外務委員会 第13号
- 発言数
- 334 件
- 登壇者
- 28 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1980/04/04
会議録
○奥田委員長代理 これより会議を開きます。 本日は委員長所用のため、委員長指名により私が委員長の職務を行います。 日本国とフィリピン共和国との間の友好通商航海条約の締結について承認を求めるの件、日本国政府とアルゼンティン共和国政府との間の文化協定の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とイタリア共和国との間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国との間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とハンガリー人民共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とポーランド人民共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とフィリピン共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約の締結について承認を求めるの件、絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約の締結について承認を求めるの件及び絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約第十一条3(a)の改正の受諾について承認を求めるの件の各件を議題といたします。 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。 日本国政府とアルゼンティン共和国政府との間の文化協定の締結について承認を求めるの件のため、本日、国際協力事業団総裁有田圭輔君及び理事佐々木正賢君に参考人として御出席を願い、御意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○奥田委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。 ―――――――――――――
○奥田委員長代理 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高沢寅男君。
○高沢委員 私は最初に、菌寄託ブダペスト条約について、まずお尋ねをいたしたいと思います。それからその後租税関係の五条約についてお尋ねをする、こういうふうな順序で進めてまいりたいと思います。 まず、ブダペスト条約でありますが、これは外務省からいただきましたこの条約に関する各国の署名状況という資料を拝見いたしますと、これには日本はまだ署名済みということになっていない、つまり日本は署名をしていない、こういう現状であるわけですが、これはなぜかということをまずお尋ねをしたいと思います。 そして同時に、いまこういうふうに審議が行われているわけでありますが、この国会でこの条約の承認が行われて批准の手続がとられるということになると、ブダペスト条約にそれがどういう結果をもたらすか、こういうことについてまず第一にお尋ねをいたしたいと思います。
○関説明員 お答え申し上げます。 先生御指摘のとおり、わが国はまだこの条約に署名いたしておりません。その理由といたしましては、署名して批准書を寄託する、それから加入書を寄託する、この二つの方法があるわけでございますが、そのいずれをとるかということは各国の判断に任せられております。ただ、条約上の効果といたしましてはいずれの方法をとりましても全く同じでございますけれども、わが国といたしましてはこの条約作成のための専門家会議、それから外交会議に積極的に参加してまいってきておりましたし、またこの条約の締結につきましても積極的に取り組むという方針でいままで臨んでまいりました。 ただ、条約が採択されました当時の状況では、必ずしも早期にこの条約が発効するというめどが立っていなかったこと、また、さらに先ほど申し上げましたようなどちらの方法でわが国がこの条約に加入するかということにつきましても、効果につきましてはいずれにしましても法的には同じでございますものですから、政府といたしましては署名批准の方法でなく加入の方法をとるということで臨んできたわけでございます。そういうことで、署名はまだいたしておりません。 それから今後の加入手続あるいは見通しでございますけれども、国会の御承認が得られますれば加入の閣議決定を経まして、わが国が加入書を世界知的所有権機関の事務局長に寄託することになるわけでございます。 現在この条約の締約国といたしましては、ハンガリー、ブルガリア、アメリカ合衆国、さらにフランス、この四カ国がすでに加盟いたしておりまして、この条約の第十六条の規定によりますと、五カ国目の批准書または加入書が寄託された日から三カ月で効力を生ずるということになっておりますので、あと一カ国が批准書または加入書を寄託すればその後三カ月で効力を生ずる、そういうことになっておりまして、もしわが国が加入書を寄託できますれば発効要件を満たすことになりまして、わが国が加入書を寄託した日の後三カ月で効力を発生するということになろうかと思います。 ただ、現在西ドイツ、イタリア、スペイン等がやはりこの条約に加入することを検討いたしているようでございまして、もしこれらの国がわが国に先立ちまして批准書等を寄託いたしますと、この条約はこれらいずれかの国の批准書等の寄託の後三カ月で効力を生ずるということになるわけでございます。
○高沢委員 この条約ができるにわが国が非常に積極的な役割りを果たした、こういうふうにお聞きしております。そういたしますと、われわれの気持ちとしても日本がその五番目の加入国になってそこで発効したというような形になるのが大変望ましいというような感じがいたしますが、いま言われたほかの国の手続の進行状況等を見て、日本が五番目になる可能性、あるいはもしかしてどこか別の国が先にいって日本が六番目になる可能性というような、可能性の見通しはいかがでしょうか。
○関説明員 先生御意見のとおり、日本ができるだけ早くこの五番目の加入国になることが望ましいわけでございますけれども、ただいま申し上げましたように西独、イタリア、スペイン等の国も加入の意図を持ちまして現在検討中のようでございます。それで政府といたしましては、国会の御審議を得て国会の御承認が得られれば、できるだけ早く加入の手続をとりまして、なるべく五番目の加入国となりたい、そういう気持ちで積極的に努力いたしたいと思っております。
○高沢委員 わかりました。それでは私たちもできるだけそうなるようにひとつ努力をいたしたい、こう考えます。 それで、この内容に入るわけでありますが、その内容に入る前の一種の総論のような問題をお聞きしたいと思います。 最近は工業所有権の分野で非常に国際化が進んでおります。わが国は昭和五十年の四月に世界知的所有権機関設立条約に加盟いたしました。また五十一年の八月に国際特許分類に関するストラスブール協定に加入をいたしました。五十三年の十月には特許協力条約に加盟をいたしました。こういう形で非常に国際化を推進してきた立場にあるわけですが、こうした工業所有権分野の国際化というものは今後も一層進むでありましょうし、また進めなければいけない、こう思いますが、こういう問題に対する基本的なお考え、お立場、また今後どういうふうに対応していくか、こういうことについてお尋ねしたいと思います。
○川原政府委員 最近の国際的な経済交流、それから技術交流が非常に活発化してきたことに伴いまして、工業所有権制度の国際化、これは非常に進展しつつございます。特にただいま先生御指摘がございましたように、特許協力条約、それから国際特許分類に関しますストラスブール協定、商標登録条約、それから本ブダペスト条約等々工業所有権に関する手続の統一化でありますとか簡素化といったようなことを目的にいたしました多数国間の条約の成立、それから発効へ向けての動きといったようなものには、まことに顕著なものがございます。また、工業所有権制度をめぐります国際協力といいました面におきましてもいろいろな進展がございます。 わが国といたしましては、従来から国際化のためには積極的に対応してきておるところでございまして、お話のございましたように、昭和五十二年にはストラスブール協定、五十三年には特許協力条約に加盟、それから現在商標登録条約につきましても真剣に検討をしておるところでございます。 また、国際協力の面におきましても、中国、それから韓国、ASEAN等の諸国から研修生の受け入れをしておりますとともに、当方からは専門家の派遣、審査の協力といったようなことを積極的に行っているところでございます。わが国といたしましてはアジアにおける唯一の特許大国ということから、今後とも引き続きまして積極的な対応をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。 ついでに、われわれ特許庁といたしましても、これらの問題に適切に対処していくという目的のもとに、国際協力及び条約に関する事項を処理するための調査官等の機構を設けておりますとともに、庁内におきましても、必要な語学の研修等も積極的に行っているところでございます。さらに、ジュネーブ等の在外公館でありますとか世界知的所有権機関等への職員の派遣、海外への留学、国際会議への積極的参加ということ等も行っておるところでございまして、今後とも特許庁といたしましては引き続きこれらの問題に積極的に対応してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
○高沢委員 いま特許庁の長官から意欲的な見解の表明をいただいたわけでありますが、私、特許庁でこういう出願される特許の審査などを担当される技官の方々とか、いろいろ知り合いや友人もいるわけでありまして、その人たちはまたその人たちでそういう一つの研究グループをつくってお互いに研さんを進めておられる、こういうことも承知しておりますが、そういう出願の審査のそれだけの件数との関係において人手が果たして十分間に合っているのかどうか。あるいはまた最近の国際化の中では特に語学の力が要求される。いま長官も言われましたが、そういう面の研修、養成の体制はどうか。あるいは国際機関へ派遣されてそこで堂々と国際舞台で外国の人たちと伍して仕事がやれる、そういう、何といいますか、専門家の養成等々の点において、恐らく特許庁としてもいろいろな希望を持っておられる、こう思います。これは年々、具体的には対大蔵省の予算要求とか等々のことになってくるかと思いますが、そういう面において、格別にいまこういうふうなことを希望したい、こういうことにネックがあるんだというような問題点があれば、この機会にひとつお聞かせをいただきたいと思います。
○川原政府委員 いまの先生のお言葉は、特許庁に対する御激励の意味も含ましていただいておるのではないかというふうに、大変喜んでおるところでございます。 現在、日本の工業所有権制度、それから特許庁の従来の行政というものを見てみますと、従来は特許に関する仕事と申しますのは、どちらかと言いますと各国がインデペンデント、独立の立場でやってまいったということで、比較的各国との交流は薄かったわけでございます。ところが、戦後、特に最近になりまして、各国との接触が非常にふえてきた。それから、後進国、発展途上国に対する経済協力等の要請も非常に強くなってきたわけでございます。そういいましたことから、世界的に見ましても、特許大国でございます日本としましては、これに対する応分の対応、それから協力というものが必要になってきたということでございます。私どもも、こういう問題が発生いたしましてから、庁内外で非常にいろいろ努力をしてまいったところでございます。 御承知のように、日本の特許出願と申しますのは、日本の高度成長期を受けまして非常に激増いたしまして、それのためにこれを審査する審査官、それから審判官の増強ということが戦後は最大の問題であったわけでございます。私どもも、できる限りの審査の促進、それから人員の増強といった両面で、まだ十分ではございませんけれども、当時のへ審査に非常に期間のかかったころから比べますと、かなり改善をしてきたというふうに思っております。 これと並行いたしまして、こういった国際化の問題に対応していくということになりまして、特許庁といたしましては、まず要員の養成、それから庁内の体制の強化ということに力を入れる必要があったわけでございます。そういうことで、現在その積み重ねをやっておるところでございます。まだ十分ではございませんけれども、庁内での語学研修、それから海外への派遣といったようなことに力を入れております。特に、先ほど申し上げましたように、世界知的所有権機関等には特許庁の職員が直接派遣されておりまして、中の職員としてほかの国の人たちと十分対応しながら仕事をやるようなところに来てまいっておるというふうに考えております。現在のところまだ十分ではございませんけれども、今後とも力を入れてまいりたい。 それから庁内におきましても、機械化の促進といったようなこと、それから審査の適正化といったようなことで、なるべく審査の期間を短縮いたしながら国際化の方へ余力を振り向けていくということで、言うなれば全面的に、特許庁としては国際化への対応のためにあらゆる努力をしておるというのが現状でございます。
○高沢委員 ひとつさらにしっかりやっていただきたいと思います。 次に進みます。 先ほど私言いましたが、五十三年の十月に特許協力条約にわが国は加盟したわけであります。その際の審議には私も外務委員会で参加した一人でありますが、この条約は、日本国民が外国において特許権を取得する場合の手続上の負担を軽減する、あるいは各国の審査の重複を省く、こういうふうな目的の条約であって、これに加盟したわけですが、聞いてみると、どうもその後これに基づく出願の状況は必ずしも多くはない、こういうふうに聞いているわけであります。その理由は一体どうかということが一つであります。 それからもう一つは、いま審議のブダペスト条約も、その点においては微生物に関する特許の出願の手続を国際的な面において簡素化する、目的は共通する面があると私は思いますが、そうすると、この特許協力条約の体制と今度のブダペスト条約の体制の両者の間には当然相互関連があるかと思いますが、その辺を結びつける運用というものをどういうふうにお考えになっておるか、あわせてお尋ねをしたいと思います。
○川原政府委員 わが国におきまして特許協力条約は昭和五十三年十月一日から発効しております。それで、昨年中のわが国における出願件数は三百二十六件でございます。この件数でございますが、各国からの全出願件数のうち約一二%を日本が占めておるわけでございまして、これはアメリカに次いで第二番目ということでございます。 先生から御指摘がございましたように、出願の絶対件数は確かに多いということは言えないわけでございますけれども、その理由といたしましては、まだ加盟国が多くない、現在二十七カ国でございまして、特にカナダでありますとか、ベルギー、イタリアといったような先進国がいまなお未加盟であるというふうなこと、それからさらに発効後日がまだ浅いということで、出願人それから代理人両方がともにまだ手続に習熟していないといったようなことが理由になっているのではないかと考えております。 いま御説明申し上げましたように、日本がアメリカに次いで第二位であるということからもおわかりでございますように、これらの理由は日本のみの理由ということではないと私どもは考えております。特許庁といたしましては、従来からこのPCTの利用促進につきましていろいろ説明会の開催等々をやってきておりますし、またこのPCTの事務局でございます世界知的所有権機関におきましても、各国でユーザーのミーティング等を実施して、そのPRに努めているところでございまして、今後とも私どもといたしましては引き続き積極的に特許協力条約の一層の利用を図るように努めてまいりたいと考えております。 それから先生の御質問で御指摘がございましたように、特許協力条約、PCTの中には微生物に関する場合についての国際出願の特別の規定がないわけでございます。したがいまして、微生物に関する国際出願をしたいという者は各指定国の国内法令を一々調べました上で各国の国内法令上の要件を満たすように国際出願の書類に記載しなければならないといったような現実の不便がございます。このために、これを何とか整合性のある、手続的にもきちんとしたものにしなければいけないという観点からその面での検討が現在各国の間で進められておりまして、日本も参加し積極的にその審議に加わっておるというのが現状でございます。
○高沢委員 いま長官も、日本は世界的に言えば特許大国、こう言われているわけでありますが、そういう立場からすると、特に発展途上国に対する協力の責任が非常に大きい、こう思うわけでありますが、その関係で、聞くところによりますと、最近パリ条約の改正外交会議が行われまして、そしてそこで先進国側と途上国側の間に非常な意見の対立があったということで、結局その会議の結果としては失敗に終わったやに聞いているわけでありますが、これはどういうことで対立があったのか、またその問題は結局会議の結果どういうふうな結論になったのかというような関連をお尋ねいたしたいと思います。
○松本(十)政府委員 今回のパリ条約の改正の外交会議、開発途上国への技術移転の促進と開発途上国における自主技術開発の推進等を図るために、特許の不実施に対する制裁の強化、各国間の特許情報の交換、開発途上国国民に対する優遇措置等を審議することを目的として開催されたことは先生御承知のとおりと存じますが、会議の冒頭から、議決方法をどうするかなど手続事項につきましての話し合いが難航いたしまして、これらの実体規定の審議はほとんど行われないで終わったようなわけであります。 しかしながら、これら実体規定の審議の前提であります改正条約の採決のための議決方法について検討が重ねられました結果、各国の妥協によりまして新たな議決方法が合意されたことは、各国の利害が異なる現下の状況にかんがみまして成果があったと言えるのではないかと考えております。 また、今回の外交会議、これをさらに継続することが決定されておりますが、日本といたしましては、今後もこの分野での先進国として、国際協力が促進される観点からも、実体規定の審議に当たりまして可能な限り貢献してまいりたい、こういうふうに考えております。
○高沢委員 いま政務次官、可能な限り貢献していきたいと言われたんですが、そういう会議で対立が出た。その対立は、直接的には議決の仕方とか、いわば議事運営のやり方についての対立であったように聞いておりますが、しかしその背景には、国の数としては圧倒的に多数な途上国側が先進国に対する何か不信感がある。先進国から自分たちに対する技術移転あるいは経済の協力というふうなものは必ずしも十分じゃない、こういう不満感、不信感というものが根底にあるんじゃないかと思います。したがって、そういう点をまとめていくためには、わが国が貢献するとすれば、わが国としては先進国グループの先頭に立って、そういう途上国に対する協力体制というものを、前向きなものをよほど示していかなければいかぬじゃないか、こういう感じがいたしますが、その点について重ねて具体的な御見解をお聞きしたいと思います。
○川原政府委員 今回のパリ条約の改正会議が難航いたしまして、これは先生の御指摘のとおりでございます。難航いたしました理由も、議決方法をめぐって非常に紛糾をしたということが実情でございます。それで、発展途上国の人たちがなぜ議決方法といったようなものに非常に固執をしたかということを含めまして、やはり発展途上国がパリ条約そのものについてどういうふうに見ておったかということが問題になるかと思いますが、私どもといたしましては、やはり発展途上国といたしましては、先進国からいろいろ財政上、技術上の援助というものを戦後受けてきたけれども、かなり時間がたってもなかなか先進国から途上国への技術移転というものが進まない。その一つの非常に大きな原因として、現在の先進国中心と見られておるパリ条約というものに基本的な問題があるのではないかといったようなこと、発展途上国側にそういう発想が出てきたのではないかと思います。 そういうことで、今回の改正に当たりまして、実体規定の改正項目はいろいろございますけれども、中でも先進国から途上国へ特許出願をする、その場合に、その特許権が後進国において現実に生産活動等に使われないまま眠っておる。しかも、途上国側で同じような生産活動をしようとする場合に、すべて先進国側の特許に抑えられて何もできないといったようなことから、途上国側としては、そういった先進国からの出願でその国で工業化されていないもの、これを途上国側で召し上げて自分たちの手で工業化に移したい、そのために、現在のパリ条約の改正をしたい、一番大きな眼目として改正をしたいというのが途上国側の一番強い要請であったのではなかろうかというふうに推測するわけでございます。そういった改正を途上国側として少しでも有利なものとするために、やはり議決方法について非常な紛糾が続いたのではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。 一方、先生おっしゃいましたように、日本はアジアにおける唯一の特許大国、世界的に見ましても非常に大きな特許大国でございます。しかもアジアにあるということで、これから日本としてはいろんなことをこういった途上国のために考えていかなければいけないというふうに思っておりますけれども、なかんずく、いま申し上げました工業所有権制度の途上国における整備、その有効な活用といったようなことが必要だというふうに考えておりまして、こういった観点から、開発途上国、発展途上国で工業所有権法を新たに制定したいというふうな場合でありますとか、制定当初なかなか審査がうまくいかないといったようなときにわが国から審査の協力をするということでありますとか、さらにはこれらの国々からの研修生を積極的に受け入れる。受け入れて、特許庁で、日本で工業所有権についての講義、審査の方法というものをよく教えるといったようなことを、これからも今後ますます積極的に行っていく必要があろうというふうに考えておるところでございます。 先進国の一員としましてという立場、それからさらに発展途上国への協力と、二つの立場がございます。それで、日本といたしましては、パリ条約の改正といったようなことに当たりましては、やはり第一には、日本の国益を損なわないということを念頭に置かなければなりませんけれども、同時に、非常に高いウエートをもちましてこれら発展途上国の工業所有権制度の発達に寄与していくということが大切であろうかというふうに考えておるところでございます。
○高沢委員 それでは次へ進みますが、本条約は、微生物に関する特許出願に当たっての必要な微生物の寄託手続を簡素化する、こういう条約であるわけですが、この条約ができた場合にどういうメリットがあるのかということとの関係で、この条約のできるまでのいままでに、わが国で微生物に関する特許出願は大体どのぐらいあったのか、まずそういう実態をお尋ねしたいと思います。
○川原政府委員 まず、微生物ないし微生物工業といったようなものの実態から、恐縮でございますが、ちょっと御説明をさせていただきたいと思います。 微生物というものでございますが、通常肉眼では見えないという非常に小さな生物のことを微生物というふうに総称しておるわけでございます。それで、現在非常に種々の産業に利用されておる。それから、非常な将来性を持っておるということでございます。 それから、微生物に関する発明でございますが、従来からのものを挙げてみますと、たとえばみそ、しょうゆ、お酒といったような伝統的な発酵食品に関するものがございます。それからまた、昭和三十年代からは特定の物質の生産のためにこの微生物を活用するという方向に来ておりまして、このような発明の例といたしましては、化学調味料、それからあるいは医薬として有用なアミノ酸、それから医薬、農薬として有用な抗生物質といったようなものに関するものがございます。 それから、最近でございますが、これらのものに加えまして廃棄物処理に非常に有用な微生物が発見されておりまして、たとえばプラスチックを処理する微生物とかアルコール製造といったような代替エネルギーに関する微生物工業というものがございます。
○高沢委員 従来の微生物に関する特許の出願件数はどのぐらいあったのか、出願の状態です。
○川原政府委員 微生物に関する出願状況でございますけれども、日本から外国への微生物に関する特許出願の状況につきましては、昭和五十年から五十二年までの三年間を例にとってみますと、日本人の国内特許出願総件数は千九百十一件でございます。このうち二百七十一件が外国に出願されております。ちなみに申しますと、主要諸外国への特許出願件数につきましては、アメリカ二百四十四件、イギリス百八十一件、西独百七十七件でございます。この外国出願率と申しますのは一四・二%に当たりまして、一件当たりの平均外国出願件数は五・五件ということになります。全分野の特許出願についての外国出願率六・七%、一件当たりの平均外国出願件数三・五件というものに比較いたしますと非常に高い割合になっております。 それから、外国から日本への微生物に関する特許の出願件数でございますけれども、同じように昭和五十年から五十二年までの三年間をとってみますと、三百九十九件でございまして、外国人特許出願率は微生物に関する特許出願総件数の二千三百十件のうち一七・三%を占めております。ちなみに申しますと、主要諸外国からの出願件数を見てみますと、アメリカが百六十五件、イギリスが四十三件、西独が五十八件というふうになっております。
○高沢委員 詳細な御説明どうもありがとうございました。 そういう従来の実態の上に今度のブダペスト条約が発効する、わが国が加盟する、こうなるわけでありますが、その場合に、わが国のこういう微生物の特許を出願しようとする人にとってどういうメリットがあるか、そういう条約の効果、メリット、この面をひとつ御説明いただきたいと思います。
○川原政府委員 先ほど御説明申し上げましたように、日本の微生物工業でございますが、国際的に見ましても非常に高い技術水準にあるわけでございます。微生物に関する特許の外国出願も、さきに申し上げましたように、一件当たりで平均五・五カ国へ出願されておるわけでございます。 それで、微生物に関する特許出願に当たりまして、各国ごとに寄託を行うというふうにいたしますと、非常に繁雑な手続を必要とするばかりでなく、多額の費用負担をしなければならないわけでございます。これに対しまして、ブダペスト条約に加入いたしますと、日本の出願人は日本の国際寄託当局一カ所だけに寄託を行えばよいということになるわけでございまして、手続的な繁雑さもなくなり、また経済的な負担も少額で済むということになるわけでございます。 以上のような効果によりまして、わが国出願人による微生物に関する外国特許出願は従前よりもはるかに容易になり、ひいてはわが国の国民の研究開発成果の保護、研究開発の発展に非常に寄与することになるのではないかというふうに期待されておるわけでございます。 また一方、この条約の目的から見てみまして、できるだけ多くの国がこの条約の加盟国になることが望ましいというふうに考えておるわけでございますが、微生物に関する研究開発の成果が特許によって保護されるということが大きな意味を持ちますためには、実際にはこの分野で技術の進んだ国が多数参加しておる、それによってこのメリットがますますふえていくことが必要であるというふうに考えておるところでございます。
○高沢委員 この条約の効果に関係するわけですが、現在世界には百数十カ国の国があります。その中で、今度のブダペスト条約の成立のための外交会議へ出席した国の数は二十九カ国、こういうふうに聞いているわけであります。二十九カ国が全部加盟したとしても、いまの世界の国の総数に比べればまだ一部じゃないかという感じがしますが、その場合、この条約の効果というものは一体どういうふうにお考えか、お尋ねしたいと思います。
○川原政府委員 二十九カ国というのは、確かに、先生から御指摘がございましたように、世界の非常に多数の国の中から言えば一部ということになるわけでございます。そういった一部の国の間で条約を結び便宜を図り合っても、その効果には非常に限界があるのではないかという気がするわけでございますが、実際には、この二十九カ国というのは、世界の微生物工業に関します先進国がほとんど全部網羅されておりまして、この二十九カ国の間でこの条約が有効に動き出すということになりました暁には、微生物関係の特許出願人にとりましては非常に大きなメリットを得るということで、条約の効果といたしましてはほとんど問題がないというふうに考えておるわけでございます。
