P政策ポータルPOLICY PORTALウォッチ
84回国会衆議院1978/05/12

法務委員会 第24号

発言数
219
登壇者
17
会派数
8
開催日
1978/05/12

会議録

鴨田宗一自由民主党

○鴨田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出、刑事事件の公判の開廷についての暫定的特例を定める法律案を議題といたします。  本日は、本案審査のため、参考人として元日本弁護士連合会会長柏木博君、日本弁護士連合会調査室長杉野修平君の御両名に御出席をいただいております。  この際、両参考人に対し一言ごあいさつを申し上げます。  両参考人には御多用のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。ただいま、当委員会におきましては本案について慎重な審査を行っております。本日、両参考人から御意見を賜りますことは、本案審査に多大な参考になることと存じております。何とぞ両参考人には忌憚のない御意見をお述べいただきたく、よろしくお願いをいたします。  次に、議事の順序について申し上げまするが、柏木参考人、杉野参考人の順序で御意見を述べていただくこととし、なお御意見の開陳は、お二人で四十分以内に取りまとめてお述べいただくようお願いをいたします。  次に、参考人に対し委員から質疑がありますので、さよう御了承願います。  それでは、柏木参考人にお願いをしたします。

柏木博元日本弁護士連合会会長

○柏木参考人 ただいま御紹介をいただきました柏木でございます。  実はきょうは日弁連の北尻会長が参上いたしまして、いろいろ御質問等にもお答えを申し上げる予定でございましたけれども、就任早々でもございますので、いろいろの用事がございまして、私が代役、と申すとおかしいのでございますけれども、私に参考人として意見を述べてくれというようなことでございました。したがいまして、できることなら日弁連の会長にもいろいろお尋ねしていただきたいというふうに考えます。  裁判と申しますと、考えてみますと、本当にむずかしい問題だと思います。人間が人間の生命、財産、自由を奪うという内容を持つ裁判でございますので、人類生活において最も深刻にして、また厳粛な行為だと思います。それだけに、人を裁く裁判官には誠実と謙虚さと忍耐とが要請されておることは申し上げるまでもないことでございます。アメリカの裁判官について、守らなければならない倫理が規定されております。日本では、裁判官倫理というようなものはできておりませんけれども、アメリカの裁判官の守るべき倫理を見ますと、裁判官は、いま申し上げた、誠実でなくてはならない、忍耐強く、しんぼうさがなくてはならない、また威厳を持たなければならない、こういうことが書かれております。この裁判官倫理は当然日本でも適用さるべきものであることは申し上げるまでもないことだと思います。もし、本当に裁判というものが、こういう環境のもとで、こういう状態のもとで開かれるならば、また、日本の全裁判官がそういうようにしんぼう強く、忍耐強く、誠実に、裁判というものの重要さに徹しまして、謙虚に裁判が行われますならば、いわゆる過激派裁判、荒れる法廷と言われておるようなものも相当の部分が起こり得ないというふうに私は確信しております。後で事実関係をいろいろ杉野調査室長から申し上げますけれども、ほとんどのと申し上げてもよかろうと思います。裁判官と被告人、その間に弁護人が介入いたしましていろいろトラブルが起きておりますが、俗な言葉で申し上げますと、売り言葉に買い言葉的な紛争というものが非常に最近——最近と申しますよりは昨年ぐらいまで起きておったのじゃなかろうかということを考えさせられるのでございます。  裁判の歴史を申し上げる必要はないと思います。皆さん御存じでございましょうが、被告人を取り調べの客体、訴訟の客体ととらえまして、自白の義務を負わせておった糾問手続、これを今日のような、当事者と見まして、検察官と被告人との当事者訴訟に進展してまいりますためには、非常に長い期間、たっとい犠牲を払いながら、人権というものに徹した人類の英知が生み出したものでございます。今日の訴訟は、刑事訴訟にいたしましても、一方には検察官が原告としております。同じ当事者といたしまして被告人がおるのであります。これはちょうど三角形の一辺というふうに言えるかと思います。その上に、三角形の頂点に、アンパイアとしての裁判官がおりまして、原告と被告、この白熱した論議あるいは立証というものを通じまして、真実がどこにあるか、またどの程度の処罰がいいのかということを判断するのが裁判でございます。わが国の刑事訴訟法も、いま申し上げたような当事者訴訟を採用しておるのでございます。  そこで、弁護士たる弁護人の地位はどこにあるのか。これは被告人と重複する、重なる立場ではございません。さりとて裁判官のところに座るものでもございません。いわんや原告の検察官のところに座る地位でもございません。こういう当事者の訴訟におきましては、武器平等の原則と言われているものがございます。検察官は、強力な国家権力を背景にいたしまして、いろいろの強い権力を行使して証拠等を集める。これに対しまして被告人は、本当の法律知識に乏しい。どういう手続を進めていいかもわからぬ。これでは余りにも格差が大きい。そこで、被告人のために、被告人の防御権をあくまでも尽くさせるための弁護権、これを行使するための弁護士制度であります。したがいまして、弁護士は被告人と重複すべきものではない。さりとて裁判官の地位に行くべきものでもない。弁護士の地位、立場が被告人寄りであることは間違いありませんけれども、被告人と重なってはまた問題になります。だから、どの辺に弁護人の立場を置くかということが、各人各様の見解があるのであります。その辺がまた一つの問題点であろうかと思います。  私は法務省提出のいろいろの資料も拝見いたしました。裁判というものは治安維持の最後のとりでということを盛んに強調されております。私は、裁判が人権のとりでであるということは、もう昔から耳にたこのできるほど聞いておりますけれども、治安維持のとりでであるという表現は、今度初めてであります。裁判というものは、社会秩序を維持するという使命と役目を負わされておると同時に、古来言われておりますように、人権のとりで、人権を守り抜く使命というものも負わされております。したがって、冒頭に申し上げましたように、裁判というものは謙虚の上にも謙虚に、慎重の上にも慎重に、どんな極悪人の被告人であっても、その言葉に十分耳を傾けて、言いたいことは言わせる、その上で証拠との関連性で正しい判断を下す、これが裁判に課せられた使命であります。また、法の目的、あるいは法の機能と申し上げてもよかろうかと思いますけれども、法も一方においては社会秩序を守っていく使命があるとともに、国家権力あるいは公権力によって市民の自由とか平和な生活というものに不当不法に介入をしていくことをチェックすべき機能を負わされております。法律のこういう両面の使命、目的のうちで、後者の公権力の自由侵害とか、あるいは平和な市民生活を乱すとか、そういうもののチェックに奉仕するための弁護士制度であります。ですから、弁護士法第一条が、御承知のように、人権を擁護し、社会正義を実現することをもって使命とするというふうに書かれておりますことも、いま申し上げた裁判の目的、法の機能というものに奉仕する使命を負わされておるわけでございます。  ところで、そういう立場から今度の法案を拝見いたしますと、どうも納得いかない点が多々出てまいります。この第一条を私どもよく見ましても「一部の刑事事件」あるいは「当面の措置として」あるいは「暫定的特例」こういうふうなどうも理解できないような条文を置いているということは、いままでの法律ではないのじゃないでしょうか。  また第二条を見まして、たとえば第一号と第二号は、訴訟を遅延させる目的で、被告人が弁護人を解任あるいは辞任するに至らしめた場合、こういうふうに書かれておりますけれども「訴訟を遅延させる目的」というものを、どういうふうに何で認めようとするのでありましょうか。また同じことが第二号にも書かれております。これは「弁護人が訴訟を遅延させる目的で辞任したとき。」こういうふうになっております。ところが、弁護人が辞任しなければならぬ場合は非常に多いわけです。まず、われわれがよく経験するのは、被告人は、あくまでも無罪を主張してくれ、本当はやっているのだけれども無罪を主張してくれ、こういう場合があります。ところが、弁護士は真実義務を負わされております。被告人は何を言ってもいい、虚言禁止から解放されておりますけれども、弁護士の倫理といたしまして真実義務を負わされております。したがって、被告人が弁護士を信頼して、本当はやっているのですけれどもぜひ無罪を主張してくれ、こう言われた場合に弁護士としてはどう対応すべきか。一番厳しい弁護士なら必ず辞任するだろうと思います。といって辞任の理由を裁判所に言うわけにいきません。またそういうような場合は、公判の前日まで被告人を説得するでありましょう。ところが、被告人が言うことを聞かないとなれば、公判のときに辞任せざるを得ません。といって辞任の理由を言うわけにいきません。これはまた被告人の利益を擁護すべき誠実義務を負わされておりますので、黙って辞任する以外にない。替え玉犯人の場合だって同じ問題が起きます。そういたしますと、一段高いところから見ておる裁判官は、これは訴訟遅延の目的ではないか、こういう判断をするにまず間違いありません。そういうことになりますと、この法案は非常に危険な法案だ、こう言わざるを得ないのであります。  それから、三号を見ますと「正当な理由がないのに公判期日に出頭しないとき、又は裁判長の許可を受けないで退廷したとき。」こういう規定があります。ところで、裁判官は上から、高いところから見まして、被告人と弁護人の関係、この本当の真相というものはわかるものじゃございません。いま申し上げたように、出頭できないいろいろの事情が背景にございます。あるいは一番卑近な、あるいは俗な言葉で言えば、いつまでに、公判の前日までに弁護料を持ってくることになっていたじゃないか、弁護料を持ってこなければこれはどうもおれはやるわけにいかぬよという場合も考えられるのであります。ところが裁判所から見ますと、何が何で弁護人が出てこないのかわからぬ、こういう判断をされることはまず間違いない。  それから、四号を見ますと「弁護人が裁判長から法廷における秩序を維持するため命じられて退廷したとき。」こういうふうになっています。これは被告人の行為とは全く関係がない。こういうときにも弁護人抜きの法廷が生まれるということになりますと、これは大変なことだと思うのです。被告人の利益をだれが守りますか。被告人は、われわれの経験からいいましても、本当に弁護人を頼り切っております。その頼りにしておる弁護人もいない。少し厳しく裁判長に迫ると退廷命令ということが出てきます。最近の例で、これは公職選挙法違反でありますけれども、十五人の検察官証人を裁判官が調べたので、いよいよ弁護人の方、被告人側の反証の段階ということで十七名の証人を申請した。即時に却下された。弁護人としては、これは予断、偏見を持っておるのだからということで忌避の申し立てをした。直ちに簡易却下された。これに対してるる抗議をしておりますと発言禁止、発言しようとすれば退廷命令、こういうことが、過激派裁判のみならず一般の裁判についても行われやすい環境になってきております。そういうときにこのような法案が出た場合に、私どもは非常に心配をしておるのであります。  法務省に言わせますと、初めはハイジャック防止対策だ、こう言っておりました。ところが、どうもそれじゃおかしいということで、過激派裁判正常化法という俗称をつけております。ところが、出てきたこの法案を見ますと、過激派に限定するところは一つもない。一般の刑事事件が全部この法律の対象になっていることは法務省自身も申しております。  また、法務省が外国資料を皆様にいろいろ差し上げておりますけれども、諸外国において、自由主義国家におきまして、このような弁護人抜きの法案あるいは制度がある国はどこにもないのです。それほど日本の秩序は乱れておるのでございましょうか。なるほど、過激派という一群がおります。おりますけれども、仮に過激派の被告人であっても、手続というものは、憲法も精神を三十一条かに書いておりますが、適正な、だれでも納得する手続のもとで処罰をすべきものであります。その刑事訴訟法の決めておる基本的な、根本的なこの手続が、こういうことで改変されるということ、これは近代的な裁判制度自体を否定するということにも通ずるのじゃないのでございましょうか。もし極端な例——私はこれは極端と申し上げません、そういう法廷が出るのじゃないかと危惧しておりますが、検察官と裁判官だけが法廷におる、被告人もいない、弁護人もいない、そういうところで証人調べやあるいはいろいろの手続が行われる、しかもそういう状態で裁判される。これは死刑であろうが無期であろうが、どんな重大な犯罪でも処罰できることになっている。これではせっかく人類の英知として築き上げました近代的な刑事裁判、それさえも否定しかねない、それを否定する危険性を持っている、こういうことをわれわれの立場からは申し上げざるを得ないと思います。  時間が参りましたので、また御質問にお答えを申し上げたいと思います。ありがとうございました。(拍手)

鴨田宗一自由民主党

○鴨田委員長 ありがとうございました。  次に、杉野参考人にお願いをいたします。

杉野修平日本弁護士連合会調査室長

○杉野参考人 私は、日本弁護士連合会の調査室長をしております杉野修平と申します。  私は、この法律案の緊急性、必要性の根拠とされている刑事裁判の公判をめぐる異常な状況が果たしてあるのかないのか、あるとすればその原因は何か、問題解決の視点は何かなどについて、調査検討に当たった者の一人として、意見を申し上げます。  結論から申し上げますと、現在いわゆる過激派事件を含め、弁護人の不出頭、退廷などのため審理の進行が停止している刑事事件はありません。したがいまして、現行刑事訴訟法に特例を設けて、弁護人抜きで審理を進行させる法律を制定する緊急性、必要性は全くないと考えます。  世間の耳目を聳動させた連合赤軍事件や連続企業爆破事件は、現在実質審理がまことに順調に進んでおります。連合赤軍事件は、リンチ殺人事件についてすでに検察官の立証の山は越えており、連続企業爆破事件についても、ことしじゅうにも検察側の立証が終了することが確実と見られております。  ところが、法務省は、ごく最近までこれらの二つの事件の審理が現在なおも異常であるかのような宣伝を続け、この法律案の緊急性、必要性の最も有力な根拠としていました。しかし、事の真相が広く国民に知れると、今度はピストル連続殺人事件の審理が停滞していることを立法の必要性の根拠の中心的事件として宣伝をしました。しかし、この宣伝も長続きはしなかったわけです。それは、ピストル連続殺人事件が過激派によって起こされた事件ではなく、また国選弁護人が選任されて、間もなく審理が再開されようとしているからであります。すると、さらに今度は成田空港関係事件がこの法律案に関係があるかのような宣伝が始められました。しかし、成田空港関連事件は、被告人、弁護人の不出頭などこの法律案の必要性を裏づける原因による訴訟遅延事例ではないのであります。したがいまして、成田関連事件をこの法律案と関係あるかのような説明をすることは正しくありません。  以上申し上げましたとおり、法務省は、この法律案の必要性の根拠とされる中心事例を連合赤軍事件、連続企業爆破事件、ピストル連続殺人事件、成田関連事件というように、まるでネコの目の変わるように変化させてみたわけですが、いずれもこの法律案の緊急性、必要性を理由づける事例でないことは明白な事実であります。  そこで私は、ただいま申し上げた事例のうち連合赤軍事件、連続企業爆破事件を中心として、刑事裁判が紛糾する本当の原因は何か、どういう時期に紛糾するのか、解決の要因などを具体的に解明し、あわせて私どもが考えております問題解決の視点を明らかにしたいと存じます。  第一に連合赤軍事件について御説明申し上げます。お手元にお配りしてあります資料六−一をごらんいただきたいと存じます。その資料六−一の七ページに記してありますように、この事件は山岳ベース及び印旛沼のリンチ殺人等の事件、真岡の猟銃強奪事件、M作戦と呼ばれる銀行強盗事件、永田、植垣各被告人に対する公務執行妨害等の事件、浅間山荘事件の七つのグループに大別することができます。  ところが、この事件の訴因は、少ない被告人で三十一、多い被告人で五十八もあり、延べ訴因数は二百七十にも達しております。次に、事件が東京、横浜、前橋、長野の各地方裁判所に係属していた事件を東京地方裁判所一カ所に併合した事件であります。さらに、リンチ殺人事件に見られますように、被害者がすでに死亡しており、殺害等の現場を目撃した第三者証人もほとんどいない特殊な事件でありますので、検察官の立証も著しく困難と思われるわけです。したがいまして、連合赤軍事件は、事件そのものに審理の複雑化、長期化をもたらせる基本的な要因が内在しているのであります。  このように複雑な訴因を検察官があえて起訴したことはともかく、検察官は、その立証を急いで遂げるために、週二回法廷を開くことを要求したわけです。それは、先ほど述べたような複雑な訴因を立証するためには、検察側の立証だけで実に二百十回以上の法廷が必要であると主張したわけであります。  これに対し、この事件の弁護人らは、週二回の開廷ペースであれば実質的な弁護活動は何もできない、法廷に立っている人形にすぎなくなるではないかということから、月一回、後には月二回の開廷ペースを求めていました。  ところが裁判所は、弁護人側の主張、立場を一切無視し、一方的に一年半にわたり週一、二回を繰り返し指定し、いわゆる百回の公判期日を一括して指定したのであります。これについて弁護人側からの変更申請を認めず、協議の申し入れも拒否したわけであります。  弁護人は、このような弁護活動を事実上不可能にする無理な期日指定を行う裁判官では公平な裁判はとうてい期待できないと考え、忌避の申し立てを行いました。しかし、忌避申し立てば簡易却下され、弁護人らは東京高等裁判所に即時抗告をいたしました。しかし、これも却下されました。しかしながら、東京高等裁判所は、この却下決定の中で、百回指定を「いささか妥当性を疑わせる点が窺われないではない」ということを書きまして、批判したわけでございます。さらに、この事態を重く見た東京の三つの弁護士会、すなわち東京弁護士会、第一東京弁護士会、第二東京弁護士会の理事者らは、この百回指定に対し批判的な見解を明らかにするとともに、事件の係属しております東京地方裁判所所長代行らに善処を要請しました。このような努力が実って、昭和四十八年四月十一日、裁判所は百回指定をすべて取り消し、以後審理は今日まで順調に進んでいるのであります。公判の進行状況は、お手元の資料六−一に詳しく記載しております。現在リンチ殺人事件等の山岳ベース事件の審理中でありますが、これも大部分終わり、残りの大きな事件は浅間山荘の事件だけになっております。  第二に、連続企業爆破事件について御説明いたします。この事件は、資料五の七十四ページをごらんいただくとおわかりのように、三菱重工など十七件の爆破事件であります。  この事件では、当初二つのグループの審理の併合をめぐって被告、弁護人側と裁判所との間に対立がありましたが、これは間もなく解決し、公判を開くペースも月二回を原則とする旨の確認に基づいて、審理は順調に進んでおりました。  ところが、途中で交代した裁判長が、それまで守られてきた公判の進行についての合意を一方的に破棄し、月四回の期日指定を一方的に強行いたしました。弁護人は、これでは実質的な弁護活動が十分にできないと再考を求めたのですが、裁判所はこれに応じなかったのであります。そこで、やむなく出廷しなかったところ、裁判所は、弁護人不出頭のまま、証拠決定、証人申請、書証及び七名の証人調べまで弁護人抜きで強行してしまったのであります。そして裁判所は、さらにそのまま月四回のペースで弁護人抜き裁判を強行する旨弁護人に通告してきたのです。そこで、弁護人らはこれを避けるために、他に方法はないと考え、やむなく辞任したのであります。  その後東京の三弁護士会の理事者が連合赤軍事件の場合と同様に東京地方裁判所所長代行らと精力的な調整作業を重ね、無理な期日指定は改められたのであります。昭和五十二年七月以降、辞任した弁護人が再選任される道が開かれ、以後きわめて順調なペースで審理は進行しております。検察官の立証は本年じゅうにも終了することはほぼ確実であると見られております。この事件の公判経過は資料六−二に詳細に記載しております。  第三に、以上御説明申し上げました二つの事件以外における弁護人の退廷または退廷命令が出された事件が数多くあります。資料第四の三ないし十三の事件がそれであります。  この中で最も問題にすべき事件はチッソ水俣病傷害事件であります。事例の三番の事件であります。この事件は、第一回公判において午前中から公訴棄却の申し立ての理由の陳述が行われておりました。ところが、裁判所はその理由の陳述を途中で打ち切り、被告人の意見の陳述を突然求めたわけであります。被告人は、そのときすでに傍聴人が全員退廷しており、被告人と弁護人、あとは報道関係者という法廷で自分の意見を述べることはできない、そういう不公正な裁判官の前では意見を述べられないと言い始めたのであります。そこで弁護人は、予期せぬ出来事に困り、被告人と法廷外でわずか十分間の打ち合わせをしたいと求めたのであります。裁判長はこれを許さず、在廷命令を発したわけであります。報道関係者、検察官、裁判所の面前で被告人と弁護人の打ち合わせができるわけはないのであります。そこで弁護人と被告人はやむなく法廷外の廊下に出て十分後に法廷に戻ろうとしたのであります。ところが法廷のとびらにはかぎがかけられておって、被告人、弁護人らは中に入れなかったのであります。さらに驚くべきことは、この裁判長は、被告人、弁護人を廊下に締め出したまま検察官の冒頭陳述、証拠調べ請求、証拠決定を強行したのであります。そのような事件が現実にあるわけであります。  それ以外のいろいろな事件を分析してみますと、多くの事例が裁判長の訴訟指揮に問題がある事例、これは個別の事例をお読みいただくと一目瞭然だと思いますので、省略させていただきます。  そこで、いま御報告申し上げた連合赤軍事件、連続企業爆破事件あるいはチッソ水俣病事件等を分析してみますと、その問題の原因は次のように分類できるかと思います。  第一に問題なのは、裁判所の公判期日指定、訴訟指揮、法廷警察権の行使、法廷警備に明らかに問題がある事例、次に、訴因の数、内容、被告人の考え方、弁護人、被告人の関係などを全く無視した期日の指定、これも第一に関連するわけでありますが、事件そのものに内在する要因を検察官、裁判所が十分考慮してないという点が挙げられるかと存じます。それから第三は、訴訟関係人が法廷内で意見の衝突などから一時的に感情的になって法廷が一時混乱するという事例、第四は、検察官の起訴、立証等に問題があると見られる事例、そのように分類できるかと思います。したがいまして、問題解決の視点はこれらの原因を除去することにあります。  裁判所の強い訴訟指揮、強い法廷警察権の行使の背景は何かという点については、すでに連合赤軍事件が進行中に提出されている刑事訴訟規則の改正についての最高裁刑事局での検討、これは資料第八でございます。したがいまして、これらの点を改めない限り法廷は正常化しないと思います。  しからば、現在は荒れている法廷はないということば冒頭にはっきり申し上げましたが、将来このような事態が起きた場合にどのような解決が一番妥当であるかという問題に帰着すると思います。この点については、私どもの日本弁護士連合会が提出した「「弁護人抜き裁判」に関する見解と提案」資料一に記載されておりますとおり、法曹三者間の協議と国選弁護人の選任を十分に行うという二点に尽きるのではないかと思います。  第一点は、先ほど申し述べましたように、連合赤軍事件、連続企業爆破事件を通じて、裁判所、弁護士会等法曹関係者が協議したことによって、非常に困難と思われた二つの事件の訴訟の停滞は解消されているわけであります。私どもは、このような過去の事実を確認して、それを制度化しよう、それも一時的な制度にしようというのが法廷対策連絡会議の構想であります。  次に、成田に見られるように大量の被告人が裁判所の能力が著しく小さい地方に起訴された場合には非常に困難な問題が生ずるわけであります。これについては、すでにこの「国選弁護人の推せんについて」の構想(二)の3において、隣接弁護士会の協力を検討するというふうな対策を考えておるわけであります。  どうかこの法律案の御審議に際しましては、裁判の生の事実を訴訟関係人から直接お聞きいただいて、慎重に審議されるよう希望いたして、私の意見陳述といたします。(拍手)

鴨田宗一自由民主党

○鴨田委員長 御苦労さんでした。     —————————————

鴨田宗一自由民主党

○鴨田委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山崎武三郎君。

山崎武三郎自由民主党

○山崎(武)委員 ただいま柏木、杉野両参考人からるる弁護士会側の御意見を賜ったわけでございますが、私はこの法案が出てきた根本というのは、弁護士法、弁護士会の運営、このものに根本的な原因があるのではないかというふうに思っております。したがいまして、時間がございませんから、この点についての焦点をしぼって御質問申し上げます。  まず、現行の弁護士法及びそのもとにおける弁護士会の運営というのは、特に弁護士の懲戒及び国選弁護人の推薦、この二点で結構でございますけれども、国民の期待にこたえて十二分にその機能を発揮しているとお考えなのかどうか、両参考人に御質問いたします。

