法務委員会 第15号
- 発言数
- 281 件
- 登壇者
- 13 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1978/04/11
会議録
○鴨田委員長 これより会議を開きます。 内閣提出、人質による強要行為等の処罰に関する法律案を議題といたします。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲葉誠一君。
○稲葉(誠)委員 この人質による強要行為等の処罰に関する法律案の前に、大臣にちょっとお伺いしておきたいことがあるのです。 それは、この法案とは関係のないことなんですが、政府はこの前の国会に、ロッキード事件に関連をして、贈収賄の刑の引き上げと、したがって公訴時効の延長、それの法案を提出しているわけですね。これはロッキード事件のようなものをなくするための福田内閣の一枚看板だとかなんとか言われておって、出しっ放しで、法務省としてもこの法案について通してくれという話も全然ないし、大臣としてはどういうふうなお考えなんですか。このロッキード事件のための贈収賄、公訴時効の延長のこの法案、内閣提出刑法の一部改正が継続になっているのですが、これに対してどういうふうにお考えなんですか。早く審議をしてほしいという御意向なんでしょうか。
○瀬戸山国務大臣 ロッキード事件に関連して、政府で、御承知のとおりこういうものに対する対策本部を設けて行政のあり方あるいはこういう犯罪の防止対策をいろいろ検討いたしまして、その一環として贈収賄事件の刑罰をもう少し重くして対応する必要がある、こういうことで法務省としては御提案申し上げておるわけでございます。三木内閣のときからでございます。もうすでに前に提案しておるのでありますから、早く国会で処理をしていただきたいと思っておるわけでございますが、国会の方でそのままになっておる、かような次第でございます。
○稲葉(誠)委員 だから大臣としてもそれでは困るんでしょう。困るから、早く内閣提出の刑法の一部改正を審議してほしいというわけなんでしょう。法務省からさっぱりそういう声が出てこないのですよ。どういうわけなんだろう。
○瀬戸山国務大臣 法務省から声が出ておる出ておらぬかにかかわらず、ずっと前に御提案申し上げておるわけですから、速やかに御審議、御決定いただければ幸せだ、かように考えております。
○稲葉(誠)委員 この人質による強要行為等の処罰に関する法律案について質問をいたすわけでございます。 この資料によりますと、「過激派による人質強要事例」として昭和四十五年の三月三十一日の日航機の「よど号」乗っ取り事例が挙げられておるわけです。五ページですね。この事件の概要はわかっていますからいいのですが、この「よど号」事件があって、そしてどういう法律ができたわけですか。
○伊藤(榮)政府委員 「よど号」事件の起きたことにかんがみまして、昭和四十五年五月十八日、法律第六十八号、航空機の強取等の処罰に関する法律、これを御制定いただいております。
○稲葉(誠)委員 いまの航空機の処罰の法律、それができて、航空危険法という法律はどういうときにできたわけですか。
○伊藤(榮)政府委員 航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律、これは、この根幹は航空法の罰則の中にあったのでございますが、ハイジャック条約の批准に先立ちまして所要の措置を加えまして、単独法として立法されたわけでございます。
○稲葉(誠)委員 そのいまの前の法律と後の法律、これは私もよくわからない、研究が不十分ですけれども、あわせて一本の法律にするわけにはいかなかったのですか。
○伊藤(榮)政府委員 航空機の強取等の処罰に関する法律の方は、いわゆるハイジャック対策ということで、航空機に関する強盗罪の特別類型のようなものをまとめて規定するということで規定しておりますし、航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律の方は、先ほども申しましたように、ハイジャックというものを一応念頭に置かないで、そのほかの方法によって航空の危険を生じさせる行為、これを網羅して規定しておる、こういうわけで、それぞれ立法趣旨が違いますので、一本の法律にはなっていない、こういうわけでございます。
○稲葉(誠)委員 いま刑事局長がハイジャックという言葉を使われましたね。ハイジャックというのはどこから出てきた言葉なのですか。
○伊藤(榮)政府委員 私も正確な出どころはわかりませんが、昭和四十六年ごろであったと思いますが、なおこの年の関係は間違っていれば後で訂正しますが、東京条約というのが結ばれておるのですが、そのときに初めて登場した言葉でございまして、当時アメリカとキューバの間で航空機が亡命のために乗っ取られた、これを俗にハイジャックというふうにだれともなく言い出して、それが国際的な慣用語になったというふうに、私も当時条約の政府代表代理として出ておりまして、初めてそういう言葉を聞いたものですから、アメリカの代表などに聞いてみますと、そういうことの説明でございました。なお語源的な探究はまだ遺憾ながらいたしておりません。
○稲葉(誠)委員 いや、一番大事なことなので、ハイジャックというのは何だかわけがわからなくて、ただハイジャックという言葉を使っていたのではだめなんですよ。後ろのベンチにいる人、よく教えてあげなさい。あれはハイウエーにおいてジャックという人が強盗をやったということから始まったんじゃないの。そこら辺のところははっきりさせてください。審議が進まないのだよ。
○伊藤(榮)政府委員 ジャックというのは私どもも多少の知識はありますが、アメリカの強盗を意味する俗語でございます。それにハイがくっついた。そのハイのくっついた理由はちょっとわかりません。
○稲葉(誠)委員 それではこちらも、はいと言うわけにはいかないのだ。それでは、ハイジャックという言葉、ハイジャッキングという言葉も使っていますね、その言葉の意味をはっきりさせてください。しばらく待っていますから。
○伊藤(榮)政府委員 それでは今後、航空機強取というふうに申すことにいたします。
○稲葉(誠)委員 航空機強取と言うのはいいのですが、あなた、ハイジャックという言葉を使ったから、よくわからないから聞いているので、どこかへ聞いてごらんなさい。何かハイウエーでジャックという人が強盗したというところから始まったと言っていましたよ。そうじゃないのですか。これはアメリカの言葉だよ、アメリカのスラングだよ。ちょっとベンチの人、教えてあげなさい。
○伊藤(榮)政府委員 ただいまの御指摘にかんがみまして、アメリカの俗語を使ったことは適当でなかったというふうに思いますので、私はハイジャックという言葉を航空機強取という意味に解して使ったわけでございまして、現在国際会議等ではハイジャック、あるいはハイジャッキングという言葉を航空機の乗っ取りという意味に使っておりますので、語源を探究しなかったのは怠慢だと言われればそれまででございますけれども、その点は鋭意研究をいたしておきたいと思います。
○稲葉(誠)委員 鋭意研究するほどのことでもない。何かハイというのはハイウエーなのか。ハイウエーだと道路でしょう。航空機だとハイウエーじゃないですね。高いという意味なんでしょうけれども。
○瀬戸山国務大臣 私も歴史学的に研究したことはないのですけれども、これはアメリカからはやってきたといいますか、出てきた言葉だと思います。日本では最近のことでございますが、アメリカ等では高速道路なんかで、あるいはその他でも、ああいう広い所でございますから車が通っておる、そうするとよくアメリカ人がハーイと言って手を挙げますね、そうして乗り込んで強盗を働くとかなんとかいうことが行われる、そういうところからきたのだろうという話でございます。
○稲葉(誠)委員 大臣が出るほどのことじゃないですよ。 そこでお聞きをしたいのは、最初に航空機強取法ができたときに、なぜ人質に関連することが航空機強取法の中に入らなかったのですか、こう聞きたいわけです。というのは、これは質問を詳しく教えてあるわけです。本当はここまで言わない方がよかったのですよ、質問の内容を教えない方がよかったのだけれども、「過激派による人質強要事例」の中に「人質の解放状況」として「明示の要求行為なし(ただし、警察官に対して、逮捕することなく安全に逃走させることを暗黙のうちに要求) 2 人質は、二三名が福岡空港で解放され、」云々、こう資料に出ているわけですね。だから、この資料に出ていることから見ると——これは後からつくったのだろうと思うのです。この資料は恐らく今度の法案をつくるのでつくったのだろうと思うのですが、この資料から見れば、当然最初の航空機強取法ができたときに、人質に関連することがこの前のときに入ってなければならないのじゃないか、こういうふうに思うのですが、その入ってなかったのはどういうわけなんですか。
○伊藤(榮)政府委員 お許しを得て便宜ハイジャックという言葉を使わしていただきますが、ハイジャックの歴史をちょっと振り返ってみる必要があるわけでございます。「よど号」事件が発生しました当時の状況を顧みるわけでございますが、「よど号」事件は、なるほど人質を乗せて運航支配して国外へ脱出をしたわけでありますが、その人質と引きかえに国外脱出以外の特定の要求をいたしませんでした。これが当時のいわゆるハイジャック事件の特色でございまして、当時起きましたものをいろいろ調べてみますと、記録に残っております一番最初のころが、昭和四十四年の八月にアメリカのTWA機が乗っ取られておりますが、これはアメリカがイスラエルにファントムを供与したことに対する報復の目的であった、したがって何の要求もない。それから同年十月にアメリカのナショナル機が乗っ取られましたが、これはキューバへ亡命する目的であった。それから同じく十月にポーランド国営航空機が乗っ取られましたが、これは東独からの亡命目的であった。それから十一月にアルゼンチンのアウストラル機が乗っ取られましたが、これもウルグアイへの亡命目的であった。同月ポーランド国営航空機がやはり乗っ取られておりますが、これはポーランドからの亡命目的。それから昭和四十五年一月にアメリカのデルタ機が乗っ取られましたが、これはスイスへの亡命目的。同月パナマ機が乗っ取られましたが、キューバへの亡命目的ということで、「よど号」ハイジャック事件もこれと同じ亡命目的の範疇に属するものと思われるわけでございまして、当時の状況からしますと、ハイジャックというものは亡命目的で行われる場合がほとんどでありまして、乗客、乗員を人質にとって、そして不法な要求をするというのは四十七年以降に生じた現象であるわけでございます。したがいまして、その当時の時点としては、航空機の強取あるいは運航支配行為、これだけを当面処罰の対象とすればよろしい、こういう考えで制定されましたので、今回御審議いただいておりますような人質強要行為、これについては立法が行われなかった、こういう経緯でございます。
○稲葉(誠)委員 四十五年というと、これは私が国会を休んでおったときですから、参議院が終わって衆議院選挙があるまでの間ですからね、無理もなかったかもしれませんけれども、とにかくそのときの提案理由には人質との問題は全然入ってませんか。提案理由どこにある、それをちょっと読んでごらんなさい。最初の提案理由。
○伊藤(榮)政府委員 私も確かめておりますが、それは入っておりません。当時の提案理由、いまここに持ってきてないかもしれませんが、そうすればおっつけ持参しまして読み上げます。
○稲葉(誠)委員 いや、持ってこなくてもいいですよ、それは。そう無理を言うのもあれだから、そこまで通告してないからあれですけれどもね。そうすると、その当時は、「よど号」事件が起きて航空機強取法をつくるときに当然人質の問題は考えられたのではないのですか、全然考えられなかった。
○伊藤(榮)政府委員 先ほど来私も記憶を喚起いたしましたが、航空機の安全に関する東京条約というのは四十五年でございました。まさにこの時期なんですが、その当時私も会議にずっと出席しておりましたが、ハイジャッキングというのはもっぱら亡命目的で、アメリカ−キューバという間のような亡命目的のことだけが論ぜられまして、いずれの場合も目的地へ到達すると人質は解放されて安全にもとのところへ戻っておる、こういう状況でございましたから、その人質を盾にとって何かの要求をするというようなことを論じた人もなければ、それに対応すべき方策について述べた人もなかったと記憶しております。
○稲葉(誠)委員 それは私も前のだれかの質問のときにその答えがあったように記憶しておるのです。——テレビ討論会でだれかがそんなことを言っていましたね、記憶があります。それは。だけれども、そうすると今度の資料の中では人質と書いてあるじゃないですか。これは本当は人質なのかどうなのか。いまになってみれば人質だったということなんですか。そのときの資料には人質のことは書いてなくて、今度は人質強要法だからというのでそれを持ってきて、この資料の中に、いかにも人質のようなことになった一つの一番最初の例にして書いてあるのはちょっと首尾一貫しないようにもとれるのですが、あるいは首尾一貫するのかもわからない。どうなんですか。
○伊藤(榮)政府委員 確かにこの資料の中には一番の「よど号」の乗っ取り事件とかあるいは浅間山荘とかそういうように特定の要求行為のないのが掲げてございますが、いずれにいたしましても、審議の御参考ということで、人質をとったような事案で世上喧伝されております事案を網羅しておりますので、そういう意味で御理解をいただきたいと思います。
○稲葉(誠)委員 何だかはっきりしないな。人質をとった事例を網羅している、この事件は人質をとったということになるの、この「よど号」事件は。ちょっとぼくもよく聞き取れなかったんだけれども、人質をとった例になるのかな。この「よど号」事件というのは、たしか強取法ができる前の事件でしょう。そうすると、強取法ができない段階でこの「よど号」事件というのは法律構成はどういう法律構成になるわけですか。
○伊藤(榮)政府委員 これは航空機の強盗、それから強盗の機会に操縦士等にけがをさせておりますから強盗致傷、それから乗客を乗せたまま連れていっていますから国外移送拐取、それから国外移送監禁、こういう罪名で処理しております。
○稲葉(誠)委員 そうすると、それは全部併合罪になるのですか。併合罪になってくると最高どういうふうになるの。
○伊藤(榮)政府委員 一番重い強盗致傷の刑によっておると思いますから、最高が無期になると思います。
○稲葉(誠)委員 そこで、いまの航空機強取法とそれから航空危険罪というのかな、そのどっちに入れたらいいかということで議論のあるような案件があったんじゃないのですか。
○伊藤(榮)政府委員 御質問の趣旨、必ずしも的確に理解できたかどうかわかりませんが、航空危険処罰法と航空機強取等処罰法とは、先ほど申しましたように立法趣旨が違いますから、どちらへ入れたらいいかというような案件はちょっといま記憶がございません。
○稲葉(誠)委員 よく相談してよ、後ろと。ベンチと相談してください。
○伊藤(榮)政府委員 これは相談するまでもなく、そういうことはございませんでしたから。
○稲葉(誠)委員 ああ、そうですか。あなたの方の池田耕平という人いる。これは何をやっている人。来ている、きょう。
○伊藤(榮)政府委員 刑事局で最も若手の検事でございます。
○稲葉(誠)委員 この人が、法曹時報の三十巻の第二号に「航空機強取等防止対策を強化するための関係法律の一部を改正する法律について」、この資料の中に出ていますよ。「対策本部における協議の過程で、爆発物等を業務中の航空機内に持ち込む罪の新設に関し、これを航空機強取法中に規定すべきか、航空危険法中に規定すべきかについて検討がなされた」こういうふうに書いてありますよ。これはどういう経過ですか。
○伊藤(榮)政府委員 私は先ほどの御質問を人質犯罪関係の事柄というふうに理解しましたから、失礼いたしました。 危険物を航空機内に持ち込む罪を航空機の強取の手段として取り締まるという観点でいくべきか、それとも一般的な航空の安全というとらえ方でいくべきか、その点が一応立案過程で議論の対象になった、こういう経緯を記しておるものと思います。
○稲葉(誠)委員 それで、いまの点は結局どうなったんですか。
○伊藤(榮)政府委員 昨年御審議いただきましたように、航空危険処罰法、略称いたしますが、その第四条として「業務中の航空機内に爆発物等を持ち込む罪」こういうことで新設を見たわけでございます。
○稲葉(誠)委員 ちょっとよくわからなかったんだけれども、それは航空危険法の中に規定するのが最も適当であると判断されて同法中に規定することとされたというんじゃないですか。いまそういう答えでしたか。——いまちょっと聞き取れなかったのですが。そうすると航空危険法というのと航空機強取法というのとは、これは片方は運輸省の所管で片方は法務省の所管かな。これ、併合して一本にするわけにいかないの。
○伊藤(榮)政府委員 先ほども申し上げましたように、航空危険処罰法の方はハイジャックと直接関係のないいろいろな航空の危険を生じさせる行為を罪として規定しておるのに対して、航空機強取法の方はまさに航空機の強取だけを取り締まりの対象としておりますので、これは仮定の問題でございますけれども、航空危険処罰法の方は、今後いろいろな航空の発達その他の状況にかんがみましてさらに細かい罰則が必要になってまいれば、これはどんどん手直しをされていくというような性格のものでございましょうし、航空機強取処罰法の方は、航空機の強取あるいは運航支配ということに限って、あるいはその周辺の事柄に限って規定をしていくという立法趣旨の違いがありますので、立法技術的にもあるいは法律の性格からいっても、なかなか一本になりにくいものだと考えております。
○稲葉(誠)委員 それでは別のことをちょっとお聞きしましょう。 衆議院の法務委員会で附帯決議が付せられましたね。一から十一までの附帯決議がつけられたわけです。これは法務省だけのあれではないかもわかりませんが、これについてはその後どういうような対策を立てて、どういうふうに対処していったわけですか。
○伊藤(榮)政府委員 ただいまお尋ねに当たって御指摘いただきましたように、附帯決議十一項目の中には私どもの所管でないものもございますけれども、日航ダッカ・ハイジャック事件の後にできましたハイジャック等非人道的暴力防止対策本部の幹事を私させていただいておりますので、他省庁の所管される部分につきましては、私が対策本部の幹事として承知しておる範囲でお答えをいたしたいと思います。 まず第一項について申し上げます。これは御承知のように、政府といたしまして昨年十一月八日、ハイジャック等非人道的暴力防止対策本部におきまして「ハイジャック等防止対策について」という対策要綱をとりまとめまして、その後同本部の幹事会を恒常的に開催いたしまして、そこに掲げました各種の対策の実施あるいは実施状況の点検を行いますとともに、さらに必要な措置があれば新たに取り上げて講ずるという措置をいたして、鋭意努力いたしております。ちなみに昨年十月以降、対策本部は四回でございますが、幹事会は十一回開催をいたしております。 次に、附帯決議の第二項についてでございますが、国際的な相互協力の問題に関する部分でございます。この点についての私どもの関係の施策は次のとおりでございます。 去る三月三日、日米逃亡犯罪人引渡し条約が調印されたことに伴いまして、犯罪人の引き渡しに関する国内手続について所要の整備を行いますとともに、犯罪人引き渡しに関する国際協力を一層推進いたしますために、わが国に対して引き渡し条約に基づかないで犯罪人を仮拘禁することの請求があった場合の手続等に関する規定を新設することを内容といたします逃亡犯罪人引渡法の一部改正案を今国会に御提出申し上げて御審議をお願いしておるわけでございまして、これが成立すれば国際的相互協力が一層増進されることになろうと思います。 また、本年四月五日から、私ども刑事局に、犯罪人の引き渡しや捜査共助あるいは司法共助など刑事に関する国際協力を推進いたすために国際犯罪対策室を設置いたしました。また、東京地方検察庁にいわゆる国際犯罪に関する資料、情報を収集整備するための国際資料課を新設いたしまして、これらの新しい組織を中心として国際的協力体制の整備を図っているところでございます。 それから、第三項は国連決議の実施促進その他の関係でございますが、外務当局の対策本部等における報告によりますと、国連の場で精力的に未加盟国に対するハイジャック関係三条約への加入の呼びかけを行っておるとのことでございます。また、未加盟国と航空等に関する条約、協定の交渉をいたします際、その他あらゆる機会を利用して、個々的にハイジャック三条約に対する加盟を呼びかけていく努力をいたしておるとのことでございます。 さらにICAO、国際民間航空機関の下部機関でございます不法行為防止委員会において、シカゴ条約の付属書の改定を行って現在各国に承諾を求めておるというような努力がなされておるようでございます。 次に、第四項の日本赤軍等過激派の捜査上の問題でございます。これは主として警察当局が外務省と協力してやっておられるわけでございますが、関係犯人を国際刑事警察機構、ICPOを通じて国際手配をいたしますとともに、一方外務省においては、それらの者の顔写真等所要の資料を在外公館等あるいは外国の当該機関等に送付をいたしまして、日本赤軍関係者等の情報の把握に努めておる、こういうふうに承知いたしております。 第五項は、暴力団犯罪や内ゲバ事件等の非人道的暴力行為に対する取り締まり等の問題でございますが、かような犯罪につきましては特に厳正な取り締まりを励行しているところでございまして、単に表面にあらわれた事件の処理に終わることなく、その背後関係についても徹底した捜査を実施いたしますとともに、公判におきましても特に悪性の情状立証に力を注いで厳正な科刑の実現に努めておるわけでございます。 なお、この種の事件におきまして、訴訟法上のルールを無視することによって裁判、すなわち刑罰の実現を不当に遅延させている事案が一部に遺憾ながら散見されますことにかんがみまして、今国会に刑事事件の公判の開廷についての暫定的特例を定める法律案を提出して、その速やかな成立を期待することによりまして過激派裁判の正常化を期したい、かように考えておるところでございます。 第六項は、機内持ち込み品の検査等の問題でございますが、昨年十一月十四日に開催されましたICAO、国際民間航空機関の理事会におきまして、わが国は西ドイツとともに手荷物検査の徹底それからダブルチェックの実施、空港警備体制の強化など六項目の決議案を提出いたしまして、これが何らの反対なく採決されましたが、そのほか、昨年十一月から十二月にかけまして運輸省係官などが諸外国に派遣されまして、日航南回り線の寄港空港合計三十五空港の中の、空港警備体制に問題がないかというふうな観点から、要チェックと思われた十七空港を含めまして合計十九港について実情調査を実施いたしまして、外国空港における安全検査の徹底等を期しておるということでございます。 なお、これらの外国空港のうち、日航の手によるダブルチェックの必要性があると認められた七空港については、現在までにこれを実施いたしておるようでございます。 それから、第七項の国際的な司法共助の関係でございますが、この問題につきましては、現在すでに具体的な事件ごとに外交チャンネルを通じて関係国との間で協議の上実施しておるところでありますが、先ほど申し上げましたように、国際犯罪対策室が新設、発足いたしましたことに伴いまして、この対策室を中心に司法共助に関する各国立法例などをも調査研究いたしまして、あわせて御決議の中にございます国内法の整備の要否をも含めて検討を加えて、一層効果的な司法共助の実現のために努力してまいりたいと考えておるところございます。 次に、第八項の逃亡犯罪人の引渡し条約の締結国を拡大する件でございますが、先ほど申し上げましたように、三月三日に日米犯罪人引渡し条約が調印されたわけでございますが、引き続きまして、その他の諸国とも可能な限りこの種条約を締結することが望ましいと考えますので、現在、発足早々の国際犯罪対策室を中心に、相手国となるべき国の法律制度あるいはその運用ぶりについて調査中でございまして、今後、外務省とも協力をいたしまして、必要性の高いと認められる国から順次条約を締結するよう努力を尽くしてまいるつもりでございます。 それから、第九項のハイジャック関係犯人の逮捕についての努力でございますが、先ほどもちょっと触れましたが、警察からの連絡によりますと、ダッカ・ハイジャック事件の釈放犯につきましては、すでにICPOを通じて手配済みであり、また、犯人のうち氏名を特定することができた者については、逮捕状の発付を得てこれに備えておるというような状況で、鋭意捜査をいたしておる、こういう状況ということでございます。 第十項は、旅券発給制限の運用についての問題でございますが、この点につきましては、御決議の趣旨を体しまして、外務省におきまして、昨年十二月十九日に御決議の趣旨に沿う旅券法第十三条第一項第二号の改正部分についての取り扱い基準というものを定めて、これによって遺憾なきを期しておるようでございますが、法務省といたしましても、これに対応いたしまして、外務省に対して逃亡被告人あるいは遁刑者等を通知をする関係の手続を定めました刑事局長通達を発しまして、運用が過度にわたることのないよう特段の措置を講じているところでございます。 第十一項につきましては、関係の各省庁の人たちがすべてこの御趣旨を体して行動しておるものというふうに考えております。
