申し上げたかったのは、たとえば、六年も繰り上げ当選の権利を持っている、次の三年の間の選挙もまだ繰り上げ当選の権利を持っている、二重に登載していてもいい、こういうような、何といいますか、町内会の選挙だってこんなことないと思うのですね。とにかく六年間も次点といいますか、繰り上げ当選の権利を持っていて、その間には次の三年目の選挙のときにもまた名簿にも載せられます、こういうめちゃくちゃなのはないだろうというのが一つあります。 それから、いま言われているようにドント方式というか、どんとこいという式に体制の方が有利なような方式が——先生も北欧におられたのならば、北欧のサン・ラグ方式ですか、修正されたもの、あるいは等差級数的ないわゆる比例の方法というようなものがあるはずですから、そういうものの導入というような意見、あるいは記号式の投票の問題、これは西平先生がおっしゃった意見でありますが、福岡先生の方も、それぞれ繰り上げ当選の問題とかその他の問題、政党の緩和の問題を言われております。そういう点については、高須先生としてはどういうふうに受けとめられるのかということをお伺いいたしたいわけであります。
○高須公述人 北欧で選挙制度を社会政策の一環として研究してまいりましたが、この比例代表制は、それぞれの国の文化的伝統とか政治的現状とかに即して規則がつくられますもので、日本は日本の独自の規則をつくっていくというのが日本の伝統の成果を発揮するのに最も都合がいいと思います。私は北欧のことを勉強はしましたが、やはり日本は日本だと思っております。
○沢田委員 どうもありがとうございました。 続いて、日本は日本だから別だということでありますが、サン・ラグ方式とドント方式との違いを西平先生等からは若干述べられましたが、いまの政治的なあり方というようなものの意味において、今日の日本の状況の中で、高須先生は諸行無常という言葉で言われましたた。その後に「おごれる者は久しからず」という言葉があるわけでありますが、高須先生はわざわざその条文を外して言われたのでありますが、そういう意味において西平先生は、このドント方式が必ずしも今日の政治情勢を反映する上において正常なもの、あるいは正確なもの、あるいは国民の意思を十分反映せしむるもの、あるいは参議院的な良識の府としてふさわしいものかどうか、この点についてはどのようにお考えになっておられるか、若干、比例代表の票の案分といいますか、考え方というものについては考慮すべき点があるのではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
○西平公述人 原則といたしまして、比例代表制を具体化するというときの基本的な、数学屋的に申しますと定理のようなものとしてはドント式というのはいいと思うのでございますが、先ほども申しましたように、第二院で比例代表制を生かすというときには、少数意見というものがある程度反映されるような方法を考えなければならない。そうしますと、いままで発表されているものではサン・ラグ方式、それを多少緩和した修正サン・ラグ方式というのも御考慮になってはいかがだろうか。しかし、北欧で修正サン・ラグなどが採用されましたのは、昔は選挙区単位に計算をしていたわけです、いまスウェーデンはちょっと違いますが。しかし、それでも選挙区、これは大体州単位でございますが、配分する議席数が十前後の選挙区が多いのでございます。そういうような場合には、ドント式と修正サン・ラグで相当大きな差が出てまいります。しかしながら、全国区五十議席ということになりますと、実はそれほどの違いはない。統計屋の目から見ればそうでございますが、しかし、少数政党にとりましては、一議席、二議席を得る可能性があるか否かということが問題になります。そういう意味では、少数政党の当選をより確保するためには、たとえ五十議席であろうともサン・ラグ、修正サン・ラグというようなことを考えた方がいいと思うのであります。
○沢田委員 ありがとうございます。自民党の皆さんもよく聞いていていただいて、せっかく名士の方においでをいただいて、これだけの見識を述べていただく、それが右から左に流されてしまって法案に生かされない、これはきわめて遺憾なことですから、ひとつ十分御配慮をいただくように特に要望しておきたいと思うのです。 そこで福岡先生にお願いいたしますが、繰り上げ当選の例をいま申し上げたのですが、普通、われわれの一般の選挙は三カ月ということになっております。この拘束名簿式の方式では、いま言ったように六年間まるまるあるというようなことになってきますと、六十の人だったら六十六になってしまう。その間には次の参議院選挙に当選してしまう人もいるだろうし、六年というものは大変長期な補充期間を据え置くということになるわけですが、これは政治学的にどのように考えたらいいのかということもあるのでありますが、どの程度が適当か。われわれみたいに三カ月程度で打ち切って、欠員は欠員のままでいって、ある一定の、次の三年目に補充選挙をやるというのが筋なのか、三年まではいいのか、一年までがいいのか、この辺についての御見解がありましたらお聞かせいただきたいと思います。
○福岡公述人 ただいまの御質問ですが、日本の歴史というのはまさに工夫改良の歴史といいますか、加工貿易に象徴されている部分があると思うのですが、その部分から考えますと、たとえば六年の繰り上げ当選ということが明記されて実施されますと、政治学上のどうこうという問題よりも、これを逆利用して、悪く言えば悪用しまして、先ほど言いましたように、たとえば衆議院に転身するとか、知事選に出るとか、あるいは地方の市長選に出るとかというような、国政で選ばれた人が地方選の方に転出するなんということを、やろうと思えばかなり大幅にできる制度だと私は思うわけです。 そこで、六年を三年にするのか、現行の三カ月にするのかというのは、考え方がいろいろあると思いますが、私はやはりなるべく短くすべきであろうと思う。そうしなければ、欠員を簡単に名簿の下から繰り上げていくならば、名前を借用して国会議員であるというようなことで、プレスティージをつけて利用するということが非常に頻繁に行われるのではないかという、僕は推察に立っております。これは幾つかの事例を見、あるいは友人たちの研究会の中でも、やはりそれが一番多く行われるだろう。従来の選挙ですと、たとえば参議院地方区に出て、その中でも衆議院のそれに該当する選挙区だけで徹底して選挙戦を行って、次の衆議院にそのまま出馬をして当選をしたケースというのは、幾つかの政党に現実に見られるわけですから、このことはぜひ御注意くださればと思っております。
○沢田委員 阪上先生は、大体原則的に現状というようなお話でありますけれども、いまこのような条件の中で、金のかからない、市川房枝さんとか青島さんとか、名前を挙げていいかどうかわかりませんが、言うなら今日の情報化社会のあり方というものの基本をどういうふうに受けとめておられるのか、ちょっとお伺いをしたいのであります。 たとえば野党をちょっと褒め過ぎたり何かすればおろされてしまうなんという状況もなくはないのですね。あるいはマスコミの社会においても、そういうような点もなくはない。言うならば、ある一定の管理的な社会の中に情報化というものが織り込まれている状況にあります。その中で生き延びていくためには、それに迎合する——迎合するという言葉がいいかわかりませんが、歩調を合わせていくということがそのタレントさんにも必要になってくる要件なんですね。そうなりますと、野党とか何かの中からそういうテレビに乗る、あるいはそういう場面というものはきわめて限られてくる。どうしても一方の側に有利な条件が生まれてくる。市川房枝さんは別にテレビでどうこうではありませんけれども、そういう人たちがえてして一番国民と接しやすい条件にある。先生方はりっぱな方々であります。しかし、諸先生方がもしこういう条件の中で出て、個人の名前ではどれだけの知名度があるだろうか。先般私のところでも大学の先生が市長選に出ましたけれども、負けましたね。そういうようなことで、必ずしも有能な人と知名人というのは同意語にならない。そういうものが選挙の一つのマイナス面としてあるわけですが、そういう意味において今日の情報化社会のあり方、現状、その中で今日の選挙を続けていくことは果たしてどの側に有利になるのだろうか、こういう疑問が残るのでありますが、どのようにお考えになっておられるでしょうか。
