社会労働委員会 第14号
- 発言数
- 245 件
- 登壇者
- 25 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1980/04/22
会議録
○葉梨委員長 これより会議を開きます。 内閣提出、労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。金子みつ君。 〔委員長退席、越智(伊)委員長代理着席〕
○金子(み)委員 私は、今回提案されております労働者災害補償保険法の改正の問題について少しお尋ねをして御意見を伺いたいと思うことがございます。 その一つは、前からもたびたび審議があったことでございますけれども、今回の改正でやはり一番問題だと思われますのは、労災保険制度と民事損害賠償制度の関連の問題だと思うのです、この関連の問題についてはいろいろな角度から多くの方が質疑を進めていらっしゃるということも知っているわけでございますけれども、私もこの観点に重点を置きまして少しお尋ねしてみたいと思うわけでございます。 最初に、労災保険の問題ですけれども、申し上げるまでもありませんけれども、この目的は、労災補償保険法の第一条にはっきり書いてありますように、被災労働者及びその遺族を援護し、その福祉の増進に寄与することを目的とするということでございます。ですから、言葉をかえて言えば、被災労働者とその家族や遺族の人たちの生活が人たるに値する内容を維持させることを基本にした被災者の療養とかあるいは労働能力の援護などを図るもので、言うなれば事業主と政府とによる生活保障給付のような性格を持ったものだというふうに考えていいんじゃないかと思うわけです。したがって、一方損害賠償のてん補を目的とする民事損害賠償制度とはおのずから発想も違うし、目的も違うし、制度も仕組みも違うということになりますから、この二つのものを調整するということ自体が妥当ではないのじゃないかと考えるわけでございます。それに、さらに政府側の御答弁を伺っておりますと、この法律をもし改正しないで従来のままに続けていくとしますならば、被災者側が二重の利益をこうむると申しますか、二重に補てんされるということは妥当でないというふうな言い方をしてこれを改めようとしていらっしゃるように思うわけでございますけれども、私はなぜそれがいけないのかということについて、やはり納得できないわけでございます。 なぜかと申しますと、こういう労働省の婦人少年局が調査なさった資料がございます。これは労働災害遺族の生活実態に関する調査なんですけれども、五十年に行われているわけです。ちょっと時間が前にずれますけれども、五十年の調査によりますと、被災者の家族の年齢なんですが、死亡した夫の年齢というのは三十歳代か四十歳代が多く、大体六割以上を占めていて、平均年齢は四十五・一歳、若い世代だということが言えるわけです。家族構成は大体三人が多い。子供さんが一人、これは平均でございます。それで、こういう家庭で妻は夫が死亡してから仕事についている人が多くて、七三・一%は就業している。ところが、就業していて賃金を受けているわけですが、その賃金が平均月収が四万五千七百三十二円とこの報告では出ておりますから、当時として五万円足らずの月収だ、こういうわけです。内職している人はその半分にしかなっていないような状態。家庭の生活は大変苦しくなっている。全体の妻の八割強は仕事につきたいと思っているけれども、なかなかつけない。これは死亡していない夫の場合ですと、障害者になっているとかあるいは療養生活をしているとかということがありますので、その夫のめんどうも見なければならない、子供の世話もしなければならない、働きに出るわけにもいかない、こういうような大変苦しい立場に置かされているので、経済的には非常に困難だということを訴えているのがこの調査でわかります。 家庭の経済状態というのも調査しておりますけれども、これによりますと、夫が死亡した場合の一時的な収入がございますね。たとえば、労災保険の葬祭料だとか、あるいは年金の前払いの一時金だとか、あるいは損害賠償金であるとか生命保険とか、いろいろなものがありますね。そういうようなものがありまして、大体四百万円ぐらい収入があるのですが、それの大半はもう使い果たしてしまっているというのが五三・七%の家庭で、家庭のやりくりというものが非常に大変なんだ。そういうような状態で、妻の悩みとか生活の実態とかというものは細かく出ております。 そこで、労災遺族の人たちがいろいろと国に要求も出しております。その要求として一番大きなものは、この資料にもありますけれども、労災年金の増額ということが一番大きな、第一位を占める要求になっているわけです。 この調査のことをいろいろ申し上げる時間もございませんので、ざっとわかっていただければと思ったのですが、この当時、労災保険を受けるということが決まっている人たち、それであってなおかつ損害賠償金も受け取っている人たちがこのような状態でいるわけです。だから、言葉をかえて申し上げれば、両方の救済があって生活はぎりぎりなんだというのが実態でございますね。そういうような人たちが多い時点において、今回、片方を切り離そう、切り捨てようというふうに考えておられる点について、私は非常に問題があるのじゃないかと思うわけでございます。 それで、どうしてこのような実態があるにもかかわらずそのことをあえていまの時点でしようとなさるのか、いままで続けてこられたものを今回そのことを改めようとなさった、その基本的な考え方、趣旨を聞かせていただきたいと思うわけでございます。
○吉本(実)政府委員 労災保険給付は、業務上または通勤による災害で労働者に生じた損失のてん補を図ることを目的としているわけでございます。しかるに、労災保険給付が行われる場合に、同一の事由について事業主が民事損害賠償責任を負うケースがあるわけですが、そのケースにつきましては、民事損害賠償と労災保険給付の損害のてん補という共通性、相互性、こういったように考えまして、その両者が重複する面について合理的な調整を行う必要があるということでございまして、これは最高裁の判決でも認めているところでございます。 そこで、ただいまなぜこの時期に行うのかということでございますが、この最高裁の判決が五十二年十月に出ましたが、その以前におきましては民事損害賠償の問題につきましては、裁判所の側の方におきまして、いわゆる重複、結果的には重複するわけですが、将来給付分につきまして含めてこれを控除しても差し支えないという形で判例が重なっておりましたので、労災の実務上につきましてはその点について何ら差し支えなかったわけでございますが、そういった判決の出た後におきまして、私どもの労災保険法につきましては、他の法律にございますように労災保険の側でこれを調整する規定がございませんでしたので、これを改正する、今回の改正がその後の最初の機会でございますので、ほかの給付の関連等を含めましてこの際調整規定を整備させていただきたい、こういうことで御提案申し上げているわけでございます。 それから、確かに先ほどの調査におきまして労災の遺家族の生活が厳しいという点につきましては、労災保険の全般の給付水準の問題でございます。そういった全般的な給付水準につきましては、他の社会保険の制度とか西欧先進国の水準等もいろいろ細かく検討する必要がございまして、労災保険審議会におきましても引き続き審議されることになっておりますので、その検討結果を待って措置いたしたいと考えているわけでございます。 それから、先ほどの調整の点につきましては、あくまでも損失のてん補という点につきまして共通性がございますので、そういった点についてだけ今回の調整を行う対象としているわけでございまして、そういった点については学説、判例等でも大勢としては認められているので、そういった点を今回の改正案として措置している次第でございます。
○金子(み)委員 いま御答弁の中で、厳しい遺家族の生活実態を考えるから保険給付額の引き上げということも考えながら検討中だということでありますが、今回の法案の中にも引き上げの額は明示されているわけでございますね。 〔越智(伊)委員長代理退席、委員長着席〕 ですから、この引き上げの額、明示されているこの額、これだけあれば大丈夫なんだというふうに考えていらっしゃるのかもしれないと思うのですけれども、それは非常に私はむずかしいことだと思うのです。一件一件によって事情が違うと思いますので、これだけ額を引き上げたからそれでいいじゃないか、私は、この問題は労災保険の金額を高くしてあげればそれで済む、お金の問題だけで済むという問題ではないというふうに考えております。金額がどこまで上がっていっても、それでいいんだというふうには考えられない。事の問題は、労災保険は当然業務上の事故に与えられるものでありますから、それはそれとして、それから使用者の不当な取り扱いの結果こういうことになったのだとすれば、それが民事損害賠償となって出てくるのは当然のことでありますから、そういう基本的な考え方はそのままやはり持ち続けなければいけないのであって、そのことをお金でかえてしまおうというようなことは私はもってのほかだと考えるわけです。ですから、増額になったからといっていいというものではないと考えますが、その辺はいかがですか。
○倉橋説明員 先生、御指摘のように、遺族の生活実態には非常に厳しいものがあることは十分承知しております。 ただ、今回の調整につきましては、被災労働者またはその遺族がこうむりました損害のうち、労災保険でてん補されるべき部分、それと民事賠償におきましてその部分において補てんをするという部分が重複する、それを合理的な調整方法を講ずるということでございまして、私どもその重複する部分につきましては損失の補てんが使用者側の民事賠償で行われた場合につきましては、やはりその部分の損失をさらに超えてまで労災保険で措置するということにつきましては合理性を欠く、そのような合理性を欠くようなことにつきましては、やはり法制的な解決が必要であるというような立場から法律の整備を図っているものでございます。したがいまして、今後とも労災保険水準の引き上げにつきましては、種々の問題を検討いたしまして、できる限り被災者またはその遺族の生活等を勘案いたしまして充実に努めてまいりたいと思っております。
○金子(み)委員 もう一つお尋ねをいたします。 こういうことがありますね。今度の改正に基づいていきますと、労災保険の受給権者が、ある条件が整いますと、その受給権を失ってしまうということが起こり得るわけでございますね。そのことについて私は非常に不安だと思いますので、お尋ねしたいのですけれども、たとえば事業主に対して損害賠償訴訟を提起しても年金が支給されないのではやらない方がいいのだと考えて、死亡労働者の遺族である受給権者、大方の場合妻だと思いますけれども、妻が訴訟を断念してしまった場合、やらなかった場合には当然損害賠償はできない。それから、いまのは受給権者が損害賠償請求権を断念した場合、あるいはそうでなくて、今度は損害賠償請求権が時効によって消滅したそのすぐ後に受給権者が死亡してしまった場合には、死亡した受給権者のさらにその遺族、たとえば子供かもしれませんが、それは受給権を受けることができないわけですね。そうすると、お父さんは亡くなった、そしてお母さんも続いて亡くなった、子供たちは何もなくなってしまう、こういうことになるのではないかと思うのです。どっちからも受けられなくなるという状態が起こるのじゃないかと思うのですが、そういうことが起こった場合にはその家庭は破壊してしまうと思いますが、その点はどういうふうに考えていただけるのでしょうか。
○倉橋説明員 いまの先生の御指摘の事案は、このように理解してお答えしたいと思います。労働者が労働災害がありまして被災をした。その遺族として母子が残り、そういうような場合に、父の、または夫の労働災害によることに関しまして民事賠償請求を提起しないままに母が死亡したというようなケースの場合にどうなるかという御指摘であろうかと思います。 私ども、労働者である夫なり父が死亡された場合、訴訟の提起の有無にかかわらず、労災上の支給の要件が備わっておれば受給権を認めまして、それにつきましては労災給付を行うわけでございます。したがいまして、民事請求がなされない場合につきましては、当然その受給権者であります遺族に対しまして引き続き労災給付が行われる。それにつきましては調整の問題も生じないわけでございます。所定の額につきまして受給権が存在する以上、引き続き給付を続けるということでございます。 ただその場合、遺族が妻だけであるというような場合、妻が受給権取得後死亡したというようなケースにおきましては受給権は失権するわけでございます。失権いたしますと、現在の労災保険制度におきましてはそれによって支給が終わるというような関係になっております。 なお、遺族につきましては従来から失権差額一時金という制度がございまして、そのすでに受けた年金の額が千日分に満たない場合につきましては、その残りの額を失権差額金で支給するというような制度を設けておりまして、これによって対応するということになっております。
○金子(み)委員 そういたしますと、いまのケースのような場合には子供だけが残るわけですね。ところが、子供は受給権者ではない。だから、受給権は停止されてしまう。しかし、いまのお話ですと、一時金のうちの千日分に到達していない部分の残りの部分、どれくらい残るかわかりませんけれども、その残った部分については支給をするという話でございますね。そうすると、それだけであとは何もないわけですね。
○倉橋説明員 いまケースといたしまして妻だけが被扶養者であったという前提でお答えしたわけでございますが、夫が死亡して、そのとき生計維持関係にありました者が妻だけではなく子供がありました、そういう場合につきましては、子を含めまして年金を支給するわけでございます。そういう形で遺族年金が支給されている間に母が亡くなられた、残されたのが引き続き未成年である場合につきましては、その未成年である子につきまして年金が引き続き支給されるということになるわけでございます。その子供につきましては十八歳に達したときに失権をするということになるわけでございます。
○金子(み)委員 もう一遍確かめさせてください。そういたしますと、いまの話ですと、十八歳未満の子供があった場合には、その子供が十八歳に達するまで年金として支給されるわけですね。父親の分の年金、その中に含まれている分の年金ということになるのでしょうか。同額出るのでしょうか、それとも減額されるのでしょうか。
○倉橋説明員 当初母と子、二人というケースにつきましてはその二人分でございますが、母親の死亡に伴いまして遺族が一名になりますから、一人に相当する年金分が支給されるということになるわけでございます。
○金子(み)委員 その比率を、わかっていたら教えていただきたいのと、それからもう一つ重ねてお尋ねしておきますけれども、いまの年金のほかに、さっきの一時金の残りが残っておればこれも出ますね。
○小田切説明員 現行の労災保険法におきましては、残された遺族一人の場合でございますと、一人の場合もケースがいろいろあるわけでございますが、いまのお話ですと、当初は母子が残されたということで二人であるわけですが、二人である場合には死亡労働者の生前賃金の五〇%の年金ということになります。それがいまのお話の例ですと、妻である母親が亡くなったというケース、したがって未成年の子が一人残されるということでございますが、そうなりますと、亡くなりました労働者の方の生前賃金の三五%の水準の年金になるということでございます。この点につきましては現在水準の引き上げを改正案として盛り込んでいるわけでございますが、この改正案によりますと、母子二人の場合には約五三%、それが十八歳未満の子供さん一人ということになりますと四二%、従前ですと五〇と三五であるわけですが、五三と四二というふうにこの改正案ではしているわけでございます。 それから、十八歳未満の子供が引き続きまして年金をもらうというケースにおきまして、なおかつ千日分に足らない間にそのお子さんの年金受給権も失権するというようなケースがありますと、そこまでに母と子が受給しました日数分、千日分に足らないわけでございますが、その日数と千日分との差は差額一時金というようなことで、さらに残された遺族に出るということになるわけでございます。
○金子(み)委員 よくわかりました。いずれにいたしましても労災家族が困らないように、その生活のことを考えて政策は立てていただきたいということを強く要望しておきます。 今度のように重複した部分については控除するという考え方を法律に書いてなかったから書き足したんだというふうにおっしゃいますけれども、要するにこれはほかに意図があったんじゃなかったかなと私は思うわけです。というのは、一口にして申しますと、労災保険財政の逼迫と申しますか、財政困難という問題があって、そしてそのことのためにこういうことをあえて今回なさったのではないかというふうに勘ぐるわけでございます。だけど労災保険の財政が苦しくなってくるということは、重複して出しているから、あるいは高額な保険給付を出しているからということだけではなくして、もっと以前に問題があると思います。それは何かと言ったら、要するに使用者側の日ごろの安全配慮義務の不履行があるのではないだろうか。安全配慮義務がもっともっとしっかりと行われておれば、こんなにいろいろと災害を起こすことはないのじゃないかと思うわけです。そのことがやはり問題じゃないかと私は思うのです。数字もいただいたのがここにあります。これはそちらでお調べになったものですけれども、労働災害が五十年、五十一年、五十二年、五十三年とぐんぐんふえていっているわけです。数字を申し上げる時間がないので申し上げませんが、ふえていっているということは、やはり安全の配慮に欠けているのじゃないかと思うのです。ですから、こちらをしっかりやれば財政逼迫になるなんということもないんじゃないかというふうに考えますが、使用者側の安全配慮義務の履行問題についてほどのように指導していらっしゃいますでしょうか。
○吉本(実)政府委員 今回の改正案につきましては、決して保険財政対策として行うものではございませんで、先ほど申しましたように、いわゆる重複負担というような技術的な問題についてその法制上の欠陥を是正するということで行っているわけでございます。 それで、ただいまの災害の増加、つまり安全配慮義務の徹底に欠けているのではないかという御指摘でございますが、確かに五十年以降若干増加の傾向をたどっているわけでございます。ところが、保険財政が単年度収支で五十二年から赤字になった、百二十三億円の赤字でございますが、その場合における労災保険の新規受給者は対前年度では〇・六%増であったわけでございまして、それによる給付の増は、仮に療養及び休業補償給付を対象にした場合に、この額が二千三百五十五億円に対して十四億ということでございますし、さらに五十三年度における単年度収支の赤字は四百九十六億円に上ってございますが、この場合における新規受給者は対前年度〇・四%の増、それに見合う金額としましては、先ほどの療養及び休業補償給付二千七百七十六億円に対して十一億円、こういうふうになるのではないかと考えている次第でございます。 もちろん、われわれの労働基準行政におきましては、災害防止を最重点の課題として取り組んでおります。事業者がその責任において、労働安全衛生法の趣旨にのっとりまして、安全衛生管理体制の整備とか機械、有害物等による労働者の危害防止等の措置も講じまして、使用する労働者の安全衛生を確保させるように、私どもさらに指導を強化してまいりたいと思います。 また、特に災害の発生率の高い建設業におきましては、今回中央労働基準審議会の答申に基づきまして労働安全衛生法の一部を改正する法律案も作成いたしまして現在御提出し、御審議を願っているところでございます。
○金子(み)委員 財政の困難なのを国民に負わせるなんということは考えるわけはないと思いますから、いまの御答弁は当然の御答弁だと思いますけれども、こういうような場合には、何か政府の姿勢が使用者側の方により近く、そして国民からより遠く離れているような感じを受けます。ですから、そういうことがあってはならないと思いますし、そういうことのないようにこれからも努めて気をつけていただきたいと思いますが、この点については大臣からもきちっとした考え方を聞かせていただいて、次の質問に入りたいと思います。
○藤波国務大臣 先ほど来の先生の御質疑を伺っておりまして、また先日の各委員の御質疑にもお答えをしたところでありますが、基本的にはやはり労働災害が起こらないようにしなければいかぬ。御指摘がありましたように、発生件数が非常に多うございまして、きょうも朝から省内の会議の中でいろいろ打ち合わせをいたしておったのでありますけれども、ただ形式的に労働安全週間とか月間を置くとか、ポスターを張って経営者の理解を求めるとかいうようなことではなくて、たとえば思い切って重点的に事業場の総点検を行うとか、特に建設省と連絡をとり合いまして、労働災害の非常に多い建設現場等についてはよほど重点的に労働災害の起こらないような構えをつくっていくとか、もしそういうふうなことになったら、もうあと建設事業が遂行できない、事業として成り立っていかない、何よりも災害が起こらないようにする配慮をしでいくことが一番大事なんだということをもっと深い認識を求めるといった姿勢で、今後労働行政の最重点に労働の安全ということを構えてやっていこう、きょうもそんな打ち合わせをいたしておったようなことでございます。 なお、先ほど来御指摘がございますように、一たび労働災害が起こりましたら、十分その補てんがきいてまいりますように、労災保険の給付につきましてはさらに今後とも改善の措置を講じていくようにしなければいかぬ。確かに労災の給付は生活保障的な役割りを果たしますし、またそういった側面が十分あるわけでございますけれども、ただ構えば、あくまでもその発生をいたしました災害の損失を補てんするということが労災保険としてのたてまえでございますので、今回の調整等のことにつきましても先生の御指摘に沿わないような感じの改正になっておることは重々私どもも理解はいたしておりますけれども、そこはやはり法律上の整合性を保ち、いろいろ他の仕組みとの関連を考えましても、今回の改正の機会に、調整をしていくという条項をどうしても改正の中に盛り込む必要がある、こういうことでこういった措置を講ずることにしたわけでございまして、今後とも労働災害の絶滅を期して努力をする、そして一たび事件が発生をいたしましたら十分その損失を補てんするように労災給付をさらに改善していくという努力をいたしてまいりますが、今回の改正に盛り込んでおりますことにつきましては、どうか深い御理解をいただきますようにお願いを申し上げたいと思うわけでございます。
○金子(み)委員 災害を起こさないのが一番いいことなんです。おっしゃるとおりです。だから、そのことを努めていただかなければならないと思います。 そこで、少し具体的な問題に入りたいと思います。このことは労働災害の一つだと考えますので労働大臣にも聞いていただきたいのであります。 具体例として一つ申し上げますが、実は鳥取大学の医学部付属病院で起こっている事件なんでございます。これは時間がありませんから簡単に申しますけれども、病院のRI病棟の勤務者の間に大変に問題が起こっているということでございます。手に入れました資料によりますと、一九六七年から一九七八年まで大体十年ぐらいの間ですが、この間に四人の死亡者が出ています。一人は看護婦さんです。白血病です。それから、もう一人は放射線技師です。これは手の皮膚がん。それから、お医者さんが一人、これも白血病。それから、これも看護婦さんですが、RIの婦長さんが一人、白血病。こういう事例があるわけでございますが、この事例について非常に問題だと考えているのですが、こういうようなことがあるということを御存じでございましたでしょうか。これは所管の文部省と科学技術庁にお尋ねしてみたいのですが、御存じだったでしょうか。
○川村説明員 ただいま御質問のございました鳥取大学の付属病院におきます被曝の問題でございますけれども、私どもこの付属病院のRI病棟におきますRI従事者の被曝線量の集計につきましては昭和四十三年度から実施しているわけでございますけれども、現在までそういうふうに被曝許容量を超えて被曝したという職員はいないと承知しておりますし、もちろんいま先生御指摘のような被曝のために死亡したというふうな職員はいないというふうに承知しているわけでございます。
○松本説明員 私どもの方に参ります報告といいますのは、許容線量を超えた被曝等がございました場合、あるいは放射線によります障害が発生した場合に報告させる形になっておりまして、そういう形では鳥取大学の方から特に報告は参っておりません。
○金子(み)委員 そこら辺に谷間ができるのだと私は思うのですけれども、いまの鳥取大学の場合はこういう事態になっているわけなんですね。こういうような事態が起こる。たとえば、勤務体制なんかでも、いま申し上げたのは死亡者ですが、その後現在は五人の人が白血球が大変に減少してしまった、二千ぐらいになってしまったという実態になっているわけなんです。ですから、こういうようなことがなぜ起こるかということが問題だと思うのです。一口に言ってしまえば電離放射線の防止規則を守っていないんじゃないかというふうに言ってしまうことになるわけなんですけれども、これは基本的な問題ですが、具体的にどんなことが起こっているかと申しますと、ここでは私はRIの管理がずさんなんじゃないかというふうに想像できます。私は実際に現地へ行って見ておりませんので直接話を聞いたわけでないものですから、行ってきた人の話を聞いているわけですから大変に歯がゆいのですけれども、そういう感じがいたします。たとえば、フィルムバッジの取り扱いの問題なんかでもこういうことになっているのですね。一定の区域の中に入るときにはフィルムバッジをつけなければいけないということになっているわけですね。ところが、そのバッジの数が少ないものですから、みんながつけられない、交代でつける、こういうわけです。交代でつけていると忙しいときはそんなことをしては間に合わないからつけないまま入ってしまう、こういう訴えがあるので、これは大変なことだというふうに私は心配しております。もし、そのようなことをすれば、さっき科学技術庁のお答えの中に、許容線量云々というのがございましたけれども、自分がどれだけ被曝をしたかの被曝線量をバッジをつけてなければはかることができないわけですから、幾ら受けたかなんということはわからないわけですね。そうすると、予防対策もとれないし、そして非常に適切な措置もとれなくなるということで大変危険なことだと思うのです。こういう事態が起こっているということは大変に問題だと思います。 それからいま一つは、ラジウムの針の取り扱いなんですが、これがまた大変に大学病院の職員の人手不足なものですから、短時間の間に針を処理しなければならない。ところが、御承知のように、体の中に入れてある針ですから、針の小さな穴の中でですね、平べったい穴の中に分泌物がまじっておる。その分泌物を落として針に糸を通さなければならない。その細かい作業をするのに一々鉛の手袋をはめていたのではとてもできない。それ早くやれ、早くやれとせかされるものですから、とても間に合わないから手袋を外して素手でやってしまうというような恐ろしいことが起こっておるのです。だから、どんな場合でも素手でやってはいけないという教育が徹底していないのじゃないかということがありますし、流しの上にそのまま針が置いてあるという事例があったりいたしまして、ラジウムのこわさというものを十分徹底して教育してないのじゃないか。これもやはり私はそこの病棟を管理する管理者の責任だろうというふうに考えるのです。 教育の問題と人手不足の問題というのは文部省にお尋ねしなければならないわけですけれども、もっとそういう病棟あるいはその部分には人手を配置して、そうしてこのようなことが起こらないようにしなければいけないと思うのですけれども、いままでこの実態を調査なさったことがおありになるでしょうか。文部省、いかがでしょうか。 それから、科学技術庁はまた別の御質問をいたします。
○川村説明員 ただいま御指摘の点につきまして、私ども日ごろから特にRI関係の業務に従事する職員の安全管理ということにつきましては大変にこれは気をつけていることでございます。御承知のとおり、人事院規則に基づきまして文部省におきましてもそういう規定をつくっておりますし、各大学ではそれに基づいてさらに具体の規定を決めるということで安全管理の徹底を図っておるわけでございます。それに従いまして、日ごろから被曝線量の測定でございますとか特別の健康診断でございますとか、そういうことを実施しているわけでございまして、ただいま先生御指摘のようなフィルムバッジが足りないとか、あるいはラジウム針を素手で取り扱っているというようなことはないと私どもは承知しているわけでございます。
○金子(み)委員 時間がございませんので急ぎますけれども、文部省としてはないとお返事なさるよりしようがないですよね。あるなんてお返事できるわけないですから。ですから、やっていらっしゃらないのだったらば調査していただきたいと思うのです。それで私はお願いしたいことがございます。これは後でお願いをいたします。 いま一つは、今度は科学技術庁にお尋ねしたいのですけれども、このRIの病棟ができるときには、その認可は科学技術庁がお出しになりますね。そして、認可をお出しになった後、随時あるいは定期的にチェックをするということをなさっているか、なさってないかという問題なんです。もし、チェックしておられれば、こういうような問題は起こらないだろう、あるいはあっても早くに発見することができるであろう、訴えも聞くことができるであろうということになると思うのです。一般の病院ですと、これは労働基準監督署へ報告して監督署から検査が入るということになるのでしょうけれども、国立の施設でございますからそれができない。そこで、やれるところと言えば科学技術庁以外にないわけですね。文部省がなさるかと思いますが、文部省はそういうことはなさらないらしいですから、科学技術庁がなさるのだろうと思うのですけれども、科学技術庁がそういうことをいままでちゃんとチェックをしていらっしゃるのか、いらっしゃらないのか、そのことについての計画がおありになるのか、ならないのか、その点も聞かせていただきたいと思います。
○松本説明員 当病院につきましては、三十九年にRIの許可を与えてございますが、その後四十年、四十四年、四十九年、それと五十三年の過去四回立入検査をいたしております。当初の三回ぐらいの検査ではいろいろ指摘もいたしておりますが、一番新しい五十三年の検査結果では、一応管理は良好だというような判断をしているようでござまいす。ただ、先生お話しのございましたような、具体的に糸を通すときに素手でやっておるかどうかというような具体の取り扱いになりますと、一度の立入検査でその場で具体的にそういう行為を見るわけにもなかなかいきませんので非常に把握がむずかしい面があるかと思います。 それから、病院につきましては、私どものRIの管理では一番実は問題業種でございまして、私どもでも重点的に入っておりますし、もう一つある都道府県の医療法の医療監視員という、所管は厚生省でございますが、そちらの方でもあわせて監視していただいておるというようなことで、非常に重点的にはやっているつもりでございます。
○金子(み)委員 科学技術庁あたりから監査にお出かけになるときなんというのは、やはり表面の監査だけしかおできにならないということは私もよくわかります。ですから、こういう問題がわからないのだと思うのです。 そこで、私は資料を少しいただきたいと思います。これは個人資料で結構でございますのでお願いしたいと思います。文部省と科学技術庁にお願いしたいのですが、RIの病棟に勤務している人たちの健康診断というのは、その記録はこの要綱によりますと永年保存になっておりますね。ですから、記録が全部あるはずだと思いますので、各人別の年次別の被曝線量の実態を報告していただきたいと思います。RIについては使用の最初から、それからエックス線については十年から二十年ぐらい前からの分がいただきたいと考えております。 それからもう一つは、これは鳥取大学でございますけれども、RIを使用しているこの病院以外の他の施設についてもいろいろなことが起こっているかもしれないのですけれども、それを一つ一ついただくということではなくて、他の施設で使っている放射線予防細則というのがあるだろうと思うのです。どこでも使っていると思うのですね。つくっているはずでございます。ですから、その予防細則をいただきたいと思います。 文部省では、各所管の大学の付属病院が予防細則をおつくりになるために基本的な何か基準みたいなものを省としておつくりになったかどうか。おつくりになっていらっしゃればそれもいただきたいと思います。 それから、最後にもう一つの資料なんですが、これは文部省にお願いすることになるだろうと思います。鳥取大学が今度RIの病棟を拡大してきれいにいたしますようでございますね。大きくなるようなんですけれども、そこで使われる同位元素が二十三種類使われるということになっておるようでございます。この二十三種類の診療用の放射性同位元素ですけれども、この種類はいただいておりますのでわかっておるのですが、これはどういう用途でどういう方法で使おうと思っていらっしゃるのかということについてわからせていただきたいというふうに思います。 以上は資料要求でございますが、もう時間がございませんので最後にいたしますが、労働大臣も聞いていていただいたと思うのですけれども、これは非常に大きな労働災害というふうに考えているわけでございます。そこで、これは医療用の放射線障害の問題でございましたけれども、原子力発電所の問題なんかもございますことですし、これから先は私はこの問題は非常に拡大されていってだんだん事例も多くなるだろうと思いますし、非常に注意しなければならない問題だと思いますので、このことに関する管理とかあるいは指導の体制を一層厳重にしていただきたいというふうに思いますが、その点につきまして最後に一日労働大臣から御所感をいただいて質問を終わりたいと思います。
○藤波国務大臣 労働の現場でいろいろな災害が発生をする。それをいろいろ絶えず点検をし、対策を講じているわけでありますが、特に最近の国会の御論議等にも見られておりますように、放射線被曝問題は最も気をつけていかなければならぬ非常に大事な労働行政上のテーマであるというふうに考えております。労働省といたしましても、いろいろな災害の中で非常に生命に危険を及ぼす心配のある放射線被曝問題につきましては、従来も通産省や科学技術庁と十分連絡をとり合って対策を講じてきておるところでございますけれども、管理取り扱い等につきましてさらに厳しい態度で、労働者を守るという立場で、働いておられる方々に災害が発生しないという立場に立って、さらに積極的に前向きに対策を講じてまいりますように努力をしていきたい、このように考えておる次第でございます。
○金子(み)委員 ありがとうございました。終わります。
○葉梨委員長 次に、安田修一二君。
○安田(修)委員 それでは、まず労働省にお伺いいたします。 先ほどの大臣の御答弁、それからまた先般来の大臣の労働行政に対する御答弁を聞いておりますと、労働災害は起こしてはならないという原則に立っての御答弁でありますから、私は大臣の気持ちが率直にあらわれていることと存じます。この大臣の気持ちと、それから今日の政府の推し進めている全体の行政の中に占める労働行政のあり方、それから第一線のいまの労働行政、この三つの間に非常に大きな乖離があるのではないかとつくづく感じられるところがあるわけです。いまどういう観点から見ましても、今日の労働行政の中に、戦後労働省ができましてからこれだけの年数がたちながら、非常に大きな前進を行政上なしておるということがなかなか見当たらない。特にこの高度経済成長期を通じ、日本に企業が雨後のタケノコのようにたくさんでき、あるいは大型プロジェクトがたくさんできた中にあって、なおかつ第一線監督官やあるいは労働安全衛生行政についてのきめ細かい配慮をすべきところの行政の網の目がなかなか伸びない。そういう点では大臣のおっしゃる気持ちが、率直に表明されているとしましても、非常にむなしいものを感ぜざるを得ないのであります。私はそのことがいまの行政の中にぜひとも生かされるようにしていただきたいという観点から質問いたすものであります。 そこで、私は、労働行政が前進しない、むしろ後退ぎみにあるんじゃないかということを感ずる中から、いまの労働災害補償保険法の、皆さんでは改正、私たちでは改悪部分があった。また、その一環として見ざるを得ないものがありますし、それだけに世間的には非常に手厳しいものがあると思います。多くの労働法学者あるいは法曹界の弁護士先生方からも挙げて反対がありますし、もちろんこれは脊髄損傷者等重症の災害者を初めとして、今日たくさんの労災に遭った人、あるいは現場労働者から一斉に反対の声が上がっています。私はこの声は天の声として、労働行政に携わっておる皆さん方にすればこれまた素直に受けてもらわなければならぬと思います。 そこで、私はまず、労働行政が拡大されなければならないにもかかわらず、行政機構簡素化にかりていま縮小の方向で検討されておることについてお伺いしたいわけであります。それは行政管理庁の方から行政機構簡素化のために行政監理委員会、それから行政管理庁の名をもって都道府県行政機関の統廃合の検討を実は行っております。その中で、都道府県労働基準局、それから婦人少年室のブロック化、都道府県への移管について検討されているのでありますが、労働大臣としてこれはどのようにいま聞いておられるか、あるいは考えておられるか、まずお伺いしたいと思います。
