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84回国会衆議院1978/04/04

法務委員会 第13号

発言数
39
登壇者
7
会派数
1
開催日
1978/04/04

会議録

鴨田宗一自由民主党

○鴨田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出、人質による強要行為等の処罰に関する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。山崎武三郎君。

山崎武三郎自由民主党

○山崎(武)委員 昨年後半から本年にかけて、わが国においてダッカ日航機ハイジャック事件、西ドイツにおいてはルフトハンザ機ハイジャック、シュライヤー氏殺害事件、イタリアにおいてもモロ前首相誘拐事件と、一部過激派による凶悪かつ卑劣きわまりない不法事犯が頻発し、世界の耳目を聳動させたところでありますが、去る三月二十六日には、成田の新東京国際空港において、過激派が不法にもコントロールタワーに侵入し、管制用の機械器具を破壊し、莫大な経済的損失を与えたのみならず、開港延期のやむなきに至らしめ、わが国の国際的信用をも著しく傷つけました。もはや過激派の取り締まりは一刻の猶予もゆるがせにできない事態に立ち至っていると考えますが、この点についての法務省の御所見を承りたい。

青木正久自由民主党法務政務次官

○青木政府委員 極左暴力集団による暴力行為に対しましては、警察当局による適切な警備措置が必要であることはもちろんでありますけれども、犯人の検挙、取り締まりの徹底及び迅速厳正な科刑の実現によってその根絶を期することが肝要であると考えております。  そのためには、当面、現行の関係法規を有効かつ多角的に運用することはもちろんでありますが、そのほかに、今回御審議願っております人質による強要行為等の処罰に関する法律案、並びにすでに法案として今国会に提出済みの刑事事件の公判の開廷についての暫定的特例を定める法律案の成立を待って、これを十二分に活用してまいりたいと考えております。ただ、その運用の過程におきまして何らかの隘路があるようなことになりますれば、所要の立法措置を考えることもやぶさかではないと考えております。

山崎武三郎自由民主党

○山崎(武)委員 昨年九月二十八日に発生したダッカ日航機ハイジャック事件においては、昭和五十年八月上旬のクアラルンプール事件に引き続き、法秩序維持の観点からきわめて重大な問題を生じたものと考えます。すなわち、人質となった乗客らの救出のためやむを得ない緊急非常の処置であったとはいえ、最も過激、危険な爆弾事件の犯人らのほか、強盗殺人事件犯人らをも含む被告人、受刑者計六人を釈放せざるを得なかったことは、法秩序を稚持し、民主主義体制を堅持する見地から、痛恨のきわみであったと考えます。  再度、日航ダッカ事件のような不法事犯が発生した場合、政府はどのような基本的態度で対処されるか、その御見解をお伺いいたします。

青木正久自由民主党法務政務次官

○青木政府委員 およそわが国を含む法治国家は、長年にわたりまして先人の努力と犠牲の上に確立されたものでありまして、その根幹をなす法秩序が厳正に維持されることは、国家存立のために必要最小限の条件であるということに思いをいたしますときに、暴力によって法秩序を根本から破壊しようとする者に対しましては、国民全体がみずからの自由と平和を守る、断固として法秩序を守るという認識と気概を持ちましてこれに対処することが必要であると考えるものであります。  ただ、政府といたしましても、この種の事件が再度発生することがないように、ハイジャック等非人道的暴力防止対策本部を設置いたしまして、万全の措置をとれるように最大の努力を傾注している段階でございます。しかし、万一不幸にして同種の事件が発生した場合には、国家みずからが不退転の決意を持ってこれに対処いたしまして、人質の生命の安全を図りつつ、粘り強く説得を行いまして、犯人の反省と悔悟の機会を与え、あるいは実力をもって制圧するなどのことを含めましていろいろな方策を講じ、犯人をしてその要求を断念させた上で、人質を安全に解放させることを最終目的とする気構えで対処すべきものと考えております。

