予算委員会 第2号
- 発言数
- 324 件
- 登壇者
- 30 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1978/10/02
会議録
○中野委員長 これより会議を開きます。 昭和五十三年度一般会計補正予算(第1号)、昭和五十三年度特別会計補正予算(特第1号)及び昭和五十三年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三件を一括して議題とし、質疑に入ります。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。武藤山治君。
○武藤(山)委員 私は、日本社会党を代表して、トップバッターを引き受けましたので、きょうは、福田総理大臣を中心にして閣僚の連帯責任という立場に立って、的確な、明確な答弁をいただきたいと思います。 総理も御承知のように、この臨時国会で総理の所信表明演説を聞いて、どの新聞も、ほめている新聞が一つもありません。「意欲だけが先行した首相演説」「説得力乏しい政府演説」「国民の胸に響かぬ首相演説」「あすの具体策欠く首相演説」「当面の施策を親切に答えない首相演説」、これは各新聞の社説であります。 さらに、衆参両院の十名に及ぶ質問がありました。その結果についてまた新聞が報道しておりますが、協調と連帯を口にする総理が、答弁の姿勢の中で連帯と協調を感ずるような姿勢が全くない。対話をしようという、野党の意見に耳を傾けようという姿勢が全くない。いたけだかで、高飛車で、何か歯車が狂っているようである。自画自賛で、反省も、国民に協力を求める姿勢もない。これでは国民の胸になるほどと落ちないと思うのであります。 なぜ総理は、従来のような姿勢から、今回このような指摘を受けるような姿勢にお変わりになったのでしょうか。体の調子でも悪いのでしょうか。それとも、総裁選が目の前に近づいて、精神的な不安、動揺が心の中にあるのでしょうか。それとも「首相にほしい思考する時間」、物を考える時間、総理のあの日程を見ると総理は一体本を読む時間などあるのだろうか、こういう投書が朝日新聞の十月一日朝刊の「声」の欄に出ておる。この三つばかり予想されるのでありますが、総理が、もっと中身のある、濃い、国民の聞きたい問題に国の最高権力者としての立場からもっと親切に具体的に答えられない理由は何でございましょうか、総理の見解をまず承っておきたいと思います。
○福田内閣総理大臣 私はかなり率直にお答えをいたしておるつもりでございます。新聞の論説を引かれましたが、私も新聞の論説、大体見出しはずっと長い間読んでおりますけれども、首相演説なんかについて、ああ、いい首相演説であったというような評価のあったことを私は覚えておりません。いま、意欲はあれど具体性に欠けるなんというような表題があったという話ですが、意欲があるということを認めただけでも、かなり私の所信表明を評価してくれたのじゃないか、私はそのように思いますが、とにかく私は、連帯と協調、この精神にいささかも欠けるところはありません。また、きょういろいろ御質問がありましょうけれども、私は誠意を尽くしてお答えを申し上げたい、このように考えております。
○武藤(山)委員 政治姿勢、外交、防衛、有事立法などについては、午後、前書記長の石橋委員から詳細御質問がありますから、私は、きょうは経済問題に限定をして、総理の見解並びに閣僚の統一ある答弁を承りたいと思うのであります。 大蔵大臣は、本会議の所信表明演説の中で、経済成長、名目一二%、実質七%については確実に達成することができると述べております。また、総理は「明年以降の明るい展望を切り開いてまいります。」と演説をしております。また、参議院の本会議の答弁の中で、七%成長は責任を持って達成するとも答えたようであります。 総理、いま日本の経済はうまくいっているのか、運営はうまく行われているのか、総理の認識からまずお尋ねをしたいと思います。
○福田内閣総理大臣 五年前の石油ショックで、世界じゅうの経済が混乱をしているのです。その混乱の中としては、私は、わが国の経済はまあまあいいところをいっている、このように見ております。国内的側面を見てみますと、国民の消費は着実に伸びておる。また設備投資も、政府の見通した見解のような趨勢をたどっておる。住宅投資、これは躍進をしておる。在庫調整、これも順調に動いておる。それから政府の予算の執行、これがかなり活発な動きをいたしておるわけであります。そういうことで、国内的側面は概していいのです。 ただ私は、総体の日本の経済とすると、外的側面、つまり輸出が、ドル安、円高の影響を受けまして鈍化の傾向を示しておる。これがいま日本の国内全体の経済の足を引っ張っておる。いま、大体日本の経済はいい方向へ動いておるけれども、黒一点、これがある。何だというと、これは為替不安、これが日本の経済の成長を妨げておる、こういうふうに私は見ておるのです。でありますから、これをほうっておきますと、七%成長、なかなかむずかしい。そこで外的要因、つまり輸出の鈍化、これの国内経済に及ぼす影響を補うということで、補正予算その他の総合対策を講じましてその落ち込みを補っていこう、こういう考えでございます。
○武藤(山)委員 総理は、経済運営はうまくいっているかという質問に対して、まあまあいいところへいっている、そして中身を少々述べたのでありますが、輸出の面だけがうまくいっていない、こういう認識のようであります。 私は、経済というのは、物価が安定をしていればそれですべてよろしいとか、あるいは七%が実現すればすべてがうまくいっているなんという単純な経済観というのは間違いだと思うのであります。 いま日本を見渡すと、総理、国際収支の不均衡、これは世界じゅうから日本が指摘をされておる。この不均衡の問題、あるいは雇用需給の不均衡、失業者が百二十一万人もいる、均衡がとれていない、これは経済がへまをいっている証拠なのであります。財政収支の不均衡、四十三兆円も借金のある財政、特に国債発行に踏み切ったのは福田大蔵大臣のときなのです。それまで日本の財政は国債発行を禁止していた。責任は重いですよ。しかも、その不均衡はますます大きくなっている。来年度予算もまた、この不均衡は大きくなるでしょう。この国際収支の不均衡や雇用需給の不均衡、財政の不均衡をもたらした政府の経済運営はうまくいっているのですか。私はうまくいっていないと思うが、もう一度はっきり答えてください。
○福田内閣総理大臣 個々の側面では問題もあります。ことに雇用、これはただいま申し上げました黒一点ですね。つまり対外的要因、こういうようなことで日本経済全体の成長がうまくいっておらぬというその結果として雇用の問題が出てくるわけです。 また財政の不均衡、これは私は相当大きな問題だと思うのです。経済だけをとってみますれば、そう時間をかけずにいいところへ安定させ得る、こういうふうに私は思っておりますが、しかし、それは後遺症が残る。その後遺症の最大のものは財政だ、財政の赤字である、このように考えておるわけでありまして、いま経済は安定に向かって動いておる。しかし、これは財政の犠牲の上において動いておると言っても過言でない状態です。それはよく承知しております。 それから、国際収支はいいと言えばいいのです。よ過ぎて問題がある、そういう状態でありまして、過ぎたるは及ばざるがごとしということがありますけれども、過ぎたる面を調整しなければならぬ、このように考えております。
○武藤(山)委員 過ぎたるは及ばざるにまさるという話ですが、国際収支がべらぼうに黒字になって、サウジアラビアの次に日本の外貨がたまり過ぎるということが国際経済の不均衡をもたらすのです。日本が黒字をたくさんためればいいことじゃないのです。総理、経済がうまくいっているというのは、常に均衡を保つということなのです。これは経済学の初歩じゃありませんか。均衡を保たないで、どこか突出部門が余りにも出過ぎたり、へこみ過ぎたりするということは、経済運営がうまくいっていないのです。経済というのは常に均衡を目指す。どうも総理大臣の経済観はそうじゃないのだね。国際収支が、たくさん外貨がたまったから経済はうまくいっているのだ、この感覚が間違いなのだ。総理は経済学をどこで勉強したのですか。一高ですか、東大の経済学部ですか。大蔵省の主税局や主計局だけで勉強した感覚で今日の世界経済は乗り切れませんよ。私は、やはり経済というものは、均衡ある発展をするところに経済の真のあるべき姿があると思うのだ。 経済を担当する経済企画庁長官宮澤さん、あなたの経済観はどうですか。
○宮澤国務大臣 先ほど総理の言われましたように、石油危機以後のショックから安定成長に移行しようという、やはり移行期をここ何年か過ごしておるわけでございますから、その間におきまして、国際収支のアンバランスであるとか、国内の貯蓄、投資のアンバランスであるとか、財政のアンバランスであるとか、雇用であるとか、いろいろ問題がありますことは確かに御指摘のとおりでございます。しかし、これは移行期でございますので、やはりそういう現象が起こっておりますので、そういうアンバランスを少しずつ解消する方向に向かってわが国経済が進んでいるということを総理は指摘しておられるものと思います。
○武藤(山)委員 そのアンバランスを解消しようとして補正予算が出てきたのはわかっているのですよ。しかし、そうなっているのは経済がうまくいっていない証拠じゃありませんかという質問なのです。だから、うまくいっていないから、これから手だてをこのようにこうしてトンネルから抜け出ますと言うなら答弁になる。うまくいっているのかいっていないのかということを聞いている。私は、均衡を破壊しているからうまくいっていないという判断なのです。総理、これでうまくいっているのですか。
○福田内閣総理大臣 先進工業国は、どの国をとらえてみましても、インフレで弱っている国もある、あるいは国際収支の大赤字で弱っている国もある、あるいは失業で非常に苦しんでいる、こういうのは世界共通の現象です。そういう中とすればわが国はまあまあという動きを示しておる、こういう認識なのです。その理由は一体どこにあるのだということを先ほどるる申し上げた、こういうことでございます。
○武藤(山)委員 総理、まあまあということは、うまくもいっていないが、悪くもいっていない、プラス・マイナス・ゼロのところだという意味ですか。
○福田内閣総理大臣 まあまあというのは、よくいっているというところにアクセントがあるのですが、よくいっているというのは無条件でよくいっているというわけではないのだ、問題もあるのだ、その問題のあるところにいま取り組んでおる、こういうことでございます。
○武藤(山)委員 時間が限られておりますから先へ進みますが、現在の経済成長の瞬間風速は一体どのくらいになっておりますか。
○宮澤国務大臣 国民所得の暫定統計、いわゆるQEによりますと、一-三月期実質国民総支出二・五%、四-六月期一・一%でございます。
○武藤(山)委員 その数字は、もし年率に換算するとどういうことになりますか。
○宮澤国務大臣 一-三月期で申しますと一〇%を超える年率でございます。四-六月期で申しますと五%をちょっと割る年率でございます。
○武藤(山)委員 七-九の予想でありますが、これはいろいろ企画庁、通産省あるいは銀行やそれぞれの調査機関も見通しをやや発表しておりますが、政府、企画庁の観測では七-九は大体どのくらいになりそうですか。
○宮澤国務大臣 先ほど武藤委員もお述べになりましたように、一-三月の二・五%のうち、輸出、輸入の関係の海外経常余剰がプラス〇・九貢献をいたしておりました。しかるところ、四-六月の一・一は海外経常余剰が逆にマイナスの一・〇、マイナスの貢献になりまして、そこで二ポイント、スイングがございましたために、全体としては一・一に落ちたわけでございます。内需につきまして申しますと、四-六月の内需は二・三でございますので、これは年率にいたしますと九・五ぐらいになっております。したがいまして、七-九を占いますものは、いわゆる海外経常余剰、輸出の数量の減りと輸入の数量の増、その両方がどれぐらい内需のプラスの足を引っ張るかということにかかってまいりますが、この点は輸出数量、輸入数量がまだはっきりいたしておりませんし、統計がはっきりいたしませんので、十二月の初めごろになりませんと七-九の数字がはっきりいたしません。この輸出の減、輸入の増という、おのおの数量でございますが、経験が実は初めてのことでございますので、私ども経済研究所でもその辺の予測をいたしかねておるのが実情でございます。
○武藤(山)委員 まだ計算をいたしかねる、十二月ごろでないとわからぬ、こういうわけでありますが、大方の民間の報道では、七月-九月の成長率は年率にして一・三程度だろう。そうすると一-三が一〇%、四-六が五%、七-九が一・三ぐらいのGNPベース。こうなると七月-九月は非常に悪いですね。それが十二月でないと政策手段の対応ができないということになりますと、これはまた後手になりますね。この九月二日の総合経済対策というのは一体何月の指数をもとにしてやったのですか。三カ月もたたぬとわからぬということになりますと、四-六の数字、年率にして大体五%程度の経済成長を基準にして今回の二兆五千億円の事業規模というものを決めたということになりますね。そうすると、ボン会議以降特に円高になったのですから、七-九は特に悪いのですよ。七、八が特に円高、急上昇したのですからね。わずか二カ月で十円以上上がったのですからね。そういうものを織り込んでないのです。今度の政府の見通しの中に。私がいま言いたいのは、一・三に落ちるという七-九のこの悪い状況というものが今回の補正予算に反映されていないのではないかということなんです。総理、どうなんですか、織り込んであるのですか。勉強する時間がなくてそういうことはわからぬですか、どうですか。
○福田内閣総理大臣 過去の実績も見るのです。しかし同時に、これからの先々を展望いたしまして計画をいたしておるわけでありまして、二、三カ月も前の統計だけを見てそれで対策を講ずるというようなことはしておりませんし、そうすべきものでもない、このように考えております。
○武藤(山)委員 総理はそういう強弁をするけれども、これは専門家の学者の間でも、たとえば下村治さんも金森さんも、あるいは日銀の元調査局長も、みんなそういう点を心配していますね。ですから、大方の専門家は、今回の補正を組んでも七%実現は不可能だ、そうはっきり断定していますね。七%絶対できると強気で言い張っているのは、日本じゅうで福田総理ただ一人だ。これはどちらが正しいのか。そう言い張る必要ないと思う、総理。経済というものはやはり動くのです。総理が幾ら七%必ずできるといばってみても、経済は総理が一人で営んでいるのじゃないのです。経済というものは一億一千五十万の全国民の心理の動きなんです。総和なんです。企業のそれぞれの経営者の行動によって経済というのは数字にあらわれてくるものなんです。それを総理は、おれが決断をした七%は絶対できるなんて言い張れるのですか、神様でもない人間が。もうちょっと謙虚に、経済の動きというものを、経済の本質というものを踏まえて、野党との討議の際に柔軟性を持つべきが、経済見通しの議論をする際の姿勢であるべきだと思う。どうでしょうか、総理、七%は絶対できるのですか。
○福田内閣総理大臣 七%七%とおっしゃいますが、七%ちょっきりということを言っているわけじゃないのです。御指摘のように私は神様じゃない。その私が、七%ちょっきりにこの膨大な日本経済の成長がおさまる、そんなようなことは考えていませんよ。七%程度、こういうことを考えておるわけなんです。その七%程度へ向けてわが国の経済は今度の施策を加えますれば動く、こういう確信を持っておる、こういうことを申し上げておるわけです。その確信を固めた理由につきましては、また経済企画庁を中心にいたしましてるる御説明申し上げます。
○武藤(山)委員 七%という数字を少々変更して七%前後、いいですね、前後。そうすると、参議院で七%は責任を持つとこう言った、その責任を持つという意味はどういうことなんですか。
○福田内閣総理大臣 どこまでも七%程度ということでありますが、七%程度の成長につきましては、これは私は責任を持ちます。これからもいろいろ変動がありましょう、世界経済の中の日本経済でありますから。世界経済波高し、その中の日本経済でありますから、いろいろ影響もありましょう。ありましょうが、七%程度の成長は実現をするということを決意をいたしておるわけでありますから、それにつきましては私は責任を持つ、こういうことであります。
○武藤(山)委員 責任を持つということはいろいろな意味がありますね。責任を持つということは、できなかったときには総理をやめて国民におわびするという意味、あるいは、これでできそうもない場合は補正を組んで第二次補正でできるように責任を持つ、あなたの言う責任を持つという中身、意味はどういうことなんですか。
○福田内閣総理大臣 まあ、責任を持つと私が申し上げれば、あなたも政治家だ、それで十分御理解がいくのじゃないか、こういうふうに思いますが、とにかく七%程度の成長につきましては、これができなかったという際におきましては、その際私は責任を持ってこれに対処する、こういう決意でございます。
○武藤(山)委員 どうもその責任を持つという意味がさっぱり――皆さん、わかりますか。(発言する者あり)あなたも政治家だからわかるでしょうじゃ、私はわからぬ。だから、私は責任を持つということは、たとえば、この十二月ごろ一-三の状況を見渡すととても七%はできそうもないというときには、総理の責任において第二次補正を組む気持ちだというのか、それとも政治家として雄渾の気風を唱える総理だったら腹を切る、そうでしょう。雄大でたくましい人間像をつくろうというのだから、それはやはりそのくらいな覚悟がなきゃ。腹を切る、腹を切るということは辞職をするということですね。責任を持つという言葉はそう軽々と一国の総理大臣が使える言葉じゃないだけに、私はいまここで聞いているのですよ。あなたがそれをどこまで本気で考えているのか。野党の追及をかわすためのその場限りの責任逃れでは、私は、国民は納得せぬと思うのであります。まあ総裁に大平さんがなるのか福田さんがなるのかわからぬから、来年になって責任をとれと言ったって、おれは総理じゃないよと言われればそれっきりだけれども、しかし、それはわからぬですね。しかし、政治家がそういうことを発言するからには、やはり野党の皆さんとも、十分経済動向を勘案して七%ができそうもないときには補正をまた皆さんに相談しましょう、そういう責任の持ち方もあるのですよ。どっちなんでしょうか。
○福田内閣総理大臣 経済運営はただ単に補正だとか財政、それだけの問題じゃないのです。これは、財政を経済運営の手段として使うときもある、あるいは金融を使うこともあります。あるいはその他の経済施策を使うこともあります。いずれにいたしましても、機動的、弾力的にこれからの経済運営には対処いたしまして、終局において七%程度の成長は実現をする、こういうことを私は申し上げておるわけでありまして、まあ、責任のとり方の態様はどうだというようなお話でございますが、それはその際の問題でありまして、もしできなかったら大いに私を責め立ててください。私はその際はしかるべき責任をとる、こういうことを申し上げておきます。
○武藤(山)委員 企画庁長官、世界経済の成長率というのをいろいろ、OECDやなんかの発表あるいは書物などで見ますと、一九七五年がマイナス〇・八、七六年が五・二、七七年が三・六、本年度の七八年が三・五、来年の見通しが三・三、これが世界全体の経済の成長率だということを一応発表されている。ヨーロッパ全体の成長率は一九七五年がマイナス一・五、七六年が四・五、七七年が二・〇、ことしが二・五、来年が三%、これはOECDの見方ですね。日本だけは図抜けて、これの倍ですね。世界経済が伸びていく、ヨーロッパ経済が伸びていく倍の伸び方を日本経済がするわけです。そういうことがまたいろいろ国際的な摩擦の要因になったり、日本だけがそういう図抜けた成長を何年も何年も続け得る環境があるのかどうか、そういう点も、マクロで見たときに大変心配の問題であります。日本銀行から九月二十九日、欧米各国が七八年成長率の下方修正をしたということを新聞に発表されていますね。これによるとアメリカ、西ドイツ、フランス、英国、どのように下方修正したか、企画庁長官御存じですか。
○宮崎(勇)政府委員 お答えいたします。 御指摘のように、OECDの本年度の調査の一番最新の見通しによりますと、先進国平均で七七年三・六%の後、七八年三・五%になっておりまして、その際アメリカが三・七五%、西ドイツが二・五%等となっておりますが、たとえば西ドイツ政府はこの二・五%に対しまして三・五%というふうに考え、アメリカ政府の見通しは三・七五%に対して五%近くを考えておりますが、それを現実の見通しでOECDの見通しに、やや低い方に修正しております。
○武藤(山)委員 いま調整局長が答えたように、ボン会議で約束をしておきながら、ヨーロッパ各国はつい最近成長率を下方修正した。アメリカは四・七が四・一になった。西ドイツは三・五が二・五にまた戻っちゃった。二・五を一%上げるとボン会議で約束したのがまた二・五。フランスは三・二、英国は二にした。これが日本銀行の調査結果の二十九日の発表なんですよ、総理。
○福田内閣総理大臣 国際調査機関でいろいろ調査をしておりますが、私の達観を申し上げますと、いま世界経済で非常に問題である点は何だというと、先ほど黒一点と申し上げましたが、これはやはりアメリカのドルの減価である、このように思うのです。その減価の背景といたしましては、まずアメリカのインフレがある、それからアメリカの国際収支の大赤字がある。世界経済を安定せんとすれば、まずアメリカがそのドル価値の維持に本当に不退転の決意で取り組む必要がある、そういうふうに思うのですが、そうなりますと、アメリカの成長というものが世界が期待するようなわけにはいかなくなるんじゃないか。そういうことを考えますと、国際調査機関が本年よりは来年は多少はよくなりそうだなという見方をしておるその見方は、私はやや疑問を持っておるわけであります。そういう疑問に答えたのかもしれません、国際調査機関で若干の下方修正を全体としてやった、こういうようなことですね。私はいま来年の経済を展望していますよ。展望しておりますが、そういう世界情勢の動きの中で、さて日本経済をどういうふうにしていかなければならぬだろうかな、こういうことを考えておるわけなんでありまして、私は世界経済を来年そう楽観はしておらぬということを申し上げておきます。
○武藤(山)委員 時間がありませんから先へ進みますが、企画庁長官、今回の補正予算は、二兆五千億円の事業規模と言いながら一般会計の持ち出しはほんのわずかで、新規のプラスになる増は当初予算以外ではわずか千四百五十億、こんなちょっぴりでもって経済成長が、福田さんの言うように達せられるとは思わない。しかし、いずれにしても、そういう議論をすると時間がなくなりますから、今回の補正でGNP、国民所得統計ベースで一・三%とにかく押し上げるんだ、いまの成長率の状態では年間五・七ぐらいにしかならない。七にするためにはどうしても一・三%をさらに加えなければならぬ、そういう観点から補正予算を組んだと言うのでありますが、その内訳、これをやることによって本当に七%になるという根拠、これを国民にわかるように説明してください。
○宮澤国務大臣 このたびの二兆五千億からそれの実質値をはじき出しました経緯でございますが、まず、公共事業関係につきましては、かなり今度は個所づけがはっきりしておりましたけれども、やはり用地費をある程度引かなければなりません。それが一点でございます。それから住宅関係につきましては、すべての住宅が年度内に完成いたすわけではございませんので、達成率を掛けなければいけません。それからもう一つ、住宅金融公庫からの貸し出しの一部は民間金融機関からの貸し出しの振りかわりが起こるであろうと考えましたので、その分を控除いたしました。そうして計算いたしまして、その残りを、乗数効果を一・二五程度と判断をいたしまして、実質二兆三千五百億円ぐらいになったわけでございますが、そこへ電力関係の投資、これは主として在庫投資になろうと存じますが、一千五、六百億円、ガスが五十億程度でございますけれども、合わせましてほぼ二兆五千億円程度、GNPの比例で考えまして一・三%程度、こういう計算をいたしております。
○武藤(山)委員 この計算はまこに甘い。ではひとつ企画庁長官、お尋ねしますがね。この二兆五千億円の事業規模のうち、いまあなたは二兆三千五百億円と、電気、ガスの投資の一千五百億から一千六百億円、それから用地費をちょっと引いて積算をして一・三になるんだ、こうおっしゃいますが、土地代を何%見ていますか。
○宮澤国務大臣 お入り用でございましたら、詳細は政府委員から申し上げますが、公共事業関係につきましては、三%引いております。これはいかにも低いという御指摘があろうかと存じますが、補正予算のときには昨年も四%程度でございまして、ほぼ個所づけがはっきりいたしておりまして、このぐらいで適当であろうということでございました。 それから地方単独につきましては、ほぼ五%の用地費の控除をいたしております。
○武藤(山)委員 総理、当初予算の公共事業費の土地支払い額は二〇%なんだ、公共事業に対して土地代が。今度は三%なんです。ここにごまかしがあるんだ。いま企画庁長官は、昨年四%だったから、ことし三%に見ればいいだろう。昨年四%で見たから、実際政府見通しどおりの経済成長にならなかったんですよ。去年も総理が言うような六・七でしたか、目標が。五・五にしかならないんだ。そういうところで、今度の補正予算の抜け穴はここに、この土地代にある。もし三%で済むとするならば、積算をして、個所づけをしたから積み上げて、もうこれとこれは土地はちゃんと用意してある、これとこれをやるという個所づけがあってしかるべきだ。予算委員会に個所づけ一覧表を出せるかどうか。出してください。
○宮崎(勇)政府委員 お答えいたします。 ただいま大臣から御答弁がありましたように、今回の追加では用地費の補償率を約三%と見ておりますが、これは財政当局におきまして事業別に積み上げをした数字でございまして、たとえば治山治水は一・四でありますとか、道路整備等は四・七%等であるということでございまして、それぞれ項目別に積み上がっております。
○武藤(山)委員 しからば、ただいまの、用地費は三%で済むという資料を本委員会に提出を願いたいと思いますが、取り計らいを願いたいと思います。
○宮澤国務大臣 承知いたしました。
○中野委員長 そのように取り計らいます。
○武藤(山)委員 民間機関の調査や、またわれわれ政策審議会の調査によると、今回の補正予算で政府固定資本形成が約六千億円増、民間住宅投資への効果が六千億増、政府財貨サービス購入の減が一千億円、そういう数字をデータにして一応コンピューターをはじいてみると、今回の補正でGNPを押し上げる率はわずか〇・四九、〇・五、来年度へ波及効果を及ぼすのが〇・六程度、こういう計算がわれわれの計算では出てきたのであります。そうなると、今回の補正を組んでも、五・七プラス〇・五というと六・一程度ですね。とても七%にならない。六・一でも七%内外ということで、総理、承知できる数字ですか。先ほどは、七%にこだわらぬ、七%前後でいいのだ、もう数字はきちっと言わぬ。その場合、〇・五ぐらいしかプラスにならぬ。学者や民間やわが社会党の計算でもそう出てくる。成長率が六・一%ぐらいになるのです。これでもがまんできる数字ですか。
○福田内閣総理大臣 今度の補正を組むに当たりましては、経済見通しの見直しをしておるわけなのです。それで、何ら手段を講じないということになりますと、五・七%ぐらいの成長にとどまるであろう。そこで、七%成長に足りないところの一・三%を補足する必要がある。それにはどうするかというと、まず予算であります。それからまた、地方公共団体に依頼するものがあります。また、民間の活動を政府の施策によって刺激する、こういう面もありますが、それらを総合すると、大体一・三%の効果がある。これは相当かたくそういうふうには見ておりますので、必要がありますれば、武藤さんの計算といつでも対比いたしまして御論議願って結構でございます。
○武藤(山)委員 総理がいろいろ強気なことをおっしゃいますが、いろいろ新聞報道の中でも、日本の代表的な経営者百人のアンケート、この産業界のトップ百人の意見の集約、これを見ても、総理が大変喜びそうな調査もしておりまして、次の総裁にだれがなるだろうか、福田赳夫さん四十六、これは最高ですね。大平正芳さん十六と、こう出ているのです。百人のトップ経営者の回答は。しかし、七%成長についてどうかというと、七%を十分に上回る成長が可能だというのはゼロ、そして景気追加策の効果が出て順調に上昇するという答えはゼロ、多少は上昇するがまだまだ力不足八十四、こういう数字なんです。七%達成できるというのは、百人のトップ経営者のアンケートで一人もいない。これは日本経済の調査で発表になっている。それをけさの新聞でさらに詳しくその数字を、「一九八〇年代の重要問題はどうなるか」ということでトップレベルが答えている。日本の経済を運営しているのは産業界なんです。資本主義経済だから。政府じゃないんだ。そうすると、経済の動きなり、経済の実態なり、行動の原理なりを一番端的に表現するのは、こういう人たちの統計資料なんです。政府じゃないのです。国民総生産全体の二百十兆あるいは二百二兆ですか、今度はちょっとふやして二百十二兆ですか、そのうち政府が出すなんというのは四分の一なんです。したがって、産業界の感覚や調査や行動というものが経済を動かす一番大きなファクターなんです。だから、総理が絶対心配ない心配ないと言っても産業界がこう言っていると、それはやっぱりこっちの方が真実になっちゃうのですね。やっぱり謙虚に耳を傾ける姿勢が国民のためになるんじゃないでしょうか。 特に、最近のデフレ効果というものがいろいろな面から出てくる。輸出が減っていくということはデフレ効果になる。輸入がふえてくるということは、国内はデフレ要因になってくる。両方がデフレ要因になってくる。それが七月、八月、特に円高によってそういう傾向が強くなってきている。その統計は政府統計にまだ出てない。 だから総理、謙虚に、そういう統計が全部そろう段階でもう一度検討してみたい、そのときには野党諸君の意見も十分聞こうじゃないか、それが協調と連帯だ、これが民主政治家なんです。いまの総理の考えは民主じゃなくて、君主の政治の思想なんです。帝王の思想なんです。これはだめなんです。アメリカのリンカーンは、民主政治は長く権力を握っていると腐敗をして君主政治になる、だから私は二期以上大統領をやらぬと言って、彼は素直に大統領をやめた。それがアメリカの歴史になり、今日、アメリカの大統領は二期以上できない法律になっている。憲法で決めてある。福田さん、まだ二年で帝王や君主の思想になっちゃいけません。民主でなければいけない。それは耳を謙虚に傾けるという姿勢なんであります。民主政治は、多数決で物を何でもがむしゃらに決めるのが民主政治じゃないのであります。民主主義はディスカッションの政治なんです。少数の皆さんにも耳を傾け、謙虚に協調と連帯をすることが民主政治なんです。福田さん、口では協調、連帯を言うけれども一つもその姿勢がない。頑迷固陋、まさに雄渾の人だ。これはだめです。 七月の生産の動向を見ても、九カ月ぶりにまた生産は減退、前月比〇・八、出荷は前月比マイナス一・二、九月の見通しも通産省に言わせるとマイナス一・四となる。これでは今回の補正を組んでもとても七%はむずかしいというのが産業界の一致した意見なんです。 河本通産大臣、通産省としてはこの見方についてどう見ておりますか。産業界の見方は間違っていると断定できますか。
○河本国務大臣 経済見通しにつきましては、今回の総合経済対策をつくります場合にも政府部内でいろいろの意見がございましたが、意見調整をいたしました結果、現時点ではおよそ二兆五千億の内需の拡大をすれば七%程度の成長達成は可能である、こういう結論に達したのであります。ただしかし、先ほど来の議論にありましたように、世界経済は激動の時代でありますし、日本経済もまた激しく動いております。したがいまして、これからも経済の動きに即応いたしまして機動的に対処していくことが必要だと思います。
○武藤(山)委員 次に進みます。 個人消費の減退でありますが、まず、ことしの賃金アップ率からお尋ねいたします。 民間、公企体、人事院勧告、公務員、ことしの賃金のアップはどのくらいになりましたか。――労働大臣おるのですが、こんなの常識じゃないのですか。労働大臣と指定しないと答えてくれないのかな。
○藤井国務大臣 お答えをいたします。 最近の賃金動向、労働省の毎月の勤労統計調査によって見ますと、賃金改定が行われた本年の四月から八月までの平均の現金給与総額は、前年同月に比較いたしまして六・九%増しております。消費者物価の上昇を差し引いた実質賃金では二・八%増となっております。
○武藤(山)委員 私が聞いているのはそういうことじゃないので、まあいいわ。ことしのベースアップが春闘でどのくらいになったかという数字を聞いたので、申し上げますが、民間が一社平均五・九%、公共企業体が五・四、政府人事院勧告、公務員は三・八四ですね。こういう上昇率なんです。 そうすると、宮澤企画庁長官、政府の当初経済見通しの賃金の伸びは、名目幾らぐらいを積算の根拠にしましたか。
○宮澤国務大臣 当初見通しは、一人当たり雇用者所得を九・四と見ておりました。
○武藤(山)委員 賃金は九・四%上昇するだろうという予想で経済見通しを立てた。個人消費の伸びもそれを基礎にして考えた。現実にはいま申し上げたような、人事院勧告が基礎にする民間のベースアップはわずか五・九、公企体は五・四、公務員に至っては三・八四。政府の言うように、当初は一一・九%個人消費が伸びるとこう言っていた。これで一体、今回の改定で個人消費は幾ら伸びるという計算に改定しましたか。
○宮澤国務大臣 一人当たり雇用者所得といわゆる春闘のベースアップとがイコールでないという点につきましては、前国会におきまして詳しく御説明を申し上げましたので省略をいたしますが、そこで、九・四に対応してそれを今回の見直しでどのように直したかというお尋ねでございます。七・九と見込んでおります。
○武藤(山)委員 農林大臣。農林省の指導で減反政策を行い、補助金は出すけれども、まあ一反歩当たり最高で七万円補助金出すけれども、農家の所得の伸びというのは、所得増というのは一体どうなるのか。率にしたらどのくらい農家所得が伸びますか、五十三年度に。
○中川国務大臣 農業は農産物の価格だけではありませんで、収量その他もありますから厳密には計算できませんが、まあかなり昨年度よりはいいのではないか。特に米はことし約六%からの増収になっておりますので、若干これは買い上げ価格よりは下がりますけれども、かなり米の増収は農家にとってはいい影響ではないかと、こう見ております。
○武藤(山)委員 農家の所得が伸びていいだろうという農林大臣の答弁はいただけないですね。まあ、いただけなくてもいいわ、一応お返ししておいて、先に進みます。 次に、この一年間、正月からずっと十二月まででもいいわ、ことしになってから、公共料金の引き上げあるいは公共的な負担の増、そういうものは一体どのくらいになりますか。まず一番最初、大蔵省関係から聞きましょうか。酒の税金が五月一日から上がりましたね。石油の税金が六月一日から上がりましたね。大蔵省管轄で国民の負担がふえるような項目と金額、これをちょっと大蔵大臣、明らかにしてください。
○村山国務大臣 酒につきましては、この前、酒のときに申し上げましたように、消費者物価で大体〇・一%押し上げるということになります。 石油につきましては、増税いたしましたけれども、石油税が創設されましたが、その後ガソリンの小売価格あるいは灯油の小売価格は下がっております。消費者物価はむしろ影響がない、かように考えております。
○武藤(山)委員 影響がない。酒は、ビールが百九十五円が二百十五円になったんでしょう。ウイスキーは特級二百三十円、一級百円、清酒は一級千四百三十円が千四百六十円で三十円上がったんでしょう。差し引き勘定を聞いているのじゃないのだ、私は。それは後で聞くのですよ、還元の方で。安くなったという話は。これによる税収は幾らふえるのですか。石油新税で幾らふえて、酒で幾らふえるのですか。
○村山国務大臣 酒の負担でございますが、平年度ベースで千九百七十億円、初年度ベースで千七百七十億円であります。それから石油税による増収額は、平年度二千百七十億円、初年度ベースで千六百二十億円でございます。
○武藤(山)委員 文部大臣、ことしの四月一日から大学、短大、高専、高校、幼稚園、国立関係で一体幾ら値上がりになったか。さらに私立で、わかる範囲内でどのくらい総額負担増になったか、それを明らかにしてください。
○砂田国務大臣 昭和五十三年度におきます授業料、入学金加えました学校への納付金は、五十二度と比較をいたしますと、国立大学で四〇%、公立の高等学校で三五%、公立幼稚園で二一%。私立学校につきましては平均額で、大学一七%、高等学校一二%、幼稚園で八%増加をしております。 父兄負担の軽減につきましては、公費をもって負担をするべき学校経費についての父兄負担解消のための施設設備費でありますとか、教材費の国庫負担の増額等取り組んでまいりましたので、義務教育の小中学校の公費をもって負担するべき経費で、PTA等の寄付金等によるものは逐次減少傾向にあります。幼稚園の入園料、保育料等、これは御承知の就園奨励費等で軽減に努めているところでありますが、また私立大学、私立の高等学校等につきましては、私学助成の法律に基づいて充実に努めてまいったところでございます。 いま、わかる範囲の数字ということでありましたけれども、申し述べました大学、高校、さらに幼稚園、五十二年に比べまして五十三年度で約八百億の負担増になるのであろうと考えております。指数でございますが、これに対応いたしまして教育費の負担軽減関係の予算を約七百四十億程度計上いたしておりまして、家計費に占めます割合で申しますと、五十三年度におきましては対前年度比〇・二%程度の上昇になるのではないかと見ております。
○武藤(山)委員 次に、厚生大臣。ことしの一月からいろいろあるね。国民年金保険料、ボーナス保険料、初診料、入院料、標準報酬月額引き上げ、政管健保険険料本人負担のアップ、その他、厚生省関係で本年一年間でどのくらい増額になるのか、国民のふところから取り上げるのか、さらに来年もまた予想しているのかどうか。新聞によると、厚生省は来年もまた予算の中で国民負担をふやすようなことが新聞報道になっておるが、あわせて、来年は何か値上がりになるのか、それをひとつ答えてください。
○小沢国務大臣 五十三年度でいきますと、私どもが五十三年度で法律改正によって引き上げました国民の負担分は、国民年金の保険料の引き上げ千五百億、月額にいたしますと、国民年金の被保険者の保険料が月五百三十円上がるわけでございます。 いまおっしゃいましたように、今年度それだけの増にとどまるかといいますと、五十二年度で健保法の改正あるいは医療費の引き上げ等がありましたので、その影響が今年度に出てくる分が全部で千六百二十三億円と考えておりまして、これを合計いたしますと、三千百二十三億円ということでございます。国民一人月額にしまして二百二十六円である、かように計算をいたしております。
○武藤(山)委員 厚生省関係だけで国民のふところから取り上げる増が三千百二十三億円。 運輸大臣、国鉄は幾らになりますか、値上がり分で。
○福永国務大臣 五十二年当初から現在までに料金ないし運賃改定によりますそれでの推算は、五十三年におきまして、運賃関係で約千六百億円と考えておりますが、ただいま国鉄はどうだというお話ですが、国鉄は千三百四十八億円と推算をいたしております。
○武藤(山)委員 建設大臣、住宅公団は幾らになりますか、家賃の値上げ。
○櫻内国務大臣 平均五千三百円の引き上げでございますが、中堅勤労者の五十三年度平均月収に対しては、その負担率は一・八%増です。
○武藤(山)委員 金額は幾らですか。
○櫻内国務大臣 金額は、いま申し上げた約五千三百円です。
○武藤(山)委員 いやいや、全体で。
○櫻内国務大臣 トータルは残念ながら、それは五十三年度で増収見込み額は百三十億円でございますけれども、家賃抑制所要額が逆に三十億円ございまして、維持管理経費百億円の増、こういう計算になっております。
