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95回国会衆議院1981/11/13

法務委員会 第7号

発言数
276
登壇者
21
会派数
4
開催日
1981/11/13

会議録

高鳥修自由民主党

○高鳥委員長 これより会議を開きます。  お諮りいたします。  本日、最高裁判所矢口事務総長、大西人事局長、小野刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

高鳥修自由民主党

○高鳥委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————

高鳥修自由民主党

○高鳥委員長 裁判所の司法行政、法務行政、検察行政及び人権擁護に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲葉誠一君。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 最高裁判所は何か御用があるということですから先にやらせていただいて、終わったら退席願って結構でございます。  最高裁判所は、この前も一人の裁判官が罷免になったし、いまも訴追委員会で訴追されている人もある。こういういろいろな状況を踏まえて、どういうふうに裁判官の倫理というか、そういうふうなものを確立することを現実に考えておられるのか、その後の扱いというか方法といいますか、具体的にどういうふうになっているかをお聞かせ願いたい、こういうふうに思います。

大西勝也最高裁判所事務総局人事局長

○大西最高裁判所長官代理者 谷合裁判官につきまして、先般裁判官弾劾裁判所で罷免の裁判があったわけでございますが、このことに関しましては、最高裁判所といたしましても前々から申し上げていることではございますけれども、裁判官、まことに遺憾なことでございまして、国民の皆様にもまことに申しわけないことであったというふうに考えておる次第でございます。  この問題を契機といたしまして、われわれとしてどうしたらいいかということにつきまして、事柄が発覚いたしましたところから鋭意いろいろ検討を続けておるわけでございますが、原因としてはいろいろ考えられるわけでございますけれども、ごく大づかみに申しまして、一つは、破産事件を含む非訟事件の処理体制に問題がないかどうか、もう一つは、本来は裁判官の自粛自戒が基本ではございますけれども、裁判官の研修、修養といったようなところに問題がないかどうか、そういう二つの点に分かれるだろうというふうに考えるわけでございます。  まず第一の非訟事件の処理の体制につきましては、ことしの春ごろ以降、協議会とか研修所の研究会等でもいろいろ研究をいたしておりまして、裁判官、書記官等の事務分配とか配置とか、合議で事件を処理するとか、あるいは破産事件を含む非訟事件につきましてどういうやり方をやったらいいかというようなことについての司法研究のようなものをやるとかというようなことをいろいろやっておるわけでございまして、まだ完全に具体化したものというのは特にございませんけれども、鋭意逐次検討を続けておるという状況でございます。  もう一点の司法研修所における裁判官の養成、研修の関係でございますけれども、この点につきましては、来年の春ごろをめどにいたしまして研修の充実強化を図るための体制を整えていこうということで、先般も、準備室といいますとやや大げさになりますけれども、いま申しましたような来年の春を期しての準備という意味で裁判官も一人別途司法研修所付ということで補充をいたしまして、その方を中心に、今後の裁判官、特に中堅裁判官等の研修のあり方について検討を続けていただきまして、来春ごろから本格的な体制に入ることができるような、いまそういうことをやり始めておる、現在としてはそういう状況にあるわけでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 事務総長にお伺いいたしますが、いま事務的な一つの答弁があったわけですが、事務総長としては、いま言ったようなことを中心として今後具体的にどういうふうなことをやるのか。東京高裁の部の総括判事が司法研修所に行くようになった、こういうふうなこともいまお話がありましたし、新聞にも出ておったのですが、具体的に原因がどこにあって、今後どういうような形で研修をし、こういう事件が起きないようにしていくかということについて事務総長から説明を願いたい、あるいは所信をお聞かせ願いたい、こういうふうに思います。

矢口洪一最高裁判所事務総長

○矢口最高裁判所長官代理者 事柄の性質というものは、ある意味におきましては非常に明白な事案でございます。裁判官が職務を執行いたしますについて関係者から物品の贈与を受けるということは、私ども大多数の裁判官にとりましてはおよそ考えられない出来事であったわけでございます。したがいまして、正直申し上げまして、この問題については、余りにも自明の事柄でありますだけに、どのようにしていけばいいかということについて戸惑ったというのが偽らざる心境でございます。  ただ、幸いなことに、弾劾裁判所の判決でもお示しいただきましたけれども、物品の供与は受けたけれども職務を曲げるということはなかったというふうな御判断をいただいておりますのは、唯一の救いであるわけでございます。しかし、およそ裁判官が物をもらって職務を曲げなければいいというものでないことは申すまでもないところでございまして、このような土壌というものは、われわれ伝承いたしてきました先輩のお心がけの中には絶対になかったことでございまして、そういったことが比較的若い裁判官の中に出てきたということはきわめて遺憾と申し上げるよりほかないことでございまして、国民の皆さんに心からおわびを申し上げるわけでございます。  今後どのようにしていったらいいかという大きな方針でございますが、私は、結局におきましては、裁判官各自がそれぞれ自覚を持つ以外にこれに対する解決方法はないというふうに根本的には考えております。かつては別々に修習をいたしましたけれども、現在は法曹同根ということで、判検事、弁護士というものは一緒の修習をいたしております。そこにはこれまでにないいろいろな利点というものがございまして、いずれは法曹一元ということの大きな根っこになっておるわけでございますが、そういったことの中に、逆に何か三者が親しくなり過ぎて、それぞれの分を忘れてしまうようなことがありはしないか、こういった点というものは、みんな理屈の上ではわかっておるわけであります。理屈の上ではわかっておりますけれども、やはり親しさというもののあります中にこれに対する甘えといったようなものがひそかに忍び寄ってきまして、ともするとその辺のけじめを忘れがちになりはしないかということでございます。このことを繰り返し各自が自粛自戒していくということの中に根本の解決策があろうかと考えております。それはいけないんだと幾ら説教いたしましても、当然わかっておることでございますので、それだけでは事は足りないように思います。  そこで、具体的な策として現在考えておりますところを簡単に申し上げますと、これまで裁判官が毎日毎日の仕事に追われまして、おのれを振り返ってみて反省をしてみるといったような余裕というものがややもすると乏しいのではないだろうか。中堅の裁判官、あるいは中堅判事補の中でも年輩の裁判官、具体的には判事補から判事になりかけの裁判官、あるいは裁判長になる直前の裁判官、そういった方のところにもう少し余裕を持たせて、いろいろな裁判の実務を離れて、おのれのこれまで歩いてきた道あるいは世間の全般というものを余裕を持って見直す機会を与えてあげるのが一番いい方法ではないだろうかというふうに考えました。これが今回研修所において新しく裁判官の研修ということを考えていこうといたしました最大の理由でございます。  具体的にどうするかということは、これは今後の問題でございまして、決して、いま申し上げましたような裁判官を集めまして、そこでまた判決の書き方をやるとか記録の読み方を見直すとか、そんなことを考えておるわけではございませんで、もう少し幅広く、裁判の実務を一定期間離れて、そこでおのれを振り返り、社会情勢というようなものを見詰め直していく、そういった中に自然と裁判官としてあるべき姿、また、自分がどのような行動をとったらいいかといったようなことが体得できるのではないだろうか、そして最終的にはやはり各自の自戒ということがもっともっと徹底していく、裁判官の職務というものはそれほどに厳しいものだということがそれぞれの胸のうちに確固たる信念としてでき上がっていく、こういったところが大きなねらいでございまして、それ以上に、いま具体的に、では何名の方をどのような形で集めるかというようなことまでは、予算との関係もございますし、明確にはここでお答えはいたしかねるわけでございますが、たとえば海外に出張させるというようなことも、日本を見直していく一つの大きな契機でございますし、海外の留学ができないといたしましても、いわゆる国内留学といったような意味で任地を離れて裁判所を見ていくということも一つの大きな施策ではなかろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 結構ですから……。  法制局長官においで願っておるものですから、実は法律的な問題についてお聞きをするわけでして、政治的な判断というかそういう問題を含むときには、奥野さん、あなたの方に答弁を願うことになると思いますので、そういう点を含めてお聞きを願っていただきたいと思います。  そこで、いまアメリカなどでは日米安保条約の改定が、議会ですか、あるいはその他のところでもよく出てきますね。ところが、一体この安保条約の改定ということが具体的に何を指すのかということがよくわからぬ。安保条約の改定ということは、法律的にどういうことが安保条約の改定として考えられるのか。そういうことについて、法律論として理論的にこういうことが考えられる、こういうことが考えられるということを御説明願いたいと思うわけです。

角田禮次郎内閣法制局長官

○角田(禮)政府委員 御質問の前提があくまで法律的なことだということでございますけれども、私ども正直に申し上げまして、政府の責任者が安保条約の改定ということは全く考えていないと言っているところでもありますし、また、安保条約の改定に法律的にどういう問題があるのかというようなことを、たとえ仮定としてでもそういうことを検討したこともございませんので、せっかくの御質問ではございますけれども、私としてはちょっとお答えいたしかねますので、お許しを願いたいと思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 それでは、具体的に安保条約と憲法との関係ということについて聞いていけば、あなたの方としても答えざるを得ないということになると思うわけです。  たとえば、いま問題となっておる一つは、安保条約の三条の問題がありますね。三条に、「締約国は、個別的に及び相互に協力して、継続的かつ効果的な自助及び相互授助により、武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を、憲法上の規定に従うことを条件として、維持し発展させる。」というのがありますね。「憲法上の規定に従うことを条件として、」というのはあたりまえのことですね。それはそうなんですが、そこで問題となってくるのは、いま言われるアメリカに対する武器の輸出、あるいは武器の技術の輸出というか、そういうものはこの安保条約三条によってできるんだという理解の仕方をする人もなきにしもあらずということを聞いているわけですね。  そうすると、それは憲法との関係その他からいって、それからまた国会で武器輸出の禁止の決議があるわけですね。それを踏まえたときに、安保条約の三条から、対米武器技術輸出は可能だという解釈が一体できるのかできないのか、これは具体的な事実、法律論ですから法制局としてもお答えを願いたい、こういうふうに思うわけです。

角田禮次郎内閣法制局長官

○角田(禮)政府委員 当面の問題として対米武器輸出あるいは武器の関連技術の提供というようなことが問題になっているようでありますけれども、その点につきましては、これは現在のところ外務省なりあるいは通産省なり防衛庁の段階で検討しておりまして、私どもの方にはまだ何らの相談もございません。したがいまして、いま稲葉委員の御質問に具体的にお答えするだけの検討はいたしておりませんけれども、あえて一般論として申し上げれば、あくまで憲法の範囲内でしかできないことであって、それを超えるということはできないわけであります。  ただ、これはずっと前に国会でお答えしたこともございますけれども、武器の輸出を全面的に禁止しなければ憲法に違反することになる、そういうことまでは憲法は言ってないだろう、こういうことは前にお答えいたしたわけでございますが、具体的なそういう政策の範囲内でどこまで憲法との関係においてできるかということについては、今後具体的な問題が起こった場合に考えてみたいというふうに考えております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 具体的に問題が起こった場合にといっても、現に起きているわけでして、だから、憲法上できないならできない、憲法の規定あるいは憲法の精神からいってできないならできないということをあなたの方ではっきり言えば、法制局としてこういう見解だということをはっきり言えば、そうすれば問題は解決してしまうわけですね。後になって出てきて、そしてああだこうだ言ったところで、そのときにはもう時期が遅いということになってきて、既成事実に引きずられていくということが起きてくる可能性があるんじゃないですか。  だから、法制局としては、国会決議もあるし、これは後で聞きますが、国会決議との関係もあってアメリカに対する武器輸出並びに武器の技術の輸出ですか、これはもうできないということをなぜはっきり言えないんですか。できないならできないといういうことをはっきり言ったらいいじゃないですか。

角田禮次郎内閣法制局長官

○角田(禮)政府委員 先ほどの答弁を繰り返すことになりますけれども、少なくとも、アメリカに限りませんが、武器の輸出を全面的に禁止しなければ憲法違反になるということはないだろうということは申し上げましたが、それではその枠内でどの程度までできるかということにつきましては、これは具体的問題が提起された場合において考えることである。いま、決まってしまった後では云々というお言葉がありましたけれども、それは当然決まる前に相談があり、私どもとして必要な場合にはそれについての判断をしなければいけないと思います。しかし、国会でそれぞれの当局が、まだ具体的な話もなくて、そしてそれについていろいろ関係の省庁で検討しているという段階であるということを申し上げているわけであります。事実、私どもにはまだ何の相談もございませんし、必要があれば相談があると思いますし、それは決して間に合わないということではないと思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 私は、あなたの答弁の裏を返したところが理解のポイントになるんじゃないかという理解の仕方をするんですがね。それがどういう結論になるかというようなことについては、あえてここでお聞きするのがいいか悪いかということについては私もちょっと考えますが……。  ところで、武器を輸出してはいかぬということの国会の決議がありますね。国会決議というものは、一体武器輸出三原則との関係でどっちが優先するというふうにお考えなんでしょうか。あるいは武器輸出禁止の三原則ですか、これと国会の決議とは全然関係ないんだ、相接触するものではないんだというふうな理解の仕方をされておられるのですか、そこはどうなんですか。

角田禮次郎内閣法制局長官

○角田(禮)政府委員 大変申しわけございませんけれども、武器輸出を全面的に禁止すべきであるという国会の決議があるというお話のようですが、ちょっとそういう決議を私、正直のところ知りませんので申し上げにくいのですが、一般的に申し上げれば、国会の決議を尊重すべきことは当然だと思います。  それから、武器輸出三原則というものあるいは三木内閣当時の政府の統一見解というものも、これは本来は輸出貿易管理令の運用基準、つまり通産大臣が輸出をする場合に許可をするかしないかの運用基準でございますけれども、すでに国会を通じて政府全体のレベルとして国会に対して申し上げているわけでありますから、それはその限りにおいては、政府としては国会に申し上げた以上それを守らなければいけない責任を持っていることは確かでございます。  しかし、国会の決議と武器輸出三原則が矛盾するというようなことを前提としての御質問でございますけれども、ちょっとその辺は、私、事実をつまびらかにいたしておりませんので、お答えをいたしかねます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 私の聞いているのは、具体的事実として出てきたときにあなた方の方の判断の基準を聞いたわけですけれども、それは憲法が全面的に禁止しているのではないという理解の仕方だということは、裏返しすると、それも許容することがあり得るということになりますね。そういうように理解してよろしいですか。

角田禮次郎内閣法制局長官

○角田(禮)政府委員 現在、武器輸出三原則あるいは三木内閣の統一見解、つまりそれは国会において政府が正式に政府の方針として申し上げていることでございますけれども、しかし、その三原則なり統一見解のもとにおいても絶対に武器の輸出を全面的に禁止してはいないということでございますから、もしそれが憲法違反であれば、現在すでにやっていること自体が、あるいは国会においてすでに政府の方針として申し上げていること自体が憲法違反であるということに論理的にはならざるを得ないわけでありますけれども、しかし、先ほど申し上げたように、絶対的に禁止しなければ憲法違反であるというふうには考えておりませんので、統一見解なりあるいは三原則のもとにおいて運用されている、こういうことだろうと思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 いま安保の改定ということがアメリカの議会などで言われておる。それは私どもはもちろん新聞紙上その他で知ることしかわかりませんけれども、集団的自衛権の行使は日本の憲法で禁止されているからできない、これははっきりしていますね。そうすると、安保の改定というのは、いま片務条約だ、アメリカが日本を守る義務はあるけれども、日本はアメリカを守る義務はないという片務条約だということですね。それを双務条約にして、そしてアメリカは日本を守る義務もあるし、同時に日本もアメリカを守る義務があるというふうにしようということだと常識的にアメリカの議論なども考えられる。  こうなってくると、いまの安保条約を双務条約にするということは、イコール集団的自衛権の認容というか行使ということにそのまま合致するのかどうかということが一つですね。それが合致すれば、双務条約にすることは憲法違反だ、こういうことになってくるわけでしょう。だから、集団的自衛権の行使を認めない憲法というものと、それから双務条約にするということとは、一体全く同じことなのか、あるいは違うことなのか、ジャンルが違うのかどうか、そこら辺はどういうふうに理解をしたらよろしいんですか。

角田禮次郎内閣法制局長官

○角田(禮)政府委員 これは確かに言葉の問題だと思いますけれども、片務条約という言葉と双務条約という言葉をどのように理解するかでございますけれども、前から稲葉委員がたびたびこの問題について御提起になりまして、私どもとしては、もしも双務条約というものにするという言葉の意味が、わが国が集団的自衛権の行使をするということを内容とするようなものに変えるという意味であれば、これはもう明らかに憲法違反であって、できないというお答えをしております。それ以外に、それじゃ双務条約ということとしてどんなことを考えているのかということにならざるを得ませんけれども、先ほど申し上げたとおり、私どもはそういうことは、全く安保条約の改定自体を考えていないわけでありますから、それについてはお答えをいたしかねます。  ただ、これはついこの前、参議院の行革特別委員会でそれに似たような問題がございまして、やはり集団的自衛権の行使をわが国としてはしないという点においては確かに片務的でありますけれども、同時に、わが国も相応に極東の平和と安全あるいは日本の安全について責任を持っていろいろなことをしているんだというような意味の総理の御答弁がございました。それは、安保条約のもとにおいてもそれぞれの規定に従ってわが国としてしかるべきことをやっている、たとえば、具体的には施設区域の提供ということをやっているわけですから、そういう意味ではわが国も当然義務を現に負っているわけであります。それを双務と言うかどうかは、これは言葉の問題でないかと思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 いや、言葉の問題でないかということを聞いているんじゃなくて、私の聞いているのは、集団的自衛権の行使、これと双務条約ということにするということとは、同じふうに理解をするのが普通の理解の仕方なのかどうかということなんですよ。そういうことになれば、双務条約ということは日本の憲法に照らしてできない、こういうことになるのでしょう。その理解の仕方が一体どういうのが通常の理解の仕方か、こう聞いているのですよ。

角田禮次郎内閣法制局長官

○角田(禮)政府委員 通常の理解の仕方と言われますけれども、確かにおっしゃることは私も全く同感でありまして、普通世の中で双務条約双務条約と、日米安保条約を双務条約にするというような場合に使う場合には、恐らく稲葉議員の言われているような集団的自衛権の行使を内容とするような条約に変えるというようなことを言っているんじゃないかと思います。ですから、そういう意味では、それはそういう意味で双務条約にするというならばわが国としては憲法上できない、これはもう明らかで、それ以外に人によって双務条約という言葉の使い方はいろいろあるのじゃないかと思いますので、それは私どもとしてはそういう問題はおよそ考えたことはないので、申し上げかねるということを申し上げているわけであります。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 これは大臣、いまのは法律的な解釈ですね、お聞きになられたと思うのです。アメリカの議会の中で——アメリカの議会を気にする必要はないと思うのですけれども、とにかくいずれにしてもそういう議論が出てきていますね。アメリカは日本を守る義務がある、しかし日本はアメリカを守る義務がないということで、いわゆる安保ただ乗り論というか、いろいろな形の中で日本の安保条約をいま言った双務条約にしろという議論が盛んに出てくるわけですね。それが憲法でできないというならば、集団的自衛権の行使に該当してできないというなら、もっと日本ははっきりとアメリカに対して、こういうことはできませんということを言うべきじゃないかと思うのですね。言っているのやら言っていないのやら、わけがわからないのですよ、これは。ああいう議論が出てくること自身がおかしいのですよ。日本がはっきりしていないからじゃないですか。その点について、大臣はどういうふうにお考えになっているかということが一つですね。  それから二つ目には、いわゆる安保ただ乗り論ということですね。日本としては、一体片一方だけが日本を守って、片一方の日本がアメリカを守らないというのはおかしいんじゃないかという素朴な議論がありますね。それに対して奥野さんとしてはどういうふうにお考えなんでしょうか、率直な御意見を伺わせていただきたい、こういうふうに思います。そのことによって私どもは、少なくとも私は、あなたの答弁を聞いてかれこれ申し上げるつもりはありません。それを前提として言わないと、またああだこうだになってもいけませんから、そういうことは言いませんから、私は。

奥野誠亮自由民主党法務大臣

○奥野国務大臣 アメリカ軍の基地を日本に設けることを日本も承認しているわけでございますから、アメリカ軍の存在は日本の防衛にも大きな役割りを果たしている、同時にアメリカの政策の上にも日本は寄与していると言えるのじゃないかと思うわけでございます。同時に、日本の経済力が格段に高まってきているわけでございますので、アメリカは日本に対してより大きな期待を持つようになってくることも、よく私は理解できると思います。したがいまして、アメリカの側に日本の役割りをもっと進めてほしいということで議論が行われる、これはこれなりに私たちは理解していいと思うのでございます。しかし同時に、日本としては日本の考え方があるわけでございまして、現在以上に軍事的な役割りを高めていくことを好ましいとは思っていないわけでございますので、いま安保条約を日本側から改定したいというようなことは、いまも法制局長官が言っておりましたように、考えてはいないということだと存じております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 日本側から安保条約を改定したいなんという議論は、これは出ません。出るわけがないので、逆に向こうから、安保条約を改定しろというような議論があちこちで出てきているわけですね。正式なあれじゃありませんから、それをこれ以上議論しても筋は同じことを繰り返すことになると思いますのであれしますが、こういう議論が出てくることが、日本はやはりそういうことはできないのだ、双務条約というのはイコール集団的自衛権の行使に該当する、これは一〇〇%そうだというように私は理解しますが、となれば、日本は憲法上できないのだということをはっきりアメリカに言わないから、こういうふうになってきているのじゃないですか。だから、そういう点をもっとぴちっと言う必要があるのじゃないかと私は思うのですね。  総理大臣が言うのは、極東の何とかでどこかで寄与しているとかなんとか、そんなことを答弁しているでしょう。そんなことを聞いているのじゃないのですよ。もう双務条約というのはだめなんだ、憲法上できないのだとはっきりアメリカに言わないから、いつまでたったって話がごちゃごちゃしてきているのじゃないのですか。大臣、もっとそういう点は閣僚としてぴちっとさせる必要があるように私は思うのですが、そういう点についてはどういうようにお考えでしょうか。

奥野誠亮自由民主党法務大臣

○奥野国務大臣 アメリカは日本のいまの姿勢を承知しておりますので、自然いろんな意見が出てきている、またそれが批判的にもなってきているのじゃないかなと思います。同時にまた、日本の憲法につきましても、自衛隊そのものを違憲だとおっしゃる方もございますし、政府・自民党は自衛隊は合憲だ、こう考えているわけでございます。同時に、集団的自衛権の行使、これはできないと考えているわけでありますけれども、憲法解釈上からもそれはできるじゃないか、こういうようなことを言う人も中にはあるわけでございまして、憲法解釈が非常に区々にわたっていることは残念な事態だな、こう思っております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 集団的自衛権の行使は憲法上できるということを言う人もいるというのですけれども、政府がそういうことはできないと言っているのに、なぜあなたはそういうことをわざわざ言うのですかね。どういうお気持ちなんでしょうか。それは率直にお話し願いたいと思うのですよ。  国会というのは言論の府だから、そういう議論を闘わしていくことは必要なんで、私はよくあなたに対する人物批評を求められるのです。社会党の中でも、奥野さんというのはけしからぬじゃないかと言う人がよくいるのだけれども、ぼくはそう言わない。あの方は非常に正直な方だ、自分の思っていることを真っすぐに言われる、普通の政治家なら適当にごまかしちゃうところを、ごまかさないでぴちっと言われるところをぼくは尊敬するんだということを言うと、率直に言ってみんな変な顔をしているのですよ。変な顔をしているのですけれども、ぼくはそれが日本の政治にとって必要じゃないかと思うのですね。  だから、いまあなたの言われること、集団的自衛権の行使が憲法上できないというのが政府の見解であるにもかかわらず、それをできると言う人もあるというようなことをわざわざあなたが言うのは、一体どういうお気持ちで言われるのでしょうか。これも人の道との関係があるのかどうか知らぬけれども、それはどうなんですか。ちょっとよくわかりませんな。

奥野誠亮自由民主党法務大臣

○奥野国務大臣 アメリカ側がいろんなことを言っているという一因の中には、日本の憲法についての国論というものが一つになり切っていない、だからいろんなことを言う一つの力にもなっているのじゃないかなという危惧がありますので、あえて申し上げたわけでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 ないかなじゃなくて、そこら辺のところはもっとぴちっと言う必要があるのですよ。  いまあなたの言われたのがちょっとよくわかりませんけれども、そうすると、あなた自身が、集団的自衛権というものは憲法上できないのだ、しかし双務条約との関係で、くどいようになりますけれども、それを認めるという議論も日本にあるのだ、そういう議論についてもわれわれとしても一われわれというのはあなたの方ですよ——としても適度の理解をする必要があるというふうにとれるのですね、話を聞いていますと。ぴしゃっとそんなことはできないのだということをあなたは言われないで、何かつけ加えるわけでしょう。つけ加えて悪いんじゃないですよ。つけ加えてもいいのですが、それを言われるからそういう議論になってくるのですね。なぜわざわざそういうことを言われるのでしょうか、私にはちょっとよく理解できない。あなたの気持ちの中に、やはり日本のいまの安保条約というのは、片務条約というのはおかしい、一方的だ、片一方が日本を守ると言っているのに、日本がアメリカを守るというのはあたりまえじゃないか、こういう考え方があるから、そういうふうな論の紹介ということになってくるのじゃないでしょうか。私は素直にそういうふうに解釈しますが、どうでしょうか。

奥野誠亮自由民主党法務大臣

○奥野国務大臣 たまたま日米の問題をおっしゃり、また憲法の解釈をきちんと言えばいいじゃないかとおっしゃった。ところが、憲法の解釈につきましても、自衛隊について稲葉さんの属しておられる社会党と自民党との間でも百八十度の違いがあるわけなものでございますから、アメリカ側がまた日本の憲法解釈について、ああであってもいいじゃないか、こうであってもいいじゃないかという考え方も生まれてくるのじゃないかな、こんなことを思って言っただけのことでございます。  同時に、いまの日本の現状、第二次世界大戦の前に国際的に孤立化していった、いまやはり外国の立場に立って日本をながめてみる、そして日本はどう考えていかなければならないかということも真剣に討議することも大切な時代を迎えているのじゃないかな。下手をすると国際的に孤立化の傾向をたどっていく、そんなことになれば大変だ、こんな危惧もありまして、ああだこうだということをあえてつけ加えて申し上げたわけであります。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 いまあなたのおっしゃったことを、私はそれなりに考えます。それを聞いている人がどういうふうに評価するかは別なことですけれども、正直に——非常にほかの政治家というのはごまかす。ごまかすことが政治家だというふうな理解の仕方が日本には非常に多い。わかったようなわからないようなことを言うのが国会の中で一番いい答弁だという理解の仕方もあるのですね。国会の中の一番いい答弁というのは、聞いているときにはわかったような気がするけれども、後で議事録を読んでみたらさっぱりわからないというのが一番いい答弁だとされているのですよ。それは林修三さんかどなたかおっしゃっていましたが、こういう行き方は私は感心しませんが……。  そこで、もう一つの問題があると私は思うのです。それはアメリカが日本を防衛するという義務があるというのでしょう。これは法律問題として義務がある。そうすると、義務を履行するには憲法の条項に従うわけですね。これもあたりまえの話です。そうすると、それまでにアメリカの場合は議会の同意がどうしても必要なのでしょう。議会の同意がない場合に大統領が出動命令を下すことも、緊急の場合できるかもわかりませんが……。  そこで、アメリカが日本を守る義務があるというけれども、守らなかったときに一体どういう責任がアメリカにあるのか、日本はどういう責任を問うことができるのか、こういうことです。これは世論調査なんかを見ますと、アメリカは日本を守ってくれない。くれるというふうに言っているけれども、守ってくれっこない。アメリカの国益を中心に考えるのはあたりまえの話ですから、守ってくれるということを一〇〇%信頼するのは間違いだという議論が相当出てきているのですね。ありますから、法律論としてまずお聞きをするわけです。

奥野誠亮自由民主党法務大臣

○奥野国務大臣 アメリカが忠実に日米間の条約を守ってもらう、その前提として日米間が常に緊密な状態にあるということが大切じゃないかな、こう思うわけでございまして、日米間の緊密度が薄れることを心配する方がいまおっしゃったような危惧の念を持たれるのじゃないかな、こう思います。政府は常に日米の安保条約を基軸にして考えていくという姿勢をとっているわけでございます。同時にまた、条約があれば未来永劫心配ないわけじゃないかということについては、第二次世界大戦の日ソ間の中立条約が一方的に侵犯されたという苦い体験を日本が持っているから、ときどきそういう意見が出てくるのじゃないかな、こう思っております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 いや、私は奥野さんの政治論を聞くのは後の話で、まず最初に法律的な見解を法制局長官にお聞きしたわけなんですから。

