法務委員会 第16号
- 発言数
- 192 件
- 登壇者
- 8 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1978/04/14
会議録
○鴨田委員長 これより会議を開きます。 内閣提出、人質による強要行為等の処罰に関する法律案を議題といたします。 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。 本案審査のため、来る十八日火曜日午前十時から参考人の出席を求め、意見を聴取することにいたし、その人選につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○鴨田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 —————————————
○鴨田委員長 質疑の申し出がありますので、これを許します。西宮弘君。
○西宮委員 提案されております今回の法律について若干お尋ねをしたいと思うのでありますが、この間の稲葉委員の質問、政府委員の御答弁、聞いておったのですけれども、なかなかわかりにくくて、どうも本当にわかりにくい法律だという感じがしたわけです。これは私の頭が悪いせいでしょうけれども、われわれみたいな頭ではなかなかわからない。やはり法律をもう少しわかりやすくできないものかという感じがするわけですが、私、頭が悪いというのは全く紛れもない事実なんですけれども、しかし多少謙遜をしているわけです。その謙遜しているというのは、大体私も日本人の平均的な理解力は持っているだろうというふうにうぬぼれているのですが、そうすると、私がわからないというのは、大体日本の国民の大半の者がわからないということになるのじゃないかという気がするわけです。 そこで大臣に一つ伺いたいのですが、まず第一に、この法律が本当に継ぎはぎ継ぎはぎでできてきたわけですね。もう少しそういう継ぎはぎ、あるいは次から次へと建て増しをしたり、そういう法律でない法律にできないものかという気がするのですが、今度例の改正刑法ができ上がったらばこの法律は存続をするのですか。
○瀬戸山国務大臣 今度の法律、継ぎはぎといいますか、というような御意見がありましたが、御承知のようにこういう特別な事態が起こりますときには、それに対応する法律上の備えをしなければならない、申し上げるまでもないことでございますが、あらゆる行政から裁判に至るまで法律に従ってやることになっておりますから、対応のできない場合には対応すべき法律を国会で決めていただく、こういうことでお願いしておるわけでございます。ですから、刑法の全面改正をする場合にはその刑法の体系の中へ入れるべきか入れざるべきか、特別法として残すべきかをそのときに検討すべき問題だと思っております。
○西宮委員 無論そういう手順になりましょうけれども、いわゆる改正刑法の草案はすでに公表されているわけですね。だからそれを前提にして考える。いまの公表された草案とこの法律はどういう関係になるのか。つまりそっちの方に全部吸収されてしまうのかどうかということです。もう一遍。
○伊藤(榮)政府委員 刑法全面改正に関しましては、御指摘のように改正刑法草案を発表しておるわけでありますが、この改正刑法草案は一応の考え方といたしまして、各種刑罰法令のうち刑法に規定するのがいいのではないかと思われるものを全部改正刑法の中に取り込むというような形で一応の規定がなされておるわけでございますが、このままの形で刑法全面改正に踏み切るかどうか、いま慎重に検討しておるところでありまして、たとえば刑法典に盛り込むということになりますと両罰規定というものが働かないようなことになることも考えられますし、しからば刑法総則に両罰規定に関する規定を置くかどうかという根本的な問題を初めといたしまして、各種特別法の中で果たして網羅的に刑法典へ取り込んでいいかどうかというような問題がございまして、鋭意検討しておるわけでございます。御承知のように改正刑法草案の中にはハイジャックの罪なども取り込むような形で現在整理がされておるわけでございますが、しからば航空危険罪の方はどうかとか、そういうふうにいろいろな問題がございますのでなお検討をしなければならぬと思っております。 さらに、仮に刑法典の中に取り込むとして、どの位置に取り込むことになるか、そういう点もやはり慎重に考えませんと、御承知のように国家法益を害する罪あるいは個人の利益を害する罪、こういうようないろいろな分け方がございますので、そういう点も考慮しながら全面改正の時期に向けて検討してまいりたい、かように考えております。
○西宮委員 いま審議中のこの法案ですね。これはいわば時限立法的な暫定的な性格を持っているというものでしょうか。ああいう「よど号」事件ないしはダッカ事件、そういうものが次々起こってそれに対処するためにつくられた法律、したがっていわば応急的な臨時的なそういう性格を持った法律でしょうか。
○伊藤(榮)政府委員 最近の事態にかんがみて急ぎ立法をお願いしたい、こういうことでございますが、事柄の性質上、臨時的な立法というわけではございませんで、今後この種の事犯がございます限りにおいては活用される法律でございます。ただ、すでに申し上げておりますように今回の法案はこの当面の事態に最小限対処するために、構成要件をしぼって、特別な形だけの犯罪類型をとらえることにしております。 一方、改正刑法草案には人質強要罪に関する一般的な規定を一応考えておりますので、全面改正の際にはその一般的な規定を設けるかどうか、さらにその際に、ただいま御審議いただいておるようなものをこれと並んで刑法典に取り込むかどうか、こういうことを検討することになると思いますけれども、かような事象が生ずる限りは適用される法律という意味において、臨時的な法律あるいは時限立法的なものであるということではございません。
○西宮委員 この法律の第二条は、例のこの前の航空機強取法ですね、あのうちに関連して第二条の規定があるわけですが、このいわゆる強取ということば、これは私、この前の改正案の審議の際にも指摘をしたのですけれども、いつからこういう言葉を取り入れたのですか。
○伊藤(榮)政府委員 「強取」という言葉は明治以来裁判例等ではしばしば用いられた言葉でございますが、法文で使い出しましたのはあるいは戦後のことではないかと思っております。
○西宮委員 戦後にどういう実例がありますか。
○伊藤(榮)政府委員 あいまいな記憶でお答えして間違っておるといけませんから、暫時他の御質問中に検討して正確なところをお答えいたします。
○西宮委員 大臣、その点も、私は「強取」という言葉についてこの前質問したのです。もう少し突っ込んで私もお尋ねをしたかったと思うのですけれども、これは日本の辞典にはないのですね。まあある辞典もあるかもしれませんけれども、国会図書館等に備えつけてある最も権威ある辞典だと思うりっぱな大きな辞典がありますけれども、それには「強取」という言葉がないのですね。だからそれからして私は非常にわかりにくい言葉だというふうに思うのですよ。
○伊藤(榮)政府委員 大変失礼を申し上げました。刑事局長ともあろうものが刑法典をうっかりしておりまして大変失礼いたしましたが、刑法二百三十六条の「強盗」の罪のところに「暴行又ハ脅迫ヲ以テ他人ノ財物ヲ強取シタル者ハ強盗ノ罪ト為シ」こうございます。恐らく旧刑法も同じような文字を使っておったのじゃないかと思いますが、現行刑法は明治四十一年でございますから、それ以来法文上強盗罪の構成要件をあらわすのに使われておる、こういうことでございます。
○西宮委員 少なくとも一般の世間で使っておる用語にはないわけですね、漢文の辞典にもないのですから。そういうものを、いま明治四十一年の刑法に書かれたということだけれども、その後戦後は法律がすべてひらがなになったわけですね、そういう時期にむしろ改めるのが当然だ。刑法を改めるというのは困難でしょうけれども、それ以外の法律に、あえて国民が使わないこういう言葉を使うということがおかしいと思うのです。そういう点は何も反省しなかったわけですか、検討しなかったわけですか。
○瀬戸山国務大臣 大きな辞典にあるかどうか私もそのことを調べておりませんが、いまも刑事局長から申し上げましたように「暴行又ハ脅迫」いわゆる力によって、強制力によって強いて物を取る、こういう言葉を強取と言う。これはほとんどといいますか慣用語、通用語になっておるわけでございまして、ほかの長ったらしい説明をするよりも強盗罪あるいは強取という言葉、これはもう慣用語になっておってそう不思議な言葉じゃないと思うのですが、いかがでしょう。
○西宮委員 別に長ったらしい言葉でなくても、たとえば強奪でもいいと思うのですよ。今度の新しい改正刑法の草案は「強奪」になっておるわけですね。強奪なんというのはどこでも使う言葉、それでいいのじゃないですか。
○伊藤(榮)政府委員 改正刑法草案でも他に適当な用語がないという意味で強取を使っております。
○西宮委員 それは改正刑法の何条ですか。
○伊藤(榮)政府委員 改正刑法草案の三百二十四条でございます。
○西宮委員 もしそうならばこの改正刑法の方で混乱をしていると思うのだけれども、百九十九条は「強奪」になっているわけです。航空機の強奪。ですから航空機の場合のごときは強奪。つまり「奪」と「取」に、混乱ではなしにあるいは観念的に分けたのかもしれませんよ。つまり私、この前の改正案の審議の際に申し上げたように航空機を強取——強取というのは取得するということだと思うのだ。航空機を取得するなんということはあり得ないと思うのですよ。それに対して刑事局長は、その唯一の例が例のあのベンガジで爆破したことがある、こういう答弁をされた。だから、爆破が問題ならば爆破でも結構だろうし、航空機を取得するということはちょっと普通には考えられないわけですね。それは不動産なんかの場合もあり得るから取得という言葉がないわけでもないだろうけれども、いわゆる強取の方。もう一つお読みになった三百何十条ですか、そこでは恐らく無理に取ってポケットに入れて持っていく、そういうのを恐らく「取」と言っているのだろう。もし混乱でないとすれば、むしろそういう点を観念的に分けていると思うのだけれども、どうですか。
○伊藤(榮)政府委員 改正刑法草案の法制審議会における審議の過程におきましては、御指摘のように百九十九条で「船舶・航空機の強奪・運航支配等」という規定を設けているわけですが、この場合には、先ほど私が御指摘申し上げました強盗罪に関する三百二十四条と若干罪質を異にするという意味であえて「強奪」という言葉を使ったように承知をいたしております。 ただ、現在の航空機の強取等の処罰に関する法律は制定当時から強取という言葉を使っておりましたので、これを踏襲して現在御提案申し上げている法律でも強取という言葉を使っておるわけでございますが、強盗罪における強取と、航空機の奪取の場合の強奪あるいは奪取というものと若干その性格が異なることば御指摘のとおりでございますので、そういう意味で改正刑法草案の構想に基づいて刑法の全面政正をするというような事態になりますと、その点をもう少しきめ細かく配慮することになるのではないか、こう思います。
○西宮委員 この法律が最初にできたのは昭和四十五年ですね。ですから、そのときに航空機の強取という言葉ができたのでしょうけれども、私はむしろその時点で当然考えるべきことだと思う。もし私もそのころ気がついて——私、当時議席におりませんでしたけれども、大いに反対して使わすべきじゃなかったと思うのです。なぜならば、大臣聞いてください、強盗の方は物を取ってくるわけですよ。だからあるいは強取でもいいのかもしらぬ、取得でもいいのかもしらぬ。しかし航空機や船は強取してくる、そういうことはあり得ないわけですよ。だから、三百二十四条ですか、当然に私は強盗の場合はそれで結構だと思うのだけれども、航空機とか艦船とかについて取得をするというような観念はきわめて不適当だ。どうお考えですか。
○瀬戸山国務大臣 西宮さん、最初、まあ中以上くらいだとおっしゃいましたが、中以上どころの騒ぎじゃない、文字の問題、用語の問題については最高の知識を持っておられるように承りました。用語の問題でございますから、できるだけその事態に合うようにすることが適当だと私も思います。非常に傾聴に値する御意見をいま承ったわけでございます。 飛行機だからあるいは船だから強取ができないというわけでもないと思いますけれども、たとえば昔は、これはよけいなことでございますが、海賊なんかが船を取ってそれを使う、これはまさに強取に入るわけでございますが、細かい用語の問題としてはとにかくとして、なるほど改正刑法草案には、こういう飛行機や艦船等の場合には強奪、これが、おっしゃるのを承りますと世間常識的に態様を考えるのには非常にふさわしい表現のように思います。でありますから、将来刑法全面改正の問題とあわせて考えるときには、もう少し用語の問題を検討する必要がある、かように考えます。
○西宮委員 こういう問題に長くこだわるつもりはありませんけれども、さっき私が申し上げた船舶、航空機の強奪という改正刑法の百九十九条ですね、これに対応する現行法は何かということを——これはもちろん政府で、法務省で出した資料です。その対応する法律としては、航空機の強取等の処罰に関する法律ということが下の欄に書いてあるわけです。ですから、改正刑法はこれを訂正して強奪にしている。だから、恐らくそういう点は十分検討して区別をしたと思うのだが、私はもう一遍言えば、いわゆる航空機の強取というのは適当じゃない、そういう判断から改正刑法の方で強奪という言葉を使ったのだろうと想像するのです。そして、しかも、法律用語としてはともかくとしても、世間では使っていない言葉なんですから、あえて強取なんということを言わなくてよろしいと思うのですよ。だから、そういう点もぜひ法律をわかりやすくしてもらいたいという一つとして指摘をしたわけです。 質問したい点は、まず大臣の提案の趣旨の御説明について伺っていきたいと思うのであります。 まず、冒頭に、一部過激分子による航空機乗っ取り云々というようなことが出ているわけですが、いわゆる過激派あるいは過激分子という言葉、このことについて伺いたいと思うのであります。これは無論、法律の本文の方にはそういう言葉があるはずはない、これは当然だと思うのですが、その法律としては、いわゆる過激派あるいは過激分子でもいいですが、過激分子というのは、二人以上が共同して、凶器を示して逮捕監禁をした、これに該当するのがいわゆる過激派だ、こういうふうに認定するわけですか。
○伊藤(榮)政府委員 そうではございませんで、提案理由説明で大臣がお述べになりました中の過激分子という言葉は、要するに独自の主義主張を持ちまして法秩序をあえて踏みにじる、そういう行動に出る最近における一部の人たち、これを過激分子と呼んでおるわけでございます。その一部の過激分子による最近の事象、これを契機といたしましてこの立法を行うわけでございますが、そうであるからと申しましても、二人以上共同して、凶器を示して云々というものがすなわち過激分子ということになるわけではございません。
○西宮委員 いま局長が言われた最近の過激分子のいわゆる犯罪の特徴というものは、お述べになったとおりだと思うのです。それを法文にあらわす場合、大臣の提案理由の説明には、過激分子を対象にするということを書いているわけですが、それを法文でうたう場合にはどういう規定の仕方をしたわけですか。
○伊藤(榮)政府委員 過激分子だけを対象にして立法したというふうに申し上げておるわけではございません。最近の一部過激分子による異常な事犯、こういうものが発生しておることにかんがみまして、この過激派等によって犯される事例の多いような形の犯罪というものを的確にとらえるような構成要件をつくって対処したい、こういうことでございます。したがいまして、構成要件をそういう観点から一応しぼって定めておりますけれども、この構成要件に該当する限りにおいては、前にも御説明申し上げましたが、先般ございましたたとえば長崎で起きましたバスジャックと言われました事件、こういうようなものでございましても当然第一条の適用がある、こういうことでございまして、過激分子が犯すのを常としておるような犯罪類型に対処するわけでございますが、その構成要件を定める限りにおきましては、その構成要件に該当する行為はこれによって処罰をされる、こういう結論になるわけでございます。
○西宮委員 できた法律ですから、でき上がれば過激分子と同じような犯罪行為、それに適用されるというのは当然だと思います。しかし、それでは大臣の提案の趣旨説明というのはきわめて不適当です。あるいは不十分です。不完全です。なぜならば、終始一貫して、過激分子による航空機の乗っ取りあるいは在外公館云々、至るところに——大変長い趣旨説明でありますか、終始一貫してそれだけを述べているわけです。おかしいじゃないですか。
○瀬戸山国務大臣 提案理由に申し述べておりますのは、最近の社会情勢、それが多くはいわゆる過激分子によって御承知のような事犯がたび重なっておる、こういう情勢、社会現象の推移を述べたわけでございまして、それに対応するためにはこういう法律をもって臨まなければならない、こういうことでございます。たとえば、そういうことが行われますと、いわゆる特殊な考えを持っておる一連の過激分子でなくても、そういうものをまねるといいますか、見習うといいますか、同じような行為に出ることがあり得るわけでございます。たとえば、先ほども話が出ました長崎におけるいわゆるバスジャックと称するものも、日本赤軍という言葉ではありませんが、われわれは阿蘇赤軍である、こういう一つのまねた行動であろうと思いますが、これは先ほど申し上げましたように、最近の社会情勢を説明するために申し上げて、それに対応するためにはこういう法律が必要だ、こういうことを申し述べておるのでありまして、矛盾とは私は考えておりません。
○西宮委員 あえて矛盾とは私も申し上げておらないので、ただ、きわめて説明として不十分であり、不完全であるということを申し上げたのです。つまり、大臣が述べておられることは、過激分子を対象として終始一貫しておるわけです。だから、それがそうじゃない、別なものもあるのだ、バスジャックというか、いわゆる過激分子とは縁のないそういうものも対象にするのだということであれば、やっぱりそういうことは趣旨説明の中に明らかにすべきだと思う。そういう点で大変不十分な趣旨説明だということだけを指摘して、この程度にいたしておきます。 それでは、きょうは警察庁あるいは総理府、文部省からもおいでをいただいておりますのでちょっとお尋ねいたしますが、いわゆる過激派、あるいは過激分子、どちらでもよろしいけれども、そういうものについては政府部内で見解が統一をされているのでしょうか、どうでしょうか。