○武藤(山)委員 自治大臣、使用料、清掃料、上下水道、保育所、幼稚園、税金、大分あるね。全国でどのくらい国民負担増になりますか。
○加藤国務大臣 昭和五十三年度の地方財政計画におきましては、前年に比しまして千百四十九億円の増加を見込んでおり、総計五千百四十七億円、かようなことでございます。この内訳は、高校授業料が約九百九十億円、幼稚園保育料が百四十億円、その他が四千十億円、かような計算であります。
○武藤(山)委員 それから、これはだれだろうか、総理大臣ですかね。それともわかる役所でもいいですが、ことしすでに上げられた乳価、砂糖、麦価、これは一体どのくらいになるか。 それから、これから私鉄運賃の値上げを運輸大臣は認めるのか認めないのか、これは一体どのくらい値上げを認めると年度間――私鉄運賃、バス、タクシー、これもメジロ押しに本年早まっている。これは担当官でいい。 それから、すでに予算査定を大蔵省は始めているけれども、来年度も値上げをするという方向のものは何と何と何か。国鉄、お米、健保料、郵便、電報、たばこ、これが値上げになるかならないか、なりそうなものをはっきり言って、ならないものはならないとはっきり言ってください。これは査定をしているからいろいろ要望があるし、わかると思いますが、それとも各省大臣で、おれの方はどうしても値上げをしたいというのがあったらはっきりしてください。明らかにしてください。
○福永国務大臣 民鉄につきましては、先ほども一部お答えをいたしましたが、いままでに運賃改定をいたしましたものによりまするならば、今年の増収額は百十二億円でありますが、ただいま一部申請等があり、これを審議会にかけておりますものもございますが、これをどういうように認めるかということ、ないし認めないかというようなことはこれからのことでございますので、この席でどのぐらい上げてどうなるということは、お答えすることを遠慮いたしますことを御了承いただきます。
○中川国務大臣 麦価、米価のお尋ねがございましたが、米価は二つございまして、(武藤(山)委員「米価は言わない、上がったものだけ」と呼ぶ)乳価その他、大体上げないという方向で処理してきたつもりでございます。詳細はまた後ほど出しますが、傾向としては上げないということで指導してきたつもりでございます。
○服部国務大臣 郵便料金の取り扱いについては、五十三年度は借入金で措置いたしておりますとおりで、五十四年度以降については、郵便事業の安定と円滑な運営を阻害することのないよう、関係の向きと十分協議いたしまして慎重に対処したい。それから、電信電話料金の問題につきましては、電電公社に対し経営努力に努めさせ、できるだけ長期間現行料金を維持することができるよう指導してまいりたい、かように考えております。(「NHK」と呼ぶ者あり)NHKも同様であります。
○武藤(山)委員 総理大臣、いまあなたの閣僚の皆さんから数字を確認をして、社会党だけで何ぼと言うと、その数字はなんと言うから、私は皆さんに信憑性を確認する意味で政府から答えていただきました。いまざっとそれを合計すると一兆六千億円になる、国民のふところからこの一年間に取り上げる、ふえる分だけで。総理は、いや、それはまた教育だ、道路だ、方々へ配っているから、おれのふところへ入ったわけじゃないと言えば、それはそうなんです。それは総理がもうけたなんて言っているわけじゃないですよ。ただ、国民のふところから一兆六千億円以上も取り上げておきながら、個人消費が政府の言うように伸びるだろうかという不安を私は持っておるわけなんだ。だから、個人消費をもっとふやして、個人の実質生活水準を低下しないようにするというのが政治の要諦なんだ。その要諦を政府が踏み外しているんだと、こう言いたいわけなんだ、私がいま言いたいのは。 そこで、一兆六千億円も国民のふところから公共料金的なものの引き上げをしておきながら、政府は財源がないから減税はできない。財源がないのは初めからわかっているのだ、五十三年度当初から。赤字国債をどんどん、どんどんふやしたでしょう。われわれは、国債なんというのは総理やるんじゃないよ、福田さんが大蔵大臣のときも社会党は絶対いけませんよと抵抗したわけですよね。夜の十二時まで議論した、当時。ところが福田さんは、いや、節度をもってやるから心配ない、国債発行は日本の経済上最も必要な時期に来たと答えている。 いまや、それが雪だるま式にでかくなって四十三兆三千億円、この責任はだれにあるのでしょうか。大変なことです。そうなっちゃったからおまえらにはもう減税なんかできないんだ、私が使う使い方はどんどん赤字国債を発行してもいいというのが政府の姿勢だ。当初予算で野党の言い分は聞かないで、全部赤字国債も建設国債も政府の思うとおり使っているでしょう。来年も恐らくそうするのでしょう、十何兆か国債発行して。福田さんの思うような方向に使ってしまうんでしょう。そうなると、国民から見ると、国民大衆、勤労国民を犠牲にして国債はどんどん累増するわ、実質生活水準は低くなるわ、踏んだりけったりじゃありませんか。そんなに国債を発行するなら、国民のふところにも分けてくれと言うのは当然じゃありませんか、国民から見れば。まさに、いまの七%経済成長、経済対策は、勤労国民犠牲の上に成り立った経済成長論じゃありませんか。総理にその反論を聞きたい。 一兆六千億円の負担増を国民に課しておいて、血も涙もないじゃないですか。どこに国定忠治の任侠の精神があるのですか。上州任侠が泣いていますよ。答えてください。
○福田内閣総理大臣 いろいろの点の御指摘がありましたが、第一には、国債の発行を非常に批判をされておる。私が昭和四十年に大蔵大臣をしたとき、国債の発行というのが本格的に始まった。私は、あの制度を始めたということは歴史的なことが始まったんだ、こういうふうに私自身は評価しておるわけです。 結局問題は、日本経済をいかにして安定させるかということ、民間の力ではどうしても安定の推進力にならぬという際に、国家が借金をして、そしてその成長、安定を達成する。また民間の力がついたということになれば、国債を引っ込めてしまえばそれでいいのですから、財政が経済政策運営のかなめとして役割りを果たさなければならぬ。それは武藤さんも御同様な意見を持たれると思いますが、そのために非常に弾力的でかつ強力な手段は国債です。いまは非常に多額の国債を発行しております。おりまするけれども、この国債の発行がなければ、私は先ほどから言っている日本の経済全体として見るときに、世界の中でまあまあいい方だというような日本経済は実現し得なかったと思うのです。それをとにかく、そう国民に不安を与えることなく大量の国債を発行し得ておるゆえんのものは、やはり四十年から国債というものにそう国民が驚かないという環境ができてきたからじゃないか、このように考えておるのですが、それが第一点。 第二点は、いろいろ手数料だ、料金だ、こういうことで政府が国民から国民の所得を吸い上げている、けしからぬ、こういうお話ですが、結局そうじゃないのです。そうじゃないのは、国民からそう吸い上げまするけれども、国民にそれは全部還元しているのですよ。還元してなお足りないものですから国債まで発行いたしまして、そしてそれを国民に還元というか追加補給をいたしておる、こういう状態でありまして、どうも政府は吸い上げ過ぎてけしからぬけしからぬと言うが、吸い上げる力のあるところ、また吸い上げを受けなければならぬたとえば利用者あるいは物資の使用者、そういう方々からは吸い上げはある。あるけれども、また国民全体のためにそれはすべて還元をされておる、そういう状態でありまして、決して収奪と言われるようなそんな政治をやっておるわけじゃないのです。国民を豊かにしよう、豊かにしよう、安定させようという一念でやっておるのだということを強調します。
○武藤(山)委員 先憂後楽、国民のことを本気で心配をしていると総理はおっしゃるけれども、数字が証明するんだね。あなたはいま、力のある人から負担をしてもらうんだ。勤労国民の担税力のない、負担力のない、そういう弱い者からも、さっきずっと拾い上げた一兆六千億円は、みんなこれ、おしなべて取り上げられておるんだよ。富の配分が不公平なんだよ。十一兆の公共事業を行って、確かに金をばらまく。だから、日本じゅうのどこかには金は行くわけですよ。しかし、その行き方が、どういう層に行き、どういう業種が潤って、その恩恵を受けない者もおるというアンバランスの問題なんです。 私は、福田さんがポッケに入れておるなんて思っていないよ。それはちゃんといただいたものは皆、また予算で配っておることは百も承知しています。問題は、配り方なんであります。公共事業一点張りで、公共事業にばかり重点を置いてそういう金を使うというあり方はこの辺で考えるべきではないか、こういうことを言っているのであります。 自民党の中にもいるんですよ。中曽根さんは、つい最近まで減税は必要だと言っていた。あるいは河本通産大臣は、この補正予算ではまだ七%はどうも実現むずかしい、やがて補正の必要があるだろうということを、あの対策会議で決まった直後、記者会見で言っているんですよ。日銀総裁も、減税必要だということをぶっているんですよ。自民党内にもいるんです。そういう正義の味方が。何人かいるんだ、何人か。 そういうことにもうちょっと総理、効率だけ追求するという政治はもう終わりにしなければいけない。いままで日本は効率だけ追求してきた。より早く、よりよいものを、よりたくさんつくる。それには徹底的な合理化をして利潤追求に徹する、まさに効率の経済、それは必要です。しかし、効率だけに偏った姿勢というものがいかに弊害を生んだかという、いま反省期なんです。大きいことがいいことだという思想は少々この辺で変えなければならぬ。スモール・イズ・ビューティフルなんです。いま世界のベストセラーになっているんだ、「スモール・イズ・ビューティフル」が。この間著者が亡くなっちゃったけれども。 そういう時代に来たのですから、物の見方、考え方を効率追求の一点張りから変える時代なんだ。何に変えるか、効率アンド公正ですよ。公正、公平が同時に効率にセットされ、車の両輪のように動かない経済は弱い者いじめになるのです。しわ寄せが弱い国民大衆、勤労国民に及ぶのであります。だから私たちは、いまのこれだけの料金の吸い上げをするからには、一兆円の減税をすることがなぜ悪いのか。公正、公平な資源の配分をするという見地に立てば、まさにこれは、野党全体の声ということは、投票数で陶民党より多い国民がこれを支持しているということなんです。天の声、地の声なんです。おかしくないんだよ、その論理がわからないのかね。福田さんは主税局長、主計局長的発想だから、そこまで経済的な方向性というものに転換できない。私は、それをいまや、転換すべき時代が来た、こう主張しているのであります。もう一度福田さんの見解を聞きたい。
○福田内閣総理大臣 武藤さん、どうも公正な政治になっておらぬじゃないか、こういうようなお話ですが、これは、統制経済をやっておるわけじゃありませんから、全国民を一律に型にはまったような生活をしてもらうわけにはいかない。しかし、先進諸国の中では、武藤さん、わが国は、中流というか、中産階級が最も多い国ですよ。これはOECDの調査でもそう言っておる。それから昨年、総理府が世論調査をしている。そうしますと、中流意識と言う人かだんだんふえていく。そうして昨年の調査では実に九〇%が、中流意識である、こういうふうに答えておるわけでありまして、まあ富の公平なる配分というか、そういう形の政治は、わが日本においては先進諸国の中では一番進んでおるんじゃあるまいか、私はそういうふうに思うわけです。 また、それに関連しまして、武藤さんが、減税をどうしてやらないんだ、公共事業一点張り、公共投資一点張りでは不公正になるんじゃないかというようなお話でありますが、私どもは、財政がこれを許しますれば、これはいろいろなことが考えられる。しかし減税をするには金が要るのです。これは。その要る一兆円なら一兆円の金、それを使ったならば、どういうことが一番効率的なんだ、また、一番現下の状態に適しておる使い方であるかということだろうと思うのです。 そうなりますと、私は、いま問題は景気の問題だ。景気対策といたしまして、一兆円の減税をした、それよりは公共投資をやる、その方が直接的にいかばかり経済の刺激になるかわからぬ。それから同時に、いま問題になっておりますのは雇用の問題です。いま納税する力のある人、その人に減税をしてやります。これは納税者だけを幾らか楽にするというだけの問題です。しかし、公共事業をいたしますということになれば、その事業の結果、所得の少ない人、ない人、そういう人にも職場をつくり、それから所得も多くする、そういう効果もあるわけで、まさに国民がそのことを求めておるのじゃないか、国民経済はそのことを要求しているのじゃないか、そのように思うわけであります。 まして財政のことを考えれば、とにかく一兆円の公債を出してそうして減税する、これは、あなたが一番よく知っていることじゃないかと思うが、大変なことなんです。インフレにでもしちゃったらこの日本もおしまいになっちゃう、そのことを考えると軽々に御同意できない、こういうことを申し上げているのです。
○武藤(山)委員 総理の答弁には大変なごまかしと論理的矛盾がある。それを一々指摘したら二、三時間かかってしまうから、端的に一、二を言うけれども、総理、いま中産階級意識を日本の多くの国民は持っている。意識の問題、現実はどうなんです。現実は。 たとえば、IMF・JCがヨーロッパの国々の賃金の調査をした数字がこの間新聞に詳しく出て、小冊子にもなっている。それを見ると、西ドイツの物価水準なり賃金水準を一〇〇として計算をして、それで日本の今日の物価高を現実に比較をしてみると、西ドイツで百マルクで生活できる人が日本に来て同じ生活レベルを維持しようとすると、何と五〇%、百五十マルクなければ同じ水準の生活ができない。特にここに商品が書いてある。小麦粉、牛肉、豚肉、牛乳、バター、卵、タマネギ、リンゴ、それの比較がずっとこう出ている。日本、高いですね。 だから、実際は賃金は、円高でもってどんどんドル表示は、世界で労働者の賃金はアメリカの次になった、アメリカにやや匹敵するほど近づいてきた。しかし、実際の購買力、通貨の購買力を見ると、西ドイツの五〇%以下、半分だというのです。この統計、これは西ドイツ連邦統計局、IMFの統計あるいはイギリスの統計、それぞれの統計を全部引っ張り出して、現実に調査もしたものを積み上げた計算をしている。だから、日本の労働者の賃金は、名目は円高でどんどん高くはなるけれども、実質購買力はそれに比例していないのであります。何が中産階級の水準であるか。意味がわからないでそういうことを言っている意識の問題なんです。私は、総理大臣がそういう詭弁を弄していたのでは日本の政治はよくならない、そういう断定をせざるを得ません。しかし、次に進みます。 通貨問題で、昨年一年間で円は三十三円五十五銭高くなりました。一一・八二%上昇。ことし百九十円で推移したとするならば二六・五%の円高となります。この急激な円高の原因を何だと考えているか。これはもうとめようのないフロート制の宿命と考えるか、日本政府としてはやるだけのことをやっているが、この円高傾向を食いとめることはできないと白状するか、もし解決できるとするならば、どういう手だてをすれば解決できるのか、国民がいま心配している円高問題について、総理大臣の率直な見解をひとつ聞かせてください。
○福田内閣総理大臣 円高というお話でございますが、円高現象を分析してみますと、わが国の円に独特な要素もありますけれども、大方これはドル安である、こういうふうに御理解願っていいのじゃあるまいか。つまり、わが日本の円だけが上昇しているわけじゃない。ドイツマルクも上昇しております。スイスフランも上昇しております。そういうような状態。それを受けて金の価格も非常に上昇いたしておる、こういうことなんです。 円高ドル安の原因は一体どこにあるのかというと、これは基軸通貨であるドル、その価値が下落し続けた、その影響を受けてわが国の円も上昇した。最近になって、諸外国に比べるとわが国の円の上昇速度が急激でございます。これはわが国の国際収支が非常に大きな黒字を出しておる、そういう点が影響しておる、このように考えるわけであります。 それに関連しまして変動為替制をどういうふうに考えるか、こういう御指摘でございますが、変動為替制は、いま世界の経済が非常に混乱をしておる、そういう際に固定制、私は固定制論者なんです。論者でありまするけれども、実際問題とすると固定制でいくわけにいかぬ。多くの国がそういう意見でありますので、わが国もそれに追随せざるを得ない、こういう立場にありますが、まあ変動制にいたしましても、これが本当に変動制がねらうところの安定した変動制であるというためには、諸外国のインフレでありますとか、あるいは赤字、黒字の国際収支の問題でありますとか、あるいは失業、景気の問題でありますとか、そういう問題が平均化いたしませんと、この変動為替制というのはこれは動揺する、こういうふうに見ておるのです。 これにいかに対処するかということは、やはり日本だけではできません。日本も世界の中で大事な立場を占める国、経済大国です。そういう立場で努力をしなければなりませんけれども、世界全体が一緒になって、とにかく世界のこの経済を平均化しよう、そういう動きをすることが大事である。そういう中で、特にアメリカが非常に国際収支がアンバランスである、それからインフレの傾向がある。この基軸通貨たるアメリカの責任を認識いたしまして最善の努力をする、この二つで問題の解決ができるのではあるまいか、そのように私は考えております。
○武藤(山)委員 総理、なぜドルが下がるのか、円が上がるのはドルが安くなるからだ、ドルが安くなるということはアメリカのインフレなんだ、アメリカの国際収支なんだ、日本のせいじゃないんだ。では、なぜアメリカが、国際収支もあんなことになり、インフレになっているか。結局、なぜドルが不安定なのかという根本にもう一度戻る、突き詰めていくと。結局それは一九七一年の金との交換制をやめたIMF体制が崩壊寸前になっているということじゃないですか、根本は。仮にアメリカのインフレ問題が処理できたとしても、二年先、三年ぐらい先だと私は思います。アメリカがインフレ問題を処理できるのは、来年あたりはまだ不可能だと思いますよ。あるいはまた、アメリカがいまの国際収支が均衡のとれるようになるのも、一年後には不可能でしょうね。かなり中期的な展望を持たなければこれもできない。 では、アメリカが、インフレ問題は処理できた、さらに国際収支問題も二年先に何とかいった、それで為替レート問題というのは解決できるか。大蔵大臣、その状態で解決できると思うか。IMF総会へ行ってきたばかりですから、ちょっと見解を聞かせてください。
○村山国務大臣 この点は今度のIMFにおいても最も論議されたところでございます。現在の状況のもとにおいて金から離脱した後におきましては、やはり変動為替相場というものは次善の策としてやむを得ない、これは各国の共通の認識であります。動く要素がたくさんありますけれども、やはり基礎的な主要国の間のインフレ率あるいは雇用状況あるいは成長率の差あるいは国際収支の差、こういうものの格差、実態的な基礎的条件の格差が縮小することが第一であるということでございまして、いままで為替がずいぶん動いておりましたのも、やはりその点に欠けるところがあったということでございます。 特に大きな問題は、アメリカの大きな経常収支の赤字、あるいは日本、ドイツ、スイス等の経常収支の黒字、こういう問題でございまして、その意味で日本が内需を拡大するという基本条件の改定ということをわれわれは申し述べ、これがまた高く評価されておるところでございます。また、アメリカはインフレ対策あるいはエネルギー対策あるいは輸出奨励対策、こういったものが相次いでいま発表されつつあり、実施に移されつつあります。この二つの、黒字国と赤字国のそれぞれの基本条件を改定していくことが今後の為替の安定について最も大事であろうということです。 ただ、御案内のように、そういう基礎的条件が為替相場に反映するまでにはかなりの期間を要すること、つまり国際収支の調整となってあらわれてくるには相当の期間がかかるということは各国認めておるところでございまして、ただ、その調整が完全に済むまでの間に短期的に投機資金の移動がある。それがまた収支過程をおくらせておる。それについては、やはり各国が短期的に為替相場の安定について、通貨当局相互間が連絡、協調していくことが大事である。この二本柱が言われたわけでございます。 幸いにしまして、いま日本の内需拡大政策あるいはドイツの一%上げるという政策、アメリカのインフレ対策、こういったものが発表されて以来、御案内のように、円は大体百九十円前後に落ちついておる、こういうことでございます。変動相場でございますから当然のことでございますけれども、徐々にその点は逆Jカーブが働いていくだろう、こういう認識でございます。(「結局だめだということじゃないか」と呼ぶ者あり)
○武藤(山)委員 そうそう、結局長期的に見たらだめなんです。というのは、アメリカがインフレ問題、国際収支問題を本当に期待するように解決されるのには、大蔵大臣の見通しでは何年先ですか。何年先にアメリカの経済が均衡すると思いますか。インフレもおさまり、国際収支も大体好ましい状態になる、そのためには日本と西ドイツがうんとひどい目に遭わなければならぬですからね。それは何年先になりますか。
○村山国務大臣 この点はなかなか確たる――さきに言ったような国際収支調整過程の中に期間がかかるということ、それから短期資金の移動があるということで、いつどうなるかということは、世界のだれも言う者はございません。ただ、IMFの今度の試算におきまして、可能性の問題として、いまの赤字が来年度ごろには半分になる、こういう試算は出ております。
○武藤(山)委員 大蔵大臣は世界のだれも見通しはわからぬと言うけれども、天下の福田総理大臣なら見通しはわかるですか、どうですか。だから、いまの時代を不確実性の時代、見通しのきかない時代、こう言われているのです。何で見通しがつかないのかというと、アメリカのインフレ問題と国際収支問題は、三年くらいの間に、私の予想ではやや解決できるかもしれない。しかし、もう一つ大問題が片づかない。それは何か、過剰ドルの問題であります。六千億ドル世界に流れているこの過剰ドルの処理であります。これは簡単にできますか。これが処理できない限りフロート制というものは、いま円高になったり、マルク高になったり、今度は逆に円が下がって、下がったことによる混乱がまた起こり、被害が起こり、企業が大変なことになる。フロート制というのはそういうことを繰り返しているのです。この不確実性の時代に産業界に、国民に、将来の見通しを与え、明るい希望を持たせるという方向性というものを示せない政治は落第であります。アメリカのカーター大統領に向かって過剰ドル問題をどう処理せよという注文を福田総理はつけたのか、その中身をちょっと説明してください。
○福田内閣総理大臣 過剰ドル問題、これは大きな問題であることは御指摘のとおりです。その額が一体どのくらいになるのか、あるいは五千億という人もあるし、六千億という人もある。そのくらい多額の過剰ドルが世界をうろうろしておる、こういうような状態でありまして、何か通貨で変動が起きる、たとえば日本の国際収支がまた黒字が大きくなった、そうすると円の力が強くなるだろう、そうするとその五、六千億ドルの通貨が円を目がけて殺到してくる。今度は同じような状態がマルクに起こってきたということになると、今度はマルクにそれが殺到する、こういうようなことで、この過剰ドル問題の処理というのは大変大事な問題です。根本的に世界を安定させるためにはこの問題にメスを入れなければならぬわけでございますが、過剰ドル、それだけの多額なものを一挙に整理すると言ったって、アメリカが今度黒字になって、だんだんとドルがアメリカに還流してくるというような道筋だとか、あるいはアメリカに対するほかの国からの投資が盛んになって、そしてまた還流がそういう方向で行われるとか、あるいはその過剰ドルを何かかん詰めにするというようなことを言う人もありますけれども、かん詰めとなると、これはまたなかなかむずかしい問題だろうと思います。 しかし、そういうむずかしい問題があって過剰ドルが世界通貨情勢を混乱させておりますが、過剰ドルがありましても、その過剰ドルがみだりに動き回る機会を与えないということにすることがまず手っ取り早い行き方ではないか、それには世界の各国の経済を早く安定させて、そしてアンバランスが各国間でなくなるように努力をすることが大事じゃないか。また、特に基軸通貨国であるアメリカが節度ある経済対策を打ち出すことが必要じゃないか、こういう手順、段取りを考えておるわけでありますが、いつになったらアメリカの対ドル政策が成功するのだということになりますと、これはだれも予言はできないと私は思うのです。できませんけれども、そういう方向へ向かってアメリカの本格的な歩みが始まった、そしてアメリカの国際収支あるいはインフレの改善の傾向が出てきたということになれば、それはしめたものだ、そうなればみんな総力を挙げて安定にいろいろ手を打つことができるであろう、こういうふうに私は考えまして、アメリカがそういう方向を早く鮮やかに打ち出し、それが数字になって出てくることを期待しております。
○武藤(山)委員 これは世界経済の見方の中期的展望論になりますから、きょうの議論は省略をいたしますが、アメリカがそういう努力をし一時安心をさせても根本的解決にならぬというのが私の結論なんだ。フロート制である限り、金との兌換を廃止した限り、ドルの信認は得られない。IMFがSDRをつくったり引き出し権を拡大していろいろあれやこれややってみても、結局ドルを世界基軸通貨の地位に置く限り今日の不確実性というものは解消しないというのがわが党の見解であります。結局は多軸通貨制への移行、バスケット計算方式にするかどういう方法にするか、いずれにしても多軸通貨制の方向に変わっていく以外に、金本位制に戻れないとするならば、ドルを世界の王様にしておく限り、今日の事態の解消は不可能な段階に必ず突き当たる。そのときに、日本はただアメリカにだけ追従していていいのか。経済大国だというからには日本独自の通貨戦略をきちっと政府が踏まえるのが、今日の国民の要請ではないのか。そういう意味で、私は今回の問題は大変重大な意味を秘めている論議だと思うのでありますが、きょうはその論争をする時間がありませんから、先へ進みます。 しからば、当面の政策で政府は当初予算経常収支を六十億ドルにいたします。こう世界に約束をしている。恐らくボン会議でもそういう議論はしたと思います。今回の政府の改定では、五十三年度経常収支は一ドル二百円で計算をすると百三十五億ドル、一ドル百九十円で計算をすると百四十二億ドルの黒字であります。これはまたまた世界から批判を受けないか。去年の十一月、本委員会で私は福田総理に緊急輸入を本気でやるのですか、初めはやると言っていた。年末までに三十億ドル何とかしたいと答えた。結果は、年末までに実行したのは五億ドル。宮澤企画庁長官が就任をして、今度は四十億ドルを実現したい、こう約束をした。その約束がいつもほごにされている。世界にうそをつくとまた日本の信頼を失うばかりではない、円に対する圧力がまた加わって円高になる。あるいはアメリカのように輸入に対するあれやこれやの規制、制限をすることになる。われわれはそういうことを心配する余り、なぜ六十億ドルが百三十五億ドル、百四十二億ドルという大変な黒字になるのか。もちろん五十三年度の前半を計算すると、ことしの前半の経常収支の黒字は二百億ドルのベースですね。このままいくと二百億ドルになるというので大変心配だ。いまのままではこの十月-十二月の水準が大体百四十億ドルくらいの水準である。来年の一月-三月に百十億ドルくらいの水準にいかないと、政府改定見通しの百三十五億ドル、百四十二億ドルにならない。それだけのことをやっていくという場合のデフレ要因がどういう形で一-三月ごろに出てくるのかということも、今後大変な関心を持たねばならぬ問題であります。いずれにしても、六十億ドルをこのように改定をしたことによって、世界からまた日本は不信感を買わないか、批判を受けないか、総理大臣、いかがですか。
○福田内閣総理大臣 ボン会議の話がありましたが、ボン会議で日本の経済運営に対しての批判、これは一言もありません。もちろん六十億ドルの黒字の問題にしても、これは国際社会に約束した問題でもありませんし、なかなかそういうことができ得る問題でもありませんし、六十億ドルを問題にするというような人がないことはもちろんですが、その他のわが国の経済運営につきましても、今後さらに国際社会で黒字減らしに努力せられたいという期待の声はありましたけれども、批判がましいことは一言もなかったということを申し上げておきます。 そこで、ことしの全体としての黒字、これを今度改定したわけですが、この改定の線はぜひひとつ守り抜いていきたい、このように考えまして、そして諸般の施策を講ずるということにしますが、国際社会において大事なことは、この百何十億ドルということも大事な問題で、何としても改定見通しは実現をしなければなりませんけれども、同時にもっと大事なことは、上半期に比べまして下半期が黒字状態が非常に改善された、これがはっきり出ますれば、国際社会は、ああ日本はずいぶん工夫したな、努力したなという評価を得るだろう、私はこのように思います。私は、ことしの推移を展望しまして、上半期の国際収支の状況と下半期の国際収支の状況というのは非常に鮮やかに変わってくる、このように考えております。
○武藤(山)委員 総理、また四十億ドルの緊急輸入をやるという方針を決めましたね。この前十一月のときは、いや、あれは願望だったんだ、実現しなくてもいいんだ、当時の企画庁長官と総理の見解が分かれて、ここでちょっと一悶着あった。今度はどうですか、四十億ドルは願望とは言わないでしょうね。最後まで実行するんでしょうね。まず、その中身、現在の進捗状況を明らかにしてください。
○宮澤国務大臣 たびたび経済対策閣僚会議を開きまして、いろいろな新しい制度も設けまして緊急輸入に努力をいたしておりますが、今年度で私ども考えておりますのは、IMFのベースで四十億一千万ドルでございますが、内訳を申し上げますか。
○武藤(山)委員 はい。
○宮澤国務大臣 ウランの濃縮役務及びウラン鉱石ほぼ十六億ドル、タンカー備蓄五億六千万ドル、鉄鉱ペレット二億ドル余り、ニッケル、クロム六千五百万ドル。小さいのを省略いたします。航空機リース七億ドル余り、プラントバージ八千八百万ドル、仕組み船六億ドル余り、医療器具六千万ドル余り、総体ですと四十億ドルをちょっと超えますが、IMFベースに直しまして四十億一千三百万ドルという試算をいたしております。
○武藤(山)委員 企画庁長官、このうちもうすでに契約ができてお金を支払えばいいだけになっているのは、この四十一億ドルのうち一体幾らあるのですか。
○宮澤国務大臣 すでに輸入計画が確定いたしておりますものは、十五億一千六百万ドルでございます。ウラン関係が十億ドル、ウラン鉱石二千七百万ドル、タンカー備蓄四億三千万ドル、ニッケル、クロム三千五百万ドル、鉄鉱石千七百万ドル、航空機リース七百万ドル等でございます。 そのほか、九月末までに輸入をいたしましたものは二億五千万ドル余りでございます。
○武藤(山)委員 今度はこれを必ず実行しないと、また国際的圧力が加わりますね。しかし、まだ十五億一千六百万ドルしか契約段階ではない、まだ半分いっていないのだから大変だな。 この中でどうもよくわからぬのは、航空機等のリースが七億四千五百万、そのうち七百万ドルといま答えた。七百万ドルというと小さい飛行機ですか、これは一体どこの国へ貸すのですか。それから、七億四千五百万ドルの予定どおり、航空機はどこかの国が借りてくれるのですか。 その次の仕組み船というのもよくわからぬのですね。仕組み船の定義から、仕組み船にこれだけお金を払うということが一体どういう意味を持つのか、この辺もよくわからない。 企画庁長官、この二点についてもうちょっと詳しく説明してみてください。
○矢野政府委員 いま手元に資料がございませんが、先生の御指摘の航空機リースでございますが、まず、ブリティッシュエアウエー、英国航空にすでに四千五百万ドルが契約を終わって、輸銀の審査も終わっております。 それ以後、いま私どもがいろいろと検討しておりますのはタイ航空、これはA300、ECの飛行機でございますが、これは一つの対象としていま検討しておりますし、フィリピン航空というのも対象でございます。それから、スペイン、ギリシャというふうなところからいま日本のリース会社の方にいろいろとサウンドをしておりまして、年度内には何か持っていけるのではないか、こういう報告のもとにいまの数字が上がっております。
○真島政府委員 仕組み船と申しますのは、わが国の船会社が長期用船をいたしております外国籍の船舶でございます。したがいまして、外国籍でございますので、建造いたしますときには外国銀行その他から金を借りてつくっております。 したがいまして、今回のドル減らし対策の一環といたしまして、輸銀から外貨貸しを受けましてこれを買い戻すということによりまして、これがドル減らしの一環となる、こういうことでございます。
○武藤(山)委員 これはどういうことですか、日本の船会社が外国籍の船を持って、その船は外国に置いてある。それを今度は日本における船会社の親会社が買うということですか、それとも、政府が買うのですか、だれが買うのですか。
○真島政府委員 買い戻しますのは日本の船会社でございまして、政府ではございません。
○武藤(山)委員 だから、日本の船会社が外国籍の船を持っているというのは、子会社でしょう、大体。それとも全部はっきりした外国会社ですか。日本で資本は出ているが、国際的ビッグビジネスですか。国際企業ですか。日本の多国籍企業ですか。そして、会社で船を買って持っていて、それを今度は日本の船会社が買う。いま日本は船はあり余って困っていて、そのときに外国船の国籍の船を日本が買った場合に、どうやって使うのですか。解体するのですか。どういうことなんですか、これは。
○真島政府委員 最初に申し上げましたとおり、今度買い戻しの対象になっております外国籍の船舶というのは、日本の船会社が長期用船をして、すでに日本の船会社の支配下に動いておる船でございますが、建造の当時にいろいろな事情がございまして外国籍になっておる船でございます。したがいまして、その外国籍の船の会社は日本の船会社の支配下にある外国の船舶所有会社というようなもの、いろいろございます。
○武藤(山)委員 しかし、これは実際には、この船の使用方法は全然変わらないでいまのとおり運航して、外国でやはりかせいでいる。ただ金だけ、国籍だけ日本に返るということで、買ったという形で金の払い込みが行われる。その金はどうなんですか、向こうのそれぞれの国へ完全にその金は入るのですか。それとも、また日本の子会社だから、回り回って親会社の方へかなり、配当だ何だという形でそういうものは戻ってくるのですか。どうもこの多国籍企業というやつの機構がよくわからない。
○真島政府委員 買い戻しされました場合の金の動きでございますけれども、日本の船社が輸銀から金を借りまして、外国籍の船でございます。現在仕組み船でございまして、その関係の金融機関あるいは関係の船会社、つまりいま仕組み船を所有しております船社に金は返ってまいりまして、外国の船社が銀行から借りておりますれば、その銀行へその金が流れるわけでございます。
○武藤(山)委員 それは日本の会社同士の結局やりくり、外国国籍を持っておる船をただ単に外貨減らしのために日本の国籍に切りかえるという、ドル減らしの苦心の策である、こう考えるのでありますが、しかし、これはとっさの、どろなわ式な、しかもそう効果のない金の動かし方であって、私は余り賛成できないようですね。これで何百万トン買うのですか、この仕組み船というのは。
○真島政府委員 現在計画がなされております仕組み船が約三十九隻、金額にいたしまして六億ドル余りでございます。(「トン数は」と呼ぶ者あり)調べてもらうことにいたします。
○武藤(山)委員 次に、最近の円高による円高差益の問題について少しくただしたいと思います。 政府の事務当局で結構でありますが、五十三年度の輸入総額七百十五億ドル予定、ドル建て輸入がどのくらいあって、もし百九十円で推移したら、その仕入れ価格にどのくらいな従来より差額が出るのか。差益という言葉を使うと気に食わぬ人もあるでしょうから、差額が出るのか、総体として、総額として。二百円で推移した場合にはトータルとして幾らの差益が出るのか、それをまず先に明らかにしてください。
○矢野政府委員 五十三年度の見通しとしての御質問と伺いまして、いろいろとこの試算は非常にむずかしいわけでございますが、大体日本の輸入につきましては、円建てとかそういうものは二%程度、一から二%でございますので、この辺を捨象させていただきまして、全部がドル建て契約だという前提と、それから今後価格がどう変動するかというような点はそのまま横ばいと見させていただきまして、いまの御指摘の御質問に答えますと、約四兆二千億という数字が出てまいります。この場合に私どもは、大体八月までがすでに平均実績レートが出て二百十三円という数字でございます。したがいまして九月以降百九十円として計算させていただきました。したがって、先生御指摘のように二百円でということになりますと、この点はさらにその差益が四兆二千億より上の方に出てくる、こういう点で、いま数字を持っておりませんが、そういう上回るというふうにお返事をさせていただきたいと思います。
○武藤(山)委員 大変な差益になるわけであります。二百十三円で九月まで計算して四兆二千億ですから、これを九月以降二百円にするともっとふえるかもしらぬ、こういう答えであります。 この円高差益がGNPベースで物価にどの程度マイナス影響を与えるか、物価を引き下げる影響を与えるか。この点は企画庁長官ですか、だれでもいいです。わからなければ事務当局でもいいです。
○藤井(直)政府委員 円高によります物価への影響でございますが、現在の段階で言いますと、卸売物価につきまして、八月現在で昨年と対比して三・六%マイナスになっておりますが、このうち、円高によって直接マイナスとなっておる比率は四・二%でございます。これが現在の卸売物価の上にあらわれている数字でございます。これがさらに生産過程、流通過程を経てその効果が及んでいくわけでございますけれども、その辺の数字につきましては、需給の状況とか、それから流通過程の問題、さらには現在のコストに対して価格がどうなっているかということ、いろいろ影響してまいりますので、数字として把握することがむずかしい状況でございます。(武藤(山)委員「一ドル幾らで計算してですか」と呼ぶ)これは百九十円程度でございます。
○武藤(山)委員 福田総理、いまあなたの部下の説明で、いまのような円高状態だと卸売物価に四・二%寄与するというのです。大変ですね。だから、卸売物価が今日マイナスで、アメリカの上昇率の半分で日本が進んでおるというのは、福田さんの政策のおかげじゃないのですよ。円高のおかげなんですよ。いみじくもいま政府の説明は、四・二%引き下げる寄与をしているというのだ。裏目が出たのだ。政策運営の失敗の裏目が出たのが物価引き下げになった。これは政策じゃない、手段が上手だったからじゃないのですよ。いばれないのです。何と思いますか。
○福田内閣総理大臣 最近は卸売物価が非常に鎮静してまいりまして、先進諸国ではない現象でありますが、とにかく最近の一年間の上昇率はマイナスの三・六だ、そういう状態になっておるわけです。他の国、たとえばドイツだってマルク高という問題がある。そういう中でわが国がマイナスの三・六という実績を上げておるわけです。 それから、昨年の九月からとにかく円高現象というものが起こってきておるわけでございますが、その前だってわが国は、卸売物価も消費者物価も世界第一級の安定傾向を示しておる。それがわが国の貿易構造、これはわが国の輸入の八割までが原材料です。そういうことを受けまして、端的にそれが卸売物価にあらわれてきておる。こういうことなのでありまして、別に私が私の内閣の物価政策を誇示するというそういう姿勢はとりませんけれども、現実の問題として世界第一安定しておるということだけは申し上げておきます。