○藤波国務大臣 今日、大平内閣が非常に大事な政治課題といたしまして行政機構の改革、行財政の改革に取り組んでおることは御高承のところでありまして、政府の非常に大事な課題として労働省としてもそのことはこなしていかなければいかぬ、このように考えておるわけでございます。しかし、先生御指摘のように、労働本省もそうでありますけれども、特に第一線の労働基準監督行政あるいは職業安定行政への需要は非常に大きくなっておりまして、できるだけ御指摘のようにきめ細かい労働基準の指導体制を進めていきたい、このように考えておりますし、また職業安定の仕事につきましても、たとえば高齢者対策であるとかあるいは心身障害者の方々の雇用対策でありますとか、最近では特に婦人労働者の方々の社会への進出でございますとか、できるだけきめ細かく対応しなければならぬというニーズが非常に高まっているわけでございます。そのような中で、むしろ労働省といたしましては人員の増員をお願いしたいということで、年々関係省庁と接触を重ねてきておるところでございまして、最善の努力をいたしてきております。 特に今度の一連の行政改革の中では、六月をめどに県の単位の機構についてこれをどう持っていくかということについてのいろいろな議論が重ねられておりまして、いま御指摘のように、各県の労働基準局でありますとかあるいは婦人少年室等もその対象になっているということは私どもも存じておるわけでございます。しかし、それぞれ非常に大事な機能を果たしておりますし、むしろ私どもといたしましてはこれらの機関をさらに増強いたしまして、特に地方におけるきめ細かい行政を推進していく、ニーズに対応していかなければいかぬ、このように考えておる次第でございまして、今後とも行政管理庁を中心といたしますこういった作業に労働省として適切に対応していくようにいたしたい、こう考えておりますが、当面はいろいろそれらの労働省としての資料を提出いたしましたり考え方を申し述べておる段階でございますので、今後のさらに五月いっぱいから六月へかけての行管庁とのいろいろな協議の中で、労働行政の重要性をさらに強調いたしまして、私どもとしての考え方が取り入れられていくように努力をしてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
○安田(修)委員 行政管理庁の方にお尋ねいたします。 いま労働大臣から労働省の機構に対する考え方がありましたが、行管の方で具体的に地方の基準局のあり方、それから監督署のあり方、ブロックヘの吸い上げ、あるいは地方移管についての問題を出しておられます。これについて行管の方では大体どの程度の作業を行っておられるのか、お伺いしたいと思います。
○坂本説明員 お答え申し上げます。行政管理庁におきまして労働省を担当しております監察官でございます。 先ほど労働大臣からお話がございましたとおりでございまして、実は昨年の十二月二十八日であったかと思いますが、行政改革に関する閣議決定がございまして、ブロック機関の整理を大体三月末、それから府県単位機関につきましては行政監理委員会におきます審議結果等を待ちまして、ことしの六月末をめどとしまして整理合理化案を立案する、こういうふうになっておるわけでございます。 それで、私どもといたしましては、行政監理委員会の審議に資するために、実は行政管理局と監察局とが共同いたしまして現在調査を実施しておるわけでございます。三月から六月という期間になっております。 この中に、やはり労働基準局、婦人少年室が含まれておりまして、これは府県単位機関というのは現在十一ございまして、その中に含まれておるわけでございまして、現在本庁とそれから各私どもの管区それから地方局を動員いたしまして調査をしております。 調査の仕方といたしましては、労働基準局、婦人少年室につきましては非常にたくさんの事務が実は行われておりまして、それについて一々個別に検討いたしますと相当の事務量になるものでございますので、大体四つないし三つの大きな主要事務にグループ化いたしまして、それにつきまして過去のいろいろな改革意見、たとえば労働基準局、婦人少年室の事務につきまして府県に委任してはどうか、そういう閣議決定もございます。あるいは労働基準局と婦人少年室を統合してはどうかという考え方もございます。そういういろいろな改革意見を当てはめてみた場合に、そこにどういう問題があるのか、そういうことを調べる、その調査結果を監理委員会に上げまして監理委員会の審議に資したい、こういう考えで現在調査を進めておりまして、調査中でございますのでまだ詳細については申し上げられない、こういう状況でございます。 以上でございます。
○安田(修)委員 いま行管の坂本監察官からお話がありましたが、行管が行政管理の一環として、いまの労働行政の、たとえば地方労働基準局あるいは婦人少年室の仕事がどのように行われて、実際の行政需要がどうなっているかということが先に行われた中からこうした問題が検討されるということであればなるほどと思うこともあるのですけれども、いまの場合は、私、労働行政全般のいま行われていることについて申し上げるような時間もございませんが、安全衛生あるいは労働保険関係、この行政関係だけからいたしますと、たとえばブロック機関への引き上げ検討事項として、一つは、安全衛生業務の企画調整監督署に対する指導援助事務、これは重大災害等の災害調査の実施を含む。二つ目に、計画の届け出に係る審査及び実施調査事務。三番目は、改善計画の作成指示に関する事務。四は、特定機械等の製造許可。五は、じん肺の管理区分の決定事項。それから、検査代行機関に行わせるか、または所轄の監督署に委譲することを検討する事項としてはどういう方向の事務があるか。その場合に特定機械等の検査。こういう問題点を挙げて具体的に、これは安全衛生関係だけ申し上げたわけでありますが、言っておるわけです。 こうなりますと、労働行政そのものを、たとえばブロック機関という場合はかなり広域の地方労働基準局みたいなものをつくって各府県幾つかをそこに労働行政一元化しようということでありましょうが、これは明らかに、今日の労働行政に対しての後退縮小を当然意味してまいります。明らかにこういう一つの争点、指標、目標を置いて行管がやっているということは、私は、今日の労働行政そのものの行われている仕事の内容そのものを行管が認識していないんじゃないか、こう思うのですが、その点どうですか。
○坂本説明員 ちょっと詳細に申し上げますと、都道府県労働基準局の事務につきましては、四つの事務にいま大きく分けまして調査をしております。一つは監督事務グループ、それから二番目には安全衛生事務グループ、それから三番目には賃金事務グループ、それから四番目には労災保険適用徴収事務グループ、こういうふうに実は分けて調査をしております。 それで、先生御指摘の点もあるかと思いますが、私どもいろいろ調査をいたしまして、そこにいろいろ問題があればそれについて十分対応していきたい、こういう考え方で現在進めております。
○安田(修)委員 そこで、私はいま四つ言われたうちの一つの安全衛生のうちの具体的な問題を取り上げたわけですが、問題があれば対応したいじゃなくして、先ほど坂本監察官が地方委譲の問題について、婦人少年室その他にあると言われました。確かに一部でやりました。それはいまの行政事務の委任、たとえば地方に対する委任事務だとかあるいはそういう関係の問題では余り労働基準行政では起きなくて、職安行政の場合には、確かにこれは戦後からの懸案事項です。それは戦前からの歴史もあります、戦前は職安行政は地方でありましたから。基準行政の場合は、全国斉一の基準による労働基準行政で運営されなければできない、これは諸外国を見たって国家権力でなければできない性質のものでしょう。それが地方移管等がこの中に具体的にいろいろと指摘されておるところにすでに問題があるのじゃないですか。ですから、まず行政需要が一体どうなのか。たとえば、いまこれだけ事業所がふえて、そしていま十三万幾らの事業所の点検のうち六一・何%ですか、労働基準の違反があるということが労働省の監督の結果出ておるわけですね。しかも、災害がたくさん起きておる。その労働行政需要が満たされないいまの労働省の、先ほど大臣がおっしゃった第一線監督官の増員やそうした問題について行管がまず先に見ないで、いきなりこの機関のブロック化や地方委譲の問題を俎上にするということ自身、皆さん行管自身の行き方の中に誤りがあるのじゃないですか。監察官、お答えいただきたいと思います。
○坂本説明員 私どもといたしましては、昨年の暮れの行政改革に関します閣議決定に沿いまして、政府として最大の努力をしているわけでございます。非常に調査期間も短うございますので、われわれとしてはできるだけ間違いのないようにしてまいりたいと思っておりまして、そのためにはやはり労働省の御意見もお聞きいたしますし、あるいはいろいろな関係団体の意見もお聞きいたしまして間違いのないようにしたい、こういうふうに思っております。
○安田(修)委員 私は、いまの政府部内のいろいろな行政機構からすれば、行政監理委員会やあるいは行管の果たしている役割りもいろいろとありますけれども、総体的な行政の各部内のあり方からすれば、いろいろな見方がありましょうが、私は、一面ではかえって行管は盲腸みたいな存在じゃないかと思っているのですよ。いま行われていることも、本当に盲腸みたいな存在じゃなくして、本来の行政のあり方そのものをびっしりやるのなら、まず労働省の行政需要そのものをどのようにいま政府として推しはかっていくか、このことからやったらどうですか。まず機構いじりじゃなくして、そのことからやる気はないですか。坂本監察官にお聞きいたします。
○坂本説明員 私どもとしましてはやはり行政需要も十分考えてまいりたい、こういうふうに思っております。
○安田(修)委員 そこで、労働大臣に、あるいは労働大臣でなくて局長でも結構でございますが、重ねていまの問題でお尋ねするわけであります。 この労働行政、たとえばいま行管がブロック化という問題についての事務の具体的な検討事項をすでに挙げておられる。あるいは地方移管の場合も具体的な検討事項を挙げておられる。このことはもちろん実現することは私はないと存じます。とてもじゃないが、こういうことはできるわけがないと思いますが、ただ問題を明らかにしていかなければならぬと思いますのは、ブロック化という場合に、現在労働省は労働組合あるいは企業等使用者団体、労使の関係団体を前面にしながら、その健全な発達あるいは労働行政前進のためにいろいろと配慮をしておられるわけですが、そういう点では労使関係団体の協力というものはどうしても必要であります。それからまた、労災関係でありますと、たとえば労災診療上の審査ということになりますと、県医師会の協力ということも全面的に必要であります。いろいろな点で地域的ないまの県の基準局が果たしておる役割り、これは他の中央官庁の出先としては見られない重要な位置づけを持っておると思うのであります。そういう点では、私はブロック化というのはいまの労働行政の縮小もしくは後退になるのではないかと思います。これが一点。 それから、地方委譲した場合には、先ほど行管に私も申し上げましたように、全国斉一の基準で労働基準行政というのは運営されなければ、たとえば都道府県の自治体のそれぞれの持ち味でやられたのでは、いわゆる俗に言われる癒着あるいはその他の問題が出てくるわけでありまして、これは不適当であるという点から、ともに困難な問題ではないかと私は思うわけでありますが、労働省の考えを聞きたいと思います。
○吉本(実)政府委員 先生ただいま御指摘の第一点の都道府県労働基準局のブロック化の問題でございますが、先生のおっしゃるとおり、私どもの行政につきましては関係労使団体なり医師会と密接に連携体制をとりながら進めていかなければならない、こういった点が必要不可欠でございます。しかも、関係労使団体なり医師会は都道府県の地域単位で組織されておりまして、労働基準局がそれぞれ密接な連絡協議を行っているところでございまして、仮にこれがブロック化されますとそういった点が困難となりますので、私どもの行政の円滑な推進には支障を来すのではなかろうか、こういうふうに思っております。 また、都道府県への委譲問題につきましては、先生御指摘のとおり、基準行政につきましては基本的に全国斉一性を要求されることでございますので、国と地方公共団体との事務配分の上においては当然国が行うべきものであるというふうに私ども考えている次第でございます。
○安田(修)委員 いま吉本局長おっしゃった趣旨、私たちも同感に思います。大臣もひとつ政府部内で労働行政の人員その他の前進は大いにやっていただきたいと思います。後退は許さないようにひとつお願いしたいと思います。 そこで、次に私は労災防止指導員の関係で少しお尋ねいたしますが、労災防止指導員ができましてかなり年数がたってまいります。そこで、この運用面でお尋ねするわけであります。 こういう新しいユニークな制度ができました。もちろんこれができた当初は、労働者側、政府間の政治的な話し合いの中からこういう制度が後からできたわけでありますけれども、さて全国的にこの運用状況、運用状況といいますと、たとえば点検件数など資料もいただきましたが、うまくいっているかどうか。私いろいろ先に問題を述べておきますと、たとえば労災防止指導員はもちろん監督官と違いまして企業の方については何の権限もない人たちでありますから、現場に入るについては現実にいろいろ抵抗もあります。しかし、これだけ十数年たちながらまだ労災防止指導員が今日の企業の中になじめないということ自身、労働省の努力も足りないのではないか。その努力の中には、私は予算面、第一線監督官の不足ということもあるのじゃないかと思います。 そこで、一応運用状況についてお聞きしたいと存じます。
○津澤政府委員 労災防止指導員の運用の状況につきましては、御案内のとおり、各都道府県労働基準局長が定めました計画にのっとりまして指導の実績を確保するということに努めておりますとともに、各地域の実情に応じた円滑な運用を図っておるつもりでございます。 そこで、五十三年度の活動実績は、事業場の数で申し上げますと、三万五千百八十七事業場を御指導いただいたことになっております。
○安田(修)委員 たとえば、事業所へ事前予告なしに抜き打ちに行かしてもらいたいと言っても、実際はなかなか困難だという意見も第一線の労働基準行政機関の中にあるようでもありますし、また、私たちも事実過去にそういうことはよく聞いてもまいりました。ただ、私も抜き打ちだけが効果があるとは思いません。あらかじめ連絡しながらこの指導をしていくということも必要であります。ただ、運用面でそういういろいろな改善点が言われればそういうことも取り入れて、指導員がはつらつと動きやすい状況をつくっていくということも必要ではないだろうか。 それから、指導員に対する予算上の措置でありますけれども、これは労働基準審議会の関係もそうでありますが、地方の基準局にあらかじめ予算の枠を決めてある。もちろん官庁でありますから予算で執行される以上は枠が必要でありますけれども、余りにも窮屈で地方では弾力を持ってやりにくい。たとえば、この指導員に対する手当なんかでも、指導員に出ておる人は別に手当をくれ、あるいはふやしてくれという気持ちは一つもないと私は思います、どちらかというとボランティアみたいなつもりでやっておりますから。ところが、第一線の局にすればやはり決まった手当は出さなければならぬ、少ない手当の場合はやはり多少は遠慮しなければならぬ。はたから委員の人たちが、いや私たちは手当は要りません、あるいは少なくてようございますと言っても、第一線の局にすれば少ない手当で、たとえば一日千円くらいではちょっと何遍も出てもらいにくい、あるいは回数もふやしにくいという考えも立つようでございます。たとえば、基準審議会の場合も年二回程度の予算しか来てない、必要に迫られて三回、四回やらざるを得ないという場合も手当も出さない。私も過去長い間県の基準審議会委員をしていましたときに、手当なしでやってくださいということでやったことがありました。ところが、後から中央からちゃんと何か予算を持ってこられるようであります。しかし、それはなかなか大変なことで、みんなが要りませんと言っても役所のたてまえではなかなかそうはいかないようです。決まっているものを出さないでやるというわけにはいかない。そうしますと、地方によってはそのときの点検あるいは行政上の違いも各県にありましょうから、そのときによってもう少し予算面でふやして多少の弾力があるような運営ができないものだろうか、この点何かお考えはないですか。
○吉本(実)政府委員 労災防止指導員の活用のことにつきましていろいろ御示唆に富んだ御意見でございます。先生お話しのように、指導員は労働安全衛生法の施行という権限行使を前提とする制度でございませんので、事業場への立入権とか調査権等の権限を有することはむずかしいわけでございまして、先ほどのお話のように予告の問題とかそのほかいろいろな問題がございます。そういう意味で、私どもこういった人々の運用につきまして、先生の御趣旨に沿いましていろいろな改善その他の運営について今後ともそういった点を改善してまいりたいと思います。 特に、御指摘の予算の関係でございますけれども、おっしゃるとおり予算の制約で御無理をおかけしている点が多々あるところであります。今後予算の増額等も図りながら、なお一層はつらつと御活動いただけるように努力を続けてまいりたいというふうに思います。 地方労働基準審議会の運営につきましてもおっしゃるような予算の制約があるわけでございまして、こういった点につきましても今後制度の有効な活用を含めまして検討してまいりたいというように思います。
○安田(修)委員 そこで、私は、問題の今回の法案の労災補償と民事損害賠償の調整問題でお尋ねしたいと思います。 先般来各委員から同趣旨のことが何遍も言われておるわけでありますけれども、私も改めて、労災保険による法定補償制度と民事損害賠償制度とは本来全く性質の違うものじゃないか。先ほど私、大臣の金子委員の質問に対する答弁を聞いておりますと、労災補償は損害てん補というのが先のように大臣のお話がありました。私は、これは法の趣旨からしますと、労災補償保険法の第一条にあるように、遺族及び家族の補償とそれからその労働者の福祉の増進に寄与するということが本法の第一条の目的でありますから、いまの労働学界やあるいは第一線法曹界で言われておるように、生活保障というのが元来労災補償法の第一義だ。たとえば、後から多少お聞きいたしますが、今回労働省が盾にしております最高裁の五十二年の一〇・二五の判決の中身全文を読んでみましても、考え方としてはそれはあくまで生活保障、これはたとえば調整問題という控除説と非控除説の二つの説が書いてある中にも全体としてうかがえるのはやはり生活保障というのが労災補償のたてまえだ。ただ、その中に損害てん補ということがどちらの説からしても免れないのじゃないかということについては共通性があるということを言っておるわけでありまして、私は、そういう点からしますと労災保険による法定補償制度と民事損害賠償制度とは本来全く性質が違うのだ、たてまえは別個のところから出ておるし、また、そこから展開されてきた今日までの法理論の中でもそうではないかということを思っておるわけでありますが、労働省の方ではそこら辺は何かごっちゃにして考えておられるように感じますけれども、その点ひとつお考えをお聞きしたいと思います。
○倉橋説明員 労災保険制度による損失の補てんと民事損害賠償制度の損失の補てんの性質の異同の問題でございますが、労災保険制度によりまして保険の対象になっております損失というものの歴史的な経緯を振り返ってまいりますと、先生御承知のように、近代法におきましては過失責任主義をとっております。 〔委員長退席、越智(伊)委員長代理着席〕 しかしながら、産業進展の中におきましてその過失責任だけでは企業活動に伴う災害に関しましてその損失を受けた労働者の十分な保護に欠けるということから、近代法の過失責任からさらに無過失責任主義へと損害賠償の理論が発展してきたわけでございます。こういうような発展の図式からわが国の労働基準法におきましても、一般民法におきましては不法行為の責任論の立場に立ちながら、労働基準法ではそれの損失の補てんから使用者に無過失賠償責任というものを設けまして、労働者の受けました損失につきまして使用者に労災補償の責任を課しているわけでございます。 こういう面及び現在の基準法から見ますと、労災保険補償を行った場合につきましてはその部分につきましては民事賠償責任が免責されるという規定もあるわけでございます。また、民事賠償を行った場合につきましては労災補償責任が免れるというふうな相互関係の規定が置いてあるわけでございます。このことはやはり不法行為におきます責任論から発展いたしました無過失賠償責任を基準法で明らかにしたものではないかと理解しているわけでございます。 そういうような労働基準法の使用者責任を労災保険法によりまして保険の形式で行うというものが労災保険制度でございます。その補てんの方法が労災保険給付でございまして、したがいまして、労災保険の給付につきましては、言うなれば無過失賠償責任に基づく損失の補てんというようなことになるわけでございまして、労災保険制度によります給付と民事賠償によります損失の補てんは本質的には同じ性質を有するというふうに理解しているわけでございます。
○安田(修)委員 倉橋審議官、先般来同じことをおっしゃっておるのでありますけれども、それは私、いまいろいろな労働学界の学説等からしても、労働省ちょっと無理があるのではないだろうか。ちょっとではなくして根本的に無理があるのではないだろうか。それは労災保険制度そのもの、それは確かに最高裁の判決の中にも言われておるように、労災補償制度と基準法の関係、それからまた民事賠償の関係、三つに分けていろいろ論じられておりますが、おっしゃったように、確かにこの基準法の災害補償とそれから労災保険制度との関係から、そして基準法八十四条二項の類推適用という問題について、いま確かにそのことについておっしゃっておられましたけれども、だが、それは私本来は法定補償制度というものはそれとは別個、たとえば派生したものでないということはこの中に言われておりますね、最高裁の中にも。派生したものではなくして、保険制度とそれから労働基準法上の災害補償とは、これは全然別個なものだ。ただ、それは法によって、八十四条によって、災害補償法で補償した場合は、それは基準法上の災害補償は免れるということはあるし、それから第二項において今度は民事損害賠償も免れるということになっています。ただそこで、八十四条二項の類推適用という問題は、これは第三者行為災害でない使用者災害の場合は、民事損害賠償との調整行為は許されぬのではないか。これは明らかに災害補償義務者である使用者が同時に不法行為の加害者である場合に、二重の責任を課して不利益になることを防ぐための特別措置ではないかと考えられるわけですけれども、その点は審議官の方ではどういうぐあいに考えておられますか。
○倉橋説明員 先ほどのことを繰り返すようになりますけれども、労災保険制度は労働基準法上の個別の使用者の災害補償責任、そういうものを基盤といたしまして、その責任を果たすための代行的機能を果たしているというような制度をつくっているわけでございます。一方労働基準法八十四条の二項には、先生いま御指摘のように、使用者が労基法上の災害補償を行った場合には、その価額の限度におきまして同一災害事由によります損害賠償責任を免れるという規定が置かれております。この法理につきましては、政府が使用者による労災補償を保険によってかわりに行う。そういうことで、労災保険を行った場合にも八十四条二項の適用はあると従来も考えておりますし、いまも考えているわけでございます。判例、学説の大勢は八十四条の第二項の解釈なり、また均衡の原則を理由といたしまして、労災給付が行われた場合につきましては、その価額の限度で賠償責任が軽減されるというようなことが判例、学説の大勢であると私どもも理解しておりますし、最高裁の五十二年判決も、このようなことについては、やはり既給付分につきましては控除をいたしております。そういう点から考えますれば、そのような類推適用を当然予定をしての話ではないかと思うわけでございます。
○安田(修)委員 私、それは実務上は確かに労働省のおっしゃるのが多いのではないかと思うのですが、学説上はそうではなくして、私は使用者が同時に不法行為加害者である場合は、二重の責任を課して不利益になることを防ぐという特別規定ではないかというのが多いのではないだろうかと思うわけですね。そこで、たとえば今回こういう民事損害賠償との調整問題が出されてきて労働者にとって非常に不利益になるということで反対運動がずいぶん出ておりますが、法曹界でも非常に多くの反対が出ておりますけれども、たまたまこの最高裁の判決を盾にして皆さんがいろいろおっしゃるわけだが、これはどちらかというと、私は、それぞれ一貫した、この中にいろいろな法理論の展開もあり、また現実の実際問題点も指摘されておるわけですけれども、多少つまみ食いのきらいがあるのではないだろうかという感じがいたします。特にたとえば五十二年十月二十五日の三共自動車・岡山クレーン災害事件判決のうち、労災保険は民法上の損害賠償責任をカバーすることを直接の目的とするものではない、こう言っているわけでありますが、解釈によれば、たとえばこの前段には、先ほど審議官のおっしゃったいろいろな八十四条二項の類推適用の関係では、それは民事損害賠償との調整問題については確かに触れておりますけれども、しかしここへ来ますと、民法上の損害賠償責任を直接カバーすることが目的ではない——たとえは直接の目的ではないから、では間接的にはという見方もありますけれども、はっきりしておることは、損害賠償責任をカバーすることが直接の目的ではないとはっきり言っているわけですね。そして、使用者の保険利益を強調する余り、労働者やその遺族の損害賠償請求権の行使が制約されるのは不当というべきであり、また将来の給付分についても、損害がてん補されたと解することは、第三者行為災害の場合の解釈とそぐわない結果となると言っておるわけですが、こうしたことを皆さんの方では巧みに部分部分を解釈しながら、たとえばこの場合にも将来の給付分についても損害がてん補されたと解することはだめだということ、これはもう全体の基調になっているわけですが、しかし今回の場合は前払一時金履行猶予制度を入れたり、そして将来にわたっての調整が出るわけですけれども、そうしますと、私は労働省は全く逆手にとって都合のいいように、特によく言われるように使用者の都合のいいように、これは労災保険法を悪くするのではないかという見方は免れないと思うのです。 そこで、審議官の考えをお聞きしたいと思います。
○倉橋説明員 先生御指摘の点につきましては、直接最高裁の判決の中には、確かに労災保険の将来部分について労災保険の側で調整するというようなことは書いておりませんが、それは本案、判決になりました事案の性格、または請求の内容からそういうようなことまで触れなかったのではないかと思うわけでございますが、いろいろいま先生の御指摘がありました民法上の損害責任をカバーすることを直接の目的としているものではないとか云々等がございますが、これは私どもの理解としましては、民法上の損害賠償につきましてはすべて責任と申しますか、その発生した損害につきまして一〇〇%補てんする責任があるわけでございます。そういう意味で労災保険制度につきましては、慰謝料等を含めました損害責任を全部カバーする、そういうようなものではございませんし、民事賠償責任を直接保険するというようなものでないことは言えるのではないかと思うわけでございます。ただ、私ども今回の調整の方法につきましては、将来給付される年金部分をすでに支給されたということで理解しているわけでございません。最高裁の言いますように、いまだ支給されない部分についてはまだ履行されておりませんから、その部分につきましては民事賠償請求ができる余地を残しているといいますか、従来、控除説の立場をとりますと、将来の年金部分の損失部分につきましては、むしろ請求認容がされなかったということになるわけでございますが、最高裁の判決に従いまして、年金部分の損失部分につきましても、民事上の請求がなし得るということにしたわけでございます。 ただ、民事賠償によりまして、その将来の年金部分の損失を民事賠償によって補てんされた場合には、その補てんされた損失につきましては、すでに使用者によってカバーしたわけでございますから、それにつきまして重複して補てんをするということは、逸失利益の性質上または損害賠償の性格から見まして合理性を欠くということになりますので、その点につきましては、将来の年金給付を保険上調整をするという仕組みにしたわけでございます。したがいまして、その点につきましては、私ども、最高裁の判決の趣旨を十分この調整の方法については生かしていくという立場で処理しているわけでございます。
○安田(修)委員 時間が参りました。私は議論する時間がこれでなくなりましたので。ただ、これでいきますと、全然あほらしくて損害賠償できなくなるというのが現実になってまいります。そういう点では私は、法案を提出されている労働大臣の方にも、これについては再考してもらいたいということを申し述べまして終わります。
○越智(伊)委員長代理 次に、村山富市君。
○村山(富)委員 労災保険法の改正案につきましては、きょうで二日目の審議が行われているわけでありますが、大体指摘されている問題点はそれぞれ集約をされてきていると思うのです。そこで、そうした問題で、重複する点もあるかもしれませんけれども、若干のお尋ねをしてみたいと思います。 最初に、現行の労災保険制度、今度国会に提案されておりまする改正の中身等々を検討してまいりまして、なおかつ不十分な点があるのではないかと思われますので、そういう点について若干冒頭にお尋ねしていきたいと思うのです。 その一つは、給付水準の問題でございますが、遺族補償年金の改正が提案されております。しかし、現状の遺族の生活実態等々から考えた場合、あるいはその他のいろいろな公害とか交通事故等といったようなものと比較した場合に、まだ給付水準が不十分ではないか。遺族の生活の実態というものを十分に把握した場合に、もう少し遺族補償年金についても大幅な給付水準の改善をすべきではなかったかと思うのですが、その点はいかがでしょうか。
○吉本(実)政府委員 遺族補償年金につきましては、従来から被扶養利益の喪失分を補てんすることを目的といたしまして、遺族数に応じて生前賃金に対する給付率を決定することと規定している次第でございます。 その給付水準につきましては、制度発足以来数次にわたります改善を行ってまいりまして、すでに先生御承知のようなILO百二十一号勧告の水準を上回って、先進諸国との比較においても、これと比肩できるものではないかと思っているわけでございます。 さらに、今回の遺族補償年金についての改正でございますが、残されました遺族の被扶養利益の喪失に対する補償をより一層適確に行い得るよう給付率を改善しようとするものでございます。受給者のうちでは構成比の高い、遺族数の少ない、年金額の低いケース、こういう点に重点を置いて改善を作成しているところでございます。しかし、御指摘のように、個々の遺族の生活実態を見た場合には、なお厳しい生活を余儀なくされる事例もあろうかと思います。そういう意味で、上述の遺族補償年金の改善に加えまして、この改正案の成立を願いました暁には、労働福祉事業の一環といたしまして遺族特別支給金の五割アップ、それから労災就学等援護費の増額、こういったことも今回の制度改正にあわせまして行うつもりでおる次第でございます。 なお、一般的な遺族年金の水準につきましては、他の年金の給付水準同様に、いろいろ先進国との水準の比較だとかあるいは横並びの社会保険年金との関係等もございますので、今後そういった点も、すでに労災保険審議会において十分慎重な検討を行うこととしておりますので、そういった検討を見まして対処してまいりたいと思っております。
○村山(富)委員 具体的にその個々の問題について若干お尋ねしたいと思うのです。 たとえば、日本の国の場合には、労働者の賃金というのは年功序列型になっていますね。したがって、年功を経るに従って賃金は上がっていく、こういう体系になっているわけであります。仮に、きわめて賃金の低い若いときに労災事故に遭った場合には、労働災害の給付水準というのは、その低い賃金で計算されたものがずっと一生いくわけです。そうしますと、若干問題点があるのではないかと思いますので、そういう関連における給付水準の低いものについて、何か特別に配慮する必要があるのではないか、こう思いますが、その点はいかがでしょう。
○吉本(実)政府委員 年金給付のスライド率に年功賃金体系を反映させる必要があるかどうか、こういう御指摘でございます。この点につきましては、従来から労災保険審議会等におきましてもいろいろ御議論のあったところでございます。一つは、年功賃金体系というものが、わが国において企業の規模あるいは職種を問わず、果たして一般的であろうかどうか、仮に年功要素を考慮した場合でも、どんな方法で賃金の年功的要素を把握するか、またどの程度までスライドに年功的要素を反映させるか、あるいは受給者が高齢になると逆に受給額が低下するようになるおそれもあるではないか、それでもどうだろうか。また、学歴別、男女別、産業別で年功的要素の賃金に与える影響度合いというものもいろいろ違いがある、これをどういうふうに勘案するかといったようないろいろな問題がございまして、今回の建議に際しましても、審議会におきましては結論の得られなかったところでございます。しかし、審議会といたしましても、大変重要な要素でございますので、引き続き検討を行うべき問題であるということにいたしまして、今後の問題としてさらに検討を重ねていこう、こういうことになっております。
○村山(富)委員 確かにそれだけではなくていろいろな要因がありますから一律的にはいかないと思います。しかし、一般論として、日本の賃金体系というのはそうなっていますから、したがって、非常に賃金の低い若いときに事故に遭って、そこで労災給付が計算をされて、その給付水準がずっと一生ついて回る、これはやはり若干問題点があるのではないかと思われますから、いまも答弁がございましたけれども、ひとつ慎重に、早急に検討を加えて結論を出して、何らかの改善措置がとられてしかるべきであると思いますので、強く要請をいたしておきます。 〔越智(伊)委員長代理退席、委員長着席〕 それから、次の問題は、先般も若干質問があったようでございますが、たとえば振動病障害などの職業病被災者の場合に、体が非常に健康で元気なときにノーマルに働いておった賃金が、体に障害が出たというので若干賃金が下がりましたね。賃金が下がってたとえば職業病の認定を受けたという場合に、下がった賃金で計算をされる可能性があるのではないか、そういうものには何らかのやはり特別措置を講じて、たとえば健康で働いておった場合の賃金を基礎日額に計算をするとかいうような特別な方法はとれないものだろうかというように思うのですが、その点はどうでしょうか。
