法務委員会 第4号
- 発言数
- 134 件
- 登壇者
- 17 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1978/02/17
会議録
○鴨田委員長 ただいまから会議を開きます。 まずお諮りをいたします。 本日、最高裁判所大西総務局長、勝見人事局長及び岡垣刑事局長からそれぞれ出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○鴨田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 ————◇—————
○鴨田委員長 内閣提出、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。 質疑の申し出がありますので、これを許します。山崎武三郎君。
○山崎(武)委員 改正案によりますと、今回の増員は裁判官八名、裁判官以外の裁判所職員十名、合計十八名となっていますが、当初の増員要求はどの程度であったのか、その要求の根拠、その内訳、折衝の経緯等について御説明ください。 また、要求が認められなかったものについてはどのような対策を考えているのか、説明されたい。
○大西最高裁判所長官代理者 昨年の八月に、つまり当初でございますが、要求いたしました数といたしましては、裁判官が十九名、裁判官以外の裁判所職員が百九名、合計百二十八名ということでございます。 その根拠でございますが、これはいわゆる特殊損害賠償事件、公害等に基づく損害賠償事件でございますが、それとか、差しとめ訴訟、これも公害等の行為があります場合にそれを事前に差しとめを求める訴訟でございますが、そういう差しとめ訴訟、それから会社更生、整理等の事件、それから調停、それから道路交通法違反事件といった特定の種類の事件につきまして、これらの事件の適正迅速な処理を図るためということで、合計百二十八名をお願いしたわけでございます。 昨年の八月時点におきますいろいろな情勢を前提といたしまして、最も望ましい姿を可及的速やかに実現するためということで百二十八名をお願いしたわけでございますが、その後の事情の変化、事件数の推移あるいは特に裁判官の充員見込みといったものを勘案いたしまして、昨年十二月の最後の段階におきましては、この法案で出ております数でございますが、つまり裁判官が八名、裁判官以外の裁判所職員が四十二名ということで最後の要求をしたわけでございます。そのとおりお認めいただいたわけでございますが、ただ、資料にも記載してございますが、いわゆる行政部門におきまして人員の削減がございまして、裁判所もそれに御協力申し上げるという趣旨で三十二名の事務官の減が一方においてございまして、それを差し引きいたしまして裁判官が八名、裁判官以外の裁判所職員が十名ということに相なったわけであります。
○山崎(武)委員 今回増員の理由とされております特殊損害賠償事件等のそれぞれの事件について、事件数の推移、処理状況等を御説明ください。
○大西最高裁判所長官代理者 事件数の関係でございますが、お手元の資料の二十五ページ以下に出ておりますけれども、まず特殊損害賠償の訴訟事件につきましては、この資料にございますように、それぞれの年末の係属事件数でございますが、四十九年では二千三百九十四件、五十一年では三千二十六件というふうに逐次手持ち事件がふえてきておるわけでございます。 会社更正、会社整理事件につきましては二十六ページに出ておりますが、これも四十九年の四百四十六件から五十一年の六百五件というふうになっております。 それから差しとめ訴訟でございますが、これも四十九年の二百九十件から三百四十三件というふうに逐次未済事件かふえるという傾向を示しております。 調停事件でございますが、これは次の二十八ページ、これは家事の調停でございますが、これはいままでの三つとは違いまして新受事件を記載してございますが、昭和四十九年に約六万八千件、五十一年七万八千件というふうに新受事件が逐次ふえております。民事の調停事件につきましては、少し戻りまして二十三ページに簡易裁判所の民事の調停というところがございます。これも新受でございますが、昭和四十九年の三万九千件から五十一年の五万二千件というふうに相なっております。 それから道路交通法違反事件でございますが、これも同じ二十三ページの刑事の略式命令のところに道路交通法という欄がございますが、これも四十九年の百六十四万件から五十一年の百九十七万件というように新受事件が逐次増加の傾向を示しております。
○山崎(武)委員 裁判官の欠員とその補充の状況についてお尋ねいたします。 資料によりますと、判事については、昨年十二月一日現在で六十五名が欠員となっておりますが、年度末までにはさらにふえると思われます。その補充の見通しはどうなっているのか御説明ください。 また、近年、弁護士、学者等から判事に任命された例があれば御説明ください。
○勝見最高裁判所長官代理者 判事の欠員は、ただいま山崎委員御指摘のとおり昨年の十二月一日現在で六十五名でございますが、その後の退官者もございますので、その数を加えますと、ことしの四月当初には欠員が百を超えるというふうに見込んでおります。その補充の見通しでございますが、四月になりますと、裁判官としての経験十年を経ました二十期の判事補等から判事に任官する見込みのある者が七十三名ございます。これに検事等から判事の方へ転官が見込まれる者を加えますと約八十名の判事任官者があるものと見込んでおります。したがいまして、四月時点におきましす判事の欠員は二十名を若干超える程度と考えております。その意味で相当充員されるものというふうに考えております。 なお、お尋ねの弁護士、学者等から判事に任官した者の数につきまして近年の例を申し上げますと、昭和四十九年に弁護士から二名、五十年に学者から一名、五十一年に弁護士から一名、五十二年に弁護士から一名ということになっております。
○山崎(武)委員 判事補については、昨年十二月一日現在では欠員はないということになっておりますが、年度末には、第二十期の判事補が判事になるため、その人数ほどの欠員が予想されますが、その補充見通しはどうなっているのでしょうか。 なお、三十期の司法修習生の志望先はどのようになっているか御説明ください。 また、簡裁判事については、昨年十二月一日現在の欠員は三十一名となっておりますが、その補充見通しはどのようになっているか、御説明ください。
○勝見最高裁判所長官代理者 まず判事補の関係でございます。判事補につきましては仰せのとおり現在欠員はございませんが、四月になりますと先ほど申し上げました二十期の判事補が判事に任官いたしますし、このたびお願い申し上げております判事補の定員増八を加えますと、本年の四月当初におきます判事補の欠員は八十を若干超えるということになるかと思われます。ところで、本年四月に修習を終えます三十期の司法修習生の中には、判事補への任官を希望している者が現在八十一名おりますので、判事補の欠員は司法修習終了者によりましてほぼ完全に補充されるというふうに考えております。 なお、お尋ねの三十期司法修習生の志望先は、現在ただいま申し上げました判事補志望八十一名のほか、簡裁判事志望二名、それから検事志望が五十九名、弁護士志望三百九名、その他十二名ということに相なっております。 簡裁判事の欠員、その他その補充の見通しについて申し上げます。簡裁判事の欠員は、御指摘のとおり昨年の十二月一日現在三十一でございますが、その後定年退官等がございますので、本年の七月末を考えますと約六十になる見込みでございます。一方、定年退官となります判事その他の者から任命の見込まれます者が十名程度ございます。さらに、御承知のように特別の選考を経まして任命される者が相当数見込まれますので、八月になりますとただいま申し上げました欠員はほぼ補充できるものというふうに考えております。
○山崎(武)委員 最後に、裁判官以外の裁判所職員についてお尋ねいたします。 書記官の欠員は、昨年十二月一日現在で百十五名となっておりますが、欠員の理由は何なのか、またその補充の見通しはどうなっているか、さらに、本年度書記官研修所終了予定者数、書記官任用試験合格者数はどうなっているのか、御説明ください。
○勝見最高裁判所長官代理者 書記官の欠員につきましては、山崎委員御指摘のとおりでございます。欠員が多いというふうにお感じになるかもしれませんけれども、すでに御承知のとおり、裁判所は支部、簡裁まで含めますと千以上の組織に分かれるわけでございます。一つの組織で一名欠員がありますと、千名以上になるというような形になっておりますので、どうしてもある程度の年度途中におきます欠員はやむを得ないものというふうに考えている次第でございます。なお、書記官につきましては、御承知のとおり資格を要する職種でございますので、欠員が出た場合にすぐ補充というわけにはまいらない面もございます。御承知のように、裁判所におきましては、年度当初におきまして書記官研修所を修了する者、それから書記官任用試験に合格した者をもって書記官に任命することになっておりますので、先ほど申し上げましたように、年度途中に減耗が出てまいりましても、随時補充するということか困難な状況になるわけでありまして、毎年十二月ころになりますと、先ほど御指摘のような程度の欠員を抱えるということも避けがたいということに相なるわけでございます。本年度の書記官研修所の修了予定者は、一部生八十名、二部生百名、合計百八十名というふうになっております。 なお、書記官任用試験合格者につきましては、本年度の分につきましては現段階ではまだ未確定でございますので、申し上げることは差し控えさしていただきますが、以上のような書記官研修所修了者それから書記官任用試験合格者をもって先ほどの欠員を年度当初におきまして補充できる見込みでございます。
○山崎(武)委員 速記官の現定員及び欠員はどうなっているか、欠員補充の見通しはどうなのか、年度末に予定されております書記官研修所速記部修了者数はどうなっているか、お尋ねいたします。
○勝見最高裁判所長官代理者 速記官の定員は九百三十五でございます。昨年十二月一日現在の速記官数は速記研修生六十六名を含めまして七百三十九名でございます。したがいまして、欠員は百九十六名となるわけでございます。ただいま申し上げました速記研修生のうち、二年生二十九名が今年度書記官研修所速記部を修了する見込みになっております。その分だけ欠員が補充されるということになっております。
○山崎(武)委員 政府の第四次人員削減計画への協力についてお尋ねいたします。 協力の理由は何なのか。また減員率は政府の方針と同じなのか。減員されるのはすべて司法行政事務の簡素化、能率化に伴うものとされているが、特に簡裁における裁判所事務官の労働過重等、司法行政事務への影響はないのか。また減員の見返りとしての複写機等能率機器等の整備状況、予算措置はどうなっているのか、御説明ください。
○大西最高裁判所長官代理者 御承知のとおり、政府におかれましては昭和五十一年の八月に、昭和五十二年度以降四年間で国家公務員の既定定員の一部を削減するという計画をお立てになっておりまして、昨年の十二月にも「行政改革の推進について」という閣議決定に基づきまして、従前の削減計画を着実に実行するというふうに閣議でお決めになりまして、その趣旨を、内閣官房長官名で最高裁判所の事務総長あてにも、その方針に協力をしてもらいたいという御依頼が参っておるわけでございます。 裁判所はもとよりこの閣議決定に拘束されるものではございませんけれども、この定員削減計画に従前と同じように御協力申し上げるということで、昭和五十二年度以降昨年も三十二名、五十三年度も三十二名を御協力申し上げるということに相なったわけでございます。ただ裁判所職員は、御承知のように、裁判官とか裁判所書記官といったような直接裁判に従事する職員につきましては、一般行政官庁とは趣を異にいたしまして、適正迅速な裁判を実現するという意味で、これを削減するというわけにはまいりませんので、それ以外の司法行政部門、これは一般の行政に類似した面もございますので、その部門で政府の削減計画に準じた形で御協力を申し上げるということにしておるわけでございます。 最後に仰せになりました、特に簡易裁判所で職員の労働強化を生じないかというふうなお尋ねでございますけれども、御承知のように、大きな地方裁判所の本庁ですとか大きな支部にも簡易裁判所がございますが、そういうところでは、必ずしも独立してそれぞれがすべての司法行政について別々にやらなければいけないというわけでもございませんので、それを一部においては統合してやりますとか、あるいは司法行政の中で報告事項を整理するとか、文書の取り扱い方法を改善するといったような方法を講じまして、事務の簡素化、能率化を図るということを考えておりますので、特に簡易裁判所、家庭裁判所もそうでございますが、司法行政に従事しておる職員に従前以上の労働過重を強いるということには相ならないような施策を十分に講じてまいりたい、かように存じております。
○山崎(武)委員 終わります。 ————◇—————
○鴨田委員長 次に、裁判所の司法行政、法務行政、検察行政及び人権擁護に関する件について調査を進めます。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。飯田忠雄君。
○飯田委員 先日、法務大臣から御所信を承りました。その中で、特にきょうはその第一の法秩序の維持に関する問題、それから第二の犯罪者及び非行少年に対する矯正及び更生保護行政の充実について、この問題に関連しましてお尋ねをいたしたいと思います。 まず最初に、きょう民事局長おいででございましょうか。法秩序の維持に関しまして大臣は「人命軽視、暴力依存の風潮が一部にうかがわれる」ということをおっしゃいまして、その対策としていろいろな刑事的な立法を御提案なさっております。このことは私も大変重要な問題だと思いますが、この人命軽視、暴力依存、そういう風潮が起こってまいりました原因を追及しないで、ただ刑事立法だけをつくるということでありますならば、十分な効果は生じないのではないかと思うわけであります。 そこで、こうした治安維持の問題、それは結局は教育の問題と密接な関連があるのではないかと思います。終戦以来、わが国は不幸にして、占領政策によりましてわが国の従来からの思想、考え方そのものを根底から変えるという方向で教育がなされてまいりました。これを私は不幸と言いましたか、あるいは幸福だったかもしれません。どちらにしろ、そういう状況でやられてきましたために、多くの国民はどうしたらいいのかわからないので、したがいまして思想の混乱が生じております。しかも、教育界におきましては、この問題について何ら確実な手を打つことをしておりません。法務当局と文部当局、あるいはそのほかの子弟を教育する機関というものが別々な方向で動いてきた、この問題が今日の人命軽視の問題を生じさせたのではないかと思うものであります。予供は、生まれながらにしてまことに心は美しいのでありまして、生まれたそのままの子供が人を殺すという心を持ち得るはずはありません。そうした心を生ずるのは、やはり生まれてから今日までの間の教育がしからしめたものであろうと思います。 そこで、大臣は国の政治を担当せられるお方でございまして、法務大臣の職務以外に、国政全般についての調整というものについてもお考えであろうと思います。また、そうしたことが御任務であろうと思います。したがいまして、内閣におきまして総合的な政策、総合的に人命軽視、暴力依存という風潮をなくする政策、こういうものをおとりになるお気持ちがございますかどうか、この点についてお伺いをいたしたいのであります。
○瀬戸山国務大臣 法務省といたしましては、やはり現に起こりつつある、また起こっておるこういうものに対して、予防なり、あるいは責任を問うという措置をとるのは当然だという考え方で措置をいたしておりますが、そういう状況が起こる根本原因、これは複雑多岐であって、一法務省だけの問題で解決することではないと思います。 おっしゃるように、戦後の状況はだんだん変わってまいりました。いろいろあると思いますが、私の見るところでは、率直に申し上げて、余りに物質偏重の傾向か出てきておる。人間といいますか、精神面といいますか、そういう面が、残念ながら物質偏重の傾向で、一方がおろそかといいますか、薄らいできている状況にある。それは、おっしゃるとおりに教育にも大きな関係があるし、また、国民生活の状況が大きく変化をしてきておる。御承知のように核家族になっておる。そして婦人もそれぞれの職業に進出をする。子供に対して愛情を持ってしつけをして育てる、人間らしい道を指導する、こういう点がだんだん欠けておるのにあわせて、物質偏重、社会がきわめて開放的になってきておる。失礼でありますけれども、まだ未熟な子供あるいは成年に至るまでの、親としてあるいは社会としてのしつけといいますか、教育といいますか、それが非常に欠けておる。私は、日本の家族制度が大きな変化を来して、一面いいところがあると思いますが、また反面非常な弊害が生ずる大きな根源になってきておるのではないか。社会の大きな動きというものを改善することは楽ではないと思いますけれども、やはりそういうところに、政府はもとより、教育者も、全国民がここら辺で反省をしないと、一片の法律で取り締まるだけではなかなか解決しない、きわめて重要な問題であると考えております。これはもちろん政府としては、各担当省といいますか各機関が総合的に物を考え、進めなければならぬ、かように考えておるわけでございます。
