法務委員会 第13号
- 発言数
- 43 件
- 登壇者
- 9 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1980/04/08
会議録
○木村委員長 これより会議を開きます。 内閣提出、民法及び家事審判法の一部を改正する法律案を議題といたします。 本日は、本案審査のため、参考人として慶応義塾大学教授人見康子君、弁護士鍛冶千鶴子君、弁護士内藤頼博君及び財団法人全国未亡人団体協議会事務局長鯉渕鉱子君、以上四名の方々に御出席をいただいております。 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。 参考人各位には、御多用中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。 参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見を承り、本委員会の審査の参考にいたしたいと存じます。何とぞよろしくお願い申し上げます。 次に、議事の順序について申し上げますが、人見参考人、鍛冶参考人、内藤参考人、鯉渕参考人の順序で御意見をお述べいただくこととし、なお、御意見の開陳はお一人十五分以内に取りまとめてお述べいただくようお願い申し上げます。次に参考人に対して委員から質疑がありますので、さよう御了承お願いいたします。 それでは、まず人見参考人にお願いをいたします。
○人見参考人 ただいま御紹介にあずかりました人見でございます。 本日は、民法及び家事審判法の一部を改正する法律案につき意見を述べます機会をお与えいただきまして、衆議院法務委員会の皆様に深く感謝を申し上げます。 家族法を専攻いたし、また家庭裁判所における調停委員、参与員としての経験を通じ、さらに婦人層との懇談を通じて得ました要望という見地も加えて意見を申し上げまして、諸先生方の御検討をお願いしたいと存じております。 今回の改正案は大きく分けまして四点、すなわち、第一に法定相続分の改定と遺留分について、第二に寄与分制度の創設について、第三に家事審判手続の改正、第四に相続税法の配偶者の相続税額の軽減措置に関する点の改正に集約されるかと存じます。 まず私の結論を先に申し上げますと、法定相続分の改定及び遺留分につきましてはおおむね妥当であると考えます。また、第二の寄与分制度の創設につきましては、遺言相続の普及いたしますまで暫定的に必要な制度であるというふうに考えておりますが、なお相続人でない寄与者についての配慮を検討すべきであると考えております。第三点の家事審判手続の改正につきましては、従来から実務的に改正の必要が痛感されておりました点に関しますものであり、妥当であると考えております。第四点の相続税法の配偶者の相続税額の軽減につきましては、相続分の改定に伴う妥当な改正であるというふうに考えられますが、なお富裕者についての過度の保護となっているというふうな実情から見まして、その限界を検討すべきであるというふうに考えております。 以下、特に私は主として民法の改正点を中心に述べさせていただきたい、こう思うわけでございますが、民法の改正は昭和二十三年の改正が時間的制約がありましたために、本格的改正作業は昭和二十九年以来慎重に続けられておりますことは周知のとおりでございます。すでに昭和三十四年の六月、法制審議会民法部会小委員会におきます仮決定及び留保事項におきまして親族法の中での問題点が、また昭和五十年の八月には法制審議会民法部会身分法小委員会中間報告におきまして、相続人相続分、夫婦財産制、寄与分についての問題点が示され、各界の意見が求められたのであります。私も所属しております婦人法律家協会を通じてあるいは個人的に、たびたび民法の改正に対しましては意見を申し上げてまいりましたところでございます。 民法は広くすべての人にかかわる問題でございまして、しかも今日価値観が多様化するというような状況の中では、その改正はなかなか容易な作業ではないと思われるわけでございます。その中で、昨年昭和五十四年の七月発表の法務省民事局参事官室の「相続に関する民法改正要綱試案」は、長年の御検討の中でほぼコンセンサスの得られました点を中心に取りまとめられたものと拝察しており、長年の立法の準備作業の御苦労を多とするものでございます。 そこで本題に入りまして、今回の改正案につきまして、その第一点は法定相続分の改定についてでございます。配偶者の相続分と血縁相続人の相続分について、配偶者の相続分を増し、さらに兄弟姉妹については代襲相続人の範囲をおい、めいに限るものとしたわけでございます。 御提案理由にもございますように、近年核家族化が進み、子供の数が減少して家族構成が変化しているというときに、配偶者の貢献を評価すべきであるという要望が強くなっております。そこで、財産蓄積における配偶者間の緊密な協力につきましては、私は、婚姻をパートナーシップとしてとらえた方がよい状況であるというふうに考えておる次第でございます。今回は改正点として取り上げられておりませんけれども、実は夫婦財産制の扱いも今後の重要な課題かと存じておる次第でございますが、少なくとも死亡による婚姻の解消に際しまして、配偶者の相続分に反映するというふうな形を通しまして配偶者の貢献を評価することは必要でございます。改正の第五点に挙げられております配偶者のみの場合の従来三分の一の遺留分を二分の一に引き上げるという点とあわせまして、生存配偶者の生活保障を一歩進めましたものとして賛意を表するものであります。 ただ、夫婦一代の協力で居住用不動産だけがやっと築き上げられるという大部分の勤労者にとりましては、不動産価格が異常に高いという日本での特殊事情とも相まちまして、配偶者に二分の一の相続権を与えただけでは必ずしも十分に老後の居住権を確保することにはならないというのが実情ではないかと思われますので、今後の御配慮をお願い申し上げたいと存じております。 なお、配偶者の相続分の引き上げに伴いまして、相続税法第十九条の二第一項第二号のイによる配偶者の相続税額の軽減も、従来の三分の一から二分の一あるいは当該金額が四千万円に満たない場合は四千万円に引き上げられましたが、この四千万円を民法中において配偶者の先取り分としてお認め願えるという道がありますと、生存配偶者の居住権の確保につながるのではないかというふうにも考えられるわけでございます。反面におきまして、何億円の遺産であっても配偶者の相続税減額の対象になるという点につきましては、税負担の公平という点で釈然としないという声も婦人層にはあります。税法独自の理論については私は研究しておりませんので、そのような意見もかなり強くあるということをお伝えいたしておきたいと存じております。 さらに今回の改正では、嫡出子と非嫡出子の相続分の差別については世論の動向にかんがみて言及されておられませんけれども、日本国憲法の理念に照らしましても問題があり、早急の検討が必要であるということを一言つけ加えさせていただきたいと存じております。 それから、兄弟姉妹の代襲相続人の範囲をおい、めいまでに制限する点につきましては、従来からも遺産分割の実務上困難な問題を生じておりましたし、さらには、現代におきまして相続人の範囲縮小という相続法の理念から見ましても、従来の範囲はかなり広過ぎると考えられております。おい、めいにつきましては改正の範囲でもなおかつ広過ぎると私は考えておりまして、遺言あるいは民法九百五十八条の三によることで十分ではないかというふうに考えておる次第でございます。 次に、改正の新しい問題といたしまして寄与分制度の創設が挙げられております。従来から実務上も民法第九百三条の裏返しというふうなことで認められてきておりますが、提案理由の中では相続人間の実質的衡平を実現するものとされております。本来は、この問題は遺言でも処理し得るものでありますし、あるいは生前の契約関係によってもある程度解決されてもきておるところでございますが、なお家族間での契約や遺言が不徹底な日本の現状でございますので、過渡的に存在理由があるというふうに考えております。 ただ民法の九百四条の二は、条文化されました段階で、共同相続人間の遺産分割の協議あるいは審判、九百十条請求の際においてのみ認められることとされております。さらに条文では、寄与の例示として「被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加につき特別の寄与をした者」が挙げられております。この点は、被相続人の療養看護に努める者のかなりのケースが実は被相続人の息子の妻という相続人でない場合があることを考え合わせますと、相続人に限定したという点は若干片手落ちの感は免れないように考えております。 なお、寄与分の算定につきましては、共同相続人間の協議によることを原則とするけれども、協議が調わないときまたは協議ができないときには、寄与をした者の請求により、家庭裁判所は寄与を定める処分につきまして乙類審判九号の二事件となし得るものといたしました点は、実務的には遺産分割手続の促進に資するものであると考えられます。しかしなお、この点は物権的請求権や不当利得請求権との関係で問題が存するものと思われます。 さらにもう一つの問題点は、寄与分の上限を設けるべきではないかという点でございます。 改正点では、配偶者の相続分の増加ということが一つの大きな問題点として取り上げられているわけでございますけれども、このような配偶者の密接な協力が配偶者相続分の増加に含まれているといたしますと、共働きや他方配偶者の事業に労務を提供した配偶者の場合を除きますと、寄与者というものが考えられますケースは血縁相続人の場合が多くなりまして、せっかくふえた配偶者の相続分が害されるあるいは均分共同相続の原則が崩されるというおそれなしといたしません。九百四条の二の第三項では、寄与分は相続財産から遺贈の価額を控除した額を超えることができないという限界を設けておりますけれども、これは、極言すれば寄与分によって全遺産に及び得るということにもなりかねないわけでございまして、むしろ他の相続人の遺留分を害してはならないとする方が妥当であるというふうに考えられます。 なお、遺産分割の基準に関する改正につきましては、従来からも一切の事情の中で考慮をしていたものを明文化したものでありますので特に言及いたしません。 家事審判法の改正につきましては、これは実務にお詳しい鍛冶弁護士あるいは内藤弁護士より詳細な御意見が述べられることと存じますが、従来から実務上問題とされていた点の改正であり、私といたしましてはほぼ妥当であるというふうに考えておる次第でございます。 特に離婚の際の財産分与につきましては、家事審判規則五十六条の二につきまして、執行力につき疑義の存していたところでございますので、今回家事審判法に規定することでその根拠を得たものと考えられるわけでございます。 なお、家事審判規則百三十三条の調停前の仮の処分の効力とも関連いたしまして、私ども調停委員といたしましては、乙類事件の調停処理について検討課題を今後課せられたものであるというふうに考えております。 なお、家事審判法第二十七条、第二十八条における過料の額の引き上げにつきましては、本来の機能を果たすことができるようにその額を改定したものでありまして、間接的に家事事件の円滑な進行に資するものであると考えられるわけでございます。 最後に私が申し上げたいのは、民法第四編第五編におきましてはまだ改正を要すべき点は多く存在していると考えられますので、今後とも家族の実態の状況に応じまして適切な改正を御提案くださることを切望いたしております。 私の意見は以上でございます。(拍手)
○木村委員長 ありがとうございました。 次に、鍛冶参考人にお願いいたします。
