社会労働委員会 第11号
- 発言数
- 72 件
- 登壇者
- 16 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1979/06/07
会議録
○委員長(対馬孝且君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。 委員の異動について御報告いたします。 去る五月三十日、安武洋子君が委員を辞任され、その補欠として小笠原貞子君が選任されました。 また、去る五日、小笠原貞子君が委員を辞任され、その補欠として渡辺武君が選任されました。 —————————————
○委員長(対馬孝且君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。 医薬品副作用被害救済基金法案及び薬事法の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に、スモン訴訟東京第二グループ原告団事務局長気賀澤勤君、スモン患者井上明君、日本製薬団体連合会理事森下弘君、日本医師会常任理事亀井康一郎君、東京大学医学部名誉教授熊谷洋君及び社団法人日本医薬品卸業連合会会長渡辺徹太郎君を参考人として御出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(対馬孝且君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 —————————————
○委員長(対馬孝且君) 医薬品副作用被害救済基金法案及び薬事法の一部を改正する法律案、以上両案を便宜一括議題といたします。 まず、両案について政府より趣旨説明を聴取いたします。橋本厚生大臣。
○国務大臣(橋本龍太郎君) ただいま議題となりました医薬品副作用被害救済基金法案について、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。 医薬品は、今日、医療上必要不可欠なものとして国民の生命、健康の保持及び増進に大きく貢献しているところでありますが、他方、このような医薬品の副作用による健康被害の発生もまた、近年見逃すことのできない問題となっております。 これら医薬品の副作用による健康被害対策の基本は、その発生防止にあることは申すまでもありません。このため、国は、医薬品の承認審査の厳格化、医薬品副作用情報収集体制の整備、既承認医薬品の安全性及び有効性の再評価等各般の対策を進めてまいったところであり、また今般、この観点から、これまでの行政の実績を踏まえて薬事法改正の実現を図りたいと考えているところであります。 しかしながら、医薬品の特殊性から、現在の医学薬学の水準によっては医薬品の副作用による健康被害の発生を完全に防止することはむずかしいことも事実であります。これらの健康被害については、現行法制度のもとでは、その救済を円滑に図ることが困難である場合が多いことから、その救済のための制度を一刻も早く確立することが社会的に強く要請されているところであります。この要請にこたえるため医薬品の副作用による健康被害に関し所要の給付を行うことを業務とする医薬品副作用被害救済基金を設立することとし、この法案を提案した次第であります。 以下この法案の主な内容につきまして御説明申し上げます。 第一に、医薬品副作用被害救済基金は、医薬品の副作用による健康被害の救済について学識経験を有する者が発起人となり、厚生大臣の認可を受けて設立することとしております。 第二に、医薬品副作用被害救済基金は、医薬品の副作用による疾病、廃疾または死亡につき、医療費、医療手当、障害年金、障害児養育年金、遺族年金、遺族一時金及び葬祭料の給付を行うこととしております。 第三に、医薬品副作用被害救済基金がこれらの給付を行うに当たり、医薬品と健康被害との因果関係等専門的判定を要すると認められる事項については、同基金の申し出により、厚生大臣が中央薬事審議会の意見を聞いて判定を行うこととしております。 第四に、医薬品の製造業者及び輸入販売業者は、医薬品副作用被害救済基金の業務に要する経費に充てるため、同基金に対し、拠出金を納付しなければならないこととしております。 第五に、著しい健康被害が多発した場合等における医薬品副作用被害救済基金に対する政府の補助その他同基金に対する監督命令等所要の規定を設けることとしております。 第六に、この法律の施行期日は、この法律の公布の日から起算して六カ月を超えない範囲内において政令で定める日としております。また、救済給付は、医薬品副作用被害救済基金設立の日以後において厚生大臣が告示で定める日から起算して六カ月を経過した日以後の医薬品の使用により生じた健康被害について行うこととしております。 以上が、この法案の提案の理由及び内容の概要でありますが、衆議院において基金の業務の範囲、厚生大臣に対する判定の申し出及び基金に対する補助金の規定について修正が行われたほか、すでに発生した健康被害の救済を図るために基金が行う業務の特例を規定する修正が行われたところであります。 次に、ただいま議題となりました薬事法の一部を改正する法律案について、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。 現行薬事法は、占領下において制定された旧薬事法を昭和三十五年に全面的に改めて制定されたものであり、以後ほとんど改正が行われずに今日に至っております。 しかしながら、医薬品を取り巻く環境は、この間に大きく変化してきており、特に昭和三十六年に発生したサリドマイド事件は、世界的に大きな衝撃を与え、医薬品の有効性と安全性の確保が、各国薬事行政の最重要課題として改めて深く認識されるに至ったわけであります。 このような状況に対し、諸外国においては、薬事法の改正を行い、各種の対策を講じてきたところでありますが、わが国においては、新薬承認の厳格化等主として行政指導による各般の施策を積極的に展開してきたところであります。 今回の改正は、これまでの行政指導による施策の実績を踏まえ、さらにその徹底を図ることを主眼とするものであり、したがって、医薬品等の有効性及び安全性の確保がその中心課題となっております。 以下、この法律案の内容について、その要旨を御説明申し上げます。 第一に、日本薬局方におさめられている医薬品についても、原則としてその製造または輸入を承認に係らしめること、承認拒否事由を明示すること等医薬品等の承認に関する規定を整備することとしております。 第二に、すでに承認されている医薬品と有効成分等が明らかに異なる新医薬品については、承認を受けて六年後に、厚生大臣の再審査を受けなければならないこととするとともに、この間、当該医薬品の使用の成績等に関する調査を行い、その結果を厚生大臣に報告しなければならないこととしております。 第三に、厚生大臣が中央薬事審議会の意見を聞いて公示した医薬品については、厚生大臣の再評価を受けなければならないこととしております。 第四に、厚生大臣は、薬局等における医薬品の試験検査の実施方法その他薬局開設者、医薬品の製造業者、一般販売業者等がその業務に関し遵守すべき事項を厚生省令で定めることができることとしております。 第五に、医薬品等の使用の期限の表示、一定の成分を含有する化粧品及び医薬部外品の成分の表示等医薬品等の表示に関し所要の規制を行うこととしております。 第六に、医薬品等による保健衛生上の危害の発生または拡大を防止するために必要な場合に厚生大臣が発する緊急命令に関する規定を新たに設けるとともに、承認の取り消し、回収等の規定の整備を行うこととしております。 第七に、医薬品または医療用具の製造業者、卸売一般販売業者等は、薬局、病院等の開設者または医師、薬剤師等の医薬関係者に対し、医薬品または医療用具の有効性及び安全性等に関し必要な情報の提供に努めるものとするとともに、薬局開設者等は製造業者等が行う情報の収集に協力するよう努めるものとしております。 第八に、承認申請資料として必要な臨床試験成績の収集を目的とする治験の依頼に関し治験計画の事前の届け出等所要の規制を行うこととしております。 第九に、一定の動物用医薬品について、食用に供される肉、乳等への残留を防止する観点から、使用できる対象動物、使用の時期等につき所要の使用規制を行うこととしております。 以上のほか、承認手数料の徴収、罰金の額の引き上げ等所要の規定の整備を行うこととしております。 なお、この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとし、また、この法律の施行に伴い所要の経過措置を設けることとしております。 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要でありますが、衆議院において薬事法の目的、承認審査項目及び再審査の時期に関する修正が行われたところであります。 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
○委員長(対馬孝且君) 次に、両案については衆議院において修正議決されておりますので、修正部分について、修正案提出者衆議院議員竹内黎一君から説明を聴取いたします。竹内君。
○衆議院議員(竹内黎一君) まず、医薬品副作用被害救済基金法案に対する衆議院の修正部分について、その内容を御説明申し上げます。 修正の要旨は、第一に、基金の業務に保健福祉事業を加えること。 第二に、基金は、救済給付の支給の決定に当たり、必ず厚生大臣に判定を申し出るものとすること。 第三に、政府は、政令で定めるところにより、特定の医薬品の副作用による健康被害の救済を円滑に行うため特に必要があると認めた場合には、基金に対し、救済給付に要する費用の一部を補助することができるものとすること。 第四に、スモン等の既発生薬害の救済でありまして、基金は、当分の間、従前に使用された特定の医薬品の副作用による健康被害の救済を円滑に行うことが特に必要であると認める場合には、厚生大臣の認可を受けて、次の業務を行うことができるものとすること。 一、健康被害の救済のために必要な事業を行う者の委託を受けて、その事業を行うこと。 二、健康被害の救済のための給付を行う者に対し、当該給付に必要な限度で資金を貸し付けること。 第五に、政府は貸し付けのうち国と連帯して行われる救済給付に必要な資金の貸し付けに充てるため、基金がする借入金に係る債務について保証することができるものとすること。 第六に、政府の債務保証に係る借入金により基金が貸し付けを行う場合、当該貸し付けを受けて救済給付を行う者は、その貸し付けを受けた額に相当する金額を貸借対照表の資産の部に計上することができるものとすること。 次に、薬事法の一部を改正する法律案に対する衆議院の修正部分について、その内容を御説明申し上げます。 修正の要旨は、第一に、法律の目的を、医薬品等の品質、有効性及び安全性を確保することに改めること。 第二に、製造承認の審査項目として、副作用を明示すること。 第三に、新医薬品等で、厚生大臣が中央薬事審議会の意見を聞いて指定するものについての再審査期間は、六年を超えない範囲内において厚生大臣の指定する期間とすること。 以上であります。 何とぞ、委員各位の御賛同をお願いいたします。
○委員長(対馬孝且君) 以上で両案の説明聴取は終わりました。 両案の政府に対する質疑は後日に譲ります。 速記をとめて。 〔速記中止〕
○委員長(対馬孝且君) 速記を始めて。 次に、先ほど決定されました参考人の方々の御出席を願っておりますので、これより参考人の方方から御意見を承ることといたします。 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。 本日は、御多忙中のところ御出席をいただき、まことにありがとうございます。参考人の皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、法案審査の参考にしたいと存じております。 これより参考人の方々に順次御意見をお伺いいたしたいと存じますが、議事進行上、まことに恐れ入りますが、お一人十分程度でお述べを願い、参考人の方々の御意見の陳述が全部終了しました後、委員からの質問がございますのでお答えを願いたいと存じます。 なお、委員各位に申し上げますが、熊谷参考人から、所用のため三時三十分までに退席をしたいとの申し出がございますので、あらかじめ御了承を願います。 それでは、まず気賀澤参考人からお願いをいたします。
○参考人(気賀澤勤君) では、意見を述べさせていただきます。 私は、スモン訴訟東京第二グループの原告団事務局長をしております気賀澤でございます。私は被害者本人ではありません。家族であります。私の妻は寝たきりの重症患者であります。お手元に私どもが提出しました資料を参考に薬事二法に関する意見を述べさしていただきます前に、このスモンの被害がいかに大きいか、被害者本人は無論ですが、その家族も被害者同様の苦しみを負わされている、家族ぐるみであることを申し上げたいと思います。 私の妻は長野県のある病院の看護婦をしておって、昭和四十一年九月発病しました。ただ腹ぐあいが悪いからと医師からもらったキノホルムによって発病しました。もうすぐ十二年になるわけですが、発病した当時は何が何だかわからない、これは奇病だ、また一つの病院から余り多く発病するので、伝染病だということで東大の権威者が来て調べ、これはまさしく伝染病だということになり、市議会も満場一致患者隔離を決定し、市立病院の一棟を隔離病棟にして患者を閉じ込め、面会や食べ物に制限をし、病棟に出入りするときは、クレゾールで消毒させ、看護婦や給食婦はマスクをつけゴム手袋をはめる人もいました。この病棟に私の妻は一年間入っていました。 〔委員長退席、理事片山甚市君着席〕 この患者隔離は患者を守るためではなく、六万市民を防衛するために行われたものであります。 このときから私ども家族の苦しみが始まりました。足がしびれたらすぐ保健所へ届けよという市報や回覧板を回され、市民からは白い目で見られ、妻の洗たく物すら、うつると言われるので夜干す始末でした。村八分です。親戚すら寄りつかなくなってしまいました。毎日の病院通いが続くし、変な目で見られるのでまともな仕事を続けることもできず、日雇い的な仕事が続き、経済的にも精神的にも破壊されてしまいました。本人は、この家族の苦しみは自分がこんな奇病、業病にかかったのだから、私さえいなければと考えてついに睡眠薬自殺をはかりました。幸い発見が早く、医師の手当てによって命は取りとめましたが、このことが新聞に出て世間にわかってしまいました。また、私どものところでは生まれる子供にも影響があるので子供はつくるなと医師に言われ、無論私どもでは子供のできる体ではありませんが、子供はなく、現在七十九歳の母と三人で、母が食事をつくっております。母が亡くなれば私が家でめんどうを見ることになり、ろくな仕事もできないでしょう。私が動けなくなったらどうなるか、考えるだけでも恐ろしいので考えないことにしております。