法務委員会 第1号
- 発言数
- 324 件
- 登壇者
- 20 名
- 会派数
- 6
- 開催日
- 1980/10/16
会議録
○委員長(鈴木一弘君) ただいまから法務委員会を開会いたします。 まず、委員の異動について御報告いたします。 昨日、宮本顕治君が委員を辞任され、その補欠として近藤忠孝君が選任されました。 —————————————
○委員長(鈴木一弘君) 理事の補欠選任についてお諮りいたします。 委員の異動に伴い、現在、理事が一名欠員となっておりますので、この際、理事の補欠選任を行いたいと存じます。 理事の選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(鈴木一弘君) 御異議ないと認めます。 それでは、理事に藤原房雄君を指名いたします。 —————————————
○委員長(鈴木一弘君) 調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。 本委員会は、今期国会におきましても、検察及び裁判の運営等に関する調査を行うこととし、この旨の調査承認要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(鈴木一弘君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 なお、要求書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(鈴木一弘君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 —————————————
○委員長(鈴木一弘君) 検察及び裁判の運営等に関する調査を議題といたします。 質疑のある方は順次御発言をお願いいたします。
○寺田熊雄君 法務大臣に憲法上の問題でお尋ねをいたしますけれども、ちょっと外務省の所管局長が外務委員会の方に出席しなきゃならぬ都合がありますので、先に金大中問題の方を質問いたしますから、御了承いただきたいと思います。 金大中氏の軍法会議の裁判でありますが、これは起訴状が日本の国内における韓民統とのかかわりを記載している部分、これは背景説明である、訴因のなる部分は算用数字の「1、2、3」と記載してあるようなそういう部分を指すという説明を、あなた方しておられますね。これは間違いないですか。
○政府委員(渡辺幸治君) 先生御指摘のとおりでございます。起訴状におきまして背景説明と訴因と分けてあり、韓民統にかかわる部分で日本における言動に関する部分については、いわゆる背景説明の中に掲げられているという点については、韓国側から確認的説明を受けております。
○寺田熊雄君 委員長、きょうは官房長官をと言ったところが、官房長官はいろんな都合で出られないが外務省のアジア局長をかわりに出席させるからというので、官房長官の 欠席を了承したんですが……。
○委員長(鈴木一弘君) ちょっと速記をとめてください。 〔速記中止〕
○委員長(鈴木一弘君) 速記を起こして。
○寺田熊雄君 ところが、日本の刑事訴訟法では確かに訴因なる概念がはっきりと規定されておるわけだけれども、韓国の軍法会議法はもちろんのこと、刑事訴訟法を見てみても訴因というような規定は全くないし、どうしてそういう説明が出てくるのか、その点は外務省としてはどういうふうに理解しておられますか。
○政府委員(渡辺幸治君) お答えいたします。 先ほど申し上げましたとおり、韓国側においては、起訴状のこの部分までは背景説明であり、それ以下が訴因であると。先生御指摘のとおり、数字ないしかなを振ってあるところが訴因であるということの説明でございました。これは確認的説明であるということを申しております。 韓国の刑事訴訟法上あるいは軍法会議の訴訟手続上、背景説明、訴因というものが明文化されているかどうかという御指摘でございますけれども、その点については韓国側の有権的解釈に従うというような立場をとっております。
○寺田熊雄君 後からもいろいろとお尋ねするけれども、すべて韓国側の説明をうのみにしてしまって、その説明が果たして韓国の法令に合致しているか、それが合理的であるかというようなことは全く吟味せずに無条件で受け入れるということは、問題があるんじゃありませんか。この点いかがです。
○政府委員(木内昭胤君) 決して韓国側の言い分をうのみにするというつもりはございません。私どもでできる範囲で調べておりますが、結論的に申し上げますと、有権的解釈ということになりますと、何分法域の違う地域での裁判でございますので、そういう意味では私ども公の場でどこまで発言できるかということになりますと、おのずから限界があるものと承知いたしております。
○寺田熊雄君 これは後でまたさらにお尋ねすることにして、軍法会議の判決文が得られないということ、これは非常に不思議なわけで、判決は公開の法廷で行うということ、これは韓国の刑事訴訟法でも軍法会議法でも不動の原理だと思いますが、これはいかがですか。
○政府委員(木内昭胤君) これは私どもの推測になるわけでございますが、韓国の憲法におきましても審理の公開という規定はございます。ただし、そのことが判決文を公開するということに即つながるのかどうか、その辺につきましては私どもとしては何とも申し上げられない。すなわち、憲法で言っておりますところの公開というのは、審理そのもの、あるいは判決そのものが公開であって、裁判関係の文書をどこまで公にするかということについては、恐らくいろいろ御議論があるところではないかと思います。日本の刑事訴訟法についての扱いがどうかということになりますと、外務省の政府委員としましては、お答えを差し控えさしていただいた方が適当かと思っております。
○寺田熊雄君 それでは、確かに韓国憲法の二十四条の三項というので、「すべての国民は迅速な裁判を受ける権利を保有する。刑事被告人は相当な理由がないかぎりとどこおりなく公開裁判を受ける権利を保有する。」これは、たとえば著しく風紀を害するというようなこと、あるいは著しく安寧秩序を害するというようなことがない限り裁判は公開されるということは、もう各国いずれも自主主義国家の大原則になっておりますね。 あなたはいま、裁判の公開ということは判決文の公開までに及ぶかどうか自分はわからぬとおっしゃったけれども、裁判の公開ということは、審理はもちろんのこと、審理以上に判決文というものは必ずこれは公開の席で、法廷で行わなきゃいかぬという、これはもう私どもの法律常識で疑う余地がないんですね。審理は公開するが判決文は公開しないというようなことは、もう公開裁判ではないんです。 これは最高裁の事務総長もおられる、それから法務省の刑事局長もおられるからここで御意見を求めてもいいんですが裁判の公開というのは、審理だけでなくして判決そのものが公開されるということを意味することは疑いがないでしょう。これは最高裁の事務総長、法務省の刑事局長、それぞれおっしゃってください。
○政府委員(前田宏君) 判決が公開の法廷で行われるのが原則であろうということは御指摘のとおりだと思いますけれども、判決書そのものを第三者に渡すかどうかということは、また別問題であろうかと思います。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 公開の法廷で判決を言い渡すわけでございますので、法廷内において判決の全文が明らかになる、こういうことでございます。
○寺田熊雄君 それは、公開された法廷で言い渡されるということは、これは結局、あまねく国民にその内容が明らかにされるということでしょう。判決文そのものが第三者に手交されるとか手交されないとかいうそういう技術的なことでなくして、判決の内容があまねく国民に明らかにされるという、そういうことなんでしょう。この点いかがですか。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) お説のとおりでございます。
○寺田熊雄君 刑事局長、いかがです。
○政府委員(前田宏君) その点は、そのとおりと存じます。
○寺田熊雄君 したがって、それは何ら秘密にせらるべきものではないわけですよ、アジア局長ね。ですから、どうして秘密にせらるべきものでないものが——私は、判決の原本をあなた方が手に入れろというようなことを要求しているわけじゃない。原本は、それは裁判所に置くんでしょう。しかし、そのリコピーを、秘密文書でないものの写しをあなた方が入手されるということに、どこに支障があるんでしょう。いかがですか。
○政府委員(木内昭胤君) 韓国の裁判におきまして、これを秘匿するつもりでやっておるのかどうか、その辺は私ども存じませんが、少なくともこれまでに受けております説明では、韓国の軍法会議法すなわち刑事訴訟法に当たる部分につきまして、訴訟関係人の請求によって、費用を払ってその謄本または抄本をもらうことができるという規定があることは事実でございます。ただし、彼らの説明によりますと、そのことが即私どもにその判決文を渡すということかどうかということになりますと、通常は軍法会議のそういう判決文書は渡さないのが慣例であるという説明をちょうだいいたしております。 にもかかわらず、御案内のとおり私どもとしましては、すなわち外務大臣も御答弁になっておりますが、できるならばその判決文を入手したいということで、現在せっかく韓国の当局といろいろ相談しておるところでございます。
○寺田熊雄君 これは、かつて外務省で韓国の裁判所なり軍法会議の裁判の写しなりリコピーを請求なさって、それが拒否された事例があるんでしょうか。
○政府委員(木内昭胤君) 請求した例があるか、あるいは拒否した例があるか、私の記憶ではいずれもないと承知いたしております。
○寺田熊雄君 それでは、そういう慣行があるということにはならないでしょう。 それから、かつて早川嘉春君と太刀川正樹君の非常普通軍法会議、これの問題が国会で取り上げられたことがありますね。そのときは非常普通軍法会議の判決文、これははっきりと公開されて、日本の法律雑誌にも載っているんですね、全文が。ですから、それが公開されて少しも差し支えないものだということは、これはもう先例があるんですよ。あなた方も入手されておるんじゃないですか、国会で論議された際に。だって、民間の者が入手しておるのに、外務省が入手してないというのはおかしいでしょう。これはいかがです。
○政府委員(木内昭胤君) 先ほど申し上げました判決文を渡す慣行がないというのは、韓国側の説明でございます。したがいまして、これは例外もあり得るかと思いますが、私どもとしては通常はもらえないものだなと、かように理解いたしておるわけでございます。 太刀川それから早川両氏のケースにつきましては、もし外に公表されているということであれば、例外に該当するものと解さざるを得ないわけですが、先ほどお答え申し上げましたとおり、私どもとしては現在引き続きまして判決文の入手に努めておるわけでございます。すでに入手したのではないかという御指摘がございましたけれども、さようなことはございません。
○寺田熊雄君 いや、すでに入手したんじゃないかというのは、太刀川君や早川君の判決文を民間の者が入手しておるのに、所管の外務省が、国会で論議された事件であるにもかかわらず入手してないというのはおかしいじゃないか、入手しておるのじゃないかということなんです。 また、あなたのおっしゃるように例外もあり得るというならば、なぜ金大中氏の裁判についてはそれが認められないんでしょう。どこに、渡したら不都合ということがあるんでしょう。少なくもあなた方は、韓国をわが国の友好国だと見ていらっしゃるんでしょう、いろいろな援助をしていらっしゃるんだから。それならば、友好国の合理的な要求に対して、またそれが秘密でないものであるならば、それをわが国に渡しても毫も差し支えないんでしょう。どうして韓国のそういう合理的でない回答をうのみになさって、それに従っていらっしゃるのか。 ですから、常に韓国の回答というものが韓国の法令に合致するか、合理的であるかということを吟味せずにうのみにして、そしてあいまいのままに過ごしていると。これはいままでがずっとそうですよ。あの金大中氏の拉致事件だって、韓国の説明では犯人が結局わからないというんでしょう。金大中氏を船に乗せて連れていって、そして家まで持っていく、そんなことをしておる犯人が多数人の犯罪で一人も出ない。ああそうですかと、審理を尽くされましたねというようなこと、捜査を尽くされましたねというようなことで、もう不合理きわまる回答というものをすべてうのみにしていらっしゃる。それを私はおかしいじゃないかと申し上げておる。いかがですか。
○政府委員(木内昭胤君) 合理的であるかどうか、これは私どもとしては判断のしようがないと思います。先ほど申し上げましたとおり、判決文の入手につきましては引き続き努力しておるというのが現状でございます。
○寺田熊雄君 いや、合理的でないかどうかということは所管の局長が判断できないことはないでしょう。いままでの慣行というその説明にしたって、いままで要求してけられたことがないとおっしゃるんだから、そういうことをいま記憶してないとおっしゃるんだから、それを慣行と言い得るかどうかも疑問ですね。それから、本来、全国民にあまねく内容を周知してしかるべき文書、それをなぜ秘密にしなければならないか、それも、それを秘密にしているということは合理的でないでしょう。あなたは、それは当然あなたの健全な常識で判断されてしかるべきものでしょう。合理的であるかないかということの判断ができないということはないでしょう。
○政府委員(木内昭胤君) 何分第三国の出来事でございますので、政府に属する者としてそれが合理的であるとか、あるいは非常におかしいとか、そういうことを公の場で申し上げる立場にないということを申し上げたつもりでございます。
○寺田熊雄君 しかし、たとえばあなた方がソビエトなどの回答に対してはしばしば合理的でないと、納得しがたいというようなことをおっしゃるわけですよね。なぜ韓国についてのみそういう不合理な回答を、合理的か不合理かそれを申し上げることができないというふうに答弁を拒否されるんでしょう。あなた自身は、合理的であるか不合理であるかという判断をしていらっしゃるんですか、いらっしゃるけれどもこの席では申し上げられないというんですか、どっちですか。
○政府委員(木内昭胤君) 個人的には、あらゆる問題について私も意見を持っております。しかしながら、ただいまお尋ねの件につきましては、公の場において政府当局の一員としてお答えするのは差し控えさせていただきたいという、かようなことでございます。
○寺田熊雄君 それは韓国に対して非常に屈従した態度なんですよ。だから私は申し上げておる。もっと毅然として、だれが見ても合理的でないと判断されるものに対しては、貴国のおっしゃることは合理的ではないように思う、だからあくまでも渡してほしいと要求しても、少しも対等の関係が損なわれるわけじゃないでしょう。その程度の自己主張というものはあなたでもできるでしょう。それをしもできないということはないでしょう。いかがですか。
○政府委員(木内昭胤君) 御意見は十分承っておきます。
○寺田熊雄君 それから、外務省からいただきました軍法会議で読み上げられました判決文ですね。この判決文の中にはっきりと「金大中被告に対する国家保安法の違反については、友邦国との関係によりこれを不問に付するが、」という文言があることはお認めになりますか。
○政府委員(木内昭胤君) そのとおりでございます。
○寺田熊雄君 これに続いて「金被告が韓民統との提携で反国家的活動を行った事実は種々の証拠により明白である。同被告の断罪は、国内における反国家的活動のみによっても十分に重罰に値する。」こういう宣告がなされたことが、あなた方の私に下さった判決公判メモに書いてある。これによりますと「国家保安法の違反については、友邦国との関係によりこれを不問に付する」という以上は、国家保安法の適用は常識的に言ってないものと判断せざるを得ないように思うんですが、これはいかがですか。
○政府委員(木内昭胤君) ただいま先生が御指摘の判決公判メモのくだりは、わが大使館員が裁判所法廷で傍聴してきた記録によるものと思います。その後、傍聴した記録だけでは十分を期し得ないということで、韓国外務部から判決理由要旨というものを入手いたしたわけでございまして、その要旨も先生のところにあるいはお届けしてあるかと思いますが、その判決理由要旨からいたしますと、私どもとしては国家保安法違反というものが金大中氏の刑の根拠になっておるというふうに解釈されるのではないか、かように考えております。
○寺田熊雄君 しかし、判決というのは宣告のときにもうできていなきゃいかぬのですよ。後でつくるというものじゃないですよ。宣告というのは、もうすでにでき上がった判決に基づいて宣告するわけですよ。そして、宣告したものが判決の内容であって、それと異なるものを後でつくるということは許されないんですよ。これは裁判の常識です。この点も専門家がいらっしゃるからお伺いするが、宣告の内容と後で違ったものを判決文にするというようなことが許される道理がないでしょう。これは最高裁の事務総長も、刑事局長もいかがでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) そのとおりでございます。
○政府委員(前田宏君) 御指摘の点はそのとおりだと思いますが、外務省の説明は、最初は耳で聞いたのだけれども、その内容を明確にするために後から文書をもらったと、こういうことを言っておられるのじゃないかと思います。
○寺田熊雄君 刑事局長が何でそんなによけいなことを言うて外務省を弁護するんですか。それはもう気持ちはわかるけれども、やっぱりあなた方は公正な法の適用を心がけていただかなければ困るんで、不合理なものを一生懸命弁護をしたのじゃ法務省のやっぱりこけんにかかわるから、その点はよほど考えてもらわなきゃいかぬ。 アジア局長、いま法律専門家が言ったように、判決は後からつくるものじゃないんですよ。もうすでにでき上がっているものを宣告するんで、宣告したものを耳で聞いて、外務省の役人がこの文言をつくったとは考えられないでしょう。あなた方もそんないいかげんな部下を法廷に差し出したわけじゃないでしょう。かなりしっかりした人間を差し出したはずだ。それがこういうふうに判決で読まれた点を書いて、あなた方に報告しているわけです。しかも二人が。その内容について、あなた方疑いを差しはさむ余地はないでしょう。いかがですか。
○政府委員(木内昭胤君) 何分、外務省員は裁判というものを経験していることはございませんし、ましてや韓国語である、速記の訓練も積んでいないということからくる制約がございまして、十分に傍聴の任を果たし得なたったということがありとすれば、その点はおわび申し上げるほかないと思います。
○寺田熊雄君 しかし、韓国語は十分わからないと、そしてその程度のことがメモできないというような、そんなお粗末なそそっかしい大使館員を法廷に差し向けたわけじゃないでしょう。もしそうだとすると、おわびどころじゃないでしょう。国家の大事にかかわること、それをそんなぞんざいな扱いをして、弁明の余地はないはずですよ。あなたはそれでも、なおかつその二人が間違ったんだろうというふうに理解していらっしゃるというんですか。
○政府委員(木内昭胤君) 記録をとるということは、私は弁解するつもりはございませんけれども、決して容易なことじゃないと思います。すなわち、十分に正確を期する場合には、速記の経験を十分に積んだ方々複数の記録によって正確を期し得るのじゃなかったかと思いますが、それができなかったということ。そういう次第で、先ほど申し上げましたとおり十分至らなかったという点については、はなはだ遺憾に思っておるということを申し上げた次第でございます。
○寺田熊雄君 これは二人の大使館員がそういうことを聞いてあなた方に報告したというだけではなくして、その判決文を聞いていたマスコミがやはり同じように報道しているんですよ。ただ、そうなると、これは何で死刑かということになって、法律適用の誤りというものが出てくるものだから、後でこれは判決を修正したとしか考えられない。決して大使館員だけがこういう報告をしているんじゃない。一斉に、国家保安法の問題については友邦国との関係によって不問に付するという報道があること。これはあなたも御存じでしょう。それをみんなが間違えたとあなたは理解されるんだろうか。
○政府委員(木内昭胤君) 先ほど先生御指摘の判決理由要旨は、すべてが間違いであったというふうに申しておるわけではございません。ただ、十分正確を期し得なかったということを申し上げた次第でございます。
○寺田熊雄君 大変納得しがたいあれだけれども、次にまた移ることにして、もう一つこの事件で恐らく何人も納得し得ないと思うのは、この被告人たちが大変な拷問を受けているということなんです。 これは「世界」という雑誌の今月号に、金大中氏の最終陳述が全文が載っているんです。これはもう当時、たしかテレビ朝日の特派員がこのことも報道しておるわけで、こういう最終陳述が九月たしか十三日ですね、これがなされておるので、あなた方はこの最終陳述も入手していらっしゃらないんだろうか。
○政府委員(木内昭胤君) 最終陳述も、わが大使館員が傍聴いたしておることは事実でございます。
○寺田熊雄君 傍聴しておられたんでしょうが、その内容なり全文は入手していらっしゃるんですか。
○政府委員(木内昭胤君) 訴訟記録は入手いたしておりません。
○寺田熊雄君 じゃあ、その内容の報告はありましたか。
○政府委員(木内昭胤君) 報告はございました。
○寺田熊雄君 そういたしますと、その最終陳述の中に、「私は合同捜査本部において、六〇日間、地下室に入れられていた。太陽も空も見あげることができずに、調査官と二四時間生活をともにしながら調査を受けた。このような状況では金相賢同志もいったように、共産主義者でなくても共産主義につくりあげられるであろう。隣りの部屋からは拷問される悲鳴の声が聞え、裸にされたりして、恐怖の中で調査を受けた。」というものがあります。 それから、この最終陳述を読みますと、金大中氏は国家保安法の罪についても内乱罪についても、つまりこの事件で最も極刑を受けるであろう公訴事実については、全面的な否認をしておるわけですね。ところが判決は、あなた方の要旨によっても、また大使館員のあなた方に報告してきたメモによりましても、この被告たちの法廷における陳述とか、また被疑者の尋問調書によって犯罪事実はその証明が十分であると、こういうことになっている。 全面的に否認しておるもの、それの拷問によって自白をさせられざるを得ないというような供述が法廷でなされておるにもかかわらず、全面否認の供述によって犯罪の証拠は十分だとか、拷問によってでき上がったその被疑者の尋問調書を証拠にとって、そうして犯罪事実の証明が十分だというような判決になっているわけですね。こういうことに対して、あなた方は少しもこの判決に対して疑いを差しはさむということがないんでしょうか。 韓国の刑事訴訟法を読んでみましても、これはやはり強制とか拷問によって得られた自白なんというものは証拠とすることができないと、これは明文があります。韓国の刑事訴訟法といえども、そういうような形式的なやはり人権を守るための規定は置いているんですね。これは韓国の刑事訴訟法の第三百九条。「被告人の自由が拷問、暴行、脅迫、身体拘束の不当な長期化又は欺罔その他の方法で任意に陳述したものでないと疑うべき理由があるときにはこれを有罪の証拠とすることができない。」これはもう当然のことなんですね。 この当然の原則で、韓国もこういう原則はやはり法律の上にうたっている。それにもかかわらず、判決を見ると全くそういう法律に違反したような判決を堂々とやっている。こういうことに関しては、あなた方は少しもこれに対して気にとめていらっしゃらないのか。この点いかがでしょう。
○政府委員(木内昭胤君) 気にとめているかどうかは別にいたしまして、この問題、すなわち拷問があったかどうかその他の問題について、先ほど来申し上げておりますとおり、私の立場からはコメント申し上げることはできないと、かように考えております。
○寺田熊雄君 しかし、韓国も、あなた御承知のように国際連合に入っているんですからね。人権に関する国際宣言、俗に言う人権宣言ですね、あの規定に違反するようなことはなし得ないということは、あなたもお認めになるでしょう。少なくともそういう人権宣言を真っ向から踏みにじるような、そうして残忍な拷問をして政治犯を葬るというようなそういう国をあなた方は友好国とするということについて、何らの疑いも持ちませんか。この点いかがです。
○政府委員(木内昭胤君) 韓国は依然国連には加盟いたしておりませんけれども、私どもとしては韓国政府がそれにもかかわらず国連憲章の精神というものに即していることを期待するものでございます。
○寺田熊雄君 いまの私の、韓国が国際連合に属しているという点は私の誤りだった、これは訂正します。 いずれにせよ、あなた方が、こういう人権を無視した裁判をしておる国家を友好国としてそして援助をすると、種々の経済援助をやっておるようですね。こういうことについては、何らの矛盾というものをお感じになりませんか。
○政府委員(木内昭胤君) 私どもとしても当然のことながら、人権の問題というものには関心を抱いておるつもりでございます。ただし、それぞれの国における出来事につきましては、国際人権規約におきましても、それぞれの国が第一義的に対処して、国連の人権委員会と相談してやっていくということになっておるわけでございます。したがいまして、政府としましては関心を抱きつつも、特定の第三国の国内においてどういうふうに人権が侵害されておるかどうか、したがって、その結果どういうふうに対応すべきであるかどうかということは言えないのじゃないかと、かように考えております。
○寺田熊雄君 そういうことはないと思いますよ。いまあなたがおっしゃったように、人権宣言だけじゃなくて、最近また国際条約をわが国も批准しましたね、人権規約を。そういう精神から言っても、もう非常な人権を無視しているそういう国に対して、これを友好国と呼び、これに援助を与えるということは、結果的にはそういう人権無視の政治体制というものをサポートすることになる、そういう矛盾は外務省としてはお感じにならないのかということなんですよ。どうでしょうか。
○政府委員(木内昭胤君) 私どもが韓国に与えております経済協力というものは、たとえば大学における教育施設の拡充であるとか、医療の手が十分及んでいない地域における病院の設備の改善に対する協力であるとか、あるいは仮にこの夏、異常な冷害があって庶民の口に十分お米が行かない場合のお米の援助とか、そういったインフラあるいは民生に直結したものを志向しておるつもりでございます。
○寺田熊雄君 あなたは人道的な面の、あるいは民生を守るための援助だから差し支えないと、こういうふうな弁明なんでしょうが、いまの人権無視の措置というものは、私がいま申し上げたような金大中さんだけではないようです。 たとえば、有名な白基チョンという評論家がいますね。これもやはり「統一主体国民会議による大統領選出阻止国民大会」というものを主導して逮捕されて、拷問で手足を折られてかたわになって、それに頭をやられて意識不明になり、一カ月以上も病院に入院して、いまは家庭療養中であるが、まだ見舞客の顔も見分けられない状態である。正常な人間に戻ることはないであろうと言われるということが報道せられています。それから、金大中氏と同じ裁判の相被告人の李海東という牧師はこの法廷で、やはり捜査官に何日間も殴られた、拷問ではれ上がり発熱した体を冷やすために生肉をはだにつけられたと法廷で陳述したということが、一斉にわが国のマスコミで報道されています。 こういうような残虐な拷問をして、しかもすべて被告人たちの法廷での供述で明らかだと、その被疑者の尋問調書も証拠にとると、そんなむちゃな裁判ということが、日本の国はもちろんですが、およそ民主主義の国家の裁判ではとうてい考えられないような蛮行です。これはもう裁判という名に値しません。それでもやっぱりあなたは、第三国の裁判だから仕方がないとおっしゃるんでしょうか。
