外務委員会 第6号
- 発言数
- 55 件
- 登壇者
- 13 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1980/03/14
会議録
○中尾委員長 これより会議を開きます。 関税及び貿易に関する一般協定の譲許表の変更に関する第四確認書の締結について承認を求めるの件等ガット東京ラウンド関係諸協定十件を一括して議題といたします。 本日は、参考人として日本貿易振興会理事青木利雄君、武蔵大学学長岡茂男君、東京経済大学教授北田芳治君、全国電気通信労働組合副中央執行委員長小森正夫君、東京大学農学部長逸見謙三君、日本興業銀行顧問細見卓君、全国農業協同組合中央会常務理事山口厳君、以上七名の方々に御出席を願っております。 この際、一言ごあいさつ申し上げます。 本日は、参考人各位には、御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。 本委員会といたしましては、ガット東京ラウンド関係諸協定につきまして、参考人の方々から忌憚のない御意見をお伺いし、今後の審査の参考にいたしたいと存じます。 次に、議事の進め方でございますが、御意見の開陳はお一人十五分程度にお願いすることといたしまして、その後、委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。 御意見の開陳の順序は、岡参考人、北田参考人、逸見参考人、細見参考人、青木参考人、小森参考人、山口参考人の順でお願いいたします。 まず、岡参考人にお願いいたします。
○岡参考人 私の方はマクロ的な視点から、東京ラウンドの意義といったようなことについて、感想を申し上げさせていただきます。 御承知のように、今回は関税交渉と非関税措置に関する交渉の二つが中心になったわけでございますが、戦後ガット体制で七回目の関税交渉になりまして、これは先進国間におきましては、八年後の関税引き下げが終わりますと、三%ないし四%といった極度に低い、いわゆる低関税時代というものを迎えることになるわけでございます。今後恐らくこれだけの大規模な関税交渉というものはちょっと期待しがたいのではないか。そういう意味では、恐らく最後の大規模な関税交渉という意味において、この東京ラウンドの一つの歴史的な意義があるのではないかというふうに思われます。 もちろん理想から申しますと、世界の関税障壁というものを全廃する、関税をゼロにするということでございますが、理想は理想として現実はなかなかむずかしいと思います。しかし、この中で、今回民間航空機につきましては一品目、限られた品目ではございますけれども、やはりゼロ関税の自由貿易地域というものが世界的にできたという意義は一つあるかと思われます。恐らく今後は個別品目についての関税交渉等は期待されるかと思いますが、しかし、EC等の例もございますし、その辺のことはなかなかわからないわけでございます。 それから、非関税措置を中心とする交渉につきましては、これは前回のケネディ・ラウンドではダンピング防止協定一つだけでございましたが、今回は七協定を初めとします多くの国際コードが成立をしたということで、今回初めて本格的な交渉が行われたというところに私は歴史的な意義があるであろうと思います。今後、恐らくこれらの協定を含めまして、この修正ないし拡大、ないしは残されたセーフガードとか、ないしは輸入数量制限といった残された分野についての国際コードの作成ということが交渉の中心になるのではないかというふうな気がいたします。 それから、三番目の問題点といたしましては、開放的な国際通商体制というものがこれによって拡大をするということであります。これは関税、非関税、両面において貿易障害がなくなるわけでございますから当然のことでございまして、結果的には自由無差別原則、これはガットの基本原則でございますが、これが確認をされたということ。つまり、その意味ではガット体制が強化をされたという意義が大きいと思います。 それから、この点につきまして忘れてならないことは、この東京ラウンドが足かけ七年にわたって行われたという結果でもございますけれども、七〇年代は御承知のように大変苦難な、オイルショック以後、世界的な不況の中で交渉が行われたわけでございますが、もしもこういう大交渉がなかったならば、世界は非常に急激な保護主義が強化され、場合によっては一九三〇年代の再現ということも考えられなくはなかったわけでございますが、それがこの交渉を通じて多国間の国際協調の結果としてそういう保護主義に陥ることなく今日の事態を迎えられたという意味も、私は大きいのではないだろうかというふうに思います。 それから、特に日本の立場として申し上げますと、戦後ガットの交渉を通じまして世界の自由通商体制というものが拡大されていきましたが、わが国はその最大の受益国の一つであるというふうに思っております。そういう意味で、わが国はもともと貿易立国であるわけでございますが、その結果としまして、わが国が経済大国となり、また大幅黒字国となった、そういう背景の中でこの東京ラウンド交渉というものが進められたわけでございます。それだけに、今回の交渉は東京ラウンドと呼ばれ、わが国がそれなりの非常に中心的なリーダーシップを持って行われた交渉であるという意義は忘れてはならない点であろうかと思います。 それから第四点といたしまして、この交渉の結果といたしまして八〇年代の国際貿易を律するようなルールというものが整備されることになった。言いかえてみますと、これは強化された開放体制、単なる開放体制でなくて、強められた、強化された開放体制、これはボン・サミットの直前に代表団声明の中でも述べられているところでございますが、その意義は、やはり非関税措置を中心とします七協定等の国際コードというものが作成されたということであろうと思います。それによりまして、これらのコード類は、ガットの規約を解釈して、それを詳細に手続等の点について明確化するないしは具体化するということでございますから、結果的にガットの法的な枠組みを強める、強化するという意義があるのであろうと思います。 たとえば輸入救済的な協定、これはダンピング防止協定とか補助金・相殺関税協定等でございますが、これにおきましては損害要件の導入が行われまして、乱用防止が歯どめがかけられておりますし、そのほか、今後は二国間の政治的な圧力によって何らかの輸入輸出自主規制等が行われるということでなくて、国際舞台でもって堂々と提訴できる道が開かれたということにもあらわれておるかと思います。 それから関税評価につきましても、いままでアメリカやカナダ等に見られましたような非常に恣意的なないしは架空の評価というふうなことがこれからはできなくなる、そういう意義は大きいであろうと思います。 それから、特に今回の協定等に盛られております協議、紛争処理のための国際機関が多数創設されたということでございます。これによりまして、たとえばダンピング協定を見ましても、ケネディ・ラウンドでできました協定におきましては、委員会がございましたけれども、これはただ自由に意見を発表するという程度の委員会でございまして、今回の新協定によります委員会は紛争を処理し解決する委員会となっておりまして、性格を大きく異にしております。こういうことにもあらわれておりますように、紛争を解決する機能を持ったそういう国際機関というものがここに新しくつくられまして、これはこの中ではお互い二国間で協議をすることが義務づけられておりますし、情報をお互いに与え合うとかないしは発言の機会を相手に与えるとか、報告書がつくられ、勧告が出され、その結果を監視する、そういうことが詳細に規定されておりますが、それでもなお解決できない場合に初めてガット二十三条二項のいわゆる対抗措置の発動ということが認められるという仕組みになったわけでございます。 それからもう一つは、開発途上国に対します特別措置が非常にたくさんとられております。各協定にも盛られておりますし、特にフレームワークの中にはこれが詳細に規定されております。途上国は今回の東京ラウンドの結果につきまして不満と言われておりますけれども、私はガット体制という観点から見ますと、非常に明確な開発途上国に対します、いわゆる自由無差別原則の例外と申しますか、ガット第一条の原則にもかかわらずこうこうするという、いわゆる授権条項というものがはっきりと認められたという意味においては、このガット第一条の原則の後退ないしは弱体化であるという、制約というふうにも見られるわけでございます。 これらの協定類、それからフレームワーク、特に開発途上国に対する観点等から見まして、この中でよく述べられていることは、やはり公正と規律というふうなことがよく述べられておりますが、強められた開放貿易体制というふうにも申しましたが、これからは単なる自由通商、自由放任ということではなくて、やはり公正といったような新しい理念でもってこれからの国際貿易というものは考えていかなければいけない。つまり、弱者に対する配慮というものを加えた、そういう開放体制という意味が、恐らく強められた開放的な国際貿易体制という意味であろうかと思います。 以上でございます。
○中尾委員長 次に、北田参考人。
○北田参考人 岡参考人から一般的な評価が行われましたが、私も、一般的に、特に東京ラウンドの背景ということに関連して若干意見を述べさせていただきたいと思います。 今回の東京ラウンドは、開始後非常に長時間要したわけであります。しかし、オイルショックなどの混乱もありまして、実際には一九七八年ごろに集中して交渉が行われたというふうに伺っております。今回、日本政府がいわば初めてガット関税交渉に非常に積極的な役割りを果たしたというふうにも伺っております。いま申しましたように、交渉は比較的最近に集中して行われたように思われますけれども、しかし、今回の東京ラウンドが行われるという背景には、前回の第六回関税交渉、ケネディ・ラウンド終了以来直ちに次期ラウンドということが胎動したということもあるように思われます。 それは、世界経済、特にアメリカを中心とした国際経済関係が非常に危機的な状況にあるという認識の中で、そのような動きが表面化したのだろうというふうに思いますし、特に私は、今回のラウンドの最も基礎的な背景として、一九七一年八月のアメリカの新経済政策というものを考えてみる必要があろうかと思います。今回の東京ラウンドの背景にニクソン大統領の経済政策があったということは否定できないと思われます。 アメリカが一九七一年八月に新経済政策を打ち出したということは、一種の世界経済に対する衝撃療法であったように思われます。アメリカとしては、国際通貨に関しあるいは国際貿易に関し新しい体制の構築を行う、そのような刺激あるいは衝撃としての意味を、この政策は持ったろうと思っております。日本政府が今回の東京ラウンドにきわめて積極的な役割りを果たしたと伝えられることは、客観的にはこのようなアメリカの意図に沿ったものと考えます。 ただ、若干この評価をしますれば、日本政府はこのアメリカの新しい経済政策の意味をかなり誤認した面があるのではなかろうかというふうに思います。ただいま岡参考人も申しましたが、世界経済がきわめて保護主義へ傾斜するというおそれがあった、私もそのおそれを否定するものではありませんけれども、そしてまた世界的にもそういう受け取り方がきわめて一般的でありましたし、それからアメリカ自身も、新しい世界経済の枠組みづくりの中でアメリカの国際収支の立て直し、アメリカ経済の新しい方向性を模索したことは確かでありましょうし、それから、東京ラウンドの期間全体を通じまして、日本の貿易の異常な黒字に対してアメリカ政府が極力日本に対して圧力をかけたこともまた事実であります。いわゆる日米経済戦争ということがしきりに言われました。つまり、確かにアメリカは新経済政策によってみずからに有利な状況をつくり出そうとしたことは事実でありましょうが、しかし、私は、アメリカがグローバルな自由貿易の枠組みを崩そうという意図を有していたというふうには考えません。むしろ、多角的なベースでの自由貿易の枠組みを変化した状況の中に再建したい、その基礎には、世界的な絶対的な資本の自由な活動を目指す、いわゆるアメリカの多国籍企業というものの利害が存在したというふうに思っております。 アメリカ及びヨーロッパからのさまざまな圧力の中で、日本の側は、保護主義の再来に対する阻止の役割りを、みずからの国に余りにも過度に、いわば割り当て過ぎたという印象を私は持っております。アメリカを初めとして、他の国もまた自由貿易に少なからぬ利益を持っていたということをもっと認識すべきであったというふうに考えます。といいますのは、日本の今回の交渉態度の中では、私は、余りにも他国に譲歩を行い過ぎておる、いわばできるだけの譲歩をしつつ東京ラウンドをまとめるというのにきゅうきゅうとし過ぎたというのが私の率直な印象であります。関税面でも、二度にわたる自発的な関税引き下げ、あるいは前倒しといいますか、を行いまして、実質的には最も大きな譲許を行ったわけでありますし、わが国は主要先進国の中で最も低い関税水準に現在では到達しておるというふうに思います。 そういうことと関連して、今回のラウンドのもう一つの特徴は、ラウンドそのものは本来多角的な世界貿易の枠組みづくりであるわけですが、それと並行して日米農産物交渉あるいは政府調達に関する日米交渉等強い日本に対する圧力がかけられ、それが並行して行われたということに特色があろうかと思います。 本来ガットの理念、あるいは繰り返し行われますラウンドの目標というものは何でありましょうか。これは、二国間ベースの貿易問題をできるだけ多角的な国際貿易の枠組みに振りかえることにあるはずであります。また、したがって日本の側が東京ラウンドの推進を、保護主義の到来を阻止するという目標で積極的に行なおうとするその立場からするならば、日本の輸出環境を多角的なベースで改善するということにあったはずであります。多角的な枠組みづくりの交渉が精力的に推進される中で、その一環として二国間ベースの交渉が今回ほど大きな比重を占めるということは、そもそもきわめて矛盾であります。東京ラウンドの成功によって二国間ベースの貿易解決というスタイルが大幅にその比重を低下するということにこそ、日本政府が推進したラウンドの本来の成果があったはずではなかったろうかと思います。 もとより、よく言われますように、ガットは国際法上確かな地位を有するというほどの法的な基礎が薄弱であり、したがって逆に、かなり融通無碍な交渉が行われる。第七回東京ラウンドも、その中にさまざまな複雑多面な交渉が持ち込まれる。このことは必ずしもその欠点だとだけ規定するわけにもいかないと思います。 しかし、いままで申し上げましたように、そのような観点からしますと、東京ラウンドは一体日本にとって成功であったのであろうかどうであろうか、私は必ずしもそのようには考えないわけです。 関税面においても、いま言いましたように大変過大な譲歩を行いました。二回の前倒しということで、東京ラウンドの交渉中にもすでにわが国の交渉力が大きくそがれたように思っております。