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84回国会参議院1978/05/09

法務委員会 第11号

発言数
179
登壇者
8
会派数
4
開催日
1978/05/09

会議録

中尾辰義公明党

○委員長(中尾辰義君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  委員の異動について御報告いたします。  去る四月二十八日、上田稔君が委員に選任されました。  また、沓脱タケ子君が委員を辞任され、その補欠として宮本顕治君が選任されました。     —————————————

中尾辰義公明党

○委員長(中尾辰義君) 検察及び裁判の運営等に関する調査を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言を願います。

寺田熊雄日本社会党

○寺田熊雄君 五月三日の新聞紙上に伝えられました岡原最高裁長官の五月二日における記者会見ですね、この発言はいろいろな方面に波紋を生じておりまして、私どもとしましてもこれを黙過しがたい内容を非常に持っておりますが、この記者会見には事務総長は立会なさいましたか。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 私は直接は立ち会っておりません。

寺田熊雄日本社会党

○寺田熊雄君 長官の発言内容が、まあ完全ではないでしょうけれども粗筋は新聞紙上で発表されておるのでありますが、その内容は大体長官のおっしゃったとおりと理解していいでしょうか。きょうの総長の御答弁をいただく上でその点をよく調査しておいていただきたいということを政府委員にお願いしておいたのですが、いかがでしょうか。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 新聞の各紙の報道には若干の相違があるようでございますけれども、大筋においては長官の御発言と相違はないものというふうに伺っております。

寺田熊雄日本社会党

○寺田熊雄君 最高裁長官の記者会見というのは、過去にも問題を起こしたことはないとは言えません。石田和外長官のときに共産党員を裁判官に任命する問題についてやはり問題の発言を起こしたことがあります。その後、承りますと、部内では長官は毎月一回記者会見をしておるというようなふうに改まったというふうにも聞いておるのですけれども、この五月二日の記者会見というのは、定例の記者会見なんでしょうか、それとも臨時にこういうことをお持ちになったのでしょうか、どちらですか。

大西勝也最高裁判所事務総局総務局長

○最高裁判所長官代理者(大西勝也君) 記者会見の細かいことでございますので、便宜私がまず御説明申し上げたいと思います。  憲法記念日を前にしての記者会見というものは、ここやはり相当前、先ほど仰せになりました石田長官の記者会見のころから毎年五月に行われておるところでございます。それ以外に、正式の記者会見ではございませんが、まあ長官と記者クラブとの雑談会と申しますか、懇談会と申しますか、そういうふうな意味で、ほぼ毎月一回くらい、これはもっとフリーな立場でざっくばらんな話をするということで懇談をされておると、そういう状況でございます。

寺田熊雄日本社会党

○寺田熊雄君 そういたしますと、今回の岡原長官の記者会見は、石田和外長官以降の慣例に従って最高裁長官としていわば恒例の記者会見であると伺ってよろしいですね。

大西勝也最高裁判所事務総局総務局長

○最高裁判所長官代理者(大西勝也君) 仰せのとおりでございます。

寺田熊雄日本社会党

○寺田熊雄君 そうといたしますと、第一に、現在、まあ弁護人抜き裁判と言う点では最高裁の方は非常にいやがるそうでありますが、刑事裁判の審理の特例法案が国会で現に審議中なのでありまして、その合憲性の点などについて与野党の間で激しい理論的な対立があります、そのさなかに、政治のらち外にあるべき最高裁長官が、公の立場でその法案の必要性を強調するというのは、裁判官の立法府に対する介入だと、特定の政党の支援を意味するという結論にならざるを得ません。これは政治への介入でもありますし、同時にこの法案の合憲性を宣伝する効果も持ちますので、将来この法律を適用した具体的な裁判事件が起きた場合、この合憲性が争われました場合に、あらかじめ事前にその合憲性についての結論を発表するに等しいわけですね。それじゃもうその公正さを疑われても仕方がない。そういう意味できわめて不当な発言だと考えますが、どうでしょう、総長、いかがですか。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 今回の憲法記念日における発言は、いわゆる記者団の質問に応じまして、現在司法の当面している問題について所信を申し上げ、それで法の支配の確立を訴えられたものというふうに伺っております。すなわち、一部の事件ではございますが、被告人、弁護人が辞任あるいは退廷を繰り返すというような、ルールを無視した行動があることによって、裁判が遅延させられているというような異常な事態がございます。こういう異常な事態に対しまして、適正迅速な裁判を実現するという使命を持った裁判所としては何らか対策を講じなければいけないのではないだろうかと、そういうことについて国民に理解を求めようということで長官が率直にその実情について所信を披瀝されたものでございまして、何ら現在国会に提案になっております法案に対して直接的に言及されたり、その当否を述べられたり、あるいは立法府に介入しようとして発言されたものというわけではございません。

寺田熊雄日本社会党

○寺田熊雄君 総長の御答弁は、現に国会で審議中の立法についての当否を言ったものではないと、こういう御答弁なんですね。間違いありませんか。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) そのとおりでございます。

寺田熊雄日本社会党

○寺田熊雄君 法務大臣、いかがでしょうか、現に国会で審議中の立法に、ついてその当否を最高裁長官が法務大臣の頭越しに声明を発するということは、適当ですか適当でありませんか、いかがですか。

瀬戸山三男自由民主党法務大臣

○国務大臣(瀬戸山三男君) 最高裁長官が国会における法案の審議中に可否を言うということは適当でないと思います。

寺田熊雄日本社会党

○寺田熊雄君 いま、法務大臣の頭越しに最高裁長官が国会で審議中の法案の必要性、妥当性について発言することは適当でないという法務大臣の御答弁がありましたが、その点は総長も同意見でいらっしゃいますか。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 一般的に申しますと、国会に現に係属しているような法案につきましてその当否等について発言するということは、三権分立のたてまえからいって差し控える方が適当であろうというふうに考えております。

寺田熊雄日本社会党

○寺田熊雄君 法務大臣のおっしゃることと、事務総長の言われたことと、表現は異なりますが、結論においては変わりなく、妥当でないという結論のようですね。  ところが、いま総長がおっしゃったように、岡原長官の発言は現に審議中の法案の必要性なり合理性なりについて発言をしたものではないとおっしゃったけれども、新聞紙上の伝えるところによると、どうしてもそう解釈せざるを得ないわけで、これは私がいま現に持っているのは、ごく限られた新聞紙の、たとえば「朝日新聞」であるとか「読売新聞」であるとか「毎日新聞」であるとかいういわゆる大新聞の報道なのでありますが、いずれも長官の発言は現に審議中のいわゆる弁護人抜き裁判についてその必要性を強調したものという報道なんですよ。「朝日新聞」は、一面に、「弁護人抜き裁判は必要 最高裁長官が積極論」という大きな見出しで、内容も大体そういう趣旨です。「読売新聞」も、同じように、「弁護人抜き支持 公判ひき延ばし是正 最高裁長官が異例の発言」と、こういう大見出しですね。それから「毎日新聞」も、「弁護人抜き裁判特例法 最高裁長官が支持」と、こういう見出しですね。私はこれだけの優秀なスタッフをそろえた大新聞の記者諸君が長官の言ったことを誤り伝えたというふうにはどうしても理解できませんよ。総長ね、総長がどのように弁明なさいましょうと、長官の発言は現に審議中の弁護人抜きのこの裁判特例法案について発言したものと解釈する以外にとうてい解釈できないのじゃないでしょうか。それとも、総長は、あくまで一般抽象論であって、この具体的な法案についての発言ではないということをあくまでも、まあ強弁すると言うては失礼になりますが、御主張になりますか。いかがです。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 現在国会で審議中の刑事事件公判開廷特例法案に全然無関係に話が出ているということではございません。それは、記者団の質問の冒頭に、そういうものが現在国会で審議されているが、それが出てきた背景には裁判の実情においてきわめて異常な事態が起きているということになっておるようだが、そういう異常な状態があるというふうに長官もお考えかという質問があったわけでございます。そういう質問に対して、現状として一部の事件ではあるけれども異常な事態が続いておる、こういう異常な事態がそのまま放置されておるということは適正迅速な裁判を行うという重大な使命を持っている裁判所の司法行政を扱う者として重大な関心を持たざるを得ない、やはりそれらに対しての対策を講ずる必要があるのではないだろうかということで各方面の御協議御審議をお願いするというような趣旨で述べられたものでございまして、直接法案の是非、当否等について発言されたものでないことは、要旨として新聞紙上に掲載されておりますところをごらんいただきましてもおわかり願えるかと存じております。

寺田熊雄日本社会党

○寺田熊雄君 そうなりますと、これはますます私は総長のおっしゃることが強弁と言わざるを得ないですよ。いま総長がおっしゃったその言葉自体から解釈しましても、明らかに結果的には弁護人抜き裁判についての妥当性、必要性というものを強調されたことになりはしませんか。そうでしょう。その具体的な法案がいま係属している、それがこういう理由で生じたのだから、何とかしなきゃいかぬから御審議を願っておるのだということは、結局その法案の必要性を記者団に強調したことになるでしょう。ですから、それを、ならないのだということをおっしゃって長官を弁護なさろうとするそのお立場はわかるけれども、それは論理的に一貫しないのじゃないでしょうか。それでまた、あなたは新聞紙を読んでみればわかるとおっしゃるけれども、この岡原長官のおっしゃっていることを、その趣旨を理解すれば、いわゆる弁護人抜き裁判法案が国会に提出されているけれども、現今の刑事裁判で法案を必要とするような異常事態があるかというなるほどそれは質問でしょう。あるというのです、結論においてね。だから、異常事態が、必要とするような異常事態なんですよ。ただ単に異常事態があるというのじゃないので、だから法案が必要だという結論にならざるを得ないのですよね。私、それをしも何か直接法案に言及したものでないんで異常事態そのものだけについて言ったんだというような御答弁は、これはちょっとどうでしょうかね、白を黒と言っては大変失礼だけれども、少し無理な御答弁じゃありませんか。いかがです。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 事実をありのままに申し上げたわけでございます。それはいわゆる現在国会で審議になっております法案と全然無関係ではないとは存じます。それは、質問にもあらわれておりますように、法案が提出されるようになった背景としての異常事態ということが述べられている。そういうような事態があるのかという御質問があったわけでございますから、質問の前提は法案を念頭に置いておられることはこれは間違いないことであろうと思います。ただ、長官がお述べになったのは、そういう異常な事態があるかということに対して、異常な事態が遺憾ながらあるのだと、そういうことに対して、あるいは法案を立案して立法府で考えていただくなり、あるいは法曹三者がいろいろ話し合って打開を講ずるなり、いろいろな方策があるだろう、そういうようなことについて一応世間一般に御理解を得てそして法の支配の確立のためにひとつ各位の御努力をお願いしたいというのが長官の趣旨でございまして、根本的には法の支配の確立ということをうたわれた長官のいわゆる憲法記念日における談話の内容を具体的な内容に沿って敷衍されたものというふうに理解していただいた方がよろしいのではないかと思っております。

寺田熊雄日本社会党

○寺田熊雄君 長官が法の支配の確立を願っておられたということは私も否定しないのですよ。ただ、そのためにこの法案が必要だということなんですよ、長官の言われたのは。したがって、法案の必要性についての発言になりはしないかということなんです。あなたのおっしゃることを伺っても、明らかにそれは法案の必要性を、まあ法の支配の確立のためにという目的論は別として、結果的にはそうならざるを得ないでしょう。いかがです。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 何度も繰り返すようでございますが、積極的に法案について言及されたわけではございません。実際の実情について説明して国民一般の御理解を得たいということで発言されたわけでございます。ただ、現在の法案について、立案当局の御説明にはそういう異常事態に対処するためということでその背景を述べておられますので、その背景と長官が述べられた背景というようなことが同様のものということになりましょうから、全然無関係ということではございませんけれども、長官としてはむしろ司法行政を総括する立場にある者として裁判の運営に異常な事態がある部分については何とかせにゃいかぬのじゃないだろうかというような御懸念を表明されたにとどまるというふうに理解いたしております。

寺田熊雄日本社会党

○寺田熊雄君 違いますよ。御懸念を表明したんじゃないですよ。法案の必要性を強調したわけですよ。だから、そういうごまかしの答弁では納得できないですよ。私はあえてごまかしと言う。あなたも裁判官をなさったでしょう。私も裁判官をやったことがある。そんなことを被告人が仮に答弁したとして、裁判官は受け入れますか。また、一定の人の供述というものは、その言語そのものを厳格に解釈すればいいというものじゃないですよ。その趣旨が何かということを絶えずわれわれは考え、その本質をつかむわけでしょう。最高裁という権威をしょっておられるあなたが、そういういわばごまかしの答弁をなさるということは、かえってみっともないですよ。見苦しいですよ。過ちを過ちだと素直に認めて謝罪する方がりっぱですよ。まあしかし、あなたはあくまでもそれを突っ張るのでしたら、これは時間のあれですから、その点はそれだけにとどめておきます。  それから現在この刑事公判審理の特例法案が与野党の間で激しい論議の中心になっているということは、長官も十分御認識になっていらっしゃるのでしょうね。これはまあ長官の御認識ですけれども、総長としては十分その点は理解していらっしゃるように見ておられるでしょうね。いかがですか。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 十分御理解いただいているものと考えております。

寺田熊雄日本社会党

○寺田熊雄君 そうといたしますと、まあその背景であるとか法の支配のためであるとかいういろいろな条件なり目的は別として、そうした目的なり背景論を主張するそういう方法によってでもあれ、この法案が結果的に必要だというようなことを公式に発表されることは、その法案の必要性を主張している特定の政党を援護することになりゃしませんか。いかがです。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 先ほどから御説明申し上げておりますとおり、法案の当否等について直接あるいは積極的に発言されたわけではございませんで、異常な状態に対する裁判所の認識ということを述べられたわけでございます。したがいまして、それがいわゆる政治的な影響を持つというようなことを当然考えられないところのものだというふうに考えております。

寺田熊雄日本社会党

○寺田熊雄君 そうすると、あの長官の発言が何らかの政治的な効果を全く生んでいないという御認識ですか。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 政治的なことを考えられて発言されたのではなくて、自分が所管されておるところの司法行政に関連して、裁判の運営において好ましからざる事態が起きていると、これらは司法行政を総括する立場にある長官としても当然関心を持たざるを得ない、それについてやはり是正するような道を何らか考究していかなければならないのではないだろうかと、そういう実情について国民に理解してもらおうということで率直に所信を表明されたものでございまして、司法行政上の立場から司法行政上の事柄に関して述べられたわけで、政治的な問題というようなことは一切関係がなく発言されたものだというふうに伺っております。

