予算委員会公聴会 第1号
- 発言数
- 82 件
- 登壇者
- 18 名
- 会派数
- 6
- 開催日
- 1979/02/10
会議録
○竹下委員長 これより会議を開きます。 昭和五十四年度一般会計予算、昭和五十四年度特別会計予算及び昭和五十四年度政府関係機関予算、以上三件について公聴会を行います。 この際、御出席の公述人各位に一言ごあいさつを申し上げます。 公述人各位には、大変御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございました。昭和五十四年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただくようお願い申し上げます。 次に、御意見を承る順序といたしましては、まず最初に宍戸公述人、次に富塚公述人、続いて神代公述人の順序で、お一人約二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答えを願いたいと存じます。 それでは、宍戸公述人にお願いをいたします。
○宍戸公述人 最初に、公述人として選ばれましたのでございまして、今回の予算の問題についていろいろ申し上げたい点がございますが、特にきょうは現状の雇用問題並びにその雇用に対する今回の財政政策のあり方という点について、私の意見を述べさせていただきたいと思います。 御存じのように、石油ショック以来、日本経済は安定成長に入りまして、そのことが雇用問題にも深刻な問題を及ぼしているわけでございまして、単なる安定成長への移行でございませんで、企業はその間におきまして減量経営に努めました結果、雇用調整という形で多くの労働者が企業から排出されてまいったわけであります。 ただ、ごく最近の景気指標並びに雇用の関係を見ておりますと、昭和五十年から始まりました減量経営はようやく完成期に入ったようでございまして、もともと企業の減量経営というものは限界がございます関係上、ある程度までまいりますとそれ以上の減量ができにくくなるということもあろうかと思うのでありますが、求人、求職関係も最近に至りまして若干好転をいたしております、まだ十分とは申し上げられませんが。製造業を中心に行われました雇用の縮小もようやく下げどまり、こういう感じをいたしておるところでございます。 昭和五十四年度は、その意味におきまして、短期的な局面から申し上げますと雇用がやや改善を見る可能性があるわけでございますけれども、いまの日本経済にとっての問題点は、ただ単にそのような短期的な動きでございませんので、中長期的に見まして日本の雇用構造と申しましょうか、特に労働力の供給の側で申し上げますると、急速に老齢化が進むわけでございますし、高学歴化、女性化——女性の労働者がふえるという意味でありますが、この三つが日本の今後の大きな問題点でございます。 ちなみに昭和六十年までの労働力の増加を推察いたしますると、何とこの七年間にふえる労働力が三百八十万人ぐらいと予測されておるのでありますが、そのうち五十歳代、五十歳から五十九歳までの高年齢層におきまして二百九十万人ふえる。逆に三十歳未満の若い労働力は二百七十万人現状よりも減少するというような形をとるわけであります。このような労働力構造におきます高年齢化、老齢化現象というものは、ただ単にちょっと景気がよくなるとかなんとかいう、減量経営がとまるというようなことだけでは解決できない、非常に基本的な、構造的な問題を持っておるかと思うわけであります。 そのような意味におきまして、この労働力の供給構造の変化を十分認識した上での雇用対策が現局面において必要であると考えるのでございますが、また同時に、需要の面から申し上げますると、基本的には日本の経済の成長力は高度成長期に比べて鈍化いたしておりまして、政府の長期計画におきましても六%弱というような、従来に比べますると低い成長率を予測せざるを得ないような局面でございますし、さらに、この次の六十年までの中期的な展望の中においては、高度成長から安定成長への移行に伴います産業構造の転換、円高が一ドル二百円ぐらいに定着いたしましたことからきますところの、国際競争力のなくなりました産業の転換、このような意味で産業構造を急速に転換しなければならないという使命を持っておるわけでございますし、そのことが、当然のことでございますけれども、労働力を右から左へ簡単に移すということではございません。産業構造の改変に伴います雇用摩擦的失業者、構造的変化に伴います構造的失業者の増大も考えなければならないわけでございます。その意味におきまして需要の面からも一つの問題がある。 さらに、昭和四十八年以降の安定成長の移行期におきまして、主として製造業の大企業において雇用の縮小が行われたわけでございますが、その間排出されました労働力は、中小企業に雇用されたりあるいは第三次産業へ吸収されたりという形で失業者がそれほど大きな増大、もちろん〇・二四%というのは決して低い数字ではございませんけれども、完全失業率のそれほど大幅な増大を呼ばずにここまでまいったわけでございます。今後のことを考えますれば、いま申し上げましたような形での雇用吸収ということの可能性についてもいろいろ問題が出てくるかと思うのであります。変な言い方でございますけれども、いままでは新日鉄をやめても一杯飲み屋を始めて何とか食えることができたのでありますが、そのような形での労働力移動が十分に行えるような条件が整ってこなくなったのではないか、こういうふうに解釈いたしておるわけでございます。 このような現状に対しまして、政府はもちろんいろいろな雇用対策をとるわけでございますが、一般論的に申し上げまして、このような雇用問題に対してより多くの雇用機会を与え、そして雇用問題を解決いたしますためには五つの政策があるかと思うのであります。 第一の政策は、いわゆる成長政策でございまして、経済の成長力を高めることによってより多くの雇用機会を創造しよう、いわゆるケインジアン経済学の立場で申し上げますと、国債を大量に発行いたしまして成長率を高めて、そして失業者を減らすというのが基本的な政策態度になるわけでございます。ただ、現局面におきまして、すでに政府のお見通しによりますると、五十四年度の経済成長率は六・三%だそうでございますが、このような成長率を実現した上に、さらに一%か二%成長率を高めるというのは非常に大変なことでございますし、そのことによって生ずるところの雇用の創造、試算によりますると一%の成長を引き上げることにおきまする雇用の改善、雇用の増加というものはわずかでございますので、現在の段階においてより多く経済を拡大させて雇用をふやすという政策、成長政策によります雇用対策は必ずしも望ましい政策であるとは考えておりません。 第二の政策と申しますのは、いわば構造政策ということでございまして、きめの細かい雇用対策を成長政策以外にとることによって摩擦的失業、構造的失業を解決しようということでございますが、第二の点は、基本的に申し上げますると、日本の終身雇用制を利用いたしましてなるべく失業者を出さないようにしようという努力でございます。現在でも政府はいろいろな形で失業者を出さない努力をしておられるわけでありまして、今回の予算におきましても、いろいろな意味でそういう配慮が行われているかと思うのであります。定年延長に関します奨励金を出すとかあるいは継続雇用に対します奨励金を出すという、中小企業に対します対策も行われておるわけでございます。もちろんこれらが果たして十分であるかというような問題はございましょうけれども、それぞれの対策がとられたことは、私は高く評価してよろしいのではないかと思います。 一方において定年延長を企業自体に強制しようという考え方も強いわけでございますが、もちろんこれは、企業の側といたしますれば、終身雇用制のもとでできるだけ失業を排出しない努力をいたしたいというのは当然のことでございますが、定年延長制に伴います問題点、たとえば現在の年功序列型賃金をどうするかというような問題も含めまして、十分検討をしていただかなければならないものであるかと思います。 第三の政策といたしましては、今度は逆に、どうしてもやむを得ず失業者になった場合、この失業者の生活の安定並びに転職といったようなことへの対策でございます。これは、現在、五十四年度予算にもございますように、雇用保険の給付の延長、従来に比べて短期の失業でございませんので、どうしても長期にわたる失業になる可能性がございます。中高年齢層は特に求人求職倍率が悪いわけでございますので、なるべく長く失業保険を出すという形をとっておる、あるいは職業転換のための給付金も行われておりますが、こういう転職に対しまして、特に今後ふえます中高年齢層におきましては、職業訓練といったような形で十分なる対策をとりませんと新しい職場へ出ることがむずかしいわけでございます。訓練期間の延長に伴います失業給付金の延長もございますし、あるいは将来予想される退職後の訓練のための有給教育訓練制度というようなものもございます。これらも制度的にはかなりそろっておるのではないかと思うわけであります。 第四は、そのような形をやりましてもなお必要なことは、特定の年齢の階層、特定の職種に対します雇用創出でございます。それを今回の新しい物の考え方といたしましては、昨年からもございますけれども、雇用開発給付金というものの制度を拡充なされることによりまして、特にこの中高年齢層の雇用創出を行おうとしておられるわけであります。五十四年度予算におきましては四百五十七億円の予算によりまして十万人の雇用創出が可能であるということになっておる。これは予算の計算の上でのことだとは思いますが、果たしてそれだけの雇用創出がもし可能であるといたしますれば、先ほど申し上げましたような成長率を高めることよりも、このような特定の制度によりまして、雇用を新たに生み出すということが大変望ましい政策であろうかと思うわけであります。もちろん、果たしてこのような制度が中小企業の方方にとってなじみやすいものであるかどうかについては私も若干の疑念を持っておりますが、PRをなされることによりましてこういった制度を有効に活用され、民間の企業の活力と政府の補助金とが相まちまして、中高年齢層の雇用の拡大に役立つことを私は希望いたしておるところでございます。企業側もこういった中高年齢層に対する雇用創出の努力はいたしておるわけでございまして、別会社をこしらえまして、中高年齢層だけを分離いたしまして、本業とは別の仕事を始めるような例が幾つか出ておりますが、現在の予算的措置といたしましては、中小企業を対象にいたしておられるようでありますが、大企業も一若干あるわけでございますが、そういった面での企業の努力と相まちまして、雇用創出の努力がいろいろ続けられることを希望いたします。 最後は、第五の点は、以上申し上げました三つの構造政策、失業者を出さない努力、失業者になった場合にそれをうまく転職させる努力、そして新しい雇用機会を創造する努力の三つに加えまして、第五の政策といたしましては、労働時間の短縮のような制度的な変化を通じましても、雇用機会を与えることは望ましいことではないかと思うのであります。もちろん日本の終身雇用制のもとで、また非常に時間当たり賃金、時間給になっていない部分が多い現局面におきましては、労働時間の短縮が必ずしも直ちに雇用の拡大につながらないという点もあるわけでございますけれども、現実に労働時間が短縮されて、その分だけどうしても働き手を必要といたしまする場合には、当然のことながら雇用を拡大させることになるでしょうし、あるいは日本の経営者の立場で申し上げますと、人を一人ふやすよりは残業をふやして、それで働いてもらった方が安上がりである、こういうふうな考え方がどうしても強いわけでございますが、このようなことに規制をかけることは大変問題かと思いますが、労働時間の短縮という基本的な精神を活用しながら雇用機会の増大に充てるということも、非常に重要な点ではないかと思っております。 最近ではヨーロッパ諸国におきましてもワークシェアリングというような考え方で、定年間近になられた方が、いままで週五日働いていたものを週三日働いて、あと二日は定年後のために準備をする。そういう形で、もちろん賃金は若干減るわけでございますが、その賃金の減った部分は年金を前倒しにいたしまして支給する。これは、一つは年をとった者が若い者に雇用機会を明け渡すための準備期間である、訓練期間である、このような考え方もあるわけでございますが、このような考え方が、日本のように非常に老齢化いたします社会において中高年齢層への雇用の機会を与えるということも必要でございますが、同時に、中高年齢層の望ましい働き方、生きがいを与えながら次代へ引き継いでいくというような配慮も含めた雇用対策が必要であるかと思っておるところでございます。 以上をもちまして私の見解を終わります。(拍手)
○竹下委員長 どうもありがとうございました。 次に、富塚公述人にお願いをいたします。
○富塚公述人 富塚であります。 私の立場から新年度予算についての見解を申し述べさせていただきたいと存じます。 新しい政府予算案を見ますと、歳入など当面の短期的制約という問題があることは十分わかるのですが、基本的には、経済の長期停滞局面からの脱出あるいは迫りくる高齢化社会への対応という中期的な課題の展望についてどうも切り開こうとしていない、すっきりしていないのじゃないかというふうに実は疑問を持っています。 また、政府の新年度予算案が発表され、同時に経済見通しがセットとして発表されましたが、一カ月もたたずして大きな変化、すなわち物価上昇再燃という問題が出てきているということであります。国際商品の市況は、非鉄あるいは木材を初め急騰の方向にありますが、同時に、OPEC諸国の石油価格の引き上げとイランの政変などが加わりまして深刻さを増していくのではないかと見ています。国際価格の国内物価へのはね返りに先行いたしまして、土地価格の再上昇あるいはカルテルによる商品価格の引き上げが進んで、当面は物価上昇が加速するのじゃないかというふうに見ています。 四月から先の公共料金の値上げの問題について、政府は経済見通しの中で五十三年度四%、これを五十四年度は四・九%というふうに見ています。しかし、経済企画庁の試算でも、大手の私鉄で〇・〇五%、国鉄で〇・一一%、米で〇・一二%、たばこで〇・四%、薬の半額負担で〇・三ないし〇・四%ということになりますと、これだけでも一%を超えるのであります。 過日、労働大臣の諮問機間である産労懇に総理大臣も経企庁の調整局長も来られたので、おかしいではないですかと質問をいたしましたところ、経企庁長官がその後の発言で一・五%などと修正されたと聞いていますが、加えて授業料、入学金、初診料、ガソリン税、こういったものの値上げを想定いたしますと、大変な値上げ幅になっていくのじゃないか。OPECの原油値上げのはね返り二・七九%と見ていますと、社会党が試算していますように、消費者物価上昇は四月から暮れに七%から一〇%になっていくというふうに見なければならないだろうと思います。 考えてみますと、こうした物価の値上げについて実質的に新しい予算は大きな目減りをしていくということを考えてみなければならぬのじゃないかと思います。また、経済の実質成長率六・三%、名目雇用者所得五・九%裏づけをされているわけですが、物価高騰下では、低い名目雇用者所得の伸びでは整合しないと思います。すなわち賃金の伸びが新たに進みつつある物価分だけげたをはいていただかないと、賃金所得が経済全体に対して強いデフレ効果をもたらすのではないかと考えます。 物価上昇は、さらに福祉年金、経過年金などについても重視されなければならないということになりますが、年金や福祉支出は物価の見通しを想定すると実質減を免れないのじゃないかというふうに見るわけであります。政府予算案に、物価修正や補正予算など物価の動向によって即応できるような体制をつくるべきではないかという点について指摘したいと思います。 また、新年度予算は増税路線を位置づけているのじゃないかと私どもは強く警戒をします。すなわち、税の公平負担、不公平税制の是正が行われないままに一般消費税導入ということの布石を考えようとしている。私も政府の税調委員の一人なんですが、見解は税調でも毎回明らかにしてきたところでありますけれども、一般消費税という問題は、やはり国民大多数が反対をしている。特に低所得者に不利な逆累進的な性格が強いという問題を持っています。したがって、政府は一般消費税と大蔵省が財政収支試算というものを出してPRをしているわけでありますけれども、国民の前にもっと条理を尽くして、税の公平負担、不公平税制の是正という問題を明確に打ち出してもらう必要があるのじゃないかというふうに思います。 医師優遇税制の措置などもきわめて不満であります。したがって、一般消費税導入に反対をするという国民的な大多数の意見は非常に強いのでありまして、すでに八百八十八の地方議会が決議をしていることをわれわれは掌握しています。また、一般消費税は五%賦課することによって二・五%の消費者物価引き上げになる社会党試算では三・二%、こうなっていますが、いずれにしても五%の一般消費税賦課が一〇%などというふうにうわさされていますが、そうなりますと、実は大変問題があるのじゃないか。新中期経済計画にマイナスを及ぼすのじゃないかと見ています。私は、政府は不公平税制の是正をする課題とその方法について、またプロセスについて、国民の前に明らかにすべきだというふうに思います。 次に、高齢化社会への対応と雇用問題であります。中期的に雇用問題が悪化していく。政府も中期経済計画案の中でそのことを示しています。昭和五十四年度も百三十万という、依然として減らないということが想定をされています。しかもこの百万以上の失業者が中高年齢層、生活を支えておる層にしわ寄せがいっているということを重視をしています。 一般に日本の失業率は少ないと言われますが、イギリスの五・六、西ドイツの四・四、イタリアの七・五、アメリカの五・九%に比較して少ないことは事実ですが、欧米諸国は若年層の失業が多いのに比較をして、日本の場合には中高年齢層にほとんどしわ寄せが向いているということであります。経営者の側は、構造不況である、減量経営を余儀なくされる、その中で高賃金にある中高年齢層の首切り、整理を考えたい、同時に、労働条件の低下、終身雇用制とか年功序列賃金体系の見直しとか、退職金、年金の切り下げとか昇給ストップとか、さまざまな中高年齢層に向けての労働条件の切り下げがいま問題とされつつあります。こういった企業の動向、中高年齢層排除の論理を貫くというやり方には、われわれは非常に問題があると見ています。 そして企業動向を見ますと、減量経営体制の環境づくりによって、増収増益体質をつくり上げようとするねらいを持っているということをわれわれは不満に思っています。もうすでに増収増益体質の決算がこの三月期にはできるということがここ連日のように報道されていますが、中高年齢層排除の中でやるというやり方には大変問題があろうと思います。 われわれは、こんなに中高年齢層を犠牲にして高齢化社会になったら一体どうするのかということについて心配をするのであります。中高年齢層の働ける社会をつくること、若い人と中高年齢層の二ーズを統一して、できるだけ国民全体のコンセンサスのもとに、日本の繁栄を考えることはできないかということを思うときに非常に心配になるのであります。 そこで、私は皆さん方に二つのことをぜひ政治の分野で当面課題として考えていただきたい。 まず第一は、六十歳定年と年金制、すなわち年金の受給の時期をつないでいく、ドッキングさせるという問題であります。どう見ても高齢化社会で五十五歳定年は早いと思います。また、皆さんのように働いておるうちは健康でおられるということは常識だと思いますだけに、五十五歳定年制はどうしても早い。六十歳定年制、そしてヨーロッパ型のように労働者の選択、働きたい人は働く、年金をもらいたい人はやめて年金をもらうといった選択にすることがいいのではないか。同時に、八本立ての現在の年金制度を大胆に統合することを検討してみる必要があるのじゃないかと思います。 共済年金、これにも三種類あります。あるいは厚生年金、国民年金、遺族年金、さまざまな年金があるわけでありますが、やはり将来は労働者の年金あるいは国民の年金といった二本立てに統合していくくらいな大胆な検討をしてみたらどうかと思います。それまでの間は、当面共済年金の支給時期の問題などいろいろうわさされていますが、部分的な改正はせずに、中期的に見た中高年齢層問題、つまり、定年制や年金制問題について、国民各界各層の代表によって検討する機関を大胆にひとつ政治の場で打ち出していただきたいと思うのであります。 私個人は、将来年金などの負担増は労働者の間でも避けられないと思っています。しかし、若い労働者に年金の負担増を求めていくことのむずかしさは、スウェーデンやデンマークの例にありますように大変な課題が出てくると思っています。 〔委員長退席、伊東委員長代理着席〕 しかし、不合理、不公平をなくして、高齢化社会に向けての基本となるこの定年制、年金の課題について抜本的に改革していく、そういった展望に立つ課題を打ち出していただきたいと思います。具体的には、中高年齢層問題を検討する何らかの国民的な会議の中で各界各層の代表を入れてやっていただきたいと思います。 二つ目の問題は、雇用問題について、具体的には三つの課題について提案をしたいと思います。年齢による雇用差別禁止法の制定が第一です。第二は、雇用創出機構の設置をぜひしていただきたい。第三は、労働者の労働時間の短縮を本格的に国家として考えていただきたい。 私どもは、もうすでに申し上げてありますように、解雇の規制をどうするか、あるいは失業者の生活保障、雇用の創出と拡大といった基本的な三つの原則を労働組合としては大事にしています。なるほど今年度政府予算案を見ますと、雇用開発給付金などの改善、これは評価していいのではないかと思っています。しかし、まだまだ不十分だと思います。雇用対策法の改正によって三十人以上の解雇の場合の届け出規制の問題とか、定年延長の法制化問題など、それぞれの政党から出されて議論をされるようでありますが、私は、まず第一に年齢差別雇用規制法を速やかにつくっていただきたい。そして中高年齢層の雇用を守る、年齢を理由に雇用差別はしないという方向について打ち出していただきたい。第一であります。 第二は、雇用創出機構であります。 現状について考えてみますと、まず企業の減量経営の中で下請、孫請、中小企業など倒産あるいは首切りという事態が余儀なくされています。地域的な格差はありますが、それが地域に大きな影響となって出ています。去年もここに参りまして、地域の経済開発と雇用創出を考えていただきたいと申し上げましたが、現実にこの問題で中央と地方自治体の間はかみ合っていません。また、地方自治体は赤字体制のもとに雇用創出までとても手が届かないというのが実態だというふうに見ます。また、失業者の数を正確につかむことができない。これは労働大臣も認めていますが、そういう弱さをわれわれは実は持っているわけであります。したがって、雇用創出機構をぜひつくっていただきたい。 われわれは、各労働団体あるいは政党間でも産業雇用促進会議など新たな雇用創出機構として公労使の三者構想を打ち出しています。一部の地方では、自治体の努力によってできておるところもあるのですが、形式的で、内容的には実を上げていません。考えてみますと、行政サイドの一方的な雇用創出機構だけではうまくいくとは思いません。われわれは、西ドイツ型の連邦雇用公社あるいはスウェーデンなどの三者構成などなどを参考にしてみますと、今回同盟の側からも提起をされて、民社党さんも積極的に取り上げられようとしているこの新たな雇用創出機構もぜひ取り上げて、具体的に雇用を創出させるための対応をどうするかという機構づくりについて当面措置してもらうことが大きな課題ではないかと思うのであります。 内容的には、同盟さんの案も民間の雇用創出を主としておるだけで、一方では公的企業あるいは医療なり社会福祉関係の労働者の増員など雇用の面では必ずしも十分な点は持っていないと思いますが、とにもかくにも新たな雇用をつくり出していくという政労使ないしは公労使間の具体的な問題について、ぜひこの国会で議論をして有効な結論を出していただきたい。そうしませんと、各政党も観念的な目標なり要求だけを掲げて、いつまでたっても雇用創出は実態的には進んでいかないのじゃないか。国民全体が努力しようとしても、その足がかりができないのじゃないかと考えておりますので、この国会でぜひ雇用創出機構問題について検討をして、結論を出していただければ幸いだと存じます。 三つ目は、時間短縮問題なんです。 われわれも欧米諸国を回りまして、貿易摩擦、輸出競争力の中で、日本の労働者の働き過ぎの問題が非常に話題にされます。批判、非難をされています。ですから、週休二日制、四十時間労働、企業も政府も努力していただきたいと思います。そして、この時間短縮によって雇用の拡大を図っていく、失業者を防いでいくという努力をもっと積極的にしていただいてもいいのじゃないか。 週休二日制問題なども、土曜日休むと郵便局や銀行の金の支払いが停止されると中小企業は困るという論理だけで突っ張られるということじゃなくて、もっと積極的に雇用拡大、国際的な視野から見るわわれわれの対応を考えても、時間短縮問題に積極的に踏み込んでいただきたいと思います。欧米では週三十五時間労働が目標で政労または労使間で話し合われているわけでありますから、週休二日制問題だけはこの国会でぜひ方向づけ、結論を出していただきたいと思います。 また、予算にあります、話題になっておりますE2C戦闘機購入なども疑惑を招いておるわけでありまして、今回購入することはぜひやめて、雇用なり福祉関係にその予算を回すべきだと思います。 いずれにいたしましても、この予算案を見ますと、耐乏生活型といいますか、どうも低福祉高負担型の予算であるというふうに見ざるを得ません。三人の公述人からともに提起されると思いますが、雇用の問題は非常に重要な課題でありますので、重点的に御審議をしていただければ幸いだと思います。 以上で終わります。(拍手)
○伊東委員長代理 どうもありがとうございました。 次に、神代公述人にお願いいたします。
○神代公述人 横浜国立大学の神代でございます。 私は、今回の予算案で論じられておりますいろいろな問題、特に雇用の角度から全体を拝見いたしまして、ぜひ補強をしていただきたいと思います点を二、三申し述べさせていただきたいと存じます。 まず、全体的に現在のマクロの経済情勢から判断いたしました場合に、何といっても雇用の改善を非常におくらしております基本的な原因がマクロ的な需要の不足にあることは申すまでもないと存じますが、恐らく現状で直ちに完全雇用の水準を達成しようと思うならば、実質で六兆円ぐらいの有効需要の追加をしなければならないはずでありますが、今回の予算で政府の固定資本形成や最終消費支出の対前年度追加による分は、実質で二兆円を下回っているはずであります。したがって、マクロ的に考えた場合に、当分の間、今日のような困難な雇用情勢が継続するということを覚悟してかからなければならないのでありますが、他面において、完全雇用と物価の安定を同時に達成するという政府の長期的な基本目標を放棄するわけにはいかないわけでありますので、いかにしてこの問題を通り抜けていくか、対処していくかというもう少しきめの細かい政策が必要のように思います。 現状は、そうしたマクロの総需要の絶対的な不足に加えまして、成長一%当たりの雇用の吸収力が大変に落ちているという問題がもう一つあります。昭和三十年代は、成長一%当たり雇用が〇・六%ぐらい伸びてきたはずでありますが、今日はそれが〇・二%ぐらいに落ちております。また実質一兆円のGNPの成長に対して、三十四、五年当時四十五万人ぐらいの雇用が増加したはずでありますが、四十年代の半ばにそれが十六万人になり、今日は恐らく八万人程度に減っております。 さらに、もう一つ供給サイドの問題といたしまして、政府の旧来の経済計画あるいは産業構造の長期ビジョン、あるいは先日出されました新しい七カ年計画等によりましても、労働供給の長期的な伸びは年間〇・八%程度と推定されているはずでありますが、すでに御指摘もありましたように、近年の労働供給の伸びはそれをはるかに上回っておりまして、昨年は恐らく一・五%ぐらいの労働供給の増加を見ているはずであります。特に女子が三%近い増加を見ておる。そういう問題にいかにして対処するのか。さらに、産業構造や雇用構造の転換に伴う摩擦対策がいかにして行われるべきか。こういう点で考えますと、正統的な財政金融政策による有効需要政策が継続的に追求されなければならないことはもちろんでございますが、他の先進諸国における雇用対策の最近の発展を見ましても、それを補足するものとしてのマンパワー政策というものがぜひもう少し積極的に採用される必要があるはずであります。 政府の今回出されました新しい七カ年計画の中にも、六十年度を目標に一・七%にまで失業率を落とすための具体的な施策の中に、教育、文化、保健、福祉などの分野で、特に民間部門を中心として雇用を拡大するような政策と、それから職業情報の開発、整備等に関する積極的な雇用政策を展開しなければならないという旨の指摘がございますが、一般的には、長期の計画の中で指摘されている問題が今年度の具体的な政府の予算案の中でどの程度実現されているかということになりますと、いささか危惧の念を抱かざるを得ないわけであります。 私がマンパワー政策として特に具体化をお願いしたいと思いますのは、たとえばアメリカにおきましてこの十数年来とられておりますマンパワー政策の体系をぜひ学ぶべきではないかというふうに考えております。御承知のように、アメリカでは、一九六〇年代に入りましてから、六二年のマンパワー・デベロプメント・アンド・トレーニング・アクトに始まりまして、一九七三年のコンプリヘンシブ・エンプロイメント・アンド・トレーニング・アクト、さらに七七年のフルエンプロイメント・アンド・バランスト・グロース・アクトに至るまで、きわめて包括的なマンパワー政策の体系が展開されております。 具体的には四つの要点がございまして、第一は、労働者あるいは使用者、政府諸機関に対するマンパワーに関する情報の提供をさらに改善をするということ、第二は、教育、訓練、再訓練及びリハビリテーションを通じてマンパワーの発展を図ること、第三は、職業紹介、ガイダンス、カウンセリングの改善や労働異動の促進によって人と仕事をマッチさせる政策をとること、第四が、労働時間や作業環境の改善あるいは安全施設の改善あるいは差別禁止の公正基準を維持する等の、広義における労働生活の質の改善、そうした政策を一体として推進することが考えられているわけであります。 そういう観点から見ますと、わが国の現在のマンパワー政策は、総論的には計画の中にすべて書かれているように見受けられるわけでありますが、具体的に三つの点でさらに補強が必要ではないかと私は考えます。 