決算委員会 第9号
- 発言数
- 227 件
- 登壇者
- 18 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1980/03/19
会議録
○高田委員長 これより会議を開きます。 この際、理事の補欠選任についてお諮りいたします。 委員の異動に伴い、現在理事が二名欠員になっております。これよりその補欠選任を行うのでありますが、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○高田委員長 御異議なしと認めます。 それでは、 新村 勝雄君 及び 中野 寛成君 を理事に指名いたします。 ————◇—————
○高田委員長 昭和五十二年度決算外二件を一括して議題といたします。 本日は、裁判所所管及び法務省所管について審査を行います。 この際、お諮りいたします。 裁判所所管の審査に関し、国会法第七十二条第二項の規定による最高裁判所長官の指定する代理者から出席説明する旨の要求がありました場合は、これを承認することとし、その取り扱いは委員長に御一任願いたいと存じますか、これに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○高田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 —————————————
○高田委員長 それでは、順次概要説明を求めます。 まず、裁判所所管について、概要の説明を求めます。牧最高裁判所事務総長。
○牧最高裁判所長官代理者 昭和五十二年度裁判所所管一般会計歳入歳出決算の概要を御説明申し上げます。 裁判所所管の歳出につきましては、当初予算額は千四百七十八億六百十七万円でありますが、これに、大蔵省所管からの移しかえ額五億七千八百十八万円余、昭和五十一年度からの繰越額二億二千六百五十八万円余、予算補正追加額二十六億八千八百四十九万円余、予算補正修正減少額一億五千四百三十五万円余、差し引き三十三億三千八百九十一万円余が増加されましたので、歳出予算現額は千五百十一億四千五百八万円余となっております。 これに対しまして、支出済歳出額は千五百億五千二百八十二万円余であり、歳出予算現額どの差額は十億九千二百二十六万円余であります。 この差額のうち、翌年度へ繰り越した額は一億四千九百十九万円余であり、不用額は九億四千三百六万円余であります。 不用額となった経費は、人件費七億五千三百八十九万円余と、その他の経費一億八千九百十七万円余であります。 裁判所主管の歳入につきましては、歳入予算額は九億七千五百八十五万円余であります。これに対しまして、収納済歳入額は十一億五千七百七十四万円余であり、歳入予算額に対し一億八千百八十九万円余の増加となっております。 この増加は、相続財産で相続人不存在のため国庫帰属となった収入金等の増加によるものであります。 以上、昭和五十二年度裁判所所管一般会計歳入歳出決算について御説明申し上げました。 よろしく御審議のほどをお願いいたします。
○高田委員長 次に、会計検査院当局から検査の概要説明を求めます。藤井会計検査院第二局長。
○藤井会計検査院説明員 昭和五十二年度裁判所の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
○高田委員長 次に、法務省所管について概要の説明を求めます。倉石法務大臣。
○倉石国務大臣 昭和五十二年度法務省所管一般会計歳入歳出決算の大要を御説明申し上げます。 法務省主管の歳入につきましては、当初予算額は六百九十五億六千三百六十五万円余であり、これに予算補正追加額十六億四千四百十五万円余が増加されましたので、歳入予算額は七百十二億七百八十万円余となっております。 これに対しまして、収納済歳入額は七百七億六千八百三十一万円余であり、歳入予算額に比べますと四億三千九百四十九万円余の減少となっております。 この減少しました要因は、罰金及科料八億五千二百四十二万円余が減少し、刑務所作業収入四億八千三百十三万円余が増加したことによるものであります。 次に、法務省所管の歳出につきましては、当初予算額は二千七百五十四億五千二百三十四万円余であります。これに予算補正追加額二十六億五千三百四十九万円余、予算補正修正減少額三億六千九百四十六万円余、総理府所管からの予算移しかえ増加額百九万円余、前年度からの繰越額五億五千四十四万円余、予備費使用額二億九千四百九十八万円余、差し引き三十一億三千五十五万円余が増加されましたので、歳出予算現額は二千七百八十五億八千二百九十万円余となっております。 これに対しまして、支出済歳出額は二千七百六十二億百二万円余であり、その差額は二十三億八千百八十八万円余となっております。 この差額のうち、翌年度へ繰り越した額は二億三千百八十六万円余であり、不用額は二十一億五千一万円余で、不用額の主なものは人件費であります。 支出済歳出額のうち主なものは、人件費二千二百四十五億千七十八万円余、外国人登録事務処理経費十一億千五百七十四万円余、登記事務等処理経費三十八億五千百九万円余、検察事務処理経費十六億六千八百二十五万円余、矯正施設における被収容者の収容、作業等に要する経費百六十二億三千二百六十六万円余、補導援護経費二十七億千九百九十二万円余、出入国審査及び被退去強制者の収容、送還等に要する経費四億八千二百十一万円余、暴力主義的破壊活動団体等の調査に要する経費十七億四千百八万円余、施設費百十一億七千七百六十万円余となっております。 以上、昭和五十二年度法務省所管一般会計歳入歳出決算について御説明申し上げました。 よろしく御審議を賜りますようお願い申し上げます。
○高田委員長 次に、会計検査院当局から検査の既要説明を求めます。藤井会計検査院第二局長。
○藤井会計検査院説明員 昭和五十二年度法務省の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
○高田委員長 これにて説明の聴取を終わります。 —————————————
○高田委員長 これより質疑に入ります。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小川国彦君。
○小川(国)委員 私は、法務省の決算に関連をいたしまして、現在政府で進められております商法改正の問題点について質問をいたしたいと思います。 最初に法務大臣にお尋ねをしたいと思いますが、法務省においていま商法改正の作業に取りかかっておりますが、大臣としてこの商法改正の作業についてどういう御認識を持っていらっしゃるか、その点をまず最初にお伺いをいたしたいと思います。
○倉石国務大臣 御指摘のように、法制審議会商法部会におきましては、現在会社法改正審議の一環といたしまして御指摘の事項が検討されておりますが、それらは株主総会制度の運営の適正化を図るための方策として取り上げられているものでございまして、御指摘の問題にも十分配慮しながら、株主総会制度の改善が図られるように期待をいたしておる次第でございます。
○小川(国)委員 法制審議会の商法部会で株式会社の株式制度、機関制度、計算・公開、こうした問題についての改正試案を出すということで昭和五十二年五月からこの作業に取り組まれておるわけでございますが、この審議の見通しといたしましては、いつごろをめどにこの改正を終え、改正案を国会に出すという考え方で進んでおられるか、そのめどを明らかにしていただきたい。
○貞家政府委員 ただいま法制審議会商法部会におきましては鋭意検討いたしておるわけでございまして、ただいま御指摘の三つの試案がございますが、これは法制審議会の商法部会におきまして、一応の審議をいたしましたその結果を踏まえまして事務当局と申しますか、法務省民事局参事官室の名前で作成して公表いたしまして、各方面の意見を伺っているところでございます。したがいまして、この意見が相当集まっておりますし、現に最後の計算・公開に関する試案は今後意見が参るわけでございますが、そういった意見を今度は参考にいたしまして再び法制審議会で審議を重ねるという方法をとっているわけでございまして、現に本日も商法部会がこれから開催されて議論が行われるというような状況でございまして、これを一日も早くというふうに私どもは考えております。法制審議会の答申が得られましたならばできる限り速やかにこの関係法律案を御提出申し上げたい、かように考えている次第でございます。
○小川(国)委員 この問題につきましては、昭和四十八年の七月三日の衆議院法務委員会の附帯決議がありまして、会社の社会的責任を明確化するという問題点が一つこの附帯決議で取り上げられております。これは「大小会社の区別、株主総会のあり方、取締役会の構成及び一株の額面金額等について所要の改正を行なう」こういうことで、主として附帯決議のねらいは会社の社会的責任を明確にするということが打ち出されております。それから、同様に昭和四十九年二月二十一日の参議院の法務委員会の附帯決議でも、「現下の株式会社の実態にかんがみ、小規模の株式会社については、別個の制度を新設してその業務運営の簡素合理化を図り、大規模の株式会社については、その業務運営を厳正公正ならしめ、株主、従業員乃び債権者の一層の保護を図り、併せて企業の社会的責任を全うすることができるよう」にする、こういうようなことが附帯決議で出されております。そこで、法務大臣に伺いたいわけでございますが、日本の会社というのは非常に株式会社はたくさんございまして、百万ぐらいの株式会社があるわけであります。そのうち、商法第二百八十三条に基づく公告を行っている会社は現在三千社ぐらいというふうに言われているわけです。いわば日本のいまの会社社会というのは、この三千の大手企業と百万に及ぶ端的に言えば同族会社、こういうものが株式会社というものを構成しているわけでございますけれども、今度の商法改正の中では大企業の会社のあり方を正していくというねらいがもちろんあると思うのですが、ただ、そのために百万に及ぶ株式会社、中小企業がこの改正の中でそのしわ寄せなり犠牲を受けるようなことがあってはならないというふうに考えるわけですが、大臣として、一般的な考え方として、株式会社の制度改正の中でこれら大企業と中小企業、それらを含めまして商法改正の方向でこれらが両立し得るような考え方というものを打ち出していく、これが基本になければならないと思うのですが、その点について、ひとつ大臣の見解を承りたいと思います。
○倉石国務大臣 大変大事なことを御指摘いただいておるわけでありますが、多分に法律技術の問題でもございますし、歴史のあることでありますので、民事局長からお答えいたさせます。
○貞家政府委員 ただいま御指摘の点は、附帯決議に盛られておりますとおりでございますし、私どもが昭和五十年に各方面に会社法改正に関する問題点としていろいろ意見を求めたわけでございますが、その際にも、大会社と小会社それぞれについてどういう対応策を講ずべきかというような問題点の指摘も行ったわけであります。確かに大会社と小会社、同族会社というものの間にはかなり実態的な相違があることは事実でございます。しかしながら、全く新たに制度を設けまして、小会社と大会社と全く別個の規制をいたすということは非常に根本的な問題になるわけでございまして、むしろ実際問題といたしましては、現に監査特例法でも行っておりますが、大小会社を実質的に規制の面においてそれぞれの特殊性に応じて区別をしていく、それぞれに対応策を講じてまいる。そして、しかしながら社会的存在として少なくとも会社と名のる以上は最低限の、社会的正義に反しないような規制というものは必要でございますので、そういった面は、大小会社が共通の制度に服するというようなことは必要でございます。また、一面において、それぞれの問題点に応じまして実態に応じた区別をいたしていくという方向で、現在法制審議会の審議も進められているという状態でございます。
○小川(国)委員 技術論ではなくて、大臣の一般的な見解を承りたいと思うのですが、株式会社というものの中には、大は株式の上場されている会社から、小は中小企業、同族会社と言われるようなものまであるわけですが、やはり日本の大きな発展の背景の中には、会社というような形の中で、大なり小なりそれぞれみんな励みをもってやってきているというふうに思うのです。これは法制度の中では同じように保護されていかなければならないというのは必然だと思うのですが、その点について、ひとつ大臣の見解を聞かせていただきたいと思います。
○倉石国務大臣 最後に御指摘になりました御趣旨はそうだと思います。そういう御趣旨を尊重して対処してまいるようにいたしたいと思います。
○小川(国)委員 そこで、具体的な商法改正の内容の問題について伺っていきたいと思うのです。 まず、株式制度に対する改正試案で見ますと、いままで株式会社の額面株式の一株の券面額及び無額面株式の一株の発行価額は、一株五百円というようなものも認められておったわけでありますが、今回の改正で見ますと、「会社設立の際には五万円を下ることができないものとし、会社設立後においては、制限しない。」こういうふうになっております。しかも、五万円の株にしないといろいろな発言権を制限されるような形が出てきております。たとえば「既存会社の株式単位是正」というところにおきまして「額面株式を発行している会社にあっては、券面額の合計が五万円に相当する数の株式を一単位とし、一単位に満たない株式について株主が会社に対して有する権利は、次に掲げるものに限る。」というので、「(a)利益若しくは利息の配当又は中間配当を受ける権利」とか、「(b)残余財産の分配を受ける権利」とか、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)と、五万円の株にしないと一定の制限を受けるような形が出てきているわけでございます。もちろんこれらの問題については、これから試行錯誤の過程を経ていくというふうに思いますが、先ほど申し上げましたように、大企業から中小企業まで全部ひっくるめて一株五万円という単位に株式の単位が切りかえられていくのかどうか、まずこの点を伺いたいと思います。
○貞家政府委員 先ほども申し上げましたとおり、発表いたしました試案は、これで私どもの態度を固めたとか、あるいは法制審議会の意見がこう固まったという問題ではございません。仰せのとおり、試行錯誤を重ねていく過程の案ということで御理解を得たいと思うのでございますが、ただいま御指摘の株式の単位の点につきましては、現行の金額が現在の経済事情のもとにおいては余りに低過ぎるという意見はかねがねございまして、株式の管理という点から見ましても、相当額に株式の単位を引き上げることが必要であるというような意見が相当強いわけでございます。もちろんそれに一部反対する意見もございます。これは今後さらに検討を重ねて妥当な結論を得たいというふうに考えております。
○小川(国)委員 一つのおそれは、一株五万円が最低ということになりますと、どうも中小企業の株式会社がつぶされるのではないか、こういう懸念もあるわけです。こうした考え方がこの改正案の中に流れているのではないかという懸念がございますが、そういう点への配慮はどうお考えになっておりますか。
○貞家政府委員 確かに、中小企業その他小会社につきましては問題があるということはわれわれも十分考えておるところでございまして、その場合に、たとえば株主の数が一定数以下の会社については、定款で定めた場合に限ってこういった金額の制限をいたすというようなことも考えられているわけでございまして、なおこの点は検討の結果を待ちたいというふうに考えております。
○小川(国)委員 この点については、あくまで中小企業の株式会社に対する配慮というものも十分お考えいただきたいと思いますが、その点はいかがでございましょうか。
○貞家政府委員 その点は、私ども法制審議会の審議におきましても十分そういった御考慮をいただけると思っておりますし、私どもといたしましても、そういった点を十分検討いたして妥当な結論に達したい、かように考えております。
○小川(国)委員 次に、子会社による親会社の株式の取得制限の問題について伺いたいと思います。 「子会社は、次の場合を除いて自己の計算で親会社の株式を取得することができない。合併又は他の会社の営業全部の譲受けによるとき 会社の権利の実行に当たりその目的を達するために必要があるとき」こういうことが一つ取得制限として出てきております。もちろん親会社は子会社の株式を取得することは自由に行えるわけでありますが、子会社が親会社の株を持てないというこの制限、これはやはりまた中小企業の発言権に制約を加えるものではないか。あるいは子会社といえども親会社の株を持って、親会社の経営のあり方、あるいは大企業と中小企業との関連の中で、大企業に対していろいろと発言をしたり物を申し入れることもあろうかと思いますが、そういう場合の子会社の独立性、発言権に制約を加えるような、子会社が親会社の株を取得できないというこの規定は、そういう点でちょっといかがかというふうに思うのでございますが、その点の見解はいかがでございましょうか。
○貞家政府委員 御指摘のとおり、株式制度に関する改正試案におきましては、子会社は一定の場合を除いて自己の計算で親会社の株式を取得することができないということにいたしまして、子会社はその株式を相当の期間内に譲渡しなければならない、また子会社は親会社の株式について議決権を有しない、こういう案が提示されているわけでございます。この点も、法制審議会その他の比較的有力な意見に基づきましてこういった案を提示したわけでございまして、もちろん今後さらに検討の対象になるわけでございます。したがいまして、これが決して確定した私どもの考えというわけではございません。 そこで、この案が出ましたその理由と申しますかその意見、これを支持する意見といたしましてはかなり有力でございますけれども、その根拠となりますのは、子会社というものは当然に親会社に支配されているわけでございまして、これはもちろん独禁法上の制限を受ける場合がありますけれども、一般には自由になっているわけでございます。 そこで、仮に子会社によって親会社の株式を取得することを認めました場合にも、子会社の取得いたしました親会社の株式についての子会社の権利行使というものは、いわば親会社の支配のもとに行われるという結果になりますので、それが親会社に対する子会社の発言権をそれによって強化するという効果は必ずしも期待できないわけでございます。むしろかえって、子会社に親会社の株式の取得を認めることになりましてその株式について権利を行使させるということにいたしました場合には、親会社の株主総会におきまして、親会社の意に沿った議決権の行使が行われる、株主総会、つまり親会社の株主総会の決議の内容が歪曲されるというような弊害も生ずるという点、これが理由になっていると思われるわけでございます。しかし、この試案に掲げております例外の場合、これに限るのがいいのか、それともさらに検討する余地があるかという点につきましては、今後法制審議会において十分議論が尽くされる、先ほども申し上げましたように、本日の会議におきましてもそういった議論が行われるというふうに考えておるわけでございます。
