法務委員会 第5号
- 発言数
- 177 件
- 登壇者
- 17 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1980/03/04
会議録
○木村委員長 これより会議を開きます。 お諮りいたします。 本日、最高裁判所大西総務局長、勝見人事局長、西山民事局長兼行政局長、原田家庭局長からそれぞれ出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○木村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 ————◇—————
○木村委員長 内閣提出、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。 質疑の申し出がありますので、順次これを許し ます。木下元二君。
○木下(元)委員 このたび裁判所職員定員法を改正して、判事の員数を二十二人増加をする、裁判官以外の裁判所の職員の員数を十五人増加をすることにはもとより賛成であります。もっとも、その増員に賛成ではありますが、決してそれに満足するものではありません。日本の裁判の現状に照らしますならば、この程度の増員ではいわば焼け石に水ではないか、もっと大幅増員をすべきではないかという大いなる不満を抱いての賛成であります。 もう一点、この法律案の提案理由の説明によりますと、増員の主たる理由は地方裁判所における特殊損害賠償事件を初め一連の特殊事件の適正迅速な処理を図る点にあるようであります。国が被告に立たされた公害関係を初め国賠などの事件、差止事件、行政事件など、確かに国として重大案件でありまして、その適正迅速な処理を図っていかねばなりません。しかし、この適正迅速な処理を図らねばならないのは、こういうような特殊事件ばかりではないのであります。一般民事事件の適正迅速な処理、そしてまた簡裁の機能の充実を図っていくことが国民の権利実現のために求められておると思うわけであります。何よりそのために増員を進めなければならないのではないか、かように思うわけであります。大臣の所見を承りたいと思います。
○倉石国務大臣 事務当局からお答え申し上げます。
○大西最高裁判所長官代理者 今回の定員法で増員をお願いしておりますその増員の理由は、ただいま木下委員御指摘のように、特殊損害賠償事件でございますとか差止事件でございますとか、その他いろいろないわば特殊な事件の処理ということで増員をお願いしておるわけでございまして、それ以外の普通の事件はどうかというお尋ねであろうかと思います。 木下委員もつとに御承知のとおり、全体として裁判所の事件が迅速に行われているかどうかということについて申し上げますならば、必ずしも全部が全部迅速にいっていないということについてはそのとおりでございますが、何と申しましても、いま申し上げましたようないわゆる特殊な事件の審理が非常におくれておるというところに現時点におきましては一番大きな問題があるわけでございまして、そういう事件の審理がおくれているということが、ひいては他の事件にも影響を及ぼすというふうな関係があるわけでございます。 試みに、一般の事件についてお手元に資料を差し上げてございますが、二十四ページの八表というのがございますが、これは一般の民事、刑事の訴訟事件の審理期間を書いたものでございますが、逐年だんだん短くなってきております。だんだん審理も速くなってきておるというような傾向もございます。 そういうふうなことから、先ほど申しましたように、一般の事件について増員が必要じゃないということではございませんけれども、こういう特殊な事件の審理をうまくやっていくということがいわば緊急を要する問題だということから、とりあえずは重点的にこういうところから、こういうところの事件の処理ということで増員を図っていこうということでございまして、一般の事件についても、これは裁判官の充員等の関係もあるわけでございますから一遍にいきませんので、逐次そういうところへも増員をお願いする、そういうふうに持っていきたいと考えておるわけでございます。
○木下(元)委員 簡裁の機能の充実という点はいかがでしょうか。
○大西最高裁判所長官代理者 簡裁についてもいろいろ問題があるわけでございますが、簡裁につきましては、一般的に申しますと、ここ二、三年若干民事事件がふえてはおりますけれども、そのふえ方がそんなに大きくはない。一時に比べますと非常に減っておる。一方、刑事事件につきましても減っておるというふうなことがございまして、簡裁の充実、もちろん必要でございますけれども、そこがまず緊急を要するところだというふうには言えないわけでございまして、そういう意味で地方裁判所の方の特殊な事件の処理ということに重点を置いてお願いをしておる、そういうわけでございます。
○木下(元)委員 一般民事事件の適正迅速な処理であるとか簡裁の機能の充実強化というふうな問題については、いまの答弁によりますと否定をされていないわけであります。 ただ、このたびの法案の提案理由の説明では、その増員の理由として特に一連の特殊事件の適正迅速な処理ということを掲げておるわけでありますが、私、感じますのに、どうもこれは政府部内ことに大蔵に対して増員を認めさせる理由としてはもっともな理由ではないかと思うのであります。しかしやはり問題は、否定されなかったように、一般事件の迅速な処理とか簡裁の問題とか、こうしたことがあるわけでありますから、国会に提案をする限りは国会ひいては国民を納得させるに足る理由を掲げるべきではないか、私はこういうふうに思うわけであります。私は、法務省が一連の特殊事件のみならず一般民事事件の適正迅速な処理や簡裁の機能充実ということを本当に図ろうとしておるのかどうか、実は疑問に思っておるのであります。といいますのは、そうした面での配慮がこれまで著しく欠けておったからであります。 そこで私は、特にこの簡裁問題を中心として伺いたいのであります。 いわゆる二人庁と呼ばれている、職員二人、事務官、書記官二人の独立簡裁であります。この二人庁の庁数は、昭和五十年度より五十四年度まで五年間でどのように推移しておるでしょうか。
○大西最高裁判所長官代理者 いわゆる簡裁の二人庁でございますが、昭和五十年におきましては三十庁でございましたが、少しずつふえてまいりまして、昭和五十四年度におきましては三十九庁に相なっております。
○木下(元)委員 五十年度は三十庁、五十二年度が三十三庁、五十三年度は三十六庁、五十四年度は三十九庁と年を追ってだんだんふえておるということですか。
○大西最高裁判所長官代理者 木下委員ただいま御指摘のとおりでございます。
○木下(元)委員 その二人庁で民訴事務不取り扱いの庁数はどうなっておりますか。
○大西最高裁判所長官代理者 詳しく申し上げますと、昭和五十年度は三十庁のうち十九庁、五十一年度は三十庁のうち二十庁、五十二年度は三十三庁のうち十九庁、それから五十三年度は三十六庁のうち十九庁、五十四年度は三十九庁のうち二十庁でございます。
○木下(元)委員 このいただいております「裁判所便覧」という資料によりますと、民訴事務を取り扱わない庁というのは三十八庁ということであります。いまのお話によりますと、二人庁で民訴事務を取り扱わない庁数は三十九庁のうち二十庁ということであります。そういたしますと、二人庁以外の簡裁で民訴を取り扱わない庁というのは十八庁もある、そして二人庁でも民訴を取り扱っておる庁というのは五十四年度で十九庁もある、こういうことですか。
○大西最高裁判所長官代理者 木下委員ただいま御指摘のとおりでございます。
○木下(元)委員 この二人庁というのはいわゆる判事不在庁でありましょうか。
○大西最高裁判所長官代理者 ただいま正確に記憶しておりませんが、二人庁の中にも二、三庁は判事の常駐しておるところがあったはずでございます。
○木下(元)委員 大半は判事不在庁ということのようでありますが、裁判官は何日に一回来るのが通常でありましょうか。
○大西最高裁判所長官代理者 各庁の事務分配で決めておりまして、それぞれの事件の来方にもよるわけでございまして、ちょっとなかなか一概に、全部調査したというわけのものではございませんので、少し不正確なところがあるかもしれませんが、一週間に一回行っておるところですとか、あるいは非常に少ないところでは二週間に一回というところもあるのではないかというふうに考えております。
○木下(元)委員 三週間に一回というところもあるのではありませんか。私の聞いているのでは、中にはそういうのもあると聞いているのですが……。
○大西最高裁判所長官代理者 ちょっと正確に調べておりませんのでわかりませんが、木下委員お聞きになったとすれば、そういうところもあるかもしれないと思います。
○木下(元)委員 裁判官は簡裁でも隔日勤務で一週間に三回来るというのが本来の姿でありますが、二週間に一回あるいは三週間に一回しか来れない、こういうところがあるということであります。 一体そういうふうなところでは、仮処分事件とかいわゆる保全処分ですね、あるいは令状というものはどういうように扱われておるのでしょうか。
○大西最高裁判所長官代理者 この二人庁のそれぞれの庁で、仮差押え、仮処分でございますとか逮捕状の請求がどれだけあるかということはちょっといま正確には手元にございませんが、全体をトータルで調べましたところ、二人庁が三十九庁ございますが、ここ全体で一年間十数件の保全処分の申し立てがあるということのようでございますので、全然ないところが半分以上、一件あるところが半分以下というふうな状況のようでございます。逮捕状の方はやはり二、三百件ぐらい全体としてあるようでございますから、そういたしますと、少しはあるということになるかと思います。 ここら辺のところは一週間、二週間あるいは三週間のところもあるかもしれませんが、それは定期的にてん補に参ります間隔でございまして、こういう緊急の申し立てがありましたときには、書記官からの連絡によりまして簡易裁判所判事が特に出向いていきますとか、あるいは場合によってはそれを隣まで持っていって判断をしてもらうとか、そういうふうなことで処理しておるようでございまして、緊急のものを裁判官がその時点で来ないからといってほっておくというふうなことはなくて、いま申し上げましたような形での事務処理を行っておるというふうに考えております。
○木下(元)委員 その書類等を裁判官のおるところに持っていくという場合があるように言われましたが、それはもちろん書記官が持っていくのだと思いますが、ただ書面だけを持っていって書面で判断をするということも、それで間に合う場合もありましょうけれども、間に合わない場合もあると思うのですね。申立人から直接事情を説明したいこともありましょう。あるいは保証金の額についても交渉したい場合もありましょう。あるいはまた裁判所の方から釈明を求めたいということもあると思うのです。そういう場合は一体どうするのでしょうか。
○大西最高裁判所長官代理者 具体的にそういう案件があったかどうかちょっとわからないのでございますが、先ほど申しましたように、年間あるところがまだ余りない、一件あるところが十何庁くらいあるということでございますから、先ほど申し上げましたように、そういうふうに裁判官の方から釈明をしなければいけないとか、申立人側、がぜひ口頭での説明をしたいというふうな希望がありまする場合には、それがかなえられるよう簡易裁判所判事がそちらへ出向いて伺いますとか、そういうふうな処置をとっておるものと考えております。
○木下(元)委員 裁判官が行ければ結構ですが、裁判官は本来てん補でずっと回っているわけですね。そしていま言われたように二週間に一回とか三週間に一回しか来れないわけですよ。 そこで、裁判官のおるところに書類を持っていくというお話があったのですが、その裁判官がもとのところに帰ってきてくれるということもあるいはできるかもわかりませんが、できない場合もあると思う。結局、そういう場合は電話でやりとりをして事を済ませるという場合もあるのではないかと思いますが、私は、やはり電話では、たとえば地図の説明であるとか、あるいは直接話をして説明をしなければなかなかわかりにくいというような場合も多いのではないかと思うのです。ですからこういう場合は、たとえば申立人がその裁判官のおるところまで出向いていく。裁判官が出向いていくということを言われましたけれども、それはなかなかむずかしくて、むしろ申立人の方が裁判所の裁判官のおるところに行くという場合になるのではないかというように私は思いますが、どうでしょう。
○大西最高裁判所長官代理者 二人庁に限りませんで、簡易裁判所の判事が常駐しておりません裁判所の事務量と申しますか、どれだけの事件の数があるかということでございますが、これは普通の簡易裁判所を一人分といたしますと一割に満たないというところが大部分でございまして、仮に隣の簡易裁判所と二つかけ持ちをしておるという場合でも、全体としては一人前分あるわけではございませんが、たとえば両方合わせて〇・二人分とか〇・三人分とかいうふうな事務量がありますときに、私どもの方で総合配置と申しておりますが、二つの裁判所のかけ持ちをやっていただくということをやっておりますので、たまたま特定の日に、その簡易裁判所判事が本来おります場所で緊急の事件等をやっております場合に、電話がかかってきたからすぐに行けるかというと行けない場合、それはあるのではないかという感じはいたしますが、しかし、それはまずまず希有な事例ではないかという感じがいたします。 ただ、いま木下委員おっしゃいますように、申立人にそういうふうに当該裁判所ではなくて隣の簡易裁判所までわざわざ行っていただくということは、これは非常に申しわけないことでございますので、もし仮にそういうことがあるといたしますれば、そういうことがないような一つの事務分配と申しますか、てん補のやり方と申しますか、そういうことを考えていただくようにひとつ当該のところへもお話をしなければいけない、こういうふうに考えます。
○木下(元)委員 督促手続ですね。支払い命令の申し立てがあったときは、これはどのように扱っておるのでしょうか。つまり、いまの二人庁で裁判官がめったに来ない、そういうところに申し立てがあった場合に、一体どういう処理をしているのでしょうか。
○大西最高裁判所長官代理者 恐らく督促手続につきましては定期的にてん補に行っておるときに処理するというのが通常の形でございましょうが、あるいは申立人から特にこの事件については急ぐというようなお話があった場合に、臨時に行くということになるのではないかというふうに考えます。
○木下(元)委員 裁判官が二週間か三週間に一回行ったときに処理をする、督促手続というのも簡易迅速を旨とするものでありまして、二週間も三週間もほっておくというのはどうかと思うのです。これは私は、やはり実態は書記官が処理をしておるのではないか、事実上処理を強いられておるのではないかというふうに思うのですが、そういうことはございませんか。
○大西最高裁判所長官代理者 書記官が処理をしておるということはないと考えます。これは裁判官でなければできないことでございますから、書記官がつくるとなりますと……(木下(元)委員「事実上のことを言っておる」と呼ぶ)事実上ということでもそういうことはないので、裁判官が目を通さずに書記官が出しておるということはないものと思います。
○木下(元)委員 そうすると、結局裁判官が来るまで待つということになると思うのですが、これでは督促手続の趣旨にもやや反することになるのではないか、二週間も三週間もためておくのかということになると思うのですね。その点いかがですか。
○大西最高裁判所長官代理者 三週間というふうなてん補の事例が仮にありますといたしました場合には、それである程度の事件がたまるという場合には、そういうことはちょっと困るわけでございますが、一般的に申しまして、そもそもそういう事件が余りたくさんは来ないわけでございまして、来ないからこそそういう問題が起きてくるわけでございますので、ただ、先ほど来申し上げておりますように、非常に急ぐような事件がありました場合には、そういう定期的なてん補の機会ではなくて、それ相応の処置、簡易裁判所判事が臨時に行きますとか、あるいはそういうものを持って書記官等が隣の簡易裁判所の方に判断を受けにいく、そういう処置がとられているのではないかと考えております。
○木下(元)委員 この二人庁というのは簡裁が発足をした当初はなかったのではないでしょうか。当初は四人庁が原則ではなかったのでしょうか。
○大西最高裁判所長官代理者 ある特定の簡易裁判所に何人おるかということは、実は最高裁判所で全部把握しておるわけではございませんで、それぞれの地方裁判所でやっておる面がございますので古い資料がございませんで、私どもの方としましては、発足当初に二人庁があったかなかったかということは実はわからないわけでございます。ただ、昭和三十年代の終わりごろには、そういう二人庁があったのではないかということはわかっておりますが、それ以前の状況につきましては、ちょっとつまびらかにしないという状況でございます。
○木下(元)委員 古い書記官などに聞きましても、当初はなかったように私は聞いておるのです。いまも言われましたように、三十年代の後半になってあったようだということでありますが、ではどうしてこういうのが生まれたのか。いかがでしようか。
