法務委員会 第7号
- 発言数
- 197 件
- 登壇者
- 14 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1981/04/22
会議録
○高鳥委員長 これより会議を開きます。 お諮りいたします。 本日、最高裁判所矢口事務総長、大西人事局長、川嵜民事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○高鳥委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 ————◇—————
○高鳥委員長 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政に関する件について調査を進めます。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲葉誠一君。
○稲葉委員 けさにも出ておったのですが、谷合判事補ですか、ゴルフ場に関連する汚職事件で逮捕されたということが出ておったわけです。法務省の刑事局長、この事件の逮捕の経過というか逮捕の事実、それから逮捕の理由、そういうことについてちょっと御説明願いたいと思います。
○前田(宏)政府委員 お尋ねの件につきましては、本年の四月早々から東京地検で捜査をしておったところでございます。そして去る十四日には関係個所の捜索等も行ったわけでございますけれども、その後、関係者につきましては、いわゆる在宅で取り調べを続けておったところでございます。しかし、昨日に至りまして、谷合、井上、それから片桐という三名の者をそれぞれ逮捕したという経過になっております。 逮捕事実は増収賄という疑いでございまして、背広二着とゴルフセット一式の供与、受供与という事実で逮捕したというふうに承知しております。
○稲葉委員 逮捕するについては、逃走のおそれがあるとか証拠隠滅のおそれがあるとか、そういうことでなければ逮捕できないですね。まあ逃走のおそれというのもないと思いますが、どういうことでしょうか。
○前田(宏)政府委員 何分にも捜査が本格的に始まったところでございますので、その内容について詳しく申し上げるのはいかがかと思うわけでございますけれども、抽象的に申しまして、在宅の調べでは証拠の収集、事実の確定というものについて十分でないということ、やや具体的に申しますと、細かい点について関係者の供述等が一致しないというようなことで、在宅のままでは調べも十分できないというふうなことで逮捕に踏み切ったというふうに承知しております。
○稲葉委員 法律的に言うと、証拠隠滅のおそれがある、証拠隠滅を疑うに足りる相当な理由があるということですか。
○前田(宏)政府委員 そういうことに当たると思います。
○稲葉委員 具体的なことはそれ以上聞きません。それは三者間の通謀の問題とか、それから贈収賄の額についていろいろ変更しようとしているとか、いろいろな話が伝わっておりますが、いずれにいたしましても、証拠隠滅のおそれがあるということだと思うのです。 そこで、ちょっと順序を変えますが、法務大臣にお尋ねしたいのです。 それは恐らく逮捕の前に聞かれたのか、逮捕されてから報告を受けたのか、どちらかだと思いますけれども、こういうふうなこと、これは率直に言いまして、前代未聞というか、ちょっと考えられないことですね。そして、司法界というものに対する国民の信頼というものをはなはだしく裏切ったというふうに考えられるわけですが、これに対する法務大臣の一つの感想というか、お考えをお聞かせ願いたいと思います。
○奥野国務大臣 事件が起こりましてからたびたび法務委員会でお尋ねをいただきまして、その都度、非常に残念なことだけれども、実態を明確にする、そのことが将来再びこういう事態を起こさない条件じゃないだろうか、こう言ってまいったわけでございました。 また、最高裁判所も、非常な苦悩の中にも相当な決意を持って臨んでまいられたわけでございまして、早々に検察庁に対しましてもこの事件の御連絡をいただいたわけでございました。同時にまた、最近は裁判官訴追委員会にも訴追の手続をとられたわけでございまして、残念なことでございますけれども、やはり実態は的確に処理していくことが大切じゃないかな、こう思うわけでございまして、昨日逮捕に踏み切ったのも、いまお尋ねがございましたけれども、そういう意味合い上やむを得ない措置であった、こう考えておるわけでございます。
○稲葉委員 最高裁判所当局にお尋ねをするわけですが、現職の裁判官が逮捕されたということは日本では初めてだというふうに私は聞いておるわけですが、こういうふうな事件が起きたことに対する最高裁当局の考え方といいまするか、感想というか弁明というか、それをまず最初にお聞かせ願って、後からそれに対する対応策というか、そうしたものについてはお聞きしたいと思います。
○矢口最高裁判所長官代理者 現職の裁判官が逮捕されるということは、まことに何とも申し上げようのないことでございます。裁判官の非行は戦後何件かございましたが、逮捕を見る、しかも先ほどの前田局長の御答弁によりますと、いわば証拠を隠滅するおそれがあるということが逮捕事由のようでございまして、そうなりますと、裁判官の品性というものは一体どこに行ったのかということになるわけでございまして、非行の事実そのものもさることながら、取り調べの経過において反省の色が全く見られないという事態に立ち至ったと見ざるを得ないわけでございまして、裁判官一般のこれによる衝撃というものは言葉では尽くせないものがあるわけでございます。 何分にも昨夜のことでございまして、私どもまだ十分に考えをまとめるだけの余裕を持っておりませんが、とりあえず、全く申しわけのないことであるという私自身の気持ちを率直に申し上げて、一応のお答えにさせていただきたいと思います。
○稲葉委員 私も、どうしてこういうふうなことが起きたのかということについて、ちょっと不思議に思うわけです。 そこで、二、三日前ですか、最高裁判所長官が各高裁の長官と事務局長を集めてといいますか、本件まだ逮捕されない前ですけれども、こういうふうなことについて会同をされましたね。その中では、一体どういうふうに今後していくかとかいろいろな具体的な問題等が、対応策といいますか、そういうふうなものが十分話し合われたのだろう、話し合われたというか訓示というか、そういうふうなものがあったのだろうと思うのですが、その点についてちょっと御説明を願いたい、こういうふうに思います。
○大西最高裁判所長官代理者 ただいま稲落委員仰せのように、四月二十日に、今回の事件にかんがみまして急遽高裁長官及び高裁の事務局長にお集まりをいただきまして、とりあえずこの問題についての協議ということで話し合いをしたわけでございます。この事務打ち合わせにおきましては、当時までに、谷合裁判官につきましては四月十七日にすでに訴追請求を最高裁長官から行っていたことでもございますので、まず谷合裁判官の方の問題につきまして、最高裁長官から裁判官訴追委員会に対しまして罷免の訴追を請求いたしました経過につきまして御報告をしたこと、それからもう一人の板垣裁判官の問題につきましては、四月の初め以来最高裁判所に設けられました調査委員会におきましても二回にわたりまして調査をし、周辺の事情も若干の調査をしておりますが、そういう調査についての中間報告というものをまず私どもの方から申し上げたわけでございます。 続きまして、今回の不祥事が破産事件に絡みまして破産事件の担当部で起きたということから、この破産事件の事務処理上の問題点についていろいろの論議なり御意見を伺ったわけでございます。ただ、何分にも急遽お集まりいただき、時間的にも午後いっぱいやったという程度のことでございますので、具体的な対策等について固まったというものではございません。いろいろ論議はございまして、今後非訟事件、特に破産事件に対する裁判所の事務処理のあり方につきまして改善の必要があるということについては意見が一致したわけでございまして、今後どういうふうにしてそれを具体化していくか、その具体策をどうするかということにつきましては、各長官お持ち帰りいただきまして検討していただく、なお必要があればまた最高裁判所の方へ集まっていただくということにしようということで、当日の事務打ち合わせは終わったわけでございます。
○稲葉委員 その結論といいますか、破産事件の取り扱いの改善ですか、破産部があるのは東京と大阪ですか、名古屋もありますか、だと思いますが、破産事件が近来地方でもずいぶんふえていますね。ときどき行きますと、大会議室なんか使いまして、破産事件の債権者集会なんか開いておるのです。まあ会社更生法の場合ですか。いろいろそういう事件がふえてきておるのです。だから破産部が東京地裁はあるわけで、破産部には統括がおると思うのですが、破産事件については合議でやるということはしないで、一人の判事だけでやっているわけですか。 私は、何回も前からも申し上げているように、破産とか非訟事件全体、特に仮処分なんかの問題で判事補一人にやらせるのは酷だと思う場合がずいぶんありますよ。それで精神的にもまいっちゃう人があるのですね。むずかしい仮処分もありますからね、断行の仮処分で。これをやったらいいか、やったらどうしようかということで、一生懸命判例や本をひっくり返してやっている人がある。それで急がなければならぬでしょう。大変なことです。 ことに破産の問題は学校でも、そんなことを言ったら悪いけれども、昔私どものころは破産法は試験のときは選択科目だったのですよ。本も薄いし、問題も大して出ないから破産法をとる人もいたのですけれども、いまは破産法というのは試験に出ないのですか。ちょっとぼくもこのごろのやつは知りませんが、恐らくマル・バツのときなんか出ないでしょう。率直な話、破産法というのはみんな余り勉強しないわけですよ。実務というのはよくわからない。理屈はわかりますよ。破産財団がどうだとか否認権がどうだとか理屈はわかっても、実際の取り扱いというのは裁判官はわからぬわけですね。ことに判事補の方は、わからないと言っては悪いけれども、わかりませんよ。 それで、非訟事件だから職権でやらなければならないということになりますが、どうしても古い書記官の人はそこにずっと長くいる人が多いですね。そういう人たちがもう実権を握ってしまっておって、若い裁判官がそこへ聞きに行っているというような状況がよく見受けられるのですよ。だからそういう点については、一つは、一人でやらないで大きな事件については部でやるとか、それから書記官の方が非常に練達である。いろいろな本なんか書いている人は書記官の方が多いですから、練達であって、実務については裁判官は余りよくわからないのが多いと思いますから、そういう点をどういうふうに改善をしていくか、こういうことについてはどうでしょうか。東京なんか特に破産がふえて、ずいぶんだまっておるというようなことをちょっと聞いたのですけれどもね。
○大西最高裁判所長官代理者 破産事件の最近の事件数の推移につきましてはちょっといま手元にございませんが、破産事件を処理いたします場合に単独でやるのか合議でやるのかという問題にいまお触れになりましたけれども、東京地裁でも大阪地裁でもそうでございますけれども、大部分の事件は一応単独体でやっております。特に複雑困難な破産事件につきましては、合議決定をいたしまして合議でやっております。東京地裁の二十部でも現に合議でやっておる事件が若干ございますが、大部分は単独で行われておったということでございます。ただ、昨年の九月に谷合裁判官の問題が指摘されるような内容証明質問状が来たわけでございますが、それを契機といたしまして、昨年九月以後は一応全件合議ということに体制を変えましてやっておるというふうな状況でございます。 確かに破産事件は一般の訴訟事件とは違いまして、司法試験も選択科目でございますし、裁判官も、こういう事件について訓練を受けていない、社会的な生活体験の少ない判事補にやらせることはどうかということについての御指摘はまことにごもっともな点であるわけでございます。仮処分等についても同じでございますが、そういう意味で、とりあえず昨年の九月からは、単独を全部合議に変えるというふうな方法をとっておるわけでございます。 いま稲葉委員いろいろ御指摘になりましたが、そういう問題点をも含めまして、今後どうするかということについて各庁でも真剣に研究していただき、それを持ち寄りまして、私どもでも御意見を伺いながらどういうふうにしてやっていくかという具体策を練り上げていきたい、かように考えておるわけでございます。
○稲葉委員 破産部でもそうですが、非訟事件全体は、書記官というよりもむしろ事務官が大ぜいいて、そしてその人たちが事務をやっているという場合が多いのではないですか。書記官は一人いますけれども、実情はどうですか。
○大西最高裁判所長官代理者 東京地裁の破産部に例をとって申しますと、書記官が八人か九人おりまして、事務官はごく少数でございまして、実際には書記官が大部分でございます。 先ほどおっしゃいましたように、書記官で同じ部にかなり長くいる人がいて、そういう意味でのベテランと申しますか、そういう書記官がいることも事実でございまして、裁判官の方はそういう意味では回転が早く、一年くらいで交代していく人が比較的多いというようなことから、言葉はちょっと悪いかもしれませんが、裁判官がベテランの書記官に引きずられるという面もないわけではないと思います。この事件について事務官がそんなに実質的にやっておるというふうなことはそれほどないのではないかという感じがいたします。もっとも、字を書くような補助的な事務につきましては事務官が関与していると思いますけれども、実際には書記官が中心になって行われておるということは稲葉委員仰せのとおりであろうと思います。
○稲葉委員 この事件で疑問に思いますのは、なぜ井上という弁護士を破産管財人に選任したのかという点なのです。実際、地方でも破産管財人をどうやって選任するのかはなかなかむずかしいのですね。適任者がなかなかいないことは事実です。民事のことに詳しくなくてはいかぬし、余り若くてもばかにされますし、相当報酬もあるかわりに相当大きな予納金を積まなければなりませんので、むずかしいことはわかります。同期だとかいうのですが、どういう経過でこの人を破産管財人に選任したのですか。
○大西最高裁判所長官代理者 井上管財人を選任いたしましたのは板垣裁判官でございまして、板垣裁判官と井上弁護士とは、ただいま御指摘のとおり司法修習生で申しますと十九期ということでありまして、同期であり、かつ同クラスであるということでございます。 選任の経過につきまして、私どもが調査いたしました限りにおきまして申し上げますと、井上弁護士を管財人に選任いたしましたのは、この事件が初めてではなくて、前に一件あるようでございます。そのときには、井上弁護士の方から書記官室の方へ、特定の事件についてではございませんで、一般的に管財人の御希望が出ておったというようなこともあるようでございますが、そういうことで、本件よりも前に、少し小さい事件でございますけれども、板垣裁判官が井上弁護士を管財人に選任したということがあるようでございます。 それでその後、本件のゴルフ場破産事件が起きたわけでございますけれども、この事件はゴルフ場が問題になっておりますのと、稲葉委員も御承知だと思いますけれども、破産事件は財産を売って分配するのが普通でございますが、破産事件では比較的例外的な営業継続の決議があるわけでございます。営業を継続する破産事件という意味では、いわば特殊な破産事件でございます。そういうことから、ゴルフのことについてもよく知っており、ある程度の事業家的な手腕もなければいかぬというようなことで、板垣裁判官はベテランの書記官等ともいろいろ相談して、だれがいいだろうかということを検討した上で井上弁護士を管財人に選任した、私どもの調査しました限りではそういう経過のようでございます。 ただ、もう一つ本件の場合、実はもしかしたら破産廃止になるかもしれないというおそれもあった。破産廃止になれば、御承知のように管財人が報酬ももらえるかどうかわからないというような事情もある。そういうおそれもあって、そういう場合には知った人であれば、そこらは勘弁してくれと比較的言いやすいのではないかということも考慮の中にあったと板垣裁判官は述べておりますけれども、経過といたしましては、そういうふうな事情で選任したということが私どもの調査しました限りでわかっておることでございます。
