P政策ポータルPOLICY PORTALウォッチ
87回国会衆議院1979/03/16

外務委員会 第4号

発言数
76
登壇者
10
会派数
2
開催日
1979/03/16

会議録

塩谷一夫自由民主党

○塩谷委員長 これより会議を開きます。  この際、理事の補欠選任についてお諮りいたします。  委員辞任に伴いまして、現在理事が三名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塩谷一夫自由民主党

○塩谷委員長 御異議なしと認めます。よって、委員長は       井上 一成君    土井たか子君       渡部 一郎君 を理事に指名いたします。      ————◇—————

塩谷一夫自由民主党

○塩谷委員長 第八十四回国会から継続になっております経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約の締結について承認を求めるの件、市民的及び政治的権利に関する国際規約の締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。  お諮りいたします。  両件の提案理由説明につきましては、すでに第八十四回国会において聴取いたしておりますので、これを省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塩谷一夫自由民主党

○塩谷委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————  経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約の締結について承認を求めるの件  市民的及び政治的権利に関する国際規約の締結について承認を求めるの件     〔本号末尾に掲載〕     —————————————

塩谷一夫自由民主党

○塩谷委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。土井たか子君。

土井たか子日本社会党

○土井委員 いま委員長から御提案のございました、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約、いわゆるA規約及び市民的及び政治的権利に関する国際規約、いわゆるB規約、この両国際人権規約についてすでに提示をされております提案理由の説明におきましても、「政府としては、」「所要の留保を行いました。」という部分がございます。また同時に資料として提示をされております国際規約の説明書の内容を見ましても、大きく項目を起こし、その5というところで「我が国の留保等」という項目が用意されております。  そこでお尋ねをいたしたいのでございますが、留保と申しますのは国際法的に一体どういうふうに考えたらよいわけでございますか。まず一般的に国際法的概念においての留保ということに対する考え方をお聞かせをいただきたいと思います。

山田中正外務省条約局外務参事官

○山田(中)政府委員 お答え申し上げます。  留保と申しますのは、一般に多数国間条約におきまして、本来はその内容につきましてすべての国がそれに合意するのが望ましいわけでございますが、それを余り厳格にいたしますと、一部の規定に同意できないために締約国になれないという国が生じてくる、そういうことを避けますために、多数国間条約の一部の規定の法的効果を排除するかまたは修正する旨の一方的意思表示を行った上で締約国になることを認めるという制度でございまして、当該条約の署名、批准、受諾、承認または加入のときに行われるのが例でございます。

土井たか子日本社会党

○土井委員 いまの御説明からいたしますと、そうすれば、一般的に申しまして二国間条約の場合に留保というものは果たしてできるのか、できないのか、そして現実の問題としてあるのかないのか、この点はいかがでございますか。

山田中正外務省条約局外務参事官

○山田(中)政府委員 お答え申し上げます。  先ほど申し上げましたように、本来留保が行われますのは多数国間条約でございます。ただ、二国間条約におきましても留保という形のものが全くないかと申しますと、必ずしもそうではございませんで、たとえば一例といたしましては、わが国と米国との間の通商航海条約を締結いたしました際に、米国側にその規定の一部に異議がございまして、留保という形をとったことがございます。ただ、この場合につきましては、形式的には米国側は留保という形をとりましたが、先ほど多数国間条約の場合には一方的な意思表示で入れるというふうに申し上げましたが、二国間条約の場合には、一方的に留保をするということでは条約が発効いたすわけにまいりませんで、相手国とその点についての合意が必要ということでございます。したがいまして、日米通商航海条約の場合には米側は留保という形で申し出てまいりましたが、それをわが国と交渉いたしまして、交換公文を作成いたして、国会にもとの条約を修正するような形での御承認をいただいておりますので、より正確に申しますれば、その場合の法的効果というのは修正であった、このように考えております。

土井たか子日本社会党

○土井委員 そうすると、厳密に言えば、二国間条約の場合には本来の意味における、純粋の意味での留保ということは現実の問題としてないと一般論としては言えるかと、いま御答弁をお伺いしていると思われます。したがって、これは当初の条約の案文に対して修正を加えた新たな条約に対して両国間での合意がその節なされた、このように理解してその場合はいいのじゃありませんか。

山田中正外務省条約局外務参事官

○山田(中)政府委員 いま土井先生がおっしゃったとおりでございます。

土井たか子日本社会党

○土井委員 ところで、ただいま問題にいたしております人権規約について申し上げますと、この条約それ自身については留保を指示しているところはどこにもございません。したがって、それぞれの国のこの規約に対する認識によって留保というものは決まっていくわけでございますから、留保をするということに限って問題を展開してまいりますと、留保は無制限だとも言えると思うのです。無制限に留保はできるとも言えると思うのです。そういう点から言えば、極端な例になりますけれども、この条約全部を留保するということも理屈の上では可能だと言えるわけでありますが、これはどうでございますか。

山田中正外務省条約局外務参事官

○山田(中)政府委員 留保の制度そのものが、先ほども少し触れましたように、一部の規定に入れないために条約全体に入れないということでは困るので、それを何とか防ごうという趣旨でございますので、いま土井先生御指摘になりましたのは留保条項がない、どの条項を留保していいという条項のない条約についての留保であろうと思いますが、その場合に締約国に許されております留保の範囲というものは、当然、その留保によって条約全体の意味がなくなる、そういうふうな留保についてまで認めておるというふうには解しておりません。

土井たか子日本社会党

○土井委員 そうすると、留保について、条約全体の意味がなくなる留保と、条約全体の意味というものは確約できた上での留保だということの判別は、一体どの機関がどういうふうな手続によってなすわけでありますか。