○福井説明員 警察の場合には極左暴力集団という言葉を使っておりますが、これはできましたいきさつがそれぞれございますので一括して極左暴力集団の概念を申し上げるのはなかなかむずかしいわけでございますけれども、ごく平たく特徴を申し上げますと、たとえばトロツキズムとか、もちろんマルクス・レーニン主義もそうでございますが、それから毛沢東思想、いろんな思想をごった煮風にしまして自分たち独自の主張をすると申しますか、そういう特徴がございます。それから行動面では、もう委員御承知のように、内ゲバ殺人をやったり爆弾事件をやったり大変過激である。そういう暴力でもってみずからの主張を達成しようとすると申しますか、そういう特徴を持っておる集団、こういうふうに理解いたしております。
○石瀬説明員 過激派分子と言われるものによります近年の犯罪行為につきましては、非常に私どもとしては遺憾に存じております。ただ、いわゆる過激派分子によります犯罪行為といいますのは、私ども平素扱いなれております一般の少年非行とはやや性格の異なるものであろうかというような感じでございまして、したがいまして、私どもが編集いたします青少年白書等においてもこれまで触れるところがなかったわけでございますが、そういった者たちにつきましても、人格形成その他の面におきまして、幼いころからの家庭とか学校とか職場とか、あるいは広い意味での社会におけるしつけとか教育とか指導とか管理、そういった問題もあるように思いますし、それから若い人たちの健全なエネルギーの発散の場が果たして十分にあるのかどうかというような問題もございますので、そういった面におきまして青少年行政とのかかわりがあるというふうに感じておるわけでございます。今後とも警察その他関係の省庁とよく連絡をとりながら協議をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
○石井説明員 私どもの方では通常警察庁で使われております把握の仕方によって理解しているわけでございます。
○西宮委員 いま私は、要するに世間で言う過激派あるいは過激分子、こういうものに対して政府ではどういう認識の仕方をしているのであろうか、それが統一しているのかどうかというようなことをお尋ねをしたわけで、後でいま回答をいただいた三人の方に、実態等についてお尋ねをしたいと思うので、後でまたそれは別個にお尋ねをしたいと思います。 もとに戻りまして大臣の趣旨説明に返りますけれども、大臣は「政府としては、かかる事態を前にして、かねてから各般にわたる防止対策を強力に推進してまいったのであります」こう述べておられますけれども、そのいわゆる強力に推進をしてきた防止対策というのは、どういうことが実際に実施をされたのか教えてください。
○伊藤(榮)政府委員 かつて昭和四十八年であったと思いますが、日航機のハイジャック事件が起きましたころから、政府といたしましては、この種事犯の防止対策要綱を定めましてこれに対処すべく努力をしてまいったのでございます。その対策に、さらに先般のダッカ事件にかんがみまして所要の措置の追加をいたしまして、昨年十一月八日、ハイジャック等防止対策というものが定められておるわけでございますが、その中にそれまで強力に推進してまいりました防止対策も含まれておりますので、そういう観点から、この防止対策につきましてちょっと御説明申し上げます。 まず、立法面等の観点で申し上げますと、いわゆるハイジャック関係の三条約、これを締結、加盟いたしましたほかに、国内立法といたしまして、すでに御承知の航空機強取処罰法を制定する、あるいは航空危険処罰法を制定するというような立法措置を講じておるわけでございますし、さらにそういった関係条約の加盟国を増加させるための努力をする。それからまた、警察庁を中心といたしまして国際的な捜査協力体制を強化する、これは御承知のICPO、国際刑事警察機構を通じての活動が多いわけでございますが、そういったことを図る。それからさらに、特にハイジャック関係につきましては乗客の手荷物あるいは搭載荷物のチェックの強化、こういうようなことをやっております。それからさらに外務省の関係におきましては、旅券の発給あるいは査証の問題に関しまして、いわゆる過激分子と言われるような者をなるべくチェックしていく、こういうような努力がなされてきたわけでございまして、そのことを大臣の提案理由説明の中で「かねてから各般にわたる防止対策を強力に推進してまいった」こういうふうに申し上げておるわけでございます。
○西宮委員 本当は、その防止対策を強力に推進したということになれば、同じような犯罪は起こらないわけですね。ところが「よど号」の次に、いまの昭和四十八年の日航ジャンボ機の問題があるし、さらに最近のダッカ事件もあるというようなことで、航空機でない事件はそれ以外にもたくさんあったわけですけれども、少なくとも「各般にわたる防止対策を強力に推進してまいったのであります」と大みえ切って胸を張って言えるほどのことじゃないのじゃないかと思うのですね。法律を改正したりあるいは新しい法律をつくったり、あるいはまた現場でボデーチェックをするとか、あるいは旅券の規制の問題とか、いろいろそういうことも制度を改正しておやりになったことはよくわかります。しかし、昭和四十五年の「よど号」、あそこを起点にして考えてみてもずいぶんたくさんの事件が起こっておるので、私は、少なくともこういう言葉で「各般にわたる防止対策を強力に推進してまいったのであります」と言って大みえを切るほどではないのじゃないかという感じがするわけです。しかし、いま伺ってみますと、いま御答弁になられたあの程度のことでしょうから、それ以上ないのでしょうからお答えを要求することもできないと思います。したがって、この程度にしておきますけれども、防止対策を強力に推進したいと考えたけれども、そのとおりにいかなかったという説明ならば、大臣の説明としてはまさに実態そのものだと思う。その辺にも、私はどうも姿勢が問題だという感じがするわけですね。 それから、これは局長にお尋ねしますが「現行の逮捕・監禁罪あるいは強要罪等をもってしては、これに対応するに十分とは言いがたい」、大臣の説明の中にありますけれども、この点は、いま読み上げたような現行の法律で間に合わないというのはどの点ですか。
○伊藤(榮)政府委員 二点から申し上げられると思います。 まず第一は、こういった凶悪な手段によって人を逮捕監禁して、これを人質にして無法な要求をするという卑劣きわまりない行為に対して、正面からこれを処罰する規定がないということは適当でないということが一つと、それから、さしあたり現行法上の罰則を活用するといたしましても、最も典型的な場合を考えますと逮捕監禁、それから刃物を持っておれば銃刀法違反というようなことになるわけでございます。それにいたしましても、このような卑劣きわまりない行為に臨むに相当な刑が盛れない、こういうことになるわけでございまして、その両面から必要性がある、こういうふうに考えたわけでございます。
○西宮委員 特に罰則を強化したという点は非常に明瞭なわけですけれども、私は、それだけで果たしてこういう事犯を未然に防ぐということにどの程度の役に立ちのだろうかという根本的な疑問を持っておるわけです。このことはいわゆる抑止力の問題として改めてお尋ねをしたいと思います。 続いて、大臣の説明には「その手段、態様も、さらにはその要求の内容も、ますます過激化してくることが憂慮されるのであります。」こう言っておられるわけですが、手段、態様あるいは要求の内容、これがますます過激化してくるんだけれども、それでは、今後はその趨勢はどうなるのか、あるいは手段、態様、内容、こういうものは今後はどういうことが予想されるのかということを……。
○伊藤(榮)政府委員 これは私どもの常識と異なる考え方を持っておる連中が犯すことでございますから、なかなか常識をもってして推測はできないわけでございますが、近時、諸外国において起きておりますような例を見ておりますと、新聞報道等でも御存じのように、ヨーロッパ方面におきましては、いわゆる要人を人質にとってとてつもない要求をする、獄中につながれておる一定の団体の関係者を全部釈放しろというようなことを言う、それから、中には、乗っ取られた飛行機なりあるいは人質なり、こういうものと関係のない第三国にある者の引き渡しを要求する、そういうことが現に出ておるわけでございまして、わが国の関係におきましてもそういうような方向へエスカレートすることが懸念されるわけでございます。
○西宮委員 いま例に挙げられた中では、まだわが国で出てないのは要人の人質ということですね。これがない。これは外国に発生しているけれども、日本ではないということですが、それでは、日本で予想されるこの種の事犯は要人の逮捕というようなことだけでしょうか。ほかに予想される問題はありませんか。
○伊藤(榮)政府委員 先ほどもちょっと申し上げましたが、たとえばハイジャックをして第三国の支配下にあるような未決、既決の囚人まで引き渡せ、そういう国際間の問題を巻き込むと申しますか、そういうような要求にわたるという場合も一応推測されるところでございます。
○西宮委員 いずれにしても、将来起こるであろう手段、態様、要求の内容というようなのを予測するというのは非常に困難かもしれません。しかし、これは申すまでもなく、こういう人たちの犯行は、全くわれわれの常識では考えられないような奇想天外なそういうことが起こり得るわけです。だから、よほどこれは法律もそれに備えた法律をつくらなければならぬでしょうし、同時にまた、たとえば検察なら検察なりそういうところも、本当にこんなことが起こり得るか、とてもとても常識では考えられなかったというようなことが、ある日突如として起こるということはあり得るわけですね。そういう点では、全く奇想天外な事態が起こるということが想像されるので、そういうのに十分備えていかなければならぬと考えるわけです。 続いて、大臣の所信表明の中では「不退転の決意を持ってこれに対処し」と言われておりますが、これはどういう内容を指すわけですか。——これは大臣でしょうな。
○瀬戸山国務大臣 いま言われましたように、どういう要求が出るか、これは想像しかねるわけでございます。いろいろな場合を想定することは可能でございますが、これはもう異常な考え方の連中がやるわけでございますから、何が出るかわからない。しかし、その要求に応ずるということでは——彼らのねらいは、率直に申し上げて、日本の場合は日本の政治、経済あらゆる国家形態を変えるという、それがねらいでございますから、そういう者の要求を一々聞いておったのでは、わが国の現行憲法下における法治国家の形態は崩される、そういうことは断じて要求に屈するわけにいかない、こういう決意でございます。
○西宮委員 大臣はこの前のダッカ事件以来、あの当時しばしば、血を流してもこれに対処するんだということを言われたのでありますが、そのいわゆる「不退転の決意」というのはそういうことを意味するのかどうか。 それからもう一つは、血を流してというのは、だれの血を流すんだということですね。お答えください。
○瀬戸山国務大臣 血を流すことを好むものじゃありません。たとえばハイジャックの場合は、いわゆる人質を擁して、そしてその生命身体に非常な危険を生じさせて、その人命との取引のもとで要求するわけでございますから、そういう要求に応じない、こういう場合には、人命を助けるためにいろいろな手段を講じなければならない。その場合に、時と場合によっては、だれの血を流すというわけじゃありませんが、血を流すこともあり得る、こういうことを覚悟しなければ問題は解決しない、こういう意味でございます。
○西宮委員 つまり、私がだれの血と言ったのは、犯人の血か、捜査陣というかそれを制圧しようとする人たちですね、そういう人の血か、あるいはもう一つは、人質にされた人の血か、こういうことですよ。
○瀬戸山国務大臣 いわゆる人質あるいは乗務員等の救出が重大問題でありますから、その作業をする場合に、場合によっては、あるいは犯人、あるいは乗務員、あるいは乗客、そういうものの血を流す場合もあり得る、こういうことでございます。そのくらいの決意をしなければ、エスカレートすればこれは処置できない、かように考えております。
○西宮委員 最悪な場合を想像すると、要するに、いま仮に航空機の場合を想定すれば、その航空機の中にいる人質と、それから犯人と、それがともに全部血を流してしまうということもあり得る。そうすれば、それを覚悟すれば、この種犯罪はやってもむだだということを彼らにも知らしめる結果にはなるでしょう。つまり、彼らが不当な要求を出す、しかしその要求には一切応じない、応じられない。したがって、ということになれば、勢い航空機は爆破されるか墜落するか、何かせざるを得ないということになるでしょうからね。だから、犯人並びに人質の血を流すこともあえて辞さないんだということであれば、その要求は拒否して、したがって、こういうことをやってもばかばかしいという認識を与えるということにはなるだろうと思うのだけれども、そこまで考えておられるわけですか。
○瀬戸山国務大臣 世界じゅうの国々がこういう者を受け入れない、こういう者を処断する、こういうことが確立すると、彼らは一つの目的を持ってやっておるわけでございますから、目的を達成することができないんだということになれば、彼らも生き物でありますし、また、一つの目標が、こういうばかばかしいことをしてもだめなんだということになれば、これはおさまると思います。しかし、いまの世界情勢ではまだそこまで、努力はしておりますけれども、行っておらないのは御承知のとおり。しかし、いずれにいたしましても、それは勝手にさせてほっておく、こういうなまやさしいものじゃありませんから、あらゆる努力を重ねて、その間において一部血を流す場合があっても、要求に応じて、そして国家の崩壊を招く、こういうことは断じてしてはならない、かようなことでございます。御承知のとおり、西ドイツがやりましたものも一部血を流す結果になった。そういうことがあってもやむを得ない、かようなことでございます。
○西宮委員 私が申し上げていることも、いずれも仮定しての話ですから、これ以上議論しても仕方がないと思うので……。 大臣の所信表明の中には、最後に「刑罰の本来有する犯罪抑止力と相まって、犯人に要求を断念させ、人質を安全に解放させる」これが目的だというふうに書いておられるので、私はぜひとも、そのいわゆる抑止力という問題について少しお尋ねをしたいのですが、これは後でまとめてお尋ねすることにいたします。 続いて、本論の方に入りたいと思いますが、まず第一に、この法律の表題、タイトルであります。 「人質による強要行為等の処罰に関する法律案」こういうことになっておりますので、二、三の点をお尋ねしたいのですが、まず第一に、「人質」という言葉はどういう内容なんですか。
○伊藤(榮)政府委員 人質にすると申しますのは、逮捕されあるいは監禁された者の生命身体等の安全に関する第三者の憂慮に乗じて、釈放、返還あるいは生命身体等の安全に対する代償として、第三者に作為または不作為を要求する目的で被逮捕者などの自由を拘束することをいうわけでございまして、わが国の立法例としては、昨年御可決いただきました航空機強取処罰法の一部改正において初めて成文法化したものでございますが、諸外国を見ますと、ドイツ刑法には人質罪というのがございまして、人質という概念をそのまま使っております。オプフェルスとなっております。それから、フランス刑法におきましても人質罪がございまして、オタージュという言葉を使っております。それからアメリカは、法律協会の模範刑法典におきましても人質という概念を使っておりまして、ホステージというような言葉を使っておりまして、一応常識的な観点からもあるいは諸外国の立法令等の観点からも、ただいま御説明申し上げたような趣旨に人質ということは理解されておる、こういうふうに考えております。
○西宮委員 法律用語としては今日まで十分に使われてこなかった用語でありますから、紛らわしいことが起こると大変だと思うのですが、そういう点を十分注意していただきたいと思います。 私も人質というのは何だろうかというので調べてみたのですけれども、有斐閣の法律学辞典によりますと、一つは戦時国際法に基づいた人質ですね、これははっきり書いてある。それから、日本においては、わが国の法制史上は人質というのは上代から江戸時代に至るまで行われておった、こういうことで、いわゆる借金のカタにとるとか、そういうことが現実に行われておったということだと思いますね。これはこの法律学辞典ではありませんけれども、特に日本は人質というようなものに対する一種の土壌というか風土というか、そういうものがあるのじゃないかと思うのですよ。つまり、昔の参勤交代なんというときに家族を人質にしておく、人質というか、家族を江戸に置いておくといったようなことが現実には人質として利用されたわけですね。そういうことが歴史的にも当然だというふうに言われてきた。したがって、人を担保に取るということが大したことでないように、あの江戸時代ならばむしろそのことはあたりまえのこととして行われておったわけですね。だから、そういう風潮が今日でも残っておるとするならば大変恐ろしいことなんで、人間を担保に取るということは絶対に排撃しなければならぬと思うのですが、言葉としても非常に新しい言葉ですから、十分範囲を明確にして間違いが起こらないようにしていただきたいと思うのです。 そこで、ひとつお尋ねをしたいのですが、この法律で言うところの「人質」は、いつから始まっていつ終わるのだということですか。
○伊藤(榮)政府委員 ごらんいただきますように、この人質は、これをいわゆるカタにとって第三者に対して無法に要求をする、こういうことでございますから、たとえば第三条に「人質にされている者」こういう言葉がございますが、これはただいま申し上げましたような第一条あるいは第二条の構成条件から申しまして、要求行為があってから安全な場所に解放されるまでの間、これが「人質にされている者」こういうことになると解しております。
○西宮委員 要するに、第三者に不当な要求をする目的で二人以上が共同して、凶器を示して逮捕監禁する、それだけで人質になりますか。つまり、第三者に対する不当な要求をするという目的を持って二人以上が共同して、凶器を示して逮捕監禁をするということで成立しますか。
○伊藤(榮)政府委員 その段階ではまだ人質というものは成立しておらないと思います。それは人を逮捕監禁しておるということでございまして、人質にして要求するわけでございますから、要求をした時点においてその逮捕監禁された人が人質になる、こういう考え方でございます。