山崎武三郎自由民主党

○山崎(武)委員 警察庁にお伺いしますけれども、ダッカ日航機ハイジャック事件を起こした犯人及び釈放犯たちはすでにアルジェリアを離れたといううわさもあり、身のしろ金として奪った約十六億円を軍資金として再度暴挙に出ることも予想されております。特に今回の成田の新東京国際空港の開港阻止闘争をめぐって、海外の日本赤軍からの支援メッセージが寄せられたといううわさもあり、日本赤軍の最近の動向はどうなっているのか、あわせて日本赤軍以外の過激派の最近における活動状況等その実態について御説明願いたい。

福井与明警察庁警備局公安第三課長

○福井説明員 まず、日本赤軍の動向でございますが、アルジェリアへ参りました十一人でございますけれども、同国から出国をしたという確認の情報は残念ながら持っておりません。ただ、さまざまの情報を総合いたしまして、また一月五日付の人民新聞で日本赤軍が、われわれは新しい同志を戦場に迎えておるということを言っております。新しい同志ということでございますから、これまでの日本赤軍の既成メンバーでなくて、恐らく九・二八事件で国外へ連れ去られました東アジア反日武装戦線なり一般刑事犯等を指しておるのではなかろうかというふうに見ております。そういうものを総合しまして、十一人はすでにアルジェリアを出国しておる可能性が十分あるということで、行き先等を含めて現在鋭意情報を収集しておるところでございます。  ところで、日本赤軍と三里塚の闘争との関連ということで御質問でございますけれども、日本赤軍は国内の彼らの支援勢力の基盤拡大に努めております。その一環としまして、三里塚なり狭山裁判なり沖縄なり、さまざまの闘争との連帯と申しますか、団結というものをかねて呼びかけておりますが、その一環と見られますけれども、三月三日付となっておりますが、日本赤軍のアピールが三月十五日付の人民新聞に載っております。「三里塚の闘う農民の皆さん」という呼びかけで始まる文書でございますが、日本赤軍は三里塚に結集した闘う仲間たちとあらゆる場で一体となって闘い抜いておるということを書いておるわけでございます。これは心理的な団結を呼びかけておるものか、それ以上のものかはわかりませんけれども、ただ、日本赤軍のさっきから申し上げました動向からしまして、国内の極左の当面の闘争課題であります三里塚等に合わせて、国外で何らかの不穏行動を企図する可能性というものを否定はできないということで、外交ルートあるいは関係各国と緊密に連絡をとりながら関連情報の収集に努めておりますし、また外務省を通じまして、在外公館なり在外の日本企業等に対する関係国の治安機関による警備強化をお願いをしております。  また、国内の過激派の最近の動向ということでございますが、国内の極左の総結集勢力はここ数年横ばいでございまして、約三万五千ということでつかんでおります。当面三里塚闘争等に取り組んでおりますが、そのほかにも、昨年は一月一日の梨木神社の爆破事件から、十一月二十四日の法政大学の五五年館の爆破事件に至る七件の爆破事件を起こしておりますし、また内ゲバそのものは、件数としては四十八年は二百三十八件、それから四十九年は二百八十六件、五十年は二百二十九件、五十一年は九十一件、五十二年は四十一件ということで、二百数十件で来ておりましたのが五十一年、五十二年とぐっと漸減いたしております。しかしながら、内ゲバ殺人事件だけは去年も七件、十人が死亡しておるという状況でございます。  極左そのものは、国民の厳しい世論なり、警察の取り締まりによって勢力そのものも抑えられてきておりますし、事犯そのものも、全体としては非常に敢行しにくくなっておりますが、その中で一部分はますます先鋭になってきておる、テロ、ゲリラ指向を強めてきておるというのが最近の動向でございます。

山崎武三郎自由民主党

○山崎(武)委員 ところで、これまでにハイジャック等を敢行している海外の日本赤軍と、今回新東京国際空港で暴挙を敢行した過激派との関連があるのかについても御説明をお願いいたします。

