地方行政委員会 第9号
- 発言数
- 226 件
- 登壇者
- 13 名
- 会派数
- 6
- 開催日
- 1980/03/25
会議録
○塩谷委員長 これより会議を開きます。 内閣提出に係る犯罪被害者等給付金支給法案を議題といたします。 この際、お諮りいたします。 本案について、法務委員会から連合審査会開会の申し入れがあります。これを受諾し、連合審査会を開会するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○塩谷委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 なお、連合審査会は、明二十六日午前十時第一委員室において開会いたします。 —————————————
○塩谷委員長 次に、本案について、来る二十七日、参考人として日本弁護士連合会司法制度調査会副委員長高橋勲君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○塩谷委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 —————————————
○塩谷委員長 これより質疑に入ります。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。神沢浄君。
○神沢委員 私はこの法案を何度か読み返してみたところでありますが、立法の趣意そのものには大変結構だ、こう思っております。むしろ遅きに失したような点を感じてもいるわけでありますが、ただ内容的に、仏つくって魂入れずという言葉がありますけれども、どうも魂がはっきり入っていないのではないかという感もしてなりません。あるいはまた、下世話に寸足らずの突っかい棒という言葉がありますけれども、せっかく突っかい棒をつくるわけなんですけれども、どうも寸が足らな過ぎて、その点、目的のごとくに突っかい棒としての役に立たぬ点があるのではないかという感じを強く受けました。そこで、つくるなら本当に突っかい棒としてはっきり役に立つような法律にしていかなければならぬという見地から、若干の問題点と思われるような事項について質問をさしていただきたい、こう思うのです。 まず第一に、立法の準備については、いろいろ聞き合わしてみますところでは、法務省が着手をしているわけなんです。いろいろな立法を求める運動などもありましたり、さらには、例の三菱重工などの事案にあらわれたような企業への犯罪なども契機になっておるところと思いますけれども、すでに法務委員会では参考人などを呼んで論議などもしておるようでありますし、なお、いわゆる法案の要綱というようなものが法務省からすでに発表があって、新聞報道などさえも行われておる、こういう経過を聞いたところでありますけれども、そうなりますと、これがどうして法務省から所管が警察庁の方へ移ってきたのかというような点を、まずお伺いいたしたいと思います。
○中平政府委員 この制度につきましては、ただいま先生から御指摘がございましたように当初は、法務省が中心になりまして、私ども警察庁の方は協力をする、こういう立場で検討を進めてまいりましたし、また、ただいま御指摘がありましたようにその間の経過につきましては、法務委員会ではしばしば論議が交わされてまいったわけでございますが、そうした検討の過程におきまして、この仕事の一番のかなめであります裁定機関というものをどのようにするかということが大きな問題になったわけでございます。 法務省におきましては当初は、法務省所管の地方支分の部局といたしまして地方委員会を新設する、こういうことが検討されたようでありますが、行政簡素化の要請の強い折からこの案は現実的ではない、こういうことで、既存の機関である都道府県の機関を裁定機関として検討するようにしたらどうだ、こういうことに話がだんだんになってまいったわけでございます。こうした結果、地方行政というものにより密接な関連を持っております警察庁が中心になって検討することがよかろう、こういうことで法務省との間に話が相整いまして、最終的には、本法案にもお願いいたしておりますように、合議体であり、かつ、その公平中立が保てるような選任上の配慮がなされております都道府県公安委員会に裁定の事務を機関委任することが最も適当であろう、そういうことになりまして、この制度そのものにつきましても、国家公安委員会で所管をしてまいる、こういうことになりまして、私どもが鋭意立法の作業を続けまして、今回の法案提出の運びに至った次第でございます。 以上でございます。
○神沢委員 あとからこの制度の基本的な性格というようなものについて伺ってまいりたい、こう思っているわけでありますが、私どもの感覚からいくと、どうも警察庁の所管ということになると、何かこの法の性格が非常に限られてしまうような印象もありますし、いま裁定機関の問題について触れられましたけれども、むしろ裁定機関はやはり中立的な機関を考えていった方がいいのではないかというような感じもいたしまして、そうすると、むしろ法務省所管の方がやはりなじむじゃないかというような感じも受けるところであります。そういうような点からなお、警察庁へ所管が移行してまいりました経緯について、法務省から来ていただいておりますか、それでは法務省からの説明をひとつお聞きをいたしたいと思います。
○藤永説明員 神沢委員御指摘のとおり、この制度につきましては、法務省が中心になって数年前から、諸外国の立法例、その運用状況、あるいは国内におけるこの制度に関心の深い学者の皆様方との非公式な研究会を催したりなどいたしまして、基礎的な検討作業を進めておったわけでございます。しかし、その中で私どもが当初考えましたのは、やはり神沢委員御指摘のとおり、各都道府県に補償の裁定実施機関として委員会制度をつくるということを内部的には考えたわけでございます。これは、学者の皆様方の意見などもありまして、現在から考えますとやや理想に近いというような制度でございました。ただこの案は、試案として内部的に作成したものにとどまりまして、公式的に法務省の要綱案ということで発表いたしたものではございません。新聞などに報道されましたのは、あくまで内部的な試案が報道されたものでございます。 そのうち、そのような試案をもとに警察庁との協議に入ったわけでございますが、何分にも行政簡素化の要請あるいはチープガバメントの要請ということで、理想に近いものではあるけれども、各都道府県に地方委員会をつくるということはどうしても財政的に無理があるのではないかという議論が起こり、一方、犯罪被害者の方々からは、この制度を一日も早く被害者のためあるいは国民のためにも設けるべきであるという強い要請がございましたものですから、私どもも警察庁との協議の過程におきまして、一日も早いこの制度の実現のためには、住民との密接な関係を持っております地方自治体に実施機関をお願いするのが相当であろう、既存の組織を使うのが相当であろうという結論に達しまして、警察庁との協議の過程で、地方自治、住民福祉に最も関係の深い警察庁にお願いするのが相当であるという結果に至ったものでございます。 ただいま警察庁の政府委員から答弁いたしましたとおりでございますが、若干補足して説明さしていただきました。
○神沢委員 そこで、いまの経過をお聞きした点につきましても私は、この制度のいわゆる基本性格というようなものとのかかわり合いが非常に重大になってくるのじゃないか、こう思うのですが、犯罪被害者の救済をしていくということでありますけれども、しかしこの救済の制度を性格的に考えてみると、たとえば一つの見地からすれば、国家の治安の維持、国民の生命、財産の防護、これはあくまで国の責任であるわけですから、そういう見地から結局、国の責任において救済や補償を行っていくというようなことであるのか、あるいは福祉行政、まあ社会保障というような見地からいたしまして、その一環としてやっていく制度なのであるのか、あるいはただ単なる気の毒なこれらの被害者層に対する国としての恩恵的な制度であるのかというふうな点がどうもはっきり把握できないところであります。 そこで、この制度の基本的性格というようなものをひとつお聞きをしてまいりたいと思います。
○中平政府委員 この制度は要するに、故意の犯罪行為という他人の悪質な行為によりまして、不慮の死亡または重障害というような重大な被害を受けたにもかかわらず、被害者または遺族が事実上不法行為による損害賠償を受けられずに、何らの救済もない事例が多いという現状を社会全体として放置しておけない、こういう観点から、これら遺族等の精神的、経済的な安定に資するために国が一定の給付金の支給を行おうという制度でございます。 したがいまして、この制度の性格というのは、一つは、国のそうした不法行為制度というものが十分に機能していない、やはりこれの実質化を図っていく必要がある、さらには、一種の広い意味での福祉政策という立場もございますし、もう一つは、やはり犯罪対策という面があるわけでございまして、そういうものを総合した施策としてこの問題を私どもはとらえ、提起しているわけでございます。しかし、その中で何といっても中心になりますのは、やはり国の法制度というものに対する国民の不信感を除去したい、つまり、犯罪によって被害者の権利が失われ、それがそのままになっておる、そうしたいわゆる法秩序が一種のへこんだような状態にあることに対して国民の持つ不信感というものをやはり回復してまいる、こういうことに置いておるわけでございます。そうしたところを基本にしてこの法律を組み立てておる次第でございます。
○神沢委員 いまの御答弁をお聞きする中でも、はっきり把握し切れぬような点もあるのですけれども、じゃ、こういうことでいいですか。要するに、これはあくまで国の責任の上において対応する制度である、同時に、これは社会保障、福祉的なものをも総合した制度であるというふうに把握をしてよろしいわけですか。
○中平政府委員 この基本には、先ほども申し上げましたように、そうした悲惨な状態にある人を社会全体として放置しておけないという、一種の社会連帯共助の精神といいますか、そうしたものがあるわけでございます。ただいまお話がありましたように、国としてはやはり犯罪を防止する責務は負っておるわけでございます。しかし、責務は負っておりますが、それが直ちにこうした制度に法的責任という形で結びついてくるものではございません。そういう意味では国の責任もあると私は思う。そういう意味での犯罪を防止しようという国の責任もありますし、それから、社会福祉的な要素もこの中には当然入っているわけでございます。それから、先ほど申し上げましたように、一種の犯罪対策という面もこれはあるわけでございますし、それから、いま言いました民法上の不法行為制度というものが機能していない、それのある意味での実質化とかある意味での肩がわり、そうした意味も含めた、そうしたものを全部のみ込んだ形での新しい制度であるわけでございます。
○神沢委員 いまのその性格論の問題は、あとからの論議といろいろかかわり合っていくと思いますから、論議を進める中でもってまた明らかにしていくことだ、こう思います。 そこで、いま御答弁のように国が国としての任務の上でもってやっていかれる、こういうことでありますには、どうしてこの対象を故意の犯罪だけに限るのかという一つの疑問が出てくるわけです。ただ故意犯だけでなしに、現実的には過失を原因とするような場合でも、国民のサイドからすれば泣き寝入り的な被害というものはたくさんあると思うのですよ。泣き寝入り的な被害を救済をしていこうというところにねらいが置かれておるとすれば、私は故意犯だけにこれを限定をするということは多大な疑問が生ずるわけでありまして、その点をひとつお尋ねをいたします。
○中平政府委員 この制度は、故意の犯罪行為による被害につきましては、遺族の方などの精神的打撃が特に大きいのに、加害者から損害賠償を受けさせるための効果のある方法がない、こういうことから、例外的に国が全額公費負担の給付金を支給しようとする、こういうことでございます。一方、過失犯によります被害につきましては、いわゆる原因者負担の原則どおりに、責任保険などによりまして救済策というものがとられるものでございまして、現に自賠責等を含めそういう方向でいろんな制度的な整備も行われてまいっているところでございます。こういうことから、過失犯による被害につきましては適用の対象にしなかったものでございまして、この制度の対象としては故意の犯罪行為による被害に限るのが適当である、こういうことで立法いたした次第でございます。
○神沢委員 私どもの側から考えるとちっとも適当じゃないと思うのですね。よくそういう問題が取り上げられているようです、これに関するものを読んでみますと。故意の犯罪被害というものははっきりしているにしても、たとえばガス爆発などの例がよくいままでの論議に挙げられているようです。確かにたとえばその爆発の原因は過失であったとしても、その爆発によって被害を受けた国民の側からいたしますと、それが過失であったからというのが理由でもって、せっかくこういう新しい制度が開かれましても救済を受けることができない。それじゃむしろ故意にやってもらった方がよかったなんということにさえなりかねないような制度というものは、私はやはり少し欠陥があると、こう思うところでありまして、これは事例もたくさんあるようですけれども、たとえば高層ビルから飛びおり自殺をしたというような場合に、これはもう自殺をしようとした者はそれでいいかもしれませんが、たまたま下を通行しておる人に衝突をして、そうしてその通行人が生命を失ったというような事例なんかもありますわね。そういうような場合に、これは故意犯とは言えぬだろうと思うのですけれども、しかしやはり泣き寝入りにならざるを得ないという立場においてはこれは全く同様でございまして、少なくとも泣き寝入りで済まさなければならないようなそういう気の毒な立場の国民の救済を一つの目的とされるならば、やはり広く泣き寝入り的な立場の国民が救済をされていくようなところまでは広げなければ、私はこの制度というものは実にその意義が半減してしまうんじゃないかというように思えてなりません。 いまちょっと具体的な事例の一、二を挙げたのですけれども、そういうふうな場合の対応はどうなりますか。
○中平政府委員 お答えいたします。 ただいまの御指摘のケースのような場合、ビルの上から飛びおり自殺をした人がたまたま下の通行人の上に落ちまして通行人の方が亡くなった、こういうような場合には、一般的には過失ということになろうかと思いますので、したがいまして適用の対象にならない、こういうことになるかと思っております。 確かにいま御指摘のありましたように、過失による被害についてはお気の毒な場合があるというふうに考えるわけでございますが、しかし制度を一応つくる場合には、大変非情なような言い方でございますが、どこかで割り切らざるを得ないものがあるわけでございます。もし過失による被害のうち、お気の毒な場合があるということで、過失に広げて制度を適用していくということになりますと、では、犯罪によらない被害で同じように気の毒な場合をどうするかと、こういう問題もまた出てまいるわけでございます。特にこの制度というのは全額公費の負担で行ういわば例外的な制度でございますので、適用の対象も他の被害と区別して取り扱うことに合理性のある類型のものでなければならない、こういうふうに考えておる次第でございます。 ところで、この制度は先ほども申し上げましたように、他人の悪質な行為で重大な被害を受けたのに、加害者から損害の賠償も受けられないのが通例である、そういう通例であるという状態に対する一般の社会の人の意識というものを基礎にいたしまして、かつ、国の施策としても公費負担による給付以外に救済の方法がない、こういうことを前提にいたしまして創設するものでございますので、対象犯罪の類型といたしましては故意の犯罪行為に限定するのが合理的である、こういう立場をとりまして立法いたした次第でございます。
○神沢委員 その辺が私にはどうしても合理的に考えられない。たとえば企業への犯罪などの例のごとくに、これは故意に爆発事故が生ずる、そのための被害者が生ずる。しかし国民、被害者としてのサイドからいたしますと、何かガス自殺のためにそれが大きな爆発事故を起こして、そして全く関係のない国民が被害者になる、被害者としての国民の側からすれば、あるいは結論的に言えば過失というようなことになるのかもしれませんが、原因が故意であろうとも過失であろうともちっともそれは変わらない、全く同じ被害者の立場だ、私はこう考えざるを得ません。同じ被害者の立場が救済できない、いわゆる原因が故意でなければ救済されないという制度には何としても私は疑問を感ぜざるを得ません。理解できないですよ。そういうふうな点について、これは長官でなくても結構ですけれども、何か運用の上でもってそういう矛盾を解消していくようなお考えを持っておられるのか、またそういう方法を検討されておるのかというような点を含めてお聞きをしておきたいと思うのです。
○中平政府委員 大変お言葉を返すようでございますが、先ほど御説明申し上げましたように、過失の場合につきましては制度として責任保険制度というものが制度論としてとれるわけでございます。ただいまのガスの問題等につきましては、これはやや立場は違いますが、たとえば瓦斯協会なんかの方で一種の見舞い金的なものを出しておりますし、そういう制度がだんだんに拡充をされてまいっておるわけでございます。たとえば瓦斯協会等がそうしたお見舞い金を出す算出の基礎といたしましては、各家庭のガスを出す放出口一口について幾らというふうな形での計算を一応いたしまして出している、こういうふうなことでございまして、そうした加害者になり得るグループの方々による、つまり利用者による一種の保険制度というものが制度論として考えられるわけでございます。しかし、故意による犯罪ということになりますと、人殺しをしたときに相手方に補償を与えるための保険制度というものは、公序良俗に反してこれは制度としては成り立たないわけでございまして、したがいまして、大変お気の毒な場合はあるが、しかし制度論としてとらえていけば、やはり責任保険制度の分野で救済し得るものは救済していただく。 それから実態といたしましても、故意の犯罪の場合には、私ども五十二年に実態調査をいたしておりますが、人を殺したりする連中というのは大体生活的に比較的貧しい立場の人でございまして、一般的には補償能力がないケースが多い、したがって非常に気の毒な立場に置かれる方が多いわけでございます。過失犯につきましては、過失犯の大多数がこれは自動車損害賠償責任保険に当たるものが非常に多いわけでございますが、そちらの方になりますと、これはまず自賠責で救われておりますし、そういうような形で過失犯の場合には、比較的資力がある場合が多いということと、それから資力をつけ得るそうした制度が制度的に残されておる、そういうことでございまして、この制度を考えるときに、先ほど基本的な立場で考えましたときも述べましたが、非常に悪質、重大な犯罪で泣き寝入りをされている、相手方に求償する方途もないままに泣き寝入りしている、こういう人たちはやっぱり救わなければいかぬ、こういうことでこの制度がそもそも発足をしたわけでございまして、私どもはこれは制度として立てるときにはあくまでもそこを踏まえた制度として考えてみよう、こういうことでつくった次第でございます。
○神沢委員 いまの点については私は国民の側からすれば、何とも大きな矛盾を感ぜざるを得ない点でありますが、時間の関係もありますから質問を進めたいと思います。 この法の施行日の問題ですが、この法案によれば施行日を五十六年一月一日ということで、五十六年一月一日以降の事件でなければ対象にはならない、こういうことにしてあるようであります。私は勧められて「もう泣き寝入りはご免だ」という本を読みましたよ。これは読んでおられるかどうか存じませんけれども、これを読んでみまして大変感銘も受けましたが、この制度を求めてかなり長い間国民の皆さんの運動というものが続けられてきているわけです。そういうようなものが動機になってこうして国会の中でもこれが取り上げられ、法案の提出というような運びになってきたように思えます。そういたしますと、こういうものを求めてきょうまで大ぜいの皆さんが、それこそ必死の運動をされてきているわけでありますが、しかしこの法律では、そういう方たちは救済できないということになるわけですね、五十六年一月以降ということになると。せっかく法律をつくるまでに大ぜいの本当に気の毒な方たちが一生懸命でもって努力をされてきたけれども、肝心のその努力をされた人たちはこの制度の受益者にはなり得ない、こういうことはちょっと気の毒に過ぎますね。 そこで、関連でもってお聞きをするのですけれども、この法律が成立をいたしまして、いわばこの法によるところの該当の件数あるいは適用を受ける人員数、それから、この法のままでもっていわゆる給付金の支給をする場合に大体どのぐらいの額のものになるのかというようなことを、これは年間の見込みでいいですからちょっと先に説明をしていただきたいと思います。
○浅野説明員 お答えいたします。 平年度の支給件数といたしましては、大体年間約千五百人ほど故意の犯罪行為による死者あるいは重障害を受けた者がございまして、それから親族間の犯罪その他この制度の対象とならないものを除いてまいりますと、四百七十二人というふうに見込まれるわけでございます。それでこのうち、死亡は四百二十六人、重障害は四十六人でございますが、これに要する年間経費は約十三億円というふうに考えております。
