外務委員会 第4号
- 発言数
- 161 件
- 登壇者
- 18 名
- 会派数
- 6
- 開催日
- 1980/11/13
会議録
○委員長(秦野章君) ただいまから外務委員会を開会いたします。 国際情勢等に関する調査を議題として質疑を行います。 質疑のある方は順次御発言願います。
○戸叶武君 伊東外相から今後の日程を最初に承りたいと思います。来月に入ってから中国をお訪ねし、それからECの国々を訪問し、エジプト等も訪ねてまいるということですが、とりあえず年内の予定はどのような日程になっておるか、それからどういう目的でこれらの国々の代表的な人物とお目にかかろうとしているか、そのことをまず第一に承りたいと思います。
○国務大臣(伊東正義君) 日程の御質問でございますが、国会が終わりました後で十二月の三日、四日、五日が日中の閣僚会議がございます。これは第一回の会議でございまして、こちらからは大蔵、通産、農林、経済企画庁、運輸の各大臣、私と六人で参ります。向こうは谷牧副首相が一番ヘッドになりまして、できればほかの副首相にも出ていただきたいという要望はしておりますが、まだ出席は確定いたしておりません。谷牧副総理が向こうの主席であることは、これは間違いございませんが、そして国際情勢初め経済問題、経済協力問題とか、そういうことを含めます日中関係全般について意見の交換をするという予定でございます。これは第一回目でございますので、私は、この有意義な会議をぜひ成功裏に開きたいというふうに思っております。それに出席をいたします。 それから、五日の晩帰りまして、六日の晩から、フランスへ行きますが、これはIEAの石油関係の閣僚会議がございますので、私と通産大臣が出る予定でございます。それが終わりましてから、イギリス、ベルギー、ベルギーは特にECの関係も別にございますのでベルギー。それから来年一月から議長国家になる予定のオランダ。それからドイツ。それから十二月の十七日にスエズ運河の改修工事の竣工式がございまして、招請がございますのでエジプトへ行きまして、そこへ出て帰ってくるという予定にしております。それが年内の予定でございます。なお、一月は八日から二十日まで総理がASEANに行かれますので、これは同行する予定でございます。 フランスは石油の会議に出るわけでございますが、これは来年度の世界の石油の需給の見通しとか、そういうことが相談になるわけでございますが、それ終わりましてから、IECとは実は昔から非常に経済関係があることは御承知のとおりでございます。ところが、政治的な話し合いというのはわりあい少なかったのでございますが、ことしイランの人質の問題の経済制裁といいますか、それのときに大来前外務大臣がECの外務大臣に会いまして、事前にいろんな協調を保っていくということで相談に参ったのでございます。それを契機にしましてECと日本の間が非常に近くなったということで、EC側から非常に喜ばれて、今後とも経済の問題は当然であるが政治の問題も、いわゆる西側の陣営でございますから、よく話し合って協調してやっていこうじゃないかという空気が非常に強く出まして、日本とECとの関係が、経済的な問題だけじゃなくて、政治的にも非常にこう親密の度を増すということになったわけでございますので、今度、私外務大臣になって初めてでございますので、各国の首脳、外務大臣はもちろん、できれば首相とか大統領とかに会って、国際情勢あるいは三国間の問題、経済問題だけじゃなくて、そういう政治問題、ソ連との経済措置の問題もございますし、あるいはイラン、イラク、もっと大きく言えば中東の和平の問題もECも非常に関心を持っておりますし、そういう問題もございますし、またECとASEANとのつながりというのが、特にドイツの外務大臣あたりが強く主張しまして、濃くなってきておりますので、そういうような経済問題のほかに政治問題も国際情勢あるいは二国間の問題を話すということで、日本とECが協調して世界の平和、安定のためにひとつ役立つように、その場合日本はどういうことをやれるかというようなことを、向こうの首脳と意見の交換をしてまいりたいという考えで、EC諸国家に参ります。 それからエジプトは、さっき申し上げましたように、スエズの改修の竣工式がございます。招待をされておりますのでそこへ出まして、いまサダト大統領にも会える、大体会って話をしようということになっておりますが、中東の和平の問題でございますとか、そういう中東情勢等について、あるいはイラン、イラクの紛争等について意見の交換をしようというつもりでございます。
○戸叶武君 園田外務大臣のころから、やはり教養と見識とを持った人が実際問題とぶつかって触れ合っていくと、そのたびごとに外交に対する感度が発達することを目の当たり私たちも見、特に大来さん及び伊東外務大臣には期待するところが大きいのでありますが、一国の外交、防衛、国の安危に関する問題も、無責任なと言っては失礼に当たるけれども、横談論議よりも、責任を持った人たちが世界の中における日本のあり方、行き方、そういうものをしっかり踏まえて、それが言動にあらわれてくれば、そのことによって日本の政治に対する信用というものが増すと思いますので、そうした意味からも、感度の強い伊東外務大臣にはいままで大きな期待を持ち、私たちも余りせかせて委員会に引っ張り出すということよりも、まあ、そで触れ合うも他生の縁というが、トインビーが言ったように、異質な文化を持っている民族でも、その触れ合いによってそこから新しい融合が生まれるという一つの教訓を政治の中にも生かすべきであるという観点に立って、いままで伊東さんの一応体で触れて確かめて、そうして一歩一歩堅実な態度で外交、防衛の問題も責任ある一つの考え方を表明してもらいたいと待ちわびていたのですが、いままでの経験において何を多く学びましたか。
○国務大臣(伊東正義君) いまおっしゃったように、人的交流が非常に大切だとおっしゃることは、私もそのとおり自分で経験してそういう感じがいたします。 実は、ことし最初に東南アジアから南西アジアへ回ったわけでございますが、あのときも各国の首脳と会って二国間の問題、特にあのときはカンボジア問題とアフガニスタン問題が中心になっていろいろ話したわけでございますが、私はそういう各国の首脳と会ってじかにはだで、またこの目で、この耳で意見を聞き、実情を見るということは、私は今後の外交をやっていく上に非常に大切であり、また役立つという感じを強く持ったわけでございます。あれから東南アジアを回って国連に行ったのでございますが、国連の場でも大体もう前に一回会って話をしているという人にまた会うわけでございまして、最初に会うという感じとは全然違った感じで話ができる、意思の疎通を図れるということでございますので、私は外交の責任者は、なるべく外国の首脳と意見の交換をするということが非常に大切なことだということを実感をしたわけでございます。 ヨーロッパへ行けばキリスト教の文明があり、エジプトへ行きますとまた別なイスラムの世界があるというようなことで、おのおの歴史、文化、伝統も違うわけでございますが、そういう人々と話をしていくことが、これは本当に、それを外交に生かしていくということが非常に大切だという、私は短かい経験でございますが、実感を持ったわけでございまして、そういう人々と話して世界の平和、安全というものはどうしたら保てるか、その中でアジアはどうだ、日本はどういう役割りだというようなことを探していく、そして外交、政治の中に生かしていくということが大切だということは先生と同意見でございますので、極力そういう努力をやって、日本の国益も守り、日本の平和、繁栄ということに努力をしてまいりたい、短い経験でございますが、そういう感を強くしたわけでございます。
○戸叶武君 日本の外交にとって、防衛をも含めて、やはり日本の東の方にあるアメリカと西の方にあるソ連とにはさまれて、日本はその谷間においていろいろ苦労しなければならないような面が今後も長く続くと思うのであります。来年になってから、大体世界を一回りしてから最終にアメリカを訪ねる予定になっているとのお話ですが、いち早くドイツのシュミットさんは近く、前々からアメリカを訪ねる予定をつくっておって、話し合いをする段取りになっている模様でありますが、いま国際社会において二度も世界戦争で敗れた西ドイツの立ち上がりというものは、恐慌と戦争と革命的な動乱の中にもまれてきて、いまのような政治体制をつくっただけに、外交においても非常に私たちは学ぶべきところがあるんじゃないかと思います。その一つは、やはり将来に対する予測を正確に見ながら、それに対応してやはりむだのない手を打っていることであります。一面においてフランスとの融和も図りながら、一面においてECから離脱したいというような考え方も持っているイギリスとの調整もし、またヨーロッパに対して過重な軍事的負担をかぶせようとするアメリカ、ソ連との対立を激化させても構わないというような行き方に対しては簡単に応ぜられないという態度も示していると思うのであります。これが新しい政治のリーダーシップのあり方であって、右か左か、戦争かデタントかというような単純な方式で、イデオロギーやあるいは宗教の力等をかりて、虚飾な力に依存して政治をやろうという形よりも、きわめて具体的な、現実的な問題を政策の中に打ち出して調整を図ろうとしていく行き方というものはなかなかみごとだと思いますが、そういう意味において、この前、大来さんが、いわゆるエコノミストとしては一流の人ですが、アメリカ通と見られていた人がやはりアメリカの現実の政治、外交、経済におけるいろいろなもろもろのちぐはぐな面をも洞察して、アメリカに順応しながらも、その中でみずからの自主性をつくり上げようという努力をしたことはみごとであり、それと同時に、日本だけの力で、日本の自主性を確立するなどということは簡単にできるものではない、日本以上に多くの悩みと経験を持っているヨーロッパ諸国におけるドイツなり、あるいはフランスなり、イギリスなり、あるいは金融面におけるスイスなり、いろいろなところの協力を得ながら、私は一つの外交の方向というものをきわめて実証的に方向づけていった役割りはやっぱり相当なものがあったと思うんです。日本には、アメリカがかぜを引けば日本もかぜを引くというような、まねすることが名人のオウムのような政治家も大分おりますが、そういうやり方でなくて、もう多極化された時代においで、もろもろの問題を一つ一つ生かして、そしてその上に立って国際連帯の力でデタントへの方向を一歩でも前進させようという努力が、日本の外務官僚の人たちの中にも、核拡散防止条約の批准前後から私は腰がすわってきたと思うんです。 そういう意味においてファシズムの——ファシズムと言うと怒られるからいけないかもしれませんが、軍核時代に便乗する、いわゆる憲法改正論や何かの空転が日本において、政治において行われております。そういうことよりもまともなひとつの国会論争というものが今後においても展開されなければならないと思っていますが、伊東さんも非常に用意周倒のようであるし、いまの総理大臣も用意周倒過ぎるようでもあって、遅々として日本の正体がわからないという状態も醸し出しておりますが、アメリカにおいてカーターが、善意なところもあるけれども、あの一貫性のない、貫く精神がない動揺ぶり、信念のなさ、そういうものがアメリカの国民から離反した原因だというふうに多くの人たちがいま見ております。いまのような外交、防衛に対しても、憲法の問題に対しても腰がすわってないで何を考えているのか、火事が済んでから拍子木でもたたこうとしているのか、わけのわからない政治のもやもやとした空気というものに、カーターよりもこれはかなわないまどろっこしさを国民は感じていますが、伊東さんは当事者の中に入っているような、入ってないような点がありますけれども、それをどういうふうに受けとめておりますか。
○国務大臣(伊東正義君) 非常に広範な御意見を承ったわけでございますが、前の外務大臣の大来君が国際的なエコノミストとして世界じゅう非常に知己が多い、そういうことで世界じゅうの人々と非常に協力して外交が進められた、またECとの関係でも非常に政治的に接近するということもあった、アメリカに対しても言うべきことはちゃんと言うというようなことで、しっかりした外交をやられたと、先生が評価をいただいたとおりでございまして、私も外務大臣就任に当たりましては、大来前外務大臣が政府の代表になってくれる、ひとつ助けてくれ、協力してもらいたいということで、私は大来君に政府代表になってもらいましたが、私の持っていない大来君の非常に大きな長所で協力をしてもらっているということでございまして、大来君のやられたことは私も非常に大きく評価をしているわけでございます。 いま先生現実的というお話がございましたが、まさに私はそのとおりだと思うのでございます。イデオロギーとか宗教とか、そういうもので判断をして外交をやっちゃいかぬとおっしゃるのは私もそのとおりだと思うわけでございまして、一つの例でございますが、国連に行ってドイツのゲンシャー外務大臣に会いましたときに、のっけから軍備の話でございました。ゲンシャー大臣はのっけから、頭から軍備、ドイツはいかにNATOの中で協力しているんだというような話が外務大臣からあったわけでございまして、いろいろ経済問題等について後でも話をしたわけでございますが、ヨーロッパの中にあるドイツというものはやっぱりそうかなというような、非常に現実的な感じを私は受けたのでございますが、確かに外交というものは現実的な外交ということを考えなければいかぬ、ヨーロッパとアメリカの関係といいますか、日本とアメリカの関係、アメリカとヨーロッパの関係、この三角関係の中に日本があるわけでございますが、その中に立って、やはり自主的に物を判断しないといかぬという先生の御注意はよくわかりますので、これはEC等々とも十分に政治的な問題につきまして協調、連絡を密にしてやっていく、そして自主的に防衛の問題を初めいろんな問題について国際協調をもとにしながら話していくという態度につきましては、先生と私は同じでございますので、十分に注意をしてまいりたいというふうに思っておるわけでございます。 デタントへの努力というお話がございました。多極化した世界の中でデタントについての努力をせいということでございました。米ソも、私はソ連のアフガニスタンへの侵入、介入をめぐってデタントにかげりが出たことは確かでございますが、アメリカとソ連というものの平和共存ということがなければ世界の平和は保てぬというふうに私は思います。グロムイコ外相にもそのことを私言いましたし、アメリカのマスキー国務長官にもブラウンさんにもそのことを言ったわけでございますが、今後も米ソは話し合いでいろんな問題を解決していくということが、基本的な態度としてやっぱりとるべき態度であるというふうに私は考え、機会があるごとにそれは要望として伝えたいと思っております。 それから、最後に先生おっしゃいました何か憲法論その他でいろいろ問題があるんだというお話でございましたが、総理も私も慎重だと、慎重過ぎるじゃないかというお話がございましたが、私はやっぱり慎重でなければいかぬというふうに思っているわけでございます。その慎重というのは何も決断をしないとか、優柔不断という意味じゃなくて、やはり物事を、この場合には情勢、情報収集、それを解析をして慎重に検討して結論を出す、結論を出した以上はこれはもう不退転の決意でそれを実行していくということが私は大切だというふうに思っておりますし、外交の問題も何回も御説明しましたが、自由主義陣営の一員でございますので、そういうことを頭に、日米関係が基軸だということはこれはもう大前提でございますが、その上に立ってどの地域でも、どういう政体の国ともなるべく友好、平和の関係を維持していくということが必要でございますので、そういう平和外交といいますか、これはもう憲法ではっきりしているわけでございますから、日本の平和主義というのは、私はそれを守っていくという態度で外交にも取り組んでまいるという決意でございます。
○戸叶武君 きょうの新聞あたりを見ますと、鈴木首相も軍事費は一%以上は増加させるようなことはないというようなことを言明しておりますけれども、前にはもっと内輪でしたが、やはりアメリカその他の要望というものを受けて軍事費を幾らか増強しなければならない、しかし、それにしてもGNPの一%内でとどめていくということにしぼってきたようですが、余り権威のない憲法改正、自主憲法とかいうような空転した議論よりも、問題は現実的な軍事費の問題でありますけれども、奥野さんの例を出すことは、またあの人に変なかみつかれ方をすると、とんちんかんな議論に引き込まれる危険性があるからこっちはまっぴらでございますが、やはりいまの現行憲法の前文なり、憲法第九条も廃棄しなけりゃならないというような暴論は行き過ぎであって、少なくとも国の基本法たる憲法はいかなるプロセスを経たにしても、最終的には国民の悲願、合意を経てつくり上げられたものであって、成立過程においていろんな問題点があったとしても、これは軽々率々に憲法改正なんかを、三流の国家ならばいざ知らず、簡単に行う癖がつくと国の信用というものもなくなるし、また国民主権に移る過程における戦争終結のときに、涙をのみながら、国民の悲願を悲願として内外にこの憲法を守るんだというふうに訴えた天皇に、責任を私たちは云々するのじゃないが、あのときにおける終戦のときの悲痛な叫び声というものは、やはり国民とともに慟哭し、自分も最終責任を持って命を捨ててかかって内外に声明したという生きた記録も残っているのであって、それ以後において天皇制は廃止され、人間天皇として民族統合の象徴としての存在になったのに、やはり明治憲法への思慕の念から解放されない旧内務官僚というようなものは、統帥権というものは天皇の名によってやることが一番手っ取り早い、戦争をやるにしても軍事費を増大するにしてもめんどうが要らないというような簡単な考えで憲法改正をもくろむとすればとんだ間違いである。 伊藤博文が明治憲法を、ビスマルクに心酔していたウィルヘルム一世に示唆されてあの超帝国主義的な憲法をつくったばかりに、イギリス憲法の流れも日本にあったのにそんなことを顧みないで、プロシア憲法よりも超帝国主義的な憲法をつくったばかりに、日本は戦争に入ってからもこれを終結するだけの政治的な手も打てず、どうすることもできない、収拾することができずに無条件降伏の恥ずかしい屈辱をなめてきた原点というのは明治憲法にあるのであって、そのことを忘れて、戦争が過ぎ去ってから三十五年、あるいはその程度の歳月の中に、再び明治憲法のようなものをつくった方が楽だというような考え方が起きるとするならば、これは、現行憲法に対する成立過程の研究も、明治憲法における成立過程の研究もしないで、そうして簡単に法律条文の解釈——内務官僚的な官僚、軍部が日本を支配しておった当時の夢から解放せられない寝言であって、ああいうような、世界の近代国家のどこにも通用できないような憲法論争が依然として日本で行われているということになると、日本という国はばかにされると思うんです。信用されなくなってしまうと思うんです。天皇をもさらに退位にまで追い込むような目に遭わせないとも限らないと私は思うんです。 プロシア的な、ビスマルク的なこの軍部官僚の自由にできるような憲法が日本を亡国に導いた原因であるということを忘れて、そしてこの方が楽だというようなことで、明治十六年八月二十三日にベルリンでビスマルクに心酔していたウィルヘルム一世に言われて、ドイツではとにかく社会民主党というのがあって、軍事費の問題を国会に出すとみんな削減されてしまうので全くてこずっていた、これができないような工夫をしなければいけないということを言われて、国家学も政治学も国際法に対する関心も、イギリス憲法に対する比較研究もしていない伊藤が、伊藤巳代治さんのような茶坊主相手につくり上げた明治憲法によって、日本の民族エネルギーというものを、日本の歴史というものを最も恥ずかしい目に遭わせた、そういう憲法じゃありませんか。そういうことを忘れて、このいまの憲法の成立過程において、どんなに国民が苦悩し、天皇もみずからが人間天皇を宣言して神格から解放されて、国民主権の、国民の国家にしたのにもかかわらず、それを逆転させようなどという、ファシストすら考えないようなばかげた考え方を、いまの内閣では、自民党の体質からああいう者もかばっていなけりゃとにかくがたがくるという調子で、勝手な放言をさせているというような無責任体制では、近代国家における責任内閣制というものは根底からもう腐っていることを意味するのであって、私は奥野さんを罷免しようとかなんとか言うんじゃない。ああいう体質にできた人はどっか保養所に入れて、やはりねんごろに精神に休養を与えることが必要だと思っているので、まじめくさってああいうのと議論をやったら、われわれが日本のいまの平和憲法を冒涜することになるんで、そういうことを平気で守っていかなければならない体質の中に、何か病膏肓に入る——病膏肓というのは、手の届かないところに病が入ってしまったことを意味するのですが、これで近代国家における責任内閣制というものが果たして民主的に運営されていると思っているんでしょうか、どうですか。これはあなたには聞くのは無理だけれども、やっぱり少しは内閣の中に良心的な国務大臣も存在しなければ困るので、まあこれは答弁を求めると、またあなたの方に火の粉が飛ぶから、病人をちょっと鎮静させておくよりしょうがないでしょうが、まあそれはそれとして、もう奥野さんにかみつかれたら、やはり狂犬にかみつかれるようなもので、こっちが病気になっちゃうから、それはしないことにします。 ところであなたはやはり一番青年時代に、若き日にいろいろな時点において人間形成をした点において、戦争中において、陸軍のシナ通と言われた松井石根さんよりも上で、半分とぼけているようですがとぼけていないで、本当に中国を愛し、日本を愛して戦争を食いとめようとした津田静枝中将に若き日にかわいがられたということは非常な感激であったということをあなたもいつか語ってくれましたが、ああいうふうにおのれをむなしゅうして、日本だけの国是でなく、隣国の中国とともにアジアの復興と近代化をつくり上げなければならないというような配慮がなされなければ、人々の心を動かすことというのはできないんじゃないか。ソ連を敵視したり、中国を警戒したり——アメリカだって警戒する必要はない、単純にできている構造もあるんだし、そういう点においては眼中に敵なしで、問題はあっちこっちをちょろちょろのぞくことよりも、自分自身がどういう信念で世界に平和共存の体制をつくるかということが一つの眼目だと思いますが、あなたは中国の新しい近代化体制の総理に選ばれたお方とお目にかかって、開口一番何を語らんとしておりますか。