○稲葉(誠)委員 この人質による強要罪を犯した者が人質にされている者を殺したときは、死刑または無期懲役に処して、その未遂をも処罰する、こういうふうになっておるわけですが、これは、人質による強要罪を犯した者が人質にされている者を殺害しない場合でも死刑または無期懲役に処す、こういうような議論が出てきておったのですか。
○伊藤(榮)政府委員 日航機ダッカ・ハイジャック事件の直後の関係者の一部の間には、あのような天人ともに許さないような犯罪については、人質の生命に危険があろうとなかろうと死刑をもって臨むべきではないかという声があったことは事実でございます。しかしながら、改めてくどくどしく申し上げるまでもなく、死刑というものにつきましては、諸外国の趨勢あるいはわが国の法体系さらには死刑というものの重要性、こういうものから考えまして、その新設につきましては、やはり人の生命にかかわるというような問題を中心にしぼって考えるべきであろうということから、その一部の御議論は、私どもとしては採用することができない、こういう立場で今回のような法案の形になっておるわけでございます。
○稲葉(誠)委員 そうすると、そのいま言った議論はどこの方面からどういうふうに出てきたわけですか。
○伊藤(榮)政府委員 たとえば、当時、当委員会でもそういう御発言をなさった方があると思いますが、政党の内部において、ダッカ・ハイジャック事件が議論されたような際にそういう声も出ておったように記憶しております。
○稲葉(誠)委員 それは、現在の法体系から見ると非常に異例なものである、こういうふうに考えてよろしいわけですか。
○伊藤(榮)政府委員 現在の法体系、さらには世界の趨勢を反映いたしまして死刑を極力減らすことにしております改正刑法草案の立場、これがわが国がいま進もうとしておる立場を代表するものではないかと思うのでございますが、その立場、あるいは人質の生命に危険を及ぼさなかったハイジャック行為に対しては、われわれが知り得る限りの世界のどの国も死刑をもっては臨まないこととしておるというようなことを考えますと、ハイジャックそのもの、あるいはハイジャック人質強要そのものに法定刑として死刑を設けることは、わが国の趨勢、諸外国の趨勢からしますと、やや行き過ぎの感がある、こういうことでございます。
○稲葉(誠)委員 いま質問した衆議院法務委員会で附帯決議が付せられておるのは一から十一までですね。このうちであなたの方に関係しているものはどれとどれで、いまちょっと聞きましたけれども、今後それについてはどういうふうに進めていこうというわけですか。
○伊藤(榮)政府委員 法務省に関係のありますのは、第一項、これは各省庁にまたがっておりますから第一項、それから第二項、第五項、第七項、第八項、第十一項、これらが法務省に直接関係する部分だと思います。 それらにつきましての今後の努力の目標等につきましては、先ほど詳細申し述べたとおりでございます。
○稲葉(誠)委員 この規定の中で、第八十二回の国会において新設された航空機強取法の第一条第二項の規定を本法中に取り入れることになった、これはどういうわけで本法中に取り入れることになったわけでしょうか。
○伊藤(榮)政府委員 若干の経緯の御説明を申し上げます。 先ほど来申し上げておりますハイジャック等非人道的暴力防止対策本部におきまして、今後のその種非人道的暴力事件に対する対策がいろいろ検討されたわけでございますが、その過程におきまして、人質をとって無法な要求をするという行為に何らかの方法で対処すべきであるという議論が一致をいたしておったわけでございますが、さしあたりダッカ日航機ハイジャック事件にかんがみますと、航空機強取犯人がその乗客、乗員を人質にとって無法な要求をするという行為についてまず真っ先に立法措置を講ずるべきである、しかる後、ハイジャック以外の、妙な言い方で恐縮でございますが、いわゆるその他ジャックとでもいうようなものに対する対策もなるべく速やかに検討し、立法化すべきである、こういう結論に達したわけでございます。 そこで、そういう関係から、航空機強取犯人が乗客、乗員を人質にして無法な要求をする行為についての立法をまずいたすことになったわけでございます。その立法いたします際に、現行の航空機の強取等の処罰に関する法律の第一条に航空機強取行為そのものに対する罰則がございまして、当時新たにつくろうといたします罪の形というものが、その強取行為を犯した者が人質を強要する行為であるということから、たった一条ないしは一項の立法でございますので、航空機強取法の一条二項として新設をいたしたわけでございます。ところで、その後一般的な人質強要の新設について検討いたしました結果、過激分子によって犯されることが多いそういう実態に即した刑罰法規といたしまして、今回御提案申し上げております第一条の人質強要行為というのを新設することにしたわけでございます。 そういたしますと、改めて航空機強取等の処罰法をながめてみますと、先ほども申し上げましたように、航空機強取処罰法は強盗罪の特別類型という形で全体の構成がなされておりまして、一方、人質強要という行為はいわば強要罪の特別類型ということでございまして、明らかに罪質を異にするわけでございます。そういう意味におきまして、人質強要の一般規定のような形で御提案申し上げております法案の第一条を置きますということになりますと、強要罪の特別類型が強盗罪の特別類型を中心とする法律の中にはさまったような形になっております航空機の強取等の処罰に関する法律一条二項を第二条としてこちらの方に取り込みまして、そして統一的に強要罪の特別類型として一まとめにした立法をいたすことの方が論理的にも通りますし、またこの法律をごらんいただく国民の立場からも御理解が得やすいのではないか、かように考えて、せっかく昨年御制定いただいた航空機強取法の一条二項でございますが、こちらの法案の方に取り込みまして理論的な整合及び理解の容易さを図った、こういうことでございます。
○稲葉(誠)委員 前回の国会の質疑の中で当然航空機強取法第一条第二項の規定についていろいろ議論があったわけですが、これをこちらの方に取り入れるのではなくて、その議論があった八十二国会の中から当然新しい法律をつくるということは予想されておったわけですか。
○伊藤(榮)政府委員 当時御指摘もあり、私あるいは大臣からも御答弁申し上げておりましたとおり、いずれは一般の人質強要の行為についての処罰規定を設けるつもりでございます。鋭意検討いたしております。こういうふうにお答えいたしております。
○稲葉(誠)委員 この前の国会のときに今度のような法案がなぜ一緒に提案されなかったわけなんでしょうか。その間の理由はどういう理由でしょうか。
○伊藤(榮)政府委員 航空機強取犯人が人質強要した行為についてはきわめて特殊な類型に属する犯罪でございますから急ぎ立法を見たわけでございますが、航空機乗っ取り以外の方法によります人質強要行為につきましては、立法いたします場合に考え得る幅が相当広うございまして、たとえば改正刑法草案の三百七条にありますような広い範囲を可罰行為として拾い上げるものもございますし、あるいは要件をしぼって、過激派対策として主として有効なものにしぼるということも考えられます。そういう、どの辺のしぼり方で立法するかという問題が一つと、それからもう一つは、身のしろ金誘拐という、現在の刑法に規定がございますが、それとの関係をどういうふうに調整するかというような、この点は技術的な問題でございますが、そういった種々の検討すべき点がございまして、八十二国会には遺憾ながら間に合わなかった、こういうことでございます。
○稲葉(誠)委員 それはちょっとわからないといえばわからないのですが、その前の国会においてもいまのような場合などについては当然予想されたものですから、当然そのときに一本にして出すというか、それが筋だったのではないのですか。
○伊藤(榮)政府委員 そうできればよかったのでございますが、その立法作業の手順からしまして日数がとうてい足りなかったというのが偽らざるところでございます。
○稲葉(誠)委員 日数が足らなかったからではなくて、あなたの方とどこというか、実際に立法に携わるものとの間に議論があって、それがまとまらなかったためにできなかったのではないのですか。
○伊藤(榮)政府委員 全くそういうことはございませんで、私ども法務省部内でいろいろな犯罪のとらえ方をあれかこれかと検討して、最もベストだと思われるものにやっと到達したのがことしの一月早々ということでございまして、御指摘のようにどこかと議論しておった、こういうような問題ではございません。
○稲葉(誠)委員 人質による強要罪を犯した者が人質にされている者を殺したときは死刑または無期懲役に処し、その未遂をも処罰するというのが第三の条件になっているわけですが、これはどうして無期懲役までもするという形になっておるのですか。これは法体系として死刑だけという法体系というものは現在の法律の中にはないわけですか。 〔委員長退席、横山委員長代理着席〕
○伊藤(榮)政府委員 現行刑法におきましては、死刑または無期禁錮とか、死刑または無期懲役というのが多うございますが、例外といたしまして外患誘致、「外国ニ通謀シテ日本国ニ対シ武力ヲ行使スルニ至ラシメタル者ハ」ということで、これは死刑だけの規定になっておるようでございます。
○稲葉(誠)委員 そうすると、犯罪に対する威嚇力というのですか、抑止力というようなこと、こういう法律ができればそういうようなものはなくなるんだ、効果があるんだ、こういうふうにお考えになっておられるわけですか。
○伊藤(榮)政府委員 およそどんな犯罪現象でありましても、刑罰を設けただけではそういう現象がなくならないことは当然でございまして、他のあらゆる諸施策と相またなければならぬわけでございます。しかしながら、そうかといって、刑罰について威嚇力ないしは犯罪抑止力があるというのも古くからの国民の伝統的な考え方でございまして、そういう信念の上に立って刑罰というものが定められ、もちろん刑罰と申しますからには、犯人の責任の度合いに応じた刑の量、あるいは犯罪の結果あるいは犯罪行為そのものの悪性に応じた法定刑の量というものが考えられるわけでございます。反面その法定刑の持ちます威嚇力あるいは犯罪抑止力、こういうものを信じながら刑罰を設けるわけでございますので、そういう意味におきまして一応犯罪抑止力あるいは威嚇力というものがある、こういうふうに考えております。
○稲葉(誠)委員 それは、威嚇力なり抑止力があるということはある程度あるかもわかりませんけれども、それではまずこういうふうにお聞きしましょうか。確信犯というのは一体どういうふうなものだとお考えでしょうか。
○伊藤(榮)政府委員 一定の物の考え方につきましての確信を抱いておる、それで、自分の確信を貫き通すためには法に触れることもあえていとわないというようなものが確信犯の範疇に入ろうかと思います。
○稲葉(誠)委員 すると、具体的な例を挙げるとどういうふうなことになるでしょうか。
○伊藤(榮)政府委員 具体的な例と申しましても、簡単に適切な事例を思い当たりませんが、たとえば明治の初めごろございましたいわゆる国事犯というような人はそういうものであろうかと思いますし、また戦前戦後を通じて一部の右翼の人たちがやっておるようなことも一種の確信犯であろうと思いますし、また自分たちの主張を貫くためには爆弾で人を殺傷するというようなこともあえて辞さないというようなものも一種の確信犯に、常識的な意味における確信犯の範疇に入れてもいいのではないかと思います。
○稲葉(誠)委員 そうすると、そういうような確信犯というものと、本法案を犯すものとの通常の関係はどういうふうになるでしょうか。
○伊藤(榮)政府委員 通常の、たとえばハイジャックを行って人質をとって無法な要求をするというような連中は、そういうことがおよそ法の許さないことであるということは知っておりますけれども、自分たちの目的を達成するためにはこれをあえて踏みにじってやるという意味において一部確信犯に似たようなところがあると思いますが、さりとて人質を皆殺しにするということをあえてしても自分の主張を貫くつもりであるかどうかという点に着眼いたしますと、必ずしも本当の確信犯でもないような色彩もあるのじゃないか。一概にはなかなか言えないのじゃないかと思います。
○稲葉(誠)委員 そうすると、いろいろな問題が出てくるわけです。昭和五十二年十月四日に内閣にハイジャック等非人道的暴力防止対策本部ができたわけです。そこでいろいろなことが策定されたわけです。航空機強取等防止対策を強化するための関係法律の一部を改正する法律案の案ができてとかいろいろ書いてあるわけですが、これは具体的にはどういう内容で、どういうふうになったのでしょうか。
○伊藤(榮)政府委員 ただいま御指摘のハイジャック等非人道的暴力防止対策本部におきまして一応の締めくくりとして出しましたのが、昨年十一月八日の「ハイジャック等防止対策について」こういうものでございます。そこには第一から第七にわたりまして、およそ政府関係機関として考え得るあらゆる対策を網羅して掲記されておるわけであります。その第七に「法律改正」という部分がございまして、その1は「今臨時国会において航空機強攻等防止対策を強化するため次の3法律の一部改正を図る。」といたしまして、その1として「航空機の強取等の処罰に関する法律」、2として「航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律」、3として「旅券法」こういうことがあったわけでございます。この点につきましては、御指摘のように第八十二国会において御可決いただいて、現在施行を見ておるわけでございます。 その2といたしまして「今後次の事項について検討する。」とありまして、1が「刑事訴訟の迅速化を図るための刑事訴訟の一部改正」、2が「航空機強取者の人質強要行為に関し死刑をもつて臨む場合を設けること。」3が「航空機以外の場における人質強要罪の新設」こういうことでございます。 この今後検討すべきとされましたうちの1の事項に対応いたしますのが、刑事事件の公判の開廷についての特例法案でございまして、2及び3に照応いたしますのが、ただいま御審議いただいております法案、こういうことになるわけでございます。
○稲葉(誠)委員 池田君が書いたものによると、昭和五十二年十月二十日航空機強取等防止対策を強化するための関係法律の一部を改正する法律案というのが出ているわけなんですが、これはどういうふうになったのですか。これに関連して説明を願えませんか。
○伊藤(榮)政府委員 先ほど申し上げましたように、航空機の強取等の処罰に関する法律、あるいは航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律、それから旅券法、この三つの一部改正を、ただいま御指摘の一本の法律でお願いをいたしまして、その一つの法律の制定の結果、ただいま申し上げました三つの法律のそれぞれ一部が改正された、こういう経緯になっております。
○稲葉(誠)委員 前回の衆議院の法務委員会において附帯決議が付せられていますね。もうさっき説明がありました。それから参議院でも付せられていますが、これは大体同じ、多少違うものもあるかもわかりませんが、もし違うものがあればそれも含めて——もうさっき説明がありましたけれども、衆議院の場合は一から十一、参議院の場合は一から十ですね、これについて一つ一つ御説明を願えませんか。
○伊藤(榮)政府委員 参議院の方におきましては、衆議院で十一項に分けて御決議になりましたものを十項に整理をされて御決議になりましたので、内容においては出入りはないというふうに思っておりまして、したがいまして、先ほど御説明いたしましたことが参議院の御決議に対しましても妥当することでございます。
○稲葉(誠)委員 そうすると、この中でたとえば「逃亡犯罪人の引渡し条約の締結国を拡大することについて努力をすべきである。」これはあなたの方の所管だということを言われました。 〔横山委員長代理退席、委員長着席〕 これは、いまは逃亡犯罪人は日本とアメリカだけですか、どうでしたかちょっと忘れましたが、それをどういうふうにしようということなんで、どういう努力をされているわけですか。
○伊藤(榮)政府委員 御承知のように、現在のわが国の逃亡犯罪人引渡法は必ずしも逃亡犯罪人の引き渡しに条約の存在を要件とはいたしておりません。条約の締結のない国からの要求がありましても、相主主義の保障があり、かつその国の法制、社会事情その他から判断して相当と認めるときには、逃亡犯罪人を引き渡す手続を行うということが可能とされております。しかしながら、もちろん特定の国との間に引渡し条約が結ばれ得ますれば、引き渡しの条件等も明らかになりますし、またそれらの国との友好が一層増進されるわけでございまして、国際協力を深めるという意味では非常に望ましいことだというふうに思うわけでございます。 ところで、今回日米間の条約を他に先がけて、全面改正という形ではございますが、締結をいたしましたのは、アメリカという国は、国内法におきまして引渡し条約のない国との間では引き渡しを行わないという法制をとっております数少ない国の一つでございます。したがいまして、アメリカとわが国との間で犯罪人の引き渡しをやりとりいたしますためには、整備された条約の存在が前提となるわけでございます。そういう意味で、まずアメリカとの条約の改定、これをいたしたわけでございます。 今後の問題といたしましては、先ほど申し上げましたようにそれらの国との間に条約が存在することがきわめて望ましいと思いますので、まずもってわが国と法制あるいは社会環境、そういったものの似通った国であり、かつ両国の間に国民の交流、往来が多い国、こういうものを取り上げながら順次条約締結のための努力をいたしていきたい、かように思っております。もちろん、引渡し条約の締結自体は外務省の所管でございますけれども、事柄の性質上、条約交渉に至ります前のいわゆるおぜん立てば私どもがやらなければならぬ、こういう意味において今後努力をしてまいりたい、こう思っておるわけでございます。
○稲葉(誠)委員 すると、逃亡犯罪人の引渡し条約は、いまはたしか日本とアメリカだけだと思いましたね。そこで、その内容について、ハイジャックというか何というか、これとの関連で、まず締結国の拡大と、それから逃亡犯罪人引渡し条約の内容の問題についてどういうふうに拡大をしていく、こういうふうにお考えなんでしょうか。
○伊藤(榮)政府委員 このハイジャックの問題につきましては、ハイジャック防止関係の三条約におきまして、ハイジャック行為というものは締約国相互間では引き渡し犯罪とするというふうな規定がございますから、そのハイジャック三条約の効力のみによっても相互引き渡しは可能でございますが、今回の日米犯罪人引渡し条約におきましては、もちろんそれらを含めてきわめて広範な罪名を列挙いたしますとともに、その列挙に漏れましたものでありましても相互の法律によりまして長期一年以上の刑を法定刑といたします罪については引き渡しをする、こういうことになっております。
○稲葉(誠)委員 それはわかっているのですけれども、引渡し条約の締結国の拡大、これはあなたの方の所管ではないかもわかりませんけれども、外務省かもわかりませんけれども、これについてはとりあえず一体どことどういうふうにしていったらいいというふうにお考えなんでしょうか。
○伊藤(榮)政府委員 何分条約締結の交渉の相手方のことでございますから、どこの国ということは私どもとして現段階で申し上げられませんけれども、たとえばヨーロッパ大陸に存在しますわが国とわりあい交流の活発な国、こういうようなものがまず考えられると思います。
○稲葉(誠)委員 だから、具体的にこれは法務省の所管ではなくて外務省ですね。だと思いますから余り聞くのも無理かとも思いますが、いまなぜこれは日本とアメリカとの間だけしかないわけですか。 それでその犯罪、これは一定に対象が決まっているわけですか。どういうふうになっているのですか。
○伊藤(榮)政府委員 現在わが国が犯罪人引渡条約を結んでいる相手国はアメリカ合衆国一国でございます。それで三月三日に新しい条約の調印が行われましたが、まだ国会の御承認を得て批准をいたしておりませんので、現在は明治十九年に制定されました旧条約が施行されておるわけでございますが、これは明治のそのころの両国の犯罪現象を前提にいたしました罪名列挙で引き渡し犯罪が制限されております。殺人、強盗、放火というような伝統的な犯罪を限って引き渡し対象にしておるということでございます。したがって、今回はその枠を大きく取っ払おう、こういうことで新しい条約が締結されておるわけでございます。
○稲葉(誠)委員 新しい条約が締結されて、それでどういうふうにいま現在なっている状況ですか。
○伊藤(榮)政府委員 現在、批准承認のために国会へ提出されておりまして、衆議院の外務委員会でおおむね御質疑が終了段階というふうに聞いております。
○稲葉(誠)委員 その前の「国際的司法共助の強化が必要であるから、国際的な協力を促進するとともに、これに伴う国内法の整備を検討すべきである。」こういうのがありますね。これは法務省だけでやれることでないかもしれませんし、非常に問題が大きいですね。だから国内法の整備と言ってもなかなかすぐできにくい点があるかもしれません。法務省だけでなくて、外務省その他のあれに関連するのでしょうけれども、いまあなたは、これは七の点も法務省関連だと言われたから聞くわけですが、これについての国内法の整備云々とかなんとか、いろいろな問題はどういうふうになっているのですか。
○伊藤(榮)政府委員 国際的司法共助についての国内法の整備の問題、いろいろなアプローチの仕方があると思いますが、その一つは、当委員会におきまして横山委員が御指摘になりました問題でございまして、民事訴訟法には外国裁判所への嘱託の規定があるけれども、刑事訴訟法にはないのは不備ではないかという御指摘がございました。確かに、考えてみるとそれも真剣に検討いたさなければならぬ問題点であろうと思っております。一例を挙げますとそういうことがございまして、そのこと自体は、たとえば刑事訴訟法の改正ということになりますればまさに私どもの所管ということになりますので、その範囲でお答えしておったわけでございます。
○稲葉(誠)委員 それは、恐縮ですけれども全体の中の一部で、この附帯決議にもあるように「これに伴う国内法の整備を検討すべきである」とあるわけですから、いま言われたのはほんの一部分ではないのですか。ですから、どういうふうに整備するかというのは後の問題になると思いますからここでは聞きませんけれども、どういう点が問題になるのだろうか。いま言われたことだけですか、ほかにもあるのですか。
○伊藤(榮)政府委員 最も手っ取り早いのは、なるべく多くの国との間に司法共助協定といったものを結ぶことであろうと思います。これは所管が外務省になりますが、私どもが最高裁判所事務当局ともよくお打ち合わせをした上で外務省と協力たて推進すべきことであろうと思います。そういったいろいろな国と共助協定というようなものを結びます場合に、たとえばアメリカ合衆国にありますような共助関係の基本規定というようなものが要るのか要らないのか、要るとすればどんなものが望ましいのか、こういうことも将来の課題として関係者で詰めていかなければならぬのじゃないか、かように思っております。
○稲葉(誠)委員 だから、いま言った点の国内法の整備というのは、考えられるのはその程度のものですか。ほかにもいろいろありますか。
○伊藤(榮)政府委員 検討の過程でいろいろ出てくるかもしれませんが、現在のところ考えられるのはその程度じゃないかと思っております。
○稲葉(誠)委員 そうすると、いまあなたが言われたことについては、いつごろ、どういうふうな形で実現の見込みがあるというふうに理解してよろしいでしょうか。
○伊藤(榮)政府委員 何分検討の緒についたところでございますので、先ほど来申し上げております国際犯罪対策室を中心としまして、諸外国の司法共助、国際捜査共助の実態等を把握いたしまして、なるべくスピードを上げて研究をやっていきたい、こういうふうに思っております。
○稲葉(誠)委員 これもあなたの方の直接のあれではないかもしれないのですが、逃亡犯罪人引渡し条約の締約国の拡大問題は、あなたの方でも関連して当然相談を受けると思うのですが、これは現在、どことどこが締結しておって、なお拡大の見込みというようなものはあるのですか。