○阪上公述人 私は、現状の全国区制が必ずしもいいと思っているわけではありません。改革しなければならない点も多々あるというふうに考えているわけですけれども、そういう改革の問題については、私はほかのところで論文などで書いておりますが、現在の改革案として出されてきたものは、参議院のあり方という問題から見ますと、先ほどお話をしましたように、政党化というものが前提になっている。ただいまお話ありましたように、現在の情報化社会というものを考えますと、一般の人、かなり高名な学識経験者でも、個人の知名度というのは非常に低いということはおっしゃるとおりでございます。しかし、少なくとも現行の制度では、国民が面接候補者を選ぶということができるわけであります。ところが、今度の改革案では政党にすべての候補者の選任をゆだねるということになりますが、果たしてそれで政党にすべて参議院にふさわしい候補者を選んでいただけるかどうか。これは国民の選ぶ立場になりますと、必ずしも全幅の信頼を置けないというところがあるわけであります。 たとえば、いま繰り上げ当選の問題が出てまいりましたけれども、当選した後党籍を離れるというようなケースが多々考えられるわけであります。そういうときに、有権者は政党に対して投票したのに対して、その政党を離れるということになりますと、この候補者を選んだ政党の責任というものが全く問われないということになってしまうわけであります。当選した議員は身分的には保障される。党籍を離れても議員として残る場合は、繰り上げ当選もないということになるわけであります。そういう意味で、政党に投票するということは、有権者の立場から見ますと、参議院の全国区という立場から考えますと非常に問題がある。現行法においても、十分選挙法に従った形で公営選挙でやっていただければ金をかけずに有権者が選択できる、そういうふうに考えるわけであります。 そういう意味で、確かに個人の知名度というのは非常に低い場合があるわけですけれども、それをすべて政党にゆだねてしまっていいというふうにはなかなか考えられないわけでありまして、参議院の全国区では従来やってきたわけでありまして、個人に有権者が直接投票するということで、いろいろな形のさまざまな人材がバラエティーよく選択されるという可能性があると思います。そういう意味で、たてまえとしてでありますけれども、全国区の改革案としては、政党化してしまうという方向でない刑の方向を考えていただきたいというふうに考えるわけであります。
○沢田委員 ここは議論の場でありませんので、皆さんのお話を聞くのが最大の目標です。 続いて、西平先生と福岡先生にお願いしたいのですが、西平先生はドント方式とサン・ラグ方式との違いはないと言ったのですが、私はきのうの質問では、今日の日本の政治の中における条件としては多数決、多数という原則は否定できないだろう、そのかわり少数意見の尊重ということも貴重な一つの要素である、それからもう一つは、選挙を行う場合の条件が同一でなければならぬ、これが少なくとも行われる場合の最低の一つの前提の条件である、こういうふうに言ったわけであります。特に少数意見の尊重ということは、民主主義を守っていくためには余り排除の論理をもって進めていくことは好ましいことではない、幾らかでも少数の意見というものを尊重していける仕組みというものを必要とする。それが若干数的な、私はあえて言えば、五十名の中の三分の一はドント方式で結構でしょう、三分の一はサン・ラグ方式を使うというような方法も、全部サン・ラグ方式でいってもいいし、そういうふうなことで、さらにウエートを若干変えていくという方法も一案としてあるだろうと思うのです。そういうようなことで、これは私個人の一つの意見なんですが、わかりやすく言うと、そういうようなことを考えていく道はあるのかないのか。それを見識者といいますか、皆さん方としては不適当だとお考えになっておられるのか、あるいはそういうことが考慮されるべきだと考えておられるのか、その辺はどのようにお考えになっておられるか、ひとつお聞かせいただきたいと思います。西平先生、もう一回ひとつその点……。
○西平公述人 先ほど申しましたように、議席数が少ないときですと、サン・ラグは少数政党に対して非常に威力を発揮いたします。五十ぐらいになると、余り実は威力を発揮いたしません。先生からそれを三つぐらいにさらに分けてというお話がございましたが、第三院の参議院で地方区の方はいままでどおりでございます。地方区の方は、御存じのとおり二十六の地方区は一人でございます。これは小選挙区でございます。二人の区があと大部分でございます。したがって、地方区の方は第一党、せいぜい第二党ぐらいまでしか議員が出せない、第三党以下はほとんど出てこないわけでございます。そういうような現状で、全国区の方を余り細切れにして、要するに枠を小さくすればするほど少数意見はやはり代表者が出しにくくなるのでございますから、そういうぐあいに分けるというのはちょっとまずいのじゃないかと思います。
○福岡公述人 ただいまの御質問ですが、私が数十回試算をしたところによれば、ドント式にしても修正サン・ラグにしても、ただいまの西平先生の御指摘にありましたように、ほとんど変わりありません。これはどういうやり方をしますかというと、たとえば八千二百万の有権者で投票率を幾つかに設定をしまして、その中でどのくらいの得票率をとってみるかということでやってみますと、このときに五十という当選定数というものが非常に大きいために、ドント式と修正サン・ラグは百分の二、三くらいの確率でしか変化が出てきません。ですから、ほぼ同じ形で出てくるだろうということです。 ただ、その中で一つ気づいたことは、二%が百万票になりますので、基数になります。たとえば三・五%から四%の間ですと、これは当選が二になるという数字のマジックなんですが、一・五から三・四くらいまでは当選が一というような範囲で、得票率の二%、四%を軸にしながら、そこに四捨五入して入ってくる数字に非常に有利に出てくるということを考えますと、ドント式と修正サン・ラグというものの違いは、それほど大きな問題ではなかろうかと思います。
○沢田委員 次に、政治団体の条件でありますが、高須先生、いままで言われているのは、一%にしてもいいんじゃないか、それから二%ぐらいに下げてもいいんじゃないか、あるいは市川さんのように、何人にいたしますかは別として、十万なり二十万なりの数になるかどうかわかりませんが、そういう数の支持者といいますか、推薦人を得られるならば入れてもいいじゃないか、それも方法の一つじゃなかろうかという意見も出されております。私たちの方の意見としては、いまの現状の五より下げようと、こういうことで言っているわけでありますが、その点高須先生はどうお考えになっておられますか。
○高須公述人 私は、結論として、配付を受けましたこの案でよろしいと思います。
○沢田委員 それはいままで各参考人が、参議院としての良識の府の中にやはりそういう人材が必要なときもあるんじゃないか。これはプラスとマイナスももちろんあると思うのですが、小党分裂になるかどうか、これまた別の議論としまして、一応その範囲まで広げてやらないと、いわゆる声なき声というものを吸収ができないんじゃないか、こういう御意見が他の先生方からあったわけですが、では、その点についてはどういう理由でこの程度がいいというふうにお考えですか、お聞かせいただきたいと思います。
○高須公述人 今日の政治では、個人がどんなに個人だけとしてよい質を持っておりましても、やはり政党に裏打ちされるということが現実的に必要な状態だろうと思います。ですから、余りに一%とか二%とかになりましても、国会の中で実際の影響力を発揮できない状態で、ただ国会に議席があるというだけになってしまいはしないか。そういうことで、やはり物事は裏表媒介し合って力が発揮できると思いますから、そういう意味では案の数字でよろしいかと思っております。
○沢田委員 いまの御意見に対して、主としていまの意見だけで結構ですが、西平先生、福岡先生、阪上先生、それぞれひとつ御意見をお聞かせいただきたいと思います。いまの高須先生の御意見について……。
○西平公述人 私は、特に第二院では少数意見が出てくる方がいいと思いますし、それから、議会というのは議決することも大事でございますが、そこでいろんな意見が出されるということが必要なことだ、特に第二院においてはそれを重視しなければいけないと思いますので、いまの高須先生のお話にはちょっと賛成しかねるのであります。
○福岡公述人 議会の役割りは、国民代表の原理と審議の原理と、それから行政府の監督という三つの理由がありますので、私は、第二院ということも含めまして、その国会に議席を持つだけということは意味がないんじゃないかという考え方にはちょっと反対をしたいと思います。
○阪上公述人 私は、今回の法案そのものが政党化ということを前提にしているので、政党の要件ということになりますと、これは修正ということである程度この法案そのものを認めなければならなくなるので余り申し上げたくないのでございますけれども、少なくとも今回の自民党案というのは、政党の要件については余りにも小党派というものを無視しているし、まして無所属というものの存在を認めないわけでありますから、これは論外だというふうに考えております。