これは将来の交渉力ということからいっても非常に大きな問題があろうかと思います。近隣諸国との競争関係、あるいは農業をめぐる国際的な環境というようなものも大きく変化しつつあります。こういう点から、独自の政策能力が大きく規制されたのではないと憂慮しております。 それで、そのような多大な譲歩をしたにもかかわらず、実は二国間ベース、特に日米あるいは日欧という貿易摩擦問題あるいは二国間の貿易交渉というものは、ますます重大化している現実であります。東京ラウンドによってそれらのことが改善されたというふうには大きく評価することはできない。現在、自動車、鉄鋼、その他いろいろな側面で、あるいは電電問題等についても、依然として解決を見ていないという状況であろうかと思います。 最後に、貿易問題の解決には、東京ラウンドのような世界貿易の枠組みづくりもきわめて重要ではありますけれども、この期間に、世界貿易の枠組みづくりと同時に、わが国に対する二国間ベースでの貿易問題がきわめて重要な役割りを果たし、それが解決されずにいるということを考えますと、わが国の経済体質それ自体についての反省、これがきわめて重要であるということを指摘しておきたいというふうに思います。 この期間にわが国が過度の貿易黒字を出していたことは事実であります。それが日本に対する圧力となったことも事実であります。これをどのような方向で是正するのか。世界貿易の枠組みづくりも一つの重要な方向ではありましょうけれども、私が特に指摘したいのは、この期間、いわゆる日本の大企業あるいは日本経済全体の輸出第一主義による過度な合理化、いわゆる減量経営等々が推進されました。こういうことが是正される方向、これがわが国の貿易の環境づくりに大きな役割りを果たすのではなかろうか。 しかし、東京ラウンドは、極言すれば、そういう体質の延長線のもとにわが国の輸出巨大企業のための環境づくりに努力した。しかし、それは十分に成功もしなければ正しい方向でもなかったのではないかというふうに思われます。一九七八年までの日本貿易の黒字、円の異常な対ドル騰貴がありましたが、それは少数の輸出巨大企業のために中小企業や農業が犠牲になるというようなことが当時しきりに指摘されました。私も同感であったわけです。今日のような変動レート制のもとで、通貨面からする国際競争条件が不断に激変するという状況では、関税政策の意義は薄くなったということが考えられます。しかしながら、性質としてはほぼ同じようなことが指摘できるかと思います。 今後、原油価格が異常に高騰するもとで、日本貿易の対外不均衡、摩擦が一層重大化することが予想されます。日本経済の体質そのものを改善することによってこの重大化を阻止することが緊急に要請されておると私は考えます。 以上であります。
○中尾委員長 ありがとうございました。 次いで逸見参考人にお願いいたします。
○逸見参考人 先生方御存じのように、こういう貿易交渉では農業は特殊な地位を占めておりますので、私は、農業に限りまして意見を申し述べたい、こういうふうに考えます。 立場によって、国内でも国外でもこういうものの評価というのはいろいろあるのじゃないかと思います。農業に関しましても、もっとオファーを出すべきであったという御意見は当然ございますし、出し過ぎたという意見も当然、これは日本の国内でも外国でもあるわけでございまして、全く私が判断しただけの限りで申し上げる、こういうことになります。 率直に申しまして、今回の交渉は農業にとりましては非常につらかったものだと思っております。国内的にはお米が過剰でどうしようか、こういうときでございますし、西日本のミカンもまた過剰でございまして、さらに、先ほど北田参考人から出ました二国間の貿易交渉で大変問題になりました畜産物、これは、そういうようなお米やミカンの過剰というものを背景にして、この部面でさらに日本農業は伸びよう、こういうときでございましたので、農業にとってつらかったのではないかと考えております。 さらに、ケネディ・ラウンド交渉のときは、日本農業はどちらかというと、アメリカとECが丁々発止とやっている中で、陰に隠れて余り風当たりが強くなかった。私の外国におります友人なども、日本農業はうまくやった、こういうふうに評価しておりました。今回は国際環境の違いからそれが日本に向かってきたわけでございまして、農業界としましては、かなりのオファーを出してもなかなか妥結しない、こういう印象を持ちましたし、したがって、大変な不安を持ったわけでございます。それで時間がかかり過ぎました。さらに途中でニュージーランドのごときは、ごときと言うと悪い意味のようでございますが、ただ例で申し上げたのでございますが、漁業交渉と農産物の輸出、輸入とを絡ませまして、さらに農民と漁民の両方の不安をかき立てた、こういうことがございます。そういう中で、おととしの十二月に妥結したということは、タイミングとして非常によかったのではないか、全体の交渉の雰囲気を変えた、こういうふうに理解しておるものでございます。私は何も政府に義理はございませんけれども、政府と関係業界の決断を多としたい、こういうふうに考えております。 こういう背景でございますので、北田参考人もおっしゃいましたように、今回の農業のオファーはある意味で大きかったのではないか、こういうふうに考えております。これは私は日本の経済力、特に輸出の関連で、ある意味では仕方がなかったのではないかと考えております。 しかし、大きかったにもかかわらず、妥結の内容は日本農業に対する影響は極力小さくなるように配慮されているのではないか。非常に細かい例を申し上げますと、国際酪農品取極におきましても、日本が脱脂粉乳をえさで使う、こういうふうなことがちゃんと書かれております。こういうことで、もちろん影響が全くないとは言いません、しかし、かなりの配慮がなされている、こういうふうに理解しております。 また、別の面から申しますと、国内の牛肉価格は高過ぎた、こういうような消費者の不満が非常に急増していたときでございまして、いろいろなもので輸入をふやさなければ消費者物価の安定が図れない、こういうときでございましたので、国内の消費者物価の値上がりを防止した、こういう側面が大きい。これで、インフレの過程でございますので、農民にはなかなかつらいことでございましたけれども、特に目立った打撃はなかった、こういうふうに考えております。 むしろ問題点は、あの交渉の過程でいろいろ農民、漁民に不安を与えた、こちらの方が大きいわけでございまして、実際の影響、価格がどのくらい下がる、こういう影響としては少なかったのではないか、こういうふうに考えております。幸いにして妥結しましたけれども、今後ともいろいろな問題が起こるのではないかと思っております。米国などがこれに不満を持つのはある意味で当然でございまして、アメリカなんかは農業を輸出産業として考えております。合理的な、生産性を向上させる産業として考えておりますけれども、日本の側は、ヨーロッパも日本に似ておりますが、農業を社会の安定の要素として、若干の経済的な不合理性がありましても維持すべきだ、こういうふうに考えておりますので、この考え方の違いがあります場合に、当然今後とも矛盾が残る、こういうふうに考えております。 こういう中で、私自身の計算ではございませんけれども、今度仮にアメリカが農産物の交渉で一〇〇得たといたしますと、EC側から四〇%くらい、日本から四〇%くらい、カナダその他から二〇%くらい、このくらいでアメリカ農民に利益が均てんしたのではないかと思っております。これは、日本の農業というものが国際関係の維持という、日本全体の国際関係というのを配慮して——私としましては、ヨーロッパと日本と比べますとヨーロッパの方が国内の農産物市場がはるかに大きいのにかかわらず、日本と同じくらいの譲り方であった、こういうことで皆さんも評価していただきたいと思います。 輸出国だけではございませんで、発展途上国側もいろいろ不満があるかと思います。日本の中小企業も同じだと思いますが、これは徐々にそういう不満を解消していく以外にないのではないか。不幸にして日本は、ヨーロッパと違いまして、国土がかなり南方の方までございますので、発展途上国の南方の国との競合品目がございますので、こういう点は一般的な経済協力で今後とも解消していっていただきたい、こういうふうに考える次第であります。 もう一つ小さい点を申し上げますと、皆さん余り注目されないのでございますが、たとえばイカの輸入税が引き下げられました。これは大変苦労なさった点ではないかと思います。先生方御存じのように、日本の漁業の経営体の九五%は非常に零細でございまして、数%だけが世界に冠たる競争力を持っております。そういう枠内で、仮にイカを例に申し上げますと、これを譲るということはなかなかむずかしかったのではないかと思います。ところが相手側から見ますと、ニュージーランドのクライストチャーチの沖合いで日本の優秀な船がイカをとりまして、それが無税で日本に入って、同じ海でニュージーランドの船がとったものが従来ですと一〇%の輸入税がかかる、これは相手国側がきわめて不公正だ、こういうふうに思うのは当然でございます。こういう点でゼロにはしないけれども譲った、こういう点は非常によかったのではないか。これはただ一つの例を申し上げただけでございまして、二百品目以上の農産物がこういうことをやっておりますので、いろいろ一々十五分以内で申し上げるわけにまいりませんので、こういう例を申し上げましたが、よかったと思っております。私といたしましては、農業がこれだけ苦労したのでございますので早く国会で承認していただきたい、こういうふうに考えます。 さらに、日米間の問題としましては、二、三年後にはまた輸入の割り当て量を見直す、こういうことがございますので、それに対して早急に準備をしていただきたい、こういうふうに考えます。貿易交渉とは違いますが、余り円安になったりしてえさの価格が国内で上昇する、そういうようなことがないように経済運営に細心の留意を払っていただきたい、こういうふうに考えております。 以上でございます。
○中尾委員長 ありがとうございました。 続きまして、細見参考人にお願いいたします。
○細見参考人 ごく概略のことしか申し上げられませんので、ごく概略のことを申し上げたいと思います。 私、実は前回のケネディ・ラウンドというのに大蔵省におりましたときに関係しておりまして、いま若干の参考人の方からお話が出ました、なぜそんなに関税を下げるのだとか、あるいは中小企業がどうなるのだとか、あるいはなぜ関税を下げるのに食糧まで引き込むのだというようなことで、ほぼ同じような議論がございまして、結果は見ておっていただきたいということを申し上げて今日の経済になっておるわけでございます。そういう意味で私は、最近の国際経済の推移の中でやはりこの東京ラウンドというのがかなり大きな事柄であったという側面を申し上げてみたいと思います。 御承知のように戦後のガット体制というのは、いろいろな意味での保護貿易主義というものを二度と繰り返させないということで出てきたわけでありますけれども、そうは申しましても、国内で中小企業の問題あるいは出おくれた産業の問題というようなものがありまして、今日のように為替レートが大幅に変動する時代になりますと関税率というのも相対的にウエートが軽い問題に見られるわけでありますけれども、このケネディ・ラウンドとか、そのもう一つ前にやはりアメリカ人の名前を使ってジロン・ラウンドというのをやっておるわけですが、そのころには関税の一〇%も下がれば企業はひっくり返ってしまうのだ、つぶれてしまうのだというような、これは国際世論でございます、日本だけがそうだったというわけじゃございません、国際的にそういうことで、関税交渉というのは非常に手間をかけて非常に細かく議論するくせがついたわけです。その意味で私は、今回の東京ラウンドはケネディ・ラウンドのときに比してまさるとも劣らない、三十数%というような関税率の引き下げによく成功されたと思うわけです。 ただ、そう申しましても、日本が非常に譲ったじゃないか、日本が一番いわば裸になってしまったじゃないかという議論がいつも出るわけでありますが、たとえば、日本の関税水準が三%ぐらいになった、アメリカやECは四%とか五%とかいう水準で、日本がカットしたのも大き過ぎるし、関税水準が低過ぎるじゃないかという議論が非常に多いわけですけれども、これは、実は関税水準を低くすることによって日本経済を支えているわけです。と申しますことは、油や鉄鉱石やあるいは輸入石炭に税金をかけたのでは日本の経済はやっていけないから、それをゼロにすることによって、つまり安い関税にすることによって日本経済は成り立っておるのであります。こういう平均で三%ということは、たとえば日本の自動車のように、御承知のように世界で一番輸出が伸びておる自動車に日本が輸入関税をかけているわけですね。そういうものを入れて三%になるわけでして、ですから、つまり、製造段階が進んでおるものほど——日本の関税の伝統でございまして、原材料はゼロにする、資源のない国ですから。どうしても買わなければならない食糧とか原材料はゼロにする、加工段階が高くなるにつれて関税を高くするというやり方になっておるわけですから、すべての輸入品目を一緒にして平均関税率というのをとれば、日本の貿易構造で関税が一番安くなる。むしろ関税が安くなっておるというのは、日本はそういうかっこうで得をしているとまでは申しませんが、そういう貿易構造であるということは第一に申し上げておかなければならないことだと思うのです。 それから第二に、今回の東京ラウンドは非常に大きくよくやっておられると思いますが、その背景として国際経済下における日本の状態というのをちょっと申し上げてみたいと思うのですが、日本は御承知のように油その他のものを買って、そしてそれに必要な外貨をかせぎ出さなければならないわけであることはもう申し上げるまでもない。ですから、たとえば去年の十一月とか十二月とかいうときの通関輸入の状況を見てみますと、日本の輸入というのはその前年同月に比べまして、数量では、十一月が一〇一%、約一〇二%ですが、二%くらいふえ、十二月には九三%、つまり去年よりも七%も減っておるわけです。しかし、ドルで払っておる金というのは、ドルでそれを見ますと、十一月が一四三%、十二月が一三八%、つまり、もう量はふえないわけですけれども、端的に油の値上がりと思っていただいていいかと思いますが、そのほかの鉄鉱石とか石炭とか、みんな上がってしまって、こういうかっこうで、とにかく何とか日本経済をやっていくためにはかせぎ出さなければならない。 一方、輸出の方はどうなっておるかと申しますと、決して輸出がそう悪いわけじゃないのです。ではありますけれども、たとえば十一月で見ますと、数量で一一三%、それから十二月が一一〇%、円のベースで見てみますと、十一月が一三八、十二月は二二九。ところが、これをドルベースで、つまり実際の外貨収入で見てみますと、それぞれ一一一%、一一四%。