法務委員会 第25号
- 発言数
- 168 件
- 登壇者
- 12 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1978/05/30
会議録
○鴨田委員長 これより会議を開きます。 お諮りいたします。 本日、最高裁判所岡垣刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○鴨田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 ————◇—————
○鴨田委員長 内閣提出、刑事事件の公判の開廷についての暫定的特例を定める法律案を議題といたします。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山花貞夫君。
○山花委員 延長後の委員会でもありますし、これからいわば本格的な審議がスタートするという時期でもありますので、冒頭われわれの考え方としてお願いしておきたいところですけれども、理事会でわれわれが要求いたしましたとおり、まさに違憲性が争われている法案でありますから、慎重に審議をしていただきたい。参考人からの事情聴取あるいは公聴会など、法案の問題点を明らかにするために幾つかの要求をしておるところでありますけれども、今後そうした問題についてぜひ十分御配慮をいただきたいと思います。同時に、ちまたにうわさされておりますような審議を強行するということのなきよう、慎重審議の実を尽くしていただきたいということを冒頭主張しておきたいと思います。 さて、この法案について、われわれは、被告人の弁護人依頼権を国民の基本的人権の一つとして保障している憲法三十七条の趣旨に違背するものであると考えています。 近代の刑事裁判の制度は、わが国においても明治十三年いわゆる弾劾訴訟を採用した治罪法に始まりまして、弁護人制度もここにスタートしています。当事者訴訟の構造を持つ近代の裁判の制度のもとで、強大な国家権力を背景として訴訟に臨む検察官に対し、被告人の防御を尽くさせる弁護人の存在は、刑事裁判の公正を担保するために不可欠であります。弁護人抜き裁判制度は、前回の法務委員会におきまして前日弁連会長が強調しておりましたとおり、近代裁判制度そのものを崩壊させるおそれがあると言わなければなりません。したがって、歴史的に見ても、弁護人抜き裁判が制度として誕生する背景には、そのときの政治権力の側が裁判の公正、国民の人権に優越するある価値観を持ったとき、こういうことを指摘することができると思うのであります。わが国における歴史を振り返ってもしかりと言わなければなりません。わが国における必要的弁護制度の例外としては、すでに指摘されておりますとおり、昭和十七年施行されました戦時刑事特別法に唯一の例外を見ることができます。この法案は「戦時ニ際シ燈火管制中又ハ敵襲ノ危険其ノ他人心ニ動揺ヲ生ゼシムベキ状態アル場合ニ於テ」窃盗、強盗を行った場合は必要的弁護事件とせず、その他の場合でも、裁判所やむを得ざる事情ありと認むるときは決定をもって必要的弁護事件としないことができたわけであります。当時の国会議事録を読んでみますと、こうした弁護人抜きということに対して、国会の中におきましても大変さまざまな観点から議論されていることを知ることができるのであります。もしこうした弁護士の人数の制限に始まり、いわんや弁護人抜きで裁判できるというようなことになるならば、時世に便乗するというそしりは免れがたいであろう、司法権の弛緩、検察権の乱用、人権じゅうりんの頻発等は国家のため断じて許容することのできないところであろう、こうした議論が重ねられました。残念ながら、当時の戦局下においてこの法案は国会を通過いたしました。わが国の司法の歴史に残された汚点であると考えています。昭和十七年二月二十三日の資料を拝見いたしますと、昭和十七年二月二十三日に、内閣総理大臣兼陸軍大臣東條英機、司法大臣岩村通世、海軍大臣嶋田繁太郎、こうした名前が御名御璽に連なりまして、法律が公布されているわけであります。われわれは、戦争中、こうした東條内閣がつくった日本の司法の制度のもとにおける唯一の例外の弁護人抜き制度は、司法の歴史に消すことのできない汚点を残したと考えております。 さて、私はこうしたことをお伺いしたい。こうした歴史を振り返りながら、いま福田内閣のもとにおいて、かつての東條内閣と同じ過ちを犯そうとしているのではなかろうか。こうした歴史を振り返る中でこの点に関して法務大臣はいかがお考えか、まず冒頭伺いたいと思います。
○瀬戸山国務大臣 戦時中にいまお話しのような刑事訴訟に関する特例が設けられたことを私は承知いたしております。しかし戦時体制という国家存亡の模様の中であらゆる問題について特別な措置がとられるということは、そういう時期にはあり得ることであると私は思います。しかし、いま私どもが提案しておりますことは全然さような観点には無関係である、かように御理解をいただきたい。 いま国家権力というお話がありましたが、私どもはかように解しておるのです。申し上げるまでもなくいわゆる民主主義国家、主権は国民にありと言われておる憲法下でございます。私どももさように解しておる。でありますから、政府なりあるいは裁判所、国会、これはすべて国民の意思によって、国民からさような部署において適当な法律に従って行政あるいは立法あるいは司法をやれということを言われておる。でありますから、私どもはその国民の委託に反しないように、負託にこたえるために最善の努力をしなければならない立場にあるわけでございます。政府が意のままに権力をふるうとか、あるいは国会が意のままに権力をふるうとかいう、全然そういう体制になっておらないということを前提に置かなければならないと私は思っております。 でありますから、今回の提案も、裁判の実態を見まして、一体憲法なり刑事訴訟法が国民の考えに従って運営されておるかどうかということをわれわれは検討する。それは一部運営にそういう憲法や諸制度の、国民が定めた法律の精神に反しておる事態がありますときには、これはやはり国民の負託にこたえて何らかの方法をとらなければならない。そういう提案をすることは、これは主権在民のもとにおけるわれわれに負託された権力ではなくて当然の責任である。これはまたそういう必要があるかどうかということを検討されることが国会の当然の責務である、かような観点にわれわれは立っております。 でありますから、この問題、いろいろ議論されておりますが、問題の焦点は、裁判の実態の中で、言われておりますように異常な事態があるのかどうか。異常な事態というのは、具体的に申し上げるとこの法案の内容に挙げておるようなことがあるのかどうか。そういうことが一体許されていいのかどうか。放置しておいていいのかどうか。それに今度提案いたしましたような手当てをすることが憲法に違反することであるかどうか。したがって国民の期待に反することであるかどうか。この点だけがこの問題の焦点であろう、私はかように考えておるわけでございまして、いまおっしゃったような戦時特例法などというものと全然性質が違う、かように考えております。
○山花委員 いま指摘しました疑問については今後の質問を通じてなおお尋ねしてまいりたいと思いますけれども、いま大臣がお答えになりました一つの考え方、本会議におきましても福田総理から、あるいはこれまでの委員会におきまして法務大臣からこもごもいわゆる法治国家論ということでお説きになっていた部分であります。ただ私は、総理の本会議における答弁を通じても、あるいは法務大臣のこれまでのこの委員会における質疑、答弁を通じても、そのいわゆる法治国家論についての考え方の中身にいささかの問題を感じないわけにはいきません。特にこの法案についてのさまざまな角度からの法務大臣のお話や、あるいは法務省の関係の皆さんのお話を伺っておりますと、法治国家論というけれども、実はその中身というものは、そのときの法秩序というものをいわば政府・自民党の側に立って管理していこうという考え方が正面に押し出されているのではないか。そういう観点から、私は、この法律についてはいわゆる治安立法としての本質を持つものではないか、こういう疑問を感じないわけにはいかないわけであります。 この点に関して、従来大臣からもあるいは刑事局長からも幾つかの観点について御説明がありました。そうした御説明に関連してまず冒頭に指摘しておきたいと思いますことは、この法案に関する法務大臣の説明についてもあるいは法務省側の説明についても、これまでした重要な問題点について幾つか誤りのあることが明らかになっているではないか。実は、後ほど私は指摘したいと思いますけれども、前回の刑事局長の発言についても重大な誤りがあると考えています。このところに、私は、まさに拙速と申しましょうか、異常事態における緊急の立法であるとは言いながら、この法案についての本当に真剣な議論があったかどうか、こういう点を大変疑問に思わざるを得ないわけであります。 誤りと申し上げましたけれども、一つ二つ指摘した中で私は具体的に伺いたいと思いますが、たとえば前回稲葉委員の方から質問をいたしましたけれども、法務大臣が国会答弁におきまして、最近いわゆるこうした過激派事件の法廷が落ちついているけれども、それはこうした法案を提案したからである、弁護士の側から聞きようによりますと、法案を提案したから弁護士どもはおとなしくなったのだ、こういう趣旨の御発言がありました。この点について、おかしいではないかと質問が重ねられました。大臣は、最近の状況についてどうかということを刑事局長に尋ねたのだ、そうしたら正常に戻っているからと報告を受けたので大筋本会議で発言したのだ、こういうように責任を刑事局長の方に投げました。刑事局長がこれに答えまして「大臣に対する補佐が足らなかったということをおとがめいただくのならば、私がこれを全部甘んじてお受けしたいと思います。」こうお答えになりました。私は、この答弁の中に明らかになっておりますけれども、十分こうした問題点について大臣と意思を合わせて、そうしてまさに違憲性の問題その他についても間違いがないと確信を持って提案されているとは思えないのであります。 また、過日の法務委員会におきまして日弁連側から説明がありました。いまの問題点について、この法案によって審理が正常化したとは全くの事実無根である、こういうように日弁連が断言しています。事実無根を提案理由とすることは誤りではないでしょうか。同時に、藤永参事官の論文についても断定がなされました。こうした意見は重実無根であり客観的事実に反するということが答えられているわけであります。藤永さんは若干弁解しておりましたけれども、この点についても、伊藤刑事局長の方がその点についての誤りを認める趣旨の発言をしたことが議事録に残っています。こうした幾つかの重要な問題点について誤りが指摘されている。事実無根であり客観的事実に反するということが指摘され続けてきているわけであります。私は、冒頭、関連して一つだけお伺いしたいと思うわけでありますけれども、せんだっての答弁の中で、伊藤刑事局長の方から、この法案に関してのいわゆる三者協議については現状どうなっているかということに関しまして、この問題については、一言で申しますと、まだ議論にされる余地がないような状態である、こういう説明が前回の法務委員会の最後の部分にされておりましたけれども、この点について重ねて刑事局長の方にお伺いしたいと思います。このいわゆる特例法について三者協議がどう進んでいるのかということについて前回の発言を訂正されるのか、維持されるのか、その点をお伺いしたいと思います。
○伊藤(榮)政府委員 前回までにお答えしましたように、この法案をお出しする過程において三者協議にかけたことはございません。かけなかった理由については、しばしばるるお答えしておりますように、事前に私から日弁連事務当局に御連絡をいたしまして御相談をいたしておりました過程において、日弁連会長の名前で断固反対するという声明が出た、こういうような状況にかんがみまして、三者協議に付することを断念をいたしましてお出しをした、こういうことでございます。 なお、三者協議の最近における動きにつきましては、いま私三者協議のメンバーになっておりませんので、担当者が来ておりますので、そちらからお答えします。
○山花委員 知らないことをなぜ委員会で答えるのでしょうか。前回の委員会において、議事録の二十二ページでありますけれども「現在議題について次にどういうことをやるかということを模索中であるように承っております。」こういう答弁がはっきりとなされているわけであります。この答弁に責任を持ちますか、どうですか。
○伊藤(榮)政府委員 私としてはそのように考えておりました。
○山花委員 考えておって、現在どうでしょうか。自分が間違っていたということをお認めになりますか、それともこのとおりであるということでありましょうか。
○伊藤(榮)政府委員 先ほど申しましたように三者協議のメンバーになっておりませんから、現在の運行については正確には存じません。
○山花委員 しかし、あなたは「現在議題について次にどういうことをやるかということを模索中であるように承っております。」こう答えています。知らないなら知らないと言えばよろしい。そうではなくて、承っておると言って、担当者から報告を聞いたその回答として、この法務委員会の席において「模索中である」こういう回答をしているわけであります。これは事実に反します。いかがですか、この点は。
○伊藤(榮)政府委員 私の認識をそのままお答えしたわけでございまして、実際に今日ただいまどういう運営がなされておるかは担当者から答えるのが適当だと思います。
○山花委員 担当者から答えを聞く前に、私はそういうお答えを聞きますと、当時あなたとしては報告もろくろく聞いていなかったのに、こういういいかげんな答弁をしたということになるのですよ。そうじゃないでしょうか。当時あなたは明らかに、現在議題について事態を模索中である、こういうふうに承っておると答えた。あなたは、報告を受けておったけれどもこういう答弁をしたのか、報告を受けていなかったけれども受けたようなことでこういう答弁をしたのか、こうした事情について明らかにしていただきたいと思います。
○伊藤(榮)政府委員 三者協議のメンバーは私の指揮下にある人たちではございません。だから、報告を受けるとか受けないとかいう関係にはございません。ただ私は、三者協議会の昨年以来の動きについて私の認識しておるとおりを申し述べたのでございます。
○山花委員 そうしますと、前回の答弁は、ここで「承っております。」という表現を使われておりますけれども、この時点まであなたが報告を受けていた、そうした知識をもとにこの発言をした、こういうことでしょうか。
○伊藤(榮)政府委員 私が三者協議の最近の状況について知り得た範囲でお答えをしたものでございます。
○山花委員 そう伺いますと、あなたは、知らなかったことについてこの法務委員会の席において刑事局長としての資格において法務委員に答えた、こういう重大な問題になってくると思います。 私はこの誤りについて確かめたいと思うのですけれども、それでは担当の方に三者協議のこれまでの経過について、特に前回の質問が五月十二日でありますから、その時期というものを踏まえてお答えをいただきたいと思います。
○枇杷田政府委員 三者協議会は五月二十二日までに二十六回開かれておりますが、その二十六回の間に沖繩の弁護士関係の問題とかあるいは百日裁判の問題とかを取り上げまして、昨年の十月ごろから大体次の議題に入ろうということになったわけであります。そのときに、議題が決まらないうちに現在御審議中の例の特例法の問題が生じまして、それをめぐりまして、議題をどう選んでいくかということがまた新たに弁護士会の方から問題が提起されました結果、三月の十一日に、いわゆる荒れる法廷の対策という意味を込めまして三つの議題が決まったわけであります。 一つは、法廷対策連絡会議、仮称でございますが、こういうものを設置してはどうかという弁護士会側の提案を検討すること、第二番目が国選弁護人の選任方法について検討すること、その他第三点が、いわゆる荒れる法廷に対するその他の対策があるかどうかということ、この三点を議題にしようということになりまして、三月の下旬の三者協議会及び四月の末の三者協議会、二十四回、二十五回の三者協議会におきまして、まず法廷対策連絡会議の設置をすることがいいかどうかという問題の議論がなされたわけであります。ところがこの問題につきましては、裁判所側の方で、特にそのような会議をつくりますと、実際上具体的な事件についての訴訟指揮について第三者が介入をするという結果になる、それは裁判所の訴訟指揮権の問題について非常に重大な意味を持つから、そのような形での法廷対策連絡会議というものを設けることはどうも不適当ではないかということになり、また法務省側も、そういう裁判所側の意見がもっともであるということになりまして、それではそういう訴訟指揮権に直接影響を及ぼさないような形で何らかうまくいくような方法は考えられないだろうかということがなお弁護士会側の方からお話がございました。それではその何かかわるような案があるのかどうかもう一回三者でその点を考えてみよう、日弁連側の方でも考えてみようということに相なりまして、いわばそういうかわる案を、模索するという言葉が適当であるかどうか知りませんけれども、考えようということになって第二十五回の四月の協議会は終えまして、そして五月の末に二十六回の三者協議会が開かれた。そこでまたいろいろな案が出されたわけでありますけれども、結局第二番目の問題の国選弁護とも絡んでまた何か考えを進めていこうということで、具体的な案についての取り上げはできなかったわけでありますけれども、そういう経過で三者協議会が進んでおるわけであります。 したがいまして、五月の十何日かの時点におきましては、いわゆる弁護士会側の方から御提案がありました法廷対策連絡会議という形のものはこれはどうも三者の合意が得られない、したがって何かそれにかわるいい方法がないかということなお互いに検討し合おうというようなことで終わっている段階でのお話であると私は考えておりすす。
○山花委員 長い御答弁をいただきましたけれども、肝心の点についてはお答えいただいておりません。したがって、記録をごらんになっていただいて結構ですから私は確認をしたいと思います。ことしに入りましてから三者協議は、いつ、何回開かれたでしょうか。まずその点について伺います。
○枇杷田政府委員 ことしに入りましてから現在まで五回開かれております。日にちは明らかに記憶しておりませんが、定例の第四火曜日にずっと間違いなく開かれております。
○山花委員 ことしの三者協議は、一月三十日、二月二十七日、四月二十四日、五月二十二日、そして次回は六月二十六日ではなかろうかと伺っています。そこで、先ほどの質問との関連で大事な部分を確かめておきたいと思うのですけれども——先ほど三月十一日が抜けております。三月十一日、三者協議会の議題委員会が開かれておると思いますが、いかがでしょうか。 〔委員長退席、保岡委員長代理着席〕
○枇杷田政府委員 仰せのとおり三月十一日に議題委員会が開かれております。
○山花委員 議題委員会ではどのようなことが議題として議論されたのか、日弁連からどんな内容の議題設定についての提案があったのか、これに対して最高裁あるいは法務省の側はどのように応答して、結論どのようになったのか、内容についてできるだけ詳しくお話をいただきたいと思います。
○枇杷田政府委員 議題委員会と申しますのは、いわゆる本会議と申しますか、協議会でどのような議題で協議を進めるかということの議題を決めるためのいわば準備的な委員会でございますが、三月十一日の議題委員会には、日弁連側から提案がございました。その提案と申しますのは「最近における一部の刑事事件の審理にみられる異常な状況に対処するための当面の措置」についてという題で、その中に二つ分けまして、一として法廷対策連絡会議(仮称)の設定について、二として国選弁護人の推せんについて。それがまた二つに分かれまして、(一)国選弁護人選任の確保のため考慮すべき諸問題、(二)として国選弁護料の増額という、そういう形で議題にしてはどうかという提案があったわけであります。 それにつきまして、ここでは先ほど申しましたように議題の内容について深く検討して協議をするという場ではございませんが、議題として取り上げるのに適するかどうかという観点で三者の間で若干のやりとりはありました。その結果、法廷対策連絡会議というものは、その内容いかんによっては、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、裁判所の訴訟指揮権に介入するような形になるおそれがあるのでちょっとどうかなというふうな空気は裁判所側、法務省側からありましたけれども、しかしこれについては内容をよく本会議の席で日弁連側から御説明を伺って、そしてその上で協議をすることにするのでいいじゃないかということになりまして、この第一の法廷対策連絡会議(仮称)というのは、これは議題にしようということに相なったわけであります。 二の国選弁護人の推せんについてということでございますけれども、この点に関しましては、まず国選弁護人選任の確保のため考慮すべき諸問題という中に、国選弁護のいろんな問題は包含されるのだから、したがってこの(一)で表現されております国際弁護人選任の確保のため考慮すべき諸問題ということを議題にすればいいのではないか、その中でいろいろ国選弁護人の関係の問題、国選弁護料の増額の問題についても協議をすることに適していようということに相なったわけであります。 なお、そのほかこの議題の日弁連側からの御提案の前文の関係でありますけれども、こういうことについてはまだほかにもいろいろ問題があるのかもしれない、しかもそれは単に特例法の関係ばかりではなくて、いわば早く申しますと荒れる法廷の関係について何か考えられる対策はないかということも協議してもいいのじゃないかという意味で、三として、その他最近における一部の刑事事件の審理にみられる異常な状況に対処するための当面の措置について、というのも一項目入れて、広くいろんな問題を協議しようということに相なって議題委員会は終わったわけであります。そしてその三月の下旬の第二十四回の三者協議会で、まず先ほど申しました法廷対策連絡会議についての協議がなされたという運びになるわけでございます。