○神沢委員 大体そういうような数字がこれは見込みとしてはあるとするならば、十三億円なら十年さかのぼったって百三十億、二十年さかのぼっても二百六十億、そんなに驚いた額とは思えぬと思います。せっかくとにかくこんな新しい制度をここでもって出発させるんだから、しかもこの制度ができ上がるまでには、国自体が考え出したということよりか、大ぜいのそういう気の毒な立場におる人たちが熱心な運動を続けて続けて苦労を積み重ねて、そうしていまこの制度が日の目を見るようなことになってきておるという経緯を考えますと、やはりそういう人たちがまずこの制度発足と同時に真っ先に救済されるようなものでなければ、これは本当に心ある制度とは私は言えないのじゃないかと思うのですよ。大体いま法律をつくろうとしていて、何でまた五十六年一月一日以降なんて遠くへ施行日を延ばさなければならぬのかという点だって、私には腑に落ちない点でありますが、これは何とかやはり考え直して、この苦労されてきた気の毒な人たちが救済できるような制度に変えるわけにはいきませんか。
○中平政府委員 ただいま御指摘の中にもございましたが、この法案の施行前に発生した犯罪によって被害を受けた方はこの法案の適用を受けることができないということについては、私どももまことにお気の毒に思っている次第でございます。特にこの制度につきましては、長年にわたって熱心に運動を続けられてきた方もございますし、そういう点につきまして私どもも非常に大変なお気の毒な気持ちを持つわけでございますが、しかしながら、一つの新しい制度というものをつくる場合には、その適用というのは法の施行後というのが原則でございまして、この制度についてのみその遡及を考える、こういう合理的な理由というものが、いろいろと検討をしてまいりましたが、残念ながら見出すことができなかった、こういうことでございます。 なお、いま申し上げましたことが一般原則ではございますが、殺人なんかの犯罪被害につきまして、遡及の対象について合理的な区分をつけることがなかなかむずかしいわけでございます。一定の期間遡及をいたすとしましても、またその遡及の前後でやはりこれは不公平の問題が起こってまいるわけでございます。それから、この制度におきましては、被害者の責任の度合い等も考えまして、支給の除外とかあるいは減額とか、かなりきめの細かい制度も考えておるわけでございますが、そうした判断を適切に行うために、やはりこれは新しく起こった事象でないと、過去にさかのぼってそうしたことを適正に裁定を下すということも非常にむずかしい問題でございます。そうしたこともありまして、遡及ということをいろいろ考えたわけでございますが、遡及措置というものがとれなかった次第でございます。 そういうことで、その方々に対してはまことにお気の毒な気持ちがいっぱいでございますが、また逆に言えば私どもは、そうした方々の気持ちを十分に背中に受けながら、この制度の必要性というものを痛感をいたしまして、ことしは警察庁の最重点の施策として真剣に取り組みまして、いまこの制度の創設にまでこぎつけてまいった、こういういきさつになっております。私どもは、この制度が呱々の声を上げることによって、こうした犯罪の被害に遭われた方々に対して、社会の温かい目が一層こうした人たちに注がれることになるようなことを強く期待をしておる、そういう次第でございます。
○神沢委員 いまの御答弁を聞いておりますと、遡及することについては、他の制度とのかかわり合いの上からいっても不合理性が生ずる点がある、それからもう一つは、これは事務的な問題でもって過去にさかのぼってということになるとちょっとむずかしいではないか、事務的にも非常に困難ではないかというようなことに聞こえましたが、他の制度との兼ね合いというようなことになってきますと、この制度自体が全く新しい制度なんだから、私はそれはそれほど理由とはならないじゃないかというふうに思いますし、事務的の問題なんということになれば、これは私は理由としてはきわめて薄弱、事務的に対応するなんということは、それなりの手だてをすればどうとでもなることだというふうに思いますしするのです。 ただ、いまの御答弁だけではなくて、たとえばもっと、財政的な理由とかなんとかいうようなことの方が、こういう施行日を先に延ばすようなことになっているのではないかという憶測まで実はしたくなるような感じがいたしますが、さっきも触れましたように大体今度の場合、当面のことを取り上げてみましても、いま法律はもう決まるわけですから、これはたとえば本当に目の前のことだけに限って取り上げてみても、四月一日からであってもむしろ妥当ですよ。何で五十六年の一月一日なんという先へまで施行日を送らなければならないのかというふうな点について、非常に疑問を感じてなりません。だから重ねて、何で施行日をそんなに送らなければならぬのか、どうしてそういう気の毒な人たちが喜べるように遡及の措置がとれないのか、こういう点についてはもうちょっと納得のいくような御説明をいただきたいと思うのです。
○中平政府委員 この法律の施行日を五十六年の一月一日といたしましたのは、また事務的なことということでおしかりを受けるかもわかりませんが、法律が公布された後、政令とかあるいは国家公安委員会の規則を制定をしたり、あるいは運用通達を作成をしたり、あるいは初めての制度でございますから事務担当者の指導とか教養をする等、新しい制度を本当に適正かつ円滑に運営するためにやはり相当な準備期間を必要とするということでございます。それからまた、適用開始日につきましてもできるだけやはり申請者にとりまして不公平感の一応少ない暦年の開始とすることがよかろう、こういうことも理由の一つでございます。なお、先生からの御指摘がございましたが、五十六年の一月一日にしたことにつきましては、現下の非常に厳しい財政上との関連においてそういうことになったということにつきましては、これはまた一つの否みがたい事実でもございます。
○神沢委員 私はいまお尋ねしてまいりました点については、納得し得ないままに、時間がもう非常に限られてまいっておりますから進行をいたしますが、これはぜひ再考を求めてやみません。 ところで、この給付の内容ですが、大体この法によって算定をしていくと、給付金の額というのは具体的にはどんなようになるわけですか。
○浅野説明員 給付金の額につきましては、基礎額というものを被害者ごとに算定をいたしまして、それに一定の倍数を掛けるわけでございますが、そういうふうにして計算しました場合、最高が遺族給付金にあっては約八百万円、障害給付金にあっては一級の最高で約九百五十万円、最低につきましては、遺族給付金の場合子供さんなどの場合で二百二十万、障害給付金では約二百六十万ということになります。
○神沢委員 その額でこの制度が目的とする気の毒な被害者たちの生活の保障なりあるいは後遺症に対するところの療養の問題なり、十分だというようにお考えなんですか。
○中平政府委員 十分か十分でないかについてはいろいろまた議論が分かれると思うわけでございますが、ただいま私どもの説明員が説明いたしましたような決め方でこの額を決めた次第でございまして、この給付金は、そうした気の毒な状態にある人たち、被害者あるいは遺族に対する精神的なショックと申しますか精神的な打撃を回復させる、あるいは、扶養家族等があっていろいろ今後の生活の問題等のある方につきましてはそれに若干の上積みをして、そうした精神的と同時に経済的な形でのめんどうも見る、そういうことでございまして、一応私どもはこの額で所期の目的は果たせるのではないか、こういうように考えておる次第でございます。
○神沢委員 申し上げるまでもないですけれども、いまの経済事情の中で長官、これはとても所期の目的を達するなんというわけにはいかない額ですね。自賠責の補償額だって二千万円ですから、それじゃそれの半分にも満たないような額にすぎない、こういうことであります。 私もいろいろ聞き合わせてみますと、法務省案の要綱というようなものの中におきましても、災害補償もあるし生活の扶助もあるし療養の補償もあるし、あるいは休業補償などに至るまで大変きめ細かにできているようでありますが、何で警察庁に所管が移ったらこんなに後退をしてしまったのか、まことにわかりかねるのです。これじゃまるで見舞い金というものですね。つかみの見舞い金というような性格のものになってしまってきておる。何でこんなに法務省案から大きく後退をしてきてしまっておるのか。一時金なんというものは額によりまして実際見舞い金にすぎないわけです。ですから、何で年金の方法がとれないのか、どうして一時金でやるのかというふうな点についてお聞きをいたしたいと思います。
○中平政府委員 この制度につきましては、たびたび繰り返しになって失礼でございますが、放置しておくことによって国の法制度に対する信頼が失われるような重大な被害を対象とすることを前提といたしまして例外的な方法による救済を行う、こういう考え方でございます。したがいましてその対象も、取り返しのつかない被害である死亡と、被害の重大さにおいて死亡と同じであるとされている重障害に限った次第でございます。それからこの制度というのは、犯罪被害者等の被害の緩和を図るものでございまして、損害の完全な補てんというものを目標とするものではないのでございます。したがいまして、こういう立場から給付金の種類につきましても、遺族給付金と障害給付金の二本立てにした次第でございます。 かつての法務省の案は、先ほど法務省の方では、正式に発表されたものでない、一種の試案のように言われておったようでございますが、それの中には、休業補償とか療養補償等もあったわけでございますが、ただいま申し上げましたような考え方から、それは一応今回の法案にはのせてないわけでございます。なお、法務省におきましても、その後鋭意検討を遂げられる過程の中で、昭和五十三年八月十一日の衆議院の法務委員会では、やはり遺族給付と重大な身体障害に対する障害給付の二本立てとしたい、こういうことを政府委員が答弁をしておる次第でございまして、その間、法務省と私どもの考え方に違いがあるわけではございません。 それから、年金にせずに一時金になぜしたかという御質問でございますが、この制度というのは、被害者とかあるいは遺族のこうむりました精神的な打撃の回復を一応第一の目途とし、それから、あわせて財産的な面の被害もめんどうを見る、こういう立場でございまして、そうした被害者の一種の立ち直り、そのためにはあるいは一時金の方がよりなじみがある、こういうことだというふうに考えておる次第でございます。なお、外国の制度を見ましても、ほとんど一時金で措置されておる、こういうことになっておる次第でございます。イギリスのレポートなんかを見ておりますと、イギリス等の経験に徴すれば一時金の方がむしろ被害者等の立ち直りにはいい、そういうふうなことも報告の中には出ておる次第でございます。
○神沢委員 いま外国の制度ということに触れられましたけれども、私、多少この種の問題に専門的な知識を持っておる人に伺いましたらば、日本がいま制定しようとしておるのは西ドイツの被害者補償法に一番近いんじゃないかというような話を聞きましたので、実は西ドイツの被害者補償法というのを調べてみたわけですけれども、この中には、やはりいろいろいまの療養の補償から生活扶助というようなものがかなりきめ細かくありますよ。日本のようなつかみ金的に死亡者、重障害に対する一時給付金でもって済ましてしまうというような内容とはかなり異なっております。 それから、試案かどうかは別にしましても、法務省案の要綱というのを見ますと、死亡はともかくとしましても、「重大な障害とは加療一カ月を要する障害または別表」、これは障害の等級表ですけれども、「に定める後遺障害を残す障害」、こういうようになっておりまして、これではわかるのですよ。これではわかるのですけれども、この案からいくと、死亡はともかくとしても重障害というのは、何か障害の等級表に基づけば三級までだ、こういうように大体なっておるようですけれども、何で三級までで切ってしまうのかというような点がこれまた理解ができませんね。私の手元にありますのは等級表ですけれども、たとえば四級を見ましても、両眼の視力が〇・〇六以下だとか、そしゃく及び言語の機能に著しい障害を持っておる、両耳の聴力がないものだとか、あるいは手をひじ関節以上で失ったものだとか、足をひざ関節以上で失ったものだとか、それから五級を見ましても、一眼が失明して他眼の視力が〇・一以下になったものだとか、神経系統の機能または精神に著しい障害を残しておるものだとか、やはり手を腕関節以上で失ったものだとか、足を足関節以上で失ったものだとか等々、以下ずっとありますが、これはたとえば四級、五級に示されているようなものでも、とにかくとても仕事はできぬでしょう、これだけの障害を受けておれば。そうすると、何で三級で切ってしまって、現に生活などは不能に近いような困難な四級から五級を対象にできないか。これは法務省案では後遺障害を残すものということになると、十三級か十四級まであるものをほとんどがそれなりの程度に応じての対象にされるようになっていたと思うのですが、三級でぴしゃっと切ってしまう、少し残酷ですね。その点はいかがですか。
○中平政府委員 法務省の試案では、確かにいま先生御指摘のとおりであるわけでございます。しかし、私どもその後法務省等とも鋭意相互に検討いたしました結果、先ほど申し上げましたように法務省の方では、その後法務委員会で遺族給付と障害給付の二本立てにする、そういうことにいたしておったわけでございます。 この重障害というのは、労働基準法その他の補償関係法令によりまして、死亡と同程度の被害というふうに評価されておる程度の障害であるわけでございます。先ほど来るる申し上げておりますように、この制度というのは通り魔殺人に見られるように、いわれなき被害に遭われて亡くなられたという死亡者に対する救済というものを私どもの制度では基本に考えまして、死亡者とそれから死亡者と同一に評価されておる障害を受けた者、こういう人を一応給付金の支給の対象にいたした、そういう次第でございます。
○神沢委員 冒頭私は寸足らずの突っかい棒じゃ困る、こう申し上げたのですが、そういうような点でお尋ねしたいことはたくさんあります。しかし、もう時間になっちゃったものですから、あとは先輩の皆さんに譲りまして、終わります。
○塩谷委員長 斎藤実君。
○斎藤(実)委員 今回提案されております犯罪被害者救済については、これまでたびたび論ぜられてまいりましたし、新聞でもこの問題についてはきわめて大きな関心を持って報道されておるわけでございます。特に被害者の会である犯罪による被害者補償制度を促進する会の故市瀬朝一氏を初め多くの人々が、この救済制度の制定について今日まで献身的な努力をしてまいりました。先ごろ「衝動殺人・息子よ」という映画がありまして、多くの国民の関心あるいは共感を呼んだと報道されております。これにより犯罪被害者に対する救済の必要性をより強く社会に訴えた、こういうふうに私は思うわけでございます。 昭和四十九年十月に衆議院法務委員会においても安原刑事局長も、犯罪による被害者が何らの補償もされないでいるということは放置できないという答弁をしておりました。今日の福祉社会のあり方としては問題があるので、補償制度について法務省としても十分前向きの答弁をしているわけでございまして、また私ども公明党も五十一年以来、犯罪被害補償法案を提出しております。救済制度の創設について、われわれも全力を尽くしてまいりました。被害者の遺族が運動を始めて十二年になるわけですね。またこの制度の創設の世論を喚起した三菱重工爆破事件から五年も経過しているわけでして、私は法案提出が遅きに失した、こういうふうに強く感ずるわけでございます。 今回、このように法案提出がおくれた理由はどこにあるのか、まずこの点から伺いたい。
○中平政府委員 私どもといたしましても、この制度をできるだけ早期に実現をしたい、こういうことで鋭意努力をしてまいった次第でございます。 法務省がまずおやりになって、それを警察庁がバトンタッチを受けて、両省庁がこの二年間ぐらい早期の実現のために本当に努力をしてまいった次第でございますが、この制度が何と申しましても、全く新しい制度でございまして、わが国の実情に合った、しかも実現の可能な制度にするためにはどうすればいいかという制度の理論づけの面あるいは制度の内容の面、そういう面につきまして多方面にわたって調査をし研究をする必要がありまして、法案の提出が現在に至った次第でございます。
○斎藤(実)委員 先ほど刑事局長の答弁で、この法案の性格について述べられましたね。確かに被害者の精神的、経済的な面から広い意味での福祉政策である。あるいは、国として法的な責任を放置するということは国民の不信感をより助長する、したがって国の制度の不信感を除去するためにこの制度を設けた。善良な市民や国民が何ら自分の過失でなくて、故意に突然通り魔のために殺傷された場合、これは主人にしろ妻にしろきょうだいや子供にしろ、その家族は大変な打撃を受けるわけです。持っていきどころがない、やり場のない怒りですね。私は、国は被害者に対して国民の人権を擁護する立場から、精神的、経済的にやはりこれらの人について早急に完璧な補償をするのが、法治国家である国の責任だろうと思うわけですが、そういう意味、立場から、私はこれから何点か質問していきたいと思うのです。 この犯罪被害者救済の諸外国の例はどうなっていますか。
○浅野説明員 諸外国におきましては、昭和三十九年にニュージーランド、イギリスで実施されましたのを初めとしまして、現在まで十二カ国で実施されております。主要国の多くが実施しているという状況でございます。なお、アメリカ合衆国、カナダ、オーストラリアにありましては、州単位で実施されております。この三カ国で三十四州ということでございます。
○斎藤(実)委員 先ほど刑事局長から、法務省の所管から警察庁へ移った理由について御答弁がありましたが、この犯罪被害者給付の裁定を都道府県公安委員会に任せることが望ましいという答弁がございましたね。この点につきまして、都道府県公安委員会は、犯罪の捜査を職務とする警察を管理する立場にあるわけですね。そこに裁定の決定権を持たせるということは、被害者たちが警察の捜査に協力するとかしないとかということによって給付額などが影響されるということがあるのではないか、私はこれを憂慮するわけですが、この点についてどういう考えを持っているのですか。
○中平政府委員 御案内のように公安委員会というのは、警察の運営につきましてその大綱、方針を示すという方法で都道府県の警察を管理する機関でございまして、直接に捜査を行うものではございませんし、また、具体的な捜査について指示を与え得る立場にもあるものではないわけでございます。そして、この制度の実施につきましては公安委員会は、それぞれの捜査機関に照会し、裁定のために必要な事項の報告を求めるものでございますが、裁定に当たりましてはあくまでも、捜査機関から提供されるのは単なる判断の材料でございまして、そうした捜査機関の見解に左右されることなく独自の判断を行うものでございます。公安委員会というものが一般の良識のある方々で選ばれました一つの合議機関でもございますし、それから、平素から運転免許業務だとかあるいは風俗営業処分の業務だとかいうことで、いろいろそうした一般の社会の動きとかそういうものについて良識のある判断のできる立場にあられる方々で構成をされているわけでございます。そういう方々がそうした捜査と離れた別途の立場で独自で御判断をなさるという仕掛けになっておりまして、そういうことで、それが捜査に協力したとか協力しないとかということで影響が出るおそれは私どもはいささかもない、こういうふうに考えておるわけでございます。 それからなお、警察の内部の組織といたしましても、この公安委員会のこうした仕事を補佐する部局といたしましては、捜査を担当しない警務の部門というものを予定しているわけでございまして、裁定の手続と捜査手続の分離の要請に十分にこたえられるものというふうに考えておる次第でございます。
○斎藤(実)委員 私は被害者が公正な裁定をされるということを前提にして申し上げているので、公安委員会が実際事情を知っているわけではなくて情報を警察から受けるわけですね。やはり捜査を担当される警察官が公安委員会に報告をするわけですね。ですから、全く公平な公安委員会の独自の判断でできるわけじゃないわけですね、警察の捜査の協力を得るわけですから。そういう意味から私は申し上げているのであって、もしそういうことが起きれば重大な影響を被害者は受けるわけでございます。私はやはり犯罪被害補償中央委員会という第三者機関が行うことが公平な裁定をすることになるのではないか、こう考えるのですが、いかがですか。
○中平政府委員 先ほど法務省の関係者からもお話がございましたが、裁定機関として第三者機関による合議制の機関を新設するという案は確かに一つの理想的な案である、こういうように考えるわけでございますが、行政簡素化の要請等との関連でその実現は困難である、こういうような判断を法務省もいたしましたし、私どもの方もそういう判断に到達したわけでございます。したがってこの法案は、既存の機関でやるとするとどこが一番いいか、こういうことになりますと、やはりその構成が公平中正を保つように選任上の配慮もなされておるし、かつ、住民代表としての性格を持っておる民主的な合議体である都道府県の公安委員会が裁定機関として最も適当である、こういうふうに考えた次第でございます。