○小川(国)委員 子会社が親会社の株を持ったために親会社の株主総会の主体性が失われるおそれというのは、私はまずないのではないか、どんなに逆立ちしても子会社が親会社の株主総会の支配権を持つに至るというのは不可能なことであり、むしろそういう中である程度の子会社の意見というものを親会社の経営の中に反映する機会を失わせしめてしまう、こういう改正、むしろ子会社の発言を全く封じてしまうというようなことになってしまってはならないのではないか。そういう親会社の独善性といいますか、そういうことは個々の問題でありましょうけれども、やはり子会社の持ち株制限をするということの中では非常に親会社の独善のおそれなきにしもあらずという感がしますわけで、角をためて牛を殺すではないですが、どうも子会社に親会社の株を持たせないということは、一方的に決めることはいかがかというふうに思うのですが、この点ひとつ十分考えていただきたい、こういうように思います。 それから次に、従来株式会社の運営というものは、取締役会があり、株主総会があり、そういう中で処理をされてきているわけでございますが、現在、資本金何億円の会社については公認会計士の監査ということが必要になっておりますが、現状では、公認監査人の存在を必要とする会社は資本金何億円という規定になっておりますでしょうか。
○貞家政府委員 現在、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律というのがございまして、その第二章におきまして資本の額が五億円以上の株式会社は監査役の監査のほか会計監査人の監査を受けなければならないという規定がございまして、これが本来の姿でございます。 ただ経過措置といたしまして、附則二項におきまして証券取引法適用会社でない株式会社で資本の額が十億円未満のものについては当分の間と申しますか、別に法律で定める日まで先ほど申し上げました規定を適用しないということになっておりますので、現在では十億円未満ということになるわけでございまして、それが限界になっているわけでございますが、この線をどこに引くかという点につきましては、現在われわれのやっております商法の改正作業の中でこれを検討するということになっております。
○小川(国)委員 大体資本金で十億未満の会社の場合は必要としないけれども、いわば五億円以上の会社については会計監査人の監査を受ける、こういうように理解してよろしいわけですね。
○貞家政府委員 仰せのとおりでございます。
○小川(国)委員 そうしますと、今度の商法改正の中では「株主総会の権限」というようなもので株主総会に対する権限というものを大きく変えようという動きが見受けられるわけであります。これを見ますと、「会計監査人による監査を受ける会社」いわゆるいまお話にあった大体五億円以上の会社については「貸借対照表、損益計算書及び営業報告書は、会計監査人及び監査役の適法とする意見があったときは、株主総会の承認を要しない。ただし、その内容を株主総会に報告しなければならない。」こういう改正になりまして、いわゆる会計監査人を置いている会社については株主総会の承認を必要としないという改正になるようでございます。そういう方向が出てきている。これはいわば俗に世間で言われております総会屋対策といいますか、総会屋によって株主総会というものが異常な形で運営される、混乱が起こる、そういうような事態を解消しようという一つのねらいがこういう改正案になって出てきているのではないかと思うわけでございます。先ほど角をためて牛を殺すということを申し上げましたが、こういう形で株主総会による承認を必要としないということになってまいりますと、株主の権利保護の面でも大きな問題がありましょうし、それからさらに、五億円以上の会社については会計監査人がおるので株主総会を開かなくてもいい、しかし九九%の中小企業については、五億円以下の会社については会計監査人がおらぬわけでありますから、この場合には株主総会というものをやらなければならない。大企業においては株主総会を開かないでも、総会の承認を経なくてもよい、報告をすればいいということになってまいって、九九%の中小企業の会社の場合には株主総会をやれ、どうも片手落ちの感がいたすわけでありますが、この点はどのようにお考えになっておりますか。
○貞家政府委員 実は、株主総会の権限、運営をいかにするかということは議論が非常に分かれておりまして困難な問題だと思うのでございますが、ただいま御指摘のような改正試案の内容になっておりますのは、これまた決定いたしたわけではございませんけれども、これは別に総会屋対策という観点からそういう案が出たわけではございません。報告事項になっておりますので、もし総会屋というものの弊害があるといたしますと、その点はこれによっては解消されないことになるのではないかと思うのでありますが、こういった案が出てまいりましたのは、大会社におきまして大衆株主というものが非常に多くなってまいりまして、経営に対する関心も一般に非常に薄くなっているというような現象が見られるわけでございます。非常に専門的な事項につきましては必ずしも関心を持たないというような形になっているわけであります。そこで、この試案の考え方と申しますのは、株主総会の権限というものを、つまり株主総会において決議すべき事項は現在の株主においても理解が可能であり関心を持ち得る面に限ることにしよう、その反面、その権限とされた事項につきましては、これを理解させるための方法を講じ、権限を十分に行使させようというねらいがあるわけでございます。 そこで貸借対照表、損益計算書の作成あるいはその適宜の判断ということになりますと、非常に専門的技術的な知識が要求されるわけでありまして、それに対する細かい知識というものも、一般大衆化した株主に求めるということは必ずしも適当ではないのではないか。むしろ専門家である監査役の判断を得た上でこれを株主に開示するようにする、そして株主から取締役の責任追及を容易にするというようなことを考える方向で解決するのが望ましいのではないかという考え方に立っているわけでありまして、貸借対照表、損益計算書につきましては会計監査人及び監査役が監査すべきものというふうに大会社についてはなっているわけでありますので、会計監査人の選任は株主総会でやる、それから監査役につきましては複数の監査役、それから社外監査役というものを強制するということによって地位の独立性を強化いたしまして、専門家による監査権限というものを強化していく。一方、株主総会につきましては、配当に直接関係のあります利益処分だけを総会の決議事項といたしまして、その他につきましては、会計監査人、監査役の適法とする意見があった場合におきましては、取締役会限りで確定するということにいたします。と同時に反面におきまして、会計監査人の選任をする、それから、総会の招集通知には会議の目的のほかに参考資料等を添付しなければならないというようなことにいたしますとか、議決権の行使を容易にするとともに、あるいはこれも議論はございますけれども、質問権、提案権というものをはっきり定めまして、株主の権限の強化を一方では図ることにしよう、こういう株主の権限の合理化と申しますか、本当に株主として権限を行使するにふさわしい事項を株主総会の権限とすることによって合理化していこうというのがこの試案のもとになっている考え方でございます。これが小会社になりますと、やや様相が違ってまいりまして、株主が少数でございますし、同族会社その他におきましては、会社の経理内容につきましてもこれは熟知しているというような点がございまして、これについて株主総会は権限を持たないでほかの専門家の意見によるというような方法をとることは適当ではないというようなことで、大小会社の区分をしているというのが、この試案のような考え方が出てまいりましたもとになる考え方であろうと思うわけでございます。
○小川(国)委員 それは一つの考え方として理解できますけれども、ただ私どもは、大企業の場合といえども、会計監査人がおりましても、たとえばいままでの不二サッシ、三共、あるいは日本熱学、東京時計、東邦産業、こういった公認会計士があって適正であるというような監査証明を出している会社でも、いろいろな経理不正の事件を引き越こしている。こういう実態から見ると、会計監査人が監査したから総会では報告事項で済むということではなくて、やはりこれは株主総会の承認というものがあくまで必要であって、私企業に対する一つの大きなチェックの機能というものがここに存在するのではないか。ですから、そういう点からするならば、これはまだいずれにしても今後の検討課題でございますけれども、大企業も中小企業も同じような方式で取り扱うべきではないか、こういうことをひとつ意見として申し上げておきたいと思います。 それから次に、経理公開の問題でございますが、「会計監査人の監査を受けなければならない会社にあっては、取締役は、定時総会後遅滞なく、貸借対照表及び損益計算書の公告をもしなければならない。ただし、法務省令で定めるところにより、その要旨を公告することを妨げない。」このほかに全体的な問題として計算書類の公示・公開という問題がありまして、「取締役は、定時総会後遅滞なく、貸借対照表、損益計算書、業務報告書及び附属明細書を商業登記所に提出しなければならない。」こういうことになってまいります。しかも、会計監査人の監査を受けなければならない会社以外の会社、いわば中小企業にあっては、貸借対照表またはその要旨のみを公告するものとすることはどうかというようなことで、いずれにしましても中小企業の決算書を商業登記所に提出しなければならない、あるいはまたその要旨を公告しなければならない、こういうようなことか取り上げられてきているのでございますか、資本金一億以下の中小企業に対して全部こういうように決算書を登記所に出させるというのは大変煩瑣なことになるのじゃないか。しかも公告しなければならない。先ほどお話しのように、同族会社的なもので、その会社の経理内容については公開するまでもなく関係者が集まれば十分お互いに了知できるという状況のものを、登記所に提出しなければならない、公告しなければならない、これは、九九%を占める中小企業にとっては大変煩瑣なものになるのじゃないかというふうに思いますが、この経理公開の点についてはどういうふうにお考えになっておりますか。
○貞家政府委員 ただいま御指摘のとおり、昨年の十二月に公表いたしました株式会社の計算・公開に関する改正試案、この中の「計算書類の公示・公開」というころには、原則としてすべての会社が貸借対照表、損益計算書、業務報告書及び附属明細書を商業登記所に提出するという大前提がございまして、さらに、大会社につきましては公告の義務を課するというような方針を打ち出しているわけでございます。ただ、商業登記所にそういった計算書類をすべて提出してこれを保管するということになりますと、これは非常に人的、物的な設備の拡充が必要でございまして、その早期の実現を図ることはむずかしいことでございます。そこで、いわば代案といたしましてこの改正試案では、大会社は貸借対照表、損益計算書またはその要旨を公告する、小会社は貸借対照表またはその要旨を公告し、公告したならばその旨を登記所に届け出るというような考え方をとっているわけでございます。確かに、中小企業等につきましては、こういった本則はもちろん、公告義務を課するということが相当な負担になるということはお説のとおりだと思うのでございます。ただ、現行法におきましても商法二百八十三条によって、貸借対照表を公告するということは義務として課されておるわけでございますが、それが現実には履行されてないという状態でございます。非常に多くの会社が履行していないというのが現実の姿でございます。 ただ、個人営業ならばともかく、会社を設立いたしまして、会社という社会的存在が成立いたしまして、その名において経済活動を営むということになりますと、やはりある程度のその公正を担保するための手段というものは講じてもらうのが相当ではないか。確かに、非常に煩瑣であり、めんどうだということはございますけれども、しかしその小会社も経済活動を営む会社でございます以上、取引関係があるわけでございます。大会社との取引におきまして、その相手方が経済的に連鎖倒産その他の例は必ずしも多くございませんけれども、むしろ小会社間の取引においては取り返しのつかないような非常な痛手をこうむるおそれがあるわけでございまして、こういうような取引におきまして一々相手方の信用調査というものが必要になってまいりますけれども、信用調査機関を利用するというようなことは、コストの点からいいましてもこれを期待することはむずかしいと思われますし、財務内容を開示してもらうということが、そういった中小の会社についてもやはり最低限として必要ではないか、こういう考え方に立っているわけでございますが、さらにその具体的な方法等につきましては十分検討がなされることを期待しているわけでございます。
○小川(国)委員 時間が参りましたので、最後に一点だけあれしますが、貸借対照表またはその要旨、いわば要点を公告するという表現にもなってきているわけですね。そうすると、中小企業の場合に要点を公告するだけではいまおっしゃられたような役目を果たし得ない面があるわけで、私は最後に大臣に申し上げたいと思いますが、どうかこの商法改正の中で、株式会社は大は上場の大手から中小企業まで百万という会社があるわけでありまして、その中の大企業の態様、中小企業の実態、それを十分識別していただいて、この改正が大企業優遇に偏らないように、中小企業の立場を十分配慮して改正が進められるように、大臣の所見を最後に求めて、質問を終わりたいと思います。
○倉石国務大臣 大変大事なことを御指摘いただきました。十分御意見を尊重してまいりたいと思います。
○小川(国)委員 終わります。
○高田委員長 新村勝雄君。
○新村(勝)委員 私は、最初に大臣の御見解を伺いたいわけですが、民主主義の社会、国家においては、言論、出版その他一切の表現の自由は、法の運用あるいは行政の執行の上において最大限に尊重されなければならないと思いますし、この原則が現在の日本の民主主義を支えておる根幹であると思うわけであります。この言論、出版その他一切の表現の自由ということに対する大臣の御見解を最初に伺いたいと思います。
○倉石国務大臣 たてまえとして、仰せのとおり、言論はどこまでも尊重されるべきものでなければならない、このように存じます。
○新村(勝)委員 ところが、この表現の自由と重大なかかわり合いのある、表現の自由を侵すおそれのある事態がいま発生をしようとしておるわけであります。それは、千葉県成田の新東京国際空港の管制塔の事件に関連をして、その状況を収録をしたビデオテープが裁判の証拠として申請をされておる、千葉県においてはすでにもう採用されておるというふうに聞いておりますけれども、さらに東京でもこれが、分離して裁判をやっているようでありまして、東京地裁刑事第八部の二十五回公判でビデオテープの証拠申請がなされております。これを大臣御存じですか。
○倉石国務大臣 新聞で拝見いたしまして、その程度の知識しか持っておりません。
○新村(勝)委員 この問題は、表現の自由、報道の自由を基本的な原則とする自由社会、現在の日本の体制にとってきわめて重大なものを含んでおると思うわけであります。このビデオがもし裁判の証拠として正式に採用され、それが判決に影響を与えるということになりますと、これはひいては報道の自由を著しく制限をする、報道の自由を害する結果を招来すると思いますけれども、大臣はそうお考えになりませんか。
○倉石国務大臣 事務当局からお答えいたさせます。
○前田(宏)政府委員 お尋ねの、成田事件の公判におきましてテレビ会社のビデオテープが証拠として取り調べをされたわけでございますが、そのことにつきましての当否、これは具体的な事案につきましてなされました裁判所の判断、措置の当否にかかわることでございますので、私の立場からその適否ということについて申し上げるのは適当でないと思いますけれども、一般的に申しますと、この種の問題につきましては、最高裁の決定等もございまして、判例上認められた、あるいは解決された問題ではないかというふうにも考えているわけでございます。 と申しますのは、昭和四十三年にいわゆる博多駅事件というのがございまして、その公判の過程で、テレビ会社が保管中のテレビフィルムにつきまして裁判所が提出命令をかけたということで、それがやはり御指摘のような議論を招きまして、最高裁まで争われたわけでございます。四十四年の十一月二十六日に最高裁の大法廷で、ただいま申しました裁判所の措置について憲法二十一条に違反するものでもないし、その趣旨にも抵触するものでもない、こういう決定が出ていることでございますので、そういう決定に照らしましても、御指摘のような点は判例上適法ということで認められているところと理解しております。
○新村(勝)委員 いまの御見解は、四十四年の最高裁判例、判断を一面的に見られた御見解だと思うのですね。そのときの判断ではこういうことを最高裁は言っておるわけですね。全文は長くなりますけれども、要点を申し上げますと、「本件におけるように刑事裁判の証拠のために使用されるような場合には、報道機関の将来における取材活動の自由を妨げることになるおそれがないわけではない。」というふうに言って、将来の報道機関の表現の自由を害するおそれがあるということを一応は認めているわけですが、そしてさらに「取材したものを証拠として提出させられることによって報道機関の取材の自由が妨げられる程度およびこれが報道の自由に及ぼす影響の度合その他諸般の事情を比較衡量して決せられるべきであり、これを刑事裁判の証拠として使用することがやむを得ないと認められる場合においても、それによって受ける報道機関の不利益が必要な限度をこえないように配慮されなければならない。」こういうふうに言っておるわけです。ですから、最高裁の判断の中にも、これはもう取材活動の自由を妨げる危険が十分あるということを認めておるわけです。 そしてさらに、この博多事件は、「被疑者および被害者の特定すら困難な状態であって、事件発生後二年ちかくを経過した現在、第三者の新たな証言はもはや期待することができず、したがって、当時、右の現場を中立的な立場から撮影した報道機関の本件フィルムが証拠上きわめて重要な価値を有し、被疑者らの罪責の有無を判定するうえに、ほとんど必須のものと認められる状況にある。」こういう場合にだけ認められるべきである、こういうことを言っておるわけです。ですから、一たんは報道の自由の上からいって、危険であるということを認めて、しかし本件は特殊な状況だ、このフィルムがなければ、その状況をあるいはまた被告の特定すらできない、こういう状態であるから、この場合には例外として認めるんだ、こういう趣旨の判断をしておるわけですけれども、全体の判断の趣旨、流れというものについては局長、どういうふうにお考えですか。