第一は、三次産業、特に公共サービスの部門における積極的な雇用の創出を図るべきだということであります。 第二は、職業別の労働市場の情報収集や需給見通しの作業をもう少し体系的に一元的に展開すべきであるということであります。 第三は、一九八〇年代の初期を目指して労働時間短縮の具体的なプラン、特に法の改正を含む時間短縮を考えるべきではないかということであります。 第一の公共サービス部門における雇用の拡大ということでございますが、これは政府の計画等を見ますと、一般的には先ほども触れましたように、「教育、文化、保健、福祉など今後その発展が見込まれる分野における民間部門によるサービスの供給及び民間資金の活用を図る方策を検討し」云々という形になっておりまして、これらの部門での雇用の積極的な拡大の必要を認められながら、基本としてあくまで民間部門による雇用の拡大ということに重点を置いておられるわけであります。もちろん一般的な財政の原則として、そうした政策がとられることを私は一概に否定するものではございませんが、わが国のこれまでの高度成長期につくり上げられた雇用構造及び将来の低成長と高齢化に伴う雇用構造の転換を展望いたします場合には、もう少し公共部門で積極的に公共サービスの拡大を図るということもあわせて考えるべきではないのかというふうに考えております。 具体的には、たとえばすでに日教組、文部省との間で議論されております教員の増員であります。これはクラスサイズを現在の四十五人から四十人ないしそれ以下に縮小することによって、教育の質的な改善を図るということが直接の目標とされているようでありますが、私は中高年の雇用対策の観点から、特に増加される教員に対しては、民間の中高年の離職者を優先的にそこに誘導するような、免許制度の改正を含む教育政策の改革と絡んでこの点をさらに議論すべきではなかろうかと存じます。御承知のように、各都道府県におきましては四十歳ないし三十五歳をもって教員採用の年齢制限としておりますが、そうした制度の改正もあわせて議論される必要があります。 さらに、看護婦等の医療関係の従業員が人口に対する比率としてアメリカやスウェーデンの半分程度にすぎないことはすでによく指摘されていることでございますが、わが国の医療制度、特に看護婦等の雇用の実態を見ますと、確かに患者四人について看護婦一人というような医療法上の基準がすでにおおむね達成をされているはずでありますが、看護婦の労働条件の面から要求されておりますいわゆる二・八勤務の体制をきちっととるといたしますと、現状では著しくまだ看護婦が不足をしておるということがすでに厚生省の公的な懇談会の報告の中でも指摘をされているとおりであります。恐らく四、五万人の看護婦は緊急にふやさないことには、そうした医療的なスタンダードを引き上げることが不可能ではないかと存じます。特にわが国の場合には、病院の労働の実態を見ますと、本来看護婦がやらない方がいいような補助的な仕事に非常に看護婦が使われておりまして、そういう面での人間の増加ということはぜひ図られるべきであります。 また、保母その他の社会福祉関係の分野におきましても、今後急速に到来いたします高齢化を考えますならば、ほうっておきましてもこの分野の雇用はかなり増加をせざるを得ないのでありますが、その点での計画的な雇用の拡大が要請されているはずであります。 すでにアメリカ等におきましては、中高年齢者の特別の雇用促進のために、高齢者のコミュニティーサービス雇用事業等が学校、病院、養老院、保育所、公園管理等の分野で積極的に公的な雇用の拡大を含めて考えられております。ぜひそうした施策も補足が必要ではないかと存じます。 あるいはわが国では、一方におきまして建築関係の諸職、たとえば配管工等の仕事におきまして実際には著しい労働力の不足を経験しております。さらに、この人たちの労働条件は決して満足すべき状況には立ち至っておりません。特に技能関係の職種におきまして、徒弟期間中の保護に関するきめの細かい施策が必要なように思います。これらの公共的な部門でのサービスの拡大が第一であります。 第二は、主としてこれらの部門にかかわりますが、職業別の労働市場に関する具体的な情報収集あるいは需給の見通しの作業を、政府のしかるべき部署において一元的に行うべきではないかということでございます。 国勢調査によって見ますと、四十五年から五十年の間に雇用の伸びに対する寄与率が最も大きかった職種は、一般事務、会計事務、販売員、料理人、外交員等、ほうっておいても三次産業を中心に自然に伸びる部門がもちろんトップでございますが、そのほかに中身に立ち入ってみますと、医療関係の諸職あるいは教育関係の諸職あるいは技能職の諸職で著しく雇用が伸びているのであります。それらはおおむね公共的なサービスに深くかかわった分野でございまして、調べてみますと、実は公的に政府あるいは自治体がその職業につくために、免許あるいは資格等を発行してコントロールを加えているものが多いわけであります。ところが、現状はそれらの数にして約六百以上の資格職、免許職があるはずでありますが、完全雇用計画の中でそうした細かい職業別の需給の見通しやすり合わせが十分に行われていないように思います。 特に問題なのは、これら医療から教育、あるいは建設省、大蔵省、通産省、運輸省に至る非常にたくさんの職業があるわけでありますが、いずれも所管の行政の立場から、たとえば厚生省関係でありますと公衆衛生とか医療行政とか食品衛生とか、そうした基準行政、あるいは建築関係でも建築基準、労働省関係でも安全衛生基準というような基準を策定するための最低限の情報を収集しているだけでありまして、これらの多分野にわたるいろいろな雇用分野の需給バランスがどうなっているか、あるいはそれの具体的な誘導政策はどうあるべきかというような立場から、雇用政策の立場からこれを一元的にたとえば労働省において所管をしているかというと、現実にはそうではなくて、各省各課に非常に多様にまたがっておりまして、全体としてのマンパワー政策を実施するに十分な情報が集中されていないのであります。そのために個々の分野で、先ほど富塚さんからもお話がございましたような雇用創出というようなことを一般的に申しましても、一体今後の経済計画の中でどこに重点的に資金を投入すべきかということの具体的な計画が立てられないのが現状ではないかと思います。したがいまして、今日のような状況では、そうした将来的な完全雇用政策、特に財政金融政策だけではカバーし切れないマンパワー政策を具体的に実施していくための政策立案の基礎的な情報となるようなものを、ぜひ緊急に政府の中に設置をすべきではないかと思います。 第三は、労働時間の短縮はすでにほかのお二人の方も触れましたが、私は簡単に一つの数字だけを申し上げて、八〇年代において労働基準法の改正を含む具体的なプログラムをいまから用意すべきではないかというふうに考えます。 昨年の暮れにヨーロッパで鉄鋼、自動車、電機等の金属関係の労働組合のエコノミストの集まりがございましたが、そこの席に出された労働時間の比較によりますと、所定内労働時間において、わが国の先進的なこれらの産業部門でさえも二百五十時間から三百時間程度、年間の労働時間が長いのであります。 たとえば、わが国の鉄鋼業は現在年間千九百八十七時間が所定労働時間であります。自動車は約二千時間で働いております。ところが、話を簡単に、一年間二千時間実働しているということは、一日八時間実働として二百五十日働いているということであります。二百五十日実働するということは、残りの百十五日ないし十六日を休んでおる。つまりこれは、五十二週の土曜、日曜をフルに休むと百四日であります。それに国民祝日十二日を足すとちょうどつじつまの合う数字であります。ということは、わが国の労働者は、西欧並みの労働時間にもし合わせるとすれば、週休二日制は辛うじて実施し、祝日は休んでおるけれども、有給休暇はゼロで働いておるというのと同じことであります。したがって、週休二日制を最低限実現するということは、すでにアメリカの貿易政策その他からもうかがわれますように、あるいはヨーロッパの方からも同じ圧力がかかってきておりますように、貿易政策の一環として公正な労働基準ということをぜひ考えなければならないところに立ち至っております。これをやりませんと、輸出の面からわが国はきわめて困難な状況に立ち至ります。したがって、単に雇用と労働時間というような問題だけでなしに、そうした対外均衡を回復するという面からも、対内均衡、特に雇用面の改革を労働時間短縮をてこにして行うということがきわめて緊急の課題になっているのではないかと思います。具体的には五カ年計画ぐらいのものをつくりまして、労働時間の短縮のための具体的なプログラムを策定する。その中に週休二日制、週四十時間制を基準法の改正によって明記し、さらに、有給休暇の不消化ということが現在非常に問題になっておりますので、ある場合には二倍程度の罰則的なプレミアムをつけて不消化の分を買い上げさせるということも含めて、具体的な労働時間短縮のプログラムを立てるべきではないかというふうに考えております。(拍手)
○伊東委員長代理 どうもありがとうございました。 —————————————
○伊東委員長代理 これより各公述人に対する質疑を行います。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。北川石松君。
○北川委員 本日は、宍戸様、富塚様、神代様と、お三方がとうとい時間を本委員会に割いていただきまして、いろいろと、おのおのの研さんをされ、あるいは現実的にあるいは学究的に、総合的に雇用問題についての意見の陳述を賜りました。その中で、五十四年度予算の政府のとりました諸政策で特に雇用問題を申し述べられたということは、現実の世界情勢の中でこれが一番重要視されておるということを物語っておると考えるものでございます。特に労働時間の短縮ということを三人ともおっしゃっておられまして、私は、いろいろの角度から聞かせていただいた点について再度皆様方の見解を聞かせていただきたいのでありますが、限られた時間の中でございますので、二、三の点についてお聞き申し上げたいと思うものでございます。 五十年度、四十年度、三十年度とさかのほりまして見ますと、戦後の日本が、経済成長、またいろいろの産業構造の発展、改造、そういう中でとってまいりました政策というものは、伸びる余地のある中でとってまいったものでございまして、いまこの高度経済成長が頭打ちになったということはすでに皆さんも御承知のとおりでありますし、その中の世界情勢というものもまた、いろいろな様相を呈しておることも御承知のとおりであります。果たして、これからの雇用問題というものを労働者の失業のみに限ってこれを対策していくかということと、あるいは労働者の失業は那辺から生じているかということを探求して将来に及ぶところの政策を立てなくちゃならぬ、そういう点で神代先生は、八〇年代における世界の労働協約に、新しい研究をしておいて、これを持ち出す必要があるということ、を仰せになりました。また、その中で特にマンパワー政策については力説を賜ったのであります。 こういういろいろ聞かせていただいた中で、学校教員の担当人数を、四十五人を四十、四十を三十五と少なくして中高年齢者を入れろ、こういう御意見も聞かせていただいて、なるほど学究的面から見れば大変結構でありますけれども、考え方によると、教員というもの、行政的面から見るとなお検討しなければならぬ、こういうふうに思う面もございます。また、諸外国の例をいろいろと御引用していただきまして、ドイツとかスウェーデンはどうだというところの点もお聞かせ願ったので、われわれもまたなお一層勉強しなくちゃならぬと痛感いたしました。 いろいろ聞かせていただきながら、富塚様はまた、現実的な労働者の立場に立って、こうやるべきである、こうやってほしいというところの御指摘があり、E2Cの予算をこっちへ回せというようなこともおっしゃっていただいたのでありますが、そういうことをいろいろ考えながら、雇用の問題というものは、経済の発展、経済の伸び、今後日本のとっていくところの経済の政策というものに大きく左右されるものではないかと私は思うものでございます。それは、民間の活力に期待するということが最近非常にたくさん言われております。民間の活力、民間企業がいかに労働問題に対処するかということが最重要の問題でございまして、ならば、民間の企業が雇用を増進する体制をとるためには経済の発展がなくてはならない、このように考えるものでございます。 そういう点で、政府は本年度、雇用の開発給付金では四百五十七億を計上して十万人の失業者対策、求職対策を実施しようとする現実的な予算を示している、こういう点に宍戸さんは言及していただきまして、少しずつでも労働者と企業間の、完全雇用は実施でき得ないにしても、一歩一歩と政府がこの雇用問題に前向きで情熱を注いでおるということを私は見るのでございます。 また、いま、いろいろの御意見もあると思いますが、宍戸様からワークシェアリング、この点についてのとうとい御意見をちょうだいいたしまして、政府のとっておる現段階におけるところの雇用問題、私はこれはやはり一番現段階の予算の中において、最上のものとは言えないにいたしましても、前向きの姿勢でとっておる、このように考えるものでございます。 特に、経済成長を六・三%、あるいは民間は五%、こういう点で民間と政府のその差をいつも指摘されるのでありますが、昨年七%に固執をいたしました政府の方針というものは、それはそれなりで、やはり一つの目標を持って政府が伸びに対して全力を挙げるということが大変必要だと私は思うのでありまして、これが六・三で終わるならば、七、九、六十三、九十点の点数をつけられるという形がありますが、経済は必ずしも固定してはならないと思うのであります。固定するところに私は重要な問題が出てくると思いますし、ときにこれはサインカーブのように、伸びるときとあるいは縮まるときがあって成長しなくちゃならぬと考えております。日本のとってきた経済政策が、過去、池田総理に端を発しました高度成長が、ただ伸びていくという形の中に、今日の一つの大変な苦しみが出たのじゃないかと考えざるを得ないのでありまして、そういう点を見ますときに、経済というものの今後の成長に対する雇用というもの、これは相ともに助け合いながら、相ともに相手の心に入りながらその政策を貫かなくてはならない。言うなれば、資本家は資本を労働者に還元し、労働者は労働力を企業に還元する、技術者は技術を、教育者は教育を、私はこういう還元政治論をかねてから唱える一人といたしまして、今後の日本の経済の成長と雇用問題というものは切り離すことのできない問題と考えます。 そういう点において、宍戸先生の多年の御経験の中から、日本政府が今回とりましたところの六%成長をより以上に伸ばすための政策が雇用にどのように及んでいくか、それからイランとかあるいは世界の諸情勢、各国それぞれ違いますが、そういうような状況の中で、資源のない日本、あるいはドルとEC諸国の欧州貨幣、こういう中で日本の経済というものが今後どういう見通しになっていくか。そういう経済の見通しの上に立つ雇用問題というものを検討しなくては、私はいい言葉だけで決して完全雇用はでき得ないと思います。経済の安定成長と雇用の安定、雇用の完全というものは相マッチするものでなくちゃならぬと考えるものでございまして、そういう点から見ますと、今日なぜ失業がふえたか。明治、大正、昭和とまいりまして、昭和の初期に至って、またいま五十四年、婦人が進出されることは大変好ましいのでありますが、家庭の中の幼児教育というものかどのようになされながら、その職業に進展されることによって雇用というものに何%程度の阻害が来ておるかという点もあわせて心配するものでございます。 いろいろ総合的に申し上げましたが、どうぞ諸先生の御見解をお聞かせ願いたいと思います。 ありがとうございます。
○宍戸公述人 ただいま御見解をいた、だきまして、特に私に対しましては、これからの日本経済の成長過程、成長の目標に対して、雇用に対するどのような影響が与えられるかというような点を中心に御質問いただいたと思うのであります。 先ほども若干申し上げましたように、現在の政府は六・三%の経済成長率を目標として経済の運営を行われるということになっておりますが、わが日興リサーチセンターの経済見通しは五・五%でございまして、実を申し上げますると、政府のこの予算規模三十八兆六千億円、前年予算比一二・六%の増ではなかなか六・三%という経済成長率は実現しにくいのではないか、こういう見解を持っておるところでございます。しかし、北川先生の御発言にありましたように、あくまでもこれは目標成長率であろうかと思いますし、望ましい成長目標ではありましても、是が非でもこれを達成しなければならないとか、あるいはどんな無理をしてでもこれを達成しなければならないというような目標ではないかと思いますし、現局面におきまして経済予測の手法その他をよほど精密なものをやりましたところで、〇・五%や一%の誤差は避け得られないのでございますので、五%から六%の経済成長が実現できますれば、先ほども申し上げましたように、日本の失業問題について、五十四年度に特に深刻なる状態になると考えていないわけであります。と申しますのは、一つは、成長率の五、六%ということが昭和五十一年からほぼ実現しておるわけでございまして、企業も大体その成長率に合わせて減量経営をやってまいったわけでございますので、五%成長と申しますと、先進諸国の中ではなお最も高い経済成長率でございますことから見ましても、この程度の成長率を実現いたしますれば、雇用問題において深刻な状態になるというふうには考えていないということをまず申し上げたいわけであります。 ということは、それをさらに七%か八%に上げなければならないという必然性をいまの日本経済は持っていないのでありまして、先ほど神代先生の御計算によりますと、いまは一兆円の経済規模の拡大に対してわずか八万人にしか雇用が拡大しない。GNP一兆円をふやそうと思えば、政府が五千億円か六千億円くらいの金を出さなければ恐らく一兆円はふえないのでございますから、先ほどのお話のように四百五十七億円ですか、四百五十七億円の雇用開発給付金によりまして十万人の雇用が確保できるといたしますれば、まことに効率のよい対策をいま政府は考えておられるということでありまして、成長率を高めるということによりまして雇用の拡大を図るよりも、特定の職種に焦点を合わせ、特定の年齢層に焦点を合わせた現段階のこのようなきめの細かい雇用対策が、最も効果的であるのではないかと思うわけであります。 さらに、北川先生は、失業問題に関係いたしまして婦人の労働意識の増大、御存じのように、最近の失業者の増大の中には婦人の失業者の増大が多いわけでありまして、従来に比べますと、婦人が家庭の主婦に戻らずに、また、首になって家庭の主婦に戻った場合でもなお就職機会を望んで、就職の意図を持っております場合に失業者になりますので、婦人の失業率がふえておるわけでございますが、ただし、御存じのように、これは女性の先進国の失業率に比べればまだ低い局面でございまして、長期的に見れば、いろいろな問題はあるにいたしましても、婦人の労働力になる傾向が強まりますし、女性も高学歴になりますことから、日本におきましては女性の職業への進出が一層高まりまして、先生の御心配のような家庭の問題、家庭の崩壊につながるかどうかというのはこれまた大変むずかしい問題で、私は答えることはできませんけれども、そういう問題を含みながらも、大勢といたしましてはその方向に進むことは必然的でございますし、またそれを前提にした雇用対策を設けなければいけないということも事実であろうと思います。そういう意味におきまして、これまでの諸政策はどちらかと言えば構造政策、ある特定の年齢層に対するきめの細かい政策がとられておることが、財政危機を迎えております現局面におきましては最も有効なる雇用対策であると考えております。
○富塚公述人 私どもは、経済の自律的な回復を個人消費の伸び、内需拡大、そういうものを基調に考えてほしい。当然、この成長率の問題も質的な転換を要求しているわけであります。福祉経済、これを大事にするような成長率を考えてほしい。問題は婦人労働者、いま先生がおっしゃるように、なるほど就業率が多くなっていることは事実なんです。これを考えてみますと、減量経営の中で中高年齢層にしわ寄せがいっているということの中からそういう方向が出ていることは否定できません。しかし、一面では、家計が苦しいということの中で婦人の方々が働きに出ているということも否定することはできないと思います。それだけに、最低賃金あるいは最低の歯どめをかける労働条件など、さまざまな提起をしているつもりです。問題は、雇用の視点から経済全般のコントロール、こういうものをどうしていくかということが課題なんではないでしょうか。民間の経営者の方々の方で、成長率を低く見ていこうなんということは非常に気になるわけでありまして、そこらあたりはせひ御一考いただきたい、こう思っております。
○神代公述人 恐らく、私に対する御質問の趣旨は、教員、看護婦その他公共的なサービスでの雇用の拡大とか時間の短縮ということに重点を置くとすると、民間の活力を阻害するのではないかという御懸念から出ているのではないかと推察をいたしますが、私は、基本的な雇用政策があくまでやはり財政金融政策にあるということを前提にしてお話をしているわけでございまして、ただ、現在置かれている財政的な諸制約の中では十分なマクロ的な政策がとり切れない。にもかかわらず、労働供給は急増してきている、需要の伸びは落ちている。そういう中で、私は宍戸先生ほど雇用の将来について楽観的でないわけでございまして、先ほどもちょっと数字で申しましたように、もし労働供給が政府の長期計画で出ておりますような、年間〇・八%程度というようなものを相当上回る率で出てまいりますと、恐らく毎年二十万人近い勢いでこの数年間失業者が増加をしてくる。年十万程度の緊急的な雇用創出政策によっては吸収し切れない数が出てくる危険性が非常に大きい。そのために、そうした基本政策の不備を何かの形でカバーしなければならないので、従来わが国で高度成長期に、相対的にやはり公共部門においては資本の投下もおくれておりますし、有能な人材をそこに配置するという面でもおくれていたことは事実でありますので、言うなれば、一種のこれは公共事業である、生活関連、社会関連基盤の強化に対する投資の一種として考えて、単に土木関係の公共事業だけが唯一のマクロ政策ではないはずでありますので、公共事業というものの中身を低成長福祉型の政策に方向転換する方がよろしいのではないかという意味で申し上げているわけであります。恐らく、実施をいたします段になりますと、具体的な将来の人口変動とかあるいは財政的な裏づけの問題とか、あるいは供給サイドでたとえば教員とか看護婦の質の低下をどうするのだとかいう問題、いろいろ細かい点が出てまいりますが、そういう点はもう少し時間があれば詰めてお答えをしたいわけでありますが、一言で申し上げるならば、私が申し上げた程度の公共サービスの政策的な拡大をやっても、むしろロングランに民間経済全体の活力を増進することにはなっても、短期的に阻害するという効果は余り大きくないのではないかというふうに考えております。 また、時間短縮等も、もちろんこれは今日までのような極端な景気の低迷期に実施するとすればマイナスの効果が非常に大きいわけでありますが、私が申し上げましたのは、政府の中期計画においてさえも景気の回復が相当に期待されている八〇年代の、まあ五十六、七年度以降積極的に取り組むということであれば、現在の身を削って時短をやるということでなくて、将来の成長の成果を計画的に配分するという形でやるのでありますので、基本的に民間の活力を阻害することにはならず、むしろ対外均衡の回復の手助けにもなる。もし全体の問題があれば、フロートの中でこれは解決のできる問題ではないかというふうに考えております。
○北川委員 大変貴重な御意見を賜りましてありがとうございました。経済の成長、物価の安定、雇用完全促進の中長期的視野に立って、今後ともまたわれわれも研さんしなければならないと考えております。 大変貴重な時間をありがとうございました。終わります。
○伊東委員長代理 これにて北川君の質疑は終了いたしました。 次に、川俣健二郎君。
○川俣委員 御苦労さんでございました。 いろいろと御意見を拝聴さしていただいたんですが、時間が限られていますから、私は社会党を代表するようなかっこうですが、皆さん方に、不肖私が取りまとめてちょっとお伺いしたいと思うわけであります。三人さんが共通して力説されたのは、なるほど、片や減量経営、そして片や雇用創出、この問題に力点を置かれたわけなんでありますので、これを中心に各先生方に、国会でせっかく審議されたこととかみ合わせるように努力して、さっき伺いながら書いた質問書で御質問したいと思います。そこで、この問題に入る前に私もちょっと伺おうかなとけさ思っておりましたら、ちょうどたまたま、航空機売り込み問題について総評の富塚さんがちょっと最後に触れられた。実はそれも、御案内のように、もういまや日本の政治課題、単に予算問題じゃなくて、倫理的政治姿勢、いろいろな面で、きのうはこの場で一日、朝から夜まで国民的な目がここへ集中したわけなんでありますが、ただ、ちょっとお言葉が足りなかったから私は誤解したかもしれないのですが、予算の配分上それを削ってこっちの予算へよこせというだけの御意見なのか。私が伺いたいのは、各先生方に聞きたいんですけれども時間がとうていありませんので、労働者の立場からどうこれをとらえているんだろうかというのが一つ。 それからもう一つは、総評は国際的な労働者の交流がございます。向こうの方にも労働者がおります。グラマンをつくっておる労働者もおります。そういう観点から、もちろんアメリカの社会機構なり社会通念なりが違うとはしても、国際労働者の交流の場がいよいよ高まってきておる今日、その辺も、せっかくですから、きょうの中心課題に入ればお聞かせ願いたいと思います。
○富塚公述人 ダグラス、グラマン問題で大変国会が焦点に当てた審議をされていることを承知していますが、先ほど雇用問題を重点に問題提起をしたもので、時間がありませんでしたから詳しく言うことはできませんでしたが、労働者、労働組合はこの問題に非常に強い関心を持っております。このE2C初め戦闘機だけでなくて、民間航空機の売り込みの事例あるいは韓国のソウル地下鉄の問題、汚職問題、いろいろうわさされているのですが、この問題の本質にどうメスを入れるかということについて、もっと国会の場で取り上げて考えていただきたいと思います。 われわれは、二つの角度からこの問題を鮮明にして解明をして、追及をしていきたい、こう思っているのは、一つは多国籍企業の問題、もう一つはリベート慣行の問題。 御存じのように日本国内の商社や企業の行動様式、ここの問題について基本的なメスを加えていく必要があるのじゃないかと思うのであります。私どもの調査でも、昨年の税務調査を見ますと、資本金一億円以上の四千三百社のうちに使途不明金が二百四十二億あった。五年間で千二百億あったと明らかにされています。その中の一〇%の二十五億だけ判明をした中で、リぺートが九億、交際費が八億、その他が八億ということで、大部分は政治献金に使われているのじゃないか、充てられているのじゃないか。それで、リぺートという問題と相手を明らかにしない交際費という問題と政治献金といったこの三つのケースについて、ロッキードなりがダグラス・グラマン問題、いまいろいろ議論されていますが、ここに位置づけてわれわれは考えていかなければいけないと思っているわけです。私どもの要求したいのは、やはり今年度の予算でE2Cの買い入れをまず中止をしてもらいたい。疑惑の解明をきちっとしていただきたい。いま言った二つの観点からの具体的な措置を国会は明らかにしていただきたい。 それで、リべ−ト慣行を改める措置というものを考えることと同時に、多国籍企業を中心にする先進国の交流の問題もわれわれは考えてみたいと思っているのですが、大企業のあり方あるいは国家と企業のあり方の問題、こういったことを取り上げまして、特に国際労働運動の分野ではアメリカのAFL・CIOとの交流も回復しましたので、いま具体的にこの問題についてわれわれはアメリカの労働組合と交流を通じて問題点を明らかにしたい、協力をいただきたいと要請中であります。われわれが国会の論議を見てますと、どうももう一歩、国民の側に立って一歩突っ込んで、どういうところにこういう問題か起きる原因があるのかという問題点を明確にして解明をする、それを正していくという措置がとられるべきでないかという点で非常に物足りなさを感じます。その点だけは労働者、労働組合としてわれわれが思っていることを明らかに申し上げておきたいのです。 以上であります。
○川俣委員 その問題はそれだけで終わります。 それでは、早速さっきの中心課題に入りたいのですが、富塚さんに続いて伺いたいのは雇用創出機構でございます。 昨年、この場で雇用問題の集中審議がございました。きょうのお三人さんでは富塚さんだけは昨年も御足労働願いました。その参考人の御意見をゆうべ一読してみました。終始雇用創出、雇用創出という言葉を使って力説しておりましたが、私ら思うには何かやっぱり機構という強力なものがなければ——これはほかの先生方もおっしゃったようでしたが、たとえば雇用促進事業団というのが労働省にございます。労働省は雇用庁というような、庁というものがない唯一の官庁と言っては悪いけれども、そういった面もある時期には論議されました。しかし、雇用促進事業団は中央においての機構であって、あとは町村がそれぞれ雇用促進事業団の本部に予算をお願いしに来るという程度である。しかし、各地方に、たとえば東北だと仙台にその支店的なものがないでもない。しかし、各県なり各町村にその強力なものがないものですから、この辺をある程度強化充実するという論議がこの場に出てくるわけです。そういった面も、総評の方としては、きょうはほかの労働四団体がおそろいになれば大変に参考になったのだろうが、その辺も含めて労働界ではどのようにお考えになっているか、同じテーブルに着いたというお話は伺いましたが、お聞かせ願いたいと思います。