○斎藤(実)委員 いわれなき故意の殺人によりまして過去多くの人たちが被害を受けては泣き寝入りをして、どこへその補償を求めるかということでずいぶん運動もしてきました。国会にも請願をし、あるいは大会を開いて、大変苦労されているわけですね。法治国家としてこれらの人に一やはり過去にそういう被害を受けて大変苦労されておる、悲惨な生活をされている善良な国民がたくさんいらっしゃるわけですね。私はこれらの人の救済をする、これは法治国家として何よりも最優先すべきだろうと思うのです。過去に被害者を受けた人の補償、遡及ですが、これは補償制度の基幹であり根本だと私は思うのです。お互いに刑事局長、これは長官もそうですし、われわれもそうですが、きょうは人の身あすはわが身で、これは人ごとじゃないわけです。 この法案が来年の一月一日から施行されるわけですね。それで、遡及の問題もそうですが、これからも——最近ずいぶん起きていますね。したがって、この遡及の問題あるいは来年の一月までに起きた問題、これについてお尋ねしたいと思うのですが、政府案では遡及について一切触れていないわけです。この触れていない理由、率直にひとつ御答弁を願いたいと思います。
○中平政府委員 この法律は一応五十六年の一月一日から施行いたしまして、施行後に行われました犯罪行為による死亡または重障害について適用することといたしておる次第でございます。したがいまして、この法律の施行前の犯罪被害者には救済の手が差し伸べられないことになりまして、法施行後の被害者と比べてまことにお気の毒である、こういうふうに存ずる次第でございますが、一般に新たな制度を設ける場合には、それが施行される前に発生した事実についてさかのぼって適用をされることがないのが原則でございまして、他の制度との関連もいろいろと生じますことから、この制度におきまして、遡及を盛り込んだ実現可能な案をいろいろと検討はいたしましたが、まことに残念ながら、施行前の被害者に対して遡及する制度を立てることができなかった次第でございます。
○斎藤(実)委員 確かに遡及につきましては法律不遡及の原則、私も承知しておりますし、他の制度との関連が影響あることも私は十分承知しています。また、遡及期間の線引きの範囲をどこで引くかという困難な問題も私は承知の上で質問しておるわけでございます。 今回、犯罪被害者の救済の法案が提出されているわけですが、この法案提出のきっかけになったのは、被害者の人々の遺族が運動してきたんですよ。政府がこれは気の毒だ、何とかしなければならぬといってできた問題じゃないわけです。それでこれらの人たちが何ら恩恵を受けられない。私は政治というものは、一人の人を完全に救済するのが政治だろうと思うのですよ。学校を建てるあるいは道路をつくる、それも私は必要だと思う。しかし、何ら自分に責任がなくて、いわれなき故意の殺人を受けて遺族の方が悲惨な苦労をしておるというのに温かい手を差し伸べないということは、政治家としても、また行政機関である政府としても、これは憲法の精神からいって全く反するし、余りにも冷たい、むごい仕打ちだと私は思うのですが、長官どうですか、答弁してください。
○山本(鎮)政府委員 ただいまお話がありましたように、これまで被害を受けた遺族の方々等が、何とかそういう救済制度をつくってほしいということでいろいろと運動を重ねてこられたことは、われわれ十分承知をいたしております。 ただいま刑事局長が答弁申し上げましたように、この法案をつくる際、そういう点も考えまして、遡及の点も十分考えながらいろいろと法案をつくる作業をいたしたのでございますが、やはり原則的に新しい制度をつくる場合、これを遡及することは非常にむずかしいという一つの障壁があったものでございますので、われわれの力が及ばないでそれを突破することができなかったわけでございまして、その点は非常に残念に思っているところでございます。しかしこの法律というのは、いま考えられる条件下において一番適切ではないかということで提案をいたした次第でございます。
○斎藤(実)委員 私は国民が政治に対する不信を持っておるというのは、こういうところから起きしてくると思うのですよ。しかも、法律が成立した時点ですぐ発効させるというのだったら、多少でもなるほどなと——現在いろんな犯罪が起きて死んでいるじゃありませんか。これを来年の一月一日というのはひど過ぎませんか。長官、どうです。
○山本(鎮)政府委員 法の施行が遅いじゃないか、来年一月からというのは不見識じゃないかというようなお話でございますが、この法律は先ほども御説明申し上げましたように、全く新しい制度であるということで、そのために、実施する際にいろいろと準備が必要であり、公安委員会のいろいろな規則なりその他定めをしなければいかぬし、それから、その衝に当たる者の適正な運営を図るために、いろいろと教養をいたしましたり講習的な形で、全国に公平にこの制度が徹底するようにきめの細かい指導を、各県の公安委員会の管理下にある警察の担当者に詳しく説明してやらなければいけない、そういうことからして、過去の経験から見ましてかなりの時間が必要である。不徹底な形でやりますとかえって不公平が生じて、この法の運営についてまた批判が出てくるというようなことがあってはいけないということで、まあ完璧主義と言われるかもしれませんが、そういう形で全体の体制を整えて間違いない施行ができるように十分な余裕を持ってこの法律の実施に当たりたい、そういう趣旨で日がどうしても数カ月かかるということで、それでは暦年で新しい年になれば新しい気分でひとつ国民にこの趣旨も徹底しやすいということで、来年の一月一日から実施という案にまとめたわけでございます。
○斎藤(実)委員 長官、政治はお役所のものでもなければ自民党のものでもないのですよ。これは国民のための政治でしょう。先ほど答弁を聞いていますと、遡及について検討したとか、できなかったのは残念だという答弁がありましたけれども、それだけではちょっと済まされない問題です。この遡及について、あるいは施行を一月一日にしたということの答弁は、そこから一歩も出ないのですよ。将来何とかしなければならぬとか、皆さんの力をいただいて努力するとかいうことがなくて、全くあなた方の立場のみをここで答弁されているわけですが、これじゃ、被害に遭って苦しんでいる国民の皆さんや、現在起きているかもしれません、そういう立場に立って——仕方がないんだとか、これで次善の策だとか、いままでないよりいいんでないかとかいう答弁でこれからいかれるのか、何らかの前進をされた方策をとられる意思があるのかどうか、長官、どうですか。
○中平政府委員 この制度は、非常にいろんな角度からいろんな立場で御検討いただきまして、やっと生まれてまいった法律であるわけでございます。そして内容につきましても、ただいま長官から御説明申し上げましたように、私どもは現在考えられる日本の国情にマッチした一番いい制度である、こういうふうに考えている次第でございまして、どうかこの法案が一日も早くスタートできるようにひとつ御支援、御理解を賜りたいと存ずる次第でございます。
○斎藤(実)委員 これ以上やっていますと平行線ですから、また後ほどお尋ねしたいと思うのですが、刑事局長、遡及について先ほど答弁がありましたけれども、諸外国で具体的に実施をしている国とその内容についてお尋ねしたいと思います。
○中平政府委員 現在諸外国におきましては、四十三の国とか州におきましてこの種の制度が実施されておりますが、イギリス、西ドイツを初めといたしましてほとんどの国とか州では、施行日以後の犯罪被害について適用することといたしておりまして、遡及適用している例は四カ国、七州でございますが、いずれも短期間の遡及が多い状況でございます。 申し上げますと、スウェーデンが約七カ月、オーストリアが約三年九カ月、オランダが約三年、フランスが約一年二カ月、アメリカの一部の州、これは三州ございますが、これが六カ月から二年、カナダの一部の州、これは四州ございますが、これが約四カ月半から長いのは五年一カ月、こういうことになっております。 大体これらの国とか州におきましては、いわゆる生活困窮の状態にあることまたは経済生活の現実の悪化ということを要件としておるもののようでございます。したがいまして、被害者やその遺族の精神的痛みというものを緩和するという点に重きを置いておりますわが国の案とは、直ちに比較しにくいように考えておる次第でございます。
○斎藤(実)委員 確かに遡及につきましては、民法七百二十四条でも、不法行為に基づく損害賠償請求権の時効を不法行為のときから二十年、こうなっておるわけですね。民法の不法行為の規定が立法の根底に私はあると思うのです。そうだと思う。いままで遡及についてはほかに例がない、こういう答弁でしたが、法律上外形は確かにそのとおりです。私もそう思いますが、実質的な面から遡及と同様の救済措置を含む法律はほかにあるのかないのか、伺いたい。
○中平政府委員 法律によりまして全く新たに制度を創設した上、同種の過去の被害について事実上の救済措置をとった事例は承知していない次第でございます。
○斎藤(実)委員 これは全額国で補助するという制度じゃありませんけれども、公害健康被害補償法では実質的な遡及という立場から救済措置をとっているわけですね。ですから、現実的な救済制度というものをやはり考えるべきではないかと思うのですが、いかがですか。
○中平政府委員 私どももいろいろと検討いたした次第でございますが、国の制度としてはそういう制度はいまのところ私どもは考えられないといいますか、考えていない次第でございます。
○斎藤(実)委員 率直にお伺いしますけれども、この法案の中で遡及の問題について触れられなかった。確かに法理上の問題もあるかもしれませんけれども、外国でも例もあるわけですから、予算の面でなかなかむずかしかったということが本音なんですか、どうですか。
○中平政府委員 先ほど長官の方からお述べになりましたように、やはり遡及することなく来年の一月一日から実施することが私どもとしては一応制度の出発としては適当である、こういうふうに考えて提案を申し上げている次第でございます。
○斎藤(実)委員 いままでの答弁を聞いておりまして、犯罪被害者の遡及について措置をとらなかった理由をまとめてみたんですが、財政上困難だということ、それから、この制度で遡及措置を認めることは他の補償制度にも導入せざるを得ないということですね。しかし、財政上の理由ということについては、これはもう政府が福祉を切り捨てる場合の常套手段として、絶えず今日までこういういろんな問題を、国民の立場から見て補償しなければならぬと言っても、財政的な理由ということで切り捨ててきた、これは私は事実だろうと思うのですよ。しかしまた、他の補償制度にも導入しなければならないという問題も私はあると思うのですよ。しかし、この補償制度を促進させてきたのはほかならぬ被害者たちの団体であったということを考えれば、私は何らかの形でこの被害者の救済に適応するということが最も国民にこたえる国の責任だろうと思うわけです。これ以上言ってもこれはもう平行線ですから、一応私の意見を申し述べます。 もう一点私はお伺いしますが、五十六年の一月一日からという施行になっていますね。概算要求では、五十五年の四月一日として初年度十億円を要求した。おくらせた理由は何ですか、率直にお伺いします。
○中平政府委員 この制度の適用の期日が五十五年の四月一日としないで五十六年の一月一日といたしましたのは、次の理由でございます。 この制度は、わが国におきまして全く新しいものでございまして、政令とかあるいは国家公安委員会の規則の制定その他いろいろ、新しい制度でございますから、事務処理につきまして関係者が相当習熟をし、適正なそうした事務の執行が行われていくためには当然相当の時日を要する、相当な準備とそれに伴う教養、そういうものを積み重ねて本当に適正な職務が執行できる、そういうことをだんだんこの法案をつくっておる過程で私どもは承知してまいったわけでございます。それから、適用の開始日につきましては、やはりその前後に不公平感の生ずることのできるだけ少ない日を選ぶ、こういうことで、そうした諸般の事情を考えまして、準備に十分な期間がとれ、かつ、暦年の始まりである昭和五十六年の一月一日から施行適用する、こういうことになった次第でございます。
○斎藤(実)委員 刑事局長、確かに時間がかかるし、準備も必要だ、体制もとらなければならぬということも十分承知していますよ。しかし、きのうきょうのこの法案じゃありませんよ。この間も北九州市でシンナー常用の工員が主婦ら三人を殺傷しましたね。それからまた、大阪の富田林市でも若い女性がやりで殺されたという事件が起きている。この間も埼玉で暴走族が善良な市民を殺傷したという事件が起きておるわけでしょう。こういう人たちは今回の対象にならぬですわ、そうでしょう。確かにそれは準備の期間もあるかもしれませんけれども、準備が必要だ、体制が整わなければできないと言う間に大ぜいの国民が被害を受けているわけですわ。こんなばかなことがありますか。絶対私はこれは困ります。この法案の審議について、遺族の方がずいぶん注目していますよ。何らかの新しい前向きの答弁が出るだろうというふうに期待していると私は思うのですよ。ずいぶん新聞でも報道されております。きょうの朝刊でも出ておりますがね、裁判の例が。これは施行の時期を思い切って早めるということが私は最も大事だろうと思うのですが、長官、どうです。
○山本(鎮)政府委員 繰り返すようでまことに心苦しいのでございますが、やはり一つの新しい制度でありますものですから、その点、慎重の上にも慎重を期しておる次第でございまして、ただいまお話のありましたように、確かにその間に被害を受けられた方々に対して救済できないというのは、まことに先生が御心配になる以上に、われわれとしてもそういう人の立場に立って考えますと非常に残念で、何たる法律だというふうな感じがいたすわけでございますが、しかし、いままで申し上げましたような理由によりまして、われわれとしてはやはり来年一月一日からの施行という形でこの法案を御審議いただかなければいけない、お認めいただきたい、こういう気持ちでございますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
○斎藤(実)委員 私、皆さんも被害に遭った遺族の方の事情をよく知っていると思うんですよ。生活保護を受けている方もいらっしゃるし、家族を抱えて一生懸命働いている人もいらっしゃる。せめて子供さんを持っている被害者の家庭、大変生活困窮者、これらにしぼって何らかの特別措置はとれませんか、どうです。
○中平政府委員 御指摘のございましたように、犯罪の被害の影響を受けておる方の中でも、遺児の方は特にお気の毒であるというふうにいま私どもも考えておる次第でございますが、さりとて、この制度をこのような遺児がおられる御家庭に限って遡及適用する、こういう方法も制度的にはなかなかむずかしい、とり得ないのではなかろうか、こういうふうに考えておる次第でございます。
○斎藤(実)委員 次に、給付金額について伺いますが、最高額が死亡で八百万円、重障害で九百五十万円となっているわけですね。私はこれでは被害者、遺族の最低生活を保障することはきわめてむずかしい、非常に金額が少ないと思うのですが、いかがですか。
○中平政府委員 給付の額についてはいろいろと御議論のあること、私どもも承知しているわけでございますが、私どもの提案しましたこの制度というのは、遺族の方々の経済的な安定というよりもむしろ、これまで私どもがお聞きしている遺族の方々の場合のように、おの犯罪による被害、悪質な犯罪から受けられた精神的な打撃というものに対して社会全体としての温かい配慮を示していくもの、そういうふうに考えておるものでございます。したがいまして給付の額につきましても、まずこのことを一応基礎にしておるわけでございますが、それだけでなくて同時に、やはり被害者の勤労による収入が幾らであったかということも考慮に入れまして、また扶養されている方があるときにはそれについてまた応分の増額をする等ということで、精神的な安定を基礎としつつ、経済的安定についてもやはり配慮をしておる、こういうものでございます。もちろんこの額が遺族の方々の将来の生活維持にとって十分なものではないという御意見もあると思いますが、しかしながら、当面の経済的な安定には寄与することができるものと考え、この制度の趣旨からやはりこの額は適正なものである、こういうふうに考えておる次第でございます。
○斎藤(実)委員 確かに刑事局長、ないよりましだ、これは私も認めます、ないところから新しく立法するのだから。しかし、この法案を見ておりまして、物すごく粗っぽいんだ。法律をつくる以上はきめ細かくやってもらわなければ困るのです。過失の問題もそうですし、障害を受けた人たちに対する医療あるいは休業補償だとか、法律をつくる場合にはきめ細かくやってもらいたいですね。金額にしましても、殺された、これは自賠責で二千万円ですからね、いまの八百万円あるいは九百五十万円はきわめて少ない。警察官の職務に協力援助した者の災害給付に関する法律というのがありますね、これが前提になっているのではないかと私は思うが、その点について伺いたいことと、この協力援助法の給付水準を上回らない、上回っては困るという考えがあるのではないかと思うのですが、いかがですか。
○中平政府委員 この制度の立て方といたしましては、警察官の職務に協力援助して亡くなられた方というのは、これは本来、本人がやらなくてもいいこと、しかも警察官という公務にある人になりかわって仕事をされて、そして命を落とされたり重大な障害を負われたりした方でございますから、一般の国民の常識といいますかそういうところから考えると、この法律の給付水準がそれを上回るということについては問題があるのではなかろうか、こういうように私どもは基本的に考えまして、警察官のそうした職務に協力援助した者の給付水準を上回らない形の中でできるだけ高い合理的な額を見出そう、そういうことで努力したものでございます。
○斎藤(実)委員 昨年一月に大阪で発生した銀行強盗人質事件で殉職した警察官二名に対して四千三百万円と四千百万円の遺族補償、一時金が出ましたね、また総理大臣のほう賞金が各一千万円贈られた、こういう例は特例かもしれません。しかし、これと比較して警察官に協力した者に対する補償額はきわめて低い。この額を引き上げてもいいのじゃないかと私は思うのですが、どうですか。
○小池説明員 警察官の職務に協力援助した者の災害給付でございますが、この給付は、警察官がいたら当然警察官が行ったであろうことを民間の方が警察官にかわって行って、そのために災害を受けたという場合に行うものでございまして、警察官の公務災害の例に準じてこの額は定められておるわけでございます。すなわち、公務災害補償の平均給与額に相当する給付基礎額、この給付基礎額は、ただいま申し上げましたように、警察官の職務に協力援助、警察官にかわってやっていただいたということでございますので、一般には巡査の俸給の平均的な金額、それから収入の多い方の場合最高限として警視の俸給の平均的な金額、これを基礎額といたしまして、それに公務災害補償と同じ倍率を乗じてこの額というものが定まっているわけでございます。したがいまして、現在のこういう補償体系の中では、確かに先生のおっしゃるように遺族等の立場からするとさらに高い給付額が望まれるということはわかるわけでございますが、こういうような仕組みから見て現在の水準というものはおおむね適当ではないかというふうに私どもは考えておるわけでございます。 なお、この協力援助者の給付につきましては、公務災害補償制度あるいは警察官の給与改定が行われた場合には、速やかにそれに対応した改正を行うようにしておるわけでございます。
○斎藤(実)委員 確かにこれは警察官にかわって逮捕のとき殺された、これはやはり応分の補償をすべきだと私は思いますよ。余りにも低過ぎる。 犯罪被害者の給付の額が警察官に協力した人に対する補償と大体見合った額というふうに答弁がありましたけれども、もし警察官に協力をした人に対する補償額が改正されれば、犯罪被害者給付の額も改正するのかどうか伺いたい。
○中平政府委員 この犯罪被害に遭われた方たちの給付金の額の決め方の問題につきましては、大変平たく申し上げますと、警察官の職務に協力援助した者の給付の水準を上回るのはやはり常識的でないだろう。しかし、一般の公害の健康被害に関する法律等がございますが、それ等にならいまして、やはりむしろ一つの社会保障的な要素、慰謝料的な要素を含めたもので基礎額を決めておりますが、おおむねその水準にならった形でやりまして、一定の年齢階層別での賃金水準というものを、労働者の大体中間にある方々の水準を出しまして、その水準の一つの幅の中で決めておるわけでございます。したがいまして、今後経済変動等がありましたら、やはりこれは実情に合うように上げてまいる。警察官の職務に協力援助した者と連動するわけではございませんが、当然そうした他の諸制度との不均衡がないようにやってまいりたい、こういうことでございます。
○斎藤(実)委員 刑事局長、深刻な顔をしてないで、明るい元気な答弁をしてくださいよ、あなたを責めているわけではないのだから。 それから、給付の対象についてですけれども、これは殺人あるいは障害などの故意による犯罪の被害者に限られておるわけですね。過失犯による被害者は適用外になっておるわけですが、この過失犯を除外した理由は何ですか。