○鍛冶参考人 御紹介いただきました鍛冶千鶴子でございます。 私は、ほぼ三十年弁護士として、実務家として家庭関係事件の処理に携わってまいりました立場から、それと同時に、親族法を講義し、また婦人団体等に関係しております立場からの意見をも加えて、私の考えておりますことを申し述べさせていただきたいと思います。 今回の改正案は、配偶者の相続分の引き上げを中心として、配偶者特に妻の地位の強化向上を目指し提案されたものでありまして、核家族化の進行に伴う家族構成の変化に即し、また夫婦中心の婚姻家族の実態に対応するものでございまして、家族関係における男女の実質的平等の実現のためにも望ましい改正でございまして、以下これから指摘いたします点を除き、全体として妥当かつ時宜を得たものであると考えますので、この点についてはまず賛意を表しておきたいと思います。 これから個別に意見を申し上げますけれども、賛成の部分については人見参考人の意見とほぼ一致するところがございますので、これは省略して、このようにあってほしいという望ましい点あるいは不足な点について特に強調して申し上げたいと思います。 まず第一に、相続分の改定については配偶者相続分の増加を中心としておりまして、妥当な線でこれには賛成でございますけれども、ただ、兄弟姉妹を配偶者がある場合にも共同相続人としたことについては後に異論を述べたいと思っております。それと同時に、従来から懸案とされた問題について未解決のまま改正案が提出されたことについて、一、二意見を述べておきたいと思います。 その第一は、昭和三十四年の七月に法務省民事局から発表されましたいわゆる仮決定及び留保事項の中で、内縁配偶者について法律上の配偶者の相続権に準ずるものを認めるべきかどうかという検討事項があったわけでございますが、今回それに対しては何らの回答も示されないままであったということが惜しまれるわけでございます。判例によって内縁配偶者保護の趨勢に昨今あるわけでございますけれども、このような状況の中で、今回の改正で相続権に準ずるものを内縁配偶者に認めなかったということは、やはり今後の課題として残ろうかと考えるわけでございます。 それから次に、昨年の七月法務省民事局参事官室から発表されました民法改正要綱試案の二において「嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分と同等とするものとする。」とされていた条項が今回の改正案で落ちていることでございます。これが削除されましたいきさつについては、新聞報道等によりますと、世論調査で賛成が少数であるということのほかに、国会内にも反対が強く、今回の改正案に盛り込んでも成立が危ぶまれるというようなことから削除されたということが出ていたわけでございますけれども、正義と良識の府である国会の中でそのような意見が支配的であるとは考えたくないわけですし、信じられないというふうに思うわけでございます。 これまで嫡出子と非嫡出子の相続分上の差別は、法律上の婚姻関係の尊重を目的とするというところから合理化されてきたものでございますけれども、同等の相続分を認められたからといって、それによって法律上の配偶者の相続分にはいささかも食い込むものではないわけでございますから、両者の間の差別を解消しても婚姻関係尊重とは少しも抵触しないと考えますし、また婚姻尊重と申しましても、親の側はともかく、生まれた子には何の罪もないのに、偏見から同じ親の子同士の間に優劣をつけることはこの際やめなければならないというふうに考えるわけでございます。 欧米諸国でも、この十年ほどの間にこのような差別法制はほとんど姿を消したことにかんがみてみましても、このような少数の声をこの際くみ上げなければ、世界の趨勢におくれをとるということにもなりかねないと考えるわけでございます。すべての子が出生等によって差別されず健やかに育成されるべきだとする国際児童年の精神から申しましても、また法のもとの平等をうたった憲法理念の貫徹のためにも、ここで修正案を出すほどの見識が示されることを希望いたしたいわけでございます。 第二に、兄弟姉妹の代襲相続の制限についてでございます。 これは、今日の家族構造やその形態、そして夫婦中心の婚姻家族の尊重という観点からすれば、配偶者がいない場合に限って兄弟姉妹は次の順位の相続人とすればよいのではないか、配偶者がいる限りは兄弟姉妹の相続分はゼロでもいいのではないかというのがこれまでの私の見解でございますし、婦人法律家協会等でもそのような意見を出していたわけでございますが、ただ、血縁を重んずる日本の精神風土、それからいまだ兄弟姉妹の間で経済面での協力援助関係が必ずしもなくなってはいない日本の現状では、四分の一を認める、残すということは現実的な妥協としてやむを得ないかもしれないと思いますけれども、これは将来に向けてはあくまでも過渡的な措置と考えたいと思うわけでございます。したがいまして、今回の改正案が兄弟姉妹の代襲相続をその子だけに限ったということは大変妥当な措置であるというふうに考え、賛成いたしたいと思うわけでございます。 第三に、寄与分制度の新設についてでございます。 これは、私の所属いたします日本婦人法律家協会を初め多くの婦人団体から立法化が要請されてきていたことでございますけれども、しかし私どもが要請いたしました寄与分の中身というのは、遺産の維持、増加に特別に寄与した者に対して、相続の際にそれが正当に報われるべきであるということを中心に求めてきたものでございまして、これを相続人に限って認めようとする、つまり法定相続人間の具体的衡平を図るということを主眼として認められた今回の改正案は、私どもが要望していた中身とは似て非なるものがあるのではないかということをここで指摘しておきたいと思うわけでございます。 現在、農家特に昨今の兼業農家では、その中心的な働き手はいわゆる農業後継者の妻であり、また後継者が被相続人よりも先に死亡した場合の働き手も多くの場合その未亡人であるわけでございますが、これらの者は相続人ではないわけですから、相続人だけに寄与分を認めるという改正案では寄与分さえも認められないということになり、寄与分制度が新しく導入されたことでかえって不公平感は増幅されることになりはしないかというわけでございます。これは単に農業だけに限らずすべての自営業にも当てはまる問題でございまして、結婚によって夫の家の家業、自営業に従事するという形態が今後も続く限り、つまるところ男性の寄与は認めても女性のそれは認めないということに帰着し、結果としては男女差別を助長することにもなりかねないということを危惧するわけでございます。 ことに、この新しい条文で被相続人の療養看護に努める者に対する寄与分の請求が掲げられておりますけれども、これは先ほど人見参考人の指摘にもございましたように、息子の妻つまり嫁の場合がほとんどであるというふうに現実には思われるわけでございますが、相続権を持たない嫁はそれゆえに寄与分にもあずかれないというのでは、どう考えても不公平であり不合理ではないかということを指摘したいわけでございます。ですから、相続権を認められない内縁の妻や事実上の養子あるいは同居の姻族たとえばいまの例にあります息子の嫁のような立場の相続人に準ずる者にまで寄与分を拡大すべきであり、そうでなければ制度の意義は大半失われてしまうことになろうかと思うわけでございます。 多くの婦人団体がこれを切望しているわけでございまして、これが実現できないと言われる意見の根拠というのは、手続が複雑になり遺産分割が遅延するということのようでございますけれども、これまでの家裁の審判や高裁の判例にも、相続人以外の寄与者に対しても寄与分を認めたものがあるわけでございまして、それは理由になり得ないと思うわけでございます。 以上のような趣旨を御賢察の上、相続人に準ずる者にまで寄与分を拡大するよう強く要望したいわけでございます。 なお、寄与分の制度は本来遺産の配分をめぐっての衡平を実現するためのものでありまして、相続における遺族の生活保障という機能にも十分に配慮すべきものでございますので、遺留分制度における自由分に相当するものを限度として上限を設けるべきであるということについては人見参考人と見解は同じでございます。そうでなければ、せっかく配偶者の相続分がふえても、いわゆる農業後継者等の寄与分請求が大きい場合には、それによってはほとんど相続財産が残らないということにもなりかねない。その意味でもやはり上限を、たとえばはっきりと二分の一というふうに具体的に決めることが望まれるわけでございます。 それから審判前の保全処分については、私、家庭関係事件を処理しております上で、個別的にこれまでも認められておりました審判前の仮処分が行われましても、具体的に処分を受けた者がそれを任意に実行しなければ有名無実に終わるという例が決して少なくなかったわけで、その点で弁護士も当事者も裁判所もその無力を認識せざるを得ないような状況にあったわけでございました。この点を改めて法律事項として家事審判法に明定して、これに強制力を持たせる改正案は、私どもが繰り返し要望してきたところでございまして、大いに歓迎するところであるわけでございます。 ただ問題は、家裁による従来の審判前の仮処分に強制力を持たせたという形の改正ではなく、ここに出ております改正案を見ますと、審判事件を本案とする仮差押え、仮処分その他の保全処分の管轄権を地方裁判所から家庭裁判所に移すことが中心のように見受けられますので、その結果、その処分が出される場合の疎明方法や保証金等の点で、生活に困窮する弱者保護に欠けることにならないような手当てが絶対に必要であると考えるわけでございます。特に生活費請求の婚姻費用分担や扶養料請求審判事件等においては、事件の性質上担保なしで仮の処分が出せることを原則とすることも明文化して手当てを考えるべきではないかというふうに、実務家としては考えるわけでございます。 また、いま申しましたような事件については、生活に困窮して緊急を要する場合が多いわけでございますから、本案が調停中であっても審判前の強制力ある保全処分と同様の制度を認めるよう追加修正すべきではないか。つまり、審判前の仮処分だけではなく、ある一定の緊急を要する事件については、調停中でもこれを本案として強制力ある保全処分を認めるべきではないかというふうに考えるわけであります。 なお、仮の処分に強制力を付与します以上は、処分を受けた者に対しては不服申し立ての道は開いておくべきが当然でございまして、ただその場合に、不服申し立てをすることによって強制力が停止されるようなことがあっては、せっかくの保全処分の意味が失われることにもなりますので、この点の配慮が望まれるわけでございます。 最後に、相続税法の改正について一言触れておきたいわけですが、相続税の課税の根拠とされます富の過度の集中を抑制して不労所得を社会に還元し、かつ担税力に応じた税負担の公平という見地から見ますと、今回の改正の提案は配偶者相続分の増加に対応した一見妥当な当然の手当てのようにも見えるわけではございますけれども、やはりいま申しました観点から見ますと、数十億の遺産相続であってもそれが二分の一の範囲内であれば無税というのでは、いかにも高額資産家を不公平なまでに優遇することになりはしないか、これでは社会的公平が保たれないのではないかという疑問を持つわけでございます。 ですから、相続における遺族の生活保障的な機能に重点を置くならば、遺族の生活保障に必要な範囲の遺産相続部分は非課税とするというような基本的な考え方で対処することが望まれるわけでございまして、これは結局定額控除ということにならざるを得ないと思いますが、現行の四千万円というのをさらに増額させて、非課税対象の最高限を決める方向での再考を求めたいと思うわけでございます。もちろん、今回このような改正が昭和五十年に引き続いて行われますことは、配偶者が相続税の心配なしに法定相続分を取得でき、その権利行使を容易にするという点でのメリットを考えないわけではございませんけれども、二分の一である限り税は青天井というのは、やはり社会的公平の観点から考え直すべきではないかというふうに思うわけでございます。 どうもありがとうございました。(拍手)
○木村委員長 ありがとうございました。 次に、内藤参考人にお願いいたします。