つまり円でかせぐ分だけドルでかせげない、そういうかっこうで、いまや国際的に世界じゅうが何をやっているかと申しますと、こういうかっこうの油というもの、あるいは一次産品というものの値上がりに対処して、みんな金利を引き上げて、そして自分の国の通貨を高くしてできるだけ安く買おう、自国通貨建てにしてできるだけ安くしようということで、いまや一九三〇年代のダンピングだとか、あるいは為替切り下げ競争だとかいうことの逆さまをやっておるわけです。 そういう意味で、それじゃ、われわれがこれから高い価格にし、高い輸出をしていかなければならない輸出の市場はどこかということでありますが、これを輸出マーケットで見てみますと、こういうことになるわけです。相変わらずアメリカが意外と大きいわけでして、本来もっとアメリカに依存度を低くすべきだと私も個人としては考えますけれども、対米輸出といいますか、輸出の中に占めるアメリカのシェアが実は二五・六%、カナダまで入れますと二七%になる。その次が、今度はヨーロッパでございまして、EC及びECに加盟してないヨーロッパを入れまして一六%、東南アジアがアメリカに匹敵して二五%、中近東が一〇%、ラテンアメリカが六%、アフリカが三%、共産圏が、全部入れまして七・二、あれだけ言われます中国でもまだ三・六%ということで、いま輸入のところで申し上げましたように、われわれがほっておいても、つまり、いま程度の経済をやっていくのでも月に二割とか三割とか輸入の金額が、代金がかさむ、それを何とか輸出をしてかせいでこなければならないマーケットというのは、貿易構造というのはそう急激に変わるわけではありませんから、やはりいま申し上げたようなシェアのマーケットへ出ていかざるを得ない。したがって、そういう国との間の貿易をいかにしてバランスしていき、お互いに摩擦を少なくしていかなければならないかというのが問題かと思います。 前回のケネディ・ラウンドのときもそうでございましたが、こういう大きな貿易交渉をいたしますと、国内では、いまも御議論がありましたように、譲り過ぎたという議論が必ず出てくるわけです。ですから、アメリカでも、御承知のようにニクソンの新政策につながる過程のアメリカの経済政策というのは、非常に保護主義的であったわけですね、ケネディ・ラウンドの後は。ヨーロッパもそうでございました。したがって、 ECができ、いろいろな排他的な動きになった。日本はそうでなかったと信じたいわけでございますが、いずれにしましても、そういうふうに大きな交渉の後というのはえてしてそういう批判が出てまいります。 日米もそういうことで自動車とかいろいろな問題があることは事実でございますけれども、これは何も日米だけで起こっているわけじゃないわけでして、アメリカとECというのは日米にまさるとも劣らない貿易戦争をいまやっているわけです。大変な悪口雑言の言い合いをいまやっております。これは政治的な背景というのは、譲り過ぎたということで、何とか強い姿勢をとらなければいかぬというムードが出やすいものだ、そういうものが政治だと私は思うわけですが、そういうことになっておるわけです。 ですから、われわれ日本のように、いま申しましたように、いやでも毎月二割とか三割とかの輸入代金というものがふえていくような——油が二倍になるとかいうことになれば、どなたがお考えになっても、二百数十億ドルで済んだ油代が四百億ドルになり、あるいは五百億ドルになり六百億ドルになるわけですね。とすれば、それをどこかでかせがなければならない、あるいは少なくともどこかで相当部分をやりくりしてこなければいかぬということになれば、やはり貿易というもの、しかも、それをできるだけフェアにやって、相手も納得する形で貿易を拡大していくということにしなければならない。貿易環境は日本だけが油で困るわけでなくて、世界じゅうも困るわけですから、世界じゅうの国がフェアなかっこうで、貿易をやって、確かにあるときは輸入が多くなることもありましょうが、その結果、またその国の輸出もふえて、両方が、つまり貿易が拡大することによって油その他に対する輸入の代金が相対的に小さくなるというようなかっこうで、拡大貿易の中で油の負担とかそのほかの問題を解決していかなければならぬわけですね。 そういう意味で、今回の東京ラウンドというのは、関税が引き下がったことも、それはそれなりに大きな評価ができますが、むしろそのことよりも、貿易のルールということについていままでになかった非常に大きな進歩が織り込まれておる。八つの協定が具体的にそうでありますが、たとえば日米の問題で何遍も何遍も問題になりますいわゆるアメリカン・セリング・プライスというやつですね、アメリカが勝手に関税評価をするとか、あるいは四百二条のaですか、そういうような条項によって、日本の製品の正当な価格を否認して勝手に輸入価格をつり上げてそれに関税をかけるというようなことをするとか、あるいはダンピングだとか、相殺関税だとかいうようなものをかなり恣意的に適用しておった。それらについてお互いに納得のいくルールができたということは、輸出市場においては先進国貿易というものに大きく依存せざるを得ない日本としては非常に大きな進歩だ。しかも相手の国が、ECもアメリカもいまや一月一日から実施しておるわけですから、最も貿易に依存しなければならないわが日本がその施行が一番おくれているというようなことは余りほめたことにはならないのではないかと私は思うわけです。 そういう意味で、この東京ラウンドというのは先進国貿易の大きなルールをつくった。ただ、先進国貿易だけのルールをつくったかと申せば、先ほどもお話がございましたように、将来の貿易の枠組みとして、農業の問題だとか、あるいは発展途上国の問題をどうしていくのだ。特に発展途上国に対しては優遇的な譲許を公然とガットの上で与えていく。いままでのように、みんな強い者だというかっこうでの競技のルールと申しますか貿易のルールではなくて、体の弱い者、おくれてきた者についてはそれなりのメリットを与えましょう。しかし、それなりの条件の譲歩をするからには、相手の方もいつまでもそういう特別の温情というようなもの、特別の譲許というようなものに頼らないで、りっぱに体力が整ってきたら卒業します、私はそんな特別扱いをしていただかなくても結構ですということをあなた方も言いなさいよ、それがお互いの貿易のフェアなルールじゃないですかというようなかっこうで将来の南北貿易への道も大きく開かれておるわけでして、そういう意味でこの東京ラウンドというのは、いわば何回かのサミットで繰り返し繰り返し東京ラウンドをやるんだということが言われたことは当然でありまして、壊れかかっておる貿易ルール、貿易機構というものをやっとといいますかきちっと強化して、八〇年代へ持っていったんだということが言えようかと思うのです。 つまり七〇年代のころにわれわれ多少とも外国の人たちと交渉しておる者たちがお互いに申しましたことは、もうガットはだめだ、われわれはいかにしてガットの次の世界貿易機構というのをつくろうかということをみんなで——みんなでといいますか心ある者が話し合った。なぜかと申しますと、ガットでいわゆる特恵関税というような制度をつくり、最近までよく言われました新発展途上国、つまり韓国とか台湾に代表されるような追い上げてきた国があって、しかもこれらの国々はガットの義務の方は守らないでガットの権利だけを、特恵関税というような権利だけを要求する。こういう国に対して平等の義務を課し、平等の権利を与える。フェアに義務をしょってもらい、フェアにまた特権も与えるということが一体できるだろうか。片一方の方はUNCTADにたてこもっていわゆる新経済秩序を一方的に言うわけでありますし、片一方の先進工業国の方はかなり力が弱ってまいりましたのでOECDにこもっていわゆるハイレベルというような会合をやる。将来の世界貿易というのはどうしたらいいだろうか。自分たち先進工業国と発展途上国、特に追いついてきた発展途上国との間の利害をどこでだれが調整できるだろうかというようなことを言って、ポストガットというようなことでどうなるかと言っておったその混乱が、とにもかくにもランブイエのサミット以来取り上げられて今日結実を見た。 その間にこれだけ為替レートが変動いたしますと、世が世であれば非常に厳しい輸入禁止措置だとか、あるいは非常に激しい対立関係とかいうようなものが起こるのだろうと思いますが、為替レートのことだからどうにもコントロールがつかないからしようがないやというあきらめもあるいはあったのかもしれませんが、とにかくこれだけの、この程度の国際的な緊張で今日までやってこれたというのは、この東京ラウンドをやっているんだ、みんなサミットでも話し合ったじゃないかというのが大きな支えになっておったということでありますから、ここまで来た東京ラウンドというのは一日も早く本当の意味で国会の御承認を得て日の目を見るのが一番いいことだと私は思います。
○中尾委員長 どうもありがとうございました。 続きまして、青木参考人にお願いを申し上げます。
○青木参考人 東京ラウンドの成果は、自由貿易体制の基盤拡充を目的とする、そういうように考えられると思いますけれども、貿易立国を国是としておりますわが国にとって非常に重要なものであろうかと考えております。また、欧米諸国の保護主義的な圧力の高まりの防止あるいは除去というような面から考えましても、そのできるだけ早い実施が望ましい、そういうように考えております。 以下、私として特に関心のあるポイントにつきまして三つぐらいにまとめて申し上げさせていただきたいと思います。 まず、相殺関税、ダンピング、関税評価、この点でございますけれども、今回の東京ラウンドにおきましては非関税措置の軽減、撤廃に関する交渉が初めて本格的に行われたわけでございますが、関税水準の低下もあって、非関税措置が貿易障害、貿易摩擦要因という意味で大きなウエートを占めるようになってきていることは皆様御存じのとおりでございますが、その中で相殺関税、ダンピング、関税評価の三つは、日本の立場として見ますと、一つにまとめていいような面があるのじゃないかと思います。と申しますのは、日本からの輸出に当たってはもう絶えず悩みの種になってきたと言ってもいいのじゃないかと思うくらい、不利益をこうむってきております。しかも、日本側はこの種の制度を発動して外国からの輸入を阻んだということはほとんどないと言えるのじゃないかと思っておりますが、そういう意味で、一方通行的な日本の輸出に対する障害だったと言えるのじゃないかと思います。 相殺関税について言いますと、ガット第六条の規定によりますと、国内産業に対する実質的な損害の存在を前提としなければいかぬとなっておると思いますが、米国の国内法では、従来、国内産業に対する損害がなくても相殺関税を課することができるようになっておりました。米国は今回本協定を受け入れるとともに、七九年通商協定法によりまして、本協定に沿って相殺関税制度に実質損害要件を導入しております。 次にまた、ダンピングにつきましても、一九六七年の国際アンチダンピング協定によりまして、実質的損害が発動の要件となっているのに対しまして、米国の国内法では、ただ単に損害があればいいとされております。これにつきましても、米国は、ダンピング防止協定の受け入れに伴いまして、七九年通商法によりアンチダンピング法を改正いたしまして、実質的損害を発動要件に改めております。 この米国の相殺関税とダンピング制度につきましては、わが国の多数の輸出品がかかわりを持ちまして、特にダンピングに関しましては、これが多用されるようになった七〇年から七八年までで約七十品目に及んでいるかと思います。したがいまして、これらの協定の成立によりまして、わが国の輸出関係者にとりましては、かなりのプラスがあると言えるのではないかと思っております。また、これに関係しましたわが国からの輸出品目の中には、かなり多くの中小企業製品も含んでおりました。また、そのほかに大企業の製品に関する場合でございましても、部品とか下請等の形で中小企業が関与しているケースも多いものと考えられます。こういう意味で直接間接に中小企業の輸出に対するプラスも大きいのではないか、そう見ております。 しかし、ダンピングあるいは相殺関税の制度につきましては、協定上以上のような改善が見られたと言っても、なお今後の各国の運用いかんによるところがあろうかと思います。したがいまして、日本としましては、各国の運用が協定の規定と精神に十分沿って行われるよう、注意深く見守っていく必要があろうかと思います。 次に、関税評価につきましては、アメリカとカナダは、ブリュッセル物品評価条約に参加しておりません。したがいまして、関税評価制度に関しましては国際的に不統一のままであったわけでございますが、今回の協定によりまして、各国の恣意的な評価方法が排除されることになりますと同時に、評価の方法につきまして明確な優先順位が与えられることとなっております。これに伴いまして、いままでわが国の輸出業者を悩ましておりましたアメリカのASP四百二a条あるいはカナダのFMV制度が廃止されることになるわけでございますが、関税評価についても国際的に合理的な方向での統一が図られるということは、まことに好ましいものと考えております。 次に、第二のポイントといたしまして、関税引き下げの問題に触れてみたいと思っております。 今回の関税引き下げ交渉の効果は、全体としては日本にとってかなり成果が大きいものであったと考えていいのではないかと思っております。 まず、主要先進工業国の鉱工業品の関税率が三分の一程度引き下げられるわけでございますが、これによりまして、関税の貿易阻害効果というのは一段と低減される。しかも、特に全世界的に見て引き下げ幅の大きいものの中に、一般機械、輸送機械、化学品、写真用品などの部門が入っておりますが、こういった部門は、日本の産業構造あるいは貿易構造の知識集約化という方向にも沿ったものであるという点で、今後輸出面でのプラスは多いかと考えております。 他方、日本側の関税引き下げでございますが、この内容は適切なものではないかと、私としては考えております。まあ関税につきましては、何と申しますか国際的な開放貿易体制とかあるいは国内の物価水準との関係というような、理念的な面からの主張もいろいろございますが、実際の関税交渉の場合になりますと、やはり自分の国の引き下げ幅は小さく、相手の国の引き下げ幅はできるだけ大きくというような立場が出てくることが多いのではないかと思います。特に今回の関税交渉は、時期的に見ますと、日本の黒字に対する批判が非常に強かった時期だけに、非常にむずかしい交渉だったのではないかと思います。 ところで、今回の日本側の引き下げの内容を拝見しますと、たとえば大企業製品で輸出の比率の高いものにつきましては、思い切って大幅に関税を引き下げておりまして、これによって日本側の市場の開放を明らかにする、それと同時に、東京ラウンドの目標でございます国際的な開放貿易体制というものについての日本の気構えを示すという点が十分あらわれておるのじゃないかと思います。 しかし、その反面、日本としてどうしてもこれ以上は譲れないんだというような線、特に繊維とか皮革等々、中小企業の分野の商品につきましては、関税引き下げの例外としたり、あるいは引き下げ幅を小幅にとどめる等、産業政策的に相当の配慮が行われているように私には感ぜられます。そういう意味で、今回の引き下げ全体として適切なものと言えるのではないだろうかと考えております。 