法務委員会 第21号
- 発言数
- 287 件
- 登壇者
- 15 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1978/04/28
会議録
○鴨田委員長 これより会議を開きます。 逃亡犯罪人引渡法の一部を改正する法律案を議題といたします。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。横山利秋君。
○横山委員 先般の私の質問に関連いたしまして、理事会で御相談いただきました附帯決議についてでございますが、その中で、私が、金東雲元韓国一等書記官が米国に滞在している場合、米国にその引き渡しを請求するか、米国以外の国に滞在している場合はどうか、こういう問題を本委員会において法務大臣にお伺いすることにいたしたのでございますが、これについて法務大臣のお答えを願いたいと存じます。
○瀬戸山国務大臣 金東雲元韓国一等書記官が米国にいることが確認されました場合は、関係機関と協議の上、身柄引き渡しを米国政府に求めるよう努力いたします。 米国以外の国にいることが確認されたときは、その国との間に相互保証をすることが適当であるか否かを検討の上、適当と認められれば同様の措置をとります。
○横山委員 第二番目の問題として、政治犯罪の定義につきましてお伺いをいたしたのでありますが、はっきりいたしませんでしたので、政府側としてもう一回十分に、政治犯罪の定義についてお答えを願うことに相なっておりますから、承りたいと存じます。
○伊藤(榮)政府委員 お答えいたします。 政治犯罪の定義につきましては、国際法上定説というべきものがありませんで、各国の国内法を見ましても、明確な定義を設けているものは見当たらないのでございます。 しかしながら、いわゆる純粋政治犯罪、すなわち特定の国の政治形態の変革を目的とした犯罪、たとえば反逆の企図、革命、クーデターの陰謀あるいは禁止された政治結社の結成等の罪が政治犯罪に当たるものとして、引き渡しの対象とはならないことは疑問の余地がございません。 一方、相対的政治犯罪、すなわち当該国の政治形態の変革を目的とし、またはこれに関連して行われる道義的または社会的に非難されるべき殺人、強盗、放火等の普通犯罪は、原則として引き渡しの対象とはならないものの、なお問題が残るわけでございます。けだし、政治形態の変革を目的として犯されたものであれば、殺人、強盗、放火等のいわゆる破廉恥犯罪であっても、それが政治犯罪として引き渡しの対象とならないといたしますのは、健全な法感情にも反し、適当ではないからであります。 そこで、一八九二年の国際法学会決議は、政治犯罪に結合した犯罪でありましても、道徳及び普通法に照らして重大な犯罪、たとえば故殺、謀殺、毒殺、持凶器強盗、放火等は引き渡しを行い得ることとしており、また、各種の条約、各国の国内法等を見ましても、このような相対的政治犯罪の一部について政治犯罪としないこととする例が多く、たとえば国の元首等に対する殺人等は政治犯罪とされないとするいわゆるベルギー加害条項を設けている条約、立法例、あるいは普通犯罪の性格の強いときは政治犯罪としないこととする立法例がございますし、また、テロ防止に関するヨーロッパ条約は、ハイジャック、誘拐、人質等のテロ事件は政治犯とみなしてはならないこととし、また、いわゆるジェノサイド条約は集団殺害罪等を政治犯罪とみなさないこととしております。このように、相対的政治犯につきましては大幅な例外を設けようとするのが世界の趨勢でありますが、いまなおその基準は明確となっていない実情にございます。 このような状況のもとでは、わが国の引渡し法上の政治犯罪の概念につきましても、抽象的かつ一義的にこれを定義することは困難でありまして、その適用に当たりましては、これら世界の趨勢を踏まえつつ、具体的な案件ごとに、その犯行における目的の具体的内容、目的と犯行内容、手段との結びつき、犯行の破廉恥性の強さ等、具体的事情を総合勘案して、健全な法律常識によって決定することとなると思われるのでございます。 以上でございます。
○横山委員 この定義も、要するに非常に難解、定義しがたいというような定義でございますが、いま聞いておりまして、一口に私の感想を申し上げれば、要するに純粋政治犯罪は引き渡しはしない、それから相対的政治犯罪は、案件ごとではあるけれども消極的に解する、つまり引き渡しをする可能性が強い、こういうふうに理解をしてよろしゅうございますか。
○伊藤(榮)政府委員 相対的政治犯罪につきましては、国際的な意識として次第に引き渡すべきものとする分野を広げつつある、こういうことでございます。(横山委員「狭めつつ……」と呼ぶ)引き渡しをすることとする犯罪を広げつつある、こういうことでございます。
○横山委員 終わります。
○鴨田委員長 稲葉誠一君。
○稲葉(誠)委員 いまの政治犯罪の定義が余り長過ぎますね。どうしてあんなに長いのですか。やけに長い定義だな。あんなに長い定義なんてありますか。定義というのは二行か三行のものなので、どういうわけですか。
○伊藤(榮)政府委員 十分御理解を得るように、正確に申し上げたわけでございます。
○稲葉(誠)委員 それでは二行か三行にまとめてください。
○伊藤(榮)政府委員 二行ないし三行にまとめることが不可能なゆえんをるる申し上げたつもりであります。
○稲葉(誠)委員 何だか少しややこしいな。 憲法の八十二条の第二項で「但し、政治犯罪」云々は「常にこれを公開しなければならない。」こうなっているわけですね。これはどういう理由から、政治犯罪は常に公開しなければならないということになるわけですか。
○伊藤(榮)政府委員 政治犯罪につきましては、そこに一緒に規定されております出版に関する罪と同様に、いわゆる時の政府が、あるいは権力者と言ってもいいと思いますが、暗黒のうちに裁判をするということを厳に戒めるために特にそういう規定が置かれておると思います。
○稲葉(誠)委員 それでは別のことをお聞きをするわけですが、明治四十四年の条約第十二号というのはどうなったのですか。
○伊藤(榮)政府委員 ただいま御指摘のは、日本国といわゆる帝政ロシアとの間の逃亡犯罪人引渡条約のことであろうと思いますが、これは御承知のように、ロシア革命の結果、これらの条約を承継しないこととなりましたので、その時点で失効しておる、こういうことでございます。
○稲葉(誠)委員 そうすると、革命前の帝政ロシアとの間に逃亡犯罪人引渡条約があった理由はどういう理由なんですか。どっちからどういうふうな話があってこの条約ができ上がっておったのですか。
○伊藤(榮)政府委員 明治四十四年に締結されました条約は、いわゆる当時の帝政ロシアとの間に締結したわけでございますが、ロシア革命の結果、革命後のソビエト連邦政府において、その条約を含めた国際条約を承継しないこととなりましたために、失効して今日に至っておる、こういうふうに理解しております。
○稲葉(誠)委員 そうじゃなくて、明治四十四年にどういう事情からこの条約ができたのだろうか、こう聞いておるわけです。
○伊藤(榮)政府委員 明治四十四年に日露間に犯罪人引渡条約が締結されました事情については、今日つまびらかにいたしておりません。
○稲葉(誠)委員 そうすると、明治十九年に日本とアメリカとの間に犯罪人引渡条約ができた、これはどういう事情からできたわけですか。
○伊藤(榮)政府委員 明治十九年に日米間に逃亡犯罪人引渡条約ができました際には、残っております資料によりますと、米側からの申し越しによりまして、日本側もこれを受けて締結をした。恐らくアメリカ合衆国が諸外国と犯罪人引き渡しに関する条約を結ぶその一環としての働きかけであったというふうに思われます。
○稲葉(誠)委員 その後、この条約がどういうふうに改正になってきたか、こういうことについてお述べを願いたいと思うのです。
○伊藤(榮)政府委員 明治十九年四月二十九日、東京においてお尋ねの条約は署名されまして、同年九月二十五日批准され、同年十月八日、無号勅令として公布されたわけでございますが、その後明治三十九年、日米間追加犯罪人引渡条約が締結されまして、ただいま申し上げた日米間の引渡条約が事実上修正されたわけでございます。この明治三十九年の追加条約は、同年九月二十六日の勅令として国内的には公布されておったわけでございます。 しかるに、日米間に戦争状態を生じまして、これらの条約の効力が停止した状態になっておったのでございますが、一九五一年九月八日にサンフランシスコで署名されました日本国との平和条約第七条(a)によりまして、各連合国は、自分の国と日本との間にこの平和条約が効力を生じた後一年以内に、戦前の二国間条約を引き続いて有効としあるいは復活させることを希望する旨を日本国に通告すれば、当該条約は引き続いて有効とされあるいは復活されるという規定があったわけでございますが、アメリカ合衆国は昭和二十八年四月二十二日付で、先ほど申し上げました日本国、アメリカ合衆国犯罪人引渡条約及び日米間追加犯罪人引渡条約を昭和二十八年七月二十二日から引き続いて有効とするという旨通告してまいりましたので、ただいま申し上げます昭和二十八年七月二十二日から両条約が再び日米両国を拘束することとなりまして今日に至っておる、こういう経緯でございます。
○稲葉(誠)委員 昭和三十九年ですか、この引渡法だけが改正になりましたね。このときは条約の改正はなくて、引渡法の改正だけだったようにとれるのですが、これはどういうわけだったのですか。
○伊藤(榮)政府委員 現在の逃亡犯罪人引渡法は昭和二十八年七月二十一日法律第六十八号ということで制定を見たわけでございますが、この制定の日からわかりますように、本来の趣旨は、日米間の引渡条約が引き続き有効とされることに伴いまして、その国内施行法といたしまして制定されたわけでございます。したがいまして、当初法文の体裁といたしまして、日米間にございます引渡条約を前提としまして、これを円滑に国内的に施行するための法律という体裁をとっておったわけでございます。 もっとも制定当時から、解釈といたしましては、引渡条約に基づかない引き渡しの請求がありました場合には、この条約の存在を前提とした形になっております法律を類推適用して運用することができるという解釈がとられておりました。したがって、昭和三十八年であったかと思いますが、この類推適用を前提として、スイス国に対して相互主義の保証をいたしまして、スイスに逃亡しました日本人二名を引き渡しを受けたということがあったわけでございます。 そういう事態になってみますと、諸外国に対して相互主義の保証をいたしまして、こういう法律がございます。これを類推適用してわが国からも引き渡しができますというふうに申しておったわけでございますけれども、いかにも法文の明文として、条約に基づかない引き渡しということが書かれておらないわけでございます。したがいまして、わが国としては国際協力の一環を果たすという意味と、それから将来、わが国が他国から逃亡犯罪人の引き渡しを受けます際に、相互主義の保証をする上からも必要であるということで、昭和三十九年の改正を試みたわけでございまして、したがいまして、昭和三十九年の改正は、引渡条約の存在しない国からの逃亡犯罪人引き渡しの請求に応じ得ることとすることを明文をもって明らかにする、こういう考え方で行われたわけであります。
○稲葉(誠)委員 私もこの法律のことは、よくわからないと言ってはあれですが、わからないですが、そうすると、相互主義というたてまえから言えば、日本とアメリカとの間だって相互主義が一番強いわけなんであって、だから日米犯罪人引渡条約というものがなくても、逃亡犯罪人引渡法があれば、それで済むのではないですか。だから条約というものは、必ずしも日米犯罪人引渡条約は要らないのではないですか。
○伊藤(榮)政府委員 今日世界の多くの国は、その国内法であります逃亡犯罪人引渡法におきまして、条約の存在しない国からの請求に対しても相互主義の保証が得られれば前向きに検討するという法制になっておりますが、例外の国がございます。そのうちの一つがアメリカ合衆国でございまして、アメリカ合衆国におきましては、条約の存在しない場合には、逃亡犯罪人の引き渡しに応じないというたてまえをとっております。したがいまして、アメリカとの間には条約がございませんと、アメリカから引き渡しを受けることがまずできませんし、今度は日本からアメリカが引き渡しを受けようとします場合に、アメリカとしては相互主義の保証ができない、こういうことになるわけでございます。したがいまして、アメリカのような条約に基づかない引き渡しを行わない原則をとっておる国との間におきましては、条約が存在することが逃亡犯罪人の相互引き渡しの大前提になるわけでございます。
○稲葉(誠)委員 それはどういう理由からアメリカの場合はそういうふうになっておるわけですか。これは刑法の属地主義と属人主義との関係ですね。属人主義は大体大陸法系で、属地主義は英米法系ですか、そういうふうなところと、アメリカがいま条約を必要としておる理由、それはどういうふうに絡んでくるわけですか。
○伊藤(榮)政府委員 アメリカの事情を私は必ずしも熟知しておるわけではございませんが、アメリカがある意味において範をとっておりますイギリス連合王国におきまして、やはり条約がなければ引き渡さないという原則をとっておる、それを承継したという形式的な一面があると思います。実質的に考えますと、英米法系の国におきましては、多く犯罪につきまして属人主義をとらないで属地主義をとっておる。そのために、自国民でありましても、自国の領域外で犯罪を犯した者につきましては、当該領域を管轄します国において裁判をしてもらわないと、自国では裁判ができないという事情があるようでございます。したがって、比較的自国民をも含めて犯罪人引き渡しに応ぜざるを得ない事情があるようでございます。ところが反面、自国民を含めて、自国にいる犯罪人を他国に渡すということになりますと、国家として自国民を中心に在住者を保護するという義務との矛盾を来す場合がある。したがいまして、なるべくその辺を二国間条約を締結しまして、これを国内的に公布することによって国民に周知徹底を図る、こういうような考え方から盛んに条約を結んで対処する、国内法一本では賄わない、常に相手国の実情等を勘案しながら二国間条約で解決していく、こういう態度をとっておるのではないかと思います。
○稲葉(誠)委員 アメリカとの関係はわかるのです。そうすると母国である——まあ母国か何かわからないが、法典的には母国でしょう、イギリスとの間に日本は犯罪人引渡条約というものをなぜ結ばないでおるわけですか。そこで何か問題が起きたときは、今度は相互主義の原則ではいかなくなってくるわけですか。
○伊藤(榮)政府委員 いままでのところ、イギリスにおきましてもわが国におきましても、日英間で必要を生じた事例がないということも相まちまして、日本国の方から英国に対して犯罪人引渡条約の締結の働きかけをしたこともありませんし、英国の方から働きかけをしてきたこともない、そういうきわめて現実的なことから条約が結ばれていない、端的に言えばただそれだけのことでございます。 ただ、ただいまの御指摘は確かに一つの問題点でございまして、前々から申し上げておりますように、将来二国間の引渡し条約あるいは多国間の引渡し条約を結んでいきます場合に、ただいま御指摘のような、イギリスでありますとかあるいはオランダ、こういう条約に基づかない引き渡しを原則として行わないという国との条約締結ということは常に念頭に置きながら、条約締結国の拡大を図っていかなければならない、かように考えております。
○稲葉(誠)委員 その条約締結国の拡大を図っていかなければならない理由はわかりますが、現実に考えてみれば、そういう問題が起きてもいないのに相手の国に対して犯罪人引渡し条約を結ばないか、こう言うのも何かちょっと政治的におかしいような気もするわけです。 そうすると問題は、日米の場合はアメリカの方から熱心にこの条約を結ぼうという形に明治十九年以来ずっと来ておる、こういう理解の仕方でもちろんいいわけですね。
○伊藤(榮)政府委員 明治十九年あるいは明治三十九年当時はアメリカの方が積極的で、わが国は受けて立ったということだと思います。ところが今度の日米新条約につきましては、まさに両方の気合いが合して、こちらも各種犯罪事件の現況にかんがみて、余りに罪種が少な過ぎるということを痛感しておりましたし、アメリカにおきましても同様なことを痛感しておったということで、両方の意思がまさに合致して条約交渉としてはとんとん拍子に進んだ、こういうふうに思っております。
○稲葉(誠)委員 そうするとこれはロッキード事件なりハイジャック——ハイジャックはアメリカと余り関係ないからあれですが、ロッキード事件の贈収賄の関連から日米犯罪人引渡条約の罪種の拡大を図っていこう、こういうことが両方から合致したというか、そういう理解の仕方でいいわけですか。
○伊藤(榮)政府委員 今度の条約締結交渉が始まりましたのはロッキード事件の前年でございまして、おおむね双方の念頭にございましたのは、わが国で言いますと、たとえばクアラルンプール事件とか、そういうようなものに代表されます過激派を中心とする国外における犯罪、それから米側におきましても現実にわが国から引き渡しを求めた事例も生じておりますし、米国人が日本国へ相当出てきていろんな犯罪を犯しておる、あるいはアメリカで犯罪を犯した者が日本へ事実上入国しまして、行政上の事実上の措置で国外退去の手段をとってもらったり何かしておる、そういう事情を踏まえまして交渉が始まったわけでございます。交渉の過程にたまたまロッキード事件という不幸な事件が出てきた、こういうことでございます。
○稲葉(誠)委員 いま政治犯罪の定義についてのこれをもらったのですが、余り長いのでちょっとあれですが、後からこれをお聞きをいたします。 その前に、国連の人権宣言の十四条の第一項とこの引渡し法との関連はどういうふうに理解したらいいわけですか。これに政治亡命、政治犯罪の問題が出てくるわけですね。
○伊藤(榮)政府委員 ただいまお尋ねの関係は、政治犯罪人という問題よりむしろ政治亡命者の問題になると思いますが、所管であります入管局長からお答えがあるかもしれませんけれども、一応私の考えを申し上げますと、人権宣言が十四条一項で「何人も、迫害からの保護を他国において求め且つ享有する権利を有する。」というふうに規定しておるわけでございますが、この人権宣言はあくまで宣言でございまして条約でございませんために、条約と同様の拘束力は持たない、一つの理想を描いての宣言であるという受けとめ方が各国においてなされておるようでございます。 今日、すべての国が政治亡命者を庇護する権利を有するということは国際的に認められておりますけれども、それでは各国が政治亡命者を庇護する義務があるかという点になりますと、ほとんどの国が否定をしておるという現状でございます。もっとも私の記憶いたしますところでは、たとえばブラジルだったと思いますが、憲法で亡命者の庇護権をうたっておるようなところもありますから、将来の方向としてはどうなるかわかりませんけれども、今日のところではそんなふうに考えております。
○稲葉(誠)委員 そうすると、政治亡命という考え方と政治犯罪という考え方、政治亡命者と政治犯罪人の不引き渡しの問題はよく混同されているというふうになってくるわけですが、政治犯罪の場合と政治亡命の場合との法律的な性格は全く違うというふうに理解していいとは思うのですが、それがダブるというような場合も考えられるわけですか。
○伊藤(榮)政府委員 御指摘のとおり、政治犯罪人と申しますのは、原則的に申し上げますれば、その所属する国におきまして犯罪を犯して他国にある者で、かつその犯したとされる犯罪が政治的なものである、こういう概念でございます。これに対して政治亡命者という概念は、その住んでおる国におきましては政治的理由によって迫害されると恐れるに足る十分な理由がありますために国籍国あるいは常住国の外にある、こういう者でございますから、概念としては明らかに分別できる概念でございます。しかしながら、これまた御指摘のように政治犯罪、たとえば純粋政治犯罪を犯して他国へ逃亡しておる者の引き渡しを求められまして、被請求国が政治犯罪を理由にこれを拒むということになりますと、その国にしばらくおられるということになります。そういう状態を見れば政治亡命者でもある、こういうことになるわけでございまして、御指摘のように二つの概念を同時に満たすようなケースもあり得るのじゃないかと思います。
○稲葉(誠)委員 それから、この政治犯罪の場合に、出入国管理令第五条第一項四号ですか、上陸拒否ですね。これは「日本国又は日本国以外の国の法令に違反して、一年以上の懲役若しくは禁こ又はこれらに相当する刑に処せられたことのある者。」それから「但し、政治犯罪により刑に処せられた者は、この限りでない。」こういうふうにあるのですが、なぜこのただし書きがついておるわけですか。
○吉田政府委員 先生は出入国管理令の第五条をお引きになったと思いますが、第五条は、わが国に上陸しようとする外国人が有効な旅券及び査証を持っておって、かつその他の法定の条件を満たしている場合であっても、なお上陸を拒否すべき事由をそこに列挙してあるわけでございます。そうして第五条第一項第四号は、先生がいまおっしゃいましたように、一年以上の懲役または禁錮の刑に処せられたことを上陸拒否事由に定めているわけであります。 そこで、いま政治犯罪をただし書きで除外をしているわけですが、それじゃ政治犯罪をここで言うのはなぜかといいますと、これは刑事局長から説明がありましたように、国際的にもまた国内法的にも必ずしも一義的な明確な概念規定はまだ確立されるに至っておりませんが、出入国管理令第五条第一項第四号が、一年以上の自由刑に処せられた外国人について上陸を拒否することとしているのは、その犯罪歴を有する者の上陸を認めることは、一般にわが国の社会の安全にとって危険であると考えられるためであります。ところが、このような自由刑に処せられた者であっても、いわゆる政治犯罪者の中には、殺人、窃盗などのような自然犯人と異なって、旅券、査証その他の条件を満たしている限り、あえて上陸を拒否しなくてもわが国の利益に反しない者があり得る、したがいまして、そういう者については除外する、こういうことでございます。
○稲葉(誠)委員 そうすると、この場合はだれがどういうふうにして政治犯罪の刑に処せられたかどうかということを認定するわけですか。これは審査官がやって、入管の審査課長がやって、最終的には法務大臣がやるのですか、どうやるのですか。
○吉田政府委員 もちろん本人によく尋ねるわけでございます。それでこういう判決を受けているということを言うわけでございますが、もちろんそのことについては国交のある国でございましたら、在京大使館を通じ、本人の言うことが事実であるかどうかも確かめるわけでございます。
○稲葉(誠)委員 そうすると、上陸をさせなければいけないわけですね。上陸した場合に、その人はどういう資格になってくるわけなんでしょうか。
○吉田政府委員 仮上陸でございます。
○稲葉(誠)委員 仮上陸というのは期間があるのでしょう、私はよく知らないけれども……。
○藤岡説明員 手続的なことでございますので、私から答弁させていただきます。 出入国管理令によりますと、第七条にいわゆる上陸の条件が定めてございますけれども、本邦に上陸をしたいという外国人は、出入国港において入国審査官に対して上陸の申請をいたしますが、審査官の方で第七条に定めておる上陸の条件に適合するかどうかを審査いたしまして、たとえばただいまお尋ねのように本人に一年以上の懲役もしくは禁錮の前科があることが判明しておる場合、しかもそれが第五条第一項第四号ただし書きで言うところの政治犯罪に該当するか否か即断即決いたしかねる場合、出入国管理令の第十三条でございましたか、いわゆる仮に上陸を許可いたします。その上陸の許可の期限と申しますのは、当該上陸手続が完了するまでということでございまして、法令上確定した期限が定められておるわけではございません。
○稲葉(誠)委員 そうすると、この場合に、政治犯罪により刑に処せられたかどうかということはどうやって調べるのですか。簡単にわからないのではないですか。
○藤岡説明員 確かに、本人がみずから私は前科者でございますというようなことを出入国港において申し立てるということは、経験的に申しましてもまれであろうと存じます。むしろそうでございませんで、何らかの資料によって日本政府入国管理当局が当該外国人について犯罪の経歴を有するということを探知しておる場合に問題になることが多いというのが事実でございます。
○稲葉(誠)委員 そうすると、ここでやはり政治犯罪の定義というか、そういうものが非常にむずかしいというか、実際に問題として起きてくるのだと思うのです。 私は前に質問したことがあるのですが、そのとき伊藤さんが刑事局の参事官か何かで、列席していたかどうかはわかりませんが、当時の竹内刑事局長は「政治犯罪というふうに政治的秩序を直接侵害する罪というのはどういう行為であるかということにつきましては、たとえば反逆行為ですね——トリーズン、その企画、それから革命またはクーデターの陰謀——コンスピラシーのようなかっこうでそういうものを言うと、こう理解されているわけです。」というふうに答えているわけですね。これは定義として非常に簡単なのじゃないですか。これは定義にならないですか。英米法で言うコンスピラシーというのは共謀、陰謀、何と訳したらいいのかあれですが、この定義で簡単なのじゃないですか。
