本会議 第3号
- 発言数
- 26 件
- 登壇者
- 8 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1978/01/21
会議録
○議長(安井謙君) これより会議を開きます。 この際、常任委員長の辞任についてお諮りいたします。 社会労働委員長 上田 哲君 建設委員長 小谷 守君 から、それぞれ常任委員長を辞任いたしたいとの申し出がございました。 いずれも許可することに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(安井謙君) 御異議ないと認めます。よって、いずれも許可することに決しました。 —————・—————
○議長(安井謙君) つきましては、この際、欠員となりました常任委員長の選挙を行います。
○大塚喬君 常任委員長の選挙は、その手続を省略し、いずれも議長において指名することの動議を提出いたします。
○遠藤要君 私は、ただいまの大塚君の動議に賛成いたします。
○議長(安井謙君) 大塚君の動議に御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(安井謙君) 御異議ないと認めます。 よって、議長は、社会労働委員長に和田静夫君を指名いたします。 〔拍手〕 建設委員長に安永英雄君を指名いたします。 〔拍手〕 —————・—————
○議長(安井謙君) この際、 北陸地方開発審議会委員 豪雪地帯対策審議会委員 日本ユネスコ国内委員会委員 鉄道建設審議会委員各一名の選挙 を行います。
○大塚喬君 各種委員の選挙は、いずれもその手続を省略し、議長において指名することの動議を提出いたします。
○遠藤要君 私は、ただいまの大塚君の動議に賛成いたします。
○議長(安井謙君) 大塚君の動議に御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(安井謙君) 御異議ないと認めます。 よって、議長は、北陸地方開発審議会委員に粕谷照美君を、 豪雪地帯対策審議会委員に吉田正雄君を、 日本ユネスコ国内委員会委員に片岡勝治君を、 鉄道建設審議会委員に小柳勇君を、それぞれ指名いたします。 —————・—————
○議長(安井謙君) 議員前田佳都男君は、去る四日逝去せられました。まことに痛惜哀悼の至りにたえません。 同君に対しましては、すでに弔詞を贈呈いたしました。 ここにその弔詞を朗読いたします。 〔総員起立〕 参議院はさきに参議院副議長として憲政の発揚につとめられまた国務大臣としての重責にあたられました議員正三位勲一等前田佳都男君の長逝に対しつつしんで哀悼の意を表しうやうやしく弔詞をささげます —————・—————
○議長(安井謙君) 加瀬完君から発言を求められております。この際、発言を許します。加瀬完君。 〔加瀬完君登壇、拍手〕
○加瀬完君 本院議員前田佳都男君は、去る一月四日、東京逓信病院において逝去されました。まことに痛惜哀悼にたえません。 私は、同僚議員各位の御同意を得て、議員一同を代表し、故前田佳都男君のみたまに謹んで哀悼の言葉をささげたいと存じます。 前田君は、明治四十二年和歌山県に生まれ、少年時代から俊秀の誉れ高く、東京帝国大学法学部卒業後、逓信省に入り、昭和十九年小磯内閣の成立を見るや、運輸通信大臣前田米藏氏秘書官に抜てきをされ、当時政界きっての老練な政治家として定評のあったこの郷里の大先輩から一方ならぬ薫陶を受けられたのであります。このことは、後日、君が人情味豊かな政治家として大成する縁となったことでございましょう。 昭和三十年、大阪郵政局長を最後に官界を去り、翌三十一年に、郷土の人々の熱心な推挙により、参議院通常選挙に和歌山県地方区から立候補、みごと初陣を飾って政界への第一歩を踏み出され、以来今日まで四期当選の栄誉を得られたのであります。 参議院議員として政界に登場するや、君の卓抜な識見と旺盛な行動力はたちまち嘱目されるところとなり、初当選の翌年には早くも参議院自由民主党副幹事長、三十四年には大蔵政務次官、三十六年には運輸委員長、四十六年は大蔵委員長の要職を歴任されたのであります。 君が大蔵委員長当時は、時あたかもわが国経済がいわゆる高度成長の時期から福祉重視の経済へと方向転換の時期でありました。また、現在と同じような貿易収支の大幅な黒字と国内における経済不況に苦悩して、かつ加えて、アメリカのドル防衛策を契機とする国際通貨不安が高まり、円の変動相場制への移行を経て大幅な円切り上げを余儀なくされるという国際金融上初めての経験をした時期でございました。 このような情勢の中で、君は財政、税制、金融関係の諸法案の成立に精力的に尽力をされ、景気回復の足取りを固めるために重要な役割りを果たされたのであります。 また君は、四十七年、国務大臣科学技術庁長官、原子力委員長、宇宙開発委員長に就任され、わが国の科学技術の発展に数々の業績を残されました。 最近の世界的資源ナショナリズムの台頭においては、資源制約の克服が重要な政治課題になっております。 君は、いわゆる石油ショック以前の当時において、今日あるをいち早く洞察し、各種資源の長期安定確保のための海洋開発の振興、これら国際協力の推進に尽力され、かつまた国民福祉の一層の向上を図るためのライフサイエンス振興の基盤形成に努め、さらに宇宙開発の面におきましては、各種人工衛星の開発計画を発足させるなど、わが国における宇宙開発の礎を固められたのであります。 昨年の気象衛星「ひまわり」及び実験用通信衛星「さくら」の打ち上げ、本年三月の実験用放送衛星の打ち上げ予定は諸君御承知のとおりであります。まさにわが国は、いま宇宙開発実用化時代の幕あけを迎えているのであります。ここに私は、改めて、これらの衛星はすべて前田君が発足させた開発計画に基づくものであることを報告せざるを得ません。 このように、君は卓越した見識と濶達な気宇をもって、各要職において敏腕をふるわれたのであります。しかし、君の政治生活を最も強く印象づけるものは、四十九年から三年間、参議院副議長として当時の河野議長を助け、参議院改革に尽瘁されたことでありましょう。 天性寛容にして愛情豊かな君は、この上なく人間関係を大切にされ、さらに限りなき誠実と真摯なお人柄は、与野党の立場を超えて厚い信望を集めておられましたが、副議長としては、常に超党派の立場から、公正無私、事を運ぶに綿密細心、もって与野党間の対話と協調に努め、遺憾なくその重責を果たされました。改めて私どもは重ねて深い敬意と感謝の念をささげるものであります。 いまや、文字どおり与野党伯仲という政治情勢のもとにあって、与野党間におけるきめ細かな対話がますます必要とされている今日、君のごとき人材を失うことは、ひとり参議院のみならず国家にとってもこの上ない大きな損失であり、惜しみても余りあるものがあります。 私どもは、君の献身的努力によって培われた好ましい参議院運営の萌芽を一層確かなものに育ててゆくことを誓い、ただひたすらに在天のみたまの安らかにお休みくださることをお祈りするばかりであります。 ここに謹んで君の輝かしい御足跡を振り返り、その豊かな人となりをしのびながら、心から御冥福をお祈りいたしまして追悼の言葉といたします。(拍手)
○議長(安井謙君) これにて午後三時まで休憩いたします。 午後二時四十五分休憩 —————・————— 午後三時三分開議
○議長(安井謙君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。 日程第一 国務大臣の演説に関する件 内閣総理大臣から施政方針に関し、外務大臣から外交に関し、大蔵大臣から財政に関し、宮澤国務大臣から経済に関し、それぞれ発言を求められております。これより順次発言を許します。福田内閣総理大臣。 〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕
○国務大臣(福田赳夫君) 新しい年を迎え、第八十四回国会が再開されるに当たり、施政の基本方針を申し述べ、国民の皆様の御理解と御協力を得たいと存じます。 ちょうど一年前、私はこの壇上から、世界はいま歴史始まって以来の転換期に直面していることを強調し、この難局に処するための行動原理は、協調と連帯にあると申し述べました。この一年の国の内外の動きを見て、いよいよその感を深くするのであります。 今日、世界の各国が当面している資源・エネルギー問題南北問題、海洋問題、さらに通商上の摩擦の増大、国際通貨の不安定、失業問題などは、そのいずれをとってみましても、一国が単独で処理し得るというものはなく、国際的な協調と連帯なくしては解決できない課題ばかりであります。 各国は相互に助け合い、譲り合い、補い合って、これらの課題を解決し、世界全体の平和と繁栄を維持する中で、それぞれの国益を実現するほかに道はないのであります。協調と連帯こそいよいよ国際社会の行動原理でなければならず、そのことは、次第に広く理解されつつあるものと確信いたす次第でございます。 思えば、戦後三十余年、国民の営々たる努力によって、わが国は目覚ましい経済発展をなし遂げたのでありますが、その反面、物心両面にわたって社会に若干のゆがみを招いたこともまた否めないのであります。いまや、人類は貴重な資源を過度に消費することは許されません。また、その中で、個人や集団がエゴを突き合わせていては生きていけないことも明らかであります。この際、われわれはさらに一歩を進め、衆知を集め、活力を動員して、より健全でより公正な社会を建設しなければならないと思うのであります。われわれがその決意を固めて行動する限り、当面する困難は、すべて新しい飛躍への好機であり、次の発展の礎石に転化し得べき魅力ある課題となり得るのであります。 石油危機は、未開発の無限のエネルギーを開発し、人類共有の資産を活用して、子孫とこれを分かち合うために、新しい知恵を発揮すべき機会であります。さらに今日、国際経済社会のあつれきは、諸国民の自制と努力によって、協調と連帯に基づく建設的な新しい秩序を確立するための契機となるのであります。 私は、これらの課題を正面から受けとめ、その解決に取り組むことが、二十一世紀へ向かうわれわれの使命であると信じ、この使命の達成のために国民の皆様の合意を得たいと存じます。 当面私が最も心配しているのは、世界経済の動向であります。四年前の石油危機で世界は揺り動かされました。いまなお、その衝撃から完全には立ち直っておりません。石油を産出しない発展途上国の困窮は、言葉で言い尽くせないものがあります。そして、その発展途上国の発展に協力すべき立場にある先進工業国も、その多くはこの打撃から抜け出すことができない状況であります。しかも、長期にわたるこのような混乱の中から、国家的なエゴイズム、すなわち保護主義への転換、偏狭なナショナリズムの台頭という危険な兆しもあらわれてきておるのであります。 今日のこの状況を、一九三〇年代、昭和初期の様相になぞらえる人があるのであります。私も、確かにそのような一面があることを痛感いたします。 一九二九年、米国の恐慌に端を発した不況は全世界に波及しました。世界各国は、この不況から脱出するのに、保護主義、ナショナリズムをもってしたのであります。その結果、不況はさらに深まり、やがて社会不安につながっていったのであります。深刻な不況と社会不安からの脱出のあえぎは、ついに第二次世界大戦争へと発展いたしたのであります。不幸な歴史は繰り返してはならない。一九三〇年代の過ちは断じて繰り返してはならないのであります。 今日の厳しい国際環境の中で、各国が自国中心に考えますれば、それぞれ不平や不満があることもあるいは当然かもしれません。しかしながら、偏狭なナショナリズムは、一波万波を呼んで、世界的混乱を招くことは必至であります。 昨年五月、主要先進国七カ国の首脳は、一堂に会して、そのような過ちを繰り返さないことを誓い合い、世界経済安定のための協力を約束しました。その後の世界経済は必ずしも思わしい結果となっていませんが、各国は、いまもその誓いに従いまして努力を重ねておるのであります。 政府は、米国、ECなど主要先進諸国との話し合いを精力的に進めております。特に日米経済関係につきまして申しますれば、これは、日米二国間の経済問題というより、世界第一の経済大国である米国と、第二の立場にあるわが国とが、相携えて世界経済にどのように対応するかという問題であります。 米国には経常収支赤字過大の問題があり、わが国には黒字過剰の問題があります。そのいずれもが、世界経済安定の立場から反省を求められておるのであります。 このような背景のもとに、このほど日米両国の間で話し合いが行われ、米国はドル価値の安定に、日本は経常収支黒字の是正に、それぞれ努力することとなったことは、きわめて重要な意味を持つものであります。 政府は、ECなど主要先進諸国との通商上の調整問題につきましても、国際協調を旨として、懸案の解決に努力してまいる所存であります。 わが国が国際的観点から見て何よりも解決を急がなければならない問題は、黒字過剰問題であります。この見地から、内需主導型の経済運営により輸入を拡大するとともに、東京ラウンド交渉への積極的取り組み、関税の前倒し引き下げ、残存輸入制限品目の割り当て枠の拡大、部分自由化など一連の措置を強力に推進し、市場の開放に努めます。 自由貿易体制の発展は、世界の繁栄とわが国自身の発展にかかわる基本的な要請であり、そのためにこそ、わが国は忍ぶべきは忍び、進んでこれらの措置をとらなければならないのであります。 もとより政府は、これらの措置により、農業を初めとする国内産業に不安動揺を与えることがないよう慎重に配慮しつつ、賢明な選択を行ってまいる所存であります。 また、南北問題につきましては、政府開発援助を今後五年間に倍増以上に拡大し、物心両面にわたる協力の強化に努力いたします。 さて、とのような国際情勢の中で、昨年のわが国経済は、総体として、民間需要の盛り上がりに乏しく、生産活動は一進一退という状況でありました。このため、政府は、昨年九月に総合経済対策を決定し、公共投資の大幅な追加などによって景気の着実な回復と経常収支の黒字の縮小を図るべく、最大限の努力を払いました。 しかしながら、その後の急激な円高もあって、思うような効果を上げることができず、国民生活安定の基盤として最も重視さるべき雇用情勢についても、目立った改善が見られなかったのであります。 その反面、最近、物価はきわめて安定してきておるのであります。私は、いまこそ思い切った景気浮揚策をとるべきであり、またそれができると考え、本年の政策の目標を景気回復に集中する考えであります。 さて、本年の国内経済を展望しますと、輸出に景気回復の牽引力を期待することはできません。また、生産設備が過剰となっているなどの現況から見て、設備投資に大きな役割りを期待することも困難な情勢であります。このような環境の中で、景気を浮揚する手段は、これを財政に求めるほかないのであります。 そこで、私は、四月から始まる五十三年度予算を待たず、年初早々からこの考え方を実行すべきものと考えたのであります。 私は、五十三年度予算に先立ち、五十二年度第二次補正予算を提案し、いわゆる十五カ月予算の構想のもとに、当面切れ目のない財政運営を行ってまいる方針であります。また、五十三年度予算におきましても、公共事業等の規模を超大型のものとし、積極的な財政運営を行うことといたしました。 もとより、積極財政、これによる内需振興だけで今日の困難な事態の乗り切りができるとは思いません。今後における産業構造の転換を展望しつつ、いわゆる構造不況業種への対策、円高によって打撃を受けている中小企業対策、雇用安定対策などを、きめ細かく、かつ、強力に推し進めなければならないと思います。 政府は、財政を中心に国家資金を総動員し、また、有効と考えられるすべての施策を実施し、総力を挙げて景気回復に取り組む決意を固めた次第でございます。国民の皆様も、地方公共団体も、企業も、政府の決意と相呼応して、事態の打開のため積極的に協力されるよう強く要請いたします。 しかしながら、ここで特に申し上げたいことは、今回の財政措置は、当面の経済対策にとどまらないのみならず、物心両面にわたるわが国の歴史的な社会開発を目指しておるということであります。 わが国は、戦後驚異的発展をなし遂げ、産業は整備され、国民生活も向上いたしましたが、生活をめぐる環境は相対的に立ちおくれておるのであります。今回、景気回復の手段として公共投資をその中心に選びましたが、それが景気波及力で最もすぐれているというだけでなく、この際、社会資本の立ちおくれを取り戻す好機であると考えたからであります。 わけても、住宅は国民の心のよりどころであり、健全な家庭の支えであります。政府は、この住宅の建設に特に重点を置くことにいたしました。また、現在及び将来にわたる国民生活の基礎となる道路、鉄道、通信、港湾、河川、農業基盤、林野、防災などに大幅な投資の拡大を行います。さらに、上下水道、公園、学校、病院、保健福祉、社会教育、体育施設など、地域の生活環境の充実には特に注意を払いました。 こうしたことによって、婦人、青少年を含め、広く地域住民の創造的な参加と連帯を求め、環境を保全し、地域的特性を生かしつつ、歴史と伝統文化に根ざした豊かな居住圏を生み出してまいりたいと思うのであります。震災その他の災害につきましても、積極的に対策を推進してまいります。 私は、また、国家百年の計に立って、人づくりを重視し、教育、学術、文化、スポーツなどの振興に格段の努力を払ってまいります。 また、高齢化社会の到来に備えつつ、国民生活のより一層の安定を図るため、社会保障の充実を初めとする広範な対策を整備してまいります。 さらに、将来にわたって、わが国経済社会の発展を維持するため、科学技術の振興、原子力を初めとする新エネルギーの開発、省エネルギーの推進、海洋開発などに努めます。 また、国民生活の安全保障にかかわる食糧を安定的に確保するため、総合的な自給力の向上を図ることを基本として農林水産業の体質の強化に努めてまいります。 復帰後五年を経た沖縄につきましては、現地の状況を踏まえつつ、その振興開発を進めます。 政府は、このような積極的な財政措置を講じますが、これによって経済社会の秩序に混乱を来すとは考えておりません。物価が着実な安定基調にあるからであります。 物価の安定こそは、雇用の安定と並んで国民生活安定の基盤であり、社会秩序のかなめであります。積極財政運営の過程におきましては、通貨の動向、国債の消化、物資の需給などに細心の配慮をいたし、物価の動向にいささかの不安もないよう、最大の努力をいたしてまいります。 