○中平政府委員 この制度の立て方といたしまして、故意の犯罪行為による被害につきましては、遺族の方々の精神的な打撃が大変大きいのに、加害者から損害賠償を受けさせるための効果のある方法を見出すことができない、こういうことから、例外的に国が全額公費負担で給付金の支給をしよう、こういう考え方に立っているものでございます。過失犯の被害につきましては、やはりこれは原因者負担の原則どおり責任保険などによって救済策がとられるものでありますし、現にそういう方向で自賠責を初め各種の制度がだんだんに整備されつつある、こういう状況にあるわけでございます。こういうことから、過失犯による被害につきましては適用の対象としなかったものでございます。
○斎藤(実)委員 この種の事件の補償については被害者は、故意であろうが過失であろうが、その苦痛、障害あるいは精神的な痛手、経済的な損失というのは変わりないのですな。この法案の最大の欠陥は、やはりこの過失を対象にしないというところに私は大きな問題があると思うのですよ。ですから、故意たけ取り上げるあるいは過失を除くということは平等に反する、非常に不公平だ、こう思うのですが、長官、あなたの意見はどうですか。
○山本(鎮)政府委員 お答えいたします。 過失原因によるものについては、その加害者負担という一つの原則がありまして、それによっていろいろと保険制度で担保されるというのがあるわけでございまして、自賠責等はその典型的な例でございますが、そういう制度がこれからさらに拡充されていく方向にあるという現実を踏まえて、われわれは過失というものはこの法律から除外していく、こういう考え方でございます。
○斎藤(実)委員 刑事局長、先ほどからずっと答弁を聞いておりまして、この法律の性格、それから補償額の問題、その遡及の問題についていろいろ答弁がありましたけれども、全く一歩も出ないといいますか、もうこれが最良のものでこれ以上どうにもならないんだという答弁なんでありますけれども、いま私が過失の問題あるいは遡及の問題あるいは金額の問題について質問しましたが、これらについてこのまま将来行くのか、また何らかの施策を講ずるのか、その点ちょっとお伺いしたい。
○中平政府委員 私どももこの法案についてはいろいろな角度から検討いたしまして、わが国の現在の実情に最も即した案である、こういうことで御提案を申し上げた次第でございますが、ただ、この制度は全く新しい制度でございます。この法律がスタートしていけばまたいろいろと運用上の問題も出てまいるかもわからないわけでございます。したがいまして、そういう問題につきましてはやはり今後研究をしてまいる、そういうことは当然考えていかなければならぬ問題である、こういうふうに考えております。
○斎藤(実)委員 この法律の根幹はやはり遡及制度なんですね。ですから、いま答弁を聞いておりますと、もうとにかく一歩前進だ、準備期間がかかる、財政的な理由その他で遡及はできない、そこから一歩も出ないわけですね。しかし、その実現に向けてやはり真剣な努力をすべきだと私は思うのですが、長官、どうです。
○山本(鎮)政府委員 重ねてのお話でございますが、遡及の問題は一つの大きなポイントということで、われわれとしても法務省とも十分そういう点はいろいろと話し合いながら、過去かなりの期間をかけてこの問題について検討を重ねてまいったわけでございまして、そういう意味では、現在のいろいろな諸条件を勘案してこの制度以外にない、そういうような結論に達したものでございますので、現在直ちにこれをまた再考する、そういうような段階ではないというふうに確信をいたしておるところでございます。
○斎藤(実)委員 法務委員会との合同審査あるいは同僚の委員からまた質問があると思いますが、率直に言って私はこの法案について疑問も持っておりますし、きわめて釈然としないという心境です。しかし、一歩前進だという意味では私は評価しますよ。まあいずれにしても、政府の考え方が明らかになりましたので、足りない点は同僚委員からまた質問があると思いますが、時間が参りましたので、私の質問はこれで終わらせてもらいます。
○塩谷委員長 安藤巖君。
○安藤委員 いま犯罪被害者等給付金支給法案についていろいろ議論がなされまして、警察庁の方の答弁を聞いておったのですが、特に遡及の問題については、心苦しい、お気の毒だ、こういうことを言っておられるのですけれども、これはいろいろ言われておりますように、新しい制度で画期的なことだと思うのですよ。だからもっと自信を持って、こういういいのをつくりましたという態度で堂々と答弁をしていただきたいと思うのですよ。それは中身にいろいろあるからそういう態度をとっておられるかもしれませんが、やはり画期的なことですからね。 そして、いま伺っておりますと警察庁長官は、この法案については確信を持っておるというふうにおっしゃったのですけれども、確信をお持ちになるのは非常にいいと思うのです。ところが、もうこの法案から一歩も動きませんよ、これが一番いいのだ、これ以上のものはないのだみたいな態度をとっていただくと、これは困るのですよ。私どもも皆さん方と協力して、応援して、もっといいのをつくろうと努力しているのですから、やはりそれに対して、いろいろ各界各方面の意見をお聞きになったら、われわれの意見もちゃんと聞いていただきたいのですよ。そうでしょう。それから、犯罪被害者の補償制度を促進する会の人たち、十数年にもわたって運動してこられたこういう人たちの意見も十分反映してもう一遍考え直していただきたい、こういうことを最初にお願いしておきたいのです。寸足らずというお話がありましたが、私に言わせれば、これはせっかく仏つくって魂入れずじゃないかというふうにも思われてなりません。 そこで、いろいろ議論がなされましたから、あれこれすべて重複するように議論を蒸し返すことはやめたいと思いますけれども、私の言いたいこともやはり言いたい、参考にしていただきたいと思いますので、そういう点から二、三お尋ねをしたいと思うのです。 最初に、遡及の問題です。これは外国の事例のことを先ほど浅野調査統計官だったかがおっしゃった。その中に、四カ国七州は短期間だけれども遡及されているのだというお話がございましたね。その理由として、経済状況等に現実的な悪化の状況があるとかあるいは生活困窮の理由があったとか、そういう場合に遡及しておるのだとおっしゃったのです。そうしますと、本件の法案についても、そういうような人たちの場合には遡及するということを考えてもいいのじゃないかと思うのです。それは裁定機関がちゃんと認定し、裁定をするということだって考えられるんじゃないかと思うのです。そういう点はどうですか。
○中平政府委員 確かにそういう考え方もあろうかと私は思いますが、一面また、そうした方だけを抜き出して遡及いたしますと他の方、犯罪によって精神的な打撃を受けていることは同じでございますから、経済的な面だけ抜き出してそういう制度を立てることについてまたいろいろと問題がある、したがってちょっとむずかしいのではないか、とり得ない制度だ、私はこう考えるわけでございます。
○安藤委員 だから、そういうことも勘案をしてもう一遍考え直してみて、そうなれば全般的に遡及するということを考えなくてはならぬということも考えられると思うのです。いま言いましたように実際に遡及をしているところでは、いまおっしゃったような心配の点をどう処理をしてきているのかということも研究されてしかるべきだと思うのです。 それから、本法案を出す一つの動機というか契機というか趣旨、これは、いわれなき犯罪によって被害を受けられた人たちがいろいろ困っておられるのを放置しておるのは国家の責任としてどうかというふうに、国に対する信頼関係が失われることになってもいかぬのでということもおっしゃったと思うのです。そうしますと、過去二十年間あるいは十年間、補償制度を促進する会の人たちがやってこられたそういう運動に参加してきた人たち、あるいは参加しておらない方でもそういう被害に遭っておられる方もあるのではないかと思うのですが、過去にそういう被害に遭っておられる人たちを放置しておくのは、では、国に対する信頼は失われないのか、これは問題だと思うのです。この辺のところをちゃんと把握すべきではないかと思うのですが、どうですか。
○中平政府委員 確かにそういう御議論も私はあろうと思いますが、やはり法律というのは施行後適用されるのが原則であって、その例外を見出すためには、なぜその制度に関してだけそういう理論的根拠が立つかということについての詳細な詰めをしなければいかぬわけであります。そういう点について私どもいろいろと検討いたしましたが、この制度だけを抜き出して遡及するという合理的な理由が見出せなかったということでございます。
○安藤委員 もう一点だけお尋ねしておきたいのですが、この法案は全額公費負担ということで、これは例外的なものだとおっしゃった。だから、いろいろな法制度、それから法律不遡及の原則等々もちろんあります。が、やはりこれは特別例外的なものとしてやるのだということなら、いろいろ運動してみえた人たちに対する国の態度の表明あるいはそれ以外の人たちに対する救済の措置を講ずるのだとかいうようなことで出てきた例外的なものなら、それをもう一歩進めて、そういう趣旨でやるのだからというので、例外で遡及するのだという考えをとってもいいのではないかと私は思うのですよ。その点どうでしょう。
○中平政府委員 私どもこれは例外的な制度であると言うのは、そういう非常に気の毒な状態にある人に対して国が公費をもってその被害の一部をてん補する、こういう制度であって、したがってそれを例外的な制度としてとらえ、他の公的給付があればそちらの方を優先させてもらう、あくまでも補充的な制度として考え、そうしたことを通じて国の法制度に対する一種の信頼感を回復する、こういうことでございます。例外的と言っても、やはりその辺には限界があるわけでございまして、遡及にまで例外を及ぼしていくということについては、なかなか制度としてはとり得ない。制度全体の整合性から申し上げますと、前者の意味で私が言っております例外性というのは、他の制度との整合性がとれるわけでございますが、後者の遡及については、そういう意味での整合性がなかなか保ちがたいのではないか、こう考えております。
○安藤委員 国に対する信頼関係を失わせないようにするという趣旨からすると、遡及をしないということは一体どうなっておるんだ、かえって信頼関係が失われたままになっていくんじゃないかということを私は強く懸念をいたします。 それで、先ほどから民法七百二十四条の不法行為に対する損害賠償責任の時効の問題がありまして、あれは二十年です。もちろん私もその程度ぐらいを遡及すべきだという考えを持っております。ところが、二十年というと、これは証拠の関係とか事実関係の確認とかこれはとんでもない、また長過ぎるんじゃないかというようなのがまず頭にぴんときて、これじゃとてもじゃないが遡及なんという話にも乗れないということでは困るのですがね。しかし、仮に二十年でないとしても、同じ民法の七百二十四条に不法行為もしくは損害を知ったときから三年というのがありますね、だからこの三年。これは私は不満足ですよ、ですが、たとえばこの三年ということだって、先ほどの諸外国の遡及をしている事例からすると、大体その辺のところにおさまりそうな年数なんですよ。だから、そういうことも考えていいのじゃないかと思うのですが、どうでしょう。
○中平政府委員 不法行為のいわゆる短期時効でございますか、これは三年ではございますが、これを犯罪被害について遡及する理由にしたらどうだ、こういう御提案だと思うわけでございます。考えてみますと本来、損害賠償責任を根底に置いている他の諸制度におきましても、こういう方法をとっていないわけでございます。したがいまして、やはり三年というのは遡及の理論的根拠としては乏しいではないか、十分な説得力を持ち得ないではないか、こういうふうに私ども考えております。
○安藤委員 遡及の問題はこれで終わりますけれども、だからやはり二十年というのに戻ってくるのですよ。だから、その辺のところをもう一度再考していただくように強く要望いたしまして、時間の関係もありますから次の問題に移ります。 ところで、いろいろ伺っておりましたが、この法律案の基本的な考え方、理念といいましょうか、あるいは、こういう法律をつくる以上はもちろん憲法に準じて、憲法に違反しないようにつくらなければいかぬことも明らかだと思うのですが、たとえば憲法で言うと十三条の個人の生命、自由等々の尊重の規定がありますね。それから二十五条は有名な生存権の保障の規定がございます。こういう憲法の規定をやはり根拠法にしておられるのでしょうか。
○中平政府委員 憲法の理念等から申し上げますと、二十五条的であろう、こういうように考えております。
○安藤委員 そうしますと、これはもちろん中身もそうですけれども、題名も、給付金支給ということで、損害を補償するということにはなっておらないわけですね。すると、これは国の過失あるいは故意によるそういう責任はないけれども、最低限度の給付をすることによって財産的な損害も一定部分てん補するんだ、こういうお話だったですね、精神的な損害をてん補するというのが第一義的だけれどもと。そうすると、その損害をてん補するという意味では国には責任はないけれどもという考え方で、これは無過失損害賠償責任論に基づく考え方なんでしょうか。
○中平政府委員 無過失責任論と申しますのは、これはあらゆる故意、過失を問わずにやはり責任があるという問題でございまして、そういう問題ではございませんので、私どもといたしましては、やはりこれは社会の連帯共助の精神に基づいて給付金を支給する、そういう立場でございます。国がそういう法律的な意味での責任がある、犯罪が起こったことについての国が法律的な責任があるという意味ではございません。
○安藤委員 そうしますと、国が法的責任を果たそうという立場ではない、こういうことですね。 そうしますと、これは先ほどもちょいちょいと話の中に出てきたのですが、社会福祉的な、あるいはお見舞い金、あるいは恩恵として出すという性質のものですか。
○中平政府委員 先ほど申し上げましたが、これはやはり民法の不法行為制度というものが事実上機能してない、これの実質化という意味、あるいは一種の刑事政策といいますか犯罪対策という立場、それから一種の社会福祉的な立場、そういうものを一応のみ込んだ制度である、こういうふうに考えておりまして、その中心をなすものは、犯罪者によって国の法秩序というものが破られておるわけでございますから、そうしたいわれなき犯罪によって、しかもそういう人たちが社会的に非常に不利な立場に追い込まれている、こういうことからくる法制度に対する国民の不信といいますか、そうしたものをこれは回復をしてまいる、そういうふうな立場で一応この制度を考えた、こういうことでございます。 〔委員長退席、石川委員長代理着席〕
○安藤委員 いろいろむずかしいと思うのですよ。だから、明確にこれを何だということを、もちろん私は法律学者じゃありませんから、その辺のところをきちっとしろとは——本当はきちっとしてほしいのですね。そうしないと、さっきの遡及の問題とか過失の問題とか金額の問題とかにこれは非常に大きな影響が出てくるのですよ、本当は。しかし、犯罪がそういうような形で起こったことに対する国の国民に対する保護義務が十分でなかったという点に対しての国の責任をとるんだという考えも入っておるようにうかがえますね。そしてそれに、被害者の方々の精神的な損害、それから生活困窮しておられる場合の財産的な損害も一定程度てん補しよう、こういうようなのが一応ミックスされて、それを全体として、国の法的責任ではないけれども、先ほどからおっしゃっておられる社会的共助の精神に基づく国の責任、こういうふうに位置づけておられる、こういうふうな理解でよろしいわけですね。
○中平政府委員 基本的にはそういう立場でございます。
○安藤委員 そうしますと、国の責任は全くないんだというような言い方ではないわけですね。 そこで、先ほどからいろいろ議論が出ておったのですが、過失の問題ですね。過失犯も、過失犯と言う以上やはりこれは犯罪であることは間違いないのです、ちゃんと刑罰の対象になるわけですから。いろいろおっしゃっておられたのですが、それは過失の場合は損害を賠償するようないろいろ原因者責任というのがあって云々というお話がありました。伺っておりましたがね。この法律案の中に八条に、「犯罪被害を原因として被害者又は遺族が損害賠償を受けたときは、その価額の限度において、犯罪被害者等給付金を支給しない。」こういう規定があるわけですよ。だから、過失の場合はそういう原因者負担というようなことでもって、自賠責もその最たるものですが、いろいろちゃんと補償される仕組みになっている、だからそちらで吸収される、あるいは救済されるからいい、これはわかります。ところが、救済されない場合もあるわけなんですよ。だから、救済された場合はいまの八条でもってそれを引けばいいのですから、ちゃんとつじつまが合うじゃないですか。そういう制度があるからといってこれをなしにすることはないと思うのです。そのことによって、過失もちゃんと対象にするということによって、こういうような原因者負担によって救済をされない人たちに対してもきちっと給付金を支給していく対象にすることができる、より一歩進んだ完全なものにする一つのこれは考え方だと思うのですが、どうでしょう。
○中平政府委員 本制度は基本的なとらえ方として、故意の犯罪被害者、故意の犯罪によって亡くなった方、死亡と同一の評価を受ける重障害を受けた方、そうした方を一応対象にしてまいっている。その根拠というのは、故意というのはやはりそうした原因者負担の制度に本来的になじまない。 片一方の方はそちらの方策がとれるじゃないか。確かにそういうことでございます。一応そういう例外はもちろんございますが、基本的にはそういう立場で制度を立てることが制度論として正しい制度ではないか。じゃ逆に、過失を制度として取り込んでしまいますと、これは故意以上に過失の認定は大変むずかしいわけでございます。過失があったかなかったかということもむずかしいし、それから本来的に、過失の場合は多くの場合資力があるわけでございますから、賠償責任というものを前提にしてやってまいらなければいかぬ、こういうことでございまして、やはり制度の根幹に触れてまいる問題でございます。この制度は、この問題が提起された経緯等にかんがみまして、何といっても国民の十分なコンセンサスの得られる故意による死亡、死亡に相当する重障害、これにしぼって運用してまいるのが実態に合うのではないか、こういう立場でございます。
○安藤委員 この法案の条文の中にはなかなかむずかしい認定のところがあるのですよ。過失があったかどうかという認定はなかなかむずかしいというお話がございましたが、たとえば給付金を支給しないことができるという六条の場合でも、六条の二号ですか、「被害者が犯罪行為を誘発したとき、」とかあるいは「被害者にも、その責めに帰すべき行為があったとき。」とか、これは非常にむずかしい判断をしなければいけませんよ。だから、それと用じような判断でもって、やはり過失があったかなかったか、あるいは、これは刑事事件の対象になるのが多いだろうと思いますからその結果を待つとか、そういうようなことでもってこれはできると思うのです。この六条の二号の「犯罪行為を誘発した」とか「その責めに帰すべき行為があった」かどうかということも非常にむずかしい認定なんですよ。こういうことまで認定しておきながら、過失の有無については非常にむずかしい認定をしなければいかぬからというので、過失をばさっと切ってしまう、これこそ国民のコンサンスは得られないと私は思うのです。 これはどうしても再考していただきたい。議論しておっても始まりませんから、同じような答弁が返ってくるに決まっておると思うのですが、私は考え直してほしいということを言っておるのです。そして、過失だから、わざとやったんじゃないからということで泣き寝入りする場合が本当は多いのですよ。だから、そういう人たちも救っていくという意味では過失も入れなければおかしいと思いますよ。これは強く再考を要求しておきます。 それから、重障害の程度の問題については、いろいろ前にも議論がありましたから、四級以下の切り捨ての問題、これは省略します。合理的な理由がないということだけ申し上げておきます。 これもやはり一定期間、たとえば一カ月以上の加療を要したとか、あるいは少し程度を下げれば二週間とか、そういう一定期間を設けて、それ以上の加療を要する程度も対象にすべきだと思うのです。普通一カ月以上の加療を要する場合重傷というふうに言われますね。そういう人たちもやはり対象にすべきだと思うのですが、いかがでしょうか。
○中平政府委員 わが国におきまして、これは放置しておくべきでない、こういうことで常に問題になってきましたのは、これは被害者がいわれなき犯罪、故意の犯罪によって死亡した場合でございまして、この制度におきましても従来の経緯等も踏まえまして、やはり死亡を中心に据えて創設するのが適当である、こういうふうに考えた次第でございます。ただ、身体上の障害でありましても、労災等でいう三級までの障害につきましては、その被害の重大さにおきまして死亡と同等の評価を受けているものでございまして、こういうものにつきましては死亡と同様に扱うことが適当である、こういうことで、やはり死亡を中心としつつ重障害を取り入れた、こういうのが私どもの基本的な考え方でございます。したがいまして、そういうような基本的な考え方に立って、それ以下のものにつきましては一応今回の対象には入れていない、こういうことでございます。
○安藤委員 議論しておるといろいろまたあれですから、次に移りますけれども、四級以下もやはり対象にしなければ不合理だということを申し上げておきます。 それから、この法律案の中でちょっと不明なところがあるので、細かい話になりますけれどもお尋ねしたいのですが、犯罪者が犯罪行為を行った後で死んでしまったあるいは行方不明になってしまったというような場合も、この給付の対象になるのかどうか、いかがでしょうか。
