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94回国会衆議院1981/06/02

外務委員会 第18号

発言数
156
登壇者
13
会派数
2
開催日
1981/06/02

会議録

奥田敬和自由民主党

○奥田委員長 これより会議を開きます。  難民の地位に関する条約の締結について承認を求めるの件及び難民の地位に関する議定書の締結について承認を求めるの件の両件を一括して議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。土井たか子君。

土井たか子日本社会党

○土井委員 難民条約に言う難民と、日本の場合は閣議了解において難民というふうに考えられている難民とがございます。この関係についてまずお尋ねをしたいのですが、いま閣議了解で認めております難民の方々の数はどれくらいになっておりますか。

色摩力夫インドシナ難民対策連絡調整会議事務局長

○色摩説明員 お答えいたします。  先生御承知のとおり、インドシナ難民については閣議了解で援護対策を行っておりますが、二つのカテゴリーがございます。  一つは、定住難民でございます。総数は五月三十一日現在で二千二百七人。そのうち元留学生等で、インドシナ難民対策が発足当時新たに日本に定住のために入国を許可された者との均衡上、正規の滞在許可を与えた方々七百四十二名、それから新しい定住許可難民千四百六十五名でございます。  また、もう一つのカテゴリーは一時滞在難民でございますが、現在のところ、これも五月三十一日現在の統計の数字でございますが、上陸者総数四千五百九十八名、その間第三国に出国した者が三千三百三十名、現在一千三百二十九名滞在しております。     〔委員長退席、松本(十)委員長代理着席〕

土井たか子日本社会党

○土井委員 いまお話しになりました二つのカテゴリーにおける閣議了解で認めている難民の方々の中で、これはわかりませんけれども、考えてごらんになって、条約上の難民となると考えられる方々はそのうち一体何人ぐらいになりますか。

色摩力夫インドシナ難民対策連絡調整会議事務局長

○色摩説明員 お答えいたします。  大変むずかしい設問でございまして、一義的に明快に申し述べることはできませんけれども、実情をお話しいたしたいと思います。  インドシナ難民対策はすでに発足した制度でございます。難民条約による難民対策はこれから発足する制度でございます。したがって、これから発足する制度によってどのくらいカバーされるかということは、正直なところやってみなければわからないというのが実情かと思います。  ただし、それではインドシナ難民として現在の制度で入ってきたインドシナ難民の方々が難民条約に言う難民手続に乗ればどのくらいになるかという見通しがいまお答えしたことなんですけれども、もっと重要な問題は、果たして難民手続に乗るべきものかどうかということかと思います。  その点、インドシナ難民対策を担当している者として申し上げたいと思いますが、現在のインドシナ難民対策の難民の認定は、日本政府としては特に行っていないのが実情でございます。つまり、UNHCRが難民と認めた範囲において、たとえば定住難民であるならば定住許可要件に合致するか否かということしか審査いたしません。また、一時滞在難民は、UNHCRが難民として日本政府に受け入れるように公式に要請した者を難民としてそのまま受け入れる、そういう制度になっております。もし難民条約に言う難民手続に乗るべきものという方針を立てますと、いままでの制度を基本的に変えることとなります。というのは、UNHCRが認めた者を日本政府が再び審査し直すということにならざるを得ない。これは対外的にも信義の問題、信頼関係の問題もございますし、またそういう煩瑣な制度を当然に政府の方針として期待するのはいかがなものかという問題がございます。  したがって、インドシナ難民が自発的に難民手続を申請すればともかく、そうでない限り、政府の方針として難民手続に当然乗せるものという方針はとるべきものではないと考えておりまして、したがって、従来の政策のインドシナ難民、これから発足する難民条約に言う難民という二つの制度をしばらくは並行して運営していかざるを得ないと認識しております。

土井たか子日本社会党

○土井委員 いまお話のございました、自発的に御本人が申請なさればともかくという御発言でございましたが、この申請というのが上陸した日から六十日以内ということになっております。それから考えますと、これは法六十一条の二で決まっているのですが、この法施行前の者にとって施行後六十日というふうな扱いにお考えになるのかどうか、いかがですか。つまり、上陸した日がはるかにそれ以前であるという人たちに対する取り扱いですね。

渡辺幸治外務大臣官房外務参事官

○渡辺(幸)政府委員 ただいま色摩事務局長からお答えいたしましたように、現在日本に定住しているインドシナ難民あるいは一時上陸しているインドシナ難民すべてが難民条約上の難民に該当するかどうかということについては、具体的なケースに従って法務省において検討を加えた上で認定されるかされないかということになろうかと思います。すべてが難民条約上の難民に該当するかどうかということについてはやや疑問もあるかと思います。  他方、インドシナ難民が、一九七五年のインドシナ政変以来のインドシナ情勢の急激な変化に伴いまして、いわば命を賭して国を出たという状況から判断いたしますと、難民でないと包括的に申し上げるわけにはいかないだろうというのが私どもの考えでございます。  土井委員いま御指摘の、条約発効以前にすでに千四百名あるいは千三百名の一時上陸者がいるという事態を踏まえて、こういう人たちはそれではどうするのだということでございますけれども、それは条約発効とそれから関係国内法の発効を待って、その時点において認定申請を受け付けるということでございますから、現在日本に定住しておりますインドシナ難民あるいは一時上陸しております難民も、認定申請の権利は経過措置として当然認められるということになろうかと思います。

土井たか子日本社会党

○土井委員 その経過措置というのはどこで決まるのですか、どういうかっこうで決められてまいりますか。

渡辺幸治外務大臣官房外務参事官

○渡辺(幸)政府委員 非常に申しわけないのでございますけれども、いま法務省の担当者が参りますので、法務省から有権的にお答えいただきたいと思うのでございますが、出入国管理令の改正に伴いまして所定の手続が決められているものと承知しております。

土井たか子日本社会党

○土井委員 ちょっとその辺は、いま気安くおっしゃいますが、どうも不確かなんですよ。それで、法務省として有権解釈をなさるからそっちにゆだねると言い切ってしまわれているのですが、これは外務省としても難民条約に言う難民ということにひっかかってくるわけでございますから、やはり御存じでないと困る問題なんですがね。

渡辺幸治外務大臣官房外務参事官

○渡辺(幸)政府委員 失礼いたしました。  難民の地位に関する条約等への加入に伴う出入国管理令その他関係法律の整備に関する法律案、いま国会で同時に御審議いただいているわけでございますが、その附則の2、経過措置でございます。「この法律の施行の際に本邦にいる外国人に係るこの法律による改正後の出入国管理及び難民認定法第六十一条の二第一項の申請の期限は、同条第二項の規定にかかわらず、この法律の施行の日から起算して六十日を経過する日とする。」と規定されております。

土井たか子日本社会党

○土井委員 そこで、認定そのものの問題に少し歩を進めてみたいのですが、認定についての異議申し出というのがここでも再三取り上げられておりますが、七日以内ということになっているのですね。これは少し短過ぎるのじゃないかと私自身も考えていますが、ここで一つの問題が別にございます。それは、申し出をしたとき、すなわち退去強制令の効力を停止しなければならないのじゃないか。  外国の例を見てまいりますと、フランスやドイツなどではそういうことをはっきり法文の上でうたい込んでいるという例になっております。たとえばフランスの場合なんか、難民無国籍者保護フランス事務省設置法、そこの五条二号b項なんかを見ますと、退去強制令の執行を停止させるという条文をはっきり設けているわけなんですね。ドイツの場合だって外国人法についてそういう規定があるわけですが、これは日本の場合はどういうふうに考えられるのですか、退去強制令の執行停止というのが本来あるべき姿だと私は思っておりますが。

渡辺幸治外務大臣官房外務参事官

○渡辺(幸)政府委員 非常に申しわけないのでございますけれども、退去強制その他の問題については法務省にお答えいただくべきで、私どもとしてお答えできないのが実情でございます。ただいま委員部を通しまして法務省の方が急遽ここに参る予定でございますので、しばし御猶予いただければと思います。

土井たか子日本社会党

○土井委員 それじゃその辺はちょっと保留にしておいて、外務省の方としてお考えいただけるはずの問題に少し移ってみましょう。  認定をするということについて、認定されなかった場合の異議申し立て審査というのがありますね。これの審査は、これも再三再四取り上げられて問題にされたはずなんですが、第三者機関にすべきではないか、こういう意見が当然のことながらございます。日本の国内においてもこの声が大きいことは御承知のとおりなんですが、もう一つ、国連の難民高等弁務官事務所代表、UNHCR代表を加えるべきじゃないのかという問題がその中にあるわけです。フランスとかオーストリアとかイギリスの場合なんかは、これをきちっと加えて考えていますね。日本の場合にこれが省かれたのは、どういうところが理由になっているのですか。なぜ省かれたのですか。

賀陽治憲外務省国際連合局長

○賀陽政府委員 御指摘のように、若干の国におきましては第三者機関による認定あるいは民間の有識者を交えるというような配慮をしておるわけでございます。わが国におきましては、今般このような形で御批准を願いますのは、法務省を主たる認定機関といたしまして各関係官庁がこれを助ける、こういう形で難民認定については遺漏なきを期するであろうという認識のもとにそういう考え方をとっておるわけでございます。  御承知のように、難民認定は第一条の規定するような国籍、宗教、政治的意見その他のことを理由に迫害を受けあるいは迫害を受けるおそれがある、こういう規定になっておるわけでございますが、かかる事実関係の認定につきましては、かかる迫害あるいは迫害を受けるおそれというものが客観的に立証される必要があるわけでございまして、そういった点につきましては、政府全体としての機能によりまして法務省を助け、認定に遺漏なきを期するという考えでございます。

土井たか子日本社会党

○土井委員 いまの御答弁では、御答弁としてまことに承服できない中身でございますね。そんなことはおっしゃらなくてもわかるわけです。法務省が中心になって皆さんがお助けになって、日本の政府としてどう認識するかという、その御答弁に尽きているわけですが、これは実は国連の難民高等弁務官事務所代表というものを加えるところに意味があるということは、すでに他国の例を見ると非常に意味として立証されているんですよ。日本としてはそれを排除しているわけなんです。日本に任せなさい、日本の政府は間違いはしません、日本の政府が万事専権で何でもかんでも大丈夫やります、日本の政府の言うことなすことに間違いは断じてございませんという認識だろうと思うのだけれども、ちょっとこれは説得性に欠けて、説得力が弱いと思いますよ。

賀陽治憲外務省国際連合局長

○賀陽政府委員 今回の法務省の認定につきましての定めにおきましても、法務大臣は認定に当たりまして公私の団体に対して照会をなし得るという規定もございますし、現実問題といたしましてはUNHCRの東京における代行者に意見を徴するということは十分心がけるべきことであると考えております。UNHCRの代行者そのものを委員にしているという例が一つだけイタリーにあるようでございますけれども、わが国としては、ただいま申し上げました法務大臣の公私団体に対する照会ということを通じまして、その先にはやはりUNHCRの代行者も当然含まれますし、その点は遺漏なく必要によって対処するということになると思います。

土井たか子日本社会党

○土井委員 やはりセクト主義といいますか、閉鎖主義というか、独善的というか、何だかそういう気分がちらちらとうかがわれるような気が私自身はしてならないのです。  外務大臣、こういうことについてどうお考えをお持ちでいらっしゃいますか。