山田中正外務省条約局外務参事官

○山田(中)政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの先生の御質問につきましては、留保の法的効果という側面からとらえてまいればよろしいのかと思いますが、留保をいたしました場合に、他の締約国がその留保に異議を申し立てない場合、ということは他の締約国もその留保が条約全体と両立すると考える場合であると思いますが、その場合におきましては、その留保をいたしました国と異議を申し立てなかった当該締約国との間には、条約の特定の留保をいたした規定がその留保の範囲において修正された形で適用されるということになろうかと思います。  ただ、他の締約国は、ある国が留保をいたしました場合に異議を申し立てることができます。その異議の申し立て方には二つございまして、そのような留保であればそもそも条約の意味をなくするので、その国としては留保を付した国と締約関係に入りたくない、そういう異議の場合がございます。そういう異議の場合には両締約国の間では条約が有効に発生しないということでございます。それからまた、締約関係に入ることについては合意するけれども、その留保には異議があるという場合がございます。この場合につきましては、異議があったということで結果的にはその留保した条項について当該締約国間で合意がないわけでございますので、その条項の適用がないという結果になるわけでございます。  したがいまして、一国が行いました留保、それが認められるか認められないかということは、その条約の締約国の、何と申しますか、条約社会と申しますか、その国々が判断するということでございます。

土井たか子日本社会党

○土井委員 それで、いままで日本が締結している条約のうちで留保した内容を持つ条約があるだろうと私は思いますが、幾つぐらいありますか。そして、どういう条約ですか。

山田中正外務省条約局外務参事官

○山田(中)政府委員 新憲法のもとで締結いたした条約で申し上げますと、第一番目には、第二十六国会、昭和三十二年でございますが、そのときに御承認を得て締結いたしました条約に船荷証券規則の統一条約というのがございます。この条約につきまして留保いたしております。それからそのほかに、穀物協定関係で一九六七年の穀物協定以来、それにかわりました小麦協定、それの延長議定書で一貫して留保いたしておりますが、現在その中で生きておりますのは、昨年の国会で御承認いただきました延長議定書で生きております一九七一年の国際小麦協定でございます。これの援助規約にわが国は留保いたしております。したがいまして、わが国について現在効力を持っておる条約で、留保条項がなくてわが国が留保したのはこの二件でございます。

土井たか子日本社会党

○土井委員 そういう留保を解除へ向けて努力した例というのがございますか。

山田中正外務省条約局外務参事官

○山田(中)政府委員 お答え申し上げます。  従来、政府といたしましては条約を結びます際にはできるだけ努力をいたしまして、留保なしに締結するという姿勢をとってまいっておりますので、留保をいたしましたものについては、どうしてもこれは留保せざるを得ないという趣旨で留保したものでございますので、先ほど申しました二件につきましては解除する方向での検討はいたしておりません。

土井たか子日本社会党

○土井委員 しかし、これは理屈の上からいうと、留保した点については、本来条約のあるべき姿として追求していく場合に、この留保解除の方向での努力をするというのは理の当然でありまして、そういうことからすると、この留保解除へ向ける努力というものは留保したという条件の上でやはり問われている問題だろうと思うわけであります。この留保を解除するときに理屈の上ではどのような手続が必要かというのは非常にひっかかる問題になってくるだろうと私は思うわけでありますが、これは一体留保解除のときには国内的、国外的にどのような手続が必要なんでありますか。

山田中正外務省条約局外務参事官

○山田(中)政府委員 お答え申し上げます。  私、先ほど新憲法のもとでの例を申し上げましたが、留保いたしましてそれを撤回した例というのは戦前にはございます。  それから、いま先生御指摘のその留保を撤回する場合にどのような手続をとるかというお話でございますが、新憲法のもとでわれわれその例がいまございませんので、具体的にはどのような手続をとるかを決めておらないわけでございますが、まず国際的には、寄託国政府に対しまして従来の留保を撤回するという手続をとればそれで留保が撤回できるわけでございます。  ただ、先生の御質問は、そういうふうなことを行政府がやる場合に、国会との関係でどのような手続をということであろうと思いますが、それでございますか。——その点につきましては、留保を付して締結することに国会の御承認を求めておるわけでございますので、もとの条約の法的効果というものをある程度狭めた形で国会の御承認を得ておりますので、留保を撤回するということはその法的効果を広げることになりますので、行政府だけでできることではないと考えております。

土井たか子日本社会党

○土井委員 いままでのところは一般論的な理屈の上での質問、御答弁をいただいたわけですが、いまこの人権規約の中で留保をいたしておりますのはどういう部分でございますか。

賀陽治憲外務省国際連合局長

○賀陽政府委員 お答えをいたします。  条約の順序に即しまして申し上げますと、A規約の第七条(d)項に「公の休日についての報酬」という規定がございますが、この点が第一点でございます。  第二点は、A規約第八条1(b)項にございますところの同盟罷業をする権利でございます。  第三点は、A規約第十三条2(b)及び(c)の中等教育及び高等教育の漸進的無償化について、この点でございます  それから、これは解釈軍書になっておりますけれども、A規約第八条2及びB規約第二十二条2との関連におきまして、団結権等の制限について。  以上でございます。

土井たか子日本社会党

○土井委員 いまA規約について留保された部分について御答弁いただいたわけですね。同じA規約を見ますと、第二条の一項の部分に「この規約の各締約国は、立法措置その他のすべての適当な方法によりこの規約において認められる権利の完全な実現を漸進的に達成するため、自国における利用可能な手段を最大限に用いることにより、個々に又は国際的な援助及び協力、特に、経済上及び技術上の援助及び協力を通じて、行動をとることを約束する。」と規定してございます。したがいまして、このA規約の第二条の一項からすれば、わが国が留保した部分についてはその行動約束というものが問われていると認識されますが、いかがでございますか。

賀陽治憲外務省国際連合局長

○賀陽政府委員 お答えをいたします。  ただいま先生御指摘のA規約の第二条の漸進性の規定でございますが、漸進的に達成いたしますということは、締約国として受諾いたしました目的を最終的に達成するために、漸進的にこれを達成することを許されておるという趣旨でございます。したがいまして、この点は直接には留保の中身とか留保に関連する問題とは考えておりません。