また、今回の関税引き下げは、八年間にわたって段階的に実施されることとなっております。したがいまして、中小企業も含めて、わが国の産業といたしましては、必要に応じて経営の合理化を行う等によりまして、逐次その抵抗力の増強を図っていく余地があろうかと思います。こうした意味で、わが国の産業全体といたしまして、今回の関税引き下げに適応していくことは可能であろうと考えております。 なお、あるいは今回のいわゆるMTNから多少離れることになるのかもしれませんが、今後日本の中小企業にとりましては、製品の高級化とか構造改善、海外進出といったような、国際環境の変化につきましてのより積極的な取り組みが必要になることが多いのではないかと考えております。これに伴いまして、海外の産業、経済、企業等に関する情報を収集いたしまして中小企業の皆さんに提供するということが、ますます重要になってくるのじゃないだろうか、こう考えております。 それから、第三のポイントといたしまして、スタンダードコードと政府調達につきまして若干触れてみたいと思います。 まあ、この規格、認証制度とかあるいは政府調達というのは、非関税措置の中の一環でございまして、若干話の順序が前後して恐縮でございますけれども、規格、認証とか政府調達という制度につきましては、何といいますか国際的に見ても、お互いに相手国の制度の内容がわかりにくいとでも言いますか、何かそういうプリミティブな疑問から紛糾を招くケースが多かったような感じがいたします。特にわが国について言いますと、言葉の制約等もあるかと思いますが、外国にわかりにくいという面でNTBの論議を招いたりしたのじゃないかと思います。今回の協定によりまして、手続や制度の公開等、あるいは情報の適切な提供等が各国に共通に義務づけられることとなったわけでございますが、これによってわが国といたしましても無用な誤解を避けるという意味で、大いに有益ではないかと思います。 なお、この種の制度に関します外国からのインクワイアリー等につきましての情報サービスといった仕事につきましては、ジェトロでは従来からもある程度やっておりまして、かなりの蓄積と経験を有しております。そういう意味で、無用のNTB論議を招かないようなという面で、何かジェトロとしてもお役に立てるようなことがあれば幸いだと、そう考えております。 ところで、全体といたしまして東京ラウンドの成果というのは、今後の日本経済あるいは世界経済の発展にとりまして非常に重要であると考えております。 日本では、昔から貿易立国という言葉があるわけでございますけれども、かつては貿易立国とは言っても実質的には輸出立国という内容で使われていたことが多かったのではないかと思っておりますが、ジェトロにおりまして海外との接触の機会もかなりあるわけでございまして、輸出と輸入のバランスのとれた発展というのが非常に大事だということをかねがね痛感いたしております。 もちろん輸出は非常に大事でございますし、また各国それに努力しておるわけでございましょう。各国の輸出の伸長は、あるいは各国の輸出を好調に伸ばしていくということは、それぞれの国の努力の成果だと言えば言えるわけでございますが、仮に輸出が好調な国と不調な国との間で余り大きいアンバランスが生ずるようなことでもございますと、こういう東京ラウンドの成果にもかかわりませず、保護主義に傾く国も出てくるような、何かそういうおそれを感ずるわけでございます。 そうした面から見ましても、日本としましてこの各種協定をできるだけ早く実行に移す、それと同時に、事実の上でもこの協定の趣旨に沿った開放貿易の体制を進めることが望ましいのではないか、こう考えております。 以上でございます。
○中尾委員長 ありがとうございました。 続きまして、小森参考人にお願いいたします。
○小森参考人 私は、東京ラウンド交渉で合意に達しておりますもののうち、政府調達に関する協定に関連をいたしまして、今日、日米間でも問題になっております電電公社の資材調達開放問題につきまして、集中的に申し上げさせていただきたいと思います。 まず第一に、先生方も御承知と思いますが、日本における情報産業に及ぼす影響についてであります。情報産業は、御承知のとおり、政治経済に重大な影響を及ぼすものであります。その意味で、電気通信事業や情報産業は国の戦略産業であるというふうにも考えておるわけであります。しかし、残念ながらわが国の電気通信事業、とりわけ情報産業の分野におきましては、必ずしも将来展望が明確に示されていないのが今日の現状であります。特にデータ通信を初めとする情報産業につきましては、外国の企業によって支配されるようなことに仮になるとするならば、わが国の政治経済に与える影響というのはきわめて大であるというふうに言わざるを得ないわけであります。 私は、一九七八年の第八十四回の国会におきまして、衆議院で特定機械情報産業振興臨時措置法に関する討議が行われた際に、附帯決議が採択されておるわけでありますが、今日の情報産業の重大性ということを御理解をいただいて、この附帯決議の特に第二項について早急に実施に移すように善処方をお願い申し上げる次第であります。 念のために、この附帯決議の第二項というのを申し上げますと、次のとおりでございます。 情報産業が経済社会に及ぼす影響の重大性及びこれをとりまく客観情勢の厳しさを認識し、国全体としての大局的観点から、情報産業のあり方及びその発展方向について、広範な各界の意見を聴いて検討する場を設け、速やかにこれに関する基本政策を策定するよう努めること。 なお、基本政策の立案に際しては、情報の民主的かつ平和的利用、国民に対する公開及び基本的人権の保障の諸点に留意すること。 これが当時の商工委員会の附帯決議第二項でございます。ぜひ情報産業の重大性ということを御理解をいただきまして、ナショナルレベルにおける速やかなコンセンサスを得るために、この第二項を早急に実施に移していただきたいということを、まず第一にお願いを申し上げる次第であります。 第二に、電気通信サービスや情報の質の安定的な供給についてであります。 特に、電気通信事業につきましては、その通信の特殊性から見まして、技術的統一性ということを確保することが非常に重要なわけでございますが、御承知のように、日本の電気通信事業というのは、その通信技術において世界のトップレベルに位置しているというふうに言われておるわけであります。したがいまして、サービスにつきましても、個々の若干の相違はあったとしても、これも世界のトップレベルに実はあるわけであります。これは真に日本の電気通信技術がわが国の立地条件に合わせまして統一された規格によって通信網を構成しているからにほかならないというふうに実は考えておるわけであります。 このような技術的統一性をもって構成されております通信網あるいは通信システムに、他の質の異なった機器を導入されることになるならば、通信サービスの低下につながる危険さえあるというふうに考えざるを得ません。これはかつてイギリスの経験でもございましたし、最近では昨年の五月一日に毎日新聞によって紹介されたブラジルの例から見ても明らかだというふうに思うわけでございます。 第三に、政府調達に関する協定についての国際的な取り組みの状況でございます。 御承知のように、ECにおきましては、東京ラウンド交渉の結果締結された政府調達に関する協定のうち、ほとんどの国は電気通信機器につきましては政府調達コードの適用対象から除外をいたしておるのであります。このこともわが国の電気通信事業と同一でございまして、電気通信技術の統一性が絶対に必要であるという共通の認識の上に立っているからだというふうに実は考えるわけであります。 また、アメリカにおきましても、一部の小さな独立系の電話会社を除きまして、アメリカ電信電話会社、AT&Tと、機械をつくっておりますウエスタン・エレクトリックの関係でも明らかなように、通信機器は競争入札の対象になっていないのであります。 このように、世界におきます主要な先進国におきましては、電気通信事業の重要性、特殊性ということを考えまして、政府調達コードの適用から除外することでほぼ合意されているというふうに私たちは承知をいたしておるのであります。 このように、アメリカを含めて世界のほとんどの国が電気通信事業は政府調達コードの適用から除外しているにもかかわらず、アメリカがなぜわが国の電気通信事業、特に電電公社の資材調達のみを対象にして政府調達コードの適用を要求するのか、この辺が私たちには全くわからないのであります。もしアメリカが本当の意味で東京ラウンドの基本的な考え方に立って政府調達問題を考えるということであるならば、ECを含めて電気通信事業の開放について積極的に努力すべきが筋だというふうに実は考えておるわけであります。ところが、ECに対しては非常に消極的でありまして、わが国にのみこれを強要するというようなやり方は、私たちにとってみますと非常に理不尽なやり方ではないかというふうに考えるわけであります。 だからといって、私たちは、電電公社のすべての調達物品について政府調達コードの適用から除外せよ、こういうふうに主張しているのではございません。わが国の電気通信設備の質を向上させ、利用者の利益を守り向上させる、そのためにアメリカなりECから輸入することが適当であるというものであるならば、私は積極的に導入すべきだと思うわけであります。つまり、アメリカの通信機器が日本の通信網に編入をされるような場合であっても、それは日本の通信網に適応するかどうかの十分な点検が必要でありまして、最初に申し上げましたように、つくられている、技術的に統一された中に異質の通信機器を入れるという意味ではなくて、日本の通信網に適応できるものとして導入することについては、われわれは決して否定するものではございません。 その意味で考えるならば、私たちもアメリカの全米通信労働組合、CWAと率直な意見交換を行ってきておりますが、世界的にこのような高度の技術の交流を進めるということは、EC、日本、あるいは日米という関係にとっても共通の利益となるわけでありますから、そういう技術交流を積極的に進めることについては、われわれもやぶさかではありません。ただし、この場合であっても、先ほど申し上げました電気通信の特殊性ということを十分に考えて、政府調達コード、いわゆる競争入札以外の方法で日米間で検討すべきではないだろうかというふうに考えておるわけでございます。 次に、昨年六月二日の共同発表によりまして合意を見ました日米間の問題についてであります。 御承知のように、牛場・ストラウス会談によりまして、六月二日に共同発表が行われたわけでございますが、その中に、「相互の市場への進出機会に関し相互主義が適用」という言葉がございます。つまり相互主義という内容でございますが、私の知る限りにおいて、また私たちが接触している限りにおいて、当事者は別でございますけれども、この相互主義の内容について日米間に評価の食い違いがあるのではないかというふうに考えざるを得ないわけであります。 そのことはどういうことかと申し上げますと、アメリカ側は、相互主義というのは、アメリカはすでに開放済みなのであるから、日本の電電公社が政府調達コードを適用するかどうかしかないのだ、簡単に申し上げるならば、電電公社が国際競争入札をやるかやらないかだけなんだという前提に立っているように思えてならないわけであります。そして、これはアメリカだけではなくて、わが国の一部にも、アメリカはすでに全面的に開放しているのじゃないか、政府調達コードを適用しているのじゃないかというふうに誤解している向きがあると思うのであります。ここのところに、相互主義に関する認識について、先ほど申し上げましたが、当事者は別にいたしまして、アメリカにおいては、たとえば議会とか労働組合とか、そういう人たちの評価が全然食い違っているのではないかというふうに疑問が生まれるわけであります。 私たちは、こういう評価の食い違いをそのままにして政治決着を急ぐということになれば、相互主義どころじゃなくて、アメリカの一方的押しつけになる危険性さえあるというふうに実は考えざるを得ないわけでございます。その意味で、相互主義の内容について日米間の認識を一致させることが重要だというふうに実は思うわけであります。 最後に、雇用問題について申し上げたいと思うわけであります。 今日の日米交渉の経緯から、仮に電電公社の資材調達を競争入札あるいは随意契約であってもアメリカとの関係で協定を結んでいくというようなことになった場合、きわめて単純計算ではございますけれども、五十二年度に例をとりますと、公社調達が六千二百六十五億ございまして、そのうち三千五百億が通信機械でございます。仮にアメリカが要求している本体部分を二〇%開放するということになれば七百億というふうになるわけでございまして、これを大手四社、日立、日電、富士、沖、この一人当たりの年間売り上げ額が約一千万円程度というふうに言われておるわけでございますから、先ほど申し上げましたように非常に単純計算ではございますが、この計算からいきますと、大手四社だけで七千名も雇用減につながっていくということが言えるわけでございます。 また、これだけにとどまらずに、御承知のように電気通信機械をつくっている各社というのは非常に中小企業に多いわけでありまして、これの関連下請は約百八十社ございますが、そこに雇用されている労働者は七万名でございます。これも単純計算ではございますが、仮に二〇%開放されるということになるならば一万四千名の雇用減ということが出てくるわけでございます。 このように、雇用に与える影響が実は非常に多いわけでございまして、特に電電公社に対する依存度の高い中小企業は深刻な雇用危機にならざるを得ない状況にございます。 このように、今日の電気通信産業の実態や特殊性を無視したままで政治的決着を急ぐことは、雇用不安を一層助長させる結果になりかねません。 したがって、私たちは、このような雇用不安を惹起させないように、関係業界や労働組合、そして電電公社、政府等を通じまして雇用不安を起こさないような方策について討議するための場をぜひ設定をしていただきたいというふうに思いますし、この意味からも、政府調達コードの適用ということについては多くの問題がございますので、慎重な対応を強くお願いを申し上げる次第でございます。 最後に一言つけ加えておきたいのでございますが、私たちが労働組合の立場で政府調達問題をいろいろ議論をしてまいりますと、一部には電電公社のメンツの問題だとかあるいはメーカーの利益の問題だとか、あるいはひどいことになりますと労使癒着じゃないかというようなことまで御批判を受けることが多々あるわけでありますけれども、私たちも国際自由労連、ICFTUあるいは国際的な電信電話の労働組合の組織でありますPTTI、こういうものに加盟をいたしまして国際的な場で議論を続けておるわけでございます。 そういう意味で、単に電電公社のメンツだとかあるいはセクトだけでこの問題が議論できようはずがございません。われわれも国際的な問題というものを十分に考慮に入れながらこの問題に取り組んでおり、さらにまた国民、利用者のために、そして国益のために、この電気通信事業、情報産業を守らなければならないという観点から、われわれもこの問題について重大な関心を持っておるところでございます。 したがいまして、繰り返すようで大変恐縮ではございますけれども、政治的な妥協——きょうも朝日新聞に紹介されておりましたが、大平総理大臣の訪米前に決着というように、政治的に妥協を急ぐのではなくて、電気通信事業、情報産業を将来どうすべきなのか、日本の産業を守っていくためにどうしたらいいのか、このことをひとつ十分考慮されまして、慎重に対米交渉を行っていただきたいということを繰り返しお願いを申し上げまして、私の意見を終わらせていただきます。