○富塚公述人 先ほど申し上げましたように、当面雇用創出機構というものを第一に設置することを考えながら、労働四団体でもいろいろな話し合いを実は続けています。同盟さんが出している雇用創出機構等の問題などを見ますと、いま先生がおっしゃったように、政府の雇用促進事業団との関係をどうするかという問題などが出てくるわけです。私どもとしては、民間を中心とする雇用創出だけでなくて公的機関、こういったものに対しての雇用創出も同時に考えるべきだという立場はとっているわけですが、これは雇用創出機構というものをつくる中で、どういうふうな段階的対応なり具体的対応を考えるかを検討していけばいいのじゃないかと思っています。いまの雇用促進事業団は、職業訓練あるいは住宅を含む労働福祉を中心とした限られた分野での、雇用保険法からのわずかな資金で運営をしているということだと思います。われわれが考えていますのは、もっと広範な雇用創出機能を持つということであり、そのためには資金は雇用保険から、だけではなくて、一般の会計からも出してもらうということを検討していただけないかというふうに思います。 また、西ドイツやあるいはヨーロッパ型を見ましても、行政サイドの雇用創出機構というのはどうもそれだけではうまくいかない。やっぱり労働者、使用者、これが一体になってやっていくということを考える必要があるだろうし、同時に、地方なり地域における独自性ということも十分くんでいくためには自治体の関係者、代表も参加をして運営をしていくということを考えるべきだろうということなので、この雇用促進事業団はやはり政府のサイドで運営をされているということだけに非常に問題がある。これからは具体的な雇用創出は、職業訓練等あらゆる問題を含めまして、いわゆる政労使あるいは公労使三者構成などによる具体的な機構の設置を考えて、その中から協議によって、相談によって生み出していくことを検討すべきじゃないかというふうに思っています。その点で労働四団体は雇用創出機構をつくることに今回重点を置いて対応したい、同時に、年齢差別問題のことも先ほど申し上げましたが、そういうところに照準を合わせて国会に働きかけたいという態度を労働四団体としてはとっております。
○川俣委員 いま年齢差別雇用問題が出ましたが、その前に雇用情勢の展望ということをテーマに考えた場合に、宍戸さんの御意見もありましたし、神代先生のお話もありました。そう甘いものじゃないという御意見もありました。神代先生は特にいろいろと書物を出されておりますので勉強はさせてもらっておりますが、特に、看護婦その他の幾らでもあるのだということのあれには感銘させられます。しかし、ただ労働問題として、たとえば年休の買い上げと言われると、もちろん一つの労働運動の場としてのあれだろうけれども、私ら抵抗を感ずるのですよね。それについて伺うのではないのですが。 それから、いま雇用創出機構というのをつくろうというテーブルに労働四団体が着いているというお話もありましたので、この辺の見解と、それから政府がいま中期経済計画案というものを出されました。これについては富塚さんも触れられました。そこで、中期的雇用情勢というのをもう少しお伺いしたいなと思っております。 〔伊東委員長代理退席、委員長着席〕
○神代公述人 私が特に中期的な雇用対策としてせひもう少し補強していただきたいと申し上げた要点は、労働時間の問題は別としますと二つあったわけでございまして、一つはやはり公共サービス面の緊急の、これはある意味で緊急避難的な政策で、一般論としては余り賛成できないことが多い政策なんですが、にもかかわらず、そうした対策もやらなければいかぬということをさっき申し上げた。それは繰り返しませんが、もう一つは、やはり長期の、中期経済計画の中で、本来経済成長があった場合に、産業部門別にどれだけ最終需要が出てくるかという計算を行って、それがどれだけ具体的な分野で雇用を生み出すかという計画が行われているはずなんですけれども、日本の完全雇用計画の場合には、労働市場が企業別の終身雇用制になっているせいもありまして、従来横断的な職業別の労働市場についての分析が非常に不足しているわけであります。また、そういう雇用全体についてのマクロの対策やその効果についての政府の報告そのものが必ずしも十分に行われていない。そのために、たとえば雇用創出機構というようなことで機構をつくる案は出てくるのですけれども、つくった機構で一体何をやるのかということがさっぱりイメージがわいてこない感があるわけであります。もちろん、いまのような状況であらゆる努力をしなければなりませんので、そういう機構をつくることに私は別に反対ではないのでありますけれども、やはり一番必要なのは、雇用に本当に責任を持つような、包括的な、職業別の横断的な雇用についての情報を収集し、解析し、将来の需給予測を行い、具体的な雇用の状況がそれにマッチしていないならば、それに合うように人間と仕事を調整するような政策を考えるような機関を、もう少し、それこそ政府の中央の中に強化すべきではないだろうか。労使がいろいろおやりになることはもちろん必要でありますけれども、そういう機構ができたときに、果たしてそれに対応していくことができるのかどうかということが非常に心配なわけであります。 実は、いろいろな機会に私申し上げておりますけれども、労働省等でもすでに検討されているはずでありますが、たとえばアメリカのそうしたマンパワー政策の中で非常に重要なものを二つ、ちょっとここに文書を持ってきております。ここにありますのは、アメリカの労働統計局がつくっておりますオキュペーショナル・アウトルック・ハンドブックというもののコピーでありますけれども、二年ごとに労働統計局が非常に多数の個別の職業別労働市場についての需給の見通しから、どういうところに仕事があるのか、仕事の内容ですね、どういう資格を持っていれば入りやすいのかというような細かい雇用の誘導的な情報を、非常に多数の人間と資金を投入して計画的に収集しているわけであります。マンパワー政策というのは何といっても——労働市場の一番の特徴は情報が非常に不完全で、情報の不完全のために、本来総需要としては足りている場合でも雇用が必ずしも改善しないというところにむずかしさがありますので、今日のような構造転換が同時に進んで、かつ総需要が足りないというときには、そうしたきめの細かい雇用情報を一元的にもう少し充実するような措置というものがまず拡充されませんと、せっかく雇用創出機構のようなものをつくっても、一体そこで何をやるのかということについての有効な施策を編み出すことがほとんど不可能ではないかというふうに私は考えております。 もう一つは、やはりここにアメリカの労働大臣——労働大臣は御承知のように労働経済学者でありますが、このマーシャル労働長官から議会あてのエンプロイメント・アンド・トレーニング・レポート・オブ・ザ・プレジデントというものが出ているわけです。こういうものをごらんいただきますと、いかにアメリカが六〇年代以降急速にマンパワー政策というものを多面的、かつ包括的にやってきたかということがおわかりいただけるはずでございます。 たとえば、金額でちょっと申しますと、一九六 ○年には、アメリカでさえも、私が申し上げているようなマンパワー政策のための特別の予算というものはゼロだったのです。それが六四年に四億ドルになりまして、六九年に二十二億ドル、さっき申し上げました包括的な雇用訓練法で現在措置されております予算は百二十七億ドルに達しております。約二兆四千億ぐらいのお金をマンパワー政策のために特に張りつけているわけであります。それによってこうした完全な雇用のための政策文書を出し、かつ基礎的な情報の提供を行っている。 つまり、そういうことをやりませんと、民間の活力に待つということを抽象的に申しましても、職業の選択をするのは具体的な個人であります。特に、わが国の場合には、非常に少数の大企業や中央官庁という、恐らく全体の雇用の八%くらいしかないところに向かって、幼稚園以前から多数の人が競争して詰めかけるというような教育の体系ができ上がってしまっていて、片方では本当に必要な職業分野に人が流れないようなふうにだんだん高度成長期になってきております。実は中期的な雇用の問題を考えますと、教育制度なり教育政策の全体の改革ということと同時にお考えをいただきませんと、簡単に手先だけの雇用対策では解決できなくなってきている。そういうようなことも含めて、もう少し基礎的な雇用情報の解析と国民に対するサービスの提供ということをぜひお考えをいただきたい、これが私の重点でございます。
○川俣委員 いまのようなお話を承って、それで具体的な問題に対処するわけですが、先ほど富塚さんも触れられておりましたが、中高年対策、特に高齢化社会、年金だけ六十歳開始したって五十五歳でちょんじゃ、後の方の連動性のないところをどうするかという問題もあるのです。 そこで伺いたいのは、年齢差別雇用という問題の禁止を急げというふうに私は耳に入ったと思うんだが、それじゃ一体具体的に皆さん方でそういうあれが練られておるのか、法律規制をやれと言うのか、強い行政指導ぐらいでやれと言っているのか。それから諸外国の法律制度があるとすれば、ちょっと披瀝していただきたいと思います。
○富塚公述人 先ほど申し上げましたように、高齢化社会の対応、同時に雇用問題を考えるという意味で、定年六十歳、そして年金受給を連動させるということを根本的に検討してみた方がいいじゃないかという提案をいたしましたが、同時に年齢差別による雇用を禁止をするといいますか、そういうことを考えていただきたいということで若干の所見を申し上げましたが、この制度のモデルとしては、アメリカの雇用における年金差別禁止法と、西ドイツの金属化学などの産業における一定の勤続期間以上の高齢労働者の解雇を禁止していること、こんなことなどを実は参考として制度として考えているわけであります。 また、ある一定年齢以上の一定の期間については、働くか、年金を受けるかは、私が言ったように選択権を労働者に与えるということも重要な点ではないかというふうに思っているのですが、何と申しましても、いま減量経営の中で、中高年齢層に照準を当てた解雇あるいは労働条件の切り下げ、そのことによって減速経済下の企業のあるべき姿をつくり上げていくというやり方、このことについて非常にわれわれは問題にしておりますし、年齢別の雇用差別をするなんて、これはとんでもないという観点で、ぜひこれは国会の政治の分野できちっと歯どめをかけていただきたいというふうに考えるわけであります。 また、質問の趣旨とは違いますけれども、解雇に対する規制措置の強化という点でも、労働協約の面でもわれわれは指導しているのでありますが、何と申しましても、当面の緊急な課題は、年齢差別雇用をどう排除するかということについて考えていただきたいということであります。大体法律的なことはアメリカないしは西ドイツのことなどを参考にしてわれわれは考えているということであります。
○川俣委員 それでは視点を変えて、この公共事業という問題をめぐる論争が昨年、一昨年から、与党と野党とむしろ二つに分かれて意見が交換されたというように私は感じておりました。だけれども、政府はことしも公共事業に振る舞い三昧したような感じを受けるといういまの御意見もあったようですが、しかし、政府は、やはり雇用吸収するのには何といったってこれが一番いい。社会党初め野党の人方は、年金を引き上げたり所得減税をやった方が購買力もあるし、景気刺激、内需のあれに効果あるんだ、こう言う。わかるが、これはやはりいまの失業群を吸収するのに役に立つのだ。私は東北なものですから、橋かけたり道路つくったりというのは、まず八割は冬場の労働力の出かせぎがそこへ来る、こういうように目に映る。 そこで問題は、ではこれだけの金をかけて雇用吸収効果が、一体、労働界が一番それをよく知っているはずですが、どういう効果があるのだろうかという疑問もあるように私は伺っているものですから、少し具体的に話を伺ってみたいと思います。
○富塚公述人 昨年、補正予算のときでしたか、建設省は十七万ぐらいの公共投資によって新たな雇用創出を考えるということをこの国会で言われたことを記憶しているのですが、どれだけ雇用創出が成ったかということになると、数万程度のことじゃないか。われわれ承っているのは、そんなふうに感じます。石巻でしたか、道路に五十億、それから橋をかけるのに五十億、この公共投資で、プロジェクトの中で位置づけたら、地元からの採用はほとんどない。大手の企業が乗り込んで全部それを引き受けてやってしまった。地元の雇用創出につながっていない。こういうことから考えてみますと、本四架橋や高速道路あるいは新幹線など、大型プロジェクト中心の公共投資では雇用創出効果はどこまで期待できるのか。これは私は余り期待できない。そういうデータが出ていることをやはり国会の場でももっと明確にしてもらいたい。われわれは、やはり、生活基盤福祉型の公共投資ということを言っているのでありまして、この大型プロジェクトによります、いまの政府が考えているような公共投資では、十分な雇用創出を図ることはできないだろうというふうに思っています。また、いろいろなところから報告をされているのですが、本四架橋などの関連工事に関係をいたします職安紹介によって雇用された労働者は九名ぐらいきりいないという、現地の職安所長が認めているという報告も聞いているのですが、とにかく地域の中から失業者をどう救っていくのか、雇用創出を考えていくのかということを考えていきますと、いまのような大型プロジェクト型の公共投資では期待できない。 問題は、先ほども申し上げましたけれども、労働省とも交渉したり、いろいろな場で、審議会などでもやり合うのですが、どのように失業者が存在をしているのか、潜在失業者があるのか、そしてどういう傾向にあるのかという、もとを含めて、行政サイドも明確な掌握がなされていないということの問題と、やはりこの公共投資による雇用がどこまで問題解決になっているのかを政府も明らかにすべきであろう、こう思っていますし、基本的にはわれわれは効果は余り期待できない、あくまでも個人消費、内需拡大、こういった型の、福祉型の公共投資、こういうふうに転換をしてほしい、こう考えています。
○川俣委員 最後に、まだ四、五分ありますから最後の質問をしたいのですが、直接雇用創出問題とは関係ないにしても、物価情勢という見通しなんですが、これは宍戸さんにも伺いたい。 宍戸さんと富塚さん、先ほどちょっと触れられたようですが、私、パーセントを聞き漏らしたと思うのですが、政府はもう四・九%上昇を見れば十分だ、こういうかなり——それは経済企画庁だってそうあやふやな気持ちで見通ししているのじゃないだろうが、これにはいろいろと意見があると思います。私たちの党も、やはり七%にはどうにしてもなる、こういうようなあれは、時間がないですが、その辺のあれを避けられないと思っております。 確かに、おっしゃられるように、イランの政情がどう展開するだろうかとか、その他いろいろなファクターが入ってくるだろうと思うので、そう簡単に、神様ではあるまいし、できやしないというのだけれども、ただ、考え方の底流が、どうも政府の方の四・九%というのは、これはどう見たって、現にもう二月一日からの米の消費者価格、たばこもあれだろう、それからタクシー料金は、はっきりせいとここで運輸大臣に言ったんだが、五月からは上げるという気持ちはないという程度の答弁で終わっちゃった。しかし、いろいろと考えると、いずれにしても四・九%ではとどまらないというのは大概の気持ちじゃないかと思うのですが、そこをお二方にお話を伺って、終わりたいと思います。
○宍戸公述人 消費者物価の上昇率について政府が四・九%を見込んでおるということでありますが、先ほど富塚さんからは四月以降一〇%、七、八%ですか、というような御意見もあったようでありますが、確かに公共料金の引き上げを通じます部分が私の方の見通しでは一・七%分、政府の見通しよりも若干高いのでありますが、ぐらいあると見込んでおりますし、さらに、十二月から実施されましたトラックの過積み規制というのがございまして、これは公共料金ではございますけれども、制度的変化に伴います物価上昇率という、これはちょっと計算しにくいのでありますが、やはりかなり消費者物価にも影響を与えると考えております。さらに、イランの動きいかんにもよりますが、円高がおさまりましたことに伴います卸売物価の上昇が消費者物価に反映すること、並びに石油の原油価格の値上げに伴います物価上昇率から見ましても、私のところでもまず六%はやむを得ないのではないかと思っております。それは年度比較でございますので、恐らく四月、五月ごろまでにそんなに高くなるとは思っておりませんけれども、そのようなことが消費者物価の中では懸念されるところでございます。 ただ、一部に言われておりますように、昭和四十七年のインフレ、あれと同じような現象がいま起きているのではないかという御意見に対しましては、現在ではなお通貨の供給量の伸び率が一二%程度にとどまっておりますという形で、金融当局の自制のある政策がとられておりますこと、並びに、これはわかりませんが、この春闘におきます賃金の上昇率はあのときのような大幅な上昇率が考えられません。私らのところでは五、六%と考えておりますが、そのような賃金の伸び率の鈍化から、極端なインフレに陥る懸念はないというふうに考えておるところでございます。
○富塚公述人 私ども、先ほど経企庁の試算、国鉄、私鉄の運賃、米、たばこ、薬代で試算をしたことを申し上げましたけれども、七%から一〇%近くにはなるのじゃないかというふうに見ています。原油の引き上げ問題も大変な影響になって出てくるだろう。物価値上げが加速化していくのではないかということが非常に心配されますから、その値上げがどういうふうになっていくかという状況を見た上での適切な対応というものは、政府自身も考えておくべきじゃないのかというふうに思います。数字的には若干不安定要素もありますけれども、いま六%ということを言われましたけれども、もっと物価上昇は加速化していくだろう。そうしますと、労働者も実質的な賃金ということになると、物価上昇なり定昇に見合う分は当然この春闘でも、あるいはマクロの立場でも、これは国家的に十分検討されるべき課題であろう、指導されるべき課題だろうというふうに私たちは思います。 いずれにいたしましても、企業動向は一面で回復基調を目指している、しかし失業者は多い、物価上昇基調にあるということ、こういった環境の中でこれから私どもも春闘を闘うという形になるのでありますが、どうかひとつ物価上昇問題がここ二、三年の経済環境とは全く違うという状況のもとで出てくる問題点だということだけは、国会の場でしっかり意思統一をして国民の前に明らかにしていただきたい。 以上、要請しておきます。
○川俣委員 どうも皆さん、ありがとうございました。 終わります。
○竹下委員長 これにて川俣君の質疑は終了いたしました。 次に、近江巳記夫君。
○近江委員 きょうは公述人の先生方、どうも御苦労さまです。貴重な御意見をお聞かせいただきまして、大分時間も食い込んでおるようでございますので、重複する問題は避けたいと思います。 まず、神代先生にお聞きしたいと思いますが、このマンパワーポリシー問題としまして、公共部門の拡大あるいは第三次産業への誘導等非常に貴重な御意見をお伺いしましてありがとうございました。もう少し具体例をお聞かせいただければ非常に幸いでございます。 それから、ワークシェアリングの問題もできましたら具体的な計画をお聞かせいただきたい、このように思います。 それから、現在の政府のいわゆる雇用対策というのは非常に対症療法的だというようなお話もあったわけでございます。確かに情報等につきましても非常に不備でございますし、将来その充実をしなければいかぬというお話もあったわけでございますが、中長期展望をいたしまして、そういうこともあわせましてさらに先生のお考えがあればお聞かせいただきたい、このように思います。 それから、宍戸公述人の方には、日興リサーチセンターでは五・五という成長率を予測されておる。政府は六・三。この間からの予算審議におきましても、六・三を達成したとしても、いわゆる雇用率にしても失業数にいたしましても五十三年度から全く横ばいというような状況が続いておる。実際にこれが落ち込むということになってきますと、それもまた非常に心配な点が出てくるわけです。そうなってきましたときに、今後の推移を見なければわかりませんけれども、やはり政府としては新たな追加策といいますか、それをとる必要があるんじゃないかと思うのですが、この点につきまして御意見をお聞かせいただきたい、このように思うわけです。私どもも成長率ばかりにこだわるわけではないわけでございますが、これは一つの目標として、その中でいろんな数値というものがここでいろいろと検討されておるわけでございますから、雇用一つの面を見ましてもそういう心配があるわけです。そういう点で、この対策というものにつきまして、追加策というものについてどのようにお考えであるか。 それからもう一つは、先ほども出ましたけれども、物価の問題でございます。上昇の原因というのは先ほどから何回も出ておりますからあえて申し上げませんけれども、私たちは非常に心配いたしております。その点、政府の見通しの四・九、六%はいくんじゃないかという御意見もあったわけですが、私どもが考えておりますのはもう少しいくんじゃないかという心配をいたしております。そこで、そういう心配が明らかになっておる以上、対策はいかにあるべきであるかという点をお聞かせいただきたいと思うのです。 それからもう一点は、いわゆる国債の問題でございますが、実際にこのままでは消化ができないんじゃないかという心配があります。これは当然国債管理政策とも関連してくるわけでございますが、金利の自由化等を含めまして、この国債の問題についてどのようにお考えであるか。 以上三点、宍戸公述人からお聞かせいただきたいと思います。 富塚さんには、いま労働四団体がまとまって雇用創出機構等を目指してがんばっておられる。これは私たちも非常に高く評価もし、社会党さん、民社党さん、各政党と力を合わせてこの実現には努力をしていきたい、このように思っておるわけですが、この労働四団体は御意見それぞれあろうかと思うのですけれども、できる限り一本にまとまっていい案を出していただきたい、このように思うのです。その経過といいますか、四団体の足並みという点につきまして、経過をもう少しお聞かせいただければ幸いでございます。 以上、まとめて申し上げましたが、よろしくお願いいたします。
○神代公述人 お尋ねのありました三点について補足をさせていただきたいと存じます。 第一の公共部門での雇用の拡大をもう少し具体的に説明しろという御質問でございますが、前提として、私は賃金補助等を含めて今年度予算案の中に盛られておりますような施策がせいぜい一年半くらいの間に期限が切れてしまうと思うのですが、その緊急的な中継ぎの雇用維持政策として今回出されておりますものが切れてしまった時期に、果たしてマクロ的な経済情勢が完全雇用という点で十分なものになるかどうかについて非常に危惧を持っておりますために、そうした現在の政策がもちろん必要なんですけれども、次の手を考えておかなければならないという意味で特にそれを申し上げているわけであります。 たとえばさっき申し上げました中で、教員の問題等がすでにいろいろ議論されているわけでございますけれども、すでに新聞等でも、四十人学級にまでクラスサイズを削減した場合に、四万三千人、人件費二千億、それに伴う校舎の増設等が五千億というような報道がなされておりますが、単に四十人にしてその程度の人をふやせばいいということでは実はないのではないか。先ほどもちょっと触れましたが、やはり現在の教育の中身、特に公教育の中身をもう少し改善する必要が片方ではあるわけでありまして、これが実は総合的な雇用政策の基本になってこなければならないはずであります。 そういう意味で教員の質の改善ということもあわせ考えまして、今日とられておりますたとえば小学校、中学校、特に小学校でありますが、先生になるためには技能教育ですね、特に音楽、美術、体育、家庭というようなところで三つの資格を取らなければいけない。われわれ昔から教育について考えておりますように、義務教育段階、特に小学校での基本的な教育というのは、やはり読み書きそろばんと社会に対する基本的な奉仕の考え方というものを植え込んでもらうところにあるのではないかと私は思います。ところが、そうした基本的なことに加えて、たとえばピアノが弾けなければいけないとか、体操の指導ができなければいかぬとか、裁縫かできなければいかぬというようなことを要求するために、本当はすぐれた人材が民間で——特にホワイトカラーの過剰雇用というようなことが片方で言われている、そういうところから多数の人がこれからまだ吐き出される可能性があり、現にそういう人の中には教員の免許を持ちながら高度成長期に民間に入った人たちもいるわけであります。こういう有能な人材を教育界に呼び戻そうとしますと、まず現行のそうした美術とかそういうものに非常に重点を置いた免許制度にひっかかり、それともう一つは三十五歳とか四十歳という年齢制限にひっかかってしまって、日本のこれからをしょって立ちます次の世代をりっぱな人間に教育をしていくために本当に必要とされている人材を民間から呼び戻す一番いい機会であるにもかかわらず、そうした制度的な障害があるためにできないわけであります。単に員数の問題としてお考えいただくだけでなしに、そうした教育の質の改革を進める絶好の機会であるということもあわせてお考えいただけないだろうか。 それから、たとえば看護婦の問題、さっき数字的なことを若干申し上げましたけれども、具体的には、今日看護婦の養成機関を経まして免許を取った人、五万人くらいの中で一万五千人くらいの人が実際に看護婦にならないでほかの職業についてしまっている、あるいはなった人が結婚の時期にすぐやめてしまう。やはり基本的には勤務体制の問題に非常に問題がありますし、またさっき申しましたように、若い人の中に、社会的に非常につらい仕事、しかしやらなければならない仕事につきたいという情熱が次第に薄れてきている。社会的な奉仕というような基本的な精神が教育の中でいま少し薄れているのではないだろうか。放置しておきますと、人のいやがる汚い仕事、つらい仕事には人手不足がますます強くなる、そういう問題が出てきているわけでありまして、看護婦等に対する対策は、そういう条件の中で、現に資格のある人たちを十分に吸引できるような、そういう意味で需給のギャップを具体的にすり合わせて調達していくようなこともぜひお考えいただけないだろうか。ほかの国、先進国の病院をごらんになるとわかると思いますが、日本の看護婦さんがやっているような汚物の処理とか、そういうような付随的な仕事というものは全く看護婦の仕事ではないわけであります。そういう面で大規模な雇用をふやすということは現実的に可能であり、社会的に必要であって、本当に看護婦を確保しようと思うならば、そういう仕事をもっとそういう資格の要らない人にやらせたらよくなる。そういう供給面での調整もまたつくはずであります。 念のために申し上げますと、今日の看護婦さんの給与の平均的な水準は、国家公務員の方が若干高いと思いますが、恐らく月に十五万程度ではないかと思います。仮に厚生省等も緊急に充足が必要だと考えている五万人くらいの人間を補充するといたしましても、月に八十億、ボーナスを入れて十七カ月で千三百六十億あれば五万人くらいの看護婦の増員はすぐできるはずであります。今回出ている予算に比べても、これはそう効率の悪い雇用拡大政策ではないのではないか。アメリカやスウェーデンに比べますと、日本の看護婦の人口比はまだ半分でありますから、仮にそれを倍にするとして二十万人ふやすとしても、五千四百四十億あれば人件費だけでは足りるはずなんです。その程度のことがなぜ今回のような雇用情勢の中で総合的に考えられないのだろうか。 さらに、肉体的な技能職務の中でも、さっきちょっと触れましたような幾つかの具体的な職務をとってみますと、やはり片方では大変に人が不足しているのであります。片方で、いいお嫁さんが来てくれないような汚い職業にはますます人手が不足しながら、全体では失業がふえる、こういうアンバランスが生じておりますので、そうした面の需給の調整をするためには、やはり教育の体系そのものの改革と含めて雇用問題として、単にこれを教育問題としてでなくて雇用問題として、あるいは単に医療問題としてでなくて、これも雇用問題である、そういう角度から総合的な検討をぜひしていただく時期ではないだろうかというふうに考えます。 それから、ちょっと順序を変えさせていただきまして、雇用情報の収集について具体的にどうしたらいいかということなんでございますけれども、これはさっきちょっと触れましたように、公的な機関が関与しております免許や資格を要する職業というのは、私がなぜ重視するかと申しますと、実はこれはたてまえ上も実態上もそういう免許や資格を手がかりにして、別に大企業に雇われなくてもいい職業なんです。中小企業でも横断的に移動のきく職業でございまして、いま特に中高年等が大企業から吐き出されている状況の中で、三次産業を中心にしてふえてくる職業、たとえば通産省の産業構造長期ビジョン等をごらんになればはっきり出ておりますが、いずれもそういう三次産業部門で比較的小規模、零細の企業で働く人たちの中に圧倒的にそういう職業が多いわけであります。ところが、そういう分野はいままで情報もほとんど集中的に集められていないのが実態でございます。 昨年たまたま私は労働省から委嘱されて、現在緊急にそういう調査をやっておりますけれども、実はこの職業情報を集めるということは大変に時間とお金と人手のかかる仕事でございまして、全体で六百ぐらいある職種の中でわずか十八程度を現在取り上げて調べているのでありますが、ゼミナールの学生を四十人動員しまして、三カ月間ほとんどこれをフルに使ってやりましても、十八程度の職業についてごく一般的な情報しかわからない。これは所管のところに行きましても、さっき申し上げたように、それぞれの行政上の基準、監督行政という立場からしか情報を集めてはおられませんので、看護婦さんとか配管工とか建築士とか税理士とか、そういうところについて個々の情報を集めようと思いますと、関係各省のトップのところをまず訪ねまして、どこに行ったらいいのかということを芋づる式に訪ねていって、関係の業界団体でありますとか、自治体の所管の課でありますとか、そういうところをずっと歩いていって、最後は実際に中小零細企業で現場で仕事をしている人たちから直接的にその情報を集めませんと、その職業の需給の実態がどうなっているのか、現在のギャップを調整するにどうしたらいいかという、その具体的なノーハウが全然得られないというのが実態でございます。これが六百とか、あるいは民間のそういう資格職業を入れますと千以上あるわけでありますけれども、そういう主要な職業について少なくとも緊急に情報を収集しようと思うと、かなり集中的に人間と予算を投入して、これは雇用促進事業団とか何とか機構というようなところで外でやる仕事ではなくて、労働省のようなところで、まさに中央官庁で責任を持って、産業構造が変化する中で継続的に繰り返し繰り返し情報を収集し、かつ更新していく必要のある問題ではないだろうかというふうに考えております。 それと最後の時間短縮による問題でありますが、これはさっきある程度申し上げたのでありますが、私は、やはり八〇年代の前半くらいに労働時間を週休二日制、週四十時間制、それから現行の基準法で最高限と認められている有給休暇二十日を完全に消化するようなところをまずねらって、それ以上の三十五時間というようなことは現状では無理だと思います。その程度のところにまず目標を設定して、そして企業の活力を阻害しないような形で具体的に五ヵ年計画でどうするか。たとえば私は、場合によっては、将来賃上げがまた景気が戻ってきて大幅になるような可能性があるとすれば、その中の一部を時間短縮に回すくらいのことも考えてやるべきではないだろうか。たとえば所定労働時間四十四時間を四十時間に短縮するとなれば、それだけで一〇%の賃上げに相当するコストが企業にかかることは事実でありますから、それだけの負担を一挙に企業にかぶせることは、これはかえって雇用の削減につながるおそれがありますので、その辺の調整を具体的に計画を立ててやる必要があるというふうに考えているわけでございます。