○沢田委員 続いて、これも言いにくい点もあったらお許しをいただきたいのでありますが、党内で候補者を選ぶということ、これは大変なことだと私もきのう言ったのであります。各派閥もあるだろうし、職能もある。金権候補者もあるだろうし、ときにはやくざ的な性格を持っている者もいるかもしれない。とにかく……(「それはひどい」と呼ぶ者あり)いや、皆さんの党にいると言っているんじゃないですから怒ることはないでしょう、それで怒るということは自分で認めることなんでありますから。そういうこともあるかもしれぬ。そういうもので選考することに大変苦労するんじゃないかと思うのであります。ときには世の中の指弾を受けるというようなことも起こり得る可能性がある。 その意味において、拘束名簿制のプラスはあるがマイナスもある、このマイナスを防いでいくための必要要件は果たして何なんだろうか。大変だと私は思っております。大変だと思いますから、もしそれをするためには、まず、原則的に私はそういうことはだめなんだと言えばこれはもう反対ということになるのですが、採用するとすれば、具体的にどういう方法が望ましいとお考えになっておられるか。高須先生、それから阪上先生は大変基本的なと言うから、申しわけありませんからお聞きしません。西平先生、福岡先生もひとつお聞かせをいただきたい、このように思います。
○高須公述人 本当に拘束名簿式の名簿のつくり方が、この制度がプラスになるかマイナスになるかの分かれ目でございます。したがいまして、これはその政党の中でどういう条件で委員を選出するかというようなことは、それぞれの政党でもまたお家の事情がありますでしょうから、とにかく一定の委員選出の条件のようなものをつくっておいてその委員会で決める、そこの辺までしか言えないんじゃないかと思います。
○西平公述人 実は、五十ぐらいの議席のところで拘束名簿以外の方法を採用するということは非常にむずかしい。私もずいぶんいろいろ考えてみたのでありますが、むずかしいのであります。私も初めは、十年くらい前は、参議院の全国区をまず比例代表制にするのが比例代表制を日本に導入する突破口になるんではないかと思っていろいろ考えたのでございますが、それはやはり無理だと思います。で、一つは衆議院の方で比例代表制と申しましたのも、実は大きな枠組みでないとそういう方法は生かされない。そこで、私も参議院の方で一ですから、参議院の方も地方区もやめてしまって、二百とか二百五十、三百というような数でやるのであれば、私もすでに提案しております、これは長くなりますので省略させていただきますが、方法でやれると思います。
○福岡公述人 基本的に各政党が名簿をつくるということに関しましては、それは各政党独自の主体性でやるべきだと思います。諸外国の例で、党内予備選挙という形を導入してやっているところもありますが、僕は、これはあくまでも党の任意の発想でもってやっていいと思います。それはあくまでも、その中にたとえば汚職議員が入っているとか、いろいろなケースが出てくる。それは国民がみずからの目で審判をして、票を与えたり与えなかったりするわけですから、そのことについて外部から、あるいはいろいろな規約をつくることは、やはりまずいと思っております。
○沢田委員 西平先生、いまのように拘束名簿制の中の名簿のつくり方について実はお伺いしたのです。この次にひとつお答えしていただきます。 また、高須先生と西平先生と福岡先生にお伺いしますが、これは居座り出したらいつになってもやめないだろうと思うのですね。御本人がいやだと言うだろうと思うのです、これは楽ですからね。名簿にさえ載っておれば、極端に言えば寝ていても、外国に行っていても当選する者は当選してしまう。また、議会に来て居眠りしていても当選してしまう。これはきわめて楽な商売になってしまうという印象がどうも抜け切らなくなる。今度は、選挙民にこびを売ってはいけないかもしれぬが、選挙民の意向をくもうとくまないとにかかわらず当選をしていく、そういう仕組みが一方のマイナス面として出てくるわけですね。それのチェックとしては、やはり一期とか二期で交代をしていく。いつまでもそこに居座ることができないのだという作用が必要なのじゃないか。有能な人も中にはいるでしょうけれども、その辺のルールをつくる必要があるのじゃないかという気がしているわけです。それが三期なり四期なり五期なりと続いて居座っていることが、果たして民主政治になるのかという気もします。先生はこれも賛成される立場なので、高須先生、西平先生、福岡先生、そういうマイナス面はどうやって——やはり党内の問題なのかもわかりませんが、せっかくりっぱな先生方がおいでになったのですから、じゃこうやった方がいいよという一つの御指導をいただければ幸いだと思うのです。高須先生、西平先生、福岡先生、お願いをいたしたいと思います。
○高須公述人 拘束名簿式比例代表制で国会に出てきた人は、選挙民にお世辞を使う必要がないわけなんですから、ほかの政治家の分も、国民に言いにくいことを言うという義務があると思います。そういう義務をやってくれているりっぱな政治家なら、私は何年続いてもそれは国のために結構なことだと思います。その辺の判断は、本人がまじめに義務を尽くしているかどうかは、何となくみんなにもわかることだろうと思います。
○西平公述人 先ほどは失礼いたしました。名簿のつくり方に関しましては、やはりヨーロッパのいろいろなところを見ましても、法律で決まっているということはないようでございます。しかしながら、たとえば西ドイツの州ごとに拘束名簿を、厳密じゃございませんが、一応順序をつけた名簿をつくるわけでございますが、社民党の方の名簿というのは、私たち統計屋が見ていてうなずける。たとえばだんだんに上がっていくとか、あるいは地方区で一人区でたくさん取った人は次のときに順位が上がるとか、これはわかるのであります。ところが、キリスト教民主同盟の方の名簿を見ますと、非常にがたがた揺れまして、どうやっておつくりになっておるのか実はわかりません。 研究論文というのは私は知りません。それから、ベルギーでやっております名簿のつくり方につきましては、社会民主党の方は党員の投票によって決めるという規則をつくりましたが、それを採用しておるところはごくわずかでございます。定年、後の話にも絡みますが、六十五歳以上の者は立候補させないというようなことも決めたのでありますが、それは例外が大変多く出ているそうでございます。ただ、その中で、たとえば女の候補者をある程度入れようというようなことは、わりあいにうまく機能しておるという論文を読んだことがございます。
○福岡公述人 ただいまの選挙をしないで当選をしてきわめて楽であるということで、ただいま自民党の中でも幾つか問題点が指摘されておるように聞いておりますが、私は、基本的に選挙は楽でいいと思っております。日本のように中選挙区制の中で激しい選挙戦をやっていくことで、エドモンド・パークではありませんが、国の代表でなく地域の代表的性格が強いがゆえに腐敗政治が起こるわけですから、選挙は大いに楽でいい、そのために逆に国政のため、国民のためにがんばるのが政治家の本来的使命だと思っております。
○沢田委員 続いてお伺いしますが、政党の要件の中に政策が入っていないですね。この条文は綱領と規約なんでありますが、これは高須先生、こういう形態の政党の条件というのはあるのでしょうか。政党に政策がなくても、国民は政党を選べる条件というものは生まれるのかどうか。さっき自民党の代表の方は、自分でも認めておられるとみえまして、ここの質問ではちゃんと政策でと、こういうことを述べておられましたが、ただ法律の中では政策は抜けておるのであります。政党に果たして政策なき政党というのがあるのだろうかと私は疑問に思っておるのでありますが、答弁では、政策は平素発表しておるからいいのだ、こう言っておるわけです。しかし、この拘束名簿の中の人物の、いわゆる政党政治ですから約束することは次のものですというものが国民に示されなければならないのではないかと、きのうも質問したわけです。 この点はまだあいまいになっておりますが、高須先生、西平先生、それから福岡先生、この名簿の提出と同時に、その名簿の者は次の政策の実行を約束するということがないと、国民の側から見ての選択はできないのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○高須公述人 それは、たとえば一回の選挙ごとに政策をという意味ですね。その場合でも、政策からはみ出してしまう人もいると思います。そういう人は個性が強くて、何か頼りになる人かもしれませんから、そういう人も救い得るようなぐあいにやはり弾力的に考えるよりしようがないと思います。
○西平公述人 私は、政策は選挙の段階でお出しにならなければ有権者が投票しないと思いますので、別に法律の中でそれをうたっておく必要はないのではないかと思います。
○福岡公述人 投票を決める際に、政党で決めるか人で決めるか政策で決めるかというのが従来の投票行動の研究の三つの要点であります。日本の場合、政策で決めるという人はわずか十数%というのが現状であります。いまの西平先生の御指摘のように、政策がなくして政党が成り立ち得るかどうかは、過去数年間の政党の中に若干あるような気もしますけれども、それは有権者の良識に任せるべきだと思っております。