○飯田委員 大臣のお考え、よくわかりました。そのお考えを、ぜひ総合政策を打ち出すということで御研究を願い、実際の政策を打ち出していただきたいと思います。 そこで、この人命軽視の問題につきまして、いろいろの問題がございますが、最近一つの事件が起こっております。これは、昨年の十二月二十八日に、菊田医師の起訴の問題を検討するという新聞記事がございます。この事件につきまして、これは実はもっと早くから起こっておるということが新聞に書いてあるのでございますが、このいわゆる赤ちゃんあっせん事件、このものについてどのようにお考えでございましょうか、お伺いをいたします。
○瀬戸山国務大臣 これは、告発といいますか、そういうことからいま刑事の事件として捜査中でありますから、そういう問題については刑事局長からお答えさせることにいたしますが、これは私は、人間社会の非常に微妙な問題だと思います。私は、人間を一個の個人として考える風潮がだんだん広まってきておる、これはちょっと言い方がおかしゅうございますが、人間社会の血のつながりといいますか、親と子というものは非常な厳粛なものだと私は考えておるわけでございまして、ただ一片の措置によって、その人間本来の厳粛な姿というものをただ法律や制度で簡単に変えるということが適当であるかどうかは、慎重に考えなければならない問題だと思います。 事件の問題については刑事局長からお答えをさせます。
○伊藤(榮)政府委員 ただいまお尋ねの菊田医師に係ります子供のあっせんといわれますケースにつきましては、昨年八月末に、愛知県産婦人科医会会長の方から仙台の地方検察庁に対しまして、菊田昇医師が自分の医院でお産をしましたAという女性の子供を、Bという女性が産んだことにいたしまして出生証明書を作成して渡してやった、そこでBという女性の方がその夫であるCという方との間に生まれた嫡出子ということで市役所に出生届をされた、これが医師法違反と公正証書原本不実記載、同行使罪になる、こういう趣旨の告発があったわけでございます。これを受けた仙台地検におきましては、昨年九月下旬、菊田医師の自宅等を捜索いたしましてカルテ等を押収いたしました上、所要の取り調べ、捜査を行っております。近く処理に熟すると存じますが、この問題の処理につきましては、半面、当該赤ちゃんあるいはその戸籍上の両親あるいは生みの親、こういった方々の名誉にはなはだ関係いたしますので、その取り扱いは特に慎重にいたさなければならぬと、こう思っておる次第でございます。
○飯田委員 本件の起こってまいりました背景についてお伺いをいたしたいわけですが、私、この背景について三つの重要な問題があるのではないかと思うわけです。 一つは、この子を産んだ母親が、自分の体面のために、あるいは将来の自分の利益のために、戸籍にその生産児の名前を載せたくない、こういう考え方であります。これは、産んだ母親が未婚者であるということもありますが、同時に、その家族の名誉のためということもあろうかと思いますが、そういう心が一方にある。そのために、実は生まれてくる子供を殺してしまいたいという願いも起こすということであります。こうした子供を産む母親が、自分の利益のためには自分の産んだ子供さえも殺して省みない、そういう風潮が起こっておるということが一つの原因、背後関係であろうと思います。 それから次に、戸籍法では、届け出に当たりまして立会人の作成した出生証明書の添付を義務づけております。先ほどのそうした退廃した気分とこの出生証明書の添付義務づけという問題が絡んでおるのではないかと思われます。 さらに、両親が実子として届け出をするということを何とかして逃れる方法はないだろうかという願いがあるのではないかと思われるわけであります。 こうした背景に対して、菊田医師は、これを子供の命を救うという観点からいろいろ行動をとっておりますが、その行動につきまして、子供を産んだ母親のふしだらさ、あるいはそうした廃退的な気分、こういうものについては一切たな上げということで言っておられます。ここに一つの問題点が存在すると私は考えるわけでありまするが、この点についての御所見はいかがでございましょうか。
○瀬戸山国務大臣 原因は、先ほどの問題に触れると思いますが、人間社会は人間の生命を満足に生かすためにお互い社会をつくり、あるいは政治を運行するという組織をつくっておると思いますから、人間の生命は最高に尊重しなければならない。それが男女の接合によってできる。私は、これは人類の生命を発展させるための、これは個人の自由でなくて、人間形成の根本から来ておるものだ、人間ばかりではなく、生命というものの根本から来ておるものだと思います。そういうことを考えない風潮が、先ほどの問題にも触れてきますけれども、自己一身の問題だけを考えるという風潮が、残念ながら最近相当びまんをしておる。そこで自分の勝手で男女の交接をいたしますが、あるいは生活経済上の問題、あるいはおっしゃるように体面の問題等によって他の新しく生まれてくる人命というものをないがしろにする、こういうことは菊田医師の問題だけではなくて、世間に相当潜在しておる、あるいは顕在しておる憂うべき事象であると私は思いますが、これをいかに処置するか、これは全体の政治に関係があるわけであります。しかし、これは教育にも関係があるし、人間の考え方にも関係がある。あるいはさっき申し上げましたような社会生活のあり方にも関係があるわけでありますが、今後、よその国は別として、わが国の将来を考えますときには、そういう根本に触れてみんなが真剣に考え、対処すべきである、かように考える次第でございます。
○飯田委員 時間の節約のために、少しく私の方から述べまして御意見を承りますが、養子の民法上の地位というのはもちろん民法に決めてありまして、嫡出子の身分を得るわけでありますので、養子は実際は実子と同じではないか。問題は、その親がその子供を実子と同じように事実上扱うかどうかの問題、親の気持ちの問題事実問題であろうと思います。その事実問題を法律問題にすりかえるということは余り好ましいことではないと私は思いまするが、現在の養子制度というものが、少しく一般の世間の人の考え方と法律との間にどうもずれがあるのではないかと思われるわけです。そういう問題、たとえば、成年者は養子能力がある、養子能力がない者については法定代理人が養子のときにいろいろ手続をするのだ、こういうことになっております。そうしますと、たとえば捨て子が生じました場合に、その捨て子は親がわからない、こういう親がわからない者につきましては、法定代理人というものも、特に国か特別に法定代理人をつくらなければないはずなのでございますが、これは実際においてはどういうふうに行われておりましょうか、お伺いをいたします。
○香川政府委員 捨て子の場合の処理はいろいろございますが、たとえばいまお尋ねの点に焦点をしぼりますと、ある人が養子にして引き取りたいというふうなときに、捨て子のあった場所の市町村長とかいうふうな者が手続をとりまして、そうして特別代理人を選任するというふうなことが通常でなかろうかと思うのであります。ただ、おっしゃるように、全部そういう形で手続が行われておるかどうか、実態関係は定かではございませんが、そういうのが通常じゃなかろうかというふうに考えております。
○飯田委員 この養子の場合に、実は養子という言葉が非常によくないということを菊田医師は言うておられまして、だから実子として戸籍に載せる方がいい、こう言っておられるわけです。実子と養子というものは法律上は同じなんですけれども、むしろ養子の方が実子よりは人権保障のたてまえからは有利であると私は考えます。ところが、世間一般からは養子という言葉は大変悪いので実子というふうにしたい、そのために戸籍簿には何とかして実子と載せたいのだが、そのためには出生証明書にうそを書かざるを得ない、こういうことでございます。そこで、その出生証明書というものはどうしてもつけなければならぬものなのかどうかということについてお伺いをいたしたいのであります。
○香川政府委員 市町村での出生届を受理する場合の手続としまして、ただ届けてきたからというだけで、それが真実だということで戸籍上の処理をするというのはいかがなものかと思うのでありまして、それぞれの場合に、出生なり、あるいは死亡、婚姻というふうな関係の届けにつきましては、しかるべく確かな証明書を添付していただいて、それによって市町村長が判断するというたてまえになっておるわけでありまして、これは実際の窓口事務の処理としてはそれ以外にちょっと戸籍の真実を担保する意味での手続としては考えようがない、現行のそういった取り扱いが一番妥当でなかろうかというふうに思っております。
○飯田委員 出生証明書が戸籍の真実を担保するためにどうしても必要だということは私も理解できます。 そこで問題は、そうした養子であるということに対して非常に卑下を感ずるということをなくすることが必要ではないか、そのためには、戸籍簿が一般に縦覧されるからあれは養子だということがわかるので、そういうことさえなければ養子だということはわかりませんので、親子の間だけの問題になります。そういう問題につきましては解決方法は考えておいでにならないでしょうか、お伺いいたします。
○香川政府委員 ただいまのところ、養子というふうに戸籍に記載されていることが公開をはばかる問題ではないのじゃないかというふうに思うのでありまして、さような面からの公開を制限するということは、戸籍制度の機能から申しましていかがなものかというふうに思っておるわけでございます。
○飯田委員 いまここで問題になっておりまするのは、出生証明書が実は問題になっておるわけであります。出生証明書というものには必ず親か書いてあるのです。ところが、捨て子の場合は、親を書かれては困るので捨てるわけなのでございます。親を書かれていいものなら、堂々とこれは養子にやるであろうと思われるわけです。そこで、この出生証明書はどうしてもつけなければならないということであればそれを承認するとしまして、親の名前を戸籍簿の上にどうしても載せなければならぬのかどうかという問題、どうしても載せなければならぬのなら、それを一般に公開するようなことは困るではないかという問題、つまり親の名前を知られたくない、つまり不義の子です。不義の子を産んだ親だ。それを天下に公表されたのではもう嫁に行くこともできなくなるから、実は捨てたいんだ、こういう心なんですから、そういう問題についてはどうでございましょうか。
○香川政府委員 子供の出生届に基づいて戸籍に記載するといたしました場合に、もともとその戸籍に登載すること自身か身分関係を公証するためのものでございますので、親子関係をはっきりさせなければならぬことは当然のことだろうと思うのであります。ただ、いまおっしゃいましたような出生の秘密と申しますか、そういったことによりましては必ずしも公開することが適当でないという場合もあり得ると思うのでありまして、さような意味から先般の国会で戸籍法の一部改正がなされまして、例の戸籍の公開制度についての合理的な制限ができるようになっておるわけでございます。したがって、いたずらにその出生の秘密をあばくような意味での戸籍の謄抄本の交付請求というふうなものは、法律的には市町村長は拒否できるというようなことになっておるわけでございます。ただ、これは実際問題といたしまして、窓口処理としてははなはだむずかしい、難を強いているようなものでもあると思うのでありますが、その辺のところをやはり事案に応じて具体的に処理していただくしかないように相なるわけでございまして、さらにいろいろ工夫を重ねてみたいというふうに考えております。
○飯田委員 たとえば親の名前を載せないで、実子ということで載せるということは、実際上いままで行われてきておりますが、法律上は違法であります。しかし実際上は行われてきておりますが、そういうことをやるということは、実は生まれてくる子供の人権を考えないやり方ではないかと私は考えるわけです。つまり、親子の間の関係を完全に絶ち切って、そしてこれを実子として登録するということになりますと、それはあくまで親中心の考え方でありまして、子供中心ではない。生まれてくる子供は実はもっと自由でなければならぬわけです。実子ということで登録されますと、もうその人は、親がどんなに貧乏になって落ちぶれようとも、実子としての義務を尽くさねばならぬ。また縁を切ることもできない。つまり、離縁をする自由を失うわけであります。一つ取り上げてもそういうところかございますが、もう一つは、もう一方から言いますと、産んだ親がいつまでも貧乏人であるとは限らない。大きな財産を残して死ぬかもしれません。相続人がいないかもしれない。その場合の相続関係も切れてしまうということで、そういう子供中心という点からいきますと、果たして実子として登録するのが有利なのかどうかということは大変疑問がございます。 そこで私は、この問題につきましては特別な制度をつくることが必要ではないかと実は思うわけです。国で捨て子の責任を負う制度が何とかできないかと思うわけでありますが、そのことに関連してであろうと思いまするけれども、新聞によりますと、この新聞は、毎日新聞だとか朝日新聞だとかいろいろ各新聞によりますと、昭和五十一年の五月二日の新聞ですが、その中で、菊田医師及びこれに賛同する人たち、特に参議院議員の下村泰さんといいますか、括弧してコロンビア・トップと書いてありますが、この下村さん以下参議院議員十人の方が、当時の法務大臣である稻葉法相に対して陳情をいたしております。この法制化に対する陳情に対しまして稻葉法務大臣は、何とか考えようといういい返事をした、こういうふうに報道されております。 それで私お尋ねいたすのですが、法務大臣が参議院議員に表明されたこの回答、これは三つの新聞で同じようなことが書いてありますので、多分それは事実ではないかと思いますが、あるいは誤報かもしれませんが、そういうことがございます。これにつきまして、いま現在の法務大臣はどのようにお考えでしょうか。これは意地の悪いことで申しわけないのですが、お尋ねをいたします。
○瀬戸山国務大臣 その問題について前の稻葉法務大臣がどうお答えなさったか、速記録を見ればわかると思いますけれども、考えてみるということは、いろいろ考えてみることでしょうから、考える問題ではあるわけでございますから、どういうふうに考えるかということは、今後の問題だと思います。
○飯田委員 突然の質問なので、恐らくどういうことを答えたらいいかわからぬからそうおっしゃったのだと思いますが、とにかくこの実子特例法をつくれという運動、これは相当強く行われておるという一つの例ではないかと思います。 そこで、こうした実子特例法というものは慎重に御考慮願って、簡単に実子として登録できるというだけの法律をつくられますと、子供の人権侵害ということが起こりますので、もう少し違った形で、捨て子を保護するという形、捨て子保護法とでもいいますか、そういう形でおつくりになれば弊害は生じないのではないかと思います。そこでこの問題につきまして、時間の関係で私、はしょらせていただきますが、まず捨て子を救済する、そういう御意思が一体政府にあるのかどうか。つまり、これはもう民間人に任せてしまっておけばいい問題とお考えになっているのか、それとも国でそういう捨て子を救済する立法をして制度をつくろうというふうにお考えになっておるのか。これは前の稻葉法務大臣の御回答がありますので、そういう点を絡めて実はお尋ねをするわけであります。
○瀬戸山国務大臣 一つの生命が生まれてきた、これを本当の親以外の人に直ちに実子としてやる、戸籍に入れるか、これは御承知のとおり民法の親族あるいは相続その他に大きな影響があること、と同時に、人間社会の形成に大きな関係があることだと思いますから、そう簡単にこれは結論を出せない、かように私は考えております。 それから、どうにもならないそういう子供があった場合どうする。国の子とするということ、制度をつくるということも簡単でありませんが、もちろんそれを放置するということは適当でない。どういう手段をとってそういう人を救済するか、これは当然考えなければならぬことであると私は考えますが、されば法律上あるいは民法に関係してどういう措置をとるかということはきわめて簡単なことじゃないと考えております。これは民法の研究で、法制審議会等でも研究をしていただいておるようでありますから、そういう各方面の考え方をまとめて細部の方式を決めなければならない、かように考えております。
○飯田委員 法務大臣から、こういう制度についてはお考えを願うという御表明かあったというふうに、私お聞きをいたしましたので、大変喜んでおるわけでありまするが、この問題につきましてはこれぐらいにしておきまして、また後ほど問題点が出ましたらお尋ねすることにいたしたいと思います。 それで、大臣のこの御所見の中で刑法改正の問題について述べておられます。刑法全面改正の問題についてどういうふうにお考えになっておるかという点についてもっと詳しくお聞きしたいと思うわけであります。 そこで、まず刑法全面改正につきまして法務省が準備作業を始められましたのが昭和三十一年、それから今日まで二十何年かたっておるのですが、いまなお政府案が完成しておらないようであります。それはどこに原因があるのでありましょうか、お尋ねをいたします。
○瀬戸山国務大臣 いわゆる刑法の全面改正については、いまおっしゃるように長らく法制審議会で検討いただいて、四十九年五月でございますか、全面改正に関する草案をつけて答申が来ておるわけでございます。 申し上げるまでもなく、刑法は国民の生活に重大な関係のある重要制度でございますから、国民各方面の意見を聞いて、将来にわたって国民の支持を得る法律を制定しなければならないという考え方で進んでおるわけでございます。 そこで法務省としては、御承知でありますが、各方面の意見を聞きながら、一昨年、五十一年十一月ごろ、その検討の結果によって、答申案についての中間的な考え方を世間に公表し、またこれに対する意見をまとめる、こういうことをいま進めております。 いずれにいたしましても相当長く今日に至っておりますから、いま法務省としては鋭意その成案の作業を急いでおる、こういうことでございます。いろいろな意見がありますから、そういうものももちろん十分考慮に入れ、参考にし、進めていこう。しかしいまおっしゃるように、専門家、各方面の方にお集まりいただいておる法制審議会で長らく検討されて成案を得ておるわけでございますから、その根本を全部変えるというような改正を考えておるわけじゃありませんが、しかしその案についてもいろんな意見がありますから、それが妥当であるかどうか、こういうことをずっとしさいに検討して、成案をできるだけ早くしたい、こういうことでいま鋭意努めておるところでございます。
