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96回国会衆議院1982/04/23

外務委員会 第11号

発言数
139
登壇者
15
会派数
3
開催日
1982/04/23

会議録

中山正暉自由民主党

○中山委員長 これより会議を開きます。  投資の促進及び保護に関する日本国とスリ・ランカ民主社会主義共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件及び所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とインドネシア共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件並びに南極地域の動物相及び植物相の保存に関する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。玉城栄一君。

玉城栄一公明党・国民会議

○玉城委員 私は十分間時間をいただきましたので、簡単に南極動植物保存法案につきまして三点お伺いをしたいのです。一点はこの法案が可決された後の運用上の問題、二点目に南極の領土権の問題、それから三点目に南極の資源問題、この三点簡単にお伺いしておきたいわけです。  最初に、この法律案は、結局南極というわが国からはるかに遠い地域での動植物の保護をしようということで国民の行動を規制して、違反者に対しては罰金を科そうというようなことになっておるわけですが、そういうことを外務省がなさろうということなんですが、実際問題として本当にそういうことが外務省としてできるのかどうか、今後の運用についてどういうふうに自信を持っていらっしゃるのか、その辺をお伺いしておきたいのです。

遠藤哲也外務大臣官房外務参事官

○遠藤説明員 お答え申し上げます。  確かに先生のおっしゃいますように本件の実行は非常に困難が伴っております。しかしながら、この法律案を御承認いただきまして成立いたしました暁には、幾つかの方法によってこの法案の実効を確保していきたいと思っております。  まずその一つは、この法案及びその基礎となっております勧告措置を周知徹底せしめるということでございます。この周知徹底せしめます対象といたしましては、いまのところ三種類ぐらいが考えられるのではないか。一つは南極の観測隊員でございます。それからもう一つは漁業関係の人たち、それからもう一つは旅行者、いわゆる観光旅行客でございますけれども、この三種類の方々がいまのところ南極に行くと想定されますので、まず観測隊員につきましては、これは国家公務員でございますからこの法案の内容を周知徹底せしめる、それから漁業者につきましては農林水産省を通じまして関係の方々にこの中身を周知徹底せしめる、それから観光旅行者につきましては、運輸省を通じまして旅行エージェント、いまのところ日本でこれを取り扱っておりますのは一社でございますから、そこに周知徹底せしめる、さらには旅券発給の段階におきましてこの中身を周知徹底せしめたいと思っております。それから最後に、南極地域で殺傷あるいは捕獲いたしました動植物を日本に持ち込んでくるということが考えられるわけで、その場合につきましては関税当局、税関でもってこれを規制する。  大体以上申し上げましたようなことで何とか、先生御指摘のとおり困難はあるのでございますけれども、この実効の確保を図っていきたい、こういうふうに考えております。

玉城栄一公明党・国民会議

○玉城委員 そこで二番目のこの領土権の問題なんです。  わが国はこれからも積極的に南極問題に取っ組んでいかなければならないと私は思うのでありますが、わが国は昭和二十七年、サンフランシスコ条約によって領土請求権を放棄しているわけです。その後、昭和三十二年に南極観測の昭和基地が建設をされて現在に至っております。片やわが国も加盟している南極条約は、領土権については凍結、しかし、今後また、十年後この条約の見直しというようなことになっておるのですが、十年後条約の見直しということになりますと当然大きくこの領土権の問題というのは出てくるわけですね。  そこで、いま各国すでに南極には科学調査のための基地を建設しているわけですが、そういう領土権が問題になったとき、各国がすでに建設をしているそういう科学調査のための基地との関係については外務省はどのように考えておられるのか、ちょっとお伺いしたいのです。

都甲岳洋外務大臣官房外務参事官

○都甲政府委員 先生御指摘のように、南極条約におきましては第四条の一項におきまして各国のいろいろな領土権の主張等につきましてこれを凍結するための規定を置いておりますが、二項におきましては「この条約の有効期間中に行なわれた行為又は活動は、南極地域における領土についての請求権を主張し、支持し、若しくは否認するための基礎をなし、又は南極地域における主権を設定するものではない。」ということを書いておりまして、「南極地域における領土についての新たな請求権又は既存の請求権の拡大は、この条約の有効期間中は、主張してはならない。」という規定が置かれております。こういうことでございますので、各国の領土請求権を凍結した上で、この期間中に行われた行為、活動等が新たな請求権の要求の根拠にならないということを明確に決めてあるわけでございます。  先生の御指摘は、この条約発効の三十年後に条約改定の機運が来たときにどうなるかというお尋ねだと思うのでございますが、これは、条約論から言いますと、この規定がもし改定されてなくなるというような場合には、凍結された領土権が再び主張されるということもございますでしょうし、ここでその期間に行われた活動の結果を領土権の主張の根拠としてはならないという条文も効力を失うということも考えられますので、そのような場合に法理論としては領土権を主張するということが再び出てきて各国の調整がむずかしくなるということはあると思いますけれども、南極条約そのものは、先生御指摘のように三十年後に運用についての見直しをやるというようにきわめて長い期間この枠組みを存続することを予定しております。そのようなわけでございますので、また、領土権を主張している国とそれを否認する国との間の対立というものもかなり激しくございますので、三十年後の見直しの時期に先ほど申し上げましたような事態になるということは余り予想されないのではないかというふうに考えております。  それから、わが国との関係におきましては、先生も御指摘のように確かにサンフランシスコ平和条約二条e項におきまして南極についての請求権を放棄しているわけでございますけれども、これはその当時に至るまでの日本の活動を根拠にして日本が南極地域について一定の主張をすることをあらかじめ防ごうというための規定でございまして、平和条約発効後に日本が行った活動を根拠にして日本が一定の主張をするということまでも妨げる規定ではないわけでございます。そういう意味で、サンフランシスコ平和条約二条e項で請求権を放棄しておりますけれども、しかし、その後、日本の活動というものは他国と同じ平等の立場において行われております。ですから、そういう意味では、わが国の活動は全く他国の活動と平等に評価される立場にあるということになるだろうと思うのでございます。ですから、日本国としてはもちろん、南極地域において各国から領土権を主張すべきではないと考えておりますし、そういう立場をとり続けますけれども、御指摘のような、発効三十年後の改定におきましてわが国が不利な立場に立つことはないというととだけは申し上げられるのではないかと思います。

玉城栄一公明党・国民会議

○玉城委員 シスコ条約によって南極に対する領土請求権を放棄し、その四年後、昭和三十二年にこういう基地が建設をされているわけですから、この南極条約の見直し等の時期においてそういう領土権の問題が議論されるときに当然いまの問題は領土権の主張になり得ると私は思うわけであります。  そこで、次の三番目の問題ですが、資源の問題、これも大変よく問題になるわけですが、各国がすでに南極地域あるいは海域の鉱物資源等調査をやっているというふうに聞いているわけです。すでにわが国も南極海域の石油それから天然ガス、鉱物資源等の調査をやっているというふうに聞いているのですが、その概要をちょっと御説明をいただきたい。

遠藤哲也外務大臣官房外務参事官

○遠藤説明員 お答え申し上げます。  先生御承知のとおり、この南極条約自身は鉱物資源の開発については何ら規定しておりませんので、したがいまして、この条約上は開発は禁止されてない、こういうふうに理解しております。しかしながら、御指摘のとおり、この地域には鉱物資源の埋蔵が伝えられておるわけでございまして、これに対する関心が高まってくるのと同時に、昭和五十二年でございますけれども、第九回の南極協議国会議におきまして、国際取り決めができるまでは探査、開発は自粛しよう、こういう勧告が出たわけでございます。日本ももちろんこれを承認いたしておるわけでございます。  それを踏まえまして、しかしながら、そうは言いましてもこの地域の鉱物資源に対する関心が上がってきていましたので、昭和五十五年、第十一回の協議国会議で鉱物資源問題が議論されたわけでございます。中身は国際取り決め等を今後検討していこうということで、ことしの六月以降に鉱物資源の開発に関します特別協議国会議を開こう、こういうことが決まっているわけでございます。  なお、この会議自身はニュージーランドが招請しておりますので、一応六月以降ということになっておりますけれども、今般の国際情勢から、果たして開かれるのかどうかは若干問題があるかと思いますが、いずれにしても、そういうふうな動きが国際的に出てきておるということでございます。  他方、日本の方は自粛の勧告を受け入れているものでございますから、探査、開発は行っていないわけでございます。しかしながら、資源関係の科学的な調査、これは五十五年から三カ年計画をもちまして、資源エネルギー庁が委託しました白嶺丸というものが南極海の地質構造等のいわゆる科学的な探査にいま従事しておるところでございます。

玉城栄一公明党・国民会議

○玉城委員 時間が参りましたので、終わります。ありがとうございました。     —————————————

中山正暉自由民主党

○中山委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  投資の促進及び保護に関する日本国とスリ・ランカ民主社会主義共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件の審査のため、本日、国際協力事業団無償資金協力部長加藤清君、総務部総務課長高橋昭君、企画部企画課長御手洗章弘君及び企画部地域課長橋口次郎君に参考人として御出席を願い、御意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中山正暉自由民主党

○中山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。     —————————————

中山正暉自由民主党

○中山委員長 井上普方君。

井上普方日本社会党

○井上(普)委員 ちょっとお伺いしますが、日本とスリランカの国との間にいままで貿易をやってきたのですけれども、これは何によってやってきたのですか。

藤井宏昭外務大臣官房審議官

○藤井(宏)政府委員 日本とスリランカとの貿易は年々ふえておりまして、特に日本に対する輸入でございますが、貴石、紅茶及び……。

井上普方日本社会党

○井上(普)委員 いやいや、そんなことを聞いていないよ。貿易をやってきたが、一体その貿易は何という条約のもとでやってきたのかということを聞いているのです。

藤井宏昭外務大臣官房審議官

○藤井(宏)政府委員 どうも失礼いたしました。貿易取り決めでございます。

井上普方日本社会党

○井上(普)委員 その貿易取り決めというのは批准を要求するものですか、あるいは行政取り決めですか、どちらです。

藤井宏昭外務大臣官房審議官

○藤井(宏)政府委員 これは行政取り決めでございまして、一九五二年九月六日に発効しております。

井上普方日本社会党

○井上(普)委員 そうしますと、私はちょっと不思議なんですけれども、いままでは行政取り決めであった。その行政取り決めが不備であるから、あるいはそれ以上のものをつくろうというので投資促進に関する協定を批准させておるのじゃございませんか。そこらの関係はどうなっておるのです。

藤井宏昭外務大臣官房審議官

○藤井(宏)政府委員 貿易取り決めは、事業活動に関する内国民待遇あるいは最恵国待遇というような投資に関連した規定を詳しくしておりませんで、これは一般的に貿易取り決めよりもっと詳しい通商航海条約でも十分にわが国の投資に見合うような事業活動等につきましての内国民待遇、最恵国待遇についての規定が十分でないというところから、現在スリランカにつきましても、それからその他の国につきましても投資保護協定を結んでいこうということでございます。

井上普方日本社会党

○井上(普)委員 私の質問をよく聞いてから、素人が言っているんだから、よく聞いてそのつもりで的確な答弁をしてもらいたい。何も揚げ足取るようなことを考えていないのだから、そのつもりでおってもらいたい。  普通、通商航海条約というものがあって、その不備なものを補っていくのに——それは批准もやりながらともかく貿易をやっておる。それに不備なるものがあるのでひとつ協定を結ぶというのが普通じゃないかな、常識的に考えればそうじゃないかなと思うのです。ところが、これはいままでスリランカとの間では行政取り決めだけでずっとやってきて、それの不備なものをひとつこの協定でやろうとする一体どこに理由があるのか、そこがわからぬから聞いているのですよ。

都甲岳洋外務大臣官房外務参事官

○都甲政府委員 前の貿易協定を行政取り決めとしておきながら、今回どうして国会承認を必要とする条約として提出したかという御疑念だと思いますので、今回の協定が国会に御提出して御承認をいただくに至った理由というものを御説明させていただきたいと思います。  御承知のように、との投資保護協定は貿易協定とはやや規定内容を異にいたしまして、特に直接投資の場合の事業活動ということを眼目に置きまして、これをめぐる最恵国待遇、内国民待遇、それから特に国有化の場合の補償、投資の利潤の送金の自由等について相互に義務を負い合うという形で決めているわけでございます。それから、さらに仲裁に付託する条項を特に設けまして、その決定については拘束力を有するというようなことが書いてあるわけでございます。  これらの条項につきましてはいずれも国民の権利義務、あるいは国家に義務を負わせるという形で、立法事項といいますか国会の御承認を要する事項でございますので、今回の条約をこのような形で国会に御提出して御承認をいただきたい、こう考えている次第でございます。

