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91回国会衆議院1980/04/04

建設委員会 第10号

発言数
162
登壇者
18
会派数
5
開催日
1980/04/04

会議録

北側義一公明党・国民会議

○北側委員長 これより会議を開きます。  明日香村における歴史的風土の保存及び生活環境の整備等に関する特別措置法案を議題といたします。  本日は、本案審査のため参考人から御意見を聴取いたしたいと存じます。  参考人は、午前午後を通じて明日香村村長愛水典慶君、午前の参考人として駒沢大学教授林修三君及び関西学院大学名誉教授一円一億君に御出席を願っております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中のところ、本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございました。  本委員会といたしましては、現在審査中の本法律案につきまして、参考人各位のお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じます。  まず、議事の順序について御説明いたします。  初めに、参考人各位から御意見をそれぞれ十分程度お述べいただきまして、あとは、委員の質疑に対しお答えをいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、参考人は委員長の許可を得て御発言願い、また、委員に対し質疑はできないことになっておりますので、御了承願います。  御意見は、愛水典慶君、林修三君、一円一億君の順序でお願いいたします。  まず、愛水典慶参考人にお願いいたします。

愛水典慶明日香村村長

○愛水参考人 地元明日香村の村長の愛水でございます。  ただいまから、明日香村の状況について御報告を申し上げたい、かように思う次第でございます。  先日来、明日香村に調査にお見えいただきまして、明日香村の現況等についてはすでに御理解をいただいておるかと思うのでございますが、再度ここで明日香村の現況について申し上げたい、かように思う次第でございます。  わが明日香村は、奈良盆地の東南のすみに位置をいたしておりまして、東は多武峰山系、南は高取山系にそれぞれ接しておりまして、桜井市高取町に接しております。地域の大部分は標高五百メートル内外の丘陵地帯に属しておりまして、わずかに西北に平地が開け、橿原市に接しているのでございます。また、飛鳥川は緩やかに地域内を西北に流れ、一方また、高取山系を源とするところの高取川も地域の西部を北に流れておるのでございます。  大和盆地を囲む青垣山の東南のすみ、なだらかな丘陵、緑したたる山々に、清らかなせせらぎが、この麗しい山河と景観、古社寺の周辺を包み、豊かな歴史と伝統のゆかしさはしみじみと郷愁を誘うものでございます。木の葉に落ちる一滴の水は、稲淵川、細田川の両渓に分かれ、飛鳥川の源をなしているのが明日香村の地域の状況でございまして、路傍の一木一草も、すべて歌であり、詩であり、文学であるとわれわれは自称いたしておるのであります。  いまを去る千三百年前、六世紀、五九二年推古帝から七世紀の七一〇年元明帝に至るまで、約百年間都が置かれた地域でございまして、政治、文化、経済の中心として栄えた地域でございます。特に、この百年間におけるところの都が置かれたこの中には、わが国の律令国家体制が初めて形成された地域でございまして、明日香村の貴重な埋蔵文化遺産が随所に残されており、歴史的な風土が千三百年前をしのばせる環境が保全されているのでございます。  ただ、千三百年以前と申しましても、あるいはそのままの姿でないかもしれませんけれども、われわれの心の中に歴史を描くにふさわしい内在的な風土と言えるかとも思うのでございまして、その中に三十七カ大字の集落が散在しておるというのが明日香村の実態でございます。  なおまた、昭和三十一年、旧阪合村、高市村、飛鳥村三村が合併いたしまして明日香村が誕生したのでございまして、現在の人口は七千百名、世帯数にいたしまして一千六百四十七一尺面積にいたしまして二十四・〇四平方キロでございます。小さな山村でございます。  特に、その面積の土地利用区分を申し上げますというと、耕作地が五百八ヘクタール、そのうち田が三百二十五ヘクタール、畑が百八十三ヘクタールございまして、また宅地には八十四、道路、河川その他に四百三十二ヘクタールがございます。特に産業別就業人口につきましては、第一次産業が四十年では一千五百五十六名、四十五年には千四百五十五名、五十年には一千十名、五十四年には九百九十名。第二次産業といたしましては四十年には六百四十、四十五年には八百九十三、五十年には八百四十三、五十四年には八百五十六。第三次産業につきましては四十年には九百八十四、四十五年には一千百六十六、五十年には一千四百二十二名、五十四年には一千六百二十三、こういうことに相なっておりまして、特に専業農家から兼業農家に移りつつあるのが明日香村の現況でございます。  なお、現行の土地利用規制の現況を申し述べたいと思います。  先ほど申し上げましたように、行政面積では二十四・〇四平方キロでございますが、その中におけるところの歴史的風土保存地区が九百十八ヘクタールございます。なお歴史的風土特別保存地区が百二ヘクタールでございます。史跡指定地が二十七・八三ヘクタール、風致地区が一千二百五十四ヘクタールでございまして、それぞれ第一種百八十一、第二種九百六十五、第三種風致地区が百八ヘクタールございます。なおそれ以外に景観保全地域が設けられ、九百三ヘクタールがございまして、明日香村におきましては九〇%が何らかの土地利用規制を受けておるのが現況でございます。なお、史跡指定地につきましては十四カ所史跡指定がされておるのでございます。  なお、本村の財政状況を申し上げますというと、特に財政関係指数を申し述べたいと思います。  標準財政規模は五十一年では五億四千四百四十七万四千円、五十二年度では六億七百七万八千円、五十三年度は六億五千二百二十八万八千円と、標準財政規模が以上のような次第でございます。  財政力指数につきましては、五十一年〇・二一五、五十二年〇・二〇九、五十三年は〇・二二三ときわめて微弱な財政状況でございます。  一般財源指数といたしましては、五十一年は〇・九九〇、五十二年は一・〇二六、五十三年一・〇二六でございます。  なお、五十二年、五十三年、五十四年の一般会計の決算を少し申し述べたいと思います。  五十二年度では十一億二千八百八十二万五千円、五十三年度では十一億六千七百二十九万五千円、五十四年度は決算見込みでございますが、十八億五千四百七十万七千円、こういう状況になっております。  特に日本経済の高度成長と乱開発の波の中から明日香村を今日まで守ってまいりましたのは、全く村民の明日香に対する、郷土に対する誇りのあらわれであろうかと思っておるのでございますが、四十五年に佐藤元総理が来村をされまして、いかに飛鳥の地域の風土が保たれているかということについて称賛をいたされたのでございまして、それ以降、明日香問題について政府の方でもいろいろ問題になりまして、当時、「飛鳥地方における地域住民の生活と調和した歴史的風土の保存のための方策について」という歴風審からの答申を得て、四十五年十二月、閣議決定が行われたのでございまして、その中には国の行う事業、県の行う事業、村の行う事業等、環境整備にお力添えをいただいたのでございます。  なお、その他細かい法律上の措置のできない問題について、財団法人の飛鳥保存財団が創設されたのでございまして、この基金につきましては民間から五億、国から五億、五十五年度が最終年度になっておろうかと思うのでございますが、その事業推進に当たりましても、種々明日香の環境保全に対してお力添えを賜って現在に至っておるのが現状でございます。  一方、このことについては村民は誇りを持ち、飛鳥保存に対する理解と協力を惜しまなかったのでございますけれども、その間、住民対策を中心として住民の生活安定向上を主としたところの立法の要望を今日まで続けてまいったのでございますが、年を追うに従いまして、その当時の素朴な住民感情から、他の地域における開発等の関係から生じました住民感情の変化が最近になって中にあらわれてきておるというのが偽らない現状でございます。  これに伴いまして、各種団体等が、特に飛鳥古京を守る議員連盟の方々が中心となって、明日香住民対策を中心としたところの明日香特別立法を制定する必要がある、こういうことで昨年一月に歴史的風土審議会に対して現総理から諮問をされたのでございまして、昨年の七月に「明日香村における歴史的風土の保存と地域住民の生活との調和を図るための方策について」という答申がなされて、政府並びに超党派的にこの特別立法を制定すべきであるという機運が高まりまして、今回の法案が上程されたように私たちは解釈をいたしております。特に明日香村の歴史的風土が今日の形で保存されてきましたのは、先ほど申し上げましたように歴史と伝統の風土を踏みしめ、文化遺産の保存に理解を持ってきた住民の努力のたまものであろうと私は信ずるものでございます。  ただここで、先ほど申し上げましたように住民感情が若干変化をしてまいりまして、ひとり明日香村だけに任せる問題ではない、明日香村の歴史的遺産を後世に伝えるのは国民的義務でもあり課題でもあるという御認識のもとに今回の法案の上程となったと解釈をいたす次第でございます。  なおまた、この法案に特に超党派的にお力添えを賜っておることに対しましては、村長私自身として、深く、国会の関係の先生方並びに各省庁の関係の方々に心から御礼を申し上げる次第でございます。  なお、御承知のとおり、法案等はすでにお手元に差し上げてあるようでございますが、十分御審議を賜りまして一日も早くその成立を見、住民に対しまして、さらに今後理解と協力を進め、この地域の歴史的風土、文化遺産を守っていくに力添えを住民が持ってくれることを期待をいたしまして、また私自身といたしましても、この法案成立後、国民の遺産でありますところの文化遺産並びにこの風土を守っていくべき責任を痛感しておるような次第でございます。  よろしく御審議を賜りますように心からお願いを申し上げる次第でございます。(拍手)

北側義一公明党・国民会議

○北側委員長 次に、林修三参考人にお願いいたします。

林修三駒澤大学教授

○林参考人 私、林修三でございます。  本日は、この明日香村における歴史的風土の保存及び生活環境の整備等に関する特別措置法案、これについての意見を述べるようにということでございまして出てまいったわけでございます。  私は、年来、憲法を専攻いたしております。そういう関係で本日もこの法案と憲法、主としてこれは憲法九十五条のいわゆる「一の地方公共團體のみに適用される特別法」、これとの関係の問題についてが憲法上の問題だろうと思うわけでございまして、これについての意見を若干申し上げてみたい、かように考えるわけでございます。  この憲法九十五条の規定は、御承知のように、アメリカの州憲法についてのモデル憲法案というものがアメリカにございます。その中に九十五条の原形ともいうべきものが盛られておりまして、それでアメリカにおきましては、州において州法等で、その州内における特定の地方公共団体の権能を制限するような立法がときどきされたというような経緯がございまして、こういうことが州憲法の一つの条項として考えられておったようでございまして、これがいまのわが国の憲法に受け入れられておるわけでございます。  わが国におきましては、実はそれまでこういうように国が法律で特定の地方公共団体についての権能を制限するような立法をした経験はほとんどございません。そういうような状況でございましたので、この憲法の規定が入った後のこの解釈、運用につきましては若干のいろいろ議論があったわけでございますが、御承知のように、昭和二十四年から二十六年にかけまして、広島平和記念都市建設法を初めといたしまして、十五件の法律がこの憲法九十五条に基づく特別法として国会において制定されております。  この種の特別法が制定されるときのいろいろの議論、あるいは私は当時内閣の法制局におりましたけれども、そういうところで議論しておりまして、これは私が職を離れて現在民間において憲法を専攻している立場からでも同じことでございますけれども、九十五条の解釈としては、ここに言う特別法は、一の——一のというのは特定のという意味だと思います。必ずしも一つには限りません。特定の地方公共団体の組織、権能あるいは運営について、その特定の地方公共団体について法律的拘束力を与えるような法律を指す、そういう考え方が妥当であろうと考えるわけでございます。実際に、先ほど申しましたように、二十四年から二十六年にかけての国会における法律の制定も、大体そういう考え方で解釈、運用されてきたように私は思うわけであります。これは言うまでもなく、九十五条の特別法とするかどうかというのは、憲法の規定から申しましても、あるいは国会法の規定から申しましても、国会において御判断になることでございまして、国会においての御判断はそういうことでやってこられたもの、かように私は考えておるわけでございます。  大体そういうことで特別法が扱われてきたわけでございますが、同時に、この特別法に当たるか当たらないかということの議論としては、その後にも若干の法案について議論があったことは御承知のとおりでございます。その場合においての判断の基準としましては、特定の地方公共団体というのは法律の上で明確に対象になっておる、実質的には地方公共団体は特定しておりましても、法律の上でそれが普通名詞的にあるいは普遍的な形で規定されておるもの、たとえば地方自治法に都とか道に関する特例がございますし、それからもう一つは、実質的には特定されるのでございますが、特定される方式を政令等に委任しておるもの、たとえば地方自治法の中で指定都市に関する制度がございますが、こういうような形のものはここで言う特別法には当たらない、そういうような考え方がとられてきております。  それからもう一つは、地方公共団体をある程度特定しておるけれども、これに対して特別に法的な拘束力を与えるものではない、事実上の経済的利益を与える、それにとどまるような法律についても、九十五条の法律に当たらないというような解釈がされてきたように思われるわけでございます。いま申しました例としては大阪港及び堺港並びにその臨港地域の整備のために発行される外貨地方債証券に関する特別措置法でございますが、あの場合にその一つの例があるかと思うわけでございます。  憲法九十五条の解釈、運用につきましては大体そういうようなことでこれまで解釈されてきて、あるいは国会における運用もそういうことで行われてきたと思うわけでございます。  そういう目から今回の法案を見てみますと、この法案は全文が八条から成っております。それで、第一条は目的規定でございますから、これは別に問題ございません。  第二条は、内閣総理大臣が明日香村全域についていわゆる古都保存法の特別保存地区として特別保存計画に相当するものを歴史的風土の保存計画として決めるということになっております。これは内閣総理大臣が決めることでございまして、これも九十五条の問題ではないと思うわけでございます。  それから三条は、古都保存法の方では、古都と指定された市町村につきまして一定の地域が古都保存計画区域になるわけでございまして、その中で特別に保存を要するところは特別保存地区に都市計画として指定されることになっておりますが、その都市計画として特別保存地区を指定することに関連いたしまして今度古都保存法がこの法案の附則で改正されておりますが、この特定の市町村、特に必要のある市町村についてはその全域をこの特別保存地区に相当するものとして都市計画で指定することができるような扱いがそこにできております。それに基づいて、この法案の三条で、明日香村全域が古都保存法における特別保存地区に相当するものとなる関係で、それを都市計画として第一種、第二種という歴史的風土保存計画地区に指定するような規定になっております。これは、都市計画事業が国の機関委任事務であるということから申しましても、あるいは古都保存法に基本規定があることから申しましても、九十五条の問題にはならないだろうという気がいたします。  それから四条は、内閣総理大臣が明日香村の生活環境あるいは産業基盤等の整備についての基本方針を決めて、これを奈良県に示すことになっております。奈良県知事は明日香村等の意見を聞いて、これに基づいて明日香村の整備計画を立てるということになっております。これは若干の問題の九十五条との関連を検討する必要があるわけでございます。この整備計画は、奈良県に対して当然に法的拘束を与えるものではなくて、一応奈良県側の自発的な発意に基づいてこの整備計画を立てることになっておりますことと、これは五条で、この整備計画に基づいて明日香村がいろいろの公共的な事業をやるわけでございますが、その場合に補助率のかさ上げをする、そういうことの前提になっておるわけでございます。この補助率のかさ上げそのものは単なる経済的利益を与えるものでございまして、先ほど申しました基準から申しましても、これは九十五条の問題として考える必要はないのだろう、かように考えるわけでございます。  それから六条は、御承知のように国が奈良県あるいは明日香村の地方債について特別の配慮をするという規定、これも特に問題はないと思います。  それから七条は、国がこの整備計画等の施行について財政上、技術上の配慮をしなければならないという規定でございます。  八条は、基金を置く規定でございまして、この基金に対して国が総体として二十四億円の資金を交付することになっております。これにつきましては、特定の地方団体に対してそういう一定の財政的援助をするものでございますけれども、この基金はこの法律の規定から申しますと、明日香村が地方自治法二百四十一条の規定に基づいて基金をつくる、その基金をつくった場合に国がこの基金の一部を補助する、こういう規定でございますから、これも実は明日香村を法的に拘束するものでもなし、単に経済的利益を与えるというものでございまして、過去の先ほど申しました解釈、運用から申しましても、九十五条の法律として考える必要はないのだろう、かように考えるわけでございます。  以上、全体を考えまして、この法案全体を憲法九十五条の法案と考える必要はないだろうというのが私の意見でございます。  これは繰り返しになりますが、九十五条に当たるかどうかということは国会における御判断で決めるべきことでございまして、私はそれに対しての参考意見を申すわけでございます。  最後にちょっと一言だけ申しますが、私は実は古都保存法が制定されました後八年間、これに基づく歴史的風土審議会の委員をしておりました。この古都保存法の運用、特にこの明日香村の保存については非常な強い関心を持っておった者の一人でございます。明日香村の歴史的風土の保存が良好に行われること、それからその村民の利益、生活基盤が確保されることがこの明日香村の保存のために非常に大事なことであるというふうに考えておったわけでございますが、今回特別立法されるような運びになりましたことを私は個人としても非常に結構なことだ、かように考えておるわけでございます。  これで私の意見の陳述を終わります。(拍手)

北側義一公明党・国民会議

○北側委員長 次に、一円一億参考人にお願いいたします。

一円一億関西学院大学名誉教授

○一円参考人 一円でございます。  この明日香村特別法案、略して申しますが、この法案にはたくさんの大事な問題点があるように私は思います。これは明日香村という一つの地方自治団体の全域にわたって現存の古都保存法の中における特別保存地区として全部規制の対象と申しますか、住民及び明日香村が活動するに当たって他の地方自治団体とは違って規制をされるという内容を持っておるわけであります。  古都保存法は住民投票なしにできておるようでありますが、古都保存法自身の中にも規制をする内容が含まれておりますが、その中でその一部分といたしまして特別保存地区というのがございます。その特別保存地区を明日香村においては全域にわたってこれをやる。そして、その明日香法の目的は、わが国における律令体制が初めてできた、そういう時期における遺跡その他のものと自然環境がそのまま残っている、これを将来にわたって残すことによって日本の歴史に対する国民の認識を起こさせ、かつ国民が国を愛する心を涵養することに資するということを配慮してこのような特別の措置をしょう、そして古都保存法の特例法としてこれをしようというわけでございます。私は、このことに関しまして日本国憲法との関連において二つの点で問題を感ずるわけでございます。  一つは明日香村におきましては、この法律が存続する限りは将来永遠に次のような事態が発生すると思います。  たとえば、土地を開墾するということあるいは土地の売買、ほかの人に売りたい、周辺も相当高くなってきた、これを売ることによって近代生活にマッチするような生活を自分たちもやりたいというようなことになりましても、それが自由にできないという点があります。家族もふえてきたので家も新築したい、家の建て増しもしたいというような場合にも、それは許可なくしてはできないということになります。あるいは家屋、工作物の色彩を現代的な色彩にしようという考えを持ちましても、それは千数百年前の昔に存在した色彩と同じ色彩のものでなければ許してもらえない。あるいは農業をやるにしましても、最も現代に即応するような農作機械を入れたり、トラクターを入れるほどの広い地域があるかどうか知りませんけれども、そういうものを入れて効率的な農業をしたいあるいはビニールの農園をつくってやりたいというようなことにしましても、明日香村の古都の環境を保存する上でこれは適当でないということになりますと、それはできない。  多分国の内外から観光客が来るでしょう。私も行きたいと思いますが、そういう場合に、それではそこに商店を経営してやろう、休憩所を自分が設けようという人があらわれましても、それもこの規制の対象になるということでございます。  こういうことは、実は憲法の第十三条との関係において大変大きな問題をはらむと思うわけでございます。むろん憲法第九十五条の住民投票に付すべきかどうかという問題が一つございますが、それ以前に十三条との関係があります。国は国である一定の目的があります。国策というものを持つのは当然であります。国は、古都の保存は大変大事である、こういうことを考えまして、古都保存の必要性という点から規制をしようとなさることは、その時々の政府の考えとしては当然しかるべきことだと思うわけでございます。しかしながら、事を行うに当たっては、憲法が定めた国民の生活の権利、そういうものを侵すということのないようにしなければならないというのが憲法第十三条の規定でございます。  十三条は、読んでみますと、「すべて國民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に封ずる國民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の國政の上で、最大の尊重を必要とする。」ということになっております。国民の生活にまつわる各種の自由及び幸福の追求については最大の尊重を立法その他の国政の上でしなければならぬというのがこの憲法の趣旨であります。  しかしながら、最大に尊重しておったのでは公共の福祉という壁に突き当たる、そういう場合にはどうするかということについては憲法は何も語っていない。ですから、国民の生活、権利を最大に尊重しておったのでは公共の福祉という壁に突き当たる場合には、これは最小の尊重だけにしておこう、あるいは尊重もしない程度にしておこうということになりましょう。しかし、これを尊重しておったのでは、公共の福祉上どうしてもほっておけない、やむを得ないという場合には、これはやむを得ず制限ができるというのが、この規定の反面解釈から解釈できると思います。したがって、私は十三条は公共の福祉によるものを制限できないというふうには考えておりません。  しかし、そのためには、国民の生活及び幸福追求が十分に保障されるという条件をやっておるという状況がなければならぬのではないかと思うのです。国民が、十分の保障があるにもかかわらず、なおかつ権利を主張するという場合には制限ができるというのがこの規定の結論であろうと思います。  その点を考えますと、この明日香法案の中には、周囲の住民との関係、一般の国民が、今後五年、十年、五十年、百年、日進月歩の状況の中で、生活というものの様式が非常に変わっていくわけであります。そういう長い間、外部の生活様式に対応するような十分の保障がなされておるならば、この規定というものは考慮されるに値すると思うわけでございます。先ほどもお聞きしますように、二十四億円というのを国が考えておるようでありますが、その二十四億円というのも、そこにおる住民の生活に、今後何十年続くかもしれない住民の生活に与えるということではなくして、この歴史的風上を保存することとの関連において必要と認められるものにこれを与えようという点において、現在のこの法案は、憲法第十三条が国民の基本的人権を保障しているという、しかも、それを公共の福祉によって制限ができるということを言うに足りるだけの十分の条件を欠いておるのではないか。したがいまして、この点を十分に国会において保障した上で、この法案を修正と申しましょうか、されるということが大事ではないか、このように考えます。どぎつい言い方をいたしますと、憲法第十三条のこの規定の趣旨に合致をしない状況が現在のこれにあるように考えるわけでございます。  そうした上で、法律を制定するに当たりましては、憲法の第九十五条が規定をしておりますように、これは特別法でございます、明日香村だけを全国の各地方公共団体と違った特別のものとして、しかも非常に強い規制のもとに置いておるわけでございます。したがって、憲法第九十五条が言います「一の地方公共團體のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共團體の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、國會は、これを制定することができない。」こう規定しております。これは国会の立法権に対する制限でございます。国会は、四十一条によりまして国の唯一の立法機関であります。立法事項は国会の専権事項であります。にもかかわらず、特別の定めのある場合はそれによるということを憲法五十九条に規定しておりますが、まさにその特別の場合というのはこの憲法九十五条でありまして、それは地方自治というものを憲法が大事に考えているということ、むろん地方団体は法律に従って地方行政を行わなければならぬことは言うまでもございません。しかしながら、各地方団体には自治がある、これを憲法が定めておるわけでございます。この自治権があるということで、一般の地方自治団体とは違った特別の取り扱いをするということは、一つにおいては、その地方団体の権能に対する特別の扱い、制限がなされるということが問題であるという点が一つ。それからもう一つは、国民の権利義務に関する事項、そういう特例を設ける、こういう二つの点において、そういう特別法をつくるという場合には、必ず地方自治体における住民の住民投票で賛成を得なければ、国会といえどもこれを制定することができない、こういうのが九十五条の趣旨でありまして、まさにこの九十五条の趣旨から申しましても、この法律を制定するためには地方住民の住民投票にかけるべきものだと考えるわけであります。  繰り返して申しますと、まず第一点において、この明日香村に居住しております住民の、国民一般に憲法第十三条が保障しております生命、自由、幸福追求に対する権利が侵されないような十分の配慮をこの法案の中に盛った上でこの法律が提出さるべきであるということ。それから第二点は、そのようになって提出された後において、明日香村住民の住民投票に問うて、その結果によらなければ、国会といえどもこれを法律として制定することはできない、こういうように私は考えております。  以上でございます。(拍手)