福井与明警察庁警備局公安第三課長

○福井説明員 日本赤軍は、国内の極左の一つのセクトでございます共産同赤軍派の理論的な流れをくんでおります。しかも、日本赤軍の中心人物であります重信房子は、かつてこの赤軍派の中央委員の一人でございました。しかしながら、四十六年の十一月ごろにこの二つの組織はたもとを分かっております。現在もいわゆる直接的な組織とのつながりはないと見ております。  それから、今回の三里塚闘争できわめて悪質な不法事犯を惹起いたしました第四インター日本支部なり共産同戦旗派でございますが、これも日本赤軍とは直接的な組織の関連はない、こういうふうに見ております。

山崎武三郎自由民主党

○山崎(武)委員 外務省にお聞きしますけれども、過激派分子による航空機の乗っ取り、在外公館の占拠、要人の誘拐等の各種不法事犯は、わが国のみならず世界各地で頻発しているところであります。過般のルフトハンザ機乗っ取り事件について、西ドイツ当局が成功裏にこれを解決することができた一因として、キャラバン英国首相、ジスカールデスタン仏大統領、カーター米大統領ら西側諸国首脳のみならず、中近東及びアフリカ大陸諸国、ソ連、東独等の諸国の政府及び首脳から物心両面の援助があったことが挙げられております。このようなことからも、過激派分子による暴力的行為の克服には国際的連携協力が不可欠であると考えますが、過激派に対する国際的な対策はどうなっているのかお伺いいたします。  なお、ハイジャック犯人たちは、最終的に逃げ込む国があるから暴挙を企てるわけであります。ハイジャック犯人を受け入れる国をなくすることがこの種不法事犯を防止する一要諦であると考えます。政府としては、ハイジャック犯人を受け入れる国をなくするよう外交的努力を尽くすべきであると思いますが、どのような御所見であるかお伺いいたします。

池田右二外務大臣官房領事移住部領事第一課長

○池田説明員 ハイジャック等の問題の解決に当たりましては、先生御指摘のとおり国際的な連帯協力が重要でありまして、わが国と諸外国との二国間のじみちな関係を常日ごろ築いていくことが必要であると考えております。かかる観点から、外務省といたしましても、従来から各国との関係増進に努力しているところであります。  過激派対策の面につきましては、昨年十一月八日政府により決定されましたハイジャック等防止対策にのっとりまして、国際刑事警察機構、ICPOを通じまして、ダッカ事件の犯人等を国際手配するとともに、在外公館を通じて日本赤軍の手配資料及び偽造旅券判別の手引きを諸外国当局に配付いたしまして協力を依頼するなどによって、過激派に関する各国の情報の交換に努めております。  他方、ハイジャック等を防止するために、犯人に対して各国が厳しい態度をとることはきわめて重要であることは御指摘のとおりでございます。かかる観点から、わが国といたしましては、すべての国がハイジャック防止関連三条約に加盟して、条約に従ってハイジャック犯人を処罰するか引き渡すことが肝要と考えておりまして、他の関心国とともに、このためにわが国は国連等の場において未加盟国の加盟を働きかけておる次第でございます。

山崎武三郎自由民主党

○山崎(武)委員 運輸省にお聞きします。  今回の法律案では、さきの第八十二臨時国会において航空機強取法の第一条第二項として新設された航空機強取犯による人質による強要罪を第二条にそっくりそのまま取り込むとともに、その過程で人質を殺害した場合にも第三条の適用があることとしているものでありますが、法律を制定したのみではハイジャックの防止にとって万全とは言えないのであり、乗客の搭乗に当たってのボデーチェック、手荷物検査等安全検査等の徹底を図ることも基本的対策の一つと考えられておりますが、ハイジャックの再発防止のため運輸省はどのような対策を講じているのかお伺いいたします。