園田直自由民主党外務大臣

○園田国務大臣 いまの事務当局の答弁を聞いておって私もわからぬところがちょいちょいあるわけでございますけれども、難民条約を御審議願ってこれが発効することになれば、やはり日本はいままでと違って、難民に対する基本的な方針を堅持をして、そして国際的に決まったことを遵法するのではなくて、国際的な難民に対する問題を一つの力としていい方向へ引っ張っていくという気概が第一になければならぬと私は思いますが、それがどう具体的になるかは事務当局とも今後よく相談してやります。

土井たか子日本社会党

○土井委員 含みのある御答弁ですが、これは現状において幾ら事務当局にお尋ねをしても押し問答みたいなかっこうになるように思われます。  さて、具体的に条約二十三条の中身なんですが、公的扶助について関係を持っている部分です。生活保護法というのは従来外国人に対しては準用されるということになっておりました。これについては先日連合審査の席でも、わずかの時間でございましたけれども取り上げまして私自身質問をする機会があったわけでございますが、もし却下を決定されました場合、それについては行政不服審査請求ということが現状日本人に対してはございますけれども、外国人に対してはこれを認めておりません。この点は改められなければならない点だと思いますが、どうやってこの却下決定に対しての異議申し立てを受けていかれるわけでありますか。

佐々木喜之厚生省年金局年金課長

○佐々木説明員 所管の説明員が参っておりませんが、私、聞いております範囲では、生活保護についてはもちろんただいま御指摘のように従来から外国人について国民と同じような措置を行っているわけでございますが、難民に対しても権利救済の措置は十分に行われるというふうに聞いております。

土井たか子日本社会党

○土井委員 十分に行われるというふうに聞いておりますと言ったって、中身についてなるほどとこっちが思われるようなものがないと、聞かされただけではだれも大丈夫と思いません。どういう措置がこれに対して講じられるようになっているのか、さっぱりその中身については御答弁がないのですね。それじゃだめですよ。御答弁にならない。この点、お答えできる方というのはいま御出席の中にはいらっしゃらないのですか、いかがですか。

佐々木喜之厚生省年金局年金課長

○佐々木説明員 大変申しわけございません。担当の説明員が参っておりませんが、私の聞いております範囲では、生活保護の権利の救済ということはもちろん重要な事柄でございまして、行政庁の違法な処分に対しましては、最終的に司法府の判断があるという点におきまして権利救済が行われるというふうに聞いております。

土井たか子日本社会党

○土井委員 それでもどうもいまのは御答弁になってないのです。小学校の教科書のようなものを聞かせていただいてもしようがないのです。中身については具体的にどういう措置を講ずるということになっているか。通達でもって条例をひっくり返すわけにいかないのです。通達の中に盛っておりますということを言われても、それは恐らく実効性はないのだろうと私は思うのです。したがって、これに対してどういう行政措置をお考えになっていらっしゃるかというのは非常に大きな問題になりますよ。それはだめですか、お答えになれないですか、いかがですか。

佐々木喜之厚生省年金局年金課長

○佐々木説明員 外国人は、今回の条約が施行される以前からすでに現在におきまして日本国民と同様の措置の対象になっているわけでございまして、そういうもとにおきまして、この生活保護の権利につきまして訴訟が提起をされまして、これが裁判所におきまして判断の対象になっているというような事実があるわけでございまして、それと同じ措置が今回も難民に対しては適用される、かように聞いております。

土井たか子日本社会党

○土井委員 却下決定についての行政不服審査請求というのは、外国人については現に認めていないのでしょう。その点についての、つまり今後のあり方というのは従前どおりであっちゃならないはずだ、どういうふうに考えていらっしゃいますかということを私はお尋ねしているのです。準用とおっしゃいますが、従来どおり準用してもこの点は救済できないですよ。

佐々木喜之厚生省年金局年金課長

○佐々木説明員 二十七日の連合審査の際におきましても政府からお答え申し上げましたように、今回の難民条約に関連いたしまして生活保護の改正は必要ないということになっておるわけでございまして、現在外国人一般に対して対象とされます措置が難民にも適用されるということでございまして、先生のお尋ねの趣旨は、さらにそれを超えまして、外国人に対してまた別の措置を講ずべきではないかというお尋ねかと存じますけれども、それは今回の条約批准との関係では行わないというふうに政府としては決定をいたしておるわけでございます。

土井たか子日本社会党

○土井委員 そうすると、生活保護法という法律についての取り扱い方については、今回の条約批准というのは何ら関係なく、従来どおり一切問題は変わらない、このように認識しておいていいのですか。

佐々木喜之厚生省年金局年金課長

○佐々木説明員 難民条約第二十三条の規定するところの関係では、生活保護につきましては従来外国人に対しまして日本国民と同様の措置をとっておりますので、それをもって条約の義務は満たし得るということでございまして、その点につきまして従来と同様でございます。

土井たか子日本社会党

○土井委員 幾らいまのような御答弁を繰り返し繰り返しお伺いしても、受給審査で却下されたときに不服申請はできないというのが従来の生活保護法に対する取り扱いだったのですね。御案内のとおりです。受給審査の節に不服申請ができるというふうなことが確認されていなければ内国民待遇ということにはならない。したがいまして、この点に対しても内国民待遇はしませんということなんですねということを私は聞いているのです。

佐々木喜之厚生省年金局年金課長

○佐々木説明員 繰り返しお答えを申し上げておりますように、条約二十三条との関係におきましては、現在の行政措置で行っております一般外国人に対する処遇が、条約二十三条との関係におきまして義務を受諾し得る、こういうような考え方でございます。したがいまして、難民条約との関係におきまして法律の改正等を行いません。ただしかし、条約の趣旨の徹底を図るべく必要に応じまして通達等を発するという方針であるというふうに聞いております。

土井たか子日本社会党

○土井委員 通達を出しても、現状においていろいろ取り扱いを進めている現場においては、通達で事をひっくり返すということにはなかなかならない。いまの御答弁ではどうも納得できる御答弁ではないのです。先ほど来所管の者が出席しておりませんからという、おっしゃるとおりだろうと私は思う。やはりこれに対しての担当の方が出られた後に、改めてこの点については聞くことにしましょう、そのことについては余りよくおわかりになっていらっしゃらないようにも思われますから。  さて、条約の二十四条の(b)、社会保障の問題について少しお尋ねをいたします。  国民年金法、児童手当法というのは国籍要件を今度撤廃をしました。しかし、国民保険はどうなるのでしょう。いま地方自治体をずっと見てまいりますと、条例で全外国人の加入を認めているのはわずかなんですが、どれくらいだというふうに認識していらっしゃいますか。

古川貞二郎厚生省保険局国民健康保険課長

○古川説明員 お答えいたします。  国民健康保険法におきましては、市町村の区域内に住所を有する者は、その市町村の行う国民健康保険の被保険者とするというふうに法律上は明記いたしておりまして、それで、その適用除外といたしまして、第六条におきましては 前条の規定にかかわらずその一定の者については国保の被保険者としない。その中で、省令でいわゆる日本国籍を有しない者、こういうふうに規定がございまして、ただし日本国籍を有しない者ですけれども、日韓条約の永住許可を受けている者等におきましては国保の強制適用をする、こういうふうな国民健康保険の仕組みでございます。これは、市町村の国民健康保険というのは地域の実情において実施されているものだというような前提でこういうふうな取り扱いをしておるわけでございまして、私どもとしては、外国人についてはできるだけ医療の確保を図るようにということで、その適用の促進方をお願いをしているところでございます。  御指摘の、今日の適用関係でございますけれども、五十五年の四月一日現在で市町村の数は三千二百七十二ございますが、その中で外国人が居住しております市町村が二千五百六十九、そのうちで適用になっておりますところの市町村は二千三百六十九でございまして、九二%に達しているわけでございます。ただ、これは日韓協定に基づく永住許可も含めたものでございまして、条例だけで申し上げますと、千九百三十九の市町村が条例を決めている、七五%でございます。  ただ、先生御案内のように、条例で決めましても、その条例の中身については、全外国人を適用するとか、あるいは一定の国籍の者を適用するとかというふうなことで、まちまちでございます。ただ、主要都市におきましては、ほとんどの市町村、主要都市におきまして、全外国人を適用する、こういうふうな扱いになっているわけでございます。  なお、人数でございますけれども、私どもが承知しております外国人の登録者数は七十七万三千人でございますけれども、そのうちに国保の適用を受けている外国人は四十三万八千人ということで、おおむね六割相当の方々が国保の適用を受けておられる、こういう状況でございます。  なお、私どもとしては、全外国人にできるだけ医療の確保を図ろうということで、ことしの一月の全国の課長会議でも申し上げましたが、近く通達を出しましてその促進方を図ろう、こういうふうな方針で臨んでおる次第でございます。

土井たか子日本社会党

○土井委員 通達、通達とおっしゃるのですが、通達で条例をひっくり返すということはなかなかむずかしいし、現在、法的な前後の取り扱いからしても本来できることじゃないわけです。  それで、いまのるる御説明になった中身というのを私の手持ちの七九年の四月一日現在の資料に従って簡単に申しますと、全国の地方自治体の中で全外国人に加入を認めているのはわずか七%です。全外国人を除外している条例というのが二六%余りもあるのです。これは通達を出してやるべき必要があると認識されているのは、実は実態を掌握されればされるほどその必要性を痛感なすっているのだろうと思いますが、通達でもってこの条例はひっくり返せませんよ。強力な行政措置というのをどういう方向でさらにやるかということが問われている問題だと思います。どうでしょう。

古川貞二郎厚生省保険局国民健康保険課長

○古川説明員 お答えいたします。  ただいま申し上げましたように、国民健康保険は地域の実情に応じて進めていくということでございまして、たとえば財政状況の問題、あるいは所得の把握の問題、受け入れの問題等々、地方公共団体のそういった事情によって対応がまちまちになっているのが現状でございます。したがいまして、私どもとしてはそういった地域の実情を踏まえて、できるだけ条例でもってその対処をしてほしいということをお願いすると同時に、国民健康保険では所得の問題、つまり所得把握による保険料の収納の問題等もございますので、国民健康保険法上、たとえば特別調整交付金というふうな各市町村に対しますところの調整交付金というものもございますが、そういった面での配慮も考えつつ適用の促進方を図ってまいりたい、かように考えているわけでございます。

土井たか子日本社会党

○土井委員 課題が非常に今後にゆだねられているがゆえに、なかなかいまお伺いした限りでも、それはまことに結構ですと言いかねるような中身だと私は思うのです。  この条約二十五条にさらに歩を進めますが、二十五条の行政上の援助ということでの国内措置というのがまだとられていないと私は考えています。この証明書の発行というのはどうされるわけですか。認定を担当なさる法務省がその法務省の資料に基づいて証明書などを発行なさらないと難民は救われないというかっこうになるのじゃないかとも思われるのですが、どういうことになるわけでございますか。

伊藤卓藏法務大臣官房審議官

○伊藤説明員 難民認定は法務大臣が行うことになるわけでございますが、難民と認定された者に発給する難民証明書は法務大臣が発給することになろうかと思います。

土井たか子日本社会党

○土井委員 いまのはよくわからないですがね。それでは、その辺をきめ細かにちょっと申し上げましょう。  教育に関する経歴とか、受験資格の有無とか、婚姻関係とか、内容を具体的に立証するような法令上の措置というのが全くないのですね。そういう場合に、御本人についていろいろとその方の立場、その方の権利の行使に対する担保というのをどのようにお考えになっていらっしゃるかということを実はお伺いしているわけです。

