法務委員会 第3号
- 発言数
- 225 件
- 登壇者
- 18 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1980/11/20
会議録
○委員長(鈴木一弘君) ただいまから法務委員会を開会いたします。 まず、委員の異動について御報告いたします。 昨十九日、官本顕治君が委員を辞任され、その補欠として近藤忠孝君が選任されました。 —————————————
○委員長(鈴木一弘君) 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案を便宜一括して議題といたします。 まず、政府から順次趣旨説明を聴取いたします。奥野法務大臣。
○国務大臣(奥野誠亮君) 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を便宜一括して説明いたします。 政府は、人事院勧告の趣旨等にかんがみ、一般の政府職員の給与を改善する必要を認め、今国会に一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案及び特別職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案を提出いたしました。そこで、裁判官及び検察官につきましても、一般の政府職員の例に準じて、その給与を改善する措置を講ずるため、この両法律案を提出した次第でありまして、改正の内容は、次のとおりであります。 第一に、最高裁判所長官、最高裁判所判事及び高等裁判所長官の報酬並びに検事総長、次長検事及び検事長の俸給は、従来、特別職の職員の給与に関する法律の適用を受ける内閣総理大臣その他の特別職の職員の俸給に準じて定められておりますところ、今回、内閣総理大臣及び国務大臣等を除く特別職の職員について、その俸給を増額することとしておりますので、おおむねこれに準じて、高等裁判所長官の報酬並びに次長検事及び検事長の俸給を増額することとしております。 第二に、判事、判事補及び簡易裁判所判事の報酬並びに検事及び副検事の俸給につきましては、おおむねその額においてこれに対応する一般職の職員の給与に関する法律の適用を受ける職員の俸給の増額に準じて、いずれもこれを増額することといたしております。 これらの改正は、判事補及び五号から十七号までの報酬を受ける簡易裁判所判事並びに九号から三十号までの俸給を受ける検事及び二号から十六号までの俸給を受ける副検事にあっては昭和五十五年四月一日から、その他の裁判官及び検察官にあっては同年十月一日から適用することといたしております。 以上が、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨であります。 何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますよう、お願いいたします。
○委員長(鈴木一弘君) 以上で趣旨説明は終わりました。 これより質疑に入ります。 質疑のある方は順次御発言を願います。
○寺田熊雄君 いま法務大臣からお話がありました裁判官、検察官の給与法、これはいま御説明を承りますと、判事補及び五号から十七号までの報酬を受ける簡易裁判所判事、九号から二十号までの俸給を受ける検事及び二号から十六号までの俸給を受ける副検事、これはことしの四月一日から、その他の裁判官及び検察官にあっては十月一日から適用を見るということになっておりますが、これは閣議決定を経たことでありますのでいまさらどうしようもないのかもしれませんけれども、この結果として、俸給の下の者が上の者よりも実収が上回るというような事例もあるというふうに聞いておりますが、そういう事実がありますか。
○政府委員(枇杷田泰助君) 御指摘の点は、裁判官で申し上げますと、判事の八号と簡易裁判所の判事五号の点にそのような問題があるのではないかという感じがいたします。判事八号の場合には、ただいま御指摘ございましたように、本年の十月一日から適用になります。簡易裁判所の判事五号の者につきましては、四月一日に遡及適用になるわけでございますが、この判事八号と簡易裁判所の判事五号とは、報酬月額では判事八号の方が多いわけでございますが、簡易裁判所の判事五号の方は、扶養手当とか通勤手当とかというような手当が支給される対象になっております。 したがいまして、扶養家族の大小によって若干の違いがございますが、配偶者と子供一人ぐらいの者ということを中心にして計算いたしますと、月額では簡易裁判所の判事五号の方が下になりますが、本年の四月から来年の三月までの年度間の一年間を総トータルいたしますと、遡及適用日の違いから、簡易裁判所の判事五号の方が二、三万円程度上回るという結果を招来いたします。 その点は一つの問題であろうかという気はいたしますけれども、御承知のとおり、判事の俸給表を受ける者は、おおむね判事補の一号から上がっていく者という系列でございますし、簡易裁判所判事の場合には、簡易裁判所の判事五号から簡易裁判所の判事四号に上がっていくという給与の系列に属するわけでございまして、系統が違うということのために、昇給したために年間の収入総額がかえって今年度ダウンするというふうな結果は招来しないというふうに考えております。
○寺田熊雄君 まあ、判事と簡判とをすぐに比べていいのかどうかは問題だけれども、常識的に言って、俸給の下の方の者が年間の実収で俸給の上の者を上回るということは、俸給の体系的には余り好ましい事態ではないと考えるんですが、それはどうでしょう。
○政府委員(枇杷田泰助君) おっしゃるとおり、体系上はやはり一つの問題であるということは考えておりますが、先ほど申し上げましたように、実質的には俸給の体系が違うところにおのおの属しておりますので、実際上の問題はないというふうに考えておる次第でございます。
○寺田熊雄君 これは法務大臣はどういうふうにお考えですか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 好ましいことではありませんけれどもやむを得ないと、こう思っておるわけであります。
○寺田熊雄君 給与法の問題はさらに次回に譲りまして、次の問題に移りたいと思います。 憲法問題について法務大臣にお尋ねをするわけですが、去る十一月の十七日に、政府は憲法改正問題と靖国の問題で統一見解を衆議院の議運に示しましたね。この統一見解は、事前に法務大臣に示されたものでしょうか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 拝覧いたしました。
○寺田熊雄君 法務大臣は、事前に示された際に、これを異議なく了承なさいましたか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 従来から政府あるいは官房長官、法制局長官が答えているとおりでございますから、そのとおり了承いたしました。
○寺田熊雄君 これを異議なく了承をなさったようですが、法務大臣の憲法発言ということが非常にいろいろと取りざたをされておりますので、あえてお尋ねをするわけですけれども、現時点でも法務大臣はこの統一見解に異議を差しはさむお考えはないのでしょうか、あるのでしょうか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 統一見解としては、先ほど申し上げましたように、従来から政府側が述べてきていることでございますので、そのとおりだと思っております。
○寺田熊雄君 この統一見解というものは、閣僚の靖国に対する公式参拝は違憲の疑いがあることを否定できないという結論であります。したがって、この靖国の問題に限局してさらに法務大臣に確認をいたしたいのですが、閣僚の公式参拝が違憲の疑いを否定できないというこの結論、これは法務大臣として御承認になるのですか、ならないのですか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 私は、自分の考えとしては、従来どおりの考え方が自分なりに正しいと思っているわけでありますが、統一見解としてはいまおっしゃいましたとおりであると、こう思っております。 なお、補足して申し上げさしていただきますと、先般、衆議院の法務委員会で、内閣官房長官、法制局長官、そして私、三人出席を求められまして、靖国神社参拝についての議論がございました。そのときに、政府としてどういう姿勢をとるのかということに際しまして官房長官からは、合憲とも違憲とも断じていない、しかし違憲の疑いが濃いから参拝をするときには私人の立場で参拝をしているということにしている、これは内閣として将来ともそう考えている、しかしいろんな考え方がある、その学説まで統一しなければならないとは考えていない、こういうお答えがございました。私、やはりそうだと思っているわけであります。しかし、ことさら自説を強調していって、閣内がいかにも不統一であるような形は避けていきたいものだと、こう思っておるわけであります。 いま申し上げましたように、統一見解はそのとおりだと思います。しかし考え方を、ものによっては思想、信条を内閣として統一しなければならないとかいう性格のものでないものもその中にはいろいろあるだろうと、こう思っておるわけでございまして、この辺は政治家としての良識によって行動すべきものだろうと、こう思っております。
○寺田熊雄君 常に法務大臣の憲法問題に関する御発言が、内閣の統一見解そのものには異議はないんだと、しかし政治家としては何かそこに異なるものがあるような、そういうトーンが伴うわけですね。そこでいつもこれが問題になりますし、したがって、政治家個人としては、この内閣の統一見解に異議があるというところまで踏み込んでおっしゃっているのでしょうか。必ずしもそうではないんだけれども、そこに自分としてはこの憲法問題に関して若干の疑いを持っておるのだという程度のものなんでしょうか。その点、ちょっともう少しはっきりおっしゃっていただけませんか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 私は、いままでお尋ねに対しまして私なりにお答えをしてまいりました。たとえば憲法の問題につきましても、内閣が憲法改正全く考えないと言っているわけだから、それに誤解を与えるような言動は避けていかなきゃならない、こう申し上げているわけでございますけれども、また、率直におまえの考え方を述べろとおっしゃいます際には、そのままを述べてまいってきているわけでございます。 したがいまして、政府の見解の統一ということは、思想、信条まで変えなければならないという性格のものではない。内閣の姿勢を疑わせないようにしていかなければならないものの私は見解の統一だと、こう思っておるわけでございまして、行動において変えるところがあってはいけませんけれども、学説において、たとえば靖国神社参拝、合憲、違憲の疑いがある、その疑いの方向まで一つにしなければならないのだというふうには官房長官は思っていないと先般答えられたわけでございまして、私はそのとおりだろうと、こう思っておるわけでございまして、そういう意味合いにおいて私は今度の統一見解、いままで政府がとってきたとおりのことを見解としてお述べになっているものだと、こう理解しておるわけでございます。
○寺田熊雄君 いまの法務大臣の御答弁を伺いますと、統一見解は結局鈴木内閣の閣僚としてはこれは異議なく承認するんだ、しかし政治家奥野個人としてはその統一見解に必ずしも同意しないんだと、こういう結論になりますか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 私個人としてはいろんな考え方を持っております。しかし、鈴木内閣にありまする限りにおいては、それから大きくはみ出すような言動は避けるべきだろうと、こう思っておるわけでございます。しかし、個々の思想、信条につきましてまで、幅のある統一見解の問題の中におきまして一つでなければならない、みんなくくってしまわなきゃならないとまでは官房長官も言っておりませんし、私もそういう性格のものだろうと、こう考えておるわけでございます。
○寺田熊雄君 結局、法務大臣のおっしゃるところを伺いますと、言外に、政治家個人としては別な考えを持っておるというふうに理解せざるを得ませんが、それでいいのでしょうか。
○国務大臣(奥野誠亮君) それは、閣僚それぞれ個々に思想、信条を持っておると考えております。
○寺田熊雄君 結局、私がいまお尋ねしたような趣旨に理解せざるを得ないわけですね。しかし、奥野法務大臣は、鈴木内閣の閣僚である限りはやはり統一見解に従わざるを得ない、したがって自分は了承したと、こういうふうにおっしゃるわけですね。 ところが、あなたの同僚でいらっしゃる中川科学技術庁長官、これは札幌市のテレビですか、十八日に、この結論は迷惑だ、公式参拝がなぜ悪いと、公然と内閣の決定を論難しておるようでありますが、これは法務大臣として、鈴木内閣の閣僚として、この発言をどういうふうに受け取りますか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 中川氏の発言の状況を承知しておりませんので、私からそれに論及することは避けさせていただきたいと思います。
○寺田熊雄君 これは法務大臣承知していらっしゃらぬというのは、中川さんから法務大臣が直接お聞きになっておらない、事実を確かめたわけじゃないからという、そういう意味だろうと思いますけれども、しかし、このことは、もうすでに大きく新聞紙上にも報道せられておりますね。全国民のこれは目に入っておることなんです。したがって、こういうようなことが現実にありとすれば、それは疑いもなく鈴木内閣の閣内不統一ということを示すものだと断ぜざるを得ませんわね。そうでしょう。このことわりを、まさか法務大臣も御否定はなさいませんでしょう。ですから、その点をお伺いしているわけです。
○国務大臣(奥野誠亮君) どういう場合に閣内不統一になり、どういう場合に閣内不統一にならないか、なかなかけじめがむずかしいのだろうと思うのです。そういう意味で私、先ほど衆議院の法務委員会における問答を御参考に申し上げたわけでございます。やはりそれぞれ合憲、違憲の考え方につきましてニュアンスの違いがあったわけでありまして、それに対して委員の方から、それを一本にしないのかという趣旨の質問があったのでございまして、その際に官房長官は、政府としては疑いを持っているものだから参拝する場合も個人の資格で参拝することにしております。これは内閣としてそういう方針をとっていきます。しかし憲法との関係において違憲である、合憲である、そういう考え方の中身まで一つにしなければならないとは思っておりませんと、こういう答えがあったわけでございまして、私は学説的なものにつきましてまで一つにしようとすることは将来への進歩を妨げるものだと、こう思っておるわけでございまして、やはり官房長官、よいことをおっしゃっているなと、こう理解しておったわけでございまして、今回の統一見解につきましてもそういう意味の私は統一見解だと、こう理解しているわけでございます。 同時に、中川氏がどういう考え方を持っているかということは中川氏の問題でございますので、私は軽々にここで批判的なことを言うことはやっぱり慎むべきであって、本人から申し上げることが一番誤解を招かないのじゃないだろうかなと、こう思いますので避けさせていただきたいと、こう申し上げているわけであります。
○寺田熊雄君 私は、いまの法務大臣の御答弁にちょっと納得できないんですがね。というのは、法務大臣の場合は統一見解を閣僚としては了承したと。それはそれで自分としては、閣僚としてはやむを得ないと考えているというふうに私どもは受けとめることができます。しかし、それは政治家奥野個人の持っておる学説まで制約するものではないと思うと。おのずから法務大臣のおっしゃるのにはそれなりの筋というか、けじめがありますね。だけれど、中川さんのおっしゃっておるのはそれじゃないようですね。つまり、統一見解そのものを論難しているわけですよ、迷惑だ、不要なものだと。それは明らかに内閣の施策に対して内閣の中にあってこれを論難、攻撃していることを意味しますね。ですから、それは明らかに閣僚としての分を越えていますよ。これをしも閣内不統一と言わずして何でしょうか。そうでしょう。ことにそれは靖国の問題、憲法問題というきわめて重要な問題ですよ。この重要な問題について内閣の統一した方針を論難するんですから、これは法務大臣、中川さんに事実を確かめるという問題じゃないんですよ。そのことがありとせば、重要なこれは閣内不統一ではないかというふうにお尋ねしておるわけです。
○国務大臣(奥野誠亮君) 与野党国対委員長会談等でいろんな話し合いがあったようでございまして、その中では統一見解を閣議決定して持ってこいという話があったり、いや、そうでなくてもいいという話があったり、いろいろな経過があるようでございます。その統一見解は事前に私は見せられました。しかし、閣議決定というかっこうはとっておりません。ですから、中川氏が事前に見せられたことはないはずだと思います。でありますから、その政府統一見解につきましての性格の問題もございますし、あるいは本人がどういう立場で言うているかということもございますし、そういうこともございますから、私がここで軽々にそれに対して批判的なことはやはり差し控えるのが穏当だと、こう思ってお答えをしているわけでございます。
○寺田熊雄君 もしも統一見解が閣僚の、たとえば法務大臣のようにいままで強くこの問題で御発言になりました方だけに限局して了承を得たものであって、国務大臣全員について了承を得てないということになりますと、それは統一見解の名に値しないのじゃないでしょうか。というのは、各省の専管に属するような分野のことでありますれば、それはその省庁の長官だけに見せて了承を得て統一見解というふうにしていいかもしれません。しかし、事は憲法の解釈、最も政治的な事柄である靖国の公式参拝の是非というような問題にかかわることでしょう。それについて特定の大臣だけの了承を得て、閣議に諮らずに、これが鈴木内閣の政府の統一見解ですということ自体が何かおかしいことになりはしませんか。もし法務大臣のお言葉が正しいとすれば、そういうふうに理解せざるを得ないと思いますが。
○国務大臣(奥野誠亮君) 私からお答えするのは適当でないような感じがいたしますけれども、私の承知している範囲で申し上げますと、衆議院の社会党の稲葉さんから、靖国神社参拝などにつきまして内閣に対して質問書が出されました。それに対して内閣がお答えをしておるわけでございます。 その際に、靖国神社は憲法上の宗教団体と考える、それから公式参拝等の問題につきましては、問題となるのは憲法二十条及び八十九条との関係においてであると、こう答えているわけでございまして、それからさらに進んだお答えはしていないわけでございます。 要するに、内閣としては違憲とも合憲とも決めかねているのだと言うにとどめているわけでございまして、この間、国対委員長会談等で問題になりましたのは、もっぱら私の発言に関して議論があったようでございまして、そういうことから私は、政府としての考え方を持ってこいということになるその過程では、閣議で決めてこなければならないとか、あるいは私がそれを見ているかどうかとか、いろんな経過があったのだろうと思うのでございまして、結論として、閣議決定という形は経ないで官房長官が議運においでになって質問に答える形でお答えになったわけでございまして、そういう意味合いで、私が先ほど中川氏のことに関連して私から答えることは適当でないと思っておりますと、こう申し上げているわけでございます。
○寺田熊雄君 率直に申し上げますと、やはり閣議を招集してこういう重要な問題について国会に意見を開陳すると、そして国会との関係を円満にするというような手はずをきちっとして、統一見解ということでお出しになるべきだったと私思うんですね。いまの法務大臣のお言葉のように、法務大臣だけの了承を得てやるべきことでは私ないと思うんですよ。というのは、その前から中川さんなどは法務大臣のお説を強力にサポートして、そしてとかく宮澤さんなり法制局の見解に異議を唱えていらっしゃるわけです。 だから、もしも閣議を経ず、中川さんの了承を得ず統一見解なり政府の考えを御発表になった場合には、またそれに対して強い異議を主張するというようなことは、当然これは予想されることでしょう。そういうことを顧慮せずに統一見解であるというようなことを発表して、閣僚がそれを論難するというようなことは、まことに不体裁といいますか、これは威信を失墜することになると思いますがね。ですから、それは鈴木総理なり宮澤長官の不手際だということになりますから、法務大臣にその手続の不手際をあえて論難するというのは適当でないかもしれません。しかし、明らかにそれは内閣の不統一を意味し、内閣の信頼を失墜した行為だと思います。そうは思われませんでしょうか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 先ほども、衆議院の稲葉さんに内閣としてお答えをいたしましたのは、公式参拝などが問題になるのは憲法二十条及び八十九条との関係においてであると。私は、これからさらに進めるということになりましたら、そう簡単なことではないのじゃないだろうかなと、こう思います。やっぱり国会の中にもいろんな議論が私はあるのじゃないかと思うのでございまして、それを社会党のおっしゃるとおりに決めろと、こうおっしゃるなら話の中身は簡単でございますけれども、そのとおり決まるのかどうかということになってまいりますと、また長い時間を要するのじゃないかなと、こう思うわけでございまして、やっぱりみんなで詰めて考えていき、日本の将来を誤らないように検討していけばいいのじゃないかな、こんな感じを私は希望としては持っているわけでございます。 内閣として決めてこいとおっしゃるなら、稲葉さんにお答えをした内閣の答弁書ということになるのじゃないかと思います。それよりもしかし野党の皆さん方に親切な姿勢をとろうとすれば、官房長官が議院運営委員会において質問に答えたような政府の姿勢になるのじゃないかな、こう考えるわけでございます。
○寺田熊雄君 あなたが官房長官の意図をごそんたくになっておっしゃる、それは私もそれなりの筋はあると思いますよ。ただ、政府の統一見解としておっしゃる以上は、中川さんなどがいままでずいぶんそれに対して反抗しているわけですからね。だからそれに対して論難、攻撃を加える蓋然性というものは当然予想せられますから、そういうものをきちっとしてやらなければ、手続的にそれは非常にずさんなものになりはしないか。現実にまた中川さんが大いにけちをつけているわけでしょう、公然と。それは鈴木内閣の威信に大きくマイナスになったのじゃないか。ですから、したがってそういう点をもっときちっとやるべきではなかったかと言ってお尋ねしているわけです。
○国務大臣(奥野誠亮君) 卒直に答えたいところろでございますけれども、また物議を醸してもいけませんので差し控えるわけでありますけれども、たとえば津の体育館地鎮祭が神式行事で行われた。これが裁判ざたになった。津の地方裁判所では合憲の判断を下しました。名古屋の高等裁判所では違憲の判断を下しました。最高裁判所は合憲の判断を下しました。そして神職に報酬が支払われ、またお供えの料金も公費で支払われました。しかし、それはいずれも財政援助を目的とするものではないから八十九条違反にはならないのだと、こういう判断も示されておるわけでございますし、また、神道の行事ではあったけれども、世俗的な行事で宗教的活動には当たらないのだと。宗教的活動というのは、宣伝あるいはまた教義の普及等であって、その効果が援助、助成、促進になるようなものを言うのだと、こういうこともあるわけでございまして、参拝ということになりますと、宗教的活動というよりも、どちらかといいますと宗教的行為ということになるのじゃないかなと思ったりもするわけでございまして、なかなかむずかしい問題でございます。 同時に、これをどうするかということは、日本の将来にかかわる私は大きな問題だと思いますので、宮澤官房長官自身が、こういう考え方まで一本にしなければならないとは思っておりませんよということを、衆議院の法務委員会で答えられておるわけでございます。そういう経緯もございますので、政府の統一見解を閣議決定してまで出すということになりますと、先ほど申し上げましたようなものがあるということでございます。 今度の宮澤さんの質問に対する答弁がどういう性格のものであるかは、宮澤さんなり、しかるべき筋にお尋ねいただく以外にはないのじゃないだろうかな、私からお答えをするといたしますならばいまのようなことを出ないのじゃないかな、こう考えているわけでございます。