○前田(宏)政府委員 ただいまお読み上げになりましたような判旨が最高裁の決定にあることは承知しておりますが、なお、さらに追加して申しますと、そのまた後にありますことは、このフィルムが「証拠として使用されることによって報道機関が蒙る不利益は、報道の自由そのものではなく、将来の取材の自由が妨げられるおそれがあるというにとどまるものと解されるのであって、」「刑事裁判が公正に行なわれることを期するためには、この程度の不利益は、報道機関の立場を十分尊重すべきものとの見地に立っても、なお忍受されなければならない程度のものというべきである。」というふうな判旨が結論の方になっておりまして、そこで先ほど申し上げましたように、結論的に「本件フィルムの提出命令は、憲法二一条に違反するものでないことはもちろん、その趣旨に抵触するものでもなく、」こういう締めくくりになっておるわけでございます。もちろん委員の御指摘のように、報道の自由、言論の自由ということは大切なことでございますから、前段の方で先ほどお読みになりましたような判旨もあるわけでございますが、全体を通じまして、私どもとしては最終的には二十一条に違反しないという結論になったものと理解しておる次第でございます。
○新村(勝)委員 それは当局寄りの解釈であって、基本的な人権あるいは報道の自由という立場からすれば、これは報道の自由を明らかにこの判断の中で認めておるというふうに解釈することが正しいと思います。その証拠と言うとおかしいのですけれども、その後の裁判あるいは判例の流れを見ますと、同じようなケースについて却下をされている例が多々ございます。たとえば昭和四十八年三月十五日に行われた公判、これは沖縄青年同盟員が国会で爆竹を鳴らしたという事件でありますけれども、この問題については、フィルムの証拠申請を却下をしておるわけであります。検察側のテレビ録画の証拠申請を却下をして、裁判長は、最高裁の判例の趣旨などから考えて、本件では証拠として採用する必要がないということを言っておるわけです。 というのは、最高裁の判例は、確かに結論的にはテープの採用を認めてはおりますけれども、これは先ほど申し上げたように、博多事件の立証のためにはほかに方法がない、このテープが唯一絶対のものであるという事情があった。それから事件後二年もたって、このテープによらなければ、フィルムによらなければそのときの状況を立証し得ないという特殊な条件があったわけです。そういう条件だから認めるという判断の趣旨、これは明らかであります。したがって、一般的な裁判の場合に、テープを無制限に証拠として認めるということは、明らかに不当であり、憲法二十一条に違反することは明らかであると思います。その見解はいかがですか。
○前田(宏)政府委員 冒頭のお答えでもお断りいたしましたように、具体的な事案につきましての裁判所の判断について、私どもの立場からその当否を論ずるというようなことは適当でないと思うわけでございます。いろいろなケースにつきまして、いろいろな裁判所の御判断があるわけでございますが、それぞれの事案に応じてのことであろうと思いますし、やはり証拠採用ということになりますと、その事案との関係において必要があるかどうかということがやはり問題になるわけでございます。その場合に、最高裁の判例等も当然参酌されることになると思いますけれども、それは先ほど来申しておりますように、その事案事案に応じた適切な御判断であろう、かように考える次第でございます。
○新村(勝)委員 論講ずることは適当でないとおっしゃいますけれども、少なくとも日本の刑事行政のトップにおられる局長の御見解が、表現の自由を尊重するのか、あるいは表現の自由を犠牲にしても便宜的な証拠をその都度採用していくべきであるという考えを持っておられるのか、これは大変重大な問題だと思うのです。ですから、その点をお伺いしておるわけなんです。 そして、いま問題になっておる空港の事件でありますけれども、その状況はこういうことなんです。当時の状況は、警察は、開港反対派が開港阻止を主張していたこと、及び成田空港周辺において違法行為が起こり得るだろうことを予想し、違法行為の規制と、それが起きた場合の検挙及び採証活動等について万全の準備を当局は整えていたわけです。二万人を超える警官隊があの空港を包囲をし、あるいはすき間もなく配備をされていたわけですから、これは違法行為が起こり得るであろうという予想のもとに万全の備えをし、措置をしていたわけですね。本件は、まさにそのような捜査側があるいは警備側が十分な体制をとり、それこそ練りに練った警備計画のもとで生起をした事件です。決してテープが唯一絶対の証拠ではない。ほかにたくさんの目撃者、いわば二万人の警官の、そうしてまた周辺住民の衆人環視の中で白昼堂々と行れた事件ですね。ですから、警察側はテープを採用しなくても、もうあり余るほどの状況証拠あるいは目撃、記録、そうして恐らく警察の方でも録画をたくさん撮っておられると思います。証拠には何一つ不足がない、こういう事件の中で何を好んで表現の自由を侵すおそれがきわめて強いと最高裁が判断されておるようなことをなさるのか。これはわれわれとしては大変疑問にたえないところなんです。こういう点はいかがでしょうか、局長。
○前田(宏)政府委員 私も言論の自由、表現の自由を否定する趣旨でお答えしているつもりはないわけでございますが、先ほども申しましたように事案事案に応じてのことでございます。ただいま委員仰せの成田事件につきましても、いろいろな見方があろうかと思いますが、先ほどおっしゃいましたように、万全の警備体制ということであったわけでございますけれども、一面から言えば虚をつかれて管制塔に侵入されたというような面もあるわけでございますし、要するに、申し上げたいことは、それぞれの事件において、この判例でも一面触れておりますように、刑事裁判の立証上必要であるかどうかということで、検察側としては必要だという考えで証拠申請をし、それに対して裁判所が公正な立場で、必要であるということで、また憲法上も特に問題はないということでの御判断をされるべきものであろうというふうに考えているわけでございます。
○新村(勝)委員 先ほど申し上げたようなそういう状況の中で起こった事件について、たくさんの状況証拠があり、あり余るほどの証人もいれば物的な証拠もある、こういう中での証拠物件の申請ということであって、これは明らかに不当だと思うのです。その点については、いまの御答弁は納得ができないわけでありまして、そのたびごとの判断と言われますけれども、やはり国としてあるいは局長として一定の見解を持つべきだと思いますね。言論の自由を侵すような証拠を提出すべきであるかどうか、こういうことについての一定の見解を持つべきだと思います。そのときそのときの状況によって判断するんだ、これはそういう面もあるでありましようけれども、国民にとって最も重大な裁判、あるいはそれによって量刑が決まり最終的な処断がなされるわけでありますから、国民にとっては、裁判と刑罰の量刑の問題等については最大の問題です。それからまた、言論の自由を確保していくということは、これまた民主主義社会の根幹をなす問題としてきわめて重大である、こういう重大な問題について局長として、大臣として一定の見解をお持ちになるということは絶対必要です。一定の見解をお持ちになっているのかどうか。
○前田(宏)政府委員 見解がないというような御批判を受けたわけでございますけれども、先ほど御引用の最高裁の決定におきましても、一言で言えば諸般の事情を比較衡量すべきであるということをおっしゃっておるわけでありますので、そういう意味でケースに応じていろいろな事情があるであろう、それによってどちらがどの程度必要であるかとかあるいは不利益であるかとかいろいろな問題かそこで比較衡量されて初めて裁判所が公正な立場で御決定になるであろう、こういうことを申したわけでありまして、それ自体がいわば一つの見解ではなかろうか、かように考えておるわけであります。
○新村(勝)委員 最高裁の判断が裁判所の一応最高の権威を持つ判断だと思います。そうしますと、先ほどくどく申し上げたように、最高裁の判断というのは一方的にテープを証拠として採用することを明らかに認めていないのですね。この全文をお読みになってみればすぐわかることですし、繰り返しませんけれども、認めていないわけです。表現の自由は最大限に尊重しなければならないということを認めた上で、しかしその証拠が唯一絶対なものであるという、そしてまたその当時の状況がそれによらなければ明らかにならないという、そういう条件のもとにおいてだけ例外的に許される、こういう判旨ですよ、この判断は。それに対して一般的にいつでもこれが簡単に許されるということでは、表現の自由が侵されることは避けられない。千葉地裁においても簡単にこれが証拠採用されているわけです。そしていま東京においても、さらにこれが同じ事件について申請をされておるということでありまして、これは大変重大だと思います。 さらにくどくなりますけれども、繰り返しますが、博多事件の状況はこういうことだったわけですよね。博多事件が「多数の機動隊等と学生との間の衝突に際して行なわれたとされる機動隊員等の公務員職権乱用罪、特別公務員暴行陵虐罪の成否」にこれはあったわけでありますが、「その審理は、現在において、被疑者および被害者の特定すら困難な状態であって、事件発生後二年ちかくを経過した現在、」現在というのは当時の現在です。「第三者の新たな証言はもはや期待することができず、したがって、当時、右の現場を中立的な立場から撮影した報道機関の本件フィルムが証拠上きわめて重要な価値を有し、被疑者らの罪責の有無を判定するうえに、ほとんど必須のものと認められる状況にある。」それなるがゆえにこの場合は許したんだ、こういう趣旨が明らかに述べられておるわけであります。それに対して大臣は、この問題についてどうお考えですか。
○倉石国務大臣 先ほど来刑事局長と新村さんの間にお話し合いができております、そういう質疑応答の中で局長の方から申し上げておりますところで私どもの判断をひとつ御理解いただきたいと思います。
○新村(勝)委員 ずいぶんそれもはっきりしないのですけれども、最高裁はそのテープがなければどうにもならないというときだけ許すと言っているわけですよ。ところが今回は、先ほど申し上げたように、成田空港の事件については証人が何千、何万といるわけです。それから、物的な証拠もたくさんあるわけですよ。そういう中でビデオを採用しなければならぬという客観的な必要性、万人が首肯できるような必要性がないわけだ。そういう中でこれを採用したということについての大臣の御見解です。そうしますと、これからそういう事態が発生した場合にはいつでもテープが証拠として採用されるということになりますか。なりますね、これは当然。
○前田(宏)政府委員 お言葉を返すようでございますけれども、お尋ねの前提が、成田事件における千葉の裁判所の措置が非常に安易に行われた、あるいは簡単に採用された、こういうような感じでのお尋ねではないかというふうに受け取られるわけでございますけれども、そのことについて冒頭にも申したところでございまして、やはり裁判所として御決定になったことについて、それがよくないとかいいとかいうことを申し上げるのは適当ではなかろうというふうに思うわけでございます。それと同じことになりますけれども、やはり裁判所としてはそう簡単に、あるいは安易に措置をとられるということはないはずでございますので、私どもとしてはそのように理解しておるわけでございます。
○新村(勝)委員 それでは具体的にちょっと伺いたいのですが、裁判の証拠として提出をされるものは、記録等については原則としては原本でなければいけないわけでしょうね。写し、あるいは改ざんの可能性のあるもの、そういうものが証拠として能力がありますか。
○前田(宏)政府委員 いろいろな場合があろうかと思いますが、御指摘のように、原本があれば原本の方がいいことは間違いございません。しかし、場合によって原本がない場合もございますし、写ししかないということで、それが必要不可欠であるということになれば、証拠として提出することも当然起こり得ますし、また、その証拠によってどのような判断をされるかということは、裁判所の問題であるわけでございます。
○新村(勝)委員 いま問題になっておる証拠として提出をされたものは、原本ではないですね。原本ではなくて、編集をされたものだというふうに伺っております。そうしますと、ビデオの編集というのは、これは確かにこまの連続でありまして、そのこまの連続の中から一つの状況が映し出されるわけでありますけれども、編集という過程を通じてそれがある程度変わってくる、あるいは解釈をされるという可能性も十分あるわけです。一こま一こまが真実だとしても、ニュースフィルム全体としての関連は一つのものであって、こまとこまとの関連によっては全体として事実に反する結果になる危険も多分に含まれている、こういうことが考えられると思います。また、フィルムは写す角度、撮影方法によってかなり変わった印象を与えることもありますし、編集者が加わることによって右の虚構はさらに加速されやすいという可能性があります。さらに、編集者の受ける事件の衝撃が大きければ大きいほど、編集者の個人的な感情や主観が画面にあらわれる、その状況の中にあらわれるという可能性もあるわけです。事実と異なる印象を視聴者に与えやすい、こういう危険がこのニュースの編集という中にあるわけであります。そういうことから考えても、テープを証拠とすることはきわめて不適当である。テープは、唯一絶対のものとしてどうにも仕方がない場合には最高裁が認めておりますけれども、一般的には、テープというのは裁判の証拠としては証拠能力がはなはだ不足をしておる、不十分である、証拠能力がないというふうに考えられると思いますけれども、局長はどう考えますか。
○前田(宏)政府委員 ビデオテープのテープに限らず、一般のテープについても同様な問題はあろうかと思いますし、さらに極端なことを申せば、普通の写真についても御指摘のような問題はあり得るといえばあり得るわけでございます。ですから、報道機関が報道しましたビデオテープ固有の問題ではないわけでございます。したがいまして、そのようなものを証拠とする場合には、そのようなものがそういう性質のものだということは当然前提になるわけでございまして、先ほど来申しておりますように、裁判所が当該証拠の性質なりそういうものを十分お考えになって当然適正な御判断をされるべきものであるし、そうされているはずでございます。したがいまして、証拠能力ということは私どもとしてはあるわけでございますが、むしろ証明力としていろいろ問題もあるわけで、その点は全体を通じまして裁判所の適正な御判断にまつべきものであろう、かように考えます。
○新村(勝)委員 個々の問題としてではなく、やはりテープを証拠として採用するということに対する一般的な考え方はどうなんですか。テープというのは、目撃あるいは写真とは違う特殊な性格を持っておる、これはお認めになると思いますけれども、こういう編集によって状況が正確に記録されないという、そういう可能性があるわけです。そういうものを証拠として出すことについての適格性というか証拠能力というか、こういう点についての問題はいかがですか。
○前田(宏)政府委員 その点も先ほどのお答えの中である程度触れたつもりでございますが、先ほど申しましたように、ビデオテープあるいは一般のテープにつきましても、編集という問題があって、それが場合によっては改ざんという心配というようなことは当然あるわけでございまして、それを否定した趣旨ではございません。しかし、そういうものが当該事件の内容との関係において必要な場合には、やはり証拠として請求もし、また裁判所が適当と認められれば採用もされるわけでございまして、その場合に、先ほど申しましたことは、そのビデオテープならビデオテープというものが委員御指摘のような性質のものであるということを十分踏まえて、それに応じた御判断があるであろう、こういうことを申したつもりでございます。
○新村(勝)委員 いままでいろいろ見解を伺ったわけですけれども、結論的にお伺いしたいのですけれども、この表現の自由を侵す危険のある——危険かあるということは最高裁か言っているのですから、危険があるわけです。こういう表現の自由を侵す危険のある証拠を採用する場合には、少なくともその制作者、編集者の了解が必要であると思いますが、それはいかがですか。
○前田(宏)政府委員 了解が得られればそれに越したことはないわけでございますが、先ほどのいわゆる博多駅事件につきましては、御了解が得られなかったので提出命令が出され、それが最高裁まで争われて、先ほど来のような御決定になり、その後におきまして裁判所が実際に強制的な措置と申しますか押収という形で所要のテレビフィルムを裁判所の方で証拠としたということでございますので、御了解が得られればもちろん越したことはありませんけれども、それが得られない場合もあり得る。それで極端な場合に、それがどうしても必要だという場合になりますと、いま申したような措置もやむを得ない場合がある、こういうことになろうかと思います。
○新村(勝)委員 そうすると、今回は了解を求める手続をとられたのですか。
○前田(宏)政府委員 今回と申しますのは、先ほど来の成田事件のことであろうかと思いますが、私の承知しております限りでは、そういう手続はなかったと思います。
○新村(勝)委員 そうすると、これは最初からそういう手続を、了解を求める御意思はなかったわけですか。
○前田(宏)政府委員 ちょっと前提が食い違ってもいかぬわけでございますが、了解を求めるかどうかということになりますと、いわゆる博多駅事件につきましては、先ほど来申しておりますように、テレビ局の方でそのフィルムを保管していたわけでございます。それを出す出さないという問題が起こったわけでございますが、今回の場合は、テレビ局自体が保管しているものではなかったわけでございますので、その前提が違うわけでございます。
○新村(勝)委員 放映されたテレビをビデオに撮ったというわけでしょう。ですから、これは編集権はテレビ局にあるわけですね。それを録画したとすれば、放送局に了解を求めることは常識でしょうね。それはいかがでしょう。
○前田(宏)政府委員 お尋ねの点は、法律的な面から言えばあるいは著作権法の問題として御議論になることではなかろうかと思いますが、ちょっと正確なお答えは、所管庁でないのでできませんけれども、やはり裁判とかそういうものに使う場合には著作権の侵害にならないというのが著作権法にあったように記憶しているわけでございます。
○新村(勝)委員 司法権の発動あるいは裁判は国家最高の権力ですから、それはそういうことがあろうと思いますけれども、そうじゃなくてやはり表現の自由を侵す危険がある問題ですから、そういった観点からこれは編集者あるいは放送局の了解を求めることが必要であるし、当然それは法以前の問題として必要じゃないかと思いますがね、その点いかかでしょう。
○前田(宏)政府委員 私どもも基本的には表現の自由、またその中に含まれる報道の自由というものを否定するものではないわけでございますが、具体的な議論の当てはめの問題になりますと、どうも委員とは御見解が合わないような気がいたしますので、いまの点もそのように御理解いただきたいわけでございます。
○新村(勝)委員 それは理解ができません。そうしますと、もう時間がありませんので最後にお伺いしますが、これからの問題として大臣にお伺いするのですけれども、表現の自由を侵すような、そういう重大な影響を持つ証拠の採用、裁判の運営、こういうことについては、これは最大限の慎重さを必要とすると思います。これは民主主義社会がそういうことを要請していると思うのですね。最大限の配慮と慎重さ、これを必要としていると思うのです。そして最高裁の判断も、これを全部読んでみると一般的には明らかに許していないわけです。特殊な場合にだけこれは受忍をされるべきだということですね。ですから、一般的にこういうことが許されることではないと思うのです。それに対して、一般的にはこういうことはすべきではないというふうに大臣お考えですか、その点を伺います。