賀陽治憲外務省国際連合局長

○賀陽政府委員 私から一般的なお話を申し上げまして、その後で担当の各省から具体例を申し上げます。  二十五条の御質問は、国内法制上どのように担保されるかということを一応ながめてみますと、現行法制のもとでこれは履行できると考えております。身分関係事項につきましては、難民に対して発給されることとなる外国人登録証明書及び同登録済証明書によって、氏名、生年月日、国籍、職業、世帯主との続柄等、基本的な身分事項の証明が可能となります。それから婚姻要件の具備証明等のその他証明、大学等への入学資格及び各種資格取得のための国家試験の受給資格を取得するために必要とされる証明等につきましては、そのための文書または証明書を難民が所持しておらず、かつ新たに取得することができない結果、これを提示することができない場合もあるわけでございますが、この場合には相当の証拠の提示さえあれば当該事実の存在を認めるとの運用を行うことといたしますので、この点について特に問題があるとは考えておりません。それから、相当の証拠の入手、これで十分と考えるわけでございますが、その証拠の入手につきましては、必要な場合には行政上可能な援助を与えることは言うまでもない点でございます。  そこで、若干具体的な点につきまして申し上げますと、婚姻要件具備証明書等につきましては、本人の申立書等にて認められることになり、また大学等への入学資格の証明につきましては、入管局における難民認定手続におきまして本人の学歴等を供述書に記載することとする予定としておりますので、入学資格を認定する関係機関の入管局に対する照会により、その資格認定が行われることになるわけでございます。

土井たか子日本社会党

○土井委員 非常に形式的に役所仕事でいまお答えが続いているわけなんですが、これは実際問題として難民認定の機関がヒアリングをなさるときにいろいろ事情聴取されるわけですね。したがって、いまのような事情も浮上してくるわけなんです。それに対して証明書を発行されるという一連のお役所の仕事が続くわけなんですが、それをいろいろなところに携帯して事を処される場合に、なかなか日本国内の事情からいたしますと、それで十分かというと、どうもいろいろな難儀というのがそのうち出てくるのです。これは予測することができない。いろいろな難儀が出てくる。その後うまくいっているかどうかという問題。認定だけでなく、あとその事情に対してフォローするくらいの心づもりがあってしかるべきだと私は思うのです。フォローをずっとしていく必要が、これは現実の問題としていろいろな点において必ず出てくる。このことは一体どこの所管であり、どこが責任を持ってなさるお仕事なんですか。

賀陽治憲外務省国際連合局長

○賀陽政府委員 土井委員の御指摘のように、この制度は難民条約に由来いたします新しい難民に対する特別のフェーバーの制度でございますから、新しいことでございますので、御指摘のようにその運用については十分周知徹底を図るとともに、あくまでフォローアップすると申しますか、末端まで徹底が図られるということをわれわれが留意すべきことは申すまでもございません。各証明書について、そういう努力をどこが行うかという点につきましては、関係所管のところで十分これをやってもらうということになると思います。

土井たか子日本社会党

○土井委員 これは実際問題として、どうしてもお役所からお役所にという窓口の行政上の連絡事務というかっこうにならざるを得ないという限界が一つはあるだろうと思うのですが、いろいろな実情に当たってみますと、とかくその窓口で思わぬ日本に対して不信の念や情けない思いに駆られる、そして場合によったら生きるかいすらなくすという場合だってあるわけなんです。そういうことを考えてまいりますと、いまの一連のお答えを聞いていてそれで結構だとはとても私は言いづらいのです。  先ほどの国民健康保険の問題についても、通達をいたしますから大丈夫というふうなことを中身に持った御趣旨の御答弁であったわけですが、いま条例を見てまいりまして、何も条例で規定のない自治体について実態をずっと当たっていった場合には、必ず外国人を排除しているという実態がございます。規定がないから外国人に対しても当然適用があってしかるべきなのに、逆なんですね。  規定がないところというのはうまくいっているかというと、そうじゃないのです。むしろ外国人を排除するのがあたりまえだというふうな認識で、わざわざ条例の上でそういう外国人取り扱いの規定を置く必要がないという認識でいままで取り扱いを進めてこられたという過去の例もあるわけでありますから、そういうことからすると、このあたりはよほど心して考えていただかないと、事は意に反して動くということすら出てまいりますよ。そういうことをついでながらひとつ申し上げておきたいと私は思うのです。  さて、ほかにもいろいろな問題点があるのですが、この条約の三十二条に関係のある問題、これについてさらにお尋ねをいたしましょう。「追放」という項目なんです。「国の安全又は公の秩序」以外は追放されないのですが、これに対して具体的にどう考えていらっしゃるかということが実は聞きたいのです。すでに日韓法的地位協定に基づいて、特別法の退去事由というのが現にございますね。それと同じように今回も考えられるかどうか、いかがなんですか。

伊藤卓藏法務大臣官房審議官

○伊藤説明員 難民認定を受けた者につきましても、退去強制事由に該当した場合には退去強制手続が行われるということをまず申し上げたいと思います。そこで、日韓協定における退去強制事由、これは非常にしぼられておりまして、現在の入管令の二十四条よりかなりしぼった退去強制事由が定められております。  そこで、難民の場合はどうかということになりますが、条約三十二条の一項にありますように「国の安全又は公の秩序を理由とする場合」には退去強制してもよろしいというふうに私ども理解しておりますが、これを国内法的に見た場合は、私どもとしては入管令二十四条に当たれば理論的には退去強制し得るというぐあいに考えております。

土井たか子日本社会党

○土井委員 日韓の場合は非常にしぼられているというふうな御答弁もいまございましたけれども、実はいま入管の二十四条に言うところの内容というのは包括的に規定されている内容で、国の安全に直接かかわるということなんです。やはりこういう問題については人権尊重という立場から考えていくと、包括的に恣意的判断がなされる余地というのが多ければ多いほど人権侵害の度合いは大きい。恣意的に判断されるという部面が少なければ少ないだけ、人権尊重という立場がそれだけ保障されているということも一般論としては考えられていい問題だろうと思うのです。  ひとつ具体的に、たとえばこういう場合を指して国の安全に直接かかわる問題だというふうに認識しているという特定規定というものを置く必要があるのじゃないかという意見が現にございますし、やはり退去と追放というのは非常に大きな問題を持っておりますから、より具体的な規定を置く必要を力説される側の理由というのも私には非常によくわかる気がするのですが、この辺は法務省としてどういうふうに考えていらっしゃるのですか。  それと、私が先ほど申し上げた日韓法的地位協定の場合は、実刑七年以上ということに決められているようですね。一般は実刑一年以上、入管令二十四条の場合はそういうことなんですが、この間の取り扱いについて一連の取り扱い上の配慮があったということを私たちも意に含めて質問しておりますので、ひとつそういうこともお含みの上での御答弁をいただきたいと思うのです。

伊藤卓藏法務大臣官房審議官

○伊藤説明員 先ほど申し上げましたように、日韓協定に基づきます退去強制事由は、わが国と韓国との歴史的ないろいろな事情から非常にしぼられたものになったと私ども理解しております。そこで、難民認定を受けた人の退去強制でございますが、今度の法改正で実は六十一条の二の八というものを設けまして、退去強制手続の結果、法務大臣が特に在留を許可するかどうかという判断をいたします際に、難民認定を受けた者につきましては元日本人であった者あるいは永住権を持っている者と同様の配慮をしろ、こういう規定を設けたわけでございます。     〔松本(十)委員長代理退席、稲垣委員長代理着席〕 そのような観点から、一般外国人とは違った人たちというふうに理解しておりますので、たとえ退去強制事由に該当しましても、法務大臣の裁決の際に特別在留許可の方向で処理がなされるのではないかというふうに考えております。

土井たか子日本社会党

○土井委員 もう一ついまの御答弁では釈然としないのですが、この点については細かく詰めていくのはさらに法務委員会の場所に譲ってやりましょう、そうでないと、ちょっときょうは時間的余裕というのが十分にそれを詰めていくための時間としては不十分だと私には思われますから。その点については非常に問題点が多いだろうと私自身考えております。  さて、この条約三十四条の「帰化」のところについてお尋ねしますが、社会への適応については生計要件を免除するという永住条件の緩和となっているわけですね。帰化については何にもないわけですが、この点をどのように考えていらっしゃいますか。

田中康久法務省民事局第五課長

○田中説明員 お答え申し上げます。  この帰化の関係につきましては、私どもは外国人が日本に帰化するかどうかにつきましては本人の自由意思に任せるべきものだと考えておりますけれども、本人が日本人になりたいという意思を持っている場合にはなるべく帰化を認める方向でいま処理しております。  今回、難民条約の批准に関しまして帰化の関係をどうするかということを私ども一応考えたわけでございますけれども、現在のところ、運用である程度のことは対処できる、運用の点で十分配慮するということで対応できるだろうということで、今回は国籍法の改正の関係では手当てをしてございません。  ただ、私どもの国籍法の方は現在改正準備作業をやっておりまして、この秋から審議会で審議を予定しております。その際には、当然帰化条件一般についてすべて見直しをやる必要があると考えておりますので、この難民認定をされた人たちについて生計要件をかぶせるのがいいのかどうか、この辺は当然検討の対象になるだろうというふうに考えております。

土井たか子日本社会党

○土井委員 そうすると、この点についてはいま御検討中ということなんですね。恐らく秋の見通しとしては、この生計要件というものは免除されるということになるであろうというふうに考えておいていいですか、どうですか。

田中康久法務省民事局第五課長

○田中説明員 これから審議の対象にして検討することになりますので、現段階でそうなるという約束はもちろんできかねます。ただ、当然その点は、今回の難民条約との関係上、検討の対象になるということはお約束することができると思います。

土井たか子日本社会党

○土井委員 何でもかんでもまだこれから先で、具体的に検討しながら通達を出すという問題ばかりが次から次から出てくるわけで、まことに心もとないのですが、この帰化の問題について、通常、帰化申請というのは、家族ぐるみ帰化となっているわけですね、現状は。難民についてはそうでない手続を用意されるのですか。個別帰化と申しますか、具体的に人権保障という点からすれば、家族ぐるみでなく個別帰化ということをやはり確定していかないといけないと私自身は思っているのですが、いかがですか。

田中康久法務省民事局第五課長

○田中説明員 現行法の帰化制度といいますのは、何も家族一体でなければいけないという明文の規定があるわけでございませんで、いわば運用でやっている点でございます。ですから、この規定を置く置かないは別にしましても、運用いかんを変えれば処理ができる問題でございます。  今回、この国籍法の改正の検討とあわせて、私どもとしては現在の運用を緩めるべく通達を出してございまして、ただ、どの限度で緩めるのがいいのかどうかということには若干いろいろ問題はございますけれども、できるだけ配慮したいということで、今回、運用の方は十分考慮するつもりでおります。

土井たか子日本社会党

○土井委員 これも運用上の問題としていま御答弁の方向で今後検討されていくということでありますから、ひとつその辺は、この条文にもございますとおり、迅速に考えていただくということも一つの大事なファクターだと思っています。  さて、さらに、条約から言うと十七条、「賃金が支払われる職業」の問題の中に入ると思うのですが、いま、公立学校の教員として外国人を採用しないという自治体がございますか、どうですか。

国分正明文部省初等中等教育局地方課長

○国分説明員 お答え申し上げます。  公立学校教員に外国人を採用することについてでございますが、御案内のとおり、現在、地方公務員法上、日本国籍を持たない者を地方公務員として採用してはいけない、そういった明文の禁止規定はございません。しかし、公務員の職のうち、公の意思の形成への参画等にかかわりますものにつきましては、日本の国籍を持たない者を任用することはできないという公務員の当然の法理から、公立学校の教員でございます地方公務員につきましても、外国人を採用することは一般的に言ってできないというふうに今日まで解釈され、運用されてきているということでございます。