永井浩運輸省航空局監理部長

○永井説明員 お答え申し上げます。  ハイジャックの防止につきましては、先生御指摘のように搭乗前の検査による事前チェックが一番有効な方法であることはいまさら言うまでもないことでございます。したがいまして、私どもとしては、ハイジャック防止のために各種安全検査の準備体制を増強してまいりました。  概略申し上げますと、まず国内空港につきましては、エックス線の検査装置あるいは金属探知器、携帯用金属探知器、安全検査員の増員等、このような施設あるいは人員を増強してまいりました。予算的に申し上げますと、五十二年度当初九億七千六百万の安全検査、警備関係の予算を計上してございますが、ダッカの事件後五十二年度緊急対策といたしまして七千九百万円の追加をいたしました。さらに、五十三年度予算案におきまして十三億七千百万円を計上してございます。これは五十二年度当初予算に比べまして約四〇%の増でございます。このような措置を講ずることによりまして、国内空港におきましては、原則としてすべての空港におきましてアーチ型の金属探知器を常備しております。ただし、離島など小型航空機のみの場合は別でございますが、原則としてアーチ型の金属探知器を備えておりますし、主要空港におきましてはエックス線検査装置を整備あるいは増強いたしました。さらに、各検査員の質の向上を図るために、警察当局とも御相談いたしまして、財団法人空港保安事業センターというものを設けまして、警備会社等の検査員の質の向上、訓練あるいは指導といったものをこのセンターにやらせるということにいたしております。さらに、近く開港を予定されます成田空港におきましては、このセンターみずから安全検査を行う、こういう計画を持っております。また乗客に対しましては、機内持ち込み手荷物の制限につきまして各種報道機関を通じまして十分PRをいたしております。  外国の空港におきましては、日本航空が寄航いたします三十五空港のうち、かねて問題のあると私どもが判断しておりました七空港につきましてダブルチェックをやりたいということで、それぞれ外国の政府あるいは空港当局に要請いたしておりました。現在のところ、この七空港すべてにつきましてダブルチェックを行っております。日本航空自体におきましても、海外の支店、空港等に保安責任者を置きまして、これらの安全検査のチェックあるいは在外公館等の情報の連絡といったものに当たっております。

山崎武三郎自由民主党

○山崎(武)委員 法務省にお聞きします。  この人質による強要罪を、刑法の一部改正の形式をとらず単独の特別立法形式をとることとした理由はどういうことであるのか、お伺いいたします。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 大きく申し上げまして三つの理由から特に今回単独立法の形をとらせていただいたわけでございます。  まずその第一は、この法案は、最近におきます一部過激分子による人質強要事犯の実情にかんがみまして、早急にこの種の強要行為に対する処罰を強化するなどの措置を講ずる必要性に対処することを目的として立案したわけでございますが、このような目的に照らしまして、一般の人質による強要行為のすべてについての処罰規定を設けようとするのではございませんで、その中から特に過激分子によって犯されることが予想されます暴力的要素の強い、それだけに人質の生命、身体に対する危険性の大きい特定の行為を重く処罰する規定を設けようとしておるわけでございます。これが第一点でございます。  それから第二点といたしまして、すでに先ほど御指摘がございました、昨年制定を見ました航空機強取法の一条一項の罪、こういう単独法として立法されております法律の罪をも本法に取り入れようとしておることが第二点でございます。  第三点といたしまして、この法案の第一条及び第二条の罪は、ごらんのとおりその本質におきまして第三者に対する強要罪でございますけれども、強要行為の相手方といたしましては国も含まれる可能性があるわけでございまして、そういうことになりますと、その場合の保護法益は国家的法益というふうに考えられるわけでございます。したがいまして、刑法典中にこの種の規定を置くといたしましても、罪の性質等にかんがみまして規定の位置などにつきましてなお慎重な検討が必要であると考えられるのでございます。そういった点を考慮いたしまして、一般の人質による強要行為についてのいわば一般規定を将来設けるかどうか、その場合、ただいま御提案申し上げておりますような罪を刑法に取り込むとして、どういう場所に置くか、こういうことが将来残るわけでございまして、それらの点につきましては、刑法全面改正の作業の一環としてなお検討を続けてまいりたい、とりあえず単独立法としてお願いをいたしたい、こういうふうに考えておるわけでございます。

