決算委員会 第7号
- 発言数
- 190 件
- 登壇者
- 16 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1981/04/09
会議録
○森下委員長代理 これより会議を開きます。 昭和五十三年度決算外二件を一括して議題といたします。 本日は、裁判所所管及び法務省所管について審査を行います。 この際、お諮りいたします。 裁判所所管の審査に関し、国会法第七十二条第二項の規定による最高裁判所長管の指定する代理者から出席説明する旨の要求がありました場合は、これを承認することとし、その取り扱いは委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○森下委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 —————————————
○森下委員長代理 それでは、順次概要説明を求めます。 まず、裁判所所管について、概要の説明を求めます。矢口最高裁判所事務総長。
○矢口最高裁判所長官代理者 昭和五十二年度裁判所所管一般会計歳入歳出決算の概要を御説明申し上げます。 裁判所所管の歳出につきましては、当初予算額は千六百二十二億四千六百八十二万円余でありますが、これに、大蔵省所管からの移しかえの額六億六千三百二十四万円余、昭和五十二年度からの繰越額一億四千九百十九万円余、予算補正修正減少額二十四億一千二百四十六万円余、差し引き十六億二万円余が減少されましたので、歳出予算現額は千六百六億四千六百八十万円余となっております。 これに対しまして、支出済歳出額は千五百八十九億三千五百六十万円余でございまして、歳出予算現額との差額は十七億一千百十九万円余となっております。 この差額のうち、翌年度へ繰り越した額は一億六千五百五十五万円余であり、不用額は十五億四千五百六十四万円余であります。 不用額となりました経費は、人件費十三億三百六十六万円余と、その他の経費二億四千百九十七万円余であります。 裁判所主管の歳入につきましては、歳入予算額は九億七千七百五十四万円余であります。 これに対しまして、収納済み歳入額は十二億二千四百六十二万円余であり、歳入予算額に対し二億四千七百七万円余の増加となっております。 この増加は、相続財産で相続人不存在のため国庫帰属となった収入金等の増加によるものであります。 以上が昭和五十三年度裁判所所管一般会計歳入歳出決算についての御説明でございます。 よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。
○森下委員長代理 次に、会計検査院当局から検査の概要説明を求めます。堤会計検査院第二局長
○堤会計検査院説明員 昭和五十三年度裁判所の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
○森下委員長代理 次に、法務省所管について概要の説明を求めます。奥野法務大臣。
○奥野国務大臣 昭和五十三年度法務省所管一般会計歳入歳出決算の大要を御説明申し上げます。 一、法務省主管の歳入につきましては、予算額は七百六十五億七千四百十五万円余であります。 これに対しまして収納済み歳入額は六百八十四億四千百三十九万円余であり、歳入予算額に比べると八十一億三千二百七十五万円余の減少となっております。 この減少しました要因は、罰金及び科料九十五億一千五百十八万円余が減少し、刑務所作業収入十一億五千八百九十四万円余が増加したことによるものであります。 二、次に、法務省所管の歳出につきましては、当初予算額は三千七億一千九百九十六万円余であります。これに予算補正修正減少額五十億八千百七十七万円余、前年度からの繰越額二億三千百八十六万円余、予備費使用額十三億六千百六十七万円余を差し引き三十四億八千八百二十四万円余の減少がありましたので、歳出予算現額は二千九百七十二億三千百七十二万円余となっております。 これに対しまして、支出済み歳出額は二千九百二十三億八千七百五十万円余であり、その差額は四十八億四千四百二十一万円余となっております。 この差額のうち、翌年度へ繰り越した額は十億四千二百九十万円余であり、不用額は三十八億百三十万円余で、不用額の主なものは人件費であります。 支出済み歳出額のうち、主なものは、人件費二千三百五十三億七千百六十五万円余、外国人登録事務処理経費十億九百五十八万円余、登記事務等処理経費三十八億五千五百五十一万円余、検察事務処理経費十九億四千百九十二万円余、矯正施設における被収容者の収容、作業等に要する経費百七十九億八千五百九十五万円余、補導援護経費二十九億五千九百七十一万円余、出入国審査及び被退去強制者の収容、送還等に要する経費五億六千三百四十五万円余、暴力主義的破壊活動団体等の調査に要する経費十八億一千四百二万円余、施設費百十七億八千二百九十二万円余となっております。 以上、昭和五十三年度法務省所管一般会計歳入歳出決算について、御説明申し上げました。 よろしく御審議を賜りますようお願い申し上げます。
○森下委員長代理 次に、会計検査院当局から検査の概要説明を求めます。堤会計検査院第二局長
○堤会計検査院説明員 昭和五十三年度法務省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を説明いたします。 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項一件であります。 検査報告番号一〇号は、職員の不正行為による損害を生じたものであります。 この事態は釧路刑務所におきまして、収入官吏の補助者が会計課歳入係として徴収簿の登記、納入告知書の作成、現金収納等の事務に従事中、刑務作業に係る製作代金等を会計課の窓口、または債務者の事業所等で現金または小切手で受領しながらこれを収入官吏に引き継がないで領得したことによって生じたものであります。 なお、本件は昭和五十四年九月末までに全額補てん済となっているものであります。 以上、簡単でございますが説明を終わります。
○森下委員長代理 これにて説明の聴取は終わります。 —————————————
○森下委員長代理 これより質疑に入ります。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上一成君。
○井上(一)委員 私は、まず昨今、行政改革がその中心的な政治の課題に入ってきたわけです。もちろん適材適所、むだのない行政を推し進めていくということについてはもう論を待たないわけでありますが、法務大臣に、とは言うものの法務省所管、とりわけ入管行政については実態は大変複雑多様化し、かつ事務が繁雑化している、そういう中にあって今後の行政推進をより効率化するために、むしろそれらの第一線においては人材の増員ないしは適所配置というものが望まれるのではないだろうか、こういうふうに思うわけであります。 ちなみに私が承知している実態数字を申し上げますと、五十年度から五十五年度までに関しては、たとえば出先での入管業務についてはその仕事量が約一・五倍に増加されているわけなんです。仕事量は五〇%ふえているのだけれども、実際の人員というものは四%弱である。実質的には五十年から五十五年にかけては五十一人しか増員がなっていない。こういうことではやはり第一線の現場では労働が過重になってくる、あるいはむしろ行政としての十分な対応でそこにはどうしても無理が生ずるのではないか、そういう意味で、この際、行政改革という形の中でこそ必要人員を必要な個所に配置していくべきではないだろうか、こういうふうに思うのですけれども、当局のお考えをまず聞いておきたいと思います。
○奥野国務大臣 おっしゃいますように、出入国管理行政が近年とみに複雑になり、また膨大なものになってきているわけでございます。同時にまた、行政改革、特に国家公務員全体としてはふやさない、むしろ減らしていきたい、こういう政策を進めている過程でございますので、必要な行政事務でありましても人員の増加がなかなか困難な事態でございます。 その中でも、出入国管理行政につきましては幾らかふやしていただいているわけでございます。しかし、おっしゃいますように、事務の増加に見合うものではございません。そういうこともございまして、今回は出入国管理行政の組織をかなり思い切って合理的なものに改めさせていただく、幸いに御承認いただきましたので、新年度から発足いたしたわけでございます。同時にまた、事務の処理につきましても、コンピューター等の採用を通じましてできる限り効率的に進められるような配慮もいたしておるわけでございます。御理解いただいて大変ありがたい気持ちでおるわけでございますが、なかなか思うように人員はふやせない。半面、組織なり事務の運営なりについてあとう限り合理化を推進することでそれの欠陥を補っていきたい、こういう努力をしているところでございます。
○井上(一)委員 もちろん事務の合理化、組織の効率化、そういうことも、それは一定の効率ある行政を推し進めていく上に必要だ。しかし、それですべてが解決するわけではありません、それに携わる人員というものが十分保証される、やはり最低限度、どうしても、これは何ぼ事務の合理化を進めても、人員の配置というものは確保しなければいかぬわけですから、そういう点について、事務機器だとかあるいは組織を合理化したって、やはりそれですべての解消にはならないし、解決にはつながらない。やはり人員の増加、必要最小限度の現場での取り組んでいる実態というものを承知しない限りは、頭の中であるいは何ぼ行革といったってできることとできぬことがあるのですから、それこそまさにできない部分、そんなに簡単に人員消滅をしていけない部分、そこをやはり理解してあげないと、仕事が能率よくはかどっていかない。そのことが入管行政に支障を来すことになるのだから、この点についてもう一度私は大臣から、まあ御苦労があろうと思いますけれども、やはり必要な人員を、実質的に仕事の量ではっきり明白になっているのですから、そういう実態をとらえてどういうふうに取り組んでいくか……。
○奥野国務大臣 混雑している現場をごらんいただきますと理解していただくのは早いわけでございまして、それを見て井上さんおっしゃっていただいているのだ、こう思います。したがいまして、これらの実態をできる限り今後も理解していただくように私たち努力をいたしまして、必要な人員確保には一段の努力を続けていきたい、こう思います。
○井上(一)委員 さらに大臣、適所配置ということについては第一線での事務担当者のすぐれた経験あるいは技術も含めて、そういう人たちの意向というものも十分くむ中で、私がいま指摘したように事務量の増加に見合うような人員増を図っていくべきだ。これはいま人を減らすという——むだなところに人を配置したってだめだから、そういうところはどんどん減らしたらいいと思う。しかしながら、必要かところまで同じように、仕事の増加している部分にまで同じように行政改革だという名のもとに人員を配置していかない、そういうことはむしろ行政の効率化を図ろうとすることに逆行するわけですね。そういう点で、現場の第一線で一生懸命御苦労いただいている人たちの意を十分くんで大臣としての取り組みを、重ねてその決意を含めて聞かしていただきたいと思います。
○奥野国務大臣 私も現場の混雑している実情を見まして、同じような気持ちを持っておるわけでございます。そういう意味において、幾らかはふえたわけでありますけれども、なかなか十分なものではない。一年限りのことではございませんので、今後も事態の推移を見ながら必要な増員措置に努力を重ねる決意でございます。
○井上(一)委員 私からも、実態に応じた人員増、人員配置を強く要望しておきたいと思います。 さらに私はここで、先日も官房長官にはお尋ねをしたわけでありますけれども、法務省所管ということでございまして、十分なお答えをいただけなかったわけであります。 現行の出入国管理令では、四十一年一月発効のいわゆる日韓地位協定に基づいた協定永住者、そういう人たちに対しては懲役七年を超える場合に強制送還、一般永住については懲役一年を超えるとき強制退去を受ける、こういうことになっているわけです。 私かここで指摘をしておきたいのは、永住者は当然わが国での居住を生活の基盤に置いているわけです。生計も家族とともに維持しているというのが実態であるわけです。もちろん、みずから犯した罪は当然償ってもらわなければいけないし、償うべきである。みずから犯した罪を償い、再生の意思を認めて、改悛の情が明らかである、もちろん再犯のおそれもない、初犯でもある、客観的にいろいろな状態が必要になりますけれども、そういういろいろな条件の中で、必ずしも懲役七年を一つの基準に置くことがいいのであろうかどうか、こういうことを私は思うわけです。先般、永住許可を拡大していこうという法務省当局の要綱が出たわけで、国会の中でいずれ当然これは審議されていくわけですけれども、いまその問題は別にして、私の申し上げたいのは、わが国での生活を基盤にし、そしてそこで受けた刑を十分償った場合には当然日本での永住は保障していってあげなければいけないのではないだろうか、もちろん条件がいろいろとありましょう、そういうことなんです。これについて、いまの法の中では七年という一つの物差しがあるわけですけれども、この物差したって、何を基準にして七年にしたのか。実際、まあまあ一定の両国の受け入れ体制あるいはいろいろな事情の中で物差しになったと思うのですけれども、私は弾力的な運用で、それはいま指摘したような条件の中で、大臣が大臣の決裁でお決めになる、そういうことがいいのではないか。本当に人間としての恩情というのでしょうかぬくもりというのでしょうか、そういうものを法というものは示していくのがやはり筋ではないだろうかという率直な私の考え方なので、決して七年がいいとか悪いとかという議論じゃありません。八年の刑を受けても、まじめに服役し、それがふとした動機であり、あるいは再犯のおそれはない、改悛の情が濃い、家族とともに日本で生活をする、そういう基盤が十分ある、そういうときに何らかの救済の道が開かれてもいいのではないだろうかというのが私の考えなんですが、大臣からこのことについて、ひとつお考えを聞いておきたいと思います。
○奥野国務大臣 お話しのように、一般永住者は一年以上の懲役刑を受けました場合には強制退去させられる、しかし協定永住者は七年以上の懲役刑を受けた場合でなければ強制退去はさせられない、その辺に、井上さんがおっしゃっているような気持ちがあらわれているのじゃないかなと思います。加えて私は、もとは日本人だったのじゃないか、こう言いたいわけでございまして、そういう配慮が必要だ。したがってまた地位協定の第六条に退去事由を挙げられているわけでございますけれども、あれに該当して強制退去を命ぜられた方で異議の申し立てをされた——退去命令を受けた方が四十八人と承知しているのですけれども、そのうち異議の申し立てをして在留許可を受けた方が十二人おられる、したがって、現実に強制退去になった方は三十六人だ、こういうことのようでございます。おっしゃいますように、第六条に該当いたしましても、家族の構成でありますとか、あるいは犯情でありますとか、あるいは改悛の情でありますとか、そういうことを判断して裁量を加えていくべきものだろう、私はこう考えるわけでございます。いま申しましたように、現実に十二人は在留許可になっているわけでございますから、そういう配慮も加えられたのだ、こう思うわけでございます。将来ともそういう姿勢で臨むべきものだろう、こう思っております。
○井上(一)委員 私は、いまのお答えであれですが、ただ、限られた人たちということよりも、一般的にもそういう弾力的運用が必要ではないだろうか、こういうふうに思うので、ひとつよろしくそういう点についても配慮を願いたい、こう思います。 続いて私は、人権問題についてひとつお尋ねをしてまいります。 大臣、もう聞くことに値しないかもわかりませんけれども、人権侵害の最たるものが部落差別であります。そういうことで、同対審答申がすでに出されて十六年、特措法が出て十二年、そういう今日、いろいろとこの問題については国会の中でも特別措置法の期限切れを前にしての激しい論議が展開されているわけです。私は、短い時間ですけれども、大臣に、もちろん同対審の答申は心から尊重をする、その気持ちは持っているということは確認する必要はないと思うのですけれども、まずは改めてここで確認をしておきます。
○奥野国務大臣 部落差別をなくするいろいろな考え方あるいは手段があの答申に盛られているのだ、こう考えているわけでございまして、ぜひ部落差別を根絶するための努力を進めていかなければならない大事な処方せんだと思っております。
○井上(一)委員 そこで、現実はどうなんだろうか、いまの社会は。やはり差別の事象が随所に起こっているわけなんです。そういう差別の事象が、大変な、もう数え切れないくらいの、もうそれこそ命を差別によってなくしていくたくさんの人たちがいる。そういう現実に立って、大臣、どうでしょうか、どうしたらいいでしょうか。
○奥野国務大臣 処方せんは一つじゃない、あらゆる角度からこの問題に取り組んでいかなければならない、また、関係する者みんなが根気強い努力を積み重ねていかなければならない、五年、十年努力したらこの問題が一遍に解決するのだ、そんな甘い考え方では私は解決できないのじゃないかな、こう思っているわけでございます。
○井上(一)委員 大臣は、三年や五年、十五年でこの問題がすべて解決するものじゃない、こういうお考えですね。私もそうだと思います。あしたの日にすべて差別がなくなるというようなそんな甘いものじゃないし、そういう甘いものであればもうとっくの昔に解決しておったかもわからぬ。だからこそ、差別をなくするためにどういう取り組みをしていくか、どういう治療をしていくか、いろいろな対応の仕方があると思うのです。その一つが差別をなくさなければいけないという意識の変革を求めての啓蒙運動、あるいは現実に生きている実態の中での差別を取り除くためのいろいろな事業、あるいはそれを推進するための先頭に立つべき行政がまず率先をしなければいけない、そういうことがいろいろありますね。 これは法務省の所管ではありませんけれども、建設省の所管で、そこに当然差別をなくしていかなければいけないそういう指導者的な人たちが、やっぱり底流に差別の意識があるから、みずから書かれた論文の中に、純然と答申に反するそういう物の考え方をきっちりと書いているわけなんです。建設省の建設大学校中央訓練所というところがあるのですけれども、そこの所長があえて書いているわけです。これは大変私は問題だと思うのです。これは大臣に実はお見せしようと思ったのですけれども、また後ほどお見せします。あるいは鳥取県の東郷町の職員の中での結婚差別事件だとか、あるいはごく最近名古屋の市会で政治家の固有名詞を挙げた差別意識の質疑がある。こんなことを考えますと、ほんの一例だけれども、深刻に私は差別をなくすための対応策が必要であると思う。それぞれの大臣がみんな一生懸命になっていらっしゃる。法務大臣も一生懸命になっていらっしゃる。そのことは私は私なりによく理解できるのですけれども、特措法が期限が切れる。四百名以上の国会議員がこれはまだ延長しなければいけないと言う。まず、特措法というものは差別をなくするためにつくったのでしょう。そういうことですよ。これは大臣はおわかりですね。特別措置法というもの、おわかりですね。そのためにつくったのでしょう。こんな念を入れて聞くまでもないのですよ。それはおわかりですね。そういうことですね。
○奥野国務大臣 先ほどおっしゃいました答申に立法措置を求めておったわけであります。立法することがいいか悪いか、三年かかりました。結論として、とにかく時限立法でいいのだから、十年たったらもうすっかりやめてもらっていいのだ、とにかく法律をつくってもらいたいという強い要請がございまして、それにこたえて十年の時限立法にし、さらに三年延長したという経過をたどっているわけでございます。