土井たか子日本社会党

○土井委員 それは法的根拠はないのでしょう。人事院規則でそういう取り扱いをしているのじゃないですか。これは、国家公務員法、地方公務員法でそういう定めがございますか。ないはずです。法上の問題じゃないのですよ。人事院規則でその中身をゆがめてそういう運用をやっているというのが実態じゃないですか。余りその辺、ごまかし答弁をなさらないようにお願いしますよ。そういう点からすれば、それは法上の根拠があるなんということを白々しくおっしゃるなんというのはとんでもない話だと私は思うのです。いかがです。

国分正明文部省初等中等教育局地方課長

○国分説明員 お答え申し上げます。  ただいまも公務員法上明文の禁止規定はないというふうに申し上げたわけでございまして、これは公務員にかかわります当然の法理ということで解釈され、運用されているところでございます。

土井たか子日本社会党

○土井委員 そうすると、今回この難民条約を批准するに当たりましては、日本においてはそういう法理を変えていただかなければなりませんね。やはり公のこういう職業につくことができるという権利を日本人と同様に認めていくという方向で法理を変えていただかなければならないと思われますが、外務大臣、どのようにお思いになりますか。

園田直自由民主党外務大臣

○園田国務大臣 私が答弁するのは少し早いかとも存じますが、いまの各条ごとに質問をされている質問者の方の御意図を承りますと、非常に大事なことを質問されている、事務当局の同僚の諸君はこれに対していささか違う方向に答弁をしているというような気がいたします。  というのは、この難民条約がなぜこのように長くおくれたか。それは、難民条約を留保なしで批准をすると、それに伴って、いままでかたく守ってきた日本の法律体系が一角から崩れる心配があるということが、どこかにあって、そこで詰められるのをこわがっておくれてきた。その原因が、いまようやく意見がまとまって御審議を願う場合もなお未練がましく残っているような気がいたします。  というのは、問題は、難民条約は国籍要件撤廃というのが第一の問題、第二番目の問題は、人間として、生まれた国は違おうとも、自分の好きなところで居住してもいいという、この二つの理想から出てきておる問題であると思います。そうすると、本当はいまおっしゃるように、国内法を全部改正をして、そして留保事項なしで難民条約の批准をお願いするのが当然かもわかりませんけれども、それをやっていると延々としてあと何十年かかるかわからぬ、そこで、留保事項なしにまずこの条約の批准を、最大限各省の関係は詰めました、法務省もよく理解をいただいております、こういうことでお願いしたわけであります。  そうすると、この批准を、皆さん方が審議を終わられて、条約を批准してよろしいと言われた途端に、今度は、国内法は一つずつこの難民条約の大理想に向かって改正をしていかなければならぬという責任と義務が出てくるわけでございます。  ところが、どうも答弁を聞いておると、今度の難民条約の批准にはその点はせぬでもいいと言って逃れたんだ、だからもうあとは安心だと言わんばかりの答弁で、そこで困ることは通達と。これは間違いであって、本当は、おっしゃることもわかります、同僚諸君の心配もわかりますが、財政上の問題あるいは骨組みをどうやるかわからぬが、たとえば年金、保険あるいはその他のいろいろな法律を、そういう困難はあっても、一つずつなるべく早くこの難民条約の目的のために改正していくという考え方のもとに、しかしながら困難でございますから、こういう点はこういう時期になるべくこうやって、それまでは通達でやります、こういう姿勢でなければならぬのが、何かこう難を逃れて、あとはもう一安心だというようなことになってきている。これはこの条約批准をお願いするについてきわめて大事な問題です。  さて、その問題は、それなら、条約批准までは外務省が一生懸命になってやったが、今度は、その批准が終わった後国内法をやるということについてはだれが責任を持つのか、こういうことになってくるわけであります。そこで、いま内閣に設置されておる調整会議の室長というものも一つのあれでありましょうけれども、国外に向かっての責任の問題でありますから、やはり道義的責任はわが外務省が背負って、つらい問題ではありますが、各省に今後、いま御指摘されたような点は深く銘記をしておいてだんだんと改正していく責任がある、このように考えております。

土井たか子日本社会党

○土井委員 外務大臣の御決意のほどは、承って非常によくわかるのです。そして、いままでそういうお気持ちで非常に努めてこられたということも私たちはよく承知しているのです。でも、どうも事務当局の方の認識やその姿勢や取り扱いに対する努力はいまだしということばかりと申し上げざるを得ないところが非常に残念なんですね。  これはきのう私も文部省からいただいた資料なんですが、昭和五十五年に実施した昭和五十六年度教員採用試験について、受験資格に日本国籍を有することを示している全国の都道府県、指定都市、一道十八県五市。わけても、従来は日本国籍を有するということを明示せず外国人に対しても受験資格を認めていた県が、新たに今度は日本国籍を有することということを明示することに逆戻りした県すらあるのです。具体的に言うと静岡県がそうなんですが、こういうことに対してのお取り扱いを文部省はどうなさるのですか。これは深刻ですよ。大きいですよ。

国分正明文部省初等中等教育局地方課長

○国分説明員 お答え申し上げます。  五十六年度採用にかかわります教員採用選考試験におきます国籍条項を明記しておりますのは、ただいま御指摘のとおり十九道県五市でございます。  なお、今後これがどうなっていくのかということにつきまして、ただいま静岡のケースについて御指摘ございましたが、私ども現時点ですべての県の状況を今後の動向について把握しているわけではございませんけれども、県によりまして、国籍条項を実施要項の中に明記していなくても、先ほど申し上げました当然の法理という見解に立って、現実に外国人を採用していないという方針を立てているところがあるわけでございます。そのような場合に、むしろ教員志望の受験生にあらかじめそのことを明らかにしておいた方がいいという県も出てこようかと思っております。

土井たか子日本社会党

○土井委員 いまの御答弁のままでは、これはしようがないですね。文部省の姿勢一つで全体が変わると言ったって、大きな物の言い方ではないと私は思うのです。事は文部省のやり方一つにかかっていますよ。いまの御答弁のままじゃしようがないです。これも満足できる問題じゃないです。  一つとして、結構ですね、よくやってくだすっていますねと言えるようなことがないのが非常に残念至極なんですが、こういうお役所を相手に、こういうことはあってしかるべきじゃないかということをいろいろ申し上げても、どうももう一つ意味が生きないという思いもするのですが、批准に伴って扱いの変更を具体的にしたPR文書というものはどうしても必要視されてくるのじゃないかと私は思います、具体的な市民生活に一つ一つがかかわることですから。まだ行政官庁お互い同士の連絡だったら、やれ通達だ、やれ意見交換だといってそれぞれの場所でその都度いろいろできるとお思いになっていらっしゃるかもしれないけれども、企業について言うならば、そういうことの手はなかなか行き届きません。  いま私、ここに新聞を二紙持ってきましたが、この新聞は、あっちこっちいっぱいあると思うので、例として二紙だけ持ってきたのです。一つは、建て売り業者が宣伝している建て売り住宅の売り出しの宣伝の記事なんですが、これの「提携ローン」というところを見ますと、日本国籍を有しているということが必須要件になっているのです。もう一つはマンションのやはり売り出しの大きな宣伝記事なんですが、ここにも「提携ローンのご案内」というところに、わざわざ御丁寧に「融資の資格 日本国籍を有する方」というふうに書いてあるのです。こういう例は多いですよ。外国人一切締め出しですよ。相手にしていないのです。われわれは日本人だけを対象に考えていますよ、日本人でなければ問題になりませんよ、こういう姿勢です。  単に住宅の話だけを私は申し上げましたけれども、こういうことは山ほどあるのじゃないでしょうか。それを考えたら、きょう私は逐一、教育の問題や、職業の問題や、それから社会保障の問題や、入国管理の問題や、退去についての問題等々ずっとお伺いしましたけれども、どれもこれも、なるほどと考えられるような答弁は何一つない。御認識のほどを披瀝された外務大臣におすがりする以外にないのじゃないかという気持ちになる国民は山ほどいるに違いないし、外国人から見たら、もうおすがりするところはあそこしかないという思いに駆られるようなただいまの雰囲気ですよ。これではしようがないのじゃないですか。これで難民条約を批准すれば大丈夫などと私は決して思いません。猛省を促したいと思うのです。猛省を促してみても始まらぬかもしれません、日本の行政自身の体質かもしれない。首が新たにならないとどうにもならないかもしれません。それぞれの部署にいらっしゃる方々がかわらないとどうにもならないかもしれないけれども、しかし、これは現状において何とかしなければならない問題なんです。  私がきょう申し上げたことはそれぞれ必要最小限度のことで、これを言い始めたらまだまだあるんですよ。きょうは二時間しか時間がありませんから、その中で氷山の一角だけを取り上げてちょっとお尋ねしたということにすぎないだろうと私は思います。  そこで、色摩さん御出席ですから、そういう意味も含めて伺いますが、一時滞在の難民の方々に対しての庇護施設というのがないのですね。ボランティアの方々の数はしかとわかりませんが、全国で三十何カ所かに分散していま一時的に庇護をしているようなかっこうだということを私、承っているのですが、これはどうしても国の方が責任を持って何とかしなければならないのじゃないかと思いますよ。どのように考えていらっしゃいますか。

色摩力夫インドシナ難民対策連絡調整会議事務局長

○色摩説明員 先生御指摘のとおり、一時滞在難民に関しましては、現在、制度といたしましては、民間の慈善団体、宗教団体、社会事業団体などがUNHCRと直接契約をいたしまして運営しております。御指摘のとおり全国に三十カ所ほどございます。ところが、一時滞在難民の方々は定住難民とは質的に異なります。それは日本に定住の意思がない方がその大部分、全部と言って過言ではないかもしれません。したがって、日本の特定の地域社会にその事業を期待するのはそもそも筋からいって必ずしもすっきりしないということに問題点があると存じます。     〔稲垣委員長代理退席、委員長着席〕 したがって、中央政府が何がしの政策をもって何がしの事業をしなければならないという問題意識は、私ども十分に認識しております。  そこで、現在私ども具体的に考えておりますことは、民間の善意から、ボランティア精神から三十何カ所運営されておりますけれども、その運営においていろいろ試行錯誤でやってみまして問題が出てまいりました。それは、現在の制度では、日本の港に着いたならば、俗な言葉で申しますと瞬間タッチ方式でいち早く機械的に空きのあるところを見定めて収容をするという形になっております。したがって、所要の手続も十分にできない、事情の聴取も十分にできない、UNHCRがたとえば最終的な定住希望地をインタビューして確かめなければいけないわけですが、全国三十何カ所、これは非常に煩瑣で困難をきわめております。また、三十数カ所の収容施設の担当者も、合理的な仕分けと申しますか、質的な検討もなしにいきなり送り込まれてきますので、いろいろな面で困難をきわめています。  したがって、この際、全国の収容施設に行くまでの間、つまり港に到着してから収容施設までの間に、レセプションセンターと申しますか、そういう施設をぜひつくっていろいろな問題点を少しでも解消いたしたい、そういうアイデアが政府部内に持ち上がっております。内閣官房にございますインドシナ難民対策連絡調整会議の下部の幹事会においてもこの点はすでに何回か議論されておりまして、ぜひ実現したいものと考えております。  現在の問題点は、これをどこが所管するか、すなわち主務官庁いかんという問題それから先生御承知のとおり、特別厳しい財政事情の中で果たして合理的な形で予算措置が実現できるかという二つの大きな問題がございますが、何とか皆様の御支援を得て実現したいと現在努力中でございます。