○内藤参考人 内藤でございます。私は、久しく裁判所におりまして昭和四十八年に退官いたしまして、それから弁護士をやっておりますが、裁判所におりましたときに家庭裁判所の仕事に比較的縁が深かったわけでございます。 今回の改正案について私の意見を申し上げます。 第一に、配偶者の相続分を引き上げる改正でございますが、これは私も適当であると考えております。配偶者の相続分の率をどう決めるかということについてはいろいろ考えられるわけでございますけれども、配偶者といっても婚姻期間の長い場合もあれば短い場合もございます。また同棲を続けている場合もありますし、配偶者といっても全く別居をしている配偶者もいるわけでございまして、必ずしも一概には言えないのでありますけれども、一般的、標準的な夫婦を考えますと、共同の生活を営んできた一方の配偶者が他方の配偶者を相続するというわけでございますから、相続分の基準を現在の三分の一にしておくことは今日の状況からそぐわないような感じを受けるわけでございます。これを改めて二分の一を基準とすることは、一般に望まれていることでございますし、また外国の立法例に照らしましても妥当なことであると存じます。配偶者の間の事情によっていろいろ変わるわけでございますけれども、それはまた遺言によってその是正を図る道もあるわけでございますので、今回の改正に賛成するわけでございます。 第二に、兄弟姉妹が相続人となるべき場合の代襲相続をその子すなわち被相続人のおい、めいに制限しようとする改正でございますが、これにつきましても相当であると考えます。被相続人のおい、めいまではともかく、その子孫もということになりますと、被相続人との縁故が遠くなりますし、余りかかわりのない者を含むことになるわけでございます。しかも遺産の分割に際しまして相続人の数が非常に多くなりますし、その所在を知ることも容易でないことになります。私が経験いたしました例でも、ただ一人がブラジルに行っているということで、ブラジルのどこにいるかわからないという事件がございました。どうにも連絡がつきませんので、外務省にお願いいたしましてやっとその所在を突きとめて連絡したことがございました。こういったことも時折起こりますので、今回の改正は遺産分割の実務の上においても大変妥当な改正だというように考えるわけでございます。 第三に、寄与分の制度を設けることにつきましては、これは遺産の分割の衡平を期するために必要欠くべからざることでございます。すでに家庭裁判所の実務におきましても実質的に寄与分を認めているのが現状でございます。寄与分は相続人以外の人にも認むべきではないかという問題、先ほど来参考人の方からも御意見がございましたけれども、それは確かに検討さるべき問題でございます。しかし今回の寄与分については、これは別個の問題と考えざるを得ないと存じます。と申しますのは、今日言われております寄与分、ここで改正しようとする寄与分は、相続人の間で遺産分割する際にその衡平を期するということにあるのでありまして、寄与分を共同相続人に限定するのは今日としてやむを得ないことかと存じます。外国の立法例も大体そのように定めているわけでございます。これは将来の問題として、ただいま御意見ございましたように、相続人に準ずべき者、内縁の妻であるとかそういう人たちに対する寄与分ということはさらに御検討願いたいとは存じております。 第四に、遺産分割の基準についての改正でありますが、「年齢」や「心身の状態及び生活の状況」ということが加えられたわけでございますが、これは現行の規定でも「その他一切の事情」という規定がございまして、これに含むものとして実務上は運営されております。これにつきましては特に申し上げることはございません。 第五に、遺留分の改定につきましては、前に述べました相続分の改正に伴う当然の処置と考えております。 第六に、家事審判事件に審判前の保全処分の制度を設けるという改正は、これはぜひ必要とされるところでございます。現在、審判前の仮の処分については家事審判規則に規定されておりますが、それには強制力がないとされておりますために、裁判所が仮の処分を命じましても実効が期待できません。そのために、この仮の処分がなされた例はきわめて少ないのでございます。それが今度の改正で仮の処分に執行力が与えられることになったわけでございます。 これも私が最近扱いました事件でございますけれども、夫と別居を余儀なくされました妻が婚姻費用として月何がしかの生活費の分担を請求したわけでございますが、この審判を申し立てましたのがある家庭裁判所支部でございます。支部というのは、御承知のように裁判官がいろいろな事件を扱います。一人で民事も刑事も家庭裁判所事件も扱うわけで、いろいろな事件を扱う関係もございますけれども、第一審の家庭裁判所の支部の審判が下るまでに七カ月かかりました。ところが相手の夫が抗告したものですから、さらに高等裁判所で五カ月かかったわけでございます。別居を強いられた妻が生活費を夫から得られるまで実に一年の日月を要したわけでございます。こういった生活費であるとかあるいは子供の扶養料であるとかいうものはもうその日に欲しいわけでございまして、一年もたってから受け取るというのでは、本当にどうして生きていいかという問題があるわけでございます。今度の改正ができましたので、仮の処分で夫の方からすぐに確実に婚姻費用の分担を求めることができるわけでございまして、家事審判が本当に実効を上げることになると思うわけでございます。 第七に、遺産分割の事件で本審判に先立って遺産の換価ができるという改正があるわけでございますが、これによって分割の審判が一層合理的に速やかに行われることが期待されますので、この点についても賛成でございます。 以上、簡単でございますが、私の意見を申し上げさせていただきました。ありがとうございました。(拍手)
○木村委員長 ありがとうございました。 次に、鯉渕参考人にお願いいたします。
○鯉渕参考人 ただいま御紹介いただきました鯉渕鉱子でございます。 先生方には、全国未亡人会として大変お世話になっておりまして、ありがとうございます。私は三人のお方と違いまして実践の方を主としてやっておりまして、泣いている母親たち、泣いている未亡人たちとともにひざ突き合わしていままで三十年間歩んできた者でございます。 それで、一番先結論から申しますと、妻の代襲権というものをぜひ認めていただきたいということをお願いするわけでございます。 全国の未亡人会ができましたのは昭和二十五年で三十年前でございます。そのときは、我妻栄先生それから中川善之助先生そして田辺繁子先生とか、あらゆる法律の関係の方にお願いしたのですけれども、お三人とも、それから宮城タマヨ先生なんかもおっしゃることは、遺言を書けばいいじゃないか、それからもう一つは養子縁組みすればいいじゃないかとか、そういうことなんですけれども、そういうものは絶対できるものではございません。やっぱり血を分けたわが子ほど、嫁よりはかわいい者はないということでございます。現在母たち、もうわれわれの年代、私も戦争未亡人でございます。考えてみれば、夫と暮らしたのはたった一年間足らず、夫の方の名前を名のって四十年になります。女一人がここで耐えていく、しかも妻の代襲権も何もなしで、夫の遺産というものは何もなしで、ここまでかみしめて自分に言い聞かせ言い聞かせ、戦争の犠牲のもとに泣いている女というのはたくさんおるわけでございます。 私も、財産のことで十年間裁判いたしました。それの弁護士に払うお金の大変なこと、裁判所へ行って相手方の人と顔合わせるののいやなこと、弁護料を払うお金なんというのは本当に大変だったです。そういう弁護士にもかかれない女一人の未亡人の生きざま、それを妻の代襲権というのがないためにどれほどまだ泣いているか、そしてそれとともに、八十、九十になる夫の親を見ております。そして今度は夫の親が死ねば、何もめんどう見なかった——こちらは三十年も四十年も夫の親と暮らしている、この種の未亡人が、今度は遺産相続になると、だんなさんの兄弟たちが持っていってしまって、そしてそのままほうり出されるというのがいま泣いている未亡人たちでございます。それがほとんど大正生まれの女でございます。 そういうことで、妻の代襲権があったらということを私たちはここ三十年間叫び続けましたけれども、だめだったのです。それでこの間、二月の新聞を見ましたらば寄与分というのがあったので、ああやっと認めてくれたんだなと思って喜んでおりましたらば、あなたたちは相続人の範囲になりませんよ、直系尊属、きょうだいということになると嫁はだめですよと言われたときは、もうがくんときてしまった。それできょう幸いにこういうところへ出て、いま生き証人がたくさんあるということをどうぞお認めいただきたいと思います。 一番大変なのは、やはり夫のおしゅうとさん、それからおまけがつく人は小じゅうともおります。嫁に行きはぐれた女の人、そういうのまで抱えている。小じゅうと鬼千匹だと私たちはよく言っておりますけれども、六十過ぎてもやっぱりわれわれ年上の小じゅうとを抱えている。その人のみとりまで私たちはやらなくちゃならないのかなと思うと、嫁に行った先を去るに忍びずそのまま同居している。そして不安におののきながら、私がもし今度はこういう年代になったらだれがめんどう見てくれるのかと思うときに、妻の代襲権でもあって遺産でもあったら、おいもめいも見てくれるのじゃないかということも考えております。 だから、どうぞ、この法律において寄与分というところに、お三人の先生方がおっしゃったように、何か亡き夫の妻の座の確立ということで財産を分けるというようにしていただきたいと思うのです。離婚するときだって慰謝料を払っているのです。それを、夫の親も看病し、きょうだいも看病している、しかも二十年、三十年どころか四十年もたっている、その妻に、お嫁さんですね、嫁にはまだそういうものがないということは、本当に何のために世の中生きてきたのか。夫のために暮らしたのでなくて、その家のために、親のために、きょうだいのために私たちは一生犠牲になるのかと思うときに、本当に寝たきり老人になった親を抱えたときに、勤めばやめなくちゃならない、そして、わが本当の親ではないから、言うにも言われないつらさはやってみた人でなかったら、これはわかりません。子供のように甘える親を見たときに、本当にどうしていいかわからない。そして、今度は追い出されたときの泣きどころも何もない。弁護士の費用のことを考えたり、そういう泣いている一人の女ということをお考えいただいて、どうぞ妻の代襲権をぜひこの民法の改正の中に、寄与分の中に、私は法律のことは何も知りませんけれども、そういう項目を入れていただきたいと思うわけです。その項目でどうしてもだめだったらば、何かの制度でつくってもらうとか、何かそういうことをぜひ先生たちのお力で守っていただけたら、本当にああ生きていてよかったということをしみじみと味わうわけでございます。 実は、寄与分というところで、私はある人を二十年以上やっぱり子なしの御婦人でしたからめんどうを見てまいりました。そして財産づくりも一緒にやりました。二十何年問いろいろとそれこそ最後のみとりまでやりました。だけれども死んだときに、そんなに看病もしなかった妹が全部財産を持っていってしまって、生前生きている人が常に言っていた言葉、遺言状を書いてなかったために、あるいは書いていたかもしれないけれども見つからないのですけれども、とうとうそっくり財産を持っていった、何も余り貢献しなかった妹が法律をたてまえに持っていってしまったという、私も体験がございます。ですから、死んだ人の意思というものは、その後育英資金に使いたいとかなんとか言っていた、そのことすらできなくなった。寄与分でそういう特別の、相続権はなくても二十年とか三十年とか特別寄与したということで、私は、やはり法律上にある相続人というのに、直系とかきょうだいとか何かおいとかめいとかでないものがあると思います。それでなくても、いま独身婦人が百五十万人もございまして、その人たちも自分の親のめんどうは見て、その後のことを考えたとき、やはりお先真っ暗だというのは子なしの未亡人と同じことだと思います。 それからもう一つは、子なしの未亡人の次に悲劇なのは後妻さんに入った妻でございます。乳飲み子を抱えているからかわいそうだということで後妻に入りました。だんなさんの方は子供が三人もいるからもう子供は生まないでくれという約束で結婚します。そして結婚して、ここにも事例も持ってきてもございます。こういう「私の足あと」という事例の中にもはっきり書いてございます。父親は生きておる。こういう事例は私たちの聞くところでは親が生きているということが大体多うございますけれども、その中で御主人が交通事故で三十五歳で亡くなってしまった。残された全く義理の子供を育て、そしてその後おしゅうとさんが亡くなるということになると、妻の代襲権というものはございませんので、全く義理と義理の中で、その後妻に行った一人の婦人は何の寄与分もなしに、しかもその年とった父親が寝たきり老人になったのを何年も看病した後、財産分与は何もなし、そして分けられるものは何もなしというようなこともございます。 本当に、裁判所にも行けないこういう泣いている妻というものが日本に、しかも何十年も生き証人で生きているということ。