○井上(一)委員 十年たって差別をなくするのだということでこれは十年の時限立法にしたわけですよ。差別があっても十年したらそれはもう時限立法だから切っていいのだということなら、答申の趣旨にも反するし、法の精神にも反するのですよ。わかっていますか、法務大臣。とにかく十年で差別をなくすという発想からこれは取り組んだのですよ。おわかりですね。
○奥野国務大臣 ちょっと違うように思うのです。思い切って差別自体というものを洗いざらい取り出して徹底的に究明する、十年間それをやってみる、そしてさっとやめてしまう、そのことの方が差別問題を解消させるのには効果的じゃないか、こういう話が私はあったように記憶しているわけでございます。しかし、なかなかむずかしいものでございまして、残事業もあるじゃないかというようなことから三年延長し、また延長問題がございますので、政府としても慎重にあらゆる角度から検討する、八月いっぱいにはひとつ結論を出したいと総理自身も言っておられるわけでございまして、いま総理府を中心としましてこの延長問題を検討している最中でございます。
○井上(一)委員 総理大臣がどうだ、総理府長官がどうだ、これは皆私はそれなりの意見を国会の中で聞いている。法務大臣にも。差別をなくするために法律というものはつくられたのです。また、そうでなければいけないと思うのです。どこが違うのですか。差別があってもこの法律はともあれ時限立法だから十年やったら切ってしまったらいいのだ、そしたら何で三年延長しました。残事業がある。差別がある。私は言うのですよ。事業だけが差別を解消する一つの処方せんじゃないのですよ。そういうことで、特措法でいろいろな社会環境というか生活環境の改善はなされた。一定の前進はあった。しかし、意識の改革というものは、まだまだ頭の中での差別意識というものは残っているから、これを変えていかなければいかぬ。それをなくしていかなければいけない。それには私個人としては、特措法という、そこに対して、事業だけに限らずにもっと意識も、差別をなくする、そういう意識を変えていく、そういうことも法の中に強化していかなければいけないというふうに考える。だから、要は差別なんてなくなったらこんな法律要りませんよ。私は何も好きこのんでこの法律をいつまでも後生大事にというのでなく、差別をなくすることのためにこの法律があるのです。この法律があってでもまだ差別が解消されないというのが今日の現状であるという認識に立っているのです。大臣もそういう認識に立ってますかということを聞いているのです。
○奥野国務大臣 明治四年に解放令が出されましてから、差別をなくす努力をずっとやってきていると私は思うのです。やってきているけれども、なかなかなくならない。その間に同和対策審議会の答申も出て立法措置もうたわれるようになり、やはり立法措置をとるべきじゃないかという意見が強くなってきたわけであります。その際に、もともと差別なんてないのだ、それを法律にまで高めると一層それを根絶しにくくしてしまうことになりはせぬだろうかと、寝ている子を起こすという言葉もあったりしたわけでございますが、そういう意見がありまして、その解決に三年かかったと、こう申し上げているわけであります。その間に、とにかく時限立法でいいのだ、十年間で最大の努力をして、そしてあっさりやめようじゃないかと、八木一男さんあたりが、社会党の方でございますけれども、かなり熱心に御主張になりました。私も、最後は八木さんの味方になった入間でございました。そしてあの法律をつくったのです。しかし、おっしゃいますように、なかなか簡単になくならない。また、大阪あたりでは激しい落書き、ちょっといままでに想像できなかったような激しさを加えている。私も心配いたしております。激越な言葉でございます。どうしてこうなってきているのだろうかと、みんな心配をしていると思うのです。 私は、差別をなくすることについてだれも異存はないと思うのです。また、あの法律に基づいてやっておりますようなことを今後も引き続いてやっていくことについて、だれも異存はないと思うのです。問題は、あの法律を残していくことがいいのか、残さない方がいいのか、手段の問題だと思うのでございまして、これはやはり、いろいろ考えて、引き続いて延長するかどうかをあらゆる角度から検討しようと、これはいま政府がとっている姿勢でございます。
○井上(一)委員 大臣も八木先生と一緒に御苦労したのだということで、それは私も承知しております。だから、それは一に差別のない社会をつくっていくのだという目標を掲げての取り組みなのです。現実にそういう差別事象があるという今日、やはり何らかの盾がというのでしょうか、何らかの歯どめがあっていい。その一つに特措法というものも今日必要である、こういうことなんです。もうあれがなくなってもいいのだという考え方は、むしろ特措法で十分でない部分が随所にあるわけです。意識に対する問題に対してはどう取り組んでいくかとか、啓蒙の分野ではどうなんだとか、そういうことも考えながら後ろ盾をより完璧なものにしていく、差別をなくしていくための一つの手法というのでしょうか、大臣の言う手段というのでしょうか、そういうことが必要ではないでしょうかと、こういうことを言っているのですが、私は必要だというふうに思うのです。 ここで、労働大臣が、そういう差別にかかわって、いわゆる地名総鑑を買った企業に対しては、みずから筆をとられて書信を出していらっしゃるわけです。それは労働大臣が、国権の最高機関である国会において自分自身が差別をなくするために一生懸命がんばるのだという約束をした、そのために協力をしてくれと、そして、そういう差別があってはいけないという綿々たる決意を込めた書信を出していらっしゃる。みんな努力なさっているのですよ。法律があるからそれでいいのだ、もう何もしないのだということじゃなく、それに基づいて、やっぱりそれぞれの持ち分というものを果たしていかなければいけない。これも大臣お見せしますけれども。 だから、私の申し上げたいのは、いろいろの手法があるだろうけれども、法務大臣として、差別をなくするために自分は最大限取り組むのだ、一生懸命やるのだと、ただ総理大臣が、あるいは総理府長官が七月、八月にその方針を決定するのだ、それまで私はじっとしておったらいいのだということじゃなく、そういう法務大臣としての見解をやっぱり機会あるごとに、事あるごとにきっちりと表明してもらいたい。表明すべきである。だから、何もいまここで特措法の延長云々と、あなたに特措法を延長しなさい、することにどうやねんというようなことを言ったってあなたは答弁できへん。本音は持っていらっしゃるかどうかわからぬけれども。それは、本当に国会の中で思う存分歯にきぬ着せない答弁をなさる法務大臣として、私はそれなりにあなたの正直さというものには、まあ評価というのでしょうか、一定の私なりの見方を持っております。意見が合う、合わないは別ですよ。その正直さというものは、それなりに私は。だから、この同和問題に対する取り組みも、やっぱりいまのような差別のあるそういう現状を見れば、私は差別の温存を主張しますねん、そんなばかなことは、だれもおりまへん。だから大臣として、差別をなくするために、やっぱり特措法、そういう立法も一つの必要な柱である。さらには後に続いて、取り組む人権擁護委員、それぞれの差別事象があった場合にその問題を適確に処理をしていただけるような、そういう協力体制も必要である。こういうことになると思うのです。 ところが現実は、人権擁護委員にしたって非常にお粗末である。お粗末であるというのは、個々の人たちじゃないのですよ。人数が、そういうお願いをしている人たちが、もう本当に少ない。これだけ差別事象があるのに二百人か三百人ぐらいの増員しかやっておらぬ。予算だって、五十三年度で一億円ちょっとです。本当に限られた予算です。そういうことで本当にいいのだろうかというのが私の考えです。どうでしょうか。
○奥野国務大臣 いまおっしゃいましたように、法律に盛られていないことでありましても差別をなくしていくための施策として有意義なものでありますればわれわれは積極的に取り上げていかなければならない、こう思っております。法律があろうがなかろうが、役立つ施策というものは私は積極的に差別根絶に向かって実施に移していくべきだ、こういう気持ちを強く持っておるわけでございまして、私は、法律存続に反対する方々も、多くの方々は、根絶のための施策は積極的にやらなければならないと、こう思っておられると思うのです。ですから、いま問題は、法律があった方が差別を根絶するに役に立つのか、法律は時限立法だから時限立法なりにおさめて、さらに積極的に実態的に、実質的にこの問題は取り組んでいった方がいいのかという、私は、そこの選択の問題になってきているのじゃないかなと思っておるわけでございます。 いずれにいたしましても、法務省は人権を守っていく責任を負っている役所でございますので、特にこの問題については今後といえども最大の努力を傾けていかなければならない。いまおっしゃいました人権擁護委員は一万二千人足らずでございまして、おっしゃいますように毎年二百人しか増員できませんけれども、連合会長の佐藤さんも、自分たちの最大の役割りをこの部落差別の根絶に置いていきたい、こう言っておられるわけでございまして、そういうことに情熱を傾けてくださっているわけでございます。私も、そういう意味で特段の努力をこの分野においては払っていかなければならない、こういう決意を深く抱いているわけでございます。御注意いただくようなことがございましたら遠慮なしにおっしゃっていただきまして、ともに努力をさせていただきたいと思っております。
○井上(一)委員 余り時間がありませんから、法律がなくてもいいという理由、法律がなくても差別がなくなるのだ——法律があってもいま私が指摘したような差別があるのですよ、大臣、おわかりですか。そういう点で法律がなかった方が差別をなくすためにより有利だという理由が私はわからぬし、そんな論理は全くでたらめだし、逆さまに歩くようなものですよ。きっちりと地に足をつけて歩くという理論は、やはりそういう整備されたものが必要であるということなんです。このことについて、もしあなたがそれはそうでしょうと、あるいはそういうことについて考えていきましょうと言うのならそれなりに、あるいは私の考え方が間違いであり、逆さまに歩けるのだと言うのなら答弁を下さい。
○奥野国務大臣 井上さんのお考えも一つの大事な考え方だと思います。いろいろな考え方があるわけでございましょうから、総合的によく検討して早く結論を出すべきものだ、こう思っております。
○井上(一)委員 この問題については、まだ十分私は大臣に私なりの意も尽くせないし、時間がないから、あなたの考えもまだはっきりわかりません。いままで八木先生と一緒にやってくれた奥野大臣がいつからそういうふうに変わったのだろうか。何がそう変える原因になったのだろうか。奥野大臣の素直な、正直な性格を私はそれなりに評価しているということ、意見の差異はあっても、党派の違いはあっても大臣の中では一番正直じゃないだろうかというふうに思っているので、今後の同和問題に対する取り組みをひとつ真剣に、そして逆さまに歩かぬように、これは要望というよりも強くあなたに警鐘を鳴らしておきたい、こういうことです。 そこで、次の問題に入りますが、法務大臣はいままで憲法問題については、いまの現行憲法は改正すべきである、ただし常に法務大臣の立場を離れてという前置きがあります。だから、この前段をやはりきっちりしておかないと……。法務大臣の立場を離れて政治家奥野個人としてはいまの現行憲法は反対である、しかし大臣として現内閣、鈴木総理が憲法を改正しないのだという趣旨の中ではそれに従います、こういうことを言っていらっしゃるわけです。もう数多く言いませんが、改正すべきであるという個人的な立場に立っておっしゃっていらっしゃるのは、占領下の中でつくられた憲法だということで、とりわけ第九条を指している。あなたが特に九条改正の希望を表明されているし、シビリアンコントロールの仕組みを指摘した上で、いわゆる軍事力がいかに大きくなっても、議会さえしっかりしていたら軍国主義の台頭は許すものではないのだという認識に立っていらっしゃるわけです。そういうことが国会で論じられているわけです。 私はちょっと聞いておきたいのですが、そういう流れの中であなたが考えていらっしゃるというのでしょうか思っていらっしゃる九条、改正したらいいだろうと、改正すべきであるという九条、あなたが持っているメニュー、九条のメニューは一体どんなものでしょうか、これをちょっと聞いておきたいのです。
○奥野国務大臣 私は、有力な政党の間で九条の解釈をめぐって真っ二つに割れている、これは国民にとって不幸なことだ、だから、解釈上疑いが起きないような表現になればそれで結構なんです、こう申し上げてまいりました。
○井上(一)委員 だから、法務大臣が理想とする、あるいは希望している九条というものは一体どんなものなんですか、こういうことを聞いているのです。
○奥野国務大臣 侵略のための戦争は夢にも考えない、しかし自衛のために武力を持つ、それは許されるのだということははっきりさせてもらって、解釈上二途に出ないようにしたいものだ、こう申し上げているわけでございます。
○井上(一)委員 それじゃ、いまの憲法九条では自衛のためにすら軍隊を持つことは許されてない、こういう理解ですね。
○奥野国務大臣 私は、自衛のための軍隊を持てるという解釈に立っておるわけであります。しかし、政党の中では、社会党のように自衛隊は違憲だ、こうおっしゃる政党もあるわけでございますから、そういう食い違いの起きないような憲法規定にしたいものだ、こう申し上げてまいりました。
○井上(一)委員 われわれの見解は、持てないというのだ。それだからあなたは九条を変えようと言うのでしょう。
○奥野国務大臣 さっきお話しいただきましたように、国民の間に議論が起きて、同じものであってもいいからもう一遍自分たちでつくり直してみようじゃないかという考えが生まれてくるならば私は好ましいと思いますよ、こう申し上げました。その事由の中で、幾つかお尋ねに従ってお答えをしましたが、九条が政党の間で解釈が違っている、これも不幸なことじゃないでしょうか、解釈の遣わぬような規定にしたい、自分たちでつくってみれば解釈が二途に出るということはあり得ない、こう思っているわけでございます。
○井上(一)委員 改正しようということは、部分的にしろいまの憲法を否定するわけなんです。肯定をするということじゃない。そういうことなので、九条をあなたが変えたいというそういうものについて一体どうなんでしょうかと、いまの話なら、出てきたものは同じものであるかもわからぬと言うのですか、解釈が一つになればいいのだと。それはいまの憲法では持てないという解釈を私たちはとっているし、事実そうなんですよ。じゃ、大臣の考えからいけば自衛隊は合憲なのか違憲なのか。
○奥野国務大臣 自衛隊法に基づいて自衛隊が生まれておるわけでございますから、国会は違憲と思って自衛隊法をつくったことはないわけであります。私は、国会は合憲という判断のもとにあの自衛隊法を制定したものだと思っておるわけでございます。したがいまして、自衛隊法は違憲という判断が出ない限りは合憲の推定を受けているものだ、私はこういう考え方に立っておるものでございます。
○井上(一)委員 法務大臣の個人的見解も含めて閣内で論議があろうと思いますし、総理ともそういうお話し合いをなさる機会が何回かあるわけですね。何か私の感じでは、もう個人的見解として法務大臣はどんどん言いなさいと、あなたの言っていること、あるいはあなたの見解は総理は承知して、了解しているのじゃないか、こういうふうにも思うわけなんですよ。そういう点については、総理もあなたの個人的見解については承知し、あるいはそれを了解しているというように理解してよろしいでしょうか。
○奥野国務大臣 私は、私の見解を総理に申し上げまして、それで御理解いただけますかというようなこと昼言ったことはございません。
○井上(一)委員 この問題についてもさらに次の機会ということにしたいと思います。 ここで、すでに御承知の帝銀事件の平沢貞通元被告、この方はたしかもう九十歳になるのですね。私の聞いている範囲では、田中元法務大臣が、あの人のかかれた絵を見て、いわゆる人の心を見抜くことができるし、あの人はそういう死刑囚であるとは思わないということを言われたように私は聞き及んでいるわけなんです。私のここで尋ねたいのは、中央更生保護審査会で決めるのだから、いや、もうそっちで決めたらそっちで決定なんですよ、普通だったらそういう答弁しか返らないわけですね。ひとつ平沢さんに対する救済の方法というのはないのでしょうかということを私は大臣に聞きたいのです。 しかし、普通にはね返るのはそれしか返ってこないから、そういう答弁ではなく、私からも大臣に、実情というのでしょうか、これからの取り組みというものを少し考えてもらえぬだろうか、こういうふうに思うわけです。 〔森下委員長代理退席、原田(昇)委員長代理着席〕 世界で最も長い間死刑を執行しなかった死刑囚として、いままだ獄中にあるわけなんです。これは法務大臣としてよりも、憲法論議じゃありませんけれども、むしろ政治家奥野先生という立場に立っても、やはり何らかの形で恩赦法とかいろいろなそれこそ手法、手段をもって、いわゆる思いやりある、温情ある措置はとれないものであろうか。占領下における死刑囚というのはたしか七人おったわけですね。私の承知しているのでは、そのうちの三人が減刑になっているわけです。二人が再審だったと思います。一人が処刑をされて、そして一人が残っているわけです。そんなことを考えると、それこそ占領下の出来事であり、取り組みであり、決定であり、そういう状態であった。このまま獄中で死んでしまうということよりも、法務大臣としての人間味のある配慮が、いわゆる一般社会の中で天寿を全うできるという状態もつくり出せるのではないだろうか。このことについて大臣の十分な配慮を含めて、私はお願いも含めて、ひとつお考えを聞いておきたい。役人的発想に立てば、冷たい発想に立てば、中央更生保護審査会で決定したのだからこれはだめなんです、こういうことになるかもわかりません。これはまさにもう冷たい、一見理性的認識と言えるかもわかりませんけれども、私はもっと感性的認識、感受性というのでしょうか情熱というのでしょうか、そういう胸の中で受けとめた配慮というものは大臣どうでしょうか、こういうことをお尋ねしたいのです、
○奥野国務大臣 基本的に死刑制度を廃止すべきだという強い運動が国際的にございます。また、現に死刑制度を廃止した国も相当数に上っております日その中での死刑囚のことでございますから、井上さんが大体こういう気持ちでおっしゃっているのだなということは私には理解できるのでございます。国会でも、死刑制度廃止をどう思うかというお尋ねもいただいてまいりました。私も、本当に死刑制度を廃止できるような世の中の状態をつくり出したいものですね、とお答えをさせていただきました。やはり凶悪な犯罪が残っている限りにおいては一挙に踏み切れないものですし、と申し上げました。 また、いま平沢氏の例をお出しになりました。平沢氏のことにつきまして、私に相反する二つの意見が寄せられております。もう年じゃないか、少し考えたらどうか、また恩赦の請求もしているわけだからあなたも力をかしたらどうか、こうおっしゃる方がいらっしゃいます。もう一つは、あなたは平沢氏の問題を考える場合には、十六人とおっしゃいましたか、殺されているのですよ、遺族のことも考えなければいけませんよ、遺族の心情にもおなりなさいよ、こんなことをおっしゃる方もいらっしゃいます。私は、すべて中更審の審査にかかっておりますので、その結論に従って進めます、こうお答えをしてまいったわけでございますけれども、そういう複雑な問題でございますし、私の気持ちもまたそういう複雑な中にある、こう御理解いただきたいな、こう思います。