○武藤(山)委員 いずれにしても、円高でもってとにかく四兆二千億円の差益があること、物価を引き下げる寄与率は四・二になるということは、政府の役人が答えたので、これは否定できない。 次に、この差益還元な福田総理初め河本さんは何としても反対していたね、七月終わりまで。還元なんというのは絶対すべきじゃない、もうとにかく投資に回すべきだ、とにかく電力投資は必要なんだということで最後までがんばっていた。しかし、社会党が七月二十九日に電力、ガスの差益をコンピューターではじいて発表したら、真っ先にまず商工会議所の永野会頭が賛成論をぶつ。ついに自民党の幹事長大平さんまでがどこかの演説で、差益は考えなければならないかもしれないと言い出した。福田さんだけはだめだだめだと言った。ついに世論に押されて電気、ガスの還元を決定した。いいことです。これは評価します。これは福田内閣の姿勢、大いに評価します。 ただ、還元の内容は、通産大臣、電気の場合は二千六百六十五億円の還元をする。これは差益の七〇%。全部しろというのはちょっと素人議論で、私も全額還元しろなどとは申しません。仮に七〇%の還元で二千六百六十五億円を国民に返してやるというのは聞こえがいいのでありますが、そのうち家庭用には二五%しか返さない予定ですね、金額にして六百六十六億円。あとは企業だ。商売用、事業。そういう企業に七五%、二千億円が還元されるのです。企業の収益にはかなりプラスになりますが、こういう配分の仕方で一体国民の期待にこたえたことになるだろうか。もうちょっとこの辺は電力会社と通産省で話し合って、配分率を五、五ぐらいに考えてやってよかったのじゃないだろうか、そんな気がするのですが、通産大臣の見解、いかがですか。
○河本国務大臣 配分の方法は、原則はあくまで消費者に公平に還元する、こういう考え方でございますが、計算方法につきましては政府委員から答弁をさせます。
○天谷政府委員 還元の基本方針はユーザーに公平に還元するということでございますので、一般消費者それから企業、この使用量に応じまして還元をいたしたわけでございます。
○武藤(山)委員 なぜですか。
○天谷政府委員 これは、電力は基本的には原価主義ということになっておりますので、差益に基づきまして原価が低減した分を使用量に応じまして還元をいたしたものでございます。
○武藤(山)委員 公正とか、弱い者に対する配慮とか、そういうことは一切抜き、電力会社の言うなり……。わかりました。それ以上追及しません。 政府は、九月二日の経済対策閣僚会議の中で「円高差益還元等物価対策の推進」という項目を第五項目に掲げ、そして全体で八項目にわたって円高差益還元物価対策要綱を出しております。 この中をずっと見ていきますと、牛肉の問題、灯油の問題、配合飼料の問題、国際航空運賃、電信電話あるいは総代理店問題などが書かれておりますけれども、一体、具体的にどういう対策をとろうとしているのですか。行政指導で具体的に何%ぐらい何が下がるというような目安を決めてやっているのですか。行政指導をやるとだけ書いてあるのですよ。中身は何もないのですよ。ちょっとその中身を説明してください。
○福永国務大臣 ただいまあなたが挙げられた幾つかの中に航空運賃という御指摘がありましたので、まず私から申し上げたいと思います。 航空会社の収支構造というものは、外貨建てによる収入と支出がやや見合っております。さような事情でございますので、直ちに円高でごそっとというような事情では必ずしもありません。ただ、運賃につきましては、方向別にかなりの差がございます。したがって、方向別是正をしなければならない。全方位というわけにはまいりません。そういうわけでございますから、私どもはそれについて、いまいろいろ作業を進めております。 ただ、こういう部門につきましては、外国の事情等ともにらみ合わせまして、相手国との話し合い等もいたさなければならぬということ等がございます。具体的には、相手国発の運賃にサーチャージを課すとかあるいは日本発運賃をディスカウントするとか、いろいろなことがございますが、さような作業をただいま急ぎ進めつつあることを御了承いただきます。
○武藤(山)委員 あと、われと思わん者は手を挙げて出てきてくれればいいのに、黙っているから次に進みます。もう時間がないから……
○橋口政府委員 流通機構ないしは流通過程の中に競争制限的な要素が織り込まれておりますと円高差益も十分進まない、こういう基本的認識に立ちまして、主として輸入総代理店制度の問題について検討いたしておるわけでございます。幾つかの措置もすでに実施しておりますが、基本的には、輸入総代理店制に内在する問題というものをもう少し掘り下げて検討する必要があるのではないか、こういう認識に立ちまして、近く実態調査をいたしたいと思っております。
○武藤(山)委員 時間が大分迫ったので個々の質問はできませんから、われわれが試算した、社会党がコンピューターで一応はじいた、差益還元をいかに数字の上で可能であるかという――実行するか何かは政府の決意でありますが、まず灯油からひとつお尋ねをいたしますが、灯油の差益還元について、政府はどういう指導方針で、いつごろからさらに差益を還元するとしておるか。
○天谷政府委員 灯油につきましては、昨年十二月と今年八月と二回にわたりまして元売業者が値下げをやっておりまして、卸売価格それから小売価格とも、低落の傾向を見せております。八月の値下げの影響はまだ小売値まで波及はいたしていないと思いますが、シーズンオフの段階でもございますので、東京都区部で申しますと、大体昨年同期と比べまして小売でもって五、六%の低下をいたしておりますが、今後さらに低下するものと考えております。元売段階につきましては、ほかの灯油類似の製品等との価格のバランス等をよくウォッチしながら、差益の還元について指導していくつもりでございます。
○武藤(山)委員 とにかく時間がないから先を急ぎますが、いまの灯油問題でわれわれが試算をすると、ことしの石油新税まできちっと計算に入れて現在の輸入量など計算をしてみますと、灯油の輸入価格は二四%低下しております。そういたしますと、ことしの七月、十八リッター当たり三百四十四円の計算が出てまいります。もちろん、この間人件費、いろいろそういうコストが幾らかはかかると思いますね。そうすると、この三百四十四円が現在幾らで売られているか。十八リッター、店頭渡しでもよろしい、配達料込でもよろしい。現在灯油は幾らになっていますか。
○宮澤国務大臣 私から申し上げます。 東京都の九月の物価の速報によりますと、七百五十八円になっております。
○武藤(山)委員 このように一応計算をしてみますと、十八リッター当たり九十円ぐらい安くなってもいいとわれわれは思ったのでありますが、逆に上がっているのですよ、総理。上がっている。昭和五十一年七月が店頭渡しで七百二十一円、五十二年一月が七百二十六円、五十三年一月が七百八円でちょっぴり下がった。また、それが、店頭渡しを見てもいま言った七百五十八円。だから、これは零細業者で、零細商店が運搬したりなんかするから、ガソリンが上がったりあるいは電話料が上がったりとかいろいろ経費が上がるから、その引き下げ率が二四%にならなくもそれは仕方ないと思うけれども、しかし、この値段は少しまだ下げが足らぬと思うが、総理、もっと下がるように指導するかどうか。
○河本国務大臣 元売価格も下がっておることでございますから、今後小売価格も下がるように指導してまいりたいと思います。
○武藤(山)委員 灯油は、それでは下がると期待をしますよ。 LPGはいかがですか。これも一九七六年を一〇〇の指数にしてわれわれがはじきますと、この七月で輸入価格は七三になります。したがって、輸入価格は二七%低下しております。社会党の計算では。これでいくと、いままでの東京の十立方メーター当たりのLPGの販売価格を見ますと、去年の一月からずっと十二月まで三千四百五十円で変化なし、差益はびた一文も還元なし、去年一年間。本年は幾らか。一月が三千四百五十円、三月から三千四百六十円で十円値上げ。差益還元が全くないのは一体いかがなものであろうか。われわれの計算でもし機械的にはじくと、十立方メーターで二百五十六円安くなってよいはずである。したがって、七月の三千四百六十円の価格は三千二百四円になっていいはずである。業界にもっと指導して下げるべきであると思うが、通産大臣の見解いかん。
○河本国務大臣 LPGも元売の価格は下がっておるのですが、小売の段階で下がっておりませんので、これはいろいろ事情を調べてみますと、何分にも零細業者が多いものですから、人件費その他のコストの値上り等が響いておるということでございますけれども、なお下がる余地が私どもあると考えまして、先般小売関係の団体に対しまして、さらに末端価格が値下がりするように協力を求めておるところでございます。
○武藤(山)委員 農林大臣、牛肉の輸入価格はどうですか。これ、輸入価格を見ると、一九七六年、おととしを一〇〇として、去年が八二、ことしの一月が七九、七月が八三、したがって輸入牛肉価格は一七%の差益があるはずである、そういう計算になる。実際の小売価格はどうなっておるか、こうなると、ことしの一月が三百十五円、現在が三百六円、したがって三%下がっておる。下がりぐあいが少々少な過ぎる。同時に、一番問題なのは、キログラム当たりの牛肉の輸入単価は一体幾らかというと、キログラムで四百三十四円。家庭で買う百グラムの牛肉の値段は、輸入価格は原価は四十三円で輸入しておる、それを流通機構だ事業団だ、何だかんだ経費を入れて三百六円。四十三円の原価が三百六円なんだ、牛肉は。総理、理由のいかんを問わず、こんなに差があって、国民が牛肉の値を下げろ下げろと言うのはむべなるかなと私は思うが、総理の感じはいかがですか。
○中川国務大臣 牛肉についてはいろいろ議論のあるところでございますが、武藤委員も御承知のように、畜産物価格安定法によりまして、国内の生産価格に見合った価格に合うように調整金を付加して販売するようになっております。これはまさに日本の酪農家を保護するための措置であり、その調整金はすべて酪農家並びに消費者対策に仕向けておるところでございます。しかし牛肉については、国内のものも高いというところから、生産費を引き下げる努力あるいは流通コストを下げるということで大変に努力をし、かなり物価が上がっておる中で若干なりとも下げつつあり、これは消費者あるいは先生方の御意見もありますから、急激にはまいりませんけれども、そういった仕組みの中で最善を尽くして、御期待にこたえたいと努力をいたしておるところでございます。
○武藤(山)委員 いずれにしても輸入原価の七倍ですね。これはやはりこのままほうっておいていいことではない。だから生産者を保護するならするで――いまの肥育牛をつくっている農家の数は全国で二十万軒くらいでしょう。もっと少ないかもしらぬな。その人たちを、思い切って国がもっと国有林野で牧草地を与えるとか、そういう個別な方法でもって酪農家はきちっと保護しながら、消費者の全体の、一億の人たちに対しては、七倍の高い小売価格はけしからぬからこうするという対応があってしかるべきなんじゃないのか、そういう点、政府は怠慢のそしりを免れぬと私は思うのであります。 総理は一生懸命還元努力すると言って、閣僚会議で決めて八項目を出しておきながら、中身を調べていったら全然還元をしてないということでは、これはたぶらかしですよ。われわれはやはりコンピューターで全部これをはじいてもらって、どのくらいになるか。政府・自民党のこれでは、コンピューターじゃなくてコンメーターだ。 小麦もそうでしょう。これは政府の食管会計になっているから、食管会計の赤字がその分減っていって好ましいことであるけれども、いま小麦の輸入はどうなっておりますか。一九七六年トン当たり五万三千六百二十三円が、今日だんだん下がってはきている。下がってはきているけれども、指数を見ると、小麦の輸入価格は三九%この二年間で下がっておる。しかるに、小麦の卸価格、小売価格はどうでしょうか。逆に六%高くなっている。輸入が三九%下がっているのに、消費者に売る場合には逆に六%高くなっているということは、消費者の立場から見ると、どう見ても理解できない。それはもう食管会計の赤字を減らすためにやむを得ないと言えばそれまでかもしらぬ。しかし、国民側から見たら、そういうものをもっと明らかに――おれのやっている経済はみんなうまくいっているんだ、心配ないんだと総理は言うけれども、こういう一つ一つを国民の前に明らかにされたら、国民はこれでうまくいっていると思いますか。総論じゃ問題にならぬ。各論できちっと国民になるほどと納得のいく措置を、差益還元についても政府はとるべきじゃありませんか。総理はしかと心に秘めて、今後差益還元については可能な限り行政指導を前向きに徹底的にやると約束しますか。
○福田内閣総理大臣 差益還元問題につきましては、わが国の貿易構造が八割までは原材料品になっておる、こういう点をよく御理解願いたいのでありまして、その貿易構造からくる差益還元、これは、卸売物価はとにかくマイナスの三・六%というところにもう端的にあらわれておるわけです。まあ、統制経済をやっておりませんから、一つ一つのものを詰めておりませんけれども、全体としてそういうふうになっておる。 それから、特にいま武藤さんが御指摘になるのは、政府の関与する物資の価格であろう、このように思いますが、いま小麦の問題につきましては米穀政策との調整の問題があるわけです。いま米の需要をふやさなければならぬというときに、これと競争的な立場にある小麦の価格、つまりパンの値段を下げるということに問題が一つあるわけでありますが、その他、いま御指摘の財政上の理由等もありましてなかなか簡単にはまいりませんけれども、差益還元という点につきましては極力努力をするつもりでございます。
○武藤(山)委員 もう時間がなくなりましたから、これは労働大臣ですか、通産省ですか、雇用対策の目玉だけ一言。今度の特定不況地域の問題で、雇用開発奨励金、三十五歳以上の失業者を雇用した場合に一人一万三千円を助成する、期間は一年間。第二は特定地域求職者雇用奨励金、これも年齢を問わず、地域外に雇用された場合に補助金を出す。この二つのねらいは、失業者をいかに雇用するかという雇用創出の構想であります。結構であります。われわれは当初予算で、雇用を新規に創出をするために四千億円、福田さん思い切って雇用創出プランを実行してくれということを迫りましたけれども、政府はやらぬのであります。今度は労働省がこの二つの一応新機軸を打ち出して、拡大をしてやろうというのでありますが、これで一体失業者は何人この制度によって吸収されますか、新規雇用創出になりますか、具体的に大臣、一言答えてください、時間ですから。
○藤井国務大臣 何といってもこの景気を早く回復の軌道に乗せるという背景が大前提でありますけれども、とりあえずいま雇用創出対策いろいろやっておること、御指摘のとおりでありまして、こういったことによりまして、これから本年度就業者、年度平均といたしまして前年度よりも約八十二万人の就業者増が見込まれる、こういう予定をいたしておるわけでございます。
○武藤(山)委員 割り当ての時間でありますから、これをもって質問を終了させていただきます。
○中野委員長 これにて武藤君の質疑は終了いたしました。 午後零時三十分より再開することとし、この際、休憩をいたします。 正午休憩 ――――◇――――― 午後零時三十一分開議
○中野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 質疑を続行いたします。毛利松平君。
○毛利委員 私は、自由民主党を代表して、福田内閣の当面せる外交、経済等、重要な問題で質問をいたします。 この際、私の持ち時間が非常に少ないので、問題を一問一答形式にやらないで、なるべく総括してお答えを願うように努めますので、御了承を賜りたいと思います。 先日、吉田茂生誕百年記念の集いに出席した私は、その夜、吉田茂元首相の著書「日本を決定した百年」という本を読んでみました。これを読んで、私は新たに感銘を深くし、心を打たれたのであります。と申しますのは、「指導者の政治的叡智」や「日本の新しい夢と目標」を掲げ、明治維新の例を引いて、近代日本の黎明期の主役を演じた指導者たちの不可欠の資質は、単なる知識でも知恵でもなく、それは政治的英知であると決めつけ、国際社会における日本の責任は発展途上国への経済協力であり、さもないと国際社会から非難されるであろうことを指摘し、日本の向かうべき目標を明確に打ち出しております。 現在の国際情勢を目前にするとき、吉田元首相の先見性と高い見識に驚きを新たにしたものであります。日本国民は、いま、石油ショックに始まった国際環境の悪化の影響を受けて、長期にわたる不況のどん底にあえぎ、幾多の難問に直面して苦悩を続けております。どうか総理にも、吉田元首相ではありませんが、優秀な人材の政治的英知を結集し、国民に新しい目標を示して、国民の向かうところを明確にしていただきたいことを要望するものであります。 私は、このことを前提として、総理の意欲的な決意のほどをお伺い申し上げたく、私の質問に入ります。 まず、外交の基本方針についてお伺いをいたします。 〔委員長退席、栗原委員長代理着席〕 多年の懸案でありましたわが国と中華人民共和国との平和友好条約が調印され、批准案が本国会に提出されるに至りましたことは、日中両国の将来のため、まことに喜ばしい次第だと思います。この際、総理、外務大臣初め関係各位の労苦に対し、深く敬意を表する次第であります。今後は、両国の平和と友好の実を上げ、他のアジア諸国、ソ連との問の相互信頼関係も一段と増進させなければならないと考えております。総理の言われる新しい外交展開に御期待を申し上げておるものであります。 さて、福田内閣は、日韓大陸棚条約の批准、日中平和友好条約の調印と、多年の懸案処理を終えて、これからは全方位外交で新しい外交を展開していこうとされております。 ところで、政府が外交方針の基調としていたものは、アメリカを基軸とする国連中心外交であったはずであります。この国連中心外交は、全方位外交と関連はどのようなものであるか、総理にお伺いいたしたいと存じます。
○福田内閣総理大臣 政治の姿勢につきまして御懇切なる御提言をいただきまして、ありがとうございます。やはり世界情勢をにらんで、わが国の行く手を過たない方向感覚を、これは行政的立場じゃない、本当に政治的な立場において間違いなくとらえて、そしてその中でいろいろ知恵をしぼっていくという姿勢こそが大事ではあるまいか、私はこのように考えております。 ところで、私が全方位平和外交と言っておりますが、これは考え方として別に新しい考え方じゃないのです。私は、戦後わが国がとってきておる外交姿勢、外交方針、これを一言で言うと全方位平和外交とも申すべきものではなかろうか、こういうことを申し上げておるわけです。つまり、わが国はいまや経済大国になったわけでございますけれども、世界の歴史の示す経済大国は軍事大国、そういうジンクスを破って、経済大国にはなったけれども再び軍事大国への道は歩まぬ、そういう選択をしたわけですね。そうすると、わが国の平和というものは何にその根源を求めるかというと、世界じゅうが安定し平和の状態であること並びに世界じゅうの国とわが国が漏れなく平和友好の関係を築かなければならない、こういうことになるわけであります。この方針が一貫してずっとわが国の外交姿勢ということになってきておるわけであります。 いま、国連中心外交というのとどういうふうに違うかというようなお尋ねでございますが、国連中心外交、これをやめたわけじゃございません。ございませんが、さらに一歩を進めまして、高い見地に立ってのわが国の基本的な外交姿勢は何だというと全方位平和外交である。その中の一つの要素として国連、つまりほとんどの全世界の国々が参加しておる、そういう形の平和機構であるところの国連、これを中心としてやっていくということは全方位平和外交のまた一つの側面である、このように御理解を願いたいのであります。
○毛利委員 総理のいまの答弁を聞いておりますと、おおむね国連外交は他力本願的であったが、全方位外交は主体性を持った外交であるように受け取りますが、いかがでございましょう。
○福田内閣総理大臣 私は所信表明演説でも申し上げたのです。わが国は、明治以来の民族的目標である追いつき追い越せ、この問題と取り組んできたわけでございますが、いま今日、西欧諸国とようやく肩を並べるところまで日本は来た、これから日本は積極的に世界の平和と世界の繁栄、発展に協力しなければならぬ、こういう環境に置かれたわけであります。そういうことを考えますと、わが国といたしましては、わが国が戦後一貫してとってきたこの平和外交路線、これを踏まえまして、そして積極的な役割りを演じなければならぬ、このように考えますが、国連中心外交というこの方針はいささかも変えてはおりませんけれども、より積極的な意欲を持って世界の平和のために協力、貢献していきたい、このように考えております。
○毛利委員 全方位外交、つまり全世界の国々と仲よくするというのは、私も賛成であります。現在の世界情勢の中では、中東を初め中ソの対立、朝鮮半島の分断、台湾海峡をはさんでの中国人の対峙等、多くの紛争地域が見られます。そのいずれの国々とも仲よくすることは、なかなかむずかしいのではないでしょうか。現に、わが国の多年の懸案である北方領土の返還問題一つとってみても、なかなか容易ではないと思います。対ソ政策については、冷徹に主体性と自主性を持って気長に当たらなければならないと考えます。 こうした世界情勢の中で、わが国はどのようにして、対立する二国や地域に対して解決の方策を与え、そしてわが国益を守っていくのか。私は、政府がしっかりした解決策と見通し及び根気強い説得をする腹構えを持たずに、安易に仲介や口出しをすると、逆に双方から憎まれ、下手をすると全方位が、全包囲される、つまり取り囲まれる危険性があるように思われますが、いかがなものでしょうか。 重ねて尋ねますが、総理は施政方針演説で全方位外交という方針を述べられましたが、その理念は理解されるものの、具体的にはどう対応されるのか。特に、さきに挙げた諸国を全方位外交の中でどのように位置づけされるのか、総理の御所見を承りたいと思います。
○福田内閣総理大臣 全方位平和外交と申しますが、私がそう申し上げておるのは、全方位等距離外交というわけではないのであります。わが国と百五十もある世界の国々との関係は、それぞれみんな質的にも違うわけでございます。 たとえば、この間わが国は日中平和友好条約を締結した。その中国がソビエト連邦と対立関係にある。この問題を全方位外交でどういうふうに裁くか、こういうことになりますと、中国との間には共同声明の趣意に従いまして平和友好条約を締結する、これはわが日本政府の責任である、私はこのように考えておりますが、さらばといって、この条約ができたからといって、わが国といたしましては決してソビエト連邦を敵視する、こういうような態度はとりません。これは条約自体に明記をされておる。苦心惨たんをしてその条約に一条を設けた、このようなことでも御理解できるのですが、中国は中国といたしまして、わが国との間に善隣であってもらいたい、ソビエトは中国とは対立いたしておるものの、わが国との関係におきましては善隣であってもらいたい、こういう立場でやっておるわけです。 それで、ソビエトについて言いますれば、これは平和条約がまだ締結になっておりません。これにはいま御指摘の四島返還問題があるわけです。この四島返還問題は国民的な悲願である。これはどうしても実現しなければならない。そしてこれが実現した上で平和条約を結ぶということにしなければならぬわけでありますが、これにはあるいは時間がかかるかもしれませんが、それはそれといたしましても、粘り強くこの問題には取り組んでいく、同時に、日ソ間の各方面の交流については、善隣といたしましてこれを進めていくにやぶさかではない、このようなことに相なるわけであります。 また、非常に基本的な問題でありまするが、わが国はアメリカとの間に安保条約を結んでおります。これが全方位平和外交の障害になるか。これはなるわけはないのです。アメリカと日本は特別な関係があるわけで、その特別な関係にある日米、この関係ではありまするけれども、だからといって、他の国に対しましてわが国が敵対行為をとるというような立場はとりません。アメリカとの間は特に緊密な関係にはありまするが、他の国に対しましても、その国々とわが日本との関係の実情はそれぞれ違いまするものの、その違いを踏まえまして、しかし平和友好の関係を保っていくという考えでございまして、それはまた支障はないことである、私はこのように考えておるわけであります。 また中東方面、これもなかなか機微な政治情勢でございますけれども、やはりどういう態度をとるにいたしましても、わが国はどの国を敵視する、このような考え方はとっておりませんから、またとっていきませんから、そのように御了解願います。
○毛利委員 防衛問題に移ります。 国の安全、平和と国民の生命、財産を守るための自衛隊の存在は、国民の大多数が認めるところであります。ところが、最近、栗栖前統幕議長の発言以来、数多くの議論がなされ、また、防衛庁による説明も有事について一貫性を欠いた点があったように思います。有事に対する政府の基本的見解を明らかにしていただきたいと思うのであります。 第一には、いわゆる奇襲にどう対処するかの問題であります。国民の中には、万一何か事があったとき、総理大臣の防衛出動命令が自衛隊に下るまで待っていたのでは、その間相手にやられてしまうし、そんなシビリアンコントロールなら、何のために自衛隊があるかわからないという素朴な不安があります。また、この手続をなくしたのではシビリアンコントロールの意味がなくなってしまうのでありますが、奇襲時におけるシビリアンコントロールのあり方、また、このままの状態で国の防衛が保てるかどうか、その辺の兼ね合いについてどう考えておられるか。 第二に、防衛庁において、万一の事態に対応するため、いわゆる有事法制の研究が行われていると聞くが、その目的、範囲についてどう考えておられるか。 この二点について、総理並びに防衛庁長官より明確な御答弁を願いたいと存じます。
○金丸国務大臣 有事という問題につきまして、あるいは奇襲という問題につきまして、世の中をいろいろ騒がせたわけでありますが、私は、この有事という問題と奇襲という問題がひとり歩きをしちゃったということであろうと思います。私自体はそんな考え方を持っておるわけではありませんが、有事という問題と奇襲という問題を混同した面もあったと私は思います。 まず、奇襲という問題について私の考え方を申し上げたいと思うわけでありますが、奇襲というものは絶対あり得ないという考え方を私は持っております。ことに、現代のこの世の中で科学も進歩しておりますし、また、奇襲ということはないようにするということが政治だと、私はたびたびこの場でも述べておるわけであります。ですから、もしあるとするならば、万々一の一つがあるのかどうか、その辺の研究をしてみることも必要だというだけであって、私は、絶対ないようにするということが政治だという考え方でおるわけであります。 また、有事法制という問題につきましては、有事法制の研究、これは二十七万の自衛隊がおる以上、この自衛隊が有事に対してどのような対応をするのか、それも憲法の範囲内で、この範疇の中で考えることは何だろう、それは自衛隊法の中にひとつこれを研究して、これがどうしても法律をつくらなければならぬのかどうか。私は自衛隊法というものは非常にりっぱに出ておる法律だと考えておるので、もしあるとすればその中に幾つあるか、全くそんなものは憲法の範囲の中では数少ないものではないかという考え方を持っておるわけであります。
○毛利委員 経済問題に移ります。財政問題についてお伺いいたします。 政府は、九月二日、公共事業等による内需拡大等を中心とするいわゆる総合経済対策を打ち出しました。実質七%の経済成長を達成するため、事業規模二兆五千億の公共投資の追加を決定いたしました。この追加的景気対策により、民間需要の自律回復力が強くなることが期待されるのでありまして、今国会に提出された補正予算案等に寄せる国民の期待はきわめて大きいものがあります。しかし、補正予算における一般会計の歳出の純然たる追加規模は、千四百五十億円の増加にとどまっております。あとは、当初予算の中からやりくりして五千七百億円をひねり出し、合計七千百五十億円の規模となっているのであります。また、財政投融資の追加規模は六千五百億円でありますが、この両方を足しても一兆三千六百五十億円にしかならず、ほかは自己資金等を都合をつけて二兆五千億の事業計画としたというのは見せかけにすぎないのではないか、これで本当に七%の経済成長が達成できるのかという疑問がわくのであります。 わが国の経済政策は、いまや、諸外国も熱い目で見守ってくれておるのであります。今回の補正予算案と二兆五千億の事業規模の関係、七%成長が達成できるとする根拠について明快にお答え願いたいのであります。
○村山国務大臣 補正予算と今度の二兆五千億の関係でございます。 まず、今度の二兆五千億の事業費の追加、この問題は、主として今後の景気浮揚をどれだけ伸ばす必要があるか、そういう観点から事業費を伸べたわけでございまして、すでにお手元にあると思いますけれども、総額で二兆五千億でございます。そのうち、今年度の国費分は四千五百九十三億、それから財投が五千九百億になっているわけでございます。その他の分が一兆四千七百幾らかありますが、これはそれぞれ、来年度分に回るものもございますし、あるいは地方財政で受け持つ分もございますし、民間資金で受け持つものもございます。そういったものを全部入れて事業費が幾らになるかということを財源別に並べたものでございます。 先ほど経企庁長官からお話がありましたように、この金額のうちことしの成長に関係ないものがあるのでございまして、来年度に回る分、あるいは民間からシフトしてくる分、あるいは来年度に繰り越される分、用地費、こういったものはこの事業費から除かれまして、あと波及効果を見まして、先ほどのお話の一・二五ぐらい見て、たまたま同じ程度の二兆五千億ぐらいのGNP効果がある、それが一・三%だ、こういうことでございます。ですから、そういう意味で、今度の一・三%を押し上げるためにどういう金が要るか、その財源別に出したのがこの表でございます。 それから、先ほどおっしゃいました今度の補正予算七千百五十億円、それから財投が全体で約六千五百億ぐらいだと思いますけれども、合わせますと一兆三千幾らになる、こういうことでございますが、このうちには景気浮揚に関係ある分は、ただいま申しましたように、国費では、七千百五十億のうちで四千五百九十三億しかない。あとは経済協力であるとかあるいは不況対策の分でございます。それから財投にいたしましても、六千五百億と言っておりますけれども、そのうち景気対策に関係のある分は五千九百億でございます。残りはやはり不況対策とかあるいは経済援助に関係ある分でございます。これはその歳出の方を出したわけでございます。 問題の、一般会計の規模が千四百五十億で財源が少ないので、それは景気とはどういう関係になるのだというお話だろうと思うのでございますが、これはまた全然別問題でございまして、すでに出ておりますように、補正予算の方を見ていただくとおわかりだろうと思いますが、景気に面接関係あるものと申しますれば公共事業予備費、これの二千億、これはいままで成長にはカウントしておりませんから問題がございません。それから、今度公債を発行いたしますけれども、三千億出しますうちの二千八百億、これは四条公債で出すわけでございますから、これは当然景気に関係のある事業費でございます。中に借入金等ございますので。だから、その二つを見ましても、千四言五十億とは関係なくこれが大きな景気刺激になるということはおわかりだろうと思うのです。 ただ、その反面、今度はその財源として節減しているところがあるいは気になるのではないかと思いますが、節減した経費はいずれも従来の、ほんの一部を除きましては大部分はその節減することによって政府の事業量を減らすという性質のものでないということを御理解願いたいのでございます。たとえば、ただいま申し上げました公共事業予備費の二千億はそうでございますし、それから交付税の減が九百六十億ございます。これを減らしますと地方の財政が小さくなるのではないかという御心配でございましょうけれども、その分は財投でもって一時つないでおきまして、後で国が年度割で償還いたしますから、これは地方財政の方の財政の減にはなりません。したがって、それもGNPを減らすということにはなりません。 それから金利が、当初予算では国債の金利は六・六八くらいで見ておったと思いますが、いま六・一何%でありますから、この金利負担軽減分、これも実体には関係ない、それだけ不用が出たというわけでございます。 また五十二年度の決算で四千二百億程度赤字公債を縮減いたしました。その分の利子も実は見てございましたが、その分は見なくてよろしいとかということもございます。また、防衛庁その他で外国からいろいろなものを買うことになっておりまして、その場合のレートは従来の基準レートで計算してあるわけでございまして、二百六十二円で計算しておりますが、今度は六カ月のローリングシステムでやっておりますから、これが二百四十何円になりますか、その差額が出てまいるわけでございます。 そういったわけでございまして、この三つの表というものは、関連いたしますけれどもそれぞれ違うことを意味しておるわけでございまして、決して見せかけとかそういう問題ではないということを御理解願いたいと思います。
○毛利委員 雇用の問題を聞きたいと思います。 雇用問題は現下の経済最大の問題でありますが、労働省の調査によると、七月現在で完全失業者百十五万人、失業率二・一%となっている。雇用失業情勢の改善はおくれているように思います。これに対処するための処置として、雇用安定資金制度等を抜本的に見直し、大幅に条件を緩和したそうでありますが、その内容はどのようなものになっておりますかお伺いいたします。特に、構造不況業が集まっている地域には、手厚い産業政策とあわせて、雇用政策の面でも新しい観点から施策が必要になると考えるのであります。 そこで、早急に経済計画及び雇用対策、基本計画を見直して、総合的な雇用対策の確立を目指すべきであると思いますが、今後のこれに対する取り組みの決意をお伺いいたします。なるべく簡単にお願いします。
○藤井国務大臣 御指摘のように大変厳しい雇用情勢でございまして、この対策につきましては、ことしの一月、新しい雇用政策としては中高年齢者を雇い入れる事業主に対する助成措置、すなわち中高年齢者雇用開発給付金制度というものを創設いたしまして、現在実施しております。なかなか厳しい情勢でございますから、いま御指摘の雇用安定資金制度を抜本的に改正する、そして十月一日から実施することにいたしたわけでございまして、その内容につきまして三つの点を御報告いたします。 第一は、雇用調整給付金等の業種指定期間を現行の六カ月から一年に延長する。それとともに、再指定の場合に必要な従来とっておりました冷却期間は撤廃するということであります。第二は、各種給付金の支給要件となっている休業あるいは教育訓練の規模を大幅に緩和する。第三番目は、各種給付金の支給限度日数を延長する等々でございまして、そういったことで厳しい雇用情勢に対応すると同時に、やはり緊急対策としては、特に造船あたりでございますけれども、仕事をつくり出すということで、船舶の解体事業あるいは官公庁の船をつくる、海上保安庁の巡視艇の増強あるいはプラントバージ、石油備蓄タンクの増設、こういった造船業の労働者と結びつくような仕事をふやしていくことに関係省庁と連絡をとって努力しておるわけでございまして、これから先構造不況業種が集中している地域に対しては、地域ぐるみに特定不況地域離職者臨時措置法を通産省と相マッチいたしまして、共同いたしまして地域の指定をやりまして、そのことによりまして雇用安定資金制度の全面適用、いままでは業種指定でありましたものを地域ぐるみに指定をしていくということ、それから雇用保険制度の特例措置によって期間を延長する、こういったことによって厳しい雇用情勢に対処したい、このように考えておるわけでございます。 また、雇用政策全般につきましては雇用政策研究会において現在検討していただいておりまして、その結果を踏まえて今後に対処したい。基本は、やはり産業構造の基調が変化してまいっておりますから、そういった変化に対応する雇用の機会を創出していく、そしてそういう方向に人手が向くように職業訓練もあわせてこれを推進していく、こういうふうに考えておるわけでございます。
○毛利委員 減税問題について承ります。 各野党は、今回の総合経済対策の中に所得税減税が含まれていないことを非難し、一兆円規模の減税の実施を強く要望しております。国民にとり税金はできるだけ安い方がよいに決まっております。しかし、景気刺激効果、財政の逼迫した現状を考慮すれば所得税減税策をとり得ないことは明らかであり、政府が公共投資の拡大を選択したことは適切な判断であると考えます。 この点について先ほど総理から明快なお答えがありましたが、まず、所得税減税と公共投資の景気刺激効果の違いについての御説明と、公共投資はもはや消化し切れないとか、その効果が特定の業種や地域に偏り過ぎておるとかいう意見に対する政府の見解はどのようなものでしょう。 次に、わが国の財政は、実質的には公債依存度が三七%にも達しております。きわめて異常な事態で、この上減税を行おうとすれば、後々まできわめて大きな負担を残すことになると考えますが、この点に関する総理の見解を簡単にお伺いいたします。
○村山国務大臣 ただいま毛利委員御指摘のとおりでございまして、かねがね申しておりますように、いま中長期的に見ますと、現在の財政収支バランスからやがては負担増を求めなくちゃならぬというときに一兆円減税をやりますと、いよいよ財政収支を困難にいたしまして、問題がさらに困難になってくるという問題が一つございます。それからまた、現在の所得税の負担状況を申しますと、いつも申しておりますように、先進国の約半分でございます。特に中小所得者に対しては軽くなっているわけでございますので、負担面からして一兆円減税という問題はないわけでございます。したがって、問題は、この際、一体当面の目標に対してどちらが有効であるかという問題として考えるべきではなかろうか。つまり、おっしゃいますことは、景気刺激に対してどうであるか、あるいは雇用効果に対してどうであるか、こういうことから判断すべきだと思いますが、それはいろいろな計算がございますが、あらゆる計算をとってみましても、やはり景気刺激効果あるいは雇用創出効果におきまして公共投資の方がすぐれておるという答えが出ておりますので、今回もその方が適当だと考えたわけでございます。 なお、御心配いただきました公共投資の方の消化は大丈夫か、こういうお話でございます。ことし三四・五%伸ばしたわけでございますが、幸いにいたしまして八月末の契約率で見ますと、六六・六%まで進捗しておりまして、過去、景気浮揚期いろいろ進捗したのでございますが、過去最大の消化率になっております。今度追加いたした分につきましても、それぞれ事業主管官庁と、消化が十分であるかどうかということを十分確かめましてやったわけでございまして、今後消化は十分やっていけると思っております。 なお、しかし、われわれはそれで安心するわけにまいりませんので、公共事業推進本部等を通じまして、また各県別に、各地方別にブロック協議会がございます。さらにその消化の状況、あるいは資材の値上がりあるいはいろいろなものの値上がりにつながることがないように十分監視してまいる。いま毛利委員がおっしゃったような御心配がないように念には念を入れてやるつもりでございます。
○毛利委員 先日、政府の税制調査会は一般消費税特別部会報告を公表しましたが、大量公債に依存している財政の現状を考えると、いまや、一般消費税問題にどう取り組むかは大きな問題であります。もちろん、一般的な税負担の増加を求める方策として所得税、法人税の増税という選択もあろうかと思いますが、所得税については減税を求める声も大きいので、一般消費税を取り上げた政府の意向もわかるのであります。ただ、いかなる形で税負担の増加を求めるにせよ、まず政府において歳出面における節減合理化、行政改革及び不公平税制の是正等に努力することなくしては、増税について国民一般の理解を得ることがむずかしいと考えますが、この点につきまして政府の見解をお伺いいたします。 次に、もし仮に一般消費税を導入するとした場合に、その時期は財政健全化の見地からできるだけ早い方がよいとする考え方がある一方、この導入によって景気の回復に水が差されるのではないかと懸念する向きもありますので、この辺の兼ね合いについては政府の判断をお尋ねするものであります。 また、最後に、一般消費税の経験に乏しいわが国は、中小企業者が多い経済構造であるため、その影響がかなり大きいと思われますので、導入によるインパクトを極力小さくする必要があります。また、負担の逆進性あるいは導入に伴う物価の上昇等の問題が指摘されております。これについてもどのような配慮が払われているか、簡単な説明をいただきたいと思います。