北側義一公明党・国民会議

○北側委員長 これにて各参考人の御意見の開陳は終わりました。     —————————————

北側義一公明党・国民会議

○北側委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大坪健一郎君。

大坪健一郎自由民主党・自由国民会議

○大坪委員 本日は、大変お忙しいところを、参考人の皆様わざわざお出かけくださいましてまことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  時間をいただいたのですが、残念ながら大変わずかな時間でございますので、要点を二つに区切って御質問申し上げたいと思います。私は十分しかいただいておりませんので、ひとつ簡潔にお答えをいただきたいと思います。  この明日香村における歴史的風土の保存及び生活環境の整備等に関する特別措置法は内閣から出されております。私どもは自由民主党といたしまして、与党でございますので、この法律の提出の意図、それから法律が提出されて明日香村に対して行われるであろういろいろな補助あるいは援助等については全面的に賛成でございますけれども、実は先日、私どもが明日香村を訪問させていただいて、そこでいろいろ村民の代表の方の御意見を承ったり村長さんの御意見を承ったりいたしました感触では、政府が、わが国のきわめて価値の高い、律令体制の温存されておる、唯一と言ってもいいこの歴史的風土の明日香村を何とかして保存すると同時に、そこに住んでおられる方々の生活環境については、日本の現在のさまざまな法律制度のいろいろな状況を見比べた上で、何としても最も手の入った援助対策をして差し上げたいという意図でつくったにかかわらず、大変厳しい御批判なり御不満が出ておるようでございます。私どもは、実態を十分把握されて反対をされておるのか、あるいは十分事情をのみ込まれて反対をされておるのかわからない点もあるわけでございます。  高いところから拝見しますと、隣の橿原市のミニ開発あるいは乱開発の都市がまさに明日香村の境界線まで押し寄せてきております。明日香村は押しつぶされそうになっておる感じさえいたします。それでは果たしてそういう橿原市の住民の方々は、明日香村に比べて、もっといい、もっと充実した生活か、それは非常に疑問のあるところでありましょう。  したがって、いま明日香村の村政に責任をお持ちになっておられるし、また大変御苦労を重ねておられます愛水村長さんは、基本的にこの法律についてどのようなお考えをお持ちなのか。村民の代表の方には大変な反対もあるようですが、お話を伺いますと、たとえば財政規模が十億からやっと十五億を超える程度に発展してこられた。そこへ国が一市町村の、地方自治法に基づいてつくる基金としてはちょっと例にない二十四億という援助をしよう。額はそんなに大きくないかもしれません。しかし、全体の較量から見て、いままでの日本の行政の実態から見て、非常に思い切った措置ではないかと思うのですけれども、これが非常に少ないから、それで開発ができないとかあるいは保存ができないとかいう議論があるのは、私どもとしてはどうも少し納得がいかない。  それから、この法律の中に、後から一円先生にも御質問いたしたいと思いますけれども、いろいろな起債上の援助ですとか補助の援助ですとかいう措置が決められております。過疎地帯でも見られないような援助が決められております。そういうものに対しても、これでは十分な補てん措置になっていないとするならば、法制上、日本の地方自治を踏まえて行われておる施策で一体どういうことをすればいいのか、こういうことも考えられるわけでございます。もちろん、私どもはこれで満足するわけではございませんから、当然将来はこの法律制度を発展させて、援助等も発展させていきたいと考えておりますけれども、その辺について村長さんの忌憚のないお気持ちをひとつお聞かせいただきたいと思うのです。

愛水典慶明日香村村長

○愛水参考人 ただいま、実情調査をいただきましたときに、村民の代表が反対のような意見を述べた、こういうように御質問をされたわけでございます。これは、村民の代表は決して反対しているのではございませんでして、従来の九〇%近い規制を受けている現状に、住民対策として十分されなかったということの不満のようなものがぶちまかれた、かように村長といたしましては解釈いたしております。  なお、この問題につきまして、住民個々にいろいろ御意見等も承ったのでございますが、村の立場を非常に理解いただいて、大変御苦労いただいたこの法律を早く通してほしいという気持ちを持っておるのが住民の大多数でございまして、あの当日御視察いただきましたのは、再度申し上げますが、従来の九〇%近い規制の中で生活してきたことに対する不満というか、そういうものが強かったので、あるいはそのような誤解を与えているのではないか、かように私といたしましては心配をいたしておったような次第でございます。  なお、それがために、住民と一番近い各大字の総代の方で住民の意見を取りまとめて、早く立法措置を講じて早期制定をしていただくようにということで、去る三月七日に、明日香特別立法措置法の今国会における早期制定に関する要望決議として、各大字、三十七名の大字総代が一応早く制定していただきたいということを決議しております。村議会はもちろんでございますが、住民と最も近い代表の方々から早期制定を図ってほしいという決議をし、お願いをいたしておるということから申し上げましても、決して反対をしているわけではない、かように御理解を賜りたい、かように思う次第でございます。  なお、財政的に非常に貧弱なわが村に対しまして、整備計画に基づくところの財政的援助あるいは起債の特別な配慮あるいは財政的、技術的な援助等この法案に盛られておりまして、私といたしましては、財政的に非常に貧弱な村でございますので、財政指数から申し上げましても大変貧弱でございますが、その援助をいただくことによってさらに整備計画を十分図っていきたい、かように考えておりまして、大変喜んでおる次第でございます。再度申し上げますが、住民も、また村当局といたしましても、喜んでおるのが現在の状況でございます。  以上でございます。

大坪健一郎自由民主党・自由国民会議

○大坪委員 愛水村長さんのお気持ちを伺いまして、私どもも、一面安心をいたし、一面自信を持った次第でございます。今後とも、御当局の御努力でこの法律の目的に従ったりっぱな村の計画ができ、村が発展されますようにお祈りをいたしたいと思います。  第二の問題でございます。第二の問題は、法律家であられる林先生と一円先生が御提起になりました、現行わが国の憲法上から見て、この新しく制定されようとする法律制度が憲法に適合したものかどうかという論議で、なかなか重要な問題であろうかと思います。私どもは立法いたすのを職能といたしておりますので、この点について明確にいたしたい点がございます。  林先生と一円先生にそれぞれお伺いを申し上げたいと思うのでございますが、林先生には、九十五条の特別法と住民投票の関係で、「一の地方公共團體のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共團體の住民の投票において」云々、こう書かれておりますが、この「一の地方公共團體のみに適用される特別法」という、非常に一般的な書き方をしておるけれども、憲法の公正、地方自治の尊重、それから条理上から見て、この非常に一般的な解釈で、すべての「一の地方公共團體のみに適用される特別法」がこの規制に従わなくてはならぬのか。それとも先ほど先生のお話がございまして、ちょっとはっきりいたしませんでしたけれども、たとえばその地域の経済的利益を増進するための国の援助を決めた法律といったような趣旨の法律は、地方自治の本旨から見て、そこの住民の地方自治の組織なり権限なりを侵すものでないから、この九十五条に該当して規制を受けるものではないというお話もございましたが、その辺のところをもう少し御説明をいただきたい。

林修三駒澤大学教授

○林参考人 ただいまの御質問にお答えいたします。  先ほど私が申し上げましたのは、憲法九十五条におけるいわゆる特別法でございます。これは地方公共団体という団体そのものをとらえまして、この団体の組織、権能、運営等について法的拘束を与える。そういうものがここに言う特別法に当たるというのが、従来の国会における立法された経緯でもそうだったと思いますし、九十五条の解釈としてもそれが妥当なところであろうと考えるわけでございます。法的拘束を与えるような場合には、その拘束の内容は、仮に経済的援助というようなものでも、それは九十五条に当たる場合もあり得るかと思いますけれども、先ほど申しましたのは、そういう法的な拘束をしないで、単に事実上の問題として経済的援助のみを与える。こういうものはある特定の地方公共団体が対象になっている法律でも九十五条の法律に当たらない、これが従来の取り扱いでもあり、それが妥当な解釈であろう、そういうことを申し上げた次第でございます。  同時に、直接は申し上げませんでしたけれども、先ほどちょっと一円先生が言われたことに関連して申しますけれども、九十五条の特別法は、ある特定の地方団体の地域とかその地域住民をとらえて、これに対する若干の規制をしている、そういうものはここに言う特別法に当たらない、そういう解釈がずっと行われているのです。また、そういう解釈であろうと思うのです。たとえば、北海道開発法であるとか、あるいは奄美群島の振興特別措置法とかあるいは小笠原の振興の措置法等に関してもそういう議論があったようでございますが、これはその地域なり地域の住民をとらえて規制がそういう人々に及ぶ。それはここに言う特別法には当たらない。もちろんそういう地域住民に対していろいろな法的規制を及ぼすものについては、憲法上の配慮が必要であることは申すまでもございませんけれども、九十五条の関係から言えば、その九十五条の特別法には当たらない、こう考えておるわけでございます。これは先ほど申し上げましたことの裏として当然それがあることでございまして、いまの大坪先生の御質問の趣旨にもそういうことがあるかと思いまして、それもお答えする次第でございます。

大坪健一郎自由民主党・自由国民会議

○大坪委員 もう時間がなくなってしまいました。大変ありがとうございました。  もう少しお聞きしたいのですが、最後に、一円先生はこの立法に関連いたしまして、憲法十三条をお引きになって、憲法十三条との関連で、十分な住民生活の保護、援助の規定を欠いておるから、どうも違憲のにおいが強いというお話をなさいましたけれども、私のちょっとわかりかねますのは、このような環境保護の目的も含めた法律では、国民の権利なり義務にいろいろな形で触れる法律も出てきております。しかし、それは憲法の規定上、十三条、その前の十二条の規定もあることでありますし、公共の福祉というものとの調和で解釈をされておるように思います。この、国民一般に憲法が保障している権利を十分に配慮して法案を出せということの一般論で、果たして明日香法の、現在この法律の中で決めておりますさまざまな特殊の援助、これはもちろん当該地方公共団体に援助が行われ、それが計画に従って住民の具体的な生活に援助として出てくるものであろうかと思いますけれども、それを考えた上でも、なおかつ先生は、この明日香法の、わが国のこういう法律制度では珍しい、非常に積極的な援助政策も十分事足りるものではないというような御意見をお持ちでございましょうか。その点をひとつお聞かせいただきたいと思います。

一円一億関西学院大学名誉教授

○一円参考人 お答えいたします。  私も、ただいまお尋ねの、こういうような規模、額、そういうことについて、明日香村の規模及び村の方の将来の生活の上で十分かどうかということについての実情を、必ずしもはっきり調べて知っておるわけではございません。明日香村に行ったことがございません。しかし、そこに書かれておりますことを見ますと、先ほど私が言いましたような、今後の細かい、生活をする上における建築物だとか、営業とかあるいは居住その他のもろもろの制限があり得るということは、これは明らかでございます。  そういう場合に、むろん飛鳥を保存しなければならぬということは大変大事なことだとは思いますが、将来、何十年あるいは何百年にわたって保存する上で、その変化に応じた住民生活の保障ということについての規定がここにはない。それから国あるいは県の助成ということも、明日香の環境を保全する上で必要な事業についての補助でありまして、住民の生活についての補助という点が非常に弱いといいますか、欠けているということ、この点が憲法十三条との関係において問題がある、こういうように考えるものでございます。  九十五条につきましては、林先生と若干考え方は違うと思いますが、やはりこれは一の地方公共団体に対する特別法であります。この規定を憲法がつくった趣旨は、地方自治体には自主性と自治権というものを与える、地方自治体に自治権を与えるということを憲法自身が定めたわけです。自治権を奪うことはできない。その自治権も、単なる地方自治体だけではなくして、地方自治体の官治というものは住民の自治によって行うということがその内容にありますから、二つあります。一つは、地方自治体がその自治を行うに当たっては、住民自治において行うべきだ、こういう二つの内容を持った自治権が憲法に定められている。  したがいまして、住民の権利義務に特別の影響を及ぼすということ、それから、一の地方自治体の権能に特別の影響を及ぼす、こういう場合には住民投要によって決定しなければならぬ、こういうのが憲法の定めだと考えます。

大坪健一郎自由民主党・自由国民会議

○大坪委員 時間がないのでやめます、まだ質問したい点が大分残っておりますけれども。どうもありがとうございました。

北側義一公明党・国民会議

○北側委員長 井上泉君。

井上泉日本社会党

○井上(泉)委員 明日香の村長さんにお尋ねするわけですが、この国会でこの法案がこんなに論議をされておるということは、一つは憲法に違反をした、憲法の条項を守ってやるべき法律であるのに、それを手抜きをしておるのではないかということ。さらにはまた、審議会の答申どおりにこの法案がつくられておれば、これは問題ないわけですけれども、この審議会の答申から逸脱をしておる。たとえばその元法と言われる古都保存法からは、国土愛というのが今度は愛国心に飛躍をしてきている、そういう点。さらにはまた、これに対する財政援助というものは、被害を受ける地域の財政援助というものが不十分である。主要な問題点としては、私どもはこの三つの点を指摘しておるわけです。審議会の答申どおりに法案が出されておれば、これは問題ないと思うわけですが、そしてまた、古都保存法の精神、審議会の答申がそのまま生かされるような法案としてこれが出されるということによって、これは審議が促進されると思うわけですが、その点について村長さんの御意見を承りたいと思います。

愛水典慶明日香村村長

○愛水参考人 村長の立場からお答えをさせていただきたい、かように思います。  特に、この法案が憲法に違反しているかどうかということ……(井上(泉)委員「そういう点はいいです」と呼ぶ)私としては、ちょっとその点はわからない、かように思います。  なお、答申どおりの問題でございますが、これも私としては、政府で立案された問題でございますので、一村長がその辺に言葉を差しはさみ得るものではない、こういうように御理解を賜りたい、かように思う次第でございます。  なお、財政援助の問題につきましては、大変国の財政事情の厳しいときに基金制度を創設していただいたということ、並びに公共事業に対する補助率アップ等を勘案いただいたということにつきましては、村長といたしましては大変喜んでおるというのが偽らない私の心境でございまして、三点御質問されましたが、二点につきましては、私の差しはさむ問題ではないと思いますが、財政援助の方につきましても、ただいま申し上げましたように私としては考え、また偽らない現在の私の心境でございます。どうぞそのように御理解を賜りたいと思います。

井上泉日本社会党

○井上(泉)委員 時間がないのできわめて簡単にお答えも願いたいと思うのですが、村長さんは非常に遠慮されておるわけですけれども、やはり明日香の住民の生命、財産を保護する最高の責任者ですから、私は、その点については言いにくいこともずばりずばり言われるのが、これが本当の村長としての仕事ではないか、こういうふうに思うわけですけれども、それは村長としての姿勢の問題ですからあえて申し上げません。しかし、いままでの要望によりますと、奈良県の議会の要望にいたしましても、あるいは奈良県議会の議長の要望にいたしましても、現在のものよりも、財政的な面でも内容が充実されるということについては御異議はないでしょう。

愛水典慶明日香村村長

○愛水参考人 内容を充実していただくということについては、私は、大変結構なことでございます。

井上泉日本社会党

○井上(泉)委員 そこで、この法案については、私は林先生のお話を聞く中にも、そして林先生は、何もこれは九十五条の適用にしないでも構わぬけれども、そのことは国会の判断によるものだ、適用にしないでもよろしいではないかという御意見を各条にわたって述べられたわけで、しかしそのことは、国会の判断によるものだ、こういうお話をされたようですが、そのとおりでしょうか。

林修三駒澤大学教授

○林参考人 私は、憲法学者としての憲法解釈を申し上げた次第でございまして、これは国会法の規定を見ましても、この九十五条に当たるかどうかということは、この国会における広義の議院の議長の判断をいたしまして、もちろんこれは国会の意思によるものと思いますが、それで地方自治法の規定に基づいて住民投票をするような手続になっております。そういうことから申しましても、これは、九十五条に当たる法律とするかどうかはもちろん憲法解釈の問題でございますけれども、それを具体的に九十五条の法律とすることは、国会の御決定で決まることでございます。

井上泉日本社会党

○井上(泉)委員 これは九十五条の関係に該当しないというのが提案者の政府の見解ですけれども、前の広島平和記念都市の建設法とかいうような場合におきましても、これがどうかということで論議をされた。これは都市計画法の特別法だ、と。しかし、論議されたけれども、結局衆議院の議院運営委員会においては、これは当然九十五条の適用にすべきだ、こういうことに決まった経過があるわけです。それと関係して、九十五条の関係は、国会の判断によるものであるという、私は、まさにそのとおりだと思うわけで、この国会が判断をしてやればそれでよろしいわけですが、一円先生の方は、この九十五条の適用を当然すべきだという論拠に立っておるわけですが、これをそのままやるとするならば、押し通すとするということは、一つは、やはり憲法に違反をする法律の内容を持っておるものではないか、一円先生の御意見を聞くと、私自身こういうふうに理解をされるわけですが、どうでしょう。

一円一億関西学院大学名誉教授

○一円参考人 お答えいたします。  法の手続といたしましては、国会がやればよいということになりましょうが、憲法に適合するかどうかという学理の問題として本日はお尋ねでございますので、その点で申しますと、これは住民投票を行わなければならないものであると私は考えます。そして、住民投票でなければ、国会は、法律として制定することができないと特に書かれている九十五条の規定に触れる、触れてもやる、触れないと考えてやるかどうかは、それは国会のお決めになることですから、その点は申しません。しかし、法理の問題としてのお尋ねに対しまして、私はそのようにお答えします。その理由は、さきに申しましたので繰り返しませんが、よろしゅうございましょうか。

井上泉日本社会党

○井上(泉)委員 はい。私どもは、やはりどんな法律でも、その法律が憲法の条項に照らして、そして憲法の精神から発した法律であるかどうかということが、その法律を審議をする一つの物差しとしておるわけですが、その物差しとしておる中で、明日香村の村長さんが、いわば政府に対しては非常に遠慮をなさっておられる。遠慮なさっておるけれども、私どもとしては、そういう村長さんの遠慮なさっておるお気持ちというものは理解をするわけですけれども、この法律を審議するに当たっては、そういう前提に立って考えた場合には、奈良県にいたしましても、村からいたしましても、この立法に対する要望書、その精神から考えて、余りにもこの法律の条項というものが逸脱をしておる、飛躍をした考え方でこの条文がつくられておる、こういうふうに考えるわけですが、時間がありませんし、また参考人の方でありまするから、いろいろ質問をすることは差し控えるわけですが、古都保存法の場合には、第一条で、この法律は、歴史的風土を保存することによって国民の国土愛の高揚に資するというのが目的とされておる。あるいはこの審議会の答申においてもそのことが盛られておる。私どもは、歴史的風土を保存をする、そういうことについてはもろ手を上げて賛成であるし、これを強化しなければならない、これに思想的な背景をつけ加えるようなそういうことは法律のたてまえとしてどうかと思うわけですが、これは憲法学者であり法律学者である林先生、そしてまた一円先生の御見解を承って私の質問を終わりたいと思います。

林修三駒澤大学教授

○林参考人 ただいまの井上先生の御質問の御趣旨でございますが、この法案の第一条に「国を愛する」云々ということがあるのは憲法との関係でどうかというような御質問かと思いますが、古都保存法には国土愛と書いてあり、これには国を愛するということが書いてございまして、これが果たして同じことなのか若干違うことか、これはいろいろ御議論があることだと思いますけれども、それは実は、憲法との関係から申せば国を愛する、国家というものを国民が愛するということは当然のことで、別に憲法との関係、それによって憲法に違反するというようなことは起こってこないと思います。国土愛というような言葉を使うか国を愛するという言葉を使うかはまさに立法政策の問題でございまして、憲法に触れるような問題ではないと私は考えております。

一円一億関西学院大学名誉教授

○一円参考人 この「国を愛する心の涵(かん)養に資する」ということが重点の一つだと思います。国を愛するということは必ずしも古い文化あるいは遺跡を見るということによって愛国の心が涵養されるだけではございません、むろんこれも一つでありますけれども。  ちょっとよその国の例を申して大変失礼でございますが、中国も大変古い遺跡を大事にいたしております。大事にいたして保存しておりますが、同時に、これは過去のあの専制政治のもとで行われたんだ、しかし、この人民がこういうものをつくった、文化遺産だということを特にあそこに書いてある。日本が別にならう必要はございません。ならう必要はないのですけれども、日本の国を愛するという心は大事であります。日本人である以上日本の国を愛しなければならぬが、愛することは過去から現在、将来に向かって日本の国を愛しなければならぬ。その一つとしてこの古い文化遺産を見て、昔にこういう文化があった、そういうものをわれわれの祖先がこうやってつくったんだ、われわれの祖先の個々の農民その他の人がつくったんだ、あるいは為政者がそれをつくらしたんだということを考える一つでございますけれども、これはその一つであるということにすぎないかと思います。

北側義一公明党・国民会議

○北側委員長 井岡大治君。

井岡大治日本社会党

○井岡委員 参考人の方々、大変お忙しいときにおいでいただきまして、審議のために御協力いただきましたことをまずもって感謝を申し上げます。  そこで、先々月の二十六日、私たち社会党で視察に参りました。そのときに、先ほど同僚の井上君からあるいはまた自民党の諸君から質問がございました中で、住民がかなり不満を持っている、こういうことについてどうかという質問がございました。村長は、それはそうではなくて理解をしてくれているんだ、こういうお話でございましたけれども、私たちの住民の皆さんとの懇談の席上、村長もおいでになっておりましたし、あるいは議長もお見えになっておられました。その中で極端な言い方だったと私は解釈をしておりますけれども、二十四億円で明日香村を売ってしまうのか、こういう質問がございました。  そこで私はいろいろ考えたわけでございますが、村長に一つだけ参考のために聞きたいのでございますが、隣の橿原町ですか、あの地域の国民所得、それから明日香村の国民所得、これはどういうことになっていますか。一人当たりの所得ということです。

愛水典慶明日香村村長

○愛水参考人 橿原市と明日香村との住民の所得と申されましても、一概にお答えのできにくい問題がございます。と申しますのは、橿原市の場合の経済基盤が異なっておりますので、その所得の換算は非常に私どもではつかみにくい状態でございます。ちょっと明確な資料も私調えておりませんので、はっきりしたことは申し上げにくい、かように思う次第でございます。

井岡大治日本社会党

○井岡委員 私たち、そこで懇談の中で聞いた中からの意見でございますが、それだけに、いま一円先生が御説明いただいた中でこの八条の事業、これと、いまお話がございました憲法十三条との関係、これはどういうことになりますか、一円先生にちょっとお尋ねをいたしたい。

一円一億関西学院大学名誉教授

○一円参考人 明日香法案の八条は、次に掲げる事業に要する経費の全部または一部を支弁するために明日香村整備基金を設ける場合には、国が二十四億円を限度としてその資金の一部を明日香村に対して補助する、こう規定しております。そして、その内容について三つありまして、一つは「歴史的風土の保存を図るために行われる事業」の場合にこの二十四億円を限度とする中からこれに充てる、それから第二は「土地の形質又は建築物その他の工作物の意匠、形態等を歴史的風土と調和させるために行われる事業」これをする場合にこれを出す、それから第三に「住民の生活の安定向上を図り、又は住民の利便を増進させるために行われる事業で歴史的風土の保存に関連して必要とされるもの」この三つの場合に限定をいたしまして、二十四億円を限度とする補助をするということがこの八条でございます。しかし、私この現実を考えてみますと、明日香村の住民といたしましては、土地も開墾できない、あるいはひょっとしたらビニール栽培ということも歴史的風土に反するということにされるかもしれない。いろいろの問題点が個々の住民の生活上の問題として将来にわたって存在し得るだろうと思う。こういうものについての十分な補償ということが、この条文の規定からしますと必ずしもないのではないか。そういう点も特に入れて、現在何十億あるいは何百億という金を出すことは国家財政からむずかしいかもしれませんが、しかしこの法案が続く限りはそれに見合うものを出す。そして住民に、十分協力をしてくれ、歴史的風土を残そうじゃないかということを特に入れてくださる方が、本当に歴史的風土を残そうという政府の本心が、これが国のためだということをお考えになるならば、むしろ将来にわたってそれを補償するような規定を設けていただくならば、憲法——それにもかかわらず、おれはもっともうけたいというので住民がこれに反対する。これは罰則を含んでおりますよ。住民がこれに反対した場合には、一年以下の懲役が科せられるという規定を含んでおりますので、大変重大であります。そういう規定を加える以上、しかもそういう配慮をしないでやるということになるならば、憲法の十三条の規定に反することになりはしないかということを私は考える次第でございます。