○井上(一)委員 相反する二つの意見がある、これはまあそうかもわからぬでしょう。しかし、獄中三十三年ですか、もう九十歳の高齢の中で、私はここで事件の事実関係を追及するとか、そういう論理は別として、人権というか、人間としてのぬくもりというものは、やはり大臣、お互いに持っているわけなんですよ。どうでしょうか、そのぬくもりを何とか生かせぬでしょうか、こういうことなんです
○奥野国務大臣 情的にはよくわかるのです。私もときにはそういう気持ちになります。しかしときにはまた、全く相反する意見を寄せられたりしますと、そうかなと思ったりもする、こういう複雑な気持ちです、こうお答えをさせていただいたわけでございます。
○井上(一)委員 複雑な気持ちだ。しかし、やはり大臣がお決めになる気持ちをきっちりと、勇気あるというのでしょうか、そういう気持ちを持ってもらうことが、まあ私はできるだけ早い機会にそういう気持ちを持ってもらいたい、こういう強い願いがあるのです。大臣、もう一つその複雑な気持ちをできるだけ早く整理をして、温かい気持ちを表明していただく、そういうことに努力をしてくれませんか。
○奥野国務大臣 御承知のように、恩赦法の適用は中央更生保護審査会が法務大臣に結論を申し出る、それを閣議に諮り、さらに天皇の認証を得て行っていくという仕組みをとっておるわけでございますので、その仕組みの中で、いまの井上さんのお考えを十分理解して承りたいと思います。
○井上(一)委員 強くその要望をして、最後の質問に入ります。 すでに新聞紙上で明らかになっているのですけれども、きょうも元管財人がまたいろいろと、裁判官との親密さが必要であるとか、あるいはいろいろな見解を出しているわけですけれども、谷合判事補あるいは板垣判事、いわゆるゴルフ場事件ですか、相次いで不祥事件が起こっているわけです。さかのぼっては鬼頭事件とか安川事件、まあこれらの行為について、司法と行政の違いというものは私は理解しておりますよ。それは十分理解しておりますけれども、行政府の中での司法を預かる最高責任者と言えば法務大臣なんですから、そういう立場に立つ法務大臣として、これらの一連の事件をどのように受けとめていらっしゃるのだろうか、そしてまた、どのようにお考えを持っていらっしゃるのだろうか、この点もやはり聞いておかなければいけない、こう思うのです。
○奥野国務大臣 人を裁いたり人を訴追したりする立場にある者は、人一倍身辺がきれいでなければならない、疑惑を持たれるようなことは特に慎まなければならない、こう思っているわけでございます。そういう中にある人について起こっている事態でありますから、私はみんな深刻にこれを受けとめていると思います。特に裁判所の皆さん方が大変な苦悩に満ちた毎日を過ごしていらっしゃるのではないだろうかな、こう思います。同時に私も、裁判官のことで問題が起きますと、検察陣の中で問題が起こっては大変だな、すぐそれが心配になる毎日でございます。しかし、起こりましたことはいたし方がございませんので、これをうやむやにしないで徹底的に明らかにしていく以外にはない。そして将来またと同じようなことを繰り返さない戒めにしていかなければならない、やむを得ないことじゃないかな、こう思っておるわけでございます。また、最高裁判所におきましてもそういう姿勢で究明に当たっておられるようでございますし、訴追委員会の問題でありますとか、あるいは検察庁側の問題でありますとか、これが今後どう発展してまいりますか、いずれにいたしましても問題ははっきりさせる以外にはない、こういう考え方でおるわけであります。
○井上(一)委員 起こった問題については、それは究明しなければいけない。起こったから、もうやめたらいいのだ、やめたらおしまいなんだというわけにはいかぬと思うのですね。その辺はどうなんですか。
○奥野国務大臣 そういう意味合いも込めまして、訴追委員会の問題、検察の問題がどう発展するか、こういう表現を使わせていただいたわけでございます。物事をはっきりさせることが将来またと起こるおそれをぶった切る力になるのじゃないだろうかな、こう思うという意味合いで、またこのことも言及さしていただいたわけでございました。
○井上(一)委員 司法官の不法行為というのでしょうか、こういうものを、防止策と言えばなんですけれども、これこそまさに別に法律とかそういうのじゃなく、まあ意識の問題なんですけれども、何か大臣としてそういう対策をお考えになりますか。あるいは、これからの取り組みとしてこういうことを防止をしていく策を考えていかなければいけないのじゃないかと私は思うのですよ。そういう意味では法務大臣の、最高裁あるいは関係機関とそういう委員会をつくるとか、あるいはまたこれからの取り組みを相談をしていくとか、どんなお考え——いや、これはもう今後ないのだからという、そんなことあらへんからそんな必要ない、もうこれまでだとおっしゃるのか。むしろ、防止策というのでしょうか、そういう対策をも含めた——対策と言えばおかしいのですけれども、何らかの検討を考えなければいけないのじゃないだろうか。厚く適さなければいけないとか、いろいろな意味でいろいろな考えが出てくるだろうと思うのですが、そういう取り組みについてのお考えを持っていらっしゃるのかどうか、これも聞いておきたいと思います。
○奥野国務大臣 判事、検事の方々はかなり優秀な方々が選ばれてその道に入ってこられるわけでありますし、また研修所におきましては絶えず厳しい研修を受けてきておられるわけでございます。したがいまして、起こりました事例、いささか重なり過ぎたきらいはあるわけでございますけれども、全く例外的に起こったことじゃないだろうかな、こう思いたいわけでございます。しかし、再びこういうことを起こしてはいけないわけでございますので、裁判所におきましてもそれなりに今後のあり方についてはいろいろと。御工夫になっていることだと思います。私もきのう、法務省の首脳部全体に対しまして、よそごとに考えないで部内でこういう問題が起きないようにそれぞれひとつ工夫してくださいよというようなことを次官、局長その他の方々に申し上げたところでございました。いろいろと工夫、努力は重ねていかなければならない、こう思っております。
○井上(一)委員 これで一応終わります。
○原田(昇)委員長代理 新村勝雄君。
○新村委員 最初に大臣から、憲法に対する大臣の基本的な態度あるいはお考えを伺いたいと思います。 最近、一連の経過がありまして、大臣の憲法に対する御見解についての最終決着が政治的な形でつけられたというような形でありますけれども、あのような形、あるいは現在の国会における憲法に対する論議のあり方、これについて大臣は満足していらっしゃいますか。
○奥野国務大臣 一ころに比べますと、憲法論議がわりあいに行われるようになったのじゃないかな、こう思います。国の基本に関する法規でございますから、私はやはり大いに論議すべきものだ、こう思うわけでございます。憲法改正論者は憲法を守らないのじゃなくて、私は憲法を守っているのだと思うのであります。より守るようにするためにはここをこう改めたいと言っているのじゃないか、こう思うわけでございまして、憲法改正論者が憲法を守る立場の人間じゃないのだというような誤解が今日なお一部ある、これは残念なことだな、私はこう思っております。そういう意味合いにおいて、国の基本に関する法規でございますから、あらゆる角度からもっと自由濶達に論議されることを一層希望している、こう申し上げた方がよろしいと思います。
○新村委員 そうしますと、そういう観点からすると、現在の国会における論議のあり方、方法は、大臣のお考えからすれば十分でないということですか。
○奥野国務大臣 昨年来、よい方向に来たと喜んでおりますけれども、おっしゃいますように、まだまだ十分でない、こう思っております。
○新村委員 いまお答えがありましたように、大臣はしばしば、護憲とそれから憲法論議は別だ、国会の中でも憲法論議は十分あるべきだ、むしろ積極的に起こすべきだというようなお考えを述べておられるわけであります。これも一つの見解だと思います。 そこで、大臣としてはこれからもやはり憲法論議については積極的に起こしていく、こういうお考えですか。
○奥野国務大臣 私は去年の八月お尋ねを受けましたときに、政府としては特段の動きをすることは適当でないと思いますよと答えたわけであります。したがいまして、私が内閣の一員であります以上、私から進んで憲法論議を起こしていこうというような姿勢をとる意思はございません。しかし、お尋ねいただきますと率直にお答えをする、また率直な論議を交わすことが国政の発展につながっていくのじゃないか、こう思っておるわけでございます。したがいまして、お尋ねがあってあえてお答えをしないということは適当ではない、こう思っております。
○新村委員 現に自民党さんの内部では、改憲についてのいろいろな御研究なり作業を進めておられるようであります。ところが公の場におきますと、やはり国会の場においてはそういった自由濶達な論議というか、論議というよりもむしろ政府の具体的な提案なり具体的なお答えがない、あるいはそういう段階の前でストップをしてしまう、こういう状況があると思うのです。しかし、それではこれは本当はいけないのであって、少なくとも天下の政権党である自民党の中で着々と改憲の作業が進められておる、あるいは議論が進められておる、こういう状況が一方にあって、国会の中には実質的な論議がない、あるいはお伺いをしてもきわめて抽象的な答弁しか返ってこないということでは、これは困るわけです。ですから、これは率直に、私どもがお伺いをした場合にはできる限り、少なくとも自民党さんの内部で検討されているくらいの、その程度のお答えはいただきたいと思うのです。そういう点で伺いたいわけですが、その点どうですか。大臣、どういうお考えですか。
○奥野国務大臣 私は、先ほど申し上げましたように、政府のあり方を昨年の八月以来申し上げております。その後、鈴木総理自身も、憲法改正は考えない、こういうお答えをしておられるわけでございます。そうなりますと、一層、内閣の一員として、憲法改正問題について、私はこう改正したいと思いますというような論議は私はすべきものではない、こう思っておるわけであります。ただ、私も政治家でございますから、政治家として、政治家個人の考え方を問われれば、それは率直にお答えをしていいのじゃないか、こう思うわけでございます。 同時に、国会の中で、政府対野党というかっこうで論議がもっぱら行われるわけでありますけれども、いま自民党がどう考えておるかということになりますと、やはり野党対自民党の論議が行われれば、いまお考えになっておりますような疑問が解明されるのじゃないかなと、こう思うわけでございます。自民党の考え方を内閣の一員にお尋ねになることはむしろ適当でないような感じがいたします。しかし、政治家個人として奥野はどう考えているかと、こうおっしゃるならば、それは私は答えるべきものだろう、こう存じておるわけであります。それはしかし、内閣の一員としての立場での答えとは違うものだという御理解をいただかなければならないだろう、こう思っております。
○新村委員 政権党として、日本の政治を左右する力を持っていらっしゃる一方の自民党の実態と国会の中の実態とが余り乖離をしては困るという、こういう点があると思うのですね。そういう点で申し上げたわけです。 それと大臣は、これまたしばしば片言隻句をあげつらうのではなくて、憲法の問題については本質論をまず検討するべきだ、闘わすべきだということを言っていらっしゃいますけれども、まずそれでは、この憲法に対する本質論、大臣はどういう基本的な考え方、いわば政治哲学ですね、現憲法に対する、あるいは憲法一般に対する、を持っていらっしゃるか、それをまずお伺いしたいと思います。
○奥野国務大臣 私が去年の八月、自主憲法をどう思うかというお尋ねを受けましたときに、国民の間で論議が行われて、もう一遍つくり直してみようじゃないかという考え方が生まれてくるならばそれは好ましいと思いますよと、しかし政府として特段の動きをすることは適当ではないと考えますよと、こう答えたわけでございました。その際に理由を幾つか挙げたわけでございまして、一つは、占領軍の指示に基づいて制定されたものだ、もう一つは、大事な規定である憲法九条について解釈が二通りに出ているじゃありませんかということ、また、憲法制定当時と今日と情勢が非常に変わってきているじゃありませんかというようなこと、あるいはまた、当時の帝国議会で議論されたのだけれども、当時の帝国議会は、いろいろな修正案を出す場合でも、あるいは動議を出す場合でも、可決、否決であっても事前に占領軍の承認を受けなければそういう行動はとれなかったのです、主体性がなかったのです、という事情も考えなければならない、こんなことを申し上げたわけでございまして、今日もそのとおりに考えているところでございます。 同時にまた、憲法の基本的な理念、平和主義でありますとか、基本的人権の問題でありますとか、あるいは民主主義の問題でありますとか、そういうような理念、これはりっぱなものだから、それは自主憲法をつくるといった場合でも生かしていかなければならないと思いますよと、こんなことを言ってまいったわけでございました。
○新村委員 そうしますと、大臣の現憲法に対する不満といいますか、改めるべき点は、占領下であるということ、制憲の過程が一つですね、それから、戦力不保持、絶対平和主義ということに対する疑問がその二つ、それから、状況が変わったということがその三つだというふうにおっしゃったわけですね。 そういたしますと、その三つの点を踏まえて現在の憲法を改正をするということになりますと、現憲法の持っておる基本的な性格が変わってくると思いますね。その点はいかがですか。
○奥野国務大臣 これは変わるか変わらないかは自主憲法のつくり方の問題と思います。先ほども申し上げましたように、しばしば憲法の基本的な理念が強調される、その理念はりっぱなものですよと、こう申し上げているわけでございます。いまの憲法規定をめぐりまして、いろいろなところで解釈が分かれている。分かれているだけではなしに、政府自身も疑問があるというような、宗教関係の規定などについては今日も態度をとっているわけでございますから、やはり自分でつくり直してみればそんな問題は一遍に消えてしまうのじゃないかな、こうも思っているわけでございます。性格が一変するということは、これはつくり方の問題であって、私はそんなことは考えてはおりません。
○新村委員 お伺いをしておりますと、制憲の過程あるいは戦力不保持に疑問がある、あるいはまた政教分離にも疑問がある、ということになりますと、現在の憲法の基本的な性格である主権在民、それから絶対平和主義、政教分離というような憲法の基本にかかわる性格が変わってくる、こう思わざるを得ないわけです。 そこでお伺いしたいのですが、現在の憲法の中で、大臣がどうしても現在の日本の国情に、国情というか、大臣のお気持ちに合わない、あるいは情勢の変化に合わないとお考えになっている点を列挙されるとどういうことになりますか。
○奥野国務大臣 どうも私の答えたことを、一方的に独断的にきめつけられるような言い方はやめてもらいたいな、こう思います。 私は国民主権をやめろとひとつも言いません。政教分離規定をやめろということもひとつも言いません。私は、いまの国民主権を守っていけばいいと思っているのであります。また、政教分離も守っていけばいいと思うのであります。その政教分離の規定について解釈上いろいろな疑いが起こっているということを指摘しただけのことでございまして、政教分離と一言に言いましても、なかなか幅広い、その言葉を使われる方々の中にも考え方があろうかと思うわけでございます。 私がまた、情勢が変わったということで一番心配しておりますのは、これだけ情勢が厳しくなっているにかかわらず、自衛隊を持つことが憲法違反だ、やめてしまえ、有力な政党の中でこんな声が今日なお出ている、これはやはりでき得ることなら、憲法の解釈が食い遣わぬように、もう一遍国民みんなで議論してつくり直してみたらいいじゃないかなと、こういう気持ちが一番中心でございまして、別に、情勢が変わったから軍事力を増強しろと言っているわけでもなんでもございません。これだけ情勢が厳しくなっているにかかわらず、自衛隊そのものまでも持てないというような解釈がある、それでいいのだろうかという心配が私にはあるものですから、やはり解釈が食い違うようなかっこうにならぬものだろうかなと念願している、これが政治家個人としての私の一貫した考え方でございます。
○新村委員 いや、きめつけじゃなくて、大臣のお考えを伺っておりますと、現憲法の基本的な性格に触れる部分がかなりあるわけですよ。ですから、そういう意味から、大臣のお考えどおりに憲法が変わっていくと、いわゆる平和憲法、数百万の人命をもってあがなったと言われておるこの平和憲法の基本的なものが変わっていくのではないか、こういう疑問があるから伺ったわけであって、決してきめつけではないわけであります。たとえば戦力不保持、絶対平和主義というのは、これは現憲法の最大の柱ですが、この柱がまず抜かれるということでしょう。それから政教分離にしても、先ほど大臣は政教分離は現在の形ではいけないとおっしゃっているわけですから、そういうことになると、現憲法は基本的にその性格を変えていくのではないかという疑問を申し上げているだけであって、きめつけではないわけです。 ですから、そういう問題点について、どういうふうな形でやるべきだという具体的な提案なりお考えがあったらもう少し聞かせていただきたいと思うのです。
○奥野国務大臣 いろいろな誤解が起きてはいけないものですから、あえて私は、同じものであってもいいからもう一遍国民の間でつくり直してみたいという気持ちが生まれてくるならばそれは好ましいと考えている人間でありますと、こうお答えをしたわけでございました。 私が九条のことを申し上げますと、いまの規定は戦力絶対不保持ということをいまおっしゃいました。それを変えようとしているのではないかとおっしゃいました。社会党は非武装中立を言っていらっしゃる、自衛隊は違憲だとおっしゃっている、自民党は、自衛隊は合憲だと考えておるわけでございます。その自衛の範囲内において自衛力は整備していこう、こう言っているわけでございまして、別に強大な軍事力を持とうなんというようなことは自民党もだれも考えていないわけでございます。社会党が自衛力も持たないのだ、こうおっしゃっていることはわかるのですけれども、私が言っているからそれを変えようとしているとおっしゃるのはちょっと言い過ぎではないか、それは社会党の解釈であって、国会は大勢はやはり自衛力は持てるという判断に立っているのではないかな、私はこう申し上げたいわけでございます。 宗教関係につきましても、詳しいことをお互い議論する場所ではありませんので申し上げませんけれども、いろいろ変わってきていると思うのです。宗教団体に対しても、文化財の保持でありますとか、あるいは教育の面でありますとかいうことについては国費を出しているわけでありまして、私は宗教の勢力を助長するために国費を使うということは、これは将来とも避けていかなければならない、こう思うわけでございます。私が国会でお答えをしてまいりましたのは、公務員の資格でお参りすることが絶対いけないということを憲法のあの規定から読まなければならぬだろうか、ここは疑問に思います、占領時代には占領軍から公務員の資格で神社にお参りしてはいけないという神道指名は出されておった、もう二十七年から独立しているのだから、私たちの解釈で考えたらいいのではないだろうか、こんなことで申し上げてまいったわけでありまして、政教分離といってもいろいろ細かく議論しますと幅がある問題だろう、こう思います。私が申し上げていることは、政教分離を破ろう、こんなことは一つも思っておりませんので、そこは誤解のないようにしていただきたいとお願いを申し上げておきたいと思います。