○高沢委員 その点はわかりました。 次に、微生物を寄託する国際寄託当局ですが、これについて条約第六条の定めを見ますと、「国際寄託当局としての地位を取得するためには、寄託機関は、いずれかの締約国の領域内に存在していなければならず、また、当該寄託機関が存在する締約国が当該寄託機関につき(2)に定める要件」、つまり国際寄託機関としての要件、この「要件を満たしており及び引き続き満たすとの保証を与えなければならない。」 つまり、締約国が、自分の国の中にある寄託機関について、これは国際的な寄託当局としての資格がありますという保証を与えればそれでよろしい、こういう規定になっているわけであります。 その場合お尋ねしたいことは、わが国では、寄託当局になるのは当然工業技術院のそういうちゃんとした公的な機関が予定されると思いますが、民間機関でもこういう寄託当局になり得るのかどうか、公的機関と民間機関とのその関係はどうなのかということをお尋ねしたいと思います。
○川原政府委員 条約上は、いまおっしゃいましたような民間機関でありましても国際寄託機関になり得るというように定められております。 ただ、わが国がブダペスト条約に加入いたしました際に、いまおっしゃいましたように、当面は工業技術院の微生物工業技術研究所を寄託機関として指定したいというふうに考えておるわけでございますが、将来の問題といたしましては、この微生物工業技術研究所のほかに適当な寄託機関というものを指定することが必要であるかどうか、それからその際にどういうふうな指定の仕方をするか、要件をどのようにするかというふうなことも含めまして、検討をしてみたいと考えておる次第でございます。
○高沢委員 いま、将来はこういうことも検討してみたい、こう言われたわけですが、それは要するに、非常に微生物寄託の出願の件数が多いとかということになってくると、現在の工業技術院の微生物工業技術研究所だけでは間に合わなくなって、そうするともう一つまたそういう国際寄託機関を指定しなければならぬようになる、こういうことからそれが出てくると理解してよろしいですか。
○川原政府委員 微生物工業技術研究所でございますけれども、これは現在筑波にございまして、非常にりっぱな施設に生まれ変わっておるわけでございます。そこにおきましては保管その他の施設の面では十分なものを持っておりまして、当面微生物工業技術研究所によります寄託受託ということで間に合っていくだろうと考えております。 ただ、日本の微生物工業、微生物産業自体は、東京周辺だけではございませんで、関西方面その他でも非常に高い水準の工業があるわけでございます。そういったこともございまして、そういった地域的な便利さ、それからそこにおきますいろいろな条約に基づく寄託機関としての要件、それから責任、こういったものが新たに加わることになると思いますので、将来のそういった他地域におきますいろいろな要請、それからいろいろな条約上の責任というものにたえられるようになるのかどうか、そういった点も勘案いたしまして、将来の検討課題というふうにいたしたいと考えておるわけでございます。
○高沢委員 日本の場合には、いまのような体制の御説明があったし、私もそれは大変信頼できるもの、こう考えるわけでありますが、外国のほかの締約国で、その国のある機関を国際寄託当局に指定された、けれども、そこは必ずしもそういう十分な責任を果たし得る体制にないというようなこともあり得るのではないかと思うのですが、そういう点については一体どういうふうな対応が必要になるのか、お聞きしたいと思います。
○川原政府委員 条約によりまして国際寄託機関になりますためには、非常に厳しい条件が課されておるわけでございます。そういうことで、具体的には、この条約におきましては締約国が大丈夫であるという保証の通告を行うことによりまして国際寄託当局としての地位を取得するということになっておるわけでございます。 しかしながら、その寄託機関が条約の第六条の(2)に列挙してございます要件を満たすかどうかということについて審査をするといったような制度は、この条約には含まれていないわけでございます。 しかしながら、条約の第八条の(1)におきましては、国際寄託当局が要件を満たさなくなった場合には、締約国がその国際寄託当局の地位を喪失させるように総会に請求することができるといった規定が設けてございます。 また、同条約の第八条の(2)におきましては、国際寄託当局が要件を満たさなくなった場合には、通告を行った締約国はみずから通告を撤回しなければならない、また、その撤回によりましてその国際寄託当局の地位が喪失するんだということを定めておるわけでございます。 このような八条の(1)と(2)という規定によりましてこの条約の円滑な実施が図られていくのではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
○高沢委員 それでは最後にお尋ねしたいのは、これは微生物とは多少性格が違いますが、微生物と似ている問題として、最近遺伝子の組みかえの研究というものが行われている、こう伝えられます。けさの新聞にもその面で、何か大腸菌の改造の研究で非常な成果があった、こういうふうなことも記事で出ておりますが、こういう研究もこれから大変重要な研究分野になるかと思います。ただ、遺伝子の改造ということになってくると、そこから生まれてくる新しい生物というようなもの、新しい細胞というものが、これがよいものだけが生まれてくれば問題ないのですが、思わざる変なものが出てくるということになるとこれは大変重大であります。そういう点についての安全保障といいますか、研究体制に万全を期する、こういうことが一体どういう体制になっているかどうか、今後の対応も含めて、これは科学技術庁でしょうか、お尋ねをしたいと思います。
○今村説明員 お答え申し上げます。 いまお尋ねの組みかえDNA遺伝子研究の安全を守るための方策ということでございますが、この遺伝子組みかえ研究は生物の遺伝子の構造と働き等を明らかにする基礎生物学的な研究、いわゆる基礎研究といいますか、そういう分野から、がんの原因の究明あるいは特効薬、たとえば糖尿病の薬でありますインシュリンの生産等、そういうような医学、薬学、さらには品種改良等を含めた農学、それから工業、微生物工業など、多くの分野に非常に利用できる可能性が大きいということがございます。その結果は人類の福祉に大きく貢献するということも期待されております。 しかし、研究によりまして生物にこれまで持っていなかったような性質を与えるという可能性がございます。したがいまして、その研究実験等の実施は十分慎重にしなければならないということでございますが、このために内閣総理大臣が、五十四年八月の科学技術会議の答申に基づきまして、わが国における当該実験の安全を確保するために必要な基本的要件として「組換えDNA実験指針」というものを定めました。この指針のもとで安全を確保しながら積極的に組みかえDNA研究の推進を図ることというふうにいたしております。この指針の遵守については内閣総理大臣から各省庁大臣あて通知いたしましたし、それから都道府県知事及び民間機関等に対しても科学技術庁より通知いたしております。 さらに、この指針の策定の後の措置でございますが、指針が正しく守られているかどうかというようなことのチェックも含めまして定期的に調査をいたすことにしております。
○高沢委員 その指針の中身は大体どういうことですか。
○今村説明員 指針の中身は、ちょっと長くなりますが、まず、実験を行うときの物理的な封じ込めの方法、それから生物学的な封じ込めの方法等を相当細かく規定いたしております。それから、使用されるDNAの供与体の安全度評価に応じた物理的封じ込め、それから生物学的封じ込め等の組み合わせといいますか、そういうものの基準を定めております。それから、組みかえ体の組みかえられた結果のものでございますが、その保管、運搬等について守るべきこと、それから実験に当たって必要な教育訓練あるいは健康管理の問題、それから試験研究機関の長及び実験責任者の責任、それから安全委員会を設けなさいというような、そういうサゼスチョンであるとか、そういう体制、制度上の問題、そういうような中身になっております。 それから、その科学的知見が十分でないというようなためにこの趣旨に基づいて基準が示されていないもの、そういうものにつきましては、今後の社会的なニーズであるとか、それから研究上の必要性等に応じて、科学技術会議ライフサイエンス部会というものがございますが、そういうところで順次検討してこの基準を追加あるいは改定していくというふうに措置が進められております。
○高沢委員 わかりました。そういう遺伝子組みかえというふうな研究で一つの結果が出てくる、成果が出てくるという場合に、それを特許で出願するということは当然あろうかと思うのですが、そういうケースはいままでどのくらい出ていますか。遺伝子組みかえの結果を特許で出願する、こういうケースがどのくらい出ているのか、また、そういう出願は今回のブダペスト条約の対象になるのかどうか、これをお尋ねしたいと思います。
○川原政府委員 現在、遺伝子組みかえ、微生物に関する特許出願のうちで公開されたものが十五件ございますが、一件を除きましては審査請求がなされていない、一件だけ審査請求がなされておるわけでございます。ただ、この一件につきましてもまだ審査には着手しておりません。 それから、本件の特許審査上の処理の方針ということについてお答えいたしますと、特許庁といたしましては、特許法の三十二条の二号という規定がございまして、そこに「公の秩序、善良の風俗又は公衆の衛生を害するおそれがある発明」は特許を受けることができないという規定があるわけでございまして、将来審査を行うに当たりましては、こういった規定ないしいま科学技術庁の方から御説明のございました指針といったようなものも参考にいたしまして、慎重に処理をしてまいりたいというふうに考えております。
○高沢委員 この種の出願もブダペスト条約の対象になるのですか。
○川原政府委員 対象になると思います。微生物ということで同じことでございます。
○高沢委員 わかりました。 特許庁、科学技術庁にずっとブダペスト条約のことをお尋ねをいたしまして、大変私も勉強になりましたし、大変ありがとうございました。 続いて、私、持ち時間の中で租税関係の条約についてお尋ねをいたしたいと思います。 まず、日本・イタリア、日本・イギリス、日本・ハンガリー、日本・ポーランド、さらに日本・フィリピン、こういう五つの租税条約がいま審議の対象になっておりますが、まず総論といたしまして、いままでにわが国が結んだ二国間の租税条約というものが三十カ国、こう聞いているわけであります。今回はそれにまた新しく三カ国が加わる。二カ国の場合はいままでの条約の改定でありますが、新しく三カ国加わるというようなことになりますが、いままでの三十カ国の大半は先進国との間における租税条約である、こういうふうにお聞きいたしております。途上国との間の租税条約はまだ十一カ国にすぎない。今度フィリピンが入りますと十二になる、こういうことでありますが、その途上国に対する日本との間の租税条約というものの役割りといいますか位置づけというものを、政府はどういうふうにお考えになっておりますか、それをまずお尋ねしたいと思います。
○松本(十)政府委員 発展途上国との貿易、投資あるいは経済、技術、文化協力及び人的交流促進、このためにはやはり租税条約の締結がきわめて重要であると考えておりまして、今後はその方向でやはり途上国との交渉なり締結に向かって進みたいということでございます。 さらにつけ加えますと、先方の要望の強さあるいは経済関係の緊密さ、課税上の問題の度合い等総合的に判断して、必要度の高いところから順次締結していかなければなりませんが、さしあたりこの五月からインドネシアと交渉を行いたい、こういうふうに考えております。
○高沢委員 この租税条約を見る場合に、いま言いました先進国との間のものと発展途上国との間のものは、条約の形式はほとんどみな同じようなものかと思いますが、しかし中身は大変、当然違うはずであるわけですが、そういう実体的な違いというものを踏まえて、外務省としてこれからのこうした租税条約に対する対応の仕方、特に発展途上国対策というものを、いま政務次官のお答えはありましたけれども、もう一歩ひとつ踏み込んだ御説明を願いたいと思います。
○源氏田説明員 お答えいたします。 もともと租税条約と申しますものは、ヨーロッパの相互に隣接する国々の間におきまして経済交流に伴って生ずる二重課税を回避することを目的として発展してきたものでございます。それで現在租税条約の基本となっておりますOECDモデル条約は、経済交流を同等のベースで行っている先進国間で結ぶということを想定しておりますので、相互主義の原則に立っているわけでございます。 しかし、最近は先進国相互間の条約締結というものもほぼ終わりまして、先進国と開発途上国との間の条約というのが新規の条約ではふえてきているわけでございますが、この先進国と開発途上国との間の場合には経済の流れが一方的になるということでございまして、こういう場合には相互主義をたてまえとする条約であっても、実質的には開発途上国側にその課税権を一方的に制限させる結果となるということになります。 たとえば租税条約では、配当、利子、使用料等の投資所得に対しまして源泉地国において課税する場合、通常その税率を低く制限しておるわけでございますけれども、これが先進国から開発途上国への投資の増大をもたらすのも事実でございますが、またそれによって経済成長を促進することになるわけでございますけれども、投資所得が一方的に開発途上国から先進国に流れているために、開発途上国の課税についてだけ税率制限が働く、事実としてそうなるということで、開発途上国の歳入の減少を来しているわけでございます。 それからほかにも、租税条約では、事業所得の課税原則とか、国際運輸業所得の相互免税等、一般的に源泉地国での課税をできる限り制限しているわけでございますけれども、これは多くの場合その開発途上国側の歳入を減少させる方向に働いております。 それから一般に二重課税の回避は、居住地国での税額から源泉地国で課された税額を控除するといういわゆる外国税額控除制度によっているわけでございますけれども、この制度のもとでは開発途上国が経済発展のために外資誘引措置として外国からの投資に対する課税を軽減または免除する場合に、その減免の恩典が結局その投資企業に及ばなくて、その先進国政府の歳入を増大させるだけになるという問題が生ずる場合があります。それでこういうような現状を踏まえまして、わが国の対開発途上国との租税条約の締結に当たりましては、開発途上国の租税減免措置の効果を無にしないように、ほとんどの開発途上国との条約で、開発途上国が行いました減免分の全部または一部を納税したものとみなして税額控除するみなし税額控除というものを採用しております。 それから、国際運輸業所得の相互免税とか配当、利子等の投資所得、それから事業所得等の課税の問題につきましても、OECD加盟国としての立場から、その先進国等の間の協調という観点とともに開発途上国側の意向をも十分にくみまして、相互に納得し得るような原則を確立するように努めてきております。 それからまた、開発途上国からの学生とか技術研修生等の受け入れを促進いたしますために、こういう者の所得に対する免税の範囲を拡大しております。
○高沢委員 いま大変詳細な御説明がありましたが、確かに途上国側は自分の国の経済発展のためには先進国からできるだけ資本、投資を導入したい、こう言う。しかし、それにはその課税を低くと、低くすれば自分の国の税収が減るという一種のジレンマの状態になるかと思います。そういう点をカバーするためには租税条約の枠内だけでは確かに無理なんであって、別途のいろいろな経済協力や援助がそれをカバーしなければいけないと思うのですが、それにしても今度の日比の租税条約ということで言えば、私、考えるのに、恐らくフィリピン側からすればそういう面において、かなり向こう側からいろいろな問題点というものがあったのじゃないか、こういう感じがいたします。それで日比の租税条約の交渉が十一年かかった、こういうふうに聞いているわけでありますが、大変長い期間がかかったことになります。そういう交渉過程で非常にむずかしかった問題、難航した問題という点が、フィリピン側から見てどういうところにあったか、日本側から見てどういうところにあったかというふうなことをお尋ねしたいと思うのです。
○渡辺説明員 お答えいたします。 日比の租税条約交渉は先生御指摘のとおり、昭和四十三年三月から始まりましたけれども、本年二月まで非常に長い期間にわたったわけでございます。四十三年三月、東京で第一回交渉がありまして、続いて第二回交渉が四十三年の同じ年の十一月に行われましたけれども、その後五年余り交渉が中断されておりました。 その理由は大きく分けて二つございまして、一つは実体的な問題でございます。それはいま御説明がございました租税条約の対象でございます国際運輸業所得条項の問題、それから投資所得条項の問題の実質事項について、日比両方の見解が大幅に乖離していたということが一つの事情でございます。 それからもう一つは、やや関連する問題ではございますけれども、この委員会に御審議いただくことになってございます日比友好通商航海条約の問題が関連してございます。昭和三十五年十二月に署名されました日比友好通商航海条約がフィリピン側の都合で長期間批准されていなかったという事情がございまして、租税条約交渉もそれとの関連で動かなかった。すなわち、日比間の経済関係を律する基本的な条約である日比友好通商航海条約が批准されてないという状況においては租税条約の交渉を急ぐきわめて強い理由はないという判断があったということでございます。 昭和四十九年一月に日比友好通商航海条約が発効をいたしまして、それから交渉を再開いたしまして今回交渉が妥結に至ったということでございます。 なお、詳しい実質的な問題については、本件交渉を行っていただきました大蔵省の方から御説明いただきたいと思っております。
○源氏田説明員 それでは補足してお答えいたします。 交渉において特に問題となりました点は、まず国際運輸業所得に対する課税の取り扱いでありますけれども、御承知のとおり、船舶、航空機の運航による国際運輸業所得につきましては、これを相互免税にするというのが基本原則でございます。これはOECDでも大体の国においてもこういう原則が認められているわけでございますが、フィリピン側は、相互免税ではなくてフィリピン側で課税するという源泉地国課税を条約の基本方針としてきております。それでフィリピンが結びましたすべての条約でこの方針を貫いているということ、それから、フィリピン側が結びました他国との条約において最恵国待遇条項をこの点に関して入れているということから、これについてはおりるわけにいかないということで非常に強い主張がございました。それからまた、配当とか利子とかロイアルティー等の源泉徴収税率につきましても、幾らにするかとかその取り扱いにつきましてかなり議論があったところでございます。 それでわれわれといたしましても、十分全体的な面を考えまして、議論を尽くして現在の線に落ちついた次第でございます。
○高沢委員 そういたしますと、つまり投資所得については一〇%、国際運輸業所得は六〇%、これは両者折れ合ったところ、こう理解してよろしいですね。
○源氏田説明員 大体そのようなことでございます。
○高沢委員 この条約の対象税目ですが、大抵所得税、法人税、そして地方税(地方税とは住民税)というふうなものがあるのですが、日比の場合には、この住民税は税目に挙がっていない、これは一体どういう事情かということをお尋ねしたいと思います。
○吉住説明員 この種の租税条約におきまして地方税の取り扱いにつきましては、一般的な考え方といたしまして問題になりますのは住民税及び事業税でございますが、これに対応する地方税が相手国にありましても、相手国がそれを対象税目としないという場合には私どもの方も住民税並びに事業税は対象税目としない。 このフィリピンの場合には、居住税あるいは営業税、日本の住民税並びに事業税に対応する税目があるわけでございますけれども、それは対象税目にしたくないということでございますので、バランス上私どもの方の事業税並びに住民税につきましても対象税目としなかったわけでございます。
○高沢委員 その点はわかりました。 この日比の中には二重課税の回避だけではなくて脱税防止があります。この脱税防止という点は大変重要だと私は思うわけであります。そのことについてお尋ねをいたしたいと思います。 例のロッキード事件やグラマン事件などが出てまいりまして、その関連で、これは特に日本の企業がいろいろな国際取引を利用して脱税をしておるということが、そういう事件の究明の中で次第に明らかになってきた、こういうことでありますが、まず、たとえば昭和五十年なら五十年を切りまして、それ以降いままでに国税当局が把握された脱税の件数、そしてまたその税額、また脱税のやり方はどういうやり方をやっておるかという方法、こういうことを含めて実態の御報告をお聞きしたいと思います、これは国税庁になるかと思いますが……。
○谷説明員 お尋ねの海外取引を利用した不正所得につきまして、国税庁全体を取りまとめた確実な統計を持っておりませんので不正確な面もございますが、最近数年の様子を見てみますと、私ども所得ベースでとらえておりますが、昭和四十九事務年度、ここで不正所得で百六十億円ぐらい、その後五十事務年度からはおおむね三十億円程度ということで推移をしております。 それから件数でございますが、これが毎年約二十件程度というふうなことになっております。 それから手口でございますが、海外取引を利用した不正手口、これは類型的に見てみますと、売り上げを除外するパターン、それから仕入れ原価を過大に計上する、あるいは一般管理費その他の費用を過大に計上する、雑収入を除外するというようなパターンがございます。 売り上げの除外と申しますのは、たとえば海外の子会社その他の法人に対する輸出価格、これを実際の価格よりも低く記帳いたしまして、その差額を収入から除外をする、あるいは海外から仕入れるときに実際の仕入れ価格よりも高くこれを記帳いたしまして、その差額を仕入れ原価に過大に計上する。あるいは費用の過大計上の場合には、海外法人に対する支払い手数料のようなものを実際の額より大きく計上する、また逆に海外から受け取ります受け取り手数料あるいはリベートといったようなものを収入から除外をするというような形で資金を捻出をいたしまして、これがたとえば海外における簿外の事業活動資金といったものに充てられている例が多いというふうなことでございます。
○高沢委員 ロッキード事件のときは、いまでも私たちの頭に残っているシグ・片山なる人物がいて、ディーク社というふうな会社を利用して、たとえば香港とかいうふうな場所を脱税の方法に利用していたというふうなことがありますが、よく言われるタックスヘーブンというふうな言葉の場所があるわけですが、そういうところを利用していま説明されたようないろいろな手口が行われているのじゃないのか、こういう感じがいたしますが、そのことと同時に、国税当局としてそういうものを捕捉するそういう体制が、日本の国内にいただけではなかなか手が届かぬという面もあろうかと思います。そうすると、そういうふうなタックスヘーブンと呼ばれるようなところまで出ていってという体制が一体できるのかどうか、またおやりになっているのかどうか、その点において体制の面でどういうふうにお考えになっているか、ひとつお聞きしたいと思います。
○谷説明員 タックスヘーブン国を利用した脱税手口につきましては、先ほど申し上げたようなパターン、これは一般的に申し上げましたが、第三者との通謀による場合もございますし、それから子会社等を利用した場合もございます。子会社等を利用する場合にタックスヘーブン国を通ずる形をとるというものもございます。ですから、大体先ほど申したようなパターンがタックスヘーブン国との関係でもあり得るというふうに考えております。 それから、御指摘のとおり、タックスヘーブン国は税を安くするというふうなことで企業が集まるわけでございますから、そこのところで問題が出てきておるということで、私どもといたしましては、タックスヘーブン国にある海外子会社に対する調査ということをできるだけ進めてまいりたいと思っておりますけれども、なかなかむずかしい問題がございまして、外国で調査をいたしますについては当該国の主権との調整という問題がございまして、相手国の同意を徴する必要があるというふうなことから、簡単に拡大するということはなかなかむずかしいのでございますけれども、できるだけこれらの実情等を勉強しておるというふうなことでございます。 それから、御承知のように五十三年度にいわゆるタックスヘーブン税制というのが導入されまして、この制度に基づく子会社にかかる留保所得について、去年の七月以降申告期の到来するわが国の親会社から合算申告が行われるというふうなことになっております。実際には海外子会社は十二月決算が非常に多く、また国内の親会社は三月期決算が多いものですから、現実にはこれから申告書が出てくるというふうなことでございますので、申告書が出てくるものを見ながら調査を取り進めていきたいというふうに考えております。
○高沢委員 そういうタックスヘーブン国との関係では、それぞれの国の主権の関係というのはよくわかります。ただ私が思うには、国税当局というものは、いわばその専門家として眼光紙背に徹する、かなりそういう目を持っておられるのではないか、こう私は思うわけです。そういう点において、あのロッキード事件とかあるいはグラマン事件等が事件として大きく出てきて、そのうちにそこには脱税があったというふうなことも出てくる、こういう面でありますが、むしろこの眼光紙背に徹する国税当局がきちんとその眼光を発揮すれば、この脱税の摘発というふうな面から先に事態が進んでいくということもあり得るのじゃないのか、こう私は思うわけでありますが、その点については大いにそういう方向でがんばっていただきたいということを申し上げつつ、その点についてもう一度その見解をお聞きしたいと思います。
○谷説明員 海外取引を利用した不正所得の把握につきましては、御指摘のように従前から十分留意して調査をいたしております。また海外子会社を有するような大法人、これは毎年のように調査をいたしておりますし、それから調査の際にも数百日という長期の日数を投じてやっております。海外取引を含む調査ということについて重点的にやっておりますし、またこれからもそういうふうに努力していきたいというふうに考えております。
○高沢委員 次に、同じく租税条約でも、今回の中にありますハンガリー、ポーランド、この関係でありますが、これは言うならば社会主義の国との租税条約ということになるわけであります。私は冒頭において、同じ租税条約でも先進国との租税条約と発展途上国との租税条約は、形は同じようであっても中身が違う、こう申し上げたのですが、今度この社会主義の国との租税条約も、形は大体OECDモデルというふうになっているようであります。しかし、当然中身が違うということになってくると思うのですが、その点はまず総論として、そういう社会主義の国との租税条約というものの性格を一体どういうふうにお考えか、まずお尋ねをいたしたいと思います。
○源氏田説明員 社会主義国との租税条約の問題でございますが、社会主義国が租税条約を結びますのは、その社会主義国の中におきましても私的セクターというものが残っておるわけでございます。それで、この私的セクターでは個人の企業を認めておりまして、個人の企業が欧米諸国と同じように活動しているという場合がございます。それからその社会主義国におきましても、外資とか外国技術の導入を目途といたしまして合弁企業の設立を推進しているというのが現状でございます。それでこういう合弁企業とか私的セクターに対する税制と申しますものは、大体欧米先進国と同じような税制をとっております。それでその土台となる租税が同じようでございますので、それに乗ります租税条約も大体OECDモデル並みというふうな状態になっております。
○高沢委員 その点はわかりました。 そういたしますと、今度はその社会主義国との租税条約というのは、実態的に言えば日本から社会主義の国に対してどの程度合弁企業が出ているか、今度相手国からそういうものが日本にどの程度来ているかというその量といいますか、そういうようなものに結局関連してくると思いますが、そういう実態は日本と社会主義の国との関係ではどういう程度に相互関係が結ばれているでしょうか。
○堂ノ脇説明員 お答えいたします。 今回租税条約を締結しましたハンガリー及びポーランドとの関係について見ますと、わが国からポーランドに進出しております企業は現在のところ十八社と聞いております。それからわが国からハンガリーへ進出しております企業は現在のところ六社と聞いております。
○高沢委員 そうすると、従来のチェコ、ルーマニア、この関係ではどのくらいありましょうか、いまの同じお尋ねですが。
○堂ノ脇説明員 お答えいたします。 チェコスロバキアにつきましては十五社と聞いております。またルーマニアもほぼ同等と聞いております。
○高沢委員 あと私がさっきお尋ねしたのは、そういうポーランドやルーマニアあるいはチェコあるいはハンガリー、そういうところから日本へ来ておる、租税条約を日本において適用を受けるようなそういう企業というものはどの程度来ておりますか。