○政府委員(木内昭胤君) 民間の立場におかれまして、たとえば国際アムネスティーの方々その他の関係者の方々がいろいろ国際的にこの問題について関心を持っておられるということは、それはそれで非常に理由があると思います。しかしながら政府としましては、先ほどの国際人権規約でも申し上げましたとおり、まず自分の国の問題というものを第一義的に考えて対処して、それを国際連合の人権委員会と十分納得のいくような円満な処理の仕方を図っていくという仕組みにあることともあわせまして、第三国のことにつきまして他国の政府からこれをとやかく言うことはやはり困難ではないかと、かように考える次第でございます。
○寺田熊雄君 それから、韓国ではかなりの数の政治家が逮捕され、そして政界から追放されているようですね。たとえば、この金大中事件の政治決着をした当時の金鍾泌元総理を初めとして、韓国の政治家はずいぶんたくさんつかまって政界から追放されているようですが、これは外務省の方でも大体その概要をつかんでおられますか。
○政府委員(木内昭胤君) 概要は把握いたしております。
○寺田熊雄君 あなた方のつかんでおられるところでは、大体国会議員が何人ぐらい逮捕されたり、あるいは追放されたりしていますか。
○政府委員(木内昭胤君) 正確な数字はただいま手元にございませんが、先ほど御指摘のとおりの金鍾泌元総理あるいは李秉禧元無任所国務大臣等々、それから新民党の国会議員数名も連行、逮捕されたということでございます。
○寺田熊雄君 これは国会議員が軍事政権によって逮捕されてその地位を失わしめられるということは、大変なことですね。余り例のないことです。いずれもどういう理由で逮捕され、どういう理由で追放されたのか、大体駐韓大使館の方から報告がありましたか。
○政府委員(木内昭胤君) 新聞紙上でもいろいろ報道されておりますとおり、不正蓄財というようなことを理由に逮捕されたり、あるいは政治の一新ということから一時尋問を受けた例等々あると承知いたしております。
○寺田熊雄君 ところが、これはあなた方からいただいた資料なんですが、あなた方からいただいた韓国の戒厳法ですね、この第十七条を読んで見ますと、国会議員の不逮捕特権というのがありますね、「戒厳宣布中国会議員は現行犯を除外するほか、逮捕または勾禁されない。」という規定があるんです。これは戒厳法の十七条です。どうして全斗煥は、この戒厳を施行して戒厳法に違反するようなことができるんですか。いかがですか。
○政府委員(木内昭胤君) その点は調べまして、後日お答え申し上げた方がよろしいかと思います。
○寺田熊雄君 それでは、それは早急にお調べになって報告していただきます。文書ですね。 そのほか、日本で言えば最高裁判所、あちらの大法院の五人の裁判官が金大中裁判の直前に辞任したという報道もあります。これはもう大変なことで、たとえば日本の最高裁判所で何らかの政治犯の裁判がある場合に、最高裁判所の裁判官が五人も一斉に定年でないのに退陣するということだったら、日本の場合はこれは大騒ぎになるでしょう。ところが、そういう不思議なことが平然と行われているわけですね。たくさんのジャーナリストが追放されたとか逮捕されたとかいうようなことは、これは数え上げれば枚挙にいとまがないわけですね。 一体あなた方は、この韓国の国情について、そういう点について何らかの疑義を持つことがおありになるのか、あるいはああそうかと単純に聞き流していらっしゃるのか。それともどういう理由で大法院の裁判官が一挙に五人も辞任したのか、あるいはあれだけ戒厳令の施行を糾弾し全斗煥の退陣を求めていた金泳三という新民党の党首が、突然政界から引退を余儀なくされたというそんな不思議な現象について、やっぱり調査していらっしゃるんでしょうか。それとも、そういう枚挙にいとまのない問題についても全く無関心でいらっしゃるのか。その点いかがでしょう。
○政府委員(木内昭胤君) 朝鮮半島の安全、それから韓国の動向につきましては、私ども重大な関心を持ってフォローいたしております。また、私どものできる能力の範囲内で、できるだけその動向につきましての情報入手に努めております。
○寺田熊雄君 私はそれで結構だと思います。そうしてほしいと思います。ですからあなた、先ほど国会議員の逮捕の事実については報告をしてくださるということですから、大法院の判事五人の退陣の理由、それから金泳三がにわかに政界の引退を声明した事情、そのことについても韓国の大使館に命じて調査をなさるか、あるいはもう調査がすでになされておるならば、あなたがフォローしているとおっしゃるから、それをやはりわれわれに説明していただきたいと思うんですが、いかがでしょう。
○政府委員(木内昭胤君) 差し支えない範囲で御連絡さしていただきます。
○寺田熊雄君 それじゃ局長、御苦労さまでした。結構です。 それでは、次に法務大臣にお尋ねをしたいと思います。 法務大臣、あなたの御性格は私もよく昔から承知しております。あなたが非常にまじめな御性格だということも、よく知っておるんです。また、そのゆえに、事柄をごまかしたりせずに率直にあなたが信念を吐露されるものだから、それがまた議論の種となるという、そういうこれについての理解を私は持っています。私も裁判官をいたしましたけれども、良心的な裁判官ほど問題点について判決でいろいろと判断を示します。その判断を示すと、それがまた控訴の理由になったり上告の理由になったりするという、そういう現象がありますね。ちょうどそれと同じだと思います。 ただ、そうは言うものの、あなたのお考えがちょっとやはり旧憲法といいますか、戦前の思想というか、それに対して余り何か執着を持っていらっしゃるような、そういう印象をどうしても与えざるを得ないわけですね。その点が、新憲法の精神なり民主主義のいまの法制にやっぱりマッチしないんですよ。その点が問題だ。 あなたが衆議院の法務委員会で最初に稲葉委員に対して、憲法が占領軍の指示に基づいて制定されたということをおっしゃって、その例証として、国会はなるほどあった、しかし委員会での提案も採決も占領軍の承認がなければできなかったんだと、自主的な活動ができなかったというふうな説明をしておられますね。これは覚えていらっしゃいますか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 占領軍の指示に基づいて制定されたものと理解しておりますと申し上げたことと、当時の国会について言及いたしましたことは別の事柄でございまして、そのとおり申し上げております。
○寺田熊雄君 いま、当時の速記録を拝見しますと、やはりそれがずっと続いた御説明になっております。これは五十五年八月二十七日の会議録ですが、「いまの憲法は占領軍の指示に基づいて制定されたものだ、私はこう心得ております。そしてまた当時は、国会はございましたけれども、委員会に提案をいたします場合にも、委員会で採決をいたします場合にも、事前に占領軍の承認が得られなければできなかったのであります。自主的な活動はできなかったのであります。」と、こうずっと続けて言っておられますから、だからどうしてもやはり自主的な憲法ではないと。その証拠には、国会に自主性が得られなかったのだというふうに理解せざるを得ないわけですね、この会議録で見る限りは。結局、大臣のおっしゃるのは、端的に申しますと、やはりこれは押しつけられた、強制されたということになるんでしょうか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 私は、押しつけられたとか、強制されたとかいうような意味合いにとりたくございません。
○寺田熊雄君 それじゃ、占領軍の指示に基づいてできたものだという意味はどういうことでしょうか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 憲法調査会等で、もうすでに実態が明るみに出ておりますので、それを素直に考えれば、私はそういう表現になって何ら不穏当ではないじゃないかと、こう思います。ただ、いまの日本の国会、何かそういうことに触れますと、すぐそういう言葉の端々で騒ぎが広がっていく、そういうこともありますので、もう皆さんよく承知のことでございますので、あえて私がここで改めて申し上げることは避けておいた方がいいのじゃないかなあと、こう思っているわけでございます。
○寺田熊雄君 端的にお尋ねをするんですけれども、あなたはそういう指示に基づいた憲法ですね、この憲法はなるほどもっともだ、この指示はもっともだと当時思われたんでしょうか。やっぱり指示された内容というものは気に入らないというふうに思われたんでしょうか。その点いかがでしょうか。
○国務大臣(奥野誠亮君) そのときのお尋ねは、自主憲法ということがある、日本の場合に当てはめてそれをどう考えるか、こういう質問だったわけでございます。したがいまして、素直に私の受け取っていることを申し上げたわけでございます。日本国憲法、りっぱな理念が盛られているわけでございますから、同時にまた、この憲法が今日の明るい充実した日本をつくり上げてまいりますに当たりまして大きな力になっていると評価しているものでもございます。 当初お話しになりましたように、もとの帝国憲法に戻すとか、そんなことは夢にも考えておりません。しかし、この日本国憲法をさらによりよいものにしていきたいという希望は常に持ち続けております。
○寺田熊雄君 私どもの考え方では、大臣、たとえ占領軍の指示に基づいたものでありましても、その内容が私どもにとって望ましいものであって、われわれがああもっともなことだと了承してそれを取り入れたのなら、少しも差し支えないと思うんですよ。ただ、その指示に基づいたというその指示の内容が気に入らなくて、もういやだけれどもしょうがない、受け取ったんだということになりますと、それはやっぱり不満が生じますね。ですから、大臣の場合はそのどちらであったのかということをお尋ねしたいわけなんですが。
○国務大臣(奥野誠亮君) 無条件降伏をいたしまして、二十六年までは占領軍のもとにあったわけでございますけれども、その間にいろんな改革が行われてきて、それがまた今日の日本の発展の力になっている、私はこういうふうに考えているものでございます。 もちろん、人によりましては、日本国憲法制定の経緯から見まして、だから同じものであっても自分たちで議論し合いながらもう一遍つくり直してみたいと、こういう考え方があってもそれは理解できるじゃないかという意味合いのことも、そのときに申し上げていると思います。 私は、内容をとやかく申し上げているわけじゃございませんで、自主憲法というものがある、日本に当てはめてどう考えるかと、こういうお話でごさいましたから、自主憲法——私は国民が論議し合って、その中からもう一遍つくり直してみようじゃないかという考え方が生まれてくるならば、それは好ましいという考え方を持っている人間でありますということを申し上げまして、その理由を三点挙げたと思います。先ほど二点お話しになりましたけれども、三点挙げさしていただいたわけでございます。
○寺田熊雄君 そうすると、あなたの当時のお気持ちとしては、占領軍の指示の内容というものは、やはり当時は、望ましいとするか、やむを得ないとするかはともかくとして、一応了承する、そういうお気持ちであられたわけですね。
○国務大臣(奥野誠亮君) 無条件降伏下の中にあるわけでございますから、占領軍の意思に基づいて日本の管理政策が進められていく、これはやむを得ないことじゃないかと、こう思います。しかし、その中身につきまして評価すべきものがたくさんあったと、こう思っております。
○寺田熊雄君 やっぱり中身については不満があったんだと言わざるを得ないと思うのですがね。私どもはあの当時、大臣、ともかく軍が解体されたというだけで大変救われた感じがしたわけですよ。当時、ことに陸軍ですが、事ごとに政治にくちばしを入れましたね。そして、国会でもサーベルをがちゃがちゃいわせてきて、委員会での質問でも佐藤賢了などは、質問した委員に対して「黙れ」と一喝をしたというようなことがありましたね。それから、斎藤隆夫が縮軍演説をしたら、もう斎藤隆夫が大変な圧迫を受けたということがありましたね。 そういうように、軍がいずれの分野にも入ってくる。私は裁判官でしたが、裁判の分野でも、たとえば出征軍人の家の場合は、どんなに債務があっても強制執行なんというのは憲兵隊が介入してなかなかできないんですよ。 それから、河合栄治郎の裁判なんというのは、軍がやらせたんだということを軍が公然と言いました。それに対して裁判官が反発して、逆に無罪の判決をしたというようなこともありました。しかし、何にしてもそれはよほど勇気のある人ができることで、大部分は軍の暴力の前に屈服してしまったわけです。そうしたら、とうとうあの戦争になってしまったでしょう。だから、占領軍によって軍が解体させられたということだけで、私どもはどのくらい救われた感じを持ったかしれません。 もう一つは、特高警察が廃止されたということです。治安維持法が廃止されたということです。これは占領中でさえも、まだ終戦直後のときは、大臣の先輩である山崎巖さんという内務大臣をした人がいますね、あの人なんかは、治安維持法の被告を、政治犯を釈放するなんというのはとんでもないことだと言って、これを強引に否定しておりました。また、法務大臣の岩田宙造氏なんかは、治安維持法は廃止できぬと言ってがんばっていました。 そういうときに、占領軍の指示があって特高警察が解体され、政治犯が釈放され、治安維持法が廃止になったわけで、初めてあなたの非常に尊重される表現の自由なんというものがしっかりとした基盤を持ってきたわけです。憲法上もね。ですから、私どもは大変救われたと。ことにそういう基本的人権の尊重であるとか民主主義であるとか平和主義であるとかいうものは、これは憲法の三大原則ですが、これはもう大変な国民にとっての福音なんで、それをあなたはやはり評価なさらぬというとちょっと問題なんですが、これはどうでしょうか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 寺田さんと同じような気持ちがあって私が八月の末に申し上げた後の言動につながっていると、こう思うのです。そういう意味で聞いていただきたいのですけれども、私が自主憲法についてお尋ねをいただいたからお答えをした。そしたら、その日に、その方の属する政党の幹部の方か法務大臣罷免という声を上げられたのです。このときに私は、政治家として私のなすべき責任が二つあると思いました。 一つは、国会は議論に反対であればやっぱり論議をもってこたえるべきである。論議の積み重ね、国会こそ論議を深めていかなきゃならない、何か言うと物が言えなくなるような国会にしてはならない、空疎なものにしてはならない、これは私の一つの使命感みたいなものでございます。 もう一つは、私が憲法の論議をしたから罷免要求という言葉になったのじゃないかなあ、特に九条に触れたことが罷免要求という言葉につながったのじゃないかなあという、私なりに判断をいたしました。憲法というのは国の基本に係る法規ではないか。また、九条も非常に重要な規定。国会論議の中にタブーをつくってはならない、国の運命を背負っていく国会において国の基本に係る憲法というような法規についての論議ができない、タブーが出てくる、そういう国会にしては日本の将来が心配だと、こう考えたわけでございまして、そのときにあなたがおっしゃった戦前の私は帝国議会を思い出したのです。帝国議会で軍部を批判しますと、その人たちはみんな排除されましたよ。私は、日本が戦争に突っ走っていった、やっぱり帝国議会にも、あの当時のあのあり方、やっぱり問題があったなあという感じをいまだに私は思い続けているのです。そういう二つのことが、私が引き続いてこの問題についていろいろと議論をいたしました基礎でございます。 私は、憲法の内容をどう改正しろというようなことはずっと言ってきませんでした。もちろん、九条に絡みまして、こういう問題がありますよという問題提起をしたことはあるかもしれません。私は、決して改正主張をずっと続けてきた、そんなことは一つもないと思います。よくひとつ私の過去を調べてみてください。同時に私は、憲法の持っております平和主義、民主主義、基本的人権の尊重、みんなりっぱな考え方だと思います。これを深めていかなきゃならないと思いますけれども、これを後退させてはならないと思います。 ですから、寺田さんがおっしゃったから、本当に私はそういう気持ちを持ち続けているのです。しばしばこんな話を皆さん方とし続けているのです。私は、国会というところは日本の運命を背負っている大事なところですから、気楽に物の言えるようにしたいと思うのです。何か言いますと騒ぎが——一言、一言で中断するのです。私は、中断するような国会、これでいいのだろうかなあといまも思い続けています。本当に自由濶達に思うように言い合うように、間違ったら論議でそれにこたえたらいいのじゃないか、そういう国会にしてもらいたいものだなあと心から私も念願していますし、憲法の持っていますりっぱな理念、これはさらに一層充実していかなきゃならない、そういう熱意においても欠けるものじゃございません。
○寺田熊雄君 いや、私も大臣のおっしゃるように、憲法に関する論議を深めていくということはこれは結構だと思います。そうなきゃならぬと思うんですね。ただ、過去において、大臣の中でたとえば、こんな憲法を持っているのはめかけのようなものだとか、そういうふうな憲法をべっ視するといいますか、尊重の念に欠ける発言があると、やっぱりそれはもう九十九条の憲法尊重、遵守義務といいますか、これに反してくるでしょう。ですから罷免要求が出るわけで、そうでなければ、論議を深めてもそれは私は差し支えないと思うんですよ。ただ大臣が、憲法が占領軍の指示に基づいて制定されたものだ、しかし、その内容も不満があるんだというそういう前提に立ちますと、やっぱり憲法を心から尊重するというそういう気持ちは起きないんじゃないだろうか。したがって、それが大臣に対するいろんな攻撃の材料になってくると、こう思うんですよね。 だから大臣が、その内容について不満もないし、それから指示を受けたということはもう当時としては全くやむを得なかったんだという肯定的な立場に立たれれば、何にも差し支えないわけですよ。そこが問題だと思うんですよ。いかがでしょうか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 私なりに憲法の中身、こういうところは疑義が出ないようにしたいなとか、それはいろいろの自分なりの考えを持っております。そのことと、私は尊重、擁護の義務というものとは相入れないものではない、両立するものだと思っています。私は、憲法論、憲法解釈としては、国務大臣が憲法を尊重、擁護する義務がある、同時に自由濶達に改憲論をどんどんやっていく、決して矛盾しない、こう思っているわけでございまして、ただ、内閣がどういう政治路線を選択するか、これもまた内閣の選択の仕方だと思うのでして、その内閣の一員である閣僚は、その内閣が選択した政治路線、これを忠実に守っていかなきゃならない。鈴木内閣は憲法改正を全く考えないと言っているわけでありますから、私が改憲論議を深めていくということは、鈴木内閣の政治路線に忠実でないということになりますから、それは今後避けていかなければならない。あとう限り疑問を持たれるような言葉は慎んでいこうと、こう考えているわけでございます。
○寺田熊雄君 大臣はいま、この憲法の民主主義、平和主義、基本的人権の尊重という三大原理、これはまた非常に評価しておる、それでまた大賛成だとおっしゃったので、だからそれはいいんです。ただ、第九条についてだけ衆議院でもこれを取り上げていらっしゃる。平和主義というものを尊重する、しかし第九条がやはり議論のないようにしたいと、こうおっしゃる。ところが、第九条の平和主義というのは、御承知のように戦争を放棄するということでしょう。それから交戦権を否定するということと戦力を持たないということ、この三つでしょう。そうすると大臣は、平和主義を尊重すると、これはもう結構だということをおっしゃって、しかしこれが論議があるからこれについて検討するということになると、この三つの平和主義のうちの戦争放棄、それから交戦権の否定、それから戦力の不保持と、この三つの原則をやはり動かしたいというお気持ちがあるんでしょうか。それとも、これはやっぱり置いといて、規定を何らかの体裁を改めるというのでしょうか。その点いかがでしょうか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 憲法九条の改正を言うと、すぐ軍備拡張主義と、こうとられてみたり、日本国憲法の改正、自由憲法を言うと、すぐ帝国憲法に戻るというふうにとられてみたりするのは、私は一方的であり過ぎるなと、それらの人たちの考え方にもいろんな幅広い考え方があるのじゃないかなと、こう私は思っているわけでございます。 私は、平和主義を徹底さしていきたい、こうまで考えているわけでございますけれども、寺田さん御承知のとおりに、九条をめぐって、自衛隊を違憲だと、こう言っておられる政党と、自衛隊を合憲だと言っている政党とあるわけでしょう。私たちは、九条一項で放棄しているのは侵略戦争だけだと、こう考えている。ところが、違憲だとおっしゃっている方々は、いや、自衛の戦争も放棄していると、こう考えておられるのでしょう。 「武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」というような言葉がある。私たちはこれは侵略戦争だと考えているのだ、不戦条約にも使われている言葉だと、こう考えているわけでございますけれども、違憲論者はそうとっておられない。私たちは二項の冒頭に「前項の目的を達するため、」と書いてあるわけだから、前項の目的は侵略戦争の目的を達するためなのだから戦力を保持しない、しかし自衛のための戦力なら保持できると、こう解釈しているわけでありますし、違憲論者はそうはお考えにならないわけですから、やっぱり解釈の違いは直せるものなら直したい。私は、これは無理からぬ希望であると受けとめてもらえるのじゃないかなと、こう考えておるわけでございます。
○寺田熊雄君 そうすると、大臣のおっしゃるところを要約すると、結局、自衛隊違憲論というものの生ずる余地のないようにしたいという一語に尽きますね。
○国務大臣(奥野誠亮君) 大体そういうことです。
○寺田熊雄君 ただ、大臣のおっしゃることは、もう憲法国会で、吉田総理と共産党の野坂議員との間で論戦があったところなんですよね、これは大臣も御存じでしょうが。つまり大臣のおっしゃるように、野坂議員は戦争にも正しい戦争と不正の戦争がある、侵略戦争という不正な戦争がある、だからこの正当防衛権を認むべきだということを主張したのに対して、吉田総理が、いや、そうじゃないんだ、しばしばそういう主張のもとに戦争が起きたんで、むしろそういうことを言うのは有害無益であるという趣旨の答弁をしておるわけですよ。だから、大臣がそうおっしゃるのは、それは憲法論としては成り立ちます。むしろそういう人が多いかもしれません。ただ、またもう一遍憲法制定のもとに帰っちゃうわけですよね。吉田元総理のおっしゃったことと正反対の議論になってくるわけですよ。そういうことでしょう。
○国務大臣(奥野誠亮君) 吉田総理も、私は政策的に考え物を言うておられたように思えます。占領時代に自衛隊を持てば、占領軍に使われる自衛隊になってしまうわけであります。私はそういう愚なことはすべきではない。あの条章を盾にわれわれは戦力は持てないのだと、私だって当然主張しただろうと、こう思います。同時に、日本の憲法が生まれたときの国際社会、その中における日本の地位、それからいまの国際社会の姿、その中における日本の地位、やっぱりいろいろ考えながら世界情勢、国内情勢、価値観、いろいろ考えが変わってくれば、それに合わせて日本の基本的な法規につきましても、妥当であるかどうか絶えず検討していかなければいけないのじゃないかなあと、こんな感じを持っているわけであります。 同時に、野党の皆さんが絶えず情報公開法をつくれと、こう迫られる。私自身大事なことだと思っているのです。客観的に事実を明確にしていかなければ、将来に対する正しい判断が生まれてこない。だから憲法についても私は、昭和二十年以後どういう経過をたどってきたか、同時にまた、国際社会なり国内社会なり、いろんな変化というものもあわせて考えながら、私は論議を深めていく必要があるのじゃないかなあと、こんな希望も持っておるわけでございます。
○寺田熊雄君 いま自衛隊の問題が出ましたので、私は大臣にお尋ねすると同時に要望したいんですが、大臣は国務大臣として閣議で、沖繩では自衛隊が認知を受けていないと、こんなことじゃ自衛隊を幾ら拡充してもだめだというふうな趣旨をおっしゃったと言うんです。それはそれなりに、大臣の国務大臣としての御発言として、私ども大臣の御意見として承っているわけなんですが、しかし、そのことをおっしゃれば、私はもっと大臣としておっしゃっていただかなければならないことがあると思うんですね。 それは何かと言いますと、沖繩においてはもう非常に県民の人権が侵害されているということですね。これは日弁連の方でも、かつて人権白書を出して、沖繩県民の人権がいかに侵害されているかということを発表したことがあります。人権侵害に対してまなじりを決して立ち上がって、それに対して措置をする、それを任務としていらっしゃる大臣というのは、行政庁の長としては法務大臣しかないんですよ。だから、法務省には御承知のように人権擁護局がある。だから、基本的人権の尊重ということを、あなたは人後に落ちないとおっしゃるから、それならば所管外の自衛隊の問題について義憤を発せられるよりも、沖繩の県民の人権がいかに侵害されているか、そういう問題についてむしろ私は閣議で発言をしていただきたかった。これはマスコミにずいぶん取り上げられております。 たとえば、ホテル経営の比嘉透さんという人が「海兵隊員にコーラびんを投げつけられたうえ、なぐられて右眼を失明。相手はジャクソンというベトナム一時帰還兵だった。」そのために「比嘉さんは、免許を失い、本島北部の農村にひっこんだ。左眼の視力も衰えていく、」こういう被害を受けても、いまだに補償を受けておらない。 それから、バス車掌の、これはA子さんとありますが、「米兵のトラックにはね飛ばされ、頭、あご、右足を骨折。いまでも入退院を繰り返し、精神障害が出ている。」これは四十四年の事故なんですよね。「娘のくちびるは額までめくれ、歯は全部折れていた。一週間後に意識を取り戻しましたが、入間がすっかり変わってしまって。米兵は酒を飲んでいたうえ、女をひざに抱いて運転していたそうです。補償はしてくれませんでした」という、これはお母さんのお言葉が新聞に紹介されております。 こういう例がたくさんあるわけですよ。これはようやく今年度から被害補償が出たというんですが、当時の収入によって補償料が出るというので、いずれもいまの経済事情に合わないんですね。たとえば、いまの娘さんなんというのは、恐らく百五十八万程度だろうということを言われております。 それから、基地内の畑を歩いていたおばあさんが飛んできた砲弾でおなかが直撃されて死んじゃった。これは「黙認耕作地」と呼ばれて「農耕パス券をもらって、毎日耕作に通っていた。」というんですから、かつてのジラード事件とは違うんです。これは。ちゃんと黙認パス券をもらっていたという。それが恐らく今度、これは事故は二十八年ですが、当時の貨幣価値で被害補償があるので、恐らく四十万程度の補償を現在において受けるだろうという。 こんな人権を侵害されている事実に対して、むしろ法務大臣としてはそんな人権侵害に対してこそやっぱり私は目を向けてほしいんです。発言してほしいんです。いかがでしょう。