○寺田熊雄君 私のお尋ねに対してお答えになった分、前半は法務大臣のこれに当てはまる答えだったんですが、後半は全く私の質問と関係のない、大臣のまた所信をお述べになったことになりますね。 大臣としては、私がお話ししたように、個々の政治家としての憲法上の所見がどうあれ——いまの津の地鎮祭の問題も、これは最高裁の合議が分かれていますね、当時の長官さえもこれに対して反対意見を述べているんですから。この問題は、憲法上非常な疑義があるということであることは間違いないわけです。現に地裁、高裁、最高裁等も、結果さえも分かれておるわけですからね。したがって、そういう個人的な意見の相違はともあれ、やはり閣僚が政府の統一見解として出されたものに対してけちをつけると、声高に論難するということが政府の不統一を暴露している、威信を大いに落としているということは間違いないでしょう。これは、法務大臣がこれに対して正直に言うと物議を醸すというお答えで、それが言外に適当でなかったということになるんでしょう。しかし、いま法務大臣に、適当でなかったと思うというお答えを求めることは無理かもしれません。しかし、そう断ぜざるを得ないと私は思います。したがって、やはり法務大臣としては、法務大臣のお立場におる限りは、私はあの統一見解を遵法して貫いていただきたいと、こう思いますが、どうでしょうか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 法務大臣として統一見解から大きくはみ出すような言動はすべきではない、こう思っております。
○寺田熊雄君 ちょっと法務大臣が常におっしゃることがあれなんですが、大きく踏み出さなくても小さく踏み出されてもそれは一緒でしょう。踏み出すことがいけないのですよ。いかがですか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 先ほどちょっと申し上げましたように、個人的な信条まで一つにしなければならないと内閣は考えておりませんと、こういう宮澤発言を御披露申し上げたわけでございます。個人的信条を個人の立場で言わなければならないときまでうそ偽って、自分を偽ってほかの話にすりかえるということは、むしろ逆に穏当でないという場合があるだろうと思いますので、そういう意味合いでお答えをしたわけであります。
○寺田熊雄君 ただ、どうしても法務大臣が政治家の信条を貫くんだと、したがって、個人の政治家としては内閣の統一見解に了承しがたいという立場を貫かれるというならば、それは私はやっぱり閣僚を辞任して政治家個人として生きる、その方が潔いと思いますよ。絶えず法務大臣と閣僚とは別なんですと、だから政府の見解は私の個人を縛りませんということを言いつつ行動をなさるということは、それはやはり内閣の不統一を国民に印象づけますですわね。しかも、外形的事実をやはり国民は見ますから、もしも奥野さんが政治家としての信念をどこまでも貫こうとなさるならば、私はやはり職を辞してこの重要な憲法問題についての信念を守るという方が潔いと思いますよ。どうでしょうか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 内閣として意見をまとめるというような場合があるといたしましたら、やはり大勢に従うということにしなければまとまらないと思うのです。みんなそれぞれ人は十人十色考え方を持っていると思うのです。まとめる場合に、やっぱり大勢にみんなが従って一つにまとめていくということになるのだろうと思うのであります。そういう気持ちで申し上げておるわけでございまして、やはり閣僚もそれぞれいろいろな考え方があるだろうと思います。鈴木内閣の閣僚であります限り、鈴木内閣の方針を疑わせるような言動は、いま寺田さんが御指摘になりましたように避けなければいけないと思います。私もそうしていきたいと思います。 これまでの経過を率直に申し上げさせていただきますと、みんな社会党の方から御質問になっているのです。私は進んでお答えをしているのじゃないのです。しかも、ある委員会では、あなたがここで何を言われようと一切問題にしないから率直にお答えをしなさいよと、こんな尋ね方で尋ねられました。また、ある委員会では、社会党の方が政府の答弁を受け取った後で、なおかつ腹蔵なく言ってくださいよと、こうおっしゃいました。ということは、通り一遍の答えでなくってもいいのだよ、虚心に言ってくれと、そして国政の参考にしていこうじゃないかというお気持ちだと私は受けておるのです。ところが、同じ社会党の方から、別な方でありますけれども、おまえがああいうことを言ったがあれを取り消すのか取り消さないのかと、取り消すか取り消さないかだけをお尋ねになるのです。 私、いろんな御質問に直面しながら、どうも私はわかりかねて、まあある程度、じゃ率直に個人の意見を申し上げなきゃいかぬかなと思って答えると、また後で反発が来たりいたすわけでございまして、私としては、しかし鈴木内閣が一つの考え方を申し上げておるわけでありますから、それに疑いを持たせるような言動は努めて避けていかなければならない、こういう気持ちではずっと来ているつもりでありますけれども、私は率直にいままでの質疑応答の経過を申し上げたわけでございますけれども、そういう過程で申し上げたことが、また法務大臣は勝手なことを言うておると、こうなってきておるわけでございまして、この辺もひとつ社会党の中で一遍お調べをいただきまして、御議論をいただきたいなという気持ちを持つわけでございます。 私としては、鈴木内閣が申し上げていることに疑問を差しはさませるような言動は努めて避けていかなきゃならない。今後もそういう姿勢を特に注意していきたいと、こう思っております。
○寺田熊雄君 それでは、この問題はもうこの程度で終わらせていただきます。
○加瀬完君 ちょっと関連。 大臣のおっしゃることは、おっしゃることと実際におやりになっていることとずいぶん違っていらっしゃると思うんです。憲法遵守の義務というものは、大臣個人ならば勝手なことを言っていいということと併存するものじゃないと思うんです。公務員であるならば、大臣であるならば、憲法遵守の義務というものは優先するべきものだと思うんです。そうであれば、個人であろうとも大臣である限りは、特に内閣で一つの方針が決まっておるならば、逆なことを言えば異論を唱えることを発言していいということにはならないと思うんです。そこの区別がきちんとついていないところに、個人であれば異論がある、しかし鈴木内閣の決定には従うと、こういう矛盾した御議論が出てくると思うんです。いかがでしょうか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 憲法遵守の義務と、憲法解釈論にいろんなことがあるということとは、これは私は両立している問題だと思います。解釈が決まっている、それはそのとおり守っていかなきゃならない。しかし、いま靖国神社参拝の問題につきましても疑義があると言うているわけだから、私も靖国神社に参拝するときには法務大臣として参拝したのじゃありません、個人として参拝しているのです。こういう姿勢をとっているわけでございます。しかし、いろんな解釈がある。その解釈論を言うことは擁護義務と私は矛盾しないと、こう考えるわけであります。 もう一つ、憲法遵守の義務と憲法を改正する議論と、これも両立する問題だと思うのです。よりよいものにしていくためには、国務大臣は常に積極的にどういう内容がいいかということは考えていかなきゃならないと、こう思うわけでございまして、これは鈴木内閣でもたびたび遵守の義務と改憲論議とは両立するのだと、こう言っているわけでございます。私自身も刑法、法務省の担当としてこれをそのとおり施行していかなきゃならない大きな責任を持っておりますが、よりよい刑法にしますために刑法改正論議も法務大臣としては積極的に考えていき、また必要なことについてはPRもしなきゃならない立場に置かれているのじゃないかなと、こう思っているわけでございます。 そういう意味合いにおいて、憲法遵守の義務と憲法の中における解釈、これはやっぱり絶えずよりよい正確なものに解釈をまとめていかなきゃならないのじゃないかなと思いますし、また、遵守の義務と改憲論議も、やっぱりよりよい憲法にしていくために改憲論議も封殺すべきものじゃないのじゃないかなと、こうも思っておるわけであります。しかし、いずれにしても、憲法が改正にならないのにそれを違った方向に施行する、違った法律をつくる、これはもう断じて許されない、憲法は遵守していかなきゃならない、そう考えているわけでございます。
○加瀬完君 それはおかしいと思うんです。一般的には、確かに憲法遵守の義務と憲法についていろいろ議論をすることとは両立しますよ。しかし、公務員について憲法遵守の義務があることは、公務員は憲法遵守を優先するという前提がなければこの法文は意味がないと思うんです。それなら特に閣僚は、内閣の決定があるならば、さらに憲法についてはその決定に従って忠実に行動すべきであるし言論をすべきであって、それはそれ、これはこれという考え方が憲法遵守の義務に違反していることになるんですよ。私はそう解釈します。いかがですか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 遵守の義務も、また改憲を書いている条文も同じ立場において私は書かれていると、こう考えているわけであります。やはり日本国憲法をよりよいものにしていくことも大切なことじゃないかなと、こう思っておるわけでございます。
○加瀬完君 申しわけありません。これ一問。 そういう御議論が成立するなら、憲法遵守の義務というのは内容は何もありませんよ。遵守の義務というのはありますけれども個人として言うことは勝手ですと、そうであれば、公務員の遵守の義務というのは内容が何にもないことになるんですよ。そんな憲法は空文なものじゃないと思うんですよ。
○国務大臣(奥野誠亮君) マッカーサー草案の議論の際には、公務員になったときに宣誓をするというようなことがあったようでございますけれども、宣誓するということが日本では行われていないものですから、だんだんああいう内容になったと、こう理解しているわけでございます。 憲法も遵守の義務はありますし、私たちはまたあらゆる法律遵守の義務があると考えているわけでございまして、私は刑法遵守の義務がある、同時に刑法をよりよいものにしていくための責任もあり、刑法改正論議も許される。これは私は、憲法に関しまする場合も、刑法に関しまする場合もみんな同じじゃないだろうかなと、こう考えているわけでございまして、別にだれの考え方が間違っているということで申し上げるわけじゃございませんが、私はそう考えていますし、また、鈴木内閣でもそうずっとこの国会で答えてまいったと、こう存じておるわけでございます。
○寺田熊雄君 次は、外務省の方が外国の高官といろいろ御折衝があるようですから、これを先にやらしていただきますが、私はこの法務委員会で、外務省アジア局長に対して金大中事件の判決文を取り寄せてほしいということを強く要請をいたしまして、あなた方も強く要請するという御答弁を得たわけでありますが、その後の経過はどうですか。入手できますか、それとも先方から何らかの意思表示があったんですか。それを伺います。
○政府委員(渡辺幸治君) 金大中裁判の判決文の入手の問題については、東京とソウルの双方でその後も鋭意入手するように努力を行っておりますけれども、いままでのところ入手するに至っていないということでございます。 最近の努力と申しますか、御報告いたしますと、十一月四日に高島外務次官から駐日崔韓国大使に対して、それから十一月の五日、明くる日でございますけれども、須之部大使から盧外務長官に対して、さらに十一月の十九日でございますけれども、須之部大使から金外務次官に対して申し入れをしているわけでございます。 先ほど申しましたように、現在までのところ入手できていないわけでございますけれども、韓国側によれば、金大中裁判の第一審の法廷というのは、軍法会議法に従う軍法上の裁判であるので、軍法会議法の規定によりまして、裁判関係者でない者に対しては判決文は与えられないことになっておりますという説明でございました。いままでのところ入手できていないということでございます。政府といたしましては、今後ともこの努力を続けていきたいというように思っているわけでございます。
○寺田熊雄君 軍法会議法を見てみましても、やはり公開の法廷で判決を言い渡すというその民主主義の裁判の原則は貫いておるようでありますから、それをしも秘密にする理由は全くないので、韓国側の応答はまことに非常識きわまるものであると考えざるを得ないので、さらにその非常識を改めさせるように御努力をお願いしたいと思います。 また、その判決による死刑の原因は、一に韓民統の議長として行動をしたということに、死刑の該当事由としてはそれに尽きるようであります。 そこで、韓民統なるものが果たして国家保安法に言う反国家団体なりや否やということが、私どもとしてはもともと疑問を持っておりますが、それが非常に重要な事柄になるわけであります。外務省としては、この韓民統の性格であるとか目的であるとか、こういうものをどういうふうに把握しておられるのでしょうか。
○政府委員(渡辺幸治君) 私どもとしては、韓民統、正確に申しますと韓国民主回復統一促進国民会議日本本部の略称だそうでございますけれども、韓民統というのは、韓国で朴政権を打倒して民主憲政を回復して朝鮮半島における自主的平和統一を実現することというようなことを目的として、昭和四十八年八月十五日に結成された在日韓国人の団体であるように承知しております。 これについて、しからば韓民統が韓国の反国家団体であるというように考えているか否かというお尋ねでございますれば、韓民統が反国家団体かどうかということは、一にかかって韓国の判断すべき問題でございまして、そういうことについてお答えする立場にないと申さざるを得ないということでございます。
○寺田熊雄君 そうすると、外務省としてその点の判断は持っておらないと言うんですか。持っておってもいまここで言いにくい、言うべきでないと、こういうふうに伺ってよろしいか。
○政府委員(渡辺幸治君) 韓民統が韓国の反国家団体かどうかというそういうお尋ねについては、これは韓国の判断すべき問題であってお答えすべき立場にないということでございます。
○寺田熊雄君 それじゃあこの問題はまたさらに討議を深めることにして、きょうはあなたはどうぞお帰りになっていただいて結構です。 次は、国籍法の問題についてお尋ねをしたいと思います。 昨年の十二月十八日に国連総会で、あらゆる形態の婦人の差別撤廃条約が採択をされまして、日本も賛成投票をいたしました。ことしの七月十一日に、わが国はこれに署名をしたわけであります。その九条は、婦人の国籍の取得、変更等について男子と同等の権利を国が与うべきこと、国籍に関して男子と同等の権利を子供に与うべきことということを規定しております。また、人権規約のB規約二十四条三項も、すべての児童は国籍を取得する権利を有すると、こういう規定がございますので、わが国籍法の二条の男系の血統主義、この規定は当然手直しを必要とするわけであります。また、無国籍の児童を許してはならないわけであります。すべての児童が国籍を持っているように処置をすべきである。 これについては、もうすでに法務省としてはそういう方向で法の改正作業に入ったというふうに伺ってよろしいですか。
○政府委員(貞家克己君) 御指摘の婦人に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約、これを本年七月にわが国も署名をいたしたわけでございまして、その批准のために国内法制等諸条件の整備に努めるということが政府の態度でございます。 その一環といたしまして、わが国籍法の御指摘の条文、これは条約との関係においていろいろ問題はございますけれども、条約の趣旨とするところに照らして問題があるというふうに私どもは考えているわけでありまして、男系主義から父母両系主義への変更、こういった方向ですでに検討を開始しているところでございます。
○寺田熊雄君 検討を開始しているということは、もうすでに法改正の準備に着手した、その一環としての検討であると理解していいですか。
○政府委員(貞家克己君) 国籍法の改正問題につきまして、いろいろ困難な問題点がございます。したがいまして、そういった検討すべき問題点を整理いたしまして、それにつきまして外国法制、これは外国の法制だけを見ても十分わからない点がございます。その運用等につきまして、書面による照会あるいは関係諸国への出張調査というようなことを現実に開始しております。
○寺田熊雄君 率直に局長はおっしゃっていただきたい。つまり、男女の平等を実現するために、男系の血統主義というものを男女の平等の方向に改正すべく、その方向に向かって進んでいるんだというふうに理解していいのでしょう。
○政府委員(貞家克己君) 現在、私どもはさような方向で積極的に検討を進めております。
○寺田熊雄君 この国籍法の第二条を改正しませんと、いまのあらゆる形態の婦人の差別撤廃条約というのもちょっと批准しにくいわけでしょう。いかがです。
○政府委員(貞家克己君) 条約が非常に含みの多い表現を使っているわけでございまして、差別撤廃条約の最初の原案は、たしか婦人に対してその国籍を子供に承継せしめるについて男子と同等の権利を有するというような表現になっていたようでございますけれども、この原案に対しましては、いわゆる生地主義をとる国々からの反対がありまして、現在のような非常に含みの多い表現になっていると思いますが、そういった経過等に照らしまして、やはり男系血統主義を維持するということは、条約との関係において問題があるという考え方でございます。
○寺田熊雄君 外務省の方からは、そういう問題のあるその障害を排除するために、法務省においては国籍法の第二条の改正をしてほしいという、そういう点についての協議をもうすでに受けておるでしょうか。
○政府委員(貞家克己君) 実は、この問題に関しましては常時、外務省当局とも連絡をいたしておるわけでございまして、これはただいまの条約の署名前におきましても十分打ち合わせをいたしておるわけでございまして、これはもう当然のことというふうに理解されているわけでございます。
○寺田熊雄君 この男系の血統主義、父系血統主義の第三条を改めるということだけではなくて、帰化の問題、第五条の一号と六条の一号も明らかに男女の平等に反するような規定でありますが、これもやはりあなたの方は、この改正を目指して進んでいらっしゃるというふうに理解していいですか。
○政府委員(貞家克己君) この点も、当然問題になろうかと思います。
○寺田熊雄君 いや、問題になることはわかっているんですがね。これは論理的にこの条約の解釈から当然のことなんで、ですから、これもやはりいまの条約に即応するように改正を目指して作業に入っていらっしゃるかどうかということを、率直にお伺いしているんです。
○政府委員(貞家克己君) もちろん、その方向でございます。 ただ、非常に弁解がましいようでございますけれども、いろいろ付随的な問題点がございますので、そういった点についての隘路をやはり自信を持って克服できるということになりませんと、完全にそういう改正をすべきだという考え方を申し上げるということがなかなかできにくいわけでございまして、方向は寺田委員御指摘の方向ですべて検討を進めている次第でございます。
○寺田熊雄君 あなた方は非常に慎重で、何といいますか、その方向に進んでおって、そして隘路を打開していくというならわかるのだけれども、隘路の打開ができなければ改正となかなか軽々に言えないんだというその説明の仕方が、あなた方余り取り越し苦労というか、方向は決まっているんだから、あなた方の英知を結集して、そして隘路を打開する方向に努力していただくということでなきゃいけないと思いますが、そうしていただけますか。
○政府委員(貞家克己君) 仰せのとおりでございまして、まさに隘路となるであろうというところをもっぱらいろいろ調査を掘り下げまして、それをどうやって打開するかということが、まさにわれわれの検討課題でございます。
○寺田熊雄君 さあ、そうしますと私どもが知りたいのは、その差別の撤廃を実現するために、あなた方の改正作業がどのくらいの年月を要するであろうかということなんです。私どもはなるべく早くしてもらいたいと思っておりますが、率直に、あなた方は非常に慎重なお方だから、一体そういう隘路を打開して法改正に持っていくためには、どのぐらいの年月を必要とするというふうにいま見ていらっしゃるのか。その点いかがでしょう。
○政府委員(貞家克己君) 実は、何年以内に必ずいたしますというお約束を申し上げるのは非常にむずかしいわけでございまして、私ども決して漫然と調査を口実に延ばしているというようなことは全くございません。これはもう、できる限り早くという気持ちに変わりはございません。 ただ、調査ということが、これが法制を調べて、条文を読めばすぐわかるという問題ばかりではないわけでございまして、たとえば国籍離脱を認めるかどうかというような問題に関しましても、諸外国の例では、わが国のように無条件に憲法上保障されて直ちに認めるというような国は少のうございまして、未成年の間は認めないとか、それはまあ条文でわかるわけでございますけれども、そうではなくって、司法長官あるいは内務長官の許可にかかわらせているというような国もございます。そういった制度の国につきましては、その運用の状況が一体どうであろうか。したがって、二重国籍を解消するに出たりましてどの程度外国の国籍離脱が容易にできるであろうかというような点も、やはり前提として腹に入れておく必要があるわけでございます。 それは全くの一例でございますけれども、そういった意味がございまして、やはり調査は相当念入りにやらなければならないと考えております。すでに外務省を通じて諸外国にいろいろ照会もいたしておるわけでございまして、また海外出張のたびにそういった資料を入手し、状況を聞くというような仕事もいたしておりますけれども、やはりそういう基礎調査にある程度の年月——年月と申しますか、期間が必要だと思います。 それから、隘路の打開でございますけれども、これは相手のあること、つまり諸外国との関連が生ずるわけでございまして、これは法務省の所管ではございませんけれども、対外的に何らかの取り決めをする必要も生じてくるということも考えられるわけでございます。 たとえば、ヨーロッパ諸国におきましては、すでに相当の国が男女両系主義に法律を改正いたしております。しかし、その背後には、たとえばヨーロッパ理事会の協定というものが一九六三年にできておりまして、重複国籍の減少及び重複国籍者の兵役に関するヨーロッパ理事会協定というようなものがございまして、相半多数のヨーロッパ、さらにはトルコ、キプロスというような範囲まで含めまして、国際間の合意ができているというような現実もあるわけでございます。 わが国の場合におきましても、将来関連の深い諸国との問において、あるいはそういう取り決めのようなものが必要になってくるということも考えられるわけでございまして、そういった要素がございますので、いま直ちに的確に、それでは二年以内にいたします。三年以内にいたしますということをお約束申し上げるのは、ちょっと控えさしていただきたいと思います。 ただ、決して漫然と時を過ごしているということは絶対にございません。一日も早く成案を得たい。成案を得て、さらに国民各層の御意見を承るというような期間も必要でございますけれども、早くそういう段階にこぎつけたいと、かように考えている次第でございます。
○寺田熊雄君 あなた方がサボったりなんかしているということは夢にも考えません。あなた方が公務員の中では最もまじめな公務員だということは、私もよく知っておるからそんなことは考えないけれども、しかし、そういう男女の差別を撤廃するということは婦人の方々の強い強い要望ですから、これは一日も早く実現する必要があると思う。 そこで、何年以内にやるというような約束はもちろんできないでしょう、そんなことはね。しかし、あなた方としても、見通しというものはおのずからあるはずですね。それをお伺いしているんです。
○政府委員(貞家克己君) その見通しも、やはり非常にむずかしいわけでございます。しかし、婦人問題企画推進本部の申し合わせで、批准のため国内法制等諸条件の整備に努めるものとすると、こういうことが申し合わせとして決定されたわけでございますが、その国内法制等諸条件の整備は、国内行動計画後半期、これが五年間ございます。その間には、これはどうしても実現させるべきであるというふうには私ども考えております。
○寺田熊雄君 あなたのお説を伺うと、大体一九八五年までには実現する、そういう決意を述べたと。まあ少し長いけれども、その点の不満は大いにあるけれども、そういうふうに理解できるようですね。いまあなたのおっしゃった、結局この点を改正しないと、無国籍の子供が生ずるというその問題は解決できないでしょう。この問題を解決するためには、どうしても二条を改めて男女両系主義をとらないといけない、この結論には間違いないでしょう。
○政府委員(貞家克己君) 男女両系主義をとりましても、世界各国の国籍法さまざまでございますから、君子の無国籍が残るとは思います。しかし、これによって大部分、無国籍者がなくなるという結果になるというふうに私どもは考えております。
○寺田熊雄君 その後にできる問題は、二重国籍の問題ですね。しかし、この点については、フランス、西ドイツ、スカンジナビアの諸国、オランダその他の西欧の先進諸国は、おおむね立法的な改正作業をもうすでに実現し終わったのじゃないでしょうか。この点いかがでしょう。