井岡大治日本社会党

○井岡委員 林先生にお伺いするわけですが、林先生は、かつて内閣の法制局長官をおやりになっておられましたから、これは議会が決めればそれでよろしいという御返事になるかと思いますけれども、いまの八条の問題ですが、この法律は、その事業に対して補助をするのであって、個々人に対する援助というものは一つも含まれておらない。しかし、憲法の十三条は、個人の人格なり権利というものを非常に高く評価をし、尊重しなければいかぬ。ただ、公共の福祉というものを何の尺度ではかるかということについては、これは議会で決めることだ、こうおっしゃるかもわかりませんけれども、ここでもう一項設けるということがあってもいいのではないか、こう思いますが、この点について参考人の御意見をお願いします。

林修三駒澤大学教授

○林参考人 いまの御質問の御趣旨でございますが、先ほど一円先生が言われた憲法十三条の関係、ちょっと私一円先生の言われたことで理解しかねる点もあるわけでございますが、一般的に住民との関係で申しますと、住民の行為の規制、たとえば先ほど言われたような自分の所有している家屋とかあるいは農地等の形状の変更が制限を受けるということは、実は古都保存法そのものですでにあるわけでございます。古都保存法の特別保存地区につきましては、相当厳重な規制が行われております。それが今度明日香の特別措置法案では、明日香村全域について特別保存地区とするということでございまして、この規制の内容は、実は古都保存法の規定から来ておるわけでございます。  それから同時に、そういう一般の国民なり住民の行為の、いわゆる公用制限とわれわれ申しますが、公用制限的な規定は、ほかの法律でも、たとえば自然環境保全法とか自然公園法とかあるいは都市計画法とか、いろいろな法律でそういう行為の規制があるわけでございます。そういうものに対して、それが憲法十三条あるいは二十九条の関係でどこまでできるかということは、これは一般的な問題としてあるわけでございまして、これにつきましては、憲法との関係から申せば、個々人の行為の規制については、主としてそれは経済的な利益と関連してまいりますから、憲法二十九条の財産権の保障というようなところと関連してくると思います。しかし、これは学説的にも従来の立法の取り扱いでも、行為の一般的な制限は、いわゆる受忍限度のものは特別の補償は要らないというのが従来の立法の考え方でございますね。これはいま申しましたように、自然環境保全法にしろ自然公園法にしろあるいは建築基準法にしろ、もろもろの法律でそういう住民なり国民の行為の規制をやっておるわけでございまして、これは一般的制限である限りには補償は要らない。しかし、それが特別偶然の損失をもたらすようなものについては憲法二十九条から補償が要るというような考え方でございますね。  その補償に当たるか当たらないかの問題でございますけれども、これは先生たちには釈迦に説法のようなものでございますが、古都保存法では、御承知のように、特別保存地区につきましては、形状の変更等については知事の許可が要るわけです。その許可が得られなかった場合において損失を受けたという場合、損失が本当にあれば、通常生ずべき損害に対しては補償するという規定が古都保存法に入っております。それから、許可を受けられなかった場合においては、その所有者等の側から、県に対してその財産の買い取り請求をすることもできることになっております。今度の明日香村のこの法案は、古都保存法に基づく特別保存地区と同じ扱いをされておるわけでございますから、この規定は当然これにも適用があるわけでございます。これは個々人の行為でございますね。これについては、いま申しましたように、特に明日香村の住民に対して、明日香村全体についてそういう規制が及ぶという点においては相当特殊な問題がございますけれども、個々人の立場から言えば、いろいろな法律で公用制限を受けているということと特別の質的な差はないわけだと思います。  そこで、この八条の基金は、明日香村全域がこういう特別保存地区に指定されて、住民においてもいろいろの行為の制限を受ける、あるいは生活上の利便についてのいろいろな制約がある、それに対して、村として第八条に書いてあるような趣旨でこの基金を設けて、その基金の運用益等で歴史的風土の保全とか、あるいは歴史的風土の環境に合ったような建築物の制限に伴ういろいろな方法の考案とか、あるいは住民の生活の向上、安定というためにこれを使うということを村がやるということが書いてあるわけでございまして、私はそれはそれでいいのではないか。つまり、住民の個々の問題につきましては、古都保存法の規定が適用があることと同時に、これは先生も御承知のように、一般的な法律でいろいろな公用制限をしておりますが、これと比較して、特にこの場合にそれが欠けておるということは私はない、かように考えておるわけでございます。

井岡大治日本社会党

○井岡委員 古都保存法によってこの法律がつくってある、こういうことですね。そうだとすると、私はここに一項を入れる必要があると思うのです。これは御承知のとおり、風土保存及び環境の整備に関する、これだけなんです。何も古都保存法によるということは、一つも書いてないのです。そうだとすると、私は一項入れるべきだ、こういうように思うのですが、この点について一円先生のお答えをいただきたいと思います。

一円一億関西学院大学名誉教授

○一円参考人 ただいま御質問のとおりに私は考えております。  それからなお、こういうことを言いますと若干失礼でございますけれども、古都保存法そのものが実は問題をはらんだ法律だと思うのです。京都市、奈良市、鎌倉市、その他政令で定める市町村を古都保存法の対象にする、こうなっておる。三つは名前を挙げております。ですから、そこで本来住民投票すべきであった、こう考える。それからそのほか全国いかなる土地であれ、政府の政令で定めたらこの規制の対象になるという、それはこの国会が本来つくるべきもの、そして住民投票によって個々の市町村を規制の対象に置くという憲法の趣旨からいいまして、古都保存法そのものが憲法上の要件を欠いておる。したがって、できましたらしかるべき措置をいまなさっておくのが適当ではないかということをちょっと、これはかえって混乱をさせると思いまして先ほどから遠慮いたしておりましたけれども、そのように考えます。

愛水典慶明日香村村長

○愛水参考人 大変失礼いたしました。手元に資料が出てまいりましたので、御報告申し上げたいと思います。  納税義務者一人当たりの所得の平均でございますが、明日香村の場合は年間百六十万三千円、橿原市が百九十万七千円、桜井市が百七十六万二千円、高取町が百六十七万二千円、以上のとおりでございます。大変失礼いたしました。

井岡大治日本社会党

○井岡委員 いま村長からお話がございましたように、橿原市との境というのが本当にわかりません。一方は農業所得で百六十万円、一方は百九十万円、こういうところにこの法を実施するに当たって、いわゆる個人に対する何らの援助と申しますか、補償と申しますか、こういうものは見ておられない。したがって、先ほど申し上げましたように、私は八条に一項設けるべきだ、こういう考え方を申し上げたわけでございますが、時間が参りましたので終わります。ありがとうございました。

北側義一公明党・国民会議

○北側委員長 松本忠助君。

松本忠助公明党・国民会議

○松本(忠)委員 林、一円両参考人にお伺いをいたします。  本法律案は、明日香村の区域の全部について歴史的風土を保存するための規制と財政上の優遇措置、これを行う、そして明日香村の住民の生活の安定を図る、こういう目的のための法律でございます。御存じのように、本法案は行政単位の地域を限定して歴史的、文化的風土の保存を図る、こういう法律でございまして、問題となっておりますのが憲法九十五条でございます。  そのために林先生、一円先生の御両所においで願ったわけでございます。この憲法九十五条を受けまして国会法の第六十七条で「一の地方公共団体のみに適用される特別法については、国会において最後の可決があった場合は、別に法律で定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票に付し、その過半数の同意を得たときに、さきの国会の議決が、確定して法律となる。」こう書いてございます。したがいまして、この憲法九十五条に該当するかどうかということが最大の問題になっておるわけでございまして、そこでそのことについてお二人の先生からるる御説明がございました。明快な御説明で、私も聞いておりましてよく理解できたわけでございます。  特に林先生から、第一条から第八条まで逐条的に細かく御説明をちょうだいいたしました。これが憲法九十五条に当たらない、こういう御説明を伺いました。  また一円参考人からも本法案が憲法第十三条に述べられているところの国民の権利が十分に守られているかどうか疑問がある、こういうお話でございました。これまた傾聴すべき御意見でございます。  ただいま自民党、社会党のお二人、合計三名の方々からこの問題につきまして繰り返し繰り返し御質問もありましたし、補足の質問がありましてお答えをちょうだいいたしましたので、この問題については国会で議決をすること、考えることであります。国会で決定する問題でございまして、御意見は御意見としてちょうだいいたしまして、私どもが今後の審議の上において九十五条に当たるかどうか、この判断をしなければならない、こういうふうに思うわけでございます。お二人の先生方の御意見を十分踏まえまして私ども今後の審議に当たりたいと思っております。大変ありがとうございました。  そこで愛水参考人に伺いたいわけでございますが、三月の十二日に当建設委員会の明日香村視察メンバーの一人といたしまして私も参りました。明日香村の住民の方々がいままで大変な犠牲を払い、協力を強いられてきたにもかかわらず、生活の安定と向上はほとんど考慮が払われていなかった、こういう事実を私も知ることができました。今回の特別立法によりまして明日香村には厳しい規制がかけられることになるわけでございますが、その結果は、明日香村の住民の方々がこれまで以上に不自由と不便、こういうものを忍ばねばならないことになるのだと思います。しかしながら本法が成立をし、基金ができて、その果実が毎年生まれ、村の責任において住民の意思を反映しながらこれを運用する、こういうことになりますならば、従来より一歩も二歩も前進することと思うわけでございます。  本法成立を明日香村の住民の方々が期待をしているというふうに愛水参考人からもお話がございました。しかしながら三月十二日に住民代表の方々の意見開陳の席では、非常に厳しい御意見が出たわけでございまして、基金が一けた違うのではないか、こういった御不満もございました。その点につきましても、いま、三月十七日にその後の総代会の御意見が訂正されて出ているというふうに村長さんからもお話がございました。理解をするわけでございます。憲法論問題はこれは愛水参考人さんにお聞きするべき問題でもございませんので、私どもはお伺いはしませんけれども、ただ、この法案が仮に成立するときに条件がつけられて、憲法九十五条の規定に基づいて明日香村の住民投票をしなければ最終的な決定をしない、こういうことになった場合を予想いたしましてお伺いするわけでございますが、明日香村の住民の方々がこの法律案の住民投票についてどういう結果が出るか、これに私どもは非常に関心を持っているわけでございます。  そこで、あの三月十二日の、あるいはまたその後三月十七日に再度お話がありましたけれども、現時点で住民投票が行われるということになったときには、明日香の方々はどのような結果を出されると思うか、現時点で愛水参考人さんのお考え、見通し、そうしたものをお伺いできれば幸いであります。

愛水典慶明日香村村長

○愛水参考人 もし、先ほど来のお話のように住民投票を御決定いただくという場合につきまして私の見通しを申し上げたい、かように思います。  私といたしましては、住民投票を実施せねばならないという御決定をいただきましたら喜んで住民投票に踏み切りたい、見通しといたしましては、賛成多数であると信じております。以上のようでございます。

松本忠助公明党・国民会議

○松本(忠)委員 村長さんもこの法案の成立には非常な期待をかけていらっしゃる。政治生命をかけているというお話まで伺っております。私も、この法案に対する熱心な、成立を御希望なさる愛水参考人のお話を伺いまして、十分この法案を審議いたしまして村民の方々の期待にこたえたい、このように思っているわけでございます。  時間もございませんし、まだあとたくさんございますので、私は以上をもって終わります。

北側義一公明党・国民会議

○北側委員長 瀬崎博義君。

瀬崎博義日本共産党・革新共同

○瀬崎委員 お忙しい中、参考人の先生御苦労さまです。  先ほど林先生、一円先生の御主張も伺ったわけでありますが、特に一円先生の強調されました公共の福祉と住民の権利が制限される問題について、われわれも提案されている明日香法が十分であるとは決して思っておりませんで、そのために現在修正案大綱も独自に出してそういう修正が政府案にぜひ盛り込まれるように努力をさせていただいている次第であります。同時にまた、明日香法の場合のみならず、現在の日本の法律制度のもとでは土地の利用一つについてもいろいろな法律でいろいろな規制がかかっていることも事実でありますが、そういう住民に対して何らかの規制が加わるときには慎重の上にも慎重でなければならない。これは立法府もしかり、行政府もしかり、こう思っているわけであります。  十分貴重な御意見を承った上でのことでありますが、まず、一円先生にお伺いします。  ある特別法の立法の趣旨が一つの特定された地域のみに適用されることを目指しておって、その地域がたまたまある一つの自治体の行政区と一致するというふうな場合、こういう場合でもその特別法は憲法九十五条の住民投票をすべき法律に該当する、そういうお考えなのかどうか、ちょっと伺ってみたいのです。

一円一億関西学院大学名誉教授

○一円参考人 お答えいたします。  その地域が特定の地方公共団体と合致しているという場合ですね。それは地方公共団体の権能の特例であり、また住民の権利義務の特例になりますから、そのように私は考えます。

瀬崎博義日本共産党・革新共同

○瀬崎委員 明日香保存法の場合なんですが、これは明日香村という地方公共団体を対象にしてあれこれ規制とかあるいは権限の新たな付与を考えたのではなくて、たまたま明日香村という行政区と一致した地域を対象にいろいろな施策を考えている法律なんだから、そういう意味で九十五条に該当しないんだ、こういうふうな意見もあるんですが、それに対して一円先生のお考えはいかがでしょう。

一円一億関西学院大学名誉教授

○一円参考人 ある特定の地域を対象としてその特定の地域の一部分はある特定の地方自治体に該当し、若干の部分は他の地方自治体にはみ出ている、こういう場合は、それぞれその地域を含む数個の地方自治体の住民投票に付すべきものだ、こう思います。  ただいまお尋ねの明日香村の方は、考え方としてはそのようにお考えになったといたしましても、完全に一つの地方自治体に合致しており、ほかに影響を及ぼしておりませんので、ただいまお答えしたように考えております。

瀬崎博義日本共産党・革新共同

○瀬崎委員 では一円先生のそのお考えでいきますと、よく似た法律といたしまして、たとえば小笠原諸島復興特別措置法であるとかあるいは奄美群島振興特別措置法でありますとか北海道開発法であるとか、あるいは滋賀県だけに係ります琵琶湖総合開発特別措置法、こういうふうな法律の場合でも、本来ならば、先ほど古都法が住民投票の対象であるべきだとおっしゃいましたが、これもまた九十五条に該当する法案というお考えなのでしょうか、一円先生。

一円一億関西学院大学名誉教授

○一円参考人 その該当する地方公共団体の権能の制限それから住民の権利義務の制限になるかならないかという具体的な内容もむろん入ってまいります。あるいは単にその住民の利益になる、権利義務を制限することじゃないというような場合には、従来住民投票を省略した例がございます。しかし、私は、そういう場合も本来は住民投票に付してやるのが適当ではないか、こういうように考えております。

瀬崎博義日本共産党・革新共同

○瀬崎委員 これは直接憲法九十五条の問題ではありませんが、林先生にひとつ伺っておきたいのです。  この明日香法の目的にはいま問題になっております「国を愛する心の涵(かん)養に資する」という文言が入っているわけですね。これをたとえば「国民の文化的向上に資する」というような表現をとるとかあるいは古都保存法の目的の言葉そのまま、つまり「国土愛の高揚に資する」こういうふうに修正した場合、埋蔵文化財と歴史的風土の保全をする、一方で住民生活を守る、これがこの法律の主たる任務であり、実体であると思うのですが、これに影響があるとお考えですかないとお考えでしょうか。

林修三駒澤大学教授

○林参考人 ちょっとむずかしい御質問でございますけれども、今度の明日香立法において「国を愛する」云々という言葉が置かれておるのは、明日香村が、よく言われます日本人の心のふるさとである、あるいは日本の古代国家が成立した最初の段階の遺跡を持っている、そういうことから来ているんだろうと思うわけでございます。これがすぐこの法律の規定の内容と、直接にどの規定と結びついているかと言われますと、その直接の結びつきは、この言葉が古都保存法のような目的規定になったからこの規定は落とすんだとか、この規定はこう修正しなければいけないというようなことは私はないと思います。ただ、こういう言葉が使われたのは、古都保存法の場合は古都保存の対象になる地域は比較的広いわけで、奈良、京都のほかにたとえば現在も鎌倉等も指定されておるわけでございますが、明日香は特殊の歴史的環境を持っているというようなことでこの言葉が使われたんだと思うわけでございまして、そういうことから明日香全域を指定するということも出てきたわけでございましょうし、直接の結びつきとは言えないかもわかりませんが、一条でこの立法に当たって政府当局が考えられたのは、明日香村全域が特殊な歴史的環境を持っている、そういうことはそれは何だと言えば、日本最古の律令体制でございますか、律令体制の国家が成立したもとだ、そういうことから出てきているのだと思いまして、この規定で直接にこれがどうなるということじゃございませんけれども、この一条にそれが入った趣旨は明日香の特殊性から来ているんだろう、かように考えるわけでございます。

瀬崎博義日本共産党・革新共同

○瀬崎委員 以下、愛水村長さんに伺いたいのです。時間が非常に少ないので簡単な答弁でお許しをいただきたいと思います。  昭和四十五年に「飛鳥地方における歴史的風土および文化財の保存等に関する方策について」と題する閣議決定が行われました。一応具体的に道路の名前も挙がった道路改良、あるいはまた飛鳥川という固有名詞を付した河川改修、公園、ごみ処理場、駐車場、周遊歩道などの村民対策を講ずること。もう一つは、国、地方公共団体及び民間が一体的な協力関係で飛鳥地方の文化財を保存し、住民生活の向上を図る、そのための機関として飛鳥保存財団を設立する、こういうふうなことが決められましたね。こうした措置がもし十分なものであるならば、この新たな法律をつくってくれというふうな動きにはならなかったのではないか。どうしても特別法をつくってくれということになったのは、この四十五年の閣議決定そのもの、またそれに基づく国の施策がきわめて不十分であった、こういうふうに見なければならないんじゃないかと私は思うのですが、いかがでしょうか。

愛水典慶明日香村村長

○愛水参考人 その問題につきましては、簡単に申し上げたいと思うわけでございますが、いろいろな環境整備事業等について十分お力添えをいただいて、明日香村におけるところの環境は大変よくなってきた。ただ問題といたしましては、住民の対策を主とした事業といいますか、そういうものが少なかったということと同時に、その当時答申の中で、明日香特別立法についても検討さるべきであるという条項が入っておった、かように記憶をいたしておりますが、それから四十五年以降、それを中心として明日香特別立法の制定を本日までお願いをしてまいってきた、こういうことでございます。  以上でございます。

瀬崎博義日本共産党・革新共同

○瀬崎委員 大きな道路や河川の改修は別として、きめ細かな住民対策というのは結局この飛鳥保存財団にかかっておったんじゃないかと思うのですね。ところがこの飛鳥保存財団に対して、先般調査に伺いました折に、総代会の皆さん等数人相当厳しい批判を出していらっしゃったと思います。  実は総理府に聞いたんですが、なるほどやった項目はたくさんあるんですね。村道舗装の住民負担軽減とか、公民館建設助成、公民館活動の助成、水路改修助成、小規模土地改良の助成、遠距離通学の助成、わら屋根のふきかえ助成、無住社寺の修復、古代民家の保存、虫害防除、石積みの助成、清掃団体のほう賞、清掃費の助成、十三項目か十四項目あると思うのです。ところが出した金は締めて七千六百万円、こういうことですね。約十年間であります。一つの項目については数十万にすぎなくなるのです。こういう点で、この財団というのは外部から来られるお客さんたちには役立ったか知れないけれども、結局村民にはお茶を濁したにすぎない、こういうことになったんじゃないかと思っているのですが、村長さんの率直な御意見を承りたいと思います。

愛水典慶明日香村村長

○愛水参考人 お答えを申し上げたいと思います。  飛鳥保存財団が閣議決定によってつくられたのでございまして、その間、先ほども申し上げましたように、現在で四億、四億の八億でございますか、五十五年度で十億になるかと思うのですが、その間いろいろな整備事業に対してお力添えを賜りまして、また法律上処理できない住民対策に対してきめ細かな援助を賜ったのでございますが、ただいまお話しございましたように、十年間で七千六百万という、それと外来者を受け入れる整備事業というのが大変多うございましたものですから、住民の中から先日のような不満が出た、私、かように解釈をいたしております。  以上で終わります。

瀬崎博義日本共産党・革新共同

○瀬崎委員 村民の政策に直接響く施策がきわめて貧弱であった反面、駅前広場の一等地はこの財団が買い占めてると言ったら言い過ぎかもしれませんが、占有している。国際の家とか総合案内所はりっぱなものをつくった。ところが自分の字には公民館一つ、集会所一つできていない。国際の家を利用せいと言われるが、あんなところまで行って利用できるか、こういう手厳しい批判もありましたね。こういう点であるとか、また財団の役員等見ますと、村長さんも理事のお一人でいらっしゃるし、林先生もいらっしゃるわけでありますが、たとえば理事長は松下幸之助さん、常務理事は二人が二人ともそれぞれ財界の大物、それから常任理事が七人いらっしゃいますが、このうち五人までがやはり財界人ですね。こういうふうな状況で、果たしてこれが本当に飛鳥の文化財の保存を担い得る組織だったのか、また村民の生活向上を本当に担い得る組織だったのかという点で私は疑問を感ずるわけなんです。ですから、今回特別立法がこういうふうに提案されているわけですから、一方こういう財団の役割りについても考え直すということも必要ではないかなというふうな気もしているのでありますが、いかがでしょうか。

愛水典慶明日香村村長

○愛水参考人 財団の果たしてきた役割りというものも、私といたしましては村民のきめ細かい事業に対して手を差し伸べていただいたということについては感謝をいたしております。ただ、問題といたしましては先ほど印したような問題が村民の感情の中にあるということだけは申し上げておきたいと思います。  なおまた財団の方と私の方とまだ詰めはいたしておりませんが、特に総理府の管理室等の御指導を得て、三十億の基金をいただく関係からその利子で財団に従来やっていただいておった事業に回せるものが数多く出てくるのじゃないか、したがって財団とのあり方についても考えていただくことになろうか、かように思っておりますし、また財団の方といたしましても、そういうようなことも私に漏らしておられましたので、そのように御理解を賜りたいと思います。

瀬崎博義日本共産党・革新共同

○瀬崎委員 一般的に、何か国民を引きつけるような名所旧跡等がありますと観光客がふえる、そのことによってホテル、旅館の宿泊者の増加あるいはレストランの飲食の増加等で間接的にも地方自治体の財源が潤うというのが通例なんでありますが、明日香村の場合、ずいぶんと観光客がふえたわけでありますが、そのことによって自治体の財政が潤った、あるいは村民の所得が潤ったというふうなことは考えられますでしょうか。

愛水典慶明日香村村長

○愛水参考人 ただいま御指摘のとおりでございまして、明日香村としてはほとんど潤っていない、またレストラン等もない、いろいろな観光客向けの施設がないということが同時に明日香の特徴であろうかと私は考えておるような次第でございます。

瀬崎博義日本共産党・革新共同

○瀬崎委員 この点、私どもも十分留意をしなければならないと本法案の審査に当たっても思っております。同時に、明日香村で村民の方々の所得についてでありますが、農業以外で何かまとまった収入源になっているものがあるのでしょうか。

愛水典慶明日香村村長

○愛水参考人 農業以外の所得と申しますと、小さな商工業程度のものでございます。ただ問題としましては兼業農家が増加しつつありまして、大阪、京都方面に三十分ないし一時間足らずで通勤できるものですから、兼業農家の増加が目立っておるというのもそういう理由でないか、かように考えております。