さて、政府はこのようにして、五十三年度の経済成長の目標を七%程度に置き、その実現に全力を傾けてまいります。これによって、日本経済の五年越しの長いトンネルも、ようやく出口がはっきりいたしてまいるのであります。そして、トンネルを抜け出たその先には、私がかねがね主張している安定成長社会への道が開かれるのであります。新しい時代は、もと来た道、つまり成長至上主義の社会では断じてありません。成長の高さよりも、その質をとうとぶ社会、活力を秘めながらも静かで均衡のとれた社会であります。それは、国の流れの大きな変化であり、転換であります。 重要なことは、この変化と転換に、国はもとより、地方公共団体も、企業も、家庭も、正しい対応の姿勢を示すことであります。日本の未来は、まさに、その対応ができるかできないか、そのいかんにかかっていると言っても過言ではないのであります。 政府が行政改革に着手したのも、このような認識に基づくものであり、今後とも綱紀を正し、行政の合理化、効率化を着実に進めるよう努力してまいります。財政の健全化につきましても、引き続き努力する所存でございます。 こうした転換の時代に当たって、とりわけ国民の生命、自由、財産を守り、社会的正義を貫くために欠かすことのできない要件は、法秩序の維持であります。政府は、法秩序の厳正な維持に努め、暴力によってこれを破壊しようとする者に対しましては断固たる態度で対処し、国民生活の安全を守る決意であります。 ところで、昨今の国際関係の多元化、多極化の趨勢と、わが国自身の国際的地位の急速な向上という事態を背景といたしまして、わが国の外交は、世界のすべての地域にわたり、また、政治のみならず、経済、社会、文化などの各分野に及ぶ広範多岐な努力を求められておるのであります。 わが国の近隣諸国である米国、中国、ソ連、韓国、さらにその他のアジア諸国との関係が、わが国外交にとってきわめて重要であることは申すまでもありませんが、さらに、わが国が世界のすべての国と友好、互恵の関係を維持していかなければならない国柄であることを考えますれば、ヨーロッパ、大洋州、中近東、中南米、アフリカの国々との間に友好と協力の関係を強化するための措置を講じていくことも、また現下のわが国外交の急務であります。 昨年夏、私が東南アジア諸国を歴訪して、これら諸国民との間に相互理解に基づく真の心と心の触れ合う信頼関係の構築に努めましたのも、このような外交努力のあらわれにほかなりません。 また、このたびの中近東諸国に対する外務大臣の公式訪問も、この地域が現下の国際政治の焦点であり、かつ、わが国民生活にとって重要なかぎを握る地域であることにかんがみ、中近東諸国とわが国との関係を強化するための努力の一環をなすものであります。 改めて申すまでもありませんが、このような広範なわが国外交活動の中軸となっているのは、米国との関係であります。 日米関係は、わが国にとって、他のいかなる国との関係にも増して重要であり、日米安全保障条約を基軸として確保されている両国間の緊密な友好協力関係を維持し発展させることは、引き続きわが外交の基本的政策であります。今日のわが国の安定と繁栄が、国民全体の英知と努力により達成されたものであることは申すまでもありません。同時に、その背景として、戦後今日に至るまでの米国との密接な協力関係が大きな役割りを果たしたことも、また明らかであります。日米両国の提携と協力を強化し、さらに発展させることが、両国相互間の関係においてのみならず、広く世界全体の平和と繁栄を確保するために、ますます重要となっているとの確信に立って、これをさらに揺るぎないものといたしたいと考えます。 日中両国の関係は、国交正常化後五年を経て、着実かつ順調に発展しております。わが国としては、日中共同声明を誠実に遵守することが両国関係の基本であるとの認識に立って、両国間の友好関係をさらに強固で永続的なものとするよう努力してまいる所存であります。また、とのことが、アジアの平和と安定にとってきわめて重要であると考えるのであります。 このような観点に立って、日中平和友好条約に関しては、双方にとって満足のいく形で、できるだけ速やかにこれが締結されるよう真剣に努力してまいりましたが、交渉の機はようやく熟しつつあるものと判断されますので、さらに一段の努力を重ねる決意であります。 昭和三十一年の国交回復以来、日ソ関係は、経済、文化、貿易、人的交流などの広範な分野において、着実に発展してまいりました。しかしながら、日ソ間に真の相互信頼に基づく安定的な関係を築くためには、日ソ間の最大の懸案である北方領土の祖国復帰を実現して平和条約を締結することが不可欠であります。 政府は、このような見地から、先般、外務大臣をソ連に派遣し、平和条約締結交渉を行わせました。遺憾ながら、今回の交渉においても、領土問題に対するソ連の態度はかたく、問題解決への前進は見られませんでしたが、政府といたしましては、今後とも一層粘り強く交渉を継続してまいる所存であります。 国の防衛は、国家存立の基本であり、政府の果たすべき最大の責務であると言わなければなりません。政府は、日米安全保障体制の円滑かつ効果的な運用を確保し、必要な防衛力の整備に力を注いでまいる所存であります。 しかしながら、防衛の根本は、国民みずからの祖国を守る気概であり、国民的合意であります。近年、防衛問題に関する国民の理解と関心が高まりつつあることは、まことに喜ばしいことでありますが、防衛問題が国民全体の問題として、広く各方面において建設的に論議されることを期待してやみません。 なお、この際付言いたしますと、昨年七月の領海法及び漁業水域に関する暫定措置法の施行に伴い、わが国漁船の保護、領海警備等の業務が飛躍的に増大しましたが、政府は、これらの水域における保安体制につきましても整備増強に努め、万全を期する所存でございます。 以上、当面する内外の諸課題と、政府の施政の基本方針について申し述べましたが、これらを踏まえて、私の政治に対する基本理念を要約して申し述べます。 第一は、平和に徹する信念を貫き通すことであります。 国際紛争の解決はこれを武力に求めないという日本国民の決意は、戦後三十余年にして、ようやく全世界の認識と理解とを深めつつあります。わが国のように国力の大きな国が、軍事大国への道を選ばず、ひたすら平和国家への道を歩み続けることは、世界の歴史の上でも類例を見ない試みであり、世界平和のためにはかり知れない意義を持つものと信じます。私は、この際、特に心を新たにいたしまして、この信念を貫き通す決意であります。 第二は、国際社会におけるわが国の責任を果たすことであります。 相互依存関係の深まる国際社会の中におきまして、わが国の立場はますます重きを加え、その国際的役割りに対する世界の期待も急速に増大しております。われわれは、世界の平和と繁栄のために積極的にその責任を遂行し、国際社会で名誉ある地位を確立しなければならないと考えます。 第三は、人づくりに力を尽くすことであります。 当面、国民の関心、政治の焦点は景気、経済に集中しておりますが、国づくりは国政のかなめであり、そのことは片時も忘れてはならないことと考えます。国づくりの基本は人であります。無気力と放縦に流れる社会には安定も向上もあり得ません。わが国が当面する内外の困難を乗り越え、新しい時代に向かって力強く前進を続けるためには、人々が大いに自己をみがく、豊かな創造力を培う、そしてその成果を踏まえて社会公共に奉仕する、また、それを喜びとし、誇りとする、そのような国民的気風を養わなければならないと思うのであります。私は、日本国民の一人一人、中でも次代を担う青少年が、自信と誇りを持って、二十一世紀に飛躍できるような、そのような日本社会の基盤を固めたいのであります。 以上は、我が国が直面している内外情勢の変化に対処するために、進んで選択すべき道と考えます。この道を進むに当たりましては、犠牲と苦痛が伴うこともありましょう。しかし、国民の皆様の御理解と御協力がある限り、必ずや明るい展望を切り開くことができるものと信じます。政府は、その責務を果たすために最善を尽くします。 国民の皆様の御理解と御協力を切に要望してやみません。(拍手) —————————————
○議長(安井謙君) 園田外務大臣。 〔国務大臣園田直君登壇、拍手〕