○国務大臣(伊東正義君) 中国へ行って趙紫陽総理以下みんなにお会いしようと思っておりますが、先生おっしゃったように、アメリカが基軸であるということで、ただ、日本はソ連との関係もあるとおっしゃいましたが、私に言わせれば、いま先生おっしゃったように中国との関係もこれはアジアにとっては非常に大きな問題でございます。 それで、いま中国は御承知のような四つの近代化ということで近代化を目指して取り組んでおるわけでございますが、軍事的な問題は、これは日本は協力ということはできないことははっきりしているわけでございますが、中国が経済的に近代化され、中国の人々の生活水準が上がっていくということは、これはアジアの平和、安定にとりましても非常に私は大きなことだと、防衛の問題もいろいろ言われますが、中国と日本が非常に友好親善が強まっていくということも総合的な安全保障を考えた場合に、日本にとって非常に大きなまたプラスでございますし、経済的、政治的、外交的、いろんな面から考えてこれはもうプラスでございますので、趙紫陽さんとお会いしましたときには日中の二国間の問題としましては、中国の近代化に日本はできるだけの協力をするということで話し合うとともに、これは北東アジアの平和ということに対して中国は大きな影響力があるわけでございますから、朝鮮半島の平和の問題あるいはカンボジアをめぐるベトナム、カンボジア、タイを含むインドシナ半島の平和の問題、ASEANとの問題あるいはアフガニスタンへのソ連軍事介入の問題でございますとか、そういう国際的な話もし、アジアに平和、安定がくるようにひとつ日中両方で協力して努力しようじゃないかというような話を私は中国の首脳の方々とはやってくるつもりでおります。
○戸叶武君 中国のいま最大の課題はやはり近代化なくして中国の発展がないというところに腰がすわってきたと思います。もうすでに安保闘争のときに、私は安保闘争のカンパニアの団長として北京を訪れ、浅沼のアメリカ帝国主義が日中共同の敵だという表現形式に誤解される面があってはいけないと思いまして、革命は輸出すべからず輸入すべからざるものである、その国の国民の責任において生み出すべきものであるということを対句のように必ずあらゆる席上において述べ、中国でも紅旗においてその言葉を取り上げてくれたのですが、自主独立の路線以外に、みずからがその国の運命を開拓する以外にその国の運命というものは開拓されないということを私は身をもって体験しておりますので、中国の人にもその考え方を伝えたいと思いましたが、周恩来さんはすでにそのことは百も承知で、アメリカに呼びかけてもアメリカは相手にしない、素朴な大アジア主義的な感覚がまだ宿っておった浅沼君を二時間以上説得して、浅沼が身を殺して仁をなすというつもりで中国と結びついていかなければ日本が共同にアジアの復興を促すことはできない。身を捨てて彼は仁をなしたのでありますが、それがためにあの中国側の通信社から向こうに都合のいいところだけが抜き書きされて世界に打電されたのでいろいろな誤解を生みましたけれども、彼は一言も弁解せずに殺されていったのです。そのことを私は河上丈太郎先生にだけは伝えましたが、浅沼が死ぬのでなく、自分が浅沼のかわりに早く死のうと思って全力を尽くしたのだがと言って河上先生は私にその心情を伝えてくれましたが、そういうアジアにおいて取り戻すことのできない近代化の道への苦悩というものは、それぞれイデオロギーや民族的な感情を乗り越えて、一個の見識人には共通な課題として、政治課題として私は生きておったと思うのであります。 それでなくて、アジテーションや観念的なイデオロギー論争なんかで、右だ左だなんていうズボンの中でへをたれたような議論をやっていたんでは、とても私は祖国の人民、国民とともに苦悩し模索してその歴史をつくることもできないし、国民から信頼されて政権を託されることもできないと考えておるんですが、これは自民党であろうと社会党であろうと共産党であろうと同じでありますけれども、やはり私はいまこそ本当に何がわれわれの祖国に対して責任を持ち、平和と前方に対する希望の光を与える政治かということを具体的に示す以外に、もういままでのようなでたらめな政治のあり方では、はったりやあるいは利権のついばみやそういうものでは私はもうこれからの政治は国民がだまされないと思うんです。 そういう意味で、中国でもいろいろな一われわれもそうだが、今後だって過誤を犯すかもしれませんが、ひたむきに近代化の道を積み上げなければ、私はやはり単なる革命的な路線論争なんかで問題は打開できないということを百も承知の上だから、私は日本の実績をもって——日本にも欠点だらけのところがあるけれども、お互いにざっくばらんに腹を割っていけるならば、日本と中国がヨーロッパのルネッサンスよりもりっぱな一つの平和時代をつくり上げるモデルが可能である。少なくとも非核国としての方向へも遠からずやはり進めないことはないと思うんですが、外務大臣は中国の将来についてどのように考えていますか。
○国務大臣(伊東正義君) 中国との関係について先輩が非常に努力をされて、自民党も社会党もそういう党派を問わず、イデオロギーを超えて努力をされたというお話、私も同感でございます。先輩に対しまして敬意を表する次第でございます。 中国の将来の問題でございますが、私ども、他国の国内的な問題を云々するのはこれは適当でないと思いますので差し控えますが、私は日本と中国が本当に、中国の言葉で言えば子々孫々まで友好親善関係が結ばれるということは、これは単に二国間の関係だけでなくて、それがアジアの一平和、安定、ひいては世界の平和、安定にもこれは大きな効果、影響力があるんだということを考えまして、偉大な隣国であります中国との、いま一生懸命に取り組んでおられる近代化——軍事の協力はできません、これはさっき申し上げたとおりでございますが、そのほかの近代化の問題につきましてはできるだけの協力をしていく、そして、中国が生活水準も高くなっていく、安定していくということが大切だと私も思いますので、イデオロギーとかそういうものを超えて、現実の問題としてそういう外交をひとつやっていく必要があるというふうに考えております。
○戸叶武君 大来さんの時代から、ECの国々の責任ある政治家と話し合うとお互いに通ずるものがあるという確信を得たと思うのでありますが、シュミットさんは、すでに十八日ごろはワシントン入りをする予定であるということですが、シュミットさんは初めからレーガンの勝利を見抜いていたということも言われております。その見抜いていたという根拠というものは、カーターの不安定な、一貫性のない、信念のない、貫くものが欠けているやり方では外交においては相手にしにくいという気持ちからで、やはり今度レーガンが大統領になった場合に、いままではタカ派といわれているが、国際関係においてきわめて現実路線で物を語り合っていく、選挙における態度とはまた別にアメリカの将来を考えていくならば、何を自分たちはやらなけりゃならないかということを、政治的な先輩でもあるシュミットさんなんかと話し合うならば、先入観が変わってくるという確信を持って、やはり説得されていかなくとも、自分の考えを率直に打ち出して世界のために語り合おうという予定を立てての行動とも思われる節もあります。 それから、エジプトにおいても、日本の政治家の多くは石油だ石油だと言って、石油の方にばっかり踏み込んで、石油が出ない国のエジプトを素通りしていったけれども、何といっても中東において近代国家としての形をなしているのはやはりエジプトや、よかれあしかれイスラエルのような国であって、エジプトのサダトのごときは出色の政治家だと思うんですよ。命がけで局面を打開しようとしてイスラエルにも飛び込んでいった人であるが、アメリカの大統領選挙が済まないうちは動かないぞと言って沈黙を守っていたのは、やはりアメリカなりソ連なりが本当に変わってくれない、変わってくれるという見通しがつかない以上は簡単にはやはり動けないという見通しの上に立っての自重だったと私は思うんですが、ソ連も事実上アフガンにおけるところの中途半端な革命家の情報によって戦車を入れてみたりしたが、かえってあの民族や近代的な国家を形成していないような状態のもとにおいて、部族、種族時代の宗教の違いその他でゲリラに遭って大変な苦労をしている、進むこともできない状態。アメリカはまたイランに空母を突っ込もうとしても、沿岸諸国が戦火を拡大することは反対だと言い、また、イラン革命がアラブの王国の国々に波及したら大変だというような形において、イラン、イラクの戦争やサウジアラビアのそれに対する援護等の動きも出ておりますが、あんなことを繰り返している間に中東というものは非常に不安定な状況から脱出できない。それをどうやって脱出するかということを中東の国々も真剣に考えてくるし、そのときにこそ私はエジプトや何かもやはり沈黙を破って、そうして中東の自主的責任において問題を片づけようと、バルフォア卿におけるイスラエルの建設、あるいはローレンスにおけるアラビアの分裂、そういうようないろいろなことがあったとしても、それを乗り越えて新しい体制をつくろうという形が私は中東自身の中からも出てくるであろうし、それに対してフランスなり西ドイツなりいろんなやはりバックアップや、あるいはインドなりのいろんな動きがあると思いますので、私はいまスエズ運河を見るという形も必要ですが、あの周辺はソ連が共産勢力の地帯に、エチオピアその他アデンまでそうしてしまっておりますけれども、それによってあすこから戦火の火ぶたを切るというようなこともできないと思いますし、そこいらを、中東国のヨーロッパにおける配慮、そういうものを見抜いた上でやはりアメリカにおもむろに乗り込むのが賢明であるかと思われるので、アメリカだって考えなけりゃならない、ソ連だって考えなけりゃならない。第三次世界戦争ができないとはわかっていながらも、メジャーや軍需産業におだてられて、莫大な賄賂をばらまいて、世界の政治を腐敗させながら軍需産業を維持していかなけりゃならない戦争屋並びにその手先の生存というものが世界を滅ぼす、混乱に陥れる末期的現象を生むおそれがあるので、そこいらのところをひとつ伊東さん、これ以上われわれがとやかく言うよりも、あなたが、やはり外交に対する最高責任は行政府が持っているんですから、しかし日本では国民の大衆が非常に成長しているんですから、あんなばかげた議論をやっていると、もう多数党とったなんといっても、それはへのかっぱでどっかへ吹っ飛んじゃいますよ。私は保革伯仲の時代、いつでも生命線は国民が握っているということをやはり考えながら、権力を自分たちが持っているから何でもできるなどという平清盛のような変な考えは起こさないで、ひとつ国民とともに苦悩し、責任を持ち、世界の人々に共鳴共感を得られるような悔いなき外交を日本がやる以外に日本の自主外交の奪還ということはあり得ないと思うんですが、伊東さん、それをどういうふうにあなたは受けとめていますか。
○国務大臣(伊東正義君) お答え申し上げます。 最後におっしゃったように、私は、大衆は賢いんだぞとおっしゃったことはわかりますし、そのとおりだと私も思います。それで、特に私は政権の座にある者は文字どおり戦々恐々といいますか、自戒して政治と取り組まにゃならぬという政治哲学をおっしゃいましたが、私もそのとおりだと思いまして、そこは十分に反省をし、常に反省をして取り組んでまいりたいというふうに思っているわけでございます。 で、先生のおっしゃいました中東の問題というものは、確かにこれは世界の噴火ローまあ、たとえが悪いかもしれませんが、そういう非常に重要な問題をはらんだ地域だという認識は先生と私は一緒でございまして、キャンプ・デービッドを第一歩としてエジプト、イスラエルの和平ということをいまやっておるわけでございますが、私はそこでやっぱり中東の永続的な包括的な和平ということを考えますと、パレスチナ人というものの自決権ということを尊重すべきであり、PLOもイスラエルの生存を認める、イスラエルもPLOというものを認めるということをまず考えて、キャンプ・デービッドの合意の上にそれを第一歩にして、さらに続けていかなければ中東の和平というものはなかなかむずかしいと私は考えます。アメリカへ行きましても要路の人にはそれを説きまして、ブッシュさんがこの前日本に来たときも中東の問題はそうしなければ永続的な和平、包括的な和平は来ないじゃないかというふうなことを主張したのでございますが、今後ともさっきのような考え、政治哲学は全然同意見でございます。同感でございますので、そういう態度で政治と取り組みますし、中東問題も今度行きましたら、サダトさんもこれはもう勇気のある決断をした政治家でございますので、その辺のところを十分意見の交換をしたいと思いますし、ECへ行きましても、ECは特使も出してあの地帯を歩いたのでございますが、ECの首脳とも十分その辺を話し合いをする機会を持ちたいというふうに思っております。
○戸叶武君 以上で質問を終わります。
○田中寿美子君 私は、今度のアメリカの大統領選挙でレーガン氏が大勝したという結果になりましたことにつきまして、これは政府もそうだし、私ども政党の者あるいは一般の者もマスコミの報道によって、世論調査で五分五分にいくのではないか、カーターさんが一%ぐらい上を行ったりまたおりたりしているから、五分五分にいって、現職だからカーターさんが勝つのではないかというような期待感みたいなものがあったように思うんですけれども、結果としてレーガン氏が大勝するという形になりました。 それについて、これは私たちもマスコミによってしか情報は知り得ないんですけれども、外務省という役所は外交を推進するのについてきちんとした情報をキャッチするシステムを持っていなければならないはずだと思うんですが、それで、もういまさらその見通しが誤ったというようなことを言ってもしようがないのですけれども、今後の出現してくるレーガン政権の政策などについてどういうふうな予想をしていらっしゃるかということを伺いたいんですが、日本の対応とそれから世界各国の、各ブロックといいましょうか、幾つかのブロックがありますが、そういうところでどういう反応をして、レーガン政権に対してどういう判断をしているかということをお尋ねしたいと思っております。 それで、私は国会図書館にお願いして、いろいろな新聞の中で報道されている各地の反響をちょっと見てみたんですが、まず外務省及び外務大臣もですが、レーガン氏が選挙中に超保守的な発言をしている、しかし後半になって少し穏健な言葉に変えたりしておりますね。それでもなお当選後も、たとえばPLOはテロリスト集団だというふうなことを言っている。選挙中には、台湾との関係を保っていくと、二つの中国のような発言もしているし、日本の自動車、日本の経済などに関しても非常に厳しい政策をとるというようなこともたくさん言っているわけなんですがね。そういうような発言が緩和されていくだろうというふうに見ていらっしゃるのかどうか。まず、外務省としてはどういう情報の上に乗っかって、どういう考え方をとっていらっしゃいますか。
○国務大臣(伊東正義君) 私お答えしまして、なお北米局長から補足をしてもらいますので御了承願います。 レーガンさんが選挙中いろんな演説をされた、あるいは共和党の政綱というものをわれわれもマスコミ等を通して知ったわけでございますが、また選挙の公約等でも途中で中道寄りといいますか、何か軌道修正もされたということを知っておるわけでございますが、その選挙公約なりあるいは政綱なりがストレートに政策に出てくるかどうかということは、これはまだ政権の座に——来年の一月二十日でございますので——ついておられませんので、どういうものが出てくるか、余り先走って予想をするのはいかがかと思いますが、まあ基本的には、アメリカを取り巻く国際環境の基調というものはそう大きな変わりはない、取り巻く環境といいますか、国際情勢というものはカーターさんのときとそう大きな変化がないわけでございますから、私はその政策でも大きな変換とか転換というふうなことはないじゃないかなと、こう予想しておるわけでございます。ただ、よく選挙公約等で力による平和ということを言っておられる、安全の幅を広げるというふうなことを言っておられることがございますので、それに由来するいろんな政策は若干違うところがあるのかなと、こういうふうに見ておりますが、現実にはまだ政策が出ておりませんので、こうだという予想はいたしておらぬわけでございます。 ただ、レーガンさんという人も非常に現実的な人だということを伺っております。またスタッフも非常に有能な人が多いということを聞いておるわけでございますが、選挙中に先生おっしゃったような米中の関係でいろいろなことを言われて、私はブッシュさんが来られたときに、日本の考えはあれと違いますよというようなことをブッシュさんに言ったことがございますが、恐らく米台の関係も現実の政策として出てくるときには、米中関係というのは、米中共同コミュニケを出したことがございますし、やはり軌道修正があるんじゃなかろうかと思っておりますし、テロリストという発言もございましたが、中東の和平という問題は、いま戸叶先生もおっしゃいましたが、なかなかこれはそういうことだけで永続的な包括的な和平が来るかどうかということも現実の問題としては非常に問題がございますので、私は選挙の公約、政綱というものが政策になって出てくる場合には相当それが中道寄りといいますか、修正されたものになるのかなと、こう見ておるわけでございます。いまのところは、現実的なものになるんじゃないかと見ておりますが、まだ正式に政策が発表になっておりませんので、静かに政策は見守っているというのがわれわれの態度でございます。
○田中寿美子君 自民党の中からも何人かの方が前もって出かけていって、そしてレーガンさんあるいはその側近と話し合うだろうというようなことも言われているんですけれども、やはりいまおっしゃったように、カーターさんの負けた一番の原因というのは、アメリカの各紙が見ているところで見ますと、やっぱりアメリカの経済問題、国内的な高インフレ、高失業率、高金利、エネルギー価格の高騰見込み、イランの人質問題の未解決などという米国の軍事力、経済力の低下に対する国民の無力感と、それを代表するようなのがカーターさんであったということから抜け出したいというような意味で、反対にレーガン氏の方に行ったという。つまりレーガン氏を積極的に非常に支持したというよりは、この無力感から抜け出したいという気持ちがあって、つまり経済的な困難の時期に確固とした指導性のある者が欲しいということであちらに回ったと。しかし、御存じのように、投票率は五二・九%ですから半分の人がどちらにも投票していないという中で、アメリカの選挙制度の結果、各州の選挙人をたくさん獲得したということになったと思うんですね。ですから、必ずしもアメリカの中の有権者だってレーガン支持というようなことではないということだろうと思いますので、日本があちらから何を言ってくるかを待ち構えてそれに対応するのではなくて、日本の外交のあるべき姿というものを自主的に主張していただきたいと思っているんですけれども。 そこで、日本が対応をする際に、世界じゅうがどういう反応をし、レーガン政権に向かってどういうふうな政策をとろうとしているかということを早く鋭くキャッチしなければならないと思うんです。その点が私は何か外務省の情報のキャッチの仕方というのは非常に遅い感じがするわけなんで、現在どのような反響があってどういうふうに各ブロックの主なる国々の指導者たちが動こうとしているかということを外務省で把握していらっしゃる点を伺いたいわけです。一つはEC諸国、これも幾つか違いはあると思います。それからソ連とか中国、東欧という社会主義諸国、それからアラブ諸国ですね、それからASEAN、それからラテン・アメリカなんかはほとんど新聞のニュースにも出てこないんですが、アメリカとラテン・アメリカの関係というのは非常に強いもので、そして代々相当反米感情がラテン・アメリカにあるんですけれども、レーガン氏は選挙中にサルバドルに出兵をしてあそこの革命をぶっつぶすみたいなことを言ったこともあるわけなんですね。だから、ラテン・アメリカはどういう反応をしているか。あるいはアフリカです。これを無視してはいけないと思う。あそこには南アフリカ共和国という国連から締め出されている国もある。ナミビアの問題もある。ですから、いまのEC、社会主義諸国それからアラブ——中近東というふうにしましょうか、いろいろ違うと思います。それからASEAN、アフリカ、ラテン・アメリカなどに関して、外務省はいち早くどういう情報をキャッチし、そしてそれぞれに対してどういうコメントを持っていらっしゃるかを伺いたいんですけれどもね。
○政府委員(淺尾新一郎君) いまお尋ねの件でございますが、私たちがいま田中委員が言われた各国の反応について、とりあえず新聞あるいは各国首脳の発言等について分析しておりますし、その結果を申し上げたいと思います。なお、各個々の地域についてはそれぞれまた地域担当の局長あるいは審議官が来ておりますのでさらにお尋ねがあれば補足していただきたいと思います。 まず、順序不同でございますけれども、中国でございます。中国については、先ほどもお話がありましたように、選挙の過程の中でレーガン候補が台湾との公的な関係を強めるというような発言をいたしまして、中国は非常にレーガン候補の出現に対して警戒的というかあるいは不安な態度を持っていたわけでございますけれども、選挙の途中でレーガン候補の中国に対する政策も、ブッシュ副大統領候補を北京に派遣してアメリカは決して二つの中国を追求するものではないというようなことを言って、次第に軌道修正をしてきたということもございまして、選挙後たとえば人民日報ではレーガン次期大統領がやはり中国との友好関係の発展のために努力したいということを述べたという点を紹介しながら、中国政府の首脳が、米中関係がその米中共同コミュニケの原則に基づいて引き続き発展することを希望していることをすでに表明しております。そこで、いま申し上げたような中国側の反応から見る限り、中国も今後とも良好な米中関係の進展を望んでいるというふうに思われますし、アメリカも現実の問題としてやはり中国との関係は従来どおり良好な関係を維持していきたいというふうに私たちは見ております。 それからソ連の反応でございますが、ソ連もやはり選挙の当初においては、レーガンが力の立場に基づいて対ソ政策を進めていくということで警戒の念を持っていたわけでございますけれども、選挙後、これは慣例でございますけれども、ブレジネフからレーガン大統領候補に対して祝電を打っておりますし、またソ連の政府首脳も新政権との間に建設的なアプローチに基づいて話し合いを続けたいというような期待の表明をしております。まだしかし、一般的に申し上げればソ連側としてはレーガンの新政権の対ソ政策が必ずしも明らかじゃないということで、しばらくはアメリカの出方を見るということがいまのソ連の反応ということではないかと思います。