この人たちも私は本当はお助け願いたいけれども、いまこの法律では何か今後のあれになりそうですけれども、この際、大正生まれとか明治四十四年から昭和の十年までとかというので、何かのことでこういう場合は拾って、そして制度で結構ですから助けてもらったらば本当に安心して、ああ私はこういう何かわからないような生活してきた中でも、こういうものを国が認めてくれた、今度の民法の改正でこういうものができたということになっていただけたらありがたいと思うのですけれども、私はそれがどんなふうな法律改正になるかはかいもくわかりませんけれども、何か国会の先生方のお力でこれをやっていただきたいと思います。 それからもう一つ、税金の問題でございますけれども、ついこの間参議院の予算委員会で婦人に関する問題の質疑がいろいろございました。その中の記録を読みますと、木島則夫先生はこの妻の代襲権について非常に発言しておりますけれども、こういうことを質問するのならもっと私たちに生の声を聞いてほしいなと思いながら、私は、しょせん、ここに男性がいて申しわけないけれども、女の気持ちは男にはわからないのだなということをこれを読んだときに最後に思いました。それでこの記録を拝見しますと、離婚の際の財産分与は非課税の取り扱いをしているということを書いてあるのです。離婚した場合の財産分与は非課税だということを言っているので、ああそうかなと思って、私も初めて離婚者はこういうことなんだなと思ったのです。ところが、われわれ未亡人の方は四千万までであとは課税されるということになると、何もなしのとき、たとえばマンションぐらい買ってそれから今後の生活費というのを考えたときに、余りにもこの妻の控除が少ないではないかと私は不思議に思いました。ですから、どうぞこの相続税、妻の控除の方もぜひ大幅に上げていただきたいと思います。今後妻が何年生きるか、その死なれた段階でも、せめて女の平均年齢ぐらいまではやる、そういう計算で非課税対象にしていただけたらありがたいと思います。みんなうちを持っている人ばかりが未亡人になるわけでございません。うちのない人が多いということをどうぞ御記憶いただきたいと思います。 そういうことで、私は裁判を十年間やって妻の座というものの確保に非常に苦労した。忘れようとしても、いま思い出すと涙が出まして何も発言できませんけれども、とにかく結婚して夫と一緒にいたのは一年足らず、こういう私がいつのまにか四十年間夫の方の名を名のりながら、女一人が小野田さんよりもっとひどい世間のうるさい口の中で生きてきたということは並み大抵なことではございません。そういう子のない未亡人、後妻に入って、それもなさぬ仲で暮らした人たちの犠牲があるということをどうぞ御記憶願いたいと思います。 それから財産問題で一番大きいのは農業とそれから中小企業と漁業、それにこの間もウナギの養殖をやっている未亡人が土地の問題で大変苦労した話をしています。それからその次は、大きな料亭に嫁いで未亡人になって子供のいない人が何ももらわずに出された話も聞きました。離婚するときだって慰謝料をもらうのです。ですから妻の代襲権というものをどうぞ認めてくださいますように、ここに強くお願いいたします。(拍手)
○木村委員長 ありがとうございました。 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。 —————————————
○木村委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山崎武三郎君。
○山崎(武)委員 四人の参考人の方々には早朝からまことに貴重な御意見を賜りまして大変ありがとうございました。 総じて四人の先生方は、それぞれ角度は違いましたけれども、当委員会におきまして現在審議中の民法改正案について不備の点を御指摘賜ったと存じております。また言われることごもっともでございますし、私どもは参考人から賜った御意見については実は念頭にあったわけでございます。 一つは、実は嫡出子と非嫡出子の差別の問題、今回の改正案の中に政府が提出に踏み切れなかった事情であります。先生方がそれぞれるる御指摘賜ったとおり、まことに生まれてきた子供については罪はないわけでございまして、それを法律婚か否かによって差別を相続分にするということはまことにおかしな話であるということをだれしもが感ずるわけでございますが、他方、法律婚というのを重視しようという現在の家族制度並びにいわゆる日本人の感情からいって、きわめて一握りの非嫡出子の問題を平等に取り扱うことから、法律婚を重視しようという家族制度を軽視する風潮になりはしないかという国民感情であります。 このことを重視して、まだそこまで機が熟していないということから、政府の方では本法案についての改正案に入れなかったというふうに私ども理解しておりますが、先生方の御意見、早急に入れるべきであるという御指摘ごもっともでありますし、そのように理解しておりますが、いま一度四人の先生方に、それぞれこの点について、国民感情がそれほどなじまなくてもそういう形で改正した方がよろしいというふうに御判断であるのか否か、その点をそれぞれお聞きします。 第二番目は、相続人でない者について寄与分を認めるべしというそれぞれの御主張がございました。私も選挙区が農業県でございます。兼業農家が多うございまして、御主人がどこか働きに行っている。実際に農業経営をしている者は残された嫁と年とったおじいさん、おばあさん、働き手の主たるものは実は嫁そのものであると言っても過言でないわけでございまして、このお嫁さんが一生懸命働いて農家を維持してきて、御主人が夕方帰ってきてあるいは朝ちょっとやる、そういう形の兼業農家が私の選挙区も非常に多うございます。 しかし、これで被相続人つまりおじいさん、おばあさんが亡くなってしまいますと、お嫁さんのところには全くゼロであるということはまことに不合理ではないかという御指摘、その他中小企業におきましてもまた同様であるだろうし、そしてまた、いま涙ながらに訴えられた鯉渕参考人の御意見もまさしくこの点の改正についての御指摘だろうというふうに思います。 しかし今回の改正案の中で、相続人である者に寄与分を認めようという本改正案の中からして、一体相続人でない者に寄与分を認めるということをやっていくといかなる弊害が起きるのか、つまりプラスの面とマイナスの面とそれぞれあるだろうというような感じを持ちます。したがって、そのプラスの面とマイナスの面とを比較考量してなおかつプラスの面が残る、そしてまた国の民法という形の中にこれをきっちり入れるべきだと言われるのだったならば、その点のことについてもぜひ御付言を賜りまして御指摘を賜ればありがたいわけでございます。 その他いろいろお聞きしたいことがございますけれども、この二点について、それぞれ四人の参考人の方に一言ずつ御意見を賜ればありがたいと存ずる次第であります。
○人見参考人 お答え申し上げます。 第一点の非嫡出子の差別についてでございますが、これは法律婚尊重という観念となかなか両立しがたいということについては従来からいろいろ御議論のあるところでございます。ただ最近の実情を申し上げますと、非嫡出子というものが必ずしも婚姻尊重の観念と相反する場合に出生するのではないということを御指摘申し上げたいと思います。と申しますのは、現在事実婚というものにつきましてはかなり法律婚に準じた扱いがされておるわけでございますけれども、この事実婚の出生子もまた非嫡出子として扱われているという事実を御指摘申し上げまして、この事実婚の処遇というものを認めるのであるとするならば、非嫡出子につきましても、なおかつ従来の道徳的な反感というものだけでは処理し切れないのではないかというふうに考えられるわけでございます。 それからもう一つ御指摘申し上げたいのは、実は配偶者の相続権が三分の一から二分の一に向上いたしますと、一つの危険が予想されております。これは再婚につきましてはかなり法律婚がむずかしくなるのではないかというふうな問題が出てまいりまして、もしそのような再婚が事実婚化いたしますと、実は再婚の出生子は非嫡出子の地位になってしまうというふうな状況になりまして、せっかくの配偶者相続権の向上ということが逆の弊害を招くのではないかというふうな危惧も考えられるわけでございます。その点で、非嫡出子の問題あるいは事実婚配偶者の相続法上の地位ということは、今後かなり考えなければならない問題ではないかというふうに私は考えておりますので、できるだけの御考慮をお願いしたいというふうに考えております。 これが第一点に関しましてのお答えでございます。 それから第二点の、相続人以外の者について寄与分を認めるべきかということでございます。これは私の考えでは、前に申し上げましたように、寄与分の制度というものを遺言が普及するまであるいは家族関係が契約関係である程度整理されてくるまでの間の暫定的な制度であると考えておりますものですから、遺言の不十分な点をある程度補充するという機能が寄与分の中にあるのだというふうに把握するわけでございます。 その点で、被相続人が本来遺言をしたならば当然に配慮したであろうという方たちについては考慮してもよろしいのではないかという点で、あるいはみなし遺贈とでも申し上げましょうか、そういう考え方をとるならば、あるいは相続人以外の方たちにつきましても配慮が加えられるのではないかというふうなことを考えますし、余り大きく体系を崩すという問題にもならないのではないかと考えております。
○鍛冶参考人 お答えいたします。 第一の点でございますけれども、これは、機が熟しているとかあるいは国民感情がどのような方向に向いているかというようなことを、だれがどのような方法によって判断するかという問題とも絡んでまいりますけれども、ある場合には、たとえば戦後の一時期国民感情を先取りして親族法、相続法改正が行われ、家族制度を廃止した相続法改正が行われたように、この問題につきましては、世界の立法の趨勢から申しましても、もし機が熟していない、国民感情がそこまで至っていないというような判断が仮にあるといたしましても、それならば法律主導型で、たてまえ論としていくことがあってもいいのではないかというふうにも考えるわけでございます。 ただ、たとえば総理府で昨年発表されました意識調査ですか、それによりますと、現行制度のままでいいという答えが四八%で、現行制度に反対で平等化すべきだというのが一六%、現行制度は改正すべきであるという積極的な賛成が一六%しかなかったということが一つの根拠とされているようでございますけれども、これは意識調査のアンケートのとり方にもよるわけでございまして、現行のままでいいという考え方がわりあい多く出てくる場合が大体多いわけでございます。 さらにまた、先ほども申しましたように、婚姻尊重の立場と同じ親の子供同士の間の優劣をつけないということとは決して矛盾するものではないと思われますし、また、ごく少数の一握りのそういった非嫡出子の保護のために国民感情を刺激することはないではないかという御意見については、やはり〇・八%という一握りの者の声は、このような場合にこそたてまえとして平等を貫くという声を法律家あるいは一般の国民が取り上げない限りは永久にネグられてしまうことになりやしないかということを恐れるわけでございます。 それから、寄与分を相続人でない者に認めた場合のメリットとデメリットについて意見を述べるようにということでございますが、寄与分制度というのは、先ほどの意見でも申しましたように、相続の段階で遺産の維持、増加に特別に寄与した者に対してそれが報われるという観点から考えるのと、もう一つは、人見教授が指摘されましたように遺言の補完制度として——遺言がもう少し行われるならば、自分の下のめんどうまで見てくれている嫁に対して、相続権のない嫁に対してこそ遺言によってその寄与に報いるべきであるわけですが、それが実際に行われない現状であるならば、やはり被相続人のそのような意思を推定して、そして遺言の補完制度として相続人以外の、無限に広げるわけではなく、相続人に準ずる者という形までに広げることは法律技術上も可能であろうと思うわけでございます。 これに対しては、遺産分割が長引くとか手続が複雑になるということだけがそこまで広げることに反対する意見の中心のようでございますので、それについては、ある一定の期間を定めて、寄与分請求の期間を制限するとかその請求権が消滅するというような形で法技術的に開発することは決して不可能ではないと考えております。