○宍戸公述人 御質問の三点についてお答え申し上げます。 私の方では五・五%の成長率の見通しでございますが、政府の六・三%の成長率が実現が不可能になる可能性があるのではないか、そういうときどうしたらよろしいのかというような御質問であろうかと思うのでありますが、現段階におきまして政府の経済見通しよりも私の方の経済見通しが低い理由は、一つは輸出が政府の考えているよりもやや低目に、五十四年度も前年に比べて輸出が低下するのではないかという懸念を持っておりますことと、賃金の上昇率が余り大きく見込まれないのにもかかわりませず、物価が政府の見通しよりも高くなります関係上、どうしても実質的な賃金の伸び悩みから消費が予想以上に伸びないのじゃないか、こういったことを含めて、政府の見通しよりも低くなっておるのでありますけれども、逆に企業の方は、ようやく企業収益も増加いたしますことから、設備投資、在庫投資に積極的な機運があらわれておりまして、マイナスの要因もありますけれども、結果的には五%台の経済成長を達成するものと見ておりまして、私自身は五%台の経済成長が達成できれば、あえてそれ以上の景気刺激策をおとりにならない方が望ましいと思うのでありますが、もし雇用その他の面において、あるいはことしの夏ごろにおいて不況感が一層強まるようなことがもしもございますれば、恐らく政府は補正予算などを通じてさらに積極的な財政支出の拡大をお図りになるのではないかと私らは考えております。少なくともわれわれの試算によりますると、十五兆二千七百億円の国債の発行を前提にいたしますれば、最近のような税収の好転を前提にいたしまして、恐らくかなりの規模の補正予算が組めるような状態になるのではないかと私は考えております。 第二のインフレ対策でございますが、インフレ対策は、もちろん一番望ましいのは思い切った金融引き締め政策をおとりになり、公定歩合の引き上げのような政策をおとりになることがよろしいわけであります。現在のインフレは、先ほど申し上げましたような対外的な要因が加わりましたものが大きいわけでございますけれども、しかし、インフレ気構え、インフレムードが最近強まっておりますのは、やはりいろいろ政府がインフレがこわいこわいとおっしゃることのために、かえって、それじゃ本当にインフレになるなら、いまのうちに買っておけなどというようなことがあるわけでございまして、このような投機的動きは、現在までのところ余りはびこっていないのでありますが、思い切ったインフレ対策をおとりになればこのようなインフレムードが鎮静化いたしまして、実際にはインフレにならずに済むと思うのであります。しかし、残念ながら現局面におきましては、政府の御方針も一方においては景気対策、景気を維持しなければならない。一方においては物価も考えなければいけない。まことに矛盾した物の言い方と申しますか、政策をお考えになっておりますことと、対外的に、御存じのようにアメリカやIMFあたりから日本は高度成長を指向しなければならないという要請もございます関係上、金融政策の転換は恐らくむずかしいのではないかと思いまして、この点、インフレ対策は何かとおっしゃれば、私ははっきりと金融政策の転換だと思いますが、観測といたしまして、予測といたしましてはやはりとらないであろうというふうに考えております。 最後の第三の点につきましては、大量の国債発行に伴います国債の値下がりということが起きております。これは従来のような金融の超緩和状態からやや企業が前向きに物を考え始めましたことや、インフレムードもございますこともあって、緩和基調にやや変化があらわれていることもございますけれども、同時に、不確実性の現段階におきまして、十年ものという非常に先の長い国債の発行が中心に行われておりますことが、長期の国債の値下がりを呼んでおるわけでございます。そういう意味におきまして、適切なる国債の発行の多様化ということがまず行われなければなりませんでしょうし、同時に、いまのように市場の実勢が売り出し価格に比べまして——九十九円五十銭で出まして、九十五円ぐらいにしか売れないというような、実勢から非常に離れた金利が形成されておりますことに問題があるわけでございまして、早急に金利の条件改定も当然必要だと思います。 しかし基本的に、そのような形で国債の大量発行、国債を大量に抱えました経済にとりまして、インフレにならないための条件は、金利の自由化ということで、資金の需要が出たら国債を持っている銀行はそれを売り払ってでも資金を調達する、値下がりしても仕方がない、そういう形で自動的に資金需給が調整されることが望ましいわけでございまして、インフレ対策の一つの面といたしましては、金利の自由化を推進すること、あるいは不当に日銀が国債の買い上げを行わないことというような歯どめが必要であるかと思っております。
○富塚公述人 労働四団体は雇用情勢の見方についてはほぼ意見の一致を見ています。当面、雇用創出機構について同一的な歩調をとっていこうという態度を打ち出しています。また私どもは、二千数百万と見られる未組織労働者が非常に大変な事態を受けていますので、これをどう包んでいくか、温かい手を差し伸べるか、そういう問題を含めて検討中であります。 以上であります。
○近江委員 どうもありがとうございました。
○竹下委員長 これにて近江君の質疑は終了いたしました。 次に竹本孫一君。
○竹本委員 公述人の皆さん、大変きょうは御苦労さまでございます。 私は、主として宍戸公述人にお伺いをいたしたいと思います。 と申しますのは、日本の経済政策を見ておりまして、一つは、最近の段階においては経済問題はおおむねすぐれて政治問題になっておる。特にまた、政治問題は国際政治とのつながりを考えないでは解決ができないようになっておる。そういう点に対する認識不足が日本の経済政策を次々に失敗をさしておると思うのですが、そういう観点から、時間もありませんので三つほどお伺いいたしますので、簡潔にお答えをいただきたい。 第一は、国際通貨の安定と日本の雇用の問題でございますけれども、御承知のように、去年は一ドル二百四十円ぐらいから始まりまして、いろいろありますけれども、百九十円ぐらいになった。五十円ぐらい円が上がりました。これにつきまして、一ドル十円上がれば失業者は五十万人ふえるのだと言ったあるお偉い方がありますが、そうなりますと百三十万人表に出ておる。過剰雇用、過剰労働力も大体二百万、二百五十万と言われておる。そこへ円高ショックでまた五十円上がって、五十万人とすれば二百五十万人ですが、仮に半分、百五十万くらいと見ましても、あれこれ五百万人の労働者の失業する状態が可能性においてできておる、大変深刻な問題でございます。 お伺いしたい点は、一つは、円が十円上がれば五十万人か三十万人か十万人か、そういうことについてリサーチセンターでは御研究があれば、その結論を聞かしていただきたい。次には、それに関連いたしまして最近は大体一ドル二百円近くで安定しつつありますが、ことしの円ドル相場は二百円プラス・マイナス十円くらいのところで安定してほしいと思っておりますけれども、専門家の宍戸さんはどういうふうに見ておられるかということ。これに関連をいたしまして、東京サミットを中心として、アメリカの日本に対する圧力がさらに加わってくるであろうと思いますけれども、それがさらにまた円高になってくる場合もある、そういう点について結論だけお考えを伺いたい。
○宍戸公述人 ただいま御質問のございましたのは大変むずかしい問題ばかりでございまして、円高になりましたことによりまして日本の輸出産業が輸出がしにくくなるというようなことが言われておるわけでございまして、現実にそのような事態が起きております。詳しい過去の推移から申しますと、五十二年の初め一ドル二百九十円台から始まりまして、二百四十円台に入ります局面までは、それほど輸出の低下がなかったわけでございまして、この期間におきましては、一ドルが五十円高くなったら五十万人の失業者が出るというようなことにはならなかったわけでございまして、その後ほぼ二百四十円台から二百円台に入ります局面において輸出の低下が激しくなり、現在二百円程度になっておりますが、なおまだその余波が残っておって輸出の低下が続いておる、こういうことでございます。 そういう意味におきまして、いま御測定になりました、どなたが御測定になりましたか知りませんけれども、少なくとも通貨の変動が日本の輸出出産業に対し影響を与え、かつそれが雇用にまで影響を及ぼすということは事実でございますけれども、簡単に測定することはむずかしゅうございます。 またさらに、円高になりましたことによります輸入、特に製品輸入の急増という形が起きております。特に繊維産業並びに食品産業におきまして、輸入品の増大によりまして国内の産業がそのために圧迫されるということも出ておるわけでございまして、この点も今後の推移を見なければわかりませんが、国際競争力のない輸入産業に対しましてどれだけ保護政策をとるのか。とらないとしますれば、その結果産業が縮小し、そして雇用の悪化につながるのか、こういった問題もお考えにならなければいけないと思いますが、少なくともこのような数字は、必ずしも現局面においては適切な数字ではないと思います。私の研究所でも計算いたしておりません。 第二点の昨年の十一月のドル防衛策の発表以来の日本の通貨は、ほぼ一ドル百九十円から二百円の間に安定いたしております。アメリカ側も日本側も、そのような二百円から百九十円くらいのところに安定させようという努力、介入が行われていることも御存じのとおりであります。 ただし、基本的にはこの国際通貨の安定ということは、ただ単なる技術的な介入、ドルを売り円を買うというような介入だけで安定するものではございませんので、アメリカではファンダメンタルズと呼んでおりますが、基本的にアメリカの国際収支の赤字幅が縮まること、並びに日本の国際収支の黒字幅が縮まること、両者が同時に達成いたしませんと真の意味においての国際通貨の安定にならないわけでございます。 当面、御存じのように、五十三年度の経常収支の黒字は、政府の見通しに比べましてやや大き目の百五十億ドルになりそうでございますが、五十四年度につきましても、私のところでは約百億ドルの黒字がなお続くものと見ております。その意味では改善はいたしますけれども、それほど大幅な改善ではないということであります。 またアメリカの経常収支も、アメリカ政府は赤字が半分になるというようなことを言っておりますが、私らの推計では、若干よくなるにしても大幅な改善はむずかしいと考えておりますので、基調的にはなお円高ドル安になる可能性を含んでおると思います。 先ほど幾らになるか、こうおっしゃいましたのですが、われわれの仲間では、賢明なるエコノミストは株価の予測と為替レートの予測はいたさないということになっておりますので、私は賢明なるエコノミストとして、先生のおっしゃいました程度におさまるだろうということを期待はいたしておりますが、幾らということは差し控えさせていただきます。
○竹本委員 大変賢明な御答弁でございまして、よくわかりませんが、時間がありませんので、あと本当は二つあるのですが、一緒にお尋ねいたします。 いずれにいたしましても、円高ということが輸出の面、輸入の面、あらゆる面を通じて日本の雇用にも重大な影響を持つのでありますが、円高の問題については、私はやはりアメリカの側と日本の側と、二つそれぞれ責任があると思うのです。その点について感想をお伺いするわけです。 一つはアメリカのドル防衛の努力が足りない。これは私ども予算委員会の理事が昨年夏、アメリカに参りましたときにも、われわれいろいろ言いましたけれども、日本が輸出を抑える、輸入をふやすという努力も足らないのでおしかりをいただくのだけれども、それ以上にアメリカのドル防衛の努力が足らないというふうに私は思っておる。というのは理由があります。アメリカの貿易依存率が一割以下であろうとか、あるいはアメリカのドルが日本に対してはうんと下がるはずだけれども、その他の国に対する関係を考慮して、加重平均で見れば大体九%程度しか下がっていない。わずかなドルの値下がりならば、下手をすれば国内経済全体については若干のインフレのプラスの面の方が出てくる。そういうこともありまして、ドル防衛ということについて熱意がないのではないかと思いますが、いずれにしても、アメリカのドル防衛の努力は、去年の十一月の初めまで特に足らなかったではないか。この点についてどういうふうに専門家としてお感じになっておるか。 それから同時に、六百億ドルか五百億ドルかわかりませんが、アメリカの投機資金というか、ドルの過剰なものが日本に向いてくるという可能性がよく言われるのですけれども、アメリカのドルの過剰でしかも投機に向いてくるものはどのぐらい、アメリカが三百億ドル動員をして防ごうという体制になっておるのだけれども、果たしてそれで十分か、反面においてどのぐらいに見ておられるかということ。 最後は、日本の問題ですけれども、最近はアメリカの日本に対する姿勢に特色があると私は思いますのは、初めはテレビや鉄鋼に問題が来た。次は牛肉とオレンジにやってきた。今度はまたさらに進めまして、電電公社だとかあるいは日本の銀行の問題だとかいうようなところへ攻勢が加わってきておる。 もう一つ言うならば、アメリカの政府が対日姿勢を強くしておるだけでなくて、最近の特色は、アメリカの議会が、上下両院の委員会、委員長が非常に強い対日姿勢を出してきておる。こういう点を考えますと、そのこと自体にも、向こうは反省が足りないという面もあるかもしれませんが、同時に日本の方も努力が足りない。大体日本の関税政策にしても自由化にしても、私はよく言うのですけれども、だれかが言ったようにステップ・バイ・ステップでやればいいのだけれども、日本はステップ・バイ・ノーステップでさっぱりやらないという皮肉を言った人がありますけれども、依然としてそうである。特に最近は、電電公社の門戸開放について非常にやかましい声が出てきておる。六千億円の物資を調達しておるのだけれども、本当に買ったのは三十億円というのだから、二百分の一だ。外国どこでも門戸を開放して、アメリカも百六十億ドルですか、ECも百億ドル以上のものを開放しておるのに日本は全体で三十五億ドルだ。こんなことで日本が誠意を持って輸入を促進し、黒字を減らすと言えるか。こういうふうにアメリカが攻撃してくるのも無理からぬ点がある。そういう点はむしろ日本が反省しなければならぬ点ではないか。第一こういう問題を事務当局に接触をさせておれば、因縁、情実なり予算の関係やらいろいろあるものですから、思い切った決断はできない。そういう意味では、むしろ政治家がこの自由化といったような問題は決断を下さなければならぬが、それをやらないということもありまして、日本の対処、努力にも非常に不満な点があるのではないか、それがまた当然ではないかと思いますが、国際経済に明るい宍戸先生として、第三者として見てどういうふうに感じておられるか、御感想だけ伺って終わりにします。
○宍戸公述人 最初の問題点でございますけれども、円高は日本だけではなくてアメリカ側の責任が大きい、これはまことにそうでございます。円高と言わずにドル安と申し上げた方がよろしいのでしょうが、ドル安がアメリカの責任であることは、これは世界じゅう言っておるわけでございます。 その原因でございます点が、アメリカは基軸通貨といたしまして、極端な言い方をいたしますれば、ドル紙幣を幾らでも刷りさえすれば、幾ら国際収支が赤字になっても構わない、このような物の考え方がいまだになお強いことは事実でございまして、その意味では、昨年の十一月、そういう物の考え方を変えてドル防衛策にアメリカ政府が積極的になりましたことを、世界じゅうでアメリかの通貨政策の転換だというふうに高く評価している。恐らくそのことが現在の通貨の安定につながっているというふうに私は考えております。 よく言われますように、アメリカ人自身、国際通貨問題に対しての関心も薄いし、また、日本ですと、国際収支というのがいつも経済見通しのトップに出るぐらい重視をされておりますが、アメリカのエコノミストに国際収支の見通しは幾らだと聞くと、いや、そいつはよくわからないよ、こんなことしか言いはしませんから、その程度の関心しかないということであります。 また、さらに続いて、ドルの非常な投機が行われておる場合に、とても三百億ドルの介入資金では足りないのではないかとおっしゃったのでありますけれども、それは本当に投機が起きました場合にはとても三百億ドルの資金では介入資金としては不足でございます。しかし、先ほど申し上げましたようなアメリカの国際通貨に対する姿勢が変わりましたということを高く評価をいたしておる点がいまの安定の理由でございまして、その意味ではこの政策の変化がないことと、さらに基礎的な国際収支の改善が行われますれば、それほど大きな波乱はなくて済ませるのではないかと思います。 次の点につきまして、どうもアメリカ側が日本の現在の国際収支改善対策に対してなお不満ではないか、日本側はこれだけ輸出が減ってきたのだから、いずれ国際収支はよくなるのだから、円高に耐えてここまで来た以上、アメリカも大分日本の努力を評価しているのではないか、こういうふうにやや考えがちなのでありますか、いまおっしゃいましたように、日本のアメリカ向け輸出が減ったのではだめなのでありまして、アメリカからの輸入がふえないとアメリカ側は納得してくれません。先ほど御指摘のような電電公社の話もございますし、先日アメリカ大使館の方とお話をしました場合には、アメリカのたばこをもっとたくさん買ってはどうか、せめてアメリカのたばこも日本のたばこ並みの値段にして売らせてくれないか、このような御要望もございましたけれども、確かにその意味では、現局面においては日本の役所側の態度の変化ということをアメリカ側が要望いたしておると思うのであります。 そしてさらに重要なことは、御指摘のように行政官同士の話し合いはございますけれども、アメリカの国会の方々と日本の議会の方々のお話し合いの機会は十分でないように思います。いまアメリカの政府は双頭のワシだといって表現した人があるわけでありますが、双頭のワシは御存じのようにアメリカの国旗でございますけれども、行政府と立法府と頭が二つあって、お互いにけんかしていて意思の統一が行われていないというのが現在の特色でございまして、行政府側が一生懸命アメリカの行政府を説得し、納得させましても、議会がそれに対して反駁を加え、かつ議会の理解が足りないということは、非常に現段階における問題だと思います。 これは私の要望でございますけれども、今後一層日本の議会の方々がアメリカの議会の方々と十分話し合う機会を持たれて、日米の相互理解に努められることが、日米間の摩擦を回避する最高の手段であろうと考えております。
○竹本委員 ありがとうございました。
○竹下委員長 これにて竹本君の質疑は終了いたしました。 次に、安藤厳君。
○安藤委員 公述人の方々、御苦労さまでございます。 三人の方からいろいろ御意見を伺いまして、御意見の中の相当なウエートで雇用、失業問題についてお話をされましたわけですが、私は時間の関係もございますので、富塚さんに二つの点についてお尋ねをして終わりたいと思います。 雇用問題について雇用創出機構の問題を中心にいろいろお話しになったのですが、富塚さんも大きな不満を持っておられる大企業の減量経営です。この減量経営、人減らし、合理化を大企業はこれまでもしきりにやってまいりましたし、いまもいろいろ画策をしておるようでございますけれども、この雇用創出機構というものをつくっていって失業者を受け入れる、その就業の機会を与えるというようなことをしっかり準備をいたしますと、大企業の経営者の頭の中には、減量経営、大量人減らしをやっても引き受けてくれるところがあるのじゃないかというようなことで、逆にそういうような方向に安易な道を歩ませるという結果になるのではないかという危惧が一つあります。だから、この点につきましては、先ほどいろいろお話がありましたように、年齢による雇用差別の規制の問題とかあるいは時間短縮の問題とかいうのが挙げられていると思うのですけれども、そのほかに、この減量経営で大量人減らしの安易な道を開かせるというようなことにならないような規制、チェックの方法ですね。これについて、まだ年齢による雇用規制の問題とか時間短縮の問題とかのほかにお考えになっておられることがあればお伺いをしたいと思います。 それから二点目は、失業者は公称百三十万、実質的には三百万というふうにも言われておりますけれども、失業対策事業というのは相当重要じゃないかというふうに思っております。ところが、労働省の方は失業対策事業の見直しということをいつも言ってまいっておりまして、五十五年にもその見直しをやるのだというようなことをまだ言っておるようです。この失対事業は一層拡大していかなければならぬと思うのですが、この失対事業の事業主体は地方公共団体なのですね。だから、これは地方公共団体の財政問題とも大きなかかわり合いがあると思うのです。御承知のように、来年度は地方公共団体の財政不足四兆一千億円とまで言われております。ところが、来年度の予算案で大平内閣が考えておりますのは、交付税特別会計からの借り入れとかあるいは地方債の増発とかというような借金財政を押しつけようとしておることです。だから、こういう点からいたしますと、失対事業の拡大という雇用創出の一つの重要な部分において事業が相当窮屈になる、縮小されるというようなことにもつながっていくのではないかと思うのです。だから、雇用、失業の問題について地方公共団体の財政問題、これは相当大きな問題だと思いますが、そういう点についてどういうような方向で打開していくことを考えておられるのか。 この二点についてお伺いをしたいと思います。
○富塚公述人 御指摘のように、大企業の減量経営ということの中で、中高年齢層に照準を当てて、非情に首切りあるいは合理化、労働条件の低下という問題をわれわれは大変な問題だとして、これをやめてもらおうといろいろな反撃の態勢というものを労働者の立場からとっています。非常に注目しなければならないのは、先ほど提起いたしましたように、雇用差別を禁止するということ、あるいは解雇規制の問題で雇対法の改正などを考えてもらいたいということなどのほかに、労働組合としては当然そういったものに一定のめどを立てて、企業が守らないときには罰則を科する、課徴金を科する、こういったようなことなども考えてもらいたいと思うし、労働協約の分野で企業の側に安易な解雇をさせないというふうな方法について積極的にやっていきたい。言いかえるなら、マクロの立場でどう企業をセーブをするか、そういうことを考えていくと同時に、労使の間において、労働協約において解雇規制を行わせていくということをやりたいと思っているわけであります。したがいまして、雇用創出機構の問題につきましても、一面では首切りの受けざらみたいになってはいけないという批判、御指摘もあります。私もそのとおりだと思いますので、純粋に雇用をどう創出して拡大をしていくのかという立場に立ってやっていただきたいし、減量経営で安易な首切りということを考えないような対応策というものは、政治の分野でもぜひ考えていただきたい。 御指摘の失対事業の問題は、われわれも本腰を入れて考えておるわけですが、おっしゃいましたように、地方の公共団体におけるどのような事業の拡大、その中に吸収できるかということについて、失対事業の見直しをするという政府の対応が、単にそれを切り捨てるということではなくて、現状の中でどのようにそれを拡大をしていく道筋があるのか、具体的な方法があるのか、公的な分野において具体的な対応策を検討していきたいということで要求もして、行動も起こしているということであります。
○安藤委員 どうもありがとうございました。終わります。
○竹下委員長 これにて安藤君の質疑は終了いたしました。 以上で各公述人に対する質疑は終了いたしました。 公述人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。(拍手) 午時一時二十分より再開することとし、この際、休憩いたします。 午後零時五十三分休憩 ————◇————— 午後一時二十四分開議
○竹下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 この際、御出席の公述人各位に一言あいさつを申し上げます。 公述人各位には、大変御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。昭和五十四年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただくようお願い申し上げます。 次に、御意見を承る順序といたしましては、まず最初に水野公述人、次に名東公述人、続いて野口公述人の順序で、お一人約二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後委員からの質疑にお答えを願いたいと存じます。 それでは、水野公述人にお願いいたします。
○水野公述人 私は、ただいま御紹介にあずかりました名古屋大学の水野でございます。 ただいまから五十四年度予算案につきまして意見を述べさせていただきます。 私の申し上げたいことは、大体三つばかりのパートに分かれております。最初は、五十四年度予算編成方針についての私の考え方を述べさせていただきます。それから第二に、そのような基本的な方針というものが、この予算案で具体的にどのように措置されているかということについて検討してみたいと思うわけです。それから第三に、五十四年度予算についての今後の問題点についての私の意見を申し上げたい。大体この三つの部分に分けて意見を述べたいと思います。 まず第一の方から始めさせていただきます。 政府は、来年度予算編成の基本方針としまして、景気の回復基調を一層定着させることと、財政健全化の足がかりを得るということを二つの重要な課題にしております。すなわち、景気の回復と財政の健全化の両立を図っていくということであります。そして、予算の内容を検討してみましても、一応この方針がかなりの努力をもって貫かれているというふうに思われます。このことは、財政運営の観点からも、また広く経済運営の観点からいってもきわめて重要な意味を持つものでありまして、この意味について若干考えてみたいと思います。 五十三年度予算は、財政の節度の維持を配慮しつつ内需中心の景気回復を図ることを最大の課題としましたが、財政による内需拡大に最も力点を置きまして、公共事業費の拡大を中心とする積極的財政の展開のために臨時異例の予算を編成し、財政収支を極度に悪化させることになりました。このような異例の財政運営によって、円高の急速な進展による景気の停滞化は避けることができ、着実な景気回復に資したことは疑い得ないところでありますが、そのような無理な財政運営によっても七%成長は達成されず、景気の急速な回復をもたらすことはできず、他面、財政健全化どころか、さらに悪化の度を強めるという結果になりました。 五十四年度予算編成に際して財政当局が直面した冷厳な事実は、増税がないとした場合、五十三年度と比べて全く税収の伸びが見込まれない、すなわち、経済活動の伸びに対応した自然増収と五月分税収取り込み分とがほとんど相殺するためでありますが、という条件のもとで、一方では財政面からの景気回復の維持が依然として必要であり、他方では財政健全化を図っていく必要があるという、この二つの要請にどのようにこたえるかというきわめて困難な問題に直面しているということでありました。 このような条件のもとでの予算編成の基本的方針として、まず二つのかなり異なった、極端な行き方が考えられます。一つは、五十三年度予算と同じように高目の経済成長率を目標に掲げて、公債依存度が四十数%になろうとも、できる限りの景気拡大的予算を組むというものであります。もう一つは、歳出の思い切った節減合理化によって、公債依存度を五十三年度並みに、あるいはそれ以下に抑えるような超緊縮型予算を組むというものであります。これら二つの考え方はいずれも一方に偏した著しくバランスを欠くものでありまして、とるべき方向ではありません。 前者のものに対しましては次のように言うことができます。経済運営の基本的考え方としては、適度な経済成長率を目標にして、各種不均衡の是正に努めつつ景気回復を図るべきでありまして、高目の経済成長率を目標にして無理な財政運営を強いることは不均衡を拡大するおそれがあり、とるべき方策ではありません。また半面、後者のものにつきましては、このような予算では公的サービスの給付水準の急激な低下をもたらすばかりか、景気に対しても大きなマイナス効果を及ぼします。現実的に妥当な行き方ではありません。五十四年度予算の基本的性格としましては、これら二つの行き方のいずれかに偏することなく、与えられた財政的条件のもとで、景気回復と財政健全化の両立を図るという第三の道を選択すべきであります。人々は往々にして景気回復と財政健全化は相矛盾するものとしてとらえがちであります。しかし、両者の両立は十分に可能であります。 五十四年度予算編成の基本方針として景気の回復と財政健全化の両立の道を選んだことは、財政の健全化を犠牲にし、景気回復を最優先させた財政運営の転換を意味するものでありまして、きわめて賢明な判断であるとして大いに評価するとともに、その持つ重要な意義をここで強調しておきたいと存じます。 次に第二の部分に入っていきたいと思います。 この財政による景気の回復と財政の健全化という課題が予算案においてどのように具体化されているか、またそのような予算案における措置がこれらの課題にこたえ得るものであるかどうかを検討してみたいと存じます。 まず財政による景気回復策について見てみたいと存じます。 一般会計全体の規模から言いますと、五十三年度当初予算に比べて一二・六%というかなり抑制的なものであります。