○浅野説明員 お答えします。 犯罪者がすでに死亡しておるあるいは所在不明の場合も対象にするという考えでございます。特に除くというふうに書いてございませんので、犯罪行為による死亡または重障害という認定はできる。なお、仮給付金の支給の条文であります十二条においては、「犯罪行為の加害者を知ることができず、」というのを要件として掲げておりますので、この点からも趣旨がはっきりするのではないかというふうに思います。
○安藤委員 ついでにもう一つちょっと細かい話をお尋ねするのですが、たとえばこれはイギリスにあった事例で、イギリスはそういう場合もちゃんと補償の対象にして支払っている事例なんですが、部屋の中にいて、犯罪者がピストルでも刀でもいいですが、一挙に襲いかかってきた、それで逃げるためにあわてて外へ飛び出した、ちょうど車が走ってきてひかれて死んでしまったという場合、本件の場合はこれは過失と故意と分けてある、過失は対象にしていないのですが、そういう場合はこれはどうなるのでしょうか。
○浅野説明員 お答えします。 イギリスにおきましては、暴力犯罪に直接起因する被害ということになっておりますが、御質問のような場合を対象にしたというような事例があるようでございます。私どもの法案の場合には、これはやはり殺人などの犯罪による被害というものを対象にするという考えでございますので、犯罪行為による死亡というような場合につきましては、殺人の場合であればその被害者と言える範囲と考えるべきだ。ただ、いま御質問の場合というのは、具体的に状況によりましては、これは殺人の被害と見得る場合がというか、もともと殺意を持って襲った場合あるいは障害の故意をもって襲った場合等については、こういう故意犯の被害と見得る場合が十分あろうかというふうに思います。
○安藤委員 そういうことであればもう一つ、私も考えておるのですが、やはり殺されかかった、そしてある一カ所けがを負ったけれども、すぐ窓から逃げ出して、そこは助かったのだけれども、それが何階か上だったので死んじゃったという場合ですね、そういう場合、これはやはり殺人行為を原因としたものだ、その犯人の行為によって、受けた傷は致命傷ではなかったのだけれども、窓から落ちたらそれで死んじゃったという場合でも、これは対象になるのですか。
○浅野説明員 お答えします。 だんだん具体的な話になってまいりまして、ちょっと私どもも実際の状況を見て判断しなければよくわからない点がございますけれども、要するに、その因果関係というものをどう評価するかという問題で、その犯罪の被害ということについて因果関係のいままでのいろいろ判断の集積があるわけでございますので、それを参考にして判断することにいたしたいと思います。
○安藤委員 それから次に移りますが、いろいろ議論がなされましたから重複してはお尋ねしませんが、給付金の額ですね。これはやはり少なくとも自賠責の二千万円まで最高額は考慮すべきだと思います。だからそういう点で再検討していただくよう要望しておきます。 そこでその関係で一つ、これは勉強しておられるだろうと思うのです、あるいは考慮されたろうというふうに思いますけれども、昭和三十九年からこの制度を実施しているイギリスの場合ですね、これはジュリストという雑誌の一九七〇年の十二月ですから、いまから約九年ちょっと前に紹介されておる事例なんですよ。これは二十八歳の未婚の男性が暴行を受けて全身麻痺状態に陥ったケースですね。将来病院生活が続くという見込みに立って、これまでの最高額の四万二千ポンド、約三千万円支払われているのです。入院費、治療費などはこれには含まれていない、こういう状態なんですね。しかも、イギリスにおいては基本的な考え方としては、恩恵的な補償という性格づけをしているのですね。 先ほど私はこの制度は恩恵的なのかあるいは見舞い金なのかということもお尋ねしたのですが、その辺のところがはっきりした答弁をいただけなかったのですが、国の責任もある、それを果たそうということも含まれているのだということをおっしゃったのですね。そして、私もそれをまとめて先ほど言いましたが、それは肯定をされたはずです。そうすると、国の責任も認めて、それも果たそうというのも中に入っているんだということになってくる。イギリスの場合は、恩恵的な補償という性格づけでやっている。にもかかわらず、いま言いましたような事例で相当前にこれは三千万円支給しているのですよ。こういうことからしても、この八百万円あるいは九百五十万円というのは、幾ら予算の関係からというのが一部入っているにはしろ、やはりこれは国の責任を果たすという意味では、国に対する国民の信頼関係というのは失われ続けるのではないかというふうに危惧するので、この点について考え直すということはどうでしょう。
○中平政府委員 ただいまイギリスの例をお挙げになりましたが、確かにそういう例もあることは私ども承知いたしております。しかし、日本の国のこの給付の水準というのは、世界の各国を横並びに一応見渡しましても低い額ではございません。むしろ非常に額としては高い方である、こういうふうに私は考えておりますし、それから制度の立て方といたしましても、やはり日本の国は死んだ人を悼むと、こういう気持ちで額等をかなり決めている。それが額の基本になっているわけでございますが、諸外国の制度というのはむしろそういうことではなくて、死亡よりもけがをしたとか現に生きている人を中心に制度が組み立てられておる、そういうこともやはり日本の国と外国とかなり立て方として違っていると思うのであります。そういう状況でございまして、日本の国の制度は私は必ずしも水準が低くない、こういうことを申し上げておきたいと思います。
○安藤委員 私がいまたまたま挙げた事例がけがをしたという場合だというので、イギリスの場合はけがをした人の方に特に重点を置いているのだみたいなお話ですけれども、これはやはり一つのけがをした場合の事例ですけれども、この給付金の額というのは本当に損害をてん補する。気の毒な状態になった、何の責任もないのにいきなりそういう災害に遭った、だからできるだけそれをもとどおりにしてやろうじゃないか、そういう犯罪行為を防ぐ点において国にもやはり責任があるのだ。これはすべての犯罪を全部チェックしてやるわけにいかない、それもわかりますよ。しかし、そういうのが起こったということは、国の犯罪防止義務違反ということもあるのだというような考え方にどうしても立っておられるわけでしょう。 そうなれば、そういう被害に遭った人たちに対しては、できるだけ従前の生活が回復できて、そして笑いを取り戻すことができるというようなところまで一応考えてやるべきじゃないかと思うのですね。だから、そういう点からするとこの金額は非常に少ない。どうしてもこれは上げなくちゃぼくは不合理だと思うのです。警察の行為に対して協力した人のことで先ほどいろいろ議論がありましたが、そちらの方の損害補償の関係と均衡を保つためとおっしゃったですが、そちらが第一低いですから、そちらを上げればいいのですよ。だから、その点のところもこれは十分考慮をしていただきたいということを要望をしておきます。 それから、障害を負ったときの後遺症の問題、これも一時金で支給されて後は知らぬというかっこうでしょう。その裁定の時期にわかっておったけがよりも後に悪化をしてそれがひどくなった、あるいは後遺症が残って相当生活に困窮するというような場合は、この法律案で見るのか見ないのか、どうでしょう。
○浅野説明員 犯罪の被害としての重障害が進んだ場合には裁定をし直すということはあり得るわけでございますが、その後の生活の状況がどうなったということは残念ながら、この制度では見ることはできないということでございます。
○安藤委員 だから、そういうようなこともやはり救済の対象にしていかないと、いいものをつくってくれたなということにはならぬと思うのですよ。だからそういう点についても再考していただきたいということを要望しておきます。 それから、これもちょっと細かい話ですが、法案の第五条の遺族給付金のところですが、支給を受けることのできる順番が書いてあるわけです。この順番についてとやかく言うつもりはありませんが、気になるのは、遺族の人が支給するという裁定を受けた、それからもらうまでの間に——たとえばだんなさんがそういう非業な最期を遂げられた。そのときは最初の支給対象者は配偶者ですから奥さんですね。ところが、病気になってしまって間もなく死んでしまった。裁定が奥さんに出たのですけれども、それからもらうまでの間に死んでしまったという場合は、この順番に従って次の一項の二号の最初に書いてある人、いわゆる子供さんですが、そこへ行くのかあるいはもう一回裁定をし直すのか、そういう点はどうでしょう。
○浅野説明員 お答えします。 この裁定がございますと、十一条の二項によりまして申請者は、給付金の支給を受ける権利をそこで取得いたしまして、これは具体的な権利になりますので、その後申請者がお亡くなりになられますと、その権利が相続されるというふうに考えております。
○安藤委員 そうしますと、それ以後は普通の民法の相続法の規定に従って、裁定によって給付を受けることになった権利が相続されるのだ、こういうことですね。うなずいてみえますから、そのとおりに理解をしておきます。 そこで、裁定の機関の問題、これもいろいろ話が出ましたけれども、私は基本的には第三者機関がこの裁定をするのがいいのではないかというふうに思っているわけです。このあれでいきますと、国家公安委員会の方には専門委員を若干名置くことになっているわけですね。ところが、都道府県公安委員会がこの仕事を担当することになっても、特に専門委員を置くという規定にはなっていないわけです。そうしますと、実質的には捜査担当機関である警察が担当することになる。先ほどのお話ですと、直接捜査とは関係のない警務の方でこの事務を扱うのだということですね。ところが十三条の三項で、申請者が正当な理由がなくていろいろ調査に協力しないというような場合は、公安委員会はその申請を却下することができる、これは却下されてしまうことになるおそれがあるわけです。 実際にその犯罪者が捜査され、送検され、起訴されて裁判を受けるというようなことまでではなくて、もっと早期にこれは裁定をするというようなことを考えておられるようですが、これもできたら答えていただきたいのです。申請をされて、どのくらいの間に裁定が出されるという仕組みになっているのかということもお答えいただきたいと思うのですが、まだ裁判になっているあるいは捜査中だということになりますと、その関係の書類は捜査当局が持っているのですよ。だからそういう申請をしても、遺族の人あるいは障害を受けた人に対して給付金を支給するという裁定をすべきかどうかという判断を公安委員会がするについての資料も、捜査機関が持っていると思うのですよ。だから、一々持っている資料をコピーをつくって公安委員会の方へ渡してしまう、あるいは警務の方へ渡してしまうということではなくして、実際問題として捜査を担当している、捜査一課か二課か知りませんが、そういうところがまだ資料を持っているのではないかと思うのです、その段階は。だから、そういう申請をした人たちがいろいろ診断書を出したり、あるいは必要と思われる文書を出したり、事情を説明したり等々するのに応じて裁定のための調査をするというのは、実際問題としては捜査を担当しているところでやるのではないかという気がするのですが、そういう懸念はないのでしょうか。
○中平政府委員 第一のお尋ねの都道府県の公安委員会に専門委員をなぜ置かなかったか、専門委員を置かないから直接捜査官がそうした裁定の事務にタッチすることになるではないかという御指摘でございますが、大体各都道府県の公安委員会に専門委員を置かなかったというのは、各府県ごとの申請件数というのは大体平均十数件が見込まれる程度で、特に専門の委員を置いてやるほど多くの裁定事務はないわけでございまして、行政簡素化等の見地からも、最終的に国の段階で国家公安委員会に専門委員を置いておるわけでございますから、ここで十分に公平性の担保はできる、こういうことを考えておるわけでございます。 それからまた、裁定といっても現実には捜査官の捜査資料を見て公安委員会が判断をする、したがって捜査官の言いなりになるではないかという御指摘でございますが、これは犯罪が起こりましたら、犯罪につきましてその真相を解明する仕事は捜査官がやるわけでございます。そして捜査官のやった捜査の結果というのは、やがてこれは起訴され、そして裁判で有罪になってまいる、こういう手続を当然経てまいるわけでございますが、この裁定はなるべく迅速にやりたいということでございまして、通常はやはり申請があってから一カ月ぐらいの間には結果を出すようにしてなるべく早く救済をいたしたい、こういうような基本的な考え方でやっているわけでございます。したがいまして捜査機関等に照会をする、そうして犯罪事実の存否、正否等については当然、公安委員会としては照会文書を出して聞かなければいかぬわけでございます。しかし、そうした照会の結果に基づきまして、公安委員会を補佐しております捜査を直接担当しない警務の人たち、こうした人たちが別の角度から公安委員会を補佐し、そして公安委員さんは公安委員さんのお立場でまた、捜査機関の照会事項を一つの自分たちの御判断の材料にされまして、そういう形で御判断がなされるわけでございますから、捜査機関の意のままに判定が下るということはないわけでございます。そういうふうな手続をとって、そうした捜査業務と裁定業務というものを分離していく、最終的には制度的には、国家公安委員会に専門委員を置いて、そしてさらに公正さを貫いてまいる、こういうような立て方をしているわけでございます。
○安藤委員 その問題については結局は、捜査をしている部署の人たちが、そういう事情も申請者の方から聞いたりなんかをして——それでないと、犯罪の中身について、先ほども私が言いましたように、被害者が誘発したのではないかとか、あるいはその責めに帰すべき行為があったんではないかとか、そういうような認定までするわけでしょう、公安委員会が。だから、そういうような認定の材料はもちろん捜査の部署が握っているし、これはまさに、最終的には裁判所が認定するのですけれども、捜査をしている部署がまず認定しますね、それによって捜査の方針を変えたりなにかしなければいかぬわけですから。だから、そういうような認定を公安委員会がするについて、直接補助をするということになると、どうしても捜査を担当している部署がこれをやるのではないかという気がするのです。 そして、そういうところでもってこの給付金の支給の申請をした人がいろいろ事情を聞かれたりなにかするということになると、結局は捜査に協力をしたかどうかによって、この申請が受け付けられあるいは支給の裁定がされるかどうか、そういうところまで左右されるのではないか。とにかく裁定に当たってのいろいろな調査に応ずる、文書を提出する、診断書を提出するということに協力しない場合は、もちろん正当な理由なくというのはありますよ、ありますけれども、協力しない場合は申請を却下することができるとあるのですから、結局は捜査に協力することによって、これはそういうことが左右されるという危惧があるのです。現実に私も日本弁護士連合会へ行って聞いてさましたら、大いにその辺は危惧しているんだ。日本弁護士連合会が発表した、警察庁がお考えになったこの給付法案に対する対案をつくっておられるのですけれども、その要綱の中ではその辺を大きく危惧の一つとして掲げでおられるのです。そういうような点は全くないのでしょうかね。
○中平政府委員 結局、犯罪に起因して亡くなられた方について、その事実関係を一番よく承知しているのは捜査した機関であり、さらにそれを捜査機関から受けまして訴追する検察の機関であり、最終的には裁判所の判定、こういうことになるわけでございます。したがいまして、捜査の最初に認定した事実が全く無にされることは制度的にあり得ないわけでございます。しかしながら、それの一応の事務の処理といたしましては、捜査機関は捜査機関の立場で一応事件を処理し、検察に送り、そしてそれが起訴され、だんだんに進行してまいる、こういうことになるわけでありまして、制度的には、それを切り離して、そうした機関からの材料の認定は、公安委員会が照会という業務を通じて一応承知をし、これはどの機関がやったってそういうことはしなければいかぬわけでございますから、それを補助する部門としては、全然捜査と関係のない、むしろ日ごろから警察官の職務に協力援助した者の裁定をやっているとか、そういう公正な立場で日ごろ仕事をされておる、そうした方々が捜査業務と離れた立場で、そうした照会を踏まえて一応自分たちの判断をし、それを公安委員会に上げて、公安委員会は合議の機関でございまして、非常に良識のある民意を代表される方として構成されておるわけでございますから、こうした人たちがそれをやり、慎重に審議をし、そうして御判定なさる、こういうことになるわけでありまして、特に捜査に協力したからどうだとか、そういう問題はないわけでございます。捜査機関が直接、おまえはどうだとかこうだとかいうようなことを、特に給付の業務中に聞くわけでも何でもございませんから、全然別の組織で、別のルートできちんとやってまいりますから、そういう心配はないし、裁定業務と捜査業務というのは、そうした組織の中で完全に分離され、公平性が十分に確保できる、こういうふうに私は考えております。
○安藤委員 そうおっしゃるだろうと思うし、そうやっていただきたいと思うのですが、犯罪があるでしょう、加害者、被害者、殺されてしまった人、その犯罪の現場に遺族なんか居合わす場合だってあるのですよ。そうすると、そのときの犯行の模様についていろいろ捜査があるでしょう。現場検証の立ち会いとか何かかんかありますよ。それからすぐ後でこの給付金の支給申請が出ます。そうすると、実はあの被害者の遺族は余り協力的でなかったというようなことになっては困るから、念のためにお尋ねしているのです。これは先ほども言いましたように、いろいろ心配しておられるところがありますので、その辺のところは、十分そういうことのないようにしていただきたいということを要望しておきます。 それから裁定機関の問題で、私は先ほどから申し上げておるように、都道府県公安委員会の段階から第三者機関の方がいいんじゃないかと思うのですが、これは法務省でいろいろやっておられたころなのか、そうではなくて、警察庁の方でこの法案をどうするかということを検討する段階になってからのことだというふうに私は聞いておるのですが、最初の裁定機関は都道府県公安委員会だ、これに不服な場合は審査請求をすることができるという規定になっておりますね。その審査請求を受けて審査をするのは国家公安委員会、仕組みはこうなっておりますね。この中央の審査請求に対する審査を担当する機関としては、公安委員会ではなくて別の第三者機関としての、たとえば中央審査会とかというようなものを考えておられた段階があるというふうに聞いておりますが、そういうような事実はありませんでしたか。
○山田(英)政府委員 お尋ねの不服審査請求の処理の仕方については、大変むずかしいケースが不服審査請求には出てくるであろう、これを公正に判断することがこの制度を実現するため必要なことであるという観点で、国家公安委員会を不服審査機関として設定いたしましたが、それの諮問を受けて専門的に審査する機関として、御質問にございました中央審査会というものを考えた時期はございます。しかし、これは国の中央行政機関の中でも大きなウエートを占める合議体であるということで、行政簡素化の見地から認められなかったわけでございまして、そのかわりに法案において国家公安委員会に置くこととされております専門委員制度、これは非常勤の国家公務員でございますが、専門委員制度というのがそれにかわりまして認められたという経緯がございます。
○安藤委員 行政改革の一つの悪い意味でのしわ寄せが来ているのじゃないかという感じがしますね。私どもは行政改革も、国民のニーズにこたえるという点で充実すべきところは充実拡充しろということを常々言っておるのですが、これはいま御答弁にあったように、一時は考えられておった、ところがそれが結局は、国家公安委員会そのものになってしまった。専門委員を置くということになったけれども、これはやはり相当大きな後退ではないか。この裁定が正しかったか正しくなかったかということをさらに審査するという機関は、やはり本当にこれは公平なものであるということを国民が納得することができるような仕組みでなければおかしいと思うのですよ。だから、いま行政改革云々の話でこうなってしまったというお話ですが、いま私が言いました公正を保つという意味からも、これはもう一遍ネジを巻いて、せめて中央の審査請求を担当するところだけでも第三者機関を設けるようにもう一遍努力してもらいたい、考えていただきたいということを私は要望しておきます。 それから、これはちょっと細かい話ですが、申請手続をするのにこれは代理人でもできるのかどうか。たとえば弁護士が代理人となって申請手続をして、そしていろいろな裁定に至る過程での調査に立ち会ったりなんかすることができるのかどうか。
○浅野説明員 当然委任があれば、代理人というものは認めるものであると考えております。
○安藤委員 それからもう一つ、これも細かい話ですが、被害を受けた人がたとえば原因者から、あるいはその他の公的な損害賠償制度等々で支給を受けたときは、その分だけは、前にお話ししましたが、この支給の給付金は減額されるということになっていますね。そういうことでなくて、裁定によって給付金を受けたそれ以後、何らかの手続によってほかの方から損害賠償を受けたという場合は、後から受けた損害賠償は返さなければいかぬことになるのか、その辺はどういうように考えておられるのですか。