○吉本(実)政府委員 労災保険の現金給付は、労働災害によりまして喪失した稼得能力のてん補を行うという趣旨でございますので、可能な限り、療養直前の個々の労働者の賃金水準に準拠すべきだということで、実は、原則といたしましては労働基準法の平均賃金を基礎として算定されているわけでございます。しかしながら、先生御指摘のように、より適正な給付基礎日額の算定をしたらどうかという点でございますが、これにつきましては、一般的な措置といたしましては、五十一年の法改正のときに私傷病によります休業期間は除外して給付基礎日額を算定するよう改善を図ったところでございます。 御質問の振動病の関係でございますが、振動病にかかって稼得能力がすでに低下している期間が平均賃金の算定期間とされていることがございまして、給付基礎日額が著しく低額となる、こういうような事例も承知しております。そういう意味で、稼得能力がより適正に反映するようひとつ検討をさしていただきたいというふうに思います。
○村山(富)委員 検討してもらわなければならぬと思いますけれどもね。たとえば、たしかじん肺の場合には三カ月でなくて六カ月前ですかね、何かの方法をとっておりますね。ですから、そういう方法を講ずるか、事例もあるわけですから、どういう点が障害になってできないのか、どういう方向で検討が加えられておるのか、もしわかれば御答弁いただきたいと思うのです。
○倉橋説明員 先生御指摘の、認定時におきまして本人の稼得実績が十分反映してないというケースにつきましては今後検討してまいる所存でございますが、いろいろ問題がございますのは、いまみたいのケースのまた反面、非常に偶発的な事由によりまして、過去三カ月で稼得能力が非常に上がってきたというようなケースもございまして、それとの均衡等、いろいろ制度的なものにしてまいりますのには、一つの全体の調和、均衡というものを考慮しなくてはならないわけでございまして、そういうものとあわせながら現在検討していることを御了解いただきたいと思います。
○村山(富)委員 そうしますと、それは下がるものもあれば上がるものもあるかもしれませんね。そこで、下がったもの、上がったもの、平均的なその人の稼得能力という判断をする基準をどこでつくるかということが一番問題なわけですね。ここの場合には、私の指摘している場合には、たとえば振動病なんかの場合には症状がはっきりわからぬわけですね。わからぬけれども、本人の体には症状があるわけですから、したがって、健康なときのようには、やはり労働能力が落ちている。そうしますと、落ちた分だけ賃金は減るわけですから、その賃金が減った分で計算をされて、基礎日額で計算をされて給付水準が決められたのでは、それは健康なときの水準とは大分違っているわけですから、そこらはやはり不公平があるから当然早急に検討を加えて改善をすべきではないか。それが高い場合があるからなかなかむずかしいとかなんとかいうふうなことではなくて、現実にそういうやはりでこぼこがあるわけですから、そこらは早急に是正をする必要があるのではないか。それは法律を変えなくたって、やろうと思えばできることだと思いますから、運用の面で十分やはり配慮さしてやっていけるのではないかというように思うのですが、どうですか。
○倉橋説明員 先生の御指摘のように、被災時におきます稼得能力の実態が十分反映されるという趣旨におきまして検討させていただきたいと思っております。
○村山(富)委員 次に、その障害補償給付の受給者あるいは遺族補償給付の受給者、こういう方々には一時金として特別支給金が支給されているわけですね。ところが、休業、傷病のこの補償年金についてはそのような特別支給金が支給されるという規定はないわけです。かねてからじん肺患者やあるいは脊損患者等から、その特別支給金の問題については強い要請があっておることも皆さん御案内のとおりです。これは客観的に検討してみても、やはり当然特別支給金はそういう方々にも支給されていいのではないかというふうに思われるのですけれども、その点はいかがでしょうか。
○吉本(実)政府委員 傷病補償年金につきましては、療養の開始後一年半を経過しても治らないものに対しまして、その廃疾の程度が一定の状態である場合に、休業補償給付にかえまして、その程度に応じて、給付基礎年額の、等級によって決まりますが、六七%から八六%相当の年金が支給されるところでございます。傷病補償年金の受給者の傷病が治癒、症状固定といったときには障害補償年金に移行することになりまして、その場合においてさらに、不幸にしてその傷病が原因で亡くなられるといったような場合には、その遺族に遺族補償給付が支給されるということでございますが、そのいずれの場合につきましても、それぞれ一時金としての特別支給金が支給されることとなっているわけでございます。 したがいまして、現時点におきまして傷病補償年金の受給者に対して一時金の特別支給金を設ける必要性はないと考えますけれども、そういった後の一時金のいわば前払い的な意味におきましても、今後そういった受給者の実情も考えまして慎重に検討してまいりたいというように思います。
○村山(富)委員 これはいまも申しましたように、現実にそういう支給をされておる、障害を受けた方々から強い要請もありますし、やはり現状に対応して、一番困っているところ、あるいはこういう点はこういうふうに是正すればこんなに助かるじゃないかといったような問題はあろうと思うのですね。それはもちろん労災法には労災法の一応の物差しというものがあるわけですから、理念というものがあるわけですから、その理念に反するものを何でもかんでもというわけにはいきませんけれども、しかし、労働することによって災害を受けた、そのことによって健康上に支障があったとか、あるいは亡くなったとかいう原因がこれはもう明確なんですから、したがって、そういう方々の生活の保障なり遺族の生活の保障なり等々にやはり万全の対策をとっていくというのは当然の話でありまして、そういう意味からしますと、私は、この問題についても同じように特別支給金が支給されるような方向を積極的に検討していただきたいということを特に強く要請をいたしておきます。 それからもう一つは、職業性の疾患などの多発によって神経系やあるいは内臓関係の障害が最近増加しておるわけです。外傷の場合には比較的はっきりいたしておりますし、過去の労災法というものは外傷を基準にしてつくられていますから、したがって、神経系統や内臓関係の障害についてはなかなかその障害等級等が現状にそぐわない点が多々あるのではないか。これは以前から障害等級専門委員会等も設けられて検討を加えられておるようでございますけれども、そうした専門委員会等の検討の経過はどうなっておるのか、どういうふうに改定をするつもりなのか、そういう点がもしおわかりになれば御説明をいただきたいと思うのです。
○倉橋説明員 先生いまお話のありました、労働者が被災した場合に障害を残してその症状が固定した、そういう場合につきましては、その残りました障害の程度に応じまして、その労働能力の喪失度に対しまして障害補償給付を行っているわけでございます。その障害の程度、労働能力の喪失の程度に応じまして一級から第十四級までの等級が設けられておりまして、これにつきましては、いま先生御指摘のように、四十二年の二月に障害等級専門家会議を発足させまして、いろいろな角度から検討を加えてきたわけでございます。その報告をいただきまして、精神神経障害なり胸腹部臓器障害につきましては、五十年九月に労災保険法の施行規則の別表第一の障害等級表の一部の改正を行ったところでございます。しかし、まだ残された問題につきましては、引き続き専門家会議で障害等級の全般につきまして検討をしていただくということになっております。御指摘のような神経、内臓器の障害等級の位置づけ、職業との関連性につきましては、障害等級の全般と深い関係があるわけでございますので、私ども引き続き同会議の結論を出していただきまして、その結論によりまして検討してまいりたいと思っております。
○村山(富)委員 いまも申しましたように、最近はむしろ外部疾患よりも神経系統や内臓関係の職業性の疾患の方が多くなってきておる、こういう傾向ですね。その点はどうですか。
○倉橋説明員 障害補償給付の中に、全体的なウエートが広まったというような実態は必ずしも明らかではございませんが、このような障害につきましては、やはりそれなりの対応の必要があるというような情勢にあることは事実でございます。
○村山(富)委員 障害等級が決められていますと、その障害等級に当てはまらない、しかも障害等級に当然入れなければならぬようなものが落ちこぼれておる。この点は、そういう人はやはり救済の対象にならぬことになりますから、ですから、そうしたものは早急に現状を把握し、そして十分現状に対応できるような等級にしていく必要があるのではないかというふうに思って、そういう意味からもこの専門委員会で検討されていると思うのです。時間が経過して、延びれば延びるほど当然救われる者が救われないということにもなりかねませんから、一日も早く結論が出るように、鋭意ひとつ努力してもらいたいというふうに思います。 それから次は、たとえば治療をやっておって、症状が大分軽減をした。そこで、あなたは軽作業ならもう働いてもよろしい、こういうことになりますね。たとえば、振動病の方を例にとりますと、振動病で認定を受けて、治療をやっておった、ところが半年ぐらい治療したら大分症状がよくなったと仮定しますよ。そして、あなたはもう治療は月に三回なら三回、五回なら五回来ればいいです、あとは軽作業でなら働いても結構ですから働いてください、こういうような事例がありますね。それからもう一つは、もう症状が固定した、これ以上治療したって治らない、症状が固定した場合に、固定したその人は、軽労働なら働いてもよろしいというので、そこでもう補償は打ち切られた、こうしますと、やはり生活のためには働かざるを得ないわけです。しかし、体が完全にもとのように健康になったわけではありませんから、もとのような仕事はもうできない。こうなりますと、仕事はなかなかないし、あったって賃金は下がる、こういう現状に置かれる方がこれからうんと出てくるのではないかということが心配されるわけです。 そうした方々の職業のあっせんとか確保とかいった面について、これは林野庁の方にもお尋ねしたいと思うのですが、どういう対策をとられておるか。あるいはいま申しましたように、若干の障害があるためにもとの職場には戻れない、仮にあったって軽作業で賃金が安い、それだけ所得が減っていくわけですから、したがって、そういうものに対して何らかの対策を講ずる必要があるのではないかというように思いますが、この点はいかがでしょうか。
○倉橋説明員 労働災害を受けられまして療養され、症状が軽快ないしは治癒されて、社会に復帰するというような場合につきまして、それらの被災労働者の方々の社会復帰につきましては、私どもやはり労災保険制度の中の重要な課題と認識しておりまして、これにつきましては鋭意取り組んでいるところでございます。具体的には、主要な地方局に社会復帰指導員等を配置いたしまして、きめの細かい、被災者本人ないしは関係団体、関係事業主に対しまして、理解協力が得られるようないろいろな活動を行ってきているところでございます。 なお、振動障害の症状が軽快いたしまして、軽作業かまたはある一定時間なら働けるというような症状になりました場合につきましては、可能な限りもといた事業主の協力を得まして、療養をしながら就労ができるように指導してまいっているところでございます。もちろん振動障害でございますから、チェーンソー等の使用を避けるような職場への配置ということを含めまして、事業主の理解と協力を得ながら適正な職場に復帰するというようなことをお願いしてまいってきておるわけでございます。しかしながら、治癒した場合なり他の作業に転換をしなければならないというような場合で、適当な職が山間僻地でなかなか得られないというような事情にございますが、こういう事情につきましては、労災保険制度のみで対応するということにつきましては、制度のたてまえからなかなかむずかしい問題があるわけでございます。私どもはもちろんのこと、職業安定機関なり林野庁、さらには地元の市町村その他の関係団体と密接な連携をとりながら、それらの方の就労の機会の確保に最善の努力をしていきたいと思っております。
○渡辺説明員 お答え申し上げます。 振動障害になられまして、治療が進み、症状が軽減いたしまして、軽労働に従事できることになったという方々につきましての職場の確保につきましては、林野庁といたしましてもそのような方が林業労働につきましての経験の深い方々でありますことから、基本的には早く職場に復帰していただきたいというようなことで考えておるわけでございます。 そのための方法といたしましては、まず一つは、職場を探すという観点からでございますが、私たち五十五年度から振動障害対策の拡充ということで予算措置を拡充した中に、市町村に振動障害関係につきましての巡回指導員を置いていただきまして、そのような方々が振動障害の予防から始まります万般のことについて御相談にあずかるということの事業を始めることにいたしておるわけでございまして、そのような中で職場の確保等につきましてのお話等が当然あるわけと予想しておりますけれども、そのような巡回指導員がそのような方々の御希望をお聞きいたしまして、市町村当局だとかあるいは森林組合あるいはほかの林業事業体等にそのような希望を伝える等いたしまして、職場の確保に努めてまいりたいと存じておるのが第一点でございます。 また、第二点といたしましては、新たに職場をつくっていくというような観点からのことでございますが、山村の中でございますので、新しい仕事をつくるのは非常に困難であることは当然でございますけれども、われわれは森林業労働者を含めまして担い手の定着、定住ということを林政上の大きな柱といたしておりまして、そのような観点から、同じく五十五年度から森林業構造改善事業というのを十年間にわたって実施することといたしております。その中におきまして、地元の状況に即応いたしまして木工施設であるとかあるいは山菜等の加工施設であるとかといったような施設につきましても、きめ細かくこれを整備してまいりたいというように考えておるわけでございまして、そのような事業を通じまして職場の確保にも努めてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
○村山(富)委員 話は結構ですけれども、ただ現実問題としてはこれだけ雇用が深刻なわけですから、雇う方からすれば、やはり健常者を雇った方がいいわけですからね。だから、健常者を入れる。仕事をしておって、またそこで仮に再発して悪くなった、そうなればまた労災問題が起こるわけですから、したがって若干忌避する、こういう傾向なきにしもあらずですね。こういう雇用の深刻な状況の中で、現実にやはりもうそういうふうに困っている方がたくさんあるわけですし、これからも出てくるわけです。職安とも連携をとって仕事を世話しますとかいろいろ言ってみても、山村僻地が多いので、そういうところでは、いまもお話がありましたように、むしろ都会に仕事を探して行っているわけです。だから、そういう方々が働く職場はほとんどないと言ってもいいのではないかと思いますから、そういう方々の職場の確保についてはもう少し積極的な施策があっていいのではないかと思いますけれども、その点はもう一遍御答弁をいただきたいと思うのです。 それから、市町村に巡回指導員を置くというのですけれども、これは市町村職員として委任をして置くのか、林野庁が置くのか、森林組合が置くのか、どの範囲に置くのか、どうですか。 それからもう一つは、大臣にも御答弁をいただきたいと思うのですが、さっきちょっと触れましたように、たとえば症状がある程度固定している、これ以上治療の必要はない、治療しても治らない、しかし保険給付を行うほどの障害ではない、こういう方がこれから出てくるわけです、打ち切られる方が。打ち切られた場合に症状が固定してあるわけですから、健康な方のようには働けないわけです。したがって、仕事もなかなか探すのはむずかしい。仮にあっても賃金はハンディがあるから大分差がある、こういう方が出てくる可能性があるし、現実にあるわけです。さっきから議論されていますように、これは逸失利益が若干あるわけですから、そういう者に対する何らかの対策を考えていく必要があるのではないかと思いますけれども、その点はいかがでしょうか。
○吉本(実)政府委員 ただいま先生の御指摘のように、なかなか就労の機会の確保はむずかしいわけでございますが、私どもといたしましても、林野庁あるいは関係の機関みんなでこれをそろってやらないとなかなか解決できないと思いますので、そういった方向で懸命に努力してまいりたいと思います。 なお、賃金の問題につきまして、なかなかむずかしい問題であろうかと思いますが、今後研究してまいりたいと思います。
○渡辺説明員 お答え申し上げます。 先ほどお答えいたしました中の五十五年度から新たに行います市町村に巡回指導員を置く置き方でございますけれども、市町村長がその巡回指導員を委嘱する形で市町村に置くことに考えておるわけでございます。
○村山(富)委員 時間がありませんから、余りこれに長く時間をかけるわけにいきませんが、市町村長が委嘱する場合に、委嘱をされた人は市町村の職員になるのですか、身分は何になるのですか。
○渡辺説明員 市町村の職員といいますか、地方公務員になるということではないと思います。
○村山(富)委員 身分はどうなるのですか、宙ぶらりんですか。
○渡辺説明員 要するに、市町村長が指導員として委嘱いたしまして、それに対しまして活動費等の支払いをするわけでございますが、そのような形で置かれる。私たちはその活動費に対しまして助成を市町村に対してする、こういう方法を考えているわけでございます。
○村山(富)委員 それは後でまた詳しく聞かしてもらいたいと思いますが、そういう現状があるわけですし、山村地域で安定して固定した仕事があれば過疎現象も防げるわけです。ですから、総合的な意味でこの種の施策は大変大きな役割りを持っていると思うのです。単に罹災者を救うだけではなくて、全体の山村の振興の一翼を担うわけですから、そういう意味でもう少し具体的な、積極的な施策があっていいのではないかと思いますから、その点も含めて強く要請をいたしておきます。 それから、いわゆる保険給付の中にはボーナスを前提にした特別支給金があるわけです。この特別支給金は昭和五十二年に創設されて以来変わっていないわけです。現在算定基礎額は上限が百万円になっておりますけれども、五十二年当時と現在とを比較した場合に、その上限が百万円で算定の基礎額が決められていることには若干の不合理があるのではないか、もう少し現状に合わして上げる必要があるのではないかと思いますけれども、その点はどうでしょうか。
○小田切説明員 いま先生お話しのように、ボーナスに基礎を置きます特別支給金を五十二年度から出しているわけでございますが、この算定基礎になりますのは、原則的には災害が起こりました直前一年間のボーナスの支払い実績になるわけでございますが、そもそもボーナスの性格は、景気の変動とか企業の業績等によりましてかなり変動性が大きいものであるという点に着目いたしまして、ボーナスの支払い実績そのまますべてを特別支給金の基礎に反映させるのではなしに一定の枠を設けております。金額的には百万円というような枠を設けてやってきているわけでございますが、この上限の枠につきましては、最近のボーナスの支給状況から見まして直ちに引き上げる必要があるとは考えておりませんが、今後の問題といたしましては、賞与すなわちボーナスの支給状態を見まして、その動向を見まして検討してまいる必要があると考えております。
○村山(富)委員 これは五十二年につくられて、五十二年当時と現在とでは賃金も大分変わってきていますし、それぞれの条件が変わってきているわけですから、条件の変化に対応して是正していくというのが当然だと思いますから、これから一層検討していただきたいと思うのです。 次に、質問が飛び飛びになりますけれども、通勤災害です。通勤災害の場合に、私はいま労働省が考えておる通勤災害の物差しでは対応し切れない実態があるのではないかと思うのです。例を挙げますと、たとえば若い労働者が職場から毎日夜間学校に通学している場合に、職場から夜間学校に通って自分の家に帰るというのは一つの通勤コースになっているわけですから、仮に学校に通う途中で事故があった場合も対象にしてもいいのではないかと思いますし、それからまた単身赴任者が休日には必ず家に帰る、休日明けには家から通勤するというようなものも大変あるわけです。そういう休日明けに家から通勤する場合には、その範囲はやはり入れるようなことも考えていいのではないか。あるいは自宅の玄関から工場の門までが通勤範囲になっていますけれども、仮に工場に入って、工場の中で車を運転しておって事故に遭ったという場合には穴場になっているわけです。この工場内で起こった事故についてはいまのところ対象になっておらないわけですけれども、こういう谷間に落ち込んだようなものに対して救済措置を考える必要があるのではないかと思いますが、その点はどうでしょうか。
○倉橋説明員 通勤災害の通勤の範囲でございますが、これにつきましては、先生御承知のように、法律上規定がございまして、「通勤とは、労働者が、就業に関し、住居と就業の場所との間を、合理的な経路及び方法により往復すること」というようなことになっておりまして、かつその間におきまして逸脱、中断がないことが前提になるわけでございます。 いま先生の御指摘になりました夜間学校への通学、企業の就業を終えまして高校、大学へ通うようなその経路、または学校を終えて下宿なり自宅に帰る、その間におきまして災害が起きた場合、それは現在の法制では救えないではないかという御指摘でございますが、逸脱、中断ということにつきまして、やはり就業に関しましての経路でございますので、通学する経路というものを現在の法制上これを読み取るということは非常にむずかしい問題があるわけでございます。 また、家族と別れて企業に勤めている、そういう場合にいわゆる土帰月来というような通勤方式をとった場合、家族の家から出て会社に行くまで、または土曜日に家族のもとへ帰るという途中におきまして事故を起こしたという場合につきましても、現在は「住居と就業の場所との間を、合理的な経路」と言っておりますので、そういうような場合にそれが住居に当たるということは現行の法制上としてはなかなか読みにくいわけでございます。ただ、これらの問題につきましては一般的な勤労者の住居関係と申しますか、居住関係が、その土帰月来ということが一般的になったような場合につきましては住居というような扱いもできるかと思いますが、現行におきましてはなかなかそういうようなのは、むしろ住居として位置づけるのはむずかしいような状況にあるわけでございます。これらの法律上の種々の問題がございますので、非常にむずかしい問題でございますが、さらにこの問題につきましては検討を進めてまいりたいと思います。 また、工場構内における事故、マイカーで出勤して会社の駐車場で事故を起こした。会社の構内には入ったけれども、まだ就業関係に入っていないというような場合につきましては、会社の門までは通勤になるけれども、また会社の就業関係になれば労災の適用があるけれども、構内の駐車場におきましてはエアポケットみたいな形になるというような不合理性があるわけでございます。 こういうような事案につきましては、個々の事案といたしまして私どもそのような事故が業務に起因するというようなことで、できるだけ救うような行政上の態度で臨んでは来ておりますが、法律的に一般的にそういうものを通勤とみなすということにつきましては、先ほど言いましたような問題がございますが、いろいろ先ほど申しました問題を含めまして、これにつきましては労災保険審議会におきましても主として労働者側の委員の御指摘もございますので、鋭意検討させていただきたいと思っております。
○村山(富)委員 ひとつそういう問題も積極的に検討を加えて、可能な限り広く救済の対象を広げていくということは必要だと思いますから、十分検討してもらいたいと思うのです。 それから次に、私傷病か、あるいは業務上の災害か傷病かというような問題で争われているというケースがありますね。業務上の傷病である場合には、これは基準法の十九条で解雇はできないわけです。けれども、なかなか結論が出ない。結論が出ない過程に一方的に経営者の方が私傷病と判断して解雇した。就業規則にあれば就業規則に基づいて解雇した。こういう場合に、解雇された後でこれは業務上の災害であるというんで労災の給付を受けることになった。解雇したことは明らかに誤りではないか、不当ではないか、こういう問題が起こるケースがあるわけです。それに対して基準法の十九条は何ら機能し得ない。行政指導はするかもしれませんけれども、しかし結果的には裁判で争わなければなかなか職場復帰できない、こういうことが起こり得ると思うのです。こういう問題については何らかの検討を加えていく必要があるんではないかということが一つです。 それからもう一つは、労災の審査会がなかなか件数も多いし、事務が停滞して迅速に結論が出ないというところにも原因があるわけですから、いま申請をしてどの程度の期間かかるか知りませんけれども、相当の期間を要するんではないか。その期間が長引くためにえてしてそんな問題も起こりがちですから、したがって、一方では労災の認定の作業の迅速化を図っていくということも必要だと思いますから、そういう点はどういうふうに考えておるかということがもう一つの問題です。 それからもう一つは、出かせぎ労働者の場合は、たとえば同じ職場の中に飯場がある、あるいは寄宿舎がある、寮がある。こういった場合に同じ作業場の中に設けられておる寄宿舎や寮で私傷病が起こった。こういう場合に、経営者がこれは業務上でないと一方的に判断をして何らの届け出もせずに葬ってしまう。そのために労働者は泣き寝入りする、家族は泣き寝入りする、こういうことだってあり得るわけです。そういう場合に、もう少し後で届け出をして、そしてこれは誤りだったということのないようにするためには届け出制といったものも考えておく必要があるんじゃないかと思いますが、その三点について、時間がございませんから、簡単に答弁願います。
○倉橋説明員 第一点の、私傷病か業務上かわからないような事態で解雇されるようなことにつきまして、解雇した時点で基準法十九条違反になるということの判断につきましては、非常にむずかしい問題でございます。 〔委員長退席、越智(伊)委員長代理着席〕 私ども、もちろんそういうようなケースにつきまして、後ほど業務上であるというようなことが明らかになれば、使用者に対しまして本人の職場復帰等につきましてはできるだけ復帰するような行政指導をしてまいりたいと思います。ただ、監督機関は、御承知のように、公的な機関でございまして、民事上の効力についてまで最終的に判断し、それを解決するという権限まで持ち合わせておりませんので、その点につきましては最終的に民事裁判にゆだねざるを得ないわけでございますが、実情に即しまして指導等に努めてまいりたいと思っております。 それから、審査請求等が非常に長期化するということでございますが、私ども審査請求事案につきましては、できるだけ早期の解決処理を図ってきているわけでございます。最近につきましても相当処理案件を消化しておりますが、なかなか複雑な事案が多く請求に出されておりまして、問題の解決に時間を要しておる実態でございますが、できるだけこれの時間短縮を図りまして労働者の保護をより迅速に図っていきたいと思っております。そのためのいろいろ内部的な事務処理体制というものをいま整備をしておるところでございます。 最後に、職場に起居する、主として出かせぎ労働者のような方が、たとえば脳溢血で死亡される場合に、業務上であるかないかわからないままうやむやの中に処理されてしまう。後ほど考えれば、もしかそれは業務上でないかという御遺族の方の配慮も出るわけでございます。私ども、建設業の付属寄宿舎に起居いたします労働者の方々に対しましては、使用者がその施設の管理に伴いまして、健康が害され、安全が損なわれるということがあってはなりませんから、使用者に管理上の責任があることを、監督指導等におきまして強く指導しているところでございます。御指摘のような事案につきましては、そういうような監督指導におきまして、飯場におきまして出かせぎ労働者の方が亡くなられておるようなケースが起きたような場合につきましてはできるだけ監督署に届け出て、その中の業務上であるかどうかというようなことを含めまして相談をするように指導してまいりたいと思っております。
○村山(富)委員 これはさっきの基準法十九条の関連とかいう問題は、指導だけではなかなかできないところがあるわけです。そこで、十九条が何らかの形で機能するような制度的なものを考える必要があるのではないかというように思いますから、これはいま答弁要りませんから、検討してくださいよ。 それから、出かせぎ者の問題なんかにつきましても、後で本人が労災の申請をして、そして業務上になったというような場合だってあるわけですから、したがって、いろいろなケースが考えられると思うのです。えてして、いろいろなケースが考えられるけれども、現状からしてやはり泣き寝入りになっておる被災者が多いのではないかと思いますから、そういった面で、やはり制度的に何らかの方法を考えていく必要があるのではないか。これは指導するといったってなかなか指導は徹底しませんし、そう全部にわたって行き届くものじゃありませんから、そう指導しなくたって制度上しなければならぬことはしなければならぬわけですから、やはりそういう点を加えて検討する必要があるのではないかということを強く要請をいたしておきます。 それからいま一つは、林野庁見えていますから、さっきの振動病の問題なんかに返るのですけれども、労働省がチェーンソーなどの使用方法について規制をしていますね。そして、その規制の通達が行くわけですよ。行きますけれども、私どもが現地で聞いてみますと、受けた業者がこう言うのです。通達はもらっています、だけれども、こんな通達を守っておったのでは仕事になりません、採算に合いませんと、極端に言えば。だから、これはもう一方的に無視されておるということです。そこで、やはり起こってくる可能性があるわけですね。これは私は現実に現場に行って請負業者から聞いたのです。そういう事態もありますから、いろいろな問題があると思うのです。いろいろな問題がありますけれども、やはりチェーンソーなんかはきちっと規定を守って、そして障害者が出ないようにするのが当然の話です。 そこで、労災の労働条件等の問題に関しては労働省が指導に当たる、請負契約等につきましては林野庁がするわけでしょう。ですから、両方それぞれ分担と任務があると思うのです。その方は労働省だから、こういうかっこうでなくて、それは現場に行ってまいりますと、たとえば監督署があったって、そう奥の山まで少ない監督官が常時指導に行くとか点検に行くとかいうようなことができるわけじゃないのですから、やはり山の監督指導は林野庁の方がやれるわけです。したがって、通達が守られておるかどうかというような問題については、これは自分のところの所管ではないというのではなくて、やはり林野庁が十分監督指導をして、実態があればそれを監督署に報告する、連絡する。監督署はその報告に基づいてたとえば勧告するといったような仕組みを、行政の間同士でしっかりとつくっておく必要があるのではないか。そうでなければなかなか効果の上がるようなことにならぬのではないかというふうに思いますから、その点はどういうふうに考えているか、お尋ねいたします。
○田中説明員 ただいま先生のお話にありましたような方法、そういうことが十分私含まれておるというふうに考えておりますけれども、これまでも労働基準監督署と営林局署の間におきましては緊密な連絡をとりながら、この種問題の防止に取り組んだところでございますが、やはりまだ十分でないというふうな各方面からのお話もあるわけでございます。今後はさらに私どもも、たとえて申しますと、事業開始時点での計画書を徴するとか、あるいは進行途上におきましては、その進行状況の報告をとるとか、またその際に発見いたしました問題等につきましてはまた労働基準監督局署にも御連絡をし、御相談をする。だんだんそういうふうな連絡の中身を濃くいたしまして、いま先生お話がありましたように、私どもの方が自分の職場の中で請負が行われているわけでございまして、りっぱな仕事をするための指導監督も当然私どもするわけでございます。そういうところで必要な情報等もまた得られるわけでございまして、根本的なこの種事案の防止のために、さらに労働省とも御連絡いたしまして、実効の上がる方法を追求、検討してまいりたいと思っております。
○村山(富)委員 そういうことでなくて、いま私が申しましたように、たとえば現場でそういう通達等が守られているかどうかということについては、監督署の監督官が一々山を歩いて点検するわけにいかぬのですから、したがって林野庁がその点は十分やりますと、もし間違いがあれば監督署に連絡しますと、そして、連絡を受けて監督署が必要があれば勧告するとかあるいは点検に行くとかいうようなことをしてもらうということぐらいまで徹底をしてお互いにしないと、なかなかやはりうまくいかぬのではないかというふうに思いますから、その辺はできますか、できませんかと聞いているわけです。
○田中説明員 私どもも現在国有林の経営改善に努めておりまして、その中ではいろいろ、定員内外ともに、一口に申しますと減量と申しますか、厳しい減量経営を目指しましていろいろ苦労をしておるところでございますが、もちろん本来的な業務がまた大変忙しいわけでございまして、とは申しましても私どもの国有林の中で行われる仕事でありまして、その契約の条項の中にはそういう労働安全に関する諸法規、諸通達を守るということを一項入れてございますので、そういう契約条項を守らせるという、そのための指導をするということで私どもも現場に出向くわけでございます。その際いろいろ得られました資料、情報等につきましては、基準監督署の御指導もいただきながら、是正すべきものについては是正をする、また、私どもが内部的に処置をとるべきものにつきましてはそれなりの処置をとるということで、緊密な連絡のもとにやっていきたいというふうに考えております。
○村山(富)委員 連絡をするようなことができますか、できませんかと言っているわけです。それだけ言えばいいんですよ、何も人員が少ないからどうのこうの言うんじゃなく。そんならできませんということじゃないか。どっちですか、それは。できるか、できぬかだけ言えばいいんだよ。
○田中説明員 私は、できませんとは申し上げておりません。そういうふうに常時連絡協議の場がございますので、そういうのを利用いたしまして実効が上がるようにいたしたいというふうに申し上げておるわけでございます。
○村山(富)委員 何遍も言いますけれども、監督署はなかなか現場の指導監督はできない。むしろ、現場にはやはり林野庁の方が主としておるわけですから、しかも契約の中にそういうものも入っているわけですから、したがって、契約が履行されているかどうかということは林野庁の方が的確につかめるわけですから、したがって、もしそういう条項に違反するようなことがあれば監督署に連絡するということぐらいはできるでしょう。それはできぬですか。
○田中説明員 そういうふうな実情がございましたら連絡をいたしたいと思っております。
○村山(富)委員 キャッチボールでボールの投げ合いをするのではなくて、投げ合いしておったのではなかなか解決しませんから、したがって、連携をとってやるんならその程度のことはやはりきちんとしてもらうということが必要ではないかというふうに言っているわけですから、それはひとつやってくださいよ。 それから、次にメリット制の問題について若干お尋ねしたいのですけれども、メリット制はそれなりにやはりその役割りと効果を持っていると思うのです。だけれども、逆の意味からしますと、これはやはり労災隠しになる可能性があるんですね。現に私は資料を持っていますけれども、建設現場等の請負関係では、下請から孫請から、あるいは一人雇われた大工や労働者等が、いまのような仕事が少ないときには弱い立場にありますね。それだけに、上から言われるともうそのまま言われたとおりにしてしまうというので、労災隠しが行われるのではないかという傾向があると思いますし、私は事実これだけの資料を持っているわけですから、一々指摘はしませんけれども。したがって、そういうふうに作用をしますと、メリット制というものはきわめて悪い結果になっていくわけですね。そういう点についてはどういう指導を具体的にやっていますか。どういうふうに考えていますか。