山崎武三郎自由民主党

○山崎(武)委員 この法律案第一条の罪の保護法益、御説明をお願いいたします。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 この罪は、ごらんのように逮捕あるいは監禁されました者を人質にいたしまして、これらの者の生命、身体等の安全に関する第三者の憂慮に乗じまして、その第三者に対し義務のないことをすることあるいは権利を行わないことなどを強要する罪なのでありますから、まず第一に、その当該第三者の意思決定あるいは行動の自由というものが保護法益となると存じます。それと同時に、人質にされた人たちの身体的あるいは精神的な自由、これも保護法益に含まれるものと考えております。  なお、先ほど申し上げましたように、この罪のいわゆる第三者には、自然人あるいは法人のほかに国家それ自体も含まれると解されますので、国家が第三者という立場になります場合には、個人の意思決定あるいは行動の自由のほかに国家の自由な意思決定あるいは行為という国家的法益も保護法益となってまいる、かように考えております。

山崎武三郎自由民主党

○山崎(武)委員 「二人以上共同して」「凶器を示して」とはいかなる意味か、お伺いいたします。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 まず「二人以上共同して」と申しますのは、現行刑法二百八条ノ二にございます凶器準備集合罪でございますが、これにございます「二人以上ノ者」という表現がございます。また暴力行為等処罰ニ関スル法律第一条に「数人共同シテ」というのがございます。また盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律第二条第二号に「二人以上現場ニ於テ共同シテ」という表現がございます。これらとおおむね同意義でございまして、二人以上の者が現場において共同して実行行為を行うこと、これを言うわけでございます。したがいまして、この第一条の罪が成立いたしますためには逮捕、監禁行為が二人以上の者によって実行されることが必要でございまして、仮に数人が共謀してもその中の一人だけによって逮捕、監禁行為が行われたような場合は、ここに言います「二人以上共同して」というのには当たらない、こういうふうに考えております。  それから、次に「凶器を示して」という言葉でございますが、これは暴力行為等処罰ニ関スル法律第一条の文言と同意義でございまして、携帯しております凶器の存在を相手方である被逮捕者等に了知させることを言うわけでございます。すなわち相手方がその存在を了知していないときには示したことにならないということでございまして、示す方法としては、凶器をちらつかせるあるいは突きつける、あるいは拳銃等を発射してみせるというふうに、視覚あるいは聴覚、触覚いずれに訴えるものでもよいわけでございますが、ただ凶器を相手方が知ることができない状態で隠して持っておるというような場合には凶器を示したことにはならない、こういうふうに考えております。

山崎武三郎自由民主党

○山崎(武)委員 本罪に「人質にして」というのはいかなる意味か、また「第三者」とはどのようなものが含まれるか、お伺いいたします。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 まず「人質にして」という文言でございますが、これは昨年制定を見ましたいわゆるハイジャック処罰法の新しい規定の中にも出てくる文言でございますが、逮捕あるいは監禁されました者の生命、身体等の安全に関する第三者の憂慮に乗じて、その釈放、返還あるいは生命、身体の安全に対する代償として第三者に作為あるいは不作為を要求する目的でこれらの被逮捕者などの自由を拘束することを言うものと考えております。平たく言えば、それらの人をカタに取ってというふうに御運解いただけばいいかと思います。  それから「第三者」という言葉でございますが、第三者という範疇の中には、犯人及び人質にされている人たち以外のすべての者が含まれるわけでございまして、それが自然人であろうと、あるいは会社、地方公共団体といったような法人であっても第三者たり得ると思います。さらにこの罪の性質から見まして、いやしくも要求の対象となり得るものである以上、たとえば各種団体、政党、そういった権利能力なき社団も含まれますし、国の機関、たとえば国会、裁判所、政府、さらには国自体もここに言う第三者に該当するものと考えられます。