○伊藤(榮)政府委員 政治犯罪の問題は、当時も大変詳細にお尋ねいただきましたので、私もおぼろげながら覚えているわけでございますが、ただいま御指摘になりました答えのほかに、それは純粋政治犯のことではないか、相対的政治犯の方はどうなっておるかというようなお尋ねがありまして、当時の竹内局長がるるお答えをしておったようでございます。それによりますと、いろいろな諸外国の立法例とか条約などを見ていきますとだんだんはっきりしてくると思うのでございますというような話し方で、たとえばベルギー加害条項とかそういうものを挙げまして、相対的政治犯罪という範疇に属するものの中には普通犯罪と申しますか、政治犯罪として扱われない領域が諸外国においても次第にふえつつある、そういうようなことを客観的に見ながら政治犯罪というものの概念を描いていく必要があろう、こういうような御答弁を申し上げたように覚えております。
○稲葉(誠)委員 竹内さんの答弁は非常にうまい答弁で、もみ手をしながら、おじぎをしながら長長しゃべる。安原さんもうまかった。あの人の答弁は、だんだん最後になってくるとゆとりというか遊びがあった。伊藤局長のはまだそこまでいっていない。頭は非常にシャープでいいけれども、もう少し遊びがある方がいい。もう少しゆとりを持ってやってください。そうするとだんだんよくなりますよ。 そこで、英米法はよくわからないのだけれども、コンスピラシーとは何ですか。
○伊藤(榮)政府委員 単にコンスピラシーと言いますと、政治犯とはまことに異なった概念だと思います。重罪の陰謀をコンスピラシーと言っておりますから、そういう意味では政治犯罪でない犯罪のコンスピラシーもあり得るわけでございまして、先ほどお読み上げになりましたところで、陰謀(コンスピラシー)というふうにお読みになったように思いますけれども、政治犯罪すなわち反逆とかクーデターのコンスピラシー、こういうふうなつもりで当時お答えをしておるのではないかと思います。
○稲葉(誠)委員 そうですね。それはあなたの言うとおりです。コンスピラシーが独立のものではなくて前にひっかかって答えているわけですからそれはそれでいいのですが、そうすると、これは日本の刑法で言うとどれが政治犯罪というものに該当すると理解すればいいわけですか。内乱罪とか外患の罪とかなんとかいろいろありますが、この中でずばり政治犯罪だというものは一体どれですか。
○伊藤(榮)政府委員 政治犯罪という概念が用いられますのは、国際的には犯罪人不引き渡しの原則の適用があるかどうかというところで問題になるわけでございますが、国内法的には、政治犯罪という概念は刑罰を科します場合に名誉刑をもって臨むべきではないかどうか、こういう観点から問題になるわけでございます。すなわち破廉恥罪と同じような懲役刑を科するということはいかがなものか、こういう観点で問題とされるわけでございます。 そういうことを前提といたしまして現行刑法をずっとながめてまいりますと、一つの考え方として、過失犯は除きますが、故意犯の中で刑として選択の余地なく禁錮刑を科しておるというようなもの、これは多く純粋政治犯的なものにそういう法定刑の定め方をしておるというふうに思います。また、懲役と禁錮との選択を許しておりますもの、たとえば騒擾罪等がございますが、こういうものにおきましては、政治犯である場合もあるしそうでない場合もあるということを前提として考えておるのではないかと思います。 なお、相対的政治犯につきましては刑法各則にはそれに当たるような規定はもちろんございません。したがいまして、個々の普通犯罪についてその動機、目的等をしさいに見まして政治犯罪であるかどうかを判断する、こういうことになるのではないかと思います。
○稲葉(誠)委員 刑法七十七条すべてが政治犯罪だとは言えない。そうすると純粋の政治犯罪だと言えるものもあるのですか。
○伊藤(榮)政府委員 ただいま御指摘の七十七条内乱罪、これにつきましては、死刑を除きますと懲役刑をもって臨まない、もっぱら禁錮刑で臨むということになっておりますので、現行刑法典におきましてはこの内乱罪は政治犯罪というふうな考え方をしておるように思います。 もう一つ御指摘のありました外患援助あるいは外患誘致、こういうものにつきましては、八十二条の外患援助をごらんいただきますと懲役の刑をもって臨むこととしておる、したがって外患の罪というものがおよそ日本国民として破廉恥な犯罪であるという考え方でこういう懲役刑の設けがある、すなわち原則として政治犯罪ではないという考え方でできておる、こういうふうに思うわけでございます。したがって、これが相対的政治犯の様相を呈することはともかく、純粋政治犯ではないという考え方であろうと思います。
○稲葉(誠)委員 ちょっとほかのことを、六法全書を調べておって十分聞いていなかったのですが、七十七条の場合はすべて政治犯罪だとは言えない、政治犯罪になる場合が多いということは言えるかもしれませんけれども。「附和随行シ其他単ニ暴動ニ干与シタル者ハ」というのがあるから、こういうものを政治犯罪だと見るのが常識的ではないかということを竹内さんは言っているわけですね。そうすると七十七条の最初の方、ことに一項の一号あたりですか、こういうものは純粋な政治犯と見ていいわけですか。
○伊藤(榮)政府委員 例外のない場合はないと思いますから一〇〇%確言するわけにまいりませんけれども、たとえば七十七条第一項第一号にあります内乱首魁は、もう原則として純粋政治犯罪に当たる。それから、二号、三号となってまいりまするにつれ、必ずしも政治犯罪と言えない場合もあり得るかもしれない、こんなところじゃないかと思います。
○稲葉(誠)委員 それから、八十一条の外患誘致ですね。ちょっと聞き漏らしましたが、これはもう純粋な政治犯罪だ、こう見ていいわけですか。
○伊藤(榮)政府委員 外患誘致を初めとします外患に関する罪は、純粋な政治犯罪というふうには考えておらないのじゃないかと思います。といいますのは、八十二条の外患援助におきましては懲役をもって臨んでおりますので、刑法典の考え方としては、外患に関する罪というのは日本国民にとって一般的に破廉恥な行為であるという考え方であろうと思いますが、ただ、先ほども申し上げましたけれども、これを犯します目的、動機等を勘案いたしまして相対的政治犯という評価を受ける場合があり得る、こういうふうには思っております。
○稲葉(誠)委員 私は外患に関する罪全部のことを聞いていませんよ。八十一条のことを聞いているわけです。
○伊藤(榮)政府委員 私は、八十一条を含めて外患に関する罪全体について申し上げているわけでございまして、ただいま申し上げましたことは八十一条についても当てはまる、こういう考えでございます。
○稲葉(誠)委員 竹内さんは、昭和三十九年五月七日参議院の法務委員会の議事録二十一号で「八十一条の罪はおそらくもうずばり政治犯罪と見られるもののように思われるのでございます」こう言っています。あなたの言うのと違うのか同じなのかちょっとよくわからない、あなたは八十二条の方ばかり説明するものだから。ぼくは八十一条のことを聞いている。
○伊藤(榮)政府委員 八十一条の場合、外国に通謀して武力を行使するに至らしめたその目的が問題でございまして、目的のいかんによって政治犯罪になり、また場合によっては政治犯罪にならない、こういうふうに思います。
○稲葉(誠)委員 大学のゼミナールをやっているわけじゃないから、それはどうでもいいようなものですけれども、そういうふうに二つに分けられるのですか。例を挙げてちょっと説明してくれませんか。
○伊藤(榮)政府委員 余り具体例のない犯罪でありますから、例を挙げろという御指摘でありますが、なかなか考えにくいのでありますが、日本に対して武力を行使するに至らせる目的として、たとえば何らかの私怨を晴らす目的でそういう大それたことをする、こういう人がおるかおらないかわかりませんけれども、おったとすれば政治犯罪ではないと思われますし、また、たとえば一定の思想的な立場を持って日本国政府を、日本国の体制を転覆させるというような、いわゆる内乱罪的な目的で外患誘致の行為をすれば、これは政治犯罪であると思います。
○稲葉(誠)委員 これはあなたの言うとおりなんですけれども、そんな例は、ことにあなたが前に挙げた政治犯罪でない例なんというのは、そんなことは常識的に考えられないわけで、これは竹内さんは「八十一条の罪はおそらくもうずばり政治犯罪と見られるもののように思われるのでございますが、」八十二条は違う、こう言っているので、そこら辺が常識的な考え方ではないか。 これは理屈を並べればいろいろありますけれども、それは大した問題ではございませんからどうでもいいのですけれども、そこで、こういう地位協定との関係で——あれは交換公文でですか、条約の場合は地位協定による場合は含まないというふうなことを入れておるわけですか。それはなぜ交換公文の中に入れたのですか、条約の中に入れなかったのですか。
○伊藤(榮)政府委員 安保条約に基づきます地位協定といいますのは、米軍がわが国に駐留しておるという特殊、例外的な事情を前提としてのものでございます。一方、日米間の犯罪人引渡しに関する新条約はきわめて一般的なものでございまして、そういう点から言いますと、われわれの用います言葉で言いますと、日米新条約は一般法で、地位協定は特別法である、こういう認識で、双方、締結交渉をしておりました。その認識においては全く一致しております。したがいまして、条約にわざわざ断る必要はない、しかしながら、念のためにその点を交換公文で確認しておこう、こういうことで交換公文になっておるわけでございます。
○稲葉(誠)委員 そうすると、一般法と特別法というか、特別法に違いないのですが、一種の時限立法的なものというふうに考えられるわけですか。
○伊藤(榮)政府委員 特別法必ずしも時限立法とは限らないわけでございますが、もし安全保障条約というものが時限的なものであるという前提をとれば、地位協定はこれに付属するものでありますからそういうことになるわけでございますが、その辺は私どもの所管外でございます。
○稲葉(誠)委員 それは外務省の条約局の問題だ、こう思うのです。 そこで、私が疑問に思いますのは、公務中に事故を起こしたという場合、これはいいと思うのですよ。問題は、軍人であっても公務外の事故であった場合に、アメリカへ帰っちゃった、こういう場合に、この条約なり引渡法なりで、アメリカに対して、逃げちゃったということで犯罪人の引き渡しというのは要求できないわけですか。
○伊藤(榮)政府委員 地位協定によりまして、米軍人がわが国で公務外で犯罪を犯して、わが国が第一次裁判権を行使しようという場合に、これが何かの事情で本国に帰ってしまったというような場合には、米国の責任において連れ戻すということになっておりまして、地位協定の効果として、現に何件かそういう例があるところでございます。 ただ問題は、本国へ帰りまして軍籍を離れてしまって軍の統制力が全く及ばないという状態になりました場合には、逃亡犯罪人引き渡しの関係で処理をするということも可能でございまして、現に実例が、一例でございますが、あるわけでございます。
○稲葉(誠)委員 一例というのは具体的にどういう例か説明を願いたいのですが、一例というのは一つという意味ですか。それは一つぐらいしかないというのはおかしいんじゃないの。公務外の事件を起こして、向こうへ行っちゃって、軍籍を離れちゃったのはいっぱいいるんじゃないか。いっぱいいるかどうかわからぬけれども、相当いるのじゃないか。調べようったってなかなかむずかしいかもわからぬけれども、それは一つが具体的にわかったというだけで、実際にはもっと多いんじゃないですか。
○伊藤(榮)政府委員 米軍も地位協定の履行には努力をしておりまして、わが国で裁判権を行使いたしましたものにつきましては、米軍の施設内で厳重に監視しておりますから、例は多くございません。私の記憶では、不幸にして本国へ逃げ帰らせてしまった例が二、三件あったと思います。この二、三件につきましては、いずれも米軍に申し入れまして、連れ戻しをして裁判を完了しておる、こういうことでございます。本国へ戻りまして民間人になってしまっておるということから逃亡犯罪人引渡条約を活用しましたものとしては、お手元の資料にあると思いますが、法律案関係資料の六の「参考資料」の「逃亡犯罪人引渡事例調」これの一番最後の4というところに被疑者ウィリアム・ローランド・マーチンというのがありますが、福岡市博多区内のホテルにおきまして昭和五十年九月一日に内妻から強く離婚を迫られたことに激高して、ゆかたのひもで締め殺したという殺人事件を犯しました者が米国へ帰っておりましたケースがございまして、五十一年十一月三十日、米国に対して引き渡しを請求し、五十二年一月二十四日福岡県警の係官がこの身柄の引き渡しを受けて帰りまして、結局懲役五年の判決を確定させた、こういう事例がございます。 〔委員長退席、保岡委員長代理着席〕
○稲葉(誠)委員 これは純粋なシビリアンですか、あるいは元軍人だった人ですか。
○伊藤(榮)政府委員 元軍人として日本に駐留しておった者でございます。
○稲葉(誠)委員 そうすると、わかったことですけれども、犯罪を犯した当時は軍人だったわけですか。軍人であって、向こうへ行ってから軍籍を離脱した、こういうわけですか。
○伊藤(榮)政府委員 除隊いたしましてから同人の犯行であることが判明しまして、犯罪人引き渡し手続で引き渡しを受けたものでございます。
○稲葉(誠)委員 政治犯罪ということにも関連するのですが、憲法八十二条の政治犯罪というのと犯罪人引渡法の政治犯罪というのとは、これは違うところもあるのですか、あるいは同じだというふうに理解していいわけですか。
○伊藤(榮)政府委員 逃亡犯罪人引渡法におきます政治犯罪は、政治犯罪を国際法的な側面から規定しておりますし、憲法八十二条の政治犯罪は、その法文の趣旨から言いまして国内法的な側面を規定しておるわけでございますが、政治犯罪という概念自体にはどちらの側面で用いましても意義は一緒であるべきだ、こういうふうに考えております。
○稲葉(誠)委員 一九五七年十二月十三日にパリで締結された逃亡犯罪人引渡しに関するヨーロッパ条約というのがあって、この中にも第三条に「政治犯罪」という規定があるのだ、こういうふうに竹内さんは言っているのですね。そうすると「第三条などは、運用解釈にあたりましてやはり大いに参考になる規定でございます。」と言うのですが、まず運用それから解釈、これはどういうふうになっておるのですか。
○伊藤(榮)政府委員 当時の竹内局長が申し上げましたことは、政治犯罪という概念の解釈に参考になる、それを参考にして解釈したところに従って運用すべきである、こういう意味で申し上げておると思いますが、犯罪人引渡しに関するヨーロッパ条約、これはイギリスを含むヨーロッパ諸国十五カ国で締結されたわけでございますが、第三条に「政治犯罪」というところがございまして、その第一項で「引渡しの請求に係る犯罪が被請求国により政治犯罪又はそれに関連する犯罪とみなされるときは、犯罪人引渡しは許されない。」という政治犯罪人不引き渡しの原則をうたいました上、その例外的なものを三項に書いておるわけでございます。三項におきまして「本条約の適用については、国の元首又はその家族の生命に対する危害は、政治犯罪とはみなされない。」いわゆるベルギー加害条項と言われるものをうたっておるわけでございます。そのことを当時の竹内局長は申したように思います。
○稲葉(誠)委員 ここで不引き渡しの原則のときに、政治犯罪、これはわかりました。または政治犯罪に関連する犯罪、ということを言っているわけですね。後の方の、または政治犯罪に関連する犯罪の場合というのはどういう意味のことか。その場合でも不引き渡しの原則が当てはまる、こういうことなんですか。それは日米犯罪人引渡し条約とは違うのですか。
○伊藤(榮)政府委員 何分外国語を日本語に翻訳して見ておるわけでございまして、翻訳が適当かどうかはわかりませんけれども、言うところの趣旨は、わが国の逃亡犯罪人引渡法第二条第二号にございます「引渡の請求が、逃亡犯罪人の犯した政治犯罪について審判し、又は刑罰を執行する目的でなされたものと認められるとき。」これと似たような意味で使っておるのではないかと思います。
○稲葉(誠)委員 はっきりしないところもありますが、そうすると、いまの第三項のベルギー何とかというのは、それは「国の元首又はその家族の生命を奪う犯罪又はその未遂は、本条約の適用においては、政治犯罪とみなさないものとする。」これはどういうわけでこういうものがあるのですか。
○伊藤(榮)政府委員 ベルギー加害条項と申しますのは、一八三三年のベルギーの犯罪人引渡法六条二項で初めて設けられて、これがいろいろな条約とか各国の国内法で踏襲されることになっておるわけでございますが、要するに政治的な目的で普通犯罪を犯した場合にどう考えるかということが中心的なテーマでございまして、その政治目的で犯したとはいえ、犯しました普通犯罪の破廉恥さ、あるいはそれから推定される動機の不純さとか、そういうものをいろいろ考えまして、結局、政治目的であるからといって国の元首あるいはその家族の生命を奪うというような行為は、いかに政治目的があっても国際的に大きな非難に値する行為である、したがって、政治犯罪として不引き渡しの対象とすべきでない、こういう認識の上にベルギー加害条項ができたのではないかと思っております。
○稲葉(誠)委員 それはわかりました。わかりましたというか、それはわかっているのですが、それと、日米犯罪人引渡し条約、逃亡犯罪人引渡し法、いま審議しているものとの関係はどういうふうになっているのですか。今度の場合もやはりこういうふうなものを含んでいるのですか。
○伊藤(榮)政府委員 日米の新条約におきましては、四条一項一号で「引渡しの請求に係る犯罪が政治犯罪である場合又は引渡しの請求が引渡しを求められている者を政治犯罪について訴追し、審判し、若しくはその者に対し刑罰を執行する目的で行われたものと認められる場合。この規定の適用につき疑義が生じたときは、被請求国の決定による。」というところまで書いておりますが、政治犯罪の定義は置いておらない。したがいまして、この政治犯罪とは何であるかということは、被請求国において判断をするということでございまして、被請求国であるわが国において判断いたします場合には、本日冒頭に横山委員のお尋ねに対しましてお答えいたしましたような考え方で、具体的な案件に応じて判断すべきである、こういうふうに考えておるわけでございます。具体的な案件に応じて判断するよりどころとしては、昭和三十九年の国会で当時の竹内局長が申し上げたようなこと、さらにはその後の国際的な認識の進展、こういうものを総合加味して判断すべきであろう、こういうふうに考えております。
○稲葉(誠)委員 よくわかりました。そうすると、昭和三十九年は古いですから、その後の国際的な進展を加味して判断するということは、具体的に言うとどういうふうなことを言うわけですか。
○伊藤(榮)政府委員 昭和三十九年当時はベルギー加害条項というようなものが一つの判断のよりどころとされておったわけでございます。ベルギー加害条項の代表的なものとして御指摘のヨーロッパ条約というようなものがあったわけでございます。ところが、その後の国際的な意識の進展として認められますものは、たとえばスイス国におきます犯罪人引き渡し法にあらわれておるような思想がある程度受け入れられるようになってきた。スイスの犯罪人引き渡し法で言っておりますのは、犯人が政治的動機や目的を口実としても、引き渡し請求の根拠となった行為が一般的重罪や軽罪の性格に重点が置かれているのであれば引き渡しは認められる、こういう規定でございますが、こういう考え方が次第に浸透しつつあるということ。それからテロ防止に関するヨーロッパ条約におきまして、ハイジャック、誘拐、人質等のテロ事件は政治犯とみなしてはならないということにしております。この条約は一九七七年の調印で現在まで十七カ国程度が署名しておると思います。それからジェノサイド条約、日本語的に言いますと集団殺害罪の防止及び処罰に関する条約、これにおきまして、集団殺害行為は犯罪人引き渡しに関しては政治犯罪とみなされないということにいたしております。なお、ハイジャック条約等におきまして、ハイジャック犯人を政治犯人とみなさない姿勢が打ち出されておることは御承知のとおりでございます。 こういうような多数国間条約あるいはそれぞれの国の国内法におきまして、次第に相対的政治犯罪の中から除くものをふやす方向で概念の移り変わりが進みつつある、こういう状況を踏まえて判断すべきであろう、こういうふうに思っております。
○稲葉(誠)委員 そうすると、前に戻って、今度は入管のさっき話した五条の上陸拒否の問題。第一項第四号「但し、政治犯罪により刑に処せられた者は、この限りでない。」ということで上陸の拒否ができない。そうすると今度は、それと政治犯の不引き渡しの原則とはどういうふうになるのですか。その者に対して退去強制できるのですか、それが政治犯とわかった場合。
○吉田政府委員 政治犯の不引き渡しの原則というものと、強制退去とか上陸拒否というものは一応別だという観念を持っております。
○稲葉(誠)委員 別だという考えを持っているのはわかるのだけれども、これは概念が違うのですから、実際問題としてはどうなのかということを聞いているのです。
○藤岡説明員 お答えをいたします。 お尋ねの出入国管理令第五条第一項第四号に定める政治犯罪に結論的に該当するという判断に到達いたしました場合には第五条第一項第四号本文の適用を受けないわけでございますから、つまりそれは上陸拒否事由に該当しない、こういうことでございます。したがいまして、ほかの出入国管理令第七条に定める上陸条件を充足しておるならば、その者に対しては第九条に基づいて上陸許可が与えられる、こういうことになるわけでございます。
○稲葉(誠)委員 これはまた政治犯だとかなんとかいろいろなことを言う言葉が非常にわからないのですが、政治的避難と政治亡命というのとはどういうふうに違うのですか。これは入管の方かな。それから政治避難の場合の保護のあり方ですね。これは私もよくわからないのですが、庇護権の問題に関係してくるわけですかね。だから、政治的避難の問題と、政治的亡命というのは、範囲はどう違って、入管令上具体的にどういうふうに違うわけですか。
○藤岡説明員 お尋ねの政治的避難ないしはいわゆる政治亡命、いずれも実定法令上の概念ではございませんので、この場合はこういう中身である、この場合はこういう中身であるというすっきりとした定義づけというものはなかなか容易でございませんが、私どもの出入国管理当局にとりまして、いわゆる政治的な避難ないしは政治亡命というものが問題になりますゆえんのものは、帰するところ、さような政治亡命に該当するというものについては、要するにその本国もしくは常住国において政治的な理由による迫害が待ち受けておるということが背景、前提でございますので、さような地域、さような国へは強制送還をしないというその問題意識、問題の所在からして初めて問題になるわけでございます。さような迫害の待ち受けている国には強制送還をしない。俗に申しますノンルフルマンの原則でございますが、これを私ども日本の出入国管理当局はかたく守ってきておるし、これからも守っていく、こういうことでございます。
○稲葉(誠)委員 そうすると、退去強制と引き渡しとは、事実行為としては、法律的な性格としてはどういうふうに違うわけですか。
○藤岡説明員 逃亡犯罪人の引き渡しは刑事局の所管でございますし、退去強制は入国管理局の所管でございますので、私から両方まとめて御説明申し上げるのは越権のさたに当たるかもしれませんが、私の理解する限りのことを申し上げます。 犯罪人の引き渡しと申しますのは、引き渡し請求国というものが一方にありまして、そしてその国の政府からこういう者を引き渡してくれという請求を受けて、それに応じて、当該犯罪人の身柄を請求国の官憲に言うなればバトンタッチをする、引き渡しをする、こういう性質のものだと私は理解いたしております。片や退去強制と申しますか、あるいは国外追放と申しますか、こちらの方は、その当該外国人の本国の政府の請求とか、意向とか、希望とかというようなことは何も関係はございませんで、もっぱらその国の、たとえば日本の国の外国人管理法令、国内法に定めるところの退去強制事由に該当する者を日本の国の領域、テリトリーから外に出てもらう、排除する、それだけのことでございまして、果たしてその本人が本国へ行くことになるのかあるいは第三国に行くことになるのか、これは第二次的な問題にすぎない。 いま申しましたような点において、引き渡しということと国外追放ということとは、法的性格においても事実上の現象の面においても明確な差異がある、私はさように理解をいたしております。
○稲葉(誠)委員 そこで、最後の質問ですが、憲法の九十八条第二項に「日本國が締結した條約及び確立された國際法規は、これを誠實に遵守することを必要とする。」こうあるのです。これは当然の規定ですが、「確立された國際法規」というのは一体明文がある法律だけを言うのですか、その他のものも言うのですか。これは何を指しているわけですかね。もちろん一般的なことではなくて、いま審議している法案との関係でお聞きしているわけです。