○稲葉委員 破産管財人は手続が非常にめんどうですね。そのために普通は希望する人はいないというふうに私どもは聞いておるのです。ただ俗世間的には、たとえば日弁連の会長をやるといい破産事件が来るから日弁連の会長をやるのだという下世話な話も伝わっておるわけですが、ちょっと私には理解ができないのです。 それはそれとして、この板垣という裁判官は山形地裁の鶴岡支部長になっていかれて、そしていまは何が問題のポイントになってまだ調査中だということになっているのですか。いまは東京の方へ、プールでもないけれども、どこかの部に置いてあるという形になっているのですか。
○大西最高裁判所長官代理者 御指摘のように、現在、板垣裁判官は鶴岡支部の支部長でございますが、この問題が新聞等で報道されまして、現地の弁護士会等でもいろいろ話もございますし、現実には裁判事務をとれる状況ではございませんので、別の裁判官をこちらから発令いたしまして行っていただいておりますが、板垣裁判官自身はそういうことで、いわば自宅待機と申しますか、自宅に謹慎しておる、そういう状況にあるわけでございます。 その板垣裁判官に対する疑惑ということでございますが、これは新聞にも報道されておりますけれども、板垣裁判官につきましても、ゴルフをしてその費用を支払っていないのではないかという点、それから井上管財人が実質的に設立したといいますか、そういう東京二十という会社、これはこのゴルフ場を買い受けるための受け皿の会社のようでございますけれども、それに関連して妻名義で井上個人に対して三百万円の出資がなされているのではないかという点、それからもう一つは、板垣裁判官が井上弁護士の土地の一部を購入し、かつその土地を井上弁護士の借財の担保に提供したという疑惑があるわけでございまして、そこら辺のところも過去二回にわたって調べておりますけれども、なお細かいところでいろいろ解明ができない点がございまして、そこら辺のところをなお引き続き調査を続行する、そういう状況にあるわけでございます。
○稲葉委員 いまの板垣判事の場合はいろいろ込み入ったところがあるかとも思いますが、調査の方は的確にというか早めて、早めるばかりが能じゃないとしても、しっかりした調査をやってやはり国民の納得できる——納得できるというのは迎合するという意味じゃないですよ。納得できる結論というものを出さなければならない義務が最高裁当局にある、こういうふうに考えるわけですが、大体の目安はいつごろその結論が出る——どういう結論かは、それはあなたの方にお任せするのであってわれわれが介入すべきではありませんが、いつごろ結論が出るというふうに伺ったらよろしいのでしょうか。
○大西最高裁判所長官代理者 ただいま全力を挙げて調査をするということでやっておるわけでございますが、板垣裁判官は、過去二回の調査におきましても供述が完全に一貫しているわけのものでもございませんし、いろいろ関係者があるわけでございますが、そこら辺のところも最高裁の調査委員会といたしましては、強制力があるものでもございませんし、なかなか事実の把握がむずかしいという隘路があるわけでございます。全力を挙げて早急に調査をし、早く結論を出したいというふうに考えておりますけれども、現在のところいつごろまでというめどがまだ立っていない、できるだけ早くやりたいという気持ちはございますが、確定的なめどは立っていないという状況でございます。
○稲葉委員 すると、最高裁の調査というのか聴取というのか、それに限界がある。これは限界があるのはあたりまえですが、限界があったときに事実が解明できなかったら、どうするのですか。
○大西最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げましたように、解明できないようなことにならないように全力を挙げて解明したい、そういう強い決意を持ち、そういう努力をしたいということのみでございます。
○稲葉委員 そういうお答えですから、いまの点しつこく聞くのはやめますが、できるだけ早く、しかも事実を正確に調べて結論を出していただきたい、こういうふうに思います。 それから、私、前にも言ったことがあるのですが、どうも法曹一元ということ、これは非常にいいことなんだと思いますが、同期で同クラスというの——同クラスというのはぼくはよく知らない。五十人くらいいるのですかな。それが個人的に親しくなるのですね。そうすると、裁判官と検事、あるいは裁判官と弁護士なり何なりが非常に親しくなるのですね。これは人間ですから友情として親しくなるのはいいのですが、その限界を超えますね。どうもそういう点がありますね。 だから、たとえば同期だというと、しかも同クラスだということになりますと、裁判所の中のいろいろなことを同期の弁護士に話すわけですよ。同期の弁護士は、率直に言うと私に雑談がてらいろいろ話すことがある。私の耳に入ってくることもあるけれども、そんなことはかれこれ申し上げませんけれども。だからどうも、同期、同クラスというのは、仲よくするのはいいのですが、限界があると思うのですよ。特に弁護士とのつき合いは限界を設けなくちゃいかぬと私は思いますよ。弁護士が判事や検事に接近するというのは、これは友情で接近する場合もありますけれども、ぼくも弁護士だけれども、計算ずくで接近する場合も相当ありますから、その点はもっと弁護士も倫理を確立しなければいかぬと私は思うのです。ですけれども、その同期、同クラスというもののつき合いの限界をもっとぴしっとしないといけないのじゃないですかね。私はちょっとその点は緩んでいるような感じがしますね。 昔は、判検事の場合はもう弁護士とつき合わなかったですよ、制度が違うからですけれどもね。まあつき合わないのがいいという意味じゃないですけれども、いまはそれが緩んで、いろいろなことをしゃべる。内部のことや何かしゃべったり何かしたりして、個人的に親しくなって限界を外すということがありますから、この点については十分注意をしていただきたいというふうに思いますね。これは、川嵜さん来られたけれども、川嵜さんは司法研修所で事務局長をやっておられたので、よく知っておられると思うのです。まあ川嵜さんでなくていいですが、この点についてはどういうふうにお考えでしょうか。
○大西最高裁判所長官代理者 戦前は判検事だけが一緒になって訓練を受けたわけでございますが、戦後、弁護士も含めた法曹三者が研修所等で一緒に教育を受けるということになったわけでございますけれども、同期の場合に幾ら親しくするといっても限界があるということは、もうまさに稲葉委員御指摘のとおりでございます。しかし、一緒に机を並べて勉強したわけでございますから、つき合うなと言ってもなかなか無理でございますけれども、結局のところは、公私の区別をきちっとつけることだということに尽きるのじゃないかというように考えます。そこら辺のところは、今後もこの問題を契機といたしまして、私どもとしてもいろいろ考えていかなければならない一つの問題点になるわけでございます。
○稲葉委員 法務大臣にまたお尋ねをするわけですが、五月三日の憲法記念日が近づくわけですね。すると、憲法記念日ということについては大臣としてはどういうようなお考えを持っていらっしゃるのでしょうかね。どうでしょうか、お聞かせ願えればと思います。
○奥野国務大臣 憲法施行の日五月三日を憲法記念日とされて祝日になっているわけでありますから、そのとおりに受け取っておるわけでございます。
○稲葉委員 この前の予算委員会では、中川一郎さんなんかは、はっきり私は改憲論者だということを言っていますね。すると奥野さんも、私は改憲論者だと、こうはっきりおっしゃっていると私の方では了解というか、承ってよろしいでしょうか。
○奥野国務大臣 従来から私が申しているとおりでございまして、それをどう理解されるかは稲葉さんのとりょうだと思います。私が申し上げておりますのは、国民の間で論議があって、同じものであってもいいからもう一遍つくり直そうじゃないかという考え方が生まれてくるなら、それは好ましいと思いますよ、しかし、政府としては特段の動きをすることは適当ではないと考えておりますと、このとおりであります。
○稲葉委員 中川さんは、しかし、予算委員会で、なかなか元気よく私は改憲論者だとはっきり言ったですね。奥野さんは、私は改憲論者だということは言わないけれども、言ったと同じことだ、そういうふうに考えてくれ、こういうことに了解してよろしいわけですか。
○奥野国務大臣 私の考え方はたびたび申し上げているとおりであります。それを稲葉さんがどうおとりになるか、これはもう稲葉さんにお任せするよりいたし方ないと思うのです。
○稲葉委員 憲法のことになると、憲法のことについて自由に論議しよう論議しようと言っておきながら、論議し出すと口が固くなっちゃうのです。どうもぼくはよくわからないのですがね。まあそれが変なふうに逆用されたり何かするから、そういう危険性が多分にあるからという意味かもしれませんけれども、もっと自由濶達に論議をしたいと私は思いますね。それは公開の席でなくてもいいですよ、非公開の席でもいいから、もっと自由に論議すべき筋合いだ、こういうふうに思うのです。その点は、自由に論議すべきだということについては大臣は賛成なわけでしょう。どうでしょうか。
○奥野国務大臣 お尋ねに対しましては、私は率直に答えてまいります。いま稲葉さんがおっしゃっているのは、私の申し上げていることをどう解釈するかということでございますから、一言に解釈しますと、その解釈をめぐりましていろいろな見解の分かれが出てくるものでございますので、あえて一口にそれを表現することは私は避けているわけでございまして、私が申し上げていることは一貫していると思いますし、これからもお尋ねがあれば率直に答えていきたい。本当に日本の国の基本に関する法規でありますから、このことこそいろいろな角度から絶えずただしていかなければならない、こう思っているものでございます。
○稲葉委員 大きな問題ですし、これはそれだけをちょっと問にはさんでやるべき筋合いのものではございませんから、別な機会にゆっくり、今度自民党の憲法調査会の方で何か出るのですか、出てからまた質問したいと思うのですが、あなたとしては、自主憲法制定なんとかというのが五月三日に集会を持ちますね。あれには御出席されないわけですか、されるわけですか。
○奥野国務大臣 五月三日は特別な用事を持っておるものでございますので、いまのところそれ以外のことに参加する余裕はございません。
○稲葉委員 では、その問題は別な機会にあれすることにして、刑事局長にお伺いしたいのですが、私もよくわからないのですよ。というのは、たとえば免田事件の場合で再審決定があったでしょう。免田事件の場合は死刑ですね。死刑の場合だと、再審決定があっても法律がなかなかむずかしくなってくる。そうではなくて、有期懲役の場合で再審決定があった場合は、当然そこで執行を停止するという決定が同時にあれば釈放するのですか。
○前田(宏)政府委員 裁判所の停止決定があれば、釈放ということになろうと思います。
○稲葉委員 そうすると、死刑の場合にどういうことになるのでしょうか。免田事件で確定をして、そして身柄の釈放——被告人じゃないから保釈じゃない、執行停止になるのですか。あるいはそれで申し立てているわけですが、これに対して検察庁としては反対の意見を出しているわけです。これはどういう意味で反対の意見なんですか。しかし、裁判所で死刑の執行を停止するという決定が出ているわけでしょう。死刑の執行の場合は、停止するという決定が出ていれば、当然それは同時に、内在的にというか釈放ということも含むのだというふうには理解できないわけですか。この点は日本の法律では規定が何もないわけですか。そこはどういうふうになっているのですか。
○前田(宏)政府委員 稲葉委員の仰せになりましたとおりでございますが、死刑の場合は、日本の場合はいわゆる絞首でございますけれども、絞首することが死刑判決の執行になるわけでございます。したがいまして、裁判所の執行停止決定というのは、刑そのもの、つまり死刑そのものの執行の停止というふうに理解されるわけでございます。したがいまして、身柄の拘束といいますか、拘禁そのものについては執行停止決定の効力は及ばないと解されるわけでございます。そういう意味では規定がないというような言い方もできるかと思いますけれども、その点についてはむしろ認めていないというのが現行の刑訴法の規定ではないかと思うわけでございます。
○稲葉委員 そうすると、裁判所側はそういう場合に、死刑は再審決定だから、再審決定の結果が出て無罪の判決が出れば、確定しなくても釈放しなければいけないのですか。どういうふうになるのですか。無罪の判決が出て確定すればすぐ釈放しなければならぬ、これはあたりまえの話ですね。そうすると、無罪の判決があれば、被告人としての地位も持っているから保釈で出るということも考えられるのですか。それはないのですか。
○前田(宏)政府委員 この問題の議論の前提といたしまして、再審開始決定があった場合に、もとのといいますか確定判決がどうなるかということが基本であろうかと思うわけでございますが、その場合の私どもの理解といたしましては、いわゆるもとのといいますか確定判決は依然として執行力をも保持しながら有効であって、再審の裁判がおっしゃいましたように無罪ということになってそれが確定すれば、そこで初めてもとの確定判決が効力を失う。それまでは効力を失わないということを基本に考えているわけでございます。
○稲葉委員 だけれども、普通の場合は、一審なら一審の場合なんか確定しなくたって、執行猶予の判決が出る、無罪の判決が出ればすぐ釈放しなければならないのでしょう。だからその場合には、執行停止が出れば、保釈というのはおかしいか何かわからぬけれども、執行停止か何か出れば、当然確定しなくても釈放しなければならないということも考えられるんじゃないですか。
○前田(宏)政府委員 一般の場合にはいま稲葉委員の仰せのとおりでございますけれども、この問題が複雑になりますのは、確定判決が現にあるということでございます。そのことで先ほど来前提としての基本的な物の考え方ということが問題になるであろうということを申したわけでございまして、一般の場合には御指摘のとおり、執行猶予になるあるいは無罪の判決があると、それを確定しなくても釈放ということがございますけれども、このような場合にはいわばもとの確定判決というものが現に存在しておって、それは理屈の上では執行力もまだ保持しておるというものとして存在しており、有効にあるわけでございますから、それを無視するわけにいかないというところで結論が異なってくるのではないかと思います。
○稲葉委員 だから、死刑の場合でも、執行停止は絞首刑を停止することですが、同時に、裁判所の方で、身柄を再審開始決定が確定して弁護人の方から釈放の申請——執行停止になるのか、釈放申請になるのかあるいは人身保護でいくのかいろいろありますが、それが出て、裁判所の方から釈放という決定が出れば、これはあたりまえですね。それに不服の方法はあるとしても、それは出さざるを得ないということですね。そういうことになりますね。
○前田(宏)政府委員 裁判所の決定がありました場合にそれに従うのは当然でございますけれども、その前提の理解としては、現行法のもとではそういう決定ができる根拠がないといいますか、そういう余地がないというのがむしろ解釈として私どもとして考えているところでございます。
○稲葉委員 法律論としては確かにその点はいろいろ議論があるところだし、法務省サイドの議論があるいは有力かもわかりませんけれども、ただ、再審開始決定がある、確定してしまったということは、事実上無罪になったとは言えぬけれども、無罪になる可能性が非常に強いというような場合、そこで身柄を釈放してしまったら、検察庁の方で身柄を釈放してしまったのでは公判廷で争うという意思をなくしてしまったというふうにとられるからということもあってなかなか釈放しないのだ、私は理屈はいろいろあると思いますが、そういうふうに考えるわけです。 そうすると、とにかくずいぶん長い間終わるまで入っていなければならないわけですね。この免田被告なんか三十何年入っていることになるのかな。それはいかに何でも長過ぎるのじゃないか、こういうふうに思いますね。だから、再審開始決定があって、その裁判の場合に、検察庁側も攻撃防御でやるべきことはやらなければいけませんし、真実発見のためにやらなければならないけれども、やはりもっと人権というものを考えて審理促進に協力することを、検察庁側としても公益の代表者として考えるべきではないか、こういうふうに思うのですが、その点はどうでしょうか。