○山花委員 いまの御説明によりますと、三月十一日の議題委員会において、三つのテーマについての議題が決まった。そのうちの御説明による三番目のものは、その他最近における一部の刑事事件の審理にみられる異常な状況に対処するための当面の措置について、まさにこの法案とかかわっているテーマでありますけれども、御説明を伺いますと、三月十一日にこの議題が決定したということであります。そして私が先ほど申し上げましたとおり、その後四月の二十四日、五月の二十二日に三者協議がスタートしている、スタートといいますか審議が続けられている、こういう状況であります。そういたしますと、刑事局長が五月十二日の段階で、議題について現在なお「模索中である」、こういう答弁は誤りではないでしょうか。
○伊藤(榮)政府委員 当時私の承知しておる認識を申し述べたわけでありますが、客観的事実はただいま担当の調査部長からお答えしたとおりでございます。
○山花委員 客観的事実がそうであるとすれば、あなたのお答えは正確な客観的事実を把握しないで法務委員会の委員の質問に対して答えたことになるということになるのではないでしょうか。刑事局長の答弁がそういうことでよろしいとお考えでしょうか。
○伊藤(榮)政府委員 お尋ねの際担当者がおりませんでしたから、私の認識をそのとおり申し上げておるわけでございまして、「承っております。」という表現で述べております。客観的な事実はただいま正確に説明申し上げたとおりでございます。
○山花委員 要するに客観的事実に反する答弁をしたということになると思います。従来から大臣の本会議における答弁あるいはこれまで申し上げました幾つかの問題点について、実はそうした問題点が大変多いのであります。三者協議の問題についてはもう少し伺わなければなりませんけれども、そうした問題点を指摘するという意味において、法務大臣の本会議における答弁との観点で客観的事実との関連性を伺いたいと思います。 大臣は本会議における提案理由説明の質疑の中で、この種問題については、日弁連の方が「弁護人抜き裁判であるとかあるいは暗黒裁判であるとか、まるで過激派のビラみたいなことで騒いで」おる、こういうことを繰り返し答弁されました。こうして、話し合おうと思ったんだけれども、そんなビラをどしどし出すので話し合う機会がなかったのだ、こういうような答弁をされました。これは恐らく大臣が刑事局長その他から報告を聞いた中で答弁をした、こういうようにお答えになると思うのですけれども、これは間違いじゃないでしょうか。話し合いに入る入らないということで、事前の話し合いでありますから、議論になりましたのは昨年の十一月、十二月段階のことであります。ビラが出たというのは去年中じゃないんじゃないでしょうか。ことしに入ってのことであります。後にあったことを前にくっつけて、だから話し合いできなかったのだという答弁はおかしいのではないでしょうか。この点について、まず大臣の方が事実をどう認識されておったか。国会決議に違反するかどうかが問われている事前協議の問題でありますから重要な論点だと思います。細かい問題かもしれませんけれども、ひとつお答えいただきたいと思います。
○瀬戸山国務大臣 話し合いといいますか、この問題について日弁連なり最高裁との接触は、前々から刑事局長から御説明したとおりに私は承知いたしております。日弁連の方では、日は忘れましたけれども、そういう話題が出て直ちに日弁連会長から反対の声明が出された。その後の行動を見ますると、あるいは街頭に出、あるいはビラを配布して、いまお読み上げになったような内容のものを配っておられる、こういう状態では、とてもじゃないが、この問題について話し合える状態ではない、かように判断したわけでございます。
○山花委員 本会議におきましても、街頭に出た、ビラをまいた、だから話し合うことなどとてもできないと思った、こういうようにお答えになっています。その街頭に出たりビラをまいたというのは一体いつごろだと法務大臣は報告を受けておりますか。
○瀬戸山国務大臣 報告を受けたのはいつごろであるか、いま記憶しておりませんが、報道機関などで私は承知いたしておるわけでございます。
○山花委員 問題を明確にしておきたいと思うのですが、報道されました事実もそのとおりでありますけれども、日弁連が法務省との関係で議論のやりとりをした種類のビラを街頭に出てまいた、いわゆる街頭に出たというのは五十三年四月十三、日であります。日弁連における全国の統一的な弁護士さんたちの行動として街頭に出て一般にビラを配布いたしました。確かに国会における議論よりは前でありましたけれども、去年のことではありません。四月十三日のことなのであります。 といたしますと、街頭に出た、ビラをまいたから話し合うことは困難であるというのは、ことしの四月十三日以降ならば話のつじつまが合うかもしれませんけれども、去年の段階で法案を提案しようとするときに、こういうことを理由にするということは全く事実に反するこじつけではないでしょうか、いかがでしょうか。
○瀬戸山国務大臣 私がお答えした当時はそういう状況でありましたが、法案について話し合う状態でないという経過は、この委員会でも伊藤局長からしばしば申し上げておりますように、最初に前宮田日弁連会長から反対声明を出された。その内容のおおよそは後でビラ等で配られたものと一緒でございます。
○山花委員 いまおっしゃった反対声明というのは、たしか十一月九日のものではなかろうかと思いますけれども、法務省関係者、刑事局長でも結構でありますけれども、街頭に出た、ビラをまいたから話し合うことは不可能であると判断した、これはおかしいのじゃないでしょうか、いかがですか。
○伊藤(榮)政府委員 大臣の御答弁、その言葉遣いを一々お取り上げになっておっしゃっておりますが、大臣もそういう趣旨で言われたと思います。要するに、私から日弁連事務総長にいろいろ連絡をしておるやさきに、十一月九日に日弁連会長名で反対声明をお出しになり、これを広くマスコミへお流しになる、その後非常に精力的に反対のための活動をお始めになったという事実は紛れもないことでございまして、そういう状態であればお話し合いの余地がないと私どもが判断するのも当然であろうと思います。大臣はそういう認識をおっしゃっておるわけでございまして、大臣の個々の言葉遣い等についての御指摘でございますけれども、大臣の御答弁の真意を御理解いただきたいと思います。
○山花委員 言葉遣いということではありません。記録を振り返ってみると、山崎議員の質問に対して、稲葉議員の質問に対して、正森議員の質問に対して、それぞれ同趣旨の発言を繰り返し、三者協議をしなかったことについての正当性の根拠としているわけであります。これは大変重要な法務省側の主張であります。立論の根拠であります。要するに、四月に入ってからのその問題を昨年の十一月にさかのぼらせて話し合わなかったということについての正当性の理由としている、これがこれまでの答弁の経過であります。 そういう観点からもう一つお尋ねしておきたいと思うのですけれども、前回、御説明の中で、日弁連の担当者と三回ほど話し合いをされたという説明がありました。しかも、その時間の設定と協議の持ち方ということについて、これは長い答弁でしたけれども、きわめて概括的にお答えになっていたという気が私はするわけでありますけれども、一回、二回、三回と、この法案について話し合おう、こういうことで日弁連の担当者と相談をされた、協議をされたということでしょうか。その点について、いまの問題点で振り返って整理をしていただきたいと思います。
○伊藤(榮)政府委員 再三お答えいたしておりますが、私から日弁連の事務総長を二回にわたって招きました。三回目には先方からいわば答えのような形で来られたわけです。時期は十月中のことでございます。 まず、一番最初のときには、いま考えておる過激派対策の法案の問題でお話ししたいから来てくれないか、こういうふうに話しまして私の部屋へ来てもらいました。前回も申し上げましたが、当時の日弁連事務総長と私とは、私的には長年の友人でございます。したがいまして、友人として来てもらうのではない、日弁連事務総長と刑事局長として話すのだという前置きをいたしまして、いまわれわれが考えている法案というものの構想ですが、これについて説明をしております。その構想と申しますのは二つの問題点から成っておる。一つの問題点は、弁護士会における懲戒処分の励行または現在御提案申し上げておるような特例法、もう一つの問題点は、国選弁護人の円滑な推薦または公設弁護人制度の創設、この二つの問題を現在考えておるということをお話しいたしまして、これに対する日弁連当局の御感触を得たいというふうに申したわけでございます。 二回目のときは、その返事をいただくことも兼ねまして会ったわけでございます。そのときに、これも毎々申し上げておりますように、国選弁護人の推薦の点は日弁連として大いに努力をしてみよう、裁判所の方で国選弁護人に対する報酬等について御配慮願えれば、日弁連あるいは単位弁護士会の理事者の努力によって何とか解決できそうに思う、こういう御返事でございました。もう一方の懲戒処分の適正迅速な励行または特例法のような形の問題については、懲戒処分の問題については日弁連としてもなかなか問題があって、直ちに前向きでやりましょうという御返事はできかねる、こういうことでございましたから、それでは公設弁護人制度の創設の方はこの際一回見送ることにして、この特例法のような形の構想で私の方は立法作業をいたしますよ、こういうことを申したわけでございます。 三回目に来られたのは、日弁連の反対声明の前日か前々日であったと思います。従来私から説明を聞いた問題について、日弁連としては断固反対する声明を出すことになったよという御連絡を受けた、こういうのが実際でございます。
○山花委員 いまお答えの冒頭に、三回ほど会った、時期は十月中というふうにお答えになりましたけれども、これは記憶違いではないかと思います。日弁連の活動日誌、これは活動を毎日記録しているものでありますけれども、私がそれで確かめさせていただいたところ、第一回が十月三十一日であります。第二回が十一月一日であります。第三回が十一月八日であります。 まず、協議をするしないの問題でありますと、第一回目のときの応答が大変大事になってくると思います。第一回目、私どもでは十月三十一日であると把握しておるわけですが、このときは刑事局長から佐藤事務総長に対して、この法案について、御説明によると内容をお話ししたということのようですけれども、これは、この問題に関して刑事局長が事務総長をお呼びになったということではなかったのじゃないでしょうか。副検事選考審査会が当日たまたまあった、その帰りに寄ってくれということを連絡されて、その連絡に基づいて事務総長がお寄りになった、こういうことではなかったでしょうか。
○伊藤(榮)政府委員 たまたま副検事選考審査会で事務総長が法務省へ来られる機会がありますので、その機会に私のところへ来てもらうように連絡をしたわけでございます。
○山花委員 そのときに、大変重要な問題であるということで、事務総長の方から刑事局長に対して、お話は通告であるか協議であるかということを確認された事実はなかったでしょうか。
○伊藤(榮)政府委員 そういう通告か協議かというような確認を受けた覚えはございません。私が先ほど申しましたように二つの構想を述べまして、これについての御感触を得たい、こういうことでございます。
○山花委員 われわれが伺っておるところでは、通告か協議かということを確認したところ、刑事局長の側から、後日のため礼を失しないように通告をするとの返事であった。要するに協議あるいは相談ということではなく、事務総長から確認をしたときの答えも、後日のため礼を失しないために一応御連絡しておく、通告しておくという趣旨の発言が刑事局長からあったというように承っておるわけですけれども、御記憶はいかがですか。
○伊藤(榮)政府委員 事柄が事柄でありますし、およそ戦争するわけじゃございませんから、通告などということを言うわけがございません。先ほど言いましたように、二つの構想を提示して、そのうちの一つは第二回目に佐藤総長が来たときの話に基づいて引っ込めるということにしたわけでございまして、その経緯からもおわかりのように、何か一方的に通告するというようなものではなかったことは御理解いただけると思います。
○山花委員 私どもの確認したところと真正面から重要な部分で食い違っているわけですけれども、この点については、なおきょうのお答えを伺いまして、私どものところで再確認をした上で質問をさせていただきたいと思います。 二回目は十一月一日ではなかったかと思いますけれども、このときはいわゆる諮問案の概要の説明をした、説明を受けた。内容についていろいろやりとり、相談をする、疑問点について応答があるということではなかったと伺っておりますが、二回目の内容はいかがでしょうか。
○伊藤(榮)政府委員 長年の友人のことに関していろいろ私から申し上げるのは私情においてはなはだ忍びないのでございますが、この法案の前身であります刑訴の一部改正案要綱が法制審議会に諮問されました際に、日弁連推薦の法制審議会委員の方々から、事前に何のあいさつもなかったじゃないかというお話がありまして、私は、それなら事務総長に聞いてみてくださいと言った経緯がありますけれども、最近になってにわかに日弁連として正式に受けとめた事柄の内容が詳細になってきたというのが私には解せないのでございます。 まあそれはそれといたしまして、私、信義の問題がありますからなるべく申し上げたくないと思っておりましたが、諮問案を見せて、二回目に詳細説明をして若干のやりとりをいたしております。実はそこまでのお尋ねですから、友情等の関係においては忍びませんけれども、前日に反対声明の文案を持って私のところへ参りまして、こういう反対声明をすることになった、長年の友人としてまことに心苦しい、しかし公の立場においてはやむを得ないから勘弁しろよと言って帰ったというのが実情でございます。
○山花委員 いまのお話はいわゆる三回目、十一月八日のことに関連してのようですけれども、このときにはいまお話しになったようなこともあったかもしれませんけれども、本当にこの改正案要綱に基づいて諮問がスタートしてどうなるのかという事実を確かめに行ったということではなかったでしょうか。
○伊藤(榮)政府委員 よく佐藤前事務総長にお聞きください。私は全く正確に記憶のとおり申し上げておるわけです。第二回目に要綱案を示しております。三回目は、彼は反対声明の案を持って見せに来たわけでございます。
○山花委員 事務総長の側、日弁連の側から私が伺っているところとかなり食い違いがあります。これは後ほど、前回に引き続いて日弁連に意見を聞く機会がありましたら、ぜひ前事務総長も加えていただきたいと思いますけれども、ただ、いま私がお伺いしてきた中身というのは、いわゆる三者協議そのものではありません。当事者間における打ち合わせのたぐいに属するものだと思います。こうした問題については、いまのお答えからも出てまいりましたとおり、それぞれ一方的な主張になりがちな部分もあります。 そこで、そうならないという問題について伺っておきたいと思うのです。三者協議については従来若干のいきさつがあったようでありますけれども、結論的には三者合意して議事録を作成しておられると伺っています。前回、前日弁連会長がおいでになりましたときに、議事録については三者で合意して作成することになったので、これをオープンにすることについても三者の合意が必要であろう、こういうお話でした。私もそれぞれ日弁連、最高裁そして法務省の方に議事録を見せてくださいということをお願いしたわけでありますけれども、なおその部分については三者の打ち合わせが必要であろうというようなお返事をいただいています。したがってこの点についても、従来の経過が大事でありますので、後ほどできれば議事録について三者合意の上委員会の方にぜひ提出していただきたいということをお願いしておきたいと思うのですけれども、その中で法務省の側から第五回、すなわち昭和五十年九月二十二日月曜日に行われました議事録につきましては、これは従来マスコミにも載ったものであるからということで、この議事録をいただきました。この議事録においては、いわゆる三者協議のあり方について大変重要な応答が記録されていると思います。 中身としては、三者協議の議題の問題などについて議論がされています。日弁連の側から「議題委員会は事務的なものだと思う。三者協議会のイメージが必ずしもはっきりしないので、確認しておきたいが、実施要領からすると司法制度に関する法律、規則の制定、改廃については、そのいわば素案の段階で早期に先ず当協議会の議題に供し大所、高所から協議するということだと思うが、そのように理解してよいか。」こういう質問があり、裁判所、法務省側より「そのとおりと考える。」こういう回答がなされたと記録されています。また、法務省の側から「司法制度の根幹に触れるような問題を協議して行くということにすると実効が挙がると思う。」こういうようにお答えがあったと伺っています。 こうした第五回の三者協議の議事録、特に議題の設定の仕方についてある程度具体的に整理がされている。こういう観点からいたしますと、本来ならば、今度のような法案については当然素案の段階あるいは問題提起ということで三者協議の議題となるべきではなかっただろうかというように思いますけれども、この点はいかがでしょうか。
○枇杷田政府委員 御指摘の第五回の議事録は、議事録全体をお読みいただけばおわかりいただけると思いますが、昭和五十年三月に三者協議会が開かれましてから何を議題にしようかということを議題として第五回まで至ったわけであります。その間に、いかなるものが議題にふさわしいかということを四回、五回重ねてやったわけでありまして、したがって、このときのいろいろな議論は、さしあたり第一回目の最初の議題として何を選定すべきか、どういうものがふさわしいであろうかという観点から議論がなされておりまして、議題について必ずこういうものは議題にするというふうなことを主目的として議論がなされたようにはうかがえないわけであります。その議事録にもありますように、しかし結局、いろいろなことを言ってみてもケース・バイ・ケースだ、法案にするようなものについては全部かけるというのはぐあいが悪いのじゃないか、結局ケース・バイ・ケースでいくよりしようがないというふうなニュアンスになっておりまして、最後までいろいろな意見が出された。しかし大体のところで、ひとつ次には具体的な議題を決めていこうというふうな雰囲気で議論がなされたようにうかがえるものでありまして、必ずこういうふうなある範囲に属するものは三者協議会にかけるということがここの第五回の協議会において決定されたというふうには私ども理解しておらない次第でございます。
○山花委員 関連して、幾つかさらにお尋ねしたい部分がございます。 たとえば、いまのお答えを前提といたしましても、今度の問題については全く当初から協議に入らない、こういう方針を定めて、その路線に沿って手続を進めたのではなかろうかという問題点を指摘したいと思うのですけれども、時間があと四、五分とのことであるので、その点おきまして、ひとつ問題だけを提起しておきたいと思います。 実は、本会議における答弁その他を通じて、福田総理は、毫も憲法違反ではない、こうお答えになりました。法務大臣も同趣旨の答弁を繰り返されました。そのことの理由の一つとして、たまたまその法廷において弁護人抜きというような事態になったとしても、いつだって弁護士をつけることができるのだ、後でまた弁護士をつけてやることができるのだ、こういうお話があったわけであります。実はこれは法廷の実態から離れた議論であるというようにわれわれは考えております。ただ、その法廷の実態を出しますとまた時間がかかりますので、具体的な刑事訴訟法の今日の構造の観点から、弁護士抜きになりますと、そのまま判決言い渡しに直結する、いわゆる暗黒裁判という指摘がなされているけれども、そのおそれがあるのではないか、こういう問題について伺いたいと思うのです。 まず刑事訴訟法三百四十一条の関係、被告人の陳述を聞かない判決、この関係がございますけれども、いわば法廷の最後の弁論の場におきまして、仮に、一言で申しますとトラブルがあって弁護人が法廷から去るというようなことがあった、そしてその場において本来ならば最後の弁論が行われる予定であったといたしますと、こういうときには弁護士なしで結審を迎える、そして判決言い渡しになる、こういうことになるのではないでしょうか。 もう一つだけ関連して伺っておきたいと思いますけれども、刑事訴訟法三百二十六条の二項の関係であります。これは証拠調べの関係でありますけれども、当日一番重要な証人を呼んで証人調べをしようとしておった、この証人で法廷がおしまいである、こういうような場面を頭に置いて考えますと、三百二十六条の二項によりますと、弁護士なしの場合、いわゆる調書などについて同意したものとみなすということになっています。その日に最重要証人が出てきて証言をしようとした、まさに訴訟の核心に迫るものである、ところがその法廷でトラブルが起こって、弁護人がいなくなった、弁護人抜きの裁判になったということになりますと、刑訴法三百二十六条の関係から言えば、検察官が証人を撤回する、そしてその証人についての調書を出す——調書の重要性というものはロッキード事件を見てみれば明らかでありますけれども、三百二十一条以降の制約を外れて同意があるとみなされれば、全部調書が法廷へ出てくる、それで裁判が終わりになる、これが手続的にはあり得るのではないでしょうか。三百四十一条とか三百二十六条というこの規定の中身を考えてみるならば、まさにそこで裁判が終わりである。後また弁護士をつけられるから憲法違反ではない、こういう議論は全く成り立つ余地がないと思いますけれども、その点はいかがでしょうか。