○伊藤(榮)政府委員 お尋ねはわが国との締約国の拡大のお話だと思いますが、所管は外務省でございますが、事柄の性質上、法務省の方から言い出さなければ進行しない問題でございます。先ほど申し上げましたように、現在はアメリカとしか条約がございませんが、その他の国々であって、これは日本が一方的に申し込んでもしようがありませんので、日本国との間に引渡し条約を結びたいという意欲のある国、これは大体わかっておりますけれども、そういう国を対象として、条約交渉前の、俗な言葉で言う根回し的な作業をいたしたい、こう思っておるわけです。
○稲葉(誠)委員 そうすると、ハイジャック防止に関連いたしまする三つの条約がありますね。これは申し上げるまでもないことですが、東京条約、へーグ条約、モントリオール条約、これを日本は各批准しているわけです。この三つの国際条約の未加盟国というのは現在どのくらいあるのか。これは外務省に関連するのかもしれませんが、あなたの方でわかっている範囲で結構です。
○伊藤(榮)政府委員 国連加盟国のうちの三分の一、条約によって出入りがあるようでありますが三分の一からあるいは四割近いものが未加盟であると承知いたしております。その未加盟国の主なものは中近東、アフリカ諸国である、こういうふうに承知しております。
○稲葉(誠)委員 この中にこういうのがありますね。「同条約の整備、改善並びに人質行為防止に関する国際条約の成立をめざして格段の努力をなすべきである。」これは参議院の附帯決議の三にあるわけですが、これはどういうことを意味しているのでしょうか。衆議院の方には直接のものはないようですね。
○伊藤(榮)政府委員 これは、西ドイツの提案によりまして現在国連の中に人質行為の防止に関する国際条約の草案をつくりますアドホック委員会ができておりまして、これにはわが国も作業メンバーに加わって現在検討いたしておるわけでございます。その作業のことを御指摘いただいた、こういうふうに考えております。
○稲葉(誠)委員 それから、衆議院の附帯決議の七です。これはあなたの方に関連しているのか、「国際的司法共助の強化が必要であるから、国際的な協力を促進するとともに、これに伴う国内法の整備を検討すべきである。」こういうふうに七に出ているわけです。これはどういうふうに対処していかれるわけですか。
○伊藤(榮)政府委員 これは先ほど申し上げましたように、国際的な司法共助の体制を整備するために、関係のあります各国の司法共助の実態あるいは法制等を調査いたしまして、それらの国々との間にできれば共助協定を結ぶというようなことをまず中心として考えまして、これの関係で相手国に所要の立法が行われておる、その相互主義的な関連においてわが国においても国内法の整備が必要になる、こういうような場合には当然国内法の整備ということも考えていかなければならない。また一般的に、先ほど申しましたような訴訟法上こちらから向こうへ共助の嘱託をいたしますための根拠規定が必要かどうか、必要があればどんな措置をすればよいか、そういうようなことを検討していくべきであろうと思っております。
○稲葉(誠)委員 この附帯決議については、いま言われましたように、一と二、それから五、七、八——十一はまああれですが、それが法務省の関係になっておる、こういうふうにお聞きをするわけですが、これに関連して、ハイジャック防止対策というのが第一次のものとしてハイジャック等非人道的暴力防止対策本部というのができておるわけですが、これで第一、第二、第三、第四、第五、第六、こういうふうにありますが、このうち法務省に関連する部分としてはどれがあるわけですか。
○伊藤(榮)政府委員 第一から第六までの間で法務省刑事局の直接関係する部分はほとんどございません。ただ第四のところに「出入国管理令を活用してわが国の公安を害するおそれのある外国人の入国を阻止する。」というのがございまして、これがわが法務省の入国管理局の所管事項に直接関連しておる、こういう状況であります。
○稲葉(誠)委員 そこで質問を大体もとの方に戻すわけですが、あなたの方の言うのでは、一部過激分子という言葉を盛んに使うわけですね、一部過激分子。それから、新東京国際空港関係閣僚会議というのが五十三年の四月四日に開かれておって「新東京国際空港の開港と安全確保対策要綱」というのができておるわけですが、これに関連しては、こっちの方では第三が「極左暴力集団対策」となっておるわけですね。「極左暴力集団の不法行為に対しては、」云々と、こういうふうになっておるわけですが、そこで、どういうわけであなたの方の提案と、新東京国際空港関係閣僚会議、これは法務大臣も入っているのかどうか知りませんけれども、これとで文字の使い方というか、それが違ってきておるわけですか。
○伊藤(榮)政府委員 まあ文字の使い方につきましては、そのものを書きました主管者でございませんから的確なお答えはいたしかねるところでございますが、私どもがこの法案の適用対象としての典型的なものとして考えております一部過激分子と申しますのは、要するにハイジャックなどをやって人質をとって無法な要求をするという、そのむちゃくちゃな行為をする連中を言っておるわけでございます。そういう意味でむちゃくちゃなことをやった連中だという観点から見れば、三月二十六日の成田において見られましたような行動をした者たちも同様ということにはなるかもしれませんけれども、私どもはその成田の周辺でいろんなことを起こした者、即ただいま御審議いただいております法案の適用対象となる行為者とは必ずしも考えておらないのでございまして、物事のとらえ方がちょっと局面が違っておるために言葉が違ってきておるのじゃないか、かように思います。
○稲葉(誠)委員 そのとらえ方の側面が違うというのは、どういうふうな点が違ってこういうふうに言葉というか何というか、それが違ってくるわけでしょうか。
○伊藤(榮)政府委員 法秩序にあえて挑戦をして、自分の主義主張あるいは目的を貫くためには法秩序を踏みにじるということをあえてするという点については両者共通しておると思いますけれども、現在私どもが御審議いただいている法案の対象として考えておりますのは、ハイジャック等を行って人質をとって、それをカタにとって無法な要求をするというような、非常に影響するところの大きい、また凶悪、悪質な犯罪を犯す者ということを念頭に置いておるわけでございますが、ただいま御指摘の成田の問題については、ああいうむちゃくちゃなことをした連中というようなとらえ方をしておられるわけでして、そういう行為をした者をとらえるとらえ方において差があるというふうに申し上げるよりしようがないのじゃないかと思います。
○稲葉(誠)委員 まだよくわからないのですが、きょうはこの法案の審議じゃないからそこら辺にしておきます。 そこで、この法案の提案理由の説明を読んでみますると、いろいろなことがずっと非常に長く書いてあるわけですが、そこで一つの問題になってくるのは「一部過激分子による」云々というような書き方で始まっておるわけですね。この「一部過激分子」という書き方というか理解の仕方といいまするか、それはどういうものを指して言っているわけですか。どういう人たちというか、どういうグループというか。
○伊藤(榮)政府委員 まず頭にありますのが日本赤軍でございます。したがいまして過激分子というのは、極左的な考え方を持っており、かつそれを行動にあらわして法秩序に挑戦をするという人々を過激分子とここでは言っておるわけでございますが、そのうちの一部、すなわち主として日本赤軍というものを念頭に置いて、一部過激分子による航空機の乗っ取り、在外公館の占拠等の不法事犯が最近一段と過激化、悪質化しておる、こういう指摘をしておるわけでございます。
○稲葉(誠)委員 その日本赤軍というのはぼくらよくわからないのですが、これは具体的にどういうのを日本赤軍と言うのですか。
○伊藤(榮)政府委員 みずから日本赤軍と称しており、かつ一般の人たちから日本赤軍に属しておると認められるものを日本赤軍と言っておるわけでございますが、実体は、重信房子というものを中心といたします約二十名から三十名の間の者が現在ヨーロッパあるいはその周辺で行動をしておるというふうに警察関係等の情報によって認められるところでございます。 なお、これを事実上あるいは心情的に支援するグループが数百という程度の数で国内に存在するというふうに推定されるというのが警察の見方でございます。
○稲葉(誠)委員 そうすると、ここに書いてありまする「一部過激分子による航空機の乗取り」というのは、いま言う日本赤軍による航空機の乗っ取りという意味に理解していいわけですか、この提案理由説明書に書いてあるのは。限定してよろしいのですか。
○伊藤(榮)政府委員 わが国の国民によって犯されました関係においては日本赤軍というふうに御理解いただいていいと思います。ただしかしながら、世界的に見ますと、バーダー・マインホフというようなのが西ドイツにございますし、中近東を中心とするゲリラ活動もありますし、国際的にはそういうものをひっくるめて考えるべきだろうと思っております。
○稲葉(誠)委員 そういうものに対する法的な対策としては、一体いままでどういうような法律によってそれが対象とされるわけですか。
○伊藤(榮)政府委員 刑罰的な対策としては、現行刑法を初めといたします各種刑罰法規があるわけでございますが、例の「よど号」の事件を契機につくられました航空機強取処罰法と申しますのは、まだ日本赤軍が分裂する前の赤軍によって犯されたものでございますが、その当時もある程度現在の日本赤軍に似た考え方を持っておる赤軍というようなものの存在、その行為を念頭に置いてつくられたという意味において、いわば過激分子に対する対策の立法という色彩を持っておったことは否定できないと思います。
○稲葉(誠)委員 そこで、この提案理由の説明を読んでまいりまするというと、この前に航空機強取法の改正を提案をして「航空機強取犯人による人質強要に係る罪を設けることなどの措置を定めることとしたのであります。しかしながら、これらの措置は、この種事犯の再発防止のための抜本的対策の一環として法改正を要する対策のうち、早急に取りまとめの可能なものについてなされたものでありまして、」云々ということで、今度のやつで第一と第二とこれを出しておるわけですね、これは提案理由の説明にあるわけですが。 そこで、私がわからないのは、今度の「第一、人質による強要に係る特定の行為を処罰する規定を新たに設けること、第二、人質による強要罰を犯した者が人質を殺害した場合を特に重く処罰することの二点を中心として本法律案を取りまとめ、」というのですけれども、第一と第二の点については、なぜ八十二国会の中の航空機強取法の中に入らなかったのか。それがどうもちょっとよく理解できないわけなんですね。これはどうして入らなかったのですか。
○伊藤(榮)政府委員 先ほども申し上げましたように、要するに準備が間に合わなかったわけでございます。
○稲葉(誠)委員 それは準備が間に合わなかったからに違いないけれども、どうして準備が間に合わなかったのか。本会議の時間の連絡が来ましたから途中でやめますけれども、どうして準備が間に合わなかったのか。そんなに重要なことなら、十分な対策というものを当然練っておられたわけじゃないのですか。どこが中心で練るのですか、この法案は。
○伊藤(榮)政府委員 法務省が鋭意検討したわけでございますが、先ほどもちょっと申し上げましたように、人質強要行為といいましても、いろんな段階がございますから、当面の対策として、どの段階での人質強要行為を処罰の対象にするか、それから既存の身代金誘拐罪の規定との関係をどう処理し、解決するかというような問題等がございまして、そのために約二カ月半を要した、こういう事情でございます。
○稲葉(誠)委員 いま本会議の連絡がありまして、一時十分から本会議だそうですから、後で聞きますけれども、なぜそんなに二カ月半もかかったのか、そこら辺のところは、きょうじゃなくて、別の機会に聞きますから、ゆっくり検討しておいてください。そんなものは二カ月もかかるわけはないので、二カ月もかかったということは、どこかにひっかかるところがあったわけですよね。どこかにひっかかる点があったのか、どこかに無理したのかどうかですね。なぜ二カ月半もかかったか、そこら辺のところを詳しく今度聞きますから……。
○鴨田委員長 午後二時再開することにし、この際、暫時休憩いたします。 午後零時三十五分休憩 ————◇————— 午後二時四分開議
○鴨田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 質疑を続行いたします。稲葉誠一君。
○稲葉(誠)委員 これは重要な問題になってまいりますので、この前のときに法案を出しておるわけですが、それと別個にまた今度法案を出したわけなんです。 〔委員長退席、山崎(武)委員長代理着席〕 そのときに、あれこれあれこれいろいろ法案をつくるのに約二カ月ぐらいかかったという説明をされたわけですが、二カ月かかったものをここで二カ月かかって説明しろというのは無理ですからそうは言いませんけれども、そうですね、一時間ぐらいちょっと説明していただきたいと思います。
○伊藤(榮)政府委員 ダッカ日航機ハイジャック事件が起きまして、これに対処するための立法が必要であるということで検討したわけでありますが、先ほど来申し上げておりますように、航空機強取処罰法の一条二項に入りましたあの関係の規定につきましては、極端に言えば夜を日に継いでの作業の結果、第八十二臨時国会に間に合わせたわけでございますが、遺憾ながら、この一般的な人質強要罪の規定につきましては検討すべき問題点が多岐にわたりましたので、同国会に間に合わなかったわけでございます。間に合わないということになりますと、次はただいま御審議いただいておるこの国会をめどに作業を進めることになるわけでございます。そういうことになりますと、夜を日に継いでその分だけにかかわっておるわけにもまいらぬわけでございまして、今国会にいわゆる前広に間に合うような手順をもって鋭意検討を進めた、その結果二カ月を要してことしの一月早々にただいまの案がまとまったということでございます。いま仰せられまして振り返ってみますと、昼夜兼行でいたしておればもう少し早くできたのではないかと思うわけでございますが、いずれにいたしましても今国会のわりあい早い機会に御提案できたわけでございまして、一応私どもはそれなりの手順を踏んで作業を進めたというふうに考えております。
○稲葉(誠)委員 私の記憶に間違いがなければ、これは三月の七日か八日に提案したのじゃなかったですかね。どうして国会の冒頭に提案できなかったのですか。
○伊藤(榮)政府委員 私どもとしては比較的早い時期に事柄の準備をいたしておりましたが、政府全体といたしまして予算関係法案をどうしても先行させるというような事情があったと思いますが、政党内部における御審議とか法制局審査とかいろいろな手続がございまして、たしか三月七日の閣議にかけていただいた、こういうふうに思っております。
○稲葉(誠)委員 そうすると法務省内部でこれについてまずどのような主な議論があったわけですか。二カ月かかったというのだからいろいろ議論があったと思うのです。内部の問題でいろいろあると思うので、全部を言えというわけにもまいらないが、主な議論としてどういう議論がこの法案についてございましたか。たとえば航空機強取法に規定するものとか、航空機危険法に規定するものとか、どっちに規定したらいいかという議論を技術的にあったと思いますが、全体としてどういう議論があっただろうか、これを私どもは非常に知りたいわけでございますので、説明を願いたいと思います。
○伊藤(榮)政府委員 先ほども御説明いたしましたように、昨年秋のハイジャック等非人道的暴力防止対策本部におきます対策要綱の中に、ただいま御提案申し上げておる法案の関係では二つの検討事項の指摘があったわけでございます。一つはハイジャック以外の方法による人質犯罪に対処するための立法を検討することでありいま一つは、ハイジャックを含めてこういったものについて死刑をもって臨む場合について検討をする、こういう二つの事項があったわけでございます。 そこで、私どもは、その二つの事項を念頭に置きながら、人質強要罪の構成要件をどういうふうに決めていくべきかということをまず考え始めたわけであります。 その人質強要罪の構成要件を定めます場合の考え方として、大きく分けて二通りの考え方があるわけであります。一つは、人質強要一般を処罰する、そういう構成要件を定める方法であります。これは改正刑法草案三百七条にあるような構成要件を考える考え方であります。 もう一つは、それとは若干観点を異にしまして、最近の過激分子によるこの種事犯の実態に対応するための限られた構成要件を考える、こういう考え方でございます。 この二つのいずれをとるべきかということをいろいろ検討しまして、その結果、改正刑法草案がとっておりますような一般的な人質強要罪ということになりますと、およそ人質強要行為を犯した者に一般的に適用される構成要件ということになりますために、刑の上限から下限に至る幅を相当考えなければならないというような問題、あるいはその中には犯罪類型が具体的には千差万別でありますから、それらに一々応ずるためには、たとえば解放減軽のような規定が要る場合があるのではないかという問題等があるわけでございます。 一方、最近の事態に対応することをもっぱら当面の対処策といたしまして構成要件をしぼる考えでまいりますと、どういう要件でしぼっていくのが最も客観的に合理的であるか、かつ、そういう重い刑に処せられては困るような案件が紛れ込むような構成要件では困るということで、その構成要件のしぼり方についていろいろな考え方を拾い上げてみまして、それを消去法により、あるいはどれかを選択するというような方法によりまして、ただいまごらんいただきますように「二人以上共同して、かつ、凶器を示して」という要件でしぼる、こういうことになったわけでございます。 なお、前者の広く人質強要罪一般を規定するということにつきましては、刑法全面改正の際になお見直すべき点が若干あるのではないか。すなわち、身代金誘拐罪との関係でありますとか、人質強要罪を刑法典中のどこに規定するか。そのことは罪種というものの考え方にも影響されるわけでございまして、そういう観点から現在のような案に落ちついたわけでございます。 もう一つの論点の、死刑をもって臨むべき場合という点につきましては、これもけさほどちょっと御指摘がありお答え申し上げましたように、一部の方の中には、ハイジャック、人質強要、それだけで、人の生命に危険が及ぼうと及ぶまいと、もうすでに死刑に相当する犯罪ではないかという御議論があったことをも念頭に置きまして、慎重に検討いたしました。その結果は、これもけさほど申し上げましたように、世界的な死刑制度に対する風潮、わが国の死刑の定め方の変遷並びに将来への動向、さらには実際の裁判における死刑適用の実態、こういうものを考えますし、さらに立法技術的に多少無理をして死刑を設ける場合を考えるということにいたしますと、構成要件を何重にもしぼっていって、本当にぎりぎりのケースについて死刑を科するということが可能になるというふうな考え方があったわけでございますが、そういう考え方からいきますと、場合によりますと、構成要件をぎりぎりしぼることによりまして当該犯罪が一種の政治犯的な色彩を呈するという結果になることも予想されたのでございます。そうなりますと、この種テロ行為、テロ活動をする非人道的暴力過激集団あるいは過激分子、こういうものを政治犯扱いしないで一般凶悪犯罪人として扱おうとする国際的風潮にも明らかに背馳することになるわけでございまして、結局ただいまごらんいただいておるような死刑の規定の仕方に落ち着いたわけでございます。 これらの過程を経てこういう案になったわけですが、ただいま申し上げましたような問題というものは、法律専門家と申しますか法律専門屋と申しますか、そういう者どもが集まって議論をいたしますと、一つの事柄でも一週間や十日議論の尽きないテーマでございます。そういうことで慎重に検討作業を繰り返した結果ごらんのような案に落ち着いた、こういう事情でございます。
○稲葉(誠)委員 そうすると、人質による強要罪の場合は、現行刑法ではどういう規定になっておるわけですか、どこへ入るわけですか。
○伊藤(榮)政府委員 現行刑法ではこれにぴったりする構成要件がございませんので、人質による強要行為を現行刑法の規定に当てはめて分解いたしまして、逮捕監禁罪及び強要罪ということになるわけでございます。
○稲葉(誠)委員 そうすると、逮捕監禁罪と強要罪との関係はどういう関係になるのですか。牽連犯か何かになるのですか。これは一所為数法という形になるのか、あるいは併合罪になるのか、どういうふうになるのですか。
○伊藤(榮)政府委員 ちょっと私の説明が不十分でありましたので訂正いたしますが、御承知のように、強要罪は、わが現行刑法におきましては親族等に対する場合だけが対象になっておりまして、いわゆる人質によって全くの第三者に強要する場合はこれに該当しませんから、その場合には逮捕監禁罪だけで処置をするということになるわけですが、いずれにしましても、強要罪が成立いたします場合には逮捕監禁罪と強要罪が併合罪の関係になると思います。
○稲葉(誠)委員 併合罪になるというと、法定刑はどういうふうになりますか。
○伊藤(榮)政府委員 逮捕監禁罪の法定刑の上限が懲役五年でありますから、これの二分の一を加えました七年六月以下、こういう処断刑になります。
○稲葉(誠)委員 そうすると、その処断刑をもってしては足りないということになってきて本法案が出てきた、こういう理解の仕方ですか。
○伊藤(榮)政府委員 まず、端的に申し上げますと、人質をとって、これを盾にして無法な要求をするという行為は、それ自体非常に憎むべき行為でありまして、国民的な感情からいって厳重に処罰されるべきであるというふうに考えられるわけでありますが、これに正面から対応する構成要件がないという状態は改めなければならないということが一つであります。 もう一つ、そういう正面から取り組む構成要件がないために、既存の刑罪法規で対処いたしますと、ただいま申し上げました程度の刑で処断をせざるを得ないということになるわけでございますが、翻って、たとえばクアラルンプール事件とかいわゆるハーグ事件等を想起いたしますれば、それがその程度の刑をもって臨むところの構成要件にしか該当しないということでは、十分な刑罰の効果が期待できない、こういうわけでありまして、要するに、そういった悪質な犯罪に対して正面から取り組む必要と、それから適当なる量の刑が盛れるようなもので対処する必要がある、この二点から第一条の罪、これを設けておるわけでございます。
○稲葉(誠)委員 そうすると、前に説明がありました「よど号」事件のときはまだこの法律はもちろんなかったわけですから、罪名の説明はありましたけれども、それを加減や何かしていくと、どういうふうな刑になってくるわけですか。上限は幾らになってくるわけですか。
○伊藤(榮)政府委員 「よど号」事件の場合には、先ほども申し上げましたように強盗致傷、国外移送目的拐取、同移送監禁、こういうことになるわけでございまして、そのうち監禁と国外移送目的拐取とは一所為数法の関係になると思いますが、強盗致傷とその余の罪とは併合罪の関係になるだろうと思います。そこで、これらの罪の中で最も重いものを求めますと、強盗致傷の無期または七年以上の懲役であります。したがって、強盗致傷の刑に所要の併合罪加重をするわけでありますが、すでにして上限が無期でありますから、無期以下で処断をする、こういうことでございまして、現に共謀犯人の一名について判決が言い渡されております。
○稲葉(誠)委員 そうすると、そういう場合には、今度できる本法の適用は別になくてもやっていけるわけですか。無期になるわけだし、どうなんですか。特に本法を適用しなくてもいいのじゃないですか。ただ、五年以上というところに引っかかるのかな。これはどうなるの。
○伊藤(榮)政府委員 「よど号」の場合にはまずもって五人の乗客等にけがを負わせでおりますからそういうことになるわけですが、けがを負わせていなければ有期懲役の範囲内で処断すべきことになる。「よど号」の場合は、航空機の機体そのものを占有奪取したという意味において強盗罪を適用しましたからいいわけでありますが、たとえば大使館占拠のような場合になりますと、強盗罪の適用はできない、すなわち逮捕監禁だけ、こういうことになると五年以下で処断をせざるを得ない、こういうことになるわけでございます。
○稲葉(誠)委員 きょうは、まだ別の機会に質問するので質問を残しておきますが、この法案と暴力行為等処罰ニ関スル法律との関係でお聞きをしたいと思うのですが、暴力行為のときは提案理由はどういう提案理由でしたか。あれはいつでしたか。できたのは大正十何年でしたかな。
○伊藤(榮)政府委員 大正十五年に暴力行為等処罰二関スル法律が帝国議会に提案されたときの理由については、ただいま持ち合わせませんので、いずれ取り寄せて御説明申し上げます。
○稲葉(誠)委員 じゃ取り寄せて説明をしてもらいたい。それは非常に重要なんですよ。委員長代理は笑っていますけれども、笑われることではないので、非常に重要なことです。なぜ重要かということを説明します。ということは、これは答えられますか。暴力行為等処罰二関スル法律、これをいろいろ組み合わせしますと——数人共同して何とかしたとか威嚇したとかいろいろな組み合わせをしますと、一体構成要件として幾つぐらいできてくるのですか。これはむずかしいですよ。