山崎武三郎自由民主党

○山崎(武)委員 過激派の一人がたとえばダイナマイトのようなきわめて危険な凶器を使用した場合を考えてみますと「二人以上共同して」という要件を必要とすることは実態に合わないようなことになりはせぬかと思いますが、いかがでしょうか。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 確かに一つのお考えでございますけれども、これまで発生いたしました過激派によりますこの種事件について見ますと、それが数名の集団によって行われるいわゆる集団犯罪であることが第一の基本的な特色であるというふうに見ることができます。もともとハイジャックその他のいわゆる人質強要事犯と申しますのは、大ぜいの人質を監禁いたしまして、長時間にわたって第三者と交渉を重ね、そして不法な要求の実現を図ろうとするわけでございますので、単独の者によっては実際上容易に犯し得ない犯行であるわけでございまして、この種の事犯の実態にかんがみまして、二人以上の集団犯罪ということで構成いたしましてかなり重い刑で臨むものとすることが実態によく合致するものと考えておるのでございます。  なお、念のために申し添えますと、仮に単独犯でもいいというふうなとらえ方をいたしますと、たとえば思慮浅薄な者が果物ナイフなどを使ってこういった犯罪を犯したというような場合もこの罪の対象に含まれることとなりまして、過激派対策の一環ということで立法いたします今回の立法の趣旨があいまいになるという点も一つ申し添えることができようかと思う次第でございます。

山崎武三郎自由民主党

○山崎(武)委員 本罪が学生運動や労使交渉の弾圧に悪用されるのではないかという懸念を表明する向きもあるやに聞いておりますが、そのようなおそれはないか、お伺いいたします。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 この罪をごらんいただけばおよそそういう懸念をお感じになる方はないのではないかと思いますが、それでもごく二部にそういうことを御懸念になる向きがあるやに伺っておるわけでございますので、その点について申し上げたいと思います。  申し上げるまでもなく、この罪は過激分子による人質強要事犯に対処することを直接のねらいとして設けたものでありますので、通常の労使交渉あるいは学内交渉がこれに当たることはあり得ないと思うわけでございます。すなわち、通常の集団交渉におきまして、たまたま一部の者がたとえばプラカードといったようなものを持っておったとしましても、そのプラカードが用法上の凶器に該当するという場合といたしましては、判例によりますと、社会通念に照らして人の視覚、聴覚上、直ちに危険性を感ぜしめる状況となっていないときはまだ凶器とみなすことはできない、したがって、人の殺傷に使用される意図が明らかに外部的に覚知され、社会通念に照らして直ちに危険性を感ぜしめる状況になったとき初めて凶器性を帯びるというふうに判例上解釈されております。したがいまして、ただプラカードがそこにあるというだけではこの罪に該当する余地は全くないわけでございます。  さらに、「人質にして」とこうなっておりますので、被逮捕者などの生命、身体の安全を条件として第三者に不法な要求をするというのがこの罪の要件でございますが、通常の団体交渉等におきましては、たとえ一時的に緊迫した状況が出ましても、その基本にはやはり労使間あるいは師弟の間の信頼関係は維持されておりまして、第三者が要求に応じないことを理由に会社役員でありますとか学校関係者を殺害する行為に出るというようなことは全く予想されないところでございまして、「人質にして」という要件にも当てはまらない。こういう意味におきまして、学生運動とか労使交渉の弾圧に利用されるという御懸念は全くないものと考えております。

山崎武三郎自由民主党

○山崎(武)委員 本罪に刑法二百二十八条ノ二にならって解放減軽規定を設けていないのは何か特別の理由があってのことなのか、御意見をお伺いいたします。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 御指摘の身のしろ金誘拐の場合に解放減軽規定があるわけでございますが、この身のしろ金誘拐という罪の実態を見てみますと、大体幼い子供を誘拐するという事例が多うございまして、犯人がその子供の身柄を隠匿し、自分の所在も明らかにしないで身のしろ金を要求するというのが典型的な例で、これがほとんどの例でございます。そういう身のしろ金誘拐におきましては、中には、要求が実現されましたのに犯行を隠蔽するために人質を殺害する例も少なくなかったのでございまして、そういう現実に対処いたしますために、要求の実現の前後を問わずに犯人に反省と悔悟の機会を与えて、子供等の被拐取者だけは解放するように、そしてその生命の安全を図るという非常に高度な刑事政策的な配慮に基づいて異例の必要的減軽規定が設けられた、こういうふうに理解いたしております。  これに対して、今回御審議いただきます法案の場合におきましては、最近におけるこういった事件の実態を見ますと、犯人は建物とか乗り物とか、所在の明らかな特定の場所に人質にされました者を監禁して立てこもり、そして第三者に対して不法な要求をする、その要求が実現いたしました場合には人質を伴って海外等の安全な場所まで逃走する、その上でようやく人質を解放する、こういうような例が多いわけでございまして、このような実態を持ちます犯罪についてまで人質の解放を条件として一律に減軽の対象とすることは、社会通念に照らし妥当でないというふうに考えられるわけでございまして、この考えは、先般の航空機強取法一条二項の罪についても同様な観点から解放減軽規定を置かなかったのでございまして、身のしろ金誘拐と今回御審議いただきます法案の罪との関係は実態において質的な差がある、これが解放減軽規定を置かない理由でございます。