角田禮次郎内閣法制局長官

○角田(禮)政府委員 一般論として申し上げますが、条約の当事国の一つがその条約違反をした場合に、相手国がどういう法的な措置をとり得るかという問題だと思います。  その点につきましては、条約法に関するウィーン条約の第六十条という規定がございまして、条約当事国の重大な条約違反があったときは、他の条約当事国に条約を廃棄する権利が生ずるということになっております。ただ、学者なども言っておりますが、その廃棄権を行使しないで、一応条約自体としては有効なものとしておいて、相手方に義務の履行を何らかの手段を通じて求めるということはむろん可能でありますし、また、損害賠償だとか陳謝を要求するというようなことも当然考えられると思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 今度は奥野さんにお聞きをするわけですが、アメリカが日本を守る義務がある、こう言ったところで、アメリカは日本のことよりもアメリカ自身の安全あるいは平和あるいは利益、こういうふうなものを中心としてそこにウエートを置いて考える。これはあたりまえのことでしょう。日本だって日本のことを中心に考えるのだから、アメリカだってアメリカを中心に物を考えるのはあたりまえじゃないでしょうか。どうでしょうか。

奥野誠亮自由民主党法務大臣

○奥野国務大臣 アメリカと日本が自由と民主主義を守っていく共同の価値観の上に立っているということで、お互いに力を合わせていっているものだと思います。アメリカの利益に何の関係もないことについて犠牲を払うというふうには、私には思えません。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 それはもちろんそうですね。  いや、私の聞いているのは、アメリカが日本を守ってくれるという義務が安保条約にある。それはわかった。それは法律的な義務なんだ。わかった。だから、いわゆる自然債務みたいなものであって、債務はあるけれども責任はないという形のものだ、こういうふうに私は理解するのですが、それを一〇〇%信頼していって、そしてそうでなくなったときに一体日本はどうするのだということ、その点をやはり考えていく必要があるのではないでしょうか。日ソの中立条約の問題も例を引かれましたけれども、それはそういうことも考えられるからじゃないでしょうか。現にアメリカの場合でも、アメリカの利益になるからやるのであって、アメリカの利益が、これはそのままストレートに日本の利益とはつながらないですよ。どっちにウエートがあるかといえば、アメリカはアメリカの利益を考えるのはあたりまえの話でしょう。日本を守ることがアメリカの利益になると考えるからやるので、もし日本がある特定の国に日本の工業力を奪われるということが考えられれば、これはまた日本をあれして、いろいろなそういうものをぶっ壊して自分の国に帰ってしまうのはあたりまえの話でしょう、アメリカとしたって。  そんなのはあたりまえの話なんで、だから、アメリカが日本を守ってくれるということを一〇〇%信頼していくということについては、日本人自身はたくさん世論調査で危惧の念を持っているじゃないですか。そういうことについて一体どういうふうに理解をされるのでしょうか。日本人がそういう危惧の念を持つというのは、極端な一部の人が持っているので、一般の人は持っていない、こうおっしゃるのですか。それはどうなんでしょうか。

奥野誠亮自由民主党法務大臣

○奥野国務大臣 安保条約は両方の利益の上に存在していると思います。しかし、先ほども申し上げましたように、前提として日米間が常に緊密な関係にあることが大切だ、こう思っているわけであります。日米間にしばしば摩擦が生ずる、アメリカがまた日本に対していろいろな期待を持ってくる、必ずしもそれに十分対応し切れていない、そういうことを心配される方々が危惧の念をときに表明されている、こう思うわけでございます。しかし、今日の世界情勢を考えてまいりますと、自由社会を守ろうとするものがお互いに力を合わせていかなければならないということが共通した認識になっているのじゃないかな、私はこう思うわけでございまして、やはり日米力を合わせていかなければならない、また、必要な場合にはアメリカは当然日米安保条約を厳守してくれるものだ、多くの方々はそれを信頼している、こう思っております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 同じ議論を蒸し返してもあれで、いまの場合に、アメリカが日本を守ってくれないというようなことも考えられるというようなことをあなたが答弁されたら、これは恐らく鈴木内閣は吹っ飛んじゃう。えらい問題になるし、そういう答弁を私は期待して質問しているわけじゃないのですよ。そんなことを言ったって無理だ。あなたの方でそんなことを言えるわけがない。これは言ったら大変な騒ぎで、自民党内閣はつぶれちゃいますよ。そんなことはわかり切ったことだ。わかり切ったことを聞いているわけじゃないんですが、まあ聞いているところもあるけれどもね。  それで、もう一つ私は常々疑問に思いますのは、事前協議の制度ができましたね。事前協議というもの、これは安保条約六条のあれで岸さんとハーターとの交換公文ですが、その中に、アメリカの軍隊の日本国への配置における重要な変更、装備における重要な変更、それから戦闘作戦行動のための日本国内の施設及び区域の使用、いろいろありますね。  そこで、一応法律論としてお聞きしましょうか、極東に有事があったということで、たとえば沖繩にいるアメリカ軍が出動するということに日本が事前協議でイエスを与えるということになると、言葉は悪いのですが、たとえば刑法で言えばそれは一種の共同正犯になるわけですね。言葉は悪いですよ、その点はちょっと抵抗がありますけれども、一種の共同正犯ですね。そういうことになって、沖繩にある基地のアメリカ軍が出動して戦闘行動なり重要な装備の変更その他について日本がイエスと言う。そうなってくると、相手の国は日本に対して戦闘行動をとるということの一つの合法性、同時に正当性というものを持つことになるんじゃないでしょうか。それはどうでしょうか。

角田禮次郎内閣法制局長官

○角田(禮)政府委員 実は、この問題は過去においてもう何回も国会で取り上げられておりまして、その都度政府の見解を申し上げていることなのでございます。そこで一つの例として、昭和四十七年六月二十二日付の西中清議員の質問主意書に対する答弁書というのがございます。まずそれを一応読み上げさせていただきたいと思いますが、質問は、   在日米軍基地において、補給、軍隊の集結、移動、偵察、補修等の軍事行動をとった場合、その基地が報復として攻撃されることはないと考えるか。   国際法上、相手国には、在日米軍基地を報復として攻撃する根拠はあるのではないか。 いま稲葉委員が御質問になったのは、恐らく後で申し上げたような問題に対するお答えになると思いますが、   国際連合の集団措置に基づく場合か自衛権の行使の場合以外の武力行使が禁じられている国際連合憲章下においては、米軍の行動は、そもそも相手国からの侵略行為があった場合にのみ行なわれるものであり、かかる侵略を排除するための米軍の行動がわが国の施設・区域の使用を伴なうことがあっても、米軍の行動の相手国がわが国に対し報復攻撃を行なうことはわが国に対する侵略であり、国際法上認められない。 こういうことであります。  その前提として若干補足させていただきますが、これも国会で何回も答弁しておりますが、戦前の戦争の概念から申しますと、戦争があった場合には、交戦当事国以外はいわゆる中立国として、中立国としての義務を負わなければならない。したがって、交戦国に対して基地を提供するとか、いま御設例になりましたような行為が禁止されていたわけであります。ところが、国連憲章下における現在の戦争についての概念は、戦争というものはすべて違法でありまして、先ほど申し上げたように、国連の強制措置であるとかあるいは自衛権の発動であるという場合以外には考えられないわけでございます。したがいまして、中立国が戦前に言われたような意味の中立義務というものを負っているということはあり得ない。つまり、自衛権の行使に対して基地を提供するというようなことは現在の国際連合憲章のもとでは禁止されていない、こういう趣旨でございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 私の言っているのといま言った後のとは必ずしも一致しませんよ。いまあなたの言った後の方の答弁は、報復という言葉が盛んに使われていますね。報復攻撃ということを私は言っているわけではないのです。いいですか。一つは、いま言ったような形で、たとえば沖繩なら沖繩におけるアメリカ軍が戦闘行動に出るということについて、これが日本が知らない間に出たのなら日本は関係ないけれども、イエスと言った以上はそれに対してそれ相応の責任を負わざるを得ないというのはあたりまえじゃないですか。私は、例は悪いけれどもと断って、刑法の共同正犯を例に引いたわけですけれども、確かに刑法の共同正犯を引くのがいいか悪いか、私もちょっと抵抗を感じますが、ただ、それをイエスと言ったということは、結局相手の交戦国に対して共同して交戦状態に入る、入ってもよろしいということを意味している、こう理解するのはあたりまえじゃないですか。後の攻撃のことは別ですよ。後の攻撃のことを聞くんじゃなくて、前のところでいま私が言ったことはどうですか。おわかりですか。刑法の六十条を引くのは例はちょっと悪いけれども、わかりやすく言えばそこで共同的な正犯関係というか、そういう状態に入るのではないか、こういうことですね。

角田禮次郎内閣法制局長官

○角田(禮)政府委員 おっしゃる意味は十分理解しているつもりでございますけれども、結局、相手国が日本の行為が国際法上違反であるということで何らかの権利を持つことはあり得ないということを申し上げているので、相手国が日本に対して事実上どういう国際的な評価といいますか、そういう感情を持つか、政策的にどういう態度をとるかというのは、これは法律問題ではございませんから、いろいろな批判というか措置があるということは、事実問題としては当然考えられると思います。  その点につきましてもかつて国会で当時の宮澤外務大臣が、事実上いろいろな措置があるということはあり得るかもしれないけれども、法律的には、いわば最初その国が侵略をして、そしてアメリカが自衛権を行使するという法律的なたてまえから言えば、その国にとって、もし実力行動をとれば当然侵略の上塗りになるというような答弁を  しております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 いまあなたの答弁の中の後の方が大事で、いろいろの措置ということを言われましたね。いろいろの措置というのは具体的にはどういうことを意味しているわけですか、どういうこと  が考えられますか。

角田禮次郎内閣法制局長官

○角田(禮)政府委員 私は法律的な責任においてお答えをしているわけで、具体的にどういう措置をとるかというのはむしろ外交問題ですから、私としてはお答えをいたしかねます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 いや、具体的な措置をとるというのは日本がとるんじゃなくて、相手の国がとることはどういうことが考えられるかということを私は聞いているわけですけれども、あなたがそういうことを言われたのですから、これは一応ここでストップさせておいた方がかえっていいと私は思うのですね。  それはわかりましたが、これは当時の条約局長だった西村さんが非常に心配されているところで、西村さんのいろいろな本とか新聞などに対するエッセーの中で盛んにそれを言われているわけですね。あるいは中央公論などにも論文を書いておられますが、西村さんはそこのところを一番心配しているわけですね。西村さんは亡くなられましたけれども、あなたの言われたのは、法律的に、侵略を前提とするということで、そして自衛権の行使だということでそういうことはあり得ない、いろいろな措置が事実上考えられる、考えられるけれども、その措置については法律論としてはここではかれこれ言えないということとして私は理解をするわけです。あたりまえの.ことですね。  その具体的な措置というのが大事なんですよ。それは、日本がイエスを与えたからこそそういう具体的な措置ということが考えられてくるんじゃないですか。あたりまえの話でしょう。日本が知らなければ、ノーと言えば具体的な措置はとれないでしょう。そこのニュアンスの差というか、合法性、正当性というものがそこで加わってくるということが私は理解できる、こういうふうに思うのですが、これ以上議論しても同じことになるでしょう。  ただ、事前協議が違憲だという説が確かにあるんですよ、いま言っている状況からいってね。戦争を放棄しておる日本が戦争に巻き込まれることになるのですから、これは違憲だという説があるけれども、現実にある制度を、しかも年限がたっているのを違憲だというふうにここであなたの口から言わせようといってもそれは無理な話で、そんなことを言えるわけがない。  質問したって私は答えはわかっているのですからそれはここではしませんが、どうもいまの具体的な措置ということを、それはいろいろ考えられることがあるということは、イエスを言ったからこそある、事前協議の制度が認められているからこそそれがあるんだというふうに私は理解をいたします。これ以上論議しても話は筋道は同じだと思うのでこの程度にして、別なことに移らしていただきたい、そのように思います。

角田禮次郎内閣法制局長官

○角田(禮)政府委員 正確を欠くといけませんから、私、先ほど宮澤大臣の答弁を引用して申し上げましたが、「事実問題として、しかしそういうことはあり得るではないかとおっしゃれば、それは私は否定をいたすことはできないと思いますけれども、そのような行為は、しかし法律上認められ得る行為であるかと言えば、いまの通念で申せば、そのようないわゆる報復というような行為は法律上認められるものではない、こういう意味合いでございます。」御質問になったのは永末委員なんですが、永末委員はそれに対して「事実問題とすればあり得るとあなたが御断判になればよろしいのでございまして」「あり得ないから事実もないんだというようなニュアンスに聞こえるから、われわれが事実問題として政府の判断を伺っております場合に、法律解釈だけの御答弁ではすれ違いということになるので、改めていま伺ったわけであります。」というふうにお答えになっております。  私としては、法律上の判断としてはそういうことはあり得ない、しかし事実上の問題としてはあり得るというふうに当時の宮澤外務大臣がお答えになったということを申し上げたわけです。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 その中で、言葉として報復報復という言葉が出てくるのですね。報復ということとは私は必ずしも一致しないと思うのですよ。なぜそういう言葉が出てきたのかよくわかりませんが、しかし、これはこれ以上議論しても始まらないことでしょう。問題を後に残しておきます。  実は西村さんの論文を読みまして、中央公論に二つ出ていますね。それから「日本の外交」という岩波新書、それから新聞に出たエッセーを読みまして、私もいろいろ考えて、これはなかなかむずかしい問題だな、やはりどうも憲法違反だということを言わせるのは無理だけれども、そのことによって日本がある危険な状態に巻き込まれる可能性というものがそこに残っているということは、私自身はそういう理解をしているわけです。これ以上議論しても始まりませんから、法制局長官、結構です。  そこで、大臣にお尋ねをいたしたいのですが、私、ロッキードの事件に関連しまして、新聞を見ていて、率直に言ってこれは噴飯物の記事が相当あるわけですね。今度の内閣改造で、内閣改造の話をして悪いけれども、外務大臣と法務大臣の地位がだれになるか非常に注目されていると書いてあるわけですね。法務大臣のことを、ロッキード公判担当の法務大臣と書いておる日刊新聞があるのですよ。私は驚きまして、この程度の頭かなと思ったのですよ。それから、ある新聞を見たら、ロッキード絡みの法務大臣の地位が注目されると書いてあるのですね。法務大臣とロッキード事件とどういう関係があって、それで一体いまどういう関係があるのでしょうか。私よくわからないものですから、まず教えていただきたい、こう思います。

奥野誠亮自由民主党法務大臣

○奥野国務大臣 事件はすでに裁判所の法廷で争われておるわけでございますので、法務大臣としては、検察の自由な訴訟活動、これを守る以外に干渉をする余地は私はない、こう思っておるわけでございまして、そういう意味では、だれが法務大臣になっても同じじゃないか、こういうことを、お尋ねがあります場合に常に申し上げているわけでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 あなた自身は、ロッキード事件の公判の行方ということについて関心を持っておられるということ、これはあたりまえのことでありましょうね。これはどうでしょうか。

奥野誠亮自由民主党法務大臣

○奥野国務大臣 関心を持っているとか持っていないとかいう意味合いがよくわかりませんけれども、これは国民全体がその推移を見守っているものだと思っております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 国民の一人として私も関心を持っておりますという答弁をした方がそれはいいのだけれども、それはあなたの自由だから、まあいいです。  そこで、検察庁法十四条、法務大臣の指揮権の問題がありますね。そういう中で、法務大臣というのは政党出身者でない方がいいという考え方、そういう意見も私はあると思うのですよ。その点についてはどういうふうにお考えでしょうか。それが一つ。  それから、検察庁法の十四条というものは、一体どういうことからこれが出てきたのか。これは戦後出てきたわけですね。戦前のあれにも一部あったかもわかりませんが、それは法体系が違うわけで、だから違うのです。十四条というのはどうしてこういう法律が出てきて、法務大臣が検事総長を指揮監督できるということ、これは一体どうしてこういうふうなことが必要なんでしょうかね。この点どうでしょうか。

奥野誠亮自由民主党法務大臣

○奥野国務大臣 私は、国務大臣になりますと、やはり国家社会のことを中心に考えているわけでございまして、自分の利益などは無視していくわけでございましょうし、仮に政党に所属しておりましても、その政党の立場で物を考えるのではなくて、国務大臣の立場で物を考えるというのが一般だ、私はこう思っております。したがいまして、検察行政を預かる法務大臣でありましても、私の感じからいいますと、やはり政治に明るい者がそのポストを占めた方がいいのではないだろうかな、こういうふうに思っているわけでございます。  なお、検察庁法十四条で、個々の事件の取り調べ及び処分については、法務大臣は検事総長のみを指揮することができるという規定がどういう関係で生まれてきていると思うか、こうお尋ねのように伺ったのですけれども、そう理解してよろしゅうございますか。——検察権も行政権に属しておるわけでございまして、したがいまして、一般に検察官を法務大臣が指揮監督することができるわけでありますけれども、個々の事件ということになってまいりますと、司法権と密接なつながりを持っている。でありますから、できる限り独立性を確保していくことが大切だ。だから、もし個々の事件について必要なことがあるならば、検事総長を法務大臣は指揮して、あとは検事総長の処置にゆだねる、そのことを通じてできる限り独立性を守っていきたいという考え方であの規定が入っているのだ、こう思っております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 この規定がなかったときに、法務大臣と検事総長なり検察官の関係は具体的にどういうふうになるでしょうか。なかった場合はどうなるのでしょうか。

奥野誠亮自由民主党法務大臣

○奥野国務大臣 個々の事件についてまで直接に法務大臣が介入していけるということになっていけるだろうと思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 そうすると、十四条はただし書きの方に重点があるというふうに理解をするわけですが、そこで私よくわからないのですが、なぜ政党出身の法務大臣が、これは政治に明るい方がいいというかもわからぬけれども、なぜ検事総長を取り調べや処分について指揮監督することが必要なんですかね。ちょっとよくわかりませんね。どういうわけですか。そうすると、そのときの政党の利害によって動かされる危険性が出てくるのじゃないですか。

奥野誠亮自由民主党法務大臣

○奥野国務大臣 先ほども申し上げましたように、政党に所属しておりましても、政党の利害に基づいて国務大臣が行動しているということは、私はないと思うのであります。やはりそこは一線を画して、国務大臣としてりっぱに職責を果たしたいという考え方で行ってきている、こう思っております。やはり政治家でございますと、国民のいろいろと考えているものを広く深くつかみやすいと思うわけでございまして、できる限り国民多数が期待している方向にすべての行政が運営されることがいいんじゃないだろうかな、こう思うわけでございます。  そういう意味におきまして、たとえば官僚出身者がそのまま法務大臣になっておればいいかといいますと、私は、それでは、広い視野から考えた場合に、必ずしも適正を期し得ないんじゃないかな、こう思ったりするわけでございまして、いろいろな意味において国民と一番深く接触しているのが政治家じゃないのだろうかな、また、単に一分野のことを考えているのではなくて、国民生活全般を常に考えている、あるいは国際社会の中における日本ということも絶えず考えているわけでございまして、そういういろいろな意味におきまして、私は政治家の方が望ましいという考え方を持っておるのでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 国際社会の中の日本ということ、それと検事総長を指揮するということと一体どういうふうに結びつくのですか。ちょっと私にはわからないですな。ということは、考え方によっては、外国との関係で日本の国益に反するような事件が出てきたときには、検事総長を指揮して、それをやらさないようにするということも日本の国益になる、こういう理解の仕方を私はいまお話を聞いていてぴんとしたのですが、そういうことも考えられるわけですか。

奥野誠亮自由民主党法務大臣

○奥野国務大臣 海外から見まして、日本のいろいろな欠陥が指摘される場合も多分にあるだろうと思うのでございまして、そういうことも心得ながら、できる限り不正を正していくという場合もあろうかと思うわけでございまして、いろいろな角度から政治家というものは常日ごろ考えをめぐらしているものじゃないだろうかな、こう思っているわけでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 この条文は議論があるのですよ。議論があるというか、非常にむずかしい議論を含んでいるわけですね。たとえば「検察官の事務に関し、」という言葉が使ってありますね。一体、事務とは何かということになってくると、組織法で言うところの検察行政事務ですか、それは外すんだ、そういうふうなこともあるし、それはもうあたりまえなんだから何も書く必要はないので、この事務というのは一体何を意味するかということについて意見が二つに分かれておったりなんかしまして、いろいろ出てくるのです。  そこで、私が聞きたいのは、このロッキード事件の判決が第一審の小佐野の関係でありましたね。その判決の事実の認定だとか、判決の内容だとか、その評価だとか、そんなことは国会で論議すべきことではございませんから、そういうことは私はお聞きをいたしません。ただ、国民は非常に疑問に思っていることがいろいろあるわけですね。それは捜査の過程の問題ですよ。それについてお聞きをしたい、こう思うのです。  この判決の中でも認定されておりますのは、例のP3Cのことですね。コーチャン、クラッター、児玉、小佐野の協議についても、米側の嘱託証言がある。修正四号契約書の存在も、P3Cの協議がなければ説明がつかない云々ということから、ずっとトライスターの記憶があったのに、この記憶はないというのはおかしいじゃないか、こういうような議論が出てくるのですがね。そのP3Cの修正契約書の四号、二十五億円になりましたね。これは刑事局長に聞いた方がいいのか、法務大臣に聞いた方がいいのか、それがあって、一体その後どういう捜査をしてどうなっちゃったのか、さっぱりわからないのですよ。わからないでしょう。トライスターの方はわかったけれども、二十五億の修正の契約書ができたんだけれども、あとのことはわからぬですよ。捜査をここまでやったけれどもわからなかったというのなら、それは国民の皆さんもある程度納得すると思うんだけれども、説明が全然ないので、何にもわからないです。その過程を御説明願いたい、こう思うのです。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 ただいまの御指摘の点でございますが、今回の判決でも認定しておりますように、ロッキード社の方からいろいろと飛行機の売り込みについての協力依頼があったということでございます。また、それに関連して契約書の修正も行われたということは、従来から明らかになっておりますし、今回の判決でも認定がされた、こういうことでございますが、それから先のことは確かに判決でも触れておりませんし、明らかになっていない、そこが問題だ、こういうことであろうと思います。  その点は、これも従来から何回かお尋ねを受けているところでございますけれども、それに対してのお答えを繰り返すようになって恐縮でございますけれども、そういう問題があったので、その後どうなったかということは当然問題でございますから、検察当局といたしましても、いろいろな関係者を調べるというようなことをいたしまして、その後の動きがどうだったかということを最大限解明するように努めたけれども、その過程において犯罪と認められるようなものは何も出てこなかった、こういうことを繰り返しお答えしているところでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 いまのは結論を言われて、真ん中辺は抽象的に言われているわけですが、捜査の過程で二十五億に修正になったというならば、いいですか、捜査の過程で小佐野賢治を調べたと思うのですが、この調べた中で、これの身柄を拘束して調べることによってもっと真相が究明されたかもわからないということは当然考えられるのではないでしょうか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 まず、小佐野氏の身柄の拘束の問題でございますが、これもこの席で改めて申し上げるまでもないと思いますが、当時御本人は病気でございまして、狭心症を伴う高血圧性の心疾患ということで、平たく言いますと狭心症の発作がある、そういうおそれがあるというようなことがございまして、身柄の拘束には至らなかったということでございます。  いま稲葉委員が、身柄を拘束すれば何か別な結果が起こったのじゃないかというお尋ねのようでございますけれども、確かにそれは、そういうこともあるかもしれないといえばそのとおりでございましょうけれども、それもやってみなければわからないことでございまして、何とも言えないということであろうかと思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 そうすると、あなたのお話を聞いていると、体が非常に悪かった、高血圧で、何とかかんとかで悪かったというのでしょう。それで身柄を拘束しなかった、こういうことですね。そうすると、それがなければ、体が健全でありたら身柄を拘束したということに、あなたのいまの答弁はとれるのですね。そういうふうに受け取ってよろしいでしょうか、そういうふうな意見が非常に多かったというふうにも受け取ってよろしいですか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 そこまで結論を出していたわけではございませんけれども、逮捕ということもあり得るということで一応検討したけれども、いま申しましたような病状があるのでそこまでに至らなかった、こういうことでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 問題は、その捜査で逮捕ということも検討したことは間違いないです。いま、あなた言われたのだから。ところが、それは体の状態が悪くなっちゃってから検討しているのです。その前の段階で、これは当然検討し、身柄を拘束すべき状況ならば、逮捕すべきだったと思うのです。田中角榮氏だって——ぼくは田中角榮氏と言うのですよ。まだ有罪判決を受けていませんからね。小佐野賢治は一審判決を受けたのですから、無罪の推定は崩れているのですからそういうふうに言いますが、それだって別件逮捕しているのでしょう。だから、これは当然もっと早い段階で、体が健全な状態で身柄を拘束すれば、このP3Cの疑惑も解明できたはずなんですよ。どうもそこのところがよくわからないですね。  ある先輩の特捜出身の検察官に聞けば、この事件は小佐野を逮捕する時期を失したのだ、逮捕するということは出たけれども、それをいろんな形で何か知らぬけれども逮捕の時期を失したということが非常に大きなポイントなんだということを先輩の特捜の検事は言っているわけです。  だから、そういう点が私はどうも納得できないのですよ。これは防衛庁にも関係し、アメリカにも関係し、ことに民間の問題じゃないから、非常に大きな影響が出てくるから、だからやらなかったのではないかというふうに勘ぐる人もいるわけです。勘ぐるというか、通常の常識で理解する人もいる、こういうことになってくる。ここのところがどうも私には納得いかないのです。だからしつこく聞いているわけです。  そこで、大臣にお尋ねしたいのは、ことしの八月五日に斉藤という人と松岡ですか、あのニューオータニの人とそれから丸紅の運転手の人、これを、よくわかりませんが、朝早く行って調べましたね。それを大臣がお知りになったのはいつごろなんでしょうか。それはどういうふうになっていますか。