○伊藤(榮)政府委員 とっさにお答えをして間違うといけませんから、よく計算をした上でお答えします。
○稲葉(誠)委員 じゃその計算ができた上で今度の法案との関係その他についてお尋ねをしたいと思いますので、区切りがいいから、きょうはこの程度にして、次回に続行いたします。 大臣に何も聞かないのは失礼ですから、大臣にもお聞きしたいと思いますが、——大臣でなくて刑事局長にこれだけ聞いておきましょう。この法案がなかったら、この法案に当たるような行為は現行法ではどういうふうになりますか。
○伊藤(榮)政府委員 第一条の罪につきましては、典型的な事例を考えると逮捕監禁罪だけであります。それから、それに関連して凶器を示しますから、銃刀法に該当する場合がある程度あると思います。それから、言葉が悪くて申しわけありませんが、バスジャックとかいうようなことになりますと、バスそのものを乗っ取る関係上、強盗罪に当たる場合もあろうかと思います。 第二条の罪につきましては、ハイジャック処罰法第一条第一項の航空機強取罪、それと逮捕監禁、以下銃刀法違反、多くの場合銃刀法違反、こういうようなことになろうかと思います。
○稲葉(誠)委員 これで終わりますが、いまの点をもう少し詳しくこの次までに準備しておいてください。この法案がなかった場合に、この法案に該当する行為がどういう罪になるかということはなかなかむずかしいですよ。そう簡単に言えるものではない。いま言ったようなことであったとしても、いろいろな場合がありますし、その場合の法定刑、それに併合罪加重がつくと刑がずっと上がってきまずからね。減軽の場合はありませんけれども、そういう場合もありますから、そういう点についてもこの次にお聞きをしたいというふうに思います。 それから、まだいっぱいあるのですが、一体刑に威嚇力というものがあるのかないのかという問題ですね。抑止力というか威嚇力というか、こういうふうなもの。それから確信犯というものについて、これはフェリが言い出したんでしょう。確信犯というのは一体何か。この確信犯というものに対して、こういう法律をつくってどれだけ価値があるのか。価値というか、実効力があるかという点ですね。この前、だれか質問していましたけれども、いろいろな点、その他の問題を聞きます。それから、刑法二百四十条、あれは結合犯だと言われておりますが、あれと第三条との関係、いろいろな問題がたくさんあると思うのですよ。これはこの次に大臣に残しておきます。
○山崎(武)委員長代理 長谷雄君。
○長谷雄委員 ただいま議題となっております人質法案に関連してお尋ねをしたいと思います。 今回この法案が内閣から出されておりますが、最近の国内法だけを見てみましても、昭和四十五年のいわゆる「よど号」事件をきっかけとして航空機強取法が制定されております。そしてまた昭和四十八年のリビア・ベンガジ空港における日航機爆破事件をきっかけとして航空危険法が制定されております。そしてまた、昨年の日航機ハイジャック事件を契機として、航空機強取法等の一部改正の法律ができたわけでございます。 このように、事件が起きるたびに立法措置がなされる、その後また新たな事件が発生をする、その後さらに法改正、立法措置がなされる、こういうぐあいにめぐりめぐってきているのが実情ではないかと思います。今回の人質法案も含めて、この辺でこうした非人道的な犯罪の再発を防止するための抜本的な対策を立てる必要がぜひともある、こう考えます。 こうした事件は多数のいわれない人質の生命を危険にさらし、不法な要求をするものでありまして、法と秩序を無視し、国民共通の基盤である民主主義体制に対する敵対行為として断じて許すことはできない、こう考えるわけでございます。立法措置ももとより大切ではありますけれども、何よりも現行法の執行についての行政の確固とした姿勢こそ重要ではないかと、こう考えます。この点につきまして、去る三月三十日、衆議院の本会議におきまして私は代表質問に立ち総理の所見を伺っておりますが、ここで改めて法務大臣の所見をお伺いしたいと思います。
○瀬戸山国務大臣 おっしゃるように、特に航空機のハイジャック等について順次対応することとして刑罰等を制定しておるわけでございます。 最近このような悪質ないわゆる凶暴犯罪は、いまおっしゃるように、まさに、特にわが国の憲法下における民主主義体制といいますか、法治国家に対する大きな挑戦と言っていいくらいでありますから、これは断じて国民の認容するところでない、そういう考え方から対応いたしておるわけでございまして、抜本的というお話でございますが、逐次かようなことをいたしましたのは、情勢の変化といいますか、時勢の変化によって新しい犯罪類型が出てくる、これに対応していくということでございまして、あらかじめあらゆる場合を想定して法を準備するということは、実際上なかなか困難でありますし、また、かえって法に対する国民の理解を求めにくい、こういう点もあろうかと思います。しかし、たび重なることでありますから、これはあくまでもいま申し上げましたように、許すべからざる行為である、こういう考え方からわれわれは対応しよう、かように考えておるわけでございます。
○長谷雄委員 こうした事件の発生原因につきましては、世間ではいろいろ言われております。そして、最近のこの種事犯は多発化の傾向にあるように思われます。 そこで、この原因をどのように法務当局は見ておられるか、お尋ねをしたいと思います。
○伊藤(榮)政府委員 法務当局の見方ということでございますのでお答え申し上げますが、もとより私ども役人という狭い視野で見ておりますから、あるいはもっと大所高所に立った御見解もあろうと思いますが、一応述べさせていただきますと、いろいろな原因があろうと思いますけれども、やはり最近、特に戦後におきますところの価値観の多様化、そういう現象の基盤の上に、何といいますか、国民的な目標というものが定かでないというような状況、こういうものを背景といたしまして、自分の主張を貫くためには法秩序というものを無視しても実現しようという風潮が社会の中に次第次第に浸透してきたというようなことがバックグラウンドとしてあるように思われてならないのでございます。特に過激派によるこの種行動を見てまいりますと、昭和三十年代の前半ごろから、国際共産主義運動の混乱というものに伴いまして、わが国におきますいわゆる新左翼と言われますものを初めとする過激な勢力が次々と出てまいりまして、以来激しい離合集散を繰り返す、組織自体が未熟でありますために離合集散を繰り返していく。そうしますと、それぞれ一つの派をなしましたそれらの過激勢力が相互に相拮抗して、みずからの存在意義を喧伝しようというようなことから争って過激な行動に出る、それが次第次第に競争のようにエスカレートをしてまいりまして今日の事態になってまいっておる。特に、その中の一部におきましては、世界的なゲリラ活動を是認するような考えの者と結びついたことによりまして、日本赤軍等のような特に過激な行動に出ておる、こういうふうにも思いますし、また一方、自己顕示欲の一つのあらわれかとも思いますけれども、それぞれの組織相互間の相克によりまして、陰惨な内ゲバ等の事件が多発しておる、こういうようなことではなかろうかと思っております。
○長谷雄委員 いまの御説明の中に、ゲリラ活動を是認する考えが一部にある、こういう御指摘がございました。私もそのとおりだと思いますが、この事件の防止のためには、こうした法的側面からの対策もきわめて重要でありますけれども、それと並んで、場合によってはそれ以上重要なものが、いわゆる国民に広く理解を求め、協力を得るということでなければならないと思っております。特に悪質なこうした犯罪であり、これは先ほども申し上げましたように、法と秩序を破壊し、民主主義体制に対する挑戦である、こういうことから、これに対しては断固とした態度をとっていかなければならない。国民の中に一部迎合的な層もあるように思われますので、そこで特に、この問題を所管をしておられる法務当局におきまして、国民向けの広報活動について、今後どのような方向でなさるおつもりなのか、お伺いしたいと思います。
○伊藤(榮)政府委員 一般的な防犯的な意味におきます国民に対する啓蒙活動というのは、内閣、総理府なりあるいは警察御当局の御所管だろうと思いますが、私ども法務、検察の立場におきましては、具体的な事件の処理及びその裁判の場におきまして、国民の前に過激派の過激分子の実態を赤裸々にさらけ出すことによりまして、それをマスコミを通じて広く国民に知っていただくという努力を今後ともなお一層なすべきものだと思っております。 ことに、いつも問題になるわけでありますが、こういう過激な勢力に対して、心情的あるいは何らかの功利的な理由によって支援をし、資金援助をするというような人々がいることは否定できないところでありまして、そういった人々に対してこそ、特にこういったPRが必要であろう、こういうふうに思っておりますので、ただいま申し上げましたような場を通じて、今後、国民への認識の浸透に努めてまいりたいと思っております。
○長谷雄委員 さきの成田事件に関連してお尋ねをしたいと思いますが、この成田事件に関与した過激派の人たちがこうした過激派の運動に入るに至った過程について、法務当局の方で何か御研究なさったものがあれば、その研究成果をお伺いしたいわけでございます。 私もちょっとある大学の先生に伺った話でありますが、中にはきわめて善良な学生もおるけれども、その善良な学生が、当初学内の自治活動、小さな運動にしか入っていなかった、それがだんだんエスカレートをして大衆運動に関与するようになった、そして逮捕を数回重ねているうちに、こうした過激派運動に進んで参加し、場合によっては首魁者的な立場で活動するようになった、こういうような話も聞いたことがありますけれども、その点についてはどのように考えておられましょうか。
○伊藤(榮)政府委員 そういった観点につきましては、警察御当局の方がより的確な御認識をお持ちかと思いますが、私どもが事件を通じて知っております限りにおきましては、ちょうど現在まで、この一週間ぐらいの間が各大学の入学式シーズンでございましたが、日本武道館などで入学式をやっております。見ますと、周りにヘルメットをかぶった諸君がいっぱいおりまして、新入生の諸君に追随いたしましてビラを渡す等の行為をやっておるのを目撃することができるわけでございますが、やはり大学新入早々の時期に活動家からいわゆるオルグをされると申しますか、されて入ってみる。そうこうするうちにデモ等に参加を慫慂されて参加する。ずるずると、いま御指摘のありますように、はまり込むという例が多いように私ども見ております。特に、大学の学部によりましては、学生自治会そのものがいわゆる新左翼の諸君の支配下にある場合がございまして、そういう場合には、学生自治会の資金そのものがそういう人たちの手に握られておるということもありまして、激しい受験勉強を通り越してほっとして、まだ思慮の定まっていない新入生諸君がオルグをされるということが比較的多いというふうに聞いております。
○長谷雄委員 この成田事件での被逮捕者の数について百六十六名と伺っておりますが、その被逮捕者の内訳でありますが、この中に、今回が初めてである人、二犯、三犯と段階的にあろうと思いますが、こうした各犯別の分類をした場合に、今回の成田事件に関与した動機ないし今回の事件における運動の役割りの違いが見られるでありましょうか。その点はいかがでしょうか。
○伊藤(榮)政府委員 御指摘のように、去る三月二十六日前後の成田事件によりまして百六十六名が逮捕され、そのうち重傷者一名が釈放されまして、百六十五名が身柄のまま検察庁へ送致になり、現在、全員勾留して取り調べ中でございます。 今日までのところ、ほとんどの者が完全黙秘でございますために、その身上等が必ずしも判明いたしません。ただいま判明しておるのが、九十人足らずの者がその身上が判明しておるように報告を受けております。大変大ざっぱな話で恐縮でございますが、その身上が判明しておるうちの半分足らずぐらいが検挙歴のある者である。かつ、そのうちに、現在確認したところでは三名、過去の成田事件で起訴されて保釈中の者がいる、こういうことでございます。 なお、それらの被逮捕者がどういう動機、縁由で運動に参加したか、あるいは参加の程度、参加といいますか意識の程度がどうかというような点は、ただいま申し上げますように、ほとんど全員が完全黙秘でございますので、いまだそこを究明するに至っておりませんが、検察も警察も全力を挙げていま取り調べにかかっておりますので、何とかその辺を知る手がかりを得たい、こういうふうに思ってやっておる次第であります。
○長谷雄委員 前科のある人も関与していたということでありますが、そういう過激派活動の役割りにも違いがあるとすれば、その違いに基づく対策というものは当然なされてしかるべきではないかと思うわけです。特に身柄を預かっている場合について、特に既決の囚人である場合については非常に矯正措置がとりやすいのではないかと思うのです。 そこで、お伺いをしたいわけですが、こうした過激派事件の関与者が受刑者である場合、その受刑者と一般事件の受刑者との比較において矯正上何らかの違いが見られるかどうか。たとえば接見交通について違いがあるかどうか。あるいは、独房である場合は別として、相部屋である場合について何らかの配慮があるのか。その他、食事だとか運動時間とか、あるいは矯正の具体的教育内容について何らかの違いがあるのかどうか、その辺についてお伺いしたいと思います。
○石原(一)政府委員 法規面の違いというのは、過激派であると一般の犯罪人であるとの間に変わりはございません。 ただ過激派の場合で、特に受刑者についてでございますので申し上げますと、過激派の物の考え方というのは、対監獄闘争がありまして、施設の秩序を紊乱しようとする傾向がございます。ただ現在入っております者について見ますと、必ずしも直接的にそうした行動を起こす者は少ないのであります。そうした行動に出ないというのは、いわば仮面をかぶっているのかあるいは真から改善更生の道に入ろうとしているのか、この点は必ずしも明確ではございません。 過激派の施設収容の状況を見ておりますと、未決時代には相当騒ぐ、しかし既決になりましてからは必ずしもそうではないというふうに見られます。それが果たしていわゆる規範意識に目覚めて罪悪感を持つに至ったものであるかどうか、この点はさらに調査等を必要とするのでございますが、何分にも内心の意思に関するものでございますので、実際上はわからない点があるというふうに言っていいだろうと思います。 食事、運動等、生活の基本条件に関する面につきましては全然変わりはございません。しかしながら、御指摘のようにたとえば接見交通、面会等におきましては、そうしたものを守る会等が結成され、またそうした意味でのパンフレットの差し入れ等がございますので、その内容についての審査あるいは面会時における注意は怠りなくいたしております。 なお、雑居房に入っている場合でございますが、これはもとより同系統の者を一緒に入れることはいたしません。他の派の者が入るということでございますが、何分にも現在は数が少なく、各刑務所に分散させておりますので、同じ房に過激派同士が入っているというのはまだございません。 それから工場でございますが、やはり危険な物のある工場に配置することは非常に危険でございますのでこれは避けております。たとえば、内ゲバその他によって鉄棒を振り回したというときに、鉄の器具のある工場に配置することはとてもむずかしかろうということでございます。一般的には、知能程度が高い関係から計算二等に使っている、あるいは印刷の方に使っているという場合が多いわけでございます。いずれにいたしましても、たとえばダッカ事件における受刑者で所内成績は必ずしも悪くなかったのでございますけれども、国外に出るというときには、自分は革命家である、したがってお呼びがあった以上は行くのだというような例もございますので、こうした者の動静につきましては十分な注意をいたしたいと思っております。 最後に教育の点についてございましたが、この点は、やはり彼らの物の考え方を少しでも変えていかなければならないというときには、彼ら自身が読むような本以外の本も読ませなければなりません。したがって、カウンセリングあるいは読書指導というものを通じまして、一般の平均的な市民社会の者が読む本をも読ませるように勧めるという指導を行っております。
○長谷雄委員 成田事件の被逮捕者とダッカ空港等いわゆるハイジャック事件の被逮捕者、これは逮捕者がいませんけれども、こういうことを実行した者、つまり日本赤軍と過激派との類似性の問題についてでありますけれども、世間一般では非常にわかりにくい。いろいろなセクトに分かれておって、どれがどうなのか、どのような分派を起こして今日のそういうグループがあるのか非常にわかりにくい。そこで一般世間では、成田等の過激派の事件に関与した人たちがいわゆる日本赤軍等の潜在的な予備軍ではないか、こういう見方もあるように聞いております。この点についてどのように見るべきか、全く同質なのか、それとも異質なのか、異質としても、それが将来こうした過激派運動をやっていくにつれて彼らが質的に転化して日本赤軍のようなそういうグループに入っていく可能性があるのかどうか、その辺の見方についてお尋ねをします。
○福井説明員 日本赤軍は共産同赤軍派の理論的な流れをくんでおります。しかもリーダーの重信房子はかつて赤軍派の中央委員の一人でございました。しかしながら四十六年の十一月ごろに両者は訣別をしておりますので、厳密に申し上げますと直接の組織的なつながりは国内の極左と日本赤軍はございません。 さっき申し上げました共産同赤軍派、これはその後幾つかに分かれておりますが、その赤軍派のプロ革派と称するのは今回の三月二十六日の成田での集会デモにも参加しておるというふうに私たちは理解しておりますが、ただ昨年の九・二八の事件の際に、京都大学構内で、一九八〇行動委員会といった名前あるいはただいま申し上げました共産同赤軍派のプロ革派の名前で、日本赤軍の犯行に同調すると申しますか、そういう趣旨の立て看等が出ておりますから、心情的にはある面で通じ合うものがあると申しますか、しかも行動をとってみましても、両者とも暴力をもってみずからの主張を貫こうとするわけでございますから、そういう行動の暴力性といった点では確かに通じ合うものがある、こういうふうに見ております。
○長谷雄委員 それでは、昨年のハイジャック事件が起きた後、政府の中でハイジャック等非人道的暴力防止対策本部が設置されておりますが、設置されて以来すでに六カ月を経過いたしておりますので、その対策本部の活動状況についてお伺いしたいと思っております。 対策本部及び幹事会がこれまで何回となく開かれておると伺っておりますが、その具体的な成果を伺いたいのであります。まず項目の第一が「日本赤軍対策」となっておりますので、この日本赤軍対策について「日本赤軍に対する情報収集および取締りを強化する。このため早急に所要の専従組織を発足させる。」そして二番目に「国際手配に関し、ICPOを積極的に活用する。」そして「相互主義の立場から必要な法的整備の方策について検討する。」こう書かれているわけでございますが、これについて、具体的な成果があればお示しを願いたいと思います。
○福井説明員 まず日本赤軍に対する専従組織の問題でございますが、昨年の十二月に警察庁に日本赤軍を専門に担当いたします調査官以下の組織を設けて、現在すでに発足しております。新年度から予算が認められましたので、さらにまたこれを充実していくことになるわけでございます。それから、警視庁初め大阪、京都等主要府県に日本赤軍の国内の支援勢力の実態を解明するための陣容を持っておりますが、これをやはり昨年十二月の時点で強化をしております。そこで、日本赤軍の国内の支援組織の実態解明と海外における日本赤軍の動向把握、これにつきましては関係諸国との情報交換なり捜査共助という形で現在進めておるわけでございます。 それから、ICPO制度等の活用について御質問でございますが、これについても外交ルートを通じて、あるいはICPOの組織を活用しての情報活動なり捜査活動面での強化と申しますか、そういう点にも配意をしております。その結果、九・二八事件につきまして、実行犯のうち氏名の判明いたしました四人、及び釈放犯の六人について国際手配をしておりますし、また外交ルートを通じまして、ことしの一月に関係国に対して日本赤軍関係者の手配書と申しますか、そういうものを配布して、日本赤軍の海外における実態解明について努力をしておるわけでございます。
○長谷雄委員 次に、第二の国際協力体制の強化についてお尋ねをします。 さきの八十二国会において、航空機強取等防止対策を強化するための関係法律の一部を改正する法律案が審議された際に、私は五十二年十一月九日、当委員会で質疑をしました。そのときに、その日現在の国連加盟数が百四十九カ国である、ところがそのハイジャック等防止関連三条約のいずれにも加盟していない国が五十四カ国ある、こういう御報告を受けました。これらの国に対して外務省の国連局長は次のように述べておられました。国際機関の場を通じてこの条約への加盟を呼びかけることは十分にできるし、今後ともやっていく、このような御決意を述べておられたのですが、その後この御決意がどの程度実現したのかをお尋ねしたいと思います。
○木島説明員 お答え申し上げます。 ただいまの昨年の十一月九日当委員会における先生の御質問がございました以降の動きでございますが、その後、衆参両院におきまして附帯決議等もございまして、政府としましては国際協力の面につきまして鋭意努力をいたしておるわけでございます。 若干敷征いたして申し上げますと、まず国連決議成立とともに国際民間航空機関、ICAOでございますが、その緊急理事会の開催を求めました。同会議において、ハイジャック防止関連三条約への加盟を呼びかけ、さらに引き続いて開催されました通常理事会におきまして、わが国は三条約加盟促進を盛り込んだ決議案を西独とともに共同提案をいたしました。同決議案は十二月二日の理事会で採択されております。右決議に基づきまして、ICAOの事務局長は、未加盟国政府に対しまして加盟を勧奨する公式書簡を送っておりますので、その調査結果が間もなく判明することではないかと思っておるわけでございます。 さらにわが国は、ICAO理事会の下部機関でございます不法行為防止委員会、わが国もそのメンバーになっておるわけでございますが、その場におきまして、各国による航空安全対策の遵守の確保を目的とする国際民間航空条約、いわゆるシカゴ条約の付属書第十七というものがございまして、これが民間航空の安全を細かく規定しているものでございますが、その付属書の十七の改定と申しますか、その充実のために具体的な提案をしておるわけでございます。 さらにわが国は、ハイジャック防止関連三条約未加盟国との新規航空協定の締結もしくはすでにございます協定の改定という場を通じまして、未加盟国の加盟促進を図るという政策をとっておりますが、今日まで行いました航空交渉はすでに加盟国であるところが相手だったものでございますので、いままで未加盟国に二国間の航空交渉等を通じて働きかける場がございませんでした。今後そういう場がございますれば、鋭意その場を利用いたしまして加盟の促進を図りたいと考えております。 その結果、昨年十一月九日に申し上げまして以降、現在までの三条約の加盟国数を申し上げますと、いわゆる東京条約が八十八カ国、これは昨年の時点と変わっておりません。ハーグ条約が八十三カ国でございます。モントリオール条約が八十二カ国、これが今年三月末の数字でございます。
○長谷雄委員 さらに、国際協力体制につきましては、国と国との友好関係の充実とあわせて民間外交もきわめて重要な柱であることは言うまでもないと思います。外務省におきましては経済協力局の所管で海外経済協力基金があるということを伺っておりますが、さらに文化事業本部というのがあって、そこで国際交流基金を管理しているということを伺っております。その出資金あるいは運用益についてどの程度の規模を持っておられるのか。その中で特にそうしたものの活動内容、それは特に中近東諸国、いわゆる政情不安定の国と申しますか急進国と申しますか、そういう国に使われている予算というものはどのような予定になっているのかをお尋ねします。
○中村説明員 外務省の主管しておりますのは、国際協力事業団という技術協力を取り扱っている事業団がございます。それとももう一つ基金というのがございますが、これは経済企画庁の主管でございます。 お尋ねの件につきまして、まず借款で海外経済協力基金の昭和五十三年度の予算規模は二千八百二十億円でございます。それから外務省が専管しております国際協力事業団、これの特に技術協力分野での事業規模は約二百九十七億円でございます。そういうことで、昭和五十三年度の政府開発援助、つまり借款あるいは国際機関に対する出資、拠出、それと二国間の贈与、技術協力、こういうものをすべて含めました政府開発援助事業予算規模は約六千三百五十億円でございます。 それから、わが国の政府開発援助の中近東に対する支出の割合でございますが、これはあらかじめ幾らを中近東に振り向けるということはいたしておりませんで、開発途上国からの援助要請に応じまして、しかるべき案件について技術協力あるいは経済協力をしているというのが実情でございます。ただ実績で申し上げますれば、昭和五十一年度におきましては、ドルタームでございますが、政府開発援助は中近東諸国に対して五千九百万ドルという金が流れておりまして、政府開発援助の大体七・八%程度が中近東に流れているという実情でございます。