○吉本(実)政府委員 メリット制につきましては、御説のように、災害防止に努力した結果、災害が軽減もしくはゼロになったことによって収支率が良好な企業に対しましては保険料額を引き下げたり、あるいは逆に災害が多くて収支率が悪い企業につきましては保険料を徴収する、こんなことで企業の災害防止意欲を喚起する、こういうことを目的としているわけでございます。今回のメリットを拡大するということも、そういった個々の企業の災害防止意欲をより喚起する、こういうことにおきましてその防止結果を一層保険料に反映させる、こういうふうに考えてやっておるわけでございます。ただいま御指摘のように災害を隠すというようなことは、私どもとしましては、あってはならないことでございますし、また労災保険法の趣旨等が広く理解され、また労働者の権利意識も高揚している、こういうような実情を見れば、決してそれほどのことではないんではないかというふうに思っておる次第でございますが、いずれにいたしましても、安全衛生法を中心としまして災害の防止措置並びにそれに対する措置もきちっとしていこう、こういうことでございますので、あってはならない労災隠しにつきましてはなお一層こういった事態の起こらないようにやってまいりたいというふうに思います。
○村山(富)委員 起こらないようにしければならぬけれども、現実に起こっている事実もあるわけですからね。ですから、私はやはりこのメリット制というものが、もろ刃の剣で両方に作用していく、非常にいい面に作用する面もあるけれども、しかしいま言ったような悪い面に作用することもある、これは現実にあるわけです。したがって、そういう点はもう少し的確に現状を把握して適切な指導がなされるようにしていく必要があるのではないかと思うのです、もう時間が参りましたから言いませんけれども。 そこで最後に、いままでずっと冒頭に申し上げましたように、現在の労災保険制度あるいは改正案の中身等々を検討してみましても、まだまだ労働者に対する給付はきわめて不十分だというように私は思うのです。こういう不十分な状況がある中に、最高裁の判決があるにもかかわらずわざわざ調整規定を用いて、そして民事で損害賠償の給付があった場合に労災の年金給付はその分だけ支給しないといったようなことを取り込んでいくというのは、現状から考えて、これは理論的にはいろいろあるかもしれませんよ、さっきから議論しましたように、あるかもしれませんけれども、現状から考えて私はやはりきわめて妥当性を欠くのではないかと思うのです。今度の法律の改正が労災保険法の抜本的な改正を図っていくという時期なら十分議論もし、検討する必要もあると思いますけれども、単なる一部的な給付の改善をするというだけの改正の際に、こんな基本的な問題を持ち込んできてやる必要が一体どこにあるのか。むしろ基本的な抜本改革をするというなら、総合的に全部の給付条件を洗い出して、そして全体として現状に対応できるようなものに変えていくということを含めて議論をしていくなら、もっと検討の余地があるかもしれませんけれども、しかし、そうした面に大変欠落する部分があるにもかかわらず、この部分だけ取り上げて、そして調整規定を持ち込んでいこうという考え方については私は断じて承服できません。 そこで、そうした現状全部を含んで、ひとつ大臣の考え方を最後に承って、私の質問を終わりたいと思うのです。
○藤波国務大臣 具体的に非常にきめの細かい御指摘をたくさんにちょうだいをいたしまして感謝をいたしております。それぞれ今回の改正で取り組んでおるところもございますし、なおもっと労働者のために解釈を拡大をするとか、あるいは運用の面で、もっときめ細かく配慮しなければならないことでありますとか、あるいは他の省庁とももっと連絡をとらなければならないことでありますとか、いろいろ今後行政指導とか法の運用の解釈とか、さらに予算の執行等で考えていくこととか、たくさんに御指摘をいただいたわけでございます。それぞれ御指摘をちょうだいをしたこと等につきましては、今後御趣旨に沿ってできる限り努力をしてまいりたいと思いますし、また、法の改正を必要とする部分につきましては、引き続き審議会のいろいろな御議論もいただいておりますので、今後の改善の課題として継続的に検討を進めさせていただきたい、このように考えておる次第でございます。 ただ、いまお話がございました今回の改正の中で特に調整の規定等を持ち込んできたこと、タイミングとして不適切ではないか、あるいはもっと検討を重ねるべきではないかという御指摘でございますが、これはやはり法律上の問題あるいは他の仕組みとの整合性等を考えまして、改正する最初のこの機会にどうしても改正をすべきである、こういうふうな形で取り組ませていただいたものでございまして、決して使用者側に有利に展開をするように考えましたり、あるいはせっかくある既得権をこの際に労働省が意図的に何か労働者の権利を剥奪するのではないかといったような考えで御心配をいただく向きがございますけれども、決してそんな意図的に取り組んだものではありませんで、最初の機会に、法の整合性としてぜひ改正すべきである、こういう各方面の御指摘もあり、かつ審議会の御答申、建議もちょうだいをいたしましたので、こういった改正点をそれぞれ盛り込んで法の改正をお願いをし、御審議を煩わしておるような次第でございますので、改善すべきところは今後御趣旨に沿って改善をするようにさらに努力をいたしたいと思いますが、今回の改正の各条項につきましては、どうか深い御理解を賜りますようにお願いを申し上げる次第でございます。
○村山(富)委員 労働者に不利にこれを扱うというのではないというお話がありましたけれども、しかし現実には最高裁の判決があって、その判決に基づいてもらっているわけですから、もらっている分がもらえなくなるのですから、これはどこから考えたって現実にはやはり後退になるのです。その点は強く指摘をしておきまして、私の質問を終わります。
○越智(伊)委員長代理 次に、平石磨作太郎君。
○平石委員 いまの大臣のお答えをお聞きしまして、今回の法改正に民事賠償との調整の問題、いまの大臣のお言葉の中にございましたが、被災労働者の権利を剥奪するものでもなし、使用者に対する利益になるものでもなし、他の法との整合性を持った、しかも答申に基づいて云々というお言葉をお聞きしました。 私、考えてみまして、このことは、せんだっての委員会でわが党の谷口議員が質問をいたしましたので、この点は質問をする予定ではございませんでした。だが、いまのお言葉を聞いてどうも納得がいかない、そのためにちょっと触れさせていただきます。 いまお話にありましたように、労働者のいわゆる被災に対する民事賠償責任がいままで別途行われておったことが、調整規定によってこれができなくなるという一つの不利の点があるということ。もう一つ、使用者側の問題を考えてみますと、この保険制度そのものは、先ほどの答弁でたびたびお聞きしましたように、いわゆる無過失賠償責任が根底にあって、そしてその責任を危険分散的に果たしていこうという一つの制度である、しかも保険給付というこの給付は、たとえ不可抗力であったとしてもこれに対して保険給付が行われる、これは労働者にとってはまことにいわば救済についての完備した一つの行き方だ、こう理解ができるわけです。ところが、同じく故意過失の責任あり、安全教育は一生懸命やった、安全施設もやった、そういう使用者が、たまたま事故が起きたときに保険会計から給付が行われることは当然だが、もう一つ、使用者が安全教育もろくにしない、施設もろくにしてない、そして民事責任がそこに生じたという場合に、やはり同じくこの会計から出していく。そうしますと、私は、そういうように安全教育を行い、労働基準法に示されたとおりのことをしている、そういう業者と、一方では基準法の違反まで犯すような業者とを同列に置いて、給付で救済をして、民事責任の方は一方でなくなるということになれば、その業者同士そこに大きな格差が出てくる。したがって、安全教育をやる方は、安全施設を行うことは余りしなくてもいいじゃないかという風潮が生まれやしないかという懸念が出てくる。したがって、使用者側に有利になるでもありませんがという大臣のお答えは、使用者の中でそういった責任が追及せられる者が有利になる、私はこう判断をするわけです。ここはどうしますか。
○藤波国務大臣 私が先ほど申し上げましたのは、使用者側に有利になることを意図したり、あるいは労働者が持っておりますと言われる権利を剥奪しようということを意図したりという法改正ではありません、こういうふうに申し上げたわけでありまして、純粋に法理論的に考えまして整合性を持たせるためにこの際法改正をお願いするということでありますが、法律的にと申し上げますところの意味を責任者から御答弁申し上げますので、少しお聞き取りをいただきたいと思います。
○倉橋説明員 今回の調整措置につきましては、使用者に故意等の責任がある場合に民事賠償請求を制限するというようなものでは毛頭ございませんで、本来民事賠償で補てんされるべき損失と、その中に含まれております労災保険制度によりまして補てんいたします損害部分とが重複する部分があるわけでございます。その重複する部分を調整するということでございまして、それ以外、労災保険で補てんする部分を超える部分につきましては、当然使用者に賠償責任があるわけでございますし、今後ともそれは従来と変わらず残るわけでございます。 そういうようなことで、さらに今後は最高裁の趣旨を体しまして、将来年金で補てんするということを制度的に確立した補てん部分につきましても、請求者から民事賠償を求めるというような場合につきましては、裁判所におきまして、年金が出るからということを前提としないで将来分を含めての損害をすべて賠償させるという点におきましては、個別の使用者については責任がより深まると申しますか、負担額がふえるというような形になるわけでございます。 そういうことで、私ども、今回につきましては、先ほど大臣が言いましたように、使用者を利するという意図は毛頭ございませんし、結果におきましても、個別使用者の負担は多くなることはあっても軽減されるというようなことはないと理解しております。
○平石委員 私の言葉にちょっと舌足らずの点がございました。余分のものについては当然できるのですよ。だから、それは制限は加えておりませんし、また、いわゆる精神的な面やら慰謝料の面、こういった面は当然労災法の適用外の問題ですから、これは当然のこととして、労災保険会計から出る分について、労災保険の方から支給があった。ほかのことはのけて、労災保険対象の中で労災保険で支給をした。一方で民事賠償の責任が生じた。その労災保険でもらっておる分については、当該使用者はそこを控除して余分に出していく。だから、いわば保険会計の中でそういった業者に対して立てかえをしてしまっておる。責任分野について、果たすべき責任のものをかわりに支払った、保険支給の責任分野の範囲において業者を助けた、こうなるわけです。この分をどうするかという問題です。そうすると、その分については、いわゆる安全教育をしなかったような業者が有利になる、他の業者と比較したときに有利になる、ここの点です。
○倉橋説明員 事業主に過失等の責任が非常に重大にあった場合に労災保険給付が行われるということの不合理性につきましての御質問かと思いますが、労働基準法を含めまして労災補償につきましては、労災補償が行われればその限りにおきまして民事賠償は免れるというような基準法のたてまえになっております。さらに、その基準法で定めます労災補償責任を保険の形式において行うものが労災保険であります。したがいまして、労災保険におきましては、使用者の過失の有無にかかわらず保険をするというシステムにでき上がっておるわけでございます。そこで、使用者に責任がある、先ほど先生の御指摘のような安全配慮義務を十分尽くさなかったために事故が発生したという場合につきましては、保険給付で補てんする部分につきましてはやはり労働者に対して給付をするということにせざるを得ないかと思います。しかしながら、また別途の観点から、そのような事故を起こしたという使用者は保険財政に相当の影響を与えているということがございますので、労災保険法の二十五条におきまして「事業主が故意又は重大な過失により生じさせた業務災害の原因である事故」につきましては、使用者に対しましてその費用の全部または一部を徴収することができるという規定を置いております。そういうことによりまして、保険はするけれども、非常に重大な事故を生ぜしめた使用者につきましては費用の徴収ができるというふうな法制度にいたしているわけでございます。
○平石委員 いま、いわゆる故意過失があろうとなかろうとということで、これは当然のことですが、故意責任を忘れることはできません。だから、無過失であるとしましても、故意責任あるいは過失責任というものを忘れてしまうわけにはまいりません。無過失であったものと故意過失のあったものとの格差を、いまのお答えでは、二十五条のいわゆる費用徴収という形で、保険会計から出た分は費用徴収いたします、こういうお言葉です。だが、私がこの条文を見たときに、費用徴収ということについては一つも責任思想がないのです。費用としていただきます。しかも、この費用としていただくということは、いまのお答えにありましたように、徴収することができるということです。やろうとやるまいと、労働省の判断でできることです、保険会計の判断でできることです。せっかくこのようにつくるのであるならば、そういったようなものは求償権として——保険会計から立てかえて出したから、過失責任、故意責任といったようなものについてはペナルティー的に、保険会計のうるさい時期にあなたのやらねばならぬ分を出したのだから、求償権で取りますぞ、ここまでいかねば不十分ではないかと私は思うのです。費用微収することができる、これだけでは十分に対応することができないし、責任意識がない。したがって、今回のここの点については、やはり将来求償権として取り戻すぞというぐらいに、そういった業者については法的整備をする必要があると思うのです。 どうですか、ひとつ大臣お答えいただきたい。
○倉橋説明員 先生の御指摘は非常によくわかるわけでございますが、四十年以前の労災法におきましては、先生御指摘のような事案につきましてはむしろ給付を行わない、そういうことに保険上いたしておりまして、使用者が労働基準法によりまして補償義務を直接行う、その補償義務は罰則によって担保しているというような法制度であったわけでございます。しかしながら、やはり使用者の中には悪質であると同時に資力のない者もございまして、それを徹底いたしますとかえって労働者が何も得ることができないというようなことがございまして、現在の法制のように、使用者に重大な過失があろうとも保険としては給付をするというようなことにし、そういうような事業主に対しては費用微収というような形で費用を取るように改めたわけでございます。いろいろの先生の御指摘につきましては、労災保険制度の保険の内容にかかわる、根幹に触れる重大な問題でございます。諸外国の立法例を私の知る限り見てまいりましても、やはり労災保険としてはそういう部分につきましても補償しているのが一般的でございます。そういうことから考えますと、直ちにいま結論を出すわけにまいりませんが、いろいろな保険制度の今後のあり方等の中におきましては十分先生の御意見等につきましても考えてまいりたいと思っております。しかしながら、現行につきましては、いろいろ労働者の保護との均衡等を考えますと現行制度によるということにならざるを得ないのではないかと思いますので、その点を御了解いただきたいと思います。
○平石委員 それで了解いたします。無過失責任賠償までやっておるのですから、私はその点はどうのこうの言うつもりはないのですから、私の言う趣旨がわかったなら、将来に備えて、ひとつお願いをしたいと思います。 それでは、時間がございませんから、次へ進ませていただきます。次に、近ごろの農作業は機械化農業ということで、田舎の山の小さな小道でも耕運機を運転して、機械農業ということがほとんど行き渡ってしまいました。したがって、従来と違って農作業中に大変な災害が出ております。特に老齢化ということも加わりまして、また機械になれていないということもあり、女の人がそういった農機具を操作するといったようなことから、農作業事故が非常にふえております。 この実態というものは、農林省お見えいただいておると思いますが、どのような状況であるか、簡単で結構ですが、ひとつお答えをいただきたい。
○松居説明員 お答えいたします。 農作業中の事故の発生状況につきましては、農林水産省で実施しております農作業事故の実態調査によりますと、まず死亡事故でございますが、全国で五十二年は三百七十一人ということになっておりまして、四十九年の四百四十五人をピークにしてその後減少傾向にございます。それから、傷害事故でございますが、いわゆる農業機械、施設による事故では、チェーンにはさまれる事故あるいはロータリーのつめ等鋭利なものによる事故が多く、農業機械、施設以外の事故では転落事故、転倒事故が多くなっております。 なお、農作業事故の内訳でございますが、死亡者につきましては全数調査を目的とした死亡個票調査、これは人口動態調査の個票から洗っているわけでございますが、農業機械、施設による事故は全体の農作業事故の大体六二%というものを占めておるわけでございますが、これには交通事故によるものも含まれております。そういうことから、いわゆる農業機械、施設による農作業事故というのは、大体死亡事故の四〇%ということになるわけでございます。 それで、農業機械、施設による事故、機種別にこれを見ますと、トラクター、いわゆる乗用型のトラクターあるいは歩行型のトラクター、トレーラー等によるものがその大半を占めております。それから、傷害事故でございますが、これにつきましてはいわゆる全国から標本集落をとりまして、その標本集落の中の全数調査をやっておるわけでございますが、いわゆる農作業中の事故の八〇%が機械、施設によるもので占められているということでございます。
○平石委員 いまの御答弁でも実態が明らかにされましたが、四十八年から五十二年までに二千四十九人の農作業中の死亡事故がございます。負傷のところを見てみますと、やはり負傷も、いま二百五十分の一会々とおっしゃいましたが、これを推計いたしますと大体五万九千人ぐらいの事故が起きておる、こういう実態が一応あるわけです。 そこで、労働省にお伺いをいたしますが、四十年に労災保険法の一部改正によって農作業に伴う事故に労災適用ができるように門戸が開かれたわけでございますが、これにどのくらい加入しておられるのか、簡単に、数字だけで結構ですからお願いします。
○原説明員 指定農業機械関係の特別加入の加入者数は五十三年度末現在で五万八千六百七十八名になっております。四十年にこの制度が発足いたしましてから次第に増加をして、現在そのような加入者数になっております。
○平石委員 そこで、いまお答えになった五万八千人入っておられる中で、負傷あるいは死亡された方でこれの適用者がどのくらいおりますか。
○原説明員 労災保険で特別加入者について給付をいたしておりますが、この農業機械関係の災害発生状況については、件数的にはデータ処理をいたしておりませんでして、給付実績、金額の方だけで現在把握をいたしておるところでございます。将来問題としましては、件数までコンピューター処理の関係の中へ入れていきたいと考えております。 給付実績で現在のところを見てみますと、五十三年度におきましては、年金関係を除く短期給付の給付金額が一年間で三億七千九百万円になっております。前年の五十二年はこれより少なくて二億四千万円程度でございます。したがって、金額的には五十二年から五十三年に相当のアップをしておりますが、この間に医療費等の改定がございましたから、これがすべて件数の増加とは見られないと思いますが、件数もふえているものかと思います。
○平石委員 そこで、高知県の場合、そういう適用者がおりますか。そういう事故が起きておりますか。
○原説明員 この指定農業機械の加入につきましては地域的な差が若干ございまして、現在のところ、高知県においては特別加入者が全然見られないという実情にございます。ただ、最近の情報でございますが、高知県の農業協同組合中央会の指導に基づきまして、特別加入者の団体が結成され、特別加入の申請がなされたという情報を把握しております。
○平石委員 高知県における事故実態を農林省にお願いします。
○松居説明員 特に高知県だけの事故実態についてはきょう資料を持ってまいっておりません。全国につきましては先ほどお答えしたとおりでございますが、特に高知県だけ取り出しましては持ってきておりません。
○平石委員 なぜこういうことを私がお聞きしたかといいますと、高知県の実態を申し上げますれば、五十三年一年で五十六件ございます。実態としてはこれだけいわゆる農作業の事故が発生しておるわけです。それで、いま労働省にお答えいただいたように、この労災保険に加入した者は一名もおらぬわけです。だから、これで全国を類推いたしますと、いま全国の数字が出てまいりましたが、私はそれが実態でないかと思うのです。農作業というものが機械化されて大変な数字の事故が生まれておるにかかわらず、この労働保険に入れない。いまお答えにもありましたように、機械を指定をして加入さす、あるいは団体をつくって加入さす、農作業についての指定をして加入さす、こういったような加入の仕方にしてあるから入れないのです。だから、門戸が狭いわけです。四十年からざっと十五年たっておりますけれども、このような状態を考えたときに、この保険法でもっと門戸を開く必要があると思う。そういう用意がありましょうかどうか、お答えをいただきたい。
○倉橋説明員 農業の特別加入を含めまして、いわゆる自営業者の方々の労災への加入でございますが、現在労災保険の中に特則といたしまして特別加入制度を設けているわけでございます。この設けている趣旨と申しますのは、それらの自営業者の方の労働の実態が労働者に近い、さらにはそれに携わっている業務そのものが非常に災害頻度が高い、そのために労働者と同じように保護することが適当であるという方につきまして、労災制度の仕組みを利用して保険をしているわけでございます。 先生御承知のように、労災保険制度につきましては使用者の安全配慮義務、そういう義務に支えられまして、使用者の補償責任を保険をする。したがいまして、あくまでも労働者と使用者の使用従属関係をもとにして仕組まれているわけでございます。したがって、その負担は使用者全額負担ということになっております。そういうことから自営業者の方が労災保険の制度に本来的に加入するというのは制度のたてまえからなかなかむずかしい問題でございますが、先ほどのような実態から見まして、特別加入制度をつくっているわけでございます。 いまの先生の御指摘のように、個々の農民の方が加入をするというような方式も考えられないことはないわけでございますが、やはり主体的には使用従属関係のもとにあります労働者そのものの保険でございますので、私どもの主体的能力の範囲または仕組みというものはやはり労働者を中心としたものにならざるを得ないわけでございまして、個々の農民の方を加入対象として個々に手続等をしていただきますと、事務的にも非常に膨大なものになりまして、本来の労災保険制度の運営がなかなかむずかしくなるというようなこと等がございまして、手続面につきましては団体加入の手続等によって処理をしていただくというのが実情に即しているのではないかと思うわけでございます。
○平石委員 いまのような法そのもののあり方から考えたときに、あるいは異質的なものかもわかりません。したがって、これの大幅加入といったような門戸開放については、そういう制限がおのずから出てくることは承知いたしております。だが、いまの実態というものを申し上げたように、災害がふえておる、これは後遺症患者もたくさんおるわけです。指が切れて飛んだ、腕が飛んだ、あるいは転落によって死亡した、こういったものが一方にたくさん出ておるわけですが、そういう実態を見たときに、いまのお言葉にありましたけれども、やはり何らかの方策を考えなければいかぬじゃないか。このままにしておきますと、使用従属関係ということは基本ではありますけれども、そこに何か団体をつくらすとかいったような形において門戸を開く、あるいは雇用者として年間約百日以上を雇用する農業者でなければならない、雇用百日以上も雇うといったような大規模の農業というのは日本には数えるしかないと私は思う。そうすると実態に合っていないのです。だから、いまの日本の農業の実態に合ったことを知恵をしぼっていただきたい。 それから、農林省は、私申し上げておきたいのですが、四十六年以降ずっと農業実態調査、いわゆる事故調査をやっております。ただ件数が何件ありました、死者が何人ありました、そして後遺症までは調べておりませんけれども、そういう数字把握に終わっておる。私は農林省も怠慢でないかと思う、そういう実態があるにかかわらず。 したがって、農林大臣にこのことについて昭和四十五年に答申が出ております。この答申を見ましても、労災保険の門戸を開いて何とか早くこれに対しての対策を立てねばならぬということが、四十五年に倉石農林大臣に対して農業機械化審議会会長から答申が出ておるわけです。四十五年に答申は、「農業機械作業に従事する農業者の災害補償制度に関しては、労働者災害補償保険法の改正により、昭和四十年十一月から農業事業主とともに特定農作業従事者に対しても労災保険に加入する途が開かれてきているが、」制度の周知徹底が十分行われていない。それから「農作業における事故実態のは握につとめ、農作業の安全および農業機械の安全性の向上についての指導を強化することとあわせて、同法の周知をはかることにより、労災保険加入を促進するよう配慮すべきであろう。」このように答申がなされておるのです。 したがって、農林省は労働省にそういったことで話し合いを自後持ってきましたかどうか、お答えをいただきたい。
○松居説明員 先生御指摘のように、昭和四十五年十二月十四日、農業機械化審議会から、いわゆる農業者を対象とした独自の補償制度の創設ということについての答申がなされたわけでございます。従来からそれを受けまして農業団体といろいろ検討してきたところでございますが、農業者の場合、就農の実態が一律でないため全員を強制加入させることは非常にむずかしいということ、それから、さればといって任意加入による小人数の保険では料金と補償内容の点で労災保険より魅力ある制度が期待できないということ、さらには家計と経営とが判然と区分しがたいというようなことで、農作業中であるか否かという認定技術上の問題が多いというような大きな難点がございまして、新制度の創設はきわめて困難であるということでございます。 そういうことでございまして、その後特別この問題について労働省さんの方に御相談はせず、むしろ農作業事故の未然防止に努めるいわゆる安全対策をやるほか、万一の事故に遭遇した場合には農業共済の活用を図りながら労災保険への加入の促進ということに努めてまいっておる次第でございます。
○平石委員 労働省にお伺いいたします。 労働省は、現行の加入制度の中で機械の指定をしてございます。いま機械がいろいろ変わって新しく進歩もしておりますが、また非常に危険度の高い機械も出てまいりました。そういうことからこの機械の拡大についてお考えがあるかどうか、そのことをお答えいただきたい。
○吉本(実)政府委員 ただいま御指摘の指定の農業機械の範囲の拡大につきましては、本年四月一日から農業機械の開発状況あるいは農業機械による農作業中の労働災害発生状況、こういったものを勘案いたしまして五種類の機械について追加をいたしたわけでございます。動力剪定機、動力勢枝機、チェーンソー、単軌条式運搬機、コンベヤー、この五つのものを追加指定したということでございます。
○平石委員 そのようになるべく拡大するように現行法の中ではやっていただきたいということと、今後ひとつお考えをいただきたいということであります。 それから、これもお聞きしようと思いましたが、時間がございませんから申し上げますが、市町村が結局自衛手段として、労働保険法が余りにも実態に合わないから、全国で二十三カ所、二十数カ町村がみずから農業者労働災害共済制度というのをつくっておるわけです。それによるいわゆる医療費あるいは休業補償、障害、死亡等の一時金とかあるいは葬祭料とかいったような制度が、自己防衛するという立場で全国に拡大されていっておるわけです。こういう実態等を考えたときに、農林省も労働省も今後ひとつ緊密に連携をとっていただいて、この保険制度に加入され、被災者が十分報われるように御配慮願いたい。これは要望して、終わらせていただきたいと思います。 次にお伺いを申し上げたいことは、いわゆる請負です。大きな親会社の下請をやっておる場合に、労務者に労働災害が起きたときに、請負と目されておる者が事業主である、いや私は事業主でない、労働者なんだ、こういった問題が大変多く出ておるわけです。私はこの問題について、時間がございませんけれども急いでお伺いをしたい。 これは具体例としましては、現在審査会において審査がなされておるケースでございますが、高知県安芸市の佐伯幸夫さんという方が、昭和二十年代からずっと北越製紙という製紙会社の山の木材を切って搬出をしてきた。そして、出かせぎに行くような地帯でございますから、農閑期のときにはグループとしてその仕事に二十数年従事してきたわけです。そして、製紙会社の要請に基づいて、いわゆる特別加入という形の処理がなされて、この佐伯さんはやっておったわけです。形式的にはそのようになっておりますけれども、その実態については、これは請負主、事業主ではない、そのような本人の申し立てでございますし、私も本人にいろいろとお聞きをし、資料等もいただいてみますと、労働省の判定では事業主だという判定が出ておるわけですが、この件についてはどうもおかしいじゃないかというように考えられるのです。 ここに高知労働基準局長の「林業の皆さんへ」というパンフレットが出ております。これを見てみますと、「請負業者」という欄のところに、「山主又は買主から、いわゆる「請負った」というだけで、その者が直ちに事業主ということはできません。すなわち、法律上、有効な請負と認められる場合です。よく、「何某に請負わせた」と言いますが、その実態を調べてみると、形式上は民法上の請負契約の形がとられていても、実は、請負った者が一般労働者と同様に、自から労働に従事しているのみであるとか、労働者の一団の代表者に過ぎない場合が大部分です。このような事態では法律上その者が山主又は買主から「請負った」とはいえません。請負が法律上有効に認められるためには、つぎの四点すべての要件を満たす必要があります。」そして、(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)と要件がございまして、「(イ) 山主又は買主と書面で請負契約がむすばれ、請負った事業の完成について、事業主としての財政上並びに法律上のすべての責任を負うものであること。(ロ) 作業に従事する労働者を指揮監督するものであること。(ハ)作業に従事する労働者に対し、使用者として法律に規定されたすべての義務を負うものであること。(ニ)自から提供する機械、設備、器材、その作業に必要な材料、資材を使用し、企画もしくは専門的な技術、専門的な経験を必要とする作業を行なうものであって、単に肉体的な労働力を提供するものでないこと。」このように出ております。 私は、なかなかよくできておると思うのです。したがって、これに基づいていまのケースを見てみますと、なるほどそういった請負契約は結ばれておりますけれども、山の仕事が終わって、切り出しが済んでから請負契約としての形式がとられている。 それから、もう一つ極端な例、これは時間がありませんから続けて申し上げていきますが、昭和五十一年にやった菖蒲山という山で、一人の労働者が振動病にかかった。そして、田舎へ引き揚げておった。それが五十三年に振動病の認定が出たわけです。さあ、そうしますと、北越製紙はこれは何とか救済してやらねばならぬから、この佐伯さんに、あなたが事業主としてやってもらわないとこの労働者の災害を救済することができないから、あなたが事業主としての契約書を結んでほしい、こういって二年も過ぎてから高知県へ送ってきた。これがそうなんです。五十三年四月一日付で会社から送ってきて請負契約書をつくっておる。そして、その一緒にグループとして働いておった労働者が振動病の認定を受けて労災保険の適用が済んだわけです。 そして、この佐伯さん自身も現在振動病の認定を受けておるわけです。ところが、あなたは事業主だから給付額その他において違いが出ることは当然ですと言われる。私はグループ長としてやっておったもので、会社の方から、後からそういう整理をするために請負主としての判をつかされた、こう申し立てておるわけです。 私はこの件について、いま審査会で審査が行われておるケースでございますからやかましくは申しませんけれども、労働省のいわゆる労働行政の中でこういった事例がたくさんあろうと思うのですが、判定をする際は、実態はどうなのか、形式はどうなのか、そしてこの形式というのは実態に合った形式になっておるのかどうか、こういうことを十分精査をしていただかなければならぬと思うのです。 このことを考えたときに、そういった大きな会社はたくさんの山をやっておるわけですが、私の会社には報告をする事故はありませんと、そういう危険負担は全部これらの人に任すのです。いわゆる切って捨てると言ったら言葉が悪いのですが、形式上そういう形をとって、私の現場には労働災害は起きておりません、非常に安全な仕事が行われております、実際は起きておるけれどもそういう形にして全部伏せられていく、こういう実態があるのではないか、その一つの犠牲者になっておるのではないか、このように考えられるわけですよ。 ひとつ労働省の見解をお伺いしたい。
○倉橋説明員 ただいま先生が御指摘になりました佐伯さんの個別の事情については詳細に私ども承知しておりませんが、労働者の判定につきましては、形式に流れることなく、やはりその実態が労働者であるかというようなことに基づきまして、労働者と使用者との使用従属関係で判断をしているわけでございます。したがいまして、先ほど高知局のパンフレットにありますように、単に請負契約であるというような書面上のものではなく、それが実態的に従属関係にあったのかどうかというような面を事実関係を調べまして判断をすることにいたしております。 なお、先生御指摘のありました個別の事案につきましては、審査請求中とのことでございますので、私どもその実態が明らかになるような資料を審査の際に提出をいただきまして、それらの実態が解明されるよう当事者の方にもぜひ御協力をいただきながら真相の実態の把握に努めてまいりたいと思っております。
○平石委員 いまのお言葉で大変結構でございます。できれば、私は資料をたくさんこの件については持っておりますので、一々示して御答弁もいただこうか、この場合どう判定するのかというように準備も整えておりましたけれども、時間がございませんから、みずから内容を説明申し上げたわけです。したがって、私がここで言わなくても労働省御自身は十分これらの資料も持っておられると思うし、また不足な面があれば、要請をいただければ、私整えたものがあります。そういうことで、本人がいわゆる自分も振動病としてもう仕事ができなくなった、そして老後を迎えた、そういう中で、実態としては労働者として働いて二十数年会社のために働いて、会社の方から絶対迷惑はかけません、全責任は負いますからひとつ事業主になってくださいと言われて、本人は十分なこともわからず、法的なこともわからず、ああそうですかということで先方がやってくれることにただ盲判を押した、それが四十八年のことです。昭和二十何年からやっておりましたけれども、四十八年のときからそのように小事業主としての判をついた、それが大きな失敗であったというようなことを本人は申しておりますので、ひとつ十分精査の上、このことについては救済が十分に行われるようにお願いを申し上げたい。そして、いま審査中でございますから労働省が云々と言うこともあるいはできないかもわかりませんけれども、そういったことを十分反映できるようにお取り計らいいただければ大変幸いだ、このように思うわけでございますので、大臣もひとついまのようなケースについて、実態が、ああいう企業がそういう小さなものを事業主として、そして安全に行われております、実際は事故が起きておるけれども表へ出ないような一つの手だてが行われておるというような状態等を含めて、これからの労働行政を進めていく上についての所見を最後にお伺いをして終わらしてもらいたいと思います。