○大西最高裁判所長官代理者 これはいろいろと理由があるだろうと思いますが、一番大きな理由は、当初簡易裁判所が設立されたときとだんだん状況が変わってまいりまして、言ってみれば、過密と過疎が進行するという社会経済上の問題からの影響が裁判所の事件数にも影響してまいりまして、田舎の簡易裁判所におきましては、かつてはある程度の事件があったものがだんだん少なくなってきて事件が非常に減ってきた、一方においては事件が相当ふえたところが出てきたということで、小さい、事件がないところから事件のあるところへ職員の異動が行われたということが一つの大きな理由ではないかというふうに考えております。
○木下(元)委員 過密と過疎というようなことを言われました。農村地域等では事件が減少しておるということでありますが、いただいております「裁判所便覧」という資料を見ますと、六十六ページではたとえば督促手続というのが出ておりますが、先ほど督促手続のお話もありましたけれども、これはここ数年ずっと増加をいたしております。たとえば四十九年に督促手続は十六万五千八百七十四件、これが年々ずっと増加いたしまして、五十三年には二十四万三千三件というように増加をいたしております。それから民訴事件では、これも四十八年ごろからずっと増加をいたしておりまして、七十二ページに出ておりますが、四十八年には六万四千三百七十八件でありましたのが、年々増加をいたしまして、五十三年には六万七千三十二件、こういうふうにふえておるわけであります。 これはもちろん簡裁全体でふえておるということなんですが、一体二人庁ではどうなのかということについては資料をもらってないから私の方にはわからないわけでありますが、二人庁等でどうなのかというようなことについて、一体調査はおやりになっているのでしょうか。
○大西最高裁判所長官代理者 毎年統計をとっておりますので、二人庁の事件の推移というものは、現在手元には持っておりませんけれども、私どもの方では把握しております。
○木下(元)委員 そうしますと、細かい数字は結構ですが、簡裁全体としては、さっきも私申しましたようにずっとふえているのですね。ところが、二人庁だけを見るとこれは減っておりますか、どうですか。
○大西最高裁判所長官代理者 まず簡裁全体といたしましてはここ数年少しふえてきておるということは御指摘のとおりでございますが、もう少し長期的に、たとえば十年、十五年前と比べますと、大分いまの方が少ないというふうなことがございます、かなり波を打って事件の増減がございますので。そういうところから見まして、現在の簡裁の二人庁の趨勢が具体的にどうかということは、ちょっといま手元にそれぞれの庁の数字を持ってはおりませんが、先ほど来申し上げておりますように、一人前の一割以下しかないというふうなところが大部分でございますので、そういう意味では、仮に増減があったといたしましても、一割にちょっとふえたか減ったかということになるわけでございますので、大勢にそう大きな影響はないのではないかと考えております。
○木下(元)委員 十年、十五年前に比べるとずっと減っておるというお話ですが、それはともかくとしまして、ここ数年全体としてずっとふえてきておる。簡裁は二人庁などにおいてはどうなのかということがもう一つ私はわかりにくいのです。 さっきも私お聞きしましたように、ことに二人庁というものがここ数年でどんどんふえておるわけです。ところが事件数はどうなのか。事件数が減っておるから二人庁がふえておるということになるのかどうか。あるいはそうでなくて、事件数は全体の状況と同じように比例してやはりふえておる。ふえておるのに、二人庁がふえておるということになるのかどうか。そこらはいかがでしょうか。
○大西最高裁判所長官代理者 各庁別の事件数というものはちょっとわからないわけでございますが、ごく大まかに申しまして、二人庁でどれだけの事件があるかということでございますが、平均いたしまして、民事の訴訟が年間三、四件、刑事の訴訟が一件はないそうでございまして、〇・五件くらいしかない。調停、督促全部合わせまして五、六十件というふうなところが二人庁の平均的な姿のようでございます。 繰り返しになってまことに恐縮でございますが、いま申し上げましたような事件について、たとえば督促が二、三件ふえたとか、二、三件減ったとかという問題はあるいはあろうかと存じますけれども、そこら辺のところの事件数の増減は大勢にそれほど大きな影響を及ぼすような増減ではない、これは繰り返しでまことに恐縮ですが、そういうふうに申し上げられるのではないかと思います。
○木下(元)委員 二人庁の事件の増減についてまた資料をいただくことにいたしまして、そこで聞きたいのは、二人で簡裁のもろもろの実務を取り扱っていくということは無理ではないかということであります。 これは、事件数が少ないというようなことがありましても、いろいろな実務があるわけですね。さっきもずっと言われましたように、民訴、刑訴、民訴がないところが一部ありましても、督促手続から調停からいろいろとあるわけであります。令状の問題もございます。そういうふうなもろもろの実務をたった二人の職員で取り扱っていくということは私は無理ではないかと思うのです。少なくとも裁判所、簡裁のあるべき姿として望ましい状態ではないのではないか、こう思うのですが、いかがですか。
○大西最高裁判所長官代理者 二人庁にも種々雑多な事件が来るということはいま御指摘のとおりでございますが、事件数といたしましては先ほど申し上げたようなことで、非常に率直な申し上げ方をいたしますと、むしろ二人で手持ちぶさたになる場合も実はあるわけでございます。もちろん法廷があったときに受け付けが来た、事件を持ってきたというようなときに忙しいということはごくまれにはあるかもしれませんが、全体としては事務処理にそう影響はないのではないかと考えております。
○木下(元)委員 それは暇なときはありますよ。年がら年じゅう忙しいということはありません。暇なときも多いと思いますよ。 しかし、私が聞いておるのはそういうことではないのです。たとえば法廷が開かれます。法廷も刑事また民事の法廷があるわけでありますが、その場合に書記官が法廷に出ていきます。廷吏は、この場合二人庁でありますからいないわけであります。廷吏がいないから神経もよけい使うことになります。恐らく清掃などもこの書記官の方が負担をしてやるということになると思うのです。そして、そういうように法廷が開かれておりますと、もう一人の事務官は必ず事務室に残って事務をとっていなければならない。お金もあることでありますから管理もしなければなりません。そして事件の受理や相談があります。電話もかかってきます。令状請求もあります。事件の受理なんというものも、これは決して平均的にあるものではないのですね。私もよく知っておりますが、これは非常にむらがあります。どかっと事件が来るわけです。そういうときに、二人しかいない場合に一体どうやって処理をしていくのか。そういう状態でありますので、常時ではありませんけれども忙しくなるとてんてこ舞いの状態ではないのか、こう思うのですよ。 特に、法廷があって一人しか事務室に残っていない、そういうときに事件や令状が重なってやってくる。処理に困ると思うのです。だから二人庁では、それは暇なときは多いと思いますけれども、事実上休暇もとれない状態ではないかと私は思います。一人が休暇をとったら、自由に好きなときに休暇をとるというようなことをいたしますと、もう一人しか残っていない。これではやっていけないわけですね。だから病気になって休むこともできない。もし休めば裁判所の機能が麻痺をしてしまう。これが二人庁の実態ではないでしょうか。ですから、私はこういう状態というものを放置しておいてよいということにならないと思うのです。そうではありませんか。
○大西最高裁判所長官代理者 二人庁につきましては、ただいま御指摘のとおり、非常にまれであるとは存じますけれども、ふくそうしたときに大変だということはよくわかるわけでございまして、そういうところにおられる方の休暇、病気で欠席されたときの問題なんということがあることは御指摘のとおりでございますが、そこら辺のところはそれぞれの裁判所でいろいろ工夫をいたしまして、そういうようなときに当たりましては、たとえば隣の裁判所からいわばてん補に行ってやるとかというようなこともやっておると存じます。 これはちょっと別の問題になりますけれども、たとえば宿直の問題なんかにいたしましても、前はそういうところで問題があったわけでございますが、いまは宿直も廃止するというふうな形をとっておりまして、職員の勤務条件が大変な形にならないような配慮というものは、それぞれの裁判所で講じておるわけでございます。今後もそこら辺のところはやはり考えていかなければならないというふうに考えております。
○木下(元)委員 最高裁の方はどうも二人庁の実情というものを十分掌握していないのではないかという感じも私はいたします。 たとえば相談活動を簡裁でやっておりますが、この相談活動でもずいぶん忙しくて、これに手をとられてしまっておるところがあるようであります。特に弁護士のいない地域では相談に手をとられてしまいます。そういう実情について、最高裁の方では報告を求めておるのでしょうか。
○西山最高裁判所長官代理者 簡易裁判所におきましては、受付事務の一環といたしまして相談事務をやっておると思われます。いま問題になっております二人庁の関係でどの程度の相談件数があるかというふうなことについては、詳細は把握しておらないのが実情でございます。また、その点についての報告も受けておらないわけでございます。
○木下(元)委員 私は、どうもやり方が偏っておるという感じを受けるわけであります。 相談活動の報告などは余り求めていない、実態もよくわからないということでありますが、たとえば労働事件、公安事件、行政事件についてはきちんと報告を求めておる。訴状、仮処分申請書などのコピーを二部余分に徴して報告を求めておるということでありますが、これは事実でしょうか。
○西山最高裁判所長官代理者 労働事件及び行政事件につきましては、各庁から、事件を受理した際に、受理した事件の類型と申しますか、そういうものの報告を受けておるわけでございます。その点では当事者に訴状、仮処分申請書、そういった写しを数通提出してもらいまして、その一部を最高裁の方に送ってもらっておるということでございます。
○木下(元)委員 その目的、何のためにそういうことをやっておるのですか。
○西山最高裁判所長官代理者 労働事件あるいは行政事件というものは非常に社会的な影響も多い事件でございますし、また審理期間も通常の事件に比べますと長期にかかっているというのが実情でございます。そういうことでございますので、どういう事件がどの裁判所にどの程度かかっているかということを把握して、それに対する措置を講ずるというためにとっておるわけでございます。
○木下(元)委員 どういう事件がどの裁判所にどの程度というようなことを言われますと、そんなものは何も訴状、仮処分申請書等のコピーを出させて報告を求める必要はないと思うのですよ。解雇事件、不当労働行為事件、いま言われたそういう類型的、定型的なタイプというものはそれぞれ事件名によって明らかなのでありますから、何もそういう書類等までも出させる必要はないのではありませんか。 これは結局、最高裁が下部の裁判所に出させる、その下部の裁判所の方はそれを当事者に押しつけるということになりがちでありまして、そういう負担がかかってくるわけであります。いま言われたような目的ならば、裁判所の方でその事件名なり類型を知りたいというのならば、それはその骨子なりそういうものをチェックすればいいことなんであって、何も余分にそういう書類の提出を求める必要はないのではないかというふうに思いますが……。
○西山最高裁判所長官代理者 労働事件につきましては、行政事件につきましても同じでございますが、類型として非常にたくさんの事件がございます。解雇が無効であるという事件もありますれば、賃金請求の事件もございます。あるいは労働協約が問題になっている事件がございますし、労働基準法上のいろいろな請求権が問題になっているというふうな事件がございます。その各事件につきましても、非常に簡単な事件から複雑な事件まで各種の態様がございます。これがただそういう賃金請求事件が一件来たということの報告だけでは、実は報告の体をなしていないというに等しいことにもなりかねないわけでございます。そういうことから申しまして報告を求めておるわけでございます。ただ、その分を当事者に数通出させる必要があるかどうかというふうなことは、また別な問題として考えていかなければならないかというふうにも考えておるわけでございます。
○木下(元)委員 類型が多いというようなことを言われますが、大体、労働事件、行政事件にしましても、法制度が変わりまして三十数年たちまして、もう類型が非常に固定化しておるというか、たとえば解雇事件でも不当労働行為の事件それから解雇権乱用の事件というように定型化されておるのですよ。類型が多いなんということを言いますと、じゃ一体民事の事件はどうですか、千差万別ですよ。あるいは特許事件とかいろいろな特殊な事件がありますが、もうこういう労働事件や行政事件以上に類型は千差万別であります。どうもいま言われておるのは、私はこじつけのような感じがするわけであります。 しかし、いま言われましたように、当事者にコピーを出させるということについては別の問題であって、考える余地があるかのようにも聞き取ったわけでありますが、これは下部の裁判所の負担を軽減する、あるいは当事者の負担を軽減するという趣旨に立ちましてひとつ考え直してもらいたい、やめてもらいたいというふうにお願いをするわけであります。いかがですか。
○西山最高裁判所長官代理者 木下委員仰せになりましたとおり、戦後三十数年たちまして労働事件あるいは行政事件につきましても、かなりの程度の学説、判例ができ上がっておりまして、そういう意味ではかなり執務の資料というものができ上がっているように思われますし、類型的にもある程度固まっているということは事実でございます。 しかしながら、先ほどから申し上げておりますように、やはり法規の面あるいは紛争の内容から申しまして非常に複雑であり困難である、長期の審理がかかるというふうな事情にあることは従前と変わっているわけではございません。そういう意味から申しまして、通常の事件でございますと、何と申しましても八十年なりそれ以上の歴史がございますから、おのずから類型的なかたまりができておるわけでございます。そういうわけで、やはり現在においてもまだ労働行政事件について若干特殊な取り扱いをするというのは変わっていないのではないかと考えておるわけでございます。 それから、報告用の訴状あるいは仮処分申請書等を当事者に負担させるのはどうかという御指摘でございますけれども、それは常に裁判所が当事者の方に提出を求めているというわけではございませんので、必要な部数は裁判所の方でコピーをとって調製するということもしておるわけでございます。
○木下(元)委員 それは前にちょっと言われたのですが、別個の問題だからひとつ考えてもというふうなニュアンスに受け取ったのですが、これはなんですか、やはりずっとやっていくということですか。そういうコピーを当事者に負担をさせるということは、私が聞いておるのでは全部やっておるように聞いておりますけれども、一部やっていないというところがあるといたしましても、そういう負担を当事者にかけるということはよくないことでありますので、ひとつやめるようにしていただきたいと私は思うのです。
○西山最高裁判所長官代理者 法律上当事者に要求されておりますのは、法定されている通数の訴状なり仮処分申請書でございますので、それ以上の分を出させるというのは根拠としてはないように思われます。そういう点では、そういう取り扱いを改めるようにしていきたいと考えております。
○木下(元)委員 二人庁と呼ばれる簡裁で職員がどんな状態に置かれているかという点は、私の方と最高裁の方と若干認識に相違があるようでありますが、相談活動なども大変忙しい、その実態については十分掌握をされていない点もあると思われます。ひとつそうした実情について報告を徴してもらいたいと思いますが、よろしいでしょうか。
○西山最高裁判所長官代理者 簡裁におきます相談につきましては、単に二人庁だけでなく全庁からも報告を求めておらないわけでございますが、その実態といたしましては非常に千差万別であるというのが実情でございます。単に法律相談的なことをしてくるということ、あるいはそこまで至らないで身の上相談をしてくるというふうなものから、直ちにそこで訴えを提起したいというふうな熟したところまで各種多様なものがございます。それを一々相談の件数として計上するのはいかがなものかと考えておるわけでございます。
○木下(元)委員 いや、私は何も件数を数字の上で出してどうのこうのということでなくて、実態を十分掌握する上において、二人庁あるいは二人庁以外でも結構でありますが、そういうものも含めて報告を徴してその実態を知るようにしていただきたい、私の方もそれを資料としていただきたい、こういう趣旨で言っておるのです。
○西山最高裁判所長官代理者 繰り返すようでございますけれども、非常に報告のとり方がむずかしいと申しますか、先ほど申しましたように内容、程度が千差万別でございます関係で、それを類別して件数にまとめ上げるというのが果たして可能かどうかというふうな問題もございますし、簡裁でやっておりますのは法律相談というものではございませんで、要するに受け付けの事務の一環としてやっているという程度のものでございますので、報告を求めるあるいは何件そういう相談があるかというふうなことを調べる意味がどれほどあるかということについては、ちょっといまのところ考えつかない状態でございます。