土井たか子日本社会党

○土井委員 ただいまの御答弁からいたしますと、留保すればその部分はもう切り捨て御免だというかっこうとして、いまのこの国際規約というものを認識されているというふうに理解できますが、そうなのですね。わが国はこの人権規約については、留保する部分については切り捨てたというふうな認識で、政府としてはこれに対処なさるということになるわけでございますか。

山田中正外務省条約局外務参事官

○山田(中)政府委員 A規約の第二条で、漸進性と申しますか、A規約をプログラム規定のようにとらえておるところで漸進性があるのでございますが、わが国が三点について留保をいたしましたものにつきましては、そういうプログラムといいますか、漸進性としても現在の時点においてはその方向に進むことを約束できないというものについてでございます。したがいまして法的には除外いたしております。

土井たか子日本社会党

○土井委員 除外ということはすなわち法的には切り捨てているかっこうだと言わざるを得ないと思うのでございますが、いかがでございますか。

山田中正外務省条約局外務参事官

○山田(中)政府委員 切り捨てるという言葉は非常に強く響くのでございますが、法的にはそういう意味と理解してよろしいものと思います。

土井たか子日本社会党

○土井委員 ただしかし、先ほど来一般論としてお尋ねした限りにおいても、人権規約本来の、規約、条約としてある姿とわが国がいま、切り捨てた部分を除外して考えておる条約、人権規約の姿とは違うわけなのですね。しかし、本来、わが国としてはこの人権規約という条約のあるべき姿全体について近づく努力というのは当然、これについて締結する以上は払わなければならぬ、これは原則論だと私は思うわけです。こういう点からいたしますと、いま留保したものについて留保を解除すべく努力をするというのは、これを締結するわが国にとっては、大切な、忘れてはならない努力義務だろうと思うのです。外務大臣、そういうふうにお考えになりますね、いま首を振っていらっしゃいますが。

園田直自由民主党外務大臣

○園田国務大臣 これは、将来にわたって大事なことでございますから、外務大臣から発言をしておきたいと存じます。  この人権規約の批准が他国に比べて非常におくれたことを遺憾に思っておるものであります。そこで、だんだん国際情勢、考え方が変わってまいりまして、人間の基本的な人権というものが、やはり政治、外交の中心になってだんだん上ってきた時期に、この批准がおくれていることは、他国と同等の外交というものがなかなかできにくい。そこで、当然、この人権規約というものは、留保条項なしに批准をするのが望ましい姿ではありますけれども、残念ながら、時間その他の関係で政府部内の意見が統一をできなかったということを恥じておるわけであります。いずれにしましても留保事項で、二国間の留保事項では漸進的に解消、解除されていくということがある場合とない場合があるわけでございますが、この人権規約については、留保した事項は、残念ながら留保したわけでありますから、これは当然、将来、法的な解釈その他は別として、解除する方向に努力をし、また、そういう責任があるということで、とりあえずこのような姿で批准、審査をお願いしておるということを明瞭にいたしておきます。

土井たか子日本社会党

○土井委員 いま外務大臣の御答弁のとおりだと私も理解をして、そして、そうなりますと、さっき一般論として、留保を解除するときの国内的な手続というのは、憲法で定める手続に従う。それは留保しているという状況から解除をするというのは、やはりこの条約の範囲を拡大させて、わが国としては認識を新たに持つことでありますから、恐らくは、ただいまこの留保したものについて人権規約の国会審議は行われる。この留保を解除するという場合についても、当然これを国会審議の対象として、審議の俎上に乗せなければならないと考えられますが、この点はいかがでございますか。

山田中正外務省条約局外務参事官

○山田(中)政府委員 この人権規約、いま御審議いただいておりますのは、その留保を付してと、先ほど先生おっしゃいましたように、この条約の幅を少し狭めた形で国会の御了承をいただくよう御審議を求めておるわけでございますので、将来それを広げる場合には、当然国会にお諮りするということになると思います。

土井たか子日本社会党

○土井委員 先ほど外務大臣も、留保条項なしに条約を締結することは望ましい姿だという意味のことを含めての御答弁を賜りました。  この人権規約という条約には大賛成だけれども、今回のこの留保に対しては反対せざるを得ないという場合、どのような意思表示をすることが、国会審議の場でその意思表示としてなされるべきか、これは大変問題だろうと思いますが、どのようにお考えでいらっしゃいますか。

園田直自由民主党外務大臣

○園田国務大臣 これは、事務当局からお答えすることではございませんので、私からお答えをいたしますが、委員会の審議あるいは国会の審議において、その意思表示は、留保事項に対する反対の意思を述べられて、賛成をされるか、あるいはそれがあるから反対になるか、これは全く議員の方々の判断でありますから、政府当局から、私がとかく言うべき筋合いではございません。

土井たか子日本社会党

○土井委員 それは外務大臣のおっしゃるとおりだろうと思います。これは政府に対して御質問する筋合いの質問では本来ございませんで、したがって、私は委員長にお伺いしたいと思いますが、この条約については賛成だけれども、今回のこの留保に対して反対をせざるを得ないという場合の当委員会における意思表示というのはどういうふうな姿においてなされるべきか、これについて委員長はどのようにお考えでいらっしゃいますか。

塩谷一夫自由民主党

○塩谷委員長 委員会としては、採決に当たって、討論にしっかりと記録させるべきものだと思っております、討論において。

土井たか子日本社会党

○土井委員 そうすると、討論の場で、反対の意思表示を反対討論という意味で行うというかっこうになるわけでありますか。

塩谷一夫自由民主党

○塩谷委員長 討論は、一応賛成、反対あり得ると思います。

土井たか子日本社会党

○土井委員 いいえ、いま申し上げているのは、当然、討論には賛成討論も反対討論もあるであろうと思います。そういう意味で、討論の意味はあると思います。しかし、この条約それ自身に賛成はしておりますけれども、今回の留保に対しては反対だというふうな意思表示は、その討論の場合に賛成討論になるのでございますか、反対討論になるのでございますか、いずれでございますか。  このことについては、ひとつ御検討を賜りたいと思います。これは、今回の条約審議について非常に大事な問題だろうと思っておりますので、ひとつ御検討賜りますようにお願いいたします。

