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84回国会衆議院1978/06/23

公害対策並びに環境保全特別委員会 第25号

発言数
191
登壇者
15
会派数
6
開催日
1978/06/23

会議録

久保等日本社会党

○久保委員長 これより会議を開きます。  公害対策並びに環境保全に関する件、特に二酸化窒素に係る環境基準に関する問題について調査を進めます。  本日お招きいたしました参考人は、日本鉄鋼連盟立地公害委員会委員長山形栄治君、東京都公害研究所長柴田徳衛君、東京大学工学部助教授西村肇君、東京大学医学部教授前田和甫君、日本弁護士連合会公害対策委員会委員真鍋正一君、全国公害患者と家族の会連絡会代表浜田耕助君、以上六名の方々であります。  なお、本日は議事の整理上、午前中は山形参考人、柴田参考人及び西村参考人から御意見を承り、午後からは前田参考人、真鍋参考人及び浜田参考人の御出席をいただき、意見を聴取することといたします。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただき、まことにありがとう存じます。参考人の皆様にはそれぞれのお立場から、どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。  なお、御意見の開陳はおのおの十五分以内に要約してお述べいただき、その後、委員の質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、山形参考人からお願いいたします。山形参考人。

山形栄治日本鉄鋼連盟立地公害委員会委員長

○山形参考人 ただいま御紹介いただきました日本鉄鋼連盟立地公害委員長の山形でございます。  本日は、NO2環境基準問題を中心にいたしまして、産業界といたしまして意見を申し述べる機会を賜りましたことを厚く御礼申し上げる次第でございます。  NO2の環境基準につきましての意見を申し述べます前に、環境政策全体のあり方につきましての私どもの希望を一言申し述べたいと存じます。  産業界は、地域社会との深いかかわり合いの中で産業活動を続けるものといたしまして、地域の自然を保護し、快適な環境づくりを進めるということは当然の責務であるという認識に立ちまして、従来から総力を挙げまして鋭意環境対策を進めてまいっておるわけでございます。この結果、御高承のとおり、近年のわが国の環境は急速に改善されまして、その成果は国際的にも高く評価されております。たとえば代表的な大気汚染物質でございますSOxについて申し上げますと、昭和五十一年度におきまして全国の約九割の部分がすでに環境基準を達成しておりまして、日本全地域の達成も間近いということが現在期待されておる状況でございます。このように、かつて見られました危機的な様相が薄らいでいるということは、こういう点から言いましても過言ではないと私は考える次第でございます。  一方、わが国の経済の情勢は、昭和四十八年秋のいわゆる石油ショックを契機といたしまして減速経済への移行を余儀なくされておりますけれども、今後の環境政策は、このような事態の変化と環境改善の現状を踏まえまして、従来にも増して、より総合的、より整合性をもって推進されることが望まれるところでございます。もとより、国民の健康を維持し、生活環境を保全いたしますことは、これは何よりも重要なことであることは申し上げるまでもございません。しかしながら、環境政策はひとりそれだけで存在し得るものではなく、国全体の雇用政策、物価政策、エネルギー政策、さらには広い産業政策等々、他の政策との整合性を図ることがこれまた重要であり、単に汚染物質は少なければ少ないほどいいのだという、合理性の線を超えて少なければ少ないほどいいのだという考え方は、若干修正を要する時期に至ったのではないかと考えておる次第でございます。  次に、産業界のNOx対策の現状について御説明申し上げます。  産業界はこれまでNOx対策につきましては鋭意取り組んでまいったわけでございます。私どものこのような姿勢は、現在の不況下におきましてもいささかも変わるものではありません。たとえば鉄鋼業界について申し上げますと、NOxの防除技術は世界的にも未踏の分野であることにかんがみまして、業界の総力を結集して開発に当たることといたしております。このため広く学界、官界、関連業界の全面的協力のもとに、昭和四十八年にNOx防除技術の基本政策の策定を行うための鉄鋼業NOx防除技術開発本部を設置いたしました。さらに技術開発を推進する機関といたしまして、財団法人鉄鋼設備窒素酸化物防除技術開発基金、それから鉄鋼業窒素酸化物防除技術研究組合をそれぞれ設立いたしまして、業界全体で現在まで約百五十億円を投じて研究を進めております。財団法人鉄鋼設備窒素酸化物防除技術開発基金といいますものは、NOx防除技術の開発促進のため、約三十四億円の計画で、大学、関連業界、各研究機関に対する研究助成金の交付を行っておりまして、すでに助成交付をしたテーマは、NOxの発生機構及び環境中の挙動に関する調査研究七件、燃焼改善等のNOx生成防止技術の研究開発十五件、排煙脱硝技術につきますもの二十三件等々、合計で六十件に及んでおる次第でございます。また、鉄鋼業窒素酸化物防除技術研究組合の方は、鉄鋼各社の共同研究機関といたしまして、現在約三十六億円の計画で鉄鋼業におきますNOx排出量の五〇%を占めます焼結炉に重点を置いて、排煙脱硝技術開発といたしまして、アンモニア選択接触還元法、電子線照射法等々の研究を進めておるわけでございます。これらの結果といたしまして、この研究の成果といいますか、低NOxバーナー等の燃焼改善技術につきましては、大幅に研究成果があらわれまして、ほぼ限界まで対策が進められております。  一方、NOx対策の決め手となります排煙脱硝技術につきまして、これも、クリーンな排ガスを対象とするものにつきましては技術的に開発されたということが評価されておりますけれども、現実的にはクリーンの排ガスというのはなかなかございませんで、SOxとかダストを含んでおります。これの排ガスにつきましては全然目途が立っておらないというのが現状でございます。今後も、この辺につきましては研究を続行する予定にいたしております。  なお、この際、移動発生源、いわゆる自動車と、工場のような固定発生源、この二つの対策技術の違いについて、一言申し上げたいと思います。  わが国の自動車業界が、世界で最も厳しい規制に対応いたして技術を開発したということにつきましては、われわれ、産業界の一員といたしまして、深い敬意をあらわすものでございます。しかし、ここで両者の違いをちょっと指摘いたしますと、自動車の排ガス対策といいますのは、あくまで新車を対象にいたしておりまして、新しい車のエンジンその他を変えるというのがその対策でございますが、固定発生源で望まれておりますのは、既存の設備、工場を主たる対象といたしまして、その点が非常な大きな違いでございます。既存の設備といいますのは、限られた用地で、すでに工場が動いておりますので、そこの施設の構造とか用地の制約等が自動車とは全然違った一つの困難を伴うものでございます。  それから、もう一つの重要な違いは、自動車の排ガスというのは、ガス自身が非常にクリーンで、しかも濃度が非常に高いガスでございます。固定発生源の方のガスは、濃度が低くて、しかも、先ほど来申し上げましたように、SOxとかダストを含んだガスでございますので、それを処理するというのが技術的に非常にむずかしい。それが根本的な違いでございます。  さらにもう一つの重要な違いは、そう言うと自動車に悪いかもしれませんけれども、自動車のエンジンというのは、コストで約十万かかるか、二十万かかるかわかりませんけれども、ほぼそういうオーダーでございます。しかもそれが、何百万台という生産台数の中で技術開発の資金を吸収できるわけでございますけれども、個々の工場は何百億とか非常に大きな金をかけた設備でございまして、これを動いている段階で改善するというところに非常な違いがございます。  われわれ、一番最初申し上げましたように、自動車業界の努力には非常に深い敬意を表するものでございますけれども、自動車でできたから固定発生源で当然にできるじゃないかというような、もし御意見等がございますれば、いま申し上げました三点を前提によくお考え願うと非常に幸いである、こういうふうに考えるわけでございます。  以上申し上げました環境政策に対する私どもの希望とNOx対策技術の現状を踏まえまして、現在、政府内部で検討されております環境基準の改定について、二、三御意見を申し上げたいと思います。  