○飯田委員 法制審議会のメンバーが相当かわってきて、反対意見を持っている人は全部出てしまったということが言われておりますが、私はそれは本当かどうか知りませんけれども、言われておりますが、そういう状態になってまいりました原因、また最近まで刑法全面改正反対ということが非常に声を大にして行われてきたそのわけ、そういうものは一体どこに原因があるとお考えでございましょうか、お尋ねいたします。
○瀬戸山国務大臣 詳細については刑事局長からお答えすることにいたしますが、たとえば日本弁護士連合会等では真っ向から全面反対、私は率直に申し上げて、これは理解がいかないわけでございます。いろいろ反対の理由にありますけれども、重罰主義に陥っておる、こういうことも言われております。スローガン的に言われております。それから、私ども全然理解できませんが、軍国主義的だという言葉も使われておるようでございます。個々の条文についていろいろな意見がありますし、特に保安処分という制度を入れるということになっておりますが、これについては、保安処分というのがあらゆる面で将来広く適用されて、非常に人権を侵害するおそれがあるのではないかとか、こういうたくさんの指摘がありますけれども、もちろんそういう点は詳細に検討いたしておりますが、そういうことで、御反対の方がおられることは事実でございます。 詳細については刑事局長からお答えさせます。
○伊藤(榮)政府委員 ただいま大臣からお答え申し上げたとおりでございますが、現在この改正刑法草案に強い反対意見を表明しておられます団体が幾つかございますが、そのお考えは大体三通りになっていると思います。 一つは、日本弁護士連合会の御意見に代表される反対意見であります。要するに、草案が処罰万能主義あるいは重罰主義という時代おくれの考え方に立っておるんだ、すなわち基本的人権の尊重を基調とする日本国憲法の精神を無視している、こういうお立場から、およそ現行刑法に比して草案が処罰の範囲を広げたり、刑罰を重くしたりしている部分にほとんど例外なく御反対でございます。また不定期刑や保安処分の導入についても適当でないとしておられるようでございます。 それからもう一つのカテゴリーといたしまして、一部の刑法学者のグループがお出しになっておる意見がございます。おおむね日本弁護士連合会と御意見は似ておるわけですけれども、他方犯罪者の改善更生を充実するという観点から、刑罰や保安処分の内容について草案よりもっと工夫をこらすべきであるという御意見がある一方、いわゆる被害者のない犯罪と言われておりますポルノとか賭博、こういうものの非刑罰化というようなことを提案しておられるのでございます。 第三のグループといたしましては、日本精神神経学会によって代表されます反対意見でございます。この方々は、保安処分の新設が、いわば戦時中の予防拘禁のようなものに用いられていくおそれがある、要するに治療の名のもとに長期間の拘禁を図る制度で、精神障害者に対する不当な差別であるというようなこと。また、体制側に都合の悪い人物を保安処分の名において社会から隔離することになるのじゃないか、こういうような反対の御意見でございます。 この三つが主なものでございますが、そのほかにマスコミ関係からは、公務員による機密漏示罪あるいは企業の役職員による企業秘密の漏示罪、こういうものを設けることに反対しておられますほか、名誉侵害罪における事実証明の規定の削除の問題について御反対でございます。 なお、幾つかの婦人団体の方々が堕胎罪の廃止を主張しておられますほか、消費者運動の抑圧につながるということで、企業秘密漏示罪や準恐喝罪というものの新設に反対しておられるようでございます。 すべてを網羅したわけではございませんが、現在刑法全面改正に対する御反対の論拠は大まかに言うとそういうことであろうと思います。 私どもといたしましては一昨年、大臣も申し上げましたような中間検討結果の報告を出しておりますが、その中でも、これらの御意見を十分踏まえながら一応の中間結果を出しておりますが、なおこれらの諸点をよく承りまして、いずれにいたしましても刑法典と申しますものは国民の大多数の合意の上につくられるべきものであると思いますので、なお謙虚にこれらの御意見に耳を傾けながら作業を進めていきたい、こう思っておる次第でございます。
○飯田委員 ただいまの御説明で反対者の意見はわかりました。この反対しておられる方々の御意見を考えてみますと、結局、一つは憲法の保障する基本的人権の問題から反対しておられるように思われます。それからもう一つは、その反対者のよって立っておられる道徳観念とそれから刑法理解者の道徳観念とのずれから来る問題もあろうと思われます。いずれにしましても、この刑法というものが前の時代からの刑法の思想の流れのもとにつくられておるのではないかという一つの考え方、そういう見方、それからもう一つは、刑法によって過去の暗い時代の状態が復活するのではないかという心配、そういうものが結局反対者の心にあるのではないかと思われます。私は、こういう反対者の意見を払拭するためには、やはり立場をはっきりさせることが必要なのではないかと思うわけです。 元来、旧刑法、いわゆる明治刑法と言われる現行刑法ですが、これが明治憲法の思想、明治憲法が保障する政治体制のもとにおいて発達した道徳観念、こういうものが基礎となって、そうしたものに対する反抗を処罰するという形、これが現行刑法の姿であろうと思われます。またそれが従来の国民の目から見ますと大体もっとものことだという合意を得られておったのだろうと思います。ところが今日に至って、そうした考え方に対しての反抗が起こってくるということになりますと、この反抗を避けるためには、やはり全国民の合意を取りつけ得る根拠、それは何であろうかという点を深く洞察することが必要ではないかと思うわけです。 今日われわれの前に提示されておりますものは、まあ憲法などはだめだという憲法反対論者もおりますけれども、少なくとも日本国家の今日の段階においては日本国憲法がもとであろうと考えるわけです。この日本国憲法というもの、このものに根拠を置いて、憲法にのみ根拠を置いて、そこから発生した刑法、それをお考えになってみるお気持ちはないかどうか、このことを私はお尋ねしたいのです。 それはどういう意味かといいますと、現在の日本国憲法はいろいろな保障をいたしております。国家を維持するための保障、行政、立法、司法を維持するための保障、それから国民の人権を保障するための保障、いろいろの保障を規定しております。そして、これは国が責任を持って国民に対して保障するのだということを約束しておるはずなんです。その約束を破ってそれを侵害するという行為、それが国によって処罰されるべきものではないか。それ以外のものの処罰は政策的にあるかもしれませんが、根本法として、基本法としての刑法において処罰すべき内容というものはそうしたものではなかろうか、こう私は考えるわけです。現在の現行刑法はやはり明治憲法に違反するものを罰してきたという観点からいたしますならば、当然そうあるべきだ。そうしますと、いままで非常に御苦労なさってつくられてきました草案というもの、このものをもう一遍根本から考え直して、どういう点を一体何のために刑法は改正するのかという点から始められましてお考えを願えたらありがたいと思うわけであります。そうして根本からみんなが納得できる刑法、そのものにぜひお力を尽くしていただけないものか、こう思うものであります。この点について大臣、御答弁をお願いいたします。
○瀬戸山国務大臣 飯田さんのおっしゃるとおりにわれわれも考えております。もちろんこの刑法は、御承知のとおりいろいろ禁止、処罰の規定を設けておるわけでございますが、これはやはりその社会における道徳といいますか規律といいますか、これを基本に刑法は制定されておるものだと思います。今度の改正草案、これはいろいろ御意見があることは先ほどから申し上げておりますが、もちろん現行日本国憲法の精神を前提にして草案はできておるものだと思います。 ただ問題は、憲法はいまおっしゃるとおりでありまして、人間の集まりの国でありますから、個人の人権をできるだけ尊重し、社会が平和で安全で、個人が自由に活動ができる、こういう社会をつくるのが私は憲法の目的としておるところだと思います。 ただその際、最近私が感じておりますことは、もちろん国民の人権は尊重されなければなりません。憲法が人権を尊重するというのは、それによって社会全体が平和で安全で、個人も自由に活動ができる、平和に生活ができる、こういうために多数の人権を今度の憲法は明記いたしておる。したがって、その個人の人権は、言うまでもないことでありますけれども、憲法に書いてありますように不断の努力によってやらなければいかない。しかもその人権は社会公共のために使わなければならない。しかもそれは乱用してはならない。問題はそこの調和であろうと思います。調和の問題で意見の分かれるところがあるわけでありますが、いまの刑法改正草案は決して現在の憲法を無視しておるとか、あるいは前提としないでいわゆる旧憲法のたてまえを前提にしておるとは全然考えておらないわけでございます。
○飯田委員 大臣の御所見はわかりましたが、実は政府の方でお出しになりました改正刑法草案、あの中に説明条項がございます。その説明条項で、何のために刑法を改正しなければならぬかという点についての御説明が余りないわけです。それからまた刑法を改正する根本の態度におきましても、憲法の保障条項違反を罰するという形での基本法としての刑法をつくるのだという御熱意があの説明ではどうも見られない。何か昔からの準備草案を焼き直していくという形のようにとれますので、こういう点がやはり反対者の心を納得させる、反対者の考えを納得させることのできない理由であろうと考えるわけです。 そこで、思い切ってこの際、いままでの草案、これはもう非常にむずかしい、大変御努力のあったことに対しては申しわけないのですけれども、これを一応撤回できたら非常にいいのじゃないか。そして新しい刑法草案をもう一度つくり直す。それはいままでのを参考にされてもいいのですよ。いままでのを参考にされておつくりになるのは構わぬのですけれども、根本の態度を変えられておやりになることはお考えになっていないのかどうか、お尋ねいたします。
○瀬戸山国務大臣 なるほど昭和十年代から現行刑法改正の問題点を検討されてきております。そういうものも参考になっておることは私は事実であろうと思います。しかし、先ほども申し上げましたように、刑法はそう時代時代によって変わるべきものではない人間社会の道徳律といいますか、あるべき姿というものがおよその根底になってきておる。そういうところが、それでは今日旧憲法時代と完全に変わっておるかというと、そういうことではないと思います。でありますから、そういうことはつながりはあるけれども、これは事実として認めなければならない。けれども、そうかといって、よく言われますけれども、昭和十年代につくったものの延長だ、こういうふうな趣旨の意見を言われる方もありますけれども、こう言っては失礼ですけれども、憲法は施行以来もう三十年、その間において、先ほど申し上げましたように現行の憲法を踏まえて、それを前提としてずっと長く検討されてきておるものでありますから、私はこれを全部洗い直すという必要はない。ただ、いろいろ御意見がありますから、また傾聴すべき意見も多々あるわけでございますので、そういうものも含めて、先ほど申し上げましたように長きにわたって日本の刑法典となり得るようなもの、国民大多数の皆さんの支持を得られるようなものに仕上げるのがわれわれの責務である、かように考えておるわけでございます。
○飯田委員 きょうは抽象的な論議ではどうも解決しませんので、また将来こういう問題について個々にはお尋ねをすることにいたしますが、この刑法改正の問題につきまして私こういう発言をいたしておりまするのは、反対者の気持ちをやわらげる、なくするということが必要だ、そのためには、刑法は憲法だけによっているのだ、憲法以外の道徳によっていないのだ——いわゆる道徳によるということになりますと、道徳を認める認めないでいろいろ議論が起こります。したがいまして、一応道徳というものは、現在の社会においては日本国憲法の憲法体制のもとに道徳ができるのですから。道徳があって憲法体制があるという考え方もあります。ありまするが、法律的な考え方から言いますならば、憲法体制ができて、その憲法体制を実現するために道徳というものが生まれてくるわけです。しかも、この憲法の条項に違反するというものを罰するということで十分犯罪類型はでき上がるわけでありまして、現在の犯罪類型の姿から言えば余り変わらない。ただ違うのは、その罪の重点視が変わってくるわけです。どの罪を重点視するかという問題は、憲法の精神から判断しますと変わってきます。また、罪の種類もおのずから限定されてくるわけです。そして、憲法か決めておる保障条項に違反する、そういう罪以外の罪については、これはもう行政罰則の問題であって、行政罰則で罰するならばそちらの方でやるということで踏み切るのが正しいと私は考えるわけです。こういう問題について、ひとつ根本的にもう一度お考え願えればありがたい。そうすれば、刑法がいまのようにたな上げになった形でおらないで、世の中に出てきて皆さんの審議の場に出てくることができるじゃないか、実はこう考えるわけです。それでそういう意見を私は述べたわけですが、そこで、時間の関係で次の問題へ入ります。 次の問題は矯正更生保護施設の問題です。 この問題につきまして、私は今日、監獄だとか少年院というものの本質をどうお考えなのかという点で非常に疑問を感ずるわけであります。ここは犯人なりあるいは非行少年をほうり込んで教育するのだ、矯正作業をするのだとおっしゃるのだが、そういうことは実際には行われておるかどうか、これに大変私は疑問を持ちます。 そこで、現在の監獄、少年院、こういうものの設備がそうした刑罰の目的を達するにふさわしい設備になっておるかどうか、それから、勤務職員の能力、教養がそれに値するだけのものであるかどうか、定員は十分なのか、こういう点についてお伺いをいたしたいのです。そして、勤務員の人格向上としてはどういう方法をとっておられるか、これも関連してお尋ねをいたしたいわけであります。
○石原(一)政府委員 現在いわゆる監獄と称せられておりますものは、組織法上では刑務所、拘置所、もちろん支所がございますが、そういうものでございます。それから、少年院はもとより少年院になっております。そのほか、資質の鑑別をいたしまして家庭裁判所に的確なる判定をいたす少年鑑別所がございます。 矯正施設、順次申し上げておきますと、拘置所は七カ所でございまして、刑務所は六十七カ所、本所は合計七十四でございます。そのほか支所が百十四ございまして、大半は拘置所でございますが、これを全部行刑と称しますれば、百十八の支所がございます。それから少年院は六十二ございます。鑑別所が五十一でございます。 これらのまず施設でございますが、刑務所の場合には、歴史も古く相当前からできておりますが、率直に申し上げまして相当老朽なところがございます。この点につきましては、当委員会の各委員からも御鞭撻をいただいているところでございますが、財政当局の好意ある計らいによって順次改善を遂げていくという方針で進んでおります。 少年院も同様でございまして、終戦当局はわずか十余りしがなかったのが六十二になったという事情からおわかりのように、当時軍の施設あるいはそのほか終戦後不用になった施設を直しまして使ったような関係から、きわめて老朽施設が多いのでございます。この点につきましても、先ほど申し上げたように、財政当局と十分折衝いたしまして、順次改築、新築をいたしていきたいと思っております。 少年鑑別所は、最初は観護所等という名前でございました。これが少年院法の発足とともに少年鑑別所になりまして整備されておりますが、まだ足りない点がございます。この点につきましても十分なる配慮をいたしたい。 要するにこれら矯正施設は、人間を収容して二十四時間にわたりまして処遇をするというところでございまして、その処遇環境の整備ということがまず大事でございます。それとともに、これらの処遇に当たります職員の宿舎も同様に老朽化しておりますので、これも直していきたい、かように思っております。 次に人員でございますが、行刑施設が一万六千人、少年院が約二万八千人、鑑別所が千二百人、その他矯正管区、本支所等を合わせまして、全矯正職員は二万一千人でございます。 特に刑務所の場合には、いわば牢番というような印象がございまして、アピールする仕事ではございません。そのために採用に困難を来していることは事実でございます。しかしながら、最近におきましては大学出の方も相当入っておりまして、数はふえてはおりませんけれども、内容的には充実いたしております。特に、矯正研修所及び研修所の支所が八つございますが、これらの研修を通じまして、少ない人員でありましても能力の向上に今後とも努めていきたい、かように思っているところでございます。
○飯田委員 もう時間が参りましたので簡単にお伺いしますが、いま私のお尋ねしましたのは、そういう形式的あるいは物質的な問題じゃなくて、心の問題をお伺いしたのです。いまの監獄、少年院に人間をつくり直す心はあるかということをお尋ねしたのです。そういう問題についてどうなんでしょうか。もう簡単に……。