○新村委員 次の問題に移ります。 現在の日本の政治の方向は、これはどう見でもやはり再軍備の方向に向かっておると思うのですね。そして、大臣がかつて、これは去年の十月ですか、やはり国会で答弁をされておりますけれども、いかに軍が大きくなっても文民統制がきいていれば軍国主義にはならない、こうおっしゃっておりますね。この発言は非常に危険だと思うのですけれども、その真の意図はどこにあるのか、もう一回伺いたいと思います。
○奥野国務大臣 どういうお答えをしたのか、いま覚えておりませんけれども、占領時代においては完全に武装を解除されたわけでございますし、また当初は将来とも武力は持たせないという考え方があったのではないかと思われるわけでございます。したがいまして、武力を持つことそのことが軍国主義だというような間違った指導も行われたような感じが私はいたします。世界じゅうみんな軍隊を持っているわけであります。そうなりますと、世界じゅうが軍国主義だというお話にもなってしまうわけであります。軍隊を持つことと軍国主義とは何のかかわり合いもない。私は、軍国主義というものは政治や経済や教育やその他の面において軍事が優先的な取り扱いをなされるのが軍国主義だ、こう考えておるわけでございまして、軍備を持つことと軍国主義とは別の範疇に属する物事なのだ、こう思っておるわけでございます。私が日本の自衛隊についてのお尋ねに対して答えましたときに、自衛隊を持つから、あるいはそれを整備していくから日本がまた軍国主義に戻っていくのだというような心配は要らないのじゃないでしょうか、戦前の日本の政治の仕組みといまの政治の仕組みとは全く違うのではありませんかと、こんなことでお答えをした記憶がございます。
○新村委員 軍国主義というのは、やはり軍備の量が一定の段階になれば、これは軍国主義になると思うのですよ。軍国主義というのは、普通の解釈からすれば、軍事力を背景にして対外的な政策を進めていくことが軍国主義というふうに解釈されていますね。そうなってくると、やはり一定の軍備の量に達して外国に少なくとも脅威を与える程度の軍備になれば、これは軍国主義の範疇に入る、これが普通の解釈ではないかと思うのです。そうなりますと、いかに軍が大きくなっても大丈夫なのだ、文民統制がきいていればいいのだ、こういうことではおさまりがつかないわけでありまして、そこらの点、大臣の御認識が少し違うのではないかと思うのですけれども、大臣は、軍がいかに大きくなっても文民統制がきいていれば大丈夫なのだ、軍国主義ではないのだということでありますけれども、そうではないと思うのです。現在のように、だんだんと軍備が拡大していって、いわゆる抑止力あるいは均衡の理論の中に日本が組み込まれていくとすれば、これは軍備が際限なくとは言いませんけれども、かなり際限なく拡大せざるを得ないわけです。アメリカとソ連の世界政策によって両方がお互いに軍備を均衡させる、ソ連が軍備拡大をすればそれに均衡する、あるいはそれを上回る軍備をアメリカ側は保持をしなければならないというふうに考えているわけですから、その中に日本が組み込まれるということになれば、日本の軍備拡大の歯どめがどこに置かれるのか、これはちょっと心配になるわけです。 〔原田(昇)委員長代理退席、森下委員長代理着席〕 そういう意味からいって、そういうことに対する大臣の事態の解釈だと思うのですけれども、その点、もう一回伺いたいと思います。
○奥野国務大臣 強大な軍隊を持つから軍国主義ということではなくて、軍国主義の結果が強大な軍隊になっていくのだ、こう私は考えるものでございます。軍国主義が原因であって、結果が軍事力の強大ということにあらわれてくる。たとえばお金の分配、財政運営の場合でも、軍事が優先的になっていって、軍事の方によけい向けられていく、あるいは経済運営に当たりましても、武器を製造している方向に資金をよけい流していくから、強大な軍隊を支えていく経済体制になっていく、こう思うわけでございます。強大な軍隊が軍国主義ではなくて、軍国主義の結果が強大な軍隊を生み出す、これなら私は話がわかる、こう考えるわけでございます。 いずれにいたしましても、それぞれの分野において国民の生活を優先させるのではなくてまず軍事を優先させる、教育の場におきましても軍事力につながるような教科を特に重視していくとかいろいろなことがあるだろうと思います。日本の過去を考えましても、学校の中で軍事教練などもずいぶん時間をかけて行われたわけでございますし、また軍事費に対しましては他のものを削っても多額のものが持っていかれたわけでございまして、財政運営においても軍事が優先になったと思います。そういうものが私は軍国主義だ、こう考えておるわけでございます。結果が強大な軍隊になっていくのだろう、こう思っております。
○新村委員 その点はちょっと見解が違いますけれども、たとえばいま世界に二つの大きな軍備を持った国があります。この国の発言力というものは、やはり軍備が背景にあるから発言力が強くなるわけですよ。日本は、そういう意味では、経済大国であっても軍備がきわめて少ないですから、軍備を背景とする対外的な発言力はないでしょう。ところが、強大な軍備を持っていれば、その軍備を背景とする国策の推進なりあるいは対外的な発言力なりというものは増してくるわけですから、そういう形になればすでに軍国主義だというのが定説だと思いますよ。大臣のように、結果としてではなくて、一定の段階の軍備に達すれば、それは好むと好まざるとにかかわらず軍国主義になる、こういう法則が一般に認められていると思うのですけれども、その点はそれでいいです。いいですけれども、軍がいかに大きくなっても文民統制がきいていれば軍国主義にはならないのだから、どんどんふやしてもいいのだという安易な考え方は間違いだということを申し上げておきたいと思います。 それからその次の問題としては、東京地裁の事件ですけれども、これは前の安川判事の問題、あるいは司法修習生が軽犯罪に問われたというような事件とか、法曹特に司法関係で問題が若干続いておりますね。この点についての感想は先ほど同僚議員からの質問にお答えがあったので重複はしませんけれども、この経過それから事実関係をひとつできるだけ詳しく伺いたいと思います。
○大西最高裁判所長官代理者 谷合裁判官、板垣裁判官に係る今回の、不祥事と言われております問題の経過について御説明を申し上げます。 一番最初は昨年の九月でございますが、新日本興産株式会社という会社でございますが、この破産会社の債権者と称する者から東京地方裁判所の民事二十部、破産部というふうに呼んでおりますけれども、この破産部に質問状の形の内容証明郵便が参りまして、その中にこの破産事件の破産管財人であります井上弁護士のことにつきまして非難する文言がございます。そのように非難いたしますとともに、谷合裁判官が井上弁護士と一緒にゴルフをした事実があるということが指摘してあったわけでございます。そこで東京地方裁判所の方で谷合裁判官から事情を聴取いたしましたところ、そのころ同裁判官は一緒にゴルフをして、その費用は支払わなかったということを認めたわけでございます。そこで東京地方裁判所では、いわば李下に冠を正さず、そういう意味合いで、そのころ谷合裁判官を他の部へ配置がえする、そういう措置をとったわけでございます。ところが、その後間もなく井上管財人と対立する債権者のグループ、管財人自体と対立するというのは変でございますけれども、債権者がいわば二派に分かれておりまして、井上管財人を支持するグループと反対するグループがあるようでございますが、その反対するグループの方から東京地方裁判所の民事二十部に対して、井上管財人を解任してほしい、そういう解任の申し立てが出てきたわけでございます。そういうことでこの破産事件につきまして関係者間の紛争が非常に深刻になってきたということがうかがわれてきたわけでございます。 この程度の事柄につきまして東京地方裁判所当局でわかっておりますし、最高裁判所でも報告を受けて概略を承知したわけでございますが、何分にも具体的な破産事件が係属しておることでもございますし、債権者が相対立しておる、しかも解任の申し立てというふうな事件も出てきた、そういうもろもろの、具体的事件が係属中、そういうことから考えますと、たとえば最高裁判所が直ちにこれをどうこうする、調査するというようなことになりますと、事件そのものに司法行政が介入する、そういうおそれがないわけでもございませんので、一応谷合裁判官を配置がえしたということで、後事態の推移を見守ってきたわけでございますひところが、御承知のように、先月の末にある新聞がこのゴルフの事実を報道いたしました。そのほかに板垣裁判官についても一緒にゴルフをした事実があるのではないかというような報道もございました。そこで最高裁判所といたしましては急選臨時の裁判官会議を開きまして、四月二日に最高裁判所事務総局内に調査委員会を設置することにいたしたわけでございます。この調査委員会でその後、板垣裁判官が現に所属しております山形の方に板垣裁判官の事情聴取をするように指示したわけでございます。ところが今度は、このゴルフの問題だけではなくて、翌日、四月三日には、板垣裁判官が、棒ゴルフ場という、破産会社所有のそういうゴルフ場の買収のために設立したのではないかというふうに言われております株式会社東京二十という会社に対して出資した疑いがあるというふうな事実が報道されたわけでございます。そこで調査委員会におきましても、さらにその点、板垣裁判官について事情聴取をするよう山形の方へ指示したわけでございます。ところがさらに、今度は四月七日になりまして、谷合裁判官が外国製のゴルフセット、それから背広上下を受け取っているというふうなことが報道されたわけでございます。調査委員会といたしましては、一昨日、四月七日にそういうことで板垣裁判官と谷合裁判官の両名を最高裁判所に呼びまして直接事情聴取を行った、そういう経過になっておるわけでございます。
○新村委員 そうしますと、当局にはかなり前にこの問題はわかっていたわけですね。しかし、そのときに十分事件の究明をしないで異動だけによって処置したということなんですけれども、どうしてそのときにもう少し徹底的な事態の調査なり解明なりをなさらなかったのか、異動だけで済まされたのか、そこらがちょっとわからないのですがね。
○大西最高裁判所長官代理者 先ほどちょっと申し上げましたように、この破産事件は現在係属しておるわけでございます。これを余り追及していきますと、その破産事件の処理に直接介入という、そういう問題を生ずるおそれがございますし、単にそういう破産事件が係属しておるだけではなくて、この破産事件の処理の過程で——この破産事件、債権者は相当たくさんございます。何千という債権者がございます。その債権者がいわば二派に分かれまして非常に紛争が深刻になっておる。解任の申し立てがある。もう少し後でございますが、管財人に対する弁護士会に対する懲戒申し立てもあったというような報道もちょっとございます。それは後のことでございますが、そういうふうに非常に紛争が深刻化してきまして、具体的事件の処理に司法行政当局が介入する、そういうおそれがあったわけでございますので、そこでとりあえずは当該担当の裁判官を他の部へ移しまして、別の裁判官でやる。しかも従来一入でやっておりましたのを三人の合議体で処理する、そういう措置をとったわけでございます。結局そういうふうにいたしませんと、今回の場合はこういうふうに大々的に報道され、世間でもいわば衆知になったということもございますので、いまの段階になりますれば最高裁判所が調査いたしましてもそういう具体的事件に介入するというおそれはそれほどないのではないかということで、調査委員会の設置に踏み切った、こういうわけでございます。
○新村委員 破産事件に影響があるということでありますけれども、その問題と、それから法の威信を守るということとは、これは別だと思いますね。そうしますと、異動だけをさせて、その後マスコミの取材等がなくて済んでしまえばそのままになってしまうということなんでしょうかね。そこらがはっきりしないわけです。問題の裁判官をその場所から引き離すということは必要でしょうけれども、引き離すと同時に、その事態に対するきちんとした決着をその時点でつけておかないと、これはわからなければそれでほおかぶりという印象を世間には与えるわけですよ。その辺の御配慮はいかがですか。
○大西最高裁判所長官代理者 決してほおかぶりするというつもりではございませんで、とりあえず谷合裁判官を他の部へ配置がえいたしまして、先ほど申し上げましたように別の裁判官で、しかも合議体で処理するということで、事件そのものの処理はそういうことで新たな陣容でちゃんとやっていけるということがあるわけでございます。ただ、谷合裁判官の処分というふうな問題は残るわけでございますが、それを考えますためには具体的事件の中身に入ってかなり調査をいたしませんことには全貌が明らかにならないわけでございます。ところが、先ほど来申し上げておりますように、事件そのものが非常に複雑で紛糾しておる。事件処理が大事でございますから、そこへ行政が介入する、たとえば処分問題を考えますためにそこに介入するということは問題ではないかということで差し控えておったと申しますか、静観しておったわけでございまして、事件そのものをうやむやにするということで放置していたというわけではないのでございます。
○新村委員 そうしますと、この事件については訴追の請求が行われるのかどうか、それからまたさらに刑事問題に発展する可能性があるのかどうか、その点はいかがでしょうか。
○大西最高裁判所長官代理者 調査委員会を設けまして、現在、事実はどうかということを調査中でございまして、その調査が済みました段階で当該裁判官の処分をどうするかということを検討する、そういうことになるわけでございます。 刑事問題につきましては、新聞報道等で検察庁のことも書いてございますけれども、これは私どもの方でただいま直接やるべき問題ではございません。むしろ捜査当局がお考えになるわけでございまして、その点は裁判所といたしましては捜査当局のおやりになることにお任せする、そういうことになるわけでございます。
○新村委員 捜査当局がいらっしゃらないのでお伺いできませんが、大臣、この問題についての御所見をひとつ伺いたい。
○奥野国務大臣 先ほどもお答えをしたわけでございましたけれども、まことに遺憾な出来事であった、こう思っております。 同時に、できたことにつきましては事態を明確に洗い出す、そしてそれなりの処理をするということが将来に対して問題を起こさないための方途でもあるのじゃなかろうかな、こう思っておるわけでございまして、そういう意味合いにおいて鋭意最高裁判所におきましても事態を明確にしようと御努力なさっておるものだ、こう思っております。
○新村委員 次の問題ですが、最近になりまして再審がしばしば決定をされておるわけですね。これは前にもなかったわけじゃないのですけれども、これは国家としても非常に大きな問題を提起をされているわけでありまして、たとえば徳島ラジオ商殺し事件であるとかあるいは免田事件ですか、こういういままでの捜査あるいは審理が全く覆されるという事態があるわけです。そうしてまたこの中には、たとえば免田事件等については裁判所の判断がまるっきり反対の判断となってあらわれる、こういう事態があるわけですけれども、こういう問題について、これは当然国の権力の最高の発動として刑罰というものは行われるわけですから、これに対する国としての責任、これを明確にしていかなければいけないと思うのですけれども、大臣としてはどういうお考えですか。
○奥野国務大臣 証拠資料が必ずしも十分でなくて再審決定になったということにつきましては、まことに遺憾なことだった、こう思っております。再審の結果がどうなりますか、これは今後の遂行にまたなければならない、こう思っておるわけでございます。
○新村委員 再審の結果が仮に無罪ということになれば、これは現在のあの刑事補償法の補償だけでは済まない問題がそこに提起されると思うのですね。そういった問題について、やはりこれは国が全面的に責任を負うべきであると思うのですね。その被疑者に対して、その人の一生をほとんど抹殺するに等しい国家的な権力の発動がその個人に対してあったわけですから、これに対して国がどう責任を負うのか、あるいはどう補償するのかということになりますと、これは現在の補償法だけではどうにもならないわけで、国家賠償請求訴訟ということが考えられますけれども、この国家賠償請求の訴訟において原告の主張が認められた例がほとんどないというのが実態です。今後、これではかえってこの法の威信という点からいってもまずいのではないか。あるいはまた、国の責任という点からいっても非常に疑問が多いわけですけれども、これらの点について大臣はいかがお考えですか。
○奥野国務大臣 再審の結果無罪となったという仮定を置いてのお尋ねだと思います。お金では償えない大変な被害を与えることになるわけでございますので、その責任は非常に大きい、こう思います。お金の面につきましては、御指摘になりましたように、刑事補償法という法律に基づきまして補償額が算定されるという仕組みを現にとっているわけでございます。この額が十分である十分でないという議論はあろうかと思うのでございますけれども、一応刑事補償法を制定し、また時日の経過とともにその金額も若干ずつ引き上げてきているようでございます。いまおっしゃいますのは、刑事補償法による補償だけじゃなしに、国家賠償法に基づく賠償責任をどう考えるのかというお尋ねであったと思います。国家賠償法の場合には、国が責任がある、したがってその責任に応じた賠償をしなければならないということでございます。 責任があるということになりますと、国が故意または過失によってその人を拘束してきた、こうならなければ責任があるということにならない。やはり検察当局は私は故意や過失で逮捕、拘禁したのだということにはならないのじゃないだろうかな、こう思っておるわけでございます。そうしますと、やはり国家賠償法の問題にはならないのじゃないか、こう考えるわけでございます。 いずれにいたしましても、再審の結果どういうことになるかによりまして違ってくるわけでございますけれども、金銭的な問題に限って申し上げますならば、刑事補償法の補償は当然に受けられる。それ以上の賠償ということになってくると、責任が国側になければならない。責任がなければならないということになると、故意か過失で本人を逮捕、拘禁したということにならなければならない。故意も過失もないのに責任があるということにはならないと思います。私は、故意、過失で、無罪になるような人をことさら逮捕、拘禁したというふうにはどうしても考えられない。だからおっしゃいますように、国家賠償法によって賠償を受けた例がほとんどないじゃないかというような御指摘になっているのじゃないかな、こう思うわけでございます。 いま申し上げましたように一方は補償であり、一方は賠償であるというけじめ、責任はなくても補償はいたします。しかし賠償は、責任がなければいたしません。責任があるためには故意か過失がなければならないということになるのじゃありませんでしょうか、こう考えているところでございます。
○新村委員 そうしますと、結果的に再審の結果無罪ということになった場合に、これは最初の判決が間違いであったわけですね。間違いであったから無罪になるわけですね。ですから、その間における国の責任というのはなしとしないと思うのですが、どうなんでしょうか。
○奥野国務大臣 逮捕、拘禁するに故意も過失もなく、それなりに事由があって逮捕、拘禁している場合には、補償の問題になっても賠償の問題にはならないのじゃないでしょうか、こうお答えしているわけであります。しかし、いずれにいたしましても、金では償えない大きな被害を与えたことになる。それはみんな十分配慮していかなければならない課題だろう、こうは思っております。