柏木博元日本弁護士連合会会長

○柏木参考人 では、お答えを申し上げます。  懲戒の点でございますが、アメリカの数字を申し上げますと年間約百六十名の懲戒、これをアクティブの弁護士約二十万といたしますと〇・一%弱であります。日本の弁護士会が懲戒している事例は、いま一万一千三百ほどおりますけれども、〇・一%を超えております。またアメリカの懲戒事例を見ましても、法廷内での、荒れる法廷、そういうもの、これもたくさんあります。アメリカで。特に黒人問題がございますので、法廷が荒れるということがアメリカにおいても非常に多いのでありますが、法廷内の弁護活動を取り上げて懲戒している事例はほとんどございません。  また各単位会、日弁連にもそれぞれ懲戒委員会を設けております。懲戒委員会は、先生も御存じのように弁護士と学識経験者と裁判官と検察官から構成されております。弁護士四名、いま申し上げた三者の方々が三名で四対三で構成しておる弁護士会が二十会ございます。また五対三で構成しておる弁護士会が十一会ございます。日弁連では弁護士八名、裁判官一名、検察官一名、学識経験者一名、三名で構成しております。  懲戒制度は会の執行部が簡単に容喙できない独立の機関でございます。しかも、いま申し上げたような構成で弁護人の非行、非違あるいは品位を乱す行為について懲戒をしておるのでございまして、懲戒制度が機能していないということは私は絶対にないと思います。ただ、過激派裁判に絡む弁護人の懲戒事案、これが現在日弁連の懲戒委員会に係属しております。したがいまして、これを私の立場からあれこれ申し上げるということはちょっといまの段階ではむずかしいと思います。  また国選弁護人のお話がございましたが、実はこういう事態になりますと、国選弁護人を推薦いたしましても、国選弁護人に対しましていろいろ過激派関係あるいはその後援会から脅迫じみた言動が出てまいります。したがって、国選弁護人は自分の体を張って国選弁護を現在遂行しております。弁護士会は生命保険を掛けております。三千万ないし五千万の保険を掛けてその国選弁護人のバックアップをしておる、こういうのが現状でございます。そういうわれわれの苦悩、これをぜひお考え願いたい、かように思います。

山崎武三郎自由民主党

○山崎(武)委員 時間がございませんから簡潔にひとつお答え願えればありがたいと思います。したがいまして杉野参考人に対するこの質問のお答えは結構でございます。  次に入ります。大体において機能している、こういうお答えだったと思います。だといたしますと、昭和四十四年にいわゆる東大事件の審理が行われまして、東京弁護士会の所属の弁護士さんが二回にわたりまして法廷等の秩序維持に関する法律により制裁を受けました。二名いらっしゃいますけれども、だれかは頭の中におありだろうと思います。このうちの一人、この弁護士さんについては東京地方裁判所所長から東京弁護士会に対しまして懲戒の申し立てがなされました。それで昭和四十六年一月十六日に、東京弁護士会の綱紀委員会は懲戒相当という議決をしております。そうして東京弁護士会の懲戒委員会、これはその後七年間何にもせずに、この法案が問題となりました昭和五十二年十二月三日になりまして、本件懲戒というのは当時の東京地裁の所長が個人として申し立てを行ったのに、綱紀委員会の議決においては地裁の所長としての職責に基づき申し立てを行ったとして、申し立て人名義が違う、こういう形式的な理由によりまして、この懲戒事件は懲戒委員会に係属してないという理由から審理を開始することができないという判断を示しました。こういう綱紀委員会の議決後七年間もほっぽっておいて、しかも右のような形式的な理由により懲戒の要否についての実質的な判断も何もしなくて、懲戒制度の運用というのが十二分に行われているという御見解はどうなのかと思いますが、再度お答え願います。

柏木博元日本弁護士連合会会長

○柏木参考人 荒れる法廷問題で裁判所から懲戒請求がありましたのは、いまの東京弁護士会の方だけでなく、私は第二弁護士会所属でありますけれども、第二弁護士会の会員についてもあったわけであります。第二東京弁護士会は四十五年に結論を出し、それが異議の申し立てによりまして現在日弁連の懲戒委員会に係属しております。  そこで私、日弁連の会長をしておりましたときに、この問題はどうなっているんだということを尋ねましたところが、日弁連の懲戒委員会、しかもその中で、これは具体的には申し上げませんけれども、弁護士委員以外の方から、現在東京弁護士会で同じケースで審理をしている、したがって日弁連の懲戒委員会で早く結論を出すと東弁の懲戒委員会を制約することになるから、東弁の結論待ちにして、合併して日弁連の懲戒委員会では結論を出すのが至当じゃないか、こういう意見で、私の会長時代にはまだ東弁から上がってこなかった。したがって、東弁の会長にも促進方は申し入れました。しかし、さっき申し上げましたように、懲戒委員会というものは、理事者あるいは会長というものがそう簡単に介入できない制度になっておりますので、幸い昨年の十二月に東弁の懲戒委員会は懲戒せずという結論を出しましたけれども、それに対する異議の申し立てがありまして、今日では日本弁護士連合会の懲戒委員会の係属案件としてこれから真剣に取り組む、こういう段階になっておりますので、まあある会が、どういう事情かわかりませんけれども若干日にちをかけたということだけは間違いないし、またそれは本当に私がおわびするのもどうかと思いますけれども、何といいましても、答弁が長くなりますが、弁護士会というものは、極左からあるいは過激派の支持者まで、これが全部加入しておる会でございます。先生方もおわかりと思いますけれども、自民党と共産党を含めて全部一致した意見を出す、これはなかなか困難、それを会というものは非常に努力をしておるということだけはひとつ買っていただきたいと思います。

山崎武三郎自由民主党

○山崎(武)委員 大分論点がかみ合ってきたような感じがいたしますが、七年間もほっぽっておいて、そしてこれについてどのような理由があるか知りませんけれども、これが十二分に機能しているというお言葉はとても申し述べられないのじゃないか、私はそう思いますし、一般国民も同様だろうと思います。  まあこの懲戒制度そのものというのが十二分に機能してないし、身内が身内を裁くわけでございまして、これを要求する方もどうかなと思うのですよ。しかし、弁護士法というのがそういうふうになっているわけですから、やはりここを正さなければうまくいきっこないというふうに私は思っております。したがって、柏木先生も良識のあるお方でございますし、ある程度は御共鳴なさるのじゃないかと思いますが、国民から見ますと、臭い物にはふたをして握りつぶしてそのままだという印象を強く受けるのじゃないか、だからこそこういう法案が出てきたのじゃないかと思うわけでございます。  現在、この懲戒問題については、昭和五十二年十二月二十六日に日弁連に異議申し立てをして六カ月たっておりますが、六カ月たった後も日弁連は何らの判断もなしておりません。だからこの辺のことも日弁連はよくお考えになりまして、単位弁護士会並びに日弁連の胸三寸にゆだねられたこの懲戒制度というのをよく御検討賜りますようにお願い申し上げる次第でございます。  もう一つございます。同じ東大事件の審理で、今度は先生御所属の第二東京弁護士会に所属する弁護士さんが、統一公判要求が入れられないということを理由にして法廷で暴言を吐くなどいたしまして、法廷等の秩序維持に関する法律により前後四回制裁を受け、その結果、第二東京弁護士会に対して、当時の東京地裁所長その他一般の方から懲戒の申し立てをいたしました。ところが、第二東京弁護士会の綱紀委員会は、昭和四十七年三月二十五日、懲戒不相当の議決をしております。これを見ますと、綱紀委員会の構成というのは全部弁護士さんでございます。したがって、弁護士さんが弁護士さんを裁くというのはやはりむずかしいことじゃないか。検察官を見ても裁判官を見ても、訴追委員会というのがございます。こういう第三者機関に綱紀委員会の権限をゆだねるべきではないかなというふうに考えますが、いかがでございましょうか。

柏木博元日本弁護士連合会会長

○柏木参考人 十二分に懲戒制度が機能していない——十二分というほどのことは私も考えておりません。ただ、一、二の問題をとらえて機能してないじゃないかと言われると心外だと申し上げているわけでございます。  それから、身内の者が裁くというお話でございますが、さっき申し上げましたように、懲戒委員会の構成は弁護士法でも定められておりますように学識経験者とか裁判官とか検察官がその資格で加入しておる懲戒制度であります。懲戒制度の中でこんな制度は恐らくないのじゃなかろうか。それからもう一つは一何人といえども懲戒の申し立てができる、非常に広く門戸を開いております。こういう制度も懲戒制度の中では少ないのじゃなかろうか。しかも、さっき申し上げた四対三の構成で懲戒委員会が開かれているのが半分近くあるということから見ますと、決して身内の懲戒委員会じゃないということを申し上げたいのでございます。  ただ、綱紀委員会というのはなるほど身内だけで構成しております。したがって身内をかばうという傾向があるのではないかと言われますと、ちょっと私も返答に困るのでありますけれども、まあ仲間意識というものは否定できないとは思いますが、しかし、いまの裁判官の申し立てた二弁の会員に対する懲戒申し立て事件は、四十五年から日弁連の懲戒委員会の中で慎重に審議されている、ただ東弁からの結論を待っておったために日にちがかかったという事実だけを申し述べさせていただきたいと思います。

山崎武三郎自由民主党

○山崎(武)委員 この荒れる法廷をめぐりまして弁護士会の態度そのものというのが大分変わったような感じがいたしますと申しますのは、いわゆる東大事件の弁護人たちが不当な法廷闘争戦術をとったとき、当時の日弁連会長阿部先生が日弁連理事者の一致した見解として談話を出していらっしゃいます。昭和四十四年九月七日の朝日新聞の朝刊です。要旨は、法的な見解の対立に対してわれわれはここでとやかく言うのではないが、これを主張する手続はすべて現行のルールに従わなければならない——一貫してルールに従えということでございます。文句があるのだったならば、現行法上、訴訟手続に関する不服はすべて適式な異議申し立て、忌避、上訴などの方法でやりなさい、裁判所の見解に仮に違法不当があるとしても、実力もしくはこれに類した事実行為によって主張を貫徹することは許されない、これが弁護士倫理であり職業上の義務だということを強く訴えていらっしゃいます。私どもはこれが本当じゃないかなと思うのでございますが、今回この法案で問題になっているような、いわゆる過激派事件の弁護人の不出頭、退廷、辞任戦術について、いろいろな方々がいろいろな御見解を申し述べていらっしゃいます。  今週の週刊新潮、五月十八日号に載っております第二東京弁護士会の会長を務めた先生の談話、これが本当かどうか知りませんが、この談話を見ますと、弁護人というのは「過激派と呼ばれる被告人たちの人権を守るために徹底した弁護活動をおこなっているんです。徹底的な弁護活動を続ければ、かならずどこかで国家権力とぶつかることがある。」「“被告人の人権を守り、社会正義を実現する”という弁護士法の精神を貫き通したいがために退廷あるいは不出頭という手段に訴えるわけで、弁護士会としての懲戒の対象なんかになり得ないんです」こういう方法は正当だ、こういう発言をしていらっしゃいます。そうしますと、東大事件のときの当時の日弁連会長の発言と現在のこういうような発言を対比いたしますと、百八十度の変わりざまでございますし、これは現在日弁連の先生方がそういうふうにお考えになっているのかどうか。  また、昭和五十三年五月五日の週刊法律新聞で拝見いたしますと、柏木先生は「裁判運営の手続や訴訟指揮が仮に形式的には法律に違反していないとしても、具体的妥当性を欠くときは、弁護士は鋭くこれを批判して是正を求むべきであり、これを放任すれば却って職務への誠実義務に反することになるであろう。そして是正を求める方法は、常に法定の手続に限定されねばならないと狭く解すべきものでもない」というふうにおっしゃっているわけでございますが、法定の手続以外の手段というのは何か。不出頭、退廷、遅延目的の辞任などのルール違反の手段をも先生はよろしいというふうにおっしゃっているのかどうかをお聞かせくださればと思います

柏木博元日本弁護士連合会会長

○柏木参考人 週刊新潮は実は私まだ拝見しておりませんけれども、私が発表しておる、これは私が書いたものでございます。したがいまして、先生もおわかりと思いますが、弁護士というものは時には国家権力と対決しなければならぬという場合が出てまいります。  ただ訴訟指揮の問題になりますと、杉野参考人から申し上げましたように、最近私どもの常識では律し切れないような強権的な訴訟指揮も出てくる。そういう場合に、すべて法律の認めた方法だけで対応し切れないという状況が今日出てきております。弁護士の使命は、いま申し上げたように不当不正あるいは違法な訴訟指揮に対してはどこまでも批判をするという批判義務と、訴訟指揮に協力しなければならないという二つの義務の摩擦の中に身を置いておるわけであります。したがいまして、弁護士は協力の方に回るべきか批判の方に回るべきかということは、具体的な事件でないと正確には申し上げられないのでありますが、絶えず裁判所の指揮だからすべて従わねばならぬということは、やはり弁護士の弁護活動を大きく制約するものだというふうに私は確信しております。  この退廷とかあるいは不出頭というような問題は、最近起こった問題ではございません。すでに明治三十年に第一回に花井卓蔵先生が懲戒問題を起こしております。今村力三郎先生も裁判長の制止を振り切って退廷をしているというような事件もある。退廷、不出頭ということは、日本の司法裁判の歴史にしょっちゅう繰り返されていることで、大変遺憾な問題ではありますけれども、そういうふうな背景が何であったか、特に戦争前は官尊民卑的なお上思想というようなものが強かったために、そういうような問題になったと思いますけれども、今日なおこの考え方が完全に払拭されておるというふうには私は残念ながら見えない。その辺やはり、一方では協力義務を負い、一方では批判義務を負わされておる弁護士という職業の苦悩というものを、ひとつ先生も十分買っていただきたいと存じます。

山崎武三郎自由民主党

○山崎(武)委員 あと一問だけ杉野参考人にお聞きいたします。  国選弁護人の推薦、これがうまくいっていますと、この法案などというのも出さなくても済んだのじゃないかなと私どもは思うのです。たとえば連続企業爆破事件、これについては昭和五十二年の一月二十一日の第二十二回公判期日の直前であります一月二十日に私選弁護人全員が辞任いたしました。辞任の理由は、裁判所の公判期日の指定に不満があるということでございました。そして、全員が辞任いたしましたから、私選弁護人を被告人に選任しなさいと言ったが一向にしてこない。しょうがないから、裁判所が東京の三弁護士会に対しまして、国選弁護人の推薦方を依頼いたしました。ところが弁護士会では、国選弁護人のなり手がない、前の私選弁護人を復帰させるのが一番よろしい等々の理由で、結局推薦せず、したがいまして、裁判所の方では国選弁護人が推薦されませんから、前の弁護士さんの要求であります月二回の期日指定をのまないと、前の弁護士さんはそれを受けないわけでございますから、泣く泣くこれをのんで、私選弁護人というのが半年後に復帰いたしました。こういうことというのは、まず弁護士会というのが国選弁護人を推薦するのに、推薦してもらわなければ困るわけでございますが、なり手がないということになってしまいますと、せめて弁護士会の役員の方々でもこれを引き受けるとかなんとかということでもせぬ以上は、弁護士会というものの存在価値がなくなってしまうわけでございます。前の弁護士さんの要求した月二回ということをのまなければ前の弁護士さんは受けない、前の弁護士さんがつかなければ法廷はもとへ戻らない、こういうことで、結局訴訟指揮というのは、実際上は前の弁護士さんたちの言うとおりになってしまう、こういうことです。これが果たしていいと思われますか、悪いと思われますか、その点だけ簡単にお答えください。

杉野修平日本弁護士連合会調査室長

○杉野参考人 お答えいたします。  幾つかの事実が誤っておられますので、その点を指摘しておきます。  まず、いまの事件で、東京弁護士会などが国選弁護人の推薦をしないという決定をした事実はありません。それから、東京弁護士会法廷委員会が言ったことは、先ほど私が意見を申し上げましかように、前任裁判長時代の合意を一方的に破棄したということはいけないことである、したがって国選弁護人が十分に弁護活動ができるような状況をつくろうではないかということで裁判所と熱心に協議しているわけです。実際には、私選弁護人が復帰する場合には、いたずらに証人調べをしないで、証人調書を同意して審理を促進しようではないかという地ならしもなされておるわけであります。したがいまして、先生がおっしゃるような、裁判所が屈服したというような事実は全くございません。  それからこの機会に、先ほど懲戒のことで先生ずいぶん御研究のようですから申し上げておきますが、アメリカの懲戒制度は、アメリカは任意のバーアソシエーションが原則ですが、すべて第一次的な懲戒権は弁護士会が持っております。その弁護士会の懲戒委員会には外部委員は一切入っておりません。日本のようにどんな小さな弁護士会であっても必ず外部委員がいるというところで審査できるというのは、世界的に見ても大変進歩した懲戒制度だと思います。それから、弁護士と関連したたとえば司法書士、弁理士、一般の公務員について、一般人から懲戒を申し立てるということは一切できないし、それからその処分庁の行政処分等が不服であるという出訴権も一切ございません。ところが、弁護士の懲戒については、だれからでも懲戒請求はできますし、不服であれば日弁連に対して不服の申し立でができる、そのように、被害者あるいは一般市民に対して開かれた懲戒制度であるということは、国内的にも国外的にも非常にはっきりしておるわけです。誤解のないようにお願いいたします。  それから、東大事件について申し上げておきます。四十四年ごろは確かに言われるような実力闘争に近い事例はあったのですが、それ以降は一切ないのであります。連赤、連企の御報告を申し上げましたように、単なる不出頭、辞任というきわめてクールな対応であります。したがいまして、先生が言われるような懲戒をしなければいけないというような事情はないと私どもは考えております。  以上でございます。

山崎武三郎自由民主党

○山崎(武)委員 終わります。

鴨田宗一自由民主党

○鴨田委員長 横山利秋君。

横山利秋日本社会党

○横山委員 私ども、党は違いましても、各同僚は皆、日弁連というもの並びに弁護士というもの、その社会的地位がきわめて高く、日弁連というものが在野法曹として日本における民主主義の支柱である、そう考えているわけです。本法案がこの国会に提出される前から、私どもは法曹三者の協議が十分行われていないではないか、こういう法案が出る以前に法曹三者の定期協議において十分委曲を尽くして、そうしてこの法案がなくても運営ができる、そういうことをすべきではないかということを、私は委員会でもまた理事会でも口をきわめて言ってきたのであります。今回法務省の刑事局が出しております「刑事訴訟法の一部改正について」というこの印刷物を見ますと、「法曹間の協議」というところで、私どものこの批評に対しまして、法制審議会の審議の状況、それから日弁連の委員も入っておること、また日弁連に対しましても事前協議したこと、こういうことを釈明いたしておるわけでありまして、なすべきことはなした、こう言っておるわけでありますが、この法曹間の三者協議、特に政府と日弁連との協議は一体いかなる状況であったか、説明を願いたいと思います。

柏木博元日本弁護士連合会会長

○柏木参考人 私が聞いておる限りは、この法案を策定する段階におきまして、日弁連に対する事前協議はないというふうに承っております。したがいまして、私どもはここに今年の三月四日付で提案をしております。さっき申し上げましたように、裁判というものは裁判官と弁護人、裁判所と弁護士会、これの信頼関係が本当にないと、手続的にもまた結論的にも正しい裁判が行われない。ところが、わずかにつながれておったこういう姿勢が最近になってだんだん崩れてきておったことも事実であります。今度岡原長官の発言が出ました。私は非常に残念に思うのです。ああいうふうな発言をされますと、せっかく弁護士会の方でも、ひとつお互いに胸襟を開いて話し合おうじゃないか、そして日本の裁判をよりよくしようじゃないかという自覚に燃えておったときに、あんな発言をされますと、足げにされたような、非常に残念なことだと思っております。  ただお答えの中心は、こういう裁判の基本にかかわるような問題について、日弁連と法務省がじっくり話し合うということはなかったということだけ申し上げます。

横山利秋日本社会党

○横山委員 私個人の考えでございますけれども、この特例法で弁護士がいなくて裁判をする、それはきわめて重大なことであるけれども、法廷においては裁判官と検事と弁護士とがそれぞれ立場を異にして公正に争う、庶民はだれでも、テレビを見ても新聞を見ても、三者がおってやり合って、そうして円満な解決がある、そういう中で弁護士がいない、それは一体どういうことだとみんなが思うわけであります。     〔委員長退席、羽田野委員長代理着席〕 かほどの重大なことでありましても、法廷内におけるお互いの主張、やり方というものはさまざまなものであろうとも、私のような素人でも、この法律が仮に通って信頼感が一層なくなれば、法廷がだれの責任であろうとも荒れることがさらに一層ひどくなるのではないか、そういうことを痛感いたすのでありますが、私の考えは間違っておるでしょうか。この弁護士抜き裁判の法律さえ通れば法廷が荒れなくなるだろうか、そういう庶民的な疑問についてどうお答えになりますか。

柏木博元日本弁護士連合会会長

○柏木参考人 先生の御指摘どおりでございます。私どももそれを心配しているから先生方にも訴え、ぜひこういう法案というものをじっくり御審議願いまして、果たしてこういう法案で対応しなければならぬ日本の現状であるかどうかということを十分見きわめをお願い申し上げたいのであります。本当に裁判官と弁護士との間に信頼関係が崩壊いたしますと、勢いのおもむくまま、私が申し上げたように、裁判官と検察官だけがおって裁判が進行できるというのがこの法案であります。でありますから、近代裁判制度というものを崩壊させるおそれさえあるのだということを申し上げているのはその点でございます。

横山利秋日本社会党

○横山委員 きょうおいで願いましたのは、理事会で話がございまして、余りにも政府と日弁連との意見が違い過ぎる、だから審議に入るに当たって、まだ審議が本格的に始まっていないのでありますが、審議に入るに当たって相互の主張は一体どんなところにあるのか、極端と極端のような話があるから、何が真実であるかをまず一遍聞いてから審議に入ろう、こういうことになっておるわけであります。  その意味では、この刑事局から出しましたパンフレットの「改正法案の明確性」というところがポイントだと思うのであります。   日本弁護士連合会は、改正法案の「要件が裁判所の判断によってどのようにでも解釈・運用されうるものである」と批判していますが、そのようなことは全くありません。この改正法案では、弁護人がなくても裁判を開ける場合の要件を厳しく絞っています。第一に、訴訟を遅延させる目的での弁護人の辞任、解任や正当な理由のない不出頭、退廷など四つの具体的な場合に限っています。第二に、被告人が憲法上の弁護人の弁護を受ける権利を自ら放棄したと認められる場合に限定しています。第三に、裁判所が審理の状況その他の事情を考慮して相当と認める場合にはじめて開廷できることにしています。   また、この「訴訟を遅延させる目的」とは、裁判の審理手続を妨げ又は阻止する目的という意味であり、弁護人と被告人の間の信頼関係の崩壊などのやむを得ない事情による弁護人の解任、辞任がこの要件に当たらないことはいうまでもありません。   「正当な理由なく公判期日に出頭しない」というのも、病気その他公判期日に出頭できない正当な理由がなく、しかも裁判所に届けも出さないで法廷に出て来ないことです。もし、弁護人が裁判所に来る途中で交通事故に会い入院したので裁判所に連絡する余裕もなかったという場合などは、正当な理由のある不出頭であり、弁護人なしで裁判を開ける場合に当たらないことはいうまでもありません。これが刑事局の各界に配っております改正法案のいわゆるみそに当たるところだと思うのであります。  このことについて、多少時間がかかってもよろしゅうございますから、政府のこの「改正法案の明確性」ということについて、日弁連はどうお考えになりますか、杉野参考人にお聞きします。