後で恒久対策の確立のところで申し述べたいと思いますが、賠償一時金は、過去のこの経済的破綻の穴埋めにほとんど終わり、今後を生きていくためにはどうしても恒久対策、療養費の年金がなければ生きていけないことをぜひ御理解いただきたいと思います。また、私の家庭などほんの一例にすぎず、全国の患者家庭がこれ以上であることを私は役職上全国を回って知っております。重ねて御理解をお願いいたします。 それでは、まず医薬品副作用被害救済基金法案について述べます。お手元に提出しました資料は、私ども原告団が衆議院社会労働委員会にも提出して訴えたものですが、先ほども申し述べましたとおり、恒久対策が確立しなければ被害者は今後の生活が成り立たないということで、私どもは長い間論議を重ね、その要求を十七項目にまとめ、東京地方裁判所に提出し、また、四月十四日から十八日にかけて京都で開かれた薬害防止のための京都国際会議に提出し、御理解をいただいたものであります。時間の関係がありますので、資料は大筋での説明にさしていただきます。 資料のナンバー二からナンバー五までに要求する十七の項目があります。この中で、東京地裁の恒久対策協議交渉により、内容的に不十分、未解決のところはありますが、一応実現に近づいているものがあります。それは三番の専門病院の設置についてですが、厚生省は全国に二カ所設置する努力をしているとのことです。次には、十一番の患者の入院については国立病院、療養所を利用できるように努力をしているようであります。次には、はり、きゅう、マッサージを健康保険に適用したことで、これは九番に当たりますが、これは実情に全く合わないので交渉中ですが、窓口だけはあきました。これが実現の方向に向かっているものであります。 また、次の資料に要求書というのがあります。これは現在全国のすべての患者団体、弁護団が共通して要求している恒久対策としての年金、患者一人当たり月額五万円以上を健康管理手当として支払うよう要求して闘っているものであります。私どもの十七項目の要求に関連して述べますれば、五番の入通院交通費補助費一カ月五千円、六番の温泉療養費一カ月一万二千五百円、九番のはり、きゅう、マッサージ補助費一カ月一万二千五百円、十番の医薬品代一カ月七千円、八指の暖房費一カ月一万円、十三番の電話代五千円、十七番の原告団事務所維持費の一カ月二千円、合計五万四千円に当たります。これがすべてではありませんが、いま申し述べただけでもこの数字になるわけであります。このことは症度にかかわりなくすべての患者についてどうしても必要な費用として算出し要求しているものであります。 さて次に、被害者救済基金法は、衆議院におかれまして、既発の薬害救済の道を開いていただいたことは私どもとして高く評価しております。しかしながら、既発の薬害の場合、基金から政府保証により貸し付ける場合は国と連帯して行う救済の場合に限っております。ところが、国は前に申し述べました年金については一切企業と連帯することを拒否しておりますが、東京地裁を初め現在まで出されたすべての判決において認められているように、国は企業と連帯して賠償する義務があります。私どもとしましては一時金たると年金たるとを問わず、国は企業と連帯してスモン患者の救済に当たるべきものと考えております。また、国が年金の支払いを拒否している理由の一つとして、年金の支払いはエンドレスだということが挙げられているようですが、一定額の資金を拠出して基金を設立し、その運用等により年金を支払っていけば何らの問題もないはずであります。この点は田辺製薬の資力が問題とされている本件のような場合、国の保証なくして長年月にわたり年金を支払わしていくことは、万一の場合の危険をスモン患者に負担させることであり、とうてい承服できません。 次は、薬事法について述べます。時間の関係がありますので、直接修正案の内容に入らせていただきます。 第一点としまして、第一条に薬事法の目的として「医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療用具に関する事項を規制し、もつてこれらの品質、有効性及び安全性を確保する」ことを法文上明確にしたことは重要な前進であるとして積極的に評価したいと思います。第十四条の医薬品の製造承認に当たっての審査項目として「副作用」を明文化し、安全性審査を行うことを明文化したことは前進であるが、医薬の有効性、安全性が医薬品の表示——表示とは添付文書中の用法、用量、適応症、使用上の注意等でありますが——と密接な関連を持つことから、承認申請の審査に当たってはぜひとも添付文書を審査の対象とすべきであろうかと思います。 第二点としまして、附帯決議についてでありますが、臨床試験については単なる試験計画の届け出のみではなく、動物実験等の資料を提出させた上、国が審査して、その安全性を確認した上で許可するのでなければ実施してはならないという原則を明記していただきたい。二番目に、新薬の承認に当たっては、有害な作用については十分なる立証がなくとも、重大な副作用を有するという可能性があれば十分考慮するようにしていただきたい。三番目としまして、審査資料は公表学術文献に限るのみでなく、審査終了後も少なくともその資料リストを公表するようにしていただきたい。 以上は、今後二度と再びスモンのような薬害事件を起こさないため、被害者が日本の薬害根絶の願いを込めて申し述べさせていただきました。 以上で私の意見を終わります。
○理事(片山甚市君) ありがとうございました。 次に、井上参考人にお願いをいたします。
○参考人(井上明君) 大阪スモンの会のスモン患者の一人である井上です。座ったままで失礼します。きょうは薬事二法の審議に当たって意見を述べさせていただく機会を与えていただきましてありがとうございます。私はスモン患者の苦しみ、被害の一端をお話ししてこの審議の参考にしていただきたいと思います。 私、実はめがねをかけていますけれども、ほとんど何も見えません。いま先生方がどの辺に座っておられるかもわかりません。このめがねはかけていないと直接眼球に物が当たって目を痛めますので、保護のためにかけているような次第です。そして、ごらんになっておわかりのように松葉づえをつかなければ歩けない状態です。また、腰から下、足の方は全く汗が出なくなっています。そのために夏になるととても体がだるくなって、非常につらい思いをしています。 〔理事片山甚市君退席、委員長着席〕 それに恥ずかしいことなんですけれども、排尿とか排便が十分がまんができないわけです。特に下痢なんかをしているときには、外出時に人前で出てしまうようなこともあるわけです。そういうときの惨めさというのは御想像していただけると思います。 私がこんな体にされたのは、ちょうど大学の二年生のときに、しばらく続いていた下痢のためにキノホルムが投与され、そして足が全然動かなくなり、目の光も奪われてしまったわけです。両親は必死の思いで看病してくれましたけれども、いまのような状態にしか回復はしなかったわけです。もちろん大学に帰ることもできませんでした。そして、それから先の生活を思うときに不安でノイローゼになり、半年ほど苦しむこともありました。それから、盲人の職業訓練センターへ行ったんですけれども、足も不自由だということで、そこで私のできる仕事は何もありませんでした。そして、たった一つ残された、座ってできる、しかも目が不自由でもできる仕事としてはりの仕事を選んだわけです。それも免許をとるためには盲学校に三年も在学しなければならなかったわけです。しかも、その勉学に耐えられるかどうかも非常に体力が弱っていて不安な状態だったですけれども、何とか必死の思いで、それができなければ一生暮らしていくことができないということで、必死の思いで何とか免許を取って、そしてまた非常に幸運なことに近くの病院に勤務することができたわけです。しかし、非常に私の場合は幸運で仕事を持てたわけですけれども、私程度の障害で仕事につけている人はほとんどないことを御理解していただきたいわけです。そして、必死の努力で結婚もすることもできましたし、何とか二人の子供もできました。しかし、女房は全盲です。そういう中で本当に死にもの狂いの生活でした。 そういう非常な苦しみ、そういう中で必死に生きてきましたけれども、その十三年間の間に国や製薬企業はほとんど何らの補償もしていただけませんでした。キノホルムが原因だとわかってからでも、七年、八年と裁判闘争して、そんな苦しい生活の中で足を引きずり引きずり闘い続けなければこういう段階には至らなかったわけです。そうして、こういう段階に来ても、製薬企業はたった二万円程度の健康管理手当しか示してきていません。二万円でどうして生活がしていけるんでしょうか。私はいま何とか無理をして仕事をしています。しかし、ひざが痛み、腰が痛み、それで三日間動けなかったこともあります。この仕事がどれだけ、後何年続けられるかわからないわけです。働けなくなったときに私たち一家四人がどうして暮らしていけばいいんでしょうか。いま一時金でその生活のことを考えてみましても、可部の和解案の裁定で私は三千二百五十万という金額らしいです。しかし、その補償で計算しましても、いまの四人の生活を続ければ十年ぐらいでお金はなくなってしまうことになるわけです。そしたら、十年後私たち四人家族は一家心中でもしなければならないということになるわけです。私は幸いにまだこうして仕事も持っています。だけど、もっともっと軽症な人でも職場がないわけです。たとえ仕事をしていてもそれは十分な収入が得られないわけです。そして、幸いに私は家庭も持てています。しかし、結婚もできないでいる人たちが、たとえば若い人たちはほとんど結婚もできないでいるわけです。そういう人たちの御両親が亡くなったときに、その人たちはどうやって生活していけばいいんでしょうか。私はそういうことで、この法案の審議の際に、ぜひ私たちの恒久補償を確立していただくようお願いします。私たちの本来の願いは、この失われた目や足や、そして十三年間という青春のその年月を返してほしいわけです。しかし、それができないならば、せめて人並みの生活を一生続けていけるような、安心して——そんなぜいたくなんか言っているわけじゃないんです。人並みの生活を続けていけるようなそういう恒久補償を確立していただきたいと思います。どうかよろしくお願いします。
○委員長(対馬孝且君) ありがとうございました。 次に、森下参考人にお願いいたします。
○参考人(森下弘君) 日本製薬団体連合会の理事森下弘でございます。 先生方が、日ごろ国民の代表として、国民の健康福祉に日夜御尽力いただいておりますことを心から敬意を表し、感謝いたしておるわけでございます。 本日、私ども製薬業界にとりましてきわめて重大な影響を持っております二つの法案、すなわち薬事法の一部を改正する法律案及び医薬品副作用被害救済基金法案が審議されるに当たりまして、業界の意見を述べる機会をお与えいただきましたことを厚く御礼申し上げます。 私どもは、今回の薬事二法案が提出されました社会的背景につきましては、十分な認識をいたしておるものでございます。これらを真剣に受けとめまして、業界の重要な転機といたしたいと存じておる次第でございます。日本製薬団体連合会は、平素より、よりすぐれた医薬品の開発、品質の確保、それから安全性、有効性に関する適正な情報の収集、提供、しかして安定供給を図ることが社会的使命として、全会員が日夜努力してまいったのでございますけれども、このたびの二法案によりまして、この社会的な使命がより明確にされたものと受けとめまして、なお一層の改善を重ね、社会の信頼を高めたいと努力中でございます。 さて、法案につきまして私どもの所信と要望を述べさしていただきます。 まず、薬事法の一部改正につきまして、本改正案の趣旨が、医薬品の品質、有効性及び安全性を確保する事項に重点を置いて作成されておりますことと理解しており、その大筋につきましては業界として賛意を表するものでございます。私たちもまた、製造承認につきましては、昭和四十二年十月の基本方針通達以来、当局の行政指導によりまして年々改善され、現行の承認レベルは国際的に見て決して遜色あるものとは存じておりません。また、製造及び品質確保に関しましても、すでに業界として自主規範、いわゆるGMPを確立いたしまして、現在その実践に努力中でございます。また、現在は流通過程における品質確保及び有効性、安全性に関する適正な情報の収集及び伝達につきまして目下努力中でございます。したがいまして、これらの事項が薬事法改正案として法律化されますことは、もちろん異議はございません。ただ、一口に製薬企業と申しましても、企業の規模あるいは製造販売品目等多種多様でございます。開発、生産、流通の各段階におきますいろんな活動が円滑に推進されますように、法の適切な運用をお願いする次第でございます。 次に、医薬品副作用被害救済基金法案につきまして申し上げます。 本案提出の社会的背景につきましては、先ほど申しましたように私どもは十分認識を持っております。特に昭和五十一年六月、医薬品の副作用による被害者の救済制度研究会報告が発表されまして以来、救済制度のあり方につきまして業界としても真剣に検討してまいったつもりでございます。この間、西ドイツを初め各国の制度の調査も行っており、これらを検討しました結果をまとめまして、昭和五十三年十一月に、医薬品の副作用による被害者の救済制度に関する意見書を公表したのであります。 さて、今回政府から提出されました救済基金法案の趣旨は、医薬品が適正な使用目的に従い適正に使用された場合においても発現する副作用被害の迅速な救済を図るということにあり、国にも業界にも民事責任の存在しない被害について、法理論を離れて早期救済を図るという社会的な救済制度であると理解いたしております。かかる制度設立の理念に対しましては、業界といたしましても十分検討を行いました上で、その理念に賛意を表しており、直接的に当該被害に関与していると否とを問わず、共同して所定の費用負担に応ずることを決意している次第でございます。とは申せ、本制度の理念から、また制度の主体者としての立場からも、国は本制度の円滑な運営を図るために、その費用負担の方式と割合とを明確にしていただきたいというのが私たちの一致した要望であります。 その理由は、一つは医薬品の製造承認を行い、かつ製造、販売、使用にわたって監督指導する国の責任が、今回の薬事法改正案によって、従来の行政指導と異なりまして法律によって明確化されたこと、それから第二に、何人にも法的責任の及ばない被害者の救済に当たるべき国の社会福祉上の責任、次に、世界に前例のない、わが国独自の性格をもって創立されます救済制度を円滑に運営するための国の責任、その他もございましょうが、以上の諸責任から、ぜひ国の御負担をお考えいただきたいと思うんであります。前に述べましたように、本制度は世界で初めてのものであり、それだけに拠金の限度におきまして、また本基金の運営におきまして業界は多大の不安を持っております。したがいまして、国の費用分担の方式と割合とを明示されてこそ業界もその社会的立場から国と連携して共同拠出に応ずる決意をしている次第であります。 右の次第で、日本製薬団体連合会といたしましては、本法案第四十三条国の補助については、すでに衆議院におきまして一部字句の修正はございましたけれども、救済の対象となる被害の給付費用及び基金の事務費につきまして、国の定率補助を明確にしていただきたいということを要望してまいった次第であります。この機会に重ねてこの点を要望いたしたいと存じますので諸先生方の御理解をお願いいたしたいと思います。 以上、諸先生方の貴重な時間を拝借いたしまして、日本製薬団体連合会としての所信と要望を申し上げたのでございますが、どうか業界の立場を御理解いただき、また、大中小いろんな規模の多数の製薬企業があることを御認識いただき、そうした個々の経営上の諸事情をも御賢察くださいまして御審議のほどをお願いする次第でございます。 どうもありがとうございました。