○堂ノ脇説明員 お答えいたします。 私どもの承知しております限りでは、ポーランドからはアグロポールという会社が日本に進出しておりまして、これは恐らく農業機械の輸入関係をやっていると思います。そのほかにポーランド航空、それからポーランドの海運会社などの支店が置かれていると聞いております。 それからハンガリーにつきましては、本邦内に設立されております日・ハンガリー合弁会社の唯一の例としまして、ハンガリー蜂蜜株式会社が日本に進出しておると聞いております。
○高沢委員 いまのお話を聞けば、租税条約が結ばれた場合に、日本が進出して向こう側においてハンガリーやポーランドや、そこでこの条約の適用を受ける方が、向こうの企業が日本へ来ていて日本で適用を受けるよりも多い、こういうふうに見ていいですね。わかりました。 それと、社会主義の国と言えば何といってもソ連というものが一番大きな国ですが、このソ連と日本との租税条約はまだできていない、これは当然できてしかるべきじゃないかという感じがするのですが、これは一体なぜか。 それから、今度日本と中国とは非常なそういう経済交流関係が活発に進む情勢にありますが、この日中の租税条約というものも当然できてくるべきではないか、こう思いますが、その辺はどういうふうな進行になるか、お尋ねしたいと思います。
○松本(十)政府委員 ソ連につきましては、交渉開始の申し出がなされておりまして、ただいま先方の税制調査を行っているというところでございます。 それから中国につきましては、先方の国内法の整備を待って、租税条約締結が可能かどうか、その可能性について検討をしたい、こういうふうに考えております。
○高沢委員 それでは、社会主義国との租税条約についてはその程度にしまして、あと、イタリア、それから英国とこうなりますが、この点については、お互いもう先進国同士ですから、要するに、この日伊、日英の租税条約によって日本の企業なりあるいは個人が、イタリア、イギリスで受けるメリット、今度は逆にイギリスやイタリアの企業や個人が日本においてこの条約で受けるメリット、そのお互いのメリットの相互関係というのはどういうことになるか、金額などで表示できればそれもひとつお聞きしたいと思います。
○源氏田説明員 まず、日英租税条約についてお答え申し上げます。 日英租税条約は、わが国にとりましてメリットがございます点は、まず最初に、一般対象税目にイギリス側の開発用地税と石油収入税というものを入れましたので、これについての課税関係が明確化されたという点がございます。 それから配当に関するイギリス側の課税について、まず、親子間配当について現行国内法では免除しておりますけれども、これを条約上の義務としてもらったという点、それから一般配当につきましてイギリスの個人居住者並みのタックスクレジットというものをもらえるように、その条約上取り決めたという点がございます。その結果、日本の投資家がイギリスから得ます配当の純手取り額が約二〇%増加するという効果がございます。 それから、従来投資信託等の信託の受益者が自分で租税条約の適用を申請しなければならないというふうになっておりまして、実際問題としてはこれはできなかったわけなんですけれども、今回の改正によりまして、信託の運用者または受託者が、その受益者にかわって条約適用の申請ができるということになりましたので、この点についてのメリットが享受できるということになります。したがいまして、たとえば利子につきましては、従来三〇%で源泉徴収されておりましたが、これが一〇%になるとか、配当についてのタックスクレジットがもらえるとかというふうなメリットがございます。 それからイギリス側につきましては、わが国が受けるほど条約改正による直接的なメリットはございませんけれども、こういう条約を結ぶことによりまして、長期的に見ますとわが国からの投資の増大が期待できる、それによって経済成長であるとか雇用機会の増大が望まれるのではないかというメリットがあると思います。 それからイタリアとの条約改正でございますけれども、まず、わが国にとりましては、イタリア側の一般対象税目が税法改正前は分類所得税となっておりましたものを、税法改正後の新税制に伴いまして所得税、法人税というふうなものを対象にするということにしております。 それから、イタリアには従来地方税が各種ございまして、そのうち家族税のみを条約の対象としていたわけでございますけれども、税制改正に伴いましてこれが地方所得税に一本化されましたので、この地方所得税を対象とすることにより、イタリアの所得に対する地方税のすべてについて条約のルールが適用できることとなったというメリットがございます。 それからイタリア側のメリットといたしましては、イタリア側の二重課税の排除に関する規定を新税制に合わせたことによりまして、条約適用関係の明確化が図られたということのほか、現行条約におきます外国税額の控除限度額を拡大することにいたしましたために、イタリアの対日投資家については二重課税の調整措置がさらに整備されたというメリットがございます。
○高沢委員 租税関係五条約についての私の質問は以上で終わります。 大変どうもありがとうございました。
○奥田委員長代理 十二時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。 午後零時八分休憩 ――――◇――――― 午後零時四十分開議
○奥田委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。 質疑を続行いたします。土井たか子君。
○土井委員 委員会を開くような状況じゃないのですけれども、総裁が朝から御待機でいらっしゃるということでございますから、特にその分についての御質問を申し上げたいと思います。 日本国政府とアルゼンティン共和国政府との間の文化協定について、この協定は締結されるについて、実は五十四年の十月十一日にビデラ・アルゼンチン大統領が訪日されました節いろいろ日本国政府との間に話し合いをお進めになって、そして技術協力に関する日本国政府とアルゼンチン政府との間の協定を、ただいま審議をいたしますこの協定と同時に署名をしていらっしゃるわけですが、この節出されました共同声明の中に、経済協力についての内容にかかる問題を両国間で、両政府間でいろいろ討議をされているわけであります。その中で特にソミサ鉄工所拡張計画についてその遂行の可能性を検討することのためにできる限り早く調査団を編成をして、そして計画の実現の可能性についてそれぞれの結論を速やかに出すことになったという部分がございますが、これは具体的にはどういうことになっておりますか。
○大鷹政府委員 いま先生がおっしゃいましたとおり、ビデラ大統領が昨年の十月に訪日されましたときに、このソミサ製鉄所の問題が出ました。先方はソミサ製鉄所の拡張計画を進めるに当たってぜひ日本から相当な額の出資をしてもらいたいということを非常に強く要請したわけでございます。しかし、率直に申し上げて、日本の民間の方ではそれだけ大きな額の出資をする用意がございませんで、結局この話はそのときにまとまらなかったわけでございます。そこでビデラ大統領は大平総理に対しまして、これは日本とアルゼンチンとの間の非常に大事な案件であるからひとつ日本の政治的な意思を決定してこの問題に前向きな姿勢を示してもらいたいということを言われました。総理からは、これはあくまでも民間主体の計画であるべきであるということを言われましたけれども、同時に両国関係の緊密化という見地から、いかなる協力が日本としてできるかということを調べるために官民の調査団を派遣しましょうということを言われたわけでございます。 この調査団は昨年の十一月にアルゼンチンに参りまして、先方のいろいろな関係の人と会いまして、またソミサ製鉄所にも参りまして、そして現在報告書の作成をいたしておる段階でございます。この報告書がいずれ近く出てくるというふうにわれわれとしては期待いたしておるところでございます。
○土井委員 出てくるのを期待しているとおっしゃるが、それはいつごろの話なんですか。それはいつごろ出てくるという目安で期待をされているのですか。
○大鷹政府委員 私はもう四月中には出てくるだろうというふうに期待いたしております。
○土井委員 この共同コミュニケの項目から言うと十四という項目のところで「総理大臣と大統領は、両国関係の一層の強化のためには、日本の対アルゼンティン投資の増加が必要であること、並びに両国政府が具体的な形でその強化のため最善の努力を払うことにつき意見の一致をみた。」と、こうございます。投資について奨励をするというかっこうなのでございますから、投資保証というのが当然この結果必要になってこようと思うのですが、いろいろ考えてみますに、相手国であるアルゼンチンは御承知のとおり軍事政権下にある国なんですね。したがいまして、いろいろ投資保証の問題について協定を結ぶということの必要をどうごらんになっていらっしゃるかという問題が出てこようと思うのです。保証協定、租税協定、そういう問題についての必要性をどのように考えていらっしゃるか。いかがですか。
○大鷹政府委員 まず投資保証でございますけれども、投資保証協定につきましては、投資環境の改善を通じて投資の促進を図るという見地から一般的には望ましいものであるというふうに考えておりますけれども、相手国の外資政策、わが国との政治経済関係等をも十分に検討して判断する必要があると考えております。 アルゼンチンにつきましては、アルゼンチンとしてはいかなる国とも投資保証協定を締結する考えはないという姿勢をとっていることもございまして、いまのところ投資保証協定締結の見通しはございません。 それから租税条約につきましては、昨年の九月にわが方の交渉団がブエノスアイレスに参りまして第一回の交渉を行いました。しかし、そのときには妥結には至らなかったために、今後日本とアルゼンチンの双方にとって都合のよいできるだけ早い時期に第二回交渉を行う予定でございます。
○土井委員 保証協定については、その必要性をいま直ちには認めていらっしゃらないというかっこうなんですね。いまの御答弁からすればそうですね。 そうすると、かの地において現地生産をしている日本の会社が一体どれくらいあるか、それから、どれくらいの会社がすでに進出しているか、その実態はどういうことでございますか。
○大鷹政府委員 いままで、日本のアルゼンチンにおける直接投資の総額は余り大きくございませんで、三千百万ドル程度でございます。大きな進出企業といたしましては日本毛織という会社がございます。しかし、最近アルゼンチンの経済が非常によくなってきておりますので、最近ではいろいろな会社がアルゼンチンに投資しようということで計画を進めているというふうにも私は聞いております。
○土井委員 いろいろな会社がとおっしゃるが、具体的には大体どれくらいの数というのをいま掌握なさっていらっしゃいますか。
○大鷹政府委員 私ども、全部の会社を把握しているわけではございませんけれども、日本の大手の電機メーカーが現地で電気器具の生産を始めるとか、そういう計画を持っているというふうにも伺っております。
○土井委員 報道によりますと、最近、これはアルゼンチンではなくて実はブラジルの問題なんですが、二十年近く、直営入植地において造成をしたり分譲をしたりする場合の農業資金の低利貸し付けを、一〇〇%出資の形で国際協力事業団がお進めになってこられました。総裁に御就任になってきょう初めてこの外務委員会に御出席をお願い申し上げた新総裁がわざわざここにおいでをいただいたわけでございますが、国際協力事業団の方から、最近のブラジルで低利融資を廃止するという方向に事が動いていると言われている実情について、少し御説明をまずいただきたいと思います。
○塚本政府委員 御指摘をいただきました昨日付の朝日新聞の記事に対する今後のわが方の対応ぶりいかんということでございますが、せっかくの機会でございますので、この機会にそのバックグラウンドを若干御説明申し上げたいと思います。 御案内のとおり、ブラジル移住始まって以来七十有余年たっておるわけでございますが、これに対しまして、わが方の援護機関といたしましては、当初海外移住振興株式会社、それから移住事業団、下って四十九年以降国際協力事業団が中心になってこれの援護をしてまいったわけでございます。これに対する現地の援護機関として、新聞報道にもございましたJAMIC、JEMIS――JAMICというのは現地の援護機関、主として入植地の取得、営農指導その他をやります援護機関でございまして、JEMISというのはこれに対する金融機関で、既往二十有余年にわたってわが方の移住者に対し援護の全きを期してまいったわけでございます。 しかるところ、ブラジル側から、日伯両サイドの移住者に対する、ブラジル側は受け入れ国、わが方はこれに対する送出国の事態が変わった。そのゆえんのものは、経済社会情勢の変革に伴いまして、ブラジルももうレギュラリーに日本を初めとするところの移住者を受け入れる国ではなくなったし、日本ももう何万というような数の農業移住者を出す国ではなくなったではありませんか、そういうゆえんのもとに、昨年八月園田外務大臣がブラジル訪問の際、日伯外相会議の席上、昭和三十五年に署名いたしまして三十八年以降このバックボーンになっておりました日伯移植民協定の見直しをしようということがございまして、その席上で園田外務大臣がそれを受けまして、そういたしましょう、そこで、協定の条項に混合委員会がございまして、その混合委員会の席上、それでは協定の見直し、並びにかねてここ両三年来先方ブラジル政府が指摘しておりました、先ほど申しましたJAMIC、JEMISという日本政府の代行機関みたいのが現地に非常にパワフルな人員とスタッフを持って強力な援護政策をしている、これがブラジル側の国内法、民法に違反するのでこれをやめてほしい、こういう申し入れがございました。 したがいまして、これを受けまして、実は私自身これの代表で参ったわけでございますが、昨年の十二月、日伯移植民協定の条項に基づく混合委員会が開かれまして、その席上、先方からぜひこのJAMIC、JEMISという二つの機関を廃止してほしい、早急にやめてほしいというプロポーザルが正式にあったわけでございます。 しかしながら、わが方といたしましては、ただいま申しましたとおり、伝統的なわが方の対ブラジル移住者に対してただいままで融資を含む非常に強力な援護をしてまいったわけでございますので、これらの援護の今後の継続及びJAMIC及びJEMISの廃止、清算、さらに経過期間の問題等、これに伴ういろいろな問題があるわけでございまして、それらの根本的な方針、原則をことしの秋にでも最終的にブラジル側と合意しなくてはなりませんので、ただいま私の方の移住課長が国際協力事業団と緊密なる協力のもとに、ただいま申したようなこれの清算、引き揚げに対するところのいろいろな問題、それから今後の移住の重点をどうするか、援護をどう強化していくかというような点を協議するために現地に参っておるわけでございます。これがそのような新聞の報道となったわけでございまして、低利廃止とか援護は変わるとかというような記事が一部にございますけれども、私どもといたしましては、引き続きこれに代替する機関に何らかの形において融資して従来どおりの援護の完全を期したい、かように考えている次第でございます。
○土井委員 ちょっとお尋ねしますが、いまのJAMIC、JEMISという二つの会社について、ブラジル側から好ましくない、国内法に違反をするということで、これが問題になったわけですね。そのブラジル側の国内法のどういうところにどういうように違反するのですか。
○塚本政府委員 これはブラジル民法序法第十一条に「会社及び財団のように、団体の利益の目的に向けられる組織は、これを設立する州の法律に従う。」とございまして、「その定款がブラジル国政府により認可される以前にブラジル国内に支店、代理店又は店舗を持つことはできない。これらはブラジルの法に従うものとする。」「外国政府及びこれが設立したか、支配するか又は公の任務を付与したいかなる団体もブラジルにおいて不動産又は公用収用の可能性がある財産を取得することはできない。」 もちろん、JAMIC、JEMISはブラジルの商法に基づいて設立したものではございますけれども、当初言われていたことは、JAMICが現地において土地を取得することがいけないんだという説明ぶりでございましたけれども、昨年十三月の混合委員会の席上においては、ただいま申しましたこの条項をクォートいたしまして、JAMIC、JEMISのエグジスタンス、存在そのものが違法だからやめてほしい、こういう申し入れがあったわけでございます。
○土井委員 ただ、いまおっしゃった民法の十一条ということから考えてまいりますと、先ほど御答弁で、JAMIC、JEMISにかわる適当な機関を設けて何とか努力を続けていく方策をいま考えている、こうおっしゃいましたが、たとえJAMIC、JEMISにかわるような適当な機関なり基金ができたといたしましても、いまのブラジルにおける民法十一条の関係からいたしまして、従来のような恩恵に浴することが移住者にはもう期待できないということになるのではないかと思いますが、この点いかがですか。
○塚本政府委員 ブラジル政府は、わが方の移住の援護及びそのファイナンスにつきましてはこれを高く評価しているわけでございます。日本政府の息のかかった代理機関を通じてやるのがいけないので、今後ともその種の日本政府側のお金の流れは歓迎したい、こういうことでございまして、そこのところは民法に違反しないように、たとえば先方にありますところの、南銀と申しておりますけれども、向こうの銀行、金融機関を通ずるなり、あるいはコチア産業組合、組合を通じて金を流してやってほしい、こういうことでございます。 しかしながら、これについてわが方にもまたいろいろと問題点がございますので、ただいまそういった意味合いにおいての点を現地において十分詰めた上で、今後ともわが方の援護を続けたい、かように考えておる次第でございます。
○土井委員 わが方にいろいろ問題点があるとおっしゃったのはどういうことですか。先ほど、園田前外務大臣がいろいろお話しになった中で、ブラジルの方ではもはや日本からの移住者に頼る必要が経済が発展してなくなってきている、日本の方も移住者ということではもはやないだろうというふうな両者間の話があったというふうなことを御答弁になったはずですね。そういうことからいたしますと、向こうとしては日本の移住者援護のやり方について歓迎しているといまおっしゃったこととはちょっと矛盾するようにも聞こえてくるのですが、この点は一体どういうふうな関係になるのですか。
○塚本政府委員 両大臣間で話し合われましたことは今後の移住者のあり方でございまして、御案内のとおり、農業移住者というものは今後は非常にスローダウンすると思います。しかしながら、技術と資本を持った、言うなれば先方の経済発展、開発等に協力するような意味合いにおける技術協力者というものは先方は依然要請しているところでございます。一方、わが方の移住の重点は、主として戦後移住者、これは昭和三十年当時をピークとしてブラジルに六、七千、全体で六万数千の移住者が参ったわけでございますが、これらの人でいまだに完全に独立の域に達していない、したがってまだファイナンスその他も必要とする移住者が若干残っております。これに対して、わが方といたしましては、引き続き重点的な援護をいたしたい、こう申したわけでございます。
○土井委員 日本側も種々問題点を持って、今後どうすべきかということに当たられるということでありましょうけれども、総裁、せっかく御出席でございますから、こういう問題について、いまの御答弁などもいろいろ踏まえた上で、今後この問題解決についてどういうところがポイントになっているとお考えになっていらっしゃいますか。
○有田参考人 お答え申し上げます。 ただいま領事移住部長の方から御説明ありましたように、本件に関するブラジル政府側の意向はきわめて明瞭であります。数回にわたりまして政府最高レベルでこのブラジル側の意図が表明されておりますので、日本政府の方でもそれに対応した措置を早急にとられるようなお考えのようでございます。事業団は、移住を含めて国際協力における執行機関でございますので、政府の御方針の御決定に従って措置していくわけでございます。 ただ、事業団を預かる者としての立場から申し上げれば、ただいまのように方向はきわめてはっきりしておりますので、措置もそれなりに迅速に対応していく必要が一つあるという感じがございます。 第二点は、ただいま移住部長の方から申し上げましたように、現在すでに入植しております移住者が相当数おります。これを中途半端で見捨てるというようなことは絶対避けるべきであろうかという感じがいたしますので、実質的な援護を引き続きする必要があるということでございます。それをどうしたらよろしいかということは、ブラジル側とも日本側が十分に相談して早急に結論を出していく、このように考えております。
○土井委員 そうすると、これは結論から申し上げれば、協力事業団としては、一〇〇%出資をしてきた現地法人についてはこれをできる限り早い機会に廃止するというかっこうになることが一つですね。しかし、それで全面的に、もう何もかもやめてしまうわけにはいかないので、今後しかるべき方策をブラジル当局との間で詰めて、そして具体的に現地法人について受け皿を用意して、何とかこの方途を講じたいということが現実の問題になる、こういうかっこうでございますね。
○有田参考人 そのとおりでございます。 ただ、もう一つつけ加えさせていただければ、事業団は現地におきましていまのように融資その他仕事をしておったわけですから、それなりに貸付金の回収その他問題が残っておりますので、これは十分手当てして措置していかなければならぬ、こういうことをつけ加えさせていただきたいと思います。
○土井委員 という事情がブラジルの場合にはあるようでございまして、今回のアルゼンチンの投資奨励について、先ほど保証協定というのは当面は必要ないという向きでこれをお考えになり、そして租税協定についていまこの中身についての両者の詰めを急いでいらっしゃるというかっこうらしゅうございますが、これで、いろいろ事情が推移していくに従って新たな問題が展開されるわけですから、いま直ちにどうだこうだと言うわけにはいかないかもしれませんけれども、今回のブラジルなんかの例をいろいろ見てまいりますと、アルゼンチンに対しての今後の投資を奨励するというふうな立場からして種々配慮をするという部面もいささかあろうかと思います。この点なんかについてはどのようにお考えになりますか。
○大鷹政府委員 アルゼンチンは現在の政権のもとで外国の投資を奨励するという政策をとっております。したがって、インフレ等の問題もありますけれども、日本の民間企業においてもアルゼンチンに対する投資に以前よりも意欲を増してきているということを先ほど申し上げたわけでございます。 しかし、投資につきましては、何と言っても投資環境の整備ということが大事ですので、必要があれば、もちろん投資環境の整備をしてほしいということはアルゼンチンに限らずほかの国にも言っておることでもありますので、今後の投資の推移もよく見ていきたいと思っております。
○土井委員 総裁、あと一問。 国際協力事業団とされては、このアルゼンチンに対していろいろ対応についての御努力はこれからもまた新たにあると存じますが、何か少し御用意を考えていらっしゃることがございますか。
○有田参考人 お答えいたします。 アルゼンチンにつきましては、御承知のように、先般大統領が来られたときでありますか、先方からも首都の南方のコルホ地区と申しますか、その地区に日本からも人を入れてほしいという話がございました。事業団の方といたしましては、先般来調査団を派遣いたしまして、種々その地域につきまして気候、風土の条件あるいはその他の環境整備の状況等というものを調査しておりまして、その可能性というものにつきまして種々調査しております。将来この地区にまた日本の方々が入れるというようなことになりました場合には、それに対応しまして事業団のできますことはできるだけしていきたい、このように存じております。ただ、ただいまはそれの前提として、果たしてそれが可能であるか、適当であるかという点について、関係者とも御協議して調査団を派遣してやっておるということでございます。
○土井委員 事情は、いろいろ法律一点張りでいかないという部面が事を起こす場合にはございますから、四角四面に考えていくということはなかなか現実の問題としてはむずかしゅうございますけれども、今回私たちが聞き知った限りでは、ブラジルの事情なんかはかの地の国内法、民法の内容からして許されることなのか許されないことなのかというのは一目瞭然、調べてみればわかることなのでございますね。ブラジル政府が言っておられることは至極はっきりしておると先ほど総裁も言われたとおりで、これはやはりブラジルの国内法である民法から考えて好ましくない投融資を日本としてはするわけにはいかない。このことは、四角四面に考えることが決して能ではないでしょうけれども、やはり法律に触れるというふうなことになってまいりますと、事は国民感情からして、あの国はどうも好ましくないやり方をやる、どうもやり方としたらえげつないやり方をやっておる、どうもこちらの国の事情なんかについてはしんしゃくなく得手勝手なことをやるというふうな気持ちを抱かせないとは限らないと思うのですね。こういう点などは、やはり事業団として十分な御配慮があろうかと存じますけれども、今回のブラジルの事例なんかについて最後にひとつ総裁のそのあたりの御感触なり御感想を承って、総裁に対する御質問を終えたいと思います。
○有田参考人 今回のブラジルとの問題の背景の最たるものは、やはり双方の事情の変化であろうと思います。御承知のようにブラジルには日系の方が大変行っております。そして農業関係で非常に努力されて地位を築かれて、いろいろな方が政府の要路にも出ております。そういった方々の努力、それから現在におけるその方々の活躍ということは、ブラジルの国全体が非常に評価しているところであろうと思います。ですから、いままで事業団の前身から事業団に引き継がれた移住関係の仕事というものは、いまそのようにブラジル側から言われましたけれども、それなりの歴史的役割りを果たしたものだと思います。 現在は、そのような方々が日本からも余り出ていくというような状況でないし、ブラジル側からも受け入れられない、むしろ受け入れられるのはいまのお話の技術を持った、資金を持った人々である。事情は全く変化したわけですね。そういう環境でこういう意見がブラジルから出てきたわけですから、そのように受けとめるべきであろうと思いますし、先生がおっしゃいましたように法律だけで割り切れる問題ではなかったのであろう、そのように感じております。
○土井委員 総裁、どうもありがとうございました。 それでは、このアルゼンチン共和国との文化協定の内容にいささか関係するところを二、三聞かせていただきたいと思うのですが、この文化協定の条文の十一条というところを見ますと、随時協議を決めているわけなんですね。大体こういう文化協定というのは全世界に向けて日本としては一体何カ国くらいといま現に結んでいて、それぞれの文化協定というのは同じようなスタイルで決められているかどうか、特に十一条なんかに関係をしてその点をひとつお伺いしたいと思うのですが、いかがですか。
○平岡説明員 お答えいたします。 まず、わが国が文化協定を結んでいる相手国でございますが、現在までのところ十七カ国と締結をいたしまして、そのほか今回御審議いただいておりますアルゼンチンとの文化協定及びフィンランドとの文化協定が署名を了しておるわけでございます。これらの十七の協定のほかに、社会主義国八カ国ばかりと一つの行政取り決めとして締結いたしましたところの文化取り決めがございます。これは範囲も狭いものでございますが、そういうものがございます。そのほかに日中とは特別な文化交流協定があるわけでございます。 それらの協定の中で、このアルゼンチンにございますような協議のスタイル、これは一方の政府が他方の政府と協議をしようというときはそれに応じて協議をするということですから、俗に随時協議と言われておりまして、このたびの協定の十一条に書いてあるわけでございますが、このような随時協議を持っております協定は、先ほどの十七の文化協定のうち六つございます。 このような随時協議のほかに、混合委員会という形でもう少しがっちりと規定しているスタイルもございます。その混合委員会をつくります場合には、大体二年置きくらいに定期的に協議するわけでございますが、そのような規定を持っておりますものが十ございます。先ほど申しました十七のうち十がそのような取り決めになっております。
○土井委員 いまおっしゃいました混合委員会という決め方と随時協議のような決め方とではどのように違うのですか。
○平岡説明員 協議の仕方そのものについては余り大きな違いはないわけでございますが、比較的に定期的に開きます場合には資料の提出等はかなりシステマチックになりますし、随時協議の場合にはむしろその場その場の主たる大きなトピックを取り上げることが多いという程度の違いはあると存じます。
○土井委員 今回のアルゼンチンとの間の文化協定が混合委員会ということにできなかった理由というのは、一体どの辺にあるわけですか。