寺田熊雄日本社会党

○寺田熊雄君 いま私がお尋ねしたことは、長官が政治的な効果を生ぜしめようとして意図的に発言したということを主張しているわけではありません。それは、長官のお人柄は私も知っておるから、そんなことは考えない。しかし、その長官の御発言がそうした政治的な効果を生んで現におるわけですよ。ですから、もうたくさんの批判が起き、反対運動が起き、訴追請求まで起きておるわけです。そういう政治的効果を生じておるという結果論について、その結果についてもあなたは御否定になるんでしょうか。結果はお認めになるんでしょうか。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) この問題が発表されまして以来、いろいろの論議を呼んでおるという事実は、これは当然承知しておることでございます。

寺田熊雄日本社会党

○寺田熊雄君 まあその論議であれ、政治的効果であれ、結論は一緒ですけれども、現実にそういう政治的効果を生んでおることは疑いがないでしょう。また、この法律がもし可決されたといたしますと、この法律を適用した裁判事件というのが生まれるわけです。それは見やすい道理ですが、それについてはもう被告人なり弁護人が当然この法律は違憲の法律であるということで必ず上訴の道をたどるということも見やすい道理ですね。その場合、最高裁長官がそうした結果論的ではあっても必要性を強調しますと、これはもう最高裁の結論が出たと一緒じゃありませんか。そうしたら、最高裁の裁判というものの権威といいますか、公正さといいますか、信頼性といいますか、それをみずからなげうつに等しいと思いますが、いかがでしょう。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 先ほども申し上げましたように、長官の発言は、いわゆる司法の現在置かれている状況について実情を説明され、それについて法の支配の確立を訴えられた、あるいは国民に呼びかけられたという趣旨でございますし、その発言のたてまえは、一応司法行政事務を掌理する立場にある長官としてお述べになられたことでございますので、現実に起こってまいります訴訟事件とは直接関係はない。したがって、公正というような問題に直接影響を及ぼすものとは考えておりません。

寺田熊雄日本社会党

○寺田熊雄君 私は、いまの総長の御答弁は、ことごとくこの国会の論議を事なく済ませるための強弁だというふうに理解せざるを得ないのですが、法務大臣はどのようにお考えでしょう。この長官の御発言ですが、これは各新聞紙で弁護人抜きの法案が必要だというふうに報道せられておるわけです。この報道が、新聞社のまあいわば早のみ込みといいますか独断によってそうした記事が生まれたというふうに大臣は理解していらっしゃるのでしょうか、それとも、やはり最高裁長官の発言がそう解釈せざるを得ないような内容を含んでおったがためにそうした記事になったものだというふうに御理解になっておられますか、どちらでしょう。

瀬戸山三男自由民主党法務大臣

○国務大臣(瀬戸山三男君) 率直に申し上げて、岡原最高裁長官のこの記者会見に私がタッチしているわけじゃございませんから、いろいろ新聞報導等で批判があったりしますので、私もどういう内容のものであったろうかということでつぶさに新聞の記事を新聞記事以外にわかりませんから見ておるわけでございますが、いろいろ印刷してある文字は多少違っておるようでございますから、ここで私は特に五月五日の「朝日新聞」の朝刊の記事にやや詳細に出ておるように思いましたので、それを見て、それと、今朝来衆議院の法務委員会等でも最高裁の方のこれについての考え方が述べられましたから、そういうものを含めて私がこの新聞記事にあらわれておる長官の発言なるものを見ますると、私は率直に感じるところは、いま論議されておるいわゆる刑事公判の特例法、この法案について特に云々しておるのではないと私は見ております。といいますのは、これにも書いてありますように、いまもお話が出ましたが、この特例法案に関連して記者会見で記者団の中から質疑が出ておりますから、私の方としては、御承知のとおりに、いまの刑事裁判の異常な事態に対する一部の事件についてはこういう処置をとらなければ裁判の正常化が進められない、こういう理由のもとに提案いたしておりますから、それに関連して、同じことを申し上げますが、記者団の方からこの刑事裁判で言われておるような異常な事態が一体あるのかどうかと、こういう質問に対して長官は答えられております。それは、あるからこういう対策としての法案が出ておると、こういうわけでございます。そのことを述べられておるのであって、出た法案が長官としてこれはいいとか悪いとかこういう発言をしておられる趣旨ではないと、率直に私はそういう受けとめ方をしておるわけでございます。

寺田熊雄日本社会党

○寺田熊雄君 それは、さっき事務総長の御答弁に対して私が申し上げたことと全く一緒なんですけど、この法案を必要とする事態があるのかというそういう新聞記者の問いに対して、あるんだということなんでしょう。結果的にはこの法案が必要だという結論にならざるを得ないじゃありませんか。だから、それはもう何か言葉の文字解釈といいますか、それだけにこだわって、その法案を必要とするという長官の考え方がにじみ出ているその全体の調子といいますか、行間に脈々とうかがわれるその意味、それを全く無視した御解釈と言うほかはないわけで、はなはだ形式的な文字解釈に過ぎると思いますけれども、まあこれだけで論じておりますと、まだまだ論じなければいけない問題がたくさんありますから、次に移りたいと思いますが、先ほど、法務大臣は、最高裁長官が現に国会で審議中の法案についてその必要性なりあるいは合理性について発言することは決して適当ではないというその点の結論はお認めになったわけですね。また、その点は、事務総長も、表現こそ異なれ、やはりこれを肯定なさったわけですね。盛んに事務総長は司法行政の立場にあるということをおっしゃったのですけれども、最高裁長官の司法行政的な立場というものがきわめて限られたものであって、国会の方に直接発言をするというようなことを含んでいないことは、これははっきりしていますね。たとえば、最高裁の持っておる司法行政事務というのは、下級審の裁判官の指名権というような人事権であるとか、憲法七十七条の規則制定権であるとか、あるいは裁判所の組織構成など管理運営に関する事項であるとか、あるいは庁舎などの施設の管理に関する事項であるとか、会計予算など財務管理に関する事項など、おのずから限られております。だから、立法府の審議に影響を及ぼすような権限もないし、それから立法についても、法務大臣つまり総理大臣が国会に対して責任を負っておるのであって、最高裁長官には法案提出権もありませんし、予算の提出権もない。そのおのずから限度があるということ、司法行政の立場とはいいながら法案の妥当性や必要性について国会に直接ものを言う、国会に直接言わなくても新聞記者を通じてそれを言うというようなことが許されないこと、これは事務総長はお認めになるでしょうね。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 司法行政がある程度の範囲を有するというようなことは、そのとおりかと存じます。ただ、司法行政については、先ほど寺田委員がおっしゃられましたいわゆる人事、会計等の内部行政のほかに、裁判所が行っている裁判が適正迅速に行われているかどうかということについてのいわゆる管理責任的なものがあるのではなかろうかというふうに存じます。したがいまして、もし裁判の運営というのが法の所期する目的のように運営せられていないという状態があるならば、それについて司法行政の範囲内で改善すべきところはとるし、また司法行政の範囲を超えるものについてはあるいは立法府等あるいは内閣等にそれぞれの所管に応じての施策をお願いするということは、これは司法行政として当然あり得て差し支えないことではないかというふうに考えているわけでございます。

寺田熊雄日本社会党

○寺田熊雄君 ですから、それは、いま総長のおっしゃったことというのは、現に審議されている法案についてその必要性や合目的性を法務大臣の頭越しに国会に言うとか、あるいは新聞記者会見を通じて国会あるいは国民全般にそれを浸透させるとかいうような権限を含むものでないということはおわかりでしょうね。いかがです。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 司法行政のあり方としてその内容方法等にそれぞれ自制すべきものがあろうということは、一般論として私どもももちろん承知いたしているところでございます。ただ、今回の分がその分をはみ出ているというようなふうには考えておりませんので、内容については、先ほども申し上げましたように、裁判の運営で必ずしも十分でない遺憾な事態が生じておると、それらについては是正すべきであるということを述べられることは、これは司法行政を預かる者としての長官の当然の職務の範囲内に入ってこようかというふうに考えております。

寺田熊雄日本社会党

○寺田熊雄君 どういうことですか、それは。あくまでも総長は強弁なさるけれども、私の質問に端的に答えてください。先ほど、あなたは、表現こそ大臣と異なるけれども、最高裁長官が立法府で審議中の法案についてその必要性などを訴えることは適当でないという意味のことをおっしゃったでしょう。それが司法行政の分野に属するものでないということはお認めになるのですかならぬのですか。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 司法行政のあり方としていまおっしゃられたような方法をとるということは適当でないというふうに考えますが、現在問題になっております長官の御発言は、そういう趣旨で述べられたものではないので、直接寺田委員が御指摘になるような意味合いではないということを申し上げたかったわけでございます。

寺田熊雄日本社会党

○寺田熊雄君 ちょうど裁判で裁判長が尋ねること以外のことを被告人が盛んに強調するのと同じなんですよ。いま事務総長がおっしゃったことは私が聞いていないでしょう。聞いていないことをどうしてそう盛んに何回も何回も言うんですか。あなたのは、自分の言いたいことがもういっぱいだものだから、こちらのお尋ねすることに答えずに、自分の言いたいということだけを盛んに強調なさるわけで、それは慎んでください。いま御答弁をお願いしているんですよ。あなたの言いたいということを勝手に言うこの場ではないんです。おわかりでしょう。  それからもう一つは、この最高裁長官の御発言というものの中に、   浅間山荘事件が起きたときは、あれだけ世間の関心を集め、早く処罰せよという声が出た。仲間も殺していた。ところがいざ公判になると、にっちもさっちもいかない。まだ証人調べがえんえんと続いている。企業爆破事件も同様だ。一般国民はそれでいいと思うだろうか。悪いことをした人間は刑罰法規で処罰を受けるべきだというのが素直な国民感情ではないか。  というような御発言があるのですね。これは先ほど総長は、大体内容においてはおっしゃったことが大筋において間違いないとおっしゃいましたからそれでお尋ねするのですけれども、こういう浅間山荘事件とか企業爆破事件とかいうような現に東京地方裁判所で審理中の事件なんです、これは。そこで証人調べが延々と続いているといって、裁判長の訴訟指揮、それを批判するようなこういう発言が適当でしょうか。いかがです。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 現実に係属しております事件の裁判の訴訟指揮について申し上げたわけではございませんで、そこにございますように、異常な事態があるかということについて、あると申し上げたその例証として、それでは具体的にどういうところにあるかというのの例として挙げられたにすぎないというふうに考えるべきじゃないかと思います。

寺田熊雄日本社会党

○寺田熊雄君 例としてであろうと、何であろうと、具体的にそういう事件を挙げて、延々と証人調べが続いているそれが悪いという結論の批判をしているわけでしょう。これがどうして裁判長の訴訟指揮に対する批判にならないのでしょう。証人調べをするというのは、裁判長の訴訟指揮でしょう。それがいかにも延々と続いている証人調べというようなものが悪いという発言でしょう。これをしも裁判に対する干渉と言わずして、どこに干渉があるんでしょう。これは裁判に対する干渉になりはしませんか。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 浅間山荘事件あるいはその他の事件が非常に遅延をしておる、その遅延をしている原因について一部の被告人、弁護人のルールを無視した不当な行状がある、それが遅延の原因であるということを申し上げまして、一つの例証としてお述べになった。異常な事態ということが裁判所の中に存在しているということの例証としてお述べになったわけでございまして、その訴訟指揮をどうするということの裁判に干渉するというような意図でないことは、お読みいただいても十分おわかり願えるのではないかと思っております。

寺田熊雄日本社会党

○寺田熊雄君 あなたのおっしゃることは、全くそれは事実をしいるものですよ。そういうことで裁判をなさったり、あるいは司法行政をなさったりしては困りますよ。いいですか、いまもう一遍お読みしますけどれも、ここでは「まだ証人調べがえんえんと続いている。」と言っているんですよ。証人調べですよ。一部弁護人がどうのこうのという問題じゃないでしょう。証人調べというのは、裁判所の訴訟指揮に基づく訴訟上の行為でしょう。どうです。弁護人の行為だとか被告人の行為だとか言っているのじゃない。証人調べを裁判所が行っていること、そのことを批判しているんですよ。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 証人調べを行っていることを非難しているわけではございませんで、そういうような一部の弁護人、被告人の不当な、ルールを無視した行状によって訴訟が遅延されている。それで、当然通常の過程でまいりますと相当証人調べが消化されておるはずであるのに、それが遅延しているために十分に適正迅速に行われていないという趣旨を述べられたと、そういうことでございまして、訴訟指揮でないということは、先ほども申し上げたとおりかと思います。

寺田熊雄日本社会党

○寺田熊雄君 あなたのようなそう白を黒と言うような御答弁を伺うとはちょっと考えられなかったですね。この記事を素直に解釈して、証人調べが延々と続いているということについて、それがどういう結果にせよ、裁判所の行っていることであることには間違いないわけでしょう、証人調べというのは。それをここに具体的に例示しておるわけです。それがだれの責任かということをここに言っているわけじゃないでしょう。また、仮にだれの責任かということを言わんとしているとしても、結果的には裁判所が行っている証人調べ、それが不要なものだと言うのでしょうか。それを非難していることには違いないですよ、これは。この点は、大臣、いかがですか。いま事務総長はこれは裁判所の行っていることについて干渉でもないし非難でもないと、弁護人や被告人に対する非難だと言っているんですが、まだ証人調べが延延と続いていると言って証人調べが続いていることについてこれを非難している文章なんですが、どういうふうにお考えになりますか。

瀬戸山三男自由民主党法務大臣

○国務大臣(瀬戸山三男君) 私は、前にも申し上げましたように、この新聞の記事だけで私の所感を申し述べる以外にないわけなんです。これは一連のものであると思いますから、とにかく異常な事態で裁判が公正妥当に進まないと、こういうことを長官は言っておられると思います。いまもお話が出ましたが、そういう事例として浅間山荘事件とかあるいは連続企業爆破事件と、こういうものが挙がってきている。そこで、いまお話に出ましたが、証拠調べ云々ということがありますけれども、その前提として、弁護人が出てこなければ始まらないと、ここがもう問題だと思うのです。通常の訴訟の進行であればもうとうに相当進んでおるのに、そういう事態があっていまなおおくれたいまの時期に証拠調べが行われておるような状態だと、こういう説明を、解明をしておられる、解説といいますか、私はそういうふうに見ておるわけでございます。とにかく弁護人が出てこなかったりいろいろ法廷闘争をしてずっとおくれていま証拠調べがまだまだやられておる、これが正常であればもっと早く進むのじゃないか、国民はそれを期待しておるのじゃないかと、こういう趣旨を言っておられるように私は見るわけでございます。