すなわち、五十三年度は、五十二年度当初予算に対しまして二〇・三%の増加というものでありまして、それに比べればかなり抑制的なものでありますが、景気の着実な回復に資するために、公共事業関係費、文教・社会福祉施設整備費等の投資的経費については一八・五%の伸びを確保しております。公共事業関係費について言いますと、災害復旧費を除いた一般公共事業は、その伸び率は二二・五%で、五十三年度の三四・五%には及びませんが、五十一年度の一九・七%、五十二年度の二〇・七%の伸びを上回るものであります。また財政投融資計画につきましてもその伸び率は、五十三年度の一八・七%に対しまして、その伸び率一三・一%でありますが、社会資本の整備を図るとともに、景気の着実な回復に資するように特に事業部門の事業規模の確保に重点を置くことにして、事業部門の事業規模は前年度当初比一五・〇%の増加となっております。 さらに、経済情勢の推移に即して機動的に対処し得るように、五十三年度に引き続き公共事業等予備費二千億円を投資部門に計上するとともに、財政投融資計画においては、資金運用部等の長期運用予定額の弾力化等によりましてその弾力的運用を図ることにしております。 五十四年度予算によりまして地方財政も合わせて、国民所得計算ベースでは政府支出は一〇・六%の伸び。その内訳を申しますと、政府消費支出が九・一%、政府資本支出が一一・九%となりまして、その他の内需の堅調な伸びと合わせまして、貿易面で輸出の停滞が見込まれるといたしましても、名目で九・五%、実質で六・三%の経済成長が見込まれると五十四年度政府経済見通しではしております。 五十三年度予算における一般公共事業費の三四・五%という大きな伸びに対しまして五十四年度は二二・五%でありまして、一般会計歳出も財政投融資の規模も五十三年度と比べてその伸び率はかなり大幅に低下しているところから、景気回復に対する効果を危ぶむ声もありますが、五十三年度がむしろ異常であったこと、全体として内需の回復が堅調であるということからしまして、高目の成長を目指すのであれば別でありますが、五%程度の成長を目指すものであれば、このような予算で可能であると考えております。 また、五十四年度予算では、雇用問題につきましても、雇用の回復は全体的景気の回復が基本であるとしながらも、中高年雇用対策を初め個別的雇用対策にも配慮し、また構造不況対策、中小企業対策にもかなりの配慮を払っていることは評価できる点であります。 次に、財政の健全化の問題について考えてみます。 五十四年度予算におきましては、次の諸点において財政の健全化が図られております。 その一は、予算規模を前年度当初比一二・六%としておりまして、名目成長率見込みの九・五%を上回るものの、五十三年度の二〇・三%に比べますと大幅に抑制的であります。特に経常的経費の伸びを一〇・九%に抑えております。これは国債費を除く経常的経費で見ますと、その伸び率はわずか八・六%であります。 第二に、緊急な施策の実施に必要な財源は、極力既定経費の節減合理化により捻出するように努めるとか、一般行政費については厳にこれを抑制するとか、補助金等の整理合理化を行う等によりまして歳出の節減合理化を極力図っております。 第三に、税制面におきましては、長い間多くの人々によって非難されてきました社会保険診療報酬課税の特例の是正が実現されるとともに、価格変動準備金の段階的整理を初め、企業関係租税特別措置の整理合理化が一段と強力に進められております。また、法人税の貸し倒れ引当金の繰り入れ率の引き下げも行うことになりまして、不公平税制の是正が一段と図られたわけであります。また、揮発油税及び地方道路税の税率引き上げ、航空機燃料税の税率引き上げ等が行われまして税収の増加が図られ、たばこの定価改定により専売益金の増大も図られました。さらに重要なことは、五十四年税収には関係ありませんが、一般消費税を昭和五十五年度中に実現できるようにその準備を進めることとされました。 第四に、公共料金、社会保険料等の引き上げを行い、歳入の増加を図るとともに、公正な費用負担の確保を図ることになりました。 以上が財政健全化のために図られた主要な措置であります。これまでの予算編成と比べまして格段の厳しさを持つものであります。しかし、それにもかかわらず、一般会計における国債発行額は十五兆二千七百億円となりまして、公債依存度は三九・六%となりました。五十三年度に比べまして、額にして四兆二千八百五十億円の増加、公債依存度は、五十三年度の実質三六・九%より二・七%の増加であります。特例公債発行の方は、八兆五百五十億円と建設公債発行を上回るに至りまして、特例公債依存度は、五十三年度の二四・〇%から二七・一%に上昇いたしました。このように財政収支はさらに悪化したのであります。財政健全化と言いながらかえって財政は悪化したではないかと考える向きもあります。五十四年度予算では結果的には確かにそうであります。しかし、これは何も放漫な予算を組んだためにそうなったわけではなくて、このようにならざるを得なかった根本的理由は、五十三年度予算において景気回復を最重点にして異例の予算を組んだため、財政力が枯渇してしまった、その後を受けての予算編成であったためであります。すなわち、五十三年度予算の後遺症とも言うべきもので、税収が全くといってよいぐらいに伸びなかったため、歳出増の分だけ公債を増発しなければならなくなったためであります。このように、結果としては財政収支のさらなる悪化ということになりましたが、五十四年度予算におきまして、前述いたしましたような財政健全化の努力が払われ、それによって財政健全化の足がかりを築こうとした点が重要であります。経常的経費を中心とする歳出の抑制と不公平税制の是正を進め、増税のための条件をつくり上げる努力をし、さらに一般消費税を五十五年度中に実施する方針を打ち出したことは、財政再建への決意を示し、それに向かって第一歩を踏み出したことを表明するものとして大いに評価できるものであります。もちろん、この問題について五十四年度予算でとられた措置は決して十分なものではありません。今後の厳しい財政再建への第一歩にすぎないことを申し添えておく必要があります。 次に、第三の部分に入りたいと思います。 以上、五十四年度予算案を、景気回復と財政健全化の視点から検討してまいりました。最後に、五十四年度予算の今後の問題について若干述べておきたいと存じます。 一つは、国債の消化に関する問題でありまして、もう一つは、財政再建に関する問題であります。 国債の消化についてまず申し上げます。 国債の大量発行によりまして、昨年あたりから国債の消化が困難になってきておりまして、また国債の価格下落も起こり始めております。五十四年度も十五兆円以上の国債を消化しなければなりません。その他、公共債としては政保債、地方債の消化があります。それらを加えると膨大な額になります。マクロ的には、設備投資が本格化せず、需給ギャップがかなりある限りは、これらの公共債は民間の貯蓄資金で消化されるはずであります。しかし、このような大量の国債発行が長期間継続して行われますと、国債の需給のバランスが大きく崩れ、国債価格が低下し、その消化が困難となってまいります。さらに、景気回復がもっと進み、民間の資金需要が活発になってきますと、民間資金需要との競合も生ずるようになります。 国債の消化を円滑にするためには発行条件の弾力化が必要であり、また、国債増発がインフレにつながるのを防ぐためには、金利の弾力化、自由化が必要であると言われております。これは確かにそのとおりであります。しかし、発行条件の弾力化を図り、金利の自由化を進め、資本市場を整備すれば国債の発行については問題はないとするのは余りにも楽観的であり、逆立ちした考えでもあります。金利の自由化にしても、望ましいことではありますが、それは同時にわが国の金融制度、金融秩序の大変革を伴わなければ可能ではありませんし、そう簡単に実現できるものでもありません。大量の国債発行を金利機能にゆだねておけばうまくいくと考えられるほど金利に調節力があるとも考えられません。 〔委員長退席、伊東委員長代理着席〕 国債発行について金融面でも困難が生じないようにするために最も基本的なことは、国債発行量を減らしていくことであります。国債を幾らでも発行しておいて、それが金利機能でうまく調節され得ると考えるのは、非現実的な楽観論にすぎないと思います。 次に、財政再建の問題について意見を申し上げたいと思います。 わが国の財政は、昭和五十年度の歳入欠陥による財政悪化以来年を経るごとに悪化の度を強めて、国債発行を累増させております。このようなことを続けてまいりますと、財政の規律を失わせて非効率な財政運営を招きやすく、国債費の累増は財政の硬直化をもたらし、また後世代に負担を残すことになるといった種々の弊害をもたらします。さらに、もっと重要なことは、このような赤字財政を続けていきますと、景気が回復していき、経済が完全雇用経済に近づくにつれてインフレの危険が増大していくことであります。そのときになってインフレ抑制的な政策をとろうとしても時すでに遅く、その間インフレがどんどん進行するといった事態になるか、あるいは強力な引き締め政策によって経済の変動を大きくするかのいずれかを招来することになります。 したがって、できるだけ早く財政再建に着手する必要があります。財政再建のためには、歳出の節減合理化が必要であることは言うまでもありませんが、それのみによって財政収支の改善を図ることは、社会保障を初めとする公共サービスの大幅の低下を伴うことになり、妥当な方向ではありません。ある程度の公共サービス水準の維持と向上を図りつつ財政収支の改善を進めるには、かなりの大きな増税によらざるを得ません。 増税については、所得税、法人税の増税、現行間接税の増税、各種新税の導入等種々勘案いたしますと、当面、一般消費税の導入が適当であると考えます。一般消費税については、五十四年度税制改正要綱におきまして、「昭和五十五年度中に実現できるよう諸般の準備を進める。」として導入の方針を固め、また、五十四年度税制改正に関する税制調査会答申におきましては、一般消費税大綱が示されております。私は、できるだけ早く一般消費税法案が国会に提出され、真剣な論議を経て導入され、財政再建が本格化することを強く要望するものであります。 一般消費税の導入については、それよりも前に行政機関の整理統合を初めとして、肥大化し、非効率化した財政機構に思い切ったメスを入れて歳出の節減合理化を図ることと、不公平税制の是正を推進すべきであり、それが十分でない段階では一般消費税の導入は行うべきでないとする意見があります。歳出の節減合理化と不公一平税制の是正を図っていくことは言うまでもなく必要であり、そのための努力をすべきでありますが、それが十分できなければ一般消費税を導入すべきでないと言っておれば手おくれになるおそれがあります。一般消費税の導入を中核とする財政再建はできるだけ早く着手すべきであります。肥大化した財政機構の縮減ということは必要なことであり、重大な決意をもって進めなければならない問題であることは言うまでもありませんが、それには、複雑な利害関係と過去の歴史により定着した制度の改革を必然的に伴うものでありまして、短時日の間に決着のつく問題ではなく、その改善合理化にはかなりの時日と努力を要するものであります。不公平税制の是正もしかりであります。これらが解決しなければ一般消費税を導入すべきでないとするのではなく、これらは今後とも努力を重ねていくべきでありますが、一般消費税はなるべく早く導入する必要があります。 政府は先日、五十四年度財政収支試算を公表いたしました。今回の試算は新しい経済計画に基づくものでありまして、五十五年度から六十年度に関するものでありますが、これまで出された三回の財政収支試算、特に昨年のものに比べまして、一、選択的な五つのタイプを示すというのではなくて、経済計画と整合的な一つのタイプのものを示したこと、二、歳出の伸びを思い切って抑制的なものにしたこと、三、特例公債発行をゼロにする目標年度を五十七年度から五十九年度に延ばしたこと等におきましてより改善され、さらに実現性を持ったものになり、財政再建への財政当局の決意をより明確化した点で評価されるものであります。しかし、その性格は単なる試算であるのか、計画性を持ったものなのか、依然として明確ではなく、遠慮ぎみのものであります。この段階で必要とされるのは単なる試算ではなく、いつごろまでに、何をめどにして、どのようにして財政の健全化を図っていくかという、財政当局の財政再建に関する基本方針を示すところの財政再建計画であります。一般消費税導入問題も単なる増税の問題として論議されるのではなく、そのような財政再建計画の一環として位置づけられ、そのような観点から論議さるべきであると考えます。 ほとんど四〇%になる公債依存から脱却して財政の健全化を図っていくことはなかなか容易なことではありません。昭和の初期に不況克服のために、日銀引き受け方式の公債発行を続け、その後始末のために高橋是清蔵相が軍部の凶刃に倒れたという苦い経験が過去にあります。もちろん当時とは経済的にも社会的にも事情を異にし、同一に論ずるわけにはいきませんが、一たん増大した公債発行を縮小させることがいかに困難であるかを示すよい例であります。一般消費税の導入そのものは、多数の国民に税の負担増大を強いるものでありまして、それ自体大変抵抗のあることであります。また、それとともに、歳出の節減合理化による厳しい財政運営は、これまでの恵まれた財政運営になれてきた国民には多大の苦痛を伴うものでありましょう。しかし、それらを克服していかなければ、日本経済の安定的成長は不可能であり、国民福祉の向上は望み得ません。私はこの機会に、日本国民が重大な決意を持ってこの苦難を克服すること、国民の代表である国会議員の方々が責任ある態度をもって財政再建の問題に取り組まれんことを強く要望するものであります。 これをもって私の公述を終わりたいと思います。(拍手)
○伊東委員長代理 どうもありがとうございました。 次に、名東公述人にお願いいたします。
○名東公述人 私は、不公平な税制をただす会の代表であり、日本大学の教授、名東孝二でございます。 言わんとする趣旨は、新しい市民生活優先型の経済、言いかえますと自立自助、自分で立って歩くという自立自助のセルフサービス社会にふさわしい、小型ではあるが、効率のよい行財政へ持っていっていただきたい、こういうことでございます。 今回の政府予算案は、景気回復と財政再建の二兎を追うものでございますが、結局両方に失敗するでありましょう。景気の停滞とインフレの共存するスタグフレーションというものになるでありましょう。その理由は次のとおりであります。 戦後にも、設備投資と成長率循環の、有名な二十年のクズネッツ・サイクルがきれいにあらわれております。景気は昭和四十八年に頭を打ち、五十三年度上期において底を固めまして、徐々に回復しつつあります。十年周期のジュグラー・サイクルの上がりではございますが、この上がりは弱く、まだ四、五年は弱含みのだらだらとした景気が続くでありましょう。無理に引き上げようとしますと、五十年周期のコンドラチェフ・サイクル、これはMIT、マサチューセッツ工科大学のフォレスター教授のコンピューターモデルによりまして、この長期波動に基づく大きな不況といいますか、グレートデプレッションの可能性が最近確認されております。このコンドラチェフ・サイクルが高原をだらだらといま歩いておるわけでございます。したがって、インフレを激化するとともに、デプレッションと恐慌の規模を拡大するわけであります。 長期停滞とインフレ傾向との共存こそが先進国共通の悩みなのであります。したがって、国家財政は民間経済の自立自助を促す程度に自粛した方がよいと考えます。カンフル注射は高度成長期には強壮剤となりましたけれども、低成長期には毒薬となるものであります。低成長期には公共投資の拡大による景気の振興はあり得ない。せいぜい下支えでありますが、景気の振興というものはあり得ないにもかかわらず、誤った経済理論によっていまだに財政膨張を続けているわけであります。そのツケである国債依存度、御存じの三九・六%は、戦争末期の昭和二十年度の三八・四%をすら上回るという大盤振る舞いであります。このため、国債を含め、公共債の五十四年度末残高は百二十兆円と言われております。一億一千万人で割ると、一人当たり約百十万円、家族四人の標準世帯で四百四十万円。これは現在、勤労者平均世帯の貯蓄残高三百万円余りと言われておりますが、これをオーバーするものであります。このような過剰流動性の上にいろいろな公共料金等が値上がりをいたします。しかも、来年から一般消費税が導入されるということになれば、インフレと不況にならぬとおっしゃる方がおかしいのではないでしょうか。 さて、もう少し具体的に申し上げますと、効率の下がっている公共事業とか、むだな補助金を整理して国債発行をおやめになるということ、極端に言えば、補助金全額と公共事業費の一部を削れば国債など発行する必要はないのではないでしょうか。補助金行政はすでに行政効率と政治機能を悪化させるガンとなっておると思うのであります。 それで、まず十兆円にもなる補助金を初め、歳出の徹底的な洗い直しが肝心であります。特に既得権益化しておる聖域、侵すべからざる聖域にメスを入れる、メール・ウント・メールといいますか、もっともっとという肥大欲求を抑え、ぜい肉を落とし、また強大なお金持ちにももっと公平な負担をしていただく、こういう勇断こそが望ましいと考えるわけであります。既得権益者にはお気の毒でございますが、甘えと癒着の続く限り日本丸は沈没し、共倒れとなるでありましょう。 第二に、税制面、税収面での不公平の是正が必要であります。最近の世論調査でも、公平とは思わないというものが六七%もおります。そのよって来る原因は何かというと、前に申し上げました税金の使い道の不公平を初め、大企業優先、資本の優遇の数々の措置、それに、なぜサラリーマンにだけ必要経費を認めないのかという、こういう根強い疑問、それから、いわゆるトーゴーサンピンと言われております捕捉率の違い、それから税制上優遇されておる者ほど脱税が大きい、これは国税庁の発表でございますが、脱税が大きいという矛盾、さらに、中央集権の強化と金縛りにからめ捕られておる三割自治——地方自治というのは名目だけだと言われておる三割自治の実態、こういうことが不公平感の出どころであると思うわけであります。これらの不公平を正し、いわゆるタックスエロージョンと言われておる税の浸食を直せば、心配されております財政収支のバランスは均衡化して、一般消費税の創設などは不必要となりましょう。大蔵省の発表しておられる五十四年度ベースの財政収支試算によりますと、五年間で約九兆円という不公平大増税は、これはもちろん賛成するわけにまいりませんが、参考ケースのB、歳出削減依存型、これはたとえば公共投資の年平均伸び率の方が社会保障費の伸び率を上回っているわけでありますが、こういったようなことにも納得できないのであります。したがって、詳細な財政計画を発表していただきたいと思います。 試みに、不公平税制是正によりまして増収額がどのくらい望めるかということを列挙いたしてみますと、第一に、石弘光一橋大学教授は、一橋論叢の七十五巻一号におきまして、税の浸食をなくせば昭和四十七年所得税が約三倍の増収、すなわち六兆八千億円の増収となると書いております。それから第二に、総評の試算で、昭和五十二年平年度におきまして七兆四百六十億円の増収、三番目に、東京都新財源構想研究会の試算、国と地方合わせまして五十四年度五兆六千五百億円の増収になると言っています。不肖私、名東の控え目な試算で、五十三年度−五十七年度の五カ年で六兆円の増収を基礎に、赤字国債十五カ年償還計画をすでに発表いたしております。 さて、第三に必要なことは、行財政の改革と整理であります。特に総定員法の骨抜き防止と特殊法人の整理、それと行財政の効率化と地域分権化の措置でございます。これらの事項は、従来有言不実行の典型なのでございますが、幸いにしてリーダーたる政治家におかれて、断固として前述の歳出、歳入の抜本的な出直しを実行されるならば、たやすく実行されるのではないか、こういうふうに考えます。 御存じのように、世界は民族と個人の独立、蜂起、自己主張の時代であります。たとえそれらがエゴ的であっても、人権の平等と生活の向上と個性化を求める基本的欲求を抑え続けることはできません。日本でもこのような個性化を背景にセルフサービス社会へと進むとすれば、また、成長のパイが小さくなっていかざるを得ないとすれば、国家は何でもめんどうを見るという万能主義、過保護なやり方でよいのでしょうか。甘えと癒着の日本株式会社をいつまでも維持していくことができるでしょうか。欧米におけるスモール・イズ・ビューティフルの流行とか、高福祉、高負担の見直しとか、カリフォルニアの納税者反乱などが日本に起こらないという保証が果たしてあるでしょうか。すでにその兆しは出ておると思われます。しかしながら、他面において市民的な未成熟のために有効な歯どめや監視機構がないので、不公平であり、かつ時代おくれな膨張体質そのものを維持し、しかも水増し、拡大しようとしているわけです。一般消費税も国債もということになりかねないのじゃないかということを心配しております。 今後の日本は、小粒ではあっても個性のあるグローバルな貢献と、各人それぞれの人間価値の実現ということにいそしむのでございますから、小型ではありましても、きれいで効率のいい政府が要望されるのではないでしょうか。したがって惰性的なぜい肉予算を削れ、甘えと癒着の予算をつけるな、こういうふうにお願い申し上げたいのであります。したがって、大蔵省の言うように国債か増税かというような単純な発想ではなくて、今後の新しい日本に適合した行財政に体質改善をするために、さきに申し上げました三つの必要条件を実行すべきだと思います。また大蔵省は、担税率約二〇%は低過ぎるとおっしゃっていますが、松下幸之助さんによると、まだ高過ぎる、一〇%でよいと言われておるわけであります。パーキンソンの法則でも次のようなことが書かれております。やむを得ないときは二〇%までだが、三〇%になるとアメリカのように国際的影響力が減退する、三七%にもなればイギリスのように平時としては致命傷ともなる、こういうふうに書いております。 また大蔵省は、国も企業も赤字なのに家計だけが黒字である、したがってそれを使わせてもらう以外には方法はない、こういうふうにおっしゃっていますが、確かに家計は黒字で貯蓄があります。しかし円の外面、円はいま二百円というふうに、外の方はよいのに反比例しまして円の内面は悪い。その値打ちは半減しておるのであります。一九七一年、昭和四十六年十二月のスミソニアン協定の一ドル三百八円を基準に、日本とアメリカの輸出物価の上昇率で比較してみまして、それを三百八円に掛けるわけでございますが、一ドルが二百円から二百二十円という数字が出ました。しかし消費者物価で計算してみますと、一ドルは四百円、最初私は驚いたのでありますが、外国の文献を見て三百八十円という数字を見ましたので、間違いないと思ったわけであります。一ドルは四百円しかない。国内のアンバランスを調整するインフレ傾向のために、円の対内価値は対外価値の半分にしかすぎないのであります。住宅や公共施設が整備され、食料も安い欧米と、土地も食べ物もばか高いわが国とを単純に比較するというのはナンセンスであります。それに、もともと社会保障が不備でありまして、自分たちの幸福は自分たちの力で守る以外にはないのであります。 最後に、大蔵省が非常に御熱心な一般消費税について一言申し上げます。 よく言われておりますように、不公平な大衆課税であり、不公平税制を助長しながら麻薬のように重税感を麻痺させると言われております。税金というものはやはり苦痛を伴った方がよいと思います。また狂乱物価の再来があると言われています。お隣の韓国では一昨年の七月一日にEC型の付加価値税を導入しておりますが、聞くところによれば、非常に激しい年率二〇%にもなる物価の高騰に悩んでおるようであります。それからデフレ効果、これは消費者が買い控えをするためにますます不況へ拍車を加えるということでございます。それから企業サイドの経営難が心配されております。特に良心的な中小企業を痛めつけるということ、大蔵省はこれは消費税だ、企業には関係ないとおっしゃっていますが、事実は、これは明らかに企業課税になるということが実際なんであります。大企業が非常に得をして、良心的な中小企業が痛めつけられるということ。それからさらに、税務執行面においてだんだんと税収が取れなくなるものですから、焦って過酷になっていく。税務のファッショ化という言葉が税理士や公認会計士の間で出ているわけであります。 これらの点以外に、余り指摘されていない点を二つだけ指摘申し上げたいと思います。 第一は、資源節約型の経済が今後の中心となるということは言うまでもないことでございますが、高い付加価値の産業と企業が中心になるということでございます。ところが、付加価値が高くなればなるほど税額が高くかかってくるということになる。したがって、ECのように複数税率とか累進税率の問題が登場せざるを得ないでしょう。 第二に、自民党の地盤であると言われております小売業者が盛んにいま反対しております。これを無視しまして強行すると、あの人たちが言っておりますように、十年戦争という言葉を使っておりますが、十年戦争の結果、かつての地方税における旧付加価値税——旧付加価値税というのは御存じのように、昭和二十五年に法律は制定されましたが、施行されずに、ついに昭和二十九年に廃止になっています。こういったような旧付加価値税と同じ運命になるのじゃないかということを心配しております。その余波を受けて、政界の地殻変動と混乱の末にエコノミックアニマル、現在はいろいろなことを言われておりますが、このエコノミックアニマルがミリタリーアニマルに変身しはしないかということをひそかに心配しておるものでございます。 では、どうも失礼しました。(拍手)
○伊東委員長代理 どうもありがとうございました。 次に、野口公述人にお願いいたします。
○野口公述人 一橋大学の野口でございます。 きょうここで、昭和五十四年度予算につきまして、私の意見を述べる機会をお与えいただきましたことをありがたく存じております。私は、次の二点につきまして、私の意見を述べさしていただきたいと思います。第一は、景気政策との関連でございます。それから第二に、財政再建の問題について申したいと存じます。 まず最初に、五十四年度予算を考える際の第一のポイントは景気政策との関連であると考えられます。五十三年度予算におきましては、臨時異例の措置として、きわめて積極的な財政政策がとられたことは御承知のとおりでございます。一般会計の一般公共事業関係費は三四・五%という高い伸びを示したわけですし、財政投融資計画におきましても、住宅金融が大幅に拡大されるというような積極的な政策がとられました。これに対して、五十四年度予算におきましては、たとえば一般会計の一般公共事業関係費を見ますと、伸び率が二二・五%に落ちております。一般にこのことは、景気維持型の予算であるというふうに説明されているわけでございますけれども、総需要政策に対して消極的な立場をとっているということは否めない事実ではないかと思います。 他方、景気動向を見ますと、企業の収益は回復基調にございますが、雇用をめぐる情勢は非常に厳しいものがあると考えられます。したがいまして、こうした情勢のもとで、昭和五十四年度予算が総需要政策について消極的な姿勢を見せていることをどういうふうに評価するかということが、評価の分かれる点ではないかというふうに考えます。 いわゆる近代経済学者の中では、これに対してより積極的な財政政策が必要であるという意見が多いように思われます。しかし、私はこれとは反対に、五十四年度予算の姿勢は妥当であったものというふうに評価したいと思います。すなわち、五十三年度におけるような量的な総需要政策の姿勢から転換したことを妥当であったものというふうに考えます。ただし、その理由は、財政赤字の解消が重要であるとかあるいは雇用の問題が重要ではないとか、そういうことではございません。そういう意味では、先ほどの水野公述人の御意見や、あるいは政府財政当局の立場と私の立場は異なるものでございます。つまり結論は同じでございますけれども、理由は全く違うのでございます。私が先ほど述べましたような考えを持つ理由は、総需要政策というのは、特に現在のような景気情勢のもとでは効果を持ち得ないのではないかというふうに考えるからであります。つまり単に量的に財政支出を拡大して、財政赤字を拡大すれば景気がよくなるというような考え方は、余りに単純過ぎるのではないかというふうに考えるからであります。 財政と景気との関係ば、一般にケインズ経済学をベースにして考えられております。財政赤字が拡大すれば景気がよくなるという考え方は、ケインズ経済学の考え方であります。しかし、最近、ことにアメリカの学界におきまして、こういうケインズ経済学の考え方に対する非常に基本的な疑問が提起されております。そして、新しい形での経済理論が展開されつつあるわけでございます。もちろんここは経済学の教室ではございませんので、そういうことについて詳しく述べるつもりはございませんけれども、簡単に申しますと、その理論は、不確実な世界において人々が将来の予想をどういうふうに立てて行動するか、そういうことを精緻に理論化していったものでございます。その理論からもたらされる結論は、ケインズ経済学の結論とは逆に、政府が公共事業を単に量的にふやしても、景気がよくなるようなことはないという結論でございます。 もちろん学界の中では、こういった理論に対して反論もありまして、論争は続いております。しかし、私がここで強調したいことは、ケインズ経済学の考え方をあたかも絶対の真理であるかのように考えるのは非常に硬直的な見方である、あくまでもそれは一つの見方にすぎないということでございます。実際、積極財政がとられた五十三年度の経済動向を見てみますと、私は、期待されたような効果は上がらなかったのではないかというふうに考えます。すなわち、GNPの項目中、公共投資と住宅投資は確かに伸びておりますけれども、それが民間の設備投資あるいは消費に波及するという効果は持たなかったのではないかというふうに思われるわけです。その反面、たとえば住宅金融が拡大したことによって地価が上昇するというような、望ましくない面があらわれているのが現実ではないかと思います。 私は、以上の理由から、五十四年度予算が、総需要政策に対する過大な期待を捨てたのは妥当であったというふうに評価したいと思います。もちろん、雇用問題は非常に深刻でございますから、これに対する対策が必要なことは申すまでもございません。これに対しては、総需要政策ではなくて、個別的な対策で対処する必要があるというふうに考えます。この点、五十四年度予算で、雇用問題に対してさまざまの個別的な対策がなされたことは、政策の方向としては適当であったというふうに考えます。