○藤波国務大臣 先ほど来の御質疑にもお答えをいたしておりますように、労働災害でありますとか、あるいは労働からくる職業的疾病等がないようにあらゆる予防措置を講じていくことが労働行政の基本でございます。そのために今後あらゆる努力をしていかなければいかぬと思いますが、不幸にもそういった事態になられました際にはできる限りの手当てを講じていくというふうに持っていくのがやはり労働行政のあり方でなければいかぬというふうに思います。御指摘をいただきましたように、労災隠しというような形でいろんな手だてが逆に講じられておりましたり、あるいは不幸にも仕組み等について、そんな話を持ち込んでくる人の言うままになって判こを押したり、あるいは書類をつくったりしている間に非常に不幸な事態になっているというようなことも今日の世の中に多々あるのではないかというふうに思いまして、御指摘をいただきましたこと等も十分参考にさせていただかなければいかぬというふうに考えておる次第でございます。 具体的な御指摘のありましたいまの佐伯さんの件につきましては、できる限り誠意を持って対応させていただきたい、このように思いますし、なお、先ほど御指摘のございました農業従事者の問題等につきましても、労働省としても、何とかいい知恵はないかと思って、働く方々で災害が起きた場合に不幸を最小限に食いとめるという立場に立ってあらゆる知恵を出してみておりますが、今後農林省とも十分話し合って関係者の不幸を最小限に食いとめていくように、一つ一つの仕組みや法律にはたてまえがございますので、先生御高承のとおりでありますけれども、何とかそのたてまえを超えて労働者を守るという姿勢でできる限りの知恵を出していくように工天をしていかなければいかぬ、このように考えておる次第でございますので、今後ともひとつ御指導を賜りますようにお願いを申し上げたいと思います。
○平石委員 以上で終わります。
○越智(伊)委員長代理 次に、大橋敏雄君。
○大橋委員 先週の委員会から労災保険の改正案の審議が続けられてきているわけでございますけれども、論議を要約してまいりまして整理してみますと大体次のようになるのではないかと私は思うわけでありますが、もし私の考えが間違っていたならば遠慮なく御指摘をくださって結構です。 まず、労災保険は、業務上の災害をこうむった労働者については、事業主の過失等の有無にかかわらず保険給付が行われる。これは労働能力の損失に対する損害のてん補である。私はむしろ生活保障の一環であるとさえ考えているのでございますけれども、このような立場から現在行われております労災補償の内容を見てまいりますと、非常に不十分であるということです。したがいまして、この給付改善は当然行うべきである、私もこの点は大いに賛成でございます。また、給付改善のための負担増につきましてはさらに事業主が負担して対処してまいります。しかし、この際、労災保険給付と民事損害賠償は原則として共通性、相補性を持っているのであり、結果的には同じ事業主の財布から出ることになるので、ここで一般に保険利益と言われております自賠責に見られる点も現にあるので、この際合理的に両者の調整を図っていくべきではないかとの意見、また、現に他の制度にはすでに調整規定があるが労災保険法にはない。特にこの点については、五十二年十月の最高裁の判決も出されたことであり、明確にすべきではないかとの意見、この最高裁判決の解釈の仕方に見解の相違があるのではないかと思われる論議が繰り返されているようにも思えてならないわけでございます。また、現に労災保険給付と民事損害賠償とは性格が違うのだから決して二重取りなどにはならないのだ等々の意見が続出しているように思います。 そこで、私も調整問題につきまして質問したいわけでございますが、いままで私が述べてきましたことについて、もし間違っているところがあれば訂正していただいて結構ですから、とりあえず労働大臣の所感を伺っておきたいと思います。
○藤波国務大臣 今回の法改正の意義、中身、そしてこの委員会として論議をされてまいりましたこと等、まことに適切におまとめをいただきまして、全くただいまの御発言のとおりであるというふうに考えております。
○大橋委員 それでは、お尋ねしますが、従来の調整の考え方と五十二年十月の最高裁判決の考え方による労災保険事務との関係性について説明していただきたいと思います。
○小田切説明員 御説明いたします。 五十二年十月に最高裁判決が出されるまでの民事損害賠償と労災保険給付との関係でございますが、労災保険給付は、御承知のように、使用者の保険料負担によりまして政府が法律に基づきまして給付を行うものであるわけでございますが、そういう点で給付が確実であるというようなこと。さらに、いま先生も御紹介がございましたように、保険料を納めているのは事業主である、事業主の側から見れば、一般的にいわゆる保険利益と言われるようなものを考慮してもしかるべきだというような観点から、業務上災害につきまして、使用者に民事損害賠償責任があります際の使用者の負担すべき民事損害賠償額につきましては、賠償額確定時までに労災保険の方からすでに支給済みの分は賠償額の方から控除する。それのみにとどまらず、将来労災保険の方から給付されるべき分につきましても、法律に基づき間違いなく国が支給するものであるという点が勘案されまして、労災保険の方から将来にわたって給付されます年金部分につきましても一定の方法で一時金額に評価し直しまして、将来支給年金分につきましても使用者が負担すべき賠償額から控除するという、逸失利益部分についてでございますが、そういうような形で使用者に損害賠償額が命ぜられるというようなことでございました。 〔越智(伊)委員長代理退席、委員長着席〕 五十二年の十月の最高裁の判決では、いま申し上げましたような取り扱いが従前一般的であったわけでございますが、それに一部考え方の変更がございまして、損害賠償額算定時までに労災保険の方から支払われたものにつきまして、それを考慮して使用者の負担すべき賠償額の方を消すというようなことは従来と同じであったわけでございますが、将来にわたって労災保険の方から支給されます年金分につきましては、確かに法律に基づいて国が間違いなく支給するものではあっても、まだ支給されていないという点においては、被害者側がまとめて、一括して損失を埋めてほしい、一時金で賠償してほしいというようなことを言っている以上、幾ら確実であるからといって、現に支給が行われていない以上、そのことをもって使用者側としては賠償額を、負担を免れていいというわけにはいかないというような、五十二年の十月の最高裁の判決では、その将来分につきまして、従来の考え方を一部変える考え方による判決が下されたわけでございます。
○大橋委員 時間が非常に限られておりますので、答弁の方は、責任ある答弁で簡潔にお願いしたいと思います。 労災保険はいまおっしゃるとおりに、事業主の負担する保険料が財源となりまして労災給付がなされるわけでございますが、それにつきましても政府の手で必要な期間、必要な給付が、いわゆる年金給付を中核として確実に行われるということですね。それから、労災保険の適用事業所としては、保険料を微収されている個別の事業主について見れば、労災保険からの給付分は負担が軽減されてしかるべきではないかという考えも浮かんでくるだろうと私は考えるわけですね。 しかし、お尋ねしたいことは、民事損害賠償額の算定に際しましてとられてきましたこれまでの調整の考え方はどうだったのかということでございますけれども、いかがですか。
○倉橋説明員 五十二年十月に最高裁の判決が出るまでの一般的な判決の民事賠償額の算定の方法でございますが、先ほど管理課長が申しましたように、損害額のうち逸失利益分につきましては、すでに訴訟進行中に労災保険で支払われていた労災給付分、既支給分とともに、将来受けるべきであろう労災年金等の将来支給分を含めまして逸失利益から控除し、その差額を民事賠償額として判決をしていたということでございます。
○大橋委員 そうしますと、要するに、必要な調整というものはすべてその民事損害賠償側で行われてきたと理解してよろしいですか。
○倉橋説明員 調整につきましては、民事賠償額の中で労災保険分を引いていた関係で裁判上行われていた。私の方は、何ら民事賠償の額によりまして給付を調整するという必要がなかったわけでございます。
○大橋委員 関連すると思いますけれども、他の制度には調整規定があるわけでございますが、そしてそれが実施されていると思うわけですけれども、労災保険にはこの調整規定がないわけですね。なぜかという疑問が当然起こってきます。また、現実に労災保険実務の上にこれまで支障はなかったのかということになるわけですが、どうですか。
○倉橋説明員 先ほども申しましたように、民事損害賠償訴訟におきます取り扱いが、裁判側の方で労災保険給付を調整していたというようなことがございましたので、重複支給、重複負担というような問題が生じておりません。したがいまして、何ら支障がございませんでした。
○大橋委員 それでは、なぜ今回この改正案を出さなければならなくなったのかということになるわけですが、いわゆる調整規定がなくとも、従来は民事損害賠償側できちっと調整されていたので実務の上では何ら障害がないということになれば、別にこの点をこの際改める必要はないんじゃないかという考えに立つわけですが、いかがですか。
○倉橋説明員 五十三年の秋に最高裁の判決が出まして、その判決によりますと、使用者が損害賠償責任がある場合におきまして、原告側、被害者の方から、将来の年金部分の損失を含めまして賠償を請求した場合につきましては、すでに支給された労災保険給付につきましてはその性格上当然控除されますが、将来部分の年金につきましては、その時点におきましてすでに支払われたものとは言えないから、それにつきましては控除をすることを要しない、したがいまして、将来分の年金で補てんする部分を合わせまして民事賠償額の算定の中に入れるという判決が出たために、労災保険の従来の引き続き年金を支給するというような運営との間にそごが生じたことになるわけでございます。
○大橋委員 いまのお話では、五十三年の秋の最高裁の判決が出たということから事情が変わってきたんだと。ということになりますと、最高裁の判決を前提といたしますと、いかなることが要請されることになるのか、お尋ねしたいと思います。
○倉橋説明員 ただいま五十三年秋と申しましたのは誤りでございまして、五十二年秋でございました。その点、訂正さしていただきます。 最高裁の判決が出たために、使用者の民事賠償額のうち、逸失利益の補てんといたしましては、将来年金で補てんされる部分を含めまして使用者の損害が履行されるということになるわけでございますが、片や私どもの保険実務におきましては、調整規定がないために、従来高裁等で行われた判決の事案に沿いまして、引き続き将来にわたって年金を支給するということになっております。そういうようなことから、結果的には労災保険給付と使用者が補てんをいたしました当該部分とに重複して補償する、逸失利益につきまして、同じ部分が二カ所の制度から補てんされるというようなことで二重補てん、二重負担、使用者にとりましては個別の賠償で負担し、かつ保険料の負担をするという二重負担の問題が生じたわけでございます。
○大橋委員 いまのお答えを聞いてまいりますと、いわゆる民事損害賠償が行われた後については、保険給付の側で合理的な調整を行うことが要請されることになったということですね。そうしますと、労災保険法に調整規定がないために重複てん補の状態が発生してきたのだということの答弁のようでございますけれども、この五十二年十月の最高裁判決でこういう言葉があると思うのですが、将来給付分を損害賠償額から控除することはできないとした点について、労働省の見解はどういうことであろうかということになるわけでございますが、いかがですか。
○倉橋説明員 現在の労災保険法につきましては、御指摘のように、調整規定がないわけでございます。そういうような実定法のもとから、最高裁といたしましては、個別の被害者が損害補てんを受ける場合につきましては、やはり将来分を一括して受領する利益も与える必要があるということで、年金部分につきましては将来にわたって渡すというようないわゆる分割払いでございますが、やはり原告本人、被害者が一括して損害の補てんを選択した以上、その本人の選択の利益を与えるべきであるということを判決したものと思われるわけでございます。私ども、そのような内容に理解しておりますが、さらにその中で、すでに給付された労災保険給付につきましては、最高裁も控除しているわけでございまして、労災給付と民事賠償とは、給付のされる場合につきましては、両者が併給にならない、なるべき性質のものではないということは、その判決の中で明らかにしているものと理解しております。
○大橋委員 もう一度お尋ねしますが、最高裁の判決で将来給付分を損害賠償額から控除することはできない、こうしていると思うのですね。その最高裁判決というものは労災保険給付と民事損害賠償との共通性といいますか、相補性をこれは一応肯定していると思うのですね。しかしながら、損害のてん補があるというためには、現実に給付が行われ、損害がすでに補てんされていることを要するとして、被害者側が損害の補てんを一括要求する以上は給付が確実であるといっても、年金という形での分割給付が将来予定されているだけでは、現に一括して損害がてん補されたとはなし得ない、こういう考えからではないかと思うのでございますが、どうでしょうか。
○倉橋説明員 そのとおりでございます。
○大橋委員 それでは、次にお尋ねしますけれども、労災保険給付側での調整措置とその原則について、一言で言えばどういうことになるのでしょうか。
○倉橋説明員 将来の賃金喪失部分、得べかりし収入を失った、そういう部分につきましての民事賠償額が行われた場合につきましては、それの同一の事由、同じ災害の事由によりまして発生いたしました損害につきまして労災保険給付から当該部分につきまして補てんを重ねて行うということは、最高裁の判決の中から見ましても、労災補償の性格というのは損失の補てんにあるというようなことでございますので、二重補てんというのは合理性がない、そういうことに触れているのではないかと思います。また、事業主の二重負担、そういうものにつきましても労災保険の制度ということから避けるべき問題ではないかと思うわけでございまして、こういうことを調整措置の内容として労災保険の側では考えていかなければならないのではないかと思うわけでございます。
○大橋委員 労災保険給付側での調整措置を一言で言え、また原則を一言で言ったらどうだという質問をしたわけでございますが、要するに履行された損害賠償の全額に相当する保険給付の停止をせよということになるのですかね、確認しておきたいと思うのですが。
○倉橋説明員 そういうことかと思いますが、言いかえれば得べかりし損害の中で二重に行われる補てんがあるべきではないということでございます。
○大橋委員 大臣にお尋ねしたいと思うのですけれども、いま言われたようなことは確かに論理的にはそういうことになろうかとは思うのですけれども、これを機械的に適用することは現実の労災保険制度を無視することになるのではないかと私は思うのですね。労災保険には年金制度を導入した趣旨があるわけですね。あるいはまた年金給付はそれなりのメリットがあるわけでございまして、そういうことを勘案してまいりますと、これを機械的に適用することは妥当ではない、私はこう思うのでございますが、恐らく支払いの停止について当然一定の限界を設ける必要があると思うのでございますけれども、大臣の見解を聞いておきたいと思います。
○吉本(実)政府委員 年金が支給停止される期間は、原則といたしまして個別の事案ごとに出された損害賠償額のうち労災保険給付に相当する部分の額を限度として、これと支給さるべき年金の給付額の水準との対応関係、こういうことによって生ずるものでございます。そうして、その際、民事損害賠償額算定の前提となっております被災労働者の平均的な就労可能年齢を考慮するといったようなことと、それからただいま御指摘のございました労災保険制度に年金制度を導入した趣旨、そういったメリットが失われないようにするというような観点から、支給停止期間につきましては上限を設ける必要があると考えておりまして、この点につきましては労災保険審議会の御意見に従って定めたい、こういうふうに思っておる次第でございます。
○大橋委員 大臣、いま局長は確かにこの問題には一定の限界を設ける必要がある、しかしそれは労災審議会に諮らねばならぬのだ、こういう答弁であるわけでございます。これは非常に大事なところだと思うのです。 ちょっと立場は変わりますけれども、示談とか和解、こういうことで内容が不明確な部分についての取り扱いの基準を私ははっきりさせる必要があるのではないかと思うのです。すでにこういう批判が出ております。恐らく官僚の裁量に任されて恣意的に判断されて、被害者に不利な調整が行われるのではないかというような批判なんですけれども、公正かつ合理的な基準によって斉一的な取り扱いが行われることが必要だと私は思うのですね。 先ほどの問題とあわせて大臣のお考えを聞いておきたいと思います。
○藤波国務大臣 御心配をいただきましたように、調整をする際に官僚の恣意的な独断によって行われるのではないかという御心配でありますが、そういったことは全くないように持っていかなければなりませんし、また私どもとしてはそんなことがあってはならないと考えているわけでございます。適正な基準に従って実施をしていく考えでありますけれども、これまた恣意的なことであってはいけませんので、実施基準の作成に当たりましては、労災保険審議会の答申に付された意見にもありますように、関係審議会の御意見を十分お伺いをして進めていくようにしなければいかぬというふうに考えております。それぞれ所定の手続を経て基準をつくり、決して官僚の独断によって決めていくというようなことのないあらゆる配慮をしてまいりたい、このように考えておりますので、御理解をいただきたいと思います。
○大橋委員 いま批判されているようなことは心配要りません、大丈夫ですという御答弁ではございますけれども、やはり調整に当たっては関係審議会に諮って定める基準に従って行うのだということを法定化する必要があるのじゃないかと私は思うのですね。この点はやはり非常に疑問を寄せられるところでございまして、そこのところを法律の上で何らかの姿できちっとうたえば、関係者の皆さんの不安はかなり除かれるのではないかと思うのですね。また、調整の実施に当たっては、その運用の面において被災労働者の保護に十分配慮した運用が行われるよう努めなければならぬわけでございますが、恐らく審議会においてこういうことは当然議論されるべきである、これは守らなければならぬと思われるようなことをいま労働省でお考えがあるとすれば、お示し願っておきたいと思います。
○倉橋説明員 政府といたしましては、関係審議会にお諮りいたしまして、政府案といたしまして法律案を提出したわけでございます。私ども、法律の内容に従いまして、恣意的に調整を行うということはもとより考えておりません。その適正な基準の策定につきましては、労災審議会から御意見をいただいておりますように、実施までに適正な基準を作成し、それによりまして審議会に諮り、さらに具体的な運用を図っていくというようなことを考えておりますし、またその基準の作成に当たりましては、被災労働者についての配慮を十分していくように考えているわけでございます。したがいまして、政府といたしましては、現在の法律案によりまして適切な対処をしていきたいと考えている次第でございます。
○大橋委員 要するに、二重てん補の不合理の是正を図る趣旨のほかに、民事賠償が一時金であるのに対して、労災保険制度が終身年金を支給する制度を導入していることに着目して、被災者または遺族についてその年金制の利益が無にならないよう基準作成上配慮されなければならぬと私は思うのでございます。と同時に、先ほど申し上げました法制化の問題は、私は非常に重視しておりますので、これは幾ら政府に詰め寄っても無理かと思いますが、私は理事会の席でもこの点を持ち出して、理事の間で審議してみたいと考えております。 時間が迫っておりますので、次の問題に移ることにいたします。 労災補償とは表裏の関係にある労働安全衛生の問題についてお伺いしたいと思います。 そもそも労働者の安全及び衛生が確保されて労働災害が絶滅されれば、先ほどから話がありましたように、労災補償の問題は起こり得ないのでございますが、しかし、現実には毎年百万人を超える労働者が労働災害をこうむっている状況にあります。その原因は一体どこにあるんだろうか。具体的に私は電力労働者の場合を例にとって若干質問させていただきたいと思います。 電気は、言うまでもなく、エネルギー源としましてのすぐれた特性から現代生活にとっては欠かすことのできないものでございます。国民生活あるいは産業活動にいかに不可欠であるかは、かつてニューヨークに起きました大停電を思い出していただければよいと思いますけれども、長時間広域停電のもたらす混乱というものははかり知れないものがありました。このような電気エネルギーを安定確実に供給することは電力産業に課せられた社会的責任と言えます。しかしながら、そうであるからといって、とうとい人命がその犠牲となってよいというものでは決してないはずでございます。残念ながら、そして不幸なことに、現実には電力の安定供給を達成するという美名のもとに労働者の安全がなおざりにされているのではないかと危惧せざるを得ないものがたくさんございます。 そこで、まずお伺いしたいのでございますが、このような電力産業で働く労働者の労働災害の状況はどのようになっているのか、お尋ねしてみたいと思います。
○津澤政府委員 電力労働者の労働災害につきまして、死亡者数に関して申し上げますと、昭和五十三年、一年間に全産業で亡くなられました方が三千三百二十六名でございますが、このうち感電によって亡くなられました方が百三十名でございました。また、昭和五十四年につきましてはただいま集計の過程ではございますけれども、全産業で亡くなられた方三千七十七名のうち、感電による者が百七名となっております。このうち、御指摘の電気業及び電気工事業におきまする死亡者は、五十三年は七十一名でございました。このうちで、感電というのが五十一名になっております。また、五十四年につきましては、電気業、電気工事業における死亡者四十五名のうち、感電は三十五名というふうに相なっております。
○大橋委員 従来、感電事故で亡くなられる方が年間約百名を超すような状況にあると私は聞いてきたのでございますが、どうも災害防止対策がなまぬるいのではないかという気がしてなりません。 災害を防止するためにどのような方策を講じているのか、労働者の安全衛生を担当する労働省と、電力産業を所管する通産省にそれぞれお伺いしてみたいと思います。
○津澤政府委員 電気業ございますとか電気工事業におきまする死亡災害というのは、ただいま申し上げましたような感電によりますもの、あるいは墜落によりますもの、交通事故、いろいろな種類のものが多くあるわけでございますが、労働省といたしましては、これらの災害を防止いたしますために、安全衛生法に基づく規則の中におきまして、感電でございますとか墜落に対するものを初め、いろいろな規制を行ってきておるところでございます。具体的にはこうした災害防止対策を進めますために、電気業、電気工事業あるいは建設業というようなところを重点にいたしまして、個別に監督指導を計画的にやっておるわけでありますが、多数の現場を持っております電気工事業というふうなものに対しましては、パトロール的な監督でございますとか、あるいは事業者に対する集団指導というようなものをやってまいりまして、その徹底を図ってきているところでございます。
○大橋委員 労働災害の防止の関係では、電力産業における複雑な下請制度にも大きな問題があるのではないかと私は思うのです。柱上作業や塔上作業や配電線の作業などの危険度の高い作業は下請に任されている。しかも、下請事業にあっては、労働者の健康管理や安全教育などが不十分であります。安全管理体制も整っていないのが一般的であると私は思うのです。下請事業者の体質改善を発注者の責任で行わせるとともに、適正な工期の確保、工事量の平均化の促進等を行うことが労働災害の防止にはぜひとも必要だと考えるのでございますが、この点、通産省はどのように考えておられるか。また、事業者に対してどのような指導を行っておりますか、お伺いしたいと思います。
○児玉(勝)政府委員 お答えいたします。 ただいま先生おっしゃいましたような下請事業者の感電防止につきましては通産省といたしましても非常な関心を持っておりまして、従来から高圧線での作業におきます感電防止ということについてはかねがね配電線の絶縁化ということをしてまいりまして、おかげさまで最近感電の事故が非常に減ってまいりました。しかしながら、ただいま先生おっしゃいましたように、感電事故はまだ年間七十件を超える状況になっておりますので、さらにその努力をしていきたいと思っております。 具体的には、作業のいわゆる安全管理体制につきましては、専門工事業者につきまして、先ほどお話がありましたように、労働者の健康管理や安全教育等の徹底を期しておるところでございますが、電気事業者におきましても、工事業者との間に安全協議会等の場を設けまして、工事業者に対し、工事の安全管理、それから工具、保護具の整備充実等に対する指導助言を行っているところでございます。さらに、発注者と受注者による工事現場の合同安全パトロールを通じまして、安全施行に対する認識の高揚、それから工事業者におきます各種教育訓練、そういう協力を実施しております。また、配電工事の大半が需要家からの要求に基づくものでございますので、下請業者の労働災害防止の観点から、適正な工期の確保を図るために、電気工事業者による需要家からの早期申し込みの促進、それからきめの細かい工程管理等を行う必要がございますが、そういうような対策の充実につきまして、引き続き電気事業者を指導してまいりたい、こう考えております。
○大橋委員 もう持ち時間が迫ってまいりましたので、あと残り一括してお尋ねしますから、よく聞いておっていただきたいと思います。 まず、電気事故の防止で、だれでも考えつくことでございますけれども、そもそも電気を通さなければよいじゃないか、電気をとめて作業をすればよいのではないかということであります。しかしながら、その当然と思われることが現に行われていない。まさに初歩的なことが実施されておりません。これは何が理由であるかということでございます。これが一点。 もう一つは、これから向かう夏のいわゆる酷暑期には例年電力労働者の災害が多発しております。夏季の作業環境は確かに非常に厳しいものと考えます。しかしながら、これらの労働者の労働環境を聞きますと、合理性の追求に急で、安全対策への配慮に欠けているということでございます。労働者の精神力あるいは体力等にも限界がございます。電力の安定供給は確かに重要でありますけれども、そのためにはそれを維持するための作業が絶対に必要であります。しかしながら、そのような作業を労働者が安心して行えないようでは今後の電力の安定供給もおぼつかなくなるのではないでしょうか。国民の便利な生活が労働者の犠牲の上に咲いたあだ花であってはならぬと私は思うのでございます。電力労働者に例をとって申し上げましたけれども、労働者の生命を守るという安全対策の原点に立ち戻って、労働災害の撲滅のための施策の確立に努めていただきたいということを私は強く要望するものでございます。 この二つの点について、まとめて御答弁願いたいと思います。
○児玉(勝)政府委員 まず、なぜ停電作業ができないのかという問題でございますが、先ほど来先生おっしゃいますように、電気が国民生活の上で欠くことのできない状況に相なりまして、その意味で、電気の供給停止は社会的に非常に大きな影響を与えることとなるわけでございます。たとえて言いますと、地下街の問題、それから上下水道、それから報道関係、それから病院、そういうようなところの停電は人命にもかかわる問題でございますし、そういうことで大きな影響を与えるためになるべく停電をしないような状況で作業をするということが考えられるわけでございます。 しかしながら、先ほど先生おっしゃいますように、非常に危険が伴うことも確実でございます。そこで、自家用発電設備の設置の促進ということ、それから配電線のループ化、これは予備線の分も含むわけでございますけれども、そういうような余分な施設ということが確かに重要でございます。しかし、そういうような投資というのは需要家の方にしていただくことが多いわけでございますので、そういう意味では、どういう場合にそういう推奨基準で自家発をつけてもらうようにするのかということについても、個々の対象によりまして、なかなかむずかしい問題を含んでいるわけでございます。そういうわけで、自家発の設備の普及というのがなかなか促進されないという状況にございます。 また、活線作業者の安全確保のためには、従来から作業管理の徹底、それから教育訓練の充実、それから工事工法の改善、それから絶縁工具、防具の開発等をやってまいりまして、その成果も上がっておりますので、今後ともそういう技術的な開発並びに管理を十分いたしまして、安全確保と電気の安定供給を両立させる方向で電気業者を指導してまいりたい、こう考えております。
○大橋委員 最後に、一言大臣にお尋ねしておきます。 いまもお話がありましたように、電気労働者はとうとい生命をかなり犠牲にされているわけでございます。たとえば、地震などが起こった場合、これは確かに自家発電、予備電源設備というものが必要だということは当然のことでございますが、消防法あるいは建築基準法等にはこの義務づけがあるわけです。しかしながら、電気にはない。現にこうして事故が起こっている。やはり労働者の生命を守る立場から、地震が起きたようなときを想定して、自家発電、予備電源設備の義務づけの方向で大臣もぜひとも努力していただきたい、その方向に運動していただきたいということを私から強く要望して、大臣のお気持ちをお伺いして、終わりたいと思います。
○藤波国務大臣 労働災害を絶滅いたしますために、いろいろな業界、業態に対応いたしまして対策を講じていかなければいかぬ、こういうふうに考えて、そういういろいろな相談を進め、対策を講じているところでございます。 電気事業に従事する労働者の生命を守りますために今後通産省ともよく連絡をとりまして、電気事業関係の労働災害を絶滅いたしますようにあらゆる手だてを講じてまいりたい、このように考えます。 また、いま具体的に御提案のございました予備電気の発電というお話につきましては、これからのこの文明社会の中での最も大事な問題の一つであるというふうに考えますので、十分前向きに真剣に取り組ませていただきたい、このように考えております。
○大橋委員 終わります。
○葉梨委員長 この際、暫時休憩いたします。 午後二時二十一分休憩 ————◇————— 午後四時二十二分開議
○葉梨委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 田口一男君外四名提出、中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案を議題とし、提出者から提案理由の説明を聴取いたします。田口一男君。
○田口議員 私は、日本社会党、公明党・国民会議、日本共産党・革新共同及び民社党・国民連合を代表して、ただいま議題となりました中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。 この特別措置法が、一九七一年五月に制定されてからすでに九年になります。一九七六年五月に改正され、以前の選定職種別の中高年齢者雇用率設定から、民間企業では事業者ごとの六%の高年齢者雇用率に移行されてからでも、すでに四カ年が経過しております。 ところが、一九七九年六月一日現在で、高年齢者雇用率未達成の企業の割合を規模別に見ると、従業員数百人以上三百人未満規模の企業で四七・七%、三百人以上五百人未満規模の企業で六四・五%、五百人以上一千人未満規模の企業で七二・五%、一千人以上規模企業では実に八〇・六%にも達しております。 現行法の努力規定では、きわめて不十分であることが実証されていると言わなくてはなりません。また、国や自治体等についても選定職種別の中高年齢者雇用率の設定だけでは、もはや不十分な時代になっております。 一方では、高年齢者の労働人口が増加し、他方では高年齢者の有効求人倍率がきわめて低く、雇用が不安定化している実態にかんがみ、この法律案を提案する次第であります。 次に、この法律案の内容について御説明申し上げます。 第一は、高年齢者雇用率達成の義務化についてであります。 現行の努力規定を義務規定に改めることといたしました。 第二は、高年齢者の雇用に関する国等の義務についてであります。 国及び地方公共団体の任命権者並びに日本専売公社、日本国有鉄道及び日本電信電話公社の総裁(以下「任命権者」という)は、当該機関に常時勤務する高年齢者である職員の数が、当該機関の職員の総数に、高年齢者雇用率を下回らない率であって政令で定めるもの(以下「国等に係る高年齢者雇用率」という)を乗じて得た数(一人未満の端数があるときは、その端数は、切り捨てる)末満である場合には、高年齢者数が国等に係る高年齢者雇用率を乗じて得た数以上となるようにするため、高年齢者雇用率の達成に関する計画を作成しなければならないものとすることといたしております。 第三は、計画及びその実施状況の通報等についてであります。 任命権者等は、政令で定めるところにより、第二の計画及びその実施状況を労働大臣に通報しなければならないものといたしております。 この場合において労働大臣は、特に必要があると認めるときは、任命権者等に対して、計画の適正な実施に関し、勧告をすることができるものといたしております。 第四は、任免に関する状況の通報についてであります。 任命権者等は、毎年一回、当該機関における高年齢者である職員の任免に関する状況を労働大臣に通報しなければならないものといたしております。 第五は、高年齢者の雇用に関する一般事業主の義務についてであります。 事業主(第二の適用を受ける国等を除く)は、雇用関係の変動がある場合には、高年齢者である労働者の数が、労働者総数に高年齢者雇用率を乗じて得た数以上であるようにしなければならないものといたしております。 この高年齢者雇用率は、高年齢者の雇用の現況を基礎とし、雇用の動向及び高年齢労働力の推移を考慮して、高年齢者の雇用の安定に資することを旨として、政令で定めるものといたしております。 これにより一人以上の高年齢者を雇用すべきこととなる事業主は、毎年一回、高年齢者の雇用に関する状況を労働大臣に報告しなければならないものといたしました。 第六は、高年齢者雇用率の達成に関する計画についてであります。 労働大臣は、高年齢者の雇用の安定を図るため必要があると認める場合には、常時百人以上の労働者を雇用する事業主だけでなく、高年齢者雇用率を達成していないすべての事業主に対して、高年齢者雇用率を達成するための計画の作成を命ずることができるものといたしました。 事業主は、この計画を作成したときは、労働大臣に提出しなければならないものといたしております。 労働大臣は、この計画の変更または計画の適正な実施に関し、勧告することができるものといたしております。 第七は、一般事業主の公表についてであります。 労働大臣は、第六の計画を作成した事業主が、正当な理由がなく上記の勧告に従わないときは、その旨を公表することができるものといたしました。 第八は、求人の申し込みの受理に関する特例についてであります。 公共職業安定所は、国等に係る高年齢者雇用率を達成していない任命権者等または高年齢者雇用率を達成していない求人の申し込みであって、正当な理由がないにもかかわらず高年齢者でないことを条件とするものを受理しないものといたしております。 第九は、罰則についてであります。 新たに所要の罰則を設けるものといたしました。 第十は、施行期日についてであります。 この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものといたしております。 以上、この法律案の提案理由及びその内容につきまして御説明申し上げました。 この法律案は、すべての労働組合はもとより、未組織を含むすべての労働者の切実なる要望であることを十分勘案され、御審議の上、速やかに御可決あらんことを切望いたします。(拍手)
○葉梨委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。 ————◇—————
○葉梨委員長 次に、前川旦君外八名提出、失業手当法案、佐藤誼君外八名提出、雇用対策法の一部を改正する法律案及び金子みつ君外八名提出、労働基準法の一部を改正する法律案の各案を議題とし、順次提案理由の説明を聴取いたします。前川旦君。