○西宮委員 これは私も実はうっかりしておりまして、人と問答しておって気がついたのですけれども、そうすると、たとえば要求する以前に飛行機の中の人を殺してしまったというような場合にはこの第三条が適用されますか、どうですか。
○伊藤(榮)政府委員 ただいま御説明いたしましたことの当然の帰結といたしまして、要求前に逮捕監禁されている人を殺した場合には第三条の罪は成立しない、こういうことでございます。
○西宮委員 外部からはその人を殺してしまったかどうかということは全くわからないわけですね。たとえばイタリーのモロさんももう殺されているのか殺されていないのかわからないわけです。殺されていないものとして、要求される側の人は、それでは金を出そうとかなんとかいろんなことを考えているのだ。しかし、事実はもう大分前に殺されておったというようなことになると、その人質はすでに存在しないわけですね、そういうことになる。したがって、いまの局長の御答弁もそういう意味ではもっともだという気もいたしますが、外部からは全くわからない状態で、飛行機の中でまだ健在なのか殺されているのかわからぬ、そういうところで殺されてしまった場合にこの法律は適用されないということだと、単なる一般の殺人罪だけが適用される、こういうことになるのですか。
○伊藤(榮)政府委員 非常に卑近な言葉で申し上げますと、要するに質ぐさがないのにあるような顔をして要求しておる、要求された人は同じ程度の憂慮を感ずるでありましょうけれども、質ぐさがないわけでありますから、その質ぐさである人を殺したということにはどうもならないのじゃないかと思うのでございます。したがいまして、そういう場合には、ハイジャックとか乗り物を強取あるいは強奪したというようなケースでございますと強盗罪が一面において成立いたしたり、あるいはハイジャック処罰法の第一条第一項の罪が成立したりいたしますので、強盗殺人罪の適用があり得ると思います。しかしながら、たとえば大使館占拠でありますとか、そういうおよそ奪うという概念が入らないような占拠の仕方で人質となるべき人を人質にするまでに殺してしまうというような場合は、一般の殺人罪と逮捕監禁罪の併合罪、こういう形になると思います。
○西宮委員 局長の御答弁はわかりましたけれども、人質について、例の今度の改正刑法の討議の資料に書いてあるのと、それからもう一つ「警察学論集」三十六巻の二号というのに載っております人質の定義を持ってきたのでありますが、大体両方とも同じようですから、前の方の改正刑法の資料だけを朗読いたしますと、こう書いてある。「「人質」にするとは、逮捕されもしくは監禁され又は略取されもしくは誘拐された者の生命、身体等の安全に関する第三者の憂慮に乗じ、釈放、返還又は生命・身体の安全に対する代償として第三者に作為又は不作為を要求する目的で、被逮捕者等の自由を拘束することをいう。」だから、これだと私がさっき一番初めにお尋ねしたように、そういう目的を持って逮捕監禁するということですでに人質だということになるという説明ではないのですか。
○伊藤(榮)政府委員 ただいま御引用になりましたのは改正刑法草案三百七条の関係の説明だと思いますが、改正刑法草案三百七条は、ただいま御提案申し上げております第一条あるいは第二条とやや異なる規定の仕方をしているわけでございます。すなわち、ただいま御提案申し上げておりますのは「人を逮捕又は監禁した者が、これを人質にして」こういう書き方をしておりますが、改正刑法草案の場合には「人を逮捕し、もしくは監禁し、又は略取し、もしくは誘拐し、これを人質にして、第三者に対し」云々とこういうことになっておりまして、その未遂罪も罰するというような一種の結合犯というような形をとっております。こういう形におきましては、未遂罪を処罰する必要性が出てきますと同様に、ただいまお読み上げになりましたような解釈に当然なってくるのだろうと思います。
○西宮委員 改正刑法の三百七条は、これこれこれを「要求した者は」ということになっておるわけですね。ですから、これはもう当然に要求行為があったわけだから、人質にはなっているということなのだ。私がいま読み上げたのは——私、一部だけとってきてあと破いてしまったので、もう一遍調べてみますが、私がさっき朗読したのは、改正刑法審議の調査資料なんですよ。ですから、いわば公の文書だと思うのですが、それにいま私が朗読したとおりに書いてあるので、それとは矛盾をするというふうに思うのです。しかし、いまの局長の見解がそのとおり、それがそういうことで明確な政府の公式な見解だということであれば私はそれを了承いたしますから、別に議論はいたしません。 警察の方にお尋ねをいたします。人質というのはずいぶんいろいろな事件があります。いわゆる赤軍派だけの問題ではなしに、たとえばわれわれの記憶に残っているのでも、吉展ちゃん事件というのもありました。ああいったような事件もたくさんあると思いますけれども、最近の要するに一般的な人質、人間を担保にして自分の要求を貫徹するという事件はどういう状況にあるのか、つまり傾向としてどういうふうになっているのか、聞かせてください。
○加藤説明員 まず、いわゆる人質事件の発生状況でございますけれども、昭和五十年では十九件、翌五十一年では二十七件、五十二年が二十四件でございます。そして、ことしの四月十四日現在までが六件発生しておるという報告を受けております。それで、昭和五十年の発生指数を一〇〇といたしました場合、五十一年が一四二、五十二年が一二六でございまして、やや増加の傾向を示しておるということが言えると思います。 それで、いま申し上げました七十六件について、どういう態様で起きているのかということでございますが、場所的に見ますと、一般の民家におけるものが最も多くて二十八件でございます。次いで、旅館あるいは飲食店におけるものが各七件、いわゆるハイジャックが六件、以下、会社事務所とか乗用車内とか、金融機関の店舗とかというふうなところにおいて起きております。 また、この犯行をその目的あるいは理由といいますか、動機というふうなことで分けてみますと、逮捕を免れるためと、これは目的とはちょっと言いにくいのでございますけれども失恋等による自暴自棄で大した目的もなくてやるというふうなものが最も多くて、各十五件でございます。その次に現金を奪うためが十三件、国外への脱出を図るためが三件、以下凶器を手に入れるためとか、世間を騒がすためとか、特定の人の釈放を求めるためというのが続いておるような状態でございます。
○西宮委員 その中で、人質が殺害されたという件数はどの程度ですか。
○加藤説明員 五十年以降の事件におきましては人質が殺されたというのはございません。
○西宮委員 次に、いまのこの法律の表題でありますが「人質による強要行為等の」云々というのですが、「強要行為」というのはむろん本文にはないわけですね。法律の本文の方には「要求」とあるわけですからね。だからこの本文で言うところの「要求」というのを表題で「強要」と言っているのは、要するに、二人以上共同して、凶器を示して逮捕監禁をして、それを人質にして、その要求がすなわち「強要」である、こういう解釈なんですか。
○伊藤(榮)政府委員 現在刑法二百二十三条に「生命、身体、自由、名誉若クハ財産ニ対シ害ヲ加フ可キコトヲ以テ脅迫シ又ハ暴行ヲ用ヒ人ヲシテ義務ナキ事ヲ行ハシメ又ハ行フ可キ権利ヲ妨害シタル者ハ」云々という規定がございまして、これは強要罪というふうに称しておるわけでございまして、この表題に申します「強要行為」と申しますのは、こういう相手の第三者の意思の自由を制圧して何らかの行為をなさせあるいは行為をさせないというようなこと、これを強要行為、こういうふうに言っておるわけでございます。
○西宮委員 それじゃ、その次の「強要行為等」の「等」は何ですか。
○伊藤(榮)政府委員 「等」と申しますのは、第三条の罪、これは強要行為そのものではなくて、人質を殺すという行為でございます。これが「等」の中身でございます。
○西宮委員 それはちょっと私は理解できないのだけれども。つまりそういう不当な要求をして、しかも凶器を示して、逮捕監禁をして要求するわけですね。だからいわばその延長線上に人を殺すこともあり得るということは出てくるのじゃないですか。
○伊藤(榮)政府委員 確かに具体的な事態としては延長線上に出てくるわけでございますが、第一条または第二条の罪を犯した者が人質にされている者を殺す行為、これは強要行為ではないわけでございまして、強要行為の延長線上にある行為でございますけれども、強要行為そのものではない。人を殺すという行為である。こういう意味において「強要行為」という言葉には入らなくて、その下の「等」という言葉に入ってくる、こういう意味でございます。
○西宮委員 そもそも凶器を示すということが構成要件になっているわけですね。だから凶器を示すというのは当然に殺すぞ、要求を聞かなければ殺すぞ、こういうことを言うに違いないので、凶器を示すというのは、ただ凶器をお見せします。これがピストルでございますと言って見せるわけじゃないでしょう。決して殺しはしませんからどうぞ御安心ください、そういうことは言わないわけですな。だから、いやしくも凶器を示した以上は当然に殺すという意図を持って、それを材料にして自分の要求を通そうというわけなんだから、私はこれは当然に予想されていることで、全くその延長線上の問題で、別個の問題ではないと考えるのですか、どうですか。
○伊藤(榮)政府委員 きわめて正確に表題をつけるといたしますと、たとえば、人質による強要行為及びその強要行為の延長線上において人を殺す行為等の処罰に関する法律ということになるかもしれませんが、法律の題名としては「等」という一字でその趣旨を明らかにしておるわけでございます。
○西宮委員 それならば刑法の逮捕監禁罪、これは二百二十一条で「前条ノ罪ヲ犯シ因テ人ヲ死傷」したる場合は云々ということになっているわけです。しかし法律には、第三十一章は「逮捕及ヒ監禁ノ罪」とあって、逮捕及び監禁等とはないです。これと同じじゃないですか。
○伊藤(榮)政府委員 これは逮捕監禁の類型をこの章にまとめてあるという意味において、章の題名は「逮捕及ヒ監禁ノ罪」ということになっておるわけでございますが、法律の題名をつけますときには、およそ題名が中身を一部しかあらわさないということでは困るわけでございます。したがいまして、第三条を意識して「強要行為等」と、こういうふうに法律の題名としてはつけておるわけでございます。
○西宮委員 私はその必要はないと思うのですね。この刑法の方が第三十一章に「逮捕及ヒ監禁ノ罪」ということを書いて、その中に当然に二百二十一条が盛られているのだから、それと全く同じでいいじゃないですか。第一「等」という言葉は非常に乱用されるきらいがあります。何か事があったときには、あの「等」の中に入っているんだという説明をしようとするのかもしれないけれども、かえって紛らわしいと思うのです。私はそれでいいと思うのです。「等」を削ったら、それではどういうことになりますか。
○伊藤(榮)政府委員 「等」を削ると第三条の規定の趣旨が表題にはあらわれていない、こういうことになろうかと思います。
○西宮委員 それでは刑法の第三十一章のこの表題では、二百二十一条の趣旨はあらわれておらない、こういうことになるわけですか。
○伊藤(榮)政府委員 仮にただいま御指摘の第三十一章「逮捕及ヒ監禁ノ罪」とありますのが二百二十条と二百二十一条のこの二カ条からなる法律をつくるといたしますと、やはり逮捕監禁等の処罰に関する法律ということになるのじゃないかと思います。
○西宮委員 それは、そういう別個の法律をつくるか、あるいは章で表現するかということには本質的な違いは全くないと思うのです。それならば三十一章は「逮捕及ヒ監禁等ノ罪」と当然すべきだった。しかもそれに類似したのはこれだけではありません。刑法の百十一条、百十八条の二項、百二十四条の二項、百二十六条の三項、百二十七条、百四十五条、百四十六条の後段、百八十一条、百九十六条、二百五条、二百十三条の後段、二百十九条、二百四十一条後段、みんなそうです。私はそれでは説明にもならぬと思う。
○伊藤(榮)政府委員 私どもの所管からちょっと外れることなのでございますが、法令作成上の慣習といたしまして、法律の件名には中身を正確に反映するように「等」をつける、章にはそういうものをつけないというのが内閣法制局でとっておる慣例でございまして、それに従っておるわけでございます。したがって、先ほども言葉遣いが適当でないということをおしかりを受けたわけでございますが、航空機の強取等の処罰に関する法律とか、航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律ということで、最近では法律の題名につきましては中身を全部包含するために「等」という字を用いることが多くなっておる、こういう状況にございます。
○西宮委員 あれはいいと思うのですよ。たとえば航空機強取等の法律というのがありますね。これは航空機のいわゆる強取と、それからほしいままの運航の支配、その強取とほしいままの運航の支配は全く別物ですよ。だからそれはその「等」で表現するというのはきわめて正しいと思うのですよ。しかし、この場合はそれとは全然違うので、あらかじめ凶器を示して、おまえ殺すぞと言って逮捕監禁をしたのですから、普通の逮捕監禁罪よりも、凶器を示すということが特にこれにはうたわれているのですから、それは聞かなければ殺すぞということは最初からわかっているので、第三条が出たからといって「等」をつけなければならぬという理由には私は全くならぬと思うのですね。
○伊藤(榮)政府委員 私どもは「等」をつけた方が中身を正確に反映すると思っているわけでございます。ただいまの御指摘の例でございますが、第一条の関係は「凶器を示して」となっておりますが、第二条の関係は凶器の有無を問わないわけでございます。そういう観点からすると、第一条の行為、第二条の行為、いずれにいたしましても、それが前提になって第三条の人質を殺す罪というのができておりますから、延長線には間違いありませんけれども、ただいま御引用になりました凶器を示しているのだからという御議論ですと、第二条の方の関係では必ずしもそうはいかないというふうにも思いますが、いずれにいたしましても、私どもはこの「等」がある方が正確じゃないかというふうな気がしておるわけでございます。
○西宮委員 私はその点はちょっと納得できないのです。繰り返しますけれども、航空機強取等、これはいいと思うのです。全然別なことがもう一つあるわけですから。ほしいままの運航の支配ですか、そういう全く性質の違ったものがあるのですから、それがなければ法律の表題には合わなくなってしまう。これは全然違ったものを入れているのだから「等」をつけるのは当然だ。しかしこれなどは、第二条はとにかくとしても、第一条がその基本の条文なんだから、その第一条の基本の条文に従って当然予見される第三条なんですから、それをまるで別個のもののように、最初に別個のものだという御答弁だったけれども、航空機の強取とほしいままの運航の支配という場合とは完全に違うので、私はおかしいと思うのですね。 それから、これは大臣にお尋ねします。さっきの御説明は大体私の言うことを了解された上だと思うのだけれども、ただ法制局ですか、そっちの方の考え方は、法律の章の見出しには「等」をつけない、そして法律の名称の場合には「等」をつけるのだという局長の御答弁だったのだけれども、これならば余りにも勝手なやり方だと思うのですね。勝手なというか、愚民を惑わすと思う。だから、さっき言うように私みたいな頭の悪いのはますますわからなくなってしまうわけですよ。頭の悪い者にもわかるようにその辺を統一してください。
○瀬戸山国務大臣 失礼ですけれども、頭が悪いのじゃなく、頭がよ過ぎていろいろ御議論されておるように思います。刑法というものが刑を科する法律だということで、表題は刑法という簡単なことを書いてあるわけでございます。その中に各種の犯罪がありますから、その類型を決めたものの表題として、こういう種類の犯罪だという意味で、いろいろまた各章別に書いてあるわけでございます。中身を全部そこに書くということをやっておりません。法律の表題としては、刑罰に関する基本法だから刑法とわかりやすく書いてある。だからこの法律は、そういう意味で、先ほど来刑事局長が苦心惨たんしてお答えしておるわけでございますけれども、第一条、第二条はいわゆる強要行為。人質による強要行為の処罰に関する法律、仮にこうなりますと、強要行為を処罰するということは明らかでございますが、そのほかにもう一つ、人質を殺してしまった、こういう罪があるものですから、それを含める意味で「等」、これが普通の常識なのです。最近は法律の表題が長くなっておりますが、わかりやすいための表題をつけるわけですから、強要行為が二つ並べてある、この行為の処罰に関する規定でございますが、強要のほかにもう一つ人を殺したという行為がありますから、それを「等」ということで含めておる、これで御理解願えるわけではないか。法律の表題はいろいろ書き方があると思いますが、大体中身がわかって簡略にということでございますから、御理解を願いたい。あれほどたくさんの条文のある刑法でも、ただ刑法とだけ書いてあるわけでございますが、そうするとこの中身は刑罰に関する基本法が書いてあるのだなとわかるのと同じことだと思います。
○西宮委員 大臣のそういう御答弁だと、もう一遍初めからやり直さなければならないのですけれども、「等」というのを航空機強取等の法律という場合ならばいいと言うのですよ。航空機強取とほしいままの運航の支配、これは全然関係がないわけです。それを二つ合わせて一つの題名にしたから「等」の字をつけた、それはいいのですよ。だが、ここで言うところの第一条と第三条は、第三条は第一条の結果として当然にあらわれてくる、いわば結果的な加重犯と考えてもいいのではないか。そういう性質のものなんですよ。現に刑法の方は、章では「等」という言葉を使っていないわけです。ところがさっきの局長の答弁だと、法律の場合にはそういうときに「等」をつけるのだ、これは法制局の慣例だというお話なんです。私は、そういう慣例はきわめて非合理的だと思うのですね。ですから、大臣にお答えを願いたいと思った私の趣旨は、そういう点はぜひ検討しましょうという答弁を期待したのだけれども、最初の問題に返ってしまったのです。どうですか、局長でもいいですから、もし法制局がそういうことを勝手にやっているならば、もう少し緻密に、厳密にやれと言うのかどうか、局長答えてください。