○前田(宏)政府委員 基本的には、審理を促進して早期に裁判が行われること、これは裁判の本来の目的からいってもそうでございますし、被告人の人権の問題からいいましてもそのとおりでございます。ただ、具体的なケースになりますと、いろいろな争点等があって裁判が長引くことは、数から言えばごく一部でございますけれども、現実としてあるわけでございます。 しかし、先ほどおっしゃいましたように、何か釈放すると検察官側の態度としてもう無罪を暗に認めるようなことになるのじゃないか、こういうことで釈放しないという考えではないかというような御指摘であったように思いますけれども、先ほど来申しておりますように、そういうことではなくて、当否は別といたしまして、むしろ現行法の規定の上からはそういう釈放をする余地がないといいますか、そういう理解であろうと思うわけでございます。
○稲葉委員 再審制度というのは各国によって非常に違います。ドイツなどでは、この前もお話ししたように、これは議会の修正ですが、検察官の抗告権の禁止も認めておるということなんです。各国の法制の場合、ことに死刑囚の場合、再審開始決定が確定した場合に、何か釈放しなければならぬとかその場合の救済は方法があるとか、そういうような立法というものはほかの国の場合にあるのですか。私もよくわかりませんけれども、どうなんでしょうかね。
○前田(宏)政府委員 率直に申しまして、諸外国のいまのような場合につきましての規定を明確に存じていないわけでございますが、一応理解しておりますところでは、たとえばいまおっしゃったドイツなんかでは、再審開始決定が確定した場合ともとの確定判決との関係については、先ほど来申し上げておるように解釈ができる規定であろうと思っておるわけでございます。
○稲葉委員 これは非常に長い間のあれでして、免田事件その他の事件で、死刑囚でいま三人開始決定が確定しているのですか、できるだけ早く裁判をやって、早く結論を出すように検察庁としても骨を折っていただきたい、こういうふうに希望をいたしておきます。 法制局の第一部長が来られたのでお尋ねするわけですが、アメリカの原子力潜水艦ジョージ・ワシントン号ですか、あれが衝突して日本の船が、日昇丸が沈没して二人の方が亡くなりましたね。あのことに関連して、国内法であるいは国際法的にアメリカとの間にどういう法律問題があるのかということを、ひとつわかりやすく説明を願いたいと思うのです。
○味村政府委員 御質問の事件につきましては、ただいま外務省の方でアメリカの方に調査を依頼中でございますので、事案の内客はよくわからないわけでございます。一般論として申し上げれば、いろいろ法律問題は考えられるかと思うのですが、やはり刑事上の法律問題と民事上の法律問題とが考えられようかと思います。 刑事上の法律問題といたしましては、あの事故は公海上の事故であるということは間違いがないようでございまして、公海上の事故につきましては、公海に関する条約十一条によりまして、公海上の事故に関する刑事責任については、その船の船籍の属する国、旗国の管轄のもとにあるのだということでございます。それが国際法になっておりますので、わが国においては刑事責任は問い得ないということであろうかと思います。 民事上の責任につきましては、これは外国の軍艦でございますので、仮に不法行為等の問題がございましても、外国はいわゆる主権免責を主張することができることになっております。したがいまして、わが国の裁判に服さないということになるわけでございますので、主権免責を放棄すればともかく、放棄しない限りわが国の裁判所で裁判することはできないということになるわけでございます。仮に日昇丸の船主なりあるいは死亡された方の遺族なりが民事上の損害を請求しようとすれば、これはアメリカの裁判所でアメリカの法律に従って請求するということになろうかと存じます。
○稲葉委員 そういうことであっては、補償の問題というのは現実問題としては解決がつかないですね。法律的にやかましく言えばね。だから、法律的な問題を離れて外交的な折衝の中で解決するというのが筋道だというふうに通常理解をされていい、結論的にはこういうことになりますかね。余り法律的にやかましく言うと、かえってむずかしくなっちゃうの。その点はどうなんですか。
○味村政府委員 確かに、おっしゃいますように、法律上はアメリカの裁判所に訴えることは恐らく可能であろうかと思うのですが、向こうの裁判所でアメリカの法律で裁判をしてもらうわけですから、いろいろ困難がある。したがって、わが国の政府としてこのような事件についていろいろな折衝をアメリカ政府との間で行うということは、一種の外交保護権と申しますか、そういったものの行使として行われるということになろうかと思いますが、ここは、私は外務省ではございませんので、断定的に申し上げることは差し控えたいと存じます。
○稲葉委員 いまの問題については、法律的に細かくすると、かえって逆なことになる場合もありますし、外交交渉であれしていただきたいと思うのです。 法務大臣、あなたの方の所管ではないかもわかりませんが、国務大臣として、いまの原潜の事故に対してあなたはどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか。たとえば安保条約がある以上、これはアメリカに対して余り言えないのだというふうにお考えなのか、あるいはそうじゃないということなのか。外務省といろいろ相談をして、相談する立場にあるかどうかは別として、とにかく閣内で、日本の船のことや亡くなった方々やその他のことを考えて早期に解決をしたいというふうにお考えなんでしょうか。そこら辺はどうなんでしょうか。
○奥野国務大臣 日米の関係は大変重要な関係でございますので、その間に起こりましたトラブルは、伏せて通るのではなしに、できる限り実態を明確にし、それに対応する処理も正確につけていくということが大切じゃないかなと思っております。幸いにして、私は新聞紙上でしか知っておりませんけれども、補償をするという意見表明があったように承知いたしております。そうしますと、アメリカにあります行政救済制度として、海事請求処理権限法に基づきまして、海軍長官またその委任を受けた者が、海事不法行為から起こってまいりました損害賠償の請求につきましては、百万ドルの範囲内で補償ができるという権限が与えられているそうでございます。したがいまして、この海事請求処理権限法に基づきまして行政的に補償に当たろうというアメリカ側の見解の表明があった、こう承知しております。そういうことで話し合いが円満に片づけば非常にありがたいな、こう思います。 不法行為は不法行為として、別途アメリカ側において明確にされるだろうと思うのでございますけれども、それよりも先立ってこの補償問題を片づけていただきますことが、日米相互の関係からいって大切なことではないだろうか。稲葉さんがおっしゃいましたように、裁判ざたで物を片づけるだけが方法じゃございませんで、それではどうしても長引くだろうと私も思います。長引くのでは遺族の問題もございますから、やはり早く補償を片づける、殺気立った国民感情というものも早く穏やかになるようにすることが大切だな、こう思っているところでございます。
○高鳥委員長 小林進君。
○小林(進)委員 今朝の新聞に関連をいたしまして御質問をいたしたいと思うのでございます。 まず第一番目に、裁判官の事犯に関係して、戦後でよろしゅうございますが、一体どれだけ訴追をされて、そのうちから一体どれだけ弾劾裁判所に回って、その結果、シロ・クロになれた事件がどれくらいあるか。いまここでおわかりになりましたら、ちょっと教えていただきたいと思うのです。 なお、現在まだ訴追にかかっている事件がどれくらいあるか。あわせてこれもひとつお伺いいたしたいと思うのでございます。
○矢口最高裁判所長官代理者 戦後裁判官が訴追をされました件数は六件でございます。なお、最高裁長官から訴追請求いたしまして、途中で立候補のため訴追の問題が起こらなかった事件が、そのほかに一件ございます。
○小林(進)委員 私は素人の立場で申し上げるのですが、裁判官の行動といいますか、日常生活といいますか、そういうものに対する社会的評価がどうも定着をしていないという感じを常日ごろ持っているのでございます。こういう機会でないとお伺いできないから、素人は素人なりに率直にお伺いするのでありますが、かつて戦争の直後には、何とかという裁判官がやみ物資を食わないということで、ついに栄養失調ですか何かになって亡くなられた。さすがに裁判官はりっぱだ、渇しても盗泉の水を飲まず、見上げたものだというような世論が大分沸き立ったが、私自身は、そのときから一つ疑問があった。裁判官だって人間じゃないか、食わないで生きているわけにはいかない、そういう感じを持ったのであります。 その後、最近では鬼頭判事補でしたか、あの事件が起きた。これは、天下の政界の首脳を、そういうインチキ電話で動かそうとする。これは公私ともに許さざる行為です。 その次に、いまおっしゃいました安川、これは簡易裁判所の判事でございますかの事件が起きたわけでございますが、私はこれを見ながら、裁判官だって人間じゃないか、酒も飲むだろうし、友人と会合もするだろうし、ときには、法律で許される範囲ならば変わった女性と情交を交えることも何で悪いのだ、あえてそういう感じを受けたのです。しかし、安川さんの場合には、自分が取り調べといいますか、判決を下すことにかかわっている事件がまだ終わらない、その途中でやったことですから、これはどう善意に考えても、常識的であるとかシロとかいうことは言えない。 言えないが、しかし、私はあの事件を見ながらも、彼が下した判決というものは、あの女性と情交を交えて——情交といってもただじゃない。ちゃんと払うべき金は払っているなんて、実にりっぱですよ。やはりこれは判事だなと思った。払うべき金は払って関係を結んで判決を下したが、私はそのときから、その判決が不当な判決じゃないと思っていた。この女性のために自分の量刑をまけてやったという感じは受けなかったのであります。しかし、その後彼の問題が暴露せられて、たしか控訴された。控訴されて、また、もとの判決が却下せられて出た最終判決はどうでした。あの安川君がやったのと、一体刑の裁量に軽重がありましたか。私の記憶では同じじゃなかったかと思っております。安川君が下したのと同じなんです。結果においては同じなんです。そうすると、客観的に見れば、彼は情交を結んだけれども、そのために決して不当な刑を行わなかったということになるわけです。 私は、それやこれやを考えまして、これから先は質問なんです。判事というものは普通の人間と別格なもの、そういう全く別の日常生活を国民が要求しているとすれば、少し不当じゃないか。やはり判事にも友人あれば同級生あり、同窓生あり、あるいは近所のつき合いあり、いろいろな人間らしい交際は全部許されていいのじゃないかと思うわけでございます。だんだんいきますけれども、私は、そういうこと、第一等に判事の社会的評価といいますか、こういう点をどうお考えになっておるか、ちょっとお伺いをしておきたいと思います。
○矢口最高裁判所長官代理者 裁判官も社会一般の人間と変わらない生活を営んでおるわけでございまして、そういう意味で特別の人種であるわけではございません。ただ、その仕事というものが争いを裁くという仕事でございますので、やはりそういった仕事の面から来る制約と申しますか、おのずと持つべき品性と申しますか、そういうものはあると思いますが、一般的には御指摘のように一般社会人と同様の生活を営むべきでありまして、むしろ余り浮世離れをするということこそ問題があり得る、そういうふうに考えております。
○小林(進)委員 大体私の問わんとすることに近づいているが、その徴候があるのですよ。どうも密室の中に入れて、おまえは判事だからといってへもひるなというように、余り厳しいことを求め過ぎているのじゃないかという感じを受ける。先ほどあなた、人事局長さんですか、稲葉君の質問で、判事は公私の別を明らかにせよということを中心に薫陶、教育をしているとおっしゃったが、公私の別それ自体が問題なんであって、どこまでが公でどこまでが私だか、これは問題ですが、国民はやみ物資も食わない判事の深遠性を求める反面には、一方にはやはり遠山の金さんですよ。やはりくりから紋々で市井の中に飛び込んでいって、大衆とともに生活をして生きている、そういう庶民的な判事にまた大衆は喝采を送っているのです。そんなに大衆から遊離して、どうも満足なあいさつもできないような、判事に会ったらまさにひやっとするへびのはだにさわったような感じがする、そんなことでは本当の生きた裁判はできないと私は思います。この辺は結論があるわけじゃありませんけれども、そういう社会的評価というものも正しく持っていかなければならない。過当な、人間をも超越したような、そんな深遠なものを判事という職業に要求してはならないと私は考えておりますから、これだけはちょっと申し上げておきます。 それで、いま当面する問題に移りたいと私は思うのでございますが、私の知恵は新聞を見ただけの話なんです。新聞を見た範囲ですが、私は谷合判事補に対しても二つの疑点を持っております。それから板垣判事に対しても私は一つの疑点を持っております。それから、裁判所の法曹官といいますか、その養成制度それ自体にも、私はこの事件を通じて若干の疑問を持っておりますから、時間の許す範囲でひとつ重複しないように御質問したいと思うのであります。 谷合判事補の逮捕事件、これは新聞で見ておりますと、彼は背広一着とゴルフ道具一式だ、これは儀礼的な贈り物だ、背広などは賄賂だという認識はなかった、こういうことを言っている。あるいはまたプレゼントの交換だ、おれもそれに相当するものを井上弁護士にやっているのだ、こういうようなことを言っているようでございますが、これに対して、何か一着ではなくて二着だからけしからぬというふうな新聞紙上の物の書き方なのです。裏を返すと、一着までは常識的なプレゼントの範囲でよろしいが、二着になると贈収賄になるという、このけじめがはっきりしませんが、こういう点いかがでございましょう。どうお考えになるのか。贈収賄と世間の常識的なプレゼントのけじめを承っておきたいと思います。
○大西最高裁判所長官代理者 谷合裁判官の問題につきましては先ほども申し上げておりますが、四月十七日に裁判官訴追委員会に対しまして最高裁長官から訴追請求をされたところでございます。裁判所の立場といたしましては、ゴルフセットの問題、背広の問題が刑法上贈収賄に当たるかどうかという観点ではなくて、むしろ訴追請求をいたしますときには、裁判官弾劾法に定めております弾劾事由に該当するかどうかということを中心として検討したわけでございまして、その結果、その時点でわかっておりましたゴルフ道具一セット、キャディーバッグ一個、背広三つぞろえ一着を受け取ったというその事実自体が裁判官弾劾法に規定しております弾劾事由、つまり職務上の義務に著しく違反したとき、及び裁判官としての威信を著しく失うべき非行があったときに該当する、かように判断して最高裁長官から訴追を請求をされたわけでございます。犯罪の成否につきましては、検察庁の方でいまお取り調べ中でございまして、挙げて検察庁の捜査にまちたい、かように考えておる次第でございます。
○小林(進)委員 おっしゃるとおりでございます。いま地検の特捜部へ持っていかれたようでございますから、これは捜査中の事件だと言われればそれっきりですが、刑事局長どうですか。私の質問に対してごく常識的でいいから、ひとつお答えいただきたいと思うのでございます。
○前田(宏)政府委員 現に捜査中の事件のことでございますから、余り詳しく申しかねるわけでございますが、先ほどのお尋ねに即して申し上げますと、たとえば背広につきまして一着ならいいが二着ならけしからぬ、こういうだけのことではないわけだと思います。もちろん、数の問題あるいは価格の問題も一つの大きな問題でございますけれども、そのことがあわせて先ほども御指摘になりました賄賂性の有無ということにもかかわることでございますので、そういう両面を持った問題だろうというふうに思うわけでございます。
○小林(進)委員 谷合判事補の問題に関連をして、まず一つ最高裁にお伺いしておきたいことは、谷合判事補は五十四年四月に鹿児島から東京地裁に転勤をしたわけだが、五十五年九月に同じ東京地裁の中でも二十部から三十三部に配置転換をされた。その配置転換をされた事由、これも新聞の知識ですから私も浅薄だが、それによると、ただゴルフが発覚をして、そのために配置転換されたのだということです。これが事実とすれば、この谷合さんはすでにもう最高裁の中では普通の判事としての資格を欠いているということだ。ただゴルフなんかやっているということがもうわかっていたということになるわけでありますが、ひとつこういう事情を差し支えない程度にここで明らかにしてください。