○前川議員 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました失業手当法案について、その理由及び内容の概要を御説明申し上げます。 近年、失業者が増加したまま、短期間の求職活動では再就職がきわめて困難となっております。新規の求職者にとっても、就職の門は狭くなっております。季節労働者や日雇い労働者の就業も、ますます不安定で困難になっております。 しかも、最近の特徴的なことは、景気回復の局面に入っても、雇用情勢はほとんど改善されず、有効求人倍率は依然として低いままであるという実態であります。 雇用保険法に基づく求職者給付等を受ける資格のある者も、給付期間が多少延長された程度では、再就職のできない人が多くなっております。 労働の意思と能力を持つこのような失業者に、生活保護費を支給して、辛うじて生命をつなぐという考え方は間違いであります。労働の能力と意思を持つ者に対しては、労働力の再生産費が保障されねばならないからです。 憲法第二十七条は、すべての国民に勤労の権利を保障しております。したがって、勤労の権利が確保されない人々に対しては、国が責任を持って、本法案のような手当を支給するのは当然のことであると言わねばなりません。 社会党は、このような状況にかんがみ、この法律案を提案する次第であります。 次に、この法律案の内容について御説明申し上げます。 第一は、この法律の目的であります。 この法律は、雇用保険等と相まって、失業者に対し、失業手当の支給及び就職指導の実施等の措置を講ずることにより、失業者の生活の安定を図るとともに、求職活動を容易にする等その就職を促進して、その職業の安定を図り、もって労働者の福祉の増進に資することを目的といたしております。 第二は、適用される失業者の定義についてであります。 この法律において失業者とは、労働の意志及び能力を有するにもかかわらず、職業につくことができない状態にある者を言い、その職業が著しく不安定であるためこれと同様の状態にあると認められる者も含むことといたしておりますが、そのような者であって、雇用保険法の規定による基本手当その他法律もしくは条例の規定によるこれに相当する給付の支給を受けている者以外の者を言うものといたしております。 第三は、受給資格の認定についてであります。 公共職業安定所長は、六十五歳未満の失業者であって、公共職業安定所に安定した職業につくことを希望して三月以上求職の申し込みをしている者の申請に基づき、受給資格の認定を行うものといたしております。 第四は、就職指導の実施についてであります。 認定受給資格者は、定期的に、公共職業安定所に出頭し、労働大臣が定める基準に従い公共職業安定所が行うその者が安定した職業につくことを促進するために必要な職業指導を受けなければならないことといたしております。 第五は、失業手当の日額についてであります。 認定受給資格者であって、安定した職業に引き続き六月以上従事した後のその職業から離職した者については、賃金日額に応じて、その六割から八割の失業手当の日額を定め、ただし、最低二千八十円を保障し、最高は三千三百円で頭打ちするものといたしております。 第六は、調整についてであります。 認定受給資格者が、雇用保険法の規定による特例一時金もしくは日雇労働求職者給付または健康保険法の規定による傷病手当金、労働者災害補償保険法の規定による休業補償給付その他これらに相当する給付を受けている場合には、その間は失業手当を支給しないものといたしております。 第七は、支給の制限についてであります。 認定受給資格者が、正当な理由がなく公共職業安定所の紹介する職業につくことを拒んだり、または、正当な理由がなく求職活動に関する公共職業安定所長の指示に従わなかったときは、一月間は失業手当を支給しないものといたしております。これを再度繰り返した場合には、受給資格の認定は効力を失うものといたしております。 第八は、施行期日についてであります。 この法律は、一九八一年四月一日から施行するものといたしております。 以上、この法律案の提案理由及びその内容につきまして御説明申し上げました。 この法律案は、失業者の、したがってあすはわが身のこととなり得る勤労国民全体の切実なる要望であることを考慮され、御審議の上、速やかに御可決あらんことを切望いたします。(拍手)
○葉梨委員長 次に、安田修三君。
○安田(修)議員 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました雇用対策法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。 勤労国民の福祉と生活向上を犠牲にすることによって、資本主義経済は景気回復を遂げ、大企業は空前の増収増益を謳歌しております。 ところが、完全失業者は百万人を大きく超えたまま、一向に減少しません。半失業者とも言うべき不安定雇用は一層増加しております。大企業は雇用を拡大することなく、むしろさらに人員を整理しながら、時間外労働等による労働強化や、臨時工や社外工などによってカバーすることが一般的な風潮になっております。不当な大量解雇が続発しております。 そのような不適当な解雇を規制し、雇用を安定させることは緊急の課題となっておるのであります。 一方では、全国の各自治体が、それぞれの条件に応じて雇用を創出し、失業を抑えていくために、都道府県知事や、地方職業安定審議会等の権限を強め、必要な任務を与えることも不可欠になっております。 社会党は、このような状況にかんがみ、これ以上失業者が増加するのを防ぐために、雇用対策法の改正を提案する次第であります。 次に、この改正法案の内容について御説明申し上げます。 第一は、この改正法の目的であります。 この法律は、現行第二十一条に定められた大量の雇用変動の届け出制度を改善、強化することによって、不適当な大量解雇を規制し、雇用の安定を図ることを目的といたしております。 第二は、届け出義務の内容改善についてであります。 現在、政令によって、事業主は一事業所において一カ月の期間内に五十人以上の労働者を解雇しようとするときは、公共職業安定所長に届け出なければならないとされているものを、法律によって一カ月の期間内に三十人以上の労働者を解雇しようとするときは、都道府県知事に届け出なければならないものといたしております。なお、この届け出は、政令によって予定の少なくとも一カ月以前でなくてはならないものとすることといたしております。 また、届け出に当たっては、事業主は、労働組合または労働者の過半数を代表する者の意見書を提出しなければならないことといたしております。 第三は、届け出についての審議や勧告についてであります。 この法律は、届け出を受けた都道府県知事がその解雇について、地方職業安定審議会または地区職業安定審議会の意見を聞かなければならないものとすることにいたしております。 都道府県知事は、地方職業安定審議会等の意見に基づき、その解雇が不適当であると認めるときは、事業主に対し、必要な勧告をすることができるものとすることといたしております。 また、国または地方公共団体の任命権者は、公務員労働者の場合の同様な解雇について、公共職業安定所長に通知しなければならないものといたしております。 第四は、労働力の需給均衡の確保についてであります。 この法律は、届け出または通知があったときは、国は職業安定機関が相互に連絡を緊密にし、広範囲にわたり求人または求職を開拓し、また職業紹介を行うこと、公共の職業訓練機関が職業訓練を行うこと等の措置によって、一定の地域における労働力の需給に著しい不均衡が生じないように、離職者の就職の促進または当該事業における労働力の確保に努めるものとすることといたしております。 以上、この法律案の提案理由及びその内容につきまして御説明申し上げました。 この法律案は、いまや全人口の七割を占める労働者の、きわめてつつましくも切実なる要望であることを十二分に配慮され、御審議の上、速やかに御可決されんことを切望いたします。(拍手)
○葉梨委員長 次に、金子みつ君。 ————————————— 労働基準法の一部を改正する法律案 〔本号末尾に掲載〕 —————————————
○金子(み)議員 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました労働基準法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。 近年、わが国の経済は高度成長を遂げ、工業生産力はヨーロッパの先進諸国を追い抜き、アメリカに次いで、資本主義国の中で第二の地位を占めるに至りました。しかしながら、労働条件においては、なかんずく、婦人労働者の労働条件においては、欧米の先進諸国に比べて、著しく立ちおくれているのが実態であります。 特に、解雇、昇進、昇給等々の労働条件において、わが国では婦人が大きな差別を受けております。この性による差別は、解消される傾向にあるどころか、雇用の不安定化とともに、むしろ拡大される傾向にあります。 たとえば、結婚した婦人や子供を産んだ婦人が、事実上差別的に解雇されたり、定年退職年齢を男子より低く決められているようなことが当然のごとく行われておるのであります。 憲法は、第十四条において、すべての国民は法の下に平等であって、人種、信条、社会的身分とともに、性別により、政治的、経済的または社会的関係において差別されないと定めております。 ところが、現行労働基準法においては、第三条で、「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。」と定めながら、性別による差別の禁止はここから省かれ、第四条において、賃金についてのみ男女の差別禁止が定められておるのであります。このままでは、解雇、昇進等における性差別をなくすることは不可能でありましょう。 また、合理化が進められ、労働の密度が高められ、神経も一層疲労させられる結果、早産、流産、死産等々の異常出産が多発し、特に周産期死亡率の国際比は一・三倍から一・六倍も高く世界で高位を占め、妊産婦死亡率も戦後ずっと世界第一位となっております。 母性をよりよく保護し、健康なる子供の出産と成長を保障することの重要性が一層増しているのであります。このようなすべての国民の健康にとって必要不可欠な母性保護が、性差別の範疇に入る性質のものでないことは言うまでもありません。 世界的に見ても国際労働機関すなわちILOの第百十一号条約では雇用及び職業についての性差別が禁止され、その第五条では、「国際労働機関の総会が採択した他の条約又は勧告で定める保護又は援助に関する特別の措置は、差別待遇とみなしてはならない。」と規定しております。ILO第百三号条約では母性保護が具体的に定められ、第九十五号勧告ではより進んだ母性保護の内容が勧告されているのであります。 日本社会党は、このような状況にかんがみ、労働条件における性差別をなくするとともに、母性保護を推進するために、労働基準法の改正を提案する次第であります。 次に、この改正案の内容について御説明申し上げます。 第一は、この法律の目的であります。 この法律は、すべての労働条件について、性別による差別的取り扱いを禁止するとともに、異常出産の多発等にかんがみ、母性保護の推進を図ることを目的としております。 第二は、性差別の禁止についてであります。 この法律は、現行の第三条に性別を加えることにより、賃金のみならずすべての労働条件について、性別を理由として差別的取り扱いをしてはならないものとすることといたしました。したがって、男女同一賃金の原則を定めた第四条は削除することといたしました。 第三は、母性保護についてであります。 その一は、現行第十九条を改正し、使用者は妊娠中の女子及び産後一年を経過しない女子を解雇してはならないものといたしました。 その二は、現行第六十一条及び第六十二条を改正し、妊娠中の女子または産後一年を経過しない女子について、労働協定による時間外労働及び深夜労働を禁止することといたしました。 その三は、現行第六十五条を改正し、産前産後の休暇の期間をそれぞれ八週間(二人以上の胎児に係る妊娠の場合には、十週間)とすることといたしました。なおこの間、健康保険法の改正により、健康保険からの六割分に、国庫から四割分を加えて、賃金の十割に相当する給付を保障することといたします。 また、産前産後六週間の期間については、女子の請求による場合でも、就労を認めないものとすることといたしました。 また、使用者は、妊娠中の女子が請求した場合には、その者の労働時間を短縮しなければならないものといたしました。 その四は、妊娠に起因するつわり等の障害または疾病の休暇を設け、その疾病により就業が困難な女子が休暇を請求した場合には、使用者はその間、その者を就業させてはならないものとすることといたしました。なお、その休業の間は、二週間を限り産前産後の場合と同様にして、賃金の十割に相当する給付を保障することといたしました。 その五は、妊娠中または産後一年以内の女子が、母子保健法による保健指導または健康審査を受けるために必要な休暇を請求したときは、その者に休暇を与えなくてはならないことといたしました。なお、その休暇については一日を限り、母子保健法の改正により賃金分の給付を保障することといたします。 その六は、現行第六十六条を改正して、育児時間は、一日二回、おのおの少なくとも一時間与えなければならないものとすることといたしました。なお、その時間は労働したものとみなすことといたしました。 その七は、現行第六十七条を改正し、生理日の女子が生理休暇を請求したときは、その者を就業させてはならないものとすることといたしました。なお、その期間は、二日を限り有給とすることといたしました。 以上、この法律案の提案理由及びその内容について御説明申し上げました。 早速御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。(拍手)
○葉梨委員長 これにて各案の提案理由の説明は終わりました。 ————◇—————
○葉梨委員長 労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案に対する質疑を続行いたします。浦井洋君。
○浦井委員 この労災保険法の一部改正について、いろいろ、特に調整の方を中心にして論議が交わされてきておるわけでありますが、私はひとつ大臣に私の話をよく聞いていただいて、主として大臣と問答をしたいというふうにあらかじめ言っておきます。 まず、第一の質問は、最近非常に労災事故に関連をいたしまして、いわゆる労災裁判というものが多く提起されてきておるわけであります。数字を申し上げますと、五十三年度末現在で千百九十三件裁判が提起をされておる、こういう現象が起こってきた原因は一体何だ、大臣はその理由は何だと思われますか。
○藤波国務大臣 労働者が労働災害に遭って、いまおっしゃるように、労災裁判という言葉が出ましたが、客観的に労災裁判と名づけていいと思いますけれども、労災法が目的といたしております、労働災害が起こって損失がそこで発生する、そのことについていわゆるその原因ができた事業の事業主に対して、十分、労働災害によって被害を受けた者がその損失の補いをつけよう、こういうことで権利を主張をして裁判に持ち込む、こういうことで裁判が当然そこで発生するわけでありますから、そういうような背景の中でこういうふうにして裁判に訴える件数が伸びてきた、こういうふうに考えております。
○浦井委員 こういうことは言えませんか。損害賠償請求の裁判を起こすことによって、ほとんどがやはり使用者の側の、いわば加害者である企業にある意味でペナルティーを科して、そしてそのことが頂門の一針のようなかっこうになって予防対策を重視をさせるというような面が私は一つ大きいと思うのでありますが、大臣はどう思われますか。これは否定できないでしょう。
○藤波国務大臣 労働災害に遭われた労働者の方が裁判に訴える、持ち込む、そのことによって事業主に頂門の一針としての反省を求めるようなことをお考えになるかどうか、それは全くわかりません。しかし、従来そういった一面があったことは、やはり取り方ではありますけれども、否定はできないというふうに私は思います、率直に。
○浦井委員 大臣、こういう例があるのですね。これは大分昔の話になりますけれども、昭和四十三年の六月二十一日に神戸製鋼所灘浜工場で労働者四人が次々と死亡する事故があったわけです。A、B、C、Dさんというふうに仮にしておきますと、この四人のうちの三人の方が構内下請ですね。神戸クリーナーという企業なんですが、そこで清掃の仕事をやる構内下請で、一人の人は神戸製鋼所の本工である。そこで、事故がどういうふうにして起こったかといいますと、これは死亡されたAさんが、前の日に一つのボイラーを早く乾燥させなければならぬということで、いつもやっているような調子でパイプにゴム管を差し込んでこれでエアが出るのだということで、エアを出したつもりでそのままになったわけです。ところが、次の日に、さあ、乾燥しただろうかという点検をするといって、Aさんがボイラーの中に入ってそのまま帰ってこない。そこで、控え室におったBさんが次に行って、また帰ってこない。Cさんが行ってまた帰ってこない。とうとうしまいに本工のDさんが行って、この方も帰ってこない。大変だということですぐに職場の同僚が点検に行って、これは危いぞということでボイラーの中の空気の入れかえをやって、それで見たところが、もう四人とも死亡しておった、亡くなっておられた。これはなぜかといいますと、エアだと思ったのが窒素ガスであったわけなんです。 これに対して神戸製鋼所という会社はどうしたかといいますと、これはAさんの不注意だと言う。前の日にAさんがゴム管をつけてコックをひねってエアが出たものだと思ったら、それが窒素ガスであったということですから、Aさんの不注意だということで済まそうとしたわけなんです。エアと窒素ガスを間違えたんだから。しかも、その中で、不注意だということでこの亡くなられたAさんは業務上過失致死で送検をするかどうかというようなところまでいったわけですね。それで、生き残ったもう一人のEという方は警察に取り調べられて、この人ももうちょっとで送検をされるというようなことであったわけなんです。 ところが、どうもおかしいということで、昭和四十三年の六月に事故が起こって、十月にそのAさんとBさんの遺族が実情をよく調べて損害賠償裁判を起こされたわけであります。ところが、この五人一つのグループになって仕事をやってただ一人生き残ったEさんが、先ほども申し上げたように、警察に呼ばれておどされたり、あるいは会社の側からは、これはもうAさんの不注意だから、おまえはよけいなことを言ってはいかぬというような口どめがあったようで、当初は証人として出ることを断られた。しかし、裁判を起こされたAさん、Bさんの遺族が非常に熱意を持ってそのEさんを説得をされて、どういうことがわかったかといいますと、こういうことなんです。このEさんの証言によると、この神戸クリーナーは神戸製鋼所動力課の指示を受けてボイラーの清掃を専門にやっておった。しかし、指示の内容は、いつ、どのボイラーをやれという程度であって、作業の方法については特に指導や訓練は受けておらない。それから、安全のための指導や教育らしいものは全く受けておらぬ。それから、エアを吹かしたことはときたまあったけれども、どの配管からとれというような指示はこれまで受けたことがない。それから、窒素の配管があるというようなことは、この仕事をいままで十年もやっておるけれども聞いたことがなかった。コックをひねればエアが出るかあるいは水が出るか、どちらかだというふうに思い込んでおった。水以外に窒素ガスというようなものがあるというようなことは全然思ってもおらなかった。窒素があるとは夢にも思っておらなかった。窒素というものがどんなものであるかというような知識もだれからも教えてもらっておらない。こういうことを証言をされたわけです。 そこで、話がもう逆転してしまった。そして、神戸地裁では昭和四十七年の四月に判決をおろした。そして、これは神戸製鋼所に責任があるんだ。大体窒素ガスかエアか、識別が不可能である。それから、教育はしておらない。あるいはいろいろな注意はしておらぬということで、Aさんの遺族に対しては一千八十七万円、Bさんの遺族に対しては七百四十万円支払えということになった。当初は、こういう業務上過失致死だというようなことで、しかも下請工ですから、だから遺族年金ということで年額二十万円、それから会社からは見舞い金、神戸製鋼所と下請の神戸クリーナー合わせて十万円、香典が三万円、これで済まそうということだった。裁判を起こしたために、こういうAさんの遺族は損害賠償一千八十七万円、Bさんの遺族は七百四十万円、こういうことになったわけです。 これから明らかに言えることは、やはりこういう裁判を起こすことが非常に意義があったということなんです。鉄鋼大手の下請で安全衛生が非常に軽視をされておるということは、これはいまも改まっておらぬわけですけれども、これが社会的に明らかになったわけなんですね。しかも、その犠牲がどうしても構内下請なんかに集中しておるんだというようなことを新聞もずっと取り上げましたし、それからまず第一に、その直接の原因である窒素ガスの危険性やその取り扱い方について注意義務をやはり喚起をしなければならぬという意識を使用者に十分に植えつけた、こういうことになるわけなんです。 私、一例を大臣に申し上げたわけでありますけれども、これが大体いま行われておる労災裁判のごく一般的なパターンだと思う。また、一つの典型だと思うわけであります。 ところが、先ほどから言っておりますように、事故が起こってからここへ来るまでに三年半、日にちがかかっておる。そして、裁判費用もばかにならぬものだろうと思うのです。だから、こういう状態でいまもなおあるところに持ってきて、大臣、今回改正案六十七条、調整というようなことを行うということになりますと、これはもう金銭上の利益はほとんどなくなる。そして、裁判を起こしても無意味だというようなことになると、これはどうなりますか。多くの原因になっておるところの使用者の過失や故意、こういうようなものに対して警鐘を鳴らすというようなことが非常に少なくなってしまう。こういうことを私は強く感ずるわけであります。非常に大変なことだ。だから、大臣もお読みになったと思いますけれども、総評弁護団の意見書の中に書かれておるように、「資本主義社会の社会法則として大量に発生している労災職業病を最も効果的に減少させるまで防止するのは、その発生責任を厳しく追及する強力な労働運動である。ところが、右法案は、労働者が企業責任を厳しく追及する場合の最も基本的な権利を奪うものであるから、労働運動による労災職業病に対する責任追及を困難ならしめるものである。それは、使用者を野放しにするものであるから、労災職業病をさらに一層増大させるものというべきであるから、不当である。」こういう一項を総評弁護団は掲げておられるわけであります。 だから、私は大臣に言いますが、ひとつ大臣の英断で六十七条を削除といいますか、撤回をするという決断をしていただきたいと思うのですが、大臣、この話を聞いてどうですか。
○藤波国務大臣 いま神戸製鋼所における非常に不幸な事件について御指摘をいただきました。労働の現場で人命が軽んぜられるような、客観的にはそういう形になってこういう不幸な事故が起きたことを非常に残念に思いますし、また遺憾に存じます。当然、労働の現場において労働の安全、わけても生命の安全を図りますために、あらゆる施設、環境が整えられなければなりませんし、またそのための絶えざる注意が事業所において進められていくということはもう前提のような形、今日の労働社会の前提であるというふうに考えますときに、非常に残念でございます。そういうことのないようにあらゆる手だてを講じて行政指導を進めているところでありますが、今後ともその努力をして、どういう事業所であれ、また下請であれ、またその付属の労働の場であれ、少なくとも人間の働く場所において、生命の安全についてのあらゆる労働安全の手だてが講じられていくように、今後とも努力をしてまいりたいと思います。 それから、少しお伺いしたいのですけれども、いまのお話は、恐らく労災に持ち込まれて労災としての給付はしかるべく行われたのであろう、しかし、とんでもないことだということで、先生御指摘のように、裁判に持ち込まれて、裁判は裁判としての一つの判決を下した、こういうことだろうと思います。その労災法の改正で、今度持ち込ませていただいております同一の損失の補てんについて、民事賠償の分と労災の給付の分とがどういうふうな形になってその裁判の場合には行われたのか、ちょっと私、詳しくわからないのでありますけれども、今後におきましても、労災は当然給付の改善を進められていかなければなりませんし、同時に、裁判に持ち込まれます場合には、この労災が目指す、いわゆる調整をしていくというような部分が、重複する部分についてはそういった調整が進められることになりますけれども、当然、民事の裁判は裁判としての一つの結論が出るというふうに思われるわけでありまして、決して裁判に持ち込んでならぬわけでもありませんし、それを阻害をするものでもないというふうに私は考えているわけでございます。したがいまして、警鐘を鳴らす、あるいは頂門の一針として経営者はけしからぬという姿勢を追及をしていくというようなことにつきましては、従来も今後も何ら変わるところがないであろうと私は考えているわけでございます。 そこで、今回の労災法の改正につきまして、なぜ調整の部分を持ち込んだのかという御指摘、あるいはこれを撤回するように決断しろということにつきましては、従来、法律上の整合性、他の仕組みとの整合性の意味合いにおきまして、民事損害賠償と労災保険の給付ということを調整していくのは、次の労災法の改正の機会にはぜひ必要なことであるというふうに指摘を受けてきておりまして、最初の改正の機会としてこれを持ち込ませていただきまして、法律としての整合性、仕組みとしての整合性をとらせていただくということでお願いをしておるわけでございます。 いま撤回しろというお話でございますが、どうか真意をぜひ御理解をいただきまして、決してこれが労災に遭われた方々に対して民事賠償の裁判に持ち込むことを阻害するものでもなければ、権利を侵害するものでもありませんし、ましてや午前中の御質疑でもいろいろ御指摘がございましたけれども、決して使用者側、経営者側に利するために意図的に持ち込まれたものでもないというふうに心得ておりますので、どうか御理解をいただきますようにお願いをいたします。
○浦井委員 大臣の考えはわかったわけです。私はけしからぬと思うのですが、補足をいたしておきますと、このケースの場合には会社側が敗訴をいたしまして、いよいよ最後のときにこの相殺の問題、調整の問題が出ておるわけです。企業側から、遺族年金の給付を受けるので、将来にわたって、会社が支払うべき賠償額から差し引くべきであると主張した。これに対して「判決は、将来にわたって保険給付を受けることが確定していたとしても、現実に支払いを受けるまでは、損害額からこれを差引く理由はない、と軽く一蹴した。」この文章はこういうふうになっているのです。Aさんの場合で言えば年額二十万円ですからね。これは補足しておきます。 それから、いま大臣は、その企業に対するいろいろな行政指導を通じてやっていきたいということであるわけですが、その行政指導なるものが果たしてそういう労災事故をかなり防げるだけの強力なものかどうかという例をひとつ挙げてみたいと思う、そうではないということ。 たとえば、これは基準局からいただいた資料でありますが、五十三年度全労災件数が百十四万三千件、それから四日以上休業の災害が三十四万三千件、それから、そのうち死亡者が三千三百二十六人でしょう。労災事故が非常に多いわけです。ところが、その中で、これは企業けしからぬということで、大臣の部下である基準監督署が司法処分にした、言うたら制裁をした。その件数、全送検件数千六百六十七件、その中でいまのような安全衛生に関する件数は千一件にすぎぬわけです。だから、この数字から見てもまだまだいろいろなプレッシャーに負けて泣き寝入りをされておられる方が非常に多いというのが実情であるわけです。だから、そういうような現状の中で、使用者責任を追及する労災裁判というものは必要だと私は思う。大臣は、提訴することを決して封殺するような意図はございませんと言われたけれども、現実にはそういう裁判に持ち込むことを封殺するような六十七条であるのだということをもう一度十分に認識をしていただきたいと思うわけです。 それからもう一つ、労災裁判が最近多く提起をされておる理由は、労働省としては反論されるだろうけれども、労災の給付の水準が余りにも低い。いま昭和四十三年のレベルの話をしました。それがだあっと上がってはおりますけれども、しかしまだまだ低いんだ。だから、被災労働者やらその遺族にとったら裁判に持ち込まざるを得ないという現状であるわけです。そこへ調整をする。前払一時金を出して、それは最高限度額まで、利子の分は多少調整するにしても、やって、しかもその後年金も調整をするんだというようなことをやることは、あなた方がどう言われようとも、今度の調整の項目の意図というのは使用者の側に立ったものだと言わざるを得ないわけです。 何か大臣、言われることがありますか。
○藤波国務大臣 まず、労働災害というものがあってはならないという立場に立っておりまして、きのうもきょうもそういう会議を省内で開いておりますが、今後ともとにかく労働災害というものを絶滅をする。文化の時代の労働行政というようなことで、たとえば週休二日であるとか労働時間の短縮であるとか、いろいろなことをいま呼びかけておりまして、労使の話し合いも進んでおりますが、そういうふうないろいろな仕組みが前進をしていくについても、前提として労働者の労働の安全ということが基本ではないのか、こういう立場に立って、あらゆる対策を今後講じていこう、こういう省内での会議も開き、またそういう対策を講じていこう、さらに努力をしていこうとしておるわけでございます。これが一つです。 それからもう一つは、いかに日本の労災が、特に過去三回の改善で先進諸国並みのところに来ました、こう言ってみても、労働災害に遭った方の御不幸から見れば、これはどんなに手厚いものであっても、これでいいなどと労働省が言える立場ではないというふうに私は思いますが、そういう意味では、まずそういう不幸が起こらないようにすることと同時に、今後とも改善のあらゆる努力をしていくということが労働省の姿勢でなければいかぬというふうに考えておりまして、これはいろいろな労災保険会計、財政の状態もあるし、他の仕組みとのバランスもありますけれども、今後とも改善についてはあらゆる努力をしていくようにいたしたい、こう考えておるわけでありますが、今回のことにつきましては、いまいろいろ御指摘がございましたけれども、使用者側に利するためであるとか、あるいは民事裁判に持ち込むことを封殺するための意図であるとかいったようなことは全く考えたことはありません。審議会におけるいろいろな御議論、建議等も踏まえまして、特に最高裁で一つの結論が出たということにつきまして法律上の整合性を持たせるということも、これまた所管省としての労働省の責任でもございまして、こういう改正に持ち込んだわけでございまして、きわめて客観的な、だれに頼まれたというか、何からそのことが発したのだということであれば、最高裁の判決を受けて法律の整合性を持たせる、あるいは他の仕組みとの整合性を持たせる、こういうことで、従来労災法の中に欠如しておりました調整の規定を設けることによりまして労災法というものの仕組みをより充実したものにする、こういうふうな考え方で改正の手だてを講じていくことにしたわけでございまして、いろいろお考えはあると思いますし、客観的には、おまえが何と言おうとそういうことになるぞということについては、これは甘んじて御批判は受けなければならぬと思いますが、意図的にそういうことにしたのではないということだけはぜひ御理解をいただきたい。お互いに政治家でございますから、やはり真意のところは理解し合って、しかもその上に立っての議論でないと私もどうも不本意であるということだけは、尊敬する浦井先生に申し上げておきたい、こう思うのでございます。
○浦井委員 昔、曲学阿世というような言葉がはやったことがありますけれども、大臣、かなり労働官僚に洗脳されましたな。 それで、もう一つの問題は、これは前回の審議のときにわが党の梅田議員からも指摘をしたわけでありますが、労災保険というのは自賠責のような責任保険ではないのだ。しかも、世界の傾向を見ると、西ヨーロッパ諸国など、アメリカも含めまして、これはだんだんと社会保障化していっておるわけだ。損害賠償の制度というのは、民法で保障された市民の一人としての権利の一つですよね。これはやはり私は異質なものだと思う。だから、本来あなた方が言われておる既支給分でさえも私は調整すべきではないと思う。それを先ほども言いましたように一時金を盾に調整をし、未支給分の年金、将来のまだ支給しておらない年金分までも調整をして相殺しようというようなことだから、私はもってのほかだと思う。 この議論はもう午前中も大分あったのでいたしませんが、もう一つは、百歩譲って、これは総評弁護団の意見書の中にも出ておりますけれども、第三者行為災害の場合ですね。この場合でさえも通達で三年限度になっておるわけでしょう。ところが、今度の場合は、使用者責任の場合に支払われる損賠金と、本来社会保障的な性格を持つ労災給付金とを相殺する期間が、三年よりも恐らく長くなるだろう、こういうことは立法の整合性から見ても非常に疑義があるというふうに言わざるを得ないと私は思うわけでありますが、この点についてはどうですか、簡単にやってください。
○倉橋説明員 第三者災害と労災との調整につきましてはすでに調整制度を設けられておりますが、これにつきましては、先生御指摘のように、運用上の取り扱いを三年ということにいたしております。これにつきましては先ほどから私どもがお答えしたように、使用者の賠償責任というものと、労災保険給付の根っこになります労災の災害補償責任という点の重複性がないわけでございます。 〔委員長退席、住委員長代理着席〕 したがいまして、私どもとしましては、第三者災害行為によります災害と使用者による場合とは、問題の考え方を違えていいのではないかということで考えております。
○浦井委員 それじゃ答えにならぬわけなんですね。問題の考え方を変えてもよいのではないか。勝手に変えてもらっては困るわけなんだ。だから、そういう意味で、大臣、どういう角度から見ましても、この調整の項というのは絶対的に改悪だと思うわけなんだ。そういう点でこの前のときにもどなたか言われたが、まさに社会正義に反する条項だとさえ思うわけなんだ。だから、私は強く撤回を要求しておきたいと思います。 それから、スライド制の問題でありますが、これも簡単に言いますけれども、厚年、国年の場合は物価スライドで毎年五%ということになっておる。ところが、労災の場合には、賃金上昇率を基準にして実質的に二年に一回のスライドになる。それで、一〇%ということになるわけです。だから、今回は六%にされたわけなんですけれども、最近のように賃金が上がりにくい、賃金抑制策がとられているような状況の中では、六%でもこれは毎年スライドにはならないのではないか、こういうように思うわけなんですが、なぜこれは六%という数字を設定されたのですか。
○小田切説明員 年金のスライド発動要件でございますが、御指摘のように、現在年金につきまして現行法では、年度単位で賃金の変動と比較してみまして、一〇%以上差があった場合にその差に応じてスライドさせるということになっておるわけでございますが、今回六%にそのスライド発動要件である賃金変動幅を縮小するというような案を御提案申し上げているわけでございます。 御指摘のように、現行は一〇%であるわけでございますが、五十二年度以降、一〇%を下回る賃金変動ということになっております。最近の賃金変動の実態を見まして一〇%を圧縮する必要があるというようなことで、私ども労災保険審議会にもいろいろ御議論していただいたのでございます。そこで、一〇%をどの程度圧縮するかというようなことであるわけでございますが、一つのよすがといたしまして、労災保険の場合には、労災保険の非常に典型的な年金と申せると思いますが、労働者本人が受け取ります年金、障害年金、傷病年金でございますが、障害の程度に応じまして従前の賃金水準に対します給付率にいろいろ格差があるわけでございます。この格差を平均的にとってみますと一二%強になるというようなことに現行はなっておるわけでございますが、一般的な賃金変動がありました場合に、災害発生の時間的遅速によりまして、せっかく労災の特徴的な年金である障害年金、傷病年金で設けられておりますような給付率の格差が、本来あるべき格差と大きく乖離することのないような時点でスライドアップするというようなことを考えると、平均的な給付間の格差が一二%強、一三%弱であるわけでございますが、そういうことを勘案いたしますと、半分程度の六%ぐらいの賃金変動があったところでスライドアップするというような措置を講ずれば、設けられております給付間の格差が大きくゆがむことのない時点で実態賃金に合わせることが可能になるのではないかというようなことで、六%としたものでございます。