○平岡説明員 混合委員会によりますところの定期的協議とそうでない随時協議の分け方、相手国によって違いますその違いがどこに基づくものであるかということにつきまして、画一的な単純な基準はないわけでございます。 一つの傾向といたしましては、その国との交流の実績が非常に大きくて協議する内容が非常に大きい、したがってより密接な協議を必要とするというような場合に混合委員会によるところの定期協議になるという傾向がございます。しかしながら、そのような実績ベースのことだけでなく、たとえば相手国の仕組み、制度、運用の仕方等によりまして非常に定期的なものを必要とするので強くわが方にそれを希望するという国がございます。相手のある交渉でございますので、そのような希望が相手国側に非常に強いときにはそれに応ずるということでございます。 このたびのアルゼンチンの場合には実は実績が非常に低いということもございます。また相手国が特にこれを希望しなかったという要素もございまして、混合委員会の規定はつくらなかったわけでございます。
○土井委員 この協定と同時に、昨年の十月段階で政府とアルゼンチンとの間で技術協力に関する協定というのが署名されていますね。この協定はなぜ国会に提出されないのですか。国会に提案されない理由はどの辺にございますか。
○大鷹政府委員 いま先生おっしゃいましたように、ビデラ大統領が昨年の十月に来られましたときに技術協力協定が署名されました。この協定はアルゼンチン側がわが国の専門家等に与える特権・免除を主たる内容といたしておりまして、わが方のとるべき措置については、国内法令で政府に与えられた権限の範囲内で実施し得る事項についてのみ定めておりまして、行政取り決めとして行政府限りで締結し得るものであるということで、国会の御承認を求めていないわけでございます。
○土井委員 国会の承認が必要でないということでございますけれども、今回のこの協定について、参考資料としてこういうものが同じように私たちの手元に届くような御配慮というのはいかがなんですか。
○大鷹政府委員 参考資料としてもしもお手元に届いていませんでしたら申しわけなかったと思います。早速お届けいたしたいと思います。
○土井委員 これは一人二人の議員ということでなしに、当外務委員会に対して条約の承認を得る手続上、それに関係したこういう問題に対しては御配慮があってしかるべきじゃないかと思うのです。それで、本則は国会の承認を得るということで臨むという姿勢でいていただきたいし、特に、いろいろおっしゃった中で、国会に提案されない、お互いの行政協定というものがございますね。それについて、本体の協定に関係するという意味で、同時に署名された今回の技術協力協定でもございますから、その辺の御配慮があってしかるべきではなかったかというふうなことを私は思いまして、申し上げた次第です。 さて、共同声明の中身で、先ほどはソミサ製鉄所のことをお尋ねしたわけですが、それ以外にいろいろこれについて決められていることを見ますと、文化、技術協力両協定の締結――ただいま審議しているところですが、農業関連産業開発計画に関する調査とか鉱物資源調査等に関する協力、それから事務レベルにより構成される経済合同委員会の設立であるとか、アルゼンチン国立銀行に対する百億円に上る輸銀バンクローンの供与決定であるとか、二百億円に上る円建て債の起債などが具体的に協議対象として決められたようでありますけれども、現状はどのようなぐあいになっているわけでございますか。
○大鷹政府委員 まず、最後の経済合同委員会でございますけれども、これは両国政府の事務レベルによって構成される合同委員会をつくろうということになったわけでございますけれども、これは特に毎年やるとかそういうふうに決めておりませんので、必要に応じ開くということで、今後いつ開くかということは必ずしも決まっておりません。 それから、技術協力の調査でございますけれども、いま先生がおっしゃいました農業関係の調査団は昨年の十一月にアルゼンチンに行きまして、現在その成果を検討中というところでございます。
○土井委員 それで、輸銀バンクローンの供与決定とか円建て債の起債等々については具体的に事が決定され進んでいるわけですね。いかがですか。
○大鷹政府委員 いま先生がおっしゃったとおりでございまして、両方とも署名を終わっているというふうに私は了解いたしております。
○土井委員 さて、今後、日本としては文化協定をどういう国と結ぼうという御用意がおありになりますか。たとえば中国はどうなんでしょうか。それから開発途上国に対してはこちらの方から協力をするという意味で結ぶ積極的な姿勢が問われているのではないかと思うのですが、こういう点も含めてお尋ねしたいと思います。
○平岡説明員 今後の文化協定のことでございますが、若干の国がわが国に協定締結を申し込んでおります。そのうちでもう交渉を始めておりますのがバングラデシュとオランダでございます。いずれも近いうちに署名にまで達することができるのではないかと考えております。 そのほか、かなりの国の申し込みがございますけれども、一方におきまして、わが方の事務体制から申しましても、余りに多くの協定交渉を同時に並行してやることにはかなりの困難がございますので、少しずつふやしておるわけでございます。 相手国につきましては、いま申しました幾つかの国には後進国、先進国とあるわけでございまして、御指摘のとおり、文化交流と申しましても援助的な色彩が非常に深まっているのが現状でございます。このことは国際交流基金の運用益によります事業を見ましてももう五〇%を超える部分が開発途上国に用いられておるわけでございまして、御指摘のとおりでございます。 ただ、協定を結ぶことがそのまま後進国への援助面での増進になるかと言えば、それは必ずしもそうでないのは、援助の場合には、わが方が向こうの望むものである限り一方的に出せる、つまり普通の水平的な交流でございますれば、こちらがたとえば演劇団を派遣しても向こう側はそれを受け入れるための便宜を十分供与してもらう必要があるわけでございますが、援助の場合にはそういうことをこちらから頼むベースではなくて向こうが喜んで引き受けてくれる、また向こうがそういうものを十分に受け入れる体制にあるから援助を求めるという関係にございます。したがいまして、たとえばアジア地域に見ましても、ASEAN五カ国の中ではいまだタイとしか文化協定がないわけでございますが、このことはほかのASEAN諸国に対する文化面での協力、教育面での協力という面では特に障害とはなっていないという認識を持っております。しかし、御指摘のとおり、全般として開発途上国に非常に重点を置いておるということはそのとおりでございます。
○土井委員 中国との間の問題はどうなりますか。
○平岡説明員 失礼いたしました。 中国につきましては、先ほどちょっと触れましたところの文化交流協定というものが去年の十二月に署名されまして、これは行政取り決めとして結ばれたわけでございます。
○土井委員 行政取り決めということで、したがって国会の承認を得る必要なしということで事をずっとお進めになっているというかっこうなんですね。
○平岡説明員 お答えいたします。 この中国との文化交流協定は、締結いたします前提といたしまして昭和五十三年に国会の御承認を得まして締結した日中平和友好条約の第二条におきまして、両国は文化関係の一層の発展及び両国民の交流の促進のために努力する旨を規定しておりまして、これを受けまして、いわばこれの細目実施取り決めという形で結ばれましたために、交流協定については特に国会の御承認をいただかなかった次第でございます。
○土井委員 実は条件が整いませんで本日の委員会の質問開始する時間がおくれましたために、あと一つ用意をいたしておりましたいわゆるワシントン条約の審議につきましては、私は次回に譲りたいと思います。 終わります。
○奥田委員長代理 玉城栄一君。
○玉城委員 最初に、日本国政府とアルゼンティン共和国政府との間の文化協定についてお伺いいたしたいと思います。 最初に外務省の方に伺いたいのですが、アルゼンチンは戦前から親日国としてわが国に対して非常に好意を持っているということで、今回こういう文化交流の協定が結ばれることは大変いいことであると思っておるわけであります。それで、わが国とアルゼンチンとの文化交流のこれまでの実績について、概略を御説明いただきたいと思います。
○平岡説明員 お答えいたします。 アルゼンチンとの文化交流、これは実際、全体の量はまだかなり低い水準にあることは認めざるを得ないところでございますが、中身につきましてはかなり多岐にわたっておるわけでございます。 まず、人物交流の面では、毎年五人アルゼンチンから国費留学生で学生を呼んでおるわけでございまして、この点わが国の方は、実はアルゼンチン側に政府のスカラシップがございませんために、私費で若干行っているだけでございます。アルゼンチンからは、先ほどの国費留学生のほかに私費で来ている者もございます。そのほかスポーツ交流、これはずっとアルゼンチンにスポーツの教師を一人派遣いたしておりますほか、民間レベルのチームの交流はかなり盛んでございます。 次に、日本語普及の分野におきましては、わが国からアルゼンチンの諸大学等へ教材、図書等を寄贈しております。 さらに、芸術交流の面につきましては、アルゼンチンに対しましてわが国からお能とか宝塚歌劇団等が最近行った例がございます。 なお、先ほどの人物交流の中につけ加えますれば、非常に著名な作家でございますところのボルヘスが昨年わが国に国際交流基金のフェローシップで来日したわけでございます。 これらのものが日本・アルゼンチン間の文化交流として行われました主たる項目でございます。
○玉城委員 これまでの文化交流の実績につきまして概略承りましたわけですが、今回の文化協定の締結に伴いまして、今後わが国とアルゼンチンとの文化交流というものが実質的にどのように発展していくのか、その辺を簡単でいいです、御説明いただきたいと思います。
○平岡説明員 協定が締結されましたことによりまして、わが方といたしましては、何も協定に何をどうするという具体的なプログラムまで書いてあるわけではございませんけれども、しかし、協定そのものが両国間の交流の上に一つの法的な枠組みを与えたわけでございまして、たとえば今後劇団等を派遣する場合におきましても、従来は事実上向こう側がその劇団の受け入れにつきまして便宜を供与してくれたわけでございますが、今後はその供与が協定に基づく一つの措置になるわけでございますので、わが方としてはいわば協定に基づいて便宜供与を求められる、このような一つの安定した基礎が交流のためにできたわけでございますので、従来以上に両国間の交流が活発化するということを私ども期待しているわけでございます。
○玉城委員 国際協力事業団の参考人の方には、本協定の審議に当たりましては大変御多忙中のところおいでいただきましたことを感謝申し上げます。 そこで、戦前戦後を通じてわが国から多数の方々がアルゼンチンに移住をしていらっしゃるわけでありますが、まずその移住のことについて参考人の考え方を伺いたいわけでありますが、実はアルゼンチン政府から沖縄県に対して百家族のアルゼンチン移住の要請を受けまして、昨年の暮れに沖縄県としても現地の方に調査団を派遣いたしまして、その結果移住適地であると判断をしているわけでありますが、その調査結果の報告の中には相当問題点もあるということがあるわけであります。 そこで、参考人の方にお伺いをしたいわけでありますけれども、この百家族の移住の問題につきまして、総裁として御存じであろうと思いますけれども、その調査結果報告の内容につきましてはお聞きになっていらっしゃるのか、でありましたならばどういうお考えを持っていらっしゃるのか、その辺御見解を承りたいと思います。
○塚本政府委員 お答え申し上げます。 御指摘のコルホ開発計画でございますが、これは単なる農業開発ばかりではなくて商工業あるいは周辺地域の電化計画といった総合開発計画でございまして、確かに先方のコルホ開発公団総裁も昨年見えまして、わが方の移住者、わけて勤勉の名の高い沖縄県からの移住者を迎え入れたい、こういうお話がございました。沖縄県側も、西銘知事さん初め、これに大変乗り気であることは先生御承知のとおりでございますけれども、確かにこれには金がかかるということ、それからその他の問題点もあるわけでございまして、それなるがゆえに、実は本日私の方の課員を団長とする国際協力事業団及び農水産省の専門家を交えましたミッションを現地に派遣いたしたわけでございます。二十四日には帰ってまいることになっておりますので、これは主としてこの移住部面、つまり、そこへどういう形においてどのくらいの人数の移植者を入れたらよいのかというような点に重点事項をしぼって調査団を派遣したわけでございますので、本件調査団が帰国いたしました上で、さらに慎重検討の上、本件の今後の指針にいたしたい、かように考えておる次第でございます。
○玉城委員 そこで、いまも御説明がございましたとおり、相当の経費もかかるわけですし、流通機構の問題とか社会環境の整備の問題等々これからやらなくてはならない問題がまだあるわけですね。したがって、これは確かに沖縄県から行くわけでありますけれども、これを県だけに独自に任せるということは、これはまた非常に負担過重になりまして、いろいろと困難になってくると思うわけであります。したがって、この事業についても当然国際協力事業団並びに海外移住事業団、あるいは外務省等のそういういわゆる政府ベースでのバックアップが強力に必要だと思うわけでありますが、その点についてはいかがでしょうか。
○塚本政府委員 まさに、御指摘のその辺の点を十分見きわめるために今次調査団を派遣したわけでございますので、調査団の帰国報告を待って、その辺を踏まえまして御協議申したい、かように考えているわけでございます。
○玉城委員 せっかく総裁がいらっしゃっておられますので、ただいまの問題も含めまして、今回の文化協定が締結されるということで、特に二世、三世あるいは四世と、大変現地で活躍をし、現地の発展に貢献をしていらっしゃるわけでありますので、いまの百家族の移住の問題も含めまして、総裁のお考えを承りたいと思います。
○有田参考人 ただいまのアルゼンチンのコルホ地区に対する移住のお話につきましては、事業団からも調査団が派遣されましたし、ただいま領事移住部長からお話がありましたように、外務省の担当官をヘッドとする調査団が本日から十八日間にわたりまして現地に参りまして、営農関係、生活環境等さらに調査してまいりまして、事業団、県側ともいろいろ打ち合わせをするということになると思います。 私の承知しております限りでは、いままでの調査である程度のことはわかっておりますが、たとえば降雨量あるいは霜の害、こういったものは、年間雨量は五百ミリ、それから霜の害もかなり終年にわたってある、あるいは土地につきましても塩害があるというようなことで、実際にあそこに移住しましてどういう作物ができるか、また、それで果たして流通関係を含めてうまく生活していけるかどうかについて専門的に見まして一抹の不安がある、そういうことがまた今回の調査団を派遣した理由でございますけれども、実際に移住をするということになりますといろいろ問題がございますので、念には念を入れて調査していく、あるいは試験的にあそこで事業をしてみるというのも一つの方法であろうかと思いますが、そういう点を含めまして十分慎重に事業団としても対処していきたいと思っております。 〔奥田委員長代理退席、志賀委員長代理 着席〕 それから、御承知のように事業団はいろいろな調査団の派遣以外に、試験事業に対する投融資ということもできますし、その他いろいろな面において、仮に県側でいろいろお考えがあるとすれば、御相談の上、御協力できる側面は多々あるのではないかというふうに考えております。
○玉城委員 ただいまの問題につきましては、せっかく調査団も派遣されまして、その調査結果を待ってなさるということでございますが、どうかこの事業が成功するように強力な御協力をよろしくお願い申し上げたいと思うわけであります。参考人の方々には大変ありがとうございました。 次に、外務省の方に伺いたいのでありますが、同じく文化協定に関連しまして、特にアルゼンチンには御存じのとおり戦前戦後から沖縄の方々がたくさん行っていらっしゃるわけです。したがって、戦後そういう一世の方々、二世の方々、出身地の沖縄の伝統芸能、ふるさとのそういう文化をぜひ派遣してやってもらいたいという強い要望等もありまして、これまで琉球舞踊芸能団とかそういう形で、現地の州政府とかあるいは県人会とかあるいは国際交流基金等によりまして派遣をしまして大変喜ばれているわけであります。幸いにこういう文化協定が今回締結されるわけでありますから、またこれを機会に、いまの沖縄の伝統文化芸能も含めてわが国の文化を紹介するという意味において、こういう協定が結ばれるわけでありますから、適当な時期を見てそういう歌舞団等の派遣というものも積極的に検討されるのかどうか、その辺を伺いたいと思います。
○平岡説明員 先生御指摘のとおり沖縄歌舞団は非常に海外で活躍しておるわけでございまして、昭和四十八年にはインドにも参りまして、昭和五十年に至りまして中南米公演をしたわけでございます。中南米公演の際はブラジル、アルゼンチン、ペルー、パナマ、この四カ国に参りまして日本文化を代表する公演団の一つといたしまして各地で公演をしたわけでございます。特にブラジルにおきましては、リオ、サンパウロ、ブラジリア、マナオスの四カ所で公演をいたしまして大変御好評を博したわけでございます。 この公演は基金が全面的に助成をいたしたわけでございます。なお、昨年は西ヨーロッパにおける公演もいたしまして、これにも基金が助成いたしました。このようないい歌舞団は、今後の活躍も私ども期待しておるところでございまして、種々の案件の審査を経た上でございますけれども、またこういう機会がぜひあることを期待したいと存じます。
○玉城委員 次は、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約について伺いたいと思います。 第一点に、近年技術交流の活発化に伴い、工業所有権制度の国際化が求められてきたわけであります。わが国としても、外国において特許出願をする場合の手続上の負担を軽減し、かつ、各国による審査の重複を省くという目的で、昭和五十三年に特許協力条約に加入しているわけでありますが、この特許協力条約のその後の実施状況について特許庁の方に伺いたいと思います。
○川原政府委員 お答えします。 わが国におきまして特許協力条約は昭和三十三年十月一日から発効したわけでございます。それで、昨暦年におきますわが国の出願件数は全部合わせまして三百二十六件でございます。この件数は、各国からの出願総数のうちの約一二%を日本が占めておるということでございます。国別に見ますと、アメリカに次ぎまして日本が第二番目という状況でございます。 ただいま先生から御指摘ございましたように、こういった出願の絶対件数というのは、私どもが当初予想いたしましたよりは多くないというのが現実でございます。その理由といたしましては、いろいろ考えられますけれども、まだ加盟国が少ない。これは現在二十七カ国でございます。特に、カナダとかベルギー、イタリーといったような先進国がまだ未加盟であるという状況がございます。 第二番目には、発効後まだ日が浅いために出願人、代理人ともにまだ手続に習熟できていないといったようなことが理由になっておるのではないかというふうに考えております。 先ほど御説明いたしましたように、日本が米国に次いで第二位であるということで、日本自体は、絶対数は少ないのでございますが、国際的に見ますと決して少なくはないという状況にございますので、いま申し上げましたような理由というものは、日本だけではございませんで、やはりほかの加盟各国につきましても同じような状態ではないだろうかというふうに考えておるところでございます。 それで、特許庁といたしましても、従来からPRのために説明会の開催等を頻繁にしてきておりますし、また、その国際事務局でございます世界知的所有権機関におきましても、ユーザー会議といったようなものを各地で実施してきておるところでございますので、今後とも私どもといたしましては、引き続き積極的にPCTの一層の利用を図るように努めてまいりたいというふうに考えております。
○渡部(一)委員 議事進行。 本日、この委員会においては、委員長は病気のため御不在であると承っております。私どもはそれを了承して当委員会を開会しておるわけでありますが、どうやら自民党内の派閥抗争のため本日御欠席の御様子であることは、先ほど報道されたテレビにおいて、画面の上で明瞭であります。きわめて不見識であると存じ、直ちに委員会を停止し、この問題の処理について理事会を開会されることを望みます。
○志賀委員長代理 暫時休憩いたします。 午後二時五分休憩 ――――◇――――― 午後二時三十一分開議
○奥田委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。 質疑を続行いたします。玉城栄一君。
○玉城委員 特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約について、再び質疑をいたしたいと思います。 まず、特許庁の方にお伺いしたいのですが、本ブダペスト条約は微生物にかかわる特許出願の手続を簡素化する目的で作成されたとのことでありますけれども、わが国の出願人は具体的にどのような利益を受けるのか、手続上の相違点、外国への微生物に関する特許出願件数、寄託手数料等を具体的に説明をしていただきたいと思います。
○川原政府委員 では、まず初めに数字の方から御説明申し上げますけれども、微生物工業に関する日本の工業水準というのは、世界的に見ましても非常に高度のものでございまして、昭和五十年から昭和五十二年までの三年間の微生物に関するわが国から外国への特許の出願状況を申し上げますと、総数は千九百十一件でございます。このうち二百七十一件が外国に出願されておりまして、この外国出願比率は一四・二%ということになっております。また、一件当たりの平均外国出願件数でございますが、これは五・五カ国ということでございます。これを微生物工業に限らず全分野を含めた数字と比較をしてまいりますと、全分野の場合には外国出願率が六・七%、それから一件当たりの平均外国出願件数は三・五カ国ということでございまして、こういった数字と比較いたしますと比率が非常に高いという状況にあるわけでございます。 それで、このブダペスト条約に加入いたしますことによって、わが国の出願人が受けるメリットでございますけれども、いま申し上げましたように、わが国から外国への出願比率が微生物工業の分野に限っては非常に高いということでございまして、今度の条約への加入によりまして手続の簡素化、それから経済的、金銭的な負担が軽くなるといったようなメリットがいろいろあるわけでございます。 単なる試算ではございますけれども、たとえば日本の出願人がアメリカ、イギリス、フランス、西独、オランダそれから日本という六カ国に出願し、微生物の寄託を行うという場合に、従来でございますと、大体七十万円ぐらいの保管料がかかっておったわけでございます。これが本条約に加入いたしますと、日本の国際寄託当局へだけ寄託を行えばよいということになっておりますので、大体九万円程度で済むのではないかというふうに考えております。 こういったようなことによりまして、日本の出願人による外国出願というものが非常にやりやすくなるということで、ひいてはわが国における微生物の研究開発の成果の保護、それから研究開発の発展に資するのではないかと考えておるところでございます。
○玉城委員 同じく特許庁の方に伺いたいのでありますが、微生物にかかわる特許出願については、従来よりわが国においても寄託制度が設けられているわけであります。本条約に加入した場合に、既存の国内寄託手続とブダペスト条約の寄託手続との関係はどういうふうになるのか、お伺いをいたします。
○川原政府委員 お答え申し上げます。 日本は過去約十年間にわたりまして微生物に関する寄託制度を実施してまいっております。この従来の国内の寄託制度と申しますのは、微生物の特許の出願に当たりましてその微生物の寄託が行われるということでございますので、その寄託が必要であるという基本的な点におきましては、従来の制度もブダペスト条約に加入した後も異なるところはないわけでございます。 ただ、微生物の保管の期間でございますけれども、現行制度によりますと、特許権の存続期間保管しなければいけないということで、具体的に申し上げますと、公告から十五年間または出願から二十年間の保管期間があったわけでございますけれども、この条約によりますと少なくとも三十年間というふうに規定されておるということ、それからさらには、手数料の納付方式でございますけれども、現行制度によりますと、年々払えばよかった、これがこの条約に加入いたしまして国際寄託ということになりますと、寄託をいたしますときに三十年分の一括払いということになっておりまして、こういった幾つかの点で違ってきておるということでございます。 以上、お答えになりましたかどうか……。
○玉城委員 そこで、いま御説明がちょっとございましたけれども、この条約上の手続と国内手続、これを一本化すると国内出願だけを希望する出願人に経済的に過重な負担をかけるようなことにならないのか。それは他方、国内寄託とブダペスト条約上の寄託を別の手続とすれば、微生物にかかわる寄託手続を国際的に簡素化し統一しようとするこの条約の精神から見て問題が残りはしないかどうか、その点を伺います。
○川原政府委員 いまお話がございましたように、仮に国際寄託制度だけに一本化してしまうということをいたしました場合にどうなるかということでございますが、出願人にとりましては特許権を取得することができるかどうかということにかかわらず、最初の出願のときに三十年分を一括払いをしなければいけないという問題がございます。それからさらには、国内出願だけをしたい、外国出願の方は当面しないといったような出願人に対しましても、一本化いたしますと三十年分の手数料をまとめて納付していただくというふうなことになるわけでございます。 それで、一方現行制度と条約に基づきます制度の二本立てということで考えてみました場合には、微生物の発明については三十年以上の保管を行うのだという国際的な考え方と、それから従来日本がそれとは違った考え方を持ってやってきたということとの調整の問題が出てくるのではないかというふうに考えられるわけでございます。 そこで、特許庁として当面どういう方針でいくかということでございますが、特許庁といたしましては、本条約への加入後、直ちに国内の従来の寄託制度をやめて国際寄託制度に一本化するということは、過去十年間にわたって国内の寄託制度が運用されてきたということを踏まえますと、出願人に一時に急激な影響を与えることになるのではなかろうかということで、やはりこのような急激なショックというのは避けることが必要であろうというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、本条約への加入後におきましても、当面は両制度を併存させていくことにいたしたいというふうに私どもは考えておる次第でございます。
○玉城委員 わかりました。 それでは、ただいまの条約についての質疑は一応これで終えまして、次に、いわゆるワシントン条約、絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約について、お伺いをしたいと思います。 一九七二年六月、「かけがえのない地球」というスローガンを掲げ、国連人間環境会議が開催されて、その会議の中でこの条約がつくられたと聞いておるわけであります。私も、地球の自然の中で野生動植物が人間の種々の行為のために淘汰されるべきでないと思います。この条約に当然賛成していくべきではないかと思うわけであります。しかし、取引のための、いわゆる国際商取引を規制するという条約のみの作成によって野生動植物の保護はできないと思うわけであります。 そこでお尋ねいたしたいのでありますけれども、野生動植物の保護について、国連人間環境会議における議題になったのか、もし議題になったならば、どういう議論がされたのか、概略御説明いただきたいと思います。
○関説明員 一九七二年の国連人間環境会議におきまして、野生動植物の輸出入等に関する条約を採択する会議をできるだけ早く開催すべきであるという勧告が行われたことは、先生御承知のとおりでございまして、この勧告を受けまして、ただいま御審議をいただいておりますこのワシントン条約がつくられたわけでございます。
○玉城委員 そこで、野生動植物の保護というものは、各国がそれぞれの立場で保護しなければならないのは当然であります。が、野生動植物の多く生息をしている開発途上国にとって、みずからの国の開発、発展という命題もありますし、その接点の中で野生動植物の保護を考えていかなければならないのではなかろうかと思うわけであります。 そう考えるならば、単に各国がそれぞれ保護をすればよいという立場だけではなくて、先進国は当然野生動植物の保護にもっと手をかすべきではないか、いわゆる援助の手を差し伸べるべきではないかと思うわけです。生息区域の環境をよくするために、経済協力の仕組みなど大いに検討すべきではないかと思いますが、その点どのようにお考えでしょうか。