○沢田委員 選挙というのは、大衆を信ずるというところに原点を置くという論理、それから今日のようないわゆる情報化社会の中において、ある意味においては大衆が一つの方向に洗脳されていくという一つの条件、こういうものを考慮していかないわけにはいかないのであります。大東亜戦争ではありませんけれども、そのときの流れにさお差す者が結果的には抹殺されていってしまったという歴史の教訓もあるわけです。その意味において、少数意見というものを尊重していくということが大変大切であるということをわれわれは主張しているわけであります。 いま先生方のお話を聞いておりまして、時代の展望その他の見方は議論になりますからやめますが、いずれにしても今日のようなコントロールされております情報化社会、教科書でも今日議論を呼んでおるような問題も出ているわけであります。そういう状況の中において、やはり少数の意見をどう尊重していくか、これはきわめて大切なことだと思うのであります。そういう意味において、ひとつ高須先生、阪上先生も、基本的には反対なんですが、ひとつ反対を押し殺して、少数意見の尊重という立場になれば同じ立場ではないかと思いますので、やはり一言述べていただきまして、西平先生、福岡先生からも、いわゆる将来の展望に立って、この制度ができますと一回目の制度で民主主義が崩れるかどうかの岐路にもなるだろうと思うのですね。このことがいい方向に向かえばいいが、悪い方に向かいますと大変重大な事態になりかねない、そういう総合性を持って、ひとつ、後で高須先生にもお伺いいたしますが、高須先生はオーソドックスに賛成しておられるようなので、細かい点はまあいいやといったような調子なんでありまして、ちょっとかみ合いませんけれども、あえて先生のお答えをいただいて、高須先生、阪上先生、西平先生、福岡先生、それで私の質問を終わりたいと思います。よろしくお願いします。
○阪上公述人 私が今回の法案に反対している理由は、いまおっしゃった少数の意見をぜひ尊重していただきたいということでありまして、そういう意味から申しまして、もしこれを通すということになれば、ぜひ、少なくとも政党要件は修正していただかないと、本当に少数派というものが無視されるということになると思うのです。できれば一できればということは、反対派としてはむずかしいのですけれどもやはり一人一党ということですね。日本で無所属というと何か所属していないということで悪いようなイメージがあるのですけれども、英語で言いますとインデペンデントで、独立しているということですね。したがって、独立しているものを一緒にくっつけてこれで政党につくり直して出てくればいいんだという意見は、非常に私はそういう一人一党でやっておられる方を誹謗した、冒涜したことだと思うのですね。そういう意味で、少なくとも政党要件の改正ということは、もしかなり強硬な形でこの法案を通されるということであれば、少なくともその程度の修正は希望したいというふうにお願いします。
○西平公述人 私も、公述のときに申しましたように、エとかオとかというような条件でぜひそういう方向にやっていただきたいと思います。それは、一つは、有権者たちに、たとえば自分たちが推薦する人が名簿は出せるのだという意味で有権者に選挙に興味を持たせるということも大事だと思うのです。どうも日本の選挙というのは当選するかしないかということばかりに重きを置いているようでございますが、選挙というのは一つのいわば国民一般の政治教育のチャンスでございますから、なるべくたくさんの人が立候補できるように、なるべくたくさんの人がそれに何らかのかかわりを持つように、そういう意味でオと申しました有権者のあれというようなことをぜひお考えいただきたいと思います。
○福岡公述人 少数意見の尊重ということについて、私は、先ほど申しましたように、いまの西平先生のオの要件、あるいは経過的措者として、前回、前々回の参議院全国区で得票率一%ぐらいまで、たとえば自民党案が四%、社会党案が二%と存じますが、一%ぐらいまで下げるべきではないかというふうに思っております。 それから、現在の政治状況の中で無党派層が、ここにありますが、NHKの調査にしましても、時事の調査にしましても、その他各新聞社にしましても、やはり三割いるということ、それから過去三回のタレント及びタレント系と著名と言われる人の得票総数なんですが、前回が一千五百四十二万票、私の試算ですが、五十二年の選挙は一千百十三万票、四十九年が一千百八十五万票で、それぞれ二八、二二、二三という得票率であります。このことを考えていったときに、この人たちが単独では出てこられないということは、国民の四分の一というものに対して、たださえ先ほど無効票が四百万票あると言いましたが、それを合わせますと、やはり三人に一人ぐらい選挙に参加しなくてもいいよという意味合いでありますので、少数意見の尊重のために政党要件の緩和を希望しております。
○高須公述人 私は少数意見尊重の線でございますけれども、広い意味の社会政策、社会を生き生きとさせるというような意味での社会政策として考えますと、政治の制度と並んで生活の線でも、少数意見、たとえばオンブズマンというような制度ですね、自分一人で泣き寝入りしてしまうというようなのがそうでないようにする、こういうようなほかの面での少数意見尊重、こういう制度とちょうど縄をなうようにしていきませんと、政治の制度だけでは成果を発揮するのがはなはだ不利な条件になってしまうと思いますから、社会諸般の面で、たとえばオンブズマン、それから日本の福祉ではもっと協同組合を活用して、いままで何か、これもやはり近代の考え方ですが、国家と個人とこの二本立てで考える近代の——近代はそうだったのですが、そういう習慣に対して、中間項としての−政党もまた中間の項目ですが、協同組合のような中間項を国民の側からもっと盛り上がるようにして、そして福祉なども、これからはたとえば……
○沢田委員 わかりました。時間の関係で私の持ち時間がなくなりましたので、またあとの先生のときにおっしゃっていただきたいと思います。 どうも諸先生ありがとうございました。(拍手)
○久野委員長 坂井弘一君。
○坂井委員 公述人の先生方、大変貴重な御意見をちょうだいいたしましてありがとうございました。私の持ち時間がドント式で大変短うございまして、各先生方にそれぞれお伺いしたいと思うのですが、残念ながら時間のゆとりがございません。阪上先生に限って御質問ということになるかと思いますが、お許しをお願いしたいと思います。 今回、拘束名簿式ということで、名簿の選定、順位のつけ方につきましては届け出の政党、団体の任意に任せましょうということでございます。そこで、順位の決められた名簿が提出されるわけでございますけれども、果たして、このような形で任意にゆだねました場合に、良識の府であると言われます参議院にふさわしい候補者、人物が選べるものであろうかどうだろうか、大変疑わしいといいますか、危惧する向きもあるようでございますが、阪上先生、どういうようにお考えでございましょうか。
○阪上公述人 ただいまのお話にありましたように、これまで現行の制度のもとにおきましては、一応国民が直接候補者を選ぶということで選んでまいったわけでございますけれども、新しい制度になりますとこれが政党に全面的にゆだねられる。したがって、政党が選んだ候補者について、その中にたとえばふさわしくないと思われる候補者がいてもそれを選択せざるを得ないということになるわけで、しかも政党が主体的に候補者を選ぶということになりますと、これまで参議院ではかなりユニークな人材がいろんな形で、批判はいろいろありましたけれども、たとえば高級公務員とかあるいはタレントとかというような形で、あるいは労組の経験を持った方とかそういう方が選ばれてきたわけですけれども、これからは政党が主体になるということになって、いままで選ばれてきた人が二回、三回でいなくなってきますと、党にどれだけ貢献したかということがどうしても選択の基準の中心になっていくと思います。 そうしますと、どうしてもいわゆる政党人というものがこれからますます名簿の上位を独占していくという形になりまして、衆議院と全く同質化してしまう、そういう点が一番大きな問題点ではないかというふうに私は思います。
○坂井委員 続けて阪上先生にお願いしたいと思いますが、今回の改革案によりますと、比例代表選挙、ここでは個人の選挙運動というものが禁止、できなくなるということでございますが、このことについてどうお考えになりますか。 あわせて、その一方では、今度は選挙区、つまり地方区の方は個人選挙でございますから、この地方区の選挙に関連いたしまして選挙運動が許される、こういうことに相なるわけでございますが、この点についてはどうお考えになられるでしょうか。この両者の見合いにおいて御見解を承りたいと存じます。