山崎武三郎自由民主党

○山崎(武)委員 この法律案第三条の人質殺害罪を設ける趣旨についてお伺いいたします。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 御記憶のとおりのいわゆるクアラルンプール事件あるいはダッカ事件におきまして、わが国といたしましては人質の生命の安全を確保するために、犯人の要求を入れていわゆる超実定法的措置を講じて事件を解決したわけでございますが、考えてみますと、このような措置が繰り返しとられることになりますれば、法治国家の根幹をなします法秩序の維持に重大な支障を来すことになるわけでございまして、今後、万一不幸にして再びこの種事件の発生を見ました場合には、国といたしましてはいままでよりも毅然たる態度でこれに対処せざるを得ないということになろうと存ずるわけでございます。そういう対応の仕方をすればするほど、その過程におきまして人質の生命により重大な危険が及ぶことも十分予想されるわけでございます。そこでこの人質殺害の罪を新設いたしまして、およそ不法な要求を実現する手段として人質を殺害することは絶対に許されるべきことではなく、あえてそのような行為に出る犯人に対しては文字どおり極刑をもって臨むという強い国家の姿勢と意思を打ち出しまして、刑罰が本来持っております犯罪抑止力を最大限に発揮させまして、犯人に要求を断念させ、あわせて人質の安全な解決を図るということの一助にしたい、こういうふうに考えておるわけでございます。

山崎武三郎自由民主党

○山崎(武)委員 わざわざ人質殺害罪を設けなくても通常殺人罪で賄えるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 犯人が不法な要求を実現する手段としまして人質を殺しました場合には、御指摘のように刑法百九十九条の殺人の罪に当たるわけでございますが、その場合には刑の下限が懲役三年というところまで下がる可能性のある法定刑の適用ということになるわけでございます。ところが、このただいま御審議いただきます人質殺害の罪、これは刑法が二百四十条におきまして特に強盗殺人罪を設けまして、強盗の機会における殺人行為を一般の殺人行為よりも重く処罰することといたしておりますのと同様な趣旨で考えられておるわけでございまして、犯人が不法な要求を実現する手段として人質を殺害するという行為が持っております強度の違法性を重視いたしまして、これに死刑または無期懲役というきわめて重い刑をもって臨みますことによりましてこの種事犯の防止に資そう、こういうことでございまして、悪質な人質犯罪が多発しております現状におきましては、ちょうど刑法二百四十条の強盗殺人罪と同じように、刑法の一般の殺人罪とは別個に本罪を設けることの必要性ないしは合理性が十分あるのではないか、かように考えておる次第でございます。