奥野誠亮自由民主党法務大臣

○奥野国務大臣 翌日、新聞等で承知いたしました。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 前もっての話は大臣にはなかったということですね。  そこで、この人を一体何の容疑で調べたのですか、この二人を。検事がわざわざ朝早く行ったのでしょう。検事が朝早く行くなんということは普通あり得ないので、この前も話したように、普通、呼んでそこで調べて、その結果によって云々するのがあれなんですが、なぜ検事が行って二人の人を呼んできて調べて、そしてその結果は一体どうしたのですか。これがまた一つわからないのですよ。国民の皆さんにはわからぬのです。なぜここでそのままの状態にしてしまったのか。考えられるのは、偽証の事実を認めたからということもあります。それからそうでなくて、ずっと否認したけれども、ほかからのいろいろなプレッシャーがかかって拘束しなかったということもあるし、それだけの価値はなかったとか、いろいろな見方があると思うのですが、これよくわかりませんね。これは調書もとったのでしょう。どういうふうな調べ方をして、調書をとりながら、この事件は一体どうなったのですか、この二人に対する関係は。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 過日、十月十四日であったかと思いますけれども、同じようなお尋ねを受けてお答えをしたところでございます。  まず第一の容疑は何かと言えば、それは一応偽証の疑いがあるということで取り調べをした、こういうことでございます。  なぜ検事が行って同行を求めたかということにつきましても、この前申し上げたとおりでございまして、その二人の方をできるだけ同じ時期に調べたいという必要があってそういう措置もとったというふうに理解しておるわけでございます。  最後に、なお結果についてどうなったかということでございますが、これはそれ自体捜査の内容でございます。まだ結論も出ておりませんので、捜査の内容でございますし、これもまた稲葉委員に申し上げるまでもないと思いますけれども、現に公判が進行中であり、そのこと自体がまだ大きな争点になって、検事側の立証があり、弁護人側の反証があり、また検事側が再立証をし、またさらに最近のように弁護人側の方で再反証と申しますか、そういう動きが繰り返されているところでございます。そういう公判の推移にきわめて密接に関連する、かかわりのあることでございますので、その内容につきましてはこの席で申しかねるわけでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 偽証容疑で調べたということがどうもはっきりしませんが、どういう偽証なんですか。二人は、それはどういう偽証容疑があるのです。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 いわゆるアリバイ問題につきまして、それ以前に証人として二人とも呼ばれているわけでございます。その証言の内容について、検察側といたしましていろいろとほかの証拠等を調べました結果、前に公判で述べた証言の内容に偽証の疑いがある、こういうことで取り調べをしたわけでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 そこで、調べ方の中で、この前の法廷の中で、言っているのは斉藤という人ですが、何か朝飯も食べさせないで調べたというようなことを言っています。こういう事実はあるのですか、ないのですか、どうなんです。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 そういうことが新聞報道もなされたことは承知しておるわけでございますが、その朝飯も食べさせないでといいますと、いかにも食べさせてくれと言ったのにそれを拒んだというか、とめたというか、そういうようなニュアンスにも聞こえるわけでございますけれども、実はそういうような申し出もなく、自宅に伺って出頭してほしいということを申し入れ、しばらくたって、本人が用意ができましたということで一緒に検察庁まで来られたということでございまして、その間に朝飯問題というようなことも出てなかったということでございますから、最初申しましたように、何か申し出があったのにそれを検察官の方でだめだと言ったような事実もないわけでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 それなら、そういうことをはっきり法廷の中で、反対尋問なり何なり——反対尋問の範囲に入るかどうかは別ですよ。関連性がないと言われるかもわからぬけれども、それをはっきりさせた方がよかったのじゃないかと思うのです。  そこで、この偽証後の問題で、最初に三つの点について起訴したわけですね。後からP3Cの関係を追加して起訴したわけでしょう。これはどういうふうな事情からこういうふうになったのですか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 後から起訴したというのは、正確に申しますと訴因の追加ということになろうかと思います。その点は捜査なり公訴の提起の技術的な問題と言えばそれに帰するわけでございますけれども、一般論というようなことになるかもしれませんが、証拠の固まったものから起訴していく、その後に証拠のはっきりしてきたものを追加するということは間々あることでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 もちろんそういうのが間々ありますよ。だけれども、それは身柄を拘束している場合の話であって、身柄を拘束している場合には期間が限定されているからそういうやり方をしますけれども、在宅の場合には普通そういうやり方はしないですよ。一〇〇%しないとは言わぬけれども、普通はしませんよ。身柄拘束で期間があれされているからという場合になってくるわけなんです。  そこで、偽証ということについて、これは各国のいろいろな法制によって違いますけれども、ドイツのは前に検事正をやっていた武安さん、あの人は非常に公平なりっぱな方ですが、あの論文があるし、それから別にフランスの——これは母法がフランスですね、判例なんかいろいろあるのですが、私がわからないのは、偽証罪ということに対する——これは刑法の百六十九条でしょう。百六十九条というのは、いわゆる文書偽造だとか有価証券偽造だとか、そういうところに入っているわけですね。そうすると、一体偽証罪の法益というのは何なのだというふうに理解しているわけですか。被害法益の問題。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 一言で申せば、司法権の公正な作用に対する侵害行為と言えるか、そういうことであろうと思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 それならば、あなた、刑法の条文のそこにあるのがおかしいのじゃないですか。公益的な犯罪だから、別な国家的な犯罪は最初の方にあるわけですから、そこに入るとかなんとかしなければおかしいのじゃないですか、これは議論からいうと、この場所がおかしいのですよ。それは今度の刑法の改正がどうなるか知りませんけれども、やはり同じようなところにあるようですね。  そこで、いまの法益の場合、これは大臣、お聞き願いたいのですが、日本には偽証というのが非常に多いのですね。これは日本人の関係ですよ。日本人は偽証というのが非常に多い。英米ではうそを言うということは非常に大きな神に対する冒涜ですね。ところが日本の場合は、うそを言うということは、いわば義理人情というかな、こういうような人をかばうという形で、むしろ美徳ではないけれども、そういうように考えられているのですね。英米においては偽証が非常に少なくて、あった場合非常にきついですね。ところが、日本の場合には多い。そしていままでは非常に軽いのですね。今度の実刑というのが初めてだと思いますが、非常に軽いのです。ここら辺のところを日本人の国民性との考えで、大臣は偽証ということについてはどういうふうにお考えでしょうか。

奥野誠亮自由民主党法務大臣

○奥野国務大臣 証人は真実を追求していくために証言を求められているものでございますので、真実を述べるということは非常に重大な任務だと、こう思います。したがいまして。偽証が大っぴらに通っていきますと真実の追求ができないわけでございますので、偽証の罪はそれなりに重視されるべきものだと、こう思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 偽証の問題は日本人に非常に多いのです。ことに多いのは暴力団の関係の事件とそれから選挙違反。選挙違反、これは多いですよ。そういうことなんですが、外国、ことにドイツなどでは非常に厳しいですね。過失偽証というのもあるのですね。私は、過失偽証というのは理解しにくいのですよ。私は、こういうふうなものがあっていいとは言いません。これはちょっと無理な法律で、ドイツの場合でも、実際はそれほど過失による偽証というのはないようですね。法文はありますけれども、ないようだ、こういうふうに思うのです。  そこで、いずれにしても偽証が非常に多いということで、そしてしかもそれは日本人の一つの特性、義理人情というか、そういうものを重んずる日本人のあれにも非常に関係するのですが、これを何とかしないと真実はなかなか発見できません。しかし、政治家自身がうそを言っているのですからね。政治家というのはほとんど本当のことを言わないでしょう。だからそういう点も、政治の姿勢そのものを正していく必要があると思うのです。  そこで、私がお尋ねをしていきたいのは、榎本何とかという女の人を証人として申請したわけですね。それについてのことは、私はかれこれ言いません。それは訴訟のルールですから、そんなことをかれこれ言うのじゃないのです。そこで問題は、この人、五月六日から九回にわたって検察官が調べておるということですね。これはまず事実ですか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 従来から申し上げていることでございますけれども、どういう人をどういう日時にどういう場所でどういう内容について調べたかという具体的なことにつきましては、捜査の内容にわたること、捜査の秘密にわたることに広い意味で含まれることと思いますので、お答えを差し控えさせていただいているわけでございますが、相当な回数事情を聴取したことは事実でございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 そうすると、本人は五月六日富山県かどこかに行っているときに呼ばれて、九回調べられたと言っているのですよ、まあいいですが。あそこでは、法廷に出たのはわずか三十分くらいでしょう。しかもそのアリバイのことと関連しているだけですね。あれ以外のことが相当な範囲にわたって事情聴取の対象になっているということは、これは常識的に考えられますね。本人が九回調べられたと言っているのですから、九回調べられたものが三十分で済むわけがないのですから、アリバイ以外のいろんな問題について調べられたということは、これは常識的に考えられることですか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 何回か事情を伺っておるわけでございますから、それなりのことは伺っているということになろうと思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 そこで、どうもよくわかりませんが、九回も、九回というのはあなたの答えじゃないけれども、本人が九回だと言っているのだから九回でしょう。それを調べるというのは、アリバイだけの問題だったらそんなに回数を調べる必要はありませんね、常識的に見たって、立証している段階だけのことならば。最初の二回ぐらいはなかなかあれしなくて、三回目ぐらいから聴取に応じたようなことが出ております。だから、本人はそこにまだ法廷にあらわれないたくさんのことがあると言っているのですね。それはそのままの言葉として受け取ってよろしいですか。どうでしょうか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 それ自体捜査の結果を申し上げるようなことになるわけでございますので、この段階では適当でないと思います。  ただ、何回も調べたということから、またその結果といたしまして、法廷であらわれた以外に大変たくさんの事実があるような印象があると思いますけれども、そういう面からいいますと、それほどではないのじゃないかという感じを持っております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 その内容を私はここで聞こうということじゃありません、そんなことはあなたの方でしゃべれないことですから。ただ、いろんなことが言われて、その中でたとえばいかにも抽象的なあれですけれども、司法権、三権分立を害するような行動が一部にあったようなことも出てきているわけですね。私はあれだけじゃわかりませんからこれ以上言いませんけれども、そういうふうなことが出てきておる。  それから、笠原という運転手も、あれは自殺ではないようなことも、笠原の奥さんたちのあの電話のかけ方とかなんとかから見て、言われているというようなことも出てきていますね。そういうことを含むと、調書全体はそれほどではないとしても、相当いろいろな面のことが話があったのではなかろうか、こういうふうに私は思っておるのですが、しかし、それをかれこれ言ってもどうということはないでしょう。  そこでお聞きをいたしたいのは、アリバイのことで盛んにやっていますけれども、それはこの女の人を証言に出さなくても、斉藤なりいまの松岡ですか、この調書があるわけですから、それを出せば済んだんじゃないのですか。みんなそうとっている人が多いんじゃないですか。どうなんです、それは。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 その点についてお答えいたしますと、現に公判進行中の公判の見通しなりあるいは現状なりについての私どもの見方というものを申し上げるようなことになるわけでございますので、そういう意味で差し控えさせていただきたいわけでございますが、一般的に申しまして、榎本氏の供述の信感性について問題があるわけでございます。それが争点にもなっているわけでございますから、それとの関連において必要もあるという面が含まれていると思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 結局、ロッキード事件はいろいろありますが、その中でこの前私も聞いたのは、二階堂氏の五百万円の問題を聞きましたね。あれは大臣は余り聞いてくれるな、そういう意味のことを言われましたけれども、政治倫理の確立からいって、私はもらったんならもらったとはっきり言ったらいいじゃないですかと言うのですよ。それをもらわないようなことを言って、私から言えば、本人がうそついているとしか考えられませんけれどもね。もう一人の人も、二百万円もらったのに、二百万円もらわないということを言っていますね。運輸何とかという人で言っていますが、ここら辺のことは、しかしはっきりとした証拠があって法務省としては国会に報告したということはこの前も聞きましたが、そのとおり間違いないわけですね。これはあたりまえな話ですね。口頭で報告したということなんですが、それに対して、もう私これ以上聞きませんけれども、法務省が報告したということについては、これは報告する前に御本人たち、たとえば二階堂氏なりあるいは加藤氏なりの話を一体聞いたのですか、聞かないのですか、どっちなんですか、刑事局長。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 再三のお尋ねでございますけれども、だれをいつ事情聴取したかということを申し上げることになりますので、お許しいただきたいわけでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 そんなことを聞いているんじゃないですよ、私は。こういう人がこれだけもらったということをあなた方国会に対して口頭にしろ報告しているでしょう。だから、本人の事情を聞きもしないで報告するということが一般的にあるかないかということを聞いているのですよ。そういう問いならいいでしょう。そんなことは一般的にあり得ないという答えが普通の答えじゃないですか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 ある事実を認定いたします場合に、必要な関係者の主張なり弁解なりを聞くということは、一般的に当然あることでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 それはそれ以上あなたの方としても言いずらいのでしょうけれども、御本人の弁解を聞かないで国会に報告したようなことを言っている人がいるから私は聞くのですよ。そんなことはあり得ないはずだと言うのですよ。ただ、新聞にばっと出ちゃったので、多少おくれたかもわからぬけれども、その日に聞いたのかどうか知りませんけれどもね。  そうすると、いま言ったお答えは私なりに理解すると、十分御本人の意見を聞いて事情を聞いて、そして法務省としては事実を認定して、その責任において口頭で国会に秘密会にしろ何にしろ報告された、こういうふうに承ってよろしいですか。それはあたりまえの話ですよ。そうでないと言ったらおかしいのだけれども、そういうふうに承ってよろしいですか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 先ほどお答えしたとおりでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 先ほどお答えしたとおりと言ったってわからないのだよ。ぼくが言ったのは結論なんで、その結論については、では私の言ったとおりの考え方が常識だろうと思います。こういうことで理解してよろしいですか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 稲葉委員も一般論としてしか言えないだろうなというお尋ねでございますから、そのように御理解をいただきたいわけでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 わかり切ったことを聞いているようなものですけれども、これ以上聞いてもあなた方の立場もいろいろあるかと思うのです。大臣、日本人というのはイエスとノーがはっきりしない国民ですね。だから、外国人との間の交渉で間違いを起こすのですよ。イエス・バット・ノーでしょう。イエスということを言いながら、しかしということで必ずノーが入ってくるので、どっちが重点なんだかわけがわからないんです、日本人の話というのは。イエス・オア・ノーじゃないでしょう。だから、ことに政治家は金をもらったならもらったでいいじゃないですか。事実ならばしようがないんだ。ちゃんとぴしっと本人が、もらったことはもらった、こういう事情だったんだということをはっきり言うのが政治家としての筋だ、こう私は思うのですね。そうでないと、国民の政治家に対する信頼を失いますよ。政治不信がますますふえてきますよ。  私は、個人的にこの人たちに対してどうこうという考えはありません。だけれども、あそこまでちゃんとした報告をしておるのに、そういう事実がないなんて白々しく言って——断定するわけじゃないけれども、そう言っておるのですね。そういうのは政治家として倫理に反すると私は考えますよ。あなたはどういうふうにお考えでしょうか。

奥野誠亮自由民主党法務大臣

○奥野国務大臣 政治家の政治活動資金の収支を明確にするということは大切なことだと思います。そういうこともあって、個人の受けました政治資金につきましても、使う場合には届け出政治団体に一たん入れて、そして政治活動に使うというように政治資金規正法も改正されたわけでございまして、お互い政治資金の収支については明確にしていきたいものだと思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 そんなことを聞いてないですよ。話をそらしちゃいかぬですね。あなたらしくないな。  じゃ、そういう答弁をすると、今度こういう質問をしなければならないのですよ。これは刑事局長、また困っちゃうんだよ。加藤六月氏がもらった二百万円もありますけれども、二階堂さんの五百万円にしましょうか。二階堂さんがもらった五百万円については、法務省当局としては賄賂と認定しているのじゃないですか。政治資金として認定しているのじゃないでしょう。賄賂と認定しているけれども職務権限がなかったという結論な出して、国会に報告しているのじゃないですか。そうでしょうが。違いますか。それはどうなんです。刑事局長を困らせちゃいかぬよ、大臣。

奥野誠亮自由民主党法務大臣

○奥野国務大臣 それぞれ見解の分かれているところは、いずれの見解が正しいというようなことを言える筋合いのものではないと私は思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 見解が分かれているといったって、どうして分かれているということがわかるのですか。私の聞いているのは、法務省はそういう認定をして、その結果を国会に報告したんじゃないですかということを聞いているのです。これは刑事局長でもいいです。気の毒だけれども、しようがないや。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 言葉の問題かもしれませんけれども、職務権限がないということになりますと賄賂とも言えないわけでございます。それはそれといたしまして、検察当局の取り調べの結果によればそういう事実が認められるという御報告をしたわけでございます。ただ、御本人がそれを否定されるということもまた御本人のことでござい  ますから、それをとやかく言うわけにまいらないと思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 そうすると、刑事局長は、あなたの方の報告と御本人の言うことと、どっちが正しいと思っているのですか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 先ほどもお答えしたとおりでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 先ほどお答えしたと言ったって、私は聞いてないよ。もう一遍はっきり言ってください、結論をイエスかノーで。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 当時の法務当局が口頭でございますけれども申し上げたことでございますから、責任のある御報告というふうに御理解いただきたいわけでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 大臣、刑事局長はいま言ったようなことを言っているのでしょう。それでもあなたは法務大臣であって——法務省だから継続しているわけだと思うんだけれども、それでもあなたは、それは政治資金だとか、あるいは事実はわからないと言うのですか。ちょっとよくわかりませんね。法務大臣としては、法務省が責任を持って報告したことについては私もそのとおりだと思いますと言うのが本当じゃないですか。そうは言えないんですか。言えない事情があるんですか、あなたとしては。どうなんですか、それは。

奥野誠亮自由民主党法務大臣

○奥野国務大臣 公訴が提起されましても、有罪になる場合もあれば無罪になる場合もございますし、また、一審、二審、三審によって判決が変わってくる場合もあるわけでございますので、見解が異なっているときに私がとやかく言うことは差し控える方が筋道じゃないだろうか、こう思っているわけでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 おかしいですね。法務大臣としては、法務大臣の一つの継続性があるわけですよね。継続性があるんだから、いま刑事局長が言っているんですから、それを信ずるというのがあたりまえじゃないですか。それを信ずることができないんですか。信じられないというんなら信じられないでしようがない。信じろと言ったって信じられないというんなら、無理も言えないからしょうがありませんけれどもね。  裁判になっているんじゃないんですよ。裁判になっていれば、それはシロ、クロは法廷であらわれるけれども、そこまで行かない事件ですね。御本人が、裁判をやって相手が争っているのに、取り下げちゃったんですよ。こんなばかな話ってないですよ。こういう方が自民党の中に何人おろうと、それはもう党の内政の問題で、私は関与いたしません。あたりまえの話で、関与しませんけれども、それがもし内閣の中に入るとなれば、私は予算委員会の中で徹底的にやらざるを得ない。あたりまえですよ。国民のために事実を明らかにすることは私どもの責任だと思うんです。  あなたは部下を信用できないのかな。どうなんです。どうもぼくが言うこととあなたの言うことと違うな。どういうわけで違うんですか。部下を信用できないというふうにお伺いしてよろしいですか。

奥野誠亮自由民主党法務大臣

○奥野国務大臣 私は、われわれの社会は人権を特段に尊重する社会だと考えているわけでございまして、いずれとも最終的な判断ができていないものにつきましてとかくのことを私なりに申し上げることは、そういう意味合いからも特に慎重でなければならない、こう思っているわけでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 これ以上言っても、あなたの方としても言えない点があるでしょう。  あなたのことを世間では——大変失礼なことを聞きますよ。失礼なことを聞くのをひとつお許し願いたいと思うのですが、あなたが田中角榮氏に非常に近い人だ、あるいは田中角榮氏の、何というのか、親密というのか、そういう意味のことを言う人がありますね。それは御存じでしょう。それは新聞社が勝手に言っているんだといえば勝手かもわからぬけれども、あなたと田中角榮氏とは一体どういうふうな御関係なんでしょうか。それをやはり国民の前に明らかにする必要があるんじゃないでしょうか。  それと、この前の——私はこんなことを聞きたくないんですが、前尾さんの百カ日か何かのときに、報ずるところによると、わざわざ田中角榮氏のところまであなたが行って握手を求めて、何を言ったのか知らぬけれども、まあ激励したのか何か知りませんが、そういうことをしたということも伝えられているわけですね。そういう事実もあるのでしょうか。これは余り聞きたくないんですけれどもね。余りプライベートなことは聞きたくないんですけれども、しようがないから聞くんですけれどもね。そういうところはどうなんですか、あなたとしては。

奥野誠亮自由民主党法務大臣

○奥野国務大臣 私は田中内閣の文部大臣を務めました。そういう関係にございますし、また、自由民主党の国会議員皆お互いに理解し合っているつもりでございます。  前尾さんのところで献花をいたしまして、私は、ちょっとほかの用事を持っておったものでございますから、遠回りをして外へ出たのですけれども、そのときに行き違いにお目にかかったわけでございまして、私が握手を求めに行ったということじゃございませんで、行き違ったということでございます。もちろん、どこで会いましてもあいさつを私はすべきものだ、こう思っております。お互い自由民主党の者同士、一層理解を今後とも深めていかなければならない、こういう気持ちは持っております。しかし、国務大臣として私がいささかも私心を差しはさんではならない、社会公共のために挺身していかなければならない、私は常にそういう気持ちを繰り返し繰り返し自分なりに反省をしながら職務を担当しているつもりでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 いま失礼なことを聞いたんですけれども、それはお許しを願いたいと思うんですが、同じ自由民主党の党員だと言うけれども、あの人はいま自由民主党の党員じゃないんじゃないですか。ちょっと違うんじゃないですか、事実が。事実誤認だよ、それは。実際は党員かもわからぬけれども。私は立ち入ったことを余り聞くのはいやなんだけれども、それは違うね。  そうすると、これもまた失礼なことですが、あなたが法務大臣になられて約二年近くになりますね。いろいろなことがあったわけですが、そういうふうな中で、あなた自身の法務大臣としてのいろいろな御経験から見た約二年間のいろいろな感想といいますか、そういうふうなことを差し支えなければお聞かせ願いたい、こういうふうに私は思うのですが、どうでしょうか。

奥野誠亮自由民主党法務大臣

○奥野国務大臣 法務省の皆さん方、それぞれに最善を尽くして努力をしている、こう思っておりますし、また法務大臣と検察庁との関係につきまして、だれが法務大臣になれば事件がどうなるというようなうわさがときどき出されるわけでございますけれども、そんなことは全く関係がない。検察陣は社会正義実現のためにそれなりに最善を尽くしている、努力をしている、こう考えているわけでございます。また、仮に違法ではないにしましても、社会的に不適正と思われるような指示をしましたら、それがそのまま通っていく法務省でもない、これは確信をいたしております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 まだ質問がたくさんあるのですけれども、時間的に制約がありましてなくなりましたので、この程度でやめておきますが、ただ最後に、全然関係ないことですけれども、何というか、気休めと言ったら言葉は悪いのですけれども、民事局長と刑事局長にお尋ねをするのですが、いままでのことと全然関係ないことですよ。もう終わりですから、ひとつ軽く聞くわけです。  十二月二十九日、三十日、三十一日、これの扱いが刑事手続と民事手続と違うわけですね。だから十四日の不変期間の進行などにも関係してきますね。これはいまどういうふうに違っていますか。またその違う理由はどういうところにあるのでしょうか。民事局長と刑事局長、どうぞ。

中島一郎法務省民事局長

○中島(一)政府委員 突然のお尋ねでございますので、十分なお答えができるかどうかわかりませんけれども、十二月二十九、三十、三十一日につきましては、これは休日との関係でお尋ねがございましたけれども、いわゆる休日ではない。したがって、開庁と申しますか開庁と申しますか、そういう関係から申しましたならば役所は開庁が原則であろう、こういうふうに考えております。  その現在の取り扱いでありますけれども、日本の社会の風習といたしまして、正月を迎えるに当たって年末の始末もいろいろある、いろいろ整理をするようなこともある、周辺を清めて正月を迎えるというようなこともありますので、特別休暇というようなことになっておる例が多いかと思います。  民事関係についての二十九、三十、三十一日の取り扱いでございますけれども、裁判所では、したがいまして、不変期間その他については二十九、三十、三十一日を算入する、こういうことになろうかと思うわけでありまして、期間が影響してまいります事件等につきましては、その間の受理をするということで支障のないような扱いになっておるのではなかろうか、私、直接の所管ではございませんけれども、そういうふうに理解をいたしておるわけでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 刑事局長、刑訴法の五十五条を見てごらんなさい。どうしてそういうふうになっておるのだろう。民事と刑事はどうしてここは違うのですか。ぼくにはわからないのだ。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 条文は存じておるわけでございまして、一月の一日、二日、三日と年末の二十九、三十、三十一日は期間に算入しないということになっておりますが、その差はなぜかということになりますと、突然のお尋ねでございまして、ちょっとまとまったお答えができない状態でございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉委員 突然のお尋ねでまとまったお答えができないことはいいのです、だから軽く質問してと言っておるのですが。それはわからないですよ、ぼくも。実は私も疑問に思っておりまして聞いてみたのだが、どうもよくわからない。時効には算入しないでしょう、刑事の場合。そうすると、不変期間が刑事の方では入らないわけだから、それは飛ぶわけでしょう。民事の場合はこれは入っちゃうわけですよ、そういう条文はありませんからね。どういうわけでこういうふうになっているのか、きょうはいいけれども、これはよく研究しておいてくださいね。  矯正局長、それから保護局長にいろいろ聞きたいことがほかにもいっぱいあるのですけれども、別の機会にしましよう。  きょうはこれで終わります。

高鳥修自由民主党

○高鳥委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時五分休憩      ————◇—————     午後一時三十六分開議

高鳥修自由民主党

○高鳥委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。質疑を続行いたします。小林進君。

小林進日本社会党

○小林(進)委員 私は、きょう三時間の時間をやらせてもらうというので、三時間を予定して段取りをしてきたわけです。私の質問時間は何ぼだ。——それならばはしょらなければいけない。  私は、前段において法務大臣に実は三十分だけ御質問するつもりだった。はしょられましたから、私は残念ながら質問をやめますけれども、私は一応警告をしたいと思うのですよ。  あなたは前回も、例の靖国神社なり憲法改正の問題について、質問に答えたというのだが、法務大臣ではなくて個人として、そういう前置きをつけられた。これはあなたの答弁の非常にずるいところです。いつでも前置きをつけて、逃げ道をつくってそういう答弁をされる。今度の例の榎本三恵子さんの証人の問題でも、一般論として、こういうことは非常にずるいやり方です。同時に、閣僚あるいは総理大臣以下が皆あなたのまねをして、これからは総理大臣じゃない、一般論としてあるいは個人としてと言って政治家が無制限に放言をされたら、一体国の行政秩序はどうなりますか。私はこの前にもあなたに憲法論のときに申し上げた。うちの中にいようと寝ていようと寝巻きを着てあぐらをかいていようと、法務大臣という身分がある限りはあなたの発言は法務大臣として責任を持たなければだめですよ。さもなければ世の中の秩序は混乱いたします。  今度の榎本三恵子さんについても、一般論として人の道云々というのは、これは大変ひきょうな答弁です。榎本女史がいわゆる裁判所に証人として立たれた。その次の日に、ジャーナリスト以下関係者が、この問題について具体的に法務大臣の御意見はいかがですかということに対して、あなたは法務大臣としてではない、一般論として言ってさっと逃げられたが、聞いている者は一般論を聞いているのじゃないのです。榎本三恵子それ自体の証言についてあなたに意見を求めているのですから、一般論と後へ言葉をちょっとつけてうまく逃げたという気持ちでおられても、国民はそうはとらない。とらないのがまたあたりまえです。もう内閣改造ではあなたもおやめになりましょうから、その後はひとつ一般論でもよろしい、あるいは国会議員としてでもよろしい、自由自在にしゃべっていただきたいが、このけじめだけはきちっとつけていただかないと、行政の秩序が乱れて困ります。時間がないからこれだけ私は申し上げておきます。  それから、いま一つこの問題に関連して、五十一年、私が予算委員会の理事をやって、そこでロッキード問題を取り上げて、そして例の全日空の若狭得治以下の諸君を偽証罪でひとつ訴えようということで予算委員会で採決をしたときに、あなたは色をなしたと言ってはちょっと大げさかもしれませんが、予算委員会へ飛び込んでこられて、そういう不当な採決は許すべきじゃない、あなたにしては珍しく興奮をせられて、怒り心頭に達したような形相をしながら、いよいよ委員会が再開をされたら、その場所を憤然として出て行かれた。出て行かれませんでしたか。私はいまでもあなたのあの恐ろしい形相がまぶたの底に浮かんでくるんでございまするけれども、あのときの心境は一体何であったのか。まあ私どもの非公式なる仲間の話では、いわゆる若狭得治はあなたと東大時代同級生だった、仲間を守るために、彼は憤然としてこの国会、立法府のあり方に対する反撃を加えたのであるという風評になっておりまするが、お差し支えがなければ、この問題もひとつお聞かせを願いたいと思うのであります。

奥野誠亮自由民主党法務大臣

○奥野国務大臣 前段の点は、御意見を心にとめさせていただきたいと思います。  後段の問題は、少し記憶を呼び起こしまして、率直にお答えをさせていただきたいと思います。私、当時予算委員会の委員でございまして、午前中で休憩に入っておりました。国対の事務局に行きますと、そのまま流れるんじゃありませんかということでございました。そうしたら呼び出しがかかりまして、予算委員会に出席をいたしました。そうしますと、野党の方々はみんな着席しておられるにかかわらず、与党は私一人でございました。その後一人、二人とはやってまいりました。どういうことをこれからやるんですかと聞きましたら、若狭証人を偽証罪で告発する決議をするんだということでございました。それならそれで、若狭証人が偽証罪に当たるか当たらないか、与党で委員が集まって説明を伺い、十分な審議をしてから委員会に出席するのが普通じゃないか。何にも言わないで、野党の方だけが全員着席しておられる、与党はだれもいない、しかも何の審議が行われるかも知らされていない。われわれは人権を一番尊重する政党なんだ、にもかかわらず、人権に触れる偽証罪の告発、そんなことを事前に話もしないで決議だけに参加させるのかと、私は息巻いたことは事実であります。  そこで、与党の委員だけが別室に集まって一応相談をしようじゃないかということになったわけでございました。説明はございました。皆さんから大変な反発がございました。だんだん時間が過ぎていきまして、結論として、野党の方々がお待ちいただいている、もうこれ以上待たせるわけにはいかない、だからとにかく委員会を開かせてくれ、そのかわり与党の皆さんが出席しようと欠席しようと自由だ、また出席しても、賛成しようと反対しようとそれも自由だ、とにかく開かせてくれ、こういうことになったわけでございました。そういう経緯でございますので、私は出席をしないで帰ったわけでございました。率直な経過でございます。