第一は、産業界といたしましては、納得のいく根拠に基づいて基準の改定をお願いいたしたいということでございます。  御高承のとおり、現行NOx環境基準は、当時といたしましてはやむを得なかった事情もあるわけでございますけれども、いずれにしましても、知見が不十分なままで一日平均〇・〇二ppm以下と設定されまして、これが、原則として五年以内に達成するものとされたわけでございます。私どもは、現行環境基準の基礎となった報告を専門委員会が出しました四十七年当時から、設定根拠の合理性に疑問を呈しまして、この〇・〇二ppmというようなほとんどバックグラウンド濃度と同程度の厳しい数値を設定いたすということについての妥当性につきましても問題を提起してまいったところでございますけれども、現在のようにNOx行政の混乱を招いた最大の原因は環境基準のこういう非現実性にあったと言っても過言ではないと考える次第でございます。このような状況の中で、本年三月、NOxの健康影響に関する判定条件と指針につきまして中公審の答申が行われたわけでございますが、私どもは、かねてから、今回の検討は、十分科学的審議が尽くされるとともに納得のいく結論が明らかにされまして、NOx問題の正常化への道を開く契機となることを深く期待しておったところでございます。しかし、今回公表されました答申内容は、すでに私どもはその見解を明らかにいたしておりますように、指針が国際水準に比較して著しく厳しいばかりでございませんで、その根拠につきましても、多くの納得しがたい問題点を含んでいると考えざるを得ないのでございます。申し上げるまでもなく、自然界に大量に存在するばかりでなく、物の燃焼に伴ってどこでもが必然的に発生するNOxというものは、その発生源がきわめて多様でございまして、とりわけ家庭内の厨暖房、それからたばこ等による室内汚染というのが非常に著しいものがございます。これは若干論理的過ぎるかもしれませんけれども、このような意味におきまして、NOxの健康影響を考えます場合に、室内汚染の影響をとうてい無視することはできないわけでございまして、室内汚染よりもはるかに低濃度の大気の環境のみを取り上げて、それで環境基準を考えていくということに本当の意味でどれほどの意味があるのか、これは非常に理論的過ぎるかもしれませんけれども、率直に私どもとしては疑問を抱かざるを得ないわけでございます。  第二は、経済的、社会的影響を踏まえた現実的かつ合理的な基準の設定をお願いいたしたいということでございます。昨年十二月、産業構造審議会が答申いたしました、その答申によりますれば、固定発生源について燃焼改善、燃料転換、排煙脱硝等の対策を可能な限り実施いたしたと仮定いたしましても、用地上の物理的制約、それからバックグラウンド濃度の存在等によりまして、主要な都市では現在の環境基準の中間目標でございます。日平均値の〇・〇四ppmでさえも実現は不可能であるということが答申されております。また、同じ答申の中で、仮に物理的限界まで対策を講じたといたしますと、固定発生源対策にかかわる設備投資額は約二兆円、これの年間のランニングコストが約一兆円、エネルギー消費の増大量は、原油換算で年間約一千万キロリットルに達するという試算がなされております。さらに、現実的なNOxの改善可能レベルにつきまして、産構審答申をもとに各種発生源の寄与率、改善可能性等を考慮して試算いたしますと、主要大都市では一日平均値で〇・〇七ないし〇・〇八ppm程度が限界であるということも答申されております。特にこの際申し上げたいことは、NOxの地域環境濃度、とりわけ大都市の場合には、その中に中小企業とかおふろ屋さんとかビルの暖房とか、いろいろなものが多量に入っておりまして、これを無視することは本当はできないわけでございますが、これら中小煙源のNOx防除技術は、現在のところ全くだれも開発研究をいたしておりません。よしんばこれが将来において著しく改善されたといたしましても、現在の中小企業とかふろ屋とかビル等の用地を考えましただけでも、そこに脱硝装置を設置することは現実問題として不可能ではないか。それからまた、その脱硝技術をやりますときアンモニアを使うわけでありますけれども、アンモニアは高圧ガス取締法の危険物の対象になっておりまして、家庭まではいかないにしても、これを中小企業、ビル等にやるということは非常な保安上の問題もありますので、実際問題としてはこの辺は規制の対象にはしにくいのではないか、こう思います。  このようなことを考えますと、これらを抜いて自動車と大きな工場のNOx対策のみで地域の環境濃度の改善をやるということは、おのずからそこにバイアスがかかっておりますので非常に限界がある。この辺もぜひ御理解願いたいと思うわけでございます。  第三の点は、国際水準との関係の問題でございます。  御存じのとおり、米国、カナダ、西独等の欧米諸国は、健康保護の観点から年平均値で〇・〇五ppm、これを一日平均に換算いたしますと大体において〇・一ppm程度に基準を設定いたしております。また、現在検討中と聞いておりますEC、ノルウェー等の諸国も同程度のレベルで考えておるとわれわれ仄聞いたしておるわけでございます。すなわち、この程度で十分国民の健康を保護し得る、大丈夫だといういわば国際的な合意というものがここに成り立っておるのではないかと考えるわけでございます。  わが国の大気中のNO2の濃度が、それらの諸国に比較して非常に高いならばまた問題でございますけれども、わが国の大気中の濃度は欧米諸国とほとんど同程度でございます。これは公式のいろいろな調査でそうなっております。こういう現状を踏まえて、わが国のみに著しく非常に厳しい基準が設定されますことは、国際的にも非常な問題があるのではないか。  筋違いの議論かもしれませんけれども、現に自動車について非常に厳しいNOx規制をやりましたときの反応といたしまして、欧米諸国は、これは日本のノン・タリフ・バリアだ、貿易条件以外の条件で外国の自動車を日本に入れないための措置であると言って著しく強く批判をした経緯が過去にあるわけでございますが、こういうことで国際的な関係もよく御配慮願いたいと思うわけでございます。  これに対しまして一つ御意見がありまして、わが国の環境基準は法的拘束力がないから行政上の目標である、諸外国の環境基準というのは法的に規制の対象基準であるので、日本は目標値であるから諸外国のそれよりも厳しくていいのではないかという御意見も一部にはあるわけでございますが、この辺につきましては、これは先生方御存じのことだと思いますけれども、日本の環境基準の運用の仕方が、地方自治体等におきましては規制基準として運営されて、公害防止協定等にもそれが採用されておる。実際、これは規制基準で運用されておりますし、今後も私はそういうふうになるのではないか、こう思うわけでございますので、その辺を踏まえて、ひとつ環境基準の設定については現実的に御高配願いたいと思うわけでございます。  この自治体の問題につきましては、これは各自治体のいろいろな御事情もございますけれども、現状がそういうことになっておる、今後もその可能性があるということを踏まえまして、環境庁を中心に政府内部で新しい環境基準をつくるに際しまして、その基準の性格とかスケジュールをどうやってやっていくのかとか、そういう細かい点までよく明確にいたしまして、責任を持って地方自治体を御指導願うようお願いいたしたいと思います。  最後にお願い申し上げたいことは、総合的な政策判断に基づいて環基基準を改定されたいということでございます。  NOx対策には、先ほど来申しましたように莫大な費用とエネルギーを必要といたします。その社会的、経済的影響もきわめて大きいわけでございます。環境基準というのは国民の健康を第一義とするのは当然でございます。しかしながら、国民の健康を十分に保護し得る範囲でございますれば、その範囲内で社会的、経済的影響、費用対効果の関係、エネルギーのロスの防止等、他の政策との関連の整合性を十分に考慮し得るのではないか。国民全体が最大の福祉を選択できるようにいたしていただきたいと思うわけでございます。  空気がきれいであればあるほど望ましい、これは当然のことでございます。しかしながら、限度を超えてさらにきれいな空気を求めるということは、その実現のために膨大な国民の負担が、結局回り回って国民全体の負担が生ずるわけでございます。この辺、比較考量の上に国の政策判断をお願いするのが当然だと私は考える次第でございます。  私どもは、これまで、きれいな空気を求めて努力をしてまいったわけでございます。今後とも必要な対策は、これを積極的に、最大の努力を払って推進していく覚悟でございます。その点、私の決意も含めましておわかりいただくことを期待いたしまして、私の意見の開陳を終わらせていただきます。  ありがとうございました。