○倉石国務大臣 表現の自由は尊重されなければならないと思っております。
○新村(勝)委員 それはわかるのです、表現の自由を尊重しないとはおっしゃるはずがないのですから。それはわかるのですけれども、こういう表現の自由を侵す危険のあることをする場合には、最大限の考慮、それから慎重さが必要だと思うのですよ。そうでしょう。そういう見解、御方針を伺っておるわけですよ。これからこういう事態がたびたび発生をするかもしれませんけれども、そういう場合に大臣として表現の自由を侵す危険のあるような事態については一切やらぬというふうにおっしゃっていただきたいわけでありますけれども、少なくとも最大限の考慮と慎重さを持っておやりになるかどうかということです。
○倉石国務大臣 本日、私がここにおりますのは、法務大臣として出席いたしておるわけであります。同時にまた、ただいまのお話し合いの進められております案件というのは、現に裁判にかけられておることでありますので、そのことについて私かとやこう申すことはいろいろ影響もありますから御遠慮すべきであると思います。 ただ私は裁判及び検察を信用しておりまして、この裁判及び検察が本件の扱いについて不偏不党で厳正公平な立場に立って進められていくものであると確信をいたしております。
○新村(勝)委員 それでは、具体的な例を離れてでも結構ですけれども、表現の自由を侵す危険のある事態については最大限の配慮をなさいますか、慎重さで今後対処されますか、その点を伺います。大臣といえども裁判に容喙はできないでしょう。そういうことを伺っているのじゃなくて、この問題に関連して、言論の自由を侵すような事態については最大限の配慮をなさる、そういうお考えはございませんか。
○倉石国務大臣 一般的に申しまして、言論の自由を尊重するということについては私どもも十分な配慮をいたさなければならぬと思っております。
○新村(勝)委員 これは民主主義社会の原則ですから、ひとつ十分そういうことで今後対処していただきたいと思います。 あともう一つ簡単にお伺いしたいのですか、いままだ法案も提出されておりませんし、議論の日程には上っておりませんけれども、政府の中ですか、選挙違反については二審制を採用するという議論があるように伺っておりますけれども、そういう議論がございますか。
○倉石国務大臣 いわゆる百日裁判という言葉がございますけれども、選挙事犯については大変おくれるものもある、こういうことを是正すべきであるという意見が自由民主党の政務調査会の中に台頭してきたようであります。その小委員会ができまして、そこでいろいろな案が出ておるようでありますが、私はまだ連絡を受けておりません。
○新村(勝)委員 選挙違反の裁判、これは刑事事件ですね。選挙違反の裁判については二審制を採用するという議論があるようですね。しかしこれは大変な間違いではないかと思います。政治の浄化あるいは選挙の浄化というのは、金権体質、金権選挙を改めることがそのポイントですよね。それを裁判制度とすりかえるということは大変な見当違いでしょう。これは弁護人抜き裁判と同じような発想でしょうけれども、国民の裁判を受ける権利をいささかでも制限をするということは大変なことであり、憲法違反だと思います。ですから、自民党の中にそういう議論があったとすれば、それは自民党さんの金権体質、金権選挙を改めることが重要なのであって、裁判制度を直したからといってそれだけで金権選挙が改まるとは思えない。その点の御見解、いかがでしょう、大臣。
○倉石国務大臣 自由民主党で選挙法について何かの決定がある場合には、私どもにも連絡があると思います。そういう場合にはただいまのあなたの御高見を、こういう御意見もあったということは伝えるようにいたします。
○新村(勝)委員 裁判制度というような国民の基本的な権利にかかわることについてではなくて、現在の政治を毒しておる金権政治あるいは金権選挙、これを改めていただきたいわけです。そのためには、さしあたり選挙法の改正も必要でありましょうけれども、政治資金規正法の改正が絶対必要でしょう。そして金と政治とのつながり、あるいは財界と政治との癒着、これを断ち切っていかなければ裁判を直したってどうにもならぬわけですから、そういう点で政治資金規正法については、大臣、重大な関係がおありですね、職責上から言っても。ですから、そういう点で、裁判制度を直すのじゃなくて、政治資金規正法の改正、それを通じての選挙の浄化と政治の浄化に御尽力をいただきたいと思いますが、いかがですか。
○倉石国務大臣 先ほど申し上げました選挙法の改正の問題について相談がありますれば、そういうときに、ただいまのような御高見のありましたことをそのままお伝えいたしたいと思います。
○新村(勝)委員 終わります。
○高田委員長 春田重昭君。
○春田委員 私は最初に、KDD事件の問題についてお尋ねしてまいりたいと思います。 郵政省の元幹部二名が警視庁に任意同行から昨日逮捕に切りかわったわけでありますけれども、これまでのKDD事件のいきさつからして、法務省としては警視庁と十分連絡をとっておられると思います。 そこで、今回の逮捕はいかなる意味を持つものか、まずお答えをいただきたいと思います。
○前田(宏)政府委員 いかなる意味かというお尋ねでございますけれども、刑事事件の捜査は改めて申し上げるまでもないかと思いますが、いろいろな捜査の端緒がございまして、それから証拠を収集いたしまして、その積み重ねの上で犯罪の容疑があるものにつきましてはそれなりの措置をするということでございますので、今回の事件につきましてもそのように御理解を賜りたいわけでございます。
○春田委員 逮捕または公判の維持のためには確かな証拠が必要であると思いますけれども、それらはつかんでおられるのか。
○前田(宏)政府委員 KDD事件につきましては、先般KDDの前社長室長でありました佐藤陽一という者を業務上横領、関税法違反ということで起訴をいたしました。それから昨日、ただいま御指摘のように、警視庁におきまして、元郵政省の幹部でありました者とKDDの社長室次長であります者を逮捕したわけでありまして、逮捕するからにはそれなりの証拠があって、それに基づいて措置をとっておるわけでございます。
○春田委員 報道等では、この二人は昭和五十二年の五月から六月にかけて国際会議に出席した。その会議終了後、KDDより一人当たり五十数万円相当の海外観光旅行のもてなし、いわゆる接待を受けたという形で報道をされておりますけれども、その事実はつかんでいるのか、また立証できる要素があるのかどうか、お答えいただきたいと思います。
○前田(宏)政府委員 現に捜査中の事件のことでございますし、昨日の逮捕事実自体は、きのう初めて逮捕ということに至ったわけでございまして、先ほど申しましたように、関係者を逮捕するにつきましてはそれなりの証拠がなければ逮捕状も出ないわけでございますから、それなりの証拠があるというふうに御理解をいただきたいわけでございます。それを起訴していくかどうか、どういうふうな処分をするかということは今後の取り調べの結果によるわけでございます。
○春田委員 一人当たり五十万円相当のもてなしということは、これは単なる社交儀礼の範囲と見るのか、それともそれを逸脱した行為と見るのか、この辺の判断はどうでしょうか。
○前田(宏)政府委員 昨日の逮捕事実自体も、捜査の内容でございますので、詳しく申し上げるのはいかがかと思いますけれども、おおむね報道されておるようなことであるわけでありますが、先ほども申しておりますように、それが贈収賄の疑いがあるということで逮捕という措置になったわけでございますから、そのような見方がなされて昨日のような措置になった、かように御理解いただきたいわけでございます。
○春田委員 今回の海外の観光旅行、これは国内でKDDとこの二人の間で事前約束されたものなのか、それとも、KDDの海外事務所がありますけれども、そこが単独でやったものなのか、法務省としてはどちらをとっておるか、御見解をいただきたいと思います。
○前田(宏)政府委員 事件の内容につきましては、いろいろと御関心かあろうかと思いますわけで、私どもといたしましてもできるだけ御説明したいわけでございますけれども、何分にも捜査のことでございますし、またきのうのこと自体は、それが始まったばかりという段階でございますので、それ以上のことは現段階では申しかねるわけでございます。
○春田委員 佐藤前社長室長は業務上横領、関税法違反で逮捕され、起訴されているわけでございます。そこで、疑惑の中心人物と見られている板野学前社長でございますけれども、この人の刑事責任は問われないのですか。
○前田(宏)政府委員 先ほどのお答えと似たようなお答えになって恐縮でございますけれども、このKDD事件につきましては、これまで佐藤前室長について起訴が行われたということ、またきのう三名の者について新たな逮捕があったということを申し上げるにとどまるわけでございまして、それ以上どういうふうに波及するかというようなことは、現段階では何とも申しかねるわけでございます。
○春田委員 再度お尋ねしますけれども、業務上横領の事実はつかんでいる、しかしそれ以上の大きなものを洗い出すために時期を見ているんだ、前社長の板野学につきましては捜査中である、こういうようなうわさもあるわけです。そういう点ではどうでございましょう。
○前田(宏)政府委員 いろいろと報道等もされ、いろいろな観測のようなことも言われておるわけでございますが、冒頭にも申しましたように、刑事事件の処理と申しますのは、証拠の積み重ねによって初めて容疑があるとかないとかいうことがわかってくるわけでございますので、いまの時点でどういうような見通しがあるかとか、どういうふうになりそうだとかいうようなことは申しかねるわけでございます。
○春田委員 今回の事件では刑法第四条海外犯の適用をするみたいでございますけれども、今回の事件に関しては収賄側と贈賄側においてはその適用範囲が違うわけですね。そういう面から考えて、今後この種の犯罪といいますか事件等が非常に国際化していく傾向が強いわけでございますけれども、そういった面からも刑法第四条の適用範囲をもっと積極的に拡大するといいますか、そうした積極的な基準を当てはめるべきじゃないかという意見もあるわけでございますけれども、この点どうでございましょう。
○前田(宏)政府委員 いわゆる国外犯の規定をもっと広く改めるべきではないかというような御意見のように拝聴したわけでございますが、さしあたってのことといたしましては、たとえばきのう来報道されておりますようなケースにつきましては現行法でも十分賄えるわけでございますし、どの程度国外犯の規定を広げるべきかということは、刑法の全面改正という問題にもつながることでございますので、今後の検討課題というふうに御理解いただきたいわけでございます。
○春田委員 最後に法務大臣にお伺いするわけでございますけれども、一連のKDD事件に対する今後の対応ですね。要するに、密輸入が発覚したのが昨年の十月二日だと聞いております。したがって、もう五カ月半以上になるわけでございますけれども、今後捜査はどこに的をしぼって展開されていくのか、この辺のお見通しがあれば聞かせていただきたいと思うのです。
○前田(宏)政府委員 この件につきましては、御案内のとおり、東京地検と警視庁とが緊密な連絡をとりまして捜査を進めておるところでございます。 何分にも内容が複雑でございますし、多岐にわたっているようなこともございまして、関係の証拠書類等も多数であるというようなこともございまして、外から見られました場合に、若干手間がかかり過ぎているではないかというような御批判もあるいはあるのではないかと思いますけれども、先ほど来繰り返して申しておりますように、やはり刑事事件の捜査でございますので、その内容に応じて、努力はいたしますけれども、手間のかかることもあるということでございます。 なお、今後の見通しにつきましては、先ほども何回か申しておりますように、的をしぼってやるというようなことではございませんで、やはり下からの積み重ねと申しますか、証拠の検討の結果によりまして、その中で犯罪の疑いがあるというものにつきましては厳正な態度をもって臨むというのが基本方針でございます。
○春田委員 この事件に対する法務大臣の御見解を最後にお尋ねして、この問題については終わりたいと思います。
○倉石国務大臣 御存じのように、捜査中でございますので、事件のことにつきまして私がとやこう申すことは御遠慮いたしたいと思いますが、とにかく、これが事実であるとすれば、非常に私は綱紀の弛緩を憂えるわけでございます。国民の皆さん、みんな御同感であろうと思います。政府を持っております私どもといたしましては、国会の皆さんにも御協力をいただいて、綱紀粛正に力を注がなければならない、このように考えておる次第であります。
○春田委員 国民からすれば、まだまだ解明してもらいたいというのが本音じゃなかろうかと思うのです。まだまだ事件というのはこれからだと思うのですね。これからが山場であり、核心じゃないかと思うのです。そういう点で、事件解明に対する大臣の努力を期待するものでございます。 それでは続いて、公務員の綱紀粛正の問題につきましてお尋ねしてまいりたいと思いますが、公務員の空出張などの不正経理、そうした事件に対する問題が一月三十一日の予算委員会でわが党の矢野委員から質問があったわけでございまして、それが去る三月七日、同じく予算委員会の締めくくりですか、総括質疑の中で、二見委員に対しまして官房長官から政府の統一見解が出されたわけでございます。当然法務大臣も御存じだろうと思いますけれども、この政府統一見解につきまして法務大臣としてはどのような御見解をお持ちなのか、お尋ねしてまいりたいと思うのです。
○倉石国務大臣 いま、お話のございました、官房長官が申し上げたかどうか、ちょっと私、記憶ございませんが、そういうことについて予算委員会でも政府側の考え方について発言をいたしております。私どもも全く同感でございまして、これについては、しさいにいろいろ検討をいたしまして、綱紀の粛正、国民に安心していただけるように最善の努力をしなければならぬというようなことは閣議等においても話が出ておる次第であります。
○春田委員 確認の意味も含めて再度お尋ねするわけでございますけれども、刑事訴訟法第二百三十九条の第二項、公務員はいわゆる告発をしなければならないとなっておりますけれども、これは義務規定なのか単なる訓示規定なのか、明らかにしていただきたいと思います。
○前田(宏)政府委員 御指摘の刑事訴訟法の二百三十九条第二項の規定は、いまおっしゃいましたように「官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない。」という表現で規定をしておるわけでございます。したがいまして、文理的にも、しなければならないという義務規定だというふうに考えられるわけでございますが、義務規定か訓示規定かということは、言葉の使い方のような問題と言うと適切でないかもしれませんが、同じ義務規定と申しましても、それによって、その義務を果たさなかった場合に罰せられるとかいうようなことになりますものと、そうでないものとがあるわけでございます。 したがいまして、性格的には義務規定でございますが、それが強制されるものではないということになりますと、まあ訓示規定的な性格も持っているというようなことになるわけでございまして、いずれかということになりますと、直ちにいずれかであるというふうにも申しかねるわけでございます。
○春田委員 一方、日本国憲法の第三十八条には「何人も、自己に不利益な供述を強要されない。」ということになっているわけです。この辺との絡みから考えてみても、この刑事訴訟法の二百三十九条第二項は、これは同僚や上司をかばい、実効面では効果が上がらないのではないか、形骸化されているのではないかという疑問が起こるわけでございますけれども、法務省としてはどうお考えになりますか。
○前田(宏)政府委員 その点につきましては、規定が明確にそのように規定しております上に、先ほど来御指摘の政府の統一見解、三月七日であったと思いますが、官房長官から申し上げたとおりでございますので、その規定の履行というものにつきましては、官吏、公吏に当たる公務員といたしまして、当然これを要する場合にはその義務を果たすべきものと考えます。
○春田委員 今後に期待しなければならないわけでございますけれども、いざそうしたいわゆる実効面で見た場合には、このように本人自身が告発するかどうかという点では非常に疑問視されているわけでございます。 この点で、総理府人事局で、この統一見解が出たわけでございますけれども、今後公務員全体に対してどのように周知徹底されていくのか、その対応というものをお聞かせいただきたいと思います。
○川崎政府委員 さきの統一見解につきましては、この三月十二日に私どもの方で人事管理官会議というものを持っておりますが、その会議の議題としてのせまして説明をいたし、全職員に周知徹底するように取り計らったところでございます。
○春田委員 そこで、実効面で疑問視されているわけですけれども、もしこの不正を見逃した場合、そしてそれが後で判明した場合、要するに公務員としては告発義務違反として処分されるかどうかという問題です。この点どうでしょうか。
○金井政府委員 およそ国家公務員法上の懲戒の問題につきましては、八十二条におきまして規定がございますが、一般的に、懲戒権者が、非違行為かあった場合には、その非違行為の性質内容その他の事情を考慮しまして、案件ごとに具体的に判断、発動をすべきものでございまして、お尋ねの場合、一般的に申しますと、正当な理由がなくてことさらに刑事訴訟法第二百三十九条第二項の規定に違反した場合には懲戒処分の対象になり得るものと考えております。
○春田委員 なり得ると思いますということでございますけれども、過去の事例からして、この告発義務違反として八十二条の第二項を適用されたことがございますか。
○金井政府委員 従来までそのようなケースはございません。
○春田委員 ということで、非常に私自身も期待するわけでございます。 続いて質問に参りますけれども、刑事訴訟法二百三十九条の条文には、先ほど前田局長もおっしゃったように「官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない。」こうなっております。このいわゆる官吏、公吏の範疇といいますか、範囲でございますけれども、どの人たちを指すのか、お尋ねしておきたいと思うのです。
○前田(宏)政府委員 官吏、公吏というような古いような表現が使われておりますが、現在に当てはめてみますと国家公務員と地方公務員がこれに当たるものと考えます。
○春田委員 たとえば専売公社とか国鉄等はそれぞれ設置法があるわけでございますけれども、設置法によればいわゆる公務員とみなす、普通みなし公務員と呼んでいるようでございますけれども、こうした方たちもこの官吏、公吏の中に入ってくるのかどうか。