○浦井委員 等級間の格差が一二%強で、それを半分ぐらいにしたら六だから、いろいろな不都合な現象が起こらないというような話でありますが、不都合な状態が起こるというのは、スライドが二年間以上になるために起こるわけなんです。だから、毎年スライドしていく、あるいは毎年賃金上昇率に自動的にスライドさしていくという制度に改めれば、これであなたの言われるようなごちゃごちゃしたことは解決するわけなんですよね。それが一つ。 それからもう一つ、スライド制について指摘しておきたいのは、休業給付が短期給付という大枠の中に入っておりますけれども、休業補償給付が依然としてスライド率二〇%のままであるわけなんです。だから、皆さん方も御承知のように、傷病補償年金の支給対象者、一年半までは休業補償給付を受けるわけでしょう。その後年金に移行する。しかも、これは一定程度以上の重症者についての給付である。休業補償給付を受ける人の中にも一年半にわたる人は当然出てくるし、あるいはそれ以上になる人もあるわけなんです。だから、これをいつまでも二〇%に置いておくのは不都合ではないか、せっかく年金の方を一〇%から六%にというふうに改正をされるんだから、この際この二〇%の数字もやはり改正をされたらどうかというのが私の意見であります。これについてはどうですか、簡単にひとつ。
○吉本(実)政府委員 ただいまのスライドの発動要件でございます賃金水準変動幅の設定の問題でございますが、私どもは、現段階におきまして六%とすることが最近の賃金水準の変動実績を見ても相当であると考えられますし、他の社会保険のスライド規定との均衡上もよろしいのではないかというふうに考えている次第でございます。また、変動幅を余り縮小し過ぎますと、賃金水準の変動が直ちに保険給付に反映しまして、場合によりましてはかえって給付額が減少する、こんなようなこともございますので、やはり一定の幅があった方がよろしいのではないかというふうにして、先ほどのような考え方から六%といたしている次第でございます。 また、休業補償給付のスライド幅を二〇%のままにしている点でございますが、これは休業補償給付がいわば短期的なものでございまして、このような短期を予定する給付の額を、景気変動だとかあるいは季節変動、事業経営上の変動に伴う賃金の一時的な、あるいは短期的な変動に応じてきめ細かくスライドさせる必要には乏しいのではないか、また他の社会保険の短期的給付とのバランス上もいかがか、特に休業補償給付の場合は四半期単位で算定した賃金水準の変動状況をスライドさせることにしておりますから、余り変動幅が少ないということは、先ほどの場合と同じように、減額スライドが働いてしまう場合も出てくるというようなことで、今回は据え置きにしておるというような次第でございます。
○浦井委員 この点はとにかく要望しておきます。 それで、次にメリット制についてですが、まず最初に聞きたいのは、メリット制の効果というのは、あなた方言われておるように、料率を上下さして負担の均衡を図るということと、先ほどに関係ありますけれども、災害抑止効果、事業場が災害発生を防止するための努力を拡大するということの二つだということになっている。今回、一般事業については三五から四〇%に拡大をされるということでありますが、この三〇から三五%に引き上げられたのがいまから四年前の七十七国会なんですよね。そのときに三〇から三五に拡大をされた。その後いままで四年間に災害抑止効果の実績、労働省調べておられますか。
○原説明員 メリット制の効果の調査でございますが、これはメリット制を導入しました二十六年当時に実施したほかは、実施しておりません。 先生御指摘の、五十一年のメリット制拡大をいたしましたとき以降の災害発生状況を見てみますと、産業全体の就業者数は増加をしております中で、五十二年は四十万人、全体で増加しておりますし、五十三年は五十五万人増加いたしております。しかも、公共工事等の建設関係の労働者増加も大変多いわけですが、そういう中で災害の度数率が五十一年以降減少を見てきております。これをもって直ちにメリット制の効果だとは私ども申し上げられないかと思っておりますが、少なくとも個々の事業で安全意識が高揚してきた、こういうことと相まって、メリット制の幅を拡大したことの効果も否定し得ないもの、それによって災害防止の意欲を喚起した点が貢献しているのではないか、こういうふうに見ております。
○浦井委員 やはりきちんと方法を講じて調査せぬといかぬですよ。いまの話だったら、これは労働省ではございませんが、厚生省の方おられるかもわかりませんが、五十三年度、政府管掌健康保険が何で黒字になったんや、かぜがはやらなんだからでしょう、それと余り変わらぬ大同小異の返答だ私は思うのですよ。 だから大臣、やはりきちんと調べる制度を立てて、どれだけ抑止効果があったのかということも、政策を実施するわけですから、そのメリット、デメリットを、それこそはかるようにせにゃいかぬですよ。いいですか、大臣。
○藤波国務大臣 絶えず実態を把握しながら次の対策を講じていくということは、行政にとって非常に大事なことだと思います。ただ、調査をしなくても、大体この仕組みはこういうふうに生きているだろうと現場でも大体つかんで、こういうふうな形で改正に持ち込んでおりますけれども、常に調査をすべきであるということは御指摘のとおりだと思います。
○浦井委員 大分時間が迫ってきておるようで急ぎますけれども、メリット制は、元請、下請というふうに、元請は大企業が多いのですけれども、これは非常に大企業に有利に、中小企業に不利になっておるわけなんですよ。 たとえば、こんな例があるのです。これは五十二年三月一日にこの社労委員会で、石田博英労働大臣の時代に大臣に尋ねたのですけれども、三菱重工神戸造船所における難聴問題、難聴で災害補償の一時金を受けた人があるわけなんです。この人が三十四年間本工として三菱神船に勤めておるわけなんです。ところが、今度それで定年になって下請企業で三年間同じ構内で、構内下請ですから、同じ仕事をしておる。三年たって退職した。そうすると、難聴の労災補償というのは、原因となった仕事から離れたときに支給されるということなんです。だから、これはメリット制はもろに下請企業にかかってくるわけなんです。三十四年間勤めた三菱神船というのは関係ないわけなんです。下請企業の負担増になるわけなんです。先ほど神戸製鋼の例を申し上げたのですけれども、これも四人のうち三人までは下請企業で、そこへのデメリットになるわけなんですね。だから、当時の労働大臣に私申し上げたら、当時の石田労働大臣も、私も非常に不合理だと思うということで、当然これは元請が負担すべきデメリットであるというふうに私は思うわけなんですが、こういう点、その後、石田前々々大臣ですか、そういう発言を受けてどういう改善策を労働省として実施あるいは検討されたのか、ちょっと答えていただきたいと思う。
○原説明員 御指摘の、下請等に難聴労働者が移ってから後に認定されて、それが下請のメリット計算に反映するという形で下請の負担になってしまうではないかという御指摘でございますが、メリット計算を行います場合には、その原因になりましたところの疾病の原因がどこの事業場によって成っているかによってその計算方式を異にするような形にしております。それで、たとえば下請の事業場に行ったときに、騒音職場、難聴になる職場があるのかないのかによってその計算が変わってくるわけでして、元方の企業のところで難聴になるおそれのある職場があった場合に、その後の下請の職場ではそういう作業がなかったという場合には、後で認定されましても当然元方のメリット計算の方に入ってまいります。しかし、下請にも難聴になるおそれのある職場がある場合には、下請もその難聴に関してやはりある意味の関係があるわけでございますので、全然関係がないと逃れられないわけでございますので、メリット計算ではそこに負担が及ぶような計算方式をとっておるわけでございます。 しかし、御指摘のようなことがございまして、先般石田大臣がお答えをしたような関係もございまして、私ども検討いたしました結果、やはりこういうシステムはどうも現在のところいたし方がないので、指導といたしまして、下請企業で、難聴にかかっていると思われる人をまた採用しようとするときには、その時点で聴力検査等を行いまして、難聴になっておるということでしたらば、そこで障害認定申請を出していただく、そういうことによって、一遍障害認定を受けまして、それから下請で作業をしてもらえば、あとはまた下請の方で累増された難聴の度合いだけがメリットにかかってくるという形になろうかと思いますので、そういう形で、採用する場合に難聴検査を実施してやるようにという下請関係に対する指導を進めてまいりたい、そういう形で対応していきたい、こういうふうに考えております。
○浦井委員 一見よいように見えますけれども、雇用問題としてはちょっと問題が出てくるだろうと思いますがね。一遍そこで難聴の検査を受けることになるわけですからね。原さん専門家だからいろいろ言われたですけれども、はっきり言って、労働安全衛生法では、統括安全責任者があって、それを置くようになっているのは造船業と建設業でしょう。ところが、労働保険徴収法では、「請負事業の一括」という項でこれが適用されておるのは建設業だけですね。造船業は入ってないわけですよね。何で造船業を外したのかよくわからぬ。同一構内で構内下請であるわけなんですからやり方が非常にむずかしいのですよ。だから、やっぱり「請負事業の一括」という項の中に建設業と一緒に造船業も入れるのが一番簡単ではないか。これは造船業だけに限らぬですよ。構内下請をやっておるようなところはほかにもあるわけですから、こういうところはやっぱり「請負事業の一括」の中に入れて、そこで元請が責任を持つというような制度にすべきではないかというふうに思います。それが第一点。 それからもう一つ、今度は料率の問題ですけれども、去年私、トヨタ自工の下請事業主からいろいろと切々として訴えられたのですが、トヨタ自工の場合には、業種が輸送用機器製造業ということで、料率千分の七になるわけなんです。ところが、全くトヨタ自工のまるまる下請であるのだけれども、その人は金属加工業だということで千分の十九だ、こういうことになると、トヨタ自工が自分のところでやれば千分の七になるわけで、これは非常に不合理ではないか、私もなるほどなというふうに思ったわけです。 それで、私の提案なんですけれども、現在は保険料率は業種別に定められておるわけなんです。ここに不合理の原因があるのではないか。だから、業種別に定めるのと同時に、企業規模別の料率体系をこの際検討してみてはどうかというふうに思うわけであります。 この二点についてひとつ簡単に答えていただきたいと思います。
○原説明員 先生御指摘のとおり、現在の労災保険の保険料率の決定は、業種別の災害発生頻度に応じてある意味の公平な費用分担をしていただくという制度になっているわけでございます。その結果、企業規模については現在は差を設けておりませんが、現在の時点で企業規模別に見てみますと、大企業よりは中小企業の方が災害発生度が高いわけでございます。その災害発生度合いに対応した形での保険料率の設定ということになりますと、中小企業については現在よりも高い保険料率の設定にならざるを得ない形になります。また、これをそういう原理に反して費用を大企業の方で負担するような形を持ち込めないかという点は、これは保険の現在の費用負担の公平化という観点から大変問題がございまして、私どもとしてはむずかしい問題だと考えております。
○浦井委員 御意見はお伺いをしておいて、要望しておきたいと思います。 それから、これは最後の質問ですが、労災病院の問題です。労災病院の場合に、当然救急医療であるとかあるいはICU、これは関西労災にすでにいま入っておるし、これから九州労災に入れられようということだそうですけれども、こういう高度医療に力を入れなければならぬという宿命を負っておるわけであります。こういう場合に、実情を調べてみますと、詳しい数字は省きますけれども、関西労災の場合にはこのICUの八台の中に四人の看護婦さんが夜勤体制をとって全体として二十五人かかりきりになっておる。一般病棟全体としては特二の看護基準をとっておるわけでありまして、わかりやすく言えば、ICUは入れなければならぬ、手はかかる、しかし全体としては定員がそれで縛られておるものですから、他の一般病棟のところが手薄になって、二・八どころか二・十もなかなか実現しがたいということで、これはなかなかむずかしい問題ではありますけれども、そういう点で事業団が国から経営委託されているわけではなしに、労災病院の場合には事業団がもう建設、維持運営、皆やっておられるわけですから、それで国立並みということになっておるわけでありますから、事業団の中で現場の意見をよく聞いて、人員のある程度のゆとりのある配分をやったり、あるいは金でいくことなら交付金制度というようなものを一遍検討して、困っているところにはそれを出すとか、何か労災病院の全体の運営自身を現場をよく見て一遍考えてみるべきではないか。きのう聞いたのですけれども、単年度ではあるけれども五十四年度は全労災病院で三十五億ぐらいの黒を出しておるわけですから、財政的にしんどいのだというようなことは言えないと思います。 そういう点で、ひとつ関係の部局から具体的に答えていただいて、あと大臣の決意を聞きたいと思う。
○倉橋説明員 ICUを含めまして労災病院の医療体制の整備でございますが、私どもできる限り定員の増置等に努力しているわけでございます。看護婦の定員配置につきましては、看護基準の区分に定められました数に基づきまして配置しておるわけでございます。先生関西病院をごらんになられたかと思いますが、私ども、関西労災につきましては、看護婦の確保ができる四月、そういうものにつきましてはできる限りの採用を行いまして、その採用された看護婦等を有効に活用する等によりまして、できるだけICUを初めその他の看護体制に問題ができないような配置にしているわけでございますが、今後とも看護婦等の増員については努力してまいりたいと思います。 〔住委員長代理退席、委員長着席〕
○藤波国務大臣 それぞれ病院として整えていかなければならぬ所定の基準については十分努力をしておることと思います。しかし、先生御指摘のように、労災病院はだんだんと経営も努力して改善してきております。ここのところ頻繁に労働福祉事業団の藤繩理事長と協議をしておりますが、この労災病院の医療の高度化でありますとか、あるいは労働省が抱えておりますいろいろな職業病についてのさらに突っ込んだ検討でありますとか、あるいは高齢者対策をいまこの職業安定行政の中で推進しておりますが、そういう意味では高齢労働者の医療と保健の問題であるとかといったような労働省の仕事とタイアップして労災病院が充実を図っていくということは非常に大事なことになっておりまして、そういう意味での検討を重ねて今後充実していきたいと思っているところでございます。その努力をしてきているところでございますけれども、先生御指摘の趣旨をさらに現場で生かしていくように努力をしてまいりたいと思います。
○浦井委員 田中議員とかわります。
○葉梨委員長 次に、田中美智子君。
○田中(美)委員 昨年の五月二十九日の社労委で、日本テレビの樋口義一さんという四十四歳の方の職業病の認定の問題について質問いたしましたが、いまなお何の音さたがないわけですけれども、その結果どうなっていますか、御回答願いたいと思うのであります。
○原説明員 先生御指摘の樋口さんの事案は東京労働基準局の審査官の段階で不服審査を現在やっておるわけでございますが、先般御指摘のような経過がございましてまだ結論が出ておりません。 本件につきましては、主張されております医学的な問題点等の判断が大変困難なことでございまして、通常、審査の過程で一回しか開催しておりません労使代表の参与会を四回も開いておりましたり、それから参与会で聞いております意見を慎重に処理していくという形で進めておりまして、大変むずかしい事案になっております。 また、収集しました資料に基づきまして専門家の鑑定を依頼した医証をもらっておるわけでございますが、参与会等の意見でさらに鑑定依頼をすべきであるというようなことも指摘されておりますので、再度鑑定依頼をする等大変手数がかかっておりまして現在のような事態に至っております。担当審査官も新しく交代をいたしまして、いま鋭意迅速な処理に努力をしているところでございますので、近く結論が出ると思います。
○田中(美)委員 鋭意迅速に努力と言っていらっしゃいますが、いまの場合、この樋口さんというのは一昨年の十二月ですから、不服申し立てをして約一年半になるんですね。その間それは何かやっているのかもしれませんが、結果がいまなお出ない。この方は、前にも質問しておりますので略しますけれども、現在は三月二十二日に自宅で同じ病気で倒れて町田市の古山病院に入院して、肝機能が低下している。絶対安静という形で、去年の五月のときから死ぬのではないか、こういうこと言いたくないのですけれども、みんなが心配している。いま非常に危険な状態になっていられるわけですね。もともとそうなるのは、最初肝炎になったときには、社内労災という形でもって一応企業に責任があるということを会社は認めていたわけなんですね。同じ病気が健康診断でまた発見されてもう慢性になっている。産業医が一日四時間勤務でやれと言っているにもかかわらず、わずか三カ月ぐらいでこれが撤回されて、医者が撤回したのじゃないですよ。会社側が強制して働かせているわけです。そして、今度は肝硬変に進んでいる。そして、静脈瘤破裂で会社で倒れる。こういう状態になって私が国会でこれを取り上げたわけですね。その半年前に労災は業務外と出たものですから、もともと社長は業務内とある程度会社の中では認めていたわけですけれども、労働省は業務外となった。それで、不服を申し立てて審査官のところに行ったのがおととしの十二月ですから、その間制限勤務ということだったのですけれども、実際にはこれがほぼ八時間勤務になっていた。多少早く帰って六時間とかということもあったようですけれども、こういう勤務になっていたわけですね。それはどうしてそうなるかといいますと、日本テレビではA手当という手当が本俸の一六%ついているわけですけれども、年休も使い果たし、ときどき疲れて休みますと、こういう手当はカットされるということで、家も建てられた方ですし、家族も、お子さんもあるということで、いままで二十九万円の月収がいま二十四万円になっている。実際に減らされてきているわけですね。ですから、早く労災が認定されていれば、安心して彼は休むことができた。それが、いろいろな理屈をおっしゃいますけれども、一年半も放置されているということは常識では考えられない。ですから、労働者の私に対する訴えというのは、これはまさに会社側と労働省が、もし樋口さんが亡くなるということがあれば、殺したのだというぐらいの強いことを訴えていられるわけです。私もそういうふうに思います。何とかして樋口さんには生きてほしいと思います。しかし、いま非常に危険な状態にあるわけですけれども、医者はもはやもとの健康体には戻れない、これ以上悪くならないように維持していくのがもう精いっぱいなんだということは、もう去年、私が知っている段階から言われていたわけですので、この一年半を見ても、余りにもひどい仕打ちではないかというふうに思います。医証、医証といいますけれども、あれだけひどい残業時間というのがありましたら、それは樋口さんは電気技師ですから、電気をさわっていたら肝硬変になるという医証が出るということは、初めからそんなことはあり得ないはずです。カメラマンがカメラをさわっていたら肝臓が悪くなる、こんな医証は出ないはずですね。結局、全くひどい、考えられないほどの残業をしていたということが病気を発生させ、またその病気をさらに悪化させたということならば、決していま補償課長が言われたようにむずかしい問題じゃないじゃないですか。医学以前の問題だ。常識で考えても、激しい残業、深夜勤を含んだ長時間の労働というものがこうした病気を発生させたのだというふうに思います。そして、それをさらに死に近づくように追いやっているのだ、それを一年半も放置しておるということは。 これは大臣、どう思われますか。簡単な問題なんです。なぜ一年半もかかるのか。どう思われますか。
○藤波国務大臣 病気の中身につきましては、専門的な話でございますし、また、いま資料を手元に持っておりませんので、これに対する考え方を詳しく申し上げることはお許しをいただきたいと思いますが、最近、労災の審査の決定に非常に時間がかかるという形になっておりますのは、個々の事案によりますけれども、職業性の病気等について非常に慎重に審査をしなければならぬような事案もふえておりますものですから、どうしても時間がかかる場合が多いというふうに聞いておりまして、これは非常に残念なことでありますが、審査はなるべく速やかに決定結果が出されるように努力していかなければいかぬ。ただ、原則として、一つは、公正を期すということでなければいかぬわけでありまして、それにはいろいろな資料を収集いたしましたり、あるいはお一人の病気につきましては、その病気の過去にさかのぼってのいろいろな調査でありますとか、環境の調査であるとか、いろいろなことをやはり時間をかけて審査しなければならぬこともありましょう。それは公正を期すという意味でかかるとするならばある程度やむを得ないところであろうかと思うのであります。 もう一つは、迅速を期すことが非常に大事な原則である、私はそのように考えるわけでありまして、そういう意味で非常に時間のかかっておりますことをまことに申しわけなく思いますが、いま聞きますと専門医にいろいろ専門的な意見を聴取しているということでございますので、その意見書が出てくれば参与会を開いて速やかに決定していく運びになるようでございますので、さらに急がせていくようにいたしたいと思います。
○田中(美)委員 大臣、申しわけないでは済まされないと思うのです。この人はもう死にそうになっているわけなのですから、死にそうになるところまでほったらかしていたから、無理して働いてきたということは、間接的に死に近づけさせたというほどの問題です。ですから、それこそ迅速にやっていただきたい。いままで何遍も私は催促をしているわけです。どうするか、そうするといつもそこは医者から返事が来ません。今度も大臣はいま医者からの医証が来たら迅速に参与会を開いて、こう言われましたけれども、また催促したら医者から返事が来ません。そうすると、医者から来なければ永遠に労働省はできないのか。なぜ医者から来ないのかということが調べられないのか。いつも医者に責任をかぶせて、医者がやらないから労働省はできないのだ、これでは困ると思うのです。なぜ一年半も医者からきちっと来ないのか。わかっていることなのですから、そんなことはないはずじゃないですか。なぜそんなに時間がかかっているのか、そういう点で緊急にこれは解決をしていただきたいと思います。 もう一つですけれども、最近労災がなかなか認定されない、時間が非常にかかっていると大臣みずから言われているわけですけれども、これはもう亡くなった方です。川合秀男さんという方が肺門がんで亡くなられた。この人は名古屋にあります三菱重工の岩塚工場で働いていて、十五年間というものは六価クロムを吸うような仕事をしていられたわけです。肺門がんは六価クロムの中毒が特徴だと言われているわけです。それで、これは七七年六月ですから、まる三年前に申請が出ているわけです。その後私も何遍も伺っているわけですけれども、いろいろ事例がないから世界の事例を集めているとかということを何回も言われまして、一応すべての資料が集まったからこれをこれから分析するのだからもうちょっと待ってください、こういうふうに言って三年かかっているのです。この川合さんのお宅はお子さんが三人いられたわけですけれども、一人は十八歳で大学の一年生のときにお父さんが四十九歳で亡くなっているのです。幾ら何でもいまどき四十九歳とか、さっきの樋口さんの場合四十四歳ですよ。そういう年齢で現職で倒れていくこと自体非常に問題があると思うのですけれども、四十九歳のときでしたからお子さんが大学一年生です。申請したわけですけれども、三年たってもまだだめだ。結局大学はやめられて、そして働いているのです。それほど子供の人生を大きく変えているわけです。ですから、余りにも遅いということは一体どういうことなのか。公正を期す、公正を期すといいますけれども、もし樋口さんの場合に労災であるならば、それが遅かったことが樋口さんを死に至らせる結果になっているかもしれないし、公正を期すといいながら三年も引き延ばすことによって、一人の青年がせっかく大学に入っていながらそれをやめて、人生が変わってくる。父を失うだけでなく、自分の人生まで変わっていく、余りにもひどいではないかと私は思うわけです。そういう点で、公正を期すという美名のもとになかなか労災認定をしないという労働省の姿勢は改めていただきたい。人間のすることですから、どうしてもわかりにくいこともあるかもしれません。そうであるならば、そうした死に至らしめるような道、これは防ぐ方向に行くべきだし、一人の青年の人生を変えていくような道に行かないように努力していただきたいと私は思うわけです。 大臣の決意を聞かしていただきたいと思います。
○藤波国務大臣 お一人お一人の人命にかかわることであり、また病気という非常に不幸な状態の中でのことでございますから、お答えを申し上げる言葉遣いは非常にむずかしいわけでありますけれども、労働省としては労働者の立場に立って、労災の審査についてはできる限り早く決定して、そして労働者の方に安心もしてもらうし、治療を促進するということでなければいかぬ、基本的にそのように考えております。そして、そのように努力をいたしております。ただ、これは委員も御理解いただいておると思いますけれども、それぞれの病気につきましてはそれぞれの専門医に、できる限り権威のある筋に専門的に審査をお願いいたしまして、その結果を尊重して公正を期して労災の適用を決定する、こういう段取りにいたしておりますので、労働省としては早くと考えておりましても、公正を期すための審査のいろいろな段取りに時間がかかっているわけです。お医者さんに一生懸命労働省の側から早くというお願いをしましても、どうしても専門的に突っ込んで一つの結論を得るための医師としての公正を期した審査ということで時間がかかることが多いものですから、事務的におくれているのではなくて、そういうことでおくれている場合がありますことを、それでもなお私どもとしては非常に残念に思って急いでいかなければいかぬことは当然でございますけれども、そういった医師としての専門的な立場があるということについてはぜひ御理解をいただきたい、こういうふうに思うのです。そして、だんだんとさっきも申し上げましたように、労働の環境からくる病気であるとか、特に職業性の疾病等については非常に新しい型の病気がふえてきているものですから、それぞれの専門医としてもやはり時間をかけて審査することになるのだと思います。いままでの決定例を見て、この人の場合はいままでの例のこれだなということでいけるといいのですけれども、どうしても新しい型の病気が多いようでございまして、時間がかかっておりますことをなお申しわけなく思いますが、今後公正ももちろんでありますけれども、迅速を旨といたしまして、できる限りそういった医師の方々の審査を急いでいただくようにお願いをするということを労働省の姿勢として促進してまいりたい、このように考えております。
○田中(美)委員 川合さんの問題はいまどこまで行っているかということを聞いておりませんので、ぜひ一言伺いたいと思います。
○原説明員 名古屋の川合さんの請求事案でございますが、五十二年六月に請求が確かにあったものでございます。 クロム関係の肺がんにつきましては世界的にもいろいろ文献がございまして、クロム製造工程における肺がんにつきましては、五十年であったかと思いますが、認定をするという形で、専門医の結論に従って認定をいたしております。そういう形でクロム製造工程での従事者の肺がんは以後認定することになりまして、省令まで改正してやっておりますが、この川合さんのケースはクロムではございますが、クロム製造工程ではない工程の従事者でございます。この関係につきましての肺がんの発生については、世界的にもまだ医学的に確立されてない分野でございますので、この辺について救うことができるのかどうか、こういう観点からわが国の専門家にこの面についての会議を持っていただいて鋭意検討していただいておるところでございます。そのような過程でおくれているものでございます。
○田中(美)委員 いずれにしても三年ですからね。 それから、樋口さんの場合は、本当に死んでいく人ですから何とか助けてもらいたいわけですよ、樋口さんを。そういう点で誠意を持ってもっと人間らしく人を愛する気持ちから、やはり立場で、こうせい、こうせいと言ってほっちらかして、ほっちらかしているんではないかもしれませんが、何回聞いても同じ回答ですので、結論が出ない。迅速に大臣やっていただきたい、これで質問を終わります。
○葉梨委員長 次に、小渕正義君。
○小渕(正)委員 今回の法改正の一番論議の中心になっているのは、要するに俗に言う調整措置だと思います。したがって、この調整措置の内容についてそれぞれ各委員からも集中的に私はこれの質問がされたと思うのでありますが、私も今回の提案されている、そういう調整措置をやろうとしているものについては本質的には理解するものでありますが、ただ問題は、これが具体的な実施基準については、これがまだ持ち越されておるわけですね。したがって、これから何といいますか、調整規定の施行に当たっては労災審議会の議を経た上で定めるということになっているわけでありまして、問題は、初めてこういう形で取り上げられてやるわけでありますから、実際にどうなるだろうかというのがどうしても心配になるわけです。 たとえば、逸失利益補てん部分の三分の二を調整の対象とする民事損害賠償において、一般的に労働可能と考えられている年齢を超えて支給される労災年金については調整の対象としない。まあ一般的に労働可能と考えられている年齢をどこに置くかというのは常識的にはいろいろあれもありましょうけれども、この問題なんかも一つ。 次に、労災保険からの年金給付を調整停止する期間については、調整措置がとられた受給権者の相当部分について支給が再開され得ると考えられる平均期間をもって限度とする。これは一体どういうことを言っているのか、一回、二回読み返してもよくわからないわけですが、要するにこういったことについて具体的にはこういうものだというような実施基準が明らかにされないことには、たとえ考え方としては理解できても、やはりこれが一般の方の一部この問題について非常に不安を持っておられる方たちがおられるわけでありますが、そういうことを考えますと、どうしてもそういうことになりますと、私もやはりこの点が果たしてどのようになるんだろうか、この運用いかんによっては、このことを私たちとしては理解できるにいたしましても、否定せざるを得ないような形になるのではないかという、またそういった若干の危惧を持つものであります。したがいまして、ひとつここらあたりについて具体的な実施基準についてのそれぞれのもう少し突っ込んだものが示されるのであれば、一つのそれをお聞きした上でないと、大綱的には理解できたとしても、やはりここだけは保留せざるを得ないようなむずかしい問題が含まれておりますので、そういう意味で、ひとつできる限り可能な限りの具体的な考え方等をお示しいただきたい、かように思います。
○倉橋説明員 民事賠償と労災保険給付との調整でございますが、まず一つには、民事賠償額につきまして調整するという問題につきましては、法案に書いてございますように、労働者が民事賠償上請求いたしましたいわゆる得べかりし収入額、賃金額の中から労災保険で給付することになっております前払一時金相当、遺族の場合でございましたら生前賃金の千日分でございます。一級に相当する障害を受けた方につきましては千三百四十日分の賃金相当の額、これを控除いたしました残りの額が民事賠償額として判決される。したがいまして、調整対象となりますのは前払一時金相当額でございます。 また、二つ目の調整といたしまして民事賠償が支払われたという場合でございますが、その支払われた民事賠償額が将来の支給される年金分に相当するような損害補てん部分につきまして民事賠償が行われたという場合でございますが、そういう場合につきましては労災給付につきまして所要の調整をするということになるわけでございます。 原則的に考えてまいりますと、民事賠償額で補てんされましたのは理論的には一〇〇%補てんをしたというようなことでなるわけでございますが、先ほど来いろいろ御議論等がございます。私ども、いろいろ制度を検討する中に、やはり労災保険制度というものが年金を導入している、年金が終身支払われることによって結果的には遺族なり被災労働者の生活の安定に資するという役割りを年金が持っております。そういう年金のよさを配慮するために、したがいまして一定年限たちますと支給を再開する、年金につきまして支給を再開する道を開いていくべきであると考えているわけでございます。 それでは、いつから年金を再開するかという考え方でございますが、これは先ほど来何回も申しておりますように、労災保険審議会にお諮りいたしまして、その諮りました合理的な基準によりまして運用してまいりたいと思いますが、その基準につきましては、いま先生がお読みになりました労災保険審議会におきまして会長が最終的な総会の日に、こういうことで今後の基準を作成してもらいたいという御発言がございまして、それに基づきまして作成してまいりたいと思います。 その考え方といたしましては、調整する年金の総額につきましては、賠償後支払われていく年金総額を累計したものが裁判上の逸失利益の三分の二相当になった、そういう年金が支給されるべき期間をもって打ち切りまして、しかる後に年金を再開をしていくというのが一点でございます。 二点目の場合には、労働可能年齢を超えては調整しないということでございますが、一般的な裁判事例を見てまいりますと、労働可能年齢というのは、労働者が六十七歳まで働けるという前提で逸失利益を計算しているのが一般的でございます。したがいまして、六十七歳にするかどうかということは別にいたしまして、損害賠償の算定上は六十七歳までの逸失利益が計算され得るということを尊重いたしまして、労働可能年齢以後におきましては、たとえ賠償額が相当額行われていた場合におきましても、六十七歳以降につきましては年金を再開をしてまいりたいというようなことを考えているわけでございます。 三番目の、相当部分の年金受給者であった者が支給を再開され得る時点をもって限度とするというような中身でございますが、これにつきましては、やはり労災保険制度に年金制度を導入していた、片や損害賠償というものは一時金でございます。一時金では相当長い期間にわたりましてそれを使い果たしまして、その後の生活等につきましていろいろ問題がある、そういうようなことから、従来は一時金であった労災保険制度が年金に切りかわっていたという経緯もございます。そういう年金制のよさを勘案いたしまして、年金受給者群全体から見まして相当部分のものが年金を再開し得るような合理的な時点を設定いたしまして、それ以降につきましては年金を再開していくというようなことを考えているわけでございます。 いずれにいたしましても、それらの基準につきましては、今後検討いたしまして、審議会におきまして労使または公益の方々の御意見を聞きながら合理的な基準を作成してまいりたいと思っております。