○木下(元)委員 それでは結構です。私の方でそういう実態を一遍よく調べまして、また問題を提起したいと思います。 それから全部事務移転庁でありますが、事務移転を行っている簡裁は全部で十九庁ある、簡裁発足の当初から移転されている庁は八庁あるというように聞いております。この移転庁の土地、建物はどうなっておるのでしょうか。
○大西最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘のとおり、全部事務移転庁が全部で十九ございますが、そのうち未開庁の八庁につきましては当初から土地、建物がないわけでございますから、いまもないということになります。それ以外に、ある程度の庁につきましては最初は借り上げ等で建物を借り上げまして事務をとっておったところはございますが、そういうところにつきましては借り上げたものを返還をして現在ないということになります。現在ありますのは、三庁につきまして比較的最近に事務移転が行われたところでございますが、三庁について裁判所が持っておるという形のものがございますが、それ以外は土地、建物はないということになります。
○木下(元)委員 その三庁は空き家になったりあるいはもう建物もなくなってペンペン草が生えておるのではないかと思われますが、これは一体どうされるおつもりですか。
○大西最高裁判所長官代理者 ちょっといま直ちにどうするという計画はないように承知しております。私、建物自体を直接所管をしておるわけではございませんので、ちょっと正確にお答えしかねる面がございますが、すぐそれをどうするという計画はいまのところはないというふうに承知しております。
○木下(元)委員 いただいた資料によりますと、簡裁の事務移転のテンポが非常に速まっておるという感じがするのです。三十年代には、三十年に一カ所、三十八年に一カ所、三十九年に二カ所、四十年代は、四十三年に一カ所、四十七年に一カ所、五十年代は、五十一年に一カ所、五十三年に二カ所というようになっております。五十四年度は計画はないのでしょうか。あるいはまた五十五年度はどうでしょうか。
○大西最高裁判所長官代理者 この簡易裁判所の事務移転は、木下委員御承知のとおり、裁判所法三十八条に基づきまして、各地方裁判所が裁判官会議で当該簡易裁判所の特別な事情を勘案して事務移転をしておるというものでございますので、最高裁判所として全国的な視野に立ってここをどうするということを考えているわけのものではございません。最高裁判所として計画があるとかないとかというものではございません。各地方裁判所で、いわば偶発的と申しますか、たまたまその当該簡易裁判所の特別事情に基づいて事務移転の手続をなさった、それが五十三年に二カ所、五十一年に一カ所あるというふうに相なるわけでございます。
○木下(元)委員 簡裁というものは戦後新憲法のもとで発足をしまして、民衆の裁判所、駆け込み裁判所というように呼ばれてまいりました。少額、軽微な事件の簡易迅速な処理を図るものであります。だれもが利用しやすい親しまれる裁判所、これが簡裁のあるべき本来の姿であります。 ところが、その簡裁にもうずっと裁判官がいなかったり二人庁が生まれたりあるいはよそに移転されてしまう、これでは私は困ると思うのです。二人庁や判事不在庁をできる限りなくしていくことが必要ではないのか、こう思います。もっとも事務移転の方は、確かに人口や交通の便の変化、発達ということもありますので、それに応じて考えねばならないこともありましょう。しかし、やはりその場合でも地元住民の納得が前提であろうと思います。また、簡裁制度が設けられました本来の趣旨に照らして考えられるべきことであろうと思います。この点、最高裁そしてまた法務大臣の所見をひとつ伺っておきたいと思います。
○大西最高裁判所長官代理者 簡易裁判所が少額、軽微な事件を簡易迅速に処理するということで新憲法下設けられた裁判所であって、国民に親しみやすい簡易裁判所にしなければいけないということはまことに木下委員御指摘のとおりでございまして、私どもといたしましても、その点については全く同感でございます。 簡裁の二人庁の問題等をいまおっしゃいましたけれども、私どもといたしましては、やはり一方において裁判所全体の事務の効率的な処理ということも考えなければいけないわけでございます。簡易裁判所の二人庁につきましては、先ほど来申し上げますように、そもそも事件が非常に少ない。もう少しふえる見込みでもあればよろしいのでございますが、そういうところについてはまだまだやはり手当てをしていかなければいけない。いつまでも二人庁で置いていくというわけのものではございませんで、場合によっては、やはり事件がふえるようなことがありましたら人数もふやしていかなければいかぬということも考えておりますけれども、何分事件が少ないということもございますし、それからやはり職員としてなかなかそういうへんぴな地へ行っていただくことが子供の教育その他の関係でむずかしいということもございますし、また、やはり職員というものは事件を通じて研さんしていくものでございますから、余り事件のないところでは職員の将来のためにもよくないとか、そういういろいろなことが絡みまして、言ってみれば不本意ながら二人庁というものができておるわけでございますが、基本的に簡易裁判所が庶民に親しみやすい裁判所でなければいかぬということ自体はそのとおりでございますので、私どもとしても、その点はいつも頭に置いていろんな措置を講じていきたい、かように考える次第でございます。
○木下(元)委員 そうしますと、判事不在庁であるとかまた二人庁というようなものは、私どもはできる限りなくしてもらいたい、なくしていく必要があるというように思っておるのですが、最高裁はその点は認識を異にするわけですか。
○大西最高裁判所長官代理者 二人庁は先ほど申し上げましたように三十数カ庁ございますし、簡易裁判所判事が常駐していないところというのは百庁以上あるわけでございます。先ほど来申し上げておりますように、普通の簡易裁判所の事件に比べて一割に満たないような簡易裁判所に全部簡易裁判所判事を仮に百数十名置くといたしますと、勢い別の簡易裁判所に対するしわ寄せというものが出てくるわけでございまして、理想的な形としてはそういうところへ置くということはもちろん考えられるかもしれませんが、そういうところに簡易裁判所判事を常駐させるとかあるいは二人庁をすぐなくしてたくさん職員を置いておくということは、現状としてはなかなか言ってもむずかしい、やはりそれは徐々にそういう方向に向かっていくということでなければしょうがないのではないか、こういうふうに考える次第でございます。
○木下(元)委員 結局理想論と現実論の違いで、本来そういう裁判官がいないような裁判所というのはこれはおかしい、また、たった職員二人でやっておるというようなこともあるべき姿ではない、これは結局お認めのようであります。ただ、現状から言って大ぜいの裁判官をこっちへ持ってくるというわけにいかぬじゃないか、それはそのとおりかもわかりません。だから私は、ただ理想の旗はやはり高く掲げて、こういう二人庁や判事不在庁というものをできる限りなくしていくという方向でひとつ進んでもらいたいと思うのであります。そのためには抜本的な増員ということも必要であります。五十五年度の増員はきわめて不十分であります。五十六年度はひとつ思い切った増員ができるようにしてもらいたいと思います。そのために、現場の実情をできるだけよく掌握をしていただくとともに、弁護士会を初め関係方面の要望にもよく耳を傾けていただきたい、こういうように私はお願いをするわけであります。大臣、いかがでありましょうか。
○倉石国務大臣 いろいろ増員等について御理解のあるお話を伺いまして、私どもも努力をいたすわけであります。
○木下(元)委員 時間がありませんが、どうも余り簡単な答弁でございますが、今年度はやむを得ないとしましても、裁判所が手薄では国民の権利の実現にやはり欠けるところがあると言わざるを得ませんので、ひとつ最大の努力をして増員を実現していただきたい、こういうようにお願いをいたします。よろしいですか。 実は私、もう少し時間が余りましたら特殊法人の問題を質問をする予定でおりましたが、時間が来てしまいましたので、これは次の機会にいたしたいと思います。終わります。
○木村委員長 長谷雄幸久君。
○長谷雄委員 私は、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案及びこれに関連する質疑をいたします。 初めに裁判所にお尋ねをいたしますが、この法案によりますと、判事二十二名それから裁判所裁判官以外の裁判所の職員十五名の増員ということでございますが、裁判所の当初案ではそれぞれ二十三名、七十七名だと伺っておりますが、裁判所のこの当初案の増員計画案をお決めになるについての基準についてお尋ねをしておきたいと思います。
○大西最高裁判所長官代理者 昨年八月の当初要求の時点におきます増員の要求数は、ただいま長谷雄委員御指摘のとおり、判事が二十三、裁判官以外の裁判所職員が七十七、合計百でございます。 その増員の要求の根拠と申しますか、それはお手元に差し上げてございます法律案関係資料の十五ページのところにございますが、判事につきましては特殊損害賠償事件、差止訴訟事件、民事執行法の関係、それから覚せい剤取締法違反事件等を含む刑事事件の処理、それから労働関係の民事・行政事件の処理というようなことが理由になっております。裁判所の書記官につきましても同様でございます。裁判所事務官につきましては、それ以外に家事の調停事件、簡易裁判所におきます民事の調停事件の処理というふうなことを理由にいたしまして、それぞれいろいろございますが、合議体を増強するということになるものもございますし、審理期間を短くするということで計算をしたものもございますし、そういうものをいろいろ計算いたしました上、判事、書記官等の充員の状況等をも勘案いたしまして、先ほど申しました判事二十三、裁判官以外の裁判所職員七十七、こういう数字になったわけでございます。
○長谷雄委員 裁判所の当初案の員数からこの法律案の員数に減らす予算案をしたことにつきまして、これはもちろん大蔵省の査定でそうなったと承知しておりますけれども、しかし三権分立の原理からいいまして、裁判所の予算を査定するについてはきわめて慎重でなければならない、こう私は考えております。この点に関する財政法の規定もまさにこれを配慮したものであろうと思います。査定を受ける裁判所の方も、司法権の独立という本来の精神に立ち返って予算獲得については勇気を持たなくてはならない、こう私は思います。この問題につきまして裁判所の所信をお尋ねしておきたいと思います。
○大西最高裁判所長官代理者 裁判所の予算は国の予算の中に独立して計上されることになっておりまして、裁判所は具体的には大蔵省と折衝するにいたしましても予算要求自体は内閣に対してするという、手続上そういうことになっておるわけでございます。 それと、ただいま長谷雄委員御指摘になりましたとおり、いわゆる二重予算の制度というものがございまして、裁判所の要求を内閣の方で減額いたしました際に、それを裁判所と内閣の方の意見が一致しない場合に、そこら辺のところを裁判所の要求を財源も書き加えて国会に提出して国会の御審議をいただくというふうな二重予算の制度もあるわけでございます。 裁判所といたしましては、常にそこのところを頭に置いて予算の折衝をしておりますし、内閣、具体的には大蔵省も常にその二重予算の制度を念頭に置いて裁判所の予算を査定していただいておるものと思います。したがいまして裁判所といたしましても、たとえば増員の問題について見ますと、大々的に判事の増員をお願いしましても、すぐにそれを埋められるというわけのものではございませんので、そこら辺のところも頭に置いて、最終的には二重予算の制度を頭に置いてやっておりますけれども、ここのところでいわば妥結した、両方の意見が終局的には一致したということになるわけでございますが、態度としてはこの二重予算ということをいつも頭に置いて勇気を持って強くやっておるということは、長谷雄委員の御指摘のとおりやっておるわけでございます。
○長谷雄委員 民事執行法に基づく執行事件についてお尋ねをいたします。 五十五年十月一日施行の民事執行法に基づく執行事件は、この法律の施行前と比べまして事件数は増加すると見込んでいるのか、それとも減少するというお考えでございましょうか。
○西山最高裁判所長官代理者 私どもといたしましては、現在の見通しでございますが、執行事件数あるいは事務量ともに増加するのではないかという見通しを持っておるわけでございます。
○長谷雄委員 そうしますと、昭和五十五年度予算案ではこの民事執行関係では増額になるということでございましょうか。
○西山最高裁判所長官代理者 仰せのとおりでございます。
○長谷雄委員 そうしますと、政府提案の五十五年度一般会計予算案の予算書を見ますと、民事執行関係につきまして予算の増額ということは明確ではありませんですね。予算書に基づいて執行に関係すると思われる予算を抜き出してみますと、執行官旅費と執行官補助金くらいしか見当らない。そうして、それらは対前年比で二百七万円、六百三十四万二千円、それぞれ減額にさえなっているように思われます。しかし裁判所からちょうだいしました資料、これは「昭和五十五年度裁判所所管予定経費要求額説明」と題する書面があります。この書面の中に最後のところに昭和五十五年度裁判所所管予定経費要求額内訳という表がございます。この表を見ますと、民事執行の充実強化という事項欄に一億二千七百九十九万三千円と記載されておりまして、それは計算上、対前年比で八千六百八十四万三千円の増額になりますね。この民事執行の充実強化のための予算案内訳につきましては、裁判所からこうした資料を別途説明のためにということでちょうだいをいたしておりますので、内容は承知をいたしております。 ところで、この裁判所からちょうだいしました「昭和五十五年度裁判所所管予定経費要求額説明」という書面はもちろん予算書ではない。国会の審議の対象になる予算案はどれかといえば、それはいま申し上げたこの裁判所からいただいた説明書ではなくて、あくまでも予算書そのものだ、こう思います。そこで、裁判所の言われる民事執行の充実強化の点につきましては、政府が国会に提案したこの予算書のどこに具体的にあらわれているのか、予算書に基づいて説明をしていただきたいと思います。
○西山最高裁判所長官代理者 民事執行の充実強化の関係の総額といたしましては、先ほど長谷雄委員御指摘のように一億二千七百九十九万三千円でございまして、前年度に比して二一一%増、ざっと三倍の金額になっております。これは予算書の各項目について御説明申し上げますと、まず裁判所所管合計、そこの五十五年度要求額千八百一億何がしとありますが、その中に一億二千七百九十九万三千円が入るわけでございます。 それから細かい項目について御説明申し上げますと、最高裁判所の項の中の百六十六ページの左の欄になりますが、その一番下に職員旅費というのがございます。その中に執行関係が百五十二万円、会同の関係でございます。それから右の欄にいきまして、中ごろに庁費というのがございます。その総額八億七千五百万何がしの中に七万八千円というのがございます。それから下の欄の裁判資料整備費の中に八百六十九万四千円というのが執務資料整備として入っております。 それから次の紙に参りまして、左の欄の下級裁判所の項の下から三番目に職員旅費というのがございます。その中に千七百六十七万五千円、それから次の欄の委員等旅費、これの中にも若干ございます。それからその下に庁費とありまして三十七億何がしとありますが、その中の四千八百八十二万七千円、これが競売場それから器具の整備費でございます。それから右の欄にいきまして、一番上の法廷等器具整備費、この六億幾らの中で四千九百二十七万円、これがやはり競売場の整備費でございます。 以上でございます。
○長谷雄委員 お話を伺いますと、裁判所からの説明によりますと執行官の増員が予算措置されていませんけれども、そのされなかった理由はどういうところにあるのか。また地方の支部あたりでは執行官の数が少ないということから執行事件がなかなか進行しない、こういう苦情も聞いております。この点につきまして、民事執行法の円滑な運用上今後どう対処されるのか、お尋ねをいたします。
○西山最高裁判所長官代理者 初めにちょっと、先ほどの御説明で訂正さしていただきますが、下級裁判所の項の委員等旅費という欄がございましたが、それは委員等旅費ではございませんで諸謝金でございます。 民事執行法が施行されまして執行官の負担が増大するかどうかあるいは適正な執行が可能かどうかというふうな問題がございますが、民事執行法は御承知のように執行官の実施する現況調査の内容等で非常に職務権限が強化されておるわけでございます。それを事務量の面から見ましても、現況調査といたしましては現在の賃貸借取り調べに比べますと非常な労力と慎重な判断を要するということになって、かなりの負担になることは否定できないと思います。しかしながら他面におきましては、新法におきまして従前のさまざまな点と比較いたしまして事務の合理化が図られております。たとえば通知をする者がよけいなものを整理するとか、許可を受けるべき事項について執行官の独自の判断ですることができるようにしたとか、あるいは調書の書き方を合理化するとかいうふうなことで合理化が図られておるわけでございます。 総体的に申しまして、これらを勘案いたしますと、新法の施行によって執行官の事務量が特に大きく増加するということまでは考えておるわけではございません。いま申しましたように非常に権限が強化されてきておりますものですから、それに対応いたしまして、それにたえ得るような知識を修得させるあるいは研究をしてもらうというための研さんなり執務資料の整備という点に努めておるわけでございますけれども、直ちに人員をふやさなければならないかどうかという点につきましては、なお今後の新法の施行状況を見ながら慎重に検討してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