○新村委員 故意、過失、————故意はないと思いますけれども、過失は個々の捜査官なり検察官なり裁判官なりについて見ればこれは確かに故意も過失もないということも言えると思いますけれども、その事態全体として考えた場合に、あるいはその個人対国家として考えた場合に、これは国に故意はないにしても、過失はなかった、これは絶対に言えないと思うのです。過失があったからこういう結果になったわけですから、これは故意も過失もなくて、しかも結果が二つであって、最初の判決が有罪であった者が再審によって無罪になった。全くあらわれ方が違うわけですよ。ですから、故意、過失というそういう技術的な問題ではなくて、やはり常識的にあるいは道義的に、これはだれが見ても有罪にした国家権力あるいは国に責任がある、償うべき責任があるというふうに考えられますけれども、その点はどうでしょうか。
○奥野国務大臣 私は、検察陣を信頼しているものですから、いま申し上げているような考え方に立っているわけであります。しかし、これはまた過失があったとするならば、それなりに裁判ざたになる問題がございましょうから、その判断にまつべきでございます。
○新村委員 裁判とおっしゃいますけれども、いままで裁判をして、常に原告が負けているわけですよ。国が勝っている。認められた例がないというふうに聞いておりますがね。そうなると、これは裁判の制度があってもなきに等しいということですけれども、そういうことで認められた例がありますか。それからまた、それはどういう場合ですか。
○奥野国務大臣 国家賠償法の賠償が認められた例があるようでございますから、事務当局の方からお答えをいたします。
○前田(宏)政府委員 ただいまの点でございますけれども、範囲を限って申しますと、最近の十年間に刑事手続で無罪になった者から国家賠償の請求を起こされたもので当局で判明いたしておりますものは約七十件ございますが、その中で国家賠償の事件についての裁判が確定しているものが二十九件ございまして、その中で請求が認められたものが三件あるというふうに承知しております。
○新村委員 それはたとえば交通事故で、交通事故に限りませんけれども、真犯人があらわれたということで、きわめて明白な場合でしょう。そうじゃなくて、たとえば加藤新一さんという人が再審裁判で六十二年ぶりに無罪になったという例がありますね、これは一つの例ですけれども。こういう長期にわたる、しかも量刑が非常に重い事犯について、これはそれだけに、個人に対する損害がきわめて大きいわけでありますけれども、こういう事態についての請求が認められた例はないというふうに聞いております。認められたのは本当に軽い犯罪で、しかも技術的な、というと言葉は適当ではないかと思いますけれども、きわめて技術的な問題の場合に、しかもきわめて例外的に認められるということのようですけれども、その点はいかがでしょう。
○前田(宏)政府委員 内容まで詳細にいま手元にございませんけれども、加藤さんの例につきましては、請求がありまして、一審で請求が棄却になって、現在控訴中というふうに承知しております。
○新村委員 この問題はこれで終わりますが、大臣にお願いするのですけれども、こういうことで無罪になった場合には、故意、過失、そういう細かい議論ではなくて、大局的に考えて、やはり国が一人の人間の一生を抹殺するに等しいことをやった場合には、そういう事態があった場合、それ相当の補償をすべきであると思うのですよ。無罪というのはあくまでも無罪であって、その人に罪がないという判断を国が最終的に行うわけでありますから、前に死刑なり無期なりという重罪を科しておきながら、その後でいろいろな新しい証拠なり総合的判断のもとに無罪ということを決定するわけでありますから、前の判断は間違っていたわけですね。その判断に参画をした人はそれは数十人、たくさんいるでしょう。個々の人について故意、過失があったかなかったか、そういう問題ではなくて、やはり国家権力と個々の国民という立場から考えた場合には、これはもう問題なしに全面的な賠償を国がすべきであるというふうに考えるわけですよ。ですから、そういう考え方で前向きに大臣としてお考えになるお気持ちがあるかどうか、ひとつ伺います。
○奥野国務大臣 御指摘いただいているのは、結論的に言いますと、私は補償の額を引き上げろ、こういう御主張につながるのじゃないかな、こんな感じがいたします。金銭で償えない大きな被害を与えたことになりますけれども、金銭でも最大限度それを償うべきだ。刑事補償額は、逮捕、拘禁しています場合には一日四千八百円以内ということで計算をすることになっているわけであります。この補償額では不十分じゃないかなというお気持ちが賠償という言葉で表現されているのじゃないかな、かように考えるわけでございます。若干この金額は手直しをしてきているわけでございますけれども、将来ともこの金額をさらに引き上げるという方向で考えていくべき課題を仰せつかった、こう理解いたしたいと思います。
○新村委員 以上で次の問題をお伺いしたいのですけれども、最高裁の人事の問題です。 最高裁の大事については、長官については政府の補佐によって天皇が任命する、それから他の裁判官については内閣が任命するということでありますけれども、三権の一つを担うきわめて重要な大事について、その基準なりあるいは任命の過程が全く明らかでないわけです。これは性質上やむを得ないといえばやむを得ないのですけれども、具体的に裁判官は内閣が任命するとありますが、これは内閣のどこで選考して、だれが任命するわけですか。
○奥野国務大臣 憲法に示されているとおりでございます。 最高裁判所の裁判官、判事は内閣で決めるわけでございますけれども、裁判所の長官は天皇が任命されるというふうに示されているわけでございます。
○新村委員 それはわかるのですけれども、他の国会あるいは行政府は任命の過程がはっきりしておりますけれども、最高裁については、三権の一つを担うきわめて重要な人事でありますが、その選考の過程なりどういう基準によって選ばれるのかということが全く国民にはわからないわけです。それらの点をもう少し明らかにできないものか、あるいは基準があるのかないのか、それからまた選考する過程でどういう人の意見を聞いてどうなるのかということが国民には全くわからないわけですけれども、それらについてできればひとつ明らかにしていただきたいわけです。
○奥野国務大臣 内閣の責任ということで選任されるし、同時にその直後国民の審判にかけられるということになっておるわけでございまして、いろいろな推薦があろうかと思いますけれども、責任は一身に負って果たしていくという姿勢がとられているということを御理解いただきたいと思います。責任があっちにもある、こっちにもあるのじゃなくて、全責任を内閣が負って決めていくのだ、そのかわり国民の審判にはかけるのだということだと理解いたしております。
○新村委員 そうしますと、人事の選考の過程は全くベールに包まれてわからないということになるわけですか。選考の過程で最高裁の方からもいろいろ希望が出る場合もある。それらも参考にしながら、あるいはまた最高裁の長官あるいは総理大臣、憲法上はそうなっておりますけれども、実際に仕事を進めるのは人間が進めるわけですから、どこでどういうふうにしてだれが進めるかということはあるわけですけれども、それらについては一切発表の限りではないということになりますか。
○奥野国務大臣 いまも申し上げましたように、他に責任を分担させるのではなしに、内閣が全責任を負って決めているということだと思います。もちろんその間にいろいろな方々の名前が挙がってくるのだろうと思うのでございますけれども、それを言われた方々に責任があるのじゃなくて、内閣が全責任を負っているのだ、そのかわり国民の審判を求めるのだ、こういう仕組みをとっている、こう思っております。
○新村委員 これは日弁連あたりが主張しているのですけれども、任命諮問委員会というようなものをつくって、国民にもう少しわかりやすい選考の過程なり方法なりをとったらいいのじゃないかというような意見がありますけれども、こういう意見は全く考慮に値しませんか。
○奥野国務大臣 積み重ねでだんだん一定のルールみたいなものができてきているということになるのじゃないかなという気がいたします。弁護士会から最高裁に入られる、その方々が退官された場合にはまたその後は弁護士会から入れる、そうじゃなくて裁判所の裁判官をしておられた方々から選ばれて最高裁に入っている、その方が退官された場合には、後また裁判官をされた方々から選んでいくというような、いつの間にやらだんだん不文律みたいなものができ上がってきているような感じがいたします。しかし、いずれにいたしましても、だからといって弁護士会に責任があるわけではない、裁判所に責任があるわけではない、内閣が全責任を負って最高裁の判事を選んでいるのだというふうに御理解いただきたいわけでございます。だんだん積み重ねで一つのルールみたいなものができ上がってきている。しかし、その推薦された方に責任があるわけではない。あくまでも内閣の責任で選んだのだ、また、選んでいくのだということだと思います。
○新村委員 時間が参りましたので簡単に次の問題ですけれども、死刑については、これは先ほどもちょっと出ましたけれども、先進国の間では、死刑を廃止した国がかなりあるわけですね。それからまた、制限つきで、特定の罪以外は死刑はないというふうにした国もあるようです。世論等においてはまだ死刑廃止の世論が上回っているということではないと思いますけれども、死刑というものが憲法に規定をされる残虐な刑罰に当たることは事実ですね。そういった意味からして、死刑というのは国家権力によって人の命を奪うわけですから、その点が一つの問題。それから、憲法に言うところの残虐な刑罰に当たるということ。それからまた、これは常にあることじゃありませんけれども、ときには冤罪によって死刑に処せられるというような場合もあり得るということからして、死刑廃止ということを検討する時期がそろそろ来ているのではないかと思うのですけれども、大臣はいかがでしょうか。
○奥野国務大臣 おっしゃいますように、死刑廃止の強い意見もございますし、国によって廃止しているところもございます。わが国におきましてもそういう意見を出される方々がいらっしゃいます。もう七年前になりますか、刑法の全面改正を法制審議会が答申された、そのときに、従来死刑に当たるとされる罪種が十八ございましたけれども、八つの罪種に減らして答申されたわけでございます。減らされたけれども、死刑廃止は適当でない、残していくのだ、こういう答申になっているわけでございます。国民の意見も、やはり死刑は浅さざるを得ないというのが多数であるようでございます。そういう状況でございますので、廃止できるような社会状態になれば幸せでございますが、凶悪な犯罪が残っている今日においてはやはり廃止にまで踏み切れないということが多くの方々の考えではなかろうかな、と思っておるところでございます。同時に、憲法の規定とのお話でございますけれども、死刑の方法につきまして、わが国はわが国なりの方針を決めておりまして、憲法に触れないような配慮はしているものだと、こう思っております。
○新村委員 終わります。
○森下委員長代理 この際、午後一時まで休憩いたします。 午後零時二十六分休憩 ————◇————— 午後一時三分開議
○森下委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。 質疑を続行いたします。田中昭二君。
○田中(昭)委員 私は、きょうは時間が大変少のうございますから、三つの点につきましてお尋ねしますが、明確にお答えをいただきたいと思います。一つは、登記所の統廃合と行政改革、二つ目は、司法内部の例の不祥事件に関係して、三つ目には、難民条約の問題等についてお尋ねしていきたいと思います。 まず最初に、国民の生活にも大変密接な関係のあります登記事務を行っております登記所の統廃合がこの十年間進められたようでございますが、その経緯と、現在どうなっておるのか、概略をお聞かせ願いたいと思います。
○中島(一)政府委員 お答え申し上げます。 ただいま御質問ございましたように、昭和四十六年四月一日から統廃合に着手をいたしまして、当時登記所というのが約一千七百カ所ぐらいございましたのですが、本年三月三十一日までの間で五百十八の登記所を整理いたしました。現在約一千二百の登記所が残っておるというような実情でございます。
○田中(昭)委員 その廃止になった五百十八庁の地域の住民の立場から考えますと、これが答申されました中にもありますように、地域住民の利便をまず第一に考慮する必要がある、こういうことを述べられておるわけですが、法務省としてこの答申の趣旨に沿って、趣旨にこたえるといいますか、そういう意味での住民側から見た行政サービスの向上が図られたと思いますが、その内容を具体的に説明してください。
○中島(一)政府委員 整理をいたしました登記所はいずれも一人庁、二人庁というようないわゆる小規模庁でございます。 登記所というのは明治時代の道路事情、交通事情というものを前提として設けられておりましたがために、その後、道路事情、交通事情が変わりまして、社会情勢、経済情勢なども変わってまいりました今日におきましては大変実情に合わなくなっておるというようなこともございまして、いろいろな分散ロスというものが出てきておったわけでございます。一人庁というようなことになりますと、一人分の仕事がないところにも職員を一人張りつけなければならぬというようなロスもございます。それから一人庁でございますと、相互に職員が協力をするあるいは相互に牽制をして適正な事務処理をするということもできがたいというような実情もございます。それから事務の機械化をし事務の合理化をするということにつきましても、余りに小規模庁でありますとそういうこともできないというような実情もございます。それから、実地調査というのをいたしますが、一人庁では実地調査に出かけておる間は留守番もいなくて、結局利用者の方に御迷惑をかけるというような実情もございました。 そういうものを解消するための整理統合ということでございましたけれども、整理されます庁を御利用になっておった住民の方々にとりましては、確かに場所的、時間的な意味では御不便をおかけするわけであります。でありますから、そういう御不便をなるべく緩和するというようなことを考えまして、登記相談所というようなものも開設をいたします。あるいは謄抄本交付を予約制にいたしまして、取りに来られたならばすぐにお渡しできるというようなことも考える。さらには、謄抄本の申請書用紙を市町村役場に備えつけておきまして、登記所においでにならなくてもその申請書用紙を利用して謄抄本の交付を申請していただけるというような、いろいろきめ細かい手当てをいたしましてサービスの向上に努めておるというような実情でございます。
○田中(昭)委員 そのことが現実にその地域でそのとおりになっておればいいわけですけれども、その内容については細かいことは省略しますが、実際の登記事務というのが、いろいろなところで聞きましても余り迅速に行われないというような実情もありますね。そうしますと、せっかく五百幾つも統廃合をやったわけですから、それがもう少し住民の立場から見て具体的な行政サービスの向上につながったというようなことは御存じないのでしょうか。もう少し何かございませんか。
○中島(一)政府委員 ただいま申しましたように、分散ロスを節約をするというようなこともございましたものですから、そのための特別の手当てをいたしまして、たとえば施設の改善というようなことも心がけておるわけでございます。さらには、先ほども申しましたように、事務の合理化、機械化によって特に職員をふやさないでサービスのレベルを上げるというようなことも可能になってまいったわけでありまして、何よりも、先ほど申しましたように複数の職員が互いに協力をし、互いに牽制をすることによって適正な登記事務の処理に努力しておるというようなことが大きなメリットであろうかというふうに考えております。
○田中(昭)委員 具体的には余り御存じないようでございますから、その問題はそのままにします。 問題は、こういう統廃合をやったということは、法務省としましても、いま問題になっております行政改革、これが一つの政治課題になっておりますが、そういう中で統廃合が行われた。いまおっしゃるようにロスをなくしたというようなことが行政サービスの向上であるとするならば、今後法務省としてその成果を踏まえて、法務省の省内で他の部門について今後どのような行政改革を考えておられますか。これは大臣からひとつお答えいただきたいと思います。
○奥野国務大臣 内閣の方針もございますけれども、それなりに効率を上げる意味におきまして改革は進めていかなければならない、こう思っておるわけでございます。登記所の統廃合、いま御指摘のとおりでございますが、出入国管理組織も今回思い切って統廃合させていただいたわけでございまして、八ブロックに入国管理局を置きまして、それなりに系統立った組織にしたわけでございます。今後もその他の面におきましても、必要な改革は続けていかなければならないと思っております。
○田中(昭)委員 次の問題に移ります。 先ほども報告があったようでございますが、このたびの司法部内のいわゆる不祥事件、先ほどの概要を聞いておりまして思いますことは、まずこの問題が起こった原因についての対応の仕方といいますか、どうも部内的な処理において妥当であったかどうかというようなことを私は感じたわけです。先ほど、午前中にお話があった中で、たとえば昨年の九月にこの問題が発見されたということにおいて、この時点で破産事件の問題は問題として、別に配置がえをして複数の裁判官でその問題に当たらせたというわけでございますから、私は、破産事件の問題はそれでそれなりに進んでいくと思うのですが、問題は、今度報道されているような二人の方について、もちろん裁判官という身分保障、特別な保障があるわけでございますから、そういうことがあるならば、なおさらこの方たちに対して、最高裁も、それから現場の中においても、もう少し親切な対応をなされるべきではなかったのかという点と、それからいまこうやって報道が大きくなっておりまして、最高裁としてはいわゆる罷免の訴追請求がなされるだろう、裁判官会議も開かれたということでありますが、それでは訴追の請求はいつされますか。その点がわかっておればお聞かせ願いたいと思います。
○大西最高裁判所長官代理者 今回の問題につきましては、午前中にも申し上げましたように、昨年九月のころに、ある投書によりまして谷合裁判官のいわゆるゴルフの問題はわかっておったわけでございますが、それ以外の問題はむしろ今月になってから各紙に報道されたというふうなことでございまして、そこら辺のところまで最高裁判所が知っておったという意味で申し上げたわけではございません。谷合裁判官のゴルフ問題以外の問題はごく最近にわかったということでございます。 その問題に対する対応、二人の裁判官に対する処置が不親切ではないかというお言葉でございましたが、先ほど来申し上げておりますように、谷合裁判官については一応配置がえする。板垣裁判官の問題はもちろんわかっておったことでもございませんし、現に関与しておるものでもございません。結局ゴルフ問題がわかった時点におきまして一番肝心なことは今後の事件処理をまずきちっとすることであるということでございまして、当該裁判官に対する処置をどうするかということは、もう少し調査をしないと何とも言えるものではない。その調査は、午前中も申し上げましたように司法行政の介入というおそれもあることで、そう軽々にできることではないということで見守っておったというわけでございます。それで、現在、調査委員会で調査をしておりまして、新聞等では訴追云々の問題も報道されているようでありますが、裁判所といたしましてこの問題がそういう方向に固まっているというのでは決してございませんので、午前中も申し上げておりますように、あくまでも事実の確定がまず第一である。事実関係を十分に把握いたしませんことには、それをどうするかということを決めるわけにいかないわけで、現在、鋭意事実関係の確認に努めているところでございまして、そういう意味で処分をどういう形にするか、それがいつになるかということは結局その事実の確定を待ってということになるわけでございます。