○伊藤(榮)政府委員 先ほど来お答え申し上げておりますように法制局の法案づくりの慣例というものでございますが、私はその慣例は一応合理性があると思っております。といいますのは、国民の皆さんが法律の題名を見たときに、さっき大臣も仰せになりましたように、ああこういうことが書いてある法律かということがわかり、中身を読んでも表題と食い違いがないということが望ましいのではないかと思いますので、そういう意味で法律の題名に「等」というのを入れることは一応合理性があるのじゃないか、ないよりある方がいいのじゃないかと思っております。
○西宮委員 法律の表題を見ただけで中身がわかる、そういうふうにしたいというのは大変結構です。私もぜひそうあるべきだと思う。しかし「等」という字をくっつけたからといって中身がわかるわけじゃないですよ。つまり航空機の強取と全く質の違った、ほしいままなる運航の支配というやつがあるわけですね。それは「等」の字がくっついたからこれがあるだろうなどということは、表題を見ただけではだれにも全然わかりませんよ。強取のほかに何かがあるのかということはわかるけれども、「等」の字がくっついたからといって、ほしいままなる運航の支配というのがあるのだろうということは、少なくとも私の頭ではわからない。繰り返して申し上げるのだが、私の知識の程度ではとても理解できないということですよ。そんないまの答弁は全く詭弁ですよ。
○伊藤(榮)政府委員 仮に人質による強要行為の処罰に関する法律という件名を国民の皆さんが見て、中身を見ると、強要行為ではない人質殺害行為までが規定してある、そうすると表題に偽りがあったということになるのじゃないかと思うのでございます。
○西宮委員 いまの説明よくわからなかったのですけれども、それでは私はもう少し保留しておきます。私はとうてい納得できない。 ついでにこれは大して議論するほどでもないのですけれども、法律案の最後についている提案理由を見ると「最近における人質による強要行為の実情にかんがみ、この種の強要行為に対する処罰を強化する等の措置を講ずる必要がある。」ではこの「等」は何ですか。
○伊藤(榮)政府委員 第四条に国外犯処罰規定がございます。「前三条の罪は、刑法第二条の例に従う。」これが「等」でございます。
○西宮委員 これだって、この種の強要行為に対する処罰を強化するというものの一つの対応の仕方じゃないですか。処罰を強化する、強化するやり方にそういうこともあるということで、それと異質のものではないでしょう。
○伊藤(榮)政府委員 処罰を強化すると申しますと、すでに存在する構成要件の法定刑を引き上げる場合、あるいは新たな犯罪類型を設定しまして従来の法律の運用によりますよりも重い刑を科し得ることとする、これが処罰の強化であると思います。第四条に書いておりますのは、この法律の適用範囲を述べておるわけでございまして、その意味で処罰の強化そのものではないわけでございます。
○西宮委員 処罰の強化というのは、一般的には罰則を強化するというのが普通だと思うのですね。しかし、それと合わせて第四条、つまり刑法第二条を適用するということもあってしかるべきだと思う。しかしこれは要するに処罰を強化する一つの方法にすぎないので、私はあえてここに「等」を入れる必要はないと思う。これは提案理由ですから、別に法律の条文じゃないから、あってもなくてもそう大して青筋立てて議論する問題ではないと思いますけれども、提案理由の方は「最近における人質による強要行為の実情にかんがみ、」ここには「強要行為等」の「等」はないわけですね。そして逆に後ろに「等」がくっついている。だから「等」の字を実に安易に使い過ぎているという傾向が多分にありますよ。これは十分注意してもらっていい問題じゃないかと思うのですね。 いま申し上げたのは提案理由ですから、強いてあれする必要はないと思います。しかし前の方だけは私は納得できませんから、保留をいたしておきます。 それでは本文に入りますが、どうしますか。
○鴨田委員長 この際、暫時休憩いたします。 午前十一時五十九分休憩 ————————————— 午後零時三十一分開議
○鴨田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 質疑を続行いたします。西宮君。
○西宮委員 いままでは今度の法律案の前段の部分をお尋ねをしてまいりましたので、これから本文についてお尋ねをしたいと思いましたが、法務省以外の関係の省庁の皆さんにもおいでをいただいておりますので、順序を変更いたしまして、法律の本文の問題は後回しにして、若干お尋ねをしたいと思います。 これは警察、総理府、文部省、いずれにもお聞きをしたい点なのでありますけれども、昭和四十五年のいわゆる「よど号」事件、あれ以来こういう問題が表面化してきたわけでありますが、あの「よど号」事件に何を学んだかということがまずお聞きしたい点なんです。それぞれ簡単にお答えいただけましょうか。
○福井説明員 「よど号」事件に何を学んだかという御質問でございますが、一つは、「よど号」事件で北朝鮮へ逃亡しました九人の実行犯のうち四人は、四十四年の一月十八日から十九日にかけましての例の東大の封鎖解除の際に、立てこもっておって逮捕された人物でございます。そういう事犯を繰り返しておった者がああいうハイジャック事犯の犯人になっておったということが一つあるわけでございます。 それから、共産同赤軍派の海外根拠地をつくっての世界同時革命という理論、これは「よど号」事件の前からあったわけでございますけれども、あの事件によって、実際に彼らがそういうことを本気で志向しておると申しますか、その後日本赤軍に犯罪の態様としては受け継がれて幾つか事件が起こるわけでございますが、そういうものを実際に彼らが引き起こしたということで、まさに彼らが本気で海外根拠地論を考えておる、こういうことをわれわれとしては知った、こういうことであります。
○石瀬説明員 「よど号」事件その他、その後一連のハイジャック事件等をいろいろ私どもも見ておりまして、私どもが平素扱いなれております一般の少年非行とは、犯人の年齢とか、あるいは犯罪の目的とか態様その他から見まして、やや特殊なものに属するのではないだろうかということで、率直に言いまして、青少年対策という観点からは「よど号」事件から格別の感想というものを持っていなかったというのが実情でございます。ただ、よく考えてみますと、確かにああいう犯罪人をつくり上げた過程にはいろいろ幼いころからの教育の問題とか、あるいはまた若い者のエネルギーの発散の問題とか、いろいろあると思いますので、今後そういった面につきましても、十分関係の機関とも連絡をとりながら目を配ってまいるようにいたしたいというふうに考えております。
○石井説明員 学生の学外における反社会的な行為ということになろうかと思いますが、文部省といたしましてはあくまでもこれは大学に対する指導ということでやるわけでございまして、従来から、学籍にある者の指導管理につきまして再検討を加えていただきまして、単位修得のおくれている者とか長期欠席者、それから休学を願い出ている者等の実態の把握とそれに応じた指導管理といいますか、的確な指導をやることを指導いたしておりますとともに、学外で引き起こしました事件につきまして、非違を犯した者の責任を明確にし、それに対して厳正適切な措置を速やかにとるように指導しているところでございます。
○西宮委員 以下主として警察庁にお尋ねをいたしますが、「よど号」事件以来今回の成田事件に至るまで、要するに最近の極左暴力集団の動き、特徴あるいはその規模、そういったものをまず御説明願いたいと思います。
○福井説明員 まず規模でございますが、ここ数年総結集勢力は約三万五千で横ばいというふうに見ております。ただ、その中身でございますけれども、警察としてつかみます一番重要なつかみ方でございますが、彼らが全国動員と称して集まってくる場合がございます。そういうものをずっと集計しておるわけでございますが、たとえば中核派で申し上げますと、今回の三・二六の集会デモに千八百人集めておりますけれども、これが去年、ことしを通じての最高でございます。それから去年の十二月十三日に大阪で中核の政治集会で五百五十を集めておりますが、これが西の方で集めたごく最近の数では一番多い数でございます。そういうものをずっと積み上げておきまして総結集勢力というのを見ておるわけでございますけれども、大体六千ぐらいかなということで見ておりましたのが、内ゲバ等で若干勢力が減ってきて、五千八百ぐらいかな、こういうことでつかんでいるわけでございます。核マルの場合は、四千五百ぐらいで大体横ばいで来ておる、そういうつかみ方でございますが、そういうものを積み上げまして総結集勢力を三万五千ということで政府としては見ております。 それから傾向でございますけれども、一言で申し上げますと、テロ、ゲリラをますます志向してきておる、こういうふうに見ております。と申しますのが、彼ら流の考え方でございますけれども、一方では権力というものに立ち向かっておる。その権力と自分たちの力関係は、いまの現実の時点で見ると、これはもう自分たちの力が圧倒的に小さいと申しますか、そういう認識を彼らはやはり持っております。 それともう一つ、中核の場合には革マルと、革マルの場合には中核、革労協と内ゲバをやっております。これが彼ら流の言葉で言いますと、政治的組織的な対決にとどまらずに、軍事的戦争的な対決だ、要するに殺し合いであるし、いわゆる組織の抹殺し合いであるし、お互いに戦意を完全にくじき合うまでやるんだ、そういう厳しい対決を対立セクトとやっておる。それで、一方では権力と対峙しながら一方では対立セクトと対峙をしている。二重対峙というように彼らは言っておりますが、そういう厳しい条件のもとで、彼らが軍事を志向する場合には、正規戦ではとても無理で、いわゆるゲリラ戦をやる以外にないということでゲリラを組織としても志向しておりますし、それから実際にやっていることもテロ志向と申しますか、そういうことがあるわけでございます。内ゲバの実態を見ておりましても爆弾闘争を見ておりましても、大きな彼らのテロ、ゲリラ志向というものの中で考えていけば一応とらえ得るという実態でございます。そういう状況でございますので、先ほど申し上げました彼らの組織、実態のつかみ方等も実はますますむずかしくなってきておりますし、彼らの犯しました凶悪な事件の捜査等も残念なことでございますけれども、ますます手がかかると申しますか、捜査期間が延びてきておる、そういう実態はあるわけでございます。
○西宮委員 いまの御説明だと内ゲバなどが盛んに行われるという話ですが、新聞のニュース面だけを見ておると、最近内ゲバというのは余り報道されなくなった。つまり、多少下火になってきたのではないかという感じがするわけです。同時に、その反対に、セクト同士でもお互いに物によっては共闘するという動きがあるのではなかろうか。これはニュース面を見ての感想にすぎませんから事実は違うのかもしれません。もし違うなら教えてもらいたいと思います。 それから、彼らの中身が学生と一般市民というか学生以外の者ですね、そういう構成はどういうふうに変わりつつあるのか。いま全体の数字で三万五千とかいろいろそういうお話もあったが、これはたとえば「よど号」事件の当時、必ずしも昭和四十五年でなくても結構ですけれども、傾向的にはどうなのか、かなりの数でふえているのか、いまのお話は三万五千で横ばいだという話だったのだけれども、数年間の動向を見るとどういうことになるのか聞かしてください。 〔委員長退席、保岡委員長代理着席〕
○福井説明員 まず組織の総結集勢力のいわゆる増減の傾向ということでございますけれども、四十九年ころからは三万五千で横ばいというふうに見ております。ピークは四十四年末の五万三千五百という数字でございますけれども、それから漸減してきまして四十九年ごろから横ばい、こういうことでございます。 それから組織同士の共闘ということでございますが、これはそのときそのときの闘争のテーマによって離合集散ございますけれども、今回の三・二六の事犯を通じて見ますと、一方では中核を中心にした動きがございましたし、一方では第四インター日本支部に共産同の戦旗派なりプロレタリア青年同盟というものがくっついて、ある意味では共闘と申しますか同じような犯行を一緒にやっておる、こういう実態は確かにございます。 それから、学生とそれ以外の者の比率ということでございますけれども、これもさっき申し上げたようなことでなかなかむずかしいわけでございますが、実態としては、現在も学生活動家であったり、労働者であってもかつては学生活動家であった者が多いと思いますけれども、いまの身分でとらえますと、学生よりは労働者部分の方がふえております。ごく大まかな数字で恐縮でございますが、学生四対労働者部分六、こういう感じでとらえております。
○西宮委員 比率として学生よりは一般労働者がふえておる、そういう御説明だったが、文部省でつかんでいる状況はどうなんですか。学内での動き、傾向的にどういうことになっておりますか。
○石井説明員 過激派の実態でございますけれども、私どもの方といたしましては全貌というものはなかなか把握することが、調査機関ではございませんので、むずかしいわけでございます。ただ紛争の発生件数というようなこと等から見てみますと、学内におきます紛争の発生件数、学生による授業妨害とか施設が占拠されたとか、あるいはそういうことにより教育研究活動が阻害されたというような件数でございますが、こういう紛争の発生件数は漸次減っておりまして、たとえば四十九年あるいは五十年ごろでしたら百件前後ありましたものが、最近では五十二年度が二十九件とか、五十三年度が十一件とかいうぐあいに紛争発生件数自体は減少している傾向にございます。したがいまして、一般的に言いますと、全国の大学はおおむね平穏な状態にある。ただし一部の大学におきまして、過激派に属する学生によりまして現に施設が占拠され、また不正常な事態が見られるということが実情でございます。
○西宮委員 さっき警察庁にお尋ねをした中で、各セクトが従来はいわゆる内ゲバでずいぶんエネルギーを使っておった、そういうのが幾らか下火になってきて、むしろ物によっては共闘するという傾向が出てきたのではないかというふうに私が申し上げたのは、たとえば「よど号」事件のときの——私は「よど号」事件に何を学んだかということをさっきお尋ねをしたのだけれども、それで私自身も昭和四十五年の四月号の代表的な三つの中央新聞を一通りめくってみたのであります。そうすると「よど号」事件に関連して、学生グループの中で、やったぞという大変な歓声を上げているというのと、あれは茶番劇だといって非常に冷たい目で見ているというのと二通りあるわけです。ところが今度の成田事件では、成田の、しかも同じ場所で同じ建物の中にいろんな派も一緒に入っているわけですね。中核、解放、第四インター、あるいは戦旗とか先鋒とか、そういうのが同じとりでの中に入っているというようなことが現にあるし、あるいは例の管制室の爆破についても、主として部隊は第四インターだったと思いますけれども、ほかの者も一緒にやっているというようなことで、大分そういう状況が変わってきているのじゃないかと思うわけです。その一つのあらわれだと思うのですが、これはいわゆる第四インターですね、さすがにあの問題を「三月開港を完全粉砕」したというので大変でかでかと礼賛しているわけですね。それから、中核はこの間のには参加をしなかったそうですけれども、それでも「三・三〇開港を爆砕」ということで、自分がやったのではないけれども管制塔の破壊というものを高く評価をしているということですね。こういうことは、各セクトがお互いに命をかけて勢力の争いをしているというような前の状況から見ると、かなり変わってきたのじゃないかというふうな気がするのですが、それならそれで、それに対する対応の仕方も幾らか変わってくると思うので、その点はいかがですか。
○福井説明員 かつては反目し合っておったのが共闘の方向に来ておるのじゃないかという御趣旨の御質問だと思いますが、そういうふうには見ておりません。今回の三里塚闘争にも中核、革労協と対立関係にあります革マル派は現地にも行っておりません。行けない状況でございます。それから、第四インターと中核等が例のいわゆる横堀要塞に一緒に入っておるではないかという御指摘がございましたが、確かにそれはございました。ところが、それぞれ自己主張の強い連中同士でございますから、横堀要塞のどこにどっちの旗を立てるかということで、こっちから見ておりましてもつかみ合いのけんかをするような状況がございますから、要するに三里塚闘争という当面の闘争の目玉について同じ場所で一緒にやっておるだけでございまして、決して大きいセクト同士が本当に共闘し合ってという状況ではございません。ただ、管制塔に入りました犯人の中に、第四インターのほかにプロレタリフ青年同盟とか共産同戦旗派の連中がいたことは事実でございますけれども、これはセクトの力もずいぶん開きがございますから、小セクトは自分たちだけではなかなかやれない、それがあの闘争に限って第四インター主導のそういう闘争に加わった、こういうことであろうと思います。 ですから、今後もそのときどきの状況によって、ある場面でそれは一緒にやることがあるかもわかりませんけれども、現在内ゲバを繰り返しております中核派と革マル派あるいは革マル派と革労協、これはさっきも申し上げましたように軍事的戦争的対決ということを言っておるわけでございますから、相手が完全にまいったということになるまではやめないという構えでございますので、対立は続く、こういうふうに見ております。
○西宮委員 特に成田の場合は常に農民の反対同盟、これが少なくとも主導権を握っている。主導権を握っていると申しますか、事の起こりは農民の土地剥奪に対する抵抗運動として出発をしたわけです。だからそこにその問題の根源があるのだということで、それを力で押さえつけるというようなことが間違いだったのだ、もう一遍原点に返って、大変おくれたにしても、いまからでもいいから、とにかく農民と十分胸襟を開いて話し合いをするようにということをわれわれは強く念願をし、主張をしているわけです。 これは政府に対して言いたいことなんで、そのことは後で改めて申し上げますが、そういう成田の特殊事情ですね。ですから、どんな運動でも農民の反対同盟を一番トップにして、各セクト、各グループはその下で、反対同盟の指揮のもとに行動する、こういうことになっているはずですね。同時にまた、反対同盟が主催した会合等では各セクトがお互いに誹謗中傷してはならない、こういうことを一つの条件にしているという話も聞いているのです。ですから、そういう特殊の事情のもとに、あそこにおいてだけお互いにある程度自分の主張を抑制しても共闘するということが行われているのじゃないかと想像しているわけですが、もしその辺に何か御説明があったら説明をしていただきたいと思います。 それから、私がさっき申し上げた「よど号」のときの新聞をいろいろ読んでみると、暗殺者名簿が警察の手で発見されたということが書いてあるわけです。これはつまり内ゲバでお互いに殺し合っているというので、その殺す相手のリストができているわけです。四十五年からかなりの時間がたったわけですが、その名簿に載っかっておった人たちは今日ではどうなっているのか、つまりそのうちの何名かはもう殺されたというような事実があるのかもしれませんし、その辺をつかんでおったら答えてください。