塩谷一夫自由民主党

○塩谷委員長 十分検討いたします。

土井たか子日本社会党

○土井委員 この人権規約の中身について、本日少しお尋ねしたい件がございます。  それは、A規約、B規約いずれもその第三条を見ますと、「この規約の締約国は、この規約に定めるすべての市民的及び政治的権利の享有について男女に同等の権利を確保することを約束する。」とございます。そして、これは他の、わが国の締結しているILOを初めとして条約関係を見てまいりますと、婦人に対するいろいろな権利を取り扱っている条約関係の内容がございますが、いま、ひとつまず政府にお伺いをしたいのは、一九七六年、国連婦人の地位委員会で採択をされております婦人に対する差別撤廃条約というのがございます。わが国としては、この婦人に対する差別撤廃条約に対して、外務省としてはどういうふうな取り組みをなさっていらっしゃるか、また考慮されているか、この点はいかがでございますか。

賀陽治憲外務省国際連合局長

○賀陽政府委員 お答えいたします。  ただいま土井委員の御指摘になりました条約は、現在の段階では、ワーキンググループをつくりまして、条約草案についてさらに審議をしておるという状況でございます。

土井たか子日本社会党

○土井委員 そうすると、これに対して締結すべくただいま御努力中だということに理解させていただいてよろしゅうございますね。

賀陽治憲外務省国際連合局長

○賀陽政府委員 今後の見通しといたしましては、国連総会における審議を経るということが予定されておりますので、その前の段階にあるということでございます。国連総会の審議において、各締約国の意見がその場において、より正式な形で表明をされるということを予想しておるわけでございます。

土井たか子日本社会党

○土井委員 ただいまのは、国際社会における情勢に対しての御報告でございまして、わが国としてどういう認識を持ってこの条約に対処なさろうとしているかという点はいかがでございますか。

園田直自由民主党外務大臣

○園田国務大臣 私からお答えをいたします。  留保事項をつけながら、提案者、私が申し上げるのはまことに不謹慎でありますけれども、この条約の批准をお願いしますことは、この条約の批准を承認していただくことによって、これに付随して、留保事項は漸次これを解除していかなければならぬし、また、これに関連したもろもろの問題を、世界各国に比べておくれがないように、逐次新しい条約を結ぶとかあるいは国内法をつくるとかということをやるためのてこだと私は考えているわけでありますから、いまの問題についても、土井委員がおっしゃった方向で努力することは当然であると考えております。

土井たか子日本社会党

○土井委員 したがいまして、この婦人に対する差別撤廃条約に対しても、日本としては締結するという方向での努力を外務省としてはお払いになっていらっしゃる、これはもうこのように理解をさせていただくことが当然だと思います。  さて、A規約、B規約それぞれ、実施のための国内措置というものが日本としては当然問われてまいります。いまの第三条という条文からいたしまして、この三条の内容に言う「男女に同等の権利を確保する」ための諸般の措置をとっていく一般的義務を日本としてはこの規約上負うことは言うまでもありません。  そういう点から、私自身、実はもう二年前になりますが、予算委員会の分科会の席で、日本の国内法にある男女の間にある差別的取り扱いの一つの例として、国籍法の問題を質問の中で取り上げました。この国籍法の内容について、どの点がどのように問題かということは、追って、改正案をもうすでに法務委員会の方に提案をいたしておりますから、法務委員会の場で具体的な質問を進めたいと思いますが、本日はそれに先立ちまして、日本の国内的措置として、人権規約の第三条から今日改正を必要視される一つの法律として国籍法があるという前提に立って、ここで若干の質問を進めたいと思うのです。  それは、現行国籍法の中では、まず問題になるのは第二条という部分でございます。  現行国籍法の第二条の部分を読みますと、「子は、左の場合には、日本国民とする。」とございまして、一から四までの項目がそこに用意をされております。その一は、「出生の時に父が日本国民であるとき。」二は「出生前に死亡した父が死亡の時に日本国民であったとき。」いずれも父のことのみを問題にいたしております。三という条項になって初めて母が出てくるわけでありますが、その規定も、「父が知れない場合又は国籍を有しない場合において、母が日本国民であるとき。」と初めて母についての問題が出てくるわけであります。  子供の国籍についてどう考えるかという問題にこのような男女差が現行国籍法第二条にある点についてまずお伺いをしたいと思いますが、外務大臣、どのようにこれをお考えになりますか。

香川保一法務省民事局長

○香川政府委員 国籍法の二条におきましていわゆる父系主義をとっておるとただいま条文御指摘の、いわゆる父系主義をとっておりますのは、つまり、国籍法の基本的な考え方として、二重国籍をぜひとも防止しなければならない、これは国際的な一つの理念でもございますし、特にその男女を差別するというふうな意図によるものでは毛頭ないわけでありまして、したがいまして、たとえば父及び母の国籍を子供が取得するということになりますと、父と母の国籍が違う場合には、その子供については二重国籍を生ずる。そうなりますと、生まれながらにしての二重国籍の取得でございますから、たとえばわが国の法令を適用して国際私法の分野で裁判をいたします場合でも、本国法が分かれるわけでございます。  そういうことで、非常に不合理な状態が生じますので、したがって、二重国籍はぜひとも防止しなければならない、かような観点で父系主義をとっておるわけでありまして、父系主義をとるか母系主義をとるか、その辺のところはそれぞれやはりその国の国民感情なりあるいは伝統的ないろいろの考え方というふうなものによって立法政策的に決せられることでございますので、したがって、御指摘のところは人権規約等のいわゆる男女平等の原則には反しないというふうに私どもは考えておるわけでございます。