○国務大臣(園田直君) 第八十四回国会が再開されるに当たり、わが外交の基本方針につき所信を申し述べます。 相互依存関係をますます深めつつある今日の国際社会において、外交は、国民生活に密接に結びついております。しかも、今日のわが国は、協調と連帯の理念に基づき、国際社会の平和と繁栄のために積極的な貢献を行っていくことが強く期待されております。 私は、この認識のもとに、国民各位の御理解と御支持を得つつ、世界に役立つ日本にふさわしい外交を展開してまいりたいと考えます。 今日わが国を取り巻く国際環境は、まことに厳しいと言わねばなりません。 一九七〇年代前半に起きた石油危機を契機とする世界経済の混乱は、多くの国に失業、インフレ等の深刻な社会問題を発生せしめ、ひいては、保護主義的な風潮を生んでおります。かかる状態を放置し、自由貿易体制の崩壊を招くような事態となれば、国の生存を国際環境に大きく依存するわが国は、はかり知れない打撃をこうむることとなります。 二百海里時代の到来も、わが国にとり深刻な事態であり、また、わが国を取り巻くエネルギー情勢も楽観を許しません。 政治情勢も、近年における産油国の発言力の顕著な増大という特徴もあって、多極化の傾向が一層進み、国際政治の動向は複雑かつ予測しがたいものとなっております。確かに、米ソ両大国を初めとする各国の努力もあり、国際社会の平和と安定を揺るがすような事態は回避されておりますが、朝鮮半島、中東、アフリカ等における緊張の継続は、国際政治の不安定要因になっているのであります。 このような情勢を前にして、わが国外交の前途は、まさに多難と言わざるを得ません。 しかも、わが国は、いまや自由世界第二位の経済力を有するに至っており、その動向の国際社会に与える影響も大なるものがあり、その経済力にふさわしい役割りを国際社会において積極的に果たすことが強く期待されております。わが国がこのような期待に積極的にこたえて行動しない限り、国際世論がわが国に背を向けるような事態がないとは言い切れない状況であると申しても過言ではございません。 私は、いまこそ、わが国が世界に役立つ日本となるために行動を起こすべきときであると信じます。これは、決して、容易なことではありません。苦痛を伴う発想の転換を必要とするところも多々ありましょう。しかし、資源も乏しく、国土も狭く、国民の英知と努力のみに頼って国の存立を図らざるを得ないわが国にとって、国際社会との協調は、その外交の絶対の前提であり、そのためには、時に勇気をもって前進することが必要であります。私は、いまこそそのときであると考えます。 わが国が世界に役立つ日本となるための行動の基本的方向は、次のようなものでなくてはならないと考えます。 第一に、平和に徹し、いかなる国とも敵対的関係をつくらないことであり、他国に脅威を与えるような軍事大国にならないことであります。 ただし、このことは、国際情勢の現実を直視し、油断をしない心構えと、そのための準備を伴ったものでなくてはなりません。日米安保体制を堅持し、必要な防衛力を整備することは、この意味で必要なことであります。 第二に、先進民主主義国として、世界の繁栄に積極的に貢献することであります。 このためには、自由貿易体制を守るべく、みずからの国内市場の一層の開放を含むあらゆる努力を行うこと、開発途上国の安定と繁栄に積極的に寄与すること、さらには、国際社会の重要な一員としての立場から、国際社会の協調と発展のために進んで役割りを果たすことが不可欠であります。 第三には、政治体制のいかんを問わず、国の大小を問わず、また、地理的遠近のいかんを問わず、広く世界の国々との間に交流を深め、意思の疎通を図り、もって相互信頼関係を築くことであります。 以上の方向に向かって行動するに当たり、私が特に強調したいことは、世界の平和と繁栄なくしてはわが国の平和と繁栄もあり得ないという事実を深く認識し、国際協調の精神に徹することであります。 わが国民の平和への強い願い、その英知と勤勉は、すでに世界の敬意を集めております。これに加えて、わが国の国際協調の姿勢に対する認識が広まれば、わが国が世界に役立つ日本としての地位を不動のものとすることができましょう。そうすることによって、多難なわが外交の前途にも道が開けてくると私は確信をいたします。 次に、このような方向での外交努力の具体的な進め方について、所信を申し述べます。 まず、国際経済について申し述べます。 わが国にとり、当面の急務は、戦後最大の試練に直面しておる世界経済の回復と繁栄に貢献することであります。 わが国は、昨年来数次にわたる景気対策を講じてまいりました。これは、わが国内経済のためのみならず、世界経済全体の回復に貢献することを目的としたものであります。今般、政府が、五十三年度経済成長率に関して先進諸国中最も高い目標を決定しましたのも、このような意図に基づいております。また、さきに政府が、東京ラウンドヘの積極的な取り組み、関税の前倒し引き下げ等の対外経済政策を決定しましたのも、国際協力推進の観点からであります。 このようなわが国の努力は、米国、ECを初めとする関係諸国からも高く評価されております。特に米国につきましては、昨年末の牛場国務大臣の訪米と、さきのストラウス通商交渉特別代表の訪日をもって、昨秋以来の日米両政府間の協議は決着を見るに至りました。このように、世界的な意味合いを有する日米両国の経済関係の基盤を強化し得たことは、まことに欣快と存じます。他方、ECとの間にも、閣僚レベルの往来を含め、従来にも増して緊密な関係が保たれております。 政府は、今後とも、主要先進民主主義諸国と協力しつつ、保護主義の抑制と自由貿易の発展を図り、世界経済が安定的に拡大するよう積極的に寄与してまいる所存であります。 南北問題は、国際社会の平和と安定にもかかわる重大な問題であります。世界経済が混迷し、開発途上国がその影響をとりわけ強く受けておる今日こそ、開発途上国の経済困難を打開し、さらにはその経済社会開発を推進すべく、積極的に協力する必要があります。政府としては、今後とも経済協力を積極的に推進すべく努力する所存であり、政府開発援助に関しては、今後五年間に二倍以上に拡大すべく、質、量ともに充実を図ってまいる決意であります。また、共通基金を含む一次産品問題及び債務累積問題等の解決にも積極的に取り組んでまいります。 なお、国内資源に恵まれないわが国が、国内経済の健全な運営を確保し、もって国際社会の繁栄に貢献するためにも、原子力を含む資源・エネルギーの安定供給を確保すべく、外交上の努力を重ねる必要があると考えます。 次に、世界各地域との関係について申し述べます。 日米安保体制を含む米国との友好協力関係は、わが外交の基軸であります。また、わが国と米国との間の深い相互信頼に基づいた協力関係は、世界の平和と繁栄に至大の重要性を持つに至っております。わが国としては、米国との間にあらゆる分野において率直な意思の疎通を図りつつ、両国間の成熟したパートナーシップの一層の強化を図るとともに、それを基盤に、国際社会全体の平和と繁栄に大きく貢献すべく引き続き努力する決意であります。 米国と並び、西欧諸国も、国際関係の安定化に重要な役割りを果たしております。わが国としては、西欧諸国並びにカナダ、豪州及びニュージーランドをも含めた先進民主主義諸国との友好協力関係の促進に一層努力してまいります。 アジア諸国とわが国は、平和と繁栄を分かち合う隣人関係にあります。これら諸国との協力を深め、心の触れ合う相互信頼関係を築き上げることは、わが外交の重要な課題であります。 昨年八月の福田総理のASEAN諸国及びビルマ歴訪によって飛躍的に拡大、強化されたこれら諸国との友好協力関係を基礎として、これら諸国の経済発展と強靱性の強化のための自主的な努力に対し、積極的に支援を進めてまいる所存であります。 わが国は、また、インドシナ諸国との間にも相互理解に基づく新たな協力関係の醸成を図り、もって東南アジア全域にわたる新しい協調的かつ建設的な秩序の形成に貢献してまいります。 わが国と韓国との関係につきましては、これを一層幅広いものとするため、努力を重ねてまいる所存であります。特に、政府としては、すでに国会の御承認を得ました日韓大陸だな協定が速やかに実施に移され、大陸だなの開発に着手できますよう、関連の特別措置法案がぜひとも今国会で早期に成立することを強く希望してやみません。 北朝鮮との関係につきましては、今後とも、貿易、人物、文化等の分野における交流を漸次積み重ねることにより、何よりもまず相互理解の増進を図ることが肝要と考えます。 また、わが国といたしましては、朝鮮半島に一日も早く緊張の緩和がもたらされるよう、そのための国際環境づくりに積極的に協力するとともに、南北双方の当事者が実質的な対話を再開することを強く希望するものであります。 政府は、インド亜大陸諸国との友好協力関係を一層強化し、この地域の安定と発展に寄与してまいります。 体制の異なる国々との間の友好関係の増進も、また、私の最も重視するところであります。 日中両国関係のあり方がアジアの平和と安定に対して有する重要性にかんがみますれば、国交正常化後五年を経た今日、両国の関係が順調に進展していることは喜ばしいことであります。政府といたしましては、日中共同声明を誠実に遵守することが両国関係の基本であるとの認識に立って、両国間の善隣友好関係の一層の発展を図る考えであります。 懸案の日中平和友好条約につきましては、双方にとって満足のいく形で、できるだけ速やかにこれが締結されるよう、真剣に努力してまいりましたが、交渉の機はようやく熟しつつあるものと判断されますので、さらに一段の努力を重ねる決意であります。 日ソ関係は、一九五六年の国交回復以来、貿易経済関係等を中心に着実に発展しております。また、漁業面では、両国間の協力協定のための交渉を進める所存であり、さらに科学技術及び文化の面においても相互の交流を進推するべく努力する考えであります。 しかしながら、日ソ関係を真に安定した基礎の上に発展させるためには、北方四島の一括返還を実現し、平和条約を締結することが不可欠であります。私は、そのため、今月八日から十一日までソ連を公式訪問し、ソ連政府首脳との間に平和条約交渉を行い、わが国の立場を明確に伝えるとともに、率直な意見交換を行ってまいりました。