○中尾委員長 どうもありがとうございました。 続きまして、山口参考人にお願いいたします。
○山口参考人 全国農協中央会の山口でございます。 生産者団体の立場から、東京ラウンドにおける農産物交渉の問題について陳述申し上げます。 御案内のとおり、東京ラウンドにおける農産物交渉の結果は、農林水産物資で二百四品目に及ぶ関税譲許のほか、各種非関税措置の軽減等、内容は非常に広範にわたっているわけでありますが、交渉の過程を通じ、私どもが特に関心を持って注目してまいりました問題は二つあるわけでございます。 その第一は、牛肉、柑橘及び果汁の自由化、輸入枠の拡大の問題でございます。第二の問題は、ワイン、ブロイラー、豚肉の関税引き下げの問題であったわけでございます。 なぜ私どもはこうような問題に強い関心を持ったかについて、その理由を簡単に御説明申し上げます。 まず、牛肉の問題でございますが、牛肉の輸入については、現在、割り当て制度を実施しているわけでありますが、われわれは過去において過大な輸入割り当てが行われたために非常に苦い経験を持っておるわけでございます。すなわち昭和四十八年でございますが、第一次の石油危機の年に当たるわけでございますが、政府は国内の牛肉が不足であるという見通しで、当初十六万トンという膨大な輸入割り当てを行ったわけでございます。この輸入割り当て数量は、事態が非常に深刻化しましたので修正をいたしまして、最後には九万トンでストップということになったわけでございますが、こういうような過大な割り当てを行いました結果、価格が四十八年下期から大暴落をいたしまして、生産者は多大の負債を抱え込むというような結果になりまして、二人の自殺者まで出るというような深刻な事態を招いたわけでございます。 これを一口に畜産危機と称しておるわけでございますが、その後遺症はいままでもずっと継続いたしておりまして、農家の負債が完全に償却しきれないというような状態でございます。国の方でもこの事実を認めまして、その救済のために畜産振興事業団から特別に低利融資を行っているというのが実態でございます。 これは私ども国内の農民に非常に打撃を与えるだけではなくて、輸入の相手国に対しても非常な損失を与えておるわけでございまして、四十八年に過大な割り当てを行った次の年の四十九年には、豪州に対する輸入割り当て量をゼロにする、全然入れないというような事態を招いたわけでございまして、非常な国際的な不信を買ったわけでございます。 また、柑橘の問題について申し上げますと、温州ミカンは昭和三十六年から実施されました農業基本法のもとで選択的拡大部門ということで政府から唱道されまして、非常に生産が奨励されたわけでございます。生産が一番盛んでございましたのが昭和四十年前後でございます。この植栽されました木がようやく実が成るような時期、成木の時期を迎えておるわけでございまして、非常に需要の方が政府の見通しと食い違いまして、生果の消費が伸びませんので、ここ数年、慢性的な生産過剰という状態にあることは御案内のとおりでございます。 そのために農家もいわゆるミカンの木を伐採するというような非常措置をとりまして生産調整に努めておるわけでございまして、四十八年の最盛期には十七万三千ヘクタールあった温州ミカンの畑が、五十四年には十四万八千ヘクタールに減ったわけでございます。それでも生産が非常が過剰であるということで、五十四年から三カ年計画でこれを五十七年度までには十三万ヘクタールまで減らそうということで、二割のミカンの木を切り倒すという、いま非常な厳しい生産削減に生産者団体としては臨んでおるわけでございます。 こういうような状態でございますので、このようなときに競合いたしますオレンジの自由化であるとか枠の拡大であるとかいうことを行われますと、これは生産者に対していわゆる首つりの足を引っ張るような結果になるわけでございまして、これに対しまして私ども生産者としては、とうてい耐えられないというのが実態であったわけでございます。 生果のオレンジだけではなくてジュースの問題も同様でございまして、いわゆる生果が青果市場で非常に価格が暴落をいたしますと、当然これは売れませんから、ジュースにするわけでございまして、本年のいわゆるジュースの取引価格を見ましてもキロ二十五円という低価格でございまして、生産コストが七十円くらいかかるわけでございますから、もう生産費を大幅に割り込んでおるわけでございます。政府の方もすでに三万トンの調整保管をするということで、補助金を出して調整保管をしようということに踏み切っておるのが現在の実態でございます。 そういう状態でございますので、この東京ラウンドのオレンジ、それからジュース、グレープフルーツジュースの自由化問題あるいは枠の拡大問題につきまして、われわれは非常な警戒を持ったわけでございます。 第二の関税引き下げの問題でございますが、まずワイン関税の引き下げの問題でございますが、原料ブドウの生産農家にこれは当然大きな影響を与えるわけでございます。特にワインの原料ブドウというものは山梨県に集中しておりまして、山梨一県で原料ブドウの六〇%を生産いたしておるわけで、山梨県のいわゆる特産になっておるわけでございます。 このワイン関税の引き下げが実施されて以来、現状を申しますと、ワインメーカーが引き取りを拒否いたしておりまして、これに対しまして国税庁と農林省がワインメーカーと生産者の間に入りまして引き取りをあっせんしておる、そしてようやく引き取っておるというような現状でございます。生産農家に対しては非常な打撃を与えておるのが現状でございます。 また、ブロイラー、豚肉の関税引き下げ問題でございますが、このブロイラー、豚肉とも生産過剰でございまして、豚に関しましては生産者は現在八万頭の雌豚を、いわゆる繁殖用の豚を屠殺するということをみずから実施せざるを得ない苦しい状態に追い込まれているのが現状でございます。関税引き下げということになりますと当然輸入の促進につながるわけでございまして、この点についてわれわれは心から心配をいたしておるわけでございます。 それから、東京ラウンドに先立ちまして五十二年から開始されました日米通商交渉以来私どもはこういうことを心配いたしまして、政府に対しましては当該品目に対する輸入の自由化とか枠の拡大とか、関税引き下げを行ってはいけないということで、反対運動を展開してまいったわけでございます。また、五十三年には生産者団体も二回にわたりまして代表団をアメリカに派遣をいたしまして、向こうの生産者団体とお互いに話し合って、日本の国内事情を訴えまして、どうか輸出をこらえてもらいたいという要請を行ったわけでございます。また、アメリカ政府並びに議会関係筋に対しましても直接交渉を行ってきた次第でございます。 このような経過を経まして、昨年十二月の五日に農産物交渉は決着を見たわけでございまして、その内容につきましては先生方御案内のとおり、オレンジの生果の輸入枠につきましては、現在四万五千トンを一九八三年までには八万二千トンに引き上げる。オレンジジュースは、三千トンを六千五百トンに引き上げる。グレープフルーツジュースは、現在千トンを六千トンに引き上げる。牛肉につきましては、アメリカから入れます高級牛肉の輸入枠については、四千トンを、今年度じゆうにふやしまして、一九八三年までには一万トンさらに上乗せするということになったわけでございます。また、豪州あたりから入れております一般枠の輸入枠は、十三万五千トンを一九八二年までに枠の拡大を図ろうということで妥結をいたしたわけでございます。また、ブロイラーの関税でございますが、二〇%関税を一〇%関税に引き下げる。ワインは、三百二十円でございましたものを、すでに五十三年に前倒しをいたしまして二百八十円、これはリッター当たりでございますが、それで決まっておりましたものを、アメリカの要請によりまして、リッター二百八十円か、あるいは輸入価格の五五%の関税か、いずれか低い方をとるということで注文をつけられて妥結をいたしたわけでございます。豚の関税は、一〇%関税を五%関税に引き下げられたというような状態に妥結をいたしたわけでございます。 私ども、こういうような妥結に至りました経過をずっと見守ってまいったわけでございますが、評価できる点は、オレンジ果汁、牛肉の輸入自由化、あるいはオレンジの季節枠を現在六月——八月にしぼっておりますが、これをアメリカが四月、五月まで延長しろ、こういう要求につきましては、政府の方でこれを防いでいただいたことは非常に政府の努力を多とするわけでございますが、しかし、輸入枠が大幅に拡大されまして、また関税が大幅に引き下げられたということは、今後の日本農業の前途に非常に大きな障害になりはしないかということを心から心配いたしておるものでございます。 また、牛肉、オレンジ等については、この取り決めが八三年までの妥結でございまして、八三年には見直しをもう一回行うということになっております。八四年以降また新たにアメリカあるいは豪州からむずかしい問題を持ち込まれるのではないかということを生産者は心配いたしておりますし、また、二年ごとに見直しを行うということでございますから、ますます輸入枠が拡大されまして、しまいには自由化したと同じ状態になるのではないかということを心配をいたしておるものでございます。 最後に、今回の協定についての生産者団体の見解でございますが、国際間の交渉でございまして、政府も非常に努力をされたと思うわけでございまして、今回の協定はやむを得ないというふうに考えておりますが、今後の交渉に当たりまして、先生方にぜひお願いしたい点があるわけでございます。 それは、私どもといたしましては、東京ラウンドでうたっております貿易障害の漸進的な軽減であるとか撤廃を通じまして世界貿易の拡大を図る、あるいは自由化を図ろうとする、その趣旨は十分理解をいたしておるつもりでございますが、ただしかし、農畜産物の交渉については、一般工業製品の交渉と別個な視点から取り上げていただきたいというお願いでございます。 と申しますのは、農業というのは国土という基本的な制約のもとに行われておる産業でございます。日本は非常に国土が狭うございます。地価をとらえましても、日本は一反当たり三百四十万以上する農地の価格でございますが、アメリカはわずか一反歩二万円の低い価格の地価でございます。これはなぜかというと、土地が狭い、広いということから来るわけでございまして、これは歴史的に宿命的なものでございます。 そういう上で農業というものは成立いたしておるわけでございますから、一般産業のように、これに資本を集中する、あるいは技術を開発するということで生産性の向上を図るというようなことはとうていできないわけでございます。こういう特殊性についてぜひ今後の交渉については配慮をしていただきたいという点が一つ。 もう一つは、農産物というのは大部分がいわゆる食糧農産物でございまして、この食糧というものは民族の生存のための安全保障にとって欠くことのできない基本的な物資であろうかと考えられるわけでございます。長期的に見ますと、世界の食糧事情は一九九〇年代にはもう相当逼迫したものになるだろうというのがFAOその他の発表でございますし、現状におきましても、穀類の国際価格等は非常に高位不安定に推移しているのが実態でございます。 そういう観点から申しますと、やはり消費者にとりましても、生存の安全保障という観点から、食糧農産物につきましては国内生産が可能なものにつきましてはできるだけ国内で自給するということが望ましいわけでございます。また、国内でできないものにつきましてはやむを得ず海外から輸入せざるを得ないわけでございますが、その場合には、先ほど申しました食肉の問題のような国際的な不信を招かないように、いわゆる安定輸入の確保という観点で輸入を図るべきであろうというふうに考えるわけでございます。 この原則を今後の交捗に当たりましてぜひ政府に守らせていただきたいということをお願いいたしまして、私の陳述を終わります。 以上でございます。
○中尾委員長 どうもありがとうございました。 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。 —————————————
○中尾委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。 質疑は自席から御自由に行っていただくことといたしますが、議事整理のため、委員長の許可を得てから御発言を願いたいと思います。なお、お答えを願う参考人を指名してくださるようお願いいたします。 また、念のため申し添えますが、逸見参考人は所用のため正午、北田参考人は零時三十分に退席されます予定ですから、御承知おき願いたいと思います。 それでは質疑を始めていただきます。
○榊委員 ジェトロの青木理事にお尋ねいたしますが、貿易立国を国是としている日本にとってというところから始められまして、それはそれなりの一つの見識だと思いますけれども……
○中尾委員長 ちょっと、途中でございますが、もしあれでございましたら、参考人の中で御退席の方がおられますから、御退席の方に御質問のある方にお先にやっていただければなおありがたいと思いますが、よろしくお願いいたします。
○榊委員 やはり国際貿易の問題は、同時に国内経済と表裏一体だと思うのでございます。日本の将来あるいは今日の構造として、いわゆる貿易だけではなくて、工業も農業も商業も、いわゆる工展着立国とか兼業立国とか、日本の自然的産業的な諸条件、可能性というものを総合的に生かして、調和のとれた日本経済の発展を図るという、そういう視点がやはり貿易の場合にも必要ではないか。 だから、そういう角度からの今度の東京ラウンドに対するアプローチ、これはジェトロの性格からいたしまして、国際貿易ですから、必ずしもそれを私ども求めるわけではございませんけれども、そういうことは、この問題を考える上で先ほど参考人は考慮に入れておられたのでございますか、ちょっと一言……。