瀬崎博義日本共産党・革新共同

○瀬崎委員 いろんな施策につきましてわざわざ特例法をつくってまで、不十分ではあるけれども国が一定の助成の強化をしようということになっているのでありますが、おとといの委員会審議を見ておりますと、事農業についてだけは、特に生産調整については、全く一般的扱い、奈良県にも通常の割り当てをして、考えるのなら奈良県の中で適当にやってくださいよというような話であったのでありますが、これは体系から見ても私はおかしいように思いました。生産調整についても、農業以外にこれといった地場産業は考えられない、施設園芸をしようにも規制を受ける、こういう現状では、これもまた国としても特例を考えて、明日香の生産調整については例外扱いにする、こういうことであってしかるべきではないかと私は思っているのですが、村長さんのお考えは率直にいかがでしょう。

愛水典慶明日香村村長

○愛水参考人 私、いつも申しておりますが、明日香の風致、景観を守っていくということにつきましては農業立村でいかざるを得ないと思っております。ただ、先日来のお話のように、農業経営そのものが国全体として非常に収入の少ない、非常にやりにくい状況に置かれておる。その中にあって明日香の農業をどう進めていくかということに対しましては、非常に私としても頭を痛めておるのが偽らない気持ちでございます。  ただ、特に米の生産調整につきまして、私はむしろ明日香で稲穂がなびくところに明日香の風土のよさがあるのじゃないか、そういう意味から、生産調整については格段の御配慮をお願いいたしたい、こういうことで県の方へも要望し続けてきたわけでございます。特に特別保存地区の農地は飛鳥米に適した地域でございます。従来から酒米につくられておった地域でございますので、その点につきましては県の方に特別にお願いをし、あの地域については県の方では配慮をしてもらっているという現状でございます。

瀬崎博義日本共産党・革新共同

○瀬崎委員 明日香村にあります、あるいは飛鳥地方にあります文化財の保存、これは地下にある文化財の保存が中心でありますために非常に困難を伴うわけでありますが、これを成功裏に進めるためにも、専門家といいましょうか、飛鳥の文化財を系統的に研究していらっしゃいます研究者の方々とそれから明日香の村民とが、対立関係になるのではなくて、できるだけ協力関係になることが大事ではないかと思うのですね。その調和を図る責任が私は国の政治の責務だ、こう思っておるのであります。この点に多少、多少どころか大きな手抜かりがあって、いろいろトラブルもあるのじゃないかと思いますけれども、願わくば村としても、今後の法律の目的とする片や文化財の保存、片や村民生活の向上、この調和を図るためにいろいろと努力をいただきたい、こう思うのでありますが、そういう両方の調和の問題について村長さんの御意見を伺って終わりたいと思うのです。

愛水典慶明日香村村長

○愛水参考人 大変ありがたい御意見を賜りました。私といたしましても、片や風土並びに景観、地下遺構の保全とそれから住民の生活向上の調和をどの点で求めていくかということが非常にむずかしい問題がございます。なお、私の方では文化財保護委員会という諮問機関を持っておりまして、これは民間から選んでおります。あるいは学者の中から選んだ方々、そういう関係の方々に十分御意見を賜っておりますのがいままでの行き方でございます。  なお、今後この法律が制定をいたされますと、特に基金制度の問題と関連をいたしまして条例を制定しなければならないことになっておると思うのでございます。自治法の二百四十一条に基づきます条例を制定して云々ということでございまして、細かい条例を設けなければならぬ、かように考えておりますと同時に、審議会をつくりまして、住民からの代表もそれに参画をしていただいて、村の保存と住民対策との意見を審議会で十分聞いた上で処理を図っていくように考えたい、かように考えております。

北側義一公明党・国民会議

○北側委員長 吉田之久君。

吉田之久民社党・国民連合

○吉田委員 参考人の皆さん御苦労さんでございます。  いろいろこの問題でちょっと考え方の交通整理をする意味でお尋ねしてみたいのでございますが、飛鳥地方とか飛鳥時代、その飛鳥地方の歴史的文化あるいは遺産を守ろう、あるいは風土を保存しよう、この基本的な考え方は、飛ぶ鳥の方の飛鳥でございますね。千三百年昔に律令国家ができた。それはわが国の国家体制の原初形態である。しかし、それは昨今まで特に守る法律もなく、自然のなすがままに任せていた。たまたま現在の明日香村というのが昭和三十一年に誕生しているわけです。飛鳥村と高市村と阪合村が三村合併して明日香村ができた。したがって、明日香村は、在来の飛鳥の文化を守ろうということで、きわめて自主的に村民の方々が努力をしてこられた。私は飛鳥の歴史というのは、現在の明日香村だけではなしに、現在の桜井市にも橿原市にもずいぶん広がったものだったと思うのです。それは時代の変化の中で新しい市になって、特にそういう規制もないし、次々と近代化していった。たまたま明日香村が自主的な努力をしていただいたところに古都保存法ができて、四十一年以降これは一層いろいろと保存をしようという規制もかかってきた。ですから、今日までもうすでに規制は続いているわけなんですね。  しかし、それでは非常に村民生活に支障を来す、だからひとつ何とかしてほしい。固定資産税も減免してもらえないか、あるいは補助率も他の町村とは違った特段のかさ上げをしてもらえないか、ついては特別立法をつくってもらえないか。これが現在の明日香村と奈良県の要望であり、それに基づいて今日に至っておる。政府がようやく特別立法の決断をした、私はそういうふうに理解いたしております。  したがって、先ほどから九十五条の問題がいろいろ問題になっておりますけれども、こういう歴史的経過を尋ねますと、むしろ辛うじて現存の明日香村を範囲として守らざるを得ないという状況にある。たまたまそれが行政単位の明日香村とぴったり合っているだけであって、その趣旨とか精神とか中身というものは、そういう村の権能を規制するという意味ではなしに、むしろ保存するためにどうすればいいか、規制もある程度それは受け入れよう、そのかわりいろいろと村民の生活安定のための援助措置も講じてもらおう、こういう趣旨からできつつあるものだと思うのですが、村長さんの御見解はいかがですか。

愛水典慶明日香村村長

○愛水参考人 いま先生のおっしゃったとおりでございまして、従来から、古都保存法が制定になって施行される以前から、何がしかの保存を現実にやってきたということは、これは事実でございます。なお、古都保存法の制定に基づきまして、特に特別保存地区あるいは保存区域とかが設けられ、また同時に都市計画法に基づく県条例によるところの風致条例が制定された、こういうことから、先ほどお話しのように、やはり住民を対象とした援助をするための、あるいは生活の安定向上を図るための特別法を制定していただきたいということをお願いし続けて今日に至ってきた、こういう経過でございます。

吉田之久民社党・国民連合

○吉田委員 そこで林先生にお伺いしたいのでございますが、いま村長さんがおっしゃっておるような経過の今度の特別立法でございますから、私は、まさに先生がおっしゃるとおり、この立法は住民の権能を大変一方的に制限するという、住民の側から言えば非常にネガティブな中身だけの法案ではない、したがってそういう意味で、九十五条の住民投票を行う必要を持たない法律案だというふうに思うのでございます。  たとえば、明日香村の村長は今後永久に知事が任命するとか、明日香村が条例を定めるときには国の許可を受けなければならないとか、こういう規定の法律でありましたら、私は九十五条の適用に値する当然の法律だと思うのですが、今度のこの内容はそれと全く違った、むしろ在来規制されたものは規制されるとして村民に対する何らかの保護措置を確立していこうという意味ですから、九十五条の法の精神とは全然次元の違う法の内容だと思うのです。それでよろしゅうございますか。

林修三駒澤大学教授

○林参考人 いま吉田先生がおっしゃったとおりと考えております。  古都保存法ができましたのはたしか四十一年だと思います。これに基づいで古都保存区域それからまたその中の特別保存地区というのが次々と指定されていったわけでございます。飛鳥地方につきましても先ほどおっしゃいましたとおりに、明日香村のほかに橿原市、桜井市の一部も古都保存区域に指定されております。特別保存地区になっているところもございます。この特別保存地区につきましては古都保存法に基づいていろいろ一般の住民の行為の規制がかかっておるわけでございまして、今度の法律はそれを受けておりまして、それはそういう住民に対する規制は古都保存法の系統で来ておるわけでございます。それについての特別の規定としては、結局全域が特別保存地区になるというところにあるわけです。それから第一種と第二種の歴史的風土地区を置くというようなところがあるわけでございますが、大部分の規定は、いまおっしゃったとおりに明日香村全域を特別保存地区、従来も大部分が特別保存地区になっていたわけでございますが、それをさらに拡張して明日香村の歴史的風土を守っていくというために全域を特別保存地区扱いにする、それについては住民の生活基盤の安定向上の見地から、この村に対してある程度の財政的援助を与える、あるいはその方法としては幾つか書いてございますが、そういうことが主体の法律でございます。  これは先ほど申しました憲法九十五条の基準から申せば、憲法九十五条の特別法というのは、特定の地方公共団体の権能とか組織とか運営についての法的拘束を与えるものだ、そう考えるのが妥当だと思います。それから申せば、いま申したようなものでございますし、また明日香村に対して若干の財政的援助が行きますけれども、これは明日香村が自発的に整備計画に基づいて公共事業等をやる、あるいは基金を設ける場合に財政援助をするというものでございまして、明日香村の権能に対して特別な制限なり法的拘束を加えているものではございませんで、これはまさに九十五条には当たらない、かように考えるわけでございます。

吉田之久民社党・国民連合

○吉田委員 そこで一円先生にお伺いしたいのでございますが、いまお話しのとおり、住民にかかるいろいろな規制等は古都保存法ですでに決められた問題でありまして、先生のおっしゃる憲法十三条に違反するかどうかという問題は、それは古都保存法それ自体にかかるならばかかるべき問題でありまして、私は、今度の明日香のこの立法について特にそのことが憲法十三条と抵触してくることにはならないと思うわけでございます。  それからいま一つは九十五条の問題でございます。ここにも地図がございますように、この白い部分でございますね、この白い部分はすでにもう古都保存法によりまして完全に特別地区としていわば凍結されているわけでございます。これを今度は第一種の特別保存地区にしよう、そして、同じ村でございますからいろいろと重要なところがありますから、残っておる部分も村全部第二種特別保存地区にしよう、こういう考え方でございます。  ですから、もしもこれがどうしてもたまたま一つの村全域にかかる法律でいろいろな制限条項があるから住民投票をしなければならないというのでありますならば、政府が住民投票をもし避けようとすれば、一坪と言っては極端ですが、一ヘクタールでもこの山林の部分を除外しておけば住民投票にかからないことになりますね。あるいは明日香村が、それならば隣の高取町と合併しようとか橿原市と合併しようということになれば住民投票の対象に全くならない理屈になりますね。私の言いたいのは、たまたまいま申しました配慮から村全体がこの立法の措置を受けることが、村の住民のためにも基金の創設のためにも大変合理的であるし、実際の運用がスムーズにいくことだ、こういう趣旨でできている法律案でございますから、住民投票の概念には当たらないと思うのでございますが、いかがでございますか。

一円一億関西学院大学名誉教授

○一円参考人 お答えいたします。二点お尋ねであったと思いますが、初めのお尋ねを後からお答えいたします。  後の方は、古都保存法によって明日香村の一部の地域は特別保存地区に現に指定されているということでございます。それで現在の明日香特別法案は全域を古都保存法に言うところの特別保存地区にしよう、そういう案でございます。全域を特別保存地区にして、さらにそれを一種、二種の二つに分けて、従来特別保存地区になっておった部分を一種特別保存地区となし、従来はそうでなかった、単純に古都保全地区であった部分を特別保存地区となして第三種としている、こういうことですから、いまの白い部分が、全部が白い部分になるわけです。今度はそういうことと私は理解しております。全部白い部分になるわけです。全部白い部分になって、従来白い部分であったのを第一種としている。それからあとの部分を第二種とする。一種も二種も全域にわたってそうするということですから、これはまさに特別の立法であって、非常に特殊な立法です。  私は古都保存法それ自身が実は問題だと考えておりますけれども、仮にそれを問わないといたしましても、政府の考え方は、古都保存法は一般法であると考えて、その一般法たる古都保存法の特例法つまり特別法として明日香法を定める、こういうことですから、一般法に対する特別法であることには変わりはないと思うのです。私は、やはりこれは住民投票に付するべき性質のものだと思います。  それからもう一つ、最初にお尋ねになりました明日香法は、特別に村長を知事が任命するとか、議会をなくするとか、そういうような組織あるいは運営に関することには関係しておらない、こう申します。なるほどそれはそのとおりです。しかし、地方自治体の運営の上で非常に大きな制限がなされておるということをまず申しておきたいと思います。これは、たとえば第四条を見てみますと、まず、内閣総理大臣は歴史的風土の保存と住民生活との調和を図るために生活環境及び産業基盤の整備に関する基本方針を定める、そしてこれを知事に示す、知事は、その整備基本方針に基づいて明日香村の意見を聞いて、明日香村における生活環境及び産業基盤の整備に関する計画を作成する、そうして内閣総理大臣に承認の申請をすることができる、こういうことになっております。それはどういうことに関してかといいますと、その第四条の三項には、道路の整備に関すること、河川の整備、下水道、都市公園、住宅、教育施設、厚生施設、消防施設、農地並びに農業用施設及び林業用施設の整備、文化財の保護に関する事項、さらに十一には「その他歴史的風土の保存と調和が保たれる地域振興に関する事項で特に必要と認められるもの」こうあります。これは明日香以外の全国のどこの市町村にも、一般的にはこういうことはありません。つまり地方自治体の権能の上で、こういう総理大臣の定めた基本計画を知事が示されて、その知事が明日香の村の意見を聞いて、そして大臣の承認を得なければ、河川の修理も、道路をいじることも、下水道に関することも何もできぬ。これは地方自治体の活動を制限しておるのですよ。そういう点で、この九十五条の、一の地方自治体のみに適用される法律を制定するのには住民投票が要るということは、単に議会をなくするとか、村長を県知事が任命する、国が任命するというような組織あるいは運営に関するだけのことではない。やはり自治の本旨、本質に基づいて、これを制限する、そういうものは住民投票なしにはやってはいけぬというのが憲法の趣旨である、このように考えます。

吉田之久民社党・国民連合

○吉田委員 時間が超過いたしましたので、これで終わらせていただきます。いろいろありがとうございました。

北側義一公明党・国民会議

○北側委員長 これにて午前の林修三参考人及び一円一億参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、御多用中のところ、長時間御出席をいただき、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。  午後一時十五分に再開することとし、この際、休憩いたします。    午後零時四十四分休憩      ————◇—————    午後一時十八分開議

北側義一公明党・国民会議

○北側委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前に引き続き、参考人から御意見を聴取いたします。  午後の参考人として関西大学名誉教授末永雅雄君、堺女子短期大学教授嶋田暁君、大阪大学名誉教授犬養孝君、及び午前に引き続いて明日香村村長愛水典慶君に御出席を願っております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中のところ、本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございました。  本委員会といたしましては、現在審査中の本法律案につきまして、参考人各位のお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じます。  まず、議事の順序について御説明いたします。  初めに、参考人各位から御意見をそれぞれ十分程度お述べいただきまして、あとは、委員の質疑に対しお答えをいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、参考人は委員長の許可を得て御発言願い、また、委員に対し質疑はできないことになっております。  御意見は、末永雅雄君、嶋田暁君、犬養孝君の順序でお願いいたします。  まず、末永雅雄参考人にお願いいたします。

末永雅雄関西大学名誉教授

○末永参考人 飛鳥地方に対する歴史的関心は、江戸時代における紀行文及び名所図会等にすでにおさめられてあります。その後、明治末から、喜田貞吉先生らによって、文献による飛鳥の研究が進められてまいりました。喜田先生は、文献だけではなく、考古学方面にも造詣をお持ちになっておられた方でありますが、しかし、考古学調査の現実に入りましたのは、昭和以来のことでございます。調査対象は、古墳、宮跡あるいは寺跡等であります。  まず、古墳調査の成果から申し上げますと、石舞台古墳は、昭和の初めに濱田青陵先生の指示によりまして、私が担当させられて今日に至りました。これは、後期方形墳を代表する横穴式の石室であります。その年代を、われわれは大体七世紀中ごろと見ております。  もう一つ、古墳調査で顕著なのは高松塚の調査でありますが、この高松塚の調査は、余り世間に知られ過ぎておりますので、御説明を申し上げるまでもなく、皆さんが御存じかと存じます。大体、円墳であって、横口式石廓、そして中に壁画がございまして、この壁画は、日本の古墳の内部における装飾の群を抜いたものでありました。他にある幾つかの古墳も、主として七世紀、八世紀の時期に係る営造と見られます。これが飛鳥の古墳の一つの文化的な特徴ということになります。同時に、宮跡の年代との関係も考えなければならない。  宮跡調査の成果でありますが、文献に残る著名な宮都は、七世紀を中心に約百年近くなりますが、名前はそれよりなお古く残っております。これは、過日、諸先生方が実地をごらんいただいたと思いますが、特に飛鳥板蓋宮の伝承地、この飛鳥板蓋宮の伝承地はなお今後に問題を残しておりますけれども、ごらんをいただいたとおりの現状の下には二重になる部分がございます。このあたりに対する遺跡への判断ははなはだ複雑でありまして、これに対していまのところ、文献にあらわれる殿堂を該当することはむずかしいのでありますが、したがってその付属あるいは諸施設というものに対する確認はまだまだ前途遼遠と言わざるを得ないのであります。かつ、いろいろの遺構が相次いで検出されておりますが、われわれの調査をいたしております地域、つまり飛鳥板蓋宮伝承地のほかからも遺構がところどころに出ております。  こういう事情でございますから、一層私たちは調査に対する慎重な態度を持って進まなければならないということを痛感しておる次第であります。われわれ橿原考古学研究所関係の者が担当をいたしておりますのは村役場の付近でございまして、その面積は約七万平米、ことに、ここでは敷石遺構が広く残っておりまして、それに続いて、最近になりまして約二百畳も敷けるかと思うような大きな建物跡が出てまいりました。  かような調査を踏まえて、私は、飛鳥保存を提唱いたしましたのが昭和四十五年三月七日でありましたが、飛鳥古京を守る会を結成いたしまして、政府、社会に飛鳥保存をお願いをしたのでありますが、なおこの上とも、明日香村民の生活安定と向上を御考慮いただき、かつ、学界、社会が安心をする今後の保存方法をお願いいたしたいと思います。(拍手)

北側義一公明党・国民会議

○北側委員長 次に、嶋田暁参考人にお願いいたします。

嶋田曉堺女子短期大学教授

○嶋田参考人 私は、こういう席にふなれでございますので、時間も限られているようでございますので、個条書き的に三点余りのことを申させていただきたいと思います。  まず最初に、ただいま末永先生が御説明くださいましたように、飛鳥の遺跡と申しますか、あえて申しますと、法案の第一条にございます、いわゆる飛鳥地方ということについてなのでございますが、必ずしも、私どもの従来の調査では、明日香村内に限ってないわけでございます。むしろ明日香村域とは少しずれていると申しますか、お隣の隣接します橿原市域あるいは桜井市域にまたがって存在するわけでございまして、私どもの研究いたします立場から申しますと、これらはやはり一体的に保存と申しますか、関連ある諸遺跡として研究してまいらないと、十分な成果が上がらないというふうに考える次第でございます。  それで、私ども、ここ二十数年来、いわゆる地下に埋蔵されております埋蔵文化財の保存につきまして微力を尽くしてまいった一員でございますが、従来のこういった埋蔵文化財の保存の方法につきましては、私どもは勝手にサンプル保存というような呼び方をするわけでございますが、と申しますのはそのうちのある部分だけを重要視いたしまして、これについては非常に行き届いた保存政策を講ずるかわりにというとちょっと言葉が過ぎるかもしれませんが、その区域を外れると、これはもう非常にその区域内の地域に——これはちょっとけちをつける言い方になって誤解を生むかもしれませんが、劣らず重要であるとわれわれ研究者の立場から思えるものについても、一方で残されたんだからこちらの方は少し破壊されるのもやむを得ない、あるいは残せる場所へ移す、いわゆる移築というようなことを図られるわけでございますが、私ども考古学の研究者の立場から申しますと、移築というのは保存にならない。あくまでもつぶしちゃって持っていくわけですからこれではぐあいが悪いわけでありまして、その場所へ残していただくということがわれわれの研究上は必要でございます。  と申しますのは、われわれの学問は日進月歩でございます。いままではいろいろな調べる方策がつかないので気づかなかったことが、例の放射性炭素元素カーボン14と呼んでおりますが、そういうものを使って、それが廃絶した、埋まった年代がわかるとか、あるいは熱残留地磁気というんだそうでございますが、そういった新しい方策が近年開発されまして、非常に厳密な古さ、年代がわかるようになってまいりました。ところが、こういうものは一度壊してしまいますと、そういう方策がわかってもいかんともしがたい、ああ残しておけばよかったなという後悔ばかりをわれわれは過去に何度も繰り返しておるようなわけでございます。そういう意味におきまして、われわれの言葉を使わしていただきますとサンプル保存ではいけない、全面保存ということをぜひお考えいただきたいというのが一つの希望意見でございます。  第二番目には、申すまでもなくこの飛鳥地方に非常にいい状態でこうした古い埋蔵文化財が残ってまいりましたのは、先年御退職になりました、長い間明日香村の村長を勤められました脇本前村長を初めとして、村民の皆さんが、明日香村という場所の歴史的な性格について非常に御配慮をいただきました結果今日に残っていることは改めて申すまでもないことかと思います。ところが、今日の状態になってまいりまして、御案内のように明日香村では思うような農業もなかなか困難になってきたという状態で、こうして今日まで明日香にずっとお住まいの、村民という言葉で呼ばしていただきますが、そういう方々が今後安心して明日香村で生活を続けられるような方途と申しますか展望と申しますか、そういうものについて、私ども承りますところでは非常に不安を感じておられるように聞いているわけでございます。  非常に失礼な申し分になるかと思いますが、お示しいただきました要綱なり法案なりを読ましていただきましても、古くから明日香村にお住まいの村民の方々が今後安心して生活を続けられるということについてのお示しと申しますか方策と申しますか、計画を策定するんだというふうなお示しがあるようでございますが、一体それは何を目指し、どういう生活をするためのあり方なんだろうかといったことについて、私の理解します限りにおきましては、法案のどこにもお示しがないように、つまりどういう機関が責任を持ってそういう明日香村の従来からの村民の生活を守れるような方途と申しますか展望と申しますか、そういうものをお出しいただけるのか、このあたりに率直に申しまして要綱なり法案なりを読ましていただいて私どもにはもう一つ納得いかないものを感じるわけでございます。ぜひひとつこの点につきましては、本委員会の審議において明確な方針をお出しいただけたら非常に幸いだと思うわけであります。  一例を挙げさせていただきますと、最近の農業は、御案内のようにビニールハウスでつくる栽培方法というものが各地で非常に行われておりますが、明日香村ではこれは規制の対象になって、やれない。私ども確かに、ほかの地方へ参りまして、見る限りビニールハウスの景観しか見えないという状態を目の当たりにいたしまして、これはいささか困る、何とかそうならないような規制を明日香村ではお願いしたいということは感じるわけでございますが、それではビニールハウスによる栽培をやらないでどういう農業が今日奈良を成り立てていくのかというあたりについて、私どもは門外漢でわかりませんですが、いろいろな方に会うたびに伺うのですが、いや、それはと皆さん言葉を濁されるようでございます。そうなってくると、最初申しましたように、明日香村民としてお住まいの方が一体今後どんな農業を続けられたら安心して明日香で住めるのか、いささか不安を感じる一例として挙げさせていただいたわけでございます。  第三点は、これは私ども調査研究に当たる者としてぜひ御検討いただきたいのは、今度の要綱なり法案によりますと、第一種地域、第二種地域という規制にやや差等をつけることをお考えのようでございます。私個人はこの考え方には全面的に賛成するものなんでありますが、ただ、この第二種地域につきましていささか不安がある、と申しますのは、これはもう申すまでもないことだと思いますが、飛鳥地方の埋蔵文化財の特色は、皆さんおいでになってごらんになれるようないわゆる地上に出ているわけじゃございません。全面的に地下に埋まっておるわけでございます。ですから、全村域に一つの規制をお考えいただくことはわれわれの立場として非常にありがたいことなんでございますが、いま申しているように、第一種地域はともかくとして第三種地域になるといささか条件が異なってまいりまして、たまたま先ほど末永先生が御紹介になりましたような新しい重要な遺構が地下に出てまいった場合に、どうもいまの状態では不安を感じざるを得ない。何とかしてそういう場合には第一種地域並みに、これは法律技術的なことは私素人でわかりませんのですが、そういう場合には別な文化財保護法を適用するなり何なりして、そういう場合にも確実に遺構が守られるような方途をぜひお考えおきいただきたいというようなことでございます。ほかに二、三細かいことで、たとえば古都保存法の審議会の中に、いま申しますように、飛鳥は鎌倉や京都、奈良と違いまして地上の文化財よりもむしろ地下の文化財いわゆる埋蔵文化財というものに特色があると申しますか、そこに力点がございます。したがいまして、従来審議会に御参加の研究者並びに学者の先生方のやや専門外の部面が中心になろうかと思います。できましたらひとつ、そういう飛鳥の特色に対応するような、深いというんでございましょうか、あるいはできればそういう審議委員の先生方の中に、おいでの末永先生のようなその筋の専門家をぜひお加えいただけたら、私どもとしては非常にありがたい。  時間が来たようでございますので、失礼いたします。(拍手)