領土問題についてのわが国とソ連との立場には、なお隔たりがありますが、私は、国民の総意を背景に、ソ連との率直な話し合いを積み重ね、戦後長きにわたる日ソ間に残された領土問題を解決し、平和条約を締結するため、一層の決意と努力を行ってまいる所存でございます。 東欧諸国との関係は順調に発展してきておりますが、今後とも相互理解と友好関係を深めていく所存であります。 わが国と中東諸国との関係は、近年とみに深まってきております。私は、今般、イラン、クウェート、アラブ首長国連邦及びサウジアラビアを親善訪問し、政府首脳と親しく意見の交換を行いましたが、明日に向かって躍動しつつあるこれら諸国の指導者が、穏健かつ現実的な政策のもとに、国づくりに日夜腐心されている姿を目の当たりに見、深い感銘を覚えました。わが国との友好協力を心底から希望している中東諸国との今後の関係発展は、単に経済技術の分野にとどまらず、文化、教育、人的交流その他各般の分野にわたらなければならないことを痛感した次第であります。政府は、今後とも頻繁かつ継続的な交流と対話によって、心の結び合う関係を築き上げていくための努力を続ける所存であります。 中東和平問題に関しましては、サダト・エジプト大統領の歴史的なイスラエル訪問を契機に新たな局面を迎えており、関係諸国の精力的な和平努力を通じ、公正かつ永続的な和平が一日も早く実現することを希望してやみません。 アフリカ諸国との間では、今後とも友好親善関係を一層深めてまいります。南部アフリカ問題につきましては、わが国は、人種差別政策の速やかな撤廃を希望いたします。 中南米諸国とわが国との関係の緊密化も、近年、顕著なものがあります。本年は、日本人のブラジル移住七十周年でもあり、六月には皇太子同妃両殿下がブラジル、パラグァイ両国を訪問せられることになっております。わが国としては、われわれの先達が辛苦と努力をもって築き上げました中南米諸国との友好関係をさらに強化発展すべく努力してまいりたいと存じます。 国際連合に対する協力は、国際協力を旨とするわが国外交の柱の一つであり、わが国としては、今後、国連の諸活動に関し、一層積極的役割りを果たしてまいる所存であります。 本年五月に開かれる国連軍縮特別総会におきまして、わが国は、何よりも核軍縮の分野で具体的進展が見られ、かつ、通常兵器の国際移転問題につき何らかの国際的努力が開始されることを強く希望するものであります。 なお、新しい海洋秩序確立のための国際的努力も、わが国にとってまた重要な意味を有するものであり、政府は、海洋法会議の早期妥結のため一層の努力を払う所存であります。 今日のごとく相互依存関係が深まっている国際社会にあっては、世界各国の諸国民との間の相互理解の増進を図ることがますます必要となっております。政府は、海外における広報活動の一層の強化を図るとともに、国際交流基金を中心とする諸外国との間の文化交流を一層促進してまいる所存であります。 以上、当面のわが重要外交施策につき、所信を申し述べました。 私は、かねてから、外交の基盤は国内にあると信じ、外交とは常に国民の理解と支持を得たものでなければならないと考えておりました。国民から遊離した外交によっては、真の国益を確保することはできません。私は、このような考え方に立って外交を進めてまいる考えであります。ここに、国民各位の一層の御理解と御支援をお願いする次第であります。(拍手) —————————————
○議長(安井謙君) 村山大蔵大臣。 〔国務大臣村山達雄君登壇、拍手〕
○国務大臣(村山達雄君) 本日、第八十四回国会の再開に当たり、今後における財政金融政策について所信を申し述べますとともに、昭和五十三年度予算の大綱を御説明いたしたいと存じます。 わが国を取り巻く内外の経済環境はきわめて厳しいものがございます。 世界経済は、石油危機によってもたらされた激しい経済変動後の調整過程にありまして、いまだに安定した成長路線を見出せない状況にあります。非産油発展途上国の経済的困難は申すまでもありませんが、先進諸国におきましても、総じて民間経済活動の盛り上がりを欠き、高水準の失業や過剰設備を抱え、中には引き続き物価上昇に悩んでいる国もあります。昨年、先進諸国がその成長率を相次いで下方修正せざるを得なかったことは、この意味で象徴的であります。 転じて、わが国経済を見ますと、石油危機により大きな打撃を受け、昭和四十九年度には戦後初めてのマイナス成長を記録しましたが、その後は緩やかな拡大基調を続け、米国、西独と並んで世界経済の回復に貢献することが期待されております。 しかしながら、生産、在庫、雇用、企業収益等に関する経済諸指標の推移は、いまなお、わが国経済が直面しているきわめて困難な諸問題を端的に物語っております。また、経常収支は大幅な黒字基調を続けており、黒字幅縮小を求める海外からの要請も高まっているほか、昨年、特に九月以降生じた円相場の急激かつ大幅な上昇によりまして、国内経済に対するデフレ効果も懸念されているところでございます。 このような内外の経済情勢のもとにおきまして、財政金融政策の果たすべき使命にまことに重大なものがあります。私は、特に次の三点を当面の緊要な課題として、政策運営に万全を期してまいりたいと存じます。 まず第一は、わが国経済を速やかに着実な回復軌道に乗せることであります。 すなわち、雇用の安定と増大を図り、国民生活の安定を確保するためには、国民各層における経済の先行きに対する不安感を払拭して、企業の健全な活動を維持発展させることが必要であります。 このために、政府は、昭和五十三年度において七%程度の実質成長を目指し、経済運営に最善を尽くす考えであります。先般の総合経済対策等の一連の施策は、生産、出荷、雇用等に徐々にその効果をあらわしつつありますが、経済の現況に顧み、財政が主導的な役割りを果たすことにより、景気の速やかな回復を図ることといたしました。特に公共事業等については、いわゆる十五カ月予算の考え方のもとに、思い切って事業規模を拡大したところであります。 また、国民経済の大宗を占める民間経済の自律回復力を喚起する必要があり、政府は、住宅建設や設備投資を促進するため、予算、税制、財政投融資計画等を通じ所要の施策を講じることといたしました。 以上の諸施策によりまして、総需要の量的な拡大を図るとともに、わが国経済が環境の変化に適切に対応していくため、産業構造の転換を促進し、雇用の安定に資する個別的な施策を推進することも肝要であります。このため、中小企業対策を充実するほか、特定不況産業に対する構造改善対策、離職者対策等について新しい措置を講ずることといたしました。 このような各般の施策を推進するに当たって留意すべきは、物価の安定であります。最近の物価の動向は一段と落ちつきを見せておりますが、政府は、引き続き低生産性部門及び流通機構の近代化等を促進するとともに、円高による輸入物価の低下を消費者物価により反映させるよう努めていく所存でございます。また、最近の金融情勢等から見て、公債の発行が民間金融を圧迫するおそれはないと考えますが、今後の財政金融政策の運営に当たりましては、いやしくも物価の安定を損なうことのないよう十分配慮してまいりたいと存じます。 第二は、対外均衡の回復を図るとともに、世界経済の安定と発展に貢献するよう努めることでございます。 各国経済の相互依存関係が著しく緊密化しておる今日の国際環境のもとにおいては、いずれの国も自国のことのみを考えて経済運営を行うことはできません。わが国もまた、世界経済の安定と発展のため積極的に貢献していかなければなりません。 さきに申し述べましたとおり、わが国の経常収支は大幅な黒字基調を続けておりますが、これをめぐって対外的にもいろいろな摩擦が生じるに至っております。また、最近、保護主義的な動きの高まりも懸念されるところであります。このような状況に対し、わが国としては、経常収支の黒字幅を縮小するよう努めるとともに、自由貿易体制を維持強化していくことが急務であります。このため、内需を拡大して輸入の増大に資することを基本としながら、市場開放政策を含め、各般の対外経済対策を強力に推進する所存でございます。なかんずく、本格的段階を迎えた東京ラウンド交渉が速やかに成果を挙げるよう、その妥結に先立って、乗用自動車など約百二十品目について関税率の引き下げを繰り上げ実施するなど、国際協調のために一層の努力を続けてまいりたいと存じます。 さらに、世界経済の均衡のとれた発展のためには、発展途上国の経済発展を支援していくことが必要であります。わが国としても、経済協力を活発に展開することとし、その大幅な拡充を図ることとしております。 第三は、財政の健全化を図るため一層の努力をすることであります。 わが国の財政は、大量の公債、特に特例公債への依存から脱却し、財政の健全化を図りつつ、同時に、速やかに景気を回復させるというきわめて困難な問題に直面しております。 このため、一般会計予算の編成に当たりまして、投資部門と経常部門とに分けて検討し、投資的経費については、国民生活充実の基盤となる社会資本の整備を促進しながら、景気の回復を早めるため、積極的にその規模を拡大することとする反面、経常的経費については、財政節度の維持に努める見地から、極力その規模を抑制することといたしました。