○長谷雄委員 次に、法務省にお尋ねをいたします。 昭和五十五年度一般会計予算案のうち法務省関係についてお尋ねをいたします。これは政府提案の予算書に記載されていることでありますけれども、法務省がおやりになろうとする政策の内容がこの予算書ではなかなか知りがたい面がございます。そこで別に説明の便宜として法務省からちょうだいした資料がございます。「昭和五十五年度法務省予算(案)の概要」と題する書面でございます。これを見ながらお尋ねをいたしたいと思います。 この予算案の概要の表紙から数えて三枚目に、法務省の政策目標について、予算の主なる事項、こう冒頭に書いてありまして、そのところで第一の法秩序の確保、第二が国民の権利保全の強化、第三非行青少年対策の充実、第四出入国管理業務の充実、第五施設の整備、この五点を挙げております。いずれも大切な政策事項だと思います。 そこで私は、第一の法秩序の確保のところを若干お伺いいたします。この中で一番に挙げているのが検察活動の充実強化でございます。この事項につきましては、法務省のこの予算案の概要によりますと、昭和五十五年度予算額は合わせて五百九十六億五千九百万円。それで対前年比で二十八億六千五百万円の増となっております。そしてその政策目標の内容につきましては、さらにわかりやすく四つの事項に分けて予算額を明示しております。ところがこの予算書を見ますと、予算書の記載内容からは、検察活動の充実強化、そしてその内訳でありますところの(1)の検察活動(財政経済、特捜、公安労働、国際犯罪等)の充実、(2)の検察事務の科学化効率化、(3)の検察執務体制の整備充実、(4)その他、こういうものは予算書からはほとんど知り得ない実情でございます。 そこで質問は、検察活動の充実強化という政策目標の内容のそれぞれが予算書のどの事項に当たるのかということについて御説明を願いたいと思います。
○前田(宏)政府委員 ただいまお尋ねの点でございますが、お手元にあります予算案の概要によりますと、検察活動の充実強化といたしまして、いま御指摘のように総額で五百九十六億余りを計上しておりまして、その内訳がその他を含めて四つに分かれておるわけでございます。 内容的に申しますと、この概要の説明という欄にまた若干の説明をつけ加えておるところでございまして、たとえば各種事犯に関する検察活動の充実として、各種情報交換協議会の開催等あるいは情報資料保管検索機等捜査用及び公判用備品等の整備充実というようなことを掲げておるわけでございます。これは改めて申し上げるまでもないと思いますが、この概要は、五十五年度予算として予算書に計上されている経費の内容をわかりやすくと申しますか内容的に御説明するという観点からまとめたものでございまして、いま御指摘のように予算書とのつながりが若干不明確でございますのでおわかりにくい点があるかと思います。 一例を申し上げますと、先ほど申しました1の(1)の検察活動の充実の説明の一にありますような各種情報交換協議会の開催等経費、このまた内容になるわけでございますけれども、それは予算書の上では出てないわけでございますが、たとえば覚せい剤事犯の対策協議会とかあるいは国際犯罪の対策協議会であるとかというものがその内容でございまして、予算費目としては諸謝金が十七万八千円、職員旅費が千七百四十九万八千円、研修旅費が二百二十八万五千円、報償費が六百九十万五千円ということで、その計が二千六百八十六万六千円ということになりまして、その数字がこの概要の1の(1)の説明の1にありますように二七、つまり二千七百万円。それがいま申しました正確に言えば二千六百八十六万六千円という数字になるわけでございます。これが予算書の方で、たとえば経費要求書でありますと三百七十一ページ以下、またいわゆる各日明細書で申しますと、法務省所管検察庁のところの十七ページ以下にあるわけでございます。 検察庁の予算は、これも御案内と思いますが、検察官署という項と検察費という項に分かれておるわけでありまして、それぞれの性質に応じまして官署の項、検察費の項に、たとえば謝金とか職員旅費とか研修旅費とかというような目の区分ごとにそれぞれ計上されておるわけでございます。ですから一つの例で申しますと、先ほどの謝金といいますのは各日明細でいいます諸謝金の目のところに計上されている中身になるわけでございまして、先ほど最高裁から御説明した関係と同じような形になっておるわけでございます。
○長谷雄委員 予算書を見ますと、歳入予算明細書と題する欄のほかに甲号として予定経費要求書、以下丁号までございます。この予定経費要求書は、財政法によりますと各省各庁所管のものはそれぞれの長が、また独立機関のものはその長がそれぞれ大蔵大臣に送付することになっております。したがって、法務省所管のものにつきましては法務大臣が作成し大蔵大臣に送付するというたてまえになると思います。 そこでお伺いしますが、この予定経費要求書という現在の様式、フォームにした理由は何なのか。大蔵省の指示なのか、それとも慣例上からそうなっているのか、また、もしおわかりになればこういうフォームになった時期を御説明願いたいと思います。
○石山政府委員 お答えをいたします。 現在の予定経費要求書の様式といいますか書き方は、財政法及び予算決算及び会計令、通称予決令と申しますが、それの定めるところによりましてそれぞれ法定されたものであります。たとえば財政法におきましては、予定経費要求書は各組織別、項別にその金額を明らかにする書面を提出せよ、こういうふうになっております。それから予決令の方におきましては、その組織の中にあります部局別、事項別にそれぞれ金額を明らかにせよというふうに定められており、現在の提出書類はそれらの法令の書式にのっとってなされたものであります。
○長谷雄委員 それはわかりました。 そこで、私はこの予算書の記載方法について一言申し上げておきたいと思います。いま予算書の中の甲号予定経費要求書だけを取り上げてみたのですが、この予算書の記載方法では、いまの質疑で明らかになったように、予算書によって政府の政策目標の内容を知るには余りにも不十分だと思います。その点につきましては、いま刑事局長もお認めになったところでございますし、また同じことは先ほどの裁判所に対する質疑の中でもおわかりいただけたと思います。さらに、私はかつて当委員会でいわゆる航空機強取防止対策法の一部改正案が議題となった際、これは五十二年十一月九日でございますが、昭和五十二年度の当初予算でハイジャック防止のための予算措置は幾らなのかということをお尋ねしたことがあります。そのときに関係省庁でお答えになったところでございますが、数字を挙げて説明されたところもございますけれども、特定の予算項目には組んでいない、いろいろな項目の中に入っているのだということで答えられないという御答弁もございました。つまり、他の省庁も法務省のそれとほとんど同じような予算書の記載方法で、これは法定されているということでございますけれども、少なくとも予決令は政令だと思うのですね。 私は、政府の政策目標という立場から見て、こういう明瞭性を欠く記載方法の予算案を内閣提出の予算案として国会審議にかけるのは非常に問題ではないか、こういうものを国会にかける意図は何なのか、私には非常に理解しがたいところでございます。個々の政策目標の内容を予算書で明らかにしないという意図が、もし国会による実質的審議を拒否しようというものであるとすれば、これは国会軽視につながるであろうと思います。もとより予算書の記載方法、分類の仕方、配列の順序などには、いま会計課長からの御答弁がございましたが、いろいろな考え方があろうかと思いますが、要するに、どのような方法によるにせよ一目で判然とするようにしなければならないと私は思います。 私がここで問題にしているのは、予算書の単なる形式論だけを申し上げているのではありません。憲法七十三条五号それから八十六条に、内閣は予算を作成して国会に提出する、こう規定されております。作成して提出するという文言につきまして、日本国憲法のもとになった英文憲法では「プリペアー アンド サブミット」とあります。そして何のためにそうするかといいますと「ツーザ ダイエット フォア イッツ コンシダレーション アンド デシジョン ア バジェット」こう規定されていますね。もとより憲法の解釈としては日本国憲法の邦文によらなければなりませんが、国会中心財政主義という大原則から考えますと、内閣が予算を作成し国会に提出するのは何のためかと言えば、国会に十分な審議をしてもらうためだ、こう言えると思うのです。そのための準備行為という意味で内閣に予算編成権があるのだと、私はこう考えております。予算の部、款、項までが国会の議決事項で目以下は議決事項ではない、こういう現行法の規定も問題のあるところでございますけれども、何よりも肝心なことは国会の審議を受けやすいように、言いかえれば国民の立場に立ったところの、国民から見て理解しやすいような記載方法にしなければならない、こう私は考えております。 この点について法務大臣の所見を求めたいところでございますが、先ほどのお答えから法務省に申し上げてもちょっと何ともしがたい面もあるのではないかと思いますけれども、法務大臣も自民党所属でありますし閣僚の一人でもございますので、予算案の内容、形式のすべてにわたって私は責任があると思いますので、国会審議の対象となる予算はあくまでも予算書そのものである、こういう立場から審議の対象とするにふさわしい形式にするよう、法務大臣の方からも積極的に私は努力すべきではないか、こう思っておりますので、この点につきまして大臣の見解をお伺いいたします。
○倉石国務大臣 毎年国会に提出されます政府案は大変わかりにくいということをおっしゃる方が非常に多い、このことは御指摘のとおりでありますが、そこで財政当局も御承知のようにあれをわかりやすく概要を別冊にして議員のわれわれに配付いたしておることも御存じのとおり。それからまた先ほど会計課長から御報告申し上げました、たとえば法務省で「昭和五十五年度法務省予算(案)の概要」というようなもので一般にわかりやすく説明をするようなものをつくって配付いたしておるというような次第でありますが、ただいまのお説は財政当局に私の方の担当者から伝えさせるようにいたしたいと思います。
○長谷雄委員 続いて、第一の2刑務所等矯正機能の充実についてお尋ねをいたします。 そのうちの(1)矯正職員の待遇改善という問題につきましては、これまで何度も私は現場を視察しまして実情を調査しました。これをもとにしまして当委員会でも矯正職員の待遇改善や総合警備システムの導入などを提唱し、それが予算面に反映され前進もしてまいりました。ところが五十五年度におきましては、予算面では余りさえない状況のようにうかがえます。 そこでお尋ねの第一は、この保安機能等の充実という事項がございますが、これは対前年比で千三百万円だけふえていますね。そこで伺いますが、果たしてそれで当初目標はどの程度達成できるかどうか、もし増額内容がわかっていれば具体的な庁名もお知らせ願いたいと思います。
○豊島政府委員 お答えいたします。 お手元にお届けいたしました資料の保安機能等の充実経費の中を見ますと、これは実は二つございまして、一つは狭い意味での保安機能の充実経費でございます。もう一つは職員の教養訓練経費でございます。 最初に、狭い意味での保安機能の充実経費について御説明いたしますと、三千四百万円の増額要求をいたしております。この保安機能充実経費の中身は何かと申しますと、これはっとに長谷雄委員から御示唆をいただき、そうすべきであるという御指摘をいただいた機械化の問題でございます。五十二年当時にも五十三年当時にも、保安の充実を図るのみならず職員の安全あるいは仕事の合理化という側面から機械化を図るべきであるという御示唆をいただいたこと、大変貴重な御示唆というふうに考えております。 そこで本年度のこの関係でございますけれども、まず刑務所の関係いわゆる総合警備システムでございます。五十五年度といたしまして五庁の整備経費を要求いたしております。金額にいたしまして一億五百万円に相なります。庁を申しますとこれはB級、つまり資質のよくない者を入れております施設、これの大きな施設であります福岡刑務所、神戸刑務所、札幌刑務所、広島刑務所、横浜刑務所、この五つにつきまして整備いたす予定を持っております。実はこの計画は五十三年度から充実してきたわけでありますが、五十三年度をちなみに申し上げますと、長期のB級の施設であります岐阜刑務所、熊本刑務所、宮城刑務所、徳島刑務所、この四庁が五十三年に整備されました。それから五十四年にはLB、長期のB級のほか長期のA級とそれから大きなB級、この三種類につきまして六庁充実をいたしました。旭川刑務所、大阪刑務所、千葉刑務所、岡山刑務所、府中刑務所、名古屋刑務所の六庁でございます。それに引き続きまして、三年度目といたしまして先ほどの五庁の整備を図るつもりでございます。 なお、そのほかに工場担当職員の警備ぐつの整備であるとかあるいは護送自動車の整備であるとか、こういったものもあわせて考えております。 それから、刑務所だけでなく少年院につきましても御示唆のありました機械化の方向を考えまして、これは事故通報のための携帯用の非常通報装置、これを九庁分、一千四百万円になるのでありますが新規に計上いたしました。 さらに少年鑑別所につきましても、やはり機械化の一環といたしまして非常通報装置、これは押しボタン式で直ちに一一〇番に連絡ができ、あらかじめ録音されたテープが回りまして、そして非常通報がなされるといった装置でございますが、これを十一庁分、六百万円の要求をいたしております。 これがいわゆる狭義の保安機能充実の中身でございます。御示唆のありましたとおり、機械化については今後も力を入れていきたいというふうに考えております。 なお、職員教養訓練経費の関係でございますが、これはお手元に配りました保安機能等の充実経費の中では実は形の上では減額になっておるわけであります。つまり差額が一千三百万円の増という数字に相なっておると思いますが、先ほど申しましたように狭義の保安機能の充実のために三千四百万円の増を図っておりますので、差し引きいたしますと二千百万円の減が形の上で出てくるわけでありますけれども、これは実は一般の職員教養訓練経費の一部をスクラップいたしまして、そして若年職員の再訓練経費を考えたわけでございます。その若年職員の再訓練経費といたしましては、お手元の資料の2の(1)の説明欄の2にございます処遇体制の充実二千百万円の増額というのがございますが、その中に実は入っておるわけでございます。 以上でございます。
○長谷雄委員 お尋ねの第二は、執務環境の整備充実で一億一千三百万円対前年比で減になっておりますが、その根拠をお尋ねしたいのですが、特に行政改革で法務省は千八百五十九名をおやりになる、こうなっておりますが、うち五十五年度では三百六十六名の減が出ておりますね。そのうち百二十一名、約三分の一が矯正局関係だと伺っておりますが、そうしますと、これは総合警備システム等の導入とも関係があるように思いますので、果たしてこういう形で矯正関係ができるのでありましょうか、お尋ねいたします。
○豊島政府委員 第一の執務環境の整備充実経費一億一千三百万円の減の根拠でございますけれども、実は執務環境の整備充実経費の中には従来二種類入っておりまして、一つはいわゆる純粋の執務環境の整備なんでありますが、他の一つは収容関係の備品、たとえば収容者の被服管理、洗たく機のようなものでございますが、そういうものとかあるいは教育関係の備品であるとか、そういったものがこの中に入っておったわけでございます。その部分一億八百万円を実は矯正収容費に組みかえをいたしております。お手元の資料の中では2の(2)の説明欄の3にございます生活備品及び日用品等、増加額七億四千五百万円というのがございますが、その中に含まれておりまして、実は実質減はないということでございます。 なお、若干の減でございますけれども、一般の職員旅費の一律一〇%カットとかあるいは私宅電話の公費負担停止による庁費の減であるとか、そういったものもこの減には影響をいたしております。 それからいまの職員の点でございますが、法務省で三百六十六名の減になっておりまして、矯正局関係におきましては百二十一人の減になっておる。法務省の中での率からいたしますと三三%の減の率になるわけでありますが、実は矯正の職員は法務省の職員の中の四二%を占めておりまして、そういう率の関係でいきますと削減計画はやむを得ないものがあるというふうに思うわけであります。 それから御指摘のように、結局この減の状況で、一方では増の要求をいたしまして保安警備体制等の充実に六十七名の増員が計上されておるという状況でございまして、現在御審議をいただいておるわけでございます。差し引きいたしますと五十四人の減員という数字が出てまいるわけでありますけれども、これは矯正全体におきまして、先ほどの警備機器等の導入などによりまして合理化を図っていく、それによりまして矯正行政の遺憾なきを期していきたいというふうに考えております。