杉野修平日本弁護士連合会調査室長

○杉野参考人 お答えいたします。  まず第一に、訴訟遅延の目的という内心の問題を、直接認定することは大変困難だということです。同じような条文は刑事訴訟法第二十四条に、訴訟を遅延させる目的のみでなされた忌避申し立てに対しては簡易却可できるという問題のある条文がありますが、その目的というのはきわめて容易に認定されておるわけです。先ほど私が御報告を申し上げました連合赤軍事件でも、詳細な事実がありながら、しかし訴訟遅延を目的とする忌避申し立てだというふうに判断しているわけです。  「正当な理由なく」ということなわけですが、これは弁護人の不出頭、退廷の場合を規定しています。しかし、正当な理由の存否というのも非常にあいまいな概念で、その判断主体は訴訟指揮をしている裁判官自体なわけです。したがって、極端に申し上げれば、自分の気に入らない弁護活動については正当な理由がないというふうな推定が働くのではないかというふうな危惧を私どもは持っております。事実、先ほど私が説明した資料の中に、後で裁判官が、自分の訴訟指揮がまずかった、退廷命令という法廷警察権の執行は間違いだったかもしれないというふうなことを法廷が終わって言っているわけですね。しかし出されてしまえば——今度の法案が通りますと、弁護人抜きで裁判が進行するわけです。いままでの場合は、後で謝って、じゃ、今度はちゃんとやりましょうというふうなことで審理が正常化していたわけですけれども、今度は、弁護人を外に出しても全然問題がないという法律になるわけですから、乱用の危険は恐るべきものがあるんじゃないかと思います。  それから一番問題なのは、法案の二号ないし三号が弁護人の辞任、不出頭、退廷について、弁護人の行為について被告人に責任を負わせる、すなわち、他人の行為について被告人に責任を負わせている。そして辞任、不出頭、退廷というのは、当該訴訟の内部で行われた弁護人の行為にすぎないわけです。それを、憲法で保障された弁護人依頼権、それを根こそぎ剥奪するという形で、被告人に弁護人依頼権の放棄の意思を推定するというところが一番問題ではないかと思います。  それから「被告人の意思に反すると認めるときは、この限りでない」というただし書きがあるから限定があるというふうな法務省の説明がありますけれども、そうしますと、その被告人の意思に反するかどうかということもすべてその裁判所が判断するわけですね。それで、私どもはこういう仮説を立てるわけです。たとえば、裁判長に退廷命令を発せられて弁護人が退廷をする、そのときに被告人が、弁護人待ってください、私のために法廷にいてくださいというふうに叫ぶと、そのときどうなるだろうか。この点については藤永参事官にもある機会にお尋ねしたことがあるのですが、これはやはりその訴訟の初めからそのときに至るまでの状況を見て、意思に反するかどうかは裁判所が認定するということになるわけです。ですから明示的に、いやです。弁護人いてくださいと言っても、その弁護人の行為が被告人の弁護人依頼権放棄の意思の推定にすりかえられるという非常に恐ろしい適用があるのではないかというふうな危険性を私どもは感じておるわけです。

横山利秋日本社会党

○横山委員 先ほど同僚委員から日弁連の内部の組織的な問題について質問がございました。この日弁連の「「弁護人抜き裁判」に関する見解と提案」を熟読いたしまして大変参考になると思うのでありますが、その一つのポイントでありますのが「法廷対策連絡会議の設置について」で、このことについてまずお伺いをいたします。  先ほど杉野参考人から、これに類するような荒れた裁判において弁護士会から東京地裁の代行に話し合いをした、それによって裁判が円滑になったというお話がございましたが、そういうような単位弁護士会の申し入れにつきまして、一体裁判所が十分に日弁連の機能というものを尊重していま行われているかどうかということが一つであります。それから、法廷対策連絡会議というものについて提案をされておるのでありますが、このことについて最高裁なりあるいは法務省と協議がされたかどうか。それから第三番目に、この連絡会議というものは任意な三者間の協議機関として考えられるのか、法制化の必要はお考えになっていないのか。それらの点についてどなたでも結構でございます。

柏木博元日本弁護士連合会会長

○柏木参考人 お答え申し上げます。  日弁連は単位会に対しまして指導、監督、連絡の義務を負わされております。いまの情勢下から申しますと、日弁連の指導性は日一日と高まっておると申し上げてよかろうかと思います。何と申しましても今日の弁護士会の制度が生まれましてからまだ三十年たちません。したがって、制度が本当に定着して本当に機能を発揮するのには、諸外国の例を見ましても百年単位で考えなければならぬのでなかろうかと思っておりますけれども、単位会に対する指導性ということは毎年年ごとに強まっておるということは間違いないと思います。  それからこういう問題を、法廷連絡協議会を日弁連で提案いたしまして法務省、最高裁判所と三者協議会というものを従来持っておりますので、それの議題にいたしてお互いに審議をし合っておるというのが現在であります。したがって、この中身はそのメンバーから申し上げれば大変ありがたいと思うのですが、一生懸命法曹三者でこの問題を協議しておる、協議中だということが今日の情勢であります。

横山利秋日本社会党

○横山委員 杉野さん、お答えになりますか。そのとおりですか。補足はありませんか。  私はせっかく御提案になったこの連絡会議、いま柏木さんからやや抽象的にお話があったのでありますが、もし具体的にこの問題が提起をされ、各裁判所単位にこれは恐らく必要があると思うのでありますが、もし経過がございましたならば、その経過並びに現状等についてひとつ文書をもって本委員会に御提出願いたいし、もし、いま柏木さんのお話のようにこの問題について担当者の意見を聞いてくれということでありましたならば、次の機会にぜひひとつ状況を調べて——中身につきましても私のいろいろな意見がございますので、お願いをいたしたいと思います。  いま柏木さんは、日弁連の指導性が年とともに高まってきておると言われました。私もそう感じないではありません。柏木さんは前々会長でございますが、そのころでありましたか、全国一斉の会長選挙の制度が実行されたのは。私は非常に意義のあることだと思うのであります。しかし世間の人が何といっても批判をいたしておりますのは、その制度によって全国から選ばれた会長が、わずか一年任期であるということであります。一年任期で、あれだけの激しい選挙をやって会長になって、そして人選をやって、日弁連が新会長のもとに指導体制ができ上がるまでには一カ月か二カ月はどうしてもかかる。それから七、八カ月かかれば、すでにまた次の会長のうわさ、事前運動、そういうことになってくる。全国一斉の選挙体制をされたということは非常に民主的ではあろうけれども、その任期が一年で、どうして一体本当の指導体制ができるのであろうか。同僚委員も日弁連の指導性あるいはまた政府も端々の中で——いまあなたのおっしゃるように、弁護士の中にも自民党系から共産党系まである、非常に多様性のあるところだとはおっしゃいました。私もよくそれは承知の上で言っておるわけであります。それにしても、こういう緊急事やあるいはいろいろと決議をされる実践状況から考えますと、まだまだ組織的に指導性は不十分なものではなかろうか。少なくともいろいろと弁護士活動の独立性というものがあるものですから、その独立性を侵す、裁判の内容について一々侵すということはいけませんけれども、社会からの期待、批判等にこたえていま一歩指導性を確立する必要があるのではないか。題材としてはまことに恐縮でございますが、一年任期を中心にして、さらに日弁連の指導体制の強化についてどうお考えになりますか。

柏木博元日本弁護士連合会会長

○柏木参考人 まず第一点は、三者協議の状況をひとつ文書で報告してくれというお話でございました。三者協議につきましては議事録を作成しております。ただこの議事録を発表するということは、協議会の考えとしては、やはり法曹三者が一致しなければならぬということになっているそうでございまして、次の協議会にそういう問題を議題にしてもらいたいと思っております。努力はいたしますけれども、組織的にはいま申し上げたようなことになっておるそうでございます。  それから日弁連の会長二年制、私は全く同感であります。幸い私のときには選挙なしであったのでございますけれども、私は任期二年制を提案いたしまして、毎月全国八十数名の理事が集まって理事会を開きますが、その理事会で昭和五十五年を目途として会長期限二年制の実現を図るという——図るのですから確定ではございませんけれども、そういう議決までしてございますので、いまの執行部が一生懸命この二年制の期限につきまして検討しております。

横山利秋日本社会党

○横山委員 最初の、三者協議の内容というわけではなくて、私がポイントを置いておりますのは、法廷対策連絡会議というところに焦点がございますので、その点を……。

杉野修平日本弁護士連合会調査室長

○杉野参考人 お答えいたします。  御質問の趣旨はわかりました。それで、かつて刑事事件をめぐりまして裁判所と弁護士会それから弁護人との間でいろいろ協議された事例の幾つかは届いておりますけれども、まだちゃんと整理できておりませんので、できるだけ集めまして、またの機会に公表できるものは公表したいと思います。

横山利秋日本社会党

○横山委員 柏木さんにお伺いをいたしますが、この法案のバックグランドになっているものに、政府側の言い分は、弁護士が悪い、そして裁判官も検事も神様と言わぬけれども何ら非を打つところはない、こういうところに終始をし、しかもなお一歩進みますと、弁護士さんも全部が悪いとは言わぬ、一部が悪い、こういうことを言うておるわけであります。そして日弁連の内部も、あいつらは悪いのだ、おれらは悪くないのだけれども、しかし立場上これに反対せざるを得ぬなあという雰囲気があるかのごとき宣伝が行われておるわけであります。日弁連はこの特例法について全国的にいかなる討議をされ、いかなる状況にあるか承りたいと思います。

柏木博元日本弁護士連合会会長

○柏木参考人 私は、瀬戸山大臣がこの委員会で、日弁連はあんなふうに反対しているけれども大方の弁護士は賛成しているのじゃないかという発言がありましてびっくりしたのでございます。この法案に関しましては、政治路線を異にし、思想、信条を異にいたしましても、九割の弁護士は反対しておる。ということは、やはり裁判というものの根幹を揺るがす危険性を持っておる法案だからというふうに思います。したがいまして、全国に五十二単位会がございますけれども、いずれの会におきましても、会の決議といたしましてあるいは会長声明といたしまして、全部反対をしております。これはもう当然、在官経験の長い弁護士さんは別としましても、九割の弁護士さんは、こういう法案はけしからぬ、さりとて過激派の弁護人の行動も若干の批判はすべきじゃないのか、こういうところがほとんどの世論といいましょうかコンセンサスだと考えます。

横山利秋日本社会党

○横山委員 先ほども話が出ましたが、国選弁護人の問題でございます。この提案の中にも、国選弁護人についてのありようについて具体的な提案をされておるわけであります。「国選弁護人は、必ず弁護士会の推せんによるものとする。」「弁護士会は、遅滞なく責任をもって国選弁護人を推せんする。」「各弁護士会は、その実情に応じて国選弁護人推せんについて、その充実のための具体的方策を早急に確定する。」そして、対処すべき事項がずっと書いてあるのでありますが、一番最後に「国選弁護料の増額を実現すること。」ということがございます。案外ここの辺がある程度みそではなかろうかという感じもしないではありません。実際問題として、国選弁護料が安いということは私どもも法務委員会でいろいろと議論をして、年々再々法務省に要求をしておるところではございますけれども、この際、国選弁護人をやっておる者の考え方、苦衷などを一遍ひとつお伺いをいたしたいと思います。

柏木博元日本弁護士連合会会長

○柏木参考人 この点は私の方からも先生方にぜひお願いしようと思っておった点でございます。現在、国選弁護料は、今度上がりましたからはっきりわかりませんけれども、一件二万九千円ぐらいじゃなかろうか。しかも、国選弁護がつけられる事件は全刑事事件の五割を占めております。五割の刑事事件を一件二万九千円ぐらいで弁護しろ、こういうのが国選弁護であります。ところが、二万九千円の中身も、中身と申しましょうか、国選弁護の事件も、十分で終わる事件もあれば三十分で終わる事件もあります。しかし、そういうものに関係なしに、ほぼ一件二万数千円ということで弁護料が払われておりますが、過激派裁判になりますと、大体朝の十時から午後の五時までみっちり審理が進められるわけであります。そういう裁判の状況に対応して、国選弁護人に二万数千円でつき合ってくれといってもなかなかむずかしい状況がございます。しかも、中には生命の危険さえあるという方もおられるので、ぜひこの国選弁護料は、イギリス並みと申しますと普通の平均の弁護料の七割ぐらいが国選弁護料になっておるそうでありますけれども、ぜひその程度までは国選弁護料を上げてもらえれば国選弁護制度の運営というものは非常にやりやすいというふうに申し上げられると思います。

横山利秋日本社会党

○横山委員 時間が参りましたので、最後に政府側の反論といいますか、外国の立法例で日弁連の主張と政府側の主張とに懸隔があるようであります。外国の立法例でこの弁護士抜き裁判のような事例がある、ないという論争について、簡潔に日弁連側の主張をお伺いいたしたいと思います。

柏木博元日本弁護士連合会会長

○柏木参考人 これは若干学問的になると思いますけれども、弁護人がいなければ裁判が開けない、審理ができないという必要弁護制度、これはヨーロッパの大陸系で発達した手続でございます。わが国はその系列を承継いたしましたので戦前からあったわけであります。もう一つは米英系の考え方であります。これはわが国の憲法の三十七条三項に、「刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する辯護人を依することができる。」という、資格ある弁護士の弁護を受ける権利を保障しております。と同時に、弁護人の依頼ができない人には国が国選弁護人をつけますという義務を規定しております。これはちょうどアメリカの憲法と同じような米英系の考え方であります。  日本は二つを従来持っておったわけであります。弁護人を依頼する権利、これは憲法上の権利だから放棄できないという考え方、意見も、アメリカでも日本でもございます。ただ、アメリカの連邦最高裁判所の確定した判決によりますと、放棄はできる、放棄はできるけれども、基本的人権に関する権利であるから、これを放棄することによってどういう利害得失があるのか、放棄すればどういうことになるかということを十分理解し、正常な心理状態のもとで確定的に、明示的に放棄の意思表示をしない限りは放棄はできないのだ、こういう判例がもう確定しているわけなんです。ところが、今度の法案をごらんになればわかりますように、弁護人依頼権というものの放棄ということが非常にあいまいな表現で、どうにでも解釈できるようにこの法案が組み立てられておるということ、これが私どもが憲法のいまの三十七条三項に抵触するのじゃないかということを唱えておる根本の理由でございます。

横山利秋日本社会党

○横山委員 ありがとうございました。

羽田野忠文自由民主党

○羽田野委員長代理 山花貞夫君。

山花貞夫日本社会党

○山花委員 ただいま横山委員も指摘しましたとおり、このいわゆる弁護人抜き裁判法案に関連して、これまでの経過を振り返ってみますと、最大の特徴は、政府、法務省の説明と日弁連の皆さんの主張とが、まさに真っ正面から衝突しているということだと思います。  根本的な問題としては、政府の方では憲法違反の疑いは毫もない、これが本会議における答弁であります。皆さんの方がこれまで出したさまざまな文書を見ますと、まさにその憲法問題が根底の問題として指摘されているところであります。違憲性については、これからの法務委員会の審議で追及されなければなりません。時間の制約がありますので、そうした問題点を頭に置きながら、残された時間、二、三点の問題についてお伺いしたいと思います。     〔羽田野委員長代理退席、委員長着席〕  実は、申し上げましたような政府、法務省の説明と日弁連の見解が食い違っているという幾つかの問題について、つい先日の法務委員会でも議論されました。たとえば、この法案の必要性について、要約いたしますと、この法案を出したから荒れる法廷が少なくなった、円満になった、弁護士どもはおとなしくなった、こういう本会議の法務大臣の回答があります。前回その点については議論されました。その種問題が実は幾つかあるわけであります。たとえば、横山委員が質問いたしました日弁連と法務省の間の事前協議について、刑事局が提出しておりますことし一月付の文書によりますと「日本弁護士連合会に対して、改正法案要綱の概要の説明をしますとともに、弁護士会の国選弁護人の推薦状況の改善方を申し入れ、事前に協議しました。」とあります。法案要綱について事前協議を済ませた、こういう説明をいたしまして、この法案の提案の一つの資料としているわけであります。あるいは、ついせんだっての本会議における質疑応答の中におきましても、同じような観点で事前の協議をしたとの趣旨の説明をしています。具体的に言いますと、御相談をしても御相談にならなかったというような、こういう形で説明をしているわけであります。文章の意を約しますと、大体日弁連は日本の、法治国家の法律の専門家であるかどうか疑わしい、瀬戸山法務大臣はこう言いました。話そうと思っても、話す暇がないのだ、相手にしてくれないのだと言っているのですけれども、その点、日弁連どうでしょうか、確かにお答えのとおり話す機会がなかったのか、皆さんの方から申し入れたことがあったかなかったか、そのことに対する法務省の応答はどうかということをお答えいただきたいと思います。

杉野修平日本弁護士連合会調査室長

○杉野参考人 お答えいたします。  事前協議の事実はございません。これは前事務総長から私どもが聞いておる事実でございますが、これこれの法案があるという事実は、たまたま前事務総長が刑事局長の部屋に私用で行ったときに示されたことはある、そこで事務総長は、これは協議ではないのですねという確認をしてその法案の中身の説明を受けたということでありまして、それ以外に法務省側から、この法案について一切協議の申し入ればありませんし、私どもは、この法案が公表された直後に、逆に三者協議を申し入れておりますけれども、それは明白に拒否されております。  それから、本法案を提案してから異常な裁判はなくなったという先般の衆議院本会議における答弁ですが、先ほども申し上げましたように、連合赤軍事件は四十八年五月から、企業爆破事件は昭和五十二年七月二十二日からすでに審理は平穏に行われておるわけです。この法案が出たのは五十二年の十一月八日で、最初対策本部で決定された刑訴法を改正したいという一番早い時期をとらえてもそうです。法案が実際に出されたのは十一月下旬です。したがいまして、この法案によって審理が正常化したということは全くの事実無根と考えます。

山花貞夫日本社会党

○山花委員 日弁連から協議を申し入れたことがあったのではないでしょうか。それに対する法務省の態度はどうでしょうか。

杉野修平日本弁護士連合会調査室長

○杉野参考人 お答えいたします。  先ほど申し上げましたように、三者協議の申し入れば法務省に否定されました。協議しないと言われました。

山花貞夫日本社会党

○山花委員 いまお話しのとおりだといたしますと、法案の提案の資料あるいは本会議の答弁が事実に反しているということになります。その点については今後確かめなければならないと思います。  関連して、一つだけ同じような問題でお伺いしておきたいと思いますけれども、先ほどお名前が出ました法務省の藤永参事官、きょうもいらっしゃっておりますけれども、この「刑訴法の改正は必要」ということで、先ほど宣伝という言葉を使いましたけれども、あちこちに論文を発表されたり新聞の論壇で論じておられます。いまの関連で申しますと、ことしの一月十九日の朝日新聞の論壇には、事件の中心であるリンチ殺人の審理にはまだ入っていない、事件後六年たったのに何事であるか、こういうことを主張して、刑訴法の改正は必要である、こういう論旨の展開されているわけでありますけれども、ことしの一月十九日の、いわゆる連合赤軍事件について、六年たっても全くリンチ殺人事件の審理に入っていないというこの説明は、先ほどいただきました資料六−一を見ますとどうもおかしい気がいたします。結論だけで結構ですけれども、いずれが正しいでしょうか。

杉野修平日本弁護士連合会調査室長

○杉野参考人 お答えいたします。  私どもが当該弁護人から聴取した資料は、資料六−一のとおりでございます。これが真実でございまして、藤永参事官のさような意見は客観的事実に反するものと考えます。

山花貞夫日本社会党

○山花委員 客観的事実に反することを新聞に発表して刑訴法改正を論ずるというのは、これはゆゆしき問題であると思います。  時間の関係がありますから先に質問を進めますけれども、最近は法務省、日弁連の対立部分だけが強調されるきらいがありますけれども、振り返って、過去の実績ということでお伺いしたいのですが、何らか法案の審議その他に関連して、日弁連が協力してやってきた、日弁連が何かの法案について意見を出して、法務省もまともに受けて、協力して法案の改正あるいは新しい法規の制定等に円満に努力してやってきたという、こういう面はなかったのでしょうか、それとも、それがあたりまえなんだけれども、このことだけについてはどうもうまくいってない、異常である、こういうことでしょうか、いかがでしょうか。

杉野修平日本弁護士連合会調査室長

○杉野参考人 お答えいたします。  今般法務委員会で審議される民事執行法、これについては非常に長い期間私どもから幹事それから委員を派遣しまして、非常に精力的な討議をしております。それから監獄法につきましても、先般監獄法部会の答申が上がりましたけれども、これについても幹事その他の委員を派遣しまして積極的に法務省に協力しております。

山花貞夫日本社会党

○山花委員 私の時間がなくなりましたので、最後にお伺いしておきたいと思いますけれども、いろいろお伺いすべき点、私自身もたくさん残りました。きょうの時間の範囲ではなかなか意を尽くしてお答えをいただくことも無理かと存じます。できましたならば、今後の法務委員会の審議に際して、中間でもいろいろ資料をいただきたい、御報告をいただきたいと思いますし、委員会出席その他ぜひ御協力をいただきたいと思いますので、そのことをひとつお願いいたしまして、きょうの私の与えられた時間内での質問を終わりたいと用います。

杉野修平日本弁護士連合会調査室長

○杉野参考人 先ほど法務省に対する本法案に関する日弁連側の協議申し入れの事実ですが、昭和五十一年十一月二十二日付で当連合会の会長宮田光秀から瀬戸山法務大臣に申し入れをしております。これは、国会の附帯決議の趣旨に沿って協議したいという申し入れを文書で行っております。それが拒否されたわけです。