○大西最高裁判所長官代理者 谷合裁判官の問題につきましては、次に申し上げるような事情があるわけでございます。 昨年の九月でございますけれども、この問題となっております破産会社の債権者と称する者から、東京地裁の民事二十部に対しまして、質問状の形式の内容証明郵便が参ったわけでございます。その内容証明郵便に書いてありますことは、主として井上恵文破産管財人を非難する文章が書いてあるわけでございますが、その中に、谷合裁判官が井上弁護士と一縮にこのゴルフ場へ行ってゴルフをして費用等を支払っていない、そういう事実が指摘されておったわけでございます。そこで、東京地方裁判所といたしましては、早速にこの谷合裁判官から事情を聴取いたしましたところ、細かい点はいろいろございますけれども、おおむね行った事実は認めたわけでございます。そこで、その事実自体、細かい点ではまだいろいろ問題があるわけでございますが、一応そういう外形的な事実がわかったので、いわば李下に冠を正さずという趣旨で他の部へ配置がえをしたわけでございます。 ところが、この破産事件、債権者の間に二つのグループがあるようでございまして、債権者が二つに分かれておりまして、少数派の方の債権者のグループのようでございますが、その後、東京地裁民事二十部に対して、井上管財人の解任を求める申し立て、やめさせてくれという申し立てが出たわけでございます。その時点では、東京地裁、最高裁も報告を受けてわかっておったわけでございますが、何しろそういう具体的な破産事件をどういうふうに処理するかという具体的事件がかかっておりますし、しかも債権者が二派に分かれておりまして、一方から管財人をやめさせろという申し立てすら出ておる状況でございますので、一応今後問題が起きないように、とりあえずはそういうことで他の部へ配置がえするにとどめまして、それ以上調べますと、事件そのものに司法行政が介入するというおそれがございますために、しばらく静観しようということで静観をしておったところ、ことしの三月末になりまして新聞に報道された、そういう経過があるわけでございます。
○小林(進)委員 最高裁の内部の人事関係は私どもうかがい知るわけにいかないのですが、昨年の九月まで、彼は一年半この二十部の職にあったわけでございます。だから、一年半の間にこの井上弁護士とあらゆる公私の結びつきがあったという感じになるわけでございますが、それをそういう内容証明つきの文書が破産財団関係人から来たということで配置転換をしてしばらく静観をする、それ以上のことをやると、最高裁としては司法行政にむしろ干渉がましい結果になる、そういう御答弁ですが、それを厳しく処置することがどうしていわゆる司法行政の内容に立ち至った干渉事項になるのか、いまでも私どもはわからない。わからぬが、あなたいま言われたから、そんなこと質問しますと時間を食い過ぎますから、きょうは私はその点はわからないままにお聞きしておきます。脇に落ちなければ、また日を改めて御質問申し上げることにします。 谷合君も自分でかいた絵を井上氏にプレゼントしたり、何か大分交換の物をやっているような事実もあるようですが、これがやはり一般の贈収賄に値するのか、判事補なるがゆえに他の一般の人よりももっと峻厳な一つのことが要求せられるのかどうか、こういうところは私は一点疑念を残しておきます。 ともかく裁判官というものは、この前からも申し上げましたように、私は司法官試験の問題について質問しましたけれども、相当厳格な試験を通じて、社会的には最も知識、教養その他の高い者が選ばれているんだから、選んで、しかも後は研修所に入れて二年間の教育をして、それから職場につけて、しかも判事補になれば十年間職場にいられて、完全な裁判官にはまだなお十年の歳月を要するという高度のものを要求せられているんだから、ここまで育成強化して選び出した者に対しては、まあまあ世間の常識やあるいはそういう行動は、ある程度その人の判断に任せていいんではないか。 先ほどの質問に戻りますけれども、それは何か、おまえは裁判官だからといって、どうも孤立せしめたり密室に入れたり、余りそういう厳しいことを言わぬでも、ちゃんと一つの指導者としての人格識見を持ってやり得るという信頼の上にこの制度が成り立っていると私は思うのであります。だから、余りミミズの穴をつついて細かくして、むしろ浮世を離れたような形に持っていってはかえって弊害が多いのではないか、そういう懸念で私は申し上げているのでありますが、このことはこれで終わりましょう。 次の板垣判事の問題に入っていくわけでございますが、この板垣判事は、御承知のとおり、あなたのお話もありましたように、井上弁護士とは研修は同期生、しかも同室でいられる。これは井上のイ、板垣のイだから、イロハ順で並べると同室の中でも隣近所で並ぶ勘定になるのかなあというふうにも考えられるわけでございます。ただ、どうも不思議でならないのは、片っ方の井上弁護士は五十五歳ですか、板垣判事は四十一歳。年齢にまたばかに——まあ司法官試験には年齢の制限はありませんが、ばかに年齢が開き過ぎている。これはどういう関係があるのでしょうか。
○大西最高裁判所長官代理者 板垣裁判官と井上弁護士の年齢の違いでございますが、板垣裁判官の場合は、大体大学を出て、まあ一、二年はずれがあるようでございますが、司法試験を通って司法修習生になられたわけでございますが、井上弁護士につきましては、それまでに学校の先生等を長らくしておられまして、それをしながら司法試験を受けて合格された、そういう経過があるようでございまして、結局、司法試験に通られた年齢が井上弁護士の方が遅かった、それで年齢に相違がある、こういうようなわけでございます。
○小林(進)委員 ちょっとお伺いしますけれども、板垣判事の奥さんというのは、井上弁護士が何か仲人になってお世話したという話ですが、その点いかがですか。まあそれはプライベートですから、大してこの問題に関係ありませんけれども、参考までに聞いておきます。
○大西最高裁判所長官代理者 その関係は正確にわかっておるわけではございませんが、仲人ということではなくて、何か結婚式のときに井上弁護士が司会をやったというふうな話はちょっと聞いております。必ずしも確実な情報ではございませんが、そういう話がございます。
○小林(進)委員 これは、ぼくとあなたと不確実なことを言い合っても、影響ありませんからな。 それで、関連してお伺いしたいことは、第一番目は、井上邸は何か豪壮な邸宅だそうだけれども、井上邸の一部、二百三十平方メートルの土地を板垣氏が井上から買っている、この問題が一つある。 〔委員長退席、熊川委員長代理着席〕 それから、井上氏が東京二十とかなんとかという会社を設立をして、その会社の設立資金にするのかどうか知りませんが、三千万円とか五千万円の金が必要で、その邸宅を井上氏が抵当に、東海銀行だか何銀行だか忘れましたけれども、銀行へ入れて金を借りた。三千万円。その入れた井上氏の邸宅の中に、板垣氏が買ったその土地も一緒に抵当権が設定された、抵当に入れている。 これはどうも正確な売買があって、井上の邸宅と板垣判事の邸宅が別個のものであるならば、それまで一緒になって銀行へ抵当に入れて井上氏が金を借りるということは、ちょっと世間の常識では考えられない。それが素直に一緒になって、井上弁護士の同一の財産として抵当権が設定されるということは、これはやはり世間の常識から見ておかしいです。悪意に推定をすれば、あの財産を結局もらったのではないか、だから井上弁護士のなすがままに任せておいて、板垣判事は異議も申し立てられなかったんじゃないかという一つの推定が成り立つわけです。こういう悪意の推定はいいことではありませんけれどもね。これが一つ。 それから第二番目の、東京二十という会社、その梓とかというゴルフ場を彼が買収する計画で会社を設立した。その東京二十に井上弁護士の細君のお名前で三百万円の融資が行われているということが一つだが、そこで、管財人が自分が管財をしているそのゴルフ場を、みずからが別会社をつくってそれを買収するというか買うというようなことは、一体法律上許されるのかどうか、管財人の行為として許されるのか。 いずれにしても、管財人というものはいろいろ仕事がありまするけれども、その破産財団を一銭でも十円でも高く売って、いわゆる債権者の損害を少なくしようというのが管財人の主たる仕事じゃありませんか。その管財人が、管財の財産を自分が株式会社をつくって全部買うということになれば、それは高く処分すれば、今度は自分が買うのですから、幾らかでも安く手に入れたいという気持ちになるのは、これは経済の常識でしょう。だから、こういうような会社をつくって、その財産を自分が引き受けたいと考えることは、正当な管財人の行為としては、社会的非難の対象になり得ると私は思います。それが法律違反までいくかいかぬか、これはお聞かせ願いたいところだが、しかし、一体管財人というものは勝手にこういうことをやれるものかどうか。いわゆる統括の裁判官の許可とか認可とかというのを得ないでこういうことが勝手にやれるものかどうか。 時間もないから、三つ四つ問題を提起しましたけれども、教えていただきたいと思います。
○大西最高裁判所長官代理者 ただいまの小林委員の御指摘、第一点が土地購入担保提供の関係、第二点が東京二十の設立等の関係でございますので、まず私から、第一点の関係について簡単に申し上げたいと思います。 板垣裁判官は、井上弁護士のいわば敷地の一部でございますけれども、その一部約七十坪を井上弁護士から購入したという事実自体、これは調査の途中でございますので細かいことは省かせていただきますけれども、これは認めておるところでございますし、その土地について、井上弁護士が金を借りるために担保として提供してほしいということで、権利書を貸してほしい言われて貸した、そういう外形的事実自体は認めているところでございます。ただ、そこら辺もう少し立ち入って、動機等一体どういうところからそういうことになったのかという点について供述が完全に一貫しているわけでもございませんし、なお解明すべき点がございますので、一応ただいまのところはそういう外形的事実だけは間違いないと認めているということだけを御報告するにとどめさせていただいて、あとはもう少し調査することにさせていただきたいと考えます。
○川嵜最高裁判所長官代理者 東京二十設立の関係について私からお答えを申し上げます。 破産管財人は、裁判所から選任されて破産債権者その他関係者のために中正公正な管財業務を行う職務を持っておるわけでございます。したがいまして、こういう立場にある管財人が破産財団の損失において自分の利益を図る目的で会社を設立して、破産財団に属する財産を取得しようというふうなことであったとすれば、それは職務違反と言わざるを得ないと考えるわけでございます。したがいまして、そういうことがわかっているような場合に、裁判所は管財人を監督する立場にありますから、裁判所としてはその監督権の発動としてそういう行為をチェックするということになろうかと思うわけでございます。
○小林(進)委員 それで終わりですか。その先を言ってくださいよ。一体井上君のやった行為はどうなるのか。抽象的なあなたの御意見は承った。しかし、破産財団に損失を与える意思があったかないかは別として、破産管財人の井上は、途中でやめたにしても、その破産財団を購入して自分の利益を図ろうとした、こういうようにやったことだけは事実だな。しかも、それを監督すべき板垣という裁判官が、みずからの財産ではないにしても、細君の名義で三百万円も融資だか投資だかわかりませんがやったということは、犯意というか、意思のいかんを問わず、客観的に見れば、まさに破産財団に損失を与えても自己の利益を図ろうとした事実は厳然として存在しませんか。それをまた監督官庁にある板垣判事は、許可すると同時に、自分の細君名義で融資の便宜を図っているということは、だれが考えてもまともな行為じゃないと思われますが、いかがでございますか。
○川嵜最高裁判所長官代理者 外形的に確定できる事実関係といたしましては、東京二十という会社が設立されておりますこと、それからこれに管財人が相当の出資をしていること、しかし管財人は代表取締役等の役職にはついていないということでございます。それで、先ほど私が申し上げましたように、管財人が破産財団の損失において自分の利益を図ることを意図してやったかどうかという点につきましては、私どもとしてはどう事実関係を認定するのかということについてまだ材料は何も持っていないというところでございます。 したがいまして、仮定の問題でございますけれども、破産財団に属するゴルフ場でございますが、このゴルフ場を管財人としては有利に換価しなければならない、その換価する先が見つからなかったような場合にどうするかという問題が一つあるわけでございます。ゴルフ場をほうっておけば無価値になるおそれがございます。こういう場合にどういうふうな形で債権者に有利に換価するか。そのために、どうしても買い手が見つからない場合に管財人が肝いりとなって受け皿会社をつくるということ、そういう非常に善意な意図のもとにされた場合に、それは職務違反かとなりますと、そう簡単に職務違反だと言うことはできないように思われます。そういうような事実関係がわかりませんために、先ほど申し上げたように抽象的に言わざるを得なかったわけでございます。
○大西最高裁判所長官代理者 ただいま民事局長は破産事件の一般論を中心に申し上げておりますので、少し本件の具体的な事案に即して申し上げます。 板垣裁判官は五十一年から五十二年まで一年間この破産事件に関与しておりますけれども、五十二年の四月以後は全くこの破産事件を離れまして、現在では鶴岡支部へ行っておるという状況でございます。したがいまして、いわゆる東京二十の出資の問題に関して申し上げますならば、板垣裁判官はその時点におきましては監督するとかそういう立場には全然ない。かつて数年前にあったということでございまして、そういう意味での直接の関係はないということがありますのと、それから、民事局長が申し上げましたように、井上管財人に自己の利益を図る目的があったかどうかということもわかりませんし、板垣裁判官がその点をどう考えておったかということも全くわかりません。金の出所もわかりませんというふうないろいろな条件がございますために、この具体的事案に即して申し上げますならば、どうこうと断定することはなかなかむずかしい、実はこういう状況にあるわけでございます。
○小林(進)委員 有利に換価する一つの方法として、管財人自身もときにはそういう別会社を設立して買い取るということも幾つかの方法の中で考えられないこともない、それはあくまでもその財産を有利に換価する一つの方法としてはというお話がありましたし、本人の意思もわからない。板垣さんはそのとおりです。そこを離れて山形に行かれたことも知っております。しかし、いまの答弁はお二人とも甘いですよ。世間の常識では、皆さん方の答弁には納得しませんよ。ぼくはゴルフは全然知りませんけれども、特に井上という人は名人なんだそうですね。シングル。ゴルフでシングルというのは大変なんだそうですな。それで、本人は弁護士であるよりもゴルフ場のオーナーになるのが一つの夢であった。これは風評ですから別といたしまして、やはり玄人だからゴルフ会社の財産を買い取ることも考えたのでしょうが、いずれにしても、世間では彼が財産を有利に換価あるいは転売するためにやったのだとはだれも考えておりません。皆さん方のような甘い考えではおりません。これだけ申し上げておきます。 ところで、先ほどの質問にあったかどうか、私は後ろにおってちょっと聞こえなかったのですけれども、私がお伺いしたいのは、破産管財人の指名といいますか任命は、裁判官が、個人といってはなんでありますが、単独で自由にできるものでありますか。
○川嵜最高裁判所長官代理者 仰せのとおり、破産管財人の選任は当該破産事件担当の裁判官の裁量にゆだねられております。