○長谷雄委員 続いて、(2)矯正施設被収容者の処遇充実、この事項は被収容者の人権に関する事項でございますので大変大切なものだと思います。しかし、それならば、いわばその裏側にいわれなき犯罪被害者がいることを忘れてはならないと思います。私たち公明党はすでに犯罪被害者補償法案を国会に提出し、この制度の創設を訴えてきております。私は、犯罪者の保護更生を世論に訴えるには、犯罪被害者との問にある処遇の不均衡の是正を図らなければならないという考えを持っております。そうでなければ刑事政策的にも公平を失する。こういう観点から私は、犯罪被害者補償制度の創設をすべきだとして、わが党の委員とともにこの委員会で何回も質疑をいたしました。これに対して昭和五十三年八月十一日の法務委員会で、私の質疑に対して当時の瀬戸山法務大臣は、次の通常国会にこの制度の創設をする法律案を提出する、こう制度の創設を確約をしました。そのことは翌八月十二日の一般紙にも報道されました。この事実は、世論がこの制度の創設を期待していたことのあらわれだと私は思います。ところが今日まで放置され、ようやく先ごろ、この国会に法案が政府から提案をされました。法案の内容自体不十分ではありますけれども、とにかく法案は出た。 そこで伺いますが、この制度創設に対する法務大臣の確約にもかかわらず、なぜ今日まで法案の提出がおくれたのか、また所管が法務省ではなく、どうも警察庁になったというぐあいに伺っておりますが、それはなぜなのか、その理由をあわせてお伺いをいたします。
○前田(宏)政府委員 お尋ねでございますが、犯罪によります被害者の方々に対しましてできるだけのことを国としてしなければならないということは当然でございまして、法務省といたしましても、詳しくは申し上げませんけれども、前々からその線で検討を進めておった次第でございます。また、その間公明党におかれまして、またほかの各党におかれましても、御熱心な質疑をいただいておったわけでございます。 ただ、これも改めて申し上げるまでもないかと思いますが、一番の問題は、その制度をつくりました場合にどこがその実施に当たるか、国あるいは地方公共団体含めましてどの機関が実施に当たるかということであったわけでございます。また内容的には、相当な多額な経費を要することでございますので、そういう財政上の措置ということもまた実質的に大きな問題であった次第でございます。 そこで、いろいろな考え方がございまして、法務省の第一次的な素案のようなものもございましたし、また現に公明党の方でお出しになっているような考え方もあるわけでございますが、最近のまうな厳しい財政事情のもとにおきまして新しい機関をつくるということもなかなか困難だということ、また、現実的に被害者の方は全国におられるわけでございますので、その地元と申しますか、そういうところでそういう事務を扱った方がよかろうというようなこともございました。そこで、各都道府県のしかるべきところで実施した方がいいのじゃないかというような考えになってまいりましたが、その場合でもいわゆる民生部門でやるとかあるいは都道府県の公安委員会でやるとか、いろいろな考え方があったわけでございます。そのようなことで、どういうふうに進めていくかということでいろいろと研究が延びたと言えば延びたわけで、おしかりを受けるわけでございが、何とか現実的にそれを実現したいということで、結局は既存の組織を利用していく方が現実的であろうという結論になりまして、今度警察庁が出しておるような案、つまり国家公安委員会のもとで各都道府県の公安委員会が実施機関になるということが一番現実的であろうというふうに、だんだんと話がそういうふうになっていった次第でございます。そういうことから、したがいまして所管も警察庁でやる。私どもといたしましても、できるだけ側面から御協力申し上げて、法案の成案を得るように努力するというような経過を経まして、先ほども御指摘のような形になった次第でございます。
○長谷雄委員 続いて、第二の国民の権利保全の強化という事項がございますが、そこの中の1登記事務処理の適正迅速化では、対前年比で二十八億一千三百万円の増。ところが「昭和五十五年度以降の行政改革計画(その一)の実施について」と題する昭和五十四年十二月二十八日付閣議決定によりますと、法務省関係の中で「ア」のところで「法務局等の出張所について、現行整理計画により昭和五十四年度中におおむね二十箇所を廃止することとし、引き続き、昭和五十五年度以降についてもその適正配置の推進に努める。」こうあります。 ところが、先ほどの登記事務処理の適正迅速化で二十八億一千三百万円増、その内訳として登記事務処理体制の充実で五億五千九百万円、その他で二十二億五千四百万円、それぞれ対前年比増となっております。 そこでお尋ねをするのですが、行政改革をやると言いながら予算がこの面でふえている、これは素朴に考えて非常に疑問ではないかと思うのです。そこで、増額をするようにした根拠、それからあわせて行政改革の実施状況について説明を伺います。
○貞家政府委員 まず、行政改革すなわち登記所の統廃合の問題でございますが、これは実は昭和四十五年十一月の閣議決定等に基づいてやっておるわけでございまして、まず、四十五年十一月二十日に閣議決定が行われまして、四十六年九月二十三日に法務大臣から、法務大臣の諮問機関であります民事行政審議会に諮問がなされまし、翌四十七年九月十四日に民事行政審議会から法務大臣あて答申がなされたわけでございます。 これによりまして、登記所の適正配置という観点からいろいろ基準を定めまして、時代に即応する登記所の配置状況というものを目指しまして適正配置の仕事を進めているわけでございまして、それはもちろん人員、予算面のむだをなくするということもその非常に大きな目的であろうかと思うのであります。要するに、人的、物的な分散ロスの解消を図る、そして経費節減を図るということは一つの大きな目的であったわけでございまして、この計画に従いまして昭和五十三年度末までに統廃合いたしました小規模の登記所、これが四百七十九庁に達しております。五十四年度におきましても、多少小規模ではございますけれども、なおこれを統廃合を続けているわけでございます。 これらの出張所を廃止いたしました結果、たとえば一人あるいは二人の庁というものは非常に少なくなりまして、たとえば昭和四十六年当初におきましては、法務局の出張所が約千五百ございました。その八割に近い千百数十庁が一人庁ないしは三人庁という状況でございましたけれども、それが現在におきましてはその割合が相当減っておりまして、まだ残っておりますけれども、職員が一人しか配置されていない庁あるいは二人しか配置されない庁というものの比率が若干少なくなっておるわけでございます。こういうことによりまして、本来支出されるべき施設関連経費でございますとか常直手当、能率備品等のいろいろの経費が著しく節約されたことは事実でございます。庁舎の新営にいたしましても、小さい庁の庁舎を一つずつやっていくということに比べまして、これは予算の面でも非常に効率的な状態になったということが言えるかと思うのでございます。 しかしながら一方、こういうふうにいたしまして機構自体は適正配置をいたしましても、事業の量と申しますか、ことに登記事務量というものは決して小さくなっているわけではございません。事業規模は依然として拡大の一途をたどっているわけでございまして、試みに数字を述べますと、ちょうどこの十年間を比較いたしますと、昭和四十四年度と五十三年度を比較いたしますと、法務局でやっております登記事件数が一・八九倍、約二倍になっておりますが、この間、登記事務に従事する職員の数というものはそれに比例して伸びてはおらない、一・一三倍という状態でございます。このようにして事務量と事件数とのアンバランスという事態は依然として残っているわけでございまして、これはいかに行政改革をやりましても事務量自体が減らないということからやむを得ない結果であると思うわけでございます。 したがいまして私どもといたしましては、まず基本的には職員の増員を図るということがございます。五十五年度におきましては純増四十六人の増員が認められているわけでございますが、しかしながら、この定員事情、国家財政の非常に厳しい状況下におきまして、増員ばかりに頼っているわけにはまいりません。そこで、いまお手元にございます資料にありますような能率器具、これは複写あるいは実地調査の自動車その他でございますが、これの充実をする。それから地図の整備、管理というものにも相当の予算を計上しております。 それから乙号事務、これは謄抄本等の事務でございますけれども、そういったものにつきまして一部の事務を民間に委託するというような経費でございますとか、その他もろもろのそういった——増員だけで賄うということになりますとこれは膨大な予算、人員を要するわけでございますので、そういったものの一部をこういった事務の合理化、能率化ということによって代替していこうという考えでございまして、確かにおっしゃいますとおり、行政改革をやりながら予算がますますふえていくではないかという御疑問ごもっともでございますけれども、これはそういった本来ならば非常に多額の、もっともっと多額の予算を必要とすべきところをこれによって節約した結果こういうふうになっておる、そしてこの経費は法務局の事務を遂行するためにどうしても削れない経費であるというふうに御理解いただきたいと思うのでございます。
○長谷雄委員 説明はよくわかりました。 次に、予算書に基づきまして歳入予算案について伺います。法務省主管歳入予算明細書の欄によりますと、諸収入のうち罰金及科料のところが対前年比で八十六億四千九百十六万五千円減額見込みになっております。減額見込みの根拠につきましては、この見積の事由及び計算の基礎という欄に、最近までの収入実績等を基礎として算出、こう書いてありますが、それだけでは判然としません。減額見込みの根拠をお伺いしたいと思います。あわせて、損害賠償請求をした場合に、その入った金はどの項目に入るのかをお知らせ願いたいと思います。
○石山政府委員 ただいま長谷雄委員御指摘のとおりに、来年度の罰金及科料の歳入見込み額が大分減っておりますが、これは説明にも簡単に書いてございますように、昭和五十五年度歳入予算のうちで罰金、科料の見積もりが、昨年の十一月までの実勢及び一昨年の実勢によります計算方式によりますと、どうしても見込み減を立てざるを得なくなった結果であります。その主たる原因は、道路交通法違反によります罰金の収入が著しく減少しておるということによるものであります。 それから第二番目の、損害賠償請求によりましてもし国が勝訴ということで入金があった場合にはどの項目になるのかという点でございますが、これは項で申しますと弁償及返納金、目で申しますと弁償及違約金、その目に最終的には整理、入金されることになります。
○長谷雄委員 次のお尋ねは運輸省と法務省に関係があると思いますが、成田の新東京国際空港襲撃事件の直後、この事件に関しまして私は衆議院本会議で代表質問をしました。 その際答弁に立った運輸大臣は、復旧に要する費用は約一億三千万円だ、こうおっしゃいました。そうして法務大臣は、損害賠償請求をするのは当然だ、こうおっしゃいました。そこで損害賠償請求権の行使をするとすれば、時効は三年でございますので、あと一年になっております。損害賠償請求についてどういう実情かを御説明願いたいと思います。
○金田説明員 お答えいたします。 五十三年三月二十六日の成田の管制塔襲撃事件に関しまして、その直後の三月三十日の本会議で長谷雄委員の方から御質問がございました。いまお話しございましたようなお答えを申し上げたところでございます。損害賠償請求をするという方針に基づきまして、現在、損害賠償額の確定のための詳細積み上げの積算をいたしておるという状況でございます。日にちが若干経過してございますが、大変複雑な機器について多種多様な被害を受けておりますので、積算に非常に時間がかかっておる。しかし、この作業の方もおおむね見通しがついてまいりましたので、早急に関係機関と調整を図りまして額を最終的に確定いたしまして、判明しております加害者に対しまして納入の告知をしていきたいと考えております。その納入告知に対しまして納入がない場合には、所定の手続を経ました上で法務省に対して訴訟による履行の請求を依頼申し上げたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
○長谷雄委員 終わります。
○木村委員長 午後一時再開することとし、この際、暫時休憩いたします。 午後零時二十一分休憩 ————◇————— 午後一時四分開議
○木村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 質疑を続行いたします。柴田睦夫君。
○柴田(睦)委員 まず定員法に関連いたしましての質問ですが、今回認められました定員は判事二十二名、書記官十六名、それから事務官の方は純減一名ということになっております。最高裁当局の当初要求を見ますと、判事が二十三名、書記官が三十一名、事務官四十六名ということですから、判事はほぼ要求どおりといたしましても、書記官は五〇%、事務官に至ってはマイナスということになっている実情です。 そこで伺いたいのは、この当初要求の根拠といいますか、最高裁当局はこれらの人員を要求して、これを実現することによってどんな裁判所にしたい、そういうような理念があったと思うのですけれども、どういう理由で要求をされたのか、それぞれの部門別にひとつお答え願いたいと思います。
○大西最高裁判所長官代理者 昨年の八月に内閣へ提出いたしました最初の予算要求のときの増員要求の数は、ただいま柴田委員御指摘のとおり、判事二十三、裁判官以外の裁判所職員が七十七でございます。最終的には判事が二十二、それから裁判所書記官が十六、裁判所事務官がマイナス一、こういうことになったわけでございますが、その理由といたしましては、お手元に差し上げました関係資料の十五ページのところに詳しく書いてございますが、判事と書記官につきましては特殊損害賠償事件、差止訴訟事件の処理、民事執行法に基づく執行事件の処理、それから覚せい剤取締法違反事件等の刑事事件の処理、労働関係民事・行政事件の処理というふうな大体五つの項目で要求をしたわけでございます。 裁判所事務官につきましては、ただいま申し上げました五つの項目のほかに、簡易裁判所における民事調停事件の処理、それから家庭裁判所における家事調停事件の処理ということで要求をいたしております。最終的には、いま申しましたように、裁判所事務官がマイナス一になっておりますけれども、裁判所事務官も、この十五ページのところに書いてございますように、三十一名の増員は認められたわけでございますが、一面におきまして、政府の方の定員削減について裁判所の方も司法行政ということで行政の範囲内で御協力できる限りはするということで、そちらの方で三十二名の減員がありましたために、合計マイナス一ということになったわけでございます。
○柴田(睦)委員 人員がこれだけあればこれだけの仕事ができて、国民へのサービスができるという観点からの要求がなされなければならないと思うわけです。いまちょっとその経過だけの説明に終わりましたが、その中で裁判官の増員についてのいわば裁判部門の充実といいますか、そういう問題についてお話しになりましたけれども、裁判部門の充実ということから見ますと、簡易裁判所の判事については何も要求されていないということですが、これは簡易裁判所の方については充足されているというようなお考えを持っておられたのでしょうか。
○大西最高裁判所長官代理者 まず簡易裁判所の受件数のことをちょっと最初に御説明申し上げたいと存じますが、この資料の二十三ページのところにございますが、民事の訴訟につきましては、過去三年見ますと少しずつふえてきております。刑事につきましては逆にずっと減ってきております。これは三年間とってみてこういうことになっておるわけでございますが、もう少しさかのぼって、たとえば十年くらい前と比べてみますと、必ずしも全体としてふえておるとは申せない。民事についても全体として減っておりますし、刑事についても全体として減っておるというふうなことから、まず増員をお願いするところとしては、先ほど申し上げましたように、地方裁判所の特殊な事件についての審理の遅滞等が一番の問題である。したがいまして、そういう一番問題のところから重点的にまずお願いするということでお願いをしてきたわけでございまして、簡易裁判所は全然必要がないというふうに決して申し上げるわけではございませんが、相対的に見れば、はるかに地方裁判所の方が大変であるというふうな認識から出ておるわけでございます。