○伊藤(榮)政府委員 ただいまの御質問は、まずもって被告人もいないという前提でお尋ねのように思います。被告人がおれば、被告人の意見を聞いて裁判所が措置することになると思います。 それからもう一つ、ちょっと横道にそれるようで恐縮でございますが、最後の弁論の日あるいは最も重要な証人の取り調べられる日、こういう日はおよそ弁護人たる者は断固法廷にとどまって正正堂々と弁論を展開し、あるいは証人に対して反対尋問権を行使する、こういう態度こそあるべきものであろうと思います。しかしながら、それにもかかわらず弁護人抜けになったような場合には、裁判所といたしまして法律上、この特例法が成立すれば、そのまま判決まで持ち込むことができるわけでございます。しかしながら一連の、恐らく否認事件でございましょう、否認事件の相当重大な事件につきまして、最終弁論を聞かないで判決をする、あるいは最も重要な、たとえば唯一の目撃証人、こういう者が取り調べられる予定の日に弁護人抜けの状態になったという場合に、裁判所は、この法案にもございますように相当と認めるということはないというふうに思います。
○山花委員 いま、こうなるのじゃなかろうかというお話がありましたけれども、私は質問に際してお断りしたとおり、現在の刑事訴訟法の仕組みから言うとこうなるのではないか。その法廷における具体的な事情はさておいて、三百二十六条の仕組みからいいますと、最重要証人が出廷して最後の法廷になる予定であった、そこでトラブルがあって弁護人抜きということになった場合には、それで調書が出てきて、調書を調べて証拠調べ終了、判決に直結するということになる。これは刑事訴訟法のたてまえからすると間違いないのじゃないでしょうか。いかがでしょうか。
○伊藤(榮)政府委員 裁判所があくまでやろうと思えば判決までいくことはできると思います。それは御指摘のとおりであります。しかしながら、条文に書いてございますように、裁判所は相当と認めるときに限って弁護人のいないままで手続を進めることができるわけでございまして、われわれとしてはわが国の裁判所、特にこれらの事件はほとんど合議体で裁判されるわけでございますが、その三人で構成されます裁判所をやはり信頼してかかるべきであろう、かように思います。
○山花委員 やろうと思えばできるけれどもやらないだろう、こういうお答えなわけですけれども、われわれは実はそういう問題点に不安を覚えるわけであります。従来法務省で説明があったとおり、特例法と言っても一般の事件にも適用があるのではないか、あるいはいろいろ裁判官を信頼しろというようなことを言っておるけれども、実はそうではない現実があるのではないかということを心配しているわけであります。 きょうは時間がないので質問できませんでしたけれども、せんだっての岡原最高裁長官の発言がありまして、これが議論の対象となっています。岡原最高裁長官が上海で検事をされておったときでしょうか、報告書を送っているようです。戦争中の「思想月報」、これは思想検事の報告ということになるのではないかと思いますけれども、それを見ますと、当時のいわば軍令に関して「従来の法律観念よりすれば本軍令の如きは其の規定簡略に過ぎ内容抽象的にして解釈上幾多の疑義を生ずる余地あるべきも、反面変転極りなき現下の情勢に処し適用範囲を適宜伸縮し得るの妙味あり、」云云と言っておるわけでありますけれども、私たちはこういう考え方が実はこの法案の中身にあるのではないかということを心配するわけであります。いまの最高裁長官は検察官から御出身になっておる。われわれは、昨年八月十八日だったと思いますけれども、将来心配なことが起こるのではないか、こういうことを内閣に対して申し入れいたしました。そういう事態が起こったのではないかと思います。瀬戸山法務大臣は、戦前裁判官として豊富な経験をお持ちであります。まさに治安維持法時代の裁判官としての経歴をお持ちであります。そしてこの法案を担当された藤永参事官は、検察官として、特に数年前は東京におけるいわば公安検察官として仕事をされてきたのではなかったでしょうか。私たちは、そうした背景を見ると、いまの御説明で信用しろ、法律はそうなっているけれども大丈夫だということについては、とても納得することができません。 時間が超過しましたので、問題点を提起して、またぜひこの次の機会にさらに突っ込んで御質問させていただきたいと思います。一応以上で終わります。
○保岡委員長代理 午後一時三十分再開することとし、この際、暫時休憩いたします。 午後零時三十分休憩 ————◇————— 午後一時三十三分開議
○保岡委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。質疑を続行いたします。長谷雄幸久君。
○長谷雄委員 ただいま議題となっております刑事事件の公判の開廷についての暫定的特例を定める法律案について質問をいたします。初めに、一部過激派による法秩序破壊行為はわが国の憲法秩序を無視したものであり、民主主義体制そのものに対する重大な挑戦であって、断じて許すことはできないと思います。このこと自体だれひとも異論のないところであると思います。本法案については、その当否は別として、こうした過激派対策を強力に進めることはきわめて重要であります。ところで、昨年九月のダッカ日航機事件以来政府がとってきた対策の中で、すでに成立をした人質による強要行為等の処罰法、それからいわゆる成田新法、それに現在、審議中の本法案をも含めて、政府の過激派対策に対する対応についての評価についてでありますけれども、これについては一部には行き過ぎであるという声があります。他の一部には全く手ぬるいという批判もございます。政府の過激派対策を含め、民主政治の基礎である法の支配を貫くための今後の取り組みと決意を伺いたいと思います。
○瀬戸山国務大臣 お話のように、一連のいわゆる過激派と言われる者の行動、これはまさに現在の国家否定の根本的な考え方でやっておると見られます。でありますから、少なくともわが国においては、断じてかような行動を許容してはならない、そういうことで、憲法その他の法律に従って断固としてこれを処置しなければならない、これが政府の方針といいますか、国民から負託された行政府として、あるいは裁判所として当然だろうと思います。再びダッカ事件等のようなことが起こったらというお話でありますが、ああいう事件が起こることをわれわれはどうしても防ぎたい、こういうことで諸般の法律制度を設け、あるいは行政で対応しておるわけでございますが、いまお話しのように、仮にああいうことが起こりました場合、単純に対応策をここで申し述べるわけにはまいりませんが、やはりそれに対応する複雑な手段方法があると思います。しかし、同じようなケースで再び裁判あるいは法を無視するという態度は政府としてはとるべきでない、こういう基本方針でございます。
○長谷雄委員 本法案の審議につきましては、すでに五月十二日、日弁連の代表の方二名が参考人として意見陳述をし、これに対する質疑がございました。わが党は、本法案及びこれをめぐる諸問題について実体真実を発見し、法案審議に誤りなきことを期するために、さきの参考人に対するわが党の飯田委員の質問は、主として法務省側の言い分、主張をもとに質疑をしております。本日は、法務省及び裁判所に対する質疑でありますので、私は主として弁護士会側の言い分を参考にしながら質疑をしてみたいと思います。もちろん弁護士会側の言い分のすべて、そしてまた法務省側の見解のすべてに同調するものでないことを初めに申し上げておきたいと思います。 さて、まず申し上げておきたいのは、仮に本法案によりまして裁判の促進がなされても、再びハイジャッカーによって犯人が奪われるという可能性がある、このように指摘がされております。そこで、裁判の促進により奪われる囚人が、未決の囚人では司法権の中にあり、既決囚では法務省の中にある、こういう違いは出てくると思います。この囚人に対する所管の違いの面から言えば、確かに司法権であるかあるいは行政権であるかという違いはあるにしても、法秩序の侵害であることには変わりはないわけであります。このことにつきまして国民のふんまんは少しもおさまらないように思います。この点についてどのようにお考えでございますか。
○瀬戸山国務大臣 細かい専門的なことがもし必要であれば刑事局長からお答えをすることにいたしますが、いまおっしゃったように、この法案がどうしても必要である、こういう考え方をいたしましたのは、ハイジャック事件によって過激派の行動及び裁判に関連をいたしまして提案をした、これは前々から申し上げておるとおりであります。言われておりますように、この法案自身で過激派の犯罪といいますか、行動あるいはハイジャック等が防げるものではない、これは当然でございます。ただ問題は、こういう過激派の行動がだんだん頻繁に行われておるということは、まさに法秩序そのものがだんだん乱れつつあるということを証明しておるといいますか、それが見られるわけでございますから、こういう裁判なりあるいは法秩序を暴力によって乱そう、これに対してはただ一片のことではだめであると思います。やはり法秩序をいかにして維持するかという万般の方策を講じて、初めてああいう過激な行動も漸次防いでいける、こういう考えに立っておるわけでありまして、過激派の裁判によって裁判が乱されておる、憲法なり刑事訴訟法が志向しておる裁判が進められておらない、やはり法秩序の根本を正す、こういう意味からこういう一つの手段も講じておかなければならない、こういうことでございますから、これはハイジャックに何も関係ないじゃないかという、そういう単純な考え方でなしに、法秩序はあらゆる面においてこれを守るという考え方といいますか、体制を整えておくことが必要だ、かような観点から提案をいたしておるわけでございます。
○長谷雄委員 本法案の提案理由につきましては、最近における一部の過激派等の刑事事件の審理に見られる異常事態に対処するためのものである、このようにございます。そこで、本法案提出の背景にあるとされる過激派裁判の実情について伺いたいと思います。 さて、法務省は「必要的弁護事件における弁護人の正当な理由のない不出頭・退廷・辞任・解任の事例一覧表」を参考資料として提出をされております。この資料によりますと過激派の刑事被告事件関係として十三の事案が紹介されておりますので、この法案第一条に言う最近における一部刑事事件の審理に見られるような異常事態とあるのはこの十三事案のことを指すのかどうか、またこの十三事案は右に言う異常事態の全部を網羅したものか、それとも一部だけであるのか、この点お答えを願いたいと思います。
○伊藤(榮)政府委員 お手元の資料に掲載いたしました分は、過激派によりますいわゆる不当な法廷闘争戦術がとられた事例の代表的なものを挙げたわけでございまして、そのほかにも、たとえば俗称で申します新橋駅内ゲバ事件でございますとか武道館事件といったような例もございます。最も典型的なものをお挙げしておるわけでございます。
○長谷雄委員 この十三事案につきまして、私の見たところ、法務省が出されたこの資料と日弁連の側で出された資料、この資料がいずれもかなりの重要な部分で食い違いが見られます。そこで前回については先ほど申し上げましたように日弁連の参考人に対する質疑があったわけでございますが、きょうは法務省、主として裁判所に対する質疑でございますので、日弁連の言い分について私は聞いてみたいと思います。 まず連合赤軍事件でございますが、この連合赤軍事件については、いわゆる百回指定がなされたことから問題になっているようでございます。そこで、この連合赤軍事件では東京地裁が、およそ従来の常識では考えられない月六回のペースで百回先までの公判期日を裁判の記録も入手できない段階で強引に指定した、こういうのが弁護士会の主張であるわけでございます。 そこで私、この点を伺いたいわけでありますが、検察官は週二回の開廷を、弁護人らは月一回の開廷を主張していた。そして検察官が週二回の開廷を求めた理由は、一公訴事実について月三開廷必要である、検察側証人は四十八名を予定しており、主尋問時間二十時間ないし三十時間となる者も数名で、主尋問だけでも三百時間を要し、検察官立証に二百十開廷以上かかるということからであった、こういうことが書いてあります。この資料は日弁連の機関誌でございます「自由と正義」の一九七八年の二月号の六十一ページ以下に日弁連調査室長杉野修平氏の書かれた資料をもとにして質疑をしているわけでございます。こういう主張がございますが、このとおりかどうかを確認したいと思います。さらに弁護側の主張する月一回の開廷に検察側が反対した理由はなぜなのか、これをお答え願いたいと思います。
○伊藤(榮)政府委員 ただいま御指摘の連合赤軍事件につきましてはその経緯を若干御説明申し上げる必要があろうと思いますが、昭和四十七年七月にすべての起訴がこの事件について終了したわけでございますが、検察官といたしましては訴因の数が大変多い、訴因が合計七十に及んでおります。被告人別に数えますと実に延べ二百十二の訴因からなっておりまして、それぞれの訴因がいずれも殺人でありますとか強盗その他の重大事犯でございます。そのために検察官としては第一回公判期日をなるべく早くしてほしい、かつ集中審理をしてほしい、刑事訴訟規則に定められております集中審理をしてほしいというふうに申しておったわけでございますが、弁護人が準備のために年が明けてから第一回公判をやってほしいということで非常に強い要求がございましたために、裁判所では、第二回公判期日以後集中審理をやるために第一回の公判期日については弁護人の要求を入れまして、起訴の半年後でございます昭和四十八年一月に第一回公判が開かれたわけでございます。 第二回公判以後につきましては、検察官といたしましては、先ほどちょっと御指摘もございましたように訴因が大変たくさんございますし、ほぼ月一回のペースで公判をやっていきますと検察官立証だけで大体十六年から十七年かかるという計算になりますので、何とか週一回あるいは週二回、最初は週二回やってほしいという主張をいたしました。これに対しまして弁護人の方はとにかく月一回だということでございまして、双方の意見が平行線をたどりましてかみ合わない。そこで裁判所におかれましては、両方の意見がかみ合いませんから、余りにも隔たっておるので職権で期日指定を行うのもやむを得ないというふうに考えられまして、各弁護人に対して、すでに他の裁判の関係その他で予定されておる差し支え日を裁判所に申し出るように差し支え日記入用紙というものを交付して照会されたようでございます。これに対して、弁護人のうち一名を除きましてこの照会に応ずることを拒否されたようでございます。そこで、裁判所はやむを得ずこれまでの両方の主張の中間をとったような形で期日指定を行うということを全弁護人に告げました上、第二回から第百回まで週二回というのと週一回というのとを交互に組み合わせて一応の期日を指定されたのでございます。なお、その際、裁判所は、もし弁護人がこの百回の期日の中で他事件ですでに公判期日の指定を受けているなどの理由で差し支え日があるのなら、具体的な事情を付して変更請求をすれば期日変更を行ってもよろしいというふうにされたのでございます。 こういった裁判所の扱いは、要するに私ども裁判所の真意と申しますか、そういうものは裁判所がおっしゃいませんからわかりませんけれども、やはり裁判が長期化すれば当然証拠物の散逸あるいは証人の記憶の減退、それから検証すべき場所の変更等のいろいろな証拠が失われて検察官、弁護人双方の立証に多大な障害が生ずる、また被告人にとっても、争ってはおりましても長期間有罪無罪不確定のままに置かれれば、その被告人及び関係者の心理的苦痛ははかり知れないものがあるというようなことから、両方の話がかみ合わないということで職権で一応の指定をされた、こういう事情でございまして、もしそのようなテンポでいけばこの事件は相当スピーディーに進んでおったのではないかと思われる次第でございます。
○長谷雄委員 この百回指定があった後、弁護人らは第二回公判期日以降の九十九回の期日指定の取り消しを求めた。これに対して裁判所は、その取り消し変更申し立てに対してその都度却下決定をしていた。その後いろいろな折衝もあったと思われますが、弁護人は四十八年一月二十日、裁判官忌避申し立てを行ったが、同月二十二日に簡易却下された、こういう記載がこの「自由と正義」の杉野論文にあります。 そこで、四十七年十二月四日の九十九回期日指定から四十八年一月二十日の裁判官忌避申し立てのあるまでどのような折衝があったのか、お尋ねをしたいと思います。
○岡垣最高裁判所長官代理者 期日指定がありましてから、弁護人の方から裁判所の方へ、先ほどお話がありましたとおりに変更の申し出がございましたのですけれども、その変更の申し出というのは、具体的な事情を付して、たとえばこの期日のためにはこれだけの準備をしなければならぬから変えてほしいとか、あるいはこういう期日が別に入っておるからこれを変えてほしいとか、そういう具体的な申し出を付した期日指定の変更というのはなかったようでありまして、ただもっぱら、百回指定するのはけしからぬ、弁護権を奪うものであるというふうな抽象的な理由でもって強く期日指定の変更を求められるということであったわけであります。したがいまして、裁判所としては、それには最初からいろいろな御主張があったのを考えた上でお決めになったことでありますので、考えて決めたことを繰り返して同じようにおっしゃっても、すぐにそれは受けるわけにいかないということでございます。なおその間、裁判所の方へ弁護人がいらっしゃって、裁判官もお目にかかっているようでありますけれども、しかし、そのときにも具体的なこういう事情でというふうなお話はなかったと聞いております。
○長谷雄委員 この簡易却下決定に対して高等裁判所に即時抗告の申し立てがなされており、抗告審の決定は、四十八年一月三十一日抗告を棄却した。これについて日弁連の資料では、その決定文の一部を引用しております。決定文の全文に流れる趣旨については私なりに理解をしておりますけれども、日弁連の主張するようなものと理解してよろしいかどうか。
○伊藤(榮)政府委員 率直に申し上げまして、日弁連の方々のおっしゃいますのは、高裁の決定の中に、百回指定についていささか妥当性を疑わせる点がうかがわれないではないという文言があることを大変高く評価されるといいますか、俗な言葉で言えば、鬼の首をとったようなことでおっしゃるわけでございますが、全体をごらんいただきますとおわかりいただけますように、こういった事件の審理については「裁判所及び当事者が一体となって格段の努力をすることが特に要請されることは言を俟たないところであり、その方策として通常の事件とは異なる程度の集中審理形式をとることも止むを得ないところであり、裁判所の方針として右形式を採用する以上、弁護人としては弁護活動の方法に創意工夫をこらし、右方針に出来うる限りの協力を惜しむべきでないことも当然のことである。」こういう考え方が全体に流れておりまして、したがいまして、この高裁の却下決定がありましても、原審では直ちに百回指定を取り消すということなく、なお若干の経過を見た上で、やはり弁護人の強硬な抵抗に遭って、最後にはこれを取り消さざるを得なくなった、こういう事情でございます。
○長谷雄委員 昭和四十八年一月二十三日、第一回公判期日について伺いたいと思います。 裁判所は予定どおりこれを開廷したということでありますが、法廷の状況は平穏に行われたのではないでしょうか。
○伊藤(榮)政府委員 第一回公判期日におきましては、現在のところ詳細な状況の書類を持っておりませんけれども、人定質問程度でございましたので、大した荒れるというような現象はなかったのじゃないかと思います。
○長谷雄委員 日弁連資料によりますと、弁護人らは、四十七年十二月十九日、所属弁護士会の法廷委員会に調査の申し立てをした。これを受けて、三月十四日には、東京弁護士会が法廷委員会の調査に基づいて、意見書をまとめた。弁護士会理事者から裁判所に要望、意見書を手渡した、とあります。これについて「裁判所所長代行は、具体的訴訟指揮についてとやかくいうことはできない、と論評は避けながらも、弁護士会からの要望にある程度の理解を示した。」と記載があります。そこで、裁判所はこの意見書というものをどのように受けとめているか、お尋ねをします。