○田中寿美子君 ちょっと途中ですけれども、ソ連の場合ですね、穀物その他の経済制裁がいまありますね、それを緩めてほしいということもあるし、米中がいままでずっとよかったわけですから、そこのところにこの際一歩先んじて本当は非常なタカ派であり、SALTIIももう破棄しようとしているような人に対して、アメリカに近づこうと先に出てきたというふうにお考えになりますか。
○政府委員(武藤利昭君) ソ連の反応につきましては、ただいま北米局長の方から御報告を申し上げたとおりでございまして、確かに穀物の禁輸の問題あるいはSALTの問題につきまして先生が御指摘になりましたような諸点、これはソ連にとっての大きな関心事ではあろうと思うわけでございますけれども、ただいま申し上げましたとおり、ソ連といたしましても、レーガン政権がどのような外交政策、どのような対ソ政策をとるかについて現時点では何らの確信を持てないということのようでございまして、このような現状のもとにいま御報告申し上げましたとおり、たとえばチーホノフ首相の演説等にも見られるわけでございますけれども、ソ連としては、米ソ両国民のために、緊張緩和とか平和維持をするために米ソ間の協力関係を発展させることには賛成であるというようなことを申しました上で、今後アメリカがソ連に対して従来以上の建設的なアプローチをとることを期待しているというような、いわばそういう希望の表明をしているというのが現状でございます。
○政府委員(淺尾新一郎君) それでは続けさせていただきます。 次はECでございますけれども、EC各国政府とも、これまでアメリカとの間で続けられてきたアメリカと欧州との間の関係が、レーガン新大統領のもとでも維持され、さらに増進されるということを希望するという意向表明を行っております。特にレーガンの選挙中の綱領に同盟国重視ということがございますので、その点についてEC諸国の期待は、いまの各国政府の反応からもうかがえるのではないかなと思いますが、しかし、現段階において、ではどういうふうに今後のレーガン政権の出方を予想しているかということは、やはり新政権が主要人事あるいはこれからの政策ということを決めていくので、いまのところはまだそれを待ってから具体的な対応ぶりあるいは判断を下したいというような姿勢でございます。 それから続いて韓国でございます。韓国についてはレーガン大統領の選挙綱領の中に対韓安全保障のコミットメント、これを維持しかつ重視していくということもございまして、一般的に言って、韓国はレーガンが当選したことに対して好意を寄せているということが反応として見られるかと思います。 それから、ASEANの方は、それほどまだ際立った反応がございません。しかし、ASEANの諸国としては、アメリカのASEAN政策がより強化されるということを期待しているという発言が多くなってきております。 あとラ米でございますけれども、ラ米の反応については、各国それぞれの立場を反映して一様ではございません。しかしレーガン候補の当選を冷静に受けとめて、新政権下のもとでアメリカとの関係の発展を期待しているというふうに見られております。 次はアラブ諸国でございますが、もちろん共和党の綱領の中にイスラエル寄りというところがございますけれども、同時にレーガン候補の政策の中にはサウジアラビア等産油国との関係を重視するということもございまして、いまのところレーガン氏の親イスラエルの立場に懸念を抱きながらも、レーガン候補の今後の出方を見守っているということでございまして、いまのところまだ具体的に目立った動きというものが見られません。 以上が主な国の反応でございます。
○田中寿美子君 日本の新聞に載った程度の情報なんですね。非常に私それは、不満なんですよね。 こういう重大な政権の交代になって、そしてアメリカの出方をみんながただ待っているわけじゃない。それぞれやっぱり自分たちの主張を反映しながら、アメリカもかつてのような力がないわけですから、ECにしましても、もうイランの人質事件以来相当のイニシアチブをとってアメリカに呼びかけているという形になってきている。それから、アラブ諸国だっていろいろあるけれども、たとえばエジプトのようにキャンプ・デービッドの会談を開いてイスラエルとの間を取り持とうとしている国はあるけれども、たとえばPLOの関係なんかは、日本はちゃんとPLOの代表権を認めようとしている立場に立っているわけですからね。ですから、こういうものに対して、レーガンという人は第三世界に対しては最も冷たい人で、いままではそうだったと、しかし今後そうはいかないから、側近に相当の国際情勢通の人やら何かを入れるに違いないわけですね。ですから、そういうときに、やはり日本はアメリカともいいパートナーであるということをしょっちゅう言っているならば、世界各国に対しての日本の対応とともに、アメリカに対して忠告をしたり進言したりする立場にあると思います。まあアラブ諸国は、特にイランなどはもうてんでレーガン氏については期待を持っていないという立場をとっております。しかし、人質事件その他ありますから、現実に処理していく問題はあると思うのですけれども、そういう情報を一体外務省はどうやって出先の公館からとっているのかということです。 アフリカの場合ですね。これはガーディアン紙のものしか私はいただいておりませんけれども、それでも南ア共和国はレーガン氏を歓迎している。カーターさんは南アへの制裁に加わり、そしてナミビアの独立に関してもそちらの側に立っている。だから南西アフリカ人民機構——SWAPOですね、それなんかに対しても協力的であった。しかしレーガンは恐らくそれに反対の立場の人ではないかという期待感を持っているわけですね。こういうことに対しては、やっぱり日本は当然のこととしてちゃんとした意見を持っているはずですし、国連を中心として外交を推進するならば、当然人民が解放されようとする、自決権を要求しているときに、その場に立った主張をしなきゃならないと思いますが、その際のアフリカ諸国の人たちがどういう考えを持っているかというようなことを探る道は持っていらっしゃるのかどうか。 それから、中近東に関してもですね、大変情報がロイター通信とかそれからイスラエル情報とかそういうものに頼っているような気がするんですが、それは一体出先の公館はどういうふうにしていらっしゃるか。一番歓迎しているのはイスラエルと南ア共和国でしょうね。それから韓国ですよね。レーガン政権の強力な右翼的な傾向を歓迎するということを言っている。しかし、現実にそういうふうにいくかどうかは、もう皆さんおっしゃったように、そうは簡単にいかないだろうと思いますけどね。 それから、ラテン・アメリカなんかは一体どういう情報をとっていらっしゃるか。余りにいまのは本当に外務省に聞かなくてもわかるようなことしかおっしゃっていないんですね。外務省は一体情報をどういう手だてを通してとられるのですか。それをまず話していただきたいと思います。
○国務大臣(伊東正義君) 先生からいま世界の情報、レーガン氏が選挙に勝ってどうだというお話でございましたが、先生がいまたとえば例示としてお挙げになりましたが、そういうところの意向といいますか、そういうものは大使館を通してわれわれはなるべくとるようにということを指示しておりますし、特にアメリカの大使館につきましては、まだ新しい政権の施策が決まっておりませんのでなかなかむずかしい問題でございますが、そういうところを十分に注意して、日本が政策を立てるときの参考になるものがあればひとつ早急に連絡するようにというようなことを各大使館にも注意をしているところでございまして、情報ということになりますとやっぱり私どもは大使館を通してとるというのが筋でございます。 で、日本の立場もなるべく早く向こうに伝える必要があるじゃないかと先生がおっしゃったことは私も同感でございまして、極力許せば国会の関係と日程を繰り合わせて、政権が誕生すればなるべく早い機会に私自身が行くということもこれは必要だと私は考えているわけでございますが、いまはたとえば大来君が向こうへ会議で行っておりますので、大来君にいろいろ話したこともございますし、あるいは党の側で党の方として向こうのいろんなルートを持っておられる方がございますので、そういう方も行かれ、こっちの意見も言い向こうの話も考え方を聞くというようなことも、できるだけのことはやろうということでいまやっておるわけでございますが、一々だれにどうだれにどうとかこう申し上げませんが、ルートは、在外公館からもらう、とるというのがわれわれのルートでございます。ただ、その量の問題、時間的な問題、そういう問題につきましてはいろいろ御議論があるかと思いますが、そういう方法でやっています。
○田中寿美子君 それでは限定しまして、中近東、いまイラン・イラク戦争の最中の場所なんですが、中近東に関する情報ですね、出先の公館はどういうふうにしてとっていらっしゃるんですか。公館の中の情報をとるスタッフというのは、そこの場所でどうやっておとりになっているんですか。
○説明員(堤功一君) 中近東地域におきましても、一般の場合と同様に、一番重要な情報をとる際の職員は大使でございまして、大使が現地の政府側あるいは民間その他と接触をする。お互いにほかの大使館の同僚とのコンタクト、情報交換ということもございます。特に中近東におきましては、アラビア語、ペルシャ語、トルコ語の専門家の活躍が非常に重要でございます。各大使館に、小さな大使館では一名程度でございますけれども、専門家が配属されておりまして、主として政務関係を担当し、先方の政府側あるいは民間の専門家等を相手に情報収集の活動をやっているというのが一般論として申し上げられると思います。
○田中寿美子君 それじゃその問題のイランとイラクのところですがね、イラクの大使館は何人いらっしゃって、そしてそういうアラビア語がちゃんとできて、あそこで情報を収集できる人が何人いるのか、イランはどうなのか、そして、どういうところから情報収集というのを、やり方ですね、私は大変疑念を持っているわけですよ。ASEAN諸国に行きましても大使館員がその現地の民衆の中に入っていくということはもうほとんどない、どうやってとれるか、やっぱり新聞記者から何かを聞く以外にはないのではないかと思うんですがね、どうやってとっていらっしゃいますか、イラン、イラク、こういう状況の中でですね。
○説明員(堤功一君) イラク、イランの両方の大使館におきまして、専門家はイラクにおいてはアラビア語の専門家が二名、イランにおきましてもペルシャ語の専門家が大使館には二名でございます。ほかに総領事館が一つございまして、これはいまホラムシャハルにございましたのが一時的にシラズに行っておりますが、総領事はペルシャ語の専門家でございます。このような専門家は、たとえば政府の発表、あるいはラジオでございますか、そのような発表が非常に重要な情報源でございますので、そのニュースを必ず聞く、先方の新聞記者あるいは政治関係の者に面会に行って情報の交換を行う等のことをやっております。
○政府委員(柳谷謙介君) ちょっと私の立場から補足さしていただきますけれども、現在何人言葉のできる者がおるかというお尋ねにつきましては、現在イラクにはアラビア語のできる者が一名でございます。アラビア語を専門としたいわゆるアラピストという者が一名でございます。それからイランは、現在ペルシャ語を専門とする者が三名でございます。もとより、これらはアラピストとして採用時から研修をさせ、そういうものとしての専門家として育成した人間でございますが、それ以外の館員が全くできないというわけじゃございませんで、赴任前の研修とか、現地における短期研修というようなことで、不十分ながら大使以下現地の言葉が——英語、フランス語等も必要でございましょうけれども、現地の言葉が相当程度できるようにできるだけ指導しているということにおいては、これ以外の者も現地の言葉を使う機会は持っているはずでございます。 人数につきましては、現在イランには日本の大使館員十三名、それからイラクは十四名ということになっております。 それからもう一つ、先ほどお尋ねのあったことに少しつけ加えますと、やはり情報収集活動というのは、いわば大使館の全活動がそれに該当するというふうにも言えるかと思いまして、大使の日常の接触、館員の通常のさまざまな接触の中からはだに感じたものがいろんな形で情報になってくるので、これが情報だといって一件ごとにとるという以上のもので、それをまあそれぞれ分析し、判断し、必要なものは本省に送るということでは、そういう意味におきましては在外公館は外交の手足でございますから、即情報活動と言っても差し支えないわけでございます。ただ、任地によりまして比較的その情報が潤沢に得られるところと、いろいろな制約がありますので相当慎重にならざるを得ないものといろいろございまして、オーソドックスなものとしては当然先ほども話がありましたように、任国のあらゆる方面からの情報、それからそこに駐在するほかの国の外交団、その他外国人からの情報、さらには必要に応じまして情報収集費というものを活用いたしまして情報提供者からの情報を得ることも、これは一定の制約がございますけれども、それも当然それに加味されていくということで、やはり総合的に判断してやっていくことによって、質量ともにその目的に合うものが現地の大使館から得られるというふうに考えております。 私ども決して現状が完全とは思っておりませんし、やはり人間の育成、たとえばアラピストの育成にしても非常に時間がかかりますので、現在かなりの者がまだ研修中でございますから、五年、十年先になれば数はふえていく、また私どもの定員の増強計画がそのまま承認を得られれば二十年、三十年先にはいまよりはるかに強力な体制になるということを期待しているということをちょっとつけ加えさしていただきます。
○田中寿美子君 私、念のため申し上げますけれども、情報収集というのは何か軍事の秘密を探るとかそういうものではなくて、それぞれの国の国民たちが何を考えているかということをよく把握しなければならないというふうに思いますが、それに関しては私は外務省の公館の人数も、別に外務省のために言うわけではないけれども、少ないし、それから本当にそれほどその土地の人たちになり切って話ができるという人が非常に少ないと思います。ですから商社やジャーナリストの人たち、そこに行っている在留邦人の方がもっといろんなことを知っている。そういうことについてそういう人たちからも民情をよく聞くというようなことをしないと、中近東というのはいま非常に重要なところであって、日本は油のことばっかり考えている感じがしますけれども、とてもそんなことであちらの人たちの信頼を獲得するわけにはいかない。しかし、中近東に対する外務省の力の入れ方というのは、私は恐らくほかの地域よりは弱いんじゃないかと思います。外交官だってアラビア語ができない人たちが多いし、行きたくない、あの紛争の多いようなところには行きたくないという気持ちがあったりして、ああいうところへやられるのはもう島流しに遭うようなものだというふうに外交官みずからが言っているという話も聞いておりますので、そういう状況で中東関係の正しい情報把握をして、そしてこれに対応することは大変むずかしいのではないかと思うわけですね。この点は外務省としては非常に重要な地域でありますから、特別にまた考えなければいけないのではないか、そのことを私は要望します。 それでいま戦争中のイランとイラクのことに関してですけれども、イランに関しては人質問題、その他いろいろ相当の情報が報道されている。いまイラクとイランに在留邦人はどのくらいいるというふうに把握していらっしゃいますか。
○説明員(塚本政雄君) お答え申し上げます。 九月二十二日紛争発生時におけるイランの在留邦人は約千七百名、それからイラクは四千百名、合計五千八百名ほどの邦人が在留しておりました。 それから累次にわたるイラン及びイラクからの出国によりまして、現在までイランから出国いたしました邦人は千百七十名、イラクからは二千四百五十名の邦人が無事出国いたしました。したがいまして、現在イランに残留いたしておりますのは五百七十名、イラクには千六百六十名、合計約二千三百三十名の邦人が残留しております。
○田中寿美子君 その人たちはどういうことをしている人たちですか。
○説明員(塚本政雄君) これは御案内のとおり、イランの石油化学プロジェクト関係者七百八十名はすでに全員引き揚げてまいりましたので、それ以外のいろいろの日本とイラン、日本とイラクとの現在石油関連の関係でのプロジェクトがたくさんございます。こういうプロジェクトの現地サイトにおける保管管理という最少限の人が残っておりまして、現地大使館の報告によりますれば、現在それらの人、したがいましてイランに残留しております五百七十名、イラクの千六百六十名はもうほとんど現状のそういう保管管理に必要人員で、したがいまして、さしあたりこれ以上出国という希望もなく、現地においてそれらの職務に邁進していると、こういうような情報に接しております。
○田中寿美子君 あの事件が起こったとき、私は、何というんですか、具体的に起こった順序から言えば、イラク側がホラムシャハル側のあそこに攻め寄せたという形で戦争が始まっておりますね。私たちもびっくりしたわけですが、これは大変なことだというふうに思ったんですが、その時点で私の聞いたところによりますと、イラクの大使館もイランの大使館もそうであろうと思いますが、在留邦人の数をちゃんと把握していないんですね。その事件が起こった二、三日後、邦人は全員無事ですという報道を見ましたけれども、数はつかんでいなかった、急いでそれから数をつかもうとなすったというふうに聞いておりますが、事実ですか。
○説明員(塚本政雄君) お言葉をお返しするようでございますが、九月二十二日の前の段階において、イラン及びイラク在留邦人についてはいち早く訓令を発しまして、それぞれの数字については私どもとしては掌握していたつもりでございます。
○田中寿美子君 前の段階で……。
○説明員(塚本政雄君) はい。
○田中寿美子君 最初の発表がたしかイラクは二千何百人とかいうことであった。後で四千八百何十人ですね。
○説明員(塚本政雄君) これはおっしゃるとおりでございまして、最初二千名というのは大使館に登録している方でございまして、三カ月ビザでもって入っております短期の旅行者あるいはそういう三カ月程度のプロジェクトをやって帰る人は、必ずしもその大使館への登録といいますか、そういったものの義務を免除されておりますものですから、したがいまして、最初の段階で、確かにその後の二千名というものは、その後の段階において大使館が掌握したと、こういう事実は事実でございます。
○田中寿美子君 私の聞いたところによりますと、イランは石油中心にして三井石油化学なんかあそこに大きなものを設置してますし、そのほかにも石油中心でしょうね、いまおっしゃったように。で、私はそれ以外にもあるだろうと思いますが、イラクの方は、学校だとか、高速道路だとか、発電所だとか、高層建築だとかいうので三菱系等の資本が入っている。日本人がああいうところに土木建設、重化学工業その他の仕事で入っているのについて、突如として戦争が起こったというようなときに、大使館はそこにいる在留邦人に対しての、在留邦人の生命を守るという責任はないんですか。
○説明員(塚本政雄君) 在留邦人の生命、安全の保護、監督というのは、これは大使館の第一義的な職務でございまして、私ども今次紛争が始まりまして以来、伊東外務大臣からもじきじきに、人命第一主義に徹して邦人の救出その他に全力を尽くして当たれと、こういう指示のもとに今日まで当たってまいったつもりでおります。
○田中寿美子君 現地から帰ってこられた方のお話を私聞きましたけれども、全く大使館が頼りにならなかったんですね。これはイラクの側、まあイラクが初め戦争の攻撃したと、そして一週間ぐらいはイラクが非常に有利な状況にあった、今度はイランの方が反撃をした、それで各地に砲撃があって、そして工事に携わっている人たちは非常な身の危険にさらされてきた。それにもかかわらず、少なくとも一義的に、これはきょうの新聞報道などによっても、イラク側が在留邦人の引き揚げには反対であると言っている。イランの方もこれを余り喜ばないという状況だと思いますけれども、しかし生命が危ないときに、一義的に、日本人が脱出するということは、これは国家が守ってやらなければならないことだと思いますがね。その辺のことを十分おやりになりましたですか。
○説明員(塚本政雄君) 確かに紛争勃発当初は若干イラク政府側が出国ビザを出していただけなかったり、あるいは国境へヨルダン側からの館員を派遣したのでございますが、イラク側に入れなかったというようなことがありまして、一応の批判が若干出たことは事実でございますし、残念なことに、これらの方々がお帰りになってのお話ではそういうようなことが伝わったかもしれませんけれども、少なくとも九月第一週が過ぎまして、イラク側の出国ビザも要らないというような段階になりましてからは、ヨルダンに脱出した方、それからわけて南に出たクウェート側では今井大使じきじきに九月二十五日に国境線においでになられて、むしろそこに来た人が、大使まで迎えに来たのですかと言わんばかりに言われたということで、手前みそになりますけれども、私どもといたしましては、その後先ほど御指摘の三菱商事あるいは電機、フジタ工業、東亜建設その他からたくさんの感謝状と謝電に接している状況でございます。
○田中寿美子君 そのイラクの方で日本政府のあれで発掘に携わっていらっしゃる方がおられるわけです。イラク古代文化研究所の所長でいらっしゃる藤井秀夫さん、まあお名前を出しても私は構わないだろうと思いますけれども、ちょうど発掘の現場のところで非常に危険を感じて、そして脱出したいということを申し入れたけれども、その方たちだけでありません、土木建設に従事している人もその他みんなそれを感じて、そうして退去したいということを言ったけれども、大使館はそれをやってくれなかったと、で、退去するのもEC諸国と話し合いをしなきゃできないという言い分なんですね、それはどういうことですか。
○説明員(塚本政雄君) そういうような事実は全然ございません。これは引き揚げ勧告を発するとかなんとかという点につきましては、御案内のとおりEC諸国とかやっぱり相手国政府との関係もございますので、そういう点については協議いたしましたけれども、少なくともイラク、ただいま申しました四千百名のうちから、過般にわたって今日まで一名のと言うとちょっと語弊ございます。確かにイラクからトルコ経由の二名の人は、足に銃創を受けましたから、その限りにおいてはけが人が出ましたけれども、しかし三千数百名の方々が今日無事東京に、日本に出国できたということは、まあ私どもといたしましては非常に僥幸であったのではなかろうかと、かように感じているわけでございます。
○田中寿美子君 まだ残っている人たちもいるわけです。それから帰ってきた人たちもですね、そういう非常の際に大使館が当てにならないということについて非常に悲しんでいるわけですよ。在外の公館というのは、在留邦人の生命を守ってくれるよりどころとなる場所だろう、だから、大使館を中心にして邦人がそこで一緒になって、困難を打開しながら出ていく方法はないか。たとえばそのバグダードから飛行機を飛ばしてもらえないと、しかしヨルダンのアンマンまで何とかしてJALを飛ばしてくれることはできないだろうかというような交渉は一切政府はやってくれない。ヨーロッパ諸国と相談しなければだめだだめだと言いながら、たとえばフランスなんかはちゃんとバグダードからもう即刻国費で飛行機をチャーターして、そしてアンマンにホテルまでも確保して救出している。永久にこれは立ち去るということではないですね、危ないときに避難するということ。そういうときに、日本政府が救出機を出す意思はもちろんない。イランの石化の人たちは特別機で出てきたというふうに言われていますがね。特別機というのは企業が自分でお金を払ってチャーターする。救出機というのは、国家が補償してくれるわけね。ところが大使館にはそんな金も何にもないんだからそんなことできないという大変冷たいあしらいであったということを、そこの在留邦人たちみんなが言っているわけですが、それはそういう努力を日本政府はする余裕が、金もないし、力がないということですか、それともそんなことまでする必要はないということでしょうか。 それからJALならJALを待機させて、一カ月なら一カ月の間、残っている人たちが危ないところから出てこれるような努力、政府が助ける、そういうことができないんですか。
○説明員(塚本政雄君) 今次紛争が始まりまして、従来ともそうなんでございますけれども、大使館、大使以下関係官と在留邦人の幹部代表、あるいはときには総会でもって、その周辺のところで常時、イラクはほとんど一週に二回ほど会合を開きまして、一体どうしたらいいか、どこを脱出していけばどういうふうにして行かれるかというような情報の交換会議はきわめて頻繁に今日までも行われております。それから特にその運輸部会におきましては、確かに日本政府といたしまして残念ながら救援機といったものはただいま持っておりません。残念ながら素手でございます。しかしながら、ジャパン・エア・ラインズの中東支配人と十分協議いたしまして、われわれは東京の本部と連絡いたしまして、一応イラクからアンマンに脱出した方々が二百名、三百名と集まった段階において、アンマンに対して二回、それからクウェートに対して一回、日航の特別チャーター機を派遣して東京に帰ってまいりました。それからつい十一月の九日にはIJPC関係者の三百四十七名という最後の方々をテヘランから、これは御指摘のとおりイラン側の好意によってイラン航空機の特別機——特別機と申しましてもこれはおっしゃるとおりチャーター機でございまして、イランの石油化学関係者が支払って帰ってまいったわけでございますけれども、これは現状においては各国もそういうような形においての対応ではなかったかと、ただし、確かにヨーロッパは国も近うございますし、それからいざという場合は軍用機を飛ばしたりなんかというようなファシリティーもあるわけでございますけれども、私どもといたしましてはそういったような手段がございませんので、与えられたる条件において、しかも最善を尽くして今日ここに至ったと、こういう状況でございます。
○田中寿美子君 まだイラクの場合、千七百人ぐらい、それからイランの場合は、さっき何人でしたか……
○説明員(塚本政雄君) 五百七十名、六百名ぐらいです。
○田中寿美子君 まだ残っているわけですね。それは絶対にもういまの工事を保っていくために出ては困る人員だというふうに先ほどおっしゃったわけですが、そういうことかどうか、私は問題だと思うわけですね。そして危険がありますときには、その政府と、向こうがなかなか応じないという問題があるかと思いますけれども、やっぱり大使館あるいは日本政府の責任においてその人たちを守って、そしてそのJALならJALがバグダッドからアンマンまで、あるいはイランの方はトルコ政府の許可を得てアンカラまでJALを六回も飛ばしている、だけどこっちのイラクの方はそれが進まないというのは、私は何やら大使館の力のなさではないかという気もするし、あるいはどういうところにそれは弱点があったのか、相手国のことがありますけれどもね。一時的に危険な場合に、避難してまた必要なら戻っていくというようなこともやむを得ないわけですね。ですから、海外に出ている日本人をちゃんと守ってくれるだけの力を持たなければいけないし、それから、そこに働いている日本人がたくさんいる。その数の把握もこういう事故が起こらなければちゃんとできないという状況では、重要な仕事をしている以上はやっぱり問題だと思いますので、大使館の対応の仕方ね、先ほど情報の問題も申し上げましたけれども、それだけじゃない、やっぱり中近東という非常に動いている地域で、いろいろなことが起こり得る地域で一体大使館がどうあるべきかということ、これは大臣、ちゃんとしていただきたいんですよ。そうでないと働きに行く人たちも非常に不安でありますしね。それから日本という国が一体どれだけの対応ができるのかということについての不安がありますから。大臣、どうですか。
○国務大臣(伊東正義君) 先生とのやりとりを伺っていたのでございますが、私もこっちにおりまして、人命救助というもの、これは至上命令だということで、中でいろいろ話をしていたのでございます。先生のような意見も現地から帰った人が言われたということは、いま承ったのでございますが、私はその事実は、もう少し調べてみませんと正確なお答えはできませんが、先生のおっしゃった邦人の保護、人命救助ということにつきまして大使館は何よりもまず一生懸命取り組むべきだ、不安ないようにしろとおっしゃることは、これはそのことはもう私もそのとおりだと思います。どうやったらそういうことができるかということでございますので、御質問もございますし、事実も少し詳細調べますが、まだ残った人がおるわけでございますから、その人たちに万一のことがあっては大変でございますので、いまの御質問のことをよく踏まえまして、私どもとしまして最善の努力することを考えたいと思います。
○田中寿美子君 いまおっしゃったこと、外務省当局のおっしゃったことと大変違う情報を私は聞いておりますので、ぜひそれはきちっとしてもらいたいし、それからイラクの場合それじゃ日航機をアンマンまで飛ばすとか、あるいはあそこのヨルダン航空ですか、そういうものとの契約をする——向こうの商売を取ってしまうというようなことではまた問題でしょうから、そういう努力が大使館の責任においてやってもらえるようにしてほしいということです。 それで、最後になりまして時間がなくなりましたけれども、イラン石化の工事の問題ですね。これは政府は続ける意思を表明している。しかし三井石化の方はこれはやめたい、借金がかさむばっかりだ、千五百億の借金。そして国費ももうすでにずいぶん出していますね。この問題について政府はどうしようとしていらっしゃるんですか。まだやるつもりだみたいなことも言っていられるけれども、すでに政府の支出は七九年二百億、八〇年二百二十六億ですか、それでその仕事はすでにもうストップしておりますから、その間の職員の給料なんてものは一体どういうふうになるんですか。
○説明員(新欣樹君) この問題いろいろと報道がなされているわけでございますけれども、まず先生おっしゃった三井側はやめたいというようなことを考えておるというようなことで、一部報道でも三井物産はイランからの、本プロジェクトからの撤退を決定したとかいうような趣旨がございましたけれども、私どもに三井物産からは、そのような報道は事実無根であり、当方として大変迷惑しておるというような報告を受けておるということをまず申し上げたいと思います。 それから次に、政府がどれだけ投資をしておるかということでございますけれども、現在までに日本側といたしまして投資、融資といった形で約三千百億円余りのものが投入をされておるわけでございますが、このうちいわゆる政府ということで申し上げますと、海外経済協力基金からの出資が、ことしの三月に二十八億円、八月に二十六億円、合わせまして五十四億円の出資が投入されてございます。それから、これは過去のものでございますが、いわゆる政府関係の融資、円借款というものが二百八十八億円、このうち投入されておると、こういうことでございます。 そして、今後どうするかということでございますけれども、このプロジェクトにつきましては、イラン側というものが一体このプロジェクトについてどう考えておるのか、これにつきましては、現在、山下ICDC社長がイランに参りまして、いろいろ交渉して、いま帰国の途上にございますので、この山下社長の御報告というものもよく承らなければいけないし、それから、実はまあ四回、五回と爆弾によりまして被害を受けたわけでございますが、この被害の状況の詳細が一体どうなるのかというところにつきましてはやはりきちんと調査などもしなければいけないというような状況にある現在におきまして、撤退だとかこういうことを云々するような段階では全くないと、したがって、目下のところ政府といたしましても継続支援していくという方針に変更はないと、こういうふうに考えておる次第でございます。
○田中寿美子君 まだありますけど、それでは時間ですからやめておきます。
○委員長(秦野章君) 午後は二時十五分から再開することとし、暫時休憩をいたします。 午後零時二分休憩 —————・————— 午後二時十五分開会
○委員長(秦野章君) ただいまから外務委員会を再開いたします。 委員の異動について御報告をいたします。 本日、中山太郎君が委員を辞任され、その補欠として大木浩君が選任されました。
○委員長(秦野章君) 休憩前に引き続き、国際情勢等に関する調査を議題として質疑を行います。 質疑のある方は順次御発言を願います。
○渋谷邦彦君 最初に、防衛問題について若干お尋ねをしたいと思います。防衛局長が時間の都合がおありになるそうでございますので、その時間の範囲内で進めさしていただきたいと思います。 まず最初に、昨今ソビエトの脅威論を背景とした防衛力増強についての整備計画、あるいは手直しをする必要があるんではないか等々、いろいろ憶測を交えてそうした考え方が乱れ飛んでいるようでございます。一昨昨日ですか、十日、原防衛事務次官が、月例の内外情勢調査会の主催による会合に出られていろいろ御発言されていたようであります。その席には防衛庁長官も列席をされている。したがって、その発言も当然権威あるものであるというふうに判断を実はしているわけでございますが、その中でのちょっと気になる問題が一つあるわけですね。つまり、防衛大綱を決定し、そして防衛力整備のための予算の枠といいますか、額についてはGNP一%にすると。これは結局いま見直し論というものがいろいろと取りざたされている中に、将来防衛大綱というものは今後も、長官の言明をかりますと、見直しする考えはないと、しかしその反面に、事務次官の言われていることは、大綱と切り離した考え方の上に立って、将来、必要に応じては防衛費というものを考え直す、そういう段階も当然予測されるであろうと、そういうニュアンスの発言があったように私は判断したわけでございます。こうなりますと、やはりいろいろと波紋を呼ぶんではないかということは当然でありますので、その辺からまず最初にお尋ねをしてまいりたいというふうに思うわけであります。
○政府委員(塩田章君) 私どもは防衛力の整備に当たりまして、当面各年度の防衛費が一%を超えないことをめどとして行うということにつきまして五十一年の閣議決定がございまして、それに従ってやっております。それを現在、この考えを変更することはないということはしばしば申し上げておるとおりでございますが、いま御指摘の原事務次官の発言のことでございますけれども、私も御本人にも伺いましたし、それからメモも読ましていただきましたけれども、次官の発言そのものは、当時の防衛計画の大綱の決定と、それから一週間ばかり後にいまの一%のあれが閣議決定になったわけですが、その経緯を述べておりまして、まあ言うなれば防衛計画の大綱の方は、何といいますか、かなり長期にわたった一つの防衛計画の大綱であり、それと当面一%以内にするという財政的なめどといいますか、その決定とは一応別なものであると、別なものとして当時決定されたんだという経緯をまあ述べておられるわけで、かつそれにとどまっておりまして、別に、それでいまいろいろ御指摘ございましたような別な判断の可能性を述べたとかいうことではないというふうに私どもは承知しております。
○渋谷邦彦君 ただ、確かにいまおっしゃったとおり、その経過の説明であったろうというふうに思うんですが、その大綱が決定された後にGNP一%以内の閣議決定が一週間おくれてなされたというところに非常に強調されたその裏には、国際情勢のあるいは激変といいますか、に対応するためには将来——その将来というのは早い将来か遠い将来かは別問題にいたしましても、当然それは見直しというものを頭の中に入れつつ、これを分離した考え方の上に立ってまあ閣議決定がなされたというような受けとめ方にはならないかということですがね。
○政府委員(塩田章君) いまも申し上げましたように、そういう将来の時点の判断といいますか、予測といいますか、そういうことを前提にした発言ではないということは、ひとつそれは御理解をいただきたいと思います。
○渋谷邦彦君 ただ五十二年に発表されました「日本の防衛」、いわゆる防衛白書ですね、その辺のくだりといいますか、いわゆる防衛力基盤整備といいますか、これを行うためには国際情勢の変化にやはり対応しなきゃならぬだろうと、いわゆる四次防のような長期計画では必ずしも変化する情勢に対応できるという判断は成り立たない、したがって、財政計画についても単年度計画というふうに切りかえざるを得ないという、そういうくだりもあるわけですね。そうした点をもう一遍煮詰めて考えると、この原防衛事務次官の発言というものがこれはやはり脈絡がある一つの表明ではなかったろうか。確かにこの防衛大綱を見ましても、それから防衛白書の中身を見ましても、特にソビエトを意識した防衛力というものを強化、拡充しなければならない、そういうようなことが一貫して貫かれていることを考えますと、今後どういう一体変化があるかわからないということが一つ。 それから特に、このレーガン政権が来年一月二十日に誕生するわけですけれども、実際に政権の座に座って細かい政策というものが発表になるまでは、果たしてどういう方向をたどるのかということはなかなか把握しがたい現状であろうかとも実は思います。しかし、まあいろいろと風聞するところによりますと、レーガンを中心としたこのスタッフ、大変強硬、いわゆる特にその軍事力増強については強硬論者をそこに据えようというような動きもあるやに伝えられているわけです。そうすると、当然軍事力の米ソ間のバランスというものをとるためには、追いつけ追い越せというような発想の中で、レーガンは相当厳しい防衛力増強というものを考えもするだろうし、あるいはアメリカの、要するにこの財政の中に占める割合も何か一%ぐらいふえるのではなかろうかということも取りざたされているわけです。となるとそれに連動して、われわれがいろいろとやはりいま危惧の念を抱いている中に、当然友好国である日本が防衛の分担をもっと鮮やかな形で要求されてくるであろうと、要求してくるであろうと、そういうようなことも十分予測をしながら、今後の日本の防衛についての判断、適切な判断というものを考えていかなきゃならない。したがって防衛庁としてもその辺ジレンマのような気持ちの中で、恐らく米国からもそういうような強い要求がある傍ら、現在の一体防衛力で果たして脅威に対するレベルというものが十分であるかどうかという問題がある。まあわれわれ素人が考えましても当然そのぐらいのことは頭の中に思い浮かんでくるわけです。 そうした場合に、やはり現状ではとうてい不十分であるということになりますと、必ずしも防衛大綱というものをもし見直さないとするならば——この見直すかどうかという問題も後でお伺いしたいと思うのですが——見直さないとするならば、やはりそのGNP一%を超えるような、あるいは別枠でもって財源措置を講じつつ防衛力整備のために取り組む方向へいま考えを持っていっているのではないかと、これは憶測ならば大変結構だとぼくは思うのですけれども、これから五年先、十年先とは言わないまでも、あるいは来年どうするのかという問題も当然出てくるであろう。そうした場合に、一体現状のままであくまでも決められた方針に従って進んでいくのかどうなのか、その辺も重ねて確認をしておきたいというふうに思うわけです。
○政府委員(塩田章君) まあ前段の大綱の見直しを、何といいますか、頭に置いての発言ではないかという点につきましては、先ほどからも申し上げておりますように、少なくとも今回の発言、ずっとこう議事録等を読んでみましても、経緯を述べたということでございまして、そのことと結びつけて発言をしたものではないということはひとつ御理解をいただきたいと思います。 それから、それと関連しまして、レーガン新政権になった場合に、日本にいろいろ防衛対日期待要求といったものが強く出てくるのではなかろうか、あるいはそういうことを頭に置いていろいろ防衛庁事務次官の発言もあったのじゃないかという趣旨のお尋ねかとも思いますが、これも、先生もおっしゃいましたように、いまの時点で新政権がどういう形でいろいろな対日防衛努力期待というものを言ってくるかまだわかりません。 この間も、先生のお尋ねだったと思いますが、お答えしましたと思いますが、共和党の綱領そのものからは、現在のカーター政権の場合とそんなに変わるとは思えないのですけれども、まあしかし具体的にどういうことになるかは、まだいまの時点では何とも申し上げられる段階ではないと思います。したがいまして、そういうことを念頭に置いた発言でもないという、要するに、当時の閣議決定の経過を説明したものであるというふうに御理解をいただきたいと思います。
○渋谷邦彦君 そのいまのお話、そのまま受けとめておけば、まあそうだろうなというふうな気持ちになってしまうわけですけれども、大村さん自身は常に衆参における他の委員会におきましても、ソ連の潜在的脅威というものを念頭から離さずに今後の日本の防衛計画というものをやはり考えていく必要があるんだと、こういう発想があるといたしますと、大変現在の防衛大綱それ自身にも矛盾があるんではないだろうか。当然そのためには見直しを迫られる、そういう展開をやっぱり示していく、必要になっていくのではないかというようなことが考えられるわけです。この防衛白書を拝見いたしましてもそうですしね、それは貫かれているんですね、もう五十一年度あたりからの防衛庁の基本的な考え方というものがそのある一点にしぼられて、そしてその防衛力整備のために能力を高めていこうと、そのためにいろいろな対応策というものがとられているであろうということが、これが連動するわけです。しかし、その半面に、ソビエトという強大な軍事国家を相手にして、一体どこまでいったならば、満足とはいかないまでも、ある程度対応できるいわゆる軍事力の整備というものができるのかどうなのか。やはりソ連の脅威というものを念頭に置いた場合には、絶えずその辺まで、エスカレートするわけではありませんけれども、どうしてもやっぱり考えていかざるを得ないであろうと、そういう観点に恐らく立つのであろうと思うんですが、これは防衛庁筋と言った方がいいのかどうなのかわかりませんけれども、国際情勢の大きな変化であるとか、あるいは大綱の目標とする防衛力の達成、あるいは国内情勢が許すときというような三条件を基礎に置きながら、将来やはり見直す時期が来るのではないかというような受けとめ方ができる、そういう非常に幅の広い考え方、判断の基準が示されていることもわれわれ伺っておるわけです。そうすると、その点については、大村さんが言われた、ソ連の潜在的な脅威というものを常に念頭から離さずに日本の防衛力のレベルを高めていくということと連動するわけですね。そうすると、当然そのためには財源措置も必要になってくる。いろんなもろもろの問題がそれに連動するわけです。この点の疑問というものはまだやはり霧の中に閉ざされているような感じがいたしまして、その辺、明確にしろといってもなかなかできにくい面も私はあるんじゃないかと思いますけれども、大村長官がすでにそういうような基本的な考え方を明確にしている以上、防衛白書にもそれを裏づけとしてある以上、やはりこのままでいくとは考えられない。その点は大丈夫かどうか。間違いなく防衛大綱に立脚して、GNP一%という枠内で日本の防衛力というものを整備していくんだと、こうなるのか。やはり将来、いま申し上げたように、国際情勢の急激な変化だとかいろいろあるわけですから、あるいはアメリカからのいろんな要請というもののはざまに入って、一体日本としてはどうするんだという問題、当然これは常識として出てくる問題ですね。その点なんかも何回か往復しながら、防衛庁としても、その点の分析、そしてまた判断というものをさらにより鮮明にしていかなければならないという、そういうことにいま迫られている段階じゃないかと、こういうふうに思うんですが、いかがでしょうか。
○政府委員(塩田章君) いまもお話がございましたように、五十一年からああいう防衛計画の大綱と伊うものができまして、単年度方式に切りかえて整備を図ってきた、もちろん、その場合、計画の大綱に従った整備、具体的には私どもが、防衛庁限りではありますけれども、中期業務見積もりというものをつくって整備してきた、この辺はよく御案内のとおりだと思います。いまのお話にございましたように、最近、長官がソ連の極東における軍備増強が潜在的脅威であるということを申し上げまして、そういうことも念頭に置いて防衛力の整備を図る必要があるという趣旨のことを発言をしておるではないかという御指摘でございますが、それは、そのことが防衛計画の大綱を変えなきゃいけないとか、そういう意味ではなくて、防衛計画の大綱に従っていま整備しておりますけれども、中期業務見積もりが予定どおり達成したとしても、まだ大綱の水準にも達していないという状況を考えましたときに、私どもはそれをなるべく早く大綱の水準に到達するための努力をしたいと、そのために中期業務見積もりをなるべく早く達成するように努力をしたいということを申し上げておるわけであります。 で、先ほど防衛計画の見直しの三原則のお話もございましたが、これは私が先般の答弁の中で申し上げたわけですけれども、将来防衛計画の大綱を見直すときがあるとすれば、それは国際情勢の変化ということも考えなければならないし、国内諸情勢の動向ということも当然考えなければいけないし、あるいはまた、いま申し上げました防衛計画の大綱への達成状況といったようなことも考えられる大きな要素、そういったようなことを考えあわせて将来そういう時期が来るかもしれないということを申し上げたわけでございます。そういういま申し上げましたことと、いまの直接一%の、財政的に一%の、どうのこうのという話とは一応別個な話としてお受けとめいただきたいと思います。