井上普方日本社会党

○井上(普)委員 後から質問しようと思うことを先におっしゃっているんだが、大体行政取り決めというものと条約というのと、これは相当違ってきていると思うのです。行政取り決めというのは批准を受けずに取り決めだけでやっていく、言いかえたら、これは戸籍で言ったら庶子だ。庶子という言葉はもうないのか知らぬが。ところが片一方は批准をやらなければならぬ、これは本妻の子だ。しかもこれはこっちの方がはるかに軽いのでしょう。先ほどの言葉をかえて言うと、母屋の方は行政取り決めでいって、分家の方だけは批准までする、貿易までやる。私、ちょっとわからないんだが、ここらあたりどうなっているのか教えてください。

都甲岳洋外務大臣官房外務参事官

○都甲政府委員 従来から国会で御答弁申し上げておりますように、行政協定につきましてはすでに現在あります法律の範囲内で、政府が実行できる権限の範囲内で締結しているものでございまして、日本国とセイロンとの間の貿管令その他の国内法に基づいて実行できる範囲内の協定でござ国内法に基づいて実行できる範囲内の協定でございますので、これを行政取り決めとして締結したものでございます。

井上普方日本社会党

○井上(普)委員 どうもこれは私、よくわからない。不思議に思っている一つです。  続いて、外務大臣の演説をこの間も拝見いたしておりますと、「世界の平和と安定の維持のために重要な地域に対する援助を引き続き強化していく」とおっしゃっておられる。「南西アジア地域及びインド洋の安定は、近年わが国にとってもますます重要性を高めており、政府としては、今後とも同地域諸国との関係強化に努力していく所存であります。」とおっしゃっておられるんだが、この「重要な地域」というのはどういう意味合いなのか、そして、どこどこの国を大体想定しておるのか、そしてまた、援助を強化するというのは具体的にどういう意味合いなのか、この点ひとつお伺いしたいのです。

櫻内義雄自由民主党外務大臣

○櫻内国務大臣 世界の平和と安定のために重要な地域とは、わが国が従来から二国間援助の七割を配分してきているアジア、なかんずくASEAN諸国、さらにはタイ、パキスタン、トルコといった紛争周辺国が含まれると考えますが、具体的にどの地域がこれに該当するかは、わが国がその都度自主的に判断することになります。  なお、世界の平和と安定の維持のために重要な地域に対する援助も、援助の基本理念である相互依存と人道的考慮に沿って行われるものでございます。  以上、お答え申し上げます。

井上普方日本社会党

○井上(普)委員 その御答弁の中でトルコが入ってきておるというのは、どうもどこから出てきたのか、わけがわからぬ。トルコというのはアジアとヨーロッパの接点だ、こうヨーロッパの地政学者が言っている。しかし、これを見てみたらやはり向こう側に近いのじゃないかとわれわれは思う。トルコは何で入ってきたのですか。

櫻内義雄自由民主党外務大臣

○櫻内国務大臣 トルコにつきましては、OECDの各国の中でトルコをみんなで救済しよう、こういうような協議が調って、この援助国会議があります。それによって、日本もOECDの一員といたしまして、そういう援助に参加をする、こういうことになりましたから、ここに紛争周辺国の一つにトルコを入れた、こういうことでございます。

井上普方日本社会党

○井上(普)委員 OECDが決めたからわれわれも加わるのだというのは、どうも自主性がございませんな。OECDが決めたからその一員としてともかく援助をやるのだなんというのは、どうも私は考えられない。といいますのは、このごろの経済援助というのがアメリカの世界戦略の一環として使われておるという感じがしてならないのであります。このごろのアメリカのレーガン大統領の政策というのは、どうも各国とも評判がよろしくない。ところがこれに追随しておるといいましょうか、しっぽを振っていっておるのは日本外交だけじゃないかという感じがしてならない。すでにこの間うちからも再三言いましたし、またこの間はミッテラン・フランス大統領が来て一番先に国会で演説したのは何かというと、世界経済を乱しているのはあのアメリカの高金利じゃないか、日本よ一緒にこれについて抗議しようじゃないかということをまず第一番に言ったじゃありませんか。やはり自国の国益ということを中心にして外交が行われているということを日本外交は忘れたのじゃないか。アメリカの顔ばかり見て、レーガンの顔ばかり見ながら外交が行われておるのじゃなかろうかという危惧の念を私は持たざるを得ない。そこでトルコなんというのが出てくるので、どうもおかしい話だなということを感ずるのであります。  それはともかくといたしまして、次に条約の方へ入りましょう。  条約を見てみますと、この条約の一番眼目になるのはどうも内国民待遇これだけじゃ足らぬということで、今度は収用、国有化等の措置がとられた場合、補償措置あるいは送金の自由ということを確保しようというのが眼目じゃございませんか。だとするならば、これはいろいろ問題が出てくると私は思います。  といいますのは、まず第一番にお伺いいたしたいのですが、そういう場合に、まあいいますならばクーデターが行われて政権がかわった、そういう場合に、当然内政的な方向が違ってくる。ところが、外国資本だからといってそれを内国民と違う扱いをしろというのがこの条約なんですか。どうなんです。

都甲岳洋外務大臣官房外務参事官

○都甲政府委員 この条約におきましては、特に収用、国有化等の場合におきまして、遅滞なく適当な補償をしなければならないということを定めておりまして、これはこのような国際的に直接投資が行われた場合に、特にその国内において国有化等が行われた場合にこのような補償をしなければならないということは一般的な国際法の概念でございますので、それをここに規定しているわけでございます。

井上普方日本社会党

○井上(普)委員 その一般的国際概念というのがわからない。そこを聞いているのですよ。

都甲岳洋外務大臣官房外務参事官

○都甲政府委員 国有化の場合に迅速、適当な補償をしなければならないということは、国際法の一般原則であるというふうに考えられておりますので、その「迅速、適当かつ効果的な補償」をするということは、それをこの条約におきましても規定しているわけでございますので、そういう意味で国際法上の原則というふうに申し上げて差し支えないと思います。

井上普方日本社会党

○井上(普)委員 国際条約上の原則を、なぜあなたは新しく書かなければいかぬのです。それを主眼とした条約を結ばなければいかぬのです。

都甲岳洋外務大臣官房外務参事官

○都甲政府委員 条約によりましては、一般国際法上の原則でございましても、それを特に二国間におきまして具体的な項目につきまして確認し合うということは往々にして行われるわけでございますけれども、この条約の国有化の際の「迅速、適当かつ効果的な補償」という項目もそのように御理解いただければと思います。

井上普方日本社会党

○井上(普)委員 そうすると、御丁寧に二重にやるのだ、こういうことですね。国際法上の原則というものはあるのだけれども、この国はどうも頼りないから、そういうようなことが起こった場合にはひとつしっかりやるのだぞ、こういうことですね。

都甲岳洋外務大臣官房外務参事官

○都甲政府委員 特にこの投資保護協定というのが、直接投資を促進するということによって両国間の経済交流を促進するという目的を持つものでございますから、このような事業活動をめぐるその投資保護の環境を整備するという意味でいろいろな原則を盛り込みあるいは確認するということが一つの眼目でございますので、そういう意味では、先生がおっしゃるように、いま存在する国際法上の原則をここで改めて念を押すという意味もございます。

井上普方日本社会党

○井上(普)委員 それは、しかしいろいろとそういう意味であれば屋上屋を重ねるような条約だなという感じもいたすのであります。  そこで、ここに第二十九回国連総会で採択せられた諸国家の経済権利義務憲章というのが、これはどうも決議としてなされたらしい。これに日本はどうも棄権したという話を聞いておりますが、いずれにしても、これは国連で採択せられたことは間違いない。その第二条の第二項の(a)、「自国の法令に基づき、また自国の国家的目的と政策の優先順位に従い、自国の国家管轄権及び範囲内で、外国投資を規制し、それに対し権限を行使すること。いかなる国家も外国投資に対し特権的待遇を与えることを強制されない。」ということを書いてある。それから第二項の(c)に、「補償問題で紛争が生じた場合はいつでも、その紛争は、国有化した国内法にもとづき、かつその法廷において解決されなければならない。但し、すべての関係国が諸国家間の主権平等の基礎の上にたち、かつ手段の選択の自由の原則に従い、他の平和的手段を追求することにつき自由にかつ相互間で合意した場合はこの限りではない。」こう書いてあるのですな。そうすると、この第六条との関係において矛盾が生じてくると思うのですが、この点いかがですか。

都甲岳洋外務大臣官房外務参事官

○都甲政府委員 先生の御指摘の国際経済権利義務憲章でございますけれども、これには確かに先生御指摘のような条項が入っておりまして、当時わが国としてはこれに棄権いたしましたのは、当時の発展途上国の強い主張があってこのような内容が盛り込まれたわけでございますけれども、これが実際に発展途上国と先進国との間の投資を促進するのに役立つ枠組みであるかどうかということに対して非常に強い疑念があったものでございますから、そういう観点から棄権したわけでございます。  それで、この中に規定されております先生御指摘の内容の幾つかの点があったわけでございますけれども、特にまさにこれらのたとえば国有化の場合の補償について、その国内法あるいはその国内の法廷のみによってこれが解決されるというような原則が書かれていること、そういうようなことがありますと、事業家としてはそれに対して非常に不安を持つということで、そういう前提に立ちますと、むしろ事業家の方に投資の意欲がわかなくて投資が促進されないのではないかという実態問題があるのではないかと思うわけでございます。  そこで、この第六条におきましては、先生の御指摘はこの憲章と六条が背馳するのではないかという御指摘でございますけれども、この第六条あるいはこの投資協定全体が、日本国が特権的な地位を要求するために、たとえばスリランカにこれをいわば押しつけたというようなものではございませんで、スリランカの方におきましても、日本国との事業活動、直接投資を促進することによって貿易のインバランスのたとえば是正を図りたいとか、そのような経済的な利益があったわけでございまして、そういう話し合いの結果、たとえばこの第六条におきまして、緊急事態あるいは敵対行為あるいは国家緊急事態による場合の損失補償等につきまして、内国民待遇、最恵国待遇を与えるという条項を双方合意の上で置いたわけでございますので、これはそういう意味で、この経済権利憲章との背馳という問題よりも、この経済権利義務憲章はさておき、両国の間でこのような合意を改めて行った、そういうことであろうと思います。

井上普方日本社会党

○井上(普)委員 そうすると、これは背馳するということはお認めになるのだけれども、スリランカの事情によってひとつ認めてくれと、こうスリランカの要求によってやったのだ、そういう考え方でやったのだ、こういうお話のようだ。  そこで、考えてみたら、投資する方がこれが強い立場に立っている。向こうはともかく投資してほしいのだから、それならひとつスリランカさん、あなたはこの憲章に賛成しておるのだけれども、これをのみなさいというような形になったのじゃないですか。それはそうじゃないとおっしゃるかもしらぬが、客観点にはそうならざるを得ない。どうなんです。

藤井宏昭外務大臣官房審議官

○藤井(宏)政府委員 スリランカはすでに六つの国とほぼ類似の投資保護協定を結んでおりまして、この規定は特にスリランカにとって目新しいものではございませんけれども、御指摘のように、交渉の過程でこの規定の明確化をめぐりまして若干の意見の対立があったことはございますが、基本的に押しつけるというようなものではないわけでございます。

井上普方日本社会党

○井上(普)委員 こっちは押しつけた気持ちでないかもしらぬが、向こうは経済大国にやられたんだ。国連での決議にはスリランカは賛成しているのでしょう。賛成した上で、その上に立って、しかしどうしても投資が少ない、経済発展のためにはもっと必要なんだ。えい、賛成したけれども、国連憲章なんていうものはほうってしまえという考え方で来ているんじゃないですか、どうなんです。しかし、国連の決議というのは、これは見てみますと、いろいろ国家間の利害衝突はありましょう、ありましょうけれども、これはやはりかなり公正なものではないかなという感じがするのですがね、私は。どうなんです。

都甲岳洋外務大臣官房外務参事官

○都甲政府委員 先生の御指摘でございますけれども、この協定の中におきましても、そういう意味ではスリランカの国内の権限行使についての十分な配慮を払われる条項は入っておりまして、二条の一項にたとえば「各締約国は、関係法令に従ってその権限を行使する権利を留保の上、」というふうに明確に規定しております。それからさらに裁判の権利あるいは行政機関に対する申し立ての権利につきましても、これを内国民待遇、最恵国待遇を与えるというような形で、そういう意味ではスリランカの中におきまして、スリランカの裁判所あるいは行政機関への申し立てについてもこのような規定を置くというように、ですからスリランカ側の権利の行使についても十分な配慮が払われた協定になっておるというふうに申し上げられるのではないかと思います。