○長谷雄委員 法務省にお尋ねをします。 これもやはり前回十一月九日でございましたか、この法務委員会の質疑の中で刑事局長の御答弁があったと思いますが、アジ研、アジア極東犯罪防止研究所というのがあって、そこから若手の優秀な検察官を海外に派遣をして研究に従事させる、こういうお話がございました。こうした活動というものは非常に重要なことであるので今後も鋭意進めていかなければならない、こう考えております。特にわが国の国情を向こうに伝えるという意味で、中近東諸国に対するこうしたアジ研あるいはこれと類似のものがもしあれば、どのようなものになっているのかをお尋ねしたいと思います。
○伊藤(榮)政府委員 アジア極東犯罪防止及び犯罪者の処遇に関する研修所、俗にアジ研と申しておりますが、過去十五年間の実績を積み重ねてきておるわけでございます。ここでいまやっておりますことは、主としてアジアを中心とする各国、ときにアフリカあるいは中近東からも招いておりますが、こういう各国の政府職員に対しまして、犯罪の防止あるいは犯罪者の処遇の分野でいろいろな研修を行っております。十五年間でその総数が一千五百名に及んでおりまして、それらの人々が、ただいま申し上げました地域、各国の犯罪防止あるいは犯罪者処遇の職場における枢要な地位に次第についてきております。このアジ研の教官をしております日本人である職員が毎年それらの地域を回るわけでございますが、そういたしますと、そういう人たちがこぞって集まって同窓会をやってくれるというような状況でございまして、ここで研修しましたことの効果もさることながら、それらの地域に有力な日本に対する理解者を得ておるという点におきましては多大の成果が上がっておると思います。 研修の内容がいろいろな分野にわたっておりますけれども、たとえば一昨年秋に行いました三カ月研修におきましては、インドを初めとする十六カ国の政府職員合計二十三名が参加しまして、ハイジャックなど人質強要事件その他悪質暴力事犯の防止、処罰あるいは犯人の処遇、これらの関係の情報交換等について活発な討議を行ったという実績もございまして、アジ研の活動はじみではありますが、そういう意味で、あらゆる意味で非常な成果を上げておるというふうに私どもは見ておりまして、そのことは国連自体によっても高く評価されておるようでございます。
○長谷雄委員 予算のことを伺ったので、ここで予算のことを一般に伺いたいと思います。 この議題となっております人質法案はいわゆる予算を伴う法案ではないわけでございますが、しかし、これが実効を伴うためにはかなりの予算を実際必要とするのではないか、こう思っております。これもさきの十一月九日の質疑の中で私申し上げて、その中で外務省の場合、御答弁がございまして、在外公館警備強化対策費が五千八百四十二万九千円、そして外交官保護対策費が約三千万円、それから運輸省の方では空港警備関係予算として約十億、こういうようなお話がございました。 そこで、この人質法案を実際法律として成立させて、将来こうした事件の再発を防止するためには相当な予算を必要とするのではないか、こう思うわけでございますが、法務省関係の五十三年度歳出予算を見ますと、それが具体的にどこの項目に当たるのか余り明確でないように思います。増員として、国際犯罪対策室の新設等ということで事務官四名の増員を書いてあるくらいで、非常にわかりにくいのでございますが、この予算関係はどのようになっているのでございましょうか。
○伊藤(榮)政府委員 まず、人員の点と経費の点に分けて御説明申し上げますと、国際犯罪対策関係で増員がございましたのが、法務本省の職員増員四名のうちの三名がその分でございます。室長自体はすでに存在いたします刑事局参事官のうちから一名をこれに充てることといたしまして、なお従来から小さな係としてございました国際係、これもこれに統合いたしまして、小さい数でお恥ずかしいのですが、当面六人で発足をさせていただいております。そのうちの三人が純増でございます。 それから、人員に関連いたしまして組織、機構といたしましては、ただいま申し上げます国際犯罪対策室を刑事局総務課に置くということが認められましたほかに、東京地方検察庁刑事部に国際資料課の新設が認められて、それぞれ課長、係長等の増設が認められております。 それから、経費の関係でございますが、これは御承知かと思いますが、具体的事件が生じましたときに対応します経費は検察費ということで、それこそ贈収賄の事件から窃盗、交通違反に至るまで、いわばどんぶり勘定と言っては言葉が悪うございますが、一括して検察費の中に入っておりますから、それを機能的有効に活用して対処するということになります。 そこで、もう一つの観点から国際犯罪処理体制を確立いたしますための特別な経費というものを予算書からピックアップしてみますと、法務本省刑事局の経費の中で新規に約六百五十万円が認められております。これは国際犯罪に関します各資料の収集経費でございますとか、諸般の調査活動をする経費あるいは外国へ調査に行く経費等でございます。それから、検察庁におきましてこれに見合う金額といたしましては約二千六百万円が認められておる、こういうことでございますが、何分予算書の細目に隠れてしまっておりますのでおわかりにくかったと思います。
○長谷雄委員 いま御説明をいただきましたが、こうした予算措置で果してこうした事件の再発が防止できるのかということが国民こぞっての心配ではないかと思うのです。それで、予算には当然限りがあるわけでございますので、この予算の中で鋭意努力されて、事件の再発をぜひとも防いでいただきたい、このように切望をいたしておきます。 次に、人質法案の条文について若干お尋ねをしたいと思います。この条文につきましては、すでにわが党の飯田委員が質問をいたしておりますので、これと重複しない範囲で申し上げたいと思います。 初めに、人質犯罪の保護法益についての理解でございますが、この保護法益については、人質とされる被逮捕者等の保護とあわせて、不法な要求を強いられておる第三者の自由というものが保護法益と考えられると思うのですが、どちらに主たる法益を置いておるのか、そしてまた、この一条を見ますと結合犯的犯罪類型でございますので、基本的構成要件についてはどのような理解をしておられるのか、お尋ねします。
○伊藤(榮)政府委員 人質による強要罪の構成要件、ごらんのとおりでございまして、刑法典で申しますと強要罪の特別類型となっておるわけでございます。したがいまして、まず第一義的には、無法な要求を受ける人の意思の自由、これがまず第一の保護法益になります。理論的には、第二に人質にされておる人の生命身体の自由というものが保護法益になってまいります。なお、例外的な問題といたしまして、この「第三者」というものの中には、個人のみならず法人あるいは法人格のない社団あるいは国家それ自体も含まれると考えられますので、仮に第三者が国家でありました場合には、国家の意思決定の自由というものが保護法益になりますから、その場合には国家的な保護法益の問題になってくる場合も時としてあろうかと思います。 なお、この第一条の書き方が結合犯的な書き方であるという御指摘でございますが、結合犯とか身分犯とかという言い方は、必ずしもはっきりしたそういう言葉の定義があるわけではございませんので、ややあいまいなお話になるかもしれませんけれども、ごらんのように「二人以上共同して、かつ、凶器を示して人を逮捕又は監禁した者が」とこうなっておりますので、一種の身分犯的な書き方をさせていただいておるわけでございます。したがいまして、人質をとって不法な要求をする者が「二人以上共同して、かつ、凶器を示して人を逮捕又は監禁した者」であるということがいわば主観的要件である、こういう構成にさせていただいておるわけであります。
○長谷雄委員 この構成要件、一条を見ますと逮捕監禁のことが書いてありますが、御承知のように、逮捕監禁については、行動の自由を持たない嬰児等に対しては逮捕監禁罪が成立しないという見解がございます。この見解によりますと、こういう人たちを人質にする場合には第一条の構成要件には当たらないのではないか。そしてまた、欺罔を手段とする誘拐のように、逮捕監禁を伴わない人質事犯ではこの一条に当たらないということにならざるを得ないのではないかと思うのです。そこで、こうした条文の書き方では、せっかく人質犯罪を新たに立法しても、所期の目的を達しない場合が出てくるのではないか。つまり漏れる場合があるのではないかということで、私はこれについて、人質をとる行為体系のすべてをとらえるためには、この第一条で書いてある「逮捕又は監禁した者が」という文言は削るべきが適当ではないか、こう考えておりますが、いかがでしょうか。
○伊藤(榮)政府委員 ただいま幼児とかそういう者を、どういいますか押さえ込む、そういう行為は監禁に当たらないのではないかということを前提としてのお尋ねでございますが、現在判例のとっております態度は、意思能力がなくても監禁罪の対象たり得るということがおおむね確立されておると思います。そこで、そういうことを前提にいたしますと「人を逮捕又は監禁した」という言葉で十分であると思います。また、観点を変えまして、「人を略取、誘拐した者」というのが要らないか、念のため入れておく必要がないかという点の御指摘もあり得ると思うのでございますが、およそ二人以上の集団で凶器を示してやるということになりますと、もうかどわかしというようなものではなくて、逮捕監禁ということになることは火を見るよりも明らかでありまして、そういうふうに評価されるべき行為でございますので、この書き方でこういう類型の行為はすべて対処できる、こういうふうに考えております。
○長谷雄委員 この一条を見ますと「要求したときは」と、こういう構成要件になっておりますので、要求したことで足りるわけでございますが、こうしますと、要求の意思表示が相手方に到達することを要する、つまり到達主義の原則は当然にこの場合もとられなければならない。そうしますと、たとえばハイジャックの場合、管制塔の機械の故障などによってたまたまハイジャッカーとの交信ができなかった、しかし犯人側としては要求している、しかしその要求の意思表示はこういう事情で到達をしていない場合、こういう事例はあり得ると思います。しかしその場合でも、犯人は人質である機長、この機長は人質であって第三者でないと思うのですね、この人質に不当な要求をしている。しかし本条に該当しないという事例が出てくるのではないか。そうしますと、ここで「要求した」という構成要件の決め方は、全部が漏れなく入るということではなくて、やはり漏れる部分があるのではないか。この意味で、客観的に要求する行為があればいいので、それが相手方に到達することまで要求するのは、ちょっと構成要件のしぼりがかかり過ぎるのじゃないか、こう思うのですが、いかがでしょうか。
○伊藤(榮)政府委員 確かに、おっしゃいますように、要求する行為をしたときは、というふうにする方法とか、あるいはこの要求の未遂、すなわち主観的に要求したけれども到達しなかったというものを未遂でとらえるとか、そういうことが観念的な問題として考えられるわけでございますが、この種犯罪の実態に照らしまして、要求したけれども到達しないというようなやり方で要求するということが実際問題としてほとんど考えられませんので、かようにしたわけでございます。たとえば、管制塔との無電交信が不可能になれば、窓から紙切れを落とすとか、あらゆる方法を使ってこの犯人は要求を到達させようとするわけでございますし、まず現実の事態といたしまして、要求行為が主観的にあったけれども到達しないという場合は考えにくいのではないかという観点から、このような規定の仕方をしたわけでございます。
○長谷雄委員 次に、同じく一条の中で、冒頭に「二人以上共同して」とありますが、これについてはすでに飯田委員が指摘をしておりますので私は簡単に触れたいと思いますが、二人以上で、単独犯の場合を除いていることになるわけですが、航空機強取法の場合は単独犯の構成要件になっておりますので、それとの兼ね合いでもやはり問題があるのではないかという気がします。 またもう一つ、たとえばこういう事例が実際起こり得るかどうかは別として、本来共犯でやるべきところを単独犯でやって、しかもあと共犯の手を実際器具で使う、たとえば爆弾をどこかに仕掛けて、単独犯のその人がボタンでも押せばそれが爆発するというような形で、実際に共犯でやったと同じ行為と結果をもたらすようなこういう事例というものは、やはり観念的にはあり得ると思うのですね。そういう他の刑罰規定との兼ね合い等もございますので、これを「二人以上」ということにする必要はないのではないか。単独犯でも十分にこういう凶悪な、凶暴な事件は起こり得ると考えられるわけです。この点について、飯田委員からも指摘がありましたけれども、私も観点を変えて申し上げたわけですが「二人以上共同して」という構成要件の文字は削るべきが適切じゃないか、こう思いますが、いかがでしょうか。
○伊藤(榮)政府委員 すでに他の委員の御質問にもお答え申し上げましたように、要するに最近における過激分子によるこの種事犯の実態にかんがみまして立法をいたしておるわけでございますが、やはりそれらを見ますと、二人以上の集団で人質をとって、たとえば交代で見張りをして、そして他の者が要求をするというような行為が顕著でございまして、またそれでなければできないという犯罪の実態になっておるわけでございますので、それらの点をしぼって適用したいという意味でこの「二人以上共同して」という文言を置いているわけでございます。 今度は逆に裏から申しまして、この要件を取りますと、たまたま思慮浅薄な者が、果物ナイフなどを用いまして、俗にトイレジャックというような行為に出ましたときにもこれで処断をするということになりますが、それはいささか、この規定いたしました刑からもおわかりのように、過酷に過ぎる場合があるのではないか。私どもの考えは、そういう当該具体的事犯に対して、この罪で臨むことが過酷にわたらないようにという観点からの一つのしぼりをかけておるわけでございまして、ただいま仰せになりますようなことも、中にはそういう一人でやる場合でも危険な行為があるかもしれませんが、そういう問題につきましては、将来刑法全面改正の一環として十分検討してまいりたい、こういうふうに思っておるわけであります。
○長谷雄委員 この法律案につきましては、予備罪の規定がないわけですね。実際予備行為に当たる場合は十分考え得ると思うのです。たとえば、二人以上共同して、凶器を示して、第三者に対して、義務のない行為をすることまたは権利を行わないことを要求するための人質にする目的で人を逮捕監禁もしくは略取誘拐したとき、こういう場合は要求行為がないわけです。要求行為がない点で、いま申し上げたような行為の場合は第一条に当たらない。こうなると、逮捕監禁もしくは単純な略取誘拐にしかならない、こういう事態が起きてくると思います。しかし、それは刑法の身代金誘拐罪の規定、これの罰条との兼ね合いできわめて不均衡な事態になるのではないか、こう思います。そこで、こういう場合も十分想定されるわけですので、人質目的の逮捕監禁もしくは略取誘拐は、第一条の前段階に当たるものとして予備罪の罰条規定を設けるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○伊藤(榮)政府委員 まず、ただいまごらんいただいております法案の第一条の罪につきましては、未遂の処罰規定を置かないこととしておるわけでございますが、まず、そうでありますことから、論理的に未遂を処罰しないで予備を処罰するというのがおかしいということになります。それから第二条の罪につきましては、航空機強取法第三条にすでに予備罪が設けられておりますので、それで賄うことになると思います。 なお、御承知のように予備罪と申しますのは、既遂罪に比して非常に刑を軽くいたしておりまして、殺人のように死刑まである罪におきましても、予備罪は二年以下の懲役という程度で評価しておるわけでございますが、御指摘のこの第一条の罪について見ますと、逮捕監禁したということ自体が逮捕監禁罪で評価できます。これが五年以下の懲役ということになっておりますので、そういう意味での本法案第一条の準備行為につきましては、逮捕監禁罪で評価して評価し残りがない、こういうふうに考えるわけでございます。 それから、さらにもう少し手前の逮捕監禁の予備というようなことになってまいりますと、事柄が非常にまた微妙になってまいりまして、うんと軽い刑で臨むことになるだろうと思いますが、それが果たして効果があるかどうか。それは逮捕監禁罪の法定刑の問題としてまた別途検討すべきであろうと思います。
○長谷雄委員 これの三条を見ますと、人質が殺害されたときには死刑または無期、こういうことになっておりますが、この三条の規定は私は必ずしも必要ではない、むしろこういう三条は設けるべきでない、こう考えます。というのは、人質に当たる人が殺害されたときには、一条もしくは二条と刑法百九十九条を適用すれば十分足りるのではないか、こう考えます。やたらと刑罰規定が大きくなってくるということはやはり差し控えるべきではないか、こう思いますが、いかがでしょうか。
○伊藤(榮)政府委員 まず、正面からのこの第三条の理解といたしまして、人質による強要行為というのが悪質な憎むべき犯罪であることは言うまでもありませんが、その全く不法な、自分の要求目的を達成するためにその人質を殺してしまうというようなことは、まことに憎みても余りある行為でございまして、まさに強盗殺人に匹敵するような憎むべき犯罪であろう。そういう意味におきまして、これにつきまして強盗殺人罪がありますように、人質殺害罪を設けることは十分合理性があり、かつ国の政策としても適当ではないかと思うわけでございます。 もう一つ、観点を変えてみますと、刑法百九十九条の通常殺人罪を適用するといたしますと、刑の下限が第一条の場合は五年あるいは第二条の場合は十年というところへ下がってまいります。そういう範囲内で裁判所が量刑できるようにしておくのがいいのか、あるいは厳格な姿勢を示した方がいいのか、こういう政策の問題であろうと思いますが、その点は、先ほど御説明申し上げましたように、やはり憎んでも余りある犯罪行為であるという観点から、法定刑を、非常に言葉は悪いのですけれども、足切りをするということで毅然たる姿勢を示す、こういうことが適当ではないかと思っております。
○長谷雄委員 次に、事件が発生した場合のことでありますが、人質事件については、先ほどから申し上げておりますように事前の防止策をどう実効あらしめるかということがきわめて大事で、刑法的側面と行政的側面、その両面相まって努力が大事でありますけれども、それでもなお不幸にして事件が発生した場合には、人質の救出を第一義として、犯人との関係については、犯人の目的は達成できない、しかも、かつ絶対に犯人は逮捕されるということでなければならない、こう考えます。 そこで、人質事件についてこれまでの発生件数、未検挙件数、未検挙犯人数、それから未検挙である事件についての将来の検挙の見通しについて、昭和四十年ごろからで結構でございますが、資料がありましたら御説明をいただきたいと思います。
○福井説明員 昭和四十年以来の件数でございますが、百五十件発生しておりまして、うち百四十七件、百五十七人を検挙しております。 未検挙の事案でございますが、四十五年の三月三十一日の例の日航機「よど号」ハイジャック事件、それから四十八年の七月二十日の、やはり日航機ハイジャック事件、それと昨年の九月二十八日の日航機乗っ取り事件、以上でございます。
○長谷雄委員 人質法案に関連しまして、不幸にして人質になった方が殺害された場合についての補償問題をここで取り上げてみたいと思います。 われわれが日常生活において生命身体が損なわれた場合については、その発生態様が労災である場合には労災保険、自動車事故である場合には自賠責等、こうした損害、被害の補償制度が、不十分ではございますが一応救済の制度はございます。ところが、通り魔的な犯罪あるいは無差別爆弾テロ、あるいはまた本件の人質法案にある人質が殺害された場合のような、いわゆるいわれなき犯罪によって被害を受けた人たちは、どこからも救済を受けることができない。しかも、こうしたいわれなき犯罪というものは年々増加の傾向にございますので、何とかこの措置をしなければならない、こう私たちは考えております。犯罪被害者に対する社全的な救済措置が極端におくれている現状がある反面、犯罪者の人権保障というものは刑事制裁の緩和、社会復帰対策の促進、収容施設の合理化及び近代化など、積極的にいま推進をされております。確かに犯罪者の人権保障の充実というものは憲法の規定に基づくものでありまして、当然のことであります。しかし、それならばなぜその犯罪被害者、しかもいわれなき犯罪被害者の人権保障を充実しないのかということが非常に問題であると思います。この犯罪被害者の人権保障もあわせて行うことが正しいこれからのあり方ではないか、こう考える次第でございます。 こうした観点から、われわれ公明党は、すでに御承知のように犯罪被害補償法案を提案をいたしておりますが、これについて、犯罪被害補償制度を制度化すべきである、こう私は考えておりますけれども、これについての法務大臣の所見をお伺いしたいと思います。
○瀬戸山国務大臣 犯罪によって被害を受ける、これは理論的には犯罪者が求償の責任を負わなければならないわけでございますけれども、実際問題としては、それはなかなか実行を伴わない場合がたくさんあるわけでございます。そういうことで、近年の趨勢として、犯罪の被害者に対する補償の制度を確立しなければならない、こういうことはあるわけでございまして、公明党の皆さんからも提案をされていることは承知いたしております。政府としてもやはりこういう時勢に対応する、それにふさわしい制度をつくらなければならない、こういう乙とを検討していることはしばしば申し上げておるわけでございますが、さて実際、どういう程度の犯罪に一これは国民の負担上、全部というわけにはなかなかいきませんから、どういう程度のもの、どういう場合、こういうことをいま細かに検討しておりまして、どの程度の補償をすべきかということを検討しておりますが、できるだけ速やかにこういう制度を、完全でなくても、まず一つの制度をつくりたい、こういうことでいま進めておるわけでございます。
○長谷雄委員 法務大臣のきわめて前向きな御答弁をいただきましたので、次に進みます。 この人質法案に関連しまして、過激派などの暴力事件により国または政府関係機関の物的施設に損害を受けたときに、その損害の費用負担をどうするかという問題がございます。今日までこうした彼らの行動による被害について、政府はほとんど損害賠償の請求をしていないように思われます。こういう姿勢は、結果的に見て国家がその費用を負担することになり、結局、国民の血税による埋め合わせをすることにほかならないのではないか、それはきわめて遺憾である、こう思います。この点について、さきの成田の新東京国際空港襲撃事件により破壊された管制塔初め航空施設の損害の負担問題について、去る三月三十日の衆議院本会議で私は法務大臣の所見を求めましたところ、大臣は前向きの御答弁をなされておりますが、今後この賠償請求をめぐってどのように具体的に措置をなさるおつもりなのかをお尋ねしたいと思います。
○伊藤(榮)政府委員 成田の管制塔襲撃事件につきましては、被害を受けましたものが国及び公団両者でございます。国につきましては運輸省の所管、こういうことでございまして、運輸省も公団もこの損害賠償を求める決意を固めておりまして、現在当省の訟務局に両者が何回か来られて、具体的な提訴手続等についてお打ち合わせをしておるという状況でございますので、遠からず提訴が行われるのじゃないか、こう思っております。
○長谷雄委員 最後に伺っておきますが、具体的に直接犯罪行為を行った過激派は当然でありますが、直接に手を下さなかった、しかし後ろで指揮をしておった人たち、あるいはその共謀者たちについて、そのグループ自体あるいはグループの構成員全員について何らかの損害賠償請求も当然考えていいのではないか。もちろん現在の法制では限界がございますが、その法制的な欠陥があるとすれば、その欠陥を直すこともまた私たち国会の立場であろうと思いますが、その点について法務省の方の御見解を伺っておきたいと思います。