山花貞夫日本社会党

○山花委員 いまの点で一つだけ……。  文書で申し入れをしたけれども、握りつぶしですか、それとも回答ぐらい何かありましたか。

杉野修平日本弁護士連合会調査室長

○杉野参考人 この文書に対する応答は、その次に開かれた三者協議会の席で、三者協議会の議題にすることはできないという形で拒否されました。

山花貞夫日本社会党

○山花委員 以上で終わります。

鴨田宗一自由民主党

○鴨田委員長 飯田忠雄君。

飯田忠雄公明党・国民会議

○飯田委員 本日は弁護士会の御意見を承りますので、通常政府に対する質問ですと政府の反対側に立って質問いたしますが、きょうは弁護士会と反対側の立場に立って御質問をいたしたいと思います。といいますのは、実体的真実を発見しなければ正しい法律はできない、こう思いますので遠慮ない質問をいたしますが、まことに失礼の点がありましたら御容赦願いたいと思います。  きょうは、実は山崎議員それからほかの同僚の社会党の議員の方々の御質問がありましたので、もう私の質問するところが大分終わりました。それで、特に四つの点について御質問申し上げたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  まず第一の点は、簡単に申しますと、国選弁護人の選任方法なんですが、これが非常に手間がかかる。また、先ほどの御答弁によりますと、ことに国選弁護人が脅迫されたり、あるいは生命に危険があるというようなことで生命保険まで掛けるというようなことで、なかなか選任がむずかしい、こういうお話でございましたが、こういうようなことは今後も起こると思います。というのは、私新聞で日本赤軍の声明文というのを見たわけなんです。この日本赤軍の声明文によりますと、明らかに今度のダッカのハイジャックは、捕らえられて獄中にあるわれわれの同志を解放するためにやったんだということを書いておりますし、今後もこれを実行するということを宣言しておるわけなんです。  そこで、こういうような事件が起こりまして裁判になりますと、どうしてもそういう人たちを弁護する弁護士さんというのは、その被告人の立場に立った弁護をしなければならぬ。そうすれば、場合によっては法廷闘争もしなければならぬし、あるいは自分の意思に反しても弁護士の任務を遂行しなければならぬ、こういうことも起こるでしょう。そうしますと、これは弁護士会で国選弁護人を選任しようとなさっても、なかなか皆さん御承諾にならない。またそのほか、裁判長が選任義務を負うておるけれども、その義務を果たし得ないというような事態が今後も生じてくるであろう、そういうような場合に、一体どう処置をしたらいいのかということが一つの問題点であろうと思います。憲法では明らかに弁護人を選任することはできる、資格ある弁護士を依頼することができると書いてあり、またその場合に、弁護人が被告人につかぬときには国はつけなければいかぬ、こう書いてあります。法律にはそう書いてあるけれども、書いてあること自体が行われ得ないということが今後は生ずると覚悟しなければならぬと思います。こういうような場合に一体どう処置するのかという点で実は私ども非常に悩んで、判断に苦しんでおるわけなんです。私どもの党では、まだ賛否を決定いたしておりませんのは、こういう点についてのことが本当にわからない、どっちをやったらいいかわからぬというところで非常に苦しんでおるわけなんでございます。そこで、こういう点について一体どのようにお考えになっておるんだろうかという点をまず第一にお尋ねいたしたいと思うわけです。  それから第二番目の点ですが、これに関連するのですけれども、新聞とか週刊誌などによりましても、こうした連合赤軍事件だとか企業爆破事件だとかの人たちにおいては、獄中と獄外との間で連絡が行われておるじゃないか、これはハイジャックを誘発するために、裁判を延ばしておいて助けてやるから、おまえらどこまでも延ばして抵抗しろということで行われておるのじゃないかと疑われるような文句の記事が載るわけですね。たとえば週刊読売に載っている大道寺あや子の書いておるのを見ますと、獄中者に向けての人民放送、東アジア反日武装戦線を救援する会の仲間たちからの連絡によって云々というふうにあります。外からの連絡がある。獄中におる者に、外からこういうがんばれといったような連絡があるということ自体、一体どうしてこういうことが起こるのだろう。こういうように、裁判をやって延ばしておいて、ハイジャックをやって助けてやるということになりますと、これは困るのです。こういう事実があるとすると、われわれは一体これに対してどうしたらいいのか。やはり悩むところですね。  そこで、たとえばこういう問題につきまして弁護士さんの中に、過激派の被告人と外部の救援連絡センター等の救護団体との連絡に当たるようなお方があるのかどうか、私どもはわかりませんが、そういうようなお方があるとすると、これはもう弁護士会の統制に服することができない、恐らく弁護士会の統制には従われないのじゃないかということを考えるわけです。中には、いろいろ弁護士さんが公判準備資料として書いて獄中に持っていって教育されることもあるということを私ども漏れ承っておるのです。これは日本弁護士会の責任ではないと思いますけれども、そういう弁護士さんがあるということになりますと、これは大変なことだ、今後こういう犯人はつかまって裁判をするたびにハイジャックされて日本からお金を持っていかれる、それではたまったものじゃないというふうに考えるわけです。こういう点について一体どうお考えになるのだろうかという問題、これが二番目です。  それから三番目。日本弁護士会では、特例法ができますと弁護人抜きでの裁判が一般的に行われていくのじゃないか、そういう心配がある、こういうふうにお考えになっているということを聞いているわけです。いわゆる弁護人抜きといいましても、最初は全部弁護人はあるのです。弁護人があって、それが途中で弁護人を脅迫するとかいやがらせをしてやめさせてしまうという事実が起こる。だから、弁護人にやめられてしまって後の補充がつかないということになってくるのでして、そういう問題は、脅迫その他の行為がなければ一般的には起こらないのじゃないか。普通の事件について弁護士さんがやめてしまうということは、過去においては起こらなかったのじゃないか。そうすると、これからも起こらないのじゃないか。そういうことが起こってくるのは、結局弁護士に対する脅迫ということがあったりいやがらせがある場合に限られるのじゃないか。そういうことになりますと、今度の特例法が出たからといって、その後弁護人抜きの状態が一般化するということは考えられないのじゃないか。これはわからぬですよ。実は私もわからぬので、弁護士会の御判断をお聞きするわけです。  それからその次にもう一つの問題、四番目ですが、特例法が出ますと暗黒裁判になる、これを読ませていただきますとそうかなとも思うのです。まあきょうは反対の立場に立っての質問ですからね。この特例法が出た場合に本当に暗黒裁判になるかどうか。といいますのは、特例法が出て弁護人がいなくなってしまうのは、先ほどもありましたように脅迫されたりいやがらせをされたりして耐えられないからやめてしまう、しかも裁判長が弁護人を選任したいと思ってもそれもできないような状態、みんないやがって、もうわしはあんなものにはなるものかということで逃げてしまうという状態が生ずるための問題であって、そういう状態さえ生じなければそういうことはないのではないか、こういうふうに考えられるのです。  憲法の問題に戻りますが、被告人が弁護人を依頼する意思を表明した場合、国選弁護人をつけなければ憲法違反だと思います。被告人が弁護人を依頼する意思を表明した場合ですよ。この場合に、つけることができない事情があれば国でつけてやる。つけなければ憲法違反です。ところが、被告人が弁護人など要らぬという意思表示をした場合、一体憲法上の問題が起こるかといいますと、私は起こらないと思うのですね。つまり被告人の意思が入り用なのでして、被告人が弁護人は要らぬと言って拒否して脅迫してやめさせてしまうという状態、そういう状態が生じた場合にでも、なお国は弁護人をつけなければならぬだろうかという点について、これは憲法上の問題ではなくて刑事政策の問題だと思いますが、そういう刑事政策が必要であるかどうか、この四点をひとつお願いします。

柏木博元日本弁護士連合会会長

○柏木参考人 大分問題が多岐に分かれました。国選弁護人を世話する弁護士会は日弁連でなくして単位会が国選弁護人を推薦しておるわけですが、国選弁護人の希望者についてそれぞれ表をつくっておりまして、非常に希望者は多いのでございます。大体順番に国選弁護人になっていただくよう推薦をするということでございます。  ただ、赤軍関係の国選弁護人になりますと、さっき申し上げましたように、何といっても朝十時から午後の五時まで、しかも回数も相当な回数になる。ところが国選弁護料が、一件大体三開廷ぐらいを予定しているようでありますが、二万九千円ぐらいである。これで何年もつき合わなければならぬ。そうするとその国選弁護人はほかの事件を犠牲にしなければならぬという非常にむずかしい問題があるわけです。ですから国選弁護料との兼ね合いで、国選弁護料が相当出れば相当の数の国選弁護希望者があるであろうということが言えると思います。  それから最後の問題から申し上げますと、過激派から脅迫されて弁護人をやめるというふうな事件は考えられません。自分で選んだ弁護人を過激派の方で脅迫するとかいうような事案はないと思います。その御心配は要らぬのではなかろうか。ただ、過去に東大事件関係を処理した場合に、国選弁護人に対して、法廷活動が誠実な弁護義務を尽くさないということで、懲戒の申し立てが八名ばかり被告人の方から出たというケースはございます。  それから、弁護人の中にはいわゆる拘束されている者との連絡に当たるような者があるのではないかという危惧を申されました。これは特にヨーロッパではテロが頻発しておりますし、日本のようなこういう平穏な社会では現在ございません。そのために西独ではテロ防止対策の一環といたしまして、テロの一味と共犯関係にあることが相当の嫌疑で証明できるような弁護人はその裁判の弁護人から排除する、また、事後においてそういうテロ団を援助したということが濃厚な嫌疑をもって証明できる場合は、その弁護人はその裁判の審理から排除するという法律ができております。しかし弁護人がいなくても裁判をやるのだという法制ではございません。  ところが、繰り返し申し上げておりますように、この法案が一般刑事事件にもなお適用になるということがございますね。そうすると一般刑事事件でも弁護人が辞任するという場合が多々ございます。しかもやむにやまれぬで辞任するけれども、辞任の理由を言うと被告人に不利になりますから言えない。ところが一段高い裁判所の方から見ますと、延期を目的にしているのじゃないかというふうにまず解釈するのじゃなかろうか。そういうことで、弁護人もいない、被告人もいないような裁判が行われる可能性は相当強い。そうだとすると、いまの裁判制度そのものを破壊するようになるのじゃないか。そうすれば暗黒裁判へ移行するおそれもこの法案の中にはあるのじゃなかろうか。先の先まで危惧するから、いま申し上げているようなわれわれの意見を申し上げているわけでございます。

杉野修平日本弁護士連合会調査室長

○杉野参考人 お答えいたします。  まず国選弁護人の選任についてですが、弁護士法第二十四条に「弁護士は、正当の理由がなければ、法令により官公署の委嘱した事項」を断ることができないという条文がございます。私どもはこれは弁護士に課せられたきわめて貴重な使命だというふうに受けとめておりますので、かつて国選弁護人を辞退したというような事態は一件もないわけです。  それで、いま一番問題になっております例の連続ピストル射殺事件、永山則夫の事件ですが、これについても、そのような立場から、大げさに言えば命がけということでも弁護士会がすでに弁護人を推薦しており、三月に選任命令をいただいております。その後も支援グループと思われる人たちからいろいろな言い分が来ているようですが、現実的には危害はありません。しかしながら私どもとしては、この事件を含めて将来いかなる凶悪犯人であろうとも国選弁護の依頼があればできるだけ早く推薦をしたいと考えております。それで、今回の見解と提案の中にあえて国選弁護制度ということを確認する意味で提案申し上げているわけです。  それから、拘置所に拘置されている被告人と房外との連絡の問題ですが、先生がお示しになった週刊読売の記事は私ども承知しておりませんが、弁護人の通信といえども検閲がございますし、身柄保証、証拠隠滅については法務省の管轄下にある拘置所で非常に厳重にチェックしておられますので、そのような事実はないのではないか。むしろ一般的な手紙の中から、獄中にいる人の意思をくみ取って大道寺さんはそういうふうなことをおっしゃったのかもしれません。私はそういうふうに考えます。  それから、特例法が過激派の裁判にだけ適用されるのではないということは法務省は早くから認めておられまして、一番ホットなところでは、たびたびお名前を出して恐縮ですが、藤永参事官が五月九日のNHKのNC9で、過激派に限ると憲法違反の問題が生ずるので、そうではないと明白に言っておられます。これは私ども録音にとってございますので、必要があればこの委員会に提示したいと思います。したがいまして、この法案が過激派正常化法という看板には偽りがございまして、すべてのルール違反に適用になるということを藤永参事官は明言しておられます。  したがいまして、ささいなことで先ほど私が申し上げました弁護人の退廷、これは裁判長の訴訟指揮に従わなかったということで——具体的な例で言いますと、裁判長を指さしたということで退廷命令の出ている事態もあるわけです。裁判官に向かって指をさすとは何事かというようなことをめぐって退廷、その場合にも審理が進め得るというのがこの法律なんです。それが大変こわいわけです。ですから一般事件に無制限に適用されるということは当然あり得ることだと私たちは考えておるわけです。それが暗黒裁判ということです。  それから、被告人からいろいろ難題を吹っかけられて、仮にやめさせられた場合、それでも被告人自身はほかに自分の気に入る弁護人を選任してほしいと考えているかもしれないわけです。そうだとすると、当該弁護人をやめさせたからといってそれが訴訟遅延というふうにはつながらぬわけです。やはり訴訟が進行しているうちに、自分を本当に防御してくれるかどうかということを被告人自身も真剣に考えるわけです。したがって、どうもこの先生は残念ながら自分のことをよくやってくれないと思えばやはり解任したいわけです。そういう場合に、ほかの弁護人を求めるというケースでも、一たん解任したときに、これは訴訟遅延の目的であるというふうに裁判所は認めることができるわけです。そうなると弁護人抜きで裁判が行われるというふうになるわけです。したがいまして、私どもはこれを暗黒裁判実現法と呼んでおるわけでございます。  以上でございます。

飯田忠雄公明党・国民会議

○飯田委員 お話は大体わかりましたが、もう少し確かめたいのです。  この法律ができました場合でも、たとえば普通の事件におきまして弁護人を雇う場合に、被告人はお金を出して雇うわけですね。自分が雇った者をそんなに簡単にやめさせてしまうだろうかという疑念が一つあるのです。やめさせることがないとするなら、結局この法律はやめさせることをやりたい人だけに適用になるのじゃないかという、素朴な質問なのですが、こういう問題があるのです。そうなると、一般化というのはちょっと極端なので、一般化というと、一般化の意味を狭く解釈するなら別ですが、問題があるのじゃないか。  それからもう一つは、もし一般化した場合でも、弁護人を依頼することを被告人が拒否する場合、つまり、私は弁護人など要らないのだ、たとえば鬼頭判事補のように、私は法律をよく知っているから弁護人は要らない——あんなのが出てきた場合でも弁護人をつけなければいかぬのかという問題です。もしつけなくてもいいというのなら、どうでしょう、この法律もそう無理ではないと考えられぬこともないのですが、いかがでしょうか。

杉野修平日本弁護士連合会調査室長

○杉野参考人 必要的弁護事件は、被告人がいやだと言ってもつけなくてはいけない、長期三年を超える重罪事件ですから。それが憲法、刑訴法のたてまえと考えます。  それから、辞任がそう頻繁にあるかというお尋ねなのですが、実際は非常にあるわけです。民事事件でもありますし、刑事事件の場合は、特に被告人は神経質になっておりまして、自分の弁護ということに対して非常にいろいろな要求をしてくるわけです。私どももできるだけ入れてやるわけですけれども、どうしても入れられないという場合は、被告人をいろいろとなだめ、教化するわけですが、どうしても合わないときは解任されます。やむを得ずわれわれの側から、あなたは自分の頼りになるほかの弁護士を選びなさいというふうにするのが親切だと思いますので、私どもはそういうときにはやめますというふうに申し上げるわけです。したがいまして、私選事件におきましても、せっかくお金を出しながら弁護を辞任するという例が非常にあるわけです。  辞任と言われましたけれども、解任の例とか、一番問題になるのは弁護人の退廷ですね。そういうふうに、被告人の意思とかかわり合いのない行為について、被告人が訴訟遅延の目的で弁護人依頼権を放棄しているというふうな擬制ですね。これは被告人は全然何も言わないわけです。黙っている被告人について弁護人依頼権そのものを放棄したという擬制、これは大変恐ろしい法律だと思うわけです。おわかりいただけたでしょうか。

鴨田宗一自由民主党

○鴨田委員長 次に、高橋君。

高橋高望民社党

○高橋委員 参考人としておいでいただいて、まずお礼を申し上げます。ありがとうございました。  こういった形での参考人のお願いというのは、法務委員会では比較的例のないことのようでありまして、ふだんはもう少し審議が進んでから参考人をお呼びして、あるいは終了のころにお願いするということが多かったのですが、今度は私のわがままを通させていただいて、審議の冒頭といいましょうか、しょっぱなに参考人の方においでいただいたわけです。  すでに二、三の同僚議員から意見陳述がございましたけれども、正直なことを言って、いろいろいただく資料、説明というものが弁護人のお立場と法務省側とで違い過ぎる。それで法案を審議する以前にそういう事実認定をしなければいけない、そんな気がしたものですから、あえて今度お願いしたわけでございます。ところが、いつでも私たちの党は順番が後の方ですから、いろいろ伺っているところもございますので、ちょっと用意しましたことを形を変えてお尋ねをしてみたいと思っております。  振り出しに戻って考えてみる、私はそういう気がしてなりません。その私の言う振り出しというのは、私たちの普通に暮らしている大多数の仲間は平和で、こんな問題に余り関心を持つ必要がない暮らしをしているわけですが、こういう問題を考えるに当たっては、やはりそういったごく普通の人が考える立場に戻っていろいろと考えてみる必要があろうと私は思います。  そこで、過激派による犯行というものを憎まない人はいないと私は思うのです。特にはっきりと表面化し、現象化した仲間のリンチによる殺人であるとか、あるいはそれこそ何の罪とがもないのに、たまたまそこに居合わせたがために仕掛けられた爆弾で負傷したり死んだりする。そうなると、過激派がどうして発生したかというような論議はさておいて、そういう問題を引き起こしてつかまった犯人は早く裁判してほしいというふうに国民の大多数の人は考えると思うのです。しかも裁判によって早く結論を出してほしいと思うのは当然だろうと思うのです。ましてや、仕掛けられた爆弾などによって傷つけられたり、特に亡くなられた方たちや遺族のことを考えたら、一刻も早く結論を出してほしいと思うのが当然なのですね。日弁連の方々は、こういう国民感情といいましょうか、私の言う国民感情で、普通の方の考える、つかまえた人を早く裁判してほしいと思う気持ち、これについてはどのように受けとめておられますか。柏木参考人、ひとつお願い申し上げます。

柏木博元日本弁護士連合会会長

○柏木参考人 一般国民感情といたしまして、過激派特に企業爆破あるいは浅間山荘事件について早く裁判しろという声があることは、私どもも当然だと思います。しかし、さりとて、長官の表現をかりますと、ほとんど手続を簡略にしてばっさりやれ、そういう思想は非常に危険だと考えております。特に弁護士が人権擁護ということを第一の使命にしておりますと、いかなる凶悪な犯人であっても適正な手続で結論を出してもらいたい、そこに手続上の正義の要求する人権擁護の考え方があるのだというふうに考えております。  特に申し上げたいのは、わが国の国民感情の中に人権意識がまだ未熟だ。ヨーロッパ、アメリカ等の人権意識から見ましても、何といってもお上裁判あるいは白州裁判というものから解放されてからわずか百年たつかたたないか。弁護人制度が生まれたのが明治十五年であります。まだ百年たっておりません。したがって、一般的な国民意識の中に人権に対する真剣な認識というものがまだ未熟じゃないのか。非常に長くなりますけれども、国際人権規約A、B、これも今日施行され、効力を発しております。東南アジアでも九カ国が批准しております。日本ではこれに署名しようという声さえまだ起きていない、あるいは国民の中にもそういう感覚がないという人権思想の未熟な国、こういう国において、早く裁判をやれ、こういうものの声にそのままに従うということは、人権擁護の立場からいきますと非常な危険を感じておると率直に申し上げたいと思います。

高橋高望民社党

○高橋委員 それはある意味においては、失礼ですけれども、参考人の世代と私の世代などとは少々違いまして、私はそんなふうには卑下はいたしません。むしろそれよりも、あなた方が御職業として金をもらって犯人との間で弁護の契約をする、先ほども御自身でおっしゃっておられたけれども、犯人の立場を弁護することを、金もらって契約しているんだから第一に考えるということは、これはやむを得ないと私は思うのですね。ただ問題は、社会正義との関係をどうするかというところにポイントがあるので、人権意識が低いという解釈はちょっとお立場からいっておかしいと私は思う。そうじゃなしに、弁護人としての立場、社会正義というものの立場、弁護士法第一条ではっきりとこの二つを書いてあるのです。その立場に立ったときには、どう考えてもいまの参考人の御意見はちょっといただけない。むしろ自己ジレンマの中にあるということは、先ほどあなた御自身もおっしゃっておられる、そこが問題じゃないのですか。いかがでございますか。

柏木博元日本弁護士連合会会長

○柏木参考人 国民の人権意識に対する認識の相違は、おっしゃられればそのとおりかもしれません。あるいは世代の相違かと思います。あるいは職業上の相違かもしれません。ただ、弁護士が金をもらっているから云々ということは私はどうかと思います。特に過激派の弁護人といろいろ今度初めて懇談する機会がありました。ほとんど若い弁護士だけであります。本当に食うや食わず、ろくろくの弁護費用ももらわないで活躍をしております。それから先生方の、先生方というとその弁護人の苦悩というものを聞けば聞くほど、本当にむずかしい局面に立っておるなという感じを痛切に持った次第でございます。

高橋高望民社党

○高橋委員 やはり弁護士さん自体が、弁護士法第一条に掲げている人権擁護の問題と社会正義との問題に対して、もう少しはっきりとしたお気持ちをこの際持たなければいけないんじゃないかな、私はそう思うのです。それが今日の問題を非常に複雑にさせている大きな原因であろうと私は思います。これは私がそう思うことで、今後のいろいろの当委員会での審議の中で、この問題は裁判所側も含めてまだまだ私たちいろいろ検討していかなければいけないことだと思いますので、とりあえずきょうの段階ではそのように思っております。  そこで、今日までこれら過激派の事件を弁護なさっておられるあなた方というのは、現在までの裁判の進行というものが国民の期待している裁判の進行ぶりだと思っておられますか。その原因がどうであるかということは私はこの際触れないとして、とにかく裁判の進行自体は国民の期待しているような進行ぶりだというふうに御判断ですか、いかがでございますか。

柏木博元日本弁護士連合会会長

○柏木参考人 いや、私どもももう何回も申し上げましたように、過激派裁判がある時点では非常に法廷の荒れた時代があった、しかし赤軍派関係では四十八年の四月ごろからすでに正常な進行状態に入って裁判が続けられておる、こう申し上げていいと思います。これは裁判所と弁護人との間の協議に基づいて、どういう方式で裁判を進めていこうかという合議が成立いたしまして、その線上で平穏無事に進行しておる状態であります。  ただ、一つ申し上げたいのは、赤軍派関係の訴因というものが非常に多い。これは具体的な数字はわかりませんけれども、だれか知っておる人があると思いますが、七、八十の訴因があるのじゃないかと思います。したがって、幾ら裁判を進行させようと思っても、事案が複雑であり、また訴因がたくさんありますと、どうしても現在の裁判制度のもとではある程度の日時は必要だというふうに考えます。

高橋高望民社党

○高橋委員 柏木参考人はそういうお立場に立たれるが、私の立場に立った場合に、一つの考え方として、この種の法律に対する略称の呼び方で、いま盛んに皆様方は弁護人抜き裁判とおっしゃる。この弁護人抜き裁判というような言い方ではなしに、裁判不当遅延防止というようなお気持ちはございませんか。いかがでございますか。

柏木博元日本弁護士連合会会長

○柏木参考人 一番の問題が、不当であるかないかという問題がやはり客観的に十分資料に基づいて御判断願わなければならぬので、一般事件と比較して不当に長期になっているか、なっていないか、これは相当微妙な問題だと思います。赤軍派関係も、さっき申し上げましたように訴因が何十にもわたっております。そういたしますとしょせん審理は長引く、そうすると日本の裁判制度そのもの、ここまで根幹探求していかなければ解決がむずかしいと思います。陪審制度であれば、これはもう一年かかるわけはないと思います。あるいはヨーロッパのように市民が裁判にみずから参加する参審制度であってもそう長くはかからないと思います。また、日本の裁判のように書面審理でなくて、直接審理する裁判官が判断を下すという、これは刑訴法のたてまえでありますけれども、実際は裁判官が何人もかわっていく、書面だけで審理をしていく、こういう昔からの日本の裁判制度のもとでは、こういうふうにある意味ではならざるを得ないというふうな気がいたします。

高橋高望民社党

○高橋委員 それでは次に移らしていただきますが、皆様方の日弁連新聞の三月一日号で「ひまわり」という囲み欄がございます。ここで「弁護士会の自律権は、国会議員の自律権と対比されることこそ必要ではあっても、裁判官、検察官のそれと比すべくもない本質を持っているのである。」こう堂々と書いてあるのですね。これは国会議員と同等の地位にある、こういうふうにお考えでございますか。

杉野修平日本弁護士連合会調査室長

○杉野参考人 お答えいたします。  その表現は誤解を受ける点があるかもしれませんが、私どもは一切国家権力を体して仕事ができる立場にないわけですね。そのことを、いわゆる民間人であってということを、それを書いた人がそういう表現をしたのではなかろうか。要するに市民の側にいて国政に対して意見を述べたり、あるいは国家権力の行使が誤るときに、基本的人権を守るためにそれを正すという、そういうふうに民の側にいるということを強張するために、国会の先生方と同じように民に自分たちの仕事の淵源はある、そういう趣旨で書いたのではなかろうかと思います。

高橋高望民社党

○高橋委員 私、なぜそんなことを申し上げたかというと、私、今度のこじれている原因の一つに、やはり弁護士さん、弁護士会というものが戦後昭和二十四年の設立以来三十年たってきて、いろいろとポジションの問題をお考えになっていらっしゃるのではないかと思う。平たく言えば、御承知のように江戸時代には公事師という制度でたしか弁護士さんはお白州で付き添いましたね。そしてその当時はまさにお白州で裁きのアドバイスで、被告の弱みにつけ込んで何か悪いことをした人もずいぶんいるようですが、それは別として、とにかくそういった公事師という立場でやってきて、一段二段下で取り扱われてきた。ずっと過去、戦前の状態まではそのあり方が続いてきたということだと私は思います。それが戦後解放されたというか、立場が見直された。私、この間あるいま話題になっている裁判に関係している小説を読んでおりましたときに、戦前派の弁護士さんは、裁判官が期日指定をすると、お引き受けしますというお答えをするのですね。この間私たまたま東京地裁を一人でちょっと見学させていただいたときには、弁護士さんが、異議ございませんと言います。この二つの中に、いいか悪いかは別としまして、やはり、ずいぶん変化が出てきていると私思うのです。ただ、お引き受けしますと言った弁護士さんが、今日過去の状態を一日も早く変えようというそのお気持ちの中から出ている向上意欲といいましょうか、ポジションを上げたいという意欲と、戦後の教育の中から出ている弁護士さんがいわゆる平等論で出てきている姿、これが裁判所というもののあり方に大きな問題を提供しているように私は思えてならないのです。  そこで、私お伺いしたいのは、弁護士さんというのは、裁判官の方を一緒に自分たちの闘いの場に引き込もうとされているのですか。当事者主義というのは検察官との間にあることであって、裁判官はあくまでもその輪とは違ったところにいる人たちじゃないですか。その辺については柏木参考人、いかがでございますか。