○政府委員(貞家克己君) 御指摘のとおりでございます。 ただ、先ほども申し上げましたように、二重国籍の解消を図るために、国際間の協定によって、たとえば自分の国に居住しない自国民、それが他の国籍を持っております場合には、自分の国の一つまり住んでいない国の方でございますが、自分の国からの国籍の離脱を当然に認めるというようなことを国際間で合意しているわけでございまして、こういった解消策が図られているわけでございます。 そこで、二重国籍は、確かに御指摘のとおり、これは一人でもできることをおそれていたのでは男女両系主義はとれないわけでございます。これは、そう完全に排除するということはできないと思います。現在の国籍法においても二重国籍というものは当然生ずるわけでございますから、結局は量的な問題であると思います。両系主義をとりますと、飛躍的に二重国籍者が一たんは多数生ずるわけでございます。そこで、それでもいいではないかという議論もあるかもしれません。ただ、これは世界の趨勢として、無国籍をなくすると同時に、重複国籍もやはりなくするというのが国籍立法の理想であろうと思います。 そこで、二重国籍を解消するためには、たとえば両親の意思によって一方に決める、あるいはそれが成年になったときにまた変更を認めるとかいろいろあるわけでございますが、そういった考え方をとりますと、非常に国籍が不安定になるという欠点がございます。また、一定の期間に外国の国籍を喪失しない場合には、自分の国籍と申しますか日本の国籍を喪失させると、こういう考え方もあり得ると思います。 ただ、この場合には、外国の国籍喪失が簡単にできるかどうか。つまり、簡単にできませんと、外国の国籍を持っているために日本の国籍を奪ってしまうという本人の意思に反した結果になるわけでございまして、外国の国籍の喪失が自由に認められるかどうか、自由に認めるようにするかどうかということが起こってくるわけでございます。 外国の例は、たとえば先ほど申し上げましたように、未成年の間は国籍離脱を認めないとか、あるいは兵役期間中は認めないというような国もございますし、司法長官、内務長官の許可がなければ認めないというようなところもございますので、そういった点がスムーズにいくように、できればそういった問題の生じないようにした上で、二重国籍者が出る事態もやむを得ないものとするようにする、こういう必要があろうかと思うわけでございまして、方法論は、いま申し上げましたのは全くの一例——一例と申しますか、考え方の一例でございます。いろいろな考え方があるかと思いますけれども、そういった何らかの手当ては必要であろうというふうにただいまのところは考えております。
○寺田熊雄君 外国のそうした法制なり行き方、これをやはりあなた方は非常に慎重に勉強なさって将来の障害の除去に努めていらっしゃるということになりますと、いまあなたの方で第五課が担当していらっしゃいますね。第五課長も一生懸命やっておられるわけだけれども、これからそういう立法作業の方を進めていく上では、外国の法制とか外国の事情とか条約関連の問題などを調査するためには、外国へ行くたびごとにその資料を持ってくるというような作業ではなかなかまだるっこいので、重要な民主主義諸国には法務省のそうした職員を常駐させるというようなことは必要はないのだろうかと、こんなふうにも考えるんですけれども、そういう構想は持っていらっしゃらぬのですか。
○政府委員(貞家克己君) 外国の常駐、これは若干の国々にはすでに外務省に出向いたしまして常駐をいたしておるわけでございます。これはいろいろ他省庁との関連もございますので、法務省だけが特別の立法のためにそれを増員するというのも現実の問題としてはむずかしいかと思いますが、私どもはそういった外国に常駐している法務省出身の職員、こういった者をフルに利用いたしまして、いろいろ調査をしていただこうと思っておりますし、また海外出張の機会もこれは何度もございます。 そういった都度、これを研究テーマの一つといたしまして職員にやってもらうというようなことにいたしておりますし、その他、学者に翻訳を依頼いたしますとか、あるいは学者の方が向こうへ行かれますときに、それをお願いするというようないろんな方法を用いているわけでございまして、そういった各国の国籍関係の法令の調査、収集のための経費というようなものもお願いをしているわけでございまして、そういったいろんな方法によりまして、私ども調査を進めてまいりたいというふうに考えております。 一挙に大ぜいの人間を使ってやって、すぐ効果がおさめられるというような調査でもございません。これはやはり相当内容的に理解をした上で外国調査に当たりませんと、なかなか思うような効果がおさめられませんので、大ぜいの人間で一斉にやるというような形にはまいりませんけれども、着実に調査を進めてまいりたいというふうに考えているわけでございます。
○寺田熊雄君 そういう調査、それからあなたの御答弁の中に、できるだけ多くの人々の意見を聞いてまいりたいというようなものがありましたね。そういう調査のために、あるいは人々の意見を聞くということのためには、これはやはり相当な経費を必要とするのだけれども、昔から法務省、最高裁というのは予算を獲得するのが下手で、なかなか産業官庁のように予算が取れない。それで、私どもこれは大臣を鞭撻して、大臣にお願いして必要な経費は取ってくださいよというふうにいつも言っておるんですが、これは法務大臣、やはりあなたも長い官界の御生活でよく御存じと思いますが、法務省というのはとかく予算の分捕りが下手ですね。 いま聞いてみますと、こういう法改正にもかなりの経費が要るんです。しかし、五十六年度の予算も、そういう特別経費は全部削られてしまったということを聞いておるんですが、これはやはり男女の格差を撤廃する、不平等を撤廃するという大変意義のある人類的な作業です。あなたも力を入れて予算の獲得に努力をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(奥野誠亮君) ごもっともな御意見でございますから、最善を尽くしてまいりたいと思います。
○寺田熊雄君 それから、各方面の意見を聞くと。これは当然、女性の団体の意見なども十分聞いていただきたいと思うのですが、したがって、いままでの法制審というような学者や役人だけに諮問するというのでは、どうも十分でない。各方面の意見を聞くというあなた方のそういう構想からしますと、どういう手段がありますか。
○政府委員(貞家克己君) 実は、その点につきましては、十分まだ考え方が煮詰まっておりませんので、確定的なことを申し上げるのは差し控えさしていただきたいと思います。 ただ、この問題は、従来の法制審議会の民法あるいは商法を改正するというような形、これは寺田委員御承知のとおりでございまして、相当学者の方が入りまして、まあ非常に大ざっぱな言葉で申し上げますと、役人と学者と共同作業のような形で少しづつ練り上げていくというような感じもするわけでございます。 ただ、国籍法の問題は、そういった理屈の面あるいは学問的な面とは別個の観点からも考えなければならないと思います。ただ、非常に技術的な点でございますけれども、やはり国際私法あるいは民法の親族法、相続法というような面と関連がないわけではございません。非常に深い関連も持っております。したがいまして、そういった面につきましては、法制審議会の審議ということも、これも必要にはなろうかと思います。 ただ、私どもはそれで事足れりというふうに考えているわけではございません。その方法といたしまして、いろいろ非常に、何と申しますか、自由に、機動的に各方面の意見を伺いたい。いま寺田委員御指摘の婦人団体というようなものも、これは無論その一つでございましょうし、あるいはこの問題は、高度に政治的な判断と申しますか、国民の範囲を決めるというきわめて重要な問題でございますから、そういった観点から、広い視野からのお知恵を拝借するような事実上の集まりと申しますか、そういった方々の集まりというようなものもこれは必要でございましょうし、国民一般に対する世論調査というような点もあるいは必要になってくるかと思うわけでございます。 ただいま、外国の例を申し上げますと、かなり作業中の国がございます。オランダあたりも、成案を得た場合に、数年間法案をさらしまして国民の批判を仰ぐというようなことも実は聞いているわけでございます。これは必ずしも正確な情報ではございませんけれども、そういったあれも聞いておるわけでございまして、そういった国でどういう方法で意見を集めようとしているのかという点も私は非常に興味のあるところでございまして、そういった方法論につきましても外国の調査もいたしたい、かように考えているわけでございまして、現在のところ、各方面の御意見を十分聴取する必要があるという認識には立っておりますけれども、具体的な方法につきましてはさらに検討をしたいというふうに考えております。
○寺田熊雄君 この問題では、社会党はすでに国籍法の改正案を出しておりますね。これは御存じでしょう。これについては、あなた方はどういうふうに考えていらっしゃいますか。
○政府委員(貞家克己君) 改正の進むべき方向といたしまして、先ほど来申し上げておりますように、これは一致いたしておるわけでございます。 ただ、先ほどから申し上げておりますいろんな手当てが必要であるかどうか、あるいはこれはよけいなことになるかもしれませんけれども、私どもが考えておりますのは、その範囲を海外で出生をした子供にまで及ぼすのがいいのかどうかという問題がございます。これは非常に技術的な問題でございますけれども、外国の例を見ますと、かなりその子供の住所、居所というようなものについていろいろ細かい区別をつけている例もございます。 また、これは非常に理論的な問題でございますけれども、例の婦人差別撤廃条約が、国籍を子供に承継させるというような考え方が背後に残っているといたしますと、わが国は御承知のとおり夫婦国籍独立主義、親子国籍独立主義を個人の尊厳ということで踏み切ったわけでございますけれども、子の福祉というような観点から申しまして、それに若干の例外を認めるべきかどうかというような問題もあるわけでございます。親は親、子は子ということで割り切っていいのかどうかという問題も実はあるわけでございます。そういった問題も、私どもは今後の検討課題として十分詰めてまいりたいと思うわけでございます。 ですから、社会党からお出しになっております案、その基本的方向はまさに私どもの考えておる方向と一致するけれども、さらに細かい手当てと申しますか、付随する問題あるいはそれに伴って起こることが予想される不都合、隘路というものを除去するためにもう少しきめ細かく配慮をしてまいりたい、かように考えているわけでございます。
○寺田熊雄君 現在の無国籍児、これは沖繩が最も多いようですね。しかし、沖繩以外にもやはり多いようですが、これは日本全国で何人ぐらいおるように把握していらっしゃるんですか。 また、沖繩ではどの程度いるというふうな把握をしておられますか。
○政府委員(貞家克己君) これは入国管理局の統計によるわけでございますけれども、全国で無国籍者というのは約二千数百人あると思います。そのうち、沖繩県につきましては、最近の統計によりますと、無国籍者が七十三人ということになっております。ただし、その大部分は中国系ではないかと思われるわけでありまして、その内訳は必ずしも明確ではございません。 無国籍の混血児の調査、これは沖繩県で二十歳未満が四十九人ということになっているようでございます。そのうち、米国系が二十三人、中国系が二十二人、その他は四人というようなことになっておるわけでございますが、ただこの統計は——統計と申しますか、以上申し上げました数字は外国人登録を基礎にしているわけでございまして、いろいろ実態につきましては複雑な問題がございます。 つまり、いわゆる未就籍無国籍というのもございますし、婚外無国籍というようなものもあるわけでございます。それで、そういったものは、たとえば未就籍の無国籍でございますと、これは米国の領事館で登録手続がとられなかったわけでございますが、実質はアメリカの国籍を法律上は持っているかもしれませんし、あるいは無国籍であるということになるかもしれないわけであります。 それから、婚外無国籍が約二十人ぐらいあるというふうに私どもは聞いております。これはアメリカ人と事実上離婚いたしまして、事実上の離婚のままで日本人の男性と重婚状態に陥った、その間に生まれた子供がそのままになっている。つまり、これはほうっておきますとアメリカ国籍になっているわけでございますけれども、あるいは無国籍の状態になっているものもございます。 しかし、これは身分関係を整理すれば、初めから日本人であったという措置がとれるわけでございまして、実体上は日本人だと——日本人と言うのは語弊がございますけれども、国籍法上日本国民として取り扱われるはずであった、こういう者もいるわけでございまして、そのでこぼこ、出入り、これは非常に複雑でございまして、一概に何人程度ということは申し上げられないわけでございますが、私どもいろいろ国際福祉相談所等から聞きましたところでは、無国籍児というのが全部で四十人ぐらいいるのではないかというふうに聞いているわけでございます。
○寺田熊雄君 沖繩の方は、局長のおっしゃったように、いま現に未解決でおるのは三十九件というふうに私ども聞いておりますね。いま日弁連が調査団を派遣しており、この調査団の派遣で明らかになると思いますが、国際福祉相談所の方で五十一年から現在までに解決をしたのが三十五件、未解決が三十九件という報告を私ども得ております。その数はともあれ、これは国際福祉相談所の元の事務局長であった大城安隆さんが非常に骨を折っていらっしゃるということのようです。 問題は、無国籍者を現行法でいかに救うか、現行法の範囲内でいかに救うかということのようであります。これはあなた方がいろいろ工夫をして、簡易帰化の方法をとったり、それから離婚手続がまだ終わらないうちに、日本人の妻と日本人との間に出生した子供についてはアメリカ人の父親との親子関係不存在確認の訴えを起こす、あるいは家裁で強制認知の審判を得るというようなことで賄っておるようですね。それはそれなりに私どももその労を多としないわけではないんですが、やはり根本的な解決というのは、先ほど言ったように、二条を両系主義に改めない限りはどうしても解決しない。 この問題は、法務大臣、あなたは先般、たしか衆議院の法務委員会で難民の処理の問題で、大変過去の問題を反省して、そしてこの問題を前向きに対処していきたいというような御答弁をなさっておられるようですね。確かに難民の問題、途上国援助の問題、これについては、日本が人類の一員として、どういうふうに人類的な問題を解決するかという考え方が足りなかったわけですが、すでに法務大臣がこういう面で過去を反省して前向きに取り組もうとしていらっしゃるといたしますと、この国籍法の改正でも、これから十分熱意を示して積極的な推進ということに御努力をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 私も、国籍法の改正につきましては、寺田さんと同じような気持ちを持って事務当局と話し合っておるわけでございます。当初、次の通常国会に出せないかとまで言ったものでございました。しかし、いろんなことから、とてもそれは不可能であることは私も理解いたしております。 しかし、いずれにいたしましても、なるべく早く父系、母系いずれでも選べるように改めなければならない。そのことを通じて沖繩に起こっております問題も解決ができるのじゃないかと、こう思っております。 同時に、その間は、帰化の問題、これをできる限り容易にできるようにしてあげることを通じて解決をすることじゃないかというようなことも話し合っておるわけでございまして、寺田さんのお気持ち、全く私も同じ気持ちを持っておるわけでございますので、そういう考え方で努力をしていきたいと思っております。
○寺田熊雄君 最後に、アメリカのたとえば父親が帰ってしまって子供に対して扶養をしない、したがって母親が大変苦労するという事例が沖繩などであるようですが、この点で婦人団体の方が、アメリカなどと扶養協定を結んでほしいという強い要望を持っておりますね。この点は、民事局長、あなた方受けとめておられますか、そしてどういうこれから態度をとっていきたいというふうに思っておられますか。
○政府委員(貞家克己君) 御指摘の扶養料の支払いの裁判を実効あらしめる方法、これは非常にむずかしい問題でございます。私どもいろいろ考えているわけでございますが、現在で申しますと、やはりアメリカの裁判所でアメリカ人の父親に対する扶養料の支払いを命ずる判決を得まして、これによって強制執行をするということがオーソドックスな道であるというふうに考えるわけでございます。しかし、そんなことはとてもできないではないかと、こういう御批判も十分私はわかるわけでございます。 ただ、父親が日本におります間に、わが国の裁判所で扶養料の支払いを命ずる裁判を受けているというような場合には、アメリカの裁判所が原則として、その裁判がなされたということを理由として直ちに扶養料の支払いを命ずる裁判を行うようでございます。これは州によって異なりますけれども、そういうこともあるようでございます。ただ、根本は、判決の承認執行ということについて、国際間の合意が成立するということが最も望ましいことでございます。 実は、御承知かと思いますけれども、ヘーグの国際私法会議におきましても、扶養義務の裁判の承認執行条約というようなものが一九七二年に採択をされているわけでございますが、これはわが国はまだ署名、批准をしておりません。アメリカもしておりません。ただ、この条約は、私どもとして今後十分検討をしなければならないと思っているわけでございまして、この条約を批准するという方向、これは当然考えられるわけでございます。 ただ、アメリカが伝統的にヘーグの国際条約に対しましては非常に批准しているのが少のうございます。日本はそれでも、少数といいましてもすでに五つの条約に加入、批准をしているわけでございますけれども、アメリカは二つだけしか入っていないというようなことがございます。したがって、アメリカの態度いかんということもあるわけでございますけれども、これは今後外務省と十分協議をいたしまして、わが方でこの条約の批准ということについての検討をいたすと同時に、アメリカにもこれに入ってもらうと、そういったことができれば私は非常に望ましいことであるというふうに考えております。 ただ、御承知のとおり、英米というのは、かなり日本それからヨーロッパ大陸系の諸国と裁判制度が違った面があります。そこで、そういった国際間の合意にアメリカはなかなか加わりにくいという事情もあるようでございます。まあ、アメリカとイギリス、カナダというような国々の間では、これは同じコモンローの国でございますから非常にそれがしやすい。それに対して、大陸系の法典を持っております国とはなかなかそのリンクがむずかしいという点はございますけれども、これは今後外務省とも十分協議をいたしまして、検討作業を進めたいというふうに考えているわけでございます。
○寺田熊雄君 じゃ、この問題はこれで打ち切りまして、最後に古館裁判官の問題に入りたいと思います。 古館裁判官、これは東京地裁の十一部、労働部の裁判官でありますが、これが総評議長の槇枝氏などたくさんの労働運動の指導者によって訴追請求された事件、これは当然最高裁は承知しておられると思いますが、その理由について衆議院で稲葉議員が質問をして、それに対して最高裁からの御答弁があったようでありますけれども、その間どうも食い違いがあるようであります。 問題は、十一部に係属しておりました森産業株式会社、これが団体交渉に応じないというので、微生研労働組合の組合員が、団体交渉を拒否してはならないという、拒否が不当労働行為に当たるとして、この拒否を禁ずる旨の裁判を求めた案件、これが東京都労委でその請求が認容されたわけであります。しかし、森産業の方はこれに応じない。そこで、都労委が緊急命令を裁判所に求めた。そういう一連の手続の中で生じたことのようであります。 これを最初に担当したのが赤西裁判官であったわけでありますが、赤面裁判官は、当初単独でこの事件を審理して、当時、これについては十二月二十一日には命令を出すという、そういう趣旨の答えをしておった。そうしておったところが、そこに急に古館裁判官が介入してそれをぶち壊してしまった、それが裁判官の独立性を侵害したかどうかという問題であります。 この問題で、最高裁の衆議院法務委員会における答弁を見てみますと、十二月二十一日当時にはすでにこの問題を合議で扱うということを内定しておったと、こういうように答弁をしておられるようですね。これは間違いありませんか。
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) そのように答弁を申し上げたことは間違いございません。
○寺田熊雄君 ところが、合議決定が書面でなされたのが十二月二十六日付であったこと、これは間違いないでしょうね。
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 間違いございません。
○寺田熊雄君 二十六日に合議決定があったのに対して、それ以前の二十一日に古館裁判官が赤西裁判官の裁判に干渉をしてきたというところに、問題があるようであります。 そこで、古館裁判官なり、あるいはその他の裁判官が事実上二十一日に合議決定をしておるというように弁明しておるのは、これは最高裁に直接そういう弁明をしておるんですか。それとも、やっぱり地方裁判所長にそういう弁明をして、それがあなた方に上がってきている、こういうことなんでしょうか。というのは、訴追の場合、鬼頭にしろ安川にしろ、過去に事件がありましたね。その場合、最高裁が直接調べられたこともあるし、あるいは安川のように福岡高裁長官の調べを最高裁で受けとめたという事案もあるようでありますが、この場合はどちらでしたか。
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) この問題が起こりましたことによりまして、私どもの方から東京地裁の民事の所長代行の方に非公式に電話で問い合わせた結果でございます。
○寺田熊雄君 所長代行の調べがもとになるんですね。私は、やはりこの古館裁判官などが二十一日に干渉した以上は、すでに合議とすることに内定しておったという陳弁をせざる得ないと思うんですね、そうしないと、ちょっとつじつまが合わないから。しかし、いかにもこれは弁明のための弁明というふうに受け取られざるを得ないので、二十一日に決定しておったなら、なぜ二十一日にその合議決定を書面化しなかったのか、あえてそれを五日後の二十六日付の書面にしたのか、その点がどうしてもわからない。これはどういうふうに報告を受けておられますか。
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) その点については、詳しい事情の報告を受けておりませんのでございます。
○寺田熊雄君 やはりそれは弁明のしょうがない、だから恐らくその点の疑問には答えられないんでしょう。 これは民事訴訟法上の決定なんですか。
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 合議体で審理、裁判をするかどうかというふうな訴訟法上の決定ではないというふうに理解しているわけでございます。
○寺田熊雄君 そうすると、それはどういう法規に基づいた決定なんでしょう。
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 裁判所の司法行政上の事務分配を定める、いわば内部的な性質を持つ決定でございまして、裁判所法上の決定というふうに理解してよろしいかというふうに考えております。
○寺田熊雄君 確かに裁判所法には、合議体で扱うべき事件についての規定がありますから、それはそういうふうに理解できないわけではないのだけれども、それならなおさら、二十一日に決定したものなら、あえて二十六日付の書面にしなくてもいいわけで、その点がどうしても弁明のための弁明とせざるを得ないんですよね。だから、裁判官というのはやっぱり率直に事実をありのままに認めて、悪いなら悪かったと言ってくれればいいのだけれども、そういう見え透いた弁明をするものだから、かえっておかしくなってしまう。 それで、私どもが調べてみますと、これはやはり赤西裁判官自体が、弁護人、代理人にいろいろと聞かれて、最終的には二十一日には決定はなかったんだ、二十六日ですということを正直に言っているらしいのですよ、われわれの三弁護人とそれから微生研の労働組合委員長の報告によりますと。これは、ですから、赤面裁判官自体についてもそういう調査を当然すべきであると思うんですが、赤面裁判官のそういう報告というものは受けておられるのですか。
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 受けておりませんでございます。