井上普方日本社会党

○井上(普)委員 私はスリランカと仲よくつくったんだということは結構なんですよ。ただ、これと国連の決議と背馳してきておるではないか。その背馳するものをも、向こうさんはしんぼうしながらつくったんじゃないか。したがって、そこらあたりについては、少し向こうはやってもらいたいという意識があるでしょう。それを押しつけがましく——いまのスリランカの政府はそう考えておるかもしらぬけれども、民衆は一体どう考えておるのだろうかという問題が今後出てくるのだ。特にクーデターとかあるいは革命とかいうようなことが起こってくるのは、現政府に対して反対の意見が出てくるのだ。どうだ、余りにも外国資本に対して優遇し過ぎているじゃないかというのが一つの理由になりかねない。だから私聞いているのですよ。どうなんです。

藤井宏昭外務大臣官房審議官

○藤井(宏)政府委員 ただいまの御質問にお答えする前に一点だけ、背馳の点でございます。背馳をしていることはそのとおりでございますけれども、二章二条二項(a)につきましては、この一番の主眼は「特権的待遇を与える」云々でございますけれども、この協定は内国民待遇、最恵国待遇を決めておるものでございまして、日本の企業に特権的な待遇を与えるということはないわけでございまして、スリランカの国の企業と同等の待遇を与えるということが最大の待遇であろうかと思います。それが第一点でございます。  それから国有化、収用等につきましては、権利義務憲章の二条二項(c)におきましても「妥当な補償を支払わねばならない。」ということは明確に述べておるわけでございます。このスリランカとの投資保護協定におきましても、国有化、収用等の権利は否定しておりませんし、またその補償についても、その補償の内容を明確化しているということであろうかと思います。したがいまして、背馳と申しましても、それが大きく背馳しているということではないと存じます。  先生の御質問につきましては、スリランカは国連で本件について賛成しておりますけれども、これはいま申しましたように一般的なスリランカとして望ましい形としての条文ということで賛成しておるわけでございまして、それに基づきまして、具体的な明確化等を含めまして、スリランカの産業政策等も勘案しながらこの協定を結んだものでございます。決してこれは押しつけたというようなものではございませんし、特に現在の政権は対外経済開放体制政策をとっておりまして、これに対してわれわれの見ておりますところでも、基本的なラインに対して民衆の支持もあるように見受けております。したがいまして、日本からの資本が特権的な待遇、あるいは非常に暴利をむさぼる等、民衆の怨嗟の的になっていくというようなことは、過去においてもございませんでしたし、今後この協定を結んだからといってそういうことが起きるというふうには必ずしも考えておりません。     〔委員長退席、愛知委員長代理着席〕

井上普方日本社会党

○井上(普)委員 ともかく外国に進出する企業というのは行儀よくやらなければいかぬ。その上に立って民衆から、いいものに来てもらったなという感じを持ってもらわなきゃならぬ。日本に対してスリランカ現政府は、それは外国の投資よ来てくれ、産業開発をやってくれ、こうおっしゃっておるかもしらぬ。しかし、民衆はそのときそのときで大きく動揺するのです。クーデターあるいは革命が起こってきた政権がかわるというのは、現政権に対して不満のある人たちがたくさんいるからそういうことが行われる。そのときの準備がいま出されておる条約なんです。そのときに投資家の保護をするんだ、向こうの国内法と同じ取り扱い、向こうの資産と同じようにやるんだ、こう言います。しかし、革命とかクーデターとかで一番先にやり玉に上がるのは外国の資本であることは洋の東西を問わない。それを国家間の約束だからというのでぎゅんぎゅんと押していくということになれば、民衆との間に乖離が生じないかということを私は恐れる。その点を恐れるから私は聞いているのですよ。いまの政府と、それはいいかもしらぬ。次に出てくるものとは一体どうなんだろうかということを考えると、この通すということ、しかもどこかに書いてあったが、裁判で決める、それで解決できないときには仲介者を立てるんだ、こう言っているんですね。一体仲介者というのはだれなんだ。ちょっとお伺いしたい。

都甲岳洋外務大臣官房外務参事官

○都甲政府委員 仲裁者につきましては、それぞれの国が仲裁委員を指定するととができることになっております。それから、国が入ってきます第三者仲裁の場合には、ここの第十三条に規定がございますけれども、仲裁委員会に付託することになっておりまして、いずれか一方の締約国が他方の締約国から紛争の仲裁を要請する公文書を受領した日から三十日の期間内に各締約国が任命する各一人の仲裁委員、それからこの二人の仲裁委員が合意する第三の仲裁委員ということによって仲裁委員会が成り立つということが規定してございますので、各締約国がまず一名ずつ仲裁委員を指定いたしまして、それでその両名がさらに第三人目の仲裁委員を選任するということになっております。それでさらにこの二人の仲裁委員の間で合意ができなかったときには第十三条の三項によりまして、国際司法裁判所に対して第三の仲裁委員を任命するように要請することができるという規定になっております。

井上普方日本社会党

○井上(普)委員 そうすると、国家と他の国家の国民との間の投資紛争の解決に関する条約というのをわれわれ批准していますが、それとこれとの関係はどうなるのです。

都甲岳洋外務大臣官房外務参事官

○都甲政府委員 先生御承知のように、ワシントンにおける投資紛争の解決に関する条約につきましては、特にこのような直接投資を促進するという見地から投資をした国民と国家の間の仲裁というものをうまく処理するメカニズムが必要であろうということになりまして、世銀の中に仲裁センターを置くことによって仲裁に持っていけるようなメカニズムをつくったものがこの協定でございますけれども、日本もスリランカもともに当事国になっております。ただ、具体的に個別の案件につきまして他方の要請があった場合にはこの条約による解決がなされなければならないという義務を個別に双方で負い合うという形でこの条約の中でさらに確認したというのが、先生御指摘のこの条約の第十一条の規定の趣旨でございます。

井上普方日本社会党

○井上(普)委員 しかし十一条には「ワシントンで作成された国家と他の国家の国民との間の投資紛争の解決に関する条約の規定が両締約国の間で効力を有する限り、同条約の規定に従い、調停又は仲裁に付託することができる。」これが中心になっているのでしょう、仲裁の場合の。

都甲岳洋外務大臣官房外務参事官

○都甲政府委員 その次の文章を見ていただきますと、「各締約国は、他方の締約国の国民又は会社が行う投資から免ずる法律上の紛争を、当該国民又は会社の要請があったときは、同条約に規定する調停又は仲裁に付託することに同意しなければならない。」というふうに、具体的にこの投資保護条約が規定いたします投資案件につきまして、特にこれは国家と国民ないし会社との関係でございますから、必ずしも対等の立場にないわけでございますので、特にその国に対してそのような投資を行った会社あるいは個人から、このワシントン条約に基づく仲裁に付託することの要請があったときには、国に対して個別に同意しなければならないという義務を課した、そういう意味では、仲裁問題につきましてさらに具体的にこのような義務を課することによって万全を期そう、そういう趣旨を盛り込んだものでございます。

井上普方日本社会党

○井上(普)委員 しかしそれは「各締約国は、他方の締約国の国民又は会社が行う投資から生ずる法律上の紛争を、」と書いてありますよ。法律上の紛争じゃないでしょう、予想されておるのは。どうなんです。先ほど来あなたの言う紛争が起きた場合の処理というのは、法律上の処理じゃないでしょう。

都甲岳洋外務大臣官房外務参事官

○都甲政府委員 この十一条で規定しておりますのは、先生御指摘のとおり確かに法律上の紛争でございます。ですから、法律上の紛争を仲裁に付するための具体的な枠組みがここに書かれておるわけでございますけれども、そういう意味では先生御指摘のような事態においての紛争というのは、主としてこの条約の中に規定されている内国民待遇であるとか最恵国待遇であるとか、そういうものが守られているかどうかという法律的な紛争の局面もかなり多いと思うのでございまして、この条約に規定されるそういう法律的な権利義務の関係を明らかにするということが実態的な紛争の解決に役立つという観点に立って、そのような法律的な紛争についてはこれを仲裁に持っていく場合の要請があったときには具体的に応じなければならないという義務を課すことによって事業家を保護しよう、こういう趣旨でございます。

井上普方日本社会党

○井上(普)委員 どうも私はいまのお話を承りましても……。紛争が起こるときはまあ非常事態のときだ、向こうの国家にすれば。非常事態のときに紛争が起こるのだという前提でこれは全部書いているのですね。そこで、これをやるとすると、一九五六年の条約ですか、これに持っていくのは少し無理があるのじゃなかろうかという感じがせぬでもない。しかし、これはお互いの国が締結して、この条約の中にぴしゃっとうたい込んで、そしてそれで仲裁する、こう言っておるのだから、当然これになるのじゃなかろうかなという感じがする。また、それが正しいのだろうと思う。そうするというと、いろいろこれは問題が出てくるので、この賠償のなにを見てみますと、投資紛争の解決に関する条約というのを見てみると、大体これは個人対国の、あるいは法人対国のものですね、条約の解釈とすると。国と国とじゃない。ここらあたりは一体どう解釈し、どういうようにこれを解決していこうとするのか、その点をお伺いしたい。

都甲岳洋外務大臣官房外務参事官

○都甲政府委員 先生御指摘のように、通常の場合には国と国との仲裁ということが多いわけでございますけれども、特に事業活動による法人あるいは個人の直接投資という場合に、その事業活動を保護するという見地に立ちますと、その個人と国の関係でその保護が全うされるかどうかという問題が多く起こるということがございましたので、特に開発途上国の諸国に対する民間投資の国際的な移動を増進するという見地から、いまのような観点に立っての保護を全うする必要があるだろうということで、この協定は一九六一年に当時の世銀総裁によって提案されて具体化されたものでございます。ですから、もともとこの協定の趣旨が、通常であれば個人と国家の関係におきまして、個人が非常に弱い立場に立つであろう、そういうことであれば、先生おっしゃったようないろいろな事態において、個人は十分に守られるという保証がないから、国際的に資本を移動して事業進出をするという意欲がわかないだろう、そういう見地から、特に世銀がこのような開発途上国への先進国からの投資を促進するという見地から、そのような紛争があった場合に、その紛争の法的な解決について、このような具体的な国家が個人の訴えに応じなければならないという仕組みをつくることによってこれを全うしようという見地からできたのが、まさにこの条約でございますので、そういう意味では、通常の国と国との仲裁に付するという枠を超えて、個人にそのようないわば出訴権を与えたという形で、しかもこれは、国と国との間でこれを約束することによって、投資をした場合に、その国に対して個人から訴えが出た場合にはこれに応じなければならないという義務を国に課したものでございます。

井上普方日本社会党

○井上(普)委員 ともかくあなたの話が速過ぎて私はあなたのテンポについていけないのだな。しかしいずれにしても、この条約と紛争解決に関する条約とは密接に結びついてはおる。おるけれども、一体それではこれで投資家が救済できるのかというと、ちょっとむずかしいのじゃないか。大体そういう非常事態の場合に、いずれにしても国内法というのはできるんだ。新しい政府によって国内法ができて、それによって収用あるいは収用みたいなことが行われてくるのが通常のことなんだ。これは向こうの国内法の問題で、これは問題にならない。そうでしょう、問題にならない。ただ、通常観念からの被害、損害に対しては、これはやらにゃいかぬと言うけれども、そのときには、紛争が起こる、そういう事態が起こってくると、その持つ財産価値というのはがた減りに減ってくる。そのがた減りに減ってくるのを、片一方の方は通常の価額によってこれは補償しろと、こう言う。ここに紛争が起こってくるのは当然のことだと思う。それで、こういうような条約のできることについて、私はあえて反対だとも言いかねる面もある。あるけれども、これを誇大広告せぬようにしてほしい。こういうような条約ができたのだから、おまえら安心してともかく投資しろ、あるいは、こういう条約ができたのだから、おまえらスリランカへ行ってうんとやれ、こういうようなことを言われたのでは、これは問題が起こってくるのじゃなかろうか。国民に対して起こってくるし、かつまた、そういう意識を持って事業活動を他国でやられるならば、必ず問題が起こってくるということを私は指摘しておきたい。     〔愛知委員長代理退席、委員長着席〕  事実、日本なんかで事業が倒産するということになってくると、一番先に賃金の未払いということが起こってくる。ところが、諸外国へ、特にスリランカあたりへ進出する企業というのは、向こうの安い労働力を使おう、あるいは資源もございましょう、安い資源も使おうという考え方の人もおるだろうが、ひとつ安い労働力を利用して、そして金もうけをしてやろうというのが投資家の考え方なんです。  そこで、皆さん方にお伺いするのだが、向こうの労働法規というのはどれくらい完備しておるものなんですか。わからなければわからないでいいよ。