○青木参考人 非常に幅の広いといいますか、奥行きの深い、むずかしい御質問でございますけれども、御指摘のとおり、ジェトロの立場としては、国内で国内産業についていろいろなされておることという面につきましては、なかなか目の届かないような点がございます。したがいまして、産業に対する影響というような面を考えるに当たっても、主としては海外との関係といいますか、そういう面での問題ということになろうかと思います。 ただ、私どもとしていろいろ調査を行って、中小企業の皆さん、そのほかに提供しておるわけでございますけれども、その中には、たとえば同種の産業でございますと、どこの先進国でもほぼ共通に後進国の追い上げを受けているような面はあるわけでございます。そういう場合に、たとえば地場産業をとって、ある先進国では同種の産業が地場産業としてりっぱにやっていけている、そういうような面があるとすれば、果たしてどういう点に特質を持っているのだろうかを日本の地場産業のために調査するという点はございますが、私どもがじかに国内の面についてタッチできる限度はその辺ということになろうかと思います。したがいまして、先生の御指摘の点については、やや限界がある、狭いんじゃないかという御批判かと思いますけれども、ある点御指摘のとおりかと思います。
○中尾委員長 逸見参考人がただいま御退席でございますが、特に逸見参考人に対して御質問のある方おられましたらば、御発言いただきたいと思います。
○高沢委員 御退席のところを済みません。一言だけ。 先ほど、農業の位置づけが、アメリカにとっては輸出産業である、しかし日本やヨーロッパの国々では、これは輸出産業というよりは社会的な一つの安定剤的な位置づけだとおっしゃって、私もそのとおりだと思うのですが、ただアメリカの場合、物すごい工業国で、工業製品の輸出国であり、同時に物すごい農業国で、農産物の輸出国であるという特殊性は、これはもうアメリカだけじゃないかという感じがいたしますが、そのアメリカと日本との間はどうしても大きな貿易関係がありますから、将来にわたってこういう農産物問題のトラブルは続く、私は御指摘のとおりだと思いますが、このラウンドの性格からして、そういう二国間の問題をできるだけ多国間の問題に振りかえていく、そういう性格に一体なじむものかどうか、多国間の問題に振りかえることができるのかどうか、そのことでひとつ御意見をお聞きしたいと思います。
○逸見参考人 元来、多国間の問題として処理すればそれにこしたことはないと私も先生の御意見に賛成でございますが、これは全体の交渉を妥結させますためには、相手側の事情から申しましてこれはジョーンズ報告にはっきり書いてあるわけでございますけれども、牛肉、オレンジをあれだけ増加しましても、金額で貿易収支がそれほどアメリカに改善されるとは思いません。ただ、アメリカの旅行者が日本に来まして、ホテルでいろいろなものを食べまして非常に印象的で、日本が大変な保護主義の国である、こういうような一般の認識がアメリカにある限りは、これは妥結できないのだということもあるのではないかと思っております。そういうシンボル的な商品に対して相手の納得を得る、もちろんこれが多国的な交渉にマイナスになる場合は困りますけれども、あの程度のことでしたらマイナスにならないのではないか。本来多国的に解決すべきものだという先生の御意見には、私賛成でございます。
○中尾委員長 逸見参考人、どうもありがとうございました。 先ほど申し上げましたように、北田参考人は零時三十分に御退席を願います。したがいまして、特に北田参考人に対する御意見がございましたらば、御開陳願いたいと思います。
○野間委員 日米経済摩擦に関連して、北田参考人にお伺いしたいと思います。 先ほどジェトロの青木参考人は、一方通行的な輸出に対する障害が相殺関連税とかあるいはダンピング防止で是正されるというような御発言があったやに記憶しておりますけれども、この点について、その前の意見開陳で北田参考人は、日米摩擦については改善されるとは評価できない、こうおっしゃいました。確かにいま、鉄にしてもあるいは自動車にしても、締結後のアメリカからの圧力は相当なものがあるように私ども認識しておりますけれども、青木参考人のそういう評価に対しまして、もし先生の方で何かございましたら、もう少し具体的に教えていただきたい、こう思います。
○北田参考人 具体的にお答えできるかどうかわかりませんけれども、先ほど青木さんも、たとえばダンピング等のコードで損害認定の問題を非常に明確化されてきているというようなことについては、私もそのとおりだと思います。同時に、青木参考人もそれに関連して、これらの協定が日米摩擦を起こさないように運用されることを期待するという趣旨のことをおっしゃったかと思います。 これらのコードが、従前に比して日米摩擦を解消するのに若干根拠ある明確化を行ったということは私も否定いたしませんけれども、先ほど申し上げました、全体の日米あるいは東京ラウンドの姿勢とのかかわりでは、実際に現実が証明しているように、これが二国間で重大な問題にならない、重大な問題を今後とも惹起しないという保障はないというふうに考えておるわけです。 それに関連しまして、先ほどの意見の開陳で少しあいまいな点があったかと思いますが、私は二国間ベースの問題をすべて多角的な枠組みに振りかえろという主張をしたつもりはございませんので、なじまないものも当然あるかと思います。しかしながら、今回のラウンドで日本政府がきわめて積極的であったのは、むしろ意図としては二国間での問題を多角的に振りかえて輸出環境を改善したい、そういう意図が中心にあったのだろうというふうに思いますが、その点について十分な成果を上げたのではなかったのではないか、そういう評価と関連して述べたわけです。したがって、あくまでも、そういう問題については日本経済の体質その他の改善が基本的には重要であろうというふうに私は考えております。
○中尾委員長 ありがとうございました。
○土井委員 お二方に実は別の問題で聞きたいと思いますが、まず、小森参考人の方からお尋ねを進めたいと思います。 小森参考人おっしゃるとおりで、情報産業というのは国の戦略産業であると私自身も思いますし、やはり、この問題は国家間の問題として今後非常に重要な課題になっていくだろうと思うのですけれども、きょうお話を承った中で、電気通信機器を政府調達のコードの適用から除外するというふうな意味で、ECに対してアメリカ側の取り扱いはむしろ進んでいるのに、日本に対してはアメリカ側はECと違った取り扱いを現実に進めようとしているのではないかという御意見、その辺はわれわれも確かに懸念しております。できましたらもう少し詳しく、この国際的な動きの中で、ECを中心にして、いまの電気通信機器について政府調達コードの適用から外すという動きがどういうぐあいになっているかということを承ることができれば幸いだと思うのです。まずそれが一つ、順を追って申しますから、まずそれについてお聞かせくださいませんか。
○小森参考人 私たちも、先ほど申し上げましたように、国際的な電信電話の労働組合の組織でありますPTTIに加盟いたしておりまして、そこと十分連携を保ちながら対応してきているわけでございますが、この東京ラウンド交渉が始まって以来、ECの事務局と、それから先ほど申し上げました国際的な組織であります世界電信電話労働組合、特にヨーロッパ地域会議との間におきまして、かなり詰めた話をしてまいりました。そして、実はつい最近までは、スイスの場合は自国に通信機器メーカーを持たないものですからある程度開放的な対処をしてきたわけでありますけれども、このスイスを含めまして、ECの事務局との間に、電気通信、特に電信電話事業の機器調達についてはこのコードの対象としないということで最近合意に達しておるというふうに、われわれは連絡を受けているわけでございます。 そういうECの動きに対しては、恐らくアメリカも承知済みではないかというふうに思いますし、特にアメリカの場合には、調達コードの適用ということにつきまして、いわゆる競争入札という言葉にかわりまして、われわれの承知する範囲では、競争的調達という言葉を実は使っておるわけです。この競争的調達という言葉の中身をいろいろ検討してみましたならば、アメリカの電信電話会社がいろんな機器をつくっておる会社から仕様書を取り寄せまして、これはアメリカの電信電話会社のシステムに合っている、コストも非常に適当である、よってこれを入れよう、こういうことのようであります。これは決して競争入札ではございませんで、ちょうど日本でよく言われておりますように、随意契約と全く似通ったものだというふうに思っておるわけです。 したがいまして、先生に御指摘いただきましたように、ECにおきましても、アメリカの電信電話会社にとっても、いまアメリカから言われているような競争入札ですべてこれを律するというふうなことにはなっていないというのが国際的な状況てございます。
○土井委員 二点目は、きょう同じく小森参考人のお話の中で、昨年六月二日の牛場・ストラウス会談の共同発表以後の問題点として、相互主義ということをどのように理解したらいいか、衆議院の外務委員会の席でもこれが問題になったという過去の経緯もございますが、きょうのお話の中で、やはりその相互主義ということについての理解で日米間に食い違いがあるのではないかというふうな御指摘がございました。これは労働組合同士で過去日米間で話し合われたという経緯がある旨もきょうはお聞きしているわけですが、具体的にはどのような議論がそこの場所で相互主義ということについてなされたか、またできましたら、アメリカの国内世論の中でこれをどういうふうに受けとめているかという感触もおわかりになったら、ひとつお聞かせいただきたいと思うのです。
○小森参考人 私、過去三回にわたりまして、アメリカの労働組合であります全米通信労組というところと話し合ってまいりました。その過程で、特に六月二日の共同発表が行われた後のアメリカの対応というのは、相互主義とかあるいは言われている日本の対応とか、そういうものについては評価しないという、実は率直に言ってそういう前提があったような気がしてならないわけであります。 つまり、共同発表は(A)と(B)に分かれておりますが、(B)の項ではいわゆる自営の電話、民間の人たちが使っている電話がございます。たとえば一つの庁舎の中における施設の電話とかそういうものはございますが、そういう問題については確かに(B)項で明らかになっていると思うのです。(A)項で、電電公社がこの資材調達については開放するということになっていない。よって、ここに言われている相互主義というものについては、われわれとしては評価するに値しない、こういう実は意見が出てきたわけなんです。 この意見の背景というものを考えてまいりますと、この相互主義というものが、議論していけばしていくほど、何かNTT、日本の電信電話公社が競争入札制度をとるかとらないかであって、アメリカは関係ないんだというふうな態度に聞こえてならないわけであります。これは交渉の当事者はどういうことになっているかは別にいたしまして、どうもアメリカの労働組合あるいは議会筋等については、先生の御質問に感触という意味で申し上げますと、いま申し上げましたような対応をしているのではないかというふうに実は思えてならないわけであります。 したがいまして、私たちは、相互主義という中身が文字どおり相互主義ということであるならばそれなりに理解はできるのですけれども、いま言ったような対応であるところに実は疑問を持たざるを得ない、こういうことを先ほど申し上げた次第でございます。
○土井委員 同じく小森参考人に、あと一問だけ聞かせていただきたいと思うのですが、今回私たち実はこれからいよいよ東京ラウンドの審議の本番入りというかっこうなんですけれども、政府調達の問題が一番、農業関係についても言えることですが、国内のいろいろな働いている立場の人たちにしわ寄せが持ち込まれることになるのではないか。そういうことであってはならない。働いている人たちの生活をそのことによって犠牲にするということであってはまことに不本意な状況ですから、その点が気にかかるわけですが、先ほどのお話を承っておりますと、やはり雇用関係の問題で、他のいろいろな企業の形態と違いまして、特に電信電話公社の場合は特殊な事情もおありになると思うのです。下請関係との関連性から言って、そういう企業体系の中で、労働問題の上で、きょうは大まかな数字だとはおっしゃいましたけれども、もし最悪の場合には、これくらいの人たちが犠牲になるという数字もお挙げになりましたけれども、あとそういう不安を解消させていくことのために、どういうふうな討議の場を具体的にはお求めになっていらっしゃるか。そうして、どうあってほしいということを政府に対しては具体的な要求としてお持ちになっていらっしゃるか、その点をもうちょっと承ることができればこの節承っておきたいと思うのです。
○小森参考人 先生の質問に関連をしまして、実は先ほど申し上げましたアメリカのCWAとの間においても、失業や雇用不安を起こすような貿易政策はとるべきではないということを、日米間の労働組合同士では合意が成り立っておるわけでございまして、アメリカの労働組合も、日本の通信機器の労働者の雇用問題に影響を与えるようなことはまずいということでは、はっきり私たちに回答しておるわけでございます。 そういうことを前提にしながら今日の状況というのを考えてみますと、先ほど申し上げました中で、とりわけ中小企業は長年こういう形で電電公社との間に資材の調達をやってきた関係で、全部がそうだとは言いませんが、約一〇〇%に近い中小企業が公社に依存をしている。いわゆる公社依存度が一〇〇%に近いという状況にあるわけでございます。この中小企業の産業構造といいますか、こういうものをこのままにしておいて、それが仮に随意契約であれ、競争入札であれ、一〇%あるいは二〇%を開放するということになりますと、先ほど申し上げましたように、中小企業だけでも、きわめて単純計算ですが、一万四千人近い人たちが雇用不安に陥れられるという結果になるというぐあいに考えておるわけでございます。 そこで、先生の御質問にありましたように、私たちはこれからどういうふうに対応していくか。いずれにしましても、こういう国際環境にあるわけでございますから、中小企業を含めまして、電気通信機器をつくっている産業、電気通信業界の産業構造を国際競争にたえ得るように改革を進めながら、その中でこの雇用問題というものを考えていかなければいけないし、雇用安定確保というものを考えていかなければいけない。そういう意味では、労働組合だけで対応できませんので、政府あるいは公社あるいは関連業界、労働組合を含めた広範な人たちによる討議の場をつくっていただいて、そこで労働者も含めた今後の対応についての政策をまとめていくような、そういう場をつくってほしいというふうに実は考えておるわけでございます。
○中尾委員長 ありがとうございました。そのほかに——野間君。 特に申し上げておきますが、北田参考人は零時三十分にお出になりますから……。