○委員長(対馬孝且君) ありがとうございました。 次に、亀井参考人にお願いいたします。
○参考人(亀井康一郎君) 私、亀井でございます。本日は、一臨床医の立場より意見を述べてみたいと思います。 まず、薬事法の一部を改正する法律案についてでありますが、医薬品に関してわれわれの基本的見解はいかなるものであるかを申し述べたいと思います。 医療とは、医学の社会的適用であるということはわれわれが常々主張しているところでありますが、しからば医学とは何か、これは人間の身体と精神の疾患を予防し、治療し、社会復帰をさせる方法論を科学的論理によって確立する学問であると考えてよろしいかと思うのであります。それを社会という場に適用することがすなわち医療であります。この医療を行う一方法として、われわれ医師は医薬品の投与を患者に行うのであり、その基盤として医師と患者の人間的信頼関係が存在するということが前提になっているわけであります。それが有効に働くとき国民の健康、国民の福祉は増大するわけであります。しかし、それが過大な副作用として働くときは薬害であると言われるわけでありますが、この問題については後に医薬品副作用被害救済基金法案のところで触れてみることにいたすつもりであります。 このように、医薬品が生命関連物質であり、それが使用される場が医師、患者関係を円心とする——円の中心とするという意味ですね、円心とする社会構造、経済構造が関与してくるということは御理解いただけたかと思うのであります。 この観点から今回の薬事法改正案をながめてみますと、問題点として指摘できますことは二、三あるわけでありますが、その主なる対象領域は、医薬品の製造承認、品質管理等、従来局長通知で行ってきたものの明文化にすぎず、それに関連する研究開発機構、流通機構の問題にまで整備されていないといううらみがあると思われるのであります。われわれは、医薬品について常に主体的な選択、ポジティブチョイスということを主張しているわけでありますが、これはどういうことかと申しますと、最も有効にして安全な医薬品を医師の判断のもとに迅速に患者に投与することであります。この医師の行為を可能にするためには、研究開発機構、流通機構が連動しなければ不可能であります。この点につきましては、すでに衆議院の社労委員会におきまして上田参考人が指摘したところでありますが、局長通知の明文化が国の責任を多少明確にしたということはありますが、そのうらはらに、いたずらに製造承認の規則を強化して開発への意欲を失わせる結果になりはしないかということを恐れるものであります。 よりよい新薬が国内において開発されるということは、大局的見地からは一企業の利益というような小さな観点ではなく、われわれ国民全体の福祉の増進となり、われわれに還元してくるものであります。この点、新薬再審査の期間が六年に延長されたことはそれなりの有意な評価をするものであります。しかし、一律に六年とすることには問題ありとする指摘により、「六年を超えない範囲内において厚生大臣の指定する期間」と改正されたことは、これも妥当であると考える次第であります。 次は、情報の提供等に関してのことでありますが、最も問題になるのは、情報提供に協力するものが正しい科学的判断の上でそれを行えるかという問題であります。情報にもいろいろありまして、間違った情報あるいは故意にためにする情報もあり得るわけであります。これらを、薬局開設者は収集に協力せよというのでありますが、臨床を扱っていない人がいかにして細かい患者の症状を的確に把握できるかという疑問がわれわれに残ります。 治験の取り扱いについては、これもすでに衆議院社労委員会で論じられたんでありますが、これは重要でありますのでちょっと触れます。 臨床試験には、御存じのように第一相、第二相、第三相とあり、第一相は健康な有志者に対して薬物の薬力学的効果と副作用の性格づけを試みるものであり、これはヒト薬理学であります。第二相は有志患者に対して薬物を用いてその効果を検討するものであり、これは臨床薬理学として特定の病院で行われるものであります。さらに第三相は、特定多数の患者に対し治療効果、副作用の検討等を特定の病院または診療所を通じて試みるものでありまして、これは薬物治療学と考えられるわけであります。もちろん第一相試験の前に前臨床試験、すなわち動物実験による一般毒性、特殊毒性の検討を経ていなければ第一相に移れないわけでありますが、第一相から第三相に至るまでの臨床の症例数は、数百例から千例前後であるわけであります。このような経過を経て、第四相、すなわち医薬品発売後の治療学、不特定多数の患者に使用されることになるわけであります。 本法案は、第三相までのいわゆる人体実験に対して規制を厳密にしようとするものであり、その意味では評価できるわけでありますが、その責任を製造業者あるいは臨床試験の実施者のみに負わせるということであれば、人間の疾患からの救済を目的として続けられている医薬品開発の純粋な意欲を減殺する結果ともなりましょう。これは当然国も責任を分担することが必要であり、それを明確にすることを望むものであります。 御承知のように、戦後三十余年を経た現在の疾病構造の変化は、昭和二十七年の乳児死亡率、これは出生千に対してのものでありますが、四九・四%でありましたから、五十二年にはそれが八・九%に低下しております。同じく昭和二十七年の全結核の死亡率は、人口十万に対しまして八〇・五%でありますが、五十二年には四・八%に低下しております。同じく肺炎、気管支炎死亡率は、昭和二十七年、人口十万に対しまして六七%でありますが、それから五十二年には二八・六%と低下してきているわけであります。 この理由は何かと申し上げますれば、社会生活の向上という条件もありましょうが、最大の理由は、昭和二十七、八年ごろより抗生物質が広くかつ低廉に使用されるようになったことが指摘されると思います。この結果は急速な平均寿命の延長につながり、男女とも北欧スウェーデンと肩を並べるようになったのは御承知のとおりであります。このことは他の重大問題を引き起こしているのでありますが、それはこの主題ではありませんので特に申しませんが、医薬品というものが、われわれ国民にとりましても、いかに大きな福祉をもたらしたかということを簡単な数値を挙げて指摘するにとどめたいと思います。 最後に、副作用被害救済基金法案について一点だけ申し上げたいと思います。 臨床医として、この法案の条文で最も気にかかることは第二条の2であります。
○委員長(対馬孝且君) ちょっと参考人、発言中ですが、まとめをひとつお願いしたいと思います。時間も経過しておりますので。
○参考人(亀井康一郎君) はい。 ここには「この法律で「医薬品の副作用」とは、医薬品が適正な使用目的に従い適正に使用された場合においてもその医薬品により人に発現する有害な反応をいう。」とあるのでありますが、この「適正」とは医学的に言ってどのように規定するのであるか、このあたりがはなはだあいまいであると思うのであります。薬事法改正案のところでも述べましたように、生体にとって異物である薬物は、生体側の条件によって同一薬物でも反応、効果等が皆異なるのであります、生体の条件とは年齢、老若、性別——男女、人種等によっても異なり、また同一生体におきましてもそのときの体内条件と環境条件によって同一薬物の反応、効果は異なるのであります。 私の専門は精神医学でありますが、われわれの分野で最も一般的に見られる疾患としててんかんがあります。このてんかん患者には鎮痙剤を持続的に投与することにより、けいれん発作を抑制でき、健康人と全く同様の社会生活を営むことができるわけでありますが、服薬中の患者に最も要求されるものは生活の規則性、自律性であります。しかし、何らかのやむを得ざる事情により、あるいは患者の恣意により身体的疲労が過剰になった場合には、同一量の鎮痙剤を服用していたとしても発作は必ず起こるのであります。これは生体の内部条件が変化し、その薬物の量では発作を抑制できなくなったためであります。そのとき薬物量は生体に対して適正でなかったとして、その薬物量を続けていること自身が責められるべきなのか、あるいは患者がみずから規則性を乱したことによる生活行為を不適正として責められるべきものであるか、私ははなはだ重大な問題であると思うのであります。ここにわれわれすべての人間を含めて、健康への意識とは何かという基本問題が浮かび上がるわけでありますが、これはここの主題ではありませんから省略いたします。要するに、人間を身体と精神を総合した全人的医療を行おうとする場合、「適正」という言葉は最も掘り下げた意味で使用すべきであるということを申し上げて私の話を終わります。
○委員長(対馬孝且君) どうもありがとうございました。 次に、熊谷参考人お願いいたします。
○参考人(熊谷洋君) 熊谷でございます。時間の節約上きわめて簡単に意見を申し述べます。 薬事法一部改正について熊谷参考人の意見。 一つ、基本的に国ないし厚生大臣の責任の明確な明文化がございません。医薬品の製造承認、発売、流通、供給許可に対して責任を持つ国は、副作用による被害にも責任を持つべきであります。 また第二、副作用発現予測あるいは発見の体制の整備。副作用の発現は短期的及び長期的の両点から観測する必要がございます。先ほどの参考人のお話で、短期的な副作用のチェックはかなり厳重にやられておると私は考えております。しかし、亀井参考人も触れたとおり不特定多数の患者に対して薬物を用いた場合には、その発現にかなり年数を必要といたします。すなわち長期的な点からも副作用の発見に努めるべきであります。そのためには薬事法の一部を改正しただけでは不十分であります。それと同時に、初期に副作用を発見できるような医療体制、これを確立することこそ急務でございましょう。これは地域医療におけるプライマリーケアの定着を意味するわけであります。 それから第三点は、亀井参考人の発言とも重複いたしますが、医薬品開発に対する国の積極的な姿勢が全く認められない。 この三点を薬事法の一部改正について意見を申し述べました。 次は、医薬品副作用被害救済基金について申し上げます。 救済、これは医学的、経済的に国の責任が先行すべきであって、それは国は医薬品の製造承認、販売許可の最高の権限と権威を持つゆえに国が責任をとるのは当然であります。そしてまた、国は副作用発現の機序、それに対する治療、これの開発にも責任を持つべきであります。そうして、当然企業もまたこれに協力すべきであります。 先ほど申しましたとおり、副作用の長期的観察、これは承認段階での副作用のチェックは、最高の科学水準によってできる限り予見することはある程度可能でございますが、先ほど申し上げましたとおり、不特定多数の臨床経験によって初めて発見される副作用もございます。これは当然考慮さるべきであります。これは動物実験と人体における薬の作用との大きな差でございます。 第二、救済の方法、薬事法が改正され、かつこの基金ができれば、具体的に解決されるというものではございません。現に、多数の患者がおる事実を考えれば、それらの人たちの苦痛を除き、社会復帰を考えることが医学の立場でございます。 具体的な提案、原則としては、難病対策的発想にならうべきでありましょう。被害者は医薬品等の因果関係が不明であっても、難病者として医学的に救助する必要があります。そのためには専門の国立病院を指定するとか、あるいは副作用の早期発見、早期治療にはプライマリーケア医師の育成が必須でございます。医務局が国立病院にプライマリーケアセンターを設け、その医師の育成を米国で研修さすということを始めたことは、この問題の具体的対策として一応評価してよかろうかと存じます。 それから、法律改正しなくともやる気があればできるということの一つの例を申し上げましょう。 難病治療薬開発への国の援助、五十四年五月十九日、厚生省記者クラブで発表された市場性、採算性の乏しい新薬開発に国が開発費の援助を始めたというこの事実を指摘したいと思います。このことは、法律の改正もさることながら、まず実績あるいは実体をつくることが問題の解決に貢献するということを述べておきたいと思います。 以上で発言を終わります。
○委員長(対馬孝且君) ありがとうございました。 最後に渡辺参考人にお願いいたします。