○田中(昭)委員 まず事実の確認ということですけれども、それと司法行政の介入という問題、私たち国民としましては、これだけ報道され、これだけ国民の注目を集めている。それでいまおっしゃるたとえば訴追についても、事実の確認は、いまあなたは谷合さんのゴルフの問題は、とおっしゃいますね。ゴルフの道具をもらったことと招待されて行ったということとは、去年の九月の時点で本人も認めたわけでしょう。そういう事実は、司法という大事な立場に立つ裁判官として、また管財事件を扱っている方として、どうも国民はそういうことでは疑惑といいますか、司法官そのものにも行政に対しても信頼が持てるのだろうかなという感じがするのです。ですから、去年の九月で谷合さんはそのゴルフの問題を本人が認めたとおっしゃるのですから、では具体的に東京地裁でどういうことをやられて認めたのか、この辺を少し……。
○大西最高裁判所長官代理者 先ほどゴルフの問題と申し上げましたのは、破産裁判所といたしまして当該破産会社が経営しております。そのゴルフ場を事実上検証いたしました際に、管財人と一緒にゴルフのクラブを振ったという事実がわかったということでございます。ゴルフクラブを受け取ったかどうかというようなことはまさに今月になってからの問題でございまして、その時点においては全然わからなかったわけでございます。問題は、そういうことでそういう事実上の検証の機会にゴルフクラブを振ったこと、それも何回あるとか、どういう形だとかということはいろいろ調べなければいけないわけでございますし、それ以外にどういうことがあるかということもあるいは調べてみなければいけませんし、そこら辺のところが、その時点においては特に債権者が二つのグループに分かれまして非常にもめておるということをも体して考えますと、あるいは一方、債権者に対する加担というそういう問題も起きてくるわけでございますので、事件処理上適切ではないということで、しばらくの間もう少し様子を見ようということにしておったわけでございまして、この点も午前中も申し上げましたけれども、裁判所として決してこの問題はほおかぶりしようなんという意図は毛頭あるわけではございませんで、いずれかの時点においてはそれを十分に調査をしてその当該裁判官に対する処分も考えなければいけないということは前々から考えておったわけでございます。今回こうやって新聞で大きくなりましたので、そこら辺の司法行政の介入という懸念もそれほどでもなくなったということで、数日前から鋭意調査に着手した、こういう経緯でございます。
○田中(昭)委員 確かに背景には微妙な問題、投書等があったというようなことですし、あると思います。ただ、こういう問題は小さい問題だというようなことで処理されては、私は問題が残るという気がしてならない。これが刑事事件の云々というようなことまで報道されておりますから、このことについてはそれ以上触れませんが、問題は、いま裁判官、あなたが事情聴取されまして、裁判官会議にかけるわけですか、そういうことによって訴追の請求もいつなされるかわからない、こういうところですね。いま新聞ではもうある程度報道されたから、事実だから行政権の介入の問題もないとして調べておるというような御発言です。こういう問題については、昨年の例の安川元判事のいわゆる不祥事件もございました。これは裁判官として大変な逸脱行為であって、厳しい世論の指弾もありますし、やられておるわけですが、この問題と引き続いて、そしてまた報道によりますと、安川は退職金も年金ももらえる、法的に支給はやむなしというような見出しで出ております。そういう判断をされた、こういうこと等考えまして、こういうことでは国民の中からは、やはりこれはどろぼうに追い銭じゃないかというような感情が盛り上がっておる。こういう現状では、いわゆる特別な身分保障もあり、地位を与えられた法の番人としては、国民の信頼を裏切る何ものでもない、こういうふうに思うのですが、この事態に対して当局はどういうふうな対処をされるおつもりですか。
○大西最高裁判所長官代理者 ただいま田中委員御指摘のように、最近不祥事がたび重なっておりまして、こういう重ね重ねの不祥事につきましては裁判所としてまことに遺憾でございまして、国民の皆様に対しましてもまことに申しわけないことだというふうに考えておるわけでございます。そういうことで、先ほど来申し上げておりますように、できるだけ早急に事実を十分に調査をして処分を決めたい、こういうふうには考えております。 安川簡裁判事の退職金支給の問題についてもいまお触れになりましたけれども、御承知のように、去年の十月に安川判事、退職とみなされたわけでございますが、普通の退職の場合ですと、退職いたしますともう間もなく退職金支給ということになるわけでございますが、この問題につきましても、ただいま田中委員御指摘のように、国民感情から見てどうかということも十分頭に置きまして、法律の解釈上退職手当を支給しないというふうに解釈する余地があるかどうかということについても十分検討をいたしました。これは退職手当法という法律がございまして、この法律で支給しない場合というのを明確に書いてあるわけでございます。懲戒処分というようなことが書いてございますが、安川簡裁判事の場合にもそれに当たるかどうか、当たると解釈できないかどうかということについてもかなりの期間をかけまして十分検討したわけでございますが、現行法のたてまえとしては、特に退職手当法の解釈としてはどうしても先ほど来申し上げておりますように、いろいろな非難があるとしても、法律の解釈をここで曲げることはやはりできないのではないか、そういう結論に達しまして、いわばやむを得ず年度末にもなりましたので払わざるを得ないということで決定したわけでございます。 いずれにいたしましても、繰り返しになります。けれども、この不祥事に対しましてはまことに申しわけない、これに対しましては調査の上厳正な措置をとりたい、かように考えておる次第でございます。
○田中(昭)委員 この問題というか、安川元判事の問題、それと今度の問題、現行法上ではそういう判断をせざるを得なかったということはわかるのですけれども、その判断したことが、ずっとその経過がありますよね。それからまたもう一つは、公務員の中でも先ほどから言いますように特別の身分保障を受けておる司法部内の方、ですから例の安川の問題のときもいわゆるああいう非行がわかって、それで最高裁としてはやはり訴追の請求をなさって、それから御存じのとおり国会の訴追委員会でかがって弾劾裁判等の手続がなされる、その間、安川の問題の場合は半年以上になりますか、そういう期間があるわけですね。そこの期間の中でどういうことが行われたかということは、もう御案内のとおりでございます。そういう法の網をくぐって国民の常識からかけ離れたようなことが行われる現況ですね。これではまた、それこそ、行政も司法も国民の信頼ということを得なければならないとするならば、私はこれは問題であろう、こういうふうに思うわけです。今度の事件にしましても、いま最高裁が請求を考えてやる、ある期間が来る、日本全国にはどこかに首長選挙もあるわけですから、またそういうことをとられれば、先ほど言ったどろぼうに追い銭じゃないかという国民感情が残る。これはひとつ法務大臣、個人のお考えてようございますから、裁判所の方はお答えにくいでしょうから、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
○奥野国務大臣 裁判所の方で鋭意問題を的確にとらえようと大変苦悩の中で御努力になっているようでございます。私もやはりそのことが大切なことじゃないかな、こう思っておるわけでございまして、問題を伏せないで、洗いざらい的確に調査をする、そしてそれに従った処断をする、そのことが将来過ちを繰り返さない一番の力になるのじゃないかな、こう思っておるわけでございます。私は単に裁判官の問題だけに受けとめないで、検察全体でこういう問題を起こさないようにさらに心を引き締めて当たっていかなければならない、お互いに戒め合っておるところでございます。
○田中(昭)委員 もう少し平易に、ちょっと具体的にお尋ねしますが、やはり訴追の請求があった時点では、司法の上からもよくないことだという判断が一応下されたわけでしょうから、そういう時期にそれに相当する、言うまでもなく一般公務員であればそういうものがあればすぐ懲戒免職で、退職金も何ももらえないのですから、そういう処置をひとつ考えるべきではなかろうかというような気持ちもするのですけれども、これはひとつ法務大臣も一政治家としてそういう問題に取り組んでもらいたいと思うのですが、いかがでしょうか。
○奥野国務大臣 判事や検事は他の人たちよりもより一層身辺がきれいでなければならない、こう考えるわけでございますし、したがいまして、そういう問題につきましては厳しい法の処置をとられてもやむを得ない、むしろとらなければならない性格の社会だろう、こう思っておるわけでございます。そういう意味で、とにかくあとう限り的確に事態を明確にしようという御努力をなさっている。その結果、いまおっしゃいましたように、懲戒処分に値するということになれば訴追委員会にかけられましょうし、また贈収賄罪に当たるということになれば検察の問題になる、こういうことだろうと思っておるわけでありまして、今後の推移によってその辺の問題が決まってくる、こう思っておるわけであります。
○田中(昭)委員 どうもこの問題はまだすっきりしませんけれども、もう一つ問題がございますからそちらに入りますが、次は、難民条約の関係でございます。 難民条約が批准されるというような状況になっておりますが、人権の内外人の平等の原則を貫いていくとするならば、わが国も国内の関連法案の改正作業が進められなければならないと思いますが、いま法務省関係でどのような法案についての改正が進んでおりますか、簡単にお答え願いたいと思います。
○大鷹政府委員 難民条約に加入いたしますと、それに伴って難民認定手続、難民に対する旅行証明書の発給、難民を政治的に迫害されるおそれのある国には送還しないという原則の明文化であるとか難民の永住要件の緩和、こういう点を盛り込みました入管令の改正が必要になってまいります。そこで、この入管令の改正法案につきまして現在関係省庁と最終的な詰めを行っている段階でございます。
○田中(昭)委員 少しその内容に触れてみたいと思います。 いまの出入国管理令の一部改正で、いまおっしゃったように永住者の関係ですね、これは聞きますと何か協定永住者とか一般永住者というようなことがあって、それにはそれぞれの内容に少し差がある。いわゆる協定永住者は懲役七年以上でなければ強制送還されないとか一般の場合は一年以上で強制送還される、そういう差別があるようでございます。それはそれなりの理由があってだと思いますが、こういう難民条約が批准されるという前提に立てば、平等の原則からこの条約の批准を契機にそういう差別をなくするということはできないのですか。
○大鷹政府委員 協定永住者の退去強制事由と、それから一般永住者、この場合特に朝鮮半島出身者の法一二六該当者との間に違いがありますことは現実事実でございます。これはわが国が外交関係を持って二国間協定を結んだ国とまだ外交関係がない国との間にある程度の差が生ずるのはやむを得ないことかと考えております。 ただ、実際の運用におきましては、こういう法令上の差はありますけれども、大差がないように取り計らっております。現に、一般永住の場合でも懲役一年の実刑を受けたからといってすぐに退去強制するようなことはしておりません。いわゆる協定永住者と一般永住者との間では差がかなり縮まっております。 なお、この問題は難民条約加入に伴う入管令の改正問題とは直接には関係ない点でございます。
○田中(昭)委員 そうすると、関係ないとすればそういうことは当然いままでのうちに差がないようにしておかなければならなかったという、逆から考えればそういうこともありますけれども、それなりの理由がありましょうから……。 もう一つお尋ねしますが、永住許可の条件ですね。これも何か日本は永住許可の年数というのが明文化されていない、アメリカあたりは在住年数をはっきり明文化している、こういうことのようでございますが、これは今度の改正で明文化するような発想はあるわけですか。
○大鷹政府委員 確かにわが国の場合には、永住許可をするときの基準として、どのくらい居住歴があるかということについて明文の規定がございません。しかし、運用におきまして実際上五年程度の居住歴があるという場合を想定しております。運用でこのように取り計らっておりますので、法の改正は必要ないと考えておりまして、今度の改正法案にもこの点は触れておりません。
○田中(昭)委員 今度は難民が観光ビザで入国した場合のことでございますが、そういうふうに難民とみなされる人がビザの期限が切れたということになって不法残留者として強制送還される、こういうことがあるようでございますが、その中で難民と流民とあるそうですね。その流民の永住希望者に対して与えるということはできないのか。流民と難民というのは一体どういう区別があるか私よくわかりませんが、いずれにしろこういう流民の実態というものもわかっておればお聞かせ願いたいと思いますが、いかがでしょう。
○大鷹政府委員 難民と流民の違いについてまず御説明申し上げますが、難民は、たとえばインドシナ半島にかつて生活していて、それがこの間の政変の前後にこの三国を脱出してほかの国に行った、こういう人たちです。それから流民というのは、そういう人たちで、その後でタイであるとか台湾であるとか、そういう国の旅券を正規に入手して、そういう国の保護を得るに至った人たちです。 この難民と流民の違いと申しますのはい主言った点でございまして、難民が一度ほかの国に行ってほかの国の国籍を取って保護を受けることになれば難民性がなくなるというわけです。したがって、流民はいわゆる難民ではないということになります。こういう違いは国際的にも認められているところで、難民条約の中でもこの点は規定されております。 それでは、日本との関係でこの流民たちがどういう状況にあるかと申しますと、いま申し上げましたインドシナ半島を脱出して一たんタイとか台湾のパスポートをもらった人が日本への観光ビザを持って日本に入国してきました。観光ビザには期限がございますけれども、この期限を超えて残留しております。いわゆる不法残留をしておるわけでございます。こういう人たちが何人いるかということは実態がなかなかつかみにくいのでございますけれども、約二百名前後いるのじゃないかという人がおります。こういう方々はいわゆる不法残留でございますので、当然強制退去の対象になります。こういう方々に永住権を与えるということは、したがって考えられないことでございます。
○田中(昭)委員 せんだってから例の中国の残留孤児が見えられているわけですが、こういう方に対する日本における永住権というようなことについての何か特別の配慮を考えておりますか。これが一点。 それから中国では、そういう人たちは日本人扱いにされておるわけですね。ただ身元がわからないというために永住希望してもいろいろな権利が認められないというようなことがあるようでございますが、これは今後どういう方向で処理されるものであるのか、まずその二点をお答え願いたい。
○大鷹政府委員 中国残留孤児につきましては、日本国籍が確認されている方々につきましては全く問題ございません。日本国民でございますから、当然日本に来て永住される権利があるわけでございます。 他方、日本国籍が確認されていない方々につきましては、私どもとしては、一たん外国人として入っていただくという手続をとっております。 中国残留孤児について申し上げますと、この方々は血統的に日本人である可能性が非常に濃い方々でございますので、永住のための入国につきましては格段の措置を、法務大臣、この間、温かい思いやりのある措置をとるようにということで、そういう方向で現在検討しております。具体的には、すぐに永住ということで入国することはむずかしいかもしれませんが、法務大臣の特別在留許可一年を差し上げて、これをどんどん更新していって最終的には永住に結びつける、こういうことを考えております。したがって、実際には永住のための入国を非常に簡単にしたいというふうに考えて、現在方法を検討中でございます。
○田中(昭)委員 そういう方向に行くのは当然であろうと思いまして、法務大臣のその温かい配慮ということでございますが、法務大臣としての、ひとつ今後そういう面についての積極的な努力についての決意を聞いて、終わりたいと思います。いかがでしょうか。
○奥野国務大臣 おっしゃるとおりの気持ちで進めていきたいと思います。基本的に日本人だと、こう思っているわけでございますし、また、中国人と結婚いたしましても、積極的に国籍離脱の意思を表明していない限りは日本の国籍は失っていない、こういう判断に立っているわけでございます。できる限り温かく迎えられるように配慮していきたいと思います。
○森下委員長代理 和田耕作君。
○和田(耕)委員 私はこれから、この前判決のありました茅沼裁判ですね、小西航空三書というのですか、昔で言えば伍長の位にある男で、反戦自衛官の一番の親玉と言われている男なんですが、これに対する茅沼裁判についてきょうは御質問を申し上げたいと思っております。 この問題は、きょうは半時間ちょっとでありますから、裁判の経過等については申し上げる時間もありませんけれども、検察庁としてこれを告発した一番の理由は何だったのでしょう。
○前田(宏)政府委員 ただいま告発というお言葉がございましたけれども、起訴したということではなかろうかと思いますが、結局、お尋ねの事件につきましては御案内のような事案でございまして、当時、昭和四十四年の秋のことでございまして、騒然という言葉が適当かどうかわかりませんけれども、いろいろな過激的な事件もあった時代でございます。そういう情勢の中であのような事件が発生いたしたわけでございまして、内容につきまして、また法律問題につきまして、またそれを起訴するかどうかにつきまして、あらゆる角度から検討いたしました結果、あの時点におきましては起訴相当であろうという結論に相なった、かように承知しております。