○国務大臣(奥野誠亮君) 私が例を挙げた中に沖繩の問題がございました。それは憲法九条の解釈をめぐりまして有力な政党間に百八十度の違いがある、そこから特異な事例が起こっている、その事例として挙げたわけでございまして、別に非難の気持ちを込めて事例を挙げたわけじゃございません。憲法九条の解釈が有力な政党の間に百八十度も違いがあるのだ、その結果、こういう特異な例が出てきているのだと、こういう意味で申し上げたわけでございます。 沖繩につきましては、いま寺田さんは戦後の例をお挙げになりましたけれども、戦前におきましても、私は沖繩の方々に大変な御迷惑をかけたという気持ちを深く持っております。事実戦場になったわけでございますし、何十万の方々が犠牲になられたわけでございますし、戦後史の発掘を見てまいりますと、軍が、沖繩の方々が避難しておられるごうから追い出して、自分たちがかわって入って、追い出した人に大変な迷惑をかけたり、いろんなことが出ておるわけでございますから、沖繩の皆さん方が、軍というものについて、われわれとは違ったまた特別な感じを持っておられることもわかるような気がいたします。 ただ、それでいいのかということになりますと、自衛隊は戦前の軍とは違うのだし、また沖繩を守るためにも努力をしているのだから、ぜひ理解を深めてもらいたいという希望はございますけれども、戦争中、また戦後、沖繩の方々が苦労してこられた事情は私なりによく理解しているつもりでございます。
○寺田熊雄君 ですから、その救済のために大いに努力していただきたい、発言していただきたいということですがね。
○国務大臣(奥野誠亮君) 御趣旨に沿うように、私なりに勉強していきます。
○寺田熊雄君 じゃ、法務大臣はもうこれで終えますから。 最高裁の事務総長、もうすでにあちこちで質問を受けているようですけれども、安川判事の今回の件、これは奸智にたけているというか、その行った活動がいやらしいだけでなくて、選挙で町長選に立候補して弾劾裁判を免れたというその悪知恵に対しては、これは全国民をくやしがらせていますよ。これはちょうど鬼頭事件があってまだ三年ちょっとでしょう。相次いでこういうことがあっては困るんですが、どんなふうに責任を感じていらっしゃいますか。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 今回の事件、まことに申しわけない事件でございまして、何とも国民の皆さんにおわびの申しようのない事件だと考えております。 相当多数の裁判官が全国におりまして、私は、その全員がやはり日々の職務を熱心に遂行しておるというふうに期待もし、また確信も持っておったものでございますが、しかし、今回のような事件が起こってみますと、たとえ一人といえどもそういうようなことを起こす人があれば、これは裁判に対する国民の信頼に対してゆゆしき問題だと、深く日ごろの心構えに反省を加えておるわけでございます。 ただ、このような事件は、これは寺田委員も十分おわかりいただいておると思いますが、およそ裁判官たる者、裁判官を志す者には考えられないと申し上げていい事件でございます。自分が審理をいたしております途中の女性被告と情交関係を結ぶと、これを一つとってみましても、私どもには実はおよそ想像を絶することであるわけでございます。 なお、その後の行動、最高裁長官から訴追の請求をいたしました。もし、何らかの言うことがあるならば、堂々と訴追委員会なり弾劾裁判所なりで自分の言うべきことを言えばいいわけでございます。それを免れたということになりますと、実は、私どもとしてはこれに対して言うべき言葉を持っていないわけでございます。ただ、私は、第二、第三のこのような裁判官が出てくるとはおよそ考えることもできませんけれども 現にこのような裁判官が一人でも出ました以上、今後の裁判官全体の心構えをさらに引き締めて、あらゆる機会にお互いの自戒を深めていきたい、このように考えております。 このようなことが起こりましたということにつきましては、私自身といたしましても深く反省をし、それなりの責任感というものを強く感じておるわけでございます。
○寺田熊雄君 じゃ、事務総長はそれで結構ですから。 それから自治省の選挙部長、お見えになっていますか。——それじゃ、選挙課長。 安川判事が町長選に立候補してそして弾劾裁判を免れたということで、公選法第九十条を改めようという趣旨の質問がもうすでに衆議院であったようですね。これは公職選挙法の第九十条を改める方法と、それから裁判官弾劾法を改正してそういうことが二度と起きないように措置をするということと、法制的な手法としては二つありますね。何か衆議院でも宮澤さんなりそれぞれが答弁しておるようだけれども、これは人事院の任用局長の意見なんかを聞いてみても、九十条はこれはいじる必要はないように思うと。むしろほかの手法の方がいいんじゃないだろうかという議論もあるし、選挙部の方でも、これはむしろ裁判官弾劾法の改正の方が望ましいのじゃないかというような意見もあるようだし、あなた方としてはどっちを改めた方が望ましいと考えておられるのか。 というのは、現に私もいま弾劾裁判所におるが、裁判官弾劾法の改正作業をいまやっているので参考のために伺いたい。どうですか。
○説明員(岩田脩君) 裁判官弾劾法のことについて直接申し上げる立場にはないわけでございますけれども、公職選挙法の立場から申し上げますと、私どもの考え方では、やはり立候補の自由の確保という問題がございますし、被選挙権のある者の立候補の自由を最大限に保障しなければならぬ。第九十条というのは、それの裏になっている規定でもございます。 今回の事件というものが、いわば裁判官弾劾制度という特別の制度があったこと、それに伴って起こったごく例外的な事例であるというようなことなどから考えまして、私どもの立場からすると、いまの立候補自由等の関係がありまして、そういう基本原則に触れる部分についてはやっぱり慎重でなければならぬのではないかと自分たちの方では考えておりますが、ちょっと弾劾法の方については私ども意見を述べる立場にはございませんので、お許しをいただきとうございます。
○寺田熊雄君 この九十条というのは、過去においては、そういう選挙に立候補する場合には辞職してからでなければいけないという規定だったでしょう。ところが、そういう規定だと、任命権者が辞職願いを承認しないと効果が出ないものだから、辞職願いを承認せず放置して、そして被選挙権の行使を妨げたという事例があるから、あなたが言われるように、選挙権、被選挙権というものを大切にする趣旨から現在のような規定になった、そういうきさつがあるんでしょう。したがって、あなたのようにこの規定はいじりたくない、昔に戻りたくない、こういう趣旨だと伺ってよろしいな。
○説明員(岩田脩君) 御指摘のとおりでございまして、裁判官について申しますならば、かつては被選挙権を持たなかった時代があり、それからその次にはやめてから出てこい、その手続上の日数その他を考えて被選挙権の行使、立候補の機会を失うことを恐れる意味で、そういう意味も含めまして、立候補と同時に失職をするという規定にその後変わったという経緯がございます。
○寺田熊雄君 それじゃ結構でございます。 厚生省の方いらっしゃいますか。—— 富士見病院の問題で、医療費の不正請求もあったということなんだけれども、この医療費の不正請求が相当過去においてあるようですね。あなた方からいただいた資料によると、医師が監査を受けた事件というのは、昭和五十年に四十七件、五十一年が八十二件、五十二年が五十八件、五十三年が三十二件、五十四年が三十件となっている。そして、保険医の指定を取り消された数も五十年が十七、五十一年が十七、五十二年が十八、五十三年が十五、五十四年が十九というのは、これは間違いないですか。
○説明員(仲村英一君) おっしゃられた数字は、私どもが把握しておる数字と同じでございます。
○寺田熊雄君 これを見ますと、監査が五十年から五十四年までに二百四十九件ある。保険医の取り消しが八十六件ある。歯科医師の方も、これは先ほど細かいことは言わなかったが、同じ年間に監査が百六件、保険医の取り消しが六十三件ある。こういうことになっているが、そうすると、これは保険料のやっぱり水増しとか架空請求ということが大部分でしょう。
○説明員(仲村英一君) 保険の不正請求の中身のお尋ねだと思いますが、いわゆる架空請求でございますとか、いわゆるつけ増しと申しますか、水増しと申しますか、そういうものが主なものでございます。
○寺田熊雄君 そうすると、それは当然刑法上の詐欺罪になるのじゃないかと思うんだけれども、これはどうでしょう。
○説明員(仲村英一君) 私、法律は実は専門ではございませんのでつまびらかではない部分があろうかと思いますが、保険医療機関あるいは保険医の取り消しにつきましては、健康保険法に基づく条文によって行政処分をしておるということでございます。
○寺田熊雄君 それはわかりますけれども、ただ、当然、架空請求とか水増し請求ということになると、これは故意によってそういう不正な医療費を請求するのだから、これはもう当然詐欺罪になると思うけれども、これは刑事局長、どうでしょう。
○政府委員(前田宏君) いまお尋ねになりましたような架空あるいは水増しの請求の場合には、詐欺罪になる場合が十分考えられると思います。
○寺田熊雄君 これはいま刑事局長が言ったように詐欺罪になるんですよね、架空請求とか水増し請求と言うんだから。そうすると、これは刑事訴訟法の二百三十九条の二項で、公務員は犯罪があると認めたときは告発をしなきゃならぬという告発が義務づけられているんだけれども、そういう告発義務の履行というのは誠実になされておるのでしょうか。
○説明員(仲村英一君) 先ほど申し上げましたように、健康保険法に基づく行政処分を行っておりますが、過去の例におきましては、当初警察の方から捜査が入りまして、詐欺罪で告発されたというふうな事例もございまして、場合によりましては、行政庁が告発をしたという例もあるわけでございます。
○寺田熊雄君 場合によってはそういう場合もあると言うんだけれども、主管の課長としてやはり告発しなければならぬというこれは義務的な規定だから。もっとも、たとえば詐欺に当たるものが、十万円程度であるとか二十万円程度であるとかいうような軽微なことまで一々告発せいということを私は言うわけじゃありません。だけれども、これはこの間、歯科医師なんか五億円も架空請求しておったなんというのがあるね、これは告発をしたようだけれども。で、この間の発表によると、こういう請求で返還を命じたのが何か十億円もあるというんだから、もうちょっとこの刑事訴訟法の規定の遵守というか、これを厳格にした方がいいんじゃないかな。いかがです。
○説明員(仲村英一君) 保険医療機関に関しましての指導あるいは監査の状況につきましては、もっと厳正にやれという御意見も非常に多うございますので、私どもその重要性にかんがみて、今後さらにその強化を図ってまいりたいと考えておりますが、不正に関しまして、悪質なもの等については、今後告発していくという方向でさらに検討してまいりたいと考えております。
○寺田熊雄君 そうしてください。 それから、今度は医務局の医務課ですか医事課ですか、これはいままでに医療の取り消しが三件だということを聞いておるけれども、医師法が施行されて三件というんだけれども、富士見病院のようなこともあるし、それからいま保険局の方の報告を見ると、ずいぶん保険医の取り消しなんというのが多いでしょう。もうちょっと保険局とも連絡をとって、こういう詐欺的な行為で医療費をよけいに取るというような品位のないお医者さんというか、犯罪行為をあえてするようなお医者さんは、もうちょっと厳しい措置をとった方がいいんじゃないでしょうか。いかがですか。
○説明員(斎藤治美君) お答え申し上げます。 先生御指摘のように、医師が罰金以上の刑に処せられた場合あるいは医事に関し犯罪または不正の行為があった場合には、医師法に基づきまして厚生大臣が免許の取り消し、または期間を定めた医業の停止という処分を行うことになっております。 医師がただいま申し上げましたような行為を行った場合に、その処分の対象としてどの範囲までをとるか、それから処分の内容としてどういうものを定めるか、これはできるだけ公正なものでなければならない。こういう考え方に立ちまして、医師法では、厚生大臣がこのような処分を行うに当たっては「あらかじめ、医道審議会の意見を聴かなければならない。」こういうふうに定めております。この規定に従いまして、平均年に一回、医道審議会をお開き願いまして、医道審議会の委員——この委員は医学、倫理学あるいはその他の高度の識見を有する方々でございますが、この審議会の結論をいただきまして、それに従って私ども処分をしているわけでございます。 保険医の取り消しを受けるようなケースにつきましては、すでにそちらで行政処分を受けているという考え方に立ちまして、従来、重ねて医師法に基づく行政処分は行わないというのが医道審議会の考え方でございます。
○寺田熊雄君 それはおかしいんじゃないの。そういう品位のない行為をした者に対してはもう保険医の取り消しで十分だと、それ以上の措置は必要ないと決めてかかるのは、ちょっと医師法の、品位を失墜した者に対する処分というものをないがしろにしていることになりはしませんか。
○説明員(斎藤治美君) 保険医の取り消し処分、その方が非常に大きな経済的な打撃を医師に与えるというような考え方を医道審議会ではとっておられるのではないだろうかと、こういうふうに考えます。
○寺田熊雄君 いまのあれでは大変不満なんだけれども、きょうはほかにまだ質問することがあるから、不満だけれどもきょうはこの程度にして、また改めてお尋ねすることにします。
○委員長(鈴木一弘君) 関連質疑を許します。大石君。
○大石武一君 富士見病院について、ちょっと関連の質問をしたいと思います。あなたが担当かどうかわかりませんが、ちょっとお聞きしたいと思います。 いま富士見病院、あすこに正式の医者は何人おりますか。おわかりですか。
○説明員(斎藤治美君) 直接私の課の所管問題とやや離れる面もございますが、私が存じておる限りでお答え申し上げますと、富士見病院には五人の医師が最近までおりました。現在もおります。
○大石武一君 実は、この富士見病院の問題は、大変な私は問題だと思います。いろんな面から見て大変なことだと思いますので、これは徹底的に真相を究明して、正しい判断、処罰をしなきゃならぬと私は思うんです。 いろんな点からこれは問題がありますが、私は一番この中で関心を持っているというか重大だと思いますのは、五人のそこに勤めておる医師の物の考え方及び行動だと思います。まあ医師の資格のない理事長とか、あるいは何か検査技師がちょっとまねをしたとか診断をしたとかいうことも、医師法違反か何かでこれはけしからぬことであります。あるいは保険の詐欺をしたとか、非常にけしからぬことなんですが、医師として、何よりも人の生命を尊重しなければならないという立場の者が、いま新聞とかその他に伝えられておるような、手術をしてはならない手術をしたり、あるいは取ってはならない肉体の一部を切り取っているというようないろいろなことが報道されておりますが、これが事実だとすれば、これは実に重大な問題だと思うんです。 そういうことで、そのような事実が果たして本当にあるのかどうか、そういうことについていま厚生省が中心となって鋭意その調査を進めておられるだろうと思いますが、何かそういうことについてはっきりしたいままでの方針なり行動というものがあったら、お聞かせ願いたいと思います。
○説明員(斎藤治美君) 先生御指摘のような重大な問題を含んでおりまして、私どもも非常に大きな関心を持っております。そして現在、埼玉県警察本部が、いま御指摘のあったような問題も含めて捜査をされていると私ども理解しておりますが、私ども行政の立場からも事実関係を徹底的に究明したい、こういう姿勢で臨んでおりまして、担当の埼玉県衛生部と連絡を取りながら、行政サイドからも極力事実関係を明らかにするように努めております。
○大石武一君 どうかひとつ、厳密な調査なり、実態をはっきりと調べていただきたいと思います。いずれ、それがわかりましたら後でまたお聞きしたいと思いますが、ひとつ警察だけに任せないで、それは医療行為というものはやっぱり医師でなきゃわからない面もありますから、十分に厚生省がそれに立ち入って、そして責任を持ってひとつ努力してもらいたいと思います。 以上で終わります。
○寺田熊雄君 警察庁の方、来ておりますか。—— 九月二十二日午前八時四十五分、品川区上大崎四の三の十四の路上で、動力車労働組合の教宣部長の小谷昌幸君が襲撃されて、鉄パイプで手や足に全治六カ月を要する重傷を負わされたと。その上に、四万五千円在中の紙袋を奪われたという事件がありましたが、これは白昼公然と、しかも衆人環視の場所でこういう事件を起こしたということで、私どもはこれは容易ならざることだと思っておる。これは警察庁としてはいまどんなふうにこの事件をとらえ捜査しておられるか、これをまずお伺いしたいと思います。
○説明員(大波多三宜君) お尋ねの事件は、九月の二十二日、御承知のとおり、都内の品川区の上大崎のフラワーマンションの前の路上におきまして、四、五人の者が、通勤途上であります小谷昌幸氏に対しまして鉄パイプ様なもので殴打をいたしまして、その結果、左右前腕部骨折、左下腿部骨折等の、いまのところ約三カ月の重傷を負うという事件が発生いたしたわけでございます。 警察といたしましては、直ちに一一〇番通報により認知をいたしましたわけですが、緊急配備を実施するとともに、検問、検索等の所要の初動措置を講じたところでございます。しかし、その時点におきまして犯人の発見、検挙には至っておらないのであります。 そこで、同日、所轄の大崎警察署に、同署長を長といたします捜査本部を直ちに設置をいたしまして、現在関係個所の捜索、証拠品の押収あるいは聞き込み、遺留品等の捜索等につきまして鋭意捜査を進めているところでございます。
○寺田熊雄君 いまあなたがおっしゃった、これは一一〇番があったので緊急配備をしたと。で、時間的な問題があるので、一一〇番があった時刻、あなた方が緊急配備をした時刻をちょっと教えていただきたい。
○説明員(大波多三宜君) 私ども承知しておりますのは、八時四十九分ごろ一一〇番通報により承知したというふうに承知しておりまして、直ちに緊急配備に移っておるところでございます。
○寺田熊雄君 ここは私も現場に行ってみましたけれども、一方交通の路上ですね。しかももう通勤時で、何人かの人が現実に見ておって一一〇番しておるようですが、これは治安の乱れというか全く大胆不敵な犯行で、あきれ返るほかはないんです。これはプロの犯行のように思うけれども、警察としてはどういうふうにこれを見ておられますか。
○説明員(大波多三宜君) この事件後に、いわゆる革労協の犯行ということで都内の報道機関に対して通報等もありまして、また、革労協の機関紙におきまして、そのような犯行についての報道といいますか、文字を書くということがございました。私ども、従前からこの種事案の背景に、そのような計画的な既公然のグループによる犯行ではないかというふうに判断をいま強めておるところでございます。
○寺田熊雄君 これはずいぶん私ども、警備担当の警察官というのは数も多いということを知っておるわけですが、残念ながらこういう事件というのは案外犯人が見つからないうらみがあるのですね。これはもう警察の方が相当真剣に捜査をして、こういう暴力事件に対しては厳しい態度をとってもらわにゃ困る。それでなければ、われわれまくらを高うして生活をすることができなくなる。暴力事件に対しては、警察といわず検察庁といわず裁判所といわず厳しい態度をとってもらわにゃ困るけれども、あなたも真剣に捜査をして、一刻も早く犯人を挙げてもらいたいけれども、そういう決意をひとつ持っておられるかどうか。いかがですか。
○説明員(大波多三宜君) 御案内のとおり、この種の事案は昭和五十年以来四百二十八件発生いたしまして、死傷者は八百名を超えるような状況であるわけでございます。これに対しまして、私どもは百四十二件、八百九十六名の検挙をいたしまして、鋭意捜査をいたしておるわけでございますが、もちろんこれは市民の皆さんに大変な不安を呼び起こす事件でもございますので、私ども強力に厳正に捜査を推し進めてまいりたい、かように存じておる次第でございます。
○寺田熊雄君 大変力強い決意表明で、これを評価するにやぶさかではないんですね。まあしっかりやっていただきたい。 細かいことだけれども、やっぱり遺留品とか、あるいは凶器とかいうものは発見されておるんですか。
○説明員(大波多三宜君) 緊急配備をいたしまして、周辺を検索いたしました。約一キロほど離れておりますビルの駐車場におきまして、偽造ナンバーを取りつけておる不審車両を発見いたしました。その中で、まあ凶器と思われる物も発見いたしておるわけでございます。
○寺田熊雄君 それから、あなた方警察犬を使って捜査をされたということも聞いておるが、その収穫はありましたか。
○説明員(大波多三宜君) お尋ねのとおり、警察犬も出動いたしまして捜索に参加さしておりますけれども、これと確実なことを言えるようなものはいまのところは承知いたしておりません。
○寺田熊雄君 それから、大阪でやはり九月二十五日、これも午前九時五分という通勤時に、大阪市東成区中道三の路上で乗用車がはさみ打ちに遭って、乗用車を運転していた総評の全国金属労働組合の大阪地本常任委員の吉岡喜久郎という二十四歳の若者が、これはもう手足だけではなくして、頭部を鉄パイプでめった打ちにされて、現在意識不明であるという、それもまた恐るべき大胆な犯行でありますが、これは捜査しておられるのかな。どういう状況か、これもちょっと報告していただきたいです。
○説明員(大波多三宜君) お尋ねのとおり、九月の二十五日の午前九時五分ごろ、大阪市の東成区の中道三丁目二番二十六号、喫茶店カルダン先の路上におきまして、普通乗用車に乗りまして出勤途上の吉岡喜久郎氏が、前後に普通貨物自動車二台によってはさまれまして、これらの車両から飛び出してまいりました覆面をした五、六人の者が鉄パイプ等で自動車のガラスを割りまして、出刃包丁つきの鉄パイプ、そういうもので突く、あるいは鉄パイプ様なもので殴るというような、そういうような事案がございました。後頭部挫創等の全治六カ月ぐらいの重傷を負うという、そういうような事案が発生を見ておるわけでございます。 これもまた、目撃者からの一一〇番の通報によりまして大阪府警は緊配をいたしますと同時に、所要の初動措置をもちろん行ったわけでございますけれども、その時点において検挙を見ずに、同日、東成警察署に署長を長といたします捜査本部を設置いたしまして、関係の個所を捜索するとともに、いろんな捜査を鋭意現在進めておるところでございます。
○寺田熊雄君 これは法務大臣、法秩序の維持というたてまえから見ても、白昼公然と衆人環視の目の前で、自分の気に入らない連中を鉄パイプで多数人がめった打ちにして傷害を与える、あるいは重傷を与える、あるいはそれを死に至らしめる、こういうような現象に対しては、法務当局としてもこれは重大な関心を持ってもらわにゃ困ります。これはよほどあなた方が警察当局と協力、ないし督励をして、こんな犯人が挙がらないというようなばかなことはないわけで、これはしっかりやっていただきたいんですが、どうでしょう。
○国務大臣(奥野誠亮君) この件がずばりそれに当てはまるかどうか承知してないのですけれども、過激派集団の内ゲバ、被害者がまたその事実を明確に言わないというようなことがございましたりして、なかなか検挙あるいはまた検挙後の裁判いずれも難航しているようでございまして、ぜひ国民の皆さん方の御協力も得ながら、こういう過激な行動が早くなくなるように、おっしゃるようにわれわれは全力を注がなければならない、そういう気持ちを深く持っております。
○寺田熊雄君 いま法務大臣は内ゲバとおっしゃったが、この事件はちょっとまた違います。というのは、普通、内ゲバというのは相手をめった打ちにして殺してしまうんだけれども、この事件は頭とか内臓はやってない、手足だけをやっているんですね。いままでと全く違ったスタイルです。ですから、内ゲバだというふうに頭から決めてしまわれても困るし、また、内ゲバなんということであなた方の捜査の意欲を少しでも減退してもらっては困る。内ゲバでも一生懸命やってもらわにゃいかぬけれども、こういう何か不思議な大胆な事件、これはことに捜査を厳重にしてもらわにゃ困ります。 審議官、この事件は、頭部をやらず内臓をやらず手足だけをやっているというこういう不思議な事件だけれども、これはあなた方専門家はどういうふうに見ておられるのか。
○説明員(大波多三宜君) 犯行の態様等につきまして、かつては手足だけをねらった事案等もございましたようで、そのときの状況、相手との関係等によって、いろんな犯行の態様があろうかと思います。 今回の事案は、何分にもまだ被疑者を検挙いたしておりませんので何とも判断ができかねるわけでございますけれども、いずれにせよ強盗であり、そして致傷事件として、私どもそういう凶悪な事件ということで全力を挙げて捜査をしてまいりたいというふうに思っております。
○寺田熊雄君 じゃ、その事件はもう終わりますが、刑事局長にお尋ねしたいんだけれども、安川判事がああいうふうにして町長選に立候補して、そして弾劾裁判を免れたということがあって、全国民を唖然たらしめた、あるいはくやしがらせたということが一面にありますが、その反面、新聞紙上によりますと、検察当局がこの人物について職権乱用罪の疑いを持って捜査を開始したという報道がありますが、これは事実ですか。
○政府委員(前田宏君) 正確に申しまして捜査を開始したということが適当かどうかと思いますけれども、いまのような問題もございますので、現地の地方検察庁におきまして慎重に検討している、こういう状態でございます。
○寺田熊雄君 検討しているというのは、もう捜査を始めたということか、捜査を始めるか否やを検討中というのか、どちらです。
○政府委員(前田宏君) 一般論のようなことで恐縮でございますが、いつからどういうことでやるかということは、まあ捜査の内容でございますので、御容赦をいただきたいわけでございます。
○寺田熊雄君 そうすると、まだ捜査には着手してないということですか、捜査をもう念頭に置いて検討しているというのか、どちらです。
○政府委員(前田宏君) 冒頭にも申しましたように、着手しているという言葉が適当かどうかというふうにお答えをしたわけでございますが、そういう職権乱用というような問題もあるということで捜査をすべきかどうかということも含めて検討している、こういうことでございます。
○寺田熊雄君 終わります。 —————————————
○委員長(鈴木一弘君) この際、委員の異動について御報告いたします。 藤田進君が本日委員を辞任され、その補欠として小谷守君が選任されました。 午前の質疑はこの程度とし、午後一時三十分まで休憩いたします。 午後零時三十二分休憩 —————・————— 午後一時三十五分開会
○委員長(鈴木一弘君) ただいまから法務委員会を再開いたします。 休憩前に引き続き、検察及び裁判の運営等に関する調査を議題とし、質疑を行います。 質疑のある方は順次御発言願います。