○石原(一)政府委員 刑務所、少年院等を含めまして、矯正と社会復帰というのが現在の矯正の目標でございます。矯正といいますのは、反社会性、反道義性を除去いたすことでございまして、社会復帰といいますのは、そうした反社会性、反道義性をなくした上で社会復帰を可能にするということに相なりますれば、当然心の問題が出てまいります。しかしながら、単に昔の修身教育のような講義をしていただけでは、受刑者なり非行少年が立ち直るとは考えられません。そのために、いわゆる職業補導あるいは教科教育あるいは生活指導を通じまして、社会への適応性を付与するということに努力しているところでございます。 要するに、現在の受刑者、非行少年の実態を見ておりますと、まず第一は共同生活への順応が足りないようであります。つまらないことで他と協調をなくしてけんかをしてしまう、あるいは犯罪に走るということがございます。それから二番目は、規律ある生活が維持されていない。やはりこうした社会風潮、特に高度成長時代において物質が豊かになったことから、享楽的な方面では充実いたし過ぎた感じがございますので、規律ある生活を維持できない、これを規律ある生活をさせなければなりませんので、この点について努力するわけでございます。それから最後は、やはり集中心と忍耐心が足りないようであります。せっかく出所あるいは出院いたしましても、たちまち犯罪人として戻ってくるということを考えてみますと、やはり集中心、忍耐心が足りない、かような点を、あるいは体育により、刑務作業もしくは職業補導により、あるいは生活指導により規範意識を覚せいさせるとともに、勤労意欲といいますか、現在の社会に適応する能力と意欲をつけさせるということには十分努力しているつもりでございます。
○飯田委員 時間ですので、私の御質問しました内容について的確な御答弁は得られなかったので非常に不満足でございますか、時間がありませんのできょうはこれでやめます。また後ほどゆっくり伺いますので、その節またよろしくお願いいたします。
○鴨田委員長 次に、東中光雄君にお願いします。
○東中委員 法務大臣は、先日の所信表明で「新たな要員を得た日本赤軍が再びこの種の国際的テロ事犯を敢行するおそれも多分にあり、その再発防止対策が当面の急務であることは申すまでもありません。」と言われまして、また、かかる過激派各派の不法越軌行為はいろいろな害毒を流すので、十分な取り締まりか必要だ、検察体制の強化が必要だということを言われたわけであります。私たちは昨年の十月に、共産党としまして「暴力・テロ集団根絶、ハイジャック防止対策要綱」というのを発表しました。その中で、特に政府・自民党の長い間の暴力集団泳がせ政策及びそれに根差した防止対策の不備、怠慢ということを指摘しまして、赤軍派など暴力テロ集団の根絶が第一に重要な課題だということを指摘したのでありますが、ちょうどそのときに、すなわち九月三十日、ダッカ日航機ハイジャック事件が起こされた直後に京都大学で、御承知だと思いますが、「九・二七日航機HJ−同志奪還斗争断乎支持」こういうプラカードが出まして、それを書いた一九八〇行動委員会というのが大学当局から教室を措りて、赤軍派の「よど号」事件のときに逮捕された高原、塩見という二人の早期釈放をかち取る全関西集会というのをやっています。これは予算委員会でも追及しております。ここに写真を持ってきておりますけれども、こういうプラカードを掲げたという問題でありますか、こういうのに対してどういうふうに処置されてきたのか、法務省、また警察も来ていただいていると思いますが、まずお伺いしたい。
○福井説明員 日本赤軍の国内の関係者が百人前後おりますことは、この委員会でも御答弁申し上げておりますが、この京都の一九八〇行動委員会と申しますのも、日本赤軍の広い意味での同調者と申しますかシンパ層であろうというふうに思っております。ただ、これについては実態が必ずしも明確でございません。現在、鋭意その実態については解明中でございます。
○伊藤(榮)政府委員 私どもも警察と協力しながら実態の究明に努めておるところでございます。
○東中委員 実態の究明に努力するけれども、実態が究明されたのでも何でもない、すでに数カ月たっているわけです。特にこの間の予算委員会で文部大臣は、「京都大学の昨年の夏休み以降の、過激派学生によります暴力事件が七件ございました。」という答弁をされております。暴力事件が七件ございました、そのことを文部省としては聞いておるということを言っておられるわけですが、こういう暴力事件について、警察、検察はどういう対処をしておられるのか。最大の急務であるというふうに法務大臣は所信表明されておるわけですが、お聞きしたい。
○瀬戸山国務大臣 東中さんからお話しのように、大学を中心としていろいろ暴力ざたが行われておる、こういうことで実は警察庁、文部省にも申し入れをいたしまして、こちらで全体の実態を調査いたしました。まだ調査が行き届かないところもあるようでありますが、とにかく意見のあるところは結構でございますけれども、暴力によってその主張を遂げよう、こういうことは断じて許さるべきものではございません。そういう意味で、大学の構内を占拠し、あるいは武器を集めてそこを拠点としておる、それが最近内ゲバがある、あるいは外にもそういうグループが暴力によって社会に害を流しておる、こういうことは厳に取り締まりといいますか処断をしなければならない、そういう方針でいま進んでおるわけでございます。 ところが、東中さんも専門家でありますから御理解願えると思うのでありますが、当然なことと言えば当然でございますけれども、いまの刑事訴訟法なり警察官職務執行法なりは、何か起こらないとこれに手をつけられない、これは御承知のとおりであります。起こっても、なかなかその真相がわからない。あるグループに逃げ込んでいって、これはもちろん犯罪でございますから巧妙な方法でやるわけでございますが、その実態がつかみにくい。こういう実情があって、警察も検察当局も非常に苦心をしておるということだけは御理解を願いたい。予防的にやることができないいまの制度でございますから、そこに非常な苦心がある。前からよくおっしゃるのですけれども、そういう者を泳がせておるという話がありますが、そういうなまやさしい事態ではない、これだけは御理解願いたい。 具体的なことは局長から答弁させます。
○伊藤(榮)政府委員 警察からも具体的にお答えがあると思いますが、京都大学関係の事件で過激派を検察庁で扱っております状況について最近のものだけを申し上げますと、五十二年の十月に公務執行妨害で一人受理いたしております。十一月に同じく公務執行妨害で二人受理しておる。それから、本年になりまして一月下旬、京都大学の時計台の落書き事件ということで六名を受理いたしております。さらに、今月の初旬、五名を警察から受理しておるという状況でございまして、逐次処理をいたしております。
○福井説明員 京都大学における暴力事件の捜査状況について申し上げます。 私の方で五十二年中に発生を認知して捜査いたしました事件は十三件ございますが、検挙は十三人でございます。(東中委員「去年の夏からでいいです」と呼ぶ)去年の七月以降でございますと十二件でございます。検挙者の数は同じでございます。本年は、法務省からも御答弁がございました一月十日の時計台の落書き事件、これで六人を検挙しております。
○東中委員 はなはだ要領を得ぬ話ですけれども、要するに文部大臣が予算委員会の総括質問の答弁の中で、七件起こったと聞いておるということを言っておるわけであります。いま伊藤刑事局長の言われたのは、四件の送検を受けておるということであります。私たちは七件だとは思っていませんけれども、政府側が言われているのでそうだということです。それで四件しか送検を受理していないという状態にある。これも、学校占拠がまだ続いておるという状態が事実上最大の課題だと言われているわりには、のんきじゃないでしょうけれども、検挙率が非常に悪いということを指摘しておきたいわけであります。 もう一つ聞いておきたいのですが、去年の秋に、殺人事件を含んでおる内ゲバ事件について私は質問をしたわけですが、昭和四十四年から内ゲバ殺人事件というのが発生した。昨年の十月現在で四十五件発生して二十二件解決を見たという三井刑事局長の答弁があったわけでありますが、その後の参議院の審議などで、二十二件解決と言っておるのは、逮捕したというのではなくて、指名手配したというのも解決の中に入っておるという答弁がなされておるわけでありますけれども、あれは公然とやって、しかもそれを記者会見で宣伝したり、あるいは声明を出したりというようなことをやっている殺人事件であります。昭和四十四年から現在まで殺人を伴う内ゲバ事件の発生件数は何ぼか、それで死亡、被害者は何人いたか、警察として検挙して全面的に解決したのは何件か、指名手配などで犯人追及中のものは何件か、全く未解決のものは何ぼかということを警察庁にお聞きしたい。
○福井説明員 四十四年以来内ゲバ殺人事件が発生いたしましたのは五十一件でございます。六十二人の死亡者を出しております。鋭意捜査の結果、検挙し解決いたしましたのが二十二件でございます。検挙者は三百十人でございます。現在指名手配をしておりますのが四十八人でございます。
○東中委員 それで、検察庁へ送検された件数と人数、起訴不起訴の実情について件数と人数、これをお伺いしたいと思います。
○伊藤(榮)政府委員 ただいま殺人というお言葉でしたけれども、私どもの方では殺人と傷害致死を一緒にしてお答えします。 昭和四十四年以降検察庁が受理しました人員は五百五十七名でございます。事件の数にいたしますと、警察からお答えがあったように二十二件に相当いたします。そのうち起訴人員は百八十一名であります。なお、二十二件のうち六件の事件については検挙があり検察庁へ送致がございましたけれども、証拠不十分で起訴に至っておりません。
○東中委員 昭和五十年以後の発生件数と解決件数をお聞きしたいと思います。
○福井説明員 五十年以降の発生件数は三十件でございます。死亡者が三十八人でございます。捜査の結果六件、九十七人を逮捕しております。指名手配をしておりますのが六人でございます。
○東中委員 法務大臣、いまの経過を見まして、一般の殺人あるいは傷害致死事件の検挙率といいますか、これは毎年若干の違いがあっても九四%ないし九五%であります。ところが、いまの調子でいけば、検挙率はぐんと下がりますね。五〇%にも達していない。特に五十年、五十一年あるいは五十二年ということになれば検挙率は非常に低い。こういう状態が温床になって、結局ハイジャックなんかを根絶できないもとになっておると思うのですが、やはり秩序維持ということを使命とされておるわけですから、そういう点で言うならば、一般犯罪と比べて特に顕著に低いという点、これはもう明白だと思うのですが、そういう点についてどうお考えになっておるか。それから「検察体制を整備充実」するということを所信表明で言っておられますが、どの点をどういうふうに充実されるのか、その内容もあわせてお聞きしておきたい。
○瀬戸山国務大臣 実態は、いまお答えを申し上げ、また東中さんが御指摘なされたとおりきわめて遺憾であります。 具体的な状況については警察当局なりあるいは刑事局長からお答えいたしますが、御承知のようにこういう事件の態様が、あるグループといいますか、の中におって、しかも学生という、学生でない者もおると私は思いますけれども、そういう姿の中でひそかにやられる、そして関係者は全部いわゆる口をつぐんで被害者もこれを持ち出さない、こういうきわめて特異な状況でありますから、警察、検察が非常な苦心をしておりますが、他の事件のように検挙が簡単にいかない、こういう実情のあることは東中さんも御想像ができると思います。私は断じてこういうことを見逃してはならないという立場で対処しておることだけはひとつ御理解を願いたい。実態については警察当局からでもお答えさせます。
○福井説明員 これまでに五十一件の内ゲバ事件が発生いたしまして検挙が二十二件だけである、しかも最近の検挙がきわめて悪いではないかという御指摘でございますが、一は被害者の協力が得られないという事情がございます。これは一番最近の事件でございますが、ことしの二月十日に大阪の都島区内で革マルの松井章という活動家が中核派に殺害された事件でございますけれども、この人物は四十九年の十月二十五日にも実は中核派に襲撃をされております。その際に、もう一切事情聴取には応じない、警戒措置を申し出たわけでありますが、これにも一切応じない。そうして家族は大阪府下の寝屋川に住んでおるわけでございますけれども、本人だけは偽名で借りた都島区内のアジトに住んでおった、そこを襲撃されたという状況で、残念ながらこちらとしては本人がそこに住んでおることを事件発生後に認知した、そういう事情がございます。 彼らは、これはことしの年頭の「前進」——中核派の機関紙でございますが、これに言っておりますように、公然部門を一層強化しつつ、裏側に党をもう一つ非合法、非公然的につくるんだ、こういうことでございます。そこで、内ゲバをやりますいわゆる実行部隊と申しますか、そういうものは公然面の集会、デモには出てこない、したがいまして警察には顔を知られておらない活動家で構成をして、しかも自分たちの組織内でも秘匿をしておる、そういう状況でございます。したがいまして、そういう者を見つけることが非常に見つけにくい。せっかく見つけましてもすでに転居をした後である、こういう状況がございます。 一方、これに対する関係者の協力度合いでございますけれども、たとえば、さっき御指摘ございました京都大学の中での学内暴力事案につきましても、十二月二十三日に京大の学生連絡会議の増尾議長が、地元の府議会議員に付き添われて京都の府警察本部の警備部長のところに申し入れをしてまいりました。警察は学内暴力の被害者について事情聴取をしておるようだ、告訴、告発状に名前を連ねただけで、具体的な被害届けを出しておらないのに一斉に事情聴取をして取り調べをしておるではないかということが申し入れの中身にあるわけでございます。それで、捜査というものをるる説明をしておるわけでございますけれども、これはこれだけに限りませんで、ことしの一月二十七日に茨城県下で起こりました革マル三人が殺害された事件につきましても、二月二日に茨城大の学生部長等が警察本部長のところに申し入れをしてきておりますが、うちの学生は被害者である、加害者を調べるべきであるのに、なぜ被害者であるうちの学生を調べるのかというのが申し入れ事項にあるわけでございます。そういうことで、こちらとしては捜査というものはこういうものであるということをるる説明して、協力を得ながらやっていかなければならない。一方、犯行をやる方は非常に非公然化が進んでおる、こういうような状況があって、捜査の期間が残念ながらだんだん長引いておることは事実でございます。 しかしながら、犯行をやりますセクトの方は、たとえば中核はさっき触れました年頭の「前進」で、昨年の活動の総括をほとんど対革マル戦にしぼるくらいに力を入れているわけでございますけれども、内ゲバそのものは国民の協力なり警察の取り調べによって非常にやりにくくなってきております。昨年の発生は四十一件でございます。死亡者そのものは残念ながらかなりの数、七件十人に上っておりますけれども、負傷者は四十七人でございます。これを前年の五十一年の数字に比べますと、発生で九十一件でございますから二分の一に減っておる。負傷者の数は五十一年は百九十二人でございますから四分の一に減っておるわけでございます。さらにまたその前の年の五十年と比べますと、発生は二百二十九件でございますから六分の一に減っておる。負傷者は五百四十三人でございますから十二分の一に減っておる。そういうことで、彼らは主観的には内ゲバそのものを志向しておりながら、取り締まりによって、あるいは国民の協力によって内ゲバそのものが大変やりにくくなっていることはこの数字の示すとおりでございます。 私たちとしては、今後とも国民の理解と御協力を得ながら未然防圧、検挙に全力を尽くしてまいりたいというように考えております。
○東中委員 私が、あるいはわが党が泳がし政策と言っているのは、わが党が言い出したのではなくて、そういう言葉を政府あるいは自民党の方々が言われた時期があったから、それを言っておるわけであります。 それから同時に、いまいろいろ困難性を言われておるわけですが、端的に言えば泣き言ですよ。計画的に犯罪がやられておる、法秩序が乱されておるということについて、しかも人命が損なわれておるというのに検挙率がほかのものと比べて非常に低いということについて私は指摘をしておるのであって、事情経過はもう時間がありませんから聞きませんけれども、ただ、ここに言われておる検察体制の整備強化、これはどういうことですか。
○伊藤(榮)政府委員 内ゲバ等のこういう過激派によります事件につきましては、これを防圧するための検察の立場からして最も重要な点は三点あろうと思います。 第一点は、警察と協力を密にして、警察の力による徹底検挙、これを何とか側面から御援助申し上げるということであろうと思います。この点がなかなかうまくいっていないことは御指摘のとおりでございます。 第二点は、検挙されました者につきまして、いろいろ被害者の協力が得られない等の困難な場面に遭遇いたしますけれども、そういう困難を乗り越えて所要の証拠を収集する技術あるいは取り調べ方法、こういうものの練磨、これが第二点であろうと思います。 それから第三点は、やはり迅速にして厳正な裁判を獲得する、こういうことが必要でございまして、この三点につきまして公安、労働係検事の会同等で議論をいたしましたり、あるいはそれぞれのブロックにおいても同じような検討会を開いてやっておる。かつまた、内ゲバ事件に対して大量検挙を見ましたような場合には、機動的に全国の検察庁の検察官、検察事務官を動員して対処する、そういうための所要の経費あるいは準備、こういうものの充実に努めておる次第でございます。