○柴田(睦)委員 ただ簡易裁判所の場合は、いわゆる駆け込み裁判所といいますか、一番人民と密着しているところですから、いろいろな仕事があるわけです。ただ、・最高裁判所への統計ということではそういうことになるかと思うわけですけれども、単に民事、刑事だけの裁判問題ではない、調停だけの問題ではないといういろいろな問題があると思うわけです。 下級裁判所の裁判官の欠員状況を見てみますと、判事が二十名、判事補が三名、簡易裁判所判事四十一名、計六十四名であるわけです。そういう中で簡易裁判所の判事の欠員率、定員に対する現在の欠員の割合は五十二年が四・四%、五十三年が四・〇%、五十四年が五・六%ということになっているわけです。簡裁の裁判官非常駐庁、これは全体で百五十二庁という実態にあります。こういう実情の中で、最高裁判所はやはり欠員をなくす努力をしなければならないと思うのですけれども、欠員をなくさなくては、長官のあいさつにもいつも出てまいります適正迅速な処理ということが、欠員があってもできるということであるならば結構ですけれども、いまの簡易裁判所の判事の欠員が下級裁判所の中でも最も多いという問題を踏まえて、この問題に対する最高裁当局の将来的な見通しも含めて、具体的に言えばいつまでにどのようにして充足するか、こういう計画についてのお答えをいただきたいと思います。
○大西最高裁判所長官代理者 裁判官の欠員につきましては、資料の十六ページにございますように、昨年十二月一日現在で判事が二十、判事補が三、簡裁判事が四十一、こういう欠員になっておるわけでございます。この十二月という時点は、柴田委員御承知のとおり、判事、判事補については四月に埋まるというのが常態でございますし、簡易裁判所判事については、退官者等で逐次埋められるという面もございますが、一方、裁判所法四十五条に基づく選考によって任命する場合は夏が主たる時期になるわけでございます。 そういう意味で、昨年十二月現在でこういうふうな欠員がありますけれども、今回の増員をも含めましてできるだけ充員に努めたい、判事、判事補については大体充員できることは間違いないと存じますが、簡裁判事につきまして夏までにどのくらいの退官者が出るかということとも関係しますが、これにつきましてもできる限りの充員を図りたい、かように考えております。
○柴田(睦)委員 そういう定員の問題があるわけですから、欠員は埋めるということで計画的な取り組みをやっていかなければならないと考えますので、その点申し上げておきたいと思います。 次は、裁判所等の裁判官の人事交流の問題についてお伺いします。最近、裁判官が法務省及び他省庁へ転出するということが行われております。そこで、法務省と裁判所判事の人事交流の問題ですが、過去十年間の実情はどういうふうになっているのか。これは裁判所から法務省に行った場合のその内訳、訟務局だとかあるいは地方検察庁だとか、転入したポスト別にお答えを願いたいと思います。
○勝見最高裁判所長官代理者 十年間につきまして資料を持ち合わせてまいりませんでしたので、まず五年間ということで御勘弁いただきたいのですが、訟務検事と裁判官の交流の問題でございます。これも一応定義づけさせていただきますと、最初に裁判官として任命された方で現在訟務検事として働いておられる方というふうに定義づけさせていただきますと、現在三十八名おります。交流の態様でありますが、五十四年度から逆算させていただきます。五十四年度は訟務の方へ七名、裁判官の方へ七名、五十二年度は訟務の方へ十名、裁判官の方へ九名、五十二年度が訟務の方へ五名、裁判官の方へ五名、それから五十一年度が訟務の方へ六名、裁判官の方へ四名、五十年度が訟務の方へ九名、裁判官の方へ四名、こんなような交流の状況でございます。
○柴田(睦)委員 それから、裁判所から他省庁へ転出している裁判官がいるわけですが、この実情はどうなっているのかお伺いします。
○勝見最高裁判所長官代理者 裁判官として任命された方で法務省以外で現実に働いていただいている方は合計十名おります。内訳は内閣法制局二名、公害等調整委員会三名、国税不服審判所一名、外務省一名、裁判官訴追委員会一名、弾劾裁判所一名、日本国有鉄道一名、以上でございます。
○柴田(睦)委員 その人員は、過去の五年間ぐらい見た場合に変化はないわけですか。
○勝見最高裁判所長官代理者 手元に正確な資料がございませんで恐縮でございますが、内閣法制局それから国税不服審判所、訴追委員会、この関係は前から、最初裁判官に任命された方で行っておられたと思います。それから公害調は設立当初、何年になりますか当初要請がありまして、いわば出向してもらっております。それから外務省と申し上げましたのは、現実に働いているところという趣旨で申し上げたのでございますが、この人は法務省の民事局へ出向している者がさらにアタッシェとして外務省という趣旨でございます。あと弾劾裁判所は三年前でございます。現在三年目だったと思います。国鉄に行っている者も三年目でございます。
○柴田(睦)委員 訟務検事と判事、判事補の交流ですけれども、これはどういう目的を持ってやられておるのか、最高裁当局と法務省と両方にお伺いします。
○勝見最高裁判所長官代理者 私ども、訟務検事に限りませんで、当初裁判官として任命した方々につきまして、いわば裁判官以外の仕事をやっていただいておるわけですが、一般的に申し上げまして、やはり裁判官の経験を持った、裁判官としての素養を持った者に対するいわば需要といいますか、それが必要であるという認識をまず第一に持っております。 一方、私どものサイドから申し上げますと、裁判官が裁判官以外の仕事をある一定期間やっていただくことは裁判官として大成していただくためにプラスであるという面もある、ひいては法曹一元というとちょっと大げさな表現になるかもしれませんが、そういう法曹一元の理念にも合致するというようなことから、従来から御指摘のいわゆる人事交流を行っているわけでございます。
○枇杷田政府委員 訟務のやっております仕事は、御承知のとおり国を代理いたしまして法廷活動をするわけでございます。したがいまして、そのような活動をする者は法曹資格を有する者が中心になって当たるということが望ましいわけでございます。 ところが、法務省固有の法曹資格を有する者というのは大体検察官ということになるわけでございますが、訟務で扱います事件は民事、行政関係の訴訟でございますので、検察官の中からそういう事件に活躍できるという者はなかなかそろえがたいという実情がございます。したがいまして、民事事件に堪能な裁判官の方からおいでをいただいて、そして円滑な訴訟遂行に当たりたいということで、裁判所にお願いをして来ていただいておるという次第でございます。
○柴田(睦)委員 訟務検事が訴訟において国を代理するということは言うまでもないことですが、法務省の資料によりますと、訟務検事中に裁判所の判事及び判事補などの経歴を持っている人の割合が現在で七五%ということになっております。過去の方を調査してみますと、昭和四十年五月一日現在で五十六名中九名、一六%であったわけですが、昭和五十二年には七十八名の中で三十二名、四一%になります。 こうして訟務検事の中に裁判官出身の人を入れる、いわばこれが訟務体制の強化とも言えるかと思うのですけれども、こうした対策というのは、国が相手になる裁判において、いやな言い方をすれば裁判官を訟務検事にすることによってその裁判において国側を有利にしよう、有利に展開していこう、こういう考え方があるのじゃないかと思うのですけれども、いかがですか。
○枇杷田政府委員 裁判官に訟務検事としておいでいただいている理由は先ほど申し上げたとおりでございますが、最近になりまして若干その数がふえておるというのは、御承知のとおり国を当事者とする訴訟がふえて、しかも非常に大きな事件がふえておるわけでございます。したがいまして、そのような事件を担当するのにふさわしい法曹資格を有する者ということになりますと、検察庁の中からはなかなか得がたいというふうな面がございますので、その需要を埋めるためにということで裁判所の方にお願いをいたしておる次第でございまして、何かいま言われましたような意図的なものを持っていることは毛頭ございません。
○柴田(睦)委員 法務大臣官房の訟務部、現在は訟務局ですけれども、そこが発行しております「訟務月報」二十巻の七号、これに昭和四十九年五月九日から十一日までに開催されました法務局長・地方法務局長会同の資料が載っているわけですが、それを見てみますと、第一課長の説明の中に「ささいな国の行政のミスを捕えての国家賠償事件の著しい増加、あるいは一時的に鎮静している税務事件が民商会員の急増によって再び増加の傾向に転ずるであろうと予測される現状」など「今後の訟務事件の動向は楽観を許さないものがある」と述べておりまして、さらに「以上のような訟務事件の動向に対処するため、官房人事課あるいは最高裁事務当局の深い御理解によりまして、ここ数年にわたり優秀な若手訟務検事の増員をすることができたわけであります」 こういうふうに述べております。裁判官の欠員で非常に忙しい裁判所がある、そういう裁判官が足りないということが問題になっているときに、最高裁としてはこの訟務部門に深い理解をして裁判官を送り込む、その必要性というものがあるのかどうか。先ほどちょっと説明がありましたが、そういう点も踏まえてもう一度お答え願いたいと思います。
○勝見最高裁判所長官代理者 私どもがいわゆる人事交流を図っておりますのは先ほど申し上げたとおりでございます。そこに意図的な何物もないことは先ほど司法法制調査部長が申し上げたと全く同意見でございます。 それから、ただいまお読み上げになりました訟務局の第一課長のあいさつでございますが、この種の人事交流というのはえてしてなかなかうまくいかないというのが現状でございます。実は私どもの立場といたしましては、先ほど申し上げましたような趣旨で行っていることでございますので、やるからにはスムーズに行うようにということを心がけておりまして、事務的にはスムーズに行わしていただいているというふうに考えております。その辺をとらえて、まあいわば私どもに対する一種の感謝の言葉かと思いますが、その前段の事件云々ということ、事件の中身と絡めて云々という趣旨ではないというふうに、私先ほど拝承いたした次第でございます。 なお、裁判官全体の人員との問題でございます。この点は確かに一時期裁判官が不足しているという時代に、いわば裁判官として働ける人を外に出しているではないかという御批判はずいぶん前からいただいているところでございます。先ほどの人事交流の積極面と手元の人員の兼ね合いとの問題かと思います。 〔委員長退席、山崎(武)委員長代理着席〕 幸いにして、最近ようやく判事補をある程度の数を年々採用してまいりまして、判事の数がおいおい充実してまいりましたので、数の上で一時ほどの窮屈さということはございませんが、その点は確かに御指摘のとおり、現在の手持ちの現有勢力と外に割く勢力とのバランスの問題かと思いますが、これから私どももその点は十分慎重に考えていくつもりでございます。
○柴田(睦)委員 では、その同じ年の六月二十日と二十一日開催されました法務局の訟務部長会同、ここで官房参事官が説明しているのですが、ちょっと読みますと「昨年の打合せ会でも、私、裁判官の仕事振りの一端を御紹介いたしましたが、今日も、これに少し触れたいと思います。なぜ裁判官の仕事振りを何度も紹介するかといいますと、」こういう前置きをしまして、その理由を二つ挙げているわけです。一つは「裁判官の仕事振りの中に、法律家の仕事の在り方の問題が含まれている」ということ、特に二番目が大事だと思うのですけれども、「我々の仕事は、最後のところ法廷で決着をつけることになるので裁判官はどんなことをしているかについて無関心はあり得ない」こう述べているわけです。そしてさらに「私が訟務部で御厄介になっている間は、毎回裁判所の仕事振りを少しずつお話する」としているわけです。 以下、裁判官がどういう発想をするかなどを述べているわけですが、結局これを見てみますと、裁判官としての経験を披瀝しながら、裁判官の心証形成の過程といいますか、手のうちを披露しているということになるわけです。そういう面が訟務検事あるいは訟務局の中において行われているという問題について、最高裁はどう受け取っておられますか。
○勝見最高裁判所長官代理者 恐らく裁判官の経験を持った方がいわば後輩の指導に当たってのくだりだと思います。ただ、御指摘の具体的な事件について心証形成を途中においてどうのこうのというのは確かに慎まるべきことだと思いますが、裁判官一般の考え方としてこうなのだということを話しすること自体は、そう支障のあることではなかろうと思います。 この点は、大変例が悪いかもしれませんが、退官した後弁護士をやられておられる方々も、いわば当事者として裁判官の心証形成、心の動きというものを自分の経験を踏まえて訴訟活動をやっておられると思います。そういうことをねらって、わざわざ裁判所の方で法務省からの要請で人を送って云々という趣旨では毛頭ございませんので、それぞれの立場で与えられた仕事を完全に遂行するための一つの努力といいますか勉強といいますか、そういうふうに御理解いただければというふうに考えます。
○柴田(睦)委員 弁護士なんかの場合でしたら、もちろん判決などを読みながら裁判所の心証形成過程の勉強も積んでいきます。それから、自分が経験した上からまた経験と勉強を積んでいくわけですが、その点、裁判官をやった人が今度は国側の代理人をやる訟務検事に対して話す場合、そういうこととはちょっと質が違ってくると思うわけです。 ですから、訟務検事として裁判官に経験を積ませるということを言われておりますけれども、それにとどまらない面があると思うのです。現実の問題として、ちょっと大臣にも聞いていただきたいのですが、国側の代理人をやっていた人、きのうまでは国側の代理人として法廷に出てきて相手になっていた人、こういう人が次のときに行ってみると今度は裁判官席に座っている。こういうことになりますと、国を相手にして裁判を起こしたような人たち、それから裁判全体の問題からいたしまして、国民に不信感というものが生じてくるのではなかろうか、これが人情ではなかろうかというようなことも考えるのですけれども、法務大臣はそういう問題についてはどうお考えですか。
○倉石国務大臣 私は、裁判官それから検察を見ておりまして、非常に厳正公平に不偏不党で事柄に対処しておっていただける、そういうふうな確信を持って信頼をいたしております。
○柴田(睦)委員 いま私が言っておるのは、結局国側の代理人、国側の主張をするそういう立場でやってきた人、そういう人たちが今度は——相手方の方にも当事者がいるわけです、あるいは弁護士がついて争っているでしょう。そういう争いをしていた、国側の主張をしていた人が今度は裁判官になる、こういう場合のことを言っているのですけれども、そういうことに対して裁判官、検察官が不偏不党、厳正公平、こういうことでは解決しない問題があるわけです。それぞれの当事者としての立場で主張してきた人が裁判官になれば、そういう裁判をするのではないか、こういう国民の疑念というものは払拭できないと思うわけです。現実に訟務検事時代に国側の代理人であった者が突然同種の事件に関係する、裁判官として配属されるということもあるわけです。 その一つが、これは新聞に出ましたけれども、クロロキン訴訟の問題であります。クロロキン訴訟に関係したある判事は、実はクロロキン訴訟の担当訟務検事をやったことがあるわけですけれども、この人が今度はクロロキン訴訟が係属している東京地裁の民事の第二十五部に配属になって、弁護団がそれはおかしいという抗議をしたということが新聞に出ておりました。こういう点は裁判官は独立であるということを言っても、やはり同じ部にいるということになれば、裁判官の数というものは同じ部においては非常に限定されているわけですから、精神的、心理的な面から見てみましても国民からは不明朗な感じがすると思うのです。こういうことは国民に対する裁判の信頼という上でもまずいのじゃないかと思うのですが、この点最高裁当局また法務大臣はどうお考えでしょうか。
○勝見最高裁判所長官代理者 釈迦に説法的になりまして大変恐縮でございますが、法曹一元が非常に高く叫ばれておりましたし、また現に叫ばれておるわけでありますが、その前提といたしまして、やはりお互いの立場を守る、それからそれぞれの職責において良心に従って仕事をするという前提が法曹一元の前提になろうかと思います。私どもといたしましては、あくまでも裁判官としてはその良心に従って仕事をすることを期待しておるわけでございます。 具体的な仕事につきまして、かつて代理人として関与しておればそれから当然身を引かなくちゃいけない、これはまた制度的にそういう仕組みになっておるわけでございますので、その点はひとつ誤解のないように御理解いただきたいと思います。ただ、先ほど御指摘の具体的な東京地裁の民事部の構成の問題は、この席で余り四角張った議論を申し上げるのは恐縮でございますが、その裁判体の構成員にはなっていなかったようでございまして、その意味では法律的に問題がなかったわけだと私どもは考えております。しかし御指摘のように、当事者側の信頼を損なうようなことがあれば、これはまた一つの問題でありますので、その辺の部の構成等々につきましては十分配慮いたすように、各裁判所が関心を持ってもらうようにお話ししたいというふうに考えております。