○伊藤(榮)政府委員 「確立された國際法規」といいますと、国連を中心として種々定められております条約はもちろんでございますが、国際慣習法と言われるものがこれに入ると思います。たとえば例を挙げますと、今日ではウィーン条約というのがありまして外交官に外交特権を認めるような条約が成文化されておりますが、その以前におきましても外交官について一定範囲で外交特権を認めるということは確立された国際慣習法であったと思うのでございます。そういうものが国際慣習法として「確立された國際法規」であろう、こういうふうに思うわけでございます。 それで、この法律との関係についてお尋ねでございますが、逃亡犯罪人を条約の有無にかかわらず引き渡すというような事柄につきましては、まだ国際慣習法として確立されているとは考えておりません。そういう請求があれば一応敬意を払って考慮するという意味の国際礼譲の範囲にとどまっておる、こういうふうな考え方をしております。
○稲葉(誠)委員 国際礼譲と国際慣習法との違いはどこにあるわけですか。どういう場合に国際礼譲が国際慣習法になるわけですか。
○伊藤(榮)政府委員 国際礼譲と申しますのは、私の理解いたしますところでは、二国間の案件が多いわけでございますが、その二国間において、相手国の存在、権威というものに対して十分敬意を払いつつ耳を傾けるというようなことでございますが、その耳を傾け敬意を払いつつ考慮する、その考慮の結果が常に前向きの方向で処理されるというような一般的な慣行が確立いたしますと、漸次国際慣習法に近づいていき、ついにはすべての国が犯罪人の引き渡しの請求があればこれに応ずるという態度をとるということになりますと、その段階で国際慣習法として成立をした、こういうふうに認める、こういう関係になるのではないかと思います。
○稲葉(誠)委員 そうすると、いま言った国際法規、国際慣習法ということになれば相互主義に基づく引き渡しは合法だ、法律的に根拠がある、国際礼譲の場合にはそれは合法とは言えない、法律的には合法ではなくて、それ以前の問題である、こういうことになるわけですね。そういうふうに理解してよろしいですか。
○伊藤(榮)政府委員 国際礼譲の程度の発展段階であるということを前提にして処置いたします限りにおいては、わが国において最小限立法を要する、こういうことになると思います。一方、国際慣習法が確立されておりますという場合には、仮に国内立法がなくてもこれを遵守しなければならないというような関係になるのではないかと思います。
○稲葉(誠)委員 憲法の九十八条の第二項に言う「確立された國際法規」こう言い得るから、その結果として、引渡し条約の締結されていない国に対して逃亡犯罪人の引き渡しをすることは合法であると言わなければならない、そこでひっかかってきて合法という言葉が出てくるのではないですか。これは法務省でも前にそういう見解をとっていたのか、あるいは一部の人が、名前を挙げるのは恐縮だから言わないけれども、刑事局にいた人がそういうような意味の書物を書いて逃亡犯罪人引渡法の解説として発表しているわけですね。だから、どっちでもいいけれども、そこまでいっておらないという理解をいまではしておる、こういうことになりますか。
○伊藤(榮)政府委員 思い起こしますと、昭和三十九年に、その当該論文をよく読んでおらぬではないかというおしかりを受けたような記憶がよみがえるわけでございますが、昭和二十八年当時に逃亡犯罪人引渡法の立案に関与しました者が、ただいま御指摘のように、確立された国際慣習法に属するのではないかというような見解を述べたことがあるようでございますが、法務省といたしましては、公式には、ただいま御説明いたしましたように、国際礼譲の域にしかまだ達していない、こういうことを前提に考えておるわけでございます。
○稲葉(誠)委員 質問をこれで終わりますが、いまのは国際慣習法ではないかというふうに言ったというのじゃなくて、はっきりと言っているわけですからね。はっきりと書物に書いているわけですけれども、いまはあなた方の考え方はそうではない、国際礼譲の範囲なんだ、こういうふうに確定した、こういう形、それはだんだん発展していくに従って国際慣習法的なものになっていく、こういうふうにお聞きをしておきます。 質問を終わります。
○保岡委員長代理 正森成二君。
○正森委員 犯罪人引渡し法の質問に入る前に、この法案の採決の際に付せられる附帯決議の「難民」に関連して一言二言まず最初に聞かしていただきたいと思います。 附帯決議では、難民について政府が措置をとることを求めるという項目があるようでございますが、難民の場合に慎重を期さなければならないのは、このことによって外交上の紛糾を避けるということが非常に必要なことではないか。 〔保岡委員長代理退席、委員長着席〕 二番目には、難民の中には謀略組織のメンバーなどがいる場合がまれにはあるので、それは純粋な難民とは言えませんから、そういう点について配慮する必要があるのではないか。第三番目に、ベトナム難民にかかわらず、いかなる国の難民にあっても、条件が同じ場合には公正に扱うべきではないかというような二、三点について少し御意見を聞いてみたいと思いますので、入管局長なりあるいは所管によっては法務大臣の御答弁をお願いしたいと思います。
○吉田政府委員 難民を受け入れる場合に、外交上いろいろ問題があり得るのじゃないかという御指摘でございますが、いま具体的に起こっておりますベトナム難民についてお答えいたしますと、これは外務省から答弁すべきだろうと思いますが、私が外務省から聞いております範囲内でお答えいたします。 もちろん政府といたしましてはその点を十分配慮いたしまして、わが在ハノイ大使を通じてハノイ当局の見解を打診いたしまして、私の承知する限り、向こうの態度は、国を捨てて出ていく人民は自分のところの国民ではない、したがって、わが国がこれらの難民を世話しても、平たく言えばけしからぬとは申しません、ただ一つだけ条件があるわけでございますが、それは、要するに難民がここで政治的活動をしちゃ困る、これはハノイに対して非友好的態度と見ざるを得ない、こういうことでございます。 その次の御質問は、ベトナム難民だけなぜやるのか、ほかにもあり得るのじゃないかという御質問だと思いますが、これは、国連はジュネーブに難民高等弁務官事務所を持っておりまして、その難民高等弁務官事務所がベトナム難民救済計画というものを持っております。したがいまして、わが国政府といたしましては、国連加盟国の一国として国連のこの計画に協力する、こういう立場に立っておるわけでございます。その点、あり得るかどうか知りませんが、現在国連としてはそういう計画をほかの地域には持っていない。だから、その点でほかの地域の人とベトナムとその辺に差がある、こう御理解いただいて結構でございます。
○正森委員 大体了解いたしました。いまの入管局長の答弁の中で、ハノイ当局からの御見解というものは、国を捨てたものはもう自国の国民ではないから、平たく言えば関知しない、しかし、日本国内で政治活動、特にベトナム人民共和国に対する敵対的な政治活動をするということは非友好的とみなされるから留意してくれるようにという意向であった、こう承りました。それについてわが政府は、もちろん難民として扱うのであるから、そういう外交関係にある国との非友好的な政治活動を在留条件として認めるということはないという何らかの保証を与えていると思いますが、そう理解してよろしいですか。
○吉田政府委員 そう理解していただいて結構でございます。これは何もベトナム難民に限らず、国際的な常識といたしまして、難民として滞在する限り政治活動は各国とも禁じておる次第でございます。
○正森委員 ありがとうございました。 それでは、犯罪人引渡し法について若干の質問をしたいと思います。できるだけ重複しないようにしますけれども、若干の重複はお許しを願いたい、こう思います。 それで、横山委員の質問に対して、手元でいま読んでまいりましたが、「政治犯罪の定義について」こういう文書をお出しになりました。そして横山委員の、定義というのは短いものでなければならないのじゃないか、二行、三行で言えないのかという質問に対して、二行、三行で言えないからこういう長さにしたのでございますという答弁がありました。私も部屋に帰りましてじっくりと読んでみまして、なるほどこれは二行、三行にはできないであろうというように刑事局長の答弁を理解いたします。しかし、それにもかかわらず、若干の点をこのいわゆる政治犯罪の定義とされているものについて伺いたいと思いますので、御了承願いたいと思います。 ここには、いわゆる純粋の政治犯罪は当然だけれども、相対的政治犯罪についてはいろいろ意見があるんだということで幾つかの項目を設けておられるわけですね。その中で、たとえばベルギー加害条項と言われている、国の元首あるいはその家族等に対する殺害は政治犯罪とみなされないとかというように一つの例示として挙げておられるわけですね。ただ私が理解いたしますところでは、わが国の犯罪人引渡法の二条の規定を見ましても、今度新しく制定されました日米犯罪人引渡し条約というのがございますが、その第四条の第一項第一号を見ましても、明文ではベルギー加害条項は載っていないわけですね。そこで私どもの理解としては、むしろ日本の場合には、ベルギー加害条項と言われる各国元首もしくはその家族に対する殺害行為等については、これは必ず政治犯罪と認めるというのではなしに、むしろ政治犯罪ではないかもしれないけれども、この定義の後段に書いてあるようにいろいろの具体的状況によってはなり得る場合もあり得るというにとどまるのではなかろうか。ベルギー加害条項を決めておる国は、これは必ず政治犯罪ではない、こうなるのであって、わが国の場合には政治犯罪とは規定しておりませんからむしろ政治犯罪にはならない場合もあるが、具体的事例によってはなる余地があるという程度の理解ではないかと思うのですが、私の解釈は間違っていますか。
○伊藤(榮)政府委員 まさに御指摘のとおりでございます。
○正森委員 そのほかに、政治犯についての考え方というのは狭める方向、たとえばハイジャック犯人とかあるいは集団殺害とかいうのもございます。一方、人道的見地から政治犯引き渡しの原則を広げるという方向もあることは法務当局も、あるいは場合によっては外務当局も御承知のとおりだと思います。たとえば、一九六三年のイギリスとスウェーデン条約の八条では「もし引渡請求の根拠となった犯罪行為が被請求国から見れば政治的性格のものであるばあい、または犯人がその引渡請求は事実上政治犯罪のために犯人を訴追または処罪するものであることを被請求国に納得させたばあいは、犯人は引渡されない」という規定がございます。あるいは少し規定の仕方が違いますが、ここでいただきました資料の中に出ておりますヨーロッパ条約の第三条の二項の規定を見てみますと「普通法上の犯罪を原因とする犯罪人引渡しの請求が人種、宗教、国籍若しくは政治上の主張のゆえにある人を訴追し若しくは処罰することを目的としてなされ、又はその者の状況が害されるおそれがあると、被請求国において認めるべき充分な理由があるときは、前項の原則を適用する。」ということで、政治犯とみなすという規定もあるわけですね。わが国は日米犯罪人引渡し条約第四条の規定から見て、また国内法の第二条の規定から見るときは、このヨーロッパ条約の第三条二項の趣旨あるいは一九六三年のイギリス・スウェーデン条約第八条の趣旨を否定するものではない、そういうことを十分に考慮した上で、具体的実情を調べて判断するというように理解できるような定義だと思いますが、いかがですか。
○伊藤(榮)政府委員 ただいまの御指摘も、そのとおりでございます。
○正森委員 そこで若干伺いたいと思いますが、この前、外務委員会でも私は質問をしたわけですけれども、たとえば、金大中氏は選挙違反だということで起訴されました。それで、わが国の公選法の規定を見ますと、三年以上の刑というのもございます。それから日米犯罪人のように一年に下げますと、大部分の規定が入るわけですね。ところが、金大中氏の選挙違反だとされました事由を見てみますと、金大中氏は起訴事実について「いま大統領が交代しなければ、もう国民の前で再び選挙が行われることはないだろう。三権分立が失われるかもしれないし、総統制のような方向に国の政治が行く恐れもある」という演説をし「事実、あれ以来、大統領の直接選挙はなくなってしまった。」というように言っているのですが、ただ総統制のようになってしまうかもしれないということを言ったことをもって、虚偽事実を主張したものであるということで公選法違反になっておるわけです。これは日本の場合なら当然、自民党は小選挙区制を意図して日本の民主主義を変えていこうとしておるというようなことはわれわれはしょっちゅう言うわけですから、それが選挙が終わってから三年たっても小選挙区制をやらないから虚偽事実ではないかということを言われれば、言論の自由はなくなってしまうわけですね。 あるいは別のところでは、事前運動だと言われて起訴され、有罪になっているという点があるわけです。これは「七〇年十月から七一年三月にかけておこなった政治活動が大統領選の事前運動であり、」というふうに言われているのですが、政権をとろうとする者が国民に政見を訴えるというのは政党独自の権利であって、これを事前運動だと言われれば、各政党の党首などの遊説はできないわけですね。わが国の場合では、これを事前運動だと考えるのは、よくよくの場合でないとそういうことにはならない、まず絶無であろうというふうに思われるわけです。 そうだといたしますと、韓国との場合には犯罪人引渡し条約は結ばれておりませんけれども、相互主義の了解のもとに逃亡犯罪人引渡し法の規定が適用されることになるわけですが、そういう場合に、万が一、金大中氏のあの程度の選挙違反について、選挙違反を行ったことのゆえをもって、それが三年以上であるということで引き渡しを請求されたような場合に、わが国としてこれを認めるような理論的な見解をとるのか、あるいはこれを相当でないとして拒否するのか、拒否する場合にはどの条項で拒否するのか、それについて刑事局長もしくは法務大臣の御答弁をお願いしたいと思います。
○伊藤(榮)政府委員 きわめて生々しい話題に関連してのお尋ねでございますから、微妙な問題がありますので、的確なお答えはいたしかねるわけでございますが、ただいま御指摘になりましたような内容を前提として一般論として考えてみますと、まずもって、わが逃亡犯罪人引渡法の第二条の四号に当たるかどうか、やや疑問ではないか。ただ、選挙違反という罪名は共通しましても、御指摘のようなケースにつきまして双方処罰の原則ありと言えるかどうか、これがまず疑問ではなかろうか。 それから、法解釈が両国において著しく異なっておるという場合には、第二条第五号において日本の裁判所で裁判が行われたとした場合に刑罰を科することができるかどうか、これも疑問ではなかろうかと思います。 さらに、一定の政治的意図があって引き渡しを求めてくるということが仮に明らかであるといたしますと、当然第四条第一項第三号の、法務大臣の「逃亡犯罪人を引き渡すことが相当でないと認めるとき。」に該当して、外務大臣と協議の上、この条項に基づいて拒むということも可能であろう。 そういう三点から、御指摘のことを前提とする限り、引き渡すことは相当でないという判断になるのではないかと思います。
○正森委員 条文を挙げての非常に明快な答弁であると私は思います。 それでは、次の問題に移らしていただきたいと思いますが、これも外務委員会で若干伺いましたので、重ねて、できれば法務大臣の御見解を伺いたいと思います。あのときには外務大臣がおられませんでしたので。 それは、日米犯罪人引渡条約でもあるいはわが国の逃亡犯罪人引渡法でも同種の規定になっておるわけですが、請求国と被請求国で、死刑または無期もしくは三年以上の懲役に当たる罪の場合には引き渡す、日米の場合はそれが一年にさらに下げられておりますけれども、そういうことになっておるわけです。ところが、日本では死刑がない、アメリカなり外国では死刑があるという場合には、死刑囚あるいは死刑に当たる罪というのは特別のものでございますから、これについては一定の条件をつける、あるいは引き渡さないということが国際法的にだんだんと広がっている傾向にあるということが言えるわけであります。 念のために申し上げますと、たとえば一九五九年のベルギー・モロッコ条約の九条を見ますと「引渡請求の原因たる犯罪行為が請求国の法の下で死刑に処されうるばあい、被請求国は、請求国が国家元首または憲法上の権限ある当局者に対し死刑を他の刑罰に軽減するよう上申するとの条件の下に引渡をすることができる」としております。一九六二年のベネルックス三カ国条約の十条にも同じ趣旨があります。一九六〇年のイギリス・西独条約の三条では「犯人が引渡犯罪に関し請求国の法の下で死刑が科されるが被請求国の法の下では同様なる事案につき死刑が規定されていないばあいは引渡を拒否することができる」こうなっております。一九五八年の西ドイツ・ベルギー条約の九条では「引渡請求の根拠である犯罪行為は請求国の法によれば死刑が科されうるが、当該犯罪行為については被請求国の法の下では死刑の規定がなく、または通常被請求国は死刑を執行しないばあい、死刑は執行されない旨の十分と思われる保証を請求国が被請求国に与えない限りは、引渡は拒否されうる」こうなっております。 つまり、世界の大勢は、自分の国ではその罪では死刑にしておらない、相手国が死刑だという場合には死刑の可能性があるので、引き渡しを拒否し得るという裁量にしている場合と、しかし、罪を犯したことは罪を犯したことだから引き渡さないというのも不公平だ、だから引き渡しはするけれども、死刑にだけはするなという保証がある場合に引き渡すというのが一つの傾向になっておるわけです。わが国の場合にはそういう規定がないわけですね。それについて実務上どういう扱いをされるのか、また、もし実務上はどうしてもいたし方がないというのであれば、今後何らかの条約上の措置あるいは国内法上の措置を将来にわたって検討される御意思があるのかどうか、お答えを願いたいと思います。
○伊藤(榮)政府委員 ただいま御指摘の問題は、死刑廃止国が漸次ふえておるということの関連で生じておる問題でございまして、いろいろ条約をお挙げになりましたが、私どもが承知しております範囲でも、最も代表的な多国間条約であるヨーロッパ条約の十一条でも、死刑のない国から死刑のある国へ引き渡すときには、死刑が執行されないことについて保証がないと引き渡さない、こういうことになっておるわけでございます。たまたま現在、わが国が条約を結んでおりますのは日米間だけでございますので、これは双方とも死刑存置国でございますのでその点の問題がないわけでございますが、将来の問題としては、条約を結びます際に、たとえば例を挙げれば、西ドイツというような死刑廃止国と条約を結びます場合を想定いたしますと、当然先方からそういう提案があろうかと思います。さような場合には、条約でその点について明確にすべきであろうというふうに考えております。 さらに現行法の運用といたしまして、わが国ではとうてい死刑にはならないような罪につきまして、引渡し条約のない請求国であって、そういう罪について死刑の規定を持っておる国から請求がございましたときには、その点をよく勘案いたしまして、場合によっては引き渡し拒否事由としてそれを考慮するということになろうかと思います。 なお一点、実務の運用というお話もございましたので、つけ加えますと、アメリカ合衆国の中にも死刑を廃止している州が幾らかあるわけでございます。そういう国から、そういう州に現に存在しておりました者を引き取ったような場合には、たとえば検察運営上、その点を考慮した求刑を行うというような措置も必要ではないかと考えておるわけでございます。
○正森委員 非常に行き届いた答弁だったと思いますけれども、人道上の見地からもぜひそういうようにしていただきたいというように思います。 それでは別の問題に移らせていただきたいと思います。 非常に失礼な質問ですけれども、刑事局長は刑事局参事官の時分に、犯罪人引渡法について著書を出しておられます。私も拝見させていただきました。その中で——長うございますから読みません。読みませんが、仮拘禁の制度について、仮拘禁の制度というのは余り望ましくないのだという趣旨の、あるいはなくてもできるのだという趣旨のことをお書きになっておるのですね。今回は仮拘禁の制度ができたわけですが、その間の考え方の変遷について、あるいは時代の進展について感想をお述べいただきたいと思います。
○伊藤(榮)政府委員 昭和三十九年に逃亡犯罪人引渡法の改正がございました際に、当時刑事局参事官でありました者が書いておりますものの中に、条約に基づかない仮拘禁の制度はとる必要がない、本拘禁で賄えるということを書いておるわけでございます。その書いた参事官というのが私でありましたことがきわめて不明の至りでございまして、当時は国際間の交流も今日ほどでございませんでしたし、また過激派によるハイジャックとかそういう問題もございませんでしたので、深くその辺を考えなかったのが実情でございますが、その後の国際交流の発展、それから犯罪者の国際的な移動の実情等を勘案いたしますと、少しでも国際的な犯罪者の逮捕あるいは犯罪の鎮圧のためにとり得る方法があればとるべきであるという考え方になっております。特に最近におきますICPO、国際刑事警察機構の目覚ましい活動、これに照応するような何らかの措置をとるということも必要であろうと考えまして検討いたしますと、やはり仮拘禁制度を用いまして、現に所在が確定いたしませんでも、場合によりましては、あらかじめ仮拘禁の請求を、相互主義の保証をしておくことによりまして、早期に逃亡犯罪人を逮捕するという可能性も出てまいると思っておるわけでございます。そういう趣旨で、今回改めて引渡し条約に基づかない仮拘禁というものも御提案申し上げたわけでございます。
○正森委員 結構です。 それでは次の質問に移りますが、仮拘禁の場合に、これは希有の場合であるということは私もわかっておりますが、過って拘禁するという可能性があるわけですね。これは具体的には仮拘禁を請求国がしたけれども、その後何らかの事情によって本当の引き渡しを請求してこなかったという場合には、一定の期日以後は釈放しなければなりませんね。それから、これは念が入っておりますが、仮拘禁で請求してきた、そして引き渡しもしてきたけれども、何らかの法的な不備あるいは引き渡せない状況にあったというような場合には釈放しなければなりません。その場合に刑事補償の規定が全くないわけですね。そうかといって、この前私が外務委員会で国家賠償の方法もあり得ると言いましたけれども、あるいは国家賠償が通る可能性があるかもしれませんが、故意か過失かなければなりませんが、わが当局としては、請求国の請求に基づいてしかるべき資料をそろえて拘禁したということになれば、過失はないという場合が多かろうと思うのです。そうではあっても、仮拘禁された者が結局は仮拘禁の必要がなかったということになれば、それをたたきっぱなしというのも、公平の見地からどうであろうかということも考えられますが、そういう点については法務当局はどのように考えておられますか。
○伊藤(榮)政府委員 御質問に当たって御指摘になりましたように、仮拘禁の請求をし、あるいは引き渡しの請求をしてとりに来ないというような例は、きわめて希有中の希有であろうと思うのでありますが、一応理論上考えられることでございます。そこで、現在のたてまえといたしましては、逃亡犯罪人をわが国が引き取る場合に、当該外国で抑留、拘禁された期間は、わが国の刑事手続で無罪になれば刑事補償の対象にする、こういうことにしておりますその裏返しの場合でございます。 ところで、仮拘禁あるいは本拘禁をしたけれどもとりに来ないために釈放した、こういう場合は、いわゆる無罪の裁判があったというわけではございませんから、そのまま刑事補償の問題は起きない。しかしながら、公平の見地から見て何らかの措置があってしかるべきであろうという御指摘はごもっともだと思います。ただ、このような問題は行政上の手続で他にも起こり得るわけでして、入管令上の強制収容と言われるものでありますとか、精神衛生法上の措置入院とか、その他ハイジャックに関する東京条約による抑留、いろいろなケースがあるわけでございますが、それらを総合的に勘案して立法の要否を決めなければならないのではないかと思っております。ただ一義的には、さような請求国の不手際によってわが国に居住する者が不利益をこうむったときには、外交上の措置として当該外国から何らかの補償を求める努力をすべきであろう。これは外務省の所管でございますが、それは一義的に思うわけでございますが、そういうことが十分行われないということになりますと、立法的な問題も考えなければならぬ、かように考えております。
○正森委員 結構でございます。 それでは次の問題に移りますが、今度の引渡し法は通過護送の規定を設けておりますが、日本を通過する場合に、飛行機で東京の羽田に寄ってすぐ一、二時間後に飛び立つという場合は別ですが、夜着いて一泊して次の日の朝またどこかへ出かけていくというような場合の拘禁場所、これは法律上は必ずしも明定されていないようですが、それはわが国の官憲が決めるのか、それとも相手国の要請に基づいて決めるのか、そして、その場合の見張りと言ったら語弊がありますが、逃走させないようにする責任はどこが負うのか、もし答えられれば答えてください。
○伊藤(榮)政府委員 通過護送の場合には、わが国の主権下に属する領域を他国の官憲が逃亡犯罪人を拘束した状態で通過することを認めるわけでございますから、したがいまして、わが国の領域内におります逃亡犯罪人の戒護の責任は一にかかって当該外国官憲にあると思います。わが国の警察当局等が関与いたします範囲は、その者が通過のために一時日本の領土におりる、あるいは飛行機の中におるという事柄が治安に及ぼす影響という観点から対処をする、こういうことであろうと思います。 それから、一晩東京なら東京で滞在するという場合にどうするかという問題につきましては、従来わが国が外国から引き取ったときの通過事例を見ますと、わが方の申し入れ、希望に応じまして先方で配慮してくれる、法の許す範囲で配慮してくれるということのようでありましたから、同じようにわが国におきましても、護送しております官憲の要望を聞きまして、それがわが国で妥当と認められる範囲でしかるべきところにとめ置く、こういうことになろうかと思います。