北側義一公明党・国民会議

○北側委員長 次に、犬養孝参考人にお願いいたします。

犬養孝大阪大学名誉教授

○犬養参考人 飛鳥のことでいろいろと御心配いただきましてありがとうございます。よろしくお願いいたします。  全国にはいろいろと遺跡がたくさんある、それから万葉集も日本全国ですから、万葉の故地がいっぱいあるのですけれども、事実ながめますと、ほとんど大部分が壊滅寸前みたいな感じです。ぼくが思いますのに、いま生きている人間でこの世が終わるなら、山を崩すもいいでしょう、いろいろ壊してしまってもいいと思いますけれども、われわれだけじゃなくて、末長い日本の未来を思いますと、守らなければならないところは幾つもあると思うのです。  その中で、私は、飛鳥だけを守るのじゃなくて、ほかも守ってほしいけれども、いまの場合、飛鳥と限定しますと、飛鳥は古代遺跡の一番密集しているところですし、それから万葉で申しましたら、万葉の豊かな心が一番密集しているところです。だから、飛鳥はどうしても、われわれだけのためでなくて、後代のために残さねばならない。皆様が試みに甘樫丘の上にお立ちになられますと、実によく全体が見渡される。あそこに立っておりますと、日本の古代史の激動、動乱、その脈動がすべて直に感じられる。そういうところは日本にございません。すべての歴史があそこの中で沸きに沸いている実相を、あの山の上に立つとそのまま見ることができる。そして、そればかりでなくて、今度は万葉の上から言いましたら、万葉集の歌は飛鳥の全域にわたっていて、まさにあの上に立つと、川べりのササの動きにも、川の流れにも、山のたたずまいにも、古代のすばらしい心があの中に宿っている、そのことを痛感いたします。また、私は学生を連れてよく万葉旅行をいたしておりまして、大学生ばかりなんですが、今日まで百六十一回続けまして、いまや三万人になろうとしております。彼らが夢中で歩いているのはなぜかと言えば、明日香に限りませんが、明日香のような現地に立ちますと、そこで本当に古代がよみがえってくるから、あるいは古代の心がよみがえってくるからだろうと思います。あるいは、実際にもうじきの話ですが、先ほど末永先生がおっしゃいました飛鳥古京を守る会がこの四月の十二日、十三日に行われるのですが、全国から、北は釧路、南は鹿児島、沖繩にかけて六百人ほど明日香に集まる。そして、その方々が実に夢中に感動するわけですね。そういう姿を見ると、飛鳥のすばらしさ、飛鳥の大切さをしみじみ思います。  それは、ただ物だけではなくて、あそこにある心をよみがえらすからだろうと思います。明日香の村をさっとながめましたら、あのような景観のところなら、日本国じゅうにもっといいところがいっぱいあるでしょう。ところが、そうでなくて、そこで幾つも豊かな心をよみがえらせるというところに、ぼくは大きな値打ちがあると思うのです。人間というのは、物に対しては、たとえばこれが正倉院の宝物だ、これは大事でよくわかるけれども、心の大切さというものは、形がないですから、わりあいにわかりにくいと思うのですね。  ぼくは思うのです。たとえば、いろいろな物を正倉院のガラスの中に入れるならば、万葉の歌なんかも、もちろん歌だから入れられないけれども、入れて当然のようなものばかりなんですね。  その一例を、ぼくは飛鳥川に例をとって申しましょう。飛鳥川なんて全く小さな川で、守る守ると言っても、皆さんがおいでになったら、こんな平凡な小さな川が何で大切なんだ。もっといい川はたくさんあるのです。ところが、飛鳥川のあのちょろちょろとした流れの中に、万葉のすぐれた歌心がいっぱい宿っております。万葉の中の川の歌で一番多いのは飛鳥川なんですね。二十五回出てまいります。たとえば、そこにこういう歌がある。天皇さんが詠んだとか、だれが詠んだというのじゃない、何でもない平凡なあの辺の農庶民の歌でしょう。   明日香川瀬々の玉藻のうちなびき心は妹に寄りにけるかも 飛鳥川にはいまも石橋といって飛び石があります。そういうところに藻が流れております。その流れを、お百姓の方でしょう、農業の方が行ったり来たりするたびに、その流れのなびきを見ている。私の恋心は、ちょうど飛鳥川瀬々の玉藻がなびくように私の心はあなたに寄ってしまったという歌ですね。歌なんて口語に訳したら本当にくだらないものです。そうじゃなくて、歌は音楽ですから、響きですから。そうしますと、いまの歌なんて本当にすばらしいと思う。  いまは恋と申しますと、今日テレビ、ラジオをごらんになれば、私はあなたを愛する、好きです、それしか言えない。万葉は、四千五百の歌の中で恋の歌が七割近くあります。それでいながら、ただの一つだって愛するという言葉はないし、恋しくて恋しくてたまらないなどという言い方をしないのです。そういう観念的な言い方をしないで、どうでしょう。   明日香川瀬々の玉藻のうちなびき心は妹に寄りにけるかもぼくはこれを見ますと、飛鳥には心のすばらしさがあるばかりではなくて、言葉のすばらしさがある。このごろの言葉で言えば、日本人の心の原点が飛鳥に密集していると思う。われわれは、現代の物質文明の忙しい中で心を忘れているでしょう。あそこに行くと忘れた心を発見する。先ほど三万人の学生がぼくと一緒に歩いていると申しましたが、その人たちは、それぞれの万葉の故地に立って忘れている心を発見する喜び、それの一番密集したのが飛鳥です。万葉集は四千五百、その中で地名は三千九百出てまいります。その地名の中で奈良県は九百です。その九百の中で、明日香村の周辺一帯は大ざっぱに言いまして延べで約二百五十回です。そういうことを思うと、飛鳥は、私の立場から言えば、心をよみがえらすことのできる大事なところで、だから風土、景観を守らなければならないと思う。  さて、話を変えまして、昭和四十五年から守るということになって本当に結構でした。もしあれをやらなければ、いまごろは団地になっているでしょうね。工場になっているでしょう。そうしたら、われわれの時代に日本から日本の宝を失ってしまったことになります。ただ、守ってくださるのはよかったが、ちょっと守り方が、あんまり博覧会みたいになって、見せ物みたいになってくることは残念に思いますので、それは今後また修正していかなければならぬと思うのです。  そういう大事なところですから、今回明日香特別立法で非常に規制されるでしょう。だから、規制されることを思うと、村の人は、規制ばかりではどうにもなりません。やはり村の人が喜んで、誇りを持って、そしてみんなで不満の気持ちではなしに、この大事な故地を守ろうという気持ちにならねばならない。そのためには、内容はいろいろ大変ですが、特別立法の実現することを祈りたいと思うのです。  そこで、ひとつぼくの疑問というよりは、ぼくの考えなんですが、たとえば川原寺のところを国有にした。結構です。そうすると、国有にしたところは、今度は芝生を植えて博覧会みたいになるわけですね。プラスチックの礎石を置いてみる。ぼくはそうではなしに、飛鳥を守るためには、国有になっても、国有になったところでもとのままの農業ができるようにあったらいいな、これが個人の考えです。それは今日の法律では、ぼくはよく存じませんが、できないそうですが、何とかして明日香だけは、景観を守るために、国有になっても、地代など払わないで、そこで作物ができてその人の収入になるようなものになったらいいということを思うのですが、そうできますならば幸せです。  さて、以上思いまして、飛鳥は本当に日本人のすばらしい心、われわれが今日忘れている心の一番密集したところですから、どうぞ日本の宝、世界の宝、心の原点の宿るところを末永く守るようにあってほしいと思います。どうぞ皆様よろしくお願いいたします。(拍手)

北側義一公明党・国民会議

○北側委員長 これにて各参考人の意見の開陳は終わりました。     —————————————

北側義一公明党・国民会議

○北側委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大坪健一郎君。

大坪健一郎自由民主党・自由国民会議

○大坪委員 午前中に引き続いて質疑をさせていただきます。  諸先生には大変お忙しいところを東京までお出向きくださいまして、きょうはまた私どものためにいろいろ貴重なお話をいただきましてまことにありがとうございます。午前中にも実は、まだお見えになっておられます愛水村長さんを初め諸先生に、法律問題を中心にいろいろお話を伺い、御質問したわけです。  私どもが、この明日香村における歴史的風土の保存及び生活環境の整備等に関する特別措置法案を今回国会で審議をし、制度として確立いたそうと考えておりますのは、いま先生方のお話にありましたように、私ども日本人の心のふるさとである飛鳥を、何とかしてその歴史的な価値を温存した上で、かつそこに住んでおられる住民の皆さんの生活にも支障がないように、そしてまた、あす、あさってを信じて生計を営みながらかつ私ども日本人の一番心のふるさととして考えられておる飛鳥時代のいろいろの遺跡を残すという趣旨でございますから、実は非常に矛盾があるわけであります。先生方のお話にありましたように、考古学的にいろいろな発掘をするとか調査をするとかということと、そこに住んでおられる住民の方々の生活なり近代化の意欲なりというものとの間にどうしても大きな摩擦がある。  どちらをとるべきかということになると、いま最後に犬養先生がおっしゃいましたように、ほっておけばあそこの丘陵地帯はきれいに整地されて団地になったでありましょうし、工場が乱立しておったかもしれないという感じがいたします。私どもはそれがああいう形で残って今日のような、日本の皆さん方が飛鳥時代を考えるについては具体的に明日香村を考える、そしてあそこに残っておる遺跡や象徴的な高松塚古墳の写真などを見て古代に思いをはせるということが、どれだけ大きな文化的な私どもの資産になり、心の支えになっているかわからないと思うのです。そういう意味で言いますれば、いろいろ先生方が考古学的な意味で、あるいは万葉の時代の史跡、旧跡をおたどりになる意味でお調べになることに国が援助を申し上げることをこの法律で決めたわけですけれども、それと同時に、そのことをよく理解して、しかもそれらの保存に本気で取り組んでいただく住民の心構えというものを培わなければならない。そしてまた、補償しなくてはならない。  そういう点について、実は嶋田先生のお話を承っておりましたら、村民の苦労を具体的にいろいろお感じになっておられるようでございます。そして、第一種と第二種に分けた場合に、第二種の地域にまだ不安があるようだとかいろいろな御議論があるようですけれども、実際、率直にお伺い申し上げて、あそこの地域でこれからまだいろいろな地域を発掘をしたり整理をしたり調査をしたりしていくその方向と、そこに住んでおられる農民の方々なり何なりの非常な不満、たとえばビニールハウスをもっと認めろとかなんとかということとの調整をしろしろとおっしゃるのはわかるけれども、実際は考古学上の必要から言えば、しては困ることも現実にはたくさん出てくるのではなかろうかと思います。  つまりどっちをとるかというときに、ここに法律をつくってこういう保護を行う以上、文化財の保護と申しますか、遺跡の保護といいますか、基本的にそっちの方に重点を向けざるを得ないのじゃないかと思うのですけれども、先生方そういう場合にどういうふうに解決をすべきだとお考えになっておられるのか、そこをひとつ伺わせていただきたいと思うのです。

嶋田曉堺女子短期大学教授

○嶋田参考人 ただいまの御質問の点につきましては、むしろ末永先生からお答えいただく方が筋かと思うのでございますが、御指名でございますので私から私見を述べさせていただきます。  私どもは、いま御指摘のような形で、いわゆる埋蔵文化財の保存と住民の生活を両てんびんにかけて二者択一的な議論にすることにそもそも反対でございます。と申しますのは、文化財の、特に私どもが直接関係しております埋蔵文化財の保存につきましては、これはそこにお住まいになっていられる、われわれ、住民という呼び方をさせていただきますが、住民の方の御理解がなかったら、これは何ぼ金をつぎ込みましても、今日の明日香の一部の悪い例に見られるように、村民の方には何らプラスにならない。明日香へ訪れてこられるいわゆる観光者の便利にはなっても、そこで生活をしようとしている村民の方にはむしろマイナス面が多いということになりかねないというふうに考えております。  したがいまして、文化財を残すというのは、決して現状を凍結して残すというふうな考え方じゃなしに、どういう残し方をしたら村民の方にも御理解いただけ、かつわれわれの立場からも、今日まで残ってまいりましたように残せるのか。先ほどちょっと犬養先生からも御意見を承りましたように、国有地になってもやはり現状どおりに耕作は続ける。これはもう御案内のように、耕作をいたしませんと草ぼうぼうになったり、あるいはそれが害虫の発生源になって周辺の水田に迷惑をかけるというのは各地で言われていることなんでございますので、法律的なことは私ども素人でわかりませんのですが、無償でいけなければ何がしかの反対給付を出すことによって引き続きそこで農耕を続けてもらう。  つまり、御承知のように今日まで残っているというのは、そこで耕作をしておって、これはいろいろな条件があると思いますが、地下水の問題とかあるいは建造物による破壊というようなことが防げてきているわけです。さっき私ちょっと申しましたように、重点的なところについては、これはやはり行かれた方の、いわゆる埋蔵文化財の活用という呼び方を私どもいたしますが、活用できるような施設というのは必要だと思います。しかし、原則的に申しましたら、私どもの立場からは、従来のように地下に埋納されておれば安心して将来にまで残るんだということをこの際強調したいわけであります。  そういう意味で、最初申しましたように、私どもは決して両てんびんに二者択一的な発想で物を考えるんじゃなしに、両方を文字どおり調和できるような方策が、いま具体的にどうせいと言われてもちょっとお答えしにくい点もございますけれども、さっきお願いいたしましたように、そういうことをこそ、ひとつ今度の特例法で、どこかの機関なり組織なりが責任を持って早くそういう方途を研究してもらえないだろうかというのが、さっきちょっと発言した趣旨でございます。

大坪健一郎自由民主党・自由国民会議

○大坪委員 いま大変貴重な話を承りまして、私ども大変啓発されてありがたいと存じます。  そこで、結局どこかの主体が責任を持ってやれというようなことになるよりも、この法律でも一番基本は、明日香村と奈良県にしっかり仕事をしていただきたい、それに対してはいろいろな手だてで御援助を申し上げたいというふうなたてまえになっておると思いますけれども、歴史的にずっと続いてこられた明日香村、行政機構でもあるし、また共同体でもある明日香村のお仕事に国がいろいろな意味で御援助をする、内閣総理大臣も口を入れてまで御援助するというような行き方以外にどうも手だてがないような気が私どもはするのでございますが、その点はいかがでございましょう。これは諸先生どなたでも結構でございますけれども、お答えいただければありがたいと思います。

末永雅雄関西大学名誉教授

○末永参考人 私たち調査を担当いたします者は、まず第一に調査対象の実情を明らかにすることが目的でありまして、それにつきましては国及び村の大きな支援がございませんとその任務の遂行はできないことになりますので、私自身はいつもこの問題につきましてはまず国及び県の指示、そうして村の協力を考えて進めてまいりました。その点で今後もやはりそうした国の方針にも従わなければなりませんし、県も同様でありますが、まず村の意向がわれわれに対してどう伝わってくるか、それによって調査を進めたいと考えております。ただいまの御質問につきましては、私は、長年とってきた方針がこのようでありますので、今後もやはりその方針で進みたいと考えております。

大坪健一郎自由民主党・自由国民会議

○大坪委員 これで終わります。どうもありがとうございました。

北側義一公明党・国民会議

○北側委員長 中村茂君。

中村茂日本社会党

○中村(茂)委員 中村でございます。  先ほどは大変参考になる御意見をお聞きいたしまして非常に感銘を深くいたしたわけであります。そういう非常に重要な日本の国の遺産とも言うべきものをどういうふうに保存していくか、これからわれわれにも皆さんの研究の結果を発表していただくには、やはりその地域の人たちの生活をどのように守りながらこういう遺産を保存していくか、そこに重点があるというふうに私は思っているわけであります。  この法案とは直接関係はございませんけれども、実はここのところに「明日香村史」上巻、これを見せていただきますと、末永先生、犬養先生お二人ともこれを編集する編集委員であったようでございますけれども、非常に参考になり興味深く読ませていただいたわけでありますが、この中の四百三十六ページに「皇陵への考古学的考察皇陵については天皇家の陵墓として宮内庁の管理下にあるので、一般の古墳と異なって詳細に調査することができず、既存の資料より考察を進めなければならない状態にある。また古い記録に記された事実の確認もできないので、推定にとどまることが多い。」そしてこの陵墓全体についてずっと書かれているわけであります。  私はここで気になったわけですが、宮内庁の管理下にあるので陵墓については細かい調査はできないということです。そこでいろいろ調べてみたところが、確かにこの古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法、ここのところには目的と定義があるわけですけれども、片や皇室典範の第二十七条に陵墓というものについて規定がございます。そして「これを陵籍及び墓籍に登録する。」こういうふうになっておりますから、したがって皇室の財産。ですから古都法から言えば陵墓はそこの歴史的風土ということには法律的にはならない。皇室の財産、こういうふうになっている。こういう法律的な関係がいろいろあろうと思いますけれども、皆さんがこれからこの地域を本当に研究していただくについても、飛鳥時代のことですから、近代とは違うわけですから、宮内庁に申し込んで発掘調査などしていただければこの時代のことが本当によくわかるんじゃないか、私はこういう気持ちになったわけです。  そこで、皆さんがこういう陵墓などについてこれから調査願って、ここで言っておりますようにいままでの資料なり推定にとどまることが多いというようなことではなしに、事実に基づいてこの地域の歴史的な風土を国民の前により明らかにしていただきたい、こういう気持ちがあるわけでありますけれども、その点についてお三人の方からひとつ御意見をいただきたいというふうに思うのです。

末永雅雄関西大学名誉教授

○末永参考人 ただいま陵墓のことについての御質問をいただきましたが、この陵墓の問題はわれわれ考古学の古墳研究者の中では常に重大な問題となっております。しかし現在のところ私はそれに対してはこういうふうに考えております。と申しますのは、陵墓として指定をされてまいりましたものは同じ古墳時代のたとえば前方後円墳あるいは方形墳の形式分類の中に入れまして、これをどのように扱うかということになるわけです。一番手っ取り早いのは発掘調査をすればわかるのではないかという素人考えがよく出てまいります。この日本の古墳全体が発掘調査をすればわかるのではないかという期待はなかなかむずかしいのであります。  そういう点で皇陵の今後の調査につきましても、私はまず調査をすべきであるということは考えますけれども、その調査に入るまでにたくさんに類型的な古墳がございますから、それを克明に調査をして、その資料をたくさんに集めてそこで見通しを立てて調査をするということの方が間違いがないと考えておるわけです。  飛鳥の場合もやはりそれと同様でありまして、すでに盗掘をされ、あるいは破壊をされました石舞台古墳のようなものは、あの構造を調査する程度にとどまりまして、なかなかその被葬者を見きわめることはむずかしいのであります。もしそのほかになお陵墓などでそれを取り上げるとすれば、日本全体あるいはその地域周辺における、すでに盗掘されてはいましても、そういう古墳の調査から始めておもむろに学問を進めるべきだというふうに私は考えております。

嶋田曉堺女子短期大学教授

○嶋田参考人 基本的な方針と申しますか、方向についてはいま末永先生からお答えいただいたとおりだと私も存じます。ただ、さっきちょっと御指摘ありました、私、法律は全くの素人で間違った理解をしているのかもしれませんが、所有権の問題と学術調査の問題というのは、やはり別個な次元の問題じゃないか。たとえ、言葉は過ぎるかもしれませんが、皇室のお墓であろうと、もちろんそれはそれ相当の敬意を払ってなされなければいけない。だからむやみやたらにだれもが立ち入っていいというふうには私ども考えませんが、しかし国民共有の文化財だという点においては同じじゃないか。ですから自分の、と言うとちょっと言葉がまずいですが、宮内庁所管の財産であるから宮内庁だけでいろいろな修築なんかをやるんだというようなことは、やはりいま申しますように、陵墓といえどもわれわれ先祖の文化財なんだという立場からすると、少しお考えを変えていただきたい。  最近、私ども再々宮内庁へ陳情いたしましていろいろ御理解を得たようでございます。先般、新聞にも報道されましたように、その場合に一部の研究者に連絡をとって立ち会えというような御連絡があったやに聞いておりますが、ぜひ今後もそういうふうにお願いしたい。つまり、もちろん宮内庁にも専門の研究家はおいででございますけれども、部内だけの調査をなさらずに、一般に公開せいという言い方じゃなしに、しかるべき関係者にはあらかじめ御連絡いただいて御一緒に見学させてもらえるような方向で、具体的に申しますと、周辺の堀にがけ崩れができてくる、これはもう当然のことだと思うのですね。その場合に、崩れたんだから護岸工事をしますということで、自分たちの、宮内庁の所管の陵墓なんだからどこへも連絡しなくたってできるのだというお考えは、ちょっと私どもは賛成いたしかねる。やはり文化庁へ、これはほかのものだったら全部そうなんでございますからね、いつ幾日にこういうことをしたいからという連絡が入るわけです。そうすればしかるべき方法でもって必要なところへ連絡があって、立ち会いなり見学なりする者はできるという方途がとられておりますので、ひとつ御陵墓につきましても、決してわれわれはむやみに立ち入って、いま末永先生おっしゃるように掘りまくろうなんて、そんなことはちっとも考えておりません。礼を失しない限度において、どうしても宮内庁の方で工事をなさると同じ場合にわれわれも見せていただいて、それが非常にわれわれの研究には役立ってくる、あるいは過去においてなさった記録なり遺物なりをどしどし一般の研究者にも、これは大学所属というような限度じゃなしに、民間にも非常に熱心に、私ども住んでおります大阪のお隣の堺市には、大学に所属しない方でわれわれ以上に熱心に研究なすっていろいろ見解を出しておられる方もおられますので、ぜひそういう方にも公開していただけるような方途を御検討いただきたい、かように考えております。