○松本(十)政府委員 野生動植物の保護につきましては、西欧、北欧等なかなか熱心でありますし、わが国も当然それをやるべきでありますが、そういう生息している国々はどちらかと言えば発展途上国でありますので、その保護するための技術的な指導なり協力あるいは資金的な援助等につきまして、いろいろ考えながら努力すべきだ、こう考えております。
○玉城委員 そこで、この条約のみで満足するのではなくて、たとえば一国が保護しても、その動物が国と国との間を移動するような場合、他の国が保護をしなければ当然絶滅していくわけでありますから、このような場合の国際条約を別に考える必要はないのかどうか。
○松本(十)政府委員 そういう角度で先進国もそういうものの生息している国々ともいろいろ協議し、協力をすべきであると思いますが、そのために条約を考えるべきか、条約でなしにそういった点を対策として出していくか、この辺はこれからさらに環境問題の一環として検討すべきではないかと思っております。
○玉城委員 この条約を締結して、取引から野生動植物を保護することはよくわかります。この条約の締結によって、動植物が日本に入ってこないために影響を受けるということがあると思うわけであります。どういう業界であるのか、そしてその対策について、概略御説明いただきたいと思います。
○関説明員 お答え申し上げます。 この条約の批准によりまして直接的な影響を受ける業界といたしましては、たとえばべっこう業界、それからウミガメ、トカゲ、ワニなどの原皮を使っておりますいわゆる爬虫類の皮革業界、それからジャコウジカの分泌物を原料といたしております生薬業界、そういう業界が関連してまいっております。 本条約に日本が加盟することによりまして、これらの業界に対しまする影響が最小限に食いとめられるようにという見地から、重要な品目、特にこれらの業界の関心のある品目につきましては、留保することにいたしております。
○玉城委員 いま留保されるという話でありますが、当然留保ということも、伝統的な業界の方々を保護するという立場からは考えられると思うわけであります。しかし、このために、この条約の趣旨からいって、対外的にどういう御説明をされるのか。それともう一つ、どんどん撲滅する野生動植物を、ただ留保しておけばいいというのではなくして、そういうものを今後増殖するとか養殖とか、いまのうちに当然手を打っておかなければならないと思うわけであります。そういうことについて、外務省並びに通産省、お考えを聞かせていただきたいと思います。
○関説明員 確かに御指摘のとおり、留保するということは、国際的にはやはり影響があるものでございますから、最小限にとどめられるべきだという基本的な態度で臨むべきだと思うわけでございますが、国際的に絶滅のおそれがあると認識されている種を国内産業保護のために留保するということは、条約の趣旨と必ずしも合致しないという点があるわけでございますけれども、留保をすることを予定しております種類のうちには、必ずしも絶滅の危機にあるとは厳密に科学的には立証されてないものもあるわけでございます。たとえばトカゲなどがそういうものでございますが、他方、また従来からほかの条約のもとで保存等の措置がとられてきたものもございます。 他方、真に絶滅のおそれのある品目につきましては、輸入量の削減をするというような対策のほかに、関係各省庁におきまして、海外における増殖あるいは養殖などのための調査研究を実施するという対策を現在講じつつございまして、政府といたしましては、機会があるごとにこのようなわが国の認識といいますか基本的な態度及び実情を各国に説明して理解を求めていきたい、かように考えております。
○玉城委員 そこで、先ほどの御説明で、そういう伝統的な業界を最小限保護しなくてはならないということで留保をされたということでありますが、その問題に関連しまして、これは沖縄県の問題です。 沖縄県にも、百年余にわたりましてウミガメ剥製のそういう歴史があるわけです。伝統加工製品として非常に貴重な伝統産業の一つになっておるわけです。昭和四十五年ごろまでは、沖縄沿岸でとれたアオウミガメやタイマイを加工して製品化されておったわけでありますけれども、最近は東南アジアからも輸入して伝統加工製品を製作をしているわけです。したがいまして、この条約が締結されますときに、こういうものは商取引が一斉に規制されるのかされないのか、その辺を伺いたいと思います。
○水野説明員 先生御指摘いただきましたように、私ども通産省の関係では、先ほど外務省の方から御説明がありました幾つかの品目のうちで、爬虫類の関係とそれからタイマイ、これはカメでございますが、この二つのグループについて留保をお願いすることになっております。しかしながら、先生からいま御質問ございましたように、単に留保をいたしますのでは国際的にいろいろな疑問が出てまいります。そんなことで、留保する一方におきまして、留保はいたしますけれども、既存の輸入量に比べまして、天然ものについては削減といいますか、なるべくふやしていかない、極力減らしていこう、こういう方向が正しい方向であろうと思います。 しかしながら、一方におきましては、関係業界は非常に零細な企業が多うございます。そういう意味で、私ども非常に中長期的な観点に立ちますと、まず養殖をしっかりやろうということで、いま御指摘がございましたカメ類なども含めまして爬虫類の関係あるいはタイマイの関係、そういったものについて今後養殖事業を展開したいということで、五十五年度の予算で、若干ではございますが、千数百万の予算を計上いたしたところでございます。そのほか、たとえばトカゲ等につきましては外務省の方でいろいろ経済協力の観点から予算を計上いたしていただくことになっております。 と同時に、そういう増養殖を一方で中長期的に行いますけれども、当面、たとえばタイマイ等の剥製につきましては、これはタイマイというのはべっこうガメになりますが、世界でほとんど日本が輸入して加工しておる、こういう実態にもございます。そこで、これは細かな数字になりますけれども、最近三年間ぐらいの輸入数量が年間大体三十トンないし四十トンぐらいということになっておりますので、その低い方の数字になるわけでございますが、年間三十トンぐらいのところで輸入数量を設定して、留保はいたすけれども必要最小限のものしか輸入しないという体制に持っていきたいということで、現在準備中でございます。 ただ、これはいろいろ産業の実態がございますので一律にすべてというわけにはまいりません。そういう意味で、たとえば先生おっしゃられましたアオウミガメとかヒメウミガメとか、この辺につきましては現在関係業界がいろいろと自主規制をやろう、こういった動きもございます。そんな動きも見ながら、国際的ないろいろな協力、義務を果たしながら、産業が当面の条約の批准に伴い打撃を受けることのないように配慮をしていきたい、こんなふうに考えております。
○玉城委員 そこで、この問題に関連しまして、沖縄伝統文化にとって絶対に欠かすことのできない沖縄三味線の胴張りに使われておるインドニシキヘビは、付表の幾つに入っておるわけでしょうか。
○関説明員 附属書IIに入っております。
○玉城委員 附属書IIということでありますと、商業的な取引というものは従来とほとんど変わりないのかあるいは変わっていくのか、その辺を御説明いただきたいと思います。
○関説明員 附属書IIに掲載されておりますと、この輸入は、輸出国が発給いたします書類が添付されておりますと問題なく輸入されるということになっております。
○玉城委員 問題なく輸入されるということでありますが、それで伺いたいのでありますけれども、この条約の十五条に、附属書IとIIは締約国会議において改正することができると書かれておりますね。いまのインドニシキヘビはいまおっしゃいましたように附属書IIに入っておりますけれども、それが附属書Iに変わるようなことは絶対にないとは言い切れないと思いますが、いかがでしょうか。
○関説明員 お答え申し上げます。 附属書のIIからIに移るということは絶対ないということは何人も保証し得ないわけでございますが、この条約が発効いたしましてすでに五年たっているのでございますけれども、依然として附属書IIにあるということは、原産国におきます資源状況がそれほど悪くないのじゃなかろうか。賦存状況が案外良好ではなかろうかというふうにも推測されるわけでございます。将来、条約の規定に基づきましてもし附属書Iに変わるというような場合におきましては、国内産業への影響の程度、それから代替品があるとかないとか、あるいは増養殖の可能性等その他いろいろな条件を十分検討いたしまして、その時点で留保するかどうかにつきまして決定を行いたいと考えております。
○玉城委員 そこで、付表のIに変わり得る場合も考えられる、しかし、当分は資源状況はそう心配はないということでありますけれども、その点の資源状況の正確な把握が果たしてされておるのかどうか、その辺は疑問に思います。そういうことで締約国が会議を持ちましていま申し上げましたところをIに入れるのだということになりました場合に、いまのお話のように留保するかどうかということについてそのときの状況によって考えたいという意味のように承ったわけでありますけれども、しかし、この条約の十五条の3を見ますと、「いずれの締約国も、1(c)又は2(1)に規定する九十日の期間内に寄託政府に対し書面による通告を行うことにより、改正について留保を付することができる。」というふうに、ちゃんと留保する権限が与えられているわけですから、当然そのときには留保をしますというふうにおっしゃっていただかないと、これは伝統的な沖縄文化のまさに破壊につながるわけですから、この沖縄の蛇皮線のインドニシキヘビがなくなりますと、これはもう全くつくれないわけですね。これは重大な問題だということで、これはそういう関係業者の方々だけの問題でなくして、六百年も続いた沖縄の伝統文化に関する重大な問題としてわれわれは深刻に地元では受けとめているわけでありますから、その点もう一回お答えいただきたいと思います。
○関説明員 先生御指摘のように、このニシキヘビが沖縄の伝統的な楽器でございます蛇皮線の原料といたしましてきわめて重要である、これが輸入できなくなった場合の影響につきましては、私ども十分にそれを留意して、今後もしそのような状況になった場合に、先ほど申し上げましたようにいろいろ対策があるかどうか、特にその中で増養殖というようなことが可能かどうかというようなことを十分検討いたしまして、沖縄の伝統的なそういう芸術品に重大な影響が生じないような対策を考えてまいりたいと思いますし、その一環といたしまして、この留保につきましても慎重に検討いたしたいと思います。
○玉城委員 そこを伺いたいわけですね。十五条の3によりますと、「留保を付することができる。」ということになっているわけですから、そういうときにもちゃんと留保するというお考えがあるのかどうか、それをはっきりおっしゃっていただきたいわけですよ。
○関説明員 確かにこの条約上は留保ができるということが明確になっておりますけれども、現実にはまだ仮定の状態でございまして、いまから留保するとかしないとかなかなか予断することがむずかしい問題じゃなかろうかという面もあろうかと思いますので、やはりその時点で沖縄の関係業界に対する影響ということをよく考えながら慎重に検討して対策を立てたい、かように考えております。
○玉城委員 この点につきましては文部省の方も、これは沖縄のそういう伝統文化にとってきわめて重大な問題であるので留保すべきであるという御意見があったやに承っておりますが、その点いかがでしょうか。外務省でも通産省でもよろしいです。
○松本(十)政府委員 先生御指摘の御意見はよくわかるのでありますが、現に条約では附属書のIIに入っているわけですね。Iに入るかもしれないということはまだ仮定の話でございまして、具体的な俎上に上っておりません。その段階で、もしもそういうことになれば留保をしますとここで予約するということは、やはり条約というものの性格からいって無理だと思うのでありまして、そのIIからIに移るという改正の問題が俎上に上った段階で慎重に検討いたしまして、先ほど参事官がお答えしておりますように、いろいろな角度から蛇皮線そのものの産業が影響をこうむらないように必ずやりましょう、こういうことで御了承願いたいと思います。
○玉城委員 そういうことで業界に対しての影響を最小限度に対策をとるんだということで、九品目につきましてはすでに留保しているわけですね。ですから、このIIの方に入っておりますインドニシキヘビについても、Iに改正になった場合については留保することができるという権限が与えられているので、当然そのように考えられるというふうに受け取っていいのかどうかということですね。先ほど慎重に検討するというようなことでおっしゃっておりますけれども、その辺、もう少し積極的にちゃんと答えてください。大臣、どうですか。大臣いらっしゃいますから。
○松本(十)政府委員 前向きに検討いたしますが、何回も申しておりますように、まだこの問題、IIからIへ移すということは仮定の問題ですね。したがって、その段階で必ず、そうなった場合にはこうしますというふうなことをここで予約申し上げることには若干問題ありますので、ただ、方向としては御心配なく、われわれも国内産業を大事にするということはもうわかっておりますから、その辺で御了承願いたいということでございます。
○玉城委員 議論しても時間がありませんので、仮定の問題とおっしゃいますけれども、その仮定のときに、十五条の3ではちゃんと留保することができると書いてあるから、そのときにはちゃんとそうしますねということを私はしつこく申し上げているわけです。まあ心配ないようにということですから……。 それで、やはり特にこの爬虫類の問題、これは生息期間が非常に長いわけですから、いまのうちから養殖にしましても手を打っておかなくてはならないわけですから、たとえばいま具体的なインドニシキヘビについて、これは通産省になるわけでしょうかね、どういうふうに考えていらっしゃるのか。
○水野説明員 インドニシキヘビ、これは沖縄の、先生おっしゃるとおりに大変重要な蛇皮線の原料でございます。ちょうど一年ぐらい前に、まだ一類か二類かということが必ずしも明白でなかったときに大変問題になった経緯がございますが、そのときいろいろ調査をいたしまして、このインドニシキヘビといいますか、通称モラレス・パイソン、こう呼ばれている品種でございますが、これについてはいま外務省の方から御説明ありましたように、間違いなく第二類である、付表の二である、こういうことが判明いたしまして、私どもといたしましても安心をいたしたところでございます。 そんなことで、先ほどちょっと御説明いたしましたように、私ども留保いたしますもの、これは絶滅の危機に瀕するという判定がなされておりますので、本来ならばなかなかむずかしいところを留保をお願いする、こういうことでございますので、一方において輸出規制をやりながら増養殖をやっていく、こういう体制を固めていくわけでございますが、本件はそのようなことで当面二類ということでございますので、私どもとしては沖縄の非常に重要な産業であるということは了知しておりますので、資源の賦存状況とかあるいは産業の実態をよく見ながら、及び、外国のそういった二類と一類の問題の動きなぞもよく見ながら、十分に実態把握をしていきたい、こう思っております。
○玉城委員 ですから、その生息期間が長いわけですから、その実態把握というのは当然ですから、それは来年度とか再来年度とか、あるいは五年後とか十年後とか、どういうことなんですか。長いだけに、いまからちゃんとやらなくちゃいかぬじゃないのか。それは当然来年度等からそういう考え方で予算等についてもちゃんと手当てしていくのかどうかということなんです。
○水野説明員 私ども、増養殖の予算につきましては五十五年度で千五百万ぐらいの予算、これはフィージビリティーのための調査費ということになりますが、これをやりております。これは私どものいまの考えではタイマイ関係、これは一類の留保の関係でございますが、タイマイ関係とそれから爬虫類の、当面一類に指定されているアオウミガメとかあるいはトカゲ関係とかワニ関係とか、主としてワニの関係を中心に調査をいたしたいというふうに考えておりますが、いま先生おっしゃられたこのニシキヘビは当面そういうことで、確かにおっしゃるように長い養殖期間が必要ではございましょうが、当面三類ということで、資源上絶滅の危機に瀕するということにはされておりませんので、今後とも資源の実態等をよく見ながら、業界の関係者とも相談しながら対応していきたい、こんなふうに考えます。
○玉城委員 時間が参りましたので、また席を変えましていろいろ伺いたいと思いますが、最後に一点。 これまた別の条約、日本国とフィリピン共和国との間の友好通商航海条約について一点。 この十二条が入ってきた経緯について簡単に御説明いただきたいと思います。
○渡辺説明員 お答えいたします。 日本とフィリピンの友好通商航海条約第十二条において、海洋汚染に関する協力規定が盛られていることは御指摘のとおりでございます。この点は産業活動の活発化、それから国際間活動の活発化に伴いまして、油等の汚染物質による海洋汚染を防止して海洋環境を保全することの必要性について日比双方間で合意に達しまして、ともに海洋国家である日比両国が海洋汚染の防止について協力するという規定を設けたわけでございます。 先生御承知のとおり、わが国が結んでおります友好通商航海条約において海洋汚染防止のための協力規定が盛り込まれたことは初めてでございます。
○玉城委員 最後に、せっかく海上保安庁の方をその件でお呼びしましたので、この特殊な条項がこの条約の中に入ってきておりますので、特に「油その他の汚染物質の排出により実際に生じた損害」云々ということで、油汚染がわが国近海、領海内で非常に問題があるわけですね。ですからそういう損害、そういう油の流出問題について現在どういう対策をとっているのか、それと、この条約との関係で、具体的なそういう損害が発生した場合、わが国あるいはフィリピン側とそれにどう対応するのか、簡単でよろしゅうございますからお答えいただきたいと思います。
○野呂説明員 沿岸海域でタンカーの海難等により油の排出事故が発生しました場合には、国籍上問わず、海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律に基づきまして船長には応急措置義務と海上保安庁への通報義務、それから船舶所有者につきましては排出した油の防除措置が義務化されております。なお、これらの両者に基づく防除措置が不十分な場合等には、海上保安庁は巡視船艇あるいは航空機等を現場に派遣いたしまして、防除資機材を動員して、また関係機関とも協力をしながら被害の局限措置を図ることになっております。
○玉城委員 終わります。
○奥田委員長代理 野間友一君。
○野間委員 まず、ブダペスト条約について質問したいと思います。 特許庁について言いますと、庁舎が分かれ、その上に職員の数と特許や実用新案の出願あるいは審査の数の推移等を見ますと、相当な乖離と申しますか、大変な実態にある。そういう中で大変苦労して仕事をされておるということに対して私は非常に評価をするわけでありますけれども、最初に、一般的な点で、職員の数と、いま申し上げた四十八年ごろから特に数が大変に多くなっておると思いますが、その間に支障がないのかどうかということ。それから庁舎が分かれて仕事においても非常に支障があると思います。ぜひこれは統合した庁舎で十分な仕事をしていただくということが非常に大事だと思いますけれども、そのあたりについて長官にひとつお伺いしたいと思います。
○川原政府委員 ただいま先生から御指摘ございましたように、特許庁といたしましては、戦後のわが国の高度成長期に特許、工業所有権関係の出願が非常にふえまして、それの審査をこなす、早く処理をするということでいろいろな手を尽くしてきたわけでございますが、審査官、審判官の増員ということにも大いに力をいたしてきたわけでございます。それで、一時期に比べますと審査官の数もかなりふえてまいったのでございますけれども、現状におきましては、かつての要処理期間が非常にかかっておったころに比べますとかなり短縮はされてきておりますけれども、なおそれで十分というところまではいっていないわけでございます。 そういったことで、審査官の増員等も図っておりますが、近年は増員自体も非常にむずかしい時期に差しかかってきておりますので、ただ審査官の数をふやして審査を促進するということだけではできないようになってきております。そういったことで、機械化でございますとか審査資料の整備をするとかいったようなことで現在の必要性に対処してきつつあるというのが現状でございます。 次に、庁舎の問題について御説明をいたします。 通産省の第三期庁舎の建設につきましては、現在、五十七年度中の竣工を目的にいたしまして工事が進められるという運びになってきておるわけでございます。それで、この第三期庁舎が完成いたしました後の特許庁の庁舎につきましては、省全体の庁舎の利用形態の検討を踏まえつつ特許庁として必要なスペースの確保をしてまいりたいと考えておるわけでございます。 特許庁といたしましては、第三期庁舎が完成いたしますと、現在の第一期及び第二期庁舎、われわれは俗に新庁舎と申しておりますけれども、ここに特許庁の庁舎を統合するという方針で従来やってきたわけでございます。これが、最近は特許行政の国際化の進展等々によりまして資料が非常にふえてくる、人員も当時よりもかなりふえてきておるというふうなことで、所要のスペースが当時想定いたしましたよりもかなり増加が著しいということで、当初考えておりました第一期及び第二期の新庁舎に全部を特許庁として入ってしまうことがむずかしいのではないかという状況に来ておるわけでございます。こういった状況の変化に伴いまして、私どもといたしましては、現在、従来からでございますが使っております古くからの三年町の本庁舎もあわせて使用することが必要になってくるのではないかと考えておるわけでございます。
○野間委員 それでは本論に進みますが、外務省に聞きます。 本条約の署名国はいま一体幾つあるのかということと、それから批准国は数は一体幾つになるのか。
○関説明員 お答え申し上げます。 署名国は十八カ国でございますが、そのうち四カ国が批准いたしております。
○野間委員 どこですか。
○関説明員 ハンガリーとブルガリア、それからアメリカとフランスでございます。この四カ国でございます。
○野間委員 これは五カ国になれば発効するというふうにたてまえはなっておりますけれども、発効の見通しについてどういうふうにお考えですか。日本が批准すれば発効するという条件があるのです。これは同僚委員の中の質問にもありましたけれども、見通しはどうなんですか。いつごろか。
○関説明員 お答え申し上げます。 私どもといたしましては、日本ができますればぜひ五番目の批准国になりましてこの条約を発効させたいというふうに願っているわけでございまして、国会の御承認が得られますれば、直ちに閣議請議をいたしまして、その手続を進めまして、ぜひともそういう状態に持っていきたいというふうに願っております。 ただ、西独、イタリア、スペイン等も早期に批准するような意向を持っておるようでございますから、日本がその五番目の国になり得るかどうかわかりませんけれども、この条約は本年中には発効するのではなかろうかというふうに見られております。
○野間委員 微生物界の実態について少しお聞きしますが、わが国の微生物工業界というのは世界でもトップレベルというふうに私はお聞きしておるわけですが、そういう世界的に見たわが国の微生物工業界の現状について簡単にひとつ説明していただきたい。
○川原政府委員 お話がございましたように、日本の微生物工業というのは世界でもトップレベルにあるというふうに言われておるわけでございます。 端的な数字でひとつ御説明いたしますと、たとえばアメリカでありますとか、それからイギリス、西独といったような先進国に日本から出願されておる微生物に関する特許の数でございます。これは日本からの微生物に限らず全出願を込みにして見ますと、大体各国で出願されております出願数の約一割というのを日本が占めておるわけでございますが、この微生物工業に限って言いますと、全体の三割くらいをそれぞれの国で占めておるということでございます。 それで、微生物につきましては、よく御存じのことと思いますけれども、たとえて例を申し上げますと、古くからありますみそ、しょうゆ、お酒といったようなものにも使われておりますし、それから化学調味料でありますとか、医薬、農薬といったようなところから、さらには、最近は公害防止のための微生物の利用というふうなところにまで及んできておるということで、微生物につきましては将来の工業的可能性が非常にたくさんある。それから、非常に微生物の発見、それから創製といったようなものには手間と暇とお金がかかるわけでございますけれども、それに非常にじみちな研究が必要であるということでもございまして、私どもといたしましては、非常に日本という国はこういった微生物工業に適した国ではなかろうか、日本人の民族性、国民性といったようなものも勘案いたしますと、非常に適した産業ではなかろうかというふうに思っておるところでございます。 それで、先ほど主な諸外国における日本の微生物の特許出願がどのくらいの割合になっておるかということを申し上げたわけでございますけれども、さらに数字を申し上げますと、日本におきます国内の出願件数は千九百十一件ということでございます。これは五十年から五十二年までの三年間でございますが、そのうち二百七十一件が外国に出ておる。これは、見てみますと、外国への出願率というのは一四・二%ということで、微生物に限らず全分野で見てみました場合にその出願率が六・七%ということになっておりまして、それの数字の比較をしてみましても、微生物工業に限っては外国に対する出願率が非常に高い、それから外国において登録されている日本の微生物の数というものも非常にウエートが外国において高いということが申し上げられるのではないかというふうに思っております。
○野間委員 そこで伺いますが、微生物の特許に関しては現行の運用があるわけですが、このブダペスト条約は現行の運用と比較してどのような違いがあるのか、長官長々とお答えになりますけれども、端的にひとつお答えをいただきたいと思います。
○川原政府委員 現行の制度とブダペスト条約に加入いたしました後の制度的な違いということで簡単に申し上げますと、まず第一に、微生物の保管の期間が異なってくるということがございます。それから次に、手数料、保管料の納付形式が違う。現行制度では一年ごとに納付する。これがブダペスト条約の場合には三十年分の一括納付ということになってくるわけでございます。
○野間委員 そこで、もしこの条約が批准され発効した場合には、一方では国内の諸法規がありましてそれでずっと実際には運用するわけですが、そしてまた、国際的な条約に基づく出願、こういうものが並行するというふうに思うわけですが、微生物に関して国内で出願する、国内出願のみ、そういう場合の取り扱いは、条約に基づいてもできるし、あるいは国内の諸法規に基づいてもできる、こういうような扱いになるわけでしょう。
○川原政府委員 そのとおりでございます。
○野間委員 条文に少し即してお伺いしたいと思いますが、国際寄託当局の問題です。これについて、この条文を見ますと、単数とも複数ともないので、数の制限というか限定がないわけです。したがって、この条約からいきますと、幾つでもよい、いろいろ要件がありますが、単に数から言いますとそういうことになるのでしょうか。
○川原政府委員 おっしゃるとおりでございます。
○野間委員 この条約が発効した場合に、具体的にこの寄託当局についてどのような機関をいま考えておるのか。
○川原政府委員 条約の中には国際寄託当局としての要件が条約の六条の(2)というところに列挙してございます。これらの要件を満たす日本の寄託機関のうちからこの国際寄託当局になり得るものを選定しなければいけないということになっておりまして、現在のところ、私どもといたしましては、工業技術院の微生物工業技術研究所を国際寄託当局に指定することを予定しておりまして、所要の準備を進めておるところでございます。
○野間委員 将来、複数の寄託当局というものを想定しておるのかどうか。 それから、もう一つ関連して、いまおっしゃった微生物工業技術研究所、これはそうすると、いままで運用しております国内のそういう寄託の取り扱いと、そしてその条約に基づく取り扱い、この二本立てということになるわけですね。
○川原政府委員 そのとおりでございます。
○野間委員 もう一つ。
○川原政府委員 別の機関でございますね。 現在、私が申し上げました工技院の微生物工業技術研究所のほかにも、条約上は指定ができるということになっておるわけでございます。 同研究所に加えましてさらにほかの機関を指定するかどうかということにつきましては、あくまでも、条約に規定されております要件、公平性でありますとか客観性の確保といったような要件が満たされるかどうかということが判断の前提になることは当然でございますけれども、さらに今後は、条約の実施状況や諸外国がどのような機関を指定していくのかといったようなことも見きわめました上で検討してまいることが必要ではないかというふうに考えております。