○浅野説明員 給付金の支給をいたしますと、その額の限度におきまして損害賠償請求権を代位取得するわけでございます。したがってその部分については法律上、正当に損害賠償を受けられないわけでございますけれども、それを差し引いた残りについて損害賠償をさらに受けました場合には、返還する必要はないという考えでございます。
○安藤委員 それはわかるのです。そうだろうと思うのですが、そうでなくて、そういう給付金を受けた限度額を引いて、そして損害賠償を請求したという場合はいまのお話でわかるんですね。ところが何かの手違いで、そうでなくて全部もらっちゃった、もらえるものだと思って。その場合は、その給付金の分は後から返さなければいかぬのかどうかということです。
○浅野説明員 それは当然、法律上の原因なくして給付したということになりますと、返還ということになると思います。
○安藤委員 法律上の手続的にはそういうことが言えるんじゃないかということを私も思うのですけれども、これはやはり金額と関係があるのですよ。いろいろ議論がありましたように金額が八百万円と九百五十万円、これが本当に国の責任をたとえ全部ではないにしても一部にしろ認めた上での制度ということからすれば、低きに失するということが言えると思うのですね。だからそういう金額でもっては、それからいまのいろいろな損害賠償制度からしても たとえば人の命は地球よりも重いと言われているでしょう、じゃあもう一遍返してくれと言ったって返すことできないわけですよ、あの世へ行ってしまった人を。あるいは、片足失った人、もう一遍足を戻してくれと言ったって、戻すことできないわけですよ。だから、財産的な被害は何らかの形によって弁償することはできるのですが、生命、身体に対する被害というものは弁償できないですよ。もとどおりにはできないです。その辺のところにやはり問題があるのですね。だからそういうことになると、賠償をよそから受けた場合にはその分給付金を減らすというのも私はおかしいと思うのですよ、本当は。もうてん補されない、ものすごい大きな損害をこうむっているのですから。だから、やはりこの給付金を受けた分は、損害賠償を受けたら給付金はその分だけ削るということであるならば、これは給付金の額を本当に損害を補償するという意味、国の責任の一端をやはり果たすんだという意味で、先ほどからほかの委員の人たちも質問されましたし、私も要求をいたしましたけれども、金額をせめて自賠責の最高限度額まで上げるというようなことでないと、これは本当の国と国民との間の信頼関係を失わないようにするという措置にはならないんじゃないかと思うのです。 だから、そのことで最後に警察庁長官の意見をお伺いして私の質問を終わりますけれども、最初に言いましたように、これは絶対一番いいものだから変える必要はないものだなんということではなくて、もっと柔軟な意見を大いに聞いて、さらに改めるべきところは改めるんだというような姿勢が如実に出てくるように答弁してください。
○山本(鎮)政府委員 ただいま大変種々貴重な御意見を承りました。それらについては、われわれのこれからの法案を実施していく過程において十分検討を積み重ねる材料にしていきたい、研究の材料にしていきたい、そういうことでこの新しい法案をさらに国民の期待できるよりよいものにしていく一つの糧にしたい、こういう気持ちでおります。
○安藤委員 時間が来ましたので、終わります。
○石川委員長代理 午後四時より再開することとし、暫時休憩いたします。 午後一時三十四分休憩 ————◇————— 午後四時二十三分開議
○塩谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 犯罪被害者等給付金支給法案を議題とし、質疑を続行いたします。河村勝君。
○河村委員 午前中のやりとりを全部聞いておることができませんでしたので、多少お聞きするのが重複するところがあるかもしれませんから、あらかじめお許しをいただきたいと思います。 私の聞いておりました限りにおいてもこの法律は、新たに犯罪被害者を何かの方法で救済しようという意欲は大変結構でありますけれども、新しい法体系としてはどうも整合性を欠いているところがあって、せっかくつくるのにこういう形でもってスタートするというのは決して好ましいことではないので、せっかくの機会ですから、もう少しこの委員会の審議を通じて修正すべきところは修正をしてりっぱなものにしてもらいたい、していきたい、そう思っているわけであります。 今度の法律一つ見ましても、一番最初の第一条「趣旨」というところでも、こういう新しい制度をつくるわけですから、それならばこの犯罪被害者に対してお金を出すにしても、それが一体どういう趣旨であるかということを第一条でうたい上げる、これが本来であるはずだと思います。ところがただ、「不慮の死を遂げた者の遺族又は重障害を受けた者に対し、国が犯罪被害者等給付金を支給することについて規定する」と、きわめて事務的で、犯罪被害者等給付金というのは全く新しい言葉ですから、これ自体には何も意味があるわけではない。だから、一体どういう趣旨のお金なのかということ、それによってどういう目的を達成しようとするのか、そうしたことをまずこの第一条でうたうことがこうした新しい制度のスタートには必要であるし、法律としてもそれが当然のことだと思うのですね。これだけ読んだのでは一体何のためにお金を出すのか一つもわからない。なぜこういうきわめて事務的な書き方をしたのか、それから伺いたい。
○中平政府委員 この法案は第一条におきまして、不慮の死を遂げた者の遺族または重障害を受けた者に対し、犯罪被害者等給付金を支給する、こういうことを規定しておりますので、被害者の救済を図るという目的は一応御理解いただけると思います。ただ、目的規定とせずに趣旨規定といたしましたのは、犯罪被害者の救済の目的という点につきましては従来からいろんな考え方、午前中も申し上げましたが、現実に機能していない要するに不法行為制度の実質化、あるいは社会福祉の拡充、あるいは刑事政策上の要素、そういうものがいろいろとありまして、そのいずれかというよりもむしろ、これらを総合したものとして理解するべきである、そういう考え方に立ちまして一応目的規定とせずに、端的に趣旨規定というふうにした次第でございます。
○河村委員 要するに、あれこれ理由があるけれども、はっきりした性格がないから書きようがないから、ここでもって目的規定を置かなかったということになるわけですね。
○中平政府委員 これは何分にも新しい制度でございまして、先ほど申しました従来のいろんなものに踏まえて一応つくって、その目的というものは一言ではなかなかあらわしがたい従来にない新しい概念でございますので、御説明申し上げると大変長くなるし、それが目的規定としてなかなか明確に書きづらいといいますか、立法技術的に書きづらい。ただいま申し上げましたような趣旨を踏まえてつくった、そうした考え方というのは各条文にそれぞれ出てまいる、そういうふうにした次第でございます。
○河村委員 性格づけがはっきりできないという事情もわからないことではないのです。だけれども、少なくとも法律をつくる以上、不慮の死を遂げたあるいは不慮の災害を受けた被害者に対して、法の適用が公平でなければいけない、同じ事情のもとにある人間に対して、ある者には支給され、ある者には支給されないというそうした不公平があってはならない、これは基本的にそういうものだと思いますが、その点は異存はないでしょうね。
○中平政府委員 法の適用にそういうふうな差別といいますか、そういうものがあってはならないことは、もちろんのことでございます。
○河村委員 そこで、午前中から問題になった過失犯の場合になぜ適用されないのかというのが、一番大きな問題になるわけですね。午前中あなたの答弁で、故意犯の場合には被害者の精神的な打撃が多いというのが、故意犯に限定した最も大きな理由であるというような答弁であったと思いますが、故意犯だと精神的打撃がどうして多いのですか。
○中平政府委員 そもそもこの法律制度の必要性というものが叫ばれたいきさつにつきましては、先生も御案内だと存じますが、いわゆる通り魔殺人等の事件がありまして、そうした人たちが不慮の死を遂げながら何ら救済されない。民事上の不法行為制度というものがありながら事実上、加害者等に資力がないということで泣き寝入りの状態になっておる。一方、加害者の側につきましては、最近の刑事政策等の進展によりまして、いろんな角度で犯罪者の処遇というものが非常に進んでまいっておる。その他、各般の社会保障制度も進んでまいっておって、そうした谷間に犯罪の被害者がいる。その中でも、やはり緊急性、必要性というものの高いのは何といっても、いわれなき故意の犯罪によって死亡あるいは重障害を受けた者であるというふうに考えまして、この制度のそもそもの根幹はそうしたところに置きつつ、私どもは一応物事を考えてみた、そういうことでございます。 故意と過失の私どもの理解している限りでは、やはり相手方から悪意を持って攻撃を加えられて死という結果を招いた、そうしたときの被害者の感情、あるいは被害者の周辺の人たちの犯人に対する一種の厳しい憎しみの気持ちといいますか、そういう気持ちは、過失もある意味の不注意でございますが、そうしたことによって亡くなられたりあるいは重障害を受けた方とは、やはりそこに違うものがあるではないだろうか、そういうふうに私どもは理解しているわけでございます。
○河村委員 しかし、不慮の死を遂げたという点については、あるいは不慮の災害を受けたという点については同じでしょう。そうすれば、たとえば遺族の場合に限定して言えば、遺族の精神的打撃というのは、相手が故意であろうとなかろうと、たとえば一家の支柱を失ったとか、そういう精神的打撃については全く変わらないのじゃないですか。
○中平政府委員 これはとらえ方、受け取り方の問題だと思います。先生のおっしゃることも十分に理解はできるわけでございますが、先ほど私が申し上げましたような立場から一応この問題を理解しているわけでございます。
○河村委員 たとえば過失犯、過失殺人の場合には、量刑からいうと千円以下の罰金でしょう。だから相手はのうのうと生きておるわけだ、罰金千円納めればよろしいんだ。こっちは死んじまった。むしろ過失犯の方が精神的打撃が大きいんじゃないですか。相手は悠然と千円だけ払えばいいというような状態ですね。いかがです。
○中平政府委員 大変むずかしい問題でございますが、逆に言えば、刑罰でそれだけ非常に重く評価しているということは、犯罪者に対する何といいますか、やはり相応の償いをしてもらわなければいかぬということで、それは社会全体の犯罪者に対する一種の、懲罰と言うのは言い過ぎだと思いますが、そういう気持ちが端的に出ているのではないでしょうか。それから、そうした人たちをお救い申し上げる、そうした人たちに救いを差し伸べる緊急の度合いから申しましても、これは故意の行為によってそうした悲惨な状態に陥った方の方をまずもってお救い申し上げるということが、やはり事柄の順序ではないだろうか、こういうふうな気持ちでございます。
○河村委員 その犯罪者の方が重い刑を受けて償わなければならぬ、それはあたりまえの話ですよ。だから刑罰上それ相応の償いをすることになっておるわけですね。だけれども、被害者にお金を差し上げる緊急の度合いが故意の方が強いという理屈が、私にはどうにもわからないですね。緊急の度合いから言えば、被害者の生計とかあるいは苦しみの程度とか障害の程度とか、そっちの方にあるべきであって、緊急の度合いが故意、過失で区別があるべきものじゃないでしょう。いかがです。
○中平政府委員 これはちょっと誤解を招いたようでございますが、一般の国民の感情としまして、そうした故意の要するに悪意に満ちた犯罪による攻撃によって亡くなった方とそれから過失で亡くなった方と、これは選択の問題として、国民の連帯共助の精神に基づいてどちらを先にめんどうを見なければいかぬかということになりますと、そういう意味での緊急の度合いというのは、やはり故意犯の場合の方に高いのじゃなかろうかという意味で申し上げた次第でございます。
○河村委員 連帯共助の方でいけば、これは故意でも過失でも区別しない方が本当ですね。だから、唯一区別すべきものは犯罪防止義務、これを果たすんだという意味からだけなら多少説明できないことはないけれども、どうも本質的な区別はないのですよね。 それから過失の場合にはさっき、自賠責とかその他責任保険の道があるからそっちの法制によればいいんだというようなお考えでしたね。自賠責があっても、たとえば原付自転車、バイクなどで、実際強制保険の義務がありながらやってないのがずいぶんありますね。それで現実に死亡者が年に何百人か出ている。こういうものは一体どうするのです。
○中平政府委員 私が先ほど申し上げましたのは、やはり一つの制度論として申し上げた次第でございまして、故意犯というのは、そうした責任保険制度といいますか、もともと人を殺すかもわからないということで保険に入るわけには、それは公序良俗に反するものでございますから、そうした制度には本来的になじまないというところから手当てのしようのない分野である。ところで、過失の分野につきましては、自賠責その他いろいろあるわけでございますが、大体加害者側に資力をつけて、そういう自分の責任で、これは基本はやはり本人の責任において弁償するのが原則でございますから、そういう道が制度的にある方向である。ところが、故意の犯罪についてはそういうのが制度的にとれない。そこにまた一つ制度の立て方として違うのではないか。 それから、繰り返しになりますが、この問題のもともとのいきさつというのは、そうしたいわれなき犯罪で亡くなった人はまことに気の毒ではないか、こういう者を放置すべきではないではないかということで、長年にわたっていろんな方が御活動なされ、そして国会でも御論議を得て今回の運びになったわけでございまして、そういう意味では、やはりそれと同等に評価されるであろう重障害とをまずもって制度として立てていくべきでないだろうか。過失につきましては、これは本質的な問題ではございませんが、ただいま申し上げました緊急性の問題だとか、あるいは先ほど申しましたような被害者側の加害者に対する感情だとか、そのほか、一般的に過失の場合の加害者には弁償能力がある場合が相対的に多いし、それに比べて人を殺すような人というのは、五十二年度私どもは実態調査をしておりますが、大体弁償能力のない、比較的に社会的にも収入の道の乏しい、それだから犯罪をやるということにもなっておるわけでございまして、そういう現実もある、したがって弁償能力の問題もある。それからそうした制度的なとり方も一応ある。そういうことだと、いろいろ考えてまいりますと、これは全額公費をもって、税金をもって賄う一つの制度でありまして、しかも、その被害者の受けた損害の全部をてん補するのではなくて、その一部を補てんする、そういうことでとにかくこの制度をつくろうではないか、こういうことで発足した次第でございますので、私どもはそういう立て方が現在の国の置かれている状況等から考えて一つの御了解の得られる考え方ではなかろうか、こういう次第で一応立てておる次第でございます。
○河村委員 経過、こういう法律をつくらなければならぬという動機になったいろいろな過去の事実、それは私もよく承知をしておりますから、通り魔殺人とかあるいは三菱重工爆破事件とか、そうしたものが起因になってできたそのいきさつはよくわかります。だけれども、法律をつくるときになったら、同じ不慮の死を遂げた被害者、何か恨みが深いとか浅いとかいろいろな問題があっても、被害者の立場としては同じ条件にある者でみすみす漏れている者ができるというのは、私はよくないことだと思うのですよ。 それからいまバイクで、実際自賠責がありながら掛けていないのがあるのです、わかりますかね。四輪の場合には、車検の際に一々チェックするからそういうことはないのですけれども、バイクなどについてはかなりある。実際それによって殺されている人もいる。つけない方は勝手だけれども、殺された方は大変で、実際支払い能力がなくてもらえないで泣き寝入りになっているのもあるわけですね。それから、午前中に議論になった飛びおり自殺のそばづえを食った人、それからプロパンガス自殺、これもありますね。これの爆発によって隣の人が亡くなった。最近では単なるガス自殺で、二階の部屋に住んでいる人のところにそれが流れていって死んでしまった。これなんかもう相手が死んでしまったから請求のしようもないというような事実もあるのですね。現にこういうものがあるわけでしょう。 あなたは税金を使うのだから限定せにゃいかぬという御意見のようだけれども、税金というのは国民全部からいただいておるわけですから、税金を使うのであればあるほど、そうした同じ条件にあるものが不公平に扱われてはいけない、そういうものでしょう。そうだったら、これの救済というのは、せっかく法律をつくる際にそういうものを救済できるように考えるのが当然じゃないですか。いかがです。
○中平政府委員 確かに先生のおっしゃることもよくわかりますし、そういうように広げていけばそれだけ喜ぶ人、救済される人が多くなるわけでございますから、その点については確かにそういう考え方も私どもも十分あろうと思います。それから学者の中にも、これは一部の人でございますが、そうした過失でも気の毒な人が一部でもおるわけだから、そうしたものが拾えるような立法というものも考えるべきではないか、そういう御意見の立場の方もおられるわけでございます。しかし、故意犯を中心に考えるべきだ、こういうのが学者の中でも大多数の方々の御意見である。外国の制度を見ましても、大体故意犯を中心に組み立てているのが各国の立法例の相当数でもあるわけでございます。私どもはそういういろいろなことを踏まえまして、午前中にも申し上げましたように、やはり原因者負担の例外としてまず、そうした非常に故意の犯罪によって亡くなられたり重障害を受けた方から制度として立てていくべきだろう、そういう立場で一応考えているところでございます。
○河村委員 どうも財政当局の圧力などがあって、なるべくお金がかからぬようにしようということが前提になっておるようですが、それを一応考慮に置くとしても、一体過失犯まで広げて本当にそんなによけい範囲が広がるだろうか、私はどうもそうは思わない。あなたはさっき午前中の議論の際に、過失犯まで入れると犯罪以外の不慮の災害にまで波及をしてしまって大変だという答弁をなさっていましたが、一体犯罪以外のそういう不慮の災害というものはどんなものを考えられるのです。
○中平政府委員 私はだんだんにその辺との区別がむずかしくなる、広がっていくとは申しておりません、区別がむずかしくなる、こういうような趣旨で申し上げたわけでございますが、まず気の毒だというものは何と言っても故意であって、過失についてはやはり気持ちの上では違うだろうと思うし、過失でもいろいろ当為があるわけでございます。大変気の毒なのもあるし、いろいろなケースがあって、過失の度合いの大変大きいのなんかになりますと余り同情の余地のないのもございましょうし、そういうふうに過失というのは、偶然の要素でそういう事故が起こるわけでございまあうから、犯罪でない不可抗力的ないろいろな事故だとか、気の毒さということから言うとだんだんにそういうものとの区別がつきにくくなってまいるのではなかろうか。たとえばニュージーランドの国の例なんかございます。これは私ここで大変詳しく申し上げるだけの自信がないわけでございますが、ニュージーランドなんかも、最初故意犯で過失を広げ、いま完全な一種の事故補償法のようになりまして、あらゆるそうした災害事故等につきましてめんどうを見る、そういう方向に行っているわけでございます。直ちに私どもそういうふうになるとは思っておりませんが、一応そうした故意犯と過失にはいろいろな意味での違いがあるのではなかろうか、こういう気持ちを持っている次第でございます。
○河村委員 さっきあなたの答弁で、犯罪以外のものと区別がつかなくなるという答弁だったのかもしれないけれども、区別がつかなくなるという答弁をした以上、何かそういうものを頭に置いて物を言われたのだろう、そう思って私は聞いたのですよ。一体何を考えているのです。考えられるのは一体何ですか。
○中平政府委員 やはり過失に至らない不可抗力的な事故による死というものはあろうかと思います。それをまただんだんに広げていくと、やや天災的なものにも近づいてまいりましょう。天災はやや違いますが、過失でない、そうした過失の認定ができない不可抗力的な事故による死というものもあるのじゃなかろうか、私はこういうふうに思うわけでございます。