○伊藤(榮)政府委員 その問題につきましては、まずもって実行行為者の背後にある者というものを確定する必要があろうと思いますので、この確定につきましては、やはり通常の行政調査でございますとかいうものではうまくいかない。したがって、刑事手続の間においてその実態を究明してその基盤をつくるということが、何よりも大事だと思っております。 具体的な例を申し上げますと「よど号」事件のときには、実際の実行行為者でない国内におった指揮者を数名起訴することができたわけでございますが、今後この種の事件につきましては、そういった背後関係の究明を徹底いたしまして、ただいま御指摘のございましたような線にいささかでも沿うような措置が可能になるようにしていきたいと、こういうふうに考えております。
○長谷雄委員 終わります。
○山崎(武)委員長代理 正森君。
○正森委員 人質による強要行為等の処罰に関する法律案について若干質問させていただきたいと思います。本法案については何人かの方が質問されましたので、なるべく重複しないようにしたいと思いますが、若干重複しますので、お許しを願いたいと思います。 すでに同僚議員がお聞きになりましたが、この法案の第二条というのは、航空機の強取等の処罰に関する法律の第一第二項と全く同じであるというように思いますが、それを改めて御規定になったのは、人質による強要罪という犯罪類型に着目して、それらを一括して規定するという趣旨のお答えがあったと承知しているのです。ただ、そうだといたしますと、全く同じ条文がそれぞれ二つの法律に規定されているという、必ずしも体裁のいいかっこうにはならないわけで、それにはもう一つ理由がなければならないと思うのです。私が考えるところでは、この法案には第三条に「第一条又は前条の罪を犯した者が、人質にされている者を殺したときは、死刑又は無期懲役に処する。」というように、殺意を持って殺した場合には、通常の殺人罪ではなしに、死刑または無期だけである、こういう類型を定めておるという点で新しさを持っておるかと思うのですが、そういうこともあって、前の法律を改正するのじゃなしに今度の法律に一括したものであるということなんでしょうか。
○伊藤(榮)政府委員 前回の航空機強取法の一部・改正におきまして、第一条第二項として、今回御提案しておる法案の第二条と全く同文のものが加えられたわけでございますが、その当時からも、ハイジャック人質強要以外の一般の人質強要についても何らかの措置をとることが必要であるということは考えられておったわけでございますが、いかんせん立法作業が間に合いませんで、ハイジャック人質強要の規定だけをとりあえずということで新設することにしたわけでございます。それが、印刷の方法にもよりますでしょうが、その三行ぐらいのものでございます。これはハイジャック行為そのものを受けての規定でございますので、その当時存在した法律の中で航空機強取処罰法の一条の二項として加えるのが最も適当であろうということで入れさせていただいたわけでございますが、このたび、この人質による強要罪のうち、ハイジャックを前提としないものをも新しく立法することになりますと、航空機強取処罰法の方がもともと強盗罪の特別類型を規定した法律であったのに、そこにあれを入れた。ところが今回の人質強要行為と申しますのは強要罪の加重類型であるという点からいたしますと、今度この法律をつくるにつきましては、昨年航空機強取処罰法の一条二項として新設させていただいたものをこちらへ取り込む方が法体系としても合理的であり、またこれをごらんになる国民の立場からも理解がしやすいのではないか、こういうことでこちらへ移しかえることにしたわけでございます。ごらんいただいておりますように、本法案の附則の第二項におきまして航空機強取処罰法の一部改正も含めておるわけでございまして、この法案が可決成立いたしまして公布になりますと、航空機強取処罰法に昨年新設されました第一条二項が削られて、そっくりこちらへ移転をしてくると申しますか、そういう関係になるわけでございます。
○正森委員 私が最後に述べました、前の法律には、人質にされている者を殺したときはという規定がなかったですね。それが新たにつけ加えられたということも、本法を設ける必要性があったことに当たるというのではないのですか。
○伊藤(榮)政府委員 その点は全く理由となっておりません。なぜかならば、仮に第二条を航空機強取処罰法に残したままにしておくとすれば、第三条の文言を、第一条または航空機強取処罰法第一条第二項の罪を犯した者がと書きさえすればよろしいわけでございますから、そういう立法技術的な観点と申しますか、そういう観点からこういう形をとったわけではございません。
○正森委員 私が言っているのは、立法技術上そういう形をとったというのじゃなしに、前回の法律に比べて、この部分を新たに付加されたことになるのではないですか、こう言っているのです。
○伊藤(榮)政府委員 第三条というものが第一条、第二条両方を前提として置かれたという意味において、それを付加されたというふうに見れば見ることもできようかと思います。
○正森委員 そういう答弁があったからいいですけれども、付加されたと言えば言えると言いますけれども、明らかに違うのじゃないですか。従前のものだったら、人を殺した場合でも、そのことによって死刑か無期しか法定刑がないということではなかったわけでしょう。今度の場合には死刑か無期か、酌量減軽等があっても、ということになったんだから、本法における新しい観点、新しい規定であるということは言えるのじゃないですか。
○伊藤(榮)政府委員 その点はいまおっしゃいますとおりです。
○正森委員 法制審議会が改正刑法ということで草案づくりをやっておりますね。法制審議会の刑事法特別部会のたしか第五小委員会で議論がされてきたというように思うわけでございますが、そこでは単に逮捕監禁だけでなしに、三百十一条だったかと思いますが「人質による強要」ということで……(伊藤(榮)政府委員「三百七」と呼ぶ)三百七か、はい。これは前のやつだな。逮捕監禁だけではなしに、略取し、誘拐しというのが入っているわけですね。講学上は、これは逮捕監禁と略取誘拐及び強要罪など結合犯類型をとったというように言われておりますが、略取と誘拐を抜いたのはどういうわけですか。
○伊藤(榮)政府委員 観念的には略取誘拐という場合も一般的な人質犯罪としてはあり得るわけでございますが、この第一条の要件といたしまして、二人以上で凶器を示すというような行為による自由を制限する行為を言っております。そうでありますと、略取誘拐という概念に該当する場合というのはなくなってしまって、逮捕監禁というのだけが残る、こういう意味であえて略取誘拐を抜いておるわけでございます。
○正森委員 法務省のおっしゃる意味は、凶器を示しという構成要件があるから、略取誘拐というのはそもそもこの規定の仕方だったら該当せずに、逮捕監禁ということだけでいくことになる、こういうお考えですか。——しかし、仮に略取誘拐して、その後凶器を示して、監禁状態が続くというようなことをもし考えますと、それは併合罪とお考えになるのですか。それとも後の方の罪だけでいくというように考えられますか。それともそもそもそんなことは起こり得ないと思われますか。
○伊藤(榮)政府委員 起こり得るか起こり得ないかは事実問題でございますから、法律論として考えれば、最初誘拐をしておいて、途中から刃物を示して監禁する、こういうことになれば併合罪が成立すると思います。
○正森委員 ですから、仮に起こった場合に併合罪で処理し得るんだから、構成要件として略取誘拐を入れない方が、凶器を示しという文言があるから、類型としてとらえるには妥当であるというように考えて、こういう規定にした、こういうように伺っていいですか。
○伊藤(榮)政府委員 二人以上共同して刃物を示して監禁するというような悪質な行為から始まるそういう犯罪類型をつかまえたい、こういうことでございます。
○正森委員 本件規定の仕方では、要求したということで構成要件を充足することになっているわけですね。身のしろ金を目的とした誘拐では、要求する行為をしたというようになっているのですね。あるいは強要罪の場合には、妨害した、こういうようになっているわけです。それぞれに違うわけです。そこで、要求する行為をしたとしないで、要求したというようにした理由について、もうほかの方がお聞きになったかもしれませんし、私もある程度は知っておりますが、念のためにお答えください。
○伊藤(榮)政府委員 観念的な問題としてとらえますと、犯人が自分の主観では要求しておるけれども、だれの耳にも届いていないという場合が観念的には考えられるわけで、そういう場合を処罰しようとすれば、要求する行為をした者というふうに書くか、あるいは要求したときの未遂罪を規定するかすればよろしいわけでございますが、この構成要件で対応しようとしております事件の実態を見ますと、およそ犯人が届かないような方法で要求するということは考え得ない実態がございますので、その実態に即して、ただいま御提案申し上げておるような文言になっておるわけでございます。
○正森委員 したがっていまの答弁を裏返せば、要求する行為をしたじゃなしに、要求したというようになっているので、未遂罪を規定しなかったのである、ただ、未遂罪を規定したのは第三条のみに未遂罪を規定した、こういうぐあいに理解してよろしゅうございますか。
○伊藤(榮)政府委員 そのとおりでございます。
○正森委員 警察官等の逮捕を免れる目的であるが、それが明示ではなしに、黙示もしくは行為自体から逮捕を免れるというように認められる場合には、本法に言う「第三者に対し、義務のない行為をすること又は権利を行わないことを要求したとき」というのに当たるように考えておられるのかどうか。
○伊藤(榮)政府委員 そういう場合にはこの構成要件に当てはまらないと考えております。
○正森委員 そうしますと、たとえばアメリカ連邦刑法の千二百一条では身のしろ金、代償、その他——アザーワイズという言葉を使っておりますが、を目的として誘拐されたものを云々ということで、そのアザーワイズの中には逮捕を免れる目的も含まれるのである、というように解釈されておるようですが、わが国のこの法律はそういう解釈をとらないというように解釈してよろしいですか。
○伊藤(榮)政府委員 単に逮捕を免れるために人質を利用するという場合は当たらないと思います。
○正森委員 それでは重ねて伺いますが、わが国ではよくあることですが、たとえば強盗犯などが他人の家へ入っていって、奥さんを取っつかまえて、警官が寄ってきたときに、寄るな寄るなという程度のことを言うという場合には、本件の構成要件は充足しない、こういうように聞いていいですか。
○伊藤(榮)政府委員 さようでございます。
○正森委員 講学上、たとえば木村教授や大塚教授は、行動の自由を持たない嬰児や幼児の場合には逮捕罪とか監禁罪は成立しないという学説をとっておられるようであります。もしそういう学説を前提といたしますと、幼児に対して凶器を示すというのもおかしなものですけれども、しかしとにもかくにも凶器を持っておったといたしまして、それは内ポケットに入れておるのじゃなしに手に持っておったということで、幼児を連れていって実際上は一カ所に閉じ込めておるというような行為が仮にあって、そして第三者の憂慮に乗じて物事を請求するというようになった場合には、本法を適用なさるということなのか、それとも未成年者云々の別の法条で行われる予定なのか、そこら辺をお聞きしたいと思います。
○伊藤(榮)政府委員 確かに、おっしゃいますように赤ん坊に刃物を示すということは余り意味がないわけなんで、そういうことがあるかどうかは別といたしまして、私どもとしては、現在判例がとっておりますし、かつ通説となっており、行政解釈としてもそういう解釈をとっておりますところの、意思能力の有無にかかわらず監禁罪の客体たり得るという考え方で解釈をすべきものだと思っておりますので、御指摘のような、ちょっとあり得べからざるような話でありますけれども、そういう場合にはこの構成要件に該当することになると思います。
○正森委員 罰則の点について伺いたいと思うわけですけれども、いま法務省側はこれは強要罪の類型に当たるものであるという解釈をとられたと思います。強要罪の場合には、いまの刑法の規定の仕方では三年以下ということになっておるわけですね。ただ手段が「逮捕又は監禁」ですから、その場合には三月以上五年以下という刑がございますけれども、それにいたしましても本刑の場合は第一条が「無期又は五年以上の懲役」ということになっておるのは飛び離れて重いというように思うわけですね。この構成要件自体から見て、なるほど「二人以上共同して、かつ、凶器を示して」というのは悪性である、こういうことなんでしょうけれども、しかしこの構成要件では、すべて過激派が社会的に見て非常に妥当でない要求のためにのみ行うということではないので、そうでない場合もこの構成要件に該当する場合があるわけですから、それを一挙にこういうぐあいに重くしたのはどういうわけですか。
○伊藤(榮)政府委員 第一条におきまして法定刑の上限を無期とし下限を五年というふうにしておるわけでございますが、クアラルンプール事件とかハーグ事件に見られるような犯罪類型に適切に対処する刑罰法規がないということにかんがみて立法されたわけでございますから、刑の上限はおのずからそれらのものにふさわしい刑を盛らざるを得ない。そういたしますと無期懲役という刑が出てくるわけでございますので、それを上限といたしておるわけでございます。 しかしながら過激派に対してしか適用しないという法律ではございませんから、御指摘のように、あるいは思慮浅薄な者が二人組みでちゃちな要求をしたというような場合もあり得るわけでございます。たとえば、やや大がかりではございましたが、先般の長崎のバスジャック事件というようなものも入ってまいります。そういたしますと、法定刑の下限はある程度ゆとりを持ったものにする必要があろう、それで何ほどが必要であろうかということで検討いたしますと、身代金誘拐罪の法定刑の下限が三年である、これをまず横目でにらみまして、さらに強盗罪の法定刑の下限が五年であるというような点を彼此考戴いたしまして、この種の犯罪に対しては下限につきまして強盗罪と同程度の評価をするのが妥当ではないか、そういう考えから五年以上無期まで至るという、比較的幅の広いと言えば広い法定刑を設定しておるわけでございます。
○正森委員 いまの説明は一応の説明にはなっているのですけれども、しかしたとえば、法務省の刑事局付の検事だった、いまは参事官をしておられるかどうかわかりませんが「いわゆる人質犯罪について」という論文を浜さんが「警察研究」に書いているのですね。それなどを見ますと、やはり非常に重いと言えるのじゃないかという気がするのですね。これには、改正刑法の草案では人質による強要の罰則、この基本類型は二年以上の有期懲役、それから傷害を与えた場合には三年以上、死亡させたときは無期もしくは五年以上、こうなっているわけですね。そうしますと、たとえ構成要件が「二人以上共同して、かつ、凶器を示して」となっておるにしても、改正刑法草案についての人質強要罪でも刑が重過ぎるというようなことで必ずしも全員の意見の一致が得られなかったのに、そこで人を死亡させてしまった場合の刑が基本類型になっておるということで、殺した場合は死刑かまたは無期だということになりますと、これは二階級特進で重くなっておる。改正刑法の草案をぴょんと飛び越えて、そしてもう一つ重いものを基本類型にしておるということになると思うのですね。その点はいかがですか。
○伊藤(榮)政府委員 改正刑法草案の三百七条に示されております人質強要罪といいますのは、人質強要についての一般法でございまして、一例を挙げますと、身代金誘拐罪に対する関係では一般法であり、身代金誘拐罪が特別法の関係になる、こういう関係になるわけでございますが、今回御提案しております第一条は、身のしろ金誘拐の特別規定となる場合もある、こういう関係でございまして、改正刑法草案の三百七条の法定刑よりも身代金誘拐罪の法定刑は重く、それよりも今回御提案しております第一条はなお重かるべきである、こういう考え方が基本にあるわけでございます。
○正森委員 伊藤さんはなかなかおつむのいい方で、重かるべしの方ばかり言われますが、軽かるべしの方は言われないのですね。なるほど人質強要罪は一般法でやる、それに対して身代金誘拐罪は特別類型でやり、そのまた特別類型がこの法律でやる、こうおっしゃいますが、しかしこの法律で包含される罪の中には、あるいは犯罪事実の中には、身代金誘拐罪に至らないような、そういう軽かるべしの方もあるわけです。ところが、そういう軽かるべしの方は考えないで、五年以上にするということになっているわけでしょう。ですから、重い方はある程度重くしなければならぬ場合があるというのは、これはわからぬでもない。しかし、軽かるべしの方は少しも考慮をされていないで、二階級特進でやるということになりますと、これが過激派の、しかも大使館を襲撃するとか、そういうものだけに、しかもピストル等を持参してというようなものであるということであればこれは一定の妥当性を持っていると思うのですけれども、構成要件自体からは必ずしもそうなっていないわけですから、そうしますと、これは非常な厳罰を処しておるということで、不当に重過ぎるというように言える点もあるのじゃないか。しかも、結果として人を死にいたすとか殺したという場合には、それはそれで別に加重類型が設けられているわけですから、そこら辺についていかがお考えですか。
○伊藤(榮)政府委員 人質強要の改正刑法草案三百七条の立場は全くの一般類型でございますから、たった一人の人を一人の人間がかどわかして、そしてわりあい小さい要求をしたという場合も当然あり得るわけでございまして、それに対処できるような法定刑の下限が一応考えられておると思います。ところが、この法案の第一条のものは、二人以上、凶器を示して行うということが前提となっておりますので、そういう犯罪というものは多くの場合、被害者の数も複数になるわけでございますし、また集団犯罪として凶器を示して行うというところに社会的な悪性も顕著に認められるわけでありますし、また、犯される犯罪の結果、あるいは要求の内容等も、一般的に改正刑法草案三百七条の立場よりは悪質な罪になってくるわけでございまして、その意味で、法定刑の下限の五年というのはおおむね妥当な線ではないかと思います。
○正森委員 いまのような答弁がありましたから、私は次の質問に移る前に構成要件の問題を少し伺いたいと思いますけれども、その場合に非常に心配なのは「二人以上共同して」ということになりますと、これは二人というのは複数の最小限ですから、二人でないものはもう一人しかないわけですから、数人共同してというような別の法律での規定と違うわけですね。「二人以上共同して」ということになると、一人以外は全部もう二人以上になるわけで、これは仮に未成年者であっても、十六、七歳の子供を使っても、やはり「二人以上共同して」ということになるわけですね。ですから、その意味では、人数の上では、一人以外の中では一番最小限のグループで足りるということになっている。 それで、「凶器を示して」のこの「凶器」というのは、これはいままでの御答弁では、性質上の凶器ではなしに用法上の凶器だということになっているわけでしょう。また、この「凶器」というのは、たとえば銃砲刀剣類所持等取締法違反に言う銃砲刀剣類とか、あるいは爆発物取締罰則に言うところの爆発物とか、あるいは火炎びん等に言う火炎びんとか、そういうぐあいに幾つかに限定されておりますと、これはこういうものを使ってやるというのは、過激派の学生かあるいは暴力団か、そういうものでないといけないし、そうなると、非常に事案が重大であるから刑を重くするということについても大方の納得が得られる場合があると思うのですね。しかし「凶器を示して」の「凶器」が用法上の凶器であるということになれば、これはもちろん過激派もやるでしょうけれども、それ以外にもこれに該当する場合はあり得るわけで、そういうものを一括して基本類型が無期または五年以上の懲役であるということは、やはり考えてみる必要があるのじゃないですか。
○伊藤(榮)政府委員 まず最初にお断りしておきますが、数人という場合には、二人も含むというのが大審院以来の確立した判例でございまして、しからば三人にするか五人にするかというような議論をすれば格別、一応単数の者が行う犯罪と複数の者が行う犯罪とでは、その罪質、その結果において質的な差があるというのが従来からの刑罰法規の定め方でございますので、そういう考え方をまずとっておるということを申し上げておきます。 それから「凶器」と申しますのは、確かに御指摘のように、用法上の凶器をも含むという概念でございます。したがいまして、ピストルとか爆弾とかそういうものでない、いわゆる用法上の凶器を用いる場合もこの構成要件に該当してくる場合があるわけでございます。したがいまして、そういう点も考慮いたしまして、法定刑の下限を五年というふうに下げてきておるわけでございます。その点、ハイジャック人質強要の場合、下限を十年といたしましたのと比較いたしまして、相当ゆとりを持った法定刑が定めてある、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
○正森委員 いまの答弁ですけれども、ハイジャックの場合は、これは航空機という、飛んでいるときにおかしなことをやられたら全部墜落して死んでしまうというような特別の類型、構成要件が規定の中にありますから、私たちも、最下限が十年でありましても、飛行機を暴行または脅迫というようなことで乗っ取って、そしてその運航を実力で支配するというような場合には、これはきわめて重大な刑をもって臨むというのはやむを得ないという大方の理解が得られると思うのですね。しかし本件の構成要件というのは、なるほど「二人以上共同して」とか「かつ、凶器を示して」というのがありますけれども、これは航空機でないことは一見明らかなんです。別に法律がありますからね。そうしますと、それじゃ外国公館とか、あるいは太平洋の中の船とかいうものだけかというと、そうではないので、陸上の、何でもない、ありふれたところももちろん含むわけですね。そうすると、それをなお重くするというのは、これは「二人以上共同して」というのと「凶器を示して」という二つの構成要件があるだけである。こうなりますと、われわれは「凶器を示して」というところでやはり一定のしぼりをかけておく必要があるのではないか。もし場所的な、航空機とかそういう特定あるいは限定的な要素があるならこれはまた別でございますが、そうでないところに「凶器」というのを非常に限定的に解釈する必要があるのじゃないか、こう思うわけですね。 私がなぜこういうことをお話しするかというと、刑事局長には釈迦に説法ですけれども、よく御承知のように「凶器」という中には、用法上の凶器ということになりますと、いろいろ幅が広いですね。たとえば氷割りに使用するアイスピック、アイスピックというのは使い方によっては危険ですけれども、そのほかに玉突き棒とか洋がさの心棒とかあるいは野球のバットとか、それからかまの柄とかそういうようなものも用法上の凶器である、プラカードの柄、これは言わずもがな、これは闘争の手段にするという形を示した段階においてはこれはもう凶器である、こうなっているわけです。そうしますと、野球のバットだとかかまの柄とか、あるいは玉突き棒とか洋がさなんというのは、これはそこら辺に幾らでもあるありふれたものなのです。しかも、そういうものも、殴りようによっては人に重傷を与えるという場合はありますけれども、しかし、こういうもので逮捕監禁して、そして第三者に対して一定の要求をするという場合には、第三者の憂慮もまた違ってくると思うのですね。第三者が、人質が常時ピストルを突きつけられておるとか、日本刀を突きつけられて、おるとかいうのではなしに、持っておるのが玉突き棒であるということがわかっておれば、これは玉突き棒でも突きどころが悪ければどうかなるというようには思います。相手は洋がさを持っておるぞ、洋がさも突きようによっては、荒木又右衛門ぐらいが突けば、心臓一突き、死んでしまうかもしらぬけれども、まずまず洋がさなら、しばらくはいろいろ警察、検察庁においても手段をとる可能性があるということで、対応の仕方も違ってくる。あるいは要求を貫徹するための迫力も違ってくるということは事実であろうと思うんですね。ですからそういう場合には、やはり「凶器」という点についてしぼりをかけるということは、刑を無期または五年以上でなしに、刑法改正草案のように二年以上の有期懲役とか、あるいは傷害の結果をいたしたときは三年以上とか、そういうものであれば、これはまた用法上の凶器を含むということもいろいろ問題になるかもしれませんけれども、主としてその他ジャックを考えて「無期又は五年以上」というように考えるならば、五年以上というのは非常に重い刑なんですから、だからやはり「凶器を示して」という「凶器」というのは一定のしぼりをかける必要があるのではないかというように思うのです。