○野間委員 諸外国の例を見ますと、公的機関と民間の機関、これは幾つか例があるようなんですけれども、特に、民間の機関、財団法人等々になりますと、別の意味でのいろいろまた問題があるように思いますので……。そうすると、当面この微生物工業技術研究所を条約に基づく寄託当局と考えている、こういうことですね。――いまうなずかれましたけれども。 その次にお聞きしたいのは、試料の分譲についてであります。これには、第三者への分譲というのが条約の中にもあるわけであります。 そこでまずお聞きしたいのは、試料の分譲について、これを認める必要性と申しますか、何のためにこういうものがあるかということです。
○川原政府委員 御承知のように、微生物は肉眼で観察できないような非常に微小なものでございます。それで、通常の一般の特許出願につきましては書面による出願の申請だけでよろしいわけでございますが、微生物につきましては、その特殊性にかんがみまして、微生物そのものを、実際に生存しておるということを証明するために寄託をさせるということになっておるわけでございます。
○野間委員 現行の運用ですが、これはいつの時点から試料の分譲をしておるのか、その点お聞かせいただきたいと思います。
○川原政府委員 寄託されました微生物の分譲の時期についてでございますが、現行制度の上では、原則として特許出願の公告後に分譲するということになっておりまして、公告前には原則として分譲しないということになっております。
○野間委員 西ドイツその他米国あるいはオランダ等々がありますけれども、これらの取り扱い、特に指定しますと西ドイツですね、ここではわが国とは違った時期での分譲をしていると思いますが、いかがですか。
○川原政府委員 西ドイツにおきましては、分譲は出願公告の日ではございませんで、出願公開の日ということになっております。
○野間委員 そうですね、確かに西ドイツでは、公告ではなくて、その前の出願の公開のその時期から分譲しておるようであります。 それから、米国の場合には公開制度をたしかとっていないと思いますが、これはいつの時期からかということと、オランダは公開の時期というふうに思いますが、これは間違いありませんか。
○川原政府委員 アメリカ、オランダ両国とも、特許の付与の日ということになっております。
○野間委員 ですから、公開とか公告とか付与とか、国によっていろいろその表現も違うし、あるいは時期も違う、こういうことになるわけですね。 そこで、次に聞きますが、いままでのわが国の取り扱いは、出願そして寄託、公開、それから審査請求があり、その後公告というふうになるわけですが、その公開から公告までの間は、これは実際実務の取り扱いではかなりの日数がかかっていると思うのですね。したがって、公開の時点で分譲するのか、あるいは広告の時点で分譲するのか、これはかなり時間的にも差があると思うのです。大体どのぐらい、日本の場合の取り扱い上、公開から公告までかかっておりますか。
○川原政府委員 いろいろ案件によって異なってはまいりますけれども、一応審査請求がございましてから、その後二年から三年くらいの間というふうに考えております。
○野間委員 そこで、ですから、これは公開時から分譲するのと公告をした時期の後で分譲するのとでは、かなり法律上の効果も違ってくると私は思うのですね。つまり、特許の侵害との関連で私はいま特にお聞きしておるわけですけれども、この条約の条文によりますと^この分譲の時期についてはどう規定されておりましょうか、そして、それはいままでのわが国の取り扱いとどういう関連になるのか。どう解釈しておりますか。
○川原政府委員 お答え申し上げます。 この条約の規則11.3(a)の(ii)というところがあるわけでございますが、ここに分譲の要件として規定がございます。要件といたしましては、「工業所有権庁が特許手続上の公表を行った」という、「公表」という言葉が使ってあるわけでございます。 それで、この「公表」という言葉が日本の特許手続上どういうふうな意味を持ってくるか。特に、いま先生のお話がございましたように、わが国の手続といたしましては、公開と公告と二つ、公表に似たような表現のものがあるわけでございます。この点につきましては、この条約の中で「外表」という文言が具体的にどのような手続を指しているのかということにつきましては、現在各国の制度が異なっておるということでございますので、基本的には各国ごとの実情に応じて各国が判断すべき問題ではないかというふうに理解をしておるところでございます。 それで、日本の特許制度上、出願公開と出願公告というものがいま申し上げましたように設けられておるわけでございますけれども、従来の国内寄託制度では、原則として出願公告以後に限り分譲を認めるということになっておるわけでございます。 さらに、これとの整合性を確保するという見地から、この条約の規則11.3の(a)(ii)に使われております「公表」という言葉は、わが国としては原則として出願公告というふうにしたいと考えておるところでございます。
○野間委員 したいという願望は、時期は公開後がいいのかあるいは公告後がいいのかこれは別の問題として、したいという願望については、そのとおり長官の気持ちはわかるわけですけれども、そもそも法律とか条約というものは勝手にそういう願望で解釈してはならないと思うのです。特に公表についての概念づけが二条の定義の中にあるわけです。「特許出願又は特許につき、公的に、公表すること又は公衆の閲覧に供する」、こういう規定があるわけです。公表とはこういうものだというのがあるわけです。 いま諸外国の中では分譲の時期はまちまちであります。そうしますと、これは条約の体裁をなさないわけです。しかも、この三条の(2)のところでは「この条約及び規則に定める要件と異なる要件又はこれらに定める要件に追加する要件を満たすことを要求してはならない。」 つまり解釈の画一性、法的安定性というものはまさにそういうことだと思うのです。 だから、長官が願望されておるということはそれとして、どうなのでしょうか。要するに、いま申し上げた定義のところにもあるわけですけれども、この公表というのは日本の国内で言う公告とか公開と表現が違うわけで、だから時期をいつに設定するか、これは条約のすり合わせの中で、交渉の中で問題になったはずだし、わが国もいままではずっと公告後にやっておった。ところが、西ドイツはそうではないという各国のさまざまな状況の中で、主張すべきものは主張するという態度があったと思うのですけれども、条約の調印時のすり合わせの中で、そのあたりの論議あるいはわが国の主張はどういうことであったのか。
○社本説明員 ただいまの試料の分譲の件でございますけれども、これの要件として規則の11.3に出ておりますのは、特許庁が証明すべき事項として「特許手続上の公表を行ったこと。」というのが一つあるということでございます。それで手続上の公表につきましては、条約を作成する段階におきましていろいろな折衝などもございまして、早期公開といいますか、公開であっても、その後の再公開、リパブリケーションと言っておりますけれども、日本国で言いますいわゆる公告、これでも差し支えない。これはどちらでもいいのだという了解があるわけでございまして、いずれをとるかということはブダペスト条約そのものが単なる手続の問題でございますので、現在それぞれの国でとっている手続に合わせるような形で進んできたということがございます。そういう意味から、これは公告でもいいのではないかというように了解されていると思います。
○野間委員 いいんじゃないか、ですからそれが私は問題だと思うのです。 それでは質問を変えますけれども、特許の場合には出願をいたします。そして公開し、審査をしてそして公告する、そういう一つの過程を経て特許権という登録によって権利が発生するわけです。そういうプロセスの中で考えてみますと、公開したその時期での特許権の権利性と申しますか、排他性とかいろいろな権利の強弱の問題と、そして公告後の権利性の強弱の問題というのはかなり違ってくるわけです。しかも時期的にも時間的にも平均して三年というずれがあるわけです。 そういう点から考えまして、私がまず聞きたいのは、公開した時点での特許権の権利の中身、特に侵害された場合どういう救済があるのか。公告後の救済の手段、方法、これは相当違いがあると思うのですが、どういう違いがあるのか、ひとつお答えいただきたいと思います。
○松家政府委員 お答え申し上げます。 現行特許法におきましては、出願公開がありましたときに、出願人は補償金請求権、これが認められます。一方出願公告がありましたときには、特許権が設定されたときとほぼ同様に差しとめ請求権、損害賠償請求権等、特許権と同様な強い保護が与えられております。一方、先ほど申しましたように、出願公開のときは差しとめとか損害賠償請求等は認められず、単にその発明が将来特許になった場合に補償金請求権が認められるという保護が与えられているにすぎないわけでございます。
○野間委員 そうですね。ですから公開後の権利性というのは非常に弱い。しかも補償金の請求というものは公告後しか請求権を発生しませんね。ところが一方では、公告後はまさに特許権そのものと同じだけの効果というか、差しとめ請求あるいは損害賠償請求、過失の推定、損害額の推定、さまざまな強い権利が発生するわけです。 そう考えますと、この試料の分譲の時期について、公開した時点で分譲できるのか、あるいは公告した後でなければ分譲できないのかということになりますと、侵害された側からすれば、救済に対して相当大きな開きというか違いがあるわけです。とりわけ微生物の場合には、一般のもので見える特許と違いまして、図面で見るとかあるいは形を見てこれは侵害かどうかというようなことでなくて、要するに寄託機関に寄託しなければならぬ。微生物というのは無数に培養もできますし、これを無数に変化させて、専門家に言うのもあれですけれども、無数に培養させてノーハウなり特許の中身を盗みとることができる、こういうことになるわけです。そしてそういうものを無数に培養させながら変化させていく。 そうなりますと、公開後に、仮にわが国に寄託して、それが試料の分譲ということで公開後に請求されてあっちこっちに行った。それがだんだんあっちこっちでいろいろな形で使われて侵害された場合に、それを防ぐ手段については、いま申し上げた時期がいつになるかによって相当な開きがある、日本から言えばそういうことです。 逆に条約の中身についてどっちでもよいというような考え方であれば、たとえば西ドイツあたりは公開した後にすでに分譲しておるわけでしょう。ちょっと物の本を調べてみますと、西ドイツの最高裁の判例ですか何かございまして、その中にはドイツではいま申し上げた公開後というのが確定しているように私は思うわけです。そうすると、ドイツから試料分譲の請求があったときに、わが国は公告後でなければならぬということが果たして条約上通用するのかどうか、もちろん争いになると思います。イタリア等についてもこれから加盟するわけですが、イタリアあたりでは過去から非常な問題のあった国でもありますし、そういう点で、将来確定した条約の解釈なり定義がなければ国際的におかしいことになるのではないか、こう思うのですけれども、これは特許庁それから外務省、条約を締結したときはどういうことになったのか、いずれにしてもお答えいただきたいと思います。
○松家政府委員 ただいま先生から御指摘ありましたように、出願公告後はほぼ特許後と変わらないような強力な権利が出願人に認められております。一方公開があっただけでは補償金請求権、これが出願人に認められるわけでございます。そういう事情からいたしまして、私どもとしましては、従来国内制度でとっておりましたように、出願公告後に分譲を認めるというのが妥当だと考えております。それは権利者の権利の保護、それから第三者の利害の調整の観点から、出願公告後に分譲を認めるという従来制度を続けるのが妥当だと考えております。 ただし、御指摘がありましたように、出願公開がありまして出願人が補償金請求権を行使するということも当然あり得ることでございまして、そういった場合については、分譲を認めるかどうかという問題について今後さらに鋭意検討してまいりたいと思っております。
○野間委員 鋭意検討されるのはやぶさかではないのですが、すでに先ほど外務省のお話でも、今年度中には発効するということ、しかもこれだけの問題があるわけですから、きちっとした、国際的にも統一をする必要があるのじゃないかと私は思えてならないわけであります。 関連して聞きますけれども、きょうの時点ではそういうように願望なり希望を聞いておきたいと思いますが、こういうふうに条約に基づく特許の出願と、同じ微生物でも国内の現行の運用に即して出願をするという二本立てがあるわけですが、そうすると、国内の現行の運用と条約上の運用とは、試料の分譲については同じ取り扱いをされる、こういうことになるわけですか。
○松家政府委員 お答え申します。 基本的には同じでございます。
○野間委員 次にお聞きしたいと思うのは、先ほど特許庁の長官も言われましたが、保管料金の問題です。 国内の現行運用では、毎年更新ということで毎年保管料を払うというふうになっていると思います。ところが、この条約では保管期間は三十年一括払い、これは寄託をした時点ですでに払わなければならない、こういうふうになると思うのです。これが果たしてそうなのかどうかということが一点、確認を求めるのと、それから生物特許委員会から弁理士会あての答申などを見ますと、三十年分一括して前払いしなければならない。そうなりますとかなり高くつく。先ほど十万円というお話がありましたけれども、前払いしなければならない、こういうことになりますので、国内の扱いとは相当違ってくるわけです。この料金をどのように決めるかというのは、国内でそれぞれの国が決めると私は思いますが、これは一括して払うということになりますと、国内のいままでの運用と比較しましてかなり配慮する必要があるのじゃないかと思うのですが、この点はいかがでしょう。
○川原政府委員 お答え申し上げます。 特許庁といたしましては、ただいまの御質問につきまして、本条約への加盟後に、直ちに国内の寄託制度を廃止して国際寄託制度に一本化するということは、過去十年間国内の寄託制度が運用されてきたということを考えますと、やはり出願人に非常に急激なショックを与えるということになると思いますので、これは避ける必要があろうということで、本条約への加入後におきましても、当面は従来の制度プラス今度の新しい国際出願制度というものを併存させてまいるようにいたしたいと考えております。
○野間委員 その次には保管期間の問題ですが、特許権の本来の消滅時効というのは国内では何年になっておりますか。
○松家政府委員 ただいまの御質問は特許権の存続期間の御質問だと解しまして、お答え申し上げます。 現行法では出願公告後十五年、ただし出願後二十年を超えることができないということになっております。
○野間委員 そうしますと、本条約では保管期間が三十年というふうになりますね。これは国際寄託当局に寄託するわけですが、国内の手続に従ってこれは違ってくると思うのですが、いずれにしても国内の運用に即してやった場合には十五年ないしは三十年、出願からは二十印ですね。ところが、今度のブダペスト条約に基づく出願の場合は三十年が保管期間ということになるわけですね。そうすると、これは十年の違いがあるということになりますと相当開きが出てくるのですけれども、国内の扱いとの整合性についてはどのように特許庁は考えておりますか。
○川原政府委員 条約によりますと三十年、それから現在の国内法によりますと、公告後十五年、出願後二十年ということで差があるわけでございますが、この点につきましては当面は二本立てという形でやってまいりますので格別の不自然さは出てこないというふうに思っております。 なぜ条約におきまして三十年という非常に長い期間を寄託期間というふうに定めておるかということでございますが、これは各国においてそれぞれ特許権等が消滅いたしました後でもその菌の分譲を得たいという企業なり研究者というふうな人が出た場合にも分譲できるような体制をとっておきたいということが、条約制定のときにいろいろ議論されたというふうに聞いております。
○野間委員 三点ばかりにしぼりまして、特許庁の見解があったわけですけれども、時間の関係で特許関係についてはこれだけにしておきます。どうも御苦労様でした。 あと、ワシントン条約について質問を続けたいと思います。 まず、外務大臣にお伺いしたいのは、この野生動植物の乱獲あるいは密猟等で、同じ動物あるいは生き物でありながら人類がこれらのものを絶滅の危機にさらしているというような深刻な状態があるわけですけれども、こういう事態をまず外務大臣はどういうふうにお考えになっておるかということを伺いたい。
○大来国務大臣 私も一九七二年のストックホルムの人間環境会議に出席いたしまして、その場でもこういう問題の討議が行われたわけでございますが、やはり人類共通の資産として野生動植物、絶滅の危険にあるものは保存するということが世界各国民の共通した責任ないし義務であろうと考えます。
○野間委員 そこで外務省事務当局、ワシントン条約の発効はたしか一九七五年、五年前だと思うのですが、主要先進国の締結状況はどういうふうになっておるのか、ひとつ簡潔にお答えいただきたいと思います。 〔奥田委員長代理退席、志賀委員長代理 着席〕
○関説明員 お答え申し上げます。 署名国が現在五十六カ国でございます。締約国が二月現在で五十九カ国となっております。
○野間委員 そういうことだと思うのですが、七五年に発効して五十九カ国がすでに締結をほぼしておるわけなんですね。調印で言いますと、七年前ということになると思うのですけれども、主要先進国は比較的早い時期に締結しておるというふうに私は理解しておりますけれども、これは間違いないですね。
○関説明員 そのように御了解いただいて結構かと思います。
○野間委員 冒頭に外務大臣の所信にもありましたが、こういう大変な問題について日本だけがなぜこんなにおくれたのかということであります。国際的にも、いろんなものによりますと、日本はどうしたのかということで大変な非難を浴びておる、こういうことでありますけれども、なぜこんなにおくれたのか、その原因について、ひとつ聞かしていただきたい。
○関説明員 先生御指摘のとおり、国会提出がおくれたことはまことに私ども遺憾に思っておりますけれども、何分にも自然保護のための国際協力というものは新しい行政分野でございまして、しかもその対象となります事項が非常に多くて、関係省庁の数も相当の数に上っているわけでございます。 そこで、どの事項をどの省庁が主たる行政官庁として処理するのか、またこの条約をそのまま批准しました場合に、影響を受ける業界につきましてどのような影響があるのか。それとまた、自然保護の要請等をどのように調整するかということが非常に大きな問題でございまして、それで関係業界と政府との間の意見調整に相当手間取ったというようなことが原因でございます。 いずれにいたしましても、御指摘のとおり、このような自然保護関係の条約は非常に重要でございますものですから、国会の御支援を得まして、できるだけ早く早期に批准を実現いたしたいというふうに考えております。
○野間委員 日本が留保した品目、留保する品目ですが、これはどういうものがあるのか、それを一つ一つについて簡潔に理由をお聞かせいただきたいと思います。
○関説明員 現在、九つの品目につきまして留保を付すように御審議をいただいているわけでございますが、まずナガスクジラを除きます八種につきましては、これを原料として輸入し、加工販売しております業界が存在しているわけでございまして、これがいわゆるべっこう業界とか爬虫類の皮革業界、それからジャコウジカの分泌物を原料といたしております生薬業界、こういう業界がございます。これらの業界は非常に零細なものも多くございますし、また原料で直ちに代替することがむずかしいというような面もございまして、このような原料の輸入がとだえた場合には、業界における打撃もきわめて大きくなるということが見通されたわけでございまして、社会的にも大きな問題になるというおそれもございましたために、留保をつけるということにいたしたわけでございます。
○野間委員 そこで、関連して、各国の留保状況全部について私はお聞きする時間がありませんので、留保品目の多いものについて幾つかどのくらいの品目を留保しておるのか、ひとつお聞かせください。
○関説明員 二、三例を申し上げさせていただきます。 たとえば、フランスは七種の品目につきまして留保いたしております。それからイタリアが五品目、西独が一品目でございます。カナダが十種類、こういう状況でございます。
○野間委員 わが国の場合、留保した品目は九品目ですね。 輸入状況の推移についてちょっと教えていただきたいと思うのですが、昭和五十年ごろくらいから見ますと、金額とかあるいは量において多くなっておるのかあるいは横ばいなのか、減っておるのか、その点についてお聞かせいただきたいと思います。
○水野説明員 通産省でございますが、私どもの関係はいまの九品目のうちでワニの関係とトカゲの関係とカメの関係と、それからカメの関係でもべっこうの関係四種類でございますが、この四種類につきましては、私いま手元に五十一年から数字がございますが、たとえばワニで申し上げますと五十一年がトン数で十一トン、通関統計でございますが、これが五十四年は同数の十一トンということになっております。ただ、金額で言いますと、その間のいろいろな物価上昇もございまして、一億円から一億七千万円くらいに上昇しております。 それからトカゲが三品目留保をお願いしておりますが、これは五十一年当時が六十トンが五十四年は六十二トンということでございます。ただ五十三年には八十トンほどの輸入がなされております。 それからカメの関係で、これはアオウミガメとヒメウミガメでございますが、これは五十一年当時百十六トン程度のものが五十三年には百六トン、そういう意味では横ばいでございますが、五十四年には百九十三トンとやや上がっております。 それからべっこうの関係は、五十一年から五十三年くらいまでほぼ四十トン程度でございましたが、五十四年は六十トン程度と上がっております。 私どもの所管の数字に関しましては以上でございます。
○野間委員 そうしますと、通産省の所管のいま挙げられた品目について、世界の取引の中で日本の占める割合というものが多いのでしょうか、そうでもないのでしょうか。
○水野説明員 世界の当該品目の取引はなかなか実は統計が世界的にございませんので、把握が困難でございます。ただ、感じで申し上げまして恐縮でございますが、いま言いましたもののうちのべっこう関係は、タイマイと称するカメでございますが、これは日本が製品輸入等も含めまして相当大きなウエートを持っておると伺っております。それから、ワニ、トカゲ、カメ、このあたりは、たとえばカメにつきましては、日本で言いますとこれは原皮の輸入ということになりますが、欧米においてはカメの食用に供する分野もございますし、比較が単純ではございません。
○野間委員 日本の場合には大変に買い付けが多いということまで言われるわけですけれども、現地での乱獲とかあるいは密猟、これに日本人が関与しておるというようなことも指摘されて国際的な世論の非難も浴びたやに私は聞いておるのですけれども、こういうあたりについての実態の把握はしておるのかどうか。
○関説明員 先生御指摘のような事実につきましていろいろ報道がございますけれども、外務省といたしましては必ずしも実態を把握するまでに至っておりません。
○野間委員 この際ですから後からまた中小企業の皆さんの業者の救済についてお尋ねしますけれども、やはり乱獲とか密猟、こういうものについてまだ実態を把握していないというところに一つ大きな問題があるんじゃないかと思いますが、今後これらについての対応策、これを考えるべきだと思いますが、どうなんでしょう。
○関説明員 基本的にはそれぞれの国の国内法でそのような事態は取り締まりあるいは管理されるべきかと思いますが、先生御指摘の点にはごもっともなことがございますので、外務省といたしましても十分気をつけて今後検討し調査を進め、あるいは必要に応じまして対策等も進めてまいりたいというふうに考えております。
○野間委員 条約の八条についてお聞きしますが、不当な取引の防止、その場合には政府が適当な措置をとるという規定がありますが、どういう体制で臨み、そしてどういう措置など考えておるのか、ちょっと具体的にひとつ条約の具体化という点でお聞かせいただきたいと思います。
○関説明員 政府といたしましては、外為法あるいは貿管令によって担保されるような措置をとることを、そのような場合には検討いたしたいと思います。
○野間委員 また九品目について戻りますけれども、これの留保について、ワシントン条約の目的とかあるいは精神からいえばできるだけ早く留保の解除も必要ではありますけれども、同時に問題なのは、先ほどから同僚議員からも論議がなされましたように、現実にこの分野で営業を続けておられる方々の利益をどうして保障していくのか。これが先ほどのお話でも国会に出すまでに五年間かかった一つの理由でもあったやに言われましたけれども、これらの対応策について、つまり加工業者、べっこうから爬虫類のいろんな加工業者の皆さんに対する関係で、どうやって業者の利益を守っていくかという点で具体的にどのように考えておるのか、何を考えておるのか。増養殖等を含めてひとつ対応策をお答えいただきたいと思います。
○関説明員 いろいろな官庁がこの問題には関連してまいりますけれども、外務省といたしましては、やはり基本的には増殖なりあるいは養殖を今後精力的に進めていくという態度でこの問題に対処していきたいと考えております。そのような見地から、五十五年度の予算にも三千余万円の予算を計上させていただいておりまして、この資金によりましてFAOを通じてトカゲの増殖の可能性につきまして調査研究を進めていきたい、このように考えております。
○野間委員 先ほどずっと答弁を聞いておりましたら、各省庁所管の品目ということで何かばらばらのような感じがするわけです。外務省、通産省、農水省等々、五十五年度から予算をつけたというふうな話がいまありました。また同僚議員の質問にも幾つか各省庁にわたりましてそういうわずかな予算をつけた話もあったのですけれども、世界各国ではこれらについてはかなり本腰を入れて以前から力を入れてやっておるように思いますが、関係省庁で組んだ調査やあるいは研究のための費用、これらについて、農水はきょうは見えてないのですか、外務省でわかったら一括してお答えいただいてもいいのです。
○関説明員 通産省におきましては、ウミガメ及びワニの増養殖につきまして適当な地域の選定、それから具体的な実施方法等につきまして調査するという計画を現在持っておりまして、他方、農水産省におきましても予算を計上いたしまして、その担当品目につきまして調査研究を推進することになっております。外務省といたしましては、通産省、農水産省その他関係官庁とよく十分に連絡をとりながら、政府といたしましてできるだけ統一的な対策が推進されるように心がけてまいりたいと思います。
○野間委員 増養殖など、この調査研究についての予算の計上ですが、これは何年度から、五十五年度という話がありましたが、これは初年度ですか。いままではこういう対応はしてこなかったのですか。
○関説明員 外務省所管の三千五百万円分につきましては五十五年度が初年度でございます。
○野間委員 通産省。
○水野説明員 通産省の方も五十五年度から増養殖の予算を千五百万計上いたしたわけでございますが、ただそれ以前からも開発輸入促進費という予算がございまして、これを活用することによりまして昭和四十九年ぐらいから具体的に増養殖の可能性の検討は行っております。
○野間委員 大体遅いわけですね。対応がきわめて鈍いというか遅い。業者の皆さんも、ワシントン条約は結構だ、しかし、われわれ業界の営業も十分配慮してくれという強い要請が出ておるわけで、むしろ対応が大変遅いというふうに私は思うのです。七五年、このワシントン条約が発効した時期から具体的に対応を進めるべきものであったと思うのですけれども、大変におくれておる。これは業者の皆さんも心配するように大変切実な問題ですので、政府の対応について遅きに失するとすら私は思うのです。いまからぼつぼつ研究調査するという段階です。 ですから、そういう点について対応が遅かったというように私は思うのですけれども、その点の反省があるのか。あるいは今後積極的に取り組む姿勢があるのかどうか、その点についてお答えいただきたい。
○関説明員 先ほども答弁の中で申し上げましたけれども、何分にも新しい行政分野のことでございまして、関係業界がどのような影響を受けるのか、その点につきまして見きわめるということがなかなか時間がかかるということもございまして、関係業界との意見の調整に相当時間がかかっておりまして、そういうこともございまして、御指摘のようにあるいは対応策が遅かったというような御批判もあろうかと思いますが、今後そのような御批判を十分念頭に置きまして対処してまいりたいと思います。
○野間委員 この点について外務大臣、いかがですか。