小林進日本社会党

○小林(進)委員 ではこの問題は、若干私とあなたの間に行き違いがあったようでございますから、いまの大臣のお答えは、それを素直にひとつ承っておくことにいたしまして、この問題はまた改めて論ずることにしまして、きょうの議題であります丸山ワクチンの問題に関連して、これは法務委員会ですから、これが人権問題と絡んで一体どういうふうに法務大臣並びに関係者がお考えになっているか、そのことからひとつ問題を掘り下げて御質問をいたしたいと思うのであります。  時間がないから、私はこれだけみんな用意してきたんですが、飛ばさざるを得ないのですが、第一番目に申し上げたいのは、篠原一教授を長とする丸山ワクチンの製造認可の促進を請願する患者、家族の会、この方々が声明書を出しあるいは要望書を送って、厚生省へしばしばおいでになっている。それによりますと、中央薬事審議会の中の医薬品特別部会の結論は、調査会の見解を是認するもので、ワクチンを使っている患者、家族としては絶対に承服できない。調査会の判定は不公正、不当なものであることは、後藤東北大学教授の異議申し立てなどで社会的に明らかになりつつある。このような不当性に目をつぶり、丸山ワクチンの有効性に対して現在のがん治療に丸山ワクチン以外に効果的な治療法を提示できるのかを問い詰めたい、こういうことを言っていられるわけですが、これに対して厚生省は一体どのような回答をお寄せになったのか、まずお聞かせを願いたい。

持永和見厚生省薬務局長

○持永政府委員 いま先生のお尋ねは、篠原先生を中心とする会に対してどういうふうに対応したかというお尋ねでございましょうか。

小林進日本社会党

○小林(進)委員 会に対してどういう回答をしたかということを聞いている。

持永和見厚生省薬務局長

○持永政府委員 篠原先生を初めとする丸山ワクチンの認可促進を求めた方々の会が何遍か厚生省にお見えになったことは事実でございますし、私もお会いしたことはございます。私がお会いしたのはすでに中央薬事審議会の答申後でございましたけれども、こういった促進の段階で、あるいは調査会の結論が出た段階でお見えになったというような事実も聞いておりますが、私どもといたしましては、こういった新薬の承認は中央薬事審議会の審議に厚生大臣が諮問するという立場をとっておりますので、その審議結果によって対処するというようなことでお答えしたというふうに考えております。

小林進日本社会党

○小林(進)委員 順次聞いていきますが、これは私は、相当支障がありますから名前は言いませんが、これはみんな特定の人が言っていることです。まず、中央薬事審議会は再考せよ、考え直せ。副作用が全くなく、まして試験結果として一部に数日でも数週間でも延命効果が見られるのなら認可すべきが当然であろう。投与せぬまま死に至ったときの家族の悔いや悲しみはずっと続くであろうし、また投与を受けて効果がなかったとしても、もって瞑すべきではないか。これは一つの大きな人権問題である。こういう投書が私のところに来ておりますが、どうですか、法務省、この丸山ワクチンの投与の問題について人権問題になりませんか。

鈴木弘法務省人権擁護局長

○鈴木(弘)政府委員 お答えいたします。  丸山ワクチンの医薬品としての承認の問題につきましては、厚生省及び薬事審議会等におきまして専門的な立場から、がん患者の中にその服用を希望する人たちがいることも考慮した上で慎重に検討されました。その結果、過日のような結論を出されたものと理解しております。また一方では、今後とも治験薬として希望者にその服用の道を残してあることも聞いておりまして、基本的人権の侵害という問題は生じないのではないか、かように思っております。

小林進日本社会党

○小林(進)委員 あなたは済んだとお考えになるが、私は順次聞きます。  また、私の敬愛する有名な病院長です。こういうことも言われている。全国の医療機関から有効であった症例を集め、これについて検討する努力がなされていない、これは厚生省に対する非難なんですよ。有効例の研究をやらないで無効と言うのは患者と家族に対して残酷であり無責任である、こういうことを言われているのでありますが、これは単なる非難でしょうかね。厚生省として責任をお感じにならないのかどうか、これをちょっとお答え願いたい。

持永和見厚生省薬務局長

○持永政府委員 丸山ワクチンを審査する薬事審議会の段階で、いろいろなデータを収集して、それに基づいて審議をしたという経過がございます。これはあくまで学問的、専門的な機関でございますので、いろいろな症例につきまして学問的立場からの評価がいろいろとあるかと思います。お出しになったデータの中には、そういった意味で、薬事審議会の評価と申しますか、学問的、専門的立場からやや症例としてとりにくいものもあったかというようなことを聞いております。そういう意味で、要するに、あくまで学問的、科学的な立場から評価にたえ得るものは、すべて資料として薬事審議会として審議の対象にしたというふうに考えております。

小林進日本社会党

○小林(進)委員 私はそのようにとっておりません。それは除々にあなたに御質問いたしますが、私は、人権問題として、このままこれを放置していいかどうかということを聞いているのです。いま一例申し上げます。これも有名な人なんです。  千人の中でたとえ三人が治癒されたとしても、一つの生命は地球よりも重いと言ってよい。動物実験を軽んじて使用したことが学界から異端視されたきっかけと聞くが、薬物が動物に一〇〇%有効でも、その比率が必ず人間に当てはまるとは言えず、その反対もあるという。精神、身体構造の顕著な人間と精神構造の異なる動物を同一視する現代薬学の欠点をもろにあらわした好例と言うべきである。薬の副作用は明白でも、動物実験を経て形式さえ整えていれば新薬として認可されるなど、人間が究明してきた科学を人間性疎外とも言える思考の根拠にする審議会体制に怒りを感ずると言っているのです。  私もこれは全くもっともだと思うのです。高度の動物である人間に巣くうがんを、動物と同様な実験で結論を出すというのは無理じゃないかと私は思うのです。こういう点について厚生省は一体どうお考えになっておりますか。人間は動物と同じですか。どうです。

持永和見厚生省薬務局長

○持永政府委員 先生御指摘のような見解もあることは事実だと思いますが、薬というのは、先ほど来申し上げておりますように、あくまで科学的、専門的なものでございます。したがいまして、薬の承認に当たりましては、承認のための一定の基準というものをつくらざるを得ないわけでございまして、これは世界各国共通のようなことになるかと思います。  その場合に、現在、薬の承認につきましては、まず基礎的な試験あるいは規格、そういったものを明確にするという、いわゆる基礎研究の部類に属するもの、それから次に、薬でございますからいろいろと副作用もあることでございますし、そういう意味合いでまず動物を対象として実験をする、その後に、動物実験である程度安全性が出るということであるとするならば、そこで一般臨床試験あるいは比較臨床試験、そういった人を対象にした試験を行いまして初めて薬の安全性、有効性を確認していく、こういうような手順で新薬の承認を行っているというのが事実でございまして、そういった手順は、科学あるいは学問の立場、あるいはまだ安全性も確保されないうちから動物実験の立場で人に対してそういう実験をするというのはいろいろ問題があろうかと思いますので、まず動物を対象にしてそういった実験をした上で、その後、人間を対象にした臨床実験をやる、こういう手順で薬の承認をやっているのというが事実でございます。

小林進日本社会党

○小林(進)委員 あなたはいみじくも認可をする順序を言われたが、それをみんなやっていますか。比較をしていますか。動物実験もやったものだけを認可しておりますか。ないものがあるでしょう。後で言いますよ。あなたはそんなりっぱな口を聞いているけれども、われわれの方から見たら、大企業と厚生省と癒着しているなと思うようなところには、いまあなたが言ったような順序を経ないでちゃんと認可しているのがあるじゃないですか。まだこれはいま序の口だから、だんだん言いましょう。  そこで法務大臣、これは人権問題として私はお伺いする。  丸山ワクチンの問題になりますと、なかなか法務大臣も御理解が深いようなので、私も質問するのが楽なのでありますけれども、従来の医薬品をめぐる争いが副作用を中心とするものだったのに対し、この丸山ワクチンの論争は、患者の側から有効だから承認せよという、患者が挙げてこれを承認せよという、有効性をめぐって論争が続けられておる特異な性格を持ったものであります。この問題には、患者の自己決定権として、薬ないし医療的処置を選ぶ自由が認められているはずであります。さらに薬品の安全性及び効能についての国の責任がどうなっているか、この問題も含まれている。問題は二つであります。  そこで、法務大臣にお尋ねするのですが、一人の患者が、もはや通常の療養では万策尽きた、末期的症状の患者が最後の頼みとして丸山ワクチンを打ってくれ、たとえ効能の証明がされていない薬であろうと自分はその注射を受けて死んでいっても満足だ、受けることに最後の希望を寄せているのだからひとつやってもらいたい、そういう願望があります。これが拒否されたとすれば、断られたとすれば、この患者の権利は一体どうなるのか。自己決定権と称する固有の権利がある。この権利はどうなるのか、私はこれをお伺いしたい。どうです。

奥野誠亮自由民主党法務大臣

○奥野国務大臣 御承知のように、行政権の行使については内閣は連帯して国会に責任を負うというたてまえになっておりますので、その点はまず御理解をいただいておきたいと思います。  そういう立場を離れまして、私も、副作用がないじゃないか、非常にたくさんな人たちがこれを利用しているじゃないか、そして早く認可を欲しいということを熱望しているじゃないか、やはりこたえてあげてほしいなという希望を持ち続けておったわけでございます。今回の決定も、先ほど話がありましたように、さらに有効性の確認に向かって努力をしていく、その間治験薬としてこれの供給を続けていくというような体制がとられておるわけでございますので、依然として若干の不自由さを伴うわけでございましょうけれども、患者の希望が拒否されてしまったわけでもないというふうに存じているわけでございます。

小林進日本社会党

○小林(進)委員 私は、これは人権問題として、どうも違反しているのじゃないかという気がするのでお尋ねしているのですが、患者は医者を選び、薬を選ぶ権利を持っている。先ほども申し上げましたように、これを学者は患者の自己決定権、こういう名前で言っているのですが、いま日本にはこの丸山ワクチンの治療を受けたいという患者が、これはいま大臣もおっしゃったとおりです。驚くような数字に達している。  十月十九日、これは毎日新聞の全国世論調査によりますと、次のように出ているのであります。すなわち「あなたやあなたの家族が、もし重いがんになった場合、たとえば「丸山ワクチン」のようなものを使いたいと思いますか」。これに対し、丸山ワクチンを使いたいと思う六四%、思わないというのはわずかに八%です。これは末期がんになったとき、医学的には未公認の、公認されない療法を受け入れるかどうか。丸山ワクチンは未公認なんです。それに対してあなたはどうですかという無差別のこの世論調査に対して、未公認でもよろしい、それを使いたい、それを使って死にたいという人が六割以上も占めているというようなことは、実に驚異的な問題ではないかと私は思うのであります。よいものは何でも試みてみようという末期がん患者や家族のわらにもすがる思いの反映であります。これを拒否するのは私は人権の侵害であると思います。人権の侵害であると思うが、この点はどうですか、人権局長。

鈴木弘法務省人権擁護局長

○鈴木(弘)政府委員 薬品一般につきましては、やはりその有効性、有害性がないかというようなこと、それの基準を決めて認可をするかどうかが定められるのだと思うわけでございます。どんな薬でも患者が必要だと言えば直ちに応じなければならないというものではないと私は思っております。ただ、この丸山ワクチンにつきましては、専門家が鋭意検討され、しかもなお、これは推察でございますが、厚生省あるいは薬事審議会におきましては、先生先ほどおっしゃいましたような、患者のわらにもすがるような気持ちあるいはその身辺の者の気持ち、さらには国民感情というようなものも踏まえて、いろんな角度から考えて過日の決定がなされたものだと思っておりますので、こういうものを総合いたしますと人権侵害とは言えないのではないか、かように思っているわけでございます。

小林進日本社会党

○小林(進)委員 あなたの答弁は私はどうも満足できませんが、今度はひとつ厚生省にお伺いしますよ。  薬を、中央薬事審議会だとかあるいは常任部会だとかあるいは特別部会だとか調査会だとかいうような、調査をして、そしてそれを認可をするときには認可証、その認可証には必ず末尾について回ってくる文章がある。それは何かというと、本剤使用について強い要望があるのでこれを決定したあるいは認可した、こういう文章が必ずついているのであります。その一例を読み上げますよ。何の薬だとは言わぬけれども、一例を挙げると、「臨床の側において作用機序の特異な本剤使用への強い要望があることを考慮し、特別部会の審議相当を決定した」、ちゃんとこれ認可証に書いてあります。私がいま読み上げた文章はどの薬につけたんだか、おわかりでしょう。どの薬です。

持永和見厚生省薬務局長

○持永政府委員 先生御指摘のものは、ピシバニールという薬だと思います。

小林進日本社会党

○小林(進)委員 そのとおりです。ピシバニールにはそのとおり、こういう強い要望があることを考慮して、これを特別部会へ上申したということを言っている。なら、これに比較すれば一体丸山ワクチンはどうですか。過去十三万人が、これの恩恵に浴しているという言葉はどうか知りませんが、恩恵に浴している。現在でも三万人がこれを使用している。重いがんになれば日本国民の六四%がこの注射を使用したいと言っている。これはピシバニールなどなどとは比較にならぬような前代未聞の強い要望がいま山野に満ち満ちているじゃないですか。しかるに、この丸山ワクチンに関する限り、国民の願いが考慮されない。少しもこういう文章がいわゆるさかのぼって症例として活用されていない理由は一体どこにあるのだ。余りにもその取り扱いが不公平であると言わなければならぬが、法務大臣どうでしょうか。不公平じゃないでしょうか。私は不公平であると思いますが、いかがでしょう。

持永和見厚生省薬務局長

○持永政府委員 大臣お答えになる前に、ちょっと事実関係だけ、私から御説明申し上げておきます。  いま先生御指摘のございましたピシバニールにつきましては、確かにそういう条件がついております。薬事法の上で、薬の承認をいたしまする際に条件をつけることがございます。これはあくまで、申請資料から薬としての有効性、安全性、そういったものは確認されましたけれども、その後におきます保健衛生上の危害発生防止の観点から、言うなればその副作用報告を義務づけるというような形での条件でございます。丸山ワクチンの場合には、先生も十分御承知のとおり、中央薬事審議会の答申そのものが、申請されたデータからは現在の段階では有効性が確認されなかったということでございまして、薬事法の上で、有効性の確認されないものについては厚生大臣は薬の承認をしてはいかぬという規定がございます。したがって、そういう規定によりまして承認できないという、こういうような事実関係でございます。

小林進日本社会党

○小林(進)委員 私はいまのあなたの答弁にも物を言いたいことがございますが、またこれは次の機会に譲りましょう。先を急ぎますからね。  これはアメリカにおいても、がんの薬レートリルについて長い論争が続けられている。これは州の連合裁判所においても裁判になったり、最高裁まで行ったりして争っている。これらの論争や裁判から見て、丸山ワクチンに関する限り、患者がこの薬を使わせてほしいという権利を承認するかどうかがこれは出発点なんだ。いかなる医療処置を受けるかは患者みずからが決定し得ることであることは先ほども申し上げました。いいですか。ただし、この権利は不可侵であり何の制限もないというわけにはいきません。これはあなたたちの立場はわかっている。医師からやっぱり症状、処置について十分説明を受ける権利を患者は持っておりましょう。医師には説明の義務がありましょう。医師は十分の説明をした上に患者の選択を重んずべきが私は近代医療の権利義務じゃないかと思っている。いいですか。この点どうですか。  そこで、この医師の説明義務によって患者は選択する権利がある。一方、欠陥のある医薬品は、これは命や健康にかかわるものだけに、医薬品については国の責任だ。これはあなた方にも責任がありますから、薬事法による医薬品の製造販売の承認制度としてこれが実現されているわけです。ところが、国の責任においてやったその薬がどうだ。はなはだしいのはサリドマイドとかキノホルムだ。何百人も殺しているじゃないか。一方にそういうような残酷な責任のとり方をしておきながら、丸山ワクチンについては副作用は全然ない。全然ないことは国の責任においても明らかにしているじゃないか。そうすれば、いま丸山ワクチンにおいて争われている問題点は一点だけだ。それは何だ。いわゆる効能の有無に関する問題ですよ。効能があるかないかという問題、これ一点なんです。  副作用は一つもない。これについて、効能が仮にゼロであるという調査会の結論に従ったとしても、精神的な効果を含めた何らかの効果があらわれていることは、これは全国で十数万とあるじゃないですか。効果があるということが明らかになっている。これはもう否定できないんだ。しかも、患者の七割近くから何としてもこれを注射をしてもらいたいという強力な要望があるとすれば、いま出ているものは全部プラスで、マイナスは一つもない。マイナスがあるというのならどうぞ教えてもらいたい。ならば、私はいままで言ってきた論調からいってもこれは認可するのが至当じゃないかと考えるのですが、どうですか。

持永和見厚生省薬務局長

○持永政府委員 先ほど来申し上げておりますように、現行の薬事法では、医薬品につきましては、有効性が確認されない限り厚生大臣はこれは認めるわけにはいかない、こういうたてまえになっておるわけでございまして、まさに先生御指摘の、丸山ワクチンについては有効性の問題が中央薬事審事会でも議論になったわけでございまして、現在の申請データでは有効性を認めることはできない、こういう結論が出たわけでございます。  ただ、私どもといたしましては、審議会の答申はそうでございますけれども、先ほど来法務省の方からもいろいろお話ございました、先生がいろいろと御指摘になっている、国民が現に使っている、がんの患者さんがそれを使っているというような実態はそのまま受けとめて、現在私どもとしては、これを治験薬として、なるべく早く国民の方々が、いま患者の方々が日本医大へわざわざ取りに行っておられますけれども、そういうことがないような形で、治験薬を郵送の形でやるというようなことで、いま関係者と話を詰めている段階でございまして、そういう意味で患者さんには迷惑をかけないようなことを考えておるつもりでございます。

小林進日本社会党

○小林(進)委員 私はそういうごまかしのやり方が気に入らないんだ。あなた方のやっているのは、これほどの世論に背を向けられなくなって、実にひきょう千万なごまかしのやり方だ。それはだめだと私は言っているんだ。  次に、そのたびに質問するが、丸山ワクチンと同種類の免疫療法剤であるピシバニール、クレスチンの認可についてお伺いいたしますが、この認可についてお伺いする前に、いまあなたの言葉に、黙って聞いていると何か理屈が、筋が通ったようになるから私は言うんだが、その有効性が認められなかったということで、適当な資料を有効性ありとして提出した東北大学の後藤教授、あるいは愛知がんセンターの中里博士、またこれを裏づけする佐々木研究所の佐藤博士、こういう方々が有効性ありとするデータを、あなた方はみんな没にしたじゃないか、あるいは、その資料を皆曲げて、有効というものを無効にしてみたり、いろいろこれをおかしくしたから、後藤教授は二回にわたって抗議の申し入れをし、あるいは中里博士は一回でありますが、異議の申し立てをしている、こういう事実がある。あるから、私はここへその三人の学者を参考人として呼んでいただきたいと言うのだけれども、きょうは呼んでいない。時間が足らないとか、委員長の力があるのかないのか知らぬけれども、呼んでないのだ。だから、これは改めてこの三人の人たちを呼んでもらわなければならぬけれども、彼らはみんなあなたのいまの証言を覆しているんだ。だから、そういうあなたの答弁を黙って聞いているわけにはいかぬ。  そこで、次の問題について引き続きお尋ねするんだが、ピシバニール、クレスチンの認可するまでのいわゆる資料を、私は何回あなた方に要求したか。あなた方は資料を公開すると言っているのだから、私は繰り返し要求したのだから資料を持ってきてもいいにもかかわらず、今日なおナシのつぶてじゃないか。持ってこない。  持ってこないで、あなたたちはわれわれの手の届かないところでもっともらしい発表をしているが、それによると、ピシバニールの有効率は、これは厚生省の公開した資料なんですが、胃がんに対しては二一・九%、肺がんには三五・三%、乳がんに対しては五〇%などで、平均して三六%の有効率があると言っているが、これは間違いないか。もしこれが間違いないならば、一体この資料はどこから出たのか、明確にこの資料の出方から明らかにしてもらいたい。

持永和見厚生省薬務局長

○持永政府委員 専門的な問題でございますので、担当の審議官から答えさせていただきます。

新田進治厚生大臣官房審議官

○新田説明員 お答えいたします。  御案内のピシバニールの有効率でございますが、これは先ほど来局長から申し上げておりますように、医薬品の承認申請に当たりましては、申請企業から、臨床実験のデータを収集いたしまして、そして提出をしてくるわけでございます。その資料について、薬事審議会の専門学者によりまして総合的な評価を行うわけでございます。その資料の中で専門家によりまして各データについて評価をされた結果が、先ほど先生が御発言になりましたような有効例になっております。たとえばピシバニールの場合でございますと、平均三五・六%の有効率になっております。

小林進日本社会党

○小林(進)委員 現実にわれわれが接触しているこういうメーカーの幹部は、この自分たちの薬に対して、どれほどの量がよいのか、最も効果的なのはどれくらいなのか、全国の病院で学問的アプローチを続けている最中ですと言って、その数字は実に信頼に足らないものであることをみずから言っているのだ。  また後ずっと続けて言いますよ。いま学問的にその有効率を研究中だというピシバニールは、二日で一回、一カ月投与を受けると大体二十一万から三十万ぐらいかかる。現在の売り上げだけでも二百億もいっているという状態なんです。  次のクレスチンは一体どうだ。クレスチンについても厚生省はこのデータを公開している。クレスチンの縮小効果は、胃がんが一九・六%、肺がんが一九・六%、乳がんが三三%など、平均二一・五%になっておる。そうして、審査をパスするには有効率二〇%をめどにして行っているということも厚生省はつけ加えている。一体この数字に間違いないのか。間違いがないならば、いま改めてこんなものを学問的に研究する必要はない。なぜ一体研究をやっているのか。この数字の出どころと、間違いがあるかないか、ひとつ言ってもらいたい。

新田進治厚生大臣官房審議官

○新田説明員 調査会におきまして制がん剤の効果判定の審査に当たりましては、日本癌学会のがん治療判断基準というのがございまして、その基準に基づきまして腫瘍縮小効果に着目して行われております。  いま二五%という御案内の数字が出ておりますが、これについては、その基準の中で二五%を上回る腫瘍の縮小またはがん性胸膜炎の胸水及びがん細胞の完全消失が認められた例のみを有効例と判定しております。したがいまして、このクレスチンの場合は、自覚、他覚症状の改善、延命効果だけではなくして、その腫瘍縮小効果を見て判定をしておる、こういうことでございます。

小林進日本社会党

○小林(進)委員 局長、君はいまの説明で、いいかね。そういう説明に裏づけする資料を何回持ってこいと要求した。何回私は繰り返し要求した。ついに一回も持ってこないじゃないか。いまも数字を挙げて言っているだけの話だ。一体だれがどこでどんなぐあいに調査研究して、その結果があらわれたのか。その資料を公開してください。届けてください。今度は大丈夫ですな。今度持ってこいと言って持ってこなければ、承知しませんよ。

持永和見厚生省薬務局長

○持永政府委員 いま先生の御要望のありました点、それに沿うようにさせていただきます。

小林進日本社会党

○小林(進)委員 厚生省からそれを見せていただいて、私はそのインチキ性を全部反論させてもらいます。  ともかく、さすがに丸山ワクチンには厳しい批判をしている朝日新聞も、八月十六日にはこういうことを言っているのだ。「ピシバニールやクレスチンが年間約二、三百億円」、これは間違っている。実は両方で六百か七百億円くらい売れているのでありますけれども、それが副作用が少ないため気休めのために使われているのだと言われている、朝日新聞はそう言っている。それならば、ピシバニール、クレスチンの再検討をするのが筋ではないか、こう言っているのだ。あなた方はこれも何もやらないで、いま私から見れば全くでたらめに等しい数字だけを挙げて、こっちの方だけを一方的にちょうちん持ちをしているとしかとれないような姿勢を示している。  それならば、ここで私は論法を切りかえて御質問しますが、皆さんはまだ丸山ワクチンは不認可だ、そうでしょう。不認可だけれども治験薬として人に入れることは認めるというだけで、不認可には変わりがない。その丸山ワクチンを、不認可なものを治験薬として認めるというのはおかしいじゃないか。なぜ認めるのです。  いま、厚生省が四十六年から医薬品の再評価をおやりになっておりますな。この十年間に約六百品目の薬が、有効性を確認できないといって薬の資格を取り消されている。私どもから言わしめれば、十年間で六百、薬の数は一万数千ありましょうけれども、六百も効かない薬をよくも厚生省は認可をしたものだ。ただ驚くばかりだ。ところが、審議官なんかを呼んで聞くと、いや、薬は日進月歩でありまして、年々歳々進歩しておりますからだんだん効かなくなる。そんな理屈が通りますか。冗談じゃないです。服装ならば毎年毎年スタイルが変わってくる、流行が変わってくるならいいけれども、薬が流行と同じで、効き目が年を置いて効かなくなるなんという理屈を、よくもそんなことをずうずうしく言われると思う。そういうふうに理屈をつけながら、無効の薬を六百も七百も、それを全部いわゆる回収をしたり取り消しをしておきながら、一度も薬として認めたものでない丸山ワクチンをこのままのあいまいな状態にしておいて、患者に注射を続けさせるから実情において支障がないだろうなどという理屈が一体わが日本の、先進国の中で通っていいんですか。あなたはこれが当然だとお考えになりますか。  法務大臣、あなたは眠たいかもしれませんが、どうですか。認可をしていた薬をいままで効果がないと言って六百も七百も全部取り消しをしておいて、一回も認可もしない、薬でないものを、いわゆる治験薬という名前は別にしておいても、これを使うことを許可するなどという行政が一体世界のどこにありますか。あったら教えてください。

持永和見厚生省薬務局長

○持永政府委員 丸山ワクチンを治験薬として使うということ自体について、今回私どもの方で、現在関係者の間で詰めておりますやり方というのは、これは先生御指摘のとおり、ある意味では異例のものでございます。ただ、私どもといたしましては、一つは中央薬事審議会からの答申が、先ほど来申し上げておりますように、申請されたデータをもってしては現在の段階で丸山ワクチンの有効性を確認することはできない、こういうような答申がございましたが、その中で附帯意見がついております。これも先生篤と御承知のことと思いますが、薬事審議会で附帯意見がつきましたのもまた異例なことであります。  この附帯意見によりますと、この丸山ワクチンの本質である人型結核菌体、これにつきましては無効と断定するわけにはいかないので、以下こういうような試験研究を続けなさいということになっております。治験と申しますのは、試験研究の一環としての臨床試験の方法でございます。その附帯意見の中にも臨床試験を続けて新しくデータの収集、整備をしなさい、こういうような部分もございまして、そういった形での臨床試験という形でこの治験を認めるということでございます。

小林進日本社会党

○小林(進)委員 そういう事務的答弁は、もう頭が痛いほど聞き飽きた。そんなものはへ理屈だよ。簡単に答えればよろしい。薬として認めないものを、それを治験薬としてあまねく日本じゅうに使わせることを了承して、りっぱな薬として認可したものを五百も六百も効力がないと言って全部これを否定して取り消しているような薬務行政が、これで満足だと思っているのか。これがあたりまえのやり方だと考えているのかどうか。私はそういうものを認めるわけにはいかないと言うのだ。そういうばかなことをやるのをやめなさいと私は言っているのだ。  時間がないから言いますけれども、次には、あなたが一生懸命ちょうちん持ちをしているピシバニール、クレスチンには一体動物実験は完全にやられたのか、丸山ワクチンに要求してやったのか、あるいは比較実験をやったのか、投与したものと投与しないものを比較してそれをやったのか。やっていないはずだ。

新田進治厚生大臣官房審議官

○新田説明員 動物実験につきましては、ピシバニールは例の連鎖球菌の菌体成分でございますので、動物実験は特に念入りにやられております。いま御案内の人における比較臨床実験は、ピシバニールの場合は単独で、一般臨床試験で有効性が証明されておりますので、比較試験はやっておりません。