○小林(進)委員 担当裁判官の自己判断に任されておる。これに関係いたしまして、私もちょっと友人にいろいろ意見を聞いたりしたのでありますが、普通は裁判所と弁護士会——弁護士の協会ですか弁護士会ですか、これも第一だの第二だの、連合会だのと、私は詳しいことはわかりませんが、そこから破産管財人たるべき希望者といいますか、資格者といいますか、弁護士会から名前を裁判所へ出しておく。何か破産事件があったらこの中からひとつ管財人を選んでくださいという弁護士会と裁判所との話ができている。ところが、それに対してまた裁判所は独自の判断、いまのお話ですと独自の判断でできるわけですから、だれを選んでもいいという結果になりますね。 弁護士会から見ると、裁判所はやはり自分の仲間のOBの裁判官をよく破産管財人に任命されるケースが多い。なかなか破産管財人というのは金になるんだそうですね。高給取りだそうですね。どれだけもらっているのか私はわかりませんけれども、高給取り。そこで弁護士会の方にしては、何だいままで裁判官なんかやっていて余り破産管財などということに熟知をしない未熟な者を出す、われわれが名簿を提出してこの中から選んでくれと言ってもさっぱり弁護士出身の者を破産管財人にしないんで、ちょっと裁判所公平ではないぞ、へんぱじゃないかという話をすると、いや、そう言いましても、破産管財人というものは非常に公正を要する非常にシビアな仕事であるから、熟練、不熟練だけではなくて、やはり世間から見てもだれも信頼に足る、あの人が破産管財人ならば公平にわれわれ関係人の利益も守ってくれるだろう、あの人の出した決定にはわれわれも従わなければならないという、そういう気持ちにさせるような人格者を選ばなければならない。そうなると、つい裁判官出身で長く公正な半生を送ってこられた人を優先的に管財人に選ぶというかっこうになってくる、決して不公平な処置をするわけじゃない、こういう返事が裁判所の方からはね返ってくる、こういうわけです。 そのくらいの返事がはね返ってくるんならば、一体この板垣さんが井上さんをこういう破産管財人に選定するところに、やや一つ従来裁判所が言われているというその選定基準からは少し外れた、安易な選び方をしているじゃないか。ここに事件発生の一番根本的な理由があるのじゃないか。もっと破産管財人は、従来裁判所が言っておられるようなそういう人格者や、客観的に見てりっぱだという人を選ぶというシステムといいますか、制度といいますか、慣習といいますか、習慣といいますか、そういうのがあれば、私はこういう事件は起きなかったのではないかと思わざるを得ないのでありますけれども、この点はいかがでございましょうか。
○大西最高裁判所長官代理者 破産管財人の選任につきましては、先ほど民事局長が申し上げましたとおり、当該破産事件を担当しております裁判官の専権に属するわけでございます。ただいま小林委員御指摘のように、弁護士会等によりましては、弁護士の中から管財人になりたいという希望者があります場合に、それについての名簿等をおつくりになりまして、裁判所の方へいわば参考ということでお出しになっておる、そういう裁判所、弁護士会等もあるようでございますけれども、ただ、先ほど来申し上げておりますように、選任自体はその中から選ばなければいかぬというものでもなく、やはり真に管財人にふさわしい方を選ぶということになるわけでございます。 〔熊川委員長代理退席、委員長着席〕 それで、本件の場合に管財人の選任が適切ではなかったのではないかというお問いでございますけれども、確かに、板垣裁判官と井上弁護士とが同期、同クラスであるというふうなこと、井上弁護士は管財人として適当な方であったかどうか、当該具体的事件との関係もございますが、あったかどうかということは、いま私どもちょっと中身に入って判定することはなかなかむずかしいわけでございますけれども、少なくとも同期、同クラスで親しい仲ということになりますと、実際はそうであろうがなかろうが、その選任についての公正と申しますか公平、それをやはり世間から疑われるという意味では適切ではなかったのではないかという感じがするわけでございまして、その点はそういうことになると思いますけれども、一般論として井上弁護士があの事件に適当じゃなかったかどうかという点についての私どもの考え方と申しますか、それはちょっと差し控えさせていただきたいというふうに思います。
○小林(進)委員 先ほどの質問の中に、井上弁護士はその前にも、まあ大きな事件ではないけれども、破産管財人になられたというお話がありましたが、ちょっと私は聞き漏らしたのですが、やはりあれですか、板垣判事が任命をしてその前にも破産管財人になったんですか。任命者はやはり板垣さんだったかどうか、ちょっと聞かしてもらいたい。
○大西最高裁判所長官代理者 御指摘のとおり、板垣裁判官が井上弁護士を管財人に選任した事件が、この事件の前に一件ございます。
○小林(進)委員 これはむしろその人の人格に対してあるいは余り適切でない質問かもしれませんけれども、ちょっと言わせてもらえば、何ですか、六本木の方から国会の方へ向かってまいりますと、あれはどこですかな、例の四つ角、総理官邸の下のおり口のあの四つ角ですが、あれは霞が関と言うのですかね、何と言うのですかね、あそこへ車がとまりますと、左の方を見ますと、高いビルのところに表から見えますよ。井上恵文とかいう大きな弁譲士の看板が出ておりますよ。そういうことに対しても、それはこういう事件が起きない前でも、普通の弁譲士の看板としてはとてもこれは異常な看板なんです。ごらんになりましたか。ごらんになりませんか。ともかく日本じゅう歩いても、弁譲士のいわゆる看板にしてああいう看板を出している弁譲士は他にないだろう。 どこへ行っても弁譲士の看板にはやはり弁譲士の一つのしきたりの看板があるんだけれども、彼は大きなビルディングの上に大きなものを出して、私はこの国会へ通っておりますから、あそこへとまると、左を見て、おお、依然として輝ける井上恵文先生の、弁譲士の看板があるというふうに見ていて、そんな話もつれづれなるままに友人なんかにいたしますと、あれは異常なんだよ、われわれの常識としては考えられないやり方なんだ、あれは名は体をあらわすといって、それくらいあれは風変わりな人物なんだという返事も大分はね返ってきておる。 私は、個人を傷つけるような質問でまことに悪いのですが、決してそういう意味で言っているんじゃないのでありまして、弁譲士という職業にああいう看板が適か不適か、すぐそこですから、首相官邸のところをちょっと向こうへおりてもらえば、こっちから行けば、六本木の方へ向かって言えば右側のビル、ちょっと五十メートルぐらいか百メートルぐらい先のビルのところへ出ておりますから、そういうことから勘案をすると、いまも言うように、公正妥当かつ信頼を得べき破産管財人としては、そういう現実から見ても適当ではないじゃないか。 それはやはり友人だあるいは知人だ、同級生だ、同室だというような関係で選ばれたとするならば、先ほどの稲葉委員の質問ではないけれども、やはり判事、検事、弁譲士、お互いに弁譲士は判事、検事の何か友情とか同級生とか同窓とかによって因縁、因果を持ちたがる、そういうこともやはりちょっとシビアに考えたらいいんじゃないかというお話もありましたけれども、まあ破産管財人等を選ぶには、その担当の判事の単なる個人的判断ということでいいか悪いか。といって、まあ判事さんですから、それまでもいけないということもどうかと思いますが、まあそこは一つ問題があるわけですから、いかがでございましょう。やはり従来どおり担当判事の選ぶ側に任していいかどうか、ちょっとお答え願いたいと思うのであります。
○大西最高裁判所長官代理者 まず、たてまえ論を申し上げて恐縮でございますけれども、一応破産法という法律で破産事件を担当する裁判官が決めるということになっておりますので、現行法を前提といたします限りは、やはり破産管財人は担当の裁判官が決めるというふうに申し上げざるを得ないわけでございます。 ただ、その裁判官が管財人を決めます場合に、どういうふうに候補者をしぼってその中から選ぶか、どういうふうに参考意見を聞くかというふうな点には、やはりいろいろ検討すべき問題があろうかと思います。そういう意味での検討は必要でございますが、最終的に裁判官が決めるというそのたてまえだけは動かすことはできないのではないか、選び方、裁判官が選ぶときにどういうことを考慮すべきかということを考えるべきだということになるのであろうと思います。
○小林(進)委員 時間もありませんからはしょって御質問いたしますけれども、やはりこういう問題が起こることについて、現在の司法制度、裁判制度というものに対しても考えてみなければならぬが、その中でも養成制度についても若干の問題点があるのではないかというようなことを今朝の新聞方も報じておりますが、この点についてはいかがでございますか。「日本弁護士連合会がまとめた「法曹養成白書」でも「三十年余の歴史を有する司法研修所を通しての法曹養成制度は、相応の成果をあげている半面、運用が理想とする軌道から、かなりはずれた方向に向かっている。この軌道のずれが、新任拒否、女性差別発言などの問題をわき出させている」」云々の批判も出ているようでございますが、いまのこの養成制度について何か御所見はございませんか。
○大西最高裁判所長官代理者 現在の養成制度は、戦後新しい司法制度が発足しますと同時に、戦前のような判検事だけを司法官試補として弁護士とは別個に教育するということではなくて、判検事、弁護士、三者を一緒に司法研修所という養成施設で養成していくという制度になったわけでございます。 今回の問題、一面において裁判官と弁護士等が同じ教室で一緒に机を並べて勉強したという心安さと申しますか、そういうところから生じてきたという一面が確かにあるわけでございますが、もう一方におきまして、ただいま新聞等で指摘されておる日弁連の「法曹養成白書」等が言っております実務偏重だからというふうなこと、そういう方面からの批判も確かにあり得ることだというふうには考えますけれども、今回の問題自体を考えますときに、そういう面からの問題があるわけではなくて、むしろ一緒にやって一緒に勉強してきたことから、先ほど来申し上げておりますように、仕事の面と私の面とのけじめがついていないという面での欠陥と申しますか、そういうことがあろうというふうに思います。しかし、この点は制度面の問題もあるかもしれませんけれども、むしろさしあたっては、まずその運用面において検討すべき問題の方が多いのではなかろうかと考える次第でございます。
○小林(進)委員 司法修習生ですか、法曹人養成制度、その養成所に入りますと、何か養成所の中の手引きだとか修習生心得とか——やはり所長はおいでになりますわな、教官がおいでになったり。教官は判事がなったり、検事や弁護士の熟練の方々、専門家の方々が修習生の教育をやっておられるのでありましょうが、そこに修習生の手引きだとか入所心得帳というか、判事捕り物帳みたいで悪いのですが、ここに入所したらこういうことを心がけるとかこういう規則を守れとか、そういう何か心得、規則、規約のようなものはございませんか。
○大西最高裁判所長官代理者 現在は名前が変わっておってちょっと正確な名前は覚えておりませんが、司法修習生心得というふうなもの、これは研修所へ修習生が入りましたときに、将来法曹となるべき修習生に対する心得を研修所で説明いたします際のいわば一つの資料ということでつくったわけでございますけれども、その中にも、たとえば今度のような問題が起きないようなそういう心得が実は書いてあるわけでございまして、そういうことも研修所ではもちろん教育はしておるわけでございますけれども、それでもこういう問題が起きてくるという状況にあるわけであります。
○小林(進)委員 時間も参りましたから、そのものずばりで申し上げますが、心得帳などというものは先輩や研究の一つの所産で、私ども外部の者がいいの悪いのということはそう簡単には言えないが、ただ、そういう心得の中に、たとえて言えばこういうのがある。君ら教官の家だとかあるいは所長とは言いませんけれども、そういうところを訪問したり、人生の門出ですから、先輩、教官から大いに教えを請う、また校外の教えを請う、あるいは自宅を訪問する、それはいいことだと思うし、決して悪いとは言わぬが、行くときにはただで行くな、何かやはり手みやげやらそういうものを持って行け、こういう心得上の個条があるというわけだ。 それは裏を返してみれば、賄賂ではないけれども、はやりの弁護士なんか月に何百万にもなるからいいけれども、検事さんや判事さんはサラリーマンだ。月給取りであって、そういう修習生なんかわやわや来られて、教官、教官と言って飲み食いされたんじゃ、とてもしがない財産もてるものじゃありません。教官のところに行ってひざ突き合わせて経験談を承ったり、また学科で教えないことを教えてもらうときに、酒の一本も持っていってお互いに飲み交わすとか、あるいは手みやげ持っていってそれをつまみ、お菓子を食いながら、余り経済的な負担をかけてはいけないぞ、そういう趣旨のものとは判断されるけれども、手ぶらで行くな、何か手みやげを持って行けという趣旨の指導がなされておる。 これは決して大きな問題ではないけれども、まあまあ司法官試験も通ってこれから社会に出ようとする者は、常識からすればそんなことは書かなくとも心得えておる。その人その人たちの常識判断に任せればいいのを、そう細かいことまで指導、指示されるところに、むしろ社会に出て偏狭になりがちな一つの習性を教え込む結果に流れていくんじゃないか。むしろこういうことを細かく言うこと自体が、こんな判事補や判事をつくる道に通じておるのではないかという批判もあるということなんです。これは部外者で経験もない私どもが、物を知ったようなことはとてもあなた方に言えないけれども、そういう意見があるということを私は申し上げておきまして、一体、教官の家に行くときには何か手みやげを持っていけ、手ぶらで行くなという細かい指導があるのかどうか、それも含めて教えていただきたい。
○大西最高裁判所長官代理者 いわゆる司法修習生心得の中に、ただいま御指摘になったような点も記載されてあったことは事実でございますけれもど、現在ではそういうものは記載しておりません。先ほど来申し上げておりますように、修習生に対していろいろ口頭で説明する際の資料的なものでございますし、いま御指摘のような点についての御批判も当時ございまして、現在ではそういう記載はしてはおりませんけれども、御批判は御批判として私どもとしては十分それを考えなければいけないと思いますけれども、やはり今回の問題はそれと相当次元の違う問題でございまして、そういう意味で、手みやげ云々と今度もらったことがその延長線にあるというふうにはお考えいただきませんようにお願い申し上げたいと思う次第であります。
○小林(進)委員 私の準備しました質問はまだ三分の一ばかり残っておりますけれども、これでちょうど与えられた時間が参りました。残念ながらこれは割愛をして幕を閉じる以外にございませんけれども、法務大臣、あなたも長々と座っていただいて大分お退屈のようでございましたけれども、私は最後に申し上げておきたいのであります。 こういう問題が起きますと、われわれのところへ来くるのですよ。政治家は濁っている、政界は腐敗している、世の中にはいいことはない、毎日見る新聞は不愉快だ。しかし、そういうわが日本の中にでもわれわれの心の頼りとしてここだけはと思っているのは裁判官と裁判所、それから会計検査院と会計検査官——会計検査官も最近はどんどん出てまいりましたけれども、これは庶民の声です。庶民の声として、裁判官と会計検査院だけはまあまあ国民の立場で良心的に清潔な道を歩いてくれるだろうと考えていたにもかかわらず、それさえもわれわれはいま裏切られつつある、一体どこに信頼を置いて生きていけばいいのか、世の中がいやになったというような声もあるのであります。大臣とされましてはこういう世論にどうこたえるか、御所信の一端を承りまして、私の質問を終わりたいと思います。
○奥野国務大臣 司法の世界が国民から信頼を確保していくということは、社会の安泰のために最大の条件だ、こう思っておるわけでございます。いまおほめいただいたように、ずっと長く信頼を確保するに足る実態であったと思います。不幸にしてここで遺憾な事例が出たわけでございます。この際、事態を明確にすることを通じて将来再びこういう事態の起こらないように最大の努力をしなければならない、そして信頼を再び取り戻して傷ついた事態を回復したい、こう考えておるわけであります。
○小林(進)委員 これで終わります。
○高鳥委員長 林百郎君。
○林(百)委員 最高裁にお聞きしますが、谷合判事補は逮捕で、勾留はまだどうなるかわかりませんか、その辺の見通しは。
○前田(宏)政府委員 昨日の夕刻逮捕したばかりでございますので、まだ勾留の段階ではないと思います。
○林(百)委員 逮捕は、言うまでもなく犯罪を犯したことを疑うに足る相当の理由ということになりますね。その犯罪の嫌疑というのは、令状を出したでしょうけれども、贈収賄、涜職の罪と証拠隠滅もその嫌疑の中に入っているのですか。新聞を見ますと、ゴルフのセットに入れかえがあったとか、洋服が一着が二着だったとかいろいろ言っていますね。そういうことがあるのですか。そうすると、証拠隠滅にも関係してきます。
○前田(宏)政府委員 逮捕状におきます被疑事実でございますが、それは贈収賄の事実だけでございます。
○林(百)委員 逮捕と勾留とは深い関係があるので、そうすると、場合によっては勾留になるかもしれませんが、逮捕して調べなければならないということですね。これはどういう必要から逮捕するに至ったのですか。勾留なら罪証を隠滅する相当の理由ということになりますけれども、逮捕なら犯罪を犯したと疑うに足る相当の理由でいいわけですね。どっちなんですか、一体。証拠を隠滅しそうだということになれば、証拠隠滅罪の被疑事実もあることになるのじゃないですか。