○村山国務大臣 一般消費税問題でございますが、先ほども申し上げましたように、中期的に見まして一般的な負担増は免れない。しかしその前に、おっしゃるように歳出の厳しい見直しあるいは不公平税制等の是正、これを推進してまいらなければならぬことは当然でございます。したがいまして、今年の概算要求に際しましても新規政策はすべてスクラップ・アンド・ビルドでやっておるし、それから補助金につきましては、特に念入りに整理合理化の方向を示しておるのでございます。昨年におきましてもこの点には十分配意いたしましたが、これを並行してやってまいることは当然でございます。ただ、マクロといたしまして、これらのことをもってしてもとうていいまの財政収支バランスは直らないことだけは確かでございますので、したがって、やはり負担増を求めざるを得ないというのが政府並びに税制調査会の認識でございます。 その場合に問題となるのは、既存の税収でもって賄うということもございますけれども、これもまた限界があることも明白でございます。問題は、一般消費税の増徴によるのか、所得税の増徴によるのかというのは、実は税制調査会において論議されたところでございますけれども、所得税の方は減税しろという要求もあり、かたがた累進税率でございますので、ある程度置きますと自然調整が行われるという問題もございまして、したがって、やはり近代的な一般消費税の方がよりすぐれているのではなかろうか。特に、わが国においては、消費税のウエートがほかの国に比べても三分の一だということを考えますと、やはり近代的な一般消費税によるべきではないかというのが中期答申であったわけでございます。 その次の問題でございまして、それならば、マイナス効果がたくさんあるのだが一体いつの時点にやるのか、こういう問題でございますが、いま税制調査会で検討しておりますのは、やる必要がある場合にはいつでもやれる体制を整えておこうということで、いま案を公表いたしまして各方面の意見を求め、そしてさらによきものを準備したい、こういう準備段階でございます。 来年度やるかどうかというような問題は、来年度の予算編成に関連しての税制改正案として新たなる答申をいただきまして、その上で政府として決断すべきことであろうと思っておるのでございます。そしてまた、いま政府として考えておりますのは、財政収支バランスが緊急であると同様に、しかしまた日本の経済の成長、これが世界経済との関連においてやはり大きな問題になりますので、その間の調整をどうするか、あるいはどちらを優先させるか、あるいはどの程度調整していくか、これはそのときの予算編成時における将来の経済の見通し、あるいは税収の動向、こういったものを総合勘案の上決定いたしたいと思っておるところでございます。 ときに、今度は一般消費税について言われております。物価はどうかというような問題がございますが、あるいはまたECのような形のものと、日本型にしたらどうか、あるいは逆進性の問題、こういう点、いま御指摘であったわけでございます。物価との関係で申しますと、いまが一番物価が安定しておりますので、非常にその点はいいという感じでございます。 それからEC型に対しまして、現在公表しておる日本型の特徴で一つ申しますと、インボイスによる税額控除方式をやめておる点が一つでございます。そうして計算期間を所得税あるいは法人税と同じ期間をとっておりまして、全体の売り上げから仕入れを引くという方法をとっております。それから免税点を思い切って上げて、記帳能力のない人たちの手数を省いておる。これがやはり一つの大きな日本型であろうと思います。 それから逆進性の問題につきましては、食料品を除きますと、ほぼ比例的なものになってくる。こういった点を考慮いたしまして食料品を思い切って除いたらどうか。 こういう点が、現在、消費税として言われている点のECに対しての大きな特徴であり、また、日本でやる場合には、なるほどそれなりに評価できる魅力のある案になっているように評価しておるところでございます。
○毛利委員 農業問題に触れます。 いまわが国の農業は、米の生産調整と海外からの農産物輸入の自由化要求という二つの問題で大揺れに揺れております。多くの農家が明日の農業に希望を持ち、農業にいそしんでいただくことこそ、わが国食糧の安定的確保を図る上から不可欠の要件であります。 昨年夏以来、アメリカから、貿易不均衡の事実を背景として農産物、肉、オレンジ、果汁の輸入自由化ないし輸入数量の枠の拡大を厳しく迫られてまいりました。そして、この問題は、東京ラウンドの決着の前提として、なお日米経済交渉の重要課題として残されております。 私は、具体的問題として伺いますが、本年一月日米経済交渉の一環として、農産物の輸入問題に関して、肉、オレンジ、果汁の輸入枠の拡大について合意が成立し、共同声明が公表されました。一たび国際間に合意が成立した場合、相当な期間はその合意で事態は決着するのが通常でありますのに、今度は同じ年の中で合意に満足しない異例の交渉が再度提起されたのは納得できないものであります。 〔栗原委員長代理退席、委員長着席〕 この点について政府の見解を伺います。 次に、わが国の柑橘農業は、昭和三十年代後半から、選択的拡大という農政の誘導によって増産が進められました。数年前から生産過剰と慢性的な価格低迷のため、生産農家の経営と生活はきわめて苦しい状態に追い込まれたのであります。しかも、今後三年間に二〇%、約三万ヘクタールの減反を実行しようとしておるにもかかわらず、他方で輸入の増大を認めるということは、矛盾もはなはだしいと思います。農林水産大臣はこの点どう考えておられますか。 また、農業は自然的、社会的条件に強く制約される産業であって、農業者の努力のみではその有利不利の格差を解消することができない性質を持っております。したがって、各国とも輸入規制を含む自国農業の保護政策をとっていると承知しておりますが、先進諸国の農産物の輸入規制の現状について農林水産大臣にお伺いいたします。 農業の基本姿勢を貫くためには、思い切った施策の展開が必要であると思います。なかんずく、農業分野における試験研究体制の画期的充実を図る必要があります。今日の米作における高い生産力は、過去におけるこの部門に対する試験研究及び生産基盤に対する投資の成果であると言っても過言ではありません。 今後、水田利用再編対策等を進め、均衡のとれた農業生産体制を築くには、大いにその方面に対する試験研究を進める必要があります。また、畑作についても思い切った基盤整備に対する投資を要すると思います。たとえばモデル地区を設けて、徹底して基盤整備と機械化、合理化を進め、研究の成果を実現させてはいかがかと考えます。 以上の点について総理の簡単な御意見を承ります。
○福田内閣総理大臣 農業は、これは非常に重大な環境に立たされておる。いま御指摘のとおりであります。しかしながら、わが国といたしますると、食糧の、特に主食の確保、これは国家安全保障という見地からも大事である、こういうようなものであり、かつ、わが国の自然環境といいますか、そういう上から見ましても、農業は大変大事な産業である。さらに日本国社会、これにおきまして、農村というものはまた一つの健全な構成要素である、このように考えますので、非常に厳しい国際環境であり、国際社会とのわが国経済全体の調和、これはとらなければなりませんが、とにかく農業につきましては、そのような見地に立ちまして、農家が安心して経営できるように政府としては最善の努力をいたす、そういう方針であります。 具体的な諸問題につきましては農林水産大臣からお答えをいたすようにいたします。
○中川国務大臣 第一番目に、一月に対米調整を行って、さらに年二回行うのはおかしいではないかという御指摘でございます。 確かにそういう感じもするのでございますが、一月は、あの当時の貿易アンバランスに対する対応ということで調整したものでございますし、現在行っておりますのは、一九八〇年代におけるMTN東京ラウンドの調整ということで、かなり長期的なものをいかにするかということの調整を行っておるところで、必ずしも同じ意味で年二度行っておるという性格のものではございません。 二番目に、ミカンの今日の現状、厳しいのではないか、そこへ輸入自由化あるいは枠の拡大はどう思うかということで、まさしくミカンは過剰傾向にあり、価格問題もございます。したがいまして、ジュースの学校給食への導入あるいは生産調整あるいは調整保管というようないろいろな策を講じており、特に来年から二〇%の生産調整をやらなければいけませんので、ミカン農家に対しては十分の対応をしなければならぬ。そこで、今回の調整に当たりましても、ミカンの端境期であります。季節外の六月、七月、八月、こういった時期を中心にして調整を図って、ミカン農家の経営に支障を与えないということを基本にして対処してまいりたいと思っております。 三番目に、農業については諸外国も保護政策を講じているではないかという御指摘でございます。まさにそのとおりでございまして、農業は工業製品と違いそれぞれ保護しなければなりませんし、先ほど総理からお話もありましたように、総合食糧の自給率というものは国家安全保障上からも大事であるということで、アメリカにおいてもまたECにおいても、形においては違いますがそれぞれ保護政策をとっておることは、日本とそう大きな差はない。日本は南から北へ非常に多種多様なものがありますから種類が多いということは実態でございますが、その点については日本も各国もそう変わらないということが言えるかと存じます。
○毛利委員 次は、時間もありませんが、エネルギー問題についてお願いいたします。 総理がいつも言われておるとおり、資源は有限なものだけに、節約を極力推し進めなければならないと思います。しかし、ここ当分の間は石油の安定供給を図ることが、わが国エネルギー・セキュリティー政策の中心的課題であります。民間による九十日分の石油備蓄あるいは一千万キロリットルの公団備蓄等も計画されておりますが、石油探鉱開発から石油外交まで一貫した政策を推進する必要があると思います。総理のお考えはどうか。 また、通産大臣にお願いいたしますが、あわせて、中国原油を初めとする重質化傾向に対していかなる対策を持っておられるか、答弁を願います。 次の課題は原子力であります。石油にかわる唯一の実用可能なエネルギーは原子力発電であることは申すまでもありません。それだけに、その安全性の確保に万全を期すだけでなく、政府みずから積極的な国民の合意形成にも努力しなければならないと考えます。これまでにも重要電源地点を指定し、電源立地の確保に努力していますが、その成果はきわめて微々たるものであります。なお一層国民的コンセンサスを得るよう努力すべきであると考えますが、これについて政府の決意をお聞かせ願います。 最後に、提案をいたします。 アメリカでは、上下両院において、日米議員の間で定期的協議を行う機会を設けることが提案され、審議が進んでいると聞いておりますが、その実現を期待しております。エネルギーのみでなく、すべての問題は話し合いの場なくしては解決できないだけに、わが国でも積極的に賛意の方向を打ち出したいと思います。政府の御意見を承ります。
○河本国務大臣 いまのお話は、ここ当分の間はエネルギーの中心は石油であるから、石油の開発、節約、備蓄、これらの諸政策に総合的に努力すべきである、同時に外交面でも十分な配慮を払うべきである、どう思うかという御質問でございますが、現在政府のとっております基本方針もそのとおりでございまして、いまの御発言に対しては全く賛成でございます。 それから同時に、電源開発についてもお話がございましたが、特にこれからの電源開発の中で原子力発電を非常に重視いたしております。原子力発電を進めますためにはやはり国民的なコンセンサスが必要でございまして、そのためには安全性の確保、環境の保全、この面で格段の配慮を払うことが必要かと考えます。
○福田内閣総理大臣 日米議員外交、交流につきましてお話がありましたが、アメリカは他の国、たとえば国境を接するメキシコでありますとかカナダ、その他一、二の国との間に、アメリカの国会と他の国の国会との間におきまして議員交流をやっておるのです。そして、そういう制度が三、四の国との間に存在しているのですが、わが日本との間にもそれをつくったらどうだろうという機運が出てまいりまして、それだけ日本という国は大事な国じゃないかという認識のようでございます。 そこで、いまお話がありましたように、アメリカの国会におきましていまこれの手続が進行して、大体でき上がるように私は承知しております。そうなりますと、わが国に対しましてもまた働きかけがあるだろう、このように思いますが、私は、いまとにかく議員交流は非常に大事なことである、議員外交は本当にこれからわが国として心していかなければならぬ問題であると考えますので、そのようなアメリカの動きは大変歓迎すべき動きではあるまいか、そのように見ておるわけであります。 しかし、この問題は政府の問題じゃないのです。アメリカの国会とわが国会との間の問題でありますので、いずれアメリカの方からわが国会に対して話し合いがあるだろう、このように思いますが、私は、ぜひとも前向きでわが国会はこの問題に取り組んでいただきたい、さように考えております。
○毛利委員 私に与えられた質問時間もなくなりましたので、最後に問題点だけ指摘して、一括お答えいただきたいと存じます。 第一に元号問題であります。この元号問題は世論がよほど高まっております。これに対する考え。 第二点は、宮城沖地震、さらには数万の死傷者を出したと言われるイランにおける地震等の災害にかんがみ、非常時に際していかなる対策を持っておるか。 第三点は、国有財産である東京大学文学部長室における先日の火災事件であります。これに対する対処。 三点をお答え願いたいと思います。
○福田内閣総理大臣 元号の問題ですが、この存続につきましては、私は存続すべし、そういうはっきりした見解でございます。ただし、その手続を一体どうするか、また手順をどうするかというような点につきましては、元号問題は非常に大事な問題でありますので、一度御提案をした際にこれがもたつくようなことがあることははなはだ好ましくない、私はそのように考えておりますので、政府が提案したら各界各方面、特に国会において速やかに賛同していただくことが望ましいと考え、いま慎重に各方面の意向等も打診しながら対処しようといたしておるところであります。 それから、地震等の非常事態に対する対策につきましては、なかなかむずかしい問題でありますけれども、しかし、鋭意これには取り組んでおります。 それから東大文学部の放火焼失の問題、これは大変遺憾な事態でございます。この問題につきましては、大学当局に対しまして厳重な処置方を申し入れ、また大学当局においても厳正に対処しようといま鋭意その手続を進めております。
○中野委員長 これにて毛利君の質疑は終了いたしました。 次に、石橋政嗣君。
○石橋(政)委員 時間が非常に限られておりますので、安全保障問題に限ってお尋ねをしたいと思います。 実は先日、私、久しぶりに映画を見ました。自衛隊によるクーデターをテーマにした「皇帝のいない八月」という映画を見たわけでございます。私の隣の席には荒船行政管理庁長官が座っておられて、何か新聞によりますと、閣議の席で、映画を見た感想を述べたというようなことが出ておりましたが、実は私も新聞雑誌の記者の皆さんから感想を求められましたので、こういうふうに言ったわけなんです。武装集団たる軍隊にはこの映画で描かれたような危険な性格がつきものなんだ、このような軍の特質を念頭に置かないでもし軍事を論じておるとするならば、それは抽象論にすぎないと私は思います。私はそういうふうに答えました。シビリアンコントロールの重要性が機会あるごとに強調されるのも、結局はこのような軍の性格を見きわめておるからだと私は思うのです。 そこで最初に、このシビリアンコントロールという言葉が口にされるわりには、それがどんなにむずかしいものであるかということを案外に理解されてないのではないかという気がしますので、総理にお尋ねをしたいと思うわけなんです。 この映画を見た政治家の中にも、荒唐無稽といったような感想を述べた人がおるようでございますが、私は、この映画を見て荒唐無稽と言う人には少なくとも軍事を論ずる資格はない、そういうふうに思っております。この意見を裏づけるかのように、最近ある雑誌の中で源田実さんが、武装集団に次に残されたものは実力行使ですよ、日本でこれにかなうものはないんですよという言葉を述べておるのを、私は読んだわけであります。旧帝国海軍、そして戦後の自衛隊に一貫して身を聞いた人の言葉だけに私は迫力があると思いましたが、シビリアンコントロールについて総理はどのような認識を持っておられるのか、そのことを冒頭お尋ねしておきたいと思います。
○福田内閣総理大臣 シビリアンコントロールとは、これは政治の軍事に対する優先、そういうふうに理解しております。 戦前、戦中におきましては統帥権の独立というわが国の憲法のたてまえでありましたけれども、戦後におきましては政治が軍事に優先をするというたてまえに、非常な大きな変更でございます。そういうことになりましたが、各国、大体そういう制度を今日とっておる。わが国もそういう制度をとるということはまことに妥当なことであり、この精神を守り抜かなければならない、私はそのように考えております。
○石橋(政)委員 私が聞きたかったのは、わが国においては政治優先、文民統制の原則は完全に貫かれておる、そしてこれから先もいささかの不安もないという確信をお持ちなのですかということを聞きたいわけなんですよ。 実は、参議院の内閣委員会において自民党のある議員がこういうふうに述べているのを私、会議録で読んだのでございます。「世界の歴史を見ても、政治が軍事に優先し、国会が国軍を有効に統制し得たという例は余りないんじゃないかと思うのでございます。文民統制というのは、歴史的に見るとなかなかこれはむずかしいようでございます。」非常に私は貴重な意見だと思いました。だから私は、率直に言って、自衛隊の最高指揮官たる総理にこの程度の認識でもあるのだろうかという危惧を持っているのですよ。 そこで、これからの質疑に入る前に一応あなたの、現時点をどういうふうに見ておられるのかというその点をお尋ねしたかったわけであります。
○福田内閣総理大臣 近代国家といたしまして文民統制、つまり政治の軍事に対する優先の制度というものは非常に貴重な国家原則ともいうべきものである、このように考えております。私は、この原則は今日わが国において守られておる、また今後といえども守り抜かなければならぬし、守り抜き得る。もちろんこれは、いま御指摘のようにいろいろ努力をしなければなりませんけれども、守り抜き得るものである、かように確信をいたしております。
○石橋(政)委員 わが国におけるいわゆるシビリアンコントロールの制度は、私は確かにりっぱに整備されていると思います。たとえば、自衛隊の最高の指揮監督権は総理大臣にあり、防衛庁長官は、文民たる国務大臣をもって充てることになっておる。国防に関する重要事項を審議する機関として内閣に国防会議が置かれておる。それから、防衛庁長官が自衛隊を管理し運営するについては、政務、事務次官が補佐し、基本的方針の策定についてはいわゆる文官の参事官が補佐しておる。自衛隊の人員、組織、編成の大網、予算、人事制度その他の重要な事項は、法律、予算等の形で国会において議決され、また防衛に関する国政は国会の調査を受けることになっておる。それから、きょう問題になります中心の、わが国が外部から武力攻撃を受けたとき、わが国を防衛するため内閣総理大臣が自衛隊に出動を命ずる際には、原則として事前に国会の承認を得なければならないことになっておる。こういうふうに、制度は確かに完璧に近いと言っていいほど整っておるのです。 しかし問題は、制度さえ整備されておれば、武装した人間の集団である軍をコントロールできるのかということなんです。いまや、日本の国防費は世界で第七位と言われております。その戦力は、陸海空三軍の均衡がよくとれておるという点で高い評価を受けておるわけです。いまや、アジアの自由主義陣営の中では最強と言われるまでに成長しているのが自衛隊であります。敗戦のコンプレックスもほとんど見られなくなっております。制服の発言権も急速に強まっておることは、最近の一連の発言の示すとおりです。とにかく、今回の栗栖発言をめぐる経緯を見ましても、制度だけで制服の諸君をコントロールすることは果たしてできるのだろうか、ちょっとむずかしいということが明らかになってきたのではないかというのが私の感想なんですよ。 制服は、国民から選ばれた議員によって構成される国会や政府の言うことには一切無条件に従え、それこそがシビリアンコントロールというものだ、確かに理屈はそのとおりです。しかし、納得できないと言う者を、予算や人事、そういったものを武器にして力ずくで抑えつけることが果たしてできるのか、非常に困難であるということを示しているのではないかという気がしてならないのです。従来は、制服の諸君は、制服を着ている間は批判は差し控えてきました。しかし、制服を脱いだ途端に本音を吐いていることは事実です。政治や政策あるいは政治家に対するふんまんを口にし批判を口にしているその例は、これから私は徐々に挙げていきます。大変なものです。それが今度栗栖氏になりまして、服を着たまま、現職のまま批判するという最も危険な形になってあらわれてきたのです。栗栖さんは、どちらかというと服を脱いでから批判するということに批判的であったようです。だから、おれは少なくとも現職の間に批判するんだ、こう言っておったかのごとく、私は、真実のほどはわかりませんけれども、伝え聞いております。 そういうシビリアンコントロールの基本にかかわるような言動を示したから、言辞を弄したから、あなたは解任したのだと言うかもしれません。しかし、彼は解任されたとは思っておりません。私も疑問を持っております。この間の経緯は、これまた速記録で読みましたから改めて説明を受けるまでもございませんけれども、なぜ私が、彼が解任されたと思ってないか、そういう形式の問題を離れて、私の判断の材料を申しますと、彼の発言が受け入れられているという事実ですよ。実際に退官はしたかもしれないけれども、彼の主張はそのまま入れられて、しかも総理大臣の指示という形で実行されようとしている。これで首になったとだれが思いますか。私は、シビリアンコントロールというならばこのポイントを言いたいのですよ。こういうことをやっているから問題だということを指摘しておきたいのです。なぜ総理大臣はわざわざ栗栖発言をそのまま受け入れたのか、ポイントですからお伺いしたいと思うのです。結局は彼の発言が筋が通っておったということじゃないのですか。しかも、ユニホームの諸君の支持を圧倒的に受けておるという事実を知っておったからじゃないのですか。だから、シビリアンコントロールの形を整えるためにやめてはもらったが、おまえさんの言うことは全部やるから勘弁しろ、迎合じゃないですか。見方によっては屈服ですよ。何がシビリアンコントロールですか、こんなことやっておって。大丈夫です。これからも大丈夫です。そんなことを言うから、私は懸念をしてお尋ねするわけなんです。いかがですか。
○金丸国務大臣 いま石橋先生のおっしゃるのには、わが方が屈服したのかという御質問ですが、超法規行動というその考え方、自衛隊があたかも憲法を犯し、法律を犯すという、まさにこれはシビリアンコントロールだ、そこを、彼があの立場においてあのような言を吐くということについては許せない。私はしばしば申し上げておりますように、いわゆるシビリアンコントロールとは、戦前の日本にしてはいけないという考え方が、私をして栗栖君をやめてもらわざるを得ない。私は屈服いたしたわけではありません。
○石橋(政)委員 私は総理にお尋ねしているのです。シビリアンコントロールを確立するためには制度さえ整えておけばいいとお考えですか、こう聞いているのです。もう一つ何か要るんじゃないか。それは、理論的にも彼らに対して優位性を持っておかなければいかぬ、説得力を持っておかなければいかぬ、これなしに、力ずくでというのは完全なコントロールにならないのじゃないか、そういう問題を提起しているのです。議論の中で、やりとりの中で、これから私は具体的に例を幾つも挙げながらやっていくつもりですけれども、最初に、制度だけでいいと思っておられるのかということをまず前提条件としてお尋ねしているわけですよ。
○福田内閣総理大臣 私は制度だけでいいというふうには思っておりません。その制度ができた趣旨をよく体して、そしてその制度を実行する、そこで初めて実効を上げ得るのである、このように考えております。
○石橋(政)委員 次に進めます。 非常に重大な問題なんです。そこで、何とか質疑をするに当たって、いわゆる俗に言う水かけ論、平行線ということにならない方法はなかろうかと私なりに考えてみました。それで、ちょっと新しい試みをやってみようという気になったのです。 それはどういうやり方かというと、御承知と思いますが、日本社会党は、軍事力による国の防衛という立場をとっておりません。それはまた、憲法の否定するものだというふうに信じております。日本国憲法は「陸海空軍その他の戰力は、これを保持しない。國の交戰權は、これを認めない。」明確に第九条で規定しておる。それじゃどうするのか。これは前文において「平和を愛する諸國民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しよう」とするのだ、これが唯一の道だ。これ以外に安全保障を確保する道はないと確信しております。しかし、その立場に立って自衛隊は違憲だ、認めぬ、こんな発言をするのは、けしからぬというだけでは議論が発展しませんから、私考えてみたのです。どういう方法をここでとってみようと考えたかといいますと、軍事力によって国の安全の確保を図ろうとする共通の立場に立つ人の意見の違いをクローズアップさせてみたいと思うのです。 まず、コントロールする側に立っておる総理、あなた方文民ですね、それとコントロールされる側に立っておるユニホームの諸君、この意見の食い違いがどこにあるか。少なくとも軍事力によって国を守ろう、防衛しようという立場に立った場合には、どちらの方が説得力があるのか、そういう観点で少しやってみたらどうだろう。なぜ私がそういう方式をここでとろうとするかというと、水かけ論を避けたいというだけではないのです。 私は、率直に言って疑いを持っているのです。いかにもあなた方の意見、主張とユニホームの諸君の意見、主張と違うごとくに見せかけておるけれども、実質的には分業の役割りを果たしておるんじゃないか。ユニホームの諸君に本音を吐かせておいて、まあ早まるな、君らは生一本過ぎる、おれたちに任せておけばじっくりとやるよ、こういうふうなことになっているんじゃないか、過去の経過から言っても。これは大変なことです。国会を欺き、国民を欺くものです。そんな懸念を私が持っておることは事実。そんなことはないということがこのやりとりの中ではっきりするかしないか、ひとつ自信を持ってお答え願いたいと思うのです。 それで、本論に入ります。栗栖さんは、七月十九日の記者会見で問題の発言をしたわけです。要約すれば、奇襲攻撃を受けた場合、内閣総理大臣による防衛出動が発令されるまでに時間的ずれがある、法制上も穴があいている、したがって、自衛隊の一線指揮官は超法規的に行動せざるを得ない、こういう要旨だと私は思います。結果的には、政府はこれをそのとおり認めたわけじゃないのですか。奇襲攻撃を受けた場合、内閣総理大臣による防衛出動が発令されるまでに時間的ずれがあるのは事実だ、法制上にも確かに穴があいておる、何とかせにゃならぬ。理論面では負けたんじゃないですか、いかがです。総理。
○福田内閣総理大臣 栗栖発言のその超法規的というところに問題があるのです。自衛隊は文民統制に服しなければならぬ。つまり最終的には国会の統制に服しなければならぬ。それが超法規的であるとは一体どういうことであるのか。これが問題とされまして、それで栗栖氏は、形のいかんを問わずとにかく退任せざるを得ない、こういうことになったわけでありまして、決して超法規、そういうことを是認する栗栖理論に政府は負けたんだ、こういうことではないのでありますから、その辺は誤解ないようにひとつ御理解願います。
○石橋(政)委員 しかし実際には、奇襲攻撃を受けたときに、内閣総理大臣による防衛出動が発令されるまでに時間的なずれがあるということは認めているじゃないですか。防衛庁長官も衆議院の内閣委員会で、二時間なりあるいは三時間あるというようなことを言っていますね。具体的な数字まで言っているのです。私は何でそんなに時間がかかるんだろうかと思ったほど、たっぷり時間があるということをお認めになっていますね。法制局長官も、奇襲から出動命令までの空白をどうするかは検討に値する問題提起である、これは参議院内閣委員会で述べております。指摘された事実は認めているじゃないですか。これに対してどうするんだ、明確な指示がなければ超法規的な行動に出ざるを得ないぞ、栗栖さんはそう言った。それは問題です。問題ですけれども、法律的にそれが穴が埋められていない、そこまでは事実なんですね。しかも、最初のうちはそんなことはないと言って、いろいろなことを詭弁を弄して醜態をさらしているじゃないですか。最初から、おっしゃるとおりですとは言ってないじゃないですか。大丈夫だ、隊員一人一人の刑法上の権利を発動すれば大丈夫だ、正当防衛権でいく、緊急避難でいく。部隊で行動している者に対して、一人一人の隊員の個人的な刑法上の権利などを持ち出して説明がつくはずはない。行き詰まっちゃう。そうしたら何ですか。今度は集団的自衛権、正当防衛権、集団的正当防衛権。そんなもの私は聞いたこともない。これもすぐにこれはいかぬと気がついた。そうしたら正当行為論だ、ついには授権論だなんというのまで飛び出してきた。醜態の限りじゃないですか。 自衛隊発足以来二十四年、そういう最も基本的なものについてすら何も答えることができない、指示することができない。何がシビリアンコントロールかと彼らに言われているのですよ、私が言っているのじゃない。ユニホームから突きつけられているわけですよ。有事というあなたたちが言う一番大切な時期、そのために自衛隊はあるのだと総理もおっしゃる。防衛庁長官なんか何回も演壇で言っておる。その一番肝心なときにどうしたらいいかという指示もなくて何がシビリアンコントロールか、こういうふうに突き詰められて、問い詰められて、答えられないじゃないですか。答えられるならいま答えてごらんなさいよ。戦えというのですか、降伏しろというのですか、逃げろというのですか。何もないじゃないですか。いまからゆっくり検討する。何がシビリアンコントロールですか、こう言われているのですよ。私はこういうところが、やはり制度が整っているというだけではなくて大切なんじゃないかと言いたいのですよ、シビリアンコントロールが大切なだけに。明確な指示もできないで何がシビリアンコントロールかと言いたいのですよ。しかも悠長に、いまから何年かかるかわからぬけれども研究する、こんなことでシビリアンコントロールができますか、総理。いかがです。
○福田内閣総理大臣 いわゆる奇襲攻撃のあった場合に対しましてどういうふうに処置するか、これにつきましては、とにかく奇襲なんというのをないようにしなければならぬ外交上の努力、これも必要だ。それからまた情報、そういうものの発達、そういうもので、もうあらかじめそういうものがあった場合に探知しなければならぬ。今日、私どもは現実のこの世界情勢から見て、わが国が奇襲を受ける、そういうケースがある、こういうふうには考えておりません。おりませんけれども、しかし、一体奇襲が絶対ないかというと、防衛庁長官も言う万々一の場合にそういうことがあるかもしれない。まあ栗栖氏はその万々一の場合のことを指摘しておったのだと私は理解しております。その指摘は、私は別に悪いとは思いません。ただ栗栖氏が、その万々一の場合に、これは超法規でいくのだという、シビリアンコントロールに反する発言をした。この点は私は断じて許すことができない、このように思うのです。栗栖氏が奇襲という事態があり得るのだ、その場合にどう備えるのだということにつきましては、これは十分政府においては検討しておかなければならぬし、ただいま申し上げたとおり、とにかく奇襲なんというものがあり得る、そういうことのないように万全の体制をとるということがとにかくかなめだ、こういうふうに思いまするけれども、万々一奇襲があったという際にどうするかということになると、これは非常に重要な問題なんです。これにつきましては、これは政府としても慎重の上にも慎重に検討してみなければならぬだろう、このように考えております。
○石橋(政)委員 まあ結果的には奇襲というものもあるということを認めているわけですね。この奇襲対処に対する防衛庁の見解というのを読みましても、いわゆる奇襲攻撃が絶無とは言えないという立場に立って、これから「文民統制の原則と組織行動を本旨とする自衛隊の特性等を踏まえて、法的側面を含め、慎重に検討することとしたい。」こう言っているわけだ。彼らにしてみれば、えらい悠長なことを言っているわい、ということになるのじゃないですか。どう説得するつもりですかと言っているんですよ。さっき言ったように、いま差し迫ってないからいいじゃないか、いざというときに備えるのだということを、ほかのときはしょっちゅう言っているじゃないですか。いざというときがいつのことかわからないというのに、のんべんだらりと何年もかけていまから研究しますで済みますか、というユニホームのこの疑問にどう答えようとおっしゃるのですかと言うんですよ。奇襲はもういまになったら万に一つぐらいで、めったにないようなことを言っておるけれども、どうですか。 このほかのところにいくと、防衛白書、ことしのですよ、ここにはこんなことまで書いていますよ。ほかのときには適当にこんなことを書いて国民を欺くのですか、それじゃ。「ソ連は、伝統的に量的優勢、奇襲及び陣地を迅速に突破する攻撃を重視している。」防衛庁の防衛白書ですよ。ちゃんと「奇襲」と書いてあるじゃないですか。ことし出たのです。一方においてこういうことを堂堂と国民の前に明らかにしておきながら、奇襲なんて万一ですよ、そんな心配する必要ありませんよで済みますか、私はそう申し上げているわけなんです。 とにかく、シビリアンコントロールというものをかっちりと機能させるためには、こういう疑問に対してはぴしっと答えていかなければいかぬのですよ。やめさせたからいいじゃないか、そんなことでまず納得しますか、残っている者たちも。その疑問を冒頭に私は提起しているのです。制度が整っているだけでいいのか、そういう形で私は疑問を呈しているのです。聞いているどなたもそれでは理解できないと思うんですよ。 そこに問題があるのですが、私はそれだけじゃなくて、いろいろな経緯を見ている中で新しい疑問がいろいろ出てきました。この防衛庁の見解、これを見ますと、有事法制の研究、奇襲対処の方法ですか、有事法制の研究に限ってですか、昨年八月、内閣総理大臣の了承のもとに、三原前防衛庁長官の指示によって開始されているというんですね。現職の統合幕僚会議議長は知らないのですか。いまやっていることを知らないのですか。どうも私はこれがわからない。ちょっとお答え願います。
○福田内閣総理大臣 どうも石橋さんの話を伺っておりますと、二つの問題を混同されているのじゃないかという感じがするのです。つまり、私どもは有事体制の整備、これは大事だ、こう申し上げておりますが、その有事というのは奇襲という場合じゃないのです。総理大臣が防衛出動を命じたその後の事態のことを言っておるわけであります。その防衛出動を命ぜられた自衛隊がどういう措置をとるか、それについて欠くるところがあったらこれは大変でありますから、それは整備しておかなければならぬ、こういうことでありまして、奇襲という問題は防衛出動が出ない場合の問題なんです。まだ防衛出動まで至らないその間において、あるいは二時間とか三時間という間があるかもしらぬ、その場合にどういうふうに対処するか、これが栗栖氏が指摘した点なのです。 改めてまた栗栖発言に戻りますが、栗栖氏の発言は二つ問題がある。一つは、有事というが、その前の緊急の事態、つまり奇襲という問題があるじゃないか、その場合にどう対処するか、そういうことであります。それからもう一つは、そういう際には超法規で対処する、こういう二つの点。 私は、緊急事態、つまり奇襲という事態があるという指摘、これは別にとがむべきことでもなく、当然のことであろうと思います。しかし、超法規という判断をしたこと、これは制服の者といたしまして見逃すことはできない、こういう判断だったのですが、いずれにいたしましても、この有事というのは、総理大臣が防衛出動を命じてその後のことである。その有事の際にいかに自衛隊が対処するかということにつきまして、一応仕組みはできております。しかし、その仕組みが完全であるかどうかということは常時防衛庁として検討しておかなければならぬし、また防衛庁の指示に従いまして自衛隊もこの検討を進めておかなければならぬ問題であろう、そのように考えるわけであります。その前の緊急という事態は、先ほども申し上げましたが、これはちょっと客観的には想像できないようなことでありまするけれども、万々一ということはありまするから、その際のこともあわせて検討しておくべきである、このような見解でございます。
○石橋(政)委員 私は、防衛白書にも奇襲という言葉を使っているということを言いましたが、あなた方は、別のときになると盛んに宣伝するのですよ。突然攻めてこられたらどうするか、どうするか、まるで国民をおどし上げるかのごとくしょっちゅう使っているのです。この防衛二法が初めて国会に提出されました昭和二十九年、内閣委員会において吉田総理がどういうことを言っているかというと、共産主義国の侵略というものは突然天から降ってきたような進撃をいたすものでありますとまで言っているのですよ。場所によってはそんなことを言っておきながら、痛いところをつかれてきたら、奇襲なんて万々一もあるかないか、ほとんどない。使い分けですよ。国民の中にはそんなことでだまされる者がおるかもしれないけれども、少なくともそれ専門のユニホームがそんなことで納得しますか。一番きついところをついてきたわけですよ、向こうは。あなた方の弱いところを、奇襲というのを持ってきたのは。ねらいは有事法制というものに取り組ませよう、整備させようということでしょう。そこにはずるずると入っているじゃないですかと私は言っているのです。しかも、取り違えているとおっしゃるけれども、それは私は取り違えておるのじゃないのです。しかし、取り違えというならそれでも結構です。少なくともすでに研究が進められているということについて統幕議長は知っておったのか、このことをまずお尋ねしているわけです。これは防衛庁長官でいいです。
○金丸国務大臣 栗栖君が統幕議長になる前、陸幕長をいたしておりましたとき、三原長官が昨年の八月指示を出したということでありますから、当然承知しておる話であります。