○岡垣最高裁判所長官代理者 いまのお問いにお答えする前に、第一回の期日の点について、裁判所からもちょっと補足して述べさせていただきたいと思いますが、第一回の昭和四十八年一月二十二日の期日は、これはいわゆる百回指定が弁護権、防御権の侵害であるということで、期日の変更申請をされましたけれども、これを入れられなかったということで、弁護人は不出頭でございます。それから被告人は、これはパンツ一枚、寝巻き姿で、机、ドア等にしがみついて暴れるなどして出頭拒否したということで、拘置所から裁判所へ連れてくることはできなかったわけでございます。したがいまして、第一回の期日はそういうわけで実質上何もできなかったということでございます。それから、こういう問題が起こりましてから、先ほど御指摘のとおりに弁護士会の方で裁判所の方へ文書でもって申し入れがございました。それに対する裁判所の方の受け取り方というものは、これは本来、個々の訴訟事件についてのトラブルの処理はその訴訟の中で処理すべきものであるというふうにまず考えたわけであります。したがって、それを弁護士会——これは弁護士さんの会でありますから弁護人に関係はあるでございましょうけれども、しかし当該訴訟の当事者という点から見ますと第三者の地位に立つわけでありまして、それから、裁判所の方がこういうことは妥当でないから考えろというふうに申し入れられるということは相当ではないというふうに受けとめました。 それから、それはまあ形式的なものでありますけれども、内容的に申し上げますと、そうすると裁判所の訴訟指揮が完全ではないかあるいは完全であるかということよりも、裁判所で一たん決めたことに対して変更の申し立てのしかるべき具体的な申し出もせず、そしてまたそのことによってどれだけの不利益を受けたかということによる具体的事件における上訴だとかあるいは異議の申し立てというふうな法的手段によらないで、事実上出てこないという、言うなれば実力行使でございますけれども、そういうことで裁判所の訴訟指揮を無にするというふうな態度、それが問題であって、そのことには触れないで、そういう裁判所の訴訟指揮はいささか妥当を欠くとか欠かないとかいうふうなことを言われるのは、これは問題のすりかえであり、筋違いであろうというのが受けとめ方でございました。
○長谷雄委員 それで結局「最終的には、四月一一日、裁判所は一〇〇回指定についてすべて変更あるいは取消すとの決定を行ったのである。」こう書いてあります。その理由については、日弁連は、裁判長の訴訟指揮が強権的であったからと言う。そして「連合赤軍事件において、弁護人の不出頭という事態が生じたのは、一〇〇回指定という裁判所の期日指定が唯一の原因だったもの」である、このように言っておりますが、そのように理解してよろしいかどうか。
○岡垣最高裁判所長官代理者 この百回指定の問題につきまして、これは非常に評価がいろいろございますけれども、これが非常に不穏当であって、それでけしからぬ、だからこれが原因なんだというお話が方々にあるわけでございますけれども、私どもはそういうふうには考えておらないわけでございます。 大体、これは先ほど法務省の方からも御説明がありましたけれども、この期日を百回指定する場合に、これは月六回の指定でございますが、これは裁判所の方としてみますと、十三名の弁護人の方が分担を工夫していただけば、共通の訴因についてたとえば二週間に一回ぐらい、個別の訴因について一カ月に一回ぐらいということで、その個別の訴因を幾つかやるという形でいけば、そう弁護人の方で期日についての負担を感じられないでもできるのではなかろうか、もし具体的にそういう準備が間に合わなければその時点で考えるということで決めたものでございます。 これに対して弁護人の方では、全弁護人が全部の期日に出頭しなくては十分な弁護はできないというふうなお話であったようでありまして、まず不当な期日は取り消せ、話はそれからだという態度であったわけであります。そういう高圧的な態度というものの裏にはやはり必要的弁護制度というものが控えているわけでございますけれども、では事実はどうか。 これは非常に意地が悪いようでありますけれども、私どもの方で実際に弁護人が御出頭になった期日を調べてみました。そうしますと、昭和五十三年五月に行われた第百二十二回の公判廷まで、公判期日の間に出頭されている率は大体四〇%でございます。これは計算のしようによりまして四三%とかいろいろありますが、大体四〇%。ということは、これは十三名の弁護人がいらっしゃいましたけれども、これがその事件事件に応じて、実際においでになっているのは二人の場合もあれば五人の場合もあれば三人の場合もある。要するに、これは手分けをしておられるからであります。そういう手分けをされるならば、大体月六回と言われても、初めからこれをお受けになっても、個々の弁護人にとってみれば月三回ぐらいお出かけになれば間に合うのではないかというふうに考えられるわけでありまして、私どもとしましては、実際に証拠調べに入られたのが第五十四回の公判でございますが、これは起訴から二年六月以上たっているわけであります。二年六月のこの期間というもの、これだけの間に、これは証拠調べが始まるまででありますが、これが五十四回であります。では一体その準備はどういうことになっているんだろうかというふうに首をかしげざるを得ないわけでありまして、そういう点から考えますと、裁判所が期日を取り消したということは、これはこのままにしておったのでは進まない、やむを得ないということで涙をのんで取り消したのでありまして、これは決してその措置がいささか妥当を欠くから取り消したとか、そういうものでは絶対ございません。
○長谷雄委員 それでは伺いますが、いわゆる百回期日指定の変更、取り消しのあった後の進行状況でありますが、そういうことで百回指定が変更になった後、月二回の開廷で進んでいるのでしょうか。また、その月二回の公判期日における実質審理は充実して進められていると理解してよろしいか。
○岡垣最高裁判所長官代理者 現在審理は順調に進んでいるのではないかという御指摘もございますが、しかしこれは順調という言葉の意味でございまして、審理がストップしているかと言えば、それは開かれております。ではその内容はどうかということになるかと存じます。それで、もちろん最近は不出頭、退廷という事態はございませんし、それから相当数の証人の取り調べもございます。しかしながら、たとえばいわゆる山岳ベース事件について申し上げますと、共犯者である証人一人の取り調べに十三回の公判期日を要しているわけでございますが、五十三年五月十六日現在、検察官申請で取り調べ未了の共犯者の証人が六人あります。このほかに主尋問だけで五回の公判期日だとか、あるいは反対尋問がそれに対して要求されているというふうな証人もございまして、こういうことから見ますと、山岳ベース事件の検察官申請の証人に対して調べる時間というものも、今後相当かかるであろうということが考えられるのでありまして、その山岳ベースの関係が終わった後に予定される浅間山荘事件に関する証人の尋問、それから分離された被告人の尋問等の現在審理中の被告人に関する尋問、その他、今度はその後にくる被告人の側の立証、反証というふうなことを考えますと、現在の進行状況というものは、ただ進んでいるということは間違いございませんが、では事件全体の処理ということを考えた場合に、必ずしも満足すべきものではないというふうに考えているわけでございます。
○長谷雄委員 日弁連資料によりますと「冒頭手続における被告人意見陳述に相当回数の期日を要したのは、裁判官交代による更新が三回あったこと、被告人の一人が病気のため開廷中に倒れ中断したことが数回あったこと、被告人一名が併合されたこと、数回に亘る訴因変更がなされたこと、などによる。」このように書かれてございますが、このように理解してよいか。 さらに次のところにありますが「証拠調手続は順調に進み、既に取調べられた証人数などは、〈別表2〉のとおりである。」別表2として、この六十八ページの中段の方に一覧表が載っております。このように言っておりますが、この証拠調べ手続はいつ始まったのか、そしてこの別表2記載の事件について被害状況などの外形的事実の立証はどこまで進んでいるのか、さらにまた各被告人の共犯関係における状況や罪体の立証はどこまで進んでいるのか、これをお答え願いたいと思います。
○岡垣最高裁判所長官代理者 最初に私の方から説明させていただきます。 この事件についての証拠調べは、先ほどちょっと申し上げましたとおりに第五十四回公判期日、昭和五十年の三月十三日から始まったわけでございます。その後意見陳述に時間を要した理由として、先ほどからの裁判官の交代だとか訴因の変更だとかいうふうなことが挙がっておりますけれども、それ自体、第一たとえば裁判官の交代による手続の更新というか、手続を初めからやり直すということでございますけれども、実質的な調べがぐっと進んでおりますと、それの手続の更新ということはかなり時間がかかるものと思われます。しかしそう実質的に進んでいない場合には、手続の更新というものはそう時間がかかるものではございません。それから裁判官の交代ということも確かにございました。しかしそれ自体によって空転したといいますか、時間がかかった公判の開廷回数というものは多くはございません。それから訴因の変更などもございましたが、これは何か弾丸の数が違っておるとか、それから傷害を受けた者の傷害の程度が少し変わっているとかいう程度の起訴状の記載の変更でありまして、これにはほとんど時間もかからないで終わったというふうに聞いております。
○伊藤(榮)政府委員 連合赤軍事件は、訴因が先ほど申し上げましたようにたくさんありますけれども、大ざっぱに分けて七つになると思います。七つのカテゴリーに入ります。第一が真岡猟銃強奪事件でございます。これについて現在までに立証が終わっているのが、共犯者三名、被害者一名の証人尋問、書証の一部、それから証拠物の一部の取り調べでございまして、まだ残っておりますのが分離組の被告人の証人尋問、それから書証の残りあるいは証拠物の残りの取り調べ、被告人質問等が残っております。 それから印旛沼リンチ殺人事件については、共犯者二人を含む証人八人の尋問が終わりましたが、なお分離組の被告人の尋問あるいは書証、証拠物の取り調べ、被告人尋問が残っておる。 それからM作戦事件と言われます一連の強盗等の事件でございますが、これにつきましては共犯者三名、被害者八名の証人尋問と書証の一部の取り調べが終わっておりまして、後に被告人尋問、それから書証の残り、証拠物全部の取り調べ等が残っております。 それから山岳ベースリンチ殺人事件、これは書証をつくりました者二十名の証人尋問、それから共犯者一名の証人尋問が終わって、なお共犯者七名の証人尋問が残っておりますほか、分離組の被告人の証人尋問、書証、証拠物の取り調べ、被告人尋問が残っている。 それから妙義山殺人未遂事件については、何ら証拠調べは行われておりません。 それから軽井沢駅傷害公務執行妨害事件、これも同様でございます。 それから浅間山荘事件についても何ら証拠調べがなされておらない。 これが現状でございまして、現在、立証に当たっております検察当局からの報告によりますと、真岡猟銃強奪事件、印旛沼リンチ殺人事件、M作戦事件はあと一年くらいで検察官立証が終わるであろう、それから山岳ベースリンチ殺人事件につきましては、五年から七年で立証が終わるだろう、永田の逮捕されました妙義山殺人未遂事件、これは半年ぐらいで終わるであろう、それから軽井沢事件は半年ぐらい、浅間山荘事件は六年ぐらいで終わるであろう、こういう報告を受けておりますので、以上の報告を私の方で計算しますと、検察官立証があと十三年から十五年、こういうことになろうかと思います。
○長谷雄委員 同じ日弁連資料の六十九ページの中段に、こういう記載があります。「一部マスコミにより、本件裁判が「今後四十年もかかるだろう、といわれる有様である」といわれている。」と毎日新聞の五十二年十二月二十二日の社説を引用しております。 そこでお尋ねをしたいのですが、現状のまま進行した場合、あとどのくらいかかる見込みか。いま刑事局長の答弁ですと相当年数かかるということでございますが、前回五月十二日の日弁連の参考人の方の意見ですと「一審だけで五年ですか。」という質問に対して「一審だけであと二、三年、もうちょっとかかるかどうか、それはわかりません。」こういう答弁がございますので、どのぐらいかかるか、ちょっと日弁連の意見と刑事局長の御意見が違うので、私ども、これから将来のことについての判断はとてもできないのでお尋ねをするわけです。
○伊藤(榮)政府委員 先ほどもお答え申し上げましたように、今後月二回のペースでこのまま公判が進行し、かつ弁護人が退廷してしまうというような事態がないという前提のもとに計算しまして先ほど申し上げたようなことでございまして、これも検察当局といたしましては、遅い裁判は裁判の意味がないということが言われますとおり、とにかく早く裁判を進行させたいということで、きわめて証拠を厳選して、普通の事件では考えれらないぐらい少ない証拠で立証を図っておるわけでございまして、それを客観的に計算して、やはり十三年から十五年、検察官の一審における主立証にかかる。そういたしますと、弁護人がどういう反証を用意しておられますか全くわかりませんのでこれの計算ができませんが、仮に検察官の半分かかったとしても、七年ぐらい弁護人の被告人の反証にかかる。恐らく、私どもこれは有罪になると確信しておりますが、そうなれば、控訴申し立てになるようなケースではなかろうか。控訴でもこれは無罪になるということはないと思いますが、そうすると上告されるのではないか。こういうことを計算していきますと、まことに考えたくないことでありますが、一般的に言って数十年かかる可能性があると言わざるを得ないのであります。
○長谷雄委員 この連合赤軍事件については、まだ詳細にお尋ねしたい点がたくさんございますが、時間が、きょうは一時間という持ち時間が約束されているようでございますので、次に移りたいと思います。 次は、連続企業爆破事件についてお尋ねをします。これについても、やはり日弁連の主張と法務省の見解がかなり違いがあるように思われます。そこで、私は真実を究明するためにお尋ねをしたいわけでありますが、これもやはり日弁連の、先ほど申し上げました杉野論文によりますと、その六十九ページの一番下の段の(1)のところに「不出頭の経緯」について書かれております。 それについては、同事件は当初「狼グループ」関係が東京地裁六部に、その他が同五部に係属していた、そこで弁護人は、六部の事件を五部に併合するよう求めたといってその理由が書かれてあります。そして弁護人らは両部に併合の申し立て書を提出をした。それに対して裁判所は、それぞれ併合についての棄却の決定をなされた。こう書いてあります。この併合は却下された理由が裁判所と弁護人あるいは被告人の見解の違いからで、不出頭だとしているけれども、その辺があまりはっきりしないのでありますが……。
○岡垣最高裁判所長官代理者 いわゆる企業爆破事件につきましては「狼グループ」と称するものとそれから「大地の牙グループ」それから「さそりグループ」とこういうふうに三つのグループが被告人の中にございまして、起訴されておる事件は全員が同一ではないわけでございます。そうしますと、ある一つのその中の事件を調べているときに、それに全く関係のない被告人が出頭して待っておらなければならないということになるわけであります。それからまた、逆に今度は、ある被告人、その一部の被告人については証拠調べが全部済んでおるにもかかわらず、ほかの公訴事実で起訴されている事件の被告人があると、それまで判決を待っておらなければならないというふうなことになるわけでございます。したがいまして、裁判所としましては、できるだけ——簡単な事件で、すぐ終わりそうな見込みのものは別といたしまして、かなり争われ、かなり複雑そうな事件で、時間もかかりそうだというふうな場合には、やはり訴因を中心にしまして合理的な分け方をする。それで、この訴因について出てくればいい被告人というのはこれだけである、この訴因についての被告人はこれだけであるということで分けるわけであります。 この場合、二つの部に分かれておりましたのも、結局、たとえば熱海七士の像爆破だとか、横浜総持寺納骨堂爆破だとか、北大アイヌ衣裳陳列ケース爆破だとか、旭川風雪の群像爆破だとか、天皇特別列車爆破計画だとか、こういうものは「大地の牙」「さそり」なんかには全然関係ございませんので、こういう被告人はこちらで審理しようというわけで、言うならば公訴事実を中心にして分けたものでありまして、それを一緒にいたしますと、審理期間、判決まで著しく延びるということで被告人らの申請を受け入れなかったわけであります。
○長谷雄委員 続いてお尋ねしますが、同じ資料によりますと、七十ページの中段でありますが、(2)のところに、五十年「一二月一七日、刑事五部において裁判所・検察官・弁護人との間で打合せがもたれた。席上、裁判所から、仮に当部で事件が併合されたら被告人は次回期日から出廷するかどうか、との釈明があった。これに対して、弁護人は「弁護人の地位にかけても、被告人の出頭を説得する」と返答し、」「および、併合された後の手続進行について「冒頭手続の進め方、公判期日は月二回とする、各公判期日において一時間程度の被告人・弁護人の打合せ時間を設ける」旨確認され、調書に作成された。」そして「休憩をおいて打合再開後、裁判所から全被告人について刑事五部において併合審理するよう決定した」と書いてあるのですが、そのとおりの経過と伺ってよいか。
○岡垣最高裁判所長官代理者 昭和五十年十二月十七日の併合決定に際しまして、裁判所と弁護人との間でいろいろ話し合いがあったことは先ほどお読みになったとおりでありますが、ただ、月二回の開廷ペースによって審理するという申し合わせ、これは、審理の進行状況あるいは審理の段階のいかんにかかわらず、そういう二回だけで進むという申し合わせがあったということであれば、それは事実に反するというふうに思われます。 すなわち、本件で被告人及び弁護人の要求を入れてこれを併合することといたしました昭和五十年十二月十七日に、検察官を交えた打ち合わせが二度持たれておりますが、その場合の申し合わせの内容というのは、その当日の打ち合わせ調書によりますと、第一回の打ち合わせの場合には、併合した場合においては弁護人側は原則として月二回の公判期日を受ける、ただし、将来立証段階に入った場合の公判期日についてはその段階で別に考慮するというふうなことであったわけであります。 第二回目の打ち合わせ、これは併合決定後に行われたわけでありますが、この場合、検察官からは、検察側の意見としては今後月に三回から四回くらいのベースで期日を指定してほしいということの申し入れがありました。裁判長は、最初の打ち合わせの際に了解を与えたように、裁判所としては一応原則として月二回ということで進行していきたいと思っているけれども、今後の審理の進行状況に応じて、その都度時宜に適した期日のやり方をしていきたいというふうに考えておるというふうに言明しておるわけでありまして、こういうふうに、当分の間月二回程度の開廷ペースで審理するとの一応の申し合わせはございましたけれども、進行状況のいかんによってはこれを検討することとされていたことは明らかでございます。
○長谷雄委員 それでは第三回公判の、つまり併合後の昭和五十年十二月二十五日の期日でありますが「人定質問のあと、被告人・弁護人は、併合決定の理由を説明されたい、と述べた」、こう記載されております。そこでお伺いしたいのでありますが、通常裁判所が弁護人らの要求に基づいて、その理由はともかくとして、併合や分離などの決定をした場合に、その決定の理由を求めるのかどうか、これが通常のやり方と理解してよいか、この点お尋ねをします。
○岡垣最高裁判所長官代理者 裁判所が、最初分離してあったものを、こういうわけでぜひ併合してほしいという申し出があって、それを併合決定をした場合に、また法廷で、なぜ併合したのかというふうなことを聞かれるということは私どもとしてはちょっと想像もできないことでありますし、現実にこの事件以外にそんなことをされた例は聞いたことがありません。
○長谷雄委員 七十ページの後段でありますが「その後、さきの一二月一七日の確認に従って、月二回の開廷ペースで進められ、局部的には法廷が若干混乱する事態もあったが、次第に審理は円滑に進行するようになり、」という記載があります。そのとおりに理解してよいかどうか。 そしてまた、そうだとすれば、五十一年十一月十一日までは大した波乱もなかったのではないかと思われますが、いかがでございましょうか。
○岡垣最高裁判所長官代理者 第三回に併合しまして、それでそのときに、いまお話が出ました、なぜ併合したのか理由を言えというふうなことで荒れて、結局被告人、弁護人不在のところで起訴状を読まざるを得ないような状況になったわけでございますけれども、その次の第四回、この場合には法廷警察権の問題でいろいろと被告人の方から陳述がありまして、結局この日は、第四回の期日は実質的に何も進められなかったわけであります。第五回と第六回は、被告人側の事件に対する意見陳述がございました。それで第七回、これは四月十四日でございますが、これは、被告人全員と、それから傍聴人五名に対して退廷命令が出ております。それから弁護人側も一名だけ残して退廷しております。したがいましてこの日も実質的には何もできなかったということになると思います。それから第八回目、これは第三回の公判で、要するに荒れたところで、弁護人もいないところで起訴状を読んだということはけしからぬということが問題になりまして、その異議の申し立てがある。これを中心にした論議がございまして、この日も実質的には何も進まない。第九回、これは六月九日でございますが、前期日で起訴状を読んだことに対する異議の申し立てについての理由をいろいろ陳述して、そして検察側がそれに対する反対の意見を述べられるということでこの日も一日終わってしまっているわけでありまして、何も進んでおりません。それから十回目が、被告人が意見陳述中に被告人と傍聴人とが騒いで、被告人全員と傍聴人七名が退廷命令を受けたということでございます。ですから、以下、裁判長交代までそれほどスムーズに進んだというわけではありませんし、その後もそうスムーズではなかったというふうに考えられます。
○長谷雄委員 次に十四回公判でありますが、この公判廷で「弁護人の一名が監置十日間の制裁処分を受けた。その理由とするところは、同弁護人が、被告人らの退廷執行にあたった看守の足を蹴る等の暴行に及んだというものであった。」こういう記載があります。ところがこれに対して、日弁連の資料によりますと「むしろ、弁護人の方こそ看守から暴行をうけたのであり、」こう言われておりますが、そのとおりではないでしょうか。