○大来国務大臣 私も余り詳しくはございませんが、確かに新しい分野で、先ほどから聞いておりましても数字とか業界の実態の把握が余り十分じゃなかったのかと思います。しかし、中小企業等にいろいろ関係のあることでございますし、一方国際的な義務は果たさなければならぬということかと思いますので、今後こういうことで大分そういうつながりといいますか、基礎的な情報をだんだん役所の方もつかみかかっておるようでございますから、今後さらに早めるように政府としてもやっていくべきだと思います。
○野間委員 留保品目の養殖などについて聞きますが、まず外務省、日本が留保した九品目ですが、世界的にこれらについて養殖などによる対応策が進んでおるという例がかなりあると思うのですけれども、これ認識しておるかどうか、それで具体的にどこがどういうふうにやっておるか、お答えいただきたい。
○関説明員 お答え申し上げます。 外務省が入手しておる情報によりますと、メキシコがカメ、それからタイがワニの増殖におきまして顕著な業績を上げているようでございます。
○野間委員 通産省からもらった資料にも、たとえばワニについてインドネシア約三百頭、これは養殖状況ですね。シンガポール約五百頭、タイが二千五百頭から三千頭ですか、パプアニューギニアが千四百頭、相当養殖状況、ワニについてやっておるわけですね。アオウミガメについて言いますと、カイマン島約十万頭、これは通産省からもらった資料ですが、通産省、これ間違いありませんね、出所は業界海外調査及び海外資料というふうにありますが……。
○水野説明員 養殖はいま先生おっしゃられた数字、間違いございませんけれども、これは先生おっしゃられましたように、それから先ほどちょっと私御説明申し上げましたように、昭和四十九年以来業界等で東南アジア諸国を中心に視察をいたしております。そのときに行った場所における養殖数でございますので、その国の、いまおっしゃられたのがインドネシアの全体を示すとかそういうことではございません。
○野間委員 そうすると、もっとやはり進んでおるかもわかりませんね。それに比べて日本の場合にはこれから調査研究の端緒というような段階で、大変心もとない感じがするわけです。 そこで、これからもし日本国内といいますか、日本国の中でどこでどういう養殖を、何をやっていくのか、これは野生動物が中心であるがゆえに非常に専門的にもむずかしい面があろうかと思いますけれども、具体的にいま通産省あるいは農水、外務でもいいのですが、日本の領域の中で増養殖、そういうものを計画しておるとするならば、それは何をどこでやろうとしておるのか、構想についてもひとつお聞かせいただきたいと思いますが……。
○水野説明員 私どもが来年度予算で実は検討しようと思っておりますものは、ワニの養殖とタイマイの養殖をとりあえず検討いたしたい、こう思っておるわけでございますが、これらはいずれも日本国内での養殖というのは比較的困難ではなかろうか。そういう意味で、私どもの予算の内容も、ASEAN諸国を中心といたしまして各国の養殖状況等を見ながら、むしろ各国で養殖が今後どういう形で進んでいくのか、日本としてはどういう形で協力できるのか、あるいは日本の企業がどんな関係を持ち得るのか、そんなことを検討したいというふうに考えております。 それから国内の問題としましては、これは私どもの管轄でございませんが、私どもいろいろないままでの議論の中で、農林水産省の方で小笠原の方で現在アオウミガメ等についていろいろ研究をされておる、こういうふうに伺っております。
○野間委員 これは国際的な協力がなければなかなかその成果を上げることはむずかしいと思うわけです。そこで一例を挙げますと、国連ですが、こういうようなところで国際的な協力体制をとって推進するというふうな構想なり考えはないのかどうか、外務省。
○関説明員 国連におきましてもFAOなどを中心にいたしまして対策がとられつつございまして、そのような国連の動きに日本も協力するという見地から、先ほど申し上げました三千五百万円の本年度の予算で支援しようという考えでいるわけでございまして、これはバングラデシュにおきましてトカゲの増養殖をFAOに研究調査してもらうというための経費でございます。
○野間委員 ところで専門家の問題ですが、日本には、こういう新しい分野ではありますが、専門家がいるのかどうか、あるいは各省庁、専門家をどのように養成していくのか、何か構想があればこの際聞かしてください。 〔志賀委員長代理退席、奥田委員長代理着席〕
○関説明員 先生御指摘のように、専門家の数がわが国におきましても必ずしも多くないわけでございます。そういう事態を踏まえまして、先ほど答弁申し上げましたように、トカゲにつきましてはFAOにその調査研究を委嘱するということを考えておるわけでございまして、他方日本におきましても専門家が得られる品目につきましては日本政府自体でその調査研究の計画を今後進めていきたいと、そのように考えております。
○野間委員 ですから、研究者、専門家ですね、こういうものは非常に数が少ないというかほとんどないというのが現状ですので、どうやってこういうものを育てていくのかということが、やはり今後の増養殖などを考える場合に、国際的なそういうような協力と並行して必要ではなかろうかという点の質問なんですがね。
○関説明員 先生御指摘のように、確かにわが国におきましてもあるいは国際的にも、一般的に専門家の数は少ないわけでございますものですから、そういうような事態をできるだけ早く解消するために、今後適当な施策が講ぜられるように所要の対策をとってまいりたいというように考えるわけでございます。
○野間委員 所要の対策の中身を聞きたいのですが、きょうは恐らくこれ以上出ないと思いますので、次に進みます。 オランダについて言いますと、トカゲとかワニ、これはよく使っておるというふうに聞きますが、いかがですか。
○関説明員 オランダは加工貿易でその原料を使用いたしております。
○野間委員 オランダは、たしかこのワシントン条約、に入ってないと思うのですが、いかがですか。
○関説明員 御案内のとおり未加盟でございます。
○野間委員 そうしますと、ECの中では、オランダがトカゲとかウニとか使うにもかかわらず、なぜこれに入ってないのか非常に不可解に思うわけですね。特にこの条文の読み方ですけれども、ちょっと聞きたいのですが、第十四条の3、これは三十七ページのところです。何かこの文言を見ておりますと、たとえば最後の三行、「これらの同盟又は地域的な貿易機構の構成国間の貿易に関するものにいかなる影響も及ぼすものではない。」この「地域的な貿易機構の構成国間」というのは、たとえばECなどがこれに該当するんじゃないかというように私は読んでおるのですけれども、ECの中でこれに加盟しておっても、オランダが加盟しておらぬ、そうすると、ECの中では取引が自由だということになりますと、しり抜けと申しますかトンネルになるんじゃないかという感じがして、私これを読んだのですけれども、これは間違いですか。
○関説明員 確かに、そのような可能性があることは指摘されております。
○野間委員 そうなりますと、これまたここにこの条約の一つの問題があるわけですね。だから、EC圏内においては取引は自由だ、たとえばオランダが入ってないということでどんどんとってきて、そして、ECの中で自由に商取引をするということになりますと、せっかく努力をしてつくり上げつつあるものが大変な結果になるんじゃないか。だから、オランダについて、ごねは許さない、やはり世界の人類の悲願ですから、こういうことがないように日本からもきちっと物を申すということが必要じゃないかと思うのです。
○山田(中)政府委員 条約の文言の関係もございますので、私の方からお答えいたします。 野間先生御指摘のございましたように、確かに十四条で例外規定を置いておるわけでございまして、その中の3項で、たとえばECのように共通関税でございますとか、関税を撤廃しておったりその中での輸出入が自由にされておる場合には、それにこの条約が影響を及ぼすものではないという点はあるのでございますが、オランダで現に生息いたしておりますものにつきましてはそういう弊害が出てくるかもわかりませんが、オランダが輸入しますものが今度ECのこの条約の締約国の中に入ってまいります場合には、十条の非締約国との関連の規定が生きてまいりますので、必ずしも、非締約国であるオランダを通じてこの条約の規制が全部抜け穴になるということではなく、ある程度の歯どめがかかるということでございます。 ただ、いずれにいたしましても、オランダが締約国になった方が、この条約の適用上完全な姿になるということは事実でございますので、わが国が御承認いただきまして締約国になりました暁には、やはりオランダに対しても加入するように働きかけるべきものであると考えております。
○野間委員 それじゃ、最後に外務大臣に、いまこのワシントン条約について問題点を私指摘して、いろいろ答弁をいただいたのですけれども、冒頭大臣も言われたように、まさに絶滅寸前の動植物あるいはそういう危険性のあるものをどう保護していくかということ、同時に、営々として中小企業の皆さんがこれに依拠して今日まで営業や経営をやってこられた、そういう方々の利益をどう守っていくのかということの接点を見つけ調和を保っていくということが、大変重大な課題であるというように思うのです。それにつけて考えましても、先ほどからいろいろお聞きしたように、国内の対応というか体制が大変におくれておるというふうに私は言わざるを得ないと思うのですけれども、外務省は直接の所管ではないとしても、やはりこの条約を効果的に実施するという立場から、各省庁にこれをきちっとやらせて条約の実効性をさらに発展させていくという点で何か所感がありましたらお聞かせを願って、私の質問を終わりたいと思います。
○大来国務大臣 このワシントン条約の批准の促進につきまして、前にワイルドライフ、野生動植物の専門家の方々からの陳情を受けたこともございますし、国際的に非常に関心の強い問題だと思っておりますので、先ほど来いろいろ答弁もありましたように、従来の行政から言うと新しい分野でなかなか十分に把握していないというような点があるようでございますが、外務省の立場としても、こういう国際条約を守るということが国際的に日本に対する信用を強めることにもなると思いますし、国内の産業との調和を考えながら、各省それぞれ真剣に取り組んでもらうように要望いたしたいと思います。
○野間委員 それじゃ、切りがよいようでございますので、私の質問はこれにて終わりたいと思います。
○奥田委員長代理 渡辺朗君。
○渡辺(朗)委員 最後の質問者になりました。皆さんもお疲れでございましょうし、私は三つの条約について質問をさせていただきます。ブダペスト条約、アルゼンチンとの文化協定、日本・フィリピンの友好通商航海条約でございます。時間も相当たちましたので、それぞれお伺いした後、担当の方はお引き取りいただいて結構でございます。 最初に、ブダペスト条約の方からお聞かせをいただきたいと思います。 いままでの説明や答弁を聞いておりまして、なかなか大変大事な条約だということがわかってまいりました。同僚議員の質問とあるいは重複するかもわかりませんが、なるべく避けまして、一、二だけ聞かしていただきたいと思います。 いま微生物工業といいますか、そういうことで特許を受けている人々、これが世界の三分の一は日本人によるものであるということを聞いて驚いているわけでありますが、現在トータルでわが国からの登録件数はどのくらいありますでしょうか、そしてまた、世界ではどのくらいの特許がすでに登録されているのか、ここら辺を教えていただきたいと思います。
○川原政府委員 お答えいたします。 最初に、日本から外国へ微生物関係の特許出願がどのくらい行っておるかという点についてお答え申し上げます。 日本から外国への微生物に関する特許出願の総件数でございますが、昭和五十年から昭和五十二年末までの三年間を例にとって申し上げますと、合わせて二百七十一件でございます。主な国といたしましては、アメリカへ二百四十四件、イギリスへ百八十一件、西独へ百七十七件ということになっております。 それからただいまお尋ねの、世界じゅうでどのくらい微生物関係の特許の蓄積があるかということでございますが、これは国によりまして特許権の存続期間その他いろいろまちまちでございまして、必ずしもはっきりと私ども数字をつかんでいない、はっきりわからないというのが実情でございます。申しわけございません。
○渡辺(朗)委員 それから、どのように工業化されたりあるいは工業的目的に使われているのかということをいろいろ聞いておりまして、私の率直な感じですけれども、これは一種の未来産業の分野だというふうな印象を受けておりますが、そのような可能性というものを非常に含んだものというふうな印象は正しいのでしょうか、いかがでございましょう。
○川原政府委員 現在地球上にあります微生物の数というのは非常に膨大なものでございまして、一説によりますと数百万種類というものがこの地球上に存在するというふうに言われておるわけでございます。土の中、海中、空中というところに天然の形で存在しておるもの、それから土の中等で天然の形ではございますけれどもそれを取り出すためには非常な技術を要する、分離のための非常な技術を要するといったようなものもございます。 そこで、日本は先ほどから申し上げておりますように微生物に関しましては世界的に水準の高い国でございまして、重複いたしますけれども、アメリカ等の先進国で日本人の特許出願が占めております割合は大体三割前後ということでございます。日本は御承知のように資源に乏しい国ではございますけれども、微生物工業に限って言いますと、微生物自体は日本の国の中に無限に存在する、それをいかに有用な微生物を探し出すか、分離して探し出すか、また探し出したものにいろいろな加工をいたしまして新しく創製するかということでございまして、非常に手間や暇やお金のかかる工業ではございますけれども、ある意味ではこういった産業というのは日本の国民性等にかんがみまして非常に日本に適したものではないかというふうにも考えられるわけでございます。 それで、ただいま微生物工業というのは未来産業という性格があるのではないかといった御質問でございますけれども、私はそのとおりだというふうに考えておる次第でございます。
○渡辺(朗)委員 そうであるとすると、わが国においてもっともっと開発を助成してもよろしいものではあるまいか、研究を促進してもいいのではないかと思いますが、政府の側としてどこがどのような助成策を講じておられるのか、おわかりでございましたら教えていただきたいと思います。通産省の方あるいはきょうはどこから来ていらっしゃいますでしょうか、それぞれありましたらお教えいただきたいと思います。
○今村説明員 お答え申し上げます。 微生物の利用技術は、大げさに言いますと人類の歴史と一緒に始まった、人類の繁栄とともに発展してきたということが言えると思います。その範囲が非常に広い。お酒をつくる醸造から廃棄物の処理にまで使える。それから今後ももちろん食糧やエネルギー問題にも関連して、人類社会の存続、発展のための大きな役割りを果たせる。そういう意味で、先ほど先生がおっしゃった未来産業ということはそのまま当てはまると思います。 特にわが国の場合考えてみますと、この微生物の利用は、たとえば醸造、それからアミノ酸、調味料、抗生物質の生産等というような分野では世界をリードしておる。それから微生物の利用方法でございますが、たとえば抗生物質や酵素のような特定の物質の製造に限ってみましても、微生物学とかそれから化学、工学、そういういろいろな分野と網羅した広範かつ総合的な科学技術によって基礎を支えなければならない、また支えられてきたということでございます。 したがいまして、わが国におきましても通商産業省さん、それから農林水産省さんというようなところの付属の研究機関はもとより、民間の製薬、食品産業関係の会社の研究部門において基礎研究から開発研究まで相当努力が積み重ねられておる、積極的に進められておるということでございます。 そこで科学技術庁としましては、科学技術庁のこの関係の活動でございますが、まず関係省庁の研究費について調整を行うという役目を仰せつかっておりますので、予算要求の段階におきましては微生物に関する研究についてはその重要性に十分留意して調整しております。 それから研究自体の活動でございますが、理化学研究所というのが科学技術庁の付属機関としてございますが、特殊法人であるわけでございますが、そこにライフサイエンス推進部というものがございまして、そこの推進部の活動としまして微生物に関する研究を積極的に推進しております。また、特別研究促進調整費、そういう特別の予算をいただいておりますので、これをもちまして総合研究等を実施してきております。 ちなみに五十五年度予算政府原案というものについて若干申し上げますと、理化学研究所ライフサイエンス推進部に対しては研究推進管としまして、そのテーマは新微生物利用技術の開発と申しておりますが、約五千万、それからわが国における微生物研究を支援するために微生物の系統保存という仕事が非常に重要でございますので、そのための施設を理化学研究所に建設させるということでございまして、総額約五億四千万ほどでございますが、五十五年度の予算としては三億九千万ほど支出するという予定でおります。 科学技術庁関係から申し上げることはこれで一応終わらしていただきます。
○渡辺(朗)委員 時間の関係で、ほかの省庁からの御説明はお聞きしたいけれどもちょっとやめますが、どうなんでしょうか、これはそういうふうに重要だ、将来有望だと言われながら、どこが統一的に指導するといいますか、そういうような問題をハンドルしておられるわけでしょう。ここら辺は科学技術庁の方、どのようにお考えでございます。どこがやっておられます。
○今村説明員 お答え申し上げます。 科学技術庁としましては、微生物産業というその特定の分野だけを目標にいたしておりませんで、ライフサイエンスというふうに広いとり方をしております。それで、微生物の分野はその中の一部に入りますが、ライフサイエンスに関しましては、特に先ほど申し上げた理化学研究所のライフサイエンス推進部というのを通じましていろいろな活動を行っております。 なお、個々の産業に直結したような分野になりますと、これは科学技術庁というよりは、それぞれの関係の省庁がございますので、立場上そういうところにお願いするということになると思います。
○渡辺(朗)委員 どうも、有望である未来産業的要素、可能性を含んでいると言いながら、ではそこら辺どう進めるかとなるとそういうふうにばらばらである。方針もできていないように受け取られます。これで果たしていいんだろうかなと私思います。 外務大臣、担当外かわかりませんけれども、どうでございます、こういうふうにばらばらでいいのでしょうか。
○大来国務大臣 私も国際的な研究者の会議に二、三出たことがございまして、マイクロバイオロジーですか、これは日本は、たとえばドイツとかその他の国に比べて一けた多い研究者を持っている、この分野の研究活動が圧倒的に盛んだという話を聞かされたことがございます。関係する分野は、たとえば醸造ということになると大蔵省だとか、農林関係にもありましょうし、非常に多岐にわたっておるので、そういうものを統一するのがいいか、それぞれの産業、行政部門で担当して、それぞれの分野で発展していくということ、まあ科学技術庁あたりが、できれば全貌をある程度つかんでいくとか、新しい研究の後押しをするとかいうようなことがよろしいのかもしれませんが、何しろ私の所管外の問題でございますから……。
○渡辺(朗)委員 少なくともこれはコーディネートするということは進めていただきたいと思います。その点要望いたしまして、ブダペスト条約については、以上、終わりでございます。どうも御苦労さまでした。 次に、アルゼンチンとの文化協定の問題に入らしていただきます。 いままで同種の文化協定というのは何か十七カ国と結んでいると言われておりますが、アルゼンチンとの、現在、たとえば昨年度における文化的な交流というものはどういうものがあったのでございましょうか。特徴的な項目だけでも御説明いただければありがたいと思います。
○平岡説明員 お答えいたします。 文化交流には実に各種の分野があるわけでございますが、アルゼンチンにつきまして五十三、四年度あたりをざっと申し上げたいと思います。 一つ最初に参りますのが各種の芸術交流でございまして、演劇とか音楽とか、そういう舞台関係のものでございます。これは五十三年にさかのぼりますれば、宝塚と、宝生流の能でございますね、この二つが行ったのが大きかったものでございます。五十四年、去年は、ジャパンデーというものに参加いたしましたり、文化講演会、生け花コンクール、このようなものがございましたし、その他いろいろな文化祭がございました。これが芸術交流の主たる出来事でございます。 人物交流につきましては、五十四年、去年でございますが、こちらからはバレーボールチームが参りましたし、向こうからは有名な小説家のボルヘスが参りました。五十二、三、四年につきましてはここら辺が大きいところでございます。 三番目に、留学生。これは文部省の所管しておりますところの国費留学生の枠が、わが方は五名アルゼンチンにございますので、五十二年も五十三年も五名ずつ参っているわけでございます。 そのほか、スポーツの交流につきまして、五十四年度に、これは大体民間のものでございますけれども、ジュニア世界自動車競技選手権大会というものに派遣いたしましたり、五十四年にまた向こうから参りましたのには、サッカー・ジャパン・カップ、世界剣道選手権大会、こういうものがございます。こういうスポーツ交流がございます。 あと主なものでは、日本語及び図書寄贈でございまして、図書寄贈につきましては五十三年が二件、五十四年に四件。現地日本語講座講師、現地で雇っております日本語の先生に国際交流基金が謝礼金を出しておりますし、日本語教育につきましての教材の援助も五十三年に三件、五十四年に四件、こういうふうにございます。 そのほかに、日本語関係では、弁論大会を助成いたしましたり、成績優秀者を日本に呼びましたり、現地の日本語講師の研修会への招聘に一名割り当てられたり、こういうような日本語関係のがございますし、最後の図書寄贈につきましては五十四年に、アルゼンチンのコルドバにございますコルドバカソリック大学に国際交流基金が図書を寄贈したり、そのほか学術交流も若干行われている。 これらがアルゼンチンとの過去三、三年の間における主たる交流でございます。
○渡辺(朗)委員 情報文化局からいただいた三月二十九日付の資料を見ますと、去年なんというのは余りぱっとしておりませんね。長期派遣でバレーボールの指導員一名それから文化人の招聘一名なんという程度であって、余りぱっとしてないと思うのですね。留学生五名。日本人学生の派遣、これはゼロのようでございますね。総理府の事業も、青少年交流なんかではゼロ。地方自治体から行っておりますね、それが十四名ぐらい。それから在外公館の文化事業もいろいろやっていらっしゃるようですけれども、どうも余りぱっとしたような感じを受けません。これは恐らく距離的にも遠いところであるし、それからこの協定なるものも、ほかに十七もあるようでありますけれども、予算というようなものはついておらぬような文化協定でございますから、限定された活動しかできないであろうということはよくわかります。しかし、ずいぶん少ないという率直な印象を私は受けました。 これは日本という国のイメージなんですけれども、相手国にどういう形で形成されていくんだろうか。文化交流や何かもっともっと頻繁に行われる、活発に行われることの前に、商品や商業活動ばかり先行するということになってしまったらどのようなことになるだろうか。この点については、昨年の十三月にたしかわが国の中南米大使の会議も行われておりました。記録を読んでみたら、その中で、文化交流を充実させることによって、日本と言えば商品と結びつくイメージを打破する必要があるということを報告されているように私は読みました。 こういう観点から考えてみますと、せっかく文化協定を結ばれた、だったら、土地柄も大変遠いところかもわかりませんけれども、これからどういうことをやっていくべきかという具体的なプログラムが当然あってしかるべきだと私は思いますが、どのような計画なりあるいは抱負なりをお持ちでございましょうか。
○平岡説明員 先生御指摘のとおりでございまして、私どもも、現在の中南米、アルゼンチンも含めましての中南米との文化交流の水準はまだまだ余りに低い、これは何とかふやしていきたいというふうに考えております。 現在、中南米ひっくるめまして国際交流基金の事業の中南米への割り振りを見ますと、八%前後くらいのところでございます。しかしながら、中南米につきましては日系人という存在もございますし、日本の文化というものを伝播していく上に日系人も一つの重要な媒介になるわけでございますし、中南米との諸関係が御指摘のように余りに経済が先行しているという面は何とか是正しなければならないと考えております。 世界の開発途上国の中でも、アジア、中近東のようなところの比重が非常に大きいので、それに押されている。何とかしてパイ全体を大きくしなければそれぞれ中南米に行き渡るものも少ないわけでございまして、私どもも国際交流基金の増資とか、そのほか一般の予算の増額に努めておりますが、まだまだ足りないことは事実でございます。 今後の問題につきましては、中南米は第三世界の中でもかなり水準の高いところでございまして、これらの国とは余り単純な交流にとどまらず、かなり芸術性もある、しかしまた娯楽性にも富んだようなもの、たとえば五十三年の宝塚などというのは非常な成功をおさめたわけでございまして、このようなものは非常に中南米に適しているという印象を得たわけでございますが、今後このようなもの、それから宝塚のような大きな団体は非常にお金がかかるわけでございますから小型の音楽の集団のようなものもよろしいし、展示等につきましても非常な古美術というよりもむしろ新しい近代美術の方がいいのではないかというような感じを持っております。非常に地道な日本研究のようなものにつきましては先進国ほどにはまだ進められないけれども、そのような視覚、聴覚に訴えるような芸術交流というものが非常に重要な地域ではないかと考えております。
○渡辺(朗)委員 それから、昨年のUNCTADのマニラ総会でも大平総理は人づくりのための国際協力、これに重点を置くのだ、そういう援助方式というものを非常に強調されました。文化協定などというものが、そういうような日本の総理大臣の対外的に発表された、ステートメントが行われた、その後に持たれたということになってくると、当然やはり私は人づくりのためのさまざまな計画というのは用意されてしかるべきだと思うのですけれども、いかがでございましょう。何かお持ちでいらっしゃいますか。
○平岡説明員 御指摘のとおり、去年のマニラにおきますUNCTAD総会以来、人づくりというのはわが国の諸種の国際協力の中で大きな比重を占めているわけでございます。ただ、文化協定そのものについての関連で申し上げれば、これは主として奨学金によりますところの留学生、この留学生の受け入れというところでございまして、先ほど申し上げたように毎年五名の枠、これも将来どんどん拡大することをアルゼンチンに限らず期待しているわけでございますけれども、文化協定そのものは総合的な、われわれ水平的と申しますか、その相手国との交互の交流を主眼としております関係上、開発途上国に対する援助そのものにつきましては、いまのような奨学金のほかは余り大きく変わるところはないわけでございます。 したがいまして、アルゼンチンへのケースをとりますと、この国への人づくりの対策はやはり主として経済協力の面、技術協力の面、こういうことになるわけでございまして、その辺につきましては経済協力局から別途補足してもらいたいと存じます。
○梁井政府委員 アルゼンチンに対します人づくり協力、いわば中核をなすと言えますJICAベースの技術協力でございますが、私も五十四年の数字は持っておりませんで五十三年の数字が一番新しい数字でございますが、五十三年におきましてはアルゼンチンから研修員を四十名受けております。日本から専門家が二十四名行っておりまして、この数字は日本のJICAベースの技術協力の中では約二十七位になっております。 それ以外の人づくり協力関係の技術協力といたしまして、現地にいろいろとプロジェクトがございますが、現在行っておりますのが健康管理システムというセンターをアルゼンチン側がつくりまして、そこに当方から専門家が参りまして、御指摘のように日系社会を中心にしているわけでございますけれども、ブエノスアイレスの中の周辺部分につきまして健康管理システムのモデル地区をつくりまして、地域保健活動というものを日本の専門家が指導しているということをやっております。 それ以外にも、昨年アルゼンチンの大統領が見えましたときに、技術協力の漁業訓練センターであるとか資源開発調査の要請があったわけでございますけれども、これは五十五年度におきまして日本側から調査団を派遣するということを考えております。
○渡辺(朗)委員 この文化協定の提案の趣旨にもありますけれども、こういうものを結ぶことによって相互理解、友好関係の一層強化に資するところ大であるから結ぶのだ、こういうことになっておりますね。どうでしょう、これはいままでほかにも結んでおられるわけでありますが、実績として、このような文化協定を結んだがゆえに、またそのことを契機にして、言うなればシグニフィカントリーにそういう成果が上がった、交流が進んだというのはございますか。