○伊藤(榮)政府委員 まず最初に、これはまた釈迦に説法でございますが、用法上の凶器と申しますのは、玉突き棒とかこうもりがさの柄がそこに転がっておるだけでは、あるいは持っておるだけでは凶器とならないわけでございまして、人の身体生命に対して危害を加えるような形で用いられたときに初めて用法上の凶器になるわけでございますので、その点をまず申し上げるわけでございますが、武器等を用いる場合は、もちろんそういう人を殺傷するに足りるような器具をそういう目的のために使用して人を逮捕監禁しておるという状態、これを強盗罪の構成要件にいいます人の反抗を抑圧してという構成要件と対比いたします。さらにまことに安危のほどがわからない人質の生命身体の安全を憂慮する第三者、これもまた意思の自由を奪われてしまうわけでございまして、両面にわたって、いわば強盗罪の構成要件的に言いますと、反抗を抑圧された状態に陥ってしまう、その結果、無法な要求に何とか応じなければならないのではないかというふうな配慮をせざるを得なくなる、こういうような状態を客観的に見ますと、強盗罪の刑というものの下限、それからこの罪の下限というものは、やはり差等をつけて考えるということが一般的におかしいのではないか、こういうふうにも考えられるわけでございまして、そういう意味において、この二人以上、凶器を示して人を逮捕監禁した上で人質強要行為に出るというこの類型からいたしますと、下限を五年よりもさらに下げるということは相当でない、かように思っております。
○正森委員 法務省のいまの御答弁はもっともらしく聞こえるのですけれども、しかしこれは凶器を用いてといいますけれども、本当に用いてしまうわけではないのでしょう、示すわけなんですから。用いてしまったら、これはもう傷害の結果が出ておるか、あるいは死んでしまっておるかということになるわけで、それで、むしろそういう意味では用いないで、それで示す、こういうことですから、だからバットを示してそれでこの部屋にじっとしておらなければぶん殴るよ、これで示したことになるでしょう。頭を一つごつんとぶん殴れば、これは相当防備堅固な頭ならいざ知らず、普通はこぶの一つぐらいできますからね。そうすると、もう加重類型の方にいってしまうわけです。だから、基本類型としては「凶器を示し」というその「凶器」というのは、やはり示しただけで畏怖させるようなものでなければならないのじゃないか。私が言いますのは、たとえば兇器準備集合罪に言う凶器とか、それから暴力行為等処罰ニ関スル法律違反の凶器とか、よく知りませんが、二つ、三つあると思いますが、そういう凶器というのは、兇器準備集合罪などというのは、これはそのことでこれから非常な暴力団同士の乱闘あるいは過激派同士の乱闘というものが行われようとする前に、集合した段階で取り押さえようということですから、この兇器準備集合罪の凶器というのを用法上の凶器ということで考えていくということも一定の理由はあると思うのですね。しかし、これはそうではなしに、人質による強要罪で、示しただけで一定の畏怖を与える、そして逮捕監禁の事実を与えるということでしょう。そしてそれは非常に飛び抜けて「無期又は五年以上の懲役」ということで、普通の脅迫罪とか強要罪とかあるいは逮捕監禁よりも、二階級特進という言葉を使いますが、非常に重いということになりますと、やはり凶器というものは、いまお話になったような、用いられるわけですからと言いましても、本当に用いるのでなしに、示して用いるわけですからね。
○伊藤(榮)政府委員 バットを示しただけでは凶器を示したことにはならないわけでありまして、そのバットを凶器として使用する状態において示すことによって用法上の凶器になるわけでありますから、ただ慢然、ごらんなさいと言ってバットを示すようなことでは凶器を示したことにはならないわけで、たとえばバットでぶん殴るぞとか、これで殴り殺すぞというようなことで示せば、これは相当な危険性がもちろん客観的にあるわけでありまして、何かただバットを転がしておけば「凶器を示し」ということになるというようなことでごさいましたら——まさかそういうふうにはお考えになっておらぬと思いますが、用法上の凶器というものの性質についてのまた別個の御理解に基づくものではないかという気がするわけであります。
○正森委員 いや、幾ら私でも、バットがそこら辺に落ちておるからこれに該当する、そんなばかなことは言わないので、それなら王選手や皆、いつでもこれをやっている可能性があるんで、そんなばかなことは言いませんけれども、しかしバットで実際にぶん殴らなくても、いま言ったような、バットであなた殺すぞとか、あるいはぶん殴るぞと言わなくても、しかし判断によっては、何も言わなくても、バットがあってそれを振り回しておったとかいうようなことで逃げるのがちゅうちょされたというような場合は、やはり「凶器を示し」になるわけでしょう。ですから私はこの「凶器」というのは、やはり一定の——用法上の凶器というのでは幅が広過ぎるのではないか。それは法定刑が重いがゆえによけいしぼりをかける必要があるのではないか。ですから「凶器を示して」という方を用法上の凶器とするなら、「無期又は五年以上」という下限はやはり少なくとも下げる必要がある。もし下限を下げないで五年以上というので維持するなら「凶器を示して」の「凶器」というのにしぼりをかける必要があるという気がするので、あえて申し上げておるわけです。 なお、念のために伺っておきますが、あなた方の出しておられる「凶器」というのと、それから軽犯罪法の一条二項に一定の規定がございますね、これは一部の学説では、全く同じことを言うのであるという説があるようですが、法務省はどういう見解をとっていますか。
○伊藤(榮)政府委員 同じに解釈しております。
○正森委員 同じに解釈しておるということになりますと、そうするとやはり相当幅広く解釈しておられるということになると思うのですね。ですから軽犯罪法一条二項のあそこで規定されておる規定の仕方というのは、やはり相当長い竹ざおだとかそういうようなものもあれに入った例があるということを聞いておりますから、そういう点についていよいよ問題があるという点を指摘しておきたい、こう思うわけです。 そこで、そういう点を指摘しておいた上で、前の浜さんの論文に戻りたいと思いますが、浜さんはこう言っているのですね。念のために申しますと、下巻の方の六十五ページから六十六ページでありますが、これは第五小委員会でA案、B案あるいは別案というようにあったのに基づいて言っておられるのですが「A案においては、本罪が強要罪の特別類型であることに照らし、強要罪の法定刑とあまりかけはなれた刑を規定することはできないが、すでにみたように本罪が悪質かつ卑劣な犯罪であることにかんがみ、これにふさわしい重い刑を定めるべきであるということ、解放軽減の規定を設ける以上、その効果を期するためには基本類型をある程度重くする必要があること、本罪をみのしろ金目的誘拐罪と対比すると、みのしろ金目的誘拐の場合には、被拐取者の生命・身体に対する危険が著しく大きく、みのしろ金を要求される近親等の憂慮心痛も大きいなどの点で本罪とはいささか異なる事情があることなどを考慮したうえ、結局、基本類型の刑を二年以上の有期懲役、致傷罪の刑を三年以上の有期懲役、致死罪の刑を無期又は五年以上の懲役とするのが相当であると考えられたのである。」こうなっているのですね。これはむしろ論文の体裁としては、浜局付検事の個人見解でありましょうが、これを書かれるについては恐らく法務省の中での一定の見解をあらわしておる、こういうように思うのですね。そうだとしますと、当時のこの浜島付検事、現在参事官ですね、参事官に地位が上がられたから見解も局長に近く変わってきたかどうか知りませんが、当時少なくとも局付検事であったときには、その解放軽減の規定をするのに、そもそものが余り軽過ぎたのでは、これは無事に解放すれば軽くしてやるなんと言っても余り効果がないのではないか、解放軽減があるからもとのは少々重くしておるのだ、こういうことなんですね。ところが本法には解放軽減の規定がないわけでしょう。そうすると、いよいよ重くするというのは刑法改正草案と比べて余りつろくがとれない。つろくがとれないというのは関西の言葉ですが、つまり均衡がとれないという意味ですね。そういう感を深くするわけです。 それから、身のしろ金請求との対比を言われましたが、ここでの浜当時局付検事の見解は、身のしろ金目的の誘拐というのは、改正刑法の一般的な第三者強要に比べて身のしろ金誘拐の方がずっと悪質なのであるという見解をとっておられますね。その点は、今度のは刑法改正のと違って「二人以上共同して」というのと「凶器を示して」というのが入っておるから同日には論じられないという論点も出てくるではあろうと思いますけれども、しかし昭和四十七年一月十日号「警察研究」ですが、当時の浜検事の見解というのは一定の合理性を持っておると思うのですね。私がいま指摘した点について御意見はいかがですか。
○伊藤(榮)政府委員 まず事実関係について一言申し上げておきますが、現在浜検事は東京地検の刑事部副部長をいたしております。 彼が書きましたものはもとより彼の私見でございますが、法制審議会第五小委員会における審議経過を客観的に紹介しておるわけでありまして、その限りにおいて第五小委員会の当時の御議論というものはわりあい正確に反映されておるのではないかと思います。ただ、当時の時点におきましては人質犯罪というものが現在とは全く様相を異にしておった時代でございまして、正確な意味の人質強要事件ではないかもしれませんが、金嬉老という人物が寸又峡に立てこもったとかいう程度の事件あるいは女子高校生が人質にとられたような事件とか、そういうような事件が続発した時期でございまして、そういう事態にかんがみて人質強要罪というものを新たにつくるべきではないか、こういう議論が行われておったわけでございます。したがいまして、そこで議論されました場合の各委員の頭の中にありましたのは、身のしろ金誘拐、赤ん坊を誘拐して憂慮に乗じて金を取るというような行為に至らないような類型が主として頭の中にあって議論された、こういうふうに承知しておるわけでございまして、そういう意味で、今日ただいま最近における異常事態に対処しようとしておりますこの法案の考え方とは時点を異にする関係上、若干のニュアンスが違っておるように思います。
○正森委員 時代が変われば見解が違うのであるという御意見のようですけれども、しかし本法に解放軽減の規定がないというのは事実であります。浜検事が当時の第五小委員会の見解をある程度反映して、解放軽減の規定を設ける以上は基本類型がある程度重いのもやむを得ない、こういう書き方なんですね。 私が承知しておりますところでは、同僚委員の質問に対して解放軽減を規定しなかったのだという点についての答弁があったようですけれども、私は大臣に長らくお待ちいただいておりますから瀬戸山法務大臣に一言質問をさせていただきたい、こう思うのですが、大臣がお読みになりました趣旨説明、多分お読みになったと思うのですが、その中にはこう書いてあるのです。途中から読みます。「この種事犯の根絶を図る必要のあることが痛感されるのでありますが、不幸にして再度事犯の発生をみた場合には、国家自らが不退転の決意を持ってこれに対処し、人質の生命の安全を図りつつ、種々方策を講じて犯人に反省と悔悟の機会を与え、その要求を断念させた上で人質を解放させることがこの種事犯の再発防止の要ていであることを指摘せざるを得ないのであります。」こういう表現があるのです。そうしますと、これは、犯人に反省と悔悟の機会を種々方策を講じて行うということが人質の安全を保つ上でも大事だということを一般的な形で言っておられるわけですね。そういたしますと、犯人に反省、悔悟の機会を与え人質を安全に取り戻すという点からいいまして、解放軽減の規定を置いておいて、そして無事に解放した場合には刑も軽くなるのだということを内外に明らかにしておくということは、この説明理由から言っても妥当なことであるというように思いますが、局長は法理技術的にお答えになりますから、大臣にひとつ政治的な見解をちょっと答弁していただきたいと思います。
○伊藤(榮)政府委員 大臣にお答えをいただきます前に、ただいまはしなくも仰せいただきました技術的な点を一、二申し上げておきます。 身代金誘拐罪をつくりますときに特殊な刑事政策的な配慮から、たとえば赤ん坊の行方が全然わからない状態に置いておいて不法な身のしろ金の要求をするという場合の赤ん坊の行方に対する不安、こういうものは非常に強いわけでございまして、身のしろ金を払ってもとにかく赤ん坊だけは無事に返してくれという特別な刑事政策的な配慮から解放減軽規定を置いたわけでございます。ところが、その身代金誘拐罪の一般類型としての人質強要罪、これをつくることになりますと、加重類型で解放減軽があるのに一般類型に解放減軽規定がないというのは権衡を失するという問題が一つあるわけでございます。 また、法制審議会の第五小委員会で人質強要罪が議論されましたころの人質犯罪と申しますのは、先ほど申しましたような金嬉老事件とかそういったような事件でございましたけれども、最近におけるクアラルンプール事件等をごらんいただけばおわかりのように、人質を解放するにしても大変遠くまで連れていって、そこで置き去りにするという形でやっと解放するというような形態が顕著でございまして、当時とは全く人質の取り方、その取り扱いが異なっておるという点を、まず考え方を、私どもが決めます基本的な前提となりました事実関係として御説明申し上げておきます。
○正森委員 瀬戸山法務大臣にお答えいただくのも結構ですけれども、どうやらいまの伊藤刑事局長の答弁は瀬戸山法務大臣のお答えになる前にその応援演説のきらいもあるようですから、私もそれに対してやはり一定の見解を述べて、それらをお聞きいただいた上で公正中立な瀬戸山法務大臣の御意見を承りたいというように思いますので、大臣よろしいですか、私がちょっと一言申し上げても。 確かにクアラルンプール事件その他で外へ連れていってから解放するというような例があるというように言われましたが、しかし当時の浜局付検事などがここに資料として載せておられるもの、あるいはその他の文献をちょっと持ってまいりましたけれども、解放軽減にはそれなりの要件を付せればいいのじゃないですか。その場合には解放する場所がどうであるとか、あるいは身体の安全が必ず保証されておるときとか、あるいは、要求して取るものだけを取って解放したのじゃこれはあたりまえの話ですから、要求して取らない前に解放するとか、一定の要件をつけるということをした上で、なおかつそういうぐあいに悔悟の情を示したら解放軽減するという考えをとるということは、私が繰り返し言いますように、この犯行を犯す者が確信犯であって、目的を遂げなければ絶対に解放しないという場合だけでなしに、規定の仕方自体は、過激派以外のいろいろな人であっても、たまたま思慮の足りなさからこういう犯行を犯したという者も入るわけですから、そして、そういう者にとってこそ解放軽減の規定というのは一定の意味を持つわけですから、そういう点を考慮して大臣に御答弁を願いたいと思います。
○瀬戸山国務大臣 私どもの立場は、応援演説じゃなくて先ほど刑事局長から申し上げたような事情で、解放軽減の規定はこの際は必要でなかろう、こういう立場であります。いま正森委員の言われた考え方も一つの考え方だと思いまするが、現状の実態の事案を見まするとそこまでする必要はない、こういう考えでやっておるわけでございます。
○正森委員 私は、大臣に政治的にお話を申し上げたいのですが、私どもも、この法案に該当するものが過激派のみであり、あるいは非常に悪質な暴力団のみであり、そしてその要求が、たとえばこの間のクアラルンプール事件その他のように、国家等に拘束されておる犯人の釈放等を要求するとか、そういうものである場合なら、この構成要件で解放軽減がなくてもこれはあれですけれども、それ以外のものも含まれるような構成要件になっておるわけです。ですから、そういう点については、刑法改正草案には解放軽減の規定が詳細に入っておるわけですから、刑法改正草案にありますような解放軽減の規定を入れておく。それを抜いてしまって、今度の法律というのは一番きついところだけをえり分けて、二階級特進しあるいは三階級特進して、そしてそのエッセンスだけを規定しておるという危倶を非常に抱くのです。法律として人質強要罪の類型が必ずしも十分でなかったから規定する必要があり得るということは認めますけれども、そういう気がするわけですが、再度、人質強要罪についての、刑法改正草案についてはそういうものが全部あったのに、その中の一番重いところだけをピックアップしているという点について——過激派のあんなことがあるからと言われるけれども、しかし構成要件から、過激派だけに適用するとは書いてないわけですからね。
○瀬戸山国務大臣 先ほど申し上げましたように、正森さんの御意見も一つの御意見として承っておるわけでございますが、実は最近の特にハイジャック事件等は、御承知のようにまことに深刻な場面が出でおるわけでございます。でありますから、死刑論の話もたびたびここでも出ますが、あの当時も、こういう犯罪に対しては、やはり要求した段階で死刑に処すべき価値のある犯罪だという意見も国会でも相当出たわけでございます。われわれも、そういう御意見は御意見としていろいろ検討いたしました。しかし、これを要求した段階で死刑となると、実際問題としてそういうことがあるかどうかわかりませんけれども、しかし人間でございますから、これは最後のぎりぎりの死刑までするということは、やはり反省の機会を与える一つの材料としてでも、その段階では死刑にすべきでない。死刑に関する国際情勢といいますか、世界的な考え方等も入っておるわけでございますが、やはり人命を何とかして助けたいというのが大きなねらいでありますから、途中まではそうあっても、人命を殺さないようなことが一番の願いでございます。でありますから、要求しただけでは、殺さなければ死刑になるようなことはないんだ、こういうことで死刑は外した、これは解放減軽に入るかどうかは別問題として、そこまで考えて立法をしたということは御理解いただきたいと思います。
○正森委員 私がいま申し上げたようなことを言いますのは、過激派だけに適用があるのではなしに、やはり構成要件を充足すればそれ以外のいろいろな、思慮の若干足りない結果起こした人にも、これほど厳罰をもって臨まなくてもいい人にも適用があるというおそれがあるからであります。これはよく引用されておりますから申し上げるまでもないのですが、暴力行為等処罰に関する法律が大正十五年に提案され、成立しましたときの江木国務大臣が「それから労働なり、小作なり、其他水平運動などを、此法律に依って取締る意思があるかどうか、是は全くさう云ふ意思を持って居らぬのであります」云々、「此法律の目的として、労働運動であるとか、或は小作運動であるとか若くは水平運動であるとか云ふが如きものを取締ると云ふ目的は、毛頭持って居らぬのであります」というように、たしか本会議だったと思いますが、二遍にわたって同じ発言をしておられるわけです。ところが、それにもかかわらず、暴力行為等処罰に関する法律違反の事案を見ますと、暴力団等だけでなしに、一般の大衆団体に非常に適用されたケースがあるということでございますので念のために聞いておる、こういうことになるわけです。 私がいま江木さんの発言を読みましたが、大臣は、暴力行為等処罰に関する法律が、暴力団あるいはそれに類するものだけでなしに、一般小作争議や労働運動に適用されたということは御存じですか。
○瀬戸山国務大臣 詳細なことを存じません。
○正森委員 法務省……。
○伊藤(榮)政府委員 暴力行為等処罰法が労働運動あるいは農民運動に関連して生じた暴力事犯に対して戦前において適用されたということは承知いたしております。戦後は、御承知のように労働基本権が憲法上保障されまして、労働運動に不当な干渉をするということはもちろん政府全体として努めて避けておるわけでございますが、労働争議の争議行為そのものではなくて、その争議行為をめぐって不当な実力行使による違法行為、こういうものが行われました場合には、時に暴力行為等処罰法による共同暴行とか、そういう規定が適用された例が戦後も存在するということは承知しております。
○正森委員 警察庁、警察庁の「犯罪統計書」がございますね。「犯罪統計書」でおよその傾向を言ってください。
○小池説明員 暴力行為等処罰に関する法律で検挙した検挙件数、検挙人員の四十一年から五十二年までの傾向を申し上げますと、四十一年は、総件数七千二百八十九件、人員一万四千四百七十九人でございまして、それが徐々に減少してまいりまして、五十二年では、検挙件数四千六百八十二件、人員で一万八百八十人、こんな状況になっています。
○正森委員 そのうち暴力団事件の件数と人員は幾らですか。
○小池説明員 お答えいたします。 四十一年中総件数七千二百八十九件のうち、いわゆる暴力団事件の件数は二千八百九十一件、人員で言いますと、一万四千四百七十九人の総件数に対しまして、暴力団関係が四千七十一人でございます。それから最近の五十二年では、総件数四千六百八十二件に対しまして、暴力団事件が二千五百十六件、それから人員にして、一万八百八十人の総件数に対して四千二百五十二人、こういう状況でございます。
○正森委員 私はここに少し古い犯罪統計書も持っておりますが、たとえば昭和三十八年というのをとってみますと、総件数が四千百十五件で、暴力団事件が二千六十三件、人員は九千二百四十二人で、暴力団事件は三千六百四十三人ということで、ここに全部統計がありますけれども、読み上げると時間が長くかかりますから全部省略します。しかし、こういうのを見ていきますと、大体事件の多い少ないはございましても、件数でほぼ二分の一が暴力団関係者である、人員で二分の一以下、ときには三、四割ぐらいが暴力団関係者であるということは統計上言えると思うのですね。ということは、それ以外の半数あるいは六割ぐらいは、初めの江木さんの国会での答弁にもかかわらず、暴力団関係者以外に適用されておるということになるわけです。ですから、本件も過激派の取り締まりに適用するということでございますけれども、しかし実際問題としては、過激派に適用されるだけでなしに、特に第一条については、それ以外の若干の思慮に欠けた、そして構成要件該当事実に触れるような行為をした国民に適用される可能性は依然として残っておる、こう思うのですね。ですから、局長に伺いますが、あなた方は本法を提出される提案理由には過激派対策ということを非常に強調しておられますけれども、しかし法律はできた以上はひとり歩きするわけですから、できてしまった以上は、構成要件に該当する限りは、それが過激派であろうと何人であろうと適用するというように思っておられるのじゃないですか。それともかつての江木さんのように、そういうことはございません、法律制定の段階だけでも過激派にだけ適用いたしますというように答弁しますか。
○伊藤(榮)政府委員 刑罰法令でありますから、構成要件に該当する場合には適用がございます。たとえば、過激派でない者が犯しました最近の事象をとってみますと、長崎のいわゆるバスジャック事件、これは明らかに構成要件に該当すると認められますので、あのような事件が今後あればこれが適用になるものと思います。
○正森委員 長崎のバスジャック事件だけでなしに、およそ構成要件に該当する場合にはやはり適用するという考えでしょう、言うまでもないことですけれども。
○伊藤(榮)政府委員 適用するとかなんとかいうことよりも、構成要件に該当する行為があればこの条文によって処罰をされる、こういうことでございます。
○正森委員 大臣、時間でございますから、御退席いただく前に一言だけ伺っておきたいと思うのです。 いま約一時間にわたっていろいろ伺いましたのは、いま刑事局長がいみじくもそう答えられたように、刑罰法規である以上は、構成要件に該当する場合には該当するものとして処置する、こういうことに当然ならざるを得ないわけで、幾ら法案の提案説明のときには過激派あるいはこれに類する凶暴な事犯というように言っていましても、問題によっては二人以上共同して凶器を示して、その凶器は用法上の凶器で、わりとちゃちなものもある、要求自体も歯牙にもかけるに足らぬとは言わぬにしても、非常に子供じみた要求もあるという場合でも、この法律は適用になるのですね。そうだとすると、やはり刑が一般類型として無期もしくは五年以上の懲役であり、解放減軽の規定もないというようなことは、政治的には問題があるというように私どもとしては考えざるを得ないのですね。これについて何らかの形でしぼりをかけられるお気持ちはございませんか。
○瀬戸山国務大臣 いかがでしょうか、私が承知しておりませんでしたけれども、先ほどずっと以前の江木司法大臣の国会での答弁を引用されました。暴力行為等処罰の法律ができて、これはそういうもののねらいでやるわけであります。したがって労働争議その他に適用すべきものではない、これはあたりまえのことでございます。ただし、労働争議であろうがほかのことであろうが、その法律に適用される、これは労働争議以外のことでありますから、適用されるような事態が起これば、法律としては取り締まらなければならぬ、こういうことになるのじゃないかと思います。 この法律でもそうでございまして、多くの事犯は過激派等によって起こる場合がある、これに対して対策を立てなければならぬ、対応しなければならぬ、そのための法律でありますが、いわゆる世間で言う過激派以外でも、これと同じような犯罪が起これば、これは取り締まらざるを得ないわけで、これは過激派以外だからいいのだというわけにいかぬ。ねらいは多くの場合、過激派がああいうことをやっておるから、これに対しては国家治安上といいますか、国民生活上これに対応策を講じなければならないが、その以外はこういうことをやってもいいのだというわけにはいかぬのじゃないでしょうか。