寺田熊雄日本社会党

○寺田熊雄君 事務総長も大臣も長官の弁護にいま精いっぱいで、その長官の言われた趣旨がどういう客観性を持ち、どういう国民に影響を与えるかというようなことを全くお考えにならずに、ひたむきに弁護していらっしゃるのですが、それでは、仮にそれが正しいとしましても、事務総長、いかがでしょう、いいですか、具体的な事件でその当該の事件の弁護人のあり方を非難するなんということが長官としてとっていい態度でしょうか、どうでしょうか。具体的な事件ですよ。もしも大臣のおっしゃるようなことだと、いやこれは裁判所の行動を非難したのじゃないんだと、その弁護人が悪いということを言っているんだという大臣のお言葉でしたが、いやしくも最高裁長官が、現に審理中の具体的な事件について、弁護人が悪いんだ、被告人が悪いんだなんということを国民に向かって言うべきでしょうかね。どうでしょう。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 一般的に法廷内において弁護人、被告人がルールを無視して不当な行状を行っておる、そしてそのために裁判が遅延させられているという実情があるということを述べられたわけでございまして、そのことは何ら差し支えないものではないかというふうに考えております。

寺田熊雄日本社会党

○寺田熊雄君 ほう、そんな考え方ですか。最高裁長官が、特定の事件について、その事件の弁護人を非難して差し支えないと、被告人を非難して差し支えないと。もう一遍伺いますが、そうですか。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 先ほども申し上げましたように、法廷内でルールを無視して不当な行状をして、その結果裁判を遅延させるという状況にあるものに対して、それは適当ではないじゃないかということを遺憾の意を表明されることは、差し支えないことではないかと思っております。

寺田熊雄日本社会党

○寺田熊雄君 そうといたしますと、その被告人なり弁護人が上告してきた場合に、自分が非難した人間について裁判することになりましょう。おまえはいけないんだというような烙印を押した人間について公正な裁判が期待できますか。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 何度も申し上げておるわけでございますが、ルールを無視したことに対してそのルール無視を非難されるということについては、これは責められるべきことは何もないのではないかというふうに考えております。

寺田熊雄日本社会党

○寺田熊雄君 当該の裁判長が、その弁護人をたしなめたり、被告人をたしなめたり、その法廷ですることは差し支えありませんよ。上級審の裁判長が下級審の裁判について頭越しにその被告人や弁護人を非難したりすることが不適当なことは裁判官の常識ですよ、これは。そんなことが許されたら、高等裁判所長官が、地方裁判所で審理中の事件について、あいつはだめだと、あんなやつはないというようなことを公然と非難していいことになるでしょう。もうそれは司法の秩序も何もあったものじゃありません。そんなことを平然とおっしゃる総長の裁判官としての倫理というものを疑わざるを得ませんよ。そうでしょう。高等裁判所長官はそれじゃ自分の管轄下の地方裁判所の事件について批判をして、あいつは弁護人が悪いんだと、被告人が悪いんだと非難していいのでしょうか。最高裁であろうとも一緒ですよ。上級審が、具体的な事件について、その事件関係者を非難したりすべきじゃありません。これは裁判官としてのモラルです。まだそれでもそうじゃないとおっしゃいますか。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 具体的な訴訟行為ということの適否を申し上げているわけではございませんで、ルールを無視した不当な行状、たとえば正当の理由のない退廷とか辞任とか、そういうような行動をとられるということは裁判の適正迅速な運営を図る上においてはきわめて遺憾であるということを述べられたわけでございまして、これは別に差し支えないことというふうに私は考えております。

寺田熊雄日本社会党

○寺田熊雄君 これはもう最高裁長官だけじゃありません。事務総長自体の裁判に対する御認識、裁判官としての心構え、これを根本的に改めていただかないと、私は日本の司法が大変な事態になると思いますよ。断じて上級審の裁判官が下級審の具体的事件についてその弁護人なり被告人の態度が間違っているとか間違っていないとか、そんなことを言うべきではありませんよ。上訴してきたときに、かつて自分の非難した人間の事件を裁くことになるじゃありませんか。どうして公正な裁判が期待できます。少なくも公正さに対する国民の信頼は失われるでしょう。これは深く反省を要求しますが、どうしてもそうだとがんばるのならこれはいたし方ありません。これは一般の法律家の批判、識者の批判をまつ以外にしかありません。  それからもう一つは、悪いことをした人間は処罰を受けるべきだというようなことも言っておられるわけですよ。しかし、それが一般の常識だとおっしゃるが、裁判官としては判決があるまでは被告人は無罪の推定を受けるという気持ちでやっていただかなきゃ困るんですよ。最高裁長官は裁判官ですからね。だから、そう軽々に悪いことをした者は処罰を受けるのはあたりまえだなんということを言っていただきたくないわけで、現に公判中の事件でしょう。それはやはり裁判があるまでは無罪の推定を受けるという裁判官としての常識を守って御発言になっていただきたいと思うのですが、これはいかがです。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 裁判で決まるまでは無罪と推定されるということはそのとおりでございまして、その意味で長官も発言されておられると思います。したがいまして、そこでは適正な手続を経た上で有罪と認定された場合には処罰を受けるということが当然の前提になった上で述べられていることだと考えております。

寺田熊雄日本社会党

○寺田熊雄君 そうといたしますと、長官のおっしゃることは、はなはだ舌足らずというほかはないですよ。いま総長のおっしゃったようなそれが前提になって、裁判があるまでは無罪だけれども、公正な裁判を経て有罪の判決を受けるべきだなんということを言っていないですよ、この文章は。悪い人間は処罰されるのはあたりまえだというようなこれは全く卑俗な常識論を展開していらっしゃるわけで、私はこの言葉だけを聞いて情けなかったんですよ。これは裁判官としての適格性さえ疑われると思ったんです。裁判官が、具体的な事件で、悪いことをするのは処罰されるのはあたりまえだよなんということを言うべきじゃないですよ。最高裁長官ですよ。どうですか。大臣、どうお考えですか。

瀬戸山三男自由民主党法務大臣

○国務大臣(瀬戸山三男君) 私、最高裁長官じゃないものだからなかなか答えにくいのですけれども、ここに書いてあるのを見ますると「悪いことをした人間は刑罰法規で処罰を受けるべきだというのが素直な国民感情ではないか。」と、こう書いてあります。私はやっぱり国民はそうだと思うのですが、いけませんかな。

寺田熊雄日本社会党

○寺田熊雄君 悪いことをした人間だとして検察官から公訴を提起されて裁判中なんでしょう。それは検察官の立場じゃないでしょうかね、大臣。なるほど悪いことをした人間は処罰されるのはあたりまえだというのは、これは一般論としては妥当でしょう。しかし、現に具体的に浅間山荘だとか企業爆破事件だという具体的な事件の被告人について言っている言葉ですよ、これは。それは検察官の御起訴が間違いなかったんでしょう、きっと。かもしれません。かもしれないけれども、裁判をなさる立場にある裁判官としては、やはり虚心坦懐に証拠調べをして心証を得てから初めてそれができることなのであって、それまでは無罪の推定を受けるものだという原則論で終始していただかないと困るわけですよ。だから、そういう一般論と、それから具体的な事件でいまこんちくしょう憎らしいというような感情を込めて最高裁長官がおっしゃっておるのと、混同して答弁なさっては困るわけです。この行間にみなぎっておるのは、あんな被告人や弁護人はけしからぬやつだ、何だ、悪いことをする人間は処罰されてあたりまえじゃないか、何をぐずぐずしているかと、こういう口吻でおっしゃっておられることがこの行間にみなぎっているじゃありませんか。だから、そういう何か言葉を文字解釈して美化しておっしゃってもらっちゃ困るんですよ。この行間にみなぎる最高裁長官のうっせきしたうっぷんといいますか、その感情というか、それをやっぱり見ていただかなきゃ困るんですよ。大臣、いかがです。

瀬戸山三男自由民主党法務大臣

○国務大臣(瀬戸山三男君) なかなかやっかいな問答なんですけれども、まあいろいろ考え方はあると思いますが、私の立場で素直な見方をいたしますと、岡原最高裁判所長官はすぐれた裁判官だと私も思っております。一般論といたしましては、起訴されておっても裁判官はいわゆる純然たる第三者でございますから、それが起訴されたような犯罪があるのかないかわからないで御承知の審理をし、証拠調べをしている。それで罪ありとすれば処罰を受けると、こういう観念を岡原長官といえども当然にこれはわきまえての御発言だと思います。ただ、連続企業爆破事件とかあるいは浅間山荘事件がたまたまもとに返りますけれども弁護人等の適当でない行為によっておくれておる。いずれにしても裁判をしてその黒白を早く決めるということが、罪あれば罰しなきゃならない、もし審理の結果罪なければ無罪でございますが、そういうことを可能な限り公正妥当な迅速な裁判をするということが司法の目的であると、こういう趣旨をおっしゃって、たまたまそういう弁護人の不当と思われるような行為に関連のある事件を例に出されたと、そういう趣旨に、何といいましょうか、私の立場で言うともう少しフェアといいますか素直に見てあげなきゃいかぬのじゃないかと、これはもうこういうのは悪んだから早く罰せよと、そういう感情で言っておられるのではないのじゃないかと、私はそう見ておるわけでございます。

寺田熊雄日本社会党

○寺田熊雄君 それはひいきの引き倒しですね。この文章を素直に、私こそ法務大臣に素直に読んでくれということを逆に申し上げたいですよ。この文章を読んでみると、もう弁護人に対する、何というのか、憎しみまではいかないかもしれないけれども、そうした浅間山荘事件なりあるいは企業爆破事件なりの弁護人や被告人に対するうっせきしたふんまんとでも言いましょうか、そういうものが一挙に爆発したような感じの文章ですよ、これは。だから、そんなに大臣のおっしゃるように冷静に非常にりっぱな一般論を説いたという文章じゃないですよ。それならだれが読んでもああもっともだと思うですよ。だれが読んでも、これは最高裁長官のそういうふんまんの爆発だと思わざるを得ないようなことなのであれだけの波紋が起きたわけですよ。だから、それはもっと法務大臣も素直に読んで御答弁いただきたいと思いますよ。  それから日弁連の運営についても発言をしておられるんです。日弁連の内部のことは裁判所でも国会でも手がつかないと。これはそのとおりでしょう。公正な批判は必ずそれなりの影響を持つと思いますけれども、強権で支配することはできませんわね。ところが、これは「朝日新聞」の表現ですけれども、   前会長にも現会長にもいっているが、弁護士会ほど自由な団体はない。アメリカでは弁護士の品位の保持を大事にしている。  これは、いいですか、アメリカでは大事にしているけれども日本では大事にしていないというのが言外に秘められているわけですよ。   ところが、日弁連は、問題のあった弁護士の徴戒問題について結論を出さないままウヤムヤにしている。弁護士会内部のことには裁判所だって国会だって手が出ない。弁護士には役人のような人事上の制肘(せいちゅう)がない。これが大問題で悪用されている。使い込みや詐欺などは懲戒をやっているが、法廷で問題を起こした弁護士にはやらない。ほんの数人だ。ばっさりやればいい。  と、こういうことなんですね。どうでしょうかね、こういうようなことを最高裁長官が言うべきことでしょうかね。弁護士会のこの問題、数人の悪者がいるからばっさりやったらいいじゃないかと。余りにもラフな神経というか、もう少し慎重さがあっていいのじゃないでしょうかね。弁護士会に対するふんまんはわかるですよね。多分にふんまんがあるでしょう。しかし、こんな形でふんまんを爆発されなくてもいいのじゃないかなと私は思いますがね。総長、どうですか、これはやっぱりあなたは弁護なさいますか。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 裁判所の法廷における不当な行状について懲戒請求をした事案がございまして、それについてはっきりと懲戒した事例はいままでにございません。それらの弁護士会の懲戒機能が十全にあるいは適切に運営されていないのではないかという危惧の念を長官としてはお述べになったわけでございまして、その点についてもし具体的な内容等の詳細が必要でございましたら、刑事局長から答弁させたいと思います。

寺田熊雄日本社会党

○寺田熊雄君 裁判所から見ればけしからぬと思うことがあるんでしょう。しかし、日弁連は日弁連で、みずからの内部事項ですからして、そうした事案ではないということで処罰をしていないわけですわね。それに対するふんまんがあれば、それはそれなりのやはり筋道があると思うんですよ。何も、天下に向かって、日弁連はだめだ、なぜばっさりやらないのかというような、そんなことを公言する必要はないのじゃないでしょうかね。余りにもラフというか、軽率というか、乱暴というか、好んで日弁連との対立関係を拡大するような、そんなことをする必要がどこにあるのでしょう。これは大臣はどう思われます。

瀬戸山三男自由民主党法務大臣

○国務大臣(瀬戸山三男君) これも、簡単でございますが、記者団の方から、「日弁連は内部自治の強化を検討しているが。」と。これは純然たる自治体制にありますから、それがきわめて不十分だということは率直に申し上げて弁護士会でも認められております。でありますから、その自治体制をもう少し強化しなきゃならぬということでいろいろ検討し、また協議しておられると思うのです。そのことをどこかの新聞記者の諸君から話題に出して、それに関連しての長官の発言でありますから、それはまあ困ったものなんだという意味で、いまお述べになった記事に出ておりますような発言をされたと思うのです。これは弁護士会自身でも自治能力をもう少し高めなきゃいかぬということを言っておられるわけですから、それに関連しての発言であって、まあ、ばっさりやれなんというのは余りにラフといいますかざっくばらんな話で、ちょっと刺激的な言葉でございますけれども、やはり弁護士会は高度の法律家の集団でありますから、もう少しきりっとしてもらいたいという趣旨を言われたのだと私は解釈しております。