○正森委員 それでは、次に警察に伺いたいと思います。 ここに「警察學論集」の二十九巻の第一号がありますが「国際犯罪をめぐる諸問題」という特集であります。その中で、金子という当時の警察庁の国際刑事課長が「国際捜査と日本警察」という論文を書いております。これは申し上げておきましたから御存じのことと思います。そこに「逃亡犯罪人引取の便法」という項目があるのですね。その中で「正規の逃亡犯罪人引渡手続があまりにも古典的に過ぎるため、実務は外に道を求めてしばしば成功してきている。制度的には、正規の手続が表街道であるが、実務的にはむしろ、それは裏街道と言えるものである。」こういうようにお書きになって「すなわち、当該犯罪人が外国で別罪を犯したときは、それで身柄を拘束され、交渉次第によっては強制退去の手続によって身柄を引取ることができる場合がある。また、外国で別罪を犯さなくても、旅券失効その他、当該犯罪人の法的地位を失わしめ、同じく強制送還に持ちこむ方法もある。とくに前者は、もっとも確実簡便であるため、それによって公海上で逮捕する実務が定着してきている。これこそインターポールルートによる関係国警察の連携プレーによって問題をスピーディに解決できる方法だからである。わが国の逃亡犯罪人引渡法によると、条約はなくても、犯罪人の引渡し請求に応ずることができる。これは、わが国から身柄を請求する場合に確認を求められる相互主義の保証を制度的に担保するものとしてつくられた制度であるが、できてから一〇年、一度も使われたことがない。それは、手続が古典的で現代のスピードに間に合わないからである。」こう言うておられるのですね。 これは非常に思い切った論文であるように思うのですが、この論文について現在の国際刑事課長の感想及び現在の所見を述べていただきたいと思います。
○水町説明員 ただいまお読みになりました論文につきましては、当時の課長の一私人としての論文であろうと思うわけでございます。 さて、それでは現在において条約のない国との関係で犯罪人の引き渡しを警察ではどのようにしているかという問題でございますが、犯罪人引渡し条約を締結していない国において日本国の裁判官が発する逮捕状の対象となります被疑者が発見されますと、その連絡が外交ルートまたはICPOルートを通じて参ります。その場合に、当該国の犯罪人引渡法に基づいて身柄の引き渡しが可能であるということになりますと、相手国において必要とされる書類等を準備いたしまして、外交ルートを通じてその者の引き渡しを請求することになります。また、被疑者が当該国の法令に基づきまして国外退去になる、これまたその連絡は外交ルート及びICPOルートを通じて参ります。この場合に、わが国の裁判官が発した逮捕状によりまして逮捕することがございます。さらに別のケースといたしましては、わが国の在外公館員等の説得によりまして自発的に帰国を促しまして、その帰国を待って逮捕状により逮捕するというケースもございます。 さて、それでは最近の実例をちょっと申し上げますと、相手国の法律によって身柄の引き渡しを受けたという事例といたしましては、昭和四十五年十二月に、背任事件の被疑者につきましてフランスから引き渡しを受けた例がございます。国外退去によって身柄の引き渡しを受けた場合といたしましては、昭和五十二年十二月に、タイから強盗傷人被疑者の引き渡しを受けたことがございます。また、昭和五十三年一月、フィリピンから覚せい剤事件の被疑者の身柄の引き渡しを受けたことがございます。 以上のような方法によりまして被疑者の身柄の引き取りを行っているわけでございますが、この点につきまして法律上の問題はないと私どもは考えておりますし、国際捜査共助の効果が上がりまして、日本国内の捜査に貢献しているものと考えておるわけでございます。
○正森委員 それでは、余り踏み込んでは質問しませんが、いまの答弁からしますと、表街道も利用させていただくし裏街道も利用させていただく、裏街道というものも脱法行為ではなしに、ちゃんとしたインターポールの手続に基づいてやっておるもので十分に活用したいということですか。——うなずいただけではわからない。
○水町説明員 裏街道という言葉が若干気にかかるわけでございますが、いずれにいたしましても双方の国の法律手続に基づきまして身柄の引き取りを行うということでございまして、今後とも大いに活用してまいりたいと思います。
○正森委員 今度は逃亡犯罪人引渡し法によりまして、表街道に仮拘禁の制度ができたわけですね。ですから、一層活用しやすくなるというように思います。 公安関係の課長さんも来ておられるようですから、先日のダッカの事件等々、事件を行いました犯人あるいはそれによって不法に釈放された未決囚あるいは既決囚、こういう者についてインターポールの協力を求めるだけでなしに、今回この法案が通りましたら、相互主義のできる国である場合には、相互主義の保証の場合に仮拘禁の請求をしていくということも十分考えられると思いますが、そういうことをやる意思がありますか、あるいは現状はどうなっておりますか、御答弁を願いたいと思います。
○福井説明員 昨年の九・二八の日航機乗っ取り事件の犯人と釈放犯でございますが、犯人のうち四人はことしの三月六日にICPOの国際手配になっております。それから釈放犯の六人は、三月八日までに同じくICPOの国際手配になっております。 ところで、この者たちの所在でございますが、アルジェリアから出国したという確証は残念ながら持っておりません。ただ、いろいろ情報を総合いたしますと、すでにアルジェリアを出国しておる可能性は十分にあると見ておりますが、そこで、この所在がわからないということが一つあるわけでございますけれども、ただ将来の問題といたしまして、所在が明らかになった場合に、相互主義の保証があるような国であった場合に仮拘禁の請求をするということはあり得ると思います。ただ実態を申し上げますと、日本赤軍の場合、これまでに、五十年三月から五十二年七月まで九人がわが国に送り返されておりますが、いずれも、そういう者が見つかったという時点で、大体偽造旅券を行使しておりますので、その国の国内法で実は身柄をすでに拘禁をされております。したがいまして、あとは日本側として、もし向こう側がいわゆる国外退去をした場合に、受け取る意思があるだろうかといった事実上の相談はございますけれども、そういうことでございますので、スウェーデンの場合にしろカナダの場合にしろヨルダンの場合にしろ、こちらで認知した時点では、すでに身柄は拘禁をされておる、こういう実態でございます。
○正森委員 それではこれで質問を終わらせていただきますが、最後に法務大臣に、私が質問して刑事局長がお答えになりました政治犯の不引き渡しの諸原則あるいは死刑囚の場合の扱い等について、ただいまの答弁は事務当局の答弁でございましたから、国務大臣、特に法執行の責任者である法務大臣として御所見のほどを簡単にお述べいただいて、質問を終わります。
○瀬戸山国務大臣 そういう場合の取り扱いは、先ほど刑事局長から細かに御答弁いたしました。やはりそういう点を考慮して判断すべきもの、かように考えております。
○正森委員 それでは、私の質問を終わります。
○鴨田委員長 午後三時再開することにし、この際、暫時休憩いたします。 午後零時四十分休憩 ————◇————— 午後三時三十分開議
○鴨田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 質疑を続行いたします。西宮弘君。
○西宮委員 私はこの逃亡犯罪人の問題で若干お尋ねをいたしますが、前回の人質強要罪の問題のとき、私は一番最初から、つまり資料の表紙から始めたものですから大分同僚の皆さんにひやかされたので、今度は心機一転いたしまして、心を入れかえて一番終わりから質問することにいたします。そういう段取りでお尋ねをいたしますが、大臣、一言だけ前回のことについて申し上げておきたいのです。 私は本当に短時間のつもりで前回追加の質問をしたわけであります。それは例の提案理由の説明の中にあります「等」の字がないという点についてお尋ねをしたのでありますが、あれなどは全く単純なミスなんですよ。これは原稿に落ちていたのか印刷屋が間違ったのか知らないけれども、いずれにしてもきわめて単純なミスなんですね。私は、ですからその四日前の質問の際、全くつまらないことだけれども、ここには「等」の字が落ちているということを申し上げておいたので、ですからそれはミスだという御答弁があるだろうと思って期待をして質問をしたわけでしたけれども、いろいろ論議が続いたものですからつい時間も長くなってしまったので、これからはそういうことに時間をとらないように、そういう単純なミスはあり得ることでしょうから、そのときはそのとおりに答えていただきたい。その方が記録としても、これは後世の人たちがいろいろ調べる際に非常に有力な材料になるわけですから、やはりミスはミスということで簡単に訂正をしておく、そういうふうにやってもらいたいと考えるわけです。特に御答弁がなければ私の申し上げたことを了解してもらったと思いますが、よろしゅうございますね。
○瀬戸山国務大臣 もちろんミスだということがわかれば、ミスはミスとして改めることにいたします。
○西宮委員 それでは、ただいま申し上げたように、いただきました資料の最後の方に青い紙と赤い紙で区別がしてありまして「六参考資料」というところがありますので、そこから取り上げて質問させていただきます。 つまりその参考資料の一番初めでありますが、ここに今日まで犯罪人の引き渡しについて日本から要求した件あるいはまた日本が要求された件、そういうものの統計が載っておるわけですが、どれを見てまず第一に感ずることは、日本が要求した件数に比べて日本が要求された件数がはるかに多い。そういう点で非常にバランスを失しているわけですが、これは一体どういうわけなんでしょうかね。日本は常に要求される方の側に立っているという点はなぜなんでしょうか。つまり、あるいは日本という国は非常に外国の犯罪人が逃げてきやすい国だという状況でもあるのでしょうか。
○伊藤(榮)政府委員 戦後におきます引き渡しにつきましては、わが国が外国から引き渡しを求められた事例はゼロでございまして、わが国が外国に要求して引き渡しを受けたのが四件でございます。戦後はそういう事情でございます。 戦前のことにつきましては、御指摘いただきますように、明治五年以来の統計を掲上しておるわけでございますが、そのうち、断っておきましたように、大正十五年から昭和九年までについては、こういう統計資料そのものが司法省の戦災によって焼失しておりまして判明いたさないわけでございます。同様にこの数字といいますものがいわゆる報告文献等からの引用でございまして、その個々具体的な内容につきましては、やはり一切戦災で焼失しておりますので、戦前においてなぜ外国からの引き渡し要求件数の方が日本からの要求件数よりも多かったのか判然といたしません。
○西宮委員 いま局長の大正十五年から昭和九年までは焼けてしまってないというお話、これは断って書いてありますから私も承知をいたしておりますが、それを除きましても、たとえば日本から要求したというのは、いま局長は年表を言われたので私も年表を見ると、十二ページでありますが、大正八年で終わっておるのですね。それは大正十五年から昭和九年までというのはあるのかもしれませんけれども、途中ずっとなくて、昭和三十八年になって初めて要求が行われている、こういう状況なんですね。それで、件数から言うと十件というのでありますが、要求されている方は明治五年から始まってずっとほとんど続いて、これも不思議なことに、要求される方は、今度は昭和になると昭和は一件もない、こういう状態。ただし数で申し上げると、日本が要求したのが十件、要求された方は八十三件というので、これまた大変なアンバランスなんですね。まことに不思議なんですな。仮に要求される方にしても、昭和の時代に入ってからずいぶん旅行者の数はふえている。そういう中でこういう状況だというのはいかにも常識では不思議だという感じがするのですけれども、どうなんでしょうか。
○伊藤(榮)政府委員 昭和十年以後におきましては、引き渡しの要求を受けたことも要求したこともないということが数字の上でわかっております。ただ先ほど申しましたように、引き渡し要求事例、それから引き渡しを求められた事例についての具体的な資料というものが全部焼失しておりますので、ここでごらんいただきますような一件、一件、二件というような件数だけが統計で残存しておりますので、まことに恐縮でございますが、的確なお答えはいたしかねるのでございます。ただ強いて考えれば、日本国の人口よりも日本国を除く国の人口の方が多いというようなことも反映しておるのかとも思いますけれども、全く自信がございません。
○西宮委員 自信がないと言われるのをくどくど言っておってもしようがないと思うのですけれども、日本一国に対して外国の方が多いのだということでありますが、たとえばアメリカ、ロシアなどを見ても、これは要求されている方がはるかに多いわけです。日本がアメリカに向かって要求する件数よりはずっと多い。いずれにしてもこの統計にあらわれた、これは局長、材料がないからわからぬというお話ですが、材料が焼けちゃったというのは大正十五年から昭和九年までのことでしょう。それ以外は全部材料がそろっているわけなんだから、そういう点から考えるとまことに了解しにくい。したがって、いわゆる犯罪人の引き渡しということはそう大した重要な問題として扱われてこなかったんじゃないか、私はそういう気がするわけです。そのことが結果的にこういう数字になってあらわれているというふうに私は思うのだけれども、その点はどうですか。
○伊藤(榮)政府委員 再三申し上げておりますように、こういう数字だけが大正十四年以前につきましての報告書等によって残っておるということでございまして、きわめて遺憾ながら、戦前の最後の引き渡し問題は大正十四年でございますが、大正十四年当時この種事務を取り扱ったものも現存いたしませんので調べようがないわけでございまして、その点はまことに申しわけないとは思いますけれども、今日その経緯を明らかにすることは全く不能の状況でございます。
○西宮委員 それでは別なことをお尋ねいたします。 「ロシヤ」というのがありますが、ロシアは、昔日露引き渡し条約を結んだ国ですね。無論この「ロシヤ」というのは現在のソ連は入ってないのでしょうね。 それから、ついでに伺いますが、「ポーランド」というのがありますが、これは現在の社会主義国としてのポーランドでしょうか。 それではもう一つ「朝鮮」も同様の質問で、いまの朝鮮民主主義人民共和国というのも含んだ朝鮮でしょうか。
○伊藤(榮)政府委員 恐らく現体制下のそれらの国は含んでいないと思いますが、その点も不明でございます。
○西宮委員 これは、まことに私もそれでは不満足なんですけれども、朝鮮というのは、終戦以前は日本の領土というふうに扱われてきたわけですから、そうすると、朝鮮が四件の要求がありますが、これなどはどういうのでしょうか。
○伊藤(榮)政府委員 この数字を合理的な頭でながめまして推測するよりしようがないわけでございますが、「朝鮮」とございますのは、例のいわゆる日韓合併前の朝鮮であろうと思います。
○西宮委員 いま私が指摘した「ロシヤ」とか「ポーランド」とか、あるいは「朝鮮」が仮に現在の民主主義人民共和国だというようなことでありますと、それも対象になっておった、対象というか、その実績があったんだということだと、いまの基本的考え方からかなり違った判断をしなければならぬと思うので、非常に大事な点なんですが、要するにこっちに年代は年代としてあるわけですから、年代の方はただ件数だけが書いてあって何国だということは全くないわけですが、それと突き合わせていったら、たとえばポーランドとかロシアとか、そういうのが恐らくわかるのじゃないかと思うのですが、その程度のことがわからないのですか。
○伊藤(榮)政府委員 ここに掲げました事項以外は、申しわけありませんがわからないのでございます。健全なる常識で推測いたしまして、恐らく「ロシヤ」とあるのは旧帝政ロシア時代のことであり、「ポーランド」と申しますのは社会主義国となる前のポーランドであろうと思いますけれども、全く間違いないのか、どういう根拠でそういうことを言うのかとおっしゃられましても、確信を持ってお答えする資料がないという意味におきましてお断り申し上げておるわけでございます。
○西宮委員 それではそれ以上お尋ねいたしませんが、この年表の方を見ても、たとえば先方から要求されたという方で見ても、昭和の時代に入っては一件もない。あるいは日本が要求したのは昭和三十八年、四十五年、五十年、五十二年と、昭和の時代には四件ある、こういうことですけれども、そのかわり昭和三十八年以前は非常に長い間ブランクなんですね。昭和九年に火事で焼けたとしても、焼けてから後の三十年間があるわけだけれども、それにも全部該当がない。今日日本から海外に出ていく人の数、あるいはまた日本へ入ってくる数を法務省で調べていただいたのですが、それを見ると、ずいぶん大変な数なわけですね。日本に入ってくるのが昨年は九十八万三千六十九人、それから日本から出ていったのが三百十五万一千四百三十一人。これが年次的に非常に猛烈にふえているわけですね。昭和三十年から調べてもらったのですけれども、大変な勢いでふえているわけです。それならば、そういう引き渡しを必要とするというような事件も、お互いに日本から、日本へ、いずれもそういう件数がふえているというふうに考えざるを得ないと私は思うのだけれども、そういう事実が全くないのでしょうか。
○伊藤(榮)政府委員 統計資料の存在します昭和十年から戦争中、それからわが国が独立を回復いたしました昭和二十七年までは一件も引き渡しの要求が相互になかったということが明らかでございます。逃亡犯罪人引渡法が二十八年に制定されまして以後今日まで、この逃亡犯罪人引渡法に基づきまして引き渡しの要求を受けた事例はゼロでございます。したがいまして引き渡したこともゼロである、こういうことでございます。 一方、戦後昭和三十八年になりましてから、わが国から外国に対して四件の引き渡し請求をした、こういうことでございまして、これもまた常識で推理をするわけでございますが、ちょうど昭和十年以降という時期は御承知のような非常な動乱の時期でございましたことが何らかの影響をしておるのではないか。それから戦後の関係につきましては、講和条約発効後、いわゆる一般の国民の海外渡航が比較的厳しゅうございました。そんなこともございまして、当分の間こういった事態の発生がなかったのではないか、かように推測いたすわけでございます。
○西宮委員 戦後四件だというお話ですが、それにしてもおびただしい日本人の海外への流出あるいは海外から日本へ向かって殺到してくるそういう人数が激増しているという中では、いわゆる国際犯罪というようなのが当然相当数あるのじゃないかというのが私どもの常識なんですけれども、そういう国際犯罪というようなものが実態がないのだということであればこれは大変結構な話で、それ以上議論する必要は全くないのですけれども、どうも私は、これだけ大ぜいの人間が行ったり来たりしているということだと、いわゆる国際犯罪と称するものが相当にあるのじゃないかという感じがするのですけれども、警察庁でも結構ですが、そういう点についてはどうでしょうか。
○水町説明員 国際犯罪の定義でございますけれども、いろいろな指標があろうと思います。大ざっぱに申しまして、外国人が関係する犯罪あるいは外国というものが何らかの形で関連する犯罪というものを広く国際犯罪と申しますが、一つの例としまして、たとえば昭和五十二年中の日本人の国外犯、日本人が国外において犯罪を犯したとしてICPOルートまたは外交ルートを通じまして通報を受けた数でございますが、五十二年中に百十四件、百三十三名でございます。関係する国の数は三十二カ国でございます。また、今度は外国人が日本国内において犯罪を犯した数でございますが、これは「昭和五十一年の犯罪」というような統計書に載っておりますけれども、昭和五十二年につきまして仮集計した結果を見てみますと、三万一千七百六十五件、二万四千百二十二人でございまして、刑法犯、特別法犯すべて含めた数でございます。 国内における外国人犯罪の特徴を見てみますと、国際旅行犯罪者による悪質なものが目立っておりまして、集団すり事件とか、集団による両替詐欺事件とか、それから女性を使った大がかりな盗難旅行小切手による詐欺事件などが最近起きておるというような状況がございます。
○西宮委員 いまお答えがあったように、ずいぶんおびただしい犯罪が行われている。その中でいわゆる逃亡犯罪人として追及するというような必要のあるものはそれほどないのですか。これはどちらがお答えでしょうか。
○水町説明員 日本国内で犯罪を犯しましてその日本人が海外に逃亡したという問題でございますが、その実態を完全につかむことは非常に困難でございます。おっしゃられますように、国際的な旅行が非常に容易になりまして多数流出しておるということは推測できますが、実態として何名出ておるのかということは非常にむずかしゅうございますが、私ども一応大ざっぱに調査してみますと、やはり二けたの数、たとえば六十名というような数が大体海外に出ているのではなかろうかというような資料を一応持っております。しかしながら、それが全部であるというふうには思っておりません。
○西宮委員 それでは、現にICPOの方で手配している人数はどのくらいですか。
○水町説明員 手配もいろいろございまして、たとえばいわゆる赤軍派というようなことでICPOルートを通じて手配しているものもございますが、そういう特殊なものはちょっと除きまして、一般犯罪ということで考えた場合に、ICPOルートを通じまして、手配書をつくらなくてもつくってもよろしゅうございますが、いろいろな形で海外に手配しているというものは二十数件ばかりございます。 〔委員長退席、山崎(武)委員長代理着席〕
○西宮委員 警察庁で出しております「昭和五十一年の犯罪」という統計書がありますが、それを見ると、これまた人数が相当ふえている。そしてさらに、これは何で私は読んだか忘れましたが、雑誌か新聞で見たのに、南北両朝鮮あるいは中国、そういう国の人の犯罪が減ってきて、日本にいるアメリカ人の犯罪がふえている、アメリカ軍人の犯罪がふえている、特にアメリカ軍人の場合は非常に凶悪な犯罪がふえている、こういうことが書いてあったのを読んだわけですけれども、これを見ましても、国籍が韓国、朝鮮、あるいは中国、これは確かに昭和三十六年と昭和五十一年と比べても半分ぐらいに減っている。それから、アメリカ軍人の場合は大体人数は同じだ、件数も同じだ。三百四十、三百七十といったような程度で大した異同がない。しかし、その内容がアメリカ軍人の場合には非常に凶悪な犯罪になっているということを書いておったのがあるのですが、このいまの犯罪統計の中にもそういう内容を、殺人であるとか強盗、放火等々内容も分類してはありますけれども、ただしこれは国別に恐らく昭和五十一年のを平面的に数字を拾ったのだろうと思いますから、立体的にその中身が年次別にどう異同があるかということはわからないのですが、いま私が言ったような在日米軍については内容的にも悪質になっている、こういうことは言えますか。
○伊藤(榮)政府委員 法務省で把握しております昭和四十八年以降の在日米軍人軍属等が犯しました犯罪の件数は次のとおりでございます。四十八年が二千七百九十九人、四十九年が二千三百二十二人、五十年が二千二百六十七人、五十一年が二千九十一人、五十二年が二千二百六十人ということでございまして、四十九年以降は総体の件数で大体横ばいでございます。この数字はわりあい多うございますが、この大部分は道路交通法違反でございます。最近の米軍犯罪の特徴といたしまして、特に凶悪犯罪がふえたというような傾向は認められません。ふえておりますように思われますのは大麻取締法関係、この犯罪が漸増しておるように見ております。
○西宮委員 この警察の統計にありますいわゆる在日米軍の犯罪数でありますが、数からいっても減っておらないし、十数年間の開きですけれども全く減っておらない。そして、しかも内容的にも問題が多いということであれば、もう少しこの点について日本国として真剣に考えなくちゃならないのじゃないか。この間横山委員がいろいろ具体的なケースについて述べておりましたけれども、こういう統計資料からも同じようなことが言えるのじゃないかということが、私はそういう問題意識を強く感ずるので、そういう点を警察なり法務省なりぜひもっと関心を持って詰めてもらいたいという気がするわけです。いかがですか。
○水町説明員 ただいま御指摘のとおり、数的に必ずしも減ってはきていないという点がございますし、それから先ほど法務省の局長からお答えしましたように、凶悪犯が非常にふえたという統計も出ておりません。若干の差は各年ともございますが、特にございませんが、今後とも米軍犯罪につきましては従来の方針どおり的確に捜査をしてまいりたいと思います。
○西宮委員 いわゆるティピカルな国際犯罪というのは、たとえば通貨の偽造であるとか、あるいはいろいろな貴重品、宝石類の密輸入であるとか、あるいは麻薬の密輸入であるとか、いろいろそういう問題があってずいぶん新聞にも報道されているので、そういう意味での国際犯罪というのは確かにふえているに違いないという感じがするわけです。 ちょっと伺いたいのだけれども、ICPOでいわゆる赤手配をするというのは、これは警察独自でやるわけですか。つまり、犯罪人引き渡しの場合だと、法によってやる場合には、あるいは条約によってやる場合はずいぶん細かい手続で、法務大臣、外務大臣が参画をして、参画というか最終的には決定をする、そういう機構になっているわけだけれども、ICPOで赤手配をする場合には法務大臣、外務大臣が加わるということはないわけですか。
○水町説明員 赤手配でございますが、一般的に国際逮捕手配書に赤色のマークがつけてあることで赤手配書と申しておりますが、この赤手配書は、逃亡犯罪人引き渡しを前提として最終的には手配国内において被手配者を逮捕するために発行するものでございまして、現時点において、日本にそういう手続規定がございませんので、日本が赤手配書を発行するようICPO国際事務局に依頼することはございません。現時点においては青手配書と申しまして、いわゆる逃亡犯罪人引き渡しを前提としない、たとえば警察が手配している者についてその所在を発見してほしいというような依頼をいたします青手配書というものを手配しているのが現状でございます。 〔山崎(武)委員長代理退席、委員長着席〕
○西宮委員 さっき途中までお尋ねしてきたこの資料ですけれども、日本が要求をされて断った、なぜ断ったかというその理由を原因別に挙げて細かく分類をしているのが十ページ、十一ページにありますけれども、この中には政治犯を理由にして断った、あるいは社会主義国で政治体制が違うということを理由にして断った、そういうケースはないのですか。
○伊藤(榮)政府委員 ここに掲げたとおりのことが資料に残っておるのみでございまして、これを見ます限りは、政治犯罪であるというゆえに断ったとかいうものはないようでございますし、また社会主義体制だから断ったというようなものもないようでございます。なお、先ほども申し上げましたように、社会主義体制の国からの引き渡し要求というものは恐らくなかったのではないかと思います。
○西宮委員 その次に、赤い紙がはさまって「逃亡犯罪人引渡しに関する立法例仮訳集」というのがありますけれども、これを見ると「仮拘禁関係」では十一例が挙がっているのですけれども、これはまだほかにもあって、ただし仮拘禁という定めをしているのはこれだけだという意味なんでしょうか。 それから、ついでにもう一つお尋ねをするが、一番最後にユーゴスラビアがありますね。これはいわゆる社会主義の国なんだけれども、そういう点では区別はないのでしょうか。
○伊藤(榮)政府委員 現在ほとんどの国が逃亡犯罪人引き渡しに関する手続法を持っておりまして、それにはほとんど仮拘禁の手続が決められておるようでございます。ここに収録いたしましたのは重立った国、いろいろな類型の規定の仕方がございますから、それらの重立ったものを取り上げて資料とさせていただいておるわけでございます。
○西宮委員 大半の国にこの法律ができているということであれば、いわゆる東側の国も対象にあるわけですか。
○伊藤(榮)政府委員 私どもが承知しておる限りでは、引渡法が存在する国が多うございます。
○西宮委員 そういうことになると、当然政治体制が違った国とは余り交流しない、この犯罪人引き渡しという問題について余り交渉しないというのも原則論としてはかえって不合理あるいは不自然なんじゃないかという気がするわけですが、この間来の質疑応答の中で、なぜそういうところとはやらないかというようなことは一応答弁があったので私もその点は承知をしておりますが、せっかく向こうにもそういう法律をつくっているのが大半だということであれば、それと没交渉であるというのはむしろおかしいのじゃないかという気がするのですが、どうでしょうか。
○伊藤(榮)政府委員 前回もたしか横山委員のお尋ねだったと思いますが、社会主義国が相手方であるから引き渡しの請求をしないあるいはこれを拒むという主義はもちろんとっておらないわけでございます。ただ、たまたま、わが国からいいますと、わが国で犯罪を犯した者が社会主義国へ逃げ込んだということが確認された事例もございませんし、また、先方から引き渡しの要求もない、したがって、そこを具体的な事例に即して詰めたことはない、こういう現状でございます。
○西宮委員 それは、いままで世界の国際刑法などを論議をする会議等では、体制の違った国とはこの問題については交渉しないということを原則にうたってきたということが現にありますから、私はむしろそういうことが理由ではなかったのじゃないかなという感じがするのですけれども、いまの局長がそういう御答弁ならば、それが日本政府の方針だということであればそれで結構だと思います。 その次に、いわゆる重要な犯罪というのを、この資料の六十一ページにもありますが、重要な犯罪を三年以上にするというのと、アメリカの場合は一年以上だ、こういう点について、これはどういうことなんでしょうか。日本で、旧刑法では重罪、軽罪あるいは違警罪というふうに分かれている。そして、いまの刑法施行法だと一年以上のものを旧刑法の重罪に当たるというふうに規定をしているわけであります。それは一体どこが原則になるのでしょうか。一年か三年か。つまり、重罪という観念は一年以上と見るのか三年以上と見るのかという点です。
○伊藤(榮)政府委員 現在のわが国におきましては重罪、軽罪という区別がございません。そこで、およそ条約のない国からの引き渡し要求がありましたときに、どの程度の範囲を引き渡すべきものとするかという一つの立法政策の問題になるわけであります。 考えてみますと、余りに軽微な犯罪あるいは短い刑、いわゆる軽い刑につきまして引き渡すということは、引き渡される者の人権の問題もございますので、その点は考慮しなければならぬことでございましょうし、また、条約のない国との間におきましては相互主義の保証が前提となりますから、わが国が今度逆にその外国に対してどの程度のものについて要求をすることがあるかということも考えなければなりません。そういう点を考えますと、一応の考え方として、ある程度の軽微なものは除いて引き渡し犯罪として原則的に規定しておくことが犯罪人の人権保障その他の観点から適当であろう。 さてそこで、わが国でそういうものを何か決める基準はないかというふうに見てみますと、いろいろな考え方はありましょうが、やはり一つの基準として、三年以上の自由刑に当たりますものは、たとえば刑事訴訟法におきましても緊急逮捕が許されるとかということで、一般的に裁判あるいは検察、警察といった活動の面におきましては、この三年以上というのが一つのめどになっておるということからそれを取り上げたわけでございます。 しかしながら、よその国におきましては必ずしもこのような、一応の基準とは言いながら、基準と違うものを持っておる国がございます。アメリカの場合は、先ほど一年以上と仰せになりましたが、そうではなくて一年を超えるわけでございますが、一年を超えるものを重い罪としております。したがいまして、アメリカとわが国との国際協力の立場からは、向こうの方が非常に軽罪、重罪の区別がはっきりしておりますから、これに従って対処するのが日米間の司法協力の緊密化を図るゆえんであろうということで、米側の重罪の概念に従って、一年を超える刑に当たる罪ということに例外的にいたしておるわけでございます。 今後、他の国と条約を結びます際には同じような問題が起きるのではないか、そのときは相手国の重い、軽いの基準の考え方と、わが国の考え方とをよく突き合わせまして、両国が妥当というふうに納得する線を見出して、それで決めていく、こういうことになろうかと思います。
○西宮委員 いわゆる国外犯として追及していくという場合でありますが、日本は世界でも例がないほど国外犯処罰の制度が整っていると言われているそうですけれども、この刑法二条に、外国人に対する処罰の規定があるわけです。これが今日では、日本もこういう逃亡犯罪人引渡法という法律ができましたからまあいいと思うのだけれども、その裏づけがあると思うのだけれども、これができる前は、一体外国人が犯した犯罪に対して、これを処罰をするというのはどうして担保されるのですか。私の質問の意味がわかりませんか。——つまり刑法の第二条では国外犯、外国人について処罰をするということがうたわれておるわけですね。しかしそれに対して、刑法は明治四十一年にできたわけですし、この法律は昭和二十八年にできた、その間は、そういう犯罪人を日本から請求するということは、いわば、いまで言うICPOみたいなそういう機構があればそれを通じてやるというようなこともできるのだろうけれども、それもなかった当時、ただ日本の刑法の方では外国人の犯罪も追及するということにはなっているけれども、それをどうしてその当時やることが可能であったのか、あるいはどういう方法でやっておったのかということです。
○伊藤(榮)政府委員 結局、刑法二条の外国人が外国で犯した犯罪を日本で裁判できるというこの規定は、その外国人がたまたま日本に立ち回ったとき以外には活用するすべはなかった、こういう状態でございます。
○西宮委員 それでわかりました。特に刑法の三条には、昔は日本人が外国で外国人から被害を受けたときにも、その外国人を処罰するということができるという規定になっておったわけですね、戦後はなくなりましたけれども。だから、私はそういう点は、規定だけあってどうしてその実行をするのだろうかという疑問を持っておったのですが、たまたま日本に来たときだけつかまえるというのでは、いわば全く権威のない規定だと思うのです。 ところで、現在でも外国で処罰をされるという場合には、たとえば日本人が罪を犯して外国に逃げていったというような場合に、向こうでつかまって向こうで処罰をされるというような場合は、その懲役に相当する期間だけ国外に追放するというようなことでけりをつけるというような例が多いというふうに聞いているのですが、実際そうでしょうか。
○伊藤(榮)政府委員 日本人が日本で犯罪を犯しまして外国へ逃げていった場合に、その外国が、日本人が日本で犯した罪について積極的に裁判をしたという事例は余り存じませんが、日本人が外国へ行って犯罪を犯したという場合に、たとえば日本人同士のけんかに基づく人殺しだというような事例がときどきあるようでございますが、そういう場合には、当該外国の国民が被害者であるわけでもなく、その外国にとっては関心が薄いと申しますか、余り関心がない犯罪になります。そういう場合には向こうで裁判をして、一回形式的に刑務所に入れますけれども、きわめて速やかに仮釈放等の措置をとりまして国外退去を命ずる、そういう形で日本へ送り返してくるということがときどき見受けられるようでございます。
○西宮委員 国外犯という問題は、さっきも申し上げたように、もとの、戦前の刑法の第三条とか、そういうところで非常に重大な事案として扱っておったようだけれども、今度の改正刑法の草案などを見ると、大分中身が変わってきたということで、いわゆる国外犯に対する日本の態度、姿勢、解釈、そういうものが大きく変わったのじゃないかという感じがするのですが、その点はどうなんですか。
○伊藤(榮)政府委員 御指摘のように、刑法総則には戦前まで、外国人が外国で犯した犯罪でも日本人が被害者になっておるような場合については、わりあい幅広く日本で裁判ができるような規定があったわけでございますが、戦後、占領時代に、国家主義的な性格の規定であるというような理由で削除されておるわけでございますが、その後、先ほど来御指摘のように国際交流が非常に活発になってまいりますと、全世界的な犯罪鎮圧のための協力をしなければならぬという一般的な、国際的な機運というものが一方に起きておりますし、他方、日本人が被害者である重大犯罪について、外国人が外国で犯したからといって、たまたまその者が日本に立ち回った場合にも手出しができない、また、当該外国が関心を有しないゆえに刑罰に処せられないで捨ておかれるというような場合には、引き渡しを求めてでもこちらで処罰をすることによって正義を実現する必要性もあります。 そういう観点から、個々の法律におきまして外国人の外国における犯罪をも処罰するような立法措置をとったものが相当あるわけでございます。御承知のようにハイジャック関係でございますとか人質犯罪関係等はその例でございますが、改正刑法草案におきましては、ただいま申し上げましたような日本人が被害者でありますような重要犯罪につきましては、再び、ただいま申したような新たな見地から日本において処罰ができるようにするために、改正刑法草案第六条で特に規定を設けたりいたして、手当てをしたいと思っておるわけでございます。
○西宮委員 私が伺ったのは、その改正刑法の第六条にしても、いままでの二条から第六条にまで後退したわけですね。つまり、いかなる人間でも該当するというのがいわゆる外国人の国外犯ということで後に下がり、それから、国民の国外犯というのも大分内容が変わってきている。したがって、いままでの日本のあるいは日本人の生命財産その他を守る、そういう非常に強い保護主義であったものが大分後退をして、いわば世界主義というようなものに変わってきたのではないかというふうな感じがするのですが、そういう解釈でいいのでしょうか。
○伊藤(榮)政府委員 改正刑法草案におきまして、確かに第六条にもそういう思想が一部出ておりますが、第七条で相当数の犯罪行為を掲げまして、いわゆる何人によらず日本国外において犯罪を犯した者にも適用することにしております。これがいわば世界主義というようなものでございまして、全世界一致協力して当該犯罪に対処すべきものを列挙しておるわけでございまして、そういう意味では、仰せになります世界主義というものが端的にあらわれておる条文といいますと、改正刑法草案におきましては第七条ということになろうかと思います。
○西宮委員 今回のいまわれわれが審議しております逃亡犯罪人の問題ですね。これも私の悪い癖かもしれませんけれども、この前と同じような疑問を感ずるのですが、特に犯罪人——逃亡はいいかもしれませんね。「逃亡」という言葉は昔も旧陸軍刑法、海軍刑法等にあった言葉ですね。犯罪人といってきめつけてしまうというのは、ずいぶん酷な呼び方ではないかという気がするのですが、その点はどうなんでしょうかね。全部犯罪人ということで、頭から犯罪人として扱ってしまっているわけですね。その点は少しひどいのじゃないかという気がするのですが。
○伊藤(榮)政府委員 「逃亡」という言葉と「犯罪人」という言葉を切り離して必ずしも考えないわけでして「逃亡犯罪人」という言葉を使っているわけですけれども、言葉の意義をしさいに分析していきますと御指摘のような問題点があろうかと思いますが、世界的に同じような言葉が使われておりますし、わが国においても明治十九年以来定着しておりますので、この言葉を使っていく方が概念の混乱が生じないのではないか、かように考えております。
○西宮委員 長い間使ってきたと言うのだけれども、私はやはりまだ犯罪人であるかどうかわからぬという人間に犯罪人というレッテルを張ってしまうというのは、まことにお気の毒だという気がします。第一、犯罪人というのは、日本ではいわゆる犯罪人になれば犯罪人名簿に登載されて、検察庁及び各市町村役場に登録をされる、こういう仕組みになっている。いわゆる前科者ということですね。犯罪人簿、同時に前科簿とも言うそうですか、要するに前科人になってしまう。頭からそういうふうに扱ってしまう。あるいはこの法律の中身を見ても、たとえば第一条には「「逃亡犯罪人」とは、引渡犯罪について請求国の刑事に関する手続が行なわれた者をいう。」こういうふうにしておりますから、請求国で刑事に関して取り上げたというのをこう呼ぶのだというふうに定義づけてはいますけれども、第二条などを見るとしばしば出てくる言葉ですけれども、逃亡犯罪人の犯した犯罪云々ということで「逃亡犯罪人の犯した政治犯罪」であるとか「逃亡犯罪人の犯した引渡犯罪」であるとかいったような言葉で、とにかく罪を犯した人間だというふうに最初から決めてしまうというのはかなり問題があると思うのだが、しかしいま以上の御答弁はないでしょうから、これ以上は申し上げません。 そこで、そのいわゆる逃亡犯罪人ですが、これの権利はどの程度に保護をされるのでしょうか。弁護人をつけることができるというようなことはあるようですけれども、たとえばその人間が請求国で裁判を受ける、あるいは被請求国で裁判を受ける、どっちが自分にとって有利であろうかというようなことを考えて、それを申し述べる機会というようなのはあるのですか。
○伊藤(榮)政府委員 法律上の保障はございません。
○西宮委員 異議申し立てもないのですか。これは行政訴訟で争うほかないわけですか。
○伊藤(榮)政府委員 結論的に申し上げますと、法務大臣の第十四条による引き渡し命令、これに対して行政訴訟で争う、こういう方法はあると思います。
○西宮委員 その途中で、たとえば東京高等裁判所が行う決定とかそういうものに対する異議の申し立てはできないわけですか。
○伊藤(榮)政府委員 東京高等裁判所の決定に対しては争う方法を設けておりません。と申しますのは、東京高等裁判所の決定は、方式不備で却下する場合、それから引き渡すべきでないと認める場合、それから引き渡すべき場合に当たるという認定をする場合、この三つあるわけですが、問題になるのは、最後の引き渡すべき場合に当たると認めた場合、この場合につきましても、高等裁判所の決定によって当該逃亡犯罪人は引き渡されるわけではございませんで、この高等裁判所の認定を前提とした行政権の代表である法務大臣の判断によって最終決定が行われるということでありまして、それまでは行政機関の内部意思決定のための手続でございますから、最後の法務大臣の決定の段階で争う、こういうことになると思います。
○西宮委員 それでは、請求国からの請求に基づいて仮拘禁をする場合がありますね。それで仮拘禁をしておったけれども引き渡しの請求がないというようなことで終わってしまう、四十五日でしたかな、その期間がたってしまうというような場合もあり得るわけだけれども、そういうときに補償はされるのですか。
○伊藤(榮)政府委員 午前中正森委員でしたかのお尋ねにもお答えしたところでございますが、およそ引き渡しの請求をすることを約束しておきましてとりにこないというような請求国は、著しく国際関係の外交上の礼儀を失するわけでございまして、万々ないと思います。したがいまして、まさにすぐれて理論上のみの問題だと思いますけれども、さような場合、すなわち仮拘禁はしてみたけれども結局引き渡しの請求をしてこない、あるいはとりにこないという場合には、釈放されるわけでございまして、それまでの間の拘禁というものがそこに残るわけでございます。これに対しては、現在のところ、補償するという規定にはなっておりません。と申しますのは、外国で日本に引き渡すために拘禁をされまして日本へ連れてこられて日本で裁判した結果無罪になる、こういう場合には、外国での拘禁も日本における拘禁期間と通算をして補償するという規定が現に置いてありますが、この逆の場合につきましては、たとえば同種の手続、例を挙げますと、入管令による強制収容あるいは精神衛生法による措置入院、その他幾つか例が挙げられると思いますが、そういう行政措置による身柄の拘束についての保証の要否というものを一般と対比しなければならぬということが一つ。それからもう一つは、当該請求国が仮拘禁を求めておきながら、信義を破ってとりにこないということになりますれば、外交ルートを通じて当該請求国に対して賠償を請求するというのがまず筋になるのではないか、こういうことも考えられるわけでございまして、将来の方向といたしましては、きわめて希有の考えにくい事態でございますけれども、今後の事態の推移によっては、あるいは外国へ請求してもナシのつぶてという場合にはお気の毒であるという意味において、立法的な手当てを要することが生ずるかもしれません。検討課題の一つでございます。
○西宮委員 局長の言われるように、全く希有のことだと思うのですけれども、このいわゆるいままで日本が請求されたけれども断ったという件数、数少ない件数でありますが、その中の一つにも「逃亡犯罪人引渡条約第一〇条の規定による仮逮捕期間満了のため釈放したもの」というのが一件あるわけですね。ですから、そういうとりにこないといったようなまことに信義誠実の原則に違反するような、そういうことも現に行われているわけですね。こんな非常に少ない数の中にもそういうのがあるのですから、やはり、ある程度そういうことをも考えておかなくちゃならないのじゃないかと思います。 それから、いろいろな外国から請求をされて被請求国は行動を起こすわけですけれども、それに要する万般の経費ですね。これはどっちが負担するのが原則なのですか。
○伊藤(榮)政府委員 国際慣行からいたしまして、請求国が、かかったお金は全部負担をするというのが原則でございます。ただ例外といたしまして、日米間の新条約におきましてはそういう金のことは、言わないで、手続をした方の国で持ってしまおう、こういう例外的な規定になっております。
○西宮委員 その日米新条約では、いわゆる護送の経費を別にして被請求国が負担をするということになっておるので、これは私はいま局長の言われた原則の全く逆ですね。ですから、非常に常識的にはまことにおかしいという感じがしたので、外務省は帰ってしまったけれども、これは条約としておかしいのじゃないでしょうかね。
○伊藤(榮)政府委員 日米条約交渉におきましては、要するに日米間の広い意味の司法共助を緊密なものにしていこう、お互いに自分の国の中で、自分の国の政府関係で要した費用というものは、一々勘定書きをつくって突きつけないでも、お互いに相殺勘定でいこうじゃないか、こういうような一般的なムードでございまして、そういう日米間の国際協力の推進という観点から、その辺はお互いに割り切ろうということになったのでございます。
○西宮委員 ただこれから先はどうなるのかわかりませんけれども、さっき一番最初に私が指摘したように、いままでのケースで見ると、特にアメリカと日本の場合だけを見ても、こっちが被請求国になるというケースが非常に多いのですね。日本が請求するという件数の何倍か日本は請求される方の立場である。そういうことだと、これは大変細かいそろばん勘定だけれども、日本はずいぶん損するのだなという気がするのですが、その辺はいいのですかね。
○伊藤(榮)政府委員 将来アメリカから日本に対する引き渡し要求もいずれ出てくるかと思いますが、いままでの実績は、わが国がアメリカに対して引き渡しを求めて引き取ったのが二件あるだけで、逆のこちらが渡したケースはございませんので、その辺は条約交渉の際に、どちらが損をするか得をするかというようなことも、それぞれの国では頭の中にそろばんを置いたかと思いますけれども、そういうめんどうなことはやめようということでいま申し上げたような決着になっているわけでございます。
○西宮委員 政治犯の問題については大分たくさんの委員の皆さんから質問がありましたので私は繰り返しませんけれども、日露条約の中にも、政治犯の問題が「政治上の性質を有する犯罪」という言葉でうたわれておったそうですか、しかしながら、日露条約は形式的には従来の帝政ロシアが現在のソ連邦に変わったというあの時点で消滅してしまったという解釈ですか。
○伊藤(榮)政府委員 ソビエト連邦政府において従前の条約を継承しませんでしたので、その時点で効力を失った、こういう理解でございます。
○西宮委員 政治犯の問題はたくさん論議をされましたから、私はこれ以上取り上げませんけれども、従来十八世紀当時には犯罪人の引き渡しと言えば、むしろ政治犯をよこせ、政治犯を引き渡せというのがその内容実態だった。今日では逆に、政治犯は引き渡さないというのを原則にする。これだけは日本の法律の中にも非常に明確に書かれているわけですから間違いがないと思う。 ただ問題は、どれが政治犯であるかということが問題だと思うのですが、今度のこの付録にもついておりますが、ヨーロッパ条約ですね。ヨーロッパ条約の第三条の第三項ですけれども、ここでは「本条約の適用については、国の元首又はその家族の生命に対する危害は、政治犯罪とはみなされない。」こういうふうに規定してあって、これは全くの強要罪か何かそういう普通犯だという解釈なんでしょうけれども、こういう規定、ここでは国の元首に対して危害を加えるというものだけを取り上げているのですけれども、そのほか、たとえば最近はやりのハイジャックとかいろいろそういうものを政治犯と見るか見ないかということが、かなりむずかしい問題だというふうに思うのですが、その動機がいわゆるハイジャックと言っても、近ごろの過激派の全く常識では考えられないようなああいう行動ですね、これはとうてい政治犯なんて称すべきでないということは明らかだと思いますけれども、かなり政治的なそういう動機から出発をして、それで結果として時の権力者に向かって相当強要をするとか、いろいろそういう問題はあり得ると思うのですね。そういうときにどこで線を引くかということはかなりむずかしい問題と思うのですが、その点はどういうふうに認識したらいいのですか。
○伊藤(榮)政府委員 いわゆる相対的政治犯罪と言われますもの、すなわち、ある国の政治形態の変革を目的とし、あるいはこれに関連して行われる普通犯罪をどう扱うかということが一つの世界的な困難な課題であるわけであります。結局、引き渡しをするかしないかという判断をしますときに、具体的案件が政治犯罪に当たるかどうかということは、もっぱらわが国がわが国の主権に基づいて認定するわけでございます。そういう認定をいたします際には、政治犯罪というものに対する世界的な認識、これを十分そしゃくし、念頭に置いた上で対処しなければならない、こういうふうに思うわけでございます。そういう頭で世界的な動きを見てみますと、たとえばテロ防止条約などで顕著に示されておりますように、目的のいかんを問わず、ともかくテロ的な行為というものはまことに非人道的な破廉恥なものであって、とうてい政治犯として庇護されるべきものではないというふうな風潮が次第に世界各国の同意を得つつあるというふうに認められるわけでございまして、そういう現状を念頭に置きながら、かつ具体的案件を客観的に見詰めまして、そういう世界的な風潮があるということを念頭に置いても、なお政治目的がはなはだ勝っておるというようなものであるかどうか、そういう点を判断して決定をすべきである、かように思っております。
○西宮委員 言われたそのいわゆる相対的な政治犯、これなども、考え方としては政治犯と理解をして、ただしそれによって行使をされる手段がきわめて不当だ、こういうことで、そういうテロ行為とか、そういうものは一般刑法に照らして処断をする、こういう考え方なんですか。つまり、相対的政治犯も一応政治犯という理解の上に立って、ただしそれに随伴したあるいは手段として用いる行動が憎むべき行動だ、こういうことでそれはその処罰の対象にする、あるいは引き渡しの対象にするというような考え方なんですか。
○伊藤(榮)政府委員 御指摘のような考え方ではございませんで、政治目的があったといたしましても、きわめて非人道的な、卑劣な、破廉恥な犯罪を犯し、これを手段としようとするような場合には、すでに相対的政治犯罪の概念にも当たらないという考え方でございます。
○西宮委員 政治犯を庇護するということで、法律で決めている国がありますか。政治亡命については憲法で亡命者を保護する、庇護するということを決めている憲法があるそうですか、政治犯についてはそういうあれはありませんか。
○伊藤(榮)政府委員 政治犯罪人についてこれを庇護するというような法制を持っている国はないと思います。ただ政治犯罪人不引き渡しの原則は各国が例外なくうたっております。政治犯罪人であるゆえをもって引き渡さないということで、その国にとどまった状態をながめますと、そのうちには政治亡命者にも当たるという場合が相当あるのじゃないか、こういうふうに思います。
○西宮委員 次に、そのいわゆる政治亡命者のことについてお尋ねをしたいと思います。 この問題も大分議論をされておりますので、私は残っておるわずかの問題をお尋ねをしたいと思うのですが、外務省が帰ってしまったのでちょっと残念なんですけれども、この亡命者の問題は、たとえば世界人権宣言にもうたわれているのですね。十四条の一項ですけれども「何人も、迫害からの保護を他国において求め且つ享有する権利を有する。」こういうことで、これは人権局長もおりませんから大臣にでもお尋ねするほかはないと思うのですが、いわゆる政治亡命者については、この人権宣言にうたっているような内容で、亡命者、つまり本国において迫害をされておるという人が日本に逃れてきたというような場合にこれを保護する、そういうことを積極的に取り組んでいく、そういう考え方はお持ちじゃありませんか。
○吉田政府委員 先生のただいまの御質問で人権宣言をお引きになりましたが、その後国連では難民条約ができているわけでございます。難民条約はすでにその国にいる人のことを主として規定しているわけでございますが、今度は政治亡命的に、たとえば日本の国に入ってくるその人を上げるか上げないかというような点を、また上げた場合にどうするかということについて国際的な条約をつくろう、いまこういう動きがございまして、昨年国連が主催いたしまして、これを領土的庇護に関する条約と称しておりますが、昨年第一回会議を開いて、あと一、二回会議を開く予定でございまして、まだ条約案でございます。締結には至っておりません。
○西宮委員 いまの難民の地位に関する条約というものですね、これは国連では一九五一年に取り上げた問題なんですが、これはいま入管局長の答弁もありましたけれども、日本政府として、これに対して日本は参加するのかしないのか、どうなんですか。
○吉田政府委員 法務省といたしましては、この条約に大筋において異議はないのでございます。ただこれは非常に各省にまたがることを規定しておりますので、まだ政府部内で各省間で協議するというところまでは至っておりませんが、とりあえず今国会は人権規約をまず批准していただくということに全力を集中しております。次のステップで難民条約が取り上げられるかどうかはまた政府部内で検討いたしますが、法務省としては異議ないということを現段階で申し上げることができると思います。
○西宮委員 いま局長も言われた国際人権規約、これはこの委員会でもたびたび議論をしてきたわけなんですが、いま進行状況はどうなっているのですか。
○伊藤(榮)政府委員 全く所管ではございませんけれども、私が知っております範囲で申し上げますと、今国会に何としても提出をするということで、いま所要の手続を進めておる段階、こういうふうに聞いております。
○西宮委員 これは法務大臣にお尋ねをいたしますが、ずいぶんたびたび論議をされた問題ですけれども、もう会期も余すところそう大してないわけなんです。私どもこの国会にもう提案されないのじゃないかという心配を持っているのですけれども、どうなんですか。
○瀬戸山国務大臣 御承知のように、人権規約は各般にわたった問題点がありますから、各省庁、国内法との関係、あるいは国内法を改正すべき点があるかどうか、いろいろ関係があります。でありますから、今日までそういう点を検討して詰めてまいったのでありますが、これは国際的な大きな課題でございますから、何とかこの国会に提案をしたい、近く提案ができる準備が詰まりつつある、こういうことでございます。
○西宮委員 それじゃ、とにかくこの国会に提案されるというふうに私どもは期待をしておって間違いがありませんか。
○瀬戸山国務大臣 二、三日前も外務大臣とも相談したわけでございますが、そういうことになると思います。
○西宮委員 それではそのつもりで私どもも期待を申し上げておりますから、ぜひ何とかして提案してもらえるようにお願いしたいと思います。 入管局長で結構ですけれども、亡命者を保護する、そういうことを法制上うたっている国は大体十カ国ぐらいあるというふうに私は聞いておるのですけれども……。
○伊藤(榮)政府委員 政治亡命者につきましては、それぞれの国はこれを庇護する権利がある、しかし義務はまだないという国際法の発展段階だと聞いておりますが、それを庇護する義務にまで高めようというのが人権宣言十四条の趣旨だろうと思います。 ところで、いまお尋ねの、政治亡命者を保護するための法律を持っておる国、これは私ども所管でございませんから十分な調査は行き届いておりませんが、世界で大体十カ国前後がそういう法律を持っておる。特に、これは私の記憶でございますが、たしかアルゼンチンあたりではなかったかと思いますが、憲法上政治亡命者の庇護をうたっておる国もあるように承知しております。
○西宮委員 私ども聞き及んでおりますのは、共産国にかなりある。それからいわゆる資本主義の国ではフランスなどだというふうに聞いておるのですけれども、共産圏にありましょうかな。
○伊藤(榮)政府委員 私どもの雑駁な調査によりますと、共産圏にはいまちょっと確認をいたしておりません。西ドイツ、スウェーデン、オーストリアなどの国内法制がわりあい整備されておる代表的なものじゃないかと思っております。
○西宮委員 入管局長にお尋ねをいたしますが、いわゆる在日韓国人の政治犯と称する問題ですね。これは韓国において政治犯として扱われているという問題で、その人が日本に来るというのは決して亡命ではないわけです。在日韓国人ですから。日本に帰ってくるというだけの問題で、言うところの亡命者が日本に入ってくるというのとは性質は違います。しかし、この機会にお尋ねをしておきたいと思うのですが、私はそういう人はもともと日本におった人なんですから、日本に帰ってくるということを日本としては温かく迎える、ぜひこういう態度であってほしいと思うのですが、それは間違いないですか。
○吉田政府委員 先生のお尋ねの対象は、たとえば戦前から日本に在住しておられた韓国人とかいう人たちのことだろうと思うわけでございますが、そういう人たちが韓国で刑を受けて、向こうは出国許可を出さないとなかなか帰れないわけでございますが、向こうが旅券を出して日本へ戻ってくるという場合には、われわれといたしましては、もちろんその人が在日歴が非常に長いとか、それから多分御家族がこちらにおられるとか、そういう事実を十分考慮に入れてケース・バイ・ケースに決定していきたい、こう考えております。
○西宮委員 ただ日本に再入国をする際に、再入国ばかりでなしに初めての入国でももちろんそうでしょうが、刑事犯罪を犯しているかどうかというようなことが欠格条件になる場合があるわけですね。そういうことを言えば、韓国へ行っていわゆる政治犯ということで裁判を受けて犯罪人になっている、そういう点でこれも同じような欠格条項だというふうにとられると非常に困るわけなんです。そういうことはないのでしょうね。
○吉田政府委員 ただいまも申しましたように、そういう場合は在日歴の長さとか家族がおられるとか、もともと日本に根を生やした人たちであるということを前提に考えさせていただきたい、こう思っております。
○西宮委員 要するに韓国においては何らかの意味で犯罪人になっているというのでしょうけれども、これはいわば現在の韓国の政治権力者に対して抵抗するとか批判をするとかそういうことが問題にされているのでしょうが、したがって韓国においてはそういう扱いをされたのはやむを得ない——私どもは実はやむを得ないとは考えないんですけれどもね、まことに不当な扱いを受けておる、きわめて非人道的な扱いを受けておるので、私どもはそのこと自体を非常に重大な、むしろ韓国の政治権力者がそういう意味では犯罪的な行為だというふうに考えているわけであります。いまそういうことを申し上げたのでは通らないでしょうから、それは議論しないことにして、しかしとにかく、仮に韓国ではそういう犯罪者として扱われたというような場合でも、日本に帰ってきて日本の社会を脅かす、日本の社会の平和を乱すというような人間でないことだけは明らかですね。ですからそういう人は日本では再入国ということについてはできるだけ、できるだけというか、その点だけは明確に、再入国は必ず認めるということをもう一遍言明をしてもらいたいと思います。
○吉田政府委員 いま先生のお尋ねの件でございますけれども、これはケース・バイ・ケースでいろいろありますし、また罪の内容にもいろいろございますので、これを一概に全部よろしいとこの場で言うのはちょっと差し控えさせていただきたいのですけれども、気持ちといたしましては、先ほどもお答えいたしましたように在日歴が非常に長い、それから家族もこちらにおられる、実質的にもう日本に根が生えた人だということを考慮して好意的に検討していきたい、こう考えております。
○西宮委員 そこで問題になりますのは、出入国管理令の二十六条の第三項ですね。これをいま局長が言われたようなそういうふうに限定して結構です。生活の根拠が日本にあって長い間日本に暮らしてきた、あるいはまた日本で生まれたというような人も少なくないと思うのです。ですから、その場合はこの二十六条の第三項は適用除外にするということにしてもらいたい。
○吉田政府委員 再入国の期限、一年以内に再入国しなければならないという条項のことを先生おっしゃっているのだろうと思いますけれども、これは法律事項でございまして、この一年の期限をやはり守って——これを超えてもよろしいと私の口から申し上げるわけにはまいらないのでございます。しかし、いずれこれは法改正するときには何とかしたいと思っているのですけれども、実質的にそういう人が余りそれによって不利益をこうむらないように好意的に考えて、要するに、再入国許可期限が切れたからあなたはもう日本に帰る権利がない、私の方でこう申しますとそれは非常な不利益を相手方に与えるわけでございますけれども、私の方は、切れてもいろいろ日本に入る方法はあるのだからそれで入ってきていただきたい、そして入ってくればできるだけ好意的には検討する用意がある、こういうことでございます。
○西宮委員 時間がなくなりましたからこれで終わりにいたしますが、たとえば徐俊植という、兄弟でこれは弟の方ですけれども、そういう人がおりますが、この人は七年の刑を科せられて、この五月の二十七日にその刑期が満了するわけでございます。したがって、出獄してから韓国でまたつかまる——つかまるというのは何か社会保安法とかなんとかいうのがあるそうですね、そんなのでまた勾留されるというようなことでもあれば別問題、日本に来ることもできなくなると思いますけれども、しかしそうでなしに刑期が満了するということになると、これは全く目の前にその時期が迫っているわけです。これは日本で住んでおった、勉強しておった学生なんですから、いまその時期が迫っておるので、そういう際にはぜひともいまのように扱ってもらいたいということを申し上げたい。そもそもこういう人たちは、よその国の人が日本は大変住みよい国だから老後は日本で暮らそうとか、そういうことで住んでいる外国人ではないので、これは全くそういう選択の余地なしに日本の国に住んでいる人たちなんです。だからその点だけはあくまでも別に考えてもらいたい。 それじゃ最後に大臣にも、局長御答弁をいただいた後でも結構ですが、一言その点について所見を伺いたいと思うのですが、私の申し上げていることは、外国人というカテゴリーでは同じだと思うのですよ、しかし、そもそも自分の選択で、日本がいいから日本に暮らそうというので住んでいる人ではないので、これは全く選択の余地なしに日本の中で生活をしなければならない、そういう宿命を帯びている人なんですから、そういう人が日本に帰るという場合には、現在の出入国管理令の二十六条三項、これは一年たつと失効して権利がなくなるという規定ですけれども、私はぜひそれの適用除外にしてもらいたい。いま局長は、この次法改正等を審議する際は、ぜひとも検討したい、こういうお話だったけれども、その法律を改正する場合はもちろんですけれども、できるならば何とか行政措置ででもいまは適用除外にしてもらう。これは局長、現在でも何か特別の理由がある場合には一年たっても若干期間を延ばすというようなことが行われているわけですね。ですから私は、そういう除外例としての扱いもできるのじゃないかと思うので、ぜひそこのところは考えてもらいたい。
○吉田政府委員 そのただいまの問題は、少し延ばしている場合もあるのじゃないかという、実質上は半年くらい、たとえば病気をされまして実際上動けなかったとかいう場合なんかはその点は考慮をしているわけでございますが、何分これは法律事項でございますので、私の口からここでその法律事項を破ってよろしいということを申し上げるわけにはまいりませんけれども、実際はその再入国期限が切れたということは、先ほども申しましたように、だからもう日本へははいれないのだということじゃなしに、再入国許可は切れても、たとえば十二条で法務大臣が特別に許可して日本に入ることを許すということもできるわけでございますので、基本的には私の方はできるだけ好意的に考えたい。ただ、その法律でしっかり規定してある点を乗り越えてくれ、その条項を無視してくれというわけにはまいりませんので、実質的にその方が目的としておられることが達せられるように計らいたい、こういうわけでございます。
○瀬戸山国務大臣 いま入管局長の説明で御理解いただいたと思いますが、一年間の再入国の権利を持って韓国に渡った、しかし、向こうに行ったら日本ではちょっと考えられないようないろいろな規定がありますから、それに当たって、一年以上、二年なり三年なり再入国期間に帰ることができなかった、こういう事例があるわけでございます。しかしだからといって、一年間の再入国期間が、これはあってもなくてもいいのですよというわけにはいかない、こういうことです。ほかの事情で入る機会があれば、日本に長く滞留しておったような人はできるだけ人道的な立場でそういう方々に有利に取り扱いを進めたい、こういうことでございますから、この際は御理解を願いたい、こういうことでございます。
○鴨田委員長 次に、鳩山邦夫君。
○鳩山委員 ある家に家訓がありまして、これは想定でありますが、子供たちは夏休み以外は一生懸命勉強をしなければならない、こういう家訓があったとしますね。そうすると、これは夏休みは遊んでもいいよという意味です。だけれども子供たちが、いや、おれは夏休みも一生懸命勉強するのだと言えば、これは勉強しても構わない、その家訓に違反するわけではない。つまり、夏休みを除いて一生懸命あとは勉強をしなければならないという家訓と、夏休み以外はとにかく勉強しなければならないし夏休みは絶対勉強してはいかぬという家訓、これは全然違うのですね。 この引渡し法の第三条を見ますと「外務大臣は、」というところなんですが、一号、二号の場合を除き法務大臣に書類その他を送付しなければならない、となっているわけです。いまの、夏休みを除いて一生懸命勉強せねばならないという家訓と全く同じ構成であります。ということは、一号や二号に当たっても書類を送付してもいいということなんでしょうか、お尋ねいたします。
○伊藤(榮)政府委員 第三条の一号、二号に書いてありますことは、引き渡しの請求を受理するための基本的な条件でありますから、この第三条の柱のところを字句どおりお読みいただきますと、ただいまの家訓の設例と似ておるわけでございますが、およそ外務大臣としては、引渡し条約に適合しない方式で請求があったとか、あるいは相互主義の保証を要するのにその相互主義の保証をしてこないという場合には、この柱の読みの結果の判断として、やはり法務大臣に送付すべきものではない、こういうことになると思います。
○鳩山委員 しかし法律というのは、読みとか柱とか、余りそういうものがまじってくるというのは好ましいことではない。もちろん法解釈というのはいろいろと高度な判断からなされる場合もあると思いますけれども、少なくとも相互保証が行われない場合は書類を送ってはいかぬとか、何かそういうような書き方の方がベターではなかったか。つまり、確かにその精神は局長の答弁のとおりだと思いますけれども、ただ外務大臣がちょっとへそ曲がりであったり、特殊な政治的なもくろみを持っておった場合に、引渡し条約のない国から逃亡犯罪人の引き渡しを要求された、請求国から同種の請求に応じるという保証がなくても書類を法務大臣に送付できる、少なくともそう読み取れるわけですね。今度それを受けた法務大臣の方も全く同じことで、第三条と第四条は先ほど私が申し上げた家訓と同じ構成になっておりますから、またこの四条も突破してしまうということで、相互保証がないままに逃亡犯罪人を引き渡してしまうということになりかねない。それは現在のようなりっぱな外務大臣や法務大臣であればいいわけでありますけれども、これはへそ曲がりの法務大臣と外務大臣が出てきますと、第二条ではちゃんと明確に制限してあるわけですけれども、二条に当たらない場合はどんな場合でも引き渡すことができるというふうなことになってしまいはしないか、そういうおそれを持つわけでございますが、いかがでございましょうか。
○伊藤(榮)政府委員 条文の書き方の問題に帰すると思いますけれども、たとえば一号、二号に当たる場合には書類を法務大臣に送付してはならない、そうでない場合は送付しなければならないというふうに書けば明快であるかもしれませんが、他の条項などを見ますと、必ずしもそうも言い切れない、是々非々でいい場合もございまして、それを一々書き分けるということをしておりませんことがおわかりにくいといいますか、ということであればおわびをしなければならぬわけでございまして、今後の立法の態度として十分承っておきたいと思います。
○鳩山委員 いまの御答弁のとおりではないかと実は私も思っておるわけであります。確かに法律の書き方の問題でございましょう。しかし本当に厳密に解釈をしていけば、先ほど申し上げたように法務大臣、外務大臣がへそ曲がりであれば三条も四条も苦もなく突破をして好き勝手なケースで引き渡しに応じるということが出てくるんじゃないか。したがって、今後のいろんな立法をなさる場合とか、あるいはまたさらにこの改正というようなことが言われてくるような場合には、ぜひそうした文言の点まで厳密に見ていただいて誤解のないように、万一という場合が起きないようにしていただきたいと思います。 それから二十三条の二項、もちろんこれは三条の二号にもあるわけでございますけれども、いわゆる「同種の請求に応ずべき旨の保証」というこの相互主義の保証、同種という意味がどの程度厳密な意味を持っておるのかお尋ねをしたい。
○伊藤(榮)政府委員 同種と申しますのは国際間の場で用いられる言葉でありますから、その国際間で用いられる言葉の通例といたしまして、やや政治的なニュアンスを持っておる言葉であると思います。したがいまして、この字義に即して申しますと、当該犯罪と同種というふうに社会通念上、健全な法律常識上言えるような犯罪、こういうことに帰するわけですけれども、しからばどういうものがそうかと言われますと、詐欺罪がいま問題になっておる、将来詐欺罪が問題になれば同種のものかというと必ずしもそうはならない。それは被害額の大小いろいろあります。それから、現在詐欺が問題になっておって、将来窃盗が問題になる、罪名が違うから同種ではないかというと、そうでもない。要するに両方の国がその犯罪をながめまして、大体同じような法的評価、社会常識的な評価を受けるものであるかどうか、こういうことをそれぞれに考えまして、両方で突き合わせて、これが果たして同種であるかどうかという国際間の詰めで同種か同種でないかということを判断するということにならざるを得ないと思います。
○鳩山委員 たとえば、外国で強盗殺人を犯して日本に逃げてきた、これはもちろん条約はない、これを引き渡せと言ってきた、その場合、日本側からは同種の保証を求めるわけでございますね。強盗殺人で逃げてきた者を引き渡せと言われて、今度こちら側から相互保証を要求する場合、どの程度のことを要求するのか、想定で結構でございますからお答えいただきたいと思います。
○伊藤(榮)政府委員 外国で強盗殺人を犯して日本に逃げてきた者を引き渡せと言ってまいりますと、それでは相互主義の保証をしてください、そうしますと当該外国は、それができると思えば口上書で相互主義の保証をいたします。こう言ってまいります。手続はそれで終わるわけですが、この次に今度は日本で強盗殺人を犯した者がその国へ逃げまして、今度こちらが要求をする。わが国としては、前にこちらが渡した者と今度引き渡しを要求している者が法律常識的に社会通念上大体同種だというふうに思っておる場合には義務として引き渡しを求めることができる。しかしその外国が、この前引き取った強盗殺人と今度引き渡しを要求している強盗殺人とはえらい内容が違うということになりますと、そこで問題が解決しない。そこで、それはともかく、それじゃ今度の強盗殺人は前のと違うかもしれないけれども、今後同種の犯罪があったら相互的にやりましょう、そこでまた相互主義の保証をして引き取る、こういうことだろうと思います。
○鳩山委員 いまの御答弁でもわかるように、結局この相互保証というのはなかなかむずかしい内容を含んでいると思います。したがって相互保証と口で言うのは簡単でありますけれども、その同種というのがどの程度まであるか、全く同じ事件というのは二つは絶対ないわけでありますから、その辺にむずかしさがある。やはりそうなれば、できるだけ多くの国と逃亡犯罪人引渡し条約を結ぶということが必要になってくる。政府はそうした方向で今後とも御努力をいただきたい。そうでないと、相互保証というような言葉だけでは実際には大した保証にはならない、私はそのように思います。 それから、いわゆる通過護送の承認につきまして、提案理由の説明の中で、日米新条約で通過護送のことについて取り決められたから、それを受けて三十四条を新設をしたんだということが明確にうたわれておるわけでございます。ということは、日米新条約の第十五条と今度の新第三十四条とが対応してくるわけでございますが、これは実はまた書き方が全然違うわけでございますね。日米新条約の場合は「護送する権利を他方の締約国に認める。」というわけですから、つまりこれは義務を負うということとほとんど同義ではないかと私は思います。これこれの場合を除いてあとは通過護送というものを承認しなければならないというのが日米新条約であります。それに対して第三十四条の場合は、これこれの場合を除いて「承認することができる。」これはやっぱり書き方が全然違うわけですね。それはどうしてこのような違いがあるのか、お答えをいただきたいと思います。
○伊藤(榮)政府委員 このたび第三十四条の新設を提案しております趣旨は、先ほどもちょっと御指摘になりましたように、日米新条約において明文で通過護送の承認に関する規定が置かれましたことを契機といたしまして、米国から通過護送の承認を求められました場合のほかに、諸外国にも通過護送の規定を持っておる国が非常に多うございますので、この際、それらの国から事実上の相互主義の保証のもとに通過護送の承認の請求があったときに対応できるようにしたい。それにはどういう方法で規定するのがよろしいかということを検討いたしました結果、法務大臣が通過護送承認の権限を有するという権限規定として設けることにしたわけでございます。もちろん、法務大臣がこの権限規定を運用されます際に、日米新条約における通過護送の規定を十分尊重して権限を働かされる、こういうことにしたわけでございまして、日米新条約の施行のみのためならば日米新条約と全く同じ文言でよかったのかもしれないと思っております。