山崎武三郎自由民主党

○山崎(武)委員 これまでに、人質が処刑された実例があるかどうかお聞かせ願います。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 わが国におきましては、御承知のような対応の仕方を従来いたしておりますことの関係もありまして、これまで人質が処刑されるといった事例は見当たりません。が、外国では幾つかの例がございます。  御承知のものも多いかと思いますが、昨年九月五日、西ドイツの経営者連盟の会長ハンス・M・シュライヤー氏が拉致されまして、十月十九日にフランスのミュルーズ市で遺体となって発見されたのは御記憶に新たなことだと思います。また、昨年十月十三日発生いたしましたルフトハンザ機乗っ取り事件で、南イエメンのアデン空港におきまして、ユルゲン・シューマン機長が犯人によって射殺されたこと、これも記憶に新しいところでございます。そのほかにも、一九七〇年三月三十一日に発生いたしましたグアテマラにおける西ドイツ大使人質事件におきましては、当該大使が殺害されております。また、一九七三年三月一日、スーダンのハルツームで発生いたしました米大使館等占拠事件におきましては、アメリカ大使、同参事官、ベルギー公使の三人が殺害されております。さらに、一九七五年四月には、在スウェーデン西独大使館が西ドイツの過激分子に襲われまして、その際、大使館員二名が殺害されております。  なお、悲惨な例といたしまして、一九七二年九月五日のミュンヘンにおきますイスラエル・オリンピック選手村事件におきましては、犯人らは選手団宿舎におきまして、イスラエル選手二名を射殺いたしました後、ミュンヘン郊外の空軍基地におきまして西ドイツ警備軍の急襲を受けますと、人質としておりましたイスラエル選手九名の搭乗する乗り継ぎのヘリコプターに手投げ弾を投げまして爆破し、全員を死亡させている、かような例が世界的には見受けられるところでございます。

山崎武三郎自由民主党

○山崎(武)委員 ハイジャック犯人のような、みずからの死を決意しているような確信犯人に対して死刑が意味があるのかどうか。無意味なような気がいたしますが、どうでしょう。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 死刑の威嚇力というものにつきましては、いろいろな見方があるわけでございまして、確かに死刑を覚悟した者に対しては、死刑の持つ威嚇力が大いに減殺されるという側面はあると思われるのでございますが、こういった種類の確信犯人におきましても、犯罪が完遂されるまでは、死刑に対する恐怖というものが後戻りさせる一つの動機となり得ることは否定できないと思うのでございまして、そういう意味で、抑止的効果が全く消滅するというふうには言えないと思うのでございます。また、死刑を覚悟しなければ凶悪な犯罪を行う決意ができないという意味で、すでに威嚇力を発揮しているというふうな見方もできようかと思うのでございます。なお、これにとどまりませず、死刑制度というものは、単に威嚇のみのためにあるわけではございませんで、当該犯罪者に対して国が加える正しい意味の応報でありまして、犯罪者の行為責任に応じた刑罰の一種ということが言えるわけでございまして、これがひいては社会防衛にも役立っている、こういうふうな一般的な見方ができようかと思うのでございます。

山崎武三郎自由民主党

○山崎(武)委員 最後に、本法の罪のすべてについて、すべての者の国外犯とした理由をお伺いいたします。

伊藤榮樹法務省刑事局長

○伊藤(榮)政府委員 まず第一条の罪につきまして、すべての者の国外犯とすることといたしましたのは、この罪により引き起こされます結果が、わが国にとって重要な国家的、社会的法益の侵害となることが予想されますことがまず第一。それからさらに、現在、国連その他の国際間の問題として、この種事犯の防止及び処罰には広く国際的協力が必要と考えられておりまして、先ほども外務省から御答弁のありましたような国際協力の促進ということが世界的にうたわれておるわけでございます。そういうことを考えますと、世界のいかなる地域において、いかなる者が犯したこの種の犯罪でありましても、わが国がこれを処罰し得る体制を整えておくべきものであるというふうに判断したわけでございます。  次に、第二条の罪は、すでに存在します航空機防止法一条二項の罪、これが同様の取り扱いをしておることをそのまま受け継ごう、こういうわけでございます。  それから第三条の人質殺害罪、これは申し上げるまでもなく第一条あるいは第二条の加重類型でございますので、当然、第一条及び第二条と同様に、すべての者の国外犯を処罰する、こういうふうにいたしたい、こう思っておるわけでございます。

山崎武三郎自由民主党

○山崎(武)委員 終わります。

鴨田宗一自由民主党

○鴨田委員長 次回は、来る七日金曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午前十時五十六分散会

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