寺田熊雄日本社会党

○寺田熊雄君 まあそう解釈なさることもそれは法務大臣として自由でしょうけれども、確かに、ラフとおっしゃったけれども、乱暴だと言う以外にないんですよね。これは私もこれを質問するのに当たっては、やはり最高裁の裁判官をなさったある大先輩の意見も聞いてみたわけですよ、独断に陥ってはいけませんから。それはやっぱり誘導尋問にかかったんだろうなんということも言っておられたですよね。大臣のいまのお言葉の中にもそう思っているのじゃないかと思われる節もありますがね。仮に敏腕な記者諸君の誘導尋問にかかったとしましましても、それが大きく報道されるであろうというようなことは当然予知できることですから、もう少し刺激的な言葉を慎んで、まあ常識的な、それは長官の言われる常識的な表現をとって一般論をお述べになればいいんだけれども、これはもう、何というか、ちょっとラフ過ぎますね。乱暴過ぎますよ。私はこの方はりっぱな人格者だということは聞いておりますし、私が意見をたたいた人もそうお話しなさった。しかし、それは裁判官になり切っていないですよ。まだ検察官だ、これは。だから、裁判官の形はとっていても、人柄はりっぱであっても、本裁判官としての心構えができていないんですよ。検察官のままですよ、これは。だからこういうことになる。それで、その大先輩も、ちょっと軽率だったなということを言われました。だれということを申し上げるのは失礼になりますから、その方も私に対する信頼があればこそおっしゃっていただいたので、名前なんか出したら大変だから申しませんけれども、これはだれが考えても軽率だというそしりは免れないですよね。  それからもう一つは、これは驚いた表現で、都教組とか全司法のことをいろいろ御批判になって、  納税者からみれば労働貴族で無制限に金が出  る。と、まあこういうようなことを言うに至っては、もう何という軽率さだと言わざるを得ない。一体そういう官公労の人や公労協の人がどのぐらい現に賃金をもらっていると思っていらっしゃるのでしょうか。私どもはよく相談を受けます。また知っています。親戚にもおる。二十年以上勤めたって手取りがぜいぜい十六、七万なんですよ、標準世帯で。どうしてこれが労働貴族なんでしょう。そんな実態を無視した認識で裁判をなさるから名古屋中郵事件のような裁判が出てくるわけですよ。つまり、公労協の労働者、官公労の労働者に対する憎しみとまでは言わないけれども何かとんでもない偏見というか反感というものを持っているんですね。だからあんな間違った裁判が出てくる。事務総長ね、いま私が申し上げたように、二十年ぐらい勤務した労働者が標準世帯で十六、七万しかいま手取りがないんです。それをしも労働貴族と言えるでしょうか。いかがです。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) まあそれは言葉の表現でございますので、そういう表現が適当であろうかどうか、私もちょっとはかりかねますけれども、いまお示しのように十六、七万というようなことであれば、それが貴族という形になるのは多少言葉としては合致していないことになろうかとは思います。

寺田熊雄日本社会党

○寺田熊雄君 初めて総長の真実を肯定なさる御答弁を伺ったような気がしますね。初めてじゃないでしょうかね。実際そうなんですよね。だから、総長ね、長官にお話しなさっていただきたいと思うのです。裁判をなさる上では実態を本当に把握して裁判してほしいということです。何を労働貴族と言ったのか、こんな間違った認識で裁判をなさったのでは裁判が過ちますよということなんです。それをお伝え願えますか、長官に。いかがですか。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 本日の御審議の模様は十分長官に御報告申すつもりでございます。

寺田熊雄日本社会党

○寺田熊雄君 これは法務大臣にもお尋ねしたいと思いましたが、総長があのように適当でないということをおっしゃったですから……。  それからなお、国民の常識ということを長官は強調せられておるわけですね。こういうことも言っているんですね。   最高裁は非常に真摯(しんし)な議論をやっている。議論にはう余曲折はあるが、結局落ちつくところはコモンセンス、常識で、それが多数意見に表れてくる。それが国民多数の常識にどこまで合致するかが問題だ。国民の常識が奈辺(なへん)にあるかを探すのがわれわれの職務だ。たとえば全逓中郵の判決には色々難点があった。 それでさっき言ったように労働貴族論が出てくるわけですが、それまでにいかない部分でも、私は国民の常識ということは非常にとうといと思いますけれども、ここは、全逓中郵事件であるとか、名古屋中郵事件であるとか、スト権の問題なんです。スト権などというものは、これは歴史をもう総長はよく御存じでしょうけれども、これは十九世紀の二〇年代まではイギリスのような先進国でさえも犯罪であったわけですね。それが当時の常識であったわけです。それから一八七〇年代、十九世紀の七〇年代では、あのシカゴの労働者の有名な事件があるでしょう。メーデーに参加して、首謀者はたしか五人ですか死刑になりましたね。また、何人かが無期懲役になり、つまりストライキがそれほどの処分を受けておった歴史があって、当時はそれが国民の常識であったかもしれませんけれども、先進的な指導者がそういう弾圧をはね返して闘いながらそれが次第に放任の時代になり、それから権利化してくるわけでしょう。だから、いつも国民の常識を後追いしていくのではスト権なんというものが認められるはずがないわけですね。そこにまた戦前のことをわれわれは考えてみましても、昭和十六年に戦争が起きたときは、恐らく国民の大部分があの戦争を支持したんでしょう。しかし、それが敗戦で平和憲法ができました。そのときは平和憲法は国民の常識が支持したわけでしょう。常識は変わるわけですわね。それからまた、吉田さんが、あの最初の憲法審議の国会で、自衛のためといえども兵力は持てない、軍隊は持てないというまではっきりと答弁したのが、いつの間にか自衛のためなら戦力が持てるとか軍隊が持てるとかいうような憲法論に変わってきました。いまは自衛隊を肯定する国民がずいぶんおるでしょう。常識は非常にもう激しく変わりますからね。だから、絶えず国民の常識を探るのがわれわれの任務だなんということでは、最高裁に進歩的な役割りなんということはとうてい期待できないでしょう。いつまでもストライキは犯罪であると、そんなような時代おくれの考えを持って裁判することを避けることができませんわね。これはもう見識の問題だけれども、何と見識のないことだろうかというふうな感じを持たざるを得ないわけですよ。つまり、もっと指導的なものを持ってほしいと、歴史をながめての見識が欲しいということを私はこの長官談話を見て感じたのですが、総長はどのようにお考えですか。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) まああるべき裁判というものがどういうものであろうかということは、個々の裁判官がそれぞれ苦悩しておるところでございまして、それを一つにまとめるということはなかなかできにくいことだろうと思います。ところで、常識による納得のいく裁判ということは、長官は日ごろ常々裁判のあるべき姿としてお述べになっておられるところでございますけれども、それには言葉ではあらわし尽くせないやっぱり二十年なり三十年なりの過去の司法体験をもとにして述べておられるところだと存じますので、いま寺田委員がおっしゃったように過去の後追いをするだけというような意味のものではない、もう少し広い意味を持った信念を述べておられるのだというふうに拝察いたしております。

寺田熊雄日本社会党

○寺田熊雄君 総長のお立場上これは美化して解釈なさるのはしようがないけれども、これはそのままにしておきましょう。どうせ本日の論議は長官にお伝えいただくということですから。これは長官がどういうふうに反省してくださるか、それを待つ以外にはないですわね。  これは法務大臣ね、この岡原最高裁長官の発言は、まあ部分的には表現がラフであるとかあるいは労働貴族論であるとか、大臣がお認めになったり、あるいは事務総長がお認めになったりするような欠陥というものがあること、これはもう大臣も総長もともどもにお認めになったわけですが、全体としましてこんなに誤解を受ける——誤解であるかどうか、まあ誤解されるのが当然だと思いますけれども、いろいろな波紋なり論議なり悪影響なり、そういうものを持つそういう発言を今回岡原長官がなさったということ、これは私は非常に軽率な発言だと、また裁判官の公正さを失墜した発言だと。前に鬼頭氏が裁判官としての威信を失墜したということで弾劾裁判にかけられたのですけれども、あれは非常に謀略性がありましたからね。最高裁長官のような人柄としてはまことに潔癖な廉直な人、むしろこういうことを思ったことをどんどん言うということが正直な人柄なんでしょう。それは認めるけれども、しかし、裁判官としての威信を失墜したという点においては変わりはありませんよ、鬼頭と。それは長官の軽率さから出ておるわけで、全体として見てこういうような発言をしたことは私は非常に不適当だと思っておるのですが、法務大臣はどんなふうにお考えですか、全体として。

瀬戸山三男自由民主党法務大臣

○国務大臣(瀬戸山三男君) 記者会見の際の比較的緩やかな気持ちでいろいろ発言されておる、そういう点に言葉としてどうかなと思う点もあると私も思います。思いますが、ひいきをするとかなんとかいう立場でなしに、最近の一部裁判における状態をずっと見ておられるわけでございますが、司法行政の最高責任者として、こういう事態があるということについてはやはり常日ごろ考えておられたことを素直に話されたというだけのことであって、著しく品位を汚すとか裁判官としての威信を傷つけるとは私は正直なところ考えられない、こういうことでございます。

寺田熊雄日本社会党

○寺田熊雄君 非常に軽率であったとは思われませんか。

瀬戸山三男自由民主党法務大臣

○国務大臣(瀬戸山三男君) 私はこの全体を見て、非常に軽率であったとは正直に見ておりません。裁判の事態というものは、関係者は別でございますが、一般国民はどういうふうになってああいう裁判がおくれておるかということを知らない人もあるわけでございますから、たまたまこの特例法に関係してこういうふうな異常事態があるという話なんですがどうですかと、こういうことを司法行政の最高責任者に聞かれたとき、実はかくかくしかじかのことがあるんだと、こういうことを率直に言われたというだけでございまして、非常に不当だというふうに私は考えていない。

寺田熊雄日本社会党

○寺田熊雄君 私のところに来られたある最高裁の関係者の方が、思ったことを言っていただいて痛快に感じましたなんと言う人があって、これは正直は正直かもしれぬけれども、そういう考え方を持っているという人は非常に困ったものだと考えたんですけれども、それはここではあえて申し上げないでおきましょう。  それから勇将のもとに弱卒なしというのですか、この間石川県の七尾市というところで七尾火力発電所衝突事件という事件が起こりまして、十四名の漁民労働者——漁民であり、労働者であり、また農民を兼ねておる人々が逮捕され勾留されたわけです。金沢の簡易裁判所で勾留理由開示裁判が行われまして、逮捕者の乗った護送車がその裁判所の玄関に到着をした。そのときに、家族などが、激励のためでしょうか、その護送車に殺到したのであります。そのときに、金沢地方裁判所の向井哲次郎という所長が非常に興奮をして機動隊の出動を要請した。まあそこまでは仮にいいとしましても、その玄関の前に立ちまして、機動隊やそれからその殺到した家族など住民を前にしまして、「不退去罪で逮捕しなさい」「証拠写真を撮りなさい」などと絶叫したというのであります。私どもは、心構えとして、裁判官が何か住民というものをけしからぬやつだ、悪者だというふうに頭から決め込んでいる、そういう態度にとうてい理解しがたいものを感ずるわけです。それは、住民の中には、一部興奮したりなんかして、何か縄を張ってあるところを少しはみ出したとかまたいだとかいうのですが、そういうことはあるでしょう。しかし、それをすぐ逮捕しろとか、証拠写真を撮れとか、住民を何か悪者扱いに頭から決め込んでいくそういう態度といいますか、これが全般にこういう態度が裁判官の間に流れているとすると、もう大変なことになりますからね。国民に奉仕するというのは、何も抽象的な一般の国民でないんで、それは個々の具体的な人間の集まりなんですから、それを、憎しみを込めて、ちょっと何かあったらすぐ逮捕しろとか証拠写真を撮れとかいうようなそういう態度はとるべきでないと思うのですが、これは事務総長なりあるいは総務局長ですか、お調べになりましたか。

岡垣勲最高裁判所事務総局刑事局長

○最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) ただいま委員から御指摘になりました事件は、最初の方は、これは御指摘のとおりに、七尾の火力発電所建設に関する事件でございまして、それで簡易裁判所でその被疑者に対する勾留の理由開示の手続が行われた。その際のある出来事であったことは間違いございませんが、そのときの状況を、少し長くなるかもしれませんが、私どもが調査しましたところをこれから申し上げます。  四月二十四日の午後四時三十分ごろに、ある被疑者の理由開示の手続をするために、勾留場所である金沢中署に連絡して、その被疑者の出頭を依頼したわけであります。その被疑者は乗用車で護送されてきたわけでございますが、被疑者が裁判所の正面にその車が来たところで、待ち構えていた多数の支援の方々、これは「北陸中日新聞」によれば四百人というように言われているようでありますが、これが一斉に護送車に押しかけられて、車の前面に立ちふさがって、手で押し返す、あるいは車にすがりついて屋根を手でたたくというふうなことがあったわけでございます。護送車は、集まられた方が危険ですから、それで一時停止させられる。警音器などを鳴らして通路を開くように努めたわけでございますが、なかなか多くの人が集まられて喧騒をきわめたので、暫時立ち往生して、そしてやがて発進したのでございますが、それには支援者がしがみついて口々に何か叫んでおったというふうな状況であったのでございます。そのままのろのろと約三十メートルほど進んで、庁舎の玄関の入り口に来た護送車からその被疑者を法廷へ出頭させるということでおろす必要があるわけでございますが、おろそうと戒護の係官がいたしたわけでございますが、群集にさえぎられて不可能であったわけであります。そこで、押送の係官の判断で護送車は被疑者を乗せたまま裁判所を退去したということでございます。その間の状況はかなり切迫したものがあったようでございます。  所長は、双方にけが人が出たり被疑者が奪還されたりという不祥事が起きてはいけないというふうに考えて、また開示手続を行わなければなりませんので、警察官の応援を要請したわけであります。これが午後四時三十分ごろということになっております。ところが、警察の方はもちろんその応援の要請にこたえたわけでございますが、やはりこの事件は七尾火力発電所建設に絡む住民にかかわる問題でございますし、慎重を期したと思われますが、所長に、隊員を到着させる場所に直接出向いて指示をしてほしいという要請があったのでございます。そこで、所長は、法廷棟の玄関に行ってその警察官の到着を待っておったわけでございますが、先ほど申しましたような事情がございましたので護送車の通路をつくるために職員に指示してロープを張らせようとしたわけであります。ロープを張れというふうに言って現場の作業を指揮したということになります。職員がロープを張る作業に取りかかったわけでございますが、その際多数の群集がロープを張らせまいというわけで、そのロープを張ろうとする職員に、何の根拠でロープを張るのか、裁判長の命令かというふうなことを言いながら手でこずくなどしてその作業を妨害したという状況があったわけであります。そこで、所長は、それを見て、職員に写真をとっておきなさいというふうに二、三回指示したということがございます。このころにはまだ現場には警察官が来ておりませんので、機動隊を指揮したとか、あるいは警察官の方に向かって不退去罪で逮捕しろとか言ったとか、あるいはみずからマイクを持って逮捕しなさいと絶叫したとかいうふうなことはないわけでございます。このマイクの点なども確かめましたけれども、マイクを持っておったのは所長ではなくて民事の書記官であったというふうに、警備に出ておった書記官だというふうに聞いております。  そういうふうな状況でございましたので、寺田委員御指摘のような、所長が被疑者の家族の方だとかあるいはそれを支援する方々というものに対して敵意を持って、何でもないことをつかまえて逮捕しろとかなんとか言ったというふうな事実というふうにはわれわれは考えておりません。  以上でございます。