小林進日本社会党

○小林(進)委員 そのとおりだ。あなた方は逃げの一方だよ、それは。何も信用できる御答弁じゃない。やっていないのはやっていないのだ、それは。時間がないから次へ行きますが、私はまだまだ了承したわけじゃないのですよ。  次に、がん集学的治療研究財団というのがある。この比較討論をすることについて、われわれの仲間である八田貞義代議士が、このがん集学的治療研究財団にこの丸山ワクチンの研究もその計画に加えるようにしてもらえないか、そうすれば自然と問題のクレスチン、ピシバニールと丸山ワクチンとの実際上の比較もできる、同一の土壌の中で比較もできるからこれをやってもらえないかということを、公文書をもって八月十四日、厚生大臣村山君のところへ要望書という形で出している。ところが、これを八田君に聞いてみたら、ナシのつぶてだという。返事一つないというのだ。一体何でその返事を出さないか。人がこれほど命に関する問題を真剣に取り扱って、公文書をもって厚生省にお願いしている。呼べば答える仲じゃないか。なぜ返事を出さないのですか。出せない理由があるのでしょう。

持永和見厚生省薬務局長

○持永政府委員 いま先生御指摘の財団は、私、薬務局長でございますけれども、医務局長の所管の財団でございますので、その理由については実は存じておりませんが、後で調べて御返事をさせていただきたいと思います。

小林進日本社会党

○小林(進)委員 できないような話を聞いているのじゃない。そのために副大臣を呼んでいるんだ。大石君、どうです、あなた御存じないですか。君、八田君が命がけで出した要望書だから、知らぬとは言わぬだろう。あなた方は都合が悪いとそういう形で逃げる。局が違うからないなんというのは、逃げ口上だ。

大石千八自由民主党厚生政務次官

○大石政府委員 その件につきまして私個人は存じませんので、それは調査をいたしまして後ほど御回答申し上げたいと思います。

小林進日本社会党

○小林(進)委員 大石君、あなたは政務次官だ、だから知らない。知らないが、こういう重大な問題はみんなあなた方に教えないで、官僚が全部これを処置しているんだ。そして、ともすると大臣やあなた方政務次官を盲にしちゃうんだ。その点をあなた、しっかりと腹の中に入れておいて、いま言った答弁を直ちに実行してください。これから先、まだ言いますよ。  なぜ一体彼らが回答文を出さないかという理由はあるんだ。出さない理由はあるのですよ。しらばくれているんだ。これは読売新聞の記事です。八月十九日の読売新聞の夕刊ですが、実にわれわれにとってはショックに値する記事が五段、六段、大きく載っているんだ。それはこれです。ごらんください。「ガン免疫療法剤 ピシバニール クレスチン 効能、二年がかりで“追試” 全国二五〇の病院で」、それが集学的治療研究財団。目的は何だ。丸山ワクチン絡みでこいつを抑えようという目的でこういう集学的治療研究財団が生まれているんだから、それはあなたたちが八田君の要求に返事ができないわけだ。  内容は一体どうかと言えば、「ガン免疫療法剤  ピシバニール クレスチン 効能、二年がかりで”追試” 全国二五〇の病院で 丸山ワクチン絡み注目集学的治療研究財団」とあって、八田代議士が一生懸命に厚生省に要望を出している集学的治療研究財団というのはピシバニールとクレスチンだけ、これだけの治療効果を手前みそにつくり上げようという財団なんだ。敵は丸山ワクチンなんだ、この財団は。その財団の中に丸山ワクチンの研究も入れてくれなんというのは、どうも敵にお願いに行くようなものだから、八田君も少し頭が抜けているけれども、あなた方の方が返事をよこさないのは、出せるわけがないじゃないか。あなた方はみんなそっちの方の仲間じゃないか。ピシバニール、クレスチンの仲間じゃないか。だから、そういうことになるとこういう国会議員の血を吐くような思いのものもみんな没にしてしまう。  しかもこの新聞記事によれば、いいですか、「ピシバニール、クレスチンの場合、こうした比較臨床試験データがないまま承認されたことから、最近の「丸山ワクチン論議」のなかで、厚生省に対しピシバニールなどの効能再評価を求める声が強くなっていた。」これは強くなっている。われわれも非常に強い。だから資料を持ってこいといって率直にあなた方に要求している。そこで、この要求をカムフラージュするためにこの財団をつくり上げた。  財団の内容はどんなものですか、それを説明してください。どんなものだか説明してください。知らぬとは言わぬだろう。ここで説明しなさい。

新田進治厚生大臣官房審議官

○新田説明員 先ほど局長が申しましたように、この財団の所管は薬務局ではないわけでございますが、その財団の設立目的は、あくまでも、がんのいろいろな治療法が現在医学界で用いられておりますが、その中で特にいまのがんの治療として最大公約数的な最善のがんの治療法を模索しようという目的のために財団がつくられたというふうに私は聞いております。

小林進日本社会党

○小林(進)委員 君、ぬけぬけとそういう人をこばかにしたような答弁するのはやめたまえ。そんななまやさしいものじゃない。君たちは承知をしてそういうずうずうしい答弁をするんだ。財団法人がん集学的治療研究財団、入っている薬メーカーはたった五社だ。五社でこの財団をつくっている。基本財産は幾らか、三億五千万円。その五社を名前を挙げて言うと、大鵬薬品工業、これはがんの薬のフトラフールを製造している会社、これが出資金一億五千万円、三共製薬、これはクレスチン、七千五百万円、呉羽化学、これもクレスチン、七千五百万円、中外製薬、ピシバニール、これは二千五百万円、協和醗酵、これが二千五百万円、合計三億五千万円をもって、厚生省と癒着していると言っては君らは気に入らぬかもしれぬけれども、君らと癒着している年間七百億、八百億、一千億売っているこの薬だけの効果を宣伝し、この聖域を侵してくるような丸山ワクチンその他を全部間伐しようという策謀のために生まれた、こういう研究財団と言っても過言ではないじゃないか。それをがんの研究のためにやっているなどという、人を子供扱いにした答弁をしてはいかぬよ。  それは、目的だけはなるほどりっぱにできている。がんの手術を中心とする集学的治療に関する研究を助成、援助するとともに、これに関する成果の解説、評価を行い、がんの最適治療を確立し、もって国民の健康の向上に貢献すると言っているけれども、自分たち五社の内輪でつくっているがんの薬の効果、それを発表、宣伝するというだけの仕事なんだ。そんなところへ丸山ワクチンも入れて研究してくれなんと言ったって受け付けるわけないじゃないですか。こういうことが現下に行われて、効きもしないがんの薬を一年間で七百億、八百億国民の患者から吸い上げて、そして社会に蠢毒を残しているというこの現実を、君たちに一片の良心があるならいま少しこれをちゃんとやりたまえということを言っている。  時間もないのにまだ私は質問の三分の一も終わってないんだ。時間が来たと言われるので私も困っているんだけれども、この問題はいま言いっ放しじゃない。厚生省は、薬務局だから医務局の仕事でこちらは関係ありませんなんてそういう逃げ言葉は許しません。ちゃんと資料を整えて出してもらいたい。いいですね。  次に、クレスチンの認可とレンチナンについて私はお伺いしたい。  クレスチンの認可は薬務局の審査課でやったと私は聞いているんだが、同じワクチンであるにもかかわらず、その取り扱いを審査課と生物製剤課と区別してやっている理由は何なのか。あわせて、クレスチンの認可については条件がついて認可されていると聞いているんだけれども、どんな条件がつかされているのか、それもひとつ教えてもらいたい。

新田進治厚生大臣官房審議官

○新田説明員 まず、ピシバニール、丸山ワクチンが生物製剤課で、それからレンチナンが薬務局審査課で所管をしておるということにつきまして御説明申し上げます。  丸山ワクチンとか先ほど申しましたピシバニールは、細菌、特に微生物から抽出した成分でございます。レンチナンは、微生物じゃなく、化学的に合成をした化学品だということで、そういう仕分けで担当所管を分けております。したがいまして、今回承認申請をされましたレンチナンについては、薬務局審査課が窓口で承認申請を取り次いでいる、こういう関係でございます。  それから、クレスチシ、ピシバニールの条件つき承認につきましては、条件つき承認というのは、承認するための基本的な条件でございますところの医薬品の有効性、安全性に関しまして申請資料から確認された場合、そのときには薬事法上医薬品が承認されるわけでございますが、そのものについてさらに保健衛生上の問題がある場合に・は条件が付せられることになっております。たとえば、具体的な例を申し上げますと、医薬品は必ず有効性と安全性の面で副作用が大なり小なりあるわけでございますが、そういう発売後のフォローアップをいたしますために副作用の情報収集の義務づけをする、こういうふうな条件づけがございます。

小林進日本社会党

○小林(進)委員 それも、クレスチンにつけた条件も、あなた方の専門だから資料として提出してもらいたい。こっちで研究します。  最近、味の素が、いま審査課でやると言われたレンチナン、これががんの治療薬を発見したということで治験者に対して莫大な金をばらまいているということを聞いている。頻繁にわれわれのところへ投書が来ている。時間がないから残念ながら言いますけれども、これも調査の上でひとつ報告してください。  もう時間が五分しかないから、最後にこの一問だけを言って、あとは次の機会に譲ります。  丸山ワクチンのフェノール含有量と吉利和博士だ、何とか大学の名誉学長か何か知りませんが、この問題について私は実に了承できない憤りを感じておる。丸山ワクチンに対する最初の非難は、あなた方もそうだ、動物の実験がないとか、正規の学会に対する承認を得ていないとか発表がないとか、いろいろなことで丸山ワクチンを非難、捏造をしてきたが、最近はその一つ一つを爆破されて単なるデマにすぎないということがわかってきたら、最近の丸山ワクチンに対する非難の方向が変わってきた。その変わってきた理由は何であるかというと、これが吉利和という浜松医科大学の学長だ、中央薬事審議会医薬品特別部会長だ、昭和五十年にこの部会長に就任している、調査会の一つランクが上だ、この人が、丸山ワクチンが規格がおかしくて、試験をしている人に渡されているものと申請しているものが違うのですよという発表をしている。公式の医事関係の九月号の本にこういう談話を発表している。  何が違うのかというと、フェノール、石炭酸、防腐剤、これが入っているのと入っていないのとの違いだ。このフェノール含有量というものは、これはツベルクリンにも〇・五%ないしそれ以下、あるいは精製のツベルクリンにも〇・五%以下、あるいはワクチン、あるいは破傷風抗毒素、ハブ抗毒素、マムシの抗毒素等、みんなこれは防腐のために〇・五%以下、わずかなものが入っている。丸山ワクチンも〇・五%以下で入っていた。もっと正確に言えば、丸山ワクチンのAについては〇.二五%あるいはBワクチンについては〇・一二五%程度のわずかなものは入っていたんだが、これを取り去る製法ができたから厚生省にお伺いした。あってもなくても大した差はないんだけれども、製法ができたからフェノールを含めないようにワクチンをつくりたいと思うがいかがでしょうかと言ったら、それはよろしい、あなた方の方でそれを承認した。承認をしたからそれに従って含有せしめないワクチンをつくった。いまも繰り返し言うように、もともとこのフェノールを含有するか否かというのは薬の本質に何も影響のあるものではないのであって、専門家であればだれもが知っていることなんだ。  これに対して吉利部会長は、いわゆるクリニックマガジンの九月号か、あるいはいま一つ薬の何とかという雑誌、ここにもありますが、二つの雑誌に次のように言っている。「一番はっきりしているのは、試験をやったものにはフェノールが入っているのですよ。ところが申請書の中にはフェノールが入っていないというのですよ。それじゃ両者は同じものとは言えないのですよ。そんなことは大した問題じゃない、効けばいいじゃないかと言われますが、内容の違うものを出されたんじゃ許可のしようがないわけです。」そう言って、自分が許可しなかった理由をかくのごとくとうとうと発表している。この発言にはさすがに私の知っている友人の医者も驚いた。専門家としてイロハを知っていてなおかつこういう言葉を吐いているとすれば、この吉利氏は驚くべきペテン師だ、よほど癒着している、金をもらっているんだろう、知らぬで言っているんだとすれば、これは専門家としての価値はゼロだ、こういうことを言っているのであります。この問題について厚生省から所見を承っておきたい。こういうことをやりながら、ないものまでもけちをつけて丸山ワクチンの承認を全部没にしているという一番極端な例を私は申し上げたのであります。ひとつ御返答を承りたい。

持永和見厚生省薬務局長

○持永政府委員 吉利先生がある雑誌でそういうことをおっしゃっていたのは事実だと思いますが、いま先生御指摘のフェノール云々ということでこの丸山ワクチンが有効性がなかったとかなんとかそういうことではないと思います。それは吉利先生の個人的な意見だというふうに私どもは承っておきたいと思います。

小林進日本社会党

○小林(進)委員 冗談言っちゃいけないよ、あなた。本人のこの本を見なさいよ。審査のしようがないから没にしたんだと言っているじゃないですか。これは単なる審査委員の一人じゃないですよ。最高の、特別部会の会長じゃないですか。その人が、これでは審査のしようがないから没にしたのですと言っているじゃないですか。冗談じゃない。君たち、そんなことを言うなら私は怒りますよ。小林進のことを子供扱いしちゃいかぬよ、あなた。この本を見なさい。資料に基づいて私は言っているのです。

持永和見厚生省薬務局長

○持永政府委員 まず事実を申し上げますと、丸山ワクチンにつきましては、当初の申請の際には先生おっしゃいましたように防腐剤としてのフェノールの〇・二五%が添加されておりました。それで、本年の二月六日、追加の資料が提出された際に申請書を差しかえられまして、フェノールを除いた薬の申請となっておりました。しかし、その臨床試験に使いました薬についてはすべてフェノールが入っておりましたので、この薬剤の同質性の点について問題となったわけでございますけれども、この問題は承認審査に大きく影響する大きな問題ということで審議会としては取り上げられたのは事実でございます。

小林進日本社会党

○小林(進)委員 もう時間がありませんけれども、あなたがそんなことを言うから私はやらなくてはならぬ。彼はここで言っているじゃないか。君、クリニックマカジンの九月号の中で——こっちにもありますよ、同じ文章があるが、内容の違うものを出されたんじゃ許可のしようがないわけです、だから没にしたと言っているじゃないですか。これほど明確なウエートがあるものを大したウエートがないなんということは言語道断だ。そんなことじゃだめです。もうあなたと言っていたら委員長に対する時間の約束を破ることになるからあなたの答弁は要らぬけれども、こんなことは明らかにしてもらわなければ困る。  そこで、まだ資料の質問を全部終わらぬけれども、結論として一体この問題をどう扱うか。いまだ追試を求めている、証拠物件の提出を求めているが、一体これが出てきたらあすにでもこれを許可する腹があるのかないのか。  いま一つは、これは時間がないから言うんだが、この医科大学をワクチン配付のセンターにして治験薬として郵送まで認めると言っているけれども、一体この郵送もどんなシステムで、どんな形でやるのか。いま四十日分五千円で分けているこの価格の問題もどうするのか。あなた方は何もやっていないじゃないか。形は一つもでき上がっていない。  この二つの問題についてひとつお聞かせを願いたい。

持永和見厚生省薬務局長

○持永政府委員 まず、治験薬としての問題でございますけれども、治験薬として現在ゼリア新薬工業と私どもの方とで話を詰めることになっておりますが、ゼリア新薬工業が日本医大の方と現在話を詰めておる段階でございまして、私どもとしてもできるだけ早くこの結論を急ぎたいというふうに考えておるものでございます。  それから、承認の問題でございますけれども、こういったことで臨床試験を積み重ねることによりまして新しいデータが出てまいりますれば、その段階で薬事審議会にお諮りをして御相談をして審議をしていただきたいというふうに考えております。

小林進日本社会党

○小林(進)委員 時間が来ましたから私はこれでやめたいと思いますが、いままでも私は相当の資料の要求をいたしました。この資料はいま初めてじゃないんです。何回も繰り返し繰り返したけれどもいままで一回も出てこなかった資料を繰り返したのでありまするが、今度はもう二度と繰り返さぬでいいようにこれをひとつ出してもらいたい。  それからいま一つは、いままであなた方から受けた答弁は、時間がないために私は反論できなかったが、一つも了承するものはありません。何もない。だからいま一回、きょうは三時間という時間をもらえなかったのは残念ですが、また繰り返して継続してこれをひとつやりますから。  法務大臣、私がこれを法務委員会でやりますのは若干筋違いになるかもしれませんけれども、人間の生命に関する、これは人権の人権たるゆえんでございますので、その意味においてあえてこの委員会を活用させていただいたわけでございますから、どうか御了承いただきたいと思います。  本日は、これで終わります。

高鳥修自由民主党

○高鳥委員長 岡田正勝君。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 大臣、冒頭に大臣の確認を得ておきたいことがあるのであります。それは去る五月二十二日に法務委員会が開かれまして、そのときに、大変困っている流民の諸君の取り扱いの問題についてお尋ねをいたしましたところ、大臣の指示を受けましてと前置きをして、大鷹局長の方からお答えのあった三つの新しい方針であります。  その中身というのは、もう御存じのとおり、「第一に、インドシナ三国の旧旅券で本邦に入国し、そのまま不法残留となっている者については、帰る国がないという事情を考慮して在留を特別許可する。」  それから「第二に、台湾、タイ等の第三国旅券を所持していても、それが他人名義の旅券を不正入手するなどしたものである場合には、これと同様に扱うものとする。」これにも「特別在留許可を出します。」  それから「第三に、台湾旅券等を正規に取得して本邦に入国している者については、ケース・バイ・ケースで検討、対処いたしますが、たとえば次のような事情にある者は、特段の忌避事由がない限り、在留特別許可を考慮いたします。」その一つは、「日本人または正規に在留する外国人と親族関係にある者」、それからその二つは、「両親、兄弟等が現に第三国の難民キャンプに収容されているなどのために、本邦から出国しても適当な行き先がない者」、第三が、「その他特に在留を許可する必要があると認められる者」という新方針が御発表になりまして、関係者一同大変明るい喜びに包まれたものでございます。  ところが、この喜びに水をかけるような、もっと悪く言えば、あら、この新方針というのはそのとき関係者をぬか喜びさせただけで、中身は空手形ではないかと思われるような事件が発生をしてまいりました。そのことにつきまして具体的にお尋ねをしていきたいと思うのでありますが、その前に、この方針はいまだ生きておりますね。その点の確認をしたいと思うのであります。

奥野誠亮自由民主党法務大臣

○奥野国務大臣 お話しのとおりであります。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 じゃ、ちょっと委員長、資料を……。  そこで、いま大臣のお手元に提出をいたしましたのは、この新方針をいま大臣にここで改めて御確認をいただきましたけれども、その新方針に全く背いておるのではないかと思われるような意外な事件が発生をしております。しかもこの新方針を発表なさったときには、時あたかも難民条約批准の問題が国会で論じられているときでもあり、その難民条約の批准も事なく終わり、ようやく国連の方にも認められまして、来年の一月一日から正式にわが国において難民条約は効力を発することに相なったわけでございます。こういうようなあと一カ月先という大事な時期に起きた事件でありますので、特にこの際お尋ねをするのでありますが、いま差し上げました資料は、横浜の入国者の収容所の中にタック・ホア君とバン・ブン・フ君というお二人の青年が、現在強制退去処分に基づきまして収容されておるのであります。ところが、この二人というのは、だれが考えてみましても、いま差し上げました資料をごらんになりましても、この五月二十二日の法務委員会で御発表になりました新方針の在留特別許可を与えるべきインドシナ流民の要件を明らかに充足していると認められるものでございます。これは非常に重大な問題でありますので、本問題につきまして四点にわたり冒頭に当局の御意見をただしたいと思うのでございます。     〔委員長退席、熊川委員長代理着席〕  さて、資料に基づいて申し上げますが、資料を差し上げておりますから少し早口で申し上げたいと思います。  まず、この該当者の二人のうちバン・ブン・フ君でございますが、この人は祖父母以来三代目の華僑でありまして、彼は一九五五年十二月九日にベトナムにおいて次男として出生をされた人でございます。御両親の名前は省略します。  次に、きょうだいはその人を含めて十人もおります。現在、両親と八人のきょうだいたちはベトナムの経済区で強制労働をさせられております。一人のお兄さんは香港におきまして難民と認定をされ、在留資格を与えられております。また、おばさん一族の六人は現在オーストラリアに難民として認定をされ、いま定住をいたしております。両親、きょうだい、そのおばさんとは、現在本人は手紙で連絡がとれているという状況であります。  彼はベトナムにおいて、それぞれ小学校、中学校、高等学校をりっぱに卒業をいたしております。  十七歳になった一九七二年に、両親から、軍隊に入り戦争で死ぬくらいならベトナムを出なさい、平和になってから帰ってくればよいと説得をされまして、両親の言に従って一九七二年の八月、貨物船で香港に密入国をしたのであります。香港におきまして約一年半ほどビニール工場で働いておりましたところ、一九七四年の十月ごろ、父から台湾でこの際勉強してはどうかというお勧めを受けました。そこで、彼は香港の旅行業者にお願いをいたしまして、台湾へ渡ったのでございます。ところが、ベトナム戦争の激化によりまして、ほどなくして父からの送金もとだえ、一九七五年四月にはサイゴンが陥落したことを知り、もうベトナムには帰れないということを彼は知ったわけです。  彼は、サイゴン陥落によりまして、父からはもはや送金の期待ができないということを理解をいたしましたが、父の意に従いまして何とか勉強を続けたいと考えまして、耐乏生活をしながら、一九七五年の七月、台湾の連合考試を受けまして僑生大学の先修班に入学いたし、わずかな蓄えで食べつなぎながら一九七六年の三月まで勉強を継続しておりましたが、これ以上資金が続かない、不可能という状態になりました。  そこで、彼は日本で自分の将来を築くことを決意いたしまして、身の回り品を売るなどして旅費をこしらえ、一九七六年の四月、第一回目の来日をしておるのであります。ビザの更新のためその後二回ほど台湾に渡った後、一九七八年十一月三日から今回の逮捕に至るまで、日本国内に不法残留をしていたものであります。  彼は、逮捕されるまでは土方をやっておりました。これは本人が言っておることでありますが、夜、水商売などをしていては自分という人間が将来だめになってしまうというので、昼間の仕事をすることを思い立ったというのでございます。  彼は、給料日に食事をいたしまして、その後道路を歩いておったところ、職務質問を受けて逮捕された。本年の六月二十九日、入管令、外登法の違反で起訴されまして、八月二十日に判決が出ました。それは懲役七カ月、執行猶予三年であります。十月十三日、彼に対して退去強制令書が発付されたのでございます。  彼は、逮捕時におきまして、ベトナムの身分証明書、出生の証明書、両親、おばからの手紙などを全部提出をしております。入管は当然のことながら彼がベトナムの難民であることを知っておったはずであります。彼が特在の条件を満たすことも知っておったはずであります。  彼は横浜入国者収容所で「流民」の本を読みまして、安藤神父に手紙で連絡をとりまして、十一名の弁護団の援助を得て、ことしの十月二十六日、法務大臣に対して再審情願を申し出をしたのであります。  という経緯でありますが、これを簡単にまとめてみますと、バン・ブン・フ君は、第一に、彼には台湾に親族とか親しい友人などは全くおりません。第二は、台湾では国交の関係等によりましてベトナムにおる両親たちとは連絡をとることができません。第三は、彼は全く台湾で生活をする気持ちは持っていなく、日本に定住することを強く希望をいたしております。第四に、彼は在留特別許可を付すべき典型的なケースと認められるのであります。なぜならば、両親、きょうだいが現にベトナムのサイゴンに居住し、一人のきょうだいは香港で難民として定住をしており、おばの一族はオーストラリアに難民として定住をしておる。彼はまさに難民であります。適当な行き先があるはずがありません。であるのに、なぜ強制退去をさせられるのか、私はその理由を知りたいのであります。  大臣のお手元にもいま差し出しましたが、ここに本人が書いた日本語の手紙があります。これは実にりっぱな文章でありまして、われわれ日本人が顔負けをするような文章でございます。ちょっと読んでみますと、   安藤神父さん   きょうも先生は私のような不幸な難民、流民問題に取り組み、苦労されていられると思います。衷心より感謝いたします。   私は、バン・ブン・フでございます。一九五五年十二月九日、ベトナムでチョロンというところに生まれ、十七歳まで育ちました。学校はチョロンの華僑中学校を卒業いたしました。   一九七二年七月ごろ、ベトナム戦争の真っ最中、父母の勧誘により命がけで香港に密入国、避難をいたしました。一年半ほど労働をそこでいたしました。   一九七四年十一月ごろ、父母の言うとおり、私も勉強を続けたいので、台湾に行って、僑生大学先修班に入学をいたしました。   一九七五年四月三十日、ベトナムではすでに共産軍が支配しつつあり、共産主義になじめない私は、母国の将来に希望を失い、送金もとぎれて学校も続けられなくなり、父母との書信は一切なく、消息を聞くことができなくなり、悩みも大きく、生活も苦しくなりました。   一九七六年の四月ごろ、台湾旅券を持って日本行きの観光ビザを申請し、第一回目の日本人国をいたしました。   一九七六年九月ごろ、同じ手続を申請、第二回目の日本入国をいたしました。   しかし、日本に行ったり来たりで、父母、きょうだいを助けることはできませんでした。   家族のために、平和で自由な国日本に住めば、父母、きょうだいと書信の往来だけでも自由にできますし、薬品等もベトナム家族に送ることもできますので、一九七八年十一月三日、三回目の日本入国を果たしました。日本に住みつく決意で、今度は初めから不法残留になるつもりでした。日本ではパブ、レストラン、土方等を勤めました。   約二年半ほどその生活をしています。家族との書信を受け取ったり、薬品を送ってやりました。   一九八一年六月六日、私は池袋の警察に逮捕されましたが、二十日間警察署に勾留されました。   一九八一年六月二十九日、東京地方裁判所刑事第十七部三係(外国人係)において、私に対する外国人登録法違反、出入国管理令違反事件につき起訴されました。   一九八一年八月二十日、第一審判決が言い渡された。私の結果は懲役七カ月、三年間の執行猶予の有罪判決でありました。   一九八一年八月二十日、私は入管に移されました。私は日本在留希望を申し出たが、九月三日、入国審査官より入管令違反の認定を受け、私はこの不服申し立てをしたが、口頭審理の上九月二十二日、特別審理官の判定があり、さらに私は法務大臣に対する異議の申し立てをしたが、九月二十八日、横浜収容所に移されてしまいました。   いままでの収容所の生活は毎日失意の中で日を送っていましたが、今日では安藤神父さんのよい消息を唯一の頼りとして生きております。   以上、申し上げましたが、私の父母、きょうだいが一日も早く自由のある国を探して出ていくことができるよう力を合わせてがんばることが私の人生においての何よりも重大な義務だと感じています。最近オーストラリアのおば(これは難民で香港に入ってオーストラリアに行った人ですが)の手紙を受けましたが、ベトナムの家族がオーストラリアに移住する手続を申請したが、旅費がなくて移住ができないという内容でありました。   安藤神父さんも御承知のとおり、台湾はいまベトナムとは国交が断絶しています。もし私が台湾に強制送還されれば、父母、きょうだいは虐政共産統治下なので、人間の地獄のようないわゆる経済区といった強制労働場に行かされることは明白な事実であり、人間はだれでも家族と結びついて生活をしたいという本能を持っていますが、私の場合には会いたくても会うこともできず、助けてやりたくても助けてやることができない宿命を持っているのであります。でも、自由の日本に住めば、せめて遠く離れた父母、きょうだいの消息でもひそかに聞くことが許されるのです。   私はいま頼るべき人もなく、だれ一人相談の相手になってくれる人もいません。また、このような私の事情を代弁してくれる方もいません。   以上申し上げたように、私は絶対に台湾には帰ることはできないつらい立場でありますので、日本の法務省当局が人道的な見地で処理してくださるように私の進路を指導してくだされば、私の人生が続く限り、この自由の国のありがたさを感じながら生きたいと思います。   以上申し上げたことをよろしくお願いいたします。安藤神父さんには一度面会したいのです。私の事情を代弁をしてください。   きょう私は品川の入管に移されました。法務省の裁決する在留許可と不許可は十八日までに決まるということです。だから一日も早く面会に来てください。 これが十月十二日に彼が収容所の中において書いた手紙でございます。この手紙を読まれまして大臣は一体どういうような感慨をお持ちになりますか。この点もお尋ねをしたいと思うのであります。  さらに、いま一人のタック・ホア君でありますが、これは南ベトナムの旧サイゴン市、現在はホー・チ・ミン市でありますが、サイゴン市内のショロンで、両親の名前を省きますが、長男として一九五二年一月十九日出生をいたしました。両親はお二人とも華僑であります。  父は、彼が五歳のとき、一九五七年に死亡されました。このため、彼は年少のころより働くことを余儀なくされまして、夜間の高等小学校に通っておったのであります。彼には現在、生存する親族としてはお母さん、お姉さん、そしてお父さんの違うお姉さんの三名がおり、右三名はいずれもベトナムのホー・チ・ミン市に居住し、生活をしておるのであります。  なお、入管が彼の退去強制先と決めた台湾には、彼の親族は全くおりません。また、親しい友人もおりません。  彼は、華僑国民学校あるいは高等小学校あるいはベトナム語の学校等をそれぞれ卒業いたしております。  彼は、卒業した十五歳のときから、お父さんがおりませんから一家の柱としてサイゴン市内の電気屋さんで働いておりました。  一九六八年になると、ベトコンがサイゴン市ショロン地区にもゲリラ攻撃を行うようになり、年を重ねるごとにサイゴン市内におけるゲリラ攻勢が激化しました。彼の一家にはお父さんがおらず、彼が唯一の男性であったために徴兵を免れておりましたけれども、人民自衛隊が組織されたため、一九七三年になると彼にも右人民自衛隊への入隊が強制されるという事態になってきました。  お母さんのタン・ホアンさんは、ベトナム戦争は遠からずして南ベトナムの負け戦になると判断をし、彼が人民自衛隊に入隊してベトコンと戦ったら、仮に生き残ったとしても銃殺等の極刑を受けることは必至であると考えて、彼をベトナムから脱出させなければならないと決意をしたのであります。そしてお母さんは、ラオスのビエンチャンの旅行業者を通じまして旅券を入手し、彼を説得してベトナムを脱出することを決意させたのであります。  母親の説得を受けてベトナム脱出を決意した彼は、一九七三年の十一月、メコン川を船で渡りましてカンボジアに脱出し、飛行機でラオスのビエンチャンに向かったのであります。彼は、旅費を蓄えるためにビエンチャンの中華料理店で働きながら、ベトナムの状況をうかがっておりましたが、一九七五年四月、サイゴンはついに陥落、ベトナムに帰ることは不可能となりました。そこで、彼は、日本に渡って新生活をしたいと考えまして、一九七五年六月ラオスを出国し、タイ、台湾を経由して、一九七五年十月ごろ観光ビザで日本に入国したのであります。  彼は、観光ビザを数度更新した後、一九七六年四月ごろ韓国に一度出国し、観光ビザを得て同じ月に日本に再入国、そのまま不法残留者となったのであります。右の間、彼は中華料理店で働きまして、病身のお母さんに薬やお金をせっせと送っておったのであります。  ところが、一九八〇年の二月十四日、入管により逮捕されまして、同年の四月十四日、退去強制処分を受けて台湾に一度送還されました。  しかし、彼は、台湾には親族も友人もおりません。国交も断絶しております。ベトナムの手紙の連絡もできない状態でございましたので、一九八〇年八月ごろ台湾政府より旅券の発給を受けて、九月再び日本に入国した。観光ビザで入国した彼は、一九八一年の一月台湾に出国、四月にまた観光ビザで日本へ入国。  彼は、四月入国後、病身の母親に薬を送り、あるいはまた自分自身の生活のためにも中華料理店で働いておりましたが、本年の八月十七日ごろ、入国警備官の捜索により逮捕された。  彼は、逮捕されて入管で取り調べを受け、十月十三日、資格外活動をしたということにより退去強制令書を受けたのであります。  彼は、入管の横浜収容所に収容中でありますが、右収容所の中にありまして「流民」という在日インドシナ流民に連帯する市民の会の本を読みまして自分も流民であることがわかり、安藤神父に連絡をとり、ことしの十月二十六日、弁護士の皆さんの応援を得て、いまお手元に差し出しておりますような法務大臣に対する再審情願の申し出をしたという経緯であります。     〔熊川委員長代理退席、委員長着席〕  これを一度まとめてみますと、このタック・ホア君は、彼は台湾旅券の発付を受けた者でございますけれども、台湾には親族も友人もおりません。出国しても適当な行く先がないというべきではないでしょうか。そして、彼の場合は親族がすべてベトナムにいるため、台湾にいては国交の関係で親族らとの連絡がほとんど不可能となる点は重大な問題であります。彼は、昨年退去令を受けて、ほどなくして新しい旅券を入手して日本に再入国していますが、これは彼が台湾で生活できないからにほかなりません。逮捕時に、彼はベトナムの身分証明書、出生証明書、母親のベトナムの身分証明書の写し、父親の死亡証明書、母親と姉からの手紙などを入管に提出をしております。したがって、入管は当然のこと、彼がことし五月二十二日の法務委員会において特在を付与すべきインドシナ流民に関する要件を満たすインドシナ流民であることがわかっていたにかかわらず、なぜ彼にも退去令を出したのか、ぜひとも伺いたいのでございます。  以上が二人の事件の経緯でございますけれども、いまこの二人は再審情願書を法務大臣と主任審査官に対して提出をしていますが、この審査に当たっては十分に人道的な配慮をして、国際社会において尊敬されるような判断をしていただきたいと思うのでありますが、大臣の御見解を伺いたいのであります。