○参考人(渡辺徹太郎君) 私は、日本医薬品卸業連合会の会長の渡辺でございます。本日はこのような機会をお与えいただきまして、私どもの業界の所見を述べさしていただくことを大変光栄に存じております。ありがとうございます。また、先生方にも平素いろいろと御指導をいただいておりまして、御配慮をいただきまして、この機会をかりて厚くお礼を申し上げます。 私ども卸の業態は、御存じのとおり医薬品の流通段階を担当いたしております。日夜医療の補助役として夜間でも医薬品の供給をいたし、医療に差し支えのないような仕事をいたしておるわけでございます。私どもの業態の中には、そのようなことで大変経済的に採算の合わないということがたくさんあるわけでございますけれども、このことについては私ども社会的使命感を五〇%ぐらいというような意識を持って努力をいたしておる次第でございます。 そこで、私どもの会員は、全国で六百九社ございます。しかし、医薬品の供給に支障ないようにするためには、その営業所数は二千三百八十五持って、その地域の供給を担当をいたしておるわけでございます。大体、一社常時一万二千品目ぐらいの商品の在庫をいたしております。このような多くの種類の医薬品が備蓄されておりませんと医療に支障を来すおそれがあるというふうに思っております。その全体の年間の売り上げは、五十二年度で一兆七千億くらいを私ども担当をいたしておりまして、機関的には輸送車等は三万五千台ぐらいを使って、人員は七万人強の者がこれに携わっておるわけでございます。その中で、やはり医薬品の管理という問題について三千人ぐらいの薬剤師を専門職として従事さしておるわけでございます。 そのような中で、今回の薬事法の一部改正法律案に対しては、私ども改正の要旨を拝見いたしますと、今回の改正は緊急に医薬品の安全性、有効性の確保を図るのが目的だと解釈をいたしております。御承知のとおり、現在の薬事法は昭和三十五年に制定されておりまして二十年近くも経過をいたしておるわけでございます。この間で医薬、医療の進歩は大変なものでございます。医薬品の種類、数量の増大、また流通構造の変動は大変著しいものがあるわけでございます。したがって、これに有効適切に私ども対応するためには、現行の薬事法では十分とは言いがたいと考えております。ここで、この改正は緊急の課題だろうと存じておる次第でございます。われわれの連合会といたしましても、医薬品の有効性と安全性の確保のために自主的に医薬品の供給と品質管理に関する実践規範というものをつくっております。これに基づきまして遺憾のないように最善の努力を現在いたしておるわけでございます。 そこで、法令上ぜひ規定をしていただくことが必要であると念願をしておるわけでございまして、そこで私どもといたしましては、お願いの一つとして、医薬品卸業者が誇りを持って自分たちに課せられている医薬品の安定供給という社会的使命を達成するのに遺憾のないように、関係法令中に医薬品の卸業という名称を取り入れていただきたい、こういうようにお願いを申し上げております。また第二点は、医薬品の卸業者は、医薬品の安全性と有効性を確保するための管理上、仕入れ先と販売先を常に明確にしておく必要があるということ、これを規定していただきたいということでございます。三番目は、不良医薬品の回収が円滑に処理できるように規定をしていただきたい。今回の改正案にはこれらの点も御考慮をいただいておりますので、この法案が早急に可決され、施行されるように御期待を申し上げる次第でございます。 次に、細かくなりますけれども、改正要綱案の第四の問題が特にわれわれに関係しているものでございます。薬局開設者、医薬品の製造業者及び一般販売業者等の遵守事項が決められております。従来この問題については、開設者と医薬品を管理する者と義務規定がはっきりいたしておらなかったのでありますが、今回は開設者の義務として、薬局における医薬品の試験検査の実施方法、薬局の管理者の義務の遂行のための配慮事項として、開設者がそれを遂行するための遵守すべき事項として決められたことはまことに当を得たことと存じております。 次に、第六項に「監督」という項があります。(一)の「緊急命令」は当然のことといたしまして、(二)の「回収等」という問題があります。これは不良医薬品等については、製造業者あるいは輸入販売業者または販売業者等に対して、販売の一時停止、廃棄または速やかに回収することを命ずることができるという条項であります。しかし、これは不良医薬品の回収に際しまして、医薬品の仕入れ先、販売先の記録がありませんと、その円滑にして的確な実施はきわめて困難でありますと考えております。どうか回収等が支障なく的確に実施できるように、所要事項を省令等で規定していただきたいと考えております。 次に第七項でありますが、「情報の提供等」という項目がありますが、これは製造業者等は必要な情報を提供するよう努めなければならない、また、これを受ける薬局開設者等は情報の収集に協力しなければならないということでありますが、これは当然なことと考えております。しかし、その実施方法、責任の所在等について慎重な配慮がなされるように希望する次第でございます。事故防止のためには情報システムをできるだけ完備する必要があると考えておりますし、情報を慎重にひとつ検討し、またそれを収集して所要の事項を広報などにより各使用者、販売業者に周知徹底させる方法を策定する必要があると考えておるわけでございます。 最後に、一般からも大変批判をされているように、日本の医薬品の取り扱いが現在きわめて不健全であるということでございます。薬が一般商品のように、安ければいい、品質は第二のような考え方があるとすれば、これは重大な問題であると思っておるわけでございまして、これでは全く医薬品の安全性は確保できないものと憂慮をいたしておる次第でございます。薬は、御承知のとおり必要が生じた場合にのみ、いつでもどこでも必要とする量を適正に供給しなければならないと考えております。いずれにいたしましても、安全性の確保からできるだけ早い機会に流通機構の健全化をぜひお図り願いたいと念願をいたしております。 大変私どもは大きな額を取り扱いながら、売上高に対しての利益は〇・六という大変プアな段階で努力をいたしておりますので、ややもしますと医薬品に対する認識が薄れるということで大変憂慮をいたしまして、みずからこの義務的な要素を背負いまして、重大な人命に対する対処をしたいという念願でございますので、どうかひとつ皆さま方にも御理解を賜りますように、深く深くお願いを申し上げまして、私の陳述を終わらしていただきます。
○委員長(対馬孝且君) ありがとうございました。 以上で参考人各位の御意見の陳述は終わりました。 それでは、これより参考人に対する質疑に入ります。 質疑のある方は順次御発言を願います。
○安恒良一君 六人の参考人の方に私ども社会党が与えられている時間は往復で五十分なんです。しかもそれは三人で質問する、こういうことでありますから、まことに六人の参考人の方には失礼に当たると思いますが、国会の運営上でありますのでお許しを願いたいと思います。そこで私は六人の方に全部お聞きする時間がありません。私には三十五分ということであります。これは皆さんのお答えを含めて三十五分ですから、どうか簡潔にお答えを願いたいと思います。 そこで、まず私は、きょうは大変御不自由な体でおいでいただきましたスモン患者の井上さん、それから奥さんがスモン患者で大変お気の毒な体をお持ちになります気賀澤さん、このお二人を中心に少しお聞きをしたいと思います。あとほかの先生方にも一、二点お聞きいたしますが、まずお二人の方にお聞きをしたいと思います。 簡単に端的にお聞きをしていきますが、いろいろ御意見がございました。特にその中で、この医薬品副作用被害救済基金法についての御意見を聞かしていただきたいのでありますが、いまのお二人の御意見を聞きますと、恒久対策について国が責任を持つべきじゃないか、こういうことでありますが、まずこの基金法についての率直な意見をいま少しお聞かせを願いたいと思います。 それから第二番目には、恒久対策についてはいろいろ必要性を強調されましたが、その具体的な中身もごく簡単に恒久対策について御意見を聞かしていただきたいと思います。 それからいま一つは、この法案が参議院に参りまして——この会期は十四日までであります。この間にこの法案を上げると同時に、現在のスモンの皆さん方の恒久対策等を含めて、全面的な同時解決がされることを実は心から望んでおります。こういう問題については可部裁判長を通じての和解なり、直接交渉が展開をされておりますが、こういう問題について現在どうなっているのか、それと同時に、国と企業がどのような責任をとっているのか、こういうことについて少しお話しを願いたいと思います。 〔委員長退席、理事小平芳平君着席〕 それからいま一つの問題は、これを解決するためには、どうしても患者さんの認定制度に、これは衆議院でもいろいろ議論されておりますが、そういう問題について御意見があるならば聞かしてもらいたいと思います。 それからいま一つは、今度は薬事法の改正について、これもお二人の方から御意見があれば端的にお聞かせを願いたいと思います。 それから、その次に、製薬団体連合会の理事の森下さんにお聞きしたいんですが、どうも皆さん方、特に救済法について、いわゆる責任は社会的、道義的責任だ、こういうところをかなり強調されて、そこでいわば国と半々だと、こう言われておりますね。私はちょっとあなたたちに反省が足らない。薬というものは、安全性と有効性の第一の責任は何といっても製薬企業にあると思う。そこのところがあなたたちの意見を聞いているとどうも製薬企業としての反省、たとえばスモンの問題でも、スモンが発生して以来の情報活動を製薬企業がいま少しりっぱにしておったならば、こんなに私は一万一千、わが国だけなんです。諸外国の例に比べると圧倒的多数になったというところに、私はあなたたちだけの責任とは言いませんが、あると思いますが、そういう問題についてどうも定率負担とか、いわば道義的とか社会的と言うわけです。しかし、少なくとも薬については、私は患者、これは選択はきかないわけですね、医者の投与に基づいて副作用があるかないかわからないで飲んじゃうんですから。そういう意味からいうと、どうもちょっとあなたの御意見について承服しかねるところがありますから、そこらの点について、参考人ですからあれですが、一、二点考え方をひとつこの際述べておいていただきたいと思います。 それから、亀井先生と熊谷先生、いろいろ国の責任を強調されました。私も薬害という問題は製薬企業だけでない、国の責任が大きいということはわかります。しかし、それならばお聞きをしておきたいんですが、私どもは、やはり国が薬事審議会において薬効その他を決めているわけですね。そうすると、私はいまの薬事審議会の機構で、あなたたちが言われるような責任が国がとれるんだろうか。だから薬事審議会をどのように改組し、どのように強化をすればいいのか、こういう点についてお二人の考え方を端的に述べていただきたいと思います。 最後に、渡辺さんの御意見の中で、至急回収をしたいから、いわゆる仕入れ先、販売先を明示してもらいたい。これはかねがねあなたたちの御希望だと聞いています。しかし、私は回収の義務は製薬企業が持っていると思うんですね、製薬企業が、流通段階で。そうすると、あなたが言われているような仕入れ先、販売先を全部明示するということになると、それは流通段階だけではだめなんであります。いわゆる病院、診療所も果たして仕入れ先、販売先を全部記帳ができるのか、明らかにすることができるのか。四万種類からの薬をいわゆる扱っているわけですね。そうしますと、そういうむずかしいことじゃなくて、問題が起こったら製薬企業は全面的に回収する、こういうことで、そうあなたが言われているような仕入れ先、販売先の記帳などということよりも、その原則を明確にした方が早いと思うんですが、この点はどうでしょうか。 以上です。
○参考人(気賀澤勤君) お答えをいたします。 まず最初に、恒久対策の具体的なことについて、また私どもが必要だと言っておる要求についてでございます。 先ほど、冒頭で私申し述べましたように、現在までに、たとえば私どもは和解の原告団でございますが、そこで受けました和解金、一時金というようなものが入りましても、過去に失われた損害、そういうものが、先ほど私が申し述べましたとおり非常に大きいわけでございます。そういう穴埋めのために使われる。また現在全国のサラリーマンの平均が年額二百四十万円ぐらいと聞いておりますが、そういう額で計算したときに、最低一千万という額では四、五年で終わってしまう。過去の失われた損害の穴埋めと、それから座して食べていけばそういうことで終わってしまう。先ほど井上参考人からも意見が述べられましたように、五年、六年先になればたちまちまた生活保護を受けなければならない状態が起きてしまう。これでは何ともいたし方ない。そういうことでありますので、ぜひとも恒久対策を確立していただいて、それによって、末、将来まで何とか生き続けていけるようにしていただきたい、ここに重点があるわけであります。細かい資料については提出してありますが、その資料によらずとも、ともかく何とか人間が最低の生活を維持していけるようにしていただきたい。そして家族としましても、重症患者を抱えて生涯それに付き添っていかなければなりません。そのためにも二重、三重の費用がかかるわけでございます。そういうことでありますので、ぜひともこの恒久対策の確立としての生涯を保障する年金制度、この確立はぜひお願いしたい。そうしてその実行の上に立って国の裏づけ保証をぜひお願いしたい。そういうことでなければ安心して私どもはこれから先生活を営んでいくことができない。こういうことであります。 次には、認定制度についてでございますが、私ども和解の原告団としましては、東京地裁の可部仲裁和解裁定に従いまして和解を現在進めております。田辺製薬の問題がありましておくれておりましたが、国との単独和解は一千名をはるかに超えて進行をしております。そういうことで、私どもは裁判所の鑑定制度に従って進めております。 具体的に私どもグループの内容を申しますと、私ども原告団は現在約七百名でございます。そういう中で現在鑑定がまだ終わっていない人は三十五名であります。もうほとんどが鑑定が出ているということでありますので、私どもはいまの制度をなお充実して進めていくならば、早期にこの問題を解決していくことが不可能ではないというふうな判断もしております。しかしながら、これは私ども原告団に限ったことで、また原告に限ったことであります。この後何千人という未提訴者、いわゆる非原告と言われる方々が多いわけであります。この人たちの救済をわれわれと同じように一日も早く救済するためにはどうするかという問題があります。これは私ども原告が片づけばそれでいいということではなくて、私ども原告が先頭に立って未提訴者といいますか、未解決者の問題を考えていかなければならない。したがって、この問題については、国としてはどういうことによって解決したならばいっときも早く解決できるかということについて真剣に考えおきいただきたい。そして認定制度が仮に必要とするならば、早期に確実な、しかも被害者の要求がきちんと守られるような方法をもって処理されることが望ましいと考えております。 次に、薬事法の改正については先ほども申し上げましたとおりでありますけれども、これはやはり薬の安全性について十分に立証されない場合は承認は拒否してもらわなければならない。この薬の安全性の十分な立証ということについては、検討していただかなければ、私どものようなスモンの被害が再び繰り返されるという結果になると思います。また薬の投薬についても十分配慮していただきたい。 具体的に私どもの実例を申し上げますならば、キノホルムを私どもは病院、医療機関から受けたわけでありますが、一つのキノホルム剤をスモン患者に与え、そしてその効果を確かめもしないで次から次にその量をふやしていく。最初一グラム一日当たりくれた、それが効くか効かないかよく判定もしないで、次はそれが二グラムになり三グラムになり、驚くなかれ連続一千グラムを超えておる患者が幾らでもおるわけでございます。一千グラムといいましたらこんなものです。そのような膨大なキノホルムを体内に投与するという形こそ問題であろう。 〔理事小平芳平君退席、委員長着席〕 私は、ここで副作用そのことよりも、副作用以前の大量製造、大量販売について問題があろうかと。ただ売って売って売りまくりさえすればどうなっても構わないという、そういう姿勢ではだめである、薬の副作用そのものよりも、その以前の問題を私どもは議論をしていただきたい。この制度をぜひとも改革していくためには、少なくとも薬事法にその精神を入れていっていただきたい、かように思います。 以上です。