○藤原房雄君 午前中もいろいろ質疑がございましたが、私も当面する当委員会としまして関連ございます憲法のことや金大中の問題、また、最近世間で社会問題としていろいろ取り上げられている諸問題につきましてお尋ねをしたいと思います。限られた時間でございますので、また、きょうは最初の委員会ということでもございますので、余り立ち入ったといいますか、深い掘り下げたことよりも、大臣の所信といいますか、こんなことでお尋ねを申し上げたいと思うんであります。 大臣、就任なさいましてからは施政方針というものはございませんで、特別国会から臨時国会、就任のごあいさつはございましたが、そういうことで法務大臣としてのお考え、これは私どももお聞きをしておればまたそれなりに私どもの考えもあるわけでございますが、いま衆議院、また参議院の予算委員会を通じまして大臣の発言がいろいろ問題になっております。大臣にしてみますと、また同じことというお考えかもしれませんが、二院制度のたてまえからいいまして、衆議院は衆議院の立場で、また予算委員会は予算委員会の立場でのいろんな発言があったんだろうと思います。 私ども法務委員会といたしまして、担当大臣ということで、これから奥野法務大臣とは長いおつき合いをしなきゃならないわけでございますので、人柄などをひとつ十分に知らしていただきたいし、またお考え等についても承らしていただきたいという、こういうことで二、三お伺いをするわけでございますので、忌憚のない御意見を承りたいと思うのであります。 午前中も質問ございましたが、最初八月の二十七日ですか、衆議院の法務委員会での大臣の御発言、個人の考えとはいいながらこれが一つの大きな問題になったのは、先ほどの大臣の午前中のお話ですと、自分の意に沿わないことが大きい問題になったような御発言でございますが、私ども公明党としましても、また私個人としましても、憲法のことについてこの国会での論議、これを深めることやまた発言があることについて、いささかも疑義があるわけじゃございません。しかしながら、大臣という閣僚の一員であるという立場、それからまた、いま言われておりますように、自民党が圧倒的多数をとりました現状の中で、こういう一つの時の流れの中で、大臣の発言というものはいかがかという私どもは大きな疑義を持つわけであります。 このときになぜこのような発言がという、どうしても私ども——私どもというより、国民皆さん方の大きな一つの疑義であろうかと思います。その言々句々につきましては、衆議院の予算委員会や参議院の予算委員会等でいろいろな釈明がございましたし、その一つ一つここで繰り返して私は言おうとは思いませんが、憲法の定めるところ、内閣というのは非常に大きな力を総理大臣にゆだねておる、閣内が一つの政策のもとに、考えのもとに憲法にのっとって進むという、こういう意味では総理大臣に大きな力が与えられておるわけでありまして、その閣僚がその内閣の意思に反するようなことがあれば、これは議会制民主主義の上からいきましても大きな問題だということで、閣内不統一ということが過日来も大きな問題になったようであります。 私もまた、当然これは閣内が不統一のようなことがあってはなりませんし、これがきちっと守られることが当然のことだろうと思います。どう言った、こう言ったという言葉じりのことではなくして、この大原則がしっかりと踏まえられてなければならないと私は思うわけであります。こういうことで、今日までも、三木内閣のときですか、稲葉法相の憲法発言ございました。これと改憲の集会に出席したということや欠陥発言ということで問題になったのとは違った面で、やっぱり法務大臣の言葉というのはそれなりに私どもも注目もし、そしてまた、その言葉の奥にあるものは一体何かという、国民の大多数もやっぱりそういう目で見ておったのではないかと思います。 こういうことで、率直なひとつ大臣の御心境ですね、今日ここに至りまして、大臣が今日、その場その場でいろいろな御答弁をなされてきておりますけれども、法務委員会といたしましては初めてのことでございますし、私ども新聞紙上では見ておりますけれども、法務大臣の率直な現在の心境といいますか、お考えをまずお聞きをしたいと思うんであります。
○国務大臣(奥野誠亮君) いまお話しございました八月の末の衆議院の法務委員会、このときには自主憲法ということがあるが日本の場合に当てはめてどう考えるか、こういうお尋ねをいただいて、率直に私の考え方を申し上げたわけでございました。 私は、憲法解釈といいましょうか憲法論といいましょうか、憲法には、国務大臣も、また国会議員も憲法を尊重し擁護する義務を負うと示されておるわけであります。同時にまた、憲法改正のことについて考えをめぐらしていく、また必要な論議を展開していく、これは何ら尊重、擁護の義務とは矛盾しない、両立するのだと、こう考えておるわけでございます。憲法のような大事な法規だから、国務大臣であれば一層真剣にいまのままでいいか悪いか考え、また必要な意見を言うていく、そういう責任を負っている。むしろ、強く憲法をさらによりよいものにしていくための責任も持っているぐらいに私自身は考えているものでございますから、率直にお答えをしたわけでございました。 そのときに、それじゃ政府としてどうするのかというお尋ねもいただいたのです。そのときに私は、政府としては自主憲法制定などに対して特別な動きをすることは適当でない、こう答えているわけであります。憲法解釈、憲法論としては、改憲運動別に不穏当ではないけれども、政府としてはいまそういう動きをするのは適当でない、なぜならば自主憲法制定ということが国民の合意にまでなっていないのだから、そんな動きをすると混乱に陥れるじゃないかと、こう私なりに判断をしたわけでございます。 当時、恐らく鈴木内閣としても憲法改正は考えないということでございましたでしょうけれども、今日全く考えない、閣僚もそういう意味において憲法改正の論議はむしろ慎んでもらいたい、こういう姿勢になってきているわけでございます。八月の末のころには、私は内閣の姿勢というものはそこまでは至っていなかったと思います。 内閣が憲法改正を進めようと、あるいはまた憲法改正に反対しようと、あるいは憲法改正は考えないけれども論議は自由にしていこうと、いろんな私は政治路線の選択があると思います。それは内閣の政治路線の選択の問題だと思います。しかし、閣僚の一員は、選択された政治路線には忠実でなければならない、こう考えるわけでございまして、そういう意味合いにおきましては、鈴木内閣では憲法改正は全く考えない、また、その政治路線に疑惑を持たせてはいけないから憲法改正の論議も慎重であってほしい、こういうことを示されておるわけでございますから、私は今後そういう疑惑を持たれないように慎重にしていかなければならないと考えておるわけでございます。 もちろん、憲法論議しては悪いわけじゃありませんけれども、鈴木内閣のとっている政治路線、それには忠実に従っていかなきゃならない、そういう意味においては慎重でなければならない、こう思っているわけであります。
○藤原房雄君 これは八月の末の段階では、まだ鈴木内閣としてこの憲法のことについて閣僚としてどうあるべきかということについての明確な指示といいますか、なかったというお話でございますけれども、これは指示がある、ないということの前に、閣僚というのはやっぱりそれだけの大きな重い立場にあるということは、これは当然自覚しなければならないんじゃないでしょうか。これは法務大臣が八月の末に御発言になってから、こういう憲法論議が盛んになり、何度も何度も繰り返して総理大臣は、鈴木内閣としては憲法は変えない、改憲は考えないということについての明確なお話がございましたけれども、内閣の一員であるという立場から言いますと、慎重さというのはこれは八月の末の段階ではやっぱり欠けていたんじゃないかというふうに私どもは思いますけれども、その間のことについての反省といいますか、遺憾の意を表明するというか、今日までいろんな論議の中で、いま率直にお話ございましたお話のとおりだろうと思います。 私は、奥野法務大臣がいままでどういう場でどういう発言をしたかということを詳細に承知しているわけじゃございませんが、これはやっぱり憲法改正ということについては非常に強い意思を持っていらっしゃる、強いといいますか、お考えを持っていらっしゃる方だろうと認識をいたしておりました。この法務大臣という、特にまた、そういう立場の上に立って、閣僚の一員であるということと法務大臣という立場の上に立っての御発言ということになりますと、これは法の上でそんなことを言っちゃいけないのかということになりますと、言っちゃいけないという、これはいままでの法制局の見解とかいろいろなことを見ましても、それを口にしたということだけでいけないということにはならないかもしれませんが、やっぱり閣僚の一員であるということ、特に法務大臣という立場にありますと、やっぱりより慎重でなければならなかったんではないかと、こう思うわけで、八月末の時点におきましても、やっぱりそれなりの慎重さが現時点で顧みますと欠けておったんではないかというふうに思わざるを得ないんですけれども、大臣はどうですか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 憲法を尊重、擁護する義務と憲法改正の論議、これは両立するのだと考えておるわけであります。同時にまた、国務大臣の中で法務大臣なるがゆえに特に尊重、擁護の義務が強いのだと、これまた私は憲法論としてはわからないように思うのです。憲法論としては、どの国務大臣であれ、どの国会議員であれ、厳格にこの憲法尊重、擁護の義務は負うていると思うのです。法務大臣なるがゆえに他の国務大臣とは違った地位にあるということは、ちょっと私にはわかりにくいように思います。 同時にまた、改憲論議、国務大臣が積極的にやっていく、何ら憲法解釈としては不穏当ではないと考えます。ただ、内閣の一員でありますから、内閣が選んだ政治路線には忠実でなければならない。内閣が仮に憲法改正を政治路線に選択しました場合には、閣僚はむしろ積極的に国民の理解を求めるために努力をしていかなければならないと思うのです。 ですから、憲法論と政治姿勢とは分けて考えていただきたいなと、こう思います。憲法論としては国務大臣、積極的に憲法改正運動をやって何もおかしくない。私の所管に刑法がございます。いろんなことで刑法改正について国民の理解を求める努力を私はいたしております。その中身についていろいろな批判はありましょうけれども、私がそういう努力をしているからといって、私が刑法を尊重、擁護する義務に欠けているというような批判はどこからもいただいていないのであります。刑法と憲法と法の性格はうんと違いますけれども、しかし、改正論議と尊重、擁護の義務とは両立するのだ、これはそういう意味においては憲法であれ刑法であれ同じじゃないかと、こう思っておるわけであります。ですから、憲法論として法務大臣が憲法改正を論じていく、これは私は差し支えないのじゃないかと思うのです。しかし、それが、内閣が選択した政治路線と違っているということになりますと問題になっていくと思うわけでございます。 同時にまた、私の考えとしましても八月末に、政府としては特別な動きをすることは適当ではない、こういう判断を申し上げたわけでございまして、それはやはり憲法の前文に、政府は国民の代表という言葉を使っておるわけでございまして、そういう性格を持っておるものでございますから、国民の間に合意が成立していないのに特別な動きをするということは混乱を招いてくる、混乱を招くようなことは国民の代表と言われている政府のとるべき行動ではない、そういう判断が私にはあるものでございますから当時そう答えたわけでございまして、だんだん鈴木内閣の政治路線が明確になりまして、国務大臣に対しましても、国民にその政治路線を疑わせるような言動については特に慎重であれということが今日明確になっているわけでありますから、私はその政治路線には忠実に従っていくつもりでありますと、こう答えておるわけでございます。
○藤原房雄君 私も、閣僚だから口にしちゃすぐこれは法的にということで言っているわけじゃない、私がお話したことを御理解いただけると思うんでありますが、法務大臣になるとどうもはしゃぎたがるといいますか、こういう発言をしたくなるのかなと、国民はこんな目で見たくなるようなここ数年のことですね。法上とか憲法上とか、それから政策上の問題との切り離しとか、そういうことは私ども十分理解しての上のお話でありますけれども、特に法の番人という立場に立ちますと、これは閣僚の一員として同じ立場にあることは当然でしょうけれども、しかし、非常に重い立場にあることは十二分に自覚しなければならぬだろうと思います。 その間のことについては今日までいろいろ議論があり、先ほど率直に御意見ございましたようないま御心境にあるんだろうと思いますが、それと今日までのいろんな議論の中で、議院内閣制ですから、閣僚の一員であるということと、また自民党員であるということとの関係性についても今日までいろいろお聞きをいたしました。その議論をまたぶりっ返すつもりもないんですけれども、憲法調査会の会長の瀬戸山さんが、現在の憲法は定着していないじゃないかというような御発言があったようですけれども、これに対しては法務大臣はどのようにお考えでしょうか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 言葉の使いようでございますから、使う人によってその意味合いが違っているのじゃないかと思います。私に言わせていただきますと、憲法の持っている基本理念、これはもう深く広く国民に理解されてきていると思います。しかし、憲法の条章につきましては、たとえば憲法九条の解釈が有力な政党の間で百八十度も違っているわけでございますから、定着しているという言葉は私はちょっと使いにくいのじゃないかなと、こういう判断をしているわけでございます。しかし、定着という言葉を使う人の考え方によっていろいろございましょうから、それはそういうふうに御理解をいただいておきたいと思います。
○藤原房雄君 いま憲法の解釈上の問題についてその見方によって違うという大臣のお話ですけれども、解釈上の問題としましては、これはいろいろ疑義があることは私も承知しております。この憲法ができるときも、必ずしも占領下といえども賛成者ばかりじゃなかったということ等についても私どもは伺っておるわけでありますが、しかし、少なくとも最近の世論調査、総理府にしましても、また新聞社等の世論調査を見ましても、現在の憲法を変えるということに対して賛成する者の比率はだんだん下がっていることは事実ですね。これはある新聞社のを見ますと、朝日新聞の世論調査で賛成が三十年の十一月の時点で三九%、それから三十七年の八月は二六%、五十三年の十月で一五%というように、これはやっぱり改憲ということについて、憲法を変えるということについての賛成の比率はだんだん下がっておる。それから、反対ということについての意思表示というのは四二%、六一%、七一%、五十三年の十月は七一%という、こういう世論調査もあるわけです。 これは統計のとり方とか、アンケートの項目の出し方にもよりましていろいろ差異はあるかもしれませんけれども、やはりこの憲法三原理にのっとった現在の憲法というものに対しての、つくられた経過がどうだという議論をすればいろいろあるのかもしれませんが、三十年たった今日、一億一千万の日本国民の中に、この憲法は少なくとも明治憲法とは違って民主憲法として、個々の条文とか個々の問題ということはいろいろあるかもしれませんけれども、国民の意思としてはそろそろ定着というものが見られたんではないかというふうに見るのが順当じゃないかと私は思いますけれども、どうですか、御見解を伺いたいと思います。
○国務大臣(奥野誠亮君) いま申し上げましたように、私に率直に言わせていただきますならば、私はそういう言葉を使わないで、憲法の基本理念、これがよく国民に理解されていると、こういうふうに申し上げさせていただきたいと思います。
○藤原房雄君 そういうことから言いますと、寺田先生も午前中お話ししておりましたけれども、昨日、大臣は前文もというお話があったようでありますが、やっぱり話は九条のことになるのかもしれません、平和を守るという。国際環境というのは絶えずこれは流動しますので、どの時点でどう見るかということは非常にこれはむずかしい。それをいつまでも持続するということは、非常に至難なことだろうと思います。しかし、現在の国際環境が厳しければ厳しいなりに、やっぱり平和を願う国民の声というものもまた強いわけでありまして、こういう中で民主、平和、人権というこの三原理、人類三千年の中で人間の英知としてつくり出されたこの三つの原理は、いままでのお話を聞くところによりましても、これは堅持するということであります。 私ども公明党も、この三原理は党の綱領の中にもうたって、この憲法は守っていかなきゃならぬと明記をいたしているところでありますけれども、平和主義とやっぱり第九条との関係というのは、これは午前もちょっとお話ございましたけれども、ここが一つの大きな問題になるんだろうと思います。国民の憲法を変えてはならぬという支持率が非常に高いという、変える必要がないといいますか、変えることに反対という者が非常に多いという、この中身の分析をいろいろしなきゃならないかもしれませんが、平和を希求する国民の声というものが、やっぱり大きなパーセントになってあらわれている。 大臣の立場といいますか、いまの憲法の推移の中で、百八十度の議論のかみ合わないようなものがこのまま併存していいかという物の考え方の上に立てば、これはまたいろんな議論のあるところだろうと思いますけれども、国民の大多数は、やっぱりいまの憲法は容易に手をつけるべきではないといいますか、こういう声が非常に大きい。しかも、九条等については平和主義をやっぱり貫けという、こういう声が非常に強いということは、この数字が如実に物語っていると言わなければならぬと思うのであります。 こういうことを考えるにつけましても、これからの憲法問題につきまして、いろんな角度から論じ合わなきゃならないことだろうと思いますけれども、今日まで一連の大臣の立場での発言の中から、私どもも少なくとも内閣の不統一のない、こういう方向で平和憲法はあくまでも守るという理念の上に立っての、そしてまた個々の問題につきましては、今後やっぱり息の長い国民の声を、世論を背に受けた立場での論議というものを推し進めていく必要があるんじゃないかと、私はこう思うわけであります。 そういうことで、平和憲法を守るということと第九条の問題と、まあ午前中もちょっと自衛権の問題等についてお話あったようでありますが、大臣のお考えがあればお聞きしたいと思います。
○国務大臣(奥野誠亮君) 憲法の基本理念、これは堅持していきたいと思いますし、また自由民主党も憲法改正を綱領に掲げておりますけれども、この三原則は堅持することをうたっておりますことも御理解をいただいておきたいと思います。 憲法を改正するとか改正しないとかいう以前に、私は有力な政党の間で自衛隊が違憲だ合憲だというような問題が何とか解決できないものだろうかな、一体政権交代したらどういうことになるのだろうかなと、こんな心配さえあるわけでございまして、そういう意味合いから、国の進むべき基本の事柄に関しましては大きな違いがないように私はする必要があるのじゃないか。これはもう憲法を改正するとか改正しないとかいう手段の問題ではございませんで、私は本当にその論議を深めていかなければならないのじゃないか。国民の立場に立って考えれば考えるほど、私はそれは切実な問題じゃないかと常日ごろ考えておるものでございます。
○藤原房雄君 この問題につきましては、いままでの議論もございますし、大臣も非常に御発言も御慎重で、先ほど御心境を述べておりましたようでございますし、また後日の委員会等におきましてもいろいろお話しすることにいたしまして、次は、これは大臣が御発言になっておりましたが、過日、新宿の西口のバス放火事件ですね、これに伴って保安処分の問題をお話ししておりました。 これは、長い間刑法の改正作業の中で大きな問題であったこの保安処分の新設ということについては、非常に重要な課題であり、今日までもいろいろな論議をしてきたことは、私も承知をいたしておるわけでございます。保安処分、新宿の西口のバス放火事件があった、得たりや応と御発言なさったように私どもは考えざるを得ないんですけれども、これは非常に重要な問題でもありますから、大臣としても非常に慎重にお考えになって御発言になったんだと思いますけれども、私どもは新聞等での報道しかわかりませんので、真意のほどをお聞かせいただきたいと思います。
○国務大臣(奥野誠亮君) 私が法務大臣に就任いたしまして奇異に感じましたことは、軒並みいろんな法律改正案が多年にわたってたなざらしになってしまっている。しかも、法務省と日本弁護士会。弁護士法の中には、弁護士は法秩序の改善に努力しなければならないという言葉でございましたでしょうか、何かそういう式の規定があるわけであります。法務省も弁護士会も同じような方向に向かって努力をしなきゃならない使命を負わされているのに、こんなに硬直的に対決していいものだろうか。力を合わせていかなきゃならない存在が、全く対決になってしまっている。これはやっぱり打開しなきゃならないなと、私、法務大臣になりましてすぐから、そのことを強く感じました。 私が弁護士会を訪れましたら、少年法改正反対というたれ幕がかかっておったのです。伺いますと、その前までは刑法改正反対のたれ幕もかかっておったと、こういう話を伺いまして、もっとざっくばらんにお互いに物を言い合える仲になれないのかなと、弁護士会に対しましても率直に私の気持ちを申し上げました。たれ幕で物を言わなくてもお互いにテーブルを囲んで議論し合ったらいいじゃありませんかと、大変失礼でございましたけれども、こんなことまで申し上げました。 八月に入りまして四件あったと思うのです。精神障害者と思われるような方が殺人事件を起こしておるのです。私は、刑法改正草案が昭和四十九年に法制審議会から答申された。もう六年たっているのです。六年たっているのに日本弁護士会は改正反対、話し合いもなされ得ない状態に置かれているわけであります。聞きますと、幾つもあるのですけれども、その一つが保安処分だと聞いておりました。 そうすると、やっぱり新宿の事件が起こりまして、また犯人が精神障害者だということになりますと、そのまま不起訴になったり無罪になったりして社会に帰されていく。そのまま社会に帰すような無責任なことをしないで、再犯のおそれがあるならやっぱり隔離をした上で治療すべきじゃないか、これが刑法改正草案に盛られている考え方であります。 やっぱり日本弁護士会とも話し合いを始めるこれをまあひとつの糸口にしたい、こんな気持ちがありまして、私は閣議で関係者と協議を重ねて、この問題の推進を図っていきたいということで御了解をいただいて、そして日本弁護士会と話し合いを始めたわけでございまして、幸いにして日本弁護士会も、反対という姿勢は崩さないけれども協議の座には着きましょうと、こう言ってくださるようになったわけでございまして、一歩前進したのじゃないかなあと思います。その中でよい結論を見出していきたいなと、こう思っているわけでございまして、私は固定的に先に結論を出しているつもりではございませんので、話し合いの中でよい結論を見つけていきたいなと。まあ幸いにして刑法改正問題も話し合いができるようになってよかったなと、こう思っているところでございます。
○藤原房雄君 大臣の人柄がそうあらしめたのか、六年越しの話し合いのテーブルに着いたということですが、まあしかしこれは、たれ幕が下がっているとか話し合いのテーブルに着かないからけしからぬとかというお話のようですが、民主主義というものはやっぱり時間をかけてじっくり話し合いをいたしませんと、また内閣も半年かそこいらですぐかわるような方々が——方々というか、そういう時期がございまして、奥野法務大臣のように真剣にやろうという気持ちでほかの人は取り組んでいないなんて言うとちょっと問題ですけれども、まあ時期的なことやいろいろなことがありましたので、一概に日弁連がどうとか、たれ幕がどうとかということだけでは判断できないことだと思うんですよ。そういう点では、それを感じた奥野法務大臣が真剣にひとつやろうという気構えはそれなりに私ども評価いたしますが、この問題はいろんなことがこれからも議論されるんだろうと思います。 私は、初めて大臣とのお話ですから、深くこれを掘り下げてやろうなんという気持ちはございませんけれども、いままで六年間も反対が続いたというのはそれなりの理由がありましたし、世界の趨勢といたしましても、どちらかというと、精神医学的な立場から言いますと、こういう法律でこれを縛るということよりも、精神病の施設とか医学的な方向についてより力を入れるというのが世界の趨勢のようで、日本はそれに逆行するような形をとるということについての危惧や、また社会に及ぼすいろいろさまざまなこういう問題が提起されておるわけであります。 そういうことで、私はこの保安処分の問題も長い間いろいろな審議がありましたが、時代の推移の中で、とかくに法文とか、またはこういう一つの社会の中で隔離するような強制力が強くなるみたいなこういう働きの圧力といいますか、そういう力の働くような形よりも、やっぱり非常に多角的な医学、精神医学やなんかにつきましても非常に最近は発達をいたしておりますから、こういうあらゆる力をかりて、なるべく刑といいますか、こういうものの力をかりないでできるような方向で物事は進めるのが世界の趨勢のように感じておるんです。 まあ、その中身のことについてはこれからいろいろな検討がなされるんだろうと思います。なされるんだろうと思いますが、これからの推移、私どもも非常に重大な関心を持っておりますことでありますから、これからも見てまいりたいと思いますし、私ども大臣の発言ということになりますと、やっぱり大臣がそういうお考えを持っているという、そしてまたそれに対して、ことに実行力といいますか、力を注がれるんだろうという、こういうふうに考えざるを得ないものですから、御発言になったその一音一句というのは非常に強く私どもは受けとめるわけです。それだけに、こういう公の席で大臣のお考えも明確にお聞きしておきたいと思うんです。 そういうことで、当時のことについてはお話ございましたが、幅広いいろんな角度から、時間をかけてこの保安処分の問題については検討していくべきだという、このように私は言っておきたいと思うんですけれども、大臣のひとつ率直な御意見、また今後の推移といいますか、責任ある立場としてのお考え等、あわせてお伺いできればお伺いしたいと思います。
○国務大臣(奥野誠亮君) いまも申し上げましたように、幸いにして日本弁護士会との間で協議ができるようになったわけでございますので、その論議の推移を待って結論を出さなければならないと思います。同時にまた、政府間でも、法務省、厚生省、十分協議をしていかなきゃならない、こう思っておるわけでございまして、論議を重ねながらその結果で結論をお互いに得るようにしていきたい、そういう方向で努力を続けていくつもりでございます。