○阪上公述人 比例代表制の選挙の中で個人の選挙運動が一切禁止されるということは、表現の自由を規定いたしました憲法に違反するんではないかという疑いを私は非常に強く持っております。さらに加えまして、これが一番眼目なんでありますが、今回の改革法の一つの中心は金のかからない選挙で、選挙運動をやらないということにメリットがあるわけでございますが、ところがいわゆる地方区の選挙に関連しては比例代表の選挙運動をやってもいい、そういう規定がしてあるわけであります。これが実際の選挙になりますと、いわゆるざる法化してしまって、結局地方区の選挙に関連して全国区の比例代表の選挙が個人ベースでも非常に盛んに行われる。先ほど、上位にランクされた者は寝てでも外国に行ってでも当選できる、非常に怠けていられるような選挙になるというふうなちょっと御質問の趣旨もありましたけれども、実際の選挙になればこの規定が生きてまいりまして、上位にランクされた方ほど下からの突き上げもあって安閑と寝ていられない、むしろ全国を飛び回って選挙運動をせざるを得ないような状況になるのではないか。そうしますと、現行の選挙運動と実態的にはほとんど変わらないような形で、地方区の選挙に名をかりた選挙運動がされるということで、せっかくのこの規定がざる法化してしまうということが一つあると思います。 それから、そういう形で地方区の選挙で全国区の比例代表の方も選挙運動を実質的に個人ベースで行うということになりますと、全国的に地方区に候補者を立てられるのは、はっきり具体的に申しまして自民党と社会党の二党だけではないかと思うのですね。そうしますと、自民党——共産党の方はかなり無理して立てられるので、当選ということは抜きにしてかなりそういうことになるわけでございますから。そうしますと、必然的に大政党だけが有利になるということになってしまうわけですね。そうしますと、これは本当に小党派を単に排除しているだけではなくて、そういう選挙運動の面からでも二大政党が不当に有利になる、そういう性格を持った法案だというふうに私は判断しております。
○坂井委員 それから、先ほどの名簿のつけ方に関連しまして、有名タレントの集票力といいますか、これを利用したいわゆるタレント選挙になる危険性があるんではないかということを指摘する向きもあるのでございますが、阪上先生、どうお考えでございましょうか。
○阪上公述人 その点につきましても、今度は逆にいろいろな面で、いままでタレントという形のタレント選挙なんという批判が出ておりましたけれども、これまでのタレント候補と言われた方は自分自身が候補者になって、そしてできれば当選して政治家になるということを前提にして選挙に打って出られたわけでありまして、そういう意味で、批判はあったにしても、私は非常に自分自身責任を持たれたりっぱな方だというふうに考えておるのですね。ところが今度の制度になりますと、政党の名前だけで果たして票が集まるかどうか、そういう面がありまして、できるだけいろいろな面から多くの票を集めたいというふうに考えられる政党が多いと思うので、そういうタレントの集票力だけを何とか利用しようとすることが普通に考えられる選挙戦術であります。そう考えますと、できるだけ名簿の下の方に、当選しないところに集票力のあるようなタレントをできるだけたくさんランクするというようなことが、逆に各党で画策されるのではないか。そういう意味で、今度は名前だけを連ねたタレントが、それもできるだけ人気のあるようなタレントが下の方に名前を連ねるというような選挙になりかねない。そうすると、有権者は政党イメージや政党の政策で選ぶという原則が、逆にそういうタレントのイメージに非常に左右されて、しかもそれが実際の選挙では当選後は生かされないということになって、まるでペテンにかかるような形で選挙が行われる危険性が非常にあるのではないか。そういう意味で、今度の改革案にはそういう面の危険性もある、そういうことを私は非常に危惧しているわけであります。
○坂井委員 終わりに一言ずつ高須先生、西平先生、福岡先生にお尋ねをしたいと思いますが、選ぶ側の無党派有権者の存在をどう見るかということに関して、先ほども御意見があったようでございますが、このことと、それからもう一方、立候補する側の問題として、無党派の候補者十人集まれば名簿を提出することができるという三番目の要件がございます。したがって、そういうことを設けておるんだから無所属、無党派を排除したものではないんだという意見がございますけれども、こうした意見に対してはどうお考えでございましょうか。お三方からお願いしたいと思います。
○高須公述人 無党派の人が十人集まって名簿を提出できる、それは結構なことだろうと思いますね。それは立候補できる権利をそうやって生かしておかなければ民主主義政治になりませんから、それは十人がたとえ烏合の衆だとわかっていても、何らかの共通な線は少しはあるのでしょうから、それで仕方がないと思います。
○西平公述人 いまおっしゃったのは、無党派の方々が連合名簿をつくるという形になると思うのでございますが、無党派の方々はそれぞれ別のイデオロギーといいますかお考えをお持ちですから、そういうことはむしろできない。たとえば市川党というようなものができまして、市川先生のおっしゃることに共鳴する方が一つの名簿をつくるというならわかりますが、市川さんと青島さんが同じ名簿をつくるというのはちょっとむずかしいのじゃないかと思います。そういう意味では、私はちょっと御考慮いただきたいと申しました名簿結合というようなことをお考えいただいた方がいいと思います。
○福岡公述人 政党要件の三点目の無所属十人という点、社会党五人でありますが、これはできる限り少なくしたのがいい。 それから、ただいまの西平先生の政党の名簿を結合するという形ですが、いまちょっと世論調査をやっているプレヒストリーの中で、小会派の者が集まっていくと意外にそこに支持が集まってくるというケースが若干まだプレヒストリーの段階で出ているわけですが、でき得るならば、名簿の無所属の人たちは五人なり三人なりというできる限り少ない数にしていったのが、少数意見の尊重にもかなうかと思います。
○坂井委員 ありがとうございました。(拍手)
○久野委員長 岡田正勝君。
○岡田(正)委員 公述人の皆さん、貴重な御意見をいただきまして大変ありがとうございます。 冒頭に皆さんにお尋ねをしておきたいのでありますが、参議院におきましても、公述人の皆さん方にいろいろと御意見をいただいたようでございます。ところが、賛成の御意見の方、反対の御意見の方、それぞれ仲よく同数が出られたのでありますが、おしなべて共通しておりました御意見というのは、こういう重大な選挙制度の改革、民主主義のルールの変更でありますから、これは大変な大問題でございますから、こういうものの審議というものは十分に時間をかけて国民の意思も問うべきであるし、各党間の合意を得られるように十分練るべきであるというのがほとんどの皆さんに共通した御意見でございました。 そこで、衆議院の公述人としてお越しくださいました六名の皆さん方の御意見は——十分に審議を尽くせと私どもは要求しておるのでありますが、参議院でも三十数時間、衆議院におきましてもわずか三十五時間、それだけでもって事が決まろうとしつつあります。非常に残念なことだと思うのでありますが、皆さんの御意見をお聞かせいただきたいと思います。
○高須公述人 それは時間をかけて論議するのが第一に必要だろうと思います。 ただ、私が一つ心配しますのは、前にも申しましたように、いま近代の社会が崩壊のテンポが早くなってきつつある。ヨーロッパなどは三重苦、四重苦に悩んでいる。日本もまたあと十年か二十年か、二十一世紀になると、現代のまま、今日のままで延長していくと、たとえば年金制度なんかも、国民をいままで結果においてだましてしまって、約束した金額を払えないとかなんとか、そういうことになるのじゃないかということを私は大変心配しております。 そういう意味で、臨調が急いでおりますのと、それからこの選挙制度の改革もやはりある程度は急ぎませんと、何かいままでどおりのレールの上をのんきに行って急に断崖絶壁に直面するというような、そういう不幸に陥らないように、やってみて都合の悪いところがあったら次の機会に直すというような、トライ・アンド・エラー方式を十分に活用するという線で行く方がよろしいかと私は思います。
○阪上公述人 いまの御意見のとおりだと思います。選挙法というものは、これは各党共通のルールでございますから、できるだけ各党からそれぞれ合意を得られるような形でルールづくりをするというのが基本的な考え方だろうと思います。そういう意味で、参議院で一党が単独採決というような形でこれを決定するというのは、基本的にはルールに非常に反する、ルールをつくるのにルールに反するということではないか。そういう意味で、衆議院ではできるだけ慎重審議をお願いしたいと思います。
○西平公述人 私は慎重審議も大事だと思いますが、抽象的な問題ではございませんで、一人一人の国民にかかわる問題でございます。間接的に国民が影響を受けるという問題ではございませんので、税金の問題とかこういう問題というのは、議会の方である程度のことが固まりましたら、それを国民の方に投げ返して、国民の方の反応を十分見てまた御考慮いただく、それが大切ではないかと思っております。