○内藤参考人 ただいまの二点の御質問でございますけれども、非嫡出子の相続分を嫡出子と平等にするという考え方につきましては、私も、いろいろな関係しておる研究会やその他で貴重な意見も聞いております。大体聞いてみますと、理論的に考えれば平等が相当であるということになりますし、現在の家庭の生活感情から言えばどうも平等というのは行き過ぎではないかというような考えに立つようでございます。たとえば家庭におられる婦人方の意見を聞きますと、大体これは反対でございます。調停委員などをしている婦人方でさえ、やはりこれは反対の意見が多いようでございます。 私は、いずれはこれは理論的な方面によって解決すべきものだと存じます。私自身の意見を申し上げますれば現在時期尚早だということでございます。いずれはそうなるにしても、今日の家庭の生活感情から言えばまだまだ時期尚早。結局立法政策の問題でございますけれども、もう少し時期を待って、十分に検討された上で改正されるべき問題だと考えております。 それから、第二点の寄与分を相続人に準ずる者に広げるかどうかでございますけれども、これは第一に、相続人に準ずる者とはどこまで広げるか。内縁の妻はもちろん入りましょうし、あるいは孫も入りましょう。おい、めいでもいいかもしれません。どういう寄与をしたときに寄与分を認めるかという次の問題がございます。同居している内縁の妻ということが挙げられますけれども、同居だけでいいかどうかという問題もございます。そういうことは余り形式的に法律で決めますと、同居してもらわなくてもいいようなお嫁さんが来てしまったり、そこにはいろいろな弊害もあるわけでございます。この点についても十分な検討が必要で、これは法律でございますから一度決めればそのままに適用されますから、十分にいろいろな角度から検討されるべき問題だと存じます。 それから、相続人に準ずる者が全然ほうっているのに、相続人以外の人が非常に尽くす場合がございます。ことに現在ボランティア活動が盛んでございまして、老人のところにボランティアとしてずいぶん入り込んで世話をしております。親身になって世話をしているボランティアを何人か私知っておりますけれども、そういう人たちとの衡平を一体どうするかということもございます。今日の世相に照らしまして、いろいろな角度から十分に御検討いただくべき問題だと存じます。いずれはこれは解決しなければならない問題でございますので、今後の十分な検討にまつ次第でございます。 以上でございます。
○鯉渕参考人 一の問題につきましては時期尚早だと思います。いま大変未婚の母がふえておりまして、その母子家庭には非常に問題がございます、子供がぐれているとか。死別はほとんどよい子で育っておりますけれども、離婚と未婚の母、これはわれわれも困っているということでございまして、そういう子にまで認めるというのは時期尚早と私は存じます。それは私の体験の上からでございます。よろしくお願いいたします。 それから第二の問題ですけれども、鍛冶先生のおっしゃった御意見に同感でございます。全くそのとおりでございます。ただ、申請したときに弁護士の費用などは国選とか何かで余りかからないように、それから時期は急いで、きわめて早くやってくれということで、やはり嫁の座というのは金がないということをどうぞ先生方御理解をお願いいたします。弁護士さんにかかるほどお金があればいいのですけれども、そうじゃない。 それからもう一つは、死んだ場合に実家の方のお墓へは入れませんから、亡くなっただんなさんのお墓に入りますのには、その後お線香の一本も上げてもらえるような感情のもとで死んでいきたいと思いますので、やはり夫のおいっ子、めいっ子とは仲よくしたい。あの嫁さん財産みんな持っていったとかみんな取られたというのでは、お線香を上げたくなくなると思います。だから、その後の墓守のことまで考えますときに、夫の方の財産等を持ち逃げしょうなんということは私たちは毛頭考えておりませんので、よろしくお願いいたします。 それから遺言書とか契約書とか専門家の方はおっしゃいますけれども、遺言書というのは、よほど理解ある母親、父親でないと、おしゅうとさん、おしゅうとめさんは絶対に書いてくれませんということを私はここで申し上げます。たくさんの事例がございます。血を分けたわが子はかわいいけれども、三十年も四十年も一緒に暮らした嫁はかわいいんだか何だかさっぱりわからないというのが現在の日本の状況でございます。明治生まれの年寄りでございます。私たち大正生まれは本当に損しております。ですから、そんな簡単に遺言なんか書くものではないということだけはどうぞ先生方御承知願いたいと思います。法律と現状とは違うということだけは強く申し上げておきます。
○山崎(武)委員 大変ありがとうございました。
○木村委員長 横山利秋君。
○横山委員 四人の参考人の皆さんには非常に御多忙のところ恐縮でございます。率直に言って大変有益な御意見だと緊張して拝聴いたしておる次第でございます。たくさんお伺いをしたいのでありますが、時間の関係でなかなかそうもまいりませんので、ポイントだけお伺いをいたします。 寄与分の新設でございますが、四人の方にお答えを願うのもなんでございますから、人見参考人と鍛冶参考人にお伺いをいたします。 法律は、「財産の維持又は増加」に特別の寄与をした相続人、こうなっております。果たしてこの文章でいいだろうか。いま皆さんから例証されましたことを考えますと、一体財産の維持または増加に特別の寄与とは何だろうか、老人のめんどうを十分見たとかいろいろな例示を出されましたが、私は、財産の維持または増加その他の特別の寄与をしたという「その他」が入るべきではなかろうか、そういう感じを持つわけであります。おわかりでございましょうか。そのうちの財産の維持または増加に経済的に貢献しただけでこの寄与分が考えられていいのであろうか。これがお二人に対する第一の質問であります。 それから、人見参考人が最後に民法四編五編は将来検討をしてもらいたいとおっしゃいました。短い時間でございますが、どんなことをお考えになっておられるでありましょうか。私は先般当委員会で言ったのですが、第二節「親権の効力」、親権は子供に対して居所指定権、懲戒権、職業許可権、財産管理権、代表権について現実からやや遊離した明白な根拠を示しておるわけなんですが、こんなことを含めまして民法四編五編の改正が必要とおっしゃる点を項目的でも結構でございますからお伺いをいたしたいと思います。 それから内藤参考人にお伺いをいたします。この間、家庭裁判所のあり方についてここで政府に質問をしたわけでありますが、この種の問題についてもそうでありますが、家庭裁判所が十分に機能をしておるであろうか。裁判官は最初のあいさつと最後のあいさつにだけ出て、あと事務の人が実際はやっておるあるいは調停委員任せであるというような状況がありはしないか。これは、鯉渕参考人から弁護士費用が高いという苦情が出されておるわけでありますが、そういうことを含めて民法改正を機会に家庭裁判所の機能をもう一遍見直す必要があるのではないか。一生懸命やっておられ、ほかの裁判所と比べて家庭的な雰囲気が非常にあると私も評価はしておりますものの、一体いまの状況でこの種の家庭紛争について家庭裁判所は本当に機能しておるかどうか、機能しているとしても、今後どういうことを改善する必要があるだろうかということをお伺いいたします。 それから、鯉渕参考人の痛切なお話なんでございまして、私ども本当に同感のことでございますが、相続人以外の準相続人に寄与分を認めるべきではないかという御提案の中で妻の代襲権について御提起がされました。鯉渕さん、妻の代襲相続権がいいか寄与分の改正でいくのがいいか、専門家ではないから私どもに検討してほしいという率直なお話がございましたが、何か承るところによりますと、弁護士会なり一般的には妻の代襲相続権についてはプラス・マイナスの面でいかがであろうか、やるならば寄与分の改正でやったらどうか、こういう御意見のように私は漏れ聞いたわけでありますが、妻の代襲相続権についてなぜそういう意見があり得るのか。これは内藤参考人と鍛冶参考人にも御意見を賜りたい。 一つ一つ皆さんの御意見を全部お伺いしたいのでありますが、時間がございませんので、以上お名前を指定して恐縮でございますけれども、御意見をまず伺いたいと思います。
○人見参考人 お答え申し上げます。 寄与分制度につきましては、従来非常に漠然としたいろいろな議論がございましたが、今回は九百四条の二ということで条文化されたわけでございます。私たちも、この条文につきましてかなり明確になった点もありますけれども、同時に、従来の漠然とした考え方からしまして、その寄与がもう少し広くとらえられた方がいいのかどうかという点では、今回の条文の表現についてはなお検討を加えたい、こう考えているところでございます。 特に御質問の趣旨は、財産の維持、増加に限るというふうな表現が出てきておるけれども、それ以外に何か考えるべきではないかということのように考えられますが、相続分の問題でございますので、むしろ寄与ということの例示の「その他の方法により」ということで若干の弾力性が持たせられるのではないか。「財産の維持又は増加につき」というのは相続分の算定でございますから財産上の対象は限られるわけでございますね、貢献の形態がもっと多様であるべきではないか、恐らくそういう御趣旨であろうかと思いますが、これはそこに出ております例示の「その他の方法により」の運用によっていくのではないかというふうに考えておるわけでございます。 ただ非常に問題がございますのは「事業に関する労務の提供又は財産上の給付、」というふうな非常にはっきりした形が出てきております。これはかなり財産上の処理が明確になり得る余地もございますものですから、寄与分制度を一体どう考えるかというときに、私は先ほど遺言の一種の補充的な制度というふうな発想をとりましたが、実はこういうふうな問題につきましてはむしろ財産権的な側面からとらえるべきではないかという根拠も考えられるように思われますので、先ほど来の私の参考人としての意見の中ではその点にも言及したわけでございます。この点が寄与分につきましての御回答でございます。 それから、民法の改正につきましてどんなものを考えたらよろしいかというふうな御質問がございましたが、これは先ほど来の意見でも申し上げましたけれども、実は配偶者の相続権を考えますときには、やはり現在の配偶者の密接な協力ということを考えますと、婚姻中においての夫婦間の協力の評価というものをどうすべきかという点では当然夫婦財産制の問題に及ばなければなりませんし、離婚につきましても、従来民法七百六十八条はある程度の規定を置いておりますけれども、その点につきましてやはり相続分の改正に応じた手当てといいますか、こういうものを考えられてしかるべきではないかというふうに見られるわけでございます。ですから、その点は直接に今回の改正と絡まりましてやはり相当の手当てをなすべき問題であるというふうに考えられます。 それから御質問の、親権の内容が現代ではかなり遊離しているのではないかという問題がございます。これは実は離婚の問題あるいは離婚をめぐりましての親権紛争というふうなこととも関連いたしまして、家族の実態がかなり変化しているという問題とも考え合わせまして、長期的にはかなり徹底的な御検討が必要なところではないかというふうに考えているわけでございます。その点で、鍛冶参考人も御指摘になられましたが、昔からのいわゆる仮決定及び留保事項というものの中に挙げられましたような論点の中で、その後の家族の実態の変動ということも踏まえまして、家族法というのは根本的にもう一度考え直さなければならない問題がございます。 それから相続につきましても、実は数人の相続人がおります場合は民法上共有か合有かという議論がございまして、この点につきましても、実務上は共有で処理しておりますが、なおかつ共有的処理ではいろいろと難点があるということについてはもうすでに御承知のとおりでございます。 なお、分割までに至る間の財産の管理につきましては、実務上はいろいろと処理に困るという問題もございまして、これもやはり相続法全般の制度という点で根本的な改正ということを御検討いただかなければならないのではないかというふうに考えておる次第でございます。