柏木博元日本弁護士連合会会長

○柏木参考人 総括的な説明で申し上げましたように、いま当事者訴訟の訴訟形式を踏んでおります。したがって、検察官対被告人、そういう三角形の頂点に裁判官がいる。だから、弁護人のポストはどの辺に想定したらいいか、被告人と重なってもいけないし、裁判官と重なってもいけない。やはりある程度独立に、法律専門家として、か弱い被告人を補助、援助をしていく、弁護していく、それによって初めて検察官と武器平等の原則のもとに、裁判官というものは一段上からその白熱的な論議を静かに見て、冷静に、謙虚に、慎重の上にも慎重に判断を下す、こういう組織だと私は思っております。それ以外のものではないと思います。

高橋高望民社党

○高橋委員 お言葉の端をつかむようですが、いま一段上からとおっしゃられたのですが、それでよろしいわけですか。そういうふうな御解釈ですか。違うのじゃないですか。私が拝見している感じでは、一段上からということは私自身もそう余り思いたくないのです。とにかくそういう同じ輪の中で争うという対象ではなくて、争うべきは検察官で、裁判官というのはもっと別の輪のところにいる人たちじゃないのですか。一段上からというふうに参考人おっしゃると、私ちょっとまた考え方が変わってきてしまうのですけれども、どうでございますか。

柏木博元日本弁護士連合会会長

○柏木参考人 一段上というか、いま申し上げているのはアンパイアなんでございますね。プレーヤーじゃないのでございます。したがって、一段上というのは、法廷をごらんになればわかりますように、へいげいしているような姿で臨んでおりますので、地位とか身分とかいう問題でない。私は法廷を想定しながら申し上げたのですけれども、あくまでも裁判官はアンパイアです。ただ、私どもが心配するのは、アンパイア兼プレーヤーになるのを恐れる、そういう可能性を、私ども戦前派ですけれども懸念をする、こういうことでございます。

高橋高望民社党

○高橋委員 安心しました。それじゃないと困るのです。  そこで、裁判所法七十一条をちょっとお考えいただきたい。この七十一条の御解釈をちょっと柏木参考人から伺いたいのです。私は、この七十一条というものが、いまの私たちの国の裁判、特に近代裁判の骨格になっていると思うのですね。これはどのように御説明いただけますか。

柏木博元日本弁護士連合会会長

○柏木参考人 法廷の秩序維持を規定したものでございますね。これはもう一つ法秩法とわれわれ呼んでいる特別法も生まれております。また、弁護士倫理の中にも法廷の秩序維持をうたっております。やはり法廷は秩序が保たれねばならぬということは、これはもうだれに聞かれましても否定する者はいないであろうと考えます。法廷の秩序が乱れるということになれば、これは法廷の威信もあったものじゃない。やはり裁判の威信の背景には法廷の秩序が保たれなければならぬというふうに解釈しております。

高橋高望民社党

○高橋委員 参考人に伺いたいのは、その裁判の秩序の維持をだれがするかということです。それを私、御見解を承りたい。

柏木博元日本弁護士連合会会長

○柏木参考人 これは裁判を主宰する裁判官の責任でもあるというふうに考えます。

高橋高望民社党

○高橋委員 ありがとうございます。私そうだろうと思うのです。そうしますと、裁判官のお立場に立つ方が法廷秩序の責任をとられる。弁護士さんも検察官も、御自分では妥当なことを言っていると思われても、またこれは当然だと思われていることであっても、裁判官がそれに対して、いろいろな意味での秩序維持の立場からの御発言が出てくるのは当然だろうと私は思うのです。ここでおのずから弁護人の方も検察官の方も、自分たちのやりたいようにはすべてやれないのだということを考えなければいけないのじゃないかと思いますけれども、いかがでございますか。

柏木博元日本弁護士連合会会長

○柏木参考人 まさにおっしゃるとおりでありまして、法廷の秩序を紊乱してもいいと考えておる弁護士は恐らくいないのじゃなかろうか、少なくとも私の周辺にはおりません。弁護士の倫理規定をつくっておりますけれども、法廷の秩序維持及び訴訟の進行については裁判所と協力しなければならぬという協力義務を課しております。

高橋高望民社党

○高橋委員 参考人、私がここでお互いの約束事項として知っておきたいことは、弁護人の方あるいは検察官の方が、何でも自分たちのやりたいようにやるということは必ずしもできないのじゃないかということを、ここでわれわれは知っておかなければいけないのではないかと私は思うのです。それは、私はこの際私たちの了解事項としておきたいと思いますけれども、いかがでございますか。

柏木博元日本弁護士連合会会長

○柏木参考人 それはまさにおっしゃるとおりでございます。ただ、冒頭に私申し上げましたように、これはアメリカの裁判官倫理にも書かれておりますけれども、やはり裁判官はあくまでも冷静であり、誠実であり、忍耐強くしんぼうしなければいかぬ、こういう倫理、私はこれは日本でも言えると思います。だから、後ろに国家権力をちらつかせながら肩を怒らせて法廷秩序維持をやるというような姿勢になりますと、とかくもめてくる。だから、その辺の問題については、裁判官倫理を含めて、法曹倫理全般をやはりこの際再検討しなければならぬというふうに考えます。

高橋高望民社党

○高橋委員 大変残念でございますけれども、きょうはあと本会議があるので、また私の持ち時間でございますので、きょうはこれで終わります。

鴨田宗一自由民主党

○鴨田委員長 午後二時再開することにし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時四十九分休憩      ————◇—————     午後二時開議

鴨田宗一自由民主党

○鴨田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  参考人に対する質疑を続行いたします。正森成二君。

正森成二日本共産党・革新共同

○正森委員 きょう午前中の同僚委員の質問の中で、弁護士会で懲戒が十分に行われていないではないかという議論がございました。また事実日本弁護士連合会会長が、五十三年の一月十日に発表されました意見書、それからそれに基づいてさらに三月四日に発表されました「弁護人抜き裁判に関する見解と提案」では、三つの方策が述べられております。それを拝見いたしますと、第三番目の「弁護士会の責務」については「弁護活動のあり方に関する弁護士会内の相互批判を強め正すべきものは正していかなければならない。」こう書いてあります。そういう意味からいいますと、単に懲戒が行われたかどうかだけでなしに、懲戒の前に弁護士会内において正すべきは正す相互批判が強く行われるかどうか、そして結果として国民の信頼を得る弁護活動が行われるかどうかということも非常に大事じゃないかと思われますが、柏木さんの御意見を伺いたいと思います。

柏木博元日本弁護士連合会会長

○柏木参考人 まず、懲戒というものは、実は最後の手段でございます。懲戒段階に入る前に、弁護士会活動というものをどういうふうに理想的な姿として把握をしていくのか、またいままでの弁護士会活動の中でどういう点が国民の批判を受けなければならないのか、こういう問題につきまして、この法案が契機になったとも言えると思いますけれども、会員の中に相当真剣に研究しようじゃないかという空気が盛り上っております。それを受けて、日弁連の提案として、相互批判を強めて、正すべきものは正す、こういう姿勢を打ち出したわけでございます。この間の臨時総会におきましても、同様な趣旨が提案理由の中に織り込まれております。  知ったかぶりを申し上げるわけじゃございませんけれども、アメリカ等におきましては、懲戒になるかならぬか非常にいろいろな微妙な問題が出てまいりますので、その問題、いわゆる事件になる前に弁護士会に具体的な問題を質問をいたしまして、弁護士会がそれに答えるという制度が確立されております。私の聞くところでは、そういう質疑応答が数千件に上っている。こういう一つの方法も、お互いの相互批判を高めていく大変ないい問題ではなかろうか、そういう機関を各界でも設けるような機運も今日は高まってきております。

正森成二日本共産党・革新共同

○正森委員 相互批判は必要だし、それを高めるつもりであるというお答えをいただいたと思います。  そこで申し上げたいのですが、同じく午前中に同僚委員が、昭和四十七年に、東京第二弁護士会へ懲戒を申し立てられて、綱紀委員会で懲戒をしないということになった例があると言われました。私は参考までにその資料を読んでみましたが、二つの事例がございますが、一つは三歳の男の子を背負って傍聴しようと思ったら、子供がおるから傍聴させられないということで、その理由を釈明している中で紛争が起こった。もう一つの事例は、傍聴人との間に一定のトラブルがあったので、弁護人がそれについての調査に赴いて入ろうとしたところが、裁判所がそのときの弁護人の言動をもってへ理屈であるということからもめたということが出ておるのですね。それで、傍聴人が無理やり退廷させられたときに暴行があったかなかったかということでカメラを使ったのがいけないかどうか。私はこういう例を見ますと、裁判所の訴訟指揮にも一定の問題があると思いますが、同時に、この東京第二弁護士会がおつくりになったのを見ておりますと、無理からぬ点があるが、同時に、弁護人には執拗にいろいろなことを繰り返したきらいもあるという指摘もあるのですね。そういう点がございますので、当事者主義ですから主張すべきは主張し、そうして正すべきは正すという点が必要ではないかと思いますが、いかがですか。

柏木博元日本弁護士連合会会長

○柏木参考人 全く先生の御意見と同感でございます。四十七年に懲戒の申し立てのあった事案は、第二東京弁護士会で大変真剣に取り組みまして、綱紀委員会でいろいろの真相究明に努めました。ただ私どもが残念に思うのは、裁判所は従来二度懲戒の申し立てをしておりますけれども、いよいよ綱紀委員会が事の真偽を確かめようといたしまして、裁判所に行ってそのときの訴訟指揮の状況あるいは弁護人の言動等を調査しようといたしますと、とかくそれはごめんだ、訴訟指揮の中身までいろいろ検討されては困るのだ、こう言って非協力的な姿勢が今日まで続いておるわけであります。弁護士の懲戒事件でありますから、ただ裁判所の主張だけで、そのままで懲戒するわけにはまいりません。あくまでも事実というものを立証をし、その証拠を集めなければならぬ。その段階になりますと、裁判所の方はそこまで調査されては困る、こういう姿勢がございますので、懲戒の運用もその点でなかなか困難があるということを申し述べておきたいと思います。

正森成二日本共産党・革新共同

○正森委員 それでは次に、杉野参考人に若干伺いたいと思います。  連合赤軍事件で法務省がいろいろ言っておりますが、いわゆる百回指定に至るまでの経緯を若干皆さん方の資料で読んでみますと、裁判所の方にも常識的でないものがあったと思われる点があるのですね。それで、そういう事実が本当かどうかについて二、三質問いたしますので、お答え願いたいと思います。  記録を見ますと、裁判所は三年間の先の差し支え日を出せ、こう言ってきたらしいのですね。三年先といいますと、われわれが生きているかどうかということもわからぬ場合があるわけで、それは暇は暇であいているでしょうけれども、それを全部一定の裁判にとってしまえばほかの事件ができなくなるという面が起こるので、一部の弁護人は半年分だけ出した、とこう言われているのですね。それは事実なんですか。

杉野修平日本弁護士連合会調査室長

○杉野参考人 お答えいたします。事実でございます。

正森成二日本共産党・革新共同

○正森委員 この裁判長は、弁護人の差し支え日も必ずしも考慮をしないで百回分を指定して、その指定が、伝えられるところによりますと、弁護人に通知される前に、先に報道関係者に明らかにしたというように言われておるのですね。最高裁の長官がこの間二日に、マスコミに談話を発表して物議を醸しましたが、上マスコミを好めば下これに従うといいますか、ならうというか、下の裁判長もマスコミを好むのかという気がするわけですが、そういう事実もあったのですか。

杉野修平日本弁護士連合会調査室長

○杉野参考人 お答えします。事実でございます。

正森成二日本共産党・革新共同

○正森委員 同じくこの裁判長は、一月三十日の第三回公判で、公判期日についての当裁判所の見解を発表したようですが、これもまたマスコミ関係者や弁護士会には直ちに配付したが、弁護人には同時には交付しなかったというように言われておりますが、こういう事実はあったのですか。

杉野修平日本弁護士連合会調査室長

○杉野参考人 それも事実でございます。

正森成二日本共産党・革新共同

○正森委員 この裁判長は、東京第二弁護士会の法廷委員会が調査申し立てをしたことがあるようですが、それについても必ずしも妥当でないやりとりがあったようですが、それについてもし御存じでしたらお答えください。

杉野修平日本弁護士連合会調査室長

○杉野参考人 お答えいたします。  中身を述べよということですが、手元にちょっといま中身がございませんので……。

正森成二日本共産党・革新共同

○正森委員 私の見ましたところでは、皆さん方から本日いただいた資料五の六十四ページの下段にそのいきさつが書いてあるようですけれども、それは本当ですか。

杉野修平日本弁護士連合会調査室長

○杉野参考人 失礼いたしました。先ほどの答弁を訂正いたします。  御指摘のとおりの記事がございます。

正森成二日本共産党・革新共同

○正森委員 記事がございますだけではわかりませんので、その内容を少し言ってください。

杉野修平日本弁護士連合会調査室長

○杉野参考人 弁護士会とのやりとりの中身でございますが、東京弁護士会の担当理事者らが、事情調査及び審理進行について意見調整をはかるべく、当該裁判所の所長に面会を申し入れたところ、一月十九日、弁護人となら今後の方針についてきちんと話し合う用意はあるが、弁護士会理事者と面会する意思はないと拒否した。このことを一月十九日伝え聞いた弁護人らは、早速裁判所に赴いたが、開廷中のため面会できず、翌二十日裁判官に面会して、裁判所も審理方式について話し合う用意があるとのことなので、話し合いたいと申し入れたところ、裁判官は、あれは弁護士会の人と会うのを断る理由として言ったまでのことで、話し合うことはないと具体的話し合いを断った。これは事実でございます。

正森成二日本共産党・革新共同

○正森委員 そうしますと、結局裁判所がうそをついたということになるわけですね。こういうことがあると、弁護人との間でいまの話し合いが非常に困難になるということは、これは考え得ることだと思うのですね。しかし同時に、弁護士会の皆さんもできる限りの努力をしていまの話し合いをしていただきたいと思いますが、伝え聞くところでは、天皇の在位五十年というのについて、それに抗議するということで弁護人が出頭しなかったというようなことを法務省筋が言っているのですが、そういう事実は調査の結果あったのですか。

杉野修平日本弁護士連合会調査室長

○杉野参考人 そのような事実はございません。一人の被告が、東京拘置所の中でハンストをしておった、そのことは天皇在位五十周年に抗議するという意図でやったかに聞いておりますけれども、弁護人がそのようなことを知って、それに呼応して出廷しなかったということは事実としてございません。

正森成二日本共産党・革新共同

○正森委員 同じく皆さん方の資料五の七十七ページに厚木基地侵入事件というので、弁護人が退廷をした例について述べられております。これを見ますと、判決の言い渡しの前に、被告が病人だというのを勾引して連れてきて、そこでトラブルがあったということのようですね。資料五の七十八ページ、九ページのあたりに書いてあります。これが事実なのかどうか。事実とすればその経緯を簡潔にここでお話しください。

杉野修平日本弁護士連合会調査室長

○杉野参考人 お答えいたします。  この事件は、厚木基地侵入事件ということで、資料四にも要約してございますが、保釈中の被告人の病気、本態性高血圧症が悪化しまして、医師の診断により出頭不能とされていたため、判決言い渡しが約九ケ月間延びておった事例でございます。ところが、病状が回復しないのに、裁判所は判決言い渡し期日の指定をいたしまして、被告人を勾引し、入院先の岐阜の病院から横浜拘置所に押送してきました。被告人は法廷で卒倒いたしまして意識不明となりましたが、裁判所は弁護人の期日変更申請を認めず開廷を宣言したわけです。そこで弁護人は、被告人の生命の危険さえ生じかねないと抗議して退廷したわけです。裁判所は意識不明で倒れている被告人に対して、起立しないとして退廷拘束命令を発しまして、被告人、弁護人不在廷のまま判決を言い渡したというケースですが、被告人は、後に弁護人が拘置所に会いに行きましたけれども、翌々日まで病状が回復しないで弁護人選任届けがとれなかった、そういう事例でございます。

正森成二日本共産党・革新共同

○正森委員 いま、たくさん事例はあるでしょうが、幾つかの点について述べていただきましたが、そうしますとこの法案は、弁護人依頼権はある、しかし弁護人依頼権は放棄することができる、そして明白な放棄の申し出がなくても一定の場合には放棄したものとみなすという三段論法をとっておるのですね。そうしますと、いまのような御説明だとすると、弁護人が退廷したから、これはある場合には被告人と意を通じて弁護権を放棄したとかいうように見られない場合があり得ると思いますが、いかがですか。

杉野修平日本弁護士連合会調査室長

○杉野参考人 お答えいたします。  見られない事例は幾つかあると思います。

正森成二日本共産党・革新共同

○正森委員 本法案の内容では「被告人が訴訟を遅延させる目的で」という言葉が出てくるわけですね。その要件で、法務省側は簡易却下について同様の規定があるから乱用のおそれはない、こう言うのですが、簡易却下の規定を見ますと、著しく訴訟を遅延させる目的が明らかであるといいますか、何か訴訟を遅延させる目的だけでなしに、まだ要件を一つか二つつけ加えていると思うのですね。そういうぐあいに厳格になっておるのに乱用されている危険というのは、実務ではございますか。

柏木博元日本弁護士連合会会長

○柏木参考人 お答え申し上げます。  簡易却下の要件といたしまして訴訟遅延のみを目的とすることが明らかな場合、こういう規定になっております。ところが、本法案では、訴訟遅延の目的というきわめて漠とした表現を使っております。訴訟遅延のみを目的とすることが明らかな場合ということが簡易却下の要件になっておりますけれども、裁判所はほとんどの事件で、全部と言っていいかもしれません、簡易却下を行っているということは、訴訟遅延目的というものを裁判所の判断ではどう理解しているかということの一つの裏づけになるものだと申し上げてよかろうかと思います。

正森成二日本共産党・革新共同

○正森委員 この法案が通りますと裁判が非常にスムーズにいく、あるいは出しただけでも弁護人の態度が改まったというようなことを申される人がいるわけですけれども、私どもは、この法案が万々が一通って、あるいは弁護人抜き裁判が行われないということが一年、二年続いても、それは考えようによっては、いままでだったら必要的弁護事件で弁護人が退廷させられても弁護人抜きで裁判が行われる可能性はまずない、しかしこの法案が通ると、その場合に弁護人抜き裁判が行われるからというので、弁護士が異議その他言い得べきことを言わないで自己抑制する、あるいは裁判所が場合によったら退廷さしても訴訟を進行できるということで、訴訟指揮に一定の無理が出てもそれがまかり通るという事態の可能性というのもまた考えられると思うのですが、法廷の実務者として柏木参考人等に御意見を承りたいと思います。

柏木博元日本弁護士連合会会長

○柏木参考人 お答え申し上げます。  私も四十年を超える法曹生活経験者でございますが、おっしゃるような危険性があるからこそわれわれは声を大にし、力を尽くして反対をしておるわけでございます。  それと、もう一点つけ加えて申し上げたいのは、もう昨年の一月ごろから必要的弁護事件、したがって弁護士がいなければ裁判を開いて審理することのできないたてまえの事件につきまして、弁護人がいなくても裁判を開いて証人調べをしておるという裁判官もいるわけなんでございます。ある意味ではこの法案の先取りをしている。もう一遍逆に言えば、この法案はそういうふうな、われわれからいけば違法な裁判、それを救済するための役目も果たすのじゃなかろうかということを非常に恐れているわけでございます。

正森成二日本共産党・革新共同

○正森委員 時間が参りましたので、最後に一問だけ質問さしていただきます。  本法案には、弁護人が辞任して、その辞任が、平たく言えば被告人と意を通じていると思われる場合には、弁護人抜きでも裁判ができるというようになっているのですね。そうしますと、なぜ辞任するかということについて裁判官によくわかってもらわなければならぬ、こういうことになるわけですね。私の非常に尊敬しているある学者の弁護士がいるのですけれども、その人の言うところでは、無罪だと言うので弁護してやっていたところが、被告人が、実は先生、わし、あれ本当はやりましたんや、やったんやけども、できるだけやってないということで弁護しておくんなはれ、こう言ったというのですね。その場合に弁護士としては、そういうことを知ってなおかつ無罪として弁護するか、それはできないということで辞任するかしかないわけです。その場合、辞任したときに裁判官に、実は被告人が実際にやりましたと言ったので辞任するんだと言ったのでは、これは弁護士としてなすべきことではないというようなことで、こんな法案ができると非常に困るんだという話を笑いながらされたことがあるわけですけれども、弁護士としては、被告人との間のことはたとえ裁判所にあっても言ってはならない、言えないという関係が実際問題としてあり得るし、またなければならない点はあると思うのですが、先生の御経験に照らしてお答え願います。それで終わります。

柏木博元日本弁護士連合会会長

○柏木参考人 お答えいたします。  私も三十年近くはほとんど刑事弁護を主体にして実務をとってまいりました。おっしゃるように被告人というのは、できるだけ体裁いいことをいろいろ弁護人に説明するわけなんです。ところが、いろいろ証拠等を見ますと、なに本人がやっていることに間違いないというような心証になる場合もあります。そこで、これは無罪を主張していくよりは情状論でいくべきではないかと言うと、いや、私は前科があるのでぜひ無罪論を主張してくれということで、弁護方針が大変変わってくるというような場合も出てきます。選挙違反でもそうなんでございますよ。実際はやっているのだけれども、私は公職についているから、ひとつできるだけ延ばしてくれ、こういう場合も非常に多いのです。  ただ弁護士の倫理からいきますと、弁護士は真実義務の制約を受けております。したがって、もっとも良心的な弁護人は辞任せざるを得ないということになります。ところが、裁判所に、実の本人がこうこうこうでこうだから私は辞任いたしますとは言えません。弁護士については法律上、守秘義務が課せられております。したがって、被告人とのそういうやりとりを外部に漏らせばそれこそ刑罪の対象になります。ですから辞任をした場合でも裁判所には、都合により辞任いたします。これ以上には言いようがないのですね。それが裁判所から見ると、訴訟遅延が目的ではないのかとまずほとんど判断するんじゃなかろうか、そういう危険がこの法案にはやはり含まれておるということを言っておるわけでございます。

鴨田宗一自由民主党

○鴨田委員長 次に、加地君。

加地和新自由クラブ

○加地委員 柏木参考人にお尋ねをいたします。先ほどの御説明あるいは御答弁の中に、国選弁護人を弁護士会が推薦しても、その被告人の支援団体あるいは推薦団体から脅迫を受けておる例がある、弁護士は生命保険も掛けておる、こういうことをおっしゃいましたけれども、具体的にどういう例がございますでしょうか。

柏木博元日本弁護士連合会会長

○柏木参考人 お答えいたします。それは永山事件と言われるものでございます。これは午前中申し上げましたように、三千万ないし五千万の保険を国選弁護士に掛けて、会がその保険料を負担しておるということです。ただ、具体的に危害が加えられるということはいままでの情勢からはございません。

加地和新自由クラブ

○加地委員 私が弁護士さんのある会合にこの法案に関連して出ていきましたときに、弁護士自体にも危害を加えよう、脅迫を加えようとする人がおるときには、弁護士抜きで裁判が進行するというときがあった方が、やはり弁護士はいてもらわなければ困るからと弁護士の言うこともよく聞くようになって、弁護士さんのためにもいいんじゃないか、また不心得な被告人あるいはその支援団体を反省させるためにもいいんじゃないか、こう言いましたら、うん、そのときはいいですねというような声が実はあったのですよ。柏木参考人はいかがお考えになりますか。