ただし、その内容を見てみますと、必ずしも十分なものとは思われませんし、ことに産業構造の新しい分野に対して、そういう分野での雇用吸収のために誘導するというよりは、どちらかと申しますと後ろ向きの施策が多いことに疑問を感じざるを得ません。 次に第二点の、財政再建の問題について述べたいと存じます。 私は、この問題を考える場合に一番重要なことは、財政再建というのは一体何を意味するのかということではないかと思います。現在、一般会計の赤字は非常に膨大な額に達しておりまして、一般には、この赤字を縮小することが財政再建であるというふうに考えられております。しかし、私は、この見方は表面的な見方ではないかと思います。人間の体にたとえてみますと、財政の赤字が非常に巨額なものに達しているということは、体のどこかに病気があって、それが熱になって出ている、その熱のようなものではないかというふうに思うわけです。つまり財政赤字というのは、それ自身が問題ではなくて、その原因になっている何かが問題であるというふうに思うわけです。したがいまして、財政赤字さえ解消できれば財政再建ができたというふうに考えるのは、たとえてみますと、熱を冷ますために水の中に飛び込むようなものではないかというふうに私は考えます。水の中に飛び込めば確かに一時的には熱は下がるかもしれません。しかし、恐らく病気はもっと拡大した形で将来発生するのではないかというふうに思われるわけです。財政についても私は同じことが言えると思います。いま重要なことは、財政のどこに病気があるかということをつきとめて、その病巣を徹底的にえぐり出すことではないかと思います。それが財政再建の意味であるというふうに私は考えております。 こうした観点から、五十四年度予算が財政再建に向かってどれだけ前進しているかということを考えてみますと、私ははなはだ不十分であったというふうに申さざるを得ません。もちろん、五十四年度予算におきましては、経常経費の圧縮のためにさまざまな政策努力がなされたのは事実であったと思います。たとえば公務員の出張のグリーン車制限というようなものは、そうした姿勢のあらわれであると申せましょう。また額的に見ましても、一般会計の経常部門のうち国債費を除く経費の伸びが八・六%、一けた台の伸びに圧縮されていることも事実でございます。しかし、この低い伸びは物価や賃金の伸びが鎮静化したということによってもたらされた半ば自動的な部分がかなり多かったのではないかというふうに推測されます。私は、五十四年度予算の編成過程でさまざまな努力がなされたことは認めつつも、なおかつ、五十四年度予算というのは基本的には従来型の予算の延長であり、前に申し述べました意味での財政再建にはほとんど手がつけられていないというふうに考えざるを得ないのであります。 それでは、財政の抱えている病巣というのはどこにあるのか、このことについて私の意見を申し述べさせていただきたいと思います。 これについて一般に言われておりますのは、行政改革ないしは行政の簡素化ということでございます。大平総理の言われるチープガバメントというのも、恐らくこういった考えを示すのではないかと思われます。私は、もちろん財政再建のために行政改革の重要性を否定するものではございません。むしろ、政府の姿勢を示すものとしてきわめて重要なポイントであるというふうに考えております。しかし、これのみで財政再建ができるというふうに私は考えておりません。なぜかと申しますと、ある意味ではこれよりもっと重要な問題を一般会計の歳出が抱えているからであるというふうに私は考えているからでございます。ここでは、具体的な例として医療費と農業関係の経費について述べさせていただきたいと思います。 五十四年度予算におきましては、医療関係の支出が約三兆三千億円に上っております。ところで、一般に医療費の約四割は薬代であるというふうに言われております。そうしますと、三兆三千億のうち約一兆四千億は薬代でございます。これはわれわれの日常経験からもわかることですけれども、薬は非常にたくさんもらうわけですけれども、飲まないで捨ててしまう部分が多いというふうに言われております。この推定は非常にむずかしいわけですが、一般に半分ぐらいはむだではないかということが言われております。もしこの推計が正しいといたしますと、一兆四千億円のうち七千億円というものは全くむだな出費であると言わざるを得ないわけでございます。この七千億円は、結局税金をもって医師ないしは製薬会社に所得移転を行っているにすぎない経費であるというふうに考えられるわけです。 いま申しましたのは一般会計の歳出に係る部分だけでございますから、保険料によって賄われている部分を考えますと、さらにこの額は多くなるわけでございまして、一般に国民医療費は十兆円というふうに言われておりますので、いまの計算を単純に当てはめますと、約二兆円がむだに使われているという結果になります。このように医療費の中には非常に多くのむだが含まれております。 その反面、医療保険が完全な医療保障を提供しているのであれば、まだ事態はよろしいわけですけれども、しかし実際には現在の医療保険のもとで提供されている保障は非常に不完全なものではないかと思います。もちろん、形式的に見ますと、医療保険は医療費の平均八八%を保障しておりますし、また老人医療無料化等の公費負担医療がこれを補完しております。しかし、それはあくまでも形式的な話でございまして、実際には、たとえばいわゆる保険外負担の問題、つまり重病になった場合に差額室料とか付添看護料が非常に多額に上りまして、そういうものが月数十万円に達するというような例もまれではないというふうに言われております。つまり、そういうふうに考えますと、現在の医療保険というものは、かぜを引いたとか二日酔いになったときには非常に便利なシステムではあるけれども、本当に病気になって家計の崩壊が心配されるときには、それを防止する機能を果たしていないというふうに考えられます。このことは民間の疾病保険が売れているということを見れば明らかでございます。 このようにまとめてみますと、現在の医療保険制度は、まず第一に非常に多額の浪費が随伴している。それから二番目に、そのもたらしている所得移転が社会的に見て恐らく認容できない。それから三番目に、本来追求すべき目的が達成されていないという意味で、非常に不完全なものであるというふうに考えざるを得ません。 同様のことは、農業関係費、なかんずく食糧管理特別会計による米価の政策的支持にもあらわれているというふうに考えます。ここにも非常に多額の浪費が起こっているわけでございまして、それは言うまでもなく米の過剰生産でございます。時間の関係で細かい数字は省略させていただきたいと思いますけれども、非常に多額に上る古米の処理に恐らく数兆円の経費がかかるのではないかというようなことが言われております。こういう施策のコストを負担しているのは、食管会計の場合主として都市の消費者、つまり私たちであります。私たちの負担は二重の意味においてなされているわけでして、一つはもちろん税金による負担、もう一つは、その国際価格から比べると著しく高い米価を強要されているという点にあるわけでございます。これによっていかなる所得移転が行われているかということを考えてみますと、一般にはそれは農民に対する所得移転であるというふうに考えられております。 しかし、私がここで強調したいのは、必ずしもそうではないということでございます。これは租税における帰着の問題と同じことでありまして、たとえば法人税を増税しても実際の負担は製品の価格の値上げを通じて消費者に帰着するという例と同じことでございまして、一般に経済学でバジェット・インシデンス、予算の帰着というふうにして論じられている問題ですが、この問題は余り認識されておりませんので強調したいと思いますけれども、米価の補助の場合に、補助されているのは米価であるわけですから、つまり米の生産費でありますので、その補助は単に農民の農業労働だけではなくて、米の生産に必要なあらゆるもの、たとえば農業機械ですとか、あるいは肥料ですとか、そういったようなものに対しても、その補助が与えられているという結果になるわけです。これはターゲット・グループ以外への所得移転がなされているということになります。 以上申し述べましたように、医療保険についても食糧管理特別会計についても非常に大きな問題があるということが明らかでございます。こうしたことを考えますと、歳出の削減は福祉の低下をもたらすから困難であるというわけにはいかない。むしろこうした現状を直していくことこそが財政の再建であるというふうに私は考えたいと思います。 私は、最後に、次の二点を強調したいと思います。 第一番目に、いま私が指摘いたしましたことは非常に根が深いということでございます。たとえば薬のむだ使いについて申しますと、直接的な原因は患者にとって医療費が幾らなのかわからないということにあるわけでして、そうしたようなことに対しては、たとえば薬代の一定限度内での自己負担というものは薬のむだ使いを防止する効果を持つというふうに考えられます。五十四年度予算では、薬剤費の二分の一患者負担の措置がなされているわけでして、一般にはこの措置は、国民の負担増を強いるとかあるいは福祉の逆行であるというふうに言われているわけでございますけれども、私は以上の論点からあえてこの措置を評価したいというふうに考えております。ただし、これだけで問題が解決できるというわけではございません。たとえば薬の場合には、薬価基準の決定法に基本的な問題がございますし、仮にその問題が解決されたとしても、診療報酬体系というのが公定価格になっているという一方で、製薬会社なり医師なりというのは、その私的な利潤を求めて行動する主体であるという点に基本的な問題がある。つまり医療体制そのものに基本的な矛盾が内在しているというふうに考えざるを得ないわけです。ですから、たとえば薬の問題が解決されたとしても、恐らく、薬づけから検査づけ医療というようなことが言われておりますけれども、そういったような事態が生ずるということは十分考えられます。食糧管理特別会計につきましても、米の値段が公定価格である一方において、米の生産者や消費者が私的な主体であるというところが私は基本的な問題ではないかと思います。 こういうふうに考えますと、私がこれまで述べましたことは、単に財政当局だけの問題ではなくて、もっと広く政治ないしは行政全般にかかわる問題であると申さざるを得ません。私は、財政というのはその国の政治と行政の投影であるというふうに考えております。つまり財政は、一国の政治や行政の姿を端的にあらわす鏡であるというふうに考えられるわけです。そういう意味で私は、いま問われているものは、わが国の政治と行政の基本的な問題であるというふうに思われます。 この委員会でも御議論があったように伺いますが、アメリカではこうした問題に対する議論が非常に活発に行われておりまして、たとえばカーター政権のゼロベース予算ですとか、あるいは議会の予算委員会でのサンセット法の立法でありますとか、さらに、最近では憲法を改正して赤字を禁止しようというような動きがあるというふうにも聞いております。私は、何もアメリカでやっていることがすべていいというふうには思いませんけれども、こうしたような状況を見ますと、アメリカの民主主義というのは非常に若々しいというふうに考えざるを得ないわけでございます。 最後に、第二点として、次の点を強調したいと存じます。 いま述べました財政の健全化というようなことは、どうしても総論賛成、各論反対ということになる傾きがございます。しかし、これは当然のことでございまして、たとえば私自身につきましても、財政健全化のために一橋大学を廃止するということになりましたら、恐らく猛烈な反対運動をすると思います。だれでも自分自身に直接関係する利害には非常に敏感でございまして、それは当然のことであるわけです。そういったことを考えますと、こういう問題というのは、各論のレベルではなくて、総論のレベルで対処することが必要であるというふうに考えられます。人々は総論の段階では正しい判断ができるわけですけれども、恐らく総論の段階でしか正しい判断ができない、それが神ならぬ人間の現実であるというふうに考えられるわけですけれども、その意味では、たとえばアメリカのサンセット法というのが個別の問題を対象にしているものではなくて、一般法であるということは非常に意味があることだと思いますし、あるいは赤字の禁止を憲法でやろうということにも意味があるというふうに考えられるわけです。 翻って、日本の現状を見ますと、財政法の第四条は赤字公債の発行を禁止しておりますけれども、ここ数年来、毎年特例法でその規定は空文化されているのが現状でございます。こうした現状を見ますと、一体財政法の存在意義は何であるかというふうに考えざるを得ないわけでございます。したがって、たとえば財政法の第四条を憲法の規定にするとか、あるいはサンセット法の日本版を立法して、すべての施策を時限的なものにするというようなことを、決して空想的なことではなくて、現実の問題として真剣に考えられてしかるべきではないかと思います。わが国の財政は、そうしたような措置をもってしなければ解決がつかないようなところまで追い込まれているというのが私の認識でございます。 予算委員会の基本的な役割りは、私は、国民の立場に立って財政におけるむだを排除していくことにあるのではないかと思います。これは、そもそも近代国家における議会がそうした役割りを担って登場してきたことからも明らかであります。その意味におきまして、今国会では歳出構造の見直しというような議論が活発になされておりますことを非常に喜ばしく思っております。私は、国民の一人として、そうした議論がさらに深められ、実効性のあるものに結実されていくことを願ってやみません。 以上をもちまして、私の意見の開陳を終わらせていただきます。(拍手)
○伊東委員長代理 どうもありがとうございました。 —————————————
○伊東委員長代理 これより各公述人に対する質疑を行います。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上普方君。
○井上(普)委員 簡単に御質問いたしたいと思いますので、ひとつ簡単にお答え願いたいと思います。 まず名東公述人にお願いいたしますが、政府は財政再建のために一般消費税の導入を切り札にいたしております。しかし、私どもは、不公平税制の是正が大前提であり、またそれとともに歳出の削減ということもやらなければならない、このように考えておるものであります。 まず、来年度の税制改正案について、不公平税制がいかにも改正せられておるように見えますけれども一、これで十分だとお考えになっておられますか、この点お伺いいたしたいと思います。 一般消費税は御承知のように逆進性を持っておりまして、そして大衆課税でございます。かつて一時わが国は、昭和二十四年でございましたか、取引高税を導入しましたけれども、非常にたくさんの違反者と申しますかが出まして、一時百八十万人もともかく更正決定をするというようなこともございまして、わずか一年数ヵ月でこれはやめてしまったという事例もございます一国民の、特にこの一般消費税を導入することによりまして中小企業の税金いじめになるのではないかというようなことを私どもは考えるのでございますが、不公平税制をただす会の代表といたしまして、中小企業者の方々はどのようにこの問題を受け取っておられるか、ひとつ御紹介していただきたいと思うのであります。 それから、もう一つ問題といたしまして、土地税制が緩和されようといたしておりますが、御承知のように土地というものはどんどん上がりまして、特に都市並びに都市近郊の土地は上がっております。これは社会のエネルギーがすべて土地の高騰ということによって吸い取られていく、言いかえますならば、不労所得によって土地所有者のみがどんどんともうけていく。したがって、私どもはどういたしましても開発利益の吸収ということを考えなければいけないのではないか、これが一点。 さらにはまた、都市へ集中しております土地所有者の集積利益、これも吐き出させる必要があるのではないかと私どもは考えておるのでございますが、これについてのお考え方をお示し願いたいのと、最近の地価の上昇傾向を見るというと、単に土地の需給関係で動いておるのではない、投機筋が動いておるのではなかろうかと私どもは考えられるのでございます。そこで、公共用地を確保するためには、どのような土地税制、土地対策が必要とお考えになっておられるか、この点をお伺いいたしたいのであります。 それから、財政再建のためには歳出を圧縮しなければならぬということで、政府は社会保障関係費を圧縮しようという動きがございます。私は、投資部門、すなわち公共事業の圧縮も大いに考えるべきではないかと思うのでございますが、歳出の洗い直しで特に必要と思われる領域がございましたならば指摘していただきたいと思うのでございます。これが名東公述人に対する質問でございます。 水野公述人にお伺いいたしますが、先ほども野口公述人から申されましたように、特例公債というものを盛んに発行してまいりまして今日の事態に至ったわけであります。財政法というのは財政の憲法でありますが、これを一方的に——私どもは財政の健全化という面からいたしますならば、絶対にこの特例公債を発行すべきではない、こういうことを主張してまいったのであります。しかしながら、日本の政治といいますものは、皆さん御承知のように自民党の一党独裁の政治がずっと続いてきたのであります。これはわれわれ野党の力が弱かったことももちろん責任はございます。しかしながら、政権をとってきた者が権力におごりまして、そしておぼれてしまって、ともかくこのような財政状況に来たということなんであります。したがって、この政府の責任というものは私は非常に重大だ、これを直すことについては、政治家であるわれわれは責任を持つけれども、政府はより責任を感じなければならないと思うのであります。 そこで、去年はあのようにばかみたいに、ともかく公共投資をぶち込みましたので、少しは景気は上がるかと思いましたが上がりません。これは、一つ言いますと円高の関係もあるでございましょう。しかし直らない。そして一方におきましては、きのうの日銀の発表によりましても御存じのとおり、景気はもう不況脱出の方向にある、こういうようなことを言い始めております。企業はいかにも黒字になってきた、しかしながら雇用の面、失業者はどんどん出てきておる、こういうように非常に弱肉強食の経済政策がいま横行いたしておるのであります。したがって、これを直し、公正な福祉社会を建設するには、ともかく根本的にいまの行政を改めなければならないのじゃないかと思うのでございますが、いかにお考えになりますか、お伺いいたしたいと思います。 第三に、野口公述人にお伺いいたしますが、財政赤字というものは、これは症状であって病気じゃない、こうおっしゃいます。そのとおりでしょう。しかしながら根本的には行財政改革をやらなければならぬ、私らはこう考えるのであります。 考えてみますと、日本は明治以来十年ごとに戦争がございました。そのたびに行財政というものは大々的に改革が行われた。しかし、戦後三十年間にわたりまして、そういうような大きい事態がなかったがために、なれと申しますか、あるいは名東先生の言う甘えというものがどんどん広がってきておるのであります。大正初年の山本内閣を初めとする行政改革あるいは昭和三、四年ごろの行政改革と、実に思い切ったことができておりますし、やろうとしました。しかし、今度の予算を見ましても、そういうところが見えないのです。ただ、大平総理大臣は、私は政治のリーダーじゃないんだ、コンダクターなんだ、不協和音が出てきたときに、片っ方の声を抑えて片っ方を上げたらいいんだというような立場で言っておりますので、いまの大平内閣のもとでは財政再建はむずかしいのではなかろうか、私はこう思っておるのであります。 したがって、いま例として医療費あるいはまた農業問題について申されましたけれども、まだほかにもたくさんあろうと思うのです。この医療あるいは農業というような食糧問題なんかを申しますよりも、もっと根本的なものが内在するのじゃなかろうか、この点をお気づきでありましたならばお示し願いたいと存ずるのであります。要は、行財政を根本的に立て直す、それはどういうような方向かと申しますならば、私は福祉社会の実現という一点にあるのじゃなかろうかと思うのでございますが、お考え方をひとつお示し願いたいと思うのでございます。 以上です。
○名東公述人 では、簡単にお答え申し上げます。 まず最初の点、「ただす会」の方としましては非常に不十分なのでございます。たとえば問題になりました医師優遇税制でございますが、大蔵省の調査は五二%という、その五二%にやっと年収五千万以上がなりましたけれども、これは御存じのように四分の一の方々にすぎないということであります。そういうようなわけで非常に不十分であるとお答え申し上げます。 それから中小企業、一般消費税の問題に関しましては、私は実は去年夏休みに一カ月ほど小売業者の団体を回ったのでございますが、このときに非常な熱気、反対の意気込みに打たれました。はっきり言うならば、われわれの味方である自民党さんがなぜこういうことをなさるのであるかとか、そういった非常に素朴な声が多かったわけであります。それで、これならばどうしても小売業者の方々と一緒にやらねばならぬということになりまして、八月の末に一般消費税反対のための中央連絡会というのを結成したわけであります。全く中小企業の方々の熱意に打たれたというのが実情なのであります。 それから、土地税制に関しましては、将来を展望した確固たる土地政策というか、都市計画というか、そういったものがやはり前提ではないかと思います。それから土地所有と土地処分に対する課税の甘さというか、課税を優遇しているということ、これがやはりガンじゃないかと思うのです。したがって、今次の改正案は意図と逆行して事態を悪化させるのではないかと考えます。したがって、やはり課税強化によって土地を持っているということのコストを引き上げて、そして吐き出させる、そのかわり農民の方々の参画できる都市計画というものをきちっとつくって、そのマスタープランを持った公共機関が買い上げていく、こういうことが好ましいのではないかと考えます。 それから圧縮の問題、私はいろいろあると思うのですが、たとえばいまのパーキンソンの法則といいますか、ほうっておけば五・六%の年率でふえていくというわけでありますが、やはり中南米局といったようなものが一つの突破口になってますますふえていく。一般消費税であれば、報ぜられるところによると八千人の税務職員をふやすというようなこと、これは徴税費も大変ですし、失業救済の意味があるのかどうか、果たして失業救済になるかどうか、その辺も疑問でありますし、そういったように民間が減量経営しているのに、お上というか官庁のみが膨張していくということはやはり基本的に問題ではないか、こういうふうに一例を申し上げます。
○水野公述人 御質問に対しましてどういうようにお答えしたらいいか、ちょっとあれですが、一つは公債の発行をいままでずっと続けてきたという、これは財政運営のあり方の問題ですが、これは五十年度以降の経済の不況あるいは停滞が続く中で内需そのものが非常に弱いというところで、ある程度の財政面からの景気浮揚策というものは必要であった、そのために公債が増大していったのはやむを得なかったと私は思います。そういう点ではやはりケインズ政策の有効性というか、こういうものはある程度は認めるものですが、しかし反面、一部の近代経済学者が言われるように、こういう時期には幾らでも公債発行をしてできる限り財政での景気刺激をやれという、こういうものについては、また私は行き過ぎだと考えるものでありまして、こういう財政による景気刺激策にしても、将来のことを考えておのずから節度を持ってやるべきであったのではないか。そういう点で、これまでのやり方はかなり節度を超えていたというふうには思っております。 しかし、幸いにして五十四年度からこういう財政政策の転換がはっきり打ち出されたようでありまして、これに今後期待するわけでありまして、今後の公正な福祉社会の建設という場合におきましても、基本的にインフレの抑制というのはやはり大きな問題であろうかと思います。インフレが進行するということは何にもまさる社会的不公正をもたらすものでありまして、この点で、公債の発行をこのまま続けていくという財政運営はこれにつながるおそれが非常に強いわけでありまして、このあたりではっきりこういう財政運営の方向を変えて、そして財政の健全化を図り、インフレにつながることを防ぐ、こういう方向が何よりも公正な福祉社会の建設に役立つというふうに考えているわけです。 以上です。
○野口公述人 お答えいたします。 先ほど私は医療と農業の場合を申しましたが、これは具体的な例を申したにすぎないわけでございまして、それ以外にもいろいろな問題があるという御指摘はそのとおりだというふうに考えます。むしろ私は、問題のない経費を探し出す方がむずかしいくらいなのではないか、つまり、そういう意味で予算というのは問題だらけなのではないかというくらいに思っております。 それから、行政改革が非常に重要なことであって、戦前にはいろいろなことができたけれども、現在そういうことがなかなかできないような状態になっているという御指摘も私はそのとおりだというふうに存じます。ただし、やはり戦前の行政機構と比べますと、現在の行政機構が非常に複雑化していることは事実でございまして、そういうことがやはり問題の解決を非常に困難にしているという点も事実かと存じます。先ほど申しましたように、やはりこういう、たとえば行政改革の問題でも個別的にやろうとしますと非常にむずかしいというのが現実だと思いますので、サンセット法の考え方と申しますのは御承知と存じますけれども、すべて国の機関なりあるいは施策なりというものは永遠に続くということが原則ではなくて、むしろ日が沈むように、ある一定の期間で終わりになってしまうのが原則であると、原則を展開させようという考え方でございます。私は、現在こういう考え方がやはり日本でも真剣に考えられなくてはならないのではないかと思います。ただし、それはひとり国の行政のみではなくて、地方の行政機構についても同じことが言えると思いますし、あるいは特殊法人についても非常に大きな問題があるのではないかというふうに考えております。 それから、福祉社会の実現ということでございましたが、私もこれに対しては全く賛成でございます。ただし、問題は福祉というのは一体何かということではないかと思うわけでございます。私は、福祉社会の実現というのは、社会保障費がただ量的に伸びていくことが福祉社会の実現であるというふうには考えておりません。社会保障費の四四%、現在の日本の予算の場合、社会保障費の約四四%は医療費でございます。医療費について、先ほどるる申しましたようないろいろな問題があるわけでございまして、私はそういう金額の増加ではなくて、医療の場合にもやはり問題は、本当に大病にかかったときに人々が安心できるような、そういう制度をつくっていくことこそ福祉社会の実現ではないかというふうに考えておりますので、そういう意味でございましたら、私は、福祉社会の実現という御提案には大賛成でございます。
○井上(普)委員 終わります。
○伊東委員長代理 これにて井上君の質疑は終了いたしました。 次に、水平豊彦君。