○鳩山委員 それでは最後に、第二条と第四条の関連につきましてお尋ねをいたしたいと思います。 第二条で、たとえば第九号の自国民不引き渡しの原則というものを取り上げてみたいと思います。そうしますと、第二条は「左の各号の一に該当する場合には、逃亡犯罪人を引き渡してはならない。」つまり、逃亡犯罪人が日本国民であれば引き渡してはならぬ、こう明確に大原則をうたい、ただし、条約で別段の定めがあればこれはまた別なのだ、こういうふうに定めておるわけでございます。ところが、第四条の二号では「引き渡すかどうかについて日本国の裁量に任せる旨の引渡条約の定めがある場合」と言って、これは「別段の定」のうちのまた特殊な場合をこうして規定をしておる。これは日米旧条約あるいは今度の新三号を見ますと、日米新条約を受けているということがよくわかるわけであります。そもそもこういう特殊なケースを四条の二号、三号に書き込んだということ自体が、日本が引渡条約を結んでいる国がアメリカしかないということから来ているのではないかと思うわけであります。 ところで、「日本国の裁量に任せる旨」というのは、確かに日米新条約にもはっきり書いてあるわけですが、この裁量というのは何だろうかということを私は考えたわけであります。つまり、条約に何にも書いてなければ自国民は絶対に引き渡すことができない。ところが、条約で日本国に任せますよというと、今度は法務大臣の権限で自国民を引き渡すことができるようになってしまう。常識的に考えると何か非常におかしなことだと私は思うのです。条約で、たとえばこれこれのケースは自国民といえどもお互いに引き渡さなければいかぬという義務規定が掲げてあれば、文字どおり第二条に言う「条約に別段の定」そのものだろうと思うのですが「日本国の裁量に任せる」ということであれば、この第二条の原則に戻ってくるべきでないだろうか。任せるのであれば、もう渡す渡さないの判断をする権限というのは法務大臣には与えられていないのではないか。日本国に任せるわけです。日本国というのは日本国民であり、そして国民の代表が国会議員であり、その国会で昭和二十八年にできたのがこの引渡法であって、ただし書きがついているけれども、大原則で、日本国民の場合は絶対に引き渡さない、引き渡してはならないとうたっておるわけですから、この裁量の余地というのは本当はないのじゃないかと思うわけでありますが、いかがでございましょうか。
○伊藤(榮)政府委員 まず、条約で日本国の裁量と言っております場合には、行政権の裁量ということを考えておるのだろうと思うのでございます。 そこで、第二条の柱の読みでございますが、これが先ほど御引用の例の家訓のような書き方をしてあるわけでございまして「左の各号の一に該当する場合には、逃亡犯罪人を引き渡してはならない。但し、」「引渡条約に別段の定があるときは、この限りでない。」この「別段の定があるときは、この限りでない。」というのは、引き渡すべきであるというふうに読むわけではなくて、引き渡してもいいし、引き渡さなくてもいいというふうに読むわけであります。条約を読みますと、日本国政府の裁量によって——日本国の裁量というのは、私どもは日本国政府の裁量というふうに考えておりますが、その裁量によって引き渡してもいいし、引き渡さなくてもいいと書いてある。そこで、その実効を担保するために四条の一項二号が置いてあるということでございまして、たとえば自国民も引き渡さなければならないという条約だとしますと、もうこの四条の一項二号は要らなくなるということでございます。 そこで、おわびをしなくてはなりませんのは、先ほど御指摘の第三条とかそういうところの柱とこの第二条の柱とが家訓のような柱であるかそうでないかという、若干の読みのむずかしい点があるように私自身も思います。将来しかるべき機会があれば検討したいと思います。
○鳩山委員 終わります。
○鴨田委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。 —————————————
○鴨田委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決いたします。 本案に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○鴨田委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。 —————————————
○鴨田委員長 次に、ただいま可決いたしました本法律案に対し、山崎武三郎君外七名から、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党、日本共産党・革新共同、新自由クラブ、無党派クラブ及び社会民主連合の共同提案に係る附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。 まず、提出者から趣旨の説明を求めます。稲葉誠一君。
○稲葉(誠)委員 私は、提案者を代表して、附帯決議案の趣旨について御説明申し上げます。 まず、案文を朗読いたします。 逃亡犯罪人引渡法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案) 一 政府は、米国以外の国とも犯罪人引渡しに関する条約を締結するよう努力すべきである。 一 政府は、いわゆる地位協定により、米国が第一次裁判権をもつている事件の処理の結果等について、米国から遅滞なく通報をうけるよう努力すべきである。 一 政府は、国際人権規約にすみやかに加盟するよう努力すべきである。 一 政府は、政治亡命者及び難民の保護について十分な措置を講ずべきである。 本案の趣旨については、委員会の質疑の過程ですでに明らかになっておりますので、省略いたします。 何とぞ本附帯決議案に御賛同あらんことをお願いいたします。
○鴨田委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。 直ちに採決いたします。 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○鴨田委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。 この際、瀬戸山法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。瀬戸山法務大臣。
○瀬戸山国務大臣 逃亡犯罪人引渡法の一部を改正する法律案につきましては、慎重に御審議をいただきまして御可決いただきましたこと、ありがとうございました。 なお、ただいま附帯決議をいただきましたが、これに対しましては、その趣旨を十分に尊重いたしまして、鋭意努力してまいりたいと存じます。 —————————————
○鴨田委員長 お諮りいたします。 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○鴨田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
○鴨田委員長 次に、内閣提出、刑事事件の公判の開廷についての暫定的特例を定める法律案を議題といたします。 お諮りいたします。 この際、最高裁判所岡垣刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○鴨田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 —————————————
○鴨田委員長 質疑の申し出がありますので、これを許します。山崎武三郎君。
○山崎(武)委員 本法案は、昨年九月に発生したダッカ日航機ハイジャック事件の後、ハイジャック防止対策の一環として提案されたものと承知しておりますが、クアラルンプール事件及びダッカ事件によって不法にも奪い去られた十一名中八名は現に公判係属中の被告人であり、もし今後も同様の事態が繰り返されるならば、司法の権威は地に落ち、法治国家の基盤が動揺させられることは明白であります。このようなハイジャック事件初め、過日の成田新空港施設に対する過激派による襲撃事件などの再発防止のために最も必要なことは、国民一人一人が法の尊厳を深く認識し、法秩序を根底から覆す不法越軌行動を絶対許さないというかたい決意のもとに、国民全体が一丸となって事に対処することが必要であると考えます。 ところで、一部過激派事件の法廷において裁判粉砕を呼号する被告人と弁護人が一体となって不当な法廷闘争戦術を繰り広げ、このため裁判の進行が被告人らの恣意にゆだねられている事態を放置しておくことは、国民の間に法無視的風潮を醸成せしめる結果となることは必定であります。本法案に反対している者は、過般のハイジャック事件では既決囚も奪われているから本法案はハイジャック防止とは関係がないなどと宣伝しておりますが、このような考え方こそ民主主義社会における法の尊厳の価値に思いをいたさない浅薄な考えであると思いますが、法務大臣の所見を伺います。
○瀬戸山国務大臣 申し上げるまでもなく、わが国は憲法下のいわゆる法治国家でございます。沖治国家というものは、法律に従って活動し生活をする、それによって社会が平和で安全で、国民が自由に活動ができるという仕組みだと私は考えております。ただしかし、社会の中にはいろいろ法に反することもあるし、また約束違反することもある。そういうときには、最終決着は憲法に定められた裁判制度によって法の目的とするところを明らかにする、こういうことでございます。その裁判の最終の保障があって初めて法治国家としての完結があるものと考えておりますが、特に刑事法においては、遺憾ながら最近いわゆる過激派等の裁判に見られるとおり裁判の遅延というか引き延ばしというか、時と場合によっては裁判を否定するような立場で被告人が活動することがしばしば見受けられます。それと同時に、被告人の弁護をする弁護人がこれと同調する形で裁判を否定するようなかっこうで裁判が進行しない。これは憲法にも裁判は公正で迅速に行え、また刑事訴訟法にもその旨が規定されております。これは法治国家としてのたてまえであるという確信を私は持っておりますが、それが乱れておるということは法治国家としてきわめて遺憾でありますから、そういうことをチェックしなければならないということで、提案理由の説明にも申し上げましたようにこの法案を提案をし、審議、御決定を願いたい、こういうことでございますし、あるいはクアラルンプール、またダッカ等のハイジャックのことをお示しになりましたが、たまたま現在被告になっておる者がああいう凶悪な犯罪によって拉致されてしまったという状態を見ますと、この法律によっていわゆるハイジャックを防止するというよりも、そういう法治国家の精神というものをあらゆる場合に徹底させるということが、こういう過激派等の犯罪の防止につながるものであるということから提案をいたしておるということを御理解願いたい。
○山崎(武)委員 まず、過激派事件の中でも特に社会の耳目を聳動させた最も凶悪な犯罪であるいわゆる連合赤軍事件及び企業爆破事件の審理の状況について尋ねます。 連合赤軍事件の発生したのは昭和四十六年から四十七年にかけてのことであり、自来すでに七年になろうとしておりますが、いまだに第一審の審理中であると聞いております。この裁判は現在どのような段階にあるのか。 この事件の審理の過程において、被告人のみならず、弁護人が十回も正当な理由なく法廷に出頭しなかったと聞いておりますが、裁判所から指定された公判期日に正当な理由なく出頭しないことは裁判の拒否であり、近代的裁判制度の否定につながるものと私は思いますが、一体どのような状況のもとでこのような事態が発生したのか、御説明願います。
○伊藤(榮)政府委員 お尋ねの連合赤軍事件の公判経過について御説明申し上げます。 御記憶と思いますが、連合赤軍事件が発生しましたのは昭和四十六年二月から四十七年二月にかけてのことでございます。被告人らが逮捕されて起訴されましたのが昭和四十七年三月から七月にかけてでございます。第一回公判が昭和四十八年一月に開かれましたが、その後、被告人、弁護人全員が不出頭というのが合計十回ございまして、起訴状の朗読が行われましたのが起訴から約一年経過しました第十六回公判でございます。検察官の冒頭陳述が行われましたのは起訴から二年以上たちました第四十四回公判でございます。それから、ようやく証拠調べに入りましたのが第一回起訴から三年を経過しました第五十四回公判でございます。その証拠調べに入った直後にクアラルンプール事件により被告人一名が出国しておるわけでございます。 以上の概略申し上げました経過をやや詳しく説明申し上げますと、連合赤軍事件は、山岳ベースにおけるリンチ殺人事件と、それからテレビで全国民が注視いたしました浅間山荘事件を中心といたしまして、真岡事件、印旛沼事件、M作戦事件など多数の凶悪な犯罪から成る訴因を持っておるわけでございます。ただいまのような経過を経まして、現在までに真岡事件、印旛沼事件、M作戦についての被告人の供述以外の証拠の取り調べがあったところでございまして、現在山岳ベース事件の立証中でございます。もっとも、これらはいずれも被告人らの供述以外の部分だけでございまして、被告人らの集団内部における状況、動機、共犯関係など、被告人らの供述によって立証せざるを得ない事件の中心的部分についてはまだ立証が行われておらないわけでございまして、さらにこれら一連の事件の中でも一つの大きな柱になります浅間山荘事件については全く立証が行われておりません。 このようにこの事件の訴訟が遅延しております原因は、被告人と弁護人が一体となった不当かつ執拗な法廷闘争戦術によるものでございまして、裁判所の訴訟指揮を無視した審理妨害行為によるものであることが明らかでございます。特に数年前から必要的弁護制度を逆用いたしまして、みずからの要求を裁判所に認めさせる手段を用いております。審理の冒頭におきまして被告人と弁護人は裁判所の公判期日の指定に抗議しまして、正当な理由のない公判不出頭を続けたのでありますが、その契機となりました昭和四十八年一月二十五日の第二回公判から昭和四十九年六月二十五日の第百回公判までの公判期日の指定の経緯を御説明しておく必要があると思います。 と申しますのは、裁判所が一方的に公判期日の百回指定をしたということが裁判所の訴訟指揮の横暴であるというようなことを言う向きがありますので、その点を特に御説明いたしておきますと、連合赤軍事件の審理を担当することとなりました東京地裁の刑事第七部は、期日指定に関しまして、検察官、弁護人と数回にわたってあらかじめ打ち合わせをしております。打ち合わせの席上、検察官は、第一回公判期日を昭和四十七年中に開きまして、以後週二回の開廷ペースで進行するように主張いたしました。これに対して弁護人は、月一回の開廷を主張いたしました。ここでもう月に七回程度の差があるわけでございます。これに対しまして裁判所は、第一回公判期日を昭和四十八年一月二十四日と指定いたしまして、訴因が膨大であることにかんがみまして、第二回以後の公判期日につきましては、あらかじめ弁護人の差し支え日を考慮して決めることとされまして、昭和四十七年十一月中に早急に各弁護人の差し支え日を裁判所に届けるように、全弁護人に対しまして差し支え日記入用紙を交付して回答を求められたのでございます。しかし、結局、一名の弁護人から差し支え日の回答があったばかりで、他の弁護人からは何ら回答がなかったのであります。 先ほど申しましたように、本件は数多くの凶悪犯罪から成り立っておりまして、訴因の数にいたしまして、延べ二百三十七になっております。罪名も爆発物取締罰則違反でありますとか、殺人、強盗といった重罪が主でございますことから、弁護人側の主張いたします月一回の開廷ペースでは、検察官の立証だけでも十六、七年かかることが予想されたのでございます。 そこで裁判所は、裁判がこのように長期化すれば、実体真実の発見に多大な障害を及ぼすにとどまらず、被告人にもはかり知れない心理的苦痛を与えることになることを憂慮されまして、週二回、週一回というのを交互に組み合わせました第百回までの公判期日を一応のものとして指定されたのであります。このペースと申しますのは過去にありましたいろいろな事件を見てみますと、メーデー事件などといった著名事件におきます公判の期日のペースよりははるかに緩やかなペースでございます。 ところが弁護人と被告人は、この期日指定の撤回があるまでは公判に出頭しないという戦術に出たのでございます。種々裁判所の説得にもかかわりませず弁護人は最後まで妥協せず、逆に裁判所は弁護人の要求を入れて、この期日指定を取り消し、現在に至るまで月二回というペースで進行しているのが現状でございます。このペースがすなわち訴訟遅延の根本的な原因になっておると思うのであります。 さらに、この事件におきましては、弁護人らが期日指定の撤回を求めて抵抗を続けておりました昭和四十八年三月十四日に、東京弁護士会におかれまして、この期日指定について批判を行う文書を作成して裁判所に交付されるなど、司法の独立を侵す裁判の干渉を行ったという経緯もございます。 また、その後も、本件におきましては、傍聴人をめぐるトラブル、被告人の医療問題、訴因の審理順序、それから被告人一名のクアラルンプール事件による出国など紛糾、難渋しておりまして、さらに被告人らの正当の理由のない退廷、不出頭が繰り返され、ただいま申し上げるような審理状況になっておるわけでございまして、第一審判決を得る時期の見通しは、遺憾ながらまだ立っていない、こういう状況でございます。
○山崎(武)委員 次に、私は、昭和四十九年八月の三菱重工業ビルに爆弾を仕掛け、無差別殺人を敢行した事件を初めとする連続企業爆破事件についても、審理が一向にはかどっていないと聞いております。おくれた裁判は裁判のないことにも等しいと言われておりますが、このような社会を震憾させた事件について、いまだに犯人に対する刑の言い渡しもないようでは、国民は納得しないと思います。この事件の審理はどのような段階になっているのか御説明願います。
○伊藤(榮)政府委員 連続企業爆破事件の内容については、改めて申し上げるまでもないと思いますが、非常に多くの死傷者を出した痛ましい結果を生じた事件でございますが、事件が起きましたのが昭和四十六年十二月から五十年五月にかけてのことでございまして、警察当局の必死の捜査によりまして、ようやく被疑者の検挙を見、起訴を行いましたのが昭和五十年六月から七月にかけてでございます。 まず、この関係につきましては、公判開始前に、昭和五十年八月に御承知のクアラルンプール事件によって被告人一名が奪い去られております。 さて公判は、裁判所におかれましては「狼グループ」と名づけられたグループ被告人四名と、「さそりグループ」「大地の牙グループ」被告人二名と、二つのグループに分離をいたしまして、二つの部で裁判をすることとされておったのでございますが、まず「狼グループ」の方につきましては、昭和五十年十月の第一回公判、それから同年十二月の第二回公判におきまして「さそり」及び「牙グループ」との統一公判を要求しまして、被告人、弁護人全員が不出頭でございまして、公判がいずれも流れてしまいました。一方「さそり」及び「牙のグループ」は、昭和五十年十一月二十五日の第一回公判に、今度は「狼グループ」との統一公判を要求しまして、被告人、弁護人全員が不出頭でございました。そこで裁判所におかれましては、やむなく両グループを併合して、いわゆる統一公判の要求に屈することとされまして、昭和五十年十二月、起訴から約半年後に第三回公判を開きまして、起訴状朗読を行ったわけでございます。 ところが、この公判におきまして、今度は被告人及び弁護人は裁判所に対し、なぜ併合したのか、併合したのは不可解だということで、その理由を示せと執拗に迫りまして、ついに裁判所は二カ部で審理する方式は現在でも合理的であると考えているが、被告人、弁護人の出廷拒否のため審理不能の状態をいつまでも続けることは許されないと考え、今回の併合決定に至ったものであるという説明まで行ったのでございます。しかるに被告人と弁護人は、なおも同じような発言を執拗に繰り返し、発言停止命令に従いませんでしたので、裁判長が弁護人一名及び被告人四名に退廷命令を発しました。そういたしますと、残りの弁護人全員が、これに抗議すると称しまして、裁判長の在廷命令を無視して退廷して、公判が流れてしまった、こういうことから始まるわけでございます。 その後の主な出来事をかいつまんで申し上げますと、昭和五十一年十月の第十四回公判におきましては、弁護人が法廷におきまして拘置所の看守を足げりにするなどの暴行を加えまして、拘束退廷命令を受けるというような出来事があり、その次の十一月の第十五回公判におきましては、被告人らは十一月一日から十日まで秋期獄中闘争と称しまして、天皇在位五十周年記念式典紛砕というスローガンを掲げてハンストを行いまして、十一月十一日の第十五回公判には、この闘争の一環として、また前回の弁護人の退廷命令等の処分に抗議する、こういう意味であると称して出頭を拒否いたしました。弁護人もこれに呼応して出頭をしなかったのでございます。この公判も何事も審理を行うことなく流れてしまっております。 さらに、五十二年一月十四日には被告人、弁護人全員不出頭でございますが、この際も、弁護人らは裁判所の判事室まで来室しながら、裁判所がその以前に、一月から四月まで月四回の公判期日を指定したことに抗議をいたしまして、弁護人らの主張するとおり月二回にしてくれない限り公判への出頭を拒否するということで出頭しなかったのでございます。このときは、裁判所はよほどがまんがならなかったものとみえまして、現行刑訴のしかるべき規定を準用等いたしまして、被告人、弁護人不在のままで若干の手続を進めたようでございます。 次に、昭和五十二年一月二十日になりますと、翌二十一日の公判期日を直前にいたしまして、弁護人全員が辞任をいたしました。これは裁判所の右のような期日の指定及び弁護人、被告人を無視した訴訟指揮というものを口実にして辞任をいたしました。そこで裁判所は、国選弁護人を得るべく在京の弁護士会に国選弁護人の推薦方をお願いいたしましたのですが、弁護士会は推薦を行われませんでしたために、以後六カ月間空転をいたしました。結局、裁判所は、最初の私選弁護人の要求を入れざるを得なくなりまして、とりあえず、弁護人の言うように月二回のペースで審理を再開することにせざるを得なかった。 こういうことでございまして、証拠調べに入りましたのは、起訴後二年以上たちました昭和五十二年七月からということでございまして、証拠調べが始まりました直後、ダッカ日航機ハイジャック事件により被告人二名がさらに奪い去られた、こういうわけでございます。 かような経過をたどっておりますが、この連続企業爆破事件は、三菱重工ビル、鹿島建設など合計十七カ所の爆破等の事件に関するものでございますが、現在までに、そのうち三菱重工、鹿島建設、帝人中央研究所、大成建設、この四つの爆破事件についての被害者の取り調べ等が終わったところでございます。すなわち、外形的事実と被害状況の立証がこの四件についてようやく終わったところでございまして、犯人の特定でございますとか、被告人相互の共犯関係などの重要部分についての立証は全く行われておりません。したがいまして、この事件も、第一審の終結を見るに至る時期の見通しは全くついておりません。 かような遅延を来しておるわけでございますが、この遅延の原因は、もういまさら申し上げるまでもなく、被告人と弁護人とが意思を同じくしまして、いわゆる裁判紛砕闘争ということで執拗に不出頭、退廷、辞任といった戦術を繰り返し、さらには国選弁護人の推薦が得られないということもありまして、裁判所をして弁護人の言うような間遠な期間の公判期日をやむなくさせられておる、こういう実情にあるのでございます。
○山崎(武)委員 成田新空港開港阻止を呼号する過激派集団による不法事犯については、被告人、弁護人、傍聴人が一体となった激しい法廷闘争によって訴訟が遅々として進まない状態にあると聞いておりますが、その中でも、昭和四十六年に発生した警察官三名が火だるまになって殺害された凶悪重大な東峰十字路事件における公判審理状況はどうなっておりますか。 この事件においても、被告人、弁護人は必要的弁護制度を逆手にとり、同一の法廷での審理が全く不可能な五十数名の被告人について統一公判を裁判所に認めさせたり、また、人定質問にすら応ぜず、しかも、不必要な求釈明を繰り返し、意見陳述に多くの公判期日を費やす等して、これをチェックする裁判所の訴訟指揮に対し異議申し立てを繰り返すなど、激しい法廷闘争を行うのみならず、被告人は傍聴人と一体となって裁判官に対し、やじ、罵声を浴びせたり、床を踏み鳴らし、さらには、裁判官席に詰め寄り、書記官に暴行を加えるなどし、法廷が騒然となり審理が行えないような状況をつくり出し、裁判官が退廷命令を発しても法廷警備員のみでは執行できず、警察官を導入せざるを得ないという状況が繰り返されたと聞いております。 さらに、弁護人は、神聖な法廷においてはあるまじき被告人、傍聴人のかかる無法きわまりない行為を容認して何ら制止しないのみならず、被告人全員が退廷させられると、裁判長の在廷命令を無視して退廷し、その後の公判審理が行えないようにしたと聞いております。このような結果、最近に至るまで月一回半日という短時間の期日指定を裁判所に認めさせるなど、裁判所の正常な訴訟運営を全く行えない状況に追い込んでいると聞いておりますが、どうなのか、御説明願います。