○和田(耕)委員 それに対してこの茅沼裁判長は、小西の反戦活動の実態は軽微であって、それに同調する隊員が出たわけではない、また言動は、具体的怠業——怠業というのはサボタージュですね、怠業をそそのかしたというよりは理念上の不服従を呼びかけたものだった、そして第三点として、被告は当時二十歳の年齢で、若く、それだけに影響力はなかったというふうな判決になっておると思いますけれども、この判決に対しまして世間ではかなり強い反応を示しておると思います。大体新聞の反応を見ますと、朝日新聞は社説で、三月二十八日、いろいろ書いておりますけれども、この判決に限っては「十一年余もたった現在では、一反戦自衛官の個人的信条の表明という色彩の濃いビラ張りを、自衛隊法の争議行為扇動罪で起訴したこと自体に無理があったというほかはない。」こういうような言葉で評価しておるのです。これに対しましてサンケイ新聞は、これも大事な問題点ですけれども、いろいろと書いておられますけれども、「国の防衛をになう特別公務員である自衛隊員と、一般公務員を混同した判決として納得できない。検察側が控訴して上級審の判断を受けるよう望みたい。」こういうように評価をして、特別公務員である自衛隊員、つまり、国を自衛する一つの戦闘集団という意味を持っている自衛隊というものについての意味をもっとはっきりさせなければならないという意味だと思うのですが、そういう主張をなさっておられる。そしてまた、日経新聞は、これも社説で、これは「反戦自衛官はなぜ無罪か」という表題をつけまして、いろいろ解説をして、検察側の訴訟のやり方についての批判があり、そしてまたいろいろと問題点を指摘しておりますけれども、要約して「「法的には無罪でも、常識的には無罪ではあり得ない」ことを確認しておかねばなるまい。」こういう形で、一般の国民が、この問題を考える人たちが、これは法的にいろいろ詰めてみると、いまの法律、自衛隊法等から見れば無罪ということになったとしても国民は常識的にはこれを無罪とは考えていない、その点を確認しなければならないというふうに述べておるわけですね。そしてまた、これについて自衛隊側と検察側の、つまり裁判をしていく場合の基本的な立場がいろいろ変化したり動揺したりしていることを批判をしておる文もここにある。そのほかいろいろあると思いますけれども、そういうふうな評価をマスコミは、三つの代表的なのをいま述べたわけでありますけれども、しておる。そしてまた、あの裁判のあった後で、会田雄次さんという人がおるのですけれども、この人が、私は軍隊を余り好きじゃないけれども、しかし国を守るための軍、自衛隊であれば、自衛隊員が公然と上官に反抗したりあるいは命令を聞かなかったりすることが無罪であっていいとは思わない、そういう意味で一遍これは法律的な問題として考えてみなければならぬじゃないかという意見を述べておるのですね。この会田さんは、法が不備であれば直しなさいというような趣旨だと思うのですね。そういう反応があります。そしてまた、いま出ておる朝日ジャーナルにはこの裁判を評価した一つの論文を出しておるのでありますけれども、これは非常に大事な一つの評価の仕方であって、この茅沼裁判というのは憲法判断は避けた、御案内のように弁護士側は自衛隊は憲法違反だからということで憲法判断を求めたのに対してこの茅沼裁判は憲法判断を避けておるけれども、いろいろと判決の中の文章の中には、やはり憲法違反の疑いがあるというような文言が二カ所ある。そういうふうなことで自衛隊というものが、これは単に憲法問題は避けたと言われるけれども、実際上はそういう憲法に対する判断も含まれておるのだという趣旨の評価を朝日ジャーナルの四月十日号はしておる。つまりこれに対する評価の仕方はいろいろですね。 ただ、私、いろいろとこの判決文も詳細に拝見をしましたけれども、サンケイ新聞が社説で言っているように、「特別の公務員である自衛隊員」つまり国を自衛するための戦闘集団、そういう意識が裁判官の方に欠けておるのじゃないか、そういう気がしてならないのですね。そういうふうな問題を含めて、これはやはり国民が重要な、真剣な関心を持っておる問題でありますから、検察側としてはどうしてもこれは問題点として上告をして、そしてもっと真剣な、もっと広範な争いをしなければならぬじゃないか、憲法裁判を避けない方がいいじゃないか、そういうふうに思うのですけれども、全般としてそういうことについてどういうふうなお考えを持っておるでしょうか。これは刑事局長さんのほかに、大臣からも一般の感じを述べていただきたい。
○前田(宏)政府委員 本件の判決につきましては、ただいま委員の方から御紹介のありましたようないろいろな御批判といいますか御意見も出ておること、これは私どもも承知いたしておるところでございます。 ただ、いまこの判決につきましては、上告とおっしゃいましたけれども、控訴ということであろうかと思いますが、控訴をするかどうかということにつきまして検察当局におきまして慎重に検討を続けているところでございます。当該地検のみならず、東京高検あるいは最高検等も含めまして何回か会議も開き、そういう意味であらゆる角度から検討を続けておるところでございまして、いまのような点も十分踏まえながら結論を出すということに相なっておるわけでございます。 そういうわけで、この段階で余りはっきりしたことを申しかねるわけでございますけれども、内容的には法律問題ももちろんございます。また、その法律解釈を前提にいたしました事実の当てはめと申しますか、事実に対する適用の問題もございます。それぞれ問題がございまして、たとえば法律解釈につきましては、怠業的行為に当たるかどうかというようなこと、また扇動に当たるかどうかというようなことについての法解釈、また適用の問題、それぞれあるわけでございますし、またこの事案の内容をどのように評価するか。先ほどの御意見にも関連するかと思いますけれども、そういうようなこと、また冒頭お答え申し上げましたように、昭和四十四年当時の情勢とその後の年月の経過に伴います社会情勢の変化というようなこともいろいろと考え合わせなければならないのじゃないかというふうに考えておりまして、そういう点を含めながら検討しておるという状態でございます。
○奥野国務大臣 いろいろ御心配いただいておりますこと、私もありがたいな、こういう感じをもって伺わせていただきました。 事件は昭和四十四年のことでございますから、物情騒然としておった時代でございます。したがいまして、あの当時につきましては、いずれにじましても厳しい姿勢で対処していかなければとても社会の鎮静を期することが困難である、当然検察庁としては法に触れるという判断のもとに起訴してまいったものだと考えますし、その気持ちには恐らく変わりはないのだろうと私は思います。 しかし、それから十二年経過しておるわけでございまして、かなり世の中が変わってきたと思います。鎮静してきていると思います。また、会田さんの意見も御披露されました。自衛隊法を見ますと、出動命令がありました場合には、上官の命令に従わない不服従の場合には刑事罰をもって臨む、こう書かれておるわけでございますけれども、平素の場合には刑事罰で臨む規定がございませんから、自然行政罰、懲戒規定の処置にゆだねられるわけでございます。 今度の起訴してまいりましたのは、それじゃなくて、怠業的行為をした場合には刑事罰をもって問うという規定がございますので、それらの関連の規定で起訴していったわけでございますけれども、それを裁判官の方では、むしろ労使紛争の場合などを想定した規定のような判断が示されているわけでございます。裁判所側は裁判所側の解釈をしているわけでございますし、検察側は検察側の解釈をしているわけでございます。そこに食い違いが明確になってきているわけでございます。 この段階で、さてどうするかという問題でございまして、御承知のようにあの背後には反戦グループの支援もあるわけでございまして、なお反戦グループがいろいろな動きをしていくことだろうと思います。いろいろおっしゃっていただきますようなことも考えながら最終的には検察庁が総合的に結論を下すのだと思います。私としては、検察庁の最終的な判断にまちたい、私からとやかくのことを検察庁側に言うことは避けておきたい、こう思っているわけでございます。高度な判断を要する課題ではないだろうかな、私はこう思っておるところでございます。
○和田(耕)委員 私、この問題に特別の関心を持ちますのは、昭和四十七年に、この小西というのがリーダーになりまして、当時の自衛隊、陸上、航空、両方にまたがるのですけれども、仙台の駐とん地、福岡の駐とん地、静岡の駐とん地、そして東京の市ケ谷、それからもう一つ富山ですか、この五人の、大体一曹ですから曹長に当たる入ですか、その人たちが東京へ集まって、防衛庁の玄関に詰めかけて、そして当時のベトナム戦争反対とか、あるいは安保改定期の直後でありましたから安保反対とか、そして佐藤内閣の沖繩等の問題について反対等、高度の政治問題を取り上げまして、小西が指導的な役割りを果たしながらやった事件があるのです。これはいわゆる反戦自衛官。 このときに私は内閣委員会の理事をしておりまして、三回にわたりまして、この刑事責任をなぜ追及しないのだということで厳しく、当時よく防衛庁長官がかわりましたけれども、江崎さんが中心でしたが、その人にかなり強く要望したことがありました。そのときも慎重に検討する、自衛隊としてはそれは非常によくわかるし、やらなければならぬと言いながら、結局やらなかった。その経過がありますので、特に同じ小西の事件の、その前のこの事件についての裁判を非常に注目しておったのです。そういう意味で、この裁判について特別の意味をもって、ぜひともこれは慎重に、言えばこれは日本の自衛隊の基本的な性格に関する問題なんですね。いま大臣は、防衛出動を必要とするような事態については厳しい罰則があるけれども、平時ではないと言われましたけれども、つまりそういうところが検討しなければならない問題なんです。これはつまり、平時の訓練なり教育と、ある非常な事態が起こった場合と違えるなどということは、これはいけないことなんです。刑の軽重はあっていいのですけれども、処罰の方針として、平時の訓練はこれで、そういう事態になれば強くやるから安心だなんていう、そんなものじゃないと思うのです、戦闘集団としての自衛隊の訓練としては。また、そういうふうなことを規定しておる自衛隊法の中にもいろいろ規定がある。私は、これは一般的には六十一条の政治的行為の制限の項目で十分対処できる項目があると思うのです。六十四条の、現にいま争点になった問題もありますけれども、いま私が申し上げたとおり、自衛隊という戦闘集団、普通の公務員とは違う集団、しかも平時と非常事態とを区別できないような訓練が必要なんです。そういうことをもっと真剣に考えれば、ああいう普通の公務員が受けるような一般的な拘束を主体にしたような裁判は、私は不当だと思うのです、そういう意味で、そういう点をひとつ特に検討していただきたいと思うのです。いかがでしょう。
○奥野国務大臣 和田さんが御指摘になりますように、私も非常にいろいろな問題を包含した結果になったなと、こう思っております。立法政策上にも大きな問題が投げかけられている、こう私たちは受けとめて将来対処していくべきだな、こう思っております。
○和田(耕)委員 特に私、今度の裁判で、普通の公務員的な感覚が出ておる個所が二カ所あると思うのです。 これは朝日ジャーナルも違った意味で指摘しておるところですけれども、一つは、これは判決の要旨ですけれども、こちらは判決の全文のものですが、「隊員は、自衛隊法によりいわゆる労働三権が全て否定され、刑罰をもって団体の結成、争議行為等が禁止されているのみならず、個々の服務規律違反に対しても刑罰による制裁が種々規定されており、一般公務員とは隔絶した法的地位に置かれているところ、これら諸規定の合憲性についてはさておくとしても、このような国家公務員中最も厳しい制約が、自発的に入隊した隊員に対し一定の心理強制を与えることは明らかである」、なぜこういうような言葉が、この判決で必要だかちょっと私はわからない。こういうような、つまり自衛隊という特別なものが、「合憲性についてはさておくとしても、」隊員に対しては非常に強迫的な心理強制を持っておると、そういう状態に起こった事件だというふうにこの問題を提起する。 あるいはもう一つの個所は、これも朝日ジャーナルが取り上げて、これは大事なところで、実際上は憲法の判断をしておるのだというところなんですけれども、扇動罪が成立するかどうかが一番問題なんです。この「「せん動」の概念を一義的定型的な概念に構成することには限界がないわけではないが」、これはややこしい言葉ですが、その次が「表現の自由の不当な抑圧」、つまり表現の自由というのは憲法二十一条で決めた大原則の一つですね。「表現の自由の不当な抑圧を回避し、刑罰法令に不可欠である行為規範としての機能を合うさせるため、同罪の立法趣旨を損わない限度でこれを限定的に解釈する」、つまり、ややこしい言葉だからわかりにくいのですけれども、表現の自由という原則をできるだけ尊重しなければならないという趣旨の、つまりそういう限定のもとでの扇動罪の立証だというふうに物を言っているわけですね。こういうところに、つまり自衛隊法で規定されておる自衛隊の特別公務員としての、そうして自衛隊法の五十二条ですか、事があれば命を賭して戦わなければならないとも規定しておるこの戦闘集団の中での事件の扱い方としては、私はいろいろ問題があると思うのです。そういう点もひとつぜひとも検察庁としても検討をしていただきたいと思うのです。 要は、とにかく大事な問題であるし、そうしてこれはいろいろ国民が疑念を持っている。日経の社説で言っているように、たとえ法律的に無罪であっても、常識的には有罪だというのが国民の感情だというところがありますから、ぜひとも上告して、もっと上の段階でこういう問題の判断を仰ぐような措置をとっていただきたいと思うのです。これは、上告してもまた負けるのではないかなんということよりも、もっとこの問題をはっきりさせていくということが大事なことなんです。もしこれが、自衛隊の中でああいうふうな形のビラをまいて、そして服従しないように、特別の演習に対して反対するようにというようなことが何も罰せられないなんということになりますと、それこそ意味を持たないのです。平時はそれでもいいのだが、非常時にはそういうことは許されないということを言うべき団体ではないのですよ、この団体は。そういうものを含めて、ぜひともひとつもっと高い場での判断を求めていただきたい、こういうことを強く要望したいと思いますけれども、いかがでしょう。
○前田(宏)政府委員 ただいま御指摘の点につきましては、私どもといたしましても、また検察当局といたしましても検討すべき問題点の大きな点といたしまして十分考えているところだというふうに存じておるところでございます。 ただ、二点お挙げになりましたけれども、一点の方は、要するに被告の行為によってどういう影響があるかという、その危険性と申しますか可能性と申しますか、そういうことが乏しいのだということの根拠として、自衛隊の隊員についてはいろいろと厳しい状態に置かれているということを述べたもののように理解されるわけでございます。 また、第二点の表現の自由との関係、判決の表現上いろいろと問題があろうかと思いますけれども、言論の自由というものをやはり念頭に置きながら扇動というものの意義を考えていかなければならないということ自体は必ずしも誤りではないように思うわけでございます。 〔森下委員長代理退席、越智(通)委員長代理着席〕 それはそれといたしまして、先ほども申しましたように、いろいろな問題を含んでおるわけでございますし、さらにさかのぼって申しますと、この起訴は怠業的行為の扇動という形でとられたわけでございまして、その怠業的行為につきましては、自衛隊法の規定が国家公務員法なりあるいは地方公務員法なりと全く同じと言っていいような表現の規定でございまして、そういう観点からの見方というものもあるわけでございます。それと、いま御指摘になりましたような上官の命令に対する反抗なり不服従というものとは、もちろん関連はございますけれども、犯罪の成否という面からいたしますといわば別問題というようなことにもなるわけでございまして、いろいろと検討を要する点が多いかと思っておりますが、御指摘の点につきましては、これまでの部内での検討におきましても検討をしておりますけれども、なお重ねて検察当局にも御意見を伝えたいと思います。
○和田(耕)委員 防衛庁の方、見えていますか。——これは上告はぜひともしていただくこととして、もしこういう行動が無罪だということになるような法律であるとすると、私は自衛隊法を改正しなければならぬと思うのです。というのは、いまの日本の防衛の問題は、お金を何兆出すか、何%にするかなんてことよりも、現在ある自衛隊が実際に働ける自衛隊にならなければならないということなんですね。かかしの軍隊という言葉はおかしいけれども、かかしの自衛隊じゃ意味なさぬということなんです。そういうことはつまり、もっと弾薬を持つ必要があるとか、あるいは栗栖さんが指摘したような問題を実行するとかということと並んでこういう法規上の問題、当然戦闘集団の中では罰せられるべき問題が罰せられないで横行できるようなこういう問題はぜひとも直していかなければならない。これは予算をふやすことよりももっともっと大事なことなんです。そうしてまた、国を愛するとか国を守るとかいう精神をしっかりしていく、これは法務大臣は適切になされた問題だと私は思うのですけれども、こういう問題を含めてやっていくことが大事なんです。予算をふやすことが能じゃないんです、現在の防衛の問題は。そういうことを考える上からいっても、ぜひともこの問題について厳しく検察の方も対処していただきたいと私は思います。 若干意見を述べまして、大臣、ひとつ御所感を最後にいただきまして、質問を終わりたいと思います。
○奥野国務大臣 自衛隊のあり方につきまして非常に重要な問題が提起されていることを和田さんからいろいろな角度から御指摘いただいた、こう私は受けとめました。検察庁がどういう態度をとるかにつきましては、いま刑事局長が申しましたように、和田さんの御意見も御連絡して向こうの判断にまちたい、こう思います。同時にまた、立法政策上もいろいろな課題があるわけでございますから、政治に携わる者はやはりみんな考えていかなければならない事柄ではなかろうかな、こうも私思っているわけでございます。将来とも祖国防衛にりっぱに効果を発揮できる自衛隊に育てていくべき責任をわれわれ負っているのじゃないかな、こうも思っているわけでございます。大変重要な御指摘をいただいたと感謝申し上げておきます。
○和田(耕)委員 私、時間が来たと思ったらまだ五分あるようでございますけれども、これを残して、これで終わります。
○越智(通)委員長代理 次に、辻第一君。
○辻(第)委員 私は、まず国籍法の改正についてお尋ねをいたします。 男女平等の精神に基づく国籍法の改正は、いまや国際的趨勢になっております。フランス、西ドイツに続いて、最近スイス、デンマーク、スウェーデンにおいても父系優先血統主義を改め、子供の国籍取得について男女平等が実現をしておるところでございます。さらに一昨年十二月の国連総会で採択をされた婦人に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約、その第九条第二項で「締約国は、婦人に対し、子の国籍に関して男子と同等の権利を与える。」このように規定をいたしております。日本政府は昨年七月、コペンハーゲンにおいてこの条約に署名したことにより同条約の批准と国内関連法の一つである国籍法の改正を行わなければならない国際的責務を負ったわけでございます。ところが、政府の改正作業は遅々として進んでいないというのが現状ではないかというふうに思うわけでございます。 さて、現国籍法は、憲法第十四条の法のもとの平等、第二十四条の両性の本質的平等の保障に照らしてみても大変不十分なものであります。たとえば第二条は、出生による子供の国籍取得について、「出生の時に父が日本国民であるとき。」として父系優先血統主義を採用いたしております。外国人と結婚した場合、父が日本国民であるときは子供は日本国籍を取得できるが、母のみが日本国民であるときはそれができない。子供の国籍取得については父母同権は実現されず、旧国籍法同様父系優先血統主義がそのまま残されたわけであります。このため沖繩県を中心に深刻な無国籍児問題が多く発生しておるのが現状であります。また、日本国民を配偶者とする外国人の日本への帰化についても、居住年数などでは男女格差が見られるわけであります。 日本共産党は、このような現行法の弱点を改め、あらゆる分野における男女平等と婦人差別撤廃条約の早期批准を実現するために、この四月一日、「国籍取得上の男女差別をなくすために一国籍法改正についての提案」と同改正案大綱を明らかにしたところでございます。そして、一九七五年、一九八〇年、わが党の栗田翠議員が、またこの三月二日には小林政子議員が国籍法改正についての質問をしたところでございます。私は、さらに国籍法改正について質問をいたしたいと思うわけでございます。 まず法務大臣にお尋ねをいたします。 三月二日のわが党の小林政子議員の質問に答えて法務大臣は、国籍法改正について前向きの御発言、御返答をいただいたわけでありますが、きょうも国籍法の改正についての決意のようなものを一言お聞かせいただければと、このように思います。
