社会労働委員会 第2号
- 発言数
- 16 件
- 登壇者
- 4 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1979/12/10
会議録
○葉梨委員長 これより会議を開きます。 角膜及び腎臓の移植に関する法律案起草の件について議事を進めます。 本件につきましては、先般来各会派間において御協議いただき、意見の一致を見ましたので、委員長において草案を作成し、委員各位のお手元に配付いたしております。 その起草案の趣旨及び内容につきまして、委員長から簡単に御説明申し上げます。 医学、医術の進歩に伴い、角膜を移植することにより視力障害者の視力の回復を図り、また、腎臓を移植することにより腎臓機能障害者に腎臓機能を付与することは、今日それぞれ確立した治療方法となっております。角膜移植につきましては、現在、角膜移植に関する法律がありますが、本案は、これを廃止し、腎臓移植とあわせて新たな法律を制定することにより、角膜移植及び腎臓移植の円滑な実施を期し、視力障害者及び腎臓機能障害者の福祉の増進を図ろうとするもので、その主な内容は次のとおりであります。 第一に、移植が適正かつ安全に行われるように、移植に当たる医師の責務を明らかにすること。 第二に、医師は、移植術に使用されるための眼球または腎臓を死体から摘出することができること。 第三に、移植術に使用する眼球または腎臓の死体からの摘出については、あらかじめその遺族の書面による承諾を要するものとすること。ただし、提供者本人が生前書面で承諾しており、かつ医師がその旨を遺族に告知し、遺族がその摘出を拒まないとき、または遺族がないときは、遺族の書面による承諾がなくてもよいこととすること。 第四に、変死体等からの眼球または腎臓の摘出の禁止、死体に対する礼意の保持等について規定するほか、業として死体の眼球または腎臓の提供のあっせんをしようとするときは、厚生大臣の許可を受けなければならないことといたしております。 以上が、本起草案の趣旨及び内容であります。 ————————————— 角膜及び腎臓の移植に関する法律案 〔本号末尾に掲載〕 —————————————
○葉梨委員長 本件につき発言の申し出がありますので、これを許します。森井忠良君。
○森井委員 ただいまの提案につきまして、若干確認をしておきたい点がございますので、各党の御同意を得まして、私から御質問申し上げたいと思います。 第一は、医学、医術の進歩は、これを国民の医療の上に反映させてこそ大きな意義を持つものであると思うのでありますが、その意味で、腎臓移植の普及は、腎不全に苦しむ多くの患者にとっての強い願いであろうかと思うのであります。 このような観点から、われわれは、今回、角膜及び腎臓の移植に関する法律案を全党一致で提案したわけでありますが、医療行政を担当する立場から見て、まず厚生大臣の所見を承っておきたいと思うわけでございます。
○野呂国務大臣 腎臓移植につきましては、従来から生体腎移植は行われてきておりますが、最近では死体腎移植の成功率も高まっておるようでございます。今後は、死体の腎臓移植を促進することが好ましい方向であると考えておるわけでございます。 これがために、厚生省といたしましては、昭和五十二年度から腎移植施設の体系的な整備を図りますとともに、腎臓移植に必要な腎臓を確保するために腎臓提供者登録制度の普及に努めてまいったわけでございます。 今回の議員立法によります法律の制定は、腎臓提供者登録制度の一層の促進を図るとともに、ひいては腎臓移植術の向上に寄与するものでございます。御指摘のように、腎不全に苦しむ患者や移植に携わる医師にとって大きな励ましになることはもとより、医療行政の面から考えましても、きわめて有意義なものであると考える次第でございます。
○森井委員 死体からの眼球や腎臓の摘出を行う場合には、どうしても死というものをどう考えるかという問題は避けられないと思います。移植を行う医師にしてみれば、できるだけ早く眼球や腎臓を摘出するのが好ましいでしょうが、そのために安易に死の判定がなされるということになりますと、摘出される側としてはゆゆしい問題であります。 そこで、死というものはどのような基準で判定されるのか、また、そうした基準があるのならば法律上明記することにしたらどうなのか、こうした点の見解を承っておきたいと思います。
○田中(明)政府委員 死の判定につきましては、本来医師の判断に属すべき事項でございますが、日本におきましては、医学上一般には、呼吸の停止、心拍の停止、瞳孔の散大の三徴候をもって死というふうに定義されております。 移植のための眼球または腎臓の摘出につきましては、ただいま述べましたこの三つの徴候を確認してから摘出を行いましても十分移植が可能でございますので、死の判定基準の問題に触れることがございません。したがいまして、特別の規定を設ける必要はないと考えた次第でございます。
○森井委員 法案では、眼球や腎臓の提供についてのあっせん業が規定されておりますが、こうしたあっせん業というものは通常の物品のあっせんとはおのずから性格が異なり、むやみに行われてはならないと思うのであります。 そこで、まず、眼球や腎臓のあっせん業の実態はどうなっているかを伺いたいと思うのであります。そして、今後それらをどのように指導していく考え方なのか。特に腎臓については全国で一元的に行う必要があると聞いておりますけれども、その考え方を明らかにしていただきたいと思います。 なお、こうしたあっせん業が営利目的で行われるとすれば大変なことでありまして、厳しい指導が必要であると思いますが、この点についてもお伺いをしておきたいと思います。