○野間委員 私は結構ですから……。 山口参考人に教えていただきたいと思うのですが、先ほどの意見の中でも、要するに農産物と工業製品というものは違うのじゃないかと、これは参考人からもお話がありましたけれども、ところが日本の場合には、政府は口では自給率の向上というようなことを言うわけですけれども、いま穀物の自給率が四〇%弱ということで、ますます低下している。そこへ関税の引き下げとか、あるいは輸入枠の拡大等になりますと、さらに自給率を低めるような役割りをするのではないか。そもそも農産物が国際的な貿易取引の対象になるということ自体、いろいろ問題があろうかと思います。 そういう前提でお聞きしたいのは、オレンジについてでございます。これは参考人もおっしゃったように、輸入枠の拡大も八〇年から、オレンジとかあるいはジュースとずっと拡大されまして、八三年では、オレンジを見ますと八万二千トンですね。そのうちオフシーズンが、四——六が四万五千五百トン。かなりふえるわけですね。とりわけ私が心配をするのは、四——六といいますと晩柑類と競合しますね。夏柑、あるいは甘柑、そしてハッサクあるいはネーブル、こういうものと競合する。しかも国内の晩柑類の全国の生産量は、私は正確な数字は知りませんけれども、約十六万トン程度であるというふうに認識しておるわけです。あるいは十七万トンぐらいになっておるかもわかりません。そうしますと、この中で占める、特にオフシーズンの四万五千五百トンというのは相当な量になってくるわけですね、しかも温州が、いま価格の暴落の中で、いろいろな工夫で、改植はずいぶんまた晩柑類にするように進められておるわけですけれども、とりわけこのような農家に対しまして大きな打撃を与えるのじやなかろうかというふうに思うわけですね。 そういう点で、この輸入枠の拡大が晩柑類、ひいては温州等にも大きな影響を及ぼすと思いますけれども、そのあたりの見通しと、それから八三年度以降に対する山口参考人の、あるいは農民の御意見なりあるいは計画等をいろいろお示し願いたいと思います。
○山口参考人 いまの季節枠の問題でございますが、現状におきましては四万五千のうち半分の二万二千五百トンが六、七、八に入れられまして、残りが通年ベースで入れられるということになっております。アメリカの方は、このMTNの交渉におきましては、季節枠の六、七、八にさらに四、五の期間延長という要求をしたわけですが、これはわれわれとしては晩柑類の出回り期でございますので、これは困るということで、それは政府の方もがんばってくれまして、そこはカットをしてもらいまして、オフシーズンは六、七、八ということで継続したわけです。 ただ、心配しておりますのは、通年ベースで入れるものを四、五に集中されますと、これが非常に困るわけでございまして、御案内のとおりオレンジの価格は、現在の温州ミカンの価格に比べますと、キロ当たりにいたしますと五十円ぐらい高いわけでございますので、出盛り期におきましては温州ミカンの方が価格の面から言っても競争力が非常にあるわけですが、晩柑類になりますと価格が非常に並んでまいりまして、四、五に持ってまいられますと、これは非常なむずかしい問題が発生してくるというふうに私は思いますので、農林省の方で業界を指導をしていただきまして、いわゆる輸入の時期を四、五に集中しないように散らしてもらうということがどうしても行政措置として必要であろう、こういうふうに考えておるわけでございます。 また、晩柑類というのは、温州ミカンの生産過剰を回避する手段として改植ということが進めてきたわけですが、それでも非常に問題がございますので、ミカンの木そのものを切っていくというような非常手段に、いま現在、改植から伐採という方向に来ておるのが現状でございます。 そういう状態でございますので、八三年以降の、八〇年からの問題につきまして、われわれとしては、もうこれ以上びた一文も入れてもらいたくないというのが本当の気持ちでございます。これはぜひそういうふうに実現させていただくように御協力賜りたいと思います。
○野間委員 一点だけ訂正ですけれども、私は、四——六と申し上げたとしたら、六——八の間違いですから、済みませんが訂正させていただきたいと思います。
○土井委員 山口参考人とそれから青木参考人にお尋ねしたいのですが、特にいまお話しになりましたミカンなども含めまして、果実についてのスタンダードの問題で、これは青木参考人の、各国の制度というのはなかなかわかりにくいというようなことの御発言の中にございましたけれども、日本が輸入しているミカンを初めとしたいろいろな果物に使われている防腐剤それから防虫剤等々の規制の仕方はきついとお思いですか、きつくないとお思いですか。いずれでございますか。
○山口参考人 これは各国それぞれの国の植防でやっておることでございまして、私は、日本の場合、決してきつくないと思っております。それが証拠には、温州ミカン等は潰瘍病ということを禁止するために、アメリカは厳しい輸入措置をとっておりまして、現在、連邦の法律で認められておるのは五州しかない。しかも人口がほとんどないアラスカみたいなところをあてがわれているわけです。人口のあるところは絶対温州ミカンは入れないのがいまの現状です。しかも、これは潰瘍病が発生しないように、いわゆる純粋培養みたいな形で圃場を設置しなければならない。周りにまた、いわゆる保護する地域、エリアを半径五十メートル設置しなければならないわけですね。圃場まで入った規制をやっている。日本の植防はそういうことを全然やっておりません。何を使うか、防腐剤を使ってはいかぬとか、当然消費者保護のためにやっておるわけでございまして、私どもとしては、日本の植防があえて輸入措置のためにやっているというふうには考えておりません。
○土井委員 青木参考人は、その問題についてどのようにお考えですか。
○青木参考人 私、農業問題について余り知識がございませんので、特に山口先生や逸見先生もおいでになることですし、あれでございますけれども、規格といいましても、やはり人間の生命とか健康に関係するものというものについては、それぞれ各国それなりの考え方があるということじゃないだろうかと一般論としては考えております。それと、各国間の比較というのも著しく困難じゃないだろうか。まあ素人の意見でございますけれども、そういうように考えております。
○中尾委員長 北田参考人には、どうもありがとうございました。
○土井委員 山口参考人にお尋ねしたいのですが、国内で自給することが基本において考えられなければならない、これは当然のことだと思うんですがね。失礼にわたるかもしれませんが、農協とされては、そのためにいろいろな御苦労がおありになると思うのです。輸入したオレンジであるとか輸入したいろいろな農産物を農協としては取り扱わないところぐらいまでいろいろとこの問題については御配慮をいただくことが、極論かもしれませんが、ある場合には必要じゃないかと思ったりいたしますが、こういう問題はどのようにお考えでいらっしゃいますか。
○山口参考人 自給の問題からまず申し上げますと、現在穀類自給率が三四%ということに下がっております。さらに、これは六十五年目標にいま精を出しておりますが、これは恐らく三〇%台になるんじゃないか。その原因は何かと申しますと、えさの輸入なんです。現在、穀類は五十四年度で二千五百万トン以上入れております。これを面積換算いたしますと七百八十九万ヘクタール、日本の耕地面積が五百五十万ヘクタールでございますから日本の耕地面積よりも相当大きな、これを国内でつくるとそれだけの面積の要るものを、穀類を入れているわけであります。これは小麦、大豆を除きますと大部分は家畜のえさでございます。これが大ざっぱに言いまして大体千六百万トン程度になるわけでございます。これは国際価格で、いわゆる関税を通りませんで配合飼料原料として入ってまいっております。その面におきまして、ある意味におきましてはその配合飼料を使って生産されております採卵鶏の卵、ブロイラー、それから養豚、この製品は国際価格があるわけでございます。製品輸入をそういう面では防いでおるわけです。だから、えさを輸入して製品を入れないという原則はその面では生きておるわけでございますが、残念ながら国際競争力がございませんのは、土地を使う大家畜、酪農。だから牛乳、乳製品は国際競争力はありません、それは粗飼料を使いますから。それから肉、特にこれは素畜生産いたしまして、土地と自給飼料を非常に必要といたしますので、こういう点で国際競争力がないのですが、国際価格のえさを使って生産されている小家畜につきましては、技術も非常に進歩いたしておりますし、多数羽養鶏、多数養豚等で生産性も非常に向上しておりますので、十分国際的に太刀打ちできるような素地を持っておるわけでございます。 そこで、国内自給率の向上という場合に、何をどこまで自給するかという問題はきわめて大きな問題になるわけでございまして、私どもは、まず穀類の面については、穀類として人間の食う主食の自給率を最大限上げる。小麦は五百六十万トンも入っております。これは好ましいことではございません、米が転作を余儀なくされているのが現状でございますので。ではなぜ小麦を入れて米の転作をやるか、これはよその国から見ればまことにナンセンスな話でございます。これは小麦を減らして米をその分置きかえる、こういう政策が国策として当然考えられなければならない世界の食糧事情にあると私どもは解釈いたしております。 そういうことで見ましても、なおかつ全耕地面積五百五十万ヘクタールですから、いま入っているものは七百八十九万ヘクタール使うわけですから、とうていその自給は達成されないわけです。そういうことになりますと、穀類自給率だけを言えば畜産を減らす以外になくなってくるわけでございますが、これは最近の食生活の動向等を見まして、急激に減らすとか抑えるということはきわめて困難である。えさが国際的に入りにくい状態になれば、これは当然畜産の面で生産が縮小してくる、こういうことで対応されるのではないか。 当面のねらいとしては、ともかく私どもの耕地面積を目いっぱい使いまして穀類については主食の自給率を達成する、いまの小麦輸入の矛盾というものを早期に解消する、こういうことが農協としての戦略でございます。 それから、オレンジ等を農協で扱うなというお話でございます。これは倫理論としては先生のおっしゃっておるとおりでございます。 以上でございます。
○高沢委員 岡参考人、ひとつよろしくお願いいたします。 先ほどのお話で、今度の東京ラウンドで先進国の間では非常な低関税時代を迎えた、これは積極的に評価されたわけですが、それと、後に残る大きな課題として、開発途上国との関係ですね。今度は、開発途上国の中でも、いわゆる産油国のようなああいう非常に外貨を得られる立場にある国とそうでない国とのこれまたギャップが非常に大きくなると思いますが、その発展途上国のいまの二つの立場の違いがこれから一体どういうふうに国際経済上あるいは貿易政策上問題点として残るのかということを、大変大問題を短時間では無理かと思いますが、ちょっと御意見をお聞きしたいと思います。
○岡参考人 大変むずかしい問題だと思いますが、いままでは国際貿易の中で南北、先進国と開発途上国という二つのグループの格差が問題になっておりましたけれども、最近は、どうも開発途上国の中でも先発と後発組、それに産油国という新しいグループが加わりまして、それから先進国のグループの中でも競争力の格差がかなり顕在化してきている。強いところと弱いところがございます。そういうことが最近の貿易摩擦等にもかなりあらわれてきているんじゃないか。 それで先ほど私もちょっと申し上げましたが、ただ自由競争ということで強いものが勝つんだというそういう論理がなかなか通りにくくなってきて、フェアでなければいけない、公正な競争といいますか公正な貿易、そういうことが今回の東京ラウンドにおいてもこういう国際コード類がつくられてきた一つの背景ではないだろうかというふうな気がしております。 南の国の中でも力の差が相当大きくなってまいりましたから、今度はフレームワークのコードの中でも言われておりますが、開発途上国の一般に対しましては、授権条項の中でさまざまなガット第一条の大原則の例外になるようなそういう特典を認める。しかしながら、卒業条項というものが設けられまして、開発途上国の中で経済の発展が進んで力のついてきた開発途上国はガットの権利義務をだんだんと受け入れていく。この卒業条項が今回の東京ラウンドでも大いに問題になったところでございますけれども、結局妥協しまして、そうなることを期待する、待望するということで妥協がやっと成立したということのようでございます。 しかし、いずれにしましても、開発途上国の中で中進国と言われているような力のついた国々は、先進国のグループの仲間入りをしてガットの権利だけではなくて義務も担当していく、そういう状況に漸次なっていくということが望ましいのではないか。そして後発のおくれたところには、非常に大きい目で援助していくということが必要じゃないかというふうに考えております。
○渡辺(朗)委員 岡先生にお尋ねをしたいと思います。 非関税障壁、非関税障害をできるだけオープンなものにして、そしてルール化していくというところに今度の東京ラウンドの一つの大きな意義があるかと思います。ただ、一体どんなものが非関税障害と言われるものであるのか、そこら辺の定義といいますか基準みたいなものが明確でないものですから、この辺をどのように先生お考えでいらっしゃいますか、教えていただきたいと思います。
○岡参考人 これはおっしゃるとおりでございまして、明確な定義が国際的な合意が得られないわけですね。これも御承知だと思いますけれども、ケネディ・ラウンド交渉が終わりましてからすぐ、ガットで非関税障壁に関する調査をいたしました。これは通報システムで調査をしたわけですが、この調査で各国が他国に対してどういう非関税障壁があるかということを通告してもらいましたら、合計これが八百に達したと言われているくらいでありまして、これがその後ガットで整理されまして十項目ほどになったわけでございます。だからほぼこれでカバーされているのじゃないかと思いますけれども、しかし、関税障壁が低くなり、さらにまた非関税措置もこうして大幅に減らされていきますと、いままで非関税措置だと思われていないものが非関税措置として浮かび上がってくる、こういった点も十分考えられますし、またこれだけ低関税の開放体制の状態に移っていきますと、いまの御審議の中にもございましたように、国内産業を何とかして守らなければいけない、そういう努力の結果が新しい非関税措置を生み出していくという可能性も十分あるのではないかということ、そういう意味では今後やはりこれが新しい重要な問題として起こってくるのじゃないかというふうな気が私はいたします。
○野間委員 どなたにお聞きしたらいいのかわかりませんけれども、中小企業関係ですからジェトロの青木参考人にお聞きしたいと思います。 政府調達ですけれども、十五万SDRという一つの基準がございますね。これはかなり、われわれから見たら基準が一つの問題じゃなかろうかと思うわけですけれども、中小企業の関係の方がどの程度いま政府調達に関与されておるのか、あるいはこれによってどういう影響を受けるのか。これは小森参考人も電電の関係でもし何かありましたら教えていただきたいのが一つ。 それからもう一つは、中小企業の貿易関係に関しまして、確かに関税の引き下げによって輸出面では一定のプラスにはなろうかと思いますけれども、ただ同時に、これは新国際経済秩序を唱える途上国との関係でかなり途上国からの追い上げ、しかもこれはほとんどが中小企業性製品なんですね、これとの競合関係が激しくなって、日本の中小企業も大変じゃないかという感じがするのですけれども、その点について岡先生あるいは細見先生等、もし御意見ありましたらお聞かせ願いたいと思ます。 以上でございます。