○高橋公述人 先ほども申し上げましたように、これは民主主義の基本的なルールであります。スポーツでたとえれば、政党間というのは競争だと思うわけです。フェアな競争をやるためには、それは全政党の合意を求めるのは当然ではないのかな。変化の激しい時代でありますけれども、全国区制そのものについての問題意識というのは各政党もあったと思うのです。したがって、前からそういう予測はできるわけですから、それは選挙制度審議会なり、さらに第三者機関を設けて国民の民意を問う。したがって、来年の七月の選挙でしょう。いまだに法案が固まらないというところに国民もやはりきわめて不信を持っていると思うのです。 しかしながら、慎重審議、それは当然なことでありまして、やはり国会は最高の国の権威を持つところでありますから、展望を含めてすべての問題、これは選挙制度ばかりではありません。第一次石油ショックの場合、第二次、これはどういう影響があるかというのは、当然予測できるわけです。それに対応していくのが日本でなければならないと思うのです。したがって、今日、日本が世界の優等生と言われておりますけれども、これが落第生になるかもしれません。保証の限りじゃないのです。それが国会じゃなかろうかということで、慎重審議をより重ねていただきたいと思います。
○福岡公述人 公選法の公聴会の公述人として呼ばれておりますので、国会の慎重審議についてのコメントというのは避けたいと思っております。ただ、基本的に、議会政治というものがコンセンサス・ポリティックス、合意による政治というものを求めなければならないわけですから、できる限りの慎重審議ということが望ましいと思っております。
○松本公述人 いまの御質問については、私が公述の中で主題として述べましたので、重ねては繰り返しませんが、当然慎重審議されるべきであると思いますし、同時に、これは法制上の解釈は私は理解が十分ではございませんけれども、参議院から衆議院に送られてまいったこの法案そのものについても、違法な内容ではないか、撤回されるべきものではないかと思います。しかし、それがいまの法制度上有効だとしても、ああいう結果をもって衆議院に送られてまいったわけでございますから、政党の論理に照らしても、ぜひとも十分な審議を願いたいと思います。 先ほどの御意見の中にもございましたが、質の問題を参議院の先生が問われている、悪い冗談だがと言っておられましたが、私は、あの審議の結果、強行採決は悪い冗談ではなく実質的に信を問われているというように思います。その点では、本議会における諸先生は、質を問われることのないような、汚点を残されることのないような審議をぜひお願いしたい。そうでなければ、国民はこの事態を黙って見過ごすこともございませんし、大きな糾弾の世論が広がると思います。 以上です。
○岡田(正)委員 ありがとうございました。 高橋さんにちょっとお尋ねいたしますが、私どもは、今回のこの全国区の改正案というのは少数派切り捨てになる、これは大変重要な問題でありまして、先ほどもいろいろと数字を挙げていらっしゃいましたが、おおむね総得票数の一七・三%ぐらいが、いわゆる無党派層といいますか、無所属といいますか、そういう方たちの札であり、また、どの政党も好きではない、もう政党は信頼できないというような無党派の人が四〇%から国民の中にいらっしゃるということを考えますと、少数派の切り捨てに通ずる今回のこの乱暴な提案ということについては非常な不安を持っておるのであります。 そこで、是が非でも全国区の改正をしなければならぬということになれば、むしろ、いまの全国区と地方区を全部やめてしまって、ブロック制で一本の、実質の選挙を闘ったらどうか。そうすれば、少数派の方も無党派の方も出てこられる可能性が十分にありますし、また、いま一つ、参議院におきましても全党挙げて問題となっております、東京高裁でも二回にわたりまして注意を受けましたところの地方区の定数の是正ということも、このブロック制を採用することによって一挙に解決するというふうに考えておるのであります。高橋さんの御意見はブロック制に賛成のようにちょっと見えたのでありますけれども、御意見を承りたいと思います。
○高橋公述人 先ほど公述の中にもブロック制ということを申し上げたわけでありますけれども、やはり定数も、最高裁でも判決が出ているように、いま衆議院においては、三万五千と、十三万ぐらいでも落選するということで、やはり定数是正も先決問題だろうし、そういう点も考えますと、参議院においてはブロック制ということも一つの方法ではないかと思うのです。そうすることによって定数是正もみずから解決するのではないか。 ブロック制でありますけれども、どうブロックを分けるかという問題もあろうかと思いますが、それはやはり国民、有権者の比例ということを前提にしてその線引きをすべきではないか。したがって、ブロック制についても一つの改正の方法だろう、私はそのように考えておるわけです。
○岡田(正)委員 ありがとうございました。 西平先生にちょっとお尋ねをいたしますが、先生の御意見では、衆議院の比例代表制は賛成であるけれども、参議院の比例代表制というのはどうも余り感心ができない、なぜかと言えば、それは第二院としての存在の理由が失われることになるかもしれないということを心配するからであるということを言われまして、非常に貴重な御意見としまして、政党要件のア、イ、ウのほかにエ、オと二つの条件をお示しになりました。これは、一つは都道府県会議員それから市町村会議員、そういう人たちの推薦する名簿も対象にしたらどうだ。それからいま一つは、ある一定の人数の有権者の皆さんの推薦する名簿も名簿として取り上げたらどうだろうかというような非常に貴重な御意見をおっしゃったのでありますが、これは先生の御意見でございますか、外国にどこか例があるのでございましょうか。
○西平公述人 工の方を考えつきましたのは、実は、昨年のフランスの大統領選挙のときに、タレントと申しますか、芸能人が立候補するというような事態が予想されまして、これに対して、公選で選ばれた方々の何人以上かの推薦がない者は大統領選挙の候補者になることはできないということにフランスではなったわけでございます。それからヒントを得ました。 それから、オの方は、比例代表制のリストを出すというのは、そもそもは、むしろ有権者の何人か以上の賛成があるそういう政党、団体に限られるべきだと思うのでございます。ア、イ、ウというようなことは、既成の政党にとっては一々それを集めるのもナンセンスでございますから、そういうような意味で残しておいてもそれは構わぬということでございます。
○岡田(正)委員 ありがとうございました。 時間が参りましたので、終わります。(拍手)
○久野委員長 安藤巖君。
○安藤委員 公述人の方々には本当に御苦労さまでございます。先ほどはいろいろ貴重な御意見を拝聴しまして大層勉強になりました。 基本的に賛成という御意見の方々も、それから反対という御意見の方々はもちろんそうですが、自民党提出のこの改正案について、質の問題とか、あるいは先ほどお話がございましたエ、オの御注文だとか、あるいは政党要件をもっと緩くすべしとかいうようないろいろ御注文をいただきました。 そこで、私は、最初に御意見を伺っておきたいと思うのですが、御承知のように、参議院でも参考人の意見聴取を、それから公述人の方々にも御意見を述べていただいたわけですね。ところが、結局ああいうようなことで、無修正で参議院は強行採決で通ってしまった。だから、公述人の方々あるいは参考人の方々が、われわれは一体何をやったのだろうか、結局セレモニーに終わってしまっただけじゃないのかというような不満を述べておられる話も新聞紙上で二、三拝見いたしました。 そこで、いまいろいろ、賛成のお立場、反対のお立場の方々から御意見をいただいたのですが、自民党の方は、現在のところ、修正に応ずる気配はどうも毛頭ないようです。となりますと、せっかく貴重な御意見をいただいたのですが、やはり修正ということに盛り込まれていかないということになってしまうおそれも多分にあるのじゃないかということを私は懸念しておるのです。ですから、そういうような点について、いまいろいろ御意見をお述べになったのですけれども、各公述人の方々お一人お一人に改めてお伺いをしたいと思うのですが、いかがでしょうか。
○高須公述人 先ほどもちょっと触れましたけれども、やはり試行錯誤ということを最初から念頭に置いてとにかくスタートした方がいいと私は思います。それは、二十一世紀というのが日本にとっては大きな鬼門だろうと私は思っております。いろいろのことがもういままでの惰性ではやっていけなくなるのではないか。たとえば人口の老齢化というようなのは、新聞などでしばしば報道されていますとおり、もう実に顕著なことになります。そうしますと、職業の問題も、たとえば丈夫な人は定年後、会社に定年延長してくれと頼んでも、会社の方は不景気でなかなか応じないと思いますから、自分で寺子屋をやって老夫婦の収入は自分で得るとか、そういうような心構えをいまから国民に広めておかないと……(笑声)これは笑い事じゃないと思います。徳川幕府が倒れて明治政府になったときの大きな転換期、失業した武士たちはどうやって暮らしたか、こういうような研究をやっていかなくてはならないと思います。武士は寺子屋をやって、読み書きを教えて野菜などをもらったりして生きていったようでございますが、そういういろいろな生活の意味での転換期が来るのでございますから、政治の方も、選挙制度についてまずいところはまた直すということを、各党間、政党の間で約束をしてスタートに持っていくというようなことが大事だろうと思います。