藤井宏昭外務大臣官房審議官

○藤井(宏)政府委員 調べてお答えいたします。

井上普方日本社会党

○井上(普)委員 しかし、投資事業を海外でやる場合、一番問題になってくるのは労働条件ではなかろうかと私は思う。また、それが外国資本に対する向こうの国民の不満というのがあらわれてくる問題だろうと思う。でございますので、そこらあたりも私らは注意しなければならないと思う。いまお手元にないようだが、日本の企業でも、倒産する、あるいは事業不振になってくると、一番に賃金未払いということが起こってきて、そこで資本と労働者側との間に、あるいは労働者の側は特に民衆というのがついてくる。ここで問題が起こってくるんですよ。この場合だって同じことが起こってこないかという心配が私らにある。その投資家が損するくらいのことは大したことはないのだ、私らからすると。それよりも、そのことによって国家間の友好親善が損なわれることを恐れる。だから、私はこういうことを伺っているのだ。それあたり、おわかりになっている範囲内でひとつお伺いしたいのだが、こういうことをにわかにぽこっと質問しているのだから、その準備がないのはわかっておるから、その点はどの程度考えておられるのか、お伺いしたい。

藤井宏昭外務大臣官房審議官

○藤井(宏)政府委員 スリランカの労働法規につきましては、ただいま申し上げましたように、調査の上、お答えいたします。  先生御指摘の点につきましては、これはすべての開発途上国に対する直接投資に共通の問題かと存じます。したがいまして、先住の御危惧はまさにそのとおりと存じます。  ただ一点だけ申し述べたいことは、直接投資は、いわゆる貿易とかあるいは金銭の貸借のように非常に浅い関係ではなくて、現実に現地に行きましてそこで企業を経営するということでございますので、それに伴いまして技術の移転、資本の移動等が行われますし、現実にその他で、その土地の人々を相手にして商売と申しますか、製造販売等をするということでございますので、それなりの覚悟と、また苦労をしながら進めていくというのが現実でございまして、通常、経済関係が密接になってきますと、開発途上国、特にアジア等におきまして日本の企業等に対する批判が行われやすいわけでございますけれども、その中でも直接投資についての批判はそれほど大きくはないのではないかと存じます。それが第一点でございます。  第二点は、さらにそれが投資保護協定ということで、より投資をした場合の予測性があるということにより、安定した投資環境が整備されるということでございますけれども、その協定があることによって先生の御危惧のような事態が促進されるということは特に考えられないのではないかと存じます。しかし、いずれにしましても、これは単にスリランカだけではなくて、アジア等に対してわが国企業が直接投資をふやしていく際に、先生の御危惧のような点は十分注意しながら進めていかなければならない点だと存じております。

井上普方日本社会党

○井上(普)委員 そのとおりだと私も思う。しかし、そういう海外投資に対する指導が十分できておるか、私は、国としてはできておらぬように思う。資本が出ていけばそのままでいいわというような考え方でいままでしてきておるので、東南アジアの各国におきましても、日本の企業進出に対しては余り快からざる人たちがかなり出てきているのじゃないか。たとえて言うならば、日本人の給料と、同じ仕事をしておるわれわれの給料とはえらい違いがあるというような考え方も出てくるし、それから現地人を日本で勉強させておきながら採用せぬというようなこともある。これは、事業家にとっては一面理由もあるなということを私も感ずるけれども、現にアジア諸国あるいはまた東南アジア諸国の人々が日本の進出企業に対して余り——うまくいっておるところもあります、ないとは言わぬ、しかし不満を持っておることも事実。こういうことを一つ考えると、この条約が批准せられて発効いたしましても、これは余り効果なさそうだな、ただ向こうの政府についてはいいだろうけれども、民衆の生活の向上は一体どうなるんだろうかという危惧の念を私は持つ。  私、三月の上旬にスリランカへ行ってまいりまして、見ますと、コロンボの自由港、自由地域ですかの開発もやっておりました。おりましたけれども——後進県と称する後進地帯が日本にはたくさんありますが、たとえば石川県や徳島県のごとく工場誘致のために工場用地をつくって、進出企業がなくて困っている、そして利子ばかり重なってふうふう言っている姿がたくさんありますが、これはどうもそういう姿になるんじゃなかろうかという危惧の念を私は持たざるを得なかった。西ドイツあるいはまたフランス等々諸国間においても、すでにこの投資保護条約が他国との間に結ばれていることも存じております。しかし、コロンボ自由地域というのですか、あそこでは余り工業進出が行われておらぬでしょう、もう五、六年になって土地の造成もできておるけれども。だから、スリランカ政府も、何とかしてこれを成功させたいというので、しんぼうしながらこんな条約をつくったのだろうと私は思う。無理からぬことだとは思いますけれども。  そこでお伺いするのだが、この投資保護条約をスリランカと結んでおる国はどこどこで、それらの国々はいま一体どれくらい投資されておるか、投資条約が結ばれて以降どれくらい企業が進出しておるのか、その点お伺いしたい。

藤井宏昭外務大臣官房審議官

○藤井(宏)政府委員 ただいままでに投資保護協定を結んでおります国はアメリカ、西独、英国、韓国、シンガポール、スイスでございまして、以上が投資保護協定が発効している国でございます。それから、署名をいたしましてまだ発効してないのがフランス、マレーシアでございます。さらに、仮署名の段階に至っておりますのがベルギー、スウェーデンでございます。  アメリカでございますが、全部で十一件、それから西独は人件が自由貿易地帯に対して投資されております。それから、自由貿易地帯外につきましては英国、西独、シンガポールが投資を行っておりますが、その残高はただいま手持ちを持っておりません。

井上普方日本社会党

○井上(普)委員 とにかくコロンボの自由港付近というのは、実際問題とすればまだがらがらだ。それで、スリランカとすれば、あわててこういうものをつくり、臨んでおられるのであろうと私は思う。しかし、それはそれといたしまして、発効した場合には、こちらから進出する企業が過大な望みを持たないように、ひとつ御注意をしていただきたいというのが一つ。  それから、日本企業というのは、やはり何を申しましても行儀がよくない。これらに対する指導というのを十分にやっていただきたい。これが二つ。  それから、民衆との接触については特に注意すべきだし、労働条件についても、日本の国内ほどとは言えないけれども、とにかく労働条件を定めることを中心に海外企業を考えていかなければ、将来大変なことになるぞということを、警告として申し上げておきたいと思うのであります。  そのほかに、あそこへ参りまして、わずか三日間ではございましたけれども、いろいろと考えさせられる点はたくさんございました。その一つにつきましてお伺いしますと、ここに「アジ研ニュース」というのが出ている。これはどこから出しているのですかな——アジア経済研究所です。これは通産省の外郭団体かな。アジア経済研究所というのは、外務省が金を出しているのかな。どうなんです。

藤井宏昭外務大臣官房審議官

○藤井(宏)政府委員 アジア経済研究所は通産省の外郭団体であると承知しております。

井上普方日本社会党

○井上(普)委員 通産省の外郭団体が出したこの文書を見てみますと、日本とスリランカの経済関係ということで文章が出ている。見てみますと、これは世の中を斜めに見ておるなという文章も中にはある。しかし、考えなければならないなというものもあるようだ。もっと言うならば、ここで斜めに見ておる一つの例としては、NHKが援助してあそこにテレビをつくった。三月の上旬だ。ちょうど、私が行きましたときにはテレビが開局して一週間以内くらいだ。夜遅く着いてあそこを通ってみますと、たくさんの人が集まっている。何だろうと思って見たら、テレビを町の広場の中にでんと据えて、周辺の村の人たちが集まってきてテレビを見ている。しかし、この「アジ研ニュース」を見ると、あの国はテレビを買うどころの騒ぎではない。ましていわんや電気料金も高くて払えないようなところにあんなテレビの経済援助をしたらおかしいじゃないかと、斜めに見て書いてある。私はそうではないと思う。人類の文化の所産であるものを民衆に知らせるということは大きな意味があると私は思う。そういうような一面からするならば、斜めに見ておるなという感じもせぬではない。しかし中を見ると、私らも聞いてきたのだけれども、経済援助をやり専門家を育てた、国内へ留学させてともかく技術研修をさせた、させたけれども日本企業が使ってくれない、自分の能力を使ってくれないという不満がスリランカの技術者の中にも出てきておる。これは日本の研修そのものに大きな欠陥があるのじゃないだろうか。スリランカだけじゃない、東南アジアの各国においてもそういう問題が起こっておる。どんな問題かというと、あちらの研修生が来て日本で研修するけれども、その研修した技術を自国の他の人たちに教えようとしない、こういう問題があるようだ。自分が日本で技術を習ってきたのを自国民に普及させることをやらずに、自分だけが持って、それで自分の生活を安泰にしよう、そういうような考え方に終始しておるような面がなきにしもあらずだと私は思う。  大体科学技術なんというのは、開発せられたら人類の生活の向上あるいは福祉のために使うのが技術開発あるいはまた発明、発見の基礎でなければならない。ところが、その努力をしたにもかかわらずそれを盗まれるのは余りおもしろくないというので特許制度というのがあるのだけれども、日本はエコノミックアニマルと言われる、自分が考えたこと、自分の技術は自分の所産なのだ、自分ひとりが独占していいのだという日本の企業の考え方が及んでおるのじゃなかろうかと思う。元来、科学技術というものは、開発せられたらそれは人類の福祉の向上のために使うのだ、だからあらゆる人たちにその技術を提供するのだというのが基本でなければならないのだが、日本の技術研修においてはそういう点の教育ができていないのじゃないだろうか、いまの海外からの研修についてそういう基礎的なこと、最もプリンシプルなものを忘れておるのじゃなかろうかという感じがしてならないのですが、その教育はどういうふうにやられておるのか、この点をお伺いしたいのです。

藤田公郎外務大臣官房審議官

○藤田説明員 技術協力の主たる柱の一つとしてわが国に招聘いたしまして技術修得を行わせております研修生は年間三千名余り来ておりますが、そういう方々が日本において研修される目的は、まさに先生の言われた前段のみずからの修得した知識、技術を帰国後自国民に伝える、教育するということが主たる目的であることはおっしゃるとおりでございます。それから、わが国から海外へ専門家を派遣する目的も、現地における先生の先生という形で、直接教えるということではなくて、現地の方を教える教師を養成することを基本として進めておるわけでございます。  その際、わが国の技術協力で移転した技術が、その移転された先生格の人から果たして本当に一般の民衆まで伝播することになっているかどうかということでございますが、確かに開発途上国、これは開発途上国に限りませんが、みずからの修得した知識、技術は、むしろみずからの所得向上といいますか自分の財産であるという考えから余り余人には教えたがらない、自分で守って自分の財産として使おうとする傾向があるということはそのとおりだと思います。そういう性格と申しますのは、国民性として日本には比較的少ないのではないかと思いますが、国民性の差で国によって強い国民もあり弱い国民もある、いままでの経験からそういう感じがしておりますけれども、そういう障害をできるだけ克服するような教育方針、研修方針というのを進めなければいけないというのはおっしゃるとおりだと思います。これは、海外からの研修生を受け入れるに際しまして、まず冒頭、協力事業団でわが国における技術協力の目的等を一般的な形で説明いたします際に各研修生には十分啓発、教育をしておる次第でございますが、今後ともそういう努力は続けてまいりたいと思います。

井上普方日本社会党

○井上(普)委員 私が申しておるのは、研修生が自分の国にその技術を伝播させることはもちろんでありますが、科学技術というものは自分ひとりのものにしてはいかぬということです。ところが、いまエコノミックアニマルと言われる日本の風潮としては、とかく技術を自分のものにしがちなのだ。科学技術の発達に対する基本的な認識が日本自体においても失われておることを私は否定しない。しかし、技術研修に来る、あるいは勉強に来る人々に対しては特にこの点を徹底的に教育しなければいけない。東南アジアの国に行ってごらんなさい。日本に研修に行ったけれども、それは自分の技術としてしまい込んでしまって外へ出さぬという不満がどこでも聞かれる。これは個々の国民性だと言うが、どこの出先の在外公館に行ってもみんなそう言う。これでは本当の技術協力にならぬと私は思います。そういう教育をなぜやるのか、おたくの国のためだけじゃないのだ、人類のためにやっているのだということを、科学技術の持つ本当の意味を明確に教えていただかなければならないのではないかということを強く申し上げておきたいと思うのであります。  それから、スリランカの貿易収支は赤字が非常に出ておって、それに従ってインフレがえらい高進しておるようなんです。であるからIMFから、生産に直接寄与しないような分野への財政支出は抑えるべきだという勧告がなされたやに承っておるのですが、この点わかっておりますか。他国の状況をとやかく言うのはどうかと思うのですけれども、わかっておるのならその点を伺いたい。  それと、スリランカ政府の財政で賄い切れない分野を日本から経済協力でひとつ協力してほしいという期待がスリランカ政府から日本に来ているということが言われておるのですが、その点はどうなのか、ひとつお伺いしたいのです。