久保等日本社会党

○久保委員長 ありがとうございました。  次に、柴田参考人にお願いいたします。  参考人には、恐縮でございますが、時間内でよろしくお願いいたします。

柴田徳衛東京都公害研究所長

○柴田参考人 私、ただいま御紹介いただきました都の公害研究所長柴田でございます。  この三月二十二日に中央公害対策審議会から「二酸化窒素の人の健康影響に係る判定条件等について」という答申が出され、そこで長期暴露についての指針として年平均値〇・〇二ないし〇・〇三ppm、こういった数値が提案されております。  これをそのまま受けまして環境庁事務当局が環境基準の見直し作業、上記の線を目標にして見直し作業を行っている、こういう由でありますが、もしこの線が大きな目標になるとしますと、従来の環境基準一日平均〇・〇二Pppmを目標としてきました私たちといたしまして憂慮にたえない事態がいろいろ考えられますので、この際、申させていただきたいと思います。  まず、先の指針値として出されました年平均値〇・〇二ないし〇・〇三ppmこれを日平均に換算すれば、〇・〇四ないし〇・〇六ppmになる、こう理解できると存じますし、さらに前記の答申におきまして測定法の改定、こういう項がございました。すなわちザルツマン係数を〇・七二から約二割高ですか、〇・八六に変える、こういう提案がそこにございます。もしそれに従うとしますと、約二割ほど旧来に対して値が緩くなる、こういうことになると思います。したがいまして、先ほどの提案の指針の数値というものは、従来の測定方法をもってしますと一日平均値が〇・〇五ないし〇・〇七ppm、こういったあたりになるかと思われます。したがいまして、答申の判定条件、これがもし環境基準の値になるとしますと、これまでの数値に対しまして三倍から四倍近く基準が緩められる、こういうことになるかと存じます。  上記答申につきましては、大気部会の専門委員会の委員の方々は大変御苦労なさったと存じますが、しかし、ここで出されました判定条件の指針から環境基準というものを導いてきます際には、まだ多くの要因が考えられなければならないと思います。  まず、この二酸化窒素の人の健康への影響、これを考える場合に、その中に有害物質に非常に敏感で被害を受けやすい病人、老人、乳幼児、妊産婦等々のいわゆる弱者、これを実際の環境基準を決める場合には十分考慮に入れていただきたいし、次の世代に生まれてくる子孫への悪影響といった問題までも十分考慮に入れていただきたい、こう思うわけであります。  それから人間の健康という問題でありますけれども、この答申を拝見しますと、主に呼吸器関連で検討がされておりまして、私のこの手持ちのものですと三ページでございますが「しかし、呼吸器以外にも生化学的変化等が起こることが報告されており、今後はこうした変化の生物・医学的意味の確認を行うとともに、二酸化窒素の影響の全容が解明されることが必要である。」こういうような記述が出てまいります。すなわち、今後、呼吸器関連のみならず、人体の他の臓器への影響、この解明の研究も必要である、こう解されるわけでございますけれども、こういった問題、さらに長期微量の暴露とかあるいは高濃度が間欠的に暴露される、こういうような問題、いろいろあるのではないかと思いますので、環境基準を導いてくる場合には、いわゆる安全係数と申しますか、いろいろの、いま申しましたような要因というものをぜひ考えていただきたいと思います。ただ、これら詳細は、私、医学あるいは疫学の専門ではございませんので、また、ぜひそうした専門の方の意見というものを検討し、参考にし、論議していただきたいと思います。  それから、さらに環境基準を考える場合に、人間を取り巻く環境、直接、間接に人間の存在あるいは人間の健康を脅かす、こういう問題を広く考える必要があるかと存じます。この答申におきましても、人の健康影響、これを論じていただいているとともに、私の手持ちですと三ページから四ページにかけてございますが、「大気中の光化学反応の過程で二次的な汚染物質、例えば、オキシダントなど光化学大気汚染の生成に関与し、また硝酸塩、亜硝酸塩等を生成する。」、したがって、二酸化窒素に由来する二次的な汚染についても今後研究の一層の推進が望まれる、こういう記述が出てまいりますけれども、いわゆる二次汚染、複合汚染、二酸化窒素にかかわるそうした問題も十分見きわめて環境基準を考えなければならない、こう私は思います。  特に、ここに取り上げておられます光化学スモッグでございますが、いわゆる二酸化窒素とノンメタンの炭化水素、これが光化学の大気汚染をもたらし、そして人体への悪影響のみならず、広く環境、特に植物の被害を多くいま出しておるのであります。気象条件で年によって被害の差はいろいろございますけれども、東京周辺を見ましても、植物被害、特にアサガオ、サトイモ、落花生、こういったものに広く被害が現在あらわれてきておると思います。関東地方の七十八カ所の調査地点における、ただいま申しましたアサガオ、サトイモ、落花生、こういうものの可視被害と申しますものは、千葉県の一部を除いて関東全域に及んでいる。そしてかなりの葉の面積、最大被害面積三〇%以上、こういった被害度がかなり広範に起きておりまして、昭和五十年からむしろふえる傾向にある。そして、これが環境に一つの大きな警鐘を鳴らしている、こういうふうに思われるわけであります。  そして、こうした光化学の大気汚染をどうしたら低減できるか。結局、その要因物質である二酸化窒素とノンメタンの炭化水素、それから生成物質であるオゾンの環境大気中でのその両者の低減というものが非常に大事だと存じます。  現在までのフィールド調査あるいはチェンバー実験、これは実際の現実の場合にはいろいろそれに多くの要因が加わってくるかと存じますが、しかしこれらの実際のフィールド調査、チェンバー実験から見ますと、二酸化窒素がいままでの環境基準とされておりました〇・〇二ppm、それから環境庁の濃度指針とされておりますノンメタンの炭化水素が〇・三一ppm、午前六時−九時の濃度をこの辺を超えさせないようにしておかないと、光化学スモッグの注意報の発令基準を超える状況になってくる、こういうようなことが考えられるのであります。結局、この二酸化窒素、それからノンメタンの炭化水素ともに抑えていかないと、憂えられる光化学大気汚染というものは抑えられない。この問題も環境基準を考える場合には大きく考慮に入れていかなければならない、こう私は思うわけであります。ことわざに「一葉落ちて天下の秋を知る」という言葉がございますけれども、一つのこうした植物の被害というものは、私たちの環境に対する大変重大な警鐘を鳴らしてくれているもの、こう存じます。  水俣で、初期の場合に、人体にはまだ特別の影響は出てこなかった、科学的にもまだその関係は究明できなかった。しかしネコが不思議な踊りを始め、やがて姿を消していった。そういう段階で、とりあえずもしわずかでも一歩先の対策がとられていれば、今日こうした世界にも類のないような悲劇というものは出ないで済んだのではないか、こういう気が非常にするわけでございます。すなわち、環境基準を考える場合には人の健康を支えております自然界と申しますかあるいは生態系、この問題をぜひ大きく考慮に入れていただきたい、こう思うわけであります。ばたばた死人が出て人間の健康に明らかに悪影響が出てきて、科学的に証明がついた、それから改めて環境基準を厳しくした。りっぱな科学研究はできたけれども、そのときにすでに手おくれで大きな犠牲が次々に出た、こういうようないままでの悲劇と言いましょうか苦い経験というものを、私たち十分考えたいと思います。  環境基準というものは、こうした多くの要因を入れて決めるべき一つの基準でございまして、今日ただいまも山形参考人からお話がございましたように、技術的、経済的にいろいろ実現の困難な点がまだあるかもしれませんけれども、しかし私は、この目標を掲げてどこまでもそれに向かって努力すべき点、こう考えるわけでございます。  昭和四十七年に決められた環境基準と言いますものは、以上述べましたようなその後のいろいろな知見というものから考え、先ほどの出していただいた判定条件に対して安全係数というものを考え、また、いま言いましたような光化学スモッグの状況から考えますと、むしろ今日ますます堅持すべき非常に意義の深い値、こう私は思うのでございます。日本の経済、技術というものは、むしろこの高い水準を目指してどこまでも突き進んでいただき、また、そのための条件というものを都市づくり、あるいは工場の設置の場合にもどこまでもそれを追求していく、そして初めて技術あるいは今後のいろいろの都市づくりの進歩というものも目指せるものと思います。  現在まで日本の経済は、公害対策に費用がかかるといってそれをとかくなおざりにして、生産第一にひたすら進んできた、そこに世界に類のない公害の悲劇というものを生じて、現在、国民生活における環境の貧しさ、そして大気汚染、特に二酸化窒素とかオキシダントという面から見れば、いろいろ憂うべき現象というものが出ておるわけでございますし、国外からいろいろ批判も出てくるわけでございます。個々の業界あるいは企業にとりましては、いろいろ困難なことがあるかもしれませんけれども、しかし、こうした現在こそ、日本経済全体としてあるいは業界全体として、世界に一歩ぬきんでた努力というものを環境改善に注いでいただく、これが日本経済のこれからの本当の発展、現在の不況を克服して、世界に喜ばれる日本経済の発展というものを開いていく道だ、こう思うわけでございます。自動車の排ガス規制、これは技術的にはいろいろ違う問題があるかもしれませんけれども、これも高い基準というものを、七大都市あるいは市民団体というものの一つの要求で、これをおろすことなく掲げてそれで突き進んでいった、そして初めて世界に誇る技術的な大きな成果というものが上げられ、それによって一歩前進し、業界自身も大きな発展のめどをそこでつかんでいる、こういう事態なわけでございます。  せっかく立てました環境基準というものを一回下げますと、従来高い基準を目標として進んできた企業は、いわゆる正直者がばかを見た、こういう形になりますし、今後再び基準を厳しくしようとしても、施設の用地がもうすでになかった、それが用意できなかったというような問題等々が出てきて、困難がますます大きくなる。今後の公害行政に大きな支障が次々と出てくるのではないかと憂えるものであります。また、つい数カ月前に出発しました各自治体の新しい年度の公害防止計画あるいは各企業との公害防止協定、こういったものも、恐らく現場の自治体ではいろいろの混乱が起こってくると思います。  また現在、環境基準の緩和というものが行われますと、既存の多くの工業地帯というものが、現状のまま皆合格。これから特別の対策を講じなくていいじゃないか、あるいは今後、大規模の開発が予定されておりますところでは、公害の未然防止計画、未然防止の施設、これはそれほど要らないんじゃないか、こういうように事態が次々と悪化していくというめどが出てくるのではないかと思います。  環境基準を決めるということは、そのまま国民がいろいろの環境要因を考えながらどういう生活環境を選んでいくかということでありまして、具体的には中央公害対策審議会、そこで国民の関心の的であるこの問題というものを、国民の納得のいくよう十分論議していただき、広く国民に納得が与えられる、こういう道でもって、ただいま私が申しましたような環境基準というものを十分審議していただきたいと思います。そして、せっかく立てられましたこれまでの既存の環境基準、いわゆる一日平均〇・〇二ppm、これは大変意義の深い値、こう思われますので、ぜひその旗をおろさずに、これを目標にして技術を進め、日本経済全体も進み、そこで発展のめどをつかみ、国民の健康、その環境というものを十分守っていただきたい、こう思う次第でございます。