○藤原房雄君 これは社会に及ぼす非常に大きな問題でありますので、私どもも非常に強い関心を持ち、いままでの考え等につきましては強い反対の意を表明してきたところでございますので、これからまた推移を見守ってまいりたいと思います。 時間もありませんのであれですが、次に安川事件のことでございますが、これは午前中もちょっとお話ございましたが、手続上のことについてはいろいろな問題が提起されまして、宮澤官房長官のお話もございまして、検討しなきゃならぬだろうと。国民感情として、本当にこれはやりきれない気持ちをどなたもお持ちになったことと思います。法務省の方にお聞きしますと、簡易裁判所の判事さんに多いようでして、今日までも何人かやっぱりこれは問題が起きたようであります。 私は、こういうことがあったからすぐ法律を改正してどうするという、これはまあ善後処置として大事なことなんだろうと思いますけれども、やっぱり何事も資質の向上といいますか、今回も、安川元判事ですか、この方に対して最高裁の担当の方はそれぞれいろいろ説得なさったりお話をなさったんだろうと思いますが、しかしながらああいう行動に出たということなんだろうと思います。 これは最高裁のことになるのかもしれませんが、全体的な考えの中で、事後対策といいますか、法文上のこと等については午前中もお話あったのですが、それは私はお聞きをしようとは思いませんけれども、やっぱり大きな法務行政ということの中でこういうことに対処するためには、法務省としてはどういう協議、どういうことが検討されておるのか。午前中の論議のように、ただ出られないようにすればいい、そのためにはどうだということだけでは済まない、それ以前のことをもうこれは当然考えなければならないんじゃないかと思いますけれども、何かお考えがありましたら、また御検討なさったことがございましたら、お伺いをしたいものだと思うのでありますが。
○国務大臣(奥野誠亮君) おととい閣議でこのことが話題になったわけでございまして、みんな何かよい手がないものかな、こういう脱法行為みたいなものが成功するということになると、国民全体が本当に不愉快な気持ちを持つだろう、いい手はないものだろうかなということでございましたけれども、みんなその際にはいい考えは出ませんで、しかし将来にわたって検討していかなきゃならない、場合によっては立法措置もしなければならない、こういうことで、さらに引き続いて考えていこうということで終わったわけでございます。いまもそういう気持ちをみんなが抱いているわけでございまして、なお検討を続けていきたいと思います。 事は裁判所の問題ですけれども、政府としてもやはり立法措置ということになりますと、研究を続けていかなければならないということになろうと思っております。
○藤原房雄君 時間がございませんので次に移りますが、実は、過日北海道、東北をずうっと視察に参りまして、私は法務関係の、また司法関係のこの視察は初めてでありましたので、初めて私の眼に映ったところを率直に申し上げさしていただきたい、こう思うのであります。 せっかく視察に行ったことですから、視察報告ということで終わってしまえばそれまでのことですけれども、こういうことに素人といいますか、初めてタッチいたしました者として、率直に私の目に映ったところをお伝えしまして、改善すべきところは改善さしていただきたいと、こう思うのですが、一つは、司法行政及び法務行政のことで、最近は民事行政につきましても非常にこういう複雑な社会情勢の中で問題が多岐にわたっているようでありますし、また刑事事件につきましても、最近は非常にこれは件数がふえているようですが、道路交通法違反とか覚せい剤取締法違反ですね、これが非常に多いのですね。北海道のそれぞれの、また青森ですか、私ども参りましたところで、どこでも問題になってお話ししておりました。 私は、これは検察庁というのは、検察庁だけでこれができることでは決してないだろうと思いますけれども、検察庁の報告で、暴力団関係による組織的な覚せい剤事犯の刑事犯の増加が指摘され、青森地検では五十三年度、五十四年度は大幅に増加している。函館地検では、覚せい剤はほとんど暴力団の手によって東京、名古屋、大阪、九州方面から相当多量に運び込まれ、卸売、小売の密売人の手を経て風俗営業従業者、深夜作業者、それからサラリーマン、主婦などにまで及び、地域的には函館市内のみならず、日本海沿岸の漁村にまで及んでいる。 さらにまた、保護観察所から見ました覚せい剤乱用者は、処遇困難な対象者としてその増加のためますます保護観察の負担が過重になっておる。それから、札幌刑務所においても女子収容者の四〇%が覚せい剤事犯者だと。男子の受刑者でも暴力組織に所属する者がほぼ半数であるが、その六〇%が覚せい剤事犯者である、青森少年鑑別所でも覚せい剤等の使用の少年が増加し約半数に達している、こういうことが各地それぞれのところでお話があったんです。 これは当然警察とか厚生省、法務省それぞれで連携を取り合ってやらなきゃならないことだと思うんですが、いずれにしましても、この数年、戦後のあの大変なときに匹敵するぐらい件数やなんか、むずかしい数字はもう時間ございませんから一々申し上げませんけれども、急激な増加をしていることは大臣もよく御存じのことだと思います。 これは非常にゆゆしき問題でございまして、担当の方々はそれなりに大変心を痛めて対処していらっしゃるんだと思いますけれども、ぜひ閣僚の一員として警察、厚生省、法務省一丸となってこれに対する取り組みをいたしませんと、戦後のあの混乱期のときには政府に対策本部のような形のものがとられて取り組んだということもちょっと聞き及んでおりますけれども、これはこういうことがあるんだということじゃなくて、各方面に大きな、しかも一般家庭にもこれが浸透しておるという、これはよって来る原因というのはいろんなことがあるんだろうと思います。海外に出るのが非常に多くなったということや、また暴力団の一つの資金源になっているとかいろんなことがあるんだと思いますけれども、法務省だけでできることじゃございませんが、ぜひ鈴木内閣としましてもこの覚せい剤問題については強力な取り組み、私は実力大臣の奥野法務大臣に是が非でもこれはひとつ奮起していただきたい。保安処分に奮起するのもいいんですが、こっちの方も本当にひとつ真剣にやろうという強い気持ちに立っていただきたいと思いますが、いかがでしょう。
○国務大臣(奥野誠亮君) 御指摘になりましたこと、私も全く同様に感じているわけでございます。事は、特に青少年にまで波及してきているわけでございますので、青少年を健全に育てていくことが国の将来にわたる基礎を築くことでございますので、特に力を入れていかなきゃならない、こう考えております。これからも覚せい剤等の問題につきまして、さらに政府が一丸になって努力していけるような体制がとれますように、私も検討を引き続いて進めていきたいと思います。
○藤原房雄君 ぜひひとつ閣議で、憲法問題で大きな論議を起こしたわけですが、覚せい剤取り締まりでひとつ論議を起こすような取り組みでこれはしていただきたいものだと思います。時間もありませんであれですから、次にまたこの問題については厚生省の担当の方々をお呼びをして、あらゆる角度からじっくり取り組みをやりたいと思います。 きょうは初めての大臣ですから、それぞれの問題についてのお考えだけお聞きしておるわけですが、それから北海道へ参りまして、地方更生保護委員会ですか、この保護観察官の方々が北海道全域四つに分かれておるんですが、全部で三十六名いらっしゃるのです。保護観察というのは、もう私が長々申し上げるまでもなく、仮出所等の方々に対して面接をするとか大事なお仕事に携わっているわけでありますが、最近こういう保護観察官が実際処理しなきゃならない問題が非常に多くなっておりまして、最近、取扱件数は五十四年度で一万四千四百五十一件。三十六人でこういう一万四千件ということですから、一人当たりだと四百件強というような非常に多くの問題に取り組まにゃならぬ。しかも、広大な北海道の中を四つに分けてそれで担当するということですから非常に大変でございまして、地元からも強いこの増員ということについて——また、先ほど申し上げた交通事故とか覚せい剤とかこういうもの、それから暴力団関係、こういう事件等非常に多発いたしておりまして、それに対処するためにこれらの方々が非常に御苦労なさっているんですね。 それで、旅費が——本当は原則的には仮釈放審査のためには二度ですか面接することになっているんだそうですけれども、旅費が十分でないというんですね。これは本当に人権にかかわる問題ですから、少なくとも旅費が足りないために延び延びになっているなんということでは、その本人にとってはこれは大変なことだろうと私は思うんです。 どうもこれ、総定員法という枠組みの中にあって、また財政も非常に厳しい中にあって、非常にむずかしいことなんだと思いますけれども、事人権にかかわる問題ということになりますと、これは予算がどうとかということではない。非常に必要な大事なことだという、こういう御認識でこれは取り組んでいただきませんと、第一線で働いている方々は非常に御苦労なさっていらっしゃる。そうでなくても、こういうお仕事というのは非常に表に立たないじみなお仕事でありますし、その方々にこういう苦痛を味わわせるようなことがあってはならぬということを、私初めてこういう方々のお話を聞いたんですけれども、大臣はしょっちゅう聞いているかもわかりませんが、初めてなものですから、ああこんなことがあったのかという気持ちだったんです。 これも詳しいことをいろいろ申し上げたいんですけれども、ああそうか、そういうことがあったのかなんというのじゃなくて、真剣にひとつ受けとめていただいて善処方——善処方というより、これは法務行政の中で当然取り組まなきゃならないことですが、やっていただきたいと思いますが、どうでしょうか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 御指摘のように、私も法務省に参りまして、人も金も非常に窮屈な役所だなということを感じました。また、保護司の方々がお手伝いをしてくださっているわけでございますけれども、保護司の方々に対する処遇も不十分なものだなと痛感しているわけでございまして、不幸にも行政改革、人減らし、あるいは経費の節減、財政立て直し、えらい悪いところにぶつかっちゃっているのだなと、こんな気持ちもありながら、私としては御指摘のような問題について責任を果たす最善の努力を払っていかなきゃならない、こういう決意は持っているところでございます。
○藤原房雄君 報告書は後からまた議事録に掲載されるはずでございますし、現状みんなが大変なのかというお考えですと困るんで、本当に広大なところで一人当たり四百件からの処理をしなきゃならない。また、北海道のあの広大なところをやらなきゃならぬというそういうお立場の方々、しかも、後からもちょっと触れたいと思うのでありますが、庁舎、営繕関係も非常に老朽化いたしておりまして、特に地方の方の方の宿舎というものが十分でないということ、これは寝泊まりなさる大事なところが非常に御不便だ。 旅費はないわ、過重労働でしかも宿舎も十分でないということだと、何を頼りにというか、何を誇りとしてお仕事なさるか。本当に私ども、ここにこういう方々がいらっしゃった、私だけじゃない、一緒に行きました方々もみんなが、あれは何とかしなきゃならないという気持ちでお聞きしておったところです。これは時代の推移の中で、高度成長のときにこういう問題についてまたやるとやりやすいのかもしれません。こういう窮屈な中で何とか処理していこうという、そこに奥野法務大臣の実力さがあるので、この現状というのは部内でもぜひひとつ御検討いただき進めていただきたいと、こう思います。 それから、さっきも申し上げました営繕関係も非常に庁舎が多うございまして、各所にございますから、老朽のこれ一遍にということじゃなく、やっぱり年次計画とか何かでやっていらっしゃると思いますが、しかし、いつ見通しが立つということもない。いろんなことはあるんですけれども、青森の地方検察庁が四十年に竣工したんですが、鉄筋コンクリートの三階ということですけれども、御存じのとおり四十二年ですか十勝地震がございまして、雪害とか地盤沈下とか十勝沖地震で影響を受けまして、年数はまだたった十五年かそこらということかもしれませんが、実はこういう地震のために大変に痛んでおりまして、雨漏りがするというんですからね。 そのほかもいろんなところがございましたが、ぜひこれ、年次計画でいろんなことを進めていると思いますけれども、大臣、ひとつせっかく法務大臣としての地位に立った以上は、こういう問題もひとつ積極的に、大事な縁の下の力持ちとして働いている方々のために御努力をいただきたいものだと思うんです。この点についても、予算、いまもう大体大枠は決まったのかもしれません。 これからの可能性はどのぐらいあるかわかりませんけれども、ちょうど予算編成の大事な時点でもあろうかと思います。こういう中でもございますので、ぜひこれは営繕関係、それからまた、旅費のことや人員のこととか、最小限ひとつ、みんなが希望を持って、われわれの窮状を知ってもらえた、一人でも二人でもいい、だれでもいい、中央官庁の大臣の、そういう努力が実ったということでみんなが張り合いの持てるようにひとつ御努力いただきたいと思うんですが、どうでしょうか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 新年度の予算につきましては、責任を果たせるよう最善を尽くしたいと思います。同時にまた、御視察いただきました御報告書、それをよく拝見さしていただきまして、それぞれについて必要な対応をするように努力していきたいと思います。
○藤原房雄君 時間ございませんので、最後になりますが、刑務所でいろいろお話を聞いておりまして、これは私だけではなくて、委員の方、異口同音にちょっと奇異に感じたといいますか、奇異という言葉が妥当かどうか知りませんけれども、この予算書の中にもございますが、刑務所の歳入予算というのがあるわけでありますけれども、五十五年度の一般会計予算では、法務省の主管歳入予算明細書で、刑務所の作業収入というのが百五十億六千四百十五万円という、こういうことになっておるわけであります。 これは現地では、上から言われてやるんじゃなくて、実際の仕事量とかいろんなことでということでありますが、何をするにも目標も何にもなくてとにかくやりましょうということじゃ、これはまあそんなことではならぬでしょう。前年どのぐらいやったか、それに対してどのくらいの伸び率を見るとか、そういうことはもちろんあるのかもしれませんけれども、これは普通の会社とか何かなら私どもはそれなりに思うわけですけれども、刑務所という特殊なところの中で、それぞれの刑務所にはなさっておるお仕事、そしてまたそれをなさる方々の立場というものを考えますと、強制なんということは考えたくないんですけれども、どういうシステムでこういう予算というものがつくられて、そして今日こういう百五十億何千万というようなものが出てくるのか。 札幌刑務所では、歳入目標というのは四億七千六百万と、こう言っておりましたけれども、これは私どもがいままで昨年やったこととか今日の状況とか等でこういうふうにしています。決してお仕事をなさっている方々に押しつけてはおりませんというお話ですけれども、これはどういう手順でこの金額というものが定められるのか。また、そういうことはきちんとしたようなものはございません、こうでございます。いろいろ答えると思うんですが、そういうことがちゃんと現場で徹底されているのかどうか、なかなかそこまで厳しくわれわれも聞くすべもないものですから、これはちょっと奇異な言葉に聞こえて、私ども参加した委員の方々が、どうなっているんだろうかというお話ございましたので、ぜひひとつこの点のことについて御説明いただきたいと思うんです。
○政府委員(豊島英次郎君) 御指摘のように、刑務作業も企業的形態をとっておりますので、毎年、年度当初に計画を立てるわけであります。計画を立てますには、基礎には刑務作業をいたしております各刑務所、この作業計画が基礎にあるわけであります。各刑務所の作業計画が、矯正管区全国に八つブロックがございますが、矯正管区へ上がり、管区から本局へ上がりまして全体を調整、統合するという形で毎年度の作業収入見積もりを立てるわけであります。 各刑務所で作業収益金の目標枠を設定します要素といたしましては、第一に就業人員——受刑者のうちどれぐらいの者がどういう業種に就業しておるかという就業人員が基礎に一つございます。それから、現在やっております刑務作業の種類、これは原材料を国で買いましてそれに製作、加工していく、たとえば木工製作のようなものもございますし、それから民間企業と契約をいたしまして、そして労務を提供するという形の俗に言う賃金作業もございます。賃金作業の場合でありますと、従来契約しております地域の企業との間に、今後どういうふうに作業が伸びていくであろうかという計算がなされるわけであります。その計算の場合には、当該地域の経済情勢といいますか、企業の状況といいますか、そういうものが参酌されることになると思います。それから生産作業の場合、つまり国が材料を提供しましてそれに加工するという作業の場合でありますと、もとになります原材料費、これをどの程度に踏むか。つまり、そこの受刑者でどれぐらい原材料費を消費する作業ができるかということが基礎にありますし、そしてでき上がりましたものを市販いたすわけでありますが、その市価がどれぐらいになるであろうかという判定が必要なわけであります。 そういう計算をいたしまして各所の作業計画が成り立つわけでありますけれども、それを管区でやはり全体を見まして調整をする、本局ではさらに全国を見まして調整、統合するという形で定まってくるわけであります。 累年、御指摘のように作業収益金が実は上がってきております。向上してきております。この作業収益金が向上する理由といいますか、私どもが向上を図るために考えております要素がおよそ三つぐらいあるだろうと思います。 その第一は、受刑者にできるだけ技能を付与していく、そして技能の質的向上を図ると、それによりまして作業収益を上げていくということが一つございます。これは受刑者の社会復帰にとって非常に重要なことで、矯正に寄与する大きなポイントになろうかと思います。 それから第二に、現在でも紙袋張りとか、あるいはつまようじづくりとかいうような非常に価格の低い、私どもで言いますと低格作業をやっております。こういう作業は社会復帰上も価値が低うございますし、これを近代的な付加価値生産性の高い作業に転換していくということがもう一つございます。そういうことを考え、そして賃金の上昇を物価に見合わして向上さしていくというようなことで、毎年の向上が図られておるという形でございます。 先生御指摘のように、作業計画を立てます場合に、職員はその獲得のために非常に努力をしてくれておるわけでございまして、無理をさしてはいけないということを絶えず私どもも常に念頭に置いております。そういたしまして、矯正社会復帰上それが寄与するように努力をすると、それにふさわしい作業目標を立てるという努力をいたしております。今後ともそういう努力をいたしたいというふうに考えております。
○藤原房雄君 最後に、大臣、先ほど申し上げましたとおりでございますので、ぜひひとつ、さっきも決意表明がございましたけれども、議員派遣、私どもがせっかく貴重な時間をさいて参りましたところでございますので、また非常に予算の編成の段階で大事な時点でもございまして、御努力いただきたい。そのことを要望いたしまして、質問を終わります。
○近藤忠孝君 午前中の憲法論議に関する大臣の発言を聞いておりまして、率直に申し上げて、かなりすっきりした答弁であると、こう感じましたし、そのことは先ほど雑談でも申し上げました。ただ、午後の討論を聞いていますと、幾つか聞き逃せない問題もありますので、これからその問題について聞きたいと思うんです。 いままで憲法問題の発言を操り返し大臣されてまいりましたが、それは国会内における議員の自由な発言であると、こうおっしゃいました。そして、そういう議員の自由な発言を抑えるのはおかしいではないかと、こういう反論もあったわけであります。となりますと、大臣の一連の憲法発言というのは憲法五十一条の議員の発言ですね。あれに関する、あの憲法五十一条に基づく発言であると、こう考えてよろしいでしょうか。
○国務大臣(奥野誠亮君) その規定とは別個のことじゃないだろうかなと思います。五十一条というのは、院内における発言が院外において責任を問われないというその規定でございましょうか。——それとは全然関係のないことでございます。
○近藤忠孝君 私は、衆議院における正森議員の質問を聞いておりましたが、そのときは明らかに、五十一条に基づいて自分が憲法発言したんだ、だから責任とるのはおかしいと、そう言いまして、正森議員からはあくまでもあの規定は院外の責任であって院内の問題は別だと、こう指摘されましたね。やはり五十一条に基づいて発言しておるという立場じゃないんでしょうか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 御趣旨わかりましたが、私がその規定を引いてお話をしたことがございます。それは、そういう規定が設けられておるほどに、国会の中では自由濶達な論議が期待されておる場所なんだと、こう申し上げたわけであります。そういう規定が置かれている趣旨は、国会の中ははつらつとした論議が交わされるような場所であってほしい、そういう願いの込められている私は規定だと思っているのだと、こういう意味で申し上げていると思います。
○近藤忠孝君 そうしますと、あくまでもこれは憲法六十三条の国務大臣としての発言、こう聞いてよろしいですね、大臣のずっと一連の憲法発言に対しては。
○国務大臣(奥野誠亮君) 六十三条というのは、出席義務を課した規定じゃないでしょうか。これと論議とはまた別のことだと思います。いずれにいたしましても、国会に出席をしてお答えをする場合には国務大臣として発言しているのだろうと思いますし、私が政治家個人として述べた場合には、それは政府所見ではございませんよと断って申し上げているつもりで、そういう言い方をしているわけでございます。
○近藤忠孝君 憲法六十三条はごらんのとおり「国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかわらず、何時でも議案について発言するため議院に出席することができる。」要するに、大臣の出席の権限と同時に発言の権限も書いてあります。要するに、この六十三条のおかげで大臣は発言できるわけですね。そう理解してないんですか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 私の発言が憲法のどういう条章に基づくものであるかなどとせんさくしたことはございませんでしたのでわかりませんでしたが、いま御指摘になりましたところには、国務大臣として発言する根拠を設けておるようでございます。
○近藤忠孝君 そうしますと、大臣としては、いままで自分の発言の根拠については憲法上の規定も確かめずに発言されてこられたと。そして片や、先ほど申し上げた五十一条の議員としての自由な発言という気持ちで発言されてきたと、こう理解してよろしいんでしょうか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 六十三条は、そこに書いてありますように、「出席することができる。」「出席しなければならない。」という規定だと思うのでして、私の話の根拠ということにもならない。むしろ私の所管じゃないことを八月の末に聞いておられるわけでございますから、お断りしても差し支えなかったと思うのです。私は憲法一般の所管じゃありませんから、お答えは差し控えさしていただきますと、こう申し上げてもよかったと思うのです。よかったとも思うのですけれども、先ほどお示しになりました、院外において責任を問われないとまで書いて、自由濶達であってほしいという期待が込められているのだから、あえて政治家個人としての意見を申し上げようと、こう思って御了解を得てお答えをさしていただいたわけでございます。 私の答弁の根拠が六十三条だと言われると、ちょっとこれは問題があるように思います。これは出席の義務を課した規定のように思います。私、別に深く検討しているわけじゃありませんけれども、どうも読みますと、「出席することができる。」「出席しなければならない。」ということのようでございますから。むしろあの場合には、私は答弁拒否したって差し支えなかったと思うのです。八月の場合に。答弁拒否してもいいと思うのです。しかし、あえて個人としてお答えをさしていただいたわけでございます。
○近藤忠孝君 私の理解では、大臣がここで発言できるのは、これはもちろん議員としてではなくて、——議員であれば、あなたは衆議院ですから、こっちは参議院ですからここで発言できないので、できるのはあくまで国務大臣であるがゆえに、そして国務大臣というのはこの六十三条であると、こう理解しておるんですが、大臣はそういう理解ではないと。で、片や、もうどんどん自由に発言されてきたとなりますと、私はそのにやはり一つ問題があったと思うんです。たしか奥野さんは、明治憲法については大変一生懸命勉強されたし、そして高文も取られたと思うんですね。だから、その点はたしかによく勉強されてきたと思いますけれども、新しい憲法についてただいまお聞きしても、自分の発言の権限の部分についてははっきりいままで自覚されておられなかった。こうなりますと、余り現憲法について正確な知識をお持ちになっておられなかったんじゃなかろうかと。そして自由に発言されてこられたとなりますと、その辺に私は奥野さんの憲法発言の問題が一つあったんじゃなかろうか。 そして一つは、もう衆議院のやりとり見てもわかるとおり、議員として自由に発言できるんだとなりますと、私は大臣が、特に法務大臣として特別やっぱり憲法を守る義務はあると思うんですが、それを越えて、一般の議員の自由な発言のつもりでやってこられたんじゃないか。こうなりますと、こういうやりとりが、与党である奥野さんと野党である私のやりとり、これはたしか憲法五十一条です。しかし、いまここでやっておるのはそうじゃなくて、あくまでも国務大臣の奥野さん、そして野党議員である私となりますと、やっぱり六十三条の問題じゃないかと思います。この点についてどうも正確な御認識がなかったんじゃないかと、このことを指摘せざるを得ないし、またその点の自覚がないまま自由な発言をされてきたところに、一ついままで問題があったということを私は指摘をせざるを得ないと、こう思います。 と同時に、私は法務大臣というのは他の大臣とやっぱり違うと思うんです。やっぱり法を守り憲法を守る点についての特に大臣ですから、同じ閣内で憲法を逸脱するような大臣がある場合には、むしろそれを直していくと、こういう私は責任がある、これが私は法務大臣であると思うんですが、そういう認識はございませんか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 八月の末の法務委員会におきます私の発言、その出席の根拠を六十三条だとおっしゃればそのとおりだと思うのです。その際の私の発言は、憲法一般は私の所管じゃないのでございますから答えなくてもいいのですよと、六十三条で答えなきゃならなくて答えたのじゃないのですよと、こういう意味で申し上げておるわけであります。ですから私は、政府見解じゃないという意味で、政治家個人としてお答えをすると、こう申し上げさしていただいて答弁したと、こういうことでございます。 それからもう一つ、法務大臣なるがゆえに特に慎重でなければならないのだよということにつきましては、先ほど私は、法務大臣であれ何大臣であれ、憲法は厳格に尊重、擁護しなきゃならない、それは変わりはないのですよと、こう申し上げさしていただいたわけでございまして、そう思っておるわけでございます。憲法論として。