○河村委員 頭に置かないで、範囲を制限するためにそういう言い方をするのははなはだよくないので、私は別段、不可抗力の災害に対してまでこれを拡大しろなんて言っているわけでは一つもない。 だから、通常自然災害類似のものであっても、国の営造物に対する管理の瑕疵があった場合に国家賠償法で賠償するわけでしょう。無過失損害賠償責任というのはこれからの問題になりますけれども、それはまた別問題ですからね。いまの法制に関する限りは国に過失責任があった場合だからね。これは国家賠償法があるから別段競合することはない。あと考えられるのは、たとえば野犬に食い殺されたというような場合ぐらいだろうと思いますよ。(「無理心中は」と呼ぶ者あり)いや、無理心中は故意殺人だから、当然入ってしまうからこれは問題ないです。だから、犯罪以外の不慮の殺人とかいうことを考えれば、野犬に殺されることぐらいしかないだろう。野犬というのは取締法規があって、これは多分警察でやっているのじゃないのかな、取り締まりの怠慢ということで国の過失があるから、これはやはり国家賠償法ということになるだろう。 そうすると、あなた方が御心配になうているようなものはみんな残らず、そういう他の法制で処理ができるわけだ。ですから、残るものはわずかに先ほど例として挙げました、プロパンガス自殺とかビルからの飛びおり自殺のあおりを食った人間とか、自賠責で保険を掛けていない者に殺された人間とか、非常に限定されてしまうのですよ。だから、あなた方が財政当局におどかされて心配するような大きな拡大というのはあり得ないはずなんだ。だから過失犯について、自賠責その他の責任保険があるものは頭から除くというのは法体系上おかしい。過失犯はそういうものがあるから除くというのは理由にならない。法律としては全部かぶせたらよろしいんだ。法律としてかぶせても、あるものは自賠責、あるものは国家賠償法、それから普通のガス爆発とか、電気が漏電してどうしたとか、列車の踏み切り事故とか、こういう種類のものはみんな対象が支払い能力があるから、これは損害賠償との相殺によって現実には支払わなくても済むわけでしょう。だから、法体系としてはそんなにびくびくしないで、過失まで全部法の網はかぶせる。だけれども、実質的にはそういうほかの制度があったりあるいは支払い能力があるから除かれるということでもって、具体的な問題としては外れていく。そうすることによって、わずかに漏れたビルの飛びおり自殺とか、無理心中は別だが、さっき私が申し上げたようなたぐいのものは救済される。その数はせいぜいあったって年間に恐らく百前後でしょう。それによって法体系としても整備ができて、しかもそんなにびっくりするように範囲が拡大されるものでないというのならば、そういう方法をとるのが賢明じゃないですか。いかがですか。
○中平政府委員 繰り返しになりますが、一つの原因者負担の例外的な制度としてそうした非常に救いようのない人を救うところに、国民の連帯共助の精神に基づく公費による負担、こういう気持ちが出てまいるのではなかろうか。それを過失に広げますと、その辺の本当の意味での国民の連帯共助の精神に基づく共感が得られるだろうか、こういう問題がまず基本の問題として考えられるわけでございます。 それから、また想像で物を言うとおしかりを受けるかもしれませんが、故意の犯罪の場合、先ほど申し上げましたように比較的資力が乏しい者が、だから人の物を盗もうとして相手を殺したりするわけでございまして、一般的に弁償能力がない、そうして資力をつけさせる方法もない、したがって、そうした気の毒な人について公費で見てもいいではないかという共感が得られると思いますが、過失の場合には、一般的に弁償能力がある人たちが多いし、現実にいま言いましたように自賠責その他でめんどうが見られておる。これを過失全般にだんだんに広げてまいりますと、これは事務的なことだと言っておしかりを受けるかもわかりませんが、故意というのは、故意があったかなかったかということは比較的わかりやすいわけでございますが、過失があったかなかったかということは、裁判で決着がつくまで相当時間のかかることが現実の問題としても相当多いわけであって、過失の有無の認定は非常にむずかしい問題がある。そうなってまいりますと、これはなるべく迅速な救済をしたい、そうした気の毒な状態に陥った人をなるべく早くお救い申し上げたいという、この制度の一つのねらいであります迅速な救済という趣旨からもだんだんに遠ざかってまいります。 それから故意の場合、大体犯罪者に弁償能力がないわけでございますから、加害者側の資力調査とかそんなものをしなくてやれるわけでございますが、過失に全部広がってまいりますと、そうした資力の調査も一つ一つやってまいらなければいかぬし、あるいは民事の問題等と非常に複雑に絡み合ってくる。例で申し上げますと、まず公安委員会の方に持ち込んで過失の認定をさせよう、一方で民事の賠償でどんどんやっていってこちらの裁定に有利に使っていこうとか、仮にそういうことがありますと、国の司法の運営に非常に影響しますし、やはり慎重にやらざるを得ない。これは先生からは付随的な問題だとおしかりを受けるかもしれませんが、そうした運用の問題もかなりいろいろな角度で出てまいることもあろう、こういうふうに思っておるわけでございます。
○河村委員 どうもしかし理由にならない。救いようがない災害に対する救済をまずやりたい。さっき申し上げたような種類のものは救いようがあるのですか、やはりないのですよ。弁償能力があるかないかという問題は、幾ら法律で網をかぶせても、弁償能力があればそこから損害賠償を取れば、国としては払わなくて済むのだからそれは理由にならない、そうでしょう。さっきの飛びおり自殺だとかガス自殺の場合はどの法律も適用にならないのですよ。過失殺であることは間違いがない、そうでしょう。 それから、過失の認定はむずかしいと言うけれども、詐欺とかなんとかという話になると過失があったかなかったかということは非常にむずかしくなるが、人を殺す場合に、故意か過失かということになるとなかなかむずかしいかもしれないけれども、人を殺したりけがをさせたりすることについて過失か不可抗力かという区別はそんなむずかしいことないでしょう。不可抗力で殺すなんという場合はまずないんだな。正当防衛か緊急避難でしょう。おたくの方の解釈でいくと、どうやら緊急避難は故意の中に入ると言うんだな。そうすると、本当に区別のつかない人殺しというのはどういうのですか。
○中平政府委員 過失があったかなかったかということは大変むずかしい問題でございます。裁判でも大変長期の裁判になっているのが過失の有無でございます。故意犯は、量刑とかいろいろな問題で争われますが、比較的——過失の有無は非常にむずかしい問題でございます。(河村委員「たとえば」と呼ぶ)たとえばと先生にいま言われてもすぐ出てまいりませんが、過失があったかなかったかということは、これは少しこの問題と離れますが、たとえば工場の現場なんかにおけるいろいろな事故、作業現場等の事故がございますが、そうしたときなんかも、過失があって、この過失が原因になってそうした大きな事故が起こったのか、それは過失でなくて過失責任は問えない、あるいは過失を問うにしても、どこまで過失責任があるのか、だんだんに上へ上がっていかなければならない問題等があります。そうした意味での過失責任を問うということは非常にむずかしい、裁判例でもそうした過失のケースというのはかなり長期に争われている例が多いわけでございます。 それから、先生のおっしゃいましたように、確かに過失の中で気の毒な人で救済できないところがあるわけではございますが、しかし、初めの議論になりますが、悪意を持って人を攻撃して殺したという場合の被害者並びに周辺、あるいは世間一般のその問題に対して公費負担をもって見るべきかどうかという判断と、それから、そうした本人の悪意でないことによって相手にそうした死傷という気の毒な結果を及ぼした場合とは、やはりこれは違うではなかろうか、そういう気持ちを私としては持っておるわけでございます。そうして、午前中申し上げましたが、やはり制度論として立てていくときには、先生は全部網をかぶせる、こういう御議論ですが、私どもとしては原因者負担の例外として、そうした非常に緊急度の高い、連帯共助の精神に基づいてめんどうを見なければいかぬのじゃないか、そういう気持ちの油然とわき上がってくるようなところにやはりこれは法制度として打ち立てて一日も早くスタートするべきである、こういう考え方でございます。
○河村委員 あなたがやっとのことで例として挙げた工場で機械がどうかしてけがをしたか亡くなったかというような場合は、これは当然労災の対象になるもので、網をかぶせておいたからそういうものが入ってきて大変手間取るということもないわけですね。せいぜいいま思いついたのはそのくらいのものなんだね。だから、そんな一生懸命考えたってありはしないのです。だから心配ないのです、そう用心深くしないでも。私も別段それはよく調べて言っているわけではなくて大体の見当で言っているのですが、どうも何とか無理やりに逃れようと思っておられるようだけれども、そういう精神は非常によくない。これ以上幾ら言っても切りがありませんからこの問題は一応打ち切ります。もう一遍よく考えておいてください。よく検討してごらんなさい。 本当に困るのは、さっきのプロパン自殺、飛びおり自殺、それと、私は現実に多少数があるなと思うのはさっき言った自賠責を掛けていないバイク事故、このくらいのものだろうと思いますよ。わずかであるけれどもこいつはまた救いようのない場合が多いのですよ。自殺されちゃったらその人間には求償できないし、それから、バイクなんかでも自賠責なんか掛けないような人というのは大体、金がないから自賠責を掛けることさえやらないという人が大部分なんですよ。そういうみすみす不慮の災害に遭って困る、そういう落ちこぼれができるんだな。落ちこぼれを救済できるのなら、そんなに心配しないで拡大しておいた方が、やはり税金を使うのですから——これは逆なんですよ。税金を使うからには同じ事情のもので落ちこぼれがあってはならない、それをよく考えておいていただきたい。問題点として残しておきます。 それから、これは財政上の事情が先に来ているのだろうと私は思いますが、午前中も質問があったのかもしれませんが、来年一月施行、これは一体何です。いかなる理由に基づくのですか。
○中平政府委員 この制度はわが国で全く新しい制度としてスタートするわけでございます。この制度を適正に運用してまいりますためには諸準備がいろいろと必要である。この法律にありますように、いろいろな政令も決めなければいかぬし、国家公安委員会の規則も決めなければいかぬし、あるいはまた警察官一般に対するいろいろな教養の問題もあろうし、裁定の事務についての適正を期するためのいろいろな教養とか訓練とかいろいろなものがある、そういう準備に相当いろいろなものを要するということと、それから、一たん出発した以上りっぱにこれを運営してまいりたい、そういうことで諸般の準備を要する、こういう問題と、それから、適用の開始日を来年の一月一日ということにしておるわけでございますが、法の適用の前後でなるべく不公平感のない時点を選ぶ、こういうことにすると一月一日がやっぱりよろしかろう、こういう考え方で、要するに、間違いのない運営をやってまいりたいということでございます。そういうことと、やはりこういう非常に厳しい情勢の中でこの制度を発足させたわけでございますので、現下のいろいろな財政等の諸事情もあったということは、これは否みがたい事実ではあるわけでございますが、そういうこともいろいろ含めましてそういうふうに決めた次第でございます。
○河村委員 せっかく法律をつくるわけでしょう、一番最初の理由は全く理由にならない。これは申請を待って公安委員会で扱うわけでしょう。故意犯があって、警察が改めて故意犯を取り調べるわけでも何でもない、当然の仕事として扱っているわけでしょう。何の準備が要るのです。何か準備が要りますか。
○中平政府委員 この法律にも政令とかあるいは国家公安委員会規則を決めるとか、そういう諸般の事務作業は残っているわけでございます。そのほか、これはせっかく発足した制度でございますから、一般の国民の方々にできるだけ周知徹底して落ちのないようにしてまいりたい、それから、警察の内部の諸般の教養あるいはこうした事務を担当する人の諸準備、こういうものは当然、全く新しい制度でございますから、いままで全くやったことのない制度でございますから、そういう意味でのいろいろと仕事があることは御理解いただけると思います。
○河村委員 それは新しい仕事ができるというのは決まった話だけれども、新しく準備しなければならぬというのは政令と国家公安委員会規則ですか、それをつくるだけのことでしょう。これは事実上もうできていますね。このくらい政令に大幅に委任してしまった法律というのは本当はおかしいと思うのだけれども、とにかく準備はできていますよ。準備が要るはずないですよ。 一月一日だとなぜ不公平感がないのです。元日だと何かいいことでもあるのですか。
○中平政府委員 やはり一月一日というのは御案内のように、切りのいいところでございます。
○河村委員 どうも議論しているのが少しばかばかしくなってきた。それは大蔵省が何と言おうと、せっかく法律ができて、一月一日までの犯罪で被害を受けた人は適用にならないということの方がよほど不公平ですよ。一般的に遡及するというのはなかなかむずかしいかもしれないけれども、フランスですか、外国の法令にも遡及した事例があるようですね。この法案でも給付金請求権の時効が二年になっていますね。だから二年ぐらいさかのぼってもいいのですよ。そのぐらいなものです。それを一月一日とは、これは本当にお粗末だ。これは修正案を出せば政府・自民党も当然賛成をしてくださるべきものだと信じておりますから議論はやめて、そっちの方で行くことにしましょう。 それから、これまた同じ議論になるのでしょうけれども、一級から三級までの重障害に限定をしてしまった、これは全く理由がありませんね、金の節約以外には。金と手間ですか、そうでしょうね。
○中平政府委員 繰り返しになって大変失礼でございますが、やはりこの制度がもともとそうした通り魔事件のような不慮の死を遂げられた方に対する社会の方々の同情といいますか関心といいますか、そういうものが高まり、こういうものを放置しておくべきでない、こういう国民の連帯共助の精神の上に立って発足する制度でございまして、やはりいわれなき犯罪による死亡といいますかそうしたものを一応制度の中心として考えまして、その死亡と全く同じように災害関係の諸制度では扱われておる重障害、それも一級、二級、三級の重障害の人、これはやはり死んだ場合と同じような苦しみを御本人並びに周辺の方々が受けるわけでございますから、そこを一応給付の対象として取り上げ、この制度を発足させてまいりたい、こういうことで考えたわけでございます。
○河村委員 通り魔犯罪を対象にする、そこまではわかりました。だけれども、同じ通り魔がやったことでも、重障害と軽障害と言ったってそれこそ紙一重でしょう。これが本当の補償金だとずいぶん額も高くなりますけれども、この場合は見舞い金的なものでしょう。そうであれば、実際どこで区別するかというのはそれこそ非常にむずかしいものなんだ。それは三カ月以上入院加療を要するというようなところで限定をしてもよろしいけれども、そのくらいのところまでやるのは当然じゃないのでしょうかね。警察官の職務執行に協力して災害を受けた人たち、これは障害も全部入っているのですね。だから額は別として、範囲は同じでいいのじゃないですか。どうです。
○中平政府委員 繰り返しになってまことに申しわけない次第でございますが、私どもはこれはやはり一種の例外的な制度として考えているわけでございます。したがいまして、その被害者の受けました損害につきましても、やはり全部をてん補するという考え方には立っていないわけでございます。この制度の従来からの経緯、そういうものを踏まえまして、それからあと、やはり国民の連帯共助の精神の結集がある、こういうことで発足を考えたわけでございます。
○河村委員 警察官に協力した場合の災害、その災害給付、これは見舞い金ですか補償ですか、どっちですか。
○小池説明員 警察官の職務に協力援助した者の災害給付に関する法律による給付の性格でございますけれども、これは本来、警察官がやるべき仕事を一般の方がかわってやっていただいたという考え方でございまして、公務災害の場合ですと使用者責任という範疇に属する損害賠償というふうに考えております。いまの協力援助法による給付もそれの延長線ということで、性格としては使用者責任的な損害賠償であるというふうに従来から言っております。ただこの法律は、当初現実に警察官の職務に協力して災害を受けた方だけを対象にしておりましたけれども、その後、現場に警察官がおらなくても、人命救助とか凶悪犯人の逮捕、そういうようなことをみずから進んで職務によらずにおやりになって災害を受けた方に対しても、給付の対象にすることにしております。そういう改正が後からあったわけでございますが、そうなりますと、いま申し上げました使用者責任的な損害賠償のほかに見舞い金的な性格が入ってきた、こういうように従来から理解しておるわけでございます。
○河村委員 午前中に話があったと思いますが、警察官の職務に協力して亡くなった場合の補償金額の水準は大体どのぐらいでしたか。
○小池説明員 一時金の場合と年金の場合とございまして、水準というのはちょっと一概に申し上げにくいのでございますが、最高、最低について申し上げると、遺族が年金を支給される場合の最高額は二百二十三万七千円でございます。最低が六十六万二千円程度の年金でございます。一時金を支給される場合の最高は八百六十万円、最低が五百万円程度ということでございます。この法律による給付はこのほかに、葬祭給付として最高五十四万九千円、最低三十一万五千円程度の葬祭料が付加されることになっております。
○河村委員 これも午前中議論がございましたが、この給付金が出て、後で損害賠償が成立した場合、その給付金の限度において損害賠償の肩がわりをする、損害賠償請求権を国が持つという規定になっておりますね。これもやはり問題があるのであって、警察官の職務に協力した場合は、いま話があったようにこれは補償ですね、損害賠償そのものですね。後で見舞い金的な性格が加わったということであったけれども、そういう説明でしたね。だから損害賠償が取れればその限度において相殺されるというのはわかるのですけれども、この場合はまず見舞い金ですね、金額的に見ても。だから、他の損害賠償と相殺するということ自体、法理的におかしくないのですか。
○中平政府委員 これは見舞い金でなくて見舞い金的性格を持ったものだ、こういうふうに考えておるわけでございまして、これは本来、加害者に対して求償すべきものでございますが、それをそういう方途がないから、そうした給付金という見舞い金的な性格のものを国がかわって出すわけでございまして、したがいまして、本来の求償の相手である相手方からそれを取りましたときには、その限度においてこれは相殺してまいる、こういうことで、見舞い金ではございません、見舞い金的性格というふうに申し上げているわけでございます。
○河村委員 だから見舞い金的性格ですから額が少ないわけだ、午前中にも議論があったように。だから、仮に別の損害賠償請求によって損害賠償に値するような額を取った場合、その場合に相殺するのはこれは合理的だと思うけれども、ただ百万ぐらいの見舞い金を相手から取ったというような場合に、百万だけカットするというのはこいつはどうなんです、常識的に。八百万円に百万ぐらいプラスになったって、損害賠償の全体の額から言えば、それはとても補償に相当する額にはならないわけだ。だから、損害賠償と相殺する場合があるにしても、そこにはどこか線の引きようがあるんじゃないですか、補償の額を超えてさらにプラスになるような場合には相殺になるとか。その方がよほど生きた法制になるんじゃないですか。どうです。
○中平政府委員 これは制度の考え方の問題でございまして、私どもはそういう考え方をとっていない、こういうことでございます。
○河村委員 これはとても理屈にならないんで、警察官に協力する場合は、さっきもあらかじめ伺ったので、これは損害賠償であるということを聞いた上でのことであって、だからあっちの場合には当事者から損害賠償が取れれば、これは同じ性格のものだから相殺されてもおかしくない。こっちのは、見舞い金ではないけれども、見舞い金的性格だというのであれば、損害賠償と当然相殺するということにはならないので、そうしたら、八百万の上に百万や百五十万取れたからといってその分は差っ引きますというのは、こいつは考え方として余りえげつないんじゃないでしょうかね。どうです。
○中平政府委員 そういうお考え方もあろうかと存じますが、先ほど申しましたように、これはやはり本来、加害者に求償すべきところをできないから見舞い金的な性格として給付金を渡すものでございますから、やはり損害賠償が払われましたら、これは一応国の方にその分をお返し願う……
○塩谷委員長 刑事局長、もう少し大きな声で。
○中平政府委員 そういうことでございます。
○河村委員 時間が来たようですからやめます。 とにかくどうも納得のいかない法制で、だから、財政当局は財政当局として、もうちょっとそういうものにはこだわらないで、修正に応ずるような態度でぜひ臨んでほしい、そう思います。これで終わります。
○塩谷委員長 田島衞君。
○田島委員 多くの先輩、同僚議員の方から出た質疑の中でも明らかなところでありますけれども、問題は、こういう法律ができるとすれば大変遅かったんじゃないかというようなこと、それから何とか遡及ができないか、いままでの過去の人たちが気の毒じゃないかというようなこと、それから対象の妥当性といいますか、それから給付金の額が果たして妥当かどうか、そういうようなことが大体中心だったと思うのです。 そこで、私もよく伺っておって、確かにもっと早くできておったらよかったなとは思うのですが、だからといって、きのうの方がよかったからといってあしたの方がいいという理屈にはならないんで、それはきょうからでもできることは結構だと思うのです。 そこでそれに関連して、いままでそのような犯罪によって被害を受けた人たちの救済ということですが、遡及ということは原則的にどだいむずかしいのですけれども、もし仮に遡及ということを考えた場合に、どの時点まで遡及したらいいのかということを考えると大変むずかしいと思うのです。じゃその遡及された時点よりもっと前の人はどう救済されるんだ、こういうようなこともあろうと思うのですが、そういうような点についてもやはり考慮された結果での今度の法案なのかどうか、ちょっと……。