○前田(宏)政府委員 お尋ねの点につきましては、若干議論があろうかと思いますけれども、やはり公務員そのものではございませんで、そういう法令の特殊性から公務員扱いにされているというものでございますので、この刑事訴訟法に言う官吏、公吏には当たらないのではないかというのがさしあたっての私どもの考え方でございます。
○春田委員 昨日、専売公社の方にお尋ねしましたら、やはりこの二百三十九条の第二項につきましては準用する、このように専売公社の方たちも言っておるわけでございますけれども、いま局長は当たらないとおっしゃいました。向こうは準用する、こう言っているわけですね。その辺の食い違いがあるわけでございますけれども、どう理解したらいいのですか。
○前田(宏)政府委員 私ども申しましたのは、刑事訴訟法の規定の非常に事務的な解釈ということで申したわけでございますが、いま専売公社の方でどういう御見解を持っておられるか、じかに聞いたわけではございませんけれども、その御趣旨は、やはりみなし公務員といえども公務員に近いようなものであるということにおきまして、こういう規定の趣旨を尊重すべきであるという、こういう御趣旨ではなかろうかと察するわけでございます。
○春田委員 要するに尊重すべきであるということで、義務規定ではない、こういう御理解じゃないかと思うのですけれども、私が直接聞いた範囲の中では、二百三十九条については私たちは守るように言われております、こう言っておるわけですね。その辺のところをひとつ確認をしていただきたいと思うのですが、そういうことで、官吏というのは当然国家公務員といいますか、公吏が地方公務員になるわけでございまして、公団、公社の職員が対象外になるわけですね。しかし、昨今の事件等には鉄建公団とか住宅公団とか、そういう公団、公社の不正事件が相当多いわけです。そういう点で、これらを放置していいのかという、別の面からのそういう意見もあるわけでございますけれども、この辺の対策といいますか、お考えをいただきたいと思うのです。
○前田(宏)政府委員 公社とか公団の職員につきまして、どのような義務を課するのが適当かということになりますと、直接的には私どもの所管ではないというような面もあるわけでございますけれども、御議論のようなこともあるわけでございますので、検討に値すると思いますが、現在の刑事訴訟法の解釈といたしまして、本来の公務員と、みなし公務員と言われるものとでは、やはり性質的にも若干の差があろうというふうに考えておる次第でございます。
○春田委員 それから、刑事訴訟法の全面改正の報道があるわけでございますけれども、そうした作業が進んでいるのかどうか、お尋ねしておきたいのです。
○前田(宏)政府委員 お尋ねは、先般三月五日付でございましたか、一部の新聞にそういう報道がなされたことを前提にしてであろうかと思いますが、私どもといたしましては、実はあの報道も若干意外のような感じも持ったわけでございまして、刑事訴訟法そのものにつきましては、いろいろと私どもとして常時検討はいたしておりますけれども、さしあたって、あそこで報道されておりますようなことにつきまして、具体的な検討を進め、直ちに改正作業をするというようなことは考えていないわけでございます。
○春田委員 次に、相続権の問題につきまして、民法の一部改正が注目されているわけでございますけれども、新聞等で骨子が発表されましたけれども、この内容について法務当局の御説明をいただきたいと思うのです。
○貞家政府委員 実は先日、民法及び家事審判法の一部を改正する法律案を御提出申し上げたのでございます。 内容につきましてごく概略を申し上げますと、民法につきまして、配偶者の法定相続分の改定をしようというのが第一点であります。つまり、現行の民法は、相続分といたしまして、配偶者が子供と一緒に相続をいたします場合には、配偶者が三分の一、直系尊属と一緒に相続いたします場合には二分の一、兄弟姉妹とともに相続人になります場合には三分の二、こういうふうに定められておりますが、最近における家族構成の実態、それから婚姻生活におきます配偶者の貢献に対する一般の評価が高まっているというようなことを考慮いたしまして、そういった点を相続に反映させますために配偶者の相続分をいずれも引き上げまして、子と一緒に相続人になる場合には二分の一、直系尊属とともに相続人になります場合には三分の二、兄弟姉妹とともに相続人になります場合には四分の三というふうにそれぞれ配偶者の相続分を引き上げるというのが第一点でございます。 それから第二点は、兄弟姉妹が相続人となるべき場合に、兄弟姉妹が死亡しているというような場合には、兄弟姉妹の子、孫というふうに代襲相続をいたすわけでありますが、現在の制度のもとにおきましては、その代襲相続人の範囲に限定がございません。それを今回はおい、めいの限度まで、つまり兄弟姉妹の子までというふうに代襲相続人の範囲を限定いたしました。 第三に、これは配偶者の相続分と並んで重要な改正でございますが、寄与分の制度を新たに設けるという点でございます。この制度は、被相続人の財産の維持または増加について特別に寄与した相続人に対しましては、遺産の分割に際しまして、本来の相続分を超える額の財産を取得させるということを可能にしようとするものでございます。これによって相続における公平を図るということでございます。 その他、それに関連する改正、遺留分の改定等の点もございますが、それは省略いたしまして、もう一つは、家事審判法の改正でございまして、これは先ほど申し上げました寄与分の制度を新設することに伴いまして、寄与分を定めるという処分を家庭裁判所の審判事項として追加すること。 それから第二といたしまして、家事審判事件につきまして、審判前の保全処分の制度を設けまして、これに法律上の効力を付与するという点でございまして、現在でも最高裁判所規則によりまして審判前の仮の処分ということが行われておりますけれども、それには法律上執行力がないというふうに解されておりますために実効性がきわめて乏しいわけでありまして、たとえば財産分与の審判が相当時間がかかる、それまでの子供に対する扶養をどうするかというような現実の問題が起こってまいります。それは一例でございますけれども、そういった場合に、本審判の前に仮の処分をいたしましてそれに法律上の効力を持たせるという点が家事審判法の重要な改正点、その他に家庭裁判所の履行命令を遵守いたしません場合に過科等が定められておりますけれども、その額を現在の経済事情等に照らしまして引き上げるというような改正もあわせて行うことにいたしております。 以上が民法及び家事審判法の一部を改正する法律案の主な内容でございます。
○春田委員 法制審議会で答申が出たのはいつですか。
○貞家政府委員 本年の二月二十五日でございます。
○春田委員 そうしたら、この問題をその審議会に諮問したのはいつですか。
○貞家政府委員 実は民法自体の諮問というのは非常に古うございます。つまり民法全般につきまして改正する必要があるか、あるとすればその要綱を示されたいという形でございまして、その諮問は、昭和二十九年に諮問されたわけでございまして、その後幾多の改正、幾多と申しましてもそれほど数多くはございませんけれども、たびたびの改正がございます。身分法関係につきましては、三十七年に一度改正がございまして、その後も若干の改正がございます。そういった身分法関係の改正がございますし、財産法の分野におきましてもいろいろと、たとえば借地法、借家法の一部改正でございますとかあるいは担保物件のところで根抵当権の制度を新たに設けるというような改正、それぞれ逐次答申がなされておりまして、その一環といたしまして相続の分野についてこのたび答申があったわけでございます。
○春田委員 昭和二十九年に諮問したわけでしょう。各分科会といいますか小委員会があると思うのですが、この相続権につきましての小委員会というのは身分法小委員会でございますね。この小委員会でこの問題を扱い出したのは大体いつごろからなんですか。
○貞家政府委員 実は昭和五十年の七月に、これは身分法の小委員会がございますが、小委員会が中間報告をいたしまして、審議を本格的に始めましたのが五十一年の七月でございます。それで、約三年間たちまして五十四年、昨年の七月十七日に至りまして、民法部会で相当審議が進んだところでその審議の経過を踏まえまして、私どもの方で法務省民事局参事官室の名前をもちまして相続に関する民法改正要綱試案というものを発表いたしまして、それに対しまして各方面の意見をちょうだいいたしまして、それをまとめて、それを参考にして本年答申にまでこぎつけた、こういう形になるわけでございます。
○春田委員 私が聞く範囲内では、昭和二十九年に諮問したけれども、昭和四十六年ぐらいからこの問題を扱い出した、となれば相当、七、八年たっておるわけですね。確かに大事な法律改正です。これは基本法でございますから大事な点でございますけれども、それにしても非常に長き年月を要しているのではないかというそういう批判の声があるわけですね。そういう点で、出された法案についてけちをつけるわけではないんですけれども、こうした問題は少なくとも二、三年ないし長くとも五年以内ぐらいに出すのが本当ではないか。これは意見を述べておきます。 そこで、今国会出されると思いますけれども、法務当局としてはこの施行実施日は大体いつごろとお考えになっているのですか。
○貞家政府委員 提出いたしました法律案では、五十六年一月一日から施行ということを考えております。
○春田委員 五十六年の一月一日から施行ということでございますけれども、法案が五月ごろで大体通過するわけですね、順調にいったとして。五月十八日が会期切れでございますから、それから半年以上たつわけでございます。そういった面から周知徹底もあると思いますけれども、関係者からはもっと早くすべきではないかという声もあるわけでございます。そういう点で非常に審査期間が長かっただけに、あと半年ぐらいいいじゃないかという声もありますけれども、しかし関係者の間では、それだけ長く待っただけに早く実施してほしいという声もあるわけですよ。どうも一月一日が縁起がいいといいますか、切りがいいような形になっておりますけれども、私は、もっと周知徹底も違った角度で大々的にやって、施行日をもっと早める必要があるんじゃないかという意見を持っているわけでございますけれども、この点、どうでございましょうか。
○貞家政府委員 確かに仰せのとおり、改善する以上は早く実施した方がいいという御意見があることは承知しております。また、確かに早く改善された方が望ましいわけでございますけれども、いま御指摘がありましたように、いろいろすべての国民に影響のあることでございまして、周知徹底、また、制度が変わりますことに対応するいろいろな方策をそれぞれ考えるという期間も必要でございますし、また、この新しい制度を取り入れました家事審判法関係の改正におきましては、最高裁判所規則の改正という作業もございます。そういった点も考えまして、一応私どもの考え方としましては五十六年一月一日が適当であろうという結論に達したわけでございまして、民法の改正につきましては、おおむねその程度の猶予期間を置いているのが従来の例でございます。
○春田委員 物理的に不可能であればやむを得ませんけれども、やり方によってはもっと早めることができるのではないかと思いますので、これは意見として述べておきます。 さらに、寄与分制度というものが新しく導入されたわけでございますけれども、この条文の中には「特別の寄与」となっているわけでございまして、その「特別の寄与」というものはどういうものであるかといったら、労務の提供とか財産上の給付という形にされているわけですけれども、この文章ではどうも抽象的なんでございまして、寄与率とかその寄与分の限度額といいますか、その辺で一定の基準といいますか目安というものを設ける必要はないんですか。
○貞家政府委員 実はこの寄与分につきましては、寄与の態様というのは社会の実態に応じましていろいろあろうかと思うわけでございます。したかいまして、民法で非常に限定的な規定をいたしますということは、かえって制度の運用を窮屈にするという点がございますので、ある程度抽象的な定めをするということになったわけでございます。ただ、この寄与分につきましては、もちろん当事者間の協議ということが成立いたしますればそれでいいわけでございますし、問題のある場合には、家庭裁判所に持ち込まれて、先ほど申しました寄与分を定める審判、これは遺産分割の際に行うということになるかと思いますけれども、そういう形になるかと思うのでございます。その場合に家庭裁判所が具体的な寄与の時期、方法、程度、それから相続財産の全体の額というようなものを考慮し、その他一切の事情をしんしゃくいたしまして寄与分を定める、そういう家庭裁判所の妥当な審判の結果にまたざるを得ないのではな いか、かように考えている次第でございます。
○春田委員 いままで条文がなくとも家裁ではこうした寄与分というのは認めていたわけですね。これがはっきりとこうした条文に盛られてくるとなれば相当従来と違った角度で、考え方でこの寄与というのが相当大きなウエートを示していくのではなかろうかという考え方もあるわけでございまして、従来いろいろな判例があるみたいでございますけれども、その辺のところである程度の限度額といいますか、いわゆる天というものを決めるべきじゃないかという意見も持っているわけでございまして、これは意見として言っておきます。 さらに、この寄与の程度でございますけれども、たとえば先妻の子と後妻の子ですね、いわゆる先妻と後妻の子供を比較した場合に、この寄与の差というのはあるのですか。
○貞家政府委員 一概に先妻の子はいいけれども後妻の子はいけない、そういう区別があろうとは思いません。これは全く千差万別でございまして、いわゆる後妻の子供さんであっても、たとえば農業経営にもっぱら従事しているとか、あるいは自家営業の商店経営に非常な功績を上げたというような場合もあるかと思います。したがいまして、先妻だから後妻だからというような区別は、全くございません。それぞれ寄与に応じてということでございます。
○春田委員 それから、嫡出子と非嫡出子の問題でございます。意見としては同等化すべきであるという意見もありますけれども、今回見送られているわけでございまして、欧米諸国ではそういう同等化が取り入れられているように聞いております。生まれた子供さんには何といいますか責任はないのであって、人権尊重の上からも同等化すべきである、こういう意見もあるわけでございます。そういう点で今回見送ったことについて、法務当局としてはこの点をどうお考えになっているのか、御見解を承りたいと存じます。
○貞家政府委員 非嫡出子の相続分の問題につきましては、実は昨年の七月に発表いたしました改正要綱試案では、嫡出の子と同等にするという提案をいたしたわけでございまして、これは先ほども申し上げましたように、法制審議会民法部会の意見を踏まえましてそういう試案をつくったわけでございます。必ずしもこれは法制審議会でその方が断然有力であったとか、そういうわけではございませんけれども、これは一つの試案として提出いたしましたわけでございまして、その根拠はいま先生御指摘のとおり、子供に何も罪はないという人権尊重の見地からそういうような意見があったというところから出発したわけでございます。ただ、この問題は、理屈だけではなかなか割り切れる問題ではございません。改正要綱試案を発表いたしまして各方面の意見を求めましたのも、これは国民感情がどのようにこれを受け取っているのかというような点も十分考慮しながら成案を得たいと考えたわけでございまして、実は昨年三月に総理府に依頼いたしまして実施されました世論調査の結果にも関心を持ったのでございますけれども、現行法維持の意見が非常に多うございまして、非嫡出子の相続分を同等化すべきであるという意見が非常に少なかったわけでございます。具体的に申しますと、現行法維持の意見が対象者の四八%、同等化論が一六%という結果になっております。法制審議会の内部におきましては積極、消極の両意見がありまして、法律家を中心とする意見としては、どちらかと申しますとやや積極の方が多いかなというような状況であったのでございますけれども、やはりその後におきますいろいろ新聞、雑誌等に掲載されました反響というようなものを見ましても、また、いま申し上げました世論調査というものから申しましても、やはり少なからぬ反対があるようだということが判明したわけでございます。そこで、こういった改正はやはり国民感情に合致するものでなければならない、つまり先走りをしてはならないという考え方があるわけでございまして、そういったことから、今回の改正においては見送ることにいたしまして、この問題はさらに国民感情の帰趨というようなものを見ながら、確かに外国においてはかなりそういった制度が行われているところが多くなっているわけでございますが、それにはそれなりの歴史的、社会的な基盤もございますでしょうし、またそれによる弊害を是正するための方策というものも——弊害と申しますか不都合でございますが、不都合がないようにするための方策というものもいろいろ工夫されているようでございますので、そういった点も含めまして今後の検討課題にしようというのが、法制審議会の最終の段階の御意見でございました。したがいまして、今回の改正法律案の中にはその点は盛り込まなかった、こういう経過になっております。
○春田委員 何もかも欧米を見習うべきであるということではないのであって、それは当然国民感情をよく見ながらこの問題には対処していただきたい、こう思います。 最後に、配偶者税法の優遇措置があるわけでございますけれども、今回の民法改正で、同じく優遇措置を、是正しなかったらその分だけ税金に持っていかれるわけでございます。大蔵省の方お見えになっておると思いますが、この点どうお考えになっているのか、お答えいただきたいと思います。
○鈴木説明員 現行の相続税法では、配偶者が財産を相続した場合に、現行の民法で一番典型的な配偶者がいる相続の場合でございますが、配偶者と子の場合、要するに三分の一でございますが、そこまでは税を課さないということにいたしております。今回、民法が改正されまして、その三分の一が二分の一に引き上げられるわけでございますけれども、税法をそのままにしておきますと、現実の配偶者の取得が、あるいは税法に引きずられまして、民法の改正が意図されているような方向に行かないというようなおそれもございますし、むしろ社会的には民法の制度と税法を合わせた方が適当であろうと判断をいたしまして、税制調査会でもそういうことについて了解をいただいております。したがって、今回の民法改正案の附則の一条をもちまして相続税法を改正して、来年の一月一日から開始する相続からでございますが、二分の一まで課税をしないということにさせていただきたいと思っております。
○春田委員 今回の寄与分については、税法上の恩典というのはないのですか。