久保等日本社会党

○久保委員長 ありがとうございました。  次に、西村参考人にお願いいたします。

西村肇東京大学工学部助教授

○西村参考人 私は、システム解析という仕事を専門にしております。それは、得られておりますデータから科学的に意味のある結論を引き出すという仕事をしております。それで、先般専門委員会がNO2に関する環境基準を決めるに当たりまして使用いたしました主なデータを私は独立にシステム解析いたしまして、その結果から環境基準というのはどの程度であるべきかという結論を得ましたので、御報告します。  結論だけ先に申し上げますと、健康に影響が出ない範囲に置くためには、大気中の二酸化窒素の濃度を、日平均の最高値を約〇・〇三ppm以下に抑える必要があるというのが私の結論です。  この問題を考えます場合には、まず三つのことを考える必要があります。それは、一つは疫学調査の問題、もう一つは毒性学的な知見、第三番目に、大気中の二酸化窒素濃度の変動に関する統計学的な知見というものが必要であります。  最初に、統計学的な知見について簡単に述べておきますと、二酸化窒素の濃度は一定ではなく、大変大きく変動いたします。そこで三つの量を代表としてとらえていきます。一つは、一時間値で見て最高幾らになるかということ。それから、毎日毎日の平均値も変動してまいりますので、日平均値が一年間で最高どれぐらいの値をとるか、日平均値の最高値が幾らかということ。それから、年間平均しまして幾らになるかという値、この三つがいろいろなところに出てまいります。環境基準というのは日平均値の最高値を規定しているわけであります。  それから毒性学的な知見に関してデータを申し上げますと、これに関しましてはWHOの窒素酸化物についてのクライテリアの委員会というのがありまして、そこに出された報告が合意されております。そこに出された報告の結論は、簡単に申しますと、一時間暴露の最大値というものは〇・一〇から〇・一七ppm以下で保たなければならないだろうということです。もちろんこれは安全率をかけた値であります。つまり専門家の間では、一時間値、一時間だけ高い濃度に暴露されたとしますと、それは〇・一〇から〇・一七ppm以下の濃度でなければならない、またそういう高い濃度は一カ月に一回以上出てはならないということが合意されているわけであります。ただ、これは一時間値の最高値を決めたのでありますから、環境基準とそのまま結びつきません。環境基準は一日の平均値の最高値を決めているわけでありますから、そうしますと、一時間値の最高値と、それから一日の平均値の最高値の間のある関係を知らなければなりませんが、これについては、現在はたくさんの測定データがありますので、かなり信頼の置ける推定ができまして、こういうことがはっきりと言えます。もし、いま言ったような委員会の要請というか合意事項を守るとすると、日平均値の最大値は〇・〇三から〇・〇五でなければならないというのが結論であります。もしか安全側をとれば〇・〇三ppm以下にしなければならないというのが、WHOのクライテリア委員会の合意事項を環境基準に引き直した結論であります。ただし、いまのは毒性学的な知見から求められた結論でありますが、御承知のように毒性学的な知見というのは、主として短期暴露の影響を考えたものでありますから、長期に微量な暴露を受けた場合にどうなるかという問題、または人々の間で比較的体の弱い人たちがいる場合、その人たちに特別な配慮がないわけでありまして、そういうことを考慮するには毒性学的な方法では不十分でありまして、疫学的な方法が使われております。  この疫学的な調査は環境庁が中心になりまして、わが国では一九七〇年から七四年までの五年間、世界に例のないようなりっぱな調査がなされております。その結論、その結果から何が言えるかということでありますが、まず疫学調査で一番大事なことは、何が効いているかということを見きわめることであります。値そのものよりも、果たして窒素酸化物というのが健康に障害を与えているかどうかということを見きわめることであります。そのためにはどうするかといいますと、明らかに汚染されている地域と、汚染が少ない、生物学で言えば余り影響がない対象地域というのを選びまして、その二つの間で健康を調査し、それから環境の状態を調査いたします。その結果得られた結論、わが国では環境庁の専門委員会、中央公害対策審議会の専門委員会がこのデータをもとに一つの結論を得ておりますが、その結論は、はっきり申しましてきわめてあいまいなものであります。われわれは、そこのところをさらに深く追求してみた結果、こういうことがわかってまいりました。  まず、特徴的に申し上げますと、わが国の高濃度地域、汚染されている地域と汚染されてない地域でもって、たんとせきとが長く続くというその有症率、大ざっぱに言いますと慢性気管支炎と言われておりますが、厳密に言えば、たんとせきとが長く続くというその病気の有症率が際立った変化をしております。一つは、汚染されている地域ではほとんど七〇年から七四年にかけて有症率の変化がありません。で、汚染されてない地域、低濃度地域では、有症率はこの五年間に低下しております。そして濃度の方で見てまいりますと、今度は両地域とも硫黄酸化物、ダストというものは顕著に減ってまいります。そして高濃度地域では、硫黄酸化物が減ったにもかかわらず、今度は窒素酸化物がふえているという現象があります。低濃度地域では、窒素酸化物の増加は見られておりません。このことから、科学的に推論できますことはこういうことでありまして、多分その有症率には窒素酸化物と硫黄酸化物の両方が効いている、いわゆる複合汚染であるということであります。そうしますと、高濃度地域では硫黄酸化物が減ったけれども窒素酸化物がふえたために、結果として有症率というのは一定に保たれているし、一定の状態になっている。しかし、低濃度地域では窒素酸化物はふえず硫黄酸化物が減ったために有症率は減った、こういうふうに定性的には推論できるわけであります。  この結論は、さらに統計学的に厳密な方法でもって検討することができまして、その結論を申し上げますと、有症率には二酸化窒素とダスト量が有意に相関をしている。その有意の程度というのは一%の危険率で有意である、つまり、こういう統計的な結論を下しても、それが間違えている確率は百に一つしかないというような高い確率で、窒素酸化物、二酸化窒素と、ダストと言われる粉じん量でありますが、それが有症率に効いているということがわかりました。つまり複合汚染である、その中では確かに窒素酸化物、二酸化窒素が病気に関係があるんだということが結論できます。  次のステップは、ではどの程度の濃度に二酸化窒素を抑えれば健康に支障がないのかということでありますが、これは二つの要因が重なっておりますので、こういうことになります。たとえば都会地域のように粉じんまたは硫黄酸化物が多いところでは、そのところでの健康を維持するためには、片方が悪いために二酸化窒素濃度はかなり下げなければなりません。その結果、二酸化窒素はそういう都会地域では日平均値の最大値にして〇・〇二ppm以下にする必要があるだろう、しかし、そうでない低濃度地域では二酸化窒素の濃度は〇・〇三ppmにすればまず健康に支障はないであろうという結論が出てまいります。  以上が、むしろ科学的に得られた知見、まあこれだけであります。あと、この科学的知見をもとに環境基準をどう設定するかということは、一つのいろいろな考え方が入る問題になりますが、私は、以上の科学的知見をもとに環境基準としては〇・〇三ppm、日平均値の最大を〇・〇三ppmという程度に設定するのが最も妥当な結論であろうと考えております。  以上が私の得られました結論と意見であります。  以上で終わります。