犬養孝大阪大学名誉教授

○犬養参考人 陵墓について別に考えておりませんので、お許しください。

中村茂日本社会党

○中村(茂)委員 次に、先ほどからいろいろお話が出ておりますように、歴史的風土審議会で四十五年に答申が出されて、その答申に基づいて閣議決定が四十五年の十二月に出されてきたわけですけれども、その中で、答申されたのは「飛鳥地方における地域住民の生活と調和した歴史的風土の保存のための方策について」、それから閣議決定の方は「飛鳥地方における歴史的風土および文化財の保存等を図るため、」こうなっているわけですね。答申の方は「地域住民の生活と調和した歴史的風土の保存」、ところが閣議決定の方は「地域住民の生活と調和」ということが抜けてしまって「歴史的風土および文化財の保存等を図るため、」したがって、なされてきたのは規制が非常に強くて地域の環境なり、特にここで言っております「地域住民の生活と調和」という面について非常に抜けてきてしまった。そこで今回は、やはり歴史的風土審議会から、飛鳥地方という中から特にこの歴史的風上が集中しております「明日香村における歴史的風土の保存と地域住民の生活との調和を図るための方策について」ということで五十四年七月五日に答申がなされて、この答申に基づいて今回の法案が出てきたわけでありますけれども、これを見ましても確かに前と違いまして「明日香村における歴史的風土の保存及び生活環境の整備」というものが入ったので、前の「飛鳥地方」ということで全然「生活環境の整備」というものが抜けていたのが入っただけ法律的には若干の進歩じゃないか、こう思うのです。ところが「生活環境の整備」ということと、実はこの答申で言っております「地域住民の生活との調和」ということでは、若干意味が違うと私は思うのですね。ですから、この法律をずっと見ていった場合に、「地域住民の生活との調和」この面が非常に抜けている今回の法案ではないかということを考えるわけであります。  そこで村長さんにお聞きしたいのですけれども、非常に村長さん御苦労されて、今度の法案をつくるにつきましても、ここで言っております皆さんのところにあります「歴史的風土」、そればかりではなしに、風致というか、木一本、山の形一つ、それも保存していくということでありますから、大変な事業だというふうに思うのですけれども、そういう中で先ほど一歩前進したというふうに申し上げましたのは、基金をつくって、その基金をいま申し上げたいわゆる住民生活との調和を図るために使いなさいよ、これが基金の趣旨だというふうに思うのですね。そこで基金をどのようにこれからどういう考え方でお使いになろうとしているか、いまの考え方をひとつ聞いておきたいと思うのですが。

愛水典慶明日香村村長

○愛水参考人 失礼いたします。  五十四年の七月に答申をされました「地域住民の生活との調和を図るための方策」ということで、非常に前回の答申よりも進歩されておる、こういうことでございますが、私たちの考えといたしましては、住民が喜んで保存に対して協力をし、理解をするという意味で、この後のくだりのところが大変大切なところではないか、かように思っておるような次第でございます。それがために基金の創設を強くお願いをしてまいってきた、こういうことでございますが、国は二十四億円を限度とし、県が二割六億円、合計三十億の基金を出してやろう、こういうことでございますが、私といたしましては基金の受けざらといたしまして、地方自治法二百四十一条に基づく基金でございますので、当然条例を制定いたしまして、住民対策として特に「歴史的風土の保存を図るために行われる事業」あるいは「土地の形質又は建築物その他の工作物の意匠、形態等を歴史的風土と調和させるために行われる事業」、なお三番目には「住民の生活の安定向上を図り、又は住民の利便を増進させるために行われる事業で歴史的風土の保存に関連して必要とされるもの」こういう項目を検討いたしまして、条例の細かい内容を定めまして、住民対策の費用として充てていきたい。  なお、けさほども申し上げましたように、民間人を含めた審議会等を設けまして、住民対策費としてその基金の利息の運営に当たっていきたいものだ、かように考えております。

中村茂日本社会党

○中村(茂)委員 私の手元に総理府と建設省からいただいた資料があるのですけれども、基金充当を要望する事項——先ほどお話しのように、基金は地方自治法の二百四十一条ですから、皆さんのところは自主的にやれということですけれども、しかし国からも基金を出してある、県からも出してあるということで要望ということになっていると思うのです。いまも村長さん言われましたように、条例をつくってきめ細かくやっていただきたい。その上に公平にやっていただきたいと思うわけですけれども、国の方から要望しているそういうものについても、住民対策とか、村そのものの対策とか、細かく言えば農業についての振興策とか、細かく出ております。その基金が五年がかりで、いま言われました国と県、国は二十四億ですけれども、三十億の基金を五年がかり。そして生まれた利子二億一千万ばかりを運用していくということですが、物価は上がる、そういう中でこの資金では、私はこれだけきめ細かくいろいろやっていくというふうに計画を立てても大変じゃないか、こういうふうに思うのです。  三十億というものを決めていただいた中にも、国の財政が非常に逼迫してきているところだから、少ないけれどもがまんしろよ、こういうふうに言われたと思うのです。できればこの資金をもう少しふやしていただければそれにこしたことはないし、五年がかりといっても、五年ではちょっと長過ぎるのではないかという気がするのですが、村で要求されてこられたのは、ざっくばらんに申し上げまして当初は五十億ぐらいかなというふうにお考えになったという話も聞いているわけであります。村長さん、率直にお考えになって、この三十億というものがいま決まろうとしているのですけれども、実際に条例をつくって、先ほど言いました歴史的風土と村の人たちの生活との調和を図りながらやっていくということになれば、この額というものはいかがなものでしょう。

愛水典慶明日香村村長

○愛水参考人 いま先生の御質問でございますが、大変微妙な御質問でございます。私の方といたしましても基金は多いほどいいということはよくわかっておるのでございますが、特にいろいろな問題で要望しておりました内容を十分検討いたしましたところ、村が行う事業に対してもこの基金から充当するという内容が入っておりましたので、金額を高く要望したそういうものを全部落としてまいりますと、一応二億二千万程度に相なるわけでございまして、基金は多いほどいいわけでございますけれども、国の財政事情等本年度の状態を思いますときにこれ以上の無理は言えないのではないかというように感じておったのでございます。  なお、五年ということで多少の年限が延びた感じでございましたが、この件についてもやむを得ないのではないか、かように思っておるのでございます。  なお本年度につきましては、県が五千万円を大体使う金を考慮していただいております。それから、この法案を通していただいたらなるべく早く初年度の分を流していただいて、多少なりともその果実が多く村の方に入るようにいたしたい、かようにお願いをいたし、半年と見まして大体二千万ぐらい入ってくるのではないか、かように考えまして、本年度使える基金の果実といたしましては七千万あたりを計算のめどに立てております。  以上でございます。

中村茂日本社会党

○中村(茂)委員 物がどんどん上がってもやっていけますかね。

愛水典慶明日香村村長

○愛水参考人 その点が私だけではなしに、住民も一般の方々も大変御心配をいただいておるわけでございまして、私といたしましては、大変な貨幣の価値の低下を来した場合には再度お願いをすべきであろうか、かように考えておる次第でございます。

中村茂日本社会党

○中村(茂)委員 憲法九十五条の住民投票の問題ですけれども、これは御存じのように、一地域に該当させる法律の場合に、住民の皆さんの投票で過半数以上になった場合に国は法律を定めることができる、こういう法律ですから、この明日香法なら明日香法のところに、明日香法が通ったら住民投票をやりなさいという法律じゃないですね。住民投票をやって過半数以上になったら法律をつくりなさいという法律です。ですから私どもはいろいろその点について考えてみて、先ほど瀬崎さんの午前中の質問に、やれというふうに法律ですれば喜んでやります、こういう御答弁があったのですけれども、法律の趣旨が、法律が通ってから住民投票をやれという法律ではございませんから、法律的にはどういうふうに取り入れるかというのはなかなかむずかしいのでございます。  法律論争は別にして、これだけの大事業を村長さんが中心になって住民の理解と協力を得ながらやっていかなければならないわけでありますから、そういう法律にはかかわり合いなく、何か住民の意思が反映できるようなことを村長さん自身がお考えになって、それで住民の協力をいただく土台にしていく方がこれからのためにいいのではないか、こういうふうに私は考えるのです。先ほどから言っておりますように、法律論争はいろいろありますね。しかしそういうものとは別に住民の皆さんの意見を十分聞くというような御措置をとっていただきたい、私はこういう希望があるのですけれども、村長さんはどんなふうにお考えになるのでしょうか。

愛水典慶明日香村村長

○愛水参考人 もっともな御意見を賜りまして、一応私といたしましては住民投票の問題は、これは議会でお決めいただくことかとも思うのでございますが、前回にも御答弁申し上げましたように、実施をするということに決まりますれば喜んで私は実施をさしていただこう、かように考えております。  それより、それ以前に、それまでの手だてとして、住民にこの法案の内容の理解が十分得られるような措置を講じておくことがいいのじゃないか、こういうことでございますが、それは私といたしましては、各大字、三十七カ大字ございますが、三十七カ大字をこの法案の内容の説明に回りたい、かように考えております。

中村茂日本社会党

○中村(茂)委員 終わります。

北側義一公明党・国民会議

○北側委員長 松本忠助君。

松本忠助公明党・国民会議

○松本(忠)委員 末永先生、嶋田先生にお伺いいたしたいと思います。  私ども三月十三日に建設委員会といたしまして現地調査をさせていただきました。私も一行に加わりまして明日香村に参りまして、村民の代表の方々といろいろと意見を交わしたわけでございますが、その御意見の中で一例を申し上げますと、何か建造物を自分で建てようということで地面を掘る、そうすると遺跡が出てくる、こうなりますと調査が完了するまで待たなければならない、こういうことで非常に住民の方々が迷惑をこうむっているということであります。その調査を早くやってくれ、何をやるのにも一年かかる、こういう話で、お役所にお百度を踏まなければなかなか進行しない、こうした苦言も伺ったわけでございます。  先ほど特に嶋田先生のお話の中にございましたが、埋蔵文化財が出てきた場合に、サンプル保存でなくて全面的にその場所で保存してほしいというような御意向を承りまして当然のことだと思うわけでございますが、そうなりますと当然その調査というものは相当の期間を必要とするわけでございます。そしてまた、調査をなさるについてもたくさんの方がそれに参加しなければならない、こうなるわけでございます。そうした調査をなさる方々、われわれはよくテレビなんかで見ておりますと、大学生の方なんかが参加してやられておるようでございますけれども、専門家でやはり経験が多少なければ、むやみやたらにやるわけにいかぬわけでございますから、ただ予算を計上してこれだけ金があるんだからやれといってもそうはいかないと思うわけです。  そういうところから私は思いますのに、現地の方々の御意向でも、文化財保護、文化財保存、こういう精神で協力しようとすればするほどいろいろと規制を受けて犠牲を払ってきたのがいままでの状態であったということがよくわかったわけでございます。そうした点を伺いまして、調査の専門家を養成する、これにはどうしたらいいのか。また、こういう仕事はずっとのべつ幕なし永久にあるわけでもないだろうと思いますし、また仕事そのものがとぎれるわけでございます。あったら掘って、それが完了すれば終わり、こういうことになるわけでございます。その方々はもちろんその調査で生計を立てるわけにもいかぬだろうと思いますので、こうした調査の専門家を養成するにはどうしたらいいのかということについて、お伺いをさせていただきます。

末永雅雄関西大学名誉教授

○末永参考人 ただいまの御質問につきましては、最も私はその問題に対して苦心をしておるところなんです。それは単に資金があるとか予算が取れればできるという問題ではなしに、これは人の問題であります。どういう人間がこの調査に適応しておるかということがまず第一であります。そのためにかなり長い年代にわたって大学在学中ぐらいから訓練をいたしますが、しかし、その人間の能力によりまして長く訓練をいたしましても余り役に立たない——いまここへ一緒に参りました嶋田君のような者は若いときからたたき上げて一応役に立つというような……(笑声)それは十人に一人か二十人に一人しか出てまいりません。私にとっては非常に苦しいことを申し上げると同時に、いまの御質問によってこうしたことをここで考えていただけることができるであろうということを大いに期待をいたします。  それで飛鳥の調査は、ことに私たちが調査に着手いたしましてから二十年、この二十年間は表面にあらわれない労苦をみんな重ねてきておるわけであります。そこで、その調査に従事するもう少し私に言わせればちゃんとした考古学の人間を育てていくということが望ましいわけであります。私たちをある方面では掘り屋と言っております。それは、掘ることを本務にしておるようになりますので掘り屋と言われるのですが、これはやむを得ないと思うのです。私自身も掘り屋の名前は甘んじて受けなければならぬと思います。しかし、発掘をいたしまして調査の現状からその後の整理というものは非常に大切なことであります上に、ここにその担当者の能力というものが大きく反映してまいります。  飛鳥の場合も調査をして掘り出していけばいいというわけではございませんで、先ほどからも私は飛鳥の文化財の中でも地下遺構に対する御説明をもっとしたいと思っておったわけですが、ただいまの御質問にまずお答えいたしますのは、そういう本当の掘り屋であり学者であるという人間を養成したいと考えますが、ただ考えておるだけではいけませんので、ここでそういうものを養成する組織をつくる。橿原考古学研究所は多少そういう傾向を持ちながら今日まで進んでまいりました。ですけれども、本当の掘り屋であり学者であるという人間をつくり上げるためには、十人が十人ともその訓練によってできるものではございませんので、その中の何%かは脱落をいたします。残る者はかえって少ないくらいになりますので、いま先生の御質問で、私は自分としてはさらにこの養成方法を強化したい、いままでもその方針でまいっておりますけれども、さらに飛鳥の場合には一層その必要があるし、これは日本考古学全体に係る問題となります。先生へのお答えはちょっと不十分かもしれませんが、この点につきましては、どうぞ国会の皆様方はそういう養成に対する何らかの法をお考え願いたい、かえって私の方からお願いをいたす次第であります。

嶋田曉堺女子短期大学教授

○嶋田参考人 御指名でございますので、蛇足になるかと思いますが、いま末永先生がお話しになりましたのは基本的な点でございます。私は少し側面を変えまして現実の問題について申し上げてみたい。  これはいろいろな県によって様子がいささか違うかと思うのでございますが、これは私が言うより責任者であらせられる末永先生にお答えいただくべきことかとも思いますが、御発言がございませんでしたので私がかわって申し上げますと、従来奈良県では各府県とは体制を異にいたしまして、埋蔵文化財センターというような組織、つまりいま先生がお使いになった言葉で言えば、掘り屋は置かない。いまおっしゃっているように県立の橿原考古学研究所という施設がございまして、もちろんこの所員は発掘調査もいたしますけれども、同時に考古学の学問的な研究もあわせてやるんだということを、所長である末永先生の御指示でわれわれはモットーにしているわけでございまして、そういう関係がございましたので、従来は奈良県に関しましては県がほとんど中心になってと申しますか、責任をとってと申しますか、調査に当たっておりました。したがいまして、先ほど御指摘のような住民の側からの苦情も私どもも再々聞いております。というより、むしろわれわれが調査をさせてほしいと申し出ましても村民の方でなかなか御承諾いただけぬ。これは鶏と卵の関係であろうと思うのでございます。  ところが、ちょっと漏れ承るところによりますと、今度特別立法がなされて予算的な裏づけもできると、今度は直接村の方でそういったことについても御配慮いただけるやに聞いております。これは私どもとして非常にありがたいことなんで、率直に申しまして、この法律が出ることによって私ども調査担当者は非常に調査がやりやすくなるというふうに率直に理解しておりますが、同時に、それだけじゃなしに、いまも申しますように、県で力の及ばぬところは村が自主的に考えていこうというお考えがあるやに承っておりますので、大いに私ども期待しておりますし、これは先生方御案内で私から申し上げるまでもないかと思いますが、国立の文化財センターがこれまた奈良国立文化財研究所の中に設置されております。ここへ大体西日本を中心として各地からそういう担当者を集めまして技術的な修練と申しますか、注意をずっと続けておられるようでございまして、これはわれわれはたから見ておりましてもかなり成果が上がっておるのではないか。ですから、今後もますますそういう機関を充実していただくと同時に、御案内のように県もなかなか財政的に人をふやすことは困難でございますので、自治体である村当局におかれてそういう配慮をこの特別立法を背景にしてお考えいただくことによって村民の方々の御不満はかなり軽減できるのではないか、こういうふうに考えております。

松本忠助公明党・国民会議

○松本(忠)委員 ありがとうございました。  嶋田先生に続いてお伺いいたしたいのでありますけれども、先ほどのお話の中で、埋蔵文化財が明日香村に隣接しているところ、橿原市あるいはまた桜井市にも相当あるのではないかというお話でございました。その隣接の橿原市、桜井市ではこうした特別措置法の制定についてはどのように考えているのかについて先生はすでにこの両市にお当たりになったことはございますか。それからまた、先生としてはこの隣接の二つの市に対してもこうした特別措置法の網をかけるといいますか、そうした御希望がございましょうか、この辺、嶋田先生だけにお伺いします。

嶋田曉堺女子短期大学教授

○嶋田参考人 前段につきましては、私はそういうアタックをしたことはございません。したがいまして、どういうふうにお考えか存じておりません。  ただ、ちょっとつけ加えさせていただきますと、桜井市におかれては、もう数年前から担当の技術者、技師という方を置いておられますし、橿原市におきましても、数年前からそういう方がおられるように聞いておりますので、多分そういうことについては非常に御理解の深い地域じゃないかというふうに私どもは想像いたします。これは想像でございます。  それから、後段の方は、これはできますればぜひ私どもの立場からは広げていただきたい。ただ、いろいろ承りますと、それについてはやや事情がわれわれの考えとは違うやに聞いておりますので、希望としては広げていただきたいけれども、それについてはまた先生方の御検討をお願いしたい、こういうふうに考えております。

松本忠助公明党・国民会議

○松本(忠)委員 それでは、時間もございませんので、犬養参考人にお伺いいたしますが、いわゆる万葉の愛好者と称する人たちが現在どれぐらいいるのかということは私も存じなかったわけでございますけれども、先ほど先生のお話で、先生と行動をともにされて百六十一回も万葉の旅をなさっている大学生の方が三万人もいるというお話でございました。こうした方々は、明日香村を訪れて、先生お話のありました甘樫丘へ立って大和三山をながめながら、そして遠い飛鳥の時代に思いをはせて感傷にふける、そしてまた、飛鳥川の流れを見て感慨にふけられる、こういう方は全体からいうとまだまだ非常に少ないのじゃなかろうか。  ということは、実は高松塚の発掘以来、確かにこの明日香村を訪れる人というのは爆発的にふえてきた、年間百万人にも近いという数字を聞いておりますが、この間も、三月十二日に参りましたときに、高校生の修学旅行の一団と一緒になりまして、私ちょっと聞いてみたのです。あなた方は飛鳥の現状をどうとらえていますか、こう聞いてみましても、全くお答えがないわけです。  確かに、京都や奈良のように神社仏閣が地上に建物として残っているのと違うわけでございまして、目に残るものと言えば、石舞台古墳、こういうものでございます。そういうところで、一概に観光地というふうに片づけてしまうわけにいかぬのでございましょう。しかも、また、歴史的風土の保存というのは学者だけのものでないとするならば、もっと若い人たちに飛鳥というものは一体どうなんだということを教育していかなければならぬと思うのでありますけれども、いまの人たちは、あの修学旅行の一団でございますけれども、そういうことに対して、伺ってみましても何のとらえ方もしていない、ただ予定が組まれているからバスに乗っかってきたというだけの話なんですね。  これでは非常に残念に思いますので、その辺のことについて、先生は、いままで飛鳥の問題、万葉の問題に対してうんちくを傾けて御研究になった、これを後代に伝えていく責任があると申し上げては大変失礼でございますけれども、そうしていただかなければならぬと私は思いますので、そういう意味から、若い人たちに対して、どんなふうにこれをとらえているかという点が一つと、どんなふうにしてこれを残していったらいいのかという点について、お話を伺えればと思います。

犬養孝大阪大学名誉教授

○犬養参考人 一般の方が、たとえば飛鳥問題飛鳥問題というのでずいぶん——具体的な話ですが、大阪で、市場でたくさん買った人には何か紙をやって招待するとか、そしてそういう人が行くと何と言うかというと、飛鳥飛鳥って騒いだって何にもないじゃないか、汚らしい仏様と石舞台だけじゃないか、つまらないところを何をあんなに騒ぐ、これが一般ですね、何にも知らない方。  しかし、今度は学生の方は、私が体験した学生の範囲内では、飛鳥に対する、万葉に対する情熱というのは全く物すごいものです。私は大阪大学におりまして、私のことを言ってぐあいが悪いけれども、ありのままを申しますと、私が講義しておりますと、もう大体七百人ぐらいが、こういうところにも腰かけ、こういうところには新聞を敷いて聞いているのです。七百人おっても、静かにしてくださいなんて一言も言うことはない。本当に熱心ですね。そうして現在、先ほど申しました百六十一回。この間近江から越前に山越えをいたしました。その山越えした実況は、中央公論社の「歴史と人物」の六月号、五月五日発売、これにちゃんとグラビアで七ページ出ております。いかに学生らが熱心であるかということ、そしてまた、学生ばかりではなくて、一般の方たちの万葉への情熱というものは物すごいものです。  私は講演を頼まれたりして方々に参りますが、そのときしみじみそれを思います。そして、また私のことを言って本当に申しわけございませんが、私に「万葉の旅」という本がございますが、現在百三十何版と出ております。すなわち百数十万の本をみんなが持っておるわけです。あれを見たらば、すごい浸透力だと思います。  それでぼくは、自分のできる範囲内でもって、できるだけ万葉への、すなわち私は万葉は日本人にとっての一種の聖書みたいなものではないかと思うくらいに、すばらしい心と言葉の集まりですから、わが情熱を傾けて、浸透できるように努力しております。ですから、テレビとかいろいろなものを頼まれても、頼まれたら断らないで、それによって何百万の方に広まっていくのですからと思って、日本のためと思って努力しております。  以上。

松本忠助公明党・国民会議

○松本(忠)委員 時間がちょっと少なくなりましたが、末永先生、嶋田先生、犬養先生、それぞれ考古学者として文化財保護の問題、あるいはまた万葉の研究者としてごりっぱな業績を残されておる第一人者でございますが、そうした方々にこういう愚問を発するのは大変失礼かと思うのでありますけれども、先般現地視察に参りましたときに、いわゆる観光公害の問題に対しまして実態を見て私はびっくりいたしました。ジュースの空きびんや空きかんがもう路上から畑の中、田の中に投げ捨てられてある。また、交通安全協会の方にお伺いしましたところが、せっかく観光者のためを思って道路をすばらしい舗装にすると、そこへ二人乗りの自転車で猛烈なスピードで来るための事故がかなりある、事故の被害者は全部村の方々だ、こういうお話を伺いましたし、婦人の代表の方々からは、もう観光客の後始末で本当に大変だ、交通標識は立っているだけだ、そうしてまた、交通規制をやってみても何の効果もない、こういうことをこぼしていられたわけでございます。  一方、ジュースを売ったり、また自転車をリースして、貸してそれを商売にしていらっしゃる方もある、こうした方々は生計をそれで立てているわけでございますし、そういう点を考えますと、この観光公害の問題はどうしてもマナーをもっともっと向上させて、そういうものを根本的に直さなければならぬとは思うのでありますけれども、御専門外かとは思いますけれども、この観光公害に対してお三方はどのようにお考えでございましょうか、お伺いをいたしたいと思います。

末永雅雄関西大学名誉教授

○末永参考人 お話しのように、これは私たちにとってちょっと専門外のことになりますが、しかし、観光公害というお言葉がございますと、その観光を誘致する一つの対象をわれわれがつくっておることにもなります。     〔委員長退席、渡辺(武)委員長代理着席〕 そうなりますと、やはりこの観光公害に対する考え方がなければならないと思いますが、絶えず私はいままでもその観光公害の与える影響の本当に大きなことを痛感しております。  明日香の場合を申しますと、私自身は飛鳥は昔の姿のままであれということは考えておりませんが、その時代時代の必要に応じて、やはり多くの人が来て、研究もし観光もすることは必要だと思います。しかし、日曜日の翌日、明日香に限らず奈良県の主要な観光地域に参りますと、実に雑物が散乱しておりまして、奈良公園のごときもまさにその代表的な場所と思われますが、これは確かに観光公害であります。場合によれば、意見は強硬かもしれませんが、やはり研究という面を除いて一般の観光は、ある程度近づくことを制限してもやむを得ないのではないかと思います。ことに史跡の場合、そこにいたずらをされたりいたしますと、たちまち重要な史料が傷つけられ、崩される。こういう例はたくさんにございます。ですから私に、おまえはどう思うかと言われますと、いま申し上げるように、観光の方法についてある程度の処置をすべきだというふうに考えるのですが、観光に来た人をノックアウトするわけにはまいりません。しかし、それにはそれなりの方法があると思います。     〔渡辺(武)委員長代理退席、委員長着席〕  まず、私は常々こういうことを考えておりますが、しかし専門外でありますために、こんなことを公の席上で申しましたのはきょうが初めてであります。お尋ねがありましたから申しました。やはりわれわれにはわれわれの分野があると思って、考古学以外は決して強硬な意見を出したりいたしません。飛鳥の今後の保存についてもいろいろ考えることがございますが、これは村長に申しまして、村長からあなた方の方へ上申してくるようにいたします。