○田中(明)政府委員 眼球につきましてのあっせんでございますが、従来からいわゆるアイバンク、これは都道府県ごとに整備する計画でございますが、このアイバンクが厚生大臣の許可を得て行ってまいっております。昭和五十二年度末で眼球の提供登録者数は九万を超えております。また、眼球の移植を希望する者の登録数は千七百二十九人となっております。 腎臓についてのあっせんでございますが、この提供登録は、国の補助によりまして社団法人腎臓移植普及会が現在行っております。昭和五十四年十月現在で登録者数は六千八百二十一人でございます。また、腎臓の移植を希望する登録は国立の佐倉病院で行っておりますが、昭和五十四年十月現在で登録者数は千二百三人となっております。 眼球についてのあっせん業につきましては、従来から眼球提供あっせん業者許可基準を厚生省医務局長通知によって定めまして、営利を目的とするものは許可しない取り扱いとなっており、営利性が問題となったということはございません。 腎臓につきましては、先生御指摘のとおり、組織適合性の観点というものから事実上個別のあっせんは不可能でございますので、全国的なネットワークで行うことが適当であると考えております。原則といたしまして社団法人腎臓移植普及会で一元的に行うように指導してまいりたいと存じております。 なお、今後ともあっせん業の許可は営利を目的とするものには与えないというようにしておりまして、営利性が問題となるようなことはないと考えております。
○森井委員 移植により患者が救われるというのは非常に結構なことでありますが、角膜移植にしても腎臓移植にしても、手術をするわけですから、かなりの費用がかかると思うわけであります。この費用が患者や関係者だけの負担ということになると、せっかくの移植も進まなくなると思います。移植に際して、そのための費用負担はどうなっているのか。また、少なくとも患者には負担がかからないようにすべきだと思うのでありますが、この点についてもお答えを承っておきたいと思います。
○田中(明)政府委員 角膜の移植につきましての経費負担でございますが、現在、角膜の摘出の経費は各都道府県のアイバンクで負担しております。これは額もそれほど要するものではございません。角膜の移植の経費でございますが、これは医療保険が適用になっております。 次に、腎臓、死体腎の移植についての経費でございますが、腎臓の摘出経費につきましては、先ほど申しました社団法人腎臓移植普及会で二十万円を負担いたしておりまして、その半額を国庫補助いたしております。また、摘出した腎の組織適合性の検査でございますが、これは地方腎センターで負担いたしておりまして、その半額を国庫補助しております。腎臓の移植の経費につきましては、角膜同様、保険が適用されております。 ただいま申し上げましたように、移植の経費についてはそれぞれ保険の適用が現在でもなされておりますが、そのほか更生医療の対象となっておりまして、実質上患者の負担はほとんどございません。 また、腎の摘出等の経費についてでございますが、現在でも、先ほど御説明いたしたとおり国の助成措置が行われておりますが、患者さんあるいは医療機関の負担が過大にならないよう今後とも充実に努力してまいりたいというふうに考えております。
○森井委員 最後に、この法律により、死体から眼球や腎臓を摘出することが正当な行為として明確にされるわけでありますが、それとの関連で、いわゆる小人症の治療薬をつくるために脳下垂体を摘出する問題についてお聞きしたいと思います。 同じく患者の治療に役立てるという意味では、この問題も重要な課題であることは申すまでもありません。死体からの眼球や腎臓の摘出を認めるということであれば、脳下垂体の摘出についても法律的根拠を与えることを真剣に考えていただきたいと思うわけでありますが、見解を承っておきたいと思います。
○野呂国務大臣 今回の法律は、移植による患者治療を促進するために、死体から移植目的でなされる眼球または腎臓の摘出は治療行為として正当な行為であるということが明確にされるわけでございますが、脳下垂体の摘出は、小人症の治療薬をつくるという点において同じく医療上の目的でございます。しかしながら、移植が目的でございませんので、直ちにこの法律の中に組み込むことは大変問題があるのではなかろうかというふうに考えるわけでございます。ただ、今回の法律が施行されまして、その後において、死体からの臓器の摘出に対する国民感情の推移等を見守りながら、これら臓器の摘出についても法律制定を考慮していく必要があるのではないか、かように考えております。
○森井委員 終わります。
○葉梨委員長 これにて森井君の発言は終わりました。 お諮りいたします。 角膜及び腎臓の移植に関する法律案起草の件につきまして、お手元に配付してあります草案を本.委員会の成案とし、これを委員会提出の法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○葉梨委員長 起立総員。よって、さよう決しました。 なお、本法律案の提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○葉梨委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。 次回は、明十一日火曜日午前十時理事会、午前十一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午前十一時五十分散会 ————◇—————