土井たか子日本社会党

○土井委員 ぜひ努力をしていただいて、具体的にそれを実現させていただくということは非常に急務を要する問題だと思いますね。大変大切なことだと思っています。  さて、この難民の地位に関する条約を見ました場合に、一番ひっかかることを最後に少し外務省にじりじりと聞きたいと思っています。  国際法の上で、政治亡命者に対する庇護ということに対しては確立されていますか、どうですか。

栗山尚一外務大臣官房審議官

○栗山政府委員 政治亡命者に対する庇護権の付与については、今日の国際法においては確立しておらないというふうに考えております。

土井たか子日本社会党

○土井委員 日本としてはどのようにそれに対して考えていらっしゃいますか。

栗山尚一外務大臣官房審議官

○栗山政府委員 ただいま申し上げましたように、わが国も庇護権というものは認めておりません。

土井たか子日本社会党

○土井委員 庇護権というものは認めないというふうにおっしゃるのですが、亡命者に対しての庇護ということをしなければ、やはり人権尊重という点からして、特に今回の難民条約を締結するというこの立場からしてもとると思われるのですが、どうなんでしょう。

栗山尚一外務大臣官房審議官

○栗山政府委員 亡命者に対しまして国際法上の庇護の義務が国家としてあるというふうには考えておりませんが、他方において、政治亡命者に対して人道的な見地から配慮をする必要があるということは、先生御承知のようにかねがね政府も方針としては明確にしておるところでございまして、たとえば御案内のように昭和五十一年十月、当委員会で政府の統一見解というものをお示ししておりますが、その中におきましても、政治亡命者に対する人道的な配慮というものは十分考えて処置していくという方針が述べられておりまして、現在におきましてもこの政府の方針は変わっておりません。

土井たか子日本社会党

○土井委員 方針としては結構なんですが、しかし、いざとなったときにいろいろな取り扱いの上で、そのことに対して取り扱い方の基準をこういうふうに考えていこうというものがもう一つないために、ケース・バイ・ケースというふうな弊害が大変起こってくるということをわれわれは知らされるのです。政治亡命のこの問題を取り上げていくと幾つかの範疇に分類することができるのではないかと思われますが、亡命法のような法律をつくって、政治亡命の多種多様性に対して対応するということを考えている外国の例がありますか、どうですか。

栗山尚一外務大臣官房審議官

○栗山政府委員 大変不勉強で申しわけございませんが、私の承知している限り、外国で亡命法というような国内法があるかどうかについては承知しておりません。

土井たか子日本社会党

○土井委員 これは少し調べてください。あるのです。実際に外国の中で、政治亡命の多種多様性に対応して、法であるとか制度であるとか判例というものがつくられていっているという例がありますから、ひとつ見ていただきたいと思いますが、しかし、これについてよくわかりませんとおっしゃるくらいの認識だということをまずよくわからせていただきました。これは実は大問題ですよ。それで、抽象的にあれこれ一般論としてどうかこうかということをお尋ねしていてもどうもらちが明きそうにないので、いろいろな例もその都度少し私は披瀝しながら考え方をただしてみたいと思うのです。よろしゅうございますか。  政治犯を引き渡さないという不引き渡し原則というのは、国際法の原則になっていますかどうですか。

栗山尚一外務大臣官房審議官

○栗山政府委員 政治犯の不引き渡しというのは犯罪人引き渡しとの関連で種々論じられる問題でございますけれども、政治犯不引き渡しというものが国際法の規則として確立しているかと言えば、これはまだ確立するに至っていないということは、従来から政府が申し上げているとおりでございます。他方におきまして、政治犯不引き渡しというものが相当広く今日の国際社会におきましては慣行として行われているということは、これまた事実だろうと思います。

土井たか子日本社会党

○土井委員 そんな程度で答弁を済まそうといったって、そうはいかない例というのは何例もあるのじゃないですか。そして、いままでその都度外務省としてどうお考えになるかということがこの問題に対して非常に大切なメルクマールだったということも、事実の問題としてあるのじゃないですか。  たとえばというので一例挙げましょうか。尹秀吉事件というのがあります。二十六年の四月に勉学のために日本に入国をしておりますが、残念ながらこれは実は密入国でございまして、東京大学に研究生として入学をして、三十年九月まで勉学を続けてまいりましたが、三十七年の四月に密入国の容疑で東京入国管理事務所に収容されまして、入国審査官によって外国人登録令違反と認定されたのです。その認定について口頭審理、それから法務大臣に対する異議申し立てが出されまして、それで争って、結局、法務大臣から申し立て棄却ということの結果、三十七年の六月に送還先を韓国とする退去強制令書の発付を受けたのです。  ところが、ここで問題が出てきたのです。どういうことかというと、韓国へ送還されることは在日中の反本国政府に対するいろいろな政治活動が理由となって必ず迫害を受けるということで、その退去強制令書の取り消しを求めて東京地裁へ訴えたわけです。東京地裁の判決はどうだったか御存じですか。

伊藤卓藏法務大臣官房審議官

○伊藤説明員 東京地裁の判決では、政治犯不引き渡しの原則に言及いたしまして、退去強制令書発付取り消しを命じたと記憶しております。

土井たか子日本社会党

○土井委員 さすがにやはり伊藤さんですね、御存じです。これは四十四年の一月二十五日に東京地裁で判決が出まして、政治犯不引き渡し原則は一般国際慣習法として確立されているというのがその判旨の中身として明確に述べられている。ところが、そのうちこの事情が変わりました。どういうふうに変わったか御存じですか。

伊藤卓藏法務大臣官房審議官

○伊藤説明員 この事件は最高裁まで争われまして、二審判決を私ちょっと頭にございませんが、最高裁におきましては、政治犯不引き渡しの原則は国際的にいまだ承認された原則ではないという趣旨の判断がなされたと記憶しております。

土井たか子日本社会党

○土井委員 ちょっと伊藤さん、最高裁の判決ではそれがないのです。東京高裁に国の方が控訴されたのですよ。そうでしょう。御訂正くださいますか。

伊藤卓藏法務大臣官房審議官

○伊藤説明員 御指摘のとおりでございます。

土井たか子日本社会党

○土井委員 東京高裁に国の方が控訴したのです。国の方が控訴して、四十七年四月十九日に、政治犯不引き渡し原則は一般国際慣習法として確立されているとは言えないという判旨がここで出てきた。一審と二審とはまるで逆の判旨なのです。  それで、外務省としたら一体どうなのかと言ったら、いま、もやもやもやとあいまいなことをおっしゃるのですが、こういう一例一例、事件を通じてこの問題に対してどう認識するかというのは、実は決め手だったのです。いわゆるメルクマールです。外務省の認識がもやもやもやとしていれば、このときの人権侵害に対して救われる道は実はございません。本人は、日本においていろいろ活動をやった中で、考えてみると、自分の本国である韓国の反政府の運動をこの日本においてやっておるから、韓国に送還されたら迫害を受けるということは必定だということで、これは切々と訴えているわけですね。こういう場合の取り扱いというのは、それじゃどうなるのかということを、具体例ですから、一般論としてとか抽象論としてと言っているわけじゃないので、外務省としたらどうお考えになるかというのをひとつお尋ねしてみましょう。

渡辺幸治外務大臣官房外務参事官

○渡辺(幸)政府委員 私の記憶にない事件でございますけれども、外務省として、一般論としては先ほど栗山政府委員から御説明いたしましたとおり、わが国の政治亡命あるいは政治亡命を希望する外国人に対する措置としては、人権の尊重とわが国の利益との調和を考慮した上で決定するということでございます。  他方、いま御指摘のございました尹秀吉事件については、先生御指摘のとおり第二審で刑が確定したということでございますから、それについて行政府としてとやかく言うという立場にないのではないかというように思います。

土井たか子日本社会党

○土井委員 何だかよくわかりませんが、それじゃこういう場合にはどういう取り扱いをなさいますか、わが国の国益と人権というものをてんびんにかけてはかる、いずれが重いかということで決めたい、こうなってくるのですね。そうすると、この強制送還をすれば本国で殺されるに違いないとわかっている問題でも、日本の国益から考えて強制送還をあえてせざるを得ない、むざむざと殺人行為に対して手をかすということを犯すということも現、実の問題として出てくるのですが、あえてそれは結構だとおっしゃるのですか。

栗山尚一外務大臣官房審議官

○栗山政府委員 ただいまの御質問、難民条約の規定との関連あるいは一般的に言われておりますいわゆるノンルフルマンの原則との関連で申し上げれば、この難民条約の三十三条にもございますように、「締約国の安全にとって危険であると認めるに足りる相当な理由があるもの」あるいは「重大な犯罪について有罪の判決が確定し、当該締約国の社会にとって危険な存在となったもの」については、迫害が待ち受ける国であっても、その国に送還してもノンルフルマンの原則に違反することにはならないということになっております。

土井たか子日本社会党

○土井委員 これは聞けば聞くほど何だか背筋が寒くなるような思いもするのですが、それじゃ、ちょっとお尋ねを変えますが、この政治犯不引き渡し原則において政治犯というのはどのように考えていらっしゃいますか。これは政治亡命、政治的難民というのと同じように考えていいのですか、それとも違うのですか、どうなんですか。

栗山尚一外務大臣官房審議官

○栗山政府委員 政治犯というものが何かということにつきましては従来からも種々議論がありまして、非常に厳密な定義があるわけではございませんが、一般的に申し上げれば、特定の国の基本的な政治秩序に対する侵害行為を行うことが政治犯罪であるというふうに言われております。典型的な例としては、たとえば反逆罪でありますとか、革命、クーデターの陰謀、そういうものが典型的な例として挙げられますが、一般的に申し上げれば、いま申し上げましたような、国の基本的な政治秩序に対する侵害というものが政治犯罪であると言われておるというふうに思われます。

土井たか子日本社会党

○土井委員 そうすると、いまの御説明だと、政治亡命、政治的難民ということと同様の概念の範疇で考えておいていいわけですね、政治犯罪というのは。そう受けとめてよろしゅうございますか。

栗山尚一外務大臣官房審議官

○栗山政府委員 政治犯罪というのはただいま申し上げましたようなことでございますが、他方、いわゆる政治的な理由による迫害というものはより広い概念でございまして、いま申し上げましたような国家の基本的な政治秩序に対する犯罪行為がなくても、政治的な理由による迫害とその結果としての難民の発生というものは十分あり得るだろうというふうに考えます。

土井たか子日本社会党

○土井委員 どうも話が次から次へと違う方向にわざと持っていかれるような気がするわけでありますけれども、そうすると、さっき少し私が取り上げて例として示しました尹秀吉事件について言うならば、政治犯不引き渡し原則というのは日本としては認めているのか認めていないのか、それは本当のところよくわからないのです。裁判所では認めると言い、片やの裁判所では認めていないと言う。一般国際慣習法として確立されていないというのが高裁の判決要旨の中身として出てきたというにとどまっているわけなんですが、これはどうでしょうね、この事件について外務省としては、そうすると、本人が、本国である韓国に送還されれば自分の身が危険であるということを訴えているけれども、日本の国益からすると国益の方が重いから、あえて送還せざるを得ないということに相なるわけでありますか、いままでの御説明を総合すれば。