○東中委員 検察体制の整備充実と言われるから何か特別のことをやられているのかと思ったらそうではなくて、いま言われていることは前々からそうだと思いますけれども、そうでなければいかぬことでありますから、あえて聞いたわけですが、特別に検察体制を整備充実するというふうなことはされているようには私としては聞けなかった、はなはだ遺憾に思います。 そこで、ハイジャック防止対策の一環として、いまもちょっと言われましたが、いわゆる過激派裁判の迅速を図るということで、刑事訴訟法の特例、刑事事件の公判の開廷についての特例という形ではありますけれども、実質上の刑事訴訟法の改正ということが出されてきておるわけでありますが、これはやはりハイジャック防止対策の一環というふうにいまもお考えになっておるか。歴史的、経過的には、ハイジャック関係の対策本部でそういう方向を出してきたという経過はありますけれども、ハイジャック防止対策あるいは再発防止対策ということではないと思うのですけれども、その点はどうでしょうか。
○伊藤(榮)政府委員 ハイジャック等非人道的暴力防止のための対策であると考えております。
○東中委員 昨年の十月段階で、わが党も、このハイジャック事件の発生を逆用して一般的な国民の権利、自由の制限に通ずるような刑事訴訟法の改悪をたくらむようなことは強く反対するという、対策要綱であえて書いておいたわけでありますけれども、これはハイジャック事件あるいは過激派事件に限ったものではない、一般の事件についてもこの要件に該当すれば適用されるという特例だというふうに言わざるを得ないのですが、そうでございますか。
○伊藤(榮)政府委員 裁判の実態をごらんいただけば、ただいまのようなことは、誤解とあえて言わせていただきますが、ないと思うわけでございます。弁護人が被告人と意思を通じて法廷を荒れほうだいに荒れさせて、そして途中から退廷してしまう、あるいは初めから出頭してこない。一例を挙げますと、天皇在位五十周年記念式典がけしからぬというので、弁護人も被告人も出てこない、こういうような状況になりますケースは、一部過激派事件の公判にしか見られないわけでございます。将来、一般事件におきまして、そういう弁護士さんがどんどん出てくるということになれば適用があるかもしれませんけれども、そういうことがあるというふうには東中委員自身もお考えになっていないんじゃないかと思います。
○東中委員 私が聞いているのは、そういう政治的発言を聞いているのではなくて、この要綱で示されておる要件に該当すれば——この要綱自体について聞いているわけですから、該当すれば、どういう犯罪であろうと全部これが適用されるということですねということを聞いているのです。
○伊藤(榮)政府委員 私、別に政治的に申し上げておるわけじゃなくて、現在準備しております法案の第一条ではっきり書くつもりでおりますけれども、ただいま申し上げたような事件に対処するための暫定的特例であるということを明らかにいたすつもりでございまして、観念的にお答え申し上げれば、まさにいま御指摘のように、荒れる法廷を現出させ、弁護人が不在になるということを利用して訴訟を引き延ばそう、そういう法廷混乱、撹乱、法廷闘争戦術が行われるような場合には適用があるかもしれません。
○東中委員 適用があるかもしれぬということじゃないじゃないですか。適用を除外してないでしょうと言っているのです。この四つの要件に入っておれば適用は除外していないのです。こんなのははっきりしなさいよ、あなた。 それからもう一つは、これは時限立法じゃないですね、当然のことですけれども。暫定的措置あるいは当面の措置、いろいろ言っても時限立法ではないですね。
○伊藤(榮)政府委員 時限立法という言葉は必ずしも正確ではございませんが、私どもの理解は暫定的特例でございますから、必要性かなくなったら速やかに廃止されるべきものだと考えております。
○東中委員 廃止の立法的措置をとらなければ廃止にならないということであるから、時限立法でないことは明白じゃないですか。時限立法の概念について、それは学問的にいろいろ議論があるかもしれません。そんなことをいま論議しているのじゃなくて、一般に言われる時限立法ではない。そして、この要件に該当すれば、ハイジャック事件あるいは過激——過激派事件というのは大体法律概念ではありませんから、そういう、言われているようなものに限定されておるのではないということは明白じゃないですか。
○瀬戸山国務大臣 結論を申し上げますと、五年間なら五年間を切って立法しようとしていることではございません。そういう意味においては時限立法ではない。ただ、私どもが理解を願いたいのは、そういう今度の法案にケースを書いて出す予定にしておりますけれども、そういう事態がまさに異常なことである。失礼でありますけれども、これは刑事訴訟法、憲法あるいは弁護士法にも反する行動をなさる弁護士さんが残念ながらいらっしゃる。そういうことを憲法なり刑事訴訟法なり弁護士法の、いわゆる法律制度のたてまえに従ってやっていただきたい、そういうことでございます。そういうことになれば、この法律は何もあってもなくても動かない、こういうことでございます。
○東中委員 法律に違反する犯罪行為をやる裁判官も出てきておるわけであります。検察官もそういう違反行為をやることがあり得るということは刑事訴訟規則の中にもあります。措置要求規定もある。弁護人の中にも、私たちは強く反対をしますけれども、批判をしておりますけれども、そういうようなのか若干出てきたということであって、そのことと制度論とを一緒にしてはいかぬというふうに思うわけであります。 それで、この間も論議がされておりましたけれども、裁判所、法務省、弁護士会の三者協議会ですね、これにはかけられていないということを聞いておりますけれども、経過はいいですから、かけられていないことは事実ですね。
○伊藤(榮)政府委員 経緯はもう御承知のようでございますからあえて御説明しませんが、いまの御質問に正面から答えれば、三者協議にはかかっておりません。
○東中委員 昭和五十年九月二十二日に開かれた三者協議会の議事録、これは裁判所も法務省も確認された議事録だと聞いておるのですが、それによりますと、ここで何を議題にするかということがすいぶん議論されておるようであります。そして「三者協議の本旨は、法制審議会或は諮問委員会にかける前に、先ず当協議会でこういう問題があるということで協議するところにあると思う。」というふうに日弁連側から言ったのに対して、裁判所も「そのような考え方で結構だと思う。附帯決議の趣旨もそこにあると考える。」ということを発言しておられます。これは、附帯決議というのは衆参両法務委員会で合計三回にわたる附帯決議のことだと思うのですが、さらに日弁連側から「確認しておきたいが、実施要領からすると司法制度に関する法律、規則の制定、改廃については、そのいわば素案の段階で早期に先ず当協議会の議題に供し大所、高所から協議するということだと思うが、」どうか。裁判所も法務省も「そのとおりと考える。」こう言っています。それから法務省が「素案の段階で当協議会で協議するということの方向は結構だと思う。」だから合意ができておるわけであります。 さらに、このときに論議されたのは少年法改正問題。すでに問題になっておる分は議題にしないけれども、今後そういうふうな案を出す場合には「当然先すその素案を当協議会にかけるべきではないか。」こういうことに対しても法務省、裁判所とも、そのとおりだ、こういうふうに言って合意ができている。ところが、今後のやつは素案の段階でかけなかった。まさにここに言っておる司法制度に関する法律、規則の制定、改廃そのものだと思うのですけれども、なぜかけられなかったのですか。経緯はいいですよ。これにかけるかどうかということについて、なぜ……。
○伊藤(榮)政府委員 二つの理由がございます。 第一は、ただいま東中委員が御指摘の部分は、日本弁護士連合会の方々が、その記載をとらえて、その合意があったとされていることでございます。しかし、議事録を全部お読みいただくとわかりますが、そのときは三者協議でどういう議題を取り上げるかということの結論を得ずに、次回に続行になっておるわけで、そういう合意ができたという事実がまずございません。しかしながら、そういう合意ができていようができていまいが、事前に弁護士会、裁判所と十分御連絡するということは必要でございますので、私から日本弁護士連合会事務総長に対して、ごく素案もまだできない段階から御説明しておりますし、最高裁判所とも密接に連絡をとって作業を進めた次第でございます。その経緯については、お尋ねがあれば詳細御説明いたします。
○東中委員 このときの議事録の最後の段階では「司法制度の根幹にふれるような問題を協議して行くということにすると実効が挙がると思う。」これは法務省側の発言だ。なお、議事の続行について言っていますけれども、法務省側が最終的にそう言っておるわけでしょう。だから私は、今度のこの改正というのは、一時的なハイジャック対策というのだったら、ハイジャック関係の法律云々というんだったらこれは別ですけれども、一般法ですから、一般の国民に適用される。ハイジャックは一般の事件ではないわけですから。 しかも、この必要的弁護事件の制度というのは、明治十三年の治罪法以来、日本の刑事訴訟関係の制度として、これはまさに百年近く定着している制度であります。さきのこの委員会で、他の外国の立法例なんかをいろいろ言われておりましたけれども、明治十三年の治罪法で、あの全体主義的な、まだ明治憲法さえできていないそういう段階でさえ、重罪についてはこういうように書いていますね。三百七十八条、重罪裁判所の裁判長は「弁護人ヲ選任シタリヤ否ヲ問フ可シ」「若シ弁護人ヲ選任セサル時ハ裁判所長ノ職権ヲ以テ其裁判所所属ノ代言人中ヨリ之ヲ選任ス可シ」、三百七十九条では「弁護人差支アル時」要するに不出頭のときですね、「若クハ被告人ヨリ之ヲ改選ス可キ」、解任するあるいはかえてくれ、かえたいということをすべき「正当ノ事由ヲ申立タル時被告人自ラ弁護人ヲ選任スルニ非サレハ前条ノ規則ニ従ヒ裁判所長ヨリ之ヲ選任ス可シ但弁護人ヲ改選シタル時ハ三日間弁論ヲ停止ス可シ」、かえてすぐやれるものじゃないんだということも言っているわけであります。「弁護人ナクシテ弁論ヲ為シタル時ハ刑ノ言渡ノ効ナカル可シ」、三百八十一条であります。以後、明治二十三年の刑事訴訟法にしましても、あるいは大正十一年の刑事訴訟法にしましても、それから現行の刑事訴訟法にしましても、必要的弁護ということ、これはもう、日本の法制としてはフランス系もあった、ドイツ系もあった、いま英米法系が入っているという問題はあっても、この点では一貫しているということだと思うのです。 しかもそれで、弁護人がなくてあるいは弁護人が出席できなくて、そういう中で裁判を進めるというふうな法制、今度やられるような、一定の要件があれば弁護人なしで裁判をやるというような法制というのは、あの太平洋戦争中の治安維持法、昭和十六年三月十日のあの治安維持法の大改正と、それからその後の昭和十七年の戦時刑事特別法、これだけですね。しかもこのいずれも、きわめて限定されているわけですね。罪名で限定しています。これはもう御承知だと思うのですが。今度はそれが無制限なんですね。要件は違うかもしれません。要件は違うかもしれぬけれども、当時は、盗犯等の防止及び処分に関する法律、いわゆる常習特殊強窃盗等、あるいは治安維持法関係に限定しているという点からいって、今度はそれが、あの戦時中の暗黒裁判と言われたときに限定しておった分より以上に、また一般に広めている。これは百年の制度の中で、戦時中だけ特別にやったのよりもまだ一般的な制限条項をつくろうというわけですから、裁判のそれこそ根幹にかかわる問題だ。弁護制度の根幹にかかわる問題であり、当事者訴訟体制をとっている今日で言えば、本当に裁判制度の根幹にかかわる。こういうものをなぜ協議にかけないのか。しかも、当事者である日本弁護士連合会、これは私的な医師会なんかとは違って、公的な、特別法によってつくられている日本弁護士連合会、それと協議さえしないというのは一体どういうことなんですか。ひとつ所見をお聞きしたい。
○伊藤(榮)政府委員 三者協議という場ではございませんでしたが協議はいたしましたということを申し上げております。 それからまた、治罪法以来の刑事訴訟手続法の沿革をるるお述べになりましたのですが、やはり司法制度を考えます場合には、その周辺の諸法律をよく見る必要があると思います。今日、わが弁護士法は、弁護士の懲戒処分について全くの自律ということになっておりまして、戦後三十年間、法廷の秩序を乱したという理由で懲戒になった弁護士さんは一人もいないと承知しております。そういう点もあわせて考えてまいらないといけないのじゃないか。私どもといたしましては、そういった弁護士の懲戒という問題について国民的な監視ができるようなそういう制度がもしできるような時期がありましたら、この法律は全く必要がなくなりますし、直ちに廃止できる、かように考えております。
○東中委員 懲戒問題とかいうのは問題の本筋を外れたことを言っているのであって、私の言いたいのは、弁護人制度というのは、今度の刑事訴訟法全体の体系から見てもそうですけれども、証人尋問をやる弁護人としての独立した権限が与えられている。それは裁判の公正を確保するというために必要な制度なんですね。それに対して、訴訟促進ということだけでそれを外してしまったら、その間に進められた手続によって、無罪になるべき人が、無辜の人が処罰されるというような事態になったらどうなるだろう。裁判を根底から覆していくことになるのじゃないか。弁護人というのは私的な民事訴訟における代理人とは違うのだ。公益を守る、裁判の公正を確保していくというための制度なんですから、特定の人がむちゃくちゃなことをやったからその後裁判は弁護人抜きで進めてしまう、その間に証拠決定もやってしまう、あるいはその間に証人調べも終わってしまうということになったら、真実発見というかそういうことに支障を来してくるのじゃないか、裁判の一番根本の目的を覆してくることになるのじゃないか、そこに問題があるのだということを言っているのであります。その点はどうでしょうか。
○伊藤(榮)政府委員 弁護士というものの社会的あるいは裁判手続における使命、東中委員が御指摘になったとおりでございます。被告人の人権を守り、実体的真実の発見のために法廷の場において正々堂々と全力を尽くして弁護活動をされるべきものだと思います。そういう方が裁判を拒否するために、被告人と手に手をとって公判期日をけ飛ばすというような場合にどうしたらいいかということを私どもは考えておるわけでございます。
○東中委員 あなたは全然問題の所在を御存じないのか、あえてそらしておられるのか。検察官だってそうでしょう、公正な裁判をやるためにやっているのでしょう。裁判所だってそうでしょう。しかし、裁判所だけでやったらいかぬのだ、裁判所と検察庁だけではだめなんだ、弁護人がついて、そしていまの三者構成でやっていって初めて基本的人権を全うしつつ、そして適正な裁判を進める、そして実体的な真実を発見する、そして適正な法令の適用実現をやっていくということなんでしょう。そのうちの一部が削られてしまったら、たとえば松川事件の例を考えれば非常によくわかります。検察官は諏訪メモを持っておった、出さなかったじゃないですか。そうでしょう。公益を守り、真実を追求するはずの検察官の方で諏訪メモを持っておったけれども出さなかった、そして死刑を含む有罪判決がやられた。しかし、弁護人の活動でそれが発見され、そしてついにあれは無罪——、単に証拠不十分というのじゃなくて、むしろあれは犯人でない人が犯人につくり上げられてきた権力犯罪だったということにまでなった。そういう一方の弁護人を外しちゃって重要なときに裁判を進めていったら、検察官なり裁判官なりが悪意でなくても法はゆがめられ、真実はつぶされていくということになる、そういう制度なんだ。弁護士個人の人間の倫理的なことを言っているのじゃないですよ、制度のことを言っているのですから。
○瀬戸山国務大臣 裁判官、検察官、弁護士、いわゆる弁護人がそろってやるということは、いま東中さんがおっしゃるように私ども期待しておるのです。それをぜひやってもらいたいというわけなんです。それをやらないで、裁判というものを否認していくということは法治国家では許されない。あなたのおっしゃるとおり、弁護人の職責はそこにある。でありますから、その職責を果たすようにしていただきたい。これだけのことでございます。それを果たさなければ裁判というものはできないのだ、そういうことは国家、国民として許されない、かようなことでございます。
○東中委員 弁護人を新たに選任して、そして先ほど治罪法を読みましたけれども、三日間置いて弁論すべしと明治十年代でさえそう言っているのに、いまそれより一層反動的なことを言われておると言わざるを得ぬわけなんですけれども、これは裁判官が、秩序を乱したとしてたとえば退廷を命ずるとか、あるいは裁判所の秩序というのは裁判官の指示でやっていくことに、指揮権を持っておるわけですからそうなるわけでありますが、その裁判官の訴訟指揮、あるいは退廷処分、その他期日指定というふうな点について、いま荒れる法廷ということを盛んに言われておりますけれども、そういう事件で裁判官がやった訴訟指揮をその裁判官みずからが適切でなかった、妥当を欠くということを後で認められる、あるいは上級審で訴訟指揮や期日指定が相当でなかったという指摘がされるという事例が何件か起こっていますね。裁判所の方でわかっておられましたらそういう事例について御説明をお願いしたいと思います。