○渋谷邦彦君 いまも伺っておりますと、あるいは将来と言ってもいつになるか、それはわれわれも予測もできないと思うんですね。ただ、急激に変化している国際環境であることは、これは間違いない。防衛庁としては、国際情勢の変化という幅の広い一つの判断に立って、将来それに対応するだけの防衛力を整備する必要がある、いまもそういう含みのある御答弁だったと思うんですが、そういう場合というものは一体どういうことを予測するか。それは、なぜ私そのことをくどいようにお尋ねしたいかと申しますと、久保さんの時代からも、これは一貫して脅威論というものが先行して、やはり脅威論というものがなければ防衛力というものは起きてこないんだ、防衛力整備というものは起きてこないんだと、確かにそうだと思うんですよ。その脅威というものについての判断の基準、何をもって一体脅威とするのか。いろいろな見方というものも当然あろうかと私は思うんですね。膨大な軍事力を抱えているそれ自体が威圧感を与えるとか、もし万が一、それがアクシデントでも起これば直ちに日本がというような、そういう恐れの中でとらまえている場合もあるでしょう。いろいろな脅威論に対してはそのとらえ方というものはぼくはあると思うんですけれども、防衛庁としては、この辺、確認をする意味でいまお尋ねをしているわけですけれども、現状としてその脅威論というものはどこまでも続くというふうに見ておられるのか、何をもって脅威としているのか、脅威を除去するためには一体どういう態勢というものが必要なのか。当然そこまでお考えにならなければ、この脅威に対する解消ということにはつながらないというのが、恐らく軍事面から見た考え方につながるであろう、こう思うんですけれども、その点は、かつて御専門であった防衛局長といたしましても、十分その辺も心得られながらお取り組みになっていらっしゃるのではないかと思いますので、お聞かせをいただければありがたいと思います。
○政府委員(塩田章君) お話にございましたように、何をもって脅威と判断するかということ自体、別に具体的な基準といったようなものはないわけでございまして、大変むずかしいことだと思いますが、私どもはいつも言っておりますのは、御承知のように、潜在的脅威という言葉を使っております。これは脅威を意図と能力に分けた場合、意図の方は問わない。それは軍事的に言えば、能力の方を注目した場合、それを潜在的脅威と見るかどうか。それも、それではどの程度の兵力になれば脅威と見るのかどうか、こういうことになりますと、これもまた具体的な基準というものはございません。やはりそのときの国際情勢なり、いろいろなものを総合的に判断をせざるを得ないだろうというふうに思います。したがいまして、もしいまのお尋ねが、何か、どういう具体的な基準かということでございますと、ちょっと、お答えは大変むずかしいんではないか。ただそれを、私どもは最近における極東におけるソ連軍の増強ぶりにつきましては潜在的脅威の増大であるということを一つの判断として申し上げているわけです。 それをまた今度は、いまのお尋ねの除去する方法としてはどういうことが考えられるかということでございますけれども、それはまさに軍事面を離れた外交を中心にした国全体の広い意味の外交政策といいますか、そういうことによって、いま申し上げた意図の方をなくするといいますか、日本に対する侵攻意図をなくするという努力がまず一番基本ではないだろうかというふうに、私は、専門外のことになりますけれども、そういうふうに思っておるわけであります。
○渋谷邦彦君 それはおっしゃるとおりだと思うんですね。一番後段でお話しになった方向で、日本としては平和に生きなければならないという宿命的な立場に置かれているわけでございますから、どうしてもやはりそういう道をとることが強く望まれることは、これはもうそのとおりだと思うんです。 ただ一方においては、日米安保体制下において、しかし、どこまでいったならばバランスのとれた防衛力整備ということにつながるのか、そういうような結果までレベルを上げていかなければ日本の防衛というものはできないのか、あるいは現状で十分対応できるのか、いろいろそういう問題も当然また出てくると思うんですね。これはもう軍事力の増強、防衛力の増強というのはもう際限がないと思うんです。ソビエトに追いつけ追い越せなんと言ったって、これはもう事実上物理的に不可能なことでありまして、それはもう財政的に見ましてもソビエトは年間三十兆を超すお金を使っている、日本は二兆円そこそこ、この財政措置の上から見た場合でも、もうとてもそれは太刀打ちのできる状況ではありません。したがって、一番最後におっしゃられたようなことにどうしても結びつかざるを得ない。けれども、最小限度局地的な紛争については限定的に排除する能力というものをやはり防衛庁として持つ、その立場から、それでもなおかつ十分な能力が発揮できるという状況ではないということで、現在整備の段階を急がれているんだろうと、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
○政府委員(塩田章君) 全くそのとおりだと私は思っております。 日米安保という体制とみずからの努力ということによる日本の安全の確保ということが私どもの目標でございますから、その場合のみずからの努力の方の防衛力の整備というのは一体限度がないのかどうかということにつきまして、結局五十一年度当時の考え方で大綱というものをつくりまして、一つの水準を示したということでございます。その辺はよく御存じのとおりだと思いますが、それに、いま大綱の水準に達するべく努力をしておりますので、それで、具体的に現在の時点で具体的な整備目標と言われれば、大綱の別表の水準に早く達したい、こういうことを申し上げておるわけでございます。それで十分かどうかというお話はまた別途の問題でございまして、私どもの現在の目標としましては、そういうところに目標を置いていま整備を図っております。それと日米安保体制とで日本の安全を確保していきたいということで、それが具体的な目標としましては、いまお話ございましたように、限定かつ小規模のものについては独力で排除し得るもの、これを目指してやっておるということでございます。
○渋谷邦彦君 独力で排除するということも、これは技術的、戦術的にというようなことになった場合に、むずかしいいろんな問題も出てくるんだろうというふうに思いますけれども、ただ、ここでもう一遍考え方を整理する必要があるんじゃないかと思いますのは、特にいま防衛庁としては対ソ関係について脅威論が先行しちゃって、その脅威論をやはりある程度鎮静化するためには防衛力の整備というものを急がなければならないのだというふうな関連した物の見方をどうしてもせざるを得ない。一方においてはソビエトの神経を逆なでするみたいな方向になりかねないという場合もあり得ましょうし、また対ソ脅威論ということから、どうしても日本の防衛力というものをもっと高めていかなきゃならぬということで防衛力増強の方へ一つの突破口になりはしまいかという、この二面がやはりどうしても出てくる。これもいままで安保特別委員会等でも大分議論になった一つの問題点であるようでございます。この点は将来ともにわたって一応やはり目標というものはソビエトに置きながら、あるいは北朝鮮がそこに入るかどうか私わかりませんよ。恐らく対象として考えられるのは、やっぱり北方四島の問題もこれあり、どうしてもソビエトを対象とした日本の防衛力整備ということに重点を置きつつ、これからもその計画を進めていく方針なのかどうなのか。余りそれが前面に押し出されますと、いまみたいなかえって危険な方向をたどらざるを得ないんじゃないかという一つの心配があるわけですよ。その点を整理しながらおっしゃっていただけますと大変ありがたいと思いますね。
○政府委員(塩田章君) 先ほども申し上げましたように、脅威ということを私ども言う場合に、意図と能力に分けて、意図についてはあくまでも外交その他の努力によりましてわが国に侵攻のないように努力していくことが先決であるというこのことにつきましては、私どもはもう全くそのとおりだといまでも確信をしておるわけでございます。そうは言いましても、私ども防衛の立場から言いますと、軍事的能力というものについて着目した場合に、私ども自身のしかるべき防衛努力ということも必要である、これはこういうふうに思っており、また思っておるからこそその努力をしておるわけでございますが、それにつきましては、いま先生御指摘ございましたけれども、前から申し上げておりますように、大増強というようなことじゃなくて、防衛計画大綱に従って一日も早くその線に達したいということを申し上げておるわけで、その具体的な線としましてはやはり、具体的と言えるかどうかわかりませんけれども、限定かつ小規模のものを自分で排除する、あとは日米安保でいくという基本的な考え方を私どもはずっと堅持しておるわけでございますから、その線で整備に努力しておるということをひとつ御理解いただきたいと思います。
○渋谷邦彦君 そこで防衛大綱の中身を拝見いたしましても、防衛力増強という視点がどこにあるのかということを考えてみますと、主として兵員の増加あるいは兵器の購入、こういったところに一切集中されているような感じがするわけですね。確かにそれは数が少ないからふやさなきゃならぬという議論になるんだろうと私は思うんです。しかし、たとえば世界的なレベルだと言われている七四戦車ですか、これを考えてみた場合、もし仮に防衛庁のおっしゃるとおり限定的な排除の対応をやるんだということになった場合、素朴な疑問として、一体戦車というのはどこで使うんだという問題だって出てきますね。しかも世界のトップレベルにも達していると言われる大変優秀な戦車を持っている。どこで使うのか、日本のように山岳列島と言われている平地の少ないところで使いようがないじゃないかという問題が出てくる。ですからそういう問題だけに、増強の中身をしぼった物の考え方というもので果たして整備されていくというふうに考えていらっしゃるのかどうなのか。いままで防衛庁におられた方々の中でも非常にそうしたことを疑問視する面がございますね。それは兵器そのものも、時々刻々通常兵器においてもより優秀なものが開発もされ、生産もされているようであります。常にそれを追っかけて常に新しい機種にそれを取りかえるということだけで一体いいのかどうなのかという問題が一つあります。それにまた膨大な予算をそこにつぎ込まなきゃならぬ、それで本当に使えるもの、使えないもの、いろいろあるんではないだろうか。仮に、かつてもう恐らく世界ではこれ以上のものは将来においても出ないだろう、できないだろうと言われたF104の戦闘機にいたしましても、いまではその性能がいかがかと言われるようなことになって、近い将来F15を導入するというようなことに変わってきているわけです。ただそういう機種を変更するということだけで、実際に整備というものが図れるのかどうなのか。十分に使いこなせた上で、なおかつ相当高い技術と能力を要求される。パイロットの養成も追いつかないままに、その次の段階に踏み切っていいのかどうなのか。いま申し上げているのは一つの例ですよ。そういったような環境の中でなおかつそういう兵器に集中し、ただ人をふやせばいいんだということで日本の防衛力の整備というものが果たせるものかどうかという、まだやはり疑問が残る。しかも、細かいことになりますけれども、もし一たんそういうような紛争が起こった場合に、弾薬にしても、油にいたしましても、十分な確保ができるかという大変むずかしい問題が控えておるわけです。われわれも太平洋戦争の経験者の一人でありますけれども、結局最後は油がないために南進をせざるを得なかった。ああいうことになりかねないということ、それが日本の置かれた現在の位置であろうとぼくは思うんです。油がなくなったらどうするんだとすぐ考えるんですね。戦える能力がないじゃないか、弾はつくれるのか、資源もどんどん枯渇することによってそれが今度価格にはね返ってくる、だんだん膨大に防衛予算というものをふやしていかなければ防衛大綱に見られているような整備というものが果たして連動しながらできるのかという問題もまだ詰めた議論がなされていないだけに、きょうも大ざっぱなことしかお伺いできないわけです。はっきり申し上げて。それよりもまだやることがあるんじゃないかということが一つ。 私はいままでレーダーサイトを対馬と稚内を見せていただきました。これが日本の国力かなあということをまざまざと見せつけられたんです。あれは一発やられてしまえばもう使い物にならない。むしろそういったところに、兵器そのものに集中するんではなくして、領海侵犯であるとか領空侵犯というものはレーダー網というものが整備されていれば事前に対応ができるという機能があるわけですね。かつてのミッドウェーで日本の連合艦隊が全滅した、結局アメリカのレーダー網にひっかかってせん滅されるという苦い経験をわれわれは過去の戦訓として、まあ時代が違いますから戦訓なんて言っちゃいけないかもしれない、教訓として持っているわけです。そういうようなことを総合的にもう一遍見直しながら、整備を図るとするならば、兵器そのものもある程度のものは必要にいたしましても、むしろそういうものを事前に予防する方向へ向けられていったらいいんじゃないかというようなことも考えられるんですよ。 外交関係もちょっと質問を残しておりますものですから、いま申し上げたことは総合的にひとつ私の疑問にお答えをいただければありがたいと思います。
○政府委員(塩田章君) お尋ねの御趣旨よくわかるわけでございますが、防衛計画の大綱の別表の場合、ごらんになっておわかりいただけますように、どうしても部隊の数とか護衛艦の数とかそういうものが書いてあるわけでございます。したがいまして、それをどこまでふやすか、そこに早く到達されるかというようなことでいつも申し上げるものですから、どうも防衛庁の考えているのはそういうものを整備することばかり考えているのじゃないかというふうに受け取られがちなんですけれども、大綱をよく読んでいただきますとおわかりいただけると思うんですが、基盤的防衛力という考え方があの大綱の骨子になっておりますが、その一番のねらいとするところは、やはり後方支援体制とのバランスをとるということを一番基本的な考え方としてうたっております。いまも御指摘のございましたような、たとえばレーダーサイトの抗堪化というような問題につきましては、別に大綱の別表の方には出てこないわけでございます。しかし、それは当然必要なことで、基盤的防衛力構想をつくったときの考え方として、後方の体制、あるいは教育訓練、こういうようなことは十分バランスをとった防衛力であるべきだということを考えております。具体的にいまの、稚内、対馬等を御視察いただいたそうでございますけれども、現状はごらんになったような状態でございます。私ども、中期業務見積もりにおきましても、そういったところの抗堪性ということについていろいろ考えていかなくちゃいけないということで、短SAMあるいは機関砲なんかをそういった基地に配備するということも、十分ではございませんけれども、考えております。それからまた、レーダーサイトがもし攻撃を受けて使用不能になった場合の移動するレーダー警戒部隊、それも考えております。そういうようなことも同時に考えながら、そのほか油のこと、弾のこといろいろ御指摘がございましたけれども、そういうことをひっくるめまして、あるいはまた、それにもっと一番大事な教育訓練、こういうことも含めましていまの基盤的防衛力構想というものはできております。それがたまたま別表ではいろいろなものの数字としてあらわれているだけでございまして、中身はいま申し上げたような考え方でできておるわけでございます。
○渋谷邦彦君 最後に一点だけ。 これからレーガン政権になって、どういう要求がなされてくるかわからないことは先ほど申し上げたとおりでありますけれども、カーター政権時代よりももっと厳しいそういう防衛力、いや防衛分担という意味で要求されてくるであろう、シーレーンの問題なんか常にひっかかる問題ですね。それについて、日本としては当然その責任の一端を果たすべきではないか。しかし、憲法の拘束があり、自衛隊法の拘束があり、それは事実上できないんだと。鈴木総理の答弁を聞いておりましても、その点についてはアメリカも十分理解を示しているはずである、こういうふうに繰り返しおっしゃっている。ただ、そういったようなことがいつまでも続くだろうか。アメリカの国内情勢もいろいろ変化しているようでありますし、そうした中で、日本は友好国の一員である、当然その責任の分担をすべきではないかというようなことがいろいろ手をかえ品をかえしてくることが予測されないではない。そうした場合に、内政干渉がましいことまで立ち入ってくるかどうかは別問題にいたしましても、防衛庁としてもうやむを得ず、あるいは自衛隊法の一部を改正することによって多少は米国の要請にこたえられるような、そういう行き方もできるんではないだろうかというようなおつもりはございませんか。
○政府委員(塩田章君) 憲法上できないということにつきまして憲法を改正する意思はないということにつきましては、総理からしばしばお答えがあることでございますから私から申し上げませんが、自衛隊法の改正によってできることについて何か考えておるのかということにつきましても、私ども、いまのところ、自衛隊法を改正していまの御指摘のような、アメリカからまあどういうことがくるかわかりませんけれども、何かあった場合に自衛隊法を改正してこれに応ずるというようなことがありはしないかというお尋ねにつきましては、いまのところそういうことを考えておりません。
○渋谷邦彦君 大変、言葉じりなんかをつかまえて恐縮でございますけれども、そのいまのところはということと、将来はということがありますわね、日本語というのはなかなか幅広い解釈をされる場合がありますので。で、将来にわたってはあるいはあり得るというふうに考えてよろしいんですか。
○政府委員(塩田章君) どういうことがあるのか、想定は私いまできませんものですから、将来のこともお答えができないわけでございますが、はっきり言えますことは、いまのところ考えていないということははっきり申し上げられますけれども、将来のことについてどういう想定があるかちょっと、いろいろなことが考えられる一どういうことが考えられるかということ自体がまだ何にも現実になっておりませんし、ちょっとお答えがしにくいわけであります。
○渋谷邦彦君 これは私も、いま具体的な問題をここに指摘しながらということは非常にいろいろな影響も出てくるであろうということをやはり配慮しなければならないと思います。大変抽象的な聞き方でいかがかと思いましたけれども、まあ将来は、問題によってはというふうなことにもなりかねない場合があるかなという大変むずかしい、慎重な御答弁でございましたけれども、それはあえていま私はそこまでお尋ねしようとは思いません。きょうはもう時間が来ているようでございますので、これで結構でございます。ありがとうございました。 今度は外務省の方でございます。 まず一つは、先般わが国が安保理事会の非常任理事国として選任されたわけであります。五回目になるわけであります。本当はもうこの国連憲章の目的から言いますと、大変この役割りは大きいはずでございますけれども、外務大臣として非常任理事国に選出されたという意義と今後の果たすべき役割りというものについて、いまどんなふうな構想をお持ちになって将来それを推し進められるおつもりかということからまず最初にお伺いしたいと思います。
○国務大臣(伊東正義君) 安保理事会の非常任理事国という役目は、これはまあ非常に大切な役目でございまして、国際の平和と安全の維持ということにつきまして、これはもう第一義的に責任を負う理事会でございますので、加盟国にかわって、アジアから日本とフィリピンが一月から非常任理事国になるわけでございますが、これは世界の国々にかわってその平和と安定の維持ということに当たるという責任を負ったわけでございます。私は日本のいまの経済力その他からすれば、そういうことをする責任もある地位だというふうに考えるわけでございまして、投票でもほとんど満票に近い票で当選したというふうなことは、やっぱり世界から非常な大きな期待をかけられておるということで、大きな責任を感ずるわけでございます。 いま先生御承知のように、イラン、イラクの紛争は目前に起きた問題で、これの解決のために事務総長がスウェーデンの前の総理大臣を指名して特派するというようなこともやったわけでございますし、あるいはインドシナのカンボジア、ベトナムの問題、インドシナ半島の平和の問題、また、アフガニスタンへのソ連の軍事介入の問題でございますとか、あるいは中東和平の問題でございますとか、大きな国際緊張を促すような問題がたくさんにこれあるわけでございまして、その一つ一つが、これはみんな安保理事会にかかっているわけでございますので、そこでひとつこういう問題に取り組んでいく、世界のために役立つ、アジアのために役立つということにひとつ取り組んでいかなければいかぬ、働く余地は非常に広がるというふうに考えておるわけでございます。
○渋谷邦彦君 ただこの一九七八年以来現在に至るまで、世界に起こった紛争と見られるものは八つあるんです。しかし残念なことには国連の機能が発揮されないまま、いずれも未解決という状況になっていることは御承知のとおりだと私は思うんです。特に顕著な例といたしましては、アフガンのソ連侵攻に対して撤退決議を国連でやりました。賛成が百四票で棄権、反対を入れるとそれぞれ十八票、そうした決議がなされてもなおかつ撤退は実行されない。非常に無力を感ずるんですね。つまり常任理事国が絡んでいる国が拒否権を発動することによって何もできないということになると、非常任理事国というのはその果たさなければならない役割りは一体何だということをもう一遍問い直されなければならない、そういういま大変厳しい状況に置かれているんではなかろうかというふうに思うんですが、この点なんかについても当然何とかしなきゃならぬという世論が起きないものかどうなのか。 そして五度目に非常任理事国に選ばれた日本として、いまおっしゃられたようなお考え方にのっとっての取り組みというのは当然だと私は思うんですね。果たしていま述べられたようなことがどのように反映できるものか、そして一歩でも二歩でも前進した国連の権威というものが機能できるかどうか、非常にまだ疑問視されざるを得ないという点について、何かこうそれに向かって、ここはこうすればいいとか悪いとかという問題よりも、打開の策として進めていきたいという一つの方策なり、これから当然日本としてもその立場に立ってそういう問題が要求されてくるんではないかというふうに思います。いかがなものでしょうか。