○前田(宏)政府委員 先ほど稲葉委員のお尋ねにもお答えしたところでございますが、具体的な内容はちょっと差し控えさしていただきますけれども、要するに、関係者の供述等において不一致等がありまして、在宅のままでは十分な取り調べ、それによる事実の確定ができないということが身柄を逮捕するに踏み切った理由でございます。
○林(百)委員 これだけは言えると思います。関係者というのはだれのことを言うのですか、三人逮捕されているようですが。
○前田(宏)政府委員 贈収賄ということでございますから、当然のことながら両方の当事者があるわけでございますし、それにまた間接的に関与した者も関係者の中に含まれるわけでございます。
○林(百)委員 これは公務員ですから、何か嘱託があったのですか、こういうことをやってもらいたいとか、こうしてもらいたいとか。
○前田(宏)政府委員 そういう具体的な内容も今後の捜査の結果にまつわけでございますけれども、現段階では、いわゆる単純収賄と申しますか、そういうとらえ方で逮捕状の事実をとらえているわけでございます。
○林(百)委員 人事局長に聞きますが、井上管財人が管財人に指定されまして、管財人は継承したわけですね、板垣判事から。この手当は裁判所の決定で、幾らもらうということは決まっているわけですね。そうすると、あと谷合判事補に贈賄することによってどういう利益が考えられるのですか。何か谷合判事補から、ギブ・アンド・テークだとすれば、今度はギブしてもらうということがあり得るのですか。
○大西最高裁判所長官代理者 どういう利益があるかというお尋ねでございますけれども、具体的にどういう利益があるか、私どもとしてもわからないわけでございます。林委員には釈迦に説法でございますけれども、裁判官は管財人に対する一般的な監督権を持っておりますし、それから、報酬決定のほかに解任権、大きな財産の譲渡をいたします場合にそれの許可権限といったような権限を持っておるわけでございますが、そこら辺の法律上書いてあります権限との関係でどうかということが、問題になるとすれば問題になるのではないかというふうに考えます。
○林(百)委員 法律に示された管財人の権限を行使するについて、井上弁護士が谷合判事補の認可を必要とするような差し迫った事態が何かあったのですか。一般的にはわかりますよ、いまあなたの言うことで。それが差し迫っていて、何かこれをやってもらわなければいけないから贈賄するということがあったのですか。
○大西最高裁判所長官代理者 具体的事件の中身でございまして、必ずしも十分よくわからない点もございますけれども、先ほど来各委員からの御質問の中にもございますように、株式会社東京二十という会社がこの破産会社からゴルフ場を買い受けようという動きがあったということは、各委員の御指摘の中にもあり、新聞報道等にも載っておるわけでございます。そういう財産の譲渡のときには裁判所の許可、債権者集会の決議というようなもの、が必要になってくるわけでございますが、そこら辺、抽象的にそういうことが言い得るというだけでございまして、具体的にどうこうということは、私どもとしては必ずしもよくわかっていないということでございます。
○林(百)委員 そのゴルフ場を譲渡するについて、当該監督裁判官であった谷合判事補の認可を必要とするような差し迫った手続がずっと進んでいたというふうに言えるのですか。一般的には重要な財産を譲渡するには裁判所の認可を受けなければいけないのですが、差し迫っていたのですか。
○大西最高裁判所長官代理者 差し迫っているかどうかという点、必ずしもよく趣旨の理解が不十分かもしれませんが、そういう問題が起きておったということは事実でございますが、具体的にその許可申請が出ておったかどうかというような点については、私どもは全然そういうふうには聞いておりません。
○林(百)委員 最高裁判所でも本件の調査委員会を設けて調査していたのですね。これもさっき同僚議員が質問したのですけれども、検察庁の方で逮捕に踏み切るというのは、最高裁判所の調査は信用できないということで逮捕になったんでしょうか。最高裁判所はどういうふうにこれを受けとめているのですか。
○大西最高裁判所長官代理者 今回の問題につきまして、検察当局としてどうお考えかということは私どもの方でお答え申すことができるものではございませんけれども、私どもといたしましては、ああいう不祥事が起きまして、不祥事を起こしました裁判官に対する処分の問題、それから、ああいう不祥事が起こったことにつきましてどういうふうに今後対策を講じるべきかという問題がございます。最高裁判所の調査委員会としてはそこら辺のところを中心に調べておるということでございまして、刑事責任を追及するという観点から調査委員会が調べておるというわけのものではございません。
○林(百)委員 刑事局長にお尋ねしますが、最高裁でも調査委員会を設けて調査をしていた、しかし、それは主として司法行政に関係する部分のようにいまお答えがあったのですけれども、最高裁の調査委員会での調査の模様や結果等はお聞きになったのですか。
○前田(宏)政府委員 捜査の内容のことでございますので余り具体的なことを申し上げるのはいかがかと思いますけれども、裁判所側の御調査の結果もそれなりに承っておるわけでございます。
○林(百)委員 承っていて逮捕状を出したのは、どういう理由なんでしょうか。
○前田(宏)政府委員 どうお答えしたらいいかと思いますが、先ほど御指摘のありましたように、別に最高裁の調査が信用できないとかいうことではないのじゃないかと思います。むしろ最高裁の調査の性格と私どもの検察当局の捜査の性格との違いもございますし、端的に言えば、捜査当局の捜査の方がより突っ込んだ取り調べができるということによる違いというふうに御理解いただければと思います。
○林(百)委員 その突っ込んだ捜査というのは、どういう点をもっと突っ込みたかったのですか。具体的な事例だから言いにくいことは言いにくい……。
○前田(宏)政府委員 これも余り内容的なことはいかがかと思いますけれども、抽象的な言い方でございますが、最高裁の御調査では恐らく当事者の方から聞くというのが主体になろうと思いますが、私どもの捜査当局の方から言いますと、先ほど関係者という言葉で申しましたけれども、直接、間接に関係のある人々からもいろいろな事情を聞くことが可能でございますので、そういう点での調査の濃淡といいますか、そういうことはおのずからあり得ると思うわけでございます。
○林(百)委員 そうすると、検察庁としては、逮捕された三人のほかにいわゆる関係者なるものがあって、それから今後事情を聴取する必要がある、こうお聞きしておいていいですか。だからこの問題はもっと広がるんだ、この三人だけで結論が出るわけじゃないんだというように聞いておいていいのですか。
○前田(宏)政府委員 私、そういう意味で申したつもりはございませんで、当事者のほかに、たとえば洋服をつくった者であるとかあるいはゴルフ道具を購入した者であるとか、そういう事実行為にかかわった者もあるわけでございますので、そういうことを念頭に置いて申したつもりでございます。
○林(百)委員 要するに、三人だけじゃなくて、そのほかにも証人として聴取をする必要がある。それは最高裁ではそういう権限がない。そういうことも検察庁としてはできるから、やる。だからやはり広がるというか、検察庁が証人として捜査をすることが、三人の当事者だけではなくてそれ以外の人たちにも捜査の手を伸ばすということになるわけですね。洋服をつくった人とか買った人とか、ゴルフセットを売った人とか、そういうところへもずっと伸びていくというように聞いておいていいんですね。
○前田(宏)政府委員 お言葉ではございますが、広がるとか伸びていくということになりますと、何か犯罪の容疑自体が広がるような印象を受けるかもしれませんけれども、そういう意味で私は申しておりませんし、恐らく林委員もそうでないと思いますけれども、私申しましたことは、そういう参考人的な立場にある人も何人かあるでしょう、そういう人たちの取り調べによりまして事実関係がより明確になっていくであろう、裏づけ的な意味あるいは本人の供述の信憑性といいますか、そういうことも含めて事実がはっきりしてくるであろう、こういうことを申したわけでございます。
○林(百)委員 事務総長にお尋ねしますが、裁判官が逮捕されたというのは、司法が始まって以来初めてのことじゃないでしょうか。これが勾留になるかどうかは今後を見なければなりませんけれども、初めてかどうか、まずそれをお聞きしましょう。
○大西最高裁判所長官代理者 戦前のことは必ずしも十分わかりませんけれども、戦後に限って申しますと、逮捕された事例は聞いておりません。
○林(百)委員 戦後初めて、身の潔白を最も典型的に持すべき裁判官が犯罪の容疑で逮捕までされるという事態が発生したわけなんですが、最高裁としてはこういう事態に対してどういう反省をし、今後どういう措置をとられていくか、まずそれを聞きたいと思うのです。板垣判事のこともありますし、国民から言えば裁判所までかという印象というか、そういう受けとめ方があると思うのですよ。それに対して最高裁判所はこたえていかなければいかぬと思うのですね。司法の厳粛な秩序を維持するためには、どう反省されて、今後どうするつもりでしょうか。
○矢口最高裁判所長官代理者 人事局長からもお答え申しましたように、現職の裁判官が逮捕されるという事態は戦後初めての問題でございます。しかも、私どもが全然関知しないところでたまたま何らかの理由で逮捕の理由が発生した。それで突如として——私どもから見ますと突然の逮捕であったということではないわけでございまして、私ども、先ほど来関係局長が御説明いたしておりますように、いろいろの疑問を本人について問いただしてきたわけでございます。裁判所の調査委員会というのは御承知のように特別の権限を持っておるわけでも何でもございませんので、もちろん十分な調査はなかなかできないわけでございますが、私どもはやはり裁判官をあくまで信用いたしまして、これまでのことはこれまでのこととして、聞けば率直に答えてくれる、こういうふうに期待をいたしておったわけでございます。 ところが、その期待も実は外れたわけでございまして、今後の検察庁のお取り調べを見ませんと本当のことはわからないわけでございますけれども、少なくとも私どもが事情聴取をいたしておりましたこととやや違ったことがあり得るのではないか。としますと、これまでのことはこれまでのこととして率直に反省もし、私どもに真情を吐露してくれてはいなかったのではないかという疑念がございます。ここのところが実はいま現在といたしましては非常に残念なところでございまして、そういうようなことであるとしますと、われわれがこれまで司法行政を担当いたしまして、独立不覇の裁判を全員の裁判官がしてくれるということを期待してきておったそのやり方が、どこか欠陥があったんじゃないかというふうに深刻な反省をせざるを得ないわけでございます。 本件で申しますれば、まず、かくなる上はあくまで本件の真相というものを十分に把握いたしまして、その把握の中から今後二度とこういう問題が起こらないようにするにはどのようにしていったらいいか。仕事の取り扱いの問題でございますとか、あるいは裁判官の配置の問題でございますとか、あるいは研修所等における裁判官の研究、修養の問題でございますとか、いろいろの問題について全面的な角度からの検討を行いまして、とにもかくにも二度とこのような不祥事が起こらないように措置をいたすことが司法行政の最大の責務だというふうに考え、このことについて今後全力を挙げていきたい。それが私どもが国民の疑惑にこたえ、また国民がせっかく寄せていただいておる信頼を回復するための唯一最大の方法である、このような覚悟をいたしておるわけでございます。
○林(百)委員 それじゃ、もう一問だけ。最高裁判所にお聞きしますが、世間では、谷合判事補が非常に苦労して、大した学歴もなくて、まだ判事補だ。この人をトカゲのしっぽ切りみたいに切って、そして司法の権威をそれで維持しようと考えておるのではないか、あるいはこれによって板垣判事の方へは傷がつかないような配慮をしているのではないか、そういう政治的な配慮があるのではないかというような疑義を持っている意見も聞くわけなんですが、そういうことについてはどうお考えになっていますか。 それと、法務大臣、先ほど小林委員も聞きましたけれども、これをどういうふうに受けとめて、今後どうするかということ。私は、一つは、司法行政の方が非常に重点が置かれて、裁判官が裁判に情熱を持つことができないというようなきらいが最近耳にも入るのです。これは事務総長にも聞いてもらいたいと思うのですが、そういうことから、弁譲士も相当の弁譲士だと思いますが、ついそういう手に乗ってしまうのだ。そういう点、やはり裁判に情熱を持ち、裁判官として自分の生涯をかけるんだ、そういう指導をしていく必要があるんじゃないか。何件処理した、この事件は何でおまえこんなにおくれているとか、事件の処理数によって決めていくとか、あるいは学歴がどうだからおまえはどうせ伸びても地方裁判所の裁判官ぐらいで終わりだとか、将来の望みを絶つ、そういうようなことが裁判官に裁判に対する情熱を持たせないということもあるんじゃないか。裁判官が裁判官になった以上は、民主主義の三権分立の一つの柱を自分がしょって立って、民主主義の大事な柱の任務を果たしているんだという、そういう情熱を持たせることが必要だと思うのですね。そういうことが欠けて、何か司法行政が非常に優位しているというようなことに問題があるのではないかというようなことも聞いておりますので、その点も率直に聞かしていただきたいと思います。 それから、これは司法の重大な問題で、司法と言えば、問題はいま裁判官だけ起きておりますけれども、お互いに検察官もわれわれ弁護士もまた司法の一員として考えていかなければならない重大な問題ですから、ひとつ奥野法務大臣のお考えも聞かしてもらいたい、こう思うわけです。
○矢口最高裁判所長官代理者 お尋ねの第一点、これでできるだけ特定の人に処置を限定して他に及ぼさないように考えておるのではないかという点でございますが、毛頭そのようなことはございません。時間はかかるかと思いますけれども、私どものでき得る限りの努力をいたしまして、今回関連不祥事の全容の把握に努めて、それに対する対策を立て、御疑念におこたえしたいという覚悟をいたしております。 それから第二点の問題でございますが、司法行政はあくまで裁判あっての司法行政でございまして、その帰するところ、司法行政の職務は裁判官が情熱を持って具体的事件の公正妥当な処理をしていただける、そのような基盤づくりをする、お手伝いをするということでございまして、私、決して裁判官が司法行政をやるということを目標にしておるなどとは夢にも思っていないわけでございます。 ただ、裁判を一線で続けていただいておりますと、来る日も来る日も難件を処理していって尽きるところのない日常を繰り返しておるわけでございますので、そういう場合に、やはりもう少しゆとりを持って、ときにおのれを振り返ってみて新たな気分で仕事をしていくといったような、そういった配慮というようなものが司法行政としていたしていかなければいけないんじゃないか。といたしますと、それはどういうふうにしてやればいいか。一例を申しますれば、一定期間仕事を離れて特定の研究をしてもらうとか、そういったようなことも必要なことではなかったろうかというふうに現在考えておるわけでございます。 そういう意味で、まだまだ司法行政の考えていかなければいけないことは多くあると思いますし、その点について力を注いでいきたいと思いますが、司法行政優位というようなことは決してございませんし、私どももそれは考えていないことだけははっきりと申し上げられるかと思います。
○林(百)委員 板垣判事との関係も、この際はっきりさしておいてください。
○矢口最高裁判所長官代理者 板垣裁判官の問題も、今後十分取り調べと申しますか、調査を続行いたしまして、御疑念にこたえ得るような決意を持っております。