また、公債発行につきましても、経常的経費の財源に充てられる特例公債の額及びその経常的経費の総額に対する割合、すなわち特例公債依存度を極力抑制することに努めましたが、全体としての公債依存度は、特別の財源措置を講じてもなお三二%と、きわめて高いものとなっております。特例公債への依存から速やかに脱却することの必要性については申すまでもありませんが、全体としての公債依存度の高いこともまた重大な問題を含んでおります。 わが国財政がこのような高い公債依存度を継続するようなことがあれば、公債残高の累増、国債費の増高等を通じて財政体質が硬直化し、機動的運営が阻害され、国民が真に必要とする施策の実施が困難となるおそれがあります。また、将来世代の負担の増加をもたらすほか、経済情勢の推移によっては民間の資金需要を圧迫し、あるいは国民経済にインフレ要因を持ち込む危険すらなしといたしません。 今後の財政運営に当たっては、中期的な展望のもとに、財政の健全化を実現することが最も重要な課題であります。しかしながら、財政再建の道は容易ならざるものがありまして、財政収支の不均衡を租税の自然増収のみによって是正することはとうてい期待し得ない状況にございます。財政を再建するためには、歳出の節減合理化について強い決意をもって取り組む必要があり、また、同時に、租税負担の一般的引き上げが避けられないところであると考えております。 以上のような観点から、改めて中期的な財政収支についての試算を作成いたしまして、今後の財政運営について再検討を進める所存でございます。私は、このような検討を通じて、わが国財政の深刻な現状が認識され、財政再建について国民各位の御理解と御協力が得られるよう強く念願するものでございます。 昭和五十三年度予算は、以上申し述べました基本的な考え方に立ちまして、現下の厳しい経済情勢に対処するため、臨時異例の財政運営を行うこととして編成いたしました。 その大要は、次のとおりであります。 第一に、予算及び財政投融資計画を通じ、公共投資等の規模を大幅に拡大することとしております。 すなわち、一般会計予算につきましては、経常的経費の規模を前年度当初予算の増加率を下回る一七・四%の増加に抑制した反面、投資的経費の規模は、公共事業等予備費二千億円を含め、前年度当初予算に対して三一・七%増の大幅な拡大を図っております。 以上の結果、両部門を合わせた一般会計予算の規模は、前年度当初予算に対し二〇・三%増の三十四兆二千九百五十億円となっております。 また、財政投融資計画につきましても、民間資金の活用を図りつつ、計画規模を経済動向に即した適度なものとすることとし、前年度当初計画に対し一八・七%増の十四兆八千八百七十六億円としております。計画の策定に当たっては、社会資本の整備の促進と景気の着実な回復を早めるため、融資部門よりも事業部門を重視し、日本国有鉄道、住宅金融公庫、日本道路公団、地方公共団体等の事業部門に対して傾斜的配分を行うことといたしました。その結果、事業部門の計画規模は、前年度当初計画に対して二四・六%増の九兆五千六百六十六億円となっております。なお、使途別には、引き続き、住宅、生活環境整備、文教等の国民生活の安定と向上に直接役立つ分野に対して資金を重点的に配分することとし、財政投融資計画全体の三分の二に相当する十兆一千九百三十一億円を充てることとしております。 第二に、公債につきましては、さきに申し述べましたとおり、昭和五十三年度においても多額の発行を行わざるを得ない状況にありまして、公債発行限度額を十兆九千八百五十億円としております。その結果、公債依存度は三二%となっておりますが、後に申し述べます五月分税収の年度所属区分の変更を行わないこととした場合の公債依存度は、約三七%にも達することになります。 公債発行限度額については、建設公債は六兆五百億円、特例公債は四兆九千三百五十億円としており、特例公債依存度は、一八・四%となっております。 なお、別途、特例公債の発行のための昭和五十三年度における財政処理のための公債の発行及び専売納付金の納付の特例に関する法律案を提出し、御審議をお願いすることといたしております。 第三に、税制面におきましては、まず、財政の健全化に資するため、酒税及び有価証券取引税の税率の引き上げを行うとともに、新たに石油税を創設することといたしております。 また、租税特別措置について、税負担の公平確保の見地から引き続きその整理合理化を進推する一方、現下の経済情勢に顧み、住宅建設及び民間設備投資の促進に資するため、住宅取得控除制度を拡充するとともに、一年限りの臨時の措置として税額控除による投資促進税制を実施することとしております。このほか、海外子会社等を通ずる租税回避の対策、中小企業対策等のため所要の措置を講ずることとしております。 なお、政府は、昭和五十三年度の税制改正において、所得税の一般的減税を行うべきかどうかについても検討いたしましたが、次のような観点からこれを行わないことが適当であると判断いたしました。 まず、わが国の所得税負担は主要国のそれに比べかなり低い水準にあり、さきに申し述べましたとおり、今後、租税負担の一般的引き上げが避けられないと考えられる状況において、所得税減税を行うことは将来における問題の解決を一層困難にすると考えられます。 また、景気対策の観点からも、減税に比べ、雇用の増加、需要の造出等の効果のより大きい公共投資の拡大により対処することが適当であると考えられます。 第四に、昭和五十三年度の税収の伸び悩みを補い、財源の確保を図るとともに、地方財政対策等にも資するため、昭和五十三年度内に納税義務が成立し昭和五十四年五月中に収納される税収について、年度所属区分を変更して、これを昭和五十三年度所属の歳入として受け入れることとし、所要の制度の改正を行うこととしております。 第五に、主要な経費について申し述べます。 昭和五十三年度予算の編成に当たりましては、各種の経費を通じ、さきに申し述べました基本的な考え方に立って、財源の重点的かつ効率的な配分に努めることにいたしました。すなわち、一般行政経費の抑制、補助金等の整理合理化の推進、受益者負担の適正化等により財政節度の維持に努めるとともに、重要な施策につきましては、次のとおり、その充実に配慮しております。 その一つは、公共事業関係費であります。 この経費につきましては、いわゆる十五カ月予算の考え方のもとに、昭和五十二年度第二次補正予算と合わせ、切り目のない執行を確保しつつ、積極的に規模の拡大を図ることといたしました。その結果、昭和五十三年度の公共事業関係費は、昭和五十二年度当初予算に対して二七・三%と大幅に増加し、五兆四千五百一億円となっております。このうち、災害復旧等事業費を除く一般公共事業関係費は、前年度当初予算に対して三四五%増加し、過去最高の増加となっております。 公共事業関係費の内容につきましては、住宅、下水道、環境衛生等の生活関連施設の拡充のほか、治山、治水等の国土保全施設の整備、農業基盤整備等の進推を図ることとしております。特に、住宅対策につきましては、住宅金融公庫の貸付枠を大幅に拡大するとともに、個人住宅の貸付限度額の引き上げ措置等を講じ、その充実を図ることとしております。 公共事業等の施行に当たりましては、その円滑な消化が図られるよう実施体制を整備するとともに、資材等の需給、価格動向等にも十分留意してまいりたいと考えております。 なお、道路整備事業につきましては、昭和五十三年度を初年度とする長期計画を策定することとしております。 その二つは、社会保障関係費であります。 この経費につきましては、国民生活の安定と福祉の充実に資するため、各般の施策についてその拡充を図ることとしております。 まず、社会的、経済的に恵まれない立場にある人々の生活の安定に資するため、生活保護基準の引き上げ、各種年金の改善等を行うほか、心身障害者対策、老人対策についてきめ細かい配慮を払っております。 また、社会福祉施設に働く職員の増員、健康管理対策の充実等について各般の措置を講じております。 このほか、国民の健康づくりのための諸施策を積極的に推進するとともに、救急医療を初めとする医療供給体制の整備を推進することとしております。 さらに、雇用対策については、景気の回復を通じて雇用の安定と増大を図るとともに、最近の雇用情勢に対処するため、前国会で成立した特定不況業種離職者臨時措置法等の実施に必要な措置を講じ、また、雇用安定資金制度の充実等を図ることとしております。 この結果、昭和五十三年度の社会保障関係費は、前年度当初予算に対し一九・一%増の六兆七千八百十一億円となっております。 その三つは、文教及び科学技術振興費であります。 この経費につきましては、公立文教施設の整備を促進することとし、公立小中学校の老朽校舎等の改築事業等について、事業量の大幅な拡大を図ることとしております。 また、国立医科大学の創設等高等教育機関の整備、私立学校に対する助成や育英事業の充実、学校災害救済制度の改善、新技術の開発等各般の施策について、その拡充を図ることとしております。なお、高校、大学等の入学時における父兄の資金負担に対処するため、新たに国民金融公庫等に進学資金貸付制度を設けることとしております。 次は、中小企業対策費であります。 