○正森委員 私の質問を必ずしも正確に御理解でないと思うのですが、私はいままで一度もこういうことをやってもいいというようなことを言ったことはないので、そういう聞き方をされておると困るのです。ただ、構成要件自体としては、過激派だけでなしに、思慮の浅いことからつい犯してしまったというものも入るのだから、そういうものについて「凶器」というところを厳重にするとか、あるいは構成要件の下限をもう少し考えるとか、そういう配慮が必要ではないかと言っているので、そういうことをやってもいいというようなことは一遍も言っていないのです。そんな考え違いをしてもらっては困る。
○瀬戸山国務大臣 やってもいいとおっしゃったとは言わぬのですけれども、そのほかに適用してはならぬようなことではないということでございます。 ただ、いまおっしゃったように、これはいつの場合でも同じでありますが、同じ形の犯罪でも、よく調べてみると、これは思慮が浅かったとか、えらいおかしなことだというような場合には、これは酌量減軽に応ずる一般刑法の原則があるわけでございますから、形が同じだから形が同じように罰しなければならぬということではないのじゃないかと思います。
○正森委員 これ以上論争はしませんけれども、幾ら酌量減軽をしようにも、下限が決まっておれば、酌量減軽では一回できる場合、二回できる場合がありまして、一定以上に重ければ幾ら下げようと思ってもそれ以上は下げられないという限度があるわけです。爆発物取締罰則の場合は七年以上の有期懲役、こうなっておれば、一度減軽しましても三年半で、その場合には、事情から言ってどれだけ執行猶予をつけようと思ってもつけられない、こういうことにもなり得るわけです。ですから、その点についての問題点を指摘しておる、こういうわけであります。 そこで、警察庁に伺いたいと思いますが、過激派による人質強要の犯人で、現在までにつかまったのがおりますか。
○福井説明員 まず、四十五年三月三十一日の日航機「よど号」ハイジャック事件でございますが、これの実行犯九人は、委員御承知のように北朝鮮へ行っております。ただ、これの謀議等に参画しました人物七人を逮捕しております。それから、これの前段の、たとえば資金を得るための強盗予備とか犯人蔵匿等で六人を検挙しております。 それから、四十七年の二月十九日から二十八日にかけての浅間山荘の事件でございますが、これは二月の七日に榛名湖畔で不審な車を見つけたのが発端で一連の事件を検挙するわけでございますが、浅間山荘に十九日から二十八日の間、管理人の細君を人質にして立てこもった犯人五人を含めまして十七人を検挙しております。これは明示の要求行為はございませんけれども、やはり安全に自分たちをどこかに逃亡させろといった黙示の要求は含まれているだろう、こういう事犯でございます。 それから、四十八年の七月の二十日にパリ発東京行きの日航機が五人の犯人に乗っ取られております。これは残念ながら検挙者は出しておりませんけれども、この五人の中に一人日本人が含まれておるということで捜査をやっておりますが、日本赤軍の中のいわゆるコマンドとしてかなり名のある人物ではないかということで捜査をやっておる事犯でございます。 それから、四十九年の一月三十一日のシンガポール事件でございますが、シンガポールにありますシェルの石油製油所を四人の犯人が砲撃して、フェリーボートに立てこもって、このボートに乗っておりました五人の乗員を人質にして海外へ逃亡するための飛行機を要求する等した事犯でございますが、この四人の犯人の中には日本人が二人含まれておるということで捜査をしております。 それから、この事件に関連をしまして、まだこのシンガポール事件が進行中の時点で、二月の六日に在クウェートの日本大使館が五人の犯人に占拠をされる事犯がございました。PFLPと名のっているゲリラでございますが、一連の事件について捜査をやっておる、こういうことでございます。 それから、四十九年の九月十三日にオランダにありますフランス大使館を三人の日本人ゲリラが占拠をしまして、当時フランスに拘禁されておりました日本赤軍の古家優と名のる人物の解放を要求した事犯でございますが、これでは、その後にストックホルム事件で逮捕しました西川純の調べ等を通じまして三人の犯人を割り出しております。さらにこの実行犯以外に謀議に参画した重信房子、吉村和江、これも国際手配に付しておる、こういうのがございます。 それから五十年の八月四日に例のクアラルンプール事件がございましたけれども、これは日本赤軍と思われる五人の犯人が実行したわけでございます。これでは、その後の捜査で奥平純三を逮捕したわけでございますが、残念ながら昨年の九月二十八日の日航機乗っ取り事件で国外へ連れ去られた、こういうことでございます。 それから、一番新しい事件が昨年の九月二十八日の日航機乗っ取り事件でございますけれども、これでは実行犯五人のうち四人を割り出しまして国際手配に付しておる、こういう状況でございます。
○正森委員 この種事犯は捜査、逮捕が非常に困難であるということはわかりますが、いま御説明がありましたのを聞いてみましても、一部国内での共謀した者等を逮捕されたというのは非常に御苦労であったと思いますが、せっかくとっつかまえて起訴したのをまた要求されて釈放したり、実際上、ハイジャック等をやって人質で重大な要求をした者を国内で現実に処罰してしまうということができにくい状態であるということは非常に遺憾に思うのですね。 それで、時間が大分たちましたのでごく簡単にで結構ですが、この間の成田空港の管制塔の事件について、管制塔の十六階には約五人の管制官がいたのですね。あれが屋上へ逃げて、しかも屋上まで追跡してこなかったからよかったのですが、追跡してくればあの五人は人質になり得る可能性は否定できなかったのではないのですか。
○福井説明員 これは現在捜査中でございますので、事実関係の詰めを残念ながら正確に時間を追って申し上げかねるわけでございますけれども、大体例のマンホールから出てきた犯人らが入っていった、一時ごろというふうに申し上げておきますが、これから始まるわけでございます。犯人が正門の入口から入りまして、エレベーターが三つございますが、一番左のエレベーターは三階までしか参りません。三階から十三階まで直行でございますけれども、どう入ってすぐにあったエレベーターに乗ったという状況がいままでの調べでは事実のようでございますから、そうしますと、右側か真ん中のエレベーターを使って、それも七階にはガードマンがおりますので——これは気がついておりません、恐らく八階まで直行したであろう、こういうふうに見ております。そうして後、階段を駆け上って、十六階に通じます十五階に実は電子ロックのかかっておるドアがございますが、恐らくそこへ行って入れずに十四階へ戻って、十四階の北側にあります非常口から彼らは外に出た。外に出た後、今度は警察官等が追ってこれないように、外側からとにかくあけられないような措置を講じた。こういう状況の後警察官が行くわけでございますけれども、火炎びん等が飛んでくることを警戒しながら階段を駆け上っておりますので若干の時間はかかっておりますが、警察官が行って十四階のマイクロ無線室のドア、二つございますけれども、最初のドアを引いて、すぐにあいたようでございます。それから中のドアは若干——今度は押すドアですが、これは若干あいておったということで、中が見える状況。すでに火炎びんが一部投げられておるし、中は若干荒らされておる状況であったようですが、それを見届けてすぐ今度は十六階に通ずる十五階のドアのところに行っているわけです。そこで警察官だからあけるようにということでやっておるわけです。その時点ではすでに応答がございませんので、恐らく管制官は離脱した後であったろう、こういうふうに見ております。 これのよしあしはなかなか論じられませんけれども、実は電子ロックをわれわれも過信をしておったわけでございますが、火炎びんを電子ロックのかかったドアの外側である程度投げられているようですが、その煙がドアの周辺に——いわゆる非常にがんじょうな、網戸というよりもっとがんじょうな鉄の格子みたいなものを御想像いただければよろしいわけですけれども、空気の流通をよくするための部分がございます。そこから煙が入っておりますが、こういうものを見て退避をされたようですが、電子ロックというものをわれわれも過信しておったように、非常にがんじょうなものであれば、まだその時点では、犯人らが入ってくるまでにはある程度の時間はあるわけでございますから、二十分程度あったのではなかろうかと思いますけれども、いや、このロックは大丈夫なんだから容易には入ってこれないということで、人質等にも容易には、この中にいる限りは大丈夫といった自信があればよろしかったであろう、こういうふうに思います。もっとも物理的にはがんじょうなものでして、犯人らもあけることができませんでしたし、われわれの方の機動隊がエンジンカッター等であけようとしてもあかなかったというほどがんじょうなものではございますけれども、心理的には不安になって、そういう時点で離脱をされた、こういう実態があったようでございます。
○正森委員 私の質問の趣旨も必ずしも正確でなかったと思いますが、いま御説明になりましたようなことは地方行政委員会、運輸委員会等で質疑がございましたので、私も一部傍聴に参って知っているわけです。私がいまここで聞きたかったのは、屋上へ離脱したでしょう。その後北側からいわゆる第四インター等の連中がハンマーでガラス戸をぶんなぐって入りましたね。それで管制官は屋上へ離脱したのですが、その屋上へ離脱する入り口というのは屋上からあけられないようになっていたのか。あるいは、十六階に入りさえすればそれがあくようになっていたら、第四インターの連中が屋上へ行って、おりてこいということでその五人を人質にするような状態はあり得たのか、こういうことを聞いているのです。
○福井説明員 十六階から屋上へ出ますのは二重のハッチになっているようでございます。最初管制官五人おられたようですけれども、五人とも屋上へ出られてハッチを閉めようとしたら、下のハッチがあいておる。そのままでは閉められない。ですから、そのままの状況ですと、犯人らにここから屋上へ出たことを察知されるということで、管制官の一人がもう一度十六階へ戻られたようです。そうして、電気スタンドのコードでいわゆる一段目のハッチを縛って、それで引き上げて、結局一段目も二段目もふたをして、さらにその上に若干はしごか何かを載っけられたようですけれども、一見そこから上に出たことがわからないようなことをやられたようです。ですから、そういう程度の時間的な余裕はあったと申しますか、というのがいまつかんでおる事実関係でございます。
○正森委員 この人質処罰の法律の審議の一環として、成田空港の場合も、一番大事なところの五名が人質になる可能性があったのじゃないか、そして、不法な要求をすれば、ただ中がめちゃめちゃにつぶれておるというだけ以上の重大な事態もまた発生したのじゃないか、こう思われるのでいまの質問をしたわけです。それに関連して、きょうは運輸委員会の質問や地方行政委員会の質問ではありませんから限度は心得ておりますが、しばらくの間私が疑問に思っていることを人質に関連して聞いておきたい、こう思うのです。 私が非常に疑問に思いますのは、地方行政委員会でいろいろ質問があり、すでに答弁も一部あるようですけれども、あなた方は一万四千人近い部隊を動員して、一番心臓部である管制塔の入り口付近に何名の部隊を配置しておられたのですか。あそこに一万四千人もおられるわけですから、私は警察の編成は知りませんけれども、最小限玄関口付近に一個大隊ぐらい置いておかれればああいう事態は十分防げたのじゃないんですか。
○福井説明員 あの事態が起こりました時点での大まかな状況を申し上げますと、一つは、三里塚の第一公園に集まりました八千人、そのうちの四千五百人が極左暴力集団でございますが、それのデモが出発をしておる、こういう状況がございます。それともう一つは、菱田小学校跡に集まりましたインター等の集団、それが三つに分かれておるわけですけれども、途中は省きますけれども、七百人が旧星華学院のグラウンドの方へ行っておる、こういう状況がございます。それから四百人が横堀の方に行くわけですが、さらにそれが分かれて三百人が第五ゲートの方へ行って、例の航空保安協会の研修センターに火炎びん等を投げて機動隊員に規制をされるわけですが、そういう状況が一つあるわけです。それから、この四百人のうちの百人は横堀の方へ行きまして、これも部隊に規制をされて、二十五人が逮捕されております。 それから、星華学院の方へ行った七百人ですが、これのうちの一部九人が四台の車に乗って東峰十字路の方へ行って、その四台の車のうちの二台をそこで自分たちで焼いて、結局道路を一部通れない状況をつくってしまった。そうして残りの車二台で第九ゲートに入ってくるわけでございます。それから星華学院に集まった七百人、大体七百ということでよろしいわけですけれども、これが朝日台三差路の方へ来るわけでございます。この場所で部隊の規制を受けております。四百人が規制を受けて、そのうちの二十八人がそこで逮捕されておるわけです。ですから、その四百人は大体そこでこちらの規制を受けたということです。それで規制を受けて、前の方に残っておった三百人が車二台を先頭にして八の二ゲートから入ってくる、こういう状況があったわけです。 ですから、そういうデモに対する警戒、それから横堀方面のそういう警戒がございます。そういう状況の中で部隊の運用をやっておったわけですけれども、管制塔の付近には、管制塔を含めての警戒に当たっておる部隊が二百二十いたというふうに記憶しております。もっともこれは管制塔だけでございませんで、あの地域の警戒に当たったという機動隊でございます。ですから、管制塔そのものは、電子ロックを過信をしておったということがございますけれども、空港署の署員四十五人程度で警戒をしておった、こういう状況でございます。
○正森委員 私はいまの質問をしておりますのは、法律をつくることも非常に大事だけれども、それ以前に、警察としてそういうのを防止し、鎮圧するということがもっと大事ではないかということを一言申し上げたいために言っておるわけです。 それで、電子ロックを過信しておられたようですけれども、電子ロックは数カ所にあったようですけれども、十六階だけではなしに十三階にも非常に重要な機器があったようですし、それでいろいろな過激派が乱入してくるというのに、一万四千人もおる部隊の中の数十名しかそこにいないということは非常に問題があるわけで、全体で千数百名しかいないというなら、これはあっちゃこっち手当てをしなければならぬということはわかりますけれども、やはり今度の警備の点については、私は最高首脳部及び幕僚陣の方にむしろ重大な欠陥があったのではないか。個々の警察官はよくがんばったということは多くの場合言えるでしょうけれども、肝心の指揮をすべき最高指揮者と参謀に、戦争の何たるかを知らない、人を得ない点があったのではないか、あるいは手落ちがあったのではないかという気が非常にするわけです。そういう点は私の方から一言だけ申しておきたいと思うのです。 あと一、二点ですが、成田の青写真を入手しておったのじゃないかということで、コマンドたちが縦四十センチ、横七十センチの管制塔周辺の青写真を示して、マンホールから地下水道伝いの侵入ルートを説明したということで、前田という男が前日にそういうことをやっておる。これは空港内部に通報者がいたのではないかということが広く言われておるわけです。あるいはマンホールを出てから一直線に裏口に行って、その裏口のかんぬきが外れておったとかというような説もある。ということになりますと、そういう点については現在捜査中でしょうけれども、十分にその可能性があるものとして捜査をしているのですか。
○福井説明員 前田というのが管制塔の十六階管制室へ侵入したと申しますか、あの十五人なり二十人ぐらいのグループのリーダーではなかろうかという推定は一応しておりますが、この人物、詳細をこちらに話すような状況ではまだございませんので、写真を示して云々というようなことを本人から聞ける状況ではございません。 それから管制塔裏の通用口云々というのがございますけれども、これは確かに彼らが出たと思われる京成空港駅の付近のマンホールから約七十七メートルいわゆる構内の三号線寄りと申しますか、二十メートル道路をこちらの方へ参りますと、三メートルばかりのフェンスが十八メートルばかり引っ込みまして、その部分に三メートル、三メートル、合計六メートルの外開きのいわゆる通用口がございます。これが確かに当時あいておったという状況があるようでございます。ですから、その部分から管制塔前の庭と申しますか、そちらの方へ行ったことは十分あり得ると思いますが、恐らくそうであろう、こういうふうには見ております。 それから、さっき部隊の全般的な運用に責任があるのじゃないかということでございましたけれども、さっき大まかな彼らの動きを申し上げましたが、それぞれ規制をしたり検挙をしているわけでございます。航空保安協会の方へ来た三百は規制しておりますし、横堀の方に行ったのは規制をして二十五人逮捕しておりますし、それから星華学院から朝日台三差路の方に来たのは二十八人を検挙しておりますし、八ゲのところで四人をまた検挙しておるわけです。 管制塔の中に入った、これは入られたことはまことに申しわけないと思っておりますけれども、十五人は逮捕いたしましたし、それから九ゲートから入ってきた九人はもちろん逮捕しておりますし、それから八の二ゲートから入ってきた車二台を先頭にした三百人も、三十四人は中で逮捕をして、あとは排除をしておるわけです。ですから、全体の部隊の配置に大きな誤りがあったというふうには考えておりません。管制塔へ入られましたのは、この全般の運用とは別の、マンホールから出てきた組でございますので、これの実査は不十分であった、これは重々反省しておりますが、実際の部隊の運用とは別の、いわゆるマンホール組に入られた、こういう状況でございます。
○正森委員 最後に、マンホールの検索その他、その方のゲリラに注意を向けてなかった非をお認めになりましたから、あえて言いません。 しかし、課長、私は今度の事件を見ておりますと、桶狭間の戦いを非常に思い出すのですよ。あのときは、われわれは立川文庫その他講談で読みますと、今川義元が数万の大軍を率いていくわけですね。それで織田信長との県境で丸根、鷲津のとりでなどは落として、それぞれ数百人の織田勢を討ち取って勝利を上げるわけだけれども、肝心の今川義元の本陣は防備が薄くて、そして折からのあらしの中で警戒不十分だった。そこをわずか干名か、せいぜい二、三千の小勢に急襲されて、結局大将が首を取られてしまうわけでしょう。そしたら、結局上落しようというのはぐるっとひっくり返さなければいかぬ。あなた方は一万四千の部隊で第二要塞やら何やらいかほどやりましても、一番中心のところの首を取られたら、結局開港は一カ月なり二カ月なりおくれるということになるので、事の軽重を判断して部隊配置を行うという点で、やはり手落ちがあった。しかも、ゲリラがそういうぐあいに入ってくるマンホール等の検索を怠ったということとそれは相乗作用を起こしておるということは、やはり指摘せざるを得ないと思うのですね。法務大臣は国家公安委員長ではありませんから、答弁の責任は必ずしもないかもしれませんけれども、せっかくいままでおられたわけですから、政府の関係政治家として御意見を承りたいと思うのです。
○福井説明員 五月二十日に開港日も設定されておりますので、ここでああだこうだと、あっちが悪かったこっちが悪かったということを、内部的な責任おっつけのようなことは厳に慎まなければならないことでございますが、ただ、管制塔に入られたという点につきまして重々反省をしております。 そこで、開港日に向けまして、運輸省なり公団なり関係当局との関係を一層緊密にしまして、しかも、そういう当局で、空港そのものなり関連の施設について、人的、物的な防護体制の整備をしていただく、これについては具体的な申し入れをしております。それと相まって、所要の警察部隊の警備を強化をして、とにかく三・二六事件を前向きに生かして、五月二十日の開港を万全の体制でやり遂げたい、こういうふうに考えております。
○青木政府委員 直接の担当ではございませんし、また、いま捜査中でございますので、何とも申し上げられませんけれども、結果から見まして、管制塔にああいう人が乱入して機器を壊したということは事実でございますので、政府の一員といたしまして、やはりそれなりの手落ちがあることは認めざるを得ないと思いますし、また、責任も痛感をしておる次第でございます。
○正森委員 これで質問を終わりたいと思いますが、警察庁、最後に一つだけ御注意申し上げて、もし調べられるなら調べていただきたいことがあるのです。 それは、私はここに「三里塚闘争ニュース」という、連帯する会ニュース一九七八年三月二十七日号外のコピーを持っております。これは「三・二六空港突入、管制塔占拠!三月開港策動打ち砕く!」ということで、三重塚闘争に連帯する会というのが発行しているものですね。これには一面の一番上段の目抜きのところに「占拠され破壊された管制塔」という大きな写真が載っておるわけです。これは角度から見て、明らかにヘリコプターからでなければ写せないものであります。非常に奇妙なことに、それから三、四日たちました三月三十一日のある新聞の夕刊に、それと全く同じ写真が載っておるのですね。これは私は顕微境みたいなもので拡大してよく見てみましたけれども、屋上に立っております五人の管制官の位置及び太陽の影、それまでも全部そっくり一緒です。ですから、これは恐らくは同一の写真であろうというように思われます。そうだとしますと、当時第四インターその他の過激派の連中がヘリコプターを飛ばしておったということは証拠上認められないわけですから、この写真は新聞社から、あるいは新聞以外の同一の第三者がヘリコプターで撮って、それを新聞社と三里塚闘争に連帯する会に提供したというように見ざるを得ないと思うのです。そうしますと、私は、これは非常に考えてみなければならぬ問題を含んでおるというように思うわけであります。そういう事実をつかんでおられるのかどうか、もしつかんでおられるとすれば、どういうようにその関係をお考えになっているか、伺いたいと思います。
○福井説明員 三里塚闘争に連帯する会と申しますのは、これはあの闘争に参加をしております市民団体の有力なものの一つでございますが、第四インター日本支部の影響力と申しますか、そういうものが強い団体である、こういうふうに見ております。そういうもののいわゆるビラに、しかも新聞に出るよりも早く写真が出るということは、まことに奇妙なことであるというふうに私たちの方でも実は注目をしております。ただ、こういうことは軽々に決断を出すわけにまいりませんので、しかも、開港日に向けて、いわゆる幅広い国民の理解と協力と申しますか、そういうものに立ってわれわれも警備をしていかなくちゃならぬわけでございますから、報道関係に対して協力を求めなくてはならぬ部分もいろいろ多いわけでございますが、事実は事実として、十分に調査を進めてまいりたい。 ただ、一般論と申しますか、この問題を離れまして、現地で反対運動に取り組んでおる人たち、あるいは極左暴力集団のところへ行って取材をするのに、彼らににらまれるとなかなか取材をしづらいという実態があるようでございますけれども、これはこの事実と別にしてそういうことがあるようでございますが、この写真のことについては慎重に検討してみたい、こういうように考えております。
○正森委員 私は、報道の自由等にいささかも干渉しようなどとは思っていないのです。しかし、いま課長がいみじくも言いましたように、彼らのところへ取材に行くのに何かおみやげを持っていかなければいかぬと、そうはおっしゃいませんでしたけれども、にらまれては困るというような御発言がありましたけれども、福田総理も本会議の答弁の中で、いままで政府も国民も寛容過ぎたのじゃないかというような発言をわざわざしておられるわけです。ですから、いま非常に問題が一面であるのじゃないかという、構成要件で無期もしくは五年以上の懲役という非常に重い罪を基本類型として定めるということで、国民全体がそういう政府の要望にこたえていろいろやるべきことはやろうとしておるときに、写真をそういう第四インターの影響を受けたところへ提供するということは、これは私は何か違法行為に触れるとかなんとかいう意味で言っているのではないのですけれども、これは国民の一人として非常に疑問に思う。ですから、そういう点についても、もし報道の自由に干渉しない程度でわかることがあれば、これは無事に開港してからでも結構ですから、一度お知らせ願いたいということを要望して、私の質問を終わります。
○山崎(武)委員長代理 次回は、来たる四月十四日金曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午後五時三十分散会