柏木博元日本弁護士連合会会長

○柏木参考人 本当にそういう被害が起きた場合なら、また考慮の余地があるかもしれませんが、たとえばイタリアでトリノ弁護士会の会長が、ことしになってテロリストから襲撃を受けて殺害されたという事件まで起きております。しかしそのイタリアにおいてさえ、今度のような非常に悲惨な非人道的な行為が行われましたけれども、弁護士抜きで裁判をする、裁判手続を進めるというような制度もないし、また声もないんじゃないのでございましょうか。ですから、日本のような世界の水準からいけば比較的治安のいいところで、何でこんな法案を突如出すのか、その背景を私どもは非常に心配しておるのでございます。

加地和新自由クラブ

○加地委員 先ほど柏木参考人が、アメリカの判例においても、弁護権を放棄できるが、その放棄の意思表示は確定的、明示的でなければならない、このように判例は語っておるとおっしゃいました。これも私が東京で、ある弁護士さんの会合に出たときに、これが乱用にならないように、弁護権の放棄ということが確定的、明示的になるというような歯どめの条文でも入れればどうなのかなと言って雑談的に話したときがあったのです。そうしましたら、一概には否定されなかった空気があったのですが、柏木参考人はいかがお考えでございますか。

柏木博元日本弁護士連合会会長

○柏木参考人 本法案のあるいは修正的な御意見かとも思いますけれども、被告人が弁護権、弁護人の依頼権を放棄するということの中身あるいはその利害得失を十分にわきまえた上で、正常な心理状態で明確かつ明示的に弁護人は要りませんというような意思表示をしたときに、それは弁護人なしでも裁判ができるという道は、あるいはあろうかと思います。ただ本件の条項は、まさに弁護人依頼権をきわめて不明確な、あいまいな表現でもって擬制をしておるというところが問題なんでございまして、その点、加地先生も法律家でございますから、よく御検討賜りたいと思います。

加地和新自由クラブ

○加地委員 私は衆議院議員として世間一般の声を聞かなければならないということ、また弁護士会の一員としてその御期待にもこたえたいという、まさにそのジレンマの立場に立っておりまして、私はこういう案を一つ考えたのです。  たとえば、社会一般とすれば、連合赤軍のような事件が二十年、二十五年も後になって結論が出るということでは、実際には法の存在価値がありません。そうすると、やはりこれを二年か三年で結論が出るようにという要請が出てくる。そうすれば週に二回ぐらい開廷しなければならない。週に二回開廷しようと思えば、弁護士の生活をつぶしてしまう。そうすると、早く実質的な内容を充実させた審理というものが行われる方法を考えなければならない。そのためには、やはり週二回開廷の場合で、弁護士さんがその事件のみに没頭しなければとうてい責任が果たせないというときに、その事件が終わるまで、普通のときには国選弁護料の着手金はないけれども、まず着手金というのを日弁連の報酬規程に準じて、あれはやや社会奉仕的ですから八掛けぐらいでやむを得ぬということになるかもしれませんけれども、出す。それから、平均の収入というのがわかりませんが、十年程度検事、裁判官をやっておられる方のボーナス込みの月給等を勘案していって、調査費用を込めて月に五十万ぐらい出す。そういう裏づけをまず与えることによって、週二回あるいは三回開廷しなければこれはなかなか、片づかない事件だというときには、そういう制度でも組み入れていくべきではなかろうか。  また、国選弁護人の選任についても、先ほど柏木参考人は、一件当たり二万九千円では、若い弁護士さんといえども、朝の十時から夕方の五時までとられてしまうような事件をぜひやってくれともなかなか言いにくい、弁護料が上がれば引き受ける人もふえるであろうとおっしゃっていました。そこで、どうしても会の方で国選弁護人が見当たらないときには、仮に月五十万までの実績保証の裏づけがあれば弁護士会の役員さんの中で比較的条件に合う方にお引き受けいただく、またそれがために、いままでの手持ちの事件について、それぞれの依頼者があるわけですから、依頼者に御迷惑をかけることのないように、ちょうど弁護士会の会員さんが死亡された後、同じ派閥の人とか友人などが五、六人で事件を担当なさいますね、あれと同じように、弁護士会の方で、この大事件の担当の方が決まったために、手持ちの事件を三十件か四十件持っておられたら、それをみんなで分散して担当する、こういうことでも考えなければ——地元へ帰ってみると、いまの法案の審理がわからないと言うのです。法務省の意見、最高裁の長官の意見を聞いたら、それが正しいようにも聞こえる、弁護士会のおつくりになるビラを見ていたら、これも正しいように思える。いわゆる国の中で一番地位の高いエリートである方々のお互いに全く相対するような言い方というのは庶民にわかるはずがない。だから、それを国会というところで英知を傾け、この機会に何とかして解決していかなければ、おまえは悪い、おまえは悪いという言い方ばかりでは片がつかないように私は思うのです。  私の悩んだ末での愚案の一端を申し上げさせていただきましたが、この案について、これは一笑に付して、おまえの考えはだめだとおっしゃるのか、あるいはいやその方向で真剣に取り組む可能性があるとお考えなのか、また個々具体的なものについて私がいろいろ申し上げた中でコメントをしていただくこと等があれば、何もけんかをする場でないとわれわれは思っていますし、前向きにアウフヘーベンしていく場だと考えておりますので、その方向で高邁な御意見を述べていただきたいと思います。

柏木博元日本弁護士連合会会長

○柏木参考人 高邁な意見と申されましても、高邁な意見ではないと思いますけれども、国選弁護料がいかに安いか、それでは国選弁護の運営がいかに困難であるかということを御認識いただきまして、月五十万という具体的な数字まで出てまいりましたことに対して非常に感謝を申し上げます。しかしながら、刑事弁護の弁護人と依頼人との間は、本当は信頼関係で結ばれていないと十分な刑事弁護ができないということは先生も御存じだと思います。したがって、本当に弁護人がいないということになって、それなら国選弁護をつける、国選弁護については十時から五時まで、しかも週に二回ぐらい行うということになると、ほかの事件は全然できません。ほかの事件ができないのみならず、二年、三年かかった場合にはお得意は全部散ってしまう。本当に弁護士の生活問題と直接の関係が出てまいります。だから、いまのような御提案は、私どもは大変貴重な提案だと受けとめまして、できれば三者協議の議題にしてもよかろうし、一応検討させていただきたい、かように考えます。  ただ、いま連合赤軍事件が二十年とか二十五年とかかかるということを前提に御発言でございましたが、これはむしろ法務省側の宣伝であって、そんなにかかるはずはございません。この間、細川隆元氏はテレビで六十年かかるというような放言をされておりましたけれども、これもまたどこから出た六十年説かわかりませんが、そんなに長くかかる事件ではございません。これは具体的に杉野参考人から申し上げましたように、あとはもう浅間山荘のあそこの現場事件というものが中心になってまいりますので、そんなに長い時間はかからないというふうに私は見ております。

加地和新自由クラブ

○加地委員 具体的に連合赤軍事件は、一審はあと何年くらい、二審はどのくらい、三審はどのくらいで済みますか。それぞれの被告人が相互に証人にならなければならない場面が全部残っておる、だからまだかなりの年月がかかると私は聞いておるのです。

杉野修平日本弁護士連合会調査室長

○杉野参考人 お答えいたします。  私どもが把握しておるのは公判経過の外形的事実でありまして、午前中御報告申し上げましたように、困難と思われておりましたリンチ殺人事件の取り調べの三分の二が現在では終わっておる。浅間山荘事件についてはまだ審理が始まっておりませんので、外部からの推論はなかなかむずかしいのではなかろうかと思います。ただ、この事件は、当初七名の被告人がおりましたが、御承知のように、起訴後一人の被告が拘置所で自殺をし、一人が五十年に出国をし、二人が国選で分離公判をしております。したがって、いま統一公判の被告人は三人でございます。そういう被告人間のいろいろな関係も一流動的ですので、案外早くいくかもしれませんし、先生が御懸念のようにあと何年かかるかということはあり得るかと思います。しかしながら、五年を超えるようなことはないのじゃないかということははっきり申し上げられます。

加地和新自由クラブ

○加地委員 一審、だけで五年ですか。

杉野修平日本弁護士連合会調査室長

○杉野参考人 一審だけであと二、三年、もうちょっとかかるかどうか、それはわかりません。普通、殺人事件は一審で三年ぐらいかかるのですが、これはたくさんの人が亡くなっておりますので、先ほど申し上げましたように訴因が二百を超えているというようなことから、丁寧に調べますともう少し時間がかかるかもしれません。これは担当弁護人らから見通しを聞いていただくのもいいかと思います。あと、裁判所も交代しますと、更新手続にはかなりの時間を要しておりますので、そういういろいろな不確定要素があるかと思います。

加地和新自由クラブ

○加地委員 柏木参考人にお尋ねいたします。  先ほどの国選弁護料の問題なのでございますが、たとえばどうしても会員さんの中でお引き受けがないときに、役員さんが会としての責任上お引き受けになるというようなことは努力次第で可能なことなんでしょうか。

柏木博元日本弁護士連合会会長

○柏木参考人 これはもう昨年の理事、いわゆる弁護士会の会長、副会長でありますけれども、まさに命を張っても国選弁護を引き受けるということを表明しております。また、国選弁護の確保の問題につきましては、現在三者協議のやはり議題の一つになりまして、法曹三者で十分論議をしておるさなかでございます。結局、理事者が昨年度は犠牲を払っても国選弁護人になると言明しておる事実だけを申し述べさせていただきたいと思います。

加地和新自由クラブ

○加地委員 国会の会期末まであと日にちわずかでございまして、延長といってもそうたくさんない。そうすると、やはりこの法案について、審議が終わるまでに弁護士会の方でもそういう前向きのアウフヘーベンした形の結論というか、それは唯我独尊の結論じゃなしに、ここにも各党もあり、またいろんな各層の意見を代弁してきている者がここに集まっておるわけでございますけれども、幅広い人の承認を得られるような結論というのが早急に出そうでございましょうか。

柏木博元日本弁護士連合会会長

○柏木参考人 午前中から申し上げておりますように、この法案の影響というものは非常に深刻なものがあるのでございます。私は暗黒裁判という言葉はきらいで使いませんけれども、近代裁判制度そのものの根底にもかかわる問題であるために、私どもも慎重にいろいろ前後左右から意見を聞きながら検討しておるわけでございます。具体的ないまのような問題について、まさに法曹三者でいろいろ協議中でもございます。したがって、会期中に結論が出るかと言われますと、出ないと申し上げざるを得ない、また出ないほど問題は重要だと思います。  どうか先生方にも、できるだけ各界の、あるいはいまのような問題になった事件の弁護人等にも十分事情を聞いていただきたいと思います。特に事実の問題につきまして、法務省の言うところと、午前中から杉野参考人が申し上げておることと全く対立している問題があるわけなんですね。事実は一つしかないのです。だから事実が本当にどこにあるんだということを十分に御究明を賜りたいと思います。

加地和新自由クラブ

○加地委員 これで終わります。

鴨田宗一自由民主党

○鴨田委員長 次に、鳩山邦夫君。

鳩山邦夫無党派クラブ

○鳩山委員 大体いつもこの時間になりますと皆さん方がお聞きになった後で、出がらしの質問のような形になってしまいますが、若干の重複をお許しいただくとして、幾つか確認のために伺っておきたいと思います。  ただいまの加地委員の質問に関連をするわけでございます。先ほど殺人事件で三年というようなお話がちょっとおありになりました。そもそも法律というもの、とりわけ刑法というものは、やはり犯罪予防的な意味合いというのは多いわけでございまして、悪いことはできないもんだな、悪いことをすればやっぱり裁かれるんだな、そういう意味がなければ刑法の存在価値も半減してしまうだろう、したがって刑事裁判の時間が非常に長くかかるということはやはりよくないことだ。先ほど柏木先生のお話の中で、裁判というのは治安のとりでだけじゃなくて人権のとりででなければいけませんよとおっしゃった、まことにもっともなことでありますけれども、しかし、その方面を重視し過ぎた結果によって、裁判というのが常に、六十年とは言わないけれども、非常に長くかかるというのであれば、裁判の意味も刑法の意味もなくなってしまう。たとえばロッキード事件、これは審理が非常に早く進んでおるということではありますけれども、ロッキード裁判が二十年、三十年かかってしまったとしたら、その間に新たな事件も起きるでしょうし、ロッキードって何だったっけ、ピーナツって一体あれは何のことだったっけ、そういう時代が来てしまう。二十年、三十年たってロッキード事件の判決が下されたとしても、その裁判の持つ効果というものは全く簿れてしまうわけでございます。  そこで、最近の刑事裁判の時間のかかり方というものがやはり長過ぎるな、もっと迅速性というものが要求されてしかるべきだな——これはケースによって違うと思いますが、そういうふうにお考えになるかどうか、柏木先生にお伺いしたいと思います。

柏木博元日本弁護士連合会会長

○柏木参考人 御承知のように、憲法の条項の中にも、公正な裁判所によって迅速に裁判はなされねばならぬ、いわゆる裁判の迅速性をうたっておるわけです。しかし、裁判は迅速であるとともに適正でなければならぬことも申すまでもないのであります。ただ、この憲法の条文は国民の基本的権利の側から規定しております。ところが法務省あるいは検察庁側においては、何が何でも早く刑罰権の発動ということを求めがちだ、弁護人の方は人権擁護を使命としておりますから、できるだけ慎重に詳細に、こういうふうなことを言っておるわけなんで、裁判が迅速、適正、二つの要件を兼ねて行われるということは、私どもも、憲法の理念から申しましても、もろ手を上げて賛成をしたいと思います。ただ、いまの制度上、果たしてそれができるかできないか、その問題点は弁護人にあるのか制度そのものにあるのか、どういうためにおくれるのか、このもっと深い、いろいろの原因というものを究明してみる必要があろうかと思います。一般的に申しますと、平均をいたしまして刑事事件は二年かかっておりません。しかも期間が短縮しつつあるというのが司法統計の示すところであります。だから、二年ぐらいが一般の刑事事件についての平均の期間というふうに御理解を願ってもよかろうかと思います。

鳩山邦夫無党派クラブ

○鳩山委員 今回の特例法を検討いたしますと、たとえば「正当な理由がないのに」とか、あるいは「秩序を維持するため」とか、あるいはまた第二条における「弁護人の行為が被告人の意思に反すると認めるときは、」とか、いろいろな表現がある。これはすべて裁判所、すなわち裁判長の判断にゆだねられるわけでございますね。そこに大きな問題点があるということを日弁連の皆様方、繰り返し述べておられる。とすれば、こんな仮定は意味がないかもしれませんけれども、もし世の中のありとあらゆる裁判官、裁判長が、すべて皆様方が望むような聖人君子であったならばこういう法律はあっても構わないのでしょうか、今度の特例法のようなものができても構わないのでしょうか、それを柏木先生にお尋ねいたします。

柏木博元日本弁護士連合会会長

○柏木参考人 ちょっとあり得ないような仮定論でございますので、本当にお答えできるかどうか、私も自信はございません。ただ、ここでそれに関連して申し上げたいのは、過激派裁判と言われる事件につきましても大変スムーズにいく事件あるいは場所もございます。大阪、関西は大体非常に円満に進行しております。ということから見ますと、裁判をする裁判官の人柄、性格、この辺とも無縁ではないと思います。また、それを弁護する弁護士の姿勢とも無縁ではないと思います。だから、プラスとプラスとがかち合えば大変激しい場面になりますし、初めからお互いにひざを突き合わせて胸襟を開いていろいろ協議をした上で裁判に入りますと、きわめて円満に進行しておる、そういう事件もございます。したがって、裁判官が全部聖人君子になれとは私は言いませんけれども、その辺の兼ね合いをもっと考えてもらうならば、弁護士の方も、みずからえりを正すべきものは正すと言っておる今日の状況でございますから、こんな法案をつくらなくても円満にいく。特に、加地先生が国選弁護人についてまで大変な御配慮をいただいておるので、そういうものと相まって、この法案がなくても大体円満にいくのじゃないか、こういうふうな感じがいたします。

杉野修平日本弁護士連合会調査室長

○杉野参考人 先ほどの刑事裁判の進行状況につきましては、法務省でおつくりの資料の四ページないし五ページに最高裁判所の統計がございます。これによれば、地裁の事件でほぼ半分以上の事件は六カ月以内に判決まで行っております。それで、九割は一年以内に終了しておる。三年を超えるような事件というのは、この統計によりますと、五年間で大体二%から三%の間ということになるかと思います。一年間の事件が地裁でほぼ六万件ですから、連合赤軍とか連続企業爆破の事件というのは四十七年ころの事件ですから、統計的に見ますと何十万件に一件のレアケースというふうに御理解いただきたいと思います。それからの事件は、一般の事件も通じて決しておくれているわけではない、事件固有の問題があるということを御理解いただきたいと思います。

鳩山邦夫無党派クラブ

○鳩山委員 いまのお話はまことによくわかるわけでありますけれども、しかし、世間の注目を浴びるような大事件が非常に時間がかかっているというわけでありますから、これは平均で議論していい問題ではないと思います。これは私の意見でございますが……。  それから、午前中の山崎委員の御質問の中で、週刊新潮の五月十八日号の中にある第二東京弁護士会古賀会長の発言、これはたしか柏木先生はお答えになったかと思うのですが、この中で、先ほど引用された部分ですね。「“被告人の人権を守り、社会正義を実現する”という弁護士法の精神を貫き通したいがために、退廷あるいは不出頭という手段に訴えるわけで、弁護士会としての懲戒の対象なんかになり得ないんです」という記述ですが、先ほどのお答え、私、ちょっとよく聞き取れなかった面があるわけですが、先生のお考えも大体同じでございますか。

柏木博元日本弁護士連合会会長

○柏木参考人 全部同じだと言われますと、恐らく私、ちょっとお答えできないのですけれども、それはエッセンスだけを抜いて書かれたものか、前後のいろいろな説明の中の部分的なものをつまみ出して書かれたものか、実際は古賀君によく確かめないとわかりません。ただ、午前中から申し上げておりますように、弁護士倫理として、法廷秩序の維持に協力しなければならぬという問題がございます。したがって、いつでも、どんな場合に退廷しても、それは倫理に違反しないというわけにはまいりません。状況次第によっては、やはり懲戒の対象になり得ると私は考えております。そういう確信を持って、私はいま弁護士倫理についてかなりの研究をしておることを御報告申し上げたいと思います。

鳩山邦夫無党派クラブ

○鳩山委員 いまの点、杉野参考人はいかがお考えでしょうか。

杉野修平日本弁護士連合会調査室長

○杉野参考人 お答えいたします。  実は、私は、その取材のときに古賀先生と同席しておりました。真相は、古賀先生は、イギリスの弁護士倫理の中では、そういう法廷の果敢な活動はむしろ弁護士として望ましいというような倫理すらあるということを別な話でおっしゃったわけです。ですから、記者の人が、その話と一般的に懲戒になるかならないかという前提事実をくっつけられたのじゃないかというふうに私は理解しております。したがって、いまのような前提を立てられますと、一般的に懲戒になるとかならないとかいう議論はむずかしいのではないか、柏木参考人のお答えのとおりになるのじゃないかと思います。

鳩山邦夫無党派クラブ

○鳩山委員 終わります。

鴨田宗一自由民主党

○鴨田委員長 阿部昭吾君。

阿部昭吾社会民主連合

○阿部(昭)委員 私は、一番新しい、一番小さな社会民主連合という政党でありますが、全くの素人であります。ほとんど重要な点がいままで質疑の中で取り上げられましたので、若干の点だけお伺いをしたいと存じます。  裁判の中でもめておるのは一体何かということになりますと、訴訟指揮とか、あるいは期日の指定の問題が一番混乱をするもめの原因になっているのではないかというふうに思います。その中で、週の間に二日間の期日指定ということをかねがね、この特例法が日程に上るようになりましてから、これは裁判所側も、法務省の方も、また弁護士会の方も、そのあたりでいろいろな議論がございました。そういたしますと、弁護士というお仕事、私も多くの友人がおりますけれども、たくさんの仕事を依頼されておられると思うのであります。週二日やるということになり、しかも、先ほどの話のように十時ないし十一時ごろから夕方の五時までということになりますと、事実上は、まさか法廷だけが弁護士の仕事ではない、そこに参りますまでの間に、たくさんの調査や、あるいは被告人なり関係者との間のいろいろなやらなければならぬ仕事が相当多いのじゃないかと私は思うのであります。そういたしますと、一番もめる原因はこの期日指定である。週二日の法廷、しかも長時間の法廷に弁護士がたえていくというのは、これはやはりなかなか大変なことなのではないか、ある意味では、ほかの依頼、ほかの事件等といったようなものを全部なげうたなければ、そういうむずかしい事件というのは引き受けるわけにはいかないという状況になるのではないかというふうに思うのですけれども、その辺の実際の状況等について御意見を伺いたいと思います。

柏木博元日本弁護士連合会会長

○柏木参考人 私の四十年ばかりの経験を通じても、週二回の公判におつき合いできるということは、まず不可能でございます。いまおっしゃいましたように、二日の公判の背後にはいろいろな準備をしなければならぬということ、また他の事件を全部犠牲にするわけにはまいりません。やはり私なら私を信頼していろいろ事件を依頼された方々に対しましても、手を抜くというわけにはまいりません。そういたしますと、週二回の十時から五時までの裁判におつき合いをするということは、本当に不可能なんでございます。いまのロッキード事件が週に一回であります。ただ、二つの事件をおやりになれば週二回になるのですけれども、ロッキード事件の裁判は週に一回。しかも、おつきになっている弁護人は、御存じのように相当な恩給があるとか、いろいろ生活に不安のない弁護士さんがおつきになっている。それですら週一回がせいぜいのところじゃないのでございましょうか。いわんや若い生活基盤が十分でない弁護士となれば、幾ら努力しても月二回というのが本当の現状だというふうな感じを私自身は持っております。

阿部昭吾社会民主連合

○阿部(昭)委員 私も実は裁判、法廷というものを傍聴したりいたしたこともしばしばございました。そういたしますと、その日の法廷が終わりの段階になりますと、次回をどうするかというので、裁判官が検察官及び弁護人に対して双方の差し支えのある日はいつかというようなことをいろいろやりながら、そして大体定まっていくということ。したがって、それなどの場合に、私などは農村地域でありますからそんなにどえらい事件などは知りませんけれども、やはり相当緩やかな期日指定ということになっておるように思うのであります。そこで私、もめております原因のほとんど大部分が期日指定をめぐるところから発しておる、それがやはり週二日とか週一遍でもなかなか大変なのではないかという気がするのであります。  しかし先ほどのお話、私ども素人ですからわかりませんが、訴因が非常に多い事件というのは法廷の回数を相当たくさんやらなければ事実の審理がなかなか尽くせない、こういう問題もあるわけですけれども、一方被告人の立場から見ますと、金のあります被告人は、たとえば弁護人を大ぜい頼む、したがって、その弁護人相互間の連携等々がうまくいきますなら、あるいはこれは週一遍でもできるのかもしれませんけれども、金のない被告人、弁護人をどんどん頼むということもできないような被告人というのは、期日指定を裁判官がする場合、非常にきつい、頻繁な回数で開かれるということになりますと、金のない被告人というのはちょっとどうにもできないことになるのではないかというような気がするのですが、その辺はいかがなんでしょうか。

柏木博元日本弁護士連合会会長

○柏木参考人 おっしゃるとおりでございます。そのために国選弁護制度ができておるわけで、国選弁護制度で全刑事事件の半分が賄われておるのが日本の現状でございます。  本当に貧困者あるいは経済的に恵まれない方々、社会の谷間におる方々のために温かい弁護の手を差し伸べねばならぬということで、私ども法律扶助協会の拡充強化をいま図っております。アメリカ等においては、年間約一億ドルの国家予算からそういう法律扶助の制度をつくっております。日本は七千万足らず。国民一人当たりにいたしますと、オーストラリアが四百円、イギリスが二百五十円、アメリカが百五十円ぐらいになりますか、日本は七十何銭というのがこの法律扶助に対する国の対応なんでございますね。その辺もひとつよく御協力のほどをお願い申し上げます。