この経費につきましては、特に、中小企業倒産防止共済制度の創設等中小企業の経営安定対策の推進及び中小企業信用保険公庫に対する出資の増額等信用補完制度の充実に重点的に配意するとともに、政府系中小企業金融三機関等の融資規模を拡大することとしております。また、輸出関連中小企業に対する為替変動対策緊急融資制度の充実を図ることとしております。 また、エネルギー対策費であります。 エネルギーの安定的な確保は国民生活と経済の基盤にかかわる基本的な問題であることに顧み、エネルギー対策を一層推進することとし、このため、石油備蓄対策等を大幅に拡充するとともに、電源立地促進対策の充実、原子力平和利用の推進等を図ることとしております。 さらに、経済協力費であります。 この経費につきましては、わが国の国際的立場に顧み、二国間無償援助の大幅な増額、技術協力の一層の充実を図る等、質量ともにその拡充について特段の配慮を加えております。 以上のほか、総合的な食糧自給力の向上と農林水産業の健全な発展を図ることを基本として、国民の食糧需要の動向に応じた食糧生産体制の整備のための諸施策を推進し、農産物の価格及び流通対策、農業後継者確保対策等の充実を図るほか、二百海里漁業水域対策についても所要の施策を講ずることとしております。 また、日本国有鉄道の財政再建問題につきましては、昨年末にその基本方針を定めたところでありますが、経営の合理化を一層推進するほか、所要の運賃等の改定を見込むこととし、これらとあわせて、引き続き助成措置の拡充を図ることとしております。 第六に、地方財政対策について申し述べます。 まず、地方交付税交付金について、さきに申し述べました年度所属区分変更後の国税三税の三二%相当額に過年度精算分等を加減した金額五兆三千九百六十八億円を計上するほか、臨時地方特例交付金二千二百五十一億円及び資金運用部資金からの借入金一兆五千五百億円の特例措置を講ずること等により、地方団体に交付すべき地方交付税交付金の総額として七兆四百億円を確保することとしております。 なお、地方財政が好転し、あるいは地方税財政制度の基本的改正が行われるまでの措置として、昭和五十三年度以降、交付税及び譲与税配付金特別会計の借入金の償還について、実質的に国がその二分の一を負担する旨を法定することとしております。昭和五十年度及び昭和五十一年度に同特別会計が行った借入金の償還についても、これに準じて地方負担の軽減を図ることとしております。 また、地方債につきましては、その円滑な消化等を図るため、政府資金を大幅に増額するとともに、一般市町村に係るいわゆる財源対策債については原則として全額政府資金で引き受けるなど、きめ細かい配慮を払っております。 この際、私は、地方公共団体に対し、国と同一の基調により、国民生活充実の基盤となる社会資本の整備に努め、一般行政経費の節減合理化を推進するとともに、財源の重点的かつ効率的配分を行い、節度ある財政運営を行うよう要請するものであります。 ————————————— なお、この機会に、さきに提出いたしました昭和五十二年度第二次補正予算について一言申し述べます。 歳出につきましては、まず、景気の回復等を図るため、公共事業等について三千六百六十四億円を追加計上することとし、いわゆる十五カ月予算の考え方のもとに、昭和五十三年度予算と合わせ、切れ目のない執行を図ることとしております。 また、最近における経済情勢に顧み、信用補完制度の強化を図るため中小企業信用保険公庫に対する出資金を増額するなど、中小企業特別対策費の追加等を行うこととしております。 なお、予見しがたい税収の減少等によって決算上の不足が生ずる場合に対処するため、別途御審議をお願いいたしまする決算調整資金に関する法律案に基づいて、昭和五十二年度において決算調整資金を創設することとし、同資金への繰り入れに要する経費二千億円を計上することといたしております。 これらを合わせた歳出追加の総額は五千八百六十八億円となっておりますが、他方、既定経費の節減二百四十六億円の修正減額を行うこととしておりますので、この補正による歳出総額の増加は、五千六百二十二億円となっております。 歳入につきましては、景気の停滞等に伴い、租税及び印紙収入について八千六十億円の減収を見込むとともに、雑収入について二十二億円の増収を見込んでおります。以上の歳出の追加、歳入の減少等に伴う財源不足額一兆三千六百六十億円につきましては、建設公債を三千四百七十億円追加発行するとともに、残余の一兆百九十億円につきましては、特例公債の追加発行を予定しております。この結果、昭和五十二年度の第二次補正後予算の公債依存度は三四%となっております。 以上によりまして、昭和五十二年度一般会計第二次補正後予算の総額は、歳入歳出とも、第一次補正後予算額に対し五千六百二十二億円増加して、二十九兆三千四百六十六億円となるのであります。 なお、地方交付税交付金につきましては、今般の一般会計予算補正により、所得税、法人税及び酒税の収入見込額の合計額が減少するにもかかわらず、特に立法措置を講じましてこれを減額しないこととし、地方財政の運営に支障を生じることのないよう配慮しているところであります。 以上、予算の大要について御説明いたしました。 ————————————— 次に、当面の金融政策の運営について申し述べます。 金融面におきましては、昨年来、預貯金金利を含む金利水準全般の引き下げを図るとともに、金融の量的緩和にも配慮してまいりました。最近の金融情勢を見ますと、市中金利の低下は順調に進んでおり、金利水準は戦後最も低い水準に低下し、企業の資金繰りも、総じて見れば緩和基調で推移しております。このような状況において、当面の金融政策の運営に当たっては、物価の安定に配意しながら、引き続き現在の緩和基調を維持し、財政面の措置と相まって景気の着実な回復に資することを基本としてまいりたいと思います。 さらに、昭和五十三年度におきましては、国債、地方債等公共債の発行が二十兆円を上回る巨額なものに達すると見込まれますが、金融情勢等に十分配慮しながら円滑な消化に努めていく所存でございます。また、市中保有の国債残高の増加に顧み、今後とも安定的な投資家の育成、流通市場の拡大整備等、国債管理政策についてなお一層の配慮を加えてまいる所存でございます。 今日、わが国が直面している最大の政策課題は、激動する内外情勢のもとにおいて、わが国経済を安定成長路線に円滑に移行させることにあります。この意味におきまして、本年は、わが国経済にとってまことに試練の年であります。 私は、財政金融政策の運営に当たりまして、中長期的な展望のもとに、当面、景気の速やかな回復を図るべく全力を挙げて取り組んでまいります。申すまでもなく、経済発展の原動力は民間の経済活動にあります。民間においても、政府の施策に相呼応して、着実な努力が払われることを強く期待しております。そして、国民の一人一人がそれぞれの個性と創意を存分に発揮できる活力にあふれた明るい社会を建設してまいりたいと思います。 国民各位の御理解と御協力をお願いする次第でございます。(拍手) —————————————
○議長(安井謙君) 宮澤国務大臣。 〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕
○国務大臣(宮澤喜一君) わが国経済の当面する課題と、これに対処する施策について、所信を明らかにいたしたいと存じます。 わが国経済は、本年、二百兆円規模の時代を迎えようといたしております。 過去三十余年の歩みを振り返りますと、日本経済は、戦後の荒廃の中から立ち上がり、ほぼ五年ごとに規模を倍にする発展を続けてまいりました。この過程を通じて、われわれの生活は今日かなりの水準にまで到達し、また、世界経済の中におけるわが国の地位も重きを加えてまいりました。 しかしながら、五年前、変動相場制への移行と石油危機の発生という経験の中で、百兆円の規模に達しまして以来今日に至るまでの道程は、かつてない困難なものとなり、わが国経済は、内においても、外にあっても、まことに大きな試練を迎えるに至りました。 過去五年間、国民生活は、その前半激しいインフレに苦しみ、最近においては雇用問題が重要な課題となっております。企業の経済活動も、またきわめて苦しい状況にございます。設備の稼働率はなお低く、生産はようやく五年前の水準に立ち戻りつつある現状にあります。 他方、国際関係にあっては、石油価格の高騰に伴う国際収支の赤字を克服し得たわが国は、現在、一転して、その黒字のゆえに新たな問題に直面いたしております。通商問題が激化し、また、急激な円高のもとで企業は厳しい対応を迫られております。 こうした情勢のもとで迎えたこの年の経済運営に当たり、目標とすべきことはおのずから明らかであると思います。最大の課題は、景気の回復を今年こそ確かなものとすることによって、国民生活安定の基盤である雇用の安定を確保することであります。国民がひとしく望むところも、また、ここにあると考えます。昭和五十三年度においては、このため、実現可能な限りの高い成長を目指しつつ、一日も早く家計や企業の現状に対する焦燥と将来に対する不安とを取り除くことが、政府のなすべき刻下の急務であると考えます。 このような考え方の上に立って、政府は、五十三年度の経済成長を実質七%程度と見込みました。