嶋田曉堺女子短期大学教授

○嶋田参考人 私も素人には違いないのでございますけれども、数年前に私、地理をちょっと勉強いたしましたので、観光地理ということについて少し考えてみて発表したことがあるのでございますが、その場合に感じましたことは、いわゆる観光というのが、今日では一方的に過ぎるのじゃないか。とにかく、これはちょっと言葉が悪いかもしれませんが、十分準備もなしにただバスに乗っかって連れていかれて、それで帰ってくるという観光、それがいわゆる観光なんだ。私に言わせると、これは観光にはちょっと値せぬのじゃないか。あえて言うならレクリエーションというのですか、むしろ遊山というのに近いのじゃないか。  私、そのときに考えましたことは、これもちょっと極端な意見になるかと思うのですが、少なくとも明日香の村域にいわゆる観光という立場でお入りになる場合、住民に所用があっておいでになるのは別でございますけれども、そうではない、観光的な立場でお入りになる場合には、これはやはり駅前なんかにそういう飛鳥についての勉強のできるような施設をぜひつくっていただいて、そこで予備知識を持った上で、できれば観光バスで一時間そこそこ駆けずり回るのじゃなしに、あるいはもっと言いますと、自分が自転車に乗れぬからそう言うのだと言われるかもしれませんが、できたらサイクリングじゃなしに、少し時間をかけ、回数をふやして、やはり徒歩でそれぞれ、さっき犬養先生がおっしゃるように、風土を味わっていただくといいますか、あるいはそれ以外の埋蔵文化財についても、最近はいろいろ調査が進みまして、説明板なんかもございますので、じっくりとそういうものを見、あるいはできればお働きになっている農民の方のお休みのときにちょっと時間を割いていただいてお話し合いをしてもらう。ただ見て回って、何や、おもしろうなかったというさっきのような感想じゃなしに、いま先生方から御指摘のあるような実情、明日香の農民の方々がいまどんな立場におるのかということをおいでになる方もじっくりと承知して帰ってもらう。そうすれば、おのずから、空きかんが散らかっているとか何だとかということはなくなるのじゃないか。そういう点に従来のやり方は粗漏さがあるといいますか、十分ではなかったのじゃないか。ですから、別に入場料を取る必要はないのじゃないかという考えなんですが、少なくとも、ある区域内へ観光のために入られる方には、そういう事前の勉強はこれは義務づけていただきたい。その上で、本当に費やされた時間なりお金なりを有効にして帰っていただけるような方途が望ましいのじゃないか。それが本当の観光施設ではないか。ただ宿屋があったり食堂があったり、これも必要でございますけれども、それ以上に、そういったことが必要であり、大事ではないか、こういうふうに私は考えております。

犬養孝大阪大学名誉教授

○犬養参考人 先ほど末永先生のお話がございましたように、私も専門外ですから何も申し上げられないのですが、結局はこれは公徳心の問題で、私どもにどうすることもできませんが、私個人としては、先ほどの万葉学生を連れていきましたときに、一人も残していく者はございません。そしてかつ、人の残したものも整理しなさいよというふうにして持ってまいるようにする。きわめて消極的なことしかできません。これはもう日本国じゅう全体の公徳心のことだろうと思います。  そして、一つだけこういう実例があるのですね。先ほど、先生お話がございましたが、奈良の春日野を月曜日に行く人はめったにございません。月曜日に行ったら大変なんです。あの青い芝生が真っ白です。ですから、シカがあの中の、いろいろなものを食べますでしょう。このごろ、包んである、あれで腸閉塞を起こすそうですから。それで、そのことをあるところでちょっと申しましたら、そんなことを言ったって、あれを日曜日に来た人みんなが全部片づけたら、月曜日に何百人かの方がお金をもらって掃除をしておられるそうで、その人が困ると言う。そこで、駅なんかを歩きますと、駅なんかでたばこを捨てている人を見ると、なるほど、捨てなければ掃除をする人も職業を失うのかと、妙な気になりました。  そういうこともございましたが、これは全く日本じゅう全員の公徳心の問題と、そう思います。

松本忠助公明党・国民会議

○松本(忠)委員 ありがとうございました。

北側義一公明党・国民会議

○北側委員長 辻第一君。

辻第一日本共産党・革新共同

○辻(第)委員 きょうは、参考人の先生方、お忙しいところを御苦労さまでございます。ありがとうございます。  私は、まず最初に末永先生にお尋ねをいたしたいと思います。  先生は、本当に長い間埋蔵文化財を守るために、また飛鳥古京を守るために御尽力をいただいておりますこと、まず最初に感謝を申し上げる次第でございます。  先ほど大変貴重なお話を聞かしていただいたのですけれども、松本先生がお尋ねになりましたことと同じようなことで恐縮なんですが、いま、奈良県で、飛鳥の埋蔵文化財を守っていくその対策、体制といいましょうか、そのようなものが奈良県としてはどのような状態になっているのか、先生のお考えをお聞かせいただきたいと思うわけですけれども。

末永雅雄関西大学名誉教授

○末永参考人 ただいまの御質問は、飛鳥を守るための奈良県の処理あるいは方針ということになると思いますが、そうなりますと、先ほど申しました土方稼業の私ではちょっと質問の荷が重過ぎますので、その重さに押されてしまいそうです。しかし、なぜ飛鳥を守らなければならないかという考古学的な面から申しますと、これは飛鳥の現状では、古墳と宮と寺跡というふうに、どれもある意味ではその他の地域、奈良県以外の地域、そういうところでランクづけをすれば、一等場所とあるいは超一級というものが非常に多いのでありますが、その中でも飛鳥の地域は、考古学、古代史、その面でとてもほかの方とは比較にならないようなものを持っております。  この保存方法につきましては、現在国会でも審議をしていただいておりますように、明日香特別立法による処置をいただくわけでありますが、奈良県としては、これは私の後に村長がなお申し上げると思います。私たちは調査をしたものに対する後の保存、これがちゃんとしてくれなければ調査の意味がございません。知事さんにはときどき進言をいたしますけれども、奥田知事さんはわりあいに私の進言をよく取り上げてくださるのです。そういう点で飛鳥の保存につきましては、現状としては、まず第一に調査をいたしました遺跡の確実な保存方法、しかしそれには私は少々意見がございまして、確実な保存方法、保護処置をするには、やはりそこにまた何らかの反抗が出てくるかもしれない。しかし、それは強硬に押して、私自身に言わせれば、保存すべきものは強力に保存していく。これは奈良県の方針としてもやってほしいと思うのでありますが、現在も調査をいたしておりますところで、恐らく飛鳥板蓋宮伝承地という、あの一角ではまず中心になると思います。そういうところを買い上げができないだとか、あるいは地主の意見が強硬だというので、村長が後ろへ下がっていくとかいうことをしては困るよということを昨晩も申しておりました。こういう場合に、非難を浴びない程度の強硬措置をとってもらいたいと考えております。

辻第一日本共産党・革新共同

○辻(第)委員 どうも私が当を得た質問をしなかったので先生に御苦労をかけて申しわけなかったと思います。それと、考古学を専攻なさっている先生として、埋蔵文化財を発掘し、調査していく、そのような体制の問題、その点についていまの状態で十分なのか、とても大変な状態で十分でないのか、その点をもう一度お尋ねしたいと思います。

末永雅雄関西大学名誉教授

○末永参考人 私たちに対してまことに有利な御質問をいただきました。現在われわれは飛鳥の調査及び奈良県内で調査をいたしておりますが、飛鳥の場合にもいろんな制約がございましたり、まずそれの調査対象となるものの取り上げ方、そういうことについてはいつも私はしゃくにさわっていることが多いのであります。しかし、怒ってしまっては物にならないというので、絶えずついていきますが、かつての方法の一つを申し上げますと、平城宮跡の当初の調査に、係の梅本君というのが、三年かかって十五億かかると言うのです。三年かかって十五億の金を使うとすれば、その土地をまず買い上げて、それから調査をして、必要がなければ払い下げれば、資金の回収がある程度つくのじゃないか。それだから、こういう場合に、地主と折衝して、時間を費やして、そうして、ああだ、こうだというよりは、まず買い上げの方法から進めて買い上げれば、十五年が三十年かかったって、ゆっくりと慎重な調査がやれるのだから、そうしろ。そのときに、いま文部省の体育局長だと思いますが、柳川さんが記念物課長で、それをひとつやりましょうというので、柳川さんが踏み切ったわけです。そこで全部買い上げて調査に入っております。  飛鳥の場合も、いま二カ所で買い上げで足踏みをしているところがございます。私は、できればそういうところは、それはもちろん大金だと思いますが、その大金を出していただいて買い上げて、ちゃんと調査をして、そうして保存をする、調査した結果、保存をしなくてもという場合もあり得ると思いますが、いま調査中の勾池と、役場の北の方にございます遺跡、これは調査をして、不要になったから払い下げなんということは絶対にあり得ない。そういう点で、私は、本来素人が玄人に指図をするようなことは一切しないでまいりました。今度の場合も、いま御列席の諸先生方は、そういう行政とか処置については皆玄人の方々であって、私はそういうことは素人で、やっと掘って調べるということだけです。しかし、掘って調べた成果を踏まえて、もし希望を申し上げるなら、あの二カ所は全部国で早く買い上げていただいて、それからおもむろにその成果を上げていくようにしていただきたいと思いますが、どうぞよろしく。

辻第一日本共産党・革新共同

○辻(第)委員 次に、嶋田先生にお尋ねをしたいと思います。  先生は考古学者でいらっしゃると同時に、文化財を守る運動に長い間携わっていただいたと聞いております。埋蔵文化財を守る上で、地域の住民の方々との関係で、いろいろ御苦労があったと思うわけでございますけれども、その点について、その御苦労話なんか率直にお話しをしていただければと思うわけです。

嶋田曉堺女子短期大学教授

○嶋田参考人 先ほど来いろいろ申さしていただいておりますが、さっきも触れましたように、何と申しましても、やはり埋蔵文化財、まあ地上の文化財もそうかもしれませんが、特に埋蔵文化財の場合には、全くその場所にお住まい、そこで生活なさっている、あるいは生活の基盤としておられる方々の理解なしでは、これはとうてい保存も活用もできないわけでございます。私どもが関係してまいりましたいわゆる遺跡を守る運動というのも、初期のころは、それに一番深く関心を持っております研究者なり学者という人たちが声を上げたところから運動が始まるケースが多かったわけでございますが、最近はむしろ、方々でそういう案件が出てまいりますもので、われわれがなかなか目が届かない。  最近の例で申しますと、私の住んでおります大阪府の寝屋川市という市がございますが、ここに高宮廃寺という、もちろん私ども研究者は早くから存在は知っておりましたし、過去に発掘調査を一部したこともあるのでございますが、最近、そこがいわゆる宅地開発されるということになったようでございます。私ども、うかつで、そういう情報はつかんでおらなかったのでございますが、地域の、主として学校の先生の団体でございます歴史教育協議会というのがあるようでございまして、その方々を中心にして、何とかこれは郷土の史跡なんだから残そうじゃないかという声が急に高まりまして、その方々の御努力が大きかったのだと思います。あるいはまた、先生方の御支援もあったかと思うのですが、ごく短時間のうちに史跡指定になりまして、保存できるというような事例も、これは最近の私どもの非常にうれしいニュースとして聞いておるわけであります。  これは一例を挙げただけでほかにも多々そういうケースがあると思うのですが、要するに申したいことは、さっきから繰り返しておりますように、幾ら研究者がしゃちほこばってがんばってみても、これはやはり地域の方々の御支援なり御理解がなければ決して残るものではない。当面の案件にかかわります飛鳥の問題に移りますと、さっきもちょっと触れましたように、従来、私どもが計画的に調査したいということで発掘をお願いに行きましても、どうも掘ってもらうのはいいけれども、先生方が掘られると、後また規制がかかってきて家も建てられなくなるので、ちょっと悪いけれども承諾印はようつきませんというようなケースが多々あったわけでございますが、幸い、今度のような特別措置が講ぜられますと、村当局の御努力もありまして、最近では非常に理解が深まって、まあそれは大事なところのようだから、一遍調べてもらいましょう、もしそういうことになれば、これはまあこの点が地主さんの本音だろうと思うのですが、少なくとも時価よりは上回った形でぜひ買収してほしい、できれば代替地が得られればそれにこしたことはないけれども、なかなか困難なようだから、それは買い上げに応じないとは言いませんけれども、御案内のように、最近地価は非常に高騰しているようでございますので、どうも後追いのような形ではちょっと承諾できぬ、かなり代替地があるなり、しかるべき有利な条件さえあれば、これはもうようわかっていますから、どんどん掘ってくださいというふうなお答えがいただけるようになっておりますので、そういう意味からも、私どもは、この特別措置が早く実現できたら、そういう意味からも埋蔵文化財の保存は長足の進歩を見るのではないかというふうに考えております。

辻第一日本共産党・革新共同

○辻(第)委員 もう一度嶋田先生にお聞きしたいのですが、先ほど先生が御意見を述べていただいたときに、第二種の地域に新しい重要な遺構が出てきたときに十分守られないようなことがあるのではないかという御心配をされておったわけでありますが、その点について、先生として、こうすればうまく守れるのではないかというようなお考えがあればお聞きをいたしたいと思います。

嶋田曉堺女子短期大学教授

○嶋田参考人 いまの御質問でございますが、率直に申しまして、今回、本日審議なさっておられます特別措置法案では少し困難な問題じゃなかろうかと私どもは考えております。と申しますのは、その前にございますように、風土の保全及び生活環境の整備に関する特例法案でございますので、それじゃどうしたらという後段の御質問につきましては、私どもは、かねてからわれわれ埋蔵文化財の基本的な法律でありますところの文化財保護法という御案内の法律について、先刻参議院の方で附帯決議をなさいました時期も切迫しております。ぜひひとつ先生方の御努力で、文化財保護法を抜本的に改善することによってのみ、私どもがいま心配しているケースが守れるのじゃなかろうか。そういう意味で、本委員会とは直接関係ないかもしれませんが、ぜひひとつ文化財保護法の方の附帯決議による抜本的な改正ということもあわせて御検討いただけると、その点安心できるのじゃないか、こういうふうに考えております。

辻第一日本共産党・革新共同

○辻(第)委員 次に、犬養先生にお尋ねをいたしたいと思います。  先ほどから、先生のお話を聞きまして、また新しく心に刻ましていただいたわけでございますけれども、先生は山のたたずまいや川のせせらぎや、そしてササの葉の露に万葉の心を感じるというふうにおっしゃったわけですが、私もこのごろちょいちょい明日香へ参りまして、先輩の万葉に非常に詳しい議員の方のお話を聞きながら明日香を回るというようなことの中でそういうことが少しわかってきたわけですが、これまでどちらかといいますと、石舞台だとかああいう埋蔵遺跡を見る方が非常に感動してきたわけでございます。そういう点で、こんな質問は先生に申しわけないと思うのですが、先生は、埋蔵遺跡文化財をごらんになったときにはどの程度の御感動になるのか、ちょっとお尋ねしたいと思うのです。

犬養孝大阪大学名誉教授

○犬養参考人 やはり飛鳥を愛しておりますから、埋蔵文化財が出たときも、たとえば高松塚のときでも、本当に驚嘆いたしました。そして、驚嘆するだけでなくて、あの中にあります壁画ですね、壁画は、もう私にとりましては、いろいろ学問の勉強の方は別としまして、私にとりましては、長い間眠っていた万葉美人が突如現実にあらわれたような感じで、非常に深い感動をいたしました。その他、常にそういう埋蔵文化財の方のことは気をつけて、いろいろ文献が出ましたらそれは集めておりますし、ただ専門とは違いますので、専門外には口を出さないことにしておりますが、非常に関心が深うございます。

辻第一日本共産党・革新共同

○辻(第)委員 どうも失礼なお尋ねを申し上げました。  次に、愛水村長さんにお尋ねをしたいわけでございますけれども、先ほども松本先生がお尋ねになられたようですけれども、文化財を本当に守っていく体制ですね。何か新しく家を建てられるというようなときには、大変長いことお待ちにならなければならない、そういう二つの側面があると思うのですが、それで国や県、村が本当にスムーズな協調の中で、小回りのきくような行政体制を確立しなくちゃならないというふうに思うわけでございます。それで、いまの村の体制ですね、主に考古学関係の方なんかを中心としたそういう専門職の体制はいまどのようになっているのか、今後どのようになさろうとしていらっしゃるのか、お尋ねしたいと思うのです。

愛水典慶明日香村村長

○愛水参考人 文化財保存の行政体制、村の体制はいかにあるかということのようでございますが、私の村の方に——小さい村でございますが、全職員合わせて九十名弱でございます。その中で恐らく全国でただ一つでないかというように思うのですが、文化財保存課という課を設けておりまして、文化財保存行政に対するところの事務的な分野をほぼ担当しております。特に技術的援助をいただきまして、文化庁の奈文研、奈良文化財研究所の関係の方々並びに県の文化財、特に橿原考古学研究所の技術的な御援助を賜っておりまして、またうちの職員の中に、専門職とはいかないのでございますが、指導をしていただければ十分その仕事をやっていけるという職員を現在二名入れておりまして、先ほど来お話しございましたように、本年は特に専門職を県の方から出向を御依頼申し上げまして、村としてもなるべく早くその調査に対応できるように村の立場でも考えていきたいものだ、かように現在のところ考えておりますので、県の方から出向の職員をいただき、また村の方にも二名ほどその下について動ける者もおるわけでございますので、村としてもできるだけそれに対応できるような対処をいたしていきたい。なお、法案にございますところの国、県の方の技術的援助も私としてはお待ちをいたしておるような次第でございます。

辻第一日本共産党・革新共同

○辻(第)委員 どうもありがとうございました。

北側義一公明党・国民会議

○北側委員長 吉田之久君。

吉田之久民社党・国民連合

○吉田委員 おいでいただきました三人の先生方に深く敬意を表します。特にきょう御出席いただいておりますことに感謝しますと同時に、きょうこうして明日香の保存立法が審議されておりますことはひとえに先生方のきょうまでの格別の御指導と御尽力のたまものであると思って感謝いたしております。  そこで、時間が十五分間しかないのですけれども、初めに愛水村長さんにお聞きします。  高松塚の発掘と壁画の発見でございますが、まさに歴史的なことだと思うのですが、あれは村が主体になってやられた発掘でございますね。ずいぶんいろいろ費用がかかったと思います。そして重要なところで末永先生らに来ていただかれたと思うのですが、いろいろ今後も村自身が主体となって発掘していかなければならない局面がかなりあるんじゃないかと思うのです。そういう点で、きょうまでの予算的な措置とか今後のいろいろな財政的な配慮とか御苦心、その辺を一言だけ。

愛水典慶明日香村村長

○愛水参考人 高松塚の調査につきましては、すでに御承知のように市街化区域に近接をいたしておりまして、破壊をされるおそれがあるということで、わずかながら村の方で予算化をいたしまして、特に考古学研究所のお力をおかりして発掘調査をしたのでございます。ところが、いままでにない壁画が発見されたということで大変大騒ぎを演じたのでございます。当時、予算はほんのわずかでございましたが、使った金が大変大きくふくれ上がりまして、これは文化庁の方でいろいろ後の手だてをしていただいたのでございます。  なお、その他一昨年冬マルコ山古墳を予算百万円で調査をいたしました。これも奈文研並びに考古学研究所の方々の御指導で調査を実施いたしまして、当初予算を見積もっておりましても、現実にはその予算をはるかにオーバーしてまいるのが実情でございまして、後の補正等にずい分苦しむ場合があるわけでございます。初めの予定よりも実際に調査を終わったときに決算的に見た場合には予算が不足しておった、こういうのが現状でございます。

吉田之久民社党・国民連合

○吉田委員 そこで、末永先生にお聞きしたいのですが、こういう質問が質問になるかどうかわかりませんけれども、よく多くの人たちは、まだまだ飛鳥でいろいろなものが出てくるんだろうかと、この間委員長らがお見えになりましたときに御案内いただきました秋山日出雄先生なんかも、飛鳥はこわいところです、何が出てくるかわからない、こうおっしゃっておりました。率直に、神ならぬ先生ですから断言はできないと思うのですけれども、飛鳥の発掘はただいま緒についたところか、あるいは高松塚の発見なんかで大体峠を越したのか、あるいはもうほぼ主なものは先生方の御賢察の範囲で大体調査が終わりつつあるのか、その辺はいかがでございますか。

末永雅雄関西大学名誉教授

○末永参考人 吉田先生はしょっちゅう奈良の情報は取っておられると思いますので、余り私はうかつなことは言えないというように思います。  飛鳥の調査の現状の問題につきましては、飛鳥の調査は橿原考古学研究所が南部地域を担当しておりまして、北の方で奈良文化財研究所が幾分手がけておるような状態であります。全体の見通しは私からはちょっと御返事申し上げにくいですが、私たちの担当するところの飛鳥板蓋宮伝承地、この範囲はまだ確認されておりませんが、しかし現在のところでは約七万平米近くの範囲まで確認をしております。そしてそこには内郭と外郭を区切るさく列も出ておりまして、役場の東の方にはエビノコという遺跡が出ております。いま七万平米と申しましたのはエビノコも含まれてのことであります。ところで役場の前を東西に通じる道がございますので、その北側に飛鳥板蓋宮伝承地、ところが私たちは、その調査状況では、敷石のある遺構は、古書を信ずるんであれば、板蓋宮は火災に遭って廃滅した。そうすれば、その火災の状況がはっきりと残るべきものでありますし、それが全くございませんで、その下層にもう二層ございます。これも調査のたびごとに確認をするために深く掘って調べておりますが、火災の跡をつかむところまでは参っておりません。そういう事情がございますので、なかなか今後の調査の終わる見通しは立っておりませんが、ただいままでの調査によって、せんだって先生方がごらん願った地域をとりますと、あれを一つの宮殿のある地域というふうに見通しを立てますと、飛鳥寺までの間の地域の調査をまだ進めなければなりません。今日まで三十年かかりました。あと何年かはわかりませんが、今日までの二十年を倍にいたしますと、なお二十年は十分かかると思います。私は、いまこの約束はできません。来年ぽこっとお迎えが来るかもしれません。そうすると、この約束はできませんが、現在の見通しでは、既往の二十年に対してさらに二十年くらいかければ、飛鳥寺の南のところまで全域の調査ができるのではないかという程度でありますが、しかし、外国では百年もかけて調査をしております。どうぞこの点は、先生方が気長くわれわれの仕事を見守っていただき、それからそれを進めていけるようにお取り計らいを願いたいと思います。

吉田之久民社党・国民連合

○吉田委員 嶋田先生にもちょっと伺います。  先生が先ほどおっしゃいましたのは、先生方専門家の方々からごらんになって、いまあそことあそことここだけは調査したい、いま先生がおっしゃったような深部にわたる点は別として、調査したい。その場合の現在の体制ですね。研究者の方々の数とかあるいは全般的な予算、大学自身の予算とかいうことからお考えいただいて、やはりまだ相当年月がかかるか、いまのピッチでいけば、何年くらいあれば現在の調査対象はほとんど調査し得るか、その辺をちょっとお願いします。