渡辺幸治外務大臣官房外務参事官

○渡辺(幸)政府委員 尹秀吉事件は、先生御指摘のとおり昭和二十六年に発生し、三十七年、三十八年に刑が確定したという事件でございます。その後、政府の方針といたしまして政治亡命に関する統一見解を昭和五十一年に御披露したわけでございますから、もしこの尹さんが、全く仮定の問題でございますけれども、たとえば政治亡命を希望したとした場合には、「迫害を受けるおそれの明らかな地域には送還しないものとする方針で」扱っているということで、別途の扱いになった可能性もあろうかと思います。

土井たか子日本社会党

○土井委員 ただ、別途な扱いというのは、それは事実について言うのなら別途な扱いになった点は結構なんですが、いまその事件についての取り扱いの中で非常に問題になったポイントについて外務省の見解を聞いているのです。どのように思っていらっしゃいますか。

渡辺幸治外務大臣官房外務参事官

○渡辺(幸)政府委員 非常に申しわけないのですけれども、先生御指摘の尹秀吉事件について、事件の詳細な内容、概括について承知しておりませんので、先生の御質問に対して直接お答えすることが非常にむずかしいわけでございますが、他方、御説明いたしましたように、「政治亡命を希望する外国人に対しては、政治的迫害の申立てが十分に根拠のあるものであるかどうかを検討し、根拠があると認められる場合には、人権の尊重と我が国の利益との調和を考慮したうえ、在留を認めること」もある。他方、「在留を認めない場合であっても、迫害を受けるおそれの明らかな地域には送還しない」という方針で確立されているわけでございますから、今後問題が発生した場合には別途の取り扱いがあり得るということを御説明したわけでございます。

土井たか子日本社会党

○土井委員 いまの御答弁からすると、先ほどの栗山さんの御答弁とニュアンスがちょっと違ってくるのですね。本国に送還すれば本人に対して明らかに身の危険があることが考えられるような場合には送還することをしないという御趣旨をいま御答弁になったわけですが、先ほどは、日本の国益とその人の人権とどっちが重いかということをはかりにかけてはかると、場合によったら人権が重いときもあるし、国益が重いときもある、国益が重い場合には、明らかに送還したら危険であることがわかっていても送還せざるを得ないという論法だったのです。大分ニュアンスが違うのです。取り扱いの上では断然違いが出てくるだろうと私は思うのですが、栗山さんの御答弁を訂正なさるのですか。

栗山尚一外務大臣官房審議官

○栗山政府委員 先ほどの私の答弁、若干口が足りなかったかもしれませんが、改めて申し上げますと、まず第一点、政治犯不引き渡しの原則が国際法としてあるかという御質問につきましては、政府としては国際法として確立するには至っていないと考えているということを申し上げた次第でございます。  次に、個々の事案について政府としてどのように配慮するかということにつきましては、先ほど私が申し上げました昭和五十一年の政府の統一見解というのがございまして、十分政治亡命者に対する人権は配慮をする、その内容といたしましては、政府としては迫害を受けるおそれの明らかな地域には送還しないものとするという方針で取り扱っていると明確に述べておりますので、先ほど来申し上げておりますように、この方針を今後とも堅持してまいる、こういうことでございます。

土井たか子日本社会党

○土井委員 さらに具体的に、こういう場合どうなるかということを尋ねてみましょう。  本人が政治亡命を求めているのです。日本としては出入国管理令というのがあって、それに対して御本人が違反をしていることが問題になっている場合があります。幾ら本人が政治亡命を求めてまいりましても、出入国管理令違反であるという理由で強制退去をさせている例もございます。したがって、こういうことを認めていくならば政治亡命が保障され得ない、政治亡命が認められる機会は完全に奪われてしまうという結果にもなっていくわけでありますが、これはどのように考えていいのでしょうね。

栗山尚一外務大臣官房審議官

○栗山政府委員 退去強制事由に該当する場合におきましても、先ほど申し上げましたような政府の方針に基づきまして、迫害を受けるおそれの明らかな地域には送還しないということでございまして、その場合には第三国への送り出しということを考えることになるだろうと思います。

土井たか子日本社会党

○土井委員 日本に亡命することを希望していても、第三国に送り出すのですか。本人はあくまで日本に亡命したいということを申し出ていても、その場合第三国に送り出すのですか。おもしろい論法ですね。いかがですか。

栗山尚一外務大臣官房審議官

○栗山政府委員 政治亡命者、わが国に亡命を希望する外国人につきましても、先ほど申し上げました政府の統一見解、もう一度その該当部分を申し上げますと、「政治的迫害の申立てが十分に根拠のあるものであるかどうかを検討し、根拠があると認められる場合には、人権の尊重と我が国の利益との調和を考慮したうえ、在留を認めることを適当とする事情のある者については」「在留を許可することとし、在留を認めない場合であっても、迫害を受けるおそれの明らかな地域には送還しないものとする方針」、こういうことになっております。

土井たか子日本社会党

○土井委員 私がいま聞いていることに対するお答えにまだなっていないのです、先ほど栗山さんはそういう場合には第三国に送るとおっしゃったわけだから。御本人が日本に対して亡命することを希望されているにもかかわらず、その希望を無視して、日本の法令違反であるという理由で本人を第三国に送ることができるのですかと聞いているのです。本来こういう問題は、亡命が認められるか認められないかということは、日本の法令違反にひっかかっているかひっかかっていないか、特に出入国管理令違反にひっかかっているかひっかかっていないかということに決定的に関係づけて考えられる問題ではなかろうと私は思っているのです。したがって、いまの問題、ちょっと整理をして答弁していただきたいと思うのです。

栗山尚一外務大臣官房審議官

○栗山政府委員 難民条約との関係で申し上げれば、先生御承知のように、第三十二条、第三十三条のそれぞれの規定がございまして、わが国の領域内にいる難民につきましては、特定の理由がない限り追放してはならない、あるいは迫害が待ち受ける国に対しては送還してはならないという義務があるわけでございます。したがいまして、そういう条約上の規定に該当する場合には、三十二条に基づいては追放してはならない、三十三条の場合におきましては迫害が待ち受ける国に送還してはならない、こういう義務が条約上存在するわけでございますから、わが国としては当然この義務を守っていかなければならない、こういうことになるわけでございます。

土井たか子日本社会党

○土井委員 そこまではわかったのです。  さあそこで、しつこいようですが、その政治亡命を求めている人が残念ながらたまたま日本の定めている出入国管理令違反に問われたというかっこうになった場合、本来ならば入管令違反だった場合には強制退去をするのが取り扱いとしては当然とるべき措置でございますね。しかし、その場合、強制退去をすれば恐らく本国において迫害を受けるであろうということが明白であるがゆえに本国に送還できない、しかも、本人が日本に対して亡命することを希望している、そういう場合においても、繰り返しになりますが、栗山さんは第三国に送るということを先ほどおっしゃったので、第三国に送るという権利が日本にはあるのですか、そして第三国に送るということを認められる根拠はどこにあるのですか、それをお尋ねします。

栗山尚一外務大臣官房審議官

○栗山政府委員 三十三条に該当する場合には、先ほど申し上げましたように、ノンルフルマンの原則がございますから、わが国といたしましては、当然当該難民あるいは先生のおっしゃいます亡命者を迫害が待ち受けている国に送還するわけにはまいりません。しかしながらその場合、三十三条の場合におきましては、これを第三国に送り出すことは禁止されておらないわけでございます。それから三十二条のもとにおきましても、国の安全または公の秩序を理由とする場合には合法的に領域内にいる難民を追放することは許容されておりますので、この限りにおきましては、入管令の所定の手続によりまして退去強制を行うことは条約上許容されているというふうに私は考えております。

土井たか子日本社会党

○土井委員 これは詰めていくと、厳密に言えばいっぱい問題が出てくるのです。いま第三国に送り出すということは禁止されていないという御答弁だったのですが、その第三国に対して本人がノーと言われる、そういう場合も亡命者の意思を無視して第三国に送ることができるのかどうか、これが一つ。また、その本人も不承不承そのことを了承したとしても、第三国に送ることが間接的に本人に対する迫害をもたらす状況を許すことになるという場合だってあると思うのです。そういうことがわかっていながら第三国に送り出すということを認めてよいかどうか。第三国と言ったって、それに対しての条件がいろいろあろうと思うのですよ。この辺は野放図に何でもいいのですか、どうなんです。

栗山尚一外務大臣官房審議官

○栗山政府委員 三十二条、三十三条の条約上の規定に基づきまして国内法を運用いたします場合に、当然人道的な配慮というものは必要であろうと思います。もう一つつけ加えさせていただきますと、何らかの事情によって第三国に送り出すことが事実上できない場合には、先ほど申し上げましたように本国に送り帰すということは条約上できないわけでございますから、何らかの形で一時的にせよわが国への在留を認めるという必要は当然出てこようかと思います。

土井たか子日本社会党

○土井委員 わが国に対して一時的にしろ在留することをやっとのことでいまお認めになるようなところまでたどり着いたのですが、本当にたどり着いたというのが実感です。なかなかかたいですね。  これは人権という問題に対しての一つのあり方を私はお尋ねしているわけですから、特に今回の難民条約の第一条にかかわる問題として私は基本的なことだと思っておりますので、いま急に考えたってそれは無理かもしれませんが、そこのところは心して考えて答弁をお願いしたいと思うのです。  そこで、それならばというのでお尋ねを進めてみたいのは、残念ながら戦争が行われた、ところがその戦争に行くことを忌避する、戦地派遣を忌避するという人が必ずどこの国にも出てまいります。特にベトナム戦争当時、アメリカ兵の中に戦地派遣を忌避するという脱走兵などがあったことは周知の事実で、実は日本がその舞台になった例もあるのです。この戦地派遣忌避を理由とする脱走について言うならば、軍事犯罪だと言ってもいいと思うのですが、軍事犯罪などの場合も、ある政治目的があり、政治信条があり、そしてそのままアメリカ本国に帰れば恐らく迫害を受けるであろう、そういう状況に当てはまると思うのですが、これはやはり一つの政治犯罪の範疇に入れて考えていいのでしょうか。日本に庇護を求めてきた場合には政治亡命の範疇に入れて考えていいのでしょうか。いかがですか。

栗山尚一外務大臣官房審議官

○栗山政府委員 先日も同種の御質問があったかに記憶いたしますが、軍隊から脱走してきたということ、あるいは戦争自体を忌避して軍隊から脱走してきたということのみによって、それを政治犯罪であるとみなすわけにはまいらないと思います。  他方におきまして、いま先生御指摘のように、その御本人がいかなる政治的信条あるいは宗教的な理由によって兵役を忌避して逃れてきたのか、あるいはそういう場合に本国に戻ればいかなる処罰を受けるのかということは、個々の事案に即して判断いたしてみないと何とも申し上げられませんが、場合によっては難民条約に言う難民に該当する者も出てこようかと考えます。ただ、一般論としまして、ただいま先生御指摘のような場合に、すべてそういう者が難民条約で言う難民に該当するかということになりますと、一般論ではなかなかお答えできないと私は考えます。

土井たか子日本社会党

○土井委員 一般論ではお答えできないとおっしゃるのですから、それでは具体例を挙げて申し上げましょう。  これは大分前の一九六七年当時の話でございます。いわゆる駐日キューバ大使館米国兵庇護事件と世に言われている事件なんです。ちょうどベトナム戦争に従軍していた一アメリカ兵が休暇で一九六七年の三月に日本に参りまして、四月三日に日本にあるキューバ大使館に亡命を求めたのです。この亡命の動機というのが、ベトナムにおけるアメリカの侵略戦争をこの目で見た、戦争に心の底から憎しみを感じたということに亡命の動機があったのです。ところが、この事件を知った在日アメリカ大使館が、当然だと思いますけれども、日米安保条約第六条に基づく地位協定の第十七条によって、このアメリカ兵の逮捕、引き渡しについて日本側の協力を正式に要請してきたのです。この要請に対して日本はこたえる義務があるのかどうか、まずこれを真っ先に聞きましょう。