○参考人(井上明君) まず救済基金法ですけれども、これは本来このスモンというものを起こした責任は国にも製薬企業にもあるわけです。しかし、私たちが一番問題だと思うのは、一時金については国の国庫補助といいますか、そういうものが設けられたようです。しかし、私たちが先ほども言ったように、一番望んでいる恒久対策については国庫補助が全くなされていない、全くこれについては不当だと思うわけです。国にも同じ責任がある以上、やはり国からも国庫補助を出して、製薬企業だけでは不十分であれば国がそれを補って、私たちの要求する人並みの生活の送れる、そういう恒久補償のできる費用を国が保証すべきだと思います。 それから、恒久補償の内容についてですけれども、これはさっきも申しましたように、私が算定されている一時金でも、いまの私どもの生活の十年そこそこの費用にしかならないわけです。しかも、私がもしこのスモンにかからずに工業大学を出ていままで働いていれば、すでにその一時金の金額ぐらいはかせげているわけです。そういう過去の損害金にも満たないような一時金、しかもそれで生活していったら十年そこそこしかもたないというもの、そういうような一時金ではとても私たちは納得できないわけです。で、その恒久補償どういうものが必要なのか、私たちは実際にさっきも言いましたように、仕事が持てない患者が非常に多くいるわけです。そういう患者の生活費、それはどれぐらいかかるかすでにおわかりになると思います。しかし、私たちスモン患者は、そういう平均的な、一般的な生活費だけではありません。これから幾つか例を挙げて申したいと思いますけれども、非常に多額な費用がかかるわけです。たとえばリハビリテーション、私たちの体はリハビリテーションを受けていなければ、たとえば足が拘縮してどんどん悪くなるわけです。そういうことで、たとえばリハビリテーションを受けにいくそういう交通費でも、たとえ一日置きに行ったとしても三万円ぐらいは要ります。それから、私なんかはいま無理して働いていますけれども、ひざが痛んだり腰が痛んだりするわけです。そういうために、はり、きゅう、マッサージなどの治療も受けたいわけです。しかし、それは国が示しているのでは週に一回ぐらいの治療しかできないわけです。そういうことではなかなか効果もあらわれない。これは鍼灸師の治療者の人たちも言っていることです。たとえばそれを週三回、私たちはせめて週三回は受けたいと思っておるわけですけれども、そうしますと、その費用だけでやはり三万数千円というお金がかかるわけです。それから、私どものように女房も目が全然見えません。そうすると介護を必要とすることはあたりまえなわけです。ところが、可部和解の算定からいきますと、私なんかは介護費用が補償されるかどうかはボーダーラインだと言われているわけです。そういうことでは全く納得できないわけですけれども、現実にそういうことで、私たちの生活が人並みにできるように、そういうホームヘルパーなり介護人をたとえ半日でも来ていただくとすれば、一月に十二万ぐらいのお金はかかるわけです。それから、もう挙げれば切りがないわけですけれども、たとえば暖房費、足が非常に冷えます。非常に暑い盛夏を除いてはほとんど暖房が必要なわけです。北海道なんかの寒冷地では一年じゅう暖房が必要です。しかも、北海道の患者さんに聞いた話では、一月に四万も五万も暖房費がかかるということを聞いているわけです。それから、たとえば私なんかもそうですけれども、外に出かけていくことが余りできないために、電話をしょっちゅう利用するわけです。そういう電話代が少なく見積もっても月一万円ぐらいはかかるわけです。それから、細かなことで言えば、たとえば私なんか足が、つま先をすってしか歩けないわけです。そうすると、くつがせいぜい二月ぐらいで壊れてしまうわけです。そういうこと、あるいはくつ下がすぐに破れてしまいます。畳をはって歩くためにひざがすぐに抜けます。そういう被服費も非常にかかるわけです。それから、仕事をしていくために学習もしなければなりません。しかし、目が見えないために点字の本を使わなければなりません。その点字の本はきわめて少ないです。しかし、その少ない本を買うにも普通の本の五倍ぐらいの価格がするわけです。そして、そういう点字の本がない場合には、木を買ってきて、そしてそれを読める人に頼むわけです。そういう費用が莫大なものになるわけです。点字の本以上につくわけです。そういうもの、もろもろを入れれば十万、二十万というようなお金ではないわけです。もちろん私はいまそんなことはできていません。収入がないためにいま言ったようなことは全部できてないわけです。 それから、恒久補償、私たちはさっきも申しましたように、本来体がもとになればこういうものは一銭も要らない。しかし、それが戻らない以上やっぱり人並みの生活がしたい、そういうことで言っているわけです。 それから、いままで製薬企業あるいは国がとってきた態度ですけれども、さっきも申しましたように、私たちがキノホルムが原因だとわかってからも七年も八年も裁判闘争してこなければいけなかった。しかも、五回の判決ではっきり責任が認められたわけです。それにもかかわらず、なお控訴をし続けて患者を放置し続けているわけです。そういうことでは、きょうも厚生省の前、あるいはおとといあたりからずっと来ているわけですけれども、八百人余りの患者が詰めかけているわけです。私たちは、将来にわたって安心して生活していける保障がない限り、いまの闘いをやめるわけにはいかないわけです。生活していけない以上、生活できるようにしてくれるまで闘いを続けなければならないわけです。 それから、認定制度の問題ですけれども、これはいまの認定制度、先ほどおっしゃいましたけれども、大阪の例ではいままで七年裁判続けてきました。で、訴訟している患者が三百五十名にも及んでいるわけですけれども、そのうち鑑定が済んでいるのはたった五十数名、六十名足らずです。で、このままでいくと大阪の訴訟している患者すべて鑑定が済むのには何年かかるか知れないと言われているわけです。たった三百数十名です。いま全国には二万人の患者がいると言われているわけです。厚生省の調べでも一万一千人です。で、その患者たちの鑑定がそういうことで進んでいくならば何年かかるかわかりません。私たちいままで闘ってきた間に、私たちの患者が十何%、一割以上の患者がすでにこの世を去っているわけです。補償されることが明らかになっても補償されるまで待てずに亡くなっていく人が非常に多いわけです。そういうことでは、簡易でしかも迅速で、そして投薬証明のない患者でも全員が漏れなく救われるような、そういう鑑定制度、たとえばお医者さんがスモンと認めた診断書で補償していくというような、そういう全員が補償される、しかも一日も早く補償されるような鑑定制度を望んでいるわけです。 それから、薬事法の問題ですけれども、これは私たちの運動の一つの大きな柱です。二度とスモンのような薬害を起こしてはならない。先ほども申しましたが、私には小さな子供が二人います。その子供に私と同じ苦しみはどんなことをしてでもさせたくはありません。そういうことで、国あるいは製薬企業の医薬品の安全性の確保の義務が明確化されることを希望いたします。
○委員長(対馬孝且君) 参考人の方にお願い申し上げたいんですが、時間がまことに制約があるものですから、お答えをできるだけひとつ要点にしぼって簡潔にお願いしたい、こう思います。 それでは森下参考人。
○参考人(森下弘君) 安恒さんの御質疑にお答えいたします。 まず、先ほどお話がありましたけれども、私たちいまここで論じておりますのは、救済制度法案についてのことにつきましてわれわれの意見を申し上げたということを、まず御了承をお願いしたいと思います。 先ほどのお話で、製薬企業の方に反省が足りないという御指摘がございました。一般論として、確かにそういう問題をわれわれ決して等閑に付しておる問題じゃございません。また、私ここでちょうど井上さんの横へ座らされておりますが、非常にこれはどういうお考えだったのか、ひしひしと身に感じながら井上参考人さん及びいま一人の参考人さんのお話を伺っている。だから、一般論としてはおっしゃることについて十分反省もし、将来こういうことがないようにわれわれも協力したいと考えていると、この点をまず御了解いただきたいと思います。 それから、いま一つの問題でございますが、スモンの場合でももっとPRをしたら患者が少なかったのではないかというお話、確かにそういう問題もあったかもしれません。ただ、われわれ決して逃げるわけじゃございませんが、医薬、まあ学問です。学問、一般に非常な勢いで進歩いたしております。十年前といまとまるで隔世の感がございます。そういう意味で、その時点でわれわれは十分尽くしていると思っていても、いまから考えると非常に欠陥があったりする。これは学問の進歩のやむを得ざる、まことに残念なことですけれども現象かと思います。したがいまして、われわれこの救済制度で、いまお話のあるような、原因や結果がどうだとか言っていろいろと問題になっておりましたあの長い期間を思うときに、その原因や、あるいはそういったことの不分明な間でも、本救済制度がありますならば以前のようなことは私はないと、それでもってある程度対処できるものではないかと思っておる次第でございます。したがいまして、われわれ決して責任をあいまいにする意味ではございませんが、そういう意味合いのことをひとつ御理解いただきたいと思います。 以上でございます。
○参考人(亀井康一郎君) 薬事審議会の問題についてでございますが、これについてはむしろ熊谷参考人からのお話の方が適当と思います。 で、私といたしましては、やはり、きょう出てまいりました理由として一般論的な意味でお話しした方がよろしいというふうに感じます。 ここにお二人の患者さんの方が同席されておりまして、いろいろお話を伺っておりますと、私も本当に疾患というものをいかに治療するかということが医師として非常に大切なことであるということをひしひしと感ずるわけでありますが、私の専門は先ほども申しましたように精神医学、で、精神病の患者は、精神病院にいらっしゃるとわかりますけれども、悲惨な状態で置かれている場合がもっとあるわけですね。これらの家族あるいは当人というものは、いかに社会に復帰しようとしても、逆に社会からレッテルを張られて復帰できないという場合がしばしばあるわけです。そのようにだれがさせたかということは、それは疾患の性質上いろいろスモンとは違いまして、本質的なもっと違う精神医学的な観点があるわけでありますけれども、疾患が起こったということ、そしてそれに治療をするというところにおいて、患者さんの側も医師の側も、そこにおいては悪意というものはまずなかったと私は思うのであります。結果として疾患が生じてきた。しかし、最初に患者さんがいらして、そしてわれわれが投薬をするという場合に悪意というものはまずあり得ない。そういう悪意を持った医者があったとしたならば、それは本質的に医の倫理に反するものであります。その点から考えますと、だれが責任があったかということは、これは法理論、法律の段階での論議と別にいたしまして、私の観点からは非常にむずかしい問題だ、こう思うわけです。ことにサイエンスがますます進歩してまいりますと、いままでわからなかったこともわかってくる、あるいはいままでそうだと断定されていたものもそうでなくなるというような事態がしばしばあるわけでありまして、これに対して、じゃ前そういう判決が出たからその時点ではそうであったかもしれないけれども、時代が変化すればそれは間違いであったということもあり得る可能性は、私は一科学者、一医者として感ずるわけでありまして、この点で薬事審議会の判定部会というものの人選というものは非常に重大であろう、こう思っているわけであります。それはあくまでも中立的な学識のある先生方によって良識的に判定されるということが必要である。それと同時に、まさにわれわれが常に主張しております一億一体の健康に対する連帯感というものが疾患に対してなされなければならない。そういうような意識を持って医療に取り組み、製薬に取り組み、あるいは社会復帰に取り組むというわれわれの姿勢というものが、今後の医療行政も含め、医療手段を含めて全部必要になるというふうに思うわけであります。私はクリスチャンでありますが、聖書の一句をいま感ずるわけであります。「罪なき者はまずこの女を打て」と、この言葉がだれにこの裁判において的確に当てはまるでありましょうか。
○参考人(熊谷洋君) 安恒議員の御質問に簡単にお答え申し上げます。 審議会を改組する必要があるかないかという御質問と解釈いたしますが、昭和四十二年以前の医薬審については再評価をしろと。しかもかなり進んでおります。同時に新薬の審査もきわめて合理的に厳格にやっております。したがって、その意味におきましては私は改組の必要は認めません。それよりも大切なことは、先ほど井上参考人がおっしゃったように、奥様が入院されたときに大学の連中が診断がつかずに伝染病として取り扱ったということの根本は、早期に薬害を発見し、早期に対処するという、そういう教育制度がないからであります。したがって、最初に申し上げましたように、遅まきながら厚生省医務局がプライマリーケアをやろうということは私は大いに期待してよかろうかと。 以上でございます。
○参考人(渡辺徹太郎君) 御質問の点につきまして、回収の問題についてはメーカーがやるべきだということでございますけれども、薬事法七十条では、メーカーだけじゃなくてわれわれ販売業者も回収命令がされるわけでございます。また実態的には七万人ぐらいの者が総動員して回収しなければ完全回収はできないわけでございますので、どうぞひとつ御理解をいただきたいと存じます。 大変どうも手数のかかるようなお話でございましたけれども、これは先ほど申し上げましたように、確かに私どもも大変なことだと存じておりますけれども、しかし、やはり人命の方が大切だということではそのくらいの努力は何としてもしなければならないというように常日ごろ考えておりますので、どうか御理解をいただきたいと存じます。