○鍛冶参考人 まず寄与分制度についての御指摘でございますけれども、今回の法案によりますと大変具体的、直接的に「労務の提供」と「財産上の給付」そして「被相続人の療養看護」というものが三つ例示されて「その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加につき特別の寄与をした者」というふうに書かれておりますと、これは一つの例示ではございますけれども、例示は三つだけということになりまして、特に被相続人が事業を営んでいた場合に限られているという部分それから療養看護と、二つにパターンとして分かれると思いますが、このように具体的に書かれますと、実際の運用面で、「その他の方法により」とは書かれていても運用によってどのような方向へいくか、運用がうまくいくかどうかということが多少危惧される点もあろうかと思います。 ただ、遺産の維持、増加に特別の貢献をしたというその態様は具体的には多種多様でありましょうから、単に同居して協力扶助する権利義務を持つ夫婦の間で療養看護をしても、それは恐らくこの特別寄与にはならないだろうと思うわけで、非常に長期にわたって家政婦なり看護婦なりをあるいは病院入院をしなければならないということであったのを、妻が一般の夫婦の間の療養看護の協力扶助義務以上に何年間にもわたって看護することによって、その間に財産を減らさずに済んだというようなことが具体的に考えられるのかなというようなことを、私、この条文を見たときに考えておりました。そういうことで、いまのところお答えいたしておきたいと思います。 民法改正の問題点については、最初に私が申しましたように、非常に詳細ないわゆる仮決定及び留保事項というものがすでに法務省から発表されておりますので、人見参考人も言われますように、その中から具体的に今日の状況に合わせて順次取り上げていったらいかがかと思うわけです。 特に私が現在考えておりますのは、離婚の際の財産分与の規定をもう少し整備して、原則として分与の基準は二分の一というふうに明定すべきだと考えております。もう一つ、やはり離婚の際の財産分与について、これはたった一つしか条文がございませんけれども、離婚後の生活援助的な意味での財産分与の規定を別に新設するということが望まれるわけでございます。これは早急に実現してほしい問題だと思います。それからもう一つ、離婚後の夫婦の氏の問題については、すでに先年、婚姻の氏を離婚後も称することができるというふうに改正されましたが、今後は、婚姻中の氏につきましても夫婦別氏を希望する者にはその道を開くべきではないか。そのような点が、仮決定及び留保事項の中には出ていなかった問題もあるかと思いますけれども、昨今の状況に照らして早急に考えられてしかるべきではないかというふうに考えております。 それからもう一つ、最後に代襲相続、息子の妻つまり嫁に対して代襲相続権を認めるという方法が可能なのかというような御質問であったかと思いますけれども、本来厳密な意味で代襲相続というものは血縁を土台としたものであって、単にその人が生きていたならば相続人であったはずの人にかわって相続するという考え方とは根本的に違うわけでございますから、生きていれば相続人になれたはずの人を介して、被相続人つまり死んだ人と血縁関係にある者がかわって相続するというのが代襲相続の本来の考え方でございますので、それはもちろん御主張のように血縁のない者に代襲相続——言葉は代襲と言えないと思いますが、そのような形の相続権を認めるという立法も、それはやれば不可能ではないとは思いますけれども、やはり不自然で不合理な結果がいろいろと予想されるわけでございまして、たとえば妻の死後再婚した夫が十余年もたった後で亡先妻の親の相続に加わって代襲相続するというような事例を一つ考えてみましても、非常に不自然で不合理なわけでございますから、これはやはり相続人に準ずる者ということで、寄与分の制度でそれをくみ上げていくという方法の方が合理的ですし、妥当であろうかというふうに考えております。
○内藤参考人 ただいま御質問のございました家庭裁判所のことでございますが、家庭裁判所ができましたのが昭和二十四年でございますので、もうすでに三十年余りを経たわけでございますが、特別な裁判所のことでございますので、今日までいろいろ工夫がなされてきたわけでございます。 今日なおまだ十分に機能を果たしていないじゃないかという御指摘がございましたけれども、まことにそういう面もうかがわれまして残念に存ずる次第でございます。家庭裁判所には、ほかの裁判所にない家庭裁判所調査官という特殊な職種がございます。 〔委員長退席、中村(靖)委員長代理着席〕 これは、法律ではなくて心理学とか社会学とか教育学とか、そういったものを専攻した人を採用しているわけでございまして、この調査官のための研修所が昭和三十二年にできまして、特別な職種についての研修を行いまして調査官制度の充実を図ってきているわけでございます。また調停委員につきましても、近年人選についていろいろ工夫をいたしまして、従来とまた違った観点から人選が行われているわけでございます。そういう意味におきまして、家庭裁判所もおいおいその使命を果たすような体制を整えつつあるとは存じます。 しかし、いまお話がございましたように、調停の席に果たして裁判官が立ち会っているのかどうかというような御指摘もございましたが、確かにおっしゃるとおり、最初は顔を出す、なかなか途中では顔を出さない、最後に調停ができたときにまた顔を出すというようなことが裁判所によっては起き得るわけでございます。 正直申し上げまして、たとえば東京の家庭裁判所でございますけれども、何分にも事件が非常に多いものでございますから、一人の裁判官の担当する調停事件の数が膨大になります。ですから、たとえば午前十時なら午前十時に調停が始まりますが、そのときに一人の裁判官が担当する調停事件が少なくとも八件ないし十件の調停を始めるわけでございます。そういった状況でございますので、八つの部屋ないし十の部屋を一人の裁判官が担当しなければならない。そうなりますと、やはり必要なときに調停委員の連絡を受けて出ていって聞き取るとかあるいは意見を述べるとかいうことになるわけでございまして、そういう点、いかにも行き届かない面もございますけれども、何分にも家庭裁判所には予想外に事件が殺到するような傾向に今日まで来ておりますので、そういった事態を生ずるわけでございます。 〔中村(靖)委員長代理退席、委員長着席〕 それにしても、なるべく事件の実態を裁判官が把握するように、常に調停委員は裁判官との連絡を密にいたしまして、そういう工夫をこらしているわけでございます。ただ当事者から見ますと、裁判官が顔を出していない調停の席というのがいかにも何か人任せのような感じを受けないとは限りませんが、現状のところやむを得ない実情になっているわけでございます。 それから次に、配偶者の代襲相続権でございます。 代襲相続と申しますのは、現在の概念では、ある世代の相続人が亡くなりまして、次の世代の者がその代襲の相続をするという考え方が代襲相続でございます。したがいまして、配偶者の代襲相続ということになりますと、ただいま鍛冶参考人が述べられましたように別個の概念になるわけでございまして、必ずしも法律で規定できないわけではございませんけれども、この点につきましては、ただいまお話がございましたように、いろいろな点を解決しませんと、十分に検討いたしませんと、果たしてどう法律で決めていいかということがなかなかむずかしい問題かと存じます。 私は、ただいまも鍛冶参考人が言われましたような、たとえば寄与分によってこれを補っていくというようなこと、あるいは根本的には人見参考人がお話しになりましたように夫婦財産制そのものに問題があろうかと存じます。この点についての今後の十分の検討を待って、夫婦財産制についての新しい観点からの何らかの立法措置が必要であるというように考えておるわけでございます。
○横山委員 鯉渕参考人にお伺いをいたします。 鯉渕さんは非常な体験をお話しになりました。理論よりも実感が迫っておるのでありますが、ただ未婚の母でございますね、事実婚の子。私どもとしては、生まれた子供に罪はないという庶民的な気持ちを持っておるのです。私は御存じのように社会党でございますが、私の後援者の中にもあなたのように、横山さん、そういうのはあかんぜとおっしゃる方もないではありません。それは母としての、妻としての体験上あるいは予想したときの場合をお考えになってのことが先行しておって、子供の立場ということ以前の問題じゃないかと私は思うのでございます。あなたの御体験もやや妻としての体験だと思うのですが、事実婚、未婚の母の子、その問題についてもう少し何か御意見が弾力性がないものかどうか。そうかなと思うのでありますけれども、率直に言って、断言をされましたので、ちょっと意外な感じがするわけでございます。 最後に、もう一遍あなたの御意見をお伺いしたいと思います。
○鯉渕参考人 いまの世の中で、子は産むことはできても母になる資格のない人があるということを御存じ願いたいと思います。 それは一例を申しますと、集団就職、そういうもので地方から出てきた者が東京なり大阪なり名古屋などで暮らしておりますと、十五、六で一人で取り残されてさびしいというのが、同じ里から来た男性とかとお話ししているうちにいつの間にか変な関係になって、そういうことをしたら子供ができるということすら知らない女もいるということ、それも二十代にもならないというのが、半分はそういう未婚の母でございます。そういうのが恐らくロッカーに子供を入れたり何かしているのじゃないかと思うのですけれども、そこまでは私は知らないですが、今度はそういうことで悩んでいる親があるということも事実でございます。 この間も新聞に出ていましたけれども、ある集団就職で出てきて、主人にしかられて、そして出入りしているパン屋の小僧さんとたった一回だけ関係したのに子供ができてしまって、その子供をおろすことすら知らなかったその女性は、とうとう悩みながら子供を産んでしまった。そうして絞め殺して結局刑務所に入って、そして刑に服して情状酌量か何かで執行猶予になったらしくて、そのときに相手の男性は二回しか刑務所に面会に来なかった。そのかわり相手の父親ですね、その人は何回も面会に行って、本当にうちの息子は悪いことをしたといって何度もわびたそうです。そうして今度は、その十幾つになる子供を殺した母が刑務所から出るときに、これを娘でもないですけれども迎えに行ったのは、その義理の父親であった。そして、その義理なる父親が空港まで送って、そのときに二十万円のお金をその娘に渡した。そのとき初めてその女の人はぽとぽととその父親の手のひらに涙をこぼしたという新聞記事を私は見たときに、ああこういう未婚の母が私が聞いた以外にもあるんだなと思いました。 私なんか、未婚の母でそういうので産んだ場合、実際にも体験しましたけれども、子供のない夫婦というのはたくさんおりますから喜んで引き受けてくれますので、養子縁組でもらっていただいて、春に生まれたから藤子という名前をつけてあげたりなんかした、そういう体験がございます。それで、全く他人のところ、子供のない夫婦に引き取られた子供は本当に幸福そのものに育っています。もうその義理の両親がなめるようにして育てている。そして、何かで、どこかで義理の子だということは法律上はわかるかもしれませんけれども、育っている子供に刺激を与えないために、私どもはなるたけ会うことはいたしませんが、たまたまもらった親たちから非常によく育っている話を聞いて、本当によかったと思って、これで子供のあれは済んだと思っております。 そういうのが成功した場合で、未婚の母は今度はこっちでまた考え直したりすればいいと思って、私はその行く先は一切追及しません。どこで何が漏れてその人のためにどんなにあれするか、世の中の変なうわさの中で一番対象になるのは未亡人の私たちですから、そういうことはさせたくないということでやっております。 それから、これは問題外でございますけれども、離婚のお母さんたちが非常に困るというのは調停委員の問題です。調停委員さんが自分たちは非常に生活が楽であったり、それから余りにも事情を知らなくてということを私たちによく訴えております。それから裁判官がいなくて調停委員ばかりで、それで調停委員の頭、生活の程度のところで、大体教養のある人ばかりですから、大学の先生でも、苦労の勉強はしていますけれども、教養のないというか、いろいろの苦労をなめ尽くした、そういう者のあれを知らない。民生委員さんも批判されますけれども、民生委員さんと調停委員さんに対する批判は、離婚したお母さんたちからもうほとんどお聞きします。だから、調停委員の選定に当たっては余り学歴とかそういうものでなくて、やはり苦労もしたというような人をお願いしたいと思うのです。離婚するという人は、ほとんどわがままだから離婚するんだというような前提で、私たちはその人たちのことを考えています。別れるなんて、死なれた私たちにはもったいないなと思うことがございますけれども、そういうことで、離婚は全部事情が違うということがございますので、調停委員さんもそれは大変だと思いますけれども、調停委員の選定はどうぞ厳重にやっていただきたいと思います。七十過ぎても非常に苦労した人なんかではよい調停委員さんもおるということ、何も若いばかりが能じゃないということもお伺いした上で、ここに私はちょっとお願いするわけでございます。
