予算委員会公聴会 第2号
- 発言数
- 58 件
- 登壇者
- 15 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1978/02/10
会議録
○中野委員長 これより会議を開きます。 昭和五十三年度一般会計予算、昭和五十三年度特別会計予算及び昭和五十三年度政府関係機関予算、以上三件について公聴会を行います。 この際、御出席の公述人の各位に一言ごあいさつを申し上げます。 各位には、大変御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。昭和五十三年度の総予算に対する各位の御意見を拝聴しまして、予算審議の貴重な参考といたしたいと存じます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただくようお願い申し上げておきます。 次に、御意見を承る順序といたしましては、まず最初に新田公述人、次に安田公述人、続いて飯田公述人の順序で、お一人約二十分程度ずつ一通り御意見をお述べをいただきまして、その後で委員からの質疑にお答えを願いたいと存じます。 それでは、新田公述人にお願いをいたします。
○新田公述人 新田でございます。 限られた時間でございますので、私は、本年度予算の中に示されております経済政策の考え方に関して意見を申し上げたいと思うのであります。必要な限り数字の問題にあるいは入るかもしれませんが、余り細かな数字の問題よりは、五十三年度予算案に具体的に示されておりますところの経済政策の考え方が、私から率直に申し上げますと大変疑問としなくてはならない点が多いわけでありまして、基本的に本年度予算の組み方なり、そこで示されていた経済政策の運営の考え方に関しては反対でございます。 まず最初に指摘しておきたいことは、本年度予算案で示されているいわゆる公共投資主導型の景気刺激パターンでございます。これは率直に申しまして、現在の経済政策の理論的水準から判断いたしましてもきわめて古典的であり、在来型のパターンを脱してないということが指摘されると思うのであります。 もう少し具体的に申しますと、本年度予算案の公共投資主導型のパターンでは日本経済の今後の本格的な立ち直りがまず期待できない、恐らく半年後に問題がすでに明らかになると思うのであります。この公共投資の刺激効果という問題は、一般に議論されておりますように、必ずしも公共投資の波及効果をめぐる数値上の議論ではないのであります。高度成長期でわれわれが公共投資の景気刺激効果を分析した際に、高度成長パターンのもとでは、概して公共投資の波及効果が二・二倍、二・三倍という数値を示したのでありますが、最近いろいろな専門家の分析、たとえば京都大学モデルの分析とか、その他を参考にいたしましても明らかなことは、この効果が一・三倍ぐらいに落ちてきているということであります。問題なのは、なぜ低成長下で公共投資の波及効果が落ちるかということでありますが、これは必ずしも量的な問題ではないのであります。計算は数値計算の結果として出てまいりますが、問題は、公共投資が波及し得ないような、経済効果が波及し得ないような一定の構造変化が生じている。高度成長下とは違った構造変化が生じている。むしろそちらの方に問題があるわけであります。この点は、実は第四次不況対策のもたらす景気刺激効果を分析した際にすでにある程度明らかになっていた問題でございまして、当時の景気論争に際しまして、公共投資の景気波及効果が比較的専門家やエコノミストのレベルで取り上げられて議論されたことがございました。私もその議論に参加した一人でありますが、この第四次不況対策の経済波及効果で示された一つの顕著な点は、この波及効果が比較的限られた領域である、限られた領域に対する波及効果しかないということが第一点と、もう少しこれを具体的に問題点として指摘してまいりますと、現在の日本経済の産業構造の変化に当たって非常に重視されなければならない機械産業部門に対する波及効果が大変低いということが指摘されたということであります。 こういう分析はいろいろな角度でなされているわけでありますが、当時の数値計算の一例として申しますと、民間における固定資本形成一兆円に対して、それによって波及効果が生ずる、機械産業に対して与える影響は五千四百二十七億円であったのに対して、同じ一兆円の固定資本形成でも、政府の固定資本形成の場合には三千七百十三億円しか機械産業に対しては影響を与えないということであります。こういうような、いわば政府固定資本形成と民間における固定資本形成の波及効果が違ってくるという意味は、今後公共投資によって日本の経済を管理する、あるいは刺激するといった場合にぜひとも念頭に直かなければならない一つの質的な問題点を提起していると思うのであります。 この問題につきましては、後で時間がありますと再び入りたいと思うのでありますが、まず基本的に、なぜそうかということに対して、いま私が申しましたように、在来型の公共投資めパターン、これは道路投資を中心とするような公共投資ですと、いま日本の経済で現に進行している産業構造の変化、その流れに対応した投資とは言いがたいのでありまして、いまわれわれが進めなければならないのは、日本経済の構造を根本的に変えるということなんでありますが、その変化の方向に沿ってないというところが致命的な欠点であると言わなくてはならぬのであります。沿ってないというよりか、かつての重化学工業的な体質の延長上にある公共投資のパターンでありますから、これはますますこれからわれわれが進めなくてはならない産業構造の改善の方向とギャップが生ずるわけでありまして、この種のパターンの公共投資は、むしろ望ましい公共投資のあり方と比較いたしますと、負の効果を与えていくという側面の方をむしろ強調しなくてはならぬのであります。 私がここで、公共投資に関して在来型と形容詞をつけましたのはそれなりの根拠がございます。いま、予算の編成に当たって景気論争が大変華やかであり、減税か公共投資かという形で問題が争われているわけでありますが、この論争のあり方は、ややきめの細かさに欠けるわけであります。いまの論争を見ておりまして、公共投資ということの内容が十分吟味されないままで減税か公共投資かという形での論争が進展してしまっている。同じ公共投資といいましても、いま私が指摘したような、道路投資に象徴されるような在来型の公共投資と、社会資本ストックに対する、とりわけ生活環境改善に対する投資は、厳密に区別しなくてはならぬのであります。一番注意しなければいけませんのは、同じ公共投資の必要性を説くということを、道路に対する投資の必要性を理由づける根拠として、日本における社会資本ストックの貧困を挙げるというのは見当外れの議論であると私は思います。意味が全く違います。 そこで、私どもがむしろこの点について積極的意見を述べるとしますと、在来型公共投資にかわる社会開発型の公共投資をもっと重視すべきである。これは、たとえば具体的に申しますと、道路投資にかわって住宅、環境、都市再開発、そういったいわば生活環境、われわれの日本経済における、やや専門的に言いますと、これまでのフローを中心とした投資政策を、ストックを中心とした投資政策に切りかえろということが基盤にあるわけでありまして、ただ、このストックの重視ということは、いま申しましたように、社会開発的な、総合的な効果のある領域にむしろ集中し限定した方がいいという考えであります。 こういうような構造変化は、一つは日本における戦略産業の後退という問題と密接に結びついているわけであります。これからの景気刺激に当たっては、一口で社会開発投資と申しましたけれども、いわば具体的な例解として言いますと、都市再開発等々に象徴されるような産業領域が、これまでの重化学工業的な体質の象徴であった自動車やあるいはテレビといった耐久消費財部門にかわって、新しい経済成長を担う戦略産業として規定さるべきだと思うのであります。 こういったところに対する投資が、しからば景気刺激効果があるのかということが次の問題でありますが、これはかなり技術的な問題に入りますので、ごく要点だけを申し上げておきます。 昭和四十年代の半ば以降、日本経済は一つの転換期に入りまして、その転換期が、だれの目にも明らかなように、ドルショック、オイルショックという二つのショックを経由して、日本経済の転換が明らかになったわけでありますが、この転換というのは、成長率が高かった時代が低成長の時代に移っていくという形で必ずしも理解されるべきではないのでありまして、むしろ問題にしなくてはならないのは、高度成長下において日本経済が持っていたところの経済構造の質であります。産業構造的な視点から言いますと、われわれはこれを重化学工業的体質と規定いたします。この重化学工業的な体質が、すでにいろいろな形で日本の経済に対して弊害を与え、このような体質を前提にした経済成長はもはや無理であるということがだれの目にもはっきりしてきたわけであります。したがって、日本経済の転換というのは、高度成長を低成長にするというのではなくて、経済構造そのものを抜本的に変えるということでなくてはならなかったのでありますが、このような構造転換に対する政策的対応と申しますのは、後で触れますとおり、しっかりとした中期的な経済計画の枠組みの中で、足が地についた政策として運営していかなくてはならぬのでありまして、突然思いついて社会資本に対する投資をふやせば問題が解決するという性格のものでは全くないのであります。 いずれにいたしましても、この日本経済の構造変革にとりまして、新しい産業政策が必要である、新しい産業構造改革が必要であるということは、今日の経済政策に、とりわけ構造的な政策という視点を要求することになるわけであります。あるいは、裏返して申しますと、今日の経済政策は、かつての金利政策に示されたように、景気の上がり下がりを調整するという域を超えた内容を要請されるわけでありまして、この辺に関して、産業構造政策が最も重要な位置を占めると言っても間違いないと思うのであります。したがって、今日の不況からの脱却というのは、落ちた成長率を何かの形でてこ入れするという形では最終的には解決できないのでありまして、経済構造の質を変えることが実は本格的に不況から脱出せしめる最も有効な政策だということがはっきりしているわけです。 その意味からしますと、今年度予算は、率直に申しまして、長きにわたって日本の経済を変えていくという中期プログラムのもとでこの政策の枠が決定され、それが今年度予算に反映されているというふうに私にはとうてい思えないのでありまして、この辺は在来型の投資の延長上で行われているという印象をぬぐいがたいのであります。これでは日本経済の構造改善に対する期待はまず持てないと断言して差し支えなかろうと思います。特に、道路を中心とする投資は、単に経済構造の問題だけではなく、財源問題その他を通じまして日本の財政硬直化の要因をまた再生産いたしますので、この辺につきましては、今年度予算におきまして、後々まで影響を与えないような形で問題を処理すべきであろうというふうに考えるわけであります。 そういう点からしまして、もう一つつけ加えておきたいことは、在来型の公共投資が現在の日本の産業構造や市場構造の変化に見合ったものではないということは、景気の波及効果が限られたところであるし、また、一時的に在庫調整が一巡して水漏れ現象がなくなったといたしましても、やがてこれは浮揚力を失ってくる、そういうことになるのはほぼ間違いないと思うのでありますけれども、ただそれだけではなくて、いまの企業の投資マインドの冷え込みというのは、一年や二年先の有効需要を与えられてもすぐには動かなくなっているということをもう少しお考え願いたいのであります。 この点は、私は今年度の予算がきわめて古典的なケインズ主義の域を脱していないということを冒頭に申し上げたわけでありますが、有効需要の効果が落ちただけではなくて、有効需要をつけたら動くという発想そのものがもう非常にクラシックな政策理論におなりになっている。むしろ重視すべきことは投資環境そのものの改善であります。投資を囲んでいる非常に悪い環境を是正する政策というのは、即効性はないかもしれませんが、長い目で見ますと、企業の投資が自発的に盛り上がってくるという条件整備でありますから、これを中期的な政策でしっかり固めていくべきではないかという気がするわけであります。その点に関しては、私どもは、日本経済の構造改善というのは、産業構造の改善を意味すると同時に、企業の投資環境の改善そのものを意味するわけでありますから、こういうきちんとした展望のもとで政策を運営されますと、政策に対する信頼も出てくるし、また数値計算以上の投資誘導効果も出てくるということであります。その点、少し議論が産業連関効果が落ちたとかふえたとか、乗数効果がどうとかというような議論に片寄り過ぎているのではないでしょうか。 以上が第一点であります。 第二点は、これまでの日本の経済の政策運営のパターンが非常によく出てきていると思いますのは、西ヨーロッパ諸国の政策等々と比べまして特に痛感いたします点でございますが、何か一つの政策ですべてを片づけようというこの発想ですね。たとえば高度成長期においては、金利さえ動かせば景気は調整できた。このときは金利万能論が出てくる。次いで出てまいりますと、輸出主導型である。輸出主導型が行き詰まると、今度は公共投資だ。一つ一つやっては反転し、行き詰まっては別な方策をとる。こういうような意味で、非常に失礼な言い方になるわけでありますが、政策運営に首尾一貫性が感じられない。非常に場当たり的であり、一面的である。こういう印象をぬぐいがたいのであります。したがって、今度は公共投資が行き詰まると何であるか。今度は少し消費をふやしたらどうだろうかというような議論が出てくる。あるいはそうかもしれないですね。したがって、この点についていささか私どもの方から理論的に提言いたしますと、少し政策の総合的効果ということについてお考え願いたいということですね。何か一つですべてを片づけるというのは、公共投資一辺倒で経済の刺激効果が上がらないということにつながるわけでありますが、きめの細かい政策を組み合わせてその総合的効果をねらうという政策理論、いわばわれわれが言う政策のシステム化を図りませんと、特に現代資本主義における複雑な構造を前提として考えた場合に、政策効果が上がるわけがない。 一例を挙げますと、公共投資を今回ふやして雇用問題が片づくか、私は不可能だと思います。それは、今年度の予算は一面では限られた範囲で雇用創出効果があるということも言えますが、同時にこの特定産業に対する、不況業種に対するスクラップ化法案に示されるとおり、もし他の諸政策が伴わないとしますと、設備の共同スクラップ化が失業をふやす危険性につながる、そういう二面性があるわけであります。一面では雇用を促進する効果がありながら、なお他面では雇用問題が悪化する要因も実は含んでいるわけであります。この点に関して、たとえば制度改革であるとかあるいは有効需要の面から雇用を考えるということだけじゃなくて、現在の低い有効求人倍率を上げるためには、日本の雇用市場の構造を考え、その失業者の実態をよく調べ、その中に占める中高年齢層だとかあるいは婦人パートタイマー等々の日本における特有の労働市場における供給問題を考え、供給圧力がなぜ高いかという問題にもメスを入れて社会政策を拡充するということが、中高年齢層の供給圧力を引き下げる。これも、有効求人倍率を引き上げるりっぱな政策なんであります。需要の面だけでこういう雇用を考えるというのも、これまたクラシックなケインズ政策であります。そういう形で政策をいろいろ組み合わせて政策運営を考えなくちゃいけない。 その意味からしますと、公共投資と減税という問題に関しましても、二者択一的な単年度予算編成的な枠の中で議論するのではなくて、中期政策のかなめとしての社会開発投資、あるいはそれに対して組み合わせていく、経済に対する即効性、景気刺激に対する即効性、あるいはまんべんなく景気刺激効果が行き渡るという意味での減税効果、こういったものをむしろ組み合わせて、短期の政策と中期の政策の整合性に関して議論を詰めていくということが必要じゃないかと思います。私は、日本のいまの経済能力からいたしまして、公共投資を軸とする成長と減税による景気刺激政策というのは並立し得ると思います。これはりっぱに組み合わせていけると思いますね。それらの意味で、第二の問題としては、いま言った政策の総合効果という点を申し上げておきたい。 それから、時間がございませんので簡単に第三点。もう少しこれからの経済政策には政治システムの問題を組み込む必要がありはしないかという点が第三点でございます。 これから公共投資が主導型で景気が刺激される。もう御存じのとおり、政府の、前倒しの件数にいたしますと、公共事業の保証額の八割近くは地方自治体の前倒しに依存しているという実態がはっきりしてまいっておりますが、いずれにしましても、この公共投資と地域の問題、あるいは最後は住民の問題という関係はいやでもこれは表面化してまいります。そのときに、もしこれを机上の乗数効果理論として何倍の効果が上がるはずだと幾ら計算されましても、公共投資に対する住民の合意が得られない、コンセンサスが得られないということが、実はもう経済の効率を非常に低下せしめる重要な要因になってまいります。そういう抵抗がなければという計算を幾ら示してみせましても、私どもは現実の経済政策としては信用できないのでありまして、むしろそういう数値計算をなさる前に、どういう形で公共投資をだれのために使うかという政策形成過程の問題まで含めまして、これからの景気刺激の方向なり内容について新しい政治システムを考える方が、長い目で見ますと、日本経済の復興に対しては大変有効な役割りを果たすのではないかという気がいたします。 そういうことで、あと申し上げたい点は多々ございますが、こういう政策を実現するために、住民の参加という問題と同時に、もう少し市場に対する政策的介入について政府は自信をお持ちになった方がいいと思う。これをやりますと、すぐ統制だということになりますね。 しかし、この点に関しましては一つ例を挙げますと、西ヨーロッパ、EC諸国が最近造船に関して行いました共同決定政策の形態を示しておきたいと思うのであります。この領域では、ヨーロッパ諸国は造船工業がもう構造的問題だ、これは市場メカニズムに任せておくことはできない、介入するのが当然というので、これを社会的行動と呼んでおります。そうしてその際に、労働者に対する影響を調査し、十六万幾らの労働者に影響が来るわけでありますが、それのための職業再訓練であるとか、事業転換に関して、欧州投資銀行を初めとしてきちんと資金をつけて秩序整然と撤退する、こういう政策がヨーロッパはとれるわけですね。 残念ながらわが国は、率直に申しまして、どうも時間がないので端的に申し上げてしまいますが、切り捨て型という印象を免れがたいわけであります。そうしてこれに関しては、正しい介入は当然なんだという点での政策理論をもう少し練り直される必要があるだろう。日本のこれまでの経済運営では、こういう政策による市場の管理というか制御というか、これが余り経験がない。なれてない。これはほっておけば伸びていくという成長の体質だろうと思うのですが、これからが本当の政策能力がためされる時期が来るのじゃないかという気がしますね。したがって、この意味で与野党問わず、まず中期の展望を持った経済政策論をきっちりと立て、その論争を繰り返すことで問題点を次第に明らかにし、そういう展望に立った政策を予算に反映していくという、こういうことをぜひお願いしたいわけであります。現在の予算の論争点は余りにも単年度編成型でありまして、その中で財源を奪い合うというきわめて短期的視点に偏り過ぎてはいないかというのが、最後に申し上げたい私の印象でございます。 時間が参りましたので、これで終わりにします。(拍手)
○中野委員長 どうもありがとうございました。 次に、安田公述人にお願いをいたします。
○安田公述人 安田であります。 昭和五十三年度予算の審議に当たりまして、公述人といたしまして平電炉業界を代表して意見を述べさせていただく機会を与えられたことに対して、厚くお礼を申し上げます。 私どもの属しております平電炉協議会と申しますのは、電気炉によりまして工場または市場で発生いたしますくずを溶かして建設用の資材にするのでありまして、それが小形棒鋼あるいは中形、小形形鋼として生産されている団体でありまして、代表的メーカー約六十社加盟いたしております。 さて、長期の不況によりまして企業体力の限界が来つつありまして、平電炉業界といたしましては、財政主導による公共事業を中心として景気回復を図ろうとする五十三年度の政府予算に対しては、業界挙げて非常に期待しておるわけであります。 従来、不況時におきましては、輸出市場にこのはけ場を見つけておりまして、需要の減退を支える傾向があったのでありますが、昨年以来、特に欧米を中心とした貿易の調整や円高傾向によりまして、昨年の輸出は前年度の約五割減になって、深刻な落ち込みをいたしましたために、不況から脱出することは何としても内需の拡大に見出さなければならない状態になっておるわけであります。 鉄鋼業にとって、公共事業を中心とした政府投資の比重は非常に多く、普通鋼鋼材の総需要の約二割を占めているのでありまして、特にこれを需要部門別に見てみますと、鉄鋼需要の約五割というものは建設関係によって占められておるのであります。特に、平電炉業界の主力製品であります小形の棒鋼とか中小形の形鋼とかいうものは、国内の需要のおよそ九〇%というものは建設に向けられておるのでありまして、したがいまして、平電炉業界の需要のほとんどのものは建設関係に依存しておると申し上げていいと思います。 こうした意味で、公共事業を重点施策として、早期景気回復をねらった昭和五十三年度の予算に対しては、業界挙げて非常に期待しております。 振り返ってみますと、昨年も鉄鋼業は不振の一言に尽きる業況でありました。鉄鋼生産の粗鋼の生産高は、四十八年の一億二千万トンをピークにいたしまして、昨年は約一億トンに落ち込んだのであります。 五十二年度の予算においても、補正予算を含めまして、政府は公共事業と住宅建設を柱として景気振興を図ったわけでありますが、鉄鋼需要の誘発効果の高い民間設備投資が依然として低調を続けたことと、高水準を保っておりました輸出が、貿易をめぐる国際的摩擦と秋口以降の急激な円高の進展によりまして非常に大きな影響を受け、深刻な局面を迎えたのであります。 平電炉業においても、引き続くこの需要の不振で、価格等非常に低迷いたしまして、企業業績はさらに悪化をいたし、多くの企業は赤字を累積し、債務超過に陥る企業も少なくないという困難な状態になっております。もちろん、各企業はそれぞれ生産品種の集約、転換、工場の集約化等徹底的な合理化により、減量経営に努めてまいったわけでありますが、現状は金融機関、商社関係、関連企業の支援を得て、ようやく持ちこたえているのが現状であります。 主力製品の小形棒鋼を例にとって申し上げますと、昨年は約九百五十万トン生産されたのでありますが、ピーク時に比較いたしましてこれで二割の減産であります。この間、一昨年から引き続いて、独占禁止法に基づいた不況カルテルにより生産調整を行ってまいりましたが、昨年の十月からは、中小企業団体法に基づいて全国小形棒鋼工業組合を設立し、生産数量と価格の制限に関する調整事業を実施いたしてまいりました。中でも、十二月からは生産数量についてアウトサイダーの規制も実施されまして、万全の体制がしかれたわけでありますが、需要は低迷したままでありまして、在庫面で若干の改善は見られたものの、根本的な需給の改善は見られませんでした。 一方、小形棒鋼の販売価格は、需要の不振という中で非常に激しい競争が企業間で行われ、また企業の資金繰り等の事情から、採算を大幅に下回る価格での出血販売を余儀なくされ、昨年一カ年間は、ベース物で約五万円程度という低い価格で低迷いたしたのであります。昨年の十月、先ほど申し上げましたように、小形棒鋼組合ができまして、調整事業によって五万二千円という下限価格を設定されましたけれども、これも下支え程度の効果しかあらわれなかったのであります。 このように、昨年は惨たんたる状態でありましたけれども、ここへ来ましてやや市況が持ち直し、堅調な状態になってまいりました。この原因を見てみますと、一つは、先ほど申しました全国小棒工業組合の設立、それによる生産調整、アウトサイダーの規制、在庫の減少、加うるに昭和五十三年度の大型予算への期待が非常に大きいということと、なお、予算に計上されると存じております小形棒鋼の海外無償援助等が背景になっておるものと存じます。 もっとも、最近では主原料である鉄くずが大分上がってまいりましたので、小形の価格については実質的に改善されたという状態ではございません。 現在の平電炉業の不況というのは、従来言われておりますような循環的な不況というものではなく、内外経済情勢の基調変化を背景としたものでありまして、業界の立ち直りには、政府投資の増大など景気振興策はもちろん必要でありますが、さらにきめ細かく、しかも総合的な構造改善対策が絶対に必要な業界だと思います。 そこで、五十三年度の予算に関しまして若干私たちのお願いの点を申し上げたいと思います。 一つは、十五カ月間という予算が組まれておりますので、何とかこの特徴を生かして、切れ目なく景気振興を図るとともに、公共事業の執行に当たっては、もろもろの、いろいろの手続をできるだけ簡素化してもらいまして、需要効果が早くあらわれますよう対策を講じていただきたいというのが第一点であります。 次は、現在実施しております。先ほど申しました団体法に基づく工業組合というものの生産数量、価格の制限に関する調整事業は、今年の三月をもって期限が切れますので、これを何とか四月以後も継続させていただいて、同時に、アウトサイダーに対する規制も実施していただくようお願いいたしたいのであります。 もともと、この小形棒鋼工業組合が設立されましたのは、通産省の基礎産業局長のもとに諮問機関として平電炉基本問題研究会というものができて、それで提言されたのでありまして、研究会の報告によりますと、この電炉業界というものは需給ギャップが非常に大きい。設備能力が五十一年度の水準のままで五十五年度まで推移いたしたとしても、五十五年度においてなお少なくとも三百三十万トンのギャップがあると指摘されたのであります。 そうして、この研究会は次の三点を指摘しております。 その第一点は、電気炉の新設、増設を抑制するとともに、今後の電気炉の設置については新しいルールをつくらなければならぬというのであります。第二は、五十三年度までに、先ほど申しました三百三十万トンの能力に見合う過剰設備を早く処理してしまいなさいということであります。第三には、この需給ギャップの解消と設備の処理の効果が出るまでの間、先ほど申し上げましたように工業組合等をつくって生産調整を行わねばならぬ。この三点を指摘されておるのであります。 したがいまして、現状でもなお、この生産調整の調整事業というものは相当の期間行わなければならないし、アウトサイダー規制というものも不可欠の状態にあるのであります。 次にお願い申し上げたいことは、五十三年度予算に計上されております小形棒鋼の無償海外援助の早期実施であります。 長期にわたり低迷しております市況がここへ来て多少上向きになったきっかけの一つは、少なくとも、海外援助というものが新聞に報道されたということが原因の一つになっております。 われわれの業界では、昨年の十一月から、関係商社に対しまして、小形棒鋼で売れ残ったものを買い取ってもらって、凍結していただくようにお願いしてあります。それらの数字は約二十万トンになっておりますので、これを、発展途上国への無償海外経済協力施策の一環として、製品供与に組み入れ活用していただきたいと存ずるのであります。これを早期に実施していただければ、業界の立ち直りがそれだけ早まりますので、予算成立後速やかに実施していただくよう特にお願いいたしたいと存じます。 なお、最後に申し上げたいのは、今国会に提出されると聞いております特定不況産業安定臨時措置法案についてでありますが、平電炉業界の意見について若干述べてみたいと思います。 現在、通産省の原案といわれる内容が一般に知られておりますけれども、これにつきまして、平電炉普通鋼協議会の理事会を二度開いたのであります。それによりまして、賛成する方もあるし反対の方もおられましたけれども、それぞれ通産大臣、公正取引委員長あてに要望書なり意見書を提出するようにいたしたのでありますが、賛成は五十社、反対の方は六社という、圧倒的に賛成が多かったのであります。 反対の方々の御意見を申し上げてみますと、その第一点は、当法案は統制経済的色彩が濃厚であって、自由主義の根幹を揺るがすものであるというのがその第一の点であります。第二は、指示カルテルは財産権の制限で違憲性が強いから削除しろ。第三は、設備の新設等の制限に係るアウトサイダー規制は、健全な企業の体質を弱体化させ、産業界の正常な発展を阻害するものである。第四は、したがって法制化は信用基金を中心にするものにしてくれというのが、反対された方々の主張でありました。 一方、五十社の賛成された方々の意見は、自由経済を堅持することは当然であるけれども、経済事情の非常な変化のもとにおいては、共同行為ということもまたやむを得ないのである。法案の内容をよく検討してみると、さきに紹介いたしましたように、平電炉基本問題研究会の提言にあります構造改善事業の立法化にほかなりませんので、これを一層確実にするものと理解しておるのであります。 先ほども基本問題研究会の提言のときに紹介いたしましたが、平電炉業界はこの提言を総意をもって受けとめたのであります。そして、少なくとも三百三十万トンに及ぶ製鋼設備を昭和五十三年度中に処理することにして、われわれはそれぞれ実施して、廃止または休止しておるのであります。 今次の構造不況に陥った一つの原因に、余りにも激しい企業間の争いがあると言われておるほどの平電炉業界において、過剰設備の処理というものは強力に推進することが必要でありますので、通産大臣による新設設備の制限に係る共同行為の指示は不可欠であるというふうにわれわれ五十社は考えております。 さらに、設備の新設の制限に係る共同行為を実施している場合においては、共同行為に加わっておられないアウトサイダーに対しても、共同行為の内容に相当する制限を実施していただきたいということであります。アウトサイダーに対する法的規制なくしては、過剰設備の処理は実効を上げることはできません。一方において過剰設備を処理しておるにもかかわらず、他方においてアウトサイダーが新設設備をどんどんつくるということになれば、われわれ業界が一丸となってやる構造改善というものは、全くできなくなることは自明のことであります。 次に、もう一つの柱となっております信用基金の創設について申し上げます。 平電炉業では、すでに昨年国庫補助金を得て平電炉業構造改善促進協会を設立いたしまして、近くその保証業務を開始する運びになっておりますが、この点について若干申し上げたいと思うのであります。 設備処理に伴う必要資金は、各企業が民間の金融機関から借り入れるわけでありますが、残念ながら各企業の業績は非常に悪く、後ろ向きの資金であるところから、借り入れが困難であることであります。また、通常の金利では企業の負担はますます重くなるばかりでありますから、どうか、信用基金の本制度が運用されるに当たりましては、資金の借り入れ、金利等について十分の御配慮を賜りますようお願いいたしたいと存ずるのであります。 以上、五十三年度の予算案に関しまして、平電炉業界を代表いたしまして、いろいろと数々のお願いを申し上げましたが、どうか鉄鋼業の安定と健全なる発展のために特別のお力添えをいただきますようお願いいたしまして、私の公述を終わりたいと思います。(拍手)
○中野委員長 どうもありがとうございました。 次に、飯田公述人にお願いをいたします。
○飯田公述人 飯田でございます。 五十三年度の政府予算案は、公共事業と住宅建設を牽引車にして内需を増大させ、景気を回復させようとするものでありますが、この予算が果たして期待どおりの成果を上げられるか否かについては、さまざまな点で疑問が出されているのであります。そういう疑問の中にはまことに合理的だと思われるものもあるのでありますが、私は、土地の問題に焦点を当てて、政府の予算案に対する疑問を述べてみたいと思うのであります。具体的に言えば、土地問題をいまのままにしておいて果たして所期の効果を上げることができるのか、またこの予算によって土地問題をさらに悪化させ、わが国の今後の発展に重大な障害を引き起こすおそれはないのか、という点について述べてみたいのであります。 言うまでもなく、公共事業にしても住宅建設にしても、新しく用地を入手する必要がある場合がきわめて多いのであります。その場合、用地の入手ができなければその実行は不可能であります。また仮に入手できても、用地費が予定よりも大きくふえれば、景気に直接関係のある需要の量、たとえば資材あるいは労働力に対する需要の量はそれだけ減少するわけであります。したがって、公共事業や住宅建設に必要な土地の入手を容易にし、その価格の高騰を防ぐということは、五十三年度予算の執行によって景気の回復を図る上できわめて重要なことでありますが、いまのままで、すなわち土地について抜本的な施策を講ずることなしにそれが果たして可能かと言えば、はなはだ疑問だと言わざるを得ないのであります。 最近、国土庁が発表した数字によりますと、昨年一年間の宅地の全国平均の上昇率は二・六%、そのうち住宅地の上昇率は三・三%と言われております。国土庁は、物価上昇率を考えればこの程度の上昇は心配ないと言っているのであります。もしこの数字が地価の実態を忠実にあらわしているとすれば、確かに地価についてそれほど心配する必要はないとも言えるのであります。わが国の地価水準が諸外国に比べてはるかに高いということは、いろいろな意味できわめて望ましくないことであります。また地価が四十九年にわずかばかり下がっただけで、その後は年とともに上昇率を高めていることも注意を要することでありますが、そのことが五十三年度予算の効果を大きく狂わせるものでないことも確かであります。 問題は、この国土庁の数字に実は大きな疑問があるという点にあるのであります。 昨年十二月二十一日付の毎日新聞によりますと、首都圏、近畿圏などの大都市の住宅地の価格は、昨年になって急激に上昇しているということを伝えているのであります。たとえば東京都の区部の場合に、いわゆるミニ開発に適当な土地を中心に、一年前に比べ三〇%ないし六〇%も暴騰している場合が数多く見られるというのであります。これは住宅用地の売り物がきわめて少なく、完全な売り手市場になっているためでありますが、たとえば最近世田谷区で、亡くなった人の家に、その人の持っていた二千平方メートル程度の土地を欲しいというので、百十軒もの不動産業者が押しかけた例があるということをこの毎日新聞の記事は伝えているのであります。 もちろん、こういう地価の暴騰は、これまでのところ、ミニ開発に適した土地を中心にしたものでありまして、全面的な地価暴騰という状態が生まれているわけではありません。政府が発表した昨年の住宅地の上昇率が三・三%にとどまっているということは、そういうことと、また公表数字が地価の上昇を誘発することを心配して、数字をできるだけ低目にしているという、二つの理由に基づくものと思われるのでありますが、最近の実情は、すでに政府が発表し、また予測しているものとは急速にかけ離れつつあるように思われるのであります。 「住宅新報」という土地と住宅についての専門紙がございます。これらの問題については相当の権威と信頼性のある週刊紙でありますが、その二月三日号によりますと、同紙が昨年十二月十五日現在で調査した大都市圏の地価は、場所によっては三カ月前に比べてかなりの速さで上昇し始めている。特に東京圏の場合には、多くの地域において五%程度の上昇が見られるというのであります。これは年率にしますと実に二〇%の上昇率に当たるのでありまして、土地ブーム時代と全く同じ状態になっているとも言えるのであります。 御承知のとおり、地価というものは、ある場所で成立した取引価格がたちまち周辺に波及するという性格を持っております。地価が上昇傾向にある場合、この波及性は特に大きいのであります。公共事業や住宅の建設に最大の重点を置いた予算の実行が予想されておる現在では、地価の上昇はもはやミニ開発地点にとどまらないで、その周辺に急速に拡大しておって、少なくとも東京圏の場合、住宅地域全体を覆うようになりつつあるように思われるのであります。 現に私が多くの不動産業者に当たって調べたところによりましても、地主が昨年一月の公示価格の三割高以上を主張している場合が数多くあるのであります。中には公示価格の三倍を要求しているという例もあるのであります。公示価格は全く名目的なものになっているということであります。もし、政府が、東京の住宅地について地価の大幅な上昇は見られないということを主張されるのであれば、公示価格の二割高以内で、ひとつ適当な住宅用地をみつけてほしいと思うのであります。 さて、土地の現状がいま述べたようなものであるといたしますと、住宅建設や公共事業あるいは民間設備投資の中で、政府が最も期待しています発電所の建設が期待どおり実行されることに対しては、きわめて大きな疑問があるのであります。これらの事業や住宅建設のうち、新しく用地の入手を必要とするものについては、その入手難と高価格という二つの面で、景気に対する効果が大きく悪影響を受けることは必至だと思われるのであります。具体的に言えば、事業や建設が予定どおり進まない上に、予算や融資された資金の中で、予想以上の金額が土地所有者の手に渡って、富める者をさらに富ませるだけであり、内需の増大にはそれほど貢献しないということになるおそれがあるのであります。しかも、すでに急上昇し始めている地価は、予算の実施によってさらに上昇速度を速めて、五十四年度以降の公共事業や住宅建設に対して大きな障害となるおそれもあります。このことは、景気の前途に対する不安を強め、五十三年度の景気回復にも水を差すことも十分考えられるのであります。 こういう事態を避けるためには、たとえば新しく借り入れる住宅ローンの金利を利子補給などの方法で引き下げることによって、地価上昇による負担増をカバーして、住宅建設の落ち込みを防止するということも一つの方法であります。また、過去の住宅ローンに対してある程度負担の軽減を図ることによって、消費需要の増大を図ることもこの際必要かと思われるのであります。しかし、これらの方法だけでは土地の入手難を解消できないという点など考えますと、問題の十分な解決は不可能であります。 一方、政府は、地価に対する監視の強化と法人に対する土地課税の緩和などによって、事態の悪化に対処できると考えているようでありますが、その効果には大きな疑問があるのであります。 結局、抜本的な土地対策を早急に実行する以外に道はないと思われるのでありますが、政府の対策の無力さあるいは抜本的対策の具体的内容について述べる前に、土地問題というものの性格、たとえば土地の需給と地価の関係などについて簡単に述べてみたいと思うのであります。 世間には、地価を抑えれば土地の供給は減り、地価が上がれば供給がふえると考えている人が多いのであります。土地の供給をふやすためには、個人の土地譲渡所得税を軽減すべきだと言う人もおります。この考え方は、税を軽減すれば地主の手取りがふえる、その結果、地価の上昇と同じ結果になるという点で、このような地価引き上げ論と同じ考え方の持ち主であります。もしこの考え方が正しいとしますと、いまのように地主が極端に土地を売り惜しんでいる場合に、これから先必要な大量の宅地を手に入れようとすれば、地価を大幅に引き上げるかあるいは譲渡所得税を大幅に軽減するか、いずれかの方法しかないということになるのであります。ところが、地価はいまでも西独の二十倍以上というように高く、一方、宅地の最大の供給源とも言える市街化区域のA、B農地の場合に、その譲渡所得税は、現在でも譲渡益が二千万円以下の場合には一五%、それ以上は何十億円でも二〇%の分離課税を適用されるというように、極端に安い課税が行われているのであります。これをさらに軽減しようとすれば、税金を免除する以外にないのであります。したがって、地価のこれ以上の上昇も、譲渡所得税の大幅な軽減も、きわめて望ましくないということであります。結局、土地問題の抜本的な解決は、このような考え方に基づく限り、不可能だということになるのであります。 しかし、幸いなことに、こういう世間の考え方というものは、生産の可能な普通の商品と土地のように有限なストックとの間にある大きな違いを無視している点で、誤っているのであります。普通の商品の場合は、御承知のとおり、価格が上がれば供給がふえ、価格を無理に抑えれば生産は減り、供給も減るのでありますが、土地の場合は、価格の抑制は、それが効果的な方法で長期間にわたって行われることになり、国民もこの政策が持続するということを信ずるようになれば、供給をふやす働きを持っているのであります。地価の抑制には、人々の土地に対する執着を弱めるという働きがあるからであります。土地の供給が少ないということは、人々が土地を手放さないということであります。そして、土地を手放さないというのは土地に対する執着が強いからであります。 では、なぜ土地に対する執着がいまのように強いのか。いまの異常に高い地価のもとでは、土地の利用による収益の利回りは、大抵の場合きわめて低いのであります。それを考えますと、結局人人が、土地の値上がりによる利益が今後もきわめて大きいので、土地はどんな資産に比べても有利である、しかも安全であると確信しているということが土地に対する執着が強い原因だと思われるのであります。 こういう確信は、大都市圏の住宅用地として適当な土地のように、今後も大きな需要が見込まれるけれどもそれをふやすことは至難である土地については、いまでもきわめて強いのであります。しかも、こういう土地の持ち主のうち圧倒的な大部分を占める農民などの個人的な地主には、ほとんどの場合土地をまとめて売らなければならないという事情はありません。したがって、こういう人たちは、今日では大抵の人が、金が必要なとき、たとえば息子のために家を建ててやる、娘を嫁にやる、そういうように金の必要なときに、それに見合う分だけ土地を売るというような習慣を持っているわけであります。こういう状況のもとで地価が上昇したりあるいは譲渡所得税の軽減が行われれば、手取りの増加に見合うだけかえって売却面積を減らすというおそれが強いのであります。 また、法人の土地税制の緩和によって宅地開発業者の企業意欲と活力を強めましても、買いあさりによって開発のための素地の価格のつり上げを行うだけであって、供給の増加につながらないことも十分に考えられるのであります。 さらに、政府は地価を監視するということを言っておりますが、単なる監視や指導が効果のないことは、これまでの経験によっても明らかであります。また、仮に一部の地域で一時的な地価凍結を行うことにいたしましても、抜本的な政策に基づくものでない限り、その期間だけ売りどめをされる、地主が売りどめをするということだけに終わる可能性が多いのであります。 では、どうすればよいか。土地の供給の少ないということも地価の高いということも、土地への執着が強過ぎるためであって、そういう執着の強さというものは、大きな値上がり益が見込まれるために、土地こそ最良の資産であると人々が確信していることから生まれているのであります。そういう事情がある以上、何らかの方法でこの確信を弱める以外に道はないと思われるのであります。そのためには地価を長期間凍結する、あるいは地価の上昇は認めるけれども、今後の値上がり益は譲渡所得税によって全部徴収するなどという方法が考えられるのでありますが、ここでは、現在の国土利用計画法の活用によって地価の凍結を行うという方法について述べてみたいと思うのであります。 具体的に言いますと、三大都市圏の市街化区域全体に対して、規制区域の指定を行い、地価の凍結を行うのであります。もっとも、現行法では、地価の凍結といっても、物価上昇率程度の地価上昇を認めることになっているのでありますが、これを完全凍結に変更する、そして凍結期間も初めから十年以上とする必要があるのであります。人人の土地に対する執着が強過ぎるのは、土地こそ最も有利な資産であると確信しているためでありますが、もし物価上昇率程度の上昇を認めることになりますと、金利の下がった今日、やはり土地が一番有利な資産だというふうに考えることに変わりはないからであります。 ところで、地価の凍結は、短期間のものであればもちろんのことでありますが、長期間のものであっても、しばらくの間は土地の供給を減少させるおそれがあります。甘過ぎる土地政策になれた地主たちが、売りどめあるいは売り惜しみによって凍結をやめさせようとする可能性が大きいからであります。これに対しては、買い控えによって対抗するということも有力な手段でありますが、さらに効果的なのは固定資産税の強化だと思われるのであります。 住宅用地の最大の供給源である個人所有地のきわめて大きな部分は市街化区域の農地でありますが、そのうちA、B農地に対しては、近傍の宅地に比べて数分の一程度、またC農地に対しては、完全に農地としての課税が現在行われているのであります。市街化区域という、宅地利用のための公共施設が現実に行われ、あるいは行われようとしている特別の地域において、農地に対するこういう固定資産税の極端な軽減というものは、税負担の公平という点で大きな問題があるだけでなく、こういう土地課税の安さということが土地保有の有利さを大きくすることで土地の供給を妨げる原因の一つにもなっているのであります。もし、この固定資産税について、市街化区域のすべての農地に対して原則として宅地並み課税を行うことにすれば、地価の凍結に対して売りどめ、売り惜しみによって抵抗することは税負担の関係で困難になり、一時的な供給減少を防ぐこともでき、また地価凍結の効果を早めることもできると思うのであります。もっとも、こういう宅地並みの課税の実施については、いまでも環境保全や食糧生産という点で強い反対論があることは御承知のとおりであります。確かに市街化区域の中の農地にはそういう面での効果がないとは言えないのであります。しかし、いまのように固定資産税の軽減を主要な手段にして農地を保存するというやり方では、地主の考え一つであしたにでもそれがミニ開発などの用地に変わる可能性が決して少なくないのであります。これではいつ消えてなくなるかわからない公園のようなものであって、都市農地保護論の趣旨にも沿わないと思われるのであります。そこで、こういう欠点を排除し、同時に税負担の公平の原則を守るために、宅地並み課税を免除する農地は、公共用地に転換する以外には永久に農地にしておくことを義務づける、一方、宅地転換の自由を認める農地に対しては宅地並み課税を行うという選択方式を実行すべきだと思うのであります。 いま述べた地価の凍結と宅地並み課税の条件つき実施ということは、よく言われる土地私権の制限の一種でありますが、それによって土地の供給増大と地価の抑制の双方が期待できるという点で、公平かつ効果の大きい私権制限であります。短期的には住宅建設や公共事業の進行を助けて、景気の浮揚に大きく貢献し、長期的には都市の改造、農業の構造改善、エネルギー対策など、大きな問題にきわめて大きな効果が期待できるのであります。いまの国会においてこの問題についても十分な御検討を切望したいのであります。 以上でございます。(拍手)
○中野委員長 どうもありがとうございました。
○中野委員長 これより各公述人に対する質疑に入ります。質疑は、大変御迷惑ですが、お一人答弁を含めて十分程度にお願いを申し上げます。 以上御了承の上、申し出順に御質疑を願います。山下元利君。
○山下(元)委員 各公述人におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきましてありがとうございました。 私は、安田公述人に二、三の点についてお伺いしたいと思っております。 公述人は、五十三年度予算は、何としても現在の経済情勢の中において内需拡大、そしてまた公共事業を中心として編成されていることについて、特に平電炉業界の実情をお述べになりながら、予算の基本的な性格について評価いただいております。また十五カ月予算にもお触れになりまして、やはり切れ目なく執行されることについてお話もございました。 〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕 そうした基本的な問題についての御意見は承りましたが、お話の中でひとつお伺いしたい点は、まず第一は、確かに公共事業を進めるということが内需拡大に役立ちまして、不況脱出のために役立つと思いますけれども、問題は、かつてはいろいろ財政なり金融政策を積極的に運営いたしましたら、同時に民間の意欲がわいてきた。単に財政面における公共事業だけではなくて、そうしたことによって民間の設備意欲が盛んになるということが大事だと思うのです。財政だけがひとり歩きして、それが済んだらもう後はさっぱり燃え上がらないというのがいまの日本の経済の不況の姿だと思うわけでございます。私どもは、五十三年度予算を編成いたしましたのは、何としても、財政をこういう形にいたすが、同時にそれによって民間の設備意欲が高まって、全体として景気がよくなるということをねらっているわけでございます。そうした意味において、今後民間の設備意欲等はどのような形になっていくだろうか。私がいま申しているような姿になることが大事だと思うのです。その辺におきまして、五十三年度予算というのは大変な大きな問題を持っておるわけでございます。それらについての御見解をまず第一にお伺いしたいと思います。 それから、特にいろいろお話もございましたが、在庫調整の問題であります。 当委員会におきまして審議している中におきましても、在庫調整の問題、またその見通しについて論議が交わされてまいりました。これはなかなかむずかしいものでございます。しかし、昨年あたりの経過を振り返ってみますと、在庫がもうちょっとうまく進んでいたらなあというふうなことを言いながら、それがなかなか進まなかったのが不況につながったと思うわけでございます。先ほどの公述の中にも、いろいろと何かいい方向に進んでいるというふうな感じも私はうかがわれたのですけれども、もうちょっと具体的にそれをお伺いをさせていただきたい、このように思うわけでございます。やはりこれがことしの経済見通しの決め手でもございますし、それがまたこの予算の庶幾いたしておりますところの経済成長にも非常に関係してまいるわけでございます。その点についての御見解を承りたい。 最後は、細かいことでございますけれども、先ほど、公共事業が切れ目なく執行されるために、やはりその執行面における手続の簡素化ということをお願いしたいという要望がございました。私ども、これは前々からまことに大事なことだと思い、進めたいと思っておるのです。つきましては、そうした具体的な形で、こういう方向でどうだというふうな具体例でもお示しいただければありがたい、このように思う次第でございます。 以上、精粗ばらばらでございますけれども、先ほどの公述に関しましてお伺いするわけでございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
○安田公述人 では簡単に申し上げます。 第一番目の公共事業と民間設備投資とどうなっているかということですが、先ほど申し上げましたように、昨年まではほとんどなかったわけでありますが、ここへ参りまして、いまの超大型予算というものが何とか民間設備の牽引車になるようにということをわれわれも望んでおります。しかし、そういうことで鋼材市況は非常に堅調になりつつあるということを申し上げますが、具体的に申し上げまして、まだどこの業界がどうということはありませんが、私の知っている範囲内では、電力関係が出てまいっております。これは大分去年とは違っております。これをまず申し上げておきます。 第二の点の在庫調整でありますが、昨年の四月の在庫は丸棒は百二十万トンあったのでありますが、この十二月で言えば約九十万トンになったわけであります。これは先ほど申し上げました不況カルテル、あるいは通産省の指導による工業組合をつくり在庫調整をやってきた。さらに、この中に約二十万トンほど商社に買い取ってもらった分があるから、それを海外援助に出していただければまたこれは減る、こういう意味で申し上げたわけであります。これが第二点であります。 第三番目の事務の簡素化ということは、もう指令がたくさん出ておるのでやっておられるようでありますけれども、青写真ができてきちんとなったら、できたところからどんどん資材購入に入っていただきたい。われわれは、全部ができるまで待たないでやっていただきたいのだ、こういうことを申し上げたいと思います。 簡単でございますが……。
○山下(元)委員 終わります。
○毛利委員長代理 小林進君。
○小林(進)委員 私は新田先生にお伺いをいたしたいと思います。 問題が五つ、六つございますので、項目だけ挙げて、きめの細かい先生のお教えを得たいと思うのでありますが、一つは、産業政策及び経済政策を考える際、今日の不況下では、従来のような市場経済に任せるだけでは何らの解決策も見出せないではないか。一定の社会的——先生は介入というお言葉をお使いになりましたが、社会的介入が必要である、これは決して統制経済ではないという御趣旨でございましたが、この社会的介入ということについていま少し具体的にお教えをいただきたい。これが一点でございます。 なお、第二点といたしましては、日本における戦略的産業構造の変革、たしかこういうお言葉があったと思いますが、ともかく戦略的産業構造の変革を考えなくてはいけない、その産業構造の変革として、土地開発並びに社会資本の蓄積、ストックというふうなお言葉をお使いになっておりますが、これは私どもも産業構造の変革というものは大変必要だと思いますけれども、具体的にどういうものかということがまだ見当らないで苦労をしておるところでございます。たまたま先生から土地開発その他土地資本のストックというようなお話、具体的なお示しがございました。これを少しいま一歩具体的にお聞かせをいただきたい。これが第二点でございます。 第三点といたしましては、これはきょうの先生の御公述の中にあったかどうかちょっと聞き落としましたが、従来の自動車あるいは家電というような突出型の輸出ではどうもだめだ、プラント輸出というものを考えなければというふうなことを、きょうでございましたか、あるいはいつぞやの先生の御講義の中で承ったのかもしれませんが、これも私はひとつこの際ぜひ承っておきたい。第三点でございます。 第四点といたしましては、景気浮揚としては、公共投資一本型などという単純なものじゃない、やはりそれは減税、年金、あらゆる総合的な政策をきめ細かく持っていかなければならないという御趣旨は、私は大変ありがたい。いま予算の修正をやっておりますけれども、これは大変有意義な御示唆をいただきましてありがたいのでございます。ありがたくちょうだいいたしまして、これは質問に入れませんが、大変ありがたい。そこで第四点といたしましては、その公共投資のあり方についてでございますけれども、政府の道路を中心とする公共投資、しかもそれは場当たり的な、場当たりという言葉があったかどうか知りませんが、公共投資ではだめではないか、早期に、かつ計画的な投資が必要なんだというお言葉があったのでございます。私は政府の今年度の予算を見まして、どうも景気浮揚のために、公共投資を途端に、一夜のうちに計画を変更しちゃって、三四%も伸ばしちゃった、あるいは公共投資の財投を三一%も伸ばした。ぐうっとあめを伸ばすように伸ばしたのでありますけれども、この公共投資というものが好、不況によって、単年度、単年度で伸ばしたり縮めたりされたら、受ける国民の側は一体どうなるんだ。私は、公共投資というものは、やはり年次的に、計画的に、恒久的に、ことし不景気だからといって道路をやったって、翌年になったら、景気が変わったから道路をやめたといって途中でちょん切られたら、受ける国民の側は大変迷惑な話でございまして、こういう点で、やはり場当たり的な公共投資のやり方は、どうも政府の考え方としては少し危険なのではないか。その意味において、先生は、やはり政策を考える場合に必要なことは中期的な計画、見通しを立てることであって、単年度の単なる積み上げだけでは問題の解決にはならない、経済発展の方向を明らかにする中期的見通しが非常に重要である。きちっとした中期計画でございますか、それを何かさっきのお言葉では、与野党とおっしゃいましたか、議会とおっしゃいましたか、含めてひとつ大いに研究といいますか練り上げることが必要なのではないかというお話がございましたけれども、私も大変感銘深くお聞きしましたので、これも含めてひとつお聞かせいただきたいと思うのであります。 以上でございます。
○新田公述人 四点ほど御質問がございましたが、簡単にお答えいたします。 まず第一点の、市場に対する社会的介入という言葉で御質問なさいましたか、一般に市場経済に対する政策的介入という表現を使っておりますけれども、これは介入という言葉から受けるように、必ずしもすぐ統制ということではなくて、いまは何といっても資本主義という体制を前提とした政策運営をやるほかございませんから、市場というのが現に存在して、その機構を無視して政策を運営することは当然できないわけであります。ただ、市場経済に任せておいて問題が解決するかといいますと、これはわれわれ学者の間でいう市場の失敗という現象が出てまいりまして、何か短期的にはうまくいくように見えるけれども、それが積み重なっていきますと、国民経済的には大変問題が悪化していくということがまずありまして、その事実があるからそれに対して一定の制御を加えようではないかという発想もまた出てくるわけであります。最初から統制するとかどうしても介入するとかということでなくて、その市場に対する介入というのは、現実の市場の失敗という現象がまずありまして、これに対しててこ入れする必要があろう。それはたとえば先ほど挙げました構造不況業種の問題なんか、造船なら造船は市場経済に任せておくと無政府的に整理されるだけで、雇用問題に対しても有効な手が打てないだろう。あるいはもうちょっと長い目で見ますと、エネルギー問題なんか典型的でありまして、これもやはり市場経済に任せておいたのじゃ問題は解決しない。あるいは交通問題なんかもそう言ってよろしいと思いますね。だから、アメリカですら、コンレールであるとかアムトラックとかというような形での制度があって公的介入をやる。これはもう先進国ではごくあたりまえのことである。問題は、どういうところで市場の失敗という現象が生じているか、どのような手段でそれに介入するかということでありますけれども、これは一概には言えないのでありまして、そのときどきの問題によってきめ細かく運営しなくちゃなりません。ただ、大まかに言いまして、こう言えるのじゃないでしょうか。われわれがやはり考えなければいけないのは、国民生活の改善であり、全体の福祉の向上だ、これは一種の国民的目標だ、それに対して市場の活動を利用しながらその目的を実現するような政策としては、基本的には誘導という政策をとらざるを得ないだろう。したがって、企業の投資活動でもそうでありますが、われわれが目指さなければならない目標に対して好ましい方向に投資を誘導するという弾力的な政策論が私は必要だと思いますね。これは政策的介入という中に含まれてよろしいと思います。しかし、逆にまた問題によりまして、これは直接国家的管理のもとに置かなければならぬ、どうしてもそうしなければ国民経済の全体の均衡が破壊されるといった場合には、国民のコンセンサスを得まして、直接的に国家管理あるいは国有化というケースだって生ずるでしょうが、そういう政策もやはり考えなければいかぬだろう。これを全般に含めまして、その問題の必要によって政策的介入ということを考えざるを得ない時期にもういまは来ておるのじゃなかろうかという点でございます。 それから第二点の戦略産業という言葉は、われわれが比較的新しく使い出した概念でありますが、いかなる段階でも経済の発展には産業構造上の特質がございます。その産業構造上の特質というのには一定の、何かが伸びればそれが関連分野を引っ張っていくという成長主導産業的な産業が出てまいりますね。高度成長ではそういう役割りを果たしたのが自動車と家電といったような耐久消費財部門であった。これが日本の重化学工業化的体質をきわめて急速に確立していった。いまはそれが限度に来ている。したがって、何か自動車とか家電にかわりまして一番わが国にとって大事な産業というのを育成しなければならない、それが一体何であるのかという議論に産業政策論としては問題が移行しているわけであります。それに関して、われわれはむしろ耐久消費財のようなフローの領域から社会資本ストックという領域に産業形成の軸を移していけ、それを育成することがいろいろな形で各産業に影響を与えていくという産業連関的な効果も重視しなければならぬだろうということであります。それが新しい戦略産業という意味で、私は都市再開発等々を具体的に挙げるべきだと思うのですね。 それから、時間がありませんから簡単に申しますが、都市再開発に関しては、特にいま民間企業あるいは日本の市場で進んでおります産業構造の知識集約化という現象がございまして、これがいわゆる技術集約的で非常にシステム化された性格を持つ産業でありますが、これらの産業に対して都市再開発産業というのは非常に大きな育成効果を与えていくということを指摘しておかなければならぬと思います。したがって、道路に対する投資とは波及効果がもうまるで違う、現代の産業構造に適合した政策運営が可能であろう。ただ、これは単に技術論で論じてもらいたくないのですね。産業政策はあくまで手段であって、なぜ都市再開発をやるかというのは、国民生活、特に日本の経済における国際的な社会資本ストックの貧困、これがいまの日本の生活問題の最大問題であるという社会的ニーズから出た政策だということをあわせて銘記していただきたいと思うのであります。 それから三番目でありますが、自動車や家電の突出輸出ではだめだという議論は私かねてから主張していることでありますが、現在の輸出構造が、いま申しました論理の延長上から申し上げますと、日本で産業構造の変化が起こっている、その変化によってだんだん押し出されている産業部門が自動車や家電である、そう解釈していただいていいと思うのですね。そこに産業構造上のずれが出ている。これは押し出され輸出という言葉を私も使うわけでありますが、こういった産業が輸出の先導になりましても、それによって日本の経済の国内市場が引っ張られ、それによって国内経済の構造が改善されるというのは、その性格一つ取り上げましてももうはっきりしているわけでございまして、そういうことは期待できない。そういうことが輸出主導型による経済成長には限度があるということを昨年からわれわれが主張し続けてきた根拠で、それがいまはっきりと実証されつつあると見ていいと思いますね。それが行き詰まるだけではなくて、この種の型は、円高に関する政府の見通しが甘かった、こういう突出した輸出部門における輸出競争力のパターン、市場構造の変化から生ずるところの競争力の強さについての見通しの甘さがあったのではないでしょうか。つまり、いまの円高というのは通貨の、対ドルレートの調整という形で直ちにブレーキがかかるという構造にはなっておりません。したがって、この辺は、放置しておきますと、こういう突出した輸出部門が円高をもたらし、それが国内の繊維をたたくという悪循環につながってくるだけですね。したがって、また国際的な摩擦も大きい。これはわれわれがみずから早目に手を打って規制すべき問題ではなかろうか。ただ、これは輸出を全部抑えるという意味にとってもらっては困るのでありまして、御質問にありましたように、日本の産業構造が変わっていきますと、それに合わせまして輸出構造も変えていってほしい、それをわれわれは輸出構造の知識集約化と言っているわけです。その担い手は、プラント輸出を中心としたものになるべきだろう。ただ、ぼくはこれはちょっと限界がいま出てきていると思いますね。プラント輸出は、御承知のとおり基本的なエンジニアリング技術をしっかり確立した上でないと本当に国際市場で競争することはできません。日本の高度成長的体質は、基本的技術に関しては外国から導入するというパターンをとり続けておりましたから、いまその限界が出始めております。したがって技術政策、特にエンジニアリング企業の育成に関するような産業政策が早急に確立されなくては輸出構造の転換もできないだろうという気がいたします。 第四点に関しては、中期計画的な発想がなぜわが国で出てこないのか。財政計画一つとりましても、スウェーデンを初めヨーロッパ諸国が中期財政計画の時代に移っているのはもう御承知のとおりだろうと思いますが、先ほど挙げました造船の計画に関しましても、一九八〇年までのEECの中期計画に基づくところの産業再編成の一環で実施されているものであります。したがって、これまでの惰性に押されて、直ちにその投資効果が上がるからやるとか、あるいはその投資効率を考えまして、道路に投ずることがさしあたっては収益を伴って返ってくるとか、そういう短期的な経済視点で公共投資が行われてはならないのであって、むしろ日本経済の構造の変革に関する中期プログラムを立てて、それに基づいて中期財政計画も立て、そして財源問題についても検討を加えて、急にやって息が切れることがないように、確かな足取りで、時間をかけて日本の経済を変えていく。したがって、その意味からしますと、政治構造が変わっても、政策については引き続いてそれが中断されることなく、たとえば十年のターム、期間で受け継がれていくというような考え方が必要じゃないでしょうか。その点が西ドイツなんかとの大変な違いだと思います。同じようにドルに対して通貨が上がっても、マルク高を国民生活に利用し得るようなそういう体質の国と、円高によって直撃を受ける産業がたくさん出てくるというような違いは、やはり西ドイツの経済政策がいろいろなところで中期的視点で取り組んできた成果がそういうところに生かされているのじゃないかと思いますね。 以上、簡単でございますが、四点についてお話ししました。
○小林(進)委員 大変どうもありがとうございました。まだお尋ねしたいことがございますけれども、時間の制約がございますので、これで失礼いたします。ありがとうございました。
○毛利委員長代理 大内君。
○大内委員 民社党の大内啓伍でございます。 お三人の公述の諸先生には大変貴重な御意見を賜りまして、本当にありがとうございました。 お三人の先生方にそれぞれお尋ねをしたいのでございますが、まず新田先生にお尋ねをいたします。 冒頭の公述のお話の中で、公共事業の波及効果というものがだんだん減じてきた、それはやはり産業構造そのものが変化を要請されている、したがって、これから景気対策等を考える場合においても、公共事業一辺倒というようなやり方ではなくて、もう少し多面的といいますか、総合的な視野に立って対策を推進しなければならぬという趣旨のお話があったように思うのでございます。いま予算審議に関連いたしまして、野党の方では減税という問題が一つの大きなテーマになっておりまして、もちろんアメリカでやっているような減税をそのまま日本に景気対策として持ち込むことの不可能を十分知りつつも、やはり公共事業の限界というものから減税という問題を提唱しているわけでありますが、景気対策という面からのこの減税効果について先生はどういうようなお考えをお持ちであるか、またその場合、減税効果というものがある程度あるという前提に立てば、たとえば本年度についてはどのくらいの規模を考えることが適正になるのかということが第一点でございます。 それからもう一つは、たしか一九六七年であったと思いますが、西ドイツが財政硬直化に陥りました際に、一つは景気調整資金というファンドの設定に入ったことと、もう一つは中期の経済計画というものの立案に入っていったという経緯を記憶しておるのでございますが、日本においてはまだ財政計画そのものも中期的な計画が立てられないという状況にございますが、公共事業を見ましても、あるいは福祉といったような面を見ましても、住宅を見ましても、何でも、実は中期計画がどうしても必要な状況の中に入ってきたのではないか。そういう中で、先生がおっしゃるような公的な規制といいますか、介入という問題がこれからの経済運営にとって非常に大きなテーマになってきたのではないかと思います。そうしますと、やはり中期経済計画というものの策定に本格的に取り組むべきだというお考えをお持ちなのかどうか、これが二点でございます。 それから三点目といたしましては、先ほど来、産業構造の変化の方向として知識集約型、特にその中身はプラントといったような問題を考えていくことが必要だという御指摘がございましたが、もう少しその点を詳しく御説明いただければ幸いでございます。 四点目といたしまして、円高の見通しが誤ったという要因の中で、輸出産業における突出部門、この力というものの想定が誤ったのではないかというお話がございまして、自動車その他の例が出されたのでございますが、しかしいまの日本の状況では、そういう突出部門の集中的な輸出というものを規制する措置がございません。したがって、そういうものについて何らかのガイドラインあるいはチェックシステム、これは今度の予算委員会における総括質問の、たしか社会党の石橋委員からもそういう問題が提起されていたと記憶しておりますが、そういう問題について何かお考えがあるのかどうか、お聞かせをいただきたいと思います。 以上が新田先生についてでございます。 次いで、安田先生にお伺いをいたしますが、予算がおくれた場合には、鉄鋼業界に対して大変な影響が生まれるというお話がございました。したがって、できるだけ早く予算を通すということが重要であるとおっしゃったのですが、予算がおくれた場合にはどういう影響が実際問題として出てくるのか。 それからなお、今度の予算委員会の質疑の中で、景気対策の一環といたしまして、鉄鋼の半製品についての備蓄という問題が一つのテーマとして問題になったわけであります。これについては先生はどういうお考えを持っているか。 以上二点についてお伺いをしたいと思うのであります。 それから飯田先生にお伺いをいたしますが、確かに政府が最近の土地の上昇を非常に甘く見ているという御指摘については、私どもも全く同感でございます。そこで、先生の、地価凍結という問題に政治が真剣に取り組まないと、将来にあらゆる面で重大な禍根を残すであろうという御指摘は、まことに傾聴に値する議論だと思って拝聴いたしましたが、その地価凍結というのは、すでに国土利用計画法においてそういうことができる状態が法制的にはあるのでございますが、実際的にはそれが発動されてはおらないわけなんであります。むしろ最近においては、土地重課というものが土地の供給を妨げているという立場から、この土地重課をむしろ緩和ないしは廃止の方向に向かうべきだ、それが土地供給対策に役立つという論が出てまいっておるのでありますが、地価凍結を行った場合の土地の流動性、つまり供給減少という問題が、先生御指摘の固定資産税の強化という問題だけで解決し得るのかどうか、その辺をもう少しお聞かせをいただきたいと思うのあります。 それからもう一つは、都市再開発というものがなかなか進まない、これはもちろん土地問題がネックでございますが、この辺も先ほどの地価凍結という問題にメスを入れればおのずから解決していくというふうにお考えなのかどうかということをお伺いしたいと思うのであります。特に政府は、来年度に法人の土地譲渡益の重課税及び特別土地保有税の緩和という問題を打ち出しているわけでありますが、この税制緩和についてはどういう問題があるとお考えになっているか。 最後にもう一つでございますが、現在、大都市はさまざまな矛盾を抱えておりまして、特に都市の居住環境というのが非常に悪くなっておりまして、そこで都市の再開発がぜひ必要とされておるのでございますが、なかなか実効が上がらない、これはいまも申し上げたとおりなのでありますが、実は住宅ないしは土地の取得に関連いたしまして、公共公益施設整備費に対する負担というのが、御存じのように五〇%を超える状況にある、それが開発者を経由いたしまして入居者に転嫁されまして住宅価格を著しく高騰さしている、この負担を軽減させるためにはどういう施策が有効だとお考えになっているか。たとえば私どもは、その公益負担については二五%ぐらいにとどめさせて、それ以上については自治体に対して地方債の発行を認め、その地方債の発行分については国が利子補給することによって、この負担を軽減せよという主張をしているわけでございますが、そういう点についてどういうふうにお考えになっているか。 以上の諸点について諸先生の御見解を賜りたいと思います。以上でございます。
○新田公述人 四つほど御質問がございました。 まず減税の問題でございます。減税の投資効果に関しましては、かつてわれわれが高成長下でいろいろなパターンで試算したりしたケースですと、ほぼ公共投資に匹敵する乗数効果が出るというのが常識的だったわけですね。いろいろ試算がございましたけれども、二倍前後の乗数効果をもたらすであろうというのが、一つはわれわれが不要不急の公共投資よりは減税を優先すべきであるという根拠であったわけであります。それから公共投資の効果が限られた範囲であるのに対して、減税の及ぼす影響というのは非常にまんべんなく行き渡るという意味がございますのと、それから何といっても、いまの中小企業問題なんかを考えますと、中小企業の倒産構造というのは需要不足から来ている側面が強いわけですから、私は政策効果を考えるときに、減税の乗数効果だけじゃなくて、乗数効果につけ加わる部分の効果、それが投資を拡大し、それがまた所得を増大させるという連鎖性をもっと重視すべきじゃなかろうかという気がいたします。 ただこれは、産業連関効果なんかで計算いたしましても、単年度的な数値としていきなり計算するというわけにいかないので、波及に時間がかかるという問題がございます。したがって初年度で争いますと、どうも公共投資に軍配が上がりそうだという議論になるのも無理ないのですが、これは先ほど言いましたように、少し単年度予算編成的な考え方で切り過ぎていやしないか。二年目以降減税効果が公共投資を上回るというのはむしろ専門家の間ではかなり有力な意見になってきているわけですね、この点をお考え願いたいということ。そのために、需給ギャップの点から類推いたしますと、需給ギャップと有効需要の創出の必要額の間にいままでの日本経済では一つの法則性みたいなものがあったのです。それはどういうことかと言いますと、かつての不況期ですと、需給ギャップの大体三分の一ぐらいの有効需要をつけてやりますと、後、ギャップが大体自然に埋まったものなんです。しかしどうもこのパターンが最近崩れてきておりまして、そのために減税による需給ギャップ解消効果というのは、多少、いろいろな構造的問題が入っておりますので差し引かなくちゃならぬというのも事実じゃないか。 したがって私は、結論だけ申しますと、減税で景気刺激の効果を考えるとなると、やはり最低限一兆円は必要じゃないかという気がいたします。ただそれで全部埋まるというのはちょっと問題がございます。またそれはやるべきじゃないでしょう。いろいろな政策を組み合わせる一環としてお考え願いたい。それも少し長目で考えていただきたいということ。 それからもう一つ言わしていただくと、減税は消費につながらないとかいうような問題がございますけれども、これは消費につながるような生活環境の改善をやってやるのが政策の本道であって、貯蓄に回るというのは生活環境の不安定をあらわしているわけだから、そっちをほったらかしておいて消費につながらないという論理はちょっと理論的に納得いかない問題ですね。 〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕 消費に結びつくような政策を補完していくのが減税の投資効果を有効ならしめるポイントじゃないでしょうか。ただ、先ほど申しましたように、これはいわば景気に対するアクセル役であって、中期的にはやはり社会資本ストックに関する成長に移していけ、これを重視していただきたいというのが私の個人的見解であります。 それから中期計画に関する問題でありますが、そのとおりでございまして、早急に日本でも中期経済計画を作成する時期は、もうすでに来ていると思います。むしろ遅過ぎるのじゃないでしょうか。いままでいろいろな計画が一斉にスタートいたしまして、それを重ねたら前期計画になって、それが実情に合わなくなると数値を変えるという、これは計画じゃないんですね。現実に合わせて数値を変えているだけの話であって、そういう意味では計画ではない。だから絶えず修正せざるを得ない。皮肉なことには、修正した目標と実績が狂わないという結果にもまたつながるということで、本当の意味での計画はない。特に、エネルギー経済計算に関する五十年代前期計画の原子力に対する見通しやあるいはLNGの見通しに関しては、全く細かな経済計算を行っていないということしか言えないのじゃないでしょうか。ですから、もう少し、そういうありきたりの数字を希望的に並べるというのじゃなくて、実行可能な具体的な中期計画をつくって、その執行にいろいろな政策手段をフルに動員する。そのためには、単年度予算をローリングシステムで組みまして、そして弾力的に対応していくというような、こういう新しい政策ツールが開発されませんと、いまの日本経済の経済構造を全部システムとして変えるということは、もう私は不可能だと思います。 第三点は、これもちょっと長くなってしまうのですが、知識集約型というのは、具体的に論述いたしますと非常に具体的な問題になりますので、一つの例を挙げますと、高度成長型で重化学工業的スタイルで大量生産をやってきたというスタイルの中で、だんだん技術集約度というのが高まってまいりまして、そして量から質への転換といいますか、こういった変化がどんどん生じてきているのです。たとえば石油化学製品が、石油価格が上がるともう成り立っていかなくなる。そういったときの化学メーカーは、汎用樹脂類に集中するよりは、むしろライフサイエンスの研究をやり、その研究を通して新しい製品を開発する、これは知識集約化の一つの例ですね。あるいは新日鉄の投資が、いままでの高炉をたくさん建てて量産するというスタイルから、いまはエンジニアリング事業本部の売り上げがもう二〇%近くなってきているというのも、これは一つの知識集約化への転化であります。物だけじゃなくて、ノーハウのウエートが高くなってくるとかというような形で変化がどんどん生じてきております。 こういった点が実はきめ細かく産業構造の変化や市場構造の変化として分析された上で産業政策を立てませんと、非常に粗っぽい政策になるわけでありまして、その辺の分析の詰めが少し足りないのじゃないでしょうか。あるいは通産省の産構審答申なんか見ておりますと、よく分析されているのだけれども、逆に言うと、そういった分析が現実の政策にちっとも生かされていないというギャップが目立ちますね。それが第三点であります。 それから集中豪雨的な輸出に対する規制は、余り輸出税的なもので一般的にやるのは好ましくない。特に対外摩擦の現場といいますか、直接問題になっているところに対する一種のこれは行政指導という形になりましょうか、やはり直接的な対策を過渡的、暫定的にはおやりになる方がいいのじゃないか。そして同時に、むしろ輸出地域の転換に関する政策的指導を行うべきだろうという感じがいたします。特に、対米自動車輸出、それからイギリスに対する自動車輸出、これはイギリス側の基準と日本の輸出基準が違っておりまして、この辺は企業レベルではなくて、もう少しナショナルなレベルでこの調整を行う必要があるのじゃないかと思いますね。それから、造船の対EC輸出も大変な問題でありまして、この辺は社会的な介入の例で申し上げましたように、向こうが秩序整然と撤退しているところにダンピング輸出というような誤解を与えかねないような輸出を行いますと大変トラブルのもとになりますので、この辺については、もう一般的規制ではなくて、問題に応じた直接的規制を行えというのが私の見解であります。
○安田公述人 二点について申し上げます。 まず第一点の、予算を早くやってもらいたい、公共事業との問題でありますが、先ほど申し上げましたように、昨年からよりも、最近に至りまして鉄鋼市況が非常に立て直りつつあるし、堅調になってまいりました。その大きな原因の一つは、今度は大型予算が組まれたということ、それから二十万トンの海外の無償援助が市中から買い上げられるのだというようなこと、こういったものが一つのムードになっております。これがおくれるということになるとまた冷えるので、できるだけ早くやっていただきたいと言うただけでございまして、別に数字的根拠で申し上げたのではございません。 第二の点の半製品の備蓄という点でありますけれども、これは主として資金繰りの関係でありまして、現在電炉メーカーそのものは非常に苦しい資金繰りでありますので、それはカルテルもやり工業組合をやっても最終製品でやっておりますので、半製品は自由につくれる仕組みになっているから、自由につくってもどこにも持っていくところがないが、これを買い上げて備蓄をしていただくようになると、それだけ資金繰りがよくなる、こういうことであります。 しからば、製品をもっとつくって備蓄したらということになりますと、製品というものは、備蓄すると品質が悪化するわけであります。したがって、どうせするなら鉄源にしておいて半製品にしておけば、それはいざというときにはどんな姿の製品にも変わり得るということで、半製品というものが出ている。ただ、電炉メーカーよりも一貫メーカーが負う量が圧倒的に多いので、私がここで決定的なことは申し上げられませんが、趣旨はそういうことだと考えております。
○飯田公述人 お答え申し上げます。 第一点の、地価凍結による供給減に対して固定資産税の強化だけで効果が出るのかという御質問でございましたが、凍結をやりますと、結局、売り手と買い手の間のにらみ合いというようなことになるわけです。そのにらみ合いで負けた方が結局弱い立場になって、もし売り手が負ければ供給はふえるし、買い手が負ければ価格を引き上げてしまう。これは普通の商品についてもそういうことはあるのでありますが、そういうことがありますので、いままで日本の土地政策というものは、戦後一貫して地主に非常に甘い政策、供給が足りなければすぐ税金を安くする、あるいは固定資産税は上げないというようなことでやってきたことになれているために、凍結政策をやっても、がんばればそれはいずれまた解除されるのではないか、二、三年ひとつしんぼうしてみようというようなことで、地主が抵抗するといいますか、この政策の撤回を求めてくるという可能性は決してないわけではありません。 そこで、農地が一番主要な供給源になりますので、この農地の中で、本当にまじめにどうしても農業をやっていきたいという人に対しては、こういう人は別に特別に値上がり益を求めているとかなんとかいうことではないのだろうから、こういう人にはひとつ永久に農地にしておいていただく。農地として転売されることは御自由なんですが、ただ、どっちにしても農地としての売買以外は認めない、あるいは例外として公共用地に転売する場合はこれは認めるということにすれば、やはり宅地にいつでも転売できるという場合よりも財産価値が減りますので、そういうものを選ばない人も相当出てくるのではないか。今日の市街化区域の農地の持ち主の中には、率直に言ってかなり仮装農家といいますか、適当に農業をやっておいて、いつでも自分の一番都合のいいときに売ってやろう、財産をどんどんふやしていこうというふうな人が相当いると思われますので、こういう方たちと、本当に農業をやって都市の環境を守っていく、あるいは都市住民のための食糧生産に努めたいという人とスクリーニングする、選別するという必要があると思います。この方法をとれば、市街化区域の農家の方の中で相当部分は結局宅地並み課税の方を選ぶ。宅地並み課税を選べば、これは税負担が相当出てくるわけですから、売りどめしたいと思っても税金部分だけはどうしても売らなければならぬというような問題も起こってきますので、凍結による売りどめに対する対抗手段としてはかなり有効だと私は思うのであります。 ただ、さっき時間の関係もありまして、その他の方法については言及しなかったわけでありますが、ほかにも方法はないわけではありません。 たとえば調整区域でございますね。調整区域というものもこれはいろいろございまして、中には市街化区域にすぐ隣接しておって交通も非常に便利であるというようなところもあるわけであります。これを無原則に市街化区域に編入するというやり方では、その人たちもまた同じく売りどめをしてしまう、値上がりを考えてなかなか売らないというようなことで、いわゆる宅地供給の増加につながらないわけでありますが、これを条件つきで、たとえば公共用地に売る場合に限って市街化区域に編入してあげるというようなことをすれば、調整区域のままでいてはどうもさっぱり妙味がない、市街化区域になるということであれば、これは公共用地という条件つきであってもこれを売るということになる。そうなりますと、いわゆる宅地というものは必ずしも生産不能といいますか、有限なストックではないという感じを一般の地主の人たちも考えるようになる。 いま地主の方たちが土地を絶対売ろうとしないのは、昔ですと交通機関の整備は非常に簡単である、遠いところでも鉄道を敷けばそこに住宅地ができる、あるいは埋め立ても自由にできるというようなことで、自分たちががんばっておってもそういう方法で土地をふやされれば、結局がんばりがいが余りないのじゃないかという気持ちがあったのですが、近年は状況が変わりまして、新しく交通機関を整備して住宅用地をどこか遠いところにつくろうと思っても、鉄道の建設がほとんどできない、用地の買収もできなければ、あるいは建設費が非常に高くてとうてい引き合わないものである、あるいは埋め立てということも原則としてもうやらないということになっておるために、結局大都市圏の住宅適地というものの持ち主は、もうこういう土地はこれ以上ふやせないのだ、これしかないのだ。たとえて言いますとピカソというようなもう死んでしまった人の絵のようなもので、絶対これ以上ふえない、それに対する需要というものはこれからも非常に見込まれる。たとえば三全総の計画で言いますと、道路と宅地だけで四十七年から六十年の間に約六十万ヘクタールというものが新しく必要になる。そのうち半分はすでに時間が経過しているわけでありますから、残りのこれからの七、八年の間にも三十万ヘクタールぐらいの土地が必要になってくる。そういうものが主として大都市圏にあるとすると、需要はどんどん出てくるのに供給の方はもうほとんどふやせない。ストックが有限であるということになれば、OPECの場合と同じように非常に強気になってくる。こんなものは絶対手放してはいかぬと思っているわけです。 そこで、必ずしも有限でないのだ、たとえば調整区域をいま申し上げた編入のようにそれをふやすこともできるのだ、あるいは埋め立てということも近年一つの禁句になっておりますが、これも状況によっては環境等を十分考慮した上で若干埋め立てをやるということも考えられるのじゃないか。これは非常に安い価格でできるわけです。現在言われているような地価から言えばかなり安い価格で、しかも非常に便利なところに埋め立てができる。それによって住宅地の供給がふえ地価の抑制ができますと、その埋め立てによる環境マイナスというものはあるにしても、一方いまのような状態でミニ開発がどんどんふえていって大変な環境破壊をやっている、あるいは都市の防災に大変なマイナスになっているというようなことに比べれば、まだ埋め立ての方がいいのじゃないかということもありますので、そういう方法も考えられる。 それからまたもう一つは、たとえば立川というような国有地がございますね。こういう国有地をとりあえず十分利用していくというような、そういういろいろな方法を使えば、地主さんの方も、十年間の地価凍結があって全然値上がりがない、ならばむしろ国債でも買った方がいいのじゃないかというような気持ちに変わる人が少なくともある程度出てくる。全部はすぐそうは考えないにしても、たとえば一割でも出てくればそういう人たちが土地を売るようになる。そうなると供給がふえてくるという形で地価も安定する。安定すればやはり土地を持つことの妙味も減ってくるということで、いわゆる悪循環と逆に良循環が起こってくるということが期待できるわけであります。そういうことで、いわゆる地価の長期凍結ということは十分効果があるのじゃないかと私は考えるわけであります。 それから第二点の御質問の法人の土地税制の緩和ということでありますが、私も、いわゆる宅地開発というようなものをやっておられる不動産業者の方たちの正常な営業活動というものは、やはりりっぱにそれだけの意義がある、これをいたずらに排撃するということは違っておると思います。その点で現在非常に苦境に陥っている不動産業者の窮境を救うというような意味で、ある程度税制の緩和をやるということについては、私は必ずしも反対ではないのであります。ただその場合、先ほど申し上げたとおり、業者のいわゆる活力ができる、資力ができる、あるいは企業意欲がふえるということだけで、一方でそういう業者が宅地開発をやるための素地、宅地造成のための素地の供給対策というものを実行しませんと、結局買い手だけがハッスルして売り手の方はさっぱり動かないということで逆に地価をつり上げてしまう。地価が上がれば、なお、先ほど申し上げたとおり、百坪売るつもりのものが五十坪でもいいじゃないかというようなことで売らなくなってくるというような逆効果が出てくる。ですから法人に対する税制の緩和というものは、そういう素地対策というものと並行して行わなければ逆に害があるという危険もあるのじゃないか、こういうふうに考えるわけであります。 それから第三点の御質問にお答えいたしますが、公共公益負担というものが非常に高い、五〇%以上のところもある、それが結局は住宅を買う人に転嫁されて高いものを買わされる、あるいは高い土地を買わされるということになっていることは確かに御指摘のとおりであります。それでこれに対して、たとえば二五%というものを限界にして、それ以上のものは適当な財政的な措置によってこれを軽減してやるというお考えに対して私も全面的に賛成であります。 きょうはちょっと触れる時間がありませんでしたから申し上げなかったのですが、少なくとも公共負担という問題は土地問題にとってきわめて重大な問題の一つでありますから、これに対する予算は何らかの形で大幅につけていくということは、道路整備計画等に非常に大きな資金を投入されるという点から考えて、その一部をそっちに回してもいいのじゃないかというふうに私は考えておるわけであります。 以上でございます。
○大内委員 どうも大変ありがとうございました。
○中野委員長 二見伸明君。
○二見委員 本日は大変貴重な御意見ありがとうございます。私は新田先生と飯田先生にお尋ねしたいと思いますけれども、時間も迫っておりますので簡単にお尋ねします。 まず新田先生には、先ほど社会的介入というお話がございまして、大内委員や小林委員からもこれについての質問もございましたけれども、これをもう少しはっきり私理解したいために、本当に生々しい問題を出してあるいは失礼かと思いますけれども、構造不況法案というのがいま問題になっておりますね、指示カルテルをめぐって通産省と公取でやりとりをしております。これが経済統制になるのかどうかという議論があります。けさの報道によると、通産省と公取の間で合意をしたという話もありますけれども、こうした法律案なり制度というのは社会的介入の中で許さるべきことなのか、あるいは経済統制色が強いので社会的介入からはちょっと外れたものというお考えを持っているのか、それを新田先生にお尋ねしたいと思います。 それから飯田先生には、先ほど調整区域の中に公共用地をとってもいいじゃないかというお話がありました。私たちは、ことしも公共投資が行われるわけであります。社会開発が行われるわけでありますけれども、それが地価の安い調整区域あるいは農振地域を目指して進出をしてまいりますと、結局は開発されたその周辺の地価が上がって全国的なレベルでは地価がアップしてしまうのじゃないかという危惧を持っております。したがって、私たちは、物によってはそうはならない場合もありますけれども、でき得るならば市街化区域内での公共投資に重点を置くべきだという考えを持っておりますけれども、調整区域、農振地域への公共投資が行われて地価が上昇するのではないかという点についてはどうお考えになっているのか。 それから、私は、地価凍結については限定的に賛成でございますけれども、ただ十年、十五年という長期にわたって地価凍結ということになりますと、これは他の価格との関係もございます。他の価格の方は、長期にわたっての凍結はあり得ないわけでございまして、土地に対してのみ長期にわたる凍結が行われるとするならば、それは土地は本来だれのものかという別の理念がなければできないだろうと思います。その点について飯田先生の御見解を承りたいと思います。 以上です。
○新田公述人 簡単な御質問ですが、大変むずかしい問題をお出しになりました。これは、独禁法あるいは広く言いまして独禁政策と産業政策の調和に関する問題として長年蓄積されてきた問題でございますが、これは私はこう思うのです。指示カルテルの問題でも、介入の形態自体を議論して、それが法律違反であるかどうかということを争うという、その議論のスタイルがややおかしいのじゃないかということですね。問題がちょっと外れてきていると思うのです。本当に議論しなければならぬのは、構造不況業種をどうするかという、もともと政策論として取り上げなければならぬ根本的問題があって、その問題に関しては、先ほど申しましたように、もっと広い意味での産業政策のレベルで根本的対策を立てて、事業転換なら事業転換についての政策を具体的にやっていくというのがあったら、いまのような問題は恐らく出てこないだろう。アメリカのソロモン委員会報告書は、恐らく皆さんお読みになったと思いますけれども、このソロモン委員会報告書でも、世界的風潮と言っていいと思うのですが、産業政策という問題を地域政策まで含め、なおかつ独占禁止法の問題なんかも同時に関連させながら、全体の産業再編成をやっていこうという視点を出しているわけであります。トリガーの問題なんかはその一環として出てきているわけでありますけれども、この点に関しましては、私は、市場への介入という意味がポジティブな場合とネガティブな場合と二つあって、日本の経済構造の改善にプラスになるような介入、生産的な意味のある介入、それから、構造不況業種に関していま出てきておりますように、一種の介入による組織的な整理という問題と意味合いが違ってくると思うのですよ。たとえば平電炉の場合でも、専門家の方がおられますから詳しくお聞きになるといいと思うのだけれども、商社であるとか、銀行であるとか、そういった機関が介在して組織的な設備のスクラップ化を行っていくという基盤がありまして、それをもっと政府レベルの政策として受けとめられてきますと、今年度予算のような一種の組織的なスクラップ化という形になってくる。こういう介入は、展望のない介入と申しますか、整理のための介入というか、非常に好ましくないと思うのです。ですから、むしろもっと産業構造を変えるために必要だ、あるいは産業再編成のために必要だというのだったら、そういった形態で争うのじゃなくて、本来の産業政策できちんと考えをお出しになって、そのレベルで問題を整理される方が私は前向きじゃないかと思いますね。いまの日本の政策論議というのは、そこまでいかない前でどうも法律論争にひっかかってしまっているというのが印象でございます。
○飯田公述人 お答えいたします。 第一点の、調整区域には公共事業をやるのは好ましくない、できるだけ市街化区域を活用すべきであるというお考え、私もそう思っているわけであります。ただこれは、後の御質問と関連するわけでありますが、凍結を長期間やりますと、それに対する当初のいわゆるアレルギーという反応で、市街化区域の土地所有者というものは、なかなか売らないという可能性がある。それに対抗する手段として、いま、一部非常に便利な、実質的には市街化区域と違わないような場所にある調整区域を利用したらどうかということを申し上げたのでありますが、私の申し上げているのは、これをただ何となく使うということじゃないわけであります。たとえば公共住宅の建設用地にして使う、これならば周辺のさらに別のところの地価を上げるという心配が余りないのじゃないか。それから、あるいは公共住宅でなく、個人住宅の場合でも、一たん国なら国が手に入れるわけでありますが、その土地を売らない、それで、そこに家を建てることは認める、貸してあげるということですね。それは場合によっては、地価の上昇ということによる利益が借地権者に出てくるわけでありますから、場合によっては借地権も認めない。要するに、比較的安い地代で土地を貸してあげるから、そこに家をお建てくださいというような、限定された目的で、しかも、限定された地域を市街化区域の中に編入するという線引きの変更でありますけれども、こういうことも場合によっては必要ではないか。それをやらないで済めばそれにこしたことはないわけでありますが、ただ、凍結というものに対する抵抗が強い場合に、これを排除する一つの方法として、これも考えられるということを申し上げたわけであります。 それから第二点の、凍結はいいけれども、十年あるいはそれ以上という長期凍結というものは、ほかの商品の場合と違って問題があるのじゃないか、ほかの商品にはそういうことがない、土地だけそういう長期凍結をやるのは、そこには何か理由があるのかというお話でありますが、やはり土地というものはいわゆる有限である、しかも、生活にとっても生産にとっても絶対に欠くことのできない必需品である、こういう性格を持っている資産といいますか財産というものは、ほかにほとんどないわけであります。そういう意味で極端に言えば空気のようなものであって、きわめて大きな公共性を持っておる。普通の商品と違うわけであります。しかも、その価格自身が、先ほど申し上げたとおり、たとえば西独の二十倍とかヨーロッパ諸国の平均に比べても数倍であるというような、異常に高い価格になっておるということを考えますと、こういう非常に公共性の高い土地については、長期の凍結というものも許されるのじゃないか。また、同時に、長期の凍結でなければ意味がない。たとえば仮に一年か二年凍結いたしますと、じゃ、一年か二年、その間待っていよう、その間は全然売らない。二年もたてば必ず解除になるから、そのときに売ればいいじゃないかということで、いわゆる売りどめというものが出てくるわけであります。凍結効果というものが逆効果になる危険があるわけであります。ところが十年とか、あるいはそれ以上になりますと、十年一昔という言葉がありますが、十年先のことはわからないということで、そんなに長い期間、利子に当たる分も全然ない、完全凍結であるということになれば、これはむしろほかの資産を持った方が有利である、いわゆる資産の選択の仕方が変わってくるということで、土地を手放そうという人が出てくる。いまのように、一方で、土地が非常に有利であるから、これをぜひ買いなさいというようなことが盛んに言われている一方で、そういう土地を手放しなさいと言っても、持っている人は手放すわけはないというような面がありまして、どうしても土地の供給をふやすということになりますと、土地には妙味がないということを考えさせる、それには短期間の凍結では意味が余りありませんで、長期間の凍結というものはどうしても必要ではないか、こう考える次第でございます。
○中野委員長 以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。 公述人各位には、大変貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。 午後一時より再開することとし、この際、休憩をいたします。 午後零時十分休憩 ————◇————— 午後一時八分開議
○中野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 この際、御出席の公述人各位に一言ごあいさつを申し上げます。 各位には、御多忙中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。 昭和五十三年度の総予算に対する各位の御意見を拝聴しまして、予算審議の貴重な参考といたしたいと存じます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。 次に、御意見を承る順序といたしましては、まず古田公述人、次に島公述人、続いて水野公述人の順序で、お一人約二十分程度ずつ一通り御意見をばお述べをいただき、その後で委員からの質疑にお答えを願いたいと存じます。 それでは、古田公述人にお願いをいたします。
○古田公述人 慶応義塾大学の古田でございます。 昭和五十三年度予算案と日本経済の現状、それに五十二年度予算案と租税政策、この二点にしぼりまして、簡単に私の公述人としての責を果たしたいと考えております。 まず、いわゆる一〇%高度成長から六−七%の安定成長路線へというスムーズな転換が可能かどうかという問題を考えますと、答えは、スムーズな転換は困難ではないか、したがって現在は過渡期ではないか、そういうふうに考えられます。 その理由でございますが、御承知の昭和五十年代前期経済計画の描く構想ですと六−七%の安定成長路線を考えているわけですが、計画では、民間設備投資の伸び率が七%、消費が五%強となっております。これはいずれも実質でございます。それに対して高度成長期には、民間設備投資の伸び率がほぼ一五%でございます。それから消費は九%弱でございます。これはいずれも実質でございます。ところが、現状では民間設備投資の伸び率は、これは推測でございますが三%程度、消費も一一%程度、これはいずれも名目でございます。いずれにしましても、消費と投資の足並みというのはふぞろいでございまして、明らかに逆転いたしているわけでございます。 そうしますと、いわゆる高度成長期におきまして設備投資主導型あるいは鉄などの基礎資材産業とか一般機械産業主導型の成長パターンから、安定成長期へどのように転換するかというときに、私の考えでは、低下した操業度をどうやって引き上げるか、これが先決ではないかと考えます。この課題が達成されたときに現在の過渡期が終了したのだというふうに考えております。 そうしますと、過渡期の中の五十三年度予算案はどうあるべきか。まず手がかりといたしまして、政府が発表された経済見通しがございます。五つの政策目標がそこでは挙がっております。第一番目、これは皆様先刻御承知のことでございますが、内需の振興、第二に雇用の安定、第三に対外均衡の回復、そして第四に消費者物価の安定、そして第五番目に、これは中長期政策目標と申しますか、資源エネルギーの安定供給の確保、この五つが挙げられております。 私の理解では、これらが日本経済が直面する課題に違いないというふうに理解しておりますが、そういたしますと、問題は、このような目標を達成するためにどのような政策手段をとるべきか。ここでは一般会計に限定して申し上げますと、第一と第二の政策目標、内需の振興、雇用の安定に対しては、今年度の一般会計の予算規模は前年度対比で申しますと二〇・三%増となっております。その点評価できるのではないかと考えております。ただ、いわゆる公共投資主導型の予算ということで、減税よりも確かに乗数効果が大である、かつまた確実であるということはそのとおりなんですが、内需の誘発効果という点では、大型公共投資事業、これが乏しいという現状を考え合わせますと、民間投資への波及効果は高くないのではないか。私の考えでは、内需を誘発するためには教育なり住宅なり医療などの社会福祉的な事業を重点的にむしろ拡大しまして、一方では内需の誘発を図り、そして他方では、消費者の将来に対するリスク予想、これを解消させることによりまして、現在問題になっておりますところの貯蓄率の引き下げに寄与するのではないか、いわば一石二鳥の役割りを果たすのではないか、そのように考えております。 第二の論点といたしまして、租税政策につきまして簡単に申し上げます。 第一に、今年度の租税印紙収入の予算額は二十一兆四千五百億円でございます。しかし、昨年度の見積もりですと当初予算額は十八兆二千四百億円でありましたが、補正後の予算額では十七兆一千三百四十億円に低下いたしております。その点、租税見積もりという点で、これは景気調整との絡み合いになりますが、果たして万全を期しておられるのかどうか、この点少し気がかりになっている点がございます。 しかし、第二の点として、税制改正の面で租税特別措置がかなり今年度は整理合理化に向かっておりまして、平年度で四百九十億円増収見込みとなっております。この点が評価できるのではないかと考えております。その理由ですが、特別措置につきまして私どもは、それがもたらす非能率とそれから不公平といった、いわばこれはコストでございます。それともう一つは租税特別措置が国民一般の目につきにくいという、この二点を考慮しますと、租税特別措置よりもむしろ補助金の方がベターであるというふうに考えております。したがいまして、昭和五十五年度に租税特別措置の多くが期限切れになりますけれども、その際、厳密なテストを行っていただきたいと考えております。 その基準は三つほどございます。第一は、特別措置が真に公共目的にかなっているのかどうか、これが第一番目でございます。第二は、特別措置がもたらす公共利益がコストと比べてそれを上回っているのかどうか、これが二番目の基準でございます。三番目は、特別措置が同一の公共目的を達成する場合に、他の措置に比べてまさっているのか、最善の措置なのかどうか、この点の検討をお願いしたいと考えております。 個々の税金について申し上げますと、まず所得税ですが、この所得税につきまして、いわゆる三大不公平税制と言われております利子配当所得、医師所得、土地譲渡所得に対する課税上の優遇措置がございますが、これはいま申し上げましたようなテストがまず要求されるのじゃないか。株式の譲渡所得の課税、これも同様に考えております。 それで、あり方としましては、やはり総合所得課税の理念を生かす方向に持っていくべきではないか。換言いたしますと、課税ベースを拡大いたします。そして税率はそれに合わせて調整する。もし税収を一定といたしますと、税率を引き下げる方が望ましいと考えております。 特に、所得税に関連しまして、資産所得課税方式の再検討がここで必要なのではないか。特に高額所得者の租税回避のためのいろいろな抜け穴がございます。これをできるだけ除去する方向に努めていただきたい。例を挙げますと無記名預金とかあるいは無記名債券、これはできるだけ認めるべきではないのではないか、そういうふうに考えております。 要するに、所得税につきましては、ここで強調するまでもございませんが、一つには公平、いま一つには効率、つまり勤労意欲とか貯蓄意欲、投資意欲を阻害することの少ないようなそういう所得税体系の整備を図る余地がまだまだ残されているというふうに考えております。 次に、法人税につきましてですが、五十三年度予算案では法人税にかかわる特別措置の合理化が進んでいる点、評価できると考えられます。特に法人税にかかわる租税特別措置の整理は、一方では財源確保という点に寄与いたしますが、もう一つは、企業間の競争条件の障害を排除するという点で、やはり一石二鳥と考えられるのではないか。ここでは法人税制の基本的あり方について触れる余裕もございませんので、ただ、シャウプ税制をもう一度見直していただきたい。私の考えでは、できればシャウプ税制に戻ることが望ましいのではないかというふうに考えております。 最後に、消費税につきまして、租税政策の基本方針といたしまして戦後一貫してとられてまいりました直接税中心主義を維持するということ、これについて私は異論を持ち合わせておりません。ただ、現在の個別消費税制度は見直すべきではないか。現状では一般消費税への移行は確かに困難かとは思いますが、物品税につきまして申しますと、物品税の課税範囲を拡大いたしまして、そして税率の調整はできるのではないか。 この考え方は、ガルブレイスが申します社会的アンバランスの回復という点で、アメリカと同様に日本でも私的財が豊かでございます。そういう点でわれわれの社会も豊かな社会になっていると思いますが、しかし公共財の面ではやはり貧弱なのではないか、そういたしますと、この社会的アンバランスを回復する手段として消費税を活用するということがもっと考えられてよろしいのではないか。要するに、租税の選択とそれから運用に関しまして、それを財源といたしまして政府支出がどのように使われるか、これに依存するということもお考え合わせいただきたいというふうに考えております。 細かい点は、かなり省略いたしましたので、御理解しにくかった点が多々あったかと思いますが、公述人としてのお話はこれで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)
○中野委員長 どうもありがとうございました。 次に、島公述人にお願いをいたします。
○島公述人 私は、四点ばかりについて私の率直な意見を申し述べたいと思っております。 初めに、予算の基調についてということでございますが、これについての私の率直な感じは異常という感じでありまして、それは予算の成立する過程から含めての問題でございます。輸出といういままでの不況の脱出口がふさがれるので、もういまや頼るべき手段は財政だけしかない。財政力を景気刺激に傾ける。しかもその財政が深刻な危機なので、結局頼るべきものは企業の成長だけではないかという、何かせっぱ詰まったかけというような感じがして、私は戦前から財政学をやっている者ですが、かつてないような危惧の念を抱くわけでございます。 よく昭和恐慌の事例が引き合いに出されますけれども、その当時、高橋大蔵大臣は彼の随筆集「経済論」にこういうことを書いております。「今日でも早く財政収支の均衡を維持する様な方に行きたいと勿論思っているが、今後国際間の関係、内外の情勢がどう変化して行くか、前途暗黒である。見通しがつかない。」というふうに、財政政策の指導者が全く見通しがなくなったということを言っておるわけなんです。当時、御承知のように日銀引き受け発行という形で公債増発を繰り返しまして、だんだん危機の深みにはまっていったということでございます。戦後の財政法は、もちろんこういう事態をなるたけ回避するように定められたものだと思いますが、財政法は実質上無視され、特例公債が繰り返し発行されている、こういう事態がどうも、似ているという点で言えばそういうことだと思うわけなんでございます。 昭和九年−十一年の歳出の中で国債費というのは一七%平均してあったと言われております。五十三年度の予算歳出ではまだ九%でございますが、公債依存度は御承知のように三七%、この伸び率が三七・三%ということで、重要費目の中で最高の伸び率を示しております。この何となく見通しのない財政拡大政策というのは、日本経済の現状をただ円高不況の一面だけで割り切っておりまして、その患部に非常に刺激的な強い局所療法を加えようとしておる、そういうところから出てくるんじゃないかと思うわけです。 日本経済の現状は、単なる不況ではなくて、インフレと絡みついたインフレ不況でありまして、そういった情勢を公債増発を含むところの財政拡大政策が起こしているという点、つまり、いまやいわゆる財政インフレという状態になっておるんじゃないかと私は思うわけです。そういう面で、不況はともかく、インフレということについての警戒心が非常に少ないように見えます。 先ほど申しました財政インフレということでございますけれども、この七〇年代に入りまして、いままで実質GNPの伸び率は六%ぐらいだと思いますが、それはもちろん輸出ということがあった場合でもありますし、その中で何年度か、景気上昇を含むそういうものをならして年率六%。それから財政の拡大率は年率にして一九・九%、二〇%に近いそういう拡大を持っておるんじゃないかと思います。他方、マネーサプライといいますか通貨供給の方は、これまたGNPの実質の伸び率の三倍くらい、これも昭和四十五年から五十一年までの年平均でありますが、一七%という非常に高い増大率を持っておるわけでございます。言うまでもなく、高度成長期にはこれにほぼ等しいような通貨供給量の増大がありましたけれども、これは民間投資がその主要な要因であったわけでして、民間投資が主要な要因でありますから、したがって実質GNPの伸び率が通貨供給量とほぼ同じぐらいにふえておったわけでございます。ですから、その時期の通貨供給はいわば成長通貨の供給と言っていいような性格を持っておりました。しかし、七〇年代の財政拡大を要因とする通貨供給の増大というのは、民間投資もさして上昇させず、したがってまた実質GNPの増大をも余りもたらしていない。したがってこれは経済成長に寄与しない、非常にインフレマネー、過剰流動性の発生にむしろ役立っているのではないかと思うわけです。したがって、予算の場合には、不況と同時にインフレにも目を配った財政政策が必要でありまして、やはり今日のような際限のない公債増発を繰り返すような財政拡大政策というのは早急に転換していただきたい、こう思っております。 二番目に、特に公債の増発の問題でございます。十兆九千億、その他公共債を含めますと二十兆円になるという、こういう巨大な公債がどうして消化されるかというときになりますと、いまは不況で、過剰資金があって消化力があるんだから心配はないということが言われるわけですけれども、しかし、こういう主張というのは大変矛盾しておりまして、この巨大な公債を消化するために不況の長期化を期待するような議論になってくるので、だれもそんなふうには思っていない。景気の速やかな回復ということを期待しておるのであって、その景気回復時に資金需要が起こってくる。その資金需要に対して巨額の公債に抑えつけられている金融市場がどういうふうにこたえるのかということが、それこそせっぱ詰まった問題であろうと私は思うのであります。必ず市中の金利の上昇が起こってまいりまして、公債の損失、値下がり、あるいは公債でなくても、証券の投げ売り、あるいはほうっておけば信用恐慌とか証券恐慌というのが起こってくる。この事態を防ごうとすれば、日銀が買いオペレーションをしなければならない。これが景気回復過程のインフレと言われるものでありまして、景気回復そのものの足を引っ張る要因になってくる。 したがって、この過剰流動性というものは、それに利子をつけて公債の方へ引き寄せるというよりも、むしろ、先ほど申しました財政拡大が要因になっておるわけでございますから、行政改革あるいは財政改革というものによる財政資金の節減、それから、この過剰流動資金の課税、そのことが問題になってくる。やはり過剰流動資金は公債増発の論拠となるよりも、増税の論拠とならなければならない、こう思います。それは金融機関の預金であるとか、企業の内部留保であるとか、あるいは非常に投機的な資金運用となっている。そして、不況の中で突然株価をつり上げたり、景気回復過程においては地価を初めとする物価上昇を非常に先行させるというような形になって、景気回復の足を引っ張る要因になってくる。したがって、私は、どうしても金融機関や企業レベルの課税、証券、土地の取引過程から発生する譲渡所得の課税、それから高額な資産所得、こういう過剰資金の入り込みやすい資産所得の課税、こういった課税をやはり強化していくということが、インフレ体質の克服のために、また赤字公債減額のために必要ではないかと思います。これとあわせて、行財政改革、こういうものがせめて並行して進むという見通しが立たないと、やはりこれは、インフレ、不況を繰り返す、悪循環を繰り返すということになるのじゃないかと思うわけです。 三番目に、今度の予算の根拠にあるような内需拡大論といいますか、外需が制限されるので内需拡大というのは、むしろ当然のことを言っているわけで、この点ではだれしも一致するんだろうと思うのでありますが、問題は、やはり企業中心の内需のとらえ方と、公共投資中心の内需拡大の仕方だろうと私は思います。 非常に高率の公共事業、その中でも特に大きなウェートを持っておる道路整備事業費、高い伸び率に大変疑問を感じるわけです。それは、すでに上昇傾向を示しておる地価を一層高めるという結果になるでしょうし、それから、そういうことを通じて各種公共事業が地価に食われていくというような事態を招くのじゃないかと思っております。 公共事業費がまたこれだけ大幅に拡大されますと、公共事業費そのものの中にあるいろいろな内的な欠陥、つまり、いわゆる縦割れ、横割れの行政機関のために、公共事業費の実際の支出金額が明確につかめない。浪費がふえる。その他事業施工の点につきましては、元請、下請、再下請というような縦の系列がありまして、末端の施工業者は実際能力のない者がやっておりまして、実際ガス管や水道管を破壊しながらやっつけ仕事をやる。公共事業費は前からこういうなにを持っておるわけですが、これは量がふえればますますこういう点についての警戒が必要じゃないかと思っております。それから個人消費の方は、これはもういろいろ言われておりますように、特に社会保障関係、恩給関係費などの、インフレに最も弱い経費の伸び率が抑えられているということ、あるいは公団、公営住宅の建設戸数が絶対的にも減額されている。あるいは所得税、住民税などが実質増税になっていくとか、手数料とかその他公共料金、使用料が高い比率で、これは国や地方のレベルでも引き上げられるであろうし、現に引き上げられている。こういう点で個人消費を抑えるという傾向を持っているのじゃないか。 個人消費の伸びが低いことは、個人貯蓄に向かう率が高い、貯蓄性向が高いという言い方がございますが、これは減税論のときにも出てくるわけですけれども、したがって、そういう観点から個人貯蓄を動員して住宅建設に回す、これが住宅金融公庫資金の融資の拡大によって持ち家建設戸数を拡大しようという政策だろうと思いますけれども、しかし、個人貯蓄の高いことは、これもまたよく言われておるように、社会保障の整備がないとか、こういうことで、特に何よりも政府が持ち家政策だから住宅貯金を高めなければならない、こういう点がございますので、しかも現在では、その個人貯蓄そのものについて庶民の不安が高まっている。それはインフレによる目減りの問題であり、金利値下げの問題であり、そこで個人貯蓄とあわせて、個人個人は金融機関から借入金をあわせて個人の家を建てようとしております。しかし、そこには住宅よりも、零細な土地つき住宅を獲得して、インフレ防衛のためにささやかな資産価値を確保しようという、生活不安から出てくる心理あるいは行動がすでに出ておるわけでして、住宅金庫融資拡大政策というのはこれを緩和するかもしれませんが、しかし、ただ資金的にこういうことを誘導しようというので、住宅政策や地価対策や、それからインフレを放置したままでの資金的な、あるいは金融的な誘導政策だけでは、国民の住宅に対する要求は満たされないし、生活不安もおさまらないだろうと私は思うわけであります。 したがって私は、むしろ今回の予算で非常に冷遇されている社会保障関係の引き上げあるいは低家賃公団住宅の積極的な拡大、それから所得税等等の実質減税、それから、むしろ道路関係の公共事業費の減額ということを言いたいわけであります。こういうことが、やはり大衆消費の増大を軸とする国内産業の拡大、それが正しい意味の内需拡大方式だろう、こう思っておるわけでございます。 最後に、雇用問題をお話ししたいのですが、もう時間がございませんので、これぐらいでやめさせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)
○中野委員長 次に、水野公述人にお願いをいたします。
○水野公述人 名古屋大学の水野であります。 ただいまから昭和五十三年度予算につきまして意見を述べさせていただきます。 五十三年度予算の最大の課題といいますのは、五十二年度補正後予算における公債依存度三四%という異常な財政悪化の状態におきまして、財政節度の維持を配慮しつつ、内需中心の景気回復を図ることにあると考えられます。政府予算案もそのような考え方に立って編成されておりますので、以下、景気対策と財政節度維持の二つの観点から、五十三年度予算について私の意見を申し上げたいと思います。 まず、景気対策の観点から申し上げますと、政府は積極的財政政策による内需の拡大によって景気の回復を図り、五十三年度実質経済成長率七%の達成を目標としております。このため、予算案におきまして景気対策の面から次のような特色が挙げられます。 第一に、公債依存度三〇%の線を放棄しまして、財政収支がさらに悪化するにもかかわらず、十五カ月予算の構想のもとに、五十二年度第二次補正予算とあわせて内需拡大のための積極型予算を編成しております。 第二に、内需拡大のための財政的措置としては、所得税減税ではなくて公共投資の増大を選んでおります。すなわち、所得税減税は今回は見送り、そのかわりに公共事業関係費を前年度当初予算に対して二七・三%増と大幅に増加させ、災害復旧等事業費を除く一般公共事業関係費では前年度当初予算に対して三四・五%増と、過去最高の増加をしております。 第三に、税制面では、景気回復の妨げとなるような増税は避けて小幅の選択的増税にとどめる反面、民間設備投資及び住宅建設の促進のために投資減税等の税制上の措置を講ずることになっております。 第四に、使途を特定しない国庫債務負担行為の限度額の設定、資金運用部資金等の長期運用予定額の弾力化、公共事業等予備費の計上など、予算及び財政投融資計画の弾力的運用を図ることとしております。 さらに第五に、中小企業対策の充実、特定不況産業に対する構造改善対策、離職者対策など、産業構造の転換を円滑にし、雇用の安定を図るための新しい措置が講じられております。 以上のような特色を持つところの予算における景気対策につきまして、その問題点と、それについての私の意見を申し上げたいと思います。 第一の問題は、財政悪化の中で景気回復のための積極的財政に転ずる必要についてであります。これにつきましては、景気動向、対外経済関係、中長期的経済運営のあり方、財政再建等の関連において判断さるべき問題でありまして、なかなかむずかしい問題であります。私の個人的見解としましては、財政再建ということを重視する考えに立って、もっと低目の成長を目標にしたモデレートな積極型予算がよかったのではないかとも考えますが、今回の予算は深刻な経済情勢における緊急避難的なものと理解し、望ましい効果を上げることを期待いたします。 第二に、内需拡大のための財政措置として、所得税減税か公共投資増大かという議論があります。これについて私は、五十三年度予算においては内需拡大はもっぱら公共事業費増大によるべきであり、所得税減税はやるべきではないと考えます。 その理由は、第一に、所得税減税よりも公共投資拡大の方が有効需要増大効果が大きいと考えられること。第二に、公共事業費の方は景気に対応して増減し得るという伸縮性を持ちますが、所得税減税の方は一たん実施するとビルトインされまして、好況でも景気を抑制する必要がある場合に増税することは容易でないという非可逆性を持っております。第三に、わが国の所得税負担は主要国と比べかなり低い水準にある。引き上げの必要こそあれ、引き下げの必要は特に認められないと考えられます。第四に、今後財政収支改善のため、いずれ税負担の引き上げが不可避でありますが、今回所得税減税をしますと、将来の財政再建をますます困難にすると考えられます。四十九年度における所得税減税が五十年度以降の財政の構造的赤字の重要な要因であったことを考える必要があります。 これらの理由で、所得税減税は行うべきではなく、公共投資拡大の線で行くべきであると考えます。 それから第三に、このような予算で七%成長を達成し得るほどの景気回復力があるかという問題があります。 これにつきましては、景気の予測の問題であり、やはりむずかしい問題でありますが、景気回復に対して効果的であるためには公共事業の円滑な消化が必須条件でありますので、国、地方ともに最大限の努力を払う必要があります。また、七%成長が達成されなくても、景気回復が着実に進行する限りは、年度途中で景気刺激のための措置をとり、さらに財政を悪化させることは厳に避けるべきであると考えます。 次に、財政節度の維持の観点から申し上げたいと思います。今回の予算案におきましては、財政節度の維持のために次のような配慮を払っているのが特色であります。 第一に、予算を経常部門と投資部門の二部門に分けまして、投資部門では、主として建設公債を財源として公共事業等の投資的経費を積極的に拡大して景気回復を図ることとするが、経常部門におきましては、経常的経費を極力抑制して、特例公債の発行をできるだけ抑制するとしております。第二に、一般行政経費の抑制、補助金等の整理合理化の推進、受益者負担の適正化等を図るとともに、重要な施策についてはその充実に配慮することによって、財源の重点的かつ効率的な配分に努めております。 第三に、酒税及び有価証券取引税の税率の引き上げ、石油税の創設、租税特別措置の整理合理化の推進によりまして、景気回復の妨げとならない限りにおいて税の増収を図り、反面、所得税減税は行わないことにしております。 以上のような財政節度の維持につきまして、その問題点と私の意見を申し上げます。 第一に、予算を経常部門と投資部門に分け、フィスカルポリシーは投資部門が担当し、その部門においては景気調整のために弾力的運用を行うが、経常部門は資源配分の観点から効率性に重点を置いた運用がなされるとする二部門分割の導入は、一方では効率的財政運営と他方では景気調節的財政政策の両立を図るためのすぐれた方法であると評価いたします。 しかし、これについては次のような問題点もあることを指摘したいと存じます。 二部門予算の考え方に基づいて特例公債依存度の概念を新しく持ち出し、これの抑制をもって財政節度維持の目安にしようとする態度がうかがわれますが、これは公債発行の歯どめとして有効な役割りを果たすことが期待される反面、財政健全化についての基本的姿勢の後退につながるおそれがあります。それは建設公債であれば問題はなく、不健全なのは特例公債であるという考えが一般化し、定着するおそれがあるからであります。建設公債であれ特例公債であれ、財政赤字であることに変わりはありません。限度いっぱいの建設公債発行を恒常的財源と考えてよいというふうに財政法第四条を解釈すべきではないと考えます。予算の二部門分割が建設公債の発行を当然視する考えをはぐくむことのないよう注意しておきたいと思います。 第二に、五月分税収の年度所属区分の変更によりまして税収の増加を図り、公債依存度の引き下げを図っております。これについては、単なるドレッシングではなくて、地方財政対策や財投の関連でこのようにせざるを得なかった財政当局の苦心のほどは承知しておりますが、やはり当座しのぎの糊塗的やり方という印象を免れません。むしろ、このようなことはしないで、公債依存度実質三七%という財政悪化の実態をそのままさらけ出した方がよかったのではないかと考えられます。 第三に、近い将来における財政再建への布石の意味も含めて、問題の多い所得税減税を退け、小幅ながら選択的増税を行った点は評価したいと思います。 第四に、財政節度維持のための財政当局の努力にもかかわらず、七%という高い経済成長率を目標に置き、景気回復を最優先課題としたため、財政の健全化がおくれるばかりか財政はさらに悪化するに至りました。景気回復にのみ目を奪われないで、この財政悪化の事態をひとしく直視すべきであると考えます。 以上、五十三年度予算案を景気対策と財政節度維持の二つの観点から検討いたしました。そこにおいて申し述べましたように、若干の問題が指摘されますが、困難な財政状態におきまして、景気回復のために可能な最大限の積極型予算を編成するとともに、財政再建への布石を含めて財政節度維持にできる限りの努力を払ったものとして、五十三年度予算を評価したいと存じます。なお、予算の執行において、景気面で所期の効果が上げられるよう期待するとともに、さらに財政を悪化させないよう望みたいと存じます。 最後に、財政の再建について申し上げたいと存じます。 五十年度以降、異常な財政収支の悪化が続き、五十三年度予算はさらにその傷を深くしたことはすでに申し上げたところであります。このような状態はいつまでも放置すべきではなく、なるべく早く改善すべきだと存じます。高い公債依存を続けることは、一、財政支出と財源調達面での負担との対応から、ともすれば放漫な財政に流れやすいこと、二、公債費負担の増大により財政の硬直化を招くおそれがあること、三、所得分配面に望ましくない影響を及ぼすおそれがあること、四、財政の弾力性を低め、フィスカルポリシーの機能を弱めるおそれがあること、五、財政の非可逆性により、経済が完全雇用に近づくときにインフレを生ぜしめるおそれがあること等の弊害をもたらします。日本経済は、現在の需給ギャップを解消して安定成長の軌道に収束することが最も重要な課題でありますが、安定成長の重要な内容として正常にして健全な財政が含まれなければなりません。ここで、正常にして健全な財政とは、安定成長の持続にフィットし、かつ、それを支え、公債依存度が低く、財政の本来の機能を効率的に果たし得るようなものを意味します。 財政当局は、五十一年と五十二年に五十年代前期経済計画の線に沿った財政収支試算を作成し、五十五年度に特例公債発行をゼロにするにはどの程度の税負担の引き上げが必要であるかを示しました。しかし、景気回復のおくれによる税収の鈍化と景気刺激のための積極財政の推進のために、財政収支の改善どころか、かえってさらに悪化する結果となり、これらの財政収支試算の線に沿う財政再建は不可能となりました。ここに改めて、財政再建の基本方針とその具体的方策を確立する必要に迫られております。財政当局が先日予算委員会に提出いたしました五十三年度ベース財政収支試算は、このような観点において作成されたものと考えられます。この財政収支試算につきましては、すでに御指摘のありましたように、計算上の問題を持っていることは否定できませんが、財政再建についての基本的問題点は浮き彫りにされ、多くの示唆が得られると考えられます。私は、近い将来において財政収支試算がさらに信頼性のあるものに高められて、それを基礎にして財政再建について真剣な議論がなされることを希望いたします。 財政再建については、わが国経済が、現在の、いまだにかなり大きな需給ギャップを抱え、内外ともにきわめて困難な状態から需給ギャップを解消して安定成長に収束していく過程において財政収支の改善を図っていかなければならないところに問題のむずかしさがあります。特に財政再建については、一、どのような姿の財政に再建するか、二、いつから財政再建に着手し、いつまでにそれを達成するのか、三、財政再建の具体的方策はどうかなどが重要な問題であります。 これらについての私の意見は、時間の関係で詳細には申し上げられませんが、その要点だけ申し上げてみたいと思います。 一、再建の目標を正常にして健全な財政の実現に置きます。特に建設公債も含めて公債依存度五−六%を正常な線とし、これに景気調整のための公債発行あるいは償還が加減されるというものを考えます。 それから二、この目標を二段階によって実現します。第一段階では五十七年度までに特例公債発行をゼロにし、第二段階ではその後約五年ぐらいで正常公債依存度五−六%までのところに持っていきます。 三、財政再建に着手する時期は、需給ギャップが解消し完全雇用経済になった段階ではなく、需給ギャップがまだ存在していても景気回復が順調に進むと判断されれば、できるだけ早く踏み切るべきであります。ただし、景気の動向に十分配慮しつつ財政の健全化を図っていく必要があることは言うまでもありません。 四、財政健全化のためには、かなりの増税によらざるを得ません。この場合、不公平税制の是正と歳出面の効率化が前提でありますが、一般消費税を導入せざるを得ないと考えます。 五十三年度を含めてわが国財政は四年間にわたって異常な、世界の主要国の中でも最悪の財政収支の状態を続けており、ますます悪化する傾向にあります。これから脱却し健全な財政の姿にするには、よほどの決意と努力を要し、そのための犠牲を覚悟しなければなりません。今回の財政収支の悪化は、景気回復につれて自動的に改善され、財政健全化が達成されるといったなまやさしいものではないと思います。そのかなりの部分がいわゆる構造的赤字ともいうべきものであり、これは税制改革を中心とした財政収支改善の努力によってのみ解消し得るものであると考えられます。 財政の健全化は、もちろん直接には財政当局の任務でありますが、財政の問題だから財政当局に任せておけばいいといったものでは決してありません。また、全く任せるのならまだよろしいのですが、常にその足を引っ張り、意気阻喪させるようなことをやっていては、いつまでたっても財政再建はできるものではないと考えられます。税負担の増大、経済成長率の若干の低下を含めて、国民のすべてがある程度の犠牲を覚悟しなければ達成されるものではありません。なるべく早く財政再建の決意を固めなければ、問題の解決をますます困難にし、国民の犠牲はより大きくなるでありましよう。 これをもって私の公述を終わりたいと思います。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○中野委員長 どうもありがとうございました。 —————————————
○中野委員長 これより各公述人に対する質疑に入ります。 質疑はお一人、答弁を含めて十分程度に、まことに恐縮でございますが、お願いいたします。 申し出順がございますので、加藤六月君。
○加藤(六)委員 公述人の先生方におかれましては、大変貴重なる御意見御開陳いただきまして、まことにありがとうございます。ただいま委員長が申されましたように時間に制約がございますので、ごく簡単にお伺いいたしたいと思います。 まず、古田公述人に御質問いたしたいわけでございます。 いろいろ税問題等にもお触れいただいたわけでございますが、ヨーロッパ諸国では、付加価値税というものが税制の中心になっておるように聞いております。私自身も調べに行ったわけでございますが。また、北欧、これは社会党政権もある国国でございますが、そこら辺においても付加価値税中心の方向が開かれておるというわけでございますが、そこら辺の背景といいますか、どういうところからなったのかということについてお教えいただきたいと思います。これが第一点です。 二点は、ただいま水野先生から大変厳しい姿勢で財政の節度、あるいは財政の健全化ということについて、財政の再建ということについて承ったのですが、実は私たちは、財政の節度を強調すると財政エゴだというので大変おしかりをいただいておるわけでございますが、しかし、財政の硬直化ということも非常にこわいわけでございます。長期にわたる赤字財政というものが経済全体の運営にどのような影響を及ぼすかということについてお教えいただきたい、こう思うわけでございます。 それから、同じく水野公述人から、公共投資というものが現在の時点において必要であるという四点についてお教えいただいたわけでございますが、われわれも実は所得税減税というものと公共投資を大々的に行うという問題は、当委員会でもたびたび議論しておるわけでございますが、需要創出の効果ということ、資源配分効果ということ、あるいは将来の財政節度という観点から、所得税減税がいいか、公共投資の拡大がいいかという問題とあわせて議論しているわけでございます。こういった需要創出効果、資源配分効果、将来の財政節度という点等に対する影響、あるいはこういう観点をもう少し古田公述人から承りたい。 以上、三点でございます。
○古田公述人 お答え申し上げます。 第一番目の付加価値税の問題でございます。 私、付加価値税の調査に西欧に行ったことございませんので……。ただ、付加価値税の理論面につきまして検討を加えたことがございます。その点につきまして若干、お答えになるかどうか、申し上げたいと思います。 日本で付加価値税の論議がどこまで突き詰めて議論されているのか私よく存じませんが、西欧では、御指摘のとおり、付加価値税のウエートが、特にEC諸国で高まってきております。その点、たとえば日本の場合法人税のウエートが世界で一番高いわけでございますが、したがいまして、景気調整のために法人税を操作するということが可能性として考えられますが、西欧の場合には考えられません。むしろ付加価値税でございます。 背景でございますが、これは御調査で十分御承知かと思いますが、いわゆる累積売上税、これがEC統合に際しまして、フランスの付加価値税にならいまして、統一税制として付加価値税が採用されたわけでございます。ヨーロッパ大陸では御承知のとおり、伝統的に間接税中心の税体系がとられてまいりました。その点で、EC諸国が付加価値税へ転換するという点で日本よりも有利な条件に恵まれていたのじゃないかと考えられるわけです。ただ、長期的に今後の税制のあり方を考えるというときに、たとえヨーロッパ大陸と税制成立の条件は異なるにせよ、日本の場合も、最近の論議で十分国民も承知しておりますとおり、付加価値税を採用するということを真剣に考慮しなければならない段階にあるのだと思います。それと関連いたしまして、私は先ほど、個別消費税の課税ベースを広げていくということを申し上げたつもりでございます。 そこで、細かい点にわたりますので省略したいと思うのですが、付加価値税につきまして、やはりメリット、デメリットがございます。この両者比較をした上でメリットが上回っているのならば、これは他の税金と比べての話でございますが、採用の方向に持っていくべきではないか。一番指摘されておりますデメリットは逆進性ということじゃないかと思いますが、私の調べました限りでは、ヨーロッパのたとえばドイツの付加価値税を調べてみますと、必ずしもこれは逆進的ではございません。ただし、そういたしますと、付加価値税のメリットの一つに数えられております中立性、つまり経済活動に対して税のインパクトが中立的だというこのメリットが、複数段階の税率を使うからこそその逆進性が緩和されるわけでございますから、どうしましても中立性が損なわれるという点が、御承知のとおりデメリットとして出てまいるかと存じます。そういう点で私は、付加価値税につきまして、今後とも日本の実情に合うような付加価値税がどんなものなのか、もう少し真剣に、私どもが討議すると同時に国民にも理解していただきたいというふうに考えております。 次の御質問だったと思うのでございますが、財政節度につきまして、御指摘のとおり現在の日本の財政が置かれている状況と申しますのは、赤字財政がこれから極度に深刻化していくんじゃないか、その中で財政節度をどのように維持していくか、これは日本だけの問題ではございませんで、先進諸国におきましても、たとえばアメリカの財務省でも財政節度ということを強調している話を私も聞きましたし、「財政節度」という本も出ております。その財政節度はどこが一番堅持しなければいけないかと申しますと、当然これは財務省でございます。これは日本の大蔵省に当たるわけでございます。したがいまして、財務省が財政節度ということを強調することは当然だと思います。ただ、これは経済あっての財政でございますから、したがって、日本の経済が不況の段階に陥ったときにフィスカルポリシー、これが言ってみれば景気調整の一番強力な手段であることは御承知のとおりでございます。これが出てこなければならない。そうしますと、財政節度を図りながらどうやって赤字財政の効果をフルに発揮させることができるか。言ってみれば両者の兼ね合い、バランスをどういうふうに図っていくかというところで財政節度の本当の意味が問われているのじゃないかと思うのです。そのときに財政が本来景気調整という役割りを持たされているかどうかということになりますと、実はあと二つの重要な役割りを持たされているということは、先ほど御指摘のとおりだと思います。むしろ財政の本来の役割りは、公共目的に資源をいかに配分するかというそういう役割りではなかったか。と同時に、税制面で指摘されておりますような所得再分配効果も当然、御指摘のとおり考慮しなければならない。と申しますことは、財政節度を問うということは、景気調整だけではなくして、二つの役割りとの最適な解決をどこに求めるかという、最終的には私は、議会政治を前提とする場合には、国民の総意がここに結集しております皆様方が真剣に御討議いただいたところで最終的には決定されるのだと思います。しかし、その前に理論と実証の段階でもって、私はいま少し詰めるべき点が残されているのではないかというふうに考えております。 お答えになってないかと思いますけれども、これで責を果たしたことにさしていただきたいと思います。
○中野委員長 水野公述人にお願いいたします。
○加藤(六)委員 水野公述人に対しては小此木委員から御質問申し上げますから私はこれで。どうもありがとうございました。
○中野委員長 次は、小此木彦三郎君。
○小此木委員 どうもきょうは御苦労さまでございます。 私は、水野公述人に一点だけお聞きしたいのでございますけれども、御承知のように、予算委員会の審議の進行の中で、減税あるいは予算修正という、私どもにはとうてい理解しがたい、絶対不可能だと思われるような論議が、時にちらちら、時に盛んに行われているのでございます。きのうも一部の公述人の御意見の中でこれに類する議論が含まれておったのでございますが、そこで私は水野公述人にお聞きしたいのでございます。 公述人は、新聞報道等でそれらをごらんいただいたかどうか、いただいたとすればその範囲内で結構でございますけれども、その予算修正なるものの財源対策等との関連で、たとえば会社臨時特別税の復活であるとか、高額所得者の付加税であるとか、各種引当金等の廃止など、いろいろな税制をめぐる構想が出されておりますが、これについて水野公述人はどのようなお考えを持っておられるか、時間の許す範囲内でお聞かせ願いたいと思います。
○水野公述人 ただいまの私に対する御質問でありますが、各方面から出されております財源対策といいますか、これにつきましていろいろな考え方が出されております。私、そのすべてを綿密に検討しているわけではありませんが、ただ新聞報道で私が知り得る範囲でいまの御質問にお答えしたいと思います。 この問題につきましては、考え方の基準を定めておいた方が議論が混乱しないのじゃないかと思います。それは、一つは、やはり現在のきわめて苦しい財政状況の中で、いわばなけなしの財布をはたいて景気回復の促進を財政面から図らなければいけないという、こういう大きな問題があります。もっとも、財源的に効率的な景気対策という面から見て効率的なものであるかどうか、また、それがかえって景気対策というものの大きな妨げにならないかどうかという点。それからもう一つは、そういう財源対策を講ずることによりまして、近い将来にやはりどうしても踏み切らなければいけない、先ほど私が申し上げましたような財政再建の問題を控えておりますが、そういう観点からそれを困難なものにしないような配慮がやはり必要だと思います。それともう一つは、そういう財源対策のいろいろの構想の中で、本来の税のあり方といいますか、税の仕組みといいますか、そういうものから考えて妥当かどうかということを考えなければいけない。大体こういうところが、そういうものを判断する場合の基準になるというふうに考えられます。 そこで、そういう立場に立って考えますと、まず第一に、出ておりますいろいろな構想の中で、現在の経済情勢から考えまして、景気回復という観点からそれに逆行するという意味で望ましくないと考えられるものがあります。例としましては、会社臨時特別税の復活であるとか、あるいは準備金の大幅削減または全廃といったものがそれに当たるかと思います。 それから、税制の固有の理論あるいはその仕組みからして妥当とは言えない、言いにくいものがやはりあります。それに当たるものといたしましては、配当益金不算入の廃止であるとかあるいは各種引当金の廃止などがそれに該当すると思われます。 それから第三に、課税の実情から考えまして妥当ではない、あるいは非現実的であると言わざるを得ないというものがあります。それに当たるものといたしまして、高額所得者付加税とか利子配当課税の特例の廃止、それから有価証券取引税の大幅引き上げ、交際費課税の強化といったようなものがそれに該当すると思われます。 いずれにせよ、私の見る範囲内では、あるいは知る範囲内では、出されておりますそのほとんどが、景気対策という点から考えましても、また税制の上から考えましても、率直に言いまして不適当あるいは非現実的なものと考えざるを得ないというのが私の率直な印象でございます。 これでお答えになったかどうか……。
○小此木委員 結構でございます。ありがとうございました。
○中野委員長 次に、寺前巖君。
○寺前委員 島先生にお伺いをしたいと思います。 先ほど、今度の予算は異常な感じで、かけをやっているようなものだという御指摘が最初にあって、幾つかの不安点を御指摘になりましたが、一番最後に雇用の問題についてということで、時間がないとおっしゃいましたので、私はこの点についてだけ、せっかくのおいでをいただいた機会でございますので、雇用問題についてぜひとも御説明をいただきたいというように思います。
○島公述人 お答えを申し上げます。 今度の予算で雇用状況、就業状況あるいは賃金の問題がどうなっていくかということは、七%成長よりも非常に予測がむずかしいわけでありますが、私は、先ほどの公述の中でも述べましたように、これまでずっとインフレ不況といいますか、低成長経済が続いておる、その中で一九%にも達する——平均してですよ、七〇年代を平均して一九%をちょっと上回るような財政拡大が続いている、この二つの条件の中で、就業構造はいままでどうなったのか、あるいはどうなりつつあるのかということを見て将来の若干の予測もできるのじゃないか、こう思っておるわけでありますが、少し前の資料でございますけれども、昭和五十年度の国勢調査の結果で、大体四十五年から五十年までの就業問題あるいは就業構造、この就業構造といいますのは産業別の就業者数の増減の問題でございますが、そういうことなど、あるいはごく最近の情勢などを見まして、まず第一に五十年調査にあられているのは、四十五年から五十年まで実質経済成長率が五・四%、これはいろいろな激変の多かった時期でありますが、平均してそういうふうになっている。財政規模の拡大率は毎年、平均して二一%を少し超えている。この二つの条件の中で就業構造というものはどうなったのかということを見ますると、第一に、就業者の全体としての一%という非常に低い増加率がある。この低い増加率というのは、女子就業者が非常な減少を示しておるということから出てきたわけであります。 それから第二番目の特徴としては、やはり相変わらず農業の就業者、第一次産業の就業者が大幅に減少傾向をたどっておるが、同時に製造業の就業者の減少が、かつてなかったような形で出てきておる。こういう第一次、あるはい第二次の製造業の縮小を通じて第三次産業の就業者がかなり増加するという、最近水ぶくれ傾向と言われておるようなものが、国勢調査の結果に出ております。 それからもう一つは、特に公共事業費というのはこの七〇年代前半ですでに二兆八千億ぐらいの高い水準に、これもいろいろ変動がございましたけれども、ならしてそういうふうになっておる。それの影響ともいうべき就業者の増加率から言うと、不動産が第一位であります。それから第二位が金融保険業、それから第三位が建設業の就業者の増加。私は、これは非常に不健全な就業構造ではないかと思います。こういうような、第一次産業、特に農業就業人口が激減し、不動産を中心とする第三次就業者が伸びるという就業構造は、かつて高度成長期には人口減少県であらわれておったわけです。ところが、この国勢調査以後、現在では、農業就業者減と製造業就業者減、それから就業者数の増加率が、第一位が不動産、次が金融保険業、第三が建設業、こういうのは、むしろ大都市圏の人口急増地帯で起こりつつあるということなんでございますね。こういう就業構造は、やはり経済構造の非常にゆがんだ形をあらわしておる。これは内需拡大型の就業構造というよりも、むしろ内需縮小型の就業構造ではないかというような気がいたします。そして、そういう事実を踏まえて、公共事業だけで雇用問題を改善しようといたしますと、非常にゆがんだ就業構造が出てくるのではないかというように推察されます。ただ私は、公共事業全部がだめだと言っておるわけではありませんので、公共事業というものが、たとえば公共事業も含めて、特に今度出てきました公共投資、というよりも公的金融と申しますか、住宅金融公庫の資金の拡大、ああいう形になりますと、どうしても個人は不動産業にお世話にならなければならない、金融保険業のお世話にならなければならないわけでありまして、こういった点が、先ほども申しましたように私は心配される点だと思うわけでして、この点については地域の計画とか、あるいは地価規制とかいうものを含んでおやりにならなければ、就業構造の面にも非常にゆがんだ形が出てくるのじゃないかというふうに推察するわけでございます。
○寺前委員 どうもありがとうございました。
○中野委員長 次に、小林進君。
○小林(進)委員 水野先生に一つだけお聞かせをいただきたいと思うのでございますが、先生は、五十三年度の予算に対して、景気の浮揚は公共投資によるべきであって、減税は景気浮揚には効果がない、あるいは少ないというふうに拝聴をいたしました。私どもの考えといたしましては、景気を浮揚するファクターは何といっても個人の消費、個人の購買力だ。これが五三%から六〇%を占めるのでありまして、財政投資をどんなに大幅にしても、その浮揚は二〇%以内、在庫投資もどう考えてみても一〇%台、こういうふうに私どもはごく常識的に考えていたわけでございますが、先生は、いや、減税は結局、個人消費に結びつかない、そういう意味で景気浮揚にはならないというふうなお考えでいらっしゃるのかどうか、私はその点を一点お伺いしたいのであります。 いま一点は、やはり公共投資でございますが、しからば、公共投資が本当に景気浮揚にどれほどの影響をしてくるのか。私は、公共事業というものは特定業種、特定産業に限られてしまうと思う。土建屋だとか、セメント屋だとか、コンクリート屋だとか、鉄屋だとか、そういう特定の業種に偏ってしまうし、それからいま一つには、地域が限られてしまう。本州−四国の公共事業と言えばあの近辺に偏るし、あるいは新幹線、高速道路と言えば、それだけの地域は確かに若干景気の刺激があるかもしれません。しかし、それが国民全般、国家全般、国内全般のものとなって景気を浮揚するというまでには時間がない、とは私は言いませんけれども、その特定の地域の業種にしか直接的影響のないものがずっと国民全般に伸びていくまでには、相当時間的にもかかるのではないかというようなことから考えまして、どうも先ほどの小此木君の質問とはちょっと逆になりますけれども、政府の、公共投資一本やりで、単純細胞で、これだけでも景気がちゃんとうまくいくという話には、私どもはどうしても納得がいかないのでありまして、この点、先生からいま一度ひとつお聞かせを願いたいと思うわけであります。
○水野公述人 ただいまの御質問、二つの点があったかと思いますが、一つは、景気対策として公共投資か減税かという場合に、所得税減税より公共投資がいいというのは、所得税減税は個人消費を増加させるのに余り効き目がないと考えているからではないか、そういう御質問だったと思いますが、その点については、私は、所得税減税の個人消費を増加させる効果というものについては必ずしも否定的ではないわけでありまして、ある程度の効果はあるというふうに考えます。ただ問題は、一つは、公共投資と比べた場合に需要創出効果といいますか、これが、たとえ同じ一兆円の片や財政支出、片や減税でありますけれども、ともに財政負担というふうに考えますと、同じ一兆円をやる場合でありますと、現在のいろいろ経済理論あるいは計量経済学的な分析、こういうものからしましても、やはり公共投資の方が効果が大きいというふうに言われております。それともう一つは所得税減税の効果で、私その効果を否定するわけではないわけで、ある程度の効果はあると先ほど申し上げましたが、ただ、これについては、わが国の場合かなり疑わしい点が考えられるわけでありまして、所得税減税をするということはそれだけ個人の可処分所得を高めることでありますが、そういう可処分所得の増加というものが直ちに個人の消費の増加に向かうかというと、それが石油ショック以来の節約ムードといいますか、あるいはまた不況下における生活防衛というか将来の設計、こういう点を考えて、やはり貯蓄率がかなり高まっておりまして、せっかく可処分所得が増加しても、それが貯蓄の増加の方に回ってしまうということも考えられるわけです。しかし、これは実際やってみなければ、どういう効果が出るかは確言はできないわけですけれども、そういうおそれはあるわけで、主にその二つの点を考えまして、同じ苦しい中で財政負担でやるとすればやはり公共事業費、公共投資の方が効率的ではないかというふうに考える次第です。ですから、財源にある程度余裕があって、あるいはまた諸外国のように公共投資をする余地というものはかなり狭められておるような、そういうところでは所得税減税に頼らざるを得ないし、また、かなり効果があると思いますが、その点においても、わが国の場合は若干事情が異なるのではないかと思っております。 それから第二の点で、公共投資による場合は、特定の業種とか、あるいは地域的にその需要効果あるいは景気浮揚効果というのが偏ってしまうのではないか、そして経済全般にわたっての波及効果というものにはかなり時間がかかるのではないかという御質問ですが、その点については、ある程度私も同じように考えます。しかし、直接的にはやはり公共投資の場合、そういう特定業種あるいは地域的に偏らざるを得ないということは認めますが、やはりそれを通じて第二次的あるいは第三次的な波及効果というものは十分期待されるわけでありまして、ただ、それがどの程度のラグでもって全体的に波及していくかという点については、これはむずかしい点がありますが、現在在庫調整あたりもかなり進んでおりますし、景気回復もわずかながら五十年以降進んでおりまして、そろそろこのあたりで、こういう公共投資の増加というものによる景気浮揚効果が、民間の設備投資の増大あたりにも、これもやはりかつてのような強い力ではありませんけれども、だんだんそういうところに結びついていくのではないか、こういう期待をしております。 以上のような点であります。
○小林(進)委員 ありがとうございました。 いま一間でございます。それでは島先生に一間だけお願いいたしますが、国債の有効な管理政策というものは具体的にどんなものか、一言だけお教え願いたいと思います。
○島公述人 有効な管理政策とは、そういう御質問になかなか私は答えるようななにはないのですが、管理政策と申しまして、金融市場にある場合の公債のなにとそれから公債償還政策、そういう両方の面があると思いますが、ただ、私の申し上げたかったことは、要するに公債の過剰な発行、つまり公共債全部含んで、それが管理政策そのものを非常に困難にするということを申し上げたいわけです。もうすでにアメリカなんかの文献で、ずっと前からその問題が出ておりますが、アメリカは国債を含んだ公共債が非常に多くて、そこで苦労しておるということなんでございます。大変あれですが……。
○小林(進)委員 どうもありがとうございました。
○中野委員長 二見伸明君。
○二見委員 本日はどうもありがとうございます。 最初に、古田先生に一問お尋ねしたいと思います。 先ほど、五十三年度予算は内需と雇用の面では評価できるというお話でございましたが、それでは対外経済といいますか経常収支の問題ですね、政府は一応黒字幅六十億ドルという数字が出ておりますし、日米通商協議でも五十億ないし六十億ドルにするという話し合いが行われております。この見通しは、先生としてはどういうふうに立てておられるか。大体そのとおりいくのか、あるいは、もし厳しいとするならば、そういうふうにするためにはこういう手を打つべきだという御意見がありましたらお伺いをしたいと思います。 それから水野先生には、先ほど、今後増税の問題として一般消費税のお話がありました。私たちの党は一般消費税に対しては非常に厳しい態度をとっておるわけでありますけれども、われわれの党の態度は別として、もし一般消費税を導入するとするならば経済的な条件も考えなければならぬだろうと思います。たとえば、物価がインフレ傾向のときに一般消費税を導入することがいいか悪いかという問題もありますし、一般消費税というのは、ある面では個人消費支出を抑える、引っ張る役割りがあるだろうと思いますので、こうした景気が落ち込んでおる、個人消費が伸びない時期に一般消費税の導入が可能かどうかという問題もあるだろうと思います。そうしたことを踏まえて経済的な条件、こういうような条件がそろえばできるけれども、こういう場合には無理だというようなことがありましたらばお教えをいただきたいと思います。 以上です。
○古田公述人 お答え申し上げます。 先ほど、私は内需と雇用、この両面から申しまして、今回とられた財政政策、特に一般会計の規模が昨年度比二〇・三%増という点、これを評価しておるというふうに申し上げました。御指摘のとおり、それでは国際収支の面で、特に経常収支六十億ドル黒字という見通し、これはどうかという御疑問ですが、昨年度の経験でございます。私の恥を申し上げるようでございますが、雑誌に日本経済と五十二年度予算について書かされました。確かに私が一番苦労しました点は御指摘の問題でございます。つまり、ドルの価値がどれくらい下がるだろうか、下がるとしましても、円と比べて、実は二百四十円までいくという見通しは持っていなかったわけでございます。二百六十円まではいくであろうというふうな見通しは立てたのでございますけれども、もちろん、黒字にいたしましても、政府見通しのようなところ、あれは四億ドルでございましたか、これはとても私は考えておりませんでした。したがいまして、今回の見通しといたしまして、経常収支六十億ドルの方向に持っていくように政府が極力努力していただきたいということを私としては申し上げるわけであります。 問題は、その打つべき手でございますが、これはきわめて教科書的な答えになって恐縮でございますが、いわゆるティンバーゲンの定理と申しますか、あるいはマンデルの定理と申しますか、それぞれの政策目標に合わせまして、それぞれ最も有効な政策手段を選ぶべきであるというときに、私ども経済学のテキストに従いますというと、財政は国内均衡向け、つまり内需向けでございます。そして金融政策は外需向けであるということで、金融政策をむしろ主力にして対外バランスの回復を図っていくべきではないか。基本方針としてはそのとおりであると私は考えております。ただ、問題は、現在置かれましたような為替市場の、これから自由化に進まなければならないという段階で、従来のような教科書的な発想でもって足りるかということになりますと、私自身、多分の疑念を持っているわけでございます。 しかし、それでは何らかの直接統制的な手段を打つのがいいかというと、私はそこまで考えておりません。むしろ、好むと好まざるとにかかわらず、今後金融が自由化していく段階でもって、金融政策の有効性がこれまで以上に日本では回復されてくるのではないか。もちろん、逆に政府のコントロールする力が減るわけですから、その面での政策の有効性が衰えることは事実でございます。しかし、差し引きしますというと、実はマクロの国際収支のメカニズムの中ではこれは有効に働いていく、基本的な見通しはそのとおりだと私は考えております。 お答えになったかどうかわかりませんが。
○水野公述人 御質問の趣旨は、一般消費税を導入するとすれば、特に経済に与える影響という点から考えて経済情勢についてどういう条件が必要かということだったかと思いますが、一般消費税を導入した場合に経済に対する影響は、一つは、よく言われますように物価に対する影響で、これによって物価を高めるという効果、それから消費に対しては消費を抑制する効果があるのではないか。それと、重要なのは所得分配面での効果でありますが、これは別にいたしまして、御質問のような物価と消費に対する効果の面で申し上げますと、物価の点につきましては、現在は物価が非常に落ちついてきております。ただ、消費者物価はもう少し下がった方がいいわけでありますが、卸売物価については特に超安定期に入っております。そういう点で、物価に関する面では余り心配ないと思いますが、消費に対する影響という点から考えて、現在直ちにあるというのはやはり問題だと思います。五十三年度にとります財政による景気回復あるいは景気対策の効果というものがかなりあらわれまして、景気回復は本格化する、そして多少増税をやっても再び景気をダウンさせるというおそれはないと考えられる情勢で、その段階で導入すべきだというふうに考えます。これを導入すれば消費にマイナスの影響を与えて再び景気をダウンさせるということが予想されるような場合は導入すべきではないというように考えます。 ただ、問題は、こういう一般消費税の導入につきましては、一般的なこれに対するおそれといいますか、十分なれない新しいものを導入されますので、いろいろの混乱というものが予想されます。それによるところの経済に対するマイナスの効果も考えられますが、これについては、事前に十分のPRその他でなるべくそういう混乱、摩擦が生じないようにするとか、あるいは中小企業に対する配慮であるとか手続上の簡素化であるとか、こういう点でできるだけそういう混乱を少なくしてスムーズに導入する必要がある。それから、一挙に最初から高い税率で導入するということにもやはり問題があるのじゃないか。最初はある程度低い税率で導入し、徐々にそれを定着させていって、これは財政との関連でありますが、必要であれば引き上げていく、こういうやり方が必要であろうというふうに考えます。
○二見委員 どうもありがとうございました。
○中野委員長 以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。 公述人各位には、大変貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。 次回は、来る十三日午前十時より開会し、総括質疑を行います。 本日は、これにて散会いたします。 午後二時四十七分散会