土井たか子日本社会党

○土井委員 法務省当局はまずああいう御見解なのですが、外務大臣、いまの法務省当局の答弁をお聞きになって、どのようにお思いになりますか。

園田直自由民主党外務大臣

○園田国務大臣 法務省も外務省も同じベースに立った政府でありますから、これを反駁するわけではありませんけれども、いま法務省から言われた理論はよくわかります。わかりますけれども、それに何か救助する方法はないものか、たとえば父と母の合意の上にやれば母親の国籍を取得するとか、何かそういうことを研究して、いまの男女差別をなくするようなことを検討すべきだと考えております。

土井たか子日本社会党

○土井委員 さきに続けて外務大臣にお尋ねをしたいのですが、国際社会で一体こういう問題がどのように取り扱われているかということに対して、動きが御承知のとおりにございます。これは、大まかに申しますと、ただいまの父系血統主義と申しますか、父系優先血統主義という取り扱いから、父母平等血統主義への移行というものが国際的な趨勢と申し上げてもいいのじゃないかというふうに、私はこの国際間のいろんな動きをいま見ているわけであります。  具体的に申し上げますと、フランスの場合は一九七三年の一月九日に法改正いたしております。ドイツの場合には一九七四年の十一月十二日という日に法改正をいたしまして、旧法はドイツ人男子の嫡出子に対して父の国籍を取得させるというふうなことを原則といたしておりましたのを、この新法によって父母のいずれか一方をドイツ人とする嫡出子、母をドイツ人とする婚外子というふうに、明確に子に対して、子の出生によりドイツ国籍を取得させるという条文を改正して持つことになったわけです。またさらにスイスでは、一九七八年の一月一日から父母同権にこの問題を移行させております。  日本においても、ただいまの国籍法上、取り扱いの上で、第二条を見ると明確にございます父系血統主義から父母平等血統主義へ移行させるということが、憲法の十四条から考えても、憲法の二十四条から考えても、さらに今回、ただいま審議中の人権規約を日本は締結をするという、こういう段取りから考えましても、外務大臣としては、いま私が申し上げているとおり、父系優先血統主義とか父系血統主義から父母平等血統主義へ国籍法を改正させる方向で努力をすることが至極当然だと私自身は思っているわけでありますが、どのようにお思いになりますか。

園田直自由民主党外務大臣

○園田国務大臣 私、法律の専門家じゃありませんので詳しくはわかりませんけれども、しかし、法律というものは時勢の変化、進歩に応じてその運営を変えていくべきですし、運営でできない場合にはやはり筋の通るように改正していくのが法律であると私は考えております。  国籍法というのは、なかなかこれはやかましいものでありまして、いまの男女差別の問題ばかりでなく、難民問題等で日本がとかく不熱心であるということで、人権の重要な問題として他国から非常に非難を受けていることは、日本は金を出してそれでいいと思っているというのは、やはり国籍法にひっかかってくるわけでありますから、こういう点はよく法務省とも相談をして、時勢に応ずるように、法律を守られるという法務省の立場はありがたいことではありますけれども、また守る原点はやはり国際社会の進歩に伴い、そしてまたかつ日本国民の本当の利益にかなうように、改正すべきものは改正していくべきではないかと考えますので、今後御相談してみたいと考えております。

土井たか子日本社会党

○土井委員 外務大臣はああいう御認識なのですが、法務省の方は、実は二年前の予算の分科会でこの点を質問いたしましたら、ただいまと同じ答弁をいただいているのです。同じ答弁をいただきまして、その節、これに対して二重国籍ということが問題になる、二重国籍が生ずると非常にいろいろな問題で困る、したがっていろいろのむずかしい問題を解決しないとこの改正はむずかしいという御趣旨の御答弁が、議事録を読みましてもあるのです。しかもなおかつその後に、検討いたしますと、こうなっているのです。このいろいろある、むずかしい二重国籍に対して、何とか解決していくことに対して、その後御検討を賜っているはずだと思うのです、この答弁どおりなら。どういう検討をただいままで賜っているか、その点はいかがですか。

香川保一法務省民事局長

○香川政府委員 二重国籍が生じました場合の、いろいろの不都合が生じます手当てをどうするかということは、これはわが国単独ではできない問題がたくさんあるわけでございます。  ただいま御指摘のドイツにおきましては、父または母の嫡出子はドイツ国籍を取得するということになっておるわけでありますが、たとえば父が日本人で母がドイツ人の子供は、ドイツから見ますとドイツ人になるわけでありますが、わが国から見れば日本人になる、ここに二重国籍になるわけであります。この場合に、その子供についていろいろ国際私法等が問題になりました場合に、わが国だけでこうするというわけにはまいらない問題がたくさんあるわけでございます。したがいまして、私どもその点について、一体ドイツはさような国籍法の改正をしたときに今日までにどういう手当てを考えておるのかというふうなことが、いろいろ検討いたしましてもどうもつまびらかにならないわけでありまして、失礼な言い方かもしれませんが、そういった問題はそのまま放置されているのではないかというふうに考えておるわけであります。  したがいまして、これはすぐれて国際私法の分野で大いに問題になることでございますので、オランダにございます国際私法の国際会議の事務局に対しまして、先般から事務局長にそういった場合の国際私法上の後始末をどうするかということを十分国際的にひとつ問題にして議論していただきたいということをお願いしておるわけでございまして、私どもとしましては、国籍法をおっしゃるような趣旨に変更するのであれば、それにまつわる問題は当然解決されるような姿で改正しなければならぬ、かように考えておるわけでございますが、その辺のところがやはり国際的な一つの機運と申しますか、考え方の統一が出てまいりませんとなかなか容易にできない、かような判断をしておるわけでございます。