○岡垣最高裁判所長官代理者 第十四回の公判期日につきましては、これは私どもある意味で興味を持ちましたのはこれは日弁連でお出しになっております「自由と正義」の昭和五十三年二月号七十五ページに、企業爆破の第十四回公判で弁護人の監置制裁に至る経緯を指して、これを強権的訴訟指揮の例であるというふうに指摘しておられるので、では、この強権的訴訟指揮とよく言われる内容はどういうものだろうかということで興味を持っているわけでございますが、この第十四回の公判においては、午前十時十二分から午前十一時まで約四十分間、弁護人と被告人との打ち合わせが法廷で行われたわけであります。大体法廷での打ち合わせということも、私どもとして考えれば、どうして事前にそういうことを弁護人の方で準備しておかれないのだろうかというふうに考えるわけであります。もちろん法廷で証人なんかを調べてすぐ、あっ、あの点について打ち合わせしなければということはございますから、法廷での打ち合わせは皆無じゃございません。しかし、この日の内容は起訴状の内容の釈明というふうなことでございましたので、ですからこんなことをその場でまたやらなければならないということはちょっと解せないわけでございますが、いずれにしましてもそういう打ち合わせがありまして、その後、前回に引き続いて起訴状に対する釈明という ことが行われたわけであります。その釈明がずっと続きまして、その日の午後五時九分に、もうきょうはこれで終わるということになったわけであります。裁判長は、これで終わるということで閉廷を宣したわけであります。ところが、被告人らが発言を続けておって、なかなか退廷しようとしないわけであります。それで裁判長は、この中で 一人の被告人、片岡という被告人だけはそういう態度をとらなかったようでありますけれども、その片岡という被告人を除くその他の被告人に対して退廷を命じたわけであります。ところが退廷しないので、今度は東京拘置所の職員らがこの退廷命令を執行しようとかかった。ところが被告人は、執行しようとした拘置所の職員に対して、帽子を突き飛ばすとか、あるいは手で殴るとか、あるいは顔面を突くとか、つばを吐きかけるというふうな激しい抵抗があったわけであります。また、ある弁護人の一人が、被告人らの退廷の執行をしようとしている東京拘置所の職員に対して、その足をけるという暴行を加えた。そのために裁判長は、この弁護人をやむなく退廷、拘束ということで拘束命令を発し、それを執行し、後で監置十日に処した、こういう経過になっております。したがいまして看守と被告人との間あるいは看守と弁護人との間に体の衝突があったことは間違いありません。しかしそれが、看守の暴行をとめようとした——それは、看守の執行を妨害しようとしたというのであれば正当であろうと思いますけれども、暴行をとめようとしたというのは、私はその評価は間違っているのではないかと考えます。
○長谷雄委員 結局監置処分を受けたということでありますが、その監置処分の最終決定はどのようになったのか、お尋ねします。
○岡垣最高裁判所長官代理者 監置の決定はそのまま現実に執行されたわけでございますけれども、確定の関係でございますか。
○長谷雄委員 そうです。
○岡垣最高裁判所長官代理者 監置の決定に対しては即時抗告がございまして、高等裁判所で棄却となったわけでございます。
○長谷雄委員 それで確定ですか。
○岡垣最高裁判所長官代理者 はい。
○長谷雄委員 「次回期日の一一月一七日、」と書いてありますが、これは、ほかの資料から十一月十一日の間違いではないかと思います。この日に第十五回期日があったわけですが、この期日で弁護人、被告人全員不出頭があった。その理由は、この資料によりますと「弁護人らは、看守らの暴力について裁判所の厳正な監視体制が約束されないのでは、今後安心して弁護活動できないと、前回の裁判所の措置に抗議して不出頭となった。」と述べているわけでありますが、十五回期日において、天皇在位五十周年記念式典に抗議して退廷したという事実が法務省見解では出ているのですが、このことについてこの日弁連の資料によりますと、これの七十四ページの中段のところでこの事実を強く否定をしております。事実関係をお教え願います。
○伊藤(榮)政府委員 先ほど裁判所からお答えのありましたように、第十四回公判で弁護人の一人に監置の処分が行われたわけでございますが、その後十一月一日から十日まで、被告人らは東京拘置所の中におきまして秋季闘争と称しまして、口口に天皇在位五十周年記念式典粉砕などと叫びましてハンストを行いました。その後の十一月十一日に十五回公判期日が予定されておったわけでございますが、この日、被告人はハンスト明けでございましたが、素っ裸になって衣類を全部便器の中につけて出廷しない、弁護人も出廷されなかったわけでございます。 ところで、私の方で調べてみますと、十一月一日から十一月十日まで、すなわち天皇在位五十周年記念式典粉砕秋季闘争期間中に、弁護人四名が全被告人に延べ十二回接見しておられます。そういう状況があり、当日、十一月十一日には弁護人は裁判所の裁判官室まで来ておられながら、裁判所の出頭要請を無視して被告人らに同調して公判期日に出頭されなかったわけでございます。被告人と弁護人との接見内容についてはもちろんわれわれ知る立場にございませんけれども、ただいま申し上げました経緯から見まして、弁護人の方々は、被告人らの天皇在位五十周年記念式典粉砕秋季闘争に基づく不出頭に同調されて出頭されなかった、こういうふうに考えざるを得ないと思っております。
○長谷雄委員 次に、第二十一回公判期日でありますが、五十二年一月の十四日に被告人、弁護人全員不出頭のようでありますが、この不出頭の理由は何かをお尋ねします。 あわせて、不出頭にもかかわらず公判手続が行われたようでありますが、それはどういうわけかお尋ねをします。
○岡垣最高裁判所長官代理者 二十一回の期日には弁護人全員不出頭になりましたけれども、これは裁判長が指定した月四回の法廷の期日というものは受けるわけにいかない、それはやはり弁護人の弁護権を奪うものである、防御権を奪うものである、こういう御主張で、それを裁判所が入れなかったので不出頭ということになったものであります。 その場合に、裁判長の方が弁護人不出頭、被告人不出頭にもかかわらず一定の手続をされました。証拠調べもされました。それはどういう理由かと申しますと、その期日の前までの間に、弁護人それから被告人に対しましても、次回期日にはこういうことをやりますよ、審理の内容を告知してあったわけであります。それから、その前日に弁護人が来られて——たしか前日だったと思いますが、弁護人が来られて、そこで打ち合わせをされた場合に、とにかく弁護人の方では絶対に出ないとおっしゃる、出てほしい、もし出られなくてもいたしますよ、そういう予告はしてあったわけであります。被告人の方にもそのことは同時に予告してあった。 そういうことが前提になりまして、そして裁判長のお考えになったことは、その当時なぜこういうふうにやるかということを詳しく決定に書いておられるわけでありますけれども、いまちょっとそれがすぐ出てこないものですから、私の読んだ記憶で申し上げますと、要するに、刑事訴訟法には確かに必要的弁護事件において弁護人が不出頭の場合には公判を開くことができない、開廷できないという規定があるわけでございます。この規定は、その裁判所の考えでは、これは憲法上の要請ではないというふうにまず考えておられます。それで、刑事訴訟法上そういうことが決められている。なぜなれば、それは慎重な審理をする、そのためには弁護人がおられて防御されるということが好ましい、たとえ被告人が要らないと言っても、それは弁護人をつけた上でやるべきである、こういう丁重な審理、また別の意味では絶対的真実と申しますか、そういう意味での国家の利益、国の利益から見て弁護人をつけろ、こういうことがあるわけであります。 ところが、それと同時に、刑事訴訟法でも憲法でも、迅速な裁判ということが要求されております。それから、裁判所というものは、いわば当事者間に争いがある場合に、ほうっておけば、それはもうあとは実力で解決をつけるほかないわけでありまして、言うなれば内ゲバといいますか力で相手を屈服させるほかないわけでありますけれども、それをもう一つ別のところから両方の言い分を聞いた上でこうだと決める、裁判所が決めたところには従ってもらうのだ、それがなくてはだめであろうということからできておるわけでありますが、そういう裁判所というものに対しては、やはり言ったことは守ってもらう、そういう権威がなくてはいけない。その権威をもうどろ足で踏みにじられることがあっては、それはやはり現在の憲法体制あるいは訴訟法の体制が考えるところではあるまい。そうしますと、言うなればそういう裁判所の権威、というよりむしろ裁判というものの構造そのものだと思いますけれども、そういうものの維持、それからその迅速な裁判という一つの要請、それからもう一方、国の立場から見て、丁重な審理をする上では弁護人がいないところでは開いてはいかぬという要請、この二つの利益が衝突している場合だというふうに考えられたわけであります。 二つの利益が衝突する場合に、一方の利益だけが絶対に妥当する、ほかのいかなる場合でもその利益だけが優先するというふうには考えられないであろう。具体的事案に即して考えた場合には、他方の利益が場を譲る場合もあってもいいであろう。それで、本件の場合にはまさにその場合に当たるという判断で、しかもそれは弁護人の場合でございますけれども、被告人の場合については、被告人が裁判所をなみするような行動をすれば、三百四十一条で、もういなくてもやれるわけであります。訴訟の場で、もちろん弁護人は大切でありますけれども、一番大事なのは被告人であります。懲役の宣告を受けて入るのは弁護人ではありません。死刑の宣告を受けて執行されるのは弁護人ではありません。したがって、最も大事な被告人についてすら、そういう裁判所をなみするようなことがあれば排除して裁判をやるんだということになっているわけであります。ただ、これはいつまでもそうやっていいというものではない。つまり、被告人には代替性はありませんが、弁護人には代替性がある。したがって、その代替性のある弁護人を付した上でやりなさいということでできているものでありますから、ですからその三百四十一条が直ちに準用になるというものではありませんけれども、しかしその当時の事情その他具体的な事情を考えれば、この場合には準用してやっていい、これがその五部のとられた立場であるというふうに私は理解しております。
○長谷雄委員 必要的弁護の例外的な扱いについての憲法論をお話しなさいましたが、その憲法論についてはまたじっくり時間をかけて質問したいと思っておりますので、次に進みます。 法務省資料によりますと、第二十二回公判期日、つまり五十二年一月二十一日から、第二十三回期日の五十二年七月二十九日までの六カ月間審理をしていないように思われますが、これはどのような理由からそうなったのかお尋ねします。
○岡垣最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。 弁護人が辞任されたものでありますから、裁判所としましては被告人に対してさらに私選弁護人を選任するかどうか照会したわけでありますけれども、なかなか選任するということをしません。いつまでもほうっておくわけにいかないので、それで裁判所から弁護士会に対して国選弁護人の推薦方をお願いいたしたわけであります。この場合は東京三会にお願いしたと思います。三会に対して数人の国選弁護人の推薦をお願いしたのでありますけれども、三会の方では、これは事情をお話しすれば長くなりますが、こういう事件の国選弁護人を引き受けてくださる方の発見はなかなかむずかしゅうございまして、努力はされたのでありますけれども、結局むずかしい。国選弁護人が推薦できないということになると、もとの私選弁護人が復帰されるのが一番いいであろう。それで、もとの私選弁護人が復帰されるようにひとつ所長代行、その当時の刑事の所長代行のところへ、あっせんしてほしいというようなお話もありました。それで所長代行の方は、これはあっせんするというふうなものではございませんが、そういうお気持ちをお持ちであるならば当該部の方へ、弁護士会の方では国選弁護人の推薦が非常に困難なので、もとの私選弁護人が復帰してもいいと言っておられるようだから、会ってみてはどうかというふうな希望を持っておられるがどうされますかという連絡をしたわけであります。当該部は、代行のお話を聞きまして、そう言っておられるならば、やむを得ないからお目にかかろうということでお目にかかって、私選弁護人であった方と話をしたわけでありますが、私選弁護人の方のお立場では月二回ということをどうしても貫徹したい、それから裁判所の方では、月二回ということを言っていたのではなかなか国民の信頼にこたえるだけの早い審理はできない、したがって二年もしくは、遅くとも三年ぐらいにこの事件が終わるように計画を立ててほしい、その二年、三年で終わるのならば、それは何回になってもいいわけだけれども、二年、三年で、いままで弁護側の方で主張しておられるような証拠の関係、つまりどの程度の証拠を同意して、どの程度の証人を調べるかというふうな問題についての状況から考えると、とても二回ではいかぬから、四回にしてほしい、あるいは裁判所も一歩下がって三回という話も出されましたが、話がなかなかつかなかった。それで結局最後に、原則として二回で一年間続けてみて、そして一年たって、それはたしかちょうどことしの六月いっぱいと思いますが、六月いっぱいまでの審理の様子を見て、その結果、これではとても国民の期待にこたえるような審理にはならないであろうと考えた場合には、裁判所の方も期日の増加を弁護人の方に話す、弁護人の方もそれについては前向きに検討するという趣旨で折れ合って、それでもとどおりの月二回ということで審理が始まることになったわけであります。 結局、根本は、こういう事件ではなかなか国選弁護人を引き受けてくださる方を求めることは困難である。今回の場合も弁護士会では非常に努力されましたけれども、ついにそれができない、やむを得ずもとの条件へ返った、こういうことになるわけであります。
○長谷雄委員 日弁連の七十三ページの後段に書いてある資料によりますと、この連続企業爆破事件については、結局「審理は円滑に進められ、証拠調べも極めて順調に進行しており、訴訟進行についての混乱もない。このまま審理終了まで推移することについて現在障碍となる事情も見当らないのである。」こう書かれておりますので、私はこのように理解したいと思っておりますが、いかがでしょうか。
○伊藤(榮)政府委員 月二回のペースでそろそろと順調に進行しておるということでございますが、この連続企業爆破事件というのは、御記憶かと思いますが、十七件の爆破事件から成っておるわけでございまして、現在十番目の韓産研事件というのに入ろうとしておるところでございます。いままで比較的スムーズに証拠調べが行われたとされますものは、被害者の診断書を書きましたお医者さんの証人尋問、それから検証調書、あるいは実況見分調書をつくった者の証人尋問等が中心でございまして、争いようもないような証拠が主でございます。 長くなりますのではしょって申し上げますが、今後の立証予定としては、残りました韓産研、オリエンタルメタル、間組、京成江戸川橋、興亜観音、総持寺納骨堂、北大北方文化研究施設、風雪の群像等々の爆破事件関係及び犯罪と被告人の結びつきに関する立証でございまして、最小限証人をあと百七十名尋問する必要がある。それから証拠物、爆弾の破片でございますとかそういうものにつきましての取り調べが必要である。もちろん被告人四名の尋問等がございまして、これは連合赤軍事件よりは早く結審できるのではないかと見ておりますが、それにいたしましてもなお数年かかるのではないかと思います。 なお、この事件の特色としまして、弁護人側の反対立証が相当かかるのではないかというふうに検察当局では見ておるようでございます。と申しますのは、従来の弁護人、被告人らの言動からいたしますと、日本帝国主義の東南アジア侵略の歴史、革命運動の歴史、朝鮮民族の歴史、台湾の歴史、アイヌの歴史等々について膨大な冒頭陳述並びに立証を計画されておるやにうかがわれるわけでございまして、これを裁判所が全部お入れになれば相当時間がかかりますし、お入れにならなければまた荒れる法廷になるということになろうかと思われまして、そういう意味で、これは検察官立証よりも今度は弁護人立証の方で相当時間をとられる案件のように検察当局では見ております。
○長谷雄委員 この連続企業爆破事件については、週刊新潮のことしの六月一日号に「「弁護人ぬき裁判」反対運動をキャンペーンする朝日新聞の「赤旗」調」という表題で書いてあるのですが、その中で、この事件の被害者、殺害された人の実弟が語るということで百四十三ページに記載があるのですが、この被害者が語ったとされていることについてお尋ねをしたいのですが、この被害者について法務省のどなたかがお会いになったことがあるのかどうか。もしお会いになったとすれば、この被害者の調査の経緯とその結果についてお答えを願いたいと思います。
○伊藤(榮)政府委員 先般私どもでは刑事局及び法務総合研究所が協力いたしまして、連続企業爆破事件の被害者及びその遺族の方々につきまして、お目にかかれるすべての方に個々面接をいたしまして、被害の実態それから被害感情、裁判に対する意識を調査いたしますとともに、あわせて今回御審議いただいております特例法についての認識の程度等について調査をさせていただきました。起訴状に書かれております方々の中から、現在外国にお出になっておる方などを除きまして、百三十二人の方にお目にかかりまして、ただいま申し上げましたような事項について調査させていただいたわけでございます。 その調査の過程で、連続企業爆破で兄さんを亡くされました方が、ぜひ話を聞いてくれ、私はマスコミには愛想が尽きた、何とかあなた方の口から国会へお話をしてくださいということで、特に録音をするようにおっしゃいまして、御意見を録音させていただきまして持ち帰っております。御指摘になりました週刊誌の記事に引かれておりますのはその方の声だと思います。
○長谷雄委員 まだたくさん取り上げて逐一質疑をしたいのでありますが、きょうは時間が一時間という制約でありますので、次の機会にまた、この法案提出の背景にあるとされている過激派裁判の実情についてお尋ねをしたいと思います。 最後に、こうした過激派裁判の実情について、弁護士会側の主張ですと、現在は平穏に審理が進行している——ただいまも刑事局長等の答弁がございましたが、その中でも、荒れてはいない、こういう趣旨の御答弁がございました。したがって、本法案の立法化は不要である、こういうことを言っております。これについて伝聞によりますと、平穏になっているのは裁判所が弁護士側に屈服したからだと言い、また四月十八日の衆議院本会議における法務大臣の答弁によりますと、最近ようやく落ちついておることは事実でございますが、これはこういう提案の話が出てきたからだ、こう言っておられるわけであります。いずれにしても、平穏に審理が進んでいるということであればそれ自体は大変結構なことであると思うわけでありますが、平穏になった原因について法務省当局はどのようにお考えになっておりますか。
○伊藤(榮)政府委員 ただいま御指摘になりましたことに尽きるように思っております。それは、先ほど来、最高裁の刑事局長からもお話がございましたように、執拗な法廷闘争戦術を繰り返すことによりまして、裁判所が弁護士、被告人のペースでしか公判期日を入れられない、結局、最後に妥協してと申しますか屈服をして、弁護人、被告人の主張する公判開廷ペースで現在公判が行われておるということが、個々具体的な事件の一つ一つをとってみますと、一見順調、平穏に審理が進んでおる原因であろうと思います。 それから、私ども各検察当局からの報告を聞きましても実感を持って痛感しておりますのは、この法案の話が出ましてから過激派事件の弁護人の方がまことに約束をよく守り、公判前の三者で打ち合わせました時間のペースに従って反対尋問等を行われておる、こういうふうに報告を受けておりまして、それは大臣がお答えになりましたように、この法案は提案したこと自体ですでに意味があったわけで、逆に考えますと、もしこの法案が廃案になった場合、また同じような現象が出てくる、こういうふうに率直に考えておる次第でございます。 なお、先ほど来申し上げておりますように、月二回あるいは一回というペースで凶悪な多数の犯罪を犯したとされておる被告人がゆるゆると審理を受けておるという状況、これに対してその当該事件の被害者はもちろん、その被害者とともに泣くことのできる人たち、これは歯がみをしておるのじゃないかというふうに思っておるわけでございます。
○長谷雄委員 さらに弁護士会側は、こうした不幸な事態に対処して、その解決に当たっては個々の事件ごとに裁判所、検察官、弁護人の訴訟関係者の協議によって必ず円滑化を図ることが可能だ、こう言っております。私も、人間という共通の基盤に立って、しかも社会から尊敬を受けるべき立場にある法曹として互いに話し合えば必ず道は開けてくるし、またそうでなければならないと考えております。この話し合いによる解決の可能性ということについて法務省はどのように考えているのか。 またこのことに関連して、憲法記念日に際して、五月の二日でございました、最高裁の岡原長官は、話し合ってもむだだ、こう言い切ったと伝えられておりますが、裁判所はどのように考えておられるのか、お尋ねをします。