○水平委員 どうも皆さん御苦労さまでございました。 私は、特に水野先生にお尋ねいたしたいと思います。 まず最初に、財政再建計画についてでありますが、この問題につきましては、たとえば本年の一月の末に財政収支試算が示されたわけであります。先ほど先生御指摘のように、過去三回にわたって示されたものよりはかなり改善されている、私もその点は認めるものでありますが、これが果たして本格的な財政再建計画にかわり得るものであるかどうか。つまり、その都度その都度数字はくるくると変わるわけでございまして、特に一般消費税というような大変な増徴を目の前にして、どうやったならば財政再建というものが行われるか慎重にわれわれは検討しなければならぬ段階であります。そうしたときに適切な審議対象となるべきこうした基本的な計画がないということはきわめて残念に思うわけでありまして、特に先生御指摘の景気回復というものと財政健全化というもののバランスのとれた方策を今後どのようにアプローチをしていくか、先生の描いていらっしゃる理想的な財政再建計画といったものについて、もう一度具体的に御表明をいただきたいと思います。 それから次に、私は一般消費税について若干お尋ねをいたします。 わが国の経済は、御案内のとおりに国際収支も物価も落ちついている。それから成長率もまだ高い方である。要するに、財政にしわ寄せが来ている。私は、このそれぞれが均衡のとれた発展をするべきだろうと思うのでありまして、そうした意味においていろいろと考えられるのは、たとえて言えば、安定成長のもとでやりますれば、これは明らかに自然増収というものも期待ができるわけでありますが、それはできない。不公平是正とか行政合理化、これはもう積極的に取り組まなければなりませんが、これすべてで対処できるかというと不十分である。赤字特例公債をこれ以上発行することは限界であるということになります。そうしますると、当然国民に負担をしてもらわなければならぬ。すなわち、増税問題が出てくるわけであります。先生も一般消費税について御肯定なさっていらっしゃったわけでありますが、果たしてこの一般消費税以外の税で増税を図るべき策というものが何かあるかどうか。たとえて言えば法人税とか所得税とかいろいろとあるでしょう。特に一般消費税に対比されて所得税というものがいつも話題に上るわけでありますが、わが国の所得税の税体系というものは、御承知のとおり二百万から三百万といういわゆる低階層といわれる方々に対する税負担というものが、諸外国と比較いたしまして非常に軽くなっている。千五百万円以上の方に対する課税が高い。もしも所得税に焦点を合わせるといたしまするならば、これは、明らかに千五百万円以上の人は数も少ないし、いっぱいいっぱいの課税でありますから限界がある。どうしてもそのしわ寄せというのは二百万から三百万階層に移らざるを得ない、ということになりますると、これは一般消費税以上の大変な抵抗を国民から受けざるを得ないわけでありまして、私ももう明らかに大反対であります。 このようにして考えてまいりますると、一般消費税との対比においてどこに税を求めるかということであります。もしも一般消費税を一応対象とするといたしまするならば、私、若干の疑問がありますのでお尋ねいたしたいと思います。 まず第一に、それは物価上昇、つまりインフレにつながりはしないかという問題がございます。これは、大蔵省あたりの見解ですと、たとえて言えば一般消費税を導入、仮に五%といたします。そうすると、課税対象は二分の一だから、五%課税されたとしても物価の上昇はその半分で二・五%ぐらいだろうというばかげた計算をしておるわけでありますが、私はどうもこんな単純計算では納得ができません。いまの赤字公債をこのまま続けていくとするならば、大変なインフレに直面するでございましょう。それをいまの段階でこの一般消費税で歯どめをする、一時的な物価高はあっても物すごいインフレにはつながらないのだ、これは歯どめになるのだ、こういうような解釈もあるわけでありますけれども、ここらの問題。そしてさらに、これを契機といたしまして便乗値上げ、この便乗値上げというのは、大蔵省あたりも、政府も、幾らありませんと言うても、庶民感覚からいたしまするならば、やはり便乗値上げがないという保証はどこにもないわけでありますから、だから、ますます不公平感といったものが増大してくると私思うのです。特に税務署に対し、徴税されるという庶民感覚は、何か税務署に対しまして距離感というようなものも感じて、そして新税導入によるところのショック度というようなものを私は受けるのじゃないか。そこに一つの大きな抵抗があるわけでありますが、いわゆるそういう衝撃度とかショック度というものは緩和できるかどうかということも、あわせてお答えを願っておきたいと思います。 その次には、よく言われておることでありますが、地方財政との絡み合いであります。税配分は、御案内のとおり三割自治と言われるように七対三でありますけれども、仕事の量、仕事を担うということになりますと、実は七割地方自治が背負っております。一般消費税を徴税、徴収いたすにいたしましても、結局この取り分といいますか、割合というもの、その税収のメリットというものがなければならぬわけでありますが、地方財政はいまやまさに、地方財政冬景色というような言葉がありまして、非常にさびれた地方財政であります。その一般消費税と地方財政への取り分とのかかわり合いについてお答えを願っておきたいと思います。 それからもう一つは、今回のような一般消費税を断行いたしますと、税務署の職員を少なくとも五千人から八千人増員をしなければならない。そうなりますと、行政改革との絡み合いで、行政改革とか簡素化とか効率化というものは、これは不公平税制の是正とともに前提条件であります。これですべて解決するとは思いませんけれども、とにかく大平総理大臣も施政方針演説の中で、行政の見直しということを相当力説されていらっしゃったわけでありますが、そうしたことを考えてまいりますると、八千人を雇わなければならぬという必要が出てまいりますると、何かほかの公務員、ほかの役所にも連鎖反応があって、財政再建第一だからやむを得ぬと考えておるとするならば、この連鎖反応が起きてきた場合にどうなのかということであります。それが一つ。 それから今度は、先ほども御質問があったようでありますが、特に中小企業に対して一般消費税というものが何か事務負担の増大になる、そして非常に転嫁の困難があるということで名東先生も御指摘なさっていらっしゃったわけでありますが、この中小企業に対して、もう少し一般消費税のかかわりあいを御説明願っておきたいと思うのであります。 それから次に、雇用問題について一言お尋ねをしておきますが、これは名東先生も、先ほど雇用対策というものは総需要分野の中ではどうしても後ろ向きになる、やはり個別対策というようなことを御指摘なされたわけでありますが、私はこの個別対策というのは具体的に言ってどういう対策であるか、お聞かせを願っておきたい。これまでしばしば政府は民間活力ということをよく使っております、潜在力を活用せよとか。ところが、どういうことであるのか、言うはやすくして、一般の人にはよくわからぬと思うのです。だから、ある人は地方自治体とそれぞれの地域におけるところの民間企業との話し合いでできるようなものであってもらいたいということを言うのでありますけれども、一体、潜在力の活用とか民間活力というものはどういうものであるか。特に今回も野党の皆さんから、雇用の創出機構をつくって、そして積極的な対応策をというようなお話がございますが、私としましては屋上屋を重ねるような気がして、たとえば労働省の職業安定審議会もありますので、それを通じて対処することがいいと思うわけでありますが、この点についても御意見を承っておきたい。 それから、しかも中小企業などに雇用問題を当てはめて考えた場合に、相当先行きといいますか、見通しを立てた上で考えてあげないと、そのときそのときの雇用状態に応じて雇用というものをぶちつけてみても、先行き不安の中で雇用というものが中小企業の中で定着するかどうか、その雇用に受け答えしていけるかどうか。つまり、線香花火のようなことではいけないと私は思うのでありますが、この問題について。 それからもう一つは、いずれも予算を伴う問題でありますが、定年制の法制化、六十歳がまず最初にありそれから六十五歳にするとか、あるいは定年制延長に当たっては、補助金とか年金なんかでそれを受けていくというようなお話もあるわけでありますが、これは、私は自由主義経済の原則に反するような気がいたしまして、行政指導ならいいが法制化するということはどうかと思うわけでありますけれども、この問題についても御意見を承っておきたいと思います。 それからもう一つは、歳出構造について野口公述人にちょっとお尋ねいたします。 先ほど食管、お米の問題とか健保の問題で先生の御高見を拝しました。実は従来三Kと言われている国鉄、食管、健保に対しましては私も批判的であります。今日の予算、なかなかかっこうよくまとまっておるようでありますが、投資的経費の伸び率が一七・九、経常的経費の伸び率が一〇・七、形の上からながめてまいりますとかっこうはいいように見えますが、何か三K問題に対する取り扱いは高度経済成長時代の名残のような気が私いたしておるわけでございまして、こういう作業はいろいろと大蔵省の皆さんがおやりになるのでしょうけれども、政策決定はわれわれ政治家がするわけであります。したがって、われわれも決意を新たにいたしまして、こうした問題にこれから対処していかなければならぬと思うのでありますが、特に、これに加えて社会保障関係費なんかは、経常費経費の縮減の中でその四分の一を占めると言われる社会保障関係にしわ寄せしてくることは当然のことであります。御案内のとおり、昭和五十三年における社会保障関係費の占める割合は対前年に比し一九・一、それが本年一二・五に下がっている。下がっているならば、私は量的だけにとらえようとは思っておりませんけれども、こういう問題というのは、今回大蔵省も予算編成の基本的な態度にいたしましたように、スクラップ・アンド・ビルド、こういう考え方からいたしますならば、国が国の立場で当然手を差し伸べてあげなければならぬ難病対策等の問題は、片一方で削減されたならば、片一方で緊急的な社会保障対策に全力を傾倒して対応してもしかるべきではなかったかと思うのでありますけれども、こうした歳出構造というものを徹底的に検討していかなければならぬと思うわけでありますが、私ども政治家に対し、識者たる先生の御高見をお聞かせ願っておきたいと思います。
○水野公述人 いま水平委員の方からの御質問でありますが、まず最初に財政再建計画の問題であります。一般にこれは財政計画と言われるものの問題でありまして、財政計画といいますと、わが国ではまだそういうものはつくられておりませんが、アメリカとかヨーロッパ諸国では、この財政計画というものは実際かなりつくられて、財政運営上かなりの役割りを果たしておるわけでありますが、それらの多くは計画という言葉がついておりますが、大体財政展望的なものでありまして、現在までの政府の諸施策、それが将来どれだけの財政負担をもたらすかといういわゆる後年度負担といいますか、これを一応確かめて、そして財政資金の効率的な配分というようなものをより長期的な観点から考えていこうという、そういう財政の効率化の一つの手段として考えられているわけであります。わが国でもこういったような後年度負担型の財政計画というのはいま大蔵省の方で検討されておりますが、私が先ほど財政再建計画と申し上げましたのは、そういったような、より長期的な視点からのそういう財政計画というよりもむしろ差し迫った、五十年度以降の極度に悪化したわが国の財政収支の姿というものをいかにして正常な姿のところまで持っていくかという、それについてのめどなりあるいはその具体的な方法なり、こういうものを示すものとしての財政再建計画が必要でないかという意味で申し上げたわけであります。これについては、従来までは国でつくられます経済計画の中に財政部門がありまして、そこにある程度こういう性格のものがすでに盛られております。それから五十二年以降作成されております財政収支試算というものがこういうものに役立ち得るものでありますが、特にこの財政収支試算については、これまでは単なる仮定に基づく試算の数字を示したものであるということで、特にそれで計画的な色彩を持たせるというものではなかったわけでありますが、私は、この段階になりますと、特に一般消費税の導入というような大きな問題をこれから議論する段階になりますと、大ざっぱでもいいからそういったような財政再建計画のようなものを示して、その大きな展望の中で議論をすべきではないかということを考えているわけです。 それから第二に、一般消費税の問題につきましては、一般消費税以外の税との関係はどうかということでありますが、やはり財政の再建を図っていくために基本的にはかなり大きな増税によらざるを得ないということ。それから、その増税を、では何でやるかという問題でありますが、考えられる候補者としては所得税の増税、それから法人税の増徴あるいはその他の現行の間接諸税の増徴、それから各種新税の創設というのがありますが、特にその中でも法人税の増徴については、現在法人税の税率というのはかなり高いところまでいっておりまして、国際比較の観点からいいましても、あと高めるとしても二、三%程度の余地のものでありまして、これでもって財政再建の柱にするほどの大きな税収を期待するというのは無理であります。また現段階でこういう法人税の増徴をやるということは、景気に対する配慮という点からも無理であろうと考えられます。そうしますと、やはり具体性をもって浮かび上がってくるのは所得税とそれから一般消費税の創設の問題でありますが、これについては先ほど水平委員がおっしゃったような意見に大体同感でありまして、やはり税理論的には所得税の増税でやるべきだという議論もかなりあります。またそれに根拠のないこともありませんが、私はやはり日本の現状というものを考えますと、まず一般消費税の創設でやるべきであるというふうに考えます。 それから一般消費税を導入した場合に、これが物価上昇に影響を与えるのではないかという点、その点の御心配でありますが、この点については私は、税率仮に五%で導入した場合に、この一般消費税は、御承知のように各取引段階においていわば付加価値額にかかっていくわけでありますが、各段階でかかっていった税というものは、結局その売上価格に上乗せされまして、そういう形で税の転嫁が行われまして、最終的に消費者のところまで転嫁が行われて消費者が負担するという性格の税でありますが、そういう形でもしその転嫁が完全に行われたとすればどの程度の物価上昇が起こるかということ、これもいろいろの計算がありまして、社会党の方で計算されたのもありますし、また政府の大蔵省の方で計算されたのもありますが、私はその点だけから申しますと、やはり二・五%程度の上昇というのが妥当な線ではないかというふうに考えるわけです。ただしこれは、いま言ったように、そのほかの問題を考えないで完全転嫁が行われたとした場合の話でありますが、ただ現実の問題としましては、一つはそういったような完全な税の転嫁というのは必ずしも起こらないわけでありまして、不完全な転嫁しか起こらない、その分だけ物価上昇分というのは差し引かれるわけであります。 それからもう一つは、そういう物価上昇の性格としては、本来は一回限りのものでありまして、たとえば経済全体としての超過需要が引き起こすところのデマンドプル・インフレのような、そういう性格のものとは違うわけでありまして、本来は一回限りのものでありますが、ただそれが場合によっては便乗値上げとかあるいはそれが賃金にはね返り、賃金の上昇がまた物価にはね返るという形で物価のスパイラル的な上昇というものをもたらすことがないとは言えないわけであります。しかしその問題は、やはり一般の経済情勢、特に財、サービスの全体としての需給関係がどうであるかとか、それからまたそれに対する政府の物価対策がどうであるかといったものに大きく依存するわけでありまして、そういうものを抜きにしては一般的に論じられない問題でありますけれども、全体、一般的に言いまして、大きなそういうデマンドプル的なインフレ要因というものがそれほど大きくはないという時期、あるいはまた導入に際して十分な政府のPR、指導をやるとか、あるいは物価のそういう上昇の起きないようないろいろな物価対策の手を打つというふうなことをやれば、そういった便乗値上げとかあるいは悪循環的な物価上昇というものは防げるというふうに考えて、この問題は、当初の導入の率によりますが、五%程度の導入であればそれほど大きな物価に対する影響はない、といいますか、それほど心配するほどのものはないのではないかということ、それから地方財政の問題につきましては、これがやはり地方財政の歳出面で諸価格の上昇によりまして実質的な財政支出の低下というものをもたらす、そういう点でのマイナス面がありますが、一方、今回の一般消費税の導入につきましては、地方に対してはその税収の一部を地方消費税という形で地方に分けることになっております。それからまた、これについての従来の地方税の調整というものもかなり配慮されてありますので、特にこれによって地方財政が著しく不利になるというふうなことはないと思います。しかし、いずれにせよ、こういう一般消費税の導入を契機にして、国税と地方税全体を合わせて税配分の見直しというふうなことは、やはり今後大きな問題として取り組むべき問題であろうと思われます。 それから、あと税務職員の増大が必要でないか、それが連鎖反応的に財政の不効率に導くかもしれないということでありますが、これはしかし、やはりこういう一般消費税のような大きな税を導入する場合に、ある程度の税務職員の増員というものは避けられないと思うわけであります。これについての財政支出の増大というものは避けられないと思いますが、いずれにせよ、こういう税を取る場合の徴税のコストというものが必要なわけでありまして、余りまたこれをけちりますと、かえって税務執行面での不公平というものをもたらすおそれがあるわけでありまして、これは仕方がない問題ではないかというふうな気がします。 それから、中小企業に対する問題としましては、中小企業に対しては一般消費税の導入が特に中小企業を圧迫しないという配慮から、一つは年間売上高二千万以下というものについては免税点にしてありまして、こういう業者は外されます。また、限界控除の制度で二千万から四千万までの規模の業者に対しては徐々に税率を引き上げていくということ、〇%から五%まで徐々に引き上げていく、そういう配慮がなされております。それからまた、納税の面におきまして簡易課税方式というものを選択できるという配慮もなされております。それから、この仕組みでは食料品が非課税になっておりまして、中小、特に零細中小業者というもののかなり多くはこういう食料品を扱っているわけでありまして、こういうものが食料品の免税という形でやはりその負担の軽減というものが事実上行われるのではないか、こういう点での各種の配慮がなされております。 それから雇用対策の問題でありますが、これについては、現在でもやはり不況からの回復過程で特に雇用問題についてはまだ大きな問題が残っておりますし、必ずしも十分な回復もなされていない、さらに、中高年雇用の問題とか重大な問題を抱えておる、それに対する対策が必要であるということ、また、これを重点的な政策課題にしなければいけないということは、私は当然であると認めておりますが、しかし、一方、最近の論調を見ておりますと、余りにも雇用問題というものを悲観的に考え過ぎている面もあるのじゃないかという気もいたします。といいますのは、一応全体としてのマクロ的な観点からしますと、雇用情勢というのは、全体の経済情勢の回復に伴いまして、それにある程度の時のおくれがありますが、徐々にやはり改善の方向に向かっているのではないかという見方をしているわけでありまして、基本的にはやはり景気の回復に大きく依存している。しかしそれでもってもやはり中高年雇用の問題とか女子労働の問題とか、こういう点についてはきめの細かい雇用対策が必要である。その場合に、雇用対策の問題というのは、やはり実際に雇用するのは私的な企業でありまして、それを無理に押しつけるわけにはいきません。しかし最近の雇用政策を見ておりますと、従来国の責任とされておったものがある程度は民間の企業にもそれを分担してもらうという方向に行っているようでありまして、これは一つの流れでありますし、また結構な話でもありますが、逆に言いますと、余り行き過ぎますと、雇用対策というものについての国の責任と私的企業の責任というものがあいまいになるおそれもあるのではないかという点、これは注意を要すると思われます。 ちょっと時間が長くなりましたが、以上です。
○名東公述人 水野さんへの質問だと思いまして、うかつで論点を大分逸したわけでありますが、簡単に一つ、二つ申し上げますと、たとえば転嫁の問題ですね。これは御存じのようにEC型のインボイスを大蔵省はおとりになっていないものですから、要するに粗利益にかけますね。そのために税額そのものがあいまいになるのです。そのために、たとえば強い大企業などであればそれに向かって何倍にも転嫁できるわけですね。ところが、たとえば中小企業の人であれば一万円の五%で五百円、そうすると一万五百円、その五百円をまけろ、隣の商店街で買いますよと言われたら、恐らく五百円まけざるを得ないのじゃないか。それは企業転嫁になるわけですね。企業転嫁すると、そういうわけで弱い者はどうしても自分が負担せざるを得ない、大きいものは、極端に言えば何倍にも転嫁できる、こういうようなアンバランスが出てくる、こういうことであります。 それから、活力の問題は、いま御存じの重化学工業がだんだんと操短をやって、いま非常な悲鳴を上げているわけでありますが、新しい都市型先端産業とかいろいろな第三次産業とか、それから第二次と第三次の間とか第四次とか言われているような新しい産業が興ってきつつあると思うのですね、まだはっきりした形態はとっておりませんけれども。そういったところにさばけていくということはございますが、私は、雇用問題は将来だんだん重大な問題に発展していくのじゃないかと思います。したがって、それをカバーするためには選択増税、不公平な税制を正したり、石油の方々にはお気の毒ですが、省資源のためにはやはり石油税についてはもっと御負担を願うとか、そういったものによって重点的に雇用創出のために努力する必要があるのじゃないかと思います。
○野口公述人 簡潔にお答えいたします。 御指摘のように、五十四年度予算におきましては社会保障関係費の伸びが予算全体の伸び率より低くなっておりますが、ただ公共事業関係費と経済協力費を除きますと、ほかの経費も予算全体の伸び率よりは低い伸びになっておりまして、その意味では、私は社会保障関係費において特にしわ寄せというようなことはなかったのではないかというふうに考えております。むしろ、たとえば生活扶助基準が八・三%改善されておりますし、年金でも物価スライド制が導入されている、あるいは先ほどの薬剤費の二分の一負担の見返りとして、家族本人の平等給付という措置がとられておりますので、私は、社会保障関係費の伸びが五十四年度予算で低かったのはむしろ単価の上昇が低かったということが基本的な原因ではなかったかというふうに考えております。 たとえば医療費の問題につきまして、御指摘のように難病対策等の分野に全力投球をせよという御指摘は私はそのとおりだと存じますが、そのほかにも、たとえば保険外負担をどうするかという問題も、やはり医療保険の問題について考えられなくてはいけない問題ではないかと思います。つまり、そういったものは積極的に改善されていくべき問題であるというふうに考えます。ただし、この場合に、その財源を一般財源に求めるかあるいは保険料に求めるかということは選択の問題ではないかと私は考えております。 公費負担医療は、現在全額一般財源が投入されているわけですけれども、それについてもやはり保険のような仕組みを考えるということは理論的には不可能ではないような気がいたしますし、保険外負担の解消は、基本的には保険特別会計の中で解消していくべき問題ではないかというふうに私は考えます。 ただし、その場合に、保険外負担の解消にしましても医療保険そのものの制度の根幹にかかわる問題でございまして、こういったものが微調整でできるかどうかというところが一番大事な問題ではないかと思います。社会保障一般の問題につきましても、やはりこれまでのように微調整で問題が解決できるような事態ではない、その制度の根本が見直されなければいけないというのが現在の財政が抱えている問題ではないかと私は考えておるわけでございます。 以上でございます。
○水平委員 どうも皆さんありがとうございました。 終わります。
○伊東委員長代理 これにて水平君の質疑は終了いたしました。 次に、大成正雄君。
○大成委員 野口先生に最初に承らせていただきたいと思います。 先生の先ほどの御説を承っておったわけでありますが、五十三年度予算に対比をいたしまして明年度予算は有効需要政策の転換をした姿勢が出ておる、こういう御指摘でございます。確かに表面的にはそういうことではございますけれども、たとえば公共事業だけでも二二・五%という伸びであります。問題はその公共事業の中身の問題だと思うのです。いまのような公共事業に対する予算の張りつけ方が果たしてわれわれが期待する財政構造の転換まで持っていけるのかどうかということが問題だと思うのです。いまの予算をいろいろ判断しましても、財政の硬直化ということが非常に問題だと思うのですね。たとえば経済七カ年計画を見ましても二百四十兆円の総投資額に対して、これを算術平均で割っても年三十四兆円ですか、七カ年の問にそれだけの公共投資をしていこう、諸投資をしていこうということですね。それで、そういったことが中成長とか低成長とかいったこの展望の中で許されるのかどうか、まず財政の硬直性を破壊しない限りは健全性の回復はあり得ないのだと私どもは理解をいたしておるわけなのであります。 先生に承りたいことは、ある程度の継続的なあるいは中長期的な視野のもとにおける前向きの投資はやっていかなければならないけれども、そういう姿勢の中でこの財政の病根をなくしていくためにはどうしたらいいのかということ、医療あるいは健保、国鉄、いわゆる三Kに代表されていますが、こういうこと以外に、先生としてはどのようなことを考えておられるかを承りたいわけであります。特に、高度成長型の財政投資あるいは財政資金の誘導、こういったことがまだ数多く残っておるわけでありますから、その辺のところを承りたいと思います。 それから、第二点は、先生お触れになりませんでしたけれども、財投が問題だと思うのですね、一般会計だけでなく。財投自身が高度成長志向の財投であるわけでありますから、そもそもこのように増税であるとか、あるいは民間の貯蓄が超過している、あるいは大幅な国債を発行しているという条件下において、いまのような財投の仕組みは許されないとわれわれは判断しているわけであります。 〔伊東委員長代理退席、委員長着席〕 ですから、財投そのものにメスを入れていかなかったら財政の病根はなくならないと思うのですが、この点についてひとつ承らせていただきたいと思います。 それから第三点としては国債の発行条件の問題でありますけれども、先生は、他の御所論を拝見いたしますと、特例債の一部を超短期債として運用したらどうかということを主張されておるわけであります。いまの手形市場や現先市場の状況からして、超短期債というものはどの程度食い込むというか、消化する可能性があるのか、この点をひとつ承らせていただきたいと思います。また、超短期債を発行する意味、目的は何なのかということ、これを承りたいと思います。 それから国債に関する二番目の問題としては、資金運用部資金によってある程度国債を消化したらどうかということもあるわけでありますが、御承知のとおり郵貯にしても伸び悩んでおるといった状況下において、この資金運用部に国債がどの程度依存できるのだろうか。また、そのことによって第二番目に、先ほど申し上げた、財投そのものにメスが加わらない限りは運用部の問題も解決しないわけでありますから、それとの関連もあろうかと思うのでありますが、その点を承らしていただきたいと思います。 最後に名東先生に承りたいと思うのですが、先ほど、この税収の不公正をトーゴーサンピンということで御指摘いただいたわけでありますが、長く言われておる有名な表現ではございますけれども、たとえば納税者の背番号制、国民総背番号というか、その背番号制については先生はどのようにお考えになっておられるのか承りたいと思います。 それからもう一つは、今年度の予算から言いますと減税がないわけでありますから、結局ある程度の物価調整減税をしない限りは、実質的にはたとえばサラリーマンの場合には増税になるわけでありますが、この点についての意見を触れていただければありがたいと思います。 以上でございます。
○野口公述人 お答えいたします。 四点問題を御指摘いただきましたが、まず第一点でございます。私は、安定成長と高度成長期の一つの違いは、やはり資金需要のパターンが変化していったことにあると思います。御承知のように、高度成長期における資金需要のパターン、資金需給のパターンと申しますのは、民間の企業部門が大幅な資金不足部門になりまして、民間の家計部門が大幅な資金過剰部門になって、つまり、民間の家計の貯蓄が、民間の設備投資を中心とした企業の投資に向けられるというような資金循環のパターンがあったわけでございますけれども、この形が大きく変わっていくということが一つの特徴であると思います。つまりへ民間の企業部門における資金不足の度合いが少なくなっていく、あるいはゼロにまでなるかもしれませんけれども、そういった形で資金需給のパターンが変わっていくという状況を考えますと、少なくともここ数年の状況を見てみますと、家計部門での民間の貯蓄というのはなお非常に高い伸び率を示しているわけです。つまり、そういったような意味で民間部門における貯蓄と投資のアンバランスが生じているという事態があると思います。 そういったようなことを考えますと、少なくともマクロ経済的な観点からいたしますと、そういう過剰な貯蓄をどこかで吸収する必要があるわけです。それはやはり公共投資で吸収するかあるいは民間の部門において、生産力の増強に直接には結びつかないような形での投資というものによって吸収していかざるを得ないと思います。生産力に直接結びつかない形での投資と申しますのは、たとえば住宅投資ですとかあるいは都市関連の基盤を整備していくとか、それから民間の企業が鉄道をつくる、こういうことを指しているわけでございます。そういったような中長期的な観点から、私は今後も公共事業の役割りはきわめて大きいものがあるというふうに考えます。これは、先ほど申しました短期的な観点から、景気刺激という観点からするのではない、つまり、ここで御指摘のように、まさに量が問題ではなくて、中身が問題になるわけです。つまり、公共投資についても、それを経済成長率との関係でどれだけの量をやるということではなくて、どういう部門に公共投資を行って、どういう社会資本の整備を行っていくかということが大事であると思います。これはどういう部門が望ましいかということは、皆様方それぞれのお立場によっていろいろ御意見が異なる問題ではないかと思いますが、私の個人的な意見は、やはり都市基盤の整備というようなことに対して社会資本が重点的になされていくことが必要ではないかというふうに考えております。 それから第二点、財政投融資計画の問題でございますけれども、財政投融資計画の基本的な姿というのは、戦後形づくられていったわけですけれども、これはやはりその当時の日本経済の状況に合ったものであったというふうに思われます。すなわち、民間の経済部門においては非常に旺盛な資金需要があったわけでございまして、他方において、たとえば一般会計の公債というものは発行されておらなかったわけでございます。したがいまして、たとえば郵便貯金で集まってきたお金をどこかに運用するとすれば、それは戦前のような形で国債に運用することはできないという状況にあった。その反面、民間の資金需要が非常に強かったわけですので、したがって、そういうような経済情勢を反映して財政投融資計画の基本的な仕組みと申しますのは、資金運用部資金を政府関係機関に融資するという形になっているわけでありまして、それが現在まで続いているわけでございます。こういったようなものが安定成長期の経済に合ったものであるかどうかということについては、私は御指摘のように大変疑問ではないかというふうに考えます。先ほどは一般会計のことだけを申しましたけれども、やはり財政投融資計画についても安定成長期に合ったような仕組みを構想するということが大事ではないかと思います。 それで、これをどういうふうに改革するかということは、一つは国債の吸収との問題で後で申し上げたいと思いますが、もう一つは、たとえば現在の政府関係の金融機関が行っているような融資の業務が、果たして現在も従来のように重要なものかどうかということには若干疑問を感じるわけでして、たとえば都市開発に対する融資ですとか、そういったようなものに政策金融の流れを転換していくということも大事ではないかというふうに思います。 それから三番目に、私がいろいろなことで申しておりました超短期債構想についてお触れいただいたわけでございますけれども、超短期債構想と申しますのは、国債の発行条件の多様化ということが言われておるわけでございまして、ただし、普通多様化という場合には、あるいは短期化という場合には、大体一年程度のものが限度になっております。これは主として個人消化を前提にした構想であると思うわけですけれども、私が提唱しておりましたのは、もっと短期の国債を歳入の手段として発行したらどうかということでございます。たとえば政府短期証券の期間を若干上回る程度の短期債を発行して、それを個人消化ではなくて、現先市場ですとかあるいは手形市場における法人の余資を吸収するものとして発行するということが考えちれないだろうかという構想でございます。 この意義、目的は何かという御質問でございますけれども、一つは、もちろんその国債の消化をやりやすくするということにあるわけでして、現在の国債の消化が行き詰まっている一つの条件 は、よく指摘されますように、十年もの長期債に偏っているというような構造が一つの原因ですので、それを多様化するというところにあるわけでございます。 それからもう一つの目的は、本来、金融政策を機動的に行うためには、市場に超短期債が存在しているということが非常に重要であるわけでして、現在の日本では、政府短期証券もそういうような役に立つような形にはなっていないわけですので、金融調整の手段を提供するという意義が一つはございます。これは恐らく日本の金融市場にとっては非常に重要な問題ではないかというふうに考えております。 それからもう一つの意義と申しますのは、この超短期債は建設公債ではなくて、特例債に限ってやったらどうかというふうに思っているわけですけれども、その目的は、特例債というのは特例債であるということをはっきりさせるという点にあるわけです。つまり、特例債が長期債で発行されるということの意味づけというのは、私はどうしてもよくわからないわけでして、特例というのは、異例の措置として財源が不足したから発行するというわけでございますから、それはあくまでもそういう異例の歳入補てん債という性格をはっきりさせるために超短期債で発行するということの方が望ましいのではないかと思います。 これがどの程度可能かという御質問でございますけれども、当然、超短期債は市場の実勢を見ながら発行されることになりますので、発行量は金融情勢によって大きく影響されることになりますけれども、現在の現先市場及び手形市場の規模、それからその急激な成長のスピードというようなことを考えますと、非常に大ざっぱな目安でございますけれども、大体年間二兆円程度の発行は不可能ではないのではないかというふうに考えております。 それから最後に、資金運用部資金における国債の引き受けの問題でございますが、私はやはり財政投融資計画を考え直すべきだということを申します一つの意義は、資金運用部資金において現在も国債の引き受けがなされておりますけれども、それよりももっと飛躍的に大きな額を資金運用部資金で吸収する、そういうものが安定成長期の財政投融資の姿ではないかというふうに考えているわけでございます。したがって、そういったような役割りは大きいと思います。具体的にどの程度できるかという御質問でございますけれども、これは確かに御指摘のように、郵便貯金の伸びというのは伸び悩んでおります。かなり高度成長期時代とはその点は情勢が違うわけですけれども、ただ、これは御承知のように、資金運用部資金の伸びと申しますのは、普通、銀行預金の伸びという場合と違いまして、銀行預金の伸びというのは、残高がどのくらい伸びたかということを言っているわけでございますけれども、資金運用部資金の伸びというのは、伸びた額が前年度に比べてどのくらいふえたかということを言っているわけでございますので、伸び悩んだと言いましても資金運用部資金が伸びていることは間違いないわけでございます。したがいまして、今後安定成長期においてそういったような構想の持つ意味は、私はかなり大きいのではないかというふうに考えております。 以上でございます。