○平岡説明員 まことにむずかしい御質問でございますし、文化関係のことは目に見える数字にあらわしにくい効果というものがあると存じます。ただ二点だけは私どもこの際申し上げ得ると思います。 一つは、文化協定が結ばれたというそのこと自体が両国民に互いに非常な親近感を与えるという比較的短期間の問題がございます。しかし、それ以上に、国によりましてでございますけれども、協定がないと、たとえばベルギーのケースなんかそうでございますが、日本の国と協定がございませんとベルギーの文化交流関係の予算が使えない、そういう制度をとっておる国が幾つかあるわけでございまして、これは一番極端なケースでございます。協定があることによってかなりな程度まで文化交流関係の予算がその国との関係で支出できる、したがいまして、こういう国におきましては協定がございませんと全く日本側の一方的な予算支出に終わってしまって十分な相互交流にならないという問題がございます。したがいまして、こういう国とは、たとえばベルギーと日本との間にございますような幾つかのプログラムは協定なしには実現し得なかった、そういうふうに考えますときに、これは非常に交流を可能ならしめた重要な基礎であるというふうに考えられます。 やはり相互理解と友好関係というものは、もちろん一時的には広報関係の措置というのが一つあるわけでございまして、たとえば写真展とか通常の広報映画のようなものを通じまして、どういうふうにして現在相手国の国民が暮らしているのかということを理解させるというような効果が広報関係であるわけでございますけれども、やはり文化という面にわれわれ別の意味を見出しますのは、文化の理解ということを通ずるのが一番相手国の国民に対する深い理解になるのではないかというふうに考えるわけでございます。すなわち、文化の中にはその国民の価値基準、その国民の気質、理想、すべてのものが含まれているわけでございますので、深い相互理解というものはやはり文化を通ずるほかないのではないか、このように考えておるわけでございます。
○渡辺(朗)委員 文化を通じて相互理解を大いに促進する、いま平岡さんのおっしゃった点、私も全面的に賛成でございます。 そこで大臣に一言お聞きしたいのですけれども、どうでしょうか、いままでの日本外交というとすぐ経済外交とか資源外交とかいろいろ言われる。またそれがまかり通る。それも大事だけれども、もうそろそろ文化外交とでもいうべき方向に一つの力点を移していくべきではないのでしょうか。そういうお考えは、外務大臣は、どのようにお受け取りになりますでしょう。
○大来国務大臣 確かに日本の国際的な役割りもだんだん大きくなってまいっておりますし、幅の広い交流が必要だと思います。従来ですと、経済、商売が先に立つというイメージがかなりあったように思います。 ただ、文化交流もいろいろな面があると思いますが、相手国のニーズといいますか要望からいうと、日本に期待する面で、いわゆる技術の移転といいますか、日本がどうして先進国から進んだ技術を吸収して自国の経済を発展させたか、そういう経験だとか、それから現実に日本の進んだ技術を自分たちの国の建設に役立てたいというような要望がございまして、やはり非常に抽象的な文化ということだけでなくて、そういう相手国、特に貧しい国々でございますから、経済発展というものを非常に重視しておる。その場合の担い手はその国の人々でありますので、先ほども出ましたそういう意味での人づくり、その中でも特に生産とかインフラストラクチュアに役立つ技術とか、いろいろな面で、その国の発展を促進するような知識を移転する、そういうことをもう少し組織的にやる、これも広い意味での文化外交と言えるのじゃないか。ある意味では生産的文化外交、そういう名前があるかどうか知りませんが。 それからいま平岡参事官が申しましたようなその国の歴史だとか価値観だとか、より深いものを理解する、あるいは日本について理解してもらう交流、従来以上にウエートを置いていくことは必要だろうと考えます。
○渡辺(朗)委員 この問題についてはこれにて終わりますけれども、いま大臣もおっしゃったように生産的文化外交でも結構であります。これは大いに進めていただきたいと思います。と同時に、やはり日本の国民のためにもそういうアプローチが、文化という問題が非常に大事であろう。最折の情勢というものは、イスラム世界との、異質な文明との衝突でもございますし、そういったものに対する理解の尺度みたいなものをこちらが持たなければいけないし、私はそういった面で、単に生産的な分野だけではなしに、文化というものの本来のあり方みたいなものも外交の中に十分取り入れていただきますよう、ひとつぜひ推進方をお願いいたします。 次に、フィリピンの問題に入ります。 現行の友好通商条約、つまりこの新しい方ではなくて現行の方は、昭和三十五年に署名されて四十九年に発効しております。昭和三十五年と四十九年、ずいぶん離れておりますが、その間どのようにして、なぜ時間がこんなにかかったのでございましょうか、ここら辺からまず御説明をいただきたいと思います。簡単にお願いいたします。
○渡辺説明員 先生御指摘のとおり、現行条約の署名されたのは一九六〇年、昭和三十五年十二月でございます。発効しましたのはそれから十四年たってでございますけれども、長くかかった理由については、フィリピン側において条約内容に対する誤解、認識不足、それからそれに伴ってある日本による経済支配に対する危惧の念というか恐れがあって、このために条約に対するフィリピンの批准、すなわち調印の同意を得ることができなかった。したがって、いま申しましたように批准書交換まで十四年間かかってしまったということでございます。その間、昭和三十五年に署名した当時のガルシア大統領、さらにはその後のマカパガル大統領と続いたわけでございますけれども、現行条約が批准され、発効いたしましたのは、現大統領のマルコスさんが登場したのが一九六五年、七四年に初めて批准書が交換され、発効したということでございます。
○渡辺(朗)委員 いまおっしゃったように、認識不足やら誤解やら日本企業への恐れというものがマルコス大統領の登場によってなくなってしまったというようにも考えられますが、それはともあれ、今回の新条約の交渉経緯をひとつ聞かせていただきたいのです。 フィリピン側の提案を受けて八回の交渉を行った、こういうふうに書いてあります。その点についてまずお聞きしますが、フィリピン側とわが国との側で最も対立した点というものは何だったのでしょうか。
○渡辺説明員 フィリピン側とは昭和五十二年以来、ただいま御指摘されましたとおり八回の交渉を行ってまいりました。交渉の争点と申しますか最大の論点は、一般的に申しますと、フィリピン側としては、現行条約においては通常の先進国間の条約と同じ、すなわち形式的平等を趣旨とした条約であるのに対して、これでは実質的な平等は保てないという主張でございました。フィリピン側の立場は、UNCTAD等で論議されておりますいわゆる南北問題の考え方を日比通商航海条約の中に盛り込みたいということでございました。それに対して日本側といたしましては、フィリピン側の立場はよくわかるけれども、日比経済関係の基本的な枠組み、権利義務を規定する条約において南北関係を反映することは非常にむずかしいという立場で折衝してきたわけでございます。八回の交渉の結果、何とか彼我の立場は調整されて調印にこぎつけたということでございます。
○渡辺(朗)委員 どう調整されたのか、そこら辺をちょっと後でお聞きしたいと思いますが、その前に、現行の条約を終了させるための予告を行った後、予告の効果を一定期間停止させる旨の通告を計四回にわたって行ってきた、こういうことが説明の中に書いてございます。通告を四回も行ってきたということは、どういう経緯があったからそういうことになったんでしょうか。
○渡辺説明員 フィリピン側は、一九七六年の六月に、現行条約の規定に従いまして、条約終了のための予告を行ったわけでございます。同時に、新しい条約の締結のための交渉を申し出てまいりました。わが方は、新条約の締結の前に現行条約が終了してしまうということは、日比間にいわば無条約状態ということになることでございますので、それは望ましくないということでフィリピン側に申し入れをいたしまして、少なくとも交渉している間は現行条約の効力を認めてほしいという要請を行った結果、先方は四たびにわたって終了予告の効果を逐次停止してきた、こういうことでございます。したがいまして、交渉している間は現行条約の効果を認めましょうということでフィリピン側も納得してきたということでございます。
○渡辺(朗)委員 四たびというのの理由がよくわからないのですけれども、どうですか、もうちょっとわかりやすく、普通そういうことありますか、そんなにたびたび通告をしてくるということは。
○渡辺説明員 終了予告の効果を四たびにわたって停止する、あるいは延長するということは、私どもとしても多分異例なことだと思います。他方、フィリピン側としては、最初一年の予告ということで、その一年の間に当然条約の交渉がまとまるという想定のもとに予告をしてきたのだと思います。ところが、先ほど申しましたように、日本とフィリピンの間の立場の相違というのはかなり大きかったためにそれがまとまらなかった。それから、現実に最後の予告については、条約の署名は行ったわけでございますけれども、双方の批准の期間、国会の御審議をいただく期間ということで、さらに終了予告の効果を停止したということでございます。その結果、四回にわたって、たしか一年、半年、半年、一年というような形だったと思います。
○渡辺(朗)委員 そうすると、フィリピン側としては新条約をよほど急いだということをうかがわせるわけでございますけれども、その結果、どうなんでしょう、今回の新条約によって特徴的に、わが国とフィリピンとの間で先ほど調整が行われたと言われましたけれども、どっちがどういうふうなメリットがあってそこら辺で調整した、こういうふうなことになったわけでしょうか。端的な御指摘だけをいただければ結構です。
○渡辺説明員 お答え申し上げます。 先ほど申しましたとおり、日比間で基本的な考え方が分かれていたのは、いわゆる南北問題的な考え方を条約の条文に盛り込みたいというフィリピン側の主張と、それを何とか受け入れたいと考えつつも、やはり条約ということで、権利義務の形でこれを規定することは非常にむずかしいという日本側の立場、その調整の問題でございました。 具体的に申しますと、たとえばフィリピン側としては、貿易の拡大のための協力、端的に申しましてフィリピン産品の日本に対する輸出拡大、これについて日本側からの協力を日本の義務として規定したいというような主張でございます。あるいは輸出入数量制限についてはすべて事前通報をしてほしいという点。あるいは日比間の海運の発展のための協力、より端的に申しますと、フィリピンの海運の発展のために日本が協力してほしいというような点。さらに海洋汚染の規制のための協力、これも端的に申しますと、日本の船舶がフィリピンの近海において油等の汚染物質を流出させた場合には日本がその排除のためにも協力してほしいというような点。さらに申しますと、フィリピンが重要なメンバーでございますASEAN、東南アジア諸国連合の間の特恵については日本はそれを例外扱いにしてほしいということ。さらには、フィリピンが持っています対米特恵、いわゆる逆特恵と申しますけれども、これについては日本に均てんさせたくないというような論点が種々ございました。 これらの点について、一々その結果を御報告することは差し控えさしていただきますけれども、たとえば最初の貿易拡大のための協力につきましては、フィリピン側は当初、フィリピンの対日輸出関心品目に対する関税、非関税障壁の軽減を条約中に明記してくれということでございましたけれども、そういう要求は二国間の条約で義務づけることはどうしても適当でないということで応酬いたしまして、第九条において、貿易拡大のための協力をする、そういう努力規定を設けまして、さらに交換公文において、日本政府としてはフィリピン産品の日本市場アクセス促進のために適当な措置をとるよう努力するということをうたいまして、先方の合意を得たということでございます。 以上の点が、大体フィリピン側が主張し、それを何とか日本側として調整した点でございますけれども、他方、日本側といたしましては、この条約において、現行条約にない種々の規定がございます。たとえば生命、身体の保護の問題、あるいは財産の保護の問題、これは現行条約にございません。さらに、投資保護協定について新たに交渉するという約束を交換公文の形で得ております。 いずれにいたしましても、先ほど申しましたように、フィリピン側は現行条約の終了予告を現実にしているわけでございまして、この条約の最大のメリットは、その現行条約に取ってかわる新しい条約を結ぶことによって、日比経済関係発展の基本的枠組みを新たに構築することができたということではないかというように考えております。
○渡辺(朗)委員 御説明ありがとうございました。 そうすると、ASEANの域内特恵適用除外を初め、フィリピン側の方でかなり言ってきた。しかしながら、大部分はそれは取り入れた。日本側の方は何とかそれを弱めながら、また投資保護や何かの、こちらの方にとってのメリットをかち取った――かち取ったと言うとおかしいけれども、そういうところで決着がついたというふうに受け取れるわけでありますけれども……。 いまのたとえば投資保護ということでございますが、これはアジア地域において初めての何か規定が盛られているわけでございますね。交換公文をくっつけられたわけですね。投資保護をされるということで、どうなんでしょうかね、今後増大していきますか。いかがでございましょう。特に、ちょっと気になるのは、フィリピン政府は投資奨励法というのをたしか持っておりました。それからまた、同時に外国人事業活動制限法というのも一九六八年につくっております。ここら辺の関連は消えたのでしょうか。制限法みたいなものは国内法ではやはり残っているわけでございますか。
○渡辺説明員 先生御指摘の投資制限法は、現行法として残っております。投資保護協定の交渉を始めようではないかということについては、日比双方合意いたしまして、その合意を交換公文の形であらわしているわけでございますけれども、投資保護協定自身の性格は、現実に行われた投資について接収等の一方的行為をできるだけ行わない、行う場合にも適正なる理由でかつ適正なる補償をもって行うという点を明確にするという趣旨のものでございます。したがいまして、フィリピン側から見まして日本の資本を積極的に導入するという効果はもちろんございますけれども、それが直接的なものではなくて、日本の投資の安定を図るということでございます。 投資導入の促進策ということになりますれば、フィリピン国内の投資優遇税制等の問題かと思います。その点については、同時にお諮りいただいております日比租税条約に関連するわけでございます。 最初に先生が御質問なされました日比友好通商航海条約の締結あるいは投資保護協定の締結によって日本のフィリピンに対する投資が伸びるだろうかということでございますけれども、現在日本のフィリピンに対する投資は延べで大体四億ドル程度でございます。これがさらに飛躍的に伸びるかどうかということになりますと、フィリピンの経済情勢を日本の実業界、財界がどう見るかということ、あるいはレートの問題等々がございます。ただ、日比友好通商航海条約がない状況であれば日本の投資活動はかなり不安定になるということは言えるかと思います。そういう意味では、今度の日比友好通商航海条約の締結は日比間の投資関係の安定化には貢献するということが申せるのではないかと思います。
○渡辺(朗)委員 この問題については本当はもうちょっと聞きたいのですけれども、時間の関係で先を急がせてもらいます。 もう一つ、この条約の中に書かれておりますASEANの域内特恵の適用除外です。これは初めてのものだと聞いておりますが、こういうものがつくられますと、今後はよその国との通商航海条約を結ぶという場合には前例になってくると考えてよろしいですね。
○渡辺説明員 先生御指摘のとおり、ASEAN域内特恵を適用除外とする条項が条約の中に入ったのはこれが初めてでございます。今後他のASEAN諸国との関係において同じような条項の挿入を求められたときにどうするかという御質問でございますけれども、ASEAN域内特恵については昨年の一月、ガットにおいてすでに認められているということもございまして、本条約の規定ぶりが先例とされて他のASEAN諸国から条約の中に同種の条項の挿入方を求められたときにはこれに十分こたえたい、こたえ得るという考え方に立っております。
○渡辺(朗)委員 そうすると、他の国と結ぶ場合に、域内特恵の適用除外は前例となっていくということになると、少なくともわが国の外交姿勢においては、これは新しい姿勢だと考えてよろしいですね。
○渡辺説明員 かねてからわが国としては、ASEANの諸国の間で地域的な経済協力を推進していくことは東南アジアのASEAN諸国の経済発展あるいは安定のために貢献するものだということで、これを前向きに評価し歓迎する態度をとってまいりました。かつ、先ほど申しましたように、昨年の一月、ガットにおいてASEAN特恵がガット上の一般的最恵国待遇の例外として認めるという措置がとられたということもございまして、一般的にASEAN特恵を前向きに評価するということをさらに一歩踏み込んで、これを条約上の権利の例外として、最恵国待遇の例外として受けとめるという姿勢を明らかにしたわけでございます。そういう意味で、わが国が政治的にASEANを重視し、東南アジアの安定のために貢献するのだという政治的姿勢を条約の中に明記したということでございます。その意味では、先生御指摘のとおり新しい日本の姿勢の確認であるということは申して差し支えないかと存じます。
○渡辺(朗)委員 また新しい姿勢を出されると同時に、通商条約の中にはっきりと東南アジア諸国連合ASEANという文字を明記されたわけでありますが、そうなると、ASEANというものは一体何なのか、その性格あるいはまたその将来について日本政府として明確な認識をお持ちの上それを明記されたと理解いたしますけれども、どのように考えておられますか。
○渡辺説明員 ASEAN東南アジア諸国連合は、政治、経済、文化、社会の各面で加盟国間の相互協力を通じて各国の強靱性強化によって東南アジア地域の平和と安定を確保することを目的として結成された国際組織でございます。一九六七年に設立されたものでございまして、これが東南アジアの安定に寄与するということ、さらに、この組織がASEAN諸国各国における経済発展、政治の安定のために寄与するということがわが国の基本的な認識でございます。 先生御案内のとおり、最近ASEANはインドシナ情勢等の進展にかんがみまして累次外相会議の開催あるいは国連総会におけるカンボジア情勢に関する決議案の提出というような政治面での協力を強化しておりまして、これも東南アジアの平和と安定に寄与するものと私どもも評価しているわけでございます。 他方、経済面の協力につきましては、具体的な段階、すなわち経済的な地域協力、地域統合の具体的な段階に入るに従いまして、それぞれ実態的な調整のむずかしさが表面化しておりまして、統合のペースといいますかその足取りは必ずしも円滑なものではございません。たとえて申しますと、ヨーロッパ共同体というような形になるにはASEANとしてはまだまだ長い道のりがあるというように考えております。
○渡辺(朗)委員 この日比通商航海条約を結んだ当事国のフィリピンのマルコス大統領は、ASEANは経済組織である、軍事問題、防衛協力の問題はASEANの能力外のところであるというような言い方をしております。そうしますと、経済組織という認識は、あなたからいま御説明いただいたわが国の認識とオーバーラップしてちゃんと一致するものなのでしょうか。食い違いはないですか。いかがでございますか。
○渡辺説明員 先ほど申しましたように、ASEANは政治、経済、文化、社会各面における相互協力を通じてASEAN各国の強靱性の強化を図るということが設立の趣旨でございまして、これを経済組織として定義づけるかあるいは政治組織として定義づけるかということについては、そのときそのとき、あるいは各国の首脳の特定の考慮によってライトのかけ方が変わってくるかと思います。 一九六七年八月、バンコクでASEANの設立宣言が行われたわけでございますけれども、その宣言は二項になっておりまして、「東南アジア諸国間の地域協力機構としてASEANを設立する。」「ASEANの目的は以下の七点である。」「東南アジア諸国の平和と繁栄の礎を強化すべく、協力と一平等の精神のもとに進める共同作業を通じて域内の経済開発、社会進歩、文化の発展を促進ずる。」ということでございます。 さらに、一九七六年の二月、バリ島で東南アジア友好協力条約が締結されました。その前文においては、「締約国は、」すなわち五カ国は、「締約国国民を相互に結びつけてきた歴史的、地理的および文化的結合の現実のきずなを認識し、公正および法の支配に対する尊重を保持し、および相互関係における地域的レジリアンスを強化することを通じて地域平和と安定を促進することを切望」するということでございます。 ASEANというものは経済組織である、あるいは政治組織であるということはいろいろ言われるわけでございますけれども、ASEANと申し上げても、五カ国それぞれ立場、歴史的な経緯も違うわけでございまして、ASEANというものの性格づけについて五カ国が完全に一致しているということは現実にないようでございます。マルコス大統領がASEANは経済組織であると言ったという新聞報道については私どもも承知しておりますけれども、その意図が果たしてどういうことであるかということについては明らかにしておりません。
○渡辺(朗)委員 ここら辺は大事なところなものですから、時間をちょっと過ごしてしまいました。あとちょっとだけお時間をいただきたいと思います。申しわけありません。 いまおっしゃったようなASEANの状況は、先般のインドシナ情勢、産油国と非産油国の間の格差拡大、またついせんだってのアフガン情勢、こういったものの余波を受けまして足並みがばらばらになっていきつつあるという印象を受けるのでありますけれども、そういう情勢認識で正しいのかどうなのか。 特にフィリピンの場合には、一九七九年の一月に、たしかアメリカと条約を改定しております。そして、むしろアメリカへの傾斜といいますか、そういうものを強めていっている傾向が出てきている。特に防衛の問題、安全保障上の問題であります。五年間でアメリカからたしか五億ドルの軍事援助が供与される。その反対給付として、フィリピンにおけるアメリカ軍の活動を保障する、あるいはフィリピンの基地を足場とする軍事行動を保障する、こういう形になったやに見られます。 そういう形になると、ASEANは、先ほどおっしゃったような一つの目標を持っていたものが、いまやばらばらになってきたあるいはなりつつあるのではないか。そのフィリピンといま日本はより深くコミットしていくような形になっていくのではないかという懸念を持つのでありますけれども、ここら辺についてアジア局参事官また外務大臣の御認識をお伺いしたいと思います。それをひとつ、ぜひぜひお願い申し上げます。
○大来国務大臣 ASEAN五カ国の中には、ことに外交的な関係で外少ニュアンスがございまして、完全に一色ではないという点がございます。たとえばマレーシアは比較的中立的な色が濃いという点もございます。ただフィリピンとアメリカの関係におきましては、米比間の基地条約の改定が行われまして、従来フィリピンがアメリカの植民地であった関係でそういう名残があったと思うのでございますけれども、基地条約の改定によりましてかなりそういう関係を薄くしてきた。フィリピンの独立の立場をより明らかにするという点もございまして、フィリピンがアメリカ向きに傾斜してきたということは必ずしも言えない。ただ、最近のベトナムの状況あるいはソ連の活動などを通じて、一ころよりはやはりアメリカとの協力関係を再認識するという面はあるように思いますけれども、全般としては、いまの基地協定などの改定に見られる傾向としては、独立国としての立場を強めるという方向に向いておると考えておるわけでございます。
○渡辺説明員 先生御指摘のとおり、昨年の一月、フィリピンは米国政府と基地協定の改定をいたしました。その結果、むしろフィリピンの要請を米国がかなり受け入れたというように承知しております。たとえばフィリピンにあるすべての米軍基地はフィリピンの主権のもとに置く、基地の管理権はフィリピン側の司令官が持つ、あるいは基地で国旗を掲げる場合にはフィリピンの国旗を掲げるというようなことでございます。このフィリピンと米国の間の基地協定の交渉は非常に難航しておるというように思われていたわけでございますけれども、昨年の一月、わりあい早く合意に達した。その背景としては、一般的に、やはりカンボジア情勢の非常に激しい展開があったということが言われております。 大臣から御説明がございましたように、ASEAN諸国の立場はそれぞれ違っておりまして、マレーシアは、どちらかというと中立的ということでございますけれども、ASEAN五カ国それぞれカンボジア問題、中国問題、あるいはソ連に対する態度、若干のニュアンスがございまして、たとえばインドネシアは御案内のとおり中国との外交関係を凍結しておるということでございます。 ASEAN五カ国のたとえばカンボジア問題、中国問題に対する考え方というのは、むしろそれぞれの国の地政学的な地位、たとえばタイはカンボジアと隣接しているということでカンボジア問題に非常に神経質といいますか深刻な関心を持っている、それに対してインドネシアとかフィリピンというのは海を隔てているということでタイほどではないということが言えるかと思います。 もう一つは、各国の中にいる中国系住民の数及び中国系住民の同化の程度ということがカンボジア問題あるいは中国に対する態度、あるいはベトナムに対する態度にも影響があるのではないかというように考えております。
○渡辺(朗)委員 時間の関係もございますので、最後に一言だけお聞かせいただきたいと思います。 いまおっしゃったようなASEANの状況のもとで、日本としてASEANの安全保障という問題についてはどのようなあり方が好ましいというふうに思われるでしょうか。 ついせんだっても、政務次官が御出席なさっておられましたけれどもESCAPの三十六回総会の席上で、ソ連側がASEANとの不可侵条約の締結を提案したということが伝えられておりまして、真偽のほども教えていただきたいのでありますが、これも含めまして、ASEANとしての好ましい安全保障のあり方について日本は全然知らぬ顔というわけにもならないでございましょう。何らかの期待なり願望はあってもいいと思いますので、そこら辺を外務大臣からお聞かせいただきたいと思います。
○大来国務大臣 先般バンコクで開かれましたESCAPの総会におきまして、ソ連の代表のフィリュービン外務次官が、人民カンボジア、ヘン・サムリンの政権だと思いますが、これは他のインドシナ諸国とともに全ASEAN諸国と二国間の不可侵条約を締結することを提案しているということを発言したわけでございます。これはソ連側がASEANとの不可侵というのじゃなくて、ソ連代表の発言で、カンボジアと他のインドシナ諸国とASEANということでございますし、もう一つは、ことしの一月にプノンペンで開かれましたベトナムとカンボジア人民共和国、ラオス三国外相会議の共同声明で同じような提案がされておりまして、ASEANのそれぞれの国との不可侵条約を締結する用意がある、この発言がいまの渡辺委員の御指摘のことじゃないかと思います。 さて、日本がASEAN諸国の安全についてどういう役割りを示すかということになりますと、これはやはり日本の役割りとしては、軍事的な面での安全という役割りは日本の憲法から見ましても国内の考え方からいってもそういう役割りは果たせない。ただ、ASEAN諸国は自分たちの経済が発展することが政治的にもレジリエンスといいますか抵抗力を強めることになる、国内の政治的安定にもつながる、こういう面で日本は経済面、技術面等で寄与してほしいということはいろいろな場合に言っておりますので、こういう点は日本の役割りがあるかと思います。 さらに進んで、これはある段階では、インドシナ三国とASEANとの間の緊張関係がございますし、また御承知のように、ベトナムと中国の間の緊張関係あるいはソ連とベトナムのつながり、いろいろな問題があの地域にあるわけでございますが、日本がアジアの一つの大きな国として平和的な手段によってこういう国々の間の緊張緩和に多少でも役立てば、これは一つのASEAN諸国の安全に対する日本の寄与ということになるのではないか、そういうことを考えておるわけでございます。
○渡辺(朗)委員 遅くまでありがとうございました。これにて終わります。
○奥田委員長代理 次回は、来る九日水曜日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午後五時五十七分散会