○目黒今朝次郎君 同僚の安恒委員からいろいろ言われましたので、一つだけ——二つになりますか、森下参考人にちょっとお伺いいたします。 われわれスモンの問題あるいはサリドマイドの問題とか、ここにこういう先天性異常というものもあるんですが、子供たちが手がない、足がない、耳がない、これもやっぱりいろいろ議論してみると、黄体ホルモン、職場で働いている職業婦人であるとか、あるいは農村の若い奥さんであるとか、そういう方々が流産防止に飲ませられた黄体ホルモンが、やはりこの原因だという点で外国でもいろいろ議論になっていると。この議論を通じて見てみますとね、私はいま参考人が、今回の薬事法の改正なりあるいはこの薬害救済法が出てきた背景については十分に認識をして業界の転機を図りたいと、こういう非常に慎重な言い回しで言葉を使っているんですが、この問題でちょっともう一歩突っ込んでお伺いしたいんですが、われわれこの薬害の問題を議論すると、再評価委員会とか学会とかということで議論されると、ずっと一番肝心なところに行くといわゆる企業秘密と、会社の秘密、製薬会社の秘密、企業秘密と。その壁にぶつかって、最も大事なその因果関係の資料を出してくれとなると、厚生省といえどもそこから中には入れない。こういうのがいままでの国会の議論、いろんな学会の議論の一番障害になっておるんです。で、私はその問題と、いろんな薬害から来る現象面、中には死亡する方もありますわね、亡くなる方も。そういうことで、やっぱり人間の命は地球よりも重いと言っているんですからね、人間の命に関する問題だという場合には、各会社はその問題の壁を取り外しても真相究明に協力すべき企業としての義務があるんじゃないかと、私はこう思うんですよ。その壁を取らない限り、おたくさんがどんなきれいごとを言っても、今後はこの薬事審議会であるとか判定部会というのがあったとしても、薬事審議会、判定部会で結局はその企業の秘密の壁で逃げ切ってしまうと、こういう可能性が十分ある。このスモンの問題も、裁判というこの司法権、司法権を行使されて何回も何回もやられて、やっと出していわゆる司法権が判断したと。それば企業の壁ですよ、企業の壁。その壁をおたくさんたちは今回は開放する気があるのか、いろんなデータを公開する気、そういう気持ちがあるのかどうか、ひとつ基本的な問題としてお聞きしたい。 同時に、お医者さんである亀井先生ですか、あるいは薬事審議会に携わっているお二人の方もですね、私はその問題についてやっぱり薬を投薬する医者の立場からもそのことが必要じゃないかと、こう思うんですよ。私はこの前別な案件で質問したら、厚生省は、いろんな情報はお医者さんに提供するけれども、その薬、有効性と副作用とありますがね、その薬を使うか使わないかは医者の判断だといって、そこから先は医者の責任に国が逃げているんですよ。こういう際に、やはり臨床に実際あずかるお医者さんとしてどういうことになるんですかな、その辺を聞かしてもらいたいです。 それから、熊谷先生には今度の救済法案ですね、この中央薬事審議会の下に判定部会ありますね、私はこの新薬承認、製造を許可する権能を持つ薬事審議会のその下部機関に、それから起こる薬害について判定部会がそれに直属しているというのはどうも制度としては私はナンセンスだと、むしろ判定部会は準司法的な、純粋な第三者として、医師会にも行政にも国に対しても物申せると、そういう私は準司法権を持つくらいの、消費者の代表も入れた、患者の代表も入れた第三者的な判定部会が正当だと、こう思うんですが、この辺の考え方を若干聞かしてもらいたい、これは簡単で結構です。 以上です。
○参考人(森下弘君) ただいまの目黒先生の御質問にお答えいたします。 ああいう問題が起こったときに、その最終の壁になるものは企業の秘密の壁であると、こういうお話でございます。その壁とは、秘密とは、たとえば薬についての副作用についてのデータが不十分な発表であるとか、そういうような意味だと私了解いたします。それに対してお答えいたしますが、実は日本でこの製薬の申請をいたします場合には、その主要部分につきましては国内の専門の学会とか、あるいは雑誌とかにもうすでに発表されております。それからまた、この安全性あるいは有効性等に関するものにつきましては、もうすでに実は発表されておるものが多いわけでございまして、ことにこの薬事審議会において諸先生方はそのことを御存じという状態でございます。ただ、あなたがおっしゃいますように、あるいは全部一般にもう一つ不行き届きでないかとおっしゃられれば、これは多少その方法に研究する必要があるかと思いますけれども、しかし、そのお使いいただく方々、しかるべきその専門家に対しては発表をいたしておるということを申し上げたいと思います。
○参考人(亀井康一郎君) 医薬品に対して、医者だけに秘密を伝えて一般に伝えてないというようなお話でございますけれども、それは違うんではないかと思います。ただ、一般の方が余り興味を持たれないわけですが、日本医師会雑誌にはちゃんと厚生省と協力をいたしまして、医薬品の再評価のデータというものはすっかり載っておりますし、またわれわれ医師会の方でも、医薬品カードというものをつくりまして常に会員に配付している。これはまさにどなたが見ても公でありまして、決して秘密ではないということを申し上げます。
○参考人(熊谷洋君) 目黒議員の御質問にお答えします。 薬事審議会の中に判定委員会をつくるのはおかしいと。そういう考え方も成り立つでありましょうが、私の基本的な考えは、その薬の審議をした連中が自分の責任を果たすという意味で薬事審議会の中に判定委員会をつくってもおかしくはないと思います。しかし、まだその細かい内容については承知しておりませんのでここで明言を避けます。
○高杉廸忠君 私は、持ち時間が、すでに社会党の時間として私が最後でありますけれども、安恒委員、目黒委員からお話がありましたことで、特に熊谷先生に伺い、それから井上さんにも伺いたいと思いますが、まず、先ほどの熊谷先生の御意見では、薬事法においては国、厚生大臣の明確な責任をもっと法文に明記すべきであるという、その御意見には全く同感であります。だとすれば、今回の救済基金制度について無過失責任制度に今回の法律案では立脚をしていない。そこで、人の命や健康、これはもう私が言うまでもなく何物にも増して尊重されなきゃならない、そのことは否定もできませんし、この際、やはり先生のそういう御主張、御意見であるならば、当然無過失責任制の確立が本法になきゃならぬという御意見になろうかと思いますが、この点についてはどういうふうにお考えになっておりますか、これが第一であります。 それから、井上さんにお尋ねをいたしたいんですが、ほかの方々にはもうお尋ねする余裕がありませんから、井上さん、この本席に着かれるのに大変足も目も御不自由な状態で、介護の方によってお席に着かれたんです。いま恒久対策等の点についてもお話がありましたが、井上さん、いまの可部方式でいきますと、あなたの方では介護費用が出るか出ないかわからぬ瀬戸際であるし境だというようなお話ですが、そういうことになると恒久対策でも、いま交渉されておると思いますが、大変私は井上さんと同じ方々、たとえば目の御不自由な方、足の不自由な方、当然介護を必要とすると私どもは一見拝見をしたわけですが、そういう点についてもう少し具体的に私はお聞かせをいただきたい。 最後に、先ほどの亀井さん、私は討論をしようとは思いません。しかし、具体的な被害の事実、亀井参考人もお聞きになったように、気賀澤さんの奥さんの状態、井上さんの御意見陳述、率直に私の方は受けているわけであります。具体的な事実であります。したがって、その責任、当然これは企業あるいは国が負うべきであるということは疑いのない事実でありますから、私は精神論で討論をしようと思いません。刑法の精神では疑わしきは罰せずというのが精神だそうでありますが、事、命について疑わしきは救済をして責任をきちっとしていくというのが私は今回の救済基金制度をつくったゆえんでもある、こういうふうに思うんです。あえて私はあなたと討論をしたいとは思いません、時間がありませんから。私はそういうふうに申し上げておきます。 以上、お二方からお答えをいただきたいと思います。
○参考人(熊谷洋君) いま高杉先生ですか、御質問にお答えします。 まず最初に、私は法律の専門家じゃございませんので、無過失責任について詳しく論ずる資格はございません。しかし、昭和五十一年六月二十五日付で厚生省、医薬品の副作用による被害者救済制度研究会報告というものが出ております。これによりますと、有責、無責のほかに無過失責任という考え方があるではないかという記載がございます。しかし、学問的と申しましょうか、には、有責も無責も決められない領域が科学的にはございます。したがって、衆議院でも申し上げましたように、この点を、この研究会を放棄しないでもっともっと詰めて、法律の側と医学の側と、もっともっと議論を詰めてやっていただきたいというのが私の希望でございます。 これで終わります。
○参考人(井上明君) 具体的に私の場合を申しますと、可部和解案の一時金の額で言いますと恐らく重症の部類に入ると思います。そうすると、それに年齢加算をされて、そして先ほど申しました三千二百五十万程度になるわけです。いま私、実は無理をして働いて世帯主になっているわけですけれども、可部裁定では、発病当時に世帯主でなければ世帯主加算というのがされないわけです。ですから私はそれはないわけです。 それでもう一つ、介護人が必要かどうかというのは全く数字的なもの、視力が〇・〇幾ら、あるいは全然歩けないというようなそういう規定があるわけです。そうすると、私は視力で言いますと〇・〇二、左目の左下、ごくわずかな視野です。中心はほとんどもう大きく見えません。左の下でわずかに、それも人の姿がぼんやりと近くでわかる程度です。もちろん点字でなければ活字は読めません。そういう状態であっても、介護費用の補償の対象になるかどうかはボーダーラインでわからないというような状態なわけです。ですから、可部和解案というのは、私たち若い者にとっては非常に薄い補償しかされてないというふうに思うわけです。そして仮にその三千二百五十万という私のあれですけれども、実は私はいま借家に住んでいるわけです。古い古いぼろぼろの借家で雨漏りもするわけです。しかし、改造するにももう年が明けたらそこを出て行ってくれと言われているわけです。現実に私たち視力障害者夫婦です。そうすると、一般の民間のアパートですと、火事を出すと危ないからといって貸してくれないんです。家を一軒建てるには何千万ものお金がかかります。特に障害者用住宅ということになれば、一般の費用の五割増しだというふうに聞いています。そうしたら、仮に可部和解案の一時金をもらえば、自分たちの住む家を一軒建てればそれで終わりなんです。そういうことで私たちは恒久補償を強く要求しているわけです。
○小平芳平君 大変に、時間も長くなりまするのと、それから体の御不自由なところを押して御出席いただいております。本当にありがとうございます。そういう関係で私もごく要点だけ御質問いたしまして、概略要点だけお答えいただけば幸いだと思います。 最初に気賀澤参考人、それから井上参考人に伺いたいと思いますことは、先ほど来お述べになっておられます恒久対策、恒久対策ということは、要するに生涯補償とも言ってきたわけでありますし、表現はどういう表現になりますか、年金等によって所得が保障され、生活が保障されることを要求されてきたのであるし、またそれにこたえるものでなくては意味がないだろうというふうに私も考えます。したがいまして、この恒久対策についてはもうお述べいただきましたので、そのことは飛ばしまして、私がいまお答えいただきたいと思いますことは医療機関に対する御意見を伺いたいわけであります。医療機関もしくは医療を受けてこられた立場としての御意見、御感想が伺えたら幸いだと思うわけであります。 最初に気賀澤参考人から、隔離病棟へ入れられた、伝染するというふうに言われたというような点につきましては、全国の多くの被害者の方がそういう思いをされたと。また、親戚の者がまずその交際を絶つというような目に遭われてきたということもよく伺ってまいりました。その点については、スモンは伝染病じゃない、キノホルムだと、原因が。ようやくここでそういうふうに裁判の判決を受けて落ちつこうという段階だろうと思いますが、しかし、それでもうこの医療を受ける皆さんの立場としまして、先ほどもちょっとお話が出ましたリハビリ、はり、きゅう、マッサージに対するお考え、あるいは入院、退院を繰り返す、入院していたくても退院しなければならなくなってしまう、いろんな事情が重なって。あるいは入院したくても入院できない、いろんなことで、スモンの皆さんが非常に苦しい生活を続けてこられていらっしゃると思いますので、そういうような点についてお考えをお述べいただいたら幸いだと思います。 それから、次に亀井先生と熊谷先生に伺いたいことは、この点についても先ほど来お話が出ておりますが、今回のこの救済基金法案で、医薬品を適正な使用目的に従い適正に使用された場合において有害な反応が生じたということなんだそうですが、一体適正な使用目的で適正に使用してどのくらい有害な反応が生ずるものかどうか。厚生大臣の先ほどの提案理由の説明では、それはもう「健康被害の発生を完全に防止することはむずかしいことも事実であります。」と言っているわけでありますが、で、一体われわれ国民の側としてはどういう気持ちで医療を受けたらいいかということを伺いたいわけです。で、適正な目的で適正な量を使って、しかも被害が発生すると、そういうことがずっと続くのかどうか。それから、現在大量に被害が発生したスモンの場合も、この適正な使用目的で適正に使用されたということになるのかどうか、その辺のお考えはいかがでしょうか。 それから、先ほどお話がございましたが、中央薬事審議会の判定部会がどういう体制をつくったらそういうことが判定できるのか。とにかくよほどの、まあ有力といいますか、強力といいますか、すばらしい機関ができないことにはそういうことを次々と判定していくということが非常に困難ではないかということを思いますが、いかがでしょうか。 以上でございます。
○参考人(気賀澤勤君) お答えをいたします。 私は、医師の責任について考えを述べる前に、医師といいましても、全国にたくさんの非常に良心的な、いまスモンの被害者を熱心に何とか回復させようと多く努力しておってくださる全くりっぱな先生方がおいでになるということを申し上げて、私が申し上げる医師の責任は、まず私どもが、また私の家内が投薬を受けたそのときからの感じから申し上げます。 先ほども申し上げましたとおりに、私の家内は病院で看護婦をしておりまして、腹ぐあいが悪いということで薬をもらった。それが後になってキノホルム剤ということがわかったわけですが、そういう患者が次々と多く出てきた、一つの病院で。私ども四十二名ばかり一つの病院から出ておる例があるわけですが、そういう中で次から次に発病してきた。これはまさしく院内の感染であろうということで隔離病棟へ入れて隔離してしまった、こういうわけでありますけれども、四十五年になりまして、スモン調査研究協議会が、スモンはキノホルムが原因であるということが明確になった。そのとき私は医師に対する物すごい反感、怒りを感じました。医者は薬をまるで何か品物のようにどんどんと本人の体に投入して、そして、しかもその薬によって次から次に患者が大量に発生したのに、それはうつるだとか、伝染だとかいうことでその医者が隔離をした。そうして多大な被害を与え、自殺未遂者をその病院だけでも三人も出している。そういう状態から見て物すごい怒りを感じました。そういうことをはっきり申し上げなきゃならない。先ほども申しましたとおり、医者は患者を診察したときに、その容体を的確に診断して、薬の投与については安全性を確かめながら投薬期間をきちんと守って正確な判断をくだしていってもらわなきゃならない。効かないから効かないからと、またはスモンにキノホルムが特効薬のごとく次から次に量をふやして、一千グラムにも及ぶような大量投与をする例が次々と挙がるということは、まことにもって、言わしてもらいますならば、医師は薬の自動販売機のボタン押し係になってしまったということすら私は言えるのではないかと、こういうふうに思っておりました。今日いま現在、私どものこの薬との関係がはっきりしてきまして、そして責任の問題となってきておりますが、私どもは、医師の責任ということにつきましては、裁判では医師の責任を問うておりません。実際に医者がこのスモンにかかわり合ったことに対する反省をしていただけるならば、私どもはこの責任を問おうとはしておりません。しかし、そういうはっきりした反省の上に立って、二度と再びこのようなことは起こさない、このような薬害は起こさないという上に立って今後を処置していただきたい。そしてまた、その反省の上に立って、今後のスモン患者の行く末、また他の薬害被害者の行く末について反省を込めて被害者の治療研究に当たっていただきたい。これが私どもの被害者の真の叫びだと私は思っております。 以上です。