末永雅雄関西大学名誉教授

○末永参考人 これもむずかしい御質問です。しかし、私がいま計画をいたしております地域では、まず第一に、敷石のございますところから南の方に、昨年の暮れに発掘をいたしました地域が、まだその周辺がわかっておりませんが、現在では約二百畳くらいの畳が敷ける程度の大きさになっております。そういたしますと、この周辺をまず確かめて、それから内郭と外郭を示す、私たちはこれを北一本柱だとか東一本柱だとか申しますが、これは内郭を区切るものであります。この辺までの調査を確認をいたしますと、まずすぐれた調査従事員の採用が必要になってまいります。それに伴う調査費ということになりますが、いまの御質問に対しましては、目の子勘定のようになりますけれども、なお七、八年はかからないと究明ができないと思います。そういたしますと、さきに申し上げました二十年の約三分の一くらいになると思います。七、八年かければ、内郭、外郭というところの見通しがつくと思いますが、この点につきましては、嶋田君が現地担当の一員でありますので、ちょっと嶋田君から見通しを申し上げるようにいたしますが、よろしゅうございますか。

吉田之久民社党・国民連合

○吉田委員 時間がもうあとほとんどありませんので、本当に簡単にお願いします。

末永雅雄関西大学名誉教授

○末永参考人 それでは、私のお答えをこれで終わります。

嶋田曉堺女子短期大学教授

○嶋田参考人 いま末永先生がお答えいただきましたのに尽きておるかと思いますが、現場を担当したこともございます私といたしましては、御案内のように、この地方は余り広くない地方に、文献の上から見ましても何度も客殿がつくられた可能性がございます。私どもが経験いたしましたごく一部分なんですけれども、いま皆さんがごらんいただき、あるいは調査を主としてやっております深さと申しますか、面よりもさらに深い、二メートルほど下がりましたところで、私どもはまた別な石敷きを検出しておりまして、これがどの範囲に広がって、それが独立した宮殿になるのかどうか、もう少しやってみないとわからないのでございますが、私個人といたしましては、これは多分記録に出てくる違った宮殿跡になる可能性が高いのではないか。上の方がございますので、いまのところはそれを壊して下を調べるというわけにまいりませんので、そういうものが上に残っていない部分を探してさらに深いところを掘って調べなければいかぬ。水田でございますので、崩れてきまして、下を広く掘ろうと思ったら、上を思い切って広くどろを排土しなければいかぬというような技術的なこともございまして、そういった深いと申しますか、下層の遺構と私ども呼びますが、そういうものの調査がまだほとんど未着手のような状態でございます。したがいまして、それまでも含めてまいりますと、末永先生のおっしゃっているよりもさらに数倍の時間が今後必要になるのではなかろうか、私はそんなふうに考えております。

吉田之久民社党・国民連合

○吉田委員 犬養先生、先生のような方々がおっていただくことによって、飛鳥や万葉は生き生きとよみがえって、日本人に感動を与えていると思うのですね。この間、私の女房も田原本の公民館で先生のお話を聞いて帰って、大変感動しておりました。そうなりますと、先生の後に続くような方々がかなり広範におっていただかないと、せっかく発掘が進み、古文化財が守られても、それが日本人の心に広範に伝わっていかないと思うのでございますね。この辺の先生がお考えいただいている方策がございましたらお聞かせいただきたいと思います。  それからいま一つは、桜井市の方で万葉の歌碑をあちこちに優雅に建てられまして、それがいろいろ全国の人たちに非常に大きな感動を与えております。明日香では甘樫丘だけのようでございますが、何かこの辺のところも先生方がいろいろお考えいただいて、村当局、国なんかとも御相談いただいて、本当にみんなになじめる、わかる飛鳥にしていただく御計画はございませんでしょうか。

犬養孝大阪大学名誉教授

○犬養参考人 まず、ただいまの御質問の後ろの方から先に答えさせていただきます。  歌碑は本当に方々に、桜井市なんか五十数基もつくりました。歌碑をつくるというのは、私は初めはきらいだったのです。あちらこちらににょこにょことああいうのができるのはぐあいが悪いと思っておりましたが、歌碑をつくること、大変意味が深いと思いました。それは一つは、開発の方には悪いけれども、開発防止の大事なかぎになる。たとえば、明日香の甘樫丘の中腹に私の書いたものがございますが、それは村の私の卒業生が還暦記念に建ててくれたのですが、村の方も一生懸命応援してくださって、私はいやだいやだと言っておりましたが、飛鳥の真っただ中に、これは村の方も急いで建てようと言うのです。なぜかというと、あそこへそのころ一週間に十件ぐらい不動産屋さんが土地買いに来るのです。そうすると、例のとおり物を大事にしますから、何もないじゃないか、何もないのに何でここが大事なんだ。それで、先生この歌碑は大至急に、何しろあそこを買いまして、何階建てかのホテルをつくろうということもあったのです。そうならないでよかったのですが、たとえば、下に万葉植物園がございますが、あれも村のお年寄りの方がそういう状況で何かつくらねばということで大至急でつくったものが、いま続いております。そういうわけで、歌碑をつくることは開発防止に大事な役をなす。それで私、頼まれれば書いて、ただいま十八、九ほど全国にございますが、本当によかったと思うのです。それとまた、土地の方がそれに対する意識を喚起するということは大変大きいものだと思うのです。山の辺の道の五十数基というのも結構だと思う。歌碑についてはそういうことで、頼まれれば私はつくっておりますし、結構だと思っております。  次に、私の跡を継ぐ者ということですが、私はもう全国を歩いております。万葉学者も、歩く方は少ないのです。もうみんな歩けないのですね。年をとられればますます歩かない。私はもうどのくらい歩いたか、とうてい数え切れません。いまやみんな歩かなくなってしまって、ぼく心の中で、個人のことですが、万葉の勉強法も変わってくるんじゃないかなと思う。万葉人は全部歩いた人です。一日四十キロを歩いた人ですね。私は三十キロでも四十キロでも歩けますけれども、歩かない人が万葉を読むようになると、今度はこれはフィクションに違いない。フィクション説がとても流行するのです。そこで、これだけ歩ける人は、言うのはおかしいけれども、いらっしゃいませんので、私は風土と密着した万葉、そういうのは、机の上で風土を言う方はいらっしゃるけれども、歩けないので、私は私の生きている限り歩いた万葉を記録しておこう、残しておこうとしておりますが、私の思うところ、そういう私の跡を継いでくださるような方はいないんじゃないかと思います。  以上です。

吉田之久民社党・国民連合

○吉田委員 ありがとうございました。  先生方ますますお元気でがんばってください。

北側義一公明党・国民会議

○北側委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、御多用中のところ、長時間御出席をいただき、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。(拍手)      ————◇—————

北側義一公明党・国民会議

○北側委員長 次に、都市計画法及び建築基準法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案に対する質疑は、去る二日すでに終了いたしております。  これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。國場幸昌君。

國場幸昌自由民主党・自由国民会議

○國場委員 ただいま議題となりました都市計画法及び建築基準法の一部を改正する法律察につきまして、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党・国民会議及び民社党・国民連合を代表して賛成の意向を表明するものであります。  御承知のとおり、最近における都市化の進展の過程の中で、良好な居住環境に対する住民の要望はますます強くなってきております。他方、市街地における比較的小規模な地域について、街路、公園等の施設の整備、建築物の敷地等の状況を見ますと、良好な都市環境の形成上問題を生じている場合が少なくないところであります。  かかる実情にかんがみ、一体的に整備または保全すべき地区を対象として、地区内の公共施設の配置と建築物の形態等について総合的に扱う地区計画の制度を創設し、この計画に基づいて、秩序ある開発行為、建築物の建築等について必要な誘導及び規制を行うための制度を設けようとすることは、適切なものと考えるのであります。  以上申し述べました理由により、私は、都市計画法及び建築基準法の一部を改正する法律案につきまして賛成するものであります。(拍手)

北側義一公明党・国民会議

○北側委員長 瀬崎博義君。

瀬崎博義日本共産党・革新共同

○瀬崎委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、都市計画法、建築基準法の一部改正案に対し、反対の討論を行います。  新都市計画法が制定されて十二年、人口及び産業の都市集中に伴う市街地の無秩序な拡散や公害の発生等、都市環境悪化の弊害を除去するという目的は、達成されるどころか、逆に、スプロール化、木賃密集地域の存続、ミニ開発、防災性の低下など、都市の居住環境をさらに悪化させました。  これは、もちろん、大企業本位、工業優先の自民党政治に起因するものでありますが、同時に、都市計画法の全体系に根本的な欠陥のあることを証明するものであります。都市計画の内容に、ややきめの細かい「地区計画」を導入するという今回の改正はきわめて限られたもので、現行都市計画法の基本的な体系は、何一つ改正されていません。ここに、反対の第一の理由があります。  次に、今回の改正事項である「地区計画」にも、重大な問題点があります。  すでにスプロール化した不良市街地の改造こそが住民の切実な願いなのですが、「地区計画」指定の第一号要件は、これらの区域を対象にはするものの、都市再開発事業、区画整理事業及び民間デベロッパーがすでに土地を取得していて、大規模な民間再開発事業の予定が立っている場合に限って指定するものであることが、質疑を通じて明らかになりました。  また、質疑を通じて、「地区計画」を作成する過程で意見を聞くべき利害関係者の範囲は、区域内の土地の所有者、利用権者、担保権者であって、借家人、借間人などの住民は含まれていないことも明確にされました。  しかも、「地区計画」区域では、土地利用、建築行為に対する制限が新たに強化されます。この新たな制限は、「地区計画」決定前に取得した土地に家を建てる場合、現に住んでいる家を建てかえる場合にも例外なく適用されるのですから、零細な土地所有者は、規制強化によってやむなく土地を放棄して転出せざるを得ない場合も考えられるのです。  このように、今回の改正案は、大企業本位の都市再開発事業推進のため、地区内の住民や零細な土地所有者の追い出しを図るものであり、ここに第二の反対理由があります。  さらに、二号、三号の要件による「地区計画」の指定は、スプロール化が心配される地域や良好な居住環境の地域に、特定の事業との結びつきなしに行われ、区域内における土地利用、建築行為の制限を強化する点で、ミニ開発などの規制、現状保全に役立つというねらいは、われわれも肯定しているものです。しかし、その制限強化は、区域内の既存の住民にも同じようにかけられるため、実効性については疑問を持っています。  わが党は、日本の都市機能の特殊性として、特に零細な土地所有者が多いこと、権利関係が複雑で、それが大規模な土地利用の妨げになっており、よい居住環境の保全や住民の利益に沿った大規模な町づくりのために、私権制限を伴う規制や小土地所有も検討されなければならないと考えています。しかし、それはあくまで小土地所有者を含めたその地域の住民自身の自発的な意思の尊重が前提であり、さらに、町を改造した後の居住条件、居住環境が前よりもよくなることが保証されなければならないと考えるものであります。  今回の改正案は、「地区計画」を定め、規制を強めるだけで、住民のための町づくりに欠かせないこうした配慮は何一つ盛り込まれていないのです。ここに第三の反対理由があります。  日本共産党・革新共同は、住民本位の民主的な都市計画法の抜本的改正の必要性を強調し、反対論を終わります。(拍手)

北側義一公明党・国民会議

○北側委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————

北側義一公明党・国民会議

○北側委員長 これにより採決に入ります。  都市計画法及び建築基準法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕

北側義一公明党・国民会議

○北側委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————

北側義一公明党・国民会議

○北側委員長 ただいま議決いたしました本法律案に対し、小沢一郎君外四名より、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党・国民会議、日本共産党・革新共同及び民社党・国民連合の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  まず、提出者より趣旨の説明を求めます。小沢一郎君。

小沢一郎自由民主党・自由国民会議

○小沢(一)委員 ただいま議題となりました都市計画法及び建築基準法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案について、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党・国民会議、日本共産党・革新共同及び民社党・国民連合を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  案文はお手元に配付してあります。  御承知のとおり本法律案につきましては、委員会において慎重に審議されてまいったのでありますが、地区計画の策定促進についての国の指導、地区計画内の道路、公園等の施設の整備、開発行為、建築等に関する財政、金融、税制上の配慮、地区計画策定の際の地権者等の意見聴取、市町村が条例を定める場合の地域住民の意向の尊重、地価の安定、評価制度の充実、取引価格の指導、建築基準法の執行体制の整備拡充等については、審議の過程において特に議論された重要な問題でありますので、ここに附帯決議を付し、政府の適切な措置を要望するものであります。  以上が、本案に附帯決議を付さんとする理由であります。  各位の御賛同をお願いいたします。     —————————————   都市計画法及び建築基準法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)  政府は、本法の施行にあたつては、次の諸点に留意し、その運用に遺憾なきを期すべきである。 一 いわゆるミニ開発による劣悪な住環境の発生を防ぐため地区計画の策定の促進について、国は、地方公共団体に十分な指導を行うとともに、地区計画の策定、地区計画内における道路、公園等の整備及び秩序ある開発行為、建築等に関し財政、金融、税制上の助成等の措置について配慮するよう努めること。 二 地区計画の策定にあたつては、地権者のみならず広く住民の意見をきき良好で計画的街づりを進めるよう指導すること。 三 市町村が条例で地区計画の内容のうち特に重要な事項につき合理的な範囲内において建築物に関する制限を定めようとする場合には、当該地域住民の意向を十分尊重して行うこと。 四 地区計画については、単一の建築物の敷地面積等の制限のみならず、同時に建設される複数の建築物で国土利用計画法、都市計画法の適用からはずれているいわゆるミニ開発の全体の開発面積に対しても適正な関連公共公益施設が整備されるように策定するよう地方公共団体を指導すること。 五 国は、良好な居住環境のそなわつた住宅を勤労者に安価で供給するため、地価の女定に努め、地価評価制度の充実、建築物を含めた取引価格の指導等諸制度の運用強化に努めること。 六 建築基準法の適正な運用をはかるため、国は、地方公共団体に対し十分な指導を行うとともに、地方公共団体の建築行政の充実のため必要な執行体制の整備拡充に努めること。   右決議する。     —————————————

北側義一公明党・国民会議

○北側委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕

北側義一公明党・国民会議

○北側委員長 起立総員。よって、小沢一郎君外四名提出の動議のとおり附帯決議を付することに決しました。     —————————————

北側義一公明党・国民会議

○北側委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

北側義一公明党・国民会議

○北側委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————

北側義一公明党・国民会議

○北側委員長 この際、渡辺建設大臣から発言を求められておりますので、これを許します。渡辺建設大臣。

渡辺栄一自由民主党・自由国民会議建設大臣

○渡辺国務大臣 都市計画法及び建築基準法の一部を改正する法律案の御審議をお願いして以来、本委員会におかれましては熱心な御討議をいただき、ただいま議決されましたことを深く感謝申し上げます。  審議中における委員各位の御高見につきましては、今後その趣旨を生かすよう努めてまいりますとともに、ただいま議決になりました附帯決議につきましても、その趣旨を十分に体して努力する所存でございます。  ここに、この法案の審議を終わるに際し、委員長初め委員各位の御指導、御協力に対し深く感謝の意を表し、ごあいさつといたします。ありがとうございました。(拍手)      ————◇—————

北側義一公明党・国民会議

○北側委員長 参議院より送付されました内閣提出、宅地建物取引業法及び積立式宅地建物販売業法の一部を改正する法律案、内閣提出、都市再開発法の一部を改正する法律案並びに伏木和雄君外二名提出、住宅基本法案の各案を議題といたします。  順次趣旨の説明を聴取いたします。渡辺建設大臣。

渡辺栄一自由民主党・自由国民会議建設大臣

○渡辺国務大臣 ただいま議題となりました宅地建物取引業法及び積立式宅地建物販売業法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及びその要旨を御説明申し上げます。  最近、世代、世帯構成等に応じた住宅の住みかえ需要の増大、職住近接の要請の高まり等により、住宅の需要構造の変化が進行し、中古住宅を含む不動産の流通量が増大しつつあります。  このような傾向のもとにおいて、宅地建物取引の態様は多様化し、その内容も複雑化してきておりますが、これに伴い、宅地建物取引に関する紛争件数が増加し、また、一部業者による悪質な事例も後を絶たない現状にあります。  この事態に対処して宅地建物の購入者等の利益を保護するため、宅地建物取引業者について、免許基準の強化等により、その資質の向上を図るとともに、その業務に関する規制を強化して取引の公正を期する必要があります。  また、増大し多様化する不動産の流通の円滑化を図るため、立ちおくれている不動産流通市場の整備、近代化を推進する必要があります。  以上が、この法律案を提案する理由でありますが、次にこの法律案の要旨を御説明申し上げます。  まず、宅地建物取引業法についてでありますが、第一に、免許の基準について、宅地建物取引業者が免許の取り消し等を受けた場合において新たな免許を受けることができない期間を三年から五年に延長し、また、免許の取り消し処分の聴聞の公示が行われた後、廃業等の届け出を行った者は、届け出の日から五年間は免許を受けることができないこととする等免許の基準を強化することといたしております。  第二に、重要事項説明の徹底を図るため、事務所に置かれる取引主任者の数を増加させるとともに、都道府県知事の発行する取引主任者証の提示の義務づけ、三年ごとの講習の受講の義務づけを行うことといたしております。  第三に、営業保証金の額は、主たる事務所及びその他の事務所ごとに、取引の実情等を考慮して、政令で定めるものとし、実情に応じた額とすることといたしております。  第四に、誇大広告等の禁止の強化、取引態様の明示の充実及び重要事項説明の充実につきましては、従前の規制をさらに強化することにより、購入者等の利益の一層の保護を図ることといたしております。  第五に、宅地建物取引業者は、自己の所有に属しない宅地または建物について、一定の場合を除き、みずから売り主となる売買契約を締結してはならないことといたしております。  第六に、売買等の媒介の契約につきましては、契約内容の書面化を義務づけて契約関係が不明確なために生ずる紛争を未然に防止するとともに、専任媒介契約について依頼者保護の見地から所要の規制を行うことといたしております。  第七に、事務所等以外の場所における宅地または建物の買い受けの申し込み等につきましては、五日以内は、書面により撤回等を行うことができることとし、いわゆるクーリングオフの制度を取り入れることといたしております。  第八に、宅地建物取引業保証協会につきましては、弁済業務保証金分担金の額は、営業保証金と同様政令で定めることとし、また、弁済業務保証金準備金は、建設大臣の承認を受けて、保証協会の業務の実施の費用に充て、または宅地建物取引業の健全な発達に寄与する事業に出渇することができることといたしております。  第九に、宅地建物取引業に関する以上の改正に関連して、監督処分及び罰則等の規定について、所要の改正を行うことといたしております。  次に、積立式宅地建物販売業法につきましては、宅地建物取引業法と同様、許可の取り消しを受けた場合等において許可を受けることができない期間を三年から五年に延長する等所要の規定の整備を行うことといたしております。  以上がこの法律案の提案の理由及びその要旨でありますが、何とぞ慎重御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。  次に、都市再開発法の一部を改正する法律案の提案理由の御説明を申し上げます。  ただいま議題となりました都市再開発法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及びその要旨を御説明申し上げます。  都市の既成市街地における都市環境の未整備、災害の危険性、職住の遠隔化、交通混雑等の問題は、依然として深刻な状況にありますが、これらの問題に対処するためには、市街地の計画的な再開発の一層の推進を図ることがきわめて重要であります。  このため、都市の再開発に関する方針を一定の大都市について明らかにすることとするとともに、市街地再開発事業制度について、施行主体の拡大、施行区域要件の緩和、事業手法の拡充等を行う必要があります。  以上が、この法律案を提案する理由でありますが、次にこの法律案の要旨を御説明申し上げます。  第一に、人口の集中の著しい政令で定める大都市を含む都市計画区域については、都市の再開発を特に計画的に推進するため、都市計画法に定める市街化区域の整備、開発または保全の方針において、都市再開発の方針を定めなければならないこととしております。  第二に、市街地再開発事業の施行主体につきましては、首都高速道路公団、阪神高速道路公団及び地方住宅供給公社を新たに施行主体に加えるとともに、個人施行者制度を拡充し、土地の所有者または借地権者以外の者であっても、事業計画及び権利変換計画について、関係権利者全員の同意を得て第一種市街地再開発事業を施行できることとしております。  第三に、市街地再開発事業の施行区域の要件につきまして、区域内の耐火建築物の率の算定に当たり、耐火建築物であっても建築面積の小さいもの及び都市計画決定された公共施設の区域内のものは耐火建築物に含めないこととするとともに、第二種市街地再開発事業の施行区域の面積が三ヘクタール以上であることを要することを改め、一ヘクタール以上であることで足りるとする等その緩和を図ることとしております。  第四に、市街地再開発事業の施行者の負担の軽減及び事業の円滑化を図るため、事業によって建築すべき建築物のうち、施行者がその全部を取得するものの建築を第三者に行わせることができることとするとともに、政令で定める公共施設の整備を当該公共施設の管理者等に行わせることができることとしております。  その他第一種市街地再開発事業の権利変換手続の特則の拡充を図ること等、所要の改正を行うこととしております。  以上が、この法律案の提案理由及びその要旨でありますが、何とぞ慎重御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。  ありがとうございました。(拍手)

北側義一公明党・国民会議

○北側委員長 松本忠助君。

松本忠助公明党・国民会議

○松本(忠)議員 公明党・国民会議を代表いたしまして、ただいま議題となりました住宅基本法案につきまして、提案の理由及びその要旨につきまして御説明申し上げます。  住宅はかけがえのない人間が住まうのみならず、家族とのコミュニティーの形成の場であり、明日への英気を養う場でもあり、国民生活に欠かすことのできない基本的なものであります。  したがって、すべての国民に健康で文化的な生活を保障する責任を持つ国は、国民生活の基盤である住宅についても快適でゆとりのある住居を確保し、国民の住宅権を保障すべきであります。  ところが政府の住宅対策を見ますと公営住宅や公団住宅など、公共住宅の建設には年々消極的となり、もっぱら住宅金融公庫の融資中心の対策に終始しています。また、良好な公共住宅が供給されないために都市勤労者は遠隔地にわずかの土地と小さな住宅を多額の住宅ローンで手に入れてがまんを強いられていますが、これでは国民の住宅に対する不満はつのるばかりです。事実、政府の住宅需要実態調査によると、全国世帯の三八・九%に相当する千二百五十六万世帯の国民が住宅困窮を訴えています。  このような現状にかんがみ、当面する住宅対策の隘路の打開を図りつつ国民の生活環境を整備促進するためには、国民の住宅権を保障する国の責任を明確にして、住宅に対する国と地方の供給体制の明確化、住生活の基準の設定、宅地の供給など住宅問題解決への基本的方途を確立せねばなりません。  以上が、この法律案を提出する理由でありますが、次にその要旨を御説明申し上げます。  まず第一に、国は国民に健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を確保し、国民の住生活を適正な水準に安定させるため、住宅に関する総合的な施策を講ずることとし、また、地方公共団体は国の施策に準じて、その地域に応じた施策を講ずる責務を持つこととしました。  第二に、国は国民の住生活の向上を図るため、適正な住宅の基準及び住居費の負担基準を定めるものとし、国及び地方公共団体は、定められた基準に適合する住宅に居住できるようにするため、住居補助等の施策を講ずることとしました。  第三に、国は住宅の供給を総合的かつ計画的に促進するため、宅地及び公共施設等を含んだ長期計画を策定することとしました。  第四に、国及び地方公共団体は低額所得者等に対して適切な規模、構造、設備を有する住宅を低廉な対価で供給するため必要な施策を講ずることとし、そのために長期かつ低利の資金の融通や税制上の措置を考慮するものとしました。  第五に、国及び地方公共団体は、老人、母子家庭、心身障害者等の福祉を増進するため、低廉な対価で福祉住宅を供給するよう特別な配慮をせねばならないこととしました。  第六に、国及び地方公共団体は住宅地における良好な居住環境を保護するため、適正な環境基準を設定し、その確保に努めなければならないものとし、良好な宅地の供給、土地価格の安定、住宅地における公共施設等の整備、住宅の災害からの保護のため施策等を講ずることとしました。  その他、政府は、国会に住宅に関する年次報告を提出すること、持ち家建設促進のための必要な施策の実施等を行うこととしてあります。  なお、この法律は、公布の日から施行するものといたしております。  以上が、この法律案の提案理由及び要旨でありますが、何とぞ慎重審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げる次第であります。(拍手)

北側義一公明党・国民会議

○北側委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  各案に対する質疑は後日に譲ります。  次回は、来る九日午前十時理事会、正午に委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時十六分散会      ————◇—————

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