○寺田熊雄君 やはりそういう点にあなた方の調査のまだ不十分さがあるわけで、古館氏だけの報告ではやっぱり事態を誤るわけですね。 この事件は、労働組合の諸君がまなじりを決してこれを訴追するというようなことは非常に珍しい、余り日本の裁判史上にも例がないことだと思うんです。 なぜこういう例のないことをしたかといいますと、根底には裁判官に対する非常な不信感があるんです。それは鬼頭のような裁判官、安川のような裁判官、いろいろありますけれども、この古館裁判官に対するような不信感というのはそうはありません。 確かに、裁判官にはいろいろな考え方を持っていらっしゃる方があります。私どもも現実に労働事件を扱う場合に、裁判長に会って早く仮処分命令出してくれと言って交渉することがあります。ある裁判長は、いやそれは労働問題というのは労働委員会で扱うんですと、だからまず地労委、中労委を経てから来てくださいというような、そんな大変非常識なことを言う方がいらっしゃる。それはとんでもないことだ、われわれが地労委へ持っていこうが裁判所へ持っていこうが、いまの日本の労働法制というのはどちらも許されているんだ、あなたの考えは根本的に変えてもらわにゃいけませんよときついことを言って、やっと仮処分が一週間後に出るというような、そういう実例も私どもはあるわけです。 刑事事件でも、この部に行くと初犯は原則として執行猶予——亡くなられた西久保良行さんのような裁判長もいらっしゃる。この裁判官は有罪判事だと——これは名前を言ってはいけませんけれども、戦前に東京控訴院で有名な裁判官がいらした。有罪判事と言われた。いろいろある。それはしかし、その人の人柄とか何とかいろんなものを見て、負けても、また有罪になっても仕方がないというあきらめがそこにある。 ところが、この古館裁判官の場合はそうじゃないんです。あの男だったらだめだ、労働者の権利は守れないと。もともと使用者のひいきばかりしておる男だ、偏った男だという不信感が根底にあるんです。そこをやはり最高裁としては考えていただかなきゃいけない。いま古館をどうしろなんという人事についてわれわれは介入するわけじゃない。しかし、裁判官というものは、大衆の信頼を得るような人であってほしい。そうすることが、あなた方の御職責だと思いますよ。 なぜ労働者がそこまで不信感を持ったかということを、この際わかりやすくお話をすると、たとえば労働事件の場合、会社側の証人の尋問が行われますね。労働者側の代理人が追及して証人が詰まると、裁判長が、それはこういうことなんでしょうといって助け船を出す。そうすると、証人はそうですと言ってそれに飛びついてしまう。それから、労働者側が追及していって使用者側の証人が詰まると、それはもういいでしょうと尋問を抑えてしまう。それから、なぜそんなことを聞くんですと、わざわざ一つ一つ尋問の目的を開陳させる。そういうへんぱなことをしますと、この男は一体これは何だと、資本家の回し者だろうというふうな印象を裁判当事者が受けるわけですよ。 それから、和解の際も、使用者側が承認した和解金額以下の金額で労働者側を抑えようとする。これは当事者主義に明らかに反するでしょう。そんなに和解に職権で、相手方が同意している金額以下に下げさせる必要はないんです。民事訴訟の構造からいったって、そんなことをする必要はない。それをやる。 それから、会社側が労働者を、暴力行為を行ったといって解雇する。その解雇が争われている事件で、会社側が事情として職場秩序違反がありましたというようなことを言いますと、いや、それが問題だ、それが争点だと言って、職権的に争点を設定してしまう。これは、民事訴訟法の当事者主義の原則というものを根本から理解していない。これは具体的な事件を言いますと、私どもちょっといろいろ差し支えがあるから、一般論としてこの傾向を申し上げておる。 それから、第一回の口頭弁論でいきなり和解勧告をする。証拠調べなど全く行わない。その一つの例として、ある病院勤務の労働者が二カ月間、弟の病気看護のために欠勤をしたという事件で、いきなり原告に対して、二カ月も休んで給料をもらうなどとは問題だ、いまのうちに和解しなさいといっていきなり職権の和解勧告をして、これはいきなり心証をもう当事者に言ってしまうわけですね。まだ証拠調べも何も済まないのに、心証をもう全部示してしまう。こんな裁判官がありますか。 それから、和解の際に、病院側が提示した金額について、よくこんな額を出したものだとびっくりしている。当事者主義で、当事者がそれで了承をしていればいいじゃありませんか。それが著しく公益を害するとか、公序良俗に反するとかいうなら別だ。金額が多少違ったからといって、当事者の納得した金額以下に無理に下げて和解を進める必要は毫もない。そういう傾向、これは裁判官として全く欠格者である。 ある具体的な例を申し上げますと、東京都の都営地下鉄などというのは、よく夜間など酔っぱらいが従業員を殴るそうです。暴行事件がある。もうすでに何十件もあるようです。たまりかねた労働者が、都を相手にして損害賠償の請求訴訟を起こす。そうしたときに、いきなり和解を勧告して、私が使用者だったら家に呼んで飲ませて終わりにする。ビールーダースぐらいで和解したらどうかと発言をして、これには使用者側も労働者側も唖然としてしまった。結局、裁判所は抜きにして、当事者間で和解をしたというようであります。こういう羽目を外した裁判官に対する不信感がある。こういう裁判官では裁判の威信も失墜するし、労働者の生活が守れないということはもう一見して明らかであります。 これが直接出たのは、御承知のように、都労委が緊急命令を出してきた。それに対してこれを却下したんですね。労働事件というのは、御承知のように、早急に解決を図らないと労働者の生活が守れない、不当労働行為があってはいけない、憲法二十八条の団結権、団体交渉権など、基本的な人権を守るためには早急に解決しなきゃいかぬというので地労委制度、中労委制度がある。その人たちは、皆裁判所のかなり練達な裁判官が都労委の会長になり、中労委の公益委員を兼ねておる。そういう方々が良心的に審理を進めて、緊急命令を必要とすると判断をしておるのに対して、全く労働問題に理解を欠いた一知半解の男がこれを却下してしまうというようなことでは、労働委員会制度なんというのは無意味になってしまう。とても憲法二十八条の基本的人権は守れない。 そこで、これはやはり人事の担当者としては、少なくも地労委、中労委というようなものの事件をレビューして、そいつを却下したりなんかするのであったならば、学識経験、労働法の理解などについて、少なくもそれを上回るやはり見識なり学識を持った人をそういう地位につけるべきだと私は考える。これは人事局長としてはどうお考えになりますか。
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 寺田委員、特に御承知のところが多かろうと存じますけれども、裁判官のそれぞれの仕事の分担につきましては、それぞれの裁判所の裁判官会議で決定いたしているところでございます。どのような事件を具体的にどの裁判官に担当していただくかは、いま申し上げたとおり、地方裁判所の方で決めていただいているところでございます。 一般論として申し上げますれば、一般の事件はもちろんのことでございますけれども、労働事件とかあるいは商事関係の事件とか、いわゆる特殊性のある事件は、東京地裁の場合には特別の部を設けているわけでございます。特殊な事件につきまして、固有の問題につきまして裁判官がそれに対する理解を持つべきことは、これまた当然でございます。不足があるとすれば、やはり自分で研さん、修養を積むべきであろうというふうに考えております。 なお、先ほどるるおっしゃっていただきましたように、裁判に対する信頼というのは、裁判官に対する信望がなければならないというふうに基本的には考えております。現に不祥事が相次ぎまして、すでに新聞にも報道されましたように、服部最高裁長官から異例の全国の裁判官に対して訓示がなされたわけでありますけれども、その中の一くだりといたしまして、「裁判に携わる者に対する信望なくして裁判に対する信頼は望むべくもない。」こういうくだりがございます。全く私どももそのとおりだと考えております。 ただいまいろいろおっしゃいましたけれども、具体的な事件の具体的な処理の過程の問題かと思います。私どももちろん、寺田委員もおっしゃるように、私どもといたしましても、具体的なそういう裁判上の手続上の処理につきましてとやかく言う立場にはございませんけれども、服部長官の訓示の中にあるとおり、全国の裁判官、まさに国民からの裁判官に対する信頼というものをかち得るように努力していかなければならないというふうに考えております。
○寺田熊雄君 確かに裁判官の信頼を得るようにしてもらいたいと、これはあなた方の先輩である鈴木忠一元裁判官が、兼子一さんの還暦祝賀論文集で「裁判官の独立とその問題」という論文を書いていらっしゃる。 その中で、「裁判官の主観的な独立——内心に於ける独立——の欠くべからざること勿論であるが、同時に当事者乃至一般国民をして、裁判官が外的にも独立であり中正であり又公平厳正であるとの信頼を失はしめない客観的な状態に於いて裁判が為されることが要請されるのである。」というふうに述べておられる。また、「若し裁判官個人の主観のほしいままな跳梁が許されるならば、それは決して「この憲法及び法律のみに拘束される」ことでないことは勿論であり、その結果は裁判官の中立性・客観性・公平・平静さが失はれ、当事者又は国民の裁判官の人間に対する信頼が全く失はれるのみでなく、最も重大な点は、裁判官の職務上の独立、身分上の独立を憲法が保障した目的、即ち憲法及び法律に従った適正な裁判によって国民の権利を保障すること自体が必然的に実現し得なくなるといふことなのである。」というふうに説いておられる。こういう点を十分に裁判官に徹底させてもらいたい。 個々の配置がどうだとかなんとかいうことは、裁判官をどうしろというようなことを私はいまここで申し上げるのではないし、それはあなた方としてもそれに応ずるというわけにいかないでしょう。しかし、裁判官の信頼を確保すると、そのためには信頼を失うようなこういう裁判官が出ないようにあなた方が御努力くださる、その職責はあると思う。大変これは論じにくい問題だけれども。 最後に、労働省の方、来ていらっしゃいますか。—— 労働省の統計によりますと、緊急命令が裁判所で却下されたということは昭和五十年に過去一回あったきりで、それが五十三、五十四とあらわれてきて、ことしになって急に二件出てきた。そのうち古館氏がその一件でありますが、こういう都労委、中労委のエキスパートが慎重に命令をし、緊急命令が必要だ、これなくしてはこの労働事件の解決が得られないと、そういうかたい信念を持って申請したものが、余り労働問題について理解のない裁判官によってたやすく却下されるということになっては、これは労働委員会制度というものが無意味になってしまう。ただ時間がかかるだけである。それなら初めからもうない方がいい。初めから裁判所へ持っていった方が早くなってしまう。 こういうことにかんがみて、私は少なくも地労委、中労委が緊急命令が必要だと考えたならば裁判所もそれを尊重する、尊重せざるを得ないというようなふうに立法的な拘束をするか、立法的な拘束が不可能だとしても、少なくもあなた方がそういうことを実現するように努力しないと、労働者の団結権、団体行動権を守るあなた方の職責は果たせませんよ。どんなふうにお考えですか。
○説明員(中村正君) 緊急命令の裁判所における取り扱いにつきましては、最近では緊急命令の適法性とそれから必要性、その両二点について裁判所の方で検討できると、その上で緊急命令を出すか出さないかということを決めることができるということになっております。 そこで、最近の例では、いま先生御指摘のとおりの状況になっておりますけれども、何分件数が余り多くございませんので、今年に至り二件出たということで、直ちにその価値判断をするというのはやや早いかと思いますけれども、確かに御指摘のとおり、労働委員会の意義をあらしめるためには、労働委員会が申し立てた、あるいは申請した緊急命令につきまして、裁判所の方でも認めていただくというような努力を労働委員会の方でもしなきゃならない。 ただ、その場合に、労働委員会の命令自体がどうかという問題になるわけでございますけれども、その場合いろいろ議論がございまして、ただいまわれわれの方でも労使関係法研究会というところで不当労働行為それ自体の勉強をしておりますけれども、裁判所において認めていただくような命令をつくろうとすると、今度は、いまでも審査の期間が長期化することで問題になっておりますが、それがさらに慎重を期すとなると長くなる。それ自体が、今度は、労働委員会の早急に労使関係争議を解決すべきという役割りと矛盾してくることになるということで、いろいろ悩みがございます。 しかし、いずれにいたしましても、労働委員会の方でもその事案の審査に適法性あるいは緊急命令を出すことの必要性について十分納得いくようなそういうような説明、こういうものについて努力をすべきと思います。 なお、制度全体の問題につきましては、先ほどもちょっと御紹介いたしましたように、労使関係法研究会というところで現在検討中でございます。
○寺田熊雄君 あなた方は、地労委、中労委の制度の目的は結局労働者の団結権、団体行動権を守ることにあるという、そのために努力するという認識と決意をやっぱり持ってもらわなければ困るし、それが壊れるような事態に対しては有効な手を打っていただかなきゃいかぬ。命令の適、不適なんということをここで言っちゃいかぬけれども、こんな何か、後で相手方が断わるかもしれぬから命令を出してもどうかというようなことを言って決定、判決があるようだけれども、断わるから命令が必要なのに、断わるかもしれぬから命令を出す必要はないというようなとんでもない理屈をこねて却下しておるわけですね。 だから、そういう認識不足に対しては、裁判官側と中労委などとの間にたとえば協議会を持つとか、そういうことによってお互いの意思の疎通を図り理解を深めるとか、そういうやっぱり努力も考えてもらいたいですね。これは、あなた方とそれから最高裁側と、そういうお互いの理解を深め研さんをする機会をやっぱりつくってもらいたいと、こう思いますが、ちょっとそれに対して答えを伺って、終わりにしたいのですけれども。
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 労働委員会が労使関係についての専門的な知識、経験を有する委員で構成されている機関であるということは、寺田委員御指摘のとおりでございます。そういうことから申しまして、そのような労働委員会のした判断を裁判所が審査するに当たりましても、労働委員会の専門的な知識、経験に基づく裁量的判断、これを尊重すべきことは言うまでもないところでございます。 労働事件を担当しております裁判官は、いずれもそういうような考え方に立って、労働委員会のした判断に裁量権の逸脱とか乱用があると認められるときに限って判断を取り消す、あるいは緊急命令についても消極的な見解を打ち出すということが許されるのであるという方針のもとに、事件の処理に当たっているというふうに考えておるわけでございます。 なお、そういう点につきましては、労働委員会と裁判所の方の相互理解を深めるということが大切であることはまさに御指摘のとおりでございまして、従前からも労働委員会との協議会を開催しているところでございます。
○説明員(中村正君) 三権の分立と申しましょうか、あるいは裁判官の職権の独立という問題、先生よく御承知の問題がございまして、役所側が裁判官に対して意見交換といいますか、いろいろやろうという働きかけをするのはやや問題があるかと思いますが、少なくとも労働省として云々というのはやや問題があるかと思いますが、いま最高裁の方から御説明がございましたように、自主的なものとして労働委員会の委員とそれから裁判官との意見の交流の場があるかと思います。そういうところで、いろいろな十分な意見の交換があるということを期待したいと思っております。
○委員長(鈴木一弘君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時二十分まで休憩いたします。 午後零時二十一分休憩 —————・————— 午後一時三十三分開会
○委員長(鈴木一弘君) ただいまから法務委員会を再開いたします。 休憩前に引き続き、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案を便宜一括して議題とし、質疑を行います。 質疑のある方は順次御発言を願います。
○藤原房雄君 本日は、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案と検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案、この二つの法案が当委員会に付託されておりますので、この法案につきまして、順次質疑をいたしたいと思います。 これは一般公務員に準じて行われるわけでございますので、毎年といいますか、そういうことで、人事院の勧告がございますと、それに伴って一部改正ということで、今日までいろいろ論議されてきております。私は当委員会、初めてのことでございまして、一般公務員の場合については、ある程度いろんなことについては承知をいたしておるわけでございますが、裁判官または検察官のことにつきましては初めてのことでもございますので、いままでいろんな議論があって、それなりの御答弁があったのかもしれませんが、若干の問題について少しく御質疑をいたしたいと思うのであります。 最初に、午前中も同僚委員から御質疑がございましたが、このたびの法律、中身としましてはそう大きな問題ではないわけでございますが、最高裁判所長官とか最高裁の判事、高等裁判所の長官の据え置き、それから判事、判事補及び簡易裁判所の判事の報酬または検事の俸給、これにつきまして、このたびの措置によりまして段差がつくわけですね、据え置かれるところ。 これは午前中にもお話ございましたけれども、ことしの給与体系全体の中で、政府としましても財政再建ということで非常措置といいますか、それなりの措置をしなければならぬ、対策を講じなければならぬということで、このたび閣議決定をいたしたわけでありますけれども、そのことによりまして、長い年月的な給与体系全体を見ますと、そのときそのときの状況判断としてはそれはやむを得ないということでありますけれども、何年か通して見ますと、やっぱりひずみといいますか、アンバランスな面が出てくる。単年度で見ますとそれなりの理由があるのかもしれませんが、やっぱり長く見ますといろんな問題が出てくる、こういうことがいろんなことにこれは習われるわけであります。 このたびもやっぱり、最高裁の方々については、長官、判事についてはこれは据え置くということです。それから、判事以上の方々については十月一日から、それの前の方々については四月一日からと、こういうことになりますと、ちょうどこの境目の方々につきましては、年間の総合所得、こういう面でどうしてもまた問題が出てくる。それから、ここ数年間の推移の中で、あるいはそういうひずみというものがどうしても出てくる。 こういうことで、裁判官と、また検察官の俸給のこのたびの問題につきましても、やはりそういう問題点が何点かあるのだろうと私は思うんでありますけれども、その点についてはいろいろ御検討なさっていらっしゃると思いますが、現状ひとつ御報告をいただきたいと思います。
○政府委員(枇杷田泰助君) ただいま御指摘のありました段差と申しますか、その区切りが二つあるわけでございまして、まず最初に、御指摘のように、裁判官で申しますと最高裁判所上長官と最高裁判事が据え置きになって、東京簡裁、長官以下が上がったということのために、だんだんその差が縮まってまいっております。御審議いただいております改正案によりますと、最高裁判事と東京高裁長官との差額が、現在十五万円でありますものが、今度は十万円に短縮をするということに相なってまいります。 この最高裁長官の百五十五万円、最高裁判事の百十三万円という金額がセットされましたのが、昭和五十三年の法律改正の際に決められた額でございまして、その後上がっておりません。一方、東京高裁長官の方はその後何回か上がっておりまして、当時十八万円の差であったものが、今度の改正案では十万円まで詰まるということに相なってまいります。この最高裁判事の場合には、憲法上も下級裁判所の裁判目とは別に相当な報酬額を与えるというふうなことを決めてございますし、ここにはかなりの差があっていいというふうに考えられる点でございますので、余りこれが詰まるということは、給与体系上一つの問題であろうというふうに考えております。 しかしながら、一方、三権分立の関係から、最高裁長官と内閣総理大臣、それから衆参両院議長が大体同額ということで伝統的に考えられております点からいたしますと、最高裁長官だけを上げるというわけにもまいらないというところで、それに伴いまして最高裁判事の方も据え置きということに相なっておるわけでございますので、これが今後とも片っ方が据え置き、片っ方が上がるということになりますと、格差がだんだん狭まってきて給与体系上おもしろからぬ結果に相なるであろうと思います。しかし、今度の改正案におきましても、ともかく十万円の差というものは維持されておりますので、この程度ならばまだ許容できるのではないかという感触でおりますが、将来また一方が据え置きということになりますと、問題がだんだんと顕在化してまいろうかと思います。 それから、次の段差と申しますか、首のところが、御指摘になりましたように裁判官で申しますと判事の八号以上、それから判事補のところの境目、簡易裁判所の判事四号、簡易裁判所の判事五号という境目が問題になるわけでございまして、上の方はいわゆる一般職で申しますと指定職の職員の俸給に見合う報酬を考えるというランクに属しておりまして、それ以下のところは一般職の行政職(一)の俸給表の適用のある職員に見合うというふうなことで考えられてきておるところでございます。 ところが、指定職の関係につきましては適用日が十月一日、一般の行政職(一)の俸給表の適用を受ける者が四月一日からということになりますと、いわばベースアップの差額の六カ月分というものに実質上の金額の差が出てまいります。先ほど寺田委員の御質問にお答えいたしましたとおり、その結果、簡易裁判所の判事五号の方の、これは扶養家族は標準的なものにセットしての話でございますけれども、その方の昭和五十五年度、すなわち、ことしの四月から来年の三月までの年間収入と、それから判事八号の方の年間収入とを比較いたしますと、給与体系上は下だというふうにランクづけをされております簡易裁判所の判事五号の方が、若干よけいになるという現象を来すわけでございます。 このことは、体系上好ましいことではないということは重々考えておるわけでございますが、現実問題といたしまして、簡易裁判所の判事五号の方は昇給すれば簡裁の判事四号に昇給されます。簡裁の判事四号と簡裁の判事五号との間では、そういう逆転現象はございません。判事の場合には、判事補一号の方が判事八号になられるというのが、一つの人事といいますか給与の系列でございますので、この関係につきましても逆転がないわけでございます。 したがいまして、位置づけという点からは問題ございますけれども、現実問題としては逆転がないということで、ここも一般の職員との対応関係で給与を決めていくという原則を貫くということからいたしますと、やむを得ないことではないか。実害が出てまいりますとちょっと問題でございますけれども、そういう点はないので許容できることではないかと思いますが、このような問題が将来とも起こることが予想されますので、その都度、そういう点についても十分に検討しながら案をつくっていかなければならないというふうに考えておる次第でございます。
○藤原房雄君 実体的にはそういう事態は起こらないんだということでありますが、これもそろそろ限度といいますか、人事院勧告、大体最近の諸物価の高騰の中では毎年行われてきているわけでありますから、ここでひとつ大きな検討をいたしませんと、次あたりからやっぱりこれは大きな現実問題として出てくるんじゃないかという、こんな気がするわけであります。 特に、このたびの人事院勧告では、寒冷地手当、これは勧告どおり行われることになっておりますね。で、いま一般職でいうところの指定職については寒冷地手当はないわけですから、こういうもの等考えあわせますと、やっぱりもう現実的には問題が出ていると言わなきゃならないと思いますけれども、どうですか。
○政府委員(枇杷田泰助君) この俸給の点につきましては、先ほど申し上げました問題があるわけでございますが、そのほかに寒冷地手当法の改正がただいま御審議されておるようでございますけれども、その内容になりますと、高い俸給月額をもらっている人が若干頭打ちになるというふうな措置がとられるようでございます。そういうことになりますと、たとえば札幌の高裁長官であるとか検事長であるとかいうような高額の報酬または俸給をもらっておる方が定率部分のところが低くなりますので、したがって、従来よりもあるいは下がるという結果に計算上はなろうかと思います。 ただ、これは経過措置的にはまた別途の措置が講じられておりますので、現実にいまおられる方が前の年よりも下がるということはないように承知いたしておりますが、だんだんと、いまの時代では上の方に少しいろんな関係で厳しいような線が出ておりますので、将来それが裁判官、検察官の給与体系上、不当な影響は受けないようにということは私どもも考えなければならないと思っておりますけれども、現段階では、そのようなことは現実問題としては許容できる範囲内にとどまっておるというふうに考えておる次第でございます。