寺田熊雄日本社会党

○寺田熊雄君 これは五十三年四月二十八日の「読売新聞」の記事なんですけれども、   「不退去罪で逮捕しなさい」「写真をとりなさい」と絶叫。これに対し、記者会見した向井所長は「「写真をとれ」とは言ったが、「逮捕しろ」と言ったかどうかはよく覚えていない。いずれにしても警告のつもりだったんだが」と「逮捕」発言については間接的に否定。しかし、現場でこの発言を報道関係者、反対派などかなり多くの人が聞いている。  という記事なんですよ。だから、局長が、所長に報告書を出させ、あるいは報告を受けている中では、それは所長は自分じゃ言わないと思うんですよ。しかし、第三者が多くの人が聞いていると書いてあるんですね。何にしても被疑者を奪還されるのじゃないかなんということを考えること自体がもう住民運動を暴力団なんかと一緒にしているんですよね。そんなことを住民運動ができるわけがないんでね、それは一時ちょっと興奮するようなことがあっても。そういう奪還されるのじゃないかと懸念したなんということ自体が、もう住民運動に対する無理解からきているわけです。何か住民というのはもう乱暴者でしようがないものだなんという誤った大衆観といいますかね、大衆に対する見方があるものですから、それでそういうことがある。それで、また、地裁所長が玄関前に出て絶叫せぬでもいいんですよ。事務局長がそのためにいるんだから、事務局長に任しておけば。だから、第三者が見てどうもおかしいと、こういうことを言ったんだと言われるような記事を書かれるというようなことがないように、心をむなしゅうしてよくお調べになって、そしてよく所長にそういう点冷静に対処するように御注意願いたいと思うのです。いかがですか。

岡垣勲最高裁判所事務総局刑事局長

○最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) 私どもは先ほど申し上げたような事実であるというふうに考えておりますけれども、まあいろいろな批判があった場合に、裁判所というところはどなたも公正で間違いのないところだというふうに認識しておられるところでありますから、それが変な嫌疑を受けるようなことがないように常々心がけなければならぬと思いますので、そういう点については今後ともよく注意していきたいと存じております。

寺田熊雄日本社会党

○寺田熊雄君 それで結構です、注意するというお言葉があったからそれに信頼してお任せしますけれども、   二十五日の段階では。読売新聞記者の取材に「あれ(逮捕発言)は、独り言みたいなもの」と発言を認めている。  という記事もあるんです。こういうことを新聞記者が勝手に書くわけはないですからね。だから、やはり事実の調査というものをよくやっていただきたいと思います。いいですか。

岡垣勲最高裁判所事務総局刑事局長

○最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) 御趣旨はよくわかりました。

寺田熊雄日本社会党

○寺田熊雄君 じゃ、終わります。

宮崎正義公明党

○宮崎正義君 岡原昌男最高裁長官が、憲法記念日を前にして行った五月二日の記者会見で、国会審議中の刑事事件の公判の開廷についての暫定的特例を定める法律案、いわゆる弁護人抜き裁判の特例法案について、法案の是非を論じたということが報道機関によって報じられております。寺田委員から事つぶさにその内容についてはいろいろ質問をなされました。私はもちろん直接にその談話を伺ったわけでもございませんし、あくまでも報道されたことによってお伺いをするわけでございますが、先ほども総長の御答弁の中に、私もそれは立ち会っていないんだと、こういうふうなお話もございました。いずれにしましても、いま寺田委員の方から一つずつの事例を取り上げながら指摘がありましたけれども、現時点の種々の状況から判断いたしまして、まことに長官は軽率な発言であったのじゃなかろうかと私もこう思っておりました。総長もさることながら、大臣も先ほどの御答弁の中にこういうふうにもおっしゃっておられましたが、最近の裁判を見て司法行政の立場で素直に話をしたと私は考えている、軽率であったとは認められない、また一般国民に異常事態があるんだということを素直に話したんだと、このように大臣は御答弁をなさっておられますが、国民の側からいきますといろいろな受けとめ方をしていると思うのです。また特に私は国民の一人の人からのこの長官の発言に対しまして「声」という欄で投書のありましたものを、総長も大臣もお読みになったかどうかわかりませんけれども、これはいろいろな意味で波紋を広げていると思うので、それを読んでみますと、   憲法記念日の記者会見で、岡原最高裁長官が、法の支配の確立のため、ルール無視の公判では弁護人抜き裁判も必要であると述べた。連合赤軍や企業爆破事件などのように一般人を犠牲にする罪を犯した被告人の場合、弁護人が法廷に出ないため裁判が延びてその処罰が遅れるのは、国民感情として納得できないはずだから、裁判迅速化は必要であるというのが理由だった。この問題が出て以来、強く反対してきたのは、主に弁護士や野党側だったが、日ごろ刑事裁判には関係ないと思っている私たちにも、これは無関心ではいられない問題である。   弁護権が、憲法や刑訴法で保障されている理由は、たとえ、どんな悪事を働いた人でも、公判では検察側と対等の席に立たされるのだし、権力の背景のない被告人の個人としての基本権は必ず守られなければならないからである。  法の支配とは、行政権に同調することなく国家権力から独立して法を守ることではないだろうか。故意に公判遅延を企てた弁護士については、弁護士法の懲戒処分の適用を工夫すれば十分ではないかと思う。   平和憲法の下で、ぬくぬくと暮らしてきた多くの人々の上に、いつヒトラーのような権力者が現われないと断言できるだろうか。そんな権力に反対した弱い人間が、弁護人なしで裁判を受ける日が、もし来たら、と思うと、ぞっとするのは私だけではないと思う。  この方の受けとめ方は、あくまでも報道機関によって報道された内容によっての感想を述べられたと思うのですが、これは一人の方の投書ではございますが、国民の声としてはやはり等閑視することのできない長官の発言だと思います。  また、もう一面にはこういう論評をされた記事がございました。   最高裁長官の「憲法記念日会見」は毎年恒例のものとして行われるが、昨年の藤林益三長官、一昨年までの村上朝一長官と、ここ数年はとりたてて論議を呼ぶような発言はなかった。むしろ〃当たりさわりのない〃発言が普通だった。その点では今回の岡原発言は、珍しく率直といえる。  とも報じられている論評もございました。  ともあれ、こうした今回の長官の発言によりまして、先ほど大臣が御答弁なさった、素直に話をされたと考えるだけで軽率ではなかったというふうに大臣は答弁なさっておられますが、裁判所は裁判官の言動に対してどのような方針をとっているのかというようなことを改めて私は伺いたくなったわけでありますが、この点について大臣も総長もひとつ御答弁を願いたいと思います。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 長官の発言に対していろいろの評価なり御批判というものが出ていることは、私どもも承知いたしております。しかしながら、事実関係としては、先ほど寺田委員の御質問に対して私が御説明申し上げましたように、裁判に存在している一部の異常な事態を何とか解決するということが司法を適正に運営していくために必要ではなかろうかということで、その実情について御理解をいただこうという趣旨で発言されたものというふうに私どもは考えておりますので、裁判についてきわめて特異な考え方を持っているとか、そういうような御趣旨ではございません。

瀬戸山三男自由民主党法務大臣

○国務大臣(瀬戸山三男君) 岡原長官の発言についていろいろマスコミの報道、あるいはそれに対する賛成といいますか反対といいますか、危惧の念を持って投書等もあります。先ほどお読みになった前段の投書は私も見ております。まあしかし、それを批評するわけではありませんが、やはり事態の真相をよく御存じない方がいろいろ疑心暗鬼で投書しておられる場合もあると私は思いますので、それをとやかく言うわけじゃありませんが、いずれにしてもこのごろはいわゆる広報時代でございますから、いろいろな意見が出てくる。それも私はいいと思います。いろいろな意見をやっぱり注意深く見て参考にして間違いない道を歩かなきゃならない。そういう意味においていいことだと思いますが、しかし、そういういろいろな物議といいますか、誤解、曲解、いろいろあると思いますけれども、やはり、発言には、お互いにその局にある者はそういう誤解あるいは曲解を受けないように言動を注意しなきゃならない。それはお互いにやっぱり反省しなきゃならぬところだと思っております。

宮崎正義公明党

○宮崎正義君 特に係属中の事件の問題等についてコメントをなさるというふうなことはこれは慎まなきゃならない問題じゃなかろうかと思いますし、不適当な不穏当な、公正を疑われるようなそういったようなことは、厳に慎んでいかなきゃならないのじゃないかと思いますが、この点どうですか。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 記者団からの質問が、いわゆる異常な事態があるかという問いでございましたので、そういう異常な状態があるということで裁判の実情についての御説明をしたわけでございます。その実情についての御説明に例証として名前が一、二挙げられたにすぎないものというふうに考えております。

宮崎正義公明党

○宮崎正義君 そのことを受けとめる場合に、やはり長官としての立場の上で受けとめ方をしていかなきゃならないのじゃないか、こう私は思うわけです。したがいまして、今後もこういう事例は出てくると思いますが、いま法務大臣が言われますように現在は情報機関とかあるいは報道の錯綜している、発達している時代で、その中でいろいろなとり方をする、そのとり方をすることによって問題を醸していく。特に裁判官である者、特に最高裁の長官である立場の人ということになれば、質問にも受け答えの態度がなくちゃならぬと思うのです。こういった意味で、私は、自今こういうふうな問題がありますときに、醸していかないような態度で臨むべきじゃなかろうかと、こう思うわけですが、いかがですか。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 先ほども申し上げましたように、長官の発言された趣旨は、内容につきましては私は司法行政を総括する者としての立場から当然のことを述べられたものだというふうに考えておりますが、そういうことを一般の国民に理解していただくためには、それに相応するような工夫がやはり必要であろうというふうに存じます。その点については委員のおっしゃられるとおりだと思いますので、われわれも十分注意はいたしておりますけれども、今後ともそういうことにも配慮して発言というものは行いたいというふうにいたしたいと思っております。

宮崎正義公明党

○宮崎正義君 寺田委員からもお話がありましたけれども、私は現在法曹三者の協議を積み重ねていく一番大事なときじゃないかと思っている。そのときに当たって、弁護士会の内部自治の問題に対して批判的な印象を与えるということは避けるべきであって、むしろ法曹三者の協議というものを進めていくような中身であったならばまだしもということを思うわけですが、いずれにしましても、法曹三者の話し合い、協議を今後どうしていかれようとするのか、その点について御答弁願いたいと思います。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 先ほども申し上げましたとおり、裁判というものは裁判所だけで運営が十分になされ得るものではございませんで、訴訟関係人である検察官、弁護士等の協力ということが非常に重要な要素であろうと思います。したがいまして、十全な裁判の運営を確保するというためには、法曹三者の話し合いというようなことが大事であることは、おっしゃられるとおりだと存じます。しかし、法曹三者の話し合いが必要で、裁判所としてもそれについては今後も努力するつもりでございますけれども、やはり法曹三者の話し合いの前提といたしまして、現在裁判の運営にきわめて異常な状態があるというそういう共通の認識を持った上でそれをどうするかということが必要ではなかろうかというふうに考えるわけでございまして、その共通の認識ということの方がやはり法曹三者の話し合いが建設的に進められるためには必要ではなかろうかというふうに存じております。

宮崎正義公明党

○宮崎正義君 その共通の建設的な意見をどうして引っ張り出そうか、どうしてやろうかという積極的な話し合いというものの場を持たなきゃならぬと思うのですが、どんなふうにお考えになっていますか、どういうふうな計画のもとに三者の話し合いを進めていかれようとしているのか。目下、衆議院におけるいわゆる弁護人抜きの裁判の法案の審議を進めつつあるようでありますが、特にこの間における話し合いというものは、審議をやっているからやらないじゃなくて、その審議をやりながらあわせながらやっていくのが私は妥当じゃないかと思うのですが、その点を総長から伺い、そして最後に大臣からも伺って、私の質問は終わります。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 先ほども申し上げましたように、法曹三者の意思の疎通ということが大事であることは申すまでもないわけでございまして、これは名前のついている会合のみならず、名前のついていない非公式な会合等におきましても三者の意思疎通を図っていくということを考えておるわけでございますが、一番端的に申し上げますと、いわゆる法曹三者で行われております三者協議会という場がございますが、ここでもこの問題についての論議ということは行われておるわけでございまして、私どもとしては法曹三者の建設的な話し合いができることは当然望んでおるところでございます。   〔委員長退席、理事寺田熊雄君着席〕

瀬戸山三男自由民主党法務大臣

○国務大臣(瀬戸山三男君) 申し上げるまでもなく、司法といいますか、裁判は、いまもお話が出ましたが、やはり裁判所、弁護人・弁護士、それから検察、この三者のそれぞれの立場における職務を通じながら相協調して前進しなきゃならぬ、これは当然なことでございます。  そこで、今度のこのいわゆる特例法に関しては、残念ながらそういう状態ではございませんから、これはこれとして、これはこれで終わるわけではございませんから、将来にわたってやはり腹蔵ない意見の交換をしなきゃならない、そういう私は考えを持っております。先般も今度新たに日弁連会長になられた北尻さんにも、また最高裁長官にも、そういう趣旨で今後はざっくばらんに話し合う会合を定期というか逐次持とうじゃないか、こういうことをお互いにそうしようということになっておりますが、この問題では遺憾ながらそういう状況でないわけでございます。それは御理解願いたいと思います。