栗山尚一外務大臣官房審議官

○栗山政府委員 御承知のように日米間には地位協定がございまして、地位協定の十七条に基づきまして引き渡しの協力の義務がございます。先ほど御指摘のケースにつきましては私は詳細を承知しておりませんけれども、地位協定に基づきまして引き渡しの要求のあった者につきましてはこれを引き渡す義務が地位協定上あるということでございます。

土井たか子日本社会党

○土井委員 引き渡しの義務があるので引き渡される、いまの御答弁からしたら結論はそうなるのですね。ところが、忘れてはならない条約が日米間にもう一つあるのです。  なるほどいまの御答弁どおりに、在日米軍地位協定の十七条の五項の(a)、六項の(a)、これによって在日米軍当局から在日米軍構成員の捜査、逮捕の協力要請があった場合は日本としてはそれに応じなければならない、引き渡しの要請があった場合は身柄を引き渡さなければならない、こうなつているところまでいまの御答弁で、したがって引き渡さざるを得ないという結論に恐らくなるのだろうと私は伺います。  ところが、一方で忘れてはならない日米間の条約と言えば、日米犯罪人引渡し条約なんです。ここの中では政治犯不引き渡し原則が規定されているのです。しかも、引き渡さないという原則は一方の締約国の義務となっているのです。これは政治犯ですよ。政治犯罪です。これはどのように取り扱うべきでしょう。外務大臣、こういう例について言うならどのようにお考えになりますか。

栗山尚一外務大臣官房審議官

○栗山政府委員 条約の非常に技術的な問題でございますので、私から御答弁させていただきたいと思います。  ただいま御指摘の日米犯罪人引渡し条約につきましては交換公文がございまして、この交換公文におきまして「この条約のいかなる規定も、」先ほど申し上げました地位「協定に基づいて有する両国の権利及び義務に影響を及ぼすものではない。」という合意がございまして、日米犯罪人引渡し条約と安保条約に基づきます地位協定との関係につきましては地位協定が優先するということが、日米間でこの交換公文で確認されております。

土井たか子日本社会党

○土井委員 その交換公文のどの点にどういうふうに明記されているのですか。

栗山尚一外務大臣官房審議官

○栗山政府委員 先ほど申し上げました日米犯罪人引渡しに関する条約に関する交換公文の第二項に、ただいまお読みしましたように、「この条約のいかなる規定も、」この条約と申しますのは日米犯罪人引渡し条約でございますが、「この条約のいかなる規定も、両締約国が千九百六十年一月十九日にワシントンで署名された」云々、これは地位協定のことでございますが、この地位「協定に基づいて有する権利及び義務に影響を及ぼすものではない。」ということが確認されております。

土井たか子日本社会党

○土井委員 そうすると、一方、これは国際法としてその原則が認められているということを先ほど御答弁になりましたいわゆるノンルフルマン原則から考えたら、この点はどうなるのですか。やはり地位協定の方が優先するのですか。

栗山尚一外務大臣官房審議官

○栗山政府委員 先ほど申し上げましたときに、必ずしも明確ではございませんでしたかもしれませんが、先ほど来御議論のあります政治犯の国際法的な取り扱いとの関連でございますが、ノンルフルマンの原則自体も一般国際法の規則として確立しているというふうには私ども考えておりません。

土井たか子日本社会党

○土井委員 そうすると、それと地位協定との兼ね合いからいっても地位協定を優先して考える、こういうかっこうになるわけですね。

栗山尚一外務大臣官房審議官

○栗山政府委員 日米犯罪人引渡し条約と日米地位協定との関係では、日米地位協定の方が優先するというのが日米両政府間の明確な了解でございます。

土井たか子日本社会党

○土井委員 そうすると、日米地位協定の中では戦争忌避の思想を持った軍事犯罪と申しますか、政治犯罪と申しますか、そういう戦争反対の立場から亡命を日本に対して希望しても、それは具体的には果たしおおせない問題である、こういう結論になると思いますが、外務大臣はいかがお考えでいらっしゃいますか。

栗山尚一外務大臣官房審議官

○栗山政府委員 大変申しわけございません。いまの先生の御質問をもう一度……。

土井たか子日本社会党

○土井委員 戦争を忌避する、戦争に反対するという考えをその個人の思想信条として強く持っている、したがって戦地に行くということを忌避するという立場で日本に対してアメリカ兵が亡命を希望する場合、この希望はかなえられないという結論に、先ほどからの質問、答弁を総合して考えたらなりますねということを言っているのです。したがって、この点について外務大臣に私はお尋ねをしたのです。そのように理解していいのですか、外務大臣。

栗山尚一外務大臣官房審議官

○栗山政府委員 先ほども申し上げましたように、日米地位協定十七条に基づきまして要求がありました者についてはこれを引き渡すというのが地位協定上の義務でございます。  それから他方におきまして、先ほど御質問のありました戦争を忌避して兵役から逃れようとする者、これがそもそも一般論として難民条約で言う難民に該当するかという点につきましては、そのようなことだけでは難民条約上の難民に該当するとはなかなか言えないであろうということは冒頭申し上げたとおりでございます。

土井たか子日本社会党

○土井委員 また話は逆戻りみたいなかっこうになるのですが、それじゃお尋ねをしましょう。本国の遂行する戦争に反対するために本国の軍法に対する違反行為を行った者というのは、亡命を要求した場合に政治亡命者として認定されるのですか、されないのですか。大臣、こういう場合どうお考えになりますか。これは大きな問題であり、大事なことですよ。

園田直自由民主党外務大臣

○園田国務大臣 大きな問題でもあるし、大事な問題でもあるし、法解釈でございますから、ここで即答するだけの判断を私は持っておりません。

土井たか子日本社会党

○土井委員 では、外務省としてはどういうふうに考えられるのですか。わが国では政治亡命者を庇護することを考えるというような制度がある。その中で、本国が戦争を行っている、その本国の遂行する戦争に反対するために本国の軍法に対する違反行為を行う、そうして日本に亡命を希望するその政治亡命者を、政治亡命者というふうに果たして日本としては認識しているのですか、この点、どうなんですか。

栗山尚一外務大臣官房審議官

○栗山政府委員 御承知のように、特定の事案が迫害に該当するかどうかというのはそれぞれ千差万別でございまして、ただいま先生おっしゃいましたような、本国が戦争を行っている、その戦争に反対だからといって兵役を忌避して逃亡する、それについて処罰されるということだけでは、これは事柄の性質上当然そういう者が難民条約でいう難民になる、あるいは政治亡命者になるというふうにはなかなかまいらないのだろうというふうに私は考えます。

土井たか子日本社会党

○土井委員 そこのところがなかなか問題なんですよ、実は。これについての例というのは、先ほど申し上げました事件とは別にイントレピッド号の航空兵の脱走事件というのがございます。事件は一九六七年十月二十三日に、在日キューバ大使館米国兵庇護事件から約半年後に起こっているわけでありますが、この中身においてもいま御答弁になった点というのが一つの大きな大きなポイントになっているのです。  外国のいろいろな例を見てまいりますと、犯罪人の引渡し条約上軍事犯罪人は引き渡されると規定している例も、引き渡されないというふうに規定している例もあるのでありまして、どのようにこれを考えるかということは大変大きな課題です。一般論としては、戦争遂行に反対する、それをやめさせる人道的な立場からもありましょう、個人の思想信条の立場からもございましょう、そういう政治的目的から行われました軍法違反行為というのは本来政治犯罪と見るべきじゃないのかというのが、大体大きな世界の流れとして現にあるのです。  しかし、ここに言うところの政治犯罪というのを政治犯不引き渡し原則における政治犯罪人の政治犯罪ということで日本としては認識し得ているのかどうかということが、実は大変大きな問題としてひっかかってきた。いま申し上げたのは、日米間において特にお互いが取り決めています地位協定というのがございますから、それとの兼ね合いでどう考えるかということにも相なりますが、その前提として、一般的に国際間においてどういうふうにこの問題を取り扱っているかというのは、それこそその前置きで大事に考えておかなきゃならないわれわれお互いの大前提だと思うのですよ。この点については外務省は研究を積んでいらっしゃるはずでありますが、どのように考えていらっしゃいますか。

栗山尚一外務大臣官房審議官

○栗山政府委員 迫害というものがいかなる場合に迫害を構成するかということは、御本人の行為と同時に、その行為によって本国においてどのような処罰を受けるかということとの兼ね合いでございまして、個人の生命、身体、自由というものに対する重大な侵害というものが迫害の存在の前提要件だろうと思います。  個人の生命、身体、自由に対する重大な侵害というものは具体的にいかなる場合かということになりますと、これはケース・バイ・ケースと言わざるを得ませんけれども、一般的に申し上げれば殺害でありますとか、長期間の拘禁でありますとか、あるいは不当に重い刑罰でありますとか、生活手段の剥奪、そういうものが迫害に当たるというのが、この難民条約の審議経緯におきましても、あるいはその他の学説におきましても言われておるところでございまして、ただいまおっしゃいましたようなことで単に軍法違反で罰せられるということだけでは迫害にはならないだろうということを、先ほど来申し上げておるところでございます。

土井たか子日本社会党

○土井委員 その論法からすると、本国に送還された場合の迫害があるかないかという問題がひっかかってくるわけですね。迫害があるというふうに思量される場合は、これは取り扱いはそのとおりですね。御本人が希望される亡命という線に沿って努力をせざるを得ない、日本としてもその亡命を受け入れてその権利を認めることにならざるを得ない、こうなると思いますが、外務大臣、その点はそのとおりに考えてよろしゅうございますね。

園田直自由民主党外務大臣

○園田国務大臣 論理的に申し上げると、犯罪人引き渡しよりも地位協定が上、地位協定よりも国際的な政治亡命者に対する慣例が上だと思います。しかしながら、軍規を犯し、あるいは脱走してきた兵隊さんが果たして政治犯であるかどうかという判断はなかなかむずかしい問題でありますから、その個々によって決まると存じます。

土井たか子日本社会党

○土井委員 その個々によって決まるというところはいわく微妙でございますから、これは後で一言申し上げたいと思うのですが、外交使節がその公館邸において政治亡命者を庇護するということが法的権利としてあるのかどうか、これはいつも問題になるのですね。日本の在外公館にその国の人あるいは第三国の人が庇護を求めてきた場合に、日本としては庇護するということが許されるのか許されないのか、どうなんですか。

栗山尚一外務大臣官房審議官

○栗山政府委員 いわゆる外交的庇護につきましては、国際法上確立した庇護というものは存在いたしません。ラテンアメリカ等におきましては、一部の国におきまして相互間に条約を結んで、締約国間同士、いま先生から御質問のありましたように、在外公館に政治犯を庇護するということを認め合っておる国がございますが、これはあくまでも条約の当事国間のことでございまして、一般国際法としては、いわゆる外交的庇護権というものは確立していないということでございます。

