法務委員会 第29号
- 発言数
- 507 件
- 登壇者
- 12 名
- 会派数
- 6
- 開催日
- 1978/06/07
会議録
○鴨田委員長 これより会議を開きます。 お諮りいたします。 本日、最高裁判所井口民事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○鴨田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 ――――◇―――――
○鴨田委員長 内閣提出、民事執行法案及び司法書士法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。加地和君。
○加地委員 それでは、まず第一に司法書士法の質問をいたします。 今回の法律改正によりまして司法書士の方の試験が国家試験に変わるわけでございますけれども、実質的にただ名前が国家試験合格者ということになるだけなのか、それとも資格そのものの効力というか力といいますか、そういうものがいままでと変わってくるのか、その点はどうなっておるのでございましょうか。
○香川政府委員 現行法は各法務局、地方法務局の長の選考認可でございますが、実質的には筆記試験の関係は全国統一的にいわゆる統一試験をやっておりますので、その面からはいわば国家試験になりましても実質はさして変わりはないと思うのであります。しかし、法律でもって国家試験に正式になるという関係は、やはり司法書士の資質の向上には相当意義があると思いますし、しかも効果としまして大事なことは、現行の法務局長の認可のもとにおきましてはその法務局の管轄区域内で業務を行う場合に限り効力があるわけでございますが、国家試験になりますと、たとえば東京で営業しておる者が、今度横浜でまた事務所を移して営業するというときにも、資格そのものは全く何ら改めて試験を受けなくてもいいわけでございまして、いわば全国共通の資格と申しますか、そういうふうな効果を持つ、それが実質的には差異がある点だろうと思います。
○加地委員 そうしますと、いままでたとえば横浜地方法務局の方で、司法書士さんが何人か存じませんが、たとえば二百人なら二百人とした場合に、横浜の方がよくはやりそうだとか、あるいは横浜は生まれ故郷なので東京から事務所を移そうと思えば、横浜法務局長とかあるいは法務省の何の許可認可なしに事務所を自由に移せるのでしょうか。
○香川政府委員 結局司法書士の登録がえと申しますか、東京から横浜地方法務局への登録がえの申請は必要でございますけれども、これは単なる手続だけでございまして、お説のとおり自由に移そうと思えば移せるわけでございます。
○加地委員 いままで地方法務局長などの権限で試験が実施されたり、あるいはいわゆる特認という経験者についてはやさしい試験などで司法書士が生まれてきたわけでございますけれども、もっぱら、余り人数をふやし過ぎると一人一人の収入が減るために、無理な業務をやっていわゆる司法書士としての道を踏み外すような方が出てはいけないので、ある程度過当競争にならないようにということで数をしぼってこられたと思うのですけれども、今回の制度になりますと司法書士さんの過当競争ということも心配されはしないのでしょうか。
○香川政府委員 形の上では法務局、地方法務局長の認可でございますので、いまお示しのようなしぼるというふうなこともできないことは法律的にはないと思いますけれども、実際問題といたしまして東京で司法書士になるのと横浜で司法書士になるのとがその合格基準が違うということではやはり問題があるわけでございまして、現行法のもとにおきましてもそういった需給関係をにらんで認可するのをしぼるということはやっておりません。これは特認の問題も同じでございまして、やはり多くの場合は生まれ故郷と申しますか、郷里で開業するというのが大半でございますが、これも本人の希望どおりのところで開業できるような特認認可をいたしておりますので、結果的にはしぼるようなことはやっていないわけでございます。 これは一つの大きな問題でございまして、国家試験に移行いたしますとますますそのことが困難になってくる問題があるわけでございまして、これをいかようにするか、またそれに伴う過当競争の弊害をどういうふうに防止するかということが今後の問題なのでございますけれども、過当競争の防止はただいまのところ各司法書士会の会則でそういったことのないような規定を設けまして、それに違反しますと会則違反ということで懲戒処分というふうな線につなげてチェックしていこう、こういうふうなことも一応考えておるわけでございます。
○加地委員 現在、日本全体として見まして、司法書士さんの業務数とそれから司法書士さんの数との比率でいきますと、過当競争になっていますか適正ですか、それとも少な過ぎるでしょうか。
○香川政府委員 これは地域的に相当差がございまして、特に大都市では若干過当競争と申しますか飽和状態というか、そういう傾向が見られると思います。
○加地委員 弁護士の場合でも医者の場合でも、大都会の方が人口比率として非常にふえてくるわけなんでございますけれども、司法書士さんの方もそのように大都会集中という傾向が出てくることは心配されないのでしょうか。特に郡部の方にも地方法務局があるという場合に、現在の認可制度でございますと、どの地方法務局にも一人は、一軒は司法書士の方がおられますけれども、全く移動が自由ということになりますと、ちょうど裁判所で支部所在地、簡易裁判所所在地で弁護士ゼロの区域が出てきて、これはその辺の住民にいろいろな面で非常に不便を与え、悪影響を与えておりますけれども、それと同じような弊害が予想されはしないでしょうか。また予想されるとすれば何か防止策というようなものはお考えなのでございましょうか。
○香川政府委員 現在でも極端な場合、過疎地等におきまして司法書士が一人もいないために地域住民が不便だということがあるわけでございまして、この場合の処理といたしまして、その地域の司法書士の業務を十分やれるような適格者がおります場合に、その方の申請によりまして認可をいたしまして、いわば特認的な認可でございますが、それをいたしまして司法書士が皆無という状況を解消するように努力しておるわけでございます。 国家試験になりました場合に試験合格者の方についてそういった地域を限定してそこで営業しろというわけにまいりませんが、特認の制度も併存してございますので、それを活用して司法書士皆無地の解消に努めたいというふうに考えております。
○加地委員 試験合格者のほかに、特認という制度が続くようでございます。これは経験年数が今回は五年から十年に変更になっておるわけでございますが、現在のところ試験合格者といわゆる特認の司法書士の方との人数の比率、これはどのくらいになっているのでしょうか。
○香川政府委員 地域によって異なりますが、全国的に見ますと、大体一対三くらいの割合かと思います。特認が一、試験合格者が三の割合でございます。
○加地委員 これも税理士さんの場合に、特別試験合格者という人がどんどんとふえてまいりまして、現在でも税理士の資格は持っておるけれどもお客さんが余りないという、生活に困る税理士さんが大分出てきておるようでございます。この特認の司法書士の方、これはいわゆる法務省とか裁判所に長いこと勤めていた人々のための一種の天下り、退職先がわりに使われることにもなるだろうと思うのです。税理士の特別試験が私は現在弊害が大分出てきておると思うのですけれども、特認の司法書士の数は今後毎年ふやしていかれるのか、現在より減らしていかれるのか、数についてはどういう考え方でおられるのでしょうか。
○香川政府委員 これは長い目でずっと見ました場合に、現在よりも特にふやすつもりもございませんし、恐らくふえないだろうと思うのであります。しかし、現在の法務局等の職員の年齢構成が非常にアンバランスになっておりまして、ある年度に退職する者が非常に多いというふうな時期がございまして、そういうときには若干ふえるかと思いますけれども、平均的には現在とさして変わりないというふうに見込んでおります。
○加地委員 いまのふやされるのかどうかという答えがちょっとはっきりしないのですが、その点についてもう一度はっきりお答え願いたいということと、まあ一般的に言われておるのでございますけれども、役人をやめて司法書士をやられた方が余りお客さんがつかない、はやらないというのが定評になっておるのでございますが、これはどういうことが原因なんでしょうか。
○香川政府委員 前段の問題、特にふやすつもりはございません。特認を今後数多くしようというつもりはございません。 それから、定年で退職した人がお客が余りつかぬというふうなこと、これは率直に申し上げますと、定年退職は大体六十歳前後でございますから、そういうふうな方で郷里に引っ込んで司法書士を傍らやるというふうな形態が多うございますので、いわば余り商売熱心でないという傾向は確かにございますけれども、特認なるがゆえにお客がつかぬということは絶対ないというふうに考えております。
○加地委員 特認の方のお客がつかない原因の幾つかを挙げられたと思うのですけれども、私はそのほかに、司法書士の方、なかなかよく勉強されまして、ほかに土地家屋調査士の資格を持っているとかあるいは社会保険労務士の資格を持っているとか、いわゆる関連業務の資格をたくさんお取りになっているために、お客さんが来ても、守備範囲が広いために、そのお客さんの需要にこたえる力を持っていると思うのですね。特認の方に司法書士の資格だけを与えても、たとえば表示登記についてはこれは土地家屋調査士の方の守備範囲だということで紹介したり何やかやすると、手間もかかれば粗漏も起きるということで、そういうところも大きな原因じゃなかろうかと思うのですよ。ですから特認で司法書士の資格を与えられるときに、司法書士の資格を中心にしてほかのいわゆる関連資格を取っておられるような方、そういう方を優先的といいますか、そういうような資格を取っておるということは、業務をやっても熱心なんだろうし、それなりのウォーミングアップというか準備ができているのだろうということになると思うのですけれども、そういうようなことを配慮して特認の資格を与えるかどうかというようなことの基準にされるお考えはありませんか。
○香川政府委員 他の関連の業の資格を取るということはまさに商売熱心ということなんでございますけれども、しかし、定年退職いたしまして余り商売熱心にもならずに悠々とやるというのもこれも一つの退職後の生き方だろうと思うのであります。したがって、そういう商売熱心な人をむしろ優先的に特認にするというふうなことはいかがなものかというふうに思いますし、そういうふうにやるつもりは現在のところございません。
○加地委員 それは商売熱心だから特認の資格を与えるというのじゃなしに、ただ司法書士という資格だけではいわゆるお客さんの、国民の需要にこたえ得る力があるとは私は言えぬと思うのです。ですから、ほかの関連資格プラス司法書士という資格があった方が本当に特認の資格を与えた意味があるのでなかろうかと思うのです。そういう人を特認にするということになれば、ひいては勤めておられる方でもそっちの方の勉学に励むという向学心を向上させることにもなっていいと思うのですけれども、どうでございましょう。
○香川政府委員 登記所の関係での仕事で申しますと、おっしゃるとおり司法書士と調査士の資格両方持っている方が何かと仕事がやりやすいといいますか、逆に依頼者の方から言えば便利であるという利点は確かにあると思います。そういうことで、調査士の資格につきましても特認の制度を現在考えておるわけでございますけれども、ほかの行政書士とかあるいは税理士というふうな関係、これは特に登記申請手続の代理ということ一本で仕事をされる場合には、さような資格がなくても、たとえば相続登記を申請する場合に戸籍謄本等が要るわけでございますが、これはやはり司法書士の付随業務ということで市町村に対して戸籍謄本の請求をやることができるという解釈になっておりますから、さしてほかの業法との関係では資格を持ってなくても不便ではなかろう。ただ登記所の関係では、司法書士だけの資格で調査士の資格がないときには、申請依頼者の方に若干不便があるという問題はあろうかと思います。
○加地委員 司法書士の方は、平常の業務の中でたとえば相続登記とか法人設立などでは添付書類、付属書類の作成とかあるいは収集を行っておられると聞きますが、これらは業務範囲とみなしていいでしょうか。また、いわゆる付属書類の作成にはかなり高度の法律的判断を要する場合があると思うのですけれども、これは業務範囲に入っておるでしょうか。あるいは今度の法改正によってその範囲というものが変わってきたでしょうか。
○香川政府委員 御指摘の関係での業務につきましては法改正によって変わっておりませんが、申請手続、申請書の添付書類の作成というふうな関係では当然業務の中に入っておるというものもございますし、先ほど申しましたような相続登記の場合の戸籍謄本の市町村に対する請求というのは、むしろ付随業務ということで、いわば業務としてやっていいというふうな解釈になっております。
○加地委員 このたびの改正で、第一条に目的、一条の二に職責が加えられておりますけれども、司法書士の業務が単なる代書人でなくて法律実務家としての評価がなされた上での改正なのでしょうか、どうでしょうか。
○香川政府委員 私どもの考えは、現行の司法書士法におきましても司法書士は法律実務家というふうな評価をして何ら差し支えないと思うのでありますが、そのことをより法律上明確にすると申しますか、さような意味で今回の改正案におきましては職責規定とか目的規定を設けたわけでございます。
○加地委員 そうしますと、弁護士の職域と司法書士の法律実務家としての職域とはどこで区別されるようになるのでしょうか。たとえば昭和四十六年に最高裁の、いわゆる即決和解作成について司法書士の方が関与しておられたので、あの即決和解はたしか無効であって、ただ私法上の和解としての効果があるとかというような最高裁の判決も出ておるのでございます。ちょっと判決の内容は不正確かもしれませんけれども、まあそういう点を絡み合わせて、司法書士さんと弁護士との境界はどこにあるでしょうか。
○香川政府委員 私どもの解釈といたしまして、司法書士の本来の業務、たとえば登記申請手続あるいは裁判所に提出する訴状の作成というふうな面につきまして申し上げますと、やはり申請人の依頼の趣旨を十分くみ取って、その依頼の趣旨に沿うように法律的な整序をいたしまして申請手続をするとかあるいは訴状を作成するという限りにおきましては、弁護士法違反にはならない。確かにさような法律的整序の面というのは弁護士の仕事でもございますけれども、司法書士が法律で認められた業務を行うに当たつてのその限度における法律的判断と申しますか、申請人の趣旨に従ってその目的を達するように適法な申請手続をするとか、あるいは正確な訴状を作成するという関係におきましての法律判断は、司法書士としても当然できるというふうに考えておるわけでございます。 ただ、具体的な問題になってまいりますと確かに限界と申しますか、あるいは弁護士法との抵触の範囲、限界というのはいろいろ問題があろうかと思いますけれども、抽象的に申し上げますればただいま申し上げたような解釈になろうかと思います。
○加地委員 司法書士と弁護士との職域の競合という問題については、現在日本じゅうで行われておる業務の状態で、司法書士会に弁護士会から別に抗議とか問題提起とかそういうことはやってないのでしょうか。
○香川政府委員 非常に極端な行き過ぎの事例が生じました場合に弁護士会からの告発というふうなこともあり得るようでございますけれども、一般的に申しまして、昔は大分その間のトラブルがあったようでございますが、現在特に弁護士会が司法書士会に対していろいろトラブルを起こすというふうな関係は余り聞いておりません。むしろ司法書士会の方でもその面の、自粛と言っては言葉があれでございますが、いろいろ協調的にやっておるようでございまして、特に問題はないように承知いたしております。
○加地委員 この司法書士法の改正に伴う司法書士法施行規則の改正についてお尋ねしたいのでございます。 今般司法書士制度の充実強化を図るため司法書士法の改正がなされようとしておりますが、従来は司法書士法は目的、職責規定を持たず、端的に申し上げまして法務局、裁判所等の職員の手不足を補充するための下請ないしは補助的機関とみなされていたことは否定できないであろうと思います。しかし今般の法改正は、目的、職責規定を新たに設けて、司法書士制度を、登記、供託及び訴訟等に関する手続の円滑な実施に資し、もって国民の権利の保全に寄与するための制度として位置づけようとされております。 ところで、司法書士法にはその付属法令として法務省令であるところの司法書士法施行規則があります。現行施行規則を見ますと、公務員の服務規定に類するような司法書士業務の執行に関する細かな規則が置かれておりまして、事実上特別権力関係的支配関係が保たれてきたと言われているのでございますが、今回の法改正を境にしてこの施行規則の根本的な見直しというか改正、こういうことを考えておられますか、どうですか。
○香川政府委員 現在の司法書士法施行規則には、役人で申しますれば服務規律に当たるような規定がございますけれども、これはやはり司法書士の業務の重要性から申しまして品位の保持等の観点から当然の規定だろうと思うのであります。したがいまして、今回の法改正によりまして司法書士法施行規則を全面的に見直すというふうなことはただいまのところ考えておりませんが、これはいろいろ過当競争防止の関係もございますし、副次的に将来起こる問題も予想いたしまして、司法書士会連合会とも協議して、施行規則の改正については検討してまいりたいというふうに考えております。
○加地委員 いわゆる登記事務などのコンピューター化ということを法務省の方も日本司法書士会連合会で発言されたり、あるいは昭和五十三、五十四年あたりにモデル法務局というものをつくってコンピューターの導入を考えておられると聞くのでございますが、これは具体的にどういう手順でいつごろモデル地区をどの辺につくるのか、将来は登記事務について、はっきり言って司法書士が要らなくなるのかどうか、どの程度までコンピューター化されるものか、それについてお伺いしたいと思うのです。
○香川政府委員 現在、登記制度にコンピューターを導入することを実験的にと申しますか試験的に検討しておることはそのとおりでございますが、いろいろ問題がございまして、実はまだ実験段階でございまして、金のかかることでもございますし、いまおっしゃるような意味の司法書士業務にどういう影響が出てくるかということもあわせ検討しなければなりません。あるいはまた不動産登記法自身を改正しなければならぬ問題もあろうかと思うのでありまして、ここ四、五年で実地に移した実験的な施行ができるというふうな段階ではまだまだないように思うのであります。理論的にはできることは間違いないのでございますけれども、実際問題として、いつから実施に移すかということは現在のところ全く未確定でございます。
○加地委員 実施できることは間違いないとおっしゃいましたのですが、私は実施に反対しているのでも賛成でもないのですよ。いわゆる現在の不動産登記手続なら登記手続のどの部分がコンピューター化できて、どの部分はできない部分というぐあいに区別ができてくるのでしょうか。
○香川政府委員 現在の実験と申しますか検討段階におきまして、できない部分というのはないように私は聞いております。たとえば登記の申請書、これもコンピューター化に適するような申請書の作成がされることになるわけでございますが、受付事務などというのは当然職員がやることになりますので、これはコンピューター化できないということとは違って、性質上当然受付事務は職員がやるということになりますが、その後の審査の一部、それから記入関係、そういったものは全部コンピューター化できるわけであります。それからまた、謄本、抄本の作成関係も全部コンピューター化できる。これは理論的にできるという意味でございまして、先ほどできることは間違いないと申しましたのは、理論的に可能だということで、現実に実施できるかどうかということはこれからの検討問題である、さような意味でございます。 〔委員長退席、羽田野委員長代理着席〕
○加地委員 それでは、実施できる方向で何かプロジェクトチームを法務省の中でつくるとか、あるいは司法書士の方とか、コンピューターという機械に詳しい方でチームでもつくって、実施する方法を段階的に研究はしておられるのですか。
○香川政府委員 そのとおりでございます。
○加地委員 大ざっぱなところで結構なのですけれども、そういうぐあいに全国コンピューター化するとなれば、総予算というのはどのくらいかかるという話なのですか。
○香川政府委員 それが一つの大きな問題でございまして、実は正直に申し上げましてどれくらい金がかかるかといううこともまだ正確にはつかめない。つまり現在のコンピューターの進歩、発展と申しますか、日進月歩のようなところがございまして、たとえば現在のコンピューターを導入するといたしますと、いろいろ室内の温度とかあるいはじんあいの関係とかいうようなことも考えて、施設そのものを相当よくしなければならぬという問題もあるわけでございます。将来もそういうことになるのかどうか私よく存じませんけれども、施設の改善から始めるということになりますと、これは膨大な金がかかるわけです。現在のところコンピューターは御承知のとおりレンタル方式でございまして、このレンタル料がばかにならぬ額になるわけでございます。それから、現在登記所のございますところに登記所をそのまま置いて全部コンピューター化するとなりますと、これまた余分な費用と言っては語弊がございますけれども、相当費用がかかる。だからある程度の登記所の統合を前提にしなければ、金の面でコンピューター化の実施はなかなかむずかしいのじゃないかというふうな問題等々ございまして、一体金が幾らぐらいかかるだろうかということも現在研究しなければならない一つの大きな問題になっているという程度の段階でございます。
○加地委員 コンピューター化に向けて何かプロジェクトチームのようなものをつくっておられると聞いたのでございますが、どういう方が責任者になって、どういうような方々が集まって、どういう手順でプロジェクトチームは活動しておられるのか、その組織的な内容をちょっと教えてもらえませんか。
○香川政府委員 正式の省令等で認知された組織はございませんが、事実上民事局内にそういった研究班、五、六名の職員を置きまして、ずっと研究を継続さしているわけであります。そのほかに専門家と申しますか技術者、現在のところは日本電信電話公社関係の職員の協力を得まして、一緒にいろいろの検討をしておる、こういう姿でございます。
○加地委員 行政にコンピューターが導入をされますと非常に便利な面もあると思いますけれども、また国民総背番号制について反対があったように、国民の生活のすみずみまで監視されはしないかという危惧もあろうと思うのです。現在考えておられるところのコンピューター化というのは、国民総背番号制につながっていくようなお考えのものでしょうか、それとも、人単位のデータを集めるのじゃなしに、土地とか建物とか物単位のものなのか。いわゆる国民総背番制に対してあったような批判が起きないような形でのコンピューター化を考えておられるのかということを聞きたいのです。
○香川政府委員 人単位の登記制度に切りかえる考えは毛頭ないわけでありまして、いわゆる物的編成主義の現行不動産登記法そのままを維持していくつもりでございまして、したがって総背番号的な問題というのは起こる余地がないというふうに考えております。
○加地委員 それでは、次に民事執行法案についての質問をさせていただきます。非常に膨大な条文でございますので、飛び飛びの質問になるかもしれませんが、御容赦願いたいと思います。 現在でも、債権の差し押さえの中でいわゆる給与債権の差し押さえについては、四分の一までは差し押さえができて、それを超える部分は差し押さえすることができないということになっておりますが、今回の法律ではそこへもう一つ金額的な制限を設けておられるのでございますけれども、具体的にはどのくらいの数字のことをお考えになっておられるのかということをまずお尋ねしたいのです。
○香川政府委員 法律では金額まではっきり規定いたしていないわけでございまして、「標準的な世帯の必要生計費を勘案して政令で定める」というふうになっているわけでございます。現在のところまだ政令案を確定いたしておりませんが、大体四人世帯で二十万円ぐらいというふうなめどで検当しているところでございます。
○加地委員 そうすると、例を挙げて言いますと、四人世帯で三十万円の月給をもらっている人、この人については二十万円まではそのサラリーマンに差し押さえがあってももらえて、二十万円を超える部分だけが差し押さえられるという意味ですか。
○香川政府委員 そのとおりでございます。
○加地委員 それから、前から私はちょっと合点がいかなかったのでございますけれども、国会議員の歳費あるいは地方議員の歳費というのが、これは給料ではないのだということで四分の一の制限がなく、全額差し押さえられておると思うのです。ところが、地方議員の場合でもはっきりと所得税を引かれたりしておりますので、いわゆる普通の給料的な性格がきわめて強いと思うのです。そしてまた、現実に地方議員あるいは国会議員の税務の申告を見ましても、いわゆる歳費以外の収入というのが余りないのじゃないかと思うのです。ある方もいらしゃいますけれども、余りないと思うのです。また、昔と違いまして、議員が地方議会なり国会へ出てこなければいけない時間も相当ふえておりまして、議員というのが片手間でやる仕事ではなしに専業的になってきておると思うのです。そういう点からいきますと、私は、議員歳費だけが全額差し押さえられるというのは明治時代か大正時代の制度をそのまま引き継いでおるものじゃなかろうかと思うのでございますけれども、今回の法律制定等においてその点について何か議論がなかったかということと、所得税等も相当天引きで引かれておるということから見て、あるいは運用の面でこれは給料扱いに今回の法律でなるのかどうか、その点をちょっとお尋ねしたいのです。
○香川政府委員 今回の改正案におきましても、現行法と同じように議員の歳費は差し押さえ禁止の規定がないわけでございます。これは法制審議会でいろいろ議論があったわけでございますが、主たるその根拠と申しますか理由は、議員については兼業禁止と申しますか他の営業をやってはならないというふうな、一般公務員のようなそういう規定がないわけでございまして、一般公務員の場合には、さような営業を一方でやるということは原則的に禁止されておりまして、いわば俸給、給料が唯一の生活資金ということになる、そういうふうなことから、そこに差異があるのではなかろうかというふうなことが主たる理由で、歳費については差し押さえ禁止財産から外された経緯でございます。これはいろいろ考え方があると思いますけれども、差し押さえすると申しますのは、他の一般の被債権者個人が債権者としてやるわけでございまして、その場合の被債権者の保護と、歳費が差し押さえられることによる議員のいわば不利益と申しますか、そういうものとを比較いたしました場合に、やはり立法政策としては歳費を特に取り出して差し押さえ禁止財産の中に入れるということは適当ではないのではないか、こういうふうな考えでおるわけでございます。
○加地委員 いろいろな本を見ましても、歳費というのを出費を弁償するものだと考えればこれは全額差し押さえしでもいい、ところが、これを俸給請求権と考えれば給料と一緒だ、こういうような説明がなされておるのでございますけれども、この説明も私はおかしいと思うのです。出費を弁償すると言えば一種の実費弁償的なものでございますから、ふところに入らない、口の中にも入らないという金であればなおさら差し押さえ対象から外れてもいいのじゃないか。いわんや俸給請求権、こうなってくれば普通の四分の一程度ということにして、その人が次に落選するかどうかはそのときの問題だと思うのです。いまの時代で、たとえば日本では借金返せないからといって、それだけの理由で刑務所にほうり込まれるわけでもなし、資本主義の複雑な世の中では、身元保証していて債務をひっかぶるとか、あるいはそういうような社会的にそう非難されない形での借金を背負うという場合があり得ると思うのです。そうしますと、議員として心配なく活動できるためには、せめて歳費くらいはいろいろな形で使えるようにしていくということは、公益性の面から言っても、いま局長がおっしゃった差し押さえられることによる弊害と、それから債権者の利益擁護ということの比較からいって、議員の歳費は差し押さえても世の中に弊害がないのだというお考え方はちょっといかがかと思うのですけれども、どうですか。
○香川政府委員 これはいろいろの考え方があると思うのであります。歳費そのものを全く一般の被用者の給料といったものと同視するということが、法律的な性質から申しますと歳費はやはり性質が違うわけでございますけれども、立法政策として給料と同じように差し押さえ禁止の中に入れるということが、議員というものの性格から果たして問題がないのかどうか、つまりそういう差し押さえ禁止を認めることによりまして不利益を受けるのは被債権者でありますから、被債権者のその不利益との均衡、バランスを考えた場合に、どちらかというと、これは理屈ではないと思いますけれども、歳費は給料と同じに扱わない方が落ちつきがいいと申しますか、立法政策としては上策ではないかというふうに考えるわけでございます。これはいろいろな考え方がおありになると思いますけれども、大体そういうふうな考え方で、法制審議会におきましても歳費は現行法どおり差し押さえ禁止から外しておこうというふうな結論になったようであります。
○加地委員 次に、第七条に関連してお尋ねいたします。 七条関係で「立会人」という規定がございますが、立会人とは違って、執行官に家屋明け渡し等の強制執行を頼もうといたしましても、弁護士にしてもあるいは素人の本人さんにしても、執行官をどういうぐあいにしてつかまえていいのか、頼んでいいのか、費用がどういうぐあいにかかるのかということがわからないために、いわゆる執行立会人と呼ばれている職業グループがあると思うのです。たとえば、家屋明け渡しのためには人夫が二十人くらい必要だ、その人夫を集めたり、それからまた、執行官が非常に忙しいために、チャンスを失わずに早く仮処分執行とか仮差し押さえ執行とかあるいは明け渡し執行なんかをやるために、常に気心の合っておる執行立会人に頼めば相当無理をして時間を割いてくれるけれども、そうでない限りは、何か非常に急ぐ仕事なのに後回しにされるとかいう場合があるのです。世間で言われておるこの執行立会人、これは裁判所なりあるいは執行官の何らかの監督下にあるのでしょうか、それとも裁判所とか執行官は全く関係のない種類の職業グループなんでしょうか。
○井口最高裁判所長官代理者 先生が御指摘のような、執行の場面に補助者を使うという必要があることは御指摘のとおりでございます。その場合に、法制上は、執行官に必要な費用を予納いたしまして執行官が補助者を雇い上げる、こういうたてまえになるはずでございます。しかしながら、実際問題といたしまして、たとえば正規の運送業者などから賃金を払って雇い上げるということがきわめて困難なのが現在の実情でございます。これは、やはり強制執行に絡んでそういう補助をするということ自身、そういう業者が好まないということもあろうと思います。それから、やはりなれれば能率もよくなるというようなものでございまして、先生御指摘のように、明け渡し執行であるとか仮処分の執行の補助者になることをある程度業とする人たちがいることは事実でございます。これは当然のことながら、執行官自身が執行官の職責としてやる執行の種類の場面に登場するわけでございますので、執行官がその執行現場で監督と申しますか、統制をしておるわけでございます。そういう意味では、いわば裁判所が監督するということではございませんで、執行官がこれを統制しておるということでございますが、実情を調べてみますと、こういった商売人の中にも好ましくない人物は当然おるわけでございまして、たとえば東京の執行官室あたりでは、好ましくない者と好ましい者とのいわばリストアップをいたしまして、できる限り好ましくない者は利用しない、こういう方法でやっておるようでございます。
○加地委員 この執行補助者がかなり乱暴を働くといいますか、執行官がようしないようなことを、たとえば物をちょっとつぶすとか、あるいは債務者に対してきつい言葉を言うとかという場合もあるのです。そして、きつい人ほど役に立つというので、そういう人たちがはやっておる。債権者側にとっては便利だということではやっておる場合もあるわけなんですけれども、どうしても私は、たとえば一つの地方裁判所なり地域なりを限定してみますと、家屋明け渡し執行は大体どのくらい必要だ、あるいはそういう補助者なんかはどのくらい必要だとかというのが恐らく出てくると思うのです。ですから、そういう補助者を準公務員的な扱いにでもするとか、給料はどうするかはまた別問題でございますけれども、そういうぐあいに、もう少し裁判所なんかが責任を持って監督し得るようにしなければならぬのじゃないかと思うのですが。いかがでございましょう。
○井口最高裁判所長官代理者 お言葉を返すようでございますけれども、この補助者は、現在の運用としては、債権者つまり執行の申し立て人自身が雇い上げて執行官に提供するという形になっております。ただいまも申しましたように、正規の業者から雇い上げるということがなかなかむずかしいところでございますけれども、しかしそうは言っておれませんので、私どもとしては、今回の法律が改まりますのを機会に、これは公務員化するとか、あるいは給料を払うという形にはとてもできないだろうと思いますけれども、もう少し素性の知れた業者から一定のものを委託するというような形にでもできないものであろうかということを、目下よりより検討しておるところでございます。
○加地委員 たとえばこういうこともあるのですね。きょうばいよいよ人夫を何十名か集めて強制執行をやる、ところが現場へ行ってみると執行停止の決定が出ていたということで、債権者はみすみす何十万円という金を損してしまうことがあるのですけれども、これなんかは、執行官がそういう執行補助者を使い、またできるだけ債権者に迷惑のかからないような費用計算でやるものだということになっておれば、あるいは裁判所の方とも連絡をして、この件について執行停止が出ているか、出そうかというようなことを判断してそういう執行補助者を雇い入れるというようなことなんかも勘案できると思うのですけれども、現在の制度のままだと、いま私が例に挙げたような、現場へ行ってみたら停止決定を持っていて、そして債権者が何十万円と損をしたというのは、これはやむを得ないということになりますか。
○井口最高裁判所長官代理者 執行現場に行きまして実際に執行が行われない場合としては、ただいま先生が御指摘のような執行停止が出た場合と、それから債務者との関係で、もう一週間待ってくれというようなことで事実上執行を延期するという場合と、二通りあろうかと思います。後者の場合は、これは償権者と債務者の力関係といいますか、執行官の判断の問題になりますからある程度のところはできようかと思いますけれども、執行停止がいま出たというような場合になりますと、人夫等を集めるのはある程度の準備が必要でございますので、そこが全くむだにならない、絶対にむだにならないような手当てができるかとおっしゃられますと、最小限度ある程度の事例は出てくるのではないかという感じがいたします。しかし、そうかといいましても、それを給料を払って国が雇い上げておくということは、私的な執行でございますので目下のところむずかしいかと思いますが、先ほど申しましたように、もう少し素性の知れた、不当な執行補助をしないという人間を集めるという方向ではぜひとも検討してまいりたい、かように考えております。
○加地委員 今回の制度で、執行官の方が現況調査等をやることによって、素人の人でも不安なく競売不動産なんかを買えるようにするということになっております。ところが、一番最後の罰則を見ますと、執行官等の質問なんかに対してうそのことを言った人が、わずかに過料の制裁があるだけでございまして、これではちょっと罰則も軽過ぎて、いままででも執行官が賃貸借の取り調べ等である程度の現況調査というのをやっていたと思うのですけれども、今回の法律改正によって現況調査が現在よりもさらに正確さが担保されたものができるというぐあいにお考えでございましょうか。私は、うそを言うというのは、暴力は使わないけれども、口での一種の公務執行妨害だと思うのです。ですから、これはやはりもう少し罰則を重くした方がいいのじゃないか、何も軽くする合理的な理由はないと思うのです。罰せられるのがいやだったらうそをつかなかったらいいのですから。と思うのですが、いかがでしょうか。
○香川政府委員 おっしゃるとおり、今回の改正案におきましても過料の制裁、確かに十万円以下でございますから額としては少し低過ぎるという感じが私どももいたしております。私どもの考えでは、先生のおっしゃるような罰則といいますか、過料の制裁を盾にして、執行官の現況調査がより容易になるようにということも考えておったのでございますけれども、これは現在いろいろの過料の規定があるわけでございまして、それらとの比較におきまして、この場合だけ特に過料を強くするということが、どうも横並びの議論といたしまして少し適当でないのではないかというふうな意見もございまして、十万円以下というふうなことになっておるわけでございます。これは、他の法律における現行の過料規定を全部一度整理いたしまして、引き上げるものは大幅に引き上げる、そういう整理がやはり早急に必要だと思うのでありまして、その際にこの問題もあわせて解決したい、かように考えております。
○加地委員 横並びということをおっしゃればそれまでのことなんですけれども、局長自身、個人的にはどう思われますか。局長が総理大臣だと想定して、何もかも改正する権限を持っておるものと仮定しての話でございます。
○香川政府委員 総理大臣でなくても、私個人といたしましても、おっしゃるように若干低いのではないかという感触でございます。ただ、これは内閣全体のやり方といたしまして、特に制裁を科する場合、罰則はもちろんでございますが、過料におきましても、やはり横並びということが現在非常に重く見られておるわけでございます。したがいまして、根本的には、先ほど申しましたように早急に過料の規定の全般的な見直しをしてこれを引き上げる、そういった法案をできるだけ早く提出すべきものというふうに考えております。
○加地委員 いただいております関係資料の中で、いろいろと表があるわけでございますが、「民事執行法案参考資料 執行事件統計表」の第八ページを見ますと「不動産の明渡し等執行の既済事件数(全地方裁判所)」となっております。この中で、昭和五十一年度が既済総数が八千三百七十九件になっておりまして、前年度の昭和五十年度の四千九百七十三件、あるいはそのずっと前の年などを比べますと、昭和五十一年度だけ極端に多くなっておるのでございますが、これはどういう理由ででしょうか。裁判所の方で何か特に工夫でもなさって、この不動産明け渡し等の執行がやりやすくなったのでしょうか、どうでございましょうか。
○井口最高裁判所長官代理者 先ほどもちょっと触れましたけれども、不動産の明け渡し執行といいますのは、いわば債務者の生活の本拠を奪う執行でございますので、特段にやりにくいと申しますか、強行しにくい場面が多うございます。勢い、執行官としては過酷な執行をしたくないという心情が働きまして、なろうことなら任意に明け渡すまで待とうという心理が働くわけでございます。したがいまして、いろいろな執行がございますけれども、この不動産明け渡し執行につきましては、特段に執行がおくれがちでございます。しかし、これは程度問題でございまして、われわれとしてはなるべく過酷にわたらない限度で迅速に執行するような指導をいたしておるわけでございます。 そこで、ただいまのお尋ねでございますが、私どもが調べましたところ、この五十年と五十一年の関係では、実は東京地方裁判所管内の事件が約千件から三千八百件にふえております。これは二千八百件ぐらいの増加でございまして、それ以外の庁はほぼ並みの増加あるいは減少の傾向でございます。東京の実情を聞きましたところ、そういう意味では滞貨がかなりたまっておりましたものを、この際、別に過酷な執行をしたというわけではございませんけれども、取り下げるべきものは取り下げ、執行すべきものは執行するという形で処理したわけでございまして、お尋ねがございませんけれども、したがいましてこの年度で東京地裁だけで取り下げ件数も四百八十九件から千四百四十四件、いわばもう事件は済んだということで、千件ばかり取り下げ自身も増加しておる、かような実情になっておるわけでございます。 〔羽田野委員長代理退席、委員長着席〕
○加地委員 時間ですので、これで終わります。
○鴨田委員長 稲葉誠一君。
○稲葉(誠)委員 最初に司法書士法の一部を改正する法律案について質問をいたします。 現在、司法書士になるための試験が現実に行われておるわけですね。特認じゃない、試験ですね。これはどういうふうに行われておるのかということをまず最初にお聞きをしたいわけです。
○香川政府委員 現行法におきましては、各法務局、地方法務局の長の選考認可によって司法書士の資格が与えられるわけでございます。この選考をいたします場合に、各法務局、地方法務局の間におきましてはらはらになったのでは適当でございませんので、少なくとも筆記試験とその採点だけは統一的にやる必要があるということで、具体的に申しますと、全国一斉に同じ問題で筆記試験を行いまして、そしてその筆記試験の合格者について法務局、地方法務局において口頭試問等の選考をやって認可するかどうかを決める、こういうふうな仕組みにいたしておるわけでございます。
○稲葉(誠)委員 それは認可という形はとっておりますが、実際に筆記試験をやって全部東京へ持ってきて、コンピューターか何かで採点してしまって、そこで結論を出して全国統一にやっているわけでしょう。そうすると、それについて地方法務局長の多少の幅がある、こういうわけですか。私の聞きたいのは、今度は国家試験になるのですが、なった場合と現在の場合と具体的にどこが違うのかということなんです。結局、試験のやり方その他についてはちっとも違わないのじゃないかということなんです。ただ、試験をいままで、地方法務局長がやっていたのを、地方法務局長は今度やれなくなって、法務省なら法務省がやるという程度の違いじゃないのですか。
○香川政府委員 実質的に考えますと、外形的にはといいますか、実際の選考認可のやり方と今回の国家試験のやり方、これは余り差異がないということはお説のとおりだと思います。
○稲葉(誠)委員 余り差異がないと言うと、差異があるように聞こえるのですけれども、実際には差異はないのじゃないですか。形は国家試験になるけれども、現在のものと違わないのじゃないですか。どうなんですか。言いづらいのかもわからないけれども、ここははっきりしなさいよ。
○香川政府委員 余り差異はないと申し上げましたのは、現在はつまり法務局、地方法務局長の認可でございますから、いわば官側だけが選考試験といいますか、選考をやるというたてまえになっております。今度の国家試験ということになりますと、これは運用の問題でございますけれども、役所の職員だけが試験委員になる、たとえば筆記試験の問題を出題するということは適当でございませんので、やはり学者を入れ、あるいは司法書士会連合会の推薦による司法書士の試験委員にも入ってもらう、そういう運用の面においておのずと差異が出てくるであろうと考えておるわけでございます。
○稲葉(誠)委員 そうすると、現在は地方法務局長に、筆記試験の結果、コンピューターで全部集まってくるでしょう。そこで、落っこった者でも採用する権限というか、裁量の幅というものはあるのですか。
○香川政府委員 これは、受験者が非常に多数でございますので、そういったふるいにかける試験をやるわけでございまして、その試験に合格しなければもう選考の対象にはなりません。
○稲葉(誠)委員 じゃ、ちっとも違わないのじゃないですか。ただ試験委員の数が違うとかメンバーが違う程度の話であって、形は国家試験だけれども具体的内容はちっとも違わないのじゃないですか。ぼくはそういうふうに思います。 そこで、ざっくばらんな話、これは恐ろしくむずかしいですね。司法書士のせがれさんなんかもずいぶん受けるので、ほとんどでもないけれども、大分落っこっちゃうわけだ。非常にむずかしい試験ですね。いまはどのくらいですか。三、四十人に一人ぐらいの割合ですか。どういうふうになっていますか。この前高松の法務局に行ったときに、ちょうどいま札幌の法務局長をやっている森君がいて、聞いてみたら、高松管内で四、五人しか受からなかったと言っていたけれども、どの程度ですか。
○香川政府委員 最近は、大体平均いたしまして一万五千名から一万六千名ぐらいの受験者があるわけでございますが、合格者が四百名から五百名ぐらいでございますので、相当のむずかしい試験ということに数字的にはなろうかと思います。
○稲葉(誠)委員 いや、数字的になっていると言うけれども、実際にむずかしくないようなことを言うけれども、相当むずかしいんじゃないのですか。何の試験をやっているのです。民法といったって、民法全部じゃないのじゃないですか。登記法とか抵当法とか、あの程度のものにいまは限定しているのじゃないですか。どういうふうにやっていますか。
○香川政府委員 別に抵当権、担保物権法というものに限定しているわけではないのでありまして、親族、相続法などの試験をやることはございます。
○稲葉(誠)委員 いつごろやるのですか。大体七月ごろにやるんでしたっけ。七月ですね。――よく法務局の前に、掲示板に書いてあるから大体七月だと思っていたけれども……。 それはどんな試験をやっていますか、ちょっと試験問題を言ってくださいよ。むずかしいんだよ。あなた、答えられますか。
○香川政府委員 具体的にどういう問題を出しているかというのは、私いまちょっと昨年の問題も待ち合わせておりませんので申し上げかねますが、一次試験の方は民法、商法、刑法、そういった実体法の問題について試験をしまして、二次試験は実務と申しますか、そういう意味から不動産登記法、商業登記法、供託法それから民事訴訟法、司法書士法というふうな法律についての試験をいたしております。
○稲葉(誠)委員 そこで、いままでは五年以上勤めた人でないと特認といいますか司法書士にしなかったわけですね。今度の法律では十年になるわけですね。そこで、実際は、法務局の職員がやめて司法書士になりたいと言っても、法務局長はやめるのを認めないんじゃないですか。やめてもらっちゃ困るといってなかなか認めないで、結局なかなかなれない場合が多い。そのために、あちこち転勤しないとやめさせないということが現実に行われているんではないですか。
○香川政府委員 法務局といたしましては、職員構成の差異がいろいろございますし、法務局の仕事を十分やっていくためには優秀な職員をできるだけたくさん抱えていなければならぬわけでございますので、やめて司法書士になりたいという職員がおりました場合も、やめさせないというのではなくて、やめないでくれというふうにお願いしまして、役所のために働いていただくというふうな例は相当あると思います。ただしかし、司法書士になるといたしますと、ある程度年齢といいますか、そう年をとってからでは十分な活動もできないというふうなこともございますので、やはり二十年あるいは二十五年ぐらい役所に勤めておる職員ということになりますと、おっしゃいますように、やめないでくれというふうにとめるケースというのはそうたくさんないのじゃないかと見ております。
○稲葉(誠)委員 やめないでくれ、そのかわりこういうところへ行ってくれ、こういうところへ行って何年以上いたらやめさせてあげる、めんどうを見る、こういうふうな条件をつけて、余り人の行きたがらないところへ行かせてそこの出張所長か何かにさせるというのが実際に行われているんじゃないですか。私のところにそういうことをよく相談に来ますよ。だから、よく知っています。これ以上言わぬけれども。いろいろな立場があるのでしょう。 そこで、この司法書士法の一部改正を提案するについて、法務局の職員で組織している全法務という組合がありますね。そういう人たちとの話し合いというのは行われておるのですか。
○香川政府委員 全法務は当初、御承知と思いますけれども、国家試験導入につきましては、特認の制度が廃止になるということもあわせ考えられると思うのですけれども、反対という意思表明があったわけでございますが、内部的にはいろいろお話し合いいたしまして、いま御提案申し上げておる司法書士法の内容については全面的に賛成ということになっております。
○稲葉(誠)委員 私も全法務の委員長や書記長に会って、この法案を早く通してほしいというふうな話を聞いておりますので、その点はよくわかるわけです。 そこで、今度この法案が通ると、これは登録関係はやはり法務局または地方法務局にするということになっているわけですね。そうして、地方法務局長あるいは法務局長の身分上の監督というか仕事上の監督というか、そういうふうなものは現在と変わってくるのですか。
○香川政府委員 一般的な監督権というものは現行法においても変わりありませんし、もちろん改正法案にもその規定は盛ん込んでおりません。ただ、いわゆる懲戒処分権というのが法務局、地方法務局の長にあるわけでございまして、そういう関係も現行法と改正法案とでは変わりはございません。つまり現在ですと、懲戒処分でたとえば資格を剥奪するという場合には「認可の取消」という形になるわけでございますけれども、それが今度は「登録の取消し」という形になる。そういった違いはございますけれども、実質的には差異はございません。
○稲葉(誠)委員 そうすると、これは登録となると登録税というか登録料というふうなものを納めることになるのですか。
○香川政府委員 その点は、今度は名称が登録免許税ということになるわけでございますけれども、現在でも認可のときにはそれに相当するものを取っておるわけでございます。その点はちっとも変わりはございません。
○稲葉(誠)委員 認可をするのに金を取るのですか、おかしいな。許可ならば禁止の解除だから金を取る場合があるかもわからぬけれども、認可するのに金を取るのかな。これはどういうわけだ。
○香川政府委員 実質は司法書士の資格を付与する行為でございますので、認可する際に登録免許税を取るということに税法上なっているわけでございます。
○稲葉(誠)委員 いままで幾らぐらい取っていて、今度は幾らぐらいになるんですか。
○香川政府委員 現行法は三万円でございまして、これはもう変わりございません。
○稲葉(誠)委員 何か日本司法書士会に登録事務をやらせると、ずいぶん金がかかるという話が一部にこの前伝えられましたね。これは具体的にどういうことなんですか。金額も、何だか人によって大分違う金額が言われておったんですけれども。
○香川政府委員 登録を司法書士会連合会でやるとなりますと、いま申しましたような登録免許税の徴収事務も当然その中に入るわけでございますし、そのほか登録の手続、これが実際どれくらい金がかかるかというので、ちなみに現在連合会が登録をやっておる税理士につきましていろいろ調査いたしました結果、人件費も含めまして連合会自身がかけておる金が二千万から二千五百万ぐらいということになるわけでございます。ただ、そのほかに全国の司法書士になろうとする者が直接連合会に登録申請するというのは不便でございますし、煩瑣でございますので、恐らく各単位会、司法書士会を通じて登録申請をするということになろうかと思います。各司法書士会におきましても、その面の手数がかかるということになるわけでございますが、これがどの程度かかるか、まだ試算はしたわけじゃございません。いずれにしましても国の事務でございますので、それをやるといたしました場合に、現に税理士会では、ただいま申しました登録免許税のほかに、登録手数料というものを会則で決めて取っておるようであります。この点が訴訟になっているわけでございますが、そういった手数料を取らざるを得ないほど費用がかかるということのあらわれだろうと思うのであります。
○稲葉(誠)委員 この特認の場合に、これを見ると「裁判所事務官、法務事務官等一定の職歴を有する者等で、法務大臣が司法書士となるのに必要な知識及び能力を有すると認定した者に付与する」こういうふうにあるわけですね。この裁判所事務官というのは、書記官や何か含まれないわけですか。中のこっちの方には含まれているけれども、最初のところには含まれていない。それから、法務事務官というのは何ですか。
○香川政府委員 第三条におきまして、裁判所書記官も明示してございます。
○稲葉(誠)委員 だから、提案理由の説明のところにはそれをみんなはしょっちゃっているんだよ。等の中に入れちゃったのかもわからぬけれども、やけに省いちゃってある。 そこで、実際問題として、検察庁の会計課長とかそれから捜査課長か何かやっていた人が司法書士になっても、率直な話どうにもしようがないんじゃないの。だから、司法書士の資格を持っていて何しているかというと、別に事務所設けないで、自分の家に看板だけかけてあって、大体調停委員やっている人が多い。そういうような関係で、検察庁関係の人で、人の内容によるかもわかりませんけれども、勤めていた人が司法書士になっても、率直な話、本人自身も困るんじゃないですか。
○香川政府委員 十年以上検察事務官であった者、これは法務事務官も同様でございますが、当然に司法書士にするわけではないのでありまして、検察事務官で現に司法書士になっておられる方たちはよく勉強されまして、当然現在で申しますれば認可する際にいろいろ試験をやっておりますが、相当のいい成績で認可を受けて、業績を上げておる検察事務官もたくさんございます。
○稲葉(誠)委員 そういう人もいるし、なかなか大変だろう、こういうふうに思うのです。 そこで「司法書士は、他人の嘱託を受けて」という言葉を使っていますね。この嘱託という意味は、どういう意味なんですか。どうしてこういう言葉を特に使ったわけなんですか。法律的に言うと、これは何に当たるのですか。
○香川政府委員 まあ現代流に言いますれば依頼ということだと思うのであります。依頼と全く同義でありまして、ただ、昔からそういう言葉を使っておりますので、ことさら改める必要もなかろうということで、いわば慣熟した言葉というそういうことでそのまま踏襲しておるわけでございます。
○稲葉(誠)委員 ぼくも依頼と嘱託とどういうふうに違うのかというのを聞こうと思っていたところなんですけれども、普通、依頼という言葉を使うので、嘱託というのは、どうしてこういう言葉を使うのか、こういうふうに思っておったのです。委任ですか、民法上の。
○香川政府委員 委任でございます。
○稲葉(誠)委員 そうすると、いつでも解除できるんですね。委任は何どきにても解除できることになっているんじゃないの。
○香川政府委員 理屈はそのとおりでございます。
○稲葉(誠)委員 それじゃ司法書士の方はきわめて不安定じゃないの。そうじゃないのかい、これは。
○香川政府委員 それは一たんは登記申請を依頼したからといって絶対に撤回できないということになっても、これまた硬直化するわけでありまして、そこはやはり法律の理論としてはおっしゃるような問題はございますけれども、そのことによって問題が起こったことは全く聞いておりませんし、常識的に運用されておるということでございます。
○稲葉(誠)委員 この仕事の内容の中で、登記の仕事、供託の仕事、訴訟に関する手続という大きく三つに分けてございますね。全体の中で、仕事の割合としてはどういうふうになっておりますか。登記が八割ぐらい、九割ぐらい、どういうふうになっています。
○香川政府委員 地域あるいは個々の司法書士によって違いますけれども、全体の事務量から見ますと、もう登記が九割以上占めておると思います。ただ、司法書士の方では裁判所関係の仕事だけをしておられるという方もおるわけでございまして、しかし全体の業務量を見ますと、九割というか九割五分以上に登記がなっておるのじゃなかろうかというように思います。
○稲葉(誠)委員 登記のときに、売買のときの所有権移転のときに、価格を書きますね。その価格は非常に安い価格を書くわけですね。現実に普通、登記の場合。非常に安いと言うと語弊があるかわからぬけれども……。これはどういうわけなの。
○香川政府委員 どういうわけか私もよく存じませんが、恐らくは昔、つまり登録税を取るときには解釈として時価といいますか、時価を反映するのが売買価格というふうなことで、登記申請書に添付する登記原因証書つまり売買契約証書に高額の売買価格を書いておきますと、それによって登録税が徴収されるということも考えられないではないわけでございます。そういうことから、むしろ登記価格というふうな言葉がございますように、もっぱら税金を配慮して、登記原因証書の売買価格は低い価格ということになってきたのではなかろうかと思います。しかし、今日におきましては、登録免許税は、いわゆる市町村の固定資産税の課税標準価格、これを課税標準価格にいたしまして登録免許税を取ることになっておりますから、したがって、別に昔のような、そういう税金を配慮しての登記価格というふうなものを使う必要は毛頭ないだろうと思うのであります。慣例でそういうふうになっているケースも相当ある、そういうことではなかろうかと思います。 〔委員長退席、山崎(武)委員長代理着席〕
○稲葉(誠)委員 これは裁判所の方にお伺いしますけれども、たとえば仮処分の場合、田畑が仮処分の場合なんかは非常に標準価格が安いですね。それを基準にしたら、三分の一を仮に保証金とすれば、保証金なんというのは千円か二千円くらいのものになってしまうでしょう。それはどうやって実際の価格を算定しているのですか。実に適当に算定しているのですね。これはどうやって算定しているの。
○井口最高裁判所長官代理者 お尋ねの、保証金を定める基礎になる価格ということだろうと思いますが、これは文字どおり適当に評価をして、その三分の一なら三分の一ということに相なっていようかと思います。
○稲葉(誠)委員 適当なんだよね、本当に。これは裁判所もわからないわけだよ。田畑の価格が現在どのくらいで売買されている、山林がどのくらいで売買されているかというのはわからぬから、本当に文字どおり適当に決まってしまって、あそこは幾らぐらいだろうなんて言う、そうすると債権者の方で幾らくらいですと言うと、それを適当にまた判断して決めておるというので、きわめて根拠の薄いものなんですね。しかし、しょうがないでしょう、ほかにやり方がないわけだから。しょうがないと思いますけれども、ここに、ぼくはよくわからないのですが、表示の登記というのがございますね。これはいつごろからできたので、どういうものを表示の登記というふうに言うわけですか。
○香川政府委員 戦後、土地台帳、家屋台帳が登記所に移管になりまして、土地、建物の現況を把握するのが台帳、権利関係を明確にするのが登記簿というふうに二元的に構成されておりましたのが、昭和三十五年に不動産登記法の改正がございまして、いわゆる登記簿と台帳の一元化ということがなされまして、つまり登記簿の表題部、登記用紙の表題部――登記用紙というのは、御承知のとおり表題部と甲区と乙区と三枚からなっておるわけでございますが、その表題部に不動産の表示に関する事項、土地で申しますれば、地積が幾らあるかとか、地目が幾らかとか、地番、そういうものが記載されるわけでございます。つまり、現況把握の台帳の機能が登記用紙の表題部に移ったということになるわけでございます。この表題部になされる登記を総称して、登記法は「不動産ノ表示ニ関スル登記」というふうに言っているわけでございまして、その中の不動産の表示の登記というのは、全く登記簿に登載されていない土地、建物について初めて表題部に登記される、その登記を不動産の表示の登記、こういうふうに言っておるわけでございます。
○稲葉(誠)委員 そうすると、表示の登記があって、甲の部分に所有権の保存登記がされていないという場合もあるわけですか。
○香川政府委員 昔の登記はそういうことはなかったわけでございますが、所有権保存の登記によって初めて登記用紙が開設されたわけでございます。現在は、お説のとおり、表示の登記だけされておって、所有権の登記がない、そういう登記簿もあるわけでございます。
○稲葉(誠)委員 その場合でも、いろいろな取引その他については別に不便はないわけですか。取引のときには所有権保存登記をして、それから売買登記をすればいいわけだから、別に不便はないわけですか。
○香川政府委員 全く不便はないわけでございまして、昔の台帳があった当時に、台帳に登録はされておるけれども登記はしていないというものももちろんあったわけでございまして、そういう不動産を売買する場合には表示の登記だけでは移転登記はできませんから、保存登記をした上で所有権移転登記をする、こういうことになるわけでございます。別に不便ということは何らないというふうに考えております。
○稲葉(誠)委員 表示の登記の法律的な効力というのは、どういう効力なわけですか。
○香川政府委員 これは機能としましては、登記用紙の表題部におきまして、権利の客体である土地、建物の現況を明確にしておく、そういう機能でございますが、そこに登載される事項というのはすべて物理的な事項でございます。したがって、効力として、たとえば推定力があるとか公信力があるというふうな問題は一切関係ないわけでございます。
○稲葉(誠)委員 建物保護法に言うところの登記表示の登記も該当する、こういうことでしょう。そういうふうに理解していいわけですか。
○香川政府委員 建物保護法の関係におきまして表示の登記だけされている場合に、いわゆる借地権の対抗力があるかどうかということは、これは法律上問題があるところでございまして、御承知のように最高裁判所は、表示の登記だけで――表示の登記と申しましても、これは所有者欄というのがございまして、そこに所有者が記載されるわけでございます。その面をとらえて、建物保護法における借地権の対抗力は表示の登記だけであるというふうな判例が出ております。
○稲葉(誠)委員 これは法律的に議論があったわけですけれども、前の平賀さんが民事局長のときに、最高裁の判例がまだ出てない前に聞いたら、いまおっしゃったようなお答えをしたので私もその当時は驚いたりなんかしたのですが、いずれにいたしましても、いまは問題が解決をしておる、こういうふうに見ていいんだと思うのです。 そこで、司法書士の仕事の中で、供託の仕事というのは現在は素人が全部できるようになっていて、司法書士の人に頼むというのはほとんどないんじゃないですか。ないことはないけれども……。
○香川政府委員 供託用紙を備えまして、そこに素人でも書き込めるような工夫をいたしております関係から、本人申請と申しますか、司法書士の手を煩わさない事件は相当多くなっておるというふうに承知しております。
○稲葉(誠)委員 そこで、この前三月一日から施行された、一たん供託したものを取り戻しなり、あるいは担保取り消しが決定になって下げるときに、また本人の印鑑証明が要るということになりましたね。これはさっぱり徹底してなかったのですが、やっとこさ徹底してきた。これは何か特別な理由があってこういうふうにしたわけなんですか。
○香川政府委員 供託規則の改正省令施行までに約一月以上期間をとっておって、その間にPRすることにいたしておったわけでありますが、十分行き届かなかった面もあることは申しわけないと思っております。 あのように改正いたしました理由は、一つは、御承知のように供託する際に委任状を出してくる、それを取り下げるときにまたそのまま前の委任状が使えるということになりますと、供託どころといたしましては、以前の供託の際の委任状の整理索引を十分しておきませんと非常に手数がかかるわけであります。その整理索引するのがまた一仕事でございまして、御承知のとおり供託所というのも非常に多忙をきわめておりますので、そういった整理索引する手数、あるいは取り下げの際に、還付請求取り戻しの際に、前の供託した際の書類を引き出してきて委任状を点検するというふうな労力、そういったものをできるだけ少なくする、いわば供託所側における事務の簡素化を図るということが一つ。もう一つは、供託されましてから取り戻されるまでの間に、一年あるいは数年を要することがあるわけでございます。そういう場合に、数年前に出された委任状を根拠にして、現在なお代理権があるんだということで取り戻しを認めますと、とかく本人と代理人との間でトラブルが起こって、ああいう代理人に払ってくれたのは困るというふうな苦情が続出する傾向がございまして、これはまことにもっともな点もございますので、そういった面の弊害を防止するということから、改めて取り戻す場合には委任状を出していただくというようなことに改正したわけでございます。
○稲葉(誠)委員 この経過措置の中に「この法律の施行の際現に司法書士である者は、」この法律の「規定による司法書士となる資格を有する者とみなす。」とありますね。これはどういう意味なんですか。特にこれは必要なんですか。
○香川政府委員 この法律が施行になりまして国家試験に移行いたしますと、現在司法書士の資格を持っている方は、国家試験の合格者でもないわけでございます。法務局の認可によって司法書士の資格を取得した。その根拠が違ってくるわけでございます。さような意味で、現在の認可によって資格を持っておる司法書士の資格をどうするかという関係の経過規定を設けておるわけでありまして、今度の国家試験導入で、資格について一番大きな差異が出てまいりますのは、現行法のもとにおきましては、認可された地方法務局の管轄区域内で業務を行う場合に限ってその資格が物を言う。国家試験の合格者につきましては、特認ももちろん新法の場合には同じでございますが、全国的に資格が通用するということが一つの大きな差異でございます。さらにまた、新法で試験に合格した者あるいは特認によって資格を得た者が、これは司法書士となる資格の付与でございまして、登録することによって初めて司法書士となるということになりますので、現在司法書士になっておられる人たちも、新法のもとにおいて登録をする必要があるという関係も含めまして、ただいま御指摘の経過規定を設けたわけでございます。
○稲葉(誠)委員 いまは何々士というものでいろいろなのがあって、よくわからないのですが、国家試験で何々士というふうになっておるものはどんなものがあるのですか。勝手な名前をつけてよく新聞に出ているので、そういうのがあるのかと思うと実際にはないので、自分勝手に名前をつけているのもあるのですね。どんなのがあります。
○香川政府委員 承知しております限りでは、前後はあれいたしまして、税理士、公認会計士、弁護士、行政書士、海事代理士、社会保険労務士、弁理士、計量士、作業環境測定士、もちろんそのほかにもあると思いますが、大体以上のようなことでございます。
○稲葉(誠)委員 それはみんな国家試験のものですか。
○香川政府委員 国家試験になっておりますが、実施が都道府県知事に委任されておると申しますか、それは行政書士なんかは都道府県でやるわけでございます。
○稲葉(誠)委員 行政書士は試験やるの。試験やらないのじゃないか。
○香川政府委員 都道府県単位で試験をやるわけでございます。
○稲葉(誠)委員 行政書士と司法書士との間で職務が競合するようなところがございますか。たとえば訴訟に関する手続の書類とかなんとかというのは、行政書士もよく書くのじゃないですか。言いちゃいけないの。それから、自分の名前ではないけれども、内容証明なんかも出しておるけれども。
○香川政府委員 裁判所、司法機関に提出する書類は、行政書士は作成はできません。
○稲葉(誠)委員 いや、できないんだけれども、事実上、本人の名前で書いて、手足となるという形でやっているのじゃないですか。 それはそれとして、これは、司法書士会連合会の人も傍聴しておられるかもわからないので言いづらいことなんですけれども、率直に言って裁判所で困るのは、最初司法書士に書類や何かを頼んでいて、それで長々と訴状や答弁書やなんか準備書面が出てきているわけです。後からにっちもさっちもいかなくなって、弁護士のところに頼みに来る事件があるのですね。率直な話、これはもう裁判所も非常に困るのですね。どこが争点だか何だかわからなくて、進行にも非常に困るという例が具体的にわれわれもよくぶつかるのですね、これ以上言わないけれども。 〔山崎(武)委員長代理退席、委員長着席〕 だから、司法書士の人の研修というふうなものもよくやってもらって、同時に地位を高めていくというふうにならないといけないんだと思うのですが、その研修というようなことはどこがどういうふうにやるのですか。
○香川政府委員 これは民間の業者でございますから、役所が主体になって研修をやるというわけにもまいりかねるわけであります。現在も各司法書士会あるいは連合会において研修をやっておるわけでございまして、今後とも、私どもできるだけ協力申し上げて、研修の充実を図っていきたいというふうに考えておるわけでございます。
○稲葉(誠)委員 司法書士法のことについては司法書士会も改正を熱願していて、全部が全部そろったわけではありませんけれども、今後健全な発展といいますか、そういうようになるのを私ども希望するわけでございます。と同時に、全法務その他法務局関係の職員と仲よくやっていってもらいたいというふうに思っております。 それでは、民事執行法案の質問にこれから入るわけでございます。 実はこんなに膨大な資料ですね。全部で何ページあるのか、途中からページがみんな変わっちゃっているからわからぬけれども、ずいぶん厚いものを出してきて、そう簡単に通してくれと言われても非常に困るので、実際にはいつごろからこの民事執行法案の改正についての作業というか、それは出てきたわけですか。
○香川政府委員 昭和二十九年に法務大臣から法制審議会に対して諮問がございまして、ただ、実際に民事執行法案の審議、これは民事訴訟法の強制執行編と競売法を一緒にしたものをつくるという前提での審議でございますが、これが始まりましたのが昭和四十二年の暮れごろからだと思います。二十九年に諮問があったわけでございますけれども、その間、執行官法とかあるいは滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する法律等々、緊急を要するものがございまして、そちらの方に強制執行制度部会がかかっておりましたので、おくれたわけでございます。したがって、四十二年の暮れからでございますので、十年ぐらい法制審議会において審議がされた、こういう経緯でございます。
○稲葉(誠)委員 十年ぐらいかかっているものを国会で審議するというのなら、その三分の一だって三年ぐらいかかるじゃないですか。そのくらいかからなくちゃわからないですよ。これは何でそんなに十年もかかったのです。民事訴訟法の第六編というのは強制執行法ですね。僕ら学校で習わないからよく知りませんが、第六編というのはどうして口頭試験に出ないの。
○香川政府委員 司法試験の所管は異なりますので、私から申し上げるのはあれでございますが、恐らく強制執行編まで入れると法律の量が非常に膨大になるということを配慮してのことだろうというふうに聞いております。
○稲葉(誠)委員 これは率直な話、なかなかわかりにくいですね。試験問題に出てくるのは債務名義とか請求に関する異議とか、その二つくらいじゃないか。あとは出やしないよ。勉強してないから私もよくわからないんです。 それで、民事訴訟法の第六編というのは母法はどこの法律なんです。ドイツですか。
○香川政府委員 ドイツ、プロイセンの法律でございます。
○稲葉(誠)委員 ドイツのプロイセンというのはどこにあって、どんな国だったんですか。口述試験だから、その辺まで聞かないと口述試験にならない。
○香川政府委員 歴史の試験をされているようでございまして、定かでございませんが、ドイツ連邦ができる前の一つの国でございます。
○稲葉(誠)委員 これは非常に古い法律ですね。それで競売法というのはいつごろできて、どんな内容の法律だったわけですか。
○香川政府委員 明治三十一年の制定に係るものでございますが、担保物件の実行手続を規定したものでございます。これはわが国独特の、外国母法がない法律でございます。
○稲葉(誠)委員 そこで、その両者の手続が必ずしも十分に調整されていない点もあるというふうに提案理由で書いてありますね。どういう点が両者の手続が必ずしも十分に調整されていなかったんですか。またそのいなかった点についていつごろ気がついたのですか。
○香川政府委員 明治にできた法律でございますので、われわれと違ってもっと法律的にも十分練られたといいますか、りっぱな法律学者がつくられた法律でございますので、現在言われているような点は当時も十分気づいておったと思うのであります。いろいろ性格とか、たとえば強制執行の規定は民事訴訟法にあるから訴訟だとか、あるいは競売法は非訟事件だというふうなことを後の学者がいろいろ言い出してややこしくしている面もなきにしもあらずでございまして、恐らくは競売法は、規定のないところは全部民事訴訟法の強制執行編の規定が準用されるというふうなつもりでできておったと私は思うのであります。ただそうは申しましても、たとえば配当手続につきましては、御承知のとおり、競売法にはこれを受け取るべき者に交付するという規定一本でございまして、やはり実務の運用としては強制執行編の配当手続の規定を準用してやっておるわけでございますけれども、しかし、競売法本来の考え方からいたしますと、そういう配当という手続は本来担保権の実行にはなじまぬものと考えておったのではないかと思うのであります。そういうふうな点が今日的に考えますといろいろの機能、つまり国民のために一番簡便にして金のかからぬ方法という視点から考えましても、やはり合理化する面が多数あるということが言われるわけでございまして、いろいろ裁判所で運用上苦労しながら準用規定を適当に修正して解釈したりしながら苦労してやっておられるわけでありまして、これをやはり立法的に早急に解決する必要があるということで今回の法案を提出した次第でございます。
○稲葉(誠)委員 これは裁判所にお尋ねをしますけれども、強制執行なり競売の手続は裁判所では実際にだれがやっているんですか。
○井口最高裁判所長官代理者 執行裁判所の裁判官が書記官その他の補助職員の補助を受けながら協力してやっておるというのが実情であろうと思います。
○稲葉(誠)委員 執行裁判所の裁判官というのは未特例の判事補がほとんどじゃないのですか。だから学校を出てきたばかりで司法試験に受かって、研修所を出てきたばかりの人が配置されて、最初は未特例でしょう。余り仕事がなく、合議の陪席くらいしか仕事がないものだからというので、これをいわゆる雑件と言っているのでしょう。事件番号はこれは「モ」ですか「サ」ですか、何と言ったか忘れてしまったけれども、これをみんな雑件と言っているのだよ。そうして書記官の方が詳しくて、書記官のところに聞きに行って実際にはやっているのじゃないですか。事件番号は何でしたか。実際にはどういうふうにやっているのですか。
○井口最高裁判所長官代理者 ただいまの件は、各地方裁判所がそれぞれ人員と実情に応じてやっておるわけでございまして、たとえば東京地方裁判所で申しますと、裁判長以下四名ないし三名の裁判官がやっておりますし、未特例の判事補だけが処理しているという庁もあるいはあろうかと思いますけれども、これはもともとその所属する合議体というものがございますので、やはり裁判長等の事実上の指導もあろうかとわれわれは理解しておるわけでございます。
○稲葉(誠)委員 東京とか大阪などの場合はちゃんと保全部もあるし、それからこういうような特殊な部がたくさんあるから別ですが、実際は古い書記官がいて、古い書記官がほとんどやっていて、裁判官はよくわからない。わからないと言っては悪いけれども、聞きに行って署名しているという程度の人も――程度の人と言っては悪いですけれども、なきにしもあらずだろう、こういうふうに思うのです。 そこで、これは執行吏が執行官になったのですね。いつでしたか、この前なりまして、執行吏が執行官になって具体的にどこがどういうふうに違ってきたのですか。
○井口最高裁判所長官代理者 稲葉委員十分御承知のことと存じますが、お尋ねでございますので主なことを申し上げます。 まず、執行吏役場を廃止いたしまして、裁判所内に事務室を設けて執務をする。次に、当事者の委任制、これは裏を返して申しますと自由に執行吏のだれを選ぶという意味での自由選択制があったわけでございますが、これを廃止いたしまして、裁判所が通常の事件と同様に事務分配をいたします。それから、当事者と執行官との間で手数料等の金銭の授受を原則的に廃止いたします。これは裁判所がすべて会計課で保管をするということに改めました。それから任命資格が、これは行(一)四等級七号俸の資格のある者だけしか任用できないということに相なっております。その他、執行吏代理という制度が旧法にございましたものを原則的に廃止いたしまして、経過的に現在存在する者だけが職務を行うことができるということ。それから最後に、監督体制が強化されまして、従来は必ずしも監督責任の所存がはっきりいたしませんでしたけれども、所長以下の監督官並びに事務局長以下の監督補佐官というような監督系列を明確にいたしました。 大体主な項目は以上のとおりでございます。
○稲葉(誠)委員 この施行期日が昭和五十五年十月一日ということですね。そうすると、昭和五十五年十月一日というと、いまから二年以上あるわけです。まず、それをどうしていま急いでこの国会に提出をしたのですか。それが一点と、それから昭和五十五年十月一日までにその他の法律あるいは施行規制、いろいろなものがあると思うのですが、そういうようなものも改正しなければならないと思うのです。一体何と何がいつごろ、どういう状況の中で出てくるのですか。国会へ出てくるものがあるし、出てこないものもあろうかと思うのですが、そこはどういうふうになっておりますか。
○香川政府委員 施行期日が先になっておりますのは、一つは、この法律が成立いたしますと最高裁判所規則を制定しなければならぬわけでございます。御承知のとおり、最高裁判所規則は諮問委員会が設置されまして審議されるわけでございますが、見込みとしまして約一年半ぐらいかかるであろうということのようであります。 それと同時に、この法律が施行されますまでにいろいろ予算措置を講じなければならない面もあるわけでございまして、たとえば従来から指摘されておりますように、現在の競売場というものをもっとオープンな明るいものにするというふうなことでの施設費等を要する面があろうかと思います。そういったいろいろの予算措置が必要になってくるということ、これは五十四年度の予算要求において最高裁からされるわけでございます。そのほか、何分にも全面改正の法律でございますので、これを一般に周知するPR期間が要るというふうなことも見込まれておるわけでございます。 なお、この法律が成立いたしますと、これに伴いまして他の法律において、たとえば競売法による競売というふうな用語が使われているものを整理するというふうな整理法が必要になってくるわけでありまして、これはこの法律が成立いたしますれば早急に、次の通常国会にでもその整理法を提出さしていただきたいというふうに考えております。
○稲葉(誠)委員 その整理法というのの具体的内容はどういうものかということと同時に、なぜそれでは出すならば一緒に出さなかったわけですか。一緒に出すというのは手続的におかしいのかな、そこら辺よくわかりませんが、どういうふうになっているのですか。
○香川政府委員 本来、附則でそういった整理もできないわけではないと思うのでありますけれども、何分にも関係法律がたくさんございますので、やはり別の法律にした方がいいというふうなことでございます。同時に出せないことも法律的にはない、出せると思いますけれども、やはり関係法令の改正作業というのが、形式的な整理でございますけれども、その面で相当時間を要するわけでございまして、しかも形式的な整理が大部分でございますので、やはりこの法律が成立してから、形式的な整理だけの法律を別途出すということの方がかえっていいというふうに考えたわけでございます。
○稲葉(誠)委員 その整理法というのは、正式の名前はどういうふうな名前になるわけですか。
○香川政府委員 まだ正式な名前は法制局とも打ち合わせいたしておりませんけれども、一つの名称として、従来の例に徴して考えられますのは、民事執行法施行法というふうなこと、あるいは民事執行法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律というふうな名称、どちらかになるのじゃなかろうかというふうに考えております。
○稲葉(誠)委員 それでは、これは国会のやることですけれども、その法律が出て、その法律と一緒にこの法律を審議し、あれするということで十分に間に合うわけですね。
○香川政府委員 先ほど申し上げましたように、この民事執行法の関係の最高裁規則の制定が一年半を要する見込みでございますので、これは正式に最高裁におきまして諮問委員会を設置するというためには、この民事執行法が成立してないと形式的にはなはだまずいということになろうかと思いますので、だからこの法案は、少なくとも五十五年に施行するものといたしますれば、ぜひとも今国会で成立させていただきたい、かように考えておるわけでございます。
○稲葉(誠)委員 それはそうだけれども、五十五年十月一日からというなら、一年六カ月を引いたって、来年でいいのじゃないの。そういう計算になってくるじゃないか。五十五年十月一日から一年六カ月引くと、昭和五十四年の四月ごろということになってくるのじゃないの。――それは一年か。一年六カ月だと違うかな。いずれにいたしましても、そんなに無理して急ぐことはない。五十五年十月一日だから、五十四年四月で一年六カ月前だ。だから、来年の国会で成立しても十分間に合うということになるのじゃないかな、計算は。 それはそれとして、最高裁にお尋ねするのですけれども、この法案は十何年かかって法務省でつくったわけですね。その間に最高裁の方ともいろいろ連絡をとってやっているわけですか。
○井口最高裁判所長官代理者 裁判所からも法制審議会の委員、幹事が出ておりますし、そのほか細部の打ち合わせば常にやっております。
○稲葉(誠)委員 常にやっているなら、もう一年六カ月もそんな規則をつくるのにかかるはずないのじゃないですか、一日や二日じゃできないだろうけれども。もうできているんじゃないの、草案は。
○香川政府委員 最高裁規則の制定は、御承知のとおり、諮問委員会を改めて設置いたしまして、これは裁判所内部の職員だけではなくて、弁護士、学者等も参加していただきまして、そして審議されるわけでございます。したがって、その諮問委員会の答申といいますか、結論を得るのに、どんなに急ぎましても一年半はかかるだろうというふうに考えられるわけでございます。
○稲葉(誠)委員 それは水かけ論ですけれども、最高裁規則に譲るものと、この法案で決めなければならないものと、両方あると思うのですよ。そうすると、最高裁規則の決め方によっては、この法案というものが骨抜きになってしまうという可能性というか、危険性もそこに当然出てくるわけです。たとえば十条ですね。「特別の定めがある場合に限り、執行抗告をすることができる。」というのがありますね。それから十条四項「執行抗告の理由は、最高裁判所規則で定めるところにより記載しなければならない。」というわけですが、この執行抗告の理由というのは限定されるという意味ですか。どういう意味ですか。 まず執行抗告というのは何なんですか、ちょっとぼくらにはよくわからない。
○香川政府委員 裁判所、執行官がいろいろの執行処分を重ねていって強制執行手続、競売手続が進むわけでありますが、その執行処分について不服がある場合の不服申し立て、これを執行抗告というふうに言っておるわけでございます。
○稲葉(誠)委員 しかし、抗告というのは決定に対して普通言うのじゃないですか。執行抗告というのは事実上の処分に対してするの。よくわからないのだけれども。
○香川政府委員 もちろん決定に対してでございまして、裁判所のこの執行手続をされる裁判が原則として形式上決定という形でされる、それに対する不服申し立てでございます。
○稲葉(誠)委員 その執行抗告はどういう場合にできるということの理由は、いまの十条四項で最高裁判所規則で定めるところにより記載しなければならないという意味は、どういう意味ですか。執行抗告の理由も最高裁判所の規則に限定をされるという意味なんですか。そこのところはどういうふうに理解したらいいのですか。
○香川政府委員 執行抗告ができるかできないかということは、この法律で全部決めるわけでございます。この十条四項の執行抗告の理由は最高裁判所規則で定めるところにより記載すると申しますのは、これはきのうも御説明申しましたように、できるだけ迅速に競売手続を進めるという意味から、執行抗告の理由は具体的、詳細に記載されるということが期待されるわけでありまして、そういう関係を最高裁規則で決めるわけでございます。この四項の最高裁規則というのは執行抗告ができるかできないかを決める性質のものとは全く違うわけであります。
○稲葉(誠)委員 そうすると、いまの場合は執行抗告というのは、私はよくわかりませんが、現在はどういう場合にできて、そして今度の法案によると、それは特に定める場合に限り許されるということになってくるので、どこがどういうふうに違ってくるのですか。
○香川政府委員 現在は、執行裁判所の執行処分について、決定に対しては全部不服申し立てできることになっているわけでございます。これが現在引き延ばしのためにいわば乱用されるわけでございまして、そのために競売手続が非常に時間を要する。その弊害を是正する意味で、その段階において不服申し立てを認めなければ非常に関係人の権利に影響を与えるというふうなものに限りまして今回は執行抗告を認めるというふうに改正しようとしているわけでございます。
○稲葉(誠)委員 具体的な事例がどうもよくわからぬものですから、具体的な事例に即して、いまの場合とこの法律ができた場合と、どういうふうに執行抗告の面で違うのか、これを説明していただかないと、ちょっとぼくらよくわからないのですよ。
○香川政府委員 この法案におきまして執行抗告ができる決定というものを拾って申し上げますと、費用不納にによる申し立て却下決定、あるいは執行費用額確定決定、強制競売の申し立て却下決定、続行申し立ての却下決定、配当要求却下の裁判、それから売却のための保全処分決定、その取り消し決定、それから売却の許可、不許可の決定、これは競落許可、不許可決定と現在言われているものでございます。それから売却許可決定の取り消し申し立てについての決定、最高価買い受け人等のための保全命令、引き渡し命令の申し立てについての裁判、強制管理の開始決定、建物使用許可決定及び同取り消し、変更決定、収益等の分与決定及び同取り消し、変更決定、それから管理人の報酬等の決定、保管人の選任の申し立てについての決定等でございます。
○稲葉(誠)委員 現行法とこの法案が通った場合とで、具体的な事例を挙げてどう違うのかということを説明してくれと言っているのですよ。わからないのですよ、こっちは。こういうのに余りぶつからないもの、だから。
○香川政府委員 仕組みが大分変わっておりまして、全く現行法の手続と同じ形の手続ということでございませんので対比が非常にあれでございますけれども、現在たとえば競売開始決定がございますとそれに対して当然異議申し立てができることになっておるわけでございます。その異議が却下されますと、それに対して当然即時抗告ができるというふうなこと、そのほかに裁判所決定に対しては全部不服申し立ての道が現在あるわけでございますが、今回は、いまの開始決定で申しますれば、全部できなくなるという関係、そこが違ってくるわけでございます。それぞれの段階でいろいろ差がございますのでちょっと対比はむずかしゅうございますけれども、例をとって申しますれば、いま申しましたようなところが違ってくるということでございます。
○稲葉(誠)委員 対比がむずかしいのはわかりますけれども、提案理由によると、強制執行法、民事訴訟法第六編と競売法とを合わせて調整したというのでしょう。調整したというならば、現在の強制執行法あるいは競売法によって行われるものと今度の新しい法律によって行われるものと、どこがどう違うのかということの対比というか、一覧表か何かできてないとぼくらはわからないのです。こういう法律は本当にわからない。技術的な法律だし、学校じゃ余り習わなかったし……。 そうすると、十年間かかったのだから、そのくらいのことにはわかっているでしょうが、ちゃんと印刷して出しなさいよ。
○香川政府委員 わかりやすく、たとえば不動産の強制競売について対比して申し上げますと、現行の民事訴訟法におきましては、御承知のとおり、強制競売の申し立てがございますと、それに対して裁判所が開始決定をするか却下するということになるわけであります。開始決定がなされますと、それによりまして競売申し立ての登記の嘱託がされまして、そしてそこから登記簿謄本の送付があって、そして裁判所から利害関係人に競売開始の通知をする……
○稲葉(誠)委員 ちょっと、そこまでで待ってください。 普通この場合は費用をどのぐらい予納するのですか。何の基準に基づいて予納するのですか。
○香川政府委員 費用はそれぞれのケースによって輿なるわけでございまして、一律に決まるわけではありません。
○稲葉(誠)委員 そうに決まっている。実際にはどういうものを標準にして、幾らぐらいの費用を予納させるのですかと聞いているのです。
○井口最高裁判所長官代理者 ちょっとただいま手元に細目を用意しておりませんけれども、費用のかかる項目はかなり細かく分かれております。わかりやすく申しますと、最も大きな費目は執行官に支払う売却の手数料でございます。これは当初に支払わせる庁と売れたときに改めて追加させる庁がございますけれども、それ以外にはおおむね手数料のほかに数万円程度の費用を予納させるのが通常の例のように聞いております。
○稲葉(誠)委員 現行法では利害関係人への通知があるわけですね。この利害関係人というのは具体的にはどういう人を利害関係人と言っているわけですか。
○香川政府委員 現行法におきましては利害関係人というのは法定されておりまして、民事訴訟法の六百四十八条に各号列記で規定してございます。
○稲葉(誠)委員 おかしいですね、ここにもらった条文では六百五十三条二項、六百五十四条と書いてある。違うのですか。
○香川政府委員 ただいまの御質問は利害関係人の範囲ということでございましたので、それは六百四十八条に規定がある。利害関係人への通知はお説のとおりの規定でございます。
○稲葉(誠)委員 それは民事執行法案ではどこに書いてあるのですか。
○香川政府委員 現行法におきましてこの利害関係人を法定することに相当いろいろ問題がございますので、法定はいたしておりません。それぞれの事案において利害関係人の範囲が解釈で決まる、こういうことになっておるわけであります。
○稲葉(誠)委員 いや、解釈で決まるのはいいけれども、そうすると、現行法ではどういう人を利害関係人というのでしたか。それに対する通知は、これは今度の執行法ではしなくていいということなんですか。
○香川政府委員 現行法の利害関係人というのは、先ほど申しましたように、六百四十八条に規定がある……(稲葉(誠)委員「いや、内容」と呼ぶ)読むわけでございますか。(稲葉(誠)委員「読まなくてもいいから内容を説明してください」と呼ぶ)差し押さえ債権者及び執行力ある正本により配当を要求する債権者、それから債務者、登記簿に記入されておる不動産上権利者、不動産上権利者としてその債権を証明し執行記録に備うべき届け出をなしたる者、知れたる抵当証券の所持人及び裏書人、これが現行法の利害関係人でございます。
○稲葉(誠)委員 それはそれぞれ通知を受けるだけの法律上の利益があるわけだから、そういうふうな条文ができているのではないですか。そういうわけでしょう。それは一人一人いま書いてあるのが通知を受けることによってどういう利益があるわけですか。
○香川政府委員 利害関係人の範囲はこういうふうに法定されておりますけれども、それぞれの手続において、たとえば先ほど申しましたように、開始決定があったときに通知するのはこの六百四十八条の利害関係人全員に対して通知するわけではないわけでありまして、それぞれの手続において利害関係人として遇される者を取捨選択しておるわけでございまして、そういう手続構造になっておるわけでございますが、この法案におきましては、そういう現行法の規定を前提としながら、それぞれの手続において利害関係人というものがおのずから決まってくる、解釈で決め得るということで処理しておるわけでございます。
○稲葉(誠)委員 解釈で決まってくるのならば、それに通知しなくたって法律上の効力はないということになるのですか。現在はこの利害関係人へ通知しなかった場合に法律的な効力はどういうふうになるのですか。
○香川政府委員 ですから、たとえば公告で賄うこともございますし、あるいは具体的なそれぞれの手続でこの者には通知するという規定をそれぞれの条文で設けておるわけでございます。
○稲葉(誠)委員 いま、これは私が質問したからくれたので、「民事執行法案と現行法との手続対比一覧表 不動産の強制競売について」「注 □は、主要改正点」と書いてあるのですね、こんな厚い資料の中に、これは重要な部分だと思うのですが、どうしてつけなかったのですか。これをつければよくわかるのじゃないですか。
○香川政府委員 条文を十分読んでいただきまして、その表をごらんいただきますとおわかり願えるのでありますけれども、その表だけをあれしますと、かえって実質が相当変わっている面もありますので誤解を生ずるおそれがあるというふうに思うのでありますが、稲葉委員は弁護士でいらっしゃるし、経験もございましょうから、それを読んでいただければおわかり願えると思います。
○稲葉(誠)委員 いや、ぼくは弁護士だけれども、こういうのは余りやったことがないからわからないのですよ、本当に。これはどうもむずかしくてわからない。 それはそれとして、いろいろずっと手続が書いてありますね。これを説明すると全部で二時間ぐらいかかるというのだから適当にしておきますけれども、そこで、まだたとえば一つの問題として三十九条の三項「弁済の猶予を承諾した旨を記載した文書の提出による強制執行の停止は、二回に限り、かつ、通じて六月を超えることができない。」こういうふうになっておるわけですね。 そこで私がまず最初にお聞きをしたいのは、公証人役場の公正証書の場合に、金銭の貸借の場合には執行文をつけますね。家屋の明け渡しやなんかの場合はもちろんつけないわけですね。これが非常に悪用されるんで、一体どうして公証人役場の公正証書に対しては金銭債権のときに執行文をつけるのですか。
○香川政府委員 現行法の問題として答弁申し上げますが、執行受諾文言がある公正証書については債務名義になるわけでございまして、その場合の執行力を付与するために公証人が執行文をつける、こういうふうになっているわけでございます。
○稲葉(誠)委員 それはわかっているのですけれども、それが金貸しやなんかに乱用されて非常に債務者が迷惑している例が多いわけですよ。だから公証人役場の公正証書に執行文をつけるのなら、ということは裁判をやらないでやれるわけですから、非常に簡単にできるのではないですか。だからこういう制度は基本的におかしいのではなかろうか、こう聞いておるわけです。
○香川政府委員 公正証書による執行として、たとえばその公正証書が無権代理人によって作成されたというふうなことで異議申し立てがございまして開始決定が取り消される、あるいはその公正証書自体が無効だというふうな事例は聞いております。これは私ども公証事務を監督しておる立場から申しまして、すべてそういう代理権限の有無とか公正証書作成についての手続関係は厳格にやるようにということでいろいろ指導監督はいたしておりますけれども、ただ一番問題になるのは、白紙委任状を債権者に交付してそして債権者がその白紙に書き入れる、印鑑証明書は当然一緒に渡してございますので、したがって、公証人役場におきまして、そういう委任状と印鑑証明書が出てまいりました場合にこれが無権代理だというふうなことをチェックすることがきわめて困難というよりは、恐らく実務的には不可能だと思うのであります。結局そこまでのチェックをするということになりますと、公正証書そのもの自身がもはや余り意味がない、用がないということにも帰着するわけでございまして、その辺のところが問題でございます。しかし、幸いにもいま申しましたような無権代理人によって公正証書が作成されたことによって証書自体が無効だとか、あるいは開始決定が取り消されるというような事例はそうたくさんあるわけではございませんで、大半は有効なものとして通用しているわけでございます。その辺のところをひとつ御勘案願って、今後公正証書のそういった無効なものが作成されるというようなことがないように私どももできるだけ指導監督してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
○稲葉(誠)委員 公正証書の作成が無権代理の場合、いま答弁がありましたけれども、実際は双方代理の場合が相当多いのではないですか。これはほとんどと言っては悪いけれども、双方代理が多いのではないですか。債権者の使用人みたいな人が債務者の側について、債務者の代理になってそして契約を結んでやっておるのが公正証書の場合に多くて、双方代理だったら一体どういうふうになるのですか。それは事実上双方代理の場合が非常に多いのではないか。非常に多いと言わないけれども、あるのではないですか。
○香川政府委員 双方代理が多いというと、これは双方代理でございますと問題があるわけでございまして、それは実際、事実上そういった公証人役場に足を運ぶというふうな使者的なといいますか、そういうのが、外見上双方代理のようなかっこうの使者というのが多いのは事実でございます。そういうのは、むしろ個々の公正証書の作成というよりは金融機関等の集団事件等について多いわけでございまして、だから逆に、金融機関の集団事件のような場合には無権代理によって後で無効になるというふうなケースはむしろ皆無というふうな形になっておるわけでございます。
○稲葉(誠)委員 だから双方代理と言ったのは、事実上双方代理という意味で私は言ったつもりですけれども、それが多いのですよ。だから、本人はこんな人は知らないというようなことが多い。ほとんどそうだ。公正証書に名前が書いてある人が、公証人役場へ行った人の名前は全然聞いたこともない、会ったこともないというのが非常に多いということになると思うのです。 そこで、この公正証書で執行するという場合、あるいはその他の場合でもそうなんですが、いわゆるサラ金とか何かでいろいろやる場合がありますね。そうすると、これは普通は利息制限法を超えているわけだ。だからいまの利息制限法の場合は、最高裁で二つの判決――両方とも大法廷でしたか、出ましたね。出資の何とか預かり法か臨時金利調整法か、ちょっと忘れましたが、罰則の方の金利は非常に高いのだから、そこで非常に食い違いが出てきているわけです。そうすると利息制限法を超えた利息をつけて公正証書ができておる、それによって執行するというのが多いんじゃないですか。これは支払い命令でもそういうのがあるかな。――その場合は違うかもわかりませんけれども、そこはどういうふうになっていますか。
○香川政府委員 公正証書を作成したいということで公証人に委嘱がありました場合には、当然その利息制限法所定の利率を超える部分は無効でございますから、公証人は公正証書の作成を拒絶するわけでございます。だから公正証書上、利息制限法違反の利息契約というふうなものが記載される例は法律上はもちろんございませんし、公証人はそこは厳格にチェックいたしておりますので、さような例はないというふうに考えております。
○稲葉(誠)委員 さような例はないと言ったって、利息制限法による最高裁の判決が二つ出ましたね、これは説明しなくてもわかっていると思うのですが。それに基づいて立法がされておるならば、もちろん公証人も、こういう法律があるのだからと言って受けつけないとかなんとかいうことがありますけれども、立法がされてないわけです。公証人の方が最高裁の判決をどこまで知っているかわかりゃしない。結局言われたまま公正証書ができてしまうんではないのですか、実際は。 それと、裁判所なんかでも支払い命令申し立てのときには一々チェックしているのですか。たとえばサラ金あたり、支払い命令がありますと、それが利息制限法に違反するかどうかというのは一々職権で調べるのですか。どういうふうになりますか。
○香川政府委員 昔の利息制限法は、裁判上無効ということになっておったわけでございますから、公正証書の作成は可能であったわけでございます。それが今日は裁判上のみならず裁判外においても、つまり司法上一切無効ということになっておるわけでございまして、最高裁の判例も非常に問題があると思いますけれども、やはり一切無効ということを前提にした解釈論でございますから、公証人が公正証書を作成いたします場合に、最高裁の判例があるから利息制限法違反の利息契約について公正証書を作成してもいいという方向で物を考える余地は全くない。むしろ最高裁の判例は、まさにすべての場合無効だということを前提にした解釈論でございますから、したがって、公証人はさような違反の利息契約では絶対公正証書は作成しないというふうに考えております。
○井口最高裁判所長官代理者 稲葉委員御承知のように、支払い命令は、申し立て人の主張のみに基づいて発するわけでございます。したがいまして、元本について、それが本当にあるかどうかというような審査は一切いたしませんが、遅延損害金その他について、利息制限法を超える部分は一切認めておらないわけでございます。 ただ考えられますのは、その元本の中にいわば天引きというような形で制限超過の利息が入っているかどうかということになりますと、これは一方審尋でありますので、当然裁判所にはわかりません。後ほど債務者の方から異議申し立てその他によって争われる、かように相なろうかと思います。
○稲葉(誠)委員 それはそのとおりなんですが、そこで仮登記担保契約に関する法律案というのが出ているわけですね。これは最高裁の大法廷の判決に基づいてできたわけだ。そうすると、利息制限法の方は最高裁の判決が二つ出ているが、これは法案をつくらなくてもいいのですか、どうなんですか。法案をつくるのは立法府だからこっちがつくるのが本筋なんで、そっちにつくれと言うのはおかしな話だけれども、それはどうなんですか。
○香川政府委員 仮登記担保の方は、御承知のような最高裁の判決が幾つかあるわけでございますが、これはそれぞれの事案に対する判決でございますので、一般論として、一般的に実体法上あるいは手続法上どこまでその解釈が決められるかという問題が、非常に実務的にあるわけでございます。そういうことから、周辺の問題を立法上は明らかにすべきだということで法律を制定することを考えたわけでございます。 他方、利息制限法につきましては、これは最高裁の判例は、御承知のとおり、率直に申し上げまして、現行の利息制限法からああいった解釈が出てくるのかどうか、若干疑問はあると思うのであります。ただ、あの判例が出まして、その周辺の問題というふうなものは御承知のとおりないわけでございまして、疑義はないというか、むしろ明快過ぎるくらい債務者保護に徹しておるというふうに考えられるわけでございます。したがって、あの判例を立法化するという意味では、これは先ほど申しましたように解釈として若干問題がございますので、立法化した方がベターではあろうかと思いますけれども、特に急ぐ必要性と申しますか、さようなものもないわけでございますが、私どもといたしましては、すでに利息制限法の改正を、最高裁の判例を踏まえて現在検討しているところでございます。
○稲葉(誠)委員 サラ金や何かから金を借りて、そして簡易裁判所へ、利息制限法超過の部分については元金に算入されるんだから、金額を、債務枠を確定してくれ、こういう調停をたくさん出されたら、裁判所は一体どうするのですか。
○井口最高裁判所長官代理者 昨年あたりから、お説のような調停はきわめて多数出ております。現在私どもの承知しておりますところでは、厳格に利息制限法による計算のし直しをしまして、それによって出た金額、それで残額があればその金額を払いなさいという形で、つまり利息制限法超過の利得を債権者に与えるような調停は一切やっておらない、かように承知しております。
○稲葉(誠)委員 問題はその計算なんですよ。計算が非常にむずかしいわけだ。これは素人にはできないわけですよ。その計算を裁判所がやってくれるんですか。やってくれるなら、全国的に檄を飛ばしてどんどん出すから。その点どうなんだ。
○井口最高裁判所長官代理者 現状を申しますと、調停委員の方がおやりになっている庁と、補助職である裁判所書記官がもっぱらやっている庁と、いずれにいたしましても裁判所側でやっております。
○稲葉(誠)委員 法務大臣がいっか閣議でサラ金のことを取り上げていろいろあれされたということになっておるわけですが、そうすると、利息制限法の利息とそれから出資等預かり金の利息が、民事と刑事は違うから違うのはいたし方ないとしても、どうしてあれが違ってきておるわけですか。
○香川政府委員 司法上無効ということにするランクと、きわめて醜悪であって刑罰をもって臨むべきランクとは、おのずと違うと思うのでございます。その差異がお説の形として出てきておると考えるべきだと思います。
○稲葉(誠)委員 そこで、いまの三十九条三項ですね。これはどうしてこういうようなことを決めたのですか。これは債権者にはいいかわからぬけれども、債務者と債権者の間は当事者であって、いわば当事者自治の原則というか何というか、片っ方が延ばしてもいいと言うならば延ばしてやったらいいじゃないですか。ただ、執行裁判所としては前の日あたりに持ってこられて非常に困る場合もあるかもわかりませんけれども、しかし債務者の立場を考えれば、金を幾らか払って弁済を猶予してもらった、だから競売を延期してほしいと、大体これは前の日あたりに出すのが多いのですね。そうすれば延ばしているわけですよ。それを何回も何回もやっていくうちに全部の金が払われていって全部済むというのが普通じゃないですか。だから何も「二回に限り、かつ、通じて六月を超えることができない。」こんなに限定する必要はないのじゃないですか。
○香川政府委員 稲葉委員御承知と思いますが、現在競売が非常に時間を要しておるというのは実はこういうところにも原因があるわけでございまして、現行法では弁済の猶予を承諾する書面が出てまいりますと常に執行停止になる、これが何回も何回も繰り返される。確かに差し押さえ債権者と債務者の間だけを考えますれば、差し押さえ債権者はその弁済を猶予する都度何がしかの債務を弁済させて、そして数回かかって債権の解消をするという、それでいいわけでありますけれども、御承知のように、競売というのは何も差し押さえ債権者一人が執行しておるわけではないわけでありまして、後で差し押さえした者はその前の差し押さえ債権者の競売手続の中に入っていって配当要求ということになるわけでありますし、配当要求をしておる他の債権者も多数おることは当然考えられるわけであります。そういうときに、差し押さえ債権者だけが弁済を猶予して、猶予するたびに自分だけの債権の解消を図るというふうなことになりまして競売が次々延びていくということになりますれば、多数の利害関係人が非常に困るわけであります。そういうことで、何とかこの点を是正しないことには競売の迅速化というのは図れないということで議論されたわけでありまして、実は法制審議会の法務大臣に対する答申は、これは一回限りでありまして、しかも三カ月ということになっておるのでございますが、やはりいろいろ検討いたしまして二回で六カ月というふうな成案を得た次第なんであります。そういうことで、もしもその差し押さえ債権者が本当に弁済を猶予してやっていいというのであれば、むしろ競売の申し立てを取り下げて、そして弁済の猶予をすればいいわけでありまして、そのときに不動産が散逸するおそれがあるというならば仮差し押さえをしておけばそれで足りるわけであります。もともと弁済猶予をするということになりますと、本来ならば競売開始決定というのはできない筋合いのものでございますので、したがって、本当に債権者と債務者間でそういうことであるならば、他人様に迷惑をかけない形として仮差し押さえをしておくという方法によるべきだというふうに考えるわけでございます。
○稲葉(誠)委員 五十五条の問題に入るわけですが、この五十五条は新しい規定ですか。――そうすると、これがない現行法の場合には、この五十五条と同じ場合にはどういう手続をとるのですか。
○香川政府委員 一般的には現行法では全く手の施しようがないわけであります。
○稲葉(誠)委員 手の施しようがない。どうして手の施しようがないのです。普通あれじゃないですか、占有を執行吏が保管している場合があるでしょう。そういう場合なんかの点検申請とかなんとかいう形でやってきたり何かしてできるのじゃないの。そういう場合とこれは違うのですか。
○香川政府委員 現行法におきましては、一般債権者が強制執行する、つまり不動産に対する差し押さえをするだけでございまして、債覇者はその不動産の使用収益権を保留しておりまして使用収益するわけであります。だからもしも、たとえば債務者が第三者に貸すとかあるいはみずから使用する場合におきまして、不動産を損壊して価格を著しく減少させるというふうな挙に出ました場合でも差し押さえ債権者としては手の施しようがない、現行法のもとにおいてはどうしようもないわけであります。
○稲葉(誠)委員 仮処分をやっておけばいいのじゃないの、処分禁止か何かの仮処分で占有を移しておけばいいのじゃないですか、それはできないの。
○香川政府委員 金銭債権者でございますから不動産について処分禁止の仮処分はできませんし、仮に処分禁止の仮処分をいたしましても、そのあれではいわば処分を禁止するだけのことでございますから、占有を奪ってしまうというわけにはまいらないわけであります。ただ仮処分とおっしゃる趣旨は、あるいはたとえば不動産の抵当権者がいたしました場合に、抵当権は物件でございますからいわゆる物件的請求権の一つのあらわれとしまして、そういった価値を減少させるような行為をしてはならぬという仮処分ということは考えられるかと思います。しかしそれも実効性をあれするためには、その占有を奪ってしまわないと究極のところは実効性がないという面もあろうかと思います。
○稲葉(誠)委員 具体的にここに書かれておる「不動産の価格を著しく減少する行為」「又はそのおそれがある行為をするとき」というのは、これは具体的にはどういうことを言っているわけですか。
○香川政府委員 これは実際的にはきわめて限られた場合だろうと思うのでありますが、たとえばよくある例としましては、債務者が破れかぶれになってと申しますか不動産を壊すというふうなこと、あるいは付属建物を取り壊すとか、あるいは風で屋根がわらがはがれた場合に、どうせ競売されるのだからということでその雨漏りを全然防がないというふうな、そういうきわめて少ない限定された場合に、ここで言う「不動産の価格を著しく減少する行為」ということになろうかと思います。
○稲葉(誠)委員 競売開始決定があると、自分の物でも他人の物になるのじゃなかったですか。
○香川政府委員 それは刑法上は損壊罪の問題として他人の物と同じように扱われる、民事上はあくまでも債務者の物は債務者の物でございます。
○稲葉(誠)委員 そうすると、よく問題となってくるのは、機械類や何か物件に対してべたべたいろいろなポスターというか紙を張ったりしますね、そうした行為は張り方によってはこれに該当するのですか、しないのですか。
○香川政府委員 労働組合等がそういった不動産にビラを張るというようなことは、ここで言う「不動産の価格を著しく減少する行為」ということには絶対当たらないと思います。
○稲葉(誠)委員 だれも労働組合と聞いてないじゃないですか。だれも聞かなかったでしょう。あなたの方で勝手に答えているのじゃないですか。そんな予断を持って答えちゃだめだよ。 それから、未払い賃金は民法ではたしか六カ月の先取り特権でしたよね、昔は。あれはどういうふうに変わったんでしたっけ、まだ変わらないのかな。
○香川政府委員 民法は変わっておりません。
○稲葉(誠)委員 民法は変わらない――どうして変わらないの。何か変わる話があったんじゃないですか。いまどういうふうになっていましたっけ。非常に少ないのじゃないですか。ちょっと民法、雇い人給料で六カ月じゃなかったつけ。明治時代にできた法律でどうして変えないのですか。
○香川政府委員 法制審議会の民法部会におきまして、先取り特権の制度全般について検討する際には当然検討されると思うのでありますが、いままでお説の問題についてまだ検討はされておりません。民法はもちろん変わっておりません。
○稲葉(誠)委員 民法が変わっていないとすると、この先取り特権はどういう程度でしたっけ。
○香川政府委員 賃金債権六カ月について先取り特権が発生するわけです。
○稲葉(誠)委員 そうすると、それで差し押さえや何かはできるわけはわけですね。そうすると、いま言った労働組合などがその物件なりを持つということになった場合には不動産の価格を著しく減少する行為には該当しないというけれども、該当する場合もあるのですか。
○香川政府委員 先ほど申しましたように、不動産を著しく損壊するような行為をいたしますれば該当いたしますけれども、ただ管理しているというだけでは、生産活動は続けておりましてもこれには該当いたしません。
○稲葉(誠)委員 ちょっと時間が来たものですから、この辺でやめて、また後でやります。
○鴨田委員長 大体十分おやりになりまして、御苦労さんでございました。 次、鳩山君。
○鳩山委員 司法書士法の改正案第三条についてお尋ねをいたします。 第三条の一号はいいわけでありますが、二号に「裁判所事務官、裁判所書記官、法務事務官若しくは検察事務官としてその職務に従事した期間が通算して十年以上になる者又はこれと同等以上の法律に関する知識及び実務の経験を有する者であって、法務大臣が司法書士の業務を行うのに必要な知識及び能力を有すると認めたもの」私はこの第三条の第二号の意味がわからないわけであります。ということは、法務大臣がこいつは知識や能力を十分持っていると認めた者に限るというのは、裁判所事務官、書記官、法務事務官、検察事務官にもかかるのか、それともこれらにはかからず、これらの人たちは従事した期間が十年以上たっておれば自動的に司法書士となる資格を有して、それらとは別に同等以上の法律に関する知識及び実務の経験を有する者にのみこの法務大臣が認める云々がかかるのか、どちらであるかをお教えいただきたいと思います。
○香川政府委員 裁判所事務官等の十年以上になる者につきましても、この後段の法務大臣が「能力を有すると認めたもの」というのはかかるわけでございます。
○鳩山委員 しかしこれはそうは読めない。この条文を読みまして、最初の四つは自動的になるんだ、そうでなくて最後のものだけが法務大臣が認める云々という条件がかかってくるんだと読み取ってしまうような素人がもしいたとしてもおかしくはないとお考えになりませんでしょうか、この条文の文章構成で。
○香川政府委員 これは素人がとおっしゃれば答弁にならないのでございますけれども、一つの条文の約束事がございまして、ごらんいただきますとわかりますように、期間を「通算して十年以上になる者又は」云々の「者であって」の下に「、」をつけまして、そして「法務大臣が」云々と、こういうふうに書いているわけでございますから、お説のような読み方は絶対にできないというふうに考えます。
○鳩山委員 実はそういうことで先ほど、きょう傍聴に見えておられます日弁連の方にもお尋ねをいたしましたら、法律の専門家ならばいま局長おっしゃったように読めるということでありました。しかし横山委員に、これは先生どう読みますかと言ったら、いや、これは読み方がわからないと横山委員は率直に私にお話しになった。横山先生はこの法務委員会の大ベテランであり、しかも国会一の勉強家であられる方がやはりこれは非常に読みにくいぞとおっしゃるわけです。この「、」の位置で確かにおっしゃるとおり私も理解できないことはないわけでありますけれども、法律というのはやはり素人でもわかるような、もっとわかりやすいものでなければいけないというのが私の年来の主張でございますので、これは何かもっとうまい書き方がないか、御検討をお願いをしたいと思うわけでございますが、いかがでございますか。
○香川政府委員 答弁になりませんが、これはうまい書き方でございまして、もっと素人わかりするようにということになれば繰り返すほかはないのでありまして、そういうことは恐らく現在の法制局ではちょっと認めていただけないのじゃないかと思うのであります。しかも実質考えますと、上の方が十年になれば当然なれるというのに、下の方が同等以上の知識、能力がありながらさらに認定が要るというのは、これは矛盾でございますから、実質を考えましてもこれを誤解される心配は私はないというふうに思っております。
○鳩山委員 裁判所の事務官、書記官その他は法律に大変詳しい方々でありましょうから、将来の司法書士を目指しておられる方は自分に関することで、十分な法律知識を持っておられれば誤解はないと思いますけれども、たとえば裁判所の事務官や書記官の息子さんやお嬢さんが、どういうわけかこの司法書士法というものを見て、うちのお父さんはもう十年以上やっているからきっと司法書士になれるんだなと思ったら、大臣が認めてくれなかったなどということであるとやはりかわいそうだなというふうに思うわけであります。 それから、第六条の三の一号「その業務を廃止したとき。」、その業務の廃止というのはどういうふうな場合を指しておられるわけですか。
○香川政府委員 もう司法書士としての、いわば俗に申しますれば商売をやめるということでございますけれども、この六条の三は、御承知のとおり業務を廃止したときに登録を取り消すということになっておるわけでございまして、これは業務の廃止届を法務局に出していただいて、それによって登録を取り消す、こういう仕組みになるわけでございます。
○鳩山委員 それは業務をもうやめたという申し出を正式にした場合ということでございますか。
○香川政府委員 この登録を法務局長が取り消します場合はまさにそのとおりでございます。
○鳩山委員 私、きのう実は出張しておりまして、当委員会に出席をしなかったものですから、昨日の質疑がわからないわけでございます。 第五条の司法書士試験について、民法、商法、刑法と書きながら憲法というものが入っていないという御質問がすでにあったそうでございますが、どのようにお答えになったのか、あらましだけでもお聞かせいただきたいと思います。
○香川政府委員 この司法書士の試験と申しますのは、いわば実務能力を試験する点に重点があるわけでございます。さような意味で、一般に他の業法、税理士法等の業法におきましても、憲法それ自体を試験科目に法律で決めておる例はないわけでございます。ただ、憲法感覚と申しますか、そういうことが必要だということはそれなりの理由があるわけでございます。したがって、憲法というものが司法書士の業務を行うに必要な知識ということに解釈できないわけでもございませんので、この五条二項三号の規定によりまして、憲法も試験するというふうなことを現在検討中でございます。
○鳩山委員 私はこれで簡単な質問を終わりますけれども、最初に申し上げた法律の条文の書き方というのを、これからは大きな課題にしていただきたいと思います。小学生の国語の教科書を見ますと「キカラオチテクビヲオッタ」というような電報が来た、これを「木から落ち手首を折った」と読むか「木から落ちて首を折った」と読むかによって、その電報の重要性というのはまるつきり変わってくるということが、小学校の国語のほとんどの教科書に、いま出ているかわかりませんけれども、われわれのころは出ていた。そういうふうなこととはもちろんこれは多少違うわけですが、こうした条文というのは、確かに点の打ち方でこうは読まないのだ、これこれこういうふうに読むのだというお話ではありますけれども、中学生、高校生の国語の授業でこういうような文章が出てきたら、これは悪文の一つになってくるだろうと思うのです。試験の問題であれば、この文章のおかしいところはどこか指摘せよという問題に出してもおかしくないのがこの第三条一項の第二号ではないかと思いますので、法務省というのはとにかく法律の総元締めのようなところでございますので、法制審議会その他と十分御協議をいただいて、わかりやすい法律を目指していただきたく、お願いを申し上げます。 終わります。
○鴨田委員長 この際、午後二時まで暫時休憩いたします。 午後一時二十二分休憩 ――――◇――――― 午後二時三分開議
○鴨田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 内閣提出、参議院送付、仮登記担保契約に関する法律案を議題といたします。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山崎武三郎君。
○山崎(武)委員 提案理由にも述べられておりますように、民法によりますと、金銭債務を担保する法的手段としては抵当権が最も典型的かつ近代的な担保制度であると思いますが、この抵当権の利用を回避し、またはこれと併用していわゆる仮登記担保が利用されるようになった理由は何か御説明願います。
○香川政府委員 仮登記担保が比較的利用されておりますのは、町の金融機関いわゆる高利貸し等々、それから商社関係、それから正規の金融機関でも信用金庫、相互銀行あたりでございまして、抵当権を回避するというよりは、仮登記担保を使う主たる理由は、一つには今回の民事執行法が施行になりました場合は様子が変わってくるかもしれませんが、現在の競売法では非常に時間がかかるということと、なかなか高くは売れないということ、さような点をおもんばかりまして、仮登記の方がむしろ債権者に有利であるということが一つ。 それからもう一つは、抵当権の登録免許税よりも仮登記の登録免許税の方がはるかに安うございます。この登録免許税は結局債務者の負担になるので、その債務者の負担を少しでも軽減することがつまり償還能力をふやすことにもなりますので、さような登録免許税の関係が一つ。 それから、商社等におきましては、たとえばガソリンスタンドとかいろいろの商売をやっておるそういう債務者との関係がいわゆる系列化しておるわけでありまして、したがってその施設自身を、系列化を維持するために債権者が取得する必要があるというふうなこともございまして仮登記担保が利用されておる、こういうことだろうと思います。
○山崎(武)委員 譲渡担保、仮登記担保、所有権留保等のいわゆる変態担保のうち、仮登記担保については今回の立法によってその法律関係が明確にされたのでありますが、その他の譲渡担保等については立法の必要性はないのか、その現状を含めて御説明願います。また、譲渡担保、仮登記担保等の変態担保に関する一般法を制定することはできないのか、お尋ねいたします。
○香川政府委員 仮登記担保を先に制定しようといたしましたのは、それまでに幾つかの最高裁判例があるわけでありますが、昭和四十九年の最高裁判例で判例理論というものがほぼ明確になりました。ただしかし、判例の性質上、具体的なケースの妥当的な解決を図るという観点からのものでございますので、一般的な理論としてどこまで通用するか、あるいはそれに伴う周辺のいろいろの法律問題がどのようになるかという点が明確を欠きましたので、実際、第一線裁判所ではその点相当苦労しておる現状にもございます。さようなことを考えまして、早急に立法的に明確にしようということで提案した次第でございます。 譲渡担保につきましては、これは長年の判例理論によりまして実務的にはさして問題はないわけでございますけれども、何分、仮登記はまだ不動産登記法に規定があるわけでございますけれども、譲渡担保は民法その他の法律に規定がない全くの判例理論によって築き上げられてきたものでございますので、やはり立法化する必要はあるということで法制審議会において一度議論を願ったことがあるわけでございますが、緊急の先に片づける問題がその後ございましたので一時中座しておるわけでございまして、近く譲渡担保等も含めまして、いわゆる変態担保全般について法制審議会の審議を煩わしたいと考えております。
○山崎(武)委員 次に、法案の内容についてお尋ねいたします。 まず、仮登記担保契約の定義については第一条に規定されておりますが、その成立要件、対抗要件を含めて詳しく御説明願います。
○香川政府委員 仮登記担保契約と申しますのは、つまり金を貸し付けましてそれが弁済されない、不履行のときに、その債務者あるいは第三者の提供する不動産の所有権その他の権利、たとえば地上権とか不動産以外の財産権といったものを債権者に移転いたしまして、それによって債権者、債務者間の債権債務を決済することを目的にする契約でございまして、その例示的なものといたしまして、第一条に掲げておりますように、代物弁済の予約とか債務不履行を停止条件にする代物弁済契約というものが代表的にあるわけでございます。 この契約はもちろん諾成契約でございますので、契約それ自身は当事者の合意によって成立いたしますが、仮登記――将来債務不履行の際に不動産の所有権等を債権者が取得する請求権を契約の成立と同時に持っておるわけでございまして、その請求権を保全するために、不動産登記法で認められておる所有権移転請求権保全の仮登記をするということになるわけでございます。この仮登記自身はそれ自体民法百七十七条で言う対抗要件ではないわけでございますけれども、不動産登記法の規定によりまして、将来仮登記に基づく本登記がされだ場合にはその本登記の対抗力が仮登記のときにさかのぼるということから、実質的に対抗要件と同じような効用を仮登記自身が持つという関係になる、さようなことでございます。
○山崎(武)委員 仮登記のついた代物弁済の予約や売買予約は、そのすべてが担保目的なのではなく、特に売買予約には本来の予約である場合も多いようであります。しかし、登記簿を見ただけではそれが果たして担保目的であるのかそうではないのか、担保目的であれば被担保債権は幾らかということはわからないので、第三者に不測の損害を与える可能性があると思いますが、担保目的なることの立証はだれがなすべきであるかを含め御説明願います。
○香川政府委員 担保目的のための仮登記の公示の問題といたしまして、確かに登記上それを明らかにすることも問題として提起されておったのでございますが、いろいろ審議されました結果、やはり相当技術的に困難であるということがございまして、特に公示上仮登記担保であることを明らかにする登記をするようにはいたしておりません。したがって、お説のとおり、第三者が見ました場合に、果たしてそれが仮登記担保なのか、それとも純然たる所有権移転の仮登記であるのかということが必ずしも明確でないということはそのとおりでございます。しかし実態を見ますと、根抵当権と併用される例もございますし、また所有権移転の仮登記の登記原因といたしまして債務不履行を停止条件にするというふうなことが記載されるのが多くあるわけでございまして、さようなことが公示上全然出ていない場合には、一般第三者は債務者あるいは債権者に当たってその調査をするということにならざるを得ないわけでございます。当該仮登記が担保目的のものであるということの立証はもちろんその債権者がすべきものであります。
○山崎(武)委員 仮登記担保契約による所有権移転にっき、予約完結の意思表示のほかに、債務者等に対する清算金見積額の通知及び二月の清算期間の経過を要するとした趣旨は何か、御説明願います。
○香川政府委員 これはつまり、基本的にはその仮登記担保権利者が債務の弁済にかえて不動産の所有権のまる取りを禁止するということでございますけれども、ただそのためには、その不動産の時価と申しますか価額、これと被担保債権との差額を債務者に返還するということになるわけでございますけれども、その不動産の価額、時価が果たして幾らであるか、あるいは債権そのもののトータルが幾らであるか、さようなことを前提にして初めて差額が出てくるわけでございまして、そういった関係について、やはり債務者のみならず他の利害関係人との間の調整と申しますか、そういったことも必要であります。したがって、契約によれば所有権を取得するべき日に所有権を移転するということではなしに、お尋ねのような、通知をしてそして二カ月を経過した時点でその所有権が移転するという構成をとりまして、しかも、その差額を算出するための不動産の価額というのがこの二カ月の期間経過時においての時価ということで、その辺の関係を明らかにした次第でございます。
○山崎(武)委員 本案によりますと、目的不動産の評価は債権者が行い、その評価額については後順位担保権者は争えないようになっております。ただ、後順位担保権者は通知を受けた清算金の額に不満であれば競売を申し立て、競売手続の中で解決する道が残されているようでありますが、競売の実情から見れば、それが後順位担保権者に有利であるとは思いません。目的不動産の評価額について何らかの公的機関の判断を求められるようにすべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。また、債権者の評価額が著しく不当であるとして債務者が清算金の受理を拒んだ場合はどうなるでしょうか、お尋ねいたします。
○香川政府委員 まず後順位担保権者でございますが、仮登記担保権者の通知に係るその差額と申しますか、それが後順位担保権者が見てもっともな正当なものであるということになりますれば、その差額、債務者が持つその差額の返還請求権に対して物上代位していく。しかし債権者の提供するその差額が不当に安いということでありますれば、お説のとおり競売によって決着をつけるということにいたしておるわけであります。確かに現行の競売におきましてはなかなか時価どおりには売れないことがあるわけで、必ずしも後順位担保権者に有利とはならないのでありますが、そういうことも背景にいたしまして、そして恐らくは仮登記担保権者、債務者、後順位担保権者間でいろいろの利害得失を考えて話し合いがなされることも期待してよかろうかと思うのであります。しかし、競売がそれ自体安くしか売れないということは何としても放置できないことでございまして、御審議願っておる民事執行法が施行されればそのようなことはまずなくなるであろうことを期待いたしておるわけでございます。 それから、債務者が債権者の通知に係るこの差額について不満であるというときには、所有権移転の登記に応ずる債務者の義務とそして差額の支払いの仮登記担保権者の義務とを同時履行の関係にいたしておりますので、したがって、提供する差額が不満であれば登記の申請を債務者の方で拒絶する、同時履行の抗弁権を行使いたしまして登記申請を拒絶するという防衛手段があるということになろうかと思います。
○山崎(武)委員 第十条は、土地について担保仮登記がされたときの法定借地権について規定しておりますが、建物について担保仮登記がされたときの法定借地権についての規定を設けなかった理由は何か、お尋ねいたします。
○香川政府委員 これはいわゆる法定地上権の制度というのが現在民法の抵当権についてあるわけでございます。その抵当権に関する法定地上権の規定は、お説のとおり土地あるいは建物いずれに抵当権が設定された場合についても法定地上権が発生することになっておるわけであります。民法の体系では担保権の場合に限ってそういった規定を設けておる。これを一般的に広げるためには、やはり民法自身の改正が必要であろうかと思うのであります。しかし、さればと申しまして、この仮登記担保の場合を考えますと、建物が債務者のものでありまして、そして土地について担保仮登記がされました場合を考えますと、仮登記に基づく本登記がされることによりまして、債務者は建物所有のための敷地についての利用権を失うことになるわけでありまして、したがってその土地から建物を収去しなければならない。土地の不法占有という状態になってくるわけであります。これはやはり債務者保護の観点から欠けるところがあるということで、債務者保護を図ることを第一に考え、しかも建物の効用を維持するという観点を考えまして、変態的ではございますけれども、土地について仮登記がされたときだけについて法定借地権を認めることにしたわけであります。 建物について仮登記がされます場合に、その建物と土地、敷地の所有者が同じ債務者である場合には、通常は建物、土地ともどもその仮登記の目的にされるわけでございまして、実際問題としては弊害は生じないというふうな考えで、土地について仮登記がされた場合の手当てだけをいたした次第でございます。
○山崎(武)委員 第十一条によりますと、第三者が所有権を取得したときは債務者は受け戻しを請求することができないとされておりますが、その意味はどういうことなのか。債権者が清算期間の満了後直ちに不動産の所有権を第三者に譲渡したとしても、第三者が所有権移転登記を受けていないときは、債務者は受け戻しを請求できるものと思われるがどうなのか、お尋ねいたします。
○香川政府委員 仮登記担保権者が差額を支払いまして、清算金を支払ってその不動産の所有権を取得したという場合に、多くの場合には、その不動産なら不動産を債権者が持っておることに意味があるわけではなくて、やはりそれを転売して資金の回収を図るということが通常であろうかと思うのであります。したがって、第三者に転売した場合につきましてもその債務者が第三者に対して受け戻し権を行使できるということに相なりますと、きわめて取引の安全を害しますし、また債権者の資金回収にそごを来すおそれもないとは言えませんので、したがって、第三者に所有権が移転した場合には受け戻し権は消滅するというふうにしたわけでございます。 もっとも、この場合の第三者に所有権が移転した場合というのは、もちろん対抗要件を備えたときでございまして、したがって、第三者に所有権移転登記がされていなければ、債務者は依然として仮登記担保権者のもとに所有権があるということで受け戻しの請求ができるということになろうかと思います。
○山崎(武)委員 最後に、この法案成立後における仮登記担保の利用の予測はどうなるか、お尋ねいたします。
○香川政府委員 先ほども申し上げましたように、一連の最高裁判決によりまして、いろいろの場合についての判例理論が示されておるわけでございますけれども、判例の性質上すべての問題について解決されているわけではないわけであります。この法案が成立いたしますと、現在実務上問題になっている解釈上いろいろ疑義のある点がある程度解明されることになると思いますので、したがって、今日判例理論のもとでいささか疑問があって仮登記の利用をちゅうちょしている向きがあるそうでございまして、さようなことが、立法化されることによりまして安んじて利用できるということになろうかと思いますので、急激にふえるというふうなことは考えられませんが、旧に復するというふうなことになろうかと予測いたしております。
○山崎(武)委員 終わります。
○鴨田委員長 次に、稲葉誠一君。
○稲葉(誠)委員 民事執行法についてはまだたくさん質問が残っていますけれども、一応次回に譲ることにさしていただいて、仮登記担保契約に関する法律案、これについて質問をさせていただきます。 問題になっておりますのは、抵当権という制度ですね、これはどこから発達した制度なんですか。
○香川政府委員 近代的な意味の抵当権につきましては、ドイツ、フランス、そのあたりから発達してきたと申しましょうか、立法化されて今日に至っておるということだろうと思います。
○稲葉(誠)委員 ドイツとかフランスとは法律のたてまえは全然違うのじゃないですか。第一、法律行為というか、物権の移動が全然違うのじゃないですか。ドイツの場合は登記がなければ移動しない、フランスの場合は意思主義だ、こういう形になっているのじゃないですか。日本の場合はどっちのやつをとったのですか。
○香川政府委員 日本の抵当権の民法の規定の法源と申しますか、母法というのは、必ずしもドイツでもないし、まあフランスに近いのかもしれないと思うのであります。 ドイツの抵当権、日本流に言えば抵当権というのは、御承知のとおり、所有者抵当もございますれば、いわゆる土地債務のようなものもございますので、いろいろ機能が違うわけであります。そういう意味から、付従性を非常に厳格にしておる日本の抵当権というのは、あるいは見方によればわが国独自のものかもしれないというふうに見られると思うのであります。
○稲葉(誠)委員 いま民事局長が言うので学生時代の授業を思い出したのですが、所有者抵当は、ドイツで認められておって日本の場合は認められておらないわけですね。それはどこにその理由があるのですか。日本の場合でも所有者抵当を認めた方がいろいろな場合に便利ではないかというような議論もたしかあったように思うのです。我妻さんの本か何かに書いてあったような気がするのですが、日本の場合にどうして認めないのですか。
○香川政府委員 所有者抵当というのは、御承知のとおり、自分の不動産に自分が抵当権を設定して枠をとっておく、将来金を借りるときにその枠を利用する、こういう形態のものであるわけであります。確かにそういう制度があればそれなりに便利さはあると思うのでありますけれども、これは全く債務がない抵当権を認めることになってくるわけでありまして、民法体系から物すごく外れる制度であるわけであります。そういうところから、やはり抵当権自体を抜本的に改正する作業の中で取り組むべき問題でありまして、現在の抵当権をそのままにして所有者抵当を導入するということは、やはり理論的には相当矛盾といいますか無理がある面がある、そういう点が一つ。 それからもう一つは、ドイツと違いまして、わが国にそういう所有者抵当の制度を導入いたしましても、果たして不動産の所有者なら所有者が自分で抵当権を設定しておいて、将来金を借りるときにその枠を利用する、つまり順位を確保しておくというふうなことで利用することができるだろうかという、そういう実態の問題があるわけでございます。恐らくわが国の場合には、まず金を貸すときには何といっても債権者は順位をやかましく言うわけでございまして、したがって、所有者抵当を設定しておいたままで後順位で新たな取引をするなんということは、まず日本では考えられないことだろうと思うのであります。そうすれば、結局、所有者抵当を認めましても、余り利用されないというふうなことになるのではなかろうかというふうにも思われるわけであります。 もともと学者等におきまして所有者抵当の導入をおっしゃる方は、近代的な抵当権として付従性を否定した一つの価値権というものを確立すべきだ、そういう理論から出発しておる問題の一環だと思うのでありまして、果たしてそういう価値権というふうにすること自身が日本の抵当制度に実際界においてマッチするかどうかということはやはり見きわめなければならぬ問題かと思うのであります。 しかし、いずれ法制審議会におきまして、先ほど申しましたように、変態担保もあわせて抵当制度全般の見直しをしていただく予定にいたしておりますので、その際この問題も議論されるだろうというふうに考えております。
○稲葉(誠)委員 抵当権の利用を回避し、または併用して代物弁済の予約等を原因とする所有権移転請求権保全の仮登記と、非常にややこしい形をとるのですが、抵当権なら抵当権の場合は、これはそれでわかりますが、これと併用して代物弁済の予約等を原因とする所有権移転請求権保全の仮登記、この両方を使うということをどうして認めたのですか。これは慣習としてそういうふうにずっとなってきてしまったからしようがないと言えばしようがないのですけれども、片方の抵当権の場合は、所有権は相手方にあるわけですね。相手方というか、債務者にあるわけだし、片方の所有権移転請求権保全の仮登記といっても、当事者間においては意思表示によって所有権が移転するとなれば、こちらの方に所有権があるという前提に立つわけではないのですか。そうすると、相矛盾する理屈で、抵当権の方は乙の方に書かれるでしょうし片方は甲の方に書かれると思うのですが、理論的には矛盾する二つのものができてきて、その二つが併用されているという形になるのじゃないですか。どうなんでしょうかね。そこのところは。
○香川政府委員 後でおっしゃいました御質問を先にお答え申し上げますと、併用の場合というのは結局仮登記の面から見ますと、これは将来のことでございますが、将来その債務が不履行のときに所有権を移転するという契約による仮登記があるわけでございます。したがって、現時点におきましてはまだ所有権は移転していない、債務者の手元にある、したがって、その債務者の手元にある不動産を目的として抵当権を設定するということは可能だ、こういう理屈だろうと思うのであります。ただ、おっしゃるように抵当権と仮登記を併用するということ、これは何も私どもが奨励しておるわけでもないのでございます。登記の申請が出てまいりますれば、これは受けざるを得ないということになるのでございますが、特に積極的に認めるというふうなことではもちろんないのであります。これは私の口から申し上げるのははなはだ越権のそしりを免れませんけれども、確かに日本の金融機関の金融取引のあり方といたしまして、抵当権を設定し、しかも仮登記をつけるということは、債務者にとっては経費等の面あるいは登録免許税の面から見ましても相当の負担であるわけであります。しかも、抵当権をつけながらさらに仮登記をつけるとなりますと、さらに余剰担保価値を利用するということが非常に困難にもなるわけだと思うのであります。したがって、望むらくは金融取引のあり方として、少なくとも余分のと申しますと語弊がありますけれども、併用というような形で債務者の負担を増し、不利益を招くようなことは、むしろ正常な金融取引としては避けるべきではないかというふうに思うのでありますけれども、いろいろの競争がやはり金融面においてもございまして、金融機関として大事をとると申しますか、よその銀行がやれば自分のところもやるというような一種の風潮的なことで併用ということが戦後非常に多くなってきたように承知いたしております。だから、私どもとしては機会あるごとに、そういう登記所の手数も大変でございますので、そういうことはなるべく避けた方がいいのではないかということを意見としては申しておりますけれども、なかなか改まっていない現状だろうと思うのであります。 ただ、今回の仮登記担保法が制定されますと、仮登記の担保的な機能という面を法律で公認している面もあるわけであります。たとえば第三者が目的不動産の競売をした場合には、抵当権と同じような扱いで優先弁済権が受けられるということにはっきりするわけでございますので、そういう面から考えますと、なおさら抵当権と仮登記を併用するという必要性はますますなくなってくるというふうに思われるわけでありまして、併用はなるべく避けるようにひとつ良識を持って対処していただきたいというふうに希望いたしておる次第でございます。
○稲葉(誠)委員 これは抵当権設定の場合の費用とそれから仮登記の場合の費用とでは、費用のかかり方が違うのですか。
○香川政府委員 抵当権についてまず登録免許税を申しますと、債権金額の千分の四でございます。そして仮登記を使いました場合に、所有権移転請求権の仮登記というふうな場合には、不動産の価額の千分の六でございます。不動産の価額は固定資産税の評価額によっておりますのでずっと安くなる、こういう関係になろうかと思います。
○稲葉(誠)委員 そこで、仮登記しておいても仮処分がしてなければ所有権を移転してもいいわけでしょう。そうすると、仮登記を本登記に直せという訴えを起こす、その場合にその所有権を後順位に取得した人の承諾が要るわけですね。これはどういうわけで承諾が要るのですか。あるいは承諾にかわる書面というのが要るわけですか。
○香川政府委員 そのような手続になりましたのはたしか昭和三十五年の不動産登記法改正の際だと思うのでありますが、従来は、甲から乙に所有権移転の仮登記がされておった場合でも、甲から丙に所有権移転の登記ができるわけでございます。その場合に、乙の仮登記が本登記に直るということに直します場合に、すでにその所有権移転の登記を受けておる丙の承諾というのは要らないわけでございます。その結果、一つの不動産について乙の所有権と丙の所有権が併存する状態になるわけでございます。これは法律的にはあり得ないことなんでございますが、その後始末について、御承知のように明治の大審院の判例以来いろいろ問題がございまして、合理的に解決する判例理論というのはなかなかないまま戦後になったわけでございます。したがって、そういった法律的な混乱と申しますか、そういうものをなくする意味で、不動産登記法の改正によりまして、いまの例で申しますれば、甲から乙への仮登記に基づく本登記を申請する際には、すでに移転登記を受けておる丙の承諾書を添付するということにいたしまして、その承諾書が添付されなければ乙の本登記申請は却下されるわけでありますから、承諾書を添付して乙の本登記がされますと、それと矛盾する丙の所有権の取得の登記を職権で抹消する、こういうようにして法律関係の明確化を図ったわけでございます。 この場合に、なぜそれでは丙の承諾書が要るかという実態的な面でございますけれども、甲から乙への仮登記がされておりましても、その仮登記が無効な場合もあるわけでございます。それから、まだ所有権が移転してないのに本登記の申請があるというようなこともあるわけでございます。それは登記官の形式、審査ではわかりませんので、したがって最も直接の利害関係のある丙の承諾書をつけることによりまして、丙がそれを承知しているなら、乙の所有権の取得が適法であり、それによって丙の所有権が否定される、こういう関係になりますので、職権抹消しても差し支えない、こういうふうな論法で改正がされたわけでございます。
○稲葉(誠)委員 普通の仮登記の場合に、たとえば売り主が仮登記を承知しない場合、そのとき仮登記仮処分という形を裁判所を通じてやるわけですね。これはどうして仮登記仮処分と言うのですか。仮登記仮処分、そんなものは制度としておかしいのだと言う判事さんもいるんですよ。なぜ仮登記仮処分と言うのですか。
○香川政府委員 まあ、おかしいのだとおっしゃるのは、つまり民事訴訟法の仮処分と同じようなものというふうに考えられるおそれがあるから、むしろ名前を変えた方がいいのじゃないかという御意見も出てくるかと思うのでありますけれども、これは不動産登記法制定当初からある制度でございまして、性質は現在では非訟事件だと言われておるわけであります。仮登記仮処分命令というのを裁判所が出して、それによって債権者が単独で仮登記ができることになるわけでございますが、これは制度的にむしろそういうものをやめてしまった方がいいんじゃないかというふうな意見もございますし、あるいはむしろ民訴の仮処分の中に包摂したらどうかというふうな意見もあるようでございますが、いろいろ検討いたしましても、やはり現行の仮登記仮処分命令という制度の方が理論的にもすっきりしていいのじゃないかというふうなことでそのまま残っておるわけでございまして、ただ、問題はないとは申せませんので、この面はいずれ民事訴訟法の仮処分の実体規定の改正を検討する際に、この問題もあわせて検討してはどうかというふうに考えております。
○稲葉(誠)委員 仮登記命令というのではまずいのですか。何で仮処分という言葉がついているのでしょう。
○香川政府委員 明治以来、法律の条文にそういう名称をつけて規定されておるからなんでございますけれども、なぜ仮処分というふうに入れたのか、つまり恐らくは仮登記というものは広い意味では二種の仮処分的なものなんだ、だからそれを裁判の面から見ればやはり仮処分に類するものだというふうな考えからではなかろうか、これはあくまでも推測でございますけれども、仮登記命令でも決しておかしいわけではないと思います。
○稲葉(誠)委員 裁判所によっては、そんなのはおかしいからと言ってなかなかやらない裁判官がいるのですよ。ぼくはある裁判官にぶつかりまして、仮登記仮処分なんてそんなことはおかしい、根本的に筋が違うんだからと言ってなかなかやってくれないので弱ったことがあるのですがね。それで記憶しておるのですけれども、それはそれとして、そこで問題になりますことは、抵当権よりも仮登記担保契約の方が従来使われておったという一つの理由は、債権者にとって債権回収の迅速性及び利得の大きさということにあった、こういうことは一つの理由ですね。そうすると今度は、利得の大きさという点についてはこの法案によってなくなるわけですか。なくなるんだけれども、なくなるのについては手続が要る、なかなかややこしくなってきているわけではないのですか。
○香川政府委員 従来の仮登記を使います場合には不動産をまる取りするわけでございますが、多くの場合には債権額の方が不動産の価額よりも低うございますから、それだけ利益が大きいということになっておったわけでございます。それが判例理論、それからこの立法によりまして、不動産価額の方が債権額よりも大きい場合にはその差額を債務者に返さなければならぬということに相なりますと、従来仮登記が使われておった利益というものがなくなることになるわけでございます。しかし、先ほども申しましたように、たとえばガソリンスタンドに営業資金を貸するとうふうな場合に、万一そのガソリンスタンドがつぶれました場合あるいは営業をやめる場合に、その施設、主として不動産でございますが、それを商社が取得して、そして新しい系列下に入る者にそこでガソリンスタンドを営業させるというふうなことを考えますと、その面の系列化の関係では役立つ面があるわけでございます。そういう意味から、差額を吐き出すことになったからといって、仮登記が使われることが少なくなるというふうには見ていないのでありますが、これはやはり実施してみた上でさらに考えなければならぬわけでございますけれども、すでにこの立法以前に、最高裁の判例で利得を吐き出す、差額を返還するということになっておりましても、そういう面での仮登記はやはり相当利用されておる、そういう状況から見まして、同じような状況の利用関係を続けるのじゃないかというふうに見ております。
○稲葉(誠)委員 これは従前でも、この最高裁の判例が出る前でも、実際の債権額と、まる取りをする物件の価額とがどの程度、違っていた場合に九十条違反ということで判例でその代物弁済は無効だというようになっていましたね。どの程度でしたか。半分でしたか、あれは。半分以下の債権で物件を取ってしまうというと――大体基準ははっきりしてなかったけれども、半分か、三分の一か、五分の一か、物によって違うかもしれぬけれども、そのときの金を借りた状況とかなんとかによって違うかもわかりませんけれども、たしか九十条違反でやったと思いますが、大体どの程度でなっていたわけですか。
○香川政府委員 九十条違反で無効というのはいわゆる暴利ということになるからだと思うのでありますが、したがって、率直に申しまして債権額の何倍になれば暴利になるかということ、これはなかなかむずかしゅうございますけれども、判例によって、たとえば八倍以上とか八・五倍になればということもいろいろございますけれども、これは一つは不動産の評価自身がやはり相当むずかしい問題でございますし、なかなか数字的に何倍になれば暴利になるというようなことは決めかねる問題ではなかろうかと思います。
○稲葉(誠)委員 それはそのとおりで、何倍だということで決めるわけにいかないので、判例によっても違うし、そのときの金を借りた事情とかすべての状態を判断して決めるべき問題ですから一概に言えないものだ、こういうふうに思いますが、もう一つの問題は、抵当権の場合には、被担保債権の範囲についての制限があるわけですね。これが仮登記の場合にはないということで利用されたのだ、こう思うのですけれどもね。だから結局、仮登記の方法によってこういうような債権担保というか、形がとられたということは、一種の脱法行為じゃないんですかね。ただ、それが慣習として長い間行われておったから違法性がないのかもわかりませんが、どうもそういう点で余り芳しくない方法だというふうにもとれたわけです。 それから、民法三百七十四条で被担保債権の範囲について抵当権の場合に制限を設けたのはどういうわけなんですか。
○香川政府委員 三百七十四条は、これは第三者に対する関係で元本のほかは利息、遅延損害金通じて最後の二年分ということになっているわけでございます。これは多くの場合抵当権は登記されるわけでございまして、そのときに債権額と利息に関する定めが登記される。そうすると余剰担保価値を利用して後順位で抵当権を取得しようとする者は、先順位の抵当権でどこまで優先されるかという計算ができなければならぬわけであります。そのときに民法で最後の二年分ということになっておりますれば、元本とその最後の二年分をトータルしたものが優先されるということで余剰担保価値の把握ができる、こういう考え方だろうと思うのであります。 今回の仮登記の場合につきまして、第三者が目的不動産について競売いたしました場合に、抵当権と同じような扱いにするという関係から仮登記権者が優先弁済金を受けるのは、元本のほかは抵当権と同じように利息、遅延損害金を通じて最後の二年分ということにいたしておるわけでありますけれども、所有権を取得するという関係での場合には利息、遅延損害金というそういう制限は設けておりません。これは仮に設けたといたしましても、差額をその債務者に返すわけでございますが、しかし二年分を超える利息、遅延損害金が残っておりますれば、その差額の返還債務と相殺してしまえば同じことなのでございます。したがって、そういう二年分に限定するということは、所有権を取得する場合には意味がないというふうに考えておるわけでございます。
○稲葉(誠)委員 これは登記簿を見てみますと、いろいろなものがくっついておってよくわからないのですがね。 たとえば、代物弁済の予約と停止条件つき代物弁済契約というのとは、具体的な例を挙げるとどういうふうに違うのですか。
○香川政府委員 登記簿面にあらわれておりますそういった登記原因の記載というのは、どこまで法律的に整理をされて意識して記載されているか、申請がされているか、私もつまびらかにいたしませんけれども、法律的に言えば、代物弁済の予約というのは、これは債務不履行になりましてから、まあ場合によれば債務不履行になる弁済期到来と同時でもいいわけでございますけれども、その代物弁済の予約の完結の意思表示を債権者がする、完結の意思表示をすることによって代物弁済契約が成立するわけでございまして、代物弁済契約の成立によって所有権が債権者に移転する。で、債権債務はそこで清算される、こういう関係になるわけでございます。 一方の停止条件つき代物弁済契約というのは、まさに債務不履行を停止条件とする。したがって、債務不履行になりますと途端にその停止条件、条件が成就することになるわけでございまして、自動的に代物弁済契約が成立する。完結の意思表示は要らぬわけでございます。そこの違いがあるんだろうというふうに考えます。
○稲葉(誠)委員 それはそのとおりなんですが、そうすると、いまの代物弁済の予約と停止条件つき代物弁済契約というのは、実際の社会ではどちらの方が多く使われているのですか。これはもう登記簿見てもよくわからないのですよ、またいろいろなのがくっついていましてね。
○香川政府委員 そこのところ、やはり法律的によく考えて使い分けしている場合ですと、抵当権を併用している場合はむしろ代物弁済の予約の方が多いのではなかろうかと思うのです。つまり債務不履行の時点になったときに抵当権を実行するか、それとも代物弁済をとるか、そこの選択の余地を残すという意味で代物弁済の予約が多かろうというふうに思うのでありますが、実際その二つ、どちらがよけい使われているかということは調査したこともございませんのでよくわかりませんが、多くの場合は、余り厳密に法律的に考えて先ほど申しましたような差異を意識して使ってない場合も相当ございますので、そこのところはどうもはっきりいたしません。
○稲葉(誠)委員 だから、代物弁済の予約なら予約完結権というものをあれしなければいけないわけですから話はわかるんですが、抵当権と停止条件つき代物弁済契約と併用しているという場合もあるわけですか。そうすると、一定の弁済期が来るというと所有権は移っちゃう。そうすると抵当権は自己抵当でなくなっちゃうわけだから消滅しなければならないわけでしょう。そこはどういうふうにするんですか。
○香川政府委員 抵当権と併用の場合でも、判例の考え方としましては、停止条件つき代物弁済契約の仮登記がされておりましても自動的に所有権が移るというふうには当事者の意思としては解すべきでないというふうな考え方がございまして、やっぱり選択するんだというふうなこと、これは一つは、停止条件つき代物弁済で代物弁済契約が成立いたしましても、債権債務が清算される、つまり債務が消滅する時点というのは不動産の完全な所有権の移転ということを言うわけでございます。これは端的に言えば登記というふうなことになるわけでございますが、それまでに期間がございますので選択ができるというふうなこと、したがって判例上前提にしますと両者の差異はほとんどないというふうなことになるわけでございます。
○稲葉(誠)委員 第一条に「その契約による権利について仮登記又は仮登録」というのがありますね。仮登記はいいのですが、仮登録というのは何を言っているわけですか。
○香川政府委員 鉱業法による採掘権あるいは工業所有権ですね、実用新案権とか特許権とか、そういった対抗要件としての登録制度をとっておるものを言っておるわけでございます。
○稲葉(誠)委員 鉱業法で言っておる登録の中に、ちょっとぼくも忘れましたが、担保に入れることのできない権利もあるんじゃないですか。ありましたね。何でしたっけ、忘れちゃったけど。
○香川政府委員 全部記憶しておりませんが、一番最たるものは、たとえば漁業権は一定の場合しか一般的には担保に供せないことになっておったと思います。これは登録制度でございますけれども。工業所有権については担保に提供できないということになっておるのはたしかないと思います。それから電話加入権は、あれは質入れでございまして、抵当権はないわけです。そのほか――まあいま思いつくのはその程度でございます。
○稲葉(誠)委員 よく思いついたと思いますよ。なかなかあれだからね。 そこで、またわからないのは、たしか民法でしたか、流質契約がありますね。流れ質。ところが流れ抵当というのは、これは直流れというのか抵当直流れというのですかね、これが有効だというんでしょう、明治以来の判例で。片方で流質法が禁止されておって、片方において抵当の直流れが認められておったというのは、これはよくわからないのですがね。これはどういうわけなんでしょうかね。
○香川政府委員 民法におきましては質権というのは主として動産質が主でございますけれども、これは少額の債権担保、しかも経済的に弱者といいますか、一般庶民の金融担保というふうな性格が強い。したがって、経済的弱者である債務者を保護する意味から流質を禁止するということにしておるわけでございます。 それに対して流抵当禁止の規定が民法にはないのはお説のとおりでございまして、したがって流抵当は有効ということになるわけでございますけれども、これはまあ民法制定当時におきましても、あるいは今日においてもそうかもしれませんけれども、不動産を持っておってそれを担保に提供できるというのは決して経済的な弱者じゃない、そういうふうな考え方があったのではなかろうかというふうに思われるわけであります。ただ、そういうことがうかがえますけれども、流質につきましても、御承知のとおり営業質屋法の方ではこれは解除しておるわけでございますから流質は有効ということになるわけでございます。それから商法におきましては商事の関係の流質は有効でございますから、やはり民事的な一般庶民の債務者保護というふうな観点からのみ流質禁止の民法の規定が設けられている、こういうふうに理解すべきでなかろうかと思います。
○稲葉(誠)委員 そうすると抵当流れですね、抵当直流れというのか流れ抵当というのか、これは具体的にどんなもので、この仮登記担保契約のこの法案ができることによって、これはどうなんですか。これは関係ないのですか、全然。どういうふうになっているの、これ。
○香川政府委員 流質と対比した意味で流抵当という言葉が民法の書物なんかにも出ておるわけでございますけれども、流質と同じ性質のものを考えるといたしますと、動産を質物として質権を設定して、その債務が支払えないときにはそのまま質物が質権者に帰属する、もちん債務者の方は債務がなくなる、こういうことでございますから、したがってそれをそのままそっくり持ってまいりますと、流抵当というのは、不動産を抵当権の目的にした場合に、債務不履行ということになれば抵当の目的不動産が債権者に帰属して債務は消滅する、こういうことになるわけでございますから、機能的に見ればまさに代物弁済予約の仮登記と同じような機能を持つという結果になるわけでございます。したがって、そういう意味では、この仮登記担保法というのは、ある側面ではまさに流抵当の法律と言っても実質はおかしくない面があると思います。 ただ流抵当というのは果たして、いま言った質権と対比のそういうものを言うというのは、これは民法を離れた独断でございまして、もっと広い意味に使ったっておかしくないわけであります。およそ代物弁済そのものを不動産の場合にはすべて流抵当と言ってもいいわけでございまして、さような意味で正確には対比できないわけですけれども、流抵当の一つの形態として仮登記担保というものが考えられるということは間違いないところだと思います。
○稲葉(誠)委員 それから、抵当権の場合には第三取得者から波除がありますね。仮登記の場合には波除がないですね。元来、波除という制度はどういうような意味でできたのですか。どういう働きをしているわけですか。
○香川政府委員 濃除の制度を民法に設けた当時におきましては、抵当不動産について所有権あるいは地上権を取得したいわゆる第三取得者の権利喪失を防止しようというふうなことだけだったと思うのであります。しかし実際問題として、これは今日では余り使われておりませんけれども、使われている場合はむしろ抵当権の実行を妨害する手段として使われるというふうな弊害面だけが出てきておるわけでございまして、だから、その面で先ほど申しましたように、抵当権全般の改正を考えます場合には滌除というものはむしろ廃止の方向で検討されるのではなかろうかと考えておるわけでございます。
○稲葉(誠)委員 三百九十五条の例の短期賃貸借の関係と抵当権の場合は、普通は保護されるわけですね。そうすると、今度の仮登記担保契約になると民法三百九十五条との関連というのは全然出てこなくなるわけですか。
○香川政府委員 抵当権実行の場合の短期賃貸借の保護、これは理屈はよくわかる。理解できるところなんですけれども、御承知のとおり、現在ではむしろ短期賃貸借というのは実がなくて、抵当権を妨害するというふうな意味に非常に使われていると言われておるわけでございます。したがって、そういうことも考え合わせまして、仮登記担保につきましては短期賃貸借の保護という規定を設けていないわけでございます。
○稲葉(誠)委員 それから、利息制限法の制限との関連で言うと、仮登記担保契約の場合の清算はどういうふうになるわけですか。それに基づいて清算するのですか。
○香川政府委員 法律的に行動するといたしますれば、もちろんその債権、金銭消費貸借の場合には利息制限法は当然適用になるわけでございますから、したがって、制限利率超過の部分は無効でございますから、清算金を算定する際には当然超過部分は無効という前提で計算されるべきものだと考えるわけでございまして、債権者がそれを有効なものとして計算して清算金を出してまいりました場合には、債務者はもちろんこの部分は無効だということで清算金の額そのものを争うということになろうかと思います。
○稲葉(誠)委員 この四十九年十月二十三日の大法廷の判決、その前に四十二年十一月十六日に第一小法廷の判決があった。その他もうこれはたくさんの判例が出ていますね。その間に矛盾があるのかどうかよくわかりませんけれども、そうすると、四十九年十月二十三日に大法廷の判決があってからこの仮登記担保契約の法案ができるまでのプロセスですね。これは、大法廷の判決があり、その前にもたくさんの判例があるので、そんなに長くかからなくても法案はできたのじゃないんですか。これはそんなむずかしいことはないのじゃないかと思うのですが、どういう点がむずかしかったのですか。
○香川政府委員 お説のとおり、四十九年大法廷判決が出るまでに、四十二年以来いろいろ最高裁の判例が出ておるわけでございます。これは、御検討いただいておわかりのとおりと思うのですが、大法廷判決になるまでの最高裁の判例というのは、まあ言い方は惑うございますけれども、前後のものが実は矛盾しているのじゃないかというふうな疑念もあったり、あるいは少数説もあったり、判例としてどう固まるかということが若干見通しが立たなかったと思うのであります。四十九年の大法廷判決が出るということが相当前もって明らかになっておりましたので、その判決を見た上で立法に取りかかろうというふうに民法部会としては考えられたわけでありまして、四十九年の十月に大法廷判決が出まして、すぐに検討に入るべきであったかもしれませんが、実際問題として、いろいろの幹事案をつくるのにも手間取ったりいたしました関係から、一年半後ぐらいの五十一年三月から民法部会において検討が開始されました。結果的に、その間一年半ばかりの間はむしろ幹事試案的なものの作成に努力しておったというふうに申し上げられると思います。
○稲葉(誠)委員 この提案理由の説明を読みますと、「この判例法理は、債権者が債務者の窮状に乗じて暴利を搾取するのを防止し、債務者を保護する観点から展開されたものでありますが、個別事案の解決を通じて展開された判例法理の性質上関係する各般の法律関係については、必ずしも疑問なしとしないし、立法的に解決すべき多くの問題点があるのであります。」こういうふうに書いてありますね。これはもちろん判例ですから、個別事案の解決ですから、判例のこの趣旨だけを見たところで、それで問題が解決するというものではありませんから、その点はよくわかりますが、その次に見ると「この法律案は、判例法理を原則として承認しつつ、」とこう書いてありますね。これは原則として承認するのはあたりまえな話なんで、最高裁の大法廷の判決を承認しなかったら、あなた大変なことになるのですから「原則として承認しつつ、」というのはどういう意味なのか。大法廷の判決を承認しない部分もあるのか。
○香川政府委員 立法以外の分野におきましてその法律解釈をいたす場合には、当然その最高裁の判例は原則どころかそのまま尊重するのがあたりまえでございます。しかし、立法するその問題といたしましては、極端なことを申し上げれば、判例と逆の立法をするということも、これは理論的には可能でございます。(稲葉(誠)委員「憲法違反になるんじゃないの」と呼ぶ)立法するときに最高裁判決と違う法律をつくるということは、憲法違反とかなんとかいう問題には全然ならぬと思います。 そこで、提案理由説明で述べておりますのは、判例理論を原則的に承認しつつと申しますのは、つまり、端的に申し上げれば、差額がある場合にそれを清算金として債務者に返還するという点を承認しつつという意味でございます。
○稲葉(誠)委員 大変意地の悪い質問ですけれども「原則として承認しつつ、」ということは、その例外として承認しなかった部分もある、こういうことになりますね、これは論理的に。そうすると、この最高裁の大法廷の判決を承認しなかった部分というのはどこなのか。
○香川政府委員 仮登記担保権者が本登記請求訴訟を起こしております場合に、競売手続と競合することがあるわけであります。この場合に、判例理論としては、いわゆる先着主義、つまり本登記請求と競売開始決定とが、いずれが先にされたかということによって効果が違ってくるわけでございますが、いわゆる先着主義を判例理論が認めておるわけでございます。これは、もちろん明文はございませんけれども、立法するにしてもちょっといかがなものかということで、この関係の先着主義の理論は採用いたしておりません。
○稲葉(誠)委員 先着主義という理論を採用してないと言うんだから、もちろんこの条文の中にはない、そういう意味ですね。それに違いないですね。――そうかなあ。最高裁の、小法廷の場合はいいけれども、大法廷の判決と違う立法というのは、いいのかな、それは。後で飯田さんに聞いてみましょう。どうもちょっとよくわからないな。最高裁の大法廷の判決というのはそんなに効力ないものなのかな。もっとも傍論のところは効力ないかもわからぬけれども、ちょっといまの点よくわからないな。いずれにいたしましても、この法案が出てきたということで、最高裁の大法廷の判決を受けているんだと思いますので、それほど特に問題点はないというふうに考えるものですから、この辺で質問を終わります。
○鴨田委員長 暫時休憩します。 午後三時十一分休憩 ――――◇――――― 午後三時三十八分開議
○鴨田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 質疑を続行いたします。飯田忠雄君。
○飯田委員 仮登記担保契約に関する法案について御質問申し上げます。 まず第一に、仮登記担保契約について、このたび特に債務者保護の規定を設けられるわけですが、譲渡担保契約と区別してなぜこれだけ保護されるのか、その理由はどういうことでしょうか。
○香川政府委員 仮登記担保につきましては、御承知のとおり昭和四十九年十月の最高裁大法廷判決で基本的な考え方は明らかになっておるわけでございますけれども、それまでのいろいろな判例理論等を含めましてなお周辺のいろいろの問題が疑問なしとしないわけでございまして、さような意味から、立法でできるだけ早く明確にする必要があるということでこの法案を提出させていただいた次第でございます。 譲渡担保契約につきましては、御承知のとおり、これは長年の一つのいわば判例法と申しますか判例の積み重ねによって実務的ないろいろの問題についてもほぼ理論が確定いたしておりまして、さしあたり急いで譲渡担保契約についての立法をする必要性、緊急性はないだろうというふうに考えるわけでございますが、しかし、やはりおっしゃるように債務者保護の観点に立ちますと、なお立法上検討しなければならぬ問題があることは否定できないわけでございまして、法制審議会の民法部会におきましては、引き続きまして抵当制度とあわせましてこういう変態担保全般について検討していただくという予定にいたしておりますので、まとまり次第また提案させていただきたいと思います。
○飯田委員 それでは、次の問題をお尋ねいたします。 代物弁済におきまして、代物の価値が債権額を超過する場合についてこのたびの法律は規定しております。そこで、超過価額というものは、弁済した側から見まするというと、時によっては贈与に該当するのではないか。つまり、任意契約の場合丁任意にそういう契約をしたのですから、余分なものを相手にやってしまったということは贈与に該当するのではないかというふうに考えられますが、この点につきまして、もし贈与だということになりますと、贈与の成立原因の有無いかんを問わずして、このたびの仮登記担保法案はこれを不当利得と解釈してしまうということを前提としての法律なんですが、これは契約自由の原則を破ることにならないでしょうか、お尋ねいたします。
○香川政府委員 確かに典型的な代物弁済契約一般を考えますと、目的物と債権額との間に開きがあって、目的物の価額が大であるという場合に、その差額がなぜ債権者に帰属するのかという問題は、お説のとおり、これは契約自由の原則による契約の効果として債権者に帰属するということになるわけであります。これをお説のように贈与と見るかどうかは別といたしまして、やはり当事者の契約によって帰属する、こういうふうに解釈すべきだろうと思うのであります。そこのところが、御承知のとおり最高裁判所の判例は、この差額の返還につきましてはもうはっきりと認めておるわけでありまして、そこがやはり飯田委員のおっしゃるような契約自由の原則あるいは民法等の明文の規定を待たずに差額返還義務ということを判例上確定いたすことの本質的な疑問点があるわけでございます。これはやはり立法をもって解決すべき問題であるわけであります。 そこで実質を考えますと、大なり小なり差額があります場合に、恐らくその差額がきわめて少ないような場合には、債権者に帰属させましてもさして不都合はないと思うのでありますけれども、多くの場合には、やはり債権額に比較いたしまして、その三倍とか四倍とか、あるいは倍というふうな相当の差額がある場合が多いわけでございます。これをやはりそのまま契約自由の原則を根拠にいたしまして債権者に帰属させるということは、債務者、弱者保護の立法政策としていかがなものかということが考えられるわけでございまして、したがって、いわば契約自由の原則を打ち破る立法として強行法規的に差額を返還しなければならないということにしたわけでございます。
○飯田委員 その点はよくわかりました。 それで、次の問題ですが、仮登記担保契約を結ぶ場合に、よく心理的強制を加えてやることがあるように聞いております。たとえば、実印を預かったとか、あるいは印鑑を押して日付を白紙にしておくとかといったようなことをやるわけですが、これは強制契約とみなされるのではないか。そうなりますと、その有効性に疑いがあるように思いますが、いかがでしょうか。
○香川政府委員 事案によりけりだと思いますけれども、債務者の金を借りるときの弱味につけ込んでというふうなケースを考えますと、確かにそのこと自体法律的に有効か無効かという疑問が非常にあろうかと思います。しかし、そういう解釈に任せるよりは、より債務者の保護の観点から、今回の立法におきましては、一定期間を設けまして、そして本来の契約で決められている時期には所有権は移転しないわけでありまして、この法律の要求する一定の手続をとって初めて所有権が移転する、そして差額の返還債務と所有権移転の登記の債務の履行とを同時履行の関係にいたしまして債務者の保護を図ることにいたしておりまして、この関係に反する債務者に不利益な特約というものは一切無効だということにいたしております結果、金を貸すときに、いま御例示のような委任状とか印鑑証明をとってやるというふうなことで、債権者がいつでも好きなときに登記ができるというふうな契約関係というのは、一切この法律は認めないということになるわけでございますから、したがって、債務不履行があった場合に、あるいはそれ以前に、債権者が勝手に預かっておるそういうものの書類を利用して移転登記いたしましても、登記原因は無効でございますから、その所有権移転登記は抹消されるものだ、こういう法律関係になるわけでございます。
○飯田委員 そこで、ただいま御答弁を得ましたような問題を根拠にして仮登記担保契約に関する法律案をつくって、清算金制度を設ける。清算金制度の立法理由は、結局のところいわゆる公序良俗問題を根拠にしておるのではないかと思われますが、この点はそれ以外の理由がございましょうか。あるいは公序良俗に反する問題としてとらえるのでございましょうか。
○香川政府委員 その差額自身がきわめて大きくて、それが暴利というふうなことに相なりますと、この法律を待たずに、民法九十条の規定によりましてその契約自身が無効になりますので、したがってそれで決着がつくことにもなるわけでございます。しかし、果たしてその暴利なりや否やというふうな、つまり公序良俗によって契約関係を無効にするその限界というのが、なかなかこれは解釈の余地がございまして、不明確と言えば不明確なわけでございます。したがって、やはり債権者としては貸した金と利息、そういったものが手元へ返ってくればそれでいいはずでございまして、したがって、その差額は大小を問わずすべて返還させるということで債務者保護を図っておる、こういうふうな考え方でございます。
○飯田委員 それでは、次の問題に移ります。 この一条、二条に関連するのですが、本法の趣旨だとか、あるいは所有権移転の効力の制限に関する条文に関連して質問するわけですが、こういういろいろの要件をお決めになって効力発生の要件を決めた理由についていろいろ御説明を願いたいのです。 まず第一に、この、要件を設定した理由というものは、考えられるものとして二つあると思います。 一つは、債権債務の均衡のためにこうした要件を決めたという問題です。この債権債務の均衡のために設けたということになりますと、債権額に相当する不動産の本登記に限定すれば足りる。つまり、本登記をするときに債権額に見合う部分だけの本登記を認める、それ以外は認めないということをすれば足りるわけではないか。 次に、もしこの要件設定の理由を不当利得制限のためだ、こういうふうに理解いたしまするならば、債権額を超過する金額を返還せしめる、いわゆる清算金の返還ということになってくると思います。 そこで、この問題を、債権債務の均衡のためではなくて、不当利得制限のためだというふうにお考えになって今度の法律をおつくりになったというふうに読めるのですが、この点についていかがでございましょうか。
○香川政府委員 先ほど御質問ございましたように、不動産の価額が債権額を超過しております場合でも、その超過額というものは債権者に帰属するというのが代物弁済の一般法理であるわけであります。その帰属するのは、先ほど申しましたように、まさに代物弁済契約そのものが根拠でございますから、したがって、今回の法案の基本的な考え方として、その差額それ自身を民法で言う不当利得だというふうには考える必要もないし、また考えていないわけでございます。 ただ、そういうことだといたしますと、お説のように、たとえば百坪の土地が代物弁済の目的になっておる、そして債権額から見れば六十坪がちょうど見合うというふうな場合に、その百坪を債権者に帰属させて超過額を支払うという手法のかわりに、百坪の土地を四十坪と六十坪とに分けて六十坪部分だけを債権者に帰属させるというやり方も、これも理論的には考えられると思うのであります。ただ、実際問題といたしまして、そういったただ百坪のうちの六十坪と申しましても表側と裏側とでは違いましょうし、線の引き方いろいろによって土地の価値が違ってくるわけでございますし、また場合によっては建物なんかは上下に分けるわけにもいかぬ場合もございますし、土地でもそういう分け方というのは技術的に非常に困難を伴うおそれがあるわけであります。そういったことを円滑にやるための手続を設けるといたしますと、これはおそらくは非訟事件手続法でやることにならざるを得ないと思うのですが、きわめて複雑なことになってきて、かえって時間も費用もかかるというふうな問題になりはしないかというふうなことで、端的に差額を返して経済的な利益の帰属分配をするということで落ちつかせたわけでごいます。
○飯田委員 ただいまの件、大変よくわかりました。 次にもう一つの点をお尋ねいたします。それは清算金の請求権というものは今度のこの法律によって新しくつくられる権利のように思われますが、これは、前に判例でいろいろなことがあったとしましても、こういう形として規定したのは今度が初めてであろうと思います。 そこで、こうした清算金請求権の規定を置いて立法しまして、これからそうした清算金請求権を持っておるその権利の行使ができる状態にするわけですから、そうしますと、ここで問題になりますのは、立法以前の状態について保護を加えることが必要ではないか、こう考えるわけです。つまり立法の段階で権利が発生するのなら、これは一つの請求権ですから時効は十年だ、今日から十年あるわけですね。ところが、もし本登記をしたとき、あるいは本登記から二カ月前の段階で清算金請求権が生ずるといたしますと、その間にもう十年たっておればもうだめだし、またもし十年たたぬとしても、立法以後一月とか二月とか一年とかいった、権利の行使の期間が短いものになってしまうわけですから、これは債務者の保護という点からいきますと債務者に少し不利ではないか。債務者は判例を一々見ているわけじゃありませんし、また従来の法的観念からいきますと契約自由の原則ということで頭がいっておりますので、出した以上はもう返ってこないと思い込んでいる人が多い。そういう人たちを保護するためには、やはり立法した今日からその請求権の時効は始まるというふうにした方が妥当ではないか、このように私は思うのです。 ただ、それはそうであるとしても、もう一つの問題があります。それは、本登記をしたときから、本登記をした人から見れば不動産の取得をしておりますので、それは取得時効をやはり考えてやるべきじゃないか。つまり本登記をしたときからこの人が、善意、悪意の問題はありますが、一応悪意としまして二十年の取得時効を考える、そして返還請求権の債権の時効はこの二十年の取得時効の範囲内に限るというふうにすれば、債権者、債務者両方の保護に欠けなくなるじゃないかというふうに考えられるわけですね。そういう時効制度をお考えになる御所存はないかどうかお尋ねいたします。
○香川政府委員 この法案におきまして、清算金の返還請求権については特にそういった時効の特例を設けていないわけでございます。もちろん、この法律施行後清算金債権が発生するものにつきましては、民法の原則どおり十年の消滅時効というふうなことに相なるわけでございますが、既発生のものをどうするか、これは昭和四十二年ごろから最高裁の判例が出まして、清算金の返還ということが判例理論として打ち立てられてきたわけでございます。もちろん、これは今日から考えますれば、それ以前のものでありましても、解釈としては返還請求権は発生している、こう見るわけでございます。したがって、この法律施行前に、場合によってはそういう返還請求権が、ついうっかりしておって行使を怠ったために時効によって消滅するということは避けられないことだと思うのであります。ただ、これを今回の立法によりまして消滅時効の期間をたとえば二十年に延長するというふうなことは、逆に債務者の方から見ますと、本来時効で消滅しておる、したがってそれだけの債務がないものが、立法によって債務が新たに生ずることになると同じような結果になるわけでございます。これは実体法の改正については常に問題になる、つまり財産権の保護と申しますか、積極、消極両方の方が問題になるわけでございまして、従来の考え方からいたしますれば、そういうものをいわば立法によって復活させたり消滅させたりするにはそれなりの憲法上の一つの制約もあるわけでございますから、相当慎重に検討しなければならないというふう考えられるわけでございまして、そういうことが理論的にもなかなかむずかしゅうございますので、今回の立法においては、解釈で、しかも消滅時効を修正することによって保護を与えるという措置は一切とってないわけでございますが、今後の問題といたしまして、いま御示唆いただきましたような考え方というのは十分検討させていただきたいというふうに考えるわけでございます。
○飯田委員 それでは、次の問題に入りたいと思います。 「清算金の支払を目的とする債権」という言葉がこの法律にうたってあります。実は私はこの言葉がどうも理解できないのです。例を挙げて申し上げますと、たとえば百万円を借りまして三百万円の評価額の土地について仮登記担保契約を結んだ、こういう場合に、百万円の債権を指してこの「清節金の支払を目的とする債権」と言うのか、あるいは三百万円の仮登記担保契約の目的となった土地を「清算金の支払を目的とする債権」と言うのか、これがはっきりしない。ただ「債権」という言葉が使ってありますので、恐らくは百万円のことではないかと思うのですけれども、これが明白ではございません。 そこで、この場合、債権を百万円の借金を指すものだ、借金に対する債権だということにいたしますと「清算期間が経過するまでは、譲渡その他の処分をすることができない。」というのは、その百万円の返還請求権だけなんだ、こういうことになりますね。そこで担保の目的となっている土地を譲渡その他の処分をしても差し支えない、こういうことにならざるを得ないわけです。こういうことになりますと、債務者保護のために設けた法の意義がなくなってしまうのではないか、こう考えられるわけです。 それで、続けてもう少し申しますが「清算金の支払を目的とする債権」というのを、債務者が持っておるところの清算金返還請求権のことだ、これは二百万円のことだというふうに解釈することはできないのかという問題もございます。これがどうも明確でないのです。「清算金の支払を目的とする債権」という言葉が大変不明確で、何を意味しておるか実ははっきりわからないということになるわけです。そこで、この債権者の持っております貸し金返還請求権なのか、あるいは債務者の持っておる清算金返還請求権なのか、この点をまず明確にする必要があるのではないか、そして、清算期間を経過するまでは、譲渡その他の処分をしてはならないというのは、一体どちらの債権のことなのかという問題が一つございます。 それから、それだけではちょっと都合が悪いのですよ。この条文は、貸し金返還請求権とか債務者の有する清算金請求権のことを本来言っておるのじゃないのじゃないか、立法しようとした目的はですよ。それは土地の問題じゃないかと私は想像するのですが、この条文からはどうしても土地だというふうに解釈が出てこないのですよ。それでこのことをお尋ねするのですが、いかがでございましよう。
○香川政府委員 たとえば六条の「清算金の支払を目的とする債権」というのは、おっしゃるとおり差額の返還請求権のことなのでございます。だから、三百万の不動産を百万円の貸し金債権で仮登記担保にとった場合に、その差額の二百万の返還請求権、つまり差額の返還請求権を「清算金の支払を目的とする債権」というふうに言っておるわけでございます。この六条で、それは清算期間が経過するまでは処分が一切できない、この規定は、つまり「清算金の支払を目的とする債権」が現実に発生いたしますのは清算期間の満了時でございます。したがって、清算期間が経過するまでの間というのは、将来の債権としてある、こういうことでございます。だから六条の一項は、清算期間が経過するまでは処分ができないというのは、将来の債権としての清算金返還請求権を処分することはできない、こういうふうな解釈になるわけでございます。
○飯田委員 それはいま御説明でわかったようなわからぬようなことになるわけですが、といいますのは、そうなりますと、清算金の返還請求権を処分してはならないということになりますと、これはいわゆる債務者に対して義務づけることなんですね。債務者に対してそういう義務づけをすることがどういう意味があるか、非常に私は疑問に思うのです。むしろ、これは仮登記担保契約の目的となった不動産、その不動産の譲渡とか処分を禁じることが本来の趣旨ではなかったか――これは想像ですよ、条文からはそういうことは出てきませんけれども、そういう条文をつくろうとなさったのではないかどうか。もしそうであるなら、そのようなふうな形の条文に書きかえていただいた方がありがたい、こう思うのですが、いかがでしょう。
○香川政府委員 仮登記の目的不動産につきましては、仮登記はされておりますので、仮に処分がされまして第三者に所有権移転登記がされましても、仮登記の消長は一切ないわけでございます。だから、さような趣旨で考えますと、仮登記の目的不動産の処分を制限するという必要性はどうもないように考えられるわけでございます。 〔委員長退席、羽田野委員長代理着席〕 この清算金の支払いを目的とする将来の債権を清算期間の経過前に処分されますと、後でいろいろ出てまいります物上代位権の関係とかあるいは債権者、債務者間の調整というふうな問題が非常にややこしくなりますので、そういう意味から処分を禁止しておる。また、実際清算金の支払い債権を持っておる債権者から考えました場合に、将来の債権でございますので、現実にまだ履行の請求ができない状態の債権でございますから、これの処分禁止をいたしましても、その債権者、つまり仮登記から申しますと債務者でございますが、その権利制限をしても支障がないだろう、実際不利益を受けることはない、こういうふうなことで、もっぱら法律関係を明確にするという趣旨から処分を制限しておるわけでございます。
○飯田委員 そうしますと、二カ月たってから請求権が生ずるので、その前には返還請求権を制限しても一向差し支えない、それはそのとおりなんですが、それではその二カ月の間に土地をよそへ売っ払っちゃったら、ややこしいことになりませんか。本登記していますからね。それをよそへ売ってしまうなり贈与してしまった場合に、清算金を今度は払おうと思っても払う金がなくなってしまう。そういう一つの作業を、やはり土地についての、二カ月の間にややこしい権利義務関係を生ずるようなことをするのを禁止する規定をもう一つ設ける必要はないでしょうか。
○香川政府委員 清算期間の経過前に不動産が処分されましても、この清算金つまり差額の後始末をいたしますのは、仮登記権利者つまり仮登記担保権者とその債務者の関係でございます。したがって、第三取得者になるものは仮登記つきのそういうものを取得したわけでございますから、清算金が円満に払われて、そしてその仮登記権利者が所有権取得の本登記をすることになりますと、第三取得者の権利は吹っ飛んでしまう、そういう関係になるわけでございます。だから、特に清算期間経過前の当該目的不動産の処分を制限する必要性はどうも法律的にはないのではなかろうかというふうに考えております。
○飯田委員 それでは、いまの問題は了解したことにいたします。まだ私、実は釈然とせぬのですけれども、ちょっとわかりません、頭が混乱しましたので。 それで、次の問題に入ります。 所有権移転登記をいたします場合に、登記は所有権の内容を表示しておると解していいのかどうかという問題でございます。これは所有権の内容をあらわしておるということになりますと、所有地の位置だとか面積だとか形状というものが、登記にしてあることが正しいのだということが承認されることになるわけなんですが、この問題のために実際問題としていろいろのややこしい事件が起こっております。登記してあるから信用して買ったところが、実はとんでもないものだったということがしばしば起こるわけなんですが、そこで、所有権の内容を正確にあらわしていない登記というものは一体どういう意味があるのかという問題があるわけです。特に証拠能力とか証拠の信用性の問題も関連してまいりますので、その点についてどのような御見解をお持ちでしょうか、お尋ねいたします。
○香川政府委員 もうお説のとおり、現在の不動産登記制度におきまして、いわゆる不動産の現況を明確にすべき不動産の表示に関する登記でございますが、これが必ずしも現況を十分に明確にしていない、たとえば千五百平米というふうに登記簿には登載されておっても、実測すれば千三百平米しかないというふうなこととか、あるいは極端な場合にはその不動産登記法が要求しております地図がまだ整備できてないために境界が明確でないというふうな例すらあるわけでございまして、さような点は今日の不動産登記制度の一番大きな問題点、欠陥だろうというふうに思うのであります。さような意味から、所有権の内容を的確に公示していないというふうに言われればまさにそのとおりなんでございますけれども、これはなかなか容易ならざることでございまして、漸進的に現況把握の機能を十分に果たせるように登記制度を運用してまいらなければならぬというふうに考えておるわけであります。 さような現状を前提にして考えますと、登記簿に記載されておりますその不動産の表示事項、地積とか地目とかいうふうなものは、これは物理的な現況を登記しているものでございますので、法律的な効果というふうなものはないと言えばないわけでございます。したがって、例示的にお尋ねのような証拠能力と申しますか、不動産はこういう不動産が存在するとか、あるいはだれの所有だというふうな意味での証拠に提出することはできますけれども、一般に登記で言われるような推計力があるとかあるいは公信力があるというふうな意味の効力は全く問題にならない、全くないというふうに考えておるわけでございます。
○飯田委員 じゃ、最後に一つお尋ねいたします。 登記所へ行きますと公図がございますが、あの公図を見てよく人は土地を買ったり売ったりする場合がございます。公図が現状と違っておる場合に、登記所の公図、あれをもっと信用できるものにする必要があると私どもは考えるわけですが、結局、現状の信用度を確保するために、現状が平穏にある一定期間存続をしておれば、それによって現状を確定していこう、そういう趣旨から、現状を認める時効制度を設ける必要があるのではないか。つまり、一定期間現状でおれば、その期間が満たされれば、もう現状を正しいものと認定してしまって、それをもとに公図をつくり直す、そしてそれは証拠能力もあるようにしてしまうということにすることはできないでしょうか。そういうような方法で公図の訂正、整備をするということですね。いかがでございましょうか。
○香川政府委員 実体的な所有権の取得の関係は、御承知のとおり、取得時効の制度で処理されるわけでありますが、お説のように、登記所の公図というのは、前の税務署が所管しておりました土地台帳、課税台帳のときのいわゆる付属地図でございまして、これは必ずしも現況と合っていないということはお説のとおりであります。 そういうことから、不動産登記法の三十五年の改正の際に、十七条におきまして、現況を明確にした地図を登記所は整備しなければならぬという規定が新たに設けられまして、それによって逐次整備するということに努力いたしておるわけでございますが、ただ、そういう地図が整備されていない地域につきましては、公的なと申しますか、いわゆる公図というのが唯一のものでございますので、これがいろいろ紛争の種にも逆になるわけでございます。したがって、そういう当事者間の境界争い等の処理をどうするかということでいろいろ問題があるわけでございますけれども、いまお示しのような一つの、時効と申し上げていいか、いわゆる一般的な時効とはちょっと性質が違うようなそういう制度、つまり、現況の占有といいますか、あるいは占有を伴わなくてもそういった図面のままにずっと来た場合に、それを争えないものにするというふうなこと、こういったことはやはり地図整備の前提といたしまして根本的に考えなければならぬ問題だと思うのでありますけれども、どのようにすればいいか、いろいろ検討しておるところでございますけれども、いまのところなかなか結論を得ていない。現在の、現行法のもとにおきましては、境界確認の訴えを起こして裁判所に決めてもらうというふうなのが結局唯一のあれでございまして、そういうことではっきりいたしますれば、それに基づいて現在の公図を訂正するという措置はいたしておりますけれども、もっと行政措置的に工夫して現況に合った地図をつくるといいますか、そういったことを、公図の訂正という手段も用いて検討してまいらなければならないというふうに考えておるわけでございます。
○飯田委員 時間が参りましたのでやめますが、その前に法務大臣に、私、きょう二、三の問題につきまして御提案申し上げたのですが、こういう提案につきましての御所感を承りたいと思います。簡単でいいです。
○瀬戸山国務大臣 事務当局からいろいろ御説明を申し上げておりますように、この法案は、現在の社会に行われております金銭貸借等において、どうも常識といいますか、社会常識からいって適当でない、こういう最高裁の判決等も出ておりまして、判決を見るまでもなく、そういう点の是正を図るべきであろうと思って御提案を申し上げておるわけでございますが、いろいろ御質疑の中で御指摘のありました点等については今後も検討をしてみたい、かように考えております。
○飯田委員 これをもって私の質問を終わります。
○羽田野委員長代理 この際、民事執行法案をあわせて議題とし、質疑を行います。正森成二君。
○正森委員 それでは、最初に民事執行法関係について先に質問をさせていただきたいと思います。 午前中に他の議員からも質問がございましたが、売却のための保全処分を定めました法五十五条について「債務者又は不動産の占有者が、不動産の価格を著しく減少する行為をするとき、又はそのおそれがある行為をするときは、執行裁判所は、差押債権者の申立てにより、買受人が代金を納付するまでの間、担保を立てさせ、又は立てさせないで、その行為をする者に対し、これらの行為を禁止し、又は一定の行為を命ずることができる。」とこう定められております。そして、この命令に違反した場合においては「不動産に対する占有を解いて執行官に保管させるべきことを命ずることができる。」こういうぐあいになっておりますが、この条文を規定した趣旨について御説明を願います。
○香川政府委員 現行法におきましては、不動産の強制競売、あるいは担保権の実行の場合も同様でございますが、当該不動産の処分を禁止する意味の差し押さえはされるのでありますけれども、債務者あるいは占有者がその不動産を故意に損壊し、著しく価格を減少させるというふうな行為があります場合に、あるいはそういう行為をするおそれがあるときに、その価値を保全するという道が全くないわけでございます。そうかといって、大半の競売事件におきましてそういう事例が非常に多いというわけではないのでありますけれども、間々考えられますのは、これは正森委員御承知と思いますけれども、その執行を妨害するために暴力団を雇い入れて、そこへ住まわせてというふうな事例が間々あるわけでございます。そういうときに、差し押さえ債権者といたしましてみすみすその不動産の価値が著しく減少する行為を傍観せざるを得ないということは、他の債権者の利害にも非常に大きく影響するわけでございますので、それを防止する措置を何とか講じなければならぬということからこの五十五条を新設するということになったわけでございます。
○正森委員 いまの答弁の中にも入っておりますが、現行法では、いま民事局長が答弁されましたような必要性が存したときには実務上どのように解決されておったのか、あるいは法律上どういうような手段があったのか、そして右のように一定の対処の仕方があるにもかかわらず、どこが不備だからこういう規定を設けたのか、重ねてもう少し詳しく御説明を願います。
○香川政府委員 一般債権者、つまり、貸し金債権なら貸し金債権を持っているだけの一般債権者、つまり強制執行の差し押さえ債権者でございますが、この場合には、先ほど申しましたような、不動産の価値を著しく減少するというふうな行為をチェックする法的手段は全くないわけでございます。ただ理屈を考えますと、たとえばその債権が抵当権によって担保されているもの、そういうときに抵当権の効力といたしまして、これは差し押さえするかしないかにかかわりなく、いわゆる物権的請求権の一つのあらわれとして、目的不動産の価値を減少させるような行為をいたしますれば、実態的には期限の利益を失うのみならず、その損壊行為等を防止するために仮処分をするというふうなことが理論的には考えられるわけであります。しかし、御承知のとおり、仮処分をいたしましても、そういう行為を禁止するところがせいぜいでございまして、それをなお強行するようなものを防止するために占有を奪うというふうなことは、これは抵当権の物権的請求権の発露としての仮処分では理論的に無理だというふうに私は考えるわけでございます。
○正森委員 いま御説明がございましたので説明の趣旨はわかりましたが、それだけに、いままでになかった権限を執行裁判所に与えるものであるということから、たとえば労働団体が右規定によりまして、自主生産とか、いろいろ憲法上も保障されております一定の権利行使をする場合に、みずからが占有しております会社施設から排除されるのではなかろうかという見解が非常に流布されて、心配されているわけですね。そこで、そういう見解に対して法務省側はどう考えておられるのか承りたいと思います。
○香川政府委員 労働組合がいわゆる自主生産、生産管理としまして工場等を占有するというふうな場合、これはまさにその施設を利用して生産活動を続けるわけでございまして、したがってそれ自体は、仮にその工場の建物が差し押さえられているというふうな場合でありましても、これは当然、本来は債務者の使用収益権限はそのまま留保されているわけでございますから、それのいわば権限として自主管理ということがなされるわけでございます。したがって、そういう自主生産あるいは生産管理というふうなことだけで当該不動産の価値を著しく減少するというふうなことは、実際上もそういうことはございませんし、理論的にもあり得ないことでございますので、この規定が発動されるというふうなことは毛頭ないというふうに考えております。
○正森委員 次に、この一項、二項を関連させて御説明願いたいのですが、労働組合等で、裁判所が退去命令を出すんじゃないか、占有の禁止を命ずるんじゃないかという心配があるようですが、それについてこの条文の規定から、法務省側の見解を承りたいと思います。
○香川政府委員 先ほども申しましたように、自主生産をやっております場合に、それ自体一項には該当しないわけでございます。したがって一項の命令が出るわけではないわけであります。ただ、仮にでございますが、これはあってはならぬことでございますけれども、一項の命令が出たといたしまして、その命令というのは、つまり不動産の価格を著しく減少させる行為をしてはならぬ、こういう命令でございます。その命令が出て、その命令に違反して、著しく減少させるような行為をした場合に初めて二項が働くわけでございまして、そういう行為があったといたしますれば、占有を解いて、執行官の保管に移すという二項の命令が出てくる余地はあるわけでございます。しかし、生産管理をしでおるということ自身がそのまま継続される限りは、仮に一項の命令は、本来は出ないにしても、出たとしましても、生産管理を継続すること自身がその不動産の価値を著しく減少する行為そのものではないわけでございますから、正常にそれが続けられている限り違反という問題も生ずる余地はもちろんない、したがって二項の命令が出ることも法律的にはあり得ないと考えております。
○正森委員 念のために伺っておきますが、たとえば組合が当初は一つであったけれども、争議の過程で第一組合と第二組合に分裂した、多数派になりました第二組合が会社との間でユニオンショップ協定とか、あるいは唯一交渉団体条項を得まして、一定の金員、退職金と引きかえに退職する、解雇に応ずる、明け渡しをするということを決めました場合に、少数派であり、唯一交渉団体約款も持たない第一組合が、そういう解決には反対だ、会社施設を占有して会社に本来の要求をするというようなことがございました場合に、この第一組合に対して五十五条の一項なり二項なりが適用されるおそれはございませんか。
○香川政府委員 いま例示されるような、第一組合がなお工場施設を占拠しておるという本来の生産管理でございますれば、これは占有権限と申しますか、違法な占有ではないわけでございますから、ただ第一組合が仮に、解釈といたしまして、そういう場合に占有権限がない、違法な占有だということに相なりましても、もともとこの五十五条というのは、初めから不法占有者が占有している場合でも、その不動産の損壊行為をしない限りはこの規定は働く余地がないわけでございます。だから、お説のような場合に、第一組合が占拠してあるいは生産活動を続けるというふうな場合におきましても、もともとそれは、あるいは不法占有というふうに評価されるかもしれませんけれども、そうだといたしましても、この規定の発動の余地は全くないと私は考えております。
○正森委員 そういう御説明でございますが、なおいろいろ心配があるようなので、続けて聞きたいと思います。 この条文に言う「不動産の価格を著しく減少する行為」というのは何を考えておられるのか、できるだけ具体的に例示していただきたいと思います。
○香川政府委員 これは、一般的にと申しますか、先ほど申しましたような、数は少のうございますけれども、ある事例としては、直接その建物を損壊するとか、あるいは暴風雨で屋根のかわらが飛んだ、盛んに雨漏りがするという場合もそれをそのまま放置しておくとか、あるいはりっぱな付属建物を壊してしまうとか、そういうふうな例が考えられるわけでございますけれども、これはやはり損壊すべてにこの規定の適用があるわけではないわけでありまして、条文上も「価格を著しく減少する行為」というふうにしぼっておりますので、実際問題としては、よほどのことをやらぬ限りはこれには当たらないだろうというふうに私は考えるわけでございます。たとえば、その土地に生育している樹木がある、それが非常に古い、りっぱなもので、何百万、何千万するというふうなものを切ってしまうということになればこれは当たるかもしれませんけれども、普通の庭木を引っこ抜くというふうなことぐらいではこれには当たるわけもありませんし、また普通の板べいを壊したぐらいで著しく減少するというふうには、これは常識的に考えたってあり得ないことでございます。だから、実際問題として、現にあるような事例というのは、さっき申しましたような経緯で、むしろ本当に邪魔をするということで物理的に壊してしまうというふうな事例が考えられるだけだろうというふうに考えております。
○正森委員 そうしますと、たとえば赤旗を正門に立てておるとか、みずからの要求を記載したステッカーをへい等に張っておるとか、そういうことでなかなか買い手がつかないから価格を減少させるのだというような解釈というのは、この法文の制定者としては毛頭考えておらないわけですか。
○香川政府委員 全く考えておりません。
○正森委員 それでは次に伺いますが、条文には「そのおそれがある行為」というようになっております。これがまた労働組合等で非常に問題になっておるわけで、「そのおそれがある行為」というのは不明確であり、漠としていないか、乱用の危険はないかというように考えられているわけですが、「そのおそれがある行為」とは具体的にはどのようなものを考えておられるのか、できるだけ具体的にお答え願いたい。
○香川政府委員 端的な例といたしましては、先ほど申しましたように、暴風雨で屋根がわらが吹っ飛んだ、雨漏りがしている、その時点におきましてはこれは天災ですからやむを得ないわけでありますが、それを何日間か放置して修繕を全くやらないというふうなときには、まさに「おそれがある」ということになるのではなかろうかというふうに思うわけでございまして、実際問題として著しく減少させる行為それ自身がきわめて希有のものでございますので、「おそれがある」ということになりますればそれも相当例が少ないといいますか、頭の中で考えますといま言ったような例が思い浮かぶ程度でございまして、実際は「おそれがある」という段階でこの規定が発動されることは、実務的には相当無理だろうというふうに私は考えております。
○正森委員 七十七条には同様の規定がございますが、時間の関係上全部は読みませんが、七十七条では「不動産の価額を減少させ、若しくは引渡しを困難にする行為をし、又はこれらの行為をするおそれがあるときは、」というように、要件が法五十五条よりよほど緩和されておるわけですね。そこで、これがまた労働組合等では非常に心配の種になっておるわけですが、なぜこういうぐあいに要件を緩和したのか。そして、この場合に不当に悪用されるおそれがないかどうか、答弁を願いたいと思います。 〔羽田野委員長代理退席、委員長着席〕
○香川政府委員 五十五条の方は競売に着手しまして差し押さえをしている段階でございますので、まだ差し押さえ債権者から見ました場合にこれをできるだけ高く売るという関係の利害だけでございます。ところが、七十七条になってまいりますと、買い受け申し出人がすでに生じておりまして、しかもその代金を納付するわけでございますから、その債務者所有のものが買い受け申し出人に所有権が移るわけでございます。そうなりますと、今度は、いままでは債務者のあれから申しますれば自分のものを占有しておった、あるいは第三者に占有させておったというふうな関係が多いわけでございますけれども、人のものになってしまった、それを占有している、対抗できない、占有権限のない者が占有しておって、しかもその不動産の価値を下落させるような行為をするということになるわけでございますから、これは端的に所有権に対する侵害行為であるわけであります。違法なわけであります。したがって「著しく」というその五十五条の要件をこの段階においては、七十七条におきましては緩和するのが当然であろう、こういう考えでございます。
○正森委員 法七十七条の場合には、現行法にはこういう規定はなかったのですか、それとも現行法にも同種の規定があったのかどうか、簡単に御説明願いたいと思います。
○香川政府委員 実は現行法には買い受け人の不動産所有権取得を確保する意味で、民事訴訟法の六百八十七条の二項、三項に規定がございまして、そして、買い受け人が競落許可決定を受けました場合に、引き渡しまでに相当の期間がかかるわけでございます。その場合に、占有している者がその建物をぶっ壊すとか、あるいは土地の価格を減少させる行為をするおそれがあるというときには、そういう要件はもちろん現行法にはないわけでございますけれども、裁判所が管理人を選任いたしまして、いきなり管理人に引き渡しさせるというふうな規定になっているわけであります。したがいまして、率直に申し上げまして、これが実は現行法は相当きついわけでございます。したがって、確かに現行法は、そういう必要性がある場合もあろうかと思うのですけれども、引き渡しを受けるまで、たとえば債務者がそこで善良な管理者の注意をもって占有、管理しておるというときまで強権的に占有を奪ってしまうというのは場合によってはひどくはないか、そういうことでございますので、むしろ現行法よりも要件を厳しく、しかもそれを緩和する意味で七十七条の規定を設けたわけでございまして、七十七条についても問題があるというお説もあるようでございますけれども、これは現行法自身がもっと問題があるわけでありまして、もっと強いわけでございます。それが債務者保護の見地から、あるいは占有者保護の見地から、余りにも強過ぎるものを緩和したつもりで七十七条の規定を設けているわけでございまして、その辺の立法趣旨を十分御理解していただきたいと思うのであります。
○正森委員 五十五条と七十七条について立法者側の御意見を承りました。しかし、労働組合やその関係の人の間には、現在、非常に不況の中で会社に勤めておった者が、企業が倒産もしくはそのおそれのある場合でも、自主生産をすることによって路頭に迷うということが防止されて、粘り強く企業再建のために闘っておった、それが五十五条や七十七条によって阻害されるのではなかろうかという不安が非常に強いわけですね。なおこの点についてはいろいろ論議をしたりあるいは検討する必要があるというように私どもとしては考えております。 それでは次の問題に移りたいと思いますが、三十九条を見ますと、これは強制執行の停止が行われる場合に、第三項を見ますと「二回に限り、かつ、通じて六月を超えることができない。」というようになっておりますね。そこで、これが実際には債務を弁済したいのだけれども、そしてそのことについて債権者側の承諾ももらったのだけれども六カ月では無理だという人を強権的に排除してしまうことになって、非常に酷な場合があり得るのではないかという意見があるのですが、これについてなぜこういうぐあいに限定してしまったのか、例外はいかなる場合にも認められないのか、御答弁を願いたいと思います。
○香川政府委員 この三十九条三項を設けました趣旨は、御承知と思いますけれども、現在、特に不動産競売でございますが、これが非常に長時間を要しておるという実態があるわけでございます。なぜそんなに長時間かかるのかという理由を検討いたしますと、一つは、無用の不服申し立てと申しますか、不服申し立て権の乱用ということで引き延ばしを図るという点が一つでございますが、もう一つの大きな理由は、まさにこの規定に関係する、その弁済猶予を証する書面を何回も出してまいりまして、そしてそれだけ競売が延びる。現行法はこれは制限がないわけでございますから、弁済猶予を証する書面が出てくれば執行を停止しなければならぬということになっているわけであります。これはおっしゃるように、確かにその差し押さえ債権者と債務者間の関係だけを考えますれば、差し押さえ債権者がそれで満足しているのでございますから、弁済猶予をしてやっているのですから、さして問題はないのでございますけれども、大体不動産が差し押さえされるということになりますと多数の債権者がいわば配当要求等の形で集まってくるわけでございます。その場合に、単に差し押さえ債権者と債務者間の弁済猶予というふうなことだけで、それがまた真実であればともかくといたしまして、実はそうでなくて、むしろいつでも売るぞということを威嚇材料に使ってちびちび弁済を強要するというふうなことも御承知のとおりだと思うのでありますが、そういうことに使われますと、利害関係を持っておる多数債権者の利益が全く無視されるわけでございます。したがって、何とかこれを制限しなければ不動産競売の迅速が図れないということで、実は法制審議会の答申は一回三カ月なっておるのでございますけれども、事案によっては、一回三カ月では少し酷な場合もあるかもしれぬということで、立案の段階で二回六カ月というふうにむしろ緩和した次第でございます。もしもそれが本当に、差し押さえ債権者と債務者間のまじめなと申しますか、できるだけ不動産を競売しないで円満に債権の回収を図るというふうな話し合いが確立できておるものだといたしますれば、もともと弁済猶予をしているときには競売はできないわけでございますから、差し押さえはそもそも許されないわけでございますから、そういう場合には、差し押さえ債権者の方が、一たん申し立てた差し押さえ、競売開始の申し立てを取り下げて、そして不動産が散逸するおそれがあるならば弁済猶予ということで仮差し押さえをしておくというふうなことで調整されるであろう。これはそれだけの手数はかかりましょうけれども、他の債権者、他人様の迷惑のもとにおいてそういう不動産競売が、ただ差し押さえ債権者と債務者間の話し合いだけで延びていくことはいかがなものかということから、この規定を設けたわけであります。
○正森委員 一応御説明は承りましたが、この規定の仕方から見ると、ほかの差し押さえ、つまり配当加入者といいますか、そういう者がいないで、その債権者だけが差し押さえている場合でもやはり二回六カ月の猶予しかできない、こういうことになっているのじゃないですか。ですから、そういう点がありはしないかというのと、それから執行異議ですね、それがこれからは理由を明示しなければならぬということで、その理由はたしか最高裁判所の規則で決められることになっておると思いますが、最高裁判所が来られたようですから、どういうものを考えておられるのか答弁願いたいと思います。
○香川政府委員 前段の問題は私からお答えいたしますが、まさに差し押さえ債権者が一人であるときには、先ほど申しましたように、仮差し押さえに転じてもらえばいい。これはほかに二重に開始決定がされている場合とか配当要求をしておる者がたくさんおる場合には、仮差し押さえといいましても、そういうふうになれば第二の競売が進行するわけでございますから意味がない。だから、差し押さえ債権者と債務者だけのことならば、仮差し押さえに転化させて十分目的の達成ができるのではないか、そういう趣旨で申し上げたわけでございます。
○井口最高裁判所長官代理者 お尋ねの点は、執行抗告の理由については最高裁判所規則に譲るという部分であろうかと思いますが、それでよろしゅうございますか。(正森委員「はい、そうです」と呼ぶ)執行抗告は申し上げるまでもなく、原裁判が違法であるという理由で抗告をいたすわけでございます。したがいまして、私どもが現在考えておりますのは、単に違法であるという抽象的なことを言うだけではなくて、何法の何に違反するというような具体的な理由を記載していただくという点がここで言う最高裁規則でのポイントでございます。
○正森委員 それでは、次の問題に移りたいと思いますが、ただ巷間言われておりますのは、いま最高裁からお答えいただきましたが、いままで悪用の危険もありましたが、執行抗告の理由の記載というのもいままではそれほど詳しく求められなかった。一方ではそういうふうに非常に厳格にしながら、弁済猶予を得られる場合にも二回六カ月に限る。なるほど、差し押さえ債権者が一人の場合には改めて仮差し押さえすればいいじゃないかということなんですが、仮差し押さえしようと思えば余分な手続きが要るし、通常の場合は担保を立てなければならないということで、そこまではできないということで、せっかくまじめに債務者が順次払っておるのに競売を強行してしまわなければならないということがあって、債権者にとっては非常に迅速な規定になっておるわけですが、債務者の利益から考えますと、もう少し情けのある計らいをしてもいいのではないかという意見があるのであえて申し上げた次第であります。 次に、最高裁が来ておられますからお時間をとらしてもいけませんから一、二問集中して聞いて、お帰りを願いたいと思います。 この民事執行法には、最高裁判所の規則に定めるというように、法律としては珍しく規則がたくさん入っているわけです。ですから、最高裁判所の規則がある意味では立法行為的な意味を持っておるわけですが、法六十四条に、売却の手続についても最高裁判所の規則にゆだねている部分がありますね。これにつきまして、売却の手続、方法について現在のところどういうように考えておられるのか、できたら少し詳細にお答え願いたいと思います。
○井口最高裁判所長官代理者 ちょっと前置きを一言二言申し上げることをお許しいただきたいと思いますが、私どもが今度規則でつくろうといたしておりますことには三つのグループがあるわけでございます。 一つには、この立法作業の過程で法務省と緊密な御協議をお願いしておるわけでございますが、その過程で、これは当然規則で決めていただきたいと言われたもの、これが第一でございます。 次に、現行法に規定がございまして、今回の法律に上っていないものがある程度ございます。これは当然、当時は規則というものがございませんでしたからすべて法律に書き切ってあったわけでございますが、これの中でなお存続する価値のあるものは規則に載せる、これが第二でございます。 それから第三には、要するにこの法律の施行のために必要な細目でございます。 現在、この第三の細目につきましてはむしろこれからの私どもの作業でございますので何ともお答えいたしかねますが、ただいまお尋ねの点はまさに第一のグループに属することかと思います。 売却の手続につきましては、御承知のように現行法ではかなり細かい規定がございます。これらがほとんどすべて規則にゆだねられております関係上、さしあたり現在考えておりますことは、たとえば執行官が売却の期日あるいは売却の期間、これは期間売却というようなものも考えられております関係上、売却の期間を決めること、特定の期日の指定の通知をすること、どういう方式で買い受けの申し出をしてもらうかという買い受けの申し出の方式、それから主にとられるであろう入札または競り売りの実施方法、これらもすべて現在は民事訴訟法に規定がございますが、そういった点が一つございます。 それから、売却の方法につきましては、ただいま申しましたように競り売りと入札が大原則でございますけれども、たとえば農地の競売などのように買い受け人が一定の資格のある者でなければならないというふうにほかの法令上なっております場合に、いわばこういう競争の売却以外の適宜の売却というものも場合によっては取り入れる、あるいは一定の期間内に入札をした者をすべてその物件の買い受け人の資格に入れるといったことを考えておりまして、これらのことを現在検討しておるわけでございます。
○正森委員 ほかに最高裁にいろいろ伺いたいこともございますが、時間がございませんのでこれで終わります。どうぞお帰りください。 それでは法務省に移りたいと思いますが、法五十七条を見ますと「執行裁判所は、執行官に対し、不動産の形状、占有関係その他の現況について調査を命じなければならない。」こうなっております。この現況調査というのが非常に重要な意味を持ちまして、そこで得られた占有関係の知識に基づいて鑑定人が評価をする、鑑定する場合でも、占有の権原がどうかということがわからなければ正確な価格は出せないわけです。そうしますと、現在執行官というのはそれでなくてもたくさん事件を抱えて、しかも執行官というのは月給じゃなしに手数料制度ですから非常に繁忙なんですね。そのときにこの現況調査で、しかもこれが物件明細書という非常に重要な意味を持つものに順次発展していくことになろうかと思うのですけれども、現在の執行官の体制でそれが可能なのかどうか、そして現況調査をやる場合の手数料が十分得られるのかどうか。まず人員が大丈夫なのかどうか、そのことをやると今度は差し押さえとかそういうことができなくなるというようなことはないのか、その辺の手当て及び教育はどうなさるのか、ごく簡単で結構ですから、お答えください。
○香川政府委員 執行官の問題は実質面は最高裁判所のあれでございますけれども、この現況調査の体制が十分かどうかという点についてお答え申し上げますと、これは御承知と思いますけれども、現在、執行官の職務権限がフルに活用されてないといいますか、いわば職務権限の拡大を求める声が強いことは御承知のとおりだと思うのであります。実は大きな不動産競売が問題になりますのは、地方、田舎の方はそうたくさんないわけでございまして、大都市ないしはその周辺が非常に多いわけでございます。そういうことから、裁判所を通じあるいは執行官自身の団体に当たりましていろいろ聞きました結果、それくらいのことは当然できるというふうな非常に張り切っておられるような状況でございますので、体制の面は心配はないのではなかろうか。 ただ問題は、やはりこれは執行官の育成と申しますか指導というか、そういうこととも関連する問題でございますけれども、この現況調査というのは相当むずかしいことでもございますし、入念にやってもらわなければならぬというふうな意味、さようなことから、これに見合う待遇はやはりしなければいかぬという問題は当然あろうと思います。さような意味から執行宮の報酬、手数料というものを今度の執行法の成立を契機にしまして再検討しなければならぬ。そういう面から経済的な基盤を整備して執行官のなり手が多くなるようにすると同時に、自主的な一つの研修と申しますか、そういうものにも努めてもらいたいというふうに希望いたしております。
○正森委員 ほかに伺いたいこともございますが、時間がございませんので、仮登記担保関係の質問に移らせていただきたいと思います。 仮登記担保契約は現在どういう方面でどのような目的で利用されておりますか。今回、判例にゆだねておかないで立法化するようになりましたのはどういう理由で、その結果どういうような影響が出ると予測しておられますか。
○香川政府委員 従前は仮登記担保は、正規の金融機関のみならず商社それから町の金融機関と申しますか、そういう方面で利用されておったわけでございますけれども、いろいろの理由があると思いますけれども、一つは最高裁の判例が出ましていろいろ疑義がある点があるわけでございます。そういう意味から、むしろ市中銀行等の正規の大きな金融機関は現在ほとんど仮登記は使っていないようでございます。信用金庫ぐらいがせいぜいでございます。多いのはもっぱら商社が系列下の商人に金を融資する際に仮登記を使うとか、それから町の金融機関、そういうふうなものが多いわけでございます。これは大銀行、市中銀行等が使わないというのも、法律上疑義があるということでございますので、この法案が成立いたしまして法律関係が明確になりますれば、市中銀行はそんなに使わぬと思いますけれども、正規の金融機関もこれを使うということが出てくるのではないかというふうに考えるわけでございます。 ただ、この仮登記は、一つは抵当権を使いました場合の競売手続が、先ほど来申し上げていますように時間がかかるのと安くしか売れないということ、それがはね返って仮登記というものが利用されておるということでございますから、先ほど御審議いただきました民事執行法案が成立いたしまして、私どもの期待としては競売の迅速化と適正な価額で売却するというふうなことをねらっているわけでございますが、それが達成されればその面から仮登記を使っておった要因というものがなくなってくるわけでございまして、したがって、この法案が成立いたしましても急激に仮登記需要がふえるというふうなことは考えていないわけでございまして、大体今日程度の利用が続くというふうな見通しでございます。
○正森委員 譲渡担保など、そういうものを一まとめにした立法化は考えられなかったのかどうか。あるいは講学上、仮登記担保には取得清算型と処分清算型がある、こういうふうに言われておりますが、本案についてはいわゆる取得清算型について不明な点を明らかにしたということで、処分清算型の代物弁済については対象になっていないように読めるのですけれども、そうなのかどうか、あるいはそうだとすればその理由は何なのか、簡明に答えてください。
○香川政府委員 譲渡担保につきましても、これは判例理論で築かれてきたものでございますから、やはり正規の立法によって明確にするという必要があると思うのでありますけれども、私どもの考えでは、さほどの緊急性はない、仮登記担保の方が緊急性があるということで、したがって、これが済みますれば引き続き変態担保全般について法制審議会で審議していただくというふうに考えております。 それから仮登記担保につきまして処分清算型の代物弁済を取り上げていないというのは、現在の解釈といたしましては清算型と差額返還型、処分清算型もあるわけでございますけれども、いろいろ債務者の保護という観点から考えますと、処分清算型というのはやはり債務者の保護がどうもうまく図られないという面があるわけでございます。たとえば、この法案であれしておりますように、清算金の債務と所有権移転登記債務を同時履行にするというふうなことは処分清算型の場合にはとれないわけでございます。そういう意味から、処分清算型は一切認めない、つまりすべて代物弁済の関係の仮登記はこの法律の律するところによるのだということになるものですから、処分清算型はいわば立法によって否定されたということになると思います。
○正森委員 この三条の一項には清算金の制度があるわけですけれども、債務者の方で清算金の額を争う方法ですね、これは次順位の担保権者の場合には競売を申し立てるとか、そういうことで争う方法が規定されておるようですが、たとえば次順位の担保権者がいない場合なんかも考えられますので、担保債権者がこれだけが清算金だ、こういう通知を出しますね、その場合に、それを争う場合が起こり得ると思うのですが、それはどういうようにして争うのか。実務上非常に影響があると思いますのでお答えいただきたいと思います。
○香川政府委員 端的に法律的な手段としましては、この三条の二項にございますように、先ほど申しました清算金の支払い債務と債権者への所有権移転登記義務の履行を同時履行の関係にしておることから、清算金の額に不服があれば、適正な清算金の支払いがないわけでございますから、したがって登記申請の協力を拒む、それが手段になりまして清算金について適正なところにだんだん話し合いが進んでいく、こういうふうな考えでございます。
○正森委員 ということは、それがさらに進みますと、清算金についての話し合いがつかなければ仮登記担保権者は所有権移転の請求を起こす、そのときに債務者の方は、いやいや、所有権移転してもいいのだけれども清算金に不服があるので、これだけの清算金を払ってくれればこれは登記できるのだという抗弁を出すという形になるか、あるいは債務者の方からこれこれの金を払えという訴えを逆に起こしてそれで争うというような、大体どちらから起こすかによって二つの型が考えられると思いますが、とことんまでいくとそういうようなかっこうで解決されるであろう、こういうことですか。
○香川政府委員 そのとおりでございます。
○正森委員 第三条の三項には債務者等に不利な特約という言葉がございますが、その債務者等にとって不利なものというのはどういうようなものが具体的に考えられますか。全部は挙げられないでしょうけれども、幾つか例示してください。
○香川政府委員 極端な例を考えますと、清算金の支払いはしなくてよろしい、清算金債務を免除するというふうな特約、それから同時履行の抗弁権を行使しないとかあるいは放棄するというふうなのが端的な例として考えられます。
○正森委員 受戻権の十一条の点について伺いますが「債務者等は、清算金の支払の債務の弁済を受けるまでは、債権等の額に相当する金銭を債権者に提供して、土地等の所有権の受戻しを請求することができる。」こうなっておりますが、そのときに債権者に提供する債権等の額、こういうのは利息が幾らであるかとか、いつが期限であったかとかで争いがあると思うのですけれども、それは債務者の定める額でいいということですか。それは一応そうなのだけれども、それについて争いがあれば仮登記担保権者の方で所有権を債務者の方に渡さないのだからこれもまた訴訟になる、そのときに債権等の額について裁判所が終局的には決める、こういうことですか。
○香川政府委員 そのとおりであります。
○正森委員 同条で「清算期間が経過した時から五年が経過したとき、又は第三者が所有権を取得したときは、この限りでない。」こうなっておりますね。そうすると、これは善意の第三者とはなっていないので、悪意の場合でも第三者が取得した以上は仕方がないというようにも読めるのですね。そこで、この点はどういうぐあいに立法者は解釈しておられますか。
○香川政府委員 この規定の趣旨から言いまして、善意、悪意は問題にならないと思うのであります。強いて言えば、悪意の例というのは、まだ清算期間が経過したときから五年が経過していない、したがってその限りでは債務者は受戻権がある、それを承知しておってそして債権者から所有権を取得した者というのが例だと思いますが、この規定はもともと債権者が代物弁済等で所有権を取得いたしましても、その所有権の所有を続けるということに目的がある場合は軽微でございまして、やはりそれを売却して資金を回収するということでございますから、その面から売りやすくしておかなければならない。第三者に売った場合でも、債務者がその第三者に対して受戻権が行使できるということになりますとこれは買い手がないわけでございまして、したがって債権者の資金回収が非常に困難になる。そういった債権者、債務者の利害調整というふうなことで、第三者に所有権が移転したときにはもはや買い戻しはできない。ただこの場合も、第三者に所有権移転の登記がされなければ、対抗の関係では受戻権の行使ができるわけでございます。さらにまた、虚偽で第三者に登記をするという場合も考えられるわけでありますが、このときは御承知のとおり所有権移転そのものが無効でございますから、したがって債務者は受戻権が行使できる、こういう解釈になろうかと思います。
○正森委員 後順位の担保権者が通知された清算金に不満がある場合にはどういう手段で争うことができるのか、そこら辺を御説明願いたいと思います。
○香川政府委員 円満に解決するために事実上の話し合いということは相当あると思いますけれども、法律的に申しますれば、そのときには、たとえば、後順位の抵当権者にその債務の弁済期が到来していなくても競売申し立て権を認めておるわけであります。そして競売手続において一切解決する、こういう手段があるわけでございます。
○正森委員 十五条には第二項で「差押債権者に対抗することができる。」、もう少し詳しく読みますと「前項の強制競売等の開始の決定があった場合において、その決定が清算金の支払の債務の弁済後にされた申立てに基づくときは、担保仮登記の権利者は、その土地等の所有権の取得をもつて差押債権者に対抗することができる。」こう書いてありますね。「対抗することができる。」という法律的な意味はどういうことでございますか。第三者異議の訴えを起こせるということですか。
○香川政府委員 まさに第三者異議の訴えを起こせるということでございます。
○正森委員 担保仮登記権者が担保仮登記で登記簿上に記載している金額もしくはその利息、それ以外に別の債権を持っておったということで清算金と相殺するということ、これはこの法律ではできないのですか。またそういうぐあいにしている理由は何ですか。
○香川政府委員 これは相殺はできないことにしております。これはやはり債務者保護ということ、つまりそういうことになりますと、仮登記担保の流用と同じような結果になるものですから、そういう意味から禁止いたしております。
○正森委員 終わらしていただきます。
○鴨田委員長 引き続き仮登記担保契約に関する法律案について質疑を続行いたします。長谷雄幸久君。
○長谷雄委員 仮登記担保契約に関する法律案について質疑を行います。 本来ならばこの法案に関する逐条審議をやった後で大臣に所信を求めたいと思っておったのですが、大臣が所用でお出かけでございますので先にお尋ねをしたいと思います。 本法案につきましてはこれまで集積された判例理論に基づいて立法化を図ったわけで、そのこと自体大きな前進であると思います。しかし、これからいろいろと質疑の中で私なりに問題点も指摘してみたいと思いますが、その中で仮登記担保権者、債務者、利害関係人の利益の調整を適切に図って、もってこの法案に対する国民の信頼が得られるように努力することがきわめて重要であると思うわけでございます。その点で大臣の所信を伺いたいと思います。
○瀬戸山国務大臣 これまでいろいろこの法案について質疑や応答があったわけでございますが、御承知のとおりに一般社会で仮登記担保が広く利用されておる。しかしそれにはまた相当の弊害もある。債権者、債務者の利害の調整あるいは第三の権利者との調整、こういう問題がしばしば裁判でも取り上げられまして、最高裁判所の判例等もありますから、これをこの際立法行為によって明らかにしたい、こういうことでございますが、この法律がなるほど社会の実態に合って、法律の目的、趣旨が生かされるように努力するのは当然でございます。何の法律でも同じでございますが、そういうつもりでやっておりますが、また実施をいたしてみましてなお不備な点があれば、さらにまた検討して改めるものは改めなければならぬ、かように考えておるわけでございます。
○長谷雄委員 では続けて質疑をいたします。 仮登記担保についての立法のあり方についてでございますが、立法形式には、一つには流抵当法という一般法を制定しその中で仮登記担保を規定するやり方と、二つには仮登記担保に関する判例法に明文の根拠規定を置くという形での立法という方法があると思います。ところで、仮登記担保というのは流質や流抵当の約款に基づく権利が仮登記により保全されるというものでありますので、第一の流れ抵当法の形式によるべきではないか、こういう考え方にも十分な根拠があると思います。それにもかかわらず、本法案では第二の形式をとっておりますので、その第二の形式をとった理由をお伺いしたいと思います。そしてまた、将来第一の形式による一般法の制定について検討する余地があるかどうかも、あわせてお尋ねをいたします。
○香川政府委員 確かにお説のような二つの立法形式が考えられると思うのでありますけれども、実は流れ抵当と言われておるのは、これは講学上の言葉でございまして、流質に対峙したものだと思うのであります。民法上そういう言葉は全くないわけでございます。したがって、法律の題名といたしまして流抵当というものをつくり出すということは若干問題があるわけでございますし、しかも、そういう講学上の言葉でございますから、流抵当の意味するところが学説によってはいろいろ内容がまちまちでございます。したがって、むしろ端的に法律上言葉のある仮登記というものを持ってきた方がより明確だろう、こういうふうな趣旨でございまして、実質を考えますと、まさにこの法案は流抵当法案だというふうに私は理解しております。
○長谷雄委員 そこで、裁判官が裁判をする際には制定法の基準がある方がベターである、これは当然のことでございます。その意味で、今回、集成、集積された判例法をもとに立法化へ進んだということは前進だと評価できるわけでございます。 そこで、この仮登記担保についてお尋ねをするわけでございますが、目的物の価格が債権額より大きい場合に債権者に清算義務を課したこと、つまりまる取りの禁止をしたことについてお伺いしたいのでありますが、まず第一に、債権者の不動産所有権取得時期についてお尋ねをいたします。 この法案の二条一項によりますと、債権者の評価した清算金額に不満がない場合には、通知が到達した日から二カ月を経過した日、つまりこの清算期間についてでありますけれども、この法律案要綱の際に二週間という期間、そしてまた後順位担保権者があるときには三カ月、こういう要綱であったように伺っておりますが、本法案では二カ月、こういう形になっておりますが、この二カ月にした理由をお尋ねをしたいと思います。
○香川政府委員 率直に申しまして、二カ月でなければならぬという的確な合理的理由があるわけではないのでございますが、これは法制審議会の審議の過程で、いまおっしゃいましたように二週間とか三週間とかいろいろな意見が出まして、しかし、実際債務者の方でその清算金の額が適正であるかどうかを判断するというにはやはり一月ではちょっと足りないのじゃないか、しかし債権者の方にとっては三月では長過ぎるというふうなことで、その中をとったと申しますか、そういうふうなことで二カ月が大体適当であろう、それだけのことでございます。
○長谷雄委員 この場合に、清算金の算定時期をいっと見るのかという問題でございますが、これまで清算金の算定時期については、清算金の提供時という見解、そしてまた所有権移転登記のとき、こういう見解があったわけでございますが、今度の法案によりますと、清算期間経過のとき、このように解釈できるように思うのでございますが、そう理解してよろしいでしょうか。
○香川政府委員 そのとおりでございます。
○長谷雄委員 債権者の不動産所有権取得の時期についてでありますが、清算期間は過ぎた、そして債権者は清算金の提供はしたけれども、債務者はまだ弁済を受けていない、しかも法案十一条による受け戻し権の行使ができる場合にもかかわらず、受け戻し権の行使をしていない、こういう場合でございますが、その場合に目的不動産の所有権の帰属は一体だれのものになるのか、いかがでしょうか。
○香川政府委員 清算期間の二カ月が経過した時点で所有権が債権者に移るという解釈でございます。したがって、お説の場合には債権者にすでに移っておるということになるわけでございます。
○長谷雄委員 その場合、幾つか具体的にお尋ねするのですが、清算期間が経過したときから五年を経過した場合では、債務者は清算金の弁済を受けていない、しかも受け戻し権は消滅をしているわけですけれども、その場合の所有権はどうなるでしょうか。
○香川政府委員 この受け戻し権は、一たんその債権者に帰属した所有権を再度また債務者に戻すということでございますので、受け戻し権を行使しなければ依然としてそのまま債権者に所有権があるわけでございます。
○長谷雄委員 その場合は所有権はもうすでに債権者に移っていて、清算金だけが残るという形になるのではないでしょうか。
○香川政府委員 本来はこの清算金の支払いと所有権移転登記の債務の関係は同時履行でございますから、したがって債務者が拒めば向こうに所有権登記はできないわけでございます。だけれども、実態的には清算期間が満了したときに所有権が移っているわけでございまして、その場合に、受け戻し権を行使するのは清算期間が経過した後、五年内でございますから、債権者の方に所有権が移っているというようなことになるわけでございます。
○長谷雄委員 それでは、債権者が債務者の方から所有権移転登記に必要な書類の提供を受けたのですけれども、債権者が登記をしないままにしておいた場合、その場合は所有権の帰属はどうなりましょうか。
○香川政府委員 債権者、債務者間におきましては、清算期間が経過した時点で債権者に移っているわけでございますけれども、登記をしてなければ債権者の方は所有権取得を第三者に対抗できない、こういう関係になるだけでございます。
○長谷雄委員 後順位担保権者がいない場合についてお尋ねしますが、債権者が算定した土地等の見積価額に債務者が満足しない場合、その場合、債務者の利益というものは恐らく三条二項の同時履行の抗弁の形で保護されるのではないかと思うのですが、そのように理解してよろしゅうございますか。
○香川政府委員 そのとおりでございます。
○長谷雄委員 この債権者が二条一項に基づいて通知をする場合に、その土地等の見積価額について相当性が必要ではないかと思うのです。もちろんこの相当性について争いがあれば、先ほどの御答弁のように三条二項の同時履行の抗弁の際に決着がつくことになると思うのですが、この見積価額の算定の根拠をこの法案に盛り込んでいないということがちょっと問題ではないかと思うのでございます。たとえば鑑定人の鑑定の結果を通知書に記載するというような形の規定になっていればそれなりに一つの合理的なものになるのではないかと思うのです。そこで、債務者の利益保護のために通知の要件としてこの見積価額の相当性を示すに足りる合理性のあるもの、たとえば公的機関による評価の公正を担保する規定というものを盛り込むべきではないか、こういう感じを持っておるのですが、いかがでございましょうか。
○香川政府委員 実質そういった立法も十分検討すべきことだと思うのでありますけれども、この通知は一つの所有権取得のいわば要件でございまして、その通知をする際に、いまお示しのような第三者の鑑定評価書をつけなければならぬというふうなことにいたしました場合に、その鑑定評価書というものが単に形式的に第三者のものであればいいということであれば足りるわけでございますけれども、やはり適正なというふうな要件が入ってまいりますと、そこが争いになって、通知そのものの効力が不安定になるわけであります。しかし、実際問題といたしまして、債権者もやはり合理的に動くといたしますれば、そういったものを示して通知するでありましょうし、あるいはまた債務者の方からこれでは安過ぎるということになれば、しかるべく話し合いで適当な機関を選んでそこで鑑定してもらうというふうなことで決着をつけるというふうなことは十分期待できますし、そういうふうに実際はなるのではなかろうかというふうに考えているわけでございます。
○長谷雄委員 お説は十分理解できるのです。鑑定の場合でも鑑定人によっては当然鑑定の結果も違ってくるわけですから、最終の争いを防止する形にはならないということは理解できるわけです。しかし、公的機関で評価の公正を担保するということでは、たとえば現在の法制の中で借地非訟事件がございます。そこでは裁判所の方で適正価額を示す、こういう形になっているわけですね。それに似たような形で、裁判所の判断がこの通知の際に盛り込まれるような形の立法というものはいかがかと思っておるのですが、いかがでしょうか。 〔委員長退席、羽田野委員長代理着席〕
○香川政府委員 立案の、法制審議会の審議の過程ではむしろ非訟事件として裁判所でそういう価額を決めることにした方がいいのではないかという御意見も確かにあったわけでございます。しかし、これは裁判所で決めるといたしましても、裁判所それ自体が、率直に申しましてそういう鑑定能力を持っているわけではないので、やはり第三者に鑑定をさせるというふうなことでございますけれども、それをしかし裁判所が決めたからといって確定的に争えないようなものにするということはやはり問題があるわけでございまして、そういうことはかえって手続を複雑にするだけではないかというふうなことで、ぎりぎりのところ、争いがありますれば所有権移転登記を求めてくる訴訟とかあるいは清算金を支払えという訴訟におきまして、両者が攻撃、防御を重ねて、立証しておのずから適正な価額がそこに発見されていくということになるわけでございまして、そういうことにした方がむしろ実態に合うのではないだろうかというふうな考えで、特にこの段階での裁判所の関与を認めることにしなかったわけでございます。
○長谷雄委員 二条一項の清算期間でございますが、二カ月ということの法的意味でございますが、これは強行規定とこう理解してよろしゅうございましょうか。つまり、当事者の特約によってこの期間を伸張あるいは短縮した場合の効力はどうなるのかということをお尋ねしているのです。
○香川政府委員 これはまさに強行法規でございまして、当事者で特約で短縮、伸張することはできません。
○長谷雄委員 三条の三項を見ますと、債務者に不利益な特約は無効である、こういう規定がございます。これは清算金に関する条項でございますが、清算期間そのものについては、先ほど申し上げた二条の条文にはそういう不利益な特約は無効であるとの規定がない。これについてどのように考えるわけでございましょうか。
○香川政府委員 これは特に三条三項のような規定を設けておりませんけれども、この規定の趣旨は、一つは所有権移転の効力を生ずるための一つの物権行為としての要件でございますので、したがって、当然強行法規性ということが解釈上出てくるであろう、こういう考え方でございます。
○長谷雄委員 清算金の提供についてお尋ねをしますが、清算金の支払い債務は引きかえ給付であるということが三条の二項に規定されております。そこでこの提供額についてぴったり合わなければならないのか、相当額の提供で足りるのか。つまり本旨弁済に当たる場合、当たらない場合を聞いているわけでございますが、その提供額が不足している場合に、結局は判決として正当な金額の清算金と引きかえに移転登記せよという場合になるのではないかと思うのですが、提供としての効力が認められない場合、その場合は受け戻し権はどのようになるのか、お尋ねしたいと思います。
○香川政府委員 債権者の提供する清算金が相当額でない、つまり債務者がそれを争うということになりますと、その争いが決着がつくまでは清算金債務について法律関係は明確にならぬわけでございまして、したがって清算金の支払いがない状態が続くわけでございます。したがって、清算期間経過後でございますれば五年以内に限って受け戻し権の行使はできるということになろうかと思います。
○長谷雄委員 そうすると、この場合、受け戻し権は残ると考えてよろしゅうございますね。
○香川政府委員 厳密に申しますと、単に債務者が債権者の清算金の提供額を争っているというだけで、それがまさにその債務者の言い分が正しいという場合でありますればこれは受領するはずもないわけでございますから、したがって清算金の支払いを受けてないという状態が続くわけでございます。したがって当然これは受け戻し権の行使ができるわけでございますけれども、清算金が適法に提供されておるのに単に受領を拒否しておる、そこで債権者の方が供託したというふうな場合が考えられるわけでございます。そのときは、供託した額が適法な額であるといたしますればこれは弁済の効力が生じておるわけでございますから、したがってそれは清算金を受領したということになるわけでございますから、したがって受け戻し権の行使はできなくなるという関係になるわけでございます。
○長谷雄委員 それでは清算金の供託についてお尋ねをします。 供託関係については法案七条について供託が差し押さえ等の場合について任意的であるということが規定されております。しかし後順位担保権者がある場合には、その者の権利行使の機会が保障されなければならないと思います。そこでそういう場合にはすべて供託ということを義務づけてはどうか、こう思うわけでございます。御承知のように、土地改良法、土地収用法、農地法、鉱業法などの特別法では一定の清算金、補償金等について供託を義務づけているわけでございます。この法案の場合にこういう規定を設けるべきではなかったかと思うのでございますが、いかがでしょうか。
○香川政府委員 後順位担保権者がいる場合、いない場合、いずれにいたしましても、差し押さえがされた場合に当然供託しなければならないということになりますと、先ほどの第三条二項の同時履行の抗弁権を債権者側について奪うことになるわけでございます。つまり先給付を強いる結果になるわけでございますから、したがって供託を義務づけるのはいかがかということで、義務づけていないわけでございます。もちろん差し押さえがされています場合には債権に対する強制執行が進むわけでございますから、これは供託されていなくても執行手続は可能でございますから特に問題はないのではなかろうかと考えているわけでございます。
○長谷雄委員 債権者が第三者のために抵当権を設定したときの抵当権の効力についてお尋ねをしたいのですが、債務者に受け戻し権がある間に、債権者が所有権移転登記をした場合に、その債権者が先ほど申し上げたように第三者のために抵当権の設定登記をした、その場合に債務者が受け戻し権を行使したとすればその抵当権の効力はどのようになるのかお尋ねします。
○香川政府委員 これは抵当権の効力には消長を来しません。したがって、債務者が抵当権つきの不動産の所有権を受け戻すことで満足するならばそれでいいわけでございますけれども、そうでなければ、受け戻し権の行使は意味ないことになるというふうなことでありますならば、その受け戻し期間中に抵当権を設定した債権者による不法行為と申しますか、そういった関係での損害賠償というふうなことが問題になるわけだろうと思います。
○長谷雄委員 次に、清算期間の経過後でございますが、債権者が第三者のために賃借権を設定した、その後に債務者が受け戻し権を行使した場合には、債務者は賃貸人の地位を承継することになるのかどうか。
○香川政府委員 その所有権を取得をいたしまして、そのままの状態で考えますれば賃貸人の地位を承継したということになるわけでございます。しかしこれは御承知のように、先ほど申しましたのと同じような意味で、瑕疵担保の問題になってくる場合とか、あるいは不法行為の損害賠償というふうな問題が起こってくる余地があるわけでございます。
○長谷雄委員 受け戻し権について十一条に規定がございますが、この受け戻し権の性質については形成権と考えているのでございましょうか。
○香川政府委員 形成権というふうに解釈いたしております。
○長谷雄委員 そうすると、これの消滅は五年という規定がございますが、五年の意味は除斥期間と解してよろしいわけですね。
○香川政府委員 そのとおりでございます。
○長谷雄委員 受け戻しのできる時期についてでございますが、債権がなくなれば受け戻せない、債権が存在する限り受け戻しができる、こういうぐあいにすれば非常にわかりやすいのではないかと思うのですが、ことさら受け戻し権というものを権利として十一条に規定をしているわけでございますので、考え方として貸し金債務がなくなっても、なおある一定の時期では受け戻し権が使えるというぐあいに考えてはどうかということでございますが、この考え方を推し進めてまいりますと、所有権移転登記がなされた、そしてまた貸し金債務も消滅をした、しかもなおかつ、清算金の受領ももう終わったという場合でも、一定の期間に限って受け戻し権が行使できてもいいのではないか、こんな理屈も成り立つのではないかと思うのですが、いかがなものでしょう。
○香川政府委員 確かに立法論としてはそういうふうなことも十分考えられると思うのでありますが、それやこれやいろいろ議論されまして、債権者の保護ということも考えなければならぬというふうな意味で、かような結果に落ちついたわけでございます。
○長谷雄委員 この仮登記担保の出発は、仮登記権者の利益保護と、その関係者の利益保護との調節にあったと思うのですが、いま言った場合、この法案十一条でなくて、いま私が例を申し上げたように、清算金も受領したけれども、なお受け戻し権が行使できる、この考え方は民法では五百七十九条の買い戻し権の規定がございますが、こういった買い戻し権的な構成にできないか、あるいは清算金の受領をするときに、その受領自体が一つの新たな別の法律行為、たとえば再売買の予約のような形に考えて、そしてなお債務者としては取り戻しができる、そういう構成は将来検討の課題になるのではないかと思うのですが、いかがなものでございましょう。
○香川政府委員 買い戻しの場合には当事者の契約によって買い戻し権を発生させるわけでございます。この場合の受け戻し権は法律の規定によって有無を言わさず発生させるわけでございます。したがって、例は悪いかもしれませんけれども、清算ができて清算金の支払いも受けた、そのときの不動産の価格から、数年たって価格が非常に上昇したというふうなときには、債権者にもとの債権相当額を払えば不動産の所有権が取得できるということになって、受け戻し権を認めますと債権者にとってきわめて酷なといいますか、逆に言えば債務者はわがまま勝手じゃないかという非難も考えられるわけでございまして、その辺のところが、契約によってできる請求権と、法律が強制的につくり上げる請求権との関係人の利害調整という面から、おのずから差が出てこざるを得ないのではないかというふうに考えるわけでございます。
○長谷雄委員 清算金の受領権者についてお尋ねをしますが、仮登記担保を設定した後に後順位の抵当権がある場合でございますが、その場合の清算金は債務者に払うのかあるいは後順位の人に払うのかということでございます。たとえば価格一千万円の不動産に三百万円の仮登記担保をつけた、その後七百万円の後順位抵当権を設定した、こういう場合を考えてみますと、所有者つまり債務者は、抵当権設定に際して七百万円の清算金相当額をもう受領しているわけですね。そうしますと、この場合は、保護を要するのは仮登記の関係の債務者ではなくて、むしろ後順位担保権者ではないかと思うのですね。そうすると、その後順位の担保権者の保護のためには、一応の手当てがあるようでございますけれども、債務者にはこの清算金の受領権なし、こうするのが理にかなっているのじゃないか、こんな感じもするのですが、いかがでしょうか。
○香川政府委員 これは、後順位担保権者の保護をどういう態様でするかということは一つの問題であると思いますが、この法案では実質的にいまお説のような結果になるように、後順位担保権者が存する場合にはその者に通知する、そうすれば、後順位担保権者は債務者の受け取るべき清算金債権というのを知り得るわけでございますから、したがって、その清算金の額に争いがない、つまり後順位担保権者としてもそれは相当額だということになりますれば、物上代位の規定によってその請求権を差し押さえる、そうして抵当権の実行をしていく、こういうことになるわけでございますから、特に後順位担保権者に払うということをしなくても、それはむしろ後順位担保権者の権利行使の形でそういう結果をもたらす方がより合理的ではないか、こういう考え方でございます。
○長谷雄委員 次に、仮登記担保権の実行、つまり、仮登記に基づく本登記請求と競売等との優先関係についてお尋ねをします。 この関係については法案十五条で一応の解決がなされているように思いますが、これには考え方として、常に仮登記担保権の実行手続を優先せよという考え方、そしてまた逆に、常に競売手続を優先せよという考え方があろうかと思いますが、そのほかに、この中間にいろんな考え方もあろうと思いますが、この法案十五条のような解決、どうしてこういう解決の仕方にしたのか、これをお伺いしたいのです。問題は、果たしてこれで仮登記担保権者及び後順位者の権利は適正に保護されていると考えるのでございましょうか。
○香川政府委員 十五条は、清算金がまだ支払われてない、そういう場合に、その目的土地について第三者が強制競売をいたしました場合に、その競売手続で一切解決すると申しますか、仮登記担保権者もいわばその債権の回収が図られればそれでいいわけでございますから、したがってあたかも抵当権者と同じような地位においてその優先弁済を受ける、こういうことにしておるわけでございますから、したがって、そういう場合に、なおかつその仮登記に基づく本登記請求を認めるというまでの必要はなかろう、それを認めたといたしましても、結果的には清算金を支払って、経済的には同価値しか回収できないわけでございますから、したがって仮登記担保権者はその競売手続で債権の回収を図ればそれでいいじゃないか。ところが、清算金を支払いました後でまだ債権者に所有権移転登記がされていないというような場合に第三者が競売いたしました場合には、これはやはりすでに所有権は実質上取得しているわけでございますから、したがってその債権者の保護を図る意味で第三者異議によって競売をとめるということにしておるわけでございまして、いろいろの立法方法はあろうかと思いますけれども、この辺のところが利害の調整という面からいいのではなかろうかというふうに思うわけでございます。
○長谷雄委員 次に、被担保債権の範囲についてお尋ねをいたします。 被担保債権の範囲については貸し金債権、これが当然入るわけです。そのほかの問題でございますが、二年分の遅延損害金等の扱いでありますが、仮登記担保権者の権利は競売手続においては抵当権と同じ扱いになっております。そういうことでこの二年分の遅延損害金等に限られるようになっておる規定でございます。このことによって仮登記担保権者の利益の独占を阻止することになると思うのでございますが、これに反して、仮登記担保の本登記手続による実行の場合を考えますと、この二年分の遅延損害金に限られない、こう考えられるわけでございます。問題は果たしてこれでいいのかどうかということでございますが、仮登記担保の制度はもともと競売手続を回避するために利用されているわけでございます。それが仮登記担保権者の意に反して競売手続にみずから巻き込まれてしまう、しかもその後、二年分の遅延損害金等しかもらえない、こういうことになるわけです。そうすると、債務者及び後順位担保権者保護の趣旨であることは十分理解はできるわけでございますが、債権者の立場から見て果たしてこれでいいのかな、何か少し後順位担保権者等の利益を保護し過ぎるのではないか、こういう意見も一部にあろうかと思うのですが、いかがなものでしょうか。
○香川政府委員 そのような考え方もあろうかと思いますけれども、しかし競売手続におきまして仮登記担保権者の優先弁済を受ける債権の範囲を全く無制限、利息、遅延損害金通じて二年分以上のものも優先弁済金を受けられるということになりますと、仮登記担保権が抵当権よりも強いことになるわけでございます。これはやはり立法政策としてはどうだろうか。私どもの考えとしましては、仮登記担保というものが使われるにはそれだけの理由があるわけでございますけれども、抵当制度の本流から考えますれば、できるだけ本来の抵当権というものを使って金融取引がされることの方が好ましいわけでございます。その場合に、仮登記担保が抵当権よりもより有利だというようなことになることは、まさにいま申しましたような本流と逆流することになりはしないかという心配があるわけでございます。そういうことからせめて抵当権並みというふうに制限したわけでございます。
○長谷雄委員 次に、仮登記担保権と短期賃貸借の保護に関する民法の三百九十五条の関係についてお尋ねをします。 この法案では民法三百九十五条を準用する趣旨の規定がないわけでございますが、これを規定しなかった理由はどういうところにあるでしょうか。
○香川政府委員 民法の三百九十五条の短期賃貸借の保護の規定はそれなりに合理的な理由は十分あるわけでございます。しかしこの短期賃貸借の保護というのは、実は立法者が考えるよりはむしろ違った機能といいますか、端的に申し上げれば競売を妨害する、抵当権者の抵当権の侵害につながる、そういったいわば乱用がされておるのが実態でございます。したがって、三百九十五条自身をむしろ廃止した方がいいというふうな意見も最近強く出ておるわけでございまして、そういうことでございますので、あえて仮登記担保について短期賃貸借を保護するということはいたしませんで、つまり本来仮登記の効力としては、これは実態上短期賃貸借といえどもすべて仮登記後のものは否定できるわけでございますから、その効力をそのまま尊重いたしまして、特例としてそういう短期賃貸借を保護するという規定を特に設けなかったわけでございます。
○長谷雄委員 お説は十分理解できますが、民法三百九十五条はもともといわゆる価値権と利用権との利害の調節を図るものであったわけでございます。仮登記担保権が実質的には担保として機能し、抵当権に類似したものであることは否定できないと思うのです。そうしますと、やはりこの場合、価値権のみを優位に置き、利用権について全くこの法案では配慮がない、こういうように思えるのですが、この配慮が見られないことによる不利益というか不都合というものはないと、このようにお考えでございましょうか。
○香川政府委員 これはまさに立法政策の問題でございまして、本来の三百九十五条短期賃貸借の保護の規定というのはそれなりの十分な理由があるわけでございます。したがって、乱用でない形のものであればその短期賃貸借を保護することは十分考えなければならぬわけでございますけれども、しかし今日の利用の実態を見ますと乱用がきわめて多い。したがって、少ないそういう例の場合の短期賃貸借の保護を図ることの利益と、それが乱用される不利益とを比較考量して考えなければならぬということだろうと思うのでございまして、そういうことから短期賃貸借の保護は、この際はむしろ弊害の方が大きいということで規定を設けなかったわけでございます。
○長谷雄委員 次に、法案十三条によりますと、仮登記担保権者には仮登記の順位による優先弁済請求権が認められております。ところが、民法三百九十八条ノ一以下には根抵当権に関する詳細な規定がございます。ところが法案十四条では、仮登記が不特定の債権を担保する目的でなされたときにはこの優先弁済請求権を認めない、こういう規定になっているわけでございます。この根仮登記担保に優先弁済請求権を認めなかった理由はどういうところにあるのでしょうか。
○香川政府委員 確かに根抵当立法がされている今日におきまして、根仮登記担保と申しますか、そういうものの有効な場合というのは当然あろうかと思うのでございます。しかし、これは別に立法上明確になっておるわけではないわけでありまして、現在実務的に、いわば昔の包括根抵当的な根仮登記担保というふうなものもあるような状態でございます。しかも今回の立法におきまして、実態を考えますと、仮登記担保というものはできるだけ抵当権に近づけたような扱いをせざるを得ないわけでございますけれども、根仮登記担保まで根抵当と同じような扱いをするということになるのは立法政策上いかがかということで、この点はいろいろ議論があったのでございますけれども、そこまでの保護はする必要はないというふうな考え方で優先弁済権を認めないということにしたわけでございます。
○長谷雄委員 いまのお話、よくわかるのですが、この認めなかった理由について、法務省のどなたか書かれておった文献によりますと、債権額を公示する手段がない、そういう理由が一つあったように思うのでございますが、そういうことは理由になっておるのでしょうか。
○香川政府委員 もともと通常の仮登記担保につきましても、これは債権額を公示しないわけでございます。しかし根仮登記担保まで考えますと、何らかの公示方法はやはり必要と言わざるを得なくなってくるのじゃないかというふうに考えられるわけでありまして、そのときに公示方法として適当な規定を設けることがなかなかむずかしゅうございまして、したがって、むしろそういうことになるといたしますれば、根抵当と同じような立法化するということにもなるわけでございまして、そこまではやるのは行き過ぎではなかろうかというふうなことでございます。
○長谷雄委員 債権額を公示する手段がないというそういう理由が一部にございましたけれども、この公示する手段がないというのは、根担保目的の場合だけに限らず仮登記担保すべてに共通することではないかと思うのですね。すでに根抵当権の制度が法定されて、今日、仮登記担保制度を立法するに当たって、根仮登記担保をいわばこういう形でまま子扱いといいましょうか、こういう形のままに残すことが果たしていいのかどうか、こういう問題があろうかと思います。特に公示制度だけの問題であるならば、そのための立法措置をすることこそ重要ではないか、こういうぐあいに考えるわけでございます。これがだめならば、冒頭申し上げたように流れ抵当の方式でやってはどうか、こういうような議論もあろうかと思うのですが、いかがなものでしょうか。
○香川政府委員 根仮登記担保というのは、つまり不特定の多数の債権を担保する形で契約ができるわけでございますけれども、その仮登記担保の実質と申しますのは、まさに代物弁済契約が根底になっているわけでございます。したがって、債権額が幾らになるかわからぬ、どういう債権が出てくるかわからぬというふうなことで、代物弁済契約を締結するということ自身が相当これは問題ではなかろうかと私は思うのであります。そういう方向での立法を根抵当と同じような形でやるということはいかがなものか。むしろそういう根仮登記担保というのは、率直に申しますと法律で禁止した方がいいので、十分根抵当によって賄えるわけでございますから、そういうものはむしろ禁止の方向に向かった方がいいのではないかというふうにも思うのでありまして、その辺のところは今後さらに検討しなければならぬ問題でございますけれども、さしあたりは、いま根仮登記担保を立法によって公認するというのはなかなか勇気の要ることではないだろうかという感じがするわけでございます。
○長谷雄委員 最後に一つ要望を申し上げておきたいと思いますが、今回の法案は、これまで最高裁等の判例の集積されたものの理論に基づいて立法化されたという意味で大きな前進であるということは評価をするわけでございますが、なお新たな立法であるという意味で、いま指摘申し上げたような問題点もやはりあろうと思います。こうした問題点についてはやはり今後の課題であろうと思いますので、十分に国民の期待に沿えるような運用とまた改善があれば、その点についても努力を進めていくことを特に望みたいと思っているわけでございます。
○香川政府委員 現実の実態を十分認識した上での立法でございますけれども、やはりやってみなければわからない問題も多々あろうかと思うのであります。したがって、この法律が制定されまして、その後の運用の状況を見まして、改善すべき点があればさらに改正法案を提出するということは、もちろん私どもとしても考えておるわけでありまして、そういうときには、ひとつ慎重に審議していただいて、できるだけ早く成立させていただく。何回でも、悪い法律があれば、悪いところに気がつけば、私どもとしては改正法案をその都度出してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
○長谷雄委員 終わります。
○羽田野委員長代理 加地和君。
○加地委員 今回の仮登記担保法案というのが昭和四十年ごろからの相次ぐ最高裁の判例、こういうものをもとにしてつくられてきたわけでございますが、だれが考えましても、いわゆる時価の、借りておるお金の二倍三倍の不動産を代物弁済で取り上げていくというのはまさに公序良俗に反して無法な行為であって、相次ぐ判例に対して余り異論を差しはさむ人もなかったと思うのですが、常識的に考えて、こういう常識を踏まえた法律というのが、なぜ最初の判例が出て十年あるいは十二、三年もの間立法化されなかったのか。こういうよい法律であればもっと早くそういう弱者保護のために立法化されなかったのか。その経過なり理由をお尋ねしたいのです。
○香川政府委員 この仮登記担保につきまして、お説のように昭和四十二年に一つの問題提起というような形で最高裁の判例が出ましたが、その以前におきましてもいろいろ議論があったわけでございます。ただ、法制審議会の民法部会におきましては、当時根抵当立法に取り組んでおりましてこれが相当期間がかかったわけでございます。そのころになりまして、やはり最高裁の判例が必ずしも同じ方向ではなくていろいろの問題が矛盾し合って出てきているわけでございまして、そういうことから近く最高裁の大法廷判決がこの点に関して出るというふうな情勢でございましたので、その大法廷判決を一遍見た上で立法に踏み切ろう、こういうふうな考えでまいったわけでございます。
○加地委員 それは余りおくれた理由にはなってないと思うのですね。最高裁の大法廷の判決を見るのもそれはいいでしょうけれども、実際にそういう場合に、判例だとまちまちの結論が出てきますし、あるいは弱者保護という立場から一々裁判で争ってみなければ救済されないというような状態に放置しておくのはやはりよろしくなかったと思うのです。今後これと類似の立法次第によって幾らでも弱者を救済できるようなものがあれば、余り大法廷の様子を見なければいかぬとか、大法廷判決が出なければ立法さえもできないという制約も何もないわけでございますので、真剣に今後各種の問題に取り組んでもらいたいと思うのです。 そこで、いままでの最高裁の判例の中では、いわゆる清算義務というものが終わるまでは代物弁済の効力は発生しないのだというような判例も出ているわけなんですね。そうしますと、代物弁済の効力が発生していなければ所有権は債権者の方へは移っていないんだ、登記の上では何かの関係ですでに債権者が手にしていた書類をもとにして、登記上は移っていても実態的にはまだ債務者のものだと考える余地もあるわけですね、その判例に従いますと。そうしますと、すでに過去のことでございますけれども、いわゆる高利貸しとか債権者にパクられるようにしてとられてしまった不動産を、いまから気がついて取り戻しの裁判などをやろうとした場合には、これは何年ぐらい先の分までさかのぼれますでしょうか。一つの考えとして、所有権は登記の上では債権者の方へ移っておるけれども、実態的にはまだ債務者のものだとすれば、所有権に基づくところの返還請求権に基づきまして移転登記の抹消請求ということも理屈の上で可能であろうかと思うのですけれども。
○香川政府委員 お尋ねのケースの場合に、さかのぼって債務者がその不動産の所有権を取り戻すことができるかどうか、これは相当疑問だと思うのであります。大審院の判例あるいは最高裁の判例で、清算関係が済まなければ所有権が移転しないということはそのとおりだといたしましても、一体債権者に現に移転登記がされているものが、では、清算関係が済んでないのかどうかという問題でございます。差額の返還請求権は、その判例が出る前から本来はあったんだということになりました場合、これは実際問題として債務者はそういうことは知る由もないわけでございますから、しかし、あったんだということになればいつでも請求できるということにもなるわけでございまして、そうなればつまりこれは債権の消滅事項の問題も出てくるわけでございまして、そういうときに常に、この新しい立法と違った形式によって、債権者に移転登記がされておるものについてその所有権取得が無効だというふうにはなかなか言い切れない、一般論としてはとても申し上げられないようなことじゃなかろうかと思うのでありまして、ケースによっては、たとえばすでに債権がそのときに皆無である、つまりたとえて考えますと、高利貸しのような場合に、最高裁の判例に従えば、もう債権は全部なかった、完済してある、それなのに所有権がとられたというようなケースを考えますれば、これはもう代物弁済そのものがあり得ないわけでございますから、所有権移転の原因を欠くということで無効だということで取り戻すことができると思いますけれども、それ以外の場合、的確に取り戻せる場合として私はいまそこのところはなかなか解釈がつかないわけでございます。
○加地委員 この法案審議の際、たとえば法制審議会などで、すでに被害をこうむってしまった人の救済という方法については議論は何も出なかったでしょうか。
○香川政府委員 実はその被害の救済と申しましても、所有権移転がされているということでいわば対等的に債務者の債務が消滅していると考えれば、その後利息とか遅延損害金が発生する余地はないわけであります。しかし、所有権は移転登記されておるけれども、まだ実は債権債務はそのまま残っているんだということになりますと、それがたとえば五年前のものであれば五年間ずっと利息なり遅延損害金が発生してきておるというふうなことにもなりかねないわけでございまして、やはりケース・バイ・ケースで、そういった過去のものについて、新法と同じような考えを持って適用していくということが果たして債務者の利益になるかどうか、その辺も相当問題なわけでございます。だから、やはり過去のものにつきましては、こういう立法もされるといたしますれば、それを十分横でにらみながら、立法前の実体法の解釈として最高裁判所がケース・バイ・ケースで適切な判断を示されるものだろうというふうに考えるわけでございます。
○加地委員 二条の二カ月の予告期間というのは、三条の三項の規定などど見比べますと、当事者の合意いかんによって短くも長くもできる期間であるようにも読めるのですけれども、これはどう解釈するのが正しいのでしょうか。
○香川政府委員 これは所有権移転のための前提としての方式でございまして、この期間の二カ月というのは、当事者の特約で短縮も伸長もできない、つまり強行法規だというふうに解釈いたしております。
○加地委員 参議院の法務委員会の方では、短くはできないけれども長くはできるというような趣旨のお答えをしておられませんでしょうか。
○香川政府委員 そういう答弁はした記憶はございません。
○加地委員 それでは、短くも長くもできない、これが法務省の解釈だと伺っておきます。 それから、第三条で、清算金の支払いと不動産の所有権の移転登記及び引き渡しは同時履行の関係になっておるようでございますが、清算金について二カ月の間決着がつかなかったときに所有権はどうなるのですか。清算期間満了のときに債権者の方へ移転するという考え方ですか。
○香川政府委員 実態的には債権者に移転するわけでございます。
○加地委員 そうしますと、同時履行ということが書いてございますけれども、債権者がすでに所有権移転登記手続に必要な印鑑証明その他の書類を金を貸す際にすでに握っていて、しかもその際に印鑑証明の有効期間内であったとすれば、清算金はもらえないままに移転登記だけされてしまって同時履行というのが余り意味を持たなくなってくるわけですね。
○香川政府委員 代物弁済の予約をしたような段階におきまして、お示しのような登記に必要な書類を向こうに渡しておるということは、つまり清算期間の経過前における同時履行の抗弁権を放棄する特約ということになるわけでございます。したがって、それはこの三条三項の規定によりましてそういった放棄はないことになるわけでございます。しかし、現実に書類が向こうへ渡っておるわけでありますから、登記がされるということにはなるわけでございます。
○加地委員 そこで、債務者の方が正しく、弱い人という立場でしばらく考えてみたいのですが、それでは、この清算金額について二カ月間債権者といろいろ交渉したけれども話がつかないというときに、債務者側としてはどういう現行制度上の手段で所有権移転登記がされてしまうのを防ぐ方法があるんでしょうか。
○香川政府委員 たとえば、金を借りまして仮登記担保契約が締結された、それから一月たった後に弁済期が到来する、そういう例を考えてみますと、弁済期が到来してから通知をして二カ月でございますから、実際に債権者が前にいろいろ書類を預かっておりましても、現在の登記手続のもとにおきましては印鑑証明書の有効期間は三カ月になってございますので、そういう例の場合には印鑑証明書の期間がすでに経過しておるということで、登記は実際問題としてはできないことになると思います。だから契約の際にそういった一切の書類を取っておって、そしてこの清算期間の二カ月を含めましても三カ月未満のときに初めて前に取っておった書類で登記ができるということになるわけでございまして、通常不動産について仮登記をつけまして代物弁済のそういうことで金を借りるという場合に、借りてから弁済期が一月以内に来るというケースはまずなかろうと思うのであります。したがって、実際問題といたしましては、同時履行の抗弁権が初めから奪われてしまうというふうなケースはないわけであります。また、二カ月のこの期間が経過する前に、債権者が、持っておる書類を奇貨として勝手に移転登記をしてしまったという場合でありますと、これはまだ所有権が移転していないのに移転登記がされたことになりますので、その所有権移転登記は無効ということになろうかと思うわけであります。
○加地委員 問いに対する答えにちょっとなってないと思うのですけれどもね。三月以内にそういう事態が発生することはまずあり得ないであろうということなんでございますが、実際にはもう金を高利貸しまがいの人から借りる人というのは、半分はもう正常な判断能力を失っておりまして、いわゆる紙切れとか判ことかを渡すだけで大金が入ってきますと、弁済期間なども記入されたかどうかを全く確認しないで、何でも債権者の言うように判こついて、そして書類を渡してしまう、こういうケースが非常に多いと思うのです。 それからまた印鑑証明の問題にしましても、印鑑証明を代理申請ができるような書類をたくさん債権者側はとっておいて、金を貸したときから三カ月後になっても、あるいは一年後になっても印鑑証明が債権者の手によって区役所とか市町村役場から手に入れられるようなことになっておるのが実情なのです。それで、私は、金を借りて、そして実際に不動産をとられるのが困るから、どういう手段を講じたらよかろうかというので私自身ちょっと考えてみたことがあるのです。たとえば清算金額について話し合いがついてないからというので移転登記禁止の仮処分というのはできますか。
○香川政府委員 私はできないと思います。これはいつごろでございましたか、昭和三十何年かに一審裁判所がそういう仮処分を出した例がございまして、控訴審でそれは間違いだということで破棄された例がございますので、解釈としてはそういう移転登記禁止の仮処分というのはできないだろうというふうに思います。
○加地委員 私もできないだろうと思うのです。清算期間満了で実態的に移るものであるとすれば、それはちょっと阻止しにくいと思うのです。 それでは、自分が正しいと思う清算金額について仮差し押さえくらいをすることになるのでしょうか。仮差し押さえはできるのでしょうね。
○香川政府委員 これは債権があるわけでございますから、したがって、この場合で言えば仮登記権利者、つまり清算金から言えば債務者、その所有の不動産になっていれば仮差し押さえはできると思います。
○加地委員 実際問題として法務局の窓口でも教えてくれる方法として、印鑑証明に出てくる住所、これの住所と同じ住民票が移転登記のときに必要なので、とにかく住所を変えなさい、そして債権者の方が新しく住民票をとってみたら、印鑑証明の住所と新しい住民票とは所番地が合わないので実際には登記ができなくなります。改印届をやっても何をやっても、すでに三カ月前に印鑑証明が出ていたら改印届をやっても無意味だけれども、住所変更というのは非常に有効ですと教えてもらっているのです。 そこで、たとえばほかの例ですけれども、離婚届の用紙に、お互いに納得して判を押したけれども、あくる朝になってしまったというときに、何か区役所の方に届けを出しますと、離婚届が出てきても、これは本人の意思とはもうそぐわない、届けの出てきた段階ではそぐわない離婚届だということで届けばできないようになると思うのですね。ですから、たとえば住民票を変えた人は法務局の方に届け出もして、どこそこの番地の印鑑証明でどの物件について登記をしにきた人があっても、実は私はもう住所はここへ変わっておりますから前の住民票に基づいて登記はしてくれるな、こういう届けを内容証明か何かで法務局へ出しておけば、法務局の方はどういうぐあいに扱っていただけますか。
○香川政府委員 そういう届けがございましても、債権者の方からの登記申請がございました場合に、却下事由に該当する瑕疵がなければ登記は受理せざるを得ないと思うのであります。いまおっしゃいますような住所を変更しておくというのは、登記簿上の住所を変更する、そういう登記を申請いたしまして、そして前に渡してあるとか前にとられてある印鑑証明の住所と、現在の登記簿のいわば所有者登記義務者の住所が違うという形になりますと、これは解釈上問題があると思いますけれども、印鑑証明書が適し切れないというようなことで却下事由になる、さようなことで法務局の窓口ではそういうことを教えているのではないかと思いますが、私はちょっとそういうことを、住所が移転している人に住所移転の届けをしなさいということをお教えするのはよろしゅうございますけれども、そういう意味で余り、それがいいか悪いか、私は何とも申し上げかねるわけでございます。
○加地委員 非常にいいことを教えていただきましてありがとうございました。確かに住所変更の登記申請が先に出ていたら、何ぼ前に古い印鑑証明が出てきても合わないわけでございますから、その印鑑証明はこわくないということはよく理解できました。 もう一つこういう方法もあるんじゃないかと思うのですけれども、後順位担保権者があれば、いわゆる競売に持ち込むことができますね。ですから、金を借りて重要な書類をたくさん出してしまった人が目が覚めて、これはしまった、下手をしたら清算金で話がつかずに物件はとられてしまうかもしれないし、裁判しなくてはいけないかもしれないので、自分の知人等から実際に金を借りて、後順位担保権者というのを実際につくるというか、実態に合った後順位担保権者ができ上がる、これがあれば競売に持ち込めますから、清算金でもたもたして、実態的に所有権が移転してしまうよりは債務者にとっては有利でしょうね。
○香川政府委員 どっちが有利か何ともお答えいたしかねますけれども、この法案では、御承知のように清算金の額に後順位担保権者が不服ある場合には、弁済期到来前でも後順位担保権者が競売の申し立てができることになっております。競売の申し立てがされると、つまり配当手続において仮登記担保権者も含めて清算することになるわけでございまして、その場合の清算と仮登記の実行と申しますか、本登記を求めて清算金を払う、どちらが債権者に有利かということになりますと、大方の場合は、はなはだ言いにくいことではございますけれども、やはり話をつけて仮登記に基づく本登記をした方が時間的な関係も債権者に有利だろうと思うのであります。したがって逆に申しますと、債権者の方は後順位担保権がついているような場合には、みずから相当だと思う適法な清算金を提供するという挙に出るだろう、その方がかえって有利でありますので、そういうふうな動き方をするであろうというふうに法案は期待しているわけでございます。
○加地委員 それから二カ月の予告期間が必要ということになりますと、所有権移転登記申請のときに、二カ月前に予告したという証拠になるものを付属書類として登記申請のときにつけなければならなくなるのでしょうか。
○香川政府委員 そのような二カ月の予告期間を置いたというふうなことの証明書をつけさせるということは考えておりません。これはもっぱら債務者と債権者の共同申請で登記をするわけでございますから、したがって債務者が登記していいと言っている以上は、登記所としては登記を受理するのが当然だろう、こういう考えでございます。
○加地委員 後順位担保権者が清算金に対して物上代位するという規定がございますが、これは「清算金の払渡し前に差押えをしなければならない。」となっておりますが、これは債務名義なしにでも差し押さえができるのでしょうか、あるいは債務名義がなければ仮差し押さえぐらいをしておかなければいかぬことになるのでしょうか。実務上、どうなるのですか。
○香川政府委員 これは現行民法の三百四条の物上代位の規定と同じことでございまして、実務的には債務名義はもちろん要らぬわけでございますし、担保権があればそれによって民事執行法の債権差し押さえの手続で差し押さえする、そういう形になるわけでございます。債務名義なしにできるということでございます。
○加地委員 それから十一条の受け戻し権でございますけれども、債権者が清算金額を供託をした、ところが債務者の方がその金額で納得をせずして最終的に裁判所で清算金額についての判決がおりたときに、供託していた金が一円でも足りなかったというときには、やはりこの供託は無効ということで債務者の方は依然として受け戻し請求権を持つのでしょうか、それとも認定された清算金額から一割か二割の範囲内の近いところの金額が供託されていたら、これは清算金の支払いがあったという扱いになるのか、どうなんでしょう。
○香川政府委員 これは民法のいわゆる不完全履行の問題、一般の問題として考えられることでございまして、供託というのは弁済の効果を持つ弁済供託でございますから、したがって一円足りないときにその供託は無効かどうか、一円足りないときに無効だというふうな解釈は恐らくないと思います。 しかし、いまおっしゃったような正当な額の八割しか供託していないという場合に、それを完全履行と同視する、一部弁済でないというふうに判断するかということになりますと、これはちょっと無理ではなかろうか。 それではどの程度までだ、こういうことになりますと、これは私もここではっきりと申し上げかねますけれども、やはりそれは単なる数学的な多寡の問題だけではなくて、その供託に至った経緯といいますか、あるいは不動産の評価自身が根本のあれでございますので、その評価自身がその程度の評価というなら無理もなかったという事情があるというふうないろいろのことを考えて決着のつく問題であろうと思うのでありまして、その辺のところは実際問題として判例というか、裁判例で一つの考え方を固めていくというふうなことよりしようがないのじゃないかというふうに考えるわけでございます。
○加地委員 附則の第二条に遡及効が定められております理由は、どういう理由でございましょうか。
○香川政府委員 この二条の遡及効は、この法律の施行前にされました仮登記担保契約で、本来当事者間の契約でその所有権等を取得するとされている日がまだ到来していない、この法律の施行後に到来することになるものについてはこの法律を適用する、つまりまだ決着というか清算というか、債務不履行になって代物弁済が物を言う状態になっていないものでございますので、したがって新法に従って処理された方がより合理的でございますから、この面に関してだけ遡及適用するということにしておるわけでございます。
○加地委員 最後に一つだけお伺いしておきたいのでございますが、すでに抵当権その他の法定の担保制度があるにもかかわらず、今回のように仮登記担保の立法を特に必要とする理由は何なのでしょうか。
○香川政府委員 先ほども申し上げましたように、担保制度というのはいろいろの形態の担保制度を法律で準備しておきまして、債権者、債務者間のいろいろの事情によって一番適当な制度を利用していただくということが好ましいことだと思うのであります。そういう意味から申しますと、仮登記担保というのは、どちらかといえば余り大いに奨励して利用されるというふうなものではないだろうと思うのであります。しかし現実には現在相当利用されておるわけでございまして、これを思い切って立法で一切無効にしてしまうというのもいかがかというふうに考えられるわけでありまして、そういう現実のもとで、できるだけ債務者の保護も図り、債権者その他の利害関係人の調整を図るいわば合理的な措置をするということで、やはり仮登記担保の制度を認め続けていかなければならぬという現実だろうと思うのであります。しかし大きな目で考えますれば、やはり担保制度全般について再検討して、いろいろのケースの場合に一番合理的に使える担保制度を各種準備するというような立法が必要でなかろうかというふうに私は考えております。
○加地委員 終わります。
○羽田野委員長代理 次回は、明八日木曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午後六時二十七分散会