宮崎正義公明党

○宮崎正義君 私は、法案の提出をされた時点の現在においても、やるべきことはやった方がよろしいと思うわけです。  それからいま大臣がおっしゃっておられますけれども、これが従来から密接な関係を持ちながらやってきておるならば、もう少し形の変わった行き方で法案の提案なり審議なりやっていく状態というものがつくられたと思うのです。この点について今日までの三者の会合というものがどうも納得のできない状態に置かれていたのじゃなかろうかということを懸念したために申し上げたわけですから、御答弁ありましたように、十分今後進めていかれながら、三者三様にお互いが向き合うのじゃなくて、背中が向き合っているというような形は断じて許されるべきことじゃないと思うわけでございます。国民の声としての声がそれだと思います。  それはそれとして、最後に、別な問題でございますが、一言だけ国務大臣として今度はお伺いしたいのは、成田の空港の開港が二十日でございますが、この安全性の確立というものは期せられますかね。と申し上げますのは、五月の五日、七日に二度にわたって京成電車の成田空港特急の焼き打ちと、それから転業農家の住宅が二棟放火されるというような事件が相次いで発生したということが報じられておりますが、いずれもこれらは時限発火装置による過激派のゲリラ活動によるもりというふうに報道されておりますが、開港を十日後に控えましてこれはきわめて憂慮すべき問題だと思います。これは毎回成田の問題は取り上げてまいりました。先月の二十日にも当委員会で成田空港の諸問題を論議いたしましたけれども、この種の事件の再発というものを厳重に防止する。どういうふうな形で出てくるか、どういうふうな手段で反対阻止をしてくるか、いろいろな形の中で出てくると思うのですが、そういうものに対する安全対策というか、防止といいますか、開港に向けての手抜かりがどうもあるような気がして不安でなりませんし、実際できるのかどうなのかというようなことを非常に危惧するわけです。きょうのニュースでも言っておりましたけれども、運輸大臣も国際的にもこれは断固としてやるけれどもということなんですが、やった、やれ困ったというようなことになるようなことは絶対に起こらないという御確信があるかどうか、ひとつその点を伺って、私の質問を終わります。

瀬戸山三男自由民主党法務大臣

○国務大臣(瀬戸山三男君) 絶対にということはなかなか簡単には申し上げられませんが、空港そのものの防護体制といいますか、そういうものは、前の経験にかんがみて、十分な措置をいまほとんど進めが終わると、こういう状況でございます。あとはいわゆる暴力集団によるゲリラ的な攻撃、これは御承知のとおり警察力でこれを防除するほか方法ないわけでございますが、いまの状況を簡単に申し上げますと、この前の三・二六のあの事件は、第四インターといういわゆる暴力集団が中心になってやったことでございます。それに対抗といいますか競争的にやっておりますのが、現状ではいわゆる中核派といわれておるもの、こういう諸君が競争的にああいう暴力活動に出ておるという状況に見ております。でありますから、警察は、全力を挙げて、空港のみならずその付近の安全、あるいはあの付近ばかりでなくても、何がどこで起こるかわからないという率直な状況でございますから、それこそ神経をとがらして防御体制をとると、こういう状況でございます。  率直に申し上げますが、成田空港は、いろいろ意見がございますけれども、わが国の国際空港としてはどうしても必要なものであるといわゆる国策として進めておるわけでございます。これが一部の暴力によって国策が阻害されるということは断じて許してはならないことでございますから、政府関係各省全力を挙げてこれに対策をとろうと、こういうのが現状でございます。

橋本敦日本共産党

○橋本敦君 最高裁事務総長に伺いますが、恒例となっている毎年憲法記念日を前にしての最高裁長官の談話の発表、これはどういう立場で行われているものですか。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 司法行政を総括している立場にある長官としての記者会見というふうに御理解いただきたいと思います。

橋本敦日本共産党

○橋本敦君 司法行政だけですか。この談話の内容を見ると、たとえば、「今後とも、公正中立の立場を堅持しながら、司法権の行使が適正迅速に行われ、これまでにも増して国民の納得が得られる司法の実現に努力する決意であります。」と、こういうことで、憲法記念日を迎えるに当たって談話を発表されている。これは司法行政という立場だけにとどまらず、文字どおり裁判機能も兼ね備えた最高裁長官として憲法記念日を迎えるに当たっての談話と見るのが当然ではありませんか。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 司法行政か総括する立場にある最高裁判所長官という立場で述べられたというふうに承知いたしております。

橋本敦日本共産党

○橋本敦君 最高裁判所長官という職務上の立場に基づいた談話である、記者会見であるということは否定できないですね。その長官という立場は、同時に裁判の最高の立場にある最高裁判所の裁判官会議、大法廷、これを主宰するというそういう立場でもある。だから、したがって、裁判権を担う当の責任者であるという立場、そして同時に司法行政の責任ある立場、この二つがある。そう簡単に分離あるいは分解できるものではない、私はそう思います。   〔理事寺田熊雄君退席、委員長着席〕この憲法記念日を前にしての談話はそんなに明確に司法行政の立場に立ってだけの談話だと、こう言えますか。例年の談話を見ますと、決してそうとは言えません。また、ことしの談話を見ても、「国民の基本的人権を擁護する」ということも強調されているではありませんか。だから、事務総長がおっしゃるように、司法行政の立場、その立場だけで記者会見を行い、談話を発表したということは、これは通らないのじゃありませんか。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 司法のあり方、これからの進むべき道というような意味で長官が個人的な所見をお述べになるということは、やはり司法行政的立場であろうかというふうに考えております。

橋本敦日本共産党

○橋本敦君 あくまであなたは司法行政の立場ということをおっしゃるが、最高裁長官がものをおっしゃるときに、司法行政の立場ということを明確に区別して、とりわけ断って言っているわけじゃありませんよね。だから、日本の司法、日本の裁判、まさにそれを担う最高責任者であるというように国民は見るし、みんなは見ている。同時に司法行政の責任者でもある。これは分離、分解できませんよ。ところが、今度のこの問題が起こって、いち早く福田総理はアメリカから帰られたときに党内打ち合わせをして、あの長官の談話は司法行政の立場において述べたものとして擁護をするという方針を決められたと新聞に出ています。法務大臣は総理からその点について何らかの指示をお受けになっておられますか。

瀬戸山三男自由民主党法務大臣

○国務大臣(瀬戸山三男君) 私は何も聞いておりません。

橋本敦日本共産党

○橋本敦君 新聞はお読みになってごらんになっておられるでしょうね。

瀬戸山三男自由民主党法務大臣

○国務大臣(瀬戸山三男君) 新聞は見ております。

橋本敦日本共産党

○橋本敦君 きょうの論議を聞いておりますと、ことさらに司法行政の立場の長としてそして意見を述べたということを非常に強調されている。その特色は、福田総理が司法行政の立場での発言として擁護すると言ったこととまさに政治的に符節を合しておる。私はその点非常に不思議に思いながら聞いておるんです。  ところで、先ほど事務総長も法務大臣も、一般的に言って審議中の法案に関して最高裁の長官が意見を述べるということは妥当でないという意見を表明された。その意見自体は私は正しいと思う。その場合の最高裁の長官というのはどういう立場で妥当でないと、こうお考えなんですか。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 最高裁判所はやはり一つの裁判機関ということでございます。いわゆる司法権を掌理させられている機関でございます。したがいまして、現行憲法におきましては三権分立の立場をとっておるわけでございますので、司法権の者が立法機関に対して法案の是非等について意見を言うことについては、一般的には差し控えるべきではなかろうかと考えているわけでございます。

橋本敦日本共産党

○橋本敦君 わかりました。いまおっしゃったその立場というのは、たとえ司法行政を預かるその立場の長であるという立場においても、審議中の法案についてあれこれ言うというのは妥当でないということは当然のことですね。いかがですか。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 司法行政の立場においても同様で、差し控えるべきものではなかろうかと考えております。

橋本敦日本共産党

○橋本敦君 だから、したがって、今度の場合、司法行政の立場ということで意見を述べたといっても、それが審議中の法案に関する意見を述べたということになれば、妥当でないということになり、三権分立のたてまえからその問題はぐあいが悪いというそういう結論になることはお認めになりますね、結論として。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 先ほどからその点について事実関係を申し上げておるわけでございますが……

橋本敦日本共産党

○橋本敦君 事実関係に入る前に一般論として。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 一般論の理屈として申し上げるならば、具体的な審議中の法案の是非について直接言及するということは差し控えるのが普通であろうというふうに考えております。

橋本敦日本共産党

○橋本敦君 そこで、問題は、おっしゃったことの内容に具体的にかかわるわけですね。たとえ司法行政の立場でおっしゃったとしても、現に国会が審議中の法案に関して介入的発言ととられる発言をすることは三権分立の立場から妥当でないことはお認めになった。そこで私は聞きますが、この長官の発言全体を通じて、最高裁長官は、司法行政の立場においてその法案は必要がない、反対であると、そういうように国民が受け取れる意見を述べておられますか。逆に聞くんです。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 法案については、直接いずれとも述べておられないというふうに理解いたしております。

橋本敦日本共産党

○橋本敦君 そうおっしゃるだろうと思うのです。法案については賛成とも反対ともいずれとも述べておらないと事務総長は解釈している。ところがですよ、ところが、新聞記者の皆さんが、皆さんじゃない、新聞記者の質問で、「現今の刑事裁判で法案を必要とするような異常事態があると認識しているか。」と、こういう質問に対して、「あるに決まっているじゃないですか。なければあんな法案は出っこない。」と、こういう答えがすぐ返ってきているということは、この法案自体を問題にしていることじゃありませんか。法案を必要とする異常事態——単に異常事態があるかと聞いているのじゃないですよ。いま審議されているような法案を必要とするような異常事態があるかという問いに対して、「あるに決まっているじゃないですか。なければあんな法案は出っこない。」ともろに法案に言及しているんですよ。そして、その後で「軌道修正が必要」だと、こういう意見を述べて、「弁護人の中には相当無茶なのがいて、裁判所の努力にも限界がある。」とおっしゃっている。「裁判所の努力にも限界がある。」つまり司法行政の立場で努力しても限界があるという意味はどういう意味なんですか。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 裁判の実情においてきわめて異常な事態が一部に起こっておる、それに対して裁判所としてはそれぞれ担当の裁判官で努力しておるけれども、その努力にはやはり限度があって、それのために引き起こされる不当な遅延を裁判所だけの努力では除き切れない面がある、そういう点についてはやはり国民は実情を知っていただくとともに、関係の機関についてはいろいろの方策をお考えいただきたいというが趣旨でございます。

橋本敦日本共産党

○橋本敦君 その趣旨が大事なんですよ。「限界がある。」と。だから、総長がおっしゃった、国民は理解をし、いろいろの機関は方策を検討してほしい。まさに政府は方策を検討しているじゃないですか。法案を出しているじゃないですか。これが対策じゃないですか。だから長官が「限界がある。」と、こう言っている意味は、あなたがおっしゃるように、裁判所の努力には限界があるから方策を考えてほしい。まさにその方策が弁護人抜き特例法案として国会に政府は出しているじゃないですか。それを支持しているじゃないですか。いかがなんです。はっきり歯に衣を着せないでおっしゃっていただきたい。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) したがいまして、問いの中にございますように、異常な事態があるかということでございますから、それは現在国会に提案されておりますいわゆる刑事公判開廷特例法案に全然無関係ということではございません。しかしながら、述べられていることは、そういうのについて対策が必要であると、その対策というものは、それは法曹三者の協議ということもあろうし、あるいは立法政策ということもあろうかもしれない、そういうようなことについてひとつお考えいただきたいということでございまして、法案を現在提案している分についての当否、賛否ということを述べられたわけではないと承知しております。

橋本敦日本共産党

○橋本敦君 あなたは私の質問で半分認めているんですよ。関係がないわけじゃないと初めていまはっきりおっしゃった。その対策を講ずるには弁護士会との協議も要るだろうとあなたはおっしゃったが、弁護士会との協議について長官はどうおっしゃっていますか。弁護士会相手に協議できぬと言っているんですよ。この問題はけしからぬ問題だと思いますけれども、協議できぬと言っているんですよ。だから、総長がそうおっしゃっても、この談話は正解できません。あなた自身も正解できないはずですよ、あなたのおっしゃることと違うことを言っているんだから。その対策の中には弁護士会との協議もあるだろうしとあなたはおっしゃったが、協議はできないとおっしゃっている。残るところは、国民の理解とこの立法の促進じゃないですか。はっきり理論的にそうなる。立法の促進しかない。どうですか。当然のことじゃないですか。もうあなたそこまで認めるところまで答えをしているんですよ。何が残るんです、立法の促進以外に。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 弁護士会その他との話し合いということは、やはり異常な事態が存在するということが一つの前提であろうかと思います。ところが、裁判所としてはこれは異常な事態であると考えておりますが、弁護士会の方としてはその点は異常ではないというふうに主張されるとすれば、そこでは話がなかなかうまくいかないということはあろうかと思います。しかし、裁判所の方としてはそういう点についてはなお弁護士会の了解を求めたいというふうには考えておるということでございます。

橋本敦日本共産党

○橋本敦君 あなたがそうお考えになってもだめなんです。長官はむだだと言っているんだから、はっきり。お読みになったでしょう、新聞でも。むだだと言っている、はっきり。弁護士会のまさに本質にまで触れて、そういう本質を直さない限りむだだと言っている。容易なことじゃないですよ。残るところは立法の促進しかないじゃないですか。これがまさにこの立法の促進ということを目指した談話でなくて何ですか。あなたのお述べになった立場からいっても、まさに三権分立という立場からいって限度を超えた発言だという結論にならざるを得ないじゃありませんか。この立法促進以外にどういう方策があるのか、もう一遍言ってください。国民に理解してもらうことと——弁護士会はだめですよ、もう。むだだと言っているんだから——立法促進以外にどういう方策を長官は考えて言われた言葉だとあなたは解しますか。これ以外にないはずですよ。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) いろいろな方策を考えてほしいということを述べられただけでございまして、特定の方策ということを述べられた趣旨ではございません。

橋本敦日本共産党

○橋本敦君 特定の方策ではないと言うが、いろいろな方策の中に、現に国会に提出されている特例法案、これもその方策の一つとして入っていることはお認めになるでしょうね、事務総長。これは方策と関係ない法案だと考えられますか。そんなことは考えられぬでしょう。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) もちろん、現在国会に提案されております特例法案の説明ということを伺って、これは裁判所の異常な事態に対処するためということでございますので、それはもちろん一つの方策の中に入ろうかというふうに存じます。

橋本敦日本共産党

○橋本敦君 そうですね。だから介入じゃないですか。一般的におっしゃったと言っても、この特例法案、いいですか、これもその方策の一つだということを含めておっしゃっているんですから、まさに国会審議中の問題について、この方策を講ずる上でこれを進めてもらいたいということじゃないですか。法務大臣、いかがですか。答弁をお聞きになっておわかりでしょう。もう一般抽象論じゃありませんよ。最高裁長官は、現に国会に出されているこの法案についても、異常な事態を解決するための方策の一つとしてこれも踏まえて発言になったことをいまお認めになった。不当な発言じゃないですか。三権分立を侵すものじゃありませんか。法務大臣、いかがですか。

瀬戸山三男自由民主党法務大臣

○国務大臣(瀬戸山三男君) これを見ますると、こういう特例法案が出ておるが、異常な事態に対処するためにわれわれ出しておるわけであります。それについて、異常な事態があるのかどうかと、こういうことを……

橋本敦日本共産党

○橋本敦君 いや、そうじゃない。法案を必要とする異常事態……

瀬戸山三男自由民主党法務大臣

○国務大臣(瀬戸山三男君) いや、ちょっと待ってください。異常な事態があると認めるかどうか聞いておるが、異常な事態があると、そういうことがあるからこういう法律も出されておるんだと、こういうことを言っておられると思います。その法律を、最高裁判所が、あるいは長官が、これをいいとか悪いとかは言っておるというわけではないと、こういうことであります。

橋本敦日本共産党

○橋本敦君 法務大臣と事務総長の答弁は食い違いますよ。事務総長は、この法案も含めて、方策として促進してもらいたいというそのことを言っている中にこの法案も入っていることを認められたんですよ。法務大臣は、そこまで私が質問しているのに、それは関係ないとおっしゃる。法務大臣と最高裁の重大な答弁の食い違いですよ。こういう三権分立というこの問題での憲法にかかわる重大な問題が起こっておるときに、こういう答弁の食い違いのままで私は質問を続行することはできませんね。

瀬戸山三男自由民主党法務大臣

○国務大臣(瀬戸山三男君) こういう法律案を、その異常な事態に対して、あるからこそ出しておるんだということを言っておるわけでありまして、別なことを言っておるわけじゃありません。ただ、問題は、その法律案を最高裁がこれを支持するとか支持しないとか、そういう発言は私の見たところじゃ見えないと、こういうことを言っておるわけであります。

橋本敦日本共産党

○橋本敦君 直接に支持するという発言があったと私も言っていませんよ。この談話、発言の趣旨、真意がそうなるではないかということをいま言っているわけです。言葉の上でそうでなくても、この趣旨はそういう趣旨のものだと、そこまで考えて慎重に最高裁長官の発言というものを考えなければ、形の上で立法を促進してもらいたいと言わない限りは最高裁長官として軽率な発言ではないというようなことで免罪できるような問題じゃない。三権分立という憲法原則は大事だし、最高裁長官という地位も重いと、だから、したがって、言葉の上で、法務大臣がおっしゃるように、この立法は賛成だ、促進だという言葉がないというだけでこの問題は済まされないから問題にしているんですよ。私はいま事務総長がお答えになったそれでもう三権分立という問題から見て問題がある発言だということがはっきりした。  それから第二番目の問題は、裁判の公正という問題についてかねがね裁判所はいろいろ注意をして、そして裁判の公正を保持するように重ねて談話も発表されてきたし、努力もされてきた。そこで、裁判の公正というそういうことはどうやって保持されるのだろうか、私はその問題について事務総長に伺いたいのですが、この長官の談話から見ると、私どもは、この法案が成立したときに、この法案はこれは違憲であるというそういう主張がなされて、寺田委員も指摘されたように、上訴ということで争われる可能性があり得ると見ている。事務総長、いかがですか。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 具体的に訴訟というようなものが起こるということの可能性はあると存じます。

橋本敦日本共産党

○橋本敦君 否定できませんね。だから、最高裁長官は、この問題について発言するというときはなおさら慎重でなくちゃならぬというのが当然その職務上要請されてくる。いかがですか。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) そういう点については十分考慮いたしまして直接法案というようなことについて触れられなかったのではなかろうかと思います。裁判の異常な状態について司法行政上これは憂慮すべき問題だという懸念を表明されたことと裁判について法案の当否が訴訟上問題になった場合とは関係はないものというふうに考えております。

橋本敦日本共産党

○橋本敦君 関係があるかないかはあなただけの判断でできないんです。最高裁長官の発言の重みというものはもっと重い広範なものなんです。たとえば、企業爆破事件に関連をして、「あれだけ世間の関心を集め、早く処罰せよという声が出た。」と長官はおっしゃっている。「早く処罰せよという声が出た。」と。いいですか、そしてその後で、「悪いことをした人間は刑罰法規で処罰を受けるべきだというのが素直な国民感情ではないか。」と、こうおっしゃっている。「早く処罰せよという声が出た。」と。その声はいかぬとおっしゃっいないんですよ。そういう国民の声が出た、早く処罰せよと。司法行政の立場でも、あの企業爆破等の事件に関連して、その異常事態を早く解決して審理を進めたいと思っていらっしゃるんですよ。そういう立場で早く処罰せよという声が出た、それで悪いやつは処罰するのはあたりまえでないかというこの論理は、あの法案が成立したときに、いいですか、早く処罰するものとして国民感情に、ここで言えば国民の声に従って早く処罰する法案として出てくるんですから、あの法案に従って今後司法行政をやっていくということを肯定された発言じゃありませんか。論理はそうなっている。将来、そのことが、いまあなたがおっしゃったように、憲法三十七条との関係で違憲な法律であるということが具体的な事件を通じて裁判所で争われることは、事務総長が予想されるとおりです。そしてまた、予想しないというのはおかしいと思う。長官も予想されておられるはずだ。そういう予想されている長官が、予想しながらこういう発言をなさるということは、これは一つには裁判の公正という観点から見ていかが相なりましょうか。まさに岡原長官がそのままいらっしゃれば、かつてこういう発言をなさったということで回避の申し立て忌避の申し立ての理由として弁護士がこれを主張するということはあながち不当だと私は思いませんよ。いかがですか。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 長官の御発言は、いわゆる不当に遅延されるということがあるのは裁判所の運営にとって好ましくない、遺憾なことである、だから適正かつ迅速な裁判が実現されることを望まれる趣旨で述べられたものと考えております。

橋本敦日本共産党

○橋本敦君 適正迅速な裁判ということであの法案が出ても、その法案を使って裁判することも適正迅速のうちに入るわけでしょうが。長官の立場から見れば、この談話から見れば。どうですか、関係ないんですか。そうは言わせませんよ。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 具体的な事件についての判断はこれは裁判事務でございますので差し控えさしていただくということになりましょうが、適正迅速ということで不当な遅延を行われないような訴訟の運営が確保されるというように施策するということは、やはり司法行政上の一つの重要問題ではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。

橋本敦日本共産党

○橋本敦君 だから、あの法案は、そういう意味で司法行政上使える法案ということでしょうという質問です。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) この法案の内容についてはそれぞれ御論議いただくことだろうと思いますが、裁判所としてはいわゆるそういう不当に遅延をしている実情がある、そういう事情に対して国民の一般の理解を求め、御協力を願いたいということを希望を表明したということでございます。

橋本敦日本共産党

○橋本敦君 具体的に、事務総長ね、こういう質問もなされていますよ。「法案は刑事被告人の弁護を受ける権利を侵す、と主張しているが。」という質問、いいですね、法案です、それに対して、長官は、「一部の人は弁護を受ける権利を尊重せよというが、それを逆手にとられるといつまでも裁判が進展しない。」とお答えになっている。つまり、そういう理屈は私はとらぬということです。そんなことを言っていると、それを逆手にとって言うといつまでも裁判が進行しない。そこで、あの企業爆破のような事件を例に挙げられて、早く処罰せよ、これは当然だというのは、あの法案について、いいですか、あれが裁判所としては今後の司法行政、迅速な裁判という、そういう上では歓迎すべき法案だという趣旨が入っているじゃありませんか。しかもそれが将来違憲問題として具体的係争事件になり得るということを予想された上で言っているとすれば、これは司法行政の立場を超えて、まさに裁判所として忌避もしくは回避に値する重大な発言じゃありませんか。裁判の公正ということから見て問題じゃありませんか。こんなことを言っていいんですか、裁判官は。司法行政の立場だということでこんなことを言っていいんですか。事務総長、はっきり答えてくださいよ。問題ですよ、これは。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 現在の裁判の実情といたしまして、一部ではございますが、弁護人あるいは被告人のルールを無視した行状によって、行動によって、裁判が不当に遅延させられている、そういうことは適正迅速な裁判の実現を使命としている裁判所にとってはきわめて遺憾なことだという懸念を表明されたということは、司法行政の立場としてきわめて当然のことではなかろうかというふうに考えております。

橋本敦日本共産党

○橋本敦君 そんな単純な懸念を表明されているんじゃないですね。事務総長は、この発言の深刻さ、最高裁長官の責任の重さを本当に腹の中で考えていらっしゃらないのじゃないだろうか。考えていらっしゃるとしても、職務上弁護に終始されているのじゃないだろうかという疑念を私は持たざるを得ないですよ。あなたも裁判官ですから、心底心の中では裁判の公正という面から見て問題があるというふうにお思いになっているのじゃないかと私は本当に期待したいぐらいです。たとえば「下級裁判所裁判判例集」一巻三号八百二十五ページというところで裁判の公正ということでこういうことを言っていますね。   裁判を真に公正なものたらしめんがためには、ただ単に裁判の結果が適正妥当なものであるというだけでは足りず、裁判の進行過程そのものにおいても、いっさいの手続は、すべて公開の法廷において公明正大に行わなければならないことはもち論、いやしくも事件の審理を担当している裁判官としては、法廷外における自己の挙措言動等によって当該事件の裁判に対する訴訟関係人その他の人びとの正当な公正感を徒に傷つけることのないように慎重な配慮を払わなければならない。 国民の公正感を傷つけるようなことは言っちゃならぬと裁判所自身がおっしゃっているんですよ。いいですか、岡原長官の発言は、国民の立場から見て、将来違憲訴訟が起こってこの法案の憲法違反かどうかが問題になるということを当然予想されておられるあなた方が、長官がこの発言をするという意味において、これは文字どおり国民の側から見て裁判の公正感を傷つける——国民の公正感ですよ——ということに値する発言だと見るのは当たりまえじゃないですか。いかがですか、もう一遍答えてください。全然公正感を傷つけませんか。公正感を傷つけるおそれさえありませんか。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 先ほど申し上げましたように、直接法案の当否その他について論議されておるわけではございませんで、いわゆる一部の異常な事態に対する世人の理解を求めて法の支配の確立を働きかけられたということでございますので、これは司法行政の衝に当たる長官として当然に述べられるべき事柄を述べられたというにすぎないものと考えておりますので、公正という問題とは直接関係ないというふうに考えております。

橋本敦日本共産党

○橋本敦君 全く抽象論に引き戻してあなたは逃げの答弁をやっているんです。私が言ったように、悪いやつは早く処罰ぜいと具体的におっしゃっているじゃないですか。法の秩序確立という観点で抽象的におっしゃっているのじゃないですよ。いいですか、早く処罰せよと、こういう声も出たのは当然だとおっしゃっているじゃないですか。あの法案は早く処罰するための法案ですよ。いいですか、あなたの言葉で言う異常事態を解決して審理を促進する法案ですよ。そして、悪いやつは処罰するのは当たりまえだと、処罰するんだと、こうおっしゃっているじゃないですか。これが一般に法の秩序の確立なんということとの抽象論で言っておることじゃありませんよ。あくまでそうあなたがおっしゃるなら、私は最高裁の姿勢を疑いますね。いやしくも国民の公正感を傷つけるようなことは、裁判官たる者は裁判所外の言動として言っちゃならぬ。何度も最高裁を中心にして裁判の公正の担保ということではあなた方がおっしゃってきたことじゃありませんか。それを長官が踏みにじっている。こういう事態に対して、事務総長、責任がなさ過ぎるのじゃありませんか。  それからもう一つは、先ほどもお答えにあったけれども、この法案がまさに今国会最終盤の与野党の厳しい対決法案として連日新聞に出ている。そういう重要な政治課題になっている法案であることは、新聞で事務総長、最高裁長官も御存じ、法務大臣も御存じのとおりです。この法案について、いまあなたがおっしゃったように、この法案も含めて早急な対策が司法行政上必要だという趣旨のことをおっしゃったということになれば、まさに国会の与野党論争の中に一石を投ずる発言をされたことになりますよ。その証拠は、まさに一石を投じられたその証拠は、寺田委員も指摘されたように、各新聞が一斉に長官談話を大きく取り上げて、これはまさに長官の積極論である、必要性を問いた談話であると、こう言っている。この談話が、結果として、国会における与野党論争、国民的な論争に一石を投じる結果をもたらした事実そのものはお認めになりますね、事実そのものは。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) いろいろの御批判なり御意見なりが新聞等に掲載されておることは私も承知いたしておりますので、長官の発言が一つの波紋を描いたという客観的事実は私も認めるところでございます。

橋本敦日本共産党

○橋本敦君 そのとおりです。大きな波紋を描いたから、衆参でこうして議論されているんです。こういうまさに与野党対決の厳しい対決点で論議をされている国会の論議、国民的論議に波紋を投ずるというような発言と行為は、これは最高裁がこれまでみずから裁判所の政治的中立を厳しく守ろうということで戒めてこられたその立場から見ると、裁判所の政治的中立というそういう立場を超えた結果をもたらしていることは事実ですよ。その点、どう反省されますか。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 先ほども申し上げましたように、長官の発言はいわゆる法の確立を訴えられたということでございますので、それが結果としていろいろの論議を呼んでいることは新聞等で承知いたしておりますが、それの趣旨は、公正というようなものとは直接関係ないものだと考えております。

橋本敦日本共産党

○橋本敦君 趣旨を抽象的に幾らおっしゃってもだめなんです。まさにいま国民の目の前に最高裁長官の発言が波紋を投じたという結果になっていることは総長はお認めになったんですよ。事実そうなんですよ。こういう結果をもたらしたことについて、最高裁自身としては、厳に政治的中立を守るというそういうこれまで自戒をされてきた立場から見れば、本当に政治的中立を守り切った発言ならこういうことにならなかったのですから、いいですか、反省されてしかるべきじゃありませんかと、こう言っているんですよ。その結果の重大さを見てもなお反省されませんか。政治的中立を戒めて厳に守るという立場から見て問題がなかったとあなたはなお言い切られますか。結果が起こっているんですよ、趣旨がどうであれ。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 長官の発言は、先ほど申し上げた趣旨でございますので、これは政治的中立を侵しているものというふうに私どもは考えておりません。結果的にいろいろな御論議があることは新聞等で承知いたしておりますけれども、司法行政の立場にある者として当然関心を持つべき内容の事実について率直に発言され、所信を表明されただけでございますので、何ら政治的中立ということを侵しているものとは考えておりません。