○伊藤(榮)政府委員 法曹三者は、申すまでもなくわが裁判制度を支えていく三つの柱でございますから、相互に十分協議を尽くして意思の疎通を図るべきことは申し上げるまでもないところでございます。 ただ問題は、一部被告人の法廷闘争戦術に同調してきわめて不穏当な法廷闘争戦術をおとりになる弁護士さん、こういう方に対して弁護士会の統制が十分有効に及んでいない現状にかんがみますときに、法曹三者の話し合った結果がすなわち当該一部の弁護士さんの態度の是正という形ではね返ってくるものとはちょっと考えられないわけでございます。 それからさらに、現在法曹三者の話し合いの場といたしましては、中央に三者協議会がございまして、各地方ごとに第一審強化方策協議会というものがございまして、定期的に法曹三者の意見の交換をやっておるわけでございます。これにもう一つ、日弁連の最近御提案になっておりますような協議会というようなものをつくりますことは屋上屋を架することになるだけではないか。のみならず、その法曹三者の話し合いによって具体的事件の期日指定とか訴訟指揮のあり方が決まっていくというようなことになれば、これはもう裁判の独立に対する、極端に言えば侵害のおそれがきわめて大きいわけでございまして、そういう裁判所の専権に属するあるいは裁判長の専権に属することに、第三者でございます法曹三者協議会というようなものが介入するということはきわめて適当でないのではないかというふうに思っておりますので、私どもは弁護士会としての御提案のお気持ちは大変評価いたしますけれども、現実性のない御提案であろう、かように考えておる次第でございます。
○岡垣最高裁判所長官代理者 ただいまの問題につきまして、私どももこういう問題で、裁判所が弁護士会あたりから悪いのは裁判所の訴訟指揮が悪いからだというふうなことを言われたり、そしてまた裁判所の方としては、弁護人の方の態度がおもしろくないからこういう結果になるのだというふうなことを、ビラを配ったりはいたしませんが、ここで問われればそういうふうに答えるというふうなことは非常に残念なことでありまして、お話しのとおりに話し合いでこの問題が解決つくものならばそれにこしたことはないというふうに考えるわけであります。しかしながら——しかしながらと申し上げるときは大体必ずしも結論的には賛成できないということになるわけでありますけれども、つまり三者の中で、指揮命令系統といいますか、上がこうだと言えばずうっと通るのは実は検察官だけであります。裁判所もそうでありますし、それから弁護人もそうだと思いますが、不覊独立、それぞれその事件の担当に当たっておりまして、裁判官に至っては、たとえば法律でも憲法に違反しているということで守らない場合だってあり得るわけでありますから、ですから三者の話し合いでこうしよう、ああしようというふうなことが仮に決まったといたしましても、それが個々の事件に当たってどこまで徹底できるかということはこれは非常にむずかしいというふうに思うわけであります。それを抽象的に申し上げた。 そうしますと、いわんや、今度日弁連の方で御提唱になっております三者の法廷の調停と申しますか、法廷でトラブルが起こった場合にはそれを解決するように三者で委員会を設けてということ、これは何と申しますか、もう本当に裁判所の訴訟指揮の当否ということを訴訟物にする別個の裁判所をつくるのと全く同じことでありまして、こういうことは裁判所としてはもう絶対に賛成できないというふうに考えております。 そこで、そういうことであるとすれば、解決できる方法というのは、それは一方では制度的な手当てであり、その制度的な手当てについては、これは対症療法的なものと、それから根源的な病根をえぐり出すようなものと、二つあると思います。それからもう一つば当事者の自覚ということでございます。当事者の自覚ということが十分に行われますればこの問題はもちろん解決がつくのじゃなかろうかというふうに考えます。ところが、いままでの経過を見ますとそれは非常にむずかしいわけであります。それで、あるいは弁護士会の方は裁判所は相変わらず強権的訴訟指揮をやる態度を改めないからだめだというふうにおっしゃるかもしれません。そうすると私たちの方から申し上げますと、弁護士会の方でいろいろおっしゃっていること、なさっていることはこれは実は裁判のあり方ということからもう一度考え直していただきたいというふうに思うわけであります。それは東大事件などで、あれほど荒れました、そしてそれに対して懲戒の申し立てがありました、それに対する綱紀委員会あるいは懲戒委員会などの反応ということを見ますと、要するに弁護人は被告人の利益に忠実にやるべきであって、そのためには裁判所のやったこと、訴訟指揮が不当であると思えば、それは単に法的な手段によって是正を求めるだけではなくて、ある程度の、何といいますか、それは暴力をふるうわけじゃありませんけれども、事実行為といいますか実力をもっても、たとえば法廷に出てこないとかあるいは同じ質問を何度でも何度でも繰り返す、それを聞くまでは証人調べもさせないとか、そういったふうなことにまで出るのも、これもやむを得ないというふうなお考えがあるように見受けられます。それは法律新聞などに出ております。現在の弁護士会でも非常に有力な方々で、私どもがりっぱな方だなと思っているような方が書いておられるもの、話しておられること、そういう内容を見ましても、やはりたとえ裁判所が決めても不服であれば徹底して争う、こういうこと、それも徹底して争うのも理論だけではなくて、事実として繰り返し繰り返し主張し、弁論して——弁論というか、本当に物理的に裁判所の行為をストップさせてでもやむを得ないというお考えがあるように見受けられます。それが、もし裁判所が一度決めたらそれに従ってやるのだということになれば、もちろんこういう問題は起きないのだろうというふうに私は考えております。したがいまして、その点のあれが改まらない限りはなかなかこれはむずかしかろうというふうに考えておるわけであります。
○長谷雄委員 時間も参りましたので、ただいままでの質疑の中で再質問をしてさらに答弁を得たい問題もたくさんございますが、それは全部次回に譲りたいと思います。 以上で終わります。
○保岡委員長代理 正森成二君。
○正森委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、いわゆる弁護人抜き裁判についてこれから質問をさせていただきますが、理事会の約束で各党一時間程度でとりあえず一巡をするということですから、この法案の重要性にかんがみて、種々問題点のすべてをお聞きするわけにいきませんので、きょうは本法案の周辺的な事実について若干の質問をさせていただきたいと思います。 〔保岡委員長代理退席、山崎(武)委員長代理着席〕 念のため委員長にお断りしておきますが、理事会でも、当然質問は十分に尽くせないし終了できないであろう、残った場合には次回適当な機会を与えられるということでございますから、その点は安んじて質問をさせていただきたい、こういうぐあいに思います。いいですな、委員長。 それでは民事局長に伺いたいと思いますが、この弁護人抜き裁判法案と並んで司法書士に関連する法案が出ておりますが、その御担当は民事局の第何課でございますか。
○香川政府委員 三課でございます。
○正森委員 私が聞いておりますところでは、五月二十日に東京司法書士会が東京商工会議所の大会議室で定例総会を行いました。そのときに動議が出まして、弁護人抜き裁判法案に反対をするということで、去る九日に行われました日本弁護士連合会の決議並びにその前に行われました東京弁護士会の決議を支持する特別決議を採択したようであります。ところが、きわめて奇異なことに、そういう決議を採択したことについて、司法書士会について非常に関係が深い、現に国会に提案されております司法書士法の所管官庁である民事局の第三課が、関係者を呼び出して事情聴取をしたようであります。そういう事実があるのかないのか、もしあるとすればどういう意図のもとに行われたのか、その経過を詳細お述べいただきたいと思います。
○香川政府委員 三課の方で関係者を呼びまして、さような決議に至った経緯、趣旨を聞いた事実はございます。それは、私どもの考えでは、司法書士会は、司法書士法にも規定されておりますように、会員の品位保持と業務の改善を図るために会員の指導、連絡を目的とする、そういう特殊法人でございますので、そういう会がただいま御指摘のような決議をするのはどういうわけだろうかという疑問がございましたので、私から指示して聞かしたわけでございます。
○正森委員 私は非常に奇異なことを承ると思うのですね。品位を保持すると言いますが、こういうように国論を二分している憲法違反の疑いのある弁護人抜き裁判について一定の意思を表明するということが別に品位を汚すわけではない。もし品位を汚すとすれば、日本の全国の弁護士会や心ある団体は全部品位を汚しておることになる。また、弁護人抜き裁判について反対決議をしたからといって、それが会員の親睦の妨げになるわけではない。大多数が一致して決議ができるものであれば、より同志的な結合というものはできることになるわけであります。 しかるに、現在、司法書士会が司法書士法の改正について非常に強く望んでおるというところにつけ込んで、事もあろうに日本の国民のすべてが持っておる政治的意思あるいは法案についての賛否の意見の表明を行ったことだけで、官庁が呼び出してその経緯や事情を聞くなんというのはもってのほかじゃないですか。そういうことによって弁護人抜き裁判を通すための世論をつくり、反対する世論を鎮圧しようとしておる。それはもちろん与党の意を受けてやっておるというように思われても仕方がないじゃないですか。私は、それは法務省として断じてなすべきことではない、そういうように思いますが、いかがです。
○香川政府委員 ただいま仰せのように東京司法書士会を弾圧してこの法案を通そう、そういうふうな意図によったという御指摘ははなはだ心外でございまして、司法書士会の本来の活動というのは那辺にあるべきかということは、これはどうも私の考えと正森委員の考えとは若干——若干じゃなくて相当違っておるようでございますけれども、率直に申しまして、この決議がされた経緯というものを聞いたところによりますと——私どもはそういう決議があったのは赤旗にいち早く載っておりましたのでそれで知ったわけでございますが、東京の定時総会におきまして、東京弁護士会の役員の方が来賓として祝辞を述べられまして、その祝辞の中に、東京司法書士会に対しまして自分たちの刑事事件の公判開廷の暫定特例法案についての反対決議を支援してもらいたいという要請があったようでございまして、そういう要請を受けて一部の司法書士から、緊急動議としてさような支援する旨の決議の動議が出されまして、実際東京司法書士会のその当時出席しておりましたメンバー、つぶさには存じませんが、率直に申しまして、この法案の内容をそうつぶさに知っておるとは私も思わないのでありますが、千五百人以上の会員を抱えておって強制加入になっておる、その会員の中にはいろいろの考え方の人がおられると思うのでありますけれども、そういう会員を一定の——今日におきましてはこの法案に対する賛否というのはあるいは政治問題ではなかろうかと私は思いますけれども、そういった問題について決議をするということは、私どもの見解によれば決して好ましいこととは考えないわけであります。したがって、その辺の経緯なりあるいは趣旨を承っておくということは、私は弾圧というようなことは縁遠いことだ、かように考えるわけでありまして、さような意図は毛頭ないことをはっきり申し上げておきます。
○正森委員 非常に弾圧というお言葉が好きだとみえて、みずから弾圧という言葉を使われましたが、弾圧といってもいろいろあって、私は古典的な意味であなたが言っておられるとは思わないのですね。 その前に申し上げますと、いま赤旗とおっしゃいましたが、私はそういう答弁があるだろうと思ってここにその記事の載っている赤旗を持ってきましたけれども、はからずも民事局長からわが赤旗が正確かつ迅速な記事を報道しておるというおほめの言葉をいただいたので、これが記録に残されたということは非常に結構であるというように思っております。 しかし、それにしてもいまの答弁の中にはからずも出ておりますように、司法書士会が弁護人抜き裁判について反対の決議をすることは決して好ましくないというか、当を得ていないという目的あるいは認識で呼んだということをはっきり認めておるのですね。だから、そういう民事局長の意を受けた民事第三課長の言動というものは、おのずから司法書士会の幹部に反映されておると見なければなりません。そうしますと、幾ら強制加入だといいましても、民間の団体である一定の団体に、行政官庁が一定の圧力をかけたという評価は、弾圧という言葉を使うかどうかは別として、これは否定できないというように思うのですね。そういうことは行政官庁として慎むべきではないか。私どもに非公式に耳に入っておるように、それがもし与党の一部から行政官庁に対して事情を聞くべきではないかというような示唆があったとすれば、いよいよもってけしからぬというように思うのです。 法務大臣に伺いますが、民事局長は自分で責任をひっかぶって一応ああいう答弁をしましたが、私はこういうようなことに行政官庁が動くということは決して好ましいことではない、こういうように思いますが、大臣としては、誤解を招くそういう事情聴取というのはやめるべきではないか、こう思いますが、御所見はいかがですか。
○瀬戸山国務大臣 そのことは、私はいまここで初めて承ったのでございます。 先ほどから民事局長も申し上げておりますが、司法書士には司法書士の職務、権限、目的があるわけでございます。そのまた団体、司法書士会あるいは司法書士会連合会、司法書士の職務の研さんあるいは地位の向上等を図るための団体、これは法務省の監督下にあるわけでございます。でありますから、全然無関係と言うとこれはおかしゅうございますが、司法書士そのものに直接関係のある問題ではないのに突然そういう決議がなされた、それはどういういわれであろうかということを事情聴取をするのは、これは人々によって感覚が違うかもしれませんが、それほど問題にすべきことではない、私はさように考えております。
○正森委員 法務大臣は、初めてきょう聞いたところだからという前提のもとにそういう答弁でございましたが、香川民事局長は、明らかにそういう決議をするのは好ましくないという前提で聞いておるわけですから、「目は口ほどに物を言い」という言葉がありますが、恐らく目つきでも口つきでも好ましくないということを表現したに違いないと思うのですね。そういうことは、私は決してなさるべきではないということを重ねて指摘したいと思いますし、それから、いま法務大臣の答弁の中に、司法書士会というのは法務省の監督下にある、だから聞くのは当然だと言われましたが、そういうお考えであるとすると、現在弁護士法を改正して弁護士会について一定の統制を行うということが自民党筋から発言されておりますが、ますます。こういう一些事をもってしても私たちは事の危険性を感じざるを得ないということを指摘して、次の質問に入らせていただきたいと思います。(発言する者あり)何ですか、言いたいことがあるのですか。言いたいことがあるのなら、そこへ出て私の質問に答えてください。(発言する者あり)それじゃ要らぬことを言わないように、委員長指図してください。それとも国対副委員長がここへ来て何か指導しておるのですか。
○山崎(武)委員長代理 質問を続けてください。
○正森委員 何か言うてください。そういうことをちょくちょく言われると質問がなかなかできない。
○山崎(武)委員長代理 不規則発言は注意します。
○正森委員 法務大臣に伺いたいと思います。 法務大臣は法務委員会において所信表明をなさいました。その中ではこういうことを言っております。 「第一に、法秩序の維持についてであります。」中略「また、当面最も警戒を要するのは、過激派各派の動向であり、国内においては、新東京国際空港開港阻止闘争、狭山事件に関する最高裁決定に対する抗議行動等に見られるように、火炎びんや時限式発火装置を使用して関係施設等に対する襲撃を繰り返しているほか、いわゆる内ゲバ事件の発生も後を絶たず、また、国外においても、いわゆる日本赤軍を中心として、きわめて重大な犯罪行動を反復敢行しております。特に、先般のダッカ日航機ハイジャック事件において、最も凶暴な爆弾事件等の犯人のみならず、殺人、強盗等の重大刑事事件の犯人をも釈放せざるを得ないという最悪の事態に立ち至ったことはいまだ記憶に新たなところでありまして、新たな要員を得た日本赤軍が再びこの種の国際的テロ事犯を敢行するおそれも多分にあり、その再発防止対策が当面の急務であることは申すまでもありません。また、かかる過激派各派の不法越軌行動は、いわゆるバスジャック等の模倣事犯を誘発するばかりでなく、一般国民の間に法に対する無力感を生むおそれなしとしないのでありますから、私は、このような情勢に対処するため、関係諸機関との緊密な連絡協調のもとに、検察体制を整備充実して厳正な検察権の行使に遺憾なきを期し、もって法秩序の維持に努めてまいる所存であります。」こう言うておられます。私はこの所信表明の趣旨を正確に読んだつもりでございますが、現在もそういう御意図にはお変わりございませんか。
○瀬戸山国務大臣 現在もそのとおりでございます。
○正森委員 そうしますと、大臣としてはここで言うておられる「また、かかる過激派各派の不法越軌行動は」云々と、こうなっておりますから、新東京国際空港開港阻止闘争あるいは内ゲバ事件、日本赤軍、こういうものは全部過激派各派の不法越軌行動である、一連の関連を持っておるという前提のもとの御発言ですね。
○瀬戸山国務大臣 組織その他はいろいろだと思いますが、底流に流れておるのは、現在の国家体制を崩して、彼らはどういう国をつくるのか知りませんけれども、現在の法律、裁判に従わないという基本的な考えが流れておると私は見ております。
○正森委員 この政府・法務大臣のお考えは、当然のことながら与党のお考えでもあるというように私は拝察いたします。 ここに現在委員長代理として委員長席におられます山崎武三郎君の四月十八日の本会議における本法案についての質問がございます。それは私とは立場を明らかに異にいたしますが、それなりに筋の通った御意見であります。いまここでその一部を朗読させていただきます。 過日の成田新空港施設に対する極左暴力集団の襲撃事件は、わが国の治安上きわめて憂慮すべき事態を生ぜしめたばかりでなく、わが国の国際的信用をも著しく失墜せしめるに至ったのでありますが、さらに昨年のハイジャック事件を初め、彼らによってこれまで繰り返されてきた過激な犯罪行為は、法秩序そのものに対するあからさまな挑戦であり、その防遏のためには、あらゆる方策を強力に推進してこれに対処すべきであります。(拍手)なかんずく、彼らによる不法越軌行動に対しては、徹底した取り締まりと並んで、迅速にして厳正な処罰を行うことが何よりも肝要であると考えます。 ところで、成田新空港開港阻止を呼号する過激派集団による不法事犯については、過日の管制塔破壊事件を除いても二千人以上が検挙され、起訴された者も五百名を超えていると承知しております。しかるに、第一審の裁判が終了した者はその一部にすぎず、四百名以上の被告人についての裁判は、いまなお延々として行われており、その多くは、第一審判決に至るまで今後十数年を要すると言われております。 そして、これらの事件の中には、昭和四十六年に発生した警察官三名が火だるまになって殺害された事件も含まれており、一方、無事の市民二百名近くを殺傷した連続企業爆破事件や浅間山荘事件、リンチ殺人事件等のいわゆる連合赤軍事件においても裁判は遅々として進まず、審理終結時期の見通しすら立たない状況にあると聞いております。しかも、これら事件の被告人中四名が、その後発生したクアラルンプール事件及びダッカ日航機ハイジャック事件において、日本赤軍によって外国に奪い去られたのであります。 このような事態に対処するためには、これら過激派による不法事犯の検挙、取り締まりをさらに徹底すべきでありますが、いかにこれを徹底したとしても、裁判が右のような状況にある限り、彼らによる不法事犯の防遏はとうてい期し得ないと思うのであります。 そこで、まず第一に、政府は、かかる過激派の法秩序に対する挑戦行為に対し、どのような決意をもって臨もうとするのか、また、右のような過激派事件の裁判の現状につき、どのような認識を持っておられるのか、これらの点について総理並びに法務大臣の御見解を承りたいのであります。(拍手) こうなっております。 それに対して、総理並びに法務大臣が答弁をされております。恐らくこの答弁は現在においても維持されているというように思いますので、まことに失礼でございますが、法務大臣の答弁は省略させていただきまして、総理の答弁が簡にして要を得ていると思われますので、朗読させていただきます。 お答えを申し上げます。 ただいま御質問の中で、民主主義を憂い、法秩序を守る、その決意を秘められての御所見、私の考え方と全く同じでありまして、その御見識に対しまして心から敬意を表します。(拍手) 法秩序が厳正に維持されることは、民主主義法治国家存立のための必要最小限度の条件であります。暴力をもって法秩序を破壊しようとする者に対しましては、国民各位の理解と協力のもとに断固たる態度をもって臨む所存でございます。 こういう考え方に基づきまして、第一には、このような破壊行動に対しましてはその検挙、取り締まりを徹底させる。これが第一。第二には、迅速、厳正な刑罰の実現を図る、こういうことであります。本法律案は、そのような考え方に基づくものでありまして、今日の社会の状態また裁判の運営、そういう状態を見てみますると、この法律案が一日も早く成立する、これは民主日本を守り抜くためのぜひ必要な要件である、このように考えております。 ぜひとも御協力のほどをお願い申し上げます。(拍手) こうなっております。 この総理の御見解は、法務大臣だけでなく、すべての国務大臣を含めた福田内閣の御認識でありますかどうか、伺いたいと思います。