○参考人(井上明君) 私は、患者がこれからの将来にわたって希望していることを申したいと思います。 私たち、何といってもやっぱり少しでもこの症状をよくなりたいという希望、治りたいという希望は最大の希望です。ですから、一日も早くスモンの治療開発、そういうものに積極的に国が努めていただきたいと思います。 それからもう一つ、いままで私たち患者は、奇病だとかあるいは原因がわかっても治療法がないということで多くの患者が病院から追い出されてきました。そういうことで、私たちは国との交渉を持ち、国立病院においては、希望すればベッドがあき次第入れるというようなことになったわけですけれども、私たちは遠く離れたところへは非常に行きにくいわけです。できることならば、私たち自分たちの住んでいる近くの医療機関で、容体が悪くなったときに入院し、よくなればまた普通の生活が送れるというような、そういうことができればと願っているわけです。 それともう一つは、身寄りのなくなった、一人だけになってしまった患者さんも多くいるわけです。あるいは今後そういうふうにならざるを得ない若い患者がいっぱいいるわけです。そういう人たちが、動けない患者が医療を受けながら、そして十分な生活をしていける、生きがいを持った生活がしていける、そういう医療機関を併設した、そういう施設を私たちは希望しています。
○参考人(亀井康一郎君) 冒頭のお話において、ほとんどいまの御質問の意味は私は説明してあると、こう思っております。それで、スモンの場合において薬が適正であったかどうかという問題については、私はスモンの専門ではありませんのであえて言うことは控えさしていただきますが、これも私の専門分野であるてんかんの例を引いて御説明申し上げましたように、薬物というものは常に異物である、それを適正に使うということがわれわれの最も注意しなければならないことであるということは常に思っているというわけであります。ですから、今後新しい薬剤が出たときに、その適正ということがどの範囲であるかということは、まさに私が一番最初に気にかかったところなんでありまして、今後も、あるいは違った種類の疾患というものが薬物によって起こる可能性というものは科学的な意味では否定できません。しかし、それを治していく、そういうものが出たとしたならば必ずそれに対して対応していくというのがわれわれの知恵である、こういうふうに思います。
○参考人(熊谷洋君) お答え申し上げます。 先生の御質問の適正な使用目的で適正に使うと、この原文をつくった役人の考えであれば、こういうふうな一般論しか言えないだろうと思います。実際にそれならばどうするかというと、判定部会で、上がってきた実際の問題についてそのプロトコルを調べる、いろんな工夫をこらして具体的にこれを判定するということが実態に即するものであろうと私は考えております。 以上でございます。
○小平芳平君 スモンのような例は。
○参考人(熊谷洋君) そういうことを防止するために再評価もやっておりますし、新薬の審査もきわめて厳重にやっております。 これで、私三時半になりましたので失礼させていただきます。
○委員長(対馬孝且君) 熊谷参考人、どうもきょうはありがとうございました。
○渡辺武君 井上参考人、大変お疲れのところだと思いますけれども、キノホルムの薬害に直接遭われたただ一人の方として二、三点伺いたいと思うんです。私、一つ一つ質問を分けて伺います。 一つは、井上参考人、大学二年生のときからこのキノホルムの薬害によって有為な人生を奪われて大変苦労してこられたというお話がございました。そのような体験を踏んまえて、製薬三社や国がいままでとってきた態度に対して、あるいはまた現在とっている態度に対してどのようにお考えか、特に御不満の点をお聞かせいただきたいと思います。
○参考人(井上明君) 私は工業大学の二年生の夏にこのスモンにかかったわけです。そのころの友達はいま会社の中堅としてばりばり活躍しているわけです。私は先ほどから話したようなこういう状態にされたわけです。先ほども言いましたけれども、それにもかかわらずこの十三年間、私たちにほとんど何らの補償もなかったわけです。そして七年も八年もこういう苦しみの中で、足を引きずり、見えない目で人に手を引かれながら闘いを続けてこなければ、和解にさえ応じてこなかったわけです。しかも、この間の衆議院の社労委だったと思いますけれども、早急にこのスモンの解決を図らなければならないという附帯決議があったと思いますけれども、それにもかかわらず、きのうの企業あるいは厚生省との直接交渉に企業の代表は一人も出てこないありさまです。そういう衆議院の決議にも反するような行動をいまだに製薬会社はとっているわけです。私たち八百人から、いま三日間ずっと厚生省前で座り込んでいるわけですけれども、非常な怒りをもって闘いを続けているわけです。決して私たちはそのような企業を許すわけにいきません。私たちはいままでに何度も紳士的に企業との交渉を申し出てきました。しかし、私たちが会社に行けば、私たちの姿を見るや否やシャッターをおろし、窓を閉め、そして屋上からはテレビカメラで私たちを監視し、そしてスピーカーで自分たちの一方的な言い分をしゃべりまくるという、そういう私たちを全く無視した態度をとり続けてきたわけです。こういう態度を一日も早く撤回し、そして誠意を持って私たちとの交渉に応じない限り、私たちは闘いを続けていく覚悟でいます。
○渡辺武君 もう一点伺いたいと思うんですが、先ほど来、恒久対策、特に健康管理手当についての強い御要望がございました。安恒委員の御質問に対してその詳しい内容の御説明がありまして、非常によくわかりました。ただ、なお追加すべきところがあれば伺いたいと思うんです。というのは、私伺っておりましてね、二、三点疑問が生まれているんです。それは、井上参考人のように、目も非常に御不自由になられる、あるいはまた歩行も非常に困難だというような方々がほとんど多いと思いますけれども、家の中で、たとえば段差があったりあるいはまた階段などがある場合は、それに応じた改造などもしなきゃならぬじゃないだろうか、あるいはまたそういう体の条件に応じた家の新築というようなことも必要じゃないだろうかという感じもするわけです。そういう点の必要はないものなのか。 それからまた、先ほどのお話を承っておりますと、御病人として通院その他特別にかかっている費用のことをおっしゃっておりましたが、しかし、同時に人間として当然生きていく権利はあると思うんですね。もし、いまいろいろめんどうなどを見ておられる親御さんたちが死なれたような場合に、当然これは生活保障を必要になってくるんじゃないかというふうに思いますが、そういう点についての御意見がございましたら伺いたいと思います。
○参考人(井上明君) お答えします。 確かに家屋の改造が必要です。私どもは借家に住んでいるにもかかわらず、やっぱり生活していかなければならない最低限度の改造を私もしました。ここ五年前にもなりますけれども、銭湯には行けません。何とか当初は行きましたけれども、何度もこけて顔に十センチもの傷をつくったり、そういうことで非常に危険ですので、無理をしておふろをつくりました。そのときに、五年前に六十数万というお金がかかりました。あるいはまた、トイレが入ったときは和式でしたので、できれば洋式にしたいです。しかしそれにも数十万のお金がかかるということで、それはいまだにできていません。あるいは、もちろん段差があれば、そういうのを、どう言うんですか、段差のないようなものにしたいわけです。しかし、それには新築する三分の一ぐらいのお金がかかってしまう。そして、私先ほど言いましたように、私どもの借家、しかも来年には出てくれと言われるというようなことでは、たとえいま雨漏りがしていても、それを直すお金さえ惜しくて出せないわけです。あるいはそういうお金を捻出することが非常に困難なわけです。そういうことで、たとえばそういう家を新築すれば、一時金がすべてなくなってしまうようなそういうことになってしまうわけです。 それから、両親のことが言われましたけれども、実は妻の両親もすでに亡くなっています。そして私の母も四年前に亡くなりました。父はほとんど耳が聞こえないような状態なわけです。ですから、私たちがとても父と一緒に住むことができません。父は私の兄、長男がめんどう見ているわけです。ですから、私たち本当に妻と二人で小さな子供を一生懸命育ててきたわけです。本当に死にもの狂いで育ててきたわけです。赤ちゃんができて、女房が一月ほど動けません。そんなときにも介護人が来てほしかったわけですけれども、一日に四千円もかかると。とてもそんな金出せなかったわけです。幸いなことに、近所に同じような障害者を持つ方がおられて、その人が家の仕事の合間を見て、そして食事の世話あるいは掃除、洗たくなどやっていただきました。私たちは本当にお礼をしたかったわけです。しかし、私たちの生活では満足なお礼もすることができませんでした。おふろに入れるにしても、女房は見えません。ですから、赤ちゃんが小さいときには、目や耳にお湯が入るといけない、私が入れたわけです。どうして入れたか。だっこして湯舟に入ることができないんです、足が不自由です。湯舟に入るときは赤ちゃんを冷たいタイルの上に寝かせて、冬だったら赤ちゃんギャーギャー泣くんです。お湯を幾らかけたって冷たいんですよ。そういう中で私たちは一生懸命、二人育ててきたわけです。
○渡辺武君 どうも大変深刻な状態をお聞かせいただきましてありがとうございます。これ以上伺うのは大変心苦しいことでございますけれども、なおもうちょっと伺いたいと思うんですが、いますべての患者団体の方々が、まあ一致して最低五万円以上という健康管理手当を要求されているというふうに承っております。恐らくこの五万円以上という金額はですね、井上参考人よりも多少症状の軽い、まあいわば軽症者と、まあちょっと言いたくないんですが、そういう言葉でちょっと表現しておきますと、そういう方々についてのことじゃないかと思います。そうしますと、参考人のように、それよりもっと重い方、あるいはまた可部和解案で出ている超重症者、超々重症者、こういう方々に対してはもっと健康管理手当、余分に出さなきゃならぬじゃないかという感じもしているわけですが、その辺についての御意見伺いたいと思います。
○参考人(井上明君) 全くそのとおりなわけです。たとえ軽症者であっても、先ほども話しましたように満足な仕事につけません。全然仕事につけない人もいるわけです。そういう人たちが五万円で生活していくなんてことは考えられないわけですけれども、それと、たとえその軽症者で仕事についている人も、先生方一時間も二時間も正座された後にしびれがあると思います。そういう同じようなしびれが四六時中あるわけです。あるいは痛みがあるわけです。自転車には乗れるけれども、百メーターと足裏が痛くて歩けないという患者もいるわけです。そういう人たちが非常に苦痛をこらえて仕事をしています。満足な仕事もできないです。そして非常に疲れます。余病もいろいろ、スモンのために病気にもなりやすいです。そういうための医療費だって普通の健康人に比べれば何倍かかるかしれないわけです。そういうことで私たちス全協は、当面の要求という私たち本当に最低ぎりぎりの要求として、重症患者には十五万円、そして中症患者には十万円、そして軽症患者でも五万円最低、それ、もう本当にぎりぎりの線だということで健康管理手当を出しているわけです。
○渡辺武君 最後にもう一点伺わさしていただきたいんですが、先ほども質問が出ましたこの鑑定団の問題ですね。私、水俣病の例で考えてみますと、あれはまあ裁判所から不作為の犯罪だと言われるくらいあの認定というのが非常におくれましてね、しかも実質上はこの認定を削り落とすような役目もかなりしてきたというような経験もありまして、この鑑定というのが非常に危険な感じがしているんです。いままでいろいろ御苦労なさって闘ってこられた立場から、この鑑定制度ですね、これどう考えていらっしゃるか、またどんなふうにしたらいいとお考えなのか伺いたいと思います。 それからもう一点、最後ですから森下参考人に伺いたいと思うんです。 先ほど安恒委員からもお話がありましたが、私、森下参考人の御陳述を伺っておりまして、非常に、まあ率直に言わしていただきますと納得できないところが大きいんですよ。と申しますのは、まあこの国の責任や国に対する費用負担の要求、これは非常におっしゃった。国の責任があること、これは当然のことですよ。しかし、同時にですよ、最も責任を負うべきものは、私はあなたの業界団体に参加している製薬業者だろうと、そう思わざるを得ません。その点の責任ですね、そしてまた、隣にいらっしゃる、あるいはまたその隣の隣にいらっしゃる患者さんの方々に対するあなた方の謝罪の言葉が一言も聞かれない、謝罪の言葉が一言も聞かれない、私はまことに遺憾だというふうに思います。特に、強く要望されているこの恒久対策、これについてやはり責任のある立場をはっきりとおっしゃっていただかなければ、責任のある態度とは私は言いがたいんじゃないかという感じがします。その点についてどうお考えなのか。
○参考人(井上明君) 私たちは、本来なら国が免許を出してお医者さんと認めた、そういうお医者さんからいただいたスモンという診断書で、それで補償がされるべきだというふうに、かなり以前から申してきています。そして、現に福岡地裁あるいは広島地裁では、投薬証明のない患者であっても、スモンという診断書だけで補償がされているわけです。そういうことで、先ほども申しましたように、私の言ったそういう診断書だけでということにはこだわりませんけれども、とにかく迅速に、しかも簡易な方法で、そして大切なことは、私たちスモン患者が切り捨てられないように、投薬証明のない患者であっても一人も残さないで救済されるような、そういう認定制度ができなくてはいけないと思っています。