○国務大臣(伊東正義君) おっしゃるように、国際紛争の解決機関として国連が十分に機能しない面があるという先生のお話は、私どもも同様に感ずることがございます。総会で決議をしてもなかなか守られぬとか、事実調査についてだけでも拒否権があるとか、いろいろ制約がございまして実現をしない。十分な働き、それをストップさせる、決議を実行させるということに十分機能できない面があるということは、これはまあ国際情勢のむずかしさといいますか、国というものがもう最高の力になっている、権威になっているということからきている問題でございまして、非常にそういう点、隔靴掻痒の感のあることは私どもも認めますが、しかしそういうむずかしい情勢の中で、たとえばそういう決議がございますと、いろいろな問題の所在ははっきりしてくる、国際世論も出てくる、あるいは消極的な効果かもしれませんが、それ以上に悪く進展するということに対する阻止要因になるということはやっぱり私はあると思うわけでございまして、先生御承知のように、国連の中に憲章と役割り強化の委員会というのがございまして、その中で、日本は総会とか、事務総長の権限とか、安保理事会の事実調査の権限の強化でございますとか、そういうことを委員会の中で主張しているところでございますし、私もこの間の国連総会では演説の中で、総会で決議をしたということをみんなが守っていくということを何とか確保する方法はないだろうか、あるいは事務総長が特使を派遣するというようなときの事実調査の活用でございますとか、あるいはそういう事実調査ということについては安保理で拒否権の乱用はできないというような憲章の改正とか、そういうことについて考え方を実は具体的に提案をしたわけでございます。終わりましてから三十カ国ぐらいの代表でございましたが、みんな賛成してくれまして、握手しに来てくれたことがあるのでございますが、一歩一歩でございますが、何とか世界じゅうみんないい知恵を出し合って紛争防止、紛争が起きたら早くおさめるということに知恵を働かしていくということは、これは大切なことでございますので、これはいまの国連の働きが十分でないから、それじゃそれをやめてということではなくて、それより一歩でも二歩でも前に進んでいくということでやっぱり世界じゅうが知恵を出し合うしかない、こういうふうにいま考えておるわけでございます。
○渋谷邦彦君 大変息の長いことかもしれませんけれども、申し上げるまでもなく、時々刻々に今日の国際情勢の変化がございますし、予測しないような紛争というものも起きかねない。絶えずその背景には米ソ二大陣営というものが何らかの形でそれに関連を持っている。となりますと、国連という存在は一体どうなっちゃっているんだろうと。やはり、力の前には力のない国は屈服せざるを得ないというようなパターンで、国連が創設されて以来今日まで少しも前進の跡を見ないまま来ているんではないだろうか。いま確かにおっしゃったことの中には大変ユニークな、日本として成し得る、たとえば拒否権の発動はできないという問題の提案であるとか、こういったことはやはり具体的にほかの国々にも働きかける一つの行動というものも要求されてくるであろうと思いますし、これはもうやはり急ぐ問題だろうと私は思うんですね。 したがって、そうしたようなことを十分頭の中に入れながら、日本としていま述べられたことも一つの具体的な方途であろうと思いますけれども、世界がどのようにまた変化していくかわからない。たとえば軍縮一つ考えましても、これは少しも前進しないわけですね。軍縮会議が持たれてもそれが一向に具体化される方向をたどらない。むしろいま軍拡の方へどんどん速度を上げて突っ走っている。しかも、その状況は米ソが中核である。こうなってみますと、力のないものは幾ら発言しても抹殺されるというような環境というものはやはり根底から覆していく必要がありましょうし、そのためには、日本としても何かいまおっしゃられたほかにも具体化する一つの道として取り組めないものかどうかということ、どうしてもやっぱり何か手ぬるいなという感じで、そうぱっぱっとリトマス試験紙みたいに色が変わるというわけにいかないかもしれませんけれども、多少でもそこに充実されたものの実りある成果というものが何か具体的な形になってあらわれるという、そこまでやっぱり日本としては責務もあるだろうし、役割りもあるのではないだろうか。ですから、いまの状況だとやっぱり同じことを繰り返し、もうそれで一年過ぎた、また一年過ぎたということになりはしまいかということを私は心配するがゆえに、伊東さんとしての思い切った日本の外交展開の一環として、国連中心ということを政府の方針としても掲げている以上、これはやっぱり成果あるような方向へぜひ持っていっていただきたいなと、こう思うんですよね。これからどうですか、いろんな機会があると思いますけれども。
○国務大臣(伊東正義君) おっしゃること、私も理解はできるわけでございます。でございますので、いま私申し上げたようなことを総会で私は演説したんですが、安保理の中で今度は日本が理事国になりまして、具体的に拒否権の乱用は防止しようじゃないかというようなことを私は強く主張していく、一つでも二つでも実現するということをやっていく必要があると思うわけでございます。 それからもう一つ、非常に悠長じゃないかとおっしやるお気持ちもわかるんでございますが、第二次大戦の前のようなことを頭に置いてみますと、いま起きているようなことは私はやっぱり、第三次か第四次か知りませんが、非常に大きくなっていることもあるんじゃないかなと。それをやっぱり防止しているのは国連で、あそこでみんなで議論し合う、協議し合うということがそういうことも阻止しているんではないかなと私は考えておるわけでございますが、ただ、歩みから見れば非常にまどろっこしいじゃないかというお気持ちはわからぬではございませんが、世界の国際情勢というのはなかなかそう簡単ではないんだということがまた一面ございますので、その点はわれわれも踏まえて今後とも努力をしてまいりたいと思います。
○渋谷邦彦君 そういった問題、そしてなかんずく、いまわれわれが頭から離れない問題については、軍縮の問題がやっぱりよみがえってくるんですね。ところが、きのうですか、恐らく次期政権の上院における軍事委員長に目されているというジョン・タワーという共和党議員が大変物騒な発言をしているんですね。中性子爆弾の開発に乗り出すんだとか、あるいはB1もこれから生産するのであるとか、そういう非常にどぎついことを——これは信感性についてはわかりませんよ、しかし、きわめて有力な共和党議員である、いま申し上げたようなそういうポストが恐らく与えられるんではないかといわれるくらいの方でございますから。そうするとまた一転して、また速度を早めたようなかっこうでアメリカも軍拡の方向へ道を開くようなことになる。そのためには国防予算というものをさらに一〇%もアップするというようなことを平然として述べておられる。 こういったことを考えると、やはりもう一つは国連の機能強化の役割りを果たす一つの手だてとして、友好国として自認している両国において、何かもっとアメリカがイニシアチブをとれるような、ただ軍事バランスだけをとることが現在の平和に対する、いわゆる戦争抑止力につながる問題であるというのでは、やっぱり世界の人類が戦々恐々としなければならぬ。これは当然だと思うんですね。そういう面での働きかけ、そしてまた国連における軍縮についての討議、大川国連大使やなんかも相当熱意を持って取り組んでおられるようです。しかしまだ必ずしも、そのバックアップの仕方が悪いのかいいのかは私はわかりませんけれども、必ずしも日本の意図するところの表明というものがどの程度反映しているんだろうかというような疑問がまたよみがえってくる。今回の非常任理事国に選出されたことと連動する問題として、また国連の機能を高める一環として、そういう具体的な題材というものは並んでいるわけですね。あれもこれもと手がけることはとうてい無理が生ずるであろうというふうに思います。まず視点をそういうところにきちっとしぼりながら、それが具体的に実効が上がるまで、これからのスケジュールを組むもよし、あるいは五年なり十年なりの目標を立てるもよし、そういったやっぱり一つの方途というものを十分に踏まえた上でお取り組みにならないと、国内における世論も沸かないであろうと私は思うんです。こうすべきだという一つの方途が示されるならば、当然国内世論もそういった方向にもっともっと努力をすべきだというふうに固まっていくであろうという、こうしたことも見逃すことのできない大きな要素であるということを私自身は考えておるわけでございますけれども、その点について、やっぱりリーダーシップを握るのは政府でございますから、その辺、積極的にお取り組みになる必要があるのではないだろうか。現在の軍縮はどうなっているのか、その辺もせっかく賀陽さんおいでになっておりますので、あわせてひとつお尋ねできれば大変ありがたいと思います。
○国務大臣(伊東正義君) 詳細は賀陽局長の方から御答弁申し上げますが、さっき先生おっしゃいました新しい核兵器の問題、これはアメリカもいま御承知のようにジュネーブで戦域核の交渉をソ連とやっている。レーガンさんも選挙の中でSALTIIIの交渉をソ連と話し合いをするというような演説もしておられるわけでございまして、私は、この核軍備の管理といいますか、そういうものもやはり私は米ソの間でも、まあ超大国といいますか、米ソの間でも今後ともやっぱり両者が考え、進めていくというふうに信じておりますし、また日本としてもそれを希望するわけでございます。 それで軍縮につきましては、一九八二年がまた臨時の軍縮の総会をやる年でございますので、日本としましては、核が広がらぬという意味で核防の条約になるべくたくさんの国が入るとか、そういう努力を実は話しかけたりもしておりますし、一九八二年の総会目指して、いま先生の言われたような、世論が安全保障という中で軍縮というものは一体どう考えていくんだということで大きなやっぱり議題となり話題になるというようなことについて、政府もその総会の準備には積極的に参画するつもりでございますし、いまおっしゃったような空気を国民の中に伝えるということはこれは大切なことで、日本憲法というものは私は軍縮を考える場合の政治哲学のもとだと思うんです。でございますので、そういう点について政府としても先生おっしゃるように、やはり意を用いていかなきゃいかぬということを痛感するわけでございます。
○政府委員(賀陽治憲君) 軍縮の交渉の現状でございますが、渋谷先生は大変軍縮についてお詳しいので、余りABC的なことを申し上げるのは気がひけるわけでございますが、御承知のように部分核停条約——地下を除く核実験禁止の条約が成立したのを皮切りに、核兵器不拡散条約というものが七〇年に発効いたしまして、それから海底軍事利用禁止条約というものもできておるわけでございます。これは七二年に発効しております。 で、冒頭申し上げました部分核停条約を補完する最も重要な地下実験を含む包括的核実験禁止条約というものは、これは御承知のように、米英ソで相当交渉が煮詰まっておるわけでございます。大陣営であろうか。そこらあたりがやっぱり認識と理解を示さない限りは、笛吹けど踊らずで、その理想は理想としても現実は違うんだという、そういうような受けとめ方の中で、ますますこの軍拡への競争というものが激しくなればこそ、軍縮への方向というものは絶望的ではないのかという大変こう悲観的な見方もないではないのですけれども、SALT交渉についても必ずしもこれは実りがなかった。果たしてそれの成果というものが十分われわれとして期待でき得るような方向へたどりつくものであろうかどうかという問題。それと、日本としてアメリカに対しあるいはソビエトに対し、軍縮への方向についてのお互いの討論あるいはその話し合い、そういったものを通じて道を開くというようなことは考えられないのか。大変素朴な考え方かもしれませんけれども、やっぱりどうしようもない壁がぼくはあるような気がしてならないわけですね。 戦争抑止力ということでもってそれでのべつ幕なしにいく。資源はいつか枯渇してしまう、あるいは国内の経済問題についても、ソビエトも大分いま大変な状況になっておるようでありますし、アメリカとしても例外ではないであろう、そういう国民の生活を犠牲にしてまでもそういう方向へ行かなきゃならぬのか、あるいはそういう点において日本として説得力のある話し合いというものの道が開けないものかという、こういう考えが出てくるんですけれども、そういったことを包括的に受けとめられて、いまもう賀陽さんの答弁にもありましたけれども、一つ一つやっぱり忍耐と熱意を持って軍縮への道を考える以外にはないであろう、まあ総論的にはそういうことになるであろうと思いますが、しかしもうこれは急がれなければならない問題であることも事実であるとするならば、絶えずやはり方途を、日本としてなし得る方途というものを できるかできないかは、これは別問題でありましてね、やっぱり取り組むというその問題がむしろ必要ではなかろうか。どうでしょう、いま私が申し上げたようなところで何とか突破口が開ける、そしてみんなが、世界じゅうが軍縮への方向へ持っていかせるような、それは大変忍耐と時間のかかる問題であるにしても、これはぜひやっぱり促進する必要があるのではないだろうか、伊東さんどうでしょう。
○国務大臣(伊東正義君) おっしゃっていられることも私よくわかりますし、それで特に日本が言うとすれば核軍縮が中心で、日本こそそれを主張しやすい立場だということも私はわかるわけでございます。 で、片っ方には、なかなかいま先生おっしゃったように壁が厚いんじゃないかという現実もあるわけでございまして、なる、ならぬということは別にして、取り組むという態度で、日本はもっと真剣にこの問題を考える必要があるのじゃないかというふうにおっしゃいましたことは、私はこれはそのお考え方はそのとおり高く評価します。私、外務大臣になってまだ日もそんなにたっておりませんけれども、この問題のむずかしさというものはよくわかるわけでございまして、また重要さということもよくわかりますので、これは中で、外務省としましてもひとつ真剣にこの問題検討してみます。
○渋谷邦彦君 最後に、そうしたような問題の経過を踏まえて、やはりこの日ソ間の関係修復化と申したらいいのかどうかわかりませんけれども、やっぱり必要にもなってくるであろう。アフガン侵攻以来日本の方針というものはまだ依然として変わりがない。その間にいろんな問題が起きている。 あれはきのうでしたか、おとといですか、自民党の何か日ソ友好議員懇話会というのですか、がポリャンスキー大使と懇談をした際に、いままでにないような大変積極的な表明があったやに伝えられているわけであります。たとえば、鈴木総理とブレジネフ書記長とのトップ会談を考慮してもいいという問題であるとか、また、四島返還についても、いままでにないような大変弾力的な発言だというふうにわれわれは感じたわけでございます。それはソビエトの対日政策が急変したとは思いませんけれども、しかし、何らかの変化があったのではないだろうかというふうに感じられるわけでございますけれども、この点いかがでございましょう。
○国務大臣(伊東正義君) おととい、十一日の晩でございましたか、ああいう催しがあったということを新聞で私拝見をいたしました。御出席になりました野中先生とか、ずっと幹事役でやっていたのでございますが、私まだ直接会って話は聞いておりませんので、新聞報道だけ見たわけでございまして、いまそれだけでどうこう申すのはいささか適当でないと、こう思うわけでございまして、ああいう問題が、先生おっしゃるようなそういうことを含んでいるとすれば、これは非常に重要なことでございまして、何か当然公式な、いまでも公式的なルートというのはいろいろあるわけで、いろんなことが大使館からも私の方へあるわけでございますが、当然そういうルートでも来ていい話ではないかなと思うわけでございます。あれだけでどうこうということは申し上げかねますが、ソ連との関係は、本当に日ソ外交というのは日本にとりましてもこれは非常に重要なことでございますので、先生お話ありましたように、アフガニスタンへの軍事介入、北方領土の軍備強化ということを契機にしましていまのような状態に入っていることは御承知のとおりでございますので、私どもとしましても、何とか温かい空気で話し合いができる環境はどうやったらできるのかということを実は考えておるところでございます。 ただ、起こった原因がソ連側の原因でございますので、まずソ連側がひとつそういう態度を、誠意ある態度をはっきりしてもらわなければ困るということをわれわれは主張しているわけでございますが、グロムイコさんと別れ際も、日ソ外交というものは非常に重要だから、お互いにひとつ努力をしようということで別れたわけでございますので、私どもとしましてもこれは非常に重要な問題だということを頭に置きまして、この問題は慎重に取り組んでまいります。
○渋谷邦彦君 日ソ外相会談をいまお考えになっていらっしゃるか。また、ソビエト側から会談要請があった場合に、外務大臣としてはどういうふうになさるか、この辺いかがですか。
○国務大臣(伊東正義君) いま日ソ外相会談という予定はございません。日ソ外相会談は平和条約締結を前提にしまして、交互に東京とモスクワと両方で外相会談をやろうということでやっておりました。園田外相が向こうに、モスクワへ行かれて話されて、その次はグロムイコさんが来るということになっていて、そのまま中止になっているのが現状でございます。でございまして、ソ連側が領土問題を含めて、平和条約というものの交渉をやろうというふうなことの提案があれば、これは日本としましても、領土問題解決ということは、これは日本の主張でございますので、これは十分に検討する問題だというふうに思っております。
○渋谷邦彦君 重ねて、もちろんいまおっしゃったとおりだと思うんですが、いまの冷却した日ソ関係の修復ということも含めて、ソビエト側から要請がある、ぜひ外相会談をやってくれぬか、来る来ないはどんなふうになるかわかりませんよ、いまおっしゃったとおり、向こうは今度は来なきゃならぬ番であると、いろいろそういう取り決めがあったのだろうと思うんですが、そういう呼びかけがあった場合は応じられますか。
○国務大臣(伊東正義君) それは仮定の問題でございますけれども、日ソ外相会談は平和条約の締結ということを前提にして毎年交互にやろうというルールができているわけでございます。でございますので、日ソ外相会談をやろうじゃないかということがあれば、当然、そのルールに従って、東京へ今度はグロムイコさんが来る番でございますし、その議題も領土問題を含めた平和条約の締結ということが前提になろうというふうに思うわけでございますから、それと、平和条約のほかに、アフガンの問題でございますとか、北方領土の問題とか、軍備強化されたその問題等、いろいろあるかもしれません。あるかもしれませんが、そういう申し出がありましたら、これは十分に検討に値することだというふうに思っております。
○立木洋君 大臣、この間、安保・沖特の委員会で所信の発言をなさったことに関連して、あの中で述べられておる自衛力の整備の促進という問題と、それから日米安保の円滑な効果的運用という点について述べられているわけで、その真意をお尋ねしたいと思うんです。 ここで述べられておるのは、アメリカや西欧諸国が協調しながら、そうしてそれぞれが与えられた条件のもとでなし得る最大限の努力をするということが世界の平和を守っていく上で非常に大切だ、その努力の一環としてソ連の世界的な軍事力の増強が西側にとって不利な状況をもたらさないようにする、そのための防衛努力の強化に努めているという趣旨のことが述べられましたが、これは、日本としてもそういう努力をするという意味として理解してよろしいんでしょうか。
○国務大臣(伊東正義君) 自衛力の整備の促進ということを言いましたのは、さっきも防衛庁から答弁があったのでございますが、日本では防衛計画の大綱というのがあるわけでございます。でございますので、この防衛計画大綱に決められた水準をなるべく早く達成をするということが私は自衛力の整備の促進ということの具体的内容になると思うのでございます。 それからもう一つの、効果的な運用ということを申しましたのは、いま、私が言ったのを一字一句覚えているというわけじゃないですけれども、日米安保というものは、一朝有事の場合に、共通の危険に対しまして日本とアメリカが共同して対処しようということが前提になっているわけでございます。でございますので、そういう安保条約を運用していくという場合に日本とアメリカで共同して対処するんですから、日本がどういう防衛力の整備ということをやるかということについては、共同して対処する相手側から見れば、やっぱりこれは関心のあることでございますから、いろんな期待表明や何かあるわけでございますが、その場合に、日本として、やはり自助努力といいますか、なすべきことは自分でやる。それは憲法の制約、専守防衛という制約、非核三原則でございますとか、シビリアンコントロールとか、いろいろこれは御承知のような制約があることは確かでございます。その制約の中で共同対処ということがしやすいような自助努力をやっていく。たとえば、いろんな有事の場合の研究もやるとか、あるいは施設とか区域の利用の円滑化を図るとか、いろいろあると思うんでございますが、そういう自助努力をやらなければ、アメリカが共同に対処してやろうという気持ちを起こすときにも、安保ただ乗り論なんというのがよくあるように、そういう感情も一部にはあるんですから、日本としてはやるべきことはやる、それが安保体制の効果的な運用につながっていくと、こういうふうに私は考えておるわけでございます。
○立木洋君 大臣、頭の回転がよろしくて先の方まで大分お答えいただいたんですが、この間述べられた中に、アメリカは、「中東地域の平和と安定を図り、同地域における海上航行の安全等を確保するため、インド洋への米軍展開を増大しております」というふうに述べられているわけですが、インド洋にアメリカ軍が展開しておるということは、中東の平和と安定を図り、海上航行の安全等を確保するためであるからという意味で、この表現は肯定的に見ているわけですね。
○国務大臣(伊東正義君) それは、そういう事実があるわけでございますから、それは事実を述べたもので、日本がいろんな国際情勢の判断をするとか、日本の防衛力、自衛力整備という場合の国際情勢を判断するときの判断材料であり、そういう事実はありますということを申したわけでございます。