久保等日本社会党

○久保委員長 ありがとうございました。     —————————————

久保等日本社会党

○久保委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。林義郎君。

林義郎自由民主党

○林(義)委員 参考人各位には大変にお忙しいところを当委員会のために御出席いただきまして、ありがとうございました。心から御礼申し上げます。  時間が余りありませんので、簡単に御質問申し上げますが、まず山形参考人にお尋ねをしたい点は、先ほどいろいろお話ございましたが、現在、鉄鋼業というのは約一億トンぐらいの生産規模であり、設備能力一億五千万トンぐらいであります。でありますが、これ一体、将来、世界的に鉄鋼というのはどうなるのかという点。やはり日本の鉄鋼業というものは日本の産業を支える上におきまして大変重要な役割りを持っていると私は思いますし、いまでこそ非常に国際競争力があるということでありますが、将来の見通しとして、依然として三分の一の設備が動いていない、こういうふうな状況が続くのかどうか。それから、将来的に日本の鉄鋼業というものは世界の中において相当競争力のある、特に発展途上国に対するいろいろな資材供給という点から、むしろ相当伸びていかなければならない点もあるんだろうと思いますが、その辺はどうかという点。  さらに申し上げますならば、先ほど来お話がありましたように設備投資額で二兆円、運転費用で一兆円、こういうふうな話でありますが、当然に鉄鋼のコストにはね返ってくるわけでありますから、一体そのコストがどのくらいになるのか。NOx、大気汚染防止対策としての公害費用は一体どのくらいになるのかということをお尋ねをしたいんです。これは、あるいは正確な数字がなかなかないかもしれませんが、大ざっぱなところで結構でございます。  と同時に、やはり鉄鋼というのは国際的に競争をしていかなければならないところでありますから、アメリカとかドイツとかイギリスとかあるいはベルギーとか、諸外国の鉄鋼業が大気汚染対策あるいはNOx対策として一体どの程度のことをいまやっているのか。日本でも相当やるということでありましたならば当然各国もやるんだろうと思いますが、その辺は一体どういうことになっているのか。鉄鋼連盟は世界鉄鋼連盟などということがありますから、いろいろとその辺のディスカッションもしておられるんだろうと思いますが、どういうことになっているのかということでございます。  それからその次に、〇・〇四では不可能だという話が産構審の答申ですか、出ておったということでありますが、むしろいまの段階で申し上げますならば、〇・〇二を目標値としてやったときにそれぞれの数字がどういうふうになるかということにつきまして、参考人からお答えをいただきたいと思います。  一応質問を全部やりまして、それからお答えをいただくことにしたいと思います。山形参考人に対してはいまの点です。  それから第二番目の問題は、柴田参考人でございますが、東京は大気汚染の問題がいろいろありますけれども、NOxの問題、特に西村さんからお話がありましたように、せき、たん、ぜんそく、こういうふうなところの問題であります。まず、東京都の教育委員会が四月末に公表しておられます「大気汚染が児童生徒の健康に及ぼす影響調査に関する総括報告」というのがありますが、この結果を公害研究所長さんの方はどういうふうに見ておられるかというのが第一点です。  それから、先ほど光化学スモッグ云々、こういうふうなお話がいろいろございました。確かに、光化学スモッグはすぐれて東京都の問題だと私は思いますが、その問題ではなくて、NOxの環境影響について都の公害研究所でもいろいろと調査研究をやっておられると思いますから、その調査研究に基づきまして一体どういう点が問題かということがありましたならば、そのお話を聞かせていただきたいと思うのです。  それで、お話の中で私ちょっと気になりましたのは、NOxが子孫への悪影響もありますという話がありました。遺伝因子としてどうなるかという話だろう、こう思いますが、遺伝因子への影響というか、そういったものはNOxについてはまず考えられないのではないかというのが大体通説だろう、こう私は思うのです。そういった点も、何か子孫への悪影響について遺伝学的な見地からこうこうだという話が、私は寡聞にして知らないのですけれども、データでもあれば、どういうデータかということを出していただきたいということでございます。  それから、お話によりますと〇・〇二ということをやっていかなければならないということのようでございますが、実はこの前の国会で通りました水質汚濁防止法改正のときに、水の総量規制をやろうということで話を進めたのです。そのときに東京都の方に来ていただきましてやったところでは、水の問題については、これ以上の環境基準の水質規制の強化はとてもできない、中小企業とかなんとかいうところがたくさんありまして、とてもじゃないが、それは行政的には非常にむずかしいことになる、こういうふうな話でありました。大気汚染の問題につきまして、いまからやっていかなければならないということになりましたならば、東京にはたくさんの中小企業もございますし、そういったところに対する対策も進めていかなければならない、と同時に、東京都内におきましては大変たくさんの自動車がありますから、自動車の交通規制等もやっていかなければ、現実、できないだろうと私は思うのです。それはそう簡単な話じゃないと思いますが、もしもいまのお話のような形でやるということになれば、いまの東京をどういうふうに変えていくかという具体的に御計画があるのかどうか、その点につきましてお尋ねをいたしたいと思います。  それから、西村参考人に対してお尋ねいたしますが、「科学」の中に出ておりました西村さんの御論文を拝見させていただきました。先ほどお話がありましたように、SOxが減りましてNOxがだんだんふえてきている、それとダストとの関係があります。九九%の有意率がございます。こういうふうなお話でございました。複合汚染の問題でありますから、ダストというのは当然取り上げていかなければなりませんが、先生の論文の中にありましたのは、浮遊粉じんの測定について、ここに「窒素酸化物のほかにえらばれた因子が硫黄酸化物でも浮遊ふんじんでもなく、降下ばいじんであったことは興味深い。浮遊ふんじんの測定は月一回二十四時間の測定であるのに対し、降下ばいじんは一種の連続測定であるからふんじん濃度をよりよく表わしているのかもしれない。」こういうふうな御表現がございます。これは降下ばいじんがやはり相当に影響しておる、こういうふうに判断をしてよろしいのでしょうかどうでしょうかという点であります。  それからもう一つは、これはきょうの御説明の中にはなかったわけでございますが、環境庁がやられました六大都市の環境影響調査というものでございますが、実は、これは当委員会におきましても、私も質問いたしたことがあるのです。前環境庁長官のときにいろいろお話をいたしまして、そのデータの有意性というのは、最初に出ましたところからは余り見られないというようなことでありまして、前環境庁長官も統計的にはどうもおかしい、どう考えてみても、グラフを見れば余り有意性というのは考えられないじゃないか、こういうふうな御答弁をいただいたのですが、この辺につきまして、これはちょっと話が長くなるかもしれませんから、あるいはこういったデータをごらんくださいとか、あるいはこういった形でやったのですというふうなお話がありましたならば御答弁をいただきたい。  以上、各先生方にお願いをいたしたいと思います。

久保等日本社会党

○久保委員長 それでは、順次御答弁を願います。

山形栄治日本鉄鋼連盟立地公害委員会委員長

○山形参考人 お答え申し上げます。  先生の質問が非常に広範囲に、わたっておりますので、うまく答えられるかどうかわかりませんけれども、御指摘のとおり、鉄鋼業に限って申し上げますと、現在生産能力は一億五千万トンぐらいあるわけでございますが、ここ数年間一億トンで推移いたしております。最近の最高が四十八年で、一億二千万トンというのが最高でございまして、それ以後、全然その線に戻りませんで、現在の国内向けの鉄鋼の出荷というのは大体昭和四十五年の水準で推移しております。あとは輸出がたまたま非常に伸びておりますので、一応一億トンの水準を維持しておるということでございまして、将来の展望といたしましては、最近の世界全体の減速経済ということと、それから御指摘がございました中進国、韓国とかブラジル等の鉄鋼業がなかなか伸びてもおりますので、それこれ考えますと、日本の鉄鋼というのはかつての一億二千万トンになるのは昭和五十五年以降に——五十五年でも無理だと私は思っておる次第でございます。そういう非常に厳しい状態で推移いたしております。  この間、鉄に限らず日本の法人所得というのがオイルショック以後どういう推移をたどっておるかということを米国と西独と比べますと、大まかに言いまして、石油ショックが起こったときの法人所得を一〇〇といたしますと、これは鉄でなく全体でございますけれども、アメリカが去年の段階で三六%、水準が回復いたしております。もちろん、雇用者所得はそれより若干高くなっておりますが、雇用者所得と法人所得を含めた経済全体が非常にバランスがとれてアメリカは伸びておるということでございます。西独は、これに対応する数字が大体二八%ぐらい伸びておるわけでございます。雇用者所得はもっとふえておりますけれども。日本は去年で、オイルショックのときの法人所得を一〇〇といたしますと七六の水準でございます。マイナス二五ぐらい、まだ水面下にあるということでございまして、これが長期不況を現実にあらわしておるところでございますが、一国の経済、雇用問題を含めますと、企業といいますか、法人がやはり採算がよくなって次の新しい研究投資とかなんかができるようにならないと、これはいずれ必ず諸外国、中進国に負けてしまうのじゃないか、国際競争力はいまはあるけれども、これは負けてしまうのじゃないかということで、日本全体としての大問題であろうかと思います。何もこれを公害とのつながりで私は論じているわけじゃございませんけれども、こういう日本の産業界が置かれている状態が非常に厳しいということを、ひとつ御理解願いたいと思うわけでございます。  それから、産構審では二兆円ぐらいかかるということを言っておりますが、これがコストにどういうふうに響くかということでございますが、民間企業がいままで公害防止投資を四十六年から五十年までずっとやってきたわけですが、累積で三兆円の投資をいたしておることになります。そのうち鉄鋼業だけについて申し上げますと、もちろんこれはNOxだけじゃございません、SOxとかいろいろなことを含めまして六千三百億円の投資をいたしております。これに今度NOxの対策がまた新しくいろいろとふえるわけでございますけれども、これは産構審の検討によりますと、先ほど来申し上げましたように、〇・〇五ppmの限界点におきまして二兆円新しく要るということでございます。鉄鋼業の場合にこれをあれいたしますと、そのうちの約二千億円が鉄鋼業に期待されておるということでございまして、いま申し上げましたように、これは一億五千万トンの能力で一億トンでございますので、そのかかった分というのは、できますれば価格にこれを転嫁せざるを得ない、こう思うわけでございます。価格は、御存じのとおり、いま不景気でございまして、今後もそういう意味での低成長は続くと思いますので、これを価格に転嫁するということはなかなかむずかしい。また、それを全部企業でカバーするということもこれまたむずかしい、こういうことで、これからこの辺が非常に大きな問題になろうかと思います。ちなみに、私、いま新日鉄におるのでございますが、新日鉄の本年の決算は、まだ発表されておりませんけれども、経常利益で実質的には六百億円の赤字でございます。これを資本、株を売ったりなんかして適当にとんとんにもっていくわけでございますけれども、去年も非常に大きな赤字を計上したわけでございまして、こういう中で価格に転嫁できないとなれば、これを何とか中で消化するということになるわけでございますが、非常にむずかしいと思います。特に、鉄鋼部門の中には平電炉業界というのがございまして、これがやはり非常に大きな問題でございます。この辺も、これは健康の問題でございますので、当然に対策を講じなければいかぬわけでございますが、平電炉はいまちょっと息をついておりますけれども、これはいわゆる有名な構造不況業種第一号でございまして、こういう業種が、これから三百三十万トンも設備を廃棄しなければいかぬという追い込まれている業界がこういうものを全部かぶっていく、また、当然にかぶらなければいかぬのはかぶりますけれども、その辺は妥当なる、納得のいくコスト上の御配慮もひとつお願いいたしたい、こう考えるわけでございます。  それから、諸外国の関係をちょっと申し上げますと、米国の公害対策投資というのは、最近ちょっと増大いたしておりますけれども、最近四年間をとりますと、米国の鉄鋼業全体で、これは二百二十円で換算いたしておりますけれども、三千八百五十億円程度でございます。これに対応して、わが国というのは、先ほどもちょっと言いましたけれども、最近七年間で、これは七年間の統計でございますが、約一兆円、日本の鉄鋼業はいたしております。日本の方が相当多いということでございます。  この公害関係投資というのがコストにどのくらいあれしておるかということでございますが、これはなかなかむずかしい問題ですけれども、アメリカでは鋼材トン当たりで大体二千五百円くらいではなかろうか、これはわれわれの推測でございます。それから、西独もほとんど同じくらいの費用、コスト計算になろうかと思います。わが国をトン当たりであれしますと、大体七千円くらいが公害関係の費用ということになっておりまして、ここにおきましてもすでに日本は一生懸命公害投資、公害防除をやっておるということでございます。  先般、アメリカのカーター大統領が、米国業界から、これから公害投資が非常にふえるので、われわれは大変で、何とかしてくれということをカーター大統領にあれしたわけでございますけれども、そのときのカーター大統領の答弁というのは、それは聞き入れられない、何となれば、日本、西独等はもうすでに相当米国の企業と比べ物にならないくらいの公害防止投資をしておる。アメリカはこれからやるのであって、厳しいからそれを受け入れられないというのは自分は拒否するということを、はっきりカーター大統領が言っておりまして、これはOECDの資料等でカーター大統領もよく御存じなんだと思いますけれども、従来、日本の産業界というのは非常に前向きに相当の投資をいたしておる。  ただ、くどいようでございますけれども、これからの産業界全体、私は鉄におりますので鉄で申し上げますと、これからの需要の増大等も非常に大幅なものは考えられませんで、この中で何とかして日本の鉄鋼輸出もやっていかなければならぬ、将来の技術水準の向上もしていかなければならぬ、いろいろな課題がありますので、コストの中の公害防止費用というのは、やることは必ずやりますけれども、その辺、非常にわれわれは厳しい状態にある、すでに相当の投資をしておるということの御理解をいただきたいと思います。  答弁になったかどうかわかりませんけれども、一応これでお答えとさせていただきます。