○名東公述人 結論的には、総背番号制を実施する必要はないと考えております。と申しますのは、問題のキャピタルゲインですね、これをつかまえる場合、御存じのように所得税法第九条によりまして、現在の二十万株五十回、これを今度大蔵省において二十万株にするということは私は非常にいいことだと思っております。ただ、十万株ぐらいにしたらどうか、二十万株を十万株に引き下げる、要するに大口だけをつかまえればいいという、そういったような少額の株主とか、少額配当者をいじめつける必要はないのです、大口さえつかまえれば。年収一千万円以上の人はわずか全体の〇・五%にも足りないという数ですから、その人たちだけを、証券会社ないしは銀行の協力をぜひ願って、その人たちをつかまえるということが基本だと思うわけであります。配当控除でも、これはいまごろ法人擬制説なんという古い学説を唱えていること自体おかしいのでありまして、たとえば、配当金は損金とみなして損金控除をそのかわり認めるという会計処理なり税法処理をやればいいのではないかと思うわけであります。 それから、物価調整減税は非常に好ましいと考えるわけでありますが、しかし財源が非常に不足しているということと、それから来るべき雇用不安もありますし、何しろインフレの危険が差し迫っていると思うのです。そういう意味では一律の、たとえば今度地方税は少し緩和されましたけれども、国税の二百一万五千円の課税最低限、それ以上の人たちに向かって所得減税をするよりは、それ以下の人たちに対して、私かねがね申し上げている負の所得税といいますか、そういったようなものも、やはりインフレで一番困るのはそう言ったら失礼ですが最下層の方々だと思うのです。そういう人たちに、中間も苦しいけれども、下の方々にできるだけの財源をそこに充ててまいる方がいいのではないかと考えるわけであります。
○大成委員 ありがとうございました。終わります。
○竹下委員長 これにて大成君の質疑は終了いたしました。 次に、二見伸明君。
○二見委員 最初に、三人の先生方にお尋ねしたいのですが、秋以降にインフレのおそれがあるのじゃないかと言われていますけれども、三人の先生方は秋以降のインフレ懸念というものに対してどういう見通しを持っておられるかお尋ねをしたいと思います。 それから、水野先生には一般消費税と景気との関係についてお尋ねをしたいのですが、私は、一般消費税を導入いたしますと景気の足を引っ張るのではないかと恐れております。もし、景気の足を引っ張るのだということになれば、一般消費税の導入をする立場に立っても、導入の時期というのはかなり慎重に選ばなければならないだろうと私は思うわけですけれども、その点についての御見解を承りたいと思います。 もう一つ、地方財政もたとえば五十四年度では四兆円の不足が出ておりますけれども、これに対してはいま小手先の手段を弄してやっておりますけれども、交付税率を引き上げることによってこれを解決するのがいいのか、あるいは一般消費税を導入してその一部をもらうという形で解決するのがベターなのか、その点についての御見解を承りたいと思、います。 それから名東先生には、先ほど、医師優遇税制について今度は税制改正が行われる予定でありますけれども、非常に不満だというお話ございましたけれども、現行から比べて不満だけれども一歩前進というふうに評価されるのか、これでは不満だから出し直してこい、全面拒否ということになられるのか、その点についてのお考えをお願いしたいと思います。 また、ただいま総背番号制の話がございましたけれども、私も一総背番号制というのはプライバシーとの関係もありまして必ずしも賛成ではないわけですけれども、ただ架空名義だとか、そういう預金をばっちり押さえるには手段としてはこれほどいいものはないというふうに国税庁では自画自賛しております。その点、不公平をなくすという面から考えたならば背番号制についてはどうお考えになるのか、お願いいたしたいと思います。先ほど反対だというお話でございましたけれども、お願いしたいと思います。 それから野口先生には、行政改革でいろいろお話がございましたけれども、公務員の定年制についてはどうお考えになられるのか。それからいつも予算編成時期になりますと、全国から知事さんを先頭に永田町かいわいに押しかけてまいりまして陳情合戦が行われると思いますけれども、それを野口先生はどういうふうにごらんになっているか。あわせて補助金行政のあり方についてまで御言及いただければありがたいと思います。以上、お願いいたしたいと思います。
○水野公述人 まず最初のインフレ懸念の問題でありますが、これは五十三年中は円高の影響もありまして特に卸売物価は下落を続けましたし、消費者物価の方も四%程度の上昇率ということで非常な安定基調であったわけでありますが、五十四年度に入りまして、一つは従来の円高が大体とまりまして、円高によるところの物価引き下げ圧力といいますか、これが余り期待できなくなったということ、それから公共料金の各種の引き上げというもの、それから海外での物価高、こういったような面で物価上昇が起きるのではないか。それから特に一部の土地取引の活発化とか、商品市況の活発あるいは不況カルテルによるところの生産制限による一部の商品の価格上昇、それにさらに国債の発行の影響というようなものでインフレ懸念が心配されておりますが、私が見るところは、当面問題になっているのは一種のコストインフレでありまして、これはそれによるある程度の物価上昇というのは避け得ないというふうに考えられます。しかし、インフレにとってもっと大事なといいますか重要な問題はやはり需要インフレでありまして、これは現在の景気回復というのがこのまま順調に進みまして需給ギャップがかなり解消していきますと、しかも財政で従来のような赤字財政を続けておるというふうになりますと、これが本格的な需要インフレを引き起こすという、それを最も心配するわけであります。それがことしじゅうにそういう段階になるかどうかというのは景気回復の程度いかんでありまして、ある点からいけば、そのおそれが生ずるほど景気が回復すれば結構だということも言えますが、恐らく現在の景気回復の速度からいけば、それが需要インフレにまで結びついていくというほどのところまではいかないだろう。しかし、先ほど言ったいろいろなコストプッシュ要因あるいは一部の部分的な超過需需要因によるところの物価上昇というもの、これはある程度は起こるだろうというふうに考えております。 それから一般消費税と景気の関係でありますが、これは一般消費税そのものを孤立させて考えれば、ある程度のデフレ効果というものを持ちまして景気に対してマイナスの影響を持ちますが、しかし一方では、これはその税収というものがどう使われるかという歳出の面を同時に考える必要がありまして、この税収の増加を固定させておくのであればデフレ効果だけにとどまるわけでありますが、同時に歳出の増加というのが他方で伴えば、そちらの方での需要拡大効果というものがありまして、必ずしも一般消費税の導入というのは即景気を下降させるというふうに短絡的に考える必要はない。ただしかし、増税そのものというのはやはりデフレ効果を持ちますから、導入の時期とかあるいはまた最初の導入時点における税率の大きさというようなものは十分景気との関係というものを考慮して決めるべきだと思います。しかし、具体的に申しますと、私は、仮に五十四年あたりから導入しても差し支えなかったという考えを持っております。 それから地方財政の方の問題でありますが、これは地方財政も歳入不足で苦しんでおることは当然でありますが、それ以上に国家財政の方が苦しんでおるわけでありまして、その国家財政の方の財源を地方財政の方でふやすという形で、地方の方だけをよくするというのも考え物だと思いまして、当面は、やはり一般消費税の導入でその一部を地方消費税として分かち与えるという形で、しかし、それによっても問題は解決するわけではありませんで、地方財政の財源の強化というような問題は、今後の財政再建の中でもやはり重要な問題として取り組んでいくべきだと思います。 以上です。
○名東公述人 インフレはもうすでに進行しているわけです。最初に私申し上げましたように、円の外面はいいけれども、内面はもう一ドル四百円の値打ちしかないのですよ。それから、これは戦前の九年から十一年の平均をとって、去年の九月現在の総理府統計局の調査資料によったわけでありますが、そうすると、勤労者の実収入は二千三百倍ぐらいです。それに対して理髪とかああいう技能者は三千何百倍。それから、米とか家賃とかそういったような生活必需品は大体千三百倍前後です。だから、もしデノミをおやりになるとすれば、ドルとの関係では百分の一ですけれども、戦前との比較ではもう千分の一やらなければ合わないのですよ。それを、マスコミと言うと失礼かもしれませんが、何か発表するときに対前年とかいう一年間の短いところばかりとるから何かの三%とか四%、ああいうことはごまかしというよりはわからなくてだめなんです。そうじゃなくて、もう少し長い距離で五年とか十年とかとれば、明らかに現在もうインフレは進行しているわけでしょう。過剰流動性があるということはM1だけじゃなくてM2、M3、短期証券のM3なんかを見たら明らかに過剰流動性と言わざるを得ません。それに、いま水野さんおっしゃったようなコストインフレの問題、それから海外から来るオイルショックでしょう。こういうものは防ぎようがないわけです。年間約一〇%という値上がりは防ぎようがないわけですよ。こういうものが重なってきて、油が流れておる過剰流動性の上にそういうたとえば公共料金が上がってくれば、それが点火役になって上がってくるわけです。さらにそれから一般消費税というふうになればさらに燃え上がる、こういうわけであります。 それから医師優遇税制は、私やはり一歩前進だと思いますね。だから、これをきっかけにやはりもっと国民の納得できるように突き進んでいただきたい、こういうふうに考えます。 それから総背番号制は、やはりこれはプライバシー、おっしゃったように経済外といいますか、経済を超えた問題でありまして、そういうものとごっちゃにしない方がいいのでありまして、やはり大口をとらまえることが一番肝心なことでありまして、小さいものまで——土地問題だってそうだと思うのですよ。百坪や二百坪の小さな自分の土地ぐらいのものを、住宅地ぐらいのものを追及する必要はないと私は考えております。
○野口公述人 御質問のありました三点について簡潔にお答えしたいと存じます。 まず第一に、インフレの問題でございますけれども、昨年は物価の基調が非常に安定していたわけでございますけれども、その一つの重要な要因は円高という外生的な要因があったことでございまして、ことしは恐らくそういうことに期待できないということが第一点。それからもう一つは、大量の国債が、特に金融機関に蓄積しているわけでございまして、その国債の価格維持というようなことから金融政策が緩和されて、マネーサプライがふえるという可能性は十分にあると思います。したがって、そういったような要因を考えますと、決してインフレの問題について楽観ができないということは事実であろうかと思います。ただし、二番目に申しましたことは、金融政策をどれだけうまくできるかという政策上のことにももちろんかかっているわけでございます。それから、インフレというのは、経済学的にはやはり非常にむずかしい問題でございまして、特に先ほど将来の予想というようなことを申しましたけれども、インフレになるという期待がインフレを引き起こしてしまうということもあるわけでございますので、この問題は非常にむずかしい問題であることは事実だと思います。それから、一般的な価格上昇の問題ではございませんが、先ほどもちょっと触れましたように、地価の上昇というのはやはり憂慮すべき問題ではないかと思っております。これに関して、今年度予算におきましては、土地税制がどちらかといえば緩和の方向に向かったということに関しては、私は大変不満に思っております。 それから、二番目に御質問のございました公務員の定年制の問題でございますけれども、実は私自身も国立大学の教官でございまして公務員でございますから、余り厳しい定年制がしかれると私自身にも影響がありますが、ただ、客観的に考えてみますと、公務員は、民間の方々に比べて共済年金等の老後の保障が比較的に充実しているということは事実だと思いますので、そういったようなことを考えますと、公務員にも定年制というのは考えられてよろしいのではないかと思います。ただし、これは国家公務員だけに定年をしくということでは恐らく片手落ちになるわけでございまして、たとえば特殊法人についても同じようなことを考えなければ実効性は上がらないと思います。それから恐らく地方公務員についても同じような問題があるかと思います。特殊法人について同じようにせよということの趣旨は御理解いただけると思いますけれども、特に日本の行政を見てみますと、またアメリカとの比較になって大変恐縮なんですけれども、現在アメリカの予算局の局長というのは私と同じくらいの年でございます。アメリカの場合には、特にカーター政権はそうなんですけれども、非常に若い人間が政権の中枢を担っているということがございます。先ほどアメリカの民主主義は若々しいということを申し上げたわけですけれども、やはり一つの理由はそういう人間の若々しさにあるのではないかというような気もいたします。 それから最後に陳情合戦のお話がございました。私は、先ほどの公述の中で、財政の姿というものは行政なり制度、政治なりのあり方の鏡であるというふうに申し上げたわけですけれども、それが非常に具体的な形であらわれているのがこの陳情合戦ではないかと思います。もう少し具体的に申しますと、日本においては本当の意味での地方財政というのが存在しないで、使途に制限をつけた補助金が非常に多いというところに基本的な問題があると思います。私は先ほどは申しませんでしたけれども、財政の健全化ということを考えていく場合に、一つの重要なポイントはどのようにして本当の地方分権主義というものを実現していくかということではないかと思います。 終わります。
○二見委員 ありがとうございました。
○竹下委員長 これにて二見君の質疑は終了いたしました。 次に、大内啓伍君。
○大内委員 きょうは三人の諸先生大変ありがとうございました。 まず、水野先生にお伺いをいたします。 御案内のとおり来年度と申しますか、昭和五十四年度、大平政権は六・三%の経済成長率を見込んでいるわけでありますが、にもかかわらず失業者は大体百三十万人くらい出るであろう、物価の面では、四・九%消費者物価は上がるであろう、卸売物価はマイナスからプラスに転ずるであろうというような幾つかの予想を立てているわけでありますが、きわめてファンダメンタルな議論の一つとして、先生は完全雇用を維持しながら、かつインフレを防止し得る日本の経済の成長率、これは日本の経済の実勢を踏まえてという意味でありますが、その上限と下限はどのぐらいとごらんになっているか、これをひとつ御教示をいただきたいと思います。 それから、先生は先ほどの公述で、今度の五十四年度予算は景気回復、財政の近代化という両方針が相当貫かれたのではないかと御指摘になりつつも、やはり公債の発行についてはこれを減らしていくことが必要だということをおっしゃったと思うのでありますが、これはもちろん歳出、増税双方と絡むわけでございまして、先生としては、公債発行を減らしていくためにどの程度の歳出の見直しというものが将来にわたって、たとえば昭和六十年という展望に立って必要なのか、それが一つ。 もう一つは、政府が発表いたしました経済七カ年計画では、現在の租税負担率一九・六%を六十年の段階で二六・五%にふやす必要がある。先ほど先生は、増税の一つのステップとして一般消費税というものを、場合によって五十四年度からも取る必要があったと思うというお話でございましたが、この租税負担率の上限、つまり国民が負担にたえ得る上限というものはしからばどのぐらいとお考えになっているのか。 もう一つは、私は四・九%の物価上昇というものについては相当疑問を持ち始めております。と申しますのは、これはたくさんの要因がございますけれども、特にエネルギー、石油関係の見通しがなかなか立ちません。これは、特に実はこの秋以降深刻化する様相もあるのでありますが、政府の物価見通しは大体妥当なものかどうか。 以上の諸点について先生の御見解を伺いたいと思います。 まとめてやらせていただきましょう。 それから名東先生にお伺いいたしますが、私は先ほど医師優遇税制に対する先生のお考えを聞きたいと思っておりましたが、すでに同僚議員から聞かれておりますので割愛いたしますが、やはり物価問題の一つの根底的な問題として土地問題というのが非常に大きいと思うのです。それから、地価の凍結という問題がその中では非常に重要なポイントになってくると思いますが、先生は宅地並み課税という問題についてどういうふうな御見解をお持ちか、承りたいと思います。もっとお伺いしたいのでありますが、時間の関係もございましょうから、質問点をしぼります。 そして野口先生にお伺いをいたしますが、大平総理は今度の施政方針演説で日本的福祉社会の建設、これは実は私どもも従来から提案してきた問題で、その限りにおいては全く賛成なんであります。ただ、私ども、欧米等を見ながら痛感いたしますのは、確かにGNPにおいては世界第二位に発展したけれども、国民の生活水準及び社会的なモラルという精神的な両面でなかなか世界第二位にはなっていない。したがって、日本が本当に経済的な側面でも第二位になるためには、そういう国民生活水準という面での底上げが相当必要だろう。しかし、そのためには政策の順位が必要だろうと思うのですが、日本的福祉社会の実現のためにどういう政策的な順位に立って政策を推進すべきか、先生のお考えを聞かせていただきたいと思います。 それからもう一つは、公共事業というものについての限界を先生が御指摘になっておりましたが、私どもも公共事業というものはただ予算をつければそれでいいということではなくて、もっとその質が問題だと思っております。特に五十三年度はそのことを明瞭に実証したと思うのですね。そこで、先生としては、これはもちろん中期的な展望に立つ必要がございますが、当面の景気回復のためには単なる量的な総需要政策でなくてどういう政策が必要なのか、またその中に減税という問題はどういう位置を占めるか、それらの点についてお伺いをしたいと思うのです。 以上でございます。
○水野公述人 まず最初の御質問でありますが、完全雇用とインフレなき経済というもの、そのもとでの、それを可能ならしめる経済成長率というものの限界はどうかという御質問でありますが、この場合に、普通、完全雇用と申しますと、失業率ゼロという状態を必ずしも意味しませんで、アメリカ、ヨーロッパあたりでは、通常完全雇用といいましても、普通数%の失業率というのを考えております。それからまた、インフレなき経済、物価が安定した状態という場合も、物価上昇率ゼロというものを必ずしも意味しないわけでありまして、これにもかなり幅がありまして、物価上昇率年率二、三%程度が物価安定と考えるか、あるいは四、五%程度までならいいと考えるか。ですから、その完全雇用の内容というものと物価安定の内容というものをどう考えるか、またそれをどう組み合わせるかによりまして、それに対応する可能な経済成長というものもいろいろな答えが出ると思います。しかしわが国の場合は、大体雇用に対する考え方も失業率という考え方も、アメリカ、ヨーロッパと比べましてかなり低いところを考えておりまして、やはりせいぜい二%程度のところまでが許容されるというふうな考え方がかなり強いわけでありまして、大体二%以下。それからインフレなき経済という場合も、物価上昇率大体四%程度というふうなものを、その組み合わせで考えますと、これは私はエコノメトリシャンでありませんので、自分でモデルをつくって計算してはじいたわけではありません。大体の勘でありますけれども、今後四%から五%程度の経済成長というものをねらっていくのであれば、十分両立できるのではないか、またこの程度の成長であれば可能であるというように考えております。 それから次に、財政再建に当たりましてどの程度の歳出の見直しといいますか削減が必要かという問題でありますが、これにつきましては一つの参考になりますのは、今回出されました財政収支試算でありまして、それによりますと、この五十四年度から六十年度までの歳出の平均伸び率というものが経常部門が一一・九%、それから投資部門が一〇%、平均年率その程度の伸びを考えております。これは前回の三回の財政収支試算によりますと、経常部門も投資部門もいずれも一五%以上の伸びを考えていたわけです。そのもとで五十七年度ごろまでに特例公債から脱却するという考えでやっていたわけで、それに比べますと、この一五%から一〇%台に歳出を落とすということ、これは非常な歳出の削減といいますか抑制であるというふうに考えられます。ちなみに四十年代後半の歳出の伸びは恐らく二〇%を超えていた。資料がありませんので正確な数字はちょっと申し上げられませんが、二〇%を超えていたと思います。そういうものから比べますと、その中身をどうするかという問題は別にして、全体としてやはり歳出にとってきわめて厳しい考え方をしている。私も、やはりその程度の姿勢といいますか、行き方は必要だというふうに考えております。 それから租税負担率がどの程度が限界かという点でありますが、これについてはなかなかちょっと客観的な基準はないと言えますが、ただ、こういう場合に国際的な比較がよく問題になりまして、そういうところを一応目安にいたしますと、アメリカにしろ、ヨーロッパ諸国にしろ、わが国よりははるかに租税負担率は高いわけでありまして、国によりましては四〇%を超えているというような国もあります。そういう点から考えますと、二六・五%の租税負担率というのは、いままでの税に対する考え方からすれば、これは驚くべき高負担でありますけれども、そういう国際比較という面からいくと、必ずしもまだそれほど高いものではない。これは単なる国際比較の数字からの問題であります。 それから四・九%の物価上昇率でありますが、これはやはりいろいろな不確定要因がありまして、ちょっとはっきりしたことは言えないわけでありますけれども、やはり従来、五十三年度それから五十四年度から考えまして、大体五%程度ではいけるのではないかというふうな気がいたしております。 以上です。
○名東公述人 市街化区域農地の宅地並み課税、これはもう当然強化せざるを得ないと思います。現在のような三年というようなものではなくて、少なくとも十年以上の農地、しかも、それを単に畑に申しわけ的に野菜をつくっているというような程度ではなくて、もっと本格的な農地の使用ということを少なくとも十年以上約束をさせる。農地扱いにはするけれども、そのかわり土地処分の自由を制限するというふうにするか、またはもうはっきりと全面的な宅地並み課税を行う、こういうふうに明確に分けるべきではないかと思います。だから、現在の過保護農政とよく言われておりますけれども、こういう上にさらに土地の課税の点にまで優遇するというのは、これは非常な極端な実例じゃないかと思います。 ただ、やはり農民側に言わせればいろんな言い分がありまして、特にはっきりとした展望に立った都市政策だとか都市計画とか、そういうものがないじゃないか、非常にびほう的に、税制もあめかむちか両方織りまぜていいかげんなことをやっているじゃないかというような非難をしていますね。それはやはり確固たる政策を示すということ、そして農民側の十分な納得を得るような参画、参加といいますか、そういったようなものを得なければいけないというように思います。
○野口公述人 御質問のありました二点についてお答えいたします。 最初に御指摘のありました、日本は国民生活の水準の面では諸外国に比べて非常に低い水準にあるのではないかという点は、私は大賛成でございます。それでは、今後の政策の順位がどういうことかという御質問でございますけれども、私は次の二点であると思います。一つは、本当の意味における社会保障を充実するということ、それからもう一つは生活基盤を整備していくということ、この二点であろうかと思います。 最初の社会保障につきましては、これまでいろいろ申し上げてきたことでございますけれども、つまり量的にただ金額がふえればいいということではなくて、本当に個人の生活の保障を可能にするような社会保障制度をつくっていただきたいということでございます。端的に申しますと、医療保険について言えば、かぜになった場合には薬代は負担してもいいけれども、重症になった場合に本当にめんどうを見てくれるような医療保険をつくっていただきたいということでございます。 それから二番目の生活基盤の整備ということは、先ほど公共事業の長期的な計画に関して申し上げたことでございますけれども、これをどういう方向にしていくかというのは、私の意見は、特に都市における生活基盤の整備を中心にした方向が必要ではないかというふうに思っております。私は、安定成長に経済が移行したということは、これまで現在の生活を犠牲にして生産力の増強に努めてきたようなそういう生活のパターンが変わって、やはり現在の生活そのものを見直していこうというような時代ではないかと思うわけです。そうした場合にどこが一番おくれているかというのは、やはり都市の生活であり、端的に言って巨大都市の問題ではないかと私は思います。最近、いろいろな方が外国に旅行をなさいますけれども、私はこれは非常にいいことだと思いますのは、外国の都市を見た場合に東京に帰ってまいりますと、東京というのはほとんど都市の体をなしていないということが実感としてわかるわけでございます。たとえば住宅の水準もそうですし、住宅の広さ、あるいは通勤に何時間もかけて、毎日非常な重労働を強いられているというような状況がおよそ人間の生活とは言えないようなものであるということが実感となって感じられるわけです。私は、そういうようなものを整備していくということが一つの重要なポイントではないかというふうに思います。 それから二番目に御質問の点でございますけれども、当面の景気回復としてどういう手段があり得るかという御質問でございます。私は先ほど申しましたように、やはり短期決戦では景気の回復ができないというのが現在の日本の経済情勢ではないかと思います。それは理論的にもそういうことですし、五十三年度の経験というのはそういうことを非常に端的な形で示しているのではないかと思います。そういう点から申しますと、減税ということもそれが単に量的なことだけを問題にされているのであれば、やはり減税も効果はないというふうに申さざるを得ません。先ほど申しました、アメリカでいろいろな経済理論が出てきているというふうに申したわけですけれども、その一つの発端は、一九六〇年代の末から七〇年代にかけまして、アメリカでいろいろ減税政策をやったわけですが、それが景気政策としては効かなかったという反省から出てきた研究でございます。私はそういったような認識に立ちますと、必要なことは、一つは労働力の流動性を高めるということ、それからもう一つは産業構造の調整を円滑に進めていくということ、その二つ、これはどちらも短期的なことではございませんで、中期的な展望に立って経済の構造を変えるというようなことでございますけれども、そういうようなことがなければ、現在の問題が解決されないというのが日本経済の置かれた現状ではないかというふうに考えております。 以上でございます。
○大内委員 どうもありがとうございました。
○竹下委員長 これにて大内君の質疑は終了いたしました。 以上で各公述人に対する質疑は終了いたしました。 公述人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。 次回は、来る十三日午前十時より公聴会を開会いたします。 本日は、これにて散会いたします。 午後四時十九分散会