○奥野国務大臣 先ほど最高裁事務総長から、まず真相を明らかにしたい、それに基づいて今後いろいろな問題をどう解決していくか、改革していくかということを取り上げていきたいという決意のお話がございました。この問題が起こりましてすぐ、最高裁の方でそれなりに独自に調査をする組織をつくられると同時に、検察庁に御連絡をいただいて、調べるところがあれは調べてもらいたいという姿勢をおとりになりました。私はそれを見て、最高裁も異常な決意を持って臨まれているなと、こう感じたわけでございます。 不幸な出来事でございますけれども、あいまいにこれを糊塗してしまいますと、再び問題を起こさないという体制はとれません。信頼を傷つけて非常に残念でございますけれども、やはり真相を明らかにして、それなりの的確な対応をしまして、そして信頼をもう一遍回復するという方が筋道だ、それでなければ信頼は回復できない、立て直しはできない、こう思っておるわけでございますので、それぞれに真相を明らかにする、それなりに的確な措置をとるということにこの際は最善を尽くしたい。そして、その結果いろいろな事態が明らかになってまいりましょうから、法曹三者におきまして今後の対応なども十分に論議していくべきだ、幸いにして最高裁、日弁連、法務検察の三者会談の組織もあるわけでございますので、こういうところで真剣に今後これらの事態を踏まえての進むべき道を模索していくべきだ、私はこう思っておるわけでございます。また、それらの課題も皆さんたちの間からいろいろ御提起いただいているわけでございますので、こういうことも当然に参考にさせていただかなければならない、こう思っておるところでございます。
○林(百)委員 終わります。
○高鳥委員長 午後一時三十分再開することとし、この際、休憩いたします。 午後零時四十分休憩 ————◇————— 午後一時三十分開議
○高鳥委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 質疑を続行いたします。林百郎君。
○林(百)委員 最初に外務省にお聞きしますが、日昇丸事件でレーマン声明が二十一日の朝ですか出て、日本の新聞にも載ったわけですが、これはどういう内容ですか、改めてごく簡潔に説明してください。
○丹波説明員 お答え申し上げます。 先生御指摘のとおり、レーマン海軍長官が本件補償の問題でステートメントをワシントン時間の二十日午後四時に発出しております。その内容を簡単に申し上げますと、米海軍は今回の衝突事故の損害賠償責任、英語でライアビリティーと言っておりますが、これを認めるということと、この措置は長期にわたる訴訟を避け、海軍がすべての関係当事者と早急に交渉を始めることを可能にすべくとられたものである、この措置はこの米軍潜水艦の艦長及び乗組員個々人の損害賠償責任及び責任を何ら予断するものではない、そういう趣旨でございます。
○林(百)委員 それは、アメリカの国内法でいいますと、何法に基づいてレーマンはこういうことを言ったのでしょうか。
○丹波説明員 本件の声明の法的な根拠については、詳細には現在調査中でございますので、確定的には申し上げかねますけれども、本件の声明の意味するところは、補償の問題に関する限りアメリカはその責任を認める、そういうところにあると思います。
○林(百)委員 だから、補償に関する限り認めるはいいけれども、何法に基づいて認めるのか。その法律によっては支出できる金額の最高限も決まっているわけですから、何法に基づいているのかとお聞きしているわけです。
○丹波説明員 この点につきましては、まさに現在訓令を発出して調査中でありますので、私の答えを確定的にお受け取りいただいては困るのですが、背後には二つの法律がございまして、一つは外国人請求法、もう一つは海事請求処理権限法、こういうものがあるであろうというふうに私は推察しております。
○林(百)委員 二法の最高限度額は幾らですか。
○丹波説明員 現在私が了解しておりますところ、本件事故をめぐる補償の問題には二つの側面がありまして、一つは人的な死傷の補償の問題、もう一つは船舶及びその貨物等の物的補償の問題と二つに分かれると思いますが、まず、前者につきましては、アメリカ側は外国人請求法により解決しよう、こういうふうに考えていると思います。また、物的損害につきましては海事請求処理権限法に基づいて処理する、こういう考えであろうと思います。それで、前者の場合には、二万五千ドルの範囲内であれば海軍長官は行政的にこれを処理することができる、後者の問題については百万ドルであれば行政的に処理することができる、こういうふうに承知しております。
○林(百)委員 国内の当事者がいま幾らの損害賠償を求めているかということは、外務省では御承知ですか、これは新聞にも出ておるところですが。
○丹波説明員 まさに新聞などで承知しておるわけですが、四百三十万ドル、そういう数字が上がっていると聞いております。
○林(百)委員 四百三十万ドルといいますと、請求法でいうと二万五千ドルが限界だ、権限法でいうと百万ドルだということになると、大分違いますね。それはどうなるのですか。
○丹波説明員 ただいま申し上げました二万五千ドル及び百万ドルという数字は、それ以上の請求については払えないという意味ではございませんで、海軍長官がこの範囲内であればみずから決裁ができるという意味の数字でございまして、当事者との話し合いの結果、アメリカ側もそれを上回る補償が必要であると判断する場合には、海軍長官がそのことを米国議会に証明して、米国議会から権限を得てさらに上積むことができる、そういう法的なたてまえになっておると承知しております。
○林(百)委員 米議会に諮問をして了承を得るというのには、時間的にはどのくらいかかることになるわけですか。
○丹波説明員 この点につきましては、私は先生と同じ問題意識を持っておりまして、たとえば過去の例でアメリカの潜水艦とギリシャの船がぶつかったことがあって、そのときにやはり同じような問題が起こったのですが、まさにきょう訓令を発出いたしまして、その場合どのぐらい時間がかかったのか、その場合の補償額はどうであったのか、あるいは議会との関係が生じた場合にはどう処理されたのか、現在調査中でございます。
○林(百)委員 照会をきょう発したということですか。発してその回答を得たのですか、まだここで答弁するまでに至っていないということですか。
○丹波説明員 この訓令は、きょう出す考えです。
○林(百)委員 これは相当の年限がかかりますし、また議会でオーケーを出すかどうかもわからないという、非常にぺンディングな要素を持っているわけです。レーマンの声明というのも日本側の当事者の要求とは大分かけ離れたもので、まだ原因関係が明らかになっておらない。どうしてこういう事故が起きたか、またどうして乗組員を救助しなかったのか、また通報が三十五時間もおくれたというのはどういうことなのか、要するに、故意があったのかなかったのか、仮に百歩譲って過失があったのかなかったのか、そういう原因関係を明らかにしないうちにレーマンがライアビリティーをもって賠償するということを言ってくるというのは、この問題を何とか金で早く処理しようということになるのではないのですか。 日本の司法制度ですと、損害賠償の場合は、明らかに故意、過失を立証して、そして現実にかかった損害なり慰謝料を請求するのですが、そういう調査報告もアメリカからはまだ何にも来ておらない、それにもかかわらず金だけ、しかも当事者の要求とはこんなにかけ離れているものを出してくるということについては政治的な意義があるんじゃないでしょうか。これは事務に専念されているあなたに聞いてもどうも何ですけれども、五月の初旬に鈴木総理がレーガンに会う、その前に何とか一つの手だけは打っておこうという政治的な手段としてやられるのではないか、こういう新聞論評も大分出ているわけですね。 だから、このレーマン声明というものがどういう意味を持っているのか、どうしていまそういうことが言われてきたのか。要するに、外交関係を円満にするという政治的な意味であって、実際の損害を賠償するということではない、こういうことになるわけですか。
○丹波説明員 私、いままで外務省に奉職しておりましてアメリカを非常に勉強しておるつもりですが、御承知のとおりアメリカ国民といいますのは、町で自分の車を人にぶつけて悪いなと思っても、絶対悪いということを言うな、こういうことを言われて育った国民、そのアメリカが、事故の原因の結果がわからないこの現段階において、損害は自分がやるというステートメントを海軍の最高の長官が発表するということは、まさに非常に異例なことである。しかもその異例なことをなぜやるかといいますと、これは総理がロング太平洋軍司令官に指摘されたり、あるいは外務大臣から再三にわたりマンスフィールド大使に指摘され、その内容はまさに先生が申された事件の核心をなす問題、これは徹底的に調査してほしい。他方、補償の問題については、国民が心配しているからこれもきちっと処理してほしい、こういうことでございまして、アメリカ側は、本件をめぐって日米関係に影響を与えるようなことが最小限ないようにという友好的な姿勢できのうのようなステートメントが発表された、私はそういう受け取り方をしております。 それから、補償の問題につきましては、私は関係乗組員を代表しておられる日本側の弁護士ときのう直接話をいたしましたが、補償の問題については非常に円滑に進んでおる、私の方から、もし何かあればいつでも協力します、いまのところは協力は要りません、非常にうまくいっている、こういう話でございます。
○林(百)委員 そうすると、日本の国としては、日本の国民の生命が失われ、そして日本の国の貨物船が損害を受け、しかも場合によっては非核三原則にも触れる心配のあるような、そういう問題があって、日本の安全の保障に関する重要な問題があるのに、そういうことについての日本側のたび重なる、真相を明らかにしてもらいたい、あるいは中間の報告でもいいから明らかにしてもらいたいということにこたえなくて、金だけ、握り金だけ出したから誠意があるという外務省の答弁は、やはり日本の国の主権を守るという立場からいって少しおかしいのじゃないですか。そんな意味にとれますか。 日本がいま求めているのは、原因について至急調査をし、明らかにしてもらいたい、場合によっては原子力潜水艦の目標として日昇丸が考えられたのではないかとか、あるいは公海に関する条約で当然救助をしなければならない人命の救助もしておらない、そして通報が三十五時間もおくれている、これはどういうわけなんだ、まずそこを明らかにしてくれ、これは日本の国の主権にも関係することだからということを言っているのに、そのことは全然報告ないのでしょう。何か外務省にあったのですか。
○丹波説明員 先ほど申し上げたことに尽きておるわけですが、なぜあのような事件が起こったのか、なぜ通報がおくれたのか、なぜ潜水艦の乗組員が全力を挙げて救助しなかったのかという点については、まことに不可思議であると私たち政府も考えております。その点については全力を挙げて究明してくれ、迅速にやってくれということは、日本政府の最高レベルからアメリカに強く要請しておるわけで、その点をごまかして、金で解決してくれ、そういう考え方は政府にもございませんし、アメリカ側にもないわけです。 この点については、御承知のとおり、まさに先週の土曜日にレーガン大統領自身が鈴木総理に手紙を送られて、この事件の解決には私が個人的な注意を払う、十分な進展が首脳会談前にもあることを期待しておる、こういうことを言っておるわけで、問題の核心をぼかすために補償の問題を先にする、こういうことではございません。問題の核心については徹底的に究明しながらも、しかし、直接の関係者の身になってみれば、これからの生活がどうなるんだと、いろいろな問題があるので、そこは心配しなくてもいいとアメリカが誠意を示した、私はこういうふうにとっております。
○林(百)委員 しかし、原因が明らかにされて、アメリカ側に故意があったということになれば、こちらの当事者も請求が正当の理由としてできる強さを持つわけなんですから、やはり当事者としても、金よりは原因を究明してもらいたい、なぜ救助してくれなかったんだ、こう言っているのじゃないですか。 しかも、仮に請求法に基づく金をもらったとすれば、こういう受取を書かなきゃいけないわけですね。本請求額は、この請求書に記載されてある損害と傷害のみの請求で、さもなければ私は偽証罪に問われても差し支えないことを宣言する、私は本請求のこの額を十分な満足と最終的解決として受領することに同意します、こういう意味の受取書を常にいままで取っていたわけでしょう。こういうことを取られたら、あなたの言うように、とりあえずの請求で、生活に困っているだろうからアメリカが恩恵をもって与えてくれるんだ、他の請求の方は別にやるんだなんて、そんな甘いことにいかないのじゃないですか。いままでの事例をずっと見ても、請求法に基づく金の受け取りについては必ずこういう受取を出さなきゃいけないようになっていますよ。この場合だけは例外で、こういう受取を出さなくてもいい——要するに、損害賠償を行うそういう事情から離れて金のやりとりだけが行われるというのが、請求法に基づく金のやりとりになっているのじゃないですか。それだけ私が心配するように、これはあて金で、つまみ金で問題を処理される危険性が非常に強いじゃないかということを心配しているのですが、どうですか。 それともう一つ、弁護士に聞いたら非常にスムーズに進んでいるというのは、どういう意味なんですか。弁護士は、明らかに米側に故意、過失があるというたてまえで損害賠償として請求しているわけでしょう。そういうたてまえで進んでいるという意味ですか。
○丹波説明員 まず、日本側弁護士さんはまさに関係乗組員の方々の意を体されてアメリカ側と損害補償の問題の話し合いを進めておる、こういうことだろうと思います。弁護士さんは、在日米海軍司令部の請求権処理の担当官と毎日のように接触しておられる、こういうことでございます。アメリカ側は、先ほど申し上げたように、補償に関する限り責任は認めておる、こういうことでございます。 それから、行政的救済で示談が成立した場合には、これが最終的なものであってこれ以上の要求は私はしませんというのは、私は、そういう点に関する限り常識であって、国内的な事件の処理においても、示談が成立した場合そういう文書が交わされるのは常識であろう、こういうふうに考えます。
○林(百)委員 それじゃ、これは行政的な補償ではないというのですか、レーマンの言うのは。
○丹波説明員 外国人請求法その他でいまアメリカ側が考えておりますのは、まさに行政的な請求、これを考えていると思います。
○林(百)委員 行政的な請求と補償ということになれば、あなたの言うように、これ以上は決して請求いたしません、満足していますという一書をこっちが取られることになるのじゃないですか。あなたも認めているように、それは当然だと言っているんだから。このレーマンの言う金の性格がちっともはっきりしないのですよ。行政的な措置としてやるということになれば、これでもうこれ以上請求はいたしませんという一書を取られるのはあたりまえだとあなたも認めているでしょう。そういう性格の金になりませんか、これ。
○丹波説明員 私が理解しておりますところ、この行政的な救済の話し合いに日本側当事者が不満であるという場合には、司法制度に訴える道も開かれておる、こういうふうに了解しております。
○林(百)委員 ところが、請求法に基づく金の受け取りには必ず、これで満足です、これ以上は請求いたしませんという受取を前例としてずっと取っているのですから、それでは、これだけはその例外となるのですということをあなたは保証できるのですか。
○丹波説明員 私が申し上げようとしておることが言葉足らずであれば申しわけございませんけれども、私が御説明しようとしておりますのは、行政的救済に満足できないと当事者が判断した場合には、もう行政的救済の話し合いはやめる、自分たちはアメリカへ出かけていってアメリカの裁判に訴える、そういう道が残されておるわけでございまして、まさに行政的救済に不満足であればそういう書面の取り交わしということがそもそも行われない、こういう意味でございます。
○林(百)委員 だから聞いているのですよ、レーマンの補償の金というのはどういう金なのかということを。 それで、日本政府も外交保護権によって独自の立場で事故の原因、救助活動がなされなかった理由、通報のおくれた理由、こういうのは調査できるはずでしょう。日本政府はこういうことを独自でやらないのですか。アメリカ側の調査報告だけを待っているのですか。
○丹波説明員 この点は、私の理解しておりますところ、本件事故調査の日本側のいわば主管官庁に当たりますところの海上保安庁が日本側独自に関係乗組員から事情聴取する、その他の調査を進めておる、こういうふうに了解しております。
○林(百)委員 それなら、外務省にまずお聞きしますが、事故の原因は何だったというのですか。どうしてああいう事故が起きたというのですか。それから、救助活動を全然しなかったというのはどういうわけか、救助をしなかったのかどうか、まずそれを前提としてお聞きしましょう。それから、通報が三十五時間おくれたというのはどういうわけか。これは海上保安庁の調査を外務省だってつぶさに知っておらなければ今後の外交交渉ができないわけですから、それはどうなっているのですか。