○青木参考人 まず政府調達と中小企業の関係でございますけれども、現在の日本の場合の数字、私ちょっと存じませんが、少なくとも十五万SDRという数字はかなり大きい数字でございますので、中小企業の製品という面に限って言いますと、いままでの実績を維持できる可能性がかなり強いのじゃないかと思います。 それから、これは若干うろ覚えで恐縮なんでございますが、政府調達に関しましては無理のない限度ということだろうと思いますけれども、できるだけ小さく分けて中小企業が均てんするように運用せよということになっておったと思います。そういう点もございます。それからまた中小企業の協同組合の納入する場合については例外とされておったと思いますので、そういう面でそれほど大きな影響は出ないのじゃなかろうかと私としては考えております。 それからLDCとの関係でございますけれども、これは細見先生の方がお詳しいと思いますが、私なりにちょっとあれしてみますと、最近よく言われておりますたとえば非価格競争力、製品の高級化とか新しい技術を応用してみるとかあるいはブランドイメージの定着、そういったような形での対抗のできる分野というものはいろいろあるようでございますし、現在各種の中小企業の皆さんが非常に努力されておるのじゃないかと思います。またそのほかに、場合によりましては中小企業の方の中でも海外進出を心がけておられる方もおありのようでございますので、そういった面でいろいろ対応されていくかと思いますし、その面で私どもとしてもいろいろお手伝いする面があるのじゃなかろうか、そんなように考えております。
○小森参考人 私は総体的なことはよくわからないのでございますが、電気通信産業に関連して少し申し上げますと、実は電電公社の資材の調達に関してどのような機械をどういう形で外国から買うのか、あるいはまたそれが競争入札であれ随意契約であれ、どの部分を買おうとするのかがまだ明らかではございません。その意味で、この部分がこう影響してくる、したがってこれにこう対応しなければならないという結論めいたものを実は持ち得ないわけであります。 ただ言えますことは、アメリカも最近そうでありますが、私たちが行ったときも、こういう電話機がたくさんアメリカに入ってきているのだということで出されたのが、先生が御指摘いただきました中進国、シンガポールとか台湾とか、そういう国の電話機で、これはかなりアメリカには参入されているというふうに聞いておるわけでございます。 こういう状況を考えてみますと、これからこれが発展途上国あるいは中進国との関係で日本にも参入してくるということになりますならば、特に電話機などについては日本の中小企業に決定的な影響を与えてくるのじゃないだろうかというふうに実は考えておるわけでございます。 同時に、これはどういう形になるか先ほど申し上げましたように明らかではございませんが、電線メーカーなどは大企業というよりも中小企業あるいは家内工業的な仕事が非常に多いわけでございまして、そういう意味で中進国あるいは発展途上国の追い上げの中で、仮に参入してくるようなことになれば、この部門でもかなり大きな影響を与えることになりはせぬかというふうに考えておるわけでございます。 したがいまして、これから日米間の交渉あるいはその他の交渉を通じまして、雇用問題あるいは中小企業問題というのは非常に大変な問題になろうかというふうに考えておりますので、先ほど土井先生から御質問いただきましたようなことで、ぜひひとつ政府レベルで具体的な対応をお願いをしたいということを申し上げる次第であります。
○岡参考人 この政府調達の部門は、御承知だと思いますけれども、実はガット発足のときに本来このガットの規制の中に入るべくして入らなかった残された一つのガット体制の大穴であったわけですね。これが今回初めてこのガットの規制の枠の中に入る、そういう意味を持っていること。そのために、今回の政府調達全般で申しますと、大枠がはめられたわけでございまして、事実三年後にはまた再交渉が予定されておりまして、その後も定期的に交渉を行うということがございます。それだけにこの政府調達につきましては、いま言ったような調達基準につきましても、とりあえずいま十五万SDRになって約四千万円程度でございますけれども、これ自体もさらに変わるという事態も私どもは考えなければいけないんじゃないかというふうに思っております。 この政府調達につきましては、アメリカの場合ですと中央政府はこれは調達を一括してやっておりますので、非常に一件当たりの単価が大きくなりまして、網にかかる率が高いというのですか、日本の場合はこれがそうなっておりませんものですから、そういう意味でこの網にかかる度合いから申しますと日本の方がはるかに少ないのじゃないか、そういう意味では中小企業に対する影響もそれほど大きくない、そういうことも言えるのではないだろうかというふうな気がいたします。 この政府調達の問題につきましてはこれからがやはり大きい問題ではないだろうか。特にそういう中進国というところからの追い上げ等の影響も当然考えられまして、政府調達部門だけではございませんけれども、やはり長期的には、日本の産業構造そのものを転換していく、変えていくという対策以外はないのではないか。ところが、これは急激にやられますと、中小企業に対する影響は非常に大きくなりますものですから、こういう問題につきましては、できるだけ時間の概念をはっきり入れて、徐々にこういう転換をやっていく。だから、そういった意味では、早期に長期的な産業政策というものを立てて、時間をかして、その間に国際競争力の持てるような、そういう体質改善を遂げさしてやるという配慮が必要だろう。ぎりぎり迫られてばっと譲歩するようなことをやりますと、その影響が非常に大きいということが言えるだろうと思います。
○高沢委員 細見参考人にお願いいたします。 先ほど、御意見の開陳の中でも、産油国との関係で大きな支払いのドルが流れるというお話がございましたが、結局そうした油を入れる先進工業国は、それを今度は工業製品の輸出でできるだけまたカムバックさせるというやり方をしているわけです。同時に、先ほども出ました産油国でない開発途上国、こういうところとの貿易では、相手が余り支払い手段を持っておりませんから、結局、先進国側ではそういう国には信用を供与して、援助等々でいろいろ資金の貸し付けをして、それでまた工業製品を買ってもらうというような全体の流れになっていると思うのです。 最近、新聞の経済ニュースで、そういう非産油途上国に対しては先進国側も、債務が非常に累積してきて、もうこの辺でこれ以上金は借せなくなった、あるいは借さなくなるんじゃないかというような記事をちょっと見るのですが、そういうことが果たして起きてくるのかどうか。もし起きてきた場合に、その影響というものは国際貿易上一体どうなるのか。非常に大きな問題じゃないかと思いますが、御意見をお聞きしたいと思います。
○細見参考人 大変むずかしい問題でもありますし、予測にわたることですから、公言をはばからなければいけないことだとば思います。 確かに第一回目の石油のショックからいままでのところというのは、わりあい、産油国にお金がたまって、大変だと言われながらまあまあやってこれたというのは、結果的には失敗に近いかっこうになっていますけれども、イランのような国を初めとして産油国が非常に早いテンポで工業化をやって、いわゆる産油国に吸収能力とでもいいますかそういうものがあって、貿易がバランスしてきたわけですね。ですから、七四年に六百億ドルぐらいのお金が産油国にたまると言われたのが、去年あたりになりますと、イランのああいう問題がなければ、恐らく五、六十億ドルにまで減ってきた、つまり世界じゅうに上手に金が回っておったわけです。 それは、いま高沢先生おっしゃったように、発展途上国と言われる国の中でも工業化がかなり進んでおる国に、先進国のいろいろな銀行や何かが間に立ちまして、主として金を貸した。産油国が直接金を貸してくれればいいわけですけれども、産油国でそういうプロジェクトを見る力もなかなかないわけですから、結局先進国の銀行が産油国から金を借りて、それはユーロマーケットを通じてのことが多いですけれども、いずれにしても産油国の金を借りてそれを発展途上国の事業に投資しておったわけです。 ところが、どこでもそうだと思いますが、貧乏な段階から生活水準が少しずつ上がっていく段階というのはどん欲になる、と言うと語弊がありますけれども、まあできたものはみんな使ってしまいたい。つまり人に借金して、これは返すものだということまでなかなか思いつかぬ。思いつくといいますか、思いつきたいのですけれども、背に腹はかえられぬわけです。ですから、そういうところに貸した金がみんな、極端に言えば、飲み食いに使われてしまった、あるいはできたものはみんな国内で使って、どうせ金持ちになんて金返さぬでもいいじゃないかというムードが結果的にできてしまったわけです。ですから金が返ってこないわけですね。 そうすると、第一回目の石油危機から来ますと、ぼつぼつ借りかえの時期にも来ておる。あるいはさらに工事を続けていくということになればお金が要る。そうすると、金融機関というのは因果なものでして、返してくれる人とか、余り金の要らぬという人には、つまり返す能力のある人には貸すわけですけれども、絶対にこれは返しっこない、本当に金の要る人には貸せないわけですね、これは返してもらえないわけですから、人の金ですから。ですから、そういうことで、非産油国にこれ以上つぎ込んでもいいのかな、と。確かに、ブラジルとかメキシコとかあるいは東南アジアの国々の中では非常に将来性があるという感じは出ておりますけれども、それは非常に将来性があるということでありますけれども、家計といいますか、国の経済の、お金の面では大変むずかしいわけです。ちょうど、強いて言えば、家が貧乏で一生懸命おやじが息子の教育に金をつぎ込んでおるということで、息子も悪いわけじゃない、親も悪いわけじゃないですけれども、その借りた金をいま返せと言ってこられたら返しようがないというのがいまの途上国の状態になってしまったわけでして、そうなれば、やはり金貸しとすれば、自分の金ならまたやりようもありますけれども、産油国から借りてきて貸すわけですから、産油国が返してくれと言うに決まっていますから、それではとても自分の資力ではかないませんというのが、いわゆる都市銀行といいますか、私的な、プライベートな銀行の天井になってしまったわけです、金を貸せる能力の。そこでどうするかというのが一方で起こっておるわけです。 それからもう一方では、先ほどイランのことを申しましたように、イランのようにやったのでは、どうも結局急激な近代化というようなことをして、いきなり、極端な言い方をすれば中世から超現代に来るようなことをやったのでは国がひっくり返ってしまうということが、みんなわかってきたわけですね。ですから、産油国の方があんな急いだ工業化計画というのはやめようということになってきておるわけです。 となりますと、いままででしたら工業のプラントを買ってくれたり、あるいはいろいろな大きな施設を、船を買ってくれたりしたわけですが、もうそういうことはやらないということになりますと、産油国にお金がたまってしまうわけですね。油はどんどん高くなって、お金がどんどん入ってくる。そのお金は使わない。だから先進国のいろいろな銀行や何かに、これを使ってうまくやれと言われても、今度は銀行の方が貸すところがない。金の欲しい人はいっぱいあるわけですけれども、返してくれる人がおるかどうかがわからぬわけですね。 ですから困ってきたときには、大体みんなある意味では無責任ですから、そうなれば、たとえばIMFとか世界銀行とかいう、だれの金だかわからぬようにしてしまうところでやらしたらいいじゃないかというのがいま、非常に乱暴な言い方ですが、みんなの言っておることなんです。つまり私的な銀行ですと頭取が首になりますけれども、世銀でしたら貸したって大丈夫じゃないか、IMFだったら貸した金について、おまえのところは財政が放漫だとか、ぐあいが悪いとか言って、よく日本でもIMFのコンサルテーションというのがございますね、ああいうことで監督ができますから、だからそういうところにやってもらおう。みんなで出している大きな組織ですから、何といいますか短期間で金の回収ができたとかできないとかという議論が起こらなくて済むわけですから、そういうようなものを使ってみたらどうかというような動きが出ております。 いずれにしましても、ブラジルにしてもメキシコにしましてもあるいは韓国にしましても、いろいろ近代化のテンポは進んでいるわけですが、それが、国民生活を抑えてでも、そのかせいだもので借金を返そうというところまではなかなかディシプリンがきかないわけでして、その辺から、一方ではお金が余る産油国ができる、一方ではお金の足らぬ国ができるということで、それでまあ考えられることは、日本とかアメリカとかドイツとかいう国でしたら向こうも信用しますから、あるいは返済能力もありますから、ですから、そういう国に経常赤字ができて、経常赤字を産油国から借金して、産油国の人たちは日本の債券を買ったり、日本の株を買ったり、あるいは場合によっては日本の土地でも買ってくれれば、われわれはその日本の赤字百五十億分を、赤字だといってこれは何とかしなければいかぬと言って、シンガポールや台湾や韓国へ日本の品物をしゃにむに売りつける、それで日本は百五十億ドルに見合う赤字分を取り戻そうということをしないでやってあげるというのが、まあ世界を急激に緊張させないために必要だ。 ですから、その意味で、経常収支の赤字がもっともなことだなんて言えば怒られますけれども、そういうことをしなければ世界はもっとまいっちゃうわけですね。だから力相応に分担をしているんだ、そうして日本が韓国や台湾やあるいはブラジルの物を買ってあげて、ブラジルや台湾は息がつけるのだ、日本がそれを買わないで日本を黒字にされたのでは相手が、もっと弱い国がまいっちゃうわけですね。そういうかっこうでのもたれ合いが出てきておるわけですから、この東京ラウンドに戻れば、そういう時代なんだから、われわれも一員だ、もう決めたことはすぐわれわれもメンバーになって、やってあげるよということが必要ではないかということで申し上げたわけです。
○中尾委員長 ありがとうございました。 なお、これはという御質問がございましたら、これだけはという参考人に求めるお気持ちがございましたら、どうぞひとつ御挙手願いたいと思います。——ちょうど一時が参りました。 では、以上で参考人に対する質疑は終わりました。 この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。 本日は、長時間にわたり大変貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。 次回は、来る十七日月曜日午後五時三十分理事会、六時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午後一時二分散会