○藤原房雄君 今度の閣議決定に当たりましても、「官庁綱紀の厳正な保持と能率の増進に努める。」という、こういうことでございますが、大臣、いまいろいろお話ございますように、今度の閣議決定の中にも総合的にこれは検討しなきゃならぬという、そういうことも言われておるわけでありますけれども、そういう実態をぜひひとつ御勘案の上、速やかに結論といいますか、今後の対処をしていっていただかなければ、やっぱり問題が出てくるでしょう。ことしあたりが本当に限界ではないかというふうなこんな感じがしますので、ちょっと申し上げておきたいと思います。 それとともに、このたびの人事院勧告がございましたが、その実施に当たりましては、やはり財政再建というのは避けて通れないこととしてあるわけであります。そのために、いまいろんなこういう措置がとられるわけでありますが、そのことのために不都合が起きてはならぬだろうと思います。それとともに、やっぱり官庁におきましても、それ相応の財政再建のための努力というものが払われなければならないのは当然のことだと思います。 そういうことのために、給与改定に当たっては、このたびの改定をするとしましても、能率の増進とか、それから官庁綱紀の厳正な保持とか、こういうものに努めるということも改めて閣議で決定しているわけですね。今年、また明年度の予算編成に当たりまして、「官庁綱紀の厳正な保持と能率の増進」、こういうことがうたわれているんですけれども、法務省としてもこれを受けとめて、来年度にはどういうことをどうしようという、こういうことでいろいろ御検討なさったんだろうと思いますけれども、どうでしょうか。
○国務大臣(奥野誠亮君) いずれ俸給表等が改正されまして実施に移す際には、改めて綱紀の振粛について留意することが大切だと、こう思っております。 新年度の問題につきましては、予算等を通じまして明らかになってきているわけでございますけれども、いろんな御意見を体しながら、さらに積極的に工夫し努力をしていきたいと思っております。
○藤原房雄君 いろんなことが閣議決定の中にも盛り込まれておりますが、「人事院に対し、給与制度全般について総合的な検討を進め、可及的速やかに結論を得るよう要請する。」とか「行政事務・事業の整理、委譲等により行政の簡素合理化を積極的に推進する。」とか、こういうふうなことが言われておりますが、これはただこういうことが言われたということじゃなくて、やっぱり各省庁ではそれなりの具体的な施策として努力なさるんだろうと思います。 こういうことについて、法務省としてもいろいろ御検討なさっていらっしゃるんだろうと思いますけれども、そういう具体的なことについて法務省で検討したことがあればお述べいただきたいと思いますけれども、別に、この閣議決定を受けて具体的なお話し合いというのはまだないんですか。
○政府委員(枇杷田泰助君) 私、直接その方面の担当でございませんので、はっきりしたことは申し上げられませんが、毎年、閣議で決められましたそういう線に従いまして給与改定が行われる際に、各出先の長に対して綱紀の粛正並びに行政の事務の能率化、簡素化に努めるというふうなことを促すということに相なると思います。 それから、その面は別といたしまして、また各組織ごとに常々能率化、合理化、事務の簡素化、そういう面については各部局ごとに検討して、常時出先の方にも指示をいたしますし、また、出先機関の方からそういう改善方のアイデアとか、そういうふうなものもどんどんくみ上げるというふうなことで動いておるように承知しております。
○藤原房雄君 担当でないということで本当に申しわけございませんが、これは閣議で、この厳しい財政再建の中での人事院勧告の実施ということでありますから、各省庁しっかりひとつ、いままでもやっているでしょうけれども、特にしっかりということだろうと思うんであります。そういう反面、やっぱり法務省というのは一般住民との接点といいますか、法務行政の上で、いろいろな事務的なことでまた仕事量も非常に多いという、過日もいろんなことを申し上げたわけであります。また後からもいろいろお聞きしたいと思いますが、そこらあたり、かじ取りはなかなかむずかしいんだろうと思いますけれども、これはひとつ御努力いただきたいと思います。 また、給与のことについては、私、今回初めてこの委員会を担当いたしまして、初任給調整手当ですか、この制度があるわけですけれども、これはいままでのいろんな歴史的な経過はあるんですが、医療職の場合には年々上がっているんですけれども、ここずっと初任給調整手当というのは余りこう動いていない。これはそれなりの調査とかデータとか、いろんなものをもとにして、勘案してやっているんだろうと思いますけれども、この諸物価高騰の中で、また社会情勢のいろんな変化の中で、ここ七年、八年動かないというのも非常に奇異に感ずるんですけれども、これがつくられるようになった淵源、職務については承知しておるつもりでありますけれども、ここ数年の間、全然これが動かないで来たという、これはいろんなデータのとり方とか社会の推移とか、そういうものが余り敏感に反映しないような現状ではないかなというふうに思うんですけれども、これはどうなんですか。
○政府委員(枇杷田泰助君) 初任給調整手当と申しますのは、御案内のとおり裁判官、検察官に優秀な人材を確保するという面でつくられたものでございまして、司法修習生が修習を終わりまして判事補、検事、弁護士という三つの道に分かれていくわけでございますけれども、その給与の面から、いわば任官希望が少ないということでは裁判制度、検察制度を維持していく上に問題だと。したがって、そういう面からの給与上の調整を図るということが趣旨でございます。 したがいまして、修習生を終わりまして弁護士になる人が、いろんな法律事務所に入る方がほとんどでございますけれども、その場合に法律事務所の方でどの程度の給与をもらっておるか、その比較において調整的な額をどの程度にしたらいいかということが決定されるということになっておるわけでございます。 この制度ができました四十六年当時にはかなりの差がございまして、そのことが任官希望者を少なくするということになっておるのじゃないかというふうなことが問題になりまして、その当時の実情を調査した結果、二万三千円という最高額が決められたわけでございます。その後、修習生を終わって法律事務所に入られる弁護士さんの給与実態というものを調査をしながら、検討を毎年繰り返しておるわけでございますが、ところがその後、何と申しますか、公務員側の方のベースアップがかなり大幅に行われたという時期もございますし、それから弁護士さんの方の、これはちょっと平たい言葉過ぎて恐縮でございますけれども、景気が余りよくないといいますか、平たい言葉で言いますと、いそ弁という方々の給与が余りそれほど上昇してないという結果が出ておりまして、そのために私どもは、弁護士さんになられた方全員の調査は実はできませんですけれども、できる限り調べたところで比較いたしますと、二万三千円の金額で大体同じ給与水準になっているのではないか。 年によって若干でこぼこはございますけれども、ごくわずかの差で上下をするというような感じでございますので、そうなりますと、これを大幅に引き上げるというふうな実質的な根拠がないということでずっと据え置きになっておるわけでございますが、しかし、また弁護士さんの方の給与がかなり上がるということになりますと、その際には、それに見合った改定は当然しなければならないというふうに考えておる次第でございます。
○藤原房雄君 当初の考え方の中には、司法修習を終わった方々の裁判官への志望者、こういう方々に対しての人材確保といいますか、そういうことの意味があったということですが、これは給料が多いから、少ないからということで単純に自分の志望を決めるということではないのかもしれませんけれども、やっぱりこれは就職というのは一生のことでもありますし、また生活というのが伴うわけでありますから、当然収入の多い方を志望するんだろうと思います。現在も、いただいた資料等見ましても、志望時点ではやっぱり裁判官等の志望数というのは少ないようですね、数からいきましても。現在は、やっぱりこういういままでずっと六年、七年二万三千円、初任給調整手当ということで措置をしたことが功を奏して、今日では余りそういうことには問題はない、こういうように考えていらっしゃるのかどうか、その辺どうですか。
○政府委員(枇杷田泰助君) 裁判官、検察官を希望いたします司法修習生が給与の面だけで志望を決定するということはないということは御指摘のとおりでございますが、ただ若干の要素になることは間違いないわけでございますので、その点で初任給調整手当というのはかなり重要なことではあろうと思います。しかし、実質的にも差がございませんし、また裁判官、検察官の希望者と申しますか、それも大体採用予定といいますか、そういう数字の人数は確保できておるというふうなことでございますので、初任給調整手当がある程度功を奏しているということも一部では言えるのではないか。それが主たる理由とまでは言えないかもしれませんけれども、支えにはなっておるのではないかという気はいたします。
○藤原房雄君 先ほどのお話の中に、全部を調べるというか、弁護士の方がいま初めてお仕事をなさって現状はどうかというのを全部調べて統計をとるというのは、人事院の給与改定に当たりまして民間企業との給与格差、こういうものの統計をとるのとは違って、いろんな立場の方々いらっしゃいますから非常にむずかしいのだろうと思いますが、一応どういう手だてで資料を集計しまして、そういうものの中からこのままでいいという、これを判断するには、やっぱりそれなりの判断の資料といいますか、基礎というものがあるんだろうと思いますけれども、これはいままでもずっと何らかの方法を講じてこられたんだと思いますが、一々詳しいお話はいいんですが、概括的に、こういうことでこういう統計、こういうことで調べてこういうふうにしておるというアウトラインでも結構ですけれども、お伺いをしたいと思います。
○政府委員(枇杷田泰助君) 私どもといたしましては、人事院の民間給与の調査のような手段を持ち合わせておりませんので、実際上この調査はむずかしい問題がございますが、また法律事務所の方では比較的その給与の実態といいますか、ひいては法律事務所の経営の実態について余りオープンにしたくないという気持ちもございますので、したがいまして従来からそういう面で御協力をいただいておる法律事務所の方からデータをいただく、あるいは修習生当時に机を並べて勉強した友達同士が、実は私のところではというふうな関係で入ってくるニュースもこれもあわせまして、そこでできるだけ数の多いデータを集めることにして、それを集計しておるわけでございますが、ただ官と違いまして、いろんな給与のやり方が法律事務所の中にはございます。 したがいまして、厳密な計算というのがなかなかできない要素がございますけれども、一応のところで計算をいたしまして、任官者との格差があるかどうかということを毎年検討しておるということでございます。
○藤原房雄君 非常にむずかしい形態であることは私どももよく存じておるんですが、四十六年といいますと、第一次のオイルショックのあのときも変えなかったということでありますし、その後のオイルショックといいますか、社会変動の中にありましても余り手を加えなかったということで、こういうことから言うと、こういう社会変動で一般的に民間の方々の給与体系というのは相当変わりがあったわけでありますが、そういうときに手を加えなくてもよかったというこういうことなのか。 そういうことで、今後この調整措置というのは固定化して本俸の中に入れるような形で考えるべきなのか、こういう形でこのまま置くのか、これからのことについてはどういうふうにお考えになっていらっしゃるか。四十六年からだと相当な変化があったろうと思うんですけれども、その中でも余り手を加えずに来たというこういうことに、私どもは非常にどうだったのかなという気がするんですが、今後のあり方につきましてお伺いしたいと思います。
○政府委員(枇杷田泰助君) 従来、据え置きになりました事柄につきましては、繰り返しになりますが、オイルショックの直後、公務員の関係の給与につきましては、一年に三〇%以上ベースアップをしたというようなこともありまして、最近は三%、四%台でございますが、四十六年度以降は一般公務員の方はかなりの上昇をしております。一方、法律事務所におきます弁護士さんの方は、そういう急激なベースアップがどうもなされた形跡がございません。その関係で、本俸の方が大分格差が縮まってきたということから、差額の絶対額が詰まってきて変化がないということになっておるかと思いますが、そういうふうなわけで、何年間も固定いたしますと、むしろ調整手当ということではなくて、本俸に組み入れてはどうだというふうなことが問題になるわけでございます。 しかし、これを組み入れてしまいまして、そして新たな差が出てきたときにどうするかということになりますと、またちょっと問題が出てまいりますので、本俸に組み入れてしまうということについては、やはり今後の経済情勢などを見ませんと、かえって不利益になる、組み入れた後で初任給調整手当をまた別に設けなければならぬということになっては困るというふうなことですので、もうしばらく推移を見る必要があろうかというふうに考えております。
○藤原房雄君 それから、いつも言われることですが、国選弁護人の報酬のことについてでございます。これはもう日弁連から要求が出ておることは私どもも承知をいたしておりますが、国選弁護人の報酬額というのは最高裁でいろんな御検討をなさっていらっしゃるんだと思いますけれども、現状に合うか合わないかというのは、いろんな事犯とか問題によりますし、いろいろなことがございますから軽々にはこれは判断できないことかもしれませんけれども、算定ですね、算定額というのは一応どういう基礎のもとにこの算定がなされているかということについてお伺いをしたいんですが。
○最高裁判所長官代理者(柳瀬隆次君) 国選弁護人の報酬につきましては、ただいま仰せのように、大変日弁連等からも増額の要求がございます。私どもはそういった日弁連等の御要望等も十分に頭に置き、また、一般の公務員のベースアップの状況あるいは財政の状況等十分に勘案した上で、毎年予算の増額に努力しておるところでございます。 支給の基準につきましては、増額の都度、毎年四月ごろでございますけれども、最高裁判所におきまして一応の支給の参考基準というようなものをこしらえております。その基準を各下級裁判所に流しまして、各下級裁判所がその基準をも一応の参考にしつつ、具体的な事案について、事件の難易あるいは開廷の回数あるいは弁護人の弁護活動の程度、そういったものを勘案した上で、それにふさわしい相当な額を算定すると、こういうような仕組みになっております。
○藤原房雄君 これは画一的にいかない非常にむずかしいといいますか、いろいろな要素があるだろうと思いますけれども、これは今後というか、明年度についてはどういうふうに考えていらっしゃるのか。これはやっぱり全体的な状況を勘案しなければならぬことだと思いますけれども、いままでの推移の中で、明年については、また予算の編成の段階にもございますので、どういうふうにお考えてなっていらっしゃるか、御検討の現状をお伺いします。
○最高裁判所長官代理者(柳瀬隆次君) まあ、代表的な事例をもってお答えするのが相当かと思います。 昭和五十五年の分につきましては、地方裁判所の実質審理が三回行われたというケースにつきまして、四万九百円を支給の基準というふうに定めております。来年度につきましては、このような地方裁判所、実質審理三開廷の分につきまして、四万六千百円という金額を要求しておるところでございます。
○藤原房雄君 実際的に、国選弁護人の方々が今日までどのぐらいの回数出られて、実際それに要しました経費というか、過去のそういうデータをちょっと持ち合わせてないので、ありましたら、ちょっと御報告いただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(柳瀬隆次君) 国選弁護に当たられる方々の私選弁護事件との割合を申し上げますと、昭和五十四年度におきまして国選弁護人のおつきになった被告人の割合は地方裁判所で五〇・三%、簡易裁判所で七一・〇%、合わせますと五四・八%ということになっています。対しまして、私選弁護人のついた被告人の割合は地方裁判所で四八・一%、簡易裁判所で二〇・四%、合計で四二・一%ということで、国選弁護人のおつきになった割合が私選弁護人のついている割合を上回っておると、こういうことになります。 そして、支出いたしました金額でございますが、昭和五十四年度について申しますと、予算額が十七億六千二百万円、支出済み額が十七億三千万円という状況になっております。
○藤原房雄君 公務員の問題につきまして、週休二日ということが言われているわけであります。これも、各省庁でそれぞれできるところからということで推進してきていることは御存じのとおりでございますが、法務省というのは、事務官の方々については可能な職場もあるように思うのでありますが、裁判官とか検事とかという立場に立つ方々につきましては、週休二日制の適用というのはどういうふうになるのか。法務省、最高裁、両方で、その携わるお仕事によっていろいろな立場の方がいらっしゃるんだと思いますが、いままでも各省庁で窓口業務をどうするとか、いろいろ工夫して、これまた四週一休ですか、こういうことでやってきておるわけでありますけれども、法務省としてはこの問題についてはどういうふうに取り組んで、現状はどうなっておりますか。また、今後についてはどういう見通しを持っていらっしゃるか、ちょっと御報告をいただきたいと思います。
○政府委員(枇杷田泰助君) 一般の事務官の場合には、法律が通りますと、そのとおり現場で工夫をこらしながらその実現を図っていくということに相なりまするが、検察庁におきましては、検察官は裁判官に準じまして、もともと給与体系から申しましても勤務時間との関係が云々されるというふうな官職ではございません。したがいまして、週休二日制の問題は若干問題があるわけでございますけれども、もちろん検察庁の仕事といたしましても検事だけでやるわけではございませんで、検察事務官と一緒になって仕事をするわけでございます。 したがいまして、検察官の方がやはり週休二日制の制度に乗りませんと、事務官の方も休めないという結果を招来いたしますので、そこは同じように現地でやりくりを、工夫をこらしながら、週休二日制の法律が通れば、そのとおりの形で実施をするという方針でおるわけでございます。
○最高裁判所長官代理者(柳瀬隆次君) 私の所管外ではございますけれども、裁判所の関係につきましては、裁判所の事務の性質上、現在のところ土曜日を休むというふうな体制はまだ整っておらないということを申し上げておきたいと思います。
○藤原房雄君 いまお話ございましたように、検事の方とそれから事務官と一体でなきゃお仕事が進まないのは当然でありますから、こういうことの中で非常に困難性があるんだろうと思います。これは何も法務省だけではございませんで、各省庁それぞれいろんな問題がありますが、特に法務省に関係する問題としましては、週休二日というのがどういう形で行われるのかというのは、非常にむずかしい問題をはらんでおるんじゃないかと思います。 そういうことに対しまして、相当時間をかけ、いろいろな検討をしてこれは進めなきゃならぬだろうと思いますけれども、大臣、どうですか、週休二日制についての今後の取り慰みとしましては、いろんな仕事の内容等勘案しながら、そういう中からやっぱり進めていくという方針には変わりはないだろうと思うんですけれども、こういう手だてやなんかについてはどうお考えでしょうか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 週休二日制を前提にして、人事院勧告に基づいて試行が行われている、こういうことだと思います。同時に、その中においても公務員をふやすことはしない。現在の人員で四週五休をやってみようというのが、今度の法案でございます。 いずれにいたしましても、政府のそういう方針の中で、法務省としても事務に支障を来さないように、しかも四週五休を達成するように努力をしていきたいと思っているところでございます。
○藤原房雄君 今度の給与改定に当たりましては、一般職、衆議院の方ではいろいろ議論を呼んでおるのは御存じのとおりでございまして、それはやっぱり定年制の問題が一つはあるわけでありますが、今度の閣議決定におきましても、定年制云々という言葉がこの中にも入っているわけですけれども、法務省につきましては、今日までは検察関係の方々については六十三ですか、高裁や簡裁については七十、地方裁については六十五ですか、こういうことになっておるわけですけれども、一般職の方々とは違って、法務省全般としまして、定年綱の問題についてはそういう一般職の方々の影響というのはあるのかどうか、法務当局としてはどうお考えになっていらっしゃるか、お伺いいたします。
○政府委員(枇杷田泰助君) その点につきましては、私は直接の所管ではございませんですけれども、私の承知しているところでは、検察官につきましてはもともと法律上、先ほど御指摘ありましたように、六十三歳ということに決まっております。それに変更があるわけではございませんし、一般の事務官につきましては、従来から慣行的に六十歳までに勧奨退職でやめるというふうな慣行がかなり定着をしておりますので、六十歳定年になりましても——もちろん例外が過去なかったわけじゃございませんけれども、結果的にはそれほど大きな混乱は生じないであろうという感触であるように承知しております。
○藤原房雄君 一般公務員では六十歳ということですけれども、それによって法務省としてはいささかかなりとも——勧奨とかいろんなことの中で今日までありましたが、影響を受けるのかどうかということで、何歳でどうしなさいとか、どうあるべきだということを言っているのじゃないんですよ。一般職でこういうことが決まりますと、それに伴って法務省としてはどういう影響を受けるというか、どういうことになるのかという、こういうことでお伺いしたんですが、まあ大体わかりました。 給与関係につきましては、これは別に私ども反対の法案でもございませんし、そのときそのとき、その年その年の現状に応じて人事院勧告に準じたベースアップでまいりまして、何年かするとやっぱりそこにひずみが出てくる。そういうことで、総合的な見直しといいますか、総体的な問題について検討しなきゃならぬじゃないか。また、今日までの初任給調整手当とか国選弁護人の問題とか、こういう問題等についても課題として検討する必要があるのではないか、こういうことを御提言を申し上げ、またこれは一般職との関連もございますので、それに準じた対応をなさるんだろうと思いますけれども、今後についての何点か問題提起をいたしたわけであります。じゃ、給与については、以上で終わりたいと思います。 次は、過日、今月の七日ですか、金沢で行政管理庁主催の行政サービス改革運動推進懇談会というのがございまして、その中で、役所の窓口の中で法務省というのはワースト官庁の中に入っておるというんですね。これは私が言うのではない、行政管理庁の統計で。週日、私ども視察に参りましたときにも、やっぱり法務省の窓口業務というのは大変な混雑をしておる。これは大臣にもこの前いろいろ申し上げたとおりであります。 行政管理庁の資料をいただきましたが、行政相談週間として十月の十二日から十八日までの一週間、管区行政監察局、地方行政監察局が開設した一日合同行政相談所、ここで受け付けたものを集計したというんですけれども、そういう中で、法務省というのは確かに受け付け件数六千五百六十一件、その中で行政サービスに関する苦情というのは千三百九十七件、二一・三%あったということです。通常年だと七%ぐらいだったんですが、最近はだんだんこういうのが多くなったのかもしれません。 苦情内容としては、応接・勤務時間、これが四十三件、事務手続が六十九件、こういうデータがありますが、過日来の委員会におきましても、この問題については触れてまいりましたんですが、そしてまた、このたびの給与改定の閣議決定に当たりましても、事務の効率化とか能率化とか合理化とか、こういうことが言われているわけでありまして、やっぱり行政サービスということからいいまして、これはもう人もふやさないし、どうしようもないんだということじゃなくて、やっぱりこの問題については真剣に取り組まなければならないと私は思うんです。 現状のままでがんばりますとか、対応しますということですと、いままで以上のことはできるわけございませんで、また、総定員法ということの中での人員増というものもそう多く望めないという、こういうことになりますと、機械化の導入とか、登記の簡易化を推進するとか、こういうふうなことが大きな柱になるのではないかと思います。甲号、乙号からいいますと、甲号の方が多いのは御承知のとおりでございまして、こういう実態等については法務省においても十分御存じのことだろうと思います。 こういう窓口業務、特に注目されております登記の問題等につきまして、これは本当にしっかり取り組んでいただきませんと、住民の苦情が非常に多いという、ワースト官庁ということになっておるということでございますので、これはぜひひとつお取り組みいただきたいと思いますが、現在いろいろなことで検討なさっておると思います。さっきちょっと閣議決定云々と言いましたけれども、抽象的な話だからお話しございませんでしたけれども、このことについてはどういうように御検討をし、また改善をしようとするのか、すぐできるということじゃございませんから、何年計画でどうするのか、こういうことについて具体的にひとつ御説明いただきたいと思いますが。
○政府委員(貞家克己君) ただいま御指摘の新聞記事を読みまして、まことに面目ない次第であると痛感いたしまして、行政管理庁にも詳細を教えていただきたいというふうにお願いをしているわけでございますが、行政管理庁の方でただいま具体的にまとめているということでございますので、詳しく苦情の内容を承知いたしまして、さらに適切な処置をいたしたいと思っております。 ただ、根本的には、先生御承知のとおり繁忙登記所、事件数の多い登記所におきまして、繁忙時間帯と申しておりますが、たとえてみれば非常に異常な状況と申しますか、申請人が殺到いたしまして、何と申しますか、殺気立っているような状況になるわけでございまして、そこでおのずから職員の方も非常にばたばたするというような状況になるわけでございます。しかしながら、一般申請人に対するサービスをなおざりにするということは許されないことでございまして、そういう場合に、できる限り冷静に対応をいたしまして関係人に不愉快な感情を抱かせないというように、できる限り極力努めるということを、機会あるごとに指導しているわけでございます。 ただ、問題の根本は、これまた先生の御指摘のとおりでございまして、異常な事件の伸び、これはたとえば最近——最近と申しますか、昭和二十五年に比べますと実に膨大な事件数になっているわけでございまして、二十年間に甲号事件が約三倍、乙号事件が約百九十倍に達しておりますが、一方、それに従事する職員の方は一倍半という程度でございます。したがいまして、これは非常に手間が不足するということは避けがたい現状でございます。ただ、これも先生御指摘のとおり、昨今のきわめて定員事情、予算事情の厳しい情勢におきまして、大幅な増員を獲得するということはこれまたきわめて困難であるということも当然でございます。 そこで、私どもといたしましては、先ほど行政監理委員会の意見群、府県単位機関等の整理合理化等について述べられておりますが、こういった事柄を、いまからざっと十年前から少しずつ実施をいたしておるわけでございまして、事務の見直しをいたしまして一部の事務を民間に委託する、あるいは窓口の整理のためには、正規の職員以外に賃金職員のための予算措置を講じましてこれに当たっているということで、相当の予算措置も最近数年間はいただいているわけでございます。 したがいまして、私どもといたしましては、今後も一面においてそういった職員のしつけと申しますか、一般申請人に対する応対に十分気をつけろという、いわば精神的な指導をいたしますと同時に、増員あるいはそれのみに頼らない場合に、機械化あるいは事務の一部の委託であるとかというような広い意味の合理化ということを推進していきたいと、かように考えている次第でございます。
○藤原房雄君 登記の問題は、やっぱり大きなものになるわけですけれども、建物の区分所有に関する法律等の改正を検討しているとか、いろいろなことについては御検討なさっていらっしゃるんだろうと思いますが、いまお話聞きますと、冷静に対処とか、精神的なことになるかもしれませんというお話が中心でございまして、大臣、やっぱりこれは、この前も米の検査官の方が何人か法務省の窓口の方に配置になるというのをちょっと新聞で見たような気がするんですが、いろいろな努力はなさっているんだと思いますけれども、人的なことでできない面については、最近のこういう進んだ時代でもありますから、機械化できないか、または法文上もっと簡素化できないか。 これは、ただ、いま一時期のことならば、がんばりましょう、やりましょうでいいかもしれませんが、こういう時代の大きな転換点に立っておりまして、これが決して一時期のことではないわけでありまして、過日、横浜へ視察に行かせていただきましたけれども、これからの開発のことでこの登記のことになると担当の方は頭が痛いというお話でございましたが、こういう開発行為というのは決してここ一年や二年で終わることではないだろうと思います。やっぱりそれに対処するためにはそれなりの予算措置なり、また、できるだけの努力をいたしませんと、一生懸命部長さん、局長さんもがんばっていらっしゃっても、これは大変なことだろうと思うのであります。 こういう厳しい財政情勢の中にあるわけでございますから、私どもその辺は十分にわかりますけれども、しかし、このままでいいというわけにはいかないと思います。大変なところというのは、申し込んでから二日も三日もかからなければなかなか目的のものが手に入らないというようなこういう現状の中で、やっぱり先ほどのような窓口業務に対する不満の声も出てくるんだと思いますが、大臣、いろいろなことをなさっているかもしれませんが、一層ひとつ御努力いただきたいと私は思うんです。この前も申し上げたのですが、具体的なことについては時間もございませんから、こういう実態にあるということだけはひとつ御認識いただいて、御努力いただきたいと思いますが。
○国務大臣(奥野誠亮君) 登記事務が非常にふくそうしておりまして、私が法務省に参りまして直後に、関係の職員からも増員の問題につきまして強い要請を受けたわけでございました。したがいまして、この問題を国民の皆さんたちの期待にこたえて円滑に運営していく、なかなかいろんな問題を含んでいると思います。事務を能率的にする、近代化していく、あるいは執務の体制を改善していく、いろいろな問題があろうと思います。 人員の問題につきましては、現在折衝が行われている最中でございますが、総合的な面から国民の不満を解消できますように、あらゆる点から改革、改善に努力を今後も鋭意払っていきたいと思っております。
○藤原房雄君 次に、行政監察が出ておったんですが、ことしの一月、これは関東における管区行政監察局の報告でありますけれども、全国的にこれは共通なことだと思いますが、受刑者に対する職業訓練ですね。最近は中高年齢に対してどうするかということが、一つの大きな時代の推移に伴いましてのいま考え方になっているわけであります。 そういう中で、受刑者の方の年齢層を見ましても、四十以上の方は、四十歳から五十九歳が二九%、三割近くいらっしゃるという、こういうこと等、それは一般社会と一緒に考えていいかどうかわかりませんけれども、年齢構成やいろんなことを考えますと、当然この中高年齢の再就職といいますか、そういうこと等勘案した職業訓練にすべきだという監察が出ておりまして、これに対して、法務省としましてもそういう方向で検討しなきゃならぬというような御答弁があったようでありますけれども、これは具体的には行政監察を受けていろいろ部内でも御検討なさって、ことしの春のことですから、全国的にもそういう方向で、これは施設とか教師とかいろんなことがございますから一遍にはできることではないだろうと思いますけれども、そういう方向で積極的に取り組んでいるという、こういうことだろうと思いますけれども、どうでしょうか。
○政府委員(豊島英次郎君) 地方監察の結果、中高年齢受刑者につきましてひとしく職業訓練の機会が得られるように、受刑者職業訓練規則を改正したらどうかという御指摘を受けたわけであります。この御指摘、それから一般労働行政の状況、それから矯正行政運営の実情というものを踏まえまして、実は受刑者職業訓練規則の改正を行いました。つまり、もとの規定では、職業訓練生の選定の基準といたしまして年齢が四十歳未満の者という要件があったわけでありますけれども、この年齢が四十歳未満の者という要件を削除いたしました。
○藤原房雄君 受刑者職業訓練のことにつきましては、国際連合の被拘禁者処遇最低基準規則ですか、こういうものとの関連もあるんですね。そういうこと等の上から、これはどういうことになりますか。
○政府委員(豊島英次郎君) 国際連合の最低基準規則では、若年者に対する職業訓練を充実せよという勧告があるわけであります。この点も、実は新規則では受けまして、施設の長は訓練生を選定するに当たっては特に二十六歳未満の者に職業訓練の機会を与えるよう配慮しなければならないという一項を設けまして、国際連合の規則との調和も図るようにいたしております。
○藤原房雄君 給与のこと、それからそれにまつわる法務当局についてのあらあらのことについて若干御質問を申し上げたわけでありますが、法務大臣、過去数回、この委員会におきましても憲法のことについて御発言ございまして、私どもの考え方、大臣の所信、考えていることについての御質疑を申し上げたわけであります。 私も、閣僚の一員であるという立場からいたしまして、やっぱりそれ相応に発言には慎重でなければならぬ。大臣、一貫してお話ししていること、私どもはそれなりに理解もし、また疑義も感ずる点も、これはすっかり一〇〇%理解しているというわけじゃございません。どうかなという疑問の点も多々あるわけであります。きょうもまた、午前中いろいろお話ございました。大臣の御性格が非常に正直といいますか、思っていることをそのままおっしゃる、そういう御性格の上に立っての御発言だろうと思いますけれども、私、内閣としては確かに不統一があってはならぬ。これは行政の最高機関としてそういうことじゃならぬことは、これは明らかであります。 そういうことについては疑義ははさまないけれども、個人としていろいろな思想、信条、ここに違いがあって、そういうことを場合によっては発言して何が悪いかというお話でございますけれども、私は、それは個人の閣僚の一員として思想、信条すべてを拘束するものではないだろうと思います。しかし、法務大臣という、また閣僚の一員であるという立場に立ちますと、これは一〇〇%基本的な人権、自分の思っていることはお話ししていいところと慎まなければならないところがあるだろうと思います。 これは大臣も、私的なことでこういう席で述べるのはどうかと思うということで、それは御判断をなさってお話をなさっているようであります。言われたことを何でも全部御答弁なさっているのではなくて、やっぱりその場に合ったお話、その場で言うと差しさわりがあるということでお慎みになっている御発言もあるわけであります。私は、そういうことから、公務員というのは憲法擁護の義務というのがあるわけでありますから、憲法擁護という義務の上に立ちますと、やっぱり基本的人権の保障ということで、何を考え何をしてもいい、何をしゃべってもいいということじゃ決してない。やっぱりそこには一つの制約というものがあるんだろうと思います。そういうことから、閣僚の一員であるということになれば、ことのほかそれは十分にお考えになっての、その場、その立場に応じたやっぱり発言というのはあるんだろうと思います。 大臣が今日までいろいろな発言をし、また当委員会におきましてもお話しなさっておりますけれども、そういう信条を曲げてまでもという、自分の思っておることもしゃべれないようなことではということでありますけれども、そういうことじゃなくて、自分のあるべき立場の上に立って、やっぱり公的な場所で言っていいことと悪いことと、立て分けはあるのだろうと私は思うんです。 その間のことについて、大臣はやっぱりどういうふうに御判断なさって、そのときそのときの御発言をなさっていらっしゃるのか。まあ時間もありませんから、大臣のお考えの一端だけひとつお聞きいたしたいと思うんです。
○国務大臣(奥野誠亮君) 閣僚の一員でありますから、鈴木内閣がとっている方針に反するような言動は慎まなければならない、これは強く考えております。 もう一つは、憲法がいま話題になったわけでありますけれども、国の基本に関する法規だから、こういうものこそ国会において存分にお互いに虚心に議論されるべきものではないだろうかと。いまの日本の国会の姿を見ていますと、一つは自主憲法好ましいという考え方がある、他方は改正まかりならぬという考え方がある。結論だけ先に出ちゃって、硬直的な対決になっている面が、私には多分にうかがわれるように思うのです。これは不幸なことじゃないか。むしろ存分に議論をした末にいろんな結論が出てくるようにしなければならないのじゃないかなと、こう思っております。私は、必要以上に、憲法の論議になりますと極端な対決が出てくる、これは好ましいことじゃないなと、こんな感じがいたします。 内閣の方針の場合でも、先ほど靖国神社参拝の問題がございました。内閣としても合憲、違憲決めかねておるわけでございます。こういう問題であれば、二十条なり八十九条なりについて、こういう考え方もあるじゃないか、ああいう考え方もあるじゃないかと、いろんな議論の末に、一体どういう関係でこの規定が生まれ、今後日本はどうしていかなきゃならないかというようなことを話し合った末で結論を出したらいいのじゃないだろうかなと。 総司令部が神道指令を出しましたけれども、その神道指令を出しましたときにも、宗教を国家から離すのだ、その目的以外には入れないのだと、こういうことを言っておるわけでございまして、そういう前提のもとに当時神社参拝を禁止したわけでございます。でありますから、今日、国家神道というものはもうなくなったわけでありますから、その前提の上に立って、今後神社についてどう考えるかというようなことを大いに議論したらいいのじゃないだろうかなと私は思うのでございまして、国家から離れた暁には、神道といえども他の宗教と同じような法のもとに平等に置かれていいのだということまで神道指令ではうたっておるわけでございます。 ですから、そういう問題も過去は不幸な時代を経てきております。憲法が生まれましてからも二十六年まで——昭和二十二年に施行になったのですか、それから数年占領下にあったわけであります。占領政策は批判まかりならない、占領軍の顔を見ながら政治をやっていかなきゃならない、こういう事態に置かれてきたわけでありますから、私は、そろそろもう本来の、日本人であれば、どういう憲法をつくるかというようなことを虚心に議論し合いながら、いまのままでも結構です。あるいはまた改革、改めるべきだという議論が生まれれば、それも結構であります。本当に私は、国会というところが議論の府にならなければならない。結論だけが先に出て対決しているようなことは、国民にとって不幸なことじゃないか。私は、もう日本の将来を考えながら、どういう道が一番正しいかということを本当に国会こそが虚心にみんなが議論をし合いながら道を求め続けていく、これが一番大切なことじゃないかなと、こう思っております。 しかし、私は、鈴木内閣がとっています方針に反するような言動は厳に慎んでいかなきゃならない。しかし、国会が求められるならば、個人政治家としてどう考えるかというお尋ねに対しましては、また素直に答えていく方がよろしいのじゃないだろうかな、こう思っております。言論の府である、一言半句で国会の論議が中断される、しばしばこういうことがあることは私は余り好ましいことじゃないじゃないだろうかな、こんな感じまでしておるわけでございまして、率直にお答えをさしていただきました。
○近藤忠孝君 最初に、法務大臣とそれから最高裁の方にお伺いしますが、きょうの給与法案に関して、裁判官は憲法上、これは七十九条、八十条で在任中その報酬を減額されないといういわば一つの特権ですね、そしてあわせて裁判官、検察官は一般公務員に比べて高い待遇を受けています。こういう制度をとっているのはどういう趣旨に基づくものか、それぞれお答えいただきたいと思います。
○政府委員(枇杷田泰助君) 憲法上、裁判官には相当の報酬を支給するというふうに決められておりますが、これは裁判官の身分保障、裁判官が独立をして公正な裁判ができるようにという趣旨での身分保障を給与面の方から裏づけるということでできた規定だと思います。検察官も同様に裁判官に準ずる面がございますので、同じように検察庁法でもそのような規定が置かれておるということと承知いたしております。
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 裁判所といたしましても、ただいま法制部長が言われましたのと同じように考えているわけであります。
○近藤忠孝君 そこで、いま言った独立性、身分保障、それを保障するためだということですが、そういたしますと、私はそれに見合う今度は裁判官並びに検察官の対応が必要だと思うんです。消極的な面ではそういう期待に反しないということ、それから積極的な面では積極的に国民のそういう期待にこたえていく、二つあると思うんです。 これは最高裁にお伺いしますが、その点ではこれはもう安川裁判官の問題、旭川の水沼浩裁判官の問題、そして最近では法曹の卵である岐阜の司法修習性のわいせつ行為、卵のうちからこういった問題があるので、いわばそれは大人になってみればよけいそういう素地があるのかなということの一つの端的な例だと思うんですが、これはやめればいいというものではないということで、最高裁として、特にこういう高い待遇を受けている裁判官にこういう不祥事を再発させないという立場から、具体的にはどういう方策を立てておられるか、お答えいただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) ただいま御指摘のような不祥事が相次ぎましたことにつきましては、はなはだ国民に対して申しわけないという感じで、 〔委員長退席、理事藤原房雄君着席〕 裁判官、裁判所一同自粛自戒の念を新たにしておるわけでございまして、先日、高裁長官を招集いたしまして、その席で最高裁長官が全裁判官に訓辞をするという形で国民に対して陳謝をすると同時に、国民の信頼を損なわないように、自粛自戒して職務に精励すべきであるという訓辞をしたわけでございます。 以上でございます。
○近藤忠孝君 訓辞だけでは、これは人間の社会ですから、私はそれだけでは解決しないだろうと思います。きょうはそれが主眼じゃありませんので、ここで要望したいことは、さらに具体的に教育の面とかその他の面で具体的に対処をされたいということを要望したいと思います。 〔理事藤原房雄君退席、委員長着席〕 それからもう一つは、積極的に国民が苦しんでいること、あるいは困っていることに敏速適切に対処していくという面が必要だと思うんです。 そこで、私は具体的に、いま民事暴力問題というのが起きていますね、暴力団などが実際に倒産とかそういうことから入ってきまして、いわば無法地席になっておる。法治国でありながら法の救済を受けられないという実際がある。その問題について、これはむしろ法務省、そして裁判所は積極的に対応してほしいということで、これから質問したいと思うんです。 そこで、その問題に入る前に、これは検察官の上にある法務大臣について、午前中の寺田委員の質問の中でこれまた聞き捨てできない問題がありましたので、もう少しお聞きしたいんですが、大臣はこう言っておられたですね。社会党さんの議員の質問だそうですが、虚心に言ってくれ、個人の考えでいいから言えと言ったのでそれに率直に答えたまでだと。それを非難されるのはけしからぬということで、憤然とされたわけです。私はお気持ちはわかるんですが、ただその発言の中に、大臣自身が果たして現行憲法を正しく理解しているのかどうか、この疑問を持ったんです。 というのは、これは私が前々回、すなわち十月十六日の当委員会で大臣に質問いたしました。大臣が自由濶達にいろいろな発言をされている憲法上の根拠は五十一条か六十三条かと聞いたところ、大臣は「私の答弁の根拠が六十三条だと言われると、ちょっとこれは問題があるように思います。」いろいろ言いまして「あの場合には、私は答弁拒否したって差し支えなかった」「しかし、あえて個人としてお答えをさしていただいたわけでございます。」さらに別のところでは「政治家個人としてお答えをすると、」こうなんですが、私が前回、その解釈は間違っているんだと指摘をいたしましたけれども、大臣お帰りになってもう一度勉強し直してみましたか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 私が午前中寺田さんのお尋ねに対しまして答えましたのは、いろいろな社会党の方からお尋ねがあって、私はその御質問の趣旨に沿うように率直に答えてまいりましたと。そうしたら、同じ社会党の方から別に、あの答弁を取り消すのか取り消さないのか、ただこれだけのお尋ねをいただきました。これは、同じ社会党の人からお尋ねを受けているのに、答えたら、それに反論を伺うなら結構なんですが、反論じゃなくて、あれを取り消すのか取り消さないのかだけのお尋ねをいただく、これはどうも私にとって不満足なのです。納得がいきかねるのです。こう答えたわけであります。 それから、いまの五十一条と六十三条との関係でございますが、五十一条は「議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。」、これはこういう規定を置いているくらいだから、国会の中では言論が活発に行われることが期待されると私は理解していますと、こう申し上げてきたと思います。それから六十三条は、出席を求めているのであって、必ずあらゆることについて答弁をしなきゃならないという責任を負わせているものじゃありません、こう答えてきたと思いますし、現在もそう考えております。
○近藤忠孝君 私が指摘したいのは、大臣が国会で発言できるのはこの六十三条があるからです。出席発言権なんですね。と同時に、これは義務もある。ただ、大臣の答弁を見ておりますと、国会に来て発言できるのが六十三条によるのだという認識がないように思うんですよ。そうでしょう。大臣は衆議院議員ですから、前回も申し上げたけれども、衆議院では発言できるけれども参議院では発言できないはずなんです。それを、ここで常々とされておるのは、やはり六十三条があるからだと。六十三条というのはあくまでも国務大臣としての発言ですから、個人の発言ではないんですね。そこで大臣は、当然のごとく、個人としての発言をしたんだ、何が悪いんだというようなお考えのようですけれども、私は、個人としての発言はそもそもできない、それが六十三条だと、こう思っております。 そのことを私は前回指摘したんですが、大臣は前回それに対しては正確なお答えをしていなかったので、お帰りになって考え直されたかどうか。いかがでしょうか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 残念ながら、その後そういう問題についての勉強をまだいたしておりません。よく勉強しておきます。
○近藤忠孝君 私は、大臣が憲法を正確に理解しないまんま行動されてきて、そして繰り返しますけれども、個人としての発言じゃない、あくまでも大臣としての発言だけれども個人の発言ができるのだと、こう大変勘違いされまして、むしろ憲法を逸脱して発言されてきている。ここに、私はいろんな問題の一つの根拠があると思うんです。勉強してこなかったと言われてはそれまでですけれども、もう一度宿題を出しますので、いままでの大臣の解釈が正しかったか正しくなかったか、ひとつこれは次回にお答えいただきたいと思っております。よろしいですね。
○国務大臣(奥野誠亮君) 国務大臣として出席しておりますけれども、質問者の意図に沿うて、できる限り国務大臣といえども個人的な見解を求められれば私は個人的な見解を述べて円滑に論議を進めた方が、国会の意義を全うできるのじゃないかなと思っております。 なお、よく勉強してまいります。
○近藤忠孝君 そうしますと、考えを変えないということのようですけれども、私はそれは憲法違反であるということを、ここで指摘をいたします。 そこで、後具体的な問題に入ってまいりますが、まず最高裁にお伺いいたします。 最近、倒産事件が大変ふえております。その中で法的整理として裁判所が受理した件数、最近ので結構ですけれども、その内容と件数をひとつ御報告いただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 最近五年間の各種倒産手続の件数を御紹介申し上げますと、まず破産事件でございますが、昭和五十年千四百八件、五十一年千五百十五件、五十二年千九百八十四件、五十三年二千六十八件、五十四年二千三百二十一件。 和議事件、五十年百九十一件、五十一年三百二十件、五十二年四百九十三件、五十三年三百八十二件、五十四年四百一件。 会社更生事件、五十年百二十二件、五十一年百二十五件、五十二年百二十六件、五十三年八十件、五十四年六十一件。 会社整理事件、五十年百三十九件、五十一年百三十件、五十二年百八十二件、五十三年百十六件、五十四年七十四件。 特別清算事件、五十年三十四件、五十一年五十四件、五十二年五十九件、五十三年五十四件、五十四年四十八件。 以上でございます。
○近藤忠孝君 最近の倒産件数は大変なものでして、大体一日五十件前後と。これは一千万円以上の事件で、いま最高裁からお話がありました件数よりもっと小さいものも含めたものだと思いますし、最近では特にサラ金関係などで、もっとごく低い額でも破産申し立てをしているという件がありますから、いま御報告の件数というのは、私は実際起きている倒産の中のごく一部であろうと思うのですね。 実際いま替われておりますことは、法的整理はいろいろな面でもう国民の、要望その他に対応できない、あるいは、むしろこれをやっておったのでは間に合わないのでほかに回してしまう。私がこれから指摘をいたします民事暴力の問題ですが、そういう事態が起きている原因は何だと思いますか。
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 各種の原因はあろうかと思われますが、私どもとしては、正確にこれが原因であるという点はつかんでおらないわけでございます。
○近藤忠孝君 私はその一つと思われますのは、審理期間が長くなっているということだと思うのですが、そういう点から見まして、破産、会社整理、特別清算等、それが大体何年ぐらいかかっているか、そういう数字はありましょうか。