○岡垣最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。 東中委員を前に置いてこんなことを申し上げるのは釈迦に説法だと思いますが、話の順序でしばらくお聞き取り願いたいと思いますけれども、その訴訟指揮というものは判決に至る過程全部を指しておりますから、期日の指定、それから被告人を人定質問をして、さらに次は訴状を読みなさいとか、証拠調べですとか、一切合財入るわけでございます。したがって、要は訴訟をどういうふうにやっていくかということ、そしてそれは大体法律に決めてございます。たとえば審理にいたしましても、訴訟規則で、二日以上かかるときはできるだけ毎日開けというふうに書いてあるわけでございまして、裁判所は大体訴訟法に書いてあること、規則に書いてあることをできるだけ忠実にやろうとする。ところが、それをやらせまいとする場合にいろいろごたごたが起きる、そうすると不当だというふうに批判される、そういうケースが多いのでありまして、御指摘のように裁判所が何か権限を乱用してどうこうしたという数は私どもはないと思っております。 ただ、こういうことはあります。例をとりますと、刑事訴訟法二百七十七条に、裁判所が権限を乱用して公判期日を変更した場合には、監督権を行う裁判所に対して司法行政上の措置をとるように申し立てることができるとなっておりますが、この訴訟を申し立てたのが幾つかございます。その中で一つの事件を取り上げて御説明申し上げますと、それは執行猶予を本来ならばつけたいと思われるけれども、法律上つけることができない、これは十カ月ほど先に期日を延ばしてしまえば執行猶予をつけられそうだということで、裁判所が期日を延ばして指定されたということがありまして、それに対してこの刑訴法二百七十七条による公判期日の変更は乱用であるということで申し立てがございました。しかし、これは最高裁としては司法行政上監督権の措置をとる必要はないということになっております。しかし、この同じ事件が、では刑事事件の事件処理としてはどうなったかと申しますと、やはりそういう期日指定は違法であるということで取り消されております。裁判上は。ですから、法律で決められている訴訟指揮の各段階、それがどこまでできるかということに対する解釈の間違いということはございます。しかし、それを乱用するとか、悪用するとか、むちゃなことをするとか、そういうことは私どもはないというふうに考えているわけであります。 そこで、問題の面をちょっと変えまして、訴訟指揮についての特別抗告が認容された事例はどうか。要するに、それは違法だぞと言って取り消されたものはどうか、解釈が違うということで取り消されたものはどうかいうことで申し上げますと、証拠開示に関するものが三件ほどございます。これは証拠書類等の閲覧に関して、弁護人の方で見せろとおっしゃる、検察官の方で見せないとおっしゃる、それを開示しろ、こういうふうに裁判所が命令した、その命令が裁判所の法律解釈が間違っているということで取り消された例が三件ございます。もし何だったら具体的にあれですけれども、三件と件数だけでよろしゅうございますね。 それから期日指定関係で申し上げますと、期日指定では、先ほど申し上げました公判期日の変更決定に対して、そういう十カ月も延ばしたのはけしからぬというので取り消された例が一つございます。それから弁論の分離、決定、判決宣告期日、こういうものを追って指定というふうにしたわけでございますが、これは被告人か外国に行っているというのでそれを帰ってくるまで待とうということで延ばした、これはいかぬということで取り消されたものがございます。 これが期日指定にかかわるものでございますが、そのほかには、弁護人不在のままに審理した一審の訴訟手続が違法であるというふうに高等裁判所で判断されたものがございます。一つは必要的弁護事件に関するものでありまして、これは大阪高等裁判所でそういう事件が一件ございました。これは破棄して差し戻しました。それから任意弁護事件にも一件ございまして、これもやはり破棄して差し戻したということであります。それは必要的弁護事件、任意弁護事件それぞれについて弁護人がいないのに裁判所で訴訟行為をし、判決したということについては、これは詳しく申し上げればいろいろございますが、要するに法律の解釈の違いということに帰するものと思われます。 以上、申し上げます。
○東中委員 時間が来ておりますので多くは申し上げませんけれども、訴訟手続上の異議申し立てとか抗告とかについて私は言っているのではないのであります。問題は、いま提起されておる過激派事件の弁護、これは私たちも厳しく批判しているやり方というのはあります。裁判を否定するようなやり方、これは許されない。しかしそれは実態、実際に生に動いておる法廷でのことをあなた方も取り上げておるし、われわれもそう言っておるわけであります。生に動いておる裁判はあれはどうなんだ、生に動いておる検察官はどうなんだ。先ほど松川事件の諏訪メモのことを言いましたけれども、違法じゃないかもしれぬけれども、あれは無実の人を死刑にしてしまう原因を権力側が握っておった。その担当検察官はじゃどういう責任をとったのか、どういう処分をしたのか。何にもしてないじゃないですか。弁護人の自律云々、懲罰云々について言われておりますけれども、問題は真実を発見していくという点で実際どのように裁判が動いていくのかということを私は問題にしておるわけであります。 それから、裁判官だって、いま問題になっておる期日指定で相当でなかったということ、たとえば水俣病のチッソ事件あるいは連合赤軍事件なんかでも、そういうものを上級審で違法として取り消すとかなんとかいうことじゃなくて、内容的にそういう批判をしているのがある。裁判官だって感情的にやることがたくさんある。特に退廷命令なんというものが出るときというのは、私も経験があるから知っていますけれども、私自身は退廷命令は出されておりませんけれども、全く特定の裁判官の非常に感情的なものも入ってのそういうことで実際にはやられていく。だからそういうときに退廷命令を出されたら、秩序維持だからといって後そこで証拠調べが進められ、あるいは証拠決定がやられていくというようなことになったら、真実はそこで曲げられていくことになるじゃないか、裁判の公正が保障されないことになるじゃないかということを言っているわけであります。 そういう点で、問題の司法の根幹にかかわる、刑事裁判の根幹にかかわるということをわれわれは言っておるのであり、戦時中のしかも特異な事件に限定して、しかも戦後は全部廃止されたという法律にしかないような制度をここへ持ってくるということ、これは当然直接の当事者であり、そして裁判を構成していく三者のうちの一つである弁護士会との協議もしないでやっていく、しかもああいう一応合意を見ていることについて、それに反してやってきたという点で、これはもう一回弁護士会とも協議をし、十分掘り下げてやるべきではないか。一部の者でそういう主張があるというようなことを前回の当委員会でいろいろ言われておりましたけれども、新聞の主張にしても、決して一部の者ではない。そういう点で、権力的な裁判、それから訴訟促進を理由にして公正裁判を損なうような制度をつくっていくこと、これはもう一回反省さるべきだ。そして出す手続をやめて、根本に戻っての検討をやられることを強く要請をして、きょうのところは質問を終わりたいと思います。
○鴨田委員長 午後二時再開することにし、この際、暫時休憩いたします。 午後零時四十七分休憩 ————◇————— 午後二時二十一分開議
○鴨田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 質疑を続行いたします。加地和君。
○加地委員 本日は、法務大臣等に、更生保護関係の、じみな問題でございますけれども、きわめて重要な問題であろうと思うのでございますが、質問さしていただきます。 〔委員長退席、山崎(武)委員長代理着席〕 刑法の改正問題あるいは更正保護基本法の制定等が進められておると聞きますが、このような一連の法改正の動きの中で、刑事政策というものもいろいろと変わり、具体化してくるわけでございますが、その中において更生保護会というのはどのような位置づけがなされ、占めるべき役割りというもの、将来の基本的なビジョンはどのように打ち立てられつつあるのかということを、大臣、ひとつ御答弁いただけませんでしょうか。
○瀬戸山国務大臣 おっしゃるように、更生保護会は社会復帰に対し重要な役割りを果たしてもらっております。御承知のように民間の篤志団体といいますか、そういうことでやっていただいておるわけでございますが、十分であるかどうかわかりませんけれども、それに対して国も費用の一部を助成をしてお願いしておる、こういうことでございまして、実態については局長からお答えさしていただきます。
○常井政府委員 更生保護会の将来の位置づけにつきまして、補足して申し上げさしていただきます。 これは、きわめて刑事政策的な処遇の場でございますので、少し法律的な申し上げ方を外しまして申し上げますと、いわゆる中間処遇の場、向こうから入りましたので術語で、英語で申し上げて失礼でございますが、ハーフウエーハウスというところに起源がございますが、現状は必ずしもハーフウエーハウス的な運営がなされておりません。これは現行の法律制度がそのようになっております。かいつまんで申し上げますと、保護観察の対象者の中で応急の救護、援護を要する者たちが一定の条件のときにここへ送られるということでございまして、いわば補足的あるいは補充的に、そして暫定的に処遇の場として与えられておるのが現行法制下の更生保護会でございます。これを第一義的な処遇のために自由に使える場とするというのが、ただいま申し上げたハーフウエーハウスそのものとして運営をするという構想でございます。これは、中間施設でございますので、施設から釈放されました場合に、実社会の生活の仕方と大変距離かございますので——比喩的な意味での距離でございますが、そこを埋める役割りを果たす。それから他方、執行猶予の保護観察対象者あるいは家庭裁判所で保護観察を言い渡された、いわゆる術語でこれをプロベーションと申しておりまして、こういう対象者に対して施設を使って集中的な処遇をする必要がございます。いわば処遇の多様化でございますが、この面でも更生保護会を十分第一義的に使うという考えでございます。 あわせまして、先ほど申し上げましたように、ハーフウエーハウスそのものとして使う、処遇の場として使う位置づけと申しますか、そういう構想を持っておりますし、現に少年法の改正に伴います法制審議会の中間答申におきましても、居住指定という制度が具体的に入っておりますが、これはやはりその方向へ具体化する構想であろうかと存じております。
○加地委員 ただいま局長から御答弁のありました第一次的な処遇の場にする、あるいはプロベーションの役割りを果たすということは、どのような条件が満たされたときにそれが実現されるのでしょうか。また、いつごろいまお考えのようなことが実現するのでしょうか。
○常井政府委員 ただいま私どもにおきまして、私どもと申しますのは保護局におきまして、犯罪者予防更生法、それから執行猶予者保護観察法、それから更生緊急保護法、それから売春防止法、これか全部あるいはその一部でございますが、それらを整備統合いたしまして一本化する準備を進めております。 このことに関しまして、また御指摘がございますれば詳しく申し上げますが、その過程におきまして御指摘のような構想を具体的に実らせたいというふうに私どもとしては考えております。
○加地委員 ただいまちょっと触れられました法の一本化ということですね。更生緊急保護法とか保護司法、犯罪者予防更生法、この三本の法律以外に、ただいま売春防止法その他の法律も一本化するという考えなんでしょうか。一本化する法律の具体的な名称をちょっともう一度確認したいのですが。
○常井政府委員 犯罪者予防更生法、それから執行猶予者保護観察法、更生緊急保護法、売春防止法、これらでございますが、更生緊急保護法とそれから売春防止法につきましては関連部分になろうかと思いますが、いずれにいたしましても、この四つを一本化するという作業でございます。保護司法は必ずしも一本化の対象にはならない、かように考えております。
○加地委員 そうしますと、法務省の方でそういう作業が済み次第、いわゆる法務省が努力をすれば、それはできるだけ早く実現できるというように聞いていいでしょうか。たとえば、ほかのもっと法務省サイド独自では、ただいま申されたような構想を妨げるような条件というのはないでしょうか。
○常井政府委員 ただいま申し上げました立法準備でございますが、これは先ほど保護局と申し上げましたが、法務省として見ますと、保護局の試案、これは試みの案あるいは私の案とおとりになっていただいて結構でございますが、これはずいぶん昔から準備を進めておることでございます。特に昭和四十九年の五月に刑法の全面改正に関します法制審議会の答申がなされておりますが、もともとこの刑法の改正の準備の過程におきまして、ある程度並行して私どもも準備作業を進めていたわけでございますが、ただいま申し上げました答申の時期以後本格化いたしまして、準備作業を進めてきたわけでございます。 と申しますのは、改正刑法の草案の中にございます刑の執行猶予、それから仮釈放、保護観察に盛られました思想は、社会経済情勢の新しい事態に対応した国内、国外の刑事政策の成果をまとめたものでございますので、いずれも私どもの更生保護の制度として取り入れなければならないわけでございますが、これらが法案としてどう固まっていくかという前提に私どもは一つ左右されるわけでございます。 それからまた、御承知のように昭和五十二年の六月に少年法の中間答申がございましたが、この内容にも保護処分の弾力化、多様化、その他私どもが取り入れなければならない政策が多分にございます。 なお、法制審議会でただいま監獄法を審議中でございますが、この結果がどうなるか、いわば私どもの役割り、出番は、裁判が始まりまして刑の執行段階になりまして、仮釈放になってからの保護観察というのを持っておりますためにいわば最後の出番でございますので、逐次前提が固まりませんと私どもの方針を固めることができないという点がございますので、その点をひとつお含みおき願いたいと思うのでございます。そういう意味におきまして私どもだけで決める、法務省保護局だけでもちろん決めることはできませんが、法務省の中におきましてもいま申し上げたような法案が固まり、そしておのおのの所を得、順序が定まりました段階におきまして私どもの最後の形も決まるということでございまして、これを飛び越して私どもの方が先に決めるというわけにはいかないのでございます。 それから、もう一つお尋ねの趣旨で、私どもといたしましては関係各省と協議を、法案の問題にしてももちろんでございますが、しなければなりませんし、またことに財政当局と現実的な問題につきましていろいろと交渉しなければなりませんので、必ずしも私ども単独でできるというものではございませんが、私どものできる範囲で努力をすべきものと、かように心得ておる次第でございます。
○加地委員 時間が限られていますので、あと御答弁はちょっと簡潔にお願いしたいのです。足りない分はまた聞いていきますので……。 現在、更生保護会関係の施設では、国から委託事務費という金が宿泊者一名について千円足らずのものが出るようでございますが、この委託事務費の中に更生保護会のいわゆる人件費も含まれておるようでございます。そのために刑余者が三十名なら三十名入れる施設がつくってあっても、三十名いっぱいにならないときにはどうしても人件費というものも変動があり、そして少なくなってくるようなやり方のようでございます。そのために、ともすれば更生保護会の方で、刑余者に対し実社会になれさすために厳しい指導もしなければならない、注意もしなければならないという役割りであるのにもかかわらず、いわゆる刑余者すなわちお客さんに泊まってもらわないことには国から出る金も減ってしまうということのために、どうしても中に泊まっている人に対して甘やかすといいますか、過保護の状態になってくるという弊害もあるようでございます。そしてまた、実際に更生保護会等で働いておられる方々の平均給与というのは、ボーナスを込みにして十一万円の月給じゃないかと思うのでございますけれども、これも何とか食えるくらいの給料に上がるようにしてほしい、こういう強い声があるのでございますけれども、法務省の方ではどのような解決策を考えておられますか。
○常井政府委員 更生保護会の職員の給与がある程度低いというのは事実であろうかと思います。私ども、これに対する具体策をどうするかというお尋ねでございますか、一つは、更生保護会は官民相ともに協力してこれを盛り立てていく組織になっておりますので、私どもといたしましては自主的に更生保護会の経営を安定化する方向に努力していただく、これかその一つであろうかと思います。 それからもう一つは、もちろん私どもが財政当局によく実情を訴えまして委託事務費の増額を図る。おっしゃるとおり委託事務費のほとんどが人件費でございますが、この増額を図る、こういう努力をすべきものだと思うのでございます。 ただ、仰せの委託事務費が結局、結論として少ないということでございますか、これは犯罪数が、ことに成人犯罪が一路減ってきております。しかもずっと好況の時代が続きましたので、おのずと更生保護会に行く人々が少なくなったという客観的な社会情勢もございます。そういう意味で、このところ定員の約五〇%の収容率を続けておるわけでございます。そのため更生保護会の職員が御指摘のように甘くなってずるずるとおらせるというような弊害があるのではないかというお話がございます。他方、大体十日くらいで退会してしまう、あるいは断って帰るのはいいのでありますが無断でどこかへ逃げてしまう。そういう人たちもかなりの数に上っておるのでございまして、そこらは強制力がございませんので、私どもとしては大変むずかしいところと存じております。 先ほど申し上げました居住指定その他の制度でハーフウエーに戻すというのは、ある程度の強制力を持たせましてそういうところろで処遇をするという構想でありますので、その点は御了解いただきたいと思います。 やはり何といいましても、処遇効果を上げましてそこで収容者かふえるということが、現状におきましては更生保護会の経営を一番よくするもとでございますので、私どももそうなるように、またそうするように努力したいと思っております。 なお、私どもの予算におきまして、委託事務費の人件費は、国家公務員の格づけで公務員の本俸並びに各種手当で計算しておるものでありまして、執行の面、実行の面でどのくらいの格差になりますか、あるいは御指摘のようなケースがあろうかと思いますが、私どもは一定の格づけで予算をとっておるわけでございます。なお私どもといたしましても検討し、更正保護会、大変一生懸命、対象者と起居をともにして、危険を顧みず処遇に当たっておりますので、私たちといたしましても、できるだけの努力をしたいと思っております。