○近藤忠孝君 大臣がこの六十三条に基づくという自覚が余りないということ、そのことがやっぱり問題だということを私はもう一度指摘をして次に進みたいと、こう思います。 この後さらに憲法の中身の問題と、それから金大中問題についてお聞きをする予定ですが、その問題について議論の時間をゆっくり残すために、最初に法務局の実務上の問題について一つお聞きをしたいと思います。 すでにお手元に資料などを渡してありますが、これは金沢で起きた事例です。土地課税台帳の記載ミスから法律上自分の所有の土地でなくなっている、そこに固定資産税が十八年間もかけられてきた、こういうことが大きく新聞でも報道されました。理由を調べてみますと、地方税法三百八十二条に基づく法務局から市役所への通知にミスがあったということであります。私、これを調査しまして、その原因が単なるミス、職員のミスといってそれを追及することで事は片がつかない。これは先ほど大臣も言われましたように、人も金も窮屈な法務省なるがゆえに起きた事例であると、こう理解せざるを得ません。現在の法務局の仕事の実情と人員から見まして、こういうミスが発生する必然性があると思えてならないんですが、その点についていかがお考えでしょうか。
○政府委員(貞家克己君) ただいま御指摘のございました通知と課税台帳とのそごというような事例に限って申しますと、私どもは従来正式に、そういう事例が数多くあって困ったものだというような報告を受けたことはございません。したがいまして、新聞紙で拝見いたしまして非常に驚いた次第でございます。 ただ、率直に申し上げますと、正式にそういう申し出なり注意を受けたことはございませんけれども、事務の現在の状況から見ますと、いずれかの過程においてそういった誤りが生ずる可能性は決して少ないとは申し上げられないというのが、私の実感でございます。はなはだ弁解めいて恐縮でございますけれども、地方税法に基づく通知事件、これは表示に関する登記とそれから権利に関する登記のうちの相当部分を占める所有権移転その他抹消等については、市町村長に通知をするという規定になっておるわけでございますが、これが事件のおおむね三分の一の量に達するわけでございます。したがいまして、現在、全国の登記所で扱っております不動産登記事件が約二千万件ございます。そういたしますと、三分の一といたしまして七百万件近くの事件について通知をしなければならない、こういうことに相なるわけでございます。 登記に従事する職員は年々わずかながら増員は認められておりますけれども、事務事件量と人員増とのアンバランスという状態はなかなか解消しがたい状況にあるわけでございますので、はなはだ申しわけないことでございますが、これはあくまでもそういった責任を他に転嫁するということは私としては許されないことだと思いますけれども、したがいまして正確を期するように、これを機会に全国の登記所に機会を見つけまして周知徹底して注意を促すつもりでおりますけれども、残念ながら、ただいま仰せになりましたような間違いが生じやすいような状況にあるということは、率直に申し上げざるを得ないと思うわけでございまして、通知につきましては、従来私ども明確に承知しておりませんけれども、たとえば、全くの登記に関してささいなミスがございますと、これは職権更正という手続になるわけでございますけれども、それも年間、ここ十年ばかり前には一万件程度であったものが、最近では一万八千件程度の職権更正事件——これは職権でみずから気がついて訂正するわけでございますけれども、そういった状況に相なっておるわけでございまして、まことに残念でございますけれども、なかなか諸般の状況からその絶滅を期するということが、言うはやすくして実行がむずかしいというのが偽らざる現状でございます。
○近藤忠孝君 実際、この事件が起きた金沢法務局を調べてみますと、職員の数、特に登記に関する職員の数が昭和二十五年以来ずっと二十三名です。それに対して仕事の量は二十倍、特に乙号事件といって登記の関係は何と百倍であるという、そこに私はやっぱり問題があると思います。そして金沢市役所の方では、現にこういった問題のあったこともあり、現在、課税台帳をオンラインシステムにするための作業をやっております。 そういう中で、三分の一、約三〇%調査しただけでも、これは昨日お手元に資料を渡しましたけれども、たとえば所有者の違うものだけでも二百六十四筆、その他大変な数なんですね。たとえば、共有関係に関する記載漏れですと一千件を超える。三分の一を調べただけでもそれだけなんです。ということは、金沢は全国の約三百分の一の人口ですね。やっぱり全国的には、これは平均的な都市ですから、約三百倍の同じようなミスが実際あるんじゃないか、こう思うわけであります。 そこで、これを今後改善していくための対策、それから同時に、この被害者に対しては一応五年分の税金は返すと、市役所は返すようですが、まだまだ被害は多いんですが、それに対する国の方の責任の負い方などないでしょうか。
○政府委員(貞家克己君) ただいま仰せの数字拝聴いたしておりますと、全国に相当数あるのじゃないかということでございまして、私もひそかにおそれているところであることは先ほども申し上げたとおりでございます。 ただ、実情を申しますと、金沢の例の場合のように、いわば登記権利者と義務者と正反対になってしまったというようなミスのために、これはどの過程でミスが生じたか、これは判然といたしませんけれども、そういうような事例は比較的従来私どもの耳には全く入っておりません。ささいなミス——ささいなミスも許されないことは同一でございますけれども、住所の一部が間違っているとか、あるいは姓名の一部が書き違いであるとかいうような場合につきましては、それぞれ当事者本人からの指摘あるいは苦情の申し出によって、その都度処理をしているものだというふうに私どもは了解しているわけでございます。しかし、そういった過ちが、軽微だから一切許されるというようなことは私どもは考えておりません。 したがいまして、ただいま申し上げましたように、すでにそういった事例がはっきりいたしました金沢地方法務局においては早速登記官その他の職員に対して、今後一層正確を期するよう登記官その他の職員に対しまして注意を喚起したところでございます。 私ども本省といたしましても、今後会同を開くような際には、必ずこれを一つのテーマといたしまして議題に供して、厳格にチェックをするという態度を確立する、そういう体制を確立するという方向で一層の注意を喚起いたしたいというふうに考えております。 また、通知の方法につきましても、これもいろいろ考えられる改善の余地があるかないかということもこれは検討されなければならないことであると思いますけれども、この点に関しましては、いわば法務局の方で手を省く方法という観点から考えればこれはいろいろあり得るかと思います。しかし、手を省くだけで、それは一般の国民に負担をかけるというような方法はこれはとりたくないわけでございますし、また、市町村の方に負担をいたずらに大きくするという方法も私どもとしてはとりがたい面がございますので、この点は非常に隘路があるわけでございます。 そこで、やはり抜本的には、そういった過ちが生じないようにするための客観点条件というものを私どもの方で極力整備していく、非常に迂遠なようではありますけれども、これ以外には方法はないのではないかというふうに考えている次第でございます。 そこで、先ほども御指摘にありましたように、法務局の、ことに登記事務に従事する職員と事務量とのアンバランスが非常な数に上っております。したがいまして、私どもは毎年そのための増員をお願いしておるわけでございまして、現に登記事務の特殊性というものは各方面の御理解を得まして年々増員を認められているわけでございますけれども、なかなか私どもが思うようには追いつかないという現状でございます。もちろん、定員事情の非常に厳しい時世である、財政状況はきわめて厳しい状況にある今日、私どもの方だけ十分な人員を確保してということは非常に無理だということは重々承知しております。したがいまして、一方では事務の合理化、機械化というような点を十分進めつつも、なお増員につきましては私どもの最大、最重点事項として今後もそういった措置を講じていきたい、かように考えている次第でございます。
○近藤忠孝君 認識をもっと大臣にも深めていただくために、たとえばこういう事例もあるんですね。登記簿に存在しながら課税台帳に記載漏れが二十二筆、それから課税台帳にありながら登記簿にないのが五十九筆、私ども弁護士から見ますと大変驚くべきことがあるわけで、そういうふうにいま局長言われた人員増等、特にやっぱりこういう国民に関する面については力を入れてほしいということを要望いたします。 次に、金大中事件ですが、外務省は来ていますね。—— 午前中も寺田委員から金大中事件の判決文入手についての質疑がありまして、どうもそれを聞いていますと、韓国側がそういうものを渡す慣例がないというのをうのみにしているようなんですが、大体そんな判決文を渡さぬという外交慣例なんかないんじゃないでしょうか。
○説明員(股野景親君) この判決文の入手につきましては、私ども日本側より韓国側の外務当局に対しまして、日本側としてはこの入手を希望するということをこれまでたびたび申し入れてまいったわけでございますが、韓国側としては韓国側の一般慣行として、韓国側の軍法会議の判決書といったものを外部に公表するという慣行にないという事情を説明いたしまして、この判決書というものを日本側にお渡しするということに困難がある、こういう事情を言ってきておるわけでございます。こういう問題につきましては、やはり外交当局間の話し合いで当方の望む結果を得るという形で努力することが必要だろうと考えておりますので、引き続きそういう努力を続けておる状況でございます。
○近藤忠孝君 韓国側の説明については午前中も発言あったんですが、問題は、私聞いておるのは、そんな韓国側の説明、それは慣行だということを日本の外務省は認めておるのかどうかということなんです。どうでしょう。
○説明員(股野景親君) これは私ども、韓国側の慣行で韓国側の国内の問題でございますので、私どもとしては韓国側の当局の説明がそういう次第でございますので、そういう説明はそれなりに受けとめているわけでございますが、なお私どもとしての希望を先方に申し入れておる、こういうことでございます。
○近藤忠孝君 実際そんな慣行なんかないんですよ。現にいままで、これは午前中も話がありました早川・太刀川事件、現に判決文入手されておりますし、さらに文世光事件、これでも判決文入手されておりますね。現に文世光事件では、先ほど午前中御質問あったものですから調べてみましたらば、判決文だけじゃなくて、実は途中経過まで、こんなに詳しいものが外務省からわれわれの手に入っているんですよ。それは、そういうものを入手するというのはむしろこれは外交慣例であって、たまたま今回の方が例外じゃないですか。
○説明員(股野景親君) 今回につきまして私どもるる努力いたしておるわけでございますが、残念ながらまだそれが実現していないという状況でございます。
○近藤忠孝君 いま私が申し上げたことは、慣例としていままでの判例は現に入手していると、だから外務省も入手しておるはずなんですよ。となれば、そういう事実はどうですか、お認めになるでしょう、いままでの。文世光事件とか早川・太刀川事件。どうですか。
○説明員(股野景親君) 御質問でございますが、私いまその関係の資料を持ち合わせておりませんので、この場でどういうものをわれわれとして入手しておったか、ちょっとお答えできかねる状態でございます。
○近藤忠孝君 それは外務省、大変怠慢だと思いますね。この判決文入手の問題については、かなり以前からもう大々的に問題になっているんです。当然いままでどうであったか、これは調べるべきじゃないでしょうか。
○説明員(股野景親君) 私ども引き続き努力してまいりたいと思っております。
○近藤忠孝君 大臣いないので、これ以上追及しても仕方ありませんが、そういう姿勢が私は韓国の態度をますますかたくなにしていると、こう思います。 そこで、今度はこの中身の問題ですが、これは法務省の問題だと思います。金大中事件発生当時の法務大臣は、言うまでもなく田中伊三次氏であります。で、金大中事件が韓国秘密警察、要するにKCIAの犯行であり主権侵害は明白だと田中さんは繰り返し発言されてまいりましたし、このことはわが党の正森議員もじかに聞いてまいりましたですね。そのことを直接に耳に入れてくれたのは、当時の駐日公使である、そしてKCIAの在日責任者であった金在権であったと、田中さんがそう言っておるということも、実際、金在権氏と思われる人物というぐあいにはっきり特定もされてきておるわけです。それからさらに、田中氏のところにその事実を告げた人が法務省に関係する国会議員以外の最高首脳となりますと、これはどう考えましても検事総長かそれに相当する人物、そう考えざるを得ないですね。そういう人々から田中伊三次氏は、このきわめて重大な事実を事件の当日知っておったと。まさにこのことは、政治決着を見直すべきだという一番の根拠になるんです。 実はこれ、大臣御承知だと思います。きのうの衆議院の法務委員会でわが党の安藤議員が発言した後に、田中伊三次さんが自分も発言をすると、こうおっしゃっておるわけです。もちろんそれは衆議院の法務委員会、また当然こちらの参議院の法務委員会でもこの後要求したいと思いますけれども、そうなりますと、われわれもそういう努力をいたしますが、現在の法務大臣として、当然法務省としてもその事実を聞くべきじゃやいでしょうか。どうでしょう。
○国務大臣(奥野誠亮君) 拉致事件、大変不幸な出来事だったと、こう思っております。 当初から一貫して警察当局が捜査に当たってきておるわけでございます。警察当局から検察に対しましていろんな要請があれば、当然検察も協力していかなければならないと思います。また、相互に連絡はしているだろうと思います。したがいまして、警察当局がいままでの経過も踏まえまして御努力になっていると思いますので、やはり警察当局の御努力にまちたい、同時に、警察当局から御要請のあったことについては法務省としても最善の協力をしていきたい、こう考えておるところでございます。
○近藤忠孝君 その答弁は繰り返し聞いておりますが、問題は、金大中氏が死刑になってしまうかどうかという、きわめて切迫した事態であります。それから田中伊三次氏が話す気になったのは、平時と違ってやはりきわめて緊迫した状況であるから、人命を救うためには話さなければいけないと、こういうお気持ちだと思うので、私は事態は変わっておると思います。特に政治決着、これは事実がはっきりすれば見直すということは鈴木総理も言っているわけですから、まさにそれを扱うのが法務大臣でしょう、内閣では。となりますと、大臣、いままさに積極的に大臣からそのことを、真相を間いただすべきだと思います。 私は、もちろん田中氏に対して、いまその点を求めておりますが、同時に田中氏と並んでもう一つ重要なのが、アメリカの方の当時の国務省韓国部長であったレイナード氏であります。これも予算委員会における質問におきまして、レイナード氏に対して問い合わせしないのか、こう聞きましたところ、鈴木総理は、在米日本大使館を通じて照会したがこれ以上かかわり合いたくないと述べた状況から、現在照会するつもりはない、こう答弁されました。 外務省にお聞きしたいのですが、このいま鈴木総理の答弁になった、レイナード氏に在米日本大使館を通じて照会した日はいつであるか、そのことをまずお聞きしたいと思います。
○説明員(股野景親君) 私、その資料をいまここに持っておりますが、ちょっと時間をちょうだいしたいと思います。次の御質問の間に……。
○近藤忠孝君 じゃ、捜している時にまた次の質問をしております。 大臣、レイナード氏は、一九七七年一月十四日以来、大体三つのことを繰り返し発言しております。一つは、金大中誘拐はKCIAの行為だ。それはアメリカの情報機関が確認した。二番目に、日本政府も警察情報でこれを確認している。それから三番目に、政治決着のために日本の政治家に、あるときには田中角榮氏と特定までしまして、金が流れたという趣旨の発言を繰り返し行っております。で、ある時期に政府がレイナード氏に問い合わせたときには、先ほどのとおり、いま答えたくないと言ったかもしれません。しかし事態は、田中氏の気持ちが変わったと同じように、レイナード氏の気持ちも大きく変わっておるのです。 たとえば、七八年八月五日、レイナード氏は毎日新聞に「金大中事件における日本の責任」という論文を書いて、積極的にそのことに触れています。それからことしの七月二十一日には「不正蓄財の金鍾泌 李厚洛、日本企業から収賄、自民党に巨額の還元」こういう発言も新聞紙上行っております。政府がレイナード氏に問い合わせしたのはいつかということが問題ですが、そういう中でレイナード氏はだんだんやっぱり積極的になっておるんです。これは大臣も御承知だと思いますが、レイナード氏は、事件発生当時アメリカの国務省の責任者としてこの情報をいち早く察知して入手して、そして韓国側に金大中を殺すなということで中心に動いた人です。いわばまさに命を助けたわけです。その後ああいう政治決着のまま推移しておって、大変金大中氏の身の上を案じておられた。新たな事態が起きて、そしてまたレイナード氏はさらに積極的な発言をし始めております。 たとえば、ごく最近ですが、ことしの八月十日のサンデー毎日にかなり長文の寄稿文をお寄せになりまして、ここの中では、金大中氏を救うための六つの提案までしているんです。日本の政府、アメリカの政府に対する、こういったことをやるべきだ、こういうことをまず指摘しています。大臣はこのレイナード氏の寄稿文をお読みになったでしょうか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 詳しくは承知しておりませんけれども、そういうことがあったという記事は週刊誌などで読んでいる程度でございます。 あとの問題につきましては、刑事局長からお答えさしていただきます。
○政府委員(前田宏君) 先ほど来御指摘になっておりますような田中元法務大臣の発言、これはいろいろな機会におっしゃっておるわけでございますけれども、たとえば先ほどもお話にございましたように、法務省に関係ある方ということはおっしゃっておられるようでございますが、それがだれであるかというようなことは一度も明らかにされていないようでございます。それから、最近もこのことが問題になりまして、私どもといたしましても検察庁を通じまして警察当局の方に問い合わせもしたことがございますが、警察の方では、最近におきましても田中元大臣から当時のことをお聞きしたということでございますが、その際にもこれという新しいことは得られなかったというようなことに聞いておるわけでございます。 また、ご指摘のレイナード氏のことでございますが、いまも指摘がありましたように、いろいろな発言があったり報道がされたりしておるわけでございますが、その点も当然、警察当局におきましてこの事件の捜査を中心になってやっておるわけでございますから、そういう発言のことも十分頭に置いて捜査がなされているものと、かように考えております。
○近藤忠孝君 どうですか外務省、まだ日にちわかりませんか。
○説明員(股野景親君) もう少し時間をちょうだいしたいと思います。申しわけありません。
○近藤忠孝君 質問が終わってしまうのですよ。では、日にちが正確にわからなければ、遅くとも私が先ほど挙げたことしの八月のサンデー毎日の記事の前であることは間違いないでしょう。
○説明員(股野景親君) 以前でございます。
○近藤忠孝君 そうなりますと、日本政府が問い合わせた時期から、もう明らかにレイナード氏の積極的な姿勢、これは変わっていることは明らかですし、しかも具体的な六つの救済のための提案をしたその後に死刑判決がありました。ちょうどその日に私もアメリカへ着いていろいろとこの関係も調べたのですが、アメリカでもかなりな反響を呼んでおったわけですね。となりますと、日本政府がもう一度、特に率直な奥野さんが、もう一度ぜひ話してくれということを、外務省を通じてにしろお話しになれば私は話すのじゃないか、こう思うのですが、どうでしょう。
○国務大臣(奥野誠亮君) いまのお話を警察当局に連絡をいたしまして、また警察当局からいろいろお考えを聞いていきたい、こう思います。
○近藤忠孝君 これは警察当局の問題じゃなくて、むしろ奥野さん自身の問題じゃないでしょうか。まさに前に田中さんが法務大臣として大変な事実を入手されておる、いわばあなたはその後継者でしょう。そしてまた、政府が政治決着を見直すかどうか決定するので、これは警察じゃないですね。その方の責任といえば、最終的には総理大臣にしろ、やはり法務大臣、あなたじゃないでしょうか。それをなぜ警察任せにするのでしょうか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 事件発生以来ずうっと警察当局が捜査を担当してきているものですから、そのたてまえを基本にして相互に協力をしていきたい、こう思うからでございます。
○近藤忠孝君 確かに警察が捜査を中心にやるというのはいいのです。具体的犯人がどこにおってそれが何をしたかという私は具体的な犯罪事実の捜査、これは警察に任してもいいと思うのです。いまや問題になっておるのは、かなり地位の高い人もしくは高かった人がそういう事実を知っておるかどうか、そしてまさに緊急に金大中氏を危機から救うために、政府の政治決着を見直しするかどうかというこういう時期ですね。私は、普通の捜査のやり方でもしも間に合わなかったら、片やその情報を入手して政治決着見直しが可能なのに、それをやらずに、再々国会で指摘されながらやらずに、しかも時期を過ごしてしまって金大中氏を死刑にさせてしまったとなれば、残念ながら奥野さんもそれに積極的ではないにしろ手をかしたことになりかねない。歴史上汚名を負わなければいかぬ、こう思うのですが、そうまで言われてもやっぱり警察に任せますか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 警察当局に御意見を伝えまして相談していきたいと思います。
○近藤忠孝君 きょう警察は来ていましたか。——警察の方はどうでしょうか、私がいままで指摘している問題について。
○説明員(鳴海国博君) ただいまの先生の御質問、レイナード氏の発言に関してのことでございますが、これにつきましては、先ほど外務省の方からお答えもございましたとおり、当面私どもといたしましては、レイナード氏はかつて在米大使館を通じての日本側の接触、その際に、自分としてはこれ以上この問題にかかわりたくない、また、だれに対しても何も発言するつもりはないと、そういう趣旨でこの事件の捜査等についての役に立つような、あるいは手がかりになるような情報の提供についての御意思がないというような御返事あるいは態度であったということを承っておりまして、いまのところその判断は変わっていないということから、特にいま改めての措置をとるということは考えておりません。
○近藤忠孝君 私が指摘したような幾つかの新たな事実、しかも奥野法務大臣も雑誌は読んでおられてレイナード氏の態度の変化は認識しておられるんですね。当然警察も知っておると思うんです。いまの答弁は、そういう新たな事実も踏まえた上での答弁ですか。
○説明員(鳴海国博君) 先生御指摘の五十五年八月十日のサンデー毎日でございますか、これは読んでおります。この中に、先生御指摘のとおり二、三の事柄が書かれておるわけでございますが、その一つといたしましてレイナード氏は、日本政府は——まあこれは表現としてはいろんな表現がございますが、日本政府は金大中氏事件にKCIAが関与していたことを完全に知っていたというような表現がある部分がございます。これに関しまして、私どものただいままでの捜査結果の事実を申し上げますれば、これまでの捜査ではKCIAないしは韓国中央情報部、これが関与していたという証拠は把握いたしていないということでございます。 そのほかの記事といたしましては、日本政府は金大中氏の誘拐実行に当たった韓国人たちの名前などを知っていたというような記事もあるわけでございます。この部分でございますが、これはかねて御承知のとおり、たびたび御説明したことでございますが、現在までの警察の捜査によりましては、金大中氏をホテルから拉致した犯人は六人であると考えております。この六人のうちの一名といたしまして、当時、駐日韓国大使館一等書記官でございました金東雲という人物を被疑者として割り出したということがあるわけでございますが、それ以外の犯人についての特定にはいまだ至っていない、そういうことでございます。そういうことでございますので、特にこのサンデー毎日等の記事によりまして新たな事実を私どもとしては得る手がかりになったということでもございませんので、先ほどお答えしたように当面は考えておるわけでございます。
○近藤忠孝君 金東雲だと特定できただけでも、それはもうKCIAのしわざだとこれは認めていいと思うんですね。そういう議論はここではしません。 問題は、警察と法務省だけが国民の認識からかけ離れて、わざとKCIAのしわざと認めない、いやむしろ認めまいとしているということを私は指摘せざるを得ないわけです。特に私は、今日の韓国の状況はもう本当に大変な事態です。ちょっとさかのぼりますが、まだ朴大統領時代のことですね。これがKCIAのしわざだということをアメリカの国会で証言した金炯旭という元KCIAの部長、この人がパリで蒸発している。そして韓国に連れ去られているわけですね。これは私がアメリカ調査中にずいぶん幾つかのところから聞いた話ですけれども、朴大統領はこの金炯旭の生首を持ってこいということを要求し、実際、前に持ってこられたというんです。こんな恐ろしいことが行われている。これは単なる一人や二人が言っていることじゃないんです。そういう国なんですね。それがもっとファッショ的な形が現政権、その中で金大中氏がまさに命が危ない、こういうことがやっぱり現状だと思います。 私は、午前中、奥野さんも人権感覚は大変おありになるということを拝聴したんですが、ひとつこの機会に、警察がああいう状況ですから警察に任せないで、ひとつ法務省としてもこの際こういう緊急の事態の中で動くべきだと、こう思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 御意見としてよく承らせていただきました。
○近藤忠孝君 承るということは、しっかり中へ入れてそして行動に移すということなんでしょうか。入れてこちらへ出てしまうのか、どちらかですか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 御意見のあるところをよく理解いたしました。
○近藤忠孝君 憲法問題についての議論をする時間がもうわずかになってしまったんですが、一点だけお聞きしたいと思うんです。 実は参議院の本会議で市川議員が、あの第二次世界大戦の性格についてお聞きしました。それについて奥野法務大臣の答弁は、戦争に追い込まれた当時の日本の事情を至極残念に感じていると、そして戦争の悲惨さについての感想を述べられましたですね。聞いたのは戦争の性格は何だったかと、こう聞いておるんです。これでは答えとしてはきわめて不十分なんです。どうお考えでしょうか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 私は戦争の性格というお尋ねでございましたから、戦争に追い込まれた当時の日本の事情、残念至極に感じておりますと、こう答えたわけでございます。 あの戦争の性格を、自衛のための戦争であるとか侵略のための戦争であるとか一言で片づけられないじゃないかと私は思っているわけでございます。でございますから、いろんな事情が複合して、とうとう日本を戦争に追いやってしまった、こう私は判断をしておるわけでございます。