○小渕(正)委員 言葉として言われていることからいくと理解できるわけです。ただ、どうしてもいま三の項で言われた受給権者の相当部分といっても、支給が再開されると考えられる平均期間をもって限度とする、言葉としてはそういう意味のことを言っているんだなということはわかるけれども、では具体的に平均的にどういう関係でこれを考えたらいいのかとなると、ちょっとこれはむずかしいですね。だから、たとえばこれは私のあれなんですけれども、民事損害賠償である程度額が決定される、それから前払一時金的なものを引いた残りの額の何分の幾らだけは調整の対象にしますとか、何かそんなはっきりしておればまだ私はわかりやすいと思うのです。しかし、そこが出ないところにむずかしさがあるのだろうと思うのですけれども、私たちこれを実際に適用する場合のことを考えたら、もう少しそこのところを割り切って、逆に民事で相当の額が決まった、それから労災法における前払一時金等を引いた残りの額に対して、それの二分の一とか三分の二とか何分の一とかを調整の対象にするとか、場合によってはそれがその人の平均給付の考えから言って、それとの絡ませをしながらどうだというようなことがもう少し明らかに出てくると少しわかるのですけれども、そこらあたりがもう少しはっきりしないものですから、どうしてもこの部分で不安が消えない、こういうことにならざるを得ないわけですよ。 だから、そういうことで私がいま一つ申し上げましたけれども、何かそういう考え方を少し整理したものが具体的に基準として試案があるのではないか、なかったらおかしいのではないかという気も私はするので、それがいまの場合まだ公にされないというのであればそれまでですけれども、何か少しそういうものがないと、これだけでは、言葉としては理解できても実際問題としてどうしても若干の不安が残る。そういう意味で、これに対しての賛否の態度を決するにちょっとちゅうちょせざるを得ない、こうなってくるわけですが、白紙じゃないわけでしょうから、労働省としてはそういう審議会にかける場合、何らかのそういう技術的ないろいろな試案というものを持って御相談をせぬことにはいかないのではないかと思うのですけれども、どうですか、もう審議会にすべて、どうぞひとつこういうことで審議会の皆さん考えてくださいという形の出し方をされるのですか。その点いかがですか。
○倉橋説明員 私の説明が非常に不十分でございましたが、先生御指摘のように、まず第一には、前払一時金等を除きまして、労働者またはその遺族が受けた損害賠償の中の逸失利益分の三分の二、それと労災年金が毎年ずっと支給されていくべき額が累増した額とがイコールになったその時点が最終の期日だ、そこまでは原則として調整するということになるわけでございますが、その原則によった場合に著しく長くなるということが考えられるわけでございます。そういうような場合に、著しく長いということになりますと、先ほど言いましたように、労災制度が年金を導入していた、年金の利益といいますか、そういうものの恩典が薄くなるということから、その年限の中にどのくらい足切りをしていくかということを考える必要があるのではないかということで、もう一つの考えといたしまして、たとえば労働可能年齢に達した時点からはもう無条件に再開をしていく、一の原則によって相当期間長くてもある一定年齢以上になれば年金は支給していくのだというような足切りを行っていくということでございます。 三番目は、さらにそのようなことをやっても相当期間長くなるというようなケースにつきましては、そこには、三番目にあれしましたように、一般的な受給者群の中で失権をしていく方があるわけでございますが、その失権をしていく数をずっと見てまいりまして、まだまだ相当部分の方が失権をしないで残っているような合理的な期間をいろいろ数理計算をいたしまして出しまして、その期限をもってそれ以上は調整をしていかない、そういうような考え方でございまして、二番目の問題、三番目の問題につきましては、何歳にするか、またはその相当部分の者が年金受給権が残っているというような具体的な数値につきましては、まだ私どもとして確定数値を持っていないわけでございます。そういう確定的な数値につきましては現在いろいろ数値を集めておりますが、その数値をもって案をつくりまして労災審議会に諮りまして、その御意見を聞いて定めるということでございます。
○小渕(正)委員 それ以上お聞きしてもそれ以上の言葉としてのあれは出ないでしょうからこれでやめますけれども、ただ先ほどの説明の中で、労働可能な年齢を六十七歳というふうに言われたようですけれども、労働というのは、どう見るかによるでしょうけれども、社会常識的にどうでしょう。いまの世相の状況の中、六十歳定年をやっていこう、行く行くは六十五歳くらいまでという目標はありましょうけれども、六十七歳というのは余り考え過ぎた年ではないでしょうか、その点いかがですか。
○倉橋説明員 私、先ほど六十七歳と言いましたのは、調整の基準にするときを六十七歳と言ったつもりではございませんで、民事賠償の逸失利益の計算上六十七歳まで働けるという想定のもとで賠償額を算定するということでございまして、私ども今後の調整基準を策定する場合に、その年齢をとるかどうかはまた別の問題でございます。
○小渕(正)委員 それでは、この問題でなおお尋ねしますが、民事訴訟によるそういう関係の中で明らかに出てくれば、またそれなりのこの基準に当てたいろいろなやり方ができるわけですね。ととろが、私の感じでは、こういった労災関係の訴訟というのが、結果的には和解によって解決していくケースが非常に多いと思います。示談、和解、見舞い金、こういう形でこの問題が処理されていく可能性が非常に大きいと思いますが、そのような場合にこれとの調整という問題をどのようにされるのか。明らかに、そういう民事訴訟の中できちっと出されたなら、それなりの分はいろいろ適用されたあれでわかるでしょうけれども、単なる示談や和解、見舞い金の中でこういった問題が処理される可能性が非常に多いと思いますが、そうした場合に、調整するといったら一体どういうふうになるのか。もう母対象になるのかならないのか、そこらあたりを含めて、こういった場合におけるいまのお考えがあったらお聞かせいただきたいと思います。
○吉本(実)政府委員 労働災害に関しまして、示談金等が支払われた場合に、それが民事損害賠償に当たるか否かということでございますが、基本的には個別のケースごとに当事者の意思いかんによって決められることとなろうかと思います。この場合、示談金に労災保険給付に相当する部分をてん補する部分があるというふうなことであれば、その部分が調整の対象とはなるものでございます。しかし、通常の場合は、事業主と労働者の間に取り交わされている示談等を見ますと、労災保険給付が支給されるということを前提とした上でのいわば上積み的な意味で支払われるというようなことが多いと考えられます。したがいまして、このような場合には労災保険給付に相当する部分というものには当たらないということでございますから、調整の対象とはならないというふうに考えておるわけです。
○小渕(正)委員 そうしますと、大体こういう当人と事業主との間で結果的に示談、和解、見舞い金とかいうような形の中で処理されたものは、もうほとんど調整の対象にならないということに考えていいですね。金額次第ではということでしょうけれども、その金額がオープンになるかどうかもまたこれは一つの問題でしょうし、裁判所の中で和解が勧告されて和解された場合には内容がわかりますけれども、それ以外のときに必ずしもすべてオープンにされるということばかりではないでしょうし、そういうことを考えますと、一応民事訴訟によるあれ以外はなかなか調整の対象になりがたい、こういうふうにも実際問題としては考えられるわけですけれども、その点どうでしょうか。
○倉橋説明員 示談の内容につきましては、やはり当事者間で決定されるものでございますから、当事者間の意思というものが一番重要でございます。私ども、成立いたしました示談、和解等の内容につきましては、できるだけ本人の意思を確認いたしまして、それに基づいて決定をしていってまいりたいと思います。 なお、その内容につきましてわからないというような場合につきましては、その額等にもよりましていろいろな判断ができるかと思いますが、相当額のものであれば、従来のいろいろ第三者行為災害等におきます調整等によりまして、そういう行政上の経験を生かしまして、その中に損害部分がどのくらいあるかというようなことも推定をしてまいりたいと思いますが、いずれにしても基本的には本人の意思による、そういうことによって労災補てん部分があるのかないのかということを決めてまいりたいと思っております。
○小渕(正)委員 それでは、一般的なものに質問を移しますが、今回、労災保険給付の水準をある程度引き上げられることになったわけでありますが、今回引き上げられるような水準の根拠はどこに求められたのか。今回の改正案の中では、従来一〇%のやつを今度六%ですか、これからのスライドはそういう数字になっていますけれども、今回引き上げる根拠としては一体どこらあたりを根拠にして考えられたのかということが一つ。 それから、障害補償年金に前払一時金制度を設けることになったわけでありますが、これは労災保険制度の改善の方向としては、年金化がずっと今日進められてきておる、そういう流れから見た場合に、果たしてこういうことが逆行することにならないのかどうかということが一つ問題として残るわけであります。 それから次は、前払一時金の最高限度額は一応今回決められておりますが、これの具体的な根拠。と申しますのは、もっと前払一時金の最高限度額を引き上げていいんじゃないかという見方もあるわけでありまして、そこらあたりについてのお考えをひとつお聞かせいただきたいと思います。
○吉本(実)政府委員 まず、スライドの問題でございますが、スライドの発動要件につきましては、現行の変動率一〇%を六%というふうにしております。これは、最近の賃金の上昇の問題あるいは障害等級間の格差のことを考えての問題というような点から、こういった点を配慮いたしまして六%というふうにしている次第でございます。 それから、前払一時金の問題でございますけれども、これをもっとふやしたらどうかということでございますが、これは現行の最低保障を定めております労働基準法の例にならいまして、それらの整合を図りながら行っておるというふうに考えている次第でございまして、現在その金額をもって妥当な線ではないかというふうに思っております。
○倉橋説明員 遺族補償年金の引き上げの根拠でございます。 遺族補償年金につきましては、家族が一人残された場合につきましては大幅な改善を行う、それにあわせまして二人、三人ということも引き上げを図っているわけでございますが、その考え方といたしましては、遺族補償年金につきましては、従来は被扶養利益を喪失した、それの補てんをすることを目的とするということから、被扶養利益を失いました遺族数に応じまして、労働者が生前受けていた賃金に対する一定の給付率をもって決めていたわけでございます。そういう給付率を決定していたわけでございますが、その際に、一般的な世帯人員別の消費支出水準の比率を基礎として給付率を算定していたわけでございます。しかしながら、被災者の家庭の消費支出の実態から見ますと、被災後の遺族の消費支出水準は、たとえば労働者の方を含めまして三人家族だったというような場合におきまして、労働者の方が亡くなられると三人から二人になるわけでございます。そういうような場合につきまして、やはり一人減ったということによって若干の消費支出の変動があるわけでございますが、その変動率、そういうものを根拠にして遺族数に応じた水準を決定するのがいいのではないかというようなことで、今回前収の六七%、これは労働者が労働不能になった場合の障害等級の三級に相当するわけでございますが、労働者が完全に労働能力を喪失したという場合の障害補償年金といたしましては、前職賃金の六七%を基準とする、それを基準といたしまして、先ほど言いました消費支出の変動、一人亡くなられたために消費支出がどのくらい変動するかというようなことを掛け合わせまして、その率を計算してきたわけでございます。そういうような考え方に基づきまして、まず遺族一人の場合の一般的な水準を前収の四二%に引き上げるというようにしたわけでございます。 それから、前払一時金制度が年金制度の逆コースになるのではないかという御指摘でございます。 私ども、年金制度を労災保険制度に導入したのは、やはり長期にわたりまして残された遺族の方または被災労働者の方の補償の実が上がるように年金制度を導入したわけでございますが、やはり被災をして病状が固定をいたしまして社会復帰をする場合、または遺族の方がいろいろ、主人が亡くなられたために職業につくとか住居を転居をするというような場合に、やはり一時金の必要があるというような非常に強い要請があるわけでございます。そういうような要請にこたえるために、年金制度の趣旨を生かしながら、やはりその一時金を遺族または被災労働者が受けられるようなことによりまして社会復帰等をスムーズにするというようなことから、前払一時金制度等を設けているわけでございます。したがいまして、これにつきましては、やはり年金のよさを残すためには余り多額になるということはいかがかと思っておりまして、その限度額につきましては、遺族につきましては一千日分、重度の三等級の障害者につきましては千三百四十日分相当の金額を限度といたしているわけでございます。
○小渕(正)委員 前払一時金制度は、そういった理由で今回新しく設けられることになったことは、これはいまよりも対象者というか、該当者という言葉は悪いのでしょうけれども、そういう方たちのためにはかえってこういう並立的な、併用的な制度はよかったんじゃないかと私は思いますね。そういう意味では、年金化するときに、すぐ機械的に年金一本にしないで、こういう一時金制度等も並立的にぜひつくるべきじゃなかったか。私はこれを見まして、いまごろこんなことを考えたのかなという感じがしたのであります。そういう意味では、余り一時金はたくさんやってもいかぬだろうということでしょうけれども、これはやはりある程度は、当事者といいますか、その人たちの希望に沿って、どちらをとるか選択できるような、そういった選択制というものをもう少し導入した方がいいのではないか。もちろん年金でいくか一時金方式でいくかということは、それぞれの置かれている環境によって違いますから、余りそれを強く出すと年金化にまた逆行することになりましょうけれども、そういう意味では、そういった血の通った行政といいますか、そういう角度から見ますならば、当事者たちの選択によってある程度どちらかを選べるようなものをもう少し制度の中に盛り込むようなものがもう少し考えられていいのではないかという意味で、ひとつ意見として申し上げたわけでありますので、この点はこれからの運用の中でもいろいろとそういった思想も取り入れた中での検討をぜひお願いしておきたいと思うのであります。 次に、今回障害特別支給金の金額が改善されて上がっているわけであります。障害特別支給金の制度がどういうアイテムでこういうふうにつくられたのかわかりませんが、これはどちらがいいのかわかりませんけれども、本来ならば保険給付の中に全部こういうものを入れていくということが筋として本当はいいのではないかという感じがたてまえとしてはするわけであります。したがって、この点、金額が余り大きくなっていくようであるならば、保険給付の中に全部盛り込む方向が逆にいいのではないかという気が私はするわけであります。そういう意味では、ここらあたりの金額の限界といいますか、そういうものについて何かお考えを持っておられるかどうか、その点をお尋ねいたします。
○倉橋説明員 特別支給金につきましては、今回大幅な増額措置というようなことで対処してまいりたいと思っておりますが、この制度につきましては、昭和四十九年の制度の改正の際に、労災審議会の建議に基づきまして、労働福祉事業の一環として設けられたものでございます。 その性格でございますが、業務上または通勤のために被災いたしました労働者やその遺族に対する経済的な逸失利益以外の面にわたって措置をするというような意味合いのものでございまして、その性格が、労災補償としての保険給付としての性格とは必ずしも同じくするものではないのでございます。あくまでも労働福祉事業の一環として行われるというものでございます。したがいまして、むしろ保険給付を補完いたしまして労働者の福祉の増進に資するものと理解しております。 そういうことから考えますと、現在、特別支給金の法的な位置づけなり性格の明確化については、保険給付として位置づけるにつきましては、なおまだ相当の検討を要する必要があるのではないかと思うわけでございます。この問題につきましては、労災保険審議会におきましても、その性格またはそれの保護、取り扱い、または調整の対象にするか否か、いろいろ議論があったわけでございますが、最終的には、この取り扱いについては今後とも検討するということで、検討の課題になっているわけでございます。私ども、特別支給金の内容につきましては今後とも実情に即した取り扱いをしてまいりたいと思いますが、その性格づけにつきましては今後とも慎重に配慮して対処してまいりたいと思っております。
○小田切説明員 いまの一時金でございます障害特別支給金とか遺族特別支給金の引き上げの今後のお話でございますが、特別支給金につきましては、いま審議官から御説明いたしましたように、災害によって賃金が得られなくなったという逸失利益そのものを補てんする、てん補するという法律上の性格のものとしてではなしに、労働福祉事業として、いわば弔慰見舞い金的なものとして出しているということで処理してきているわけでございます。そういうことから考えますと、現在企業内におきましていわゆる上積み給付というものが行われているわけでございますが、いろいろな意味合いで行われているわけでございますが、それの弔慰見舞い金的なものが、平均的に見ますと、死亡等の場合には三百万円強であるというような上昇になっている。その辺を見まして、今回死亡等の場合に遺族に差し上げます特別支給金を二百万円から三百万円に五割アップしたいというようなことで御議論いただいておるわけでございますが、今後につきましても、そういう企業内上積みの金額の状況等を見まして、必要に応じて改善を図ってまいりたいと考えております。 本来の保険給付とのバランスで、特別支給金、そういう形で出すものが不当に高くなってくるのも問題じゃないかというような御指摘でございますが、今回五割アップで、死亡の場合には二百万円を三百万円にということでございますが、しばらく定額にその金額を据え置いたものでございますから五割アップするということでございますが、それほど本来の保険給付とのバランスで大きなものになるということではないのではないかと考えております。
○小渕(正)委員 そうすると、これはそういう見舞い金的な性格であり、世間相場の水準から見て金額は決めていったということですね。ということになるならば、そういう世間水準で、こういった弔慰金、見舞い金的なものの水準が上がれば、それに準じて当然考えていくということになるわけですね。わかりました。 次に、ボーナス特別支給金の算定の基礎でありますが、特別給与の限度額が百万円または年間定期給与額の二〇%のいずれかが限度額の一つの基準としてあるわけです。私は、その人がもしもそこで労働されていた場合にどのくらいのボーナスだったのかということを見るのは、なかなかむずかしい基準になると思いますけれども、年間定期給与額の二〇%というのはちょっと低いのじゃないかと思うのです。現在、世間一般に言って年間臨時給与というか、そういうものは、年間ですから夏と秋、冬を考えたら、最低でも三カ月以内ということはあり得ないと思うのです。それから見ると、二〇%というのはちょっと低いのではないかという気がするのですが、そこらあたりについての考え方があったらお示しいただきたいと思います。 それから、時間の関係もありますので合わせて申し上げますが、労災による外傷性の脊髄損傷者、俗に言う車いすの生活を余儀なくされている人たちの場合、これの援護策といいますか、社会復帰というものは非常に大事な問題であります。これらの援護策について、特に社会復帰対策としてはどのようなことを重点にして労働省としてはやられておるのか、そこらあたりについても特にお願いしたいと思います。なかなかむずかしい問題であろうかと思いますが、やはり社会復帰するという意味でのそういうリハビリテーションその他の施設、職業訓練的な施設、あわせて社会復帰をどのようにさせていくかということについて労働省としては実際問題としてどの程度これらに力を入れてやられているのか、ひとつそこらあたりの実態を御説明いただきたいと思います。
○吉本(実)政府委員 まず、第一点のボーナス特別支給金の算定の基礎となる特別給与の限度額でございますが、現在その者の年間特別給与額は二〇%相当額といたしております。これが額が百万円を超える場合には百万円と、もう一つの条件があるわけでございまして、これによりまして特別支給金の額を算定することとしております。御承知のように、特別給与は景気の変動なり事業の種類、事業の規模によって大幅な格差を生じやすいわけでございまして、不安定な要素を持っております。そういう意味で、実情に反しました高額な給与等を給付の基礎に算入することは好ましくないのではないかというふうに考えておる次第でございます。また、最近におきます経済的な変動の大きい時期におきましては、特にボーナスの上限額を引き上げるということは、こういった偶発的な要素によりまして受給間に不当に格差を拡大するようなおそれもありますので、慎重に考える必要があろうかと思います。しかし、それにいたしましても、現行の限度額が実情にそぐわない、こういうふうに考えられなくもない。こういったこと等につきましては、今後とも特別給与の支給動向を十分見ながら検討してまいりたいというふうに思っている次第でございます。 それから、リハビリの点でございます。ただいま御指摘のように、医学的なリハビリテーションが職業的な社会復帰と密接な関連を持って行われるべきじゃないか、こういう点でございますが、労災保険行政におきましてはかねがね被災労務者の社会復帰につきましては重大な関心を持っているところでございまして、特に職業復帰の件につきましては、現在全国八カ所の労災リハビリテーション作業所を設けまして、労災病院等と連携をしながら自立更生を援助することといたしております。それから、昨年の五月に福岡県の飯塚市に総合せき損センターを設置いたしまして、治療から職業的リハビリテーションまで一貫して行うようにしておるところでございます。また、さらに昨年の十二月には埼玉県所沢市に開設しました国立リハビリテーションセンターにおきましても、その隣接しております同時につくりました厚生省の国立身体障害者リハビリテーションセンターと連携いたしまして、一貫した業務を行っておる次第でございます。また、さらに四十五年度から労働福祉事業団に社会復帰指導員というものを設置しておりますし、また五十三年度からは主な都道府県労働基準局に社会復帰指導官を設置いたしまして、療養中から社会復帰に必要な職業相談ということを行うようにしているところでございます。
○小渕(正)委員 それから、こういう脊髄損傷者といいますか、労災によってこういう状態になられた方たちは全国的に大体どの程度おられるのですか。掌握されておれば、その数をお知らせいただきたいと思います。 それから、この福祉事業の中の一つとして社会復帰資金貸付制度というのがあって、今回これも改善されることになっているわけでありまして、貸付金を七十万から百万に引き上げる、こういうことで今回改正が出されておるわけでありますが、現在までこの制度の中で大体どれくらいの人たちが利用されておるのか。貸付金ということになっておりますと、実際問題として返済その他はどのような形をされておるのか、そこらあたりの実態をひとつ御説明いただきたい、かように思います。
○小田切説明員 最初の数字の方はいまわかっておりますが、私ども現在長期的に療養を継続する必要があるということで傷病補償年金というものを支給しているわけでございます。その対象の中では、五十三年度の数字でございますが、背損の方々は四千五百人ほどということになっております。そういうような方々に、長期に療養を続ける必要があるということで年金をずっと出しているわけでございます。 そこで、二番目の方の社会復帰資金の問題でございますが、社会復帰資金の貸付制度というものを労働福祉事業団でやっております。労災保険の制度といたしましては、労働福祉事業の一環ということでございますが、貸付限度額は七十万円でございます。今回の制度改正の一環といたしまして百万円に引き上げたい、こういうふうに考えておりますが、これを利用なさる方々は主として車いすで日常生活をされる方々でございまして、病院から退院してきまして自宅で生活を送るというようなことになりますと、玄関であるとかおふろ場であるとかいうところの改造が必要になるわけでございますが、主としてそういうものに使われておるというのが実態でございます。貸与制度でございますが、無利息でございまして、一定の場合には返還免除というような制度もございます。五十三年度の実績でございますが、五十三年度一年間にこの社会復帰資金貸付制度を利用された方は約二百四十人ほどございまして、金額で申し上げますと一億六千四百万円ほどの貸付金を二百四十名ほどの方が受けておられるというような実態になっております。
○小渕(正)委員 五十三年度で二百四十人、いままでの累計でどれくらいですか。それと、返還免除というのは全部そういう形になっているわけですか。その貸付金は、貸付対象の方に該当すればみんな返還免除、こういう制度ですか。
○小田切説明員 一定の要件に当たる場合に返還免除ということでございますが、大方の方々は要件に該当するということで、実際問題としては返還免除の処置を受けているということになっておるようであります。(小渕(正)委員「累計は」と呼ぶ)ちょっと手元の数字に累計はございませんが、その前の五十二年度の実績におきましても二百十人ということでございます。四十一年からずっと実施してきているわけでございますが、手元にございます五十二年度、五十三年度の実績で見ますと、二百十ないし二百四十人の利用実績があるということでございます。
○小渕(正)委員 最近で年間二百人前後、二百人からオーバーということですから、四十一年から大体二百人前後と見ていいということですか。そうじゃないでしょう。その点は後でいいですから、きちっと数字をください。 次に、廃疾状態の妻の場合にこういう話をちょっと聞いたのです。真相はつまびらかでないのですけれども、遺族年金といいますか、現在のこの制度の中で廃疾状態の妻に対しての適用は五級以上というふうになっていると思います。これが実際問題として、地方公務員その他そういった現業部門の公務員の人たちの場合には七級以上からこれが給付されている、こういうふうな説があるわけでありますが、この点について事実かどうかということと、もしこれが事実だとすればどうしてこんな違いが出てくるのか。担当が違うからと言ってしまえばそれまでですけれども、そこらあたりについての御説明をいただきたいと思います。 それから、あわせてこの問題と関連いたしまして一つ問題になっているのは、今回は年金のスライド発動要件として、賃金のアップ率を一〇%から六%に緩和するということになっておるわけでありますが、これも公務員関係の補償制度の中では、その都度その都度のアップ率をそのままスライドさせている、実際にはこういう運営をやっておるのじゃないかという話も実は聞くわけです。したがって、この二つについても、制度としての実際の運用がそういう形の中でかなり格差を持たれてやられているのではないかという説があるわけでありますが、これらについて当局として事実としてつかんでおられるかどうか、つかんでおられるとすれば、それに対する見解をお尋ねいたしたいと思います。
○小田切説明員 まず、第一点でございますが、多分そのお話は、私どもの労災保険におきましても遺族年金であるわけでございますが、妻が災害に遭って死亡した、夫の方が残されたというふうなケースも当然あり得るわけでございますが、残された遺族が夫である場合には、妻の業務上災害に伴います年金は、一般的には六十歳を超えてから受給することになるわけでございます。現在五十五歳の夫につきましても年金受給資格がつきまして、現実に六十歳になったときから受給を開始するということになっております。それが一般的な制度でございますが、その残された夫である遺族が一定の廃疾の状態にある場合には、年齢にかかわりなく遺族年金の受給をし得るということになっておるわけでございます。一定の廃疾状態というものを等級で申し上げますと、五級以上の障害の状態にあるというふうに私どもの労災保険の制度では処理しているわけでございます。 それに対しまして、国家公務員の場合でございますが、国家公務員の場合には、障害の程度で言いますと、お話のように、七級程度以上の障害があれば夫たる遺族は妻の業務上死亡に伴います遺族年金を受けることができるというような制度になっているようでございます。 この理由でございますが、私どもの方の労災保険の制度で遺族年金を受給し得る夫の要件といたしまして、廃疾の状態が五級より重いという状態に限っているわけでございますが、これは厚生年金の方で同じように遺族年金をもらえる要件がございまして、その場合には、夫の場合には五級程度以上の廃疾障害の状態にあることということがあるわけであります。業務上の災害について遺族年金を支給するケースにつきまして、厚生年金の方からも遺族年金が出るということがございまして、その場合に調整をするということに法律上規定がなっているわけでございますが、調整するというふうな技術的な観点からいきましても、両者におきましてはいま言ったような要件についてそろえておく必要があるということで、私どもは厚生年金にならっておるわけでございます。 国家公務員につきましては七級程度と、若干障害の程度の軽い者についても年金受給資格を夫に与えておるわけでございますが、公務員の場合には共済年金とのバランスということがあるようでございます。公務員の共済年金につきましては、七級程度以上の廃疾の状態にある場合に遺族年金が夫である者に出るということになっておりまして、それとのバランスということでそういう措置がとられているようでございます。 それから、スライドの発動要件でございますが、私どもの労災年金の場合には現行一〇%を六%に圧縮したいという改正を出しておるわけでございますが、現在国家公務員の方につきましても、年金について見ますと、人事院規則一六−〇の第十九条が該当の規定でございますが、この人事院規則一六−〇の第十九条を見ますと、現行の労災保険法と同じように一〇%変動があった場合にスライドするという規定になっておるようでございます。その他運用の細かな点につきましては私どもちょっと承知しかねるわけでございますが、国家公務員の場合につきましては、年金のスライドは人事院規則では現行一〇%になっておるわけでございます。
○小渕(正)委員 要するに、民間は厚生年金をベースにすべて考えていく、公務員関係は共済年金との関係で考えていくという一つのベースがあるからそういう形になるのだろうと思います。したがって、そこらあたりは私たちも実態を把握した中でまた問題提起をしたいと思いますが、そういった問題に関連してこういうことも出ておるわけです。 今回の労災保険の中では民事損害賠償と労災保険給付との調整が新たに導入されようとしているわけであります。国家公務員や地方公務員の場合にはすでにそういった調整規定があるわけでありますが、具体的に調整作業を見た場合には、第三者的行為の損害賠償の調整規定と同じような形で実際としては運営しているということで、本来的なそれと違ってかなり甘いやり方をしているという説も実はあります。これは時間がございませんので見解を述べませんけれども、要するにそういう形ですべてが、片一方は厚生年金のベースの中で比較して考えていこう、片一方は共済年金との関係で比較していこうということになりますと、労災関係の中においてさえ官民における格差的なものがいろいろと残されておると言わざるを得ないのではないかと思います。したがって、この点は私たちももう少し実態を追及した中で問題提起しますけれども、労働省としても労働行政の方向の一つとしてこういう問題もあるのじゃないかということで、ぜひひとつ重大な関心を持っておっていただきたい、かようにお願いするわけであります。 最後になりましたけれども、災害発生時の若い人たちに対する救済という意味でちょっと考えてみたいわけであります。年少労働者といいますか、現在は、若い人でも新高卒で十八、中卒で入って十六、十七ですが、こういう若い人たちが不幸にして労災の適用を受けられるようなことになった場合、年金の基礎となるべきものはそのときの基礎日額、収入が基礎になっておりますから、長期間ずっとこういったものだけのベースでいくことは若干不合理があるのじゃないか。御承知のように、わが国の給与体系は、若干変わってきましたけれども、三十から四十くらいをピークに給料がずっと上がっていく年功序列のシステムですから、それからいきますと何らかの調整を考えなければいかぬような問題があるのじゃないかと思うわけでありますが、ここらあたりについてはどのようなお考えなのか、その点を最後の御質問として御答弁をお願いしたいと思います。
○吉本(実)政府委員 確かに労災保険の給付は被災直前の賃金を基礎にしておりますから、賃金が低いときに被災した場合、低いときの賃金がついて回ることになるわけでございまして、若年者にとってどうか、こういう御質問でございます。 年金給付のスライド率に年功賃金体系を反映させる必要があるかどうかにつきましては、従来から労災保険審議会、その中におきます労災保険基本問題懇談会等におきましてもいろいろ議論がなされたところでございますけれども、そもそも年功賃金体系がわが国におきまして企業の規模、職種を問わず果たして一般的であるかどうか、仮に年功要素を加味するにしてもどういった方法でこれを把握して反映させるか、また高齢になりますと逆に受給額が低くなるといったようなこともありますので、そういったことでいいか、また学歴別なり男女別、産業別で年功的要素が賃金に与える影響度合いもいろいろ違ってきますので、これをどの程度まで勘案していくかというようなことでいろいろ問題がございまして、審議会におきましてもいろいろと議論がなされたところでございます。そういうことで今回結論には至らなかったわけでございますが、審議会におきましてもなおこれを研究していこうということでございますので、そういったことも考えましてさらに検討してまいりたいと思っております。
○小渕(正)委員 審議会でも一応検討されておるということですから理解しますが、いま申されたように、ああでもない、こうでもないといろいろなことを並べ立てれば身動きできなくなるのが実態だと私は思いますので、ぜひ前向きに御検討いただきたいと思います。 最後と言いましたけれども、恐れ入りますがもう一つだけ。 労災給付認定の期間ですが、普通であれば短期間でできると思いますが、一年以上、二年以上、三年かかってもまだ労災に認定されてないというような案件があちこち残っておるようでありますが、申請されて一年以上残っておるのがどれぐらいあるのか。三年以上経過してまだ認定されないといいますか、保留といいますか、上がってきてまだ認定途中だ、俗に言う認定作業の結論がはっきり出されていない、そういうものが全国的にどれぐらいあるのか。五年以上というのはないのじゃないかという気もするのですが、大体ざっと考えてみて、一年以上、三年以上ぐらいで、そういういままだ懸案になっているようなものがどれぐらいあるのか、御参考までにお知らせいただきたいと思います。
○原説明員 労災保険におきましては、被災労働者の保護の立場から、給付につきましては適正かつ迅速に行うということを最も重要なポイントとしてやっておるわけでございますが、私ども内部の監察機構を使いまして、各監督署におきます認定の実情等も把握し、督励をしているところでございます。その監察の中で把握したところで、監督署で認定している実情を平均的に見てみました数字が把握されておりますが、それによりますと、休業補償給付等につきましては、平均的に見まして十四・六日ということになっておりますし、障害補償給付、これは障害でございますので認定にまた手間がかかるという事態がございますが、三十六・八日という結果が出ております。最近、職業性疾病等で認定が困難なものが多くなってきておりまして、そういうものに関係するものがだんだん長くなってきているという傾向がございまして、私どもさらにこの点を徹底したいと思っております。 御指摘のような一年以上、三年以上、五年以上というケース別の把握を数字的にいたしておりませんので、いま手元にもないわけでございますが、五年以上というケースは余りないと私どもは考えております。
○小渕(正)委員 まあ考えられないですからね。その点、後で結構ですから資料を出していただきたいということをお願いしまして、これで終わります。
○葉梨委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。 午後七時三分散会 ————◇—————