阿部昭吾社会民主連合

○阿部(昭)委員 よくわかります。  そこで、私は疑問に思うことがあるのでありますが、この問題は過激派裁判というところから始まってきた。だけれども、長くかかっておる裁判というのは、ほかにもたくさんあると思います。たとえば戦後の疑獄事件ですね、こういうのは大体政治家が介在するわけですが、やはり相当長期裁判になっておると思うのです。それが一つ。それから、私は二十五歳のときから選挙をやりましたけれども、一度も選挙違反をやったことがないというのが自慢なんです。そこで、選挙違反裁判ですね。ほとんどの裁判が——たとえば四年なら四年の任期がある、ところが、その事件が決着をすることによって当選人がかわる可能性があるというような、ある意味で言えば民主主義の根幹にかかわる問題だと思うのですけれども、そういう場合でも、任期の間に選挙違反裁判というものが決着がつくという例は最近はほとんどないのであります。こういう問題は全然日程に上らぬのですね。そこで、過激派裁判というのが日程に上るわけですけれども、そういう意味ではやはり、何というんですか、汚職事件、疑獄事件といったようなもの、あるいは選挙違反裁判といったようなもの、このあたりからきちっと正さないと、どうもそっちだけを盛んに何か目のかたきにしておるというところにも、何というんですか、この問題の扱いに、この問題の出てきておる背景というものに、何か逆流傾向というか——私も決して過激派を認めるわけにはいかないと思うのです。だけれども、過激派裁判だけを限定することは、これは当然できない。したがって、一般刑事事件もということになる。そうすると、先ほども指摘がございましたように、正当な事由がなく云々とか、いろいろな判断はすべて官の側、つまり裁判官の側にオールマイティーにゆだねられるということになりますと、どうも全般的にいまある逆流傾向というものを私は感じられてならぬわけです。  そういう面で、私は、何かここで弁護士会あるいは検察官あるいは裁判官、こういう中で、やはりいまの日本の裁判制度というものの基本をどうするのかという問題をもっと突き詰めてみる必要があるんじゃないかと思うのですが、私の印象では、どうもそこのところが官の側だけで一方的なことですぱっと問題が提起されてきておるように思えてならないわけです。そうだからといって、弁護士会の側で問題を提起すると、何かそれにまた違った立場からの反論みたいなものもあるけれども、私は、われわれも含めて、やはりもう少し冷静に問題を見きわめてみなければならぬのじゃないかという気がするわけであります。  そういう意味で、柏木先生なり杉野先生は、いまの全般の流れから、特にこの問題がクローズアップされてきておるという状況に対してどういう御理解を持っていらっしゃるか、お教えいただければありがたいと思います。

柏木博元日本弁護士連合会会長

○柏木参考人 私、午前中にも申し上げましたけれども、この法案を法務省が用意しましたときの第一声は、ハイジャック防止対策だ、こういう説明を盛んにPRしております。しかし、それじゃおかしいじゃないかということで、今度は過激派裁判正常化法案と、こういうふうな俗称をつけたわけなんです。ところが、用意しているものは、別に過激派裁判正常化の法案ではない。御存じのようにどんな事件でも適用になるという、しかも、正当な理由だとか、相当と思うときはとか、遅延の目的とか、これはもう判断をする側においてはどうにでも判断できるようなあいまいな字句を使っておるわけでございます。法律の用語というものは、やはり客観的に見て争いのないような用語を使ってもらわなければ国民は困るのです。しかも、官の方でそういうふうな姿勢をとるのですが、アメリカにしましてもイギリスにいたしましても、法曹一元制度をとっております。日本も真剣に法曹一元問題を考えていただきたいと思います。午前中何回も申し上げましたように、裁判というものは、お互いの信頼関係がなければ本当の正しい裁判はできないと思います。ことに、私は私見として、五年間弁護士をやって、その中から裁判官なり検察官を選びなさい、そうすれば国民の苦しみもわかるであろうし、国民の実情もわかるであろう、また弁護士業務というものもわかるであろう。百回指定なんというものは、ちょっとでも弁護士経験をすれば出るはずはない。五年間ぐらいは弁護士生活をさせて、その中から適当に選んで裁判官なり検察官をつくればいいんじゃないかという私見まで持っておるのですが、そういうことを含めて、ひとつよく日本の裁判制度について御研究のほどをお願い申し上げたいと思います。

阿部昭吾社会民主連合

○阿部(昭)委員 終わります。

鴨田宗一自由民主党

○鴨田委員長 これについて参考人に対する質疑は終了いたしました。  一言ごあいさつ申し上げます。  両参考人には、長時間にわたりまして貴重なる御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。     —————————————

鴨田宗一自由民主党

○鴨田委員長 引き続き、政府に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、これを許します。稲葉誠一君。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 法案の質問に入るわけですが、最初に、いわゆる法曹三者の協議をやるようにという附帯決議が、これは衆議院と参議院でしたかね、ございました。たしか一回は管轄の拡張のときかなんかでなかったかと思っていますけれども、もう一回はちょっと忘れました。いずれにいたしましても、そのときにどういう趣旨でその三者協議をやるというようになったのか、それからまた一般的にそのときの附帯決議はどういう附帯決議であったかということですね。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 御指摘のように、裁判所法の一部改正、管轄の問題が取り上げられたときの附帯決議が最初でございます。結局裁判所法の改正というような問題をめぐりまして、必ずしも法曹三者の意見が十分調整されていなかったというお感じを国会におきましてお持ちになったのであろうと思いますが、たとえば一番最初御決議がございました昭和四十五年五月十三日の参議院の法務委員会におきましては「今後、司法制度の改正にあたっては、法曹三者の意見を一致させて実施するように努めなければならない。」こういう御決議でございまして、私どももまことにこのとおりだと思います。およそ法曹三者の意見が一致すべき問題について十分一致をさせるように努めるということは、当然努力をしなければならないことだと思うわけでございまして、こういった附帯決議がきっかけになりまして、三者協議会というものが現在事実上の仕組みとして設けられておるわけでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 そうすると、本法案についてはその三者協議というのは一体あったのかなかったのか、これはどうなんですか。それから、その前に、三者協議というのは具体的にどの程度のランクの人がやるものなんですか。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 ただいま申し上げました三者協議会というものにつきましては、通常のメンバーとしては私は入っておりません。官房長、司法法制調査部長、秘書課長、これが事実上の常勤的な法務省のメンバーでございます。裁判所もこれに相当する総務局長等々であると思いまます。それから日弁連側では、なるべくメンバーの交代がない方が望ましいということで、しかるべき弁護士の方々が数名協議員になっておられます。そういう仕組みでやっておるわけでございます。  私も直接の担当者ではございませんが、承っておりますところによりますと、まずもって何を三者協議会の議題に取り上げるかというところで議論が堂々めぐりをすることが多うございまして、これまで選挙違反事件の百日裁判の問題等が具体的に取り上げられた程度でございまして、現在議題について次にどういうことをやるかということを模索中であるように承っております。  さて、そこで、今回の法案の立案に先立ちまして三者協議を行ったかというお尋ねでございますが、いま申し上げます三者協議会というものにかけたことはございません。そういうことはございませんが、前にもお答えしたかと思いますが、私ども刑事局と日弁連の事務当局、それから私ども刑事局と最高裁の事務当局という関係で、私どもが中心になりましてそれぞれの事務方と御連絡をする、こういうことを事実上やっております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 そうすると、国会の附帯決議の三者協議というものを本法案についてやらなかった理由というのはどういうことなんですか。一たん議題にかけたけれども話がまとまらなかったということならまた話は別ですけれども、最初からこれはかけなかったわけでしょう。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 昨年十月初めごろから、ダッカ日航機ハイジャック事件を契機として、ハイジャックその他の非人道的暴力行為に対する対策を政府の対策本部で検討を開始したわけでございます。その過程におきまして、当省所管の事項といたしましては、ハイジャック処罰法の強化あるいはハイジャック危険防止処罰法の強化とか、そういう立法問題と並んで、過激派裁判の迅速化というテーマが取り上げられたわけでございます。そこで十月に入りましてから、私どもといたしましては、ただいま御提案申し上げているような一つの刑事手続の特例というもの、それからもう一つは、国選弁護人がなかなか得られないという現状にかんがみまして、公設弁護人と申しますかそういう制度、この二つを車の両輪のような関係におきまして提案することによって過激派裁判の迅速化を図るべきであろう、こういうふうに考えたわけでございます。  そこで、そういう考えになりましたから、一方におきましてこういう考え方につきまして最高裁事務当局と御連絡をして御相談を申し上げ、他方において日弁連事務総長に私のところにお越しをいただきまして、数次にわたってその構想の説明をし、これに対する日弁連としての感触を伺うというような手続をやっておりました。その過程におきまして、国選弁護人の選任については今後とも弁護士会としても努力の余地がある——もっともそれには前提がありまして、裁判所において過激派事件の国選弁護人に相当額の報酬を払ってもらいたい、こういう条件がございましたが、大いに努力の余地があるという御返事でございましたので、公設弁護人制度の新設の点はこの際は見送ることといたしまして、車の両輪の片一方は運用によっていましばらくやってみた方がいいのではなかろうか、こういうことになって、ただいま御提案申し上げているようなものに固めつつあったわけでございます。  そうこうするうちに十一月八日になりまして、政府に設けられましたハイジャック等非人道的暴力防止対策本部におきまして防止対策を決定いたしました。その中に、刑事訴訟の迅速化を図るための法改正というものも検討課題として最終的に取り上げられたわけであります。そういたしますと、まさにその翌日であります十一月九日に、刑事訴訟法の改正に関する法務省の企図については断固として反対するという旨の日弁連会長声明が出たわけでございます。  さような状態になってみますと、天下に対して断固反対するというふうに声明をしておられます方と、私どもと、それから最高裁判所事務当局が、三者協議会の議題としてこれを取り上げて議論をいたしましても、速やかに所要の結論を得ると申しますか、附帯決議の御趣旨のような意見の一致を見るということはとうていむずかしかろう、こういうふうに考えられたわけでございます。そこでこの際は、日弁連御推薦の委員の方もおられます法制審議会の場におきまして十分御討議をいただこう、こういうことで取り運んだわけでございまして、要するに、私どもとしては附帯決議の趣旨を実質的に十分踏まえて努力をいたしましたし、さらに努力をしたいと思っておりましたけれども、さような状況になってしまいましたために、遺憾ながら先ほど来申し上げております三者協議会の議題として取り上げる、こういうことにはならなかったわけでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 ハイジャック暴力防止対策本部の十一月八日の発表がありましたね。なぜその十一月八日以前に法務省、最高裁、日弁連三者が集まって、そういう法案なり何なりをつくるとかどうかということについての話し合いというか協議会というか、名称はどうでもいいのですが、それを持たなかったのですか。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 ただいま申し上げましたように、十一月八日の政府の方針決定に至る適程として、私どもはそういう方向で政府として決定していただくことの是非についていろいろ検討しておったわけでございます。そういうことでありますから、十一月八日に政府の方針が決定いたしますと、この政府の方針に基づきましてこれを具体化する方策いかんということで、対外的に公に議題とするということに熟する事柄であろうと思うわけであります。したがいまして、十一月八日以前の過程は、十一月八日の対策要綱に織り込むことについてわれわれ法務省の内部での腹を決める、そういう作業の一環として最高裁事務当局、あるいは先ほど申し上げました日弁連の事務当局と内々の折衝、連絡をしたわけでございます。十一月八日に方針が決まって、一夜明けますと反対であるということでありますから、三者協議会の議題には取り上げられなかった、こういうことであります。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 一夜明けてから後の話はいまあなたがしたのだから、それは同じことを何回言ったってあれだけれども、日弁連と数次にわたって交渉というか協議したとかなんとかと言われましたが、それを具体的に説明してくれませんか。電話で二回やっただけじゃないですか。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 具体的にということでありますから御説明いたしますと、日弁連事務総長には法務省刑事局長室に三回にわたって来ていただいております。  まず第一回に来てもらいましたときは、あるいは委員御承知かと思いますが、当時の日弁連事務総長と私とは本来は友人の、それも相当親しい友人の間柄であります。したがいまして、来てもらいますときにも、また会ってからも、きょうは友達として話をするのじゃない、日弁連の事務総長と法務省刑事局長としての話だ、よく聞いてくれということで、二つの話をいたしました。  過激派裁判の遅延が目に余るものがある、それはいろんな原因が他にもあるかもしれないけれども、弁護人が被告人と意思を同じくしてはなはだしい法廷闘争戦術を展開しておる、これが一つの大きな問題点である。この問題に対応するには、われわれ法務省事務当局としては二つのアプローチがあると考えている。その一つのアプローチは、法廷における秩序を著しく乱した弁護士に対して、日弁連によります懲戒処分が迅速適正に落われてその是正が図られるということが一つの方策であるとともに、あるいはもう一つの考え方としては、そういう著しく不当な法廷秩序を乱す言動のあった弁護士が勝手に退廷したり出頭してこなかった場合に、被告人の意思がこれと合致しておるというような場合には、そのまま若干の期間手続を進めることができるように立法をする方法である。すなわち簡単に言いますと、懲戒処分の適正迅速化か、ただいま提案しておるような立法か、こういうアプローチが一つある。  それからもう一つのアプローチは、ただいま申したような措置をとったとしても、当該私選弁護人が排除された場合に、排除されっ放しでは困るわけでありますから、なるべく速やかに本人が希望すれば国選弁護人がつけられるように担保しておく必要があろう。その第二のアプローチとして考えられることは、日弁連がいままでのように六カ月も一年も国選弁護人の推薦ができないということではなく、今後裁判所から推薦依頼があれば理事者等が責任を持って国選弁護人を推薦するということにするか、そうでなければアメリカ等にも見られる公設弁護人制度の新設を図る、このいずれかの措置が必要であると考えておる、この点について日弁連の感触を得たい、こういうふうに申したわけであります。  これに対して第二回目に、これは先方からの連絡で日時をセットしたわけですが、事務総長が来ましたときに話がありましたのは、第一の点、すなわち懲戒処分の適正迅速化か刑事訴訟における必要的弁護の例外規定の新設か、こういう問題については、日弁連としては懲戒処分を直ちにこれから適正迅速に行うということを保証できるようなムードではない。  それから、第二の点の国選弁護人の円滑な推薦か公設弁護人制度の新設か、こういう問題点については、日弁連として国選弁護人の推薦にはさらに努力をすべきだと思っておるし努力する余地があると思う、さらにそれに付加しまして、多少事務総長である自分個人の意見も入るけれども、過激派事件というようなだれも好んで国選弁護人となりたがらないような事件についての国選弁護人の報酬をうんとはずんでもらうということが必要ではないか、こういうことで、もしそういう国選弁護人の報酬について十分な配慮がなされれば、弁護士会の努力と相まって国選弁護人の推薦はもう少しスムーズにいくようになると思う、こういうような説明があったわけであります。  そこで、事務総長と会いました翌日から最高裁事務当局と話し合いをいたしまして、国選弁護人の推薦について一つのネックとして常識的に考えられるものとして、報酬が安過ぎるという問題がありはしないか、その点は裁判所で御努力になる必要があるのではないか、いまはそうでないと思いますが、かつて最高裁事務当局の内部には、弁護士というものは二年間国費で修習を受けた者であるから、そういう経過を経て弁護士になった者である以上、国の公の仕事のためにはむしろ手弁当でやってもいいのじゃないかというような思想が根底にありはしないかと思われるような弁護士に対する報酬の扱いというものがないわけではなかったと思われる、その点は最高裁事務当局で十分努力してもらわなければいかぬように常識的に思うけれどもどうだろうというふうに尋ねておったわけです。それに対しまして最高裁事務当局では、その点は十分努力をするというふうなお返事がありました。  そこで、先ほどの日弁連事務総長の話と最高裁事務当局のお返事とを総合いたしますと、国選弁護人が得られないという現状にかんがみて直ちに公設弁護人というような制度をつくるということはやはりもう少し様子を見ていいのじゃないか、もう一遍日弁連の努力に期待をかけてみようということになりまして、最後に三回目に事務総長に来てもらったときに、あなたの方の説明を聞き、最高裁事務当局の説明も聞き、結局私が最初言った国選弁護の問題、これにかわる公設弁護の問題、これは一応たな上げにして、刑事手続における必要的弁護の例外規定の新設、これだけをやらしてもらう方向で進めますよということを申しまして、その直近の政府のハイジャック等非人道的暴力防止対策本部幹事会におきまして、私からそういう方向で検討をいたしますということを申し述べまして十一月八日の決定になった、こういう経緯でございます。

瀬戸山三男自由民主党法務大臣

○瀬戸山国務大臣 ここでこの問題の発端を簡単し申し上げてみます。  といいますのは、御承知のとおりに昨年九月末だったと思いますが、ダッカ事件が起こった。そして現に裁判中の被告人、いま名前を明確に覚えておりませんが、いわゆる日本赤軍事件の被告人それから連続企業爆破事件の被告人が、御承知のような事態で日本赤軍に取られてしまった、という言葉はおかしゅうございますが、釈放せざるを得なかった。こういう状態の直後に私は突如として十月五日に法務大臣に任命されたのでございますが、その際に特に私は、いわゆる浅間山荘事件、四十七年でございますが、白昼堂々とテレビで放映されて、国民が全部テレビで見ておるような犯罪の被告人でありますから、就任直後、一体あの事件はどういうふうな裁判になっておるのだということを事務当局に聞いたわけでございます。ところが、当委員会等でもしばしば事務当局が説明いたしておりますように、いわゆる激しい法廷闘争ということで、弁護人の辞退あるいは欠席等がずっと連続して行われて、まだまだ一審裁始の見通しもっかない状態にあるのだ、こういう説明でありまます。それは非常におかしなことじゃないか、大体裁判に値しない状態が日本の裁判で行われておるということは、法治国家である日本の裁判として非常におかしい、これはどうにもならないと言うから、どうにもならないようなことでは、われわれは憲法、刑事訴訟法を担当しておりながらその対策がないということはおかしいじゃないか、何らかそれを打開する方法を検討しなさい、こういうことを私が刑事局長その他の事務当局に命じたわけでございます。それに対する対策としていろいろ検討した後の話がいま刑事局長が御説明した状況でございます。  その前に、私はそういう検討を命じましたから、就任後間もなく、何日だったか覚えておりませんが、日弁連に就任のごあいさつに行ったときに、その当時の宮田会長に、こういう状態でお互いに裁判に値しないようなことを続けておくということは適当でないから、私はまだそのときは具体的にどういう方策ということを聞き得る段階でございませんでしたけれども、これを改善する方法をお互いに考えましょう、こういう話をあいさつかたがたいたしましたたのでございます。具体的内容を持っておるわけじゃありませんから、そういう話で、当時の宮田会長も何か検討しなければいかぬなという程度のことでございました。  それとほとんど同時期に最高裁長官にも就任あいさつかたがた行って、こういう状態で裁判があるということは国民に対しても申しわけないことであるから、われわれも考えるが、最高裁判所としても、裁判を実際預かっておる方としても何らかの打開策といいますか、これに対する方法、手段を考えてもらわなければ困るじゃないか、こういう話をして、実際に困っておるのですよという話でございました。これが発端でございます。  その後事務当局としてはいろいろ検討をして、それから閣僚会議の議題になった、こういういきさつでありますから、事の起こりを御説明いたしておきます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 刑事局長は三者会議の正式なメンバーではないのに、今回のこれに限って出かけていったというか何というか、それはどういうふうなことからなんですか。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 三者協議の固定メンバーは先ほど申し上げたとおりでありまして、たとえば百日裁判の問題というようなことになりますとそのテーマに合わせて刑事局長が出ていくというような運用でございますが、今回のいわば三者一緒に会したわけではないところの先ほど御説明しましたような連絡というようなものは、私、事務次官と相談をいたしまして、いずれにしたって刑事局が所管部局でございますから、その責任者であるおまえが直接話したらよかろうということでございまして、私が直接話すということになると、日弁連会長をお呼びするわけにいきませんから、事務総長に来ていただいた、こういう経緯でございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 四月十八日の国会の質問、これはこの前問題にいたしましたのが一部ありますが、そのほかに、九ページの上から二段目、これは飯田さんの質問ですね。その中に大臣の答弁があるのですね。これは一段目の左端「国会で決議された司法制度に関しては、法曹三者でよく協議するように、それは非常にもっともなことでありまして、従来からいろいろ三者で協議をしてきておることは、飯田さんも御承知だと思いますが、先ほど申し上げましたように、この件でももちろん御協議を始めました。」こうあるのですね。これといまの大臣の説明、あなたの説明とは、違うと言えば違うのじゃないの。ただ、それはニュアンスの差だとあなたの方は逃げるに違いない。もう答えはわかっているよ。大体役人の答えというのは、あちこちいろいろなことを考えて、きっと何かごまかすに決まっているのだから。そうでしょう。この協議というのは、いやいままで言ったことも協議のうちに入るのだ、こういう答えでしょう、きっと。だけれども、協議じゃないじゃないですか、いまあなたなり大臣の言ったことは。大臣の答えは間違いというか、きわめて不足じゃないの、これは。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 私と日弁連事務総長、それから私と最高裁の事務当局の局長の方々とはまさに協議をしておるわけでございます。したがって、先ほど申しましたように、三者が一堂に会して協議をしたということは確かにないわけですけれども、私を接点といたしまして、それぞれ法曹の他の二者に御連絡し、御協議申し上げておる、こういうことであります。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 それはあなた、いまになって御協議ということを言ったので、前の答弁のときには、あなたは連絡だけしか言わなかったのですよ。そうでしょう。ぼくはそういうふうに聞いて、気がついたけど黙っていた、余り言葉じりをつかまえるのはいやだからね。だから、御協議を始めましたというのは、これはおかしいのよ。  それじゃ、後のところ、別のところを見てごらんなさいよ、大臣の答弁を。これは協議という言葉は使っていない。今度は相談というような言葉を使っていますけれども、相談も協議も同じかもわからぬけれども、十二ページの一番下段、これは正森さんに対する答え。「先ほども他の方からお話がありましたが、この法案作成の過程において、いわゆる法曹三者が協議をしなかったじゃないか、それはしばしば決議しておる国会の決議に反しはしないか、こういうことでございますが、前に申し上げましたけれども、御相談をしても御相談にならなかったということでございまして、こちらは、もちろん、そういうやり方が一番よろしいと思っておりましたけれども、真っ向から反対で、」云々、こういうふうなことですね。相談も協議も同じかもわからぬけれども、そういうのを三者協議とは言わないのじゃないですか。三者が正式に集まって協議して、そしてじっくり案を練ってやれというのが、これが国会の決議の趣旨なんじゃないですか。それをあなたが、局長が、日弁連の事務総長、これはあなたとの間のフレンドシップのことはぼくもよく知っていますからこれは申し上げませんけれども、最高裁の、これはだれとやったのか知らぬけれども、刑事局長とやったのか何か知らぬけれども、ただそれを極にしてやったというだけの話で、これで果たしていわゆる国会決議で言う法曹三者の協議ということに当たるかどうかということははなはだ疑問じゃないでしょうか。仮に断固反対だと言ったとしても、それじゃとにかく集まって一応は協議しようじゃないかと言ってやるのが筋ではないか、私はこう思うのですが、その点はどうなんでしょうか。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 いろいろな言葉で御説明しておりますが、こちらの考え方を連絡し、それに対する意見を求めてきたというのは、相談ということにもなりましょうし、協議ということにもなるのじゃないかと思います。  いずれにいたしましても、この問題は、ダッカ・ハイジャック事件の起きましたことにかんがみて、政府として緊急に措置をすべき問題でございまして、断固反対するという声明を発せられましたからといって、年月をかけてじわりじわりと説得をしていけば、またいつの日にかはこちらの気持ちも十分理解いただいて、なるほどそれじゃ一緒にそういうことをやろうというふうな機運になるのかもしれませんけれども、全くただ一行の対策本部の対策要綱が出た途端に、断固反対声明を出されるというような状況を拝見しますと、いまから、それじゃあなたは反対だけれどももう一遍よく相談しましょうというようなことを申し上げて従来の三者協議会の開催テンポでずっとやっていきましたら、もうそのころにはまた次のハイジャックあるいはそれに類する行動が起きるかもしれません。そういうことを考えますと、そんなのんびりしたことも言っておられない事態である、こういうことが偽らざるところであります。したがって、もう日時がないというので、法制審議会の席上で十分に日弁連推薦委員の方の意見も聞き、まあ日弁連推薦委員の方のおっしゃいますことは、日弁連の機関でお決めになりましたことを従来からお述べになるわけでございますから、そこで十分公平な学者等も交えてディスカッションをして結論を出していただこう、こういうことになったわけでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 あなたのお話を聞いていますと、この法案がハイジャックの防止に役に立つ、こういうことのようですね。初めそういう説明をしておって、後からだんだん変わってきたようにも聞きますけれども、この法案がハイジャックの防止にどういうふうに役に立つのですか。それは既決だろうと未決だろうと、結局それは多少の差はあるかもわからぬけれども、現実にこの前のときは同じだったのじゃないのですか。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 もう釈迦に説法で、申し上げるまでもないところでありますが、ハイジャックその他これに類する非人道的暴力行為を抜本的に根絶するためには何が一番大事かと申しますと、やはり国民全部が法秩序を守り抜くという決意を固めて、断固とした決意でこういう卑劣な悪と闘うということではなかろうかと思うわけでございます。そういう国民の法を守り抜こうという合意というものが最もとうといものであるということからいたしますと、法秩序のわが憲法下におきます最後のとりででございます裁判、これがそういう卑劣な行為あるいはこれに加担するような人々の行動によりましてじゅうりんされる、そのために適正迅速な裁判が実現できないということになりますれば、当然のことながら、当該犯罪の被害者はもちろん、関心を有する一般国民は、法秩序というものがわが国において十分維持されておるかどうかについての自信を失っていくのではないかと思うのであります。そういう観点からいいますと、私は、先ほど大臣もちょっとお述べになりましたが、ごね得の裁判の遅延というようなものが過激派に対して許されるというようなことを防遏するということは、ハイジャックの根絶を図るための第一歩ではないか、法秩序を毅然としてわが国に確立するということが一番大事なことではないか、こういうふうに考えておるわけであります。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 大臣が四時から参議院の本会議に出られるということでございますので、その前に大臣にちょっとお尋ねしたいのですが、やはりあなたの答弁の中で、九ページの二段目ですね、これは国選弁護人の選任の問題ですが、その中で「それから国選弁護人云々の話もありますが、そういう際に国選弁護人を弁護士会に依頼いたしますと、なかなか弁護士会から出していただけない。うかつに国選弁護人になりますと、その御本人のみならず、家族の生命身体に危害を及ぼすというようなことで、これは弁護士会の内部でそうおっしゃっておるのですから、つけ加えておきたいと思います。」云々、こういう答弁があるわけですね。これは、この資料の赤い紙がありますね、この赤い紙の一から十三までのどれを言っているわけですか。