○立木洋君 インド洋へ米軍展開を増大しておるということは事実なんですよ。だけれども、「中東地域の平和と安定を図り、同地域における海上航行の安全等を確保するため、」というのは、これは評価なんですよ。どういう意味で展開しているかということの日本政府としての評価なんですから、これは事実だけじゃないんですね。やっぱり評価が入っている。ですから、私は肯定的に評価しているものというふうに見ているわけですが、その次に「その結果アジア・西太平洋における米軍事力を割くことを余儀なくされてきております。」というふうに大臣は述べられているわけですね。ということは、つまり米軍の極東における抑止力がこのことによって減退をする、つまり中東に米軍が軍備を割くわけですから、極東における米軍の抑止力がやっぱりこのことによって減退するという御判断をされるんでしょうか。
○国務大臣(伊東正義君) たとえば十あったものが五抜けたから五になったと、簡単にはそうはいかないと思うんです。また、残った五が装備の近代化を図るとかいろんな能力の向上を図るとかいうようなことをやれば、それはまた五が五でなくなるということもこれは考えられるわけでございますが、しかし一般論として言えば、インド洋の航行の安全を図るとか、ホルムズ海峡の航行の安全を図るというようなことにこっちから一部力を割けば、ある程度薄くなるということだけは、これは一般論としては言えるというふうに私は見ております。
○立木洋君 それで私は問題にしたいのは、いまずっと一連のことをお尋ねしてきたわけですが、ここで述べておるのは、つまりこのような状況において「わが国の自衛力の整備を促進し、」ということにつながるわけですね。だとしますと、米ソの軍事バランス、これの変化に応じて西側が不利にならないように、また米軍の他への展開に従って極東の抑止力の減退することをも考慮して、わが国の自衛力の整備を促進するという、こういう考え方になっていくわけですね。もちろんここには、大臣もよくお考えになっているから、軍事大国にはならず、専守防衛を守り、憲法の枠内でということはもちろん言われておりますけれども、しかし、ここでなされてきておる発想というのは、軍事バランスが変わってくると、そういうことも念頭に置かなければならないし、いわゆるアメリカや西ヨーロッパ諸国と協調関係という点から、尽くすべき最大の努力はしなければならないということも前に述べられているわけですから、そういうふうに考えてきますと、つまり問題の発想が限定小規模侵略への対処ということではなくて——私たちはこれ自体反対ですけれども、情勢に応じて自衛力を強化していくという、そういう発想になる考え方がこの根底にあるんではないかという気がするんですけれども、大臣はどういう意味でここの趣旨、自衛力の整備の促進ということを、こういう状況を展開しながらお述べになったんでしょうか。
○国務大臣(伊東正義君) 防衛庁の専門家じゃないですから、その言葉の用語とか何かはあるいは若干私自身に誤解があれば御容赦を願いたいと思うんですが、自衛力と、こう言っておりますが、これは固定化したものじゃないと思う。固定的なものじゃないと思うんです。相対的な問題だというふうに私は思います。それで国際情勢その他が変化すれば、いま先生がおっしゃった最小限の規模の侵略といいますか、紛争といいますか、そういうものに対する対応力というものもこれは私は固定化された問題じゃない。相対的に自衛力というものは考えるべきだというふうに思いますので、そういう発想で日本の自衛力を考える必要があるんじゃないか、しかしそれはあくまでも憲法の枠内なんだし、専守防衛なんだし、日本をそれで守っていくんだということが必要だ、そこで起こってくることは、やっぱりいままで基盤防衛力ということを言っていたわけでございますから、その基盤防衛力には私は何にも変わりない。質の問題とかそれは当然ありますよ。ありますが、私はそう思っているわけなんです。特に発想が変わってしまったのだというふうには私は思っていないんですから……。
○立木洋君 大臣御承知のように、基盤整備という問題がありますわね。それが脅威対処論に変わっていく。変わっていくといいますか、そうは言っていませんけれども、そういう論調もあるわけですね。非常に微妙なといいますか、そういう時期にある中で、大臣がお述べになっていることというのをよく読んでみると、玉虫色のようでもあるけれども、外務省としては踏み込んだような発言としても見れる部分があるんですよ。それで私は念のために、最近は真意をただすことが大分はやっているそうでありますから、その意味で大臣のお考えを確かめたかったわけですが、私は大臣がいまそういう発想が変わっていないというふうに否定されましたけれども、私はもう一度大臣、これは大臣がお書きになって、大臣がお読みになった——お読みになったというか、大臣の所感で、だれが書いたか私はわかりませんが、大臣の所信の発言ですから、大臣のほかの人に聞くというわけには私はいかないだろうと思うので、大臣のお考えとしてどうなのかということを確かめたかったわけです。 ただ、ここでなぜそういう問題を取り上げるかといいますと、十月の五日に、ブラウン国防長官がABC放送のインタビューに答えまして、こういう話が出ているんです。ホルムズ海峡を頻繁に日本が利用している、ところが日本の海軍は憲法上制約をされてペルシャ湾地域に派遣できない、だからアメリカが西太平洋海域での役割りを軽減してその分をペルシャ湾に回せるようにする、そのために日本に海軍力の増強を行うように強く迫るべきではないかと、こういう質問をしたんですよね。そうしたら、ブラウン長官がその質問に答えて、アメリカは日本にそのように求めております。その話し合いのためことし多くの時間を割いてきましたと、こう語っているわけですよ。 それで大臣にお尋ねしたいのは、どのような話し合いをなさったのか。話し合いをしたのかどうかということからまずお尋ねしたいんですが、いかがでしょうか。
○国務大臣(伊東正義君) ブラウンさんと会いましたときに、ブラウンさんが世界戦略といいますか、そういうものをいろいろ説明したことがございますし、いまのホルムズ海峡の問題も話をされたことがございます。そして結論として出ましたのは、日本の防衛力の整備、それをひとつ、顕著という言葉が出たんです。顕著、着実にやってもらいたいと。それからこれは一年で終わることではない、継続的にも考えてもらいたいというそういう抽象論で出たのでございます。数字でGNPの一%をふやしてくれとかあるいは九・七の要求のシーリングをもっとふやしてくれとか、そういうことは一切出ませんでした。いまの抽象論でそういう話が出たことは確かでございます。それに対しまして私は、何回も御答弁しているんですが、それは日本の憲法その他で制約があるということはもうこれははっきりしているんで、その制約の中でこれは日本が自主的に日本を守るためにどうするかということを考えていくんだ、財政の問題もあるし国民的なコンセンサスを得る必要もあるし、これは日本が予算のときに考えることだから、ということを私は返事をしたというのが事実でございます。
○立木洋君 そのお話は大臣が直接話し合った内容ですね。
○国務大臣(伊東正義君) そうです。
○立木洋君 この海軍力を増強を迫るようにしたらどうかというのに対してブラウンが、ことしはそのために多くの時間を割いてきたと言われるんですが、防衛局長の方はそういうこと、話し合った内容等々は全くありませんか、どうでしょうか。防衛庁としてはどうでしょうか。
○政府委員(塩田章君) ブラウンさん個人、個人といいますか……
○立木洋君 いえ、個人だけでなくても結構です。アメリカ側との………。
○政府委員(塩田章君) アメリカ側とのいろんな話の中で、特にどこをどうというような具体的な話は一切ございません。
○立木洋君 さっきは大臣にお尋ねしたんですが、それなら北米局長の方で外務省としてこの問題について話し合ったことはございませんか。
○政府委員(淺尾新一郎君) ただいま大臣及び防衛局長から御説明したとおりで、私の方から特につけ加えることはございません。
○立木洋君 ところがね、ことしの正月、一月から二月にかけて、緊急展開部隊の在日米軍の基地使用と日米安全保障上の問題についてアメリカ側にことしの一月確認を求めている、これに対してどうするかという問題、これは大来さんが外務大臣のときに述べているわけですね。さらに二月になって中東へ米軍が緊急展開部隊をする、行うという問題と関連して、この問題に関連するいろいろな諸問題をできるだけ近い将来にアメリカ側と話し合っていきたいというふうに大来さんが二月四日に述べているんですよ。数字が何も出されなくて日米安保協議会等々もあったと思うんですがね。いろんなレベルでの接触というのは再々あるわけですが、淺尾局長、余り遠慮しなくても結構ですから、大臣が述べたとおりでございますなどと言わないで、具体的に話し合いがあったらその話し合った内容を出していただきたいんですけれどもね。話し合いますと言って外務大臣が前に行ったんだから。
○政府委員(淺尾新一郎君) いま先生御指摘の点は、実は違う場面での話でございまして、今回の、ことしの通常国会で、緊急展開部隊の点が大変問題になったわけでございます。で、その際に私たちが一貫して説明してきた点についてアメリカ側にいろいろ確認を求めてきた点でございまして、たとえば日本にある、あるいは沖繩も含んで日本にある米軍が中東の事態に即して事前協議の対象になるような戦闘作戦行動に従事することはないというふうにわれわれは理解しているということを国会でも御答弁してきたわけでございますが、その過程でアメリカ側にもそういう理解で正しいかということを求めて、それはそのとおりであるということがあったわけでございます。それから、大来前大臣が述べられたのもまさにその点で、国会でのいろいろな議論の中で、緊急展開部隊ができたということに伴って安保条約が変質したのではないかというようなことがあって、そういうことについて、国会の議論を踏まえて大来大臣が三月に訪米されたときにアメリカ側と話をするということを言われて、そのとおりブラウン長官との間で国会の論議をいろいろと紹介されて日本側の立場を説明されたと、そういうことでございます。
○立木洋君 いや、その先を聞きたいんですよ。だからそれまではもう国会の議論で議事録に出ておりますから読んだらわかるわけです。つまり問題はその後ですよ。その後出ていった後ですよ。海軍力をいわゆる補完するような意味で日本に海軍力を強めるように求めてくると、その努力はたくさんしたということを言っているわけですから。だからいま言ったように、それが事前協議の対象になるかどうかだとか、安保条約に違反するかどうかということを確認をとったというのは一月三十一日のときにもう話が出ているわけです。確認して。あれが二月の七日でしたか二月の四日でしたかの議事録に載っているわけです。その後ですよ、それが出ていった後日本の軍事力、海軍力を増強するように迫ったらどうかという質問に対してブラウンさんが、そのことについてはことし多くの時間を費やして話し合いましたということを言っているんですから、その事実があるのかないのかということを聞いているんです。
○政府委員(淺尾新一郎君) いま私がそういうふうに御説明、御答弁したのは、立木委員の質問が、大来前大臣が約束したから、その点に基づいて何かブラウン長官と話があったかということで、ブラウン長官との三月の会談の中身を御紹介したわけでございまして、そのときに、さらに敷衍すればアメリカ側が国際情勢、特に軍事を中心にして国際情勢を説明して、そしてアメリカ側として追加的な軍事的努力をしているという説明があったわけでございます。さらに五月に総理大臣が訪米されたときにもカーター大統領の方からアメリカの行っている努力というものの説明もあったわけです。越えてその次に後はハワイで安保事務レベル協議というのもございました。その際はもちろん国際情勢あるいは日本の防衛努力という話はあったわけでございますけれども、先ほど防衛局長から答弁されたように、具体的に日本に対して、どこの点をどういうふうにしろという注文とか要請というのはなかったわけでございます。
○立木洋君 そうしたら次にこういうふうなお尋ねの仕方をしましょう。 いま防衛三法で潜水艦隊の創設が問題になっていますわね。それから対潜哨戒機P3Cが来年度から導入されます。されるかまだ決まってないけれども、されるという案がつくられている。それから機雷封鎖に使用される可能性もあると言われるC130Hですかの計画もつくられている。これはアメリカから要求された結果ですかと聞いたら、そうではないというふうに言われるでしょうけれども、アメリカとの話し合いと全く関係がないんですか、どうでしょうか。
○政府委員(塩田章君) 潜水艦隊につきましては全く関係がございません。それからP3C、C130Hは関係があるかと言われましても、具体的にP3C、C130Hについての関係ではなくて、中期業務見積もりの中に私ども入れておりますから、中期業務見積もりの説明をしたときにアメリカはそういうものがあるんだということは承知しているとは思います。別に向こうからいろいろ相談があって受けたというものではございません。
○立木洋君 この辺は何としてもなかなか実態がよくわからない、いつ何回お聞きしてもそういう状況ですが。 それで外務大臣ね、さっきの話に戻っていくわけですが、つまり外務大臣は、先ほど私がお尋ねしたように、自衛力の整備を促進するというふうにこれははっきり述べられたわけなんです。そしてその前には米軍が中東に行くことが余儀なくされております。こういう状況のもとで自衛力の整備を促進しますという文脈に述べられた話はなっているわけですね。そうすると、つまり米軍の先ほど抑止力が減退すると、それが五引けば五必ず減退するとは言わないけれども、多少減るかもしれない、そうすると自衛力の整備を促進するという意味は、米軍が中東に出て行った後という状況を踏まえて、その減退した部分を穴埋めするという意味合いはあるのでしょうか。
○国務大臣(伊東正義君) 米軍が日本を守っていてくれる、それが一部抜けたからその後すぐに日本が穴埋めするんだと、そういう直接の因果関係ということは——私は米軍のどういう態様のものが日本で守っていたか、そういうことの穴埋めが憲法でできるかどうか、あるいは専守防衛という考え方からしてできるかどうかとか、いろいろそこは考えなけりゃならぬ問題だと私は思うわけでございます。すぐに短絡するということじゃございません。私はその点はそういうふうに思うんですが、世界情勢がそういう緊迫している情勢にあるんです。自衛力を増強するときの判断材料にこれは考えております。ということを言ったわけでございまして、自衛力の整備というのは当然防衛大綱の中に書いてあるわけでございますから、あの書いてあることをなるべく早く整備していくということでございまして、あくまで防衛大綱ということの中の計画を促進していく、それが防衛力の整備だというふうに考えております。
○立木洋君 大臣、いま直接的なお答えはされなかったわけですけれども、先ほどアメリカのABC放送でのブラウン長官のあれを私が申し上げたのは、つまりアメリカとしては出ていくんだから、その減った分については日本にやってもらったらどうかと、端的に言えばそういうことなんですね。そうしたらアメリカのブラウン長官は、私たちもそういう努力をしてきたんだと、話し合いをしているんだということを言っているわけです。これをよく見ますと、それに対応したような文脈にとれるんですよ。つまりソ連の世界的な軍事力増強が西側にとって不利な状況をもたらすことがないようにということが前段に入って、そうしてそういう状況で米軍は中東に出ていかなければならない状況を余儀なくされている、こういう状況においてなんですよね。何回も繰り返して申し上げませんが、そういう点から見て私は非常にこの問題重要だと思うのは、言うならばこれは私たち日米安保条約は反対しておりますけれども、安保条約の中で述べられておる米軍の日本に駐留する目的というのは、これは御承知のように、日本の平和と安全を守る、それから極東の平和と安全を守る、この二つなんですね。だけれども、少なくとも米軍が出て行ったからといって自衛隊がこれを補完するわけにいかぬのですよ、自衛隊は極東の平和と安全を守るなんという任務も目的もないわけですから、日本の防衛だけなんですから。だけれども現実にはそういう事態が進行しておるおそれがあるということを、私はこの外務大臣の発言の中から考えざるを得ないような叙述になっているのではないかということを非常に危惧しているわけです。もしかそういうふうな考え方をお持ちになっておるとすれば、これは非常に大変なことではないかと思ったので、その真意を重ねて確かめたかったわけなんです。改めてその点についてその真意をもう一遍お聞かせいただきたいんです。
○国務大臣(伊東正義君) 先ほど短絡しないということを私はわざわざ言ったわけでございまして、先生の御質問のようなことを言われるんじゃないかと思って私は実は言ったのでございます。これはここに書いてありますのはそういうことじゃなくて、やはり日本は国際情勢はそういうことがあるということを頭に置かにゃいかぬという、判断をする場合にですね、それはこういう情勢でございますということを言って、その中で日本の自衛力の整備を促進するということは、あくまで日本の防衛大綱の中に掲げてありますことの整備を促進するということ、その場合には、軍事大国にならぬ、専守防衛だと、憲法の枠内、国民の理解ということのもう制約がついているのでございまして、私はあくまでそれはその制約の中で日本を専守防衛して守っていくんだということでこれは書いてあります。こういうことでございまして、先生の御質問のようなそういうつもりはございません。
○立木洋君 ちょっと今度は質問の内容を変えますが、アメリカのスイング戦略ですね、これに対して日本政府は——どういうふうにお尋ねしましょうか、日本政府は了解しているのか、あるいは理解を示しているのか。了解したと言ったら、アメリカに、結構です。どうぞおやりくださいということになりますわね。そうではなくて、了解しているというのか、あるいは理解をしているというのか、このスイング戦略に対する考え方というのは、大臣、どういうお考えをお持ちでしょうか。
○政府委員(淺尾新一郎君) スイング戦略というのは、若干日本では誤解されている面があるわけです。常にスイング戦略というのは、中東の事態に対処するために太平洋にある兵力が向こうの方へ抜かれていくというふうに考えられているわけですけれども、そうではなくて……
○立木洋君 そうじゃないです。
○政府委員(淺尾新一郎君) そうではなくて、西から東、東から西への両方の展開があって、これはアメリカ軍の柔軟性というか強靱性ということを示す戦略であるわけです。そうであるとすれば、それは軍隊としてそういうあらゆる状態に対処するような戦略を持つということは十分日本側としても了解できる、こういうことです。
○立木洋君 たまたまあのときには中東に緊張した状態があって、そこにアジアの一部の兵力を割くかどうかということが問題でそういう表現がとられたわけで、これは必要なところに部隊をどう展開するかという問題として、世界的な視野でアメリカとしては考えていることですから、もちろんそういう誤解は私自身はしていないんですけれども、日本としてそれに対して了解を与えていると。これについては、結局了解を与えたというのは、一月三十一日、安保条約上これが支障がないかどうかということを確認した時期に了解を与えたという意味ですか。どういう時期にどういう、口頭でかあるいは文書で了解を与えたのか、その了解の与え方というのはどういう形になっているんでしょうか。
○政府委員(淺尾新一郎君) いまお尋ねの件は、一月三十一日あるいは二月七日という特定の時期に特定の人がアメリカのスイング戦略について理解を示したとかあるいは了解したということではございませんで、これは一般的な日本の考え方として、軍としてあらゆる事態に即応する体制をとるのは必要であるということで、これは一般的な話し合いの中で出てきているので、特別の時点で中東を頭に置きながらそういう理解を示したということではございません。
○立木洋君 まあ一般的にということですね。 それで大臣ね、私がことしの三月二十四日に参議院の予算委員会でやりましたときに、大来外務大臣それからそのとき伊達さんにもお尋ねしたんですが、つまり日本に駐留しておる米軍ですね、これには二つの制約があると。これは私が言ったんではなくて、岸総理が言っているんです。そして一つの制約は何かというと、日本に駐留している米軍は、つまり駐留目的に違反しては困るのだと、駐留目的という限定があります。制限がありますと。これは第六条に述べられていますように、日本の平和と安全、極東の平和と安全を維持する、守るというために駐留しているのだ、これが一つの制約です。それ以外のことを勝手にどんどんやられてしまったら困るという意味ですね。それからもう一つは、いわゆる重大な装備やあるいは配置の転換等々、これは事前協議にかかる問題ですね。だから事前協議にかかるというもう一つの制約がございますと。この二つの制約がございますということを在日米軍については述べたわけです。 そのときに大来さんに、いまでもこの考えはお変わりございませんかと聞いたら、特別に変わっておりませんと、こう述べたんです。伊達条約局長にお尋ねしたら、条約局長も、現在においてもいささかも変わりないというふうに述べたわけです。外務大臣、これは現在いかがでしょうか、現在でも変わりないでしょうか。
○国務大臣(伊東正義君) 何も変わったということ、その後私——大来君から私になったのは直前でございますが、そんな短い間に変わるということは私はないと思います。
○立木洋君 そうすると、先ほど淺尾さんが注意しながら述べたのは、つまり一般的にという言い方でスイング戦略に対して了解を与えたという意味のことを言いました。しかし駐留目的というのは日米安保条約の第六条で決められているわけですね。そして、アメリカのスイング戦略に了解を示したということは、つまり在日米軍が駐留目的と違うことのために他の地域に行くということもスイング戦略の内容としてはあり得るわけですね。そうすると、日本に駐留している米軍は駐留目的に制約されることなしに、どこに行っても結構ですということを一般的に認めたことになるのかどうか。大臣、いかがでしょうか。