○石橋(政)委員 承知しておってなおかつこういう言辞を弄したということになるわけですね、その解釈でいきますと。 ところが、どうも腑に落ちないのは、この栗栖発言が出てきたら、去年からスタートしていると後では言うけれども、そのときにはどうも総理大臣も防衛庁長官も忘れておったのじゃないかという気がしてならぬのですよ。改めて指示しているわけですね、総理。七月二十七日の国防会議議員懇談会で指示しておられるわけですよ。翌日の閣議で確認をしておられるわけです。自衛隊が有事の際にとるべき対応措置についての立法措置の研究を推進すること、有事立法と有事の防衛研究、さらに民間防衛体制研究の検討促進を図ること、栗栖発言を踏まえてわざわざあなたは指示をしていますね。去年から総理大臣の了承を得て三原防衛庁長官のもとにおいてスタートしておるということは、覚えておったのですか。どうもこういう肝心なことについてその場その場をしのぐ、かっこうつけだけじゃないか。疑いを持たれますよ、こういう事実は。こういうこともまた、結果的にはユニホームの不信を買うんじゃないですか。本気かいな、かっこうづけじゃないか。私にもわからないですよ。最終的に出てきた文書を見ると、去年からやっております。ところが経過を振り返ってみると、栗栖発言が出た、あわてて総理が指示をした。総理大臣も防衛庁長官も、去年からやっていることももう忘れている。防衛庁長官、忘れておらぬなんて言わせませんよ。衆議院の内閣委員会であなたはそう言っているのだから。総理大臣から指示があったときに私は参考意見として総理にこういうことを申し上げておったわけでございますと言っていますよ。いや、それは去年から始めておりますなんて言ってない。この程度です。あなたたちはいざ鎌倉に備えて、軍隊は要る要るとおどかしはしますけれども、しかし実際には肝心なことは何もやっておらないということが問題なんです。それはいまに始まった姿勢じゃない。 私は、この問題が起きてから、二十四年間もこんな問題研究してないはずはないと思って、過去の記録を調べてみました。同じような議論が防衛二法制定国会でなされているのです。昭和二十九年四月五日衆議院内閣委員会において、大久保武雄委員の指摘によってこの論議がなされているのです。栗栖さんは具体的な例として空を例に出したようですが、大久保委員は、さすがに自分の本職から、海の例を出しているだけの違いです。 私は詳しくこの速記録を読むことを控えますけれども、彼が例に出しているのは、漁船の拿捕という問題に関連して海上自衛隊はどうしたらいいのかという問題提起をしているのです。きわめて重大な問題であり、海上自衛隊の隊員はサウンド・ジャッジメント、良識ある判断を海上においてなせといって、現地官に任せることは適当でないと思う。どうするんだ。海上自衛隊の艦長に、第一線の指揮官に任せておくのか、超法規的行為でやれというのかという質問を大久保さんがしているのですよ。これに対して当時の、これはまだ自衛隊法が通る前ですから、保安庁と言いました。保安庁長官木村篤太郎氏、どういう答弁をしていると思いますか。「御説ごもっともであります。われわれといたしましては、終始それらの方法について慎重考慮いたしております。部下に対しても相当これに対しての指導はしております。しかし具体的に今申しましたことに対して、どうやって行くかということについての御返答は差控えたい、こう考えております。」どうしろという指示はしている。しかし、ないしょにしたいから具体的にここで答弁させることは差し控えてもらいたい。あるけれども言えないんだ、秘密なんだと言わんばかりの答弁をしているのですよ。二十四年前に、自衛隊発足の直前のいわゆる防衛二法制定国会の内閣委員会でこういう答弁をしているのですよ。 どうなんです。うそを言っているのですか。できているのに、あなた方まで隠しているのですか。あると言うならそうでしょう。ないと言うなら、木村さん、法案を通すためのでたらめを言ったのですか。国会という場を何と心得ているかと私は言いたい。その場その場を何とか口先で切り抜ければいい。こんなことでユニホームが納得しますか。まさにシビリアンコントロールの根幹にかかわる問題です。どうなんですか。
○伊藤(圭)政府委員 二十四年前当時のことはまだ私も詳しくは存じませんけれども、その当時はいわゆる海上自衛隊という形がございませんでした。したがって海上警備隊の時代であったと思います。したがいまして、海上警備隊というのは現在の海上保安庁の仕事のようなことをやっていたのではないかと思いますので、その間のいわゆる対応策というものは指示していたのではないかという気がするわけでございますが、詳しいことは、いま私も手元に持っておりませんので、調べてみたいと思います。
○石橋(政)委員 私は速記録をここに持ってきているのです。もう大久保さんは、法案が成立するという前提で物を言っているようですよ。海上自衛隊という言葉を使っているのです。そして「木村保安庁長官はこういう国際的な問題の起る事態に対して、いかなる処置を部下に対して命令をしておるか、またいかなる保護を日本国民に対してとられるように命令しておるか、」こういう尋ね方をしているのです。これに対して、あります――その前、私はるる大久保委員が述べていることを省略しましたから、あなたのような逃げ口上で通るかと錯覚しているかもしれませんけれども、そうじゃないのです。いま問題にされているのと同じ形を、空でなくて海という例示の中で大久保さん、提起しているのですよ。そして聞き方も同じなんです。第一線の指揮官に任せるのですか、こんな国際的な重要な問題を、こういう聞き方をしているのです。同じです。栗栖さんは逆に言ったんですね。明確な指示がなければ超法規的な行動に出ざるを得ませんよ、同じ問題提起なんですよ。これに対して、心配するな、任しておけ、答えることだけは勘弁してちょうだい、秘密だからと言わんばかり。ないものを秘密だと言ったんですかと私は言っているのです。あってあなた方は隠しているのですかと言っているのです。とにかく答えられないでしょう。私が言いたいのは、そんなその場逃れの、口先だけでコントロールなんかできるなんて思ったらとんでもない間違いですよ、こういうことを具体的な例で申し上げておるわけなんです。時間が幾らあっても足りませんから次に進めます。 あなた方は、いまから有事に備える研究をするんだ、いまからやる、とこう言う。しかしユニホームの諸君に言わせれば、いまからじゃ間に合わない、そんなものはもうあるよ、こう言いたいのじゃないんですか。彼らが言うあるよというのは何だ、いわゆる三矢研究ですよ、三矢計画ですよ。あなた方ごちゃごちゃ言わぬでも、もう私たちが先にちゃんと昭和三十八年につくっておりますよ。だから、あなたたちがいまから始めようというのは、それをいよいよ認知するということになるんじゃないかと私は思うのです。この制服の諸君が、三矢研究こそ、三矢計画こそ有事立法、有事体制の整備の原点だというように考えている証拠をここで幾つかお示しします。 石川貫之という元航空幕僚長がおりますが、彼は「自衛隊戦わば」という本の中でこう言っております。「航空だって空域の問題からして法にしばられているし、航空管制にしても非常時の一元コントロールはできない。それから民間基地も緊急事態には使えるようにすることですね。要するに戦時立法の必要がありますね。」これに対して内田一臣元海上幕僚長は「それを詰めていうと、かつての「三矢研究」的想定研究をもう一度見直してもらえないですか、ということになりますね。」植村英一元飛行教育集団司令官「一口で言えば、私は政府機関が共同して「新三矢計画」を勉強してもらいたいと思う。」「誰もやろうとしないから、それを制服組がやろうとしたのがかつての三矢研究であり、その結果、大変な非難攻撃を浴びた。」さらに石隈辰彦元護衛艦隊司令官「三矢研究は現在の国防体制にどんな問題があり、どんな点を政策として研究し、また準備してもらう必要があるか、研究するのが目的だった。」異口同音に言っています。 この時点はまだユニホームを着ている段階じゃないのです。ユニホームを着てこういう基本的な問題についての意見を述べたのは栗栖さんが初めてです。いわばユニホームのトップの座を占めておった人たちが、ユニホームを脱いだ途端に口をそろえてこう言っておる。彼らにとっての有事体制というものの原点は三矢計画なんです。あなたたちがもたもたして何もしないから、おれたちはちゃんとその日に備えてもう研究し計画をつくり上げている、こういう言い分なんですよ。いまからやれば結局それを追認するということに終わるのじゃないか、私はそう思うのですが、この三矢計画、三矢研究というものについて、総理大臣はどういうふうに御認識を持っておられるのですか。
○福田内閣総理大臣 三矢研究というのはあれは廃棄されたのであって、いま生きておるというものでないように承知しております。 問題になりましたのは、これは三矢研究というのが制服ひとり歩きというか、制服だけでひそかに研究した、こういうところに問題がある。これが国会を初めとするずっと一連のシビリアンコントロールという範疇の外で行われたのだ、そこに問題があったのだというふうに承知しております。
○石橋(政)委員 そうですか、防衛庁長官、当時の志賀健次郎防衛庁長官はこれを知らなかったとおっしゃるのですか。内局も防衛庁長官もつんぼさじきだったとおっしゃるのですか。事実だけでいいですからおっしゃってください。
○金丸国務大臣 その三矢研究の問題につきましては、私は、長官も知らなかったというように承知いたしております。
○石橋(政)委員 大変な問題ですから、局長にちゃんと念を押してもらいなさいよ。いいですか。
○金丸国務大臣 ただいま申し上げましたことはそのとおりでありますが、防衛局の第一課ですか、課長は、そういうことを聞いておったけれども、その内容については承知しておらない、こういうことであります。
○石橋(政)委員 この点については、それでは後で私はもっと念を押しておきますから。恥ずかしいことですよ。こんな大切なことを、防衛庁長官も局長も次官もだれも知らないときにユニホームでやりましたなんて平気であなたおっしゃるけれども、私はそうじゃないだろうと思う。現に当時の志賀防衛庁長官は公表までしておる。私はそうじゃないと思うが、総理大臣そういうふうに思い込んでいるなら、それで一応きょうはいいですよ。 問題は、総理大臣や防衛庁長官の知らぬところでやったからけしからぬ。内容はどうなんですか、内容は。
○金丸国務大臣 私は、その内容につきましては、その当時の長官ではありませんから知らないのが当然でありますが、私の聞くところによりますと、その問題はもうすべて破棄されておるということであります。
○石橋(政)委員 それでは、内容の幾つかの例を私挙げて、総理の御意見を承りたいと思います。 〔委員長退席、山下(元)委員長代理着席〕 その前に、基本的な前提になる事項について若干お尋ねしておこうと思うのです。 第一は、有事とは何だということです。その定義から。統一見解によりますと、「自衛隊法第七六条の規定により防衛出動を命ぜられるという事態」というように非常に狭く限定しているようですが、参議院の内閣委員会における竹岡官房長の答弁を見ますと、もっと広いですね。 そこで、具体的にお尋ねします。 七十七条防衛出動待機命令、七十八条治安出動命令、七十九条治安出動待機命令、そういうものの命ぜられるという事態、これまで含まれるのですか、どうですか。
○伊藤(圭)政府委員 私どもが考えておりますのは、七十六条の第一項によりまして総理大臣の防衛出動が下令される事態を考えておるわけでございます。しかしながら、この防衛出動が下令されるに当たって、その防衛出動ときわめて密接な関連のあります七十七条の待機命令の時点、その点も含めて研究したいと思っておりますが、治安出動の関係については研究の対象といたしておりません。
○石橋(政)委員 大切なことですから、こういう文書で統一見解を出されるときにはきちっとお書きになったらどうですか。ぼかす必要はないじゃないですか。七十六条の発動されるそういう事態だけというふうに書いてあるじゃないですか。詰めていけばもっと広い。そういうインチキはおやりにならないように。要するに戦時、非常時、緊急事態ということですね。 それじゃ、そういうときに備える法制の研究とは一体何ですか。これも防衛庁の見解を読みますと、「自衛隊がその任務を有効かつ円滑に遂行する上での法制上の諸問題」ということになるのだそうですが、わかりやすく言えば、自衛隊の作戦行動を容易ならしめるためにはどんな法律が必要か、また障害となる法律上の制約を取り除くためにはどういう法律の改正が必要か、そういうことを研究し検討するということでしょう、いかがです。
○伊藤(圭)政府委員 ただいままでの説明によりまして、先生が非常に広い範囲ではないかという御疑問を持っておられるようでございますけれども、私どもは、有事におきます自衛隊の行動につきましては、現在の自衛隊法によりましてその行動の基準あるいは権限等については定められております。しかしながら、御承知のように総理から防衛体制の整備に努めよという御指示をいただいておりますが、私どもはこれを三つの要素に考えているわけでございます。教育訓練を懸命にやりまして練度を高めておくということが一つでございます。それから、侵略に対して防衛力として有効に発揮できるような近代化された装備品をもって対処するということがもう一つあろうかと思います。そしてさらには、軍事技術というものは非常に発展してまいっております。そしてまた、戦術構想というものも変わってきているわけでございますが、そういった状況の中におきまして自衛隊の行動をするのに、現在の自衛隊法の中に書いてあることで、その後いろいろ問題があるのかないのか、そういうことを中心に研究したいと思うわけでございます。といいますのは、いま御説明いたしました二つの要素というものを果たすために、一応自衛隊法には自衛隊の行動あるいは権限というものが定められでおりますが、この有事というのが実際問題としてございませんでしたので、現時点におきましてこの自衛隊法の中の問題等につきまして検討したいということでございます。
○石橋(政)委員 私はもっと広く研究しろなんて言っているのじゃないのです。冒頭に申し上げたように、きょうは私の意見というものを生でぶつけるというのは避けているのですよ。だから、あなた方の言うような言い方でユニホームの諸君を説得できるかどうか、そういう立場に立って質問しているわけなんです。狭く狭くして、研究しているから心配するなと言って納得しますかと質問しているのですよ。本当に自衛隊の狭い七十六条、その周辺だけの行動、そういうものを研究しておりますで納得しますか。それを詰めていけば、有事には自衛隊だけで戦え、おれたちは知らぬ、そんなことで納得しますかということですよ、わかりやすく言えば。有事というものを想定し、しかも軍事力によって国の防衛を図ろう、安全を確保しようというならば、自衛隊に関するもの、軍に関するものだけじゃ済まないはずです。国家防衛の諸法令、そういうものが当然に必要になってくるのじゃないかという視点から私は言っているのですよ。一生懸命狭くしておるけれども、そんなことじゃ聞かぬでしょう、専門のユニホームの諸君は。 どこの国の例を見ましても、大体、日本の憲法のようなものを持っておる国はないんだから無理ですけれども、あなたたちはそれをあえてやろうとしているんだから、自衛隊というものをつくり上げたんだから、言わざるを得ない。有事法体制ということになれば、軍に関するものと国家防衛の諸法令とから成り立っているんです。たとえば、国家の戦争指導組織法令、それから国家非常事態法令、民間防衛法令、経済活動を維持するための物資統制、経済運営管理法令、非常に広範多岐にわたる研究というものが必要になってくるわけですよ、ここに踏み込めば、有事というものを想定すれば。それをあなた、必要ないないとここで言おうとすることは無理じゃないかと言っているんですよ。有事というものを前提にした、いざ鎌倉、どこかの国が攻めてくる、そのときに備えようというのに、自衛隊の七十六条の周辺だけです。そんなことでだれが納得しますか。おまえらだけで適当にやっておけ、民間も知らない、何にも知らない、国家機構もそのまま、そんなことで有事に対処できるんですか。 そういう意味から、私申し上げたように、三矢計画というのが原点なんですよ。実に細かく研究しております。本当にこれを一つ一つやっておれば時間が幾らあっても限りがありませんから、ほんのわずかな例だけ読み上げてみますけれども、「国防中央機構等の整備に関する事項」、「国防中央機構等の整備は、情勢の推移を勘案して、法令の整備と相まって、逐次段階的にかつ機能発揮の均衡性を配慮しつつ実施する。」三矢計画は、有事に直面して一挙に法制化するというそういう立場をとっておりますから、こういうのが出てくるのです。「整備を必要とする機構等を次のとおりとする。」「戦争指導機構、民防衛機構、国土防空機構、交通統制機構、海運統制機構、通信統制機構、放送、報道統制機構、経済統制機構」、私は必要だと思いますよ、有事というのがある、それを前提に研究するとなれば。こんなものは必要ないのです。 もう一つ、「経済及び要員等に関する施策」、「有事における民生安定をはかるとともに、軍需に応ずることを主眼として、逐次必要最少限度の経済の統制及び動員を行うとともに、なしうる限りの産業防衛施策を実施するものとし、当面次の施策を準備し、情勢に応じ実施する。」 「(1)経済の統制イ生活必需物資の規制最低生活の確保を目途とし、主食および大部分を輸入に依存している物資を規制する。ロ戦略物資の統制軍需を優先し、石油、鉄、稀少非鉄金属等を統制する。ハ物価統制インフレ防止のため主要品目について実施する。ニ金融統制軍需産業に優先投資する。ホ輸送統制a外航海運の統制、bその他の輸送の統制。 (2)経済の動員軍用物件の収用及び利用、a軍用資材、b医療機関、c輸送機関、d土地、建造物、eその他、f生活必需物資及び軍需品増産諸施策の実施、g重要戦略物資の備蓄施策の実施。(3)産業防衛」。それから「二、重要戦略物資の繰上げ輸入及び新規輸入を実施する。」「三、要員確保」。 実に細部にわたって研究をし、成案を得ております。これが三矢計画です。 有事に備えるという限りにおいてはそこまでやらなければ全きを期することはできないのじゃないですか。自衛隊だけ、出動にかかわる分だけ、それだけで有事に備えたと言えるのですか、どうなんですか。こういうものは必要ないとおっしゃるのだったら、必要のない理由をおっしゃっていただきたい。
○福田内閣総理大臣 三矢研究につきましては私も詳細は承知いたしておりませんが、有事、さあ自衛隊はどういう行動をとるか、とり得るか、こういうことにつきましては、これは自衛隊法でも、ある程度の自衛隊の任務権限が決められております。しかし、それで果たして有事に対応できるかどうかという問題は、これは常に研究しておかなければならぬ問題だ。防衛出動の命令を受けて、その自衛隊が任務を尽くせない、こういうようなことであっては自衛隊を置く意味がないわけでありますから、したがって、そういう有事に対しまして、自衛隊が防衛庁長官の指示のもとにいろいろ研究をしておく、これはもう当然自衛隊の責任としてもしなければならぬ問題であろう、私はこのように考えております。
○石橋(政)委員 私は防衛庁を離れて言っているのです。国防会議の議長たる総理大臣に言っているのです。防衛庁あるいはそれだけでもいいと言うかもしれません。しかし、有事を前提にして考えるならば、いま私が申し上げた三矢計画で成案を得ているこの程度のことは、どこかでやっておかなければいかぬのでしょう。どこでやるんだ、国防会議ですよ。必要ないのですか。ないのだったら、何で必要ないのですか。必要ないという立場でユニホームを説得できるのですか、コントロールできるのですか、そういうふうにお聞きしているのです。自衛隊だけで戦えとおっしゃるつもりですか。
○福田内閣総理大臣 有事に際しまして、その有事に自衛隊が完全にその使命を達成する、このためにはあらゆる準備をしておく必要があると思うのです。有事に対して何もしないでいいですかとおっしゃいますが、何もしないでよくありません。ありませんものですから、有事には有事に対するあらゆる体制を整えておかなければならぬ、そのことを防衛庁主導のもとに研究しておくということを私は了解をいたしておる、こういうことなのです。とにかく国防の問題ですから、これは防衛庁が中心になってそういう研究をする、そして必要があれば国防会議の議題にもするし、また、関係が非常に広範でございますから関係省庁ともよく協議をする、こういうことになると思います。
○石橋(政)委員 私は、これは全部が聞いておるわけですから、あなたのおっしゃっておるようなことで、みんなわからないと思うのですよ。自衛隊にかかわる分だけをやっておけばいい、それで有事に有効に対応することになるのですか。有事というものを前提にして研究するというならば、もっと広範な研究が必要なのじゃないですか。必要であるかのごとく、ないかのごとくおっしゃって逃げようというか、そういうその場その場の逃げ口上じゃだめですよと言っているのですよ。説得力ありませんよ。そんなことでは一番肝心な諸君が聞きませんよ、腹の中でばかにしますよ、こう申し上げておるのです。ばかにされたら、本当にシビリアンコントロールなんて機能しませんからね。心配して言っているのですよ。しかし、あなたは答えられないようですから、もうちょっと進めてみましょう。(福田内閣総理大臣「いや、答えますよ、それは」と呼ぶ)いいですよ、もう一つ次のところで答えてください。 機密保護法の制定、これは有事を想定した場合の最優先議題じゃないですか。「有事の際に自衛隊の各部隊がどう配属され、どのように移動しつつあるか、人員、装備はどの程度で、弾薬の備蓄量はどの程度かというようなことが筒抜けということでは、これはどうにもならぬ、有効に対処できぬ」と彼らは言っているのですが、この点はどうなさいますか。源田さんはこの雑誌で、「これをやらないで有事立法なんて言ったって意味がありません」と断定しています。しかも、ひどいことに、源田さんの論法でいくと、「国会に防衛委員会をつくることにも反対しているのは、機密保護法がないからだ」とまで言っていますよ。どうですか、有事有事とおっしゃるなら、どうしてもこれは必要ということになるのですか。
○伊藤(圭)政府委員 秘密保護法の内容がどういうものか、いろいろな方が言っておられる内容はよくわかりませんけれども、御承知のように現在の自衛隊法の五十九条にも、秘密を守る義務というのが自衛隊員には課せられているわけでございます。有事になりまして、その秘密を守っていくということによりまして、国内で迎え撃つわけでございますから、秘密保護法というような特別なものが要るというようなことはすぐ申し上げるわけにはまいらないという気がするわけでございます。私どもは、現在の自衛隊法の秘密を守る義務、これを厳格に実施することで有事に対処する基本的なものは整っているというふうに考えているわけでございます。
○石橋(政)委員 総理大臣に聞きたいのですよ。必要ないならないとはっきり言ってください、国民が安心するように、みんなが安心するように。
○福田内閣総理大臣 ただいまのところは、いま防衛局長がお答え申し上げましたように、その問題を検討の対象にする考えはありません。
○石橋(政)委員 ただいまのところはない、やがてやるということですか。 そのほかに、今度の防衛庁見解によりますと、今回の研究は、憲法の範囲内で行うものであるから、旧憲法下の戒厳令や徴兵制のような制度を考えることはあり得ないし、言論統制などの措置も検討の対象としない。これはちゃんと書いているのですね、一応。機密保護法のこともこの中に含まれておるつもりかもしれませんけれども。こういったものも、本当に有効に対処するためにそんなものは要らぬのだということなのですか、それとも憲法上無理があるからいまのところできないということなのですか。
○伊藤(圭)政府委員 私どもは、戒厳令、徴兵令等につきましては、憲法上もできないと思っておりますし、また実際に自衛隊の有事の行動の面から見て必ずしもそういったものは必要ではないというふうにも考えているわけでございます。
○石橋(政)委員 そう言っておきながら、ちらりちらりと本音が出るのですね。この統一見解の中でもちらっと出ているところを見ると、「有事の場合においても可能な限り個々の国民の権利が尊重されるべきことは当然である。」ちゃんと逃げ道をつくってあるのです。「可能な限り」と。絶対にやらぬとはおっしゃらない。現に竹岡官房長は、参議院の内閣委員会で八月十七日ににおわせている。中曽根総務会長のごときはもっとはっきりと言い抜いている。これは省略します。 結局、私が言いたいのは、憲法は自衛隊の存在を認めていないのですよ、交戦権も認めていない。だから、一切の軍事規定というものが憲法にない。軍事規定がないのだから緊急事態における例外規定もない。そういう中で有事を想定し、軍事力による防衛というものを一生懸命考えようとすれば、行き詰まってしまうのは当然なのです。さっきも申し上げたように、有事立法というものは自衛隊が戦争のために自由な行動を確保しようというのがねらいである以上、いろいろな面で規制が行われるのは当然なのです。憲法や現行法の枠の中でやれるはずがない。それをやろうとするから、うそを積み重ねることになる。うそだから説得力がない、言うことを聞かない。一番根本のところが狂ってしまっているのですよ。 もう一つ具体的な例。本会議でもちょっと問題になっておりましたけれども、ここに毎日新聞の記事があるわけです。「「有事」の日米防衛協力作戦指揮を一本化」。いわゆる有事に際しては日米の統一司令部を設けられるつもりですか。
○伊藤(圭)政府委員 その新聞の記事をお読みいただいてもおわかりだと思いますけれども、もともと日米間は指揮系統を別にしてある、したがって、その調整が必要であろうということで、必要な場合には調整機関を設ける必要があるだろうというようなことが防衛協力小委員会において検討されておりますけれども、その記事の内容をごらんいただいてもわかりますように、統一指揮というようなことは全く考えていないわけでございます。 〔山下(元)委員長代理退席、委員長着席〕
○石橋(政)委員 ここでも私は、ユニホームの諸君との意見を対比させてみたいのですよ。防衛庁は必要ないと言う、つくる意思もないと言う。ユニホームの諸君は、そんなことでは有事に対処できぬと言う。私、さっき一回、例を引きましたけれども、石隈元護衛艦隊司令官ですが、そういうことでは本当の日米協力による日本の防衛はできないと思う、断定していますよ。北村謙一元自衛艦隊司令官、この人も、自衛権を発動した後はやはり集団自衛権の行使でなければ共同の海上防衛作戦は成り立たない。いいですか。ユニホームの諸君は、自衛隊と米軍とが別々で、調整ぐらいなことで作戦の遂行ができるか、こう言っているのですよ。防衛はできない、海上防衛作戦は成り立たない、そこまで言っていますよ。どこでどう言っているのか、細かく知りたければ全部読んでもいい、私、書いてきていますから。 ここでお尋ねしたいのです。統一司令部のもとで共同で戦う場合と、あなた方が言うようにそれぞれの司令部のもとで戦うのと、どっちが有効に対処できるのですか。
○伊藤(圭)政府委員 いま先生がおっしゃいましたけれども、御承知のように、いわゆる防衛行動といいますか軍事行動をするに当たっては、共同でやる場合にはもちろんそれは統一司令部があった方がいいということは、いわゆるオペレーションといいますか、運用の側からは言えると思います。しかし、わが国は憲法のもとで自衛隊が存在し、そして米軍の協力を得て事態に対処するという方針をとっておりますので、その制約のもとで整合のとれた運用をやっていこうということでございまして、このことにつきましてアメリカも、不自由はあるかもしれませんけれども、統一司令部でなければできないというようなことは一言も言っていないわけでございます。
○石橋(政)委員 私は、お役人がこの問題についてとやかく言うこと自体が、責任回避といいますか、基本的に間違っていると思いますよ。何で最高指揮官の総理大臣なり、それを補佐する防衛庁長官なりが自信を持って、胸を張って国民に説明しないのですか。こんな程度のこともわからないのですか。統一司令部で戦うのとばらばらで戦うのと、どっちが有効ですか。わからないのですか。ユニホームの諸君は、さっき言ったように、そんなことじゃ海上防衛作戦は成り立たないとまで言っているのですよ。成り立たないとまで。専門職の連中に成り立たないと言われて放置しておいていいのですか。いや、あれはユニホームを脱いだ後だからいいというのですか。とんでもないことですよ。 もっと極端な発言を紹介しましょう。植村英一さん、こういうことを言っています。とにかく非常時には内閣総理大臣の権限を拡充し、強化することがぜひ必要だと思う。一々立法措置して議会の賛成を得てということでは間尺に合わない。いいですか、間尺に合わないそうです。さっき紹介しました北村謙一、この人が、国際的な協力をする以上は国際的に適応する考え方でやっていかなければならない。これを受けてまた植村英一さんが、確かにそうですね。手前勝手に憲法に逃げ込んでいる。憲法は国内的なもので国際的に効果のあるものではない。こんなことまで言っているのですよ。 確かに、有事を想定したらば、その対応は死力を尽くすということでなければならないはずです。制服の諸君にしてみれば、事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に努め、もって国民の負託にこたえることを誓いますとおれたちは宣誓しているんだ、こう言うのですよ。あなた方もそれを彼らに期待しているわけでしょう。一身をなげうって国の防衛に当たれ、こう言っているわけでしょう。 そこで総理にお尋ねするのです。制服の諸君に向かって全力を尽くす必要はないよ、憲法の枠内でやればいいよ、憲法で禁じられたことをやらなかったために敗れても、国の防衛ができなかったとしても、それはやむを得ないよ、自信を持ってそう言えますか。言うだけではだめですよ。さっきから読み上げているように、彼らは口をそろえて批判をし続けているのです。納得をさせなければいかぬ。黙れで済まない。けしからぬで済まない。やめさせたからそれでいいでは解決になりません。また、やめた後の発言だからしようがない、それでも済みません。私はそう思います。どうですか、総理大臣。
○福田内閣総理大臣 国の基本は憲法でございます。この憲法の枠を度外視いたしまして、幾ら自衛隊の任務が重大であろうとも、この自衛隊が行動するということは許されるはずはないのです。私どもは、憲法の範囲内におきましてできるだけの任務を尽くしてもらいたい、そのためのできるだけの準備、いわゆる有事体制への準備、これはとり進めておかなければならぬ、このように考えます。
○石橋(政)委員 もう一人だけユニホームOBの発言を紹介して結論に入りますが、村木杉太郎という元統幕事務局長の発言です。一言で言うと、戦時にまで現法規の延長線上でやろうとするのは無理です。こう言っています。有事を想定する限り憲法の枠内での対処なんということはあり得ないのです。なぜならば、さっきも申し上げましたけれども、憲法は軍備を禁じておるのです。軍事に関する規定は一切ないのです。軍事力による対応は全く考えていないわけですから、そうなるのが当然なんですよ。 そこで、あなた方が有事を想定した場合に、検討すると言う、研究すると言う。どういうケースがあるんだろうか。私なりに頭の整理をしてみました。結局三つのケースがあるというふうに私は分類したのです。第一は、平時において有事法制を完全に整備しておく。ただし、この場合は憲法改正が必要となる。憲法の枠内ということであればほんの部分的な整備に終わらざるを得ない。これが第一ケース。第二、有事に際して一挙に法制を整備する。三矢研究、三矢計画なるものはこの例です。この場合は実質的な憲法の停止ということになります。第三は、有事に直面したとき、法制の整備を待たず超法規的に行動する、この三つのケースです。政府は、できれば第一の方法でいきたい。今度もちらっとその本音を出しました。しかし、国民の抵抗がまだ強そうだというので第二の方法に切りかえたんじゃないでしょうか。部分的にやれる分だけ憲法解釈をねじ曲げて、やれる範囲だけちょっとやっておいて、残りの大切な部分は第二の方法、有事に直面した場合に三矢方式でぽんとやる。第二の方法でやるにしたって、研究だけは平時においてやっておかなければいかぬ、そういう考え方が背景にあることは間違いありません。これに対して制服の諸君は、あなたたちがもたもた言うならば、第一でも第二でも第三でもいい。第一、第二でやってくれなければ第三でやるだけだ。これが栗栖さんの超法規的行動という表現になったんじゃないんですか。私はそう理解します。 とにかく、憲法の枠の中での有事体制の確立、有事法制の整備、そんなことは不可能です。できっこありません。それを、これまたこの防衛庁の見解の中で本音をちらっと示しているんですよ。ちらっとが実に上手です。どういうふうに書いているかというと、「研究の対象は、自衛隊法第七六条の規定により防衛出動を命ぜられるという事態において自衛隊がその任務を有効かつ円滑に遂行する上での法制上の諸問題である。」「残された法制上の不備はないか、不備があるとすればどのような事項か等の問題点の整理が今回の研究の目的であり、」この後です。「近い将来に国会提出を予定した立法の準備ではない。」ここですよ、問題は。日ごろから整備しておかなければいかぬ、整備しておかなければいかぬ、そう言っておきながら、「近い将来に国会提出を予定した立法の準備ではない。」まさに第二のケースという目標をちらっと見せているんじゃないですか。研究だけしておく、準備だけしておく、立法手続は、国会提出は近い将来じゃない、まさに有事だ。非常に危険な風潮です。――答弁ありますか。
○金丸国務大臣 ただいまいろいろお話もあったわけでありますが、先ほどから述べておるお話の中に、制服を脱げば言いたい放題を言う、制服を脱がぬときは思っていることを言わない、その傾向のあることは、私も認めざるを得ないと思います。 そこで、有事の法制についてどう考えているかという、その一、二、三の例も挙がったわけでありますが、私は、いわゆるこの有事法制の研究をして、その研究の中で中間報告をしろと言えば中間報告もいたします。ひた隠しに隠すようなことはいたしません。いわゆる防衛という問題は、二十七万の自衛隊だけで防衛ができるわけじゃない。一億一千万国民の合意なくして防衛はないというところに私は重大な関心を持っておるわけであります。
○石橋(政)委員 しかし、先ほどから私が言っているように、憲法の枠の中の問題ならば報告もしましょう、立法手続もとりましょう。しかし、憲法の枠の中にとどまらない問題は報告できないのでしょう。
○金丸国務大臣 先ほど来総理も述べておられるように、憲法の範疇の中だ。しかし、日本の憲法というものは、よその国にないような珍しい憲法であることは当然であります。そこに石橋さんもいろいろついてこられるわけでありますが、私は、この日本の憲法に沿って、あくまでもいわゆる範疇の外は研究しない、こういうことであります。
○石橋(政)委員 あなたがそこで幾ら力んでもユニホームの諸君には通じないんじゃないですかという、そういう立場から私はお尋ねしているんです。(金丸国務大臣「委員長」と呼ぶ)いいです。まだ。ちょっと待ちなさい。 あなた方は、一方において憲法を無視して軍隊をつくっており、これの増強に努めながら、一方では憲法の範囲内などと言って抑えつけるようなことばかり言っているんですよ。もう根本的に矛盾しているわけなんだ。これはどういうことになるかというと、あなた方の論法でいくと、日本の憲法は軍備の保有を認めておる。有事に対して軍事力によって防衛を図るということも認めている。しかし非常に守りにくいように、防衛しにくいようにいろいろな制約を加えている。こんなつじつまの合わないことになってしまうのですよ。こんなばかな話がありますか。軍事力によって防衛を図ると言っておきながら、あれもだめ、これもだめ、わざわざ守れないように守れないようにしておりますという説明をしなければならぬ。こんなばかばかしい話で彼らが納得するものですかと私言っているのです。こんなことを繰り返していると、本来ならば、その有事に備えることを第一の目的とするはずの自衛隊の第一の目的が憲法改正ということになるんですよ。冒頭に申し上げたこのクーデター映画の中で私が見たのですけれども、首謀者がクライマックスで演説するわけですが、何のためにクーデターをやったか。彼らの主張も憲法改正なんです。そうならざるを得ないんじゃないですか、こんなばかなこと言っておれば。本来有事に備えるべきものの自衛隊の一番の目標が憲法改正、そのためには時として手段も選ばぬなんということになりかねない。そこまで突き詰めて考えないで何がシビリアンコントロールですかと私は申し上げているんです。これは防衛庁長官答えたいでしょうけれども、あなたの出る幕じゃありません。総理大臣。
○福田内閣総理大臣 るる石橋さんの御意見を承りましたが、憲法改正せいという御所見をまじえての御意見でしょうか、というような感じがしてならないくらいであります。(発言する者あり)私は、まさかそういうようなことを言っておられるのだとは思いません。思いませんが、とにかくわが国は憲法を遵守してやっていかなければならぬ。どこの国でもそうだと思うのです。憲法のもとにおいてできる限りの自衛力を発揮いたしたい、この一語に尽きるわけであります。
○石橋(政)委員 私は冒頭に申し上げたつもりです。できるだけ平行線にならないように実のある討議にしたいと。そのためにはどうしたらいいか。私どもは、自衛隊というものは違憲の存在として認めておらぬ。しかしそれではかみ合わないから、一歩譲ります。これだけ謙虚な態度をとっているのに何という言い方ですか。そうしておいて、私たちが自分たちの基本的な主張を踏まえて質問をすれば、抽象論だ。実のある質問をしようと思えば何という態度ですか。まじめにやりなさいよ。 私が言っているのは、いまの憲法を無視して自衛隊というものをつくっているから、あなたたちは矛盾撞着に陥っている、こういうことを指摘しているんです。その中で有事法体系の整備なんて言えば三つのケースしかない。あなたたちは一をねらう、できなければ二でいく、ユニホームは一も二もだめなら三でいく、そう考えているのじゃないか。そうしかやりようがないです。有事というものを想定すればそのケースしかない。あるなら答えてごらんなさいよ。有事なんというものをつくらなければ、私たちの、社会党の主張、立場ですよ、一番いいのだ。あなたたちは、有事があると言うのだ。あって、それを軍事力によって対応すると言うのだ。まじめにやってもらいたい。 私は、栗栖さんの言う奇襲というケースを前提にして法の不備をついてきたわけですが、今度はほかの面から率直に言ってちょっと疑問を持ちましたからお伺いします。 安保条約をつき詰めて実行していくということになると、同じような疑問にぶち当たるわけなんですよ。それはどういうことかといいますと、安保条約第五条によれば、わが国に対して武力攻撃が行われたときには、日米両国は自国の憲法上の規定及び手続に従ってそれぞれの行動をとることになっているわけですね。この場合は事前協議の対象にはならない。それぞれがそれぞれの憲法上の規定及び手続に従って行動を起こす。したがって、日本の場合は自衛隊法第七十六条の適用を受ける、憲法には規定がありませんから。これが従来の政府の統一した見解だと思いますが、まず念を押します。いかがですか。
○中島政府委員 安保条約第五条は、ただいま先生がおっしゃられましたように「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」こうなっております。ここで言いますところの「憲法上の規定及び手続」の中に自衛隊法が直接入っていることは形式的にはないわけでございますけれども、他方、自衛隊法という国内法に従って自衛隊が行動することは安保条約によって排除されておらないということが、安保条約の国会以来の政府側の説明でございます。したがいまして、自衛隊が行動する場合にはこの自衛隊法の第七十六条の手続に従って行動を行う、こういうことになるわけでございます。
○石橋(政)委員 要するに私の言ったとおりだということでしょう。わかりやすく言えばいいものを、わかりやすく言っているのにわかりにくく言いかえる、そうなんでしょう。みんなにわかってもらわなければいけませんから、私の言ったとおりなんでしょう。
○中島政府委員 実態的に申し上げれば、自衛隊は自衛隊法第七十六条の手続に従って行動を開始する、こういうことでございます。
○石橋(政)委員 それで、私はそういう面からちょっと疑問を感じたのですよ。どういうことかというと、日本の領域内にある米軍の基地が攻撃される、五条でこういう場合が含まれているわけですね、日本の施政下にある領域が攻撃される、この場合の規定ですから。日本は個別的な自衛権を発動していまの七十六条の手続をとる、アメリカの方は直ちに反撃に出る、こういう場合が想定されるのです。その場合、アメリカは直ちに反撃に出る、日本は、日本の領域が攻撃されているにもかかわらず待っておかなければいかぬ。防衛庁長官の話だと、二、三時間かかるかもしれぬ。そんなことが実際問題として可能なのか、私はそういう疑問にぶつかったのです。栗栖さんは奇襲というものから言ったけれども、私は安保条約から言っておる。これはおかしいのじゃないか。米軍はすぐに反撃に出るが、日本は手続を経るまでちょっと待っておこう、そんなことが現実の問題として可能なんだろうかという疑問にぶつかったのですが、いかがですか。