○参考人(森下弘君) 渡辺さんの御質疑にお答えいたします。 まず、製薬企業の反省が足りないんじゃないかというお話じゃないかと思うんです。で、私、この場のテーマといいますか、まあ先ほどからの御質疑を受けながら考えていたのは、一体この委員会の目的といいますか、それはどういうんだろうかと反省しながら聞いておったんです。で、今度の救済基金法案についていろいろ意見を交換すると、こういうぐあいに私は実は、まああなたからごらんになればそれは不十分とおっしゃるかもしれませんが、その立場を堅持しながらいろいろ発言もしたわけでございます。で、そうじゃなくて、一体スモン病をどう感ずるのだとかいうような問題は、もちろんそれに対して無関心であるわけじゃございませんが、この場の問題ではないと、私は実はそう考えながらお答えしたので、あなたにとってはそれが非常に不満足であると、こうおっしゃったんだろうと思います。しかし、先ほども申しましたように、われわれ一般論といたしまして、これは決して製薬企業が全然無関心なものであるとか、責任を感じないとか、そういうような問題とは感じておりません。しかし、この場におきましては、先ほどのを繰り返すようでございますが、この法案に関連する限りにおいてお答えしておると、こういうぐあいに御了承いただければ非常に結構だと思います。 それから最後に、お隣の皆さんに対して謝罪がないじゃないかと、こうおっしゃいました。これもこの場がそういう場であるならば、また別途の私も態度をとれます。しかし、私先ほども申し上げました。お隣にお二方が座っていらっしゃる。これはこの社労委の準備をなすった方の、あるいは順番、席順ですね、患者の方の横に私を座らしたということは、かなりやはり御配慮があったのじゃないか。その点、私痛いほど感じているということを申し上げました。その言葉が足りなければ申しわけありませんけれども、その表現で私たちの気持ちをおくみ取りいただければ非常に結構だと、こう思います。 以上です。
○柄谷道一君 気賀澤及び井上両参考人の御事情は十分拝聴いたしましたし、先ほど同僚の議員から多くの質問があり、さらに認識を深めましたので、お疲れのこととも思いますし、また私に与えられた時間が限られておりますので、他の三名の方を中心に御質問をいたしたいと存じます。 まず初めに、亀井参考人にお伺いをいたします。医師と医薬品に対する信頼、これがわが国医療の根幹をなすものでございます。そして、医師と医薬品というものに対する仮にも信頼というものが失われるとするならば、これはわが国の医療は根底から崩壊しかねない問題であろうと、こう認識するのでございます。医薬品の安全性と有効性の確保、未然防止体制の強化、これが必要なことは論をまちませんし、われわれは引き続き委員会で十分の検討を加えたいと思っております。しかし、その一面倫理性の高い医療、そしてそれに対応する医療経済の形成というものが必要であることはまた論をまたないと思います。まずこの点に対する御所見をお伺いいたします。
○参考人(亀井康一郎君) 医薬品と医師の信頼関係というのですが、これは初めて私にとって聞く言葉でありまして、私は医療を行う場では医師と患者の信頼関係というふうに考えております。そして、そこで用いられるものが物質として医薬品であると、こういうふうに考えているわけですが、その点をちょっと論理的に明確にしていただきたいと思います。
○柄谷道一君 では具体的に御質問いたします。 私は、スモンその他の薬害が医薬品に対する信頼というものを失わしめた、これは明らかな事実であります。同時に、井上参考人が申されましたように、良心的なお医者さんはたくさんいらっしゃいますけれども、たとえ一部にしろ医師というものに対する患者の信頼を失わしめたということも否めない事実であろうと私は思うのでございます。 そこで、四月十四日から五日間京都で開かれました薬害防止のための京都国際会議、ここで西ドイツのレンツ博士は「医師は副作用に対して常に批判的態度を忘れず、副作用と知った時は口をつぐんではならない」ということを強調され、これまで国や製薬会社の陰に隠れがちだった医師の薬害に対する責任というものについて述べられますと同時に、最後に「もし医師がそうした姿勢を常に保っていたなら、サリドマイドもスモンも防げた」のではないかと、こう述べられまして、これは新聞紙上報道するところでございますけれども、「わが国から参加した医師の中にも、深い反省の色が見られた」と、こう新聞には報道されているわけでございます。私は、過去にさかのぼってこのスモンの問題に対する医師の責任を云々しようとするものではございません。今回薬事二法が制定及び改正をされるという、これを契機に、医師として薬害防止という視点に立ったひとつ立場といいますか、基本的姿勢というものをまずお伺いしたい、そういう意味で申し上げておるわけです。
○参考人(亀井康一郎君) その意味なら明瞭にわかりました。まさにレンツ博士の言われることはわれわれが常に思っていることでありまして、全く同感であります。
○柄谷道一君 それでは、さらにお伺いいたしますが、一九七五年の世界医師総会で採択されましたヘルシンキ宣言の全面改定、これによりますと、施設内審査を経ない臨床研究の報告は、発表を受け入れてはならない、こういうふうに決められたと私は承知しております。そうなりますと、第三者を含む施設内審査委員会を設置するという問題、これは世界医師会総会の宣言に沿う方向でございます。さらに、治験による被験者の健康被害に対する救済制度の問題、これらについてどうお考えになりますか。
○参考人(亀井康一郎君) いまのヘルシンキ宣言、しかも東京改定の宣言でございますが、それはまさにわれわれが改定をいたしましたものでありまして、全くいま柄谷委員のお言葉に私は同意するわけであります。
○柄谷道一君 私の意見の開陳は、きょうは討論の場ではございませんので一応御意見だけを伺っておきます。 次に、森下参考人にお伺いをいたしたいと思うのでございます。私は、この薬害問題というものに対して、世間の中にはいわゆる医薬品というのは両刃の剣である、多かれ少なかれ副作用は避け得られないという一種の天災論に近いような考え方がございます。また他方では、国、企業及び医療機関が高度の注意義務を尽くせばほとんどの場合においてその予見及び予知は可能である、こういう説がございます。私はまあそのいずれか一方という意味ではございませんけれども、基本的物の概念をいずれに置くかということが、私はその差が、いまつくろうとしております制度の性格やまた内容、そして財源負担等のすべてにかかわってくるのではないかと、こう思うのでございます。この点まことに率直にお伺いいたしますけれども、製薬企業としての御所見をお伺いいたしたい。
○参考人(森下弘君) お答えいたします。 いまおっしゃった二つの説といいますか、私率直に言って両方ともそのまま肯定できると思います。ただし、その肯定の仕方は、一つは残念ながら現実である。それからもう一つは、どうぞわれわれはそこまで到達したいのだということと、二つがあると思います。で、われわれの理念としては、あくまでも、あれ何といいますか、ドイツ語でゾルレンといいますか、そのゾルレンをやっぱり追求したい、ザインといいますか、現実におぼれてはいかぬと、こう思います。
○柄谷道一君 次に、同じく森下参考人にお伺いいたしたいわけでございますが、今日までのスモンにかかわる判決は、これは単なる一時金のみではなくて、恒久対策を含めて国といわゆる製薬メーカーが連帯して対応すべきである、こういう一貫した判決の精神でございます。ところが今回の法律によりますと、衆議院修正がなされておりますけれども、一応一時金に関しては国が連帯して保証行為を行い、まあ企業の収益なり支払い能力を理由として補償に手抜かりがあってはならぬ、こういう措置がとられているわけでございますけれども、気賀澤参考人及び井上参考人から切々として述べられました健康管理手当等のいわゆる恒久策につきましては、いわゆる連帯して保証という対象の中には入っていないわけでございます。しかし、これがスモンの患者にとりましては、きわめて今後テーブルに着き話し合う中での重要な課題といいますか、話題になってくることはもう当然でございます。この点に対するお考えいかがでございますか。
○参考人(森下弘君) お答えします。 いま御質疑がありましたその恒久策についてのわれわれの考え方はどうかという問題でございますが、確かに、一般論としておっしゃることそのとおりだと思います。ただ、それを実現するためにどういう手段が妥当というか、適正であるか、現時点で。この問題としてはおのずからいろいろと変わるだろうと思います。その意味で私たち考えますのは、私たちというよりも、むしろ私は、確かにそういう恒久策を、やっぱり、いま切々というお言葉もございましたが、私も聞いておりますし、何とかそういう方法がないものかと思います。そこで、そういったような問題につきましては、私はやはり国が率先してそういうことにまた当たっていただきたい、そして何らかの方法があれば、われわれも何とかその御協力を申し上げる機会もあろうと、現在ではそう思っています。その必要自体については決して否定もいたしませんし、その事実が目前にあるのでございますから、何とかいい方法がないものかと、こう考えております。恐らく国の方でもいろいろとお考えになっていらっしゃると思いますので、その結論を私は待ちたいと思っております。 以上でございます。
○柄谷道一君 私は、立法府として今回薬害救済法をつくろうということは、いわばその条件を整備するというわれわれの任務なんですね。その整えられた条件の中で具体的恒久策というものは、国、製薬会社及びその患者の方々がテーブルに着いてこれから話し合うということなんです。したがって、われわれ国会議員としての任務は、できるだけその条件というものを整備するというのがわれわれの任務であろうと、こう理解しております。 そこで、具体的に健康管理手当幾らぐらい考えるかというようなことをここでは言えないことは私十分承知しておりますけれども、この健康管理手当に対する基本的なお考えはいかがでございますか。
○参考人(森下弘君) いま御即答を申し上げることは、ちょっと私そこまで考えておりませんでしたのできわめて困難な問題かと存じます。しかし、そういったような問題がある、そしてそれに対しては何とかしなければならぬであろうということについては私は認識いたします。
○柄谷道一君 私は、森下参考人にお伺いいたしますけれども、今回の薬事法の改正によりまして、GMP、すなわち製造設備と品質管理の基準というものが一層厳正になると、これはもう当然でございます。また、一方今後の薬害に対する救済資金というものを拠出しなければならないという新しい義務が製薬会社に課せられることになるわけです。ところが、薬業界の実態をながめてみますと、私の承知するところ二千数百社がひしめいているわけですね、その中にはきわめて零細なところも多いわけでございます。薬というものは人間の健康と生命を預かる重要な産業でございます。そうしますと、やはり製薬の産業政策といいますか、やはり十分の品質管理をやり、十分の完備された製造設備を持ち研究を十分行い、かつ自後の情報に対して的確にこれを把握し、またお医者さんと緊密な連携を図り、場合によれば国際間の情報の交換を行っていく、こういう体制が産業界に整わなければ、いわゆる単なる監視行政だけでは薬害の再発を防止するということは非常にむずかしいと私は思うんです。 そこで、これらの問題について、あるいは協業化が必要でございましょう。場合によっては近代化が必要でございましょう。そのために積極的な国の誘導政策も必要でございましょう。私は、薬業界をカバーするという意味ではなくて、この薬事法の改正によって今後その薬害の再発を防止するという視点から、どのような産業に対する姿勢を持っておられるのか、これをお伺いしておきたい。
○参考人(森下弘君) お答えいたします。 いまの問題、まことにわれわれも日夜気にしている問題でございます。ただ、これは私、産業界の団体の役員の一人でございますが、同時に企業の首脳でもございます。したがいまして、恐らく御質疑は団体の者として一体そのことについてはどう考えているのかと、こういうことと了解してよろしゅうございますか。 そこで、この将来のおもむく形といたしましては、いまおっしゃるように、たとえばGMPに相当やっぱり設備資金がかかる、それから、品質保持のためにいろんなやはり人員のチェッカーマンが必要だ、それは薬剤師でなけりゃならぬとか、それだけでなしに、今度制定せられます救済基金法によりますと、やはり利益があろうとなかろうと一定の拠金をしなきゃならぬ、こういうような問題がかぶさってくるわけでございますから、その企業の規模によっては、あるいは耐えられないものがあるんじゃなかろうかというのが御質疑の中身かと思います。いま、あなた自身もおっしゃいましたように、恐らくそういうものに対する処置は、これはその行政の一つの誘導政策もありましょう。それから自発的なわれわれの一つの勧告もあるかもしれません。あるいはアドバイスもあるかもしれませんが、やはりある程度の企業の規模の拡大がやっぱり要請されるのじゃないだろうか。問題はその実現のスピードにあろうと思います。急激にやってはとてもできないと思います。いまおっしゃるように二千幾らかありまして、その中身はもう雑多でございます。したがいまして、方向としてはやはりある程度の規模の拡大化はこれは不可避であろうと思います。しかし、問題はそのスピードとそれの実現の方法にあろうと私は思っております。 以上でございます。
○柄谷道一君 最後に渡辺参考人にお伺いいたします。 薬づけ医療とよく言われております。この薬づけ医療を解消していくためには、診療報酬体系の問題、薬価基準と実勢価格の乖離の解消の問題、いろいろありますけれども、しかし、流通段階としてもやはり質的転換というものが求められてくるのではないかと、いわゆる健康を預かる薬の流通の責めに当たるわけでございますから、売らんかなのただ姿勢だけでは対応できまいと、こう思うのでございます。今法律改正及び制定を契機として、今後のプロパー活動の質的転換についてひとつどう考えておられるのかお伺いをいたしまして、時間でございますので質問を終わります。
○参考人(渡辺徹太郎君) いま御質問の中にプロパー活動というのがございまして、これはメーカーさんの分野でございますので、私の方はいわばセールス活動で、当然医薬品を扱っておりますので、医薬品に対する感覚はもういまお話がございましたとおりでございます。 私は、そういうことを、実は私自身が薬剤師でございますものですから、ある意味では神経質に必要以上に考えているかもしれませんけれども、御説のとおり、いつまでもどうもこう企業のペースだけで物事を考えておったのでは、この安全性ということが本当に確立できるのかという、これは危惧でございますから、大変どうもいろいろ影響があると思いますけれども考えておりますので、今後はもっともっと私どものやはり機能の向上を図る、またそういうような社会感覚の向上を図って、その意識の中で、私どもがやはり社会貢献をしながらそれに対するペイをいただくということの方向に誘導をしていくくらいな気概でやっておりますので、どうぞ今後ともよろしく御指導のほどお願い申し上げます。
○委員長(対馬孝且君) 他に御発言もなければ、参考人に対する質疑はこれにて終了いたします。 参考人の方々に一言御礼申し上げます。 本日は、御多忙中のところ御出席を願い、貴重な御意見を拝聴いたしまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。 本日はこれにて散会いたします。 午後四時十一分散会 —————・—————