土井たか子日本社会党

○土井委員 国際私法的な措置というのは、日本の国内法の国籍法がいかがあろうと行政措置として解決することができる分野でありまして、これ自身を逆に持ってきて、だから国籍法の第二条を日本としてはがんとして変えるわけにはいかないという論は通用しないのじゃないか、私はそのようにまず思うわけです。  そこでお尋ねをしたいのは、国籍法の第九条という条文を見ますと、「外国で生れたことによってその国の国籍を取得した日本国民は、戸籍法の定めるところにより日本の国籍を留保する意思を表示しなければ、その出生の時にさかのぼって日本の国籍を失う。」とこうなっております。いま二重国籍をいかにして回避するかということを非常に、ただいまの国籍法第二条を改正することがむずかしいという理由として法務省としては述べられるわけでありますが、この第九条からしますと、二重国籍を取得していっている、外国において出生する日本の国籍を持っている国民というのはふえていっているのじゃないかと私は思うのです。つまり、国籍法の第九条は、生地主義の国で生まれた日本国民を父とする子供に対して日本国籍を留保することを認めております。そうでございますね。これは法自身が一定期間二重国籍を日本国民に認めているということにもなるわけなのです。そうでしょう。一定期間法自身が二重国籍をすでに現行法において認めているという対象になってきたこの人たちの数というのは年々ふえる傾向にあるのじゃないかと私は思いますが、これは外務省の方の領事館の方で、少なくともこういう問題に対してはお調べ願ったらおわかりになるのだろうと思います。この点はいま掌握なすっていらっしゃいますか、いかがですか。

賀陽治憲外務省国際連合局長

○賀陽政府委員 領事事務の方に早急に調査するように申しまして、お手元に差し上げます。

土井たか子日本社会党

○土井委員 私の手元にある資料からいたしますと、出生地主義国において出生した日本人としての出生届があった件数は、一九七六年四月一日から七七年三月三十一日、つまりこの一年間に三千四十一名の多数に上っております。恐らくこれは年々増加する一方だろうと私は思うのですね、やはり国際的に活動分野というのは、日本はずいぶん広まっていっておりますから。したがいまして、そういう点からすると、ふえることはあっても減ることはない、このように私は思います。したがいまして、この一九七六年から七七年の件数をいま私は手元の資料で申し上げましたけれども、ひとつ、いま国連局長御答弁のとおりに年次別にここ十年くらいのを提示していただきたいと思います。よろしゅうございますね。

賀陽治憲外務省国際連合局長

○賀陽政府委員 そのように措置させていただきます。

土井たか子日本社会党

○土井委員 そういうことからいたしましたら、これは同様の理屈でもって、母が日本国籍である子供については一定期間その子供の日本国籍を留保するということも可能だということは言えるのですね、成人するまでは。したがって、成人するまで子供に対して二重国籍を認めていくということは、現行法からしてもこれは何ら矛盾することじゃない、このように私は認識しているわけです。この点、いかがでございますか。

香川保一法務省民事局長

○香川政府委員 先ほど申し上げましたように、二重国籍の防止というのは国際通念だろうと思うのでありますが、しかし、例外的に二重国籍が生ずる場合があるわけでありまして、先ほど御指摘の国籍法九条の規定も、出生地主義をとっておる国がある場合には二重国籍の生ずるおそれがあるわけであります。逆にまた無国籍の生ずる場合もあるわけでございまして、そういった特殊な場合、したがって数的にはきわめて少ない場合につきましてそれぞれの可能な限りの手当てはする必要がございますけれども、先ほどおっしゃいますような、父または母のいずれかの国籍をそれぞれ取得するというふうな一般的なものになってまいりますと、二重国籍の数が飛躍的にふえるわけであります。したがって、二重国籍は好ましくないという前提に立つ限りは、そういった飛躍的に数が多くなるような場合はできるだけそれを抑えるということがやはり立法政策として必要じゃなかろうか。しかし、そういった場合でも、国際間のことでございますので、まれな場合として二重国籍が生じた場合の手当ては最小限するというふうなのが現在の国籍法の立法趣旨だろうと思うのであります。したがって、希有な場合に手当てする、最小限度必要な手当てができるのだから、一般的な場合にもその手当てをして二重国籍を認めていいじゃないかというふうなお考えのようでございますけれども、そこのところがなかなか踏み切れない問題ではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。

土井たか子日本社会党

○土井委員 現に二重国籍の問題については法務省自身が、日本人女性が外国人男性と結婚いたしまして配偶者の国籍を取得した場合、日本国籍を留保すべく窓口で行政指導をなさるという例が通常であります。したがいまして、そういう人たちにとってはやはり行政指導によって二重国籍を取得し続けるというかっこうに現実になっているわけでありますから、二重国籍をいかにして回避するかという御努力を片方で払いながら、しかし現実の問題はむしろ二布国籍を持つべく窓口での行政指導もある、こういう現実があるわけです。その点は、二重国籍回避のための努力をどう払うかという、国際的な、国家間のお互いのいろいろな取り決めに従っての取り扱いの努力というのはあるでしょう。しかし、日本の国内法としてある国籍法の立場から考えますと、この二重国籍回避のための努力を日本の国内でどう払うかという問題は、国籍法第二条の改正は認められないという理由にはもはや当たらないと私は見ているわけです。この点は法務委員会に参りまして私はさらに追及をしたいと思います。  もう時間の関係がありますから簡単に申し上げますけれども、日本に帰化する条件について、実は現行法では、一般外国人の場合その第四条の一で「引き続き五年以上日本に住所を有すること。」ということになっておりますが、五条、六条においては、日本国民の夫が外国人である場合、この外国人の夫に対しては引き続き三年以上日本に居住することが帰化の条件になっております。ところが、外務大臣、ここで一つ問題があるのです。日本国民の男性が外国人の女性を妻にした場合、この妻である外国人の女性の日本における居住歴は必要ないということなのです。日本の女性が外国人の男性と結婚した場合に、その男性については日本に引き続き三年以上居住しないと帰化の条件は整いません。しかし、日本の男性が外国人の女性と結婚した場合、この外国人の女性の日本に対する帰化の要件は日本に局住歴がなくてもできるわけであります。これは格差があり過ぎる。私は、これは問題点として国籍法改正の必要ありと見ている点でありますが、今回の人権規約の第三条から考えましてこの点をどのように外務大臣は御認識になりますか。