○丹波説明員 先生がいま挙げました幾つかの問題点は、私たちにとりましてもまさに問題の核心を突く問題点であるという認識を持っております。 そこで、海上保安庁の調査につきましては、私の理解しておりますところ、まだ調査が完了せず、したがって外務省にもその内容が伝えられてきておりません。他方において、私たちはアメリカの調査がいまの問題点をめぐって徹底的に行われることをまさに総理以下アメリカ側に強く要請しておる、そういう段階にあるわけです。
○林(百)委員 だから、アメリカ側に強く要求することは結構ですが、日本側の調査はあなたの言う海上保安庁ですかでどの程度のところまで進んでいるかということを、あなたの方で聞いていることを国会で報告できないですか。
○丹波説明員 お答えいたします。 今日までのところ、私たちは海上保安庁から調査の内容についての情報は得ておりません。
○林(百)委員 外務省も外交交渉をし、それから外交保護権も与えられるわけなんですから、そういう点を日本側の独自の調査と今日における結果を知ってアメリカ側に交渉するというのが外交のたてまえじゃないのですか。アメリカの方の調査を待っています、それがちっとも出ません。それではあなた、ここで出ると保証できますか。そうしておいて金だけ、これでがまんしてくれということになったらどうします。これは全くあて金で事態の本質を不明にしたことになるでしょう。だから、アメリカの原子力潜水艦の行動ですけれども、その行動についての報告がアメリカから日本側へ必ず通告されるという保証をあなたにしろと言っても、外務大臣でもありませんしあれですけれども、少なくとも一線で働いておる外務省のあなたとしてはそういう保証はできますか。必ずアメリカ側から日本に調査の結果は伝えられる、これは私が責任を持って林議員にお答えできますと言えますか。
○丹波説明員 お答えいたします。 先週の土曜日に本件問題をめぐりまして外務大臣とマンスフィールド大使が会談した席に私も同席しておりましたが、その席上、マンスフィールド大使は、アメリカが本件事故をめぐって発見する真実は必ず日本政府と分かち合うということを確言しております。そういうことを受けて一昨日、衆議院安全保障特別委員会の席上、外務大臣が、アメリカが発見した真理は必ず日本政府に伝達されるというふうに確言しております。以上の言葉をもちまして私の答えにさせていただきたいと思います。
○林(百)委員 それはそれで一応お聞きしておきます、あなたがマンスフィールドと外務大臣の会談に同席しての答えだというのですから。 同時に、日本政府側の独自の見解、そして日本政府側の独自の見解に基づくあなた方の外交交渉の保護権を行使する、こういうことはどうしておやりにならないのですか。五月初旬になれば鈴木総理はアメリカに行くわけですから、外務省もそれに随行していくでしょうから、いまの段階で日本側の調査ではどういうことだったんだ——きょうの新聞の社説を見ますと、「原潜「あて逃げ」事件の解明を」「原潜衝突事故の真の解決を」と、みんな金でごまかされてはいけないよということを社説で書いているわけです。これはマスコミも、そういう日本の主権がいやしくもあいまいにされるようなことがあってはならない、しかもあて逃げというのは常識語になっているのです。それほど強い関心をマスコミを初め国民が持っているときに、外務省が、まだ私の申し上げました点について海上保安庁で調査中です、その調査は聞いておりません、マンスフィールドがこう言いましたからそれを信頼しておきますということじゃ、全くアメリカ任せじゃないですか。自主性がないことになりませんか。
○丹波説明員 お答えいたします。 先ほどから再三申し上げておりまして、ぜひ御理解いただきたいのでございますが、日本政府もアメリカ政府も、本件を金でごまかすという考えは一切持っておりません。 それから、日本側の調査はいま海上保安庁が鋭意進めておって、それがまだ完了していないという段階にあるものですから、それは主管官庁が調査を完了するのを待つよりしようがないという私のお答え、御説明はきわめて常識のラインに沿っておるものと私は考えております。
○林(百)委員 鈴木総理が行ってレーガンと会えば、この問題も重要な一つの問題になる。これは常識ですね。私の言うことが常識だと思うのですよ。それまでに一体アメリカ側の調査の結果が来るのですか、あるいは日本側の海上保安庁の調査が完結して、それを腹に入れて鈴木総理はレーガンに会えるのですか、五月三日とか四日とか言っておりますけれども、それはどうなんですか。そういう保証はどうなんですか。これから一年も二年も先になって出たって意味をなさないじゃないですか。
○丹波説明員 先ほどのことにつきましては私は保証申し上げましたが、この点については、私がこの席で保証するということが非常にむずかしいということは先生ぜひ御理解いただきたいのですが、私たちといたしましては、先週土曜日のレーガン親書の中でレーガン大統領が、私としては閣下のワシントン訪問の前に双方にとって必要なことを満たす十分な進展が見られることを非常に期待していると表明しておりますので、総理のワシントン訪問前に必要なことを満たす十分な進展が見られることをわれわれも期待しておる、そういう段階にあるわけでございます。
○林(百)委員 そういうことはそれでお聞きしておきますが、レーガンもそう言っている、マンスフィールドもこう言った。それならばそれにこたえる保証を、それじゃ鈴木総理が行くまでに必ずそういう報告を出すなら出してもらいたい、そういう交渉はしているのですか。もしそういう交渉がなければ、いまあなたの言ったことも、結局必要性がなくなった、あるいは当時者に一定の金を与えて、さっき言ったような行政措置の金で満足いたしましたというような受取を取って、一件落着としたようなときに仮にそういう報告が来ても、それはもう日本の国民の利益、日本の国家の主権に属する財産の損害を日本政府として外交交渉で解決するということに間に合わないのじゃないでしょうか。あなたもいつアメリカ側から報告が来るか言いがたい、そしていつまでに来るという保証は私としては言いがたいと言っているわけですね。それでは、どこにそういう困難があるとお考えになるのですか。
○丹波説明員 ただいまの先生の御質問の趣旨、必ずしも私、わかりませんが、昨日も外務大臣の命を受けまして、私は大使館に、先ほどのようなレーガン親書もあり、調査を急いでくださいということを申し入れております。
○高鳥委員長 林委員に申し上げますが、きょうのお約束の時間がすでに来ておりますから、ひとつ質問を簡潔にお願いします。
○林(百)委員 それでは簡潔にいたします。 それはいいですよ、あなたがそう言うのは。急いでいただきたいという申し入れをした、その結果はどうかということです。 それから、新聞によりますと、アメリカ側の海軍関係者が来て、日本の日昇丸の乗組員に会って調査をしているというのです。そういう記事が出ておりましたが、これは事実かどうか。そういうことだとすると、日本の国民に対してアメリカの公権が行使されるという場合は、国の了承を得なければできないことじゃないですか。そういう事実、知っていますか。
○丹波説明員 督促の結果につきましては、アメリカ側大使館は、外務大臣の心配もよくわかる、なお一層迅速に調査するように努力します、これはマンスフィールド大使の言葉として伝えられてきておるわけです。そういう回答を得ております。 第二番目の点につきましては、本日、本件事故の調査を担当しておりますところのリッチ米海軍大佐が、日本側関係乗組員のうち四人の方に対しまして、日本側の弁護士さんを通じまして、アメリカ側としてはぜひ日本側の関係乗組員から見た事情も聞いてみたいということをお願いいたしまして、そういう意味で任意のベースでお願いいたしまして、乗組員がこれに応じた。そういうことできょう会見が成立したということは承知しております。
○林(百)委員 時間の注意もありましたので、日本がロッキード事件でアメリカへ行って、そしてコーチャンの記録などをもらってくるときにはあれほど強い制限を受け、そしてコーチャンのこれに関する犯罪の構成については起訴については一切放棄する、そういうことまで制限されているのに、アメリカが日本へ来て日本人を調べる場合は、あなたは任意だ任意だと言っていますけれども、しかし、アメリカの公権が作用するのですから、これは日本政府に一応断って、こういうことをしたいと思うけれども日本政府は許してくれるかどうかということを、外交ルートを通じてでも了解を得るのは当然じゃないですか。そう思いませんか。 最後ですから、それと、法務大臣にもお聞きしますが、奥野さん、これは非常に重要な問題で、金大中問題の政治解決というようなことで、われわれは日本の国の主権が明らかに侵されていると思うのに、事の真相が知らなくて苦い経験をした覚えがあるわけです。そういう意味で、いま私が申し上げましたようなこういう重要な点について、事故の原因、救助がされなくて二名の日本人の生命が失われている、通報がもっと早ければその処置がとれた、あるいは当て逃げではないかとまで言われている、あるいは非核三原則——十六キロくらいで日本の領土へ入るところでやっているわけですから、演習中行ったのじゃないか、そして非核三原則が侵されているじゃないかという重要な問題があるわけですね。 だから、こういう問題は、日本の主権をしっかりと守る立場であくまで真相を究明して、そして何かレーマンが金を出すとか出さないとか言っていますけれども、まずこういうことをはっきり踏まえて、そして賠償なら賠償のことを外交保護権までも入れてやることが必要だと思うのですよ。そういう点について法務大臣としてはどうお考えになりますか。日本の主権を守る重要な位置に法務大臣もおられるわけですから、どう思われますか。法務大臣と丹波さんの二人、この問題について。
○奥野国務大臣 事の真相を明確にして将来の措置を誤らないようにしなければならない、そういう姿勢については日米ともに異なるところはないように承知しているわけでございます。同時にまた、船体の問題、荷物の問題、あるいは遺族の問題等考えますと、損害賠償は急いだ方がいいと思うのであります。損害賠償ということになりますと、公海上の出来事でございますし、また賠償を行う側がアメリカ側でございますので、自然アメリカの法律に基づいてアメリカの裁判所で争うということになるだろうと思います。その場合には、やはり故意、過失があるかないか、これが前提になるのだろうと思うのであります、故意も過失もないのに賠償請求というわけにいきませんので。そうしますと、その存在から争ってまいりますと、相当長期を要するのじゃないかと私は思います。アメリカに公船法という法律があり、外国人に対しましてもそういう手続を認めているようでございます。 しかし、それよりも、アメリカ側には行政救済制度があるわけでありますので、その行政救済制度で救済の面だけをひとつ急いでやろうというアメリカ側の姿勢が打ち出されたわけでございまして、これは私は、それなりにアメリカの姿勢を評価してしかるべきじゃないだろうかな、こう思うわけでございます。行政手続でやるわけでございますので……(林(百)委員「究明しなくてもいいのですか、真相は」と呼ぶ)真相は真相の究明として別途行う……(林(百)委員「日本側も」と呼ぶ)日米双方のその気持ちには私は変わりはない、こう思っておるということを前段に申し上げたわけであります。急がなければならないものについて裁判で争うよりは、行政救済制度がアメリカ側にあるわけだから、この行政救済制度に基づいて早急に補償措置をとろうというアメリカ側の声明になってきたわけでありますから、それはそれなりに私は評価をしてしかるべきだ、こう考えているわけであります。 やはり両面から努力がなされるべきだ。アメリカ側にとりましても、どういう不法行為があったか究明しなければならないことは当然でございますし、また処罰の問題にもなってくるわけでございますので、慎重にその手続もアメリカ側としては進めなければならない。そういうことを待っておったのでは肝心の補償問題がおくれていくばかりではないだろうか。そういう意味で、私はアメリカ側のとっている措置を評価したい、こう申し上げているわけでございます。
○丹波説明員 ただいま先生御指摘の点につきましては、まさにアメリカ大使館が外務省に対して外交ルートを通じてそういう打診があり、私たちといたしましては関係省庁とも協議の上、結構であるという処理をしております。
○林(百)委員 では最後に、この問題の結論だけ言っておきますが、向こうでレーマンの言う外国人損害賠償法によっても、海事請求処理権限法によっても、日本側の関係者の要求しているのとうんと違うのですね。だから、それは好意だと言えば握り金でも好意だ、そういう評価をするかもしれない。私は好意だとは思わないのですね。これはこれでもって、事態の本体を究明することをこれによって避けてしまう、その手としてこの金を言ってきている、そのように思われますので、私の見解を一応言って、そしてこれは私の独自の見解ばかりでなくて、マスコミ等も事件の真相の究明を、あるいは事故の真の解決をというようなことを強く言っておりますので、私は、その上に立っての損害賠償ということにならないと、事態の真相が全く不明のままで、まだ沈没している、船さえ引き揚げられないような状態のままで、そんな損害補償と、それも法律に基づいているのかいないのか、故意、過失を認めた上の損害補償かわからないというような状態では、これは相当、日本の主権を守るために、外務省もまた法務大臣も腰を据えて考えていただかなければならないと思うわけです。 時間が参りましたので、この問題はこれで結構です。 最後に、一言だけお聞きしておきますが、敦賀の原発問題で福井県警が捜査を始めた。それから労働基準局も捜査を始めた、こういう記事が新聞に出ておるわけなんですが、これはしかし、監督庁である通産省が告発をしなければならないはずなんです。これは、田中通産大臣は二十一日の朝の閣議でも告発をするという方針を明らかにしたそうでございますので、これについて警察側の捜査の状況、それから基準局の捜査の状況と根拠、それから、通産大臣が閣議で告発をするという方針を明らかにしたので、その具体化がどうなっておるか、お聞きしたいと思うのです。
○中島説明員 お答えいたします。 御質問の事件、非常に技術的、専門的な分野でございますので、事柄の性質上、行政当局の対応を先行させるべきものと考えておる次第であります。警察としましては、通産省の対応を見まして、その結果によりまして処理するということになるわけでございまして、現段階では必要な情報を集めておる、こういう次第であります。
○林部説明員 労働省といたしましては、地元の監督署、それから福井の基準局が中心になりまして、電離放射線障害防止規則に違反する事実があるかどうかということで、事実関係の情報収集を現在やっておる段階ということであります。
○平田説明員 御説明申し上げます。 通産省といたしましては、今回の件につきまして、現在電気事業法第百七条に基づき立入検査を実施しておる等、事実の究明を急いでおるところでございます。法律上の違反行為があったか否かにつきましては、その結果を踏まえて判断することといたしたいと考えております。
○林(百)委員 そうすると、あれですか、通産大臣はできることなら告発する方針だと閣議で言っておるようですよ。だからそれを前提として調査されておる、資料が整い次第告発するということなんですか。 それから、奥野さん、閣議で言っておると新聞に出ていますが、そのときの田中通産大臣の発言、記憶ありますか。
○平田説明員 私の方が聞いておりますところでは、告発を含め検討するという発言をしたというふうに聞いております。
○奥野国務大臣 通産大臣から事故の報告はございましたけれども、告発の言葉は閣議では聞いておりません。
○林(百)委員 そうすると、通産省の方はそういうことがあったというように記憶しておるわけですね。聞いておるわけですね。あなたは所管でなかったから記憶ないかもしれませんが……。
○平田説明員 私どもも大臣から直接聞いたわけではございませんが、私が聞いておるところでは、告発を含め検討する……(林(百)委員「閣議でそう言ったというのですか、どこで言ったのですか」と呼ぶ)閣議か閣議後の記者会見かということについては、私も……(林(百)委員「通産大臣がそう言ったという」と呼ぶ)というふうに聞いております。
○林(百)委員 結構です。
○高鳥委員長 次回は、明後二十四日金曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午後二時十七分散会