奥野誠亮自由民主党法務大臣

○奥野国務大臣 大変同情すべき方々のように伺ったわけでございますけれども、先に事務当局からお答えをさせていただきたいと思います。

大鷹弘法務省入国管理局長

○大鷹政府委員 いま岡田委員からお話がございましたタック・ホア、バン・ブン・フ、この両名に対しては十月十三日に強制退去令書が発付されております。それはなぜかと申しますと、もともとこの両名は、いずれも中国籍を現在持っております。しかも、わが国と台湾との間を往復していた、そういういきさつがございます。  私どもも強制退去令書を発付する前に、いわゆる流民に関する処遇方針に照らして、これに該当するかどうかということを慎重に検討したのでございます。ところが御承知のように、この先生いまお読み上げになりました処遇方針の一で掲げておりますインドシナ三国の旧旅券で本邦に入国した者ではいずれもございません。それから第二番目の、台湾とかタイ等の第三国旅券を持っていてもそれが不正入手されたものであるという、そのケースにも両名は当たりません。それじゃ、第三番目のどれかに当たるかということを、これも注意深く検討してみたわけでございますけれども、日本人または正規在留外国人と親族関係にあるかどうかということでございますが、両名とも独身者でありまして、こういう関係はないようでございます。それから両親、きょうだい等が現に第三国の難民キャンプに収容されているなどのために本邦から出国しても適当な行き先がない者に該当するかどうかという点でございますけれども、タック・ホア、バン・ブン・フ、いずれも先ほど申し上げたとおり台湾の保護下にございまして、台湾国籍を持っております。バン・ブン・フに至りましては昭和四十九年の十一月にベトナムから台湾に入りましてから通算三年半以上も台湾に居住した経歴がございます。そこで、両名とも台湾に居住が可能と判断した次第でございます。  なお、タック・ホアにつきましては、そのほか、ただいま触れました処遇方針の三に特段の忌避事由がなければというただし書きがございますけれども、この特段の忌避事由に該当する、そういう事実がございます。それは何であるかと申しますと、タック・ホアは昭和五十五年四月十四日、不法残留により一度わが国から台湾へ向け送還された歴史がございますが、その当時、タック・ホアの名前はタック・メイ・ホアでございました。ところが、強制退去された後一年間はわが国に入国できない、上陸できないという、そういう入管令上の規則がございますけれども、これを知ってか知らずか、彼は名前を現在称しておりますタック・ホアに変えて、そして昭和五十六年四月九日に入国しているわけでございます。これはかなり意図的な入国規制違反であると私どもは考えておりまして、タック・ホアにつきましては特段の忌避事由も成り立つと考えておるわけでございます。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 大臣の御感想は、後でいただくことにいたします。  いまお答えがありましたが、局長さん、私がお願いしたいと思いますことは、いまのバン君は台湾で三年半ほど生活歴がある、それからいまのタック君は忌避事由がある、名前を変えて入ってきたじゃないか、こういうことをおっしゃるのでございますが、そこで私が特にお願いをしたいと思いますのは、私どもは局長さんも大臣も含めまして、大臣や私などは戦火の中をくぐり抜けた経験を持っておるのでございますけれども、もうほとんどの方が戦争の味なんというものはなめたことも見たこともない、まあテレビで見ることがあるというような人が多くなった時代でございます。しかも日本は非常に平和で安定した、秩序の保たれた国です。法律さえ守っておれば何とか生きていかれるというような幸せな国ですね。そういうところで生活しておる者の持っておる常識だけで、そういう人たちの物差しだけで判断をしてやるということは、私は余りにも酷ではないかと思うのです。  戦火に追われて、もし自分がベトナムとかそういうところに帰れなんて、それはとても帰ることはできない。帰ったら、待っておるのは死刑が待っておるだけということになる。台湾なんかへ行きましても、国交は断絶しているのですから、それは一人でもぐり込んで働けと言ってほうり出せばそれでいいのかもわかりませんが、しかし、本人が自由な日本、平和な日本を頼りたいと言って来ておるのであれば、やはりそれに対しては、私はもっとおおらかな気持ちを持ってやらなければいかぬと思うのですよ。  いまそういう話が出たから申し上げるのですが、時間がなくなったらいかぬと思って私は後回しにしておったのでありますけれども、もう一件こういうようなのもあるのですよ。まことに気の毒なんです。どういう事例があるかといいますと、退去令で出された人の中でスンポンパクリ・センガヌという人とセンマンというラオス人の姉妹がおる。これが強制退去を受けまして、そして一年たったから入れてもらいたいということをお願いしようと思ったところ、どっこいだめだと言う。そのだめだというのは何の理由かといったら、おまえさんうそを言ったと言うのです。さっき、名前を変えて入っておる、悪質ではないか、こう局長は言われるけれども、私から言わしたならばもっと考え方を変えてもらいたい。  なぜなら、この姉妹の場合でも、おまえさんは一番最初の強制退去を受けるときに、日本に親族はおるか、友人はおるかと聞いたらおらぬと言ったではないか、それで今度一年後に入ってきたときには、日本で知っておる者はおるかと聞いたら、はい実は私のいとこで元留学生のポンサイという人が日本におります、だから親族がおるということになります、こう言ったら、おまえはうそを言った、うそを言ったからだめだ、帰れ、こういうことになる。これはひどいですよ。こんなやり方はないです。  それから、そういう脅威の中をくぐり抜けて逃げ歩いている人、殺人をしたのでも何でもないけれども逃げ歩いているような心理状態の人たちから見たら、名前を変えてでも何をしてでもとにか無事に定着したいという気持ちになるのは当然のことでしょう。だから私は、名前が少々変わったからといって、そのくらいのことを重視して、せっかくの新方針が出ておるのに、けしからぬ、忌避事由に当たると言って、それで本人たちの親もきょうだいも全部ベトナムにおるベトナム人であるということがわかっておるのに、台湾の旅券を使ったから台湾の国籍を持っておるんだ、台湾政府の保護下に入っておるんだと決めつけちゃって台湾に追い返すというようなやり方というのは余りにも人情がなさ過ぎる、私はそう思うのです。  もっとおおらかな気持ちでやってください。余りにも四角四面過ぎます。もし局長や大臣の子供さんがこういう境遇に遭ったらどうなさるのですか。すべて人のことだと思ってやっていらっしゃるとは言いませんけれども、しかし、法にも情があるはずでしょう。法にだって情があるはずですよ。私はそういうところをもっと考えていただきたい。  最後に、大臣の御感想を承りたいと思います。

奥野誠亮自由民主党法務大臣

○奥野国務大臣 岡田さんのお話もよくわかるのです。事務当局は事務当局として処理してきている、これもよくわかるわけです。特別情願が出ておるということでございますので、よく相談をしていきたいと思います。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 それでは、最後にお願いだけ申し上げておきます。  いま申し上げたような二人は、いろいろ足し算したら台湾に足かけ三年半おったというようなことがあるから、これはもう台湾の保護に入ればいいや。それから名前を変えた、これはけしからぬ、お上をだます、こういううそをつくような者はだめだ、こういうお気持ちもわかります。わかりますけれども、しかし、相手の立場というのはまことに複雑であり、悲惨な状態です。そして日夜、本当に日の目を見ることができないような生活をしているのですね。そういう人たちでございますから、いまのような理由でぼんぼんはねられたら——この二人は親戚も両親もきょうだいも全部ベトナムにおるのに、しかもベトナムの出生の証明書まであるのに、しかるに、いや、台湾へ行ったんだからとにかく台湾に保護してもらいなさい、台湾でパスポートをもらったんだからあそこに行きなさいといって無理やり外にほうり出すというやり方は、五月二十二日に出された新方針は一体何のために出したのか、私は気休めにしか過ぎないと思う。  いま日本におる流民と称せられる人たちというのは、ほとんどが台湾のパスポートを持っていますよ。それ以外にどうやって来るのですか。海を泳いで来ることなんかできやしません。ほとんどが台湾の人、一〇〇%と言っていいのじゃないでしょうか。ということになれば、せっかくの新方針が出たけれども、このバン君やタック君のよううなケースでさえ認めてやらないよということになったら、日本の政府は、いま日本に潜在しておるところの二百人から五百人と推定される流民諸君は一人も取り上げてやることはできません。これは余りにも非道じゃないでしょうか。私は一考も二考もしていただきたいと思うのです。  幸い、十一名もの弁護士さんが連名で大臣と主任審査官あてに再審情願をお出しになっております。どうぞひとつ大臣も局長ももう一度新たな気持ちになって、この平和な日本にずっと住んでおるようなつもりじゃなくて、戦火の被害を受けて逃げてきた人の気持ちはどんなものだろうかということに思いをはせて審査に応じていただきたい。そして国際社会から、さすがに日本は偉いなと尊敬を受けられるような対処をしていただくことを心から期待するものでございます。  次にお尋ねをいたしますが、五月二十二日に三大方針を出されまして、私ども非常に高く評価したことはもう御承知のとおりであります。  そこで、この特在を認める基準の運用状況でありますが、五月二十二日に新方針が出てから後、特在の許可をした数はどのくらいになるのか。それから、いま私が読み上げた一から三までの中のそれが一体何名ずつぐらいに当たるのか。それから、現在取り調べをしている数はどのぐらいあるのか。その取り調べをしている数でも、いまの一、二、三のどの部類に何名ずつぐらい入っておるかということをお答え願いたいと思います。

大鷹弘法務省入国管理局長

○大鷹政府委員 五月二十二日に流民にも特在を認めるということを奥野法務大臣の御発言で明らかにいたしましてから今日まで在留特別許可が与えられました流民の数は、すべてで八名でございます。いずれも一年の在留期間の特別許可を与えられております。  御参考までにこの八名の国籍を申し上げますと、ラオス人が一名、タイ人が二名、台湾の国籍を有する者が五名でございます。このうち一名だけがこの処遇方針の第一に該当する者でございまして、ラオス人のケースでございます。かつてのインドシナ三国の旅券を持っていたケースでございます。そのほかの七名は、いずれも三の二でございます。つまり「行き先がない者」という中に分類される者でございます。  なお、この八名のほかにもう一人、アメリカへの入国が認められて近く出国いたします予定の台湾籍の者に対しまして、短期九十日の在留特別許可を与えたいきさつがございます。  現在取り調べ中のケースは、全部で十五でございます。この十五のうち何名ぐらいが処遇方針のどれに該当しそうかということについては、現在調査を進めておる段階でございますので、まだ何とも申し上げられないわけでございます。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 次に、いまの新基準の中の第三であります。一と二は非常に明確でありますから、これは議論の余地はないのでありますが、やはり一番問題になるのは第三のものでありまして、これは台湾などの正規の旅券で入国した者に対してはケース・バイ・ケースで対処するということなんでありますが、このケース・バイ・ケースの運用の次第によっては、先ほど冒頭に二人の例を述べましたように、流民の大半が救うことはできない状態になると私は思うのです。というのは、もう御承知かと思いますが、町で私どもに接触をしてくる人たちのほとんど一〇〇%は、台湾の正規の旅券で入国した人ばかりであります。  そこで、この第三基準に関連をして質問をするのでありますが、特段の忌避事由がない限り特在を考慮するという第一の「日本人または正規に在留する外国人と親族関係にある者」の親族関係というのは、日本国民法で言いますところの親族という意味でございましょうか。  それから質問の第二は、正規の在留外国人というのがありますが、この在留資格は限定されておるのでしょうか。もし限定されているならどの範囲か、お答えいただきたいと思います。

大鷹弘法務省入国管理局長

○大鷹政府委員 新基準処遇方針の三の一に掲げております「日本人または正規に在留する外国人と親族関係にある者」と言いますのは、これは民法上の親族関係を言うものではございません。私どもといたしましては、家族の離散をなるべく防止して、人道上の配慮をしようという考え方に基づきましてこういうことを立てたのでございまして、したがって、ここに言います親族関係というのは、夫婦であるとか親子、きょうだいであって、生活上お互いにある程度の依存関係が認められる場合を想定しているものでございます。実際の運用はケース・バイ・ケースで弾力的に考えていきたいと思います。  次に、正規在留外国人の意味でございますけれども、この場合在留資格に限定があるのかというお尋ねでございますが、限定はございません。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 次に入らせていただきます。  「両親、兄弟等が現に第三国の難民キャンプに収容されているなどのために、本邦から出国しても適当な行き先がない者」にも特在を考慮するということになっておりますが、難民キャンプは本来長く収容するところではありませんね。だから、大体一、二年でアメリカだカナダだオーストラリアだというところへ行くわけでございますが、そういう第三国のところへ再定住先を見つけて出ていく難民がほとんどということになってまいります。  そこで、この新方針の問題でありますが、したがって、親きょうだいだちが難民キャンプを経由して第三国に定住している場合でも、親きょうだいが現に難民キャンプに収容されている場合と同様に扱ってもらいたい、適当な行き先がない者と認めてやってもらいたい。特在を許すべきであると思うのでありますが、その点はいかがでありましょうか。

大鷹弘法務省入国管理局長

○大鷹政府委員 処遇方針三の二は、本邦から出国しても適当な行き先がないというところに重点があるのでございまして、親きょうだいが難民キャンプに収容されている場合などは適当な出国先がないことが多いであろうということをおもんぱかってそういうふうに表現したものでございます。したがって、仮に親きょうだいがすでに第三国に定住している場合でも、本人について適当な出国先がないと認められれば十分配慮をする所存でございます。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 大変結構な回答をいただきまして、ありがとうございました。いまの御回答によりますと、難民キャンプにおるかおらぬか、あるいはアメリカ、カナダ等の第三国にすでに行っているかというようなことは別問題として、とにかく本人が適当な行き先がないということがもう一番主なんである。それで、たとえば肉親が第三国に行っている場合であっても、本人がそこに行くのが適当ではないと思われ、判断されるような場合は、やはりこの条件にはまるのですというお答えでありまして、非常に明確でありました。大変ありがとうございます。  そこで、親きょうだいが難民キャンプから第三国に定住したからといって流民本人がその第三国に行けるとは限らないということを考慮の上に置かれて言っておられるんだと思います。また、親きょうだいが難民キャンプに入っているときには特在を認めていますが、親きょうだいがそこから第三国に行ってしまったら特在を認めないというのでは余りひどいというので、せっかく出した新方針だからそれは本人の意思を尊重しよう、こういうことであったと思いますが、よろしゅうございますね。  それでは次に、第三の質問に入らしていただきますが、「その他特に在留を許可する必要があると認められる者」というのでは、どんな事情があれば特在が出るのか見当が実はつかぬのです。これをもっと具体的にすることはできませんか。町の流民は一日も早く自首を希望しているものの、自分が果たして特在条件を満たしているかどうかということについては大変不安を持って、自首をためらっているのがほとんどであります。種々の要因、たとえば旅券の種類、同じ台湾旅券でも発行の場所等による区別が可能であるし、日本への入国日あるいは台湾での生活歴その他を考慮して点数制などを用いて、一定の点数以上は特在を出すというようなことなどを考えることはできないものでしょうか。この点についていかがでしょうか。

大鷹弘法務省入国管理局長

○大鷹政府委員 処遇方針の三の三、「その他特に在留を許可する必要があると認められる者」というのは、三の一及び二の要件、つまり日本人または正規在留外国人と親族関係にあるとか、行き先がないとか、こういうものを補充して、一及び二に準じて考えなければならないような特別な事情がある場合を想定した補充要件でございまして、別個の独立の要件を設けようという趣旨のものではございません。したがって、対象者について認められる千差万別の個人的事情などを考えますと、これ以上具体的な表現をとることは技術的にも非常にむずかしいと言わなければならないのでございます。現実の運用につきましては、何度も繰り返して申し上げておりますが、十分に人道的な配慮をしてまいりたいと考えております。  なお、先生がただいまお触れになりました点数制につきましては、点数を構成する項目の設定であるとか配点、点をどういうふうに配分するとか、こういうところにむずかしさがあるだけではなくて、個人的事情が千差万別でございますので、こういう点数制度をとるということは現実的な方法ではないんじゃないかと私ども考えております。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 時間がありませんので、次に進ませていただきます。  そうなりますと、いまお話しのようにどうもそういう点数制というのは具体化がむずかしいなということになりましたら、むしろこの第三基準をケース・バイ・ケースということにしないで、いささか乱暴かもわかりませんが、一律に、たとえば新基準を出しました本年の五月二十二日以前に入国した者は全部名のって出なさい、特在を許しましょうというようなことができないものでしょうか。しかも、来年の一月一日から難民条約がわが国において発効するわけですね、国連に認められて。八十二番目ではありますけれども、ようやく発効するわけです。こういう記念すべきときに、やはり思い切った流民問題の全面解決というような対策はとれないものなんでしょうか。いかがでしょう。

大鷹弘法務省入国管理局長

○大鷹政府委員 入国時期の前後によって特別在留許可を認めるかどうかを振り分けるというのも一つの方法であるかもしれませんけれども、しかし、よく考えてみますと、実際問題としては、たとえば一日違いで結論が逆になるという難点もございます。それから、各個人の個別的な事情等が必ずしもしんしゃくされないという不都合も生じ得ようかと思います。そこで、むしろケース・バイ・ケースで極力人道的な配慮をするという方が適当妥当な方法ではないかと私どもは考えております。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 それじゃ、もう一つ新提案をするのでありますが、局長さんのおっしゃるように、人道的な配慮をできるだけしたいと私も思っておりますということを言われましたし、それから先ほどの御回答の中で、私は局長さんを本当に見直したのです。この局長さんは偉いなと思って実は見直した回答があるのであります。  それは、先ほど質問をいたしました難民キャンプを親きょうだいが経由して第三国に定住しておる場合でも、親きょうだいが現に難民キャンプに収容されているときと同様にひとつ認めてやるべきではないだろうかという問題につきまして、適当な行き先がない者ということが重点でありまして、とにかくそれが主である、それで親きょうだいがオーストラリア、アメリカに行っておっても本人がそれを望まないなら、やはりその意見を尊重してやらなければいかぬと思っておるのでありますという非常にりっぱなお答えをいただきまして、私大変感激しておるのでありますが、さてここで、いま局長さんがそういうふうに人道的な配慮をするよ、こう言いましても、さあ自首して出るとなると、行ってから、私はこういう者でございますがと言うたら、あなたはそれはだめだ、もうそれは条件にはまらぬわい、よう来た、すぐこっちへ入れといってがちゃんと入れられたら、これは正直な話が何しに行ったのかわからぬですよね。そういうこわさがあるわけですよ。恐怖心があるのですよ。  ですから、一律に五月二十二日にさかのぼって、そこからさきの人は全部認めてしまうということも一つの方法だが、なかなかそうはいかぬとおっしゃるなら、せめて書類審査、まず前もって予備審査とでもいいますか、書類審査のようなことはできぬものでしょうか。めんどうくさいからしたくないですか。お答えください。

大鷹弘法務省入国管理局長

○大鷹政府委員 ただいま岡田委員がお取り上げになりました書類審査、予備審査でございますけれども、これは事実関係の把握が正確にできるかどうかという点とも関連して問題が多いんじゃないかとは考えますが、しかし、いわゆる行政相談の一環として、御相談があれば誠意を持って対応したいと存じます。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 ありがとうございました。  それでは早速でございますが、私は特在が許可されるでしょうかね、どうでしょうかねと言って、恐れながら私に申し出てきた人が六人あるのです。それで、この六人の詳細をこの中に書いてありますから、これは逆に捜査なんかに使わぬようにしてくださいよ。ただし、住所だけは抜いてあります。住所だけは抜いてあるけれども、大体こういうのを捜査をやる人はうまいですからね。だから、これをネタにしてこの人たちを不幸な目に遭わさないことを約束の上で、いま約束されたのだから、これをぜひひとつ書類審査をして私の方に御回答願いたい。これをお願いします。六名あるのです。  それで、私も思い切ってそういう大変重要な書類まで局長さんに出しましたのは、本当に法務当局に人道的な対処をしてもらえるかどうかという疑いを実はまだ若干持っているのです。ところが、いま非常にいい御回答をいただきましたので、やはり疑いは取りのけにゃいかぬ、信じにゃいかぬと思って、私も信じて出したわけですから、ぜひひとつその旨をよく含んでいただいて御回答をいただきたいと思います。これは他に利用はなさらないでください。  それから、続いて質問するのでありますが、いま言う自首ということが、みんなしたいのだけれどもなかなかできない。それでいままでに、五月二十二日から後、本人が自首出頭してきたというのは何人ぐらいありますか。その中で特在を与えられた人は何人ぐらいおりますか。これをお答えください。

大鷹弘法務省入国管理局長

○大鷹政府委員 五月二十二日以降自首して出た者は全部で十五名でございますが、このうち十名は現在違反調査中でございまして、その残りの五名は審査中でございます。したがって、いずれもまだ在留特別許可を与えられるかどうか、判断する段階には至っておりません。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 そこで、いまの十名の調査中、五名の審査中、これは十五名の人が、自分から進んで、私は認定してもらえるだろうと思って、自信を持って出ているわけです。出ているのですが、その十名の調査や五名の審査の方というのは、例のがちゃんという中へ入れておるのですか。いわゆる在宅調査ということにしておるのですか。そこらは、犯罪人の場合でも自首してきたときには、よう出たのうと言って何か違うのでしょう。つかまえたものじゃないのですから、そこらの違いがなくてはいかぬと思うのでありますが、この十名の調査中と五名の審査中というのは、一体どこに置いてあるのですか。

大鷹弘法務省入国管理局長

○大鷹政府委員 十名の調査中の者は、現在在宅のまま調査をしております。それから五名の違反の審査中の者につきましては、現在すべて仮放免中でございます。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 はい、ありがとうございました。これは大分入管は人道的にやっておられますね。この線を崩さんでくださいよ。この線を崩したのでは、自首して出てこいと言ったってそれは無理な話ですから、この線を崩さぬようにお願いをいたします。  そこで、局長さんどう思いますか。いま自首してくる数というのが、聞いたのでは十五名というのは少ないですね。もう半年近いのに、少ないと思いますよ。二百人から五百人ぐらいおるのでしょう、はっきりした数はわからぬけれども。それにしては自首する数が少ないと私は思うのでありますが、その原因は一体どこにあると考えていらっしゃいますか。そしてそれに対して、どういうふうにしたらふやすことができるだろうかという具体策をお持ちでしょうか。お答えください。