橋本敦日本共産党

○橋本敦君 総長ね、そういうことでは政治的中立が守れないから私は言っているのです。最高裁が主観的にどのような波紋が起ころうともそれは関係ないと、自分がそういう政治的中立を侵す意思がなくて、当然言いたいこと、言うべきことを言っているという範囲において何を言っても、結果が起こった、結果が悪い、受け取る国民が悪い、質問する橋本委員が悪い、まあ極端に言えば、ということで政治的中立というのは客観的社会現象で守れないんですよ。政治的中立を厳に守るということは、そのような政治論争に波紋を投じ、かみ込むような結果を及ぼさないように自戒をするということでなかったら守れないんですよ。政治的中立を守るというのは、最高裁が主観的にどういう結果が起ころうと自分は政治的中立を守っているんだと、こう考えておりさえすればよいというようなものじゃありませんよ。政治的中立が、裁判の公正さが、これが担保されているかどうか、国民感情から見て社会的に見てどうかというのは、最高裁だけの価値判断でできません。客観的です、社会的です、政治的です、道義的です、あらゆる客観的判断があるんです、そういうむずかしい判断の中で最高裁が政治的中立を守るということです、極端に言えば。もっと具体的に言えば、最高裁が、主観的にどうであれ、客観的に政治論争に一石を投じ、そこへ介入し、あるいはみずから足を踏み込んだというような結果をもたらさないように十分配慮することが政治的中立の本旨じゃありませんか。自分が主観的に政治的中立だと、侵していないと、こう考えたら何を言っても政治的中立ということを侵したことにならぬということにはなりませんよ。そういう意味で今度の問題がこれだけの波紋を呼んだ。まさに終盤国会、与野党論争の渦中に一石を投じ、国会で大問題になった。この問題を考えれば、裁判所の政治的中立保持という観点に立ってなお一層反省すべきは反省するという立場に立ってもらわねばならぬじゃないですか。もう一遍答弁してください。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 裁判の実情を率直に長官が述べられたことにより、裁判の事情を一般の国民がある程度御承知になり、それについての論議が起こって、特例法案についての論議ということにもひいて及んできていると存じますけれども、実情を知っていただいた上での御論議ということがいろいろな面で必要であろうと思いますので、その実情を知っていただくことを長官が発言されたとしても、それは政治的中立ということとは関係ないのではないかと考えております。

橋本敦日本共産党

○橋本敦君 事務総長ね、私が本当に真剣に言っていることがおわかりにならぬですね。実情を知っていただくというような限度を超えて客観的に重大な波紋を呼んでいるんですよ。いいですか、だから問題になっているんですよ。だから、たとえば新聞記者の皆さんがこういう質問をなさったときに、司法行政上いろいろ話したいことはあるが、現にいま国会で立法審議中の問題だから、長官としてはこの際発言を控えさしてもらいたいと一言なぜ言えなかったかという問題なんですよ。長官はそこまでの配慮をするということによって、全国の裁判官に政治的中立の保持の厳格な訓示もできるんですよ。最高裁としての裁判所としての威信も保つことができるでしょう。三権分立をかたく守るという憲法上の要請にこたえられるでしょう。いま私が発言すれば、私の言いたいことはどうであれ、客観的に波紋を呼ぶであろうということまで考えて、いま国会で大論争になっているその問題については私はコメントはきょうはしません、それが裁判官のとるべき態度じゃなかったですか、最高裁長官のとるべき態度じゃなかったですか。こうして口きたなく労働者を非難し、弁護士会を非難し、言いたいことを言っておいて、それであなたのように言い切れるものでしょうか。一言新聞記者の皆さんに、最高裁長官の発言というのはこういう重いものだから、きょうはその質問には答えられない、これが最高裁のとるべき道だとなぜ言えなかったか。ここですよ、問題は。言うべきだったと私は思います。あなたはそう思われませんか、こういう波紋を生じておいて。

牧圭次最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(牧圭次君) それはいろいろ評価の問題はあろうかと存じますが、長官としては現在の裁判の実情が余りにも一般国民に承知されておらないのじゃないだろうかという危惧を抱かれて、現在の状況を率直に表明されて、それについて論議が交わされて、正しい解決がもたらされることを希求されたものだと考えますので、それは一つの長官の態度ということで是認できるものというふうに考えております。

橋本敦日本共産党

○橋本敦君 全く話になりませんね。私は、日本の最高裁、裁判所が、これだけ私が理を尽くして述べても、いまのような開き直った答えしかなさらないというところに私はむしろ重大な問題を感じざるを得ないです。あなたがどうおっしゃろうと、最高裁長官が三権分立の憲法の立場を、政治的中立を厳守するという裁判官の模範を、そして裁判の公正ということを、本当にぎりぎりお考えになっているなら、いいですか、この質問に対してはコメントをなさらない立場を貫くべきであった、重ねてこのことを言っておきます。その立場を貫かなかったところに私は違背があり、職務上の違反があると見ます。われわれの党は、あなたのそのきょうの答弁を聞けば、ますます訴追請求を進めざるを得ないということを言っておきます。  最高裁に対する質問はこれで終わりまして、次に時間がありませんが法務大臣にお伺いをしたい問題があります。  それは、石川県金沢で開かれた自主憲法制定国民会議、ここに祝電をお打ちになったという新聞報道に接しておりますが、どういう内容の祝電をお打ちになったのでしょうか。

瀬戸山三男自由民主党法務大臣

○国務大臣(瀬戸山三男君) これこそいろいろ御心配をかけてまことに恐縮であります。実は、私も、そういう会が金沢にあって私の祝電が行っておるということは、その新聞を見て知ったのでございます。後で聞きますと、まあわれわれ政治家といいますかのところにはいろいろ会合の案内が来るわけでございますが、おおむねそういうときには出られないときには御盛会を祈りますというような祝電を打つことが多いわけでございますが、これもその一つであったわけでございますが、後で聞きますと、会館の事務所の連中が御盛会を祈りますという趣旨の祝電を出しておったと、こういうことでございまして、私は新聞を見てああそういう会があってそういう祝電が行っておったのかなということを知ったのが本当の実情でございます。

橋本敦日本共産党

○橋本敦君 最高裁は質問は終わりましたので、委員長、御退席いただいて結構です。なおいろいろまだ問題は残っておりますから、いずれ機会を見てまた質問要求したいと思います。きょうのところはありがとうございました。  じゃ、委員長、続けます。  法務大臣の祝電ですね、大臣ね。ほかにもいっぱいこう電報が行ったと思うんですよ。だけど、新聞で法務大臣が祝電をお寄せになったということが記事になったということについて、どう思われますか。

瀬戸山三男自由民主党法務大臣

○国務大臣(瀬戸山三男君) いま申し上げたような事情ですから、率直に言って余りどうという深い気持ちもないわけでございますけれども、まあしかし何か法務大臣が電報を打ったということが奇異に感じられるという意味で、私は、会館事務所の諸君には、祝電など打つときにはよく気をつけて打ってくれということを言っておいたわけでございます。

橋本敦日本共産党

○橋本敦君 後からよく気をつけておいてくれとおっしゃったそうですが、このお打ちになったのは、法務大臣の秘書さんですか、もう一遍確認しますが、どういう方ですか。

瀬戸山三男自由民主党法務大臣

○国務大臣(瀬戸山三男君) 法務大臣の秘書といいますか、会館事務所におる若い者でございます。

橋本敦日本共産党

○橋本敦君 何年ぐらい会館事務所で大臣の議員の秘書をなさっておられますか。

瀬戸山三男自由民主党法務大臣

○国務大臣(瀬戸山三男君) さあ五、六年でしょうか、その程度です。

橋本敦日本共産党

○橋本敦君 そういたしますと、かつて稻葉法務大臣がこの自主憲法制定国民会議に御出席になった件で三木総理まで法務委員会に御出席になって大問題になった。政府が統一見解を出した。ああいう事件が起こったことは御存じの秘書さんですね、五、六年ということになりますとね。あれは昭和五十年でございますからね。  そこで、私がここで問題にするのは、法務大臣ね、自主憲法制定国民会議というのは、これは自主憲法制定というので憲法改正を進めていく運動体、これは大臣も理解していらっしゃるとおりだと思いますがね。そこで、憲法記念日に当たって法務大臣という立場で出席をする、あるいは法務大臣という立場で電報を打つということは憲法擁護という関係で問題があるから、新聞も書くし、私どもも質問せざるを得ないと、こうなるわけです。そこらあたりどうお考えでしょうか。

瀬戸山三男自由民主党法務大臣

○国務大臣(瀬戸山三男君) 実は、私は、自主憲法制定国民会議というものへ行ったことはないです、いまだかつて。行ったことはないですが、案内が来ておったから、御盛会を祈りますという趣旨の祝電を打ったんだそうですが、御承知のようにわれわれの自民党は自主憲法制定をしたいという一つの希望といいますか持っておるわけでございます。私もそういうことができれば好ましいことだと思っておるわけでございまして、憲法をどうするこうするという具体的なことを考えておるわけじゃありませんが、私の考えは、昭和二十一年にできた現行日本国憲法はまさに敗戦直後の占領下にできたわけでございます。私の体験から言うと、憲法審議には参加しておりませんけれども、その当時は国会といえども自由なる言論はできなかった。一つの法案を出すについても、占領軍といいますかいわゆるGHQの許可を受けて、発言もそれに沿わなければ許されないという時代でございました。そういう間にできておる、まあいろいろ言われておりますが、押しつけ憲法とかもらった憲法とかいうふうに言われておりますが、その内容の是非を言うのじゃなくて、私は、一国の独立国というものは、やはり国民の国家運営の将来の基本法というものは、国民がディスカッションをして、そしてこうあるべきだというふうに、いわゆる自主的にといいますか、国民の合意によって憲法というものをつくるのが正しいと思っておる。そういう意味で、わが党も、そういう考え方から自主憲法を何とか制定したいという希望左出しておるわけでございますが、まあそれがすぐできるとも思いません。思いませんが、私はだからそういう意味においては、できれば自主憲法——自主憲法といいますのは、いま申し上げましたように、国民のディスカッションによって国民自身がわが国の基本法を定めると、決定すると、そういうことが望ましいというのはいまも変わっておりません。

橋本敦日本共産党

○橋本敦君 私は自民党の党是が憲法改正方向を志向していることを知っております。それに賛成だという法務大臣の意見、これは個人的な意見だと私はいまは伺います。ここで、法務大臣、私があなたに質問するのは、福田内閣の法務大臣という立場において、いいですか、こういう憲法改正を進めようという運動をやっているところに祝電をお打ちになったそのことが政治的にどうかという問題なんです。そこで伺いますが、福田内閣は、憲法は自民党の党是に従って改正してよい、自主憲法にしてよいと考えているんですか、それとも、憲法は改正しないという福田内閣は方針を持っているんですか、どちらでしょう。

瀬戸山三男自由民主党法務大臣

○国務大臣(瀬戸山三男君) いまの情勢で、憲法が改正される、改正というのは何を改正するのか私わかりませんが、そういう状況でありませんから、福田内閣としていまこれを直ちに改正するなどということは考えておりません。

橋本敦日本共産党

○橋本敦君 そうすると、福田内閣の方針は、憲法改正しないという現在そういう方針だと伺いました。この前、政府の統一見解で、稻葉法務大臣の問題が起こったときに、こう言っております。   稻葉法務大臣に限らず、三木内閣の閣僚が憲 法改正を推進する会合に出席することは、憲法 改正をしないという三木内閣の方針について誤 解を生ずるおそれがあるので、三木内閣の閣僚 である限りは、今後は出席しないこととする。という政府の統一見解が出ました。だから、福田内閣も憲法を改正しないという方針があるなら、現職の閣僚中川農林大臣、現職の閣僚瀬戸山法務大臣、この法務大臣が、今度は出席はしていないが、御盛会を祈る、発展を祈るという激励の電報を打つということは、やっぱりこの統一見解の趣旨からしても憲法を改正しないという福田内閣の方針について誤解が生ずるおそれがある行為だと私は心配するのですが、いかがですか。

瀬戸山三男自由民主党法務大臣

○国務大臣(瀬戸山三男君) 私は、先ほども申し上げましたように、自主憲法制定国民会議というものをよく知らない、出たことがありませんから。ただ、それは、さっき申し上げたように、私の解するところでは、やはり国民の手によって憲法を自主的に制定するということがいいという趣旨だと思って、それを国民に運動といいますかアッピール、理解を求めておる団体といいますか、会議だろうと思います。いまこれがすぐ憲法改正につながるとは思っておりません。そういう意味ですから、最初申し上げたように、いろいろ御心配をしていただくということには実は恐縮しておりますから、会館の事務所の若い連中が祝電を打ったということについても、先ほど申し上げたように、現職の法務大臣という場合には簡単にどこでも祝電を打つということは気をつけなさいと、こう言っておるのが実情でございます。

橋本敦日本共産党

○橋本敦君 だから、法務大臣、気をつけなさいと秘書さんに注意をされた、それはいいです。注意をされたということは、まさにいま私が言っているように、あなたの秘書さんがお打ちになった電報がこの政府の統一見解の趣旨からしても憲法を改正しないという福田内閣の方針に誤解を生ずるおそれがある、こう見られてもしようがないでしょう。だからあなたは秘書さんに注意なさった、こうなるのじゃありませんか。いかがですか。この統一見解の趣旨からして、あなたの秘書さんが打った今度の電報は、法務大臣という肩書きづきの電報ですから、まさに福田内閣の閣僚の電報ですから、そういう意味では憲法改正しないということに誤解を生ずるというおそれがなかったとは言い切れないでしょう、率直に言って。

瀬戸山三男自由民主党法務大臣

○国務大臣(瀬戸山三男君) 誤解が生じたということになると、誤解が生ずるようなことをしたということについては反省をいたしております。反省いたしておりますが、率直に言って近い将来憲法が改正される状態になるとは全然思っていないです。

橋本敦日本共産党

○橋本敦君 それはそうですよ。それはわれわれだって絶対憲法改正はやらさないつもりだから、そう簡単にいかないですが、率直に言ってこの前稻葉法務大臣で大問題になり、今度もこういうことで次の法務大臣がまた法を預かる番人として内閣が憲法改正しないという方針があるのにこの自主憲法制定国民会議に電報をお打ちになる、これはやっぱり問題だから、今後は厳重に自粛をしていただきたいと、こういうことです。そのことはよくわかっていただけますね。

瀬戸山三男自由民主党法務大臣

○国務大臣(瀬戸山三男君) ありがたい御忠告、ありがとうございます。

橋本敦日本共産党

○橋本敦君 きょうはこれで終わります。

中尾辰義公明党

○委員長(中尾辰義君) 本日の調査はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十五分散会      —————・—————

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