○柴田(睦)委員 前段の方は、私も前提として、その事件に関与してはいないけれども、数名の裁判官の部の中にいままで代理人として同じ事件をやってきた人がいるということ自体が問題だと言っているわけです。いまの最後の方の答弁は、そういうことが結局国民から見て疑惑を生じるということで、人事配置の面で考慮しなければならないという答弁がありましたので、前提は同じことで出発しているわけですから、そういうことで出発しなければならないというように付言しておきます。 ついでに、これは日弁連の方で出している本の中にあるのですけれども、行政と裁判の癒着の危険性という指摘をして、事例として宮老齢福祉年金訴訟という事件がある。これは有名な事件ですけれども、岡山県の七十八歳の老人の宮氏が、国民年金法による恩給が支給されていることを理由として老齢福祉年金が支給されないことを定めた同法七十九条の二第五項、六条一項は憲法十四条及び二十五条に違反して無効であると国相手に争っている事件である。第一審の東京地裁は昭和四十九年四月二十四日原告の請求を棄却したわけです。これに対して控訴があって、今度は東京高裁の第九民事部に係属するわけですけれども、裁判長は、ちょっと省略いたしますけれども、訟務畑の経験を持って、いわゆる朝日訴訟の第一審における国側の指定代理人であった。また陪席判事、これは名前は書いてあるのですけれどもあえて言いませんが、陪席判事はやはり訟務検事を務めて、朝日訴訟においては上告審において国側指定代理人として意見書、答弁書を提出して弁論をしている。 この宮訴訟、朝日訴訟のいずれも、憲法二十五条の生存権をめぐる、生存権の解釈を中心争点とするいわゆる生存権訴訟として非常に類似している事件であるわけです。ここで、かつて国の代理人として朝日訴訟において政府の見解を代弁した者が、これは真っ向から対立しているのですから、政府の見解を代弁した者が今度は裁判長、右陪席として事件の審理を担当するということは、偶然であるにしても裁判の公正に対する信頼の上で国民の疑惑を招くおそれのあるものと言えよう。この事件については、宮氏が二人の裁判官に対して回避勧告を行って争っているということがあるわけですけれども、これに対して当然であろうという見解が述べられていますが、こういうふうに、現実に国側の代理人として訴訟を担当しあるいはその中で代理人として意見を述べた人が今度は裁判官になる。そういう場合に、これは意見を述べるということはやはり信念を持って述べるわけでしょうから、今度はその人が裁判官になった場合に、その考え方というものがそんなに簡単に変わるわけではないわけですから、こういう人事配置というものは厳に慎しまなければならないと考えるわけです。 次に、昭和四十九年ごろから判事及び判事補と捜査、公判担当の地検検事との人事交流が行われているわけですが、実情はどのようになっておりますか。
○勝見最高裁判所長官代理者 この点も何年から行われていたというものでもございませんので、一般のいわゆる判、検事の交流というふうに御理解いただきたいと思うのではございますが、現在、裁判官として任官された方でいわゆる捜査、公判検事として働いておられる方は、私どもの調べでは六名ございます。現実の動きをまた逆に昭和五十四年度から申し上げますと、五十四年度は検事へ一名、裁判官へ二名、それから五十二年度は検事の方へ三名、裁判官の方へ五名、それから五十二年度は二名と二名、以上のような形になっておりまして、その年度ごとでいろいろ差がございます。検事で任官された方でも中途で裁判官に転官したいという方もおられますし、御指摘のように裁判官の方から検事の方へ転官される方もあるというふうに御理解いただきたいと思います。
○柴田(睦)委員 修習生を出て裁判官になった人を地検の検事すなわち捜査、公判担当の検事にするということがやられるようになったのは、その前に本人の希望があってかえるということはあるでしょうけれども、そういう人事交流が地についたといいますか、いつもやられるようになったというのは大体昭和四十九年ごろからだと思うのです。そして私が見たところでは、そういう組織的なものは四十九年以前には見当たらないと思うのですけれども、いかがでしょうか。もし四十九年ごろからそういう計画的に行われたということであれば、その目的もお伺いします。
○勝見最高裁判所長官代理者 この点につきましても、冒頭に申し上げましたように、計画的にというお言葉の内容の問題でございますが、刑事裁判官として検察の事務を知っていただく、あるいは検察官として刑事裁判官の事務を知っていただく、このことは戦前のことを対比に出すこと自体はあるいは全然お答えにならないかと思いますが、一般論としてはあってもおかしくないし、むしろ考えようによっては、私どものサイドから言いますと刑事裁判官として大成していただくにはプラスであるというふうに考えられる面もあるわけでございます。したがいまして、この種のいわゆる捜査検事との交流、この点につきましても決して消極の評価をしているわけではございません。
○柴田(睦)委員 当時の新聞報道によりますと、これは四十九年三月二十九日付の読売ですけれども、 最高裁と法務省は、判事・検事の人事交流を図るための折衝を進めてきたが、二十八日までに基本的な合意に達し、四十九年度から実施することになった。合意の内容は1交流した判・検事は、三年をメドに元の判・検事の身分に戻ることができるようにする2とりあえず四月一日に大阪地裁勤務二人、東京地裁勤務一人、計三人の判事補を東京地検検事に転出させる一というもの。 今度の措置は1判・検事双方にとって、異なる分野で経験を積むことは、視野を広げ、相手に対する良い意味での理解を深めることができる2そのためには、いつでも元の身分に戻れるよう保証した方が、交流もスムーズにできる——という認識が、最高裁と法務省で一致した結果、実施することになった。 これは新聞報道ですけれども、この法務省と最高裁の合意、こういうものがあるのかどうか、あればどういうものかお伺いします。
○勝見最高裁判所長官代理者 御指摘の当時そういう話のあったことは聞いております。ただ、合意の内容が文書でどうのこうのという趣旨ではございませんで、当時の担当者同士が、先ほど私の方から申し上げたような趣旨で、これは積極面を考えればある程度の交流というものをやったらどうかという話はあったようでございます。したがいまして、その間の年限とか何かというのは、事実上訟務検事を含めまして大体三年ぐらいがめどでございますので、特にその関係で文書の交換というようなことはございません。
○柴田(睦)委員 捜査検事に関して調べてみますと、やはり三年ごとに確実に入れかわっているというのが現状であるわけで、そういう文書はないとおっしゃいますけれども、事実上そういうふうな話になっている、あるいは三年間だけ行ってくれということで本人の同意を取りつけて行かせる、こういうことがあるのではないかと思うわけです。 新聞報道で見る限りでは、「相手に対する良い意味での理解を深める」と言っているわけですが、これは裁判官と検事相互の理解を深めるということであるわけですけれども、われわれ危惧するのは、裁判官の独立を侵す、そういう危険な面もあると思うわけです。たとえば、東京地裁の広報の二百十一号で、捜査検事を経験した判事がその感想を述べているのですけれども、これを見ると 私の印象では起訴は一〇〇%に近い有罪の確率がある場合にのみなされているように感じました。すなわち、少々無罪の可能性があったとしても、捜査を遂げた以上、起訴し、判断を裁判所に任せるという考えはなく、有罪を確信した場合のみ起訴している実務が諸外国に例を見ない有罪率九九%を超えるという結果を生じさせているのだと思いました。 これは個人的な感想であるわけですけれども、私から言えば、裁判官から検察官になって捜査検事あるいは公判検事をやった、扱った事件というものはやはり限られたものであったでしょうし、なったばかりの検事にそんなむずかしい問題をやらせることはないわけですから、どちらかと言えば単純な事件、そうしたものしか経験がないというふうに思うわけです。 問題は、検察庁に入って一部を見て、すべてがそうだ、特に検事は一〇〇%有罪の確信を持って起訴するのだから、裁判所としてもやはりそれが前提になって、現場を調べた検事が有罪だという確信を持って起訴するのだから有罪が本当であろう、こういう前提に立って裁判をされるというようなことになると、これは非常に重大な問題になって、こういう交流で得られる感想というものが単に個人だけの問題ではなくなるわけです。こういう点、最高裁当局はどう受けとめていらっしゃるかお伺いします。
○勝見最高裁判所長官代理者 あるいは私の答弁の範囲外かもしれませんが、刑事裁判官としての心構えというのは、あくまでも法律と良心に従って裁判をやるべきでありまして、起訴されているからもう九九%以上クロだという心証を持って法廷に臨む、事件に臨むというのは間違いであるというふうに私は思います。しかし、ただいまお読み上げの点は、刑事訴訟法の教科書等々においてすでに言い古されていることでありまして、そのこと自体をもって、いわば検事を経験した裁判官がいけないというふうにおとりいただくのはいかがかと存じます。 ちょっとつけ加えさせていただきますが、四十九年ごろそういう取り決めがあったのではないかというお話でございましたが、前からそういうお話がありまして、そういうふうにやってみようかというふうなことは聞いております。また、繰り返しになりますが、三年というような取り決めということでなくて、大体三年ぐらいで戻るということで現実には運用いたしているような状況でございます。
○柴田(睦)委員 だから、裁判官に勉強のために捜査を担当する検事をやらせる、こういうことについては、私は、弁護士の経験から考えてみましても非常に疑問を感じるわけです。検察庁の中に入れば、やはり検察庁の組織の一員として活動する、そういう中で検事の心情というものに非常に似たようなものを感じる。私、若いころ弁護士をやっていて、先輩の裁判官なんかで、判事や検事は公務員だから同じ考えを持って進むのは当然だというようなことを言う裁判官の発言を聞いて驚いたこともあったわけですけれども、そういう再教育、検察官的な物の見方を裁判官にさせるということになりはしないか、こういうことを危惧しているわけです。 そういう点から、日弁連なども行政と裁判の癒着を生むおそれがあるということを指摘をしているわけですが、捜査検事までやらせるということについて、最高裁としてはあるいは法務省としては、改善しなければならない問題がある、注意しなければならない問題があるという点は考えていらっしゃらないかどうかお伺いします。
○勝見最高裁判所長官代理者 繰り返しになって大変恐縮でございますが、ただいまの場合は刑事裁判官に限定されるわけでありますが、裁判官として大成していただくためにいわば裁判以外の仕事をやる機会を与えられるというのは、本人にとっては非常なプラスではないかというふうに繰り返し申し上げたところでございます。 特に刑事の裁判の場合に、それでは捜査を経験させてどういうデメリットがあるかということになりますと、いささか私の方から申し上げるのは答えに窮するわけでありますが、これも一つのプラスの材料ではないかというふうに私どもは考えます。決して、当初から癒着というようなことを考えた上での現在の交流、これは処遇も同じでございますけれども、そういう趣旨は毛頭ございません。
○枇杷田政府委員 私どもの方でも別に意図的なことを考えておるわけでは毛頭ございませんで、お互いに経験、体験の範囲を広くし見聞を広めることが大きな法曹に育っていくために役立つであろうということで実施をいたしておるわけでございまして、もとより私ども法曹の各人は、それぞれ良識と自覚を持っておりますから、妙な結果が生ずるというふうなことは考えておりませんで、むしろ有益になるところが多いのではないかという考えでおる次第でございます。
○柴田(睦)委員 判事の経験を積むということを大義名分にされるわけですが、いわば法曹一元化ということにもつながっていくかと思うのです。そうしますと、裁判官に弁護士の経験を積ませる、弁護士の場合は民事も刑事もやる、しかも国民と密着している、そういう意味では弁護士をやらせることが一番豊かな経験を積むことになるのではないかと思うのです。 弁護士の任官状況を見てみますと、五十二年一名、五十三年四名、五十四年も一名という実情で、裁判官と検察官の交流と比べてみますと非常に少ない状況にあるわけです。そういう意味で、判事、検事の交流が、その結果として与えられるものを考えてみた場合に、またそれが単に経験を積むということであれば、判事、検事よりもむしろ弁護士の経験をやらせた方がいいということになると思うのです。そういうことから、いろいろ文書などを見ながら、この交流問題についての国民の疑念について申し上げた次第です。「司法権独立の歴史的考察」という本を見てみますと、これは戦前の話ですが、先ほど戦前からもありましたと言われましたけれども、戦前の昭和十三年の思想実務家会同で、当時の裁判官が 無論、検察と裁判は別個の立場におるのでありますから、おのおの範囲を侵さないようにすることが必要である。しかしながら、いずれも国家機関であって、同一の目的を持っているのでありまするから、究極において同一の目的を達成しようという機関でありまするがゆえに、社会の誤解を受けるということを要心しつつ、連絡を緊密にしなければならぬ、こういうように考えているのであります。 こう述べているのですが、現在の人事交流がこういう戦前の状態に立ち戻っているのではないか、そういうきっかけになるのではないかという危惧が生じるわけです。現在の人事交流が戦前のこの考え方とは違うのだというのであればまた別ですけれども、これとどう違っているのか、その点をお伺いします。
○勝見最高裁判所長官代理者 ただいまお読み上げになりました文言は、どういう機会にどういう方がおっしゃっているかよくわかりませんけれども、現実に刑事事件一般についてお互いの連絡というふうなことであれば現在も行われているところでございまして、内容が具体的な事件について判事と検事がいわば一体となるべきだという趣旨であれば、当時といえどもそれはおかしな言い方ではなかったかと思います。現在においてはもちろん考えられないことだというふうに思います。どのような機会にどういう人が言われたのかよくわかりませんので、これ以上のコメントは差し控えさしていただきます。
○柴田(睦)委員 いまの点は、昭和十三年の思想実務家会同における東京控訴院刑事部長、判事、名前は抜いておきますけれども、思想実務家会同において、いわば判、検事は一体だ、こういうことを言っているわけです。だから連絡もちゃんと緊密にやらなくちゃならない。戦前は確かにそういう面があったと思うのです。いまの判、検事交流というのは決してそういうことになってはならないということを私は強調したいわけです。 ちょっとまたほかの質問を用意しておりましたが、時間が参りましたので、きょうはこれで終わります。
○山崎(武)委員長代理 横山利秋君。
○横山委員 先般総括的な御質問をして、そして大臣以下御意見を伺ったわけでありますが、実感を得るために、この問名古屋の家庭裁判所、簡易裁判所で、つぶさというわけにはまいりませんでしたけれども、ひざを交えて責任者を初め皆さんと懇談をしてまいりました。短い時間でございますから、その経験並びに結論を全部申し上げるわけにはまいりません。 まず家裁でございますが、いまも質問がありましたように、家裁というところはきわめて普通の裁判所と違った、いわゆる家庭的な雰囲気、そしてまた数々のケースを取り扱っておるところでありますが、各所の家裁がどうであるかは別といたしまして、そういう内容を持っておる仕事であるにかかわりませず、入ってまいりました雰囲気が、枯れかけの植木が一本玄関に置いてあるだけで、奥さんやおばさんが子供を連れて入っていったら、もっとやわらかい雰囲気で率直に意見が言えるような、そういう雰囲気に家庭裁判所をするべきではないか。これは聞いてみたら、冗談話でございますが、予算にもありますので、こういう話でございますが、最高裁として、家庭裁判所の雰囲気をもう少しいろんな知恵をこらして変えたらどうか。絵も、これはいい絵ですよと言っていましたけれども、余りいい絵だとは思わぬのです。ちょっとした工夫で、何もいい絵でなくても、たとえば子供の絵が体裁よく飾られるのも一つの方法であろう。駆け込み寺とは言いませんけれども、何か家庭的な雰囲気を出すことに知恵をこらしたらもっと感じが違ってくるのではないか。これは意見でありますが、そういう工夫なり努力なりというものは考えられたことがあるのでしょうか。
○原田最高裁判所長官代理者 家庭裁判所というところは、平和な家庭の建設、健全な親族共同生活の維持、あるいは少年の保護、健全育成を目的にしておることは委員御存じのとおりでございますが、それを端的にあらわすものといたしまして「家庭に光を 少年に愛を」というようなモットー、あるいは「家庭に平和を 少年に希望を」というようなモットーを掲げておるわけでございます。家裁の門をくぐってこられる方々は、あるいは悩み、あるいは迷い、あるいは痛みを感じてこられる方がほとんど大部分でございますので、家裁に職を奉ずる者といたしましては誠実な態度をもって接する、そして少しでも親しみのある身近な裁判所としてのイメージを抱いていただくように努力する、これは長年の積み重ねにもよりましょうが、一般的に家裁の職員には定着をしておるというふうに考えておる次第でございます。 そういうことで、その家裁の目標あるいはそれに従事する家裁の職員一般の気風というものがないまざって、現在の家庭裁判所はやはりやわらかい雰囲気は出てきておるのではないかというふうに考えるわけでございますが、それをやはり委員御指摘のように、少しでも親しみのある雰囲気が出せるように形づくりをする必要もあるというふうに考えるわけでございます。まだまだ手だてが少ないのではないかというおしかりでございますが、少しでも威圧感のないような建物にするのが望ましいわけでございますが、現在、特に最近におきましては、外観とかあるいは建物の色というようなものにも配慮が加えられているようにも思いますし、また、たとえば審判廷のカーテンはレースのカーテンにするとか、あるいは当事者あるいは関係者によりましては乳幼児を抱えてこられる方もおありなものでございますから、ベビーベッドをしつらえてあるとかいうようなことで、いろいろの工夫、配慮を加えておるわけでございます。委員の御趣旨に沿うように今後も一段の工夫を積み重ねてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