○近藤忠孝君 幾つもの性格が複合しておったという点、私も認識を共通にします。ただ中身はちょっと違いますけれども。これはもう多くの歴史家が指摘しておりますけれども、三つの性格があったと。一つは、奥野さんが追い込められたと考えられている主要な面だと思うんですが、要するに帝国主義、外へどんどん出ていく、そういう国々の衝突。日本はむしろアメリカに戦争に追い込められたと、そういう認識がやっぱり一つだと思うんです。しかし、歴史家はもっと違うことを指摘しています。一つは、民族解放運動と民族を抑えるその戦いだったという点が一つと、それから一番中心は、日独伊のファシズムに対する民主主義の戦いだったと、このように多くの歴史家が書いています。一々挙げる余裕はありませんけれども。主要な問題は、このファシズムに対する民主主義の戦いだったと、こういう御認識はお持ちでしょうか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 近藤さんが言おうとされているところはわかります。しかし私は、徳川時代の封建社会から明治新政府ができて、近代日本を建設するために努力を始めた。それから十年ごとに戦争を繰り返してきた。私は、これを一連のものとしてとらえて判断をしなければ正確な判断ができないのじゃないかと、こう思っておるわけでございます。 となりますと、帝国憲法が統帥権の独立をうたっておったところにも問題があろうと思いますし、また、その後のマスコミの社会あるいは教育界あるいは軍部の姿その他いろんなことが私は複合してきていると思いますし、また、諸外国が黄色人種に対してどういう姿勢をとってきたかということも私はそれは原因の一つに数えたい気持ちもございますし、でございますので簡単には割り切れないし、また、数字を扱うようにはみんなの考え方を一つにしてしまうということも困難なことじゃないだろうかなと、こう思っております。
○近藤忠孝君 もうあと最後の質問になりますが、たくさんあるんですね。しかし、その中で現憲法はどういう立場をとっておるのか、これは明白だと思うんです。やはり日本が政府の行為によって戦争に進めてしまったと。やっぱりその場合、国内の人権を抑えるなど、言論など抑えたファシズムに進んでいった結果そうなってしまった、そういったことは再び繰り返すまいと、そういう立場は憲法の中に筋として一つぐっと流れている、こういう御認識はお持ちでないんでしょうか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 先ほど来たびたび議論になっていますように、日本国憲法は平和主義、民主主義、人権尊重、こういう貴重な理念の上に打ち立てられているものだと、こう考えているわけでございます。当然、戦争の反省もその中には十分盛られていると、こう考えております。
○近藤忠孝君 戦争の反省といった場合、私がいま指摘したやっぱりファシズムに対する反省と、こういう点もあるんでしょうね。
○国務大臣(奥野誠亮君) 憲法は学問、思想、信条、言論、表現等々の自由も強く保障しておるわけでございますから、おっしゃっているような点も入っていると理解できると思います。
○中山千夏君 初めて親しくお話しします。 私は昭和二十三年の生まれでして、そういう意味で言うと、この間、八月二十七日の衆議院の法務委員会でしたか、そこでちょっと教科書の問題に大臣が触れていらっしゃいましたけれども、まるっきりそういう教科書の教育を受けて育った人間なんです。 確かに大臣が御指摘になったように、私、それから私と同じ世代の者たち、それからその後に生まれてきた者たちというのは、愛国心と言えるようなものは教育されてこなかったと思います。愛国心というようなものがおまえの中にあるかというふうに聞かれますと、あんまり感じられない。でも、私たちの中には命を大切にする気持ちとか、それから自分の友だちや、たまたまこの日本という国の中に住んでいるほかの、日本人だけじゃなくて在日外国人の人もいるわけですね。そういう人たちに対して愛情を抱く気持ち、それから国境を越えた人類に対する愛というようなものは、ちゃんと育ってきたという気がしています。そういう教育、戦後の教育を受けたことを、私やそれから戦後生まれの大部分の人間たちは非常に満足しているというふうに考えているんです。 ですから、大臣とお話しするときには大分いろいろと意見の違いがあるかもしれませんけれども、この間、国会でははつらつな論議をすべきだということを大臣がおっしゃっていたということを聞きまして、そのことは私すごく同感なんですね。でも、とても素人で、国会の中に入ってきて窮屈さとか物の言いにくさとか、大分ちまたとは違うということを感じておりました。でも、大臣となら、はつらつとした論議ができるかもしれないと思ってきょうは質問に立ったわけなんですけれども、ぜひはつらつとお願いします。 まず、死刑制度についてちょっと、私、死刑制度に反対なんです。それで死刑制度についてお伺いしたいんですけれども、法相は死刑制度をどういうふうに考えていらっしゃいますか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 死刑というような制度がない社会、つくらなくてもよい社会をつくり上げたいなと、こういう気持ちが基本的にございます。
○中山千夏君 先進諸国では、大分死刑制度を廃止した国が多いようですね。日本で廃止に至らない理由というのは、どういうことだとお考えでしょうか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 廃止した国もございましょうし、また廃止に向かっている国もございましょうし、廃止した国がまた復活したいと考えている国もあるようでございまして、いろいろでございます。人の命を永久に奪い去ってしまうわけでございますから、真剣に考えていかなきゃならない大事な課題だと思います。 また、死刑廃止制度を国際的運動として繰り広げていらっしゃる方々もございます。日本には死刑制度はあるわけでございますし、また、六年前に法制審議会から刑法改正草案をお示しいただきました。その中では、死刑に処する罪種は減らしているわけでございますけれども、やっぱり死刑制度は残すという形で御答申をいただいておるわけでございますので、いますぐ死刑を廃止できる状態ではないというふうに思っております。
○中山千夏君 その廃止しない理由というのは、どういうものだとお考えなんでしょうか。
○国務大臣(奥野誠亮君) やはり凶悪な犯罪がなくならない、自分のやったことについてはそれなりにまた自分がその報いを受けるという趣旨がある程度抑止力になってくるのじゃないか、こうも思われるわけでございますから、凶悪な犯罪がなくなったわけではないし、また、何が何でも死刑制度を廃止せよということが国民の合意にもなってきていないし、また、法制審議会からもそういう答申をいただいているということになりますと、責任ある当局者としては、単に人道的といいましょうか、そういう見地だけで制度改正に踏み切るということは困難だということでございます。
○中山千夏君 法相御自身は、死刑は残虐だというふうにお考えになりますか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 当初申し上げましたように、こういう制度がなくて済ませるような社会をつくれれば理想だと、こう思っております。
○中山千夏君 ちょっと存じ上げないんですけれども、就任後に死刑執行の命令はなさいましたか。
○国務大臣(奥野誠亮君) いたしておりません。
○中山千夏君 もし、するというようなことになったとき、その行為について、もし私であれば、やっぱりすごく自分がそのことでもって殺人者になってしまうような胸の痛みというか、何か後ろめたさみたいなものを感じてしまうと思うんですけれども、その辺はいかがでしょうか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 私の在任中に、そういう任務が回ってこないことを念願いたしております。
○中山千夏君 よくこう——そうたびたびあることではありませんけれども、やはり大切な、世の中で重大視されている問題として、審理の間違いということがありますね。もし無実の人間を死刑台に送ってしまうようなことになった場合に、その責任をどういう形でおとりになるんでしょうか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 現在は再審の制度もございますし、いろいろな仕組みが講ぜられておるわけでございますから、そういう間違いは起こさないだろうと信じておるわけでございます。
○中山千夏君 もし起こったらというのは、お答えいただけないでしょうか。
○国務大臣(奥野誠亮君) もしというような事態であっても起こしちゃいけないと、こう思います。
○中山千夏君 なるほど。先ほど、ぜひ存続すべきだというようなお答えかなと思っておりましたら、なくなるような世の中が望ましいというふうにおっしゃったので、ちょっと希望を持ったんですけれども、死刑をなくしていく方向で国民的な合意を得るというような努力をなさるお気持ちはありますでしょうか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 凶悪な犯罪がなお残っているさなかにおいて、ただ死刑の制度だけなくするという動きをすることは、私は必ずしも正鵠を射てないじゃないかなという心配を持ちます。
○中山千夏君 とすると、やはり凶悪な犯罪をなくすというか、抑止する力に死刑はなり得るという考えを持っていらっしゃるわけですか。
○国務大臣(奥野誠亮君) そういう犯罪が残っている限りにおいては抑止し得る役割りを果たすのじゃないかと、こう思っております。でございますから、まずそういうものをなくすことから努力をしていくのが先決じゃないだろうかな、こう思っておるわけでございます。
○中山千夏君 鶏が先か卵が先かみたいで、とってもむずかしい問題で、まだ私はちょっと意見が違って納得できないところもありますけれど、非常に気になる問題があって、時間が迫っていますので、またかとお思いでしょうけれども、憲法についてちょっとお話を伺いたいと思います。 自主憲法制定国民会議に、現在も所属していらっしゃるわけですね。
○国務大臣(奥野誠亮君) 自主憲法制定国民会議は、いろいろな団体が一緒になってつくっておられる団体のようです。私は正確じゃありませんけれども。個人個人が加入しているのじゃなくて、いろんな団体でつくっておられるのじゃないでしょうか。私は、いずれにしても、自主憲法制定国民会議には入っておりません。
○中山千夏君 すると、自主憲法期成議員同盟には現在入っておられるわけですか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 自由民主党がつくっております自主憲法期成議員連盟でしたでしょうか、ちょっと名前は正確じゃありませんが、それには所属しております。
○中山千夏君 その議員同盟が、自主憲法制定国民会議に団体として加入しているということだと思うんですけれども、それはいかがですか。
○国務大臣(奥野誠亮君) どうもそのような形になっているようでございます。きのう、私、衆議院で質問を伺いながら教わりました。
○中山千夏君 そうすると、その自主憲法制定国民会議というところに自主憲綱領というのがあるんですよね。それについては御存じですか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 不勉強で申しわけありません。知りません。
○中山千夏君 自分の属している団体が属している団体の綱領について御存じないというのは、ちょっとびっくりしたんですけれども。 私が言うのもすごく変な感じがするんですが、こういう綱領なんです。「一、天皇は国家の中心であり、日本国を代表する。一、国民は国家に忠誠の義務を負う。一、防衛力を強化し、世界平和のため国際協力の義務を負う。一、われわれは歴史と伝統に基づく家族制度を確立する。一、われわれは公共の福祉を優先し社会の秩序に貢献する。一、われわれは国家緊急権の確立を期す。」というんですね。 綱領がある場合は、そこに加わっている団体の団体に加盟していらっしゃる方も、やはり綱領に同意していらっしゃるはずだと思うのですけれども、それはいかがなんでしょうか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 団体が加盟しているから、加盟先の団体の綱領全部にも共鳴しているはずだということにはならないと思うのです。それは一般にそういうものだろうと思います。 自由民主党の綱領は、平和主義、民主主義、基本的人権の尊重、これを堅持して憲法を改正すると、こううたっている点は、御理解をいただいておきたいと思います。
○中山千夏君 そうすると、いま読んだ綱領には全然賛同していらっしゃらないわけですか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 私なりにまたいろいろな考え方を持っております。
○中山千夏君 いろいろな考え方といいますと、この中の幾つかに賛同とか、幾つかには反対とかということですか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 自分は加わっていない団体の綱領に対しまして、私は批判すべき立場にはないように思いますので、それは避けておいた方がよろしいのじゃないかと、こう思います。
○中山千夏君 どうしてもおかしくなっちゃうんですけれども、大臣が入っていらっしゃる団体が、団体としてこの自主憲法制定国民会議、ここに入っているわけですよね。そうすると、結果として大臣も入っていることになるんじゃないですか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 自民党の団体が入っているからといいまして、自民党の団体に入っているみんなを、そちらの方の考え方で拘束するというようなことはできないはずであります。
○中山千夏君 そうすると、それには入っていらっしゃらないわけですね、つまり個人としては。
○国務大臣(奥野誠亮君) 自主憲法制定国民会議には入っておりません。
○中山千夏君 わかりました。 で、その入っていらっしゃる議員同盟の方のお話なんですけれども、去る三月に改憲決議の採択の要請をしたというふうに聞いています。それにこたえて五つの市町村議会が決議をした、そのときの決議の模様が、いつも大臣がおっしゃっている論議を尽くしてというあり方とはほど遠い、いわゆる数で押してしまう決議の仕方をしているんですよね。そのことについてはどうお考えになりますか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 憲法改正運動も自由だし憲法改正反対運動も自由だ、できる限り自由な論議の上で最終的な結論を得るようにしなければならないなと、こう思っております。
○中山千夏君 そうすると、自由な論議をしないで数で押すというような形で採択されたものというのは、非常によくないものだとお考えになるでしょうか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 採択された団体は、自由な論議を経ないでやったものか、あるいは多年にわたってお互いに意見を交換し合いながらそういう結論に到達したのか、そのときの採決だけでは私は議論ができないのじゃないだろうかなと思います。憲法も生まれまして三十四年たっておるわけでございますから、三十四年間に、お互いにどういう思いを持ちながら、どういう考え方を交わしながら、どういう行動を議論をしながらやってきたのか、それはしさいにはわかりませんので、そのときの採決の一時期だけをとらえて、論議をしなかったとかしたとかいう結論を用いるのは、少し判断が一方に偏しやせぬだろうかなという疑問は持ちます。
○中山千夏君 私は、論議がうんと尽くされれば強行採決のような形をとらなくても、出し抜くような形をとらなくてもきちんとした採決でできるのではないかと思うんですね。だから、その前に、多年にわたって論議があったというふうには思えないんです。でも、それはそれでおきます。 何度もおっしゃっていることで、きょうもお昼おっしゃいましたけれども、有力な政党間で、第九条に関して百八十度も解釈が食い違っているのは問題だと、それが問題があるので九条に問題があるというような言い方をしたというふうに再三お聞きしているんですけれども、食い違いが大臣が表現されるように百八十度というのは、すごく異常なような気がするんですね。たとえば、十度とか九十度とかというんだったら食い違いだなという感じですけれども、百八十度というのは真反対なわけでしょう。そうすると、食い違っているのではなくて、どっちかが間違っているんじゃないですか。それはどうお考えでしょうか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 表現の仕方ですから、これはどうお考えになるかわかりませんけれども、私は違憲と合憲ですから、全く正反対の違いじゃないか。自衛隊を認める、認めないですから、やっぱり百八十度の相違と申し上げても、そういう表現の仕方もあるのじゃないかなと、こう思います。
○中山千夏君 いまおっしゃったように、全く違うわけですね、違憲と合憲というのは。違憲と合憲というふうに違うから憲法第九条に問題があるということではなくて、それの解釈の方の、右と左に全く違う解釈の方のどちらかに間違いがあるんじゃないかと私なんかは思うんですね。それはどうお考えですか。
○国務大臣(奥野誠亮君) いろいろ複雑な経緯をたどってきていますので、私はいろんな解釈が生まれる可能性は多分にあると、こう思います。
○中山千夏君 そうすると、間違いかどうかということで言うと、どっちも合っているということですか。
○国務大臣(奥野誠亮君) どちらも合っているというつもりで議論しておられると思います。
○中山千夏君 そうすると、合憲の方も合っているし、違憲の方も合っているということなんですか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 私は合憲だと考えておりますけれども、違憲だと考えておられる方は、それなりに信念を持ってそうおっしゃっているのだと、こう思います。
○中山千夏君 そうすると、やっぱり論議ということをずうっとおっしゃるんであれば、むしろ合憲か違憲かという論議をもう少し一生懸命やった方がいいのじゃないかという気がするんです。昔、合憲か違憲かということで騒がれていたころ、若いころですけれども、それも覚えがありますけれども、その合憲か違憲かということが、何となく自衛隊というものが合憲か違憲かという論議が尽くされる前に既成事実みたいにしてできてしまった、それの尾を引いているような感じがするんですね。だから、いまからでも遅くはないから、合憲か違憲かという論議の方を、改憲論じゃなくて、してみようという気持ちはお持ちじゃないですか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 私もあなたと同じような気持ちから、ああいう言動をしているのです。国会で憲法九条に触れるとタブーみたいになっちゃっている。国会の審議がしばしばとまる。やっぱり論議には論議を重ねて、あらゆる問題について国の将来を誤らないようにしていかなきゃならない、そういう念願から私はあの八月の末の法務委員会以後、やっぱり国会を空疎なものにしないようにしようじゃありませんか、憲法論議も深めようじゃありませんかと、この二つ、私なりに使命感みたいなものを感じまして努力をしてきたわけであります。
○中山千夏君 しかし、それがやっぱり合憲か違憲かという問題じゃなくて、いきなり改憲という問題に行っちゃうから、かなり紛糾したのじゃないかというふうにそばで見ていて思ったんですけれども、そうではないわけですか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 改憲ということになりますと、どうしても九条の解釈の違いがあります限りは、それを手直ししなきゃならないという問題になる。手直ししないで自衛隊は違憲だ、自衛隊はやめるべきだ、それが日本の将来のために必要なんだと、こう考えていらっしゃる方々は、やっぱり改憲論も憲法九条の解釈論も、私は余り快くは思われないのじゃないだろうかなと思います。これまでの経過を振り返ってみまして、そんな感じがいたすわけであります。
○中山千夏君 でも、相手が快く思っても思わなくても、きちんと合憲か違憲かという討論をなすったらどうだろうと思うんですけれども。
○国務大臣(奥野誠亮君) ぜひ中山さんの御努力を期待いたしております。
○中山千夏君 本当にいまの憲法をまずは守ると、いまの憲法にまずは手をつけない、その上で自衛隊が合憲か違憲かという論議を皆さんがなさる場合には、努力はしたいと思います。 次に、八月二十七日の衆院法務委員会に、議事録がここにあるんですけれども、「日本は戦争に負けました直後に、修身と歴史と地理の授業の停止をまず命ぜられたのです。国旗も国歌も許されなかったのです。」というふうな大臣の発言が載っています。議事録にはそれしか載っていないんですけれども、新聞で拝見しますとちょっと違っていまして、おっしゃっていることは一緒なんですけれども、「「日本は戦争に負けた時、修身と地理と歴史の授業を禁止されたんです」。ちょっと間をおいて「国旗と国歌も許されなかったんです」と絶句してしまった。うつ向き、くちびるをかみしめ、目には涙。並み居る委員も息をのみ、一瞬シンミリ。」という報道がありました。大臣がちょっと涙ぐまれた、絶句して涙ぐまれたという報道を二、三の新聞で見たんですけれども、どうして涙ぐまれたんですか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 大変不覚をとったなという感じを持っているわけでございますので、そのときのことを言われると恥ずかしい思いがいたします。私はそのときに、タカとかハトとか、右とか左とか、一言で人をきめつけるようなことをしないで、一緒になって日本の将来を心配していこうじゃありませんかと、こういう気持ちが中心でお答えをしておったと思います。こういうきめつけ方をしておって日本の将来は心配ないのだろうか、やっぱりもっとフランクに話し合いながら今後の日本の進むべき道を求めようじゃないかと、こういう気持ちが私に込み上げておったものですから、それがああいうことになったのじゃないかなと思うのですけれども、私はその後深くはせんさくいたしておりません。
○中山千夏君 その後の委員会が終わってからの記者会見というか、記者の方たちにお漏らしになった言葉がありまして、いまハトとかタカとか言われることが中心だったとおっしゃった、そのことの多分同じようなところにある気持ちを漏らされたのだと思うんですけれども、「終戦当時、内務省の課長補佐として、占領軍と折衝する立場にあったが、「その時のみじめさ、悔しさが話しているうちに思い出され、不覚にもあんなことになってしまった」」という談話を出していらっしゃるんですけれども、それは事実と違いますか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 私は、そんなことを言った覚えはございません。あるいはそこをお書きになった方は、その方の推測でお書きになっているのだろうと思います。
○中山千夏君 じゃ、こういうふうにお答えになったことはないわけですか。
○国務大臣(奥野誠亮君) ありません。
○中山千夏君 私は、むしろそうお答えになった方がなるほどと思ったんです。というのは、タカだとかハトだとかといっていじめられるから泣いちゃったというんじゃ、余り子供みたいで、むしろ終戦当時の、いままでずっと政治を続けていらしていろいろな歴史をお持ちだと思うんです。私は、むしろこの新聞を読んだときに、それは法相の立場に私がなってみたときに納得できたんですね。というのは、法相のようなちょうど同じ年ごろの方でそういう方もいらっしゃいますから、その方を見たことがありますから、それは納得できたわけです。むしろ、タカだとかハトだとかと言われたから泣いちゃったという方が納得できない。 ただ、やっぱり私にとってとても奇異だったのは、戦後生まれの私にとって、戦争に負けたときに修身と地理と歴史の授業を禁止された、国旗と国歌も許されなかったと言った直後に、言った方が涙ぐんでしまって、しかもそこに並みいる議員の方たちがみんなしーんとしてしまったというのは、私にとってはとても奇異なことだったんですね。というのは、その当時の地理とか修身とか歴史とかというのは、私もたまに見る機会がありますけれども、こういうものを習うような羽目にならなくて本当によかったというふうに考えるんです。 たとえば愛国心、さっき教科書にないとおっしゃっていた愛国心の問題にしても、日の丸をつけて特攻隊で突撃していかなきゃならない、下手をするとそうなりかねない愛国心みたいなものをたたき込まれなくて本当によかったと思うし、私が周りにいるたくさんの一般の何の力も持っていない人たちに話を聞くと、終戦になった途端、つまり法相が言われる国旗も国歌も禁止されてしまったその時期ですね、そのとき非常にうれしかったという声が圧倒的に多いわけです。それはお昼にも社会党の方がおっしゃっていましたけれども、いろいろな拘束があったわけですね。国民は戦時中いろいろな拘束に縛られていた。思想の自由がない、新聞にも本当のことが書いてない。それから、もちろん食べるものもない。で、生命を維持していくという保障すら奪われている。そういうもう本当にひどい状態からやっと、それは敗戦という形ではあったけれども、そこからは少なくとも抜け出ることができるということが、まず国民にとっては一番先に、大多数の国民にとっては、どんと胸に来たことだったと私は受け取っているんです。 そのときに、たとえばアメリカの力であったかもしれないけれども、日の丸とか君が代とかというものに象徴された天皇の力、そういうものによってもう抑えつけられなくていいんだというような解放感というのが確かにあったというふうに私は理解しているんですね。そういうものと、大臣が国旗も国歌も禁止されてしまったんだと言った直後に涙ぐまれて議場がしんとするという光景は、私にとっては非常に遠いものに感じられました。その遠い、すごく遠いというところが、実はとても問題なのじゃないだろうかと思ったんですけれども、あすこで泣いちゃうというのも、議場がしーんとするのも、わからないなと思ったんです。それは私の感覚ですけれど。だけれど、私のような者もいま日本の中にたくさん育っていまして、私がこういうところに出てくるのを見てもわかるように、私も国民ですし、それから私のような考えを持っている者もやっぱり日本の国民なわけです。そのことを、ぜひ大臣として忘れないでいただきたいというふうに考えています。 で、閣僚としては、鈴木内閣の方針に従って、それから憲法遵守、擁護と、ただし一議員としてはその限りではないという政治姿勢らしいというふうに受け取っているんですが、それでよろしいでしょうか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 中山さんに対して失礼かもしれませんけれども、私が申し上げたら、すぐあなたがタカとかハトだけで私が詰まっちゃったと、こう断定された。そういうきめつけはしないでくださいよというのが私の念願でございます。あなたはそうお取りになったけれども、私はそんなつもりで言うているのじゃございません。もっと私は深刻なものが自分にあったと思うのです。ずっとあったと思うのです。先はやっぱり日本の将来だったと思うのです。同時にまた、戦後の日本をどう受けとめていくか、中山さんがおっしゃったように、いろんな考えの人があると思うのです。 私が常に言うているのは、自分の考え方が一〇〇%正しくて、相手の考え方が一〇〇%間違っている、この姿勢だけはみんなとらないようにしようじゃありませんかと、こう言い続けているのですよ。あなたも最後にそういう意味のこともおっしゃいました。同時に、日本が戦争に負けまして、占領軍は軍国主義の排除、日本の民主化の徹底、これが私は日本管理政策の二つの大きな旗印だったと思うのです。軍国主義というのは、私は軍事が政治とか経済その他において優先する、これは避けなければいけないということだと思うのですけれども、自衛のための軍隊を持っちゃ悪いということじゃないと思うのです。別の議論だと思うのです。しかし、軍国主義の排除で日本は完全に非武装されましたし、その後も団体行動まで禁止されたのですよ。それが軍国主義だと、こういう批判のもとになされたわけでございます。 ですから、私は一例を挙げたわけですけれども、戦後の占領軍の日本の管理政策というものが、みんないま振り返ってみて問題のなかったものばかりではないのだと、やっぱり過去を素直に振り返ってみて、いいもの悪いもの議論をしたらいいじゃないだろうか。過去はみんないいという方と、みんな悪いという方と、両極端になってしまっているのじゃないか。やっぱりいいもの悪いもの、いろいろ論議をし合いながら今後の日本の行くべき道を求めていこうじゃないか。憲法なら改憲論と改憲反対運動、硬直的な対決になっちゃっている。まず議論をして、その上で結論を得るようにしなければいけないのじゃないかと、こう私は考えているわけでございます。 憲法論のことでございますけれども、憲法解釈としては、国務大臣、自由に改憲のことも考え、また改憲のための説得もすることもできると思う。しかし、その内閣がどういう政治路線を歩むかによって国務大臣としてはその内閣の政治路線には拘束されますよ、その路線には忠実に従わなければなりませんよと、こう申し上げておるわけでございます。