○奥野国務大臣 お話の中にありました国連婦人の十年の中間年の昨年、婦人の差別撤廃条約に日本が署名をした、署名する段階において国籍法の改正を決意したわけであります。国籍法の改正を決意したから署名した、こうお考えいただいてよろしいわけでございます。現在は父系の血統主義、これを男女平等にしたいというわけでございます。そうしますと、母が日本人、その子供も日本の国籍を取れる。アジア全部は父系の血統主義をとっておるのが一般でございますから、どうしても二重国籍になるわけであります。やはり重国籍は避けられるものなら避けた方がいいことは十分御理解いただけると思います、よけいなことを申し上げませんでも。それにはどうしたらいいかということで検討しているわけでございまして、国籍法改正が遅々として進まないのではなくて、各国との交渉も重ね、十分な検討を加えて、絶対重国籍を発生させないということは不可能でありますけれども、重国籍はできる限り少なくしたい、そして国籍法を男女平等主義に改めたい、それにはある程度時間をかけなければならないということで時間がかかっておるわけでございまして、遅々として進まないという表現をなさいましたけれども、それはひとつ取り下げていただきたいなと。もう昨年以来、国籍法の改正は決意して、男女平等主義に改めるということで進んでいるわけであります。しかしそれには、重国籍をできる限り少なくするためには各国との交渉を十分深めておいて少なくしたい、こういうことで進んでおりますので、御理解を賜っておきたいと思います。
○辻(第)委員 いまそのようにおっしゃいましたけれども、やはり進み方が非常に遅いというのが現実だろうというふうに私は思うわけでございます。 それでは、準備作業の進行状態について、どのように進んでいるのかお尋ねをいたしたいと思います。
○中島(一)政府委員 国籍法改正のための準備作業でございますが、まず諸外国の立法例、制度並びに運営の実情を調査することが第一歩かというふうに考えまして、それから着手をいたしております。私どもの方から職員を派遣いたしまして調査をいたした国が四カ国ございます。それから外務省にお願いをいたしまして、在外公館を通じて調査をお願いしておる国が五十二カ国ございます。現在のところ約半数以上の国についてお返事をいただいているわけでありますが、あと東南アジアあるいは南米等のわりあい関係の深い国について若干お返事をいただいてない部分がございます。その資料の中に翻訳のないものにつきましては、私どもで翻訳も手をつけておるというような実情でございます。 それからもう一つ、帰化条件につきまして男女の間に問題があるということで、その点をどういうふうにするかということにつきましては、すでに帰化をいたしました外国人妻及び外国人夫につきましてその後の追跡調査なども着手をしたいというふうに考えておるわけでありまして、そういう諸外国の調査を前提といたしまして、それに加えてさらに法律の改正をいたしました場合に、各省庁の所管しております法律との関係でどういう問題点が出てくるかというようなことを、各省庁との間で事前の協議を行いたいというふうに考えております。 そういうものをここ数カ月の間に終わりまして、秋ごろからは審議会で問題点についての御審議をいただく、広く各界の御意見を聞く機会を持ちたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
○辻(第)委員 そうすると、数カ月でその調査を終えて、秋には法制審議会に諮問をする、このような段取りのようでございますが、そうなりますと大体のめどがつくのではないか、このように思うわけでございますが、法務大臣からそのめどについてお答えをいただきたいと思います。
○奥野国務大臣 私としても一年でも早く改正案を国会に提出したいものだな、こう思っております。 しかし、事務当局に聞いておりますと、来年改正案を提出することはとても無理です、こういう答えも聞かされておるわけでございます。しかし、幾ら遅くなっても国連十年の間に片づかないという醜態は避けなければいけないと思います。その辺で御判断いただきたいと思います。
○辻(第)委員 明確なめどが立たないということは残念なんですが、できるだけ早く実現のために御努力をいただきたい。重ねて要望をいたします。 次に、今度の国籍法の改正の問題について一番問題なところは、二重国籍の問題、これをどう回避するかということであろうと思います。私どもの今度の国籍法改正案大綱では、今度の改正によって「外国人である配偶者との間から出生する子は重国籍となる場合がある。国民的義務の生じる成人となって、重国籍による弊害が発生するのを回避するために、次の条項を追加する。「十五歳となった日本人で、第二条一号により外国の国籍を有する者は、二十歳に達する前にいずれかの国籍を選択し、日本国籍を選択する場合には、戸籍法の定めるところによりその意思を表示しなければならない。」」もう一つ、「重国籍者が二十歳に達した後、引き続き外国にある場合、五年以内に日本国籍を留保する意思を表示しなければ日本国籍を失う。」こういうふうに提案をしているところでございます。 なおもう一つ、「重国籍の回避のための措置を実効あるものとするために、各国に国籍離脱の自由の理解をもとめ、協定などの締結によって国際的な保障を確立していくことをあわせて提唱」をしているところでございます。この共産党の考え方、提案について法務省の御見解をお聞きをいたしたいと思います。
○中島(一)政府委員 先ほどからお話に出ておりますように、今回の改正、父母両系主義ということにいたしました場合に、やはり最大の問題は二重国籍の問題、二重国籍のままでいいか、二重国籍の解消策をどうするかというような問題であろうかと思います。 その二重国籍の解消策といたしまして、共産党の改正案大綱も拝見をいたしました。ただ、これは相手の国の国籍に関連をする事柄でありますので、相手国の国籍の離脱並びに放棄というようなものが果たして無制限に許されておるのかどうかというようなことにかかってくるわけでございます。そういう点をただいま資料を集めます際に重点を置いて調査をしておるわけでありますが、まだ十分整理をいたしておりませんけれども、やはり多くの国では、未成年者の時代には国籍の離脱を無制限には認めていない、あるいは兵役の関係で国籍の離脱について制限を設けておるという国が多いようでございます。そういう資料の整理を終わりまして、その点の実態関係を把握いたしました上でどういうふうにするかということを考えてみたいと思うわけでございます。
○辻(第)委員 次に、無国籍児の問題というのは、本当に基本的人権の上からも現実の面からもきわめて深刻なゆゆしき問題である、このように思います。この無国籍児を解消していくということは、本当に大変緊急かつ重大な課題であるというふうに思うわけでありますが、現在沖繩にはこのような無国籍児がたくさんおられるというふうに聞いておるわけでありますが、法務省としてはどのように把握をされているのか、お聞きをしたいと思います。
○中島(一)政府委員 問題になりますのはアメリカ系の無国籍児が中心であろうかと思いますけれども、この数字がはっきりとつかめません。プライバシーの問題にも関係をしてまいりますので、徹底した調査ができないといううらみもあったわけでございますけれども、数十名というような数字を聞いておりますけれども、はっきりした実態はつかめておりません。そういう方々に対しては抜本的な解決としては国籍法の改正、国籍取得に関する国籍法の条項を改めるということであろうかと思いますけれども、それまでの間は帰化によって救済を図ってまいりたいということで考えておるわけでございます。
○辻(第)委員 どうも把握が十分でなかったように思うわけであります。さしあたりこの無国籍児を解消するためには帰化というふうにおっしゃったわけでありますが、そのためにいわゆる簡易帰化というのがあるようでございますが、実際この簡易帰化の方法で日本に国籍を持った子供はどれぐらいあったのか、お尋ねをしたいと思います。
○中島(一)政府委員 従来、沖繩におけるアメリカ系無国籍児の実態については、先ほども申しましたように、必ずしもその実態把握が十分でなかったわけでありますけれども、今回、国籍法の帰化に関する部分を改正をするその資料といたしましてそういった人たちの実態調査をやってみようということで、この四月から着手をいたすということになっておりますので、追い追いにその実態が明らかになってくるだろうというふうに思うわけでございます。 帰化件数でございますけれども、ここのところそういった沖繩におけるアメリカ系の無国籍児からの帰化申請というものはございません。私どもは、そういう方たちの救済をなるべく厚くするためにということで、なるべく簡便な方法で帰化ができるようにということを考えまして、各地方法務局に指示をいたしておりますけれども、現実に事件が出てまいりません。その原因がどこにあるのかわかりませんが、ただいま申しました実態調査によってそういう原因もある程度わかってくるのじゃないか。その結果によっては、またいろいろと改善の方法があれば考えてみたい、こういうふうに思っております。
○辻(第)委員 その点につきましては、手続が簡易化されたと申しましてもやはり十数枚の書類が要るなど、まだ手続が繁雑なのではないか、あるいはまた、以前に比べますとそれでもかなり簡易にされたようですけれども、そのようなことが十分周知されていない、そのような方策が十分とられなかったというふうにも思うのであります。今後、実態調査をされた上、一刻も早くこのような無国籍児をなくすために御努力をいただきたい、こういうように思います。そして根本的に解決をするには、やはり法改正しかないというふうに思うわけであります。しかし、無国籍児に対する特別措置として「無国籍児問題を解決するため、改正法施行前に日本国民を母として出生じた者で、現に日本に住所を有し、かつ国籍のない者は、法務大臣に届け出をすれば、日本の国籍を取得することができるものとする。」こういうふうに私どもの改正案大綱にはしているところでございます。この点について法務省の御見解をお尋ねをいたします。
○中島(一)政府委員 経過措置として、どういう範囲の無国籍児に、あるいは無国籍児でございませんでも外国国籍人に日本国籍を与えるかということは、一つまた問題点であろうかと考えております。 ただいま御質問にありました共産党の改正案大綱にもそういう条項が盛り込まれておりますし、社会党の案にもあったかというふうに考えておるわけでありまして、私どもも、最近に父母両系主義に法律を改めました各国の経過措置等についても資料を集めております。そういうものを十分に検討いたしまして、正しい経過措置のあり方というものを考えてまいりたいと思っております。
○辻(第)委員 最後に、国籍取得上の男女差別をなくすためにも、また無国籍児をなくすためにも、国籍法の改正に積極的に御努力をいただきたいということを要望して、法務省への質問を終わります。 続いて、裁判所に質問をいたします。 裁判所ではどんどんと訴訟事件がふえておるというふうに思うわけでありますが、この五年ないし十年のところ、どのようにふえておるのか、お尋ねをいたします。
○梅田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。 全国の規模で見ますと、民事事件につきましてはこの十年の間に約七%増加いたしております。そのうち典型的な訴訟事件につきましては約六%の増でございます。刑事事件全般につきましてはこの十年間に一八%の増加、うち、刑事の訴訟事件につきましては、十年前に比べますと、ほんのわずかではございますが減少、こういったのが民事、刑事の全国的な事件の増減の概要でございます。
○辻(第)委員 そのような案件がやはりかなり増加をしておるというふうに思うわけでございます。 ことに奈良県は人口が急増いたしております。そういうことで、そういう案件が非常にふえておるというふうに聞いておるわけでございます。ところが裁判所にお勤めになっている労働者の労働条件は、事案がふえておるにもかかわらず、それに対して人員が十分にふえていない、しかも最高裁判所から訴訟の促進化が勧められておる、こういう条件もありまして、労働条件が大変悪化をしているというふうに聞いておるわけでございます。ことに奈良県では、たとえば書記官の人で、昼休みの時間の和解とか期日外の検証とか所在尋問や遅くなる法廷などが日常化してきている。その結果、仕事の持ち帰りが時間外勤務となって健康問題に発展をしている、こういう状況も来しておるというのが現状であると思います。そして現在このような状態は、奈良だけではなしに全国的な状態であるというふうに聞いておるわけでありますが、ほかにもタイピストの方なんか、奈良では二人頭肩腕症候群の方が出ておるということであります。それからもう一人は書痙の方が出ておる。こういうふうに、労働条件が非常に悪化をし、そのために健康の被害が出てきておる、こういう状況であろうと思います。私は、いまの日本の状況の中で、いろいろ困難な問題はあると思いますけれども、やはりまともな仕事をしていただく、しかも労働者が十分労働条件や健康の状態が保障されるということはどうしても必要な問題であるというふうに思いますので、ぜひ増員を含めた十分な対策をとっていただきたい、このように思いますが、その点について御返答いただきたいと思います。
○梅田最高裁判所長官代理者 委員仰せのとおり、奈良の地家裁につきましては、全国の平均的な事件の伸びに比較いたしますと、多少奈良地家裁の方が上回っているように思っております。ところで、全国の職員数のここ十年間の伸びは、人数にいたしますと七百七十六人の増でございまして、増加率は三・四%になっております。これに対しまして奈良地家裁についてみますと、百六十三人から百七十三人、十人増加いたしまして、その増加率は六・一%でございます。したがいまして、奈良地家裁に対しましては、事件数の伸びに応じた全国の職員増加率を上回る割合の職員を手当てしてまいっております。 私どもとしましては、裁判所の使命でございます適正迅速な裁判を実現いたしますために、また職員の負担が地域によって偏することのないように、健康で明るく仕事ができますように、全国的な視野から、事件数の伸びに応じた適正な職員の配置を今後とも心がけてまいりたいと思っております。
○辻(第)委員 それでは、職員の健康状態についてはどのように……。全国的並びに奈良の状態についてお答えをいただけませんか。
○大西最高裁判所長官代理者 職員の健康状態のお尋ねでございますが、御承知のように、一般の定期健康診断というものを定期にやっておりますし、特別の職種につきましては、法令の定めによりまして特別の健康診断というのもやっておるわけでございます。組織があり、大ぜいの人がおります以上、やはり健康を害する方もあるわけでございますけれども、ただいま仰せの奈良の場合特にどうかということで申し上げますならば、全国的に見て奈良が特段に健康を害している方が多いとか、そういうふうな報告は受けておりませんで、まず普通の状態なのではないかというふうに考えております。
○辻(第)委員 私も、何も奈良が特別健康の被害がひどいというふうに言っているわけでもないので、奈良もひどいけれども、全国ひどいのではないかと、こういうふうに考えておるところでございます。それで、いまの人員で適正だとお考えでしょうか。
○梅田最高裁判所長官代理者 裁判所職員の人員につきましては、裁判官、書記官、事務官、いろいろな職種がございますけれども、果たしてどれだけの人があれば適正な人員であるかということは、数字の面で申し上げるのはきわめてむずかしい要素があろうかと思います。私どもも、決して現在の職員数が理想的な数であるというふうには思ってはおりません。しかし、裁判官にいたしましても、書記官、それから家庭裁判所調査官、速記官、それらの職種につきましては、非常に高度の資格も要求されておりますし、養成にも限度がございます。また一方、質を下げるというわけにもまいりませんので、できる限りの充員を今後とも図ってまいりたいと思っております。
○辻(第)委員 さっき私が述べました書記官の方の例はほんの一例だと思いますけれども、こういうことでは本当に大変なことだと私は思います。これでは、健康の上でも、また、まともな仕事がだんだんできぬようになるというふうにも私は思うわけであります。やはり個人の努力には限界があると思うわけでありますので、ぜひ十分な体制をおとりになるように、重ねて要望していきたいと思います。 それから、昨年の八月の末だったか、書痙の人が出たのですね、字がうまく書けないという。そういう方の公務災害認定の手続をされたのが、ことしの三月ぐらいに結論が出るだろうと言われておったのが、また一、二カ月延びる、こういう話も聞いておるわけでありますが、こういう問題については、もっと早く、迅速に処理をされるべきではないか、こう思うわけですが、その点はいかがでしょう。
○大西最高裁判所長官代理者 辻委員御承知のこととは存じますけれども、いわゆる公務災害ということが起きました場合には、本人の申し出によりまして、原庁、奈良ですとか大阪ですとかいう原庁におきましていろいろな調査をいたしまして、その上で最高裁判所の方へ報告が上がってきて、最高裁判所の実施機関、最高裁判所事務総局がそれを決定するということになるわけでございますが、ただいま御指摘の問題につきましては実はまだ最高裁判所の方に来ていないのでございますが、結局奈良の方でやっておるのだろうと思いますが、いずれにいたしましても、御指摘のようにこういう問題につきましてはできるだけ早くごれをやらなければいけないということはまさにそのとおりでございますが、一般に手指の障害につきましては、非常に釈迦に説法でございますが、辻委員よく御承知のように、なかなかこれはむずかしい問題が医学的にもあるようでございまして、いろいろ専門医の御意見も聞き、資料もいろいろ集めて考えませんことにはできないという、そういう種類のものでございまして、一般の場合は非常に早くできておるのでございますが、こういうものにつきましては、ややほかのものよりおくれるということは確かに御指摘のとおりでございます。私どもの方に参りましたときには早くやりますし、原庁におきましてもできるだけ早くやって報告をするように常々指導もしておりますし、今後もそういう方針で指導してまいりたい、かように考える次第でございます。
○辻(第)委員 それから、話が細かいのですが、タイピストの方で頸肩腕症候群が起こっておる人があるのですけれども、いまの事情の中でこれもいろいろと問題があろうかと思いますけれども、いま大体八年間使われるそうですね。八年使いますと非常に機械が傷みます。そのために作業が一層の努力を要するということにもなろうかと思いますし、そのために健康の被害が進む、こういうふうにも思われます。そういう点で、健康を守るためにも、私は、せめて五年ぐらいで買いかえられるのが当然ではないかと思うのですけれども、その点はどうでしょうか。
○大西最高裁判所長官代理者 ただいまの御質問はタイプライター機械の更新期間の問題だというふうに存じますが、ちょっと私正確に、直接の所管でございませんので現在何年で更新しているかということはよく存じませんけれども、ただいまの仰せ、所管の局にも伝えまして、古くて非常に力が要って大変であるというような機械はそのまま放置しないように、そういうことのないように、早目に更新するように努力するように申し伝えたいと、かように考えます。
○辻(第)委員 それでは最後に、裁判所の労働者の方が、本当に労働条件がきっちり守られて、健康の被害が出ず十分な仕事ができる、そのような体制を確立していただくために一層の努力をしていただきたい、このことを強く要望して、私の質問を終わります。
○越智委員長代理 次回は、来る十四日火曜日午前十時理事会、午前十時十五分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午後二時四十八分散会