土井たか子日本社会党

○土井委員 それは、切り口上でお役所的答弁をなさるとそのとおりだと思うのです。いまおっしゃった中南米の問題は、ハバナ条約とかカラカス条約のことを指しておっしゃっておるのだろうと思います。しかし、それを問題にするときに、向こうはいつも、世界人権宣言でも亡命は認められているということをこの条約に加盟しているか加盟していないかにかかわらず考えてもらいたいということを必ず言っているのです。だから、そういうことが、庇護することは認められておりませんと言って済んでしまうのかどうかですよ。その助けてくださいと言ってきた人を突き出すときは、命にかかわるだろうと思っていても突き出すのですか。どうなんですか。

栗山尚一外務大臣官房審議官

○栗山政府委員 私は条約局の人間でございますので非常に純法律的な答弁を申し上げて、その結果が切り口上になるということで、申しわけございません。  そういう場合にいろいろ人道的な配慮が必要な場合もあろうかと思いますが、国際法の問題といたしましては、在外公館にそういう政治犯を庇護するということは、他方におきまして国際法上確立しております在外公館、大使館の機能というものの枠外の問題になりますので、そういうものとの均衡で、国際法の次元におきましても、そういう在外公館あるいは大使館の国際法で認められております適正な機能の範疇を出る行為でございますから、そういうものと庇護を求めてきております人間に対する人道的な配慮、さらには今度は相手国との外交的な関係、友好的な関係もいろいろ考慮をしなければなりませんので、ただいまの先生の御質問に対しては、直截なお答えは非常にむずかしかろうというふうに考える次第でございます。

土井たか子日本社会党

○土井委員 これはなかなかむずかしい問題なんですね。そのときそのときに一体どう考えるかという対処の仕方が大変むずかしいがゆえに、先ほど出しました友好国同士の中南米諸国の間の条約が私は実は意味があると思っているのです。こういうことに対してお互いが条約を締結して認め合おうじゃないかということを言うことは、私は大変意味があると思っているのです。  外務大臣はこういう行き方に対して恐らく意欲的に取り組まれる大臣であろうと私は憶測しておりますので、その意のあるところを一言お聞かせ願いたいと思いますが、こういう問題についてどういうふうにお考えになりますか。

園田直自由民主党外務大臣

○園田国務大臣 なかなかむずかしい問題でございますから、研究をさせていただきます。

土井たか子日本社会党

○土井委員 渋い御答弁なんですが、不用意にこういうのをあれこれと発言すると大変問題が起こるという要素をはらんでいる問題でもあります。しかし、それは前例としてあるのですね。こういうことをお互いの国同士で、庇護権を認め合おうじゃないかということで条約として決めている前例があるのです。全く前例がなければ別ですよ。しかし、前例があるわけでありますから、こういう点は日本としてもう少し意欲的に取り組んでいい、外交に課せられている一つの宿題じゃなかろうかと私は思ったりするのです。そういう意味で私は大臣にお尋ねしているので、木で鼻をくくったように、少し勉強してみますのでそれを済ましてしまうというわけにはいかぬと思いますが、いかがですか。

園田直自由民主党外務大臣

○園田国務大臣 おっしゃることはよくわかりますので、よく勉強いたします。

土井たか子日本社会党

○土井委員 それでは最後に、こういう一連の問題についてこういうことはどうだろうかということをちょっとお尋ねします。  庇護を受けていた政治亡命者が、本国の政府の官憲によってひそかに本国へ連れ出された、そういう場合があると思うのですが、そういう場合に庇護国は、本国の違法行為に対して、回復として当人の連れ戻しを権利として主張することができるかどうかという問題でございます。つまり、一国の主権を侵害して他国に連れ去られた者について、被侵害国の立場からすると、改めてその引き戻しを主張することができるかどうかという問題なんですが、こういう場合はどのように考えたらよろしゅうございますか。

栗山尚一外務大臣官房審議官

○栗山政府委員 外国の官憲がわが国の許可なくわが国の領域内で公権力を行使することは、当然のことながら国際法上認められません。仮にもそういうことが起こりました場合には、これは国際法違反の行為でありますので、それに従って、いま先生の御指摘の原状回復と申しますか、御本人をこちらに戻してくることがよいのかあるいはその他の方法がよいのか、それはそのときのケースによろうかと思いますが、いずれにしましても、そういう不法行為を行った国の責任解除のための何らかの適切な手段が講じられることをわが国として要求する国際法上の権利はあろうかと思います。

土井たか子日本社会党

○土井委員 これはお尋ねすればするほど、ケース・バイ・ケースというふうな趣旨でのお答えしかどうも出てこないようでありますけれども、亡命は一つ一つ事情が違います。それは事実です。しかし、一律にこれを処理しようということになってまいりましても、どうもそれはむずかしいということであるかもしれませんけれども、何らかそこに一定の基準があってしかるべきではないのかというのが私の物の見方なんです。  漠然とケース・バイ・ケースで事情が同一でないということを理由にいたしまして一定しない態度というのが、どうも外務省を初め日本の政府について言うならば、いままでの事例に当たれば当たるほど、こういう場合には右に行き、こういう場合には左に行き、何だかふらふらふらふらしていて、場合によったら、そのときそのときのその場しのぎで何とかやったらいいんじゃないかというふうな風潮すら見える。一番大切な、忘れてはならないことは、あくまでも政治亡命の問題については基本的人権ということを掌握しなければならないという問題なんです。この人権尊重という点を度外視してこの問題の取り扱いがなされた場合には、そのときは何とかその場しのぎでやっていけるのかもしれないけれども、後日必ずこれに対して何らかの報復なり制裁なりが来るということをあえて私は言わなければならない。  そういうことからすると、やはり政治亡命事件の処理の仕方について、その政治亡命という問題についての一つの基準というものをここで用意されてはいかがかという問題です。多種多様性に対応する一つの基準というものをやはり政府として設けていくという努力、これはいわば恣意的な判断というものを抑制することになりますし、政治的な裁量によって亡命者の人権が無視されるということを抑えていくことにもなるわけでありますから、非常に大切なことであると思います。先例としては、最初に私は申し上げた、栗山さんはよくそのところを御承知なかったようでありますけれども、諸外国では政治亡命のいろいろな多種多様性に対応することのために一応の目安といいますか、基準といいますか、そういうものをつくる努力をいたしておりまして、それは法の形になったり、制度化されたり、判例の中での積み重ねを判例法として後追認して、具体的にそれを当てはめて考えるという努力をやっております。  日本としては、この点の努力というのがいままでの事例に当たれば当たるほど欠如しているのじゃないかと言わざるを得ない。今回の難民条約を締結をする予定になっておりますこの審議の最後に当たりまして、この点についての大臣の御決意のほどを私はぜひぜひ伺っておきたいと思うのです。いかがでございますか。

園田直自由民主党外務大臣

○園田国務大臣 御発言のような問題を処理するに当たっては、人権尊重ということを第一義に考えて処理すべきことは私も賛成でございます。それなくしては問題を間違えます。したがいまして、その方向でどのような基本方針で処理したらいいか、これはよく検討いたします。

土井たか子日本社会党

○土井委員 その検討とおっしゃるのは、それでまことに結構なんですが、どういうふうな方向で、その指針といいますか、基準といいますか、そういうものを形としておつくりになるのか、それとも心構えとして単に心の中だけで持っておればいいという問題にとどまるのか、どうなんでございますか。

園田直自由民主党外務大臣

○園田国務大臣 基本的には人権尊重ということを第一義にしてその基本方針を決めますが、これを決める時期もなかなかむずかしゅうございまして、いまうかつに出しますと、基準そのものが政治的な配慮の中で一つの枠をつくられては大変でございますから、そういうことも考えて検討をいたします。

土井たか子日本社会党

○土井委員 まあ非常にいわく微妙な問題で、政治的な配慮というのもそういう意味では大変大切だと思われますから、ひとつその点の努力を切に促してこの質問を終えたいと思いますが、最後に、きょう申し上げたのは全部が具体的な市民生活にかかわる事柄なので、特に難民条約に言う難民、それからさらには閣議了解に言う難民、そういう方々に向けて事と次第がわかるようなわかりやすいPRの小冊子といいますか、パンフといいますか、それから手続をとる場合の手続に対しての手順をわかりやすく述べた中身、そういうものを用意しておくということはどうしても大切だと思われるのですが、これをひとつ用意されますか、どうですか。

賀陽治憲外務省国際連合局長

○賀陽政府委員 人権規約を御審議いただきましたときに小冊子を準備いたしましたが、ここにございますものでございます。このほかにもございますが、今回も、重要な御指摘でございますので、その方向で対処いたします。

土井たか子日本社会党

○土井委員 断っておきますが、その方々は日本語を読めないのですよ。日本語をよく読めない。日本語の研修を三カ月一生懸命受けられても、読み書きが十分にできるのはとうていむずかしいです。だから、そういうことからすると、大体その方々に対して十分意味のあるようなパンフにしていただかなければならないということも私は申し上げていることを了解していただきたいと思いますが、その点もよろしゅうございますね。

賀陽治憲外務省国際連合局長

○賀陽政府委員 大変細かい御注文でございますが、その方向で努力いたします。

土井たか子日本社会党

○土井委員 終わります。

奥田敬和自由民主党

○奥田委員長 これにて両件に対する質疑は終了いたしました。     —————————————

奥田敬和自由民主党

○奥田委員長 これより両件に対する討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  まず、難民の地位に関する条約の締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕

奥田敬和自由民主党

○奥田委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  次に、難民の地位に関する議定書の締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕

奥田敬和自由民主党

○奥田委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました両件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥田敬和自由民主党

○奥田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————

奥田敬和自由民主党

○奥田委員長 次に、国際情勢に関する件について調査を進めます。  ただいま委員長の手元に、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党及び新自由クラブの六党共同提出に係る難民問題に関する件について、本委員会において決議されたいとの動議が稲垣実男君外五名より提出されております。  この際、本動議を議題とし、提出者から趣旨の説明を求めます。高沢寅男君。

高沢寅男日本社会党

○高沢委員 ただいま議題となりました動議につきまして、その趣旨を御説明いたします。  案文の朗読をもって趣旨の説明にかえさせていただきます。     難民問題に関する件(案)   現在世界各地で発生している難民問題は、人道上放置できない重大な国際問題であるとともに、世界の平和と安定を維持する上から早急にその解決を迫られ、そのための各国の救援努力が要請されていることにかんがみ、政府は左記事項につき特段の努力をすべきである。     記  一、難民条約の締結は、人権の分野における国際協力の拡充の観点から評価されるが、条約の精神を踏まえ、条約の運用に当たってはできる限り人道的な配慮を行うこと。  一、定住インドシナ難民については、これらの者が、日本社会に適応できるようできるだけ配慮すること。  一、国際の平和と人権の尊重が不可分の関係にあるとの立場に立脚し、人権擁護に関する条約の批准促進に努めること。   右決議する。 以上であります。  何とぞ各位の御賛同をよろしくお願いいたします。

奥田敬和自由民主党

○奥田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  ほかに発言の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  稲垣実男君外五名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕

奥田敬和自由民主党

○奥田委員長 起立総員。よって、本件は本委員会の決議とすることに決しました。  この際、外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。外務大臣園田直君。

園田直自由民主党外務大臣

○園田国務大臣 ただいま御採決になりました決議につきましては、御趣旨を十分尊重して、今後とも一層努力を重ねてまいる所存でございます。

奥田敬和自由民主党

○奥田委員長 お諮りいたします。  ただいまの決議について、議長に対する報告及び関係当局への参考送付につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥田敬和自由民主党

○奥田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、明三日水曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時五十九分散会

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