○伊藤(圭)政府委員 自衛隊は総理大臣の防衛出動下令がされましてから武力行使をするわけでございます。いま先生は、アメリカは直ちにということでございますけれども、その直ちにというのは、実態的に言うと、自衛隊に防衛出動が下令されないようなときには、あるのか、ないのかわかりませんけれども、実態の面からしますと、日本の国内にあります基地で実力を持っている部隊というのは現在沖繩しかないわけでございます。したがいまして、本土におきまして実態的に反撃するといいましても、それは行われないというふうに思っているわけでございます。
○石橋(政)委員 栗栖さんが奇襲というもので問題を投げかけてきたのです。私は、安保条約の履行という面で同じような疑問を持ったのです。違わないですよ。栗栖さんの場合だって、あなた方、万が一にはあり得るかもしれぬと言っているのでしょう。あらゆる事態を想定しなければいかぬじゃないですか。 いま沖繩に実戦行動に移れる米軍の部隊がある。その部隊に対して攻撃があった、米軍の基地に対して。米軍は直ちに反撃に出るでしょう。日本は日本の領土がやられたのだけれども、七十六条の手続、栗栖さんが指摘したと同じような問題がそこで出てくるわけです。その手続が終わるまでちょっと待っておる、手をこまねいて見ておる、そんなことが現実の問題として可能ですかという問題が出てくるでしょう。出てこないですか。出てこないならばどうすると答えてください。七十六条関係ない、アメリカと一緒に立ち上がってやる、そういうことになりますか。憲法の枠内である限りできないでしょう。明快に答えてください、私にわかるように、国民にわかるように。
○福田内閣総理大臣 御想定の場合といえども、これは憲法の許す範囲においてのみ自衛隊は行動いたします。
○石橋(政)委員 現実の問題としてそんなことができるのですか。日本には憲法上、集団自衛権というものは認められてない。だから、安保条約も無理して、集団自衛権の発動というふうに言われないように慎重な配慮をあなたたちなりにしているわけです。どういう点で配慮しているかというと、日本の施政下にある領域に対して攻撃された場合という形でですね。日本の領土の中に米軍の基地があるから、その米軍の基地が攻撃されたときは、日本自体に対する攻撃だから、アメリカに対する攻撃と受け取らないで、日本に対する攻撃だから武力攻撃に対処する、こういう規定をつくり上げたわけです。無理やりに。これは本来は、実質的には集団自衛権ですよ。攻撃した方も、本来はアメリカをやっつけるつもりだったかもしれない。しかし、日本の領土の中にあるアメリカの基地をやっつけてきたから、それは日本に対する攻撃になる、個別的自衛権と、こういう解釈なんだ。そのときは、おれは知らぬ、まだ手続終わらぬから、アメリカだけでやっておいてくれ、沖繩が攻撃されたけれども、アメリカだけでやっておいてくれで済みますかと言うのです。総理は済みますといま言う、説得力あるかどうかは別として。済みますと言うならば、その場合に、国会承認だとかなんだといろいろ枠をつくっているけれども、ノーと言うような決意ができますか。アメリカに任しておけ、米軍の基地がやられたのだから、おれは知らぬというような、そういう意思を働かすことができますか。選択の余地がありますか。常識的にはないのじゃないですか。そうすると、その面からも七十六条というのは形骸化されるのじゃないですか、条文としてあっても。自動的に承認するほかに選択の方法はない、そういうことになるのじゃないかという疑問を呈しているのです。どうなんです。
○福田内閣総理大臣 自衛隊は国土防衛のために全力を投入しなければなりませんけれども、その行動の範囲は憲法の範囲内である、これは明快に申し上げます。
○石橋(政)委員 明快に申し上げていただいて結構ですけれども、いまの場合どうするのですか、具体的に答えて下さい。
○伊藤(圭)政府委員 米軍に提供しております基地といえども、これは日本の領土でございます。したがいまして、日本の領土に対するそういった急迫不正の侵害があったということは、やはり日本にとってもこれは非常に危機の状態でございますから、私どもといたしましては、その事態がいろいろな場合があると思いますけれども、そういう場合にはまさに防衛出動が下令されるような事態であるというふうに考えているわけでございます。
○石橋(政)委員 国会の承認が必要だという大枠をかちっとはめてシビリアンコントロールの柱にしているのは何のためです。国会の意思が出動を認めるか認めないか、選択の余地があって初めて生きる条文ですよ。その場合に、認めないという可能性が多少なりとも残されているのは実質的な集団自衛権の発動に当たる、こういうケースの場合じゃないですか。日本自体に対して攻撃が加えられた場合にはほとんど承認ということになるでしょう。結果的には日本の領域に対する攻撃になったにしても、敵のねらいは米軍であった、米軍の基地であった。この場合が一番選択の余地が残るのです。ところが、その選択の余地の残るケースについては自動的に承認以外にないというのじゃ形骸化じゃないですか。何のための七十六条ですか。こういう問題提起をしているのですよ。そうお思いになりませんか。疑問を持ちませんか。私は、たまたまこの栗栖提案によって、ほかの視点からやはり疑問を持ったのですよ。こういう点についてもやはり問題があるんじゃないですか、研究するということになると。いかがです。
○伊藤(圭)政府委員 自動的にとは私どもは考えていないわけでございますが、御承知のように、米軍の基地というものは周辺住民とほとんど近傍にあるわけでございますから、そういった場合は、当然のことながら日本の領土であり、また、日本の国民に対しても大変な急迫不正の侵害というふうに考えられるのではないかというふうに思っております。
○石橋(政)委員 せっかく総理が答えようとしているのですから、総理に答えさしてください。
○福田内閣総理大臣 非常に事態が急迫しているという際におきましては、これは事後承認ということも自衛隊法上認められておる、こういうことでありますので、あるいはそういう措置をとらなければならないということも考えられる、このように考えます。
○石橋(政)委員 それは栗栖提案に対する対応と同じですよ。栗栖提案の場合も、基本的には事後承認ということもあるし、おそれのある場合というケースもあるし、何とか対応できる、しかし奇襲対処については法的側面を含めて慎重に検討することとしたい、そういう結論を出しているんですよ。同じじゃないですか。これは完全に答えられないじゃないですか、そういうケースについては。全然検討の必要ありませんか。
○金丸国務大臣 私は、奇襲の問題につきましては絶対にないようにすることが政治で、万々と言うけれども、全くないんじゃないかという考え方の中で、もし万があるならばひとつそれだけは研究はしてみようということですが、絶対ない、そうすることがシビリアンコントロールを確保することだとも私は考えておるわけでございます。
○石橋(政)委員 奇襲どころか、侵略なんか絶対ないようにするのが政治家の務めです。日本社会党は結局、外交を中心とする非軍事的な措置でそういう事態をつくっていこうというのが私たちの主張なんです。こういうふうに追い詰められていくとあなた方もそれを認めることになるというのですね。有事もないようとしようというのが社会党の主張なんです。その正しさをお認めになるならいいですよ。あなたたちは認めないんだ。万が一、万が一と言うんだ。ところが、万が一こういうケースがあったらどうすると言うと、私たちと同じところに逃げ込んでくる。そんなことじゃ説得力はございませんよ。 きょうは、軍事問題は私が皮切りですから、これから討議を深めていただくことにして、最後に、ちょっと外交問題に入っておきたいと思います。 総理は、このごろしきりに全方位外交という言葉を使うのですけれども、おやめになったらいいんじゃないですか。これほど実態と異なる発言はございませんよ。私が言うだけじゃない。国防会議の事務局長も「国防」の十月号に論文を書いていますが、その中で指摘していますよ。「これが福田首相のいう全方位外交というものであろうが、この言葉も必ずしも実態を表す適当な表現とは思えない。」彼も言っています。私もそう思います。少し質問でもされるとつけ加えるのですね、日米安保条約を基軸にするんだと。日米安保条約を基軸にして全方位外交なんてあり得ないのですよ、そんなものは。 それに現実の問題としても、あなたが全方位外交と言うならば一つまだ忘れておりませんかと私言いたいのです。どこの国とも仲よくする、近隣の国々と特に仲よくしなければならぬ。朝鮮民主主義人民共和国とはいまだに国交を持とうとしないじゃないですか。全方位外交というものが本物だというならば、まずそういうかきねを取っ払ったらどうです。せめてつき合いだけは全部持つ、そういう態勢をおとりになったらいかがですか。それができないのはなぜです。安保条約があるからじゃないですか。韓国条項があるからじゃないですか。何が全方位外交です。日米安保条約を軸にして全方位外交なんてない。何よりの証拠が朝鮮民主主義人民共和国との国交を持とうとしない。そうじゃないのですか。
○福田内閣総理大臣 私が全方位平和外交と申しておりますのは、わが国はもう軍事大国にはならぬ、平和国家で行こう、こういう選択をしたわけです。そうしますと、世界じゅうのどの国ともこれは平和友好の関係を結ばなければならぬ、このように思うのでありまして、そのことを私は言っておるのです。全方位等距離外交とは言っておりません。相手国とわが国との間にはいろいろ国交関係の態様の違いがあります。その態様の違いがありますけれども、善隣友好、平和友好、この精神においては違いがあるところがあってはならない、わが国はどの国をも敵視せず、友好平和の関係を保つことを心がけなければならぬ、こういうことを言っているのです。ですから、日中平和友好条約が結ばれた、それでアメリカだ、あるいはソビエト連邦だということを敵視するというような、そういう考え方は全然ありません。あるいは朝鮮民主主義人民共和国、これに対しましても、韓国とわが国が基本条約を締結しているという関係がある、そういう関係から平和条約を締結しておりませんけれども、しかし、民間のレベルにおきまして平和友好のつき合いをするという考え方を持っておるのでありまして、この平和友好の精神というものはこれらの国と他の国と何ら異なるところはない、このように考えておるのです一これで御理解を願えるのじゃないかと思います。私は、全方位平和外交という言葉は撤回せい、こういうような御所見ですが、これを撤回する所存はありません。
○石橋(政)委員 羊頭狗肉の典型だと言っているのですよ。おこがましい、全方位外交などという言葉を軽々使うということは。私が言っているのはそういうことです。現実に朝鮮民主主義人民共和国とは国交も持とうとしないじゃないですか。なぜだ、日米安保条約というものがあり、韓国条項があるからじゃないですか。日米安保条約というのは、朝鮮との関係で言うならばいわば障害になっているのです。それなのに、矛盾したことを平気でつなぎ合わせて、日米安保条約を基軸として全方位外交を展開しております。こんなインチキをおっしゃいますなと私は言っているのですよ。そうじゃない、朝鮮民主主義人民共和国と国交を持たないのはほかの理由があると言うのですか。あるならおっしゃってください。
○福田内閣総理大臣 不幸にして韓国は南北に二分をされておる。その南に対しまして中国、ソビエト連邦、これらは国交を持っておらないのです。そういう際に、わが国が北と関係を持つということはかえって南北の関係を乱す、こういうふうに考えますので、私はもう少し国際環境の成熟するのを待たなければこの問題は解決しない、こういう見解です。
○石橋(政)委員 その議論がちょっとおかしくなってきているのですよ。というのは、日中平和友好条約の締結というのがあるからです。あなた方は中国に対してもその論法をいままで使ってきたのです。台湾との間、問題があるから中国を承認するわけにいかぬ、国交を持つわけにいかぬと言ってきたけれども、やめたじゃないですか。あなたたちは明確に、台湾は中華人民共和国の領土の不可分の一部である、そういうことを認めて、中国を一つと見て、台湾問題は中国の内政問題として認めて国交を回復し、平和友好条約の締結に一歩前進したじゃないですか。同じことをなぜ朝鮮でやれないのです。中国に対して言ってきたことと同じ理屈をまたいまおっしゃるのですよ。向こう側に問題があるのじゃない。日本が、朝鮮の内政問題だ、平和的に自主的に統一してもらいたい、妨害しない、一つのものだという前提を中国と同じように認めれば進めるじゃないですか。踏み込めるじゃないですか。少なくとも全方位外交が形の上だけでも完成するじゃないですか。理論的に崩壊しているから私言っているのですよ。中国に対しては、われわれが言ったとおりやったんだ。なぜ朝鮮にやれないか。全方位外交と言うならやりなさい。本腰を上げておるわけです。 さっぱり自主性がないということがここにもあらわれるのですよ。いかにも、日中の国交回復も平和友好条約の締結も、自主外交の展開のごとく装っているけれども、実際はアメリカ次第じゃないですか。アメリカが認めればやる、認めない分には踏み込めない、これが本音でしょう。こんな自主性のない態度で何が全方位外交かと私は申し上げているのです。
○福田内閣総理大臣 日中平和友好条約をアメリカの示唆のもとにわが国が踏ん切りをつけた、こういうような御所見ですが、これは大変な間違いですから、ひとつ御訂正を願いたい。私どもはこれは全く自主的な判断で決定しておる、このことをひとつしかと御理解願いたいと思います。
○石橋(政)委員 あなたがアメリカから帰ってきて、外務大臣なんかも盛んに言ったじゃないですか。アメリカがやれやれと言った、歓迎している、それを鬼の首でも取ったような材料に使って党内をまとめたのじゃないのですか。取り消す意思はございません。 現に、私はここで問題にしたいのは、金丸長官の日韓台三国の運命共同体論です。私は日中平和友好条約の締結交渉のさなかにこういう発言をしたので交渉に迷惑をかけるからと言って取り消した。取り消したで済む問題じゃないですよ。長官の本音なんだから、これは。本音というのは取り消して消えてなくなるものじゃない。あなた、これは初めて言ったわけでも何でもない。前にも言って、指摘されて取り消したこともある。私は、内閣委員会のあなたのこの釈明を聞きました。この中で新しい疑問にぶつかったのです。 アメリカのブラウン長官が、台湾の問題については同盟国との約束は絶対守ると言った、それがきっかけだと言うのです。矛盾を感じませんか。アメリカが、アメリカと台湾との援助条約の義務を必ず守ると言ったという、その前提で一体どうしようというのだろう。日中平和友好条約第一条で確認している平和五原則とこのことは明らかに矛盾するのじゃないですか。まずお伺いしますけれども、これは間違いありませんか。
○金丸国務大臣 アメリカへ参りましてブラウン長官に会って、米中正常化というものはどんな状況になっているのだというお話を承りました。それとあわせて、ブラウン長官から、いわゆるアジアの同盟国とのコミットメントは絶対守るという中で台湾の話もあったということであります。 ただ私は、運命共同体というお話を申し上げましたのは、すぐ、講演の終わった直後取り消したのですが、その取り消した理由は、いわゆる中国と台湾の関係は一つだという、こういう考え方。ただ、私の考え方の中には、いわゆる台湾はわが国にとって防衛上重要な地域であるという考え方から運命共同体だという言葉が出たわけでありますが、先ほど石橋先生からもお話がありましたように、日中国交正常化のために園田外務大臣が向こうへ行っておられるというような状況の中でもあり、あるいはこれを思いあわせまして取り消した、こういうことで御理解をいただきたい。
○石橋(政)委員 取り消しても問題を含んでいるのですよ。 具体的にお聞きしましょう。台湾条項というものがある。肝心のアメリカは米華相互援助条約の義務を果たすと言う。これは安保条約の第六条の発動の対象になるということです。だから、台湾地域の安全のために米軍が日本から出動するという可能性があるということです。その場合は事前協議というものがある。その場合にはもう一切ノーと言えるのですか、日本は。もうイエスは絶対ない。アメリカは義務を果たすつもりかもしらぬが、日本はもう関係ない、中国と約束したのだから、日本の基地から台湾地域に出ていくと言ったってそれはお断り、事前協議でもオールノーである、そうおっしゃるのですか。それならば、あなたの取り消しも名実ともに意味をなします。いかがです。
○中野委員長 時間がないから――だれが答弁するの。
○大森政府委員 ただいま御指摘の台湾条項についてでございますが、これは一九六九年当時の両国首脳の台湾地域の情勢に対する認識を述べたものでございますが、その後情勢は大きな変化を遂げており、すでに従来から繰り返し申し上げておりますように、この地域をめぐります武力紛争が現実に発生するという可能性は非常になくなったというふうに私どもとしては確信しているところでございます。そういう背景に照らしまして、このような認識が変化したというのが従来からの政府側の見解でございます。 なお、先ほど御指摘になりました、いわゆる事前協議という問題でございますが、この事前協議というものに対する政府の対応は、あくまでわが国の国益というものを踏まえてその態度を決定するものでございますが、従来国会で明らかにしておりますように、この安保条約の運用につきましては、わが国といたしましては日中両国間の友好関係を念頭に置いて慎重に配慮する、これが政府の従来からの一貫した立場でございます。
○石橋(政)委員 一言でいいのですよ、明快に答えてくださいよ。絶対に出動を認めることはない、台湾地域に。はっきり言ったらどうです。それはもうお役人の問題じゃないです。大臣答えなさい。
○金丸国務大臣 その問題につきましては、私の答弁する守備範囲ではないと思います。
○石橋(政)委員 守備範囲の方でどうぞ、総理。
○福田内閣総理大臣 ただいまの御指摘の問題につきましては、慎重に配慮いたします。
○石橋(政)委員 それじゃ後で引き続いてやってもらいます。
○中野委員長 これにて石橋君の質疑は終了いたしました。 次に、正木良明君。
○正木委員 私は、公明党・国民会議を代表して質問をいたします。 まず最初に、今回締結されました日中平和友好条約に関して質問をいたしたいと思います。 日中平和友好条約は、日中共同声明、日中国交正常化以来その締結が非常に難航いたしておりましたが、今回両国首脳の間に合意ができまして条約が締結されたことを私は心から喜ぶものでありますし、これに対して福田総理が熟慮の上決断をされ、また園田外務大臣がこの条約交渉に当たって多大の努力を払われましたこと、さらには、日中平和友好条約締結に至るまで多くの先達の御苦心がありましたことについて、私はそれに感謝申し上げますとともに、それを大きく評価したいと考えております。 さて、わが公明党も、数次にわたる代表団を送りまして、日中国交正常化のため、また条約締結のためにいささかの微力を傾けたと思っておりますし、その内容については相当詳しく存じておりますので、この条約の内容について質問するのはいかがかと思いましたけれども、しかし、この重要な条約がどういう内容であったかということ、それに対する政府の見解というものがどうであるかということは、やはり後代に残しておかなければならないものであろうと思いますので、そういう意味から二、三の問題点について御質問を申し上げたいと思います。 まず最初に、日中平和友好条約が締結されまして、それについてはさまざまな受け取り方がされているわけであります。素直に喜ぶ者、さらには、日米中のソ連包囲網の完成であるとか、いろいろの問題があるわけでございますが、政府はこれに対して、いわゆるこの条約が国際的にまた国際政治に与える影響というものについてどのようにお考えになっておるか、簡潔にお願いをいたしたいと思います。
○園田国務大臣 この条約は、長期にわたる日中間の友好を規定したばかりでなくて、それに基づいてアジアの平和と繁栄、ひいては世界の平和に貢献するという意義を持った条約である、このように考えております。
○正木委員 政府の認識はよくわかります。私もそうでなければならぬと思います。問題は、条約が締結されたことについても大きな意義があると思いますが、しかし、実は、この条約の中で日中双方が誓い合いました内容が、今後どのように実行されていくか、どの方向をたどっていくかということについては、締結された意義以上に重要な意味があると私は思うのであります。 そこで、順次具体的にお尋ねをいたしますが、日中が双方覇権を求めず、このような誓いをいたしましたが、これは日中双方が不可侵の誓いをしたのであるというふうに、ないしは言葉をかえますと不可侵条約的な内容さえもこの意味の中には含まれているのかどうか、お願いします。
○園田国務大臣 御発言のとおりでありまして、この条約の第一条第一項においては、他の原則と並んで、相互不可侵の原則に基づいて両国間の恒久的な平和友好関係を発展させることを約束をしております。また、第一条第二項において、両国は相互の関係においてすべての紛争を平和的手段により解決し、武力に訴えないことを確認しております。したがって、当然のことながら、この条約により日中両国は相互に覇権を行使しない、お互いに侵さないということになっております。なおまた、会談の経過におきましても、この点は相互で相当深く相互理解をいたしております。
○正木委員 条約の第二条では「両締約国は、そのいずれも、アジア・太平洋地域においても又は他のいずれの地域においても覇権を求めるべきではなく、また、このような覇権を確立しようとする他のいかなる国又は国の集団による試みにも反対することを表明する。」とあります。 そこで、非常に重要な問題になってくるわけでありますが、この反覇権条項というのは実態的な想定をしたのか、それとも精神的な規定であるのかということであります。いわゆるこの覇権に対して反対するということは、何らかの行動を義務づけるのかどうか、日中それぞれ単独でないしは双方でというような性格を持つものかどうかということであります。
○園田国務大臣 この内容から言ってもそうでありますが、交渉の過程で特に両方で理解し合ったことは、まず、アジアの諸国に対する中国の将来、そして日本の将来、ともに不安を与えない、これの実行をやるということを相当深く突っ込んで話しておるわけでございますが、この文章から申しますとおり、これには、覇権に対しては反対をする、ただし、その覇権に反対する立場はそれぞれの立場で反対をする、なお、それぞれの外交基本方針を拘束するものではない、こういうことを書いてありますから、覇権に対する共同行動または協議ということは一切規定されていないばかりでなく、これは明確に主張して帰ってまいりました。
○正木委員 そのとおりだろうと思います。本年の三月十四日に、公明党が矢野書記長を団長とする第六次訪中団を派遣いたしまして、その際、総理から中国側への伝言を忠実かつ客観的にお伝えしてまいりましたが、それに対して中国側が、廖承志全人代常務副委員長を通じて、中国政府の見解として四項目が示された中に「中日両国が覇権に反対することは両国政府が共同行動をとるといったようなことを意味するものではない。中日両国はそれぞれ独自の外交政策を持っている。双方とも相手の内政を干渉するものではない。」というものがございますから、これに適合するものであろうというふうに了解をいたします。 しかし、今後、共同行動はとらないというふうに、また、それぞれの国の立場というものを尊重するということになっておりますけれども、実際問題として、日本ないしは中国に対して第三国の覇権の行為があった、ないしはそのおそれがあるというときに、それぞれの立場で判断するということは当然でありましょうけれども、しかし、第三国が他の第三国に対して覇権行動を起こしておるというような場合があったとしたときに、日本としてはどのような覇権に反対する態度というものを示すのか。たとえば、それを抗議するための言明を行うとか貿易関係を遮断するとか、いろいろな方法があるでしょうが、日中以外の国の覇権行動に対してはどのような判断をもってするかということ、これはその場合になってみなければわからぬということになると思いますけれども、基本的なお考えをお聞きしておきたいと思います。
○園田国務大臣 まず、第三国の覇権行為を覇権行為と断定する場合でありますが、この場合は、両国が協議をして断定するのではなくて、それぞれの立場で、中国は中国で覇権と思うし、日本は日本の立場から覇権と判断をする。なお、第三国が第三国に対する行為、これは、当然社会通念に従い、日本が持っている平和的手段、特に国連を中心にしてこの覇権に対する抵抗をやるという考えであります。
○正木委員 それでは、条約の問題は私の方の専門家がまた外務委員会等で質問をいたしたいと思いますので、この程度にしたいと思います。 さて、これからの日中関係の展望の中において、日中の経済関係が非常に重要なものになってくるでありましょう。このことについて主として通産大臣にお尋ねをしたいと思います。 現在、中国は、四つの近代化、現地では現代化と呼んでおりますが、農業、工業、国防、科学技術の四つの近代化を国是として、それを推進しようといたしておるわけでございます。私は、やはり中国に対しては、日本が可能な限り、協力できる範囲においてそれに協力すべきであろうと考えているわけでありますが、特に日中共同声明の中において中国が日本に対する賠償請求権を放棄したということもございまして、それにはそれなりのこたえ方をしなければならないのではないかと考えております。そういう意味から、さきに日中長期貿易協定が締結されましたが、これをさらに進展させたい、協定の延長であるとか貿易量の拡大であるとかということを要望いたしておるようでございますが、通産大臣は、中国に行かれまして、この問題についてどのような内容で合意を得てこられたのかどうか、お聞きしたいと思います。
○河本国務大臣 ただいまお話しの日中長期貿易取り決めでありますが、これは八年間に片道百億ドル、合わせて二百億ドルの長期取り決め内容になっております。ところが、昨年来中国の国家建設計画が完全に軌道に乗りまして、わが国からこの長期協定に基づきまして中国に出ていく予定になっておりますプラント関係、技術関係、それから建設用の機材、資材、非常に順調に話し合いが進みまして、枠がいっぱいになるのもそう遠いことではない、こういう感じでございます。そこで、中国との間の経済関係を拡大するためには、どうしてもこの枠の拡大が必要であります。そのために、先般結ばれました貿易協定の六年目から八年目までの数字が未確定でありますので、これをできるだけ早く確定することと、それから、期間を八年を五年間延長いたしまして、一九八六年から一九九〇年まで、この五カ年を延長いたしまして、合計十三年にしよう、そのことを背景として貿易の枠の拡大を、飛躍的に増額をしていこうではないか、こういうことで基本的に合意をしたわけでありますが、さて、しからばこれをどのような順序で具体化をしていくかということにつきましては、先方と当方の専門家を交えましてできるだけ早く検討する、こういうことになっております。
○正木委員 この問題は、日中間においては双方とも非常に積極的な気持ちがございますから、合意しやすい問題であろうと私は思うのですが、ただ問題は、日中間の問題というのは、すぐ他の国へいろいろと影響が出てまいります。したがいまして、他国の誤解や懸念というものをできるだけ生ぜしめないようにしなければならない点が一つ。もう一つ重要なのは、先ほどの議論からも、平和国家に徹しようとする総理のお気持ちから言いましても、この中国との経済協力ないしは貿易関係というものが平和に徹したものでなければいかぬだろうと私は思うのです。問題は、先ほど申し上げましたように、四つの近代化の中には実は国防というのが入っておりまして、これに直接ストレートに働きかけるような形での援助や協力というのは、私はこれは絶対避けなければならぬ問題であろうと思います。そういう意味でこの二つの問題にお答えいただくと同時に、何か外務大臣がニューヨークで黄華外相とお会いになったときにこの問題が話し合われたというように聞いております。たとえば黄華外相が、日本だけではなくてアメリカやECからも近代化の協力を得たいと思っている、日中枢軸を極力避けたいとか、軍事力強化の協力はしないとか、こういうことを黄華外相との間でお話し合いがあったというふうに聞いておりますが、その点を確認したいわけです。
○園田国務大臣 これは、中国に参りましたときに、黄華外交部長並びに鄧小平副主席との会談の際に話した中で、二つの点がございます。それはいまの御発言のとおりでありまして、鄧小平副主席から正直に、中国の近代化に日本は援助をしてくれ、こういう話がありました。華国鋒主席からは、日本が助けるとなれば中国は助けてもらうから、こういう話でありましたが、いずれにいたしましても、軍の近代化は日本の憲法によってできない、したがって、それ以外のことはできるだけの協力はいたしたいと存じますと。 なお、その際、いま御発言のとおりに、中国の近代化というのは相当膨大であって、しかもスピードを急ぐ必要がある。そのためには排他的な経済協力であってはならぬので、日本と中国だけが話をしてはいかぬので、これは米国、ヨーロッパ、その他の国々からも積極的に協力されたがよかろう、こういうことで合意をいたしております。 ニューヨークでは、そういう特別な話はございませんでした。
○正木委員 わかりました。 次は、これは通産大臣になると思いますが、そうなりますと、やはりここで重要な問題になってくるのは、一つは、武器輸出禁止の三原則というものがどのように明確に守られていくかということ。 もう一つは、ココムの問題であります。これは影響するところが非常に大きいものでありますから、これをどのような方向で考えていこうとしているのか。 さらに、これは問題は変わってまいりますけれども、日中間において決済をどうするか、貿易の決済資金をどういうふうな形でやっていこうとしているか。 この三点についてひとつお話をいただきたいと思います。
○河本国務大臣 中国との貿易関係を拡大いたしますけれども、わが国の武器三原則、これはあくまで守っていくつもりでございます。 それから、ココムの問題につきましては、これは技術の進歩に応じ、あるいはまた国際情勢の変化に応じまして、毎年見直すことになっております。ことしもいま見直しの時期が来ておるわけでありますが、日本といたしましては、以上の二つの点から、できるだけ緩和をするような方向で努力をしていきたいと思っております。 それから、第三点は何でございましたか。(正木委員「決済」と呼ぶ)決済、金融問題につきましては、これはいま輸銀が中心になりまして最終の話し合いをしておりますが、プラントの延べ払い問題は当然起こってまいりますけれども、この延べ払い条件は、OECD、先進国の間で先般申し合わせをいたしました紳士協約がございますから、この協約はあくまで守っていくつもりでございます。
○正木委員 ココムの問題はまた別に申し上げます。 先に、いまの決済の問題でありますが、いまのお話は、輸銀の延べ払いについては、OECDのガイドラインから言うと、大体公的資金、要するに公的指示を受けた輸出信用に対しては、五年以内は七・二五%、五年を超すものについては七・五%という形があるようでございますが、中国側はどうも金利は六%にしてほしいということでありますから、これに差があるわけですね。それについて、いま通産大臣は、OECDのガイドラインに沿った形でやっていくんだというお話でございますけれども、これは中国との間での合意が得られるというふうにお考えになりますか。 さらに、これはドル建てで決済するのか、円建てで決済するのかということが非常に重要な問題になってくるだろうと思います。円高の問題がございますから、円高と言うより、むしろ円の変動相場制という問題がございますから、この辺の見通しはどうですか。
○河本国務大臣 あるいはこの問題のお答えは大蔵大臣からされる方が適当かと思いますが、従来のいきさつ等もございますから、私からかわって申し上げます。 このプラント輸出の延べ払いは、これはOECD間の申し合わせがありますから、この紳士協定はやはりあくまで守っていく必要があろうと思います。(正木委員「金利はまけられぬということですね」と呼ぶ)そうです。金利と条件、その他の条件は、申し合わせどおりの線でやる必要があろうと思います。 ただ、中国との経済協力を進めていきます場合に、石油の開発に協力をするという話も出ております。それから、石炭の開発に協力するという話も出ております。輸銀の制度といたしまして、日本が資源エネルギーの開発輸入をいたします場合には、六%をちょっと超えた条件で輸銀の資金を貸し付けることができることになっております。だから、これは延べ払いとは全然別個のわが国の資源エネルギーを確保するために貸し付ける制度がございますので、中国側にそれを利用されたらどうですかということもお勧めをしております。ただ、先方は、最近円の価格が急上昇したものですから、どうも円で金を借りることは非常に危険だ、そこでドルで借りる方法はないか、こういうことを言っておられます。もしドルで借りるということであれば、日本側が提示した条件は、これはもうそのままで大変結構だ、こういうことでありまして、いま、この通貨を何にするかということが非常に大きな課題になっておりますけれども、日本といたしましては、国内のいろいろな仕組みがあるものですから、この点を中心にいま輸銀が話し合っておられるというのが現状でございます。
○正木委員 原油、石炭の問題は後に回します。 先ほどの御答弁の中のココムの問題でございますが、どうも中国との間では、特に上海の宝山製鉄所のコンピューターの集中管理、これがいわゆる対共産圏輸出統制、ココムにひっかかるように聞いておりますし、いわゆるICの設備がココムにひっかかるように聞いております。 さらに、ココムには特認制度というのがあるようで、これからパリの委員会が開かれるようでございますけれども、ある意味においてはこのココムというのは東西冷戦構造の中から生まれてきたものでありますから、何らかの緩和措置というのは、やはり時代の趨勢によって手を加えていくべきではないか。そういう意味からいって、日本側が相当努力をしてやらなければこの問題は解決しないのではないかと思っておりますが、これの見通しについて、これは通産のあれになりますか。
○河本国務大臣 二つの案件につきまして、やはりココムの問題がございます。それで、この問題につきまして、国際情勢も変わっておりますし、技術も大きく進歩しておりますので、条件を外すようにいま交渉中でございます。
○正木委員 見通しはどうですか。わかりませんか。
○河本国務大臣 まだ交渉中でございますから、いま結論を申し上げる段階ではありませんが、何とかこれが外れるように実現をしたいと、いませっかく努力をしておるところでございます。
○正木委員 さて、この貿易量が拡大いたしてまいりますと、日本側はどうしてもやはり製品輸入というよりも素材輸入になるでありましょうから、石油というものが一つの大きなシェアを占めることになるのではないかと思いますが、この点は、御承知のように中国の石油は軽質油ではなくて重質油でございますから、これに対する精製の設備というものを相当今後日本がふやしていかないと、いわゆる採算がとれなくなってくるのではないか。大体、現在ないしは最初の長期貿易取り決めの最終年度であるところの一九八二年で千五百万トンぐらいでありますから、これは能力があるようでありますけれども、昭和六十年ごろには五千万トンというようなことも言われておるようでございますが、これに対して石油業界が新しい設備投資をしていかなければならぬという問題があるのです。これの見通し、ちょっと早過ぎるかもわかりませんけれども、もしおわかりになればおっしゃってください。
○河本国務大臣 中国との貿易関係が飛躍的に拡大できるかどうかは、石油取引が拡大できるかどうかにかかっておると思います。中国の油は重質油が多いわけでありますけれども、最近は世界全体が重質油の傾向になってきておりまして、有力なOPECの国々でも、従前は軽質油だけを売っておりましたが、最近は重質油と抱き合わせで買え、こういう要請が出ております。でありますから、これからは世界全体が重質油の傾向になる、このように理解しておく必要があろうと思います。 ところで、先ほどお示しの千五百万トンという数字は、昭和五十七年、一九八二年の数字でございますが、この段階までは現在の設備で対応できます。それ以降、双方でできるだけ大幅に数量をふやそう、こういう基本的な合意ができておりまして、これをどうして増量するかということでありますが、いまのところ、昨年の総合エネルギー調査会の中間報告では、相当思い切った節約をいたしましても、石油の需要は、一九八五年、昭和六十年にはおよそ四億三千万トン必要である。現在は二億九千万トンぐらいでありますから、約五割、一億四千万トンぐらい増量が必要である。節約に成功しなければもっと需要がふえるわけでありますけれども、いずれにいたしましても相当大量の増量になります。通産省といたしましては、相当大量に新しい設備が必要でありますが、その新しい設備の一部を重質油を処理できるような対応で進めていきたいと考えております。 そこで、ただいま重質油の懇談会をつくりまして、そこで抜本的に重質油問題をいろいろ研究をいたしております。最近はヨーロッパ、アメリカ等にも重質油の施設がたくさんありますので、この調査に専門家を派遣することにいたしております。十分研究をいたしまして、世界全体が重質油の傾向になるという、全体としての対応の中で中国の石油問題を解決していきたいと考えております。
○正木委員 このほか、先ほどお話のあった石油、石炭の開発の日中合作の問題がございますが、時間がありませんから、それはまた別な機会にお願いしたいと思います。 日中関係で文部大臣にちょっとお聞きしたいのですが、実は留学生を日本に受け入れてもらいたいという希望が非常に強いわけでございますが、この留学生を受け入れるにつきましても、ただ、いらっしゃい、いらっしゃいというわけにはいかない問題でありまして、この間にいろいろと大学の入学資格の問題ないしは留学生の受け入れの宿舎の問題、そのほか、これは法務省に関係するかもしれませんが、入国に関しての手続の問題がございまして、なかなかそう簡単にはいかないと思うのですが、文部省は、この中国の留学生を受け入れるということについて基本的にどのような方針で臨んでいられるか、お聞きしたいわけであります。
○砂田国務大臣 お答えいたします。 世界各国との学術交流、教育交流、非常に重要な意味を持っておりますし、特に中国と日本の教育、学術の交流の意味は十分承知をいたしておりますので、受け入れ体制の状況を勘案しながら積極的に交流の進展を図っていこう、そういう基本的な考えに立つことをまず申し上げておきたいと思います。 ただ、そこで問題なのは、日本と中国の間で、学校の制度でありますとか教育の水準でありますとか、そういういろいろな派遣受け入れの体制が、どうも情報がお互いに不十分なことでございます。幸いにいたしまして、明日、日本政府の招待で教育視察団が日本へ参りますので、この場で具体的な懇談が初めて始められると期待をしているものであります。 まず、留学生の問題につきましては、非常に重要な問題でありますけれども、中国の学制そのものが、まだ私ども明確に承知をしておりませんし、学部段階の留学生を送りたいと言っておられるのか、大学院段階を考えておられるのか、研究所等の若手研究員の留学を考えておられるのか、数もまた実は不明確でございます。これらの点は、四日には文部省との懇談が持てると思いますので、その両国の協議の席でこれらのことが明らかになってくるであろうと期待をいたしているところでございます。私どもがこの懇談、協議を持ちます前に準備いたしておりますのは、学部、大学院の留学につきましては、正規の学生として受け入れる場合――いま中国から留学生が二十七名来ておりますけれども、いずれもこれは聴講生あるいは研究生で、正規ではない。こういうことをあるいは希望されるかもしれませんから、その場合のことも検討しております。研究所等での若手研究員の受け入れのことについても、あるいは国費留学生、私費留学生、そのほかに中国の国の費用負担の留学生、こういう留学生の制度を日本としては受け入れの一つの柱としていままで持っておりませんから、全く新しいこととして、これをどう考えればいいか、このようなことを検討いたしておりますが、いずれにいたしましても、明日から始まりますその協議の席で双方意見が一致すれば、日中合同委員会というようなものを続けて持っていかないと具体的な詰めがむずかしいのではないだろうか、こういうことをわが方からも提案をしたいと考えております。 学術の交流につきましても、中国の学術研究体制に関する情報が大変私ども不足をいたしておりますので、外務大臣とも御相談いたしまして、学術振興会が窓口になって中国の各大学との接触を図って、中国の大学学長を十月下旬から十一月の上旬にかけて日本に招待をしたい、そして協議の場を持って学術交流の進展を図っていきたい、このように考えているわけでございます。 それから、入国の手続の問題でありますが、正木委員、恐らく指紋の問題を御指摘になったのだろうと思います。しかし、これは留学生と言わず中国だけに限ったことではありませんし、外国人登録法の問題でございますから、いずれの国の外国人も、日本に一年以上滞在いたしますときにはそういう手続がなされるように外国人登録法で定められておりますから、このことも明日から始まります協議の席で恐らく議題になろうかと思いますので、よく日本の法律のあり方、その趣旨とするところも説明をいたしまして理解を求めていきたい、協議の一つの事項に相なるであろうと考えております。 いまの入学資格のことがもう一つ御指摘がございましたが、大学または大学院の入学資格につきましては、やはり日本の場合と同じように、外国において十二年の学校教育の修了を要件とするというのが原則でございます。しかし、中国の学校制度そのものが六・二・三とも伝えられ、六・三・二とも伝えられ、明確でございませんので、これも協議の席で十分実情を把握をいたしまして、中国の留学生を正規の学部学生として受け入れるためには何らかの形で不足をするであろう修業年限の調整を図らなければなりません。これは日本語をマスターするための勉強期間も含めてのことでございます。大学院についても同じようなことがあるわけでございますので、留学生の受け入れ問題につきましては、実は明日からのお互いの協議が持てることを期待をしているところでございます。文部大臣自身が懇談をする機会を予算委員会の理事会でお与えいただきましたことをお礼を申し上げて、これを答弁にかえさせていただきたいと思います。