経済活動の沈滞に加えて急激な円高の影響が懸念されております現状のもとで、これは必ずしも容易な課題ではございませんが、雇用の安定を確保し、あわせてわが国経済の将来の発展への足固めを図る上で、ぜひとも達成いたさなければなりません。対外均衡の改善にも、これが大きく寄与するものと考えます。政府は、あらゆる政策手段を動員してその実現を図る考えであります。 その具体的内容を申し上げるに先立ち、本年の政策運営に当たって留意すべき他の二つの問題すなわち、物価とわが国経済の中長期的な課題の二点について申し述べたいと存じます。 まず、物価の動向には、引き続き細心の注意を払ってまいります。石油危機を契機とする物価の高騰が国民生活にもたらした混乱は、いまだわれわれの記憶に新しいところであります。現在ようやく定着しつつあるかに見える物価の安定化基調を推し進めることは、景気対策を思い切って進めていく上にも肝要でございます。 このため、政府は、家計に直結する生活必需物資について、生産、流通、販売等の各般にわたる価格安定対策を強力に推進してまいります。円高の効果は、国内の販売価格により一層反映されなければなりません。同時に、中長期的観点に立って、輸入政策の積極的な活用、低生産性部門及び流通機構の近代化の促進、競争政策の推進等、各般の施策を着実に推進してまいる所存であります。 なお、公共料金につきましては、基本的には経営の合理化を進めることを前提として、受益者負担の原則により料金水準の適正化が図られるべきであると考えますが、その改定が物価や国民生活に及ぼす影響については慎重に配意をいたしてまいります。 昨年初めに九%台であった消費者物価の上昇率は、春には八%台、夏には七%台に下がり、本年度末には六%台に落ちつく見込みであります。五十三年度におきましては、これを年度平均で六%台とし、物価の安定を求める国民の願いにこたえてまいります。 次に、当面の問題に対応するに当たっては、将来の展望の上に立った政策運営を心がける必要がございます。 政府は、一昨年、中長期的な政策運営の指針として、昭和五十年代前期経済計画を策定いたしました。 わが国経済のその後の歩みを振り返りますと、設備投資等の民間需要や財政収支など、計画の想定しているところと異なった推移を示しているものも少なくありません。物価については、物価抑制のためのこれまでの努力が、計画目標に向かって見るべき成果をおさめつつございます。完全雇用の確保や国際収支の均衡については、その実現への過程でさまざまな困難に直面しておりますが、ここで強力な内需振興を図ることによって、目標の達成に向かって努力をいたしたいと考えます。 政府は、いま手がける政策の一つ一つが、これら計画の掲げる中長期的な課題とどう関連するかを十分考えながら政策選択を図り、長期安定成長路線への円滑な移行を目指してまいります。 さて、七%成長の第一の柱は、財政でございます。 すでに長期にわたって需給の不均衡が続いているわが国経済の現状を見るとき、雇用の安定と企業経営の健全性の回復を、経済の自律的反転力にのみ期待することは困難であります。したがって、この際、政府の積極的な施策によって経済活動の水準を引き上げることが重要であり、特に、設備投資を初めとする民間需要が停滞している情勢のもとで、景気回復の起動力として財政の果たすべき役割りが大きいことは申すまでもありません。 他方、財政は、連年にわたり大量の公債に依存するきわめて苦しい状況にございます。このため、政府は、一方において経常的経費の節減合理化に努めつつ、投資的経費についてはあえて公債を増発することにより、いわゆる十五カ月予算の考え方のもとに、公共投資を主軸として思い切った財政運営を行うことといたしました。 わが国の社会資本は、先進諸国に比べて相対的に立ちおくれております。ここでその充実に力を注ぐことは、当面の景気浮揚のためばかりでなく、将来にわたって国民生活の基盤を整備し、住みよい環境をつくり上げていく上でも意義のあることであると考えます。 今後、本年度の二次にわたる補正予算と五十三年度予算が切れ目のない実効を上げることにより、雇用を吸収し、直接的な需要の拡大となってあらわれるばかりでなく、その効果が広く経済全体に波及し、わが国経済の牽引車としての役割りを果たし得るものと信じます。 次に、民間需要につきましては、まず住宅建設について、住宅金融公庫の個人住宅向け貸付枠を四十万戸とするとともに、貸付限度額を引き上げるなど、量質両面にわたり拡充を図ったほか、税制面において住宅取得控除制度を拡充することにより、「わが家」を求める国民の強い期待にこたえることといたしております。 企業の投資意欲は、需給ギャップの解消がおくれていることに加え、過剰在庫が存在していることもありまして、これまで低迷したままで推移してまいりました。現在なお、基礎資材産業や構造不況業種等を中心に、需給バランスの改善に時間を要すると見られる分野もございます。しかし、全体として見れば、このところ在庫調整がかなりの程度進行しつつあると見られることから、今後、生産が上向き、稼働率の改善が進む業種がふえていくものと期待されます。 均衡のとれた内需の回復を期する上で、企業の投資活動が重要であることは申すまでもなく、わが国経済の長期的な発展基盤の培養を図る上でも、これを推進する必要がございます。資源問題一つをとりましても、それは一方で経済活動の制約要因ではございますが、他方、エネルギー節約、資源の確保、技術開発等の新たな投資活動を求めるものであります。 このため、政府としても、電源開発の促進、石油備蓄の推進を図るとともに、省エネルギー、公害防止等関連設備に対する投資促進税制の実施を通じて、投資意欲の喚起に努めてまいります。 景気の回復が必要とされるゆえんは、何よりも雇用の確保、失業の防止にあることは、すでに申し述べたところでございます。 現在、百万人を超える人々が働く場所を求めております。それに加えて、企業は、苦しい経営環境のもとで、雇用の維持のため精いっぱいの努力を続けておりますが、構造不況業種を初め、厳しい雇用調整を迫られているものも少なくありません。連鎖倒産や円高の打撃の中で、中小企業を初めとする企業の倒産は依然高水準を続けております。 政府は、失業の積極的防止はもとより、失業者の生活の維持、再就職の促進、また、中高年齢層の雇用の安定等に格段の努力を傾注し、万全の対策を講じてまいります。 また、中小企業や構造不況業種に対する施策の充実を期するため、中小企業円高緊急対策を講ずるほか、中小企業経営安定資金制度や債務保証基金制度の新設など、各般の対策を進めることとしております。 最終需要の中で最大のものは、申すまでもなく個人の消費支出であります。今後、雇用の安定と物価の鎮静化が国民生活に明るさと安心感を取り戻し、家計の消費活動に、堅実な中にも底がたい回復を期待することができるものと考えます。 公共、民間両部門にわたって、景気浮揚のため、以上申し述べました施策を強力に進推することにより、現在、在庫その他各般の調整が着実に進展していることも背景に、五十三年度後半には、民間需要が回復の基調を強め、わが国経済が再び息の長い発展への第一歩を踏み出すことを期待いたします。 この五年間のわが国経済の困難は、世界の国々にとっても、また同様のものでありました。各国の懸命の努力にもかかわらず、世界経済はなお石油危機の残した調整過程の中にあります。 わが国の経済規模が拡大し、あらゆる分野で世界との相互依存関係が深まるにつれ、諸外国との間で利害の対立を生ずることも多くなり、また、わが国市場の一層の開放を求め、経済協力の拡大を期待する声も、つとに高まっております。 こうした見地から、わが国がいま取り組まなければならないことは、わが国市場の対外的な障壁を可能な限り低いものとすることによって、世界への門戸をさらに広げ、対外均衡の確保を図ることであります。そのために何をなすべきかについては、昨年来ほぼ論じ尽くされておりますので、今後は、勇断をもって、これを確実に推進してまいる所存であります。 五十三年度においては、特に年度後半、内需の振興を通じて輸入が拡大し、一連の対外経済対策の効果がこれに相まつことによって、経常収支はその黒字幅を縮減し、世界経済の立ち直りと保護貿易主義の回避に寄与し得るものと考えます。 以上申し述べましたように、政府は、国内景気の拡大がこの年こそ必ずや実現されるよう、実効ある政策を迅速に展開し、わが国経済の持つ潜在的な力を再び発揮する道を開きたいと考えます。 過去三十余年を顧みますと、未来が不透明でなかったときはかつてなく、内外の環境もわれわれにとって有利なものばかりだったわけではありません。しかし、わが国の経済は、その柔軟な適応力と豊かな創造性によって、時のいかんを問わず、常に時代の流れ、変革の波を乗り切ってまいりました。いまこそわれわれの持っている力を改めて結集し、わが国経済の新しい時代に向かって前進するため、政府は全力を尽くします。 国民各位の御協力を切にお願い申し上げます。(拍手)
○議長(安井謙君) ただいまの演説に対する質疑は次会に譲りたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(安井謙君) 御異議ないと認めます。 本日は、これにて散会いたします。 午後四時三十二分散会 —————・—————