大鷹弘法務省入国管理局長

○大鷹政府委員 ただいま岡田委員から、潜在している流民の数は約二百名から五百名くらいじゃないかというお話がございましたけれども、法務省として一応推定しておりますのはそんな大きな人数ではございませんで、約百二十名と踏んでおります。と申しますのは、かつて不法残留で摘発された者の総数の中でいわゆる流民と考えられる人たちの占めている割合、これをはじき出しまして、それに現在不法残留中でもぐっている者の総数に掛けたわけでございます。その結果、大体私どもの推定では百二十名ぐらいと考えております。そのうちの十五名でございますけれども、これが果たして多いのか少ないのかはなかなか判断のむずかしいところで、私どもとしてはそれほど少ない数ではない。  なぜ残りの人たちは出てこないのかということでございますけれども、あるいは、自分たちは出ていってもこの新しい処遇方針では救われないと思っている方々が多いのかもしれません。そこで私どもとしては、そういう人たちになるべくたくさん出てきてもらうために何をすることを考えているかということでございますけれども、特段別に私どもの方からそういう方々のために、ぜひ出ていらっしゃい、出てきたらば必ず特別在留許可を与えるからというような措置をとることは考えておりません。それはやはりその個々の方のそれぞれの良心の問題であろうと私どもは考えておるわけでございます。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 そこで、大臣にこの際お尋ねをしておきたいと思うのでありますが、入管に自首して出てきますインドシナ流民を、もうこれは全部刑事被告人じゃというような態度で取り扱うのでしょうか。それとも、難民条約の枠の中に入らぬけれども、この人たちは実質的にはインドシナ難民ではないか、何とかして彼らを助ける道を開いてやろう、助けてやろうというような気持ちで取り扱っていただけるのだろうか。これは扱い方が大変違いますので、大臣で無理ということになれば、刑事局長さんの御回答をお願いします。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 過日、五月二十二日の当委員会でも、関連のある問題につきましてお尋ねを受けたわけでございます。その際にも申し上げたことでございますけれども、刑事事件は刑事事件としてあるわけでございますから、それなりの扱いはしなければならないわけでございますけれども、それぞれの事案に応じていろいろな情状があるわけでございまして、その情状に応じて検察庁はそれに応じた処理をするというのがたてまえであるということを申したつもりでございます。したがいまして、この不法残留なら不法残留という犯罪になることはなるのでございましょうけれども、その場合でもそれぞれの事案に応じた事情というものは十分勘案して処理をするというのが、一般論のようでございますが、この場合にも当てはまるのじゃないかというふうに思います。  なお、自首という話が出たわけでございますが、これは改めて申し上げるまでもないと思いますけれども、自首をしてまいりました場合には、刑法上も刑の減刑事由になるという規定もあるわけでございますので、それも一つの有利な情状に参酌されることになるであろうというふうに思うわけでございます。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 それでは一つだけ、いまの刑事局長さんのお答え非常にやわらかくて結構なんでありますが、希望しておきたいのです。  この前、五月二十二日のときであったかと思いますが、申し上げましたタオ・イン君というのがアパートの中におりまして、戸口調査をやっておるときに、いわゆる不法滞在ということがわかって警察に引っ張られて、それきり裁判が終わるまで、実に五カ月にわたって勾留を受けました。本人は歯槽膿漏のためにもう頭もふらふらになり、体も弱ってしまって物がなかなか食べられない、お医者さんにもかかれないというような状態であるのにかかわらず、五カ月近くもほうり込んでおった。  これは私は、殺人事件を犯したとかバスの焼き打ちをしたとか、そういう悪質な犯罪を犯したのなら甘んじて受けるべきであろうと思いますが、不法滞在というぐらいのことで——ぐらいのことでという言い方は適当ではありませんが、しかし、犯罪のハの字にも入らぬぐらいの問題で何で五カ月間も人間の自由を拘束しなくてはならぬのか。あのときの刑事局長さんの御回答もきょうのようにやわらかいものであったけれども、しかし現実に行われたことは、タオ・イン君というのはまことに惨めな思いをしたものであります。現実のことです。つい先月出てきたばかりです。私は、ひとつぜひとも彼らを温かい目で処遇してやってほしいということをお願いをしたいと思います。  最後の質問であります。  いま、この違反調査にいたしましてもあるいはその他の調査にいたしましても、自首してきた者については全員在宅調査あるいは仮放免というようなことでやっておりますということを伺いまして、大変安心をしたのでありますが、今後とも自首してきた人間については全員在宅調査という形でやっていただける、身柄を拘束しないでやってもらえるというふうに考えてよろしいか。  それからもう一つは、この流民の人が自首していく場合におきましても、やはり一人で行くのは恐ろしいですよね、そうやさしいところじゃありませんし、ドアを閉めるたびにガチャンガチャンいうところですから。だから、そういうところに行くときにはだれか付添人がついていってやってもらいたい。これは自首する人たちの共通の心理であります。これを許されるかどうか、この二つだけ、最後の質問といたします。

大鷹弘法務省入国管理局長

○大鷹政府委員 先生のただいまの御質問のうちのまず第一点につきまして、流民と称する人たちの違反調査を全員在宅のままやってもらえるかという点でございますが、こういう人たちの本邦への入国の経緯であるとか旅券を手に入れたいきさつ、それから家族その他身分事項等事実関係に間違いがない、こういう人たちが申し述べることが正確であるということを前提として、その事実関係からいわゆる流民に当たると認められれば、確実な身元の保証と調査のための呼び出しの際の出頭の確約を条件として、当面在宅のまま調査を行うよう考慮したいと思います。そしてその場合も、違反調査の段階が終わって入国審査官へ事件が引き渡される場合には、法令上収容令書による身柄の収容を行わざるを得ませんけれども、その際も、仮放免の条件が整う者であるならば、仮放免を考慮したいと思います。  その次の第二の点でございますけれども、付添人をつけることにつきましては、出頭の際に付添人が同行してくることは何ら問題はないと思うのでありますけれども、違反調査の段階で、つまり容疑者を取り調べる段階で立会人を付することにつきましては、できないと申し上げざるを得ません。これは現在の入管令上そういうことになっているわけでございます。したがって、流民というだけで例外の取り扱いはできませんけれども、年をとった人あるいはまだ年の若い人、老幼、それから病気の人等で介添え人の同席を必要とする場合には、親権者とか後見人、保佐人等の立ち会いを認めているわけでございますので、今後もそういったきめの細かい配慮をしていきたいと思います。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 時間が過ぎましてまことに申しわけありませんが、参議院における山本説明員の説明とちょっと違っておりますので、再確認をしておきたいと思うのであります。  藤原議員がこの問題を質問いたしましたときに、山本説明員の説明の中でいまおっしゃるようなことは前段にずっと言われたのです。それはいけません、それはもう一対一でひざを突き合わせてゆっくり話し合うというのが調査の段階では一番いいのでございます、審査をする場合には一番いいのでございます、だから付添人は認めないのでございますということを言っておかれて、その後で、まあまあ、そうではございますが、   物事そういう原則だけでは適正に賄っていけませんので、調査あるいは審査の段階でも、親権者なり後見人、保佐人など、まあ保護者でございますね、そういう者の立ち会いを従来も認めてきておりまして、また、必ずしもそういう人がいない場合もあるわけです。不幸にしてそういう保護者になり得る人がいないという場合には、友人あるいは福祉施設の職員などを立ち会わせてこの調査、審査を行ってまいったところであります。今後もこの難民認定のための調査につきましても、そういうきめの細かい配慮を行ってまいりたいと考えております。 と言っておりますが、ちょっと違いますね。

大鷹弘法務省入国管理局長

○大鷹政府委員 ただいま岡田委員がお読み上げになりました参議院の法務委員会における藤原委員に対する私どもの官房参事官の説明の記録は手元にございますけれども、私が簡単に申し上げましたことと内容におきましては食い違いはないと存じます。違反調査の段階におきまして立会人を付することはできないということは、この場合にも官房参事官が指摘しております。そして次の口頭審理の段階になりますと、これは入管令上「親族又は知人の一人を立ち会わせることができる。」ということになっております。先ほど私が申し上げましたのは違反調査の段階でございまして、こういうこととは別に、違反調査、口頭審理の段階通じまして、年をとっているとかあるいは病気であるとかいう場合には、保護者と申しますか、そういう人たちが一緒についていくということは認められるということを申し上げたわけでございます。したがって、この場合、私がきょう説明しましたこととこの参議院における説明とは、中身においては一致しているはずでございます。

岡田正勝民社党・国民連合

○岡田(正)委員 それでは、藤原議員に対する答弁は確認をさせていただいたことにいたします。  そこで、時間が過ぎましたので最後に御要望を申し上げておきますが、先ほども私は大臣に申し上げましたが、とにかく日本のような非常に平和で安定した豊かな国にみんな住んでおりますと、やはりそういう感覚で物を考えますね。だから、戦乱を逃れて日本へ逃げてきた、そして日夜お日さんを隠れるようにして働いておる潜在の流民の諸君の気持ちというものは、これはなかなかはかりがたいものがありますよ。ですから、せっかく新方針が出たのでございますから、しかもお尋ねしてみれば、二百も五百もおりやしません、百二十ぐらいのものですとおっしゃっているのですから、全部ひっくるめてオーケーにしたところで大した数ではないわけですね。日本が倒れるほどのものでもないし、それが犯罪の根拠になるわけでもない。だから、本当に戦乱の地から逃れてきたということさえわかれば、それが証明されれば、台湾に三遍行こうと何遍行こうと、追い返されるから、そのたびに観光ビザを取るために向こうで働かなければ、ただではビザをくれませんからそのために働いてやってきた、それが足してみたら三年半になったということになるわけなんですから、そういう点を余り酷にしゃくし定規にはめないで、戦火に追われた哀れな国民をどうやったら救うことができるか、助けることができるかという、そういう世界の中の日本という大きな立場に立って法務行政が大前進をなさるよう強く要望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。

高鳥修自由民主党

○高鳥委員長 林百郎君。

林百郎日本共産党

○林(百)委員 いまマスコミでも、また国民の間からも非常に重大な問題になっており、これは法務大臣がお考えになっているよりも格段の関心を呼び起こしておるあの十月三十日の記者会見でのあなたの発言の問題を、私はどうしても究明しなければならないように思うわけですが、一体どういう事情のもとにあなたがこの発言をなさったのでしょうか、その説明をまずお聞きしたいと思うのです。

奥野誠亮自由民主党法務大臣

○奥野国務大臣 十月三十日、閣議後の記者会見で閣議のお話をいたしました。一人の記者の方から、榎本前夫人の証人尋問の感想を聞きたい、こういうお話がございました。そこで私は、検察庁のやっていることについて批判はしません、また事件に介入するつもりはありません、一般論として言えば、検察庁はこうあってほしいと思います、こんなことで二つ挙げたわけであります。  一つは、国民一般から支持される検察庁であってほしい。もう一つは人の道に外れない存在であってほしい、しかし、このことは榎本前夫人の証人尋問、これに当たるとか当たらないとかいう意味で言うているわけじゃありませんよ、こう申し上げたわけでございまして、それがすべてでございました。

林百郎日本共産党

○林(百)委員 それじゃ聞きますが、あなたの人の道に反しないとか人倫に反しないということはどういうことなのですか。あなたの解釈をひとつ聞きたいのです。

奥野誠亮自由民主党法務大臣

○奥野国務大臣 検察庁は不正を追及していく機関でございますから、不正の追及に抜かりがあったのでは国民から支持されない、本来の任務を全うしていかなければならない、こう思うわけでございます。しかし、だからといって合法である限りは何をやってもいいというわけにはまいらない、やはり人の道に外れない存在であってほしい、こういう意味合いで申し上げたわけでございます。先ほども申し上げましたように、別段今度の場合がこれに当たるとか当たらないとかいう意味で言うているわけじゃありませんよということでございます。要するに、検察庁本来の使命はあくまでも不正の追及でございますから、それに向かって万全を期していかなければならない、だからといって何があっても構わないというわけじゃありませんよという意味で道に外れない存在であってほしい、こうつけ加えたわけでございます。

林百郎日本共産党

○林(百)委員 あなたの検察に対する一般的な監督というか、そういうものは検察庁法の十四条にちゃんとあるわけでしょう。あなたのいま言った「一般」というのと検察庁法十四条で言う「一般」というのは違うのでしょうか。

奥野誠亮自由民主党法務大臣

○奥野国務大臣 十四条に「検察官を一般に指揮監督することができる。」と書いてある。その中には検察庁の姿勢も当然含まれていると思っております。

林百郎日本共産党

○林(百)委員 そうすると、検察庁法十四条で言う「一般」ということをマスコミの諸君の前で法務大臣が言うということは、いままであったのでしょうか。許す許さないということは問題ですが、この検察庁法十四条の「一般に指揮監督することができる。」というこの「一般」というものの内容とそれに対する法務大臣の監督権の行使の方法ですね、それについてはどういうことが考えられるのか。  法制局、おいでになりますか。——法制局がいたら、これは部内でそういうことをやるということが検察庁法で決められているのじゃないでしょうか。それから、従来どういう方法をとられてきたのか。マスコミの前で検察庁法十四条の一般の検察官に対する指揮監督というのがなされたことがありますか。

奥野誠亮自由民主党法務大臣

○奥野国務大臣 私は別に検察を指揮監督するという意味で申し上げているわけではございませんで、記者の方からお尋ねがございましたから、何も答えないのも失礼だと思いますので、私なりに検察庁は常にこうあってほしいと思っていることを申し上げたわけでございます。

味村治内閣法制局第一部長

○味村政府委員 検察庁法十四条は、検察官またはただし書きの場合は検事総長に対する指揮監督権について規定をしているわけでございますから、この監督の対象になりますのは検察官及び検事総長であるということになるわけでございます。したがいまして、マスコミ等を通じましてこの指揮監督権を行使するということは考えられないところであると存じます。  あとは事実上の問題でございますので、法制局といたしましては、過去にそういうことがあったかとか実際に法務省、検察庁部内でどういうふうに指揮監督が行われているかということは、答弁を差し控えさせていただきます。

林百郎日本共産党

○林(百)委員 大臣、お聞きになったと思います。あなたは、マスコミの人に聞かれたから、失礼に当たってはいけないから検察の一般的なあり方を述べたと言いますが、そういうことはあなたは許されないのですよ。あなたがどう言おうと、あなたの言ったことは検察一般に対するあなたの指揮あるいは監督に属することなのですよ、人の道に反しないようにやれよと言うことは。それはちゃんと言うべき場所があるのですよ。何も新聞記者さんに聞かれたからといって、あなたが答えなければならないということはないでしょう。そういうことについてはきょうはノーコメントですと言っても、新聞記者さんが、いや絶対許しませんなんて言いませんよ。そういうことをちゃんと場所をわきまえずに言うということ、これは重大な問題じゃないですか。あなたは、その点の反省はありませんか。

奥野誠亮自由民主党法務大臣

○奥野国務大臣 それぞれ各省の責任者が、自分はこういう方針でやっているのだというようなことをマスコミの関係者とお話しして何らおかしくないと思うのでございまして、また不都合があれば、その批判に耳を傾けたらよいことだと思います。ことさら指揮監督しているつもりで言っているわけじゃないわけでございまして、自分が指揮監督権を行使する場合の心構えでありますとか、あるいは客観的に見て社会がそれぞれの機関にどうあってほしいと考えている、それをまたそれぞれの責任者が、世間はこう考えているし、私もそうあってほしいと言うても何も差し支えないと思うのでございまして、それがことごとく指揮監督をしているのだという立場で物を言うているというふうに受け取られることは、少しいかがなものかなと思うわけでございます。

林百郎日本共産党

○林(百)委員 あなたがそういうことを言っているから、世間はあなたに対する厳しい批判をするのですよ。ことに、このときは、前段で新聞記者さんが聞いたのは榎本三恵子さんの証人申請、証拠調べについてはどうですかということと連動しているわけです。あなたは、一応切り離した、一般的なことだと言っておりますけれども、そういうときに何か検察官のやり方について人道に反しないように、人倫に反しないようにと、それは一般的な検察官会同で訓示として言うことですよ。それを新聞記者諸君の前で言うということは、これはあなた、場所をわきまえない言葉ですよ。  ことに、国民はみんな、榎本さんの証言についてはよくやった。それは榎本さんの個人的な生活についてはいろいろな問題があるようなことも書かれておりますけれども、とにかく一線で奮闘している検察官があれだけの証拠方法を講じたということには、国民は大きな賛同を与えているのですよ。しかし、あなたの発言のどこを見ても、検察官はよくやっていますよじゃなくて、あなたは、こうしてほしい、ああしてほしいと、ほしいことばかり言っているのですよ。そんなことは当然会同でやるべきですよ。むしろそのとき、あなたが本当に国民の気持ちをくんでいるとすれば、一線の検察官は私の期待にこたえてよくやっています、そう言うべきじゃないですか。  ことに検察庁法十四条と政党との関係というのは、接点ですから厳格な立場をとらなければならないと言われていることなのですよ。だから、それに対してあなたが、新聞記者さんがどうでも答えろと言うから答えたということじゃ、これはあなた、どうしても逃れられませんよ。場所前をわきまえない、一線で奮闘している検察官の苦労をわきまえない言葉ですよ。これは、法務大臣としてあなたは責任をとらなければいけない問題ですよ。どうでしょうか。  あなたの発言を調べてみると、ああやってほしい、こうやってほしい、そういうことだけでしょう。それは具体的に、田中事件のその日の証拠方法について言わないにしても、一線の検察官はみんなどんな困難があっても一生懸命にやっていますよ、そう言ったっていいんじゃないですか。それは訓示でも何でもないですよ。やはり法務大臣はわれわれの苦労を買ってくれているなと。  しかも、田中の弁護陣を見れば、大阪の高検の検事長をやった人だとか、新潟の検事正をやった人だとか、法務省の元参事官だとか、法務総合研究所の研究官だとか、東京地検の検事正だとか、こういう人がずらっと金と力でもって取り囲んでいるのです、弁護人として。その中で一線の若い検事が奮闘するということは、容易ならぬことだと私は思うのです。それに対してあなたは、評価することは何もないのです。あなたの言葉は、こうやってほしい、ああやってほしい、人倫に反することをしないようにしてもらいたい、人の道に反しないようなことをやってもらいたい。そんなことをこの場であなたが言おうと言うまいと、それは全くナンセンスですよ。検察官会同でちゃんとおっしゃることならわかりますけれどもね。そういう反省があなたはありませんか。

奥野誠亮自由民主党法務大臣

○奥野国務大臣 記者の方から、検察庁のとっている具体の事柄について聞かれたわけでございますから、私は、答えないのも一つだと思います。答えるとすればやはり一般論で答えるということだと思いますので、ああいう言葉になるのも別段異例のことではないんじゃないかなと思っておるわけでございます

林百郎日本共産党

○林(百)委員 それでは、あなたの一般論というのは、検察庁法の「一般」とどう違うのですか。これは明らかに「一般」という言葉は、内容もあなたの「一般」も同じですよ。そういうことをあなたがマスコミの前で言うから、あなたが、場所前もわきまえない法務大臣としての発言だという批判を世間から受けるんじゃないですか。それでは、検察庁法で言う「一般に」という言葉と、あなたがここで使っている「一般に」とはどう違うのですか。

奥野誠亮自由民主党法務大臣

○奥野国務大臣 先ほども申し上げましたように、私は検察庁法を盾にとって新聞記者の皆さん方に申し上げているわけじゃないのでございます。新聞記者の方から具体の事実についてお話がございましたので、私なりの常識的な考え方を申し上げただけのことでございます。

林百郎日本共産党

○林(百)委員 あなたがそういう弁解をなさっても、ちっとも私の質問には答えていないのですよ。  あなたの言う「一般」というのは、一般的に答えたと言うけれども、それは検察庁法の訓示、会同あるいは通達、そういう方法で検察官に言うことなんです。そういうことは会同で言うことなんですよ、検察官というものはこうあるべきだよ、人の道に反しないように、人倫に反しないようにやってもらいたいということは。それをあなたは「一般」という言葉でもって——あなたの本心を国民の側に立って見れば、これは、榎本のアリバイについて奥さんが決定的な証言を与えた、ああいうことは余り好ましくないな、別れた妻が夫に対しての証人として出ることは人の道に反するんじゃないか、これを陰にひそめながら言った、こうとるよりほか道はないじゃないですか。  たとえば、あなたが参議院で言ったことですね、これはどういうことなんですか。これはうちの下田京子議員に答えたことなんですが、検察は人の道に反するなとか、離婚した妻の証人申請は、他に証人を求める道があれば他に求めるのが望ましい、それからこの日に、証人にだれが望ましいということについて発言することは、私の監督に属する問題ですと。  あなたは、監督に属するからこういうことを言えるのですか。具体的に証人についてのだれが望ましいかなんということをあなたは言えますか、マスコミの前で。あなたの言った内容はこういう意味だということをちゃんと答えているのですよ。これはむしろ、検察庁法の二項の検事総長に言うべきことを言ったとも言えますよ、具体的な証人について物を言ったとすれば。  だからあなたは、法務大臣でありながら、検察庁法の立場というものを厳粛に考えておらないですよ。一線の検事がどんなに苦労しているかということを、あなたは本当に身にしみて感じていない。むしろあなたは自民党で、失礼ですけれども隠れ田中派で、さっきも話が出ましたが…。ここに写真も持っていますが、何も新聞記者にそういう答えをした日に、何ですか、にやにや笑って——笑って悪いということは言いませんが、田中角榮と握手している。こういうことをみんな世間や国民は厳格に考えているのですよ。  法務大臣にいささかもそういうことがあってはたまらぬ、純独立の司法権としての検察庁が政党の影響を受けるようなことがあって、そのために事実がゆがめられては大変だと思っているときに、あなたがこういうようなことを、十月二十八日の法廷で、榎本元夫人を証人として証拠決定を裁判所がして、証拠調べをしたことに対しては、他に証人を求める道があればその方が望ましいとか、だれを証人にするかということは私の監督に属する問題だ、こういう答弁をしていますね。これはどういう意味ですか。

奥野誠亮自由民主党法務大臣

○奥野国務大臣 私は林さんとは違いますから、人の人格を傷つけるようなことはできる限り慎んでお答えをいたします。(林(百)委員「どうぞ言ってください」と呼ぶ)同時にまた、断片的に取り上げておっしゃることもぜひやめていただきたいなと。  そこで、いま断片的に取り上げられたことにつきまして、若干私から加えて御説明をしたいと思います。  参議院の法務委員会で寺田議員からお尋ねがございました。その際に、証人の問題を具体の事件から切り離して一般論として聞くから答えてくれないかというお話があったわけでございます。榎本前夫人のように、特定の事件の中で出てきた具体の証人の問題ではなしに、一般論として証人だけを切り離して、要するに抽象化された証人の問題としてお尋ねがございまして、離婚した妻が夫の証人に立つことをどう思うかというお尋ねでございましたから、私は、他に求める証人があるならばそちらを求めた方が好ましいと思います、こう答えたわけでございます。  このことを取り上げまして、行革の特別委員会で下田委員から、私が司法権に介入している、こうおっしゃったのです。そこで、証人は裁判所で検察官から申請するのですよ、検察官については法務大臣があれこれ関心を持っていなければならない存在ですから、司法権に介入しているということは当たらないのですよ、こう申し上げたわけでございます。

林百郎日本共産党

○林(百)委員 私が人格を傷つけたって、だれの人格をどう傷つけたんですか。断片的に取り上げてはいけないとあなたが言うなら、だから私は、あなたが、これは参議院でどういう事情で言ったのですかと聞いているのですから。私がだれの人格を傷つけたんですか。それはあなた、取り消してくださいよ。

奥野誠亮自由民主党法務大臣

○奥野国務大臣 あなたは大変人を誹謗するようなことを言っておられますよ、その週刊誌を持って言ってみたり、私を勝手に特別な批判をされてみたりすることは。真実に基づいて言っていただきた.いな、こう思いますよ。

林百郎日本共産党

○林(百)委員 特定の人というのはだれですか。特定の人、ある人と握手をしたということが、何で人格を傷つけたことになりますか。

奥野誠亮自由民主党法務大臣

○奥野国務大臣 隠れ田中派とはどういう意味ですか。

高鳥修自由民主党

○高鳥委員長 順々に発言してください。

林百郎日本共産党

○林(百)委員 ちょっと待ってください。いまあなたは田中裁判で、榎本発言について重大な疑惑を持たれているわけですよ。法務大臣として一線は守らなければならない、政党からの圧力に対して法務大臣というのはそれを守るのがむしろ重大な任務なんですよ。そういう場合、被告になって、しかも証人調べになって問題になっているそ被告と、あなた、この写真を見てください、こういう顔で握手を、まあ握手したかどうか知りませんが、握手したと書いてあります。こういう顔であなたが接していれば、あなたに対して疑惑を持つのは当然じゃないですか。そのことを厳粛にしてくれというのが、何であなたの人格を傷つけるのですか。  この写真を見てくださいよ。それは当然ですよ。国民の立場に立って私は物を言っている。写真を見てくださいよ。私は別にあなたの人格を傷つけた覚えはない。被告の田中を田中と言ってはいけないのですか。被告じゃないですか。しかも、一国の総理大臣が外国から賄賂をもらったという嫌疑を受けて逮捕されて裁判にかけられるなんということは、国民の恥ですよ。怒りを持つのが当然じゃありませんか。それを、田中と言ったから人格を傷つけた。何ですか。そういうところにあなたが隠れ田中派だとか、あるいは政党と特別な関係を持つという危惧を国民が抱くのですよ。何で言ってはいけないのですか。国民の怒りを感じてごらんなさいな、あなた。

奥野誠亮自由民主党法務大臣

○奥野国務大臣 私の人格を傷つけないように言うてくださいよという言い方をしたつもりでございます。

林百郎日本共産党

○林(百)委員 あなたの人格を傷つけないからこそ、私はあなたに、これはどういうことでしたかといってあなたに答弁を求めているのでしょう。そうしたら、あなたは答弁したらいいじゃないですか。林さん、それは細切れですよ、現実はこうだったのですよと言えばそれでいいじゃないですか。とにかく取り消してくださいよ、私があなたの人格を傷つけたなんということは。そうじゃなければ、あなたの答弁を求めませんよ。

奥野誠亮自由民主党法務大臣

○奥野国務大臣 あなたが私の人格を誹謗するようなつもりで言われた意思でないのなら、取り消します。

林百郎日本共産党

○林(百)委員 それから、私は第一に、いま申しましたような国民感情の正しい立場から言いますと、あなたが十月の三十日に言われたことは、やはり検察官会同なり通達なり訓示で部内でおっしゃるべきことだ。幾ら新聞記者に言われたとしても、検察官にこうあってほしい、あああってほしい、そういうようなことを言うべきじゃないと思うのです。そうあってほしい、あああってほしいということがあったら、それは部内で言えばいいことであって、あなたは法務大臣として検察官の最高の責任を負っているわけなんですから、むしろ一線で奮闘し、そして榎本のアリバイを崩したそういう検察官の努力を評価してやるべきじゃないですか。  検察官もたびたび言っているでしょう。記録を読んでみますと、あなたは前の御主人のことについて証言をするので、拒否することができますよ、言いたくないことは言わなくても結構ですよと言っているのですよ。裁判所もまたそれをしばしば言っているのですよ。しかし榎本夫人が、私は自分から事実を明らかにするために言います、こう言っているわけなんですね。それがどうしてあなたの言うように望ましくない、違う証人があれば望ましいというようなこと、それからあなたの言う、証人にだれが望ましいということについて発言することは私の監督に属する問題だ、これはいいですよ。しかし、それは検事総長にだけあなたは言えるのです。個々の裁判についてはあなたは直接この証人は望ましいとか望ましくないということは言えないはずですよ。  ここでは個々の証人のことについて聞いているのですからね。これは検察庁法十四条の二項にもあなたは違反したことをここで言っているのです。そう思いませんか。そういう具体的な事案について、具体的な証人等についてのあなたの検察官に対する監督権というのは、検事総長のみに言えるのですよ。検事総長があなたの意向に沿うか沿わないか、これは検事総長の判断です。検事総長から伝えられるべきものです。あなたは直接この証人は適当だ、適当でないと言う権限はないですよ。

奥野誠亮自由民主党法務大臣

○奥野国務大臣 いま御説明したから御理解いただいておると思っておりましたが、御理解いただいてないようでございますので、もう一遍繰り返して申し上げます。  参議院の法務委員会で寺田委員から、具体の榎本夫人の証人というようなことについて、私は是非は答えませんでした。そこで、具体の問題を離れて抽象化された証人ということで、一般論で尋ねたいのだ、こういうお尋ねでございましたから、私は離婚した妻よりも他に証人を求める人があるならばそれが望ましいと思いますよ、こう答えていることでございます。具体の事件についての問題ではございませんで、一般的に訴訟活動の場合にどういうことが望ましいとか、どういうことが望ましくないとかいうたぐいのものだ、こう私は心得ているわけでございます。そのことはまた、司法権に属するものではなしに検察権の問題に属する、こう思っているからでございます。  同時にまた、私は、検察官は常にいろいろなことを考えて、あらゆることを総合的に考えて、常に最善を尽くすべく努力をしているのだ、こういうことも申し上げているわけでございまして、検察官が職責を全うしていないとかいうような気持ちはいささかも持っていませんで、先日来も参議院の法務委員会でも申し上げてまいりましたが、検察官としてはそれぞれいろいろなことを考えながら、常に最善を尽くす努力をしてきているのだ、それをまた社会がいろいろ御批判される場合もあるだろうけれども、検察官としては常に最善を尽くす努力をしているものだということは申し上げてきております。