藤井宏昭外務大臣官房審議官

○藤井(宏)政府委員 御指摘のように、スリランカの貿易収支は黒字でございましたが、それがだんだん悪化してまいりまして、IMFから不要の投資をしないようにという趣旨の勧告が出ていることは事実でございます。  それから、先ほど御指摘あったインフレ、これもスリランカの最大の問題の一つでございまして、二四%程度のインフレでございます。  それから、日本に対する期待でございますけれども、財政的な赤字と申しますか困難のために、日本からその分を何とか補てんするような経済協力をしてもらいたいという気持ちが確かにございまして、わが方もそれにある程度見合うような商品借款等をやっておるわけでございます。

井上普方日本社会党

○井上(普)委員 そういうところに、インフレが高進しておる、あるいは貿易赤字がえらい大きい、しかも輸入の一番大きい先は日本であるというようなことでありますので、まあ無理からぬということはございましょうけれども、だからといって、これはこういう条約ができたからひとつ日本の投資家は、事業家はどんどん進出しろというようなことを政府が奨励するようなことはやめていただきたいと思うのです。それは期待外れになることもありましょうし、そのことによって日本企業が向こうへ行って何でもやってもいいというような気風を起こしてはならない。あくまでも向こうに進出する場合には向こうの国民になり切る気持ちで、向こうの経済発展のために努力するのだという気持ちを日本の投資家にも出さしていただかなければ、将来のスリランカとの間の国交に大きな支障が起こるのじゃなかろうかと思いますので、老婆心ながら申し添える次第であります。  私はスリランカに初めて参りまして、三日ほど泊まったキャンディという町を見てまいりました。行った目的は人口問題でございまして、キャンディの地区は人口百七十万ぐらいでございましたが、そこの病院におきまして断種をやっていました。どのくらいやっているのか聞きましたら、去年一年間で男性では一万八千人、女の人で一万二千人、合計三万人が断種をした。百七十万の人口の中で三万人も一度にパイプカットをやり、卵巣結紮をやる、えらいすごいじゃないかというのでびっくりした。どうしてこういうことが行われたのですかと言いますと、パイプカットをやりあるいは卵巣結紮をやると五百ルピー、五千円渡すのだと言う。五千円欲しさのため、一年間に三万人の人がパイプカットなり卵巣結紮をやったということを承りまして、この一事をもってしてもいかに民衆の生活が苦しいかということが言えるのじゃなかろうかと私は思った。しかし、その地帯の保健婦さんなりあるいはお医者さん、保健活動はかなり活発に行われていることは事実でありますけれども、そういうような実態のある国なんです。あそこにはインドに見られるようなアンタッチャブルは少ない、これが私には救いでございました。  いまあの国の電源開発の工事がやられて、計画も行なわれる。日本の土建屋さんが仕事をとるべくたくさん現地に出張しており、出張所もできている。あるいはまた、国会議事堂をつくるために問題の三井建設が行っておりまして、もうできておりました。  しかし、一体そういうように日本の大企業が進出していくのがあそこの民衆の生活向上に役立つのだろうか。企業は自由だとは言いながら、これは日本の国として規制といいますか、規制と言うたら言葉が悪いけれども、何らかの処置を講じなければいけないのじゃなかろうか。  経済協力につきましては、これは私は素人で何も言うことはないのですけれども、どうも過大な期待をかの国民に与える。しかし実際にはどうだといいますと、あそこの病院建設に見られますように、一体民衆の生活に合わした病院建設が行われているのだろうか。りっぱな病院があるにこしたことはないですよ。しかし、民衆がそれを利用できる病院でなければならない。それにもかかわらずりっぱな機械、年に一回か二回使うような医療器具をじゃんじゃか入れておる。これはスリランカが入れておるというのじゃございませんよ。経済援助ではそういう傾向なきにしもあらず。スリランカには政府が八十億の投資をして、いまりっぱな病院ができつつあるようでございましたけれども、民衆の生活というものを中心にして、民生安定のための経済協力だということをひとつさらに徹底させる必要があるのじゃなかろうかと私には感じられてならなかったのであります。  あそこの電源開発で五十万キロワットの電源ができれば、この国はしばらくの間は電気に——灌漑用水にも利用できるし、バラ色の夢をばらまくような宣伝がなされておりましたけれども、これが民衆の生活に直結できるような開発援助であってほしいということを私は付言いたしまして、きょうの質問を終えさせていただきます。

中山正暉自由民主党

○中山委員長 次に、井上泉君。

井上泉日本社会党

○井上(泉)委員 この協定について、わが国とインドネシアとの間の協定を締結することによって、二重課税の回避の制度を通じ、両国間の経済、技術及び文化の面での交流が促進される。結構なことだと思うけれども、これによって利益を受けるのはインドネシアへ出ておる日本の企業であり、また、日本におけるインドネシアの企業であるということで、その企業の利益を国と国との間において条約という形で協定を結んでこれを保護するというのがこの条約の趣旨でしょう。

藤井宏昭外務大臣官房審議官

○藤井(宏)政府委員 この租税協定は、企業のみならず個人、たとえば芸能人とかあるいは研修生等々も含めておりまして、御指摘のとおりそれを含めましてお互いの課税の二重課税を回避し、あるいはそれを排除するということがその目的でございます。

井上泉日本社会党

○井上(泉)委員 この協定を結ぶと結ばないとで、企業または個人は税の負担は非常に違うということですが、大蔵省の方ではこれを結ぶことによっておよそどれだけの税負担が軽減をされるという試算をしておるのか。

河原康之大蔵省主税局国際租税課長

○河原説明員 お答えいたします。  金額的にこの租税条約を結ぶことによって日本がどれだけの税負担をし、インドネシアがどれだけの税負担を軽減されるか、そういう計算はいたしておりませんが、おおむね企業が進出いたしましたときに、その租税環境といいますか、課税関係というのが非常に安定されるということがございます。したがって、いまからインドネシアがどれだけの課税をし、それが日本でどのように税が引かれるかという関係がはっきりしますと同時に、税務当局間のそういった関係での話し合いというのが非常に密接になりまして、企業の方としてもそういったことで課税関係の安定というメリットを受けるものと思っております。

井上泉日本社会党

○井上(泉)委員 いまの課税関係の安定というメリットを受けるということ、それじゃいままでは課税関係が不安定であった、こういうことでしょう。

河原康之大蔵省主税局国際租税課長

○河原説明員 現在までのところ、インドネシアが日本の企業に対して非常に不合理な課税をする、そういうことは起こっておりませんが、ただインドネシア税務当局といたしましてもいろいろな個別ケースにおいてはそういった例もあるということを聞いております。  ただ、これは十年間交渉しておりました関係上、インドネシアの方としても不合理な租税を課するということは日本に対して非常にあれだということで、それを控えておったという面もございます。租税交渉というのは交渉中からそういったメリットが出る、そういう例がたくさんあると思います。

井上泉日本社会党

○井上(泉)委員 およそこういうものを結んで、それが税金関係で合理的なメリットが出るということになれば、いままで不合理であったものがどういう面であり、これでやればどれだけ企業の税金が軽減をされるのか、それくらいのことは、およそ試算的なものは大蔵省もするのが当然だと思うし、むしろ私はこれによって、海外で企業がもうけた利益は向こうで税金をかけておるから、もう日本では税金をかけませんよ、こういうことで企業を保護する、そういう性質を持っておるのではないか、こういうふうに思うわけですけれども、どうでしょう。

河原康之大蔵省主税局国際租税課長

○河原説明員 租税関係におきましては、理想的な形というのは、どこで商売しても同じ所得に対して同じような税金がかかる、たとえば法人税でいいますと世界的に大体五〇%ぐらいの実効税率というのがどこでもとられている政策でございますけれども、これが日本で商売するのとインドネシアで商売する場合と租税関係については中立的に取るというのが理想でございまして、インドネシアで商売した関係で、たとえばその実効税率の五〇%というのが六〇になるとか七〇になるとかそういうことになると、経済的な交流に対して租税が介入するというかっこうになりますから、そういった意味で日本の税額控除というのは、たとえばインドネシアで取られた税額については、租税条約がなくてもそれを日本の法人税から税額控除をするというシステムをとっておるわけでございます。

井上泉日本社会党

○井上(泉)委員 詳しい説明は要らないですから。これは結局企業を保護する、これがあることによって税金を二重課税されないからということで企業に対する国の恩恵的政策である、こういうことには間違いないでしょう、そうでなければ結ぶ必要はないんだから。

河原康之大蔵省主税局国際租税課長

○河原説明員 お答えいたします。  企業に対する保護政策といった面はございません。ただ租税条約というのは、企業が安心して出ていけるという面においては、そういう意味においては企業を保護する、そういう性格はあると思いますけれども、税金を軽減してそれを促進するといいますか、保護する、そういうところはございません。   ただ、たとえばみなし税額控除の制度といいますのは、インドネシアの方の企業誘致政策、そういうものに対して日本側がそれに協力をするという意味合いはございます。

井上泉日本社会党

○井上(泉)委員 あなたは企業を保護すると言うと何か問題だ、こう思ってよう言わぬのだろう、こう思うわけですけれども、これははっきり書いてあるでしょう。二重課税の回避を通じて両国間の経済、文化、技術の交流を深める、そのことは向こうに進出しておる日本の企業が安心をして仕事のできるような条件、税金の面でも条件整備を図るというのが、この協定、これは企業だけではないですよ、個人も。そういうことで、これは日本企業に対する国の一つの政策として取り結んでおることであって、それは企業者を守るというような考えはないとか、企業者の税負担を軽減するためにやるんでないんだとかいうようなことなら、こんな協定は要らぬわけですから。この協定の当事者である外務省の方、これははっきりそうでしょう。これは日本の進出企業を守り、そして日本の企業が向こうへ進出しやすいような、そういう条件をつくるための一つの政策でしょう。時間がないので、簡単に答えてください。

藤井宏昭外務大臣官房審議官

○藤井(宏)政府委員 先ほどもお答え申しましたとおり、この協定は企業のみならず個人、研修生等も含んでおります。したがいまして、先生御指摘の企業を保護するということを、そのままそのとおりでございますと言いますと若干語弊があるかもしれませんが、企業が海外において仕事をしやすくするということが、この協定の目指す一つの目的であることは、そのとおりでございます。

井上泉日本社会党

○井上(泉)委員 そんな、保護すると言うと何か大きな問題で、おまえたちは企業べったりじゃないかと言われるような心配をしておるんでしょうけれども、一つもそんな心配はないですよ。この協定は日本の企業を守っていく、日本の国民の海外における経済活動、これの支援の条件を整備するためにやる協定であるという認識を持っていなければ、これは何のために結ぶのか。企業者の利益だけでこれをやるというようなことを考えては、これは大変な間違いだし、その辺はもっと素直にならなければいかぬと私は思うのです。何かことで言われると、何か突っ込まれやすまいかというような心配をして、これは企業者のためではありません。それならだれのためなんだ、日本国というものはだれの日本国だ、こういうことになる。結局日本国民の海外における経済活動に対してのいろいろな問題点、税金関係の問題点をこの協定によって整理をしていこう、こういうことがこの協定の趣旨であり、そのことが日本が調印をした本旨でしょう。大臣どうですか。

櫻内義雄自由民主党外務大臣

○櫻内国務大臣 井上委員からるるおっしゃられているととも、この協定を結ぶ目的の一つだと思います。

井上泉日本社会党

○井上(泉)委員 そういう答弁の仕方をすると、それならそれ以外に何の目的があるか、こういうことを問わなければいかぬ、そういうことになるわけですが、これ以外に何の目的があるんだろう、こう思うわけです。これによって両国間の親善友好関係を深めていく、そのことは日本国民の利益になる。そうしたらやはりこれは日本国民の利益のために両国間の平和友好関係をより積極的にするためにつくるのだから、私の言うこと以外に何か目的があれば言ってください。