柴田徳衛東京都公害研究所長

○柴田参考人 幾つかの御質問をいただきましたけれども、まず学童の有症率でございますが、これに対しましては亜硫酸ガスの減少あるいは問診の問題あるいはさらに長期的に見て、今後十年、児童たちが成長したときにどういうことになるであろうか、いろいろな問題があるのではないかと存じますけれども、私、実は医学専門ではございませんので、その細かい分析というものはちょっと申すのを差し控えたいと思いますけれども、ただ、ここで私が申したいと思いますのは、児童の間からいろいろ出てくる声としまして、人間がつくった光化学スモッグを一体どうして人間がこれをなくすことができないのか、どうして児童たちが楽しく校庭で遊ぼうと思っても注意報が出てくると教室にいろと言われるのか、こういう質問が出る。それに対する答えというものをどう考えたらよいかと大変考えさせられているということをここで付言させていただきたいと思います。  それから、健康の影響でございますけれども、私が先ほど言わんとしたところは、あるいは聞き違えられたかもしれませんけれども、先ほど述べました報告の中でもありますように、健康の影響というものはいろいろ方々で論じられているわけ でございますけれども、いわゆる私たちの言小弱者、すなわち老人とかあるいは子供とか病人、さらに妊産婦、こういうような問題も考えていただきたいし、もし、そういうところにいろいろ調査を今後伸ばしていって、悪影響がいくとすれば、次に妊産婦から生まれてくる子孫へも悪影響があるではないか、そういう点も十分調査し、考慮に入れていただきたいという意味でありまして、医学的に積極的に窒素酸化物が具体的に何%で遺伝子にこういう形で影響があるということを申したわけではございません。  それから次に、ちょうどいい機会で、よく健康への影響を論じられて、当人に対してどのような影響があるかということが中心に議論されておるわけですけれども、次に生まれてくる子供たちのことも一般の環境の問題を考える場合にはぜひ考慮に入れていただきたいし、また、そうしなければならないじゃないかということは、この場をかりて、ぜひ皆様にもお願いしたいと存じます。  それから次の御質問で、水の総量規制、いろいろ困難なことがあるという話があったそうでございますけれども、私としましては、御質問にございましたように、今後、中小企業の対策あるいは自動車の問題は大いに考えていかなければならないと思います。具体的にどういう政策を進めるか、私、実際の都市計画の担当者ではございませんけれども、私の意見として言わせていただけるならば、東京あるいは日本の都市の交通網の考え直しというような問題も、自動車の走行量の軽減の根本には当然出てくると存じます。  それから、自動車そのものも、先ほど私申しましたように、確かに大きな一歩前進の成果は窒素酸化物に関して進められたわけでございますけれども、これでもうゼロになったということではもちろんございませんし、ディーゼルの問題とかあるいは現在の乗用車でもさらに改善を一歩、二歩と進めていただきたい、こういう方はぜひ今後も諸先生の御努力をまちまして進めていきたい、こう思っておるわけでございます。

西村肇東京大学工学部助教授

○西村参考人 御質問のありましたダストが効いているように見えるという件ですが、統計学的に見ますと、硫黄酸化物、浮遊粉じん、ダストというのは同じように変動いたしまして、どれが効いているかということをはっきりと言うことはむずかしいのですが、どちらかと言うと浮遊粉じん、ダストの方が効いているように思えます。しかし、実際判断といたしましては、ダストというものはポットの中に落ちてきたごみでありますから、それが効いているとはとても考えてはおりません。効くのでしたら多分浮遊粉じんの方が効くのであろうと思いますが、結果はそういうふうにあらわれていない。それはなぜかと言いますと、浮遊粉じんというのは、月にたかだか一回しかはかっていない。それに比べてダストは、一月の間放置して、その平均値が出ているからではないかと思います。ですから、もし浮遊粉じんを毎日毎日はかって、その月平均をとりますれば、よりはっきりした結論が得られるだろうということをこの論文では述べたわけであります。  それから第二点、六大都市の調査に関して、環境庁長官は有意な相関がどうも得られなかったというお答えであったそうでありますが、環境庁の専門委員会が解析したのと私たちの解析とが二点で違っております。  一つは、環境庁で解析の場合には、複合汚染ということは考えませんで、有症率を何か単一の因子との間で相関をさせようさせようといろいろ試みたところ、危険率五%以下で有意なものは少なかったということであります。これは複合汚染と考えて初めてかなり有意な相関が出てきたというのが一つであります。  それからもう一つ、環境庁の場合にはその年ごとのデータだけを比べていたためにデータの数が少なかったわけでありますが、私たちは五年、実際は三年間ですが、そのデータを全部まとめてデータの数を多くして解析いたしました。ただ、その際には、繰り返して調査をすると、どうしてもアンケートのときに有症率が低く出るという統計的な傾向がありますので、それをどの程度低くなるかということをもう一度データの中から見出しまして、補正をいたしております。多分、複合汚染にしたこと、それから四年間のデータを全部使ったことのために統計的に有意な相関が出たと考えております。