○中平政府委員 遡及の問題がこの法案をつくる上で従来の経緯にかんがみていろいろと議論になることは、私どもは十分承知しておったわけでございます。したがいまして、いろいろな角度から遡及の問題について検討したわけでございますが、午前中来るる申し上げておりますように、特にこの制度に限ってさかのぼって適用すべしという理論と申しますか、そういうものを立てることができなかった、こういうことでございます。
○田島委員 お答えの点はよくわかるのです。法の不遡及ということは通常言われることですから、その点はよくわかるのですけれども、確かにこの法ができる一つの要因には、被害を受けた方々のたゆみない運動というものがあったことは事実だと思うのですよ。それだけに、そういう方々が実際には適用されないというところに問題があるだろうと思うのです。その点で私なども大変お気の毒だとは思うのですけれども、じゃ仮に遡及ということを何か可能にするように考えたとしても、何年までさかのぼったらいいのかということになると大変むずかしい。その前の人たちをどうするんだというと、依然として不公平が残るわけですね。だから恐らく今度の場合も、それでなくともむずかしいのですけれども、遡及ということを特に避けられたのかなと、こう思ったのですけれども、そういう点はどうなんでしょう。
○中平政府委員 おっしゃるとおりでございます。どこにさかのぼってもその前後で公正さという点から非常な問題が残る、こういうことでございます。
○田島委員 それから、対象が果たして妥当かどうか、つまり故意によるというそこが問題で、先ほど来ほかの質問者からも、過失だとかあるいは自然災害とも言うべきものによるところの被害者の救済はどうなるかという問題が出ておったと思うのですけれども、そういう過失、自然災害等によるところの被害については、別に考えたいという立場なのか、それとも、それも一緒にやりたいんだけれどもいまはやれないということなのか、その点はどうなんですか。警察庁の立場としては警察庁という立場からして、いまこの法案で求めようとしているところの対象だけに限っていきたいんだということなのか、それとも、できれば過失の方まで手を伸ばしたいのですけれども現状それができないということなのか、その点はどうなんでしょうか。
○中平政府委員 この制度は、故意の犯罪行為という他人の悪質な行為によりまして被害を受けた場合の精神的な打撃が特に大きいのに救済が受けられない、こういうことが前提となっておるわけでございまして、これは自然災害とか不可抗力の事故とは別個に扱うことのできる問題である、こう私どもは考えておるわけでございます。過失につきましても、ほぼ同様に考えておる次第でございます。
○田島委員 それから、その被害を受けた程度が死亡または重障害となっておるのですけれども、不勉強で伺っては申しわけないのですが、たとえば警察官の職務に協力援助をした者の災害給付の場合の対象というのは、やはり同じ死亡または重障害で同じ限度になっているのですか、それとも幾らか違うのかどうか。
○小池説明員 警察官の職務に協力援助した者の災害給付に関する法律による給付を受ける場合には、死亡のほか、すべての療養を必要とするような負傷、障害、すべて対象になるわけでございます。
○田島委員 被害者の気の毒さにおいては同じですけれども、結局、進んで協力した立場の者とそうでない者との差ということと受け取ってよろしいですか。
○中平政府委員 これはまさに警察官にかわってそうした行為をなさって、そして死亡なりあるいは負傷なりを受けられた方でございますので、やはりこれは本件の対象になっている方々とは違う、こう理解しております。
○田島委員 次に、給付金の額が果たして妥当かどうかということも議論の的ですけれども、いまお聞きしたように、警察官の職務に協力援助した者の災害給付、先ほど河村先生からも質問が出ておったようですが、そのお答えでちょっとはっきりしないのですけれども、死亡の場合は、一時金の場合は五百万から八百六十万というお答えでしたかな、そのことを改めてお伺いしたいのですけれども、この法案に基づくところの被害者に対する給付金と、警察官の職務に協力援助した者の災害給付とのバランスというか、どういうあれになっているのか、その点をちょっと説明してほしいと思うのです。
○浅野説明員 この制度によります給付金につきましては、遺族給付金で申しますと、これはすべて一時金でございますけれども、最高約八百万円という額でございまして、警察官の職務に協力援助した者の災害給付の場合の一時金の最高額というのを少し下回っている額でございます。
○田島委員 関連して、重障害の場合はどうですか。
○浅野説明員 重障害の場合は、協力援助の方につきましては全部年金でございますが、この制度によります一時金の障害給付金といたしましては、最高が九百五十万程度を見込んでおるわけでございます。これは一定の倍数でやっておるわけで、年金とは直ちに比較はできないのですが、遺族給付金とのバランス等をとった額としておるのでございます。
○田島委員 そうすると、この給付金の額が少ないという意見もあるわけですが、警察庁当局とすれば、進んで協力援助した者から比べれば決してそうではない、十分のつもりだということになりますかな。
○中平政府委員 この制度は本来、加害者がてん補すべき損害につきまして、その全額を公費で給付金を支給しようという制度でございます。したがいまして、やはりその給付の水準につきましては、警察官の職務に協力援助した者を上回ることに——警察官にかわってまさに公務をしたような方々と同じレベルより、やはり少し低いというのが妥当ではないか、こう考えているわけでございまして、そういう中で、できるだけこれに近い額を支給したいということで、他のいろいろな災害関係の諸制度等との均衡をとりながら決めた額でございまして、被害者等の救済には私どもは効果のある額である、こう考えております。
○田島委員 それから次に、支給しないことができる場合、全部または一部を支給しないことができるものとする、こうなっていますけれども、このできるものとするというのは、なかなかこれは実際の運用というのはむずかしいので、何か特別に基準が考えられるのかどうか。できないものとするとかできるものとするというのは、その運用というのは大変むずかしいと思うのですよ。はっきりできるとかできないとかいうのはいいのですが、ものとするというのがくっついてくると大変むずかしくなってくるのです。たとえば親族関係とかあるいは被害者側に何らかの責任といいますかそういうものがあった場合云々というところで、全部または一部を支給しないことができるものとする、こうありますが、しょせんこれはどなたかの人間が裁定することになると思うのです。その基準といいますか、何かこういう点を基準にして考えてみたいというものがありましたら、聞かせていただきたいと思います。
○浅野説明員 お答えいたします。 この六条の判断、これは確かに誠実に行う必要があるものであると思います。そういうことで、国家公安委員会規則でその基準を定めてこの六条の運用をやるという形をとっておるわけでございます。たとえば「被害者と加害者との間に親族関係があるとき。」ということでございますが、法文では「全部又は一部を支給しないことができる。」となっておりますけれども、通常ここに掲げておりますのは支給がふさわしくないというようなケースでございます。親族間の犯罪につきましてはこの基準として、たとえば同じ親族関係と申しましても、被害者と加害者との関係が配偶者、直系血族、その他三親等内の親族及びその他の同居の親族、こういう関係にあるときは原則として給付の全部を支給しない、それ以外の関係の場合には減額して支給するような基準というようなことを考えておるわけでございます。
○田島委員 統計官さんですかいまのお答えの中にも、原則としてとありますね、その原則としてというのはなかなかくせ者で、では、その原則以外というのはどういうことを言うのかということになると、たとえばこういう関係のものは絶対だめとか絶対いいのだとかいうのはいいのですが、そういうものの中では——全部または一部を支給しないことができるものとするということになると、いまの御説明のように原則的にはこうなんですと言う。では、原則的ということは、原則的でない場合があるのか、その場合というのはどういうことだということになってくるわけなんですが、実際にその原則的でない場合というのはあり得るのでしょうか。もしあれば、これからやろうとすることですから聞いても無理ですが、何か予測できるようなことがあれば、たとえばということでちょっと御説明いただければ……。
○浅野説明員 ただいま原則的というふうに申し上げましたけれども、特段の事情がある場合という考え方でございます。この場合は、親族間でございましても、たとえば姻族等の場合ですと、その姻族の関係に係る婚姻等が事実上なくなっているような場合もあります。こういう場合はそのような近親として扱う必要もない。それからまた、その犯罪行為が親族関係と全くかかわりなくあるいは加害者の一方的な理由で行われたような場合で、被害者と加害者が先ほど申しました親族関係でも直接近い関係でないような場合については支給の対象にし得るというような場合が、特段の事情というような場合に該当しようかと思います。
○田島委員 次に、給付の申請に関連してですけれども、犯罪の発生を知った日から二年以内、発生した日から七年以内、この二年以内と七年以内と大分離れているわけなんですけれども、この知った日と発生した日、二年と七年と設けられたのは何か理由といいますか……。
○浅野説明員 お答えいたします。 まず、この制度は殺人事件が主な対象でございますから、犯罪被害が実際に発生いたしましても、それを遺族が知るのが大分後になるというケースは当然予想されるわけでございます。そういうことで、まず申請することができる期間を犯罪被害の発生からではなくて、知った日から一定の期間ということで考えたい。犯罪被害の発生を知った日からということであれば、二年というのは十分な期間だというふうに考えられるわけでございます。しかし一方、そういう形をとっておりまして、いつまでも長い期間置いておきますと、その事務の処理に困難な問題も生じてきまして、適正な裁定が行えないおそれもあるということで、やはり犯罪被害の発生したときから一定の期間で切っておく必要があるだろう。その被害の発生からの期間としては、七年という長い期間をとったということでございます。
○田島委員 そこで、発生を知った日から二年というのは私にもよくわかるのですけれども、その発生した日ということの断定がこれまた大変むずかしいんじゃなかろうか。たとえば捜査当局においてすら果たして犯罪が発生したのかどうかだって、すぐわかる場合もあるし、なかなかわからぬ場合も、ただ行方不明になったという場合もあるでしょう。そういう点での発生した日というものの定義は、後から捜査の結果発生した日というのはいつだなと決まったらその日から、もちろんそういう意味だろうと思うのですけれども、それと七年間という時限のとり方はどうでしょうか。
○浅野説明員 犯罪被害の発生を知るということにつきましては、単に行方不明になったということを知っただけで十分でないのはもちろん、死亡したという事実を知っただけでも十分でなくて、故意の犯罪行為により死亡したということを遺族が知った日ということを考えておるわけでございます。一方、七年の方は、客観的に犯罪被害が発生した日ということでございますから、その犯罪がいつ発生したかということは客観的に認定いたしまして、七年の期間を計算するということでございます。
○田島委員 たとえば捜査当局が一生懸命がんばってやっとその犯罪の事実をつかんだ、けれども、調べてみるとその発生ははるか十数年前にさかのぼっておったという場合には、被害者の方だって、捜査当局すらその事実を知ったのがもう十数年たっておったら、これは申請のしようがないわけですね。もちろんこれはあくまでも予測の線ですから、そんなような場合はあり得ないかどうかわかりませんけれども、そういう点についての考慮はどうでしょうか。
○浅野説明員 通常そういうケースは少ないわけでございますけれども、普通こういう給付等をする場合に、やはり被害の発生したときから一定の期間というもので時効を設けるということがあるわけでございます。この制度の場合には、殺人被害というものを対象にしているという特殊性から、七年というかなり長い期間の時効というものを設けておるわけでございます。これはやはり時効をどこかで設けておかなければいけない。設けますと、その後で発見したような場合については、先生おっしゃるような問題というのはどうしても避けがたい場合が出てくるというふうに思いますので、御了承いただきたいと思います。
○田島委員 仮定の話ですからそれ以上言ってもあれですが、ということは、いまの大変すばらしい日本の警察機構のことですから、そんな心配はないのだろうと思いますけれども、将来、この法が施行されて、どうも七年ではまずい、犯罪の事実が確実にあったということがわかってその発生の日をさかのぼって尋ねると、十年以上前だったなんという場合が多いようなことがあったとすれば、また考えよう、こういうことになるわけですか、絶対にこれよりは延伸しないということになるのですか、それとも、警察はそんなことは絶対ないということになりますか。
○浅野説明員 お答えいたします。 現状といたしまして、そういうケースがどんどん出てくるという状況ではございません。この七年という数字を決めましたのは、民事上の失綜宣告というので七年という数字を使っておる、それで、この制度の法律関係に一定の区切りをつける場合には、その年数を参考とするのが合理的であろうということで、七年と決めたわけでございます。
○田島委員 今度は十六条の時効規定についてですけれども、この支給を受ける権利は時効二年間だということになっているのですが、この時効の始期といいますか、どの事実をもって時効のときの始まりとするのか。
○浅野説明員 お答えいたします。 十六条の時効は、犯罪被害者等給付金の支給を受ける権利の時効でございますけれども、この権利は裁定により発生するものでございますので、その裁定を受けたときから二年間ということでございます。
○田島委員 そうすると、この裁定を受けても申請者が取りに行かなければいかぬわけですか。
○浅野説明員 これは都道府県公安委員会が行うのは裁定でございまして、給付金の支給は国が行うということになっております。実際考えております手続といたしましては、裁定書とともに支給申請書が交付されて、それを郵送で国あてに送ればいいということでございます。
○田島委員 次に、法案の十八条の公課の禁止、そこには「租税その他の公課は、この法律により支給を受けた金銭を標準として、課することができない。」とあり、それはそれでわかるのですけれども、公課すらできないとはっきり規定しているのに、その次の戸籍事項の無料証明では、十九条、略しましておしりの方へいって、「当該市町村の条例で定めるところにより、被害者又はその遺族の戸籍に関し、無料で証明を行うことができる。」とあるわけですね。課税ですら課税するなと言っているのに、証明みたいな軽微なことを「行うことができる。」ということは、これもまた行わなくてもいい、要するに有料でやってもいいよということになるわけなんですけれども、ここらがちょっとアンバランスな感じがするのですが……。
○浅野説明員 十八条、十九条の規定は他の同種の法令の規定例にならったものでございますが、この十九条の条例で定めるところにより、無料で証明を行うことができるという規定例がとられておることにつきましては、この戸籍の証明に関する事務は市町村に委任された事務でありますことから、市町村の意思を尊重するという形をとるのがいいということであるというふうに承知しております。私どもとしては、これはぜひ無料でやっていただくようにお願いしていきたいというふうに思っております。
○田島委員 そこで、今度は総体的にこの法案の性格というものについてですけれども、これも先ほど来議論になっておるところですが、こういうような犯罪の被害者の立場は確かにお気の毒な立場でありますから、それに対する見舞い金的な性格も、余裕があれば国がやることは結構なことだと思うのですけれども、問題は、見舞い金的な性格といったら本来警察庁の直接担当することではないのじゃないだろうか。犯罪の防止ということについての責任がある立場であるだけに、そういう犯罪がやむを得ず起こって、それによる被害者が出たからそれで見舞い金をあげたいということも、もちろん全然無関係ではないとは思いますけれども、そういう不慮の犯罪被害に遭った方への見舞いという意味だったら、もっと別な立場からでもおかしくないと思うのです。警察庁という立場でこの法案を特に重視するという考え方には、おのずからそこにそれなりの求めるものがあるのじゃないかと思うのですけれども、そういう点についてもし御説明いただければ、ちょっと伺いたい。
○山田(英)政府委員 お答えいたします。 警察の責務とこの給付制度とのかかわりについてのお尋ねでございますが、この新しい犯罪被害給付制度の趣旨につきましては、繰り返し御答弁申し上げておりますが、われわれの考え方としては、不法行為制度が機能してない、その肩がわり的な意味合いもある、これが一つ。もう一つは、被害者の犯罪による精神的、経済的な被害、それを一部でも補てんして経済的、精神的安定に資する、言いますれば福祉的効果というのも一つございます。それから、何よりもさらにございます趣旨は、御答弁申し上げておりますように、犯罪によって被害者に損害が生じているということは、公共の安全と秩序といういわば一つの法秩序が破れておる、そういう状態だと思います。それを補てんするということは、警察法にいう警察の責務の中にございます公共の安全と秩序の維持にかかわる、そういう意味の犯罪対策、法秩序への不信感を除去するということを御答弁申し上げておりますが、そういう犯罪対策が制度の根幹に横たわっておると思います。 そういう観点から見ますと、犯罪によって生じた被害の回復ということについては、財産の問題については警察はすでに質屋営業法、古物営業法という法令によりまして、単に盗犯を検挙するだけでなくて、賦物の発見に努めて被害品の回復を図って被害者の保護に当たる、こういうことを犯罪対策としてやっておるわけでございます。したがいまして、警察の行う犯罪対策というのは、犯罪の予防、鎮圧、捜査、そういうものだけに限定されるものではない、犯罪被害の回復に係る事項、これも含むとわれわれは考えております。ただ、この給付制度における事務は従来の警察の責務、これは国民に対するその権利義務の制限という作用を中心に構成されてきておりましたから、給付金を支給するという事務は従来の事務と著しく異なることは確かでございますが、いままで申し上げているところによりまして、警察が所管する犯罪対策にかかわると考えております。
○田島委員 五十五年度の警察庁関係の予算の中で、本案に関係しての予算が一億九千七百万ですか、計上されておると思うのですけれども、一億九千七百万というと大したお金じゃないのですが、この計上の理由は、この法案に基づくところの犯罪被害者給付に係る事務と給付金、こういうことになっているのですが、給付金といったらほとんど全然問題にならぬと思いますけれども、このうちに事務経費としてはどのくらい考えられているのかということをお伺いすると、おのずから給付金のためにはどのくらいということになる。それを聞いてみると、それではとてもそう簡単に施行期日を早くするわけにはいかないでしょうということにもなってくるんじゃないかと思うのですが、ちょっとその点御説明をいただきたい。
○山田(英)政府委員 お答えいたします。 予算案に計上されておりますのは、いま御質問ございましたように、一億九千七百三十九万二千円でございます。そのうち、事務費は八百七十七万円でございまして、国家公安委員会に置かれます専門委員に対する手当、旅費等百三十二万円余を含みまして、国の方で四百十七万一千円でございます。それから府県の公安委員会の裁定に要する経費、事務経費等、これが四百五十九万九千円で、事務費は八百七十七万円になります。したがいまして、事務費以外の給付金は一億八千八百六十二万二千円ということで計上されております。
○田島委員 先ほど来どなたかの質問の中にお答えがあったと思うのですけれども、これもやってみないことにはわからぬ、予測ですけれども、大体一年間にどのくらいの給付金が必要になるだろうと考えられるか。
○浅野説明員 私どもの試算では約十三億と見込んでおります。
○田島委員 その御答弁からすると、これはそんなに早く始めたってちょっと困るんじゃないかなという感じもするのですけれども、別に予算から縛られるということもないのですが、予算との関連は全然ないと言えますか、関連があると言えるか、どうでしょうか。
○中平政府委員 予算との関連は、これはいわゆる否みがたい事実である、こういうように考えております。
○田島委員 質問を終わります。
○塩谷委員長 次回は、来る二十七日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会いたします。 なお、明二十六日午前十時から法務委員会との連合審査会を開会いたしますので、念のためお知らせいたします。 これにて散会いたします。 午後六時一分散会