櫻内義雄自由民主党外務大臣

○櫻内国務大臣 これはこういうことを書いてあるでしょう。「相手国内で勤務又は芸能活動等が行われる場合にのみ相手国において課税されること、短期滞在者、教授、学生、訓練生等の所得は、一定の条件の下に相手国において免税されること」等々いろいろある。だから先生が言われるそれがこの協定の中で大きなウエートがある、それは私も認めます。しかし、いま申し上げたようにいろいろあることはある。

井上泉日本社会党

○井上(泉)委員 これはまあいいですよ。これはいいですが、あなたたちは非常にわが国、わが国と言うけれども、わが国の国益というものは日本国民のための利益を守るということである、そういう考え方を持って行政に当たってもらわなければいかぬと私は思うわけです。  一つの例でありますけれども、この委員会における質疑のやりとりにいたしましても正直に答えるということ。これはほんのこの間、外務委員会で高沢委員や土井委員がそれぞれ四十億の問題について質問をした、その明くる日になってくると、そのうち外務次官に訪韓をさせて、それには四十億、二億か三億か上積みをさせてやるというようなことが新聞に出る。そんなことを知っておれば、こういうことも考えておりますというぐらいの話はこの委員会の席上で言わないで隠してしまつ三後で国会に出す。きょうの新聞を見るとまた様子が変わっておる。本来なら、この問題もはっきりするまでは、土井議員の言うように条約等の審議は一時以降ストップしてやらなければいかぬわけだと思うわけですけれども、しかしそういうことをしないということだけでもわが社会党のおおらかな態度だ、こう思うわけです。  そこで、正直に答えていただきたいわけですが、インドネシアという国はすぐスカルノ大統領を思い出す。そうするとそれに関連してデビ夫人を思い出す。いろいろなことが連想されるわけでありますが、岸総理がインドネシアと賠償協定をした年に八百億という賠償協定を結んだでしょう。八百三億か。その時分の日本の国家予算が一兆三千億かなんかしかない。その当時、まさに今日二十倍か三十五倍になっておるわけですから、インドネシアに対しては二兆円以上の賠償金を支払った、こういうことになっておるわけですが、これは今日考えてみてその当時の八百億という貨幣価値がいかに高いものであったか。そのインドネシアの賠償として八百億も出したが、いまで換算をすると二兆円を超すが、これは賠償金の金額としてはちょっとけた外れなものじゃなかったか。その時分にいろいろとうわさをされて、鶏一羽が何十万にもなっておるという話を私は地方におるときよく聞いたのですが、との八百億という賠償金と、それから今日までインドネシアに出しておる経済援助の金額というものがまさに膨大な数字になっておるわけですが、こういうふうな金額を出さなければいかぬ、八百億を出さなければいかぬというなにがあったのでしょうか、インドネシアとの間において。

藤田公郎外務大臣官房審議官

○藤田説明員 ただいま先生御指摘のように賠償以後の経済協力ということをとりましても、わが国はインドネシアにとりまして現在最大の援助供与国でございますし、わが国にとりましても援助供与国中の最大の地位を占めているのが現状でございます。この理由いかんという御質問かと思いますが、先ほど大臣からの御答弁にございましたように、わが国の経済協力の基本的な理念と申しますのがわが国との相互依存関係それから人道的な考慮、この二つに基づいて行われております。インドネシアはもう御高承のとおりASEANの最有力の一国としてわが国との政治、経済、文化各般にわたる相互依存の関係というものが非常に密接なものがございます。したがいまして、そういう観点からインドネシアがわが国の経済協力の方面で一番大きな最も重視をされておるということだと存じます。

井上泉日本社会党

○井上(泉)委員 この協定を結んだ昭和三十四、五年ごろにはあなたはいなかったからわからぬだろうと思いますが、外務大臣はその当時からも日本の国政には関係しておったのじゃないか、こう思うわけです。八百億という賠償を決めたというのは妥当な金額——妥当でないということはいまさらよう言わぬだろうけれども、これはえらい大きな金額を出したものだな、そういうふうな気持ちは今日感じないですか。——あなたもまだ外国におったでしょう。その当時の大臣でなければわからぬよ。まだ小学校か。まあ、あなたやりなさい。

藤井宏昭外務大臣官房審議官

○藤井(宏)政府委員 インドネシアに対しましてはわが国は戦争中に非常に大きな被害を与えまして、さらにインドネシア人の一部の人はわが国の軍隊に援助する等いろいろな関係があったわけでございますし、さらにインドネシアは、当時の人口は私存じませんが、現在一億五千万というきわめて大きな国でございますし、さらに資源等もございます。日本との経済関係で申しましても、これは現在で言わさしていただきますけれども、日本の石油の輸入の一五%を占めている、日本の海外投資はアメリカに次いで二番目だというように、資源の輸入先といたしましてもそれからわが国の投資先等経済関係きわめて密接なものでございまして、そういうことでこの賠償の時点におきましても、この賠償を私が理解しておりますところでは、過去における償いと同時に、この八百億円はいろいろな具体的なプラント、製紙工場とかあるいは合板工場等々に使われております。将来日本とインドネシアの経済関係を発展させていくということを考えながら賠償が行われたものだと考えておりまして、その意味では八百億円というものが妥当であったのではないかというふうに考えております。

井上泉日本社会党

○井上(泉)委員 そんなことはわかっています。その使い道は岸総理のふところに入ってきたのだというようなことはないですよ。そんなことがあったら大ごとだから。それはそれぞれ使った道を説明しておるから、私はそんなことを問うておるのじゃない。このときの八百億、今日で言えば二兆円を超す金額、さらにまた今日、一九六八年以降、円借款にしても八千四百二十四億という金がインドネシアへ出されておる。だからインドネシアには無数の企業が出ておる。その無数の企業にいわば寄りかかっておるものがたくさんおるわけですが、私はそのことはきょうはここで言わないですが、仮にこの賠償が正しい数字であるとするならば、今日中国は賠償を要求してないですけれども、中国に賠償しなければいかぬということになったらどんな数字になるのですか。これはやはり賢明な外務省のこうしたことをやっておるあなたとしては、もし中国が言うてきたらこれくらいのものは出さなければいかぬというはじき出しをしているのじゃないかと思うので、参考のために聞かしてください。

藤井宏昭外務大臣官房審議官

○藤井(宏)政府委員 わが国と中国との間には一九七二年の日中共同声明発出後賠償の問題は一切存在しておりません。したがいまして、先生御指摘の、はじき出しているかということについては、そういう計算はしておりません。

井上泉日本社会党

○井上(泉)委員 はじき出していないと言えばそれまでですけれども、賠償するにしてもあるいは借款を与えるにしてもいろいろな面で根拠というものであってこれをやっておるでしょう。だから、韓国から六十億ドル要求してきておる、それを、積み上げか総枠かその論議は別としても、四十億で日本がいこうと思うと四十億で話がつかぬから、二億ぐらいはひとつ次官の腹のうちにおさめておいて、そういうことが新聞に出てくると、今度は韓国が、そんな二億ではいくか、もっとよげい出せよ、こうくるのはあたりまえだし、それこそ外交の秘密で、そんなことは新聞ですっぱ抜かれることのないように、せめて、そういうことで韓国と話し合いをするようにしておりますということぐらいは外務大臣としてはこの委員会で説明をし、質問に答えるべきことじゃなかったかと思うわけです。これはついでですが、きょう、もう新聞もごらんになったでありましょう。対韓援助の枠の問題についていま外務大臣としてはどう考えておるのか、今日現在の現状はどうであるのか、ひとつ外務大臣の現状の説明を聞きたい。

櫻内義雄自由民主党外務大臣

○櫻内国務大臣 しばしば御説明申し上げておるわけでございますが、中間回答をしたときに、基金の方にふさわしいプロジェクトはこう、収益性があるから輸銀でこう、あるいは、これは基金にも輸銀にもそぐわない、民間でやるべきでないかというふうに中間回答をした。しかし、それについては韓国が大変不満で、特に商品借款はやれないと言ったことについて、いまの韓国の経済事情からしてこれも考え直してくれ、こう言って戻ってきたわけです。それでまたいろいろ検討して、この間大使が帰られて、従来の日本側の方針はやはり曲げることはできない、商品借款はやはりやれません、基金だ輸銀だで十一のプロジェクトを考えるということについてはなおよく検討をしたいというようなことを言うでしょう。そうすると、従来しばしばここでも問題になっているのは、枠がどうだこうだ、そういうことはやらぬ、経済協力の基本方針でやります、積み上げてやります、こう言っておるので、仕分けをしてみればそれで大体見当はついてくる、それは私は否定しないのですよ。それを新聞等が推定して何十億ドルというようなことを言うわけですけれども、しかし現在まだ折衝中のことで、そして最終的にはどういう形になってくるか、これも御説明を申し上げたのですよ。この五十七年度にやるべきものが幾ら、こういうことに最終的にはなりますよと。しかしこれはもともとが、韓国の五カ年計画その中の十一はひとつ日本で協力してくれ、こう言ってきたのですから、そうすると五カ年ではどうというふうに、これは推定はみな出てくるのですよ。しかしながら、私の方から何十億でございますとかどうとか、そういうことは言っておらないということを何遍も御説明を申し上げておる次第です。

井上泉日本社会党

○井上(泉)委員 それなら、毎日新聞に載っておった円借款を二億ドル増すということも新聞の推測記事であって、外務大臣としてはそうしたことはいささかも考えておる金額ではないということを確認しておいていいですか。

櫻内義雄自由民主党外務大臣

○櫻内国務大臣 新聞社がどういう取材をしてどういうことで書かれておるかは私は存じません。少なくとも私としては、責任を持って従来繰り返し繰り返し申し上げておることでございまして、私から言えば、その推定が間違っておるかどうかというようなことまで云々することはどうかと思うのです。というのはどういうことかといいますと、いまいろいろ話しておるのでしょう。そうすると、去年分ですね、年度がかわりましたから。去年は何も提供してないわけだ。しかし、この話が済むときには去年の分も考えられるかどうかというような話もあるし、それから五年じゃ無理だから六年ではどうかというものも出てくる。だからしたがって、本来言うと、どういう推定で、恐らくそれは五年でとってやっているのか、その方は私が計算しているのじゃないからわからないんだな、そういうことなんです。

井上泉日本社会党

○井上(泉)委員 口は重宝なもので、どうでも説明がつくわけです。それで、やっていることも、幾ら悪意でやっても悪意でやっておると言う人はだれもいないようなもので、特に韓国との関係の問題において、こうしてまた二億積み上げする。そうすればもっと向こうが、それじゃいかぬ、五億持ってこい、いや五十億にしよう、足してそれを二で割ろうじゃないかというようなことで韓国との援助関係を整理することは——韓国に限らず、どこでも、やはり一つの国としての経済協力の目安といいますか、引くべき線がなければならない。線がないとするならば線をあなたがつくらなければいかぬ。  インドネシアはことし、五十七年度は経済協力をやはり二千億か何か要求してきておるでしょう。五十六年度は五百何十億、それで五十七年度は二千億要求してきておる。それならこの問題はどこで線を引くのか、こういうことになるでしょう。インドネシアがことしの借款を要求してきておる金額を報告願いたいと思います。

藤田公郎外務大臣官房審議官

○藤田説明員 先生御承知のように、毎年インドネシア援助国会議というのが開かれまして、そこでインドネシアに対する援助国が集まって世銀の計算によるインドネシアの援助必要量を聴取し、インドネシア側の見解を聞き、そこで各主要援助国が自国の援助予定量を意図表明をするという形になっております。インドネシア側から毎年自国の開発計画に基づきまして非常に多くの援助要請案件が提示されます。わが国としましては、その中からわが国の援助政策に合っている案件、かつその案件が十分に技術的、経済的に可能性と申しますか、採算性のあるものを調査、検討しまして、そういうプロジェクトに対して援助の意図表明を行うという形にしているわけでございます。  いま御質問の五十七年度ということにつきましては、いまそういう検討作業を行っておりまして、インドネシア側からの要請の案件数は、毎年、わが国が供与の意図表明を行います額をはるかに上回るものが来ているわけでございます。したがいまして、五十七年度どの程度の規模の協力をわが方として意図表明を行うかというのは目下検討中でございまして、いまだ金額等は詰まっていない段階でございますが、御参考までに昨年度、五十六年度のわが国の意図表明金額というものを申し上げますと、円借款につきましては五百八十億円、ASEANの中では一番大きな金額についての意図表明を行っている現状でございます。