○加地委員 他の社会福祉施設、厚生省が所管しておるような施設におきましては、三十名定員なら定員のところへ何人入ろうと、その月は平均十名であろうと二十名であろうと、いわゆる定員定額制という人件費の算出方法になっておるようなんでございますが、更正保護会の方も厚生省関係と同じように定員定額制にしてほしい、こういう声が非常に強いわけでございます。戦後いわゆる生活保護とかの社会福祉関係も更正保護会関係もともに同じような仕組みで出発したはずでございますが、いつの間にか知りませんけれども、厚生省関係の施設に働く人々と比べて、法務省関係の施設で働く人々、特に更正保護会関係は非常に冷遇されておる。これは事実だろうと思うのです。特に厚生省関係の場合でございますと、地方自治法にも、地方自治体の所管事務の中にいわゆるこういう社会福祉的なものもかなり入っておりますために、国から金が出るのみならず、地方自治体からも二割か三割ほどは出してもらえるようになってきていると聞いております。なおかつ、生活保護とか厚生省関係の方は、職員の方に反抗するということは余りなかろうと思うのです。職員の方が対象者に接するのに、はれものにさわるというような気を使う必要はないと思うのです。ところが、この更正保護会関係の方は、やはり厚生省関係の施設の対象者と比べれば神経も使う、極端に言えば身の危険を感じるときもあるであろうと思うのです。そうすると、いわゆる対象者の方は自分の身から出たさびでございますから、食べ物とかそこらについて若干不満が残るのもこれまたある面ではやむを得ない面があるかもしれませんが、何の罪もないいわゆる更正保護関係に従事する職員の人が厚生省関係と比べては非常に冷遇されるというのは、これはまさに、私は、法務省関係の方々の予算獲得についての努力の欠如といいますか、実情を把握しておられなかったのが大きな原因じゃないかと思うのですけれども、とにかく定員定額制実現についてどういう御努力をなされる決意がございましょうか。
○常井政府委員 定員定額制の御指摘でございますけれども、先ほど申し上げましたように、ここのところずっと収容率が約五〇%でございます。厚生省の方も、私ども知っておる限りにおきましては、たとえば児童福祉の施設におきましても、定員定額制とは申しますが、八〇%以上入っておりませんとその定員は落とされるということでございまして、あとはむしろ現員現額といいますか、現在の実人員で計算するというところが厚生省の方も、これはまあ見方でございますが、多いのではないかというふうに承知しております。いずれにいたしましても、厚生省の定員定額と言われておるのも、そういうふうに限定がございます。私どもの方は五〇%でございますので、これは何としても、先ほど申し上げましたように収容率を高める、つまり実効を挙げて収容率を高める、更生保護会の方も御努力をいただきますし、私どももまたそういうふうに指導して適当なものをそこに入れる。結局、先ほど申し上げました構想のハーフウエーハウスと、第一義的な法制にする。法律制度そのものがそうなっておりませんので、そこに努力をいたしたいと思うのであります。 それでは見通しはどうかということでございますが、収容者を調べますと、たしか昭和三十七年を一〇〇にいたしますと、この二、三年は約その半分、五二、三という減り方でございます。こういう状況でございますので、やはり収容率とあわせてそういう絶対数が減っておりますので、この時期に国家財政に対しまして定員定額制をということは、努力はしたいとは思いますが、なかなか受け入れがたいのではないかと思うのでございます。繰り返しますが、先ほど申し上げたような形でこの実績を上げていくというほかに道はないのではないかというふうに思っております。 なお、危険を伴う仕事でございますので、それやこれやの実情をよく知らないで、予算の折衝も下手なのではないかという仰せでございますが、私ども実情は仕事として知っておるつもりでございますし、また、何といいましてもできる限りこの現状を訴えて、それに相応した予算をとるという努力をしておるわけでございますが、やはり先ほど申し上げましたように、絶対数が少ないというそのもとは犯罪者が少ないということでございますので、何ともいたし方ない客観情勢を御理解願いたいと思うのでございます。 ただ、危険につきましては、私どもの方に委託費の中で補導費というのかございます。御承知と思いますか、この補導費は厚生省の職員にはない費用でございます。ここに私どもの危険に対する手当ての努力と申しますか、それを見ていただきたいことと、私どもは調整手当を、幹部職員につきましては、危険の意味を含めまして、さらに調整手当の積算としてそういう請求をしておるわけでございますし、今後も御趣旨に沿ったような請求をしたいと思っております。
○加地委員 お立場上いろいろと御説明なさるのですけれども、現実に、毎日出勤で、まあ四日に一遍ぐらいは宿直が回ってくるという職業で、しかもはれものにさわるような対象者を相手にして、月給平均十一万円というのは、この現実の姿から、やはり現状の打開といいますか、改正を強く、大臣を先頭にして、私らも応授いたしますので、努力を続けていただきたいと思うのです。まあ一部分のところでごさいましょうけれども、定員定額制のことを強く要求しますと、いわゆる役所の方の方か、それなら国家公務員になってしまうから、どこへ転勤さすかわからないぞ、こういうようなことをおっしゃって、もうふるえてしまってその定員定額制のことが余り発言できないような雰囲気になってしまったということも聞くのです。 またもう一つは、退職金制度というのですか、共済制度というのが全くないらしいのです。中には何か中小企業の任意の共済制度、これに加入したらいいじゃないかという御意見もあるようでございますけれども、現実に平均の月給十一万円の中からそういう積立金をというものも差し引けるような実情ではないと思うのです。要は、いみじくも局長がおっしゃったように、収容者の数が減ってきておるということが望ましいことかもしれません。あるいは見方を変えれば野放しになっていて嘆かわしいということかもしれません。いずれにしても、平均収容率五〇%という状態であれば、これはここの更生保護会の施設では解決のつかない事態になってきていると思うのですね。ですから、やはり施設を整理統合するものは統合する、定員定額制にするものはする、そういうところから国の方は一体どうしてくださるつもりですか、ですから、ビジョンを聞きたい、早く現状を打開してほしいという声になってくるわけでございますので、その点をよく御理解の上御努力を賜りたいと思います。 それからまた、週休二日制という問題が役所関係でも出てきております。そうしますと、もし週休二日制ということになりますと、刑務所から出てきた人があるときに、どうも保護観察所なりが休みだ、そこらの施設では受け入れられない、その休みの日には。そういうときには一時的に更生保護会の方が預かることになると思うのです。そうすると、週休二日制になるといままでよりも更生保護会の方がかえって忙しくなる可能性がある。しかもまた更生保護会の職員にも週休二日制ということをおのずから実施していかなければならないとなりますと、ローテーションを組んでいく上においても、いままで四名の体制のところを五名にしなければならないとか、あるいは六名のところを七名にしなければならないとかというぐあいに、おのずから人員増という問題が出てくると思うのですね。週休二日制の問題と更生保護会関係の人件費の問題、これをどう考えておられますか。
○常井政府委員 法務省におきましての週休二日制は全体的にどのような進行段階になりますか、私から申し上げる立場ではないと思いますが、ただ、保護観察所で想定いたします場合に、週休二日制と申しましても全部が休むわけではありませんので、必ずその間の仕事はできるようにして休むはずでございますし、またそうでなければいけないと思いますので、更生保護法に対する仕事の関係で、週休二日制になったから観察所の仕事の部分を更生保護会が持つということは、私といたしましてはちょっと想定できないわけでございます。 それからなお、更生保護会との連絡は密にいたしまして、たとえば正月の休みのようなときにでございますが、そういうようなときには施設に問い合わせまして、事前に連絡をして、この日にこういう者が行く、満期釈放の日はわかりますから、そういう手配をした上で正月を迎えるとか年末を迎える、そういう配慮を私ども口を酸っぱくしてさせているわけでございますが、週休二日制につきましてはお尋ねのようなことがちょっと私は考えられないのでございます。 それから、更生保護会の方の週休という問題は私どもが云々する問題ではございませんので、民間の自主的団体でございますから、こうせよということは言えないと思いますが、もちろんそういう体制になりましたならばどう対応すべきか、どうすべきかというあるべき姿は十分検討したいと思っております。
○加地委員 いま委託事務費の中でいわゆる人件費というのは積算基礎の上で何円ぐらいになっているのでしょうか。
○常井政府委員 委託費の中の委託事務費は五十三年度の予算におきましては千二十二円四十八銭になっております。そのうちのほとんどでございますが、九百九十二円七十一銭でございます。これが人件費の積算でございます。
○加地委員 それから、更生保護会関係で近畿とか関東とかそういう大きな管区単位ぐらいに病院をつくってほしいという声が大分あると思うのですけれども、一般の病院でございますと、刑務所から出てきた人をいやがってなかなか受け付けてくれない。そのために病院をつくってほしいという声が以前から出ておるようでございますが、それがつくれる見通しとか法務省のお考えとか、そういうものをお聞かせ願いたいと思います。どうも一般の病院では看護婦がひやかされたりとか、そういうような傾向もちょっとあるらしいのですね。
○常井政府委員 病院も総合病院あるいは専門の精神科の病院、いろいろございますが、関東の管内には更生保護会で精神病院を営み、しかもそういう収容者を引き受ける施設自体がございます。御指摘の病院は、あるいは内科、外科みんな整った病院でございますか、これは望ましいことだとは思うのでございますが、先般来申し上げておりますように、更生緊急保護法、緊急のあるいは応急の、しかも前提となるある一定の条件を満たさない場合に補充的にめんどうを見るところであるという現行の法制になっております。したがいまして、公共の病院とか家族等が引き取る場合にはそちらを優先する、そしてその補充的に何とかめんどうを見なさいというのが現行法でございますので、できればといいますか、法の趣旨といたしましては公の病院を利用する。結局生活保護その他の手段によりましてそちらにお願いするというのが現行法のたてまえであろうと思うのでございます。それでありますがゆえに、私どもは現行法を改正して、そうではないのだ、病院へ送りたければ初めから病院へ送るし、それから更生保護会もそういう施設を持つことができるのだというものにしたいというのが私どもの法改正の趣旨でございます。現行法の方は、いま申し上げましたように二次的な応急的なものである。しかも、あえて申し上げますと、できるだけ能率を上げて、短期に、国費を使わないようにしなければいけないという趣旨の法律の条文もございますので、私どもといたしましてはそれに拘束されるのでございまして、もう少し積極的な形にしたいというので、まず法律改正からいかなければならぬだろうというふうに思っておる次第でございます。
○加地委員 一点だけ……。 現在社会福祉事業法等におきましても、いろいろな融資を受けるときにも更生保護事業関係は除くとかいうように一般の社会福祉とは別に扱われておりまして、別にというのが、いいようにではなしに冷遇される方にどうもなってしまっておるようなんでございます。たとえば更生保護会の施設を建てかえるときでも、普通の社会福祉施設のときには政府の方が利子補給をしてくれるとかあるいは地方自治体が出してくれるとかというような方法がとれるようでございますけれども、更生保護会関係の方はどうもできない。そのために現在あるところの保護司会とか更生保護会とか更生保護婦人会とかBBS、これを一本にまとめて特殊法人として、そして厚生省所管の社会福祉施設と同じように融資の道が与えられるようにしてほしいという強い声がございますが、これについては何かお考えは進んでおりますのでしょうか。
○常井政府委員 厚生省関係の方ほど融資を得られないということでございますが、国の補助金がございますのは御承知だろうと思いますが、そのぽかに日本自転車振興会、これは四分の三補助をしております。この金を受けまして更生保護会の約九〇%が全面改築をしてきたという実績も御了解願いたいと思います。それから全額の補助につきましては、お年玉つき郵便はがき寄付金の配分がございます。なお、日本船舶振興会からの補助も受けられるのでございます。確かに全体を検討いたしますと、厚生省関係の施設ほどの道はあるとは申し上げかねますが、しかしそういうことがあることも御了解いただきたいと思うのでございます。 それから更生保護会は連絡、助成の更生保護会がございまして、これは寄付金その他の金を集めましてこういう事業を援助する組織でございます。これも法務省所管の中にございます。そういう組織であるということを御了解願いたいと思います。 なお、三つの御指摘の保護司会、更生保護会、更生保護婦人会でございますが、これはいわば官製のものと申し上げるよりは、本来地域社会に根を生やしてでき上がったおのおのの団体でございますので、多分にいろいろの利害といろいろの事業目的、主張を持っております上に規模も違いますし、すでに法人になっているのもございますし、それらを統合して一本にするということは、私の感じといたしましては、生き物を殺してしまうというようなマイナスの面もあるのではないかということをおそれるのでございます。なお検討させていただきたいとは思いますが、御必要に応じましていまのお話しになりました個々の三つの団体の差異等につきましては申し上げたいと思いますが、いずれにいたしましても、結論としていま申し上げたような感じを持っておるのでございます。しかし、なお御趣旨のあるところは体して努力をしたいと思っております。
○瀬戸山国務大臣 いままで加地さんからいろいろ更生保護の関係について御指摘がありました。遺憾ながら私はまだそういう施設を十分見て歩くいとまがありませんで、細かい点を承知しておらないところがありますけれども、 〔山崎(武)委員長代理退席、委員長着席〕 いま御指摘をされておる数々の問題について非常に傾聴すべき点があったといいますか、十分検討して改善の図れるものは改善したい、かように考えます。
○鴨田委員長 鳩山邦夫君。
○鳩山委員 私はきょうは東京入管、つまり東京入国管理事務所の実態について、その改善をお願いする質問をしたいと思っております。 いま貿易の経常収支の黒字が何億ドルだとか、ことしはどれだけ減らすんだとか、いろいろ議論が出ておる。その根拠はどうなんだというようなことで予算委員会でも紛糾をしたりいたしております。要は、日本が国際的な責任を果たすことが、経済的にはもちろんのこと、文化的にも求められているということではないかと思います。つまり、外国から日本に来られたお客様がいい印象を持ってそれぞれの故郷に帰られるということも、やはりどうしても必要なことになるのじゃないだろうか。 そんな観点から入管行政のあり方というものも見直されていかなければならない時代であります。しかし東京入管の事務所が港区港南三の三の二十というところにございます。お役所の関係の方は知っておられるにしても、マスコミ関係や政界の方に東京入管の場所知っていますかと言うと、どこにあるのとおっしゃいます。港南にあるんですよと言うと、港南ってどこですかと皆さんおっしゃる。それもそのはず、われわれの日常生活で港南という住所のところに行く可能性はほとんどないですね。ここは倉庫街の真っただ中であって、いわば人が住んだり買い物をしたりする場所ではない。そんなへんぴなところに入管があって、そして再入国の許可をもらいに行ったり資格審査を受けたりしておるという状況だと思います。 そこで、私はそういう点についてお尋ねをしたいわけでありますが、全国に十四の入管事務所があると伺っておりますが、それがそのとおりであるかどうか、お答えいただきたい。 もう一点は、十四のうち、たとえば東京は神奈川県以外の関東甲信越がその守備範囲である、横浜は神奈川と静岡が守備範囲である。ところが下関はほぼ山口県だけを担当しておる、あるいは鹿児島は、もちろん南の玄関ではありますけれども、鹿児島県一県だけを担当しておるというふうに、大分アンバランスがあると思うのです。これを、たとえば各県に必ず一つずつつくって、それをまとめて各地方ごとに系統立てていく、そういうお考えがあるかどうか、この二点についてお尋ねを申し上げます。