○阪上公述人 やはりこれは各党に共通する、そして国民の選挙権という基本的な権利に共通する大問題でございますから、私は、公聴会に公述人として出席して意見を述べましたので、できるだけそういう意見は反映させていただきたいというふうに思うわけでございますけれども、それ以上に、修正といいますと私の意見にちょっと反するので余り申し上げられないのですけれども、これをのむかのまないかという形で各党が自民党案について審議するということでは、共通のルールづくりという面からは非常に反するものになるのではないかというふうに思うわけです。そういう意味で、私個人の希望としては、参議院のあり方というものを、抜本的に運営の面とそれから選挙制度の面と両面から根本的に検討するということをやっていただきたいと思うのですけれども、現時点では、少なくともこの自民党案をどういうふうにするか、その点で各党共通の理解が得られるような方向で考えていただきたいと思います。
○西平公述人 私も、公述人として出てまいります以上は、自分の意見が何らか反映するようにしていただきたいと思うわけでございますが、これは結局、各党の皆様方、また私の説明が下手だったかもしれませんが、各党の方々の御努力にまつ、そして場合によっては失望することがあるかもしれませんけれども、われわれとしては何度も何度も自分たちの意見を述べ続けていかなければならない問題だと思っております。
○高橋公述人 公述人も、いろいろ賛成、反対、修正もあるわけでありますから、自分の意見を通したいという気持ちはそれぞれ持つと思うのです。その主張が通らなければむなしいという感じはぬぐい去られないと思うのですが、本来、二院制度、すなわち参議院がスタートした原点に返るように参議院の機能を付与していただきたい、こういう希望だけ申し上げておきたいと思います。
○福岡公述人 現在、全国区改正の政策決定過程の研究を私なりにしているわけですが、その中で、五十五年の同時選挙での保守政党の圧勝以来、やはり修正とか慎重審議といったものが非常に薄くなっていると思います。私自身、先ほど御指摘をしましたが、提案の趣旨の中にある、「参議院にふさわしい人を、」という理由でもって第一に掲げて、それを「より得やすい制度にする」ためにということで、政党要件三つで足かせをはめていることは大変な自己矛盾であると思います。 ここに、前回の同時選挙の直後に行われました明るい選挙の調査がありますが、それをお話しすることで話にかえさせていただきますけれども、政治の現状を改めるのにふさわしい人物として選んだ人が一一・二%いたわけでございます。 以上です。
○松本公述人 私も、私が公述いたしました内容が生かされることがぜひ望ましいと思いますが、本委員会の性格としては、基本的な本案の代案ということができないようなシステムになっているというようにも聞いております。しかし、その場合の修正という形でのこの会議の中での議論がされるとしても、ぜひとも少数意見の尊重される内容であるとか、さらには選挙活動の自由の問題はもっと拡大すべき問題であるとか、そういう抜本的な内容での御論議をお願いしたいものだと思います。 この際、一言付言をしておきますが、参議院段階で社会党の諸先生が政党要件の緩和という形で修正案を提出されておられましたが、もしもああいう立場でこの会議での論議がされるとすれば、私はそのことについても不満である、反対であるということも意見を申し述べておきたいと思います。 以上です。
○安藤委員 どうもありがとうございました。 私ども共産党は抜本的な修正案を提出しておるのでございます。その中身はここでは申し上げませんが、その中には、名簿登載者の人たちの選挙活動、選挙運動、これは従来どおり認めるべきだということを申し上げておるのですね。これまでも日本の公職選挙法はいわゆるべからず選挙法だというふうに言われているほど、あれもやってはいけない、これもやっちゃいけないというふうに大分規制が厳しいわけです。その上、ごく最近、昨年もいろいろな政党機関紙誌カーの規制とかいうのが人ってまいって、よけい厳しくなっているわけですね。そこへ持ってきて、自民党の今回の改正案というのは、さらに選挙活動、全国区についてはいわゆる比例代表区という名前を使っておられますけれども、名簿登載者の選挙活動というのはやる必要がないのだということで規制をしておられる、禁止をしておられる。 松本公述人にお伺いをしたいのですが、いろいろ労働組合運動をやってこられて、一般国民としての立場にあられると思うのですが、国民の選挙をする立場から見て、そういう選挙運動が規制される、そして今回の改正案ではさらに規制をされるということについては、どういうふうに思っておられますか。
○松本公述人 私、つい先般の京都の知事選に当たりましても、私個人の資格で選挙応援に参りました。そのとき、私の組合員やさらに市民が申しますのは、まさにこの公選法の改正に基づく選挙というのは声のない選挙だということの批判、不満が多数でございました。その具体的な内容については、数字は申し上げませんが、投票率等の低下という形でも具体的になっているというように思います。その辺から、国民が知る権利、さらに政策を選択する権利の立場からも、選挙活動の自由その他についてもこれはもっと拡大をすべきだというふうに思います。 あわせて、私は労働組合の責任者でございます。微力な組織でございますが、日本医療協という十四万の組織を代表しております。さらには、統一労組懇と申しまして、政党、資本からの独立、要求の一致する行動ということを掲げながら労働運動をしている百五十万の運動体になっておりますが、それらのおのおの代表委員も兼ねております。それを代表していまの内容を申し上げますと、もちろん政治の問題、平和の問題民主主義の問題、憲法の問題、それについての関心は高い組織だというふうに自負はいたしておりますが、しかし、今回のような問題について、事柄の実態、本質をいま職場の末端までが理解しているだろうかという点では、これは大きな疑問があると思います。その意味からも、国民の立場からも十分に事柄の本質や経過が明らかになるように御審議も願いたいし、政党としても努力をお願いしたいというふうに思います。
○安藤委員 どうもありがとうございました。 時間が参りましたので、終わります。
○久野委員長 小杉隆君。
○小杉委員 私の質問時間は本来、ドント方式でありますと七分間ですが、諸政党の御配慮によりまして十二分間ということで延長していただきました。選挙法の審議に当たっても、こういう精神を持っていただきたいものだということをまず申し上げたいと思います。 そこで、いままで公述人の皆さんに長時間御出席いただき、各党からお話が出ましたので、私はできるだけ論点をしぼりまして一、二お伺いをしたいと思います。 まず、政党要件の緩和というところが非常にきょうは焦点になったと思います。今度の自民党提案によります原案では、従来の個人中心の選挙から政党本位の選挙に移行していくのだ、そしてその政党とは、政党らしい政党だということで、政党要件として三つ、つまり五人以上の現職議員あるいは直近の国政選挙で四%あるいは立候補者十人という一つの枠を定めたわけですが、個人の立候補を認めるべきだとか、無所属の候補を締め出すのはまずいというふうな意見もたくさん出ております。しかし、発議者の意見では、やはり政党と個人とが混在をするというのは好ましくないという意見があるわけですね。一方において、共産党が今度提出——まだ正式にはされておりませんが、修正案を見ますと、要するに、そうした政党要件というのは一切取っ払っちゃえ、そしてこの拘束名簿式比例代表制は原則として認めるけれども、無所属候補も認めたらどうかという意見があるわけですが、拘束名簿式比例代表制とこの無所属立候補、個人立候補との間に矛盾がないかどうか、これはまず西平先生の御見解を伺っておきたいと思うのです。
○西平公述人 たとえば、ベルギーの選挙では、これは完全に拘束ではございませんけれども、個人で立候補する者と名簿で立候補する者と両方混在しております。