○瀬戸山国務大臣 そのとおりでございます。
○正森委員 さようでありますという御答弁がございました。 そこで、運輸省来ていますか。——運輸省に伺いたいと思います。運輸大臣は、成田空港の開港に当たっていろいろな行動をとっております。私は、これは運輸大臣として心情において無理からぬ点はあったかもしれないとは思いますが、その中には、以上のような与党の考え方やあるいは政府首脳の考え方と比べてみて看過することのできない問題点を含んでおる、こう思いますので、閣内の意見がどのようなものであるかを知るために、本来は福永運輸大臣に出てきていただきたいのでありますが、法務委員会で、ここへはなかなか出てこれないようでありますから、かわりに高橋航空局長に伺いたいと思います。大臣でなければ答えられないような点もありますから、どうしても答えられない点は答えられないと答えていただいて結構です。ただ、事前に、なるべく大臣の意を聞いてきてほしい、こう言っておりますから、答えられる分は答えてください。 運輸大臣は、反対同盟が福田首相やあるいは福永運輸相らにあてた声明書、公開書簡というものがございましたね、それに対してみずから親書をお出しになったということでありますが、その経緯並びに親書の簡単な要旨についてお答えください。
○高橋(寿)政府委員 お答えいたします。 反対同盟は、委員長戸村一作氏の名前をもちまして四月の十七日に声明書という形で運輸大臣あてに文書を出しました。声明書ということでございますので、直ちにその場で読み上げて、私どもはテレビで知ったわけでありますが、その手紙そのものは翌日配達証明つきで届きました。これはすでに新聞に報道されているとおりのものでございますが、その結びといたしまして、政府と反対同盟との対話実現のための対等の立場を保証する原則的要件としてという前提で三つのことを掲げておりまして、北原、秋葉、石井武の三名を初めとする百六十八名の即時釈放、二番目に、開港計画の凍結と二期工事区域に踏み込まないこと、三番目に治安立法の撤回と機動隊の即時撤退、こういう三つのことを対話を実現するための条件だという形でいわば申し入れをしてきたわけであります。そこで、これを受けまして、このことをめぐっていろいろ議論があったわけでございますけれども、私どもといたしましては、成田空港をめぐる数々の問題の中で、地域の農民に対する問題が、やはり十二年間の経過を振り返ってみまして心配りの足らない点があったのではないかということを反省いたしまして、もちろん成田空港用地千六十五ヘクタールのうち、わずかに残っておりますところは四十ヘクタールでございまして、この四十ヘクタールの所有者を中心とする農民の人たちが最後まで抵抗しているということでありますけれども、これに至る過程におきましても、地元の農民に対する接し方につきましてはやはり反省すべき点もあったんじゃないかというふうなことを私ども考えておりまして、今後成田空港を開港し、また続く第二期工事も進め、そして成田空港周辺の平和を保つというためには、何としても、一番反対の核になっております反対農民の人と話し合いをいたしまして、そしていわゆる反対の根を断つということが基本的に必要であるということを認識いたしまして、実はいろいろのいわゆるルートを通じまして接触をいたしました。十二年間の歳月の隔たりがございますので、そう言いましてもなかなか簡単にパイプは通じませんでしたけれども、しかし反対同盟の中にも、この際そういった政府の姿勢を前向きに受けとめて何らかの形で接触をしようという空気は出てきたわけであります。 具体的には、三月二十八日、例の三・二六事件の翌々日でございますが、反対同盟の副委員長石橋氏を中心に、数十名の農民が雨の中をバスでやってきまして、事務次官と会って、ひとつ今後対話をしたいということを申し入れていったわけであります。そういうことを踏まえましていろいろ努力をしてまいりました。そのさなかに、こういう声明書が出てまいりました。 先ほどお読みいたしました三つの条件というものにつきましては、政府の立場としてはなかなか応じにくいものでございました。いずれにつきましても大変な問題がございますので、これについてはなかなか応じにくい。しかしながら、反対農民がバスでやってきた、そして対話を求めたいということを言ってきているという事情、その他いろいろのルートから入ってくる話といたしまして、反対同盟の内部には、この際、政府と話をしてみたらどうかという意見もあるやに伝えられている報道もございまして、私どもとしては、この際、反対同盟として運輸大臣あてに手紙が来たのでありますから、この手紙に対しまして所見を申し述べる必要がある、そういうふうに考えたわけであります。しかしながら、いま私、ここに持っておりませんが、三条件に具体的に答えるということは、この際、内容的に非常に困難である、しかしながら運輸省としては、成田問題十二年の歴史を振り返って、やはりこの際、大変不幸な事態であったことを率直に認め、今後の対応といたしましては、皆さん方とひとつ話し合いをしてみたい、そして何よりもこの北総台地の農業の展開ということについては多大の関心を持っている、そこで、皆さん方の農業経営の将来について話し合いをしよう、こういう趣旨の手紙を五月九日に私どもの局の参事官が戸村一作氏に手渡しました。彼はそれを持って成田へ帰ったわけであります。手紙の大要は、いま持っておりませんが、いま申し上げましたようなことでございます。
○正森委員 お断り申しておきますが、私は、成田の事件に関しましても、暴力的な活動を行っている者及び反対同盟のこれに同調する一部幹部と、それから土地に愛着心を持っている農民というのは区別して考えたいと思います。そういう意味で、運輸省が、土地に愛着を持っている農民の土地問題等について話し合いを考えておるということすべてを否定するものではありません。また、成田空港の、ここまで問題がこじれました原因について、最初の土地の買収のときに十分に農民との話し合いが行われなかった、審議会にすらかけられなかった場合もあるというような問題や、あるいは空域の不備の問題や、騒音対策が不十分な問題や、ジェット燃料の輸送について土地関係者の十分な理解を得られていない問題や、それらについて改善すべき点を改善すべきであるという主張は、私たちは一貫して持っているわけであります。しかし、それにもかかわらず、いま高橋航空局長がお答えになりました中に、反対同盟が三つの条件を出してきた、その三つの条件の一つは、北原同盟事務局長ら逮捕者百六十八名の即時釈放という条件と、それから三番目には、成田関係の特別立法の撤回と機動隊の撤退ということがあるわけですね。この二つというのは、まさに国の政治の根幹にかかわる問題である。しかも第一条件に至っては、これは司法権の独立と非常に関係のある問題であるという認識が、これは政治家であればだれでもそう思うと思うのですね。 私は、法務大臣に伺いたいと思いますが、このような要求は、先ほど私が読み上げました法務大臣の所信表明「特に、先般のダッカ日航機ハイジャック事件において、最も凶暴な爆弾事件等の犯人のみならず、殺人、強盗等の重大刑事事件の犯人をも釈放せざるを得ないという最悪の事態に立ち至ったことはいまだ記憶に新たなところでありまして、」こういうぐあいに言っておられますが、こういう事態と性質において事を同じくするものではないかというように私は思いますが、いかがです。
○瀬戸山国務大臣 お尋ねの趣旨をちょっと理解しかねておるのですが、反対同盟の方から三条件を出されたのに対して、それをどうするこうするという措置をとっておるわけじゃありませんので、ちょっと理解しにくいところがあります。
○正森委員 私の言っているのはそうじゃなしに、反対同盟のこのような三つの条件というのは、ダッカ・ハイジャック事件で凶悪犯人の釈放を要求した、それと性質を同じくするものではないか、こう聞いておるのです。対応が同じであったと言っているのではないのです。
○瀬戸山国務大臣 似たようなことであろうと思います。
○正森委員 そこで、高橋航空局長に伺いたいのですが、私は手元に、新聞に載りました書簡の要旨を持ってきておりますが、その中では、いわゆる三条件については正面切って答えておらないというのが、この朝日新聞に載りました書簡のこれは全文だと思いますが、これでもわかると思います。 しかしながら、その後、五月十一日に参議院の運輸委員会において委員の質問に答えて、この百六十八名の逮捕者の釈放について福永運輸大臣は、福永個人として保釈に努力したいというように答えております。これは事実だと思いますが、その間の経緯を御説明ください。
○高橋(寿)政府委員 私、速記録がございませんので記憶によってでございますが、たしか五月十一日の運輸委員会におきまして、成田関係の例の特別措置法の審議の過程におきまして委員の御質問があったわけでございますが、たしかそのときの委員の方の御質問は、先ほど私が名前を言いました北原、秋葉、石井武という三名、この人たちの釈放についての質問であったと記憶いたしております。この三名の人は反対同盟の仲間でございまして三・二六事件で逮捕されました百六十八人のうち、この三人だけがいわゆる地元の反対同盟の同盟員であった。そして北原鉱治氏は反対同盟事務局長でありまして、この人は農民ではございませんが、たしか秋葉哲、石井武のこのお二人は農民であります。そしてこの三人は、他の管制塔乱入等を初めとする百六十八人の過激派とは、地元の農民ないしは地元の反対同盟員という形で恐らく多少立場が違うのじゃないかというふうなお気持ちで質問なさった先生は、この三人の釈放について努力する気はないかというお話があったのだろうと思います。日は忘れましたけれども、このことがあります幾日か前の状況といたしまして、たしか千葉県の知事さんが反対同盟に対しまして、対話をする気はないかというふうな働きかけをなさったことがあるように記憶いたしております。そのときに反対同盟側の応答は、三人の幹部がいま入っているので相談のしようがない、したがって、この三人の幹部が出てきたところで、反対同盟として話し合いについてどうするかということを決めたい、こういうことを知事に答えたという経過はございました。そこで、その日の大臣の答弁も、いま速記録がございませんから正確に覚えておりませんけれども、この反対同盟三人、いわゆる農民を中心とする反対同盟三人の保釈について、大臣は働きかけあるいは努力をするつもりはないかというふうな質問に対しまして運輸大臣は、いわゆる公の人、つまり政府の一員である大臣という立場では何ともいたしかねるけれども、人間福永としては、というふうな言葉を使われたように記憶をいたしておりますけれども、検討してみたい、こういうふうな答弁をされたように記憶いたしております。
○正森委員 記録を調べますと、司法権と関連することでむずかしいが、人間福永として保釈に努力したい、こういうように答えておられるようであります。 そこで、私は瀬戸山法務大臣に伺いたいと思うのです。運輸大臣として努力するという場合と、運輸大臣福永健司個人として、人間として努力したいというように使い分けられるものでございますか。政府はダッカ事件だとか過激派事件について断固たる態度をとる、こう言っておる。そしてそれに一番大事なのは、逮捕し、取り締まること、それからわれわれから見れば直接関係がないのに、弁護人抜き裁判をやることだ、こう言っております。ところが一番大事な逮捕し、取り締まるという点について、こういう弁護人抜き裁判を提案してきておる政府が、司法権の独立に介入してまで保釈に努力したいということを言うのは、こういう法案の提出理由自体を根本から滅却してしまうものではないか。政府はそもそも逮捕されている者について、ダッカ事件と同じように、百何十名釈放しろという条件に甘い態度をとる、事もあろうに現職の大臣が、人間個人として釈放に努力したいというようなことを言う、そういうようなことで対応しながら、一方では弁護人抜きで裁判をやらなければだめだ、こう言ってきたって、理屈としてそんなものが通用しますか。 高橋航空局長に伺いますが、福永さんは運輸大臣としてはやっておらないというなら、人間個人として、三人のうち二人は保釈されたそうでありますが、どういうことをやったのか、ここの席でお答え願いたい。
○高橋(寿)政府委員 私は、大臣がどういうことをおやりになったか、あるいはやらなかったかについて、全然承知いたしておりません。
○正森委員 そうすると、こういうことを言うてははなはだ失礼ですが、福永運輸大臣はリップサービスをなさったわけですか。過激派に対してこういうことをちょいと言うて新聞に出れば、多少いい反応があろうかということで、リップサービスをなさったのですか、そうなのか。高橋航空局長という、事航空関係についてはいわばふところ刀に隠して、知られないように何かをやったのか、どっちなのですか。
○高橋(寿)政府委員 私は大臣から、この発言に基づいてどういう行動をとったというふうなお話を直接伺っておりません。したがって、おやりになったかもしれませんし、おやりにならなかったかもしれないわけであります。ただ私としては、大臣が大臣の立場で答弁なさったことでありますならばこれをフォローする責任がございますが、人間福永個人としてということでございましたので、私はあえて大臣にこのことを伺わなかったわけであります。
○正森委員 はなはだ都合のいい言葉があるものでありまして、人間福永として保釈に努力したいというようなことを言っても、人間福永なんという抽象的なものはこの世の中に存在しないので、かつて吉田内閣の官房長官をされ、政治経歴赫々たる現職の運輸大臣福永健司以外には福永健司という人間はないのです。そういう人物が事もあろうに、釈放しろ、こう言うのに対して協力するというようなことを言っておって、この弁護人抜き裁判における四月十八日の本会議での政府与党山崎武三郎君の質問の趣旨、それに対する与党総裁であり総理大臣である福田赳夫君の答弁の趣旨、これとどのようにして矛盾することなく整合的に考えたらよろしいのか、瀬戸山法務大臣の御教示をお願いします。
○瀬戸山国務大臣 人間福永健司君がどういうことをしたか、私は全然知りません。またそういうことをやる余地はないのじゃないかと思います。私も、参議院の法務委員会だったと思いますが、共産党の橋本委員から質疑を受けました。これは新聞報道でございますけれども、そういう三条件ということが言われておるが、その中にいまおっしゃったように釈放の問題がある、それについて法務大臣はどう考えるかというお話があり、私は、そういう要求があったから釈放すべきという問題ではない、ただし、まだ被疑者として調べ中でありますから、それが刑事訴訟法の手続によって拘束しておく必要がないと裁判所が判断すれば釈放になることはあるでしょう、それ以外にはないと思います。こういうお答えをしておるわけでございます。福永運輸大臣、と言うとまたひっかかりがありますから、福永個人、これは運輸大臣の職にあるわけでございますが、心情的に、行政府はやはり緩急よろしきを得なければならない、私もさように思っております。でありますから、ああいう三・二六事件があって、その後地元の農民との間は非常にエキサイトしてしまって、これはだれしも考えることでありますが、先ほど高橋航空局長も話がありましたけれども、やはりこの段階になっても何とかして地元の農民の皆さんとは話し合いをして、そして理解の上で円満に解決できるものは解決したい、私はその道をたどり、できればそうあってもらいたい、福永運輸大臣にもそういうことを、しばしば私の意見を申しておるわけでございます。あなた、命をかけても何とか話し合いをして円満に解決する方法をとってもらいたい、福永君もそういう心境でありました。でありますから、できれば、いわゆる過激派と言われる人々じゃなくて農民の一部でございますから、外に出る機会があれば、これは幹部に当たる人のようでございますから、もっと話し合いがうまくいくのじゃないか、そういう心情を吐露したのじゃないか、私はこれはあながち非難すべき問題ではない。さればといって、暴力によって要求をされて、刑事事件として逮捕されている者を、その圧力によって釈放する、かようなことは断じて考えておらないと思います。
○正森委員 いま法務大臣から、裁判所が保釈すべきものは保釈するでしょう一それは当然のことだと思いますね。刑事訴訟法八十九条には権利保釈の規定がありますから、権利保釈になるべきものはなるでしょうし、権利保釈の要件が備わらなくても、裁量保釈できるものは裁量保釈するでしょう。しかしそれは裁判所が独自の判断で決めることであって、たとえ人間としてであろうと何であろうと、行政官庁が当事者の一方から、釈放しろ、釈放することが円満話し合いの条件で、釈放しなければまた三月二十六日の管制塔乱入事件のようなことをやるぞ、いわばそういう通告であります。それに対して甘い態度をとるということは、これは福田内閣の基本的な姿勢にも反するのではないか。 現に、ここに私は、三月二十九日の参議院における本会議の議事録「新東京国際空港の開港延期及び新東京国際空港における極左暴力集団の不法行為について」の緊急質問の議事録を持っております。その中で福田赳夫総理大臣はこう言っているのですね。「しかし、今回のこの事件、また、最近いろいろの事態が起こっておる、そういうことを考えますと、制度的にも、またその制度の運用上においても、私は、少しこの種の暴力、また秩序破壊の行動に対しまして、どうも政府も国民もみんな寛容な面があり過ぎたのじゃないかということをしみじみと感じておる次第でございます。」つまり、いままでどうも寛容だった、しかしこれからは寛容でないようにやる、こういう態度ですね。ところが、いま法務大臣のお答えを聞きましても、三月二十六日にあれだけのことが起こっておるのに、そういうことが起こったときには政治というものは緩急よろしきを得なければいかぬという意味のことをいま言われたと思うのです。緩急よろしきを得るといいましても、地元農民といろいろ胸襟を開いて第二期工事の問題について土地取り上げが行き過ぎにならないように話し合いをするなどということは、これは大いに政治としてやらなければならぬ。しかし、幹部三名を含む百何十名を釈放しろとか、機動隊を出すなとか、そういうことについては話し合えることと話し合えないことがあるのではないですか。もしそうでなければ、私はいま法務委員会でこの弁護人抜き裁判法案などを審議するということ自体が無意味であるというように思うのです。
○瀬戸山国務大臣 暴力の排除をするための警察力の行使あるいは警戒、あるいは百六十何名かの犯罪者と見られる人々を拘束しておる、これを釈放するなどとは全然考えておりません。
○正森委員 刑事局に伺いたいと思います。刑事局長なり公安課長がお答えください。 話し合いというようなことをやりましたが、その後いわゆる成田の過激派集団というのは、五月二十日には例のケーブルを切っておりますし、その他幾つかの無差別ゲリラ的なことをやったと思いますが、どういうことをやったか、ごく簡単で結構ですから列挙してください。
○伊藤(榮)政府委員 三・二六事件から今回の開港の前後にかけまして、私どもが把握しておる限りで過激派による犯行と見られる犯罪行為が四十二件発生しております。いろいろなのがありますが、簡単に言いますと、時限装置つきの発火装置を仕掛けて放火を図るというカテゴリー、それから電話配線あるいは信号機配線等のいわゆる電線切断をするという手口、それから火炎びんをもっていろいろな施設を襲う、この三つのカテゴリーが顕著のようでございます。
○正森委員 私は、弁護人抜き裁判法案の審議ですから、ここに資料を持っておりますけれども、多くは申しません。しかし、いま刑事局長がごく簡単に列挙したものを見ましても、とても行政府が、たとえ人間としてであれ、保釈を積極的に申請するために努力するあるいはできるように努力するというようなことでは、これは政府としての筋目を立てることはできない。それはその後の発生した事件を見ても明らかだというようにも思います。また、伝え聞くところでは、政府与党、自民党の千葉県連みずからが保釈をしろということを申し入れたというように大きく新聞に報道されております。私は、一方ではこういうことをやりながら、そして、まさに暴力を背景にした話し合いに応ずるあるいは司法権の独立にも関係するような保釈について申し入れをしてみたり、人間として努力してみたりするのに、一方では三者協議で法廷を、ともに基本的人権を守り、真実を明らかにするために、違った立場ではありますが、論争的な立場から維持していかなければならない弁護士会とは話し合いをしない、三者協議をやらない。これはもってのほかじゃないですか。もし政府の、福永運輸大臣の答弁のようなことがあるなら、弁護士会もひとつ火炎びんでも投げて円満にいくなら、三者協議をしろと言えば、これは政府としては緩急よろしきを得て話し合いをする、そういうことになるのかと言いたくなる。理をもって切々と、憲法に違反するじゃないか、基本的人権を侵害するじゃないか、こう言って道理をもって言う者には一顧だにせずに三者協議はしない。他方では、暴力行為を繰り返し、そして釈放だとか保釈をしろとか、そういうことを言う者には緩急よろしきを得て人間として話し合いに努力する、保釈に努力する、こんなことでこの法案を出す説得力がありますか。 私は、最高裁が来ておりますから一言聞いておきたいと思うのです。最高裁は、福永運輸大臣が人間として保釈に努力する、こういうような行動を歓迎するわけですか。現職の運輸大臣ですよ。