林義郎自由民主党

○林(義)委員 時間がないようですから、終わります。

久保等日本社会党

○久保委員長 次に、島本虎三君。

島本虎三日本社会党

○島本委員 参考人の皆さん、御苦労さんでございます。与えられた時間が三十分でありまして少のうございますので、初めに端的に問題点だけをお三人の方にお伺いいたします。その結果によって再質問になろうかと思いますが、あらかじめよろしく願います。  まず、山形参考人に四点について伺います。  その一つは、冒頭のお言葉の中に公害に対しての考え方が出ていたようであります。雇用、物価、エネルギー、産業政策との整合性などが重要であって、公害はただ少なければよろしいという考えは修正を要する、大体こういうような冒頭の切り出しがあったようであります。すると、これは現在のような不況、雇用、エネルギー対策からして公害は出てもやむを得ないんだ、国民はがまんすべきなんだ、こういうのが産業界全体のお考えでしょうかどうか、これが一点であります。  第二点目は、移動、固定両発生源についての陳述がございました。自動車については世界的に厳しい技術を開発した、ただし、これは新車を対象にしている。固定発生源の場合も設備の膨大なことをいろいろおっしゃいました。聞いておりまして私一つの疑念がありますので、この点の御解明を願いたいのであります。それは、自動車、移動発生源の場合は、厳しい規制は新車のみ対象ということで終わっていたのかどうかであります。これは確かに四十八年五月一日に使用過程車についても装置規制をして、排出ガスの減少装置の設置義務、点火時期の調整義務というようなことも言っているのでありまして、濃度規制や最高値、またそれに類するような汚染度、こういうようなものを決めてあるのであります。こういうようなものは行われていないという、これは産業界の一つの見方でございましょうか、この点をまずお伺い  いたしたいと思います。  第三番目に、国際水準との関係についての御意見がいろいろございました。アメリカ、カナダ、西独やEC、ノルウェーと同程度だとして〇〇五ppmそれから〇・一ppmというような御発表があったわけであります。この程度で国民の健康保護が大丈夫なんだから国際的水準じゃないか、こういうようなお言葉でありました。これはそのとおりでございましょうか。そうすると、アメリカの場合やその他は規制値そのものが許認可の関係にまできちっと結びついている、それから補償請求の場合の一つのめどとしていろいろこれが用いられるという重大性がある。それからきれいなところと、それほどでもないところと、うんと汚れたところ、この三段階規制が入っているはずでありまして、きれいなところは汚してはならない、そしてわりあいに汚れたところに対してはここまでにせよ、こういうような一つの基準であるということを聞いているのです。ただ日本と同じような状態ではないはずでありますが、誤解を生むおそれがあろうかと思いますので、この点をはっきり御解明願いたいのであります。  第四点目は、これは日本は行政目標値ではないか、しかし自治体は規制基準としてとられている、こういうようなお言葉がございましたが、確かに日本は行政上の目標値としてこれはやっているはずであります。しかし、一番住民の命、健康に携わっているのは自治体であります。自治体は住民そのものを直接自治体として、完全自治体として把握しておりますから、その場合にはやはり目標だけでは足りないから、規制値としてでもこれを守らなければ住民の健康、命が守れない、こういうことに立って条例でこれをやっているのではございますまいか。そうすると、それをやるのが当然であって、緩いのは住民の命も健康も守れぬということに結びつくのじゃないか、こう思われたわけでありますが、この四点について、ひとつ率直に御解明願いたいと思うのであります。  それから、柴田参考人にお伺いいたしたいと思います。  確かにおっしゃったことはよくわかりました。そのうち〇・〇二ppm、そして安全係数、こういうようなものを見ないと病人、老人、乳幼児、妊産婦、いわゆる社会的、医学的な弱者という人たちを大気汚染の影響から保護することはできない、こういうようなことのように承りました。そして、もしこれを改めてしまえば、既存の工場地帯の対策はもう必要ないということになるじゃないか、未然防止というようなものはできなくなるのじゃないかというような御意見があったようであります。これはまことに重大だと私は思うのでありますが、その点について、もう少しきちっとしてお願いしたいのであります。現行のものをもし変えるとすると、光化学スモッグの発生に対しては全然歯どめにならないのかどうか。この二点をお伺いいたしたいと思います。  次に、西村参考人に、貴重な御意見本当にありがたいのであります。その貴重な御意見の中で、確かにポトンと落ちたものもあり、われわれの知らなかったことを教えてもらったわけであります。  環境の汚染に対する日本の追求の結果の特徴点ということで、高濃度のものと低濃度のもの、たんとせきの有症率、こういうようなことからしてSOxとNOx、この複合汚染、こういうようなものは、高濃度の場合にはSOxが減ってもNOxが減らなければ、これはもう何にもならないのだ、それから、この中には粉じんとの関係も重要だ、こういうようなことなんですが、それはよくわかったのであります。そうすると、その結論として、都会では粉じん、硫黄酸化物、こういうようなものもたくさんあるからNOxの場合は〇・〇二Pppm以下が望ましい、低濃度の地帯では〇・〇三ppm以下がよろしい、科学的知見として一日平均値が〇・〇三ppm以下が望ましい、このようなお言葉だったように思います。  そうすると、〇・〇三ppm以下ということになると、低濃度地域、それを指すのでありまして、高濃度のいわば汚染されたところ、〇・〇二ppm以下、こういうようなものに対しては、以下だから入るじゃないかと言えば入りましょうけれども、恐らくは〇・〇二ppm以下、これが本当は正しいのであって、低濃度のものに対してはそれまでの猶予、こういうようなものであってもよろしいという意味じゃないのじゃないだろうか。もし〇・〇三ppmが正しいということになったら、それ以下、うんと汚れたところに対してはまことに手当てができないということになりはせぬか、こういうように考えたものですから、以上の点をお伺いしたい、こう思います。

山形栄治日本鉄鋼連盟立地公害委員会委員長

○山形参考人 お答え申し上げます。  第一点の、汚染物質は少なければ少ないほどよいとする考え方は若干検討を要する時期に来たのではないかと私申し上げましたのに誤解がありましたら非常に恐縮でございますが、私の申し上げましたのは、最後の方でも再度申し上げましたように、国民の健康保持というのは何にも増して大事なことである、したがって、国民の健康を十分に保護する範囲内でお考え願いたい、その十分に保護する範囲内の中で極端に言うとゼロがいいのだというようなお考えは若干御検討願う時期ではないかという趣旨で申し上げたわけでございます。くどいようでございますけれども、先生全部御存じだと思いますが、自然界にもこれは人力ではどうしようもないNOxのppmがあるわけでございますし、それから、中小煙源、中小企業とかおふろ屋さんとか家庭の中からも出ておるわけでございまして、その辺の踏まえて健康の保持できる範囲内でお考え願いたい。低ければ低いほどいいというのは、それだけで使いますとちょっと誤解を受けますので、われわれは健康保持を最大第一眼目にしておるということは全くいささかも変わっておりません。その点、再度申し上げたいと思います。  それから、二番目の自動車の問題でございますけれども、これは、自動車のことで私、間違うかもしれませんけれども、私の聞いています範囲内では、NOxにつきましては新車の段階で型式承認でこれをチェックするというふうに聞いております。SOx等々につきましては先生のおっしゃいますようなことがあるのかもしれませんけれども、NOxにつきましては型式承認段階でチェックするということでございますので、一応現在の規制は新市段階でやっておるということだと存じております。  それから、国際水準に関係いたしまして、アメリカは許認可、いわゆる規制の値でやっておる、しかも三段階区分でやっておる、これはそのとおりでございます。日本のは望ましい行政目標である、これもそのとおりでございます。アメリカは法規制でございますので、三年後に達成できる基準ということでつかんでおります。これは当然のことで、十年先の達成できるものを規制するというのはなかなか無理だと私は思うのでございます。日本の環境基準というのは行政上の望ましい目標でございますので、八年とか五年とか相当長い期間でございますが、しかし、これが現実の運用面では、これはなかなか言いにくいことですが、規制的に運用されておりますとアメリカ等でやっております規制と同じようなかっこうで、これが非常に理想的な姿をいますぐといいますか、短時間でやれと言われますと非常にむずかしい問題が出るということでございまして、われわれは、その運用面も含めましてひとつ環境基準を決めますときに御高配をいただきたい、こう言っております。アメリカと日本との違いは先生のおっしゃるとおりでございます。  それから、地方自治体が、中央で決めました行政目標を、地元の住民の方々の健康を保持するためにどうしても少し早目にこれを実施いたしたい、これは当然のことだと思うわけでございますけれども、しかし、やはり、いま三点目で申し上げましたと同じように、行政目標というのはあくまで相当先の一つの姿でございますので、どうかその本質をよくわかっていただきまして、実際の規制というものと行政の目標というものとの間の関係というものを御理解いただいて、やれるものからやっていくという一つの基本的なお考えに立って運用していただきたい。これは各地方で非常に行政上の混乱も生じておるやに聞いておりますけれども、これから新しく環境基準を改定いたしますとなれば、先ほども申し上げましたように、環境基準の性格論、その辺も環境庁の方から各地方公共団体によく周知していただいて、その辺の運用に過ちのないように善処をお願いしたい、こういうことを要望いたす次第でございます。