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 破産事件について申し上げますと、既済事件の受理から終局までの審理期間を昭和五十四年度の事件について見ましたところ、総数が千八百十二件、そのうち三カ月以内に処理できたのは五百六十件、六月以内二百五件、一年以内二百二十六件、二年以内二百九十四件、三年以内百四十八件、三年を超えるもの三百七十九件、それから未済事件の審理期間について見ますと、総数が五千六百九十七件ございまして、そのうち六月以内のものが千五件、一年以内が六百九十三件、二年以内が九百五十一件、三年以内が七百四十件、三年を超えるもの二千三百八件、こういう結果になっております。
○近藤忠孝君 圧倒的に大変な長時間かかるということで、実際の要望に間に合わないのが現状だと思うんです。 これは警察庁にお伺いしますが、そこでいわゆる整理屋というものがはびこっておると思うんです。整理屋という概念自身まだ決まっていないと思いますけれども、一つは、最近は暴力団などがそこに入ってきて実際倒産などに関与しておるということで、警察庁なりに一つの概念をとらえてそういうものに対する対応をしていると思うんですが、その一応の概念と、それからそれの実態を御報告いただきたいと思います。
○説明員(漆間英治君) ただいま整理屋ということで御質問がございましたが、私どもの方では整理屋ということにしぼってこの問題に取り組んでいるわけではございませんで、広く市民の社会生活なり、あるいは経済生活に、暴力団ないしはその周辺の者が暴力団の威力を背景にして介入、関与するケースを対象にいたしております。それを総称して、民事介入暴力というように呼んでおります。 この取り扱いにつきましては、昨年の十二月から各県でこの問題に専門の担当官を設けるようにということを通達をいたしまして、それに基づきまして各県の暴力団対策担当課に、警部クラスでございますが、この問題の専門家が置かれております。 それ以来、この問題について処理をいたしておりますが、本年の一月から六月末日、つまり上半期の状況で申し上げますと、全部でこのようなケースで四千四百三十二件の相談案件がございまして、その中で内容別にちょっと大どころを申し上げますと、債権取り立て等に絡むものが六百二十九件、一四・二%でございます。それから金銭貸借、これは個人間の金銭貸借等が主なものでありますが、金銭貸借等に絡むものが六百四件、一三・六%。以下、交通事故の示談に絡むものとか、あるいは家屋の賃貸借、不動産問題、それから手形割引、そういったものがございまして、ただいま御質問のありました企業倒産債務整理等に絡むものは四千四百三十二件のうち二百十件ございまして、パーセントで申し上げますと四・七%、そういう状況でございます。
○近藤忠孝君 これはことし七月ごろの新聞ですが、警察庁の調べによるとということで、全国十万余の暴力団が実際こういう非合法活動によっていろんな収入を得ている。そういう収入の額が大変な額に上っておるわけで、そんな中で債権取り立てなど民事への介入で得た収入が二百九十八億に上ったと。それから交通事故の示談金交渉の仲介など、これも大体数十億に達するというような記事がありますけれども、大体これはそのとおり間違いないですか。
○説明員(漆間英治君) それは恐らく昨年の三月に発表いたしました推計の結果だと思いますが、そのうちで債権取り立てに絡むものが二百九十八億ぐらいあるだろうという推計は、御指摘のとおりです。ただ、交通事故の問題については、その中で特に項目としては取り立てておりませんので、そのことについてはちょっと……。
○近藤忠孝君 最近のはどうですか。最近のもありますか。
○説明員(漆間英治君) 最近のはございません。推計は学者等に頼んで、そのときに初めて……。
○近藤忠孝君 そこで、これはあるいは御承知かと思いますけれども、 〔委員長退席、理事藤原房雄君着席〕 平岩さんという人が書いた「倒産・破産」という本です。これは三年ほど前の数字ですが、これによりますと、いわゆる整理屋というのは関西に多いということで「現在、整理屋と呼ばれる企業は約二〇社。このうち「山富」「東洋商事」「大一商事」が御三家といわれ、いずれも関西が本拠地でこれらが時により関東に出稼ぎする。以下の一〇数社も最近はグループ化が進んでおり、大きな“仕事”には、グループで結束して整理に当たる」、四十九年ごろからは「暴力団の進出が激しく、二〇社のうち五社までが暴力団に汚染されている」、これは警察調べであります。「なかでもとくに、山口組・田岡組長の跡目をねらう菅谷組の動きが激しく、さらに小西一家や山口組と提携関係にある関東の稲川会も進出をはかっているといわれる。」 これは大体三年ほど前のものですが、その後事態はもっと発展していると思うんです。その辺で警察でつかんでいる事態があったら、教えてもらいたいと思います。
○説明員(漆間英治君) もともと私どもが承知しております範囲では、倒産整理屋というのは必ずしも暴力団そのものではないわけでありまして、整理屋は整理屋といういわばグループがあるわけですが、それが暴力団と徐々に接近をしつつあるという事実と、もう一つは、暴力団そのものがこの領域に進出しつつある、この二つの要素が重なっておりまして、最近は、いまの記事にもありますような事態が出つつあるわけであります。 ただ、その記事の中で山口組、管谷組とありましたが、菅谷はその後、山口組を除名されておりまして、山口系を離れているという事情はありますけれども、やはりそのような系統のものがこの種の事案に早くから手を出して、関東の方にも進出しておるという事実はあるやに伺っております。
○近藤忠孝君 そこで、これはこういう問題に詳しい弁護士さんが書いた論文ですが、このいわゆる整理屋の場合には、整理屋と高利金融業者、暴力団、これは三位一体の関係にある。まず整理屋みずから、傘下の高利金融業者が割り引いた手形が不渡りになると、すぐ倒産企業に乗り込んで、後は暴力団が威力で一般の債権者を排除する、あるいは社屋を占拠して、倒産会社が持っている売掛金の回収などを開始するというのが大体常套手段だと。それからさらには、バッタ屋などというブローカーなども使う。さらに、この整理屋自身その手形を持って債権者として乗り込んで、倒産企業の経営者に対して徹底的な追い込みをかける。一方では、企業の側の全権代理人になってしまう方法とか、そして債権者集会を牛耳っていろいろやる、こんなような手口が群がれておりますが、大体警察の方でつかんでおられる手口もこんなものでしょうか。
○説明員(漆間英治君) 大体おっしゃるとおりでありまして、初めは、債権者として乗り込んで債務者側と対立するようなそういう形態が多かったわけですけれども、最近は、むしろ倒産整理そのものを請け負うという形になりまして、債務者側である会社の社長を取り込んでしまって、その上でいいようにその会社を食い物にする、そういう形態のものがふえつつあるというように聞いております。
○近藤忠孝君 これに対する警察の対応については、先ほど各県警に担当者を置くというお話でしたが、これは大体もう全部配置されたんでしょうか。 それから、配置が県警本部の段階か、警察の段階までいっておるのか、その陣容はどうなっていましょうか。
○説明員(漆間英治君) 県警本部には、先ほど言いましたように、暴力団対策主管課に警部クラスの者を担当者として配置いたしております。 〔理事藤原房雄君退席、委員長着席〕 それから、各署には担当者ということで、これは刑事課の中の比較的民事関係に明るい者を指名いたしておりますが、それぞれ一名以上指定するようにということでございますから、千二百数署でございますので、これは千二百何人かいるはずでございます。そのほかに、警察庁にいわば対策センターということで、これは暴力団担当の課長補佐が兼務をいたしておりますが、全国的にいろいろ問題のあるところについては警察庁の方で相談をしつつ、問題の解決を図るという体制をとっております。
○近藤忠孝君 長らく警察では民事不介入の原則がありまして、いろいろわれわれが要請してもなかなか出てきてもらえなかったんです。今回、こういう担当者を置いてもらったことは、大変結構なことで高く評価をするものですが、そうしますと、これは警察とすると、いままでの民事不介入の原則を、その態度は変えたと。相手は一定の限度はあると思いますね。労働運動やその他の市民運動に介入してはいけませんけれども、相手が不法に債権を取り立てするとか、そういう一つの類型のものに対しては積極的に関与して善良な市民を救済する、そういう立場に立ったと、こうお聞きしていいんですか。
○説明員(漆間英治君) 民事不介入の原則というものは、今後も厳然としてあるわけでありまして、この領域に限って民事不介入の原則をかなぐり捨てたということでは決してないわけでありますが、ただ従来、ともするとこの民事不介入の原則がございますために、民事問題がらみの刑事事件についての警察の対応が若干いろいろと市民から批判を受ける面がある、そういうような反省の上に立って、市民が現実に暴力団の恐怖におびえている場面で、警察が何らこれに力になれないということではいけないのではないか、そういうことで積極的に取り組んで、事件になるものは事件として処理していくべきではないか、そういうことでございまして、もともと事件にならないものに警察が取り組むということでは決してございません。 それともう一つは、民事不介入の原則と申しましても、暴力団が一方の当事者となった場合に、二つのケースがあるわけですが、暴力団であっても、一般の私人としていわゆる市民生活を営んでいく上ではあらゆる民事活動が付随することは当然でございまして、それについてまで私どもがとやかく言うことでは決してないわけでございます。 先ほど申し上げましたように、私どもが問題とするこの種の事案というのは、あくまでも暴力団員が暴力団としての組織的な威力なり、あるいは潜在的な暴力性を背景にこの種の問題に臨んだ場合について、私どもが監視の目を光らしていこうということでございますので、その面につきましては、私どもは必ずしも民事不介入の原則とは矛盾しないというように考えているわけでございます。
○近藤忠孝君 そうすると、こう理解していいわけですね。いままでは外形的に民事だという面があると、中に刑事事件があってもなかなか踏み込めなかった。しかし、これからは中をよく見てみて、そして中に刑事事件というものがあれば積極的にそれをつまみ出していく、こういう方針と、こう聞いていいんですか。
○説明員(漆間英治君) おおむねそのとおりでございます。
○近藤忠孝君 そこで、弁護士会の方でもこれはほうっておけないということですし、大体弁護士自身が、倒産事件に関与しますと、この問題に一番直面いたしまして大変苦慮をしてまいったということで、弁護士会の中にも民事介入暴力対策特別委員会というのができまして、これは警察庁とも懇談会を持った、こう聞いております。ここでの協議事項と、そして協議されたことを恐らく実施に移してもらっておると思うんですが、その内容について御報告を願いたいと思います。
○説明員(漆間英治君) この問題につきましては、日弁連の方でも大変深い理解を示していただきまして、本年の春ごろに日弁連独自に、やはりこの問題の対策委員会を設置されたというように伺っております。その後、それを受けまして、四月十八日に警察庁の刑事局長を初めとする幹部と日弁連の会長以下の幹部の方々と第一回の懇談会を持ちまして、この種の問題についての対応を深めるために互いに一層連携を密にしようという話し合いを持っております。 その後、日弁連の方で独自に対策を御検討されまして、去る十月の七日に日弁連の会長名で警察庁長官に対しまして、文書で、この問題については警察と密接な協力を必要とするのでよろしく頼むという趣旨の協力依頼の要請がございました。それを受けまして、十月二十日に日弁連の事務総長以下の方々、それから私どもは私以下のこの問題の担当者、いわゆる実務者レベルの会議を設けまして、今後この問題についての窓口をどうするか、どのように連絡をとり合いながら進めていくか、そういう内容を話し合いながら、現に作業を進めつつあります。 また、日弁連としても、これに先立ちまして各傘下の単位弁護士会でございますか、それに対しましてそれぞれ準則を示しまして、救済センターというものを設けて対処するようにというような趣旨の恐らく話が流れていっていると思いますが、それを受けまして、各県においても各県の弁護士会と各県警の間で同様な話し合いが過去に行われておりますし、これからも行われる予定でございます。したがいまして、それが完了しますと、一応日弁連との間にこの問題についての協力体制が確立する。 私どもとしましては、この問題を処理していく上で、警察は刑事事件になるものについては対処することができますけれども、純粋民事事件というものにつきましては、先ほど申し上げましたようなことでございますので、やはりこれはその段階で弁護士さんにお任せすべきではないか。従来のように、その段階で警察は民事事件だからだめですよとはいきませんので、その辺を考慮した上で、弁護士会に統一的な窓口をつくっていただきまして、その問題についてはここに行きなさいと言って親切な指導ができるような体制をつくりたいということで弁護士会と話し合ってまいりました結果が、以上申し上げたような経過であり結果でございます。
○近藤忠孝君 その方針が徹底しましてうまくいっている例が、愛知県のようですね。愛知県では県警内にチームができまして、弁護士会の方から要請があるとすぐ来てつかまえてくれるということで、これは弁護士さんも大変感謝しております。それから、札幌でも警察がすぐ来てくれるようになったということで、これも大変いい面だと思います。ところが私、調べてみましたら、京都では呼んでも来てくれないというのですね。傷害にならなきゃだめなんです。しかし、この種の事件で傷害になったら、もうすでにこれはこちらの方は屈服して、まいったところですね。 ですから、この点で、まだ徹底しているところとしないところとあるんですけれども、これはもう全部に進んだ例を大いに紹介し、全体をそのレベルに達するように、こういう御指導は願えますか。
○説明員(漆間英治君) ただいまの京都の例がいつごろの例であるかあれですが、私が聞いているところでは、十月一日の日に弁護士会と京都府警の担当者とが初会合を開きまして、この問題についてはそれぞれ担当窓口を決めて、いまのような問題が起きたときにどう対応するかということは、そういう窓口を通じてやるようにしましょうということで話し合いがついたと聞いておりますので、恐らくそれ以後にそのような事態が起こっているとはちょっと考えられないわけでございますが、そういう問題を解決するために、お互いの連絡窓口を決めようじゃないかということでやってきたわけであります。よく時期をお確かめいただきたいと思いますが、恐らく現在はそういう状態は改善できていると思います。 各県においても、その趣旨に従って各県ごとに話し合いをして統一窓口を決めて、そういう問題についての対応に遺憾のないようにしていきたいということでございます。
○近藤忠孝君 これは、私は一昨日、京都弁護士会で副会長二名に会って聞いてきたことで、最近でもまだ警察がすぐに動いてくれない、こういう事態があるということですので、これはひとつ積極的にお願いしたい、こう思うんです。 そうしますと、全国的に見まして、一応弁護士会側からの要請があれば積極的に対応できる、しかも速やかに対応できる、こういう方針で進んでおり、それがだんだん実行されると、こう伺ってよろしいんですか。
○説明員(漆間英治君) 基本的にはそのとおりでございます。 ただ、一言、念を押しておきたいことは、個々の弁護士さんから直接警察署にありましても、必ずしもうまくいかないケースが多うございまして、ですから、この統一窓口を必ず通じていただくように、弁護士会の方も弁士会として要請いただくように、そういうことでお話し合いをいたしておるわけでございます。
○近藤忠孝君 そうしますと、今度は警察の方の担当者と弁護士会の方の担当者と常時連絡をとる、そういう体制になるということですね。 そこで、以上のことを前提にして裁判所とそれから法務省にお伺いしたいんですが、これはやはり弁護士会とそれから警察に任しておくべき問題じゃないと、私はこう思うんです。裁判所も検察庁も、これはその地位や権限、また強力な組織ですね、それから見まして十分対応できるし、またもう一歩踏み込んでいただく必要があろう、こう思います。 そこで、これはまず検察庁の関係ですが、京都の弁護士会では最近、京都ではずっと交通事故の示談屋と称して介入して暴利をむさぼると。京都がその発祥の地だと言われておるのですが、そういうことから弁護士会で調査をいたしまして、そして数名の者について、これは告発ではなかったけれども、協力要請をして、実際資料を提供して、そしてこれは非弁活動、要するに弁護士法違反として捜査をお願いして、そのうち二名が起訴されたというので、成果が上がっておるんです。 ですから、弁護士会でもそれなりの努力をしておるんですが、ただ、ずっとこの問題に関与する弁護士さんに会って聞いてみますと、検察庁の弁護士法違反に対する対応が少し甘いんではなかろうか。なかなか弁護士法違反として起訴してくれないと、こういう話がよく出てまいるんですね。この点で、先ほど来ずっと出てきたようなことを前提にして、検察庁ないし法務省としてどうお考えか、伺います。
○政府委員(前田宏君) 最近、お話しのように暴力団の関係者が、まあ民事紛争と申しますか、そういうものに介入していろいろと不法なことをやっているということは検察当局も承知しているところでございまして、先ほど来お話しのありましたように、そういう民事介入に伴う刑事事件につきましては、従来からもそうだったと思いますけれども、一層厳正な態度で臨みたいというふうに考えておるわけでございます。 いま具体的な弁護士法違反の問題でございますが、別に態度として甘いとかいうことはないはずでございますが、御案内のとおり弁護士法違反になるかどうかということは、やはりいろいろとむずかしい証拠の問題もございましょうし、そういうことで証拠等の関係から起訴できない場合もあるいはあるかと思いますけれども、方針といいますか態度といたしまして、甘くするというようなことは考えていないわけでございます。
○近藤忠孝君 暴力団が入ってきますと、これは類型的になってきまして、私は証拠なども集めやすいと思うし、だんだん起訴もしやすくなってくるだろうと、こう思いますので、ひとつこの点は特段の努力をお願いしたいと思います。 それから、もう一つ検察庁に要請したいことは、どうしてもこういうものに関与する人間は知能犯的なんですね。警察官が出かけていきましても、逆に言い負かされて帰ってきてしまうというような例が、これは実際いままであったと思いますし、また、これからもこれはあり得ると思うんです。 そこで、私はこれは法務省と検察庁両方に要請したいんですが、こういう場合は警察を呼んで、警察が帰ってしまいますと、披露者にとってはもうよけい大変なんです。なぜ警察を呼んだかといことで締め上げられますし、警察を呼んだけれど頼りにならぬということで、これはもう絶望が二重にも三重にもなりまして、屈服しなくてもいいものが屈服してしまうと、こういう事態になるわけであります。そこで、この点については、一つは、強力なる指導体制を検察庁もひとつ法律の専門家として乗り出していただきたい。そしてさらに、警察に任せず検察庁が直接こういうものにやっぱり出ていく必要があるんじゃなかろうかというのが、法務省関係です。 それから、警察庁では、これは面接の担当者をふやすということが一つの対応策だと思うんですが、口で言い負かされて帰ってくるんじゃ仕方ないわけで、やはりその面の教育、指導、そういう点でもこれは充実してほしいと思いますが、いかがでしょうか。
○政府委員(前田宏君) 御指摘の点はごもっともだと思いますが、先ほど来警察の方からも御説明がありましたように、警察当局におかれましてもそういう専門家といいますか、その方面に明るい人を特に専門の担当官ということで配置しておるというような状況でございますので、警察でもその点が賄える面が多々あるのじゃないかと思いますけれども、御指摘のように、民事的な法令の適用とかいろいろと法律上の知識が必要な場合もあろうかと思いますので、そういう点につきまして、警察とも十分御協力申し上げて、遺憾のないようにいたしたいと思います。
○説明員(漆間英治君) 現実的な事態に遭遇して、これを刑事事件として構成できるかどうかという点については、個々の場面で検察庁と協議しながら、お知恵を借りながら処理をしていくことは、いままでもそうでございまして、今後もそうでございます。 それから、担当者の教養の問題につきましては、私どもも実はその点を一番考えているわけでありまして、去年この問題を発足させましたときに、ことしの二月にその担当官に命ぜられました警部さんたちを集めまして、まずどういう方針で臨むか、今後の段取りをどうするかというふうなことをやりまして、それと同時に、できるだけ多くのこういう問題に精通した係官をつくるような養成計画というのを示して、教養するように話をしてございます。 これは御承知のように教育のことでございますから、急に効果があらわれて、一日にしていままで処理できなかったものが処理できるようになるということではございませんけれども、徐々に恐らく効果を上げてくるであろうと思っております。それが効果を上げてきますれば、この問題についての対応もかなり警察も習熟をし、国民の御期待にもこたえられるようになるのではないかというように考えておりますので、もうしばらく時間をおかしいただきたいというふうに考えております。
○近藤忠孝君 もう一つ、これは検察庁に要請ですが、私たち見ておって、暴力団の親分とか、あるいは幹部に対する捜査や起訴の基準あるいは求刑の基準がやはり少し甘いのじゃないかと思うんです。一つは、たとえば暴力団同士の殺人になりますと、相手が相手だということでどうしても軽いんですね。それから、チンピラに比べて総体的に親分や幹部の方はいろんな点に手を伸ばしていますし、ほとんど関与しているんですが、実際起訴事実なんか見ますと、かなり起訴事実から抜けているんです。チンピラというのは大体個々に担当したところだけ、たとえば女性をトルコへ送り込んでやっているということになると、その部分は完全に起訴されますけれども、そういうことをたくさん指導している幹部になりますと、それが幾つか落ちている。 私も、実際弁護を担当してそういう事例にぶつかったものですから、検察庁に率直に申し上げたんですが、そういう例がやっぱりあるわけですね。そして、最終的に求刑基準がどうも低いように思うんです。この点を、もっと求刑基準を上げるとか、こういうことはやっぱりできるんじゃなかろうか。 というのは、私はこれは実際現場の警察官に聞きましても、せっかく苦労して逮捕して検察庁に送っても、いつの間にか出てきているというのですね。あるいは保釈で出ていたり、あるいは実刑食っても比較的早く出てきておってがっかりするという、こんな話を聞くことがありますけれども、これについていかがでしょう。
○政府委員(前田宏君) 暴力団の関係者につきまして、特段に求刑基準というようなものを設けているわけではございませんが、一般的に申しまして、むしろ暴力団の関係者が関与します事件は、それだけに内容も悪質なものが多いわけでございますので、そういう観点から処理もむしろきつくなっているというふうに私どもは考えておるわけでございます。 ちなみに、たとえば暴力団関係者の起訴率等を見ましても、全体の起訴率が六四%ぐらいでございますのに暴力団関係者の起訴率は八五%ぐらいである。また、公判請求の率も、全体では四七%ぐらいであるのに暴力団関係は七八%余りであるというような統計もあるわけでございまして、そういうことからもおわかりのように、方針といいますか、態度といたしましては、厳正に臨んでいるつもりでございます。 ただ、幹部の方についてなかなか起訴されない場合があるのじゃないかという御指摘もあったわけでございますけれども、やはり実際の実行行為をやった者とその背後にある者ということになりますと、共謀関係でありますとか、そういう点での証拠の問題もあるわけでございます。しかし、この問題に限らず、警察も同様と思いますけれども、検察当局といたしましても、表面的な捜査に終わらないように、その背後にあるものを追及するようにということは毎々申しているところでございます。