○正木委員 大体お考えになっていることはわかりましたが、入国手続の問題は簡単におっしゃいましたけれども、実は指紋だけではなくて、入国に際しての誓約書といいますか、あれがやはり大きな問題になるんじゃないかと思うわけです。要するに日本の国に入国するに関しては、その行動というものについて大きな拘束を受ける。それに対してそれを了解する誓約書なんですが、中国では、指紋というのは犯罪者だけで、指紋をとられるというのはどうも潔しとしない風潮があるように聞いております。 いずれにいたしましても、私は、こういう日本と外国との関係は、これは外交関係においては常に相互主義ということがやかましく言われるわけでありまして、向こうでやらないことはこっちもやらぬ、向こうでやることはこっちもやるという相互主義というもの、これは中国だけには限りませんけれども、こういう学術、教育の交流、文化の交流というような状況の中では、やはりそういう相互主義というものも取り入れてもいいのではないかというふうに考えておるわけでございます。そういう点で検討の余地があるのかどうか、これはむしろ外務大臣と法務大臣になるかと思います。
○園田国務大臣 中国から留学生を派遣したいということは、鄧小平副主席から直接私に話がございました。そり前にそういう情報もありましたから、文部大臣とよく詳細相談をして行ったわけでありますが、近代化のためにぜひ勉強にやりたい、英国には二千名やる、こういう話でありました。そこで、これは留学生の問題もさることながら、中国の近代化に日本で勉強した青年が従事するかどうかということは、将来の日中問題に非常に大きな影響があるわけでありますので、費用等の問題もありましたが、費用等の問題があれば自分の方で出してもいいという弾力的な話でございましたから、文部大臣ともよく相談をして、なるべく、向こうの御希望に沿えるようにやりたいと考えております。
○正木委員 入国手続の相互主義ということを聞きたかったのです。
○瀬戸山国務大臣 わが国に在留する外国人の入国手続でございますが、これは先ほど文部大臣からも御説明申し上げましたように、一年以上在留する者すべて指紋をとっておるわけでございます。これは正木さんも御承知だと思いますが、わが国の社会秩序の維持のためにやっておるわけでございまして、どこの国民であるからという差別は一切やっておりません。また、他の多くの諸外国でもやっておることでございまして、これは在留外国人の同一性を明確にする、このためにやっておることでございますから、その国の社会事情によって違うところもありますが、これは相互主義の関係には関係ないもの、私どもはかように考えておるわけでございます。
○正木委員 指紋、誓約書の問題についてはさらに検討をしていただきたいと思います。 ポスト日中の外交政策、他国に対する外交政策の問題を詳しくお聞きしたかったわけですが、ちょっと時間の配分がまずうございますので、主要な点だけを御質問をいたしたいと思います。 日中平和友好条約についてソ連が不快感を持っているということは、やはりどうしても無視できないことであろうと私は思うのです。そういう点で、日ソの関係を修復するということは今後の非常に重要な問題になってくると思いますが、私は、外交の上においては恫喝に屈服するということはあり得てはならないと思いますけれども、そのほかに関係を修復する点については十分な配慮をしていかなければならぬと思います。 これはどういう内容であったのか。私は新聞で承知をいたしました。しかも、その新聞は一紙だけでございましたのでよくわかりませんけれども、福田総理が中東諸国を歴訪されましたときに、向こうで、たしかイランでありましたか、日本の対ソ方針を説明された中に、日ソ長期経済協力協定というものを日ソ両国で進めていきたい、こういうふうなお話があったというふうに聞いております。 これは、かつてソ連が日ソ長期経済協力協定の締結を提案してきたときに、日本政府としては非常に消極的であったというふうに覚えておりますが、総理が提案――提案というよりもそういう考え方をあの中東でお述べになったのかどうか、なったとするならば、この前ソ連が提案してきたような内容のものを予想されているのかどうか、この点ひとつお答えいただきたいと思います。
○福田内閣総理大臣 ある一紙ですね。私という名前になっていましたか、政府筋ということになっていましたか、イラン側に話したというのじゃないのです。場所がたまたまイランだったというのです。福田総理だったか、福田総理周辺だったかが語る、こういう見出しでいま御指摘のような話が出ておりましたが、私は、そういう話を新聞社の人に対しましていたしましたことはございません。恐らく、私の周辺の人でもそういう人はないのじゃないかと思います。 この問題は日中経済協定と性格が違うのです。ソビエト連邦は、ある幾つかの国との間で、政府間で長期経済協定というものを締結しているわけです。そこで、諸外国と締結しておるような長期経済協定、日中間は民間協定でございます。政府間の長期協定を締結せられたい、こういう要請を前々からしておるのです。しかし、わが国といたしましては、政府間でどこの国とも長期貿易協定というものをいたしておりませんものですから、そこで、ソビエトの希望には応じかねる、こういう答弁をしてきておるわけでありますが、政府間で長期の貿易取り決めをするというのは、自由経済体制をとっておるわが国といたしますと大変問題があるわけでございます。そういうことで、この上とも慎重に対処していきたい、このように考えております。
○正木委員 そうすると、政府が助言しながら民間との間で、シベリア開発の問題であるとかサハリンの開発の問題であるとか、そういう問題を進めていくほかにはソ連との間での経済的な協力関係というものは新しく生まれてこないでありましょうし、そのことが日ソ関係の修復に関係があるとするならば、非常に重要な問題として取り上げていかなければならぬだろうと思うのですが、その点の今後の見通し、ないしは総理がお考えになっていらっしゃることがございましたら……。
○福田内閣総理大臣 日ソ関係修復修復というふうにお話しになられますが、私どもは別に修復というような考え方は持っておらないのです。つまり、日中条約は、もうとにかく共同声明が発せられてからおよそ六年かかりました。なぜかかったかというと、あの覇権条項をどういうふうに扱うか、この覇権条項を条約に取り入れた結果、アメリカだとかソビエト連邦でありますとか、いろいろな第三国に対して悪い影響があってはならぬ、そういうようなことで、日中平和友好条約ができても他の第三国に悪い影響を及ぼさないのだ、これを条約上明らかにする、こういうことを旨として日中間で交渉が進められておりましたものですから、それに手間取ったのですが、しかし、御承知のとおり、この問題は、覇権条項は取り入れられるけれども、しかし覇権条項を含め条約全体といたしまして、この両国のそれぞれとるところの外交政策には何ら影響するものではない、こういうことが明快に示されておりますので、日中平和友好条約ができたからといって、ソビエト連邦に対しまして何ら悪い影響を与えたものではない、こういうことを確信いたしております。でありますがゆえに、国交修復という、そういう考え方ではありません。が、ソビエトも大事な隣邦でございます。でありますので、ソビエトとの間、これは北方四島を返してもらって平和条約を結ぶという基本的な問題もありますが、貿易でありますとか、あるいは経済開発でありますとか、あるいは文化交流でありますとか、そういう面につきましては従来どおり前向きにこれを進めていく、こういうことを考えておるわけであります。 まあ、日ソ関係は日ソ関係といたしまして大事にしてまいりたい、このように考えております。
○正木委員 おっしゃることはよくわかります。それは日本側から言って主観的に修復すべき何物もないであろうということはよくわかりますが、やはり客観的に見ましてまずくなっていくことはまずくなっていくだろうと思うので、そういう言葉を使いましたが、これは大いに意を用いてもらわなければならぬだろうと思いますので、よろしくお願いします。 それから日ソ関係の問題、幾つかございますが、これもまた、別の人にお譲りしましょう。 特に、他の発展途上国との間、いわゆる南北問題、この問題についてやはり日本が一定の役割りを果たしていかなければならぬ責任はあるだろうと私は思います。そういう意味で、ボンの先進国首脳会談で対外援助、政府ベースのものを三年間に倍増させるという約束をしてこられましたけれども、これは総理、国連あたりからも相当勧告がございますけれども、日本の政府ベースの援助というのは、GNPの比率においては非常に低いわけでありますけれども、これは金額で倍増しようとされているのか、それともそのGNPに占める割合を倍増していこうとお考えになっているのか、どちらでございますか。
○福田内閣総理大臣 それは金額でございます。
○正木委員 金額で言いますと、そんなに率は伸びてこないだろうと思うのですね。ことしは七%程度の実質成長で、名目成長が一二%程度ということなっておりますが、これが来年も再来年も続くのかどうか、私は定かではございませんけれども、仮に年率一〇%で名目成長を遂げたといたしまして、仮に金額を倍増いたしましたとしても、恐らくGNPに占める割合というのはそう高くはならない、そういう計算になるのですけれどもね。やはりどうしてもGNP、これは即その国の国力、国の力というふうに判断されているわけですから、その中の何%を援助に回すかどうかということで議論されるでありましょうから、金額だけが倍増してもその率が上がらなければ、やはり先ほどの石橋さんの質問の中でも、結局奇襲もなければ有事もないという時代をつくっていくために、そういう状況をつくるためには、日本が果たしていかなければならない総合安全保障対策の一環としての政策、私は対外援助というものが非常に大きな役割りを果たすと思いますが、率が上がらないということになってまいりますと、それは実際問題として世界の好意の目で迎えられないのではないだろうか、このように思うのです。ボンの約束は約束として、方針としてGNPに占める割合を伸ばしていこうというお考えがあるかどううか、どの程度を目標となさっておるのかということをお聞かせ願えればと思います。
○福田内閣総理大臣 先進工業国の平均水準、これを目指して逐次そこへ近づけていきたい、こういうふうに考えておるのですが、何せ、わが国の対外経済協力の現況は、GNP計算でいきますとまだ非常に低いのです。そういうことで、なかなかGNP水準を一挙に先進国水準というようなわけにまいりませんけれども、いままでとにかく五年で倍増という速度で対外経済協力を進めてきた、今度はそれを三年で倍増、こういうことにしたわけです。 しかし、その結果、一方においてはGNPも日本は世界最高で伸びていくわけですから、対GNP比率が下がるのだというようなことではもうならぬわけでありますから、財政の都合もありましてそう一挙にはまいりませんけれども、逐次この対GNP比率も改善していく。一方、国際社会で公約した三年倍増、これは確実にやっていく、こういう方針でやってみたいと思います。
○正木委員 そうすると、GNPに占める比率を世界水準まで持っていくためには努力はしていく、とりあえずは金額で三年間に倍増しよう、こういうことですね。これはやはり財政的な理由もありましょうけれども、一方ではドル減らしという一つの大きな問題も解決できることでもありますし、これはひとつ鋭意努力をしていただきたいと思います。 さて、経済問題に入る前に、非常に社会問題化いたしておりますサラ金問題についてちょっと先にお尋ねいたしておきます。 これは多くのことを申し上げますよりも、もうすでに新聞等の報道で、また世間が非常にこのことで騒がしくなっている、連日このことで記事が出ない日はないというぐらいに、このサラリーローンという問題については大きな問題になってきておるわけです。それは借りる方が悪いんだと言ってしまえばそういうこともあり得るかもわかりませんけれども、実際問題としてかわいそうだと私は思いますね。中には悪らつな形で、当然そういう報いを受けるんだという人もあるかもわかりませんけれども、多くの人たちは、やはり暮らしに困ってつい手を出したサラリーローンが、利息が非常に高いために、利息が利息を生んでとても返済できないというような状況に追い込まれているということも、私は事実だろうと思うのです。私の近所のおじいちゃんが、大体サラリーローンという名前がよくないと言いましたよ。この人は、高利貸しという名前に変えなければいかぬ。高利貸しというのは、小説で読んだり、映画やテレビで、もう昔から悪らつなのは高利貸しと決まっているんで、高利貸しならなかなか手を出さないんだけれども、これがサラリーローンなんというハイカラな名前になっておるから、すぐ、これを借りないと何か現代のフィーリングに合わないなんというようなことを言う者もいるくらいでありますから。そうかと思うと、パーソナルローンであるとかパーソナルファイナンスなんというような非常にモダンな名前をつけている。これなんかも、別に法律で高利貸しにしろということを言っているわけじゃありませんが、そういうこともあるわけですね。そういうことで、昨年の五月、公明党が貸金業法案という、サラ金を厳しく規制する法案を提出いたしました。しかし、これがなかなか進んでまいりません。 サラ金問題というのは、大きく三つ問題点があるのではないかと私は考えるわけですね。一つは、サラ金業というのは、届け出さえすればだれでも営業できるという点があるのですね。二つ目は、著しく高い金利である。しかも、罰則を持った出資法では、日歩三十銭、換算すると一〇九・五%までならば罰則の適用を受けないということがありますね。それと三つ目は、返済ができないときの取り立ての悪らつさである。暴力団の資金源にさえなっていると言われているような状況、これを何とかしなければならないと思うのです。詳しくは、大蔵委員会でまたわが党の委員がやると思いますけれども、ここで基本的な問題についてお聞きをしておきたい。 それで、ただいまも申し上げましたように、利息の問題は、利息制限法では限度二〇%ですね。ところが出資法では一〇九・五%、日歩三十銭というような高率、これが認められている。認められているというよりも、むしろこれ以下であると罰則適用を受けないということがありますね。したがって、私は、利息制限法の利率に出資法の利率をできるだけ近づける、一緒にするのが一番いいだろうと思いますが、近づけるということをしなければ、少なくとも、二〇%にならなければとりあえず五〇%ぐらいにでも、そういうような改正をしていく。そうして、この届け出制という問題も認可制に変えることが可能であるならば、できるだけその方向へ持っていく、こういうことが必要ではないかと思うのでございますが、大蔵大臣、その点についていかがでしょう。
○村山国務大臣 サラ金の問題については、いま実態調査を各省庁詰めておりましてやっているところでございますが、問題点はいま正木委員がおっしゃったような点にあるように思います。ただ、現在のところは自由営業だということになっておるわけでございまして、単なる届け出でございます。そして、おっしゃるように、出資法の日歩三十銭を超えた場合には罰則の適用があるということでございます。大蔵省におきましては、実態調査の権限しかございませんで、指導監督の権限は一切ないわけでございます。 こういった、いま正木さんのおっしゃったようなポイントをどういう角度からいくのか。一つは、出資法によるところの年に一〇九%というようなものは二十九年当時できた法律、高金利のころにできた法律でございますので、それを下げる方向でやはり検討するかどうかという問題が一点ございます。ただ、この場合は、業者でなくても一般の私人間にも全部適用がある法律になっておりますので、その点はあわせ考えていかなくてはならない、それが第一点の問題であろうと思います。 それから第二点の問題は、これを一体取り締まる方向でいくのか、助長する方向でいくのか、そこの取り締まりの関係、あるいは助長の関係、どっちでいくのか。現在、御案内のように十七万という数でございますので、全部都道府県知事に委任しているわけでございます。したがって、それをどんな方向でやっていくか。 それから第三番目は、取り立てについていろいろな暴力行為であるとか、いやがらせであるとか、特に、実態的に申しますと、他のサラ金業者の方に回しますから利息が利息を生む、借りかえ制度によりましてやっているようで、どんどん利子が利子を生むという形で非常に返済に困っているというようなこと、こういった点を考えまして、どんな規制の内容にするか。 したがって、法務省、警察庁あるいは大蔵省、そういった方に、広範にまたがってくる問題でございます。そういった問題をいま実態調査を取りまとめまして、これから各省でそれぞれの案を出しまして、案をすり合わせまして、そして何とか来年の通常国会までには成案を得たい、こういう点で検討しておりますが、問題点はいま先生のおっしゃった三点ぐらいに尽きるだろうと思います。
○正木委員 これはテレビで放映されておりますから、恐らくこれを聞いている人もずいぶんいるでしょうが、その中には、サラ金に悩んでいる人たちだってずいぶんいると思うのです。ちょっと、政府の対応が余りにもマンマンデー過ぎると私は思うのですよ。 この問題は、一つは、庶民が正しいやり方におけるところの貸し金というものを利用できる機会を奪ってはならぬだろうと私は思います。そういう意味では、いま大蔵省が応急ローンというのを各銀行に慫慂しているようですけれども、これは、私は一つのユニークな発想だと思うのですね。百万円以上の年収のある人であるならば三十万まで、入院の費用であるとか入学の費用であるとかというものを非常に安い利子で貸す。それで本人の手に入らないで、病気の場合には病院へ直送される、学校の入学金ならば学校へ直送される。これは私は新しいユニークな発想だと思うのですが、こういうものをどんどん助長しながらやっていくべきであって、その高い利子がまた利子を生んでいくという形で、すぐ十万単位のものが何百万というような額になってしまう、こういうものはやはり取り締まっていかなければならぬと私は思うのですね。 それと同時に、最高裁の判決では、利息制限法を超えて取った利息については、これは無効の判決が出ているのですね。だから、訴訟をすればそれが違法の利息であるということで無効措置が講じられるということはあるのだけれども、実際五万、十万と借りているような人たちがその訴訟費用を負担できるかどうかというと、訴訟にまで持ち込めないという状況があるわけですね。そういうことで、もし今度新しい法律をつくるまでに(「それじゃ間に合わぬ」と呼ぶ者あり)後ろから言っているように、間に合わぬわけですから、困っている人はいま困っているわけですから、それを何とか直ちに救済する、要するに二〇%以上のものでは無効になるというようなことを最高裁まで行かなくてもできるような形のものを応急的につくるべきではないか。たとえば交通違反をすると、切符を切って、それに不満な人は正式の裁判に持ち込む。しかし、それで納得する人は、そこで罰金を払ってこの問題の落着をする。それと同じように、もっと簡便に訴訟に持ち込んで、二〇%以上の利息というものについては無効という判決が出るような形のものをいまつくれないか。また、いま制度としてはそういうものが活用できる方法はないのか。この点は法務大臣どうですか。
○瀬戸山国務大臣 利息制限法、三段階に分かれておりますのは御承知のとおり。十万未満、十万超百万未満、百万以上、三段階に分かれておりまして、二〇%、一八%、一五%になっており、これ以上のものは無効と法律に書いてあるのですから、そのとおりになっておるわけでございます。 そこで、いわゆる貸金業、庶民金融の場合はより高くなっている。この問題も、今度改正する場合に検討の必要があると私は思っております。でありますから、一〇九・五%あるいは一〇九・八%となっておりますが、これは法律で無効なんです。ですから、払わないと言えばそれまでのこと。ただ、そういう知識がないところに問題がある。でありますから、そういうことを含めて今度改正のときにはもう少し明確に、しかも庶民がこれは利用する必要があるから起こってくるわけでございますから、これをつぶすわけにもいかない。生かしながら、利用する人が困難を来さない、こういう道はどこにあるかということで目下検討いたしておりますから、先ほど大蔵大臣もお話しがありましたように、次の通常国会に是が非でもそういう成案を得たい、かように考えております。 裁判の問題でございますが、これは現在でも簡易裁判所でやれる道がありますから、別に裁判制度をつくる必要はない、かように考えておるわけでございます。
○正木委員 法務大臣、簡易裁判所でそれがやれるんだということは結構だと思うのですが、少なくともこのテレビを通じて、こういう方法でやれば裁判費用がかからないで裁判所で、二〇%、一八%、一五%、これは金額によって違いますが、この利息制限法の範囲を超えたものについては無効になるんだ、こういう方法で金をかけずに裁判ができるんだということをPRしてくれませんか。
○瀬戸山国務大臣 細かい手続については民事局長から説明させます。
○香川政府委員 御質問の御趣旨は、簡易、迅速な裁判手続があるかないかと、その問題でございますが、実はそういう御趣旨で、ちょっと細かくなりますけれども、現在民事訴訟法に督促手続というのが設けられておりまして、これは判決手続とは異なる構造になっております。いわゆる支払い命令の制度と言われているものでございます。 簡単に申しますと、サラ金の場合、利息制限法違反の関係で申し上げますと、債務者が違反の利息を払ってしまった、そういうときに、御指摘のように最高裁判所の判例では返還請求ができることになっておるわけでございますが、その返還の請求の申し立てを簡易裁判所にいたしますと、その場合に支払い命令を求めることになるわけでございます。これはもちろん訴訟と違いまして、口頭でもよろしゅうございますし、また、もちろん弁護士を代理にしなくてもいいわけでございます。その申し立てがございますと、裁判所ではその申し立て人だけを審尋いたしまして、そして言っていることが間違いないということでございますれば、債務者、つまり貸金業者でございますが、それに対して幾ら幾ら支払え、こういう支払い命令を出しまして、そしてその命令に対して二週間内に異議を申し立てないと仮執行の宣言をつけるぞということを言うわけでございます。二週間内に異議の申し立てがございませんと、仮執行の宣言が債権者、つまり借りた人の方の、返してほしい人の申し立てによって仮執行の宣言がつけられまして、任意に返してくれなければ強制執行ができる、こういう仕組みになっておるわけでございます。仮執行の宣言がつきまして、そして異議の申し立てがあるということになりますと、そのまま訴訟に移行するわけでございますけれども、仮執行宣言がついておりますので、訴訟に移行いたしましても、執行裁判所の方で執行停止を出さない限りは強制執行ができる、こういう仕組みになっておるわけでございます。 そういう簡易な制度があるわけでございますけれども、私どもPRが足りないために、必ずしもサラ金の関係では活用されているとは限らないわけでございますが、今後ともPRに努めなければならぬ。 もう一つは、多くのまあ少額のものでございますから、訴訟になりましても簡易裁判所で訴訟手続がなされるわけでございます。これは地方裁判所の訴訟手続よりもいろいろの面で簡素化されておりまして、費用の点はもちろんでございますが、手続的にも簡易、迅速になるようにということで配慮されておるわけでございます。 そういった制度がございますので、さしあたりはと申しますか、これを大いにPRして、救済に少しでも役立てたいというふうに考えるわけでございますが、さらに簡素化したいい制度があるかということになりますと、事がやはり裁判手続でございますので、私どもの今日までの検討の段階では、これ以上、この支払い命令の制度以上に簡素化するのはいかがかというふうな感じがいたしておるわけでありまして、もっぱら当分はPRに努めるべきだろう、かように考えておるわけでございます。
○正木委員 それで、簡易裁判所へその問題を持ち出すときに、何か証拠書類みたいなのが必要ですか。要するに、たとえば幾らの元金で幾らの利子を払ったという領収書みたいなものが必要なのかどうか。ないしは、払わない前ならば、払えないぐらい借金が大きくなっているというような場合にはそこへは持ち出せないのか。これをちょっとお伺いします。
○香川政府委員 前者の問題は、先ほど申しましたように口頭で申し立てをしてもいいわけでございますし、それを立証する証拠書類がございますればそれにこしたことはございませんけれども、裁判所の方では、その申し立て人を審尋いたしまして、言っていることが間違いないという心証を得ればいきなり支払い命令を出すわけでございます。相手方が――この制度は、つまり両者で中身については問題がないというふうなものは一々訴訟でやらずに簡易な手続でやろうというところが本質でございまして、したがって、相当訴訟とは違った、的確な証拠がなくても支払い命令は出ることになっております。 それから、いま申しますのは支払ったものの返還請求の関係で申し上げたわけでございますが、まだ払ってない、貸金業者の方から取り立てが急に、非常にいろいろの手で取り立て請求が執拗になされるというときには、これは出るところへ出れば勝つのでございますから、そこで支払いを拒否する、利息制限法違反の部分については支払いを拒否するという挙に出ていただきませんと、払ってしまった後は、さっき申しましたような支払い命令の制度を活用するという道がございますけれども、その前提としまして、法律上請求できない、したがって支払わなくてもいいものは支払わない勇気をひとつ出していただく。これはなかなかむずかしいことだと思いますけれども、その辺のところも大いにPRしなければならぬ問題だろうというふうに考えております。
○正木委員 どうもありがとうございました。 これでいささかは変わってくるでしょう。そのかわり、これが徹底いたしますと一斉に簡易裁判所へ押しかけるでしょうから、相当増員もしてもらわなければならぬかもわかりませんけれども、いずれにしてもそういう方法があるということがわかっただけでも私は大きな収穫であろうというふうに考えます。 それともう一つは、やはりこれは基本的に考えていかなければいけないのは、そういうサラ金業者に金を借りなければならないような状況の人、それはばくちの元手が要るからといって借りる人はほかでは調達できないでしょうけれども、真実暮らしに困って、また生業資金に困っているという人だっていると思うのですよ。そのためには、やはり生業資金等の貸し付けの制度というようなものももっと枠をふやし、そうして、その条件についてもある程度緩和をしていくという形でやっていかなければならぬだろうと私は思います。これは答弁をいただいておりますと時間がございませんので、それを関係の大臣の皆さん方に御要望申し上げておきますから、その点もあわせて考えていただきたいと思います。 さて、いよいよ経済問題に入りたいと思います。 ちょっと時間が足りなくなってしまいましたが、けさは武藤委員が、七%成長の問題について疑問点をいろいろと提出されました。私は再びこれを繰り返さないで、それを引き継いだ形で議論をしたいと思うわけでございます。 総理は財政均衡論者でございますから、財政のことがしょっちゅう頭の中にあって、それが気になって、何とか赤字をなくそう、何とか国債発行を減らそうというふうに努力をされている。私はそれはそれなりに一つの見識だと思うのですけれども、しかし、戦後何回か日本に不況期が訪れました。そして、その不況克服というものをやりましたし、四十年のときには、むしろあっという間にその不況期を乗り越えたという記録も出ているわけです。その当時はやはり、それはもちろん公共事業等を増発したりなんかはいたしましたけれども、主としてやはり民間の力で、民間自力回復力というものがまだ残っておりましたし、それが設備投資の増大等につながって景気回復をしたし、同時にまた、その当時はいろいろの優遇税制をつくりながらも、要するに輸出ドライブをかけることができた。これがやはり私は不況乗り切りのための大きな要素でなかったかと思います。ですから、その輸出ドライブをかける、輸出をどんどん振興していく、そのために、ひどいときには国内価格と輸出価格が違うというようなものが出てきたりなんかして大きな問題になったこともありますけれども、そのほか金融政策を併用して、さらには財政的には公共事業を増発する。いまほど増発はしておりませんが、要するにその当時はちょっとてこを入れてやれば、民間の力があったから、その民間の力によって不況を克服することができたという時代なんですね。 今回の不況は、私は全く状況が違ってきているというふうに考えるわけです。確かにあのインフレの中で、とりあえずインフレを鎮静化させるということに意を用いられたということは、これまた一つの見識であると私は思いますが、同時に、その後、景気回復のための手おくれが相当大きく影響していると思います。同時にまた、同じように輸出を振興するというふうな形で景気回復をしようとした、ここに私は大きな問題点があるだろうと思います。石油ショックによって、石油代金の支払いで先進工業国はそれぞれ赤字を抱えているような状況の中で、そこへ集中豪雨的に日本から輸出が行って向こうが受けられるわけはありませんし、そういう意味から言って、どうしても輸出の頭打ちという問題が起こってまいりましたし、また、輸出を頭打ちさせるために、あの円高現象というものが急激に起こってきたとも考えられるわけです。そういう意味では、いまもう民間が景気回復をする力というものはまだまだ失われた状態であろうというふうに、大まかに言って私は考えるわけですね。 そういうときには、財政が財政支出をしていくという形でそれにてこ入れをしていく、いわば景気回復の主役は財政という時代になっている、これは私は間違った意見ではないように思うのです。ちょっと精緻さを欠いているかもわかりませんが、大まかに言って。そういう状況の中でそれでは財政を何に使っていくかという形で、要するに公共事業一本やりという形で公共事業を年々増大させていった。これはこれなりに私は意味のあることだと思うのです。ただ問題は、一本やりであったというところが問題なんです。私は、公共事業よりも減税等の問題の方が効果があるというようなことは言いません。しかし、こういう時代には、いろいろ複合された政策というものが同時に実行されていかないと景気回復はできないのじゃないかというふうに私は考えているわけです。 そこで、問題を簡単に整理をいたしまして、私の言いたいことは、まず第一に、七%ないしは七%程度とけさおっしゃいましたね。私は、七%でなければ六・九%や六・八%じゃいかぬと言っているわけではないのです。七%近い成長で私は結構だと思うのです。いまこのままいったって六%に乗るか乗らぬかわからぬという民間の経済機関の調査報告さえあるぐらいですから、六%に乗って七%に近くなれば上できだと私は思っているのですがね。 それでは、なぜ七%程度の経済成長が必要なのかという議論、その後、そんな必要な景気回復がなぜおくれたのかという原因論、その上に立って、それでは必要性、目的論というのがちゃんと出てくるでありましょうから、その目的に合わすために、おくれてきたけれどもいま何をなすべきかという方法論、私はこの三つはやはりじっくりやらなければいかぬだろうと思うのですね。その割りには時間がなくなってきちゃったな。 とりあえず私は第一番の、それではなぜ七%程度の経済成長が必要なのかという議論、これは私は、その目的というものは大体皆さん方と共通しているだろうと思います。私は、第一にはやはり雇用の安定だろうと思うのです。こんな雇用の不安定な状況の中から失業者を減らしていく、そのために七%の経済成長というものが必要なのじゃないかと考えますね。 それともう一つは、何といってもこれ以上激しい円高に見舞われるようなことがあってはなりません。そのためにはやはり輸入をふやしていかなければなりません。その輸入はどうしてふえるかというと、内需を拡大するという形でふやすよりほかに道がない。その方法としては、公共事業であるとかいろいろなものがあるかもしれませんが、内需を拡大していかなければいかぬでしょう。これがもしできませんと、貿易収支がいつまでも膨大な黒字を残したまま、そうして七%近い成長もできないということになると、私は、今度は総理が約束されてきたボンでのお約束のあれが実行されないということになってまいりますと、また急激に外圧が加わって円高現象が起こってくるという悪循環が起こるおそれが多分にあるのじゃないかという気がしますね。 もう一つは、やはりそれと同時に、内需が拡大しませんと、私が心配なのは、輸入がふえてこない。輸入がふえてこないのに見合った形での輸出というふうにどんどん輸出が減ってきますと、ある意味では縮小均衡という形になってまいりますから、これは貿易で生きていかなければならぬ日本にとっては重大な問題だと私は思うのです。やはり拡大均衡に持っていかなければなりませんから、輸入をうんとふやす、そしてそれに見合った輸出という形での、少なくとも現状維持の状況というものは続けていく必要があるのじゃないかというように考えますね。 三つ目は、やはり総理が一番心配なさっている財政問題です。 稲葉秀三さんがおもしろいことを言っているのですよ。「企業設備が過剰になり、他方で貯蓄超過が起っている状況のもとでは、政府が有効需要を外から投入しなければならない。」これはいま申し上げたように財政主役ということですね。「それから、今の日本は三年から五年間は、三〇%以上の国債発行をしていかないと六%成長は確保しえないように思われる。」そこで、この人はここのプロセスを言っているのですけれども、「国債を発行し財政支出をし、それが経済に活力を与え、景気を上昇させ、次の段階で工業生産やGNPを高め、企業に活力を与え、雇用を増大させ、民間設備投資を上向かせ、税収の増大を図り、この結果、国債依存率を引き下げる。」ということにならなければいかぬ。こう言っておるわけですね。 だから私は野方図に国債を発行していいというふうなむちゃな議論をしようとは思いませんけれども、しかし、いま財政が主役になって景気回復をしなければならない、そうしないと結果的には財政へ返ってくる余裕というものも生まれてこないというならば、いまはそう総理や大蔵大臣のように赤字ばかりを恐れているということでは、結局中途半端な形で、いつまでたってもこの財政状況の悪さが延びていくだけにすぎないと私は思うわけであります。どうでしょうか。
○福田内閣総理大臣 七%成長はまずどういうことから実行を迫られているか、こういうお話ですが、これは正木さんのおっしゃるように二つの側面から要請されている。つまり国内的要因、それから国際的要因といいますか、国内的には何としても雇用を早く安定させなければならぬ。そういうことになりますと、いま緩やかな景気上昇といいますか、経済の成長というものがありまするけれども、まだそれは水面下の動きなんです。超大型のデフレギャップがありまして、そしてまだ設備が過剰の状態が続いておる、このような状態。私は、ことし七%ぐらいの成長をすれば、来年の三月ごろ、本年度末ぐらいには、いま八〇%ぐらいのところを動いておる操業度が八二、三%には行くと思うのです。望ましい操業度というのは八五%だとこう言う。私が三月の時点においてはもうトンネルの出口が見えると言うのは、八五%という望ましい操業度というものが展望できる、そういうときに差しかかるということを意味しておるわけなんですが、そういう段階になると、そこで民間で活発な設備投資が始まってくる、民間主導型の経済というものが展開される。それ前の段階におきましては正木さんがおっしゃるとおりです。私、全く同感です。これは財政主導型の経済運営でなければならぬ。そういう考え方のもとに、あの石油ショック以来、あれだけ公債を増発しましてずっとやってきておりますわね。大体、私は、昨年あたりはまあいいところへいくんじゃないかと思ったのですが、急激なドル安円高という現象がやってまいりまして、不幸にして成長目標も達成できない、こういうことになりましたが、ことしはとにかく実質三七%公債依存、こういう財政、これをてこにいたしまして何とかして七%成長を達成し、そして年度末にはもうトンネルの出口が見える、企業操業度を八二、三%というところまで持っていきたいな、そうなれば、それ自身が雇用に貢献すると同時に、来年ある時点で設備過剰状態が大方解消される、それで民間の設備投資も始まる、こういうことになれば雇用問題には非常に明るい動きが出てくるだろう、こういう国内的要因があるわけです。 それからもう一つは、いま正木さんの御指摘の対外的の要因でございますが、とにかく、世界でいま最大の問題は通貨不安です。これはドルの問題が基軸になっておりまするけれども、しかし、わが国の黒字過剰、これもまた国際通貨不安の一つの原因になっておる。こういうことを考えますと、国際社会に対する責任といたしまして、わが国はどうしてもドルを減らす政策をとらなければならぬ。ドルを減らすには輸出を抑えるかというと、これは邪道です。そうじゃなくて、内需を拡大して輸入をふやすという政策をとるべきである。それには内需を拡大する必要がある。どの程度の内需を拡大するか、これは七%という見当の経済運営をする、こういうことなんですが、いまそういう中で正木さんは、もっとひとつ財政を働かしたらどうだ、こういうお気持ちのお話のようでございますが、いま、とにかく実質三七%国債依存というような財政運営をしているところはないです。それから公債、これも消化されなければならぬ。消化されなければならぬわけですが、その消化にもそう明るい側面ばかりじゃありません。黄信号が出てきておると言うとちょっとオーバーかもしれませんが、いまちょっとそういう感じの国債の消化状況なんですよ。そこへいままた減税のために一兆円の公債の増発をしようということになりますと、財政は財政のためにあるわけじゃない、経済を本当に正常に運営させるためにあるわけですが、この公債問題をきっかけといたしまして、物価不安というか、いやしくも公債が消化されないというようなことになったらこれはインフレですよ。そのインフレというものは、これは非常に深刻なインフレです。そんなようなところへ日本社会を持っていっては困るのじゃないかと思うのです。 ですから私は、とにかく一兆円という金がある、あるのならこれは本当は貴重な一兆円として使わなければならぬ、そういうことになれば、これは減税よりも景気、雇用の面で効果のある公共投資に使うべきだ、こういうことを申し上げておるのです。しかのみならず、いままた別の角度で言うと、日本社会は、われわれの生活周辺の整備、これを非常に迫られておるわけなんです。そういうことを考えますと、みんなして一兆円を使ってしまう、そういうよりは、それを集めて社会投資に使って、われわれの子孫のために、われわれの後に来る人々のためにいい社会環境を残すという考え方は、これは私は間違った考え方じゃないのじゃないか、このように思いまして、まあ公共投資中心という考え方なんですが、ひとつ御理解のほどをお願い申し上げます。