○福井説明員 三里塚で反対同盟ができましたのは四十一年と記憶しておりますが、極左が三里塚闘争に本格的に介入いたしましたのは四十三年の二月ごろからでございます。要するに、三里塚に空港をつくることには反対ということでは地元の農民の一部の人々と極左の連中の主張が同じであるということで入っていったわけでございます。それで、委員御指摘のように、確かに三里塚では反対同盟のまるきり反対に遭っては動きづらい事情がございますので、たとえば集会等も反対同盟主催の形をとってそれに参加するというスタイルでございます。ただ、同床異夢と申しますか、彼らは、三里塚闘争の核心は日帝国家権力との非和解的な実力闘争、こういう言い方をしておりますから、空港反対の点では通じますけれども、彼らは彼ら自身の目的を持っております。彼ら流の階級闘争の一環としてとらえておりますし、要するに彼ら流の暴力革命を実践する目的であそこに集まってさまざまな行動を繰り返しておるわけでございます。ですから、一応表面は反対同盟の主催する集会等に参加する形をとりますけれども、後の行動はそれぞれ極左が独自に動いておる、こういうふうな理解をしております。 それから「よど号」の犯人らが暗殺者の名簿を持っておったという御指摘でございますが、これは当時の証拠物を詳細に点検し直したわけではございませんけれども、共産同赤軍派はあの時点ではたしかまだ内部対立は起こしてなかったはずでございます。したがいまして、内ゲバと申しますか、あの時点ではそういう事態はなかったように理解をしております。その後いろいろごたごたを起こして細かく分かれてまいりますけれども、あの時点ではまだ共産同赤軍派として一本であった、こういうふうに理解をしております。
○西宮委員 もう一つ、四十五年の「よど号」のときの新聞に、警察としては「大口資金源を追及」という見出しで報道されている記事があるのでありますが、また、今度の成田事件以後も、その資金の問題についていろいろ報道されておりますけれども、わかっている実態をわかっている程度で答えてください。
○福井説明員 まず、よど号事件の当時の経過を申し上げます。 「よど号」事件の犯人らの一番大きな資金源は、「よど号」事件は四十五年の三月三十一日でございますけれども、四十六年に一連の銀行強盗等を彼らは敢行しております。三月九日には横浜銀行の相武台の出張所を襲いまして百五十万くらいの金を奪っておりますし、それから五月十五日には、小学校のいわゆる給料の入ったものを強奪をして、三百数十万円というのを奪った事件がございますが、そういうものが一番大きな資金源であったというふうに理解をしております。 それから、最近の極左の資金源でございますけれども、これは若干実態が違っておりまして、さっき申し上げましたように、大まかに見て半分以上が労働者部分でございますから、これからカンパと称して吸い上げをいたします。毎月の月給からも吸い上げますし、ボーナス等からは大変な率で吸い上げるわけでございますが、これの実態はなかなかむずかしいわけでございます。それと、あと本人に対するはね返りがございますので、詳細な説明は省かせていただきますが、ごく一例を申し上げますと、三十代のごくごく普通のサラリーマン、それで百万ぐらいを大体年間に吸い上げられておったというような実態がございますが、そういうものが一番大きな資金源、こういうふうに見ております。そのほかにも、もちろん機関紙の売り上げとか党費という形で取っている分もございますけれども、一番大きなものは、ただいま申し上げましたような組織内からの資金カンパ、こういうふうに見ております。
○西宮委員 給料の何割かをカンパにしているという話でしたが、私は何で読んだのかちょっと忘れてしまったけれども、あるセクトなどは、給料の全額をセクトの本部に出して、そして生活費はまた別にそっちの本部から受け取る、そういう仕組みになっているという話も聞いているわけです。そういうことは実態であるのかどうか。 最近は、さっき例に挙げたような銀行強盗とかそういうことはほとんど全くないですね。新聞で見る限り全然ないと思うのだけれども。だから、そういうことになれば、そういう金の非合法的な集め方はやっていないということでしょうが、したがって、そういう組織内部からカンパで徴する、ある意味においてはそれは自由だと思うのですね。彼らとしては全く合法的なやり方だと思うのですけれども、それにしても、資金としては莫大な資金だ。こういう新聞等を見ても、これは本当にこの辺の普通の新聞と全く変わりのない、紙の質から言っても何でもりっぱな新聞が出ているし、それから、それぞれ本部の所在する場所などはこれまたりっぱな会館を構えている、あるいはりっぱな印刷所を持っているとか、いろいろそういうことが、これは現に事実だと思うのですね。そういうことになると、それだけを全部組織内で賄っていくということだとなかなか容易ではないのじゃないかという気がするんだが、そう思いませんか。その組織内のカンパだけで十分に間に合っているというふうにあなた方は見ておられますか。
○福井説明員 資金源というのは一番内容をつかみづらい部分でございますが、さっき例を一つ申し上げましたけれども、ごくごく単純に申し上げまして、たとえば百万のものを、組織の勢力が三千人としますと三十億でございますから、これは大変な金額でございますが、そのほかに、たとえば三里塚に常駐をしておる連中が百数十人くらいおりますが、この連中は、援農と称して地元の反対同盟の農家の作業の手伝いをやることがございます。その際に、金銭の形で反対給付を受けることは余りないようでございますけれども、いわゆる野菜とか米とか、品物の形で反対給付を受けるという実態はずいぶんあるようでございますから、そういうものプラス、あるいはアルバイト等に出て金銭面でも若干の収入を上げる、そういうことをやって、さっき申し上げました組織内からの吸い上げを補っておる部分もある、こういうふうに見ております。
○西宮委員 この問題に関連して、最後にもう一つお尋ねをしたいのですが、国際的なかかわり合いというのはあるのかないのか。第一、日本赤軍が直接には参加してないのかどうか。日本赤軍は無論国外に本部を設けておるわけですが、といって、これが国際的な組織というわけではないので、国際的なかかわり合いというような私の質問は当を得ないかもしれませんけれども、そういう点はどうなっているのか。 それからさらに第四インター、これだけは完全に国際的な組織なんですね、日本支部ということになっているわけですから。この第四インターの本部はどういう態度をとっているのだろうか。要するに、国際的な関連性というのがあるのかないのか、聞かしてください。
○福井説明員 まず日本赤軍でございますが、三月十五日付の人民新聞で声明をしておるわけでございますけれども、三里塚の闘う農民の皆さんという書き出しでございますが、そうして、中では、日本赤軍は三里塚に結集した闘う仲間たちとあらゆる場所で一体となって闘い抜いておるという趣旨のことを言っております。ですから、気持ちとして日本赤軍が三里塚現地の闘争に連帯を表明しておることは間違いないわけでございます。じゃ、具体的にどうかということでございますけれども、いわゆる日本赤軍の国内の関係者と申しますか、そういうものが一部三里塚の集会デモに参加したであろうというふうにはもちろん見ております。ただ、具体的な犯行面と申しますか、検挙された中にそういう者は現在のところ発見はされておりません。 それから第四インター日本支部でございますが、これはまさにそのとおりの名称でございますけれども、要するに、国際的に非常に強い本部があってそのもとに一体的に動いておるというほどのものではございませんで、ほかの組織に比べますと一応国際性は強いわけでございますけれども、やはり革共同系の一派と申しますか、中核なり革マルなり第四インター日本支部、そういうつかみ方をしております。特にこれだけを抜き出して、非常に実体の違うグループ、こういうふうには見ておりません。 〔保岡委員長代理退席、羽田野委員長代理着席〕
○西宮委員 これは文部省にお尋ねをしたいと思うのです。あるいは総理府にですね。この問題をいわゆる公安事件として、治安の事件としてだけとらえていくというのは非常に問題があると思いますが、さっきから申し上げている「よど号」事件のときなど、大学の制度に問題がある、あるいは大学の学生部は解散すべきであるというような学生部解散論というのが載っておったり、あるいは全教官が防波堤になれというようなことの論文が載っておったり、あるいは「天声人語」みたいな各新聞のああいう欄の中にずいぶん示唆に富んだいろいろな提言が行われておったんですけれども、文部省などでは十分そういう点は、学生に対する教育の問題としていまの制度に対して反省すべき点がないのかどうか、そういうことが当然に考えられなければならないと思うのですが、そういう点はどうですか。
○石井説明員 学生の更生補導といいますか指導につきましては、先生御指摘のとおりだと思います。私ども文部省におきましては、機会あるごとに学生部のいろいろな会議を通じまして、学生の更生補導に十分万全を期するように指導しているところでございます。特に、こういう学外における問題につきまして非違を犯した、法に触れる行為を犯したというようなこと等については、その処分といいますか、その行為について厳正な措置をとるよう指導しているところでございます。特にその前に、何よりもそういう行為に走らないようにいろんな場面において、大学のサークル活動とかクラブ活動とかそういうあり方、それからまた更生補導のいろいろな各施設を通じて、学生が十分健全な活動ができるようにそういう面に配慮をしていくように、私ども文部省、大学一体となってやらなければならないというふうに考えているところでございます。
○西宮委員 総理府の青少年対策本部、さっき答弁をいただいたのである程度わかりましたけれども、この青少年白書等を見てもずいぶん膨大な書物で、その中には青少年の非行の問題などを取り上げて説明をしておりますけれども、いままでそういういわゆる極左冒険主義といったような人にはほとんど目を向けていなかった。さっきの話のとおりなんだけれども、これからそういう点についても十分関心を持っていこうという答弁だったわけです。私はやはり青少年対策本部と称するからには、こういう問題にも十分配慮をして、講ずべき方策を講じていくということが当然だろうと思うのです。だからそういう点で、この前の昭和四十五年の「よど号」事件というのがさっぱり教訓として生かされていないということ、これは何もあなた方総理府だけを責めるのではないのですけれども、全体として生かされておらない。これは、午前中には刑事局長に、いままで対策を強硬に講じてきたというのは何だということをお尋ねした場合の答弁でも、同じようなことを私は感じたわけです。つまり「よど号」事件、あれだけ重大な事件が発生したにもかかわらず、それが十分教訓として生かされておらなかったということが考えられるのだけれども、どうなんですか、そういう点の反省はないのか、あるいはさらに今後どういうふうに取り組んでいくかということを、もう一遍最後に答えてください。
○石瀬説明員 青少年白書を毎年出しておるわけですが、担当が違いますのでちょっと責任のあるお答えになるかどうかわかりませんが、過激派の問題につきまして取り上げていないという理由には、恐らく二つあるのではないかというふうに考えております。 一つは、先ほど来申し上げましたように、過激派による犯罪行為というのが、私ども平素扱っております一般の青少年非行と、犯人の年齢とか犯罪の態様や目的、そういったものから見まして相当異なる、きわめて特殊なものであるということが一つと、それからいま一つは、総理府の役所の性格といたしまして、非行防止にいたしましても健全育成の仕事にいたしましても、関係各省庁のやっておる仕事を総合調整するというのが本来の仕事でございますので、白書の性格としても、どうしても特殊なものはできるだけ避けて一般的なものにならざるを得なかったということに、その理由があるのじゃないだろうかというふうに考えております。 しかし、せっかくいろいろ御指摘もございましたので、私どもの方では一カ月か二カ月に一回ぐらいずつ非行関係の省庁の連絡会議等を設けておりますので、そういった場にもいまの過激派の問題につきましても話題を提供いたしまして、よりよく協議をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
○西宮委員 法務省以外から出ていただいたお三人は引き取っていただいて結構だと思うのですが、その前に一つだけ申し上げておきたいと思うのです。 私はさっきもちょっと言いましたし、これは法務大臣等を通じて政府全体に十分理解をしてもらいたいということで、後で取り上げてまたその点を強調したいと思うのです。それは、成田問題などがそもそもよって起こった原因は、強引な土地の取り上げにあった。何らの理解を得ることなしに突っ走ってしまったというところに問題の発端があったわけですから、福田総理大臣の答弁などを聞いておっても、常に言うことは、農民とあの集団とは全く異質のものだ、別ものだ、こういう立場で答弁されるわけです。私もその答弁に関する限りそれは間違ってはいないと思いますけれども、しかし彼らをして大義名分を掲げて成田に突入するということになったのには、そういう農民の土地取り上げを守ろうというにしきの御旗を彼らは得てしまったわけですね。だから、農民と十分話し合いをしてそれを切り離すのでなければ、やはり依然としてそれは続いていくと思う。つまり彼らは、あくまでも農民の立場を守るんだ、そういう大義名分を掲げて彼らの行動を続けるだろうと思います。 さっき課長の答弁の中にも、百数十人が常時成田に駐在しているという話だったけれども、何月ごろだったか忘れましたけれども、朝日ジャーナルに現地のルポが載っていました。それなどを見ると、私などもむしろ意外に思ったのだけれども、現地に住んでいるあるいは滞在している彼らは、農民とはもちろん一体になって、あるいはあのとりで、団結小屋、ああいうのも全く開放的で、新聞記者が行こうがだれが行こうが自由自在に迎え入れて、そして泊まることになれば何人でも平気で泊まらしておく。恐らくその中には、彼らの行動を探ろうというような目的で来る人もずいぶんあるのだろうけれども、そんなのは一向お構いなしだ、きわめて開放的だというような記事を見て、私どもが想像しておったのと非常に違ったという感じがしたのですけれども、そういうふうにあの一つの集落の中であの村の住人になり切ってしまっているわけですね。だからその辺が、闘争の際に非常に勇猛果敢に戦うというのと、日常生活の中で農民にとっては本当にかえがたいわれわれの援助者だと——この間テレビの際にも石橋さんという副委員長が、彼らこそ正義の味方なんだと言って非常に称賛し、絶賛をしておったわけだけれども、そういう気持ちになっていると思うのですね。ですから、警察も単に力で制圧をするという考え方では、私は成田の平穏を取り戻すことはできないと思うので、もし何かお答えがあるなら聞かせてください。
○福井説明員 朝日ジャーナルの現地ルポを私不勉強で目を通しておりませんが、これは朝日ジャーナルの一つの見方だろうと思いますけれども、反対同盟発足当初は、戸数で三百戸ぐらいだったというふうに理解しておりますが、先般の三・二六の集会の際に出ておった人たち、これもなかなかつかみづらいわけでございますけれども、百二十人程度と私たちは理解しております。ですから、朝日ジャーナルの言うように、あの地域に空港建設に反対するそういう人たちが満ち満ちておるという実態ではございませんで、反対同盟一つをとっても、数がぐっと減ってきておる実態があることは間違いないわけでございます。 それから団結小屋の出入りにしましても、第一私たちが参りますと、これはとても自由自在というわけにはまいりません。現地にずっといる千葉県の警察官等が全く声もかけられないという実態ではないようでございますけれども、朝日ジャーナルが言っておる実態とわれわれの認識とはかなり違う点がある、これは一つ申し上げておきたいと思います。
○西宮委員 それでは、法務省以外の方に対する質問はこれで終わりにいたしますが、そのジャーナルを読んでいないというのは私はいささかがっかりしたので、そういう記事はきわめて大事な記事なんだから、これに関連するようなことはぜひ読んでおいてもらいたいと思います。なるほど、公安関係の第三課長が来たなんていうと、そう自由自在に出入りするというわけにはいかぬかもしれませんよ。だけれども、地方の人などが来ても別にどこのだれだということを確かめるわけでも何でもない、そういう人たちが本当に自由に出入りをしているというような実態は私どもの想像とは違っておったので、非常に私も教えられるところがあったわけです。ひとつそういう点も勉強してください。それではどうぞ。 それで、その法律の方に戻りましてお尋ねをいたします。 第一条の「二人以上共同して」云々ということですが、なぜ二人以上ということを限定をしたのか、一人ではいけなかったのかという点をまずお聞きします。
○伊藤(榮)政府委員 すでに申し述べておりますように、今回の立法と申しますのは、最近におきます一部過激分子等によりますところの人質犯罪に緊急に対応していきたい、こういうことで立法しておるわけでございます。これまでに発生いたしました過激分子によりますこの種の事犯を見てみますと、それが数名の集団によって犯されますいわゆる集団犯罪であることが第一の基本的な特色として挙げることができるわけでございます。もともと、ハイジャックその他の人質強要犯罪と申しますのは、多数の人質を監禁いたしまして、長時間にわたって第三者に要求を突きつけ、交渉を重ね、そして無法な要求の実現を図ろうとするものでございますから、単独の者によっては実際上容易に犯し得ない犯行でございますので、かようなこの種事犯の実態にかんがみまして、これを二人以上の集団犯罪ということで構成をいたし、かなり重い刑をもって臨むこと、こういうことにいたしますのが事犯の実態によく合致するものと考えたわけでございます。 なお、逆に考えてみますと、単独犯でも同じような犯罪になるという構成をとるとしますと、たとえば思慮浅薄な者が一人で果物ナイフなどを用いてこういったことをやる、いつかもございましたいわゆるトイレジャックというような、女子社員をトイレに閉じ込めて云々するというようなものもこの対象に含まれるわけでございまして、そうなりますと、こういう今回の立法の趣旨があいまいになってくるという点もあろうかと考えております。
○西宮委員 飛行機などの場合ならば、非常に強烈な、たとえば爆弾などを持っているということになれば、たった一人でも恐らく相当なこともやれる、非常にやりにくいだろうけれどもやれないことは決してない。そういうことを考えると、あえて二人以上ということに限定しなくてもよかったのではないかという気がする。しかし、無論こういう異常な事態に対処する法律ですから、できるだけ条件を厳しくして、みだりにこういうことが重い刑で処罰されることがないようにということで、その範囲を縮小するということは私も賛成ですけれども、一人で航空機を乗っ取る場合もあり得ると思うので、そういう点も想定してお尋ねをしたわけですが、それでは、「共同して」というのは共謀ではないわけですね。共謀では足りないわけですか。
○伊藤(榮)政府委員 その問題にお答えいたします前に一言お断りしておきますが、第二条をごらんいただきますとおわかりいただけますように、航空機の場合には、いわゆるハイジャックの場合には必ずしも二人以上共同しなくてもいい構成要件にいたしております。これは御指摘のとおりの航空機の特殊性からでございます。 それから「共同して」と申しますのは、現場で一緒に行動を行うという意味でございまして、現場に二人以上がおってそれが力を合わせてやる、こういう場合でございまして、三人目、四人目の者が、仮に現場にいない共謀者がおるといたしますと、現場に二人以上おるということを条件にして共謀による共同正犯が成立するという関係になるわけでございます。
○西宮委員 その二人は共通した意思を持っているということが要件になるわけですか。
○伊藤(榮)政府委員 二人が同じ一つの目的のために力を出し合う、こういうことでございます。
○西宮委員 その次は「凶器を示して」ということなんですが、これも大変むずかしい問題だと思いますけれども、凶器とは一体何ですか。
○伊藤(榮)政府委員 凶器と申しますのは、本来もともと凶器である性質上の凶器と、用い方によっては凶器になるという用法上の凶器と両方あるとされておるわけでございますが、ここで単に「凶器」と書いておりますところからおわかりのように、これは性質上の凶器と用法上の凶器と両方を含む概念として用いております。 なお申し上げますと、凶器というからには、人の身体に攻撃を加えることによりまして人を殺傷するに足る道具である、こういうことでございます。
○西宮委員 人を殺傷するに足る道具ということですが、人ではなしに物を破壊するに足る道具、これはどうですか。
○伊藤(榮)政府委員 そういうものは凶器の概念には含まれないというふうに解釈されております。
○西宮委員 そういうふうに解釈されているというのは一般論ですか。この法律ではそれはとらない、つまりあくまでも身体生命に危害を加えるというものだけにこの法律では限定するという意味ですか。
○伊藤(榮)政府委員 「凶器」という言葉は、すでに刑法あるいは暴力行為処罰法とか、他の法律にいろいろ使われておる言葉でございまして、それが長年の判例の積み重ね等によりまして解釈が確定しておる、こういうふうに思います。
○西宮委員 それでは、たとえば薬剤、毒物などはどうですか。
○伊藤(榮)政府委員 毒物等は凶器の概念には入らないと思います。
○西宮委員 われわれもなるべく範囲が狭いことを望ましいと思うのだけれども、やるつもりならば毒物で人を殺傷するということも当然できるわけですから、そういうことは起こり得ると思うのだけれども、それは考えないでよろしいわけですか。
○伊藤(榮)政府委員 凶器という言葉の内容として、毒物とかそういうものは含まれないというのが確立した解釈でございます。
○西宮委員 いま私がお尋ねしたのは、言葉が足りなかったかもしれませんけれども、その凶器というのには毒物は入らないと思います。それはお答えのとおりだと思うのだけれども、そういうことも想像して加える必要はなかったのかというお尋ねなのです。
○伊藤(榮)政府委員 毒物を示しましても、結局それを飲ませなければ何ともならないわけでありまして、飲ませるためにはやはり逮捕監禁された人の抵抗を制圧するという必要があるわけでございまして、その抵抗を制圧するための一つの最も典型的な、悪質な姿というのは、やはり凶器を示して抵抗を抑圧するということでありますから、薬物を持っておるというだけでは、持ってそれをちらつかせる、あるいは示すというだけでは、凶器を示した場合とはおのずから相手方の意思及び行動の自由を制圧する程度において差があるのではないかと思います。
○西宮委員 飲ませる薬ならばそういうことだと思いますけれども、たとえば何かそういう毒物を散布するということで全員の神経あるいは生命にも危害を加えるということも、できないことではないわけですよ。そういうことだとすれば、単に凶器という器具だけを、道具だけを対象にしなくても、そういうものも想像はできるので、したがって、そういうものはあらかじめ防いでおくということがあってもいいのじゃないかと思うのです。
○伊藤(榮)政府委員 考えてみますと、確かに仰せのように、そういう薬剤というものを振りかけるぞというようなことでやることも観念的には可能だろうと思います。そういう意味で、将来不測の事態に備えるという意味では一つの意味があろうかと思いますが、先ほど来申し上げておりますように、最近の実態に即して立法をしよう、なるべく構成要件をしぼっていこう、こういう考えでこさえておりますので、将来不幸にしてそのような事態が生ずるというようなことが相当な蓋然性をもって予想されるようになれば、あるいはそのときにまた考えなければならぬかと思いますが、さしあたりは、最近の実態に即し、また最近の実態から推測できる将来のある程度の蓋然性、こういうものに対応するにはこの程度の構成要件でいいのではないかと思っております。
○西宮委員 この航空機の強取を取り締まる法律にしても、「よど号」事件が起こって、あのときは全く国外に脱出するというのが目的だったので、それを防ぐというだけでつくった。ところが、その後同じような事件が次々と出ると、またそれに対応して法律を改めるということで、次々に法律が改まってくる。したがって、さっき私が言ったような非常に継ぎはぎだらけの法律になってしまったということを言ったのですけれども、こういう問題も、私はそういう問題が起こったらそのときまた改めて考えるということではなしに、想定し得るものは一応入れておく、これが特にあなた方が言うような抑止力として役立つのだということであれば、そういうことも考える必要があるのじゃないか。現に、たとえば破壊活動防止法ですね、ああいうのには劇毒物として入っているわけですね。あるいは軽犯罪法にもたしかあったように思いましたが、なかったですか、ちょっと見てください。何か軽犯罪法にもあったように私は記憶しているのだけれども。——それでは、その軽犯罪法の方は後ろで見てもらえば結構ですけれども、立法の姿勢としてはそういうことが必要なんじゃないですか。つまり、そういう問題が起これば起こったたびごとにいろいろまたその分だけを加えていくというようなことよりも、起こり得る可能性のあるものは想定して規定していくということの方が望ましいのではないでしょうか。
○伊藤(榮)政府委員 お答えいたします前に、軽犯罪法にはそういった規定はないと思います。 なお、将来起こり得るすべての事態を想定して法律をつくった方がいいのではないかということでございます。確かにおっしゃいますように、振り返ってみますと「よど号」ハイジャックを契機として航空機強取処罰法ができたわけでございますが、その時点では、航空機を乗っ取って乗客、乗員を人質にして何か無法な要求を出すというような事態がなかったために、まずとりあえずハイジャック行為だけに対応するために法律をつくる。それからダッカの日航機ハイジャック事件を契機に人質強要というものを加えた法改正がなされるということでございまして、なるほど改正の経緯を見ますと、事が起きて、後手後手でつづくり合わせておるというようなお感じもお受けになるかと思いますけれども、ただ、基本法典でございますたとえば刑法の全面改正とかそういう事態でございますれば、いろいろなことを想定いたしまして、また国民の感情というものをよく踏まえて、論理的に全く整合した立法をしてまいるというのがその立法の姿勢だと思うわけでございますが、今回の立法は、先ほど来申し上げておりますように、最近の事態、さらにはこれから想像されるところの近い将来における蓋然性、こういうものを踏まえて立法いたしておりますために、必要最小限度の措置ということで、御指摘のような毒劇物というようなものを加えていない、こういうことでございます。 〔羽田野委員長代理退席、委員長着席〕
○西宮委員 さっき局長の御答弁は、いわゆる凶器には性質上の凶器と用法上の凶器と二つあるのだというお話だったのだが、私は、この法律に関する限り、用法上の凶器というのはあり得るのだろうかと思いますね。つまり、用法上の凶器というのは、全く凶器ではない、しかしその使い方いかんによっては凶器にもなり得る、人の殺傷もできるという場合ですね。それを示して逮捕監禁をするというわけでしょう。それを示したって、それだけじゃ何にもならないですか。いわゆる用法上の凶器となり得るものは、たとえば手ぬぐいでもいいわけだ。ついこの間、日暮里だか田端だか、どこかあの辺でこうもりがさで突っついて殺しちゃったというのがありましたね。つい数日前のことなんだけれども、電車の中で隣り合わせに座った人が口論の末、ホームにおりてこうもりで突いたら相手がきゅっと言って死んじゃったという話なんですな。ですから、こうもりを示して逮捕監禁をしたって、恐らくそんなのはちっともおっかなくも何ともないと思うのです。どうですか。
○伊藤(榮)政府委員 用法上の凶器を示すということになりますと、本来人を殺傷するための道具でないものでありますけれども人を殺傷するに足る機能を有するものを、そういう人を殺傷するために使おうとする状況で示すわけでございまして、そのようなことで初めて用法上の凶器になるわけでございます。 用法上の凶器をこの構成要件から抜いてしまったらどうかという御指摘かと思いますけれども、たとえば出刃包丁というようなものは本来料理をするために使うものでありますから性質上の凶器ではないわけでございますが、出刃包丁を横っ腹に突きつけるというような示し方もあるわけでございまして、そういう意味で用法上の凶器を除くということはどうも適当でない、こういうふうに考えております。
○西宮委員 私は用法上の凶器を除くと言っているのではないので、この場合には用法上の凶器というのは存在しないのじゃないかというふうに考えたわけです。つまり手ぬぐい一本で殺せるわけですからね。しかし手ぬぐいを示したからといってちっともおっかなくも何ともないので、用法上の凶器、なるほど出刃包丁みたいなのはこれは料理用に使うんだけれども、用法上の凶器でもあるし、同時に性質上の凶器でもあると思うのです。性質上の凶器ということは無理ですか。それはピストルとか日本刀とか、そんなのはもうだれが見ても性質上の凶器だけれども、しかし出刃包丁などは性質上の凶器でもあるんじゃないかと私は思いますね。そういうことを言うと、たとえば屠殺場で使う屠殺の用具など、こんなのも全く性質上の凶器とは言えないと言うのかもしれませんけれども、そういう道具とかあるいはいまの出刃包丁なんかを見せられたら、それはおっかなくなりますよ。直ちに一転して凶器になり得るということがわかるわけだけれども、たとえば手ぬぐいとかあるいはこうもりとか、あるいは松本清張さんの小説には、お正月の鏡もちで人を殺したというのがあるけれども、こんなものは見ただけじゃだれも凶器とは思わない。どうですか、出刃包丁とは違うと思うのです。
○伊藤(榮)政府委員 用い方によっては人を殺傷するに足りる器具、こう申しましても、もちろんやはり常識的な社会通念にのっとった判断が必要なわけでございまして、それはなるほど雪のかたまりとかドライアイス、鏡もち、こういうもので人を殺すということも全く考えられないわけではないのでございますが、さようなものを、用法上にしろ凶器だというふうに考えている人はだれもいないのじゃないかと思うわけでございまして、私どもが凶器という言葉の中に用法上の凶器も含めて考えております趣旨は、やはり例を挙げれば出刃包丁とかあるいはまさかりとか、そういう本来人を殺傷するためにこさえられておる器具でない、そういうものを凶器として用いる場合が優に考えられますので、そういうものを規定しておるわけでございます。
○西宮委員 木村篤太郎法務総裁の説明の中に、共産党員が持てばマッチ一本でも凶器になるのだ、こういうことを言っておられるわけですね。私は、少なくともわれわれの常識とは大変に違うと思うのです。しかし、これは非常にむずかしいと思うのですよ。むずかしいというか、適用を十分厳格にしなければならぬと思うのですね。つまり、繰り返すようだけれども、いまの出刃包丁のごときは一見して身の危険を感ずるわけですよ。だからこれは用法上の凶器となり得ることは当然だけれども、むしろ性質上の凶器に近いという面も持っておるので、用法上の凶器、性質上の凶器というものを観念だけではっきり区別をするということはできない、その中間的なものが当然あると思うのですよ。ですから、その辺はやはりその適用に当たっては厳密に考えていく必要があると思う。 それでは違った角度でお尋ねをしますが、もともと凶器ではないもの、たとえばおもちゃのピストル、これを示して、いかにも本物だというので逮捕監禁をしたという場合はどうですか。
○伊藤(榮)政府委員 ここに「凶器を示して」と書いてございますとおりでありまして、凶器であることがまず第一の前提でございます。したがって、おもちゃのピストル、これを本物のピストルのように見せかけて示したという場合には凶器を示したことにはなりません。なぜかならば、おもちゃのピストルは、示された人は本物だと思って驚くでありましょうけれども、結局それによって人質になる人の生命身体が危険にさらされるということはまずないわけでございますので、そういう観点から、そういう凶器らしきものを示す場合は除かれる、こういうことでございます。
○西宮委員 それは当然そうあってほしいと思うし、そうすべきだと思うのですけれども、被害者の方からすると、それが本物かうそものかということはわからないわけですね。だから、やはり相当恐怖観念に襲われるということは避けがたいと思うのです。しかし、それはその実体が凶器ではないのだ、おもちゃなんだということで、したがって実際に危害を加えることが不可能なんだということだから、それは凶器としてみなさないという御説明はわかりましたし、私もそれで妥当だと思います。 それじゃ同じようなことは、たとえばピストルを持っていないのに、いかにもポケットにピストルが入っているようなかっこうをして相手をおどかす、これもむろん同じですね。
○伊藤(榮)政府委員 さようでございます。 なお、つけ加えますと、ピストルを本当に持っておっても、ただ隠し持っておるというだけでは示したことにならない、こういうことでございます。
○西宮委員 もう一つだけ、くどいようですけれども伺っておきますが、凶器を示した結果、相手が非常に恐怖観念に襲われた、こういうことは犯罪構成要件としては必要であるのですか。
○伊藤(榮)政府委員 恐怖感に襲われるということは必ずしも法律上要件とはなっておりませんが、その凶器を示したことによって、そういう手段によって逮捕監禁という状態をつくり出すわけでありますから、当然のことながら、その示された人は抵抗がはなはだしく困難か全く不能の状態になって、そして逮捕監禁される、こういう関係になると思います。
○西宮委員 局長の答弁も、全体ひっくるめてできるだけ凶器の概念は狭く取り扱っていこうというようなことで、その点について基本的に私も同意見です。 これはいまでも通用しているのでしょうか、大正十四年五月二十六日の大審院の判例ですけれども、これには「其前段二例示シタル銃砲槍戟竹槍棍棒等ト同視スヘキ程度ニ在ル用法上ノ兇器ニシテ社会ノ通念ニ照ラシ人ノ視聴上直チニ危険ノ感ヲ抱カシムルニ足ルモノタルコトヲ要ス」これは古い判例ですけれども、いまでもこの原則はそのまま適用されているのでしょうか。
○伊藤(榮)政府委員 どういう事案についての判例であったか私ちょっと記憶がありませんけれども、基本的な考え方はそのとおりでございます。
○西宮委員 要するにこれは、社会通念上「直チニ危険ノ感ヲ抱カシムルニ足ルモノ」でなければいかぬということを言っているわけですね。非常に範囲を限定して述べておるわけです。恐らく精神は今日でも生きているのではないかというふうに思います。 それから、用法上の凶器になるものはどの時点で凶器になるかということ、これもまた厳密に判断をしなければならぬ問題だと思うのだが、その点について、たとえば昭和四十六年三月十九日の東京地裁の判決があります。これは飯田橋事件と称する事件で、デモ隊が途中で、担いできたプラカードをいわゆる凶器としたというか、それで警察官に対抗したというときの事例なんですが、そういう一つの同じものでも、ある時点までは全く凶器ではない、ある時点から凶器に変わるということがあり得ると思う。そういう点については変わりはないわけですね。
○伊藤(榮)政府委員 用法上の凶器につきましては常にそういう問題があるわけでございます。本来、人を殺傷するために製造された器具ではないというものでありましても、先ほどお述べになりましたように、用い方によっては人を殺傷することができるということが一般に考えられるようなもの、これを、人を殺傷するために用いる意思で、客観的にそれとわかるような状態に置いた場合に初めて用法上の凶器になる、それまでは凶器ではない、こういうふうに思います。
○西宮委員 飯田橋事件に対する判決は、私は大変重要なことだと思うのでちょっと引用しておきたいと思うのです。 これは長さ百二十センチ、太さ約三・五センチ×四・五センチ、そういう角材が使われたプラカードだったのですけれども、単にそれだけでは凶器とはみなさないという前提のもとに、これが「八時二三分ころ法政大学正門を出発し、同二七分ころ前田建設付近にさしかかるまでの間においては、人を殺傷する能力を備えていても、社会通念に照らし、人の視聴覚上直ちに危険性を感ぜしめるものとは未だいえず、」先ほど私が申し上げた大正十四年五月二十六日の大審院の判決をそのまま引用しているわけですね。「これを直ちに兇器とみなすことはできない。しかしながら、少なくとも、同二七分ころ学生集団が前田建設正門前付近で青木葉署長らと接触し、うち一部の学生が同署長らに本件『角材の柄付きプラカード』で殴りかかった段階においては、客観的状況からして右物件はプラカードとして使用されるのではなく、闘争の際に使用される意図が明らかに外部的に覚知され、」云々ということで、その時点から用法上の凶器ということで取り上げているわけですね。大事な点ですから御紹介をしておきたいと思います。 それから、今度の法律は逮捕監禁を言っているけれども、略取誘拐は切り離しているのはなぜか。今度の改正刑法の三百七条は、逮捕監禁のほかに略取誘拐も一緒にしているわけですね。それを除外したのはどういうわけですか。
○伊藤(榮)政府委員 ごらんいただきますように、改正刑法草案の三百七条にございます一般的な人質強要罪の形におきましては略取誘拐も入れておるわけでございますが、ただいま御審議いただいております第一条ではこれを入れていない、こういう点についてのお尋ねでございますが、構成要件の中に「二人以上共同して、かつ、凶器を示して」というようになっておりますので、誘惑などの手段でいたします誘拐というのはこれに当たらないことが明らかでございます。それから、本来暴行脅迫を手段といたします略取、これにつきましても、凶器を示して行われるという形におきましては逮捕あるいは監禁の中に含まれてしまう、そういう関係で、二人以上共同して、凶器を示して略取誘拐するということはそれ自体論理矛盾がございますので、抜いたわけでございます。
○西宮委員 その点はよくわかりました。 それでは、いわゆる逮捕監禁の状態ですが、本文は「二人以上共同して、かつ、凶器を示して」というふうに厳格な制限があるわけですね。では、凶器を示して逮捕監禁したということなんだけれども、初めはきわめて平穏に、あるいはきわめて合法的にある人の支配下に入ったという人に対して、途中で凶器を示し、逮捕監禁するという場合は——逮捕監禁というか、逮捕監禁と同じような状態がすでに発生しておった、そういうときはどうなんですか。
○伊藤(榮)政府委員 たとえて申しますと、誘拐をいたしまして、平穏に誘拐をするという言葉も変でございますが、凶器などを示さないで、甘言を弄して誘拐をして一定の場所に連れ込んだ、さて、そこで刃物などを示してもう出さないぞというような状態になりますと、その時点から監禁になるわけでございまして、したがいまして、いまの例で申しますと、凶器を示して、もう出さないぞということになった時点からここに言う凶器を示して監禁した、こういうことになると思います。
○西宮委員 その次の、義務のない行為をやらせる、あるいは権利を行わせないという規定ですが、これは具体的にはどういう内容ですか。
○伊藤(榮)政府委員 この「義務のない行為をすること又は権利を行わないこと」というような用例は、現行刑法の二百二十三条の強要罪にある表現をそのまま持ってきたわけでございますが、端的に結論だけを申し上げれば、一切の不法な要求、これを示す言葉として「義務のない行為をすること又は権利を行わないことを要求」する、こういうふうに言うわけでございます。 なお分解して御説明申し上げますと「義務のない行為をすること」と申しますのは、たとえば身のしろ金を提供することなどの財政上の処分行為をすること、それから捜査や裁判のため勾留されている者などを釈放することの措置を政府がとること、あるいは公務員でありますとか会社役員が辞任するといったように身分上の行為をすること、あるいは国家機関、政党、会社その他の団体あるいは個人が謝罪声明を行うことといったような、例は幾らでも挙げられると思いますが、法律上そういうことを行う義務がないことに関する作為、不作為の一切を言うということでございます。 それから「権利を行わない」という例といたしましては、たとえば国外に逃亡寸前の犯罪者を逮捕しないこと、あるいは被疑者を起訴しないことといったように、法律上認められている権利の行使を思いとどまらせること、さらには外国旅行を計画している者に計画を実行しないようにさせるというように、個人の自由権の行使をさせないということもこれに含まれるわけでございまして、かれこれ例をずっと挙げてまいりますと、要するに義務のない行為をすることと権利を行わせないことというのは、場合によっては境目がはっきりしない場合もあるわけでございまして、両者の文言を含めまして一切の不法な要求行為がこれに含まれるということでございます。
○西宮委員 しかもそれは、そのことを要求すればそれで構成要件を満たすわけですね。謝罪文を書かせたとか外国に行くのを行かせなかったとか、そこまでやる必要はないわけですな。
○伊藤(榮)政府委員 御指摘のとおりでございます。
○西宮委員 私も実はこれ雑誌その他に出ているやつを読んだだけですけれども、いまの謝罪文を書かせたという大正十五年の大審院の判例、あるいは部下の首を切れということを要求したという昭和七年の大審院の判決、あるいは社長排斥はするなということを他の重役に誓約をさせたという大正九年の大審院の判決、こういうのがあるようですから、おおむね実際の適用に当たって、そう混乱するようなこともない条件ではないかと思いますが、一応念のために伺っておいたわけです。 それから、この改正刑法では、人質の場合に第四項で取り上げておるいわゆる解放減軽ですね、これはこの法律では採用しないわけですか。
○伊藤(榮)政府委員 解放減軽の規定は、この法律では採用しないことといたしております。現行刑法で解放減軽規定のございますのは、刑法二百二十八条ノ二にございます身のしろ金誘拐の場合だけでございます。身代金誘拐罪ができました当時の社会状況を見ますと、特に赤ん坊が主でございまして、これが何者かによって奪い去られて全くどこにおるのかわからない、安否ももちろんわからないという状態に置いておいて親に身のしろ金を要求する、こういう行為が頻発いたしましたので身代金誘拐罪という規定が設けられたわけでございますが、そのときにそういった犯罪の実情として、誘拐をされた赤ちゃんなどの居場所が全然わからないというのがそういう犯罪の特色でございましたために、身のしろ金は、払うものは払ってもいいからとにかく誘拐された赤ちゃんだけは安全に解放してほしい、こういうきわめて特殊な刑事政策的な見地から異例な減軽規定が設けられたわけでございます。しかしながら、ただいま御提案申し上げておりますこの事犯の関係になりますと、最近の事例に徴しても明らかなように、犯人は建物でありますとか乗り物でありますとか、所在の明らかな特定の場所に人質を盾にとってこもりまして、そうして不法な要求をする、不法な要求が実現しますと人質を連れて海外などの安全な場所まで行ってそこで人質を解放するという例が非常に多いわけでございます。かような場合に、たとえばダッカで人質になった人がアルジェリアで解放される、こういうような場合まで一律に減軽しなければならぬということにするのは適当ではないというふうに考えられますので、今回のこの法案においては解放減軽規定は置かないことにしておるわけでございます。特に情状くむべきものがあれば、刑法総則にございます酌量減軽の規定の活用を裁判所に期待する、こういうことで賄えるのじゃないかというふうに思っております。 なお、改正刑法草案の三百七条で解放減軽の規定を置いておりますのは、その三百七条の人質強要罪は身代金誘拐罪の一般法の関係になりますので、特別法の関係に立つ身のしろ金誘拐に解放減軽があるのに、それより下のランクというと表現が悪いのですが、そういう一般法に解放減軽がなくては均衡を失するという観点から一応置くこととしておるわけでございますが、身のしろ金誘拐の解放減軽規定の運用状況を見てみますと、制定されてから適用された例がほとんどございません。そういうこともございますし、いまから考えてみますと、赤ん坊さえ返れば金は取られてもしようがないわというような考え方自体も多少問題があるところではないかということで、将来刑法の全面改正の際にはこの解放減軽規定というものを再検討しなければならぬ、なくす方向で再検討すべきではないかと考えておるところでございます。
○西宮委員 いまの航空機のハイジャックみたいな際はほとんどアルジェリアで解放する、あるいはベンガジと言いましたか、あそこで飛行機を爆破した。リビアですか、ベンガジで解放する。だからそういうところで解放したのではさっぱりありがたみがないわけですね。そこで解放してからその人を減軽する、減軽してやったって、こっちの日本政府なり日本国民としてはちっとも御利益がないわけですね。しかし日本の、たとえば政府の官庁を乗っ取ったというような場合など、これは大臣もひとつ考えていただきたいと思うのだが、そういう場合などはむしろ、早く解放しろ、そうすれば刑は軽くしてやるぞ、そういう制度があった方が、あるいはそういうやり方をした方が早く解放させることに役に立つのじゃないか、その点どうですか。だから、これは立法上の問題として十分考えていい問題じゃないかと思うのだが、大臣、お考えがあったら言ってください。
○伊藤(榮)政府委員 身のしろ金誘拐の場合に、解放減軽規定を設けて、これによって誘拐犯人を説得しようということであったわけですが、その規定を示しても全く成功しないわけでございまして、余り効果がない。また特に犯人の大変な要求を第三者が受け入れた後において、ただ人質の生命だけを保証したからといって、どうしても一律に減軽してやらなければならぬというのは余りにも常識的でないのじゃないかという気がするわけでございます。むしろ今度の立法の考え方としては、人質をとることはけしからぬ、けしからぬが、その人質の命をとるようなことをやったら本当に承知しないぞという意味で、第三条を置くことによって御指摘と同じような効果をねらいたいと思っておるわけでございます。
○西宮委員 その次にお尋ねをしたいのは、ここで規定されている犯罪を政治犯とみなす余地があるかどうかということです。政治犯とは全く考えられない場合もある。きわめて卑劣な、きわめて反人道的な犯罪であって、とうてい政治犯などと呼べるものじゃない、そういう例が多いと思います。しかし、中には政治犯の範疇に入るものもあるのじゃないかと考えるわけですが、それはどうですか。
○伊藤(榮)政府委員 政治犯の問題でございますが、政治犯という概念自体が実は国際的に固まっておらない概念でございまして、よく絶対的政治犯と相対的政治犯という分け方をされたりいたします。世界各国でだれが見ても政治犯に間違いないということになっておりますものは、たとえば反逆罪とか、そういう全く政治的な主義主張を通す行為だけが犯罪であるという場合に政治犯であるということは共通しております。それでは、政治的な一定の目的を達するために暴力的な行為をする、一般犯罪を犯すという場合に政治犯になるかどうかについては、必ずしも一定した見解はないわけでございます。 最近の状況を見ますと、ハイジャック犯人など、国際手配をするということからもわかりますように、主義主張のいかんにかかわらずきわめて卑劣な犯罪であって、とうてい政治犯というようなものではないという扱いに国際的な合意ができつつあるように思うわけでございます。ただ、一部中近東諸国の中にはなお、政治目的であれば政治犯だという見方をしている国もありますけれども、大勢はそうではないと思います。 私どもといたしましては、この法案の第一条、第二条、第三条に書いてありますような犯罪はまことに卑劣きわまりない一般犯罪であって、政治犯というものでは断じてない、こういう考え方でございますので、ごらんいただきますように、政治犯に特有の禁錮という刑を置きませんで、懲役一本でいくということにしておるわけでございます。
○西宮委員 政治犯として取り扱っていないということはよくわかりますが、政治犯の場合ならば、犯罪人が外国に行った場合に引き渡しをしないという国際間の条約があるわけですね。ですから、政治犯ということになれば犯人を引き渡さないという慣例が適用されることになると思うのだが、いまわれわれが審議しておるこの法律では、そういう場合は全くあり得ないという前提ですか。
○伊藤(榮)政府委員 中には政治的な主義主張を貫くためにこういう犯罪に出る者があるであろうということは予測させるわけでありますが、そういう目的でやりましても、この種のきわめて悪質かつ卑劣な行為というものは政治犯として評価することは断じてできないと思います。
○西宮委員 私は、法律の内容については大体この程度にしておきたいと思いますけれども、先ほど来、法務省以外の三省庁の担当官に来てもらいまして質問をした際にも申し上げたのですが、「よど号」事件で何を学んだかというお尋ねをし、さらにそれに関連して、さっき大臣が述べられた、各般にわたる防止対策を強力に推進してまいりましたということについて、何をやったかということをお尋ねしたわけです。さっきの法務省以外の三省庁の皆さんからの説明でも、ないしは先ほどの私の質問に対する刑事局長の答弁でも、何となく「よど号」の教訓が十分に生かされていなかったのじゃないかという感じがするわけです。 そのうちの一つに、大臣、これは法務省の所管事項ではないかもしれませんけれども、あの当時のハイジャックは、かつて局長が他の質問者にお答えになったように、国外に脱出するということだけが目的だったわけです。特に国外に脱出するということが頻繁に行われたのはアメリカとキューバの間ですね。あれは回数も実に頻繁だったのだけれども、これは要するに、あそこに正当な国際関係が樹立されておらないために、万やむを得ずああいう方法でキューバに行くということが行われておった。国交が正常化してくればそういう必要はなくなってしまう。だから、ハイジャックという問題は、一般国民がこうむる犠牲はずいぶん大きいものだけれども、やり方次第でそれは全然起こらなくても済むということはあり得るわけです。たとえば「よど号」事件の際に、田宮何がし以下あれだけの人間が朝鮮民主主義人民共和国に脱出していったわけです。正当な渡航のルートがないということでああいう方法をとった。しかし、ああいう方法をとられてみると、国民のこうむった被害というのはまことに甚大だったわけです。 ですから、私が法務大臣に希望したいのは、そういう未承認国に対する往来をもう少し自由にする、あるいは緩和する、こういうやり方をとったらどうか。未承認国に対する国交の正常化ということが根本的な解決方法ですけれども、それがない間でも、少なくとも行ったり来たりはできるだけ自由にさせてやる、それによってかなり防げるのじゃないかという気がするのですが、いかがですか。
○瀬戸山国務大臣 未承認国といえども、その国に渡航といいますか旅行をする場合には、ものによってはもちろん国としてはこれを認めておるわけでございます。ただ、わが国の治安なり、国民に大きな弊害を及ぼすような状態の渡航は国益のために許さない、こういうことにしておるわけでありまして、御承知のように観光とか、あるいは通商といいますか経済問題だとか、あるいは体育、文化活動とか、そういう目的であれば、それは彼らといえども必ずしも渡航を禁止しておるわけではありません。ただ「よど号」事件に関係した連中は他の犯罪で日本で裁判を受けておる状態でありましたから、これは許すわけにいかないわけでありますが、彼らの目標が何であったか私自身は余りつまびらかにしておりませんが、とにかく革命活動をしたい、そういうものに案外意思を相通ずることができるのじゃないかという意味で北朝鮮にああいう強硬手段をもって行ったのじゃないかと思いますが、未承認国でも全部旅行を禁止しておるというわけでないことは御理解いただけると思います。
○西宮委員 要するにケース・バイ・ケースだということになるのだと思いますけれども、もう世の中が大分落ちついてきて、国際関係でもかなり改善をされて安定してきているわけですから、そういう未承認国に対する往来というようなことも相当緩和して、いまのように日本で刑事裁判で裁判中の人間とかこういうのは困りましょうけれども、そうでない場合にはそういう点は相当緩和するというふうにぜひ態度を改めてほしい、さらに一層それを推進してもらいたいということを希望しておきたいと思います。 それで刑事局長、「よど号」のときは国外脱出だけを目的にしたわけですね。したがって、航空機強取処罰法という法律をつくったわけですが、あの当時には、将来犯人は国外脱出以外の目的を持つであろう、そういうことを要求をするであろうということは全く想像しなかったわけですか。
○伊藤(榮)政府委員 昭和四十五年の前半の時点におきましては、世界的に見てもハイジャックというのは亡命その他の国外脱出目的だけに行われておりまして、乗客、乗員を人質にとって何か無法な要求をするという事態は、その後四十六年以降に諸外国でも出てきたわけでございます。したがいまして、四十五年当時の立法担当者は、まさかそういう卑劣な凶悪な犯罪が将来起きるというようには思わなかったものと考えております。
○西宮委員 さっき申し上げたように、私は昭和四十五年四月の新聞記事などをいま振り返ってみて、いろいろな問題が提起されていることを知ったのですけれども、その当時でもそういうことを懸念する向きもあったわけです。そういう論説等もあったわけです。それに気がつかなかったというのならば、まことにうかつだったというふうに言わざるを得ないと思うのですけれども。そこで、さっき何回も繰り返したように、今度はこれで十分なのかということをお尋ねしたのですが、しかしそのときはそこまで考えなかったというのならば、これ以上論議をしても仕方がないと思うのです。「よど号」事件が起こって、昭和四十五年に航空機強取処罰法をつくった。ところが三年たった四十八年には、今度はまた日航のジャンボ機の乗っ取りが起こった。そしてまたこの間はダッカ事件が起こったわけです。それらを見ると、いま法務省が特に強調しておられる刑罰規定の強化による抑止力というのに私は疑問を持たざるを得ないわけです。むろん私がさっき、そういう起こり得る事態を考えてあらかじめ立法もそれに対処すべきだということを言ったのは、これは政府が法律には十分そういう抑止力があるのだということを強調されるから、それならば将来起こり得る事態に対しても法律は備えるべきだ、こういうことを申し上げているので、だからそこははっきりと混同しないようにしていただきたいと思うのです。私は一般論として、こういう刑罰の強化がそれだけの抑止力になり得るかということについては根本的な疑問があるわけです。その点、大臣いかがですか。
○瀬戸山国務大臣 刑罰の抑止力についてはしばしば議論のあるところでありますが、刑罰があれば刑罰が対象としておる違法行為といいますか犯罪行為、社会に害を与える行為が全部なくなるというものではないと思います。しかし、刑罰がないときのことを想像いたしますと、やはり刑罰によって相当のそういう社会に害をなす行為が抑止されている、これまた間違いないことだと思います。 こう言ってはまことに恐縮でありますが、人の物を取っても別に罰することはないのだなどといったら、世の中はとてもじゃないがおさまりがつかないと思います。でありますから、刑罰には相当の抑止力がある。しかし、特にこういう確信犯などというものについては、他の場合とは違って抑止力は相当減殺されると思いますが、しかし、そういう反社会的な行為については刑罰をもってこたえる、これはまた社会の秩序を維持するために当然なことである、私どもはさように考えております。
○西宮委員 法務省で出しておられる犯罪白書によると「過激派集団の犯罪」という一節があります。その中に「これを根絶するためには、徹底した検挙と厳重な処罰を必要としよう。」こう書いてあるのですけれども、逆に言うならば、徹底した検挙と厳重な処罰をやれば根絶できるのだ、こういうふうに書かれておるわけであります。私はそれで果たして根絶できるのか、それならばいまのような事態はもっと改善されておるべきはずじゃないかというふうに思うのですが、これはいかがですか。
○伊藤(榮)政府委員 刑罰の抑止力についてはただいま大臣からお答えがございましたが、これが抑止力を発揮するために必要な大きな前提がございます。それは犯人が必ずつかまることであります。つかまった犯人が速やかに適正な刑罰を受ける、こういう一連の手続があって初めて刑罰の抑止力が十分に担保されるわけでございます。たとえば最近また覚せい剤が流行しておりますが、戦後いわゆるヒロポンと言われたころの大流行が、覚せい剤取締法の制定及びこれに伴う取り締まりの励行によって一時ほとんどゼロに近い数値を示すようになったこともあるわけでございます。この一例から見ましても、ただいま御指摘になりました犯罪白書にございますように「徹底した検挙と厳重な処罰」ということが何としても大事であろう。そういう意味で、今回御提案いたしておりますような犯罪を犯した者がなかなかつかまっておらぬというところは私どもも大変反省しておるところでございますが、何とか草の根を分けてもつかまえるということが必要ではないかと思っております。
○西宮委員 いま私が朗読をしたのは「徹底した検挙と厳重な処罰」これによって根絶をするのだということですね。それで「徹底した検挙と厳重な処罰」、その点に関しては、いま局長も言われたので私は全く同感ですけれども、そういう犯罪は必ずつかまるということが、それ以後そういう類似した犯罪が発生するということを抑止するためには非常に有効だと思うのですよ。だから徹底した検挙が先で、厳重な処罰という方は、ウエートから言ったらずっと軽い。とにかくそういう人はつかまるのだ、やればつかまるのだということが——これはいわゆるこういう公安事件以外でも、あらゆる犯罪がそうだと思いますけれども、だから、とにかく悪いことをした人はつかまるのだということになれば、世の中の犯罪を大いに減少させることができると思います。ただ刑を加重するということだけでは、むしろ場合によったらば、ああいう異常な無謀なことをする人たちですから、かえって自暴自棄に追いやってしまうということだってあり得ると思うのですよ。だから徹底した検挙ということは、私は非常に大事なことだと思うのですけれども、それが残念ながら実行されておらないということは非常に遺憾なことですね。これは治安を担当する大臣として、この辺についてはぜひ御所見を伺っておきたいと思うのです。とにかく悪いことをした人はいつかはつかまるのだ、そういうことがずっと行われれば、世の中の犯罪はずっと少なくなっていくと思うのだけれども、いまの状況は残念ながらそうではないわけですね。いかがですか、大臣。
○瀬戸山国務大臣 もちろん犯罪に対しては徹底した検挙、必ずつかまるのだということが非常に大事でございます。しかし、つかまってもまたすぐ出るのだということでも、これはまた抑止力にならない。いまおっしゃったように、つかまらないというのは、つかまったら罰される、とんでもないことになるのだという意識があるから、警察庁も盛んにさっきから御説明がありましたが、なかなかつかまらぬように逃げ隠れしてやっておる。これはやはり刑罰制度があるからだと私は思います。これは両々またないとなかなかそうはいかない。裁判の話に移って恐縮でありますが、いま裁判中の者でも、速やかに正当な処罰をしない仮釈放中の者が再び犯罪を犯しておる。現に成田事件等にもそれがあるわけでございます。やはり両々またなければいけないと思います。 それから「根絶」ということが書いてあるわけでありますが、この根絶は、徹底検挙はもとよりではございますけれども、率直に言って、検挙をし処罰するだけで、かようなことが根絶すると私は思いません。やはりその他の教育の問題なり社会の改良なりいろいろあわせて総合的にしなければ、この種のものばかりでなくて、犯罪というものは根絶しない。これは刑事政策の面から白書は書いてあるからさように書いてありますが、それだけでこういうものの根絶ということはなかなか期待できない。諸般の政策を総合して、そういう人がそういうものに走らないような政策もあわせてやることが必要だ、かように考えておるわけであります。
○西宮委員 その諸般の政策ということですが、私も全く同感だと思います。この種の過激な行動に走る青年たちですね、何がそもそも原因であったかということは一人一人実態を究明しないとわからぬと思いますけれども、いまの社会が若い青年たちにはなかなか納得できない。これはわれわれ政治に関与している者が、われわれ自身が反省をしなければならぬという点もたくさんありますよ。政治がきわめて無気力だというふうなこともあろうし、あるいはいろいろな汚職事件その他が続発をするというようなことで正義感が傷つけられるというようなこともあるだろうし、あるいはまた、ことに最近のようになってくると、倒産とか失業とか、そういう問題で非常に経済的にも困難をする、自分なりあるいは自分の家族がそういうような状態に置かれるというような例もあると思いますね。あるいは、この間私もテレビを見ておって大いに感じさせられたのですけれども、ことし大学を出た卒業生で、全く大学とは縁もゆかりもない、そういうところに就職をしているいろいろな例を放映しておりましたけれども、たとえば一例に、ある理科系の大学院を出た人がタクシーの運転手としてタクシー会社で特訓を受けているわけですね。そういう状況を見て、私はタクシーの運転手という職業をまことにりっぱな職業だと思います。しかし、少なくとも大学で学んだ学科とは全く無縁なわけですよ。だから、大学で長い間研さんを重ねたということが全部死んでしまっているわけですね。そういうことになると、いまの社会に対して非常な不満を持つということもやむを得ない、当然だと思うのです。したがって、そういう欲求不満な人たち、あるいはそういう落ちこぼれる人たちは、暴走族にでもなるか、あるいはこういう方面に走るか、どっちか以外に道がないのじゃないかと思うような人も相当あるわけです。あるいはもう一つ言わせていただくならば、日本における失業者とかそういう経済的にも非常に苦しい人がある。同時にまた、反対に大変なぼろもうけをしているというような、大変な所得の格差がある。こういうところにも私は若い青年に疑問を感じさせるというような点が恐らくあるに違いないと思うのです。これは決して中国がいいと言うわけじゃありませんけれども、たとえばあそこなんかは月給は六十円が大体平均のようですが、最高の毛沢東などが四百円なんですね。その程度の所得の格差しかない。そういうのに比べてみると、日本などの何と格差が激しいことか。そういうところに青年がいろいろ疑問を感ずるというようなことが少なくない。ですから、そういう意味では社会として、あるいは特に政治の責任を持っているわれわれとしては考えなければならぬ問題がある。私は、こういう問題は決して法務大臣だけではなしに、政府全体として取り組んでもらわなければならぬ問題であるというふうに考えるのですが、大臣の御所見を聞かせてください。
○瀬戸山国務大臣 さようなことはいろいろな考え方があると思います。いかなる時代いかなる社会でもなかなか理想的な社会はできない。考えられることは、やはり政治が公正で、経済もできるだけ連帯の精神で、お互いに平和に生きていけるように社会をつくり上げる、こういうことに努めなければならないと思いますが、さればといってなかなかそういうことが完全にできるものじゃない。そういうことはもとより努めなければならないと思います。ただ、現在の日本の状況を見ましても、これはいろいろのことがございますが、そうかといって、それじゃ全部一億一千万の国民が不満で過激派になるかというと、そんなものじゃないのです。私は、私の認識があるいは不十分であるかもしれませんけれども、やはり人間の社会というものに対する考え方といいますか見方といいますか、ああいう行動に出る人は、遺憾ながら非常に未熟である、みずからの努力が足らない、そして望むことが大きい、非常に不完全な人間だと思います。不完全だからこれを仕方がないと言って見逃すことは適当じゃありませんから、そういう不完全な人も補うことを補ってやって、そういう不幸な道に入らないようにすることも、また当然あらゆる方面から考えなければならないと思いますが、そういう意味において、率直に言って彼らは非常に未熟な人間である、かように考えております。 私から言うと、よけいなことでございますが、いま日本の憲法は非常にすばらしくできておると思います。その中で政治をしておるわけでありますが、ただ、憲法が明定しておる人権あるいは基本的な日本の国のつくり方の自由、そういう面についての考え方といいますか、認識というものが非常にひずみを生じておる。そこにああいう現象が起こる根源がある。憲法の見方を誤っておる。また、憲法の教え方を間違って教えておる教育がある。最近はだんだん変わってきたと思いまするが、やはり進歩的文化人だとかなんとかいう人は、私から言うと、誤った教育をして後に責任を負わないという現象がたくさんあります。私は率直に言って、犯罪をかわいそうだとは思いませんが、ああいう道に入っておる人の状態を見ますると哀れだと思う。かわいそうだという一面も私は人間として持っております。そういう考え方で各般のものを総合してやるべきだと思いますが、世の中はなかなか理想的にいかない、これが私の本当の偽らざる所感でございます。
○西宮委員 なかなか思うように理想的にいかないということ、現実はそのとおりだと思いますが、少なくとも、われわれ政治に関与する者としては、できるだけマイナス面を軽減していくという努力をしなければならぬということでいま申し上げたわけです。成田問題について、もうさっきも申し上げたから決して繰り返すつもりはありませんけれども、問題の根源はどこにあったんだということを、法務大臣というよりも内閣で、政府でぜひそういう点を十分掘り下げて、もう一遍原点に返ってこの問題を検討してもらう。原点に返るというのは何だということは、もう十分おわかりだと思いますから繰り返しまけんけれども、ぜひそういう姿勢で取り組んでもらいたいと思います。 そこで、今度の第二期工事ですね。その区域の中には十八戸の農家がある。恐らくあと一両年の間にはそこも立ち退いてもらわないと第二期工事ができないという実態です。その時点では、恐らく成田の空港には毎日数万の人が出入りをする。乗客、それから見送り、その他の人が数万人を数える、これは予想されているわけですよ。そういう一方において十八戸の農家に立ち退きを求めるという時点で、空港の方には数万の人間が集まっているという状態だと、一体そのときはどういうことになるのだろうかということを想像すると、想像しただけでも慄然とするわけですよ。だから、そういう問題は、本当に胸襟を開いて話し合いでもしないととんでもないことになるということが十分に予想されるので、このことを申し上げておきたいと思います。 大分遅くなりましたのでこれで終わりにいたしますが、最後に刑事局長にお尋ねをいたします。 西ドイツで新しいハイジャック防止のための立法をしたということを聞きましたので、それを御承知でしたら知らしていただきたい。 それから、くれぐれも法務大臣に申し上げたかったのは、そういういわゆる刑を加重するということだけで犯罪の抑止ができるのだというふうに思うことは、法律、立法というものを過信し過ぎる結果になる。私はここに持ってまいりましたが、時間もありませんから朗読もいたしませんが、これは細かい字でいっぱい羅列してありますのは、治安維持法の時代に起こった各種の治安事件、公安事件なんです。だから、ああいう治安維持法という厳重な法律があって、しかも、警察と憲兵と一緒になって取り締まっておった当時にさえ、こういう数え上げられないくらいたくさんの大小さまざまな事件が起こっているわけです。だから、そういう法律と検察だけで抑え切ってしまうということはなかなかできない。だから、それとあわせて各種の施策を手落ちのないように講じてもらうということが実際に必要だということを、くどいようですけれども繰り返して申し上げたわけです。 それじゃ局長に、いまの質問に対してお答えをしていただきます。
○伊藤(榮)政府委員 ごく最近、また西ドイツにおいて立法を行ったようでございますが、まだ、その詳細について入手いたしておりませんので、ここでは一九七六年八月に制定されました刑法、刑事訴訟法、裁判所構成法、連邦弁護士法及び行刑法を改正する法律、いわゆるテロ防止法でございますが、これを御説明申し上げておきます。 この長い名前の法律でございますが、中心をなしますのは刑法と刑事訴訟法の改正でございます。まず刑法につきましては、第百二十九条のaを新設いたしまして、謀殺、故殺または民族殺、恐喝的な略取または人質取得の場合における人身の自由に対する犯罪行為などの罪を行うことに向けられた団体の結成に関与した者は六月以上五年以下の自由刑に処する、主謀者は一年以上十年以下の自由刑に処する、こういうことにいたしたのでございます。 次に刑事訴訟法につきましては、ただいま申し上げました第百二十九条aに基づく犯罪的団体結成の罪につきましては、謀殺、故殺及び民族殺並びに人質取得等人身の自由に対する犯罪行為を目的とした場合には、逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれがなくても、行為の重大性ゆえに当然勾留ができる、また、同罪で勾留した場合には、弁護人と被告人、被疑者との文書その他の物件の授受について裁判所が監視処分を行うことにする、さらに、審理の対象となっている行為に関与したことを理由として当該手続から排除されました弁護士は、同一の手続の在宅でない被疑者、被告人をも弁護できない、また、被疑者、被告人との交通権を乱用しての犯罪の予備及び執行施設の保安危殆を理由として排除された弁護人は、右のほか、排除された時点ですでに開始されている刑法百二十九条aによる犯罪行為を対象とする他の手続の在宅でない被疑者、被告人の弁護もできない、こういうことを内容としたものでございます。 なを、蛇足でございますが、西ドイツのほかに、この種の法律は、スウェーデン、イギリス、スペイン等でも制定されているようでございます。 以上でございます。
○瀬戸山国務大臣 先ほど来、西宮委員からいろいろ御意見を承ってありがとうございました。 成田空港の問題についていろいろお話がありましたが、率直に言って、公団なりあるいは政府のやや手落ちというとおかしゅうございますが、努力が足らなかったところがあると私は思っております。しかし、現在も開港の準備をしております第一期工事に関する土地あるいは建物については、大体土地が三百ヘクタールぐらいあると思いますが、その九九%まではもう任意で、相談の上で話がついておる。その中に百四十五戸の建物があったわけでございますが、これも全部話し合いの上で解決しておるわけでございます。一部土地について、ほんの九九%以外のものはやむを得ず強制収用をした、それが現在残っておるのが〇・三ヘクタール、こういう状況でありまして、非常な努力をして地元の皆さんと話し合いをしてやっておるわけでございます。一部まだ第二期工事についても、話し合いによって大部分が解決しておりますが、直接第一期工事の現在の地域に関係のない農民の人がやはり不満を持っておる。それから第一期工事についても、やや反対された人が、数は少のうございますが、反対をずっと叫んでおるわけです。これについて私は申し上げるわけでございますが、もっと誠意を尽くして、ひざを突き合わせてお互い理解を求め、そしてそういう方々の生活の将来を考えて措置をする、こういうところにやや欠けておった点があると私は思っている。ただ、あの運動が変形をいたしました。先ほど警察からもお話がありましたが、ほかにもあるわけでございますが、何かの問題で地域の住民の反対運動等がありますと、それを利用する意味で過激派集団等が入り込んで、目的は別でありますけれども、このかさに隠れてといいますか、みのを着て運動をする、これに変形してしまっておる、こういうのが現状であると思います。でありますから、その分は徹底的に排除をしなければならない。こういうことでありますので、まだまだ開港後の問題がありますから、閣内でも今後の問題については、現在反対闘争に加わっておると言われておる二百人足らずの人、あるいは今後第二期工事に関係のある人もあると思いますが、将来が大事でございますから、あの空港の安全と航行の安全を図るということは絶対必要でございますので、そこで地元の皆さんと、この段階に及んでも腹を打ち割って、誠意をもって話し合わなければならない、そして円満に解決するようにしなければならない、こういう方針を決めております。そういう状況が出ましたら閣僚みずからが出向いて向こうの意見も聞き、また対策を講ずべきところは対策を講ずる、こういう覚悟でおりますから、ひとつ皆さんも御協力いただきたいと思います。
○鴨田委員長 次回は、来る十八日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することにし、本日は、これにて散会いたします。 午後二時五十三分散会