柴田徳衛東京都公害研究所長

○柴田参考人 環境基準が緩められると日本の各地域でどのような状態になるかという御質問かと存じますが、昭和五十一年度の全国二酸化窒素の測定局の値によりますと、一日平均値〇・〇四ないし〇・〇六ppm、これをすでに満足している測定局が五〇ないし八五%、非常に多くの部分がその範囲に入ってくる。そうしますと、これらの地域は二酸化窒素の対策の必要がなくなる、こういうことになってしまうわけでございます。大都市の札幌、東京、川崎、横浜等のいわゆる十大都市、これ以外の自動車通行量が比較的少ない苫小牧、大分、鹿島、四日市、市原、倉敷、こういったような大きな工業地帯でもほとんど〇・〇四ppm以下。そうしますと、これらの地区では、工場の大発生源でさえ、現在のまま合格といいますか、対策が要らない、あるいは緩やかになってしまう、こういうことでございます。すなわち、もし環境基準がこういった値に緩和されてまいりますと、そのもとでは、多くの地域で、大量に窒素酸化物を排出する事業あるいは企業の活動、こういうものに対しましても、ほとんど二酸化窒素の対策なしに許容される、こういうことでございます。  それから次に、光化学スモッグの問題でございますけれども、このたび出ました政府の環境白書におきましても、アメリカでもいろいろこの面の調査が進んでおるようでございますけれども、特に二次汚染として出てまいりますPANそれからアルデヒド等、これにつきましては、健康の点からもきわめて重要視されており、「PANは窒素酸化物、アルデヒドは非メタン炭化水素濃度に依拠することから」「複合大気汚染としての性格を有する光化学大気汚染の防止対策としては」「広域にわたる光化学大気汚染の発生を効果的に防止するためには、窒素酸化物及び非メタン炭化水素の双方を低減することが必要である。」、これは百九十四ページでございますが、こういう大変注目する指摘がございますし、私たちの、先ほど申しましたようなフィールド調査、チェンバー実験等々を見てみましても、先ほどの〇・〇二というところ、それからノンメタンの炭化水素の〇・〇三一、この辺が一つのめどになりまして、これを超えると光化学スモッグが出やすい。もちろん現実には気象条件、湿度とか、風向とか、いろいろ複雑な条件が重なりますので、引き続いてこれを調査する必要があるかと思いますけれども、いずれにせよ窒素酸化物、それから炭化水素、両方を抑えるということが光化学スモッグを抑え、国民の健康というものを守る上でも非常に大事ではないか、こう思うわけでございます。そして、いろいろの基準を出す際には、たとえば百人の調査のうち二名が弱者で九十八は普通の健康の人であったら、算術的にその平均値でこれということではなしに、特にそこに出てきました二名と申しますか、弱者を守るということが、環境基準を考える際には非常に重要ではないか。たとえば普通の壮年の婦人を中心にされた調査の値が出ましても、男子というもの、あるいは乳幼児、老人という問題ではどう引いてくるか、そこに安全率というものを大きく考えなければならない、こういう次第でございます。

西村肇東京大学工学部助教授

○西村参考人 先生から御指摘いただきました点はそのとおりでありまして、つまり、純粋に科学的に言えることは、高濃度地域の有症率を低濃度地域の有症率と全く同じにするのには、さらに現在の粉じん量が全く変わらないとするならば、窒素酸化物の濃度は、二酸化窒素を〇。〇二ppm以下にしなければならないというのは科学的に得られる結論であります。ただし、どうしても環境基準としてその値をとらなければならないかというと、話は違ってまいると思います。そのためには、それを二酸化窒素だけでカバーするのか、または、さらに浮遊粉じんなりをもっと下げていくようにすべきかどうかという、その選択の問題があるわけであります。一つはそのことであります。  それからもう一つは、大都会における二酸化窒素を〇・〇二ppm以下にするというのは、実はきわめて非現実的なことになってしまいます。特に私がそういうことを申し上げますのは、環境基準が空文化することを恐れているからであります。というのはこういうことであります。現在の環境基準〇・〇二ppmというものも、実際には日本のほとんどの地域で守られていない。達成できていない。そのためにこういうことが起こります。たとえば低濃度地域で、その地域の自然を十分に守りたい、環境を守りたい場所で、もし本四架橋のような道路を引くということが行われたときに、環境アセスメントを行いますが、そのアセスメントをした結果、この計画が認められるかどうかの判定に環境基準が全然使われないということが起こっているわけであります。本来は、環境基準があって、現在の状態が環境基準以下であるならば、その事業が認められるかどうかは、その事業を行ってもその状態が環境基準の中に入っていればその事業は認められる、それを超えれば事業は認められないということのように環境基準は使われるべきでありますが、現実には、実際の状態がすでに環境基準を上回っているために、ある事業の許認可には環境基準は全く関係がないということが起こっているわけであります。空文化をしたのでかえって結果が悪くなっておりますので、私がそういう大気汚染または環境アセスメントの問題に携わって考えますことは、やはり十分努力すれば実現可能な値を環境基準に選びまして、選んだ以上はそれはきちんと守る、新しい事業を行うときにもその環境基準を超えるような事業は認めることはできないというような使われ方が必要であろうと思います。現在の環境基準〇・〇二ppmというのは、そういうことには全然向きませんで、空文化してしまっている。かえって事態はそのために悪くなってしまっているのではないかというので、科学的知見は先ほど述べたようなものでありますが、健康の面から見ても十分に意味のある、必要な数値として〇・〇三ppmを提案したわけであります。この値が実現可能であるということは環境庁の吉田先生を中心とする委員会で報告をされているわけでありまして、この値ならばいいし、またこの値は実現可能であると考えております。ですから、この値が採用されたときには、それは今後いろいろな行政できちんと守るべき値であるというふうに考えて、そういう総合判断の上に立ちまして私は環境基準は〇・〇三ppmが妥当であろうと申し上げたわけであります。

久保等日本社会党

○久保委員長 次に、細谷治嘉君。

細谷治嘉日本社会党

○細谷委員 関連でありますので、時間もありませんから一、二点お尋ねしたいのですが、最初に山形参考人に。  私の聞き違いかもしれませんけれども、山形さんの陳述の中で、現在の脱硝技術を一〇〇%駆使しても〇・〇四ppm日平均は到達が困難であると、こういうふうにお聞きしたわけであります。ところが西村さんの御意見によりますと、いま島本委員から、〇・〇三と置いたについては、せっかく統計学的、毒性学的、疫学的に調べたのに対して、余りにもその学問的な結論というのも政治判断して妥協しちゃっているところに非常に問題があるのではないかという御指摘がありましたけれども、それにいたしましても、日平均〇・〇三ppmが妥当である、こうおっしゃっておりますと、この山形さんと西村さんとの意見の間には越えることのできない大きな断絶があるように私は承ったわけですよ。ですから、あなたが学問的にやった結論というのは、妥協してもなおかつ業界の方はそれはだめなんだ、こう言っているのですがね、これは一体どういうことなのか、どう解決するのか、それをひとつ。  西村さん、ちょっと資料を見てみますと、先ほどもちょっと柴田さんから御意見がございましたけれども、大体〇・〇四ppmということになりますと、おおむね五五%程度というのはもうそれ以内におさまっておるようですね。あとの半分がおさまらない。自動車あたりでありますと、その中におさまっているのは六%くらい、こういう状況ですね。ところが、技術的に〇・〇四ppm以上だめなんだ、だからこうしてくれというのが山形さんの御意見なんですが、山形さん、もうこれ以上克服する、あるいはもっと努力するという意思はないのですか、あるのですか、これをちょっとお尋ねしておきたいのです。

山形栄治日本鉄鋼連盟立地公害委員会委員長

○山形参考人 産業界といたしましては、その意思は十分にあるわけでございます。現にいろんな努力をいたしておるわけでございます。これは先ほど来申し上げたことでございます。私、西村さんですか、聞いていて非常にむずかしくてよくわからないのでございますけれども、私が先ほど〇・〇四ppm以下では達成できないと申し上げましたのは、私の意見よりは、引用いたしましたのは昨年の十二月に出ました産構審の答申でございます。産構審の答申では、非常にこれも乱暴な前提を置いておるのですが、ある前提を置いて〇・〇五ppm程度が限界である、なおいろんな条件を加味すると、本当に実施可能なレベルは〇・〇七八くらいであるというようなことも推論からはうかがえるようなことになっておるわけでございます。  私の申し上げましたのは、環境庁の費用効果分析を吉田先生でございますか、まとめましたあれを詳細にまだ検討——まだ資料も出ておりませんけれども、出ておる限りの資料で限定いたしますと、大きく言うと一つ非常に大きな問題がある。環境庁の方の費用効果分析は、結局〇・〇三ができる、こう言っているわけでございますが、その一番大きな問題は、排煙脱硝におきまして特に触媒を使わない、無触媒法というのが実施できるという前提で、しかもこれを中小企業等に全部及ぼしまして計算をいたしておるわけでございます。ところが現実問題としての無触媒法というのは、結局アンモニアを使いまして触媒を使わないでやるわけでございますけれども、これは産構審の方では理論的に、用地とか、それから出てくるガスの温度とかいろんなことを加味すると、今後も大体全量の一〇%程度に実施できるだろうと思うということを詳細に検討しておるわけでございます。  産業界といたしましては、産構審の方が正しいとわれわれは考えておるわけでございまして、ほかにもございますけれども、一番大きな問題は排煙脱硝技術の実施率といