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84回国会衆議院1978/06/02

法務委員会 第27号

発言数
107
登壇者
9
会派数
5
開催日
1978/06/02

会議録

鴨田宗一自由民主党

○鴨田委員長 これより会議を開きます。  お諮りいたします。  本日、最高裁判所岡垣刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鴨田宗一自由民主党

○鴨田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————

鴨田宗一自由民主党

○鴨田委員長 内閣提出、刑事事件の公判の開廷についての暫定的特例を定める法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高橋高望君。

高橋高望民社党

○高橋委員 私は、この法案の審議に当たっては、当初から、できるだけこの法案を必要としてきた事実を知りたいと思ってまいりました。たとえば、一口に荒れた法廷、こう言われましても、遺憾ながら今日まで私その実態を大多数の国民と同様知らなかったわけです。ですから、その対策を考えるといいましても、軽々しく判断を下すということはなかなかできなかったので、この際、すでに先んじて同僚の委員から質疑が行われた後ではございますけれども、少々足取りを戻していただいてお伺いをいたしたい、そのように思います。どうぞ、そういった意味で平易にお答えをお願いいたしたいと思うのです。  まず、裁判所側にお伺いいたしますが、言われるような異常な事態、この場合は荒れた法廷を指すとお考えいただいてよろしいと思いますが、この異常な事態というものの一例を、皆さんのところに届いている報告をできるだけ客観的に、その状況を余り専門語を使わないでわれわれに示していただきたいと思う。特にそのときにおける弁護人のとった行動、日時、事件名、状況等、ひとつできるだけ詳しくというよりも平易ということの方を望むのですが、一例を取り上げて御説明願いたい、そのように思います。

岡垣勲最高裁判所事務総局刑事局長

○岡垣最高裁判所長官代理者 それではお答え申し上げます。  典型的な例がよろしいと存じますので、この事例の中にも載っておりますいわゆる企業爆破事件についての第三回の公判廷の模様について少し詳しく申し上げます。  大体この企業爆破事件は、被告人全部を一緒に審理してほしいといういわゆる統一公判の要求というものがあって、それで被告人の不出頭、弁護人の不出頭ということで、裁判所が全部一緒にしない限りは進まないという状況があったので、それでそれを統一公判といいますか、全部一緒にして審理することになったわけでありますが、その場合、併合して一緒に審理をする前に、裁判所としましては、当然弁護人の方と審理の打ち合わせ、進め方についていろいろ御相談申し上げたわけであります。弁護人の方からは、もし統一して一緒に裁判してもらえるならば、自分たちはその地位にかけても被告人らの出頭を、つまり被告人が法廷に出てくるようにそれは確保いたしますという約束、それから、その一緒にしてやる最初の法廷では、報告人はだれかということで人定質問と申しますが、確かめたり、起訴状を読んだり、それから黙秘権、黙っていてもいいんだよというようなことを告げたりする手続がありますが、そういう手続はそのままスムーズにさせるというふうなことを約束されました。その手続が終わるまでは、弁護人も被告人も勝手なことは言わないという三点の事前の打ち合わせ、了承があったわけであります。  裁判所は、それを前提にいたしまして第三回の公判期日を開いたわけでございますが、この最初の開廷の前に、弁護人の方から裁判所に対して、ちょっと打ち合わせをしたいという申し出がありまして、裁判所は開廷期日の時間が決まっておりましたけれども、その時間をおくらせて、そして、じゃお話を伺いましょうということで、したわけであります。そうしましたところが、弁護人の方からは、開廷の冒頭の段階で被告人や弁護人に意見陳述させろ、つまり裁判所が被告人がだれであるかということを確かめ、そこで問題になるのはこの事実ですよという起訴状を読んで、さあこれについてどうかということを言う前に、とにかくしゃべらせろ、こういう御要求であります。その機会が与えられない限りは、もう訴訟手続を進めることはできない、こういう申し入れがあったわけであります。裁判所は、これは最初の打ち合わせの了解とば違うじゃありませんかということでずいぶん説得いたしましたけれども、しかし、これは余り強く言いますとまた出ていただけませんので、それで譲歩いたしまして、人定質問の後一時間くらいの範囲内で、事実関係には触れないことを条件に意見陳述を与えましょうというふうなことで、一時間くらいかかってやっと譲歩というか、調整が終わりまして開廷することになったわけであります。  開廷の後に人定質問、要するにおまえはだれかということから始まったわけでありますが、裁判長が、君はだれかという質問に対して、被告人は、東アジア反日武装戦線獄中兵士、以下必要ありませんという返事、生年月日はと言うと、言う必要はありません、本籍は、全世界人民の共和国というふうな大声を張り上げる、こういうことであります。裁判長は検察官に、この被告人は何のだれべえであるかということを聞いて、それで、じゃ、これは何という被告人だなということを確かめた上で、検察官が提出した被告人の顔写真、写真帳と対照して、それで人定質問というか、だれが来ているかということを確かめたわけであります。  そこで、弁護人の意見陳述に入ったわけでありますが、弁護人は、統一公判をするに至った過程を見ると、裁判所は場当たり的であって、感情的な訴訟指揮をしている、将来も安定した一貫性のある訴訟指揮がされるかどうか大変不安だ、裁判所は大体最初は分離して公判期日を開くと言いながら、突然統一公判ということで変更した理由がはっきりしないから、これを明らかにしろというふうに迫られたわけです。それから被告人も、裁判所は最初は分離公判が迅速な裁判に適していると言いながら、被告人が統一公判を要求すると、たちまち統一公判が迅速な裁判に変わるというのは矛盾しているから合理的な説明をしろというようなこと、あるいは接見禁止を早く解除しろとか、東京拘置所当局の被告人に対する処分がどうも妥当でないから、裁判所は適切な措置をとれというふうなことをいろいろと長く述べられて、裁判所の回答を迫られたという状況にあります。  裁判長は、そういうことは本来訴訟手続の中で応答しなければならぬ事実だとは思わないけれども、しかし一応答えようということで、二つのグループに分けて進めるのが一番合理的な方法であるということにはいまの考えは変わりはないけれども、被告人や弁護人が出頭を拒否されるのでは審理か不能に陥るから、その要望に沿って統一公判にせざるを得ないというふうにしたのだ、それからそれ以外の点については、裁判所というものは、これは非常にテクニカルなことになりますけれども、第一回公判期日が終わらないと、被告人の身柄関係についてまだ裁判所が権限を持っているわけではございませんで、裁判所の権限外であるというふうないろいろ説明をしたわけであります。  ところが、こういう事件ではいつもそうでありますけれども、裁判所が言っても、それは説明になっていないという返事が返ってくるだけでありまして、これに対して弁護人の方は、それでは答えとして十分でないということで、検察官の起訴状朗読を促す裁判官に対して、執拗に応答を求めるという事態になったわけであります。  裁判長は、それじゃ起訴状も読めないではありませんかということで、そんなに執拗に発言されるのでは困るから、発言は禁止ですと何度も何度も禁止をし、そんなに続けられると退廷させますよ、こういうこと。それでもまだ発言を続けられる。そこで裁判長は、やむを得ないから弁護人に退廷を命じたということになるわけであります。この段階で傍聴席は騒然となりまして、裁判長の発言禁止命令に従わない傍聴人の十人くらいが退廷させられたわけであります。  この訴訟指揮に抗議するというわけで、被告席から被告人が立ち上がりまして大声で発言をする、裁判長を論難する。被告人のうち四名がそういう態度をとったために退廷命令を受けて退廷させられた。  その後、そういうことで喧騒状態が一応一段落しましたので、被告人や四名の弁護人が在廷する法廷で、中断されていた検察官の起訴状の朗読が続行されて、一人分の起訴状の朗読が終わった段階で一たん休憩したわけであります。  休憩時間中に、先ほどの残っておりました四人の弁護人が裁判官室に来られまして、すでに退廷させられている弁護人と四名の被告人を再び法廷に入れてほしいという話があったわけであります。そこで裁判長は、現在起訴状朗読中だから、退廷させられた者が起訴状朗読という手続が終わるまでは発言しないということを約束してもらえるならば、退廷させた者もまた人れましょうということを言ったわけでありますが、弁護人は、ではそういうことを退廷させられた者と協議しますと言って退去されたわけであります。  そこで裁判長は、四十分の休廷が終わった後で法廷に入りまして、残っておった被告人、弁護人、傍聴人を入廷させて開廷を宣したところが、弁護人の一人が立ち上がりまして、退廷させられた弁護人と相談しましたが、その弁護人の言い分ももっともだと自分は思うので、自分もそれと共同歩調をとる、ついては、裁判長は弁護人から出された先ほどの質問、つまりなぜ併合したかについて回答してもらいたい、その回答が得られないならば被告人も再び入ることは潔しとしない、入らないと言っているという発言があったわけであります。しかし裁判長は、休憩中の打ち合わせの模様について、大体こういうことで打ち合わせたということで大体のことを確認した上で、とにかく裁判所が申し上げた静かにしておるという条件で承服しなかったということであればこれはやむを得ない、検察官は起訴状の朗読を続けてください、こういうふうに言ったわけです。すると、その弁護人はさらに発言を続けて裁判長の応答を求めて、裁判長が、起訴状を朗読するからやめてくださいと言ってその発言を制止する、立っていろいろ言われますから座ってくださいと言うわけであります。そうしたところが、かえって逆に、こんな状態では私も退廷しますということになってきたわけであります。裁判長は弁護人に対して、それでは困る、法廷におってくださいという在廷命令を出されたわけです。ところが、こういう裁判所のやり方が不服だということで退廷するそぶりを示した三人の弁護人がありましたので、その人に対してもさらに在廷してくださいということで在廷命令を出したわけです。しかしながら四人の弁護人の方は、警備員がとめるのを振り切って、前後して法廷から出ていってしまったわけです。  この間、発言あるいは発声をした傍聴人が退廷を命ぜられるなどして喧騒状態が続いておったわけでありまして、被告人の一人は、サル芝居なんかやめちまえというふうに叫んで、自分で出ていこうとした。それからもう一人の被告人がこれと一緒に退廷しようとしたので、この二人の被告人に対して、君たちは出ていってはいかぬと言って在廷命令が発せられたわけであります。ところがこの二人の被告人は、勝手に出ようとしたのを拘置所の係官に被告人席に一たん連れ戻されたわけでありますけれども、その後も激しく叫び声を上げて騒ぐものですから、裁判所もしょうがないというわけで、そんなに騒ぐのなら君出ていけということで、そのうちの一人に退廷命令が発せられた。それからもう一人の被告人はなおしばらく興奮した顔で座っておりましたが、突然前の机を手と足で突き飛ばして、結局退廷を命ぜられた、こういう状況になったわけであります。  第三回、併合したときの公判廷の状況というのは大体こういうことでございます。

高橋高望民社党

○高橋委員 ありがとうございました。冷たい水でもちょっと飲んでおいてくださいませ。  そこで、いま喧騒状態というものの代表的な例を第三回の公判で私に教えていただいたのですが、こういう事態がこの第三回公判のときに突然発生したのではなくて、それよりも前からそういう傾向ば出ていたのではないかと私は思うのです。裁判所側としてこういう状態はちょっと問題だなという意識をなさったのは大体いつごろからでございますか、年数でも結構です。

岡垣勲最高裁判所事務総局刑事局長

○岡垣最高裁判所長官代理者 お答え申します。  こういう法廷で騒ぐのが一番最近私どもの前で顕著になりましたのは、例の四十四年の東大事件以来のいわゆる学生事件に始まるわけでございます。

高橋高望民社党

○高橋委員 少なくとも四十四年にそういう傾向が出てきて、何とかしなければいかぬというお考えがあった。現実にいま私たちがこの法案を審議しているのは昭和五十三年ですね。そうするとざっと十年近くになる。私に言わせれば、ちょっと長く時間をかけ過ぎている。異常な事態に対しての手当て、幾ら何ぼ何でもこの長い間対策なしでこられたとは思えませんが、この時間のあきについてばどのような事情の説明をなさいますか。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 ただいま最高裁の方からお話がありましたように、昭和四十四年ごろのいわゆる学生騒ぎのころから荒れる法廷というのは顕著になったわけでございますが、東大事件を中心としますあのころの事件は、どちらかといいますと凶器準備集合罪とかそういうものでございまして、要するに必要的弁護事件ではないものが中心であったわけでございます。したがいまして、法廷が荒れるとはいいましても、すでに刑事訴訟法にございますように被告人がいなくても裁判ができるという規定を使いまして何とかやりくりしてきたわけでございます。  ところがここ数年前から、ただいまも御説明がありましたような連続企業爆破とか連合赤軍とかそういう非常に重大な罪を犯した者が、弁護人が被告人と一体になって裁判阻止闘争をやるということが顕著になりまして、私どもといたしましても、これは何とかしなければいかぬのではなかろうかという感じをだんだん持ってきておったわけでございます。  そこのところへ、御承知のクアラルンプール事件、ダッカ・ハイジャック事件が相次いで起きまして、裁判係属中の被告人がむざむざと連れ去られるというきわめて忌まわしい出来事があったわけでございます。一度ならず二度までもそういうことがあった。それというのも、やはり裁判が遅々として進まないということのために、司法権の実現を見ないままで連れ去られるという事態が生じたわけでございます。  そこで、私ども政府といたしましては、もうがまんがならないのじゃないか、もう一回こういうことがあったらどうなるだろうということで思いを新たにいたしまして、ハイジャック等の防止対策を詰めますと同時に、こういった過激派による事件の訴訟の遅延については、もう何か手を打たなければならないというふうに決意をしたわけでございます。なるべくならばやはり弁護士さんの自覚を促して正規の刑事訴訟手続にのっとった法廷の運営ができるようにしていきたいものだと思いながらきておったところ、そういう事情があり、かつ動機があって法案を作成提出する、こういう運びになった次第でございます。そういう意味では、顧みてみますと、もう少し早く手を打つということを考えてもよかったのではないかということを私どもも若干の反省の気持ちを持って考えておるわけでございます。

高橋高望民社党

○高橋委員 やはり拙速であってはならないと思いますけれども、実態を国民の前により明らかにして、いわゆる鉄は熱いうちに打てという言葉もございますので、私はその辺について、いま局長御自身から反省の余地があるというお言葉をいただいたのでこれ以上のお尋ねはやめますが、何か少し時間をかけ過ぎて、かえっていろいろな問題をそこへ絡ませ過ぎてしまったのじゃないか、そんな気がしてなりません。  そこで問題を少し原則的な方へ移させていただきますが、私自身にしてみれば当然のことだと思っておるのですけれども、そうでないと考える人がありますので、お伺いしておきたいことがございます。  それは裁判の進行に当たっては、その審理方式や期日指定等の訴訟指揮権というものは裁判長の専権である、こう思っておりますが、この私の考え方は間違っておりましょうか。もちろんその前提として、権力というものの発揮は常に謙虚であれという鉄則を踏まえた上での立場をとりますが、それにいたしましても、審理方式、期日指定等の訴訟指揮権は裁判長の専権ではないか、このように考えておる私の考えに、何か間違いがござ  いましたら御指摘くださいませ。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 まさに御指摘のとおりでございまして、訴訟の指揮あるいは期日の指定、裁判の幾つかの事件を一緒に審理をするか別々にして審理するかというようなこと、広い意味で訴訟指揮と申しますが、これはもう刑事訴訟法に明文がございまして、裁判所あるいは裁判長の専権に属する、こういうことになっております。もちろんその運用に当たってば、当事者の合理的な意見は裁判所としても十分お聞きになっておやりになっておるわけでございますが、法のたてまえは御指摘のとおりでございまして、そういう裁判所あるいは裁判長の専権に属する訴訟指揮を中心に、関係当事者がお互いに良識を持って法廷の場で白熱した議論をして真相の究明、真相の発見、適正な判決、こういうものを目指していくべきものだ、これが訴訟の本義であろう、こういうふうに思っております。

高橋高望民社党

○高橋委員 私もそう思いますが、その上に立つてもなおかつお尋ねしたいことは、日弁連を初めとしてこの法案に大変な反対をなさる方々の声に、裁判長の無理な訴訟指揮が法廷を荒らす原因になるということをよくわれわれは聞かされるわけですが、この実情をひとつ率直にお述べいただきたいと思います。

岡垣勲最高裁判所事務総局刑事局長

○岡垣最高裁判所長官代理者 裁判所の訴訟指揮というものは裁判長の専権ではありましても、法律によっていろいろな制約といいますか、訴訟はこういうふうにしてやれということが皆決めてございまして、裁判長が勝手にあれこれできるというものではないわけであります。しかも裁判所の訴訟指揮が妥当でないと非難される、そしてそれが原因だというふうに言われております場合を私どもよく見てみますと、たとえば本当に裁判長が、来ておられる当事者の方を足げにしたり、つばをかけたり、そういうことではありませんので、どちらにでもとれる、ある人はこうするであろう、ほかの人はこうするかも一しれない、そういうどちらでもあり得るような場合に、裁判所がこちらをとります。こう言った場合に、それでは納得できないというふうに言って固執されるということが原因のように私は思うわけであります。  その中で一つ、二つ実例を申し上げたいと存じますが、一つは、この間正森委員からのお尋ねのありました厚木基地の事件で、被告人が病気で失神しているのを構わずに判決を言い渡したのではないかということがありまして、非常に非人道的であるというお話がございました。そのときにいろいろと、裁判所は、こういうふうに勾留状を出す場合にも、法廷を開く場合にも、判決を宣告する場合にも上々医師に対して診断を求めた上で措置したのでありますというふうに申し上げましたが、そのときに、実はもう一つ資料を忘れておりまして申し落としたことがございましたから、それをつけ加えておけばなおそのときの状況がはっきりすると思うわけでありますけれども、これは高等裁判所がその事件について控訴審で判決を五十三年四月六日にいたしまして、そしてその判決は確定しているわけでありますが、その高等裁判所の判決の中にこういうことがございます。つまり弁護人の方から「当時、同被告人は失神状態にあって裁判長の訴訟指揮に従うことができなかったのであるから、同被告人に対する退廷命令は無効であるというが、検察官及び弁護人立会のもとになされた医師伊藤順通に対する原裁判所の審問調書によれば、同被告人の健康状態は、前述したところのほか、」というのは、ずっと血圧だとかなんとか述べておるわけでありますが、「前述したところのほか、同医師が眼球の対光反応を調べるため眼を開けようとすると、自分で眼を閉じてしまい、無理に開けると黒眼を上の方につり上げるなど、故意に診察を拒否する態度を示したこと、腱反射は正常で、五分ないし一〇分程度であれば起立することも可能な状態であったことが認められるので、これらの事実に徴すれば、当時、同被告人が失神状態にあったとは到底認められない。」こういうわけであります。したがいまして、そのときの状況というものを、あるいは弁護人の方でもいろいろの認識がございましょうから、これは被告人が失神しているのじゃないかと思われたという錯誤に陥られることももちろんあり得るわけであります。しかしそれにしましても、その当時の状況、裁判所がお医者さんに聞いたり、お医者さんがそういうことを話してくれたりした状況というものを考えて、それから従来の法廷の被告人の状況、それから期日を指定してもなかなか判決期日に出てこないといったような状況、いろいろな状況をお考えになれば、むしろこの場合には、けしからぬから出ていくと言われるよりも、やはり残って状況をごらんになった方がよかったのじゃなかったかというふうに思うわけであります。これは人によってとり方はいろいろありますけれども、そういうのが一つございます。  それから期日指定の問題がいままでいろいろ勝手な期日を言うということを言われるわけでございますので、今度はそういう法廷の中での問題から離れて期日指定の問題について申し上げますと、これはこの前の機会にも申し上げましたけれども、たとえば一番批判の的になっているのは連合赤軍事件においてのいわゆる百回指定ということがいろいろ問題にされているわけであります。この百回指定というのもいきなりぼっと決めたわけではございませんので、何度も何度も、数回にわたりまして弁護人との間に打ち合わせをいたしまして、そして検察官の主張と弁護人の主張とが折り合わない。そこで裁判所は、一応その期日を決めます。決めますが、具体的にこうこうこういう事情でこういうふうにしてもらわなくては困るのですということの事情があれば、それはその変更の申請をしてくだされば、それが合理的な事情であったら変更いたしましょうという柔軟な指定をいたしましたけれども、弁護人の方ではいや百回指定そのものがもう絶対に弁護人の生活権あるいは被告人の防御権を侵害するものであるから、まず取り消さなければだめだということで、具体的に、一応裁判所はそう決めた、じゃやってみるが、ここでこれは困るから変えてくれ、こういう態度ではなかったわけであります。  そしてその百回というのは、平たく申し上げますと一年半分の期日が指定してございますが、月で言えば六回でございます。月で六回の期日を、裁判所の方の考えからしますれば、被告人に共通の部分と、それからそれぞれの被告人だけの事実と、公訴事実いろいろございます。ですから共通の部分をやる期日、それからこの被告人だけの期日というふうなものに分けて、それでそれを手分けしてやっていけば、この当時十三人の弁護人がおられたわけでございますから、決してそう毎月六回ぴしっと全部出なければならぬというものではないと思います。もちろん弁護のやり方というものは、これは弁護人の方がみずからの責任でお決めになることで、裁判所がどうこう言うことではありませんけれども、しかし裁判所の方も、ひとつ弁護人の方にそういう点をお考えいただいたらどうでしょうかということはあると思います。ところがそれに対しては、いやそんなばらばらに出るわけにはいかないので、全部出なければいかぬというふうなお話だった。しかし、実際お出になったのを後で計算してみれば、四割ちょっとぐらいしかお出になっていない。それでは一カ月六日であるとすれば、四割であれば四、六、二十四、少なくとも三日間ぐらいで済んだはずであります。そういうことを考えますと、期日指定というものは、これは確かに弁護人の御負担になりますし、シリアスな問題ではありますけれども、もう少し工夫してお互いに妥協しようという頭であればこれは幾らでも解決できるし、また裁判所はそれに対応していく柔軟な姿勢は持っているはずであります。  以上です。

瀬戸山三男自由民主党法務大臣

○瀬戸山国務大臣 いま裁判の運営の問題等につき、また過去の裁判の実例等についていろいろ法務省や裁判所から説明がありました。  御参考というと恐縮でありますが、その点に関して私からも高橋さんに申し上げて御参考に供したいと思います。  これは、この前もこの委員会で御紹介したわけでありますが、紹介かたがた考え方を示すわけでありますが、これは元の日弁連の会長の吉川大二郎氏が書いた文章でございます。日本法律家協会の会報に示されている。その問題に触れておりますから、全部は紹介しませんが、これは御承知の文楽それから歌舞伎、これをたとえにとつで書いてある文章でありますが「裁判は芸術ではないが、裁判所、検事、弁護士の三位一体の協力関係において、その運営がなされねばならぬ点では文楽と同様である」、文楽というのは、これは私の注釈でございますが、いわゆる大夫が中心になってでき上がるのだそうであります。「いうまでもなく、その指導権はどこまでも裁判所にある。この指導権は、法的には主として、口頭弁論における訴訟指揮権と、法廷秩序維持のための法廷警察権として現われるのである。まさに、この限りでは、裁判所の役割は文楽の大夫のそれに匹敵するといえるであろう。しかるに、近時における裁判の実態を見ると、主として公安事件とか労働事件とかの限られた範囲においてではあるが、裁判所が自らの指導権を放棄して、一部の弁護士に引き廻されるというケースが、いわゆる「荒れる法廷」などという名の下に、しばしば報ぜられている。いわば、裁判所が大夫の座をすてて、「チョボ」太夫となり下がっているわけである。」これは私の注釈でございますが、チョボ太夫というのは字が違うのだそうであります。これは歌舞伎の太夫をチョボ太夫と言うのだそうです。わき役であるということであります。「わが司法制度の円滑な運営とその進展の上から見て、まことに遺憾にたえない次第である。もっとも、当該事件を担当する裁判官は大変な苦労であるが、勇気をもってその職責を果してもらいたい、とともに、同僚裁判官はもとより在野法曹たる弁護士もこれに協力し、バックアップする心掛けとその実践が肝要であると信じられる。そこでわたくしは、この際、声を大にして叫びたいのである。「裁判官よ、チョボになるな。弁護士よ、裁判官をチョボとするな」と。」こう書いてある。  こういうことが原則であると私も信じて疑いませんが、先ほど来説明しておるような事態が起こっておる。  ここで一つつけ加えておきたいのは、先ほど最高裁の刑事局長から御説明いたしましたが、いわゆる連続企業爆破事件等の実態を見ておりますと、先ほども説明がありましたけれども、わが国の裁判に服する必要がないのだ、こういう主張でございます。基本の主張はこういうことでございます。でありますから、裁判官の訴訟指揮権とかあるいは法廷警察権、それはナンセンスである、われわれがむしろ裁判所を裁判する立場にある、こういう主張が根本にあります。現にそう言われております。そういうことで、しかしほかにそれを貫く手段がありませんから、いま申し上げておるように、いわゆる必要たる弁護の規定を逆用している。そして退廷、不出頭、こういうことが続いておる、これが実態でございます。

高橋高望民社党

○高橋委員 私は、きょうは自分の意見はできるだけ申し上げないことにして、伺う立場を続けたいと思います。  そこで、この種の法律をつくると、俗に法律の一人歩きと申しましょうか、法の拡大適用ということを懸念する人が多いのですが、私もこの特例法についてはその危険性を考えますけれども、この特例法が仮に成立をしたとした場合の一人歩きについて、どのような御説明をなさいますか。危険性についての私の疑問にお答えをいただきたいと思います。

岡垣勲最高裁判所事務総局刑事局長

○岡垣最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  法律の一人歩きということが言われ、あるいは暗黒裁判というふうなものを招来するということが言われております。この言葉の意味するところが何であるか、必ずしも明確ではございませんが、ごく具象的に申し上げますと、たとえば弁護人がいないままで裁判所は勝手に裁判をやってしまうという状態になるのではないかということだろうと思います。  しかし、そこでまずお考え願いたいのは、弁護人はまず最初、大体の場合に選任されて、私選でついておられるあるいは国選でついておられるという状態がまず出発点にあるわけでございまして、もちろん任意弁護と申しますか、現在でも長期三年を超えないもの、たとえば先ほど申し上げました凶器準備集合などというもの、あれは弁護人がっかなくてもよろしいわけでありまして、ですから、四十四年以後の学生事件の場合には、裁判所は弁護人がいないままで裁判をしてきたわけであります。ところが、その最初におられる弁護人の方が、必要的弁護の場合はもちろん、その他の場合もそうでありますけれども、いなくなるという現象はなぜ出てくるか。それは、気違いのような裁判官がいて、理由もなく出ていけとかということになればそういうことになるかもしれません。しかし、まあその点ではどうか裁判所を御信用いただきたいということを申し上げるほかありませんし、それから、現実に裁判官は、当事者が十分にお互いの主張をし、資料を出されたところでもって判断するということで審理を行いたいわけでありまして、当事者が抜けた裁判などというものはまるでもう、裁判所がすべての責任は自分一人でみずから出ていってしょうようなことでありまして、そんなことを裁判官がしたいなどと思う気持ちはないわけであります。できるだけ当事者の方から資料を積極的に出してもらって、もう自分たちで出せるものはこれだけだというところを聞いた上で判断したい、これが裁判官の考えるところであります。  いまの場合は退廷の場合でございますけれども、辞任させた場合、こういう場合は、被告人の方で自分で弁護人をおつけになればそれですぐもとに返るわけであります。ですから、暗黒と言われますけれども、自分で目をつぶっておれば暗黒なわけでありまして、自分で目をあければいい、それだけのことだと考えております。ですから、そう一人歩きして広がるとか、暗黒裁判になるということはないというふうにわれわれは考えております。

高橋高望民社党

○高橋委員 定められた時間もありますので、ここで私、弁護士問題をひとつ伺ってみたい。  とは言いながらも、弁護士さんに対しては、いろいろとこれを監督する官庁もないという組織もよく存じた上で伺うのですが、まず、昭和二十四年に弁護士法が制定されましたが、議員立法だと伺っております。この制定の経緯をごく簡単にひとつ御説明いただけませんでしょうか。

枇杷田泰助法務大臣官房司法法制調査部長

○枇杷田政府委員 お答え申し上げます。  戦後、新憲法の精神に基づきまして裁判所法、検察庁法、弁護士法の改正が必要になってまいりましたわけでございますが、裁判所法、検察庁法につきましては、比較的早く案がまとまりまして制定されたわけでございますが、弁護士法に関しましては終戦直後から議論がなされております。  まず、昭和二十一年の九月に司法省内に弁護士法改正準備委員会というものが設けられまして、ここで弁護士法改正要綱案というものが作成されて、二十一年の十二月に当時の司法大臣に答申がなされております。ところが、この委員会の答申案が、司法省内部での委員会ではございますけれども、司法省自体も反対でございますし、それから裁判所等からも反対が出るということで、結局司法省としての案にまでまとまることができなかったわけでございます。そのときの案と申しますのは、大体現行法に近いような答申案だったように聞いております。  そういうことでございましたが、翌昭和二十二年の十一月に、衆議院の法務委員会におきまして、松永義雄委員長から弁護士法の改正を法務委員会で取り上げようという発言がなされたようであります。そして、また一方日弁連側は、先ほど申しました答申案をもとにして弁護士法の改正案の確定案を発表いたしております。そういう動きを背景といたしまして、衆議院の法制局の方で日弁連の案をいわば基礎といたしまして、当時のGHQと交渉するなどして、第一次整理案から第六次整理案まで作成をいたしましたけれども、結局それもまだ案としては提出に至らないという状態でございました。  ところが、昭和二十四年の第五国会に至りまして、衆議院の法務委員会に弁護士法改正起草小委員会というものが設けられ、二十四年の五月に、その小委員会で起草した改正法案が法務委員会で可決されて、そして衆議院の本会議でも可決され、即日参議院に送られ、若干参議院で修正を受けた後、また衆議院に戻って、採決により結局原案を可決したという経緯になっております。その原案が大体現行法ということになるわけでございます。

高橋高望民社党

○高橋委員 経緯としてはわかりましたが、私が現在の弁護士法をざっと勉強させていただいた範囲内でも、非常に自律権の許された世界でもまれな制度だろう、私はこう思います。  そこで皆様にちょっとお伺いしておきたいのです。特にこれは大臣にちょっとお伺いしたいと思いますが、私、つい先日、たしか五月二十七日でございましたが、読売新聞に、日弁連が総会の席上で「国連軍縮特別総会が開催中だが、日弁連としても核兵器の使用を禁止する国際条約を締結するよう提言しており、政府もそのために積極的外交を展開してほしい。」という、そういう考え方を正式に発表されておるわけでございますね。そうすると、日弁連というか弁護士さんの会は強制加入団体でございますから、そういう強制加入団体が、一定のいわゆる政治的な活動と申しましょうか、政治的な立場に立つと思われるような決議をして、そしてそれを発表するというようなことは何か割り切れないのですけれども、現行法では、このような弁護士会の政治活動  私はあえて言うのですけれども、強制的な加入をさせられているその弁護士会が、こういうふうな政治活動をするということに対して規制することはできないのですか。また、法務当局はこれについてどのようにお考えになられますか。

瀬戸山三男自由民主党法務大臣

○瀬戸山国務大臣 御承知のとおり、弁護士会のやられることについて法務省は報告を受ける立場にございません。でありますから、これをとやかく言うことは適当でないかもしれませんが、弁護士法の目的は、御承知のように、人権を擁護し、社会正義を守る、こういうことに使命があるようでございます。その他にもいろいろありますが、言論あるいは政治的見解というものをどういうように考えるか、これは自由でございますが、日本弁護士連合会として政治問題に方向づけする、何かの問題について決議をするということは、これは私、弁護士会の性格からいって好ましいことでない、かように考えますけれども、それをどうする、こうするという手だてはないわけでございます。

高橋高望民社党

○高橋委員 私、先ほどから自分の意見を言わないよう心がけていると申し上げながらも、どうも申し上げちゃうのですけれども、日弁連さんのこの種の政治活動というものは、くどいようですけれども、強制加入団体として妥当かどうか、何かの席にはひとつ取り上げてお考えになっていただきたい、そんなふうに思います。  そこで、続いてでございますけれども、われわれの社会で一番むずかしいことは、個人も団体も含めて、みずからを律するということは非常にむずかしいものだろうと私は思います。個人であれば特にそうですけれども、そういう場合、やむを得ずどうしても他によって定められた枠を意識しないわけにまいりません。日弁連さんというのはその自律性を十分に認められておって、それで裁判官にあるような弾劾制度のようなものもございませんし、自律性というのは非常にむずかしいと思います。そこで、前回でしたか、日弁連の代表として前の前の会長の柏木さんの御発言によっても、なかなか全員をコントロールするというのはむずかしいということをおっしゃっておられます。  そこで、私、日弁連の懲戒委員会の問題をちょっとここでお伺いしてみたいのですが、法廷で、まあ荒れた法廷をつくり出した一つの役割りを演じてしまった弁護人を懲戒しようとする。それを裁判所の方から弁護士連合会に対してお願いするというか、求める。私は、日弁連の懲戒委員会というものが正しい運営をされるということを期待しておりました。当初、日弁連さんがよく言われたことは、日弁連というか、弁護士会の懲戒委員会というのは第三者も入っているから一方的に自分たちだけでやっているんじゃない、こういうふうに書類の上でもあるいは口頭でも私聞きました。しかし、その後わかってきたところでは、裁判所の懲戒請求に対して、即懲戒委員会が開かれるのではなくて、その前段として、日弁連さん内部で、いわゆる内部の訴追委員会的な仕事をする綱紀委員会というものがある、その綱紀委員会が検討して懲戒委員会にかける、こういう段取りになっているように私、知りました。それで、懲戒委員会は確かに第三者が入っておられるようですけれども、この綱紀委員会というものはどうも弁護士さんだけのようです。まず、その辺に私の理解が違っているかどうか、お示しをいただきたいと思います。  さらに、この綱紀委員会が下した裁定というものを取り上げた懲戒委員会がどう取り扱ったかということを、何か一つの例を示して教えていただけるとありがたいのですが、いかがでございましょうか。

枇杷田泰助法務大臣官房司法法制調査部長

○枇杷田政府委員 まず第一点の、綱紀委員会に第三者が入っているかという点は、御指摘のように入っておらないわけでございます。これは法律上も入ることを必要としておりませんし、実際上の各弁護士会でも入っていないようであります。  それから第二点の、綱紀委員会が扱ったものを懲戒委員会でどうしたかという点について、私ども、その内部的な関係については十分承知いたしておりませんけれども、綱紀委員会で懲戒相当としたものについても、懲戒委員会の方で懲戒不相当としたというふうな事例もあるかと思いますが、その詳細は残念ながら承知しておりませんので、お許しいただきたいと思います。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 一言つけ加えますと、弁護士会の綱紀委員会の問題は、昭和三十九年に臨時司法制度調査会の答申でもすでに指摘されておりまして、内部の人たちだけで綱紀委員会が構成されているということは適当でない、だからその構成について改めることを検討すべきである、こういう答申が出ておることを申し添えます。  それから、具体的な案件として一つ申し上げますと、昭和四十四年に、当時の東京地方裁判所長からYという人に対して、東大事件の法廷で著しく不当な言動があったということで、弁護士会に対して懲戒の請求がなされましたが、請求がありましたのが四十四年、これが四十七年に第二東京弁護士会の綱紀委員会で懲戒不相当という議決がございまして、すぐさまこの申し立てられました方がこれに対して異議の申し立てを日本弁護士連合会になされましたが、私どもが承知しております限りでは、昨年の暮れまで見たところ、なお日本弁護士連合会の方で御調査中のようでございまして、十年近くたっておるのではないかというふうに思っております。  それからもう一つ逆に、昭和四十四年に東京地裁所長が懲戒請求をされましたMという弁護士さん、これも同じようなケースでございますが、これは東京弁護士会で昭和四十六年に綱紀委員会で懲戒相当の議決がありましたが、昨年の十二月になりまして、今度は懲戒委員会で審査を開始することができないという議決があったそうでございまして、これも異議の申し立てがなされて、現在日弁連の方で御検討中のように承っております。そんなような事例をわずかに承知しておるわけでございます。

高橋高望民社党

○高橋委員 わかりました。  それでは、すでに他の委員が尋ねられたことと若干重複するかと思いますけれども、例の百回指定問題とも関連して、私思うことなんですが、日弁連側が言われるような月一回あるいは月二回きりの裁判開催、それ以上は困難だということの理由の中で、ほかにいろいろ事件を抱えていて、それで忙しいからできない、こういうことをよく聞くのですが、逆に言えば、仕事をたくさん抱えると、重大な事件でも公判が開かれない、あるいは回数が少なく開かれるということにもなってしまうのですが、こういう現在の日弁連の見方というものに対して、確かに自律性を認めていらして、物事がなかなか直接には御相談しにくいのかと思いますけれども、こういう日弁連のあり方についてはどのようにお考えになりますか。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 確かにきわめてしばしば弁護士さんが裁判所の期日の指定を受ける際に、月一回しか受けられない、あるいは月二回しか受けられないということをおっしゃるわけでございます。その理由とされるところは、それ以上受けると、他の受けている事件に影響が出るとか、あるいは大した弁護料をもらっておらないからほかの事件でかせがなければならないからだめなんだとか、こういうお話があるわけです。これは役人の立場をちょっと越えるような話で恐縮でございますが、私の経験に基づく感想でございますが、二つの面からある種の感想を持っておるわけでございます。   一つは、普通町で商売をしておられますお店屋さん、こういう方は大体売れるだけの数を見込んでお仕入れになる、こういうものだろうと思うのでございます。ところが、どうも弁護士さんの中には、販売能力を超えてどんどん仕入れられるということのために、在庫が非常にふえまして、なかなかはけていかない、こういうことが顕著であり、特に過激派事件におつきになる弁護士さんにつきましては、いわゆるいまの例で大変恐縮でございますが、一種の専門店でございまして、店舗の数が少ないこともあるようでございまして、きわめて多量の仕入れがなされるというところに一つの原因があるのじゃないか、こういったことを感想として持っております。一それからもう一つは、諸外国との対比をしてみます。たとえば陪審制度とかあるいは参審制度というような民衆が裁判に参加しておるようなシステムの国では、一月に一回、二回というような法廷を開いておりましたら、陪審員などはそれこそ飯の食い上げになるということでございますから、望むと望まざるとにかかわらず連日開廷もあえてして、短期に裁判をせざるを得ないわけでございます。幸か不幸か、わが国におきましては職業裁判官による裁判がなされておりますから、月に一回、二回という裁判でも、大変頭のいい裁判官が多いのでございましょう、ちゃんと覚えていて適正な裁判をなさると思いますけれども、ただそれにしましても、刑事訴訟規則にちゃんと明文がありますように、二日以上の公判開廷を必要とする場合には、なるべく連日でも開廷して集中審理をしなさいと書いてあります。裁判というものは、やはり裁判官が口頭でなされますことを自分の記憶にある間に判断をして裁判をするというのが理想だろうと思うのでございます。  そういう感想を持っておるわけでございますが、そういう感想から申しますと、たとえば特定の弁護士さんに事件がきわめて集中をして、適正なテンポによる期日の指定が受けられないという状況がもしあったといたしますれば、それらはやはり他に監督機関もないわけでございますから、弁護士会において、公正でかつ迅速な裁判の実現のためにその辺の調整を十分なさるということか望ましいのじゃないか、こういうふうに考えておる次第でございます。

高橋高望民社党

○高橋委員 それでは、ここでちょっと憲法問題で一つだけお伺いしておきたいことがあります。どうかひとつできるだけ平易にわかりやすくお教えいただきたいと思いますが、憲法三十七条第三項、条文も私も知らない間に暗記しちゃいましたけれども「刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する癖護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、國でこれを附する。」とこうあるのですが、この「依頼することができる。」という言葉を考えましたときに、被告人が、おれはいいよと言っていても弁護人をつけなければならないというふうに解釈するものなのですかどうか、この辺ちょっとお教えをいただきたいと思います。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 この点につきましては最高裁判所の大法廷によります類似の判決もございまして、ただいま御指摘のように、国は、被告人が自分の好む弁護人をつけたいという場合に、その機会を奪ってはいけない、こういう趣旨の規定であるとされております。したがって憲法三十七条三項の解釈としては、被告人が、おれは弁護人は要らないんだという場合にも国がつけなければならないということは言っていない、これが最高裁の判例であり、私どももそう思っておるわけでございます。  ただ、刑事訴訟法では、長期三年を超えるような比較的重い罪の事件については、刑事訴訟法の立法政策として、憲法の枠を超えてなお手厚くするために必要的弁護制度をとっておる、こういうことであろうと思います。もしそうでなくて、憲法三十七条三項が世上一部の人が言っているように、どんな場合にも弁護人をつけなければならないという趣旨の規定であるとすると、現在の刑事訴訟法上、長期三年を超えない罪の事件については、被告人が要らないと言えば弁護人なしで裁判ができることになっておりますが、その現在の刑事訴訟法の規定が憲法違反だということになるわけでございまして、そういう憲法違反の刑事訴訟法が戦後三十年続いてきておるということも全くないわけで、そういうふうに考えている人も全くないと思うのでございます。そういう点からしましても、憲法の三十七条三項の考え方はただいま御指摘のとおりだと思います。

高橋高望民社党

○高橋委員 委員長、私は、与えられた時間は十分過ぎまでだったと思うのですが、もう一問だけお許しをいただきたいと思います。それは、他の委員にも御了解を願いたいのですが、ちょっと最後に現在のことでお伺いしたいことが一つあるのです。  それは、過激派の最近の無法事件で、この間の三月二十六日の成田の管制塔乱入事件、一連の暴力革命運動だと私が思うものが行われておりますけれども、これについては私たちの党の立場からでも、国民一般としても強い関心を持っていると思います。ざっと申し上げますが、これらの事件の捜査とか処理状況、起訴したのが何名ぐらいあるのか、あるいはこれはいわゆる必要的弁護事件なのか、また弁護人がすでに選任されておりますか、それから千葉地方裁判所が千葉弁護士会にどうも国選弁護人の推薦を依頼しているらしいのですが、この辺の実情、そして第一回の公判の期日というのはいつごろ行われそうですが、ざっと申し上げて恐縮ですけれども、もし途中であれでしたらもう一度お尋ねいたしますが、いまの状況をひとつ教えていただきたい。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 去る三月二十六日をはさみます前後のいわゆる成田空港開港阻止闘争と申します事件で検挙されて、検察庁へ身柄送致になりましたのが合計百六十八名でございます。そのうち百四十九名を今日までに千葉地方裁判所に公判請求をいたしております。したがって不起訴処分が八名、少年でありますために家庭裁判所へ送致しましたのが十一名という数になっております。  このうち必要的弁護事件はどの程度かということでございますが、端的に申し上げると、百四十九名全員が必要的弁護事件の被告人でございます。と申しますのは、傷害とか火炎びんの取り締まりに関する法律あるいは航空危険罪、殺人未遂というようなどれかがついておりますので、必要的弁護事件になります。  弁護人の点でございますが、すでに保釈になりました反対同盟員三名につきましては弁護人が十三名選任されております。そのほかの百四十六名についてはまだ選任されたということを承知しておりません。ただ、大体わかっておりますことは、この一連の成田関係の事件、これは昭和四十三年以来の事件でございますが、合計六百人ぐらいの起訴が行われておるわけでございますが、それらはごくわずかの一定の弁護士さんが全部についておるわけですが、その弁護士さん、これは弁護団、こう言っておられるようでありますが、に属する方が何回も面会したりしておられますので、そういう方がまたこの事件もおつきになるのではないかと思っております。  それから、第一回公判期日はいつごろになるかということでございますが、第一回公判期日を決めます前には刑事訴訟規制等にのっとりまして、事前に裁判所、検察官、弁護士が集まりまして打ち合わせを遂げた上、決まるというのが実情でございますが、いま申しましたように、弁護人がまだ決まっておりませんので、そういう手続にまだ入っておりませんので、いつ第一回公判期日が開かれるかまだわからないという状況でございます。  なお、千葉地裁が千葉弁護士会に対して国選弁護人の推薦依頼をされたかどうか、この点は、ちょっと私どもの方では承知いたしておりません。

高橋高望民社党

○高橋委員 時間を超過いだしまして申しわけございません。またの機会に再度いろいろ伺わせていただきたいと思います。ありがとうございました。

鴨田宗一自由民主党

○鴨田委員長 加地和君。

加地和新自由クラブ

○加地委員 いままでのいろいろな審議の中で、法務省が言っておられることと、それから日本弁護士会あたりが言っておることとで非常に大きな食い違いのあることが幾つか見受けられるわけでございます。そのうちの一つは、連合赤軍事件の裁判があと何年ぐらいで終わるかという問題について、ある方面では、あと二十年か三十年かかると言いますし、またある方面では、あと五年以内に一審判決は下るであろうというわけでございます。この法案は、いろいろな物の見方があると思いますけれども、やはり迅速にして充実した裁判制度を実現していくために役立つ意味というものがなければならないと思うのです。そういう意味合いにおきまして、いま私が挙げました連合赤軍事件の一審判決が下されるまであと何年ぐらい現在の制度のままではかかるものでございましょうか。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 よく俗に水ものと言われる流動的な裁判の事柄につきまして、将来を予測するということはなかなか困難なことでございますが、お尋ねでございますから、率直に現在の感じを申し上げたいと思います。  連合赤軍事件はこれまで約六年間かかっておりますが、その六年間に百二十一回の公判が開かれております。そのうち証拠調べが行われましたのは第五十四回以降の六十八回ということになるわけでございます。六十八回で行いましたことは、証人が四十四名、書証百八十二通、証拠物七十五点の取り調べを行ったわけでございます。  今後取り調べる予定の証人あるいは書証、証拠物の数を見てみますと、この連合赤軍の事件の中で最も重大事件の一つであります例の浅間山荘事件のほか、被告人が二名ばかり逮捕されたときに発生した事件、こういったものについては、検察官側の証拠申請に対する弁護人側の意見もまだ述.へられておりませんので、なかなか今後の期間の予測に困難な要素があるわけでございますが、これからやりますことを数えますと、検察官が申請しております証拠の数が、被告人の供述調書などを除きまして、書証六百五通、証拠物五百七十一点、証人四十五名ということになっておりまして、御承知のとおり、この書証六百五通については弁護人、被告人の同意があればよろしいのですが、同意がないと次々に証人に切りかえていかなければならぬわけでございます。そういう状況を踏まえまして、検察当局から報告を聞きましたところによりますと、現在のような月二回、それも午後だけ審理をするというやり方でまいります限り、真岡猟銃強奪事件と言われますもの、印旛沼リンチ殺人事件と言われますもの、M作戦事件と言われますものにつきましてあと一年、山岳ベースリンチ殺人事件と言われますものにつきまして、共犯者の証人の尋問でまだ終わっていない部分、これに三年から四年、被告人尋問に二年から三年の合計五年から七年、それから永田洋子というのが逮捕されましたときの事件につきまして半年、それから植垣というのが逮捕されましたときの軽井沢事件と言われますものについて半年、それから浅間山荘の事件につきまして、証人尋問と書証の取り調べが五年、共犯者の証人尋問と被告人尋問に一年、合計六年をどう考えても要るということでございます。以上が検察当局からの報告でございますが、これを合計いたしますと、検察官立証だけであと十三年から十五年かかる、こういうことになっております。  その後、弁護人側の立証に入るわけでございますが、弁護人側がどういう立証方針であるか全くわかりませんけれども、これまでの言動に徴しますと、一連の連合赤軍事件が革命運動の一環である、あるいは内乱であるというような観点から、事件の背景立証というようなことで、資本主義構造から革命運動の歴史などについて立証しようという主張がなされることが予想されるわけでございます。こういった、私どもからしますと、全く本件と関係のない背景立証と言われますものにつきまして、もし裁判所がこれをお認めになれば延々と続くでありましょうし、お認めにならなければ退廷騒ぎ等が起きるでございましょうし、いずれにいたしましても、弁護人側の反証が相当かかるであろう。仮にきわめて大ざっぱに、検察官立証の半分と見ますと大体十年から十一年かかるというふうにも思われるわけでございまして、そういう機械的な計算をしますと、今後判決が出ますのは二十三年から二十六年後に第一審判決が出る、こういう計算になります。  被告人らは捜査段階で全部自白をしておりますから、これは恐らく有罪になると思います。有罪になりますと恐らく控訴があるのではないか、また仮に控訴棄却にでもなれば上告があるのではないか、こういうふうに考えますと、計算上は四十年ぐらいはかかる、こういうふうに言わざるを得ない実情で、私どもも放置できないという感じを持っております。

加地和新自由クラブ

○加地委員 まことに驚くべき裁判日数でございまして、私も判決がおりるころに生きておるかどうかわからないというような感じさえいたします。被告人自身も生きておるかどうかわからない、証人も生きておるかどうかわからない。そうすると、これは暗やみの中に包まれたままの解決になってしまって、ある意味では粘り勝ちといいますか、悪いことのし勝ちといいますか、法律が六法全書には書いてあっても生きた機能を果たさないという重大な問題を含んでおると私は思うのです。ただ、弁護士、日弁連の参考人の方が、一審判決ば五年以内くらいでおさまりますよということをここではっきり言っておられましたけれども、刑事局長さんは第一審だけであと二十三年か二十五、六年とおっしゃいますし、片一方は五年と言いますし、これはどこで大きな違いが出てくるのでしょうね。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 私も全く理解に苦しむところでございまして、私どもの計算は、検察当局に、今回国会で御答弁申し上げることを前提にいたしまして、従来の一開廷における証人調べに要した時間とかを厳密に積み上げまして計算をさせましたので、この計算は個々具体的な検察官の立証計画も、なるべく早く終わらせるために本当の骨だけの立証を現在やっているわけでございますけれども、それを厳密に計算をさせた数字が先ほど申し上げたとおりでございまして、五年以内にもし終わるお見通しが弁護士会の側にあるとすれば、それは一転して被告人が公判廷で事実を認めてしまうか、そうでないとしても、書証等に全部同意をされる、こういうことであり、かつ弁護人、被告人側の反証も情状程度に限られるということであれば五年で終わるのではないかと思いますが、現在の状況はなかなかそうではございません。

加地和新自由クラブ

○加地委員 一審判決でそう長期間かかるのは論外といたしまして、岡原長官の問題にされております発言の中にも、裁判というのは国民感情を背景にしてやらなければならないのだ、だからこういう世間の耳目を聳動させたような事件が長いことかかるのはいけないのだ、早くやらなくちゃいけないのだという発言がありますし、また、連続企業爆破事件について法廷がもめた原因の一つに、新しくかわってこられた裁判官が、こういう事件は二年以内で片づけなければ世間に申しわけがないのだというような発言もなさったようにも聞いておるのでございますが、検察当局なり裁判所の方は、こういう一連の発言を聞いておりますと、連合赤軍事件だったら何年ぐらいで終わるべきだ、あるいは連続企業爆破事件だったら何年ぐらいで終わるべきものだというような、一つの理想像なりかくあるべしというお考えがあるのではなかろうかと思うのでございますけれども、どのくらいの期間で現行裁判制度上は工夫をこらしゃれるものか、あるいはまたやらなければならないものかということについて、何年という数字をちょっとお答え願いたいのでございます。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 およそ刑事裁判は早ければそれだけでいいというものではなくて、公正でなければなりませんから、訴因の数その他との関連におきましておのずと期間の長短が出てくる面もあると思うのでございます。  しかしながら、一般論としまして、たとえば被害者の被害感情とか国民の感情、それから今度は裁判上の問題でも証拠の散逸、先ほどもちょっと仰せになりましたが、証人が死んでしまうとか記憶を失ってしまう、あるいは現場が変わってしまうというようないろいろなことがございますので、早くやらなければ適正な裁判も得られないという要素があるわけでございます。そういった点を考えますと、非常に大ざっぱに言えば、私どもとしては、一審というものはどんな事件でも少なくとも数年で終わるべきものであろうと思います。  具体的なケースを見てみますと、連合赤軍事件におきまして、分離公判で審理を受けました被告人が相当数あるわけですが、大体この分離公判で審理を受けました被告人は、分離公判ですから裁判所が片手間におやりになったのかどうか知りませんが、月一回程度の公判ぺースでも、大体起訴後一年から三年で一審判決が言い渡されておるわけでございます。これが一つのメルクマールになるのではないか。それからまた、似たような訴因の多い重大事件で、皆さん方の御記憶にある事件で申しますと、連続強姦殺人事件と言われました大久保何がしによります七名の女性に対する連続強姦殺人、これが起訴後約一年八カ月で一審判決になっております。また、関口何がしというのが殺し屋グループを雇って四人の人を次々に殺害などしました事件、これは六人の共犯者のある事件でありますが、これも否認があったりして非常に複雑な事件でございましたが、起訴後約三年で一審判決に至っておるわけでございまして、事件の難易その他がございますから一概には言えませんが、やはり数年以内に一審判決というものが出てしかるべきものだというのが私どもの考え方でございます。

岡垣勲最高裁判所事務総局刑事局長

○岡垣最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  ただいま委員の方から、連合赤軍事件を頭に置きながらだと思いますけれどもお話がございましたが、個々具体的な事件の進行を予測するということはきわめて困難でありまして、私どもが、この事件はこれくらいで終わるということを、現に事件を担当していないで申し上げることはできないと存じます。  たとえば連合赤軍事件の場合に、これは弁護人が例のいわゆる百回の期日指定に関連しまして、裁判長というか、三名の裁判官の忌避の申し立てをされた、その理由書の中に弁護人が書いておられることでありますけれども、こういうふうに言っております。「しかし、本件事件は裁判所においても、新聞等で知っておられるとおり、山のベースの事件は被害者はすでにいないのであるから共犯者しかない。いんば沼の事件もまたしかりである。浅間山荘事件もむたさん以外は警察官と共犯者であり、真岡事件も被害者と共犯者しかいない。共犯者は供述拒否権があり、特に公安事件の場合はこれを行使するものが多く、その際は一日に一〇人位済んでしまう。もし供述しても、すべての人が同じことをしゃべる必要はないのであるから、それにかかる時間はしれている。したがって、ふつうの公安事件と余り時間数等考えてもかわるとは考えられない。」というふうに、これは事件の最初におっしゃっているわけです。これは、常識的にはそうかもしれません。浅間山荘事件などは、あれはもうテレビで国民の目の前で起こっていた事件であります。わからなかったことは何か、山荘の中での共犯者同士の関係であったと思います。それから、たくさんの人が殺された山岳べース事件でございますが、これは皆死んでおるわけでありまして、あとはそこに入っておった人たちの間の関係がどうであったかということだけであります。  ですから、もしおっしゃっているようなことを前提にいたしますと、極端なことを申し上げれば、もう被告人同士の間でどうしたのだということを法廷でそれぞれ聞けば済んでしまうというふうな見方もできるわけでございまして、そういう観点からすれば、審理期間は余り要らないという返事が出てくるかと思います。  しかし、現実はそうではございませんで、いままでかかってきている状況を見ますと、そう簡単に終わらないということになる。これはやはり訴訟の当事者の出方、それからその訴訟の進行に応じてのいろいろな状況の変化、そういうものがいろいろ組み合わさって決まっていくわけでございまして、裁判所は、当事者の活動の上に乗っかって、そして出てきた両方の資料を判断して裁判所はこう考えるというところを判定するということでございますので、自分で範囲等を勝手に決めてしまうわけにいきません。ですから、とにかく具体的な事件について、どれくらいでできるということを申し上げることはできないわけでございます。  ただ、一般的に申し上げますと、たとえば一審の事件は五、六カ月で大体平均済んでおる。しかし最高裁まで参りますと、争われた事件が参りますから、一審で六カ月というわけにいきません。私どもの方の統計で見ておりますと、これは昭和五十一年の事件で申し上げますと、最高裁で終局しました被告人一人当たりの期間を見ますと、一審で十三・七カ月、二審で七・三カ月、それから最高裁で四・四カ月、その間、一審から二審に行く期間、それから二審から上告の期間というその移る期間がございますので、その期間を加えまして、全部で二十八・二ヵ月でございますか、ですから大体二年四月ぐらいで終わっているのが、これが最高裁まで行った事件の平均でございます。  私どもとしましては、これはそんなに遅滞があるとは思えませんが、しかしこれもできるだけ縮めるように努力していきたい。でございますから、ごく理想的なことを申し上げれば、どんな事件でも二年ぐらいの間には最高裁の判決が出るぐらいのところまで持っていかなければならぬ、それを目標にして努力しなければならぬと考えておりますけれども、しかしなかなかそれが困難な現状であることは御承知のとおりでございます。

加地和新自由クラブ

○加地委員 ところで、いま審議されておりますところの法案、通称弁護人抜き法案、これがもし可決された場合には連合赤軍事件は一審判決まで何年でいけることになるのでしょうか。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 ただいま御審議いただいております法案が成立いたしました場合に、これを踏まえて訴訟指揮をなさいますのは具体的な裁判所でございますから、その当該裁判所がどういうふうな訴訟指揮をし、どういう審理をなさるかということに一にかかるわけでございまして、そういう意味で、今後具体的な事件について裁判所がおやりになることを私どもの方で予測してお答えをするということは不可能でございますが、単純な算術計算で仮にやってみますと、まずもって、公判期日を合理的な進度で入れようとすると法廷から逃げてしまうという現在のその弁護人の態度がなくなって、合理的な公判期日が入ってくる、仮に、検察側の主張は週二回であったわけですけれども、百歩を譲って月四回になる、それも朝からやっていただくということになりますと、それだけで四倍のスピードアップが図られます。それから、先ほどもちょっと申し上げましたが、まことに事件と関係のない尋問あるいは立証等が弁護人、被告人側からなされようとしました場合にも、恐る恐る対応しておられるというような状況が仮になくなるといたしますと、大変な目の子算で恐れ入りますが、現在の倍ぐらいのスピードにはなるのではないか。それこれ考えますと、大変大ざっばな計算で恐れ入りますが、現在の八倍ぐらいのスピードになるのではないか。そうしますと、少なくとも検察官立証はあと二年で終わり、弁護人の立証等も数えましても、まさに日弁連のおっ、しゃっておるような五年以内には確実に終わるというようなペースになるのではないか。これは算術的な計算でございまして、具体的な処理につきましては裁判所の御判断にまつよりほかないと思います。

加地和新自由クラブ

○加地委員 裁判所の方にもちょっとお答えを願いたいと思います。

岡垣勲最高裁判所事務総局刑事局長

○岡垣最高裁判所長官代理者 裁判所といたしましては、先ほど申し上げましたとおりに、具体的な事件についてこの法案が通ったらどうなるこうなるというふうなことを、事件を担当していない者が申し上げる筋合いではないと存じますので、連合赤軍事件はどうなるかということについてはちょっとここでお答えできないと存じます。  ただ、一般的な問題として申し上げますと、たとえば私たちの方で調べておりますいわゆる学生事件で、五十一年と五十二年で地方裁判所で終局裁判があった、いわゆる学生の集団事件がございますが、それで係属三年を超えたもの九十一件、これを全部一応ずうっと集計いたしまして、それで見ますと、その一件の平均審理期間は六十九、六月、五年八月となっております。普通の事件の審理期間が五、六カ月という点に比べると、これはまた非常に長いわけであります。この事件の証人調べの開始までに、平均二十八・三月、二年ちょっとかかっている。そういたしますと、五年八月で終わっている事件の全体が、大体半分近くとまではいきませんが、六十八月のうち二十八月まで証人調べがかかる。これはなぜかというと、皆ほとんどが法廷での混乱が原因であろうというふうに考えられるわけでありまして、もちろんいろいろな事情はあると思いますけれども、多くは法廷での混乱だろうというふうに考えられます。ですから、こういう点が今度の法案で解消されれば、非常にスピードが上がってくるであろうというふうに考えます。それからまた、開廷間隔も、平均一・八月というふうになっておりまして、この一・八月という開廷間隔も、もし裁判所の方でもっと入れても出てきていただけるということであればこれは短くなると思いますから、一・八月に一回のものが、仮に月に一回になり、二回になり、仮に月に二回になれば、もう四分の一ぐらいに縮まるということになるわけでありまして、ですから、個々の事件というものは、これは何度も申し上げますとおりに生き物であり、本当に世の中にその事件は一つしかないわけでありますから、その個性に応じていかなければならないのであって、それがどうこうということは申し上げられませんが、ごく一般的な観点から申し上げれば、いま申し上げたようなことになるのではないか、こう考えております。

加地和新自由クラブ

○加地委員 連合赤軍の場合に、いまの八倍のスピードでいけるかどうか疑問にも思いますけれども、仮に八倍でいきましても、あと相当の年数がかかるということになると思うのです。そういうことを考えていきますと、この法律を通すだけではなしに、この法律が通った後でも訴訟関係者であるところの弁護士なりがそういうスピードで対応していけるような方策といいますか、措置というものが別途講じられないと、スピードは速まったけれども、どうも準備が十分にできていない、あるいは中身の乏しい裁判ということになってしまう場合もあると思うのです。  それは、私は、現在の裁判所と弁護士とのトラブル等が起きたときに辞任とかいうことが行われた後、弁護士会の方に国選弁護人の選任依頼ということをなさっておりますけれども、この国選弁護人の後がまの人がなかなか決まってこない原因の中に、この前、元日弁連会長の柏木さんもここで言っておられたのでございますが、現在、月三回開廷を標準としたところの、二万九千円程度の国選弁護料では、たとえば連合赤軍事件のような相当長期間、弁護士としてもほかの事件を犠牲にしてでもやらなければいけないというような大事件について、国選弁護人になる人が経済的な問題でしり込みしている面もあるのでなかろうかということを、柏木さんのお話を聞いて、私はそう感じておるわけでございます。また、それ以前からも感じておるわけでございますが、国選弁護制度の充実という点について、弁護人抜き裁判法案が法制審議会にかけられたときにも、審議会の委員の中からも何か御発言があったようにも聞いておるのでございますが、どういう御発言があったかということと、法務省の方では、この国選弁護制度の充実についてどういうぐあいに考えておられますか、お答え願いたいのです。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 御指摘の点は非常に重要な点だと思います。この特例法が仮に成立をいたしました場合を考えましても、裁判所が国民の期待にこたえる合理的な間隔で公判期日を入れようとする、その場合に、私選弁護人では相当な報酬が得られないという理由で受け手がないというような場合には、国選弁護人をもって対処しなければなりません。また、弁護人が辞任してしまったというような場合に、この法案によりまして、理論的にはどこまでも弁護人のいない状態で手続が進められるわけでございますけれども、先ほども最高裁の方からお話がありましたように、やはり当事者を十分助けるべき弁護人の存在する法廷を開くということが望ましいことは言うまでもありません。したがって、そういう場合には、国選弁護人の請求があればすぐつけられるという状態にすることが望ましいことは申すまでもないわけでございます。そこで、法制審議会の際にも私どもの方から御説明をいたしたわけでございますが、物事というものは、最近の事態に対処するためには二つの要素が要るのである、一つは、この特例法のような内容の措置であり、もう一つは、やはり国選弁護人制度の充実である、この二つがいわば車の両輪となっていかなければ望ましくないというふうに考えております。しかしながら、国選弁護人の点につきましては、突き詰めて言えば、公設弁護人というようなものをつくって、常に需要に応じられるというふうな制度的なことをやることも考えられますけれども、再三申し上げておりますように、法案作成の前提として日弁連御当局とお話し合いしましたときも、国選弁護人の推薦の点についてはなお努力の余地があるというお話でございましたので、その点は制度的には御提案申し上げておりませんけれども、国選弁護人の円満な推薦ということば、やはり法曹三者が話し合って、全力を挙げて努力をしなければならないことだというふうに考えておる旨を私の方から御説明を申し上げ、委員の皆さん方からも、まことにさようであるという御意見があった次第でございます。     〔羽田野委員長代理退席、委員長着席〕 確かに、ただいま御指摘になりましたように、国選弁護人の選任をスムーズにやるためには、特殊な事件につきましては、また、たとえば一カ月における開廷期日の頻度によりましては相当額の報酬を差し上げるということを考えるということがどうしても必要ではなかろうかと思うわけでございまして、そのことは最高裁の御当局にもお話をいたしまして、これから御相談をしながら善処していきたい、かように考えておる次第でございます。

岡垣勲最高裁判所事務総局刑事局長

○岡垣最高裁判所長官代理者 国選弁護人報酬の点については、先ほど法務省の方からお話のありましたとおり、この法案をおつくりになるときから私の方にもお話がございました。ただ、私の方の考えるところをここで申し上げますと、この間、柏木参考人が当委員会でお話しになりました議事録を私、後で拝見しまして、そして少し誤解しておられるのではなかろうかというふうに考えた点が一つございます。それは、何でもかんでも一件二万九千円とか三万三千円だとかいうふうに考えておられるのではないかというふうに読んだわけでございますが、それはそうではございませんので、私どもの方で、地方裁判所で申し上げますと、去年までは大体一件当たり三開廷基準で二万九千円、ことしからは三開廷基準で三万三千三百円という基準にしておりますのは、それはごく普通の事件を基準にして考えているものでございまして、ごく普通の事件というのはどういうのかと申しますと、御承知のとおりに、裁判所の刑事事件というのは自白事件が非常に多うございまして、それからまた単独事件が非常に多いわけでございます。一審でございますが、たしか全事件の八〇%ぐらいが単独事件で自白事件だと思います。そういう事件というのは御承知のとおり、第一回公判期日が開かれて、東京地裁の刑事部でやっておりますけれども、一時間ずつ二回ぐらいでしょうか、二回か三回で終わるような事件でありまして、そういう事件を基準として、現在では地方裁判所で言えば一件、三開廷平均で三万三千三百円が基準となっております。しかし、そういうのを基準にして頭に置いておりますから、では困難であった事例というものはそれはそのときそのときの状況に応じて受訴裁判所がお決めになる。これは法律によって、裁判所が定めるところによっているわけでありまして、したがいまして、私どものところに来ておる報告によりますと、たとえば神戸の地方裁判所であへん法、関税法違反の被告事件、五十一年には報酬としてこれに十七万円支給しておられる事例がございますし、それから大津の地方裁判所では、五十一年でございますが、二十七万七千七百六十五円支給されている。それから横浜の地方裁判所では詐欺の事件で、昭和五十一年のことでございますが、報酬として五十万円支給しておられる。挙げれば幾らでもございますけれども、別にその三万三千三百円が固定不動のものというわけではございませんで、したがいまして、たとえばただいま問題となっておりますような連合赤軍事件なり企業爆破事件なり、これが国選弁護事件でやらなければならぬということになりますと、受訴裁判所としては、その事件の重要性、それから弁護人として働かれる場合の御努力がどれほどの準備なり活動が必要であるかということを考えて適当な報酬の決定をするものと考えます。ただその決定される報酬は、現在の日弁連でお定めになっております報酬基準と比べれば、これは低いであろう、そのとおりにはいかないであろうというふうに考えます。これは国民の税金で負担され、そして結局は被告人が負担することになるものでございますから、どうしても同じようにはいかないというふうに考えるわけでございます。

瀬戸山三男自由民主党法務大臣

○瀬戸山国務大臣 私からもこの際申し上げておきますが、実情はいま御説明申し上げたとおりでございますが、この案を検討する際にも国選弁護人の問題を検討いたしました。弁護活動に対する報酬が適当でないような感じもいたすわけでございます。でありますから、この問題については予算に関係がありますから、法務省の責任でもありますし、裁判所と協議し、また弁護資会の意見等も聞いて積極的に国選弁護人として参加できるような体制をつくりたい、かように考えておるわけでございます。

加地和新自由クラブ

○加地委員 最高裁判所にお尋ねいたしますけれども、第六十八国会の参議院法務委員会議事録によりますと、最高裁長官代理者として牧圭次さんという方が出ておられまして、この国選弁護料というのが何を基準に、どういうぐあいに考えるかということについてしゃべっておられるのでございます。それをちょっと引用いたしますと「私どもが一応考えておりますのは、日本弁護士連合会で報酬等基準規程というのをお定めになっております。その報酬等基準規程を一応の基準といたしまして、できるだけそれに近づけた報酬を支給できるようにいたしたいということで私どもはせっかく努力いたしておるわけでございます。」こういうことをしゃべっておられるのでございますが、「この考えはいまも最高裁の方は変わらないのでしょうか。それからまたここに「努力いたしておる」こう書いてございますけれども、この第六十八国会以後、どういうぐあいに努力をなさいましてどういう成果が上がったかということをお答えください。

岡垣勲最高裁判所事務総局刑事局長

○岡垣最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  ただいまお話しになりましたように、当時の牧刑事局長がそういった趣旨のお答えをしていることはそのとおりでございまして、ただその当時は、日弁連でお定めになっている報酬基準というものと、私どもの方で国選弁護人の報酬の基準として考えておりますところとそう差がなかったわけでございますので、それに近づけようということで努力しておったわけでございますが、その後日弁連の報酬基準が、たとえばその当時二万円であったものが、たしか四十八年でございますか、これが六万円、その次には十五万円でございますから、これは単独で十五万円で合議では二十万円ででございます。ですからとてもその基準どおりにはいけないのではないか。この基準について、ちょっとこれは余り言いたくないことでありますが、たとえば刑事事件についての報酬基準が、いま申し上げたとおりに現在では手数料二十万円、それから無罪ならば三十万円の謝金、執行猶予になれば二十万円の謝金、執行猶予事件で、合議事件であれば大体四十万円、単独事件であれば三十万円というような基準になっております。それと同時にお決めになっている少年事件が、たとえば手数料十万円で不開始の場合十五万円。そうしますと、私どもは不開始もしくは不処分というふうな少年事件を自分たちで経験しておりまして、それで二十五万円というのはどうだろうかというふうに思うわけでございますけれども、必ずしも実感にびたっとこない。地方裁判所関係のものにしましても、必ずしもこのとおりそのまま目標にしていくというのは妥当であろうかという点については、私どもとしてはそのとおりであるという気持ちにはなれないわけでございます。  したがいまして、この差が非常に開いてしまって、もはやこれは天上の星のようになってしまって、あとはそれを見上げていなければならぬかもしれませんが、直接の目標として歩くことはむずかしいということになりましてからは、年々のその当時の経済状態その他を勘案しながらその引き上げに努力してまいったわけでありまして、たとえば地方裁判所で申し上げますと、逆の方からいきますが、五十二年で二万九千円、その前は二万五千六百円でありました。その前の年は二万三千三百円でありました。その二万三千三百円の前は一万九千四百円であります。そういうふうに毎年大体一〇%もしくはそれを少し超えるぐらいなところで積み上げに努力してまいったというのが現状でございます。

加地和新自由クラブ

○加地委員 お聞きしておりますと、どうも数字というものが先にあって、それが日弁連の報酬基準と大体合うておる。あるいは日弁連の報酬基準がとんとんと上がっていったということをおっしゃいまして、最高裁判所として数字というものが先にあるような気がするのです。いま日弁連の報酬基準について、少年事件の不開始の場合の例を挙げられましたし、あるいはまた地裁の事件の例も挙げられたのですけれども、批判はなさったわけでございますが、最高裁判所がその批判された二つの例についてはどのくらいの弁護料というのが適正というか、正しいというようなお考えをお持ちなんですか。

岡垣勲最高裁判所事務総局刑事局長

○岡垣最高裁判所長官代理者 私どもとしたしましては、いま申し上げましたうちで、少年事件関係の方は現に関係しておりませんので、その点は御容赦願いますが、地方裁判所の事件の関係でございますと、これは現在三万三千三百円と先ほど申し上げました。これはがまんしていただくぎりぎりの線であろうというふうに思っております。つまり、これで十分でございますと言って知らぬ顔しているというつもりは毛頭ございませんので、それで今後ともこれをできるだけ多くするように努力していきたいというふうに考えておりますけれども、しかしこれは、裁判所全体の予算のバランスとの関係でいろいろと考えていかなければならぬ問題でありまして、これだけを特に飛び抜けてどうするということはできないし、するつもりもない。大体先ほど申し上げましたようないろいろな事情、この基準となっている事件というものの実態、単独事件の自白事件というようなものを頭に置きますと、基準そのものはこれくらいでいまのところはがまんしていただかなくちゃならぬだろう、こういうふうに考えておるわけでございます。

加地和新自由クラブ

○加地委員 いろいろおっしゃいますけれども、私が漏れ聞くところでは、最高裁判所の方は、弁護士というのは司法修習生時代国費で教えてもらったんだから国選弁護ぐらいはただでやるのがあたりまえだというような基本的な風潮というか、お考えがあるように実は聞いておるのです。もういまはなくなったかもしれませんが、あったようにも聞いておるのでございますが、その点はどうでございますか。

岡垣勲最高裁判所事務総局刑事局長

○岡垣最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  国選弁護人の費用、報酬というものをどういうものとして考えるかという場合に、これはいろいろな要素が入ってくると存じます。その場合に、やはり裁判所としましては、弁護人の現在の訴訟の中において持たれるところの重要さ、憲法上、法制上から持つ意味の重さというふうなこと、それからまた法律の専門家として、要するにいわゆるその道のプロとして処遇されるべき重さというふうなこと、それから、現実に扱われる事件に対するその努力とかあるいは支出されなければならない労苦というふうなもの、いろいろな要件をあわせて考えて、これくらいならばというふうに考えるわけです。その要素の中に、やはり弁護人というのは司法研修所を通って、裁判所、国家の方でも費用を出して養成しておるということも一つの要素として入ってくるであろうというだけのことでございまして、そういったいろいろなものを考えてこれくらいというつかみの額を考えておる、そういう現状でございます。

加地和新自由クラブ

○加地委員 それはきわめて独断的な考えだと思うのですね。たとえば裁判官だって研修所で国費で養成されたわけです。ところが普通の国家公務員上級試験なんか通ってこられた方で、国立大学出た方は別でございますけれども、私立大学なんか出た人は国の援助というのは余りなかったと思うのですね。それでありながら常に、いろいろな裁判官なんかの給与法なんか審査しましたときに、いつの年度、年限をとっても他の公務員の方よりも最高のところにおられるわけですよ。自分たちの方は国と養成機関で金出してもらってやりながら、最高の位におりながら、弁護人の場合だけはそういうことも要素の一つに考えていくというのは、私は官尊民卑の思想というのがまだひっついておるような気がしてならないわけでございます。  それで、国選弁護関係について次の質問に移りますけれども、たとえば連合赤軍事件というのが、いままでずっと国選弁護だったとしますと、いまの時点でもし清算したとしたらどのくらいの国選弁護料というのがいまの制度で計算できるのでしょうか。

岡垣勲最高裁判所事務総局刑事局長

○岡垣最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  現在の制度では裁判所が相当と認めるところによるという制約があるだけでございますから、担当裁判官がその弁護人の活動状況をいろいろお考えになって、それでこれだけが相当とお決めになる額がすなわち報酬の額となるということでございます。

加地和新自由クラブ

○加地委員 これも全く説得力のない答弁しかできない制度になっていると思うのですね。この弁護士というのが大体検察側といわゆる法律に従った争いをやっていきます。裁判所と別に争うというものじゃありませんけれども、現実には生き物でございますから裁判所とも見解を異にして、対立した立場になっていくという場合もよくあると思うのですね。ところが、そのいわゆる対立しておる相手方に金額をすべて決めてもらうという制度自体は、私は非常に根本的におかしいと思うのです。たとえば、労働者の賃金の問題についても争議権があり、あるいはまた公務員の方々の場合にも人事院というものもございます。何らかの形で働く人の意向、意見というものが賃金決定にはしんしゃくされる仕組みになっておるのでございますけれども、世の中で自分の労務賃を全くけんかしておる相手方に一方的に決めてもらうという制度は合理的なものだとは思いませんが、この点についていかがお考えでございますか。

岡垣勲最高裁判所事務総局刑事局長

○岡垣最高裁判所長官代理者 弁護人報酬をどういう形で決めるかということにつきましては、いろいろな決め方があると存じますし、それのどれをとるかということは、これは立法政策の問題でありまして、私どもの方でああだこうだと申し上げる筋合いではないと存じます。したがって、現行制度でいかぬと思っておるかという御質問というふうに解釈して申し上げますと、私どもは、裁判所は弁護人と敵対関係とおっしゃいましたけれども、裁判所は弁護人と敵対関係になるというふうなことは考えておりませんので、裁判所がその事件の具体的な状況に応じて適当な判断でお決めになるというのがそれなりに合理的であり、それでいかぬからいま変えなければというふうには考えておらない次第でございます。

加地和新自由クラブ

○加地委員 いろいろな決め方があるとおっしゃいましたけれども、他の国の立法例等ではどんな制度がありますか、当該事件についての国選弁護料の決め方について。もしわかっておられたら教えていただきたいのです。もしいまわからなかったら、また後で教えていただきたいのですが、いかがでございますか。

岡垣勲最高裁判所事務総局刑事局長

○岡垣最高裁判所長官代理者 残念ながら浅学非才、直ちにお答えするだけの資料を持っておりませんので、後でまたお話しします。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 いろんな形があると思いますが、わりあい合理的だと思っておりますのは、たとえばドイツのような場合だと思うのです。ドイツでは、弁護士報酬が法定されておりまして、国選であろうが何であろうが、たちどころに数字が出てくるという形になっております。それも一つの考え方だろうと思います。  それから、よけいなことかもしれませんが、国選弁護に対する報酬を考えます場合に、一般の一、二開廷あるいは三開廷ぐらいで終わる事件と違いまして、週に一回とかあるいは月に何回というような公判期日の入ります事件につきましては、当該弁護士の方の弁護士としての職業活動の何分の一ぐらいを割くことになるかというようなことを勘案しながら、かつ、その方と大体同年輩のたとえば検察官の報酬というようなものとを勘案いたしまして、ある程度生活費の保障というような感じでもって決めるというようなのも一つの行き方だろうと思うわけで、これは私の記憶でございますが、そういうような行き方をしている国もあったのじゃないかと思います。

加地和新自由クラブ

○加地委員 いままで日弁連等からいろいろ資料等も出ていたかもしれませんが、実際には、私選弁護の場合と比べて国選弁護の場合には、家族とか友人の協力というのはほとんど得られないわけです。私選弁護の場合でございますと、家族とか友人に、ちょっと事務所の方へ来てくれ、あるいは被害者との示談書をまとめてきてください、こういうことが弁護士以外の人の手でやれるわけであります。ところが国選弁護人の場合には、大体その弁護人が全部動いてあげなければならない。二万九千円に見合った仕事だけしておったらいいという考えの人はほとんどないと思うのですね。やはり弁護士としての使命から考えてできるだけのことをやるというのがほとんどの人でございますが、国選弁護の方が私選よりも実際手間がかかるのですよ。手間もかかるし神経も使うという要素が強うございまして、研修所でおまえらに金を出してやったから、ちょっとは安くてもいいのだ、しかもそれを一つの要素にも考えるというお考えは、私はなくしていただきたいと思うのですね。いま弁護士会などのことがいろいろ問題になっておりますけれども、余りにもこういう金額が少ないために、それじゃ国選弁護人、一回ストライキをやったらどうかというぐあいに冗談みたいに私は言ったのです。そうすると、その担当の役員の方は、弁護士というのは、拘置所に入っている被告人のことを考えれば、どこかの世界のように何もかもそうしたいとか、ストライキとか、そういうことはやれません、現行の制度の中でいろいろな証拠といいますか他の例等も突きつけながら言えば、裁判所も法務省も良識のある方だから、いつかはわかってくださると思うので、決してストライキはやりません、こういうぐあいに、私、逆にたしなめられたようなことすらあったぐらいなんです。実情はそういうものなんですね。  それからもう一つだけ聞きますが、これは裁判所がお決めになる制度でございますけれども、普通の場合でございますと、その裁判官の決めたことに対して不服申し立ての方法があるわけですね。ところが、この国選弁護料の決定については不服申し立ての方法もないというのは、これもちょっと片手落ちの制度じゃないかと思うのですけれども、これは最高裁の方はどう思われますか。

岡垣勲最高裁判所事務総局刑事局長

○岡垣最高裁判所長官代理者 これは法制の立て方の問題でございます。ですから、たとえば民事で言えば、たしか破産管財人でございますか、これの報酬を裁判所が決めた場合に、不服があればたしか即時抗告で争う方法があったと存じます。ですから、規定の立て方で争う方法をきめることももちろん可能でございましょうが、現在の弁護人の報酬に関する規定では裁判所の定めるところによるというだけで、不服の申し立ての方法はないわけでございます。私どもは、その当否についていまここで申し上げる立場にはないように存じます。

加地和新自由クラブ

○加地委員 時間でございますので、また次の機会に続行します。

鴨田宗一自由民主党

○鴨田委員長 午後二時再開することにし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時十六分休憩      ————◇—————     午後二時二分開議

鴨田宗一自由民主党

○鴨田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。鳩山邦夫君。

鳩山邦夫無党派クラブ

○鳩山委員 私は、民社党の高橋委員と同じ観点から、実際の裁判での実情その他をわかりやすく御説明いただきたいと思うわけであります。  まず最初に、連続企業爆破事件の裁判におきまして、裁判所側が公判期日、回数その他について約束を破ったということがしばしば言われておるわけでありますが、最高裁としてはこの点どのようにお考えになっておられるか、わかりやすくお聞かせいただきたいと思います。

岡垣勲最高裁判所事務総局刑事局長

○岡垣最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  連続企業爆破事件におきまして、裁判所と弁護人との間に将来月二回の開廷ペースで審理をずっと続けていくという申し合わせがあったのではございません。すなわち、この事件につきましては、被告人と弁護人との要求を入れまして、いわゆる統一公判、全部一緒に裁判をするということにした昭和五十年十二月十七日に、検察官と弁護人と裁判所側が打ち合わせを二回行っているわけでありますけれども、このときの内容は、裁判所の打ち合わせ調書と申しまして、そのときの状況を記録しておる書面がございますが、次のとおりになっております。まず統一公判を始める前の第一回目の打ち合わせにおきましては、事件を併合した場合においては、弁護人側は原則として月二回の公判期日を、これは受けるというふうな形になっておりますけれども、了承する、ただ、将来立証の段階に入った場合の公判期日についてはその段階で別に考慮する、こういうことになっております。そこで、事件を全部一緒にして統一公判ということで併合いたしまして、その後に第二回目の打ち合わせが行われたわけでありますが、そのときに検察官の方からは、検察側の意見としては今後月に三回から四回くらいのペースで期日を指定してほしい、こういう申し出があったわけであります。これに対して裁判所の答えは、最初の打ち合わせの際に了解を得たように、裁判所としては、一応原則として月二回ということで進行していきたいと思っているが、今後の審理の進行状況に応じてその都度時宜に適した期日の入れ方をしていきたいと考えておる、こういうふうになっておるわけであります。  したがいまして、当分の間月二回程度の開廷ペースで審理するということの一応の申し合わせがあったことはございましたが、審理の進行状況のいかんによってはこの開廷ペースを検討することとされていたことは明らかであります。そして、その後月四回の公判期日の指定が行われたことも事実でございますか、これは決して突然にあるいは一方的に行われたものではございません。すなわち裁判所としましては、昭和五十一年の十月七日、第十三回公判の段階でございますが、ここで、すでに、昭和五十二年の一月以降は毎週金曜日を公判期日として指定したい考えであるということを告げております。さらに、五十一年十一月十五日に当事者と弁護人と検察官が打ち合わせた際にも予定の期日を通知をした上で、そして昭和五十一年の十二月三日の第十七回の公判期日で、五十二年の一月から四月までの期日を正式に指定したのであります。決して突然に裁判所が抜き打ち的に期日指定をしたというものではございません。

鳩山邦夫無党派クラブ

○鳩山委員 午前中の加地委員の質問の中で、この法律が通ると連合赤軍事件の第一審判決までどれくらい短く、早くできるのかということが出ました。それに対する刑事局長のお話としては、いまのままだと二十年以上かかるけれども、これが三年から五年くらいでできるようになるのではないか、ラフではあったけれどもその計算の中で、現在は午前中しか開かれていないものが朝から開かれるようになるから半分になるという御答弁があったわけであります。  そこで私も調べてみますと、連続企業爆破事件の方は十時半から午後五時ぐらいまでびっちり開くことができる。それに対して連合赤軍事件の方は、午前中に弁護人と被告人との打ち合わせを行い、午後一時から午後五時までとなってはおるけれども途中に三十分間休みがあり、さらにそのうち一人がいつも気分が悪くなる関係で三十分ぐらい差し引くと、一回について実際は三時間ぐらいしか実質の裁判が行われていない、こういうことのようでございます。連続企業爆破事件と連合赤軍事件とでこうも違うのは一体どうしてだろうか、われわれ素人として率直にそういう疑問を感ずるわけでございます。裁判官独立の原則というのがありますから、これは最高裁としてはお答えになりにくいことかと思いますので、刑事局長の方から御説明をいただきたいと思います。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 非常に平たく言いますと、最初のボタンのかけ違いがずっと続いておるということだろうと思います。連合赤軍事件の場合には、公判の初めのころからいろいろ紛糾したことはすでにおわかりのとおりでございますが、その過程において毎回午前中、法廷で被告人と弁護人の打ち合わせをさせろという執拗な弁護人、被告人の要求がありまして、それに一たび裁判所が屈服された、その状態でずっと続いておる。それを改めようとすると、そこにまた波風が立つということでやむなくそういうことをしておられる、こういうふうに考えております。

鳩山邦夫無党派クラブ

○鳩山委員 ということは、はれものにさわるようなやり方でしか裁判が行われていないということですか。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 率直に言って、そのとおりでございます。被告人、弁護人の気にいらないようなことが起きますと寝てしまう、こういうことだと思います。

鳩山邦夫無党派クラブ

○鳩山委員 午前中の加地委員の御質問というのは、私は国民的な関心だろうと思うのです。二十・何年かかるのか、いや十年ぐらいなのか、それとも三年ぐらいなのか、これが国民が知りたがっている一番大きな事柄だろうと思うのです。ところが、もし午前中も開廷できるようになれば、刑事局長の朝の御答弁にもありましたように、たとえば二十三年かかるものは十年ちょっとでできるようになるわけですね。実はこれは大変な違いなんじゃないか、そう思うわけでございまして、この法律ができればはれものにさわらなくてもいいということではありますけれども、この法律と無関係に、そうした企業爆破と連合赤軍事件との際立った裁判進行の相違というもの、これは何らかの手を打っていただけないかという希望をいたす次第であります。  それから、法務省刑事局資料「過激派裁判正常化法について 五十三年三月 必要的弁護の例外規定の新設」こういう資料を刑事局からいただいております。この十二ページ、十三ページにかけまして憲法との関係についてお書きになっている。そこで、今回の特例法で問題になっている弁護人の不出頭あるいは退廷、退廷命令というような場合に、弁護人と被告人が意思が通じ合っておれば、これは弁護を受ける権利を放棄しているとみなすことができる。憲法三十七条では弁護を受けることができるというような表現になっておる。つまり先ほどの御答弁にもありましたように、弁護を受けようとしない人間は弁護人がいなくてもいいんだ、弁護を受ける権利を放棄している、そういうふうな解釈。その憲法の解釈はそれでもいいと私は思うのですけれども、意思が通じておれば弁護を受ける権利の放棄とみなしていいかというと、私はそうはみなすことはできないのじゃないかという気がするのですね。いやしくも法廷闘争戦術として退廷、不出頭、いろいろなことをやるわけでありますから、これはやはり被告人の方は弁護を受けようという気持ちは失ってはいないと思うのです。ただ、そのやり方がルール違反だ、そう解釈をすべきじゃないだろうか。つまり、いわば権利の乱用である、公共の福祉に著しく反するような権利の主張である、そういう権利乱用という立場からこの憲法との関係を処理すべきではないかと思うわけであります。  これを考えてみますと、たとえば相撲の「待った」みたいなものじゃないかと思うのですね。「待った」を五回も十回も繰り返すと、相撲のルールでどういうふうになるかわかりませんけれども、これは相手をじらそうという一つの戦術だ。何も相撲をとろうという気持ちまで放棄しているわけではないけれども、やたらと「待った」をして相手をいら立たせるという戦法というのは考えられる。それを「待った」を五回やれば、これはもう相撲をとる気がないのだからおまえは負けだというふうな判断の仕方というのは多少無理があるのじゃないか。だから、今度のこの十二ページから十三ページにかけて書いてある弁護を受ける権利を放棄したとみなそうという論法を、むしろ権利乱用という方向へ変えていただければ、この特例法というのはもっと素直に読み取れる、私は  そう思うわけでありますが、いかがでしょうか。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 物事には両面あるわけでございますが、それを一面から正当に御指摘になつておると思います。土俵の中から力士が姿を消してしまった、こういう状態を微視的に見ました場合に、なるほど弁護人はいないけれども被告人の意思のとおりいなくなっておるのだ、そういう状況を見ると弁護権の放棄ということになるわけですけれども、そういう戦術全体を見ますと、まさに必要的弁護制度というものを逆用して、ときどき姿をくらましたり、また出てきたり、そういうことをやるわけでございますから、そういう社会現象としての大きな見地から見ますときには、まさに定められた権利の乱用という形でとらえるということもできるわけでございまして、その意味でただいまの御指摘は正しいのじゃないかと思います。

鳩山邦夫無党派クラブ

○鳩山委員 最高裁にお伺いいたしますが、東京弁護士会が三月五日印刷、三月九日発行をいたしました「閉ざされる真実への道 「弁護人抜き裁判」を許してはならない 東京弁護士会」という資料があります。その八ページに   長野地裁ではこんな例がありました。事案は背任事件です。検察官の持っている証拠を弁護人に見せるよう裁判所から命令を出してもらうため、弁護人が裁判官にいろいろと意見を述べはじめようとしました。  弁護人A 現段階で検察官は手持ちの証拠を開示する必要があると考えるので、その必要性について述べたい。  裁判官 それは弁護人提出の書面に書いて、あるのでわかっている。  弁護人A その書面をさらに敷衍してのべたい。  裁判官 くどい。発言禁止。それ以上発言すると退廷させる。  弁護人B いまの裁判官の態度ば問答無用ではないか。少なくとも弁護人の意見を十分聞いたうえで判断してもらいたい。  裁判官 それはそうです。  弁護人A それでは弁護人の基本的考え方を述べたい……  裁判官 退廷!廷吏、退廷させなさい。  弁護人B 裁判官、その退廷命令に対して異議がある。異議の理由は……  裁判官 君も退廷。  弁護人B 異議の理由を述べるのです。  裁判官 もう退廷させられている。退廷しなさい。 こういう記述が載っておるのです。これは読めばある程度説得力がある話です。この事件がどの事件であるかはもちろんおわかりでございますね。  そこで妙なことを伺うわけでありますが、内容がこのとおりであるかどうかということが第一点と、これはテープにはとってあるのでしょうか、ないのでしょうか。それから、普通裁判というものはすべてテープにとるわけではないのでしょうか。その辺についてお答えいただきたいのです。

岡垣勲最高裁判所事務総局刑事局長

○岡垣最高裁判所長官代理者 いまの事件につきましては、長い時間にわたるものをちょこちょこ都合のいいようにとって書いてあるというふうに私ども思うのでございます。ですから、個々具体的な言葉で、たとえばそれは、もうくどい、そんな繰り返しては困るじゃありませんかというふうなことがあったかもしれません。しかし、それがどういう経過を経たかという前後の事情というものを抜きにしてはその記述が正しいかどうかということをちょっとここで申し上げるわけにはいかないわけでございます。もし御必要とあれば、そのあれがどういう経過で退廷命令になるまでになったかということは申し上げる資料は持っておりますけれども……。  それから法廷の録音でございますが、これは書記官が調書を正確に書くための補助手段としまして録音テープを使うことは多うございます。ただ、とって、それを補助として調書をつくる、調書をつくればそれを消してまた別の事件に使う、こういうことは多く行われております。  それから、もう一点何か、三点あったと思いますが……。

鳩山邦夫無党派クラブ

○鳩山委員 ふだん裁判というものはテープをとるものかということですから、もうお答えはいただいたようなものです。  裁判公開の原則というのは傍聴ができるということでもあると思うのですが、ある意味で言えば、裁判の実態というものが、ビデオテープとは言わないまでも、録音テープあたりでとってあって、何も調書をつくるためじゃなくて、記録をつくるためじゃなくて、テープという近代的な手段があるわけですから保存しておいていただいて、それが必要なときにまた聞けば、これは雰囲気というものも、字面だけでなくてやはり雰囲気というものは非常に重要な要素だと思うのです。まさに私たちがいま議論しているような内容というのは雰囲気というのが非常に大事だろうと思うわけでございまして、裁判公開の原則というのは、その補助手段として今後テープをとっておいていただければ、それを私たちが聞く権利がいつでもあるかどうかは別といたしまして、便利だろうなと思うわけであります。たとえばこの「くどい。発言禁止。」なんというのでも物の言い方がどういう調子で言われたのか、あるいは語尾がどうであったかというのは、これはかなり大きな違いではないか、そう思うわけであります。  次はまたテープの話なんですが、法務省が連続企業爆破事件の遺族の方々にアンケートをしたということは、週刊誌あるいは新聞でも報道をされておるわけであります。私もそのことを法務省の皆さん方から伺いまして、とりわけその中の一人が、これは恐らく企業爆破事件で亡くなられた方の弟さんだと聞いておるわけでありますけれども、大変熱心に裁判所に通われて、その公判の模様を聞かれた。途中でいやになって行かなかったこともあるけれども、大体裁判に行って傍聴をしたということを聞いておるわけであります。その記録の内容についても大体伺っておるわけでありますが、伺いましたところ、その遺族の切実なる訴えというものを法務省はテープでとって、そして正確な記録を作成しようとなさったということなんです。委員長、どういうものでしょうか。そのテープをここでお聞かせいただくわけにはいかぬでしょうか、理事会には諮っておりませんけれども。

鴨田宗一自由民主党

○鴨田委員長 ただいまの鳩山君の御要求については、理事会において御協議して、何かの方法でもって御期待に沿えるようにしたいと思います。

鳩山邦夫無党派クラブ

○鳩山委員 理事会で協議してオーケーということであれば、ここでテープを聞いても……。

鴨田宗一自由民主党

○鴨田委員長 いままで委員会ではそういうのはないらしいんですよ。

鳩山邦夫無党派クラブ

○鳩山委員 しかし、そう考えますと、日本の委員会というのは非常に非近代的だということでございますね、いままでは。

鴨田宗一自由民主党

○鴨田委員長 だから、理事会でよろしいということであればいいんじゃないですか。

鳩山邦夫無党派クラブ

○鳩山委員 私は、先ほどの裁判のテープの点もそうなんでございますけれども、文字と記憶で委員会で議論をするというのは余りすばらしいことだとは思わないのです。それはやたらと物を持ち込んで議論し合うというのも国会としてはどうかと思いますけれども、たとえば相撲でも、際どい勝負のときに写真判定というものをやればずいぶん違う。昔はいろいろ協議しまして、みんなの見た感じで、いや、足が先に出たとか先に倒れたとかいう議論をした。でも、やはり後から新聞社の写真を見ると、これは逆だったなんということもよくあるわけで、テープというようなもの、せっかく近代的な便法というものがあるわけでありますから、これからの委員会ではなるべくそういったものを取り入れやすい仕組みというものを確立していただきますよう委員長にお願いをする次第でございます。  それでは、私が法務省からいただいた、これはテープではないけれども、文字に直したものをちょっと読み上げさしていただきたいと思います。  「連続企業爆破事件被害者の遺族(実弟)の訴え東京都、自営業、男五十一歳」こうなっております。御自分の生まれから語られておるこの方、まずこう言っています。   私は第一回の公判から行っているわけだけれども、もっとも途中であまり裁判がだらだらしていて情けないので絶望してやめてしまったこともありますけれども、 こんなことを言って、しばらくすると、   一番私が不思議に思うのは、被告が衣服を脱いで水につけて格子にしがみつくと、それを無理やりに引っ張り出して公判に回さないということですね。 こんなことも言っている。それから、   当時六人の被告がいたわけだが、彼らが言うことというのは裁判には全く関係のないことなので、つまり、拘置所内でいかに彼らが不当な目に遭わされたかということを延々としてしゃべるわけです。六人が六人とも大体同じことを言っている。ですから、公判というものはほとんど進捗しないわけでしょう。だからそれで時間が来て、その日の公判というものは終わってしまう。 そして、次の裁判ではどういうことを言うかというと   その前回と次回との間の拘置所内での生活、つまりさっき言った、またまた非常に不当な扱いを受けたということを延々として述べ立てるわけです。そうすると、裁判官もたまりかねて発言を中止させるわけですね。そうすると、それは被告の自由を奪うものだとして、机をけ飛ばしたりいすをけ飛ばしたりして暴れるわけです。そうすると、当然、刑務官というんですか、廷吏というんですか、ああいう係りの人が来て取り押さえるわけですね。外へ連れ出すわけです。退廷を命ずるわけですね。そうすると、不思議なことに弁護士まで一緒に帰ってしまうわけです。もちろん裁判官は、弁護人は残るようにということを言うんだけれども、被告のいない裁判なんていうものはあり得ないんだからとかなんとか言いながら出ていってしまうわけです。ですからその裁判というものは流れてしまうわけですね。 それから、被害者の遺族の心情というものをこう語っております。   連続企業爆破事件に対しても十五年ということを言ってるわけですね。そうすると、われわれ被害者というものは、私のおふくろは七十七でもうすっかりボケちゃっているし、おやじは七十九でよたよたしている。とても十五年もつ体ではない。恐らく二、三年でだめになるだろうと思う。そうしたならば、せめて親の生きているうちに彼らが死刑になったという報告だけは私はしてやりたいと思う。それが子供を失った親の気持ちだろうと思うんですね。 それから、結論的には、   だから、連続企業爆破事件のことにかえってくると、裁判の正常化というものは当然の話なんて、これに反対する人というのは連続企業爆破事件あるいは過激派の事件、そういう公判を一回見てみればいいと思うんですね。 そんなことも言っている。  そこで私は、これは大変リアルで、よく説明されていると思うわけなんですが、この六人の被告が、拘置所内で自分たちがひどい扱いを受けているということばかりやたらと述べ立てて裁判がちっとも進まないという実態は実際にあったことなのか、あるいはほかの事件でもこういうことが行われているかどうか、お答えをいただきたいと思います。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 連続企業爆破事件などの実態と申しますのは、とにかく被告人は法廷へ出ない、そのために素っ裸になって衣服を便器の中の水の中につけてしまう、そしてその便器のパイプにしがみついて何としても引き出せない、こういう状況で一回が流れてしまう。これが二回、三回と流れてしまう。そしてやっと出てまいりますと、しがみついて出たくないと言ったのに、手を引っ張られたとか足を引っ張られたとかということを言い、また房の中で、たとえば天皇在位五十周年反対とかいろいろ大きな声で叫びます。叫びますから、拘置所の職員としては、秩序を維持するためにこれを制止させるというようなことをいたしますと、次の法廷で、看守にけられたとか殴られたとか、手をねじられたとかというようなことを言う。あるいは腹が痛いと言って医者に見てもらったけれども、何の手当てもしてくれなかったとか、そういうことをくだくだと言いまして、裁判所はまずもって拘置所の中を検分をして拘置所の扱いをとにかく改めさせるべきであるというようなことから毎日の公判が始まっていく。これが連続企業爆破事件の大方の姿であったわけでありますが、さようなことはいわゆる過激派の事件の被告人は常に言い立てるわけでありまして、一つの戦術として流行しておるというふうに言ってもいいのじゃないかと思います。

鳩山邦夫無党派クラブ

○鳩山委員 同時に、そういう自分たちに対する不当な取り扱いについて述べ立てて、裁判官が発言を中止させる、そうすると、自分たちの自由を奪ったと言って被告人たちが暴れる、そして取り押さえる、外へ連れ出していく、不思議なことに弁護士が一緒に外へ出ていっちゃう、裁判官は、弁護人は残るように言うけれども、被告のいない裁判なんていうものはあり得ないのだと言って一緒について出ていっちゃう、そういうこともしばしば見られたことなんでしょうか。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 そのとおりでございます。特に連続企業爆破事件というのは、被告人らは自分たちがああいう犯罪を犯したのではないといういわゆる否認をしておるわけではないんでして、むしろ、まだ公判廷ではっきりは言っておりませんが、捜査の段階などの状況を見てみますと、胸を張って自分たちのやったことを一種の戦闘行為と申しますか、ということで非常にいいことをやったというようなつもりでおるわけでございます。したがいまして、裁判の場で普通に裁判を受けますとすぐ終わってしまいます。それを終わらせないためには、結局もうそういうただいま申したようなことをやるよりしようがない。それに対して一部の弁護士さんが同調しておられるというようなのが実情であろう、こういうふうに思います。そういう状況で昨年の秋ごろまでずっと来た、こういうことでございます。