○鈴木説明員 寄与分につきましては、税制上の特別の配慮をいたしておりません。その理由を簡単に申し上げますと、先ほど民事局長からのお話もございましたように、寄与分というのは、相続財産の配分に当たりまして相続人間の公平を保つための一つの基準だろうと理解しております。すなわち、あくまで相続財産の相続人による取得の際の一つの基準でございますので、相続財産であることについては間違いございません。したがいまして、寄与分であるからといって相続税に恩典を設けなければならぬという理由はないと思います。 それから第二点は、執行上非常に困難だということでございます。寄与分というものが第一次的には当事者の協議によって決まるものでございます。したがいまして、そういうことでございますから、仮に当事者が恣意的に寄与分を決めてそれについて税の恩典を施すということになりますと、現実に相続税の課税にきわめて不公平が生じることになろうかと思います。しかしながら、じゃそういう寄与分について現実に協議に至りましたものが正確であるかというようなことにつきまして税務署長が判断をするというのもきわめて不自然なことでございます。したがいまして、そういう理屈の面からも執行の面からも、寄与分について税制上の措置を講ずることは困難かと思っております。
○春田委員 それは大蔵省の言い分であると思います。しかし、せっかく民法でこうした配慮をしたわけでございまして、税金でその分だけ持っていかれるとなったら、いわゆるこの寄与分というのをせっかく新しく導入した趣旨が生かされないのではないか、こう思うわけでございまして、法務省としてはこの点どうお考えになりますか。
○貞家政府委員 寄与分というのが具体的な相続分の修正である、こういう考え方に立ちます以上、それだけの財産を取得するわけでございまして、さらにそれについて税法上の優遇措置をとるということはさらに別途の問題になるかと思いますので、ただいま大蔵省から御説明がありました、現段階においてはやはりその方向が妥当であろうというふうに考えておる次第でございます。
○春田委員 もう一点、行政改革の問題があるわけでございますけれども、どうにもKDDの事件が入りまして時間がなくなってまいりました。そこでこの問題につきましては、せっかく行政管理庁の方もおいでになっていただいておりますけれども、次の機会に譲っていきたいと思いますので、御了承いただきたいと思います。 一点だけ確認しますけれども、いま政府全体でやっております行政改革、第一弾として特殊法人の統廃合等やったわけでございますけれども、法務省は特殊法人がないわけですね。したがって今回の第一弾では関係なかったわけでございますけれども、第二弾、第三弾として地方支分局の統廃合とか審議会とか府県単位のいろいろな国の機関等の統廃合等が行管中心に行われているみたいでございますが、その第二弾として地方ブロック機関の統廃合が三月いっぱいをめどに作業が進められていると聞いているわけでございますけれども、法務省としてはこの地方ブロックの統廃合について、この行政改革についてはどのようなお考えを持っておられるのか、また、そうした検討をしているのかどうか、これをお尋ねしていきたいと思います。
○筧政府委員 お答え申し上げます。 地方ブロック機関の統廃合につきましては、昨日でございましたか、一昨日でございますか、最近行管の方からいろいろな御方針を承りまして、具体的な点についてただいま私どもの方でも検討いたしており、行管の方とも連絡をとって具体的な作業を進めておる段階でございます。
○春田委員 一部の新聞では、入国管理事務所の統配合で、固有名詞も出ておりますね。鹿児島とか下関の廃止ということが挙がっておりますけれども、こうした鹿児島や下関の具体的な個所に関して検討が加えられているのかどうか。
○筧政府委員 お答え申し上げます。 地方入国管理事務所につきまして、ただいまのブロック機関の整理統合と申しますか、検討を進めておる段階でございますが、具体的にどこをどうということはいま検討中でございますので差し控えさせていただきたいと思います。
○春田委員 この地方ブロックの入管の統廃合についてはやる、どこどことはまだ言えないけれども、入管の統廃合についてはやっていく、そういう基本的な方針ですか。
○筧政府委員 まだ最終的な結論には至っておりませんが、現在、行管庁との間で協議を進めておりますのは入管事務所でございます。
○春田委員 私なりの意見でございますけれども、鹿児島は別として下関ですね。いろいろ統計的に見ても、もし下関が統廃合の対象、廃止の対象になっていれば非常に問題点も多いのじゃないか。というのは、下関は非常に韓国と近いもので、不法入国とか密入とか、いろいろなそういう問題が絡んだ地域だと聞いております。そういう点で下関は残す必要があるんじゃないかという考え方を持っているわけでございまして、いま検討されているわけでこれ以上のことはそちらの方から答えが返ってこないと思いますけれども、その点も十分踏まえてやっていただきたい、こう思うわけでございます。 最後に、地方法務局の出張所、登記所、この問題を今回この決算委員会で質問をやる予定でございましたけれども、ちょうど時間が来たみたいでございますので、これは次の機会に譲るといたしまして、きょうはこれで質問を終わりたいと思います。
○高田委員長 この際、午後二時まで休憩いたします。 午後零時四十七分休憩 ————◇————— 午後二時開議
○高田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 質疑を続行いたします。庄司幸助君。
○庄司委員 私は、まず最初に、一連の汚職の事件でちょっとお伺いしたいのですが、一つは、この間のロッキード公判で出てきた名前で、小佐野賢治が二十万ドルのロッキードからもらった金を渡したということで、ミスターK・ハマダというのが日米司法協定の資料提供の中に出てきたらしいのですが、これは日本人ですか。
○前田(宏)政府委員 お尋ねの点でございますが、いま御指摘のように、去る三月六日に、ロッキード事件の小佐野ルートの公判におきまして、検察官が冒頭陳述の補充訂正というものをしたわけでございます。その補充訂正の中で、K・ハマダという名前が出てきておるわけでございますが、いま委員も仰せになりましたように、この事件は、小佐野被告人が二十万ドルを受け取ったかどうかということが偽証の内容の一つの大きな点になっておるわけでございまして、その点が公判でいろいろと争われておるわけでございます。したがいまして、検察官側といたしましては、その授受の事実を裏づける事実ということで、先ほど申し上げました冒頭陳述の補充訂正をしたわけでございますので、その内容はこれから次回の公判以後立証されていくことでございまして、現段階ではいま申しましたような形の冒頭陳述の補充訂正があったという程度にとどまっているわけでございます。
○庄司委員 伺ったのは、日本人なのかどうか。ハマダと言っても二世もありますから、それをひとつお願いします。
○前田(宏)政府委員 ただいまも申したつもりでございますが、冒頭陳述書の補充訂正書の上では、K・ハマダ、Kはローマ字でありハマダはかたかなで表示しているわけでありまして、その人がどういう人であるか、御指摘のように日本人であるかどうかということは、この冒頭陳述の上では特に明らかにされていないわけでございます。
○庄司委員 なかなかガードがかたいようであります。それは無理もないだろうと思いますが、いずれK・ハマダという人と実像が重なってくるだろうと思いますが、それがいま前田局長がおっしゃった今後の公判で重なってくる可能性があると理解していいですか。
○前田(宏)政府委員 可能性があるかないかと言えば、あると言えばあるのかもしれませんけれども、刑事裁判の立証でございますので、先ほど申しましたように、検察官側としては、過日の冒頭陳述の補充訂正で述べた事実を立証していくということでございますが、被告人側あるいは弁護人側におきまして、その事実をどのように対応していくか、争うか争わないかという問題になるわけでございまして、そのいかんによりましては、そのことが特に問題なく推移するということもあり得るわけでございますので、現段階では何とも申し上げかねるわけでございます。
○庄司委員 これは小佐野賢治がロッキードから二十万ドルもらった、それでもらわなかったと言っている偽証に当たっていま告発を受けているわけですが、これは、まあ仮定の論には答えられないというお話になるかもしれませんか、もし小佐野賢治からもらったそれが、ロッキードとK・ハマダが何らかのつながりも出てくる可能性が、一般論として言うのですが、あるだろうと思うのですよ。そうすれば、これはひとり小佐野賢治にとどまらないで、そういうロッキードの買収資金がそのK・ハマダにもあるいは間接的に渡ったという可能性も、これは一般論として言えるのではないかと思うのですが、そういう点で、そういう事件の拡大ということもあり得ると考えていいですか。
○前田(宏)政府委員 念のためにお答えいたしておきますけれども、過日の冒頭陳述の補充訂正におきましては、小佐野被告人からK・ハマダなる人に現実に金が渡されたということではございませんで、K・ハマダという人がサンズホテルというところに負っていた債務がありまして、その債務を小佐野被告人が支払い保証をしたということから始まっておるわけでございます。したがいまして、ロッキード社の方から渡されたということになっております二十万ドルが、K・ハマダという人にじかに渡されたというわけではないという関係になるわけでございます。 それから、先ほども申しましたように、当面の問題は、被告人が二十万ドルを受け取ったかどうかということが問題でございまして、それが当該公判での立証事実であるわけでございます。そのまた間接の立証事実といたしまして、小佐野被告人がホテルに対して支払い保証をしていたかどうか、またその支払い保証をどのように履行していったかどうかというところが間接事実としての立証事実であるわけでございまして、そのもとになる事実は特段のことではないわけでございます。したがいまして、この公判におきましては、当面のその被告事件における立証事実がどのように確定していくかというところが問題でございまして、そのもとになる事実については裁判の対象になっていないわけでございます。
○庄司委員 この問題はこれぐらいにします。 それからKDDの問題なんですが、やっと郵政省の高級官僚にたどりついた、これは大変御苦労だったと思いますけれども、けさの朝刊の社説を見ても、一斉に、政界はどうしているのだという書き方ですね。それから、私も地元の方々といろいろ接しますけれども、とにかくあれが郵政省の一部幹部だけでとどまったのでは国民は納得しないというのが強い世論ですね。法のもとに平等だという原則から言えば、一部官僚だけがああいう糾弾を受けて、政治家のいろいろな疑惑が深まっているわけですが、特に国会でもいろいろ論議されておりますが、そういう中で元郵政大臣のお名前やら、あるいは現職の閣僚のお名前やら、あるいは現職の議員やら、いろいろ名前か議論されているわけです。その点私は、いやしくも法務省が法のもとに平等だという原則から逸脱したというようなそしりを受けたのでは、法務省の権威、またわが国の政治の権威が失墜するのではないか、こう思うわけです。そういう点で、逮捕された佐藤社長室長、これはもっぱら郵政省工作をやったなどと言われております。そして板野社長が政界工作をやったんじゃないか、こういうふうにも言われているわけです。そういう点で、板野社長はまだ強制捜査の対象にはなっていないようでありますけれども、この辺どういう関心を持って——法務省として政界とのつながりの問題について関心をお持ちなのかどうか、これだけひとつ、これぐらいなら答えられると思いますから。
○前田(宏)政府委員 いわゆるKDD事件につきましては、先ほども仰せになりましたように、東京地検と警察とが協力いたしまして捜査を鋭意進めているところでございまして、昨日も佐藤元室長を含めまして四名の者を、警視庁におきまして新たに逮捕したという状態にあるわけでございます。この事件につきましては、国民の方々の御関心が高いということ、また国会でもそういう観点から御議論があることは、検察当局といたしましても十分承知しておるわけでございます。したがいまして、今後とも警察当局と検察当局とは一層協力をいたしまして事案の解明に努力するわけでございますけれども、お話しのような今後の問題につきましては、まだ現時点では何とも申しかねるわけでございます。しかしながら、先ほども御指摘のようなことがあることは十分承知しておるわけでございますので、その点につきましても十分念頭に置きながら捜査が進められるもの、かように考えております。ただ、何分にも刑事事件の処理でございますから、やはり証拠というものがなければ逮捕というわけにはまいらないわけでございます。したがいまして、犯罪の容疑が認められました者が複数ありました場合に、その一人だけを検挙するというようなことでございますとそれは不公平なことでございますが、証拠の関係で片方は立証ができ、片方は証拠が十分集まらないということになりますと、それは刑事事件の処理としてはやむを得ないということも一般論としては起こるわけでございます。
○庄司委員 私はもう二点ほど伺いたいのですが、役人の場合は贈収賄が成立するのは、これは世間の話でありますから私は法律的にはどうかわかりませんけれども、大体その人の一カ月分の給料ですね、その辺か目安なんだなどという話も聞くのであります。政治家の場合は一体、これも世間の話でありますが、どうも額の問題で定めがたいというような話も聞いているわけです。たとえば政治家の場合、いままでの判決や起訴のあれを見ますと、日通事件では大倉精一さんが二百万円もらったということで起訴されております。それから池田正之輔さんですか、この方は三百万円もらった。これで判決確定しております。ロッキード事件では、これはピンからキリまでありまして、田中角榮の五億円から佐藤孝行氏の二百万円まである。一体こういう点、政治家の場合の贈収賄の金額の目安というのは、私はたとえば五万もらったって十万もらったって賄賂は賄賂だと考えていますが、しかし起訴の関係になりますと、余り小者だとめんどうくさいから、五万や十万だったら起訴しないというような話も聞いているのですが、その辺どうなんでございますか。
○前田(宏)政府委員 大変むずかしいお尋ねでございましてお答えができるかどうかと思いますが、委員御指摘のようにいろいろな目安ということが言われておるかもしれませんけれども、先ほどおっしゃいましたように、一般公務員の場合に月給の程度であればいいとか悪いとかいうことはないわけでございます。また反面、いまも仰せになりましたように、いわゆる政治家の方々につきましては、いわばそういう目安もないわけでございます。一般論のようなことになって恐縮でございますけれども、およそ金品の提供であるとか酒食の供応接待であるとかということが行われました場合に、その当事者間の間柄等にもよると思いますけれども、それが一般的に過大であるということになりますと、何らか特別の事由かあるのじゃないかということが言われるだろうと思います。しかしながら、その特別の事由も場合によっては職務とは無関係な場合もあり得るわけでございますので、その金額あるいは供応接待の額、程度というものだけで一概に賄賂になるとかならないとかいうことは申しかねるわけだろうと思います。
○庄司委員 とにかくこういう問題に絡んでよく、社会通念とか社会的儀礼の範囲内だとか言われるわけです。たとえばKDDの場合、郵政省の場合なんかも、私もこの場で質問したことがあるのですが、郵政大臣は、とにかくいずれも社会的儀礼の範囲内だから名前も出せませんという答弁だったのです。その辺で、たとえば料理屋さんで接待を受ける、社会的通念というのは、刑事局長一体何ぼぐらいに見ておられるのですか。
○前田(宏)政府委員 先ほどのお尋ねに対するお答えと似たようなことになって恐縮でございますが、いわゆる社会通念の範囲とか社交的儀礼の範囲とかという言葉が使われておるわけでございますが、それ自体に意味があるわけではなくて、むしろ裏を返せば、そういう範囲内であるかどうかということは即賄賂になるかどうか、こういう問題ではなかろうかと思うわけでございます。先ほど申しましたように、金品の提供があるとか供応接待があった場合にそれが賄賂になるかどうかということの一つの要素として、社会的通念とか社交儀礼とかいう言葉が言われておるわけでございまして、結論的に申せば、やはりその金品の提供なり接待なりが賄賂であるかどうかというところに帰するわけでございます。そうなりますと、先ほど申しましたように、額の多い少ない、程度が高い低いということはもちろん一つの要素でございますけれども、何万円ならいいとか何万円以上なら悪いとかいうようなことは直ちには出てこないわけでございまして、それがきわめて低い場合にはもちろん問題にならないと思いますが、ある程度以上になりました場合には、やはりそれか職務とどういう関係に立つかということから、それが賄賂性があるかどうかという判定になってくるわけでございまして、額だけをにらんでどうこうというわけにはまいらないのではないか、かように考えます。
○庄司委員 大臣にお伺いしたいのですが、実は綱紀粛正に絡んで、私、過日大蔵大臣にも質問したのですが、接待を受けた場合、いわゆる社会的儀礼の範囲内だからという問題、これは大蔵省側が厚生省側から接待を受けた事例なんですが、大体一人一晩四万五千円程度でどこか赤坂の料亭で接待を受けた、これは大蔵大臣は——これまで言っちゃうと大臣、答えにくくなるかもしれませんが、大蔵大臣は、社会的儀礼については庄司議員と同じでございますとおっしゃったから、いや私の社会的通念だと、大体三千円ぐらいまでだったら私はそう考えている、四万五千円というのは法外だ、こう言ったのですよ。 そこで私は、やはり倉石さんも閣僚のメンバーの一人でありますから、内閣は連帯して責任を負わなくちゃならないですから、綱紀粛正についてああいうふうに国費が乱費されるような問題この点で大臣の社会的通念と称するものは、一体一人一晩何ぼぐらいか役人が接待を受ける限度なのか、これをひとつ法務大臣の見解、法務大臣といっても倉石さんの見解を伺いたいと思うのですよ。
○倉石国務大臣 社会的儀礼の範囲内かどうかは、それぞれの社会やその人の置かれました立場などによって異なるものであると存じます。一概に申し上げかねるのでありますけれども、いずれにせよ綱紀粛正は現内閣に課されました重大な使命でございますし、私はその閣僚の一人として、政官界においていやしくも国民の批判を招くような供応接待が行われるべきではないと存じておるわけであります。
○庄司委員 大臣、くどいようですが、それじゃ具体的に聞きましょう。一人一晩四万五千円というのは、役人が他の官庁の役人から接待してもらう金額としては社会的通念に反しているかどうか。具体的に言ってもいいんです。郵政省の役人がKDDからどこかの料亭で一晩について四万五千円接待を受けた、あるいは大蔵省のお役人が厚生省の役人から四万五千円ずつ一人一晩接待を受けた。私は、役人だから料亭に行っちゃならない、そんなことは言いません。自前で行くならどこへ行こうと個人の自由ですからいいんですけれども、公費をもって接待を受ける、こういう場合四万五千円という額、私は法務大臣として常識外れのものだとお思いになるのが当然だろうと思うのですが、どうですか、その辺。