○横山委員 ともあれ、私の第一の結論は、家庭裁判所の環境整備に特段の工夫をしてもらいたい、これが第一であります。第二番目に、家庭裁判所の中における特に少年問題であります。きょう配付をされました「自由と正義」に中部弁護士連合会の定期大会報告があり、この点についてきわめて具体的に第一決議をしています。その提案理由をちょっと読ませていただきますと 去年家庭裁判所は三十周年を迎えた。家庭裁判所発足と同時に施行された新少年法は、旧少年法時代の少年処遇に対する反省と、新憲法の基本精神から、家庭裁判所に、少年問題の中心的役割を負わせ、審判の場より警察検察その他行政機関の影響を排除し、教育的福祉的観点から少年の処遇を決定できるようにした。 ここに、家庭裁判所は、単に、「司法的機能」のみならず、「ケースワーク的機能」をも併せもった新しい裁判所——いわば開かれた裁判所——たる特色をもち、その運営の基本理念として「家庭裁判所の独立的性格、民主的性格、科学的性格、社会的性格」が、また、その「社会福祉的機能」が強調されてきた。 家庭裁判所の「ケースワーク的機能」とは、少年事件については、試験観察や補導委託に象徴されるように、非行少年の処遇にあたり、民間施設やボランティア活動など一般社会との有効な協力体制を必要不可欠とするものであり、このような活動を通じて、家庭裁判所が、少年問題につき、中心的役割を演ずることが期待されていたのである。 その役割を全うするため家庭裁判所については、少年審判にふさわしい素養を具えた裁判官、家庭裁判所調査官の養成等、その充実が発足当初から強く要請されてきたが、家庭裁判所の少年審判の現状は、三十年を経過した今日においても改善されていない。 即ち、大多数の家庭裁判所は、いまだ独立の庁舎ももたず、裁判官も、専任者は極めて少く、地方裁判所裁判官と兼務する者が多い。実務家の中からも、このような現状を「少年事件は、片手間的な地位に押しやられている。」と憂慮する声が聞かれている。 また、日本弁護士連合会及び東京弁護士会が昨年実施したアンケート調査においても、「裁判官の経験不足」や「専任裁判官の必要性」が強く指摘されており、当連合会の実施した名古屋高等裁判所管内の各少年事件担当裁判官の配置状況の調査からも、かかる傾向が実証されている。 また、ケースワークの第一線に立つべき調査官についても、人員の不足、予算の制約と相俟って、従前行われていた少年の自宅訪問、現場調査等社会調査を中心としたケースワーカー的活動が次第に不活発となり、家庭裁判所へ、少年、保護者を呼び出す机上の調査に重点が移りつつある。 この社会調査よりも机上の調査を重視する傾向は、最近の試験観察の活用を自己規制する傾向とともに、「ケースワーク的機能」の軽視を意味するものと言わざるを得ない。 こうした家庭裁判所の現状は、少年の処遇決定を事実上、警察に委ねるともいえる簡易送致制度を是認、拡大するなど、自らの機能を萎縮させ、いまや、少年問題の中心的役割を担うべき地位は警察に移りつつあり、少年の健全育成よりも治安の維持が優先されようとしている。 かくて、家庭裁判所が、家事々件において果す役割は広く国民の間に認識されているのに反し、少年事件に課せられた重要な使命は、いまだ国民に充分知られないまま、少年法の理念が空洞化されかねない状況にあり、現在、法務省当局がすすめている少年法改正は、まさにこの動向を助長するものである。 少年法の理念をたかく評価し、改正に反対してきた当連合会としては、このような現状を看過することはできない。 われわれは、最高裁判所が、家庭裁判所発足時の理念に立ち返り、少年審判の使命が全うされるよう、人的、物的にも、財政的にも、家庭裁判所の飛躍的充実をはかることを強く求めるものである。 こうあります。私が見てまいりました感じからさらに少年問題に突っ込んで、いま読み上げたのは提案理由でございますけれども、少年問題について共感を得るところがかなり多いのであります。 したがいまして、この少年事犯につきましても、先ほど申しましたように環境整備はもとよりでございますけれども、ぜひひとつ、もう一遍家庭裁判所の見直しといいますか機能強化について格段の努力をしてもらいたいと考えますが、いかがですか。
○原田最高裁判所長官代理者 家庭裁判所も昭和二十四年に発足しまして昨年満三十年を迎えたわけでございます。家事事件、少年事件両方を受け持っておる家庭裁判所でございますが、いずれの事件を処理するにいたしましても、福祉的性格というものが中心になって動いております。先ほど申しましたように、少年の保護健全教育ということが少年事件処理の大きな柱になっておるわけでございます。そのために裁判官あるいは家裁調査官、書記官が一体となりまして事件の処理に励んでおる、このように申し上げたいと存じます。
○横山委員 次は簡裁であります。 簡裁へ行きまして、これは名古屋の新庁舎でございますから、それをもって議論するわけにはまいりますまいが、名古屋の高裁の庁舎に入りまして、最高裁まではいきませんにしてもかなり冷厳な感じがいたします。そして三階にあります調停その他をやるオフィスへ入りましたところ、ランプが二十ぐらい、調停室のランプが半分ぐらいついております。きわめて多忙な調停事務が行われておることを実感をいたしましたが、同時に戸だなを見ますと、印刷された何々ローン、何々ローンあての手紙がずっと並んでいるわけです。そこでサラ金の問題についていろいろ懇談したわけでありますが、最近サラ金の調停事案がきわめて減っておるという話であります。それは一体なぜ減ったか、現実にサラ金被害が減っておるかどうかという点についてはいろいろ議論がございますけれども、少なくとも簡裁における調停事案が減っておることだけはわかりました。 そこで今度は法務大臣にもう一遍その点について、これはこの問申し上げたわけでありますが、実際問題として簡易裁判所におきます調停事案は、現行法、最高裁判所の判決と利息制限法、この二つを中心にして調停機能が成果を上げておるわけですね。先般一過ぐる国会で自由民主党のサラ金に関する規制法案が出たわけでありますが廃案になりまして、この間私がここで申し上げたように、一向与野党の間に調整ができないわけであります。できない一つの理由は、去年は衆議院選挙、ことしは参議院選挙を目の前にいたしております。各党それぞれの立場はございますけれども、結局選挙前では、この問題についてなかなかコンセンサスが得られない、冷静な判断によるコンセンサスがなかなか得られない、私の意見は別といたしましても、そう感ぜざるを得ないのであります。 そこで先般申しましたように、この種の問題は本来政府が提案すべき問題なんだ、政府が議員提案で大蔵委員会でまとめてくれということはひきょうなやり方だ、こう私はかねがね言っておるわけであります。私がこのサラ金の問題を取り上げましてから本委員会で質問することはすでに七、八たびにわたっています。前法務大臣も前々法務大臣も私の意図を了として閣議でもこのサラ金のことについて政府として考うべきであると言われ、二回、三回にわたって法務大臣にこの問題の推進を図っていただいた。そして簡易裁判所では、もうここ二、三年簡易裁判所の仕事はサラ金の問題が圧倒的比重を占めるようにまでなっているわけですから、今日のサラ金被害をさらに是正するためにも、この際与野党のコンセンサスが政治的になかなか得られない今日においては、政府がみずから責任を持ってこの国会にサラ金の規制の法案を出すべきだ、そのために法務大臣が前代、前々代の法務大臣の意図をも踏襲してお骨折りを願うべきではないか、そう私は要請したいのでございますが、いかがでございますか。 〔山崎(武)委員長代理退席、委員長着席〕
○倉石国務大臣 重要な問題でありますので、よく検討いたします。
○横山委員 私はこの間も申し上げたのですよ。きょうも同じ答弁なら私は意欲を失うわけです。この問も申し上げ、きょうもサラ金の問題は出るということを通告しているのですから、重要な問題だからよく検討しますでは、こうしてひざを交えるような気持ちで大臣ひとつ骨折ってくださいよと言うておる気持ちがもう少しわかってもらわなければいかぬと思いますね。私の言うのは簡単なことで、このままではこの国会でサラ金の規制法案は通りませんよ、参議院選挙の前だから、それがいいとか悪いとか言ったってしょうがないのだから、いま簡易裁判所では被害は減っておるけれども、潜在的な問題は少しも変わらぬのだから、政府がここで、あなたがイニシアをとって大蔵大臣やあるいは自治大臣、経済企画庁、そういう関係各省と相談をされて、あなたは閣僚の中でもキャリアの深い人だから、相談をしてひとつ政府提案というふうに推進してもらいたいと言っているのですよ。どうですか。いやならいやと言ってもらえば仕方がない、もうこれ以上言いません。
○倉石国務大臣 私、経過をそれほど深く存じておりませんので、検討すると申し上げておるわけであります。なおよく調査してみます。
○横山委員 委員長、答弁に満足しないのですが、委員長からひとつとりなしてくれませんか。——経緯、経緯とおっしゃるけれども、私が言っていることがすべてですよ。ここ二、三年来、あなたも政治家だったら新聞をごらんになっているでしょう、サラ金の被害は社会的に何とかしなければいかぬということは、これは天の声、地の声、人の声ですよ。そうでしょう。ところが政府が議員提案でやってくれというわけで、大蔵委員会いろいろやったんですよ。やったけれども、与野党のコンセンサスが得られないという状況になっている。 私は、本来こんなことは政府提案すべき問題だと言っているのです。政府がひきょうで逃げている。しかも、それは前大臣、前々大臣がみんな閣議の中でも取り上げてこれはやれと言った。言ったけれども、最後の詰めが足らなかったものだから、政府は国会の意思を尊重するから国会で決めてくれというふうに逃げちゃった。逃げちゃったけれども、国会はそれをようやらぬのです、実際問題として。いいとか悪いとかは別ですよ。したがって法務大臣、あなたが閣議の中でも、このままではいかぬぞ、関係各省集まってどうしたらいいか一遍相談しようじゃないかと言い出してくれと言っているのですよ。それを経緯とか何とか、ハチの頭じゃないですよ、政治的決断の問題ですよ。どうですか、お骨折り願えませんか。
○倉石国務大臣 おっしゃる御事情はよくわかりますし、私も党務をやっておりますころ説明を聞いたこともございますので、そういうことを含んで一遍勉強してみます。
○横山委員 それではこうしましょう。 あなたは勉強する、勉強すると言うから、本当に誠意を持ってお答えなさったと私は理解します。それなら、勉強の成果を次に、来週でもまた私ここに立ちますから、そのときには勉強の成果を聞かしてください。いいですね。いつまでもそんな勉強、勉強なんということはだめですよ。来週その勉強の成果を聞かしていただけますか。
○倉石国務大臣 法務大臣という立場をもってここでお答えするには、まだそこまでいっておりませんことを私自身が責任を感じているわけであります。しかし国会議員として、一代議士としてはそういう点についていろいろ話を聞いて少しは知っておりますので、横山さん、そこまでおっしゃっていただかなくても、一遍そういうことに関係をいたしておりました人たちとよく意見を交換してみたいと思っております。なかなか複雑なところもあるものですから、どうぞ……。
○横山委員 刑事局長、下向いておられるようですけれども、御進講が足りませんね。来週その御勉強の結果を伺いますので、それまでに御進講を十分して、しかし御進講も私の気持ちが反映するように、少なくともまず関係各省の事務当事者の会議をやれというふうに大臣が号令をかけてもらう、そしてそれがまとまらぬときには関係閣僚で裁断をするというふうな作業をしてもらいたい。またこれは来週伺います。 それから一つ、場違いではございますけれども、裁判の問題でございますからお伺いをいたします。 最近新聞で伝うるところによりますと、自由民主党の中で選挙違反についての二審制を討議せられておるようであります。要するに、国会議員は高等裁判所と最高裁の二審、地方議員は地方裁判所と高等裁判所の二審。この選挙違反、百日裁判と法律に決まっておるけれども、それがちっともうまく機能しないから、三審だとどうしたって結論がつくまでに次の選挙になってしまう。まあ、それをねらっておる人もないわけではないわけです。私も長年の政治生活の中で不幸にも選挙違反を犯したことがあるのですけれどもね。残念ながらあるのです、大したことございませんけれども。そういう経験から言いまして、私ども国会議員がこういうことを議論することは余り適当ではないような気がしますが、しかし世間一般として、選挙違反の問題が少なくとも何年もかかって結論がついたときにはもうバッジが変わっておる、一それでその効果が全くないという批判があることは、私も耳を澄まして聞かざるを得ぬと思っております。 承れば、法務省も与党内で法律的な見解その他を御説明になったように聞いておるわけでありますが、まず法務大臣としてこの選挙違反の二審制について何かお考えがありましたら伺いたいと思います。
○倉石国務大臣 私もそういう説があるという程度にしか聞いておりませんが、いわゆる百日裁判ということのつもりであのころはああいうことをいたしたわけでありますが、実際見ますとなかなかそういうわけにはいきません。したがって、法律的にはいろいろ問題があると思いますが、いま鋭意党の責任者において研究中であるということを承っております。
○横山委員 事務当局は何か御意見がございますか。
○前田(宏)政府委員 大臣のお答えと似たようなことでございますけれども、先ほど来横山委員の仰せのように、選挙違反事件、特に当選にかかわるような事件につきまして、もっと裁判を速くすべきではないかという御意見があるわけでございます。そのことの関連におきまして、自由民主党の関係調査会の中で、先ほどのようないわゆる二審制ということによって少しでも選挙違反事件の公判を速く進めるようにというような御意向があって、そういう面での御検討が進められておるというふうに聞いておるわけでございます。 私どもも、いま仰せのように非公式ながら意見を求められて若干のことを申し上げておりますが、改めて申し上げるまでもなく、その内容いかんにもよるわけでございますけれども、やはり裁判制度の中でそういう例外を設けることの当否、またさらにさかのぼれば憲法問題等もいろいろあるわけでございまして、憲法問題につきましては内閣の法制局の意見も徴さなければならぬというようなことで、いろいろと検討は進めておりますけれども、まだ結論を得るに至っていないという状態でございます。
○横山委員 法務省としては前向きにその意見を述べたのですか、後ろ向きに意見を述べたのですか。その辺がいまよくわからぬのだが……。
○前田(宏)政府委員 先ほど申し上げましたように、いろいろ問題があるということを御指摘も申し上げておりますが、なるべく早くそういう事件の処理をしなければならぬということは大方の御意向であろうかと思いますので、そういうことが憲法上あるいは司法制度上可能であるかどうかということでございまして、必ずしも憲法違反になるというふうなことでもなかろうかというような感じでおるわけでございますが、なおいろいろと詰めなければならぬのじゃないかというふうに考えております。
○横山委員 最後に最高裁に伺いますが、また司法修習生の任官の時期が迫ってまいりましたが、ことしはどうですか。毎年ここで議論になるわけですが、青法協なるがゆえの任官拒否というものがあり得るわけですか。
○勝見最高裁判所長官代理者 前から申し上げておりますように、私どもといたしましては当該希望者が青法協に入っておること自体がわからないこともございまして、青法協に加入しているからということで任官を拒否することはございません。
○横山委員 額面どおり承っておきます。実質的な判断がまた論争になると思いますが、そのような論争が本委員会で行われないように希望して、質問を終わります。
○木村委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。 —————————————
○木村委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決いたします。 本案に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○木村委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。 お諮りいたします。 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○木村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 ————————————— 〔報告書は附録に掲載〕 —————————————
○木村委員長 次回は、明五日水曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午後二時三十三分散会