井上泉日本社会党

○井上(泉)委員 そのインドネシアが、これは新聞が推測記事を書いておると言えばそれまでですけれども、とにかく五十七年度については二千六百億円の要請が来ている。これを政府は五月までに詰める、こういうことに新聞では報道されているわけですが、金額は二千六百億で、それを五月まで詰めるということはこの報道で間違いないですか。

藤田公郎外務大臣官房審議官

○藤田説明員 第一の先方の要請プロジェクトの総額を合計いたしますと、ほぼ先生の御指摘のごとき金額になるかと思われます。  それから第二点、五月に行われると申しますのは、先ほど私御説明申し上げましたインドネシアに対する援助国会議が五月に予定されておりますので、その会議を目途に、目下関係各省間で検討作業を進めているという状況でございます。  ちなみに一言付言いたしますと、要請金額というもの自体は各国ともどちらかと申しますと、各援助国が援助が可能である量の倍に近い金額等を提示しまして、その中から援助供与国の政策に見合ったものを選んでもらうという傾きがございますので、援助要請の金額がどのくらいであるかというのは特にわが国の援助供与を行う際に大きな影響があるものということではございません。

井上泉日本社会党

○井上(泉)委員 これもけさの新聞記事でありますけれども、日中の租税協定交渉が持ち越された。そしてまた一方、ソ連の方も租税協定を結ぶような要請がなされておるというようなことですが、これは一番お隣の日中、日ソ、この関係との租税協定というものが、日中の関係はまだ始まったばかりですけれども、ソ連との関係はずっと前にやられておって、まだ今日までそのことがそのままになってきておるわけですが、一体交渉を再開するという用意があるのかないのか。そして日中の租税協定はいつごろをめどに結ぼうというお考えであるのか、その辺は外務大臣の自分の姿勢、計画の中にありとすれば外務大臣、まだ外務大臣まで上がってないとするなら、担当の審議官から御説明願いたい。

加藤吉弥外務省欧亜局長

○加藤(吉)政府委員 日ソの租税協定の部分についてお答え申し上げます。  一昨年、昭和五十五年十月に第一回の租税協定の交渉を行っております。この際には、日ソ双方の租税体系、それから基本的な考え方、枠組み、こういう一般的な問題について意見交換をしたわけでございます。  第二回の交渉の時期につきましては、双互で打ち合わせて決めるということになっておりますが、現時点においてはまだそこまで到達しておりません。モスクワ及び東京において第二回の交渉の日取りを詰めるべく、いま鋭意検討を進め、準備を進めている状況でございます。

藤井宏昭外務大臣官房審議官

○藤井(宏)政府委員 中国との租税協定の交渉でございますが、昨年の一月と六月、二回ほど会合をいたしまして、第三回の会合が北京で今月の二十日から昨二十二日まで行われたところでございます。  今後の見通しでございますけれども、できるだけ早期にこれを締結したいということでございまして、いつごろ条文がまとまるかということは現在まだ定かではございません。ただ、昨年末の第二回の日中の閣僚会議におきましても、租税協定の早期締結ということがその結果の共同新聞発表にも出ておりまして、この方針で今後とも進めていきたいと存じております。

井上泉日本社会党

○井上(泉)委員 この日中のは始まったばかりですけれども、ソ連との関係、またソ連との今日までの経済関係というのを考えて、これは世界の国々の中でやはりソ連との関係においてもこの租税協定は日本側も積極的に取り組むべき問題ではないか、私はかように思うわけですけれども、大臣、どうですか、これを積極的にやれ、こういう御見解はないですか。

加藤吉弥外務省欧亜局長

○加藤(吉)政府委員 先ほど私は答弁を抜かして申しわけございませんでした。先生御指摘のとおり、積極的にこの協定は進めたいと考えております。

井上泉日本社会党

○井上(泉)委員 あなたが積極的に考えておっても、大臣がそうするなと言ったらそれで済むでしょう。大臣がどうあろうとも、あなたたち優秀な外務官僚がやっていくからと言えば、これは大臣は要らぬものでしょう。私は大臣に問うておるのですから、大臣はそのことは、ソ連との関係においてこれはいろいろなこともありましょうけれども、この租税協定というものは別に対ソ脅威論を振りかざす問題でもないし、これは平和な経済関係の問題だから、やはり租税協定ぐらいは早くやれよ、こういう大臣としての政治姿勢があってしかるべきだと私は思うわけなので、大臣の見解を聞いておるのです。決してあなたの部下の局長が一人走りをしないように、大臣としての指導力を発揮した方針というものをここで御説明願いたい。

櫻内義雄自由民主党外務大臣

○櫻内国務大臣 これは私としても積極的にやりたいと思っております。  ただ、加藤局長が言われたのは、最初の一問のときにもうそこまで言っていいのだがそれを落として言ったのだから、どうぞ勘弁してください。

井上泉日本社会党

○井上(泉)委員 これは委員長、外務大臣に問うたのをすぐ局長が出てくる、まさに外務大臣無視というのですから、これは外務大臣も人がいいから、局長が手を挙げるとおまえやれよというぐらいにやらしておると思うけれども、やはりわれわれは大臣に問うておるのですから、問うておることで大臣のわからぬ実務的なことは局長を使い、局長でわからぬことは何も別に政府委員でなくてもいいのですよ。そこで絶えず局長にいろいろな資料を提供する若い職員でも構わぬですよ、説明を受けるぐらいは。その辺のことは委員長、ひとつしかと委員会の運営をしていただくように要望しておきたいと思うわけですが……。

中山正暉自由民主党

○中山委員長 わかりました。

井上泉日本社会党

○井上(泉)委員 私はきょうは、本会議も一時でありますので、これ以上の時間をとることは遠慮するわけですけれども、インドネシアに対する援助実績の余りにも大きな数字にいささかびっくりするわけです。インドネシアとか韓国とかいうような国に対する援助がびっくりするぐらいあるわけなんであります。そこにはやはり巷間伝えられる日本のいわゆる政治の黒幕と称する人たちがこのインドネシアに対する経済援助に便乗して大きな動きがありはしないか、そんなことを考えるわけでありますけれども、そうした問題について、インドネシアに対する援助の内容、そしてインドネシアの政情、ことに今日インドネシアは選挙をやっておるでしょう。非常にいわば大混乱の中に選挙が行われているわけです。しかも、インドネシアの政権というものは、大統領が自分で国会議員を百名ですか、任命することができる、いわばファッショ政権でしょう。いわゆる俗に言う民主主義政権ではないでしょう。そういう政権との間における経済援助協力問題というものは、私はこれはやはり慎重に対応しなければならぬと思うのですが、今日のインドネシアの政情というものを大臣はどう認識をしておるのか、大臣のインドネシアに対する認識をお伺いをして、そしてこれは租税協定とは別に、今後次の機会に御質問申し上げたいと思うわけなので、大臣の見解を承りたいと思います。

櫻内義雄自由民主党外務大臣

○櫻内国務大臣 一つには、いまのスハルト政権が国内の政治的安定を図りつつ、経済発展と社会公正の実現を目指して努力を傾注しておるということは、これを認めていいと思うのですね。そして七〇年代を通じて年平均七・八%の成長を達成しておる、また国民の所得も一人当たり四百五ドルぐらいに来ておると思うのですね。そういうインドネシアが安定した状況にある。それから日本との関係を考えてみますと、石油を初めとする資源の重要な供給国であるということは、これを認めていいと思うのですね。それからさらには、きょういろいろ御質問をちょうだいしましたが、重要な投資先として深い経済的相互依存関係を有する国である、こういう日本との関係がある。それからもう一つ考えておく必要があるのは、ASEANの主要国として、ASEAN五カ国ということでたとえばカンボジア問題などについては共同歩調をとって行動していますね。そのASEAN諸国の中ではインドネシアはまた主要な、重要な立場の国である、こういうふうに思うのでありまして、こういうインドネシアであるという認識のもとに今後一層の友好親善関係を深めてしかるべきだ、こう思います。

井上泉日本社会党

○井上(泉)委員 終わります。

中山正暉自由民主党

○中山委員長 これにて各案件に対する質疑は終了いたしました。     —————————————

中山正暉自由民主党

○中山委員長 これより各案件に対する討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  まず、投資の促進及び保護に関する日本国とスリ・ランカ民主社会主義共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕

中山正暉自由民主党

○中山委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。  次に、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とインドネシア共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕

中山正暉自由民主党

○中山委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。  次に、南極地域の動物相及び植物相の保存に関する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕

中山正暉自由民主党

○中山委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました各案件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中山正暉自由民主党

○中山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————

中山正暉自由民主党

○中山委員長 午後四時三十分委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四十五分休憩      ————◇—————     午後四時三十八分開議

中山正暉自由民主党

○中山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とオーストラリア政府との間の協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、これを許します。愛知和男君。

愛知和男自由民主党

○愛知委員 いわゆる新日豪原子力協定に関しまして基本的な点について幾つかお尋ねいたしたいと思います。  この協定は、原子力分野における日豪協力の基礎となるものであり、わが国の原子力の開発、利用に資するものであると考えるわけですが、本協定の内容に入る前に、まずわが国の原子力開発、利用の現状についてお尋ねをしておきたいと思います。  現在わが国の原子力発電はどのくらいの規模になっておりましょうか。

田辺俊彦資源エネルギー庁長官官房原子力産業課長

○田辺説明員 御説明いたします。  現在運転中のものが二十四基、千七百十八万キロワットの規模に達しております。それから建設中のものが十基ございまして、これが九百六十万キロワット、さらに準備中が七基、六百十万キロワットということでございまして、合計三千二百八十八万キロワット、四十一基がここ近い将来にわが国のエネルギー供給を担う原子力発電の供給施設となるという状況でございます。

愛知和男自由民主党

○愛知委員 わが国における原子力発電というのは、資源に乏しいわが国といたしましては今後とも石油代替エネルギーとして中核的なものだと考えるわけです。一昨日ですか、総合エネルギー調査会において長期エネルギー需給見通しの中間報告がまとめられ、また、これは本日の閣議と承知しておりますが、石油代替エネルギーの供給目標が決定されたと聞いておりますが、これらの中長期的な展望のもとで原子力発電というのはどのように位置づけられておりますでしょうか、その辺のことを御説明いただきたいと思います。

田辺俊彦資源エネルギー庁長官官房原子力産業課長

○田辺説明員 先生御指摘のとおりでございまして、総合エネルギー調査会の需給部会におきまして一九九〇年、それから二〇〇〇年に至る原子力を含むエネルギーの見通しを検討してまいりました。その結果が出たわけでございまして、それをベースにきょう閣議で代替エネルギーの供給目標が決定されたわけでございます。  それによりますと、現在、原子力の位置づけ、千七百万キロワットでございますが、昭和六十五年度に四千六百万キロワットにその開発規模が広がるという想定をしております。全体のエネルギーにおける原子力のシェアが、現在五、六%でございますが一一%を超えるということで、次第に原子力のウエートが増大してまいります。それから、昭和七十五年度、二〇〇〇年でございますけれども、二〇〇〇年のエネルギー需給見通しというのは、これはマクロの想定でございますが九千万キロワットの開発規模に広がるであろう。そして、全体のエネルギー供給の中で二割弱、一八%程度を占める、そういう規模になるかと思います。特に電力供給の中における地位を見ますと、原子力は昭和六十五年度で設備供給能力で二二%、電力量で三割を超えるという形に大きく広がってまいります。二〇〇〇年におきましては電力供給の四割を超えるということで、わが国の主要なエネルギー源としての役割りがますます増大してくるという状況でございます。

愛知和男自由民主党

○愛知委員 原子力の重要性がますます増してくるという現状の御説明がございました。  そこで、この原子力の分野における日本とオーストラリアの関係、こういうことにつきましてお尋ねをしたいと思います。  まず、この原子力の分野における日本とオーストラリア両国関係の現状、そして、これからますます重要性を増すと言われております原子力の分野における豪州の重要性といったものにつきまして御説明をいただきたいと思います。