○近藤忠孝君 そこで裁判所の方ですが、裁判所が直接関与するのは、先ほど申し上げたとおり時間がかかるという点で、その点では民事執行法、これは十月一日から施行されましたので、かなりな改善がされると私は思っておるんです。そこで、それをこういう観点から実効あらしめるためにどういう運用の方針であるか、それを御説明いただきたいこと。 それから、実際現場では、競売の場にいわゆる暴力団が来てほかの人が排除される、こういう問題がありまして、執行官などは恐らく身の危険をずいぶん感ずる。中には、そういう中でとうとう向こうのとりこになってしまうというようなこともあるわけです。今回の民事執行法六条あるいは六十五条などでは、警察との関係がずいぶん密接に書いてありまして大変結構だと思うんですが、こういう状況の中で、私はそういう執行官などの安全を守り、そして実際暴力団をそういう場から排除していく。そういう点で具体的な方策、これをお聞きしたいと思うんです。 それからもう一つは、これはこういう面では弁護士会とも協力態勢をひとつ大いにとるべきだろう。現に和歌山弁護士会では、弁護士の方がこれはもう積極的にこういう競売に大いに関係していこうということで申し合わせいたしまして、積極的な取り組みをしておるわけです。こういう点での裁判所の対応していくお考え方、これをお聞きしたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 民事執行法の六十五条によりまして、執行官に競売の場所の秩序維持、要するに競売場の秩序維持の権限が与えられることになりました点が、従前の執行手続と非常に大きな違いをなしておるわけでございます。 この内容を申し上げますと、一定の人間について入場制限、退場命令あるいは買い受け申し出の禁止といったそのどれかの措置をとることができるということになっておりまして、その一定の悪質な人間と解されている、示されている者としては、一が「売却の適正な実施を妨げる行為をし、又はその行為をさせた者」、二が、他の民事執行手続の売却不許可決定においていま申し上げたようなものに該当すると認定された者、それから三番目が、民事執行手続の売却に関して談合罪、封印破棄罪、強制執行免脱罪等の有罪判決を受けた者、こういう者が対象になっておるわけでございます。 この法の規定を活用するために、最高裁の事務総局民事局といたしましては、これらの者のリストを全国の裁判所からの報告に基づいて作成いたしまして、これを各裁判所と執行官に配付しております。執行官といたしましては、このリストに登載された者であるかどうかということを確認するために、競売場に参集した者に対して身分に関する証明を求めることができるように、最高裁規則であります民事執行規則において定めてございます。 それから、新しい手続になりまして一番特色といたしましては、従前の競り売りに対しまして入札を原則としたということでございますが、入札の場合でも、やはり暴力団の介入が避けられないという点もございますので、その中では新しい制度といたしまして、民事執行規則におきまして期間入札という制度を採用いたしました。これは郵便で入札書を送ってき、あるいは保証金を送ってくるということで、一定の期間内に入札をさせて、裁判所におきましては開札の期日だけ開くということになります。 これによりまして、買い受け希望者がお互いに顔を合わせることの機会を少なくする、結果として暴力団の介入の防止にも役立つのではなかろうかというふうに考えておるわけでございますが、新制度になりましてから多くの裁判所ではこの期間入札を活用するという予定でございまして、特に東京地裁、大阪地裁におきましては、新法事件につきましては全件、期間入札を実施するということを予定しております。 なお、これは従前からの処理体制でございますが、暴力団の介入が目につくようになってきたということもございまして、執行官の監督官であります裁判官とか、監督補佐官である書記官が常時競売場に臨場して暴力団の介入を防止するように努めておりますし、そのほかに警備担当の職員等を競売場の内外に配置して監視をする、それから非常に介入の危険が強い場合には、警察官の協力を要請するというふうな方策を講じておるわけでございます。 それから、ただいま御指摘ありましたように、和歌山県におきましては、弁護士会がそういう民事介入暴力を避けるために、積極的に代理人として競売に参加していただくという方針をお立てになっておるようでありまして、裁判所としてもそういう方針は非常に歓迎すべきものというふうに考えておるわけでございまして、従前はややもすれば弁護士さんが競売の実際からは遠ざかっておられたわけでございますが、積極的に参加していただけることが望ましいというふうに考えておるわけでございます。
○近藤忠孝君 時間が来たので、それとまた、民事執行法はこれからいわば施行されるわけで、果たして立法の趣旨が生かされるかどうかこれからだと思いますし、そういう事態を見て、これからも私はときどき取り上げていきたいと思っております。 最後に大臣、以上のような問題で、大体法曹三者と警察も含めて同じ方向をいまずっと歩んでおるんですね。こういう中で、特にやっぱり私は法務大臣が積極的に進めるという決意が大変大事だと思いますけれども、その点いかがですか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 暴力団のことについてだんだんのお話がございまして、法の支配が力の支配に置きかえられているということだと思います。法の支配が暴力の支配に置きかえられる、法治国家としてはあるまじきことだと、こう考えるわけでございまして、何事よりも特に法治国家の秩序を維持する責任者は力を入れていかなきゃならない。 いま三者からそれぞれ御答弁申し上げましたように、力を入れているつもりでありますけれども、今後もさらに努力をしていくようにいたしたいと思います。
○市川房枝君 私は、いまこの委員会で議題となっております裁判官及び検察官のベースアップの法案に賛成するものです。一般の公務員のベースアップがあれば、当然裁判官、検察官のベースアップもあるべきだと思いますから。 ただ、裁判官及び検察官は、法の厳格な施行に努力していただいておりますが、一方、被告あるいはその家族あるいは国民一般から見ますと、冷酷で血が通っていないと思われるようなケースもたまにあることを遺憾に思います。その一例として、この機会に再審の問題について、最高裁及び検察当局に若干の質問を申し上げたいと思います。 第一に、最近十年間ぐらいでよろしいが、再審の申請の件数がどれくらいあったか。そのうち、再審開始の判決のあったのがどのくらいか。 さらに、その結果、無罪になった件数がどれくらいあるのか、それを伺いたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(柳瀬隆次君) 最近十年間ということでお答えいたしたいと思いますけれども、資料の関係上、昭和四十四年から五十三年までの十年間ということにさせていただきたいと存じます。 この十年間におきまして再審請求事件の新受人員は九百九人、既済人員は九百一人、そのうち再審開始決定のあったものは二百九十九人、これは率にいたしますと既済人員のうち三三・二%となっております。 次に、同じく最近の五十三年まででございますが、十年間における再審開始決定のあった事件につきましてその後の終局結果でございますが、十年間に終局した人員は二百九十人ございます。その終局結果を見ますと、控訴棄却となった者が三人、残り二百八十七人はいずれも無罪という結果になっております。 以上でございます。
○市川房枝君 いまの数字を伺いますと、再審開始の判決があり、そのうちの大多数が無罪になっているみたいですね。ただ、私が聞いているのでは、再審開始の判決があっても、そのすぐ直後に検察が抗告をなさる。そうすると、もう一遍初めからやり直しであって、それに数年またかかると、そういうことでストップさせられる。せっかく本人あるいは家族は再審開始になったということで喜び希望を持っても、そういう場合が少なくないと言われているんですが、それはいかがですか。
○政府委員(前田宏君) ただいまのお尋ねに対するお答えの前提といたしまして、一言申さしていただきたいわけでございますが、私どもで調べております限りで、たとえば昭和四十九年から五十三年までの五年間、再審の開始決定があったのは百六十五人でございますけれども、その中で、むしろ検察官の方から再審の申し立てをしたものが多いわけでございます。数字で申しますと百五十七人でございまして、逆に本人側から申し立てのあったのが八人でございますから、パーセントで申しますと、約九五%がむしろ検察官の方から再審の申し立てをしているというような状況にあるわけでございます。 冒頭、市川先生から、検察官の方で冷たい点があるのじゃないかというような御意見もございましたけれども、私どもといたしましては、常に無実の者を罰してはいかぬという精神を持ちまして、いま申し上げましたような数字にもあらわれておりますように、検察官側の方から進んで申し立てをしている場合も多いわけでございます。 ただ、いまの内容は、大半がいわゆる身がわり事件、つまり交通事故事犯で身がわりを立てまして罪を免れるというような場合が多いわけでございますが、そういう場合にはやはり本来の犯人を罰し、片や本来の犯人でない者は再審で無罪にするというようなことになっておるわけでございまして、もともと無実な人が罰せられたというわけではないということも、御理解を賜りたいわけでございます。 それから、お尋ねの裁判所で再審の開始決定があった場合に、検察官側で不服を申し立てて、せっかく開始決定があってもその効果がないのじゃないかというような御指摘であったと思いますけれども、検察側といたしましてすべて争っているわけではございませんで、開始決定がありました場合に、特に争わない場合もないわけではございません。ただ一方、検察官といたしましては、公益の代表者というような立場にもあるわけでございますので、再審決定がございましても、その内容につきまして納得できがたい点があるという場合には、さらに上級の裁判所の判断を求めるのが適当であろうという場合もございますので、そういう場合には、それぞれ法律上定められた手続によりまして不服を申し立てていると、こういうことでございます。
○市川房枝君 いまの御答弁ですと、再審開始決定があった後、検察側が必ずしも抗告はしていないと、こういうことを伺ったんですが、私が聞いているのでは、抗告がすぐ、あるいは一日か二日の間にかなりされておるというふうに言われておるんですけれども、それは間違いでしょうかね。
○政府委員(前田宏君) 数字的な統計を持っておりませんけれども、著名事件で申しましても、たとえば加藤老事件と呼ばれているような事件、あるいは弘前大学の教授夫人の殺害事件等につきましては、それぞれ再審の開始決定がありました場合に不服を申し立てていないわけでございます。 ただ、先生が御理解になっておりますように、最近、三件ばかり著名な事件で再審の開始決定がございました。それにつきましては、先ほど申し上げましたような、それぞれケース・バイ・ケースでございますけれども、検察官側としてはやや納得しがたい点があると。むしろそこでその決定を確定的なものにするよりは、上級審のさらに慎重な判断を仰いだ方が適当であろうと、こういうことで申し立てている場合があるわけでございます。
○市川房枝君 再審開始までには、裁判所で相当の期間、それには検察官も入って審理をし、そして結論として再審開始になった場合に、それに対して検察の方が異議を抗告して、そうしてもう一遍上級の裁判所で審理をし直すということですね。そうすると、またそれで何年かかかるといいますか、まあ私は法律に暗いし素人ですけれども、一応再審開始するかどうかということで相当の期間かけて審理を終えたものを、それを検察の方が不満だとしてするということですね。それで、これは検察の方では御存じでしょうけれども、西ドイツでは一九六四年に再審法の金面的な見直しをして、そして検察にいわゆる抗告権といいますか、それを与えないということになったというふうに聞いておりますが、それは事実でしょうか。
○政府委員(前田宏君) 先ほど申しておりますように、裁判所の一応の判断があったわけでございますから、それはそれなりに尊重すべきものと考えておりますが、中には、さらに上級の裁判所の判断を求めた方が適当であろうというものもないわけではないというふうに、御理解を賜りたいわけでございます。 確かに、無実の人を罰していかぬことはそのとおりでございますけれども、反面、刑事責任のあるべき者がそれを免れるということがあってもいかぬわけでございますので、その両面の調和をとりながら適当な措置をとるべきものと、かように考えているわけでございます。 なお、いま西ドイツの法律の改正のことにお触れになりましたが、もともと四ドイツの刑事訴訟法では、むしろ被告人に不利益な場合の再審も認められているわけでございます。これは日本の刑事訴訟法でも戦前はあったわけでございますけれども、戦後はそういう制度はなくなったということで、再審制度そのものが大分基本から違っておるわけでございますので、直ちに日本の場合に当てはまるかどうかというふうには言えないのじゃないかと、かように考えております。
○市川房枝君 私は、裁判官も検察官もといいましょうか、神様じゃないので、やっぱり間違いということはある。だから、裁判の結果、いわゆる無実な者を有罪と間違ってしたということは、これは認めなくちゃならぬと思うんですが、ただ、しかしそれを認めると、結局は裁判官、検察官が間違っていたということを明らかにするわけなんです。それで、それを裁判官なり検察官としては非常に不名誉といいますか、あるいはいやだということで、いままでのこれは私の受けた印象ですけれども、再審ということに対して非常に厳しいというか、あるいは非常に冷酷だとでもいいましょうか、そういう扱いをされてきている。 ただ、最高裁が十年ぐらい前にでしたか、再審についての新しい見解を発表してから少し変わってきたとは思っておるんですけれども、だからもっと再審を、私はやっぱり間違っていると本人が言うというか、そういうものはもう受けて、そして親切に再審をする。そして、開始と決定するのは、やっぱりその裁判では誤っていたかもしれぬ、だからもう一遍審理し直す必要があるということの意思表示なんだから、私はやっぱりそれを重んじて、そして検察の方、また上の方へそれを抗告するということは、そこまでする必要はないというか、同じことをまた繰り返すというか、さっき言いましたように、被告なり、あるいはその親族なり一般の国民から見ると、どうもその点がちょっと納得できないように思いますけれども、いかがですか。
○政府委員(前田宏君) 同じようなお答えになって恐縮でございますけれども、もちろん裁判所の一応の判断が示されたわけでございますから、それはそれなりに尊重すべきものと、かように考えておりますし、決して無実の者を罰していいということを考えているわけではございません。 先ほども冒頭で数字を申し上げたわけでございますけれども、検察官側の方からやはり客観的な事実に合うべきものというふうに思いました場合には、進んで再審の申し立てをしておるということからも御理解を賜りたいわけでございます。 制度上、即時抗告でありますとか、あるいは異議の申し立てでありますとか、そういうことができる道は開かれておるわけでございますし、検察官側といたしましては、いまのような御意見も十分念頭に置きながら、また、裁判所の開始決定というものはそれなりに十分尊重しながら運用に当たっているわけでございまして、それでもなおかつ、たとえば地方裁判所の判断では若干納得できないという場合に、高等裁判所の判断を求めた方がいいのじゃないか、あるいは高等裁判所の決定についてさらに場合によっては最高裁の判断を求めた方がいいのじゃないかというふうに思われるものもないわけではないわけでございますので、そういう場合にはそれなりの措置をとらしていただいているというふうに、御理解をいただきたいわけでございます。
○市川房枝君 私は、実は徳島のラジオ商殺し、皆さん御存じですが、その事件で早くからこの被告の富士茂子氏を支持して、それに関連しての運動を多少してきた一人でございます。 富士さんは、十三年の刑期を終えて出獄をしましたが、服役中から自分は夫を殺してはいないと主張し続け、出獄してから一昨年は第五回目の再審を申請している。そして、徳島の地裁でもって審理中に、昨年死亡いたしました。その後、兄弟姉妹がその訴訟を引き継ぐことを許されて、いま引き続いているわけです。それで、ようやくこの十二月の十三日に再審を開始するかどうかの判決が徳島地裁から下されることになっております。 新しい資料が幾つか出ておりますし、私どもは今度は開始するという判決がいただけるだろうと思っていますけれども、それもそのときになってみなければわかりませんが、仮に再開するという判決がありましても、さっきから申しましたように、検察があるいは一日か二日のうちにすぐ抗告をするというケースをいままで私どもとしては大分聞いているんですが、そうすると、また何年か引き続いてということになり、そのことを私どもは心配をしているものでございます。検察が抗告しないようにしてほしいとこれは祈念しておりますけれども、どういうことになるかはっきりわかりません。 この問題は富士さん個人の問題でなく、私はほかのこういうような場合にも、さっき申しましたように、抗告はしないようなふうに法の改正があり、あるいは運営の上でそういうことにしていただければ、一般の国民としては納得がいくんじゃないかと思います。これについては、法務大臣から御答弁いただきたいんですが。
○国務大臣(奥野誠亮君) 再審の申請ということは、まことに深刻な問題だと思います。したがいまして、再審の申請がありました場合に、それを許すか許さぬか裁判所で判断されるわけでございますけれども、それにつきましても細心の留意がなされて決定されると思いますし、また、その決定に対しましても検察がどう扱うか、やはり深刻な課題であり、細心の留意の上で決定なされたということを踏まえて検察の態度も決めなければならないと、こう存じております。
○市川房枝君 続いて簡単に、いま有名になっております所沢の富士見産婦人科病院のことについて、被害者の婦人たちから陳情を受けておりますので、法務、厚生当局に対してちょっと伺いたいと思います。 まず、法務当局に伺いたいのは、北野理事長の政治献金のことでございます。齋藤前厚生大臣は、北野から大臣就任お祝いとして厚生省の大臣室で五百万円もらったことを御本人が承認し、大臣をおやめになりました。しかし一般国民は、一体それだけでもうすぐ済んじゃったのか、それでいいのかと、こういう疑問を非常に持っておりまして、私どもにもずいぶんそういう意見が寄せられております。 いろんな問題がありましょうけれども、特に政治献金の問題について申しますならば、現在の政治資金規正法によると、個人が政治献金をもらった場合、届けなくてもいいんですけれども、もらう金額は百五十万円までという規定が、新しい改正された政治資金規正法に載っております。だから、齋藤氏の場合、政治資金規正法違反だということだけははっきりしておりますけれども、それは検察の方ではどういうふうにお扱いになっているんでしょうか。
○政府委員(前田宏君) 富士見病院の事件につきましては、御案内のとおり医師法違反ということで捜査をし、起訴もし、また、さらに継続して捜査が続けられておるわけでございます。 いま御指摘のいわゆる政治献金と申しますか、その点につきましては、もちろん念頭に置いて警察当局は捜査をしておると思いますけれども、まだ警察がそういう関係の捜査といいますか、検討している段階でございまして、まだ検察庁の方に送致がないということもございますので、詳細につきましては私ども承知してないわけでございます。
○市川房枝君 いま一つの疑問は、あのときは五百万円だけれども、もっと前にも金を出しているので、それがやっぱり何か便宜を与えてもらおうというか、一種の賄賂性があるんじゃないかということを、これは一般の常識として考えるんですけれども、その点は検察の方でもお調べになっているかどうか、お調べになってどういうことになっているか、ちょっと伺いたいと思います。
○政府委員(前田宏君) 先ほども申しましたように、そういう点がいろいろと取りざたされているわけでございまして、現地の埼玉の県警の方で、警察の方でいろいろな面から検討しているということ自体は聞いておりますけれども、その結果といいますか、どういうふうに扱うかということにつきましては、まだ検察庁の方には話がないわけでございますので、現段階では何とも申しかねるわけでございます。
○市川房枝君 厚生省当局にちょっと伺います。 被害者の婦人たちが厚生省にといいますか、あるいは厚生大臣に会ってこの問題についていろいろ陳情をしておりますが、その陳情したことは厚生省の方でどういう対策をおとりになったか、それを伺わせていただきたい。
○説明員(小沢壮六君) 十月の二十二日に被害者の方々が大臣のところにお見えになりまして、その際、四項目にわたります要望書をいただいておるわけでございます。 四項目につきましてそれぞれ申し上げますと、第一番目の項目といたしましては、被害者の方々の一番の不安というのは後遺症に悩んでおられる。したがいまして、それの的確な検診の医療機関を公の手で決めてもらいたい。それから、あわせて国公立の病院に産婦人科の病床を増床してもらいたいと、そういう内容でございます。 この第一点目につきましては、私ども埼玉県とも協議いたしまして、所沢保健所を窓口にいたしまして、あの地区で最も信頼されております防衛医大という医療機関があるわけでございますが、御心配のある患者さん方につきましては、保健所が窓口になりまして、順次防衛医大で再検診をしていただく。その結果、異常があるという方々につきましては、さらに保健所と地元の医師会が相談いたしまして、しかるべき地元の医療機関で治療を受けていただくと、そういう体制を整えているわけでございます。 それから、国公立病院についての産婦人科の増床につきましては、一般的に国立病院あるいは公立病院におきましていわゆる診療科目をどうするかという問題は、地域の医療需要を勘案しまして、それぞれ適切に決めているわけでございますので、今後ともそういった形で、地域の医療需要としてこの診療科目が必要であるというようなことがございましたら、それに応じた形で整備を進めてまいりたいと、このように考えておるわけでございます。 それから、御要望の第二点目は、経済的な補償を何らかの形で国あるいは地方公共団体の手でできないかという点でございます。この二番目の点につきましては、私ども、この事件の性格としまして、事件そのものは大変重大な事件だと考えておるわけでございますが、ただ、事件の形といたしましては、いわゆる一般の医療事故といいましょうか、医事紛争と申しましょうか、そういったものと同質の問題ではないだろうか。したがいまして、やはり基本的に、経済的な補償の問題につきましては医療法人たる芙蓉会と患者さんの間での一般的な、私法的な関係において解決されるべき問題であると、このように考えておるわけでございます。 それから第三点目は、病院の理事長あるいは医師に対する行政的な処分を速やかにせよという点でございます。この三点口につきましては、私どもも事実関係の全体像が明らかになった時点で、法に基づきます厳正な処分をいたしたいと考えておるわけでございますが、現在、まだ最終的に全体につきましての事実関係の解明が終わっておりませんので、事実関係の解明が終わり次第、法に基づいた厳正な処分をいたしていきたいと、このように考えておるわけでございます。 それから第四点目は、医療機関に対する指導監督をさらに強化せよという点でございますが、この点につきましては、この事件の発生後、直ちに九月二十日付で、私ども次官名で医療機関に対する指導監督の徹底についてという通知を出しておりますし、それからさらに十月に入りましても同じような趣旨で、医務局長名で全国の都道府県を指導しておるわけでございます。さらに、ちょうどきょうから各県に医療相談コーナーというものを設けまして、住民の方々からのいろいろな声もあわせてお聞きするというような態勢をとっておるわけでございます。 それから、基本的な問題として、そういう医療機関に対する指導監督のあり方をどうするかということにつきまして、厚生省内に医療全般にわたります検討委員会のプロジェクトチームをつくっておりますので、長期的な問題につきましては、そのプロジェクトチームの中で検討していきたいと、このように考えておるわけでございます。
○市川房枝君 いろいろ対策を講じていてくださるようで、それが具体的にどういうことになるかということは、時がたってまた伺いますけれども、私、被害者の人に会って特に心配しましたのは、いわゆる後遺症がある、あるいは子宮だの卵巣を取り除かれた人たちが、その後頭が痛いのだ、あるいは体がだるいのだ、あるいは夫婦生活がうまくいっていないのだとか、いろいろな事情を訴えられまして、それに対して毎日ホルモンを注射ているという人もあり、いや、ホルモン注射をするのはよくないからと言われて迷っているのだ、一体どうしたらいいのかなんというような質問もあります。 だから、そういう人たちの指導といいますか、さっきちょっとほかの病院に何か紹介してというようなのもありましたけれども、それがうまくいっているかどうか、それはまだ私の方で確認はしておりませんけれども、それからそれの費用の問題ですね、一体いまどこで補償をするのか。これは全体の問題と関連していろいろ問題があると思いますけれども、これは富士見病院の問題だけでなくて、全国の医療に対するいままでもいろんな患者からの訴えもありまして、そういうのに対して必ずしも対策がとられていなかったといううらみがありますけれども、さっき御答弁がありましたように、厚生省の方から各県に対してというか、そういうコーナーを設けるということで、一応そういうものができますけれども、それが実際に効果がありますように、ただ置いたというだけでなくて、ひとつこの上とも御努力を願いたいと思います。 私、時間が参りましたので、これで終わります。ありがとうございました。
○委員長(鈴木一弘君) 両案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。 本日はこれにて散会いたします。 午後四時五分散会 —————・—————