○横山委員 ありがとうございました。終わります。
○木村委員長 長谷雄幸久君。
○長谷雄委員 本日は参考人の四名の方本当に御苦労さんでございました。大変貴重な御意見を伺いましてありがとうございました。 参考人の方全部に御意見をさらに重ねてちょうだいしたいと思っておりますが、時間もございますので、また質問もたくさん用意はしておりますけれども、今回の民法及び家事審判法の改正の主眼といいますか、これは配偶者の相続権に関するものが中心でございますので、その点にしぼって若干の点を、先ほど何名かの委員が質問しましたが、それと重複しない範囲でお尋ねしてみたいと思います。 まずは内縁の問題ですけれども、先ほどこれは鍛冶参考人からもお話があったと思いますけれども、内縁について法律婚との差異は、氏の問題と相続権が決定的な差異だろうと思うのです。氏については、これはその人についた符牒なんだ、しかし符牒は単なる符牒ではなくて、その符牒が結局相続権に絡んできておるということでございますので、相続権を内縁の配偶者に認めれば、実質上の差異は法律婚との間になくなってくる。内縁関係にもいろいろな内縁関係がございますし、またそこから生まれてきたお子さん、非嫡出子についてもいろいろなお子さんもおるし、さっき参考人がお話しになったように、反倫理的でない非嫡出子も確かにいることは認めます。こういう内縁保護は必要であり、それに保護を与えることは一つの重要な課題だと思うのです。 そういう意味で、内縁の保護が今日まで学説や判例によりましてかなり高められてきた、実際上も特に福祉の面ではほとんどもう差異がないというところまで高められてきたことは非常に喜ぶべきことだと思うのです。 ところが反面、夫婦はいわば身分関係の基礎になると思うのです。法律婚主義の必要はいまさら言うまでもないことなんですけれども、その立場から見て、この内縁の配偶者に法律婚の配偶者と同じような相続権を与えることが果たしていいかどうかという面で、かなり反対の考え方を持っている学者や実務家等もたくさんいらっしゃるんですね。それとの関係で内縁に相続権を認めないこともやむを得ないんじゃないかという議論がございますので、その議論の関係において御意見を伺えればと思います。 次に、寄与分制度の関係でございますけれども、先ほど寄与分については、たしか人見参考人だったと思いますが、上限を設けた方がよろしい、その上限については遺留分を侵害しない範囲のものがいいんだ、こういう御意見だったように拝聴しました。それは確かにおっしゃるとおりで、そのお立場は私も十分理解できますので、できるならばそういう制度もいいんじゃないか、こういう意見も持っております。しかし、いま一つの法律制度でくくりますと、必ずしもその法律の枠の中でくくられてしまわないような、そういうケースもいろいろな立場で出てくると思うのです。 いろいろな例があると思うのですけれども、たとえば被相続人で事業をやっていた、こうした場合に、その被相続人とその息子はもう全然仕事をしていない。その配偶者、主としてこの場合は妻ですけれども、妻が一人で切り盛りをして仕事をしてきた。その被相続人が亡くなった後この相続権は、現行法でいうと配偶者である妻と息子、今回の改正で各二分の一の相続権を持ちますし、遺留分もその二分の一ということになりますと、この息子には遺留分が四分の一になるんですね。ところが実際息子は何も寄与していないし、相当の財産が残っても実際やったのは全部配偶者なんだ、こうした場合に、やはり上限を設けることはいかがなものかなという意見も一部にあると思うのです。確かにそういう意見を私も雑誌等で読んだことがございます。この問題をどうお考えになるか。 それからもう一つは、寄与分制度の中で寄与分の清算をする場合の時期ですけれども、この時期については、今度の改正の案の中ではこの清算を具体化するのは相続の場合に限定をいたしております。 この寄与分の制度が設けられた趣旨は、要するに相続人間の衡平を図るということがねらいだと思うのです。このことも一つは問題だということは、先ほどもどなたかから指摘があったと思いますが、非相続人にも寄与分を認めたらいいのではないかという御意見からすれば、この人が除外されていることについて一つの問題はありますけれども、いずれにしても相続人間の衡平を図るということであるならば、生前の清算の場合、よく引かれる例ですけれども、被寄与者に強制執行や破産手続を開始した場合についても認めてはどうかという議論も一部にございます。これはもっと立場を変えて、また見方、角度を変えますと、離婚による婚姻関係の解消の場合については財産分与が認められておりますけれども、財産分与についてはかなり実質的な寄与分が、額は幾らかにしても家庭裁判所の審判等で認められているのが実情だと思うのです。これはいわば形を変えた生前の寄与分の清算、こう言えないこともないのではないかと思います。 そうしますと、同じような発想で寄与分についての清算の時期を生前についても認めるというようなことについてはいかがな御意見をお持ちか、これについては人見参考人と、できれば内藤参考人からも御意見をちょうだいしたいと思います。
○鍛冶参考人 内縁というのはいわゆるめかけ関係とは異なりまして別に反倫理的と言えるものではないわけで、何らかの事情で婚姻届ができないという実情にある者、そういった者を内縁と呼んでよろしいかと思いますので、内縁配偶者が死亡した場合に、その生存内縁配偶者についてどのような形で生活の安定を図るかということは、正式の婚姻届を出した法律婚の夫婦と同じように、それに準じて考えなければならないということから、昨今の判例の趨勢は、それとほぼ変わらないような財産分与に至るまで認める判例も出てきているような趨勢であるわけでございます。 ですから、確かに法律婚主義というものを貫く以上は結婚は公示されるべきですし、身分関係の基礎となる出発点でもございますので、法律婚を貫かなければならないということはもちろん私も意見は同じでございますが、この場合について私が申しますのは、相続権を認めよというのではなくて、仮決定及び留保事項の中でも内縁継続中に一方が死亡した場合に相続権に準ずるものを認めるべきかどうかという検討事項でございまして、これは今回寄与分制度において、先ほどの嫁の代襲相続の主張をいわゆる代襲相続として保護するか寄与分制度ですくい上げるかという問題と同じように、内縁配偶者に相続権に準ずるものが今回認められない、取り上げられなかった以上は、やはり寄与分のところで相続人に準ずるものとしてすくい上げるべきではないか、そういうふうに考えるわけでございます。つまり、相続における生活保障的な機能ということに重点を置いてその辺を考えてもらいたいという意向でございます。
○人見参考人 お答え申し上げます。 寄与分の上限を設けることにつきましては、私は先ほど来、寄与分の制度をどう考えるかということとも関連いたしまして、遺言の制度が十分に機能してない日本の現状において補充の役割りをするというとらえ方をしておるものでございますから、遺言であれば遺留分との関係というものが常に問題になるわけでございますが、その点で、寄与分についての上限に遺留分を持ってきてはどうかという問題を御意見として申し上げたわけでございます。しかし、この九百四条の二の条文を一体どういうふうに説明するかということにつきましては、実は寄与分制度が条文化された段階でどう意味づけるかというのはかなりむずかしい問題でございまして、先ほど来申し上げましたように、「事業に関する労務の提供又は財産上の給付、」こういう問題ですと、本来は生前からの財産上の処理にもかなり親しむことが例示として出てきておるわけでございます。 この点は御質問の中にもございましたが、寄与分評価の時期をいつにするかというので、本制度では遺産分割の中でというにとどまらず、さらに生前にも認めるべきでないかということでございますけれども、「事業に関する労務の提供又は財産上の給付、」でございましたら、これはもう生前においてもすでに、たとえば農業経営におきましても、いろいろと農業法人その他の手段によりましてかなり生前の評価が報いられるようになっているわけでございます。それからまた現在ですと、農業の場合ですと一括贈与というふうな便法が講じられておりましたりいたしますので、かなり生前の評価ということが報いられているわけでございます。 ただ問題になりますのは、そのように遺贈あるいは遺言の補充的な制度だということになりますと、遺贈の場合には民法九百三条の方で実は遺贈分は後で相続分の方から差し引かれてしまうというような処理になってまいりますので、その点の九百三条と九百四条の二の連係をどう考えるか。九百四条の二ですと寄与分を取った上にさらに相続分を上積みできるという全く反対の構想に立っておりますので、実はこのところは私としては非常に説明がむずかしいことになる制度なのではないかというふうに予想しておりまして、先ほど来財産権との関係並びに九百三条との兼ね合いというふうな点での説明が、この条文の表現からでは非常にむずかしい制度になっているということをつけ加えて申し上げたいと思っております。 その点で、寄与分清算の時期を生前において認めるというのはすでに現在からほかの方法によって行われておりますので、その場合にはその点はもうすでにカウントされたものとして、今度の九百四条の二でさらにもう一回評価する必要はなくなるのではないかということで、むしろ九百三条の生前贈与の方で相続分を減らされるという、それとの兼ね合いで困難な問題を生ずるということだけ御指摘申し上げておきたいと存じております。
○内藤参考人 御質問のございました寄与分の上限の問題でございますけれども、これもやはり必ずしも寄与分を得る人が妻の場合とは限りませんので、たとえば裁判所の審判で長男にすっかり寄与分を認めてしまって妻はほとんど得られなかったというような、ちょっと異常でございますけれども、そういった弊害を生んだ例もございます。したがって、遺留分ないし遺贈を侵すことができないという上限はやはり必要かと存じておるわけでございます。 それから第二の清算の時期でございますけれども、これも確かにお話しのような事案がございまして、私も相談を受けたような例もございます。主人が大変だらしなくて財産を失ってしまう、妻は全くそこには住めなくなる、今後の生活をどうしてよいかわからないという路頭に迷うようなケースがあるわけでございますけれども、しかしやはり寄与分となりますと相続の際に清算されるという相続財産についての考え方でございますので、被相続人が財産を失ってしまえば相続人は相続権はあっても実質には相続分はないということは、これはもう現在の身分法上、財産法上やむを得ないことかと存じております。 以上でございます。
○長谷雄委員 どうもありがとうございました。
○木村委員長 柴田睦夫君。
○柴田(睦)委員 参考人の方には貴重な御意見をいただきましてありがとうございました。 最初に鯉渕参考人にお伺いしたいと思いますが、御意見を聞いておりますと、妻に代襲権を認めよという要求がある、それから寄与分を認めよということ、いろいろなお考えがあるわけで、それを説明されるのにみずからの体験そしてまた自分の知っていらっしゃる人々の苦労を中心にしてお話しをいただいたわけですけれども、結局そうした環境で生活している人たちの要望というのは、法定相続人には相続権それから寄与分が認められるということになるわけですけれども、亡くなった夫の妻として、その亡くなった夫の家族のめんどうもずっと見ていろいろな寄与をしているという場合に、やはりそうした相続人と同じような扱いをすべきである、これが皆さん方のお考えになっていることでしょうか。