宇川秀幸外務大臣官房審議官

○宇川政府委員 お答えいたします。  先ほど資源エネルギー庁担当課長からも御説明がございましたように、わが国におきましてはエネルギー、特に電力の需要の非常に大きな比率が原子力によって賄われております。これは平たく言えば民需用のほぼ全量に相当する程度の発電量がすでにあるという形でわが国に組み込まれておるわけですが、豪州との関係につきましては、現在、ウランの供給の約一割強を豪州との関係に頼っているという姿になっております。  御承知と存じますが、豪州は確定ウラン資源量の側面におきましては世界第三位の大きな資源国でございまして、非常に安価でかつ供給可能な地域に多量のウラン資源を有しております。そういった経済面からも日豪の原子力平和利用の側面における関係は今後ともますます重視されるというふうに私どもは認識いたしております。  さらに、豪州は私ども同様核不拡散条約、NPTに非核保有国として参画いたしておりまして、核の不拡散を根本目標にする、かつ原子力の利用においても、豪州の基本政策として平和的な利用に限るという意味でわが国と立場も非常に近寄っております。また同時に、同じく先進民主国家としてわが国と政治的な理念もいろいろ共有しているということで、国際的な場でも日豪の立場が全く一致するということではなくても、立場が非常に近いという状況でございまして、たとえばウィーンにございます国際原子力機関の諸活動におきましても非常に密接な協力関係にございます。  この協定の前文にもうたわれておりますとおり、この協定の基本的な目標というのは、現在の原子力の平和利用における日豪関係を継続し、かつさらに発展させるということでございまして、これが私どもの日豪の原子力分野におきます基本的な認識となっております。

愛知和男自由民主党

○愛知委員 日本と豪州との原子力協力関係の重要性を御説明をいただきましたが、さてそういう中で、今度の協定の締結の意義あるいはこの協定の特徴というものがあると思います。それらの意義あるいは特色といったようなものをどのように考えたらいいか御説明をいただきたいと思います。

宇川秀幸外務大臣官房審議官

○宇川政府委員 お答えいたします。  この協定は、前文にもございますように平和利用におきます日豪の協力関係の長期的な基盤をつくるというのを一つの大きな目標といたしております。そのために最近の国際的な動き等も総合いたしまして核不拡散面での細かい規定を各種置いております。同時に、これは私どもにとっては全く新しい試みでありますが、伝統的な日本の主張でございましたプログラムアプローチという形で協定を取り決めまして、その結果、非常に長期安定的に日本の原子力計画自身を推進してまいれるという基盤を築いた、その辺に大きな意義と今回の協定の特色があると考えております。

愛知和男自由民主党

○愛知委員 いま本協定の特徴としてプログラムアプローチということがございましたが、このプログラムアプローチということにつきましてもう少し詳しく御説明をいただきたい。また、このプログラムアプローチというものがこの協定に盛り込まれたということがほかの国との関係についてもいろいろな影響を与えるのじゃないかと言われておりますが、その辺のことなどをもう少し詳しく御説明をいただきたいと思います。

宇川秀幸外務大臣官房審議官

○宇川政府委員 お答えいたします。  この条約自身のプログラムアプローチに関します規定ぶりは、正確を期する意図もございまして非常に精密でございます。したがいまして、正確に御説明いたしますと非常にこんがらかるという側面がございますので丸めて御説明させていただきます。  まず、ここで行われておりますことは、日本の原子力開発計画の全貌を書き出しまして、現在の日本の計画、それから予定しておる計画というものを精密に規定して豪州に通報する、これがいわゆるプログラムアプローチと替われる際の日本のプログラム、計画に相当いたします。この計画をベースにいたしまして、豪州としてはこの計画全体を評価して、平和利用に徹しておる、かつその担保もあるということを確認した上で、豪州としては一部事前同意権を有しておるわけですから、それを計画全体に対して一括して行使する。したがいまして、丸めて言わせていただければ、日本が現在行っております計画及び今後予定する計画の大半につきましては、一定の条件下ではございますけれども、日本といたしまして長期的な見通しを持ってこれを推進してまいれるという形になります。協定上の言葉をかりますと、「予見可能かつ実際的な態様」で長期的な計画ができるようにするということでございまして、現在の日本が結んでおります他の国との協定、たとえばカナダ、アメリカの場合には再処理を行うとか海外へ移転をするまたは再輸入をするという場合には事前の許可を個別に取りつける必要がございますが、これを一括してこの段階で全部合意してある。したがって、その後は毎回の繁雑さがないのみならず、予見できる形で政策の運営を行っていけるということでございます。

愛知和男自由民主党

○愛知委員 原子力の平和利用というものを今後どんどんと進めていくべきだと思いますが、そういう場合でも最も肝心な点は核不拡散の確保ということにあるわけだと思います。いまプログラムアプローチ等についてお話もございましたが、この協定は核不拡散を担保しながら原子力の平和利用を進めていくという思想に貫かれているものと思います。したがって、この協定を締結すること自体わが国の核不拡散の決意がここでなおもう一度確認される、こういう意味もあるのではないか、こんなふうに思います。  そこで、原子力の平和利用に徹するわが国としまして、原子力開発を推進するということと核拡散防止の問題にいかに対処すべきかということについて外務省の考え方を伺いたいと思います。

宇川秀幸外務大臣官房審議官

○宇川政府委員 お答えいたします。  先生御指摘のとおり、この協定を結ぶということ自体私どもの平和利用に徹するというたてまえを再確認することになるわけでございますが、御存じのように日本としては核兵器の拡散につながるおそれがある原子力の利用というものについては被爆国として絶対に避けなければならない。まずわが国自身平和目的にのみ使用するという基本を立てまして、この点は原子力基本法等で明らかになっておる次第でございます。かつ非核三原則を貫きまして核拡散防止のための国際協力を積極的に進めて、その面での貢献をしていくというのが私どもの基本的な発想でございます。みずからまず範をたれる、各国にもそういう形で呼びかけていく。私どもは原子力の平和利用と核拡散防止は両立させなければいけないし、かつ両立できるものだと存じております。

愛知和男自由民主党

○愛知委員 核不拡散のための努力は徹底してやる必要がございますが、それにしましても具体的な措置というものが肝心であります。その中で最も重要なものとして考えられるのは原子力資材の輸出管理があると思われますが、この体制が現在どのようになっているか、これは通産省からお答えいただきたいと思います。

田辺俊彦資源エネルギー庁長官官房原子力産業課長

○田辺説明員 通産省は原子力資材の貿易管理を担当しているわけでございますが、その基本的考え方といたしましては、原子力基本法の第二条の平和利用、それから平和目的、それから核拡散防止条約に日本が加盟しているというのが基本的姿勢でございます。原子力資材の輸出につきましても、私どもとしては平和目的利用の精神を貫くべく、それに基づきまして原子力資材が平和目的に限られて利用されることを確保しているわけです。とりわけ核拡散防止条約、それからロンドン・ガイドラインには原子力資材の輸出に関するルールがございます。通産省としましては、それらの国際的な合意を踏まえまして、それを完全な形で外為法の輸出貿易管理令の中で核不拡散に徹底するという趣旨を現実に要承認品目として列記した上で、ケース・バイ・ケース、個々の品目について厳密なチェックをしているところでございます。

愛知和男自由民主党

○愛知委員 この面につきましては大変大事な点ですので、今後ともじみちかつ確実に努力を続けていっていただきたいと思います。  科学技術庁にその保障措置、いまのような面での保障措置がどのように適用されているかをお伺いしたいと思います。

川崎雅弘科学技術庁原子力安全局保障措置課長

○川崎説明員 お答え申し上げます。  保障措置と申し上げますのは、核拡散を防止するためにあらゆる技術手段を駆使しまして、核物質が軍用に転用されていないことを検認していくという活動を申しております。わが国の場合にはユーラトムと同じようにこの保障措置は国内の制度というものを持っておりまして、さらにNPT条約に基づきますIAEA、国際原子力機関の保障措置というものが日本の国内保障措置制度の上に乗っかる形で二重に実施をしているわけでございます。  現在、国内の保障措置あるいはIAEAの保障措置の中で、特に施設へ職員が立ち入りまして核物質の所在量等を確認する査察という行為をいたしておりますが、その査察の対象となっております施設は、原子力発電所あるいは燃料加工工場とを合わせまして現在約六十一施設ございまして、年間通じまして量といたしましてIAEAが千二百人目の査察量、国内の査察官が行っております量といたしましては千三百人目の査察が行われております。その結果、IAEAの理事会等では、わが国における保障措置の実施状況はきわめて満足できるレベルの高いものであるという評価を受けておる次第でございます。

愛知和男自由民主党

○愛知委員 大変重要な点だと思いますので、今後ともひとつぜひ万全を期してやっていただきたいと思います。  いろいろ肝心な点につきましてお尋ねをしてまいりましたけれども、いろいろな観点から申しましても今度のこの協定というのは大変意義のある協定である、このように思うわけでございます。したがって、私は一日も早くこの国会で承認をいたしまして発効させるべきだと考えているわけでございますが、本協定の発効が万一おくれるようなことになった場合、具体的にどんな影響が出てくるかということにつきましてお尋ねをしておきたいと思います。

宇川秀幸外務大臣官房審議官

○宇川政府委員 お答えいたします。  この協定は、日豪ともある意味では新しい実験であり、かつ鋭意詰めてまいったわけでございまして、双方ともその早期発足を望んでおるわけでございます。  この協定の直接の交渉のきっかけになりましたのは、豪州がいろいろの事情から新しい政策を打ち出したというところがございますが、その政策の一環として、新規の契約に基づくウランの輸出については豪州も希望し、かつ相手国と話をしてでき上がった新しい協定の発効が一つの要件であるということを早くから明らかにしてまいったわけでございます。具体的には、わが国が資金的にも協力し、かつ資本的にも参加いたしておりますレンジャー鉱山から新たにいま鉱石が出荷されようという時期にまいっております。したがいまして、豪州としてもこの協定の発効を待ってこの輸出を新規の契約の輸出の第一号にしたいというふうに希望しておると存じますので、協定発行の遅延に基づきましてそのような困難が生ずるということは私どもとしても希望しない次第でございますので、その意味でよろしく御審議をいただきたいと思います。  なお、先ほど若干答弁漏れになりましたのでその点もつけ加えさしていただきますが、このプログラムアプローチというのは初めてのケースでございまして、日カあるいは日米等同じく事前同意権を有しながら個別の形にとどまっておる国との関係を、このアプローチを一つの先例として私どもとしては整理してまいりたいと考えております。したがいまして、そういう話し合いの上においてもこの協定ができるだけ早く成立していくということが望ましいと存じます。

愛知和男自由民主党

○愛知委員 ただいままで事務当局からお伺いをしてまいりましたが、最後に大臣にお伺いをしておきたいと思います。  この協定がいろんな意味で大変大切な協定だということでございますが、それに対する大臣の御所見をお伺いすると同時に、豪州という国、日本と豪州との関係といいますのはいろんな意味で相補完をする関係にあって、非常に大事だと言われております。豪州は資源エネルギー、そういう面で大変豊富だということもございます。しかし、私は豪州という国はそういった経済、貿易、そういう面だけで重要だというのではなくて、日本の外交にとって大変重要な国である、大切な国であると思います。また、現在でもそうでありますが、これから先のことを考えた場合には、やはり日本としては太平洋諸国、環太平洋ということも言われますが、太平洋をめぐる諸国との関係をより一層深めていくということも大切でございますし、また、将来は太平洋の時代だなどと言われている面もあるわけでございますが、そんなような意味も含めまして、豪州という国は日本にとって非常に大切な国ではないか、こんなふうに思うわけでございます。  そこで、大臣に最後に、この豪州との間の原子力協定についての御所見、そしてさらに幅広く日本と豪州との関係について基本的にどのように考えておられるか、大臣の御所見をお伺いをして質問を終わりたいと思います。

櫻内義雄自由民主党外務大臣

○櫻内国務大臣 本件協定は、わが国と豪州との間の原子力の平和利用の分野での協力の基礎となるものでありますが、ただいままでの説明のように、プログラムアプローチという新しい試みは、核拡散の防止を図りつつ、わが国の核燃料サイクルの実際上の要請にも応じ得る仕組みであり、高く評価しております。  また、本件協定を締結することは、日豪両国の原子力分野を初めとする広範な協力関係を一層深めるものと確信しています。長い間の懸案であった本件協定の締結により、両国間の友好関係は一層緊密の度を加えるものと期待されます。  さらに、世界的な視野で見れば、日豪両国が共通の基盤に立って原子力平和利用及び核不拡散の両面で緊密な協力を行い、国際社会の発展に寄与していくことは、きわめて有意義なことであると信じます。  日豪関係につきましては、お話しのように両国経済の相互補完性を基礎に著しい発展を遂げてきており、豪州はわが国にとり主要な貿易相手国として、また、わが国は豪州にとり最大の貿易相手国として、互いに重要な位置を占めております。また、日豪関係はかかる経済分野のみならず、政治、文化等の面でも拡大しつつあり、両国間には幅広い友好協力関係が発展しつつあります。政府としては、今後ともかかる幅広い日豪間の友好協力関係を一層強化、拡大していきたいと考えておる次第でございます。

愛知和男自由民主党

○愛知委員 ありがとうございました。終わります。

中山正暉自由民主党

○中山委員長 次回は、来る二十七日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時七分散会

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