鳩山邦夫無党派クラブ

○鳩山委員 それから、先ほどは読み上げませんでしたけれども、同じ方がこう言っているようですね。自分が行かなかったときだけれども   被告が暴れて机だとかいすをけ飛ばして退廷処分になったと。そのときに弁護人のだれかが刑務官というんですか、廷吏というんですか、あの人を殴ったかなんかしたらしいですね。それで裁判長から何か処分を受けたらしいんですよ。だけど、そんなことが実際にあっていいのかと思うんですね、弁護人が。こういうことを言っておられるわけですが、これは実際あったことでしょうか。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 実際にあったことでありまして、被告人に対する退廷命令を執行しようとしました刑務官の足を弁護人の一人が飛び出していってけ飛ばした、こういうことで裁判所から制裁を受けております。

鳩山邦夫無党派クラブ

○鳩山委員 それはどういう制裁でございますか。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 法廷秩序維持に関する法律というのに基づきまして、監置十日間という制裁でございます。

鳩山邦夫無党派クラブ

○鳩山委員 監置というのはどういう形でございましょうか。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 まあ平たく言いますと、刑務所あるいは拘置所の房の中へ十日間黙って入れられておる、こういうことであります。

鳩山邦夫無党派クラブ

○鳩山委員 その弁護人というか弁護士さん、いわゆる話題となっている弁護士会の懲戒ということでは何か行われておるわけでしょうか。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 私の知る限りでは、何らの措置もとられていないように思います。

鳩山邦夫無党派クラブ

○鳩山委員 そうしますと、法廷というのはこの委員会と同じかそれ以上に神聖な場所で、そこで弁護士さんが暴れてけっ飛ばしたりしても、弁護士会として懲戒するわけでも何でもないということでございますね。そうなると、先ほども高橋委員が御質問なさっておりましたけれども、われわれ素人としてはやはり何か考えなくてはいかぬなという気持ちになるのは当然ではないかと思います。  それから、このアンケートを離れまして、この特例法の反対論のいわばまくら言葉としてもよく使われるチッソ水俣事件第一回公判の実情についてでございます。いろいろな週刊誌その他でも、これもいろいろな書き方がしてあるとは思いますけれども、たとえばこれは何日付かわかりませんが、週刊朝日ではこんなふうに書いてある。  「突然の打ち切りは不当だ!」  「陳述を続けさせろ!」  ヤジの中で、裁判長が叫んだ。  「傍聴人全員に退廷を命ずる」  再開した廷内には、もちろん傍聴人はいなかった。そこで、  「公訴棄却の申し立てを却下する」と、裁判長。  これはこのとおりわれわれは受けとめてよろしいかどうか、お答えいただきたいのです。

岡垣勲最高裁判所事務総局刑事局長

○岡垣最高裁判所長官代理者 いわゆるチッソの事件の関係ではしばしば聞かれまして、それに対して私どもは実は非常に残念に思っておるわけでありますが、事実は大体こういうことでございます。  まずこの公訴事実というのは、被告人がチッソの社員に対してかみついたり、それから殴打するというような暴行を与えて、たとえばある人に対しては全治二週間の傷害を与えたとか、あるいはほかの人に対しては一週間、またほかの人に対しては二週間、二週間、約十日間というような形で傷害を加えたということで起訴された事件でございますが、この事件の審理の最初の段階におきまして、弁護人の方から、この公訴は無効な起訴であるから、この起訴は無効だから裁判所は公訴棄却せよという、そういう御主張があったわけであります。その公訴が無効だというこのとき御主張になった内容は、これは証拠が必ずしも十分でない事件だから公訴はいかぬとか、あるいは事案が軽微だから、もう処罰に値しないので公訴はいかぬというようなことを言われまして、まあほかにもございましたけれども、結局普通そういう公訴、起訴自体がいかぬからやめろというようなことに対する裁判所の判断というものは、その事実、起訴になっている事実を調べることとダブってしまうものでございますから、その問題についての判断は、大体普通の事件であれば、その事件を調べた後で判定するということになるわけで、その前にそう長々といろいろやるものではないわけであります。  この当日は、午前中二時間ほどにわたって、弁護人からいま申し上げた性質の公訴棄却に関する公訴無効の御主張がございまして、終わりごろになりますともうすっかりダブって、重複した発言が重ねて行われたわけであります。それで裁判長としては、その御主張はもうダブっておりますということを何度か言いまして、もうわかりました、弁護側の御主張はわかりましたから、午後は検察官の御意見を聞いた上で裁判所の判断を示しましょう、こういうことにしたわけであります。そうしたら、そういう措置が不服であるということで法廷が騒然としてしまった。それでこれを制止する警備員に対する抗議それから抵抗というふうなものがあって、結局全員の退廷ということになったわけであります。  午後になってから、裁判長は、では検察官から午前中の弁護人の御主張に対して意見があれば言ってほしいということで、検察官から意見が述べられ、そして裁判所がこれに対する裁判所の見解というものを述べたわけであります。それは先ほど申し上げたとおりに、起訴自体か無効であるというふうなことについて調べることは、結局その事件の内容がどういうことであるかという公訴事実を調べることとダブってしまうから、それを調べてから考えますという内容の裁判所の見解を出したわけであります。ところが弁護人は、そういう裁判所が言っているところでもって、裁判所の訴訟指揮は支離滅裂でありますというようなことを言って再三再四発言をされた。裁判所はもうやめてくれということで制止しましたけれども、聞かれないので、結局発言を禁止するということを言ったわけであります。  その後、今度は順序としましては、起訴状を読んでおりますので、その起訴状に書いてある事実に対して、そういうことがあったかなかったか、あるいはそれに関連する意見というものを被告人から聞くことになっておりますから、その意見陳述をしなさいということになったわけです。ところが午前中にそういうふうに法廷が混乱して暴れておりましたので、全員退廷を命ぜられたので、その暴れた人たちはもう入れないわけでして、法廷には傍聴人としては報道関係の人、つまり静かにしておった方だけが入っておられたということになるわけです。そこで、陳述しろと言うところが、被告人の方では、こういう状態の法廷では裁判の公開の原則に反するから、午前中の退廷命令を撤回しろという要求があったわけです。こういう状況では自分は意見陳述する気にはなれないということで、応じないわけであります。弁護人もまた、裁判長の午前中の指揮は、これは法廷警察権の行使はいかぬからということで謝罪を要求する、傍聴人のいない法廷で被告人に意見陳述させるわけにはいかないというふうな陳述が繰り返し行われたわけであります。それで裁判長は、そういう繰り返した発言はしないでくれと、それで発言禁止ということになったわけであります。  さらに、被告人に対して、事件に対して意見があったら述べなさい。被告人は弁護人と相談したいのでと、こういうことでありますから、それはどうぞ相談しなさい。主任弁護人が十分間打ち合わせたいということでございますので、それでは打ち合わせなさいということだったわけであります。ところが、その打ち合わせが、法廷のそこでおやりなさいと裁判長が言われたわけでありますが、そのときに裁判長は、被告人の意見陳述はその日にやるということはもう前から決まっていることなので、何もそう長く特に外でやらなければならぬということはないであろうということ、それから傍聴席に混乱があっても、午前中のことだから昼休みの休憩時間にも十分打ち合わせできたことではないだろうかというふうなことを考えて、十分でいいでしょうというふうなことで許したわけです。ところが、主任弁護人の方は、法廷外でぜひやりたいということでがんばられたわけであります。これは、私などがチャーチ委員会か何かのああいう証人尋問などの様子を見ましても、ついてきておる弁護人と被告人とが何か相談しながらやっておられますし、それから、私どもが普通事件を裁判しておりましても、証人の証言があります。そうすると、反対尋問をする必要があれば、それは弁護人がすぐ被告人と話をされる。それは法廷でみんなおやりになるわけでして、それはあたりまえのことだと思うのですけれども、ぼそぼそ声でやるのはいやだということを言われる。そして、裁判長、そちらが退廷したらどうですか、そしたらここでやりますよというふうなことまで言われたわけであります。それで裁判長は、いやそう言われても、ここでやってくださいということで、十分間法廷で行うようにさらに指示されたけれども、結局、被告人と弁護人と、全員が裁判長の許可を得ないで席を立って退廷しようとされる。それで裁判長は、いや困る、在廷命令を出します。いや、ということで無視して退廷してしまった、こういう経過でございます。

鳩山邦夫無党派クラブ

○鳩山委員 大変失礼なことを申し上げますが、怒らないで聞いていただきたいと思うのですが、この間、柏木先生が参考人としてお見えのときに、世の中のありとあらゆる裁判官がすべて神様のような聖人君子であったら、こういう特例法はあっても大丈夫でしょうかと、こう私が申しましたら、そんな前提はあり得ませんというようなお話がありました。あるいは、日弁連のある友人から聞いた話でありますけれども、いわゆる退廷とか不出頭とか、そういう事件でなくても、裁判官と弁護人、あるいは被告人ということもあるでしょうが、トラブルはいろいろとある、大体トラブルを非常に起こしやすい裁判官というのがいるんだ、すぐ興奮して、口はふるえて、この辺が、ほほがびりびりして、ヒステリックに物を言う裁判官というのがいつも問題を起こすんだよというお話も伺ったことがある。現に、世の中には鬼頭判事補などというような方もおられた事実をわれわれは見せつけられておるわけであります。  裁判官というのは、もちろん神のように冷静に判断をしなければいけないわけでありますけれども、同じ人類、ホモサピエンスであるということは変わりがないわけでございます。しかも、裁判官と政治家というのを比較してはいけないのですけれども、政治家というのは、常に自分の選挙とか票というものを気にしていなければいけない。国会では多少でかいことを言いましても、地元に帰ればやはり有権者様は神様でございますということで、これが政治家倫理への一つの保障措置というか歯どめというか、何かそんなものになっているような気が私はするわけですね。ところが、裁判官の場合、大学で一生懸命勉強をして、そして試験に合格をする、それから司法修習生として勉強をする、勉強だけしているうちにいつの間にか裁判官になっている。大変忙しいでしょうから、いわゆる世事について疎い場合もあるかもしれない。もちろん弾劾裁判というのがあるけれども、それは異例の場合でございますから、通常は、人からどなられたり怒られたり、上役に気を使ったりするというような経験をするわけでもない。民事事件であれば、両方からごまをすられる立場にあるだろうと思うのです。もちろん刑事事件でも、これは弁護人だって裁判官をいたく怒らせたらまずいことになるんじゃないかと思うだろうし、検察側にしても、やはり裁判官の心証というのは非常に大切にするだろう。つまり、大学で勉強をして、勉強ばかりしているうちにいつの間にか、あらゆる人間から、あらゆる身近な人間からごまをすられて、法律に対しては気を使わなければならないけれども、ほかの人間に対して、われわれが選挙区を回るような形で気を使うという経験はほとんどなくて、だんだん偉くなっていくと思うのです。そうしますと、一番常識を豊かに持っていなければならない裁判官というものが実は非常に常識に疎い人間になりがちではないかという議論が、これは日弁連の友人から聞いただけじゃなくて、私もそういうおそれはあるな、こう思うわけですよ。ですから、なるべくまともな、りっぱな裁判官というものをこれから皆様方のお力でつくり出していただかなければならないと思うのですが、いま私がずっと申し上げたようなことに関しまして、最高裁の刑事局長としてはどのようにお考えになるか、ちょっと気持ちだけでもお答えいただきたいと思います。

岡垣勲最高裁判所事務総局刑事局長

○岡垣最高裁判所長官代理者 みずからに対しては厳に、他に対しては寛ということは、これは私どもが生きていくうちで基本的な考えでいかなければいかぬと思います。ですから、他人からいろいろと批判をされる場合には、頭から、そんなことはないよとか、そんなばかなことがというふうなことを考えてはいけないわけでありまして、どこか自分にそういう悪いところ、欠けるところがあるからそういうふうに言われるのではなかろうかというふうに反省しながら、ずっと一生生きていくということが必要でありましょう。私どもも、そういう考えで自分の研さん、それから相互の切磋琢磨ということをやっていかなければいかぬというふうに思うわけであります。  それが大前提であり、それ以外に何もないわけでございますが、私はただ残念に思いますのは、この問題が取り出された場合に、裁判官もいかぬからこうなるのではないかという見方がされているわけであります。それは私は、今度の問題のすりかえであろう。AにするかBにするか、どちらでも人間として考え得るような場合に当事者に争いがある、それを裁判所がAととった場合に、Aに反対しておれはBだというふうに言ってがんばる弁護人があるいは被告人が勝手に法廷から出ていっていいか、ここを考えていただきたいと私は思うわけであります。しかし、それはこの問題に関して思うことでありまして、根本的には、これはもう本当に小心翼々、おれは足りない、おれは足りないと思っていかなければならぬ、こう思っております。     〔委員長退席、保岡委員長代理着席〕

鳩山邦夫無党派クラブ

○鳩山委員 私は、何も問題のすりかえをするつもりはないわけであります。先ほどから申し上げているとおり、さまざまな事件での公判の実態というものをきょうは伺った次第でございます。ただ、裁判官の側にも反省すべき点が多少なりともあるならばお考えをいただきたい、こういうことを申し上げただけでございます。  最後に、大臣に伺いたいと思います。これは恐らく加地委員の質問の繰り返しになるとは思いますけれども、私は、裁判の迅速性というものは大変重要なことである、これは前にもこの委員会でも申し上げたとおりでございます。ロッキード事件が二十年後に判決が出たって、政治的事件としてのいわば世の中に対するいい効果というのはもう全くなくなってしまう、あるいは先ほどのアンケートに答えられた遺族の方の話にしても、おふくろやおやじが生きているうちに裁判の結果が出た方がいいんだ、これは本当の心情そのものだろうと思うわけであります。そういう観点、刑事法の存在意義という点から考えますと、刑事事件というのは一年ぐらいで結論が出てしかるべきじゃないかと私は思うわけであります。三年、五年でも長過ぎる。せめて半年か一年ぐらいでびしつと結論が出るくらいでちょうどいいだろうと私は思うのです。そういった意味で、こうした重大事件で何かスピード審理ができるような方法というものはないものだろうか。加地先生がおっしゃるように、ある事件についてはもう毎日開廷してもいいような制度的な保障をする、国選弁護人に対しては暮らせるだけの金を払う、そうすれば裁判官の方だって、毎日同じ事件を審理していけば書類を読み返す必要というのはなくなるわけです。常に記憶に新しいものがそのまま続いていくわけでありますから、これは裁判全体の能率化という面からもプラスだろうと私は思うわけであります。大臣に何か、いますぐに実現性はなくても、妙案がおありでしたら述べていただきたいと思う次第です。

瀬戸山三男自由民主党法務大臣

○瀬戸山国務大臣 そのことは法務省あるいは法務大臣から言うよりも、本当は裁判所の方の考え方がよろしいと思いますが、その前に裁判の迅速性というお話がありました。たびたび同じようなことを申し上げて恐縮でありますが、私どもは、憲法下におけるいわゆる法治国家というものは、法律の条文をたくさん書き並べておればそれでいいというものじゃないと思うのです。それが実社会において、そういう法律の志向するところが現実としてあらわれるということが法治国家の趣旨だろうと思います。でありますから、民事においては多くの場合は個人間の法律に従った約束でございます。それで直ちに実現することができる場合が多うございます。刑事においては、特別な機関を設けてそれこそ公開の席で公正なしかも迅速な裁判をするという定めになっておる。でありますから、社会を乱したあるいは他人に損害を与えたというようないわゆる刑事事件においては、その実効を速やかにあらわして、悪を悪として、国民の考えるところに従って実現させる、私はこれが法治国家の裁判制度のあるゆえんであろうと思います。でありますから、私どもはそういう観点から裁判の公正、迅速ということには特別の留意をしておるわけでございます。  いま裁判のお話になりましたが、これは先ほど申し上げましたように、われわれの立場で言うということは必ずしも適切ではありませんけれども、考えはどうだというせっかくのお尋ねでありますから、裁判所からも後でお答えがあると思いますが、ちょうど刑事事件等に特殊なあるいは重大事件、複雑な事件がありますときには、御承知のとおりいろいろな事件と兼ね合ってやるということではなしに、特捜部というものをこしらえて集中的に捜査をする、そしてその実態を速やかに明らかにするということをやっておると同じことでございます。非常にむずかしい複雑な事件があるときには、特別の部、専属の部をこしらえてそれを速やかにやる、こういうこともあり得るわけでございまして、現にそういうことも行われておると私は思います。でありますから、それを制度でやるというよりも、どうすれば裁判が速やかにやれるかということは、現行法の中で十分考えられることである。ただ問題は、いま問題になっており先ほどからいろいろお話がありますように、その刑事裁判にはいわゆる法曹三者が立ち会わなければだめだという規定がある、その一角がおれは立ち会わないということになりますと裁判が進まない、それでは憲法やあるいは刑事訴訟法の法治国家としての定めに反するではないか、これを放置するわけにいかないというのが、今度のこの特例法をお願いしておるゆえんであるということは御理解願っておると思います。

岡垣勲最高裁判所事務総局刑事局長

○岡垣最高裁判所長官代理者 それでは裁判所の立場から、いまの問題について私の考えているところを申し上げたいと思います。  現在の訴訟法は、先ほど法務省の刑事局長もおっしゃいましたけれども、一日で終わらない事件はできるだけ毎日やれというふうにすでに決まっておりまして、ですから訴訟法の予定しているように、すべての関係者が本当にその事件の争点といいますか、問題の争いのあるところはどこかということをよく調べ考えて、そしてそれに集中して証拠を出して争っていけば、これは本当に早い審理ができると思うわけであります。     〔保岡委員長代理退席、委員長着席〕 その意味では、現在の法律に欠陥があるわけではございません。したがって、私どもとしてはできるだけ早くできるようにしたい。もし一つの部に事件が来た場合に、その裁判部がほかの事件をやる余裕がない場合には、従来でも例がございますが、事件の配点ということをやめてその事件だけに専念させるということはできるわけでありまして、これはその来た事件をどこに分けるかというだけの問題でございますから、裁判所の方としては集中してやるという体制はいっでもとれるわけでございます。  問題は、今度の事例でも御認識のように、やあ百回指定だ、やあ四回はけしからぬというふうなことでもめるわけであります。しかしこれはこれなりに、弁護士さんの現在の社会における業態というものの一つの実態があると存じます。これは私どもとしてはどうすることもできない。しかし、その中で許される範囲内では、できるだけ回数、期日を多く入れて、そしてできるだけ問題の焦点に集中してやっていけるように裁判所の立場で努力しておる、こういう状況でございます。

鳩山邦夫無党派クラブ

○鳩山委員 裁判所の方はいつでも迅速裁判に応ずることができるんだというお話でありますけれども、これにつきましては加地委員とも御相談をし、さらに調査を進めて、たとえば何らかの立法措置が必要であれば議員立法でも用意するというような方向で努力をいたしたいと考えております。  お約束の時間内に終了いたしましたが、終わります。

鴨田宗一自由民主党

○鴨田委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後二時五十八分休憩      ————◇—————     午後三時三十六分開議

鴨田宗一自由民主党

○鴨田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出、民事執行法案、参議院送付、仮登記担保契約に関する法律案及び司法書士法の一部を改正する法律案、以上三案を議題といたします。  まず、政府から、順次趣旨の説明を聴取いたします。瀬戸山法務大臣。民事執行法案仮登記担保契約に関する法律案司法書士法の一部を改正する法律案    〔本号末尾に掲載〕

瀬戸山三男自由民主党法務大臣

○瀬戸山国務大臣 まず第一に、民事執行法案につきまして、その趣旨を御説明いたします。  現行法におきましては、判決等の債務名義に基づく強制執行については民事訴訟法第六編(強制執行)に、抵当権等の担保権の実行としての競売については競売法に、それぞれその執行手続が規定されておりますが、これらの法律は、いずれも明治時代に制定されたものであります上、その両者の手続が必ずしも十分に調整されていない点もあり、加えて、規定に不備がありますため学説、判例も区区に分かれ、実務の取り扱い上各種の不便を生じているのみならず、競売の完結までに相当の長期間を要しており、また、必ずしも適正な価額による売却が行われがたい面も否定できないのであります。  そこで、この法律案は、強制執行法と競売法とを統合した民事執行の手続法としての単行法を制定し、債務者その他の利害関係人の利害を調整しつつ、執行手続の改善及び執行の適正迅速化を図ろうとするものであります。  この法律案の要点を申し上げますと、第一は、執行手続の迅速化を図ることであります。すなわち、まず、執行の引き延ばしを目的とする不服申し立ての乱用を防止するため、不服申し立ての方法を整理し、執行抗告は特に定める場合に限り許されるものとし、かつ、執行抗告の理由を具体的に記載した抗告状を原裁判所に提出しなければならないものとし、不適法な執行抗告は、原裁判所で却下できるものとしております。また、強制執行の停止につきましても、それが手続の遅延を生じさせ、ひいては利害関係人に対して不利益を与えている現状にかんがみ、これに合理的な制限を加えることとしております。  第二は、債権者の権利行使の実効性を確保するとともに、売却手続の改善を図っていることであります。すなわち、まず、虚偽債権等の届け出による不当な配当要求を排除するため、現行法の配当要求の制度を改善し、配当要求をすることができる一般債権者につきましては、原則として、判決等の債務名義を有する債権者及び仮差し押さ、え債権者に限ることとし、例外的に、給料債権者等一般の先取り特権を有する者につきましては、その優先弁済権を確保するため、債務名義がなくても配当要求ができることとしております。また、目的物が適正な価格で売却されることが、債権者の権利実現のために不可欠なことでありますので、特に権利関係の錯雑しております不動産については、その権利関係を正確に把握して執行裁判所が適正な売却価格を定めてこれを売却することができるように、執行官による不動産の現況調査権限を強化し、評価人の評価の適正を図り、加えて、目的不動産の権利関係を明らかにした物件明細書を作成し、これを一般の閲覧に供し、適正な価格による買い受けの申し出を保障することといたしております。さらに、執行の目的物を迅速かつ適正な価格で売却するためには、一般の市民が広くその売却手続に参加して買い受けの申し出ができるようにすることが必要でありますので、目的物の売却手続を改善いたしております。たとえば、不動産の競売においても、その売却の方法については、執行裁判所が入札、競り売りのほか、随意売却等の弾力的な売却方法が選択できるように、最高裁判所規則で定めることといたし、また、買い受け人が代金を納付しないために再競売が行われることを防止するため、買い受け申し出人に相当な保証を提供きせることといたしておりますほか、次順位買い受けの申し出を認めることとしまして、最高価の買い受け申し出人が代金を納付しない場合でも、再競売をせずにその次順位買い受け申し出人に対し売却許可の決定ができる道を開くことといたしたのであります。また、競売場で売却の適正な実施を妨げる行為をした者等に対し退場を命ずる等、執行官に秩序維持の権限を与え、かつ、それらの者に対しては、売却不許可決定をすることを明らかにすることといたしております。  第三は、買い受け人の地位の安定、強化を図っていることであります。すなわち、不動産の買い受け人の所有権取得の時期を明確にするとともに、代金を納付した買い受け人が容易にその不動産の引き渡しを受けられるようにするための不動産の引き渡し命令の制度を強化し、買い受け人に対抗することができない不動産の占有者に対し、一定期間内に引き渡し命令を受けて強制執行をすることができるものとするほか、この引き渡し命令による執行を保全するため、不動産を執行官保管に付することができる措置を講じております。また、担保権実行としての競売における不動産等の買い受け人の地位の安定を図るため、担保権実行の要件と手続を整備し、買い受け人の所有権取得の効果は、担保権の不存在または消滅により妨げられないことを明らかにいたしております。  第四は、債務者の保護に関する規定を整備していることであります。すなわち、債務者の生活の保持を図るため、動産の差し押さえ禁止の範囲を合理化する一方、執行裁判所は、申し立てにより債務者の生活の状況等を考慮して、差し押さえ禁止物の範囲の拡大または減縮を認めることができることとし、また、債権についても、一定の部分の差し押さえを禁止するとともに、差し押さえ可能の範囲の拡大または減縮ができることといたしております。  なお、この法律の制定に伴い、最高裁判所規則の制定及び関係法律の整理等所要の手続を必要といたしますので、その期間を考慮いたしまして、この法律は、昭和五十五年十月一日から施行することとし、また、競売法を廃止し、民事訴訟法の所要の整理をし、必要な経過措置を定めております。  以上が、民事執行法案の趣旨であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。  次に、仮登記担保契約に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。  民法によれば、金銭債務を担保する法的手段としては、抵当権が最も典型的、かつ、近代的な担保制度でありますが、近時、種々の理由により、この抵当権の利用を回避し、またはこれと併用して、代物弁済の予約等を原因とする所有権移転請求権保全の仮登記を利用することが一般に行われております。この仮登記は、通常、金銭債務の不履行がある場合には、その履行にかえて債権者が目的不動産を取得し、これにより債権債務関係を簡易迅速に決済することを目的としているものでありますが、この仮登記を利用すれば、不動産の価格が債権額をはるかに上回るときにおいても、債権者は、仮登記に基づく本登記をすることにより、完全にその不動産をまる取りできることとなり、債務者の保護に欠けるうらみなしとしないのであります。  そこで、最高裁判所は、昭和四十二年十一月十六日第一小法廷判決を初めとし、昭和四十九年十月二十三日大法廷判決に至るまでの一連の判例により、債権者が不動産の所有権を取得しようとするときは、その価格から債権額を差し引いた差額を清算金として債務者に支払うことを要する旨を明らかにし、債権者が債権額を上回る価格を有する不動産をまる取りすることを禁止したのであります。  この判例法理は、債権者が債務者の窮状に乗じて暴利を搾取するのを防止し、債務者を保護する観点から展開されたものでありますが、個別事案の解決を通じて展開された判例法理の性質上関係する各般の法律関係については、必ずしも疑問なしとしないし、立法的に解決すべき多くの問題点があるのであります。  そこで、この法律案は、判例法理を原則として承認しつつ、その法律関係を明確にして債務者の保護を図るとともに、債務者及び利害関係人の利害を合理的に調整しようとするものであります。  この法律案の要点を申し上げますと、第一は、代物弁済等による所有権取得手続の特則を設けたことであります。すなわち金銭債務の不履行があるときはその履行にかえて債権者が目的不動産の所有権を取得することを目的としてされた代物弁済の予約、停止条件付代物弁済契約等の契約により、債権者がその所有権を取得しようとするときば、あらかじめ債務者にその旨を通知し、その通知が債務者に到達した日から二月の期間が経過しなければ、債権者は、その所有権を取得することができないものとしたのであります。これにより、債権者があらかじめ債務者から預かり保管中の登記申請書類を利用して、債務者の不知の間に所有権の取得の登記をしても、その登記を無効とし、もって債務者の保護を図るとともに、この二月の期間を置くことによって、利害関係を有する第三者がその期間内に権利保全の手段をとることができるようにしたのであります。  第二は、債権者に対し清算義務を課したことであります。債権者は、前述の通知が債務者に到達した日から二月の期間が経過したときに不動産の所有権を取得することになるのでありますが、その時における目的不動産の価格が債権額を超えるときは、債権者は、その超過額に相当する金銭を清算金として債務者に支払い、債権債務関係の清算を行うべきものとし、この清算金の支払いの債務と不動産の所有権移転の登記及び引き渡しの債務とは同時履行の関係に立つべきものとしたのであります。さらに、これに反する特約で債務者に不利益なものは、原則として無効とし、債務者の保護を図ることとしたのであります。  第三は、清算金をめぐる利害関係人の争いを合理的に解決する方法を講じたことであります。代物弁済の予約による権利を保全するための仮登記がされた後、抵当権等の担保権の登記を受けた後順位担保権者は、仮登記権利者が債務者に支払うべき清算金について通知を受けるべきものとし、通知を受けた清算金の額に不満がないときは、債務者の有する清算金請求権を差し押さえることによって物上代位し、その権利の順位に従った優先弁済を受けられるようにしたのであります。また、通知を受けた清算金の額に不満があるときは、不動産の競売を請求し、その競売手続にこの仮登記権利者の参加を求め、仮登記権利者にも抵当権と同様の優先弁済権を認め、配当手続を通じて各債権者の利害を調整することにしたのであります。  第四は、債務者の受け戻し権、すなわち債権者が清算金の支払いの債務を履行しないときは、一定の要件のもとに債務者が目的不動産を受け戻すことができることとしたのであります。  第五、以上の法律関係は、不動産の所有権以外の登記または登録制度のある財産権についての代物弁済の予約等にも準用することとしたのであります。  なお、このような手続を設けることに伴い、その円滑な運用を期するために、差し押さえを原因とする清算金の弁済供託及び第三の通知の拘束力、その他関係人の利害の調整に関する規定を設けるほか、この法律の制定に伴う国税徴収法等の関係法律の整理をいたしております。  以上が仮登記担保契約に関する法律案の趣旨及びその内容であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。  司法書士法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を説明いたします。  この法律案は、司法書士の制度の充実強化を図るため、その資格に関する制度を合理化するとともに、その職責、業務等に関する規定を整備しようとするものであります。  この法律案の要点を申し上げますと、第一に、現行の司法書士法によりますと司法書士となるには、法務局または地方法務局の長の選考認可によることとされているのでありますが、これを改め、司法書士となる資格は、(一)法務大臣が毎年一回以上行う司法書士試験に合格した者、(二)裁判所事務官、法務事務官等一定の職歴を有する者等で、法務大臣が司法書士となるのに必要な知識及び能力を有すると認定した者に付与するものとしております。また、未成年者は司法書士となる資格を有しないものとするなど欠格事由に関する規定を整備することとしております。  第二に、司法書士となる資格を有する者が司法書士となるには、その事務所を設けようとする地を管轄する法務局または地方法務局において登録を受けなければならないものとし、登録に関する所要の規定を設けるとともに、登録の申請と司法書士会への入会の手続とを同時にすべきこととしております。  第三に、司法書士の制度は、登記、供託、訴訟に関する手続の円滑な実施に資し、国民の権利の保全に寄与するために設けられたものであること、及び司法書士の職責は、常に品位を保持し、業務に関連する法令に精通して、公正かつ誠実にその業務を行うことにあることを明らかにすることとしております。  第四に、司法書士は、登記、供託の申請についての代理等のほか、これに関する審査請求についても代理することができることを明らかにすることとしております。  第五に、司法書士の職責の重要性にかんがみ、懲戒処分による業務停止の最長期間を現行の一年から二年に改めるとともに、司法書士会の自主性の強化を図る見地から、司法書士会は、法令に違反するおそれがある所属の会員に対して、注意勧告をすることができることとし、また日本司法書士会連合会は、司法書士の業務または制度につき、法務大臣に対する建議等をすることができることとしております。  第六に、司法書士法に定める罰金及び過料の多額は、これを定めて以来長年月を経過しておりますので、相当額に引き上げることとしております。  以上が司法書士法の一部を改正する法律案の趣旨であります。  何とぞ慎重御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。  以上でございます。

鴨田宗一自由民主党

○鴨田委員長 これにて三案の趣旨の説明は終わりました。      ————◇—————

鴨田宗一自由民主党

○鴨田委員長 次に、横山利秋君外五名提出の民法の一部を改正する法律案を議題といたします。  提出者から趣旨の説明を聴取します。西宮弘君。

西宮弘日本社会党

○西宮議員 私は、日本社会党を代表して、民法の一部を改正する法律案について、提案の趣旨を御説明いたします。  戦後、わが国においては、個人の尊厳と法のもとの平等をうたった新憲法のもと、民法もこれに応じて改正され、家の制度を廃止し、男女の不平等を取り除く努力がなされてまいりました。しかし、現行民法にはなお男女平等を阻害し、家の制度の残滓を思わせる規定が温存され、古い因習や観念と相まって婦人の地位向上の隘路の原因になっている点が多く見受けられるのであります。  特に相続法中、相続人である被相続人の配偶者の利益擁護が全く不十分であり、かつ実情に合わなくなっている点があるので、これを改正することこそ、現在最も緊急に必要とされていることと考え、本法律案を提案するに至った次第であります。  次に本法律案の要旨を申し上げます。  第一は、配偶者の相続順位に関する改正であります。  現行法では、血族相続人として、第一に子とその代襲相続人、第二に直系尊属、第三に兄弟姉妹とその代襲相続人という順位があり、これら血族相続人と並んで配偶者は常に相続人となると定められていますが、最近は被相続人と最も密接な家族共同生活をともにした生存配偶者の相続権に対する観念も改まり、生存配偶者は、相続上第一位の相続人として重視し、血族であるというだけで相続人となり得る親等の遠い非家族構成員に優先されることが、新しい相続法の傾向に合致するものと考えられるに至っているのであります。  そこで、被相続人の兄弟姉妹は、相続人である被相続人の配偶者、子及び直系尊属がない場合に相続人となることとし、配偶者の相続順位を被相続人の兄弟姉妹の先順位とすることといたしております。  第二は、配偶者の相続分に関する改正であります。  現行法では、妻の法定相続分は、子と共同相続する場合は三分の一、直系尊属と共同相続する場合は二分の一と定められているのでありますが、戦後相続法が改正された当時に比べ、現在は家族構成が大きく変化しており、妻の相続分が子一人の相続分より少なくなるなど配偶者相続分について不合理な結果をもたらし、妻の地位の保護にも欠け、実質上の不平等を生ぜしめていると考えられるのであります。  そこで、配偶者が被相続人の子または直系尊属と共同相続人となる場合における配偶者の相続分をそれぞれ二分の一、または三分の二に引き上げることといたしております。  以上が民法の一部を改正する法律案の趣旨であります。  何とぞ慎重御審議の上、御賛同あらんことをお願いいたします。(拍手)

鴨田宗一自由民主党

○鴨田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  次回は、来る六日火曜日開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三分散会      ————◇—————

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