○鯉渕参考人 先生のおっしゃるとおりでございます。 それで、ちょっと考えただけでもございまして、大体いま小じゅうとと暮らすとかそういうのがございますけれども、父親が死んだときに小じゅうとさんの方には遺産相続があっても、子なしの未亡人には——とにかく女は三界に家なしということで、そのまま婚家先におります者はそういうことで暮らしております。 それから、妻の代襲権というものがどうしてもいろいろの不合理ございましたら、ここの第三の寄与分の相続人というのにもう一つ何か、夫を失った者というか何というか法律の言葉はわかりませんけれども、父親が生きていて夫には先立たれた、そしてそれにいろいろ貢献した者に対しては何か特別の条項をつけて、黙っていても子なしの未亡人には財産がいくというようにしていただきたいと思います。そしてそれに対して、財産をもらって持ち逃げするということもございますでしょうけれども、そういう者に対してはやはり年限を切るとか——農業とかいろいろあると思いますので、一番問題は農業と商業とそれから漁業でございます。ですから、法律家でなくてはわからないですけれども、そういうものを何か先生方のお力で決めていただいて、寄与分で妻の代襲権というようなものを認めていただきたいということを今回は強くお願いします。
○柴田(睦)委員 鯉渕さんがお話しになったことは、いろいろな本などを見ても、また私たちの周りの者を見てもやはり非常に深刻な問題であり、これに対して法律が対応するような法律になっていかなければならないということを考えるわけですけれども、法律家でいらっしゃる三人の参考人の方に、いまの鯉渕さんがお話しになったようなケースについて、具体的に救済していくといいますか制度的な保障をしていくという意味で、親族法、相続法の制度で、その改正も含めてどうこたえていくかということについて御意見を伺いたいと思います。これは審議会などでも夫婦財産制あるいは寄与分相続人相続制度、いろいろな点を総合的に審議されてきているわけですけれども、そうしたものを踏まえて三名の参考人の方々の御意見をお伺いしたいと思います。
○人見参考人 お答え申し上げます。 鯉渕参考人がおっしゃられましたような状況というのは、現在におきまして非常に無視できない状況であることにつきましては私らも深く認識をしているところでございます。 そうしまして、この法律的な対応策ということになるわけでございますが、鯉渕参考人の御意見では配偶者の代襲相続権ということを非常に強調されたわけでございますが、私どもの考え方では、実は代襲相続という制度で対応するのは余り上手な対応策ではないというふうに考えております。これは現在でも、実は今回の改正で代襲相続というのは若干複雑になりまして、子供の相続人の場合の代襲相続とそれから兄弟姉妹の場合の代襲相続につきまして、必ずしも統一した理論ではいかないという点で若干代襲相続制度が変質したわけでございます。しかし、なおかつ世代間の順位を調節するという点では若干共通の基盤があると考えられますけれども、配偶者の代襲相続権になりますと、実はその点で全く根本の発想が違ってしまうという点で、三色の代襲相続権を認めるということは現在の法律制度としてはかなり困難ではないかというふうに考えられるわけでございます。 そこで、そのような状況を法律制度の上で困難であるから全く無視してよろしいかということになりますと、これは私あるいは鍛冶参考人あるいは内藤参考人も皆さん非常に強調されましたように、やはり寄与分という形を通して、しかも現在の寄与分の改正案に考えられているような非常に限定的な考え方ではなく、相続人に準ずる者というふうな形を通しまして寄与分という形での救済というのが、寄与分というのが非常に弾力的な制度でございますだけに、相続人につきましては私はこれは一種の指定相続分の補充というふうな考え方をとっておりますが、そのほかに相続人に準ずる方につきましては、先ほど申し上げましたようにみなし遺贈というような発想をとれば必ずしも現行の民法体制にそう大きな変化を加えずに取り入れられるのではないかという点で、私は、寄与分において、相続人でない方でありましても相続人に準ずる範囲につきましてはかなり積極的な御検討をお願い申し上げたいというふうに考えております。
○鍛冶参考人 私のお答えも大体人見教授のお答えと重なるわけでございますけれども、寄与分というのは制度として、法律上条文がなくても、現在まで過去十数年来、鯉渕さんの言われるような事案からいわゆる後継者の財産相続、家業後継、自営業の後継等の問題をも含めた解決策として、家裁の審判例でもそれから高裁の判例でも認められてきた制度でございますから、本当に弾力的な運用のできる制度であるわけでございますから、今回の改正案がかたくなに相続人だけに限るというのは、やはり遺産分割が複雑化し長引くという点に余りにこだわり過ぎた考え方ではないかということを一つ指摘しておきたいわけです。 それからもう一つ、先ほどからの御指摘にありますような夫に先立たれた未亡人やその家族たちの生活困窮の問題をただ法律制度のレールの上に乗せて保護するという観点だといたしましても、代襲相続という形一本でしかこれが解決できないというふうに考えることにはやはり少し問題がありはしないか。つまり、もっとほかの方に観点を向けて、その問題解決あるいは福祉の増進について考えてみるべきではないかということ、これはこの法律案の改正について論議される場で申し上げることではないかもしれませんけれども、やはり余り法律に対する期待が過剰であってはいけないという気もいたすわけでございまして、ですから、この点は寄与分でくみ上げることと同時に、法律以外の分野でもそういった状況にある人たちの救済、福祉の問題として、もっと政治や経済、社会の面で救済の手が差し伸べられることもあわせて考えられなければならない問題ではないかというふうに思っております。
○内藤参考人 鯉渕参考人のお述べになりましたことはまことにごもっともなことで、大変に重大な問題であると存じますけれども、やはり法律家と申しますか法律的な観点から考えますと、妻の代襲権を認めるということ、ここに問題があろうと存じます。 先ほど来二人の参考人もお述べになりましたように、いろいろなむずかしい問題がございますけれども、寄与分の制度であるとかさらに夫婦財産制の問題もございますけれども、こういった点についての十分な検討をいただいて、そういった妻の地位を法律的にあるいは財産的に保護をしていくというのが筋道であろうというように考えております。 以上でございます。
○柴田(睦)委員 今度の改正案というのは、結局は、法制審議会の民法部会の身分法小委員会でずっと議論をしてきたものがあって、それを法務省の民事局の参事官室の名前で「相続に関する民法改正要綱試案」というのが出されて、それを受けて今度の改正案に至ったわけですけれども、今度の法律の改正案をごらんになって、先ほど鍛冶参考人は非嫡出子の相続の問題について修正案が出されるようにというような御意見もありましたけれども、現在の段階においてこの改正案をさらに修正する、つけ加える、そうしたことについて御提案がある参考人の方から御提案の中身を承りたいと思います。
○鍛冶参考人 最初の十五分間いただきましたところで申し述べました指摘が私の修正案でございますけれども、それをまたもう一度繰り返して申し上げますと、寄与分のところ、これが一番問題でございますが、その例示を、内縁の妻、事実上の養子あるいは同居の姻族といった例示をして、相続人に準ずる者に寄与分を広げるというような修正案が考えられるかと思います。したがって、最初に申しました内縁の配偶者に相続権に準ずるものを認めるということは、これをこの際解決しなくても寄与分のところですくい上げられるというふうに考えます。 それから出ている問題では、兄弟姉妹の相続権について四分の一を認めることについては、これは一応妥協の産物としてこの際は過渡的措置として肯定したいと思いますが、もし兄弟姉妹がこの場合に相続人から外れる段階においては寄与分の制度ですくい上げるということになろうかと思います。つまり、兄弟姉妹が四分の一という相続人として残ったのは、相続人に寄与分を限るというところからやはり兄弟姉妹をここに残したということが言えるのではないかというふうに思っております。 それから審判前の保全処分については、この保全処分の強制力は、ある特定の調停事件たとえば婚姻費用の分担とか扶養料の請求というような困窮した特に緊急を要する特定のケースについては、本案が調停であっても、つまりもともとこれは審判事項ではございますけれども調停前置主義の関係で調停が先に行われるのが実務上の流れでございますので、その調停が本案である場合にもそれらの事件に限っては仮の処分に執行力を認めるように追加すべきであるということを提案いたしました。 それからなお、仮処分を受けた者の相手方の不服申し立てについては、恐らくこれは最高裁判所の規則の方に譲られるかと思いますけれども、したがいましてここで追加というようなことを申し上げることではないと思いますので、その点を希望として述べておく程度にいたします。 現在、申しました修正意見としてはその程度でございますが、実はもう一つ、私がきょう意見としては述べませんでしたけれども、遺産分割の基準の改定について新たに「年齢、職業、心身の状態及び生活の状況」というものが入るような改正が提案されておりますけれども、この規定は本来は遺産分割の方法に関するものでございまして、相続分を変更するものではないわけでございますから、遺産分割の基準と言ってもそこにはおのずから限度がございまして、現行のように「遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の職業その他一切の事情を考慮してこれをする。」ということで十分ではなかろうかと思うわけで、スイス民法のように心身に障害のある者や教育を受け終わっていない子に対しては余分に相続をさせるというような立法を新たにこの際提案されているのなら、それは別でございますけれども、先ほど来内藤参考人も御指摘になりましたように、現在ここに新しく入れられましたような事情は「その他一切の事情」ということで考慮されて審判や調停が運用されている状況にかんがみますと、このような余地のない分割基準に関する改正案のような修正というものは、かえってそのような、たとえば心身の障害のある者とかあるいは教育を受け終わっていないような者に対して、相続分の変更あるいは増加がこれによって期待できるのではないかという幻想を抱かせるというような懸念もございますし、分割協議あるいは分割の調停でかえって混乱を生じさせるだけではないかというような感じもいたしますので、この部分の改正は不必要ではないかというような考えを持ってはおりますが、これは、ほかにこれを明文化しておく必要がどうしてもあると言われればまた別でございますけれども、私としてはこの点については疑問を抱いております。 以上でございます。
○人見参考人 二、三点意見を申し上げたいと思います。 一つは、鯉渕参考人のように非常に強い声を上げることができませんグループを代表しまして意見を申し上げます。これは非嫡出子の問題でございます。このようなプレッシャーグループがございませんので、これは法律家が声を大にして叫ばなければ、子供自身に罪はないのに加えられる不当な差別というものの要望が取り上げられないと思いますので、非嫡出子につきまして一点お話を申し上げます。 それから第二点は、先ほど来たびたび出ておりますが、寄与分につきまして、相続人に準ずる者につきましての扱いでございますが、これは先ほども私申し上げましたが、配偶者の相続分の増加が実は内縁の発生をかなり予想させるという問題が出まして、この内縁の配偶者の処遇を相続権で救済できないとすれば、やはり寄与分という形で取り込まざるを得ないのではないかということがかなりの確実性を持って予想されると思うのでございます。その点で、寄与分の制度の方で少なくとも配偶者相続権の保護を受けられない方についての保護を考えておかなければ、せっかくの配偶者相続権の向上ということの片方から水が漏れてしまうというふうな結果になるのではないかということで大いにお考えいただきたい、この二点が特に私としては強調いたしたい点でございます。
○内藤参考人 特にございません。
○柴田(睦)委員 では終わります。
○木村委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。 次回は、明九日水曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午後零時二分散会