○小杉委員 提案者の考えの中には、余り小党分立をして政治が不安定になってしまうんじゃないかという懸念があると思うのですね。そういう点では、福岡先生も欧米諸国の例を挙げられたわけですけれども、小党分立してもかまわないじゃないか、それはそれぞれの国の政治風土によって、たとえばドイツなどはワイマール憲法の後、小党分立をしてヒトラーが出てきたけれども、これは決して小党分立の結果ではない。西平先生は、これは中小政党の対立抗争が一つの原因でヒトラーというような出現になったという御意見ですし、逆に小党分立でない二大政党的なイギリス、フランス、カナダ等で非常に政権が不安定で、選挙がたびたびあるというようなことですけれども、無所属立候補を認めた場合に弊害が出るかどうかというのはわれわれもまだ未知の経験ですからわかりませんが、こういった点に関して、ひとつ西平先生とそれから福岡先生の御見解を伺いたいと思うのです。
○西平公述人 比例代表制でやりましても、たとえば戦後新しい比例代表制を採用しました西ドイツ、それからイタリアというのは、西ドイツの方は厳しい政党要件で政党が限られてきてしまいました。イタリアの方は、政党要件といいますか、第二段階目の議席配分のときの要件が緩いのでございますが、同じ比例代表制で、両方ともある意味では理想的な方法だと思うのですが、片一方は分裂しているということでございます。ですから、やはりその国のいろいろ要件ということがありまして、一概に政党の数が多ければうまくいく、少なければうまくいくということではないと思います。 西ドイツも、選挙法はいいのでございますが、現実に社会民主党と自民党とが連立しているわけでございまして、いわば社会民主党という革新政党と自由民主党という保主政党とが連立しなければならないという西ドイツの少数政党の支配というのは、少し異常な状態だと私は思っております。
○福岡公述人 政党政治の現状の中で見まして、西ドイツの五%・三人条項、スウェーデンの四%・一二%条項というのがあります。この場合、政党制はマイルドな多党制といいますか緩やかな多党制ということで、大体四党から五常であります。そういう意味で、今日、日本の中選挙区制が非常にいい制度であるということで、逆に欧米の人たちが私たちの方に聞きに来るということもあります。 その中で、いま西平先生の御指摘にありましたように制限条項を取り払った場合、イタリアのように十二党ぐらいの政党が成立する。デンマークは、先ほど申しましたように二%条項ですから、これが十党を超えました。こうなりますと、イタリアにはかつて一年の三分の一は政権がなかったというような、そういう大変な政党間抗争というのが起こります。その意味で、やはり比例代表制を行う上では一定の制限条項をつけなければならないだろうというのが先ほどの発想です。 しかし、そのときに、確かに政党システムの破片化ということを起こすからそれはつけなければいけないということですが、私はその中で、ただ日本の場合参議院の全国区であるということを考えていくならば、この制限条項は、泡沫候補だけ出られないような形で、何らかの実績を重んじて、先ほどコロンビア・トップさんの五十六万票がちょうど一%に該当するわけですから、ちょうど次点から数えて八番目か七番目です。この人たちぐらいならば、経過的措置として改めてリターンマッチをさせてもいいのではないかというふうな発想であります。推薦をつけるということになると、また宗教組織やいろいろな団体が出てくるわけですから、これはつけ方が、先ほどちょっと言いましたけれども、非常にむずかしくなってくると思うのです。
○小杉委員 阪上先生は原則的に今度の提案に反対ということですが、どうしてもこの制度が通ってしまうのならばという注釈つきで、無所属立候補、個人立候補を認めよという御意見だったわけですが、こういう政党本位の選挙になった場合に政党と個人とがまじって選挙が行われるということで好ましくないという意見もあるわけですが、その点に関してはどういう御見解をお持ちでしょうか。
○阪上公述人 私は、この制度が衆議院ではなくて参議院に導入されるということに非常に難色を示しているわけでありまして、比例代表制、特に拘束名簿式比例代表制ということを原則にした上で、そこに個人を候補者として認めるということは、個人候補者そのものが非常に不利になりまして、ほとんど当選の可能性がないということになると思うのですね。そういう意味で、そういうことを私が要求しても余り意味がないわけなんで、一つのそういうような、もしどうしてもこの制度が通るということであれば、多少そのくらいの余裕をつけていただかないと、全く無所属候補というものが排除されるというのはいろいろな面で問題だというふうに思うのですけれども、基本的に政党化ということを前提として参議院の全国区を改正するということは望ましくないので、そこに今度は拘束名簿式のところに個人の候補者を入れても余り意味がないというふうに私は考えているわけです。
○小杉委員 それでは、西平先生に、先ほどから名簿連合というのがよく出てきておりますが、たとえば日本でいま衆議院では新自由クラブ・民主連合という一つの会派を組んでいますが、選挙のときになれば、これは現実には新自由クラブという政党と社会民主連合という政党があるわけですね。その名簿連合というのは、選挙のときに別々に名前を出していても、開票のときに一つの名簿連合として新自由クラブ・民主連合という連合体でありますよということにしておいて、新自由クラブと入れても社民連と入れても、その一つの結合された名簿の中に、勘定に入るというふうな考え方なんでしょうか。それをまずお伺いします。
○西平公述人 そのとおりでございますが、普通は名簿結合と言っております。というのは、連合名簿というのは、たとえば社民連と新自由クラブが一つのリストの中へ名前を出すときは連合名簿と申しまして、別の名簿が結合される、計算のときに結合するという意味でございます。で、御趣旨はおっしゃるとおりでございます。
○小杉委員 福岡先生に伺いますが、先ほど来無党派層とか無関心層ということが言われておりますが、私は、無党派と言われる、三割とか四割とか言われておりますけれども、厳密に分析をしますと、もう全く政治その他選挙に無関心で投票に行かないという人たちと、意識的に、いまの政治に満足できないから棄権をするとか、それから政党にどうも同調しない、そういう意識的な棄権層というか、政治不信層というのか、あると思うのです。 今度の新しい制度を導入することによって、たとえば各党が競ってできるだけいい人物を、いい人材を名簿に、しかも順位に非常に工夫をこらして出すということで、やはり無党派と言われる中でも意識的な棄権層、いわゆる無党派層というものをいまのままで置いておいちゃいけない、もっと各党が積極的にそういういい人材を出して、そういう無党派層を引きつけるという努力をするということによって、政党の良質化を図るという可能性を今度の制度の中に、私はもしこれが行われるとすればやはり期待をかけたいと思うのです。そういう点は、何かいままでの無関心層というのはずっとこのまま続いていくのだという発想でいままで議論が行われていますけれども、こういう政党本位の選挙になって、そういう政治への信頼あるいは政党の信頼性を高める努力を各党が行うことによって、もう少し政党が良質化をするという効果を期待できないかと思うのです。その辺についての見解を伺いたいと思います。
○福岡公述人 これは全くの推察、推量の域を出ないわけですが、私は幾つかの形でシミュレーションをしている中で、たとえばいま世論調査のプレ調査の段階なんですが、幾つかの会派が集まった場合に、一プラス一は二プラスアルファという増幅効果みたいなものが出てくる。次回の場合、特に地方選挙との時間差ダブル選挙になりますので、第一回、第五回、第九回の選挙のときは約一〇%投票率が下がっておりますから、次回もこのままいきますとその結果になります。 その中で一つ私が考えているのは、無党派層というものを引きつける意味で、次回の参議院の選挙がもし単独といいますか、衆議院との同時選挙でなければ、政党がいままでやってきたことに対する一つのバロメーターになるだろう。ある政党がたとえば非常に得票をふやしたならば、その名簿にある名前がすぐれて浮動層を引きつけるということで、現状の日本の政党政治というものが、まさに一部の人たちには政治的無関心を増長させ、一部の人たちには政治不信をつのらせるというような形で、完全な悪循環を呈しているわけです。その中で今日三〇%から四〇%と言われている人たち、先ほど無効票が四百万票あると言われましたが、もし次回の単独で行われたときの参議院選挙が六〇%を大幅に切るような選挙戦になった場合には、今回の全国区改正というもの、それから各党のつくった名簿に対する国民の声なき、サイレントな批判であるというふうに考えております。
○小杉委員 時間が参りましたので終わります。 どうもありがとうございました。
○久野委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。 公述人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、ありがとうございました。ここに委員会を代表して心から御礼申し上げます。(拍手) これにて公聴会は終了いたしました。 次回は、来る十一日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午後三時五分散会