瀬戸山三男自由民主党法務大臣

○瀬戸山国務大臣 それは赤い紙のどれからどれということではないのです。どの事件でどうだったということを私聞いているわけじゃありません。こういう席でありますから、どなたがどうおっしゃったということもここでは申し上げないことにいたしますが、弁護士会の責任者がそうおっしゃったのでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 弁護士会の責任者が何かのときに言ったのかどうか、それはあなたがおっしゃるので知りませんけれども、これはいま言った赤い紙の一から十二までの過激派事件の資料以外の事件についてのことが頭にあってしゃべっているのじゃないですか。

瀬戸山三男自由民主党法務大臣

○瀬戸山国務大臣 いや、どの事件というか、過激派の事件ではそういう状態ですということを説明されたわけでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 おかしいなあ。過激派の事件でこういうふうな事実が現実にあったのですか。いわゆる一から十三までの事件ですよ。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 国選弁護人がなかなか得られなかった事例はその中に幾つかあるわけです。脅迫された事件につきまして一番顕著な例としては、沖縄解放闘争と申しましたか、あの事件におきまして国選弁護人あるいは国選弁護人となろうとした者を脅迫いたしまして、裁判所で裁判を受けておるという事例が二件ぐらいございます。それから、大臣いま御指摘にはなりませんでしたが、日本弁護士連合会の機関誌であります「自由と正義」に学者の方が書いた論文の中にそれと同様なことが書かれております。そういうようなことをひっくるめて、大臣としては弁護士会関係のどなたかからお聞きになっておっしゃったものと思っております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 大臣がこの前、何か「自由と正義」の中のあれを読まれましたね。あれは庭山さんのやつでしたか。それを言っているのかどうかわかりませんけれども……。この前は吉川さんの論文かエッセイか何か読んで、何か文楽とかなんとかと比較して何とか言われたけれども、吉川大二郎さんというのは一体何の御専門だと思われます。大臣御存じですか。

瀬戸山三男自由民主党法務大臣

○瀬戸山国務大臣 ずっと前に弁護士さんで日弁連の会長をしておられたということだけしか知りませんで、弁護士として何が専門かということを私はつまびらかにしておりません。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 これはもうだれでも知っていることですよ。これは日本の強制執行の問題の大家ですよ、吉川大二郎さんというのは。立命館大学の教授をずっとやっておられましたが、強制執行の大家です。それから、あなたはこの前慶応大学の宮沢浩一さんの何か、あれ読まれましたね、オオカミの何とかの話というのを読んだじゃないですか。——あなたじゃなかったっけな。何だかこっちも忘れちゃった。あの宮沢さんは——これは刑事局長は知ってますね、宮沢さんは何のあれが専攻だか知っているでしょう。これは刑法だとか刑事政策だけじゃなくて、むしろ犯罪被害者学の専門家ですよ。日本にまだない、被害者の立場から犯罪をどういうふうにながめていくかというふうな処遇を中心とする被害者学というものの専門家なんで、被害者の立場から問題をずっと考えていく人です。それからポルノの問題なんかいま一生懸命やっている人だ。だから、この宮沢さんの言うのを引用するのも、私はちょっと当たらないように思うのですよ。刑法の専門家じゃないもの。刑事訴訟法の専門家じゃないよ。専門家だけれども、これはもっとほかの方だよ。私の理解の仕方では、刑事政策学あるいは刑事被害者学とかなんとかという新しい学問の系統の人ですね。それからポルノのことを何か研究をしている人ですよ。そのことはまあいいです。「それから、さっき日弁連の人が言っていましたね。これは過激派だけに限るということではない、もし過激派だけに限るということであったならばそれは憲法違反だということを藤永参事官がどこかで言われた。これは何で言われたのか知らぬけれども、NC9とかなんとか言ってたなあ。そう言われた録音もあるとかなんとか言っていたけれども、過激派だけに限るということであるとやはり憲法違反、恐らく憲法十四条の違反だろうと思うのだけれども、憲法違反になるの。そこ、どういうふうに理解するのですか。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 過激派という概念が必ずしも法律的あるいは社会的に全く一分の疑念も出ないように確立されておるという状態でございません。したがいまして、本日参議院で御審議になっております成田のいわゆる新立法におきましても破壊的暴力活動の定義を長々とやっておるようでございますが、そういうことでありますから、そういうあいまいな概念をそのまま用いまして、その被告人に限って特定の手続を適用するということになりますと憲法十四条に抵触する疑いが出てくるのではないか、かように思っております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 そこで、赤い紙の第二が連合赤軍事件の統一組の公判経過というものですが、この事件は幾つのジャンルというのですか、項目別というのですか、それに分けられるわけですか。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 大変恐縮でございますが、御質問の趣旨がちょっとわかりかねますが……。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 たとえば真岡事件とか山岳リンチ事件だとか、浅間山荘事件とか、こういうふうに分けてやっているわけでしょう。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 歴史的順序から申しますと、一等最初にM作戦という銀行強盗のような事件、それから真岡事件と言われます猟銃を奪った事件、それから山岳ベースで次々に元同志であった者を殺害いたしました、十三人であったかと思いますが、次々に殺害して地中へ埋めてしまったリンチ殺人事件、それから最後にテレビで全国民の注目を集めました浅間山荘事件、こういうようなものが集合しておるのが連合赤軍事件であります。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 そのリンチ殺人事件というのはどれを言っておるのですか。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 連合赤軍が関東北部の山岳地帯に次々とアジトをつくりまして、それぞれのアジトで人を逐次殺していった、これが中心であります。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 いわゆる山岳ベース事件と称せられるものですか。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 それが中心であります。ほかに山岳ベースでないところでリンチで殺された者もございますけれども、ほとんどが山岳ベースと言われるところでリンチ殺人を受けておる、こういうことであります。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 そうすると、山岳ベース事件の証拠調べですね、まず、証拠調べという言葉を使いますが、それはいつから始まっておりますか。

藤永幸治法務大臣官房参事官

○藤永説明員 お尋ねの山岳リンチ殺人事件の証人調べに最初に入っておりますのが、昭和五十一年八月三十日からでございます。もっともこの証人調べと申しますのは、鑑定書あるいは検証調書の作成者の証人調べということでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 昭和五十一年八月三十日というのは、これは印旛沼の事件ではないですか。印旛沼の事件で瀬木政児というのを調べておるのじゃないのですか。

藤永幸治法務大臣官房参事官

○藤永説明員 印旛沼リンチ殺人事件の証人調べはそれ以前から入っております。     〔委員長退席、羽田野委員長代理着席〕 五十一年四月二十六日からすでに入っておりますが、五十一年の四月、五月、六月、七月と、六月に入りましてから印旛沼リンチ殺人事件のほか真岡の猟銃強奪事件なども証人調べに入っております。私がさきに申し上げました五十一年八月三十日は、印旛沼のリンチ殺人事件の証人のほか、初めて山岳リンチ殺人事件の証人調べが行われたという意味でこの日が最初であると申し上げたわけであります。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 それはだれを調べたのですか。長野県警の検証警察官河原豊という人を調べていますね。これが九月二十七日ではないですか。そこから始まったのではないですか。八月三十日は印旛沼ではないですか。

藤永幸治法務大臣官房参事官

○藤永説明員 御指摘の五十一年九月二十七日、これは確かに稲葉委員のおっしゃいました鑑定書あるいは検証調書の作成に入っておりますが、その前の八月三十日から山岳リンチ殺人事件の証人調べにも入っております。ただこの証人の固有名詞並びにどのような証人であったかということについては、現在手元にあります資料でははっきりいたしません。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 その後、どういうふうに山岳ベースの証人調べが行われましたか。

藤永幸治法務大臣官房参事官

○藤永説明員 先ほど稲葉委員御指摘のとおり、五十一年九月二十七日から山岳リンチ殺人事件のみの証人調べが行われまして、五十一年の十月、十一月、十二月、五十二年の一月、二月、以降も山岳ベース事件の証人調べは行われております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 読み上げますから事実と違うかどうか答えてください。  第八十七回法廷、十月十八日にもう一度河原豊、それと須藤万夫を調べていますね。十月二十五日も同じ人を調べて、そのほかに小池正という人を調べている。小池正を十一月八日にも調べておる。十一月二十九日に松林表治という人を調べている。この人は検証警察官ですね。それから高野美信。十二月十三日にも高野美信を調べ、同じく山形成三、林仟章。五十二年一月十八日に小鮒佐太郎、青柳高。一月二十五日に佐藤三郎、関谷二郎。二月八日に飯島秀二、黒沢治雄。二月二十二日に黒沢治雄。三月八日に黒沢治雄。三月二十九日に川尻八郎、古沢茂、関口喜久男、大沢政義。四月十二日に古川研、この方は群馬大学の教授で鑑定人であります。四月二十六日に同じく古川研。五月三十一日に山岳ベースの証拠物押収手続の警察官福田利直、浅川寿雄。それから六月七日以降六月二十一日、七月五日、七月十九日、八月九日、九月十三日、九月二十七、十月十一日と前沢虎義を調べておりますね。十月十一日は更新手続ですから違いますが……。それに対して検察官の主尋問が、いま言った六月七日と六月二十一日、七月五日、七月十九日、八月九日まで行われ、あとは反対尋問、こういうことですね。五十三年二月二十八日にも前沢虎義を調べて、そのほかに共犯として青砥幹夫というのも調べておる、こういうわけです。ことしになってからのは別として、前沢虎義というのは何ですか。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 元連合赤軍のメンバーで、いわゆる広い意味での共犯者で、分離して裁判が終わっておる者でございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 朝日新聞の昭和五十三年一月十九日の「論壇」に藤永さんはこう書いていますね。「刑訴法の改正は必要 異常な裁判粉砕闘争への対策」これは藤永さんの一番最初の論文、短いから論文と言えるかどうか、「論壇」というやつです。これを見ますといろいろなことを言っています。その中で「そのため、前記の連合赤軍事件は、事件発生後六年をへた現在でも、」現在というのは五十三年一月十九日、これを書いたのは二、三日前かもしれぬけれども「事件の中心であるリンチ殺人の審理にはまだ入っていない」と書いてあるでしょう。これはどうなの。

藤永幸治法務大臣官房参事官

○藤永説明員 私の書きました朝日新聞の「論壇」のことでございますのでお答え申し上げます。  あの「論壇」は二百字詰め八枚ということで、千六百字以内にとどめるという点で言葉がやや足りなかった点は認めますが、先ほど申し上げましたように、山岳ベースにおけるリンチ殺人事件の証拠調べと申し上げたのはいずれも外形的な事実、死亡者が何人出たかということで、共犯者も一、二名調べは入ってはおりますけれども、まだだれがどのようにしてだれを殺したかというような立証段階には入っていない、そのように細かく神経を使って書くべきではありますが、先ほど申し上げましたように二百字詰め八枚ということですべてを書き尽くしたいということから言葉の足りなかった点は認めます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 言葉が足りなかったじゃないよ。そんなことを言っちゃいかぬよ。「事件の中心であるリンチ殺人の審理にはまだ入っていない」と書いてあるじゃないですか。あなたがいま言うようなら被告人質問じゃないですか。共犯者を被告人として調べるか分離して調べるのかどうか知らぬけれども、被告人質問に入ってないという意味のことをあなたは言っているじゃないですか。証人調べをやって審理に現実に入っているじゃないですか。しかも、転向したのかどうか知らぬけれども、共犯者の調べまで、前沢というのをずっとやっているじゃないですか。そんな事実と違うことを書いて発表して、世間をあれするようなことはいかぬですよ。責任をとらなくちゃいかぬぞ。これは間違いなら間違いとはっきりしなさいよ。故意なのか過失なのか、どうなんだ。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 前沢虎義外一名が現実に取り調べを受けておるわけであります。これは、連合赤軍のことを御記憶と思いますが、要するにリーダーのグループと兵隊のグループがありまして、兵隊のグループに属します者がリーダーのグループからの命令によりまして実際に殺害行為をやった、こういうことでございます。したがって、連合赤軍事件の公判でこれから一番問題になってまいりますのはリーダーの間の共謀関係あるいはその指示の関係、こういうものが立証の中心点になる。そういう意味からいいますと、山岳ベースのリンチ殺人事件の責任が那辺にあるかという終局的なといいますか、一番大切なところの立証はまだいつのことかわからない、こういうことであります。     〔羽田野委員長代理退席、委員長着席〕  しかしながら、ただいまお読み上げになりましたように、藤永参事官の書きましたものは、字数の制限があるとはいえ、そういう意味では御指摘のような点で事実に相違しておることは遺憾だと思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 まだ事実と違っているのがある。この前私が言ったでしょう。法務省刑事局、あなたの方から五十三年一月に「刑事訴訟法の一部改正について」というのが出ているでしょう。この中で訴訟指揮の問題について言っていますね。五番の「適正な訴訟指揮」で「刑事裁判は、訴訟のルールと裁判長の訴訟指揮に従って進められることを建前としています。過激派事件を含めすべての事件において、裁判長の公判期日の指定、当事者の発言の整理、証拠調などは適正に行われており、強権的な訴訟指揮がなされているようなことはありません。」と書いてありますね。書いてあるのは、これは書いてあるのだから間違いないのですけれどもね。これも事実に違うんじゃないですか。これはいろんな事件があるのでぼくも余り細かいことは言いたくありませんけれどもね。  たとえばチッソの事件がありますね。川本という人の傷害事件、これは過激派の事件じゃないけれども、これは「過激派事件を含めすべての事件において、」とこう書いてあるんだからね。だからすべての事件の中にチッソの川本さんの事件も入っておると思うのですけれども、この事件について訴訟指揮が、審理の方法があれだということで高裁で、これは一審が船田三雄という人が裁判長かな、そうですね。これに対して忌避の申し立てかなんかに対して抗告があって、この高裁の決定がありますね。この高裁の決定の中で、明らかにこれの原審の訴訟手続が問題だ、こういうようなことを言っているんじゃないですか、これ。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 ただいま御指摘のは東京高裁の決定をおっしゃっておると思うのでございますが、その東京高裁の決定は、検察官からの特別抗告によって最高裁によって取り消されておるものでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 そんなこと知っていますよ。恐らくあなたもそういうように答えると思っていたんだ、こっちは。それはあなた、そんなことをこっちは調べないで質問なんかしませんよ。そんなことしたらこっちが笑われちゃうよ、こっちの業務上過失になっちゃう。それはよく見てごらんなさいよ。高裁の決定と最高裁で棄却しているのと内容をよく調べてごらんなさいよ、内容を。高裁では事実関係を詳しく述べて、原審のいろんな訴訟指揮が非常にまずかったというような意味のことを言っているんじゃないですか。高裁では、これは裁判長は海部安昌さんだ、裁判官は環直彌と内匠和彦というのかな。「その妥当性にいささか疑のある本件裁判長の法廷外での打合せをあくまで許可しなかった措置に対してなされたものであること並びに弁護権のもつ憲法的意味における重要性及び弁護人等不在廷のまま行われた本件の具体的審理の重要性をも併せ考えると、本件裁判長の前記措置が少くとも妥当を欠くものがあるとも考えられるのであり、さらに所論指摘のその他の点についても、詳説はしないが、」ちょっと間を抜かしますが「不当な訴訟指揮等であると判断される余地なしとしない。」こう書いてあるのですよ。これに対して検察官から特別抗告があった。特別抗告があって最高裁では破棄したけれども、破棄した理由は違うのですよ、これは、高等裁判所のそういう不当な訴訟指揮として原審のものを認めたとか認めないとか、そういうことを言っているんじゃなくて、訴訟指揮権、法廷警察権の行使の不当を理由とする忌避申し立てについては、これは最高裁で本来許さないんだ、法律で許さないんだ、そういって、内容のことについては触れてないんですよ。見てごらんなさいよ、これ。だからあなたのように、あらゆる事件において訴訟指揮が強権的になされていなかったなんて、そんなことは書いちゃいかぬですよ。多少オーバーに書くのはまあしようがないかも——しようがないと言うとあれだけれども、役所だからね、もう少し客観的な事実に即して書かなければいけませんよ。あなたの方から、もうこれは最高裁判所で却下されておりますというふうに出ると思っていたんだ、こっちは。出ると思っていたからもうそこまでちゃんと調べてある。どうなんだ、だめよ、これ。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 私は稲葉委員がそういうことを御存じあるまいと思って述べたわけではないのでありまして、要するに高等裁判所の決定で傍論で述べたところでございますから、最高裁がこの傍論に対して判断を示す理由はないわけであります。  要するに私が申し上げたかったことは、最高裁判所によりまして破棄された高等裁判所の決定を根拠として、確定的に一審の訴訟指揮が強権的だったと決めつけることはいかがなものか、こういう趣旨で申し上げたのでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 破棄されたと言うけれども、破棄された理由は、だからいま言ったような理由で、中身に触れてなくて破棄している形式的な理由で破棄しているんですよ、これは。それじゃもっと言いましょうか。ぼくは言わなかったんだけれども、このチッソの事件に対する検察庁の態度というのはもう大衆弾圧の態度以外の何物でもないのですよ。  じゃこれ、一審で検事が何カ月求刑したか知っていますか。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 ちょっと記憶にありません。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 すぐ調べてごらん。——一年六カ月だよ。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 求刑一年六月でございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 そうでしょう。結果どうなった。結果、罰金一万円でしょう。罰金一万円で執行猶予二年間じゃないかな。あるいはぼくの記憶違いかもわからないけれども。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 判決は、罰金五万円、一年間の執行猶予であります。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 五万円と一万円の違いだ。それはこっちの勘違いだ。その点は業務上過失だ、こっちが。  じゃ、なぜ検事控訴しなかったんです。ぼくはそのことを質問しようとしたことがあるんですよ。この求刑は余りひどいから。そうしたら法務省のある課長がぼくのところへ来て、こういうことは先生、ぜひ頼むから質問しないでくれと言うからやらなかったんだ、ぼくはこの前は。それでもと言わぬよ、ここで。それで、あなたの方と現場の東京地検でけんかしたでしょう。ごたごたやり合ったでしょうが、この求刑が妥当か妥当でないかで。そんなことはまあいいけれども、ここでは。検事控訴しないのですよ。——しなかったでしょう。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 検事控訴はしておりません。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 懲役一年六カ月で罰金五万円、しかも執行猶予だったら検事控訴する事案でしょう、普通ならば。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 控訴するかどうかを検討しる事案であります。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 何を言っているんだ、それはそうさ。初めから控訴するというふうに決めるわけじゃないんで、まあ古いこと——これはまた高裁で公訴棄却になったわけだ、たしか。刑事四部だね。相沢さんのところかな。棄却になって、これでいま検事上告しているわけだ。それは知っていますがね。  それはそれとして、いま言ったようにあなたの方の揚げ足をとるわけじゃないけれども、いろんなことでまだ大分違うところがあるんですよ。  いま何か、破棄されたものを引っ張ったのはけしからぬと言うでしょう、あなた。ぼくにそういうふうに言ったように聞こえるんだけれども、はなはだチャレンジ的であるようにも思われるし、思われないと見れば思われないけれども、それじゃ藤永君の書いた「判例タイムズ」ナンバー三五九、「弁護人依頼権の放棄は許される」というところで、三段目「弁護人の正当な理由のない不出頭、退廷に被告人が同意し又は異議を述べなければ、放棄とみなされ」というやつですね。これはロブボーン・V・ジョンストンという判決がありますね。これは下級審の判決で、上級審で破棄されたんじゃないんですか、この判決。どう、藤永君。

藤永幸治法務大臣官房参事官

○藤永説明員 御指摘のとおり破棄されております。ただ私が引用いたしましたのは、考え方ということで引用いたしましたわけで、わが国の法律問題を議論する場合に、外国の判例のうち確定したもののみを引用するというようなことは学界でもやっておりませんし、自説に合うような説は、未確定、確定を問わず外国の判例の引用をなさっておるというふうに私は了解しております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉(誠)委員 そんな変な理屈をつけるなよ、あなた。それはだれだって確定した判決を並べて自説を展開するのがあたりまえの話だよ。一つの良心の問題ですよ。これがあなた、下級審でやられて上級審で破棄されたものを、弁護人の依頼権が許されるか許されないかという問題の証拠に並べるなんというのは、これはあなた、法務省一の学者でしょう、あなたが、ドイツ語からフランス語から英語からロシア語——ロシア語は知らないけれども、とにかく英米法でも非常に詳しい人なんだけれども、いずれにいたしましても、あなたもりっぱな方なんだからこれ以上言わぬけれども、だめなのよ。そういうふうにいまあなたは、ぼくの方がやれば破棄された判決だ、こう言うし、あなたの方から持ってくれば破棄された判決を引用しているし、そんなどろ仕合いみたいなことをしたくないからこれ以上やりませんけれども、まだいろんな形で、あなたの方の出した資料に間違いというか不十分なところがあるのですよ。これは人間の書いたものだからしようがありませんけれどもね。  きょうはもう時間が来ましたから、また別の機会にゆっくりやりますが、私ばかりやっているわけにはいかぬということになりますからね。全体の何分の一ぐらい私の質問で行ったのか、私自身もよくわからないのですが、これからいろいろな中身に入ってまた改めて聞きますけれども、こういう法案ですからお互いに議論があるのはいいと私は思うのです。意見が分かれることは、これはもういたし方ない。しかし、前提となる事実は事実として確認しなければいかぬ、こういう態度は持ち続けて、今後この法案の審議に慎重に当たっていきたい、こういうふうに考えて、きょうの質問を終わります。

鴨田宗一自由民主党

○鴨田委員長 次回は、来る十六日火曜日開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時二十一分散会

国会会議録検索システムで原文を見る ↗