○伊藤(榮)政府委員 お尋ねの成田闘争の一環をなします東峰十字路事件につきましては、まさに御指摘のような状況になっておるわけでございまして、被告人、弁護人、傍聴人が一体となりまして、必要的弁護事件を逆手にとりまして、およそ法治国家の法廷における裁判とはとうてい思われないような無謀な法廷闘争を展開してきたところでございます。 本来、法曹の一員として裁判長の訴訟指揮に従って訴訟の運営に協力すべき責務を有します弁護人が、第八回及び第九回公判におきまして、一人の被告人が裁判官の訴訟指揮に従わず、裁判官に対して、やじ、罵声を浴びせて退廷を命ぜられましたのをきっかけに、他の被告人十七名が総立ちとなって怒号し、この退廷命令を執行しようといたしました法廷警備員の職務を実力で妨害をいたしましたため、やむなく法廷に導入されました警察官によりまして被告人全員が退廷させられたという出来事があったわけでありますが、弁護人らは、この間、被告人、傍聴人をたしなめるどころか、裁判長のこれらの措置が不当であるということで抗議をいたしまして、裁判長が在廷命令を発しましたのに、あえて全員退廷するという暴挙に出まして、その後の公判審理を不可能にしたのでございます。 また、この関係におきましては、五十六人の被告人が併合審理されておるわけでございますが、本来、同一の公判廷で五十六人という多数の被告人を適正に審理することがきわめてむずかしいということは、法律家でありますならば自明のことでございますが、弁護人らは、裁判所に対して統一公判をあくまで要求して、これを認めるのやむなきに至らせておりました。 さらには、公判期日の指定に至りましては、月一回半日、それも二、三時間程度しか行わせず、その審議すら被告人らの暴力的法廷闘争によって妨害されておりまして、第一回公判後約二年半経過いたしました第二十六回公判に至ってやっと証拠調べに入ったのでございますが、月一回半日というようなペースでございますために、検察官の立証が終了するまでにも相当の長期間を要する、一つの見方によれば、なお十五年かかるのではないかという見方もあるわけでございまして、裁判確定の時期のめどはなおさら立たない、こういう現状にあるわけでございます。 ことに成田事件におきましては、先般の三月二十六日の事件を含めまして約六百人の成田関係の事件の被告人についての公判が係属しておるわけでございますが、月一回、それも半日というようなペースで参りましたならば、とうてい裁判制度の意義を全うすることはできないというふうに考えまして、私どももきわめて遺憾に思いながらも措置のしようがないという状況にございます。
○山崎(武)委員 本法案第二条の「被告人の意思に反すると認めるとき」とか「訴訟を遅延させる目的」などの要件は直接認定することが困難であり、裁判所によってどのようにでも認定されてしまうから乱用の危険があるという批判もありますが、従来の被告人と弁護人の法廷闘争とか訴訟進行についての態度から、弁護人の不出頭や辞任が「被告人の意思に反する」かどうかは容易に、かつ正しくできると思われます。また「訴訟を遅延させる目的」という用語もすでに刑事訴訟法の中で使われているのでありますから、その判断が恣意的になるものとは思われません。まして、現在の裁判制度のもとでは、要件の有無を認定する立場にある裁判所が判断するのは当然のことであります。日本の裁判官の水準は、外国と比べてまさるとも劣らないものであると言われておりますから、乱用の危険があるとはとうてい考えられませんが、この点についてお伺いします。
○伊藤(榮)政府委員 ただいま御指摘になりましたように、わが国の裁判制度そのものについて、一部にためにする批判、あるいはごく一部に法律の解釈を誤る等の誤りが見られることはありますけれども、憲法下におきます最高裁判所を頂点とするわが司法制度がおおむね適正かつ迅速に運営されておるということはどなたもお認めになることだと思うのでございます。 ところで、ただいま御提案いたしておりますような特例に基づく措置が、仮に万一——恐らくそういうことはないと思いますが、その点は後に御説明申し上げますが、誤って用いられたといたしましても、これは直ちに訴訟法に基づく措置、あるいは上級審において是正されることになるわけでございまして、わが国の最高裁判所を頂点といたします裁判制度というものを頭から否定してかかる、あるいはこれを頭から信用しないでかかるということがあればともかく、乱用のおそれというものは私はためにする議論であると思っておるのでございます。 特に、御指摘のありました「被告人の意思に反する」という要件でございますが、この要件と申しましても、先ほど来実例で申し上げましたように、弁護人が在廷命令を無視して退廷する、あるいは何らかの裁判所の訴訟指揮に抗議して出頭しない、あるいは裁判所の期日の直前にことさら辞任をする、こういうようなことをいたします場合に、たとえば弁護人が抗議をして退廷するということになりますと被告人あるいは一部の傍聴人が一斉に拍手をもってこれを送る、あるいは弁護人が退廷命令を出されるような不当な言動をやりました場合に、これに対してやじ等で声援を送る、こういう場合が問題になるわけでございまして、そのような場合に被告人の意思に反する反しないということはきわめて明瞭でございまして、およそ裁判所がその公判経過及び当該公判期日におけるありさまをじっと見ておれば明らかにわかるわけでございまして、これをしも見誤るというような事柄ではないと思うのでございます。 また「訴訟を遅延させる目的」と申しますのも、先ほど実例で申し上げましたように、公判期日を入れさせないために退廷、不出頭、辞任をやる、あるいは公判期日における審理を空転させるために行う、こういうことでございまして、そのような場合、訴訟を遅延させる目的があることは明らかでございます。さらに「訴訟を遅延させる目的」と申しますのは、すでに刑事訴訟法の二十四条に同一文言があり、判例においてその解釈等も定着しておる問題でございまして、かような点をあれこれ考え合わせますと、これが乱用されてたとえば暗黒裁判になるといったようなことは、きわめてこの法案の意図を歪曲して、あるいは現在の裁判所のあり方そのものを頭から信頼しないでかかっている、そういうためにする意見ではないか、かように考えておる次第でございます。
○瀬戸山国務大臣 この際私からもお答えをしておきたいと思います。 裁判というものは申し上げるまでもなく、刑事裁判においては検事それから被告人をはさんで弁護人、それから裁判官、裁判所、この三者が、立場は違いますけれども、憲法なり刑事訴訟法あるいは弁護士法等の趣旨に従って事件を明らかにし責任の所在を明らかにする、こういう三位一体の協力関係にあって初めて裁判というものが値打ちがあるといいますか、スムーズにいくものだと私は思っております。 そこで、今度この提案をいたしましたについていろいろ言われておりますが、私は弁護士の経験がありませんから、弁護士さんたちがどういうことで裁判に臨まなければならないとしておられるかということを実は考えておったわけでございます。そこで、ここに弁護士の大先輩であられる人が書いておりますから、それをこの際申し上げて、この立法の趣旨が那辺にあるかということを御理解いただきたい、かように思います。 これは「日本法律家協会会報」というのに出ておる一文でございますが、随筆的なものでございます。これは御承知だと思いますが、前に日弁連の会長をしておられた吉川大二郎さん、弁護士会の大先輩であろうと思います。この人が「チョボと裁判官」という題で書いておられます。私はこの題を見て、実はどういうことかわからなかった。ところが、この前書きがいろいろありますが、御承知のとおり文楽では浄瑠璃を語るのが大夫と言われておる。それから歌舞伎でも浄瑠璃を語られる、これも太夫と言っておられる。ところが、私初めてそういう差異があるのかということがわかったわけでありますが、文楽における大夫は、大の中に点はないのだそうであります。「大夫」と書いてある。それから歌舞伎における同じ太夫でも、大の中に点がある「太夫」だ、こういうふうに書いてある。なかなかおもしろいことでございますが、初めて発見しました。それはどういうことかというと、文楽においては浄瑠璃を語る大夫が中心的なことで主役だそうでございます。同じ浄瑠璃を語る太夫であるもう一つの歌舞伎においては実は俳優が主役であって、このいわゆる太夫が文楽の大夫とは違った立場にある、こういうことを解説しておられますが、私はおもしろい発見をいたしました。そういうことを解説した先に裁判に及んでおります。 「ところが、裁判は芸術ではないが、裁判所、検事、弁護士の三位一体の協力関係において、その運営がなされねばならぬ点では文楽と同様であるが、いうまでもなく、その指導権はどこまでも裁判所にある。この指導権は、法的には主として、口頭弁論における訴訟指揮権と、法廷秩序維持のための法廷警察権として現われるのである。まさに、この限りでは、裁判所の役割は文楽の大夫のそれに匹敵するといえるであろう。しかるに、近時における、裁判の実態を見ると、主として公安事件とか労働事件とかの限られた範囲においてではあるが、裁判所が自らの指導権を放棄して、一部の弁護士に引き廻されるというケースが、いわゆる「荒れる法廷」などという名の下に、しばしば報ぜられている。いわば、裁判所が大夫の座をすてて、「チョボ」太夫となり下がっているわけである。わが司法制度の円滑な運営とその進展の上から見て、まことに遺憾にたえない次第である。もっとも、当該事件を担当する裁判官は大変な苦労であるが、勇気をもってその職責を果してもらいたい、とともに、同僚裁判官はもとより在野法曹たる弁護士もこれに協力し、バックアップする心掛けとその実践が肝要であると信じられる。そこでわたくしは、この際、声を大にして叫びたいのである。「裁判官よ、チョボになるな。弁護士よ、裁判官をチョボとするな」と。」こう書いておられる。私は、この弁護士会の大先輩の弁護士の立場から書かれたこの文章を見まして、裁判というものはそうあって初めて憲法や刑事訴訟法の規定しておる裁判が進む、これで法治国家というものは成り立つのだ、こういうふうに考えて感激いたしておりますので、今度の提案しております特例法はまさにこのことを期待しておる、こういうことでございますから、御理解を願いたいと思います。
○山崎(武)委員 裁判粉砕を呼号するような被告人と一体となって不当な法廷闘争戦術を行う弁護士に対しては、当然弁護士会において厳しい懲戒がなされてしかるべきものと考えます。弁護士法五十六条によりますと、弁護士法違反、所属弁護士会もしくは日弁連会則違反、所属弁護士会等の秩序または信用の侵害、その職務の内外を問わずその品位を失うべき非行等があったときには、弁護士は懲戒を受けるとされております。また刑事訴訟規則三百三条によりますと、弁護人が訴訟手続に関する法律や規則に違反し、審理の迅速な進行を妨げた場合には、裁判所は所属弁護士会または日弁連に対し適当な処置をとるべきことを要求できるとされております。しかしながら、本法案の対象となるような不当な法廷闘争戦術をとった弁護士に対し、懲戒や処置がとられたかどうか聞かないのでありますが、これら懲戒等の運用の実情はどうなっておりますか、お聞きいたします。
○伊藤(榮)政府委員 当然お尋ねのような不当な行状のありました弁護士に対しましては、弁護士会において厳正なかつ迅速な懲戒処分がなされてしかるべきものであると考えるものでございます。 ところで、弁護士会におきます懲戒の運用状況でございますが、御承知のように、日本弁護士連合会は全く独立した、国家機関のいかなるものからも監督を受けない完全な自律権を持っておられる団体でございますために、私ども法務省といたしましては、運用状況について御報告すら受け得る立場にございませんので、その懲戒の全貌を把握することが不可能でございますが、私どもが把握した限りについて申し上げますと、これまで過激派事件等を中心に延べ十七名の弁護士につきまして、法廷における不当な活動を理由に懲戒請求がなされましたが、これに基づいて懲戒が現実になされました弁護士は一人もいないと聞いておるところでございます。 また、刑事訴訟規則三百三条によりまして、裁判所が弁護士会に対して不当な言動に出ました弁護士についての処置請求をいたしました事例、これがこれまで延べ十三名あるようでございますが、この十三名についても、懲戒処分が行われた事例は一件もないようでございます。 その他法制審議会の場等を通じまして、日弁連推薦の法制審議会委員等からのお話を伺いましても、この法廷闘争戦術としての不当な行状を理由として懲戒処分を受けた弁護士さんは、遺憾ながらこれまで一人もおられない、かように承知しております。 〔委員長退席、保岡委員長代理着席〕
○山崎(武)委員 現行法のもとにおいては、日弁連は、言うまでもなく弁護士の品位を保持し、弁護士事務の改善、進歩を図るため、弁護士及び弁護士会の指導、連絡及び監督に関する事務を行うことを目的として設けられた公益的性格のきわめて強い団体であり、しかも国の監督を受けない自治団体であります。私は、このような団体の性格にかんがみ、日弁連の活動には、それにふさわしい品位と威信が伴ってしかるべきものと思います。ところが、日弁連は従来から事あるごとに反対の行動をとり、最近では多くの者が、その反対はいわばためにする反対らしいという疑惑を抱くに至っております。日弁連はいわゆるオオカミ少年の役どころを演じていると論じている刑事法専門の大学教授もいらっしゃいます。これは、重大な責任を国民から負託されている在野法曹の団体としてゆゆしい事柄であると考えますが、この点についての御見解を賜ります。
○伊藤(榮)政府委員 私ども客観的に拝見しておりましても、現在の最近までの日弁連あるいはその傘下の単位弁護士会の活動のあり方につきましては、いささかいかがなものかと思わせられることが多いのでございます。率直に申しまして、所属会員の総意というものが反映されていないのではないか、一部の偏った考え方が主として反映されるような体質が最近あるのではないかということを、率直に言って感じざるを得ないのでございます。 ただいま御指摘になりましたように、慶応大学の教授であります宮沢浩一氏が随筆の中で「日弁連は、弁護人依頼権を保障する憲法に違反するとか、暗黒裁判になるとか、一般刑事々件に拡大されるといったキャンペーンをはろうとしているが、国民の多数は冷い目で見ていることに気づいて欲しいものである。日弁連は、これまでにも、同じような調子で、手をかえ品をかえして、ことあるごとに反対の行動をとってきた。近頃では、どうやら、その「反対」は、何か「タメにする反対」らしいという疑惑を多くの者は抱き始めた。日弁連は、「狼少年」の役どころを演じている。」と、かような発言をしておられるのでございます。かような大学教授の御発言に対して私ども論評すべき立場にございませんが、率直に申しましてこの表現はいささか厳しきに過ぎるとは思いますけれども、同感を禁じ得ない面があることも事実でございまして、弁護士会が国民から負託をされております重大な責務に思いを新たにされまして、法曹三者一致協力して裁判の適正迅速な運営を図るという方向で御協力を賜れば、まことに幸いだと感ずる次第でございます。
○山崎(武)委員 本法案第一条によれば、本法は、最近における一部の刑事事件の審理に見られるような異常な状況に対処するための当面の措置として、必要的弁護事件の「公判の開廷について暫定的特例を定めるもの」とされております。私は法曹三者の良識を当然の前提とする基本法典である刑事訴訟法に、一部の者であるにせよ良識を欠く弁護人の存在を前提とする規定を加えることは適当でないと考えるし、また、このような特例は、異常な状況を抜本的に解決するための法曹三者の努力が実を結べば不要となると考えるので、本法案のように暫定的特例としたことは相当であると考えますが、この点についての見解を承ります。 一部には、暫定的特例と言う以上、いわゆる時限立法であることを明示すべきであるとの批判もあるようでありますが、私は現時点では、本法案一条に言う異常な状況が一定期間後解消するとの見込みは全くなく、過激派事件においては引き続き同様の不当な法廷闘争戦術がとられるおそれが十分にある上、最近においては、いわゆる一般刑事事件についても、過激派支援組織がつき、過激派事件同様の戦術が展開されているとも聞いておりますので、いわゆる時限立法とするのは妥当でないと考えますが、この点についての見解を賜ります。
○伊藤(榮)政府委員 まず特例法といたしました趣旨でございますが、御指摘のとおりでございまして、現在過激派の事件等におきまして、被告人と意思を同じくして熾烈な法廷闘争の戦術を展開しておられます弁護士さんと申しますのは、ごく一部の弁護士さんでございます。一万一千人と言われております弁護士さんの大半、むしろほとんどは、法秩序を尊重し、良識に従って対処される方々ばかりでございまして、深く尊敬をしておるところでございますが、ごくその一部の弁護士さんが、これまで申し上げましたような行動に出られるというのが実情でございます。かような実情に対して何らかの対処をいたします場合のアプローチの方法としては二つあろうかと思います。 一つは、そういう裁判そのものを否定してかかるというような戦術にくみして不当な言動をなさいます弁護士さんを、懲戒等の手段によって弁護士の世界から排除する、そういうアプローチが一つ。それからもう一つは、ただいま御提案申し上げておるようなシステムであろう、こういうふうに思うわけでございます。 しかしながら、前者の問題につきましては、とにもかくにも法律によりまして完全な自律権を与えられております弁護士会の自律能力そのものを疑ってかかるという立場に立って初めてさようなアプローチが行い得るわけでございまして、私どもは、日本弁護士連合会を頂点とする弁護士会の御努力、これはなお期待すべきである、こういうふうな観点から、あえて今回御提案申し上げたような形をとったわけでございます。したがいまして、刑事訴訟法の本来予想しておりますような事態とは全く異質な、異常な事態をこの際緊急に取っ払っておきたい、こういうことでございますので、暫定的な特例法ということにいたしたわけでございまして、一日も早く根本的な解決策が講じられまして、この法律が仮に成立しました場合でも、働かなくなるという日が一日も早いことを念願しておるわけでございます。 しかしながら、それではいつまでたったら、あるいは何年待ったらこの法律の必要がなくなるか。これは早いにこしたことはありませんけれども、たとえば懲戒処分一つ例にとってみましても、やはり国民の監視のもとで懲戒が行われるという制度的な保障も現在ございません。国民は弁護士会に対して懲戒の申し立てはできますけれども、弁護士会のなさいます判断に対しては一切不服を申し立てられない、裁判所にも申し立てられない、こういうような状況でございまして、そこら辺のシステムを国民の納得のいくようなシステムにつくり直すというためにはなお若干の日時を要するのではないか。その日時を要する程度につきましても、ただいま簡単に予測することができない。そういう意味におきまして、この法案を時限立法とするということはただいまのところ適当でない、かように考えておる次第でございます。
○山崎(武)委員 以上お尋ねしたところから、私は、本法第一条の言う「異常な状況」を放置することは、民主制国家の根幹をなす法秩序の維持の見地からとうてい許されないものと考えます。事態はまさに深刻であり、急を要し、その対処は現実的にしてかつ効果的でなければならないと考えます。事態は、弁護士会の提唱するような、話し合いにより解決できるようななまやさしいものではなく、また弁護士法の改正、国選弁護制度の改善等にはなお相当の時間を要すると思います。したがって私は、本会議において申し上げたように、本法案は一日も早く可決成立させるべきものと考えますが、この点についての法務大臣の決意を改めてお伺いします。
○瀬戸山国務大臣 いままで種々お答えいたしましたような状態でありますから、日本の裁判制度のために、いわゆる法治国家のためにそういう異常な状態を一日も早く排除する、これが国民の期待しているところであろうと思いますから、速やかに御審議をいただき、決定をしていただきたいというのが私どものお願いでございます。 なお、先ほど日弁連のことについてお話がありましたが、私は率直に言って、いま各種の過激な暴力が御承知のとおりあるわけでございますが、日弁連にも、そういう過激な暴力的なことが影響しておるのじゃないかということを感じております。これは私が感ずるばかりでなくて、私は非常に残念ながら、こういう論文を書いておられるということを申し上げなければならぬ。 これはことしの二月号の「自由と正義」、これは日弁連の機関誌でございますが、その中に、このいわゆる特例法に関連して、中京大学の教授の庭山さんが書いておられる。その一つに、先ほど刑事局長が触れました日弁連の問題でありますが、あれにぴたっと当たるということじゃございませんけれども、この問題に関連して書かれてあるわけでございます。「わが国の論者の中には、日弁連が国家的制裁の外にある唯一の自律的集団であることが、国選弁護人選任遅滞の主因であるかのように説く者もあるが、弁護士会を弱気だと非難する前に、生命の危険を冒してまで自ら弁護人を買って出ることができるかどうかを考えてみる必要があろう。」こういう一文があります。 〔保岡委員長代理退席、委員長着席〕 これは結局、こういう事件についてはだれでも弁護人としては出られない、被告人と同調して裁判否定のような行動をする立場になければ入れないということをここに書いておられる。これは日弁連も容易なことではないと思いますが、やはり何らかの方法をとっていただかなければ、こういう特別法は要らない、これは用をなさないのだという事態はなかなか来ないのじゃないか、かように私は考えておることをつけ加えておきます。
○山崎(武)委員 いわゆる過激派事件においては、被告人、傍聴人が時には弁護人と一体となり、法廷の秩序を乱し、裁判官を侮辱する発言を繰り返し、さらには不必要な求釈明、意見陳述を行い、これを裁判所において抑制しようとするとさらに異議申し立てを行い、その理由陳述と称して長々と意見を述べ、あげくの果てには、必要的弁護事件においては弁護人が不当な不出頭や退廷を繰り返し、あるいはこの挙に出ることを示して裁判所を威嚇するなどして、それがため裁判所は不当な要求を入れざるを得ない状況に追い込まれていると聞いております。 本法案は、このような本末転倒の異常な状況に効果的に対処するための必要最小限度の処置と考えますが、過激派裁判における実情及び本法案に対する裁判所当局の率直な見解を賜ります。
○岡垣最高裁判所長官代理者 この法案に言うところの一部の刑事事件について、その審理の状況につきましては、これはただいま法務省の方からお答えになったと同様の認識を私ども持っております。そして私どもとしましても、この法案が一日も早く成立することを願っているものでございます。
○山崎(武)委員 この法案に反対する者の中には、最近の裁判官、なかんずく若手の裁判官の一部の者の訴訟指揮が強権的に過ぎ、したがって本法案が成立するとこれら一部の裁判官はこれを武器として一層専断的な訴訟指揮を行うのではないかとの危惧感に基づき、過激派事件の審理における弁護人の常軌を逸脱した活動に対処するために本法案の必要性及びその妥当性につき十分これを認識しつつ、なおこれに反対せざるを得ないとする者があるやに聞いております。 私は、先般の本会議の代表質問において申し上げたとおり、わが国の裁判所は常に被告人の主張にもよく耳を傾け、いやしくも過って無事の者を処罰することのないよう十分配慮しており、最高裁判所を頂点とするわが国の裁判制度が、全体として公正に運営されていることは疑いの余地がないと信じておるものであります。したがって私としては、先ほど申し述べたような一部の者の見解はいわれなき危惧の念に基づくものと考えるのでありますが、善良な国民の一部に、裁判所に対する信頼の念が万一にも欠けては、やはり画竜点睛を欠くとのきらいもなしとしないので、この際、司法行政の最高責任者としての最高裁当局において、このような疑念を一掃するための決意及びこれを具体化する方途についての見解をお伺いいたします。
○岡垣最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘の点につきましては、裁判所のいたします訴訟指揮というのは刑事訴訟法にすべて根拠がございまして、刑事訴訟法並びに規則によって細かく規定されているわけでございます。したがいまして、裁判所は大体もう法律と規則に定められた範囲内で事を行い、わりに狭い範囲内で裁量を行使するということでございまして、ただいま御指摘になりましたような強権的訴訟指揮でまことにけしからぬというふうな状況は私どもはないものと信じておりますけれども、しかし、いまおっしゃいましたような点は、これは人間がやることでございますから、批判があれば謙虚にそれは受けとめなければならないと存じます。したがいまして、われわれといたしましては、今後たとえば裁判官の協議会だとかあるいは会同だとか、あらゆる機会をとらえて、そういうふうな御批判の起きることがないように、できるだけの努力を切磋琢磨してやっていきたいというふうに考えております。
○山崎(武)委員 終わります。
○鴨田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることにし、本日は、これにて散会いたします。 午後六時三十一分散会