○倉石国務大臣 率直に申し上げまして、さっきほかの閣僚かこう言ったということをお示しになっておりますので、あなたが私の立場になられてもそれに批判を加えるというのはなかなかむずかしいことだと思うのです。社交的儀礼というような、いい日本語があると思うのでして、その辺のところでとにかく私どもとしては、毎日、新聞、テレビ等一般の家庭の方々がごらんになって、そしていろいろな事件が出てくるのをごらんになって大変心配しておられるだろうと思う。したがって私どもはどういうふうにして綱紀の粛正を図っていくか、こういうことを念じてそういうことに対処する義務があるのではないか、こういうふうに考えておる次第であります。
○庄司委員 私は、やはり綱紀粛正というのは、具体的な一つ一つから改めていかないとかけ声だけで綱紀粛正を語ったってこれは百年河清を待つようなものじゃないか、こう思うのですよ。どうも大臣の御答弁を聞いておりますと、大平さんと同じようなことをおっしゃる傾向があるように感ずるわけですよね。だから私は大平内閣に綱紀粛正というのを望んでもなかなか無理だな、こういうふうな感じがしているわけでありますが、しかし時間もありませんから、これはこれで終わります。 それで、いまから法務局の整備強化の問題でお伺いしたいのです。 一九七八年一月の民事月報付録に所載された「法務局を整備、強化するための総合計画」というのがございます。これは民事局と訟務局、人権擁護局の三者でお出しになった大変苦渋に満ちた文章であります。これで大変苦慮されていることは私は非常に理解できたのです。私どもの地元の方でもこの点では全く同感だとおっしゃっているわけですが、一向に改善されないようなんですね。この計画では昭和五十七年を目途にやる、こういうことになっているのですが、ことしは昭和五十五年であります。大体半ばになっているわけですが、おたくからちょうだいした資料を拝見しますと、たとえば「登記に関する登録免許税額の推移」、私は乙号手数料だけ申し上げますけれども、昭和四十四年度、十年前ですが、三十六億五千万円ほどでありました。それが五十三年では百九十一億円、大体五倍近くになっております、手数料収入が。五十五年度の予算では、これは昨年手数料改定があったせいも若干はあるでしょうけれども、二百七十九億円、これほどの予算計上されているわけです。手数料の改定は大体一〇%ちょっとでありますから、この改定分差し引いても明らかに相当の、七倍近くの事業量になっている。これが物語っております。 それから「登記事件数の推移」を見ますと、これは甲号で、四十四年対比で五十三年度は大体一・二倍程度になっております。それから乙号ですと一・九六倍になっておりますね。二倍近くです。 これに対して計画は、一番最後に「職員の定員に関する問題」でこう述べております。「したがって、国民の要請に十分応えるために、法務局においては、適正、迅速な事務処理体制を確立するための要員の確保に最大の努力をする必要がある。」こう述べておるのですが、「法務局職員数の推移」を拝見しますと、昭和四十四年度が八千二百九十七人、これは登記関係だけです。五十四年は九千五百五人、四十四年対比で一割五分しか伸びていない、こういう状況があるのです。この職員の増員の五十七年までの計画で、最大限の努力をして国民の要求にこたえるということに対してきわめて進捗率が遅いように感ずるわけですよ。それに加えて今後いわゆる行政改革問題が出てきまして、なかなか行管の方の定員の配分も渋くなっているやに聞くわけですが、しかし実際に国民の需要はもうふえる一方だし、不満はみなぎる一方ですね。本当に御不自由をなすっている。そういう点でこの計画の遂行をどうやっておやりになるのか、それから人員の拡大に最大限の努力をする必要がある、こうおっしゃっておりますが、一体何人までふやさなければならないのか、この点ちょっとお聞かせ願いたいのです。
○貞家政府委員 法務局の事件といたしましては、登記のほか戸籍、国籍、供託、訟務、人権、各種の事務を取り扱っておるわけでございますが、その大部分を占めます登記事件、これにつきましてはいま御指摘のとおり、最近におきます経済規模の拡大、公共事業の活発化等に伴いまして異常な増加を示しているわけでございまして、ここ十年間に御指摘のとおり事件数が二倍近く、しかるにそれに見合う登記事務の従事人員は一・二倍に満たないという現状でございます。この点から申しますと、事務量と人員との間のアンバランスという現象がまことに痛感されるわけでございます。 そこで、先ほど仰せになりました総合計画におきましても、増員等の問題につきまして、これは種々検討の結果を述べているわけでございまして、それを具体化するための検討委員会が、五十三年度以降約四年計画をもちまして個々の問題について検討を進めているわけでございます。しかしながら一方では、最近の事増員の問題に限って申し上げますと、最近のきわめて厳しい財政事情のもとにおきまして、行政コストの節減というような問題もありまして、私どもの事務量に見合う人員ということは、現実の問題といたしまして早期の実現はきわめてむずかしい状況になっておるわけでございます。しかしながら、幸いにいたしまして関係当局の理解を得まして、例年少数ではございますけれども、純増の増員数が認められているわけでございまして、本年度昭和五十五年度におきましても、その数はわずかでございますけれども純増が四十六人という数字になっておりまして、なお部門別の配置転換として三十六人の受け入れというような予定になっているわけでございます。この数字は確かに御指摘のとおり事務量を十分にカバーするだけの人員ではございませんけれども、しかしながら現在の情勢下におきましては、単に増員だけですべてをカバーするということは現実の問題として困難であろうかと思われるわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、増員とあわせて、機構の適正化、施設の整備、それに何よりも事務の合理化、機械化等の諸施策を同時に講じなければならないと考えているわけでありまして、これまた総合計画の大きな課題として検討を続けているところでございます。幸いにして機械化等の予算につきましては年々ある程度の増額措置を認められておるのでございまして、そういった面で足らざるところを補っていくということによりまして、国民の皆さんになるべく御迷惑をおかけしないような法務行政をやっていきたい、かように考えている次第でございます。
○庄司委員 機械化の問題もこれに触れられておるのですね。機械化もその一つなんだ、しかしやはり人員の問題が最大の問題なんだとこれに書いてあるのですよ。もう機械化も大体限度に達している状況だと私は思います。だから機械化ですりかえることをしないで、人員の問題、これに見合った分を一体どうするんだというのです。大体法務省は大分これで手数料を取っているんですよ。さっき言ったようにことしの予算では二百七十何億円ですね。それでしかも、私はおたくの手数料の積算の基礎というのをちょうだいしたのですが、これで参りますと、法務局予算の人件費は五十四年度四百十六億円、そのうち乙号手数料を積算した人件費の割合、これで計算しますと二百四十三億円余です。だから七三%ぐらいこれでかせいでいるわけです。言うならば法務局の全予算の人件費のうち七三・五%をこの手数料に負担させている。それだったら私は、乙号事務の人をこの需要に見合っただけふやすのが、国民の感情からいったって当然だろうと思うのです。金だけ取って人はふやさないで御不便ばかりかけている。この辺はひとつ私は大至急改善してもらいたいと思うのです。 実は私は宮城県の塩釜の支局の事例を調べてきたのです。ここは支局長一名と登記事務九名、総務二名、中型の支局です。これが甲号登記だけでも年間約二万二千三百件扱う。乙号は二十九万件ぐらい扱っています。甲号だけで見ても大体一人当たり二千四百七十九件扱っているのです。本省基準の二千件と比べるとこれもオーバーです。それへもってきて大変なのは乙号なんですよ。二十九万件、これは稼働日数の二百九十八日で割りますと、一人一日四百八十六件です。ここは乙号は二人しかやっていませんから、そうすると四百八十六件は、おたくの手数料の積算の基礎でまいりますと一件について二・七一分かかると書いてありますから、これでいくと二十二時間一日にやらなくちゃならない勘定なんです。そこからやはり更正事件も出てくる、私はこういう問題があると思うのです。更正事件はふえていますね。おたくの資料です、これは。更正事件は昭和四十四年度を一〇〇とすると五十三年度は一六五・四です。間違ったやつが六割五分ふえています。こういう一人で一日四百八十六件も扱うようなスピード、しかもその上に、地図の写しからあらゆることをやらなくちゃならないのです。それから人権擁護の相談までやらなくちゃならない。それから、家屋の登記の場合は現物を見にいかなくちゃいけない。これはやれますか、一体、この人数で。だから、地元の人でさえも登記所の人について、登記所というのは人権無視の役場だと言う。人権擁護を叫びながらこういう状況にしておいて、どうなんです、一体これは。それから、この塩釜なんか見ますと、人権相談を受ける場所がないのです。一般の閲覧者に顔を見られながら人権の相談をしなければならない、それから会議室もない、こういう状況です。だから、この塩釜の方がおっしゃっていましたが、いま十二名いるんだけれども、どうしたってこれに見合う分は二十六名にしてもらわなければならない。そうすると倍以上です。倍以上にふやすなんというと、法務大臣は腰を抜かして逃げ出すかもしれませんけれども、少なくとも、こういうものにどれだけこたえていくか。 そういう点で私は、時間もありませんから、行管も見えていますが、行管庁は、昭和三十六年、お客さんに御不便をかけているという指摘をやっています。ところが、人をふやすとなると、人はくれない、しかもこれは金を取っているのです。こういう点で、私はやはり、行管ももっと法務省の人員の問題を、いまの議論を聞いて、ひとつ真剣に考えてもらいたいのです。同時に、私は、法務省としても真剣に考えて、具体的な改善策を出してほしい。これについて、ひとつ行管と民事局長と、最後に大臣から答弁を承りたいと思います。
○武智説明員 お答えいたします。 法務省の登記関係職員につきましては、御指摘のとおり業務量が相当大幅にふえております。したがいまして、われわれといたしましても相当量の増員をやってきたというふうに考えておりまして、総定員法が施行されましたのが四十三年でございますけれども、それ以降千三百人ふやしておるわけでございます。 ちなみに、ではほかの官庁はどうかということでございますけれども、たとえば国立学校なり国立病院、国立療養所等を除きますと三万七千人の縮減を図ってきておるわけでございまして、そういう中にありまして、先生御指摘のように、わずかだとおっしゃいますけれども、われわれといたしましては千三百人、年にいたしまして約百人でございますけれども、ふやしておることの努力は買っていただきたいというふうに考えておる次第でございます。 今後におきましても、御指摘のような問題がございますので、われわれといたしましても、業務に滞りを生ずるようなことがないように、法務当局とも一緒になって相談してまいりたいというふうに考えております。
○貞家政府委員 確かに、先生御指摘のとおり、私どもの努力が至らないということを率直に申し上げざるを得ないと思うのでありますけれども、ただ、ただいま行管当局からも答弁がありましたように、全体を見渡しまして、年々少しずつではございますけれども私どもの法務局の職場の実態というものを認識していただいているという感じはいたすわけでございます。 庁舎の問題にいたしましても、これは数年前に比べますと飛躍的に改善されているというふうに、日本全国を見渡しますと私はそういう感じがいたすわけでございまして、もちろん庁舎等につきまして非常にまだおくれた面がございます。そういった面につきましても私どもは極力努力をいたすつもりでございますし、また、機械化、合理化等の面につきましても、まだまだ私は改善の余地、伸ばしていく余地があるものというふうに考えておるわけでございまして、先ほど御指摘のございました総合計画の具体化というような問題を通じまして、精いっぱいの努力をいたして法務行政の改善に努めたい、かように考えている次第でございます。
○倉石国務大臣 大変法務局の仕事に御理解をいただきまして、ありがとうございます。 いま行管庁の方もお話がございましたように、一方において行革はぜひやらなければならぬところでありますけれども、その辺のことにつきましては緩急よろしきを得て、国民の皆さん方に御迷惑をかけないように、なお政府一体になって努力をいたしてまいりたいと思っております。
○庄司委員 終わります。
○高田委員長 岡田正勝君。
○岡田(正)委員 倉石法務大臣にお尋ねをいたしますが、その前に、倉石法務大臣は、言葉は適当でないかもわかりませんが、並みの大臣であるとは私は思っておりません。その証拠に、本会議で大臣が左右にお並びになっておりますが、議場の方へ向かいますと右側の、まさに最右翼にいらっしゃるわけでございまして、副総理の席にお着きになっておる大臣でありますから、並みの大臣のような返事をなさらぬように、前もってお断りをしておきたいと思うのであります。 さて、本論に入らせていただきますが、私はただいまから、朝鮮民主主義人民共和国、以下、北朝鮮と呼ばせていただくことにいたしますが、約六千人とも言われております北朝鮮の日本人妻の里帰りについて、与えられました三十六分間をこの問題一つにしぼりまして質問をいたします。 この問題は人道上の問題でありまして、いまから六年前、すなわち昭和四十九年五月二十四日、民社党の永末英一国対委員長が取り上げて以来、昨年の十二月十四日までの間に十七名の議員が質問をし、訴え続けてきた問題であります。 御承知のとおり、昭和三十四年八月十三日のカルカッタ協定によりまして、同年十二月十四日北朝鮮へ第一次帰還船が出て以来、早くも二十年三カ月の時が流れ去りました。北朝鮮は地上の楽園と信じ、期待をして、新天地での新しい人生を求めて出国をした人は約九万三千人余りと聞いております。 ところが、その大半は音信不通でございまして行方不明になっております。大臣、こんなことが地球上であってよろしいのでしょうか。また、わずかに便りのある人たちも、想像を絶するところの塗炭の苦しみに追いやられている実情を、大臣あなたもお聞き及びのことだと思うのでありますが、いかがでございますか、大臣、聞いていますか、お答えを願いたいと思います。
○倉石国務大臣 そのようなことを聞いております。
○岡田(正)委員 ありがとうございました。 聞いていらっしゃるなら話はわかりやすいのであります。 人間であればだれしもが、まして肉親ということになればなおさらのことでありますが、どうしているのだろうか、元気でいるだろうか、その安否を知りたい、一目でもいいから会って抱き締めてやりたい、一度でもいいから里帰りをしてもらいたいと思いますのは至極当然のことでありまして、無理もないことと思いませんか。大臣、一人の人間、同じ日本人という立場でお気持ちをお聞かせいただきたいと思います。
○倉石国務大臣 肉親の方たちのそのようなお気持ちは当然のことだろうとお察しいたします。
○岡田(正)委員 ありがとうございました。 せっかくの日赤の長年の御努力にもかかわりませず、今日までで五年の間に、わずか二百十件という件数にまでしぼりにしぼって出しました安否の問い合わせに対しまして、北朝鮮からは何ら返事がありません。ナシのつぶてだと聞いております。もちろん里帰りは一人も実現をしていません。大臣、何と腹立たしく、こんな悲しい、こんなむなしいことはありませんね。まして肉親の人たちの心情は察するに余りあります。ジェット機で飛んだらわずか一時間のところです。向こうにいらっしゃる方々が、羽があったらな、鳥になれたらなと思い思われながらも、東奔西走のかいもなく、万策尽きて関係者の皆さんは政府にすがっているのであります。しかしながら、その事態はさらに進展がなく、次々とくしの歯が欠けるように年老いた親たちが万斛の恨みをのんでこの世々去っていっておるのであります。人道上からもほってはおけない問題であります。政治というのは一体何のためにあるのでしょうか。差し押さえをしてまでも税金を取るのは何のためなんでしょうか。それは国民の自由と平和と安全と生活を守るためのものではないのでしょうか。国家が国津を守る、これを忘れて、これができないということになったら、一体何が政治なのでありましょうか。一日も早く有効な対策を打つべきであると思いますが、大臣、いかが思われますか、お気持ちをお聞かせください。
○倉石国務大臣 国外におられます日本人の保護の問題でございまして、外務省においてもいろいろと対策を講じておられることであろうと思いますか、事柄はいまお話しのように人道上の問題でございますので、日本人妻の里帰りが実現するように私どもも側面から協力いたしたいと考えております。
○岡田(正)委員 ちょっと大臣に資料をお渡ししたいと思います。お許しいただきます。
○高田委員長 はい。
○岡田(正)委員 大臣、いまお手元に差し上げましたのは、実は先方から、いわゆる北朝鮮にいらっしゃる方でほんのわずかしか音信がないのでありますけれども、三名の方々の主な手紙を類集したものでございます。こちらの留守家族の方が懸命になって運動して収集したもので、非常に貴重なものでありまして、もう読んだらまことに心が痛む、涙なくして読まれないようなものでございます。また、そこに出してありますレポート、これは促進会の皆さん方が、たった千六百家族で集まって、なけなしの金をはたきながら毎月一部ずつ出しておる「望郷」というレポートでありまして、これまた本当に痛切なことばかりが書いてあります。大変お忙しい体でございますけれども、ぜひとも本件に深い御理解を示していただくためにも、一度ぜひ目を通していただきたいと思います。 なお、いまの冊子の中には、ごく簡単に申し上げておきますが、陸川文子さんとおっしゃる方の手紙がその中に全部載っております。 主なところだけ申し上げますと、たとえば、向こうに渡ってわずか四年八カ月で夫に死に別れております。七人の子供を残して夫が死にました。異郷の空でどんなにつらい思いをされたでありましょう。子供を愛するがゆえに、歯を食いしばって残られて今日までがんばっていらっしゃいます。十三年七カ月目には、羽がないのが残念だということを言われたり、あるいは十三年八カ月目には、みずからが病気にかかって入院をしてみたり、また、自分が入院したその月に郷里に残っておる日本のお母さんが亡くなってしまわれたり、そのときに、ツバメになったら海を飛び越えて帰れるのになと嘆いていらっしゃることが本当に痛ましく書いてあります。しかも、神も仏もないのか、いつになったら父母の墓参りができるのだろうかというようなことを述懐をしております。そして、渡って十四年三カ月日、ついに四十五歳にしてもう動くことかできない体になってしまわれたのであります。それからもういまは二十一年目を迎えました。今日までどうしていらっしゃるでしょうね。私は大変だと思います。この人の兄弟は九人兄弟でありましたが、その一番上のお姉さんでございました。残された日本におる兄弟の中で陸川国次さんという人が一生懸命がんばっております。そうして、ついこの間あの板門店へ行って、国交がないのですから、何とかして、姉さんが住んでおるその異国の空だけでも見て帰りたいと思って、十六名の人が行動をともにして行きました。何にも会ってくれるものはありません。幾ら呼んでもむなしくこだまが返るだけでありました。十六人が涙をのんで帰ったという手記も、私はそこに折り込みをしてあります。ごらんいただきたいと思うのでございます。 そのほか、高見沢順子さんの問題、この人にいたしましても、子供が生まれたと思えば死に、また新しい子供が生まれたかと思えば、御主人がとうとう——向こうに渡って二年十カ月目で一人の子供が死に、一人の子供が残った、そのところで、その御主人は行方不明になって今日まで二十一年目、全然わからぬのであります。 また、西山すみさんの問題にいたしましても、古着でもいいから送ってください、手紙を送ろうと思っても検査が通らなくて、なかなか手紙が出せないのです、夫が高血圧で入院してしまいました、去年一年間手紙は一体どうなったんでしょう、こういう痛烈な叫びが書いてあります。ぜひとも目を通していただくようにお願いをしておきたいと思うのであります。 さて、次に事務的な問題に入らしていただきます。 この問題について、いままでまるまる六年間、衆議院、参議院におきまして、十七名の議員が訴え続けてまいりましたが、一貫して政府の御見解は、要約して言うならば、北朝鮮の日本人妻は、日本国籍保有者である人については、当然国として保護の義務があります、人権擁護の観点からも大きなる関心がありますとお答えになっております。そう言われながら、実は今日まで、その答弁の中で、日本人妻の数は不明確なのであります。一番近いところ、昭和五十二年四月一日の法務委員会におきまして御答弁になりましたのは、日本国籍保有の日本人妻の数は推計千八百二十七名、国籍離脱者の数はわかりません、単身で渡航して、現地で日本人妻となった人の数もわかりませんと発表いたしました。だがしかし、一縷の望みは、政府といたしましては、この名簿をつくろうと思えばつくることができますと御答弁になっておるのであります。 さて、その答弁がありましてちょうど二年を経過いたしました今日の時点、リストアップができておると私は信じておりますが、できておりましたら、この場で発表願いたいと思うのであります。