○岡垣最高裁判所長官代理者 ただいまの問題につきまして政治的な観点からどうこうということは私どももちろん申すことはありませんので、簡単に申し上げますと、裁判所は法律を運用するところでありまして、保釈の問題については法律に定める要件があるかないかだけを考える、そしてそれに処するところであります。それ以外のものを引くことは好みません。
○正森委員 それ以外のことについては好まないというように、私の耳に間違いがなければ、お答えになりました。つまり福永運輸大臣の、人間としてであれ何であれ、そういう言動は司法の立場からして好ましくないということであります。非常にはっきりしておるのです。瀬戸山法務大臣はどうお考えになりますか。
○瀬戸山国務大臣 先ほども申し上げましたように、保釈するかしないかは裁判所がその条件に従ってやるわけでございまして、外部からとやかくしても通じないものでございます。
○正森委員 私はそれは当然のお立場であろう、こういうぐあいに思います。ところが、その当然のお立場が何かあると曲げられておるということでは、私どもは、なぜ過激派暴力分子とは暴力を背景として話し合うかのごとき態度をとり、そして理論をもっていろいろ説得する日本弁護士連合会とは話し合いをしないのかという問題点を依然として感じるわけでございまして、いまからでも遅くない、日弁連と十分な話し合いをされて本法案を撤回されて、こんな法案は出さなくてもいい方途を探られることを切に希望したいというように考える次第であります。 私はもう少し時間が残っておりますので質問を続けたいと思いますが、ここに持ってきておりますが、昭和五十二年一月に「刑事訴訟法の一部改正について 必要的弁護の例外規定の新設 法務省刑事局」こういう小冊子を私ども国会議員にお配りになりましたが、これは法務省作成のものに間違いありませんか。
○伊藤(榮)政府委員 さようでございます。
○正森委員 同じく昭和五十二年二月「過激派裁判正常化法について 必要的弁護の例外規定の新設」というのを法務省刑事局の名前で私ども国会議員に配付なさいましたが、これも法務省作成のものに間違いありませんか。
○伊藤(榮)政府委員 昭和五十三年二月「過激派裁判正常化法について」、副題「必要的弁護の例外規定の新設」と題しますものは、私どもでつくったものです。
○正森委員 そこで私はこの二つ、前の方は「刑事訴訟法の一部改正について」であります。後の方のは「過激派裁判正常化法について」こうなっております。ところが、これは相当長い文章でありますが、どこが違うのであろうというように私が逐一読んでみますと、違うところは二カ所しかないのですね。一カ所は、初めの方に「更にその対策の一環として、過激派による刑事事件の裁判の促進を図るために、刑事訴訟法の一部改正法案を近く国会に提出したいと考えています。」こういうところがあるのです。そこのところが、後に出されたものは「更に、その対策の一環として、過激派による刑事事件の裁判の正常化を図るため、「刑事事件の公判の開廷についての暫定的特例を定める法律(過激派裁判正常化法)」案を近く国会に提出したいと考えています。」。ここの二行が違う。それから一番最後のところが「その後、先に述べました理由により、刑事訴訟法の一部改正でなく、「刑事事件の公判の開廷についての暫定的特例を定める法律」として立法化をすることとなったのです。」という、初めと終わりが違うだけで、きせる乗りという言葉がありますが、真ん中は全部一緒である。だから刑事訴訟法の一部改正ではなくて、刑事事件の公判の開廷についての暫定的特例を定める法律に変えたということでありますが、その趣旨説明ですね。「一 はじめに」から「二 改正法案の内容、三 ハイジャック防止対策、四 過激派事件の裁判の実情、五 適正な訴訟指揮、六 弁護士会の役割、七 外国の立法例、八 憲法との関係、九 改正法案の明確性、十 法曹間の協議」というものも、おおむね全部一緒なのですね。この法案は、いろいろ言うておられますけれども、結局刑事訴訟法の一部改正という当初の考えが全く変わっておらないということではないのですか、心の奥底では。
○伊藤(榮)政府委員 刑事訴訟法の一部改正として提案しようといたしましたものと現在提案いたしておりますものとお比べいただけばおわかりのように、第二条の実体規定は全く同一でございまして、第一条で今回特例法とするにつきまして本法の趣旨を明らかにした、そこが違うだけでございます。したがいまして、二つの小冊子の中身の実質にわたる部分は全く同一でございます。
○正森委員 いまいみじくもお答えになりましたように、衣を少々変えましても、清盛があわてて衣を着てきましても、よろいがちょろちょろ見えているのと同じように、法務省の考え方の根本というのは全く変わっておらない。ただ第一条の初めの方をちょろっとつけただけであって、変わっておらないということを非常にはっきり示しておる。しかも過激派裁判正常化法というふうに名前を変えましたけれども、これについても法務省の間に一定の動揺があったのではないでしょうか。というのは、私の方にいただいているのをよく見ると、「刑事事件の公判の開廷についての特例を定める法律(案)」というようになっておったのですね。それを「暫定的」という別の判こをこしらえまして、横に「刑事事件の公判の開廷についての暫定的特例を定める法律(案)」ということで「暫定的」というのは活字ではなしに三文判でちょんと押してあるわけですね。だから、本来は「刑事事件の公判の開廷についての特例を定める法律(案)」で、「暫定的」などということは考えていなかったのだけれども、ちょいとゴム印で横につけた、こういうことではないのですか。文章を見るとそうなっていますね。
○伊藤(榮)政府委員 最初、刑事訴訟法の一部改正をもって臨もうということで法制審議会に答申をし、諮問をいただいたわけでございます。ところがよくよく考えてみますと、弁護士の皆さんを相手として、いわゆるあて先としてつくる法律ではございませんで、ごく一部の方に限ってそういう目に余ることがある、それに対処するための法律である、してみると、刑訴という基本法そのものを改正するよりもやはり特例法でいくべきであろうということで、特例法でいこうということにしたわけでございます。 ところが、もう一つよく考えてみると、将来法曹三者が本当に真剣な努力をし、あるいは国会方面でも御協力をいただいて、それ相応の手当て等がなされますならば、この法案は成立いたしましても運用されないまま、いずれは廃止すべき時期が来るのではないか、またそれが望ましい事態である、こういうことから「暫定的」というのをもう一つつけ加える、こういうことで、そういう経過を経て現在の法案になりましたので、たまたまお手元へ差し上げましたものが如実にその私どもの思考過程を反映しておる、こういうことでございます。
○正森委員 思考過程の解析までしていただいて非常にありがたいと思いますが、そのことは結局「暫定的」とかなんとかつけ加わりましたけれども、心の根本というものはでんと変わっておらないということを逆に明らかにしておるというように私たちは考えるわけです。 委員長、ほぼお約束の時間が参ったようでございますが、もう一問だけ伺ってもよろしゅうございますか。——それでは、外側だけでもあれでございますから、この法案を必要とされる岡原長官の言葉によれば、異常な事態といいますか、特別の事態といいますか、そういうものがあるとかないとかいうことについていま長谷雄議員から相当詳細な質問がございましたが、私も一例だけ最高裁に聞かしていただきたいと思います。 幾つかございますが、私は一つだけ伺っておきたいと思うのです。それは、通常厚木基地侵入事件と呼ばれるものですが、昭和五十一年十二月十四日に判決の言い渡しがあったようであります。 日弁連側の御調査によりますと、最初は五十一年の三月七日が判決の言い渡し期日とされたが、一人の被告人の病状が悪化して、診断書は本態性高血圧症ということで、三月二十四日に指定を変えられたが、やはり出頭できなかった。そして五月三十日に郷里の病院に入院した。そして八月十七日に受命裁判官が入院先の病院の担当医師に尋問を行ったところが、現状では出頭は不能である、来年三月ころまでは出頭は無理との見通しであるとの証言がされた。ところがさらに十一月に期日指定を行った。当然のことでありますが、出頭ができないということになりましたら、裁判所は再び十二月十四日に言い渡し期日を指定してきた。弁護人から裁判所に期日を変更してほしいということを申し入れたら、十二月十日には裁判所は被告人に対して勾引状を発付して、十三日にはそれが執行されて、入院先の病院から横浜の拘置所に護送された。こういう事実関係であります。 それだけでなしに、当日その被告人の病状を確認するために接見を申し入れたが、禁止をして裁判所は会わせなかった。開廷前に裁判所に期日の変更を申し入れたが、これも拒否された。 裁判所はそのまま開廷しようとしたところ、被告人が裁判長の前に進み出て、病気で入院中であるのに、勾引まで行ったことについて抗議を始めた。ところが一、二分で顔面蒼白になってその場に卒倒した。裁判所はこの被告人を法廷のベンチに横に寝させたけれども、その被告人は過呼吸、意識不明のままであって、倒れてから約三十分たっても意識も回復しない。ところが裁判所は嘱託医に診察させて、その医師を尋問したところ、医者は、一時的失神状態であって、回復しないことについて外在的理由の所見はないという供述であった。 弁護人は、この被告人が相変わらず意識不明で、過呼吸のほかけいれん状態もあったので、期日変更を求めるとともに、入院病院を裁判所の近くに移して、病状が少しでもよいときには出頭させるように努力したい、こういうように言ったのに、裁判所は聞き入れないで、被告人が意識不明で横に寝ているままの状態で開廷を宣告した。 そこで弁護人は、裁判長のかかる措置は被告人の生命の危険さえ生ぜしめかねないとして抗議して退廷した。ところが裁判長は、意識不明のまま横に寝ている被告人に対して、あたかも被告人が作為的に意識不明を装っているかのように、起立を命じた。意識不明だから当然起立できない。そうすると拘束を命じて、看守に横に寝ている被告人をベンチごと別室へ持ち運ばせた。その後裁判所は、被告人、弁護人が不在廷のまま判決を言い渡した。被告人は無意識状態のまま三十分後に横浜の刑務所の医務室に収監されたが、そのときも意識不明、けいれん状態、過呼吸の状態であった。 弁護人らは翌日の十五日に控訴手続をとるために横浜刑務所に赴き、弁護人選任届に署名捺印を得たい旨申し入れたが、刑務所から被告人はとても書ける状態にないと断られた。こういうことが報告されております。 私は、もしこれが事実だとすると、裁判所の訴訟指揮というものは非常に強権的であり、弁護人が生命の安全を保障できないということで抗議するのは人間として当然であり、それをやらない弁護人というのは被告人の権利を防衛することができないというように思うのですが、裁判所のつかんでおる事実認識及びこのような訴訟指揮をいいと思っているのかどうかについて御答弁を願いたいと思います。
○岡垣最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。 いわゆる厚木基地侵入事件というのは、被告人が数名と共謀の上、厚木航空基地に侵入して、建物を爆破すべくダイナマイトに装着した電気雷管にコードを接続しようとした際に警備員に発見されたという事案に関するものでございます。そこで、この被告人が保釈されていて、期日を指定しても向こうで入院してなかなか出てこられないという経過がございまして、裁判所は被告人に対して勾引状を発したわけでございます。その理由はどういうことか、その経過を少し申し上げますと、本件は昭和五十年十二月十六日に終結して、あとは判決の言い渡しだけということで判決言い渡し期日が定められたわけでありますが、六回の判決言い渡し期日にいずれも被告人が出てこなかったということであります。そういうわけで期日が空転しておりまして、五十一年八月十八日に受命裁判官が被告人の入院先の担当医師に対する尋問を行ったわけであります。その尋問の調書によりますと、そのお医者さんとしましては、結局本人が高血圧症であるということから安全第一の見地に立って、また自分の開業医としての立場を考えて、出頭が不能だという診断をしたものである。同人の血圧は入院後間もなくから最高が百五十九ないし百七十八、最低が九十ないし百七程度であって、この受命裁判官が行って尋問した当日には最高が百六十四、最低が百一という状況だったようであります。そういったことで出頭不能という診断をしたのであって、本人の出頭が不可能であると断定しているものではない。またこの同医師は、本人が地元の裁判所へ徒歩で出頭するぐらいのことなら十分可能であるというふうに考えていたことが明らかになったのでございます。 そこで裁判所としましては、本人の病状の推移を十分考慮しまして、また保釈後一年十一カ月、入院以来六カ月を経ておりまして、判決言い渡しに対する精神的な準備をするについても十分な猶予期間は与えられているであろうというふうに考える。また被告人はかつて長期の公判審理中も現在の症状とほぼ同様の血圧であったわけでありますが、証人尋問、意見陳述等の激しい公判活動に耐えているという事情をも考慮しまして、結局これは被告人を勾引して差し支えないというふうに判断されたようであります。 その勾引状の執行状況は、勾引状は判決の言い渡し期日の前日に執行されましたが、その執行に当たっては検察庁の共済組合嘱託医の診察を受けまして、勾引状を執行することに支障はないかということを聞いたわけでありますが、それは支障がないという診断を得たわけであります。大垣市の入院先から横浜拘置所までの護送には、念のためにこの嘱託医に同行していただきました。護送中と拘置所に到達するときのいずれも、被告人の健康状態に異状は認められなかったわけであります。 第五十三回公判、五十一年十一月二日でございますが、この日は出頭不能という診断書があるのに、また弁護人から変更申請が出ているではないか、それを執行するのは相当ではないではないかというふうなお考えもあるかと思いますが、先ほど申し上げたとおりの状況でございまして、裁判所としては医者も同行させてその判断を得た上で勾引状を執行してこられたということであります。 そこで、判決言い渡しのときの状況に入るわけでございますけれども、開廷の冒頭に被告人が勾引されたことに抗議してその場に倒れた、これは事実でございます。その際に抗議の発言をした傍聴人二名が退廷命令を受けて退廷しました。その後、休廷して、待機していた裁判所医官、これは看護婦ですが、これが血圧をはかるなどして看護するとともに、直ちに医師の診断を得たところが、被告人は興奮状態を示しているけれども、脈搏、血圧等に顕著な異常はない、十分程度起立して判決の言い渡しを受けることは可能である、そういうお医者さんの診断でありました。そこで約一時間後に再開されたのであります。しかし、弁護人三名はこの言い渡し手続を進めることには不満であるというわけで、裁判長の在廷命令を無視して退廷されました。また被告人も、裁判長の起立するようにという再三の命令にもかかわらず、長いすに寝たままであったので、退廷命令を受けて退廷したわけであります。その後、判決の言い渡し手続が終えたわけであります。ここで、言い渡しのときに被告人は失神して何もわからなかったのではないかという、そこのところの認識が裁判所の認識と、それから弁護人の方の認識とは違うかと思います。 では、一体こういうふうなやり方で判決を言い渡すのは非常に強権的な訴訟指揮ではないかということになると思いますけれども、実は私などはそれは強権的な訴訟指揮とは言えないのではないか。勾引状の発付それからその執行については、これは先ほど申し上げたとおりのことで十分考慮されておりますし、確かに被告人は法廷では倒れましたけれども、その判決の言い渡しを受けることは可能であるという医師の診断を得た上で判決の言い渡し手続が行われたわけでありまして、強権的な訴訟指揮であるというふうには思われないのであります。 その言い渡しを受けた後、何か弁護士会でお出しになっている雑誌だったと思いますけれども、もう弁護人選任届も書けないような状況であったというふうなことが載っておりたと思いますが、実はそういう状況はないわけでありまして、判決言い渡しの後、本人が収監された横浜刑務所の医師の診断によりますと、本人の病状は次のとおりである。 つまり、病状には著変がない限り、相当期間の勾留に耐え得る。それで収監直後の十二月十四日午後二時現在では、血圧百四十二から百二、脈搏が百二十二、呼吸四十八、頸部強直なく、瞳孔正同大、それから胸腹部に異常所見はない。それで意識はもうろう状態であるためリン液、鎮静剤を投与した、こうあります。このもうろう状態とはどういうことなのか、よくわかりませんが、こういうことになっております。 それから、十二月十五日午前十時現在でございますが、意識正常、応答確実であるということになっております。それで前夜の睡眠は良好であって、後頭部が痛いという訴えがある。ただし、これは常習の頭痛である。血圧は百九十ないし百十八、脈搏九十二、その他特別な異常症状は認めない。現時点では勾留に耐えられない症状は認められないということで、その後十二月二十日現在で、食欲、睡眠とも良好であるし、後頭部に常習性頭痛を訴える、血圧の変動は最高百九十ないし百七十ミリ、最低百十八ないし百十ミリで、脈搏は毎分百二十八ないし八十五回である。高血圧は多分に遺伝的な素質、これは両親、兄弟とも高血圧でありますが、遺伝的な素質によるものであろうが、外部の刺激に鋭敏な性格のためか、診療中でも心悸高進、血圧上昇を来すことがある。これまでに実施した肝臓機能検査、電解質及び血清たん白等の血液検査の結果では異常な所見は認められなかった。 〔山崎(武)委員長代理退席、委員長着席〕 なお、右の経過から考察して、今後とも病状に著変がない限り相当期間の勾留に耐え得るものと思量するということでございまして、弁護人選任届は十二月十四日付、これは判決言い渡しの翌日でございますか、十二月十四日付で作成されて、十五日に裁判所に提出されております。ただし、十二月十三日の午後八時二十五分ごろの入所時の健康診察に際して本人はがんこに診断を拒否したため、血圧その他の測定、診察は不能であるということになっております。 以上のような状況でございまして、この外形的な事実、これはお医者さんの判断なり何なりということでそのものはいろいろな評価があると思います。しかし私どもの見ましたところでは、これは被告人が判決を受けるのをいやがって不出頭ということをやっておったのを、裁判所が医師の診断その他を考慮されて、これは判決言い渡し可能であるという認定のもとに判決を言い渡されたものであり、かつその翌日以後の健康状態から見まして決して無理な措置ではなかったというふうにわれわれは考えております。
○正森委員 いま最高裁側からの見解を伺ったわけですから、私たちは他方の当事者の見解も伺ってみたいというようには思っておりますが、いまの最高裁刑事局長の答弁の中でも、私自身が若干問題だと思うところが二、三カ所あります。その一つは、刑務所の医官みずからが、意識もうろう状態であったので鎮静剤を与えたと言っていることであります。意識もうろう状態というのが、意識が十分でないということとほぼ似た意味に使われるわけで、意識がもうろう状態であるならば、自分の一生に重大な関係がある判決を聞く状態に適当かどうかというのは、一義的には適当であるとは言えない状態であったのではなかろうか。それからもう一つは血圧と脈搏の問題でございますけれども、血圧が、私いま正確な数字は覚えておりませんけれども、百九十幾つと百十八だ、こう言いましたが、最高が百九十幾つで最低が百をはるかにオーバーして百十八であるというのが正常な状態でないことは非常にはっきりしているわけですね。ロッキード事件の小佐野や児玉なら、公判に出頭しなくていいという状態ですね。私は、伊藤刑事局長からしばしば病状を聞いておりますけれども、私の記憶では、一度小佐野にこれよりも高い事態があったと思いますが、大体これとちょぼちょぼかそれより低い段階で、出てこなくてもいいと裁判所は言うておるわけですね。小佐野というのは何十億円持っておるのか知らないけれども、そういうようにその人の社会的地位によって区別するということは非常に好ましくない。特に、脈搏の正常な値というのは大体七十前後でありますから、安静にしておっても百二十幾つであるということは、よほど心悸高進しておるというのは素人でもわかるわけであります。 以上、私は二、三点を挙げましたけれども、刑事局長がみずから認めておりますように、判決言い渡しのときにふてくされて横臥しておったのか、それとも意識がなくて、あるいはもうろうとして横臥しておったのか争いがあると言いますが、私は、勾引したのがいいかどうかは別として、少なくとも判決言い渡しの裁判所の訴訟指揮はやや性急過ぎたのではないかという疑念を、いまの答弁を伺っても、なお消し去ることができないというように思います。 きょうは審議の中身に入るわけではありませんが、いまのような答弁を聞きましても、いよいよ裁判所の是なりとされる訴訟指揮についても非常に問題があるのではないか。そういうことを前提として退廷命令等が出されあるいは退廷を余儀なくされ、その場合に弁護人不在でいろいろな手続が進められるということは、われわれは非常に慎重でなければならないという気がいまなおしておるということを申し上げて、これ以上のこの問題の本質的部分に触れる質問は、次に与えられる機会に、恐らく次の国会か、次の次の国会になるか、あるいはもうその機会は廃案になってなくなるか、いずれかであると思いますが、もし機会が来ればさしていただきたいと思います。 以上で質問を終わらしていただきます。
○鴨田委員長 次回は、明三十一日水曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午後四時二十四分散会