○吉田政府委員 全国で入国管理事務所は十四ございまして、ほかに入国者収容所というのが二つございます。十四ができましたのは、おのおの経緯がありましていまのような形になっているのでございますが、御指摘の下関、これは関門海峡を持ちまして、昔はあそこから韓半島からの密入国が非常にございまして、関門海峡をはさんで山口県だけで北九州は別だということになりますと、その取り締まりが非常にむずかしい。したがいまして、下関の入国管理事務所は関門海峡、北九州及び山口県、こういうふうになっておるのでございます。それから鹿児島でございますが、これはまだ沖繩が返還されない時代は鹿児島から南、奄美大島方面の離島が国境の第一線的存在であったわけでございまして、外地的な扱いを受けた沖繩との出入国を鹿児島で見る、こういう経緯がございました。そういう歴史的背景から、現在の形では少しおかしいと思われる分け方になっておる次第でございます。 それから、もちろん望ましい姿といたしましては、各都道府県単位に一つずつ事務所を置くというのが望ましい姿でございますが、この入国管理行政というものは戦後発達いたしまして、まず出入国を取り締まるわけでございますので、港のあるところということから出発いたしました。その次に、段階として今度は航空機が発展いたしまして、空港のあるところという発展の仕方をしている。漸次、このごろは在留管理という面が出てまいりましたので内陸に及ぶ形になっておりますけれども、まだそこまで発展段階が至っていないという現状でございます。 なお、お尋ねの東京入国管理事務所の位置の問題でございますが、これは十何年前のことでございますが、当時非常に国有地を探した、なかなか東京の中心地に適当な場所が見つからなかった、そういう関係で、あの当時は法務省といたしましては非常に苦労をいたしまして、やっとあの場所を見つけた。といいますのは、なるほど先生ただいま御指摘のとおり、あの地区はただいま倉庫街というふうになっておりますけれども、これはわが国の経済の発展に従いましてあの地区が非常な変化を来したのでございますが、当時といたしましては、都心には非常に土地が、国有地がない、適当な場所がないということで、しからば結局、羽田空港にも近い、それから品川駅にも近い、あの辺ならまずいいのではないか、それから、むしろあの辺は公園みたいになって発展していくのではないか、こういう予想であったようでございます。私も直接当時おりませんので。ただ、それがわが経済の発展とともに非常に倉庫がじゃんじゃん建ってしまったという、十年間のわが国の変化に基づいた非常に予期せざる変化があの地区に起こったということで、御了承願いたいと思います。
○鳩山委員 しかし、これは了承するとかしないとかいう問題ではなくて、法務省のためにも、あるいは日本の国のためにも、ひとつりっぱなものをつくっていただかなければならないと思います。 現在の場所は、大変足の便が悪いわけでございますね。これは、いま予期せぬ出来事が起きたとおっしゃっておりますか、しかし、足の便が悪かったのは当時からではないかと思うのです。私、伺いましたところによりますと、外国人のお客様から、何でこんなばかげたへんぴなところにあるんだという苦情が事実幾つも出ておるということを聞いております。 それから、品川駅からおりて二百メートル近い地下道を通って海側に寄った出口に出る。そこから歩いてくる人が圧倒的に多いということでございます。バスは、本数が少ないものがありますけれども、入管の近くでとまるわけではなくて、やはりバスの駅から歩いてくれば結構かかるから、バスを待つより品川の駅から歩いてしまおうというのが職員の方の実態だと聞いております。しかも、外国人でもお金持ちの方でしたら車で、車はそんなに混むところではありませんから、ばっと来るでしょう。しかし、留学生の方は職員と同じで、ほとんどが歩いてこられているそうであります。これは、私、おとといも行ってまいりました。そこまでは調べなかったのですか、品川の駅からおりて東京入管まで歩いて、大体何分ぐらいかかるものなんでしょうか。
○吉田政府委員 大体十五分ぐらいと聞いております。
○鳩山委員 しかし、留学生を十五分、二十分歩かせるということは、私は必ずしもいいことではないと思います。 それから、そういうへんぴなところで、倉庫街の陰に隠れたようなところにあるわけです。モノレールも近くに通っております。そこで、余り目立つほどの案内図、案内板のようなものを、私はおととい参りまして見なかったような気がするのですが、そういうものは立てておられるのでございましょうか。
○吉田政府委員 実は、先生御指摘のとおり、私が着任してあの事務所を訪れたときに、その点を指摘したわけでございますが、そのときに所長が申しますのは、三カ所ぐらいに立ててあるということでございます。 それから足の便でございますが、ただいま所長が、モノレールの停留所をあそこにつくってもらいたいと、一日大体五百人の外国人が事務所を訪ねるものでございますので、それから、あの辺に勤務しておられる人たちの足の便も考えて、モノレールの停留所をつくるという交渉をいまやっております。
○鳩山委員 そこで問題は、外国のお客様に与える印象の問題なんです。私、昔一度学生時代に用事で行ったことがありまして、その印象では、東京入管はバラックであったと思っておったのであります。ところが行ってみましたら確かにバラックではないので、鉄筋だろうと思います。昭和三十九年にできた建物ですから、十五年はまだたっていないのでございましょう。しかし、中を見ますと、やはりこれはまことにお粗末だろうと思います。一階では、大ぜい外国の方が事務のいろいろな申請をするところでありますが、一階のホールと言われるところには、座布団のない、汚れた木のベンチが二つありました。それから待合室はホールと続いておるわけでありますが、ビニール製のいかにも冷たそうな、これも余りきれいでない古い長いすが幾つかありました。そしてホールのわきには、かさが開いたまま転がっておって、これはだれのかさだかわからないのです。あるいは掃除道具が立てかけてあるわけなんです。これはお勤めの方や掃除をなさる方の怠慢ではなくして、そういう掃除道具や何かをきちんとしまったり、あるいはかさなどをきちんときれいに整理するような場所がないからそんなふうになっているんじゃないだろうか。あるいは内部が非常に粗末なものですから、余りきれいにするしがいもないということでそんなふうになっているんじゃないかと私は思ったわけでございます。 くどいようですが、二階の方は、これは審査第二課が入っておりますけれども、ここはビニール製のいすすらなく、木の長いすが二つ、木のテーブルか一つあって、座り心地が悪いし、寒いものですから、おとといは、私が参りましたときに、ある外国人の方は、ヒーターというのでしょうか、中から暖かい空気が出てくる空調の上に座って書類に何か書いておる、そういう光景だったわけでございます。これでは幾ら何でも、日本に来て帰った外国の方が、日本はどうだった、入管というところはひどくて、あんなところじゃ行く気がしないよということにもなりかねない、私はそう思います。 日本の予算もいろいろ大変でございますし、法務省の予算もまた大変なことはわかりますけれども、やはり東京入管はある意味では日本の表玄関だろうと私は思います。確かに羽田が玄関だ、成田が玄関だ、これはよくわかる。しかし、再入国の許可をとるときには必ずあそこに行かなくちゃならない。だから、日本で勉強している留学生とか、日本でどこかの会社に勤めている外国人とか、あるいは日本の大学で教鞭をとっておられる外国人か、何度かは必ず行くところだと思います。とすれば、当委員会室の向こう側のロビーというのでしょうか、エレベーターホールというのでしょうか、あれくらいきれいなものかあって、ホテルのロビーと変わらないぐらいのものがあっても当然ではないかと思っております。 そこで、諸外国では入管行政のやり方が日本とは違うと思いますけれども、やはり在米日本人あるいは在英日本人というような方は何らかの事務所に出頭なさることが多いと思うのですが、諸外国の実態というものを、きょうは結構でございますが、いずれお調べいただいて、非常にりっぱであるか、日本と同じぐらい粗末であるかお調べいただきたいと思います。 問題は、この一階の審査第一課のあるところでは、お客さんは窓口に向かって書類を書く。ですから、お客さん側と、つまり待合室側と事務所側の間に、何と呼んだらいいのかわかりませんが、一種のカウンターの壁みたいなものがあるわけですね、これがはなはだしく傾いているわけなんです。事務所側に上が曲がっている。私は最初これはわざとそうしてあるのかなと思った。そして、おととい行って聞いてみましたら、そうではないと言うのです。最初は真っすぐだったんだけれども、建物が粗末だからだんだん曲がってきた、その証拠をお見せしましょうと言われたのは、曲がっているつい立てみたいなものの間をくりぬいているドアが、昭和三十九年当時はよくあけられたらしいのですが、だんだん傾いてくるものですからひっかかるわけですね。ドアの片側を削って、傾いたつい立てにちょうどはまるようにかんなで削ってつくりかえてある、そういう状況でございますから、これはぜひ大臣にも御認識をいただいてやっていただきたいことだと思っております。(「みんなで見に行ったらいい」と呼ぶ者あり)そうですね、委員会の皆さんで見に行っていただきたいとさえ思うぐらいでございます。 そこで、その将来についてでございますが、実はこの問題につきましては、昨年の通常国会明けの大臣を囲んでの昼食会のときだったでしょうか、福田前法務大臣に私ちょっと申し上げました。そうしたら理解を示してくださって、法務省の側にも何らかの指示かあったらしく、東京入管の吉田所長は、そういう話は聞いているとおっしゃっておりました。そこで、竹橋にある公安調査庁の跡はどうかという話が出たことがあるのだ、昨年のことだと思います。あの跡を全部壊して新築をしてりっぱな東京入管をつくるという話がありかけたらしいのでございますが、ところが、あの場所に新築をするならば関東信越国税局が入るのだと大蔵省が言っているらしいのです。そして、関信局が独立をしたら合同庁舎の中から出るからその間でもどうかというお話があるというふうに伺っておりますが、そういう話が確かにあったかどうかお答えいただきたい。
○瀬戸山国務大臣 鳩山さんに東京入管事務所のことを御指摘いただいてありがとうございます。おっしゃるとおり、やはり海外から外国の人が出入するところ、日本の顔であり玄関でもあるわけでございます。余りそう年数はたっておらないようでありますけれども、しかし三階建て、鉄筋コンクリだということでございますが、あの当時のことですから、今日建てるような建物とはやはりやり方が違っておったように思います。やはりややみっともないようなかっこうになっておるということ。 それから、おっしゃるように、あそこに行った歴史は先ほど局長からお話しいたしましたが、今日の段階で言うと、あんなところにどうしてあるんだろうかというようなかっこうになっておる。こういう状況でありますから、御指摘のように何とかこれを——まああそこで多少の補修はしておるようでありますけれども、もっと地理的にも便利なところ、しかも顔として恥ずかしくないようなところ、こういうことで検討を進めておりますが、その状況については局長からお答えいたします。
○吉田政府委員 ただいま大臣から答弁がございましたように、また先ほど先生から御指摘ありましたように、昨年の国会の終わった後、法務委員会の懇親会で先生から御指摘がありました。ちょうどあのときに竹橋の公安調査庁の跡に移るというような、あれは大蔵当局と話が大分進んでいた段階でございまして、先生には私からむしろ明るいなにをあのとき申し上げたと記憶いたしております。その後いろいろやりくりで、財政当局の方からあれはまた別途計画に入ったということで、いまちょっと一時とんざの形になっておる次第でございますが、われわれといたしましてもできるだけ早い機会に努力したいと思います。 なお、各国のオフィスがどうなっているかということでございますが、必要ならばまた御報告申し上げますが、私が体験いたしましたところでは、アメリカ、ヨーロッパの各国、豪州あたりのオフィスは、飛び切り外務省のようにきれいだということではございませんけれども、まあまあふさわしい構えはいたしております。 ただ、ちょっと弁解めきますが、全国でただいま申し上げました十四カ所の事務所がございます。発足当初は借家で、場所によっては非常に変なところにも入っていた次第でございますが、漸次整ってまいりまして、昨年は大阪事務所が非常にりっぱなのができておりますし、各所大体事務所に関する限りふさわしい事務所ができて、おひざ元の東京だけが場所の関係で一番おくれている次第でございます。それから、出張所も漸次きれいなものになってきております。まだ二、三仮住まいとかのところがございますが、鋭意これも年々改善をいたしてきております。私の見るところ東京事務所が一番出おくれておる次第でございますので、決して全国ああいう状態になっているわけじゃございませんので、ちょっと御報告申し上げます。
○鳩山委員 この間いただいた「法務省所管 昭和五十三年度予算について」、この営繕費の中で東京入管の増築、改築その他は法務省では予定しておられないわけでございますか。
○前田(宏)政府委員 お答え申し上げます。 ただいまのお尋ねの五十三年度の予算そのものにつきまして、東京入管を新築するということの予算はついていないわけでございますが、その事情はただいま大臣あるいは局長から申し上げたとおりでございます。ただ、当面、そのつなぎと申しますか、新しいところに移るまでの補修と申しますか、改善、改修と申しますか、そういうための費用というものは、一般的に修繕費というものが予算に計上されておりますので、その執行の面でできるだけのことをやりたいと考えております。
○鳩山委員 はなはだ細かいことになりますが、そういう補修ができるということであれば、まず案内図を各所に整備をしていただきたいということ。それから、内部の壁を塗りかえていただきたいということ。それから、床が波を打っておりますので、できればこれもすべりにくいようなきちっとした床にしていただきたいということ。それから、何といっても傾いているカウンターを真っすぐに直していただきたいということ。それから、これはまた別になりますか、木のベンチではなくて、もう少しまともな、座り心地のいい長いすを入れていただきたいということ、それだけは私からお願いをいたしておきます。 それから、最後に、これは全く問題は別になりますけれども、昨日参議院の方ではプロ野球のドラフト制度について参考人を呼んでの質疑が行われたわけでございまして、私どももその内容はニュースで伺ったわけでございます。いろいろな意見があると思いますし、私自身も確たる意見を持っておるわけではございませんけれども、いわゆるドラフト制度が憲法の保障する職業選択の自由に障害となっているようなものであるのか、あるいはむしろドラフト制度のようなものは国会で議論をするようなものではない、ちょうど裁判における統治行為みたいに、国会その他での審議あるいは国家権力が何だかんだというようなことにはなじまない性質のものであるとお考えなのか、基本的なお考えだけでも大臣から御答弁をいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
○瀬戸山国務大臣 私、野球をテレビで見ることは好きなんですけれども、野球の実態はよく承知しておりません。 なお、いわゆるドラフト制が、報道なんかで見ておりますけれども、どういう歴史でできたのか、どういう深い意味かあるのかとあうことをつまびらかにわきまえておらないのでありますが、これに的確な判断をすることはできもしないし、また判断すべき問題でもない、かように考えております。 さて、国会で論議すべきものであるかどうかということは、これも国会というところは最高の言論の自由なところでございますから、それがいいとか悪いとか言うのはおかしゅうございますが、せっかく意見はどうだと言われると、率直なところ、野球のドラフト制はいろいろ問題があるようでございます。しかし、人権を、憲法上の職業選択の自由を奪ったというところまではいかないのじゃないか、私はいまのところそういう気がいたしておりますが、できますことならば、そういう若い、すぐれた球技を持っておる人を生かす道を野球界の中で相談をして善処されることが一番望ましい。国会でこれを議論したって結論が出るものではないと私は思います。野球ははやりですから、国会で野球論議をするのも悪いことではないかもしれないけれども、野球を国会で結論を出すということはちょっと無理じゃないかと思いますので、願わくはああいうふうな——今度の場合は江川君という人の問題から来たようでございますが、私の浅い考え方から言いますと、やはりプロ野球というのも一つの営業であろうと私は思います。一面においてはこれはスポーツ。スポーツと事業とのミックスしたような感じがするわけでございますから、スポーツは生かす、しかもそれに対して能力を持っておる人はできるだけ生かす、これが関係者、当人のためにもよろしいし、また一つの企業として、国民が大きく期待しておる一つの娯楽的企業でございます。それも生かすようにするということは、内部でお話し合いをされればいい知恵が出るのじゃないかというのが率直な私の考えでございます。
○鳩山委員 終わります。
○鴨田委員長 次回は、来る二十一日火曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午後三時三十四分散会