○中山千夏君 法相は、選挙公報に改憲はおうたいになりましたか。
○国務大臣(奥野誠亮君) うたったことはございません。
○中山千夏君 私、とっても不思議に思うんですけれども、拝見していると大変熱心な自主憲法制定を考えていらして、しかも運動を推進していらっしゃるというふうにお見受けするんです。だれが見てもそうだろうと思うんです。議員になられるときに、選挙に出られるときに、むしろ改憲をしないと、護憲だということであれば、一つの現状維持ということですから特にうたう必要もないかもしれませんけれど、自分は議員になったときに自主憲法を制定するような動きをしていくんだと、そのことをうんと議論して、いまおっしゃったように、もしかしたらそのことをわからない人に説得していくような働きまでするんだというようなこと、これは物すごく重大なことだと思うんですね。 選挙民が一人の政治家を選ぶときに、その人がいまある一番大切な憲法というものを変えようとしているのか、変えようとしているのならどんな形に変えようとしているのかということは、選挙のときに投票する大切な大切な基準だと思うんです。それをなぜおっしゃらないのか、おっしゃらないでおいて当選して、議会に入られてからそれをなさるというのはとても納得できないですね。 といいますのは、議員というのは、ある一つの公報なり何なりで示した、主に公報ですね、それから政見放送もありますけれど、そういうもので示した姿勢、政治的な立場だとか意見だとか考え方というものに対して投票が行われるんであって、法相全体というか、議員になられたらどうぞ何してくだすっても結構ですという形で行われるのじゃないと思うんですね。だから、もし改憲ということをすごく考えて、議員の一つのテーマとして精力的にやられるのなら、どうして公報なんかにお書きにならないんですか。
○国務大臣(奥野誠亮君) 私は、大変失礼ですけれども、護憲というと憲法を改正しない立場だと、こう決めておられるとすると私は問題があるのだと思うのですよ。憲法を守る立場で憲法をよりよいものにするために改正に努力をしていく、こういう立場もあり得るわけです。憲法擁護——憲法を守る、その立場でも、この憲法をさらによりよいものにするために努力をしていくと、こういう考え方もあるのです。ですから、国会議員みんなが、おれは憲法改正に反対だとか、おれは憲法を改正するのだとか、そんなのは一々書けるものじゃありません。もっと真剣に考えなきゃ結論は出ないと思いますよ。また、自民党も今後三年の間にどこをどうすればいいか、具体的な内容を決めた上で国民に問いかけるようにしたいということで努力するということを言っておられるわけでございます。 おっしゃっているように、そう簡単に一人の力でどちらかの方向に持っていけるということじゃなくて、発議する場合にも国会議員三分の二以上の力がなけりゃ発議もできないわけでございますから、そういうこともお考えいただいて、そう簡単なことではないということだけの御理解を得たいと思うのです。
○中山千夏君 いまのお答えは、何か突然大臣が人格的に鈴木首相になられたようで、余りはつらつとした感じを受けませんでした。改憲、改正するということぐらいはきちんと書けると思いますし、護憲の立場で改正するんなら護憲の立場で改正するというふうに書けると私は思います。でも、それはとても納得、私にはできません。 その点がとても納得できないことと、それからお昼のお話の間でも、よく自由な論議ができないということを非常に強調しておっしゃっていました。いまお話ししていても非常に感じるところがあるんですけれども、私は一人一派でして、時間がとっても限られているわけですね。大臣の場合はあっちこっちでお話をなさるし、御自分の御意見をお述べになる時間はたくさんあると思うんです。にもかかわらず、非常に長く自分でお話になってしまう、意見を述べてしまわれる、それを大臣は自由だというふうに考えていらっしゃるんでしょう。でも、さっき近藤さんがおっしゃったように、私もやっぱり、ああいうふうにむずかしくは言えませんけれど、人格としては高潔でしらして非常に一本気な性格だとお見受けするのに、どっかおかしい、どっかおかしいとずっと考えていたんですね。きょうお話を伺っていて、さっきむずかしくおっしゃったけれども、つまり、閣僚としての自覚というものがやっぱりちょっとないのじゃないかということに、私は思い至ったんです。 それは、閣僚というのは、間接的な形ではありますけれども、行政府の中にいて、一般の国民よりは特別な権力を持つという権利をゆだねられているわけですね。たとえば、一般の人たちは絶対に死刑の執行命令なんかできないわけです。でも、大臣はおできになる。そういう権力を行政府は持っているわけです。行政府の人間は。そういう権力を持っている人間は、おのずからその発言とか行動とかいうものにはある程度の規制は加えられてしかるべきだし、はつらつたる論議は結構ですけれども、それの反発や反論が大きいのも当然なことだと思うんですね。権力を持っている人間たちが言いたいことをやる、したいことをやるというから、戦時中はいろいろな問題が起こった。そうではなくて、権力を持っている人間の発言とか行動とかいうものに、おのずからある程度の規制が加えられて、何の権力も持っていない人たちの自由を最大限に認めると、そういう姿勢が自由民主主義の姿勢なんだと思うんです。 そのあたりのことで閣僚ということについての認識、自覚に欠けていらっしゃるし、それから幾ら高潔な方でも、政治の場では、いい人だからといってそれで国民は納得しないわけです。だから、改憲、自主憲法制定などという運動に加わっている方が閣僚にいらっしゃると、幾らその閣僚は憲法改正をしない、そういうことには触れないと言っても、形できちんとあらわしていただかないと国民は納得できない。だから、ぜひ閣僚をおやめになるか、もしくはその憲法を変えるという動きを国民にわかるような形でおやめになるか、そのどちらかだと思うんですね。いかがでしょうか。おやめになる気はありますか、どちらかを。
○国務大臣(奥野誠亮君) 先ほど来たびたび答えてまいりましたように、憲法論と政治姿勢の問題がある。政治姿勢としては、鈴木内閣は憲法改正全く考えない強い姿勢を出しておられるわけでありますから、同時に閣僚としても、そういう意味で憲法論議についてはその姿勢を疑われないように慎重であってほしいと、こう言っておられるわけでありますから、今後特に憲法論議については慎重でいきたいと、こう思います。同時に、中山さんが不適格だと、こうおっしゃった。中山さんがおっしゃるのですから、これは私は謙虚に受けとめて、十分反省していかなきゃならないと思います。
○委員長(鈴木一弘君) 時間ですから 簡単にお願いします。
○中山千夏君 いまのお答えだと、国民に形のわかることであなたの政治姿勢を示してほしいという私の質問の意味は、故意にか故意ではなくか、非常にはぐらかされてしまった感じですが、時間ですのでこれで終わります。
○委員長(鈴木一弘君) 本日の調査はこの程度にとどめます。 —————————————
○委員長(鈴木一弘君) 先般、本委員会が行いました委員派遣について、派遣委員から報告を聴取いたします。 まず、第一班の御報告を願います。大石君。
○大石武一君 第九十二国会閉会後、委員会より北海道及び東北地方へ派遣をされました委員を代表して、調査の結果を報告いたします。ただし、お手元にもうこの内容がお配りしてありますので、それをお読みいただければそれで済むことでございますけれども、いままでのこの委員会の慣例でございますので、これをひとつ報告させていただきます。 去る九月八日から四日間、寺田理事、藤原理事、円山委員、それに私が、北海道及び青森県におきまして、最近における司法行政及び法務行政に関する実情等について調査を行ってまいりました。 調査の対象は、北海道においては、札幌高等裁判所、札幌地方裁判所、札幌家庭裁判所、札幌高等検察庁、札幌地方検察庁、札幌法務局、札幌矯正管区、北海道地方更生保護委員会及び札幌入国管理事務所並びに函館地方裁判所、函館家庭裁判所、函館地方検察庁、函館地方法務局、函館少年鑑別所及び函館保護観察所であります。青森県においては、青森地方裁判所、青森家庭裁判所、青森地方検察庁、青森地方法務局、青森刑務所、青森少年院、青森少年鑑別所及び青森保護観察所であります。 以下、調査項目に従って、報告いたします。 第一は、司法行政及び法務行政に関する管内概況であります。 まず、裁判所における各種事件の処理状況について申し上げます。 札幌高等裁判所におきます民事行政事件の新受件数は、逐年増加の傾向を示しているばかりでなく、医療過誤訴訟、公害訴訟などの近時の社会、経済情勢を反映した複雑かつ困難な事件が増加しているのが特徴であります。刑事事件の新受件数は、昭和五十三年度以降、増加が顕著で、道路交通法違反事件、交通事故による業務上過失致死傷事件及び覚せい剤取締法違反事件の比率が、年を追って高くなっております。とりわけ覚せい剤取締法違反事件が全控訴事件の五〇%を超える状況になっているのが特筆されます。既済、未済の件数は、ほぼ右の新受の推移に従っております。 札幌地方裁判所、函館地方裁判所及び青森地方裁判所における事件の概況は、札幌高等裁判所のそれとほぼ同様であります。ただし、函館地方裁判所においては、強制執行事件、特に破産、会社更生、不動産任意競売の各事件は、昭和五十四年以降、例年の二倍以上の増加を示しており、また、調停事件は、昭和五十三年以降、サラリーマン金融関係の調停事件の増加のために事件数が激増し、この傾向は、当分続くのではないかと見られております。 一方、家庭裁判所の場合は、札幌、函館及び青森の各裁判所を通じて、家事審判事件の増加が目立っています。ちなみに、北海道は、ここ数年来、離婚率が全国一位を占め、この傾向は、裁判所で扱う事件にもあらわれ、夫婦関係事件は、調停事件数総数の六二%以上の高率を占めています。 次に、検察庁関係について報告します。 まず、受理事件数ですが、札幌地方検察庁、函館地方検察庁及び青森地方検察庁とも、おおむね横ばいないし漸減の傾向をたどっています。犯罪の特徴としては、暴力団関係者による組織的な覚せい剤事件と、自動車による業務上過失致死傷事件の増加が目立っています。また、函館地方検察庁からは、最近の北洋漁業の不振に基づく漁業関係法令違反を初め、海事関係法令違反事件などが発生しているという報告がありました。 なお、北海道における特殊事情としましては、吹雪や積雪のために交通が途絶するなど、気象条件などによる各庁職員の勤務態勢の厳しさが指摘され、また、北海道には地方検察庁が四庁あるのに対して、警察は五つの方面本部に分けており、事務処理に多少円滑を欠く面もなしとしないとの報告がありました。 次に、法務局関係について報告します。 まず、札幌法務局における事務の概況でありますが、訟務事務は、量的にはほぼ横ばいの状況にあります。しかし、たとえば長沼ナイキ基地事件、スモン事件、六価クロム事件などに見られるように、特殊な専門的知識を必要とする事件が増加し、その質的変化が顕著になっています。次に、登記事務は、市勢の飛躍的発展もあり、昭和五十四年は、前年に比べて、甲号事件は五・六%増の約三万件の増加、乙号事件は一〇・一%増の約六十万件の増加となっており、事務量の増加は著しく、職員の事務上の負担は、きわめて厳しい情況にあります。戸籍事務及び国籍事務も毎年増加の傾向にあり、特に供託事務は、北海道教育委員会による教職員の教育業務連絡指導手当の供託など特殊な事件が多くなり、量的にも急激な増加となっています。 函館地方法務局及び青森地方法務局における事務の概要は、ほぼ右に述べたところと同様でありますが、青森地方法務局では、訟務事務について、国有林の多いことから国有林をめぐる訴訟が多数係属していることが特徴として指摘されます。 なお、法務局は、登記事務を初めとしまして、事務量の増加と事務内容の複雑、困難化が顕著であるにもかかわらず、職員数の増加はきわめて少なく、職員の負担は過重となっており、増員が強く望まれています。 次に、北海道地方更生保護委員会の報告であります。当委員会内には、札幌、函館、旭川、釧路の四保護観察所があり、保護観察官は三十六名おりますが、昭和五十四年度の保護観察事件などの取扱件数は一万四千四百五十一件であります。すなわち、保護観察官一人当たりの担当件数は約四百件強であり、その負担はきわめて過重なものがあり、保護観察官の早急な増員が強く望まれています。また、地方更生保護委員会の主要業務は、刑務所在監者等に対する仮釈放の審査とその決定を行うことであり、このため道内の各矯正施設に出向くのでありますが、旅費の不足のため適正な仮釈放の運用に影響することが大きく、仮釈放審査旅費等の増額が望まれています。 右に述べました保護観察官の事務量の負担過重による増員の要求と、仮釈放審査旅費等の増額の要望は、函館保護観察所及び青森保護観察所からも出されていました。一方、札幌入国管理事務所におきましては、昨年度の道内の出入国者総数は二万八千六百人を超え、前年度の四・二倍に達し、事務量は急激に増加しています。 第二は、裁判所及び法務省関係の庁舎及び宿舎の営繕状況であります。 まず、庁舎施設であります。青森地方検察庁は、昭和四十年十月に竣工した鉄筋コンクリート三階建ての建物に青森地方公安調査局等と合同使用しておりますが、建築当初予想されなかった雪害、地盤沈下に加えて、十勝沖地震等の影響で、天井や内外壁に亀裂が生じ、雨水が漏れ、また、内部のベニヤ板間仕切りの破損等建物全体の老朽化がはなはだしく、早急な改善措置が望まれる状況であり、また、札幌法務局の管内の庁数は、本局四、支局十五、出張所七十四の合計九十三でありますが、このうち敷地は三十八庁、建物は二十一庁が借り上げという状況であります。さらに、この九十三庁のうち、耐火構造は七十九庁、木造は十四庁でありますが、木造庁舎の老朽化が目立ち、職員の増員、大型複写機の導入などによる狭隘化が急激で、新営等による緊急かつ抜本的解決を図る必要に迫られている庁舎が十九庁に上っています。函館地方法務局管内においても、きわめて老朽狭隘のため地域住民等の利用者に不便をかけ、早急に新営が必要とされています出張所が二庁あります。 次に、宿舎について申し上げます。 全般的には、毎年増築され、次第に充足しつつありますが、宿舎のうちには大正以前の建築に係るものなど早急に改築を要するものも数戸あるといった状況であります。法務局関係では、宿舎は都市部に集中しているため、支局、出張所の所在地におきましては、交通事情の悪さも加え、人事配置上支障も生じており、住居の確保に苦慮しているとのことであります。 最後に、札幌刑務所、函館少年刑務所及び青森少年鑑別所の視察をしましたので、簡単に御報告しておきます。 札幌刑務所は、女子の収容も行っておりますが、近時、女子収容者の数が目立って増加し、昭和五十三年夏から収容者定員を上回るようになりました。また、すでに各種事件の処理状況において報告したように、ここにも覚せい剤事犯の広がりがあらわれており、従来の女子収容者は窃盗によるものが最も多かったのでありますが、最近は、女子収容者の四〇%が覚せい剤事犯者であります。函館少年刑務所では、その特色として、総合職業訓練施設として溶接科など十二種目を実施しており、そのうちの船舶職員科と無線通信科は全国施設から募集し、自動車整備科とともに、かなりの成果をおさめているとのことであります。ちなみに、同所の収容者数は年々増加し、一日の平均収容人員は、昭和五十年には三百五十五人でありましたのが、昭和五十四年には五百六十九人となっております。青森少年鑑別所の収容者の数も年々増加し、特に収容者の年齢の低下及び覚せい剤やシンナー使用の少年が増加し、収容者の約半数に達していることが指摘されます。青森県は、日本一の出かせぎ県で、従前は父親のみでしたが、最近は夫婦とも出かせぎに行く家庭が多く、こういう家庭に非行少年が多いという傾向があるとのことでありました。 以上をもって報告を終わりますが、詳細は、調査室保管の資料に譲りたいと存じます。 最後になりましたが、調査に当たり、現地の各関係機関から終始懇切な御協力をいただきましたこと、また、最高裁判所及び法務省から種々便宜を得ましたことを報告し、厚くお礼を申し上げます。
○委員長(鈴木一弘君) 次に、第二班の御報告をお願いいたします。真鍋君。
○真鍋賢二君 第九十二回国会閉会後に、委員会より香川県及び高知県へ派遣されました委員を代表して、調査の結果を御報告いたします。 去る九月十日から三日間、鈴木委員長、上條理事及び私、真鍋とが、高松、丸亀、善通寺及び高知の各市におきまして、最近の司法行政及び法務行政の実情について調査を行ってまいりました。 調査の対象は、香川県におきましては高松高等裁判所、高松地方裁判所、高松家庭裁判所、高松高等検察庁、高松地方検察庁、高松法務局、高松矯正管区、四国地方更生保護委員会、高松入国管理事務所、丸亀少女の家、四国少年院でございます。高知県におきましては、高知地方裁判所、高知家庭裁判所、高知地方検察庁、高知地方法務局、高知少年鑑別所、高知保護観察所、高知刑務所でございます。 以下、調査項目に従いまして、御報告申し上げます。 第一は、裁判所及び法務省関係各庁の管内概況でございます。 初めに、裁判所における各種事件の処理状況について申し上げます。 まず、昭和五十四年までの五年間の事件の概況を民事事件について見ますと、高松高等裁判所の民事訴訟事件の受理件数は、一時減少したもののその前後に大きな増減はなく、管内の地方裁判所及び簡易裁判所の新受件数は、全般的に見て、緩やかな増加の傾向にあると認められます。特に高知地裁管内の簡易裁判におきましては、昭和五十一年以後民事訴訟事件が急増しており、これは割賦購入あっせん業者からの立てかえ金請求事件の増加によるものと見られます。 次に、刑事事件について見ますと、高松高等裁判所における刑事訴訟事件の受理人員は、昭和五十三年以降増勢に転じ、管内地方裁判所におきましても、五十四年は五十年に比較して約二八%の増加となっております。ただ、管内簡易裁判所における刑事訴訟事件及び略式事件の新受人員は、ほぼ横ばいの状態にありますが、高松では略式事件が増加し、高知では訴訟事件が減少してきております。刑事事件の増加は、覚せい剤取締法または道路交通法の違反事件の漸増によると考えられます。 各裁判所における事件の処理状況を見ますと、民・刑事件とも新受件数、新受人員数の増減に応じて推移しており、未済件数、未済人員に大きな変化はありませんが、高松高等裁判所における昭和五十四年の刑事事件の未済件数は、過去五年間の最低となっております。 なお、再審請求事件として注目されております。いわゆる財田川事件は、現在、高松高等裁判所に係属するところとなっております。 次に、家庭裁判所関係の事件について見ますと、高松高等裁判所管内の家庭裁判所における家事事件及び少年事件は、ともに年を追って増加の傾向にあります。少年事件は、高松家裁管内に例をとると、昭和五十四年までの五年間に、道路交通法違反保護事件を中心に四三%の著しい増加を示しております。家事事件は、審判事件、調停事件とも、高松、高知両家裁管内ではほぼ横ばいの状況にありますが、核家族化の進展等社会情勢の変化を反映して複雑困難な事件がふえております。これら事件の処理状況はほぼ新受に見合っていると見られます。 次は、検察庁関係でございます。 高松高等検察庁管内の治安情勢は、おおむね平穏に推移しておりますが、ここ数年覚せい剤取締法違反事件が累増の傾向にあります。このことは、覚せい剤の使用による心神喪失の状態での犯行の発生あるいは暴力団の資金源等にも関連するゆゆしい問題と言わなければならず、今後とも厳正な取り締まりが望まれるところであります。刑法犯と特別法犯との割合は、ほぼ一対二の比率で推移しております。また、高松地検の昭和五十四年の受理人員で見ますと、刑法犯の七三・八%が自動車による業務上過失致死傷事件、特別法犯の八七・九%が道路交通法違反事件であり、交通事件が両者の大半を占める状況にあります。高知地検管内の犯罪状況の特徴としては、殺人事件と交通事故による死亡者数がともに全国ワースト一位にあることを挙げなければなりません。さらに、飲酒運転による事故件数も、愛媛を除く四国三県はすべて上位にあり、道路交通事情の改善等適切な対策の必要が痛感されます。 次は、法務局関係であります。 高松法務局管内の最近の訟務事件の動向は、量的にはほぼ横ばいの状況にありますが、質的には顕著な変化が見られます。すなわち、伊方原発訴訟、未熟児網膜症訴訟等公共事業関係あるいは薬害関係の大型で複雑困難な訴訟の増加がそれであります。一方、民事行政部門におきましては、戸籍、供託事務は横ばいの状況ながら、登記乙号事件の需要の拡大傾向はとどまることなく、特に直接請求事件の増加によって窓口事務に混雑の度を加えております。このような状況から、事務量に見合う職員の増員と処遇改善のための行政職(一)四等級定数の拡大について切実な要望がなされたのであります。法務局の増員については、かねてから強い要望のあるところであり、この際、職員の適正配置等格段の措置が望まれます。また、高知地方法務局におきましては、管内二十一出張所中、八庁が一人庁であり、職員に事故ある場合の対応に苦慮している実情にあります。 次は、矯正関係であります。 丸亀少女の家は、四国唯一の女子少年収容施設でありまして、長期または短期の処遇を必要とする者に対して、その資質と特性に応じたきめ細かい個別的矯正教育がなされております。出院後四年までの更生率は八〇・七%となっております。 四国少年院は、長期処遇の少年の収容施設でありまして、現在、収容者の約半数は窃盗によるものですが、二割近くは毒物・劇物取締法または覚せい剤取締法の違反によるものであります。当院におきましては、薬物乱用、暴力志向等問題群別講座を設け、非行の態様に対応した特色ある処遇が行われております。 高知刑務所は、明治四年の開設にかかるものでありますが、昭和五十一年十月に現在地に新築移転し、実刑刑期八年未満で犯罪傾向の進んでいる若年者を主として収容しております。昨年末に収容定員が倍増しておりますが、収容者の適正処遇とボイラー技能等の職業訓練の充実に向けて実績を上げております。ちなみに、全国の裁判所、検察庁の指定用紙は、一括して当所の印刷によるものであります。 高知少年鑑別所におきましては、虞犯による女子中学生の収容が急増しているのが注目されます。 次に、更生保護関係でございます。 四国更生保護委員会管内の保護観察事件の受理件数は増加しております。これを高知保護観察所について見ますと、昭和五十四年までの五カ年における件数は、保護観察付執行猶予者を中心に二倍以上に増加し、中でも交通事件は約四・五倍に達しております。また、四国管内の一般的動向として、覚せい剤常用者、暴走族少年等の処遇困難者及び暴力団関係者、精神障害者等処遇上特別な配慮を要する者がふえる傾向にあります。これら保護観察対象者に対しましては、保護観察官の定期駐在による面接指導や家庭訪問による直接処遇が肝要とされながら、現在の定員と予算をもってしてはその効果的実施は期待できない状況にあります。同管内における保護観察官一名当たりの事件担当件数が全国平均を上回る事情もあって、現地では保護観察官の大幅増員と旅費の増額が望まれております。 次は、入国管理関係であります。 高松入国管理事務所管内の外国人登録数は、本年六月末現在五千六百九十五名で、その八二%は韓国・朝鮮人であります。いずれの県におきましても定住者は漸増の傾向にあります。管内の過疎地域では、無医状態を解消するため、主として中国、韓国を国籍とする外国人医師を招聘する傾向が強く、七月末現在では五十名が在留中とのことであります。また、最近の状況の特徴は、小型韓国船の入港の急増でありまして、今年八月現在で九十四隻と、昨年一年間の実績をすでに大幅に超えております。これらの入港地はいずれも入管出張所から遠隔の地にありますため、臨船審査体制の充実上、出張旅費の増額について要望がありました。 第二として、裁判所及び法務省関係の庁舎及び宿舎の営繕状況について申し上げます。 まず、庁舎施設についてでありますが、裁判所関係では近年鉄筋建築への整備が進んできているものの、高松及び高知管内の簡易裁判所のうち八庁は、主として昭和二十年代の木造建築であり、雨漏り、壁落ち等の見られる庁舎もあって、その整備が急がれております。検察庁関係では、昭和五十二年に高松法務合同庁舎が新営され、現在、高松高等検察庁ほか九庁が使用し、その施設、執務環境は満足すべき状況にあります。一方、区検察庁の一部には、裁判所同様昭和二十年代の木造庁舎が見られ、そのうち、台風常襲地帯にあって老朽化のはなはだしい赤岡区検、シロアリ被害と狭隘化の著しい土庄区検については、現在新営方について検討がなされております。法務局関係では、庁舎の整備は逐次進んでおりますが、いまだに木造老朽化庁舎が多く、また登記事件の急増による利用者の増加等によって狭隘化が著しく、早期新営ないし増築を要する庁は二十庁を下りません。また、四国四県における法務局の冷房機設置率は一五・七%にすぎず、管内の高温多湿の気象条件を考慮すれば、その充実が望まれるところであります。 最後は、宿舎についてであります。職員の宿舎は、逐年増築整備され、安定充足の方向にあると言えますが、高知地検におけるごとく宿舎不足の例も指摘されております。特に、法務局の支局管内では職員宿舎の大幅不足によって人事管理上に隘路を生じており、その確保については、一層の配慮が必要と思われます。 以上をもちまして報告を終わりますが、詳細は調査室保管の資料に譲りたいと存じます。 最後に、今回の調査に当たり、最高裁判所及び法務省から種々便宜を得ましたこと、また現地の各関係機関から終始懇切な御協力をいただきましたことに厚くお礼を申し上げます。 以上です。
○委員長(鈴木一弘君) 以上で派遣委員の報告は終了いたしました。 本日はこれにて散会いたします。 午後四時三十九分散会 —————・—————