○小杉政府委員 ただいま先生から御指摘ございましたリストは一応作成いたしておりますが、本日再び先生からこの点についての御質問があるということで、改めて内容の再点検、補正等を行った次第でございます。まだ文字どおり完全というわけではありませんが、一応の作成は完了したと申し上げることができると思います。 この資料によりますと、日本国籍のまま北朝鮮に渡られた方の総数は、今回は日本人の全体の姿を把握するという意味で、単に女性のみならず、男性も含めてリストアップしてみたのでありますが、男女性別を問わずに、その総数は六千六百七十一名になっております。そのうち女性は四千八十二名でございます。この女子の数字の中には、独身の女性あるいは子供等を含んだ数字でございまして、昭和五十二年当時、私の前任者がいわゆる日本人妻と推定される数字として千八百余名の数字を申し上げましたが、この数字を基礎といたしまして一応再点検の上補正いたしますと、現時点でいわゆる日本人妻と推定される数字は千八百二十八名となる、そういう結果を得ております。
○岡田(正)委員 時間がありませんので、次に移らしていただきます。 北朝鮮の日本人妻の安否調査及び里帰りか実現しないことに対して、国交かないということは私は理由にならないと思うのであります。なぜならば、わが国は国交がないとはいえ年々在日朝鮮人の再入国許可を増強しているではありませんか。人道ケースにはほとんど許可を与えられておりますし、さらにスポーツ、学術、文化関係、国際会議でさえも許可をしておりますね。この在日朝鮮人の再入国の状況というのは一九七六年一月五日付の朝日新聞によりますと、一九六五年に三名、七一年に二十七名、七二年に百四十四名、七三年に四百五十四名、七四年に七百十名、七五年に六百二名となっておりますが、昨年などは祖国訪問団と称して大ぜいの人か北朝鮮に行っていると聞きます。この数は一九七六年以降ことしまでどれだけの数になっておるかわかりませんのでお教えいただきたいと思います。
○小杉政府委員 お答え申し上げます。 一九七六年六百七十名、七七年千百三十九名、七八年千六百二十二名、七九年二千八百三十二名、八〇年、ことしに入りまして昨日まで二百七十五名。 以上でございます。
○岡田(正)委員 その問題ばかりではなくて、北朝鮮からの入国もあるはずであります。私の漏れ承りました情報によりますと、昨年一年だけでも百八十五団体が来ておるということを聞いておりますが、この実情は一体どのようになっておりますか。
○小杉政府委員 北朝鮮からの入国の許可数は一九六五年以降本年三月十八日まで総計いたしまして千五百三十九名でございます。それから、昨年じゅうに入国を認めましたのは、ただいま先生かなり大きな数字をお挙げになりましたが、団体としては六十団体でございまして、人数は百九十二名でございます。
○岡田(正)委員 ただいまお聞きのように、日本国政府は北朝鮮と国交がなくても実に寛大な措置をとっておられるわけですから、北朝鮮が人道問題の日本人の妻の里帰りを許可することはしごく当然の話ではないかと私は思うのであります。強くそう要請をするべきであると思うのでありますが、大臣どのように思われますか。
○倉石国務大臣 これは御存じのように、先ほど申し上げました外務省もそのつもりでいろいろやっていっていただけることだと思いますが、十分相談をいたして対処してまいりたいと思います。
○岡田(正)委員 そこで、いまひとつ申し上げておきたいと思うのでありますが、これはもちろん外務省の問題でありますが、大臣非常に御親切な答弁いただきましてありがとうございます。ただ、私申し上げたいと思いますのは、日本国籍を有しておる日本人妻たちに対しましては、国といたしましては当然の保護義務がある、そして、これは政府の責任を問われかねない問題であるというふうに思っておるのであります。それに対して、入管の問題については法務省のことでございますから、一緒にあわせてお尋ねをしておるわけでございますが、日本だけが寛大な一方的措置をとる必要はないではないかということを私は言いたいのです。日本人妻の里帰り、これはほかの仕事ではない人道上の問題として当然、国連の中でも人権条約が結ばれておるのですから、私はその立場からも日本の立場というものをもっと強く押し出してもらいたい。私の個人的な感情からいったら、こんな人道的な問題さえ処理できぬのなら、国交が回復しておらぬということが理由なら、国交は回復してないのだから北朝鮮からの入国ということについても政府はもう一遍考え直すべき時期が来ておるのではないかというふうに私は思うのでありますが、大臣、どう思われますか。
○小杉政府委員 確かにただいま先生がおっしゃられております議論はそれなりの筋が通った議論であろうかと思います。しかしながら、北朝鮮からの入国の許可と申しましても、また、在日朝鮮人の再入国の許可と申しましても、いずれも日本政府か主権の作用といたしまして一方的に拒否の判断をしておる事項でございます。この措置が確かに一見寛大に見えるというようなことはございましょうが、だからといって相手方にまた同様の寛大さというものを求める法律的な根拠はない。まことに残念でございますけれども、私自身も心情的にはけしからぬというふうに考えておりますが、法律的にはなかなか対抗できがたい問題であるというふうに考えております。
○岡田(正)委員 さて、そこでさらにつけ加えていきますと、いまから二十一年前、昭和三十四年に藤山外務大臣は、人道主義という理由をもとにいたしまして、国交がなかったにもかかわりませず帰還事業というものを開始する動機をおつくりになったのであります。私がいま問題にしておりますこの里帰り問題は、すべての問題に優先する人道問題として国交に関係なく行われるべきではないかと思うのであります。私は、国交が回復してないからということは逃げ口上にすぎないと考えております。また、帰還事業は閣議で決定して開始されたのです、二十一年前。ですから、二十年後の今日のこの現状を解決するということについても閣議で善処するということが日本政府としての急務ではないかと思うのでありますが、いかが思われますか。
○倉石国務大臣 大筋は先ほど入管局長から御説明申し上げましたようなことでありますが、国交に関することでありますし、人道問題であることは間違いありませんけれども、政府全体のことでありますので、所管省の外務省とも十分相談をいたしたいと思います。
○岡田(正)委員 ありがとうございました。 さて、法務大臣、いまひとつ念押しをいたしたいと思うのですが、いまのような温かいお気持ちがあるとするならば、直接的には、日本人妻の里帰りという問題を閣議に持ち出すにいたしましても、それは当然外務大臣の御所管でございます。だがしかし、片や入管事務を取り扱っておるのは法務省という立場から考えましても、そして冒頭に私申し上げましたように、倉石さんはまさに副総理格の方でございます。並みの大臣ではありません。所管のこと以外はおれは知っちゃいないという立場じゃないはすであります。そういうお立場から、いままでの温かい御答弁から考え合わせまして、いま一つ大臣にお願いをしたいと思うのですけれども、閣議に法務大臣から、外務大臣と一緒になってこの日本人妻の里帰り、何千人と残っておるこのかわいそうな日本人妻の里帰りの問題について閣議へ御相談をする、提案をしていただくということをぜひひとつやっていただきたい。きょうは外務省からも参事官が御出席ですから、外務省のお立場からも私のいまの考えについてお答えをいただきたいと思いますが、法務大臣からもひとつぜひお答えをいただきたいのです。あなたが日本人であり、あなたに本当に日本人の血が流れているなら、所管の事項の違いが何であろうと、まさに副総理格の立場として、そして日本の国民である以上守らなければならぬということがわかっておる立場からしても、この悲しい立場にいらっしゃる人たちに一臂の力を与えてやろうということは閣議で持ち出したところで、話に出したところで、罰も何も当らぬと私は思うのです。ぜひ大臣のお考えを聞かしてください。閣議に話を持ち出してください。お願いしたいと思います。
○倉石国務大臣 先ほど申し上げましたように、気持ちはもうよくわかっておるわけでありますが、いろいろそれぞれ所管省がございまして、関係省庁と緊密な連絡をとってでないと事が運びませんので、その辺のことはひとつ御了承願いたいと思います。
○岡田(正)委員 外務省のお答えは後から聞くといたしまして、いまの法務大臣のお答え、私はわかるような気がするのであります。ただ、私がこう理解をさせていただいてよろしいかということを申し上げて御返事をいただきたいと思うのですが、この問題を直接出すというのには、おっしゃるとおり所管ではございませんから、法務大臣からお持ち出しになることは無理かと思います。だがしかし、閣議に諮る前にも閣僚懇談会もあるわけでございまして、その閣僚懇談会で所管以外のことを話をしたらいかぬという取り決めはないわけでございます。ですから、法務大臣といたしましては、外務大臣と一緒になって日本の閣議の中でこの話が前進していくように努力をしたいと思っているというお答えであったと理解をしてよろしいでしょうか。
○倉石国務大臣 余り追い詰められますというとなかなか発言しにくくなりますので、その辺のところはひとつ御容赦願って、事は人道問題でありますし、国際情勢もこうやってだんだん変化していくときでありますので、ひとつその辺を御理解いただきたいと思います。
○岡田(正)委員 大臣のお気持ちもわからぬではありません。所管外を乗り越えて決算委員会で発言したとなると、これまた一つの問題でありますからよくわかりますが、もう一度くどいようでありますけれども、法務大臣としては所管外のことであるけれども、しかし人道の問題ということになれば、これはもう日本国政府全体の責任でありますし、おれは知っちゃいないという問題ではない。しかも法務省は入管事務という大きな武器を持っておるということから考えたら、やはり外務省とよく相談を、緊密に連携をとられまして、本件が前進するように考慮したいというふうに考えてよろしいか。もう一度確認をとりたいと思うのであります。
○倉石国務大臣 先ほど申し上げましたように、余り追い詰められるとだんだん物が言えなくなりますが、最近問題になっておりますいわゆるボートピープル、ああいう難民のことなどでも、本当に私どもはあれがもしわれわれ同胞であったらどうなるだろうというようなことも連想していろいろ考えさせられるのでありますが、これらもやはり外務省と緊密にお話し合いをして、私どもなりにできるだけのことはいたしておるつもりでありまして、そういうことでございますので、ひとつお任せをいただいて、私どもの気持ちは、最初あなたのお尋ねに対してお答えをしたのがわれわれの本当の気持ちでありますので、どうぞその辺で御了解願いたいと思います。
○岡田(正)委員 大臣、ありがとうございました。大変無理を言いましたが、本当にりっぱな答弁をいただきました。私は、もういままでのまるまる六年間、十七名の議員が本当に訴え続けてきたことが、何かしらきょうほのぼのと夜が明けていくような感じがいたしました。心から感謝いたします。大臣のこれからの格段の御努力をお願いしたいと思うのであります。 続いて外務省の参事官からお答えいただきたいと思います。
○三宅政府委員 お答えいたします。 外務省といたしましても、先生御指摘のように、この問題は本当に人道問題でございます。私たちの気持ちも、いま先生のおっしゃった気持ちと全く同じでございます。残念ながら国交関係がございませんものですから、実際の折衝は日本赤十字にゆだねざるを得ないという事情はございます。日本赤十字のいろいろな照会に対しても、先方は何らの返事もよこさない、はなはだ遺憾なことだと思います。今後の方策といたしましても、さらに法務省なり日本赤十字と十分相談しながら、なかなか事態は厳しいということも現実でございますが、いかなる有効な方法がいいか、真剣にさらに検討してまいりたいと思いますし、また、法務大臣に御提起になった問題につきましても、関係省と十分相談させて、検討させていただきたいと思います。
○岡田(正)委員 三宅さん、この際あなたにもお願いしておきたいと思うのです。この席上は外務大臣が出られるところではございませんので、あなたに御無理を願って出ていただいたわけでありますが、いまの法務大臣とのこの一貫した私のやりとりというのは十分おわかりいただけたと思うのであります。私は、八〇年代の日本だ、さらに新しい時代を求めたとかいろいろなことを言っていますけれども、要するに人間が人間のためにするのでしょう。国境だ何だと言ったって、人間が勝手に引いたのが国境でしょう。同じ人間に変わりはない。勝手に引かれた国境線のために、国交がないために泣く人間がおる。人間の命は地球より重たい、そんなことは演説の文句にみんな使うけれども、実際には北朝鮮に行っておる、いま言われた数字の千八百二十八名でも推定でありますけれども、日本国籍を持つ日本人妻がおるのに、それに対して国交がないから、日赤を通して以外に方法がないからという、そんな悲しいことを言わないでください。もっとほかに考えてくださいよ。六年間日赤にお任せをして今日までやったのでしょう。全然前進はないじゃありませんか。いまのお答えは、六年前と一緒なんですよ。こうなれば、幾ら手を尽くしても、日赤にお願いしても一緒ということになれば、閣議へ持ち出してください。外務省だけの問題じゃなくて、日本として動いてくださいよ。 それからさらに、時間がありませんからもう一つお願いをしておきますが、国際赤十字にはもちろん訴えていらっしゃるわけですが、国連にも訴え、第三国をも通じて、もっと積極的な、日本の国が日本人を守るという正々堂々たる姿勢を世界に示してもらいたい、この点についてどう思われますか。
○三宅政府委員 あるいは私の答弁が舌足らずで誤解を招いたかもしれませんが、私は決していまのやり方だけでいいと思っておりません。従来こういうやり方をしてまいったと申し上げたわけでございますが、今後もいろいろな、先生いま御指摘になったような点、なかなか厳しいと思いますけれども、いかなる有効な方法、現実的な方法があり得るか検討してまいりたいと思います。 なお、大臣には十分伝えまして私たちとしてもできるだけのことはしていきたいと思っております。
○岡田(正)委員 ありがとうございました。 たとえば違いますけれども、あの「よど号」の問題のときでも、日本の政府高官が国交のない国へ飛んで、自分の命を犠牲にしてでも、そして日本の国民の皆さんの税金を使ってでも救おうとして乗り込んで行った。やろうと思えばできぬことはない。私は、むずかしいいろいろなことがあると思いますけれども、もっと政府が日本人の命を守るために命がけになってもらいたい、それだけは大臣に正確にお伝えを願いたいと思います。 さらにいま一つ、これはどちらからお答えをいただけばいいか私も考えあぐねておりますが、いままで出たことのない問題であります。先般、遺族と言っちゃいけません、留守家族の皆さんが、その冊子に出ておる一番たくさんの手紙をよこしていただいた陸川文子さんの弟さん陸川国次さん初め十六名の人々が、声は届かぬ、顔は見えぬけれども、兄弟姉妹が住んでおる北朝鮮はここかという、行かれるところまで行こうと言って板門店で涙をのんで帰った。空気だけ吸って帰った。その板門店でいろいろなむずかしいことがあって、会わすこともできない、物を言うちゃいけない、手紙も書いちゃいけぬというのなら、板門店のあのところで、物は言わなくても顔だけでも会わしてもらえるようなことを考えることはできぬでしょうかね、いかがでしょうか。
○三宅政府委員 私たちとしましても、そのようなことでも実現されれば非常に結構だと思います。ただ、いままでの北朝鮮の政府の態度が非常に厳しいということも事実でございます。いかなる方法で実現可能か、また、だれを通じてどうしたらいいかということを含めてわれわれの中で検討さしていただきたいと思います。しかし、申し上げますが、これはなかなか相手のあること、北朝鮮の態度から見まして決して楽なことではないと思いますが、検討さしていただきたいと思います。
○岡田(正)委員 ありがとうございました。本日は、法務大臣も外務省の参事官の方も本当に真剣な回答をしていただきまして、ありがとうございます。 時間がなくなりましたので、最後に要望を申し上げておきたいと思いますが、いかに事情がどうであれ、いかに厳しくあれ、ともかく人道上の問題であり、日本国が日本人の生命と財産と安否を気遣うというのは当然のことであって、全世界のだれに聞かれたって恥ずかしくない問題でございます。ありとあらゆる手を尽くしてこの問題の解決のために格段の努力をしていただけるよう、そして日本に残っている人はみんな七十、八十という、もう死んでいくだけ、一目でいいから会いたいと言って毎日を泣き暮らしているその父母の気持ちを察していただきまして、一日も早く本件が解決しますように格段の努力を両省にお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
○高田委員長 次回は、来る二十七日木曜日午前十時理事会、午前十時十五分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午後三時二十四分散会