園田直自由民主党外務大臣

○園田国務大臣 ただいまの国籍法ばかりでなく、この人権規約の批准と国内法の関係、ほかにもいろいろ問題があるわけであります。国籍法につきましては、承りますと関白太政大臣布告ではないが明治二十何年にできた法律であって、それをその後昭和二十何年に改正しているそうでございます。そこで外務大臣の言う平和外交、全方位外交、こういう点からいうと、国籍法そのものが純粋な日本人を守ろうとするためにできた法律のようであって、極端に言うと日本人でなければ日本に住む人間でないというところが所々あるわけでありますから、そういう基本的な問題からもいまの男女の不平等の問題からも、いろいろ検討をして相談し努力をすべきことだと考えております。  なお、法務省の方がおっしゃいましたことは、法律を守る立場から言っていらっしゃることでありますから、私も十分理解できるところではあります。しかし、政治的にはもうそういう段階に来ておる、こう思います。

土井たか子日本社会党

○土井委員 後の問題は法務委員会の方に場所を移しましてひとつ具体的に、もう提案をしていることでもありますので、国籍法の一部改正について質問を展開して、これを今国会において成立すべく私は最大限の努力を払いたいと思っています。これが今人権規約に対して、日本がこの規約を大事な規約であると認め、そして批准をするということからすると、国内的に非常に必要な問題であるという認識もその中にあることを重ねて申し上げさせていただいて、本日の質問はひとまずこれで終えたいと思います。

塩谷一夫自由民主党

○塩谷委員長 大坪健一郎君。

大坪健一郎自由民主党

○大坪委員 土井委員が大変御熱心な質問をなさいまして時間がなくなってしまいましたので、二つくらい重要な点についてちょっと御質問を申し上げたいと思います。十二時に本会議ですからそれまでに終わりたいと思いますので、簡略な御答弁をいただきたい。  一つは、この人権規約についてその義務違反が出た場合にどうするか、規約上どういうことになっておるか、それをまず御説明いただきたい。

賀陽治憲外務省国際連合局長

○賀陽政府委員 お答えいたします。  義務違反について直接制裁といったものは想定しておりませんが、先生御高承のように四十一条の任意調停制度等によりまして、締約国は他の締約国の本件条約の遵守状況に対しまして、これが望ましくない場合には申し入れをするというような制度も想定されておるわけでございます。  もう一つは、国連に対する報告を提出いたしまして、A規約については経済社会理事会、B規約についてはB規約の人権委員会でこれを審査いたしまして、若干手続上の違いがあるわけでございますが、基本的には勧告的意見その他を締約国に間接的または直接的に送付し得る、そういった形で条約の内容を担保しておるというのが姿でございます。

大坪健一郎自由民主党

○大坪委員 いまのお話のように、この人権規約は非常に高遠な理想を条文化しようとする努力が払われましたけれども、条約違反については実際上余り厳しく追及できるシステムになっておりません。つまり国際的な、人間関係を規律する理想を述べておる領域が非常に広いと思うのです。条約自体にも矛盾が幾つかあると思います。  たとえばいま国連局長がお答えになりましたように、第四十一条では締約国の義務違反に異議を唱える制度が決めてありますけれども、これは四十一条のそういう制度を受けるという宣言をしなければ相互主義で相手国についていろいろ言えないわけでございますし、内政干渉にわたるようなことができるような制度に実はなっておりません。  それからもう一つは、たとえば言論の自由は基本的人権として保障されなければいけないわけですけれども、たとえばB規約の第二十条には戦争宣伝の禁止でありますとか憎悪を唱道したりすることを法律で禁止せよというような条文がございます。  こういうことを考えますと、幾つかの重要な問題についてこの条文の構成では矛盾がございます。そういうのを踏まえて、しかしなおかつこの規約をわが国で批准をしようということでございますから——実は外務大臣が御退席になりましたけれども、外務大臣は、日本が留保をいたしました問題についてこれは残念なことである、やむを得ず留保したというようなお答えがございましたけれども、私は必ずしもそうでないと思うのです。やむを得ず当面留保して漸進的に解決しなければならないような問題もあれば、論理上あるいはその国の制度上おかしい問題もある、その点ははっきりして御答弁をしていただかないと、何か留保したことが悪いような印象になってしまう。そうでないということをまず二、三問題点を指摘しながらお伺いをしてみたいと思います。  留保の対象になります問題点としてまずスト権の問題がある。それからもう一つは休日の労働に対する報酬支払いの問題がある。もう一つは高等学校以上の教育に対する無償の制度化があります。  スト権の問題については、スト権はあらゆる勤労者にこれを与えるべきだという基本理念が国際的にあることは間違いございません。しかしこれはわが国の制度として現状で受諾できないばかりでなく、将来にわたって受諾していいかどうか一つの問題がある。  それから休日の給与の支払いについては労働の対価として賃金が支払われるという原則に立ってわが国の法制はすべて決められております。ところが休日の報酬は労働の対価のない者に対してもこれを支払えという社会保障的観点に貫かれております。これが一体そういう理念とかそういう考え方で受けとめていいのかどうか、大いに問題のあるところでございます。  それから、高等学校教育の無償化につきましてもやはり同じような問題点がございます。A規約の第二条第三項では、開発途上国につきましては外国人の権利の範囲についてこれを裁量できる、完全に内外平等にしなくてもいいという規定もございます。それからA規約は漸進的にこれをやればいいと書いてある。そういう点を考えますと、先ほどの外務大臣の御答弁はやや私どもは理解に苦しむ点があるという点を申し上げて、まず国連局長の御答弁をいただきたい。

賀陽治憲外務省国際連合局長

○賀陽政府委員 お答えいたします。  ただいま大坪委員の御指摘になりました点につきましては、留保をいたすに当たりましては、十分国内法との関連性も慎重に検討いたしました上で留保の決定をいたしたわけでございます。大臣の仰せになりましたことは、法的には留保した条項につきましては条約は白紙になる、これは右にするか左にするかということを何ら決めない白紙の状態であるという御趣旨ではございますけれども、政治的な御判断としては、問題によっては法的解釈とは別に努力すべき側面もあるのではないかという御答弁があったように私は拝聴いたしました。

大坪健一郎自由民主党

○大坪委員 たとえばA、B両規約とも内外人平等の原則を規定しております。しかし、厳密に考えますと、B規約は自由権でございますから、一般的な内外人差別の排除ということがあり得るわけでございますけれども、A規約は社会権でございますから、国によっては状況によってなかなかできにくいような条文もたくさん入っておる。だから漸進的にこれをやれと書いてあるし、その上緊急非常の事態が起こったようなときには制限していいと書いてある。しかも、実際上社会保障の問題については、属人主義の法律が属地主義の法律ばかりでなくてたくさんございます。日本の社会保障の中にはそういうたてまえの、日本人だから社会保障としてこれを保護するという制度がございます。そういうものを当然私どもとしてはたてまえとして堅持していっても差し支えないのではないかと思うのですけれども、そこの点について、特に厚生省の関係の法律に日本国籍を持った者についての制度が多うございます。たとえば年金なんかもそうでございます。その点についてのお考えをひとつお聞かせいただきたい。

松田正厚生大臣官房審議官

○松田説明員 御指摘のとおり、社会保障制度につきましては、その大部分の制度について日本国民と同様に外国人に適用しているという実態でございます。ただ、若干の制度につきましては国籍を要件とする制度もございますので、この国際人権規約の趣旨に沿いまして、それぞれの制度の性格なりあるいは歴史的な問題、技術的な問題を考慮しながら漸進的に改善の方向で考えたい、かように考えております。

大坪健一郎自由民主党

○大坪委員 せっかく来ていただいていますから、同じような問題でちょっと文部省にもお尋ねしたいのですが、外国人、いま非常に技術交流も進んでおりますし、知的な開発については内外人の差別を特に排除しなければいかぬと思われますが、国立大学の教授に特に外国人がなれない。これは教授会の構成と権限の問題と関係があると思います。ところが、わが国の閉鎖性を排除せよという議論も非常に出ておりまして、国際的な開放体制にわが国は持っていかなければならぬということもあります。そういう点で言いますと、日本の国立大学の教授に外国人がなれないという制度についてどういうふうにお考えになっておられるのか、御意見をお聞かせいただきたい。

遠藤丞文部省大学局高等教育計画課長

○遠藤説明員 お答えいたします。  先生御指摘のような方向で私ども進めたいと考えておりますけれども、単に国立大学だけという問題じゃなくて、広く公務員制度の全般にも影響の出てくる問題でもございますし、また単に内外人を平等にするというだけでは、かえって現在とっております外国人教師の制度よりも給与の面で下がるというような問題もございますので、いろいろな観点から関係省庁と協議をして、現在案を練っておる段階でございます。

大坪健一郎自由民主党

○大坪委員 もう時間がございませんので、最後に締めくくりで、この人権規約を締結し、承認するということで、日本政府も国際社会における人権問題の重要性について十分な認識を持ち、かつ人権外交にも本格的に取り組む、こういう意義があることと考えます。いろいろ内容については問題点もあるし、議論もございますけれども、しかし全体として考えた場合に、日本の外交にとって非常に大きな意義を持つ規約の締結であろうかと思います。  その辺の外務省の心意気を伺いたいことと、それから、特に最近外務省に難民対策室ができました。先ほど大臣の答弁にもございましたように、難民問題について日本政府が前向きに取り組むということは、日本の閉鎖性に対する外国の論難に対して一つの回答になるということも考えられるわけでございます。今後難民問題についてどのように対処していかれるのか、そういう点も含めて、外務省のこの人権を基礎にした今後の外交のお考えを、政務次官にひとつ御答弁いただきたいと思います。

志賀節自由民主党外務政務次官

○志賀政府委員 この人権規約に対する私どもの姿勢といたしましては、世界じゅうの価値観といいますか、価値基準と申しますか、こういうものが千差万別のままにばらばらになっているよりも、やはり一つのものをそこに置いて、そういうものの中で合意というものが成立しながら、横の紐帯、つながりというものがきちっとなっていくことがいろいろな面で望ましい。特に人権規約でございますから、世界平和あるいは同じ人類としての理解を相互に深めるということで、これはきわめて大事なことであると考えておるわけでございます。  そこで、ただいま大坪先生からいろいろ御指摘がございましたようなそれぞれのお国ぶりあるいは成り立ちから、どうしてもすべて受け入れられない面もあるわけでございますが、この点に留保をつけながらも、しかし一歩一歩共通の基盤に世界各国が立っていく、これに対してわが日本外務省としては積極的に取り組んでまいらなければならない、こういう考え方であることは申し上げるまでもございません。  そこで難民問題でございますが、実は私、つい先ごろマニラで総会が開かれました第八回ESCAPに出席をいたしまして、ここで演説をさせていただきました。その演説の中で特に私が触れましたことは、日本がともすれば経済的、物質的繁栄にのみ心を奪われて、精神的な繁栄というものがなおざりになっていたきらいがある、こういう深い反省から私どもは心と心のつながりを重視したい、こういうことを申し上げたわけでございました。その後記者会見の際に日本の新聞記者の一人から、難民を受け入れるような姿勢を持たずして一体心と心、心の繁栄というようなことを言ってもこれは絵にかいたもちではないだろうか、こういう鋭い御指摘がございました。私ども日本といたしましては、ただいま大坪先生が御指摘くださいましたような難民の受け入れ等を含めて積極的にこれに取り組まなければいけないと考えて、ただいま御指摘のとおりの対策室が生まれておるわけでございます。  ただ問題は、そのような受け入れを早急に行っても、受け入れられた側がそのことによってかえって幸せになれないようなことがあってはいけない、そういう基盤整備も大事でございますので、私どもは、この点について鋭意積極的に取り組みたい、このような考え方でございます。

塩谷一夫自由民主党

○塩谷委員長 次回は、来る二十二日金曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     正午散会

国会会議録検索システムで原文を見る ↗