林百郎日本共産党

○林(百)委員 あなたの談話は、そんなことは言っていませんよ。人の道に外れないように留意することが大切だと思う、検察を批判することは避けたい、一般論として検察幹部にそういう心構えでやってもらいたい、進行には深入りするつもりはない、人倫をわきまえながらやってほしい、今回の件が人倫に反しているかいないかということを言う意思はありませんが、常にそういう気持ちでやってほしい、やってほしい、やってほしい、そうしてほしいということなんです。そんなことを何もマスコミにあなたが言うことはないですよ。それはちゃんと部内であなたが言う場所があるのですから、そういうところで言われたらどうなんです。  そういうことをわきまえて、とにかく国民の立場から言えば、あなたがここで、いや一般論だとか、いやどうだこうだと言ったって、あなたに対する国民の不信というものは払拭しがたいですよ。だからあなたももう少し自己批判をして、反省されてみて、みずから自分の身を処理するお考えはありませんか。共産党は罷免を要求するという方針になっていますけれども、あなたは自分でやめる気持ちはありませんか。こういう重大な問題になっている。ここで私とあなたと話している、こんなものじゃないですよ、世間の一般的な今度の問題に対する大きな批判というものは。政治家というものは出処進退が大串ですからね。  ことにあなたは、政党と純独立をしておる検察陣との接着点にあるので、むしろ私が手に入れたこの検察講義案から見ますと、監督権の行使というのは、検察権に対する政治的勢力からの不当な圧迫や干渉を排除する配慮を払わねばならない。要するに、政党からの不当な圧迫や干渉を排除しなければならない。検察官は常に健全な国民感情を正しくつかんで、国民から深い信頼を得るよう絶えず謙虚な反省を行わなくてはならない。あなたなんか全然反省も何もあったものじゃないですよ。むしろ開き直ってだんだん強気で出てきているので、これじゃ、何としても法務大臣としての適格性を欠いていると私は思うのですよ。みずからおやめになる意思はありませんか。

奥野誠亮自由民主党法務大臣

○奥野国務大臣 私は、先ほど最善を尽くしているというのは、参議院法務委員会で述べたことでございます。記者会見で述べましたことは、記者の方の質問に対して答えたわけでございまして、私は、記者の方の質問に対する答えとしては、それなりに両者の呼吸は合っておったと思うのであります。ただ、具体論で尋ねられたことに対しまして、私は一般論で答えたということだろうと思います。

林百郎日本共産党

○林(百)委員 だから、そのものずばりで答えてください。あなたは自分の身を処して、この際これだけの大きな問題になったのだから、自分はよく反省をして自分の身を処する。要するに辞任するというような考えはみじんもありませんか。それにはっきり答えてください。

奥野誠亮自由民主党法務大臣

○奥野国務大臣 私は、私として最善の道を歩んでいきます。

林百郎日本共産党

○林(百)委員 だから、私があなたの最善の道の一つをお示ししているんだから、そういう意思があるかどうかということをここで言ってください。

奥野誠亮自由民主党法務大臣

○奥野国務大臣 私として信ずる最善の道を歩んでいきます。

林百郎日本共産党

○林(百)委員 それじゃ、あなたとして信ずる最善の道とは何ですか。私は、あなたがこの際身を処してむしろ辞任をすべきだ、こうあなたに言っている。あなたは自分の最善と信ずる道を歩むと言うが、それはどういう道ですか。ここで具体的に言ってください。またあなたの人権を侵害したなんと言われちゃいかぬから、あなたからよくいろいろ聞きたいと思います。

奥野誠亮自由民主党法務大臣

○奥野国務大臣 私が信ずる道でございます。

林百郎日本共産党

○林(百)委員 だから、あなたの信ずる道というのはどういう道ですか。それじゃ、私の言うあなたが自分から自分の身を処すべきだ、この際法務大臣としての職を辞すべきだということについては、あなたはノーなんですか。それでいいんですよ、その回答してもらえば。あなたの信ずる道なんといったってわからないよ、あなたが何を信じているかわからないんだから。

奥野誠亮自由民主党法務大臣

○奥野国務大臣 私の信ずる道を歩んでいくということでございまして、それで御理解いただければ結構だと思います。

林百郎日本共産党

○林(百)委員 御理解できないのですよ。

奥野誠亮自由民主党法務大臣

○奥野国務大臣 やむを得ません。

林百郎日本共産党

○林(百)委員 そういう開き直った態度をいつまでもおとりになるなら、ますますあなたを罷免するか、そういう要求をするか、われわれは。もちろんそうしていますけれども、自分で辞するつもりがないと言うなら。しかし、事は非常に重大だという意識だけはあなたにぜひ持ってもらわなければならない、こういうように思うわけなんですよ。  じゃ、時間がありませんから違う問題について、これは検察庁の方へお尋ねしたいのですが、小佐野賢治の有罪の判決があって、執行猶予がつかなかった。非常に厳粛な判決だということで、国民は非常にこれを支持しているわけですね。ただ、在宅起訴だったものですから、有罪の判決があって執行猶予がつかなくても、テレビで見れば、何も血圧で動けないような顔つきじゃないのが、外車に乗って堂々と出ていくということに対して、国民は納得しないわけなんですね。これはどうして一体、実刑の判決を受けて、執行猶予もないのに収容されないのだろう。それは国民の皆さんが全部刑事訴訟法を知っているというわけじゃありません。  そのことについて御質問しますが、御承知のとおり小佐野賢治氏の弁護人には、大沢一郎というような元検事総長まで、私はこういう検察の最高の地位にあった人がいかに弁護人になったからといって、どんな事件でもやっていいとは思いませんけれども、しかし、これはそれぞれ人の思うことですからあれこれは言いませんけれども、こういう人もついている。世間では、にらみをきかしている、だからこれは勾留にはならないのだと言われます。  御承知のとおり小佐野は、ホテルは世界の至るところにある。ハワイのワイキキでは、小佐野通りというものがあるほどホテルやいろいろの施設を持っている。こういうところへいつ飛んでいってしまうかわからないわけですね。そしてしかも、小佐野判決にもありましたように、金力と人力を動員して、そしてロサンゼルスでの二十万ドルのクラッターからの授受については、クラッターの日記を検察陣よりも先に、これも報道の報じておるところですが、先に手に入れてしまって、そして「4・30 SGCC 9ホールズ」というような点について、弁護人側は弁護人側のこの日のアリバイをこれで主張している。検察官は、これは誤記だっただろうと言っている。しかし半谷裁判官は、半谷さんの独自の判断をしている。  こういうようなことを考えますと、在宅で小佐野を許しておくということになって、もし露骨な証拠隠滅だとかあるいはどこか行方のわからない、どこにでもホテルがあるわけですから、そういうようなことが目に余るようなものがあった場合に、検察官としてはこれに対してそのままにしておかれるのですか、何らかの手を打つことを考えられるわけですか。これは将来のことです。そういう事態が仮にあったとすれば、ということにしておきましょう。現実には四十八年十一月三日のクラッター日記の問題もありますけれども、これより以上のことをやる可能性もあると思うのです。そういう場合に検察官としてはどういう措置をとられますか。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 林委員は法律の専門家であられますから、私から申し上げるまでもないと思いますけれども、お尋ねを聞いておりますと、小佐野被告人を収監しないのは、何か圧力でもあって収監しないような印象を持たれるようなことでございますので、あえて申し上げますけれども、在宅で起訴しております場合に、有罪の判決があった、実刑の判決があったといたしましても、それが確定しない以上は収監できないというのが法律のたてまえでございまして、それを乱すわけにはいかないわけでございます。  なお、罪証隠滅のおそれがある、あるいは逃亡のおそれがあるということで身柄拘束の必要性があります場合に、これは一般論でございますけれども、身柄勾留という措置がとられることはあり得ることでございます。

林百郎日本共産党

○林(百)委員 まことにそのとおりだと思うのです。しかし、そういう身柄勾留は裁判所がその権限を持っていますから、検察庁としてはそういうことについて申し入れをするとか、これこれこういうような証拠隠滅の実情があるのでひとつ勾留をしてもらいたいという、そういう申し入れをするとか、あるいはそういう意見を裁判所へ申し入れるとか、そういうことはあり得るということでしょうね。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 仮定の議論でございますから、具体的なことについて申し上げるのは適当でないと思いますから、先ほど申し上げたとおりに御理解いただきたいわけでございます。

林百郎日本共産党

○林(百)委員 仮定ですけれども、もう一度それを確かめたいのです。だから、そういう明らかに証拠隠滅やいろいろする場合には、一般論としては勾留ということもあり得るのだ、そういうことでしょう。

前田宏法務省刑事局長

○前田(宏)政府委員 先ほどもそのように申したつもりでございます。

林百郎日本共産党

○林(百)委員 最高裁の刑事局長、来ていますか。——いま検察庁ではそういう方針なんですけれども、検察庁からそういう申し入れがある、あるいはそういうことを促すような意見がある、これは裁判所の独自の見解がありますけれども、在宅のために自由に、ことに世界じゅうにホテルを持っていたり、航空の株を持っていますから、飛び歩けるわけですね。そういう場合に、検察の方からそういう申し入れがあるとか、あるいはそういうことを促すというようなことがあった場合には、刑訴の六十条がありますけれども、裁判所としては考慮なさいますか。

小野幹雄最高裁判所事務総局刑事局長

○小野最高裁判所長官代理者 ただいまのお尋ねは具体的なことでございますので、具体的なことはちょっと私の方からは差し控えさせていただきますが、一般論といたしまして、検察官の方から、勾留してほしい、まあ職権発動を促すというようなことがありました場合には、裁判所の方では、六十条一項各号にございます勾留の理由、住所が定まっていないとか、罪証隠滅のおそれとか、あるいは逃走のおそれ、そういうものでございますが、そういうものの有無を慎重に判断するほかに、さらに勾留の必要性があるかどうかというようなことも十分検討して対処することになると思います。

林百郎日本共産党

○林(百)委員 そうすると、いろいろの条件を勘案することは当然ですが、一般論としては勾留ということもあり得る、そういうことですか。ちょっとそこをはっきりしてください。

小野幹雄最高裁判所事務総局刑事局長

○小野最高裁判所長官代理者 そういう点をいろいろ考慮した結果、勾留の必要性があるということになれば、そういうことになると思います。

林百郎日本共産党

○林(百)委員 もう一つ、警察庁とそれから国税庁、来ていますか。——これは私は前に質問したのですが、例の田岡ですね、山口組の問題について、名目はどういう名目であるにしろ、それが暴力団の資金源となるようなものになるならば、それは徴税はいたします、もしそれに不服があれば、行政訴訟を起こしてその判決を待てばいいわけなんですから。ところが、週刊誌や新聞などを見てみますと、何か香典だからこれには課税ができないんだというようなことをいろいろ言われておるので、これはもう葬儀は二回もしているわけですから、明らかにこれはデモンストレーションなんで、広域の暴力団ですね。これに対して、二億とも言われ、あるいはそれ以上とも言われ、大きいのば一千万円以上が未亡人へ行っているとかいうような話も出ておりますけれども、これに対しては警察もできるだけのことはしたようです。ボデーチェックしたり、いろいろした。しかしつかめなかったということですが、警察はそれに対してさらに十分な捜査を続けるかどうか、また、国税庁も、警察と連絡をしながら、将来課税ということを考えるかどうか、このことが一つ。  それから、時間もありませんので……。きょうの新聞に、日本の評論家からアメリカの大統領の側近の高官に金銭の授受が行われている、それに対してアメリカ側から日本の警察庁へ捜査の依頼があって、日本の警察庁も捜査をしたという記事が載っておりますが、これは事実こういうことがあったのかどうか。もちろん、新聞には捜査が一応完了したとは書いてありますけれども、捜査の過程ですから、言える範囲のことだけこれは言っていただきたい。  その二つの点を質問しておきます。

浦部幸哉警察庁刑事局暴力団対策官

○浦部説明員 お答えいたします。  暴力団の行ういわゆる組葬といいますのは、暴力団社会の特有な習慣的な行事でございますが、そういう組葬の際に、世間一般の常識を超えるような非常に多くの金が香典という形で集められる、しかも、その金が暴力団の不法活動の資金に使われる場合もあるというようなことにつきましては、私どももかねがね非常に関心を持って対処しているところでございます。  ただ、御承知のとおり、暴力団が組葬に際して香典を集めること自体は犯罪を構成いたしませんので、それを検挙するわけにはまいりません。しかしながら、その金の事実上の帰属者といいますか、取得をした者がどういうふうになるか、あるいはその金の使途がどうなっているかというようなことにつきましては一課税の対象になるということになりますと、私どもは国税当局と協力いたしまして、いやしくも暴力団が税金逃れをすることがないように、非常に厳正に対処してまいりたい、そういうふうな気持ちでおります。  それから第二点の、アメリカ高官問題というようなことでございますけれども、私、ちょっと暴力団だけを担当している関係でございまして、まだ詳しいことを承知しておりませんので、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。

林百郎日本共産党

○林(百)委員 それでは、それは調査して担当官に私のところへ回答に来るように言ってください。  国税庁の方の答弁を聞いて、私の質問を終わります。

入江敏行国税庁直税部所得税課長

○入江説明員 第一点の点につきましてお答えいたします。  葬式の場合の香典が、一般論としまして、その金額が受贈者、つまり香典をもらった人の社会的地位とかあるいは香典をもらった人とそれを出した人との関係などから見まして、社会通念上相当と認められる場合は課税しないというふうに扱われていることは、先生もうすでに御承知のとおりだと思います。御指摘のありました新聞記事その他につきましては、恐らくそういう一般論を述べたものだと了解いたしております。  ただ、本件の場合、いろいろ報道がなされておりますけれども、われわれ税務当局といたしましては、その組葬と称するものの際に、どのような性格の金がどの程度の金額、そしてだれからだれに渡されたかというような課税関係を判断する上で非常に重要な事実、そういったものが実際はまだ把握されてない段階でございまして、そういう段階で課税関係の判断ができないというのが実情でございます。  しかし、前回のときに申し上げましたように、所得があれば適正に課税するというのは、これはもう税務当局にとって避けられないといいますか、本来の使命でございますから、今後警察当局と十分連絡をとり合いまして事実の解明に努めまして、課税すべき事実を把握した場合には適正に処理をいたしたい、そのように思っております。

林百郎日本共産党

○林(百)委員 これで終わりますが、いま国税庁もそういうことを言っておりますが、警察庁の方はこの点については、何も手口をここで披露しろとは言いませんけれども、十分調査なさいますか、その決意をここで答弁してください。

浦部幸哉警察庁刑事局暴力団対策官

○浦部説明員 お答えします。  私どもは、やはり暴力団が組葬に際して得た収入がいかに使われるかということに大変大きな関心を持っておりますので、あらゆる角度からその実態把握に鋭意努めてまいりたいと思っております。

林百郎日本共産党

○林(百)委員 終わります。

高鳥修自由民主党

○高鳥委員長 安藤巖君。

安藤巖日本共産党

○安藤委員 林委員の質問に関連をしまして、二、三大臣にお尋ねをしたいと思います。  大臣は、十月三十日の発言の問題についてあれこれあちこちで質問を受けて、もう真っ平御免だと思ってみえるのかもしれませんが、先ほど来林委員が言っておりましたように、事はきわめて重大だと私どもは受けとめておりますので、その関係についてお尋ねをしたいと思うのです。  まず、先ほども話になりましたが、三十日にあのような発言をなさって、それから故前尾繁三郎氏の百日忌にお出かけになって田中角榮と握手をしたということが新聞、雑誌に報道されておるわけですね。それは、先ほども週刊文春のあの写真を林委員の方から大臣にお見せしたし、そのほかの機会にもごらんになっておられると思いますから、十分御承知のとおりだと思うのです。  そこで、私がお尋ねしたいのは、あのロッキード裁判で検察官が、小佐野被告ももちろんおるわけでございますけれども、田中角榮被告に対してその刑事責任を追及するために検察官は一生懸命努力をしているわけですよ、大臣。大臣は、先ほどからも言っておられるように、検察庁法第十四条に基づいて、一般的な指揮権、あるいは具体的な事件については検事総長に対する指揮権というのを持っておられる。それから政府の閣僚として、法務行政についてもあるいは検察事務についても最高の責任者としての立場であられるわけですね。そうしますと、当の検察官が刑事責任を追及している刑事被告人の田中角榮に、その検察官を指揮監督する立場にある法務大臣が、まあ写真の上ではにこやかに笑っているから、にこやかに笑ってだろうと思うのですが、まさか怒って握手をすることもないと思うのですが、そういうような状態で握手をするということは、一般国民感情から見て、一体これはどうなっておるのだ、いいかしらんというような疑念を抱くのも当然だと思うのですが、そういう行動は法務大臣としてふさわしくない、あるいはしてはならない行為だったというふうには思っておられませんか。

奥野誠亮自由民主党法務大臣

○奥野国務大臣 十月三十日に前尾繁三郎さんの百カ日忌がございました。それで私は献花をいたしまして、その後、森戸辰男さんの労働科学研究所六十周年の会がございまして、そちらへ回ったわけでございます。献花をして、そちらへ行きますときに田中さんとすれ違いになったわけでございました。私は、田中内閣の文部大臣でもございまして、お互いに顔を見合わせれば、田中さんのみならず、自民党の関係者、皆さんと素知らぬ顔をして通り過ぎてしまうというような不作法は心得ていないつもりでございまして、できる限りお互いにあいさつを交わす。それは私は、われわれの本来の礼儀じゃないだろうかな、こう思っておるわけでございます。すれ違って握手することも私は不自然ではない、こう思っておるわけでございます。それと法務行政を遂行していく、検察を預かるという問題とは、これまた別個の問題だ、こう思っておるわけでございます。  同時にまた、マスコミもいやみを持った書き方をしているなと、私は大変不愉快にあの記事も見ておるわけでございますけれども、おっしゃる週刊誌にその写真が載っておりました。ただそれだけでございまして、一瞬のお互いの顔合わせにすぎないわけでございますけれども、何か含むところがあるような取り上げ方をしていることも残念でございますし、先ほどの林さんといい、何か私があの事件に介入するために言っているような、印象づけようとするようにお尋ねになっているふうに受け取れまして、共産党の方というのは常にそういう意図的な扱いをされるのではないかなと思って、大変不愉快な感じを持って、林さんにいささか私のふんまんをぶつけたようなわけでございました。

安藤巖日本共産党

○安藤委員 私は何も、いま大臣がおっしゃったような、そういう意図で言っているんじゃないんですよ。誤解しないでくださいよ。先ほども私はっきり言いましたように、ああいうような報道がなされ、写真も出る、週刊誌にも載るということになると、国民はこれはいいのかなと思うんじゃないかということをお尋ねしているのです。それを変なふうに、いまマスコミの方が変な、いやらしい取り上げ方をしているというお話がありましたが、大臣の方こそ私の質問を変なふうにとっているじゃないですか。そうでしょう。だから、それはいまお尋ねしますから、答弁のときにちゃんと直してくださいよ。  国民感情から見ていいだろうかなという気持ちを持つ、これは当然じゃないかと思うのですよ。そして、それは時たまマスコミの取り上げ方の問題についてはどうかなと思うのもあります。それはないとは言い切れません。しかし、先ほど申し上げましたように、それから林委員も言いましたように、この問題は非常に大きな問題になっているんですね。だから、そういうような立場にある法務大臣が、検察官がまさに刑事責任を追及するために一生懸命になっているその相手と握手をするということになると、これは重大問題だと国民は受けとめるに違いないということを私は言っているのですよ。  何も私は、大臣に不作法なことをやれということまで言っておりません。しかし、身を処するに、検察を預かっている法務大臣として、当の刑事被告人と握手をするということになったら、それは国民感情としては重大な疑惑を持つ、これは当然じゃないでしょうか。その辺のところ、全く配慮されない。前に田中角榮が病気で倒れたときに、法務大臣でなかったら行きたいところだがなということを大臣発言なさって、それも問題になった。しかし、そのときは大臣お行きにならなかった。だから、そのときは一応そういうことをお考えになった、しかしそういう発言があったことは別ですけれども。そういうような身の処し方をやはりすべきじゃなかったのでしょうか。だから、そのことを私お尋ねしているのです。どうですか。

奥野誠亮自由民主党法務大臣

○奥野国務大臣 さっきも申し上げましたように、田中内閣で私、文部大臣をしておったわけでございますし、長い間の政治経歴を持っている方でございますから、検察が公訴を提起している被告になっておられる、それはそれとして、すれ違ったときに手を握るということがあったからといって、私は、それが特に批判すべきふうに検察官一般が見るかといいますと、それはそれなりに両様に理解してくれるんじゃないかと思うのです。やはり長い関係にある人でございますから、礼儀としてお互いにあいさつをするということは、私は、それは理解してくれるんじゃないかな、こう思うのです。同時にまた、私は検察官が公訴を提起しているその活動を守っていかなければならない立場でありますし、またその守る姿勢はずっととってきておるわけでございますので、そういう意味合いでもより一層理解してもらえることじゃないかな、こんな感じを持っているわけでございます。

安藤巖日本共産党

○安藤委員 私は、最初から国民の声を代表して質問をしているつもりなんです。ですから、国民はそういう疑惑を持つんじゃないかということをお尋ねしておるのです。だから、大臣はその国民感情を逆なでしている、国民の気持ちをよくわかってないんじゃないかと思うのです。しっかり聞いてください。その辺のところを私、聞いているのです。いま検察官云々とおっしゃったけれども、それはすぐ後でお尋ねします。  国民はどう思うか。国民を甘っちょろく見ておられるんじゃないか。ジャーナリズムの方も、そういう国民の声を背景にしてそういう報道をしていると私は思っているのです、この問題については。だから、その辺のところを、検察を預かるといまみずからおっしゃった法務大臣としては、やるべきでないことをやったんじゃないかということは反省されないのかということをお尋ねしておるのです。どうですか。

奥野誠亮自由民主党法務大臣

○奥野国務大臣 私は、人それぞれによって感じ方がかなり違うんじゃないかなと思うのです。政治の社会に明るい人でありますと、政治家同士がすれ違う、そこで一瞬手を握る、それはその方が自然と感ずるでしょうし、そうでない人たちはまた、安藤さんが言われるような感じを持つ人たちもたくさんある。やはりその人の立場立場で感じは違うのじゃないかなと思うのです。同時にまた、私の立場として考えますならば、やはりすれ違ったら、あいさつを交わしてすれ違っていきたいものだ、こう思っておるわけでございます。

安藤巖日本共産党

○安藤委員 何度も繰り返しませんが、そこのところが大臣の姿勢がおかしいのじゃないかと私は思うのです。国民大衆は許さないと思いますよ。その辺のところを十分考えていただきたいのです。  そこで、検察官の方も——大臣は一般論で説明をしておられる、そして一つの事件について言ったわけではないというような答弁を参議院でもしておられるということですが、大臣があの発言をされた同じ三十日に安原検事総長が談話を発表していることは御存じだと思うのです。これにはこうなっているのですよ。これは毎日新聞の記事ですが、「「検察としては常に社会に支持され、人倫の道に反しないように仕事をすることを心がけている。今回も、こうした配慮をしながら法律に認められている配偶者の証人尋問を請求しており、人倫に反することはしていない」と述べた。」とあるわけです。いま私がちょっと力を入れて言いましたように、「今回も」というふうに検事総長が言っていることは、検事総長みずからが、大臣のあの発言は、今回もこの榎本三恵子証人の証人尋問申請をしてその証言を得たというその問題を指しているということを感じ取っているから、こういう発言になったのじゃないかと私は思うのです。だから、これは検察当局の最高責任者がやはりそう思うのです。これからすると、一般の国民、私どももそう思うのがあたりまえじゃないかと思うのですが、この点どう思いますか。

奥野誠亮自由民主党法務大臣

○奥野国務大臣 私も、検察当局は広く国民から支持せられるようにやっていく、また人の道に外れぬようにやっていく、今回もそのことは十分考えて結論を出していると思います。  また、私も参議院の法務委員会等におきまして、検察庁はいろいろなことを総合的に判断して活動している、常に最善の道を歩んでいっていると思っている、同時に、その具体のことについて、この問題とは別でございますけれども、ときにはあるいは検察ファッショと非難されてみたり、あるいは不正の追及に対して抜かりがあると見られていたりする、それについては私なりに責任を負わなければならないことなんだ、こう申し上げているわけでございます。  私は、検察官みんなが常に最善と考える道を歩んでいると思いますし、また、私が二つ挙げました事柄は検察官みんなが絶えず考えてくれていることだ、こう思っております。

安藤巖日本共産党

○安藤委員 いまの私の質問に対する答弁になっていないのですよ。「今回も」というふうに検事総長が受けとめているということは、すぐれて具体的にこのロッキード事件の榎本三恵子証人の証人尋問のことを指しているというふうに検事総長は受け取っている証拠ではないかということをお尋ねしておるのですよ。

奥野誠亮自由民主党法務大臣

○奥野国務大臣 そのとおりだと思います。私は、そのとおりであるとかそのとおりでないとかいうことは、一つも言ってないのです。一般論としては検察官はこうあってほしいという二つの例を挙げた。具体の事実について批判はしない、すべきでないと思っているんだと、こう申し上げてきたわけでございます。

安藤巖日本共産党

○安藤委員 そのとおりでございますというのは、念を押しますが、検事総長がいま読み上げましたような談話を発表したということは、検事総長がこのロッキード事件の榎本三恵子証人の証人尋問に関して大臣が発言をしたというふうに受けとめている、そういうふうに考えておられますか。そういうことです。

奥野誠亮自由民主党法務大臣

○奥野国務大臣 私は一般論として言うているわけでございますし、一般論をもそれに当てはめて何ら外れてはいないという意味合いで検事総長が言うたのだと思うのでございます。私の言うた言葉をどう伝えられているか、それは私は承知しておりません。

安藤巖日本共産党

○安藤委員 一般論は先ほど私が読み上げた前段の方で、そして「今回も」ということまで断っているということは、検事総長みずからが大臣の発言は今回の事案について榎本三恵子証人の証人尋問についてのことだというふうに受けとめているということだと私は思うのです。大臣はそういうふうに思わないのですかどうかということを聞いているのです。簡潔に答えてください。

奥野誠亮自由民主党法務大臣

○奥野国務大臣 私の発言をどう受けとめているかは承知しませんが、一般論として答えたわけでございますし、その一般論も、検事総長の立場から見ると、今度の場合についてもそれと反することは何らしていない、それは当然だと思うのでございまして、そういう考え方に立って検察庁としては行動しておられる、そういう発言だと思います。

安藤巖日本共産党

○安藤委員 どうも大臣の答弁がよくわからぬですが、日本語を素直に読めば、検事総長も、まさに榎本三恵子証人尋問の問題について大臣の発言があった、だからこういう談話を発表したというふうに受け取らざるを得ぬというふうに思うのです。  時間が参りましたので、一言だけ最後に。  先ほどいろいろ林委員の方から、会同の問題等々で、一般的な指揮をするならそういう機会に言うべきじゃないかということをお尋ねしたのですが、大臣が大臣になられてから検察長官会同とかいろいろなところでの訓示、全部で十七回やっておられます。私、持っているのですが、この中で一番新しいのでことしの九月三十日の検察長官会同、ここで、これは特につけ加えられたくだりがあるのです。大臣がお読みになったから記憶しておられると思うのですが、「法秩序の維持にあたるものとしては、国民の間にいささかも疑惑を生じさせることのないよう最善を尽くされたいのであります。」こうあるわけです。いままで私もお尋ねしたし、それから林委員もお尋ねしてまいりましたが、大臣の発言は国民に非常に大きな疑惑を生じさせているのでよ。そうなると、大臣みずから大臣の訓示を破っていることになるのじゃないかと思うのですが、感想をお聞かせいただきたい。  これで終わります。

奥野誠亮自由民主党法務大臣

○奥野国務大臣 いろいろな批判を受けているわけでございますから、それが私の言葉から発していることにも違いはないと思います。ただ、私が言いたいことは、記者会見で私が言うた、その中にいらっしゃった方がそれをどうお聞きになったか、それをまたどういうふうに報道されたか、その報道を受け取った方がどういうふうに理解されてそれをどう表現されたか、いろいろなことが関連してまいりますので、私があれだけいろいろ前提を置いて、どちらかといいますと親切に答えたつもりでございました。それが私の気持ちとは違った方向に行ってしまっているなというのが実感でございます。

安藤巖日本共産党

○安藤委員 終わります。

高鳥修自由民主党

○高鳥委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十九分散会

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