○政府委員(淺尾新一郎君) いま委員が言われたことと、従来政府が答弁していることとの間に若干の誤解というか、乖離があるわけでございまして、日本にいる米軍が移動していく範囲というものは、別に極東あるいは極東の周辺に限られないわけです。それは別にペルシャ湾の事態ができたというときから起きたわけでなくて、従来からその艦船なり飛行機が極東の範囲の外に出るということはあったわけで、その施設区域が全体として、あるいはその部隊が全体として日本の安全、極東の安全と平和に貢献しているということであれば、それは駐留目的に反しないというのが政府の見解であって、この点は現在も全く変わっていないと思います。
○立木洋君 それは淺尾さんがそこで答弁するから、前の蒸し返しになるんですよ。私はもうそのことを前に淺尾さんにはお尋ねしている。だから、もう淺尾さんにお答えしてもらったって同じですから、新しく外務大臣がなられているんですから、私は外務大臣に聞いているんですよ。 つまり、前に米軍の行動の中には移動も含むんですかという点については、岸さんも福田さんもそうだって言ってるんですよ。含むって言ってるんですよ。米軍の行動がいわゆる駐留目的に反してもらったら、これは困るわけですよ。前にSR71がベトナムの領空を侵犯したというふうなことがもしか事実であるならば、それは事前協議以前の問題で、国際法違反になることですから、そのようなことを行う部隊がおってもらったら困りますと、一般的に言ってということも、そのときはもちろん宮澤さんはつけ加えられましたけれども、そういう言い方もされたこともあるんです。ですから、私はここであえて言っているのは、特定の場合を指してはもちろんいないわけです。だけど、やっぱり米軍の行動として見る場合に、駐留目的に違反してもらったら困るんじゃないですか。だから、一般的にスイング戦略はどんな場合でも了解いたしますということにはならないのではないかという意味のお尋ねなんです。大臣、お考えいかがでしょう。
○国務大臣(伊東正義君) 足りないところは補足していただきますが、もっぱらあれですね、極東の範囲以外へ行って行動するとか、そういうことになったら私はいかぬと思います。いまお話が出たように、必ず極東の範囲から一歩も出ちゃいかぬということじゃなくて、外へ行って帰ってくることもある。しかし、それは極東の安全を守るためにやっぱり日本に——たとえば飛行機の場合でも航空母艦の場合でもいいですが、その目的は極東の安全を守るためだということであれば、それは何もいまの安保条約上少しも差し支えないことだというふうに私は解しています。
○政府委員(伊達宗起君) ただいま立木委員が御質問の中でおっしゃられた中で、移動も米軍の行動の中に入るという答弁が従来政府からなされたということでございますが、ちょっとどのようなコンテクストでそういう御答弁がなされたのか私存じませんけれども、日本に駐留している米軍が日本から去っていくということを移動というふうに称しますれば、その意味における移動というものは、いわゆる米軍の行動、つまり安保条約の規制するところの米軍の行動というものには含まれないというふうに私どもは考えております。 それから、先ほどの在日米軍がスイングの部隊としての任務も帯びているということとの関連で御質問があったわけでございますが、先ほど北米局長がお答えしたところに加えまして、実は私は、たとえば海兵隊がスイングの部隊の構成要素として、そういう任務も兼ね備えておるということは、私は軍隊としてアメリカのグローバルな作戦の中であり得ることではございましょうが、日本に海兵隊が駐留しておるということ、その時点をとらえますれば、それはやはり抑止力として日本の安全及び極東における国際の平和及び安全に寄与しているという実態が全く損われずにそのままあるわけでございまして、たとえば緊急な事態が生じて、それがスイング部隊としてどこか中東ないしアフリカあるいはアメリカの方に一たん戻るというようなときには、それは私どもは移動であって、先ほど申したような意味における移動でございまして、これは安保条約上何ら問題のないところであるというふうに考えているわけでございます。
○立木洋君 ではあと一分ですから、最後の質問にいたしますが、このSR71の問題に関しては、これは衆議院でも淺尾さんがお答えになっている。一回や二回ならばいいかもしれないけども、たびたび行くということになると、これは日米安保条約上問題になるかもしれません、しかし私は確認いたしておりません、というお答えだった。私はSR71の問題だけじゃなくして、事実上ミッドウェーなんか日本の横須賀が母港になっているわけですね。それがいまインド洋に出ているわけでしょう。 それから、この間のケリー司令官が九月の十六日ですか、アメリカの上院外交委員会の秘密聴聞会での発言の中で、いわゆるよく文脈を読んでみますと、沖繩におる海兵隊が緊急の場合には展開でき得る、そういう発言をも見ることができるわけですね。現に沖繩の事態で言えば展開する準備がすでに着々と進んでおるという状況にもなっているわけです。 私は、きのうの総理質問のときも、外務大臣お聞き取りいただいたと思うのですが、非常に大変なそういう軍備の増強、それからいろいろな日米安保条約改定等々、アメリカからの大変な要求が出されてくる中で、危険な状況がある中で、外務省としては平和外交に徹しなければならないということを大臣一方で述べながら、どうもそういうのに押されるような文脈を感じてどうも危険でならないので、きょうはひとつ大臣の真意を確かめなければならないということでお尋ねしたわけです。だから、本当に平和外交に徹するということをそういう意味でも貫いてほしいと思うのです。そういう意味で、こういうような危険な事態が起こるということについては、きちっとした対応をとるように、最後に強く要望したいと思うのですが、きょうの全体的な私の質問に対する最後の答弁をいただいて質問を終わります。
○国務大臣(伊東正義君) どうも先生から信用がないようで、はなはだ遺憾なんでございますが、私はやっぱり日本は憲法の制約があるんだと、専守防衛である、あの憲法の平和主義というのは、国連に行っても多くの国が評価している、これは確かでございます。私はそういう立場で外交を貫くという考え方でおりますので、いまいろいろ御質問をいただきましたが、日本が本当に紛争に巻き込まれないようにする、日本の平和と繁栄ということにつきましては、強い決意を持って取り組むつもりでございます。
○木島則夫君 レーガン政権の誕生を来年に控えまして、これからの日米の問題がどう展開をされていくか、あるいは対ソの修復外交をどう展開をしていくかなど、国際問題というのはまことに複雑にしてむずかしい問題が多々ございます。きょうはこういった問題に触れる時間がございませんので、人道問題にしぼりまして、朝鮮民主主義人民共和国で望郷の念に駆られている日本人妻の里帰りと、家族の訪朝について、しぼって大臣に質問をしたい。まあ質問をしたいという言い方よりも、ここでしばらくお話をさしていただきたいと申し上げた方がよろしかろうと思います。お断りをしておきますけれど、この問題はあくまでも人道上の問題であって、こういった観点に立って質問をすることを前提としたいわけです。 で、御承知のように、いまから六年前でございました、昭和四十九年の五月の二十四日、民社党の永末議員がこの問題を取り上げまして以来、衆参各議員——ついせんだって三月のたしか十九日でございましたが、民社党の同僚議員岡田君がこの問題の早期解決と再確認を含めて質問をしていることを含めまして、きょう私がこの問題を取り上げることを入れると、たしか十九名の議員がこの問題にかかずらわっているわけであります。 御承知のとおり、昭和三十四年の八月の十三日のカルカッタ協定によって三十四年の十二月の十四日、北朝鮮への第一次帰還船が出て以来早くも二十一年の歳月が流れたわけでございます。新天地での新しい人生を求めて出国をした人は約九万三千人余りと聞いております。ところが、その大半の方々からの音信が不通でありまして、消息が定かではない。せっかくの日赤の長年の御努力にもかかわらず、今日まで五年の間にわずか二百十件という件数にまでしぼりにしぼって出した安否調査に対しても、先方からは御返事をいただいていない、いただけていないという状況であります。まあナシのつぶてということであります。したがって、残念だが里帰りが実現をしていない。 そこで外務大臣の御認識をまず伺っておきたいのでありますけれど、人道問題としてこれは放置できない問題であるという御認識は、これはまあ当然お持ちだろうと思います。そして日赤とか外務省を初め、日本人妻自由往来実現運動の会などの方々の御努力にもかかわらず、一向にこの里帰りと家族の訪朝というものが実現を見ない現状をまずどう御認識をされているか、大臣、この辺からひとつ伺っておきたいと思います。
○国務大臣(伊東正義君) 朝鮮民主主義人民共和国の日本人妻の里帰りの問題、これは先生がおっしゃるとおり、確かに人道上の私は大きな問題だという認識は一緒でございます。実は私も外務大臣になります前にこの問題とは関係したことがございまして、私も朝鮮民主主義人民共和国の公務員の人にも実は手紙を託しまして、何とかこの問題は国交はないけれども好意的に考えてもらいたいということを私自身も、外務大臣になる前でございますが、言ったことがあるのでございます。返ってくる返事は、りっぱに朝鮮民主主義人民共和国の公の人、公人となって幸福に生活をしておられるからという返事が返ってくるだけで、具体的にはないわけでございます。で、日本赤十字関係者を通していろいろ努力はしているところでございますが、まだこれは実現をしておりません。 私は、こっちにおられる朝総連の人にも前に、こういう問題をやっぱり実現してあげることが日本と朝鮮民主主義人民共和国との感情といいますか、そういうものもやわらげることであるし、ぜひそういうことはしたらどうかなという意見も言ったことがございますし、この問題についての考え方は先生おっしゃったと同じような考え方でございます。
○木島則夫君 日本人妻の安否の調査とかあるいは里帰りが実現できないのは、いま大臣もちょっとお触れになりましたけれど、国交がないからだという理由を挙げる人がおりますけれど、私は必ずしもこれが全部理由にはならないというふうに考えております。なぜならば、わが国と朝鮮民主主義人民共和国との国交がないとはいいながら、年々在日朝鮮人の再入国の許可は増強されておりますことも事実ですし、また人道的なケースとしてはほとんど許可を与えられているという現状もよく承知をいたしております。さらにスポーツ、学術、文化関係、国際会議、こういったものでさえも許可が出ております。そこで、その再入国者数、まあ在日朝鮮人の再入国者数と、北朝鮮からの、朝鮮民主主義人民共和国からの入国者ですね、これは大づかみで結構ですけれど、ここ数年来どんな傾向になっておりますか、ちょっと教えていただきたい。
○政府委員(木内昭胤君) 北朝鮮からわが国への入国者数、最近三年につきまして申し上げますと、五十三年が二百六十二人、五十四年が百九十一人、五十五年八月末現在で百八十七名になっております。 それから北朝鮮に向けまして出国しまして再入国を許可された在日朝鮮人の人々は、昭和五十三年が千百九十七名でございます。うち親族訪問が八百三十三人。五十四年が二千五百十六人、うち親族訪問が千九百六十九人。五十五年が九月末現在で三千七百三十七人になっておりまして、うち親族訪問は二千八百七十五名と承知いたしております。
○木島則夫君 御報告のように、日本国政府は——以下便宜上北朝鮮というふうに呼ばしていただきますけれど、先方との国交がないとはいいながら、いまの数字からもわかるように、寛大な措置がとられているというわけでありますから、先方がその人道上の問題である日本人妻の里帰りを許可することは、われわれの常識からすればこれはしごく当然であると思うわけでありますけれど、残念ながらいまだに実現をされていない。 そこで、具体的に少しお尋ねをしてまいりたいのでありますけれど、去る九月の八日から十八日まで、これは自民党の方々でありますけれど、AA研のグループの方が訪朝をされておりますね。その際に金日成主席との間で日本人妻の里帰り問題が話し合いに出された、これは確かなようであります。その際、金日成主席から、日本人妻の里帰りと、日本にいるその家族の訪朝を歓迎をするという意向が示されたと聞いております。で、外務省としましては、この金主席の意向をどのように受けとめておられるか、公的な発言として確認をしていいのかどうか、まずこの辺を大臣にお尋ねをしたいと思います。
○国務大臣(伊東正義君) 九月に自民党のAA研の方が行かれて金日成主席に会われたときに、そういう発言があって、具体的には対文協の人々とよく相談をしてほしいという発言があったということを聞いております。そういう報告を受けました。まあ国交がございませんので、正式に政府と政府との話ではこれはございませんが、そういう話がAA研の人にあったということはわれわれ聞いておりますので、結構なことだと、こう思っております。
○木島則夫君 もう一度確認をいたしますけれど、日本人妻の里帰りと、日本にいるその家族の訪朝を歓迎するという金主席のこの発言は、外務省として公式にこれをお認めになるんだと……。
○国務大臣(伊東正義君) いまも私申し上げましたように、国交がございませんので、正式に政府と政府の間の話し合いでございませんので、公式かと言われますと若干そこは疑念、言葉自体が疑念がございますが、向こうの主席がそういうことを言われ、対文協の方と具体的に話すようにと言われたことにつきましては、私はこれは単に私的とか、あえて言ってという問題じゃなくて、やっぱり向こうの責任者が話されたことだというふうに受けとめております。
○木島則夫君 公的な発言として受けとめておられるというふうに受け取ってよろしいと思います。 この発言がなされましたのが九月の八日から十日間の間であったということでございます。約二カ月それからたっておりますので、この発言を一つの土台として何らかの具体的な話し合い、まあ政府間交渉というのはございませんから、この辺は私のお尋ねの仕方があるいは短絡的なのかもしれませんけれど、外務省が把握をしているこの金主席の発言以後の接点と申しますか、そういうものが着実に進んでいるのかどうか、その辺はどんなふうに外務省は把握をしておいででありますか。
○政府委員(木内昭胤君) 金日成主席がこの問題について、先ほど大臣が触れられましたように、公的な発言があったわけですが、そうして、事務的には対外文化連絡協会と話を詰めるようにと言われた由に承っておるわけでございます。 で、AA研の議員の方に伺いましたところ、この金日成主席の発言を受けまして対文協関係者と話をした、そのときに先方が提起しました問題点、あるいはつけました条件と申しますか、はっきりいたしませんが、相互主義により実施したいと述べた由でありまして、この相互主義というものが具体的にどういうものであるのか。先ほど挙げました数字に、在日朝鮮人で親族訪問を行っております方々はことしすでに八月末現在三千人近くになりますが、それに見合う相互主義であるのか、あるいはほかのことを意図しておられるのか、その点まだ十分確認していないのがただいまの現状でございます。
○木島則夫君 よくその相互主義というものに問題点があるんだということをおっしゃる方がおいでになる。それは、里帰りは許すけれど、そのかわり要人の入国など、そのほかを相互的にやっぱり条件としてのんでほしい、認めてほしいというような、きっと相互主義が一つ大きな問題点になるんじゃないかと私は思うのであります。 で、いま局長が触れられましたように、すでに八月末現在で親族訪問をされた人が三千人近くもいるということは、同じ境遇にある人をこれだけ多く、いわゆる北朝鮮に入国を許可しているんだからという意味からすれば、その相互主義というものを同じ境遇にある人同士の問題として受けとめていいんじゃないでしょうか。この辺は外務省はまだ詰めていないというふうにおっしゃったけれど、お考えを聞かしていただきたい。
○政府委員(木内昭胤君) これは今後私どもとしましても、日赤等を通じまして、あるいは訪朝される国会議員の方々にお願いしまして詰めなければならない問題でございますが、私どもの希望といたしましては、この相互主義が北朝鮮を親族訪問している在日朝鮮人の方々に見合う相互主義であることを希望いたしておりますことは事実でございます。
○木島則夫君 それからもう一つ、これは家族の方々の切なる願いでございまして、きょうも傍聴席にはそういう大臣の、あるいは外務省の一言、一言に耳をそばだてていらっしゃる関係者の方もたしかおいでのはずでございます。安否調査というのはいままでも行われてきたとは思いますけれど、外務省としてこの安否調査をきちっとおやりになるという、そういう御意向はございますか。
○政府委員(木内昭胤君) これまでに引き続きまして日赤等を通じまして安否調査を継続して行う考えには変わりございません。
○木島則夫君 そうしますと、金主席の発言は事態解決のために一歩前進であり、これを足がかりとして何らかの事態の進展につながる明るい見通しなんだというふうに外務省はこのことをお考えになっていて、まあ政府対政府——相手は対文協というようなお話がありましたけれど、これから具体的に個々ばらばらでこういうものに当たっても仕方がないから、何かしかるべき民間団体を代表窓口にしてこの問題を積極的にお進めになろうという御意向など、構想など、いまもうAA研の方が接触をされて二カ月ぐらいたっているわけでありますから、お考えがあったらひとつ伺わさしていただきたい。これは皆さん非常に関心を持っている問題で、切実なんですね。したがって、私、しつこく伺いますけれど、その辺もよろしかったら聞かしていただきたい。
○国務大臣(伊東正義君) いまの御質問は、私が大臣になる前にこの問題に若干関係したことがある、その経験から言いますと、主席がこういう発言をされたということは私は非常に——こういうことは私どものときはなかったわけでございますので、 〔委員長退席、理事松前達郎君着席〕 私は一つの前進の足がかりだと見ております。それで、これは本当に人道的な問題でございますから、いま安否調査の話も出たわけでございますが、これは南北間のいろんな話し合いが向こうであることもございます。また、向こうの、朝鮮半島の緊張の問題、いろいろございますが、しかしこれは本当に人道問題としてこういう問題を私はやっぱり少しでも解決していくということは必要だと思いますので、これはよく検討いたしますし、AA研の皆さんとも、あるいは赤十字ともよく話してみます。
○木島則夫君 いま外務大臣がおっしゃった、金主席の発言が事態解決のための前進であるという御認識をしていただいて、私は非常に力強いと思いますし、これから当然それに伴っていろんなことが展開されなければならない。しかし、それをいまここでどうやって、ああやってということはこれはおっしゃりにくい問題もあるだろうし、私はあえてここではお伺いをいたしませんけれど、この金主席の意向をこれから実現をしていくとなった場合に、たとえば里帰りの場合、現地で夫がすでに死亡をし、日本人妻が強烈に里帰りを切望をしていて、しかも日本にいる家族が里帰りをした後の身元を保証するというケースですね。さらに、日本の身内ですでに非常に高齢の方がたくさんでして、八十歳、九十歳というような、一日千秋の思いで再会を願っている方たちが、もしこのことが実現をされるような段階になったときには、いま私が申し上げたような方が最優先されるということはいままで外務省の御指導にもあったと思います。この辺は確認をしておきたいところでありますけれど、いかがでございましょうか。
○政府委員(木内昭胤君) 木島委員御指摘のとおりでございます。
○木島則夫君 いずれにいたしましても、今回の金日成主席の発言は事態打開の一歩前進と受けとめられまして、日本にいる家族の方々のこれにかける気持ちはまことに大きなものがあると同時に、やはりいろんな問題があり、障害はあるにしても、人道上の立場から早期の解決にひとつ努めてほしいというお気持ちを込めて私もここで大臣に申し上げておきたい。 そして大臣ね、これは私の私見でありますけれど、こういったことが緒につきますと、これを機に朝鮮動乱のときに悲惨な家族の離散、分散、こういうようなことが行われた、そのこと自体の、また何というんでしょうかね、照会とか連絡とか交流ということにも私はつながっていくんではないだろうか。したがって、日朝のこういう人道上の問題の糸口、一つ端緒ができれば、そのことをきっかけにしてまた朝鮮半島の平和なりというものがそれによって重みを増してくるんだということにもつながる問題であるというふうに、これは私見であるけれど、私は理解をするわけであります。外務大臣、この辺はどんなふうにお考えになりますか。
○国務大臣(伊東正義君) 朝鮮半島の北と韓国との間で対話——御承知のような平和的に話し合いをしようという、話し合いの内容に、手紙の往復でございますとか、あるいはそういう親族同士の相互訪問の問題とか、人の交流の問題、そういう問題がいろいろ話題に出ているということは、私ははっきりはわかりませんが、仄聞をしていることでございますが、私は、そういうことが緊張緩和のまず第一歩と言ってはなんでございますが、役立つことだというふうに、そういうことができるということがあればというので、私は重大な関心を持って見ているということでございまして、それがまた大いに役立つことの一つの手段じゃないかというふうにも見ているわけでございます。
○木島則夫君 最後に局長に。こうした金主席の発言が事態解決の前進のために大変好ましいものであるという外務大臣のお言葉を受けまして、これからいろんなことで政府同士でこれをやることがむずかしいというならば、具体的に問題の処理、事務的な処理をしていかなければならないというふうに思いますが、局長ひとつこれは早期にやっていただきたいということでめどをつけられませんかね。具体的なめどというのはございませんか。
○政府委員(木内昭胤君) 具体的なめどとおっしゃられますとお答えしにくいんですが、木島委員のお気持ちを十分に体して、このめどをつけたつもりで対処いたしたいと思います。
○木島則夫君 残余いろいろ質問がございますけれど、この問題をいずれフォローして私もやらしていただくことで、とにかく一歩前進に向かって事態が打開をされたという明るい空気の中で、人道問題としてこの日本人妻の里帰りの問題と、いわゆる家族の訪朝が実現されますように、大臣ひとつ最後に決意のほどを語っていただいて、私の質問を終わりたいと思います。
○国務大臣(伊東正義君) いまおっしゃったように、本当にこれは人道的な問題でございますので、長年の懸案、国交はなくても何とかできないかという関係者の長年の懸案でございますので、ひとつ積極的にこれ努力をしてみます。
○木島則夫君 結構です。どうもありがとうございました。
○理事(松前達郎君) 本日の調査はこの程度とし、これにて散会いたします。 午後四時四十五分散会