○正木委員 前半はぼくと同じ意見なんです。ところが後の方はちょっと違ってくるのですが、そこまで実は質問をしていないので、お答えいただいてしまったわけでありますけれども。だから、雇用を安定させ、対外的にもその約束を果たすと同時に、これ以上の円高というものを防いでいくというような状況をつくり出していく、そのために七%程度の経済成長が必要である。これは意見は一緒なんです。そうすると、どうしてもやはり七%程度の経済成長はさせていかなければいかぬわけでしょう。これも意見は一致したわけです。 ところが、このままの状況で来年になるとトンネルの出口がほのかに見えてくる、いわゆる七%程度の経済成長ができるという総理の意見と、ぼくの意見が違うわけなんです。このままでは七%、要するにトンネルの出口が見えないというのが私の意見なんですよ。 去年も上期がよくて下期が悪いという状況、これはもう二年続いて、ことし三年目なんですが、これはもう何遍も、けさからも宮澤長官もおっしゃっておりますから、余り詳しくは繰り返しませんけれども、ことしの一-三月が二・五%、年率にすると一〇・四%、四-六月が一・一%、年率に直すと四・五%、これはGNPの実質成長ですね。もし仮に七%にするためには、七月から九月期、十月から十二月期、一月から三月期、毎期二%の経済成長、年率にして八・二%の経済成長が遂げられなければ七%へ達しないのですよ。これができるという保証はもう全くないのです。去年も総理はそうおっしゃった。あの二度の追加補正によって必ず六・八%の経済成長はできるのですと。結局どうだったのですか。五・五%だったじゃないですか。ここが実は非常に大きな問題点であるわけなのです。 去年それができなかったのは、これは個人消費の伸び率が低下した。民間住宅、民間企業設備の率の低下、これの大部分は輸出で埋めたわけでありますけれども、かつ、公共事業の追加をして政府の財政支出でそれを埋めようとした。しかし、結果的には名目が二・七%、実質は五・五%の経済成長で終わってしまっているのです。 しかも、去年の補正よりも今回の補正の方がもっと質が悪いのです。去年は何といったってやはり二千七百億くらいの実質的な予算の追加があったのです。ことしは実質的な予算の追加というのは一千億じゃありませんか。そうして二兆五千億。これはしかし、悪いくせがついてしまったものだと私は思いますが、ずいぶんふくらましたですね。これはやはり問題だと思いますよ。大体GNPの増加額を二兆三千億円、こういうふうに見込んでいらっしゃいますね。ところが支出の規模は一兆九千二百億円ですよ。なぜかというと、二千五百億円の債務負担行為というのが入っていますね。債務負担行為というのは、ことしに発注はするけれども、金を払うのは来年の四月以降だということでしょう。けさ、約二%の用地費を見込んでいるとおっしゃいましたが、これは大体七百億くらいじゃないでしょうか。それと、けさ宮澤長官もおっしゃいましたように、住宅金融公庫の枠をふやすと、民間資金によるところの住宅建設がそっちの方へ食われてしまいますから、大体その乗りかえ分が二千六百億ぐらいと見ているのじゃないでしょうか。そうすると、結局二兆三千億のGNPの伸び、これを一・三%と見ていらっしゃるようですが、どだい一・三%の基礎になっている五・七%、このままいけば、追加しなければ、五・七%という経済成長それ自体が甘過ぎるじゃありませんか。その上にこういう衣の大きなてんぷらを乗っけて、それで七%にしよう、それは数字のつじつま合わせにしかすぎぬと私は思うのですよ。実際は公共投資の追加が一兆三千四百億円と住宅投資の追加が五千八百億円、それで一兆九千二百億円だ。それで事業規模が二兆五千億円というふうにおっしゃっている。これはもう全く、出ていきもしない金、またGNPを支えるに足りない金までこの中へ全部ほうり込んで二兆五千億、二兆五千億と宣伝をなさっているのです。 長官、ぼくの言っていること、どこか間違いがありますか。
○宮澤国務大臣 いまおっしゃった数字に関する限り間違いございません。
○正木委員 それで、この二兆五千億の公共事業費の資金分担を見ますと、一般会計で四千六百億、地方自治体とか政府関係機関の資金の手当てが六千五百億、そして債務負担行為が二千五百億、財投が六千億、このうちの三千億は地方の単独事業債です。そうして民間資金が五千四百億です。これじゃ私は、もうどう考えたって七%の成長を支えていくに足る力を持っていないと思いますね。だから、いろいろの民間の経済機関なんかも相当悲観的であります。 そうしてもう一つは、心理的なものがあるんですよ。高度成長期は、政府が七%成長だと言うと、これはまた伸びるぞというので、一〇%に伸びるくらいの設備投資が生まれてきた。このごろ政府が七%と言うと、ああ五%やなというような感じなんですな。どうも心理的にはまるっきり違う。 こういう状況を示して、なおかつ心理効果としてはまさに低目低目、悲観的悲観的になっている状況の中で、これをやはり好転させなければいかぬだろうと私は思いますね。それは総理が、私ができると言っているんだからできるというふうに激励しないとよけい沈滞してしまうんだというお考えがあって、そうして、空元気というと悪いですけれども、そういう形でどんどん宣伝なさっているのかもしれませんけれども、しかし、実体の数字というものをエコノミストは見ているわけでありますし、そういう中で、それは言葉のかけ声だけでは絶対私は、明るい見通しなんというものは持ってこないと思いますね。ですから、今度のエビてんの二兆五千億は、要するに公共事業の息切れを支えただけだ、息切れをなくしただけだというふうな考え方の人もあります。そして輸出の落ち込みをある程度追加によってしのいだだけだという。いずれにしても、七%成長というものを実質的にやっていかない限り雇用も安定しないし、ないしは輸入もふえない。要するに内需が振興されないわけですから。民間設備投資も総理がおっしゃるように、来年うまくいけば八五%の操業率になって、その後民間設備投資が伸びてくる。私は願わしいことだと思うけれども、それは恐らく無理ではなかろうかというふうに考えているわけです。 そうなりますと、それじゃもしできなかったときにはどうするか。朝の武藤さんの質問にもお答えになっていらっしゃいましたけれども、もう一度お聞きいたします。もしそれじゃできなかったときに、またできないという見通しがついたときには、七%成長という至上目的に対して、それを達成するために第二次補正か何かまたお組みになりますか。できなかったときには、そういう形をとらないで、政治責任をおとりになるという形でおさめられますか、どうなりますか、できなかったとき。
○福田内閣総理大臣 大体七%程度の成長ができませんと、雇用の問題、この展望が開けてこない。また国際社会に対する責任、これも果たせない、そういうふうに考えますので、私はもう責任を持ってこの成長目標を達成したい、このように考えております。経済は生き物ですから、いろいろまだ変化はありましょう。ありましょうが、それに応じて、これはいろいろ景気対策手法というものがあります。予算ばかりじゃありません。いろいろな手法があるわけですから、あらゆる手法を駆使いたしまして、とにかく内外の期待にこたえていきたい、このように考えております。
○正木委員 聞きようによっては非常に重大な発言をなさっておるわけで、景気回復のための手法は予算を追加することだけではない、ほかにもいろいろ手法がある。それはいろいろあるでしょう。ところが、だれでもすっと思いつくことは何かというと、さらに公定歩合を引き下げるのかということになるのです。金利の引き下げをやるのか。一番だれも考えつきやすい予算以外の方策ですが、もし状況として、二兆五千億の事業量と言われておるこの追加補正によってなおかつ先行きが暗いということであるならば、それはお考えになるのですか、年末かないしは年初に。
○福田内閣総理大臣 経済は生き物ですから、その経済のこれからの動きを見て、そしてあらゆる手段を講じなければならぬだろう、このように考えています。あらゆる手段、その中にはいろいろな手段があるわけでありますが、そのときその時点において最も適切であるという手段を採用していきたいと思います。
○正木委員 いや、実は私もそのことを申し上げておるのです。だからこそ公共事業一本やりでやってまいりましたけれども、公共事業はもうこれ以上ふやせない。もう消化不良を起こしつつあるという状況の中で公共事業を追加することは、恐らくこの二兆五千億以上に、今度仮に第二次補正という問題が起こってきたときに、公共事業でそれにふやしていくということは恐らく不可能でしょう。そういうことをしても、少なくとも三月三十一日までに効果があらわれるはずはありませんし、執行の状況の中においてももう頭打ちになっていくのじゃないかというふうに私は感じます。 余り時間がありませんからそこに入っていきますが、一つは、先ほど資金分担の面で申しましたけれども、この中で地方単独事業だって、これは起債の枠は与えてくれるらしいですけれども、実際問題としては国から補助金が一文もない事業を地方単独事業というのでありますから、ここでその起債を消化していかなければなりません。この起債の消化が果たして地方自治体で、市中銀行との縁故債の借り入れについてうまくいくかどうか、私はちょっとこれは疑問があると思います。ないと言うなら言ってください。 もう一つは、いま建材が高騰してきています。それから技術者の不足が、設計から現場の技術者に至るまで不足している。これは常識になっておる。最大の問題は、昔、戦前お上の力が強かったときには、地図の上に線引っ張ってここに道つけるぞと言ったらついたかもわかりません。いま、そんな時代じゃありませんよ。老人ホームを建てるのでも地元から反対が出たという時代なんですよ。そういうときに、実際問題として単独事業にしろ国庫補助のある公共事業にしろ、たとえそれが国民生活に密着した事業であったとしても、地元との協議をして納得ずくでなければ、着工はできないし設計もできないのです。幾らでも金さえつければ公共事業がどんどん進んで、それで経済効果が上がってくる、GNPを押し上げていくのだという考え方は、私はもう通用しないと思うのです。おのずから限度があると私は思うのですよ。ですから、資金的な問題、技術者の問題、さらには地元との問題、それから建設資材や土地の値上がり、これで、実際問題として公共事業はげっぷが出るのです。やろうにもやれない状況が来ていると私は思うのですが、いかがでしょう。
○加藤国務大臣 今回の補正で、地方財政は公共事業と単独事業を合わせまして約五千九百億円の地方債を発行いたす、かようなことでございます。そこで、公共事業分につきましては、地元で負担いたしますものは八〇%政府資金を充当いたす、かようなことでございますから、まず大丈夫可能である、かように考えますのと、それから単独事業の起債につきましては、従来は全額民間引き受け、民間縁故債、かようなことでございましたけれども、今回は特別の措置をとりまして、いわゆる臨時三事業、御承知の河川と道路と高等学校でございます。この臨時三事業につきましては公営企業金融公庫が七五%引き受ける、かようなことに相なりましたので、まずこの点も消化が可能である、かような考え方を持っておるのでございます。しかし、一般縁故債も二千六百億円を超えますものの、発行は必要であるのでございますから、先般も大蔵大臣が関係金融機関に対しまして、地方債の消化に当たりまして十分に協力してくださるように、かような処置をとっていますのと、また地方団体におきましても、縁故債の消化が困難でありますのは、都道府県や大きな市はさほどの困難を感じませんけれども、しかし、財政力の弱い市とか町村が大変なのでありまして、かような町村に対しましては都道府県が十分指導いたす、かような体制をとりまして万全を期してまいりたい、かように考えております。 それから、技術者の不足でございますが、まず私は、当初予算で組まれましたものを地方が消化してまいりまして、なお消化が可能である、かようなものを各省庁と相談いたしておりますし、また単独事業の起債につきましても同様の取り運びがなされておるのでありますから、この程度の補正でございますならば、地方も結構消化し得る、かように判断をいたしております。
○正木委員 建設大臣、どうですか。
○櫻内国務大臣 ただいま自治大臣がお答えしたような同じような傾向を、国の直轄事業におきましても持っておると思うのであります。 御質問の中で建設資材についての御心配がございましたが、必要があれば詳しく申し上げますが、昨年の十二月現在、不況カルテルを結んで生産制限をしておった、こういうことでありますから、今年度に入りまして多少の値上がりはやむを得ないし、また、そのことが景気回復に寄与しておると思うのであります。ここ三、四カ月のセメント、鋼材、骨材あるいは木材、合板、すべて安定した価格傾向をとっておると思います。 それから、用地のことが非常に問題であると思いますが、しかし、今回の補正で必要な一応の試算は七百三十ヘクタールでございまして、この年度当初の着工可能な用地、それから、その後の取得したものの中で使う用地、それらを勘案してみましても、用地の問題で公共事業遂行の上に大きな支障はないと思います。 あと、技術職員の問題、労務者の問題については、自治大臣のお答えしたとおりでございます。
○正木委員 そういうふうに通り一遍に言えばそれで済むというようなものかもしれませんけれども、私たちが調査いたしますと、実態は違うのです。たとえば茨城県の職員組合の調査によりますと、職員不足のために関係職員が月百五十時間残業しておりまして、年度内に予算執行ができるかという設問に対して、五五・八%の職員が、できないと回答しているのです。また、三三%の職員は、来年度へ繰り越しが出ると、さじを投げているそうです。こういうふうに実態は違うんですよ。 これはぼくが当初予算のときに申し上げたはずでございますけれども、技術者、熟練工の不足というのが激しいわけです。片方にたくさんの失業者がいるわけですから、これは仕事が出たんだから就労の機会が出るというふうに総理はおっしゃいますけれども、しかし、それは単純労働なんですよ、単純労働者。単純労働というのは手に職がない、大阪弁で言うと。要するに、だれでもできるような仕事の口、そこへは行けるわけですが、それは失業者が押し寄せていますから、そんなに新しい雇用は生まれてこないのです。実際に不足しているのは何かというと、技術者、熟練工なんです。これはいままで紡績にいた従業員の人が、鉄筋工をやったり、セメント工をやったり、型枠工をやったりなんかできるかというと、そんなことできるわけがありません。それが足りない。これがなければ工事は進まないのです。幾ら手に職のない人が山ほど集まったって工事はできぬのです。これが五十三年の四月の技術者、労働者需給調査報告書。これは労働省ですよ。不足率は、鉄筋工が二九・八%、建築大工が一八・二%、ブロック建築工が一六・五%、タイル張り工が二一・七%、配管工・鉛工が二四・四%と、重要な部分の不足が著しいのです。もうげっぷが出るほど公共事業が出ておりますから、これ以上ふやしたってなかなかできないのです。私は、公共事業がおくれておる、社会資本の蓄積をやっていくのだし、また景気に対する刺激効果もあるし、結構だと言っているんですよ。必要ないとは言ってないのです。しかし、これだけでは、もうすでに遂行が危ぶまれるような状況がずいぶん出てきておるということを申し上げてみたいわけです。 それと、自治大臣が、お尋ねしませんでしたからお答えがなかったのかもしれませんが、それは確かに、地方単独事業や国庫補助事業の裏負担についての起債の手当てはできたかもわかりません。しかし、ついて回っている問題は何かというと、国から補助金をもらって地方自治体が公共事業を執行するに当たって、最大の問題は超過負担です。この問題は解決されていないのです。これは起債の手当ても何もなく、地方はみずからのふところの中から金を出さなければ執行できないのです。ですから、皆さん方が通り一遍のことをおっしゃいましたけれども、そう簡単に地方ではいっていないということです。苦心の上に苦心を重ねて、何とか国の要望にこたえて景気をよくするためにがんばってくれてはおるけれども、実情はこれ以上できないというような状況にまで追い込まれているということは十分わかっていただかないと大変なことになると私は思います。 そこで、そういう状況の中で、もしかしたらこの二兆五千億円という工事が執行できないということになってくれば、これはがたんとGNPに影響してくるのですから、また、公共事業の来年、再来年、三年後、四年後という計画も出していないのでありますから、いつ、ぽんと公共事業を打ち切られるかわからぬし、それがどの程度下がってくるかもわからぬから、建設資材の方だって設備投資を新しくしない。このためには、やはりちゃんとした公共事業の総合的な年度計画というものを示してやらなければならぬでしょう。中期財政計画についてはいま諮問をなさっているようでありますけれども、これも詳しく聞きたかったのだけれども、聞けませんけれども、これだってもっと早く出してあげるべきであったと思うし、そういう形で目安をつくってあげない限り明るい見通しなんていうものは何もありません。まして、手痛いインフレで大やけどをして、減量経営減量経営ということで、もうそれが徹底しているわけでありますから、新しい設備投資がふえてこないから景気回復もしていかないでしょうし、新しい雇用創出ができてこないでしょうし、むしろ失業者がふえるという状況に追い込まれてしまうというふうに私は考えるわけです。 そういう状況の中で、もう公共事業でどうしようもなければ、しかも七%の経済成長をあなたは確信を持っておっしゃっておりますけれども、去年も確信を持っておっしゃったことが実現できなかったのだから、われわれとしては、疑いたくはないけれども疑いたくなってくる。それならもう一つそれを達成するための別な政策を御用意なさったらどうですかというのが一兆円の減税なんです。 しかも、今度の追加補正予算で公務員の給与の残金まで振りかえておりますが、これは余った金だから振りかえて結構ですけれども、要するに国が年度当初予想されたよりも賃上げが低かったということの証拠でしょう。一般にもそれが波及しているわけですから個人消費は伸び悩んでいる。個人消費は伸びている伸びていると言うけれども、それはことしの夏が暑過ぎたからです。だから繊維関係では、下着類は在庫一掃されるくらい出たでしょう。クーラーは、それこそできるのを待たなければいかぬぐらい電気屋さんの門口では売り切れてしまったかもわかりません。扇風機もそうだったかもわかりません。これはしかし、政策の成果ではなくて、お天気じゃありませんか。そうすると、このままいけばことしは厳寒を期待しなければいかぬ。ものすごく寒い冬を期待しないと七%いかないというふうになったらどないなるんですか。しかも、その厳寒になったときに初めて、じゃ新しくオーバーを買おう、新しい下着を買おうと言ったって金がなければ買えないのでありますがゆえに、これは何といったって減税という形で個人消費を刺激する方策を片方に用意しない限り、七%成長しなければ困るんだという状況が生まれない。これは私は非常に心配をいたしておるわけです。 それともう一つ、総理、もう時間がありませんから固めて質問しますから、覚えておいてくださいね。それでちゃんと答えてくださいね。 経済企画庁が出した表ですが、けさの武藤さんの質問に答えて、公共事業をやれば雇用が促進されるのです。一兆円の減税でわずかな金をみんなにばらまいたって雇用は促進されませんとおっしゃいましたね。経済企画庁の資料によると、生産誘発係数の比較は、民間消費支出と政府の固定資本形成、これは公共事業、これは民間消費支出は〇・八五ですから悪いです。五十年では〇・八二です。しかし片方の就業誘発係数、就業誘発係数というのは人間が働くその係数は、個人消費の方が公共事業よりも一・三九倍、五十年で一・二三倍。公共事業よりも個人消費を伸ばした方が雇用関係はよくなると経済企画庁の試算には出ております。これはわれわれがつくった資料じゃありません、皆さん方の資料で私は申し上げているのです。だから一兆円減税という問題については、先ほど申し上げたように、いま赤字国債を出さないでできればこれにこしたことはありませんよ。しかしそれしか財源がないとしたならば、その赤字国債を使ってでもいま景気にてこ入れをしていく。そうでなければ、中途半端な形でまた来年も再来年もと進んでいけば、いつまでたったって景気回復はしないし、そのために企業の収益が上がらない、雇用が好転しない、そしてベースアップもこない。そうするとそこからいただく税金も少なくなってくるという順序において低迷しなければならぬのではないかというふうに私は考えるわけです。 国債の消化の問題につきましても、もう黄信号がついて売れにくくなった、そういう現象が出ているかもわかりません。私は一時的だと思いますね。これは、やはり方策というものを変えていきさえするならば私は国債消化は可能であると思っていますよ。また、可能であるということを理財局長もけさの日経でしゃべっている。あの人なかなかいいことを言うてはります。ですから、私はこの一兆円減税というものは、単に政府をいじめるためにそれをやってやろうとか、政府の足を引っ張るために一兆円減税を言っている、そういうことではなくて、国民全体の立場の中から、いま先ほど申し上げたように、七%の経済成長がどうしてもいま日本の国にとって必要だ、それは合意ができたわけですから、それを達成するためにいま何をやるべきかという話の中で、この二兆五千億という公共事業の追加とともに一兆円減税というものをやっていくことがいま政府が選ぶべき政策選択ではないのか、私はこのように申し上げているわけです。
○村山国務大臣 先ほど自治大臣並びに建設大臣から申し上げましたとおり、現在の公共事業の消化状況もきわめてよろしゅうございますし、今後の問題も消化可能だということを確かめましてそれでやっているわけでございます。したがいまして、われわれはいま物価の動向その他を見ておりますが、現在の供給能力からいたしまして、この程度の公共事業の追加であれば十分こなせるであろうということをまず申し上げたいのでございます。 それから、第二番目に一兆円の減税のお話でございまして、もう多くの点申し上げましたので、ただ一つ申し上げておきますと、公共投資にいたしましてもあるいは減税にいたしましても、要するに公債財源によらざるを得ないことはもう当然でございます。問題は建設国債であるか赤字国債であるかという話でございまして、その消化という問題はやはり同じような困難な問題を伴うことは当然でございます。最近におきましては、まだそう心配することはないとは思いますけれども、もう新聞紙上にも出ておりますように、金利の底打ち感からいたしまして、大体投資は短いものを選好するという方向に向いておりまして、そういう起債市場でもございますので、私たちはいま公債の発行に非常に腐心をいたしまして、少しいま手控えておる。逆に申しますと、運用部が少し入札で買っておるような状況で、起債市場はいま座っているような状況でございます。何とかいくとは思いますが、万一こんなことで金利が反騰いたしますと、これは少々の景気対策なんか全部すっ飛んでしまうぐらい大きな影響を持つであろうと思って心配しているのでございます。 第三点は、これは経済企画庁から説明してもらった方がいいのかもしれませんが、いまおっしゃいました雇用誘発係数の話でございますが、これは乗数効果を入れますとやはり投資の方が雇用問題でもすぐれておるということになっておりますので、念のためにお答え申し上げておきます。
○正木委員 大臣、いまの補正追加の中から公共事業を一兆減らしてこれを減税に回せと言っているのじゃないのですよ。これはこれでいいでしょう。さらに一兆の減税というものを効果あらしめるように追加なさったらどうですかということを申し上げているのですよ。 それで、これはやはり総理、去年は貯金に回るという話だったのです。減税してもそのほとんどは貯蓄に回りますから経済を刺激する効果はありません、個人消費を刺激しませんと言われた。ことしは一向に、そのことは一遍も聞きませんが、これは何か心境の変化があったのか。というのは、恐らくことし三千億当初にやりましたものも、これがある組織の調査によりますと、そのうちで貯蓄に回ったのはわずか一〇%ですから、もうこの議論は通らないというふうにお思いになっているのかもわかりません。それでは、ことしは一転、国債の消化が困難である。国債の消化が困難であるということになってくるとインフレを誘発するおそれがあるから、国債を財源にした減税は反対であるというふうに変わってきたと私は思うのですがね。そういう性質のものではないだろうと私は思うのです。 ここで、田中理財局長はいいことをおっしゃっているんですがね。この中でやはり相当冒険をしなければならない新しい政策がございますから、これはなかなか全部できないと思いますけれども、大蔵大臣、どうなんですか、少なくともいまこの低金利時代に十年という長期国債を保有しているということについては、一般の投資家、また資産を国債でという人たちも非常に不安なわけですね。だからもっと短期債を――今度三年の利付債をお出しになったようだけれども、これだって一般に出てないでしょう、運用部の資金で買い込んでしまったから。だから、五年とか三年とか二年とかという短期債をもっと多様化した形で発行する。それは確かに、二年たったら二年ごとに借りかえていかなければいかぬから、しんどいと言えばしんどいかもわかりませんけれども、少なくともインフレにならないためには何が必要かと言えば、いわゆる個人消化ということなんですから、それは貯蓄を対象にしたような形での国債の多様化ということを考えてもらわなければならぬと思うのですけれども、そういうことさえ考えていけば、そんなに総理が心配なさるほど消化の問題については不安はないのではないかという気が私はするのです。確かに野方図に発行すべきものじゃないですよ。その前提に立ちながら、いま緊急の事態においては、一兆円減税をやるについて赤字国債を財源とすることはやむを得ない。その赤字国債を新しく追加発行しても消化ができないというならば、その消化の段階においては別の方法でその消化を助けていく方法がある、このように考えているのですが、どうですか。
○村山国務大臣 国債の多様化については本当にこれは苦心してまいらなければならぬのでございまして、したがいまして、昨年度五年ものの割引債を発行しましたし、ことしはまた三年ものを発行しておるわけでございます。しかし、最近の状況からいいまして、さらに多様化をする必要がありますので、二年ものをことしは出したいと思っております。 ただ、これも釈迦に説法でございますけれども、何でも出せばいいというわけではございませんので、各金融機関との競合関係があるわけでございます。その辺の整合性を十分持って出しませんと、今度はもう金融機関の方が困ってしまうわけでございまして、非常に苦心をいたしておるのでございます。ですから、運用部の方ではいま長いものを買いまして、そして今度は短いものを一般の方で出していく、こういうやり方を苦心に苦心を重ねてやっておるところでございます。
○正木委員 これは私の全く個人的意見です。これは党の政策でも何でもありません。一つは、金持ち優遇と言われるかもしれないというので私も決めかねているのですけれども、方法として、いま貯蓄に対して三百万を限度とするところのマル優制度というのがありますね。国債に限っては、十年債に限って特優制度というのが三百万ありますね。それが短期債にないのですね。五年もの、三年もの、ことし出そうとしている二年ものには特優制度はありませんね。これに特優をつけてしまうということになると、長期債の方が売れなくなるというおそれがあるかもわかりませんので、私は同じようにはできないだろうと思うけれども、これは最終利回りが大きく変わってまいりますから、これを三百万と言わなくても二百万でもいい、そのかわりに長期債の方は四百万まで特優制度を拡大するとか、そういう買いやすい国債にするという方法、どうですか、この考え方。
○村山国務大臣 事実関係だけ申し上げておきますと、割引債だけはございませんけれども、短期債の三年ものにはいま特優制度はございます。それで、いまの免税の関係を申しますと、もう御承知でございますが、一般少額貯蓄三百万円、それから郵便貯金の限度三百万円、それから国債三百万円、さらに財形になりますと五百万円まで別枠があるわけでございます。一方におきまして確かに消化の問題もございますし、他方におきまして利子配当の課税の公平という点から総合の問題が言われているわけでございます。現在の一世帯当たりの預金は、貯蓄動向調査の方で調べますと大体一世帯で四百万ぐらい。それぐらいでございますから、いかがなものであろうか、金融から考え、それから税制から考え、そして金融の競合から考え、慎重に扱う必要があるな、こういうことを考えておるところでございます。
○正木委員 そういうことで、われわれは、野党がここで言ってもうんとはおっしゃいませんから、野党が団結をいたしまして一兆円減税は要求をしていきたいと思います。 そこで、もう余り時間がなくなりましたので、雇用問題について労働大臣にお尋ねしたいのですがね。どうなんでしょうか、新しい雇用創出というものをどういうふうな方向でやっていこうとお考えになっていらっしゃいますか。まあ減量経営がこれだけ進んでまいりまして、恐らく製造部門におけるところの再雇用の問題というのはなかなか簡単にはいかないところだと思います。聞くところによると、構造不況産業から出てきた失業者、これがある意味での――好況産業というのは別にあるわけですから、その好況産業がある程度吸収してくれればいいのだけれども、好況産業は新しい雇用をなかなかしてもらえなくて、残業残業でこなしているようでありますから、どうしても不況産業から出てきた失業者というもの、またそれ以外の中高年の人たち、そういう人たちの就業の機会というのが非常に奪われてきておる。ないという状況があるわけですね。そのためには新しい雇用創出をしなければならないでしょう。 同時にまた、雇用創出の中でも、労働時間を短縮したりするというような形で雇用の機会をふやしたり何かもしなければならないと私は思うのですけれども、いま、とりあえず雇用保険によるところの最低生活というものを何とか維持はできたとしても、その新しい受けざらというのが非常に重要になってくる、また、重要なときであると思うのですが、それのお考えなり見通しなりをおっしゃってください。
○藤井国務大臣 現在、高度成長からいわゆる安定成長に産業構造の基調が変化しつつあるわけでございますから、その変化に対応してやはり雇用問題も当然考えなければならぬわけでございます。 当面の問題としては、やはり緊急対策は、このたび、構造不況業種が集中しておる地域に対して地域ぐるみの特定不況地域離職者臨時措置法という法案を準備しておるわけでございますけれども、それと同時に、やはり造船あたりはとりあえず仕事をつなぐという、こういったことの対応策をしなければならぬ。したがって、午前中からお答えしたような工夫をいろいろいたしておりまして、今度の補正予算におきましても、船舶の解撤事業あるいはまた海上保安庁の巡視艇の増強、こういったものが追加補正の中に相当盛り込まれておるわけでございますが、それと、やはりこれからの雇用問題は中高年齢者の雇用対策というのが非常に大切になってくるわけでございまして、とりあえず中高年齢者の雇用対策としては、中高年齢者を雇い入れる事業主に対して助成をする、こういったことも午前中お答えをしたとおりでございます。 それと、産業構造の方向転換が――従来物をつくって輸出するということに偏り過ぎた、この日本の産業の体質を、やはりこれからは国内の内需をふやして、そして第三次産業の方向、福祉であるとかあるいは社会保険であるとかあるいは教育文化施設であるとか、そういった方面の施設を充実して、その施設に人を張りつけていって雇用の拡大を図っていく、こういった方向を考えるべきであるというふうに思うわけでございまして、それも現在の補正予算ではある程度前兆があるわけでございまして、福祉関係施設であるとか国民体育施設であるとかいろいろ出ておるわけでございますから、五十四年度においては一層そういう方向に配慮していただきたい、このようにわれわれも考えておるわけでございます。
○正木委員 大体新しい雇用創出のできるところというものは、常識的に言われているのは、教育機関であるとか、医療機関であるとか、福祉機関であるとか、コミュニティーづくりだとかいうふうに言われているわけですけれども、確かにお話としてはきれいだし、それは私たちの「生きがいとバイタリティーのある福祉社会」のトータルプランの中でも、そのことで相当増員されることになっておりますけれども、ただ、民間の方における雇用創出ということを考えてまいりませんと、何でもそこへやればいいというふうに考えますと、これは実際それを養っていくのは税金ですから、ここに一つの問題点がまたぶち当たってくるのです。したがって、福祉施設やなんかと言ったら、公明党は福祉に熱心だから納得するだろうと思って言うたのかわからぬが、それは結構なことだと思いますが、それだけではいかぬのであって、いまの第三次部門というのだって、それは流通部門だってあるのだし、いろいろ民間のものがあるわけですから、それは基本的にそういう新しい民間の雇用創出の場というものを開拓していかなければならないし、同時に、人がたくさん余って仕事が少なければ、働く時間を少なくして仕事の機会をふやすよりほかに道がない、だれが考えたって。そうなってくれば、やはり労働時間の短縮等の問題も考えていかない限りこの問題は解決しないと思うのですが、そういう方面のお考え、どうですか。
○藤井国務大臣 いわゆる福祉型産業構造といった面に対する配慮もやらなければなりませんが、同時に、製造部門においては付加価値の高い、いわゆる知識集約型産業といいますか、そういった点を推進をして、そして技術革新によってわれわれはそれを産業化し企業化して雇用の拡大を図ることは、かつて戦後われわれが歩んできた足跡からも当然考えられますから、そういう点もあわせながらやっていくということ。 同時に、いま時間対策の問題のお話ございましたが、やはり長い目で見ますと、仕事を分かち合うという面においては時間対策も当然考えなければならない。現在、行政指導において、週休二日制の問題あるいは残業時間の短縮の問題あるいは有給休暇の完全消化、こういった方向へ向かって粘り強く今後前進すべく努力をしておる、こういう考えでありまして、それは要するところ、長い目で見ると仕事を分かち合う、こういった関係でございまして、低成長時代にはそういう配慮も当然しなければならぬ、このように考えるわけでございます。
○正木委員 さらには失業者を出させないということ、出させないと言ったって非常に困難なことかもわかりませんが、何でも減量経営だとかなんとかを頭から容認してどんどん人減らしをしていく、生首を切っていくという状況に対しても何らかの措置を加えませんと、そういう方面から出てくる失業者ということについて非常に問題が残ると私は思うのですがね。 要するに問題点としては三つあって、そういう失業者をできるだけ出さないような形のものを企業の側にもある程度義務づけるような措置をしていかなければならぬでしょう。そして、発生した失業に対して再就職のチャンスを与えるための努力をしていかなければならぬでしょう。また、再就職がなかなかむずかしい人たちについては再訓練をして、そうして新しい就職先をつくり出していくということもしなければいかぬでしょう。いま政府がやっておるのは、三つ並べた中の二番目だけで、一番目と三番目にちょっと欠けるところがあると思うのですが、どうですか。
○藤井国務大臣 いまは、先ほどもお話ししたように、非常に時代が激しく変化しておるわけでございまして、それに沿うて世の中の需要に対応する職業訓練の実施体制というもの、これも積極的にやらなければならない、このように思うわけでございまして、いろいろな問題を総合的に、現在雇用政策研究会で精力的に検討していただいておりまして、それを新しい経済計画の中にも織り込む、こういったことで配慮していきたい、このように考えるわけであります。
○正木委員 もう時間が迫ってまいりましたので、最後に総理にお伺いをしたいと思います。 経済問題についてはもっと深い議論をしたいと思っておりましたが、時間が足りなくなってしまって残念でございます。また別の機会にいろいろと意見を申し上げたい、議論をしたいと思っております。 政府の責任を追及するのは野党の本分であるし責任であると私は思っております。したがってその立場を放棄するものではありませんけれども、ただ単に福田内閣の失政を拾い上げて、それで追及して事終わるという時代ではない。いまは何としてもやはり景気回復をして、この非常にアンバランスな財政を再建するために――いますぐじゃありませんよ、そのための順序として、景気回復をしていく、景気回復をするためには、一時自分たちの体を切ってでも、血を流すことがあったって、要するに赤字国債を発行するという意味ですが、そういうことがあったって、いまそれをするためにやはり決断をしなければならない場面がある、それはやはり総理に決断してもらって、そうしてやがてはそれが財政均衡につながっていくというようなプロセス、道筋というものをつくり上げていくことこそが大事であるし、そのためには単なる責任追及や単なる攻撃だけではなくて、国民が求めておる安定した雇用、安定した国民生活、また安定した企業経営、こういう時代をつくるためにやはりどうしてもがんばっていかなければならぬという精神で申し上げているのでありまして、そういう意味から言えば、私は、いま一兆円減税は何としても必要な政策である、いまこれがなければ――確かに、全額国債といたしますと国債は一兆円ふえる。そのことは決して一〇〇%善とは申しませんけれども、しかしいまそれが必要なときだ、そういう立場で私は誠心誠意申し上げたつもりであります。そういう意味で、今後第二次補正があるか、また他の政治政策手段をお使いになるか、それはよくわかりませんけれども、少なくとも、もうそろそろ総理のおっしゃるようなトンネルの出口に差しかからないと、日本の経済は大変なことになるということです。また、日本の国民生活が大変なことになるという感じでいっぱいでございます。そういう点で、やはり責任のある立場で総理の答弁をお聞きしたいと思います。
○福田内閣総理大臣 政府といたしますと、当面のことも非常に心配です。しかし、来年のことも再来年のこともその先のことも考えなければならぬ。私は、非常にこだわるようでございますが、これ以上公債を発行する、これはなかなか将来に大きな問題を残していくのじゃないか。来年のことを考えたって、これは大変な公債を出さなければならない。そこへまた一兆円の負担が乗っかっていくわけなんですから、まあ来年あたりからぽつぽつ景気も水面から頭を出す、こういうことになりますれば、金融の民間需要、これがまた始まってくるわけです。それと大量の国債が競合するというようなことになったら、これは大変な事態になってくるのです。当面のこと、これは十分気をつけていかなければならぬけれども、そういう先々のことまでもひとつお考えもいただきたいものだなという感じがするのです。 大変建設的ないろいろな御意見は拝聴いたしましたが、一兆円減税の前提には、今度の二兆五千億の公共投資、これが実行できないんじゃないかなんという御不安があるようでございますが、御審議をいただき、これが成立いたしましたならば、これが完全消化に向かって全力を尽くして、この措置によって七%成長をぜひ実現したい、このように考えております。
○正木委員 ありがとうございました。
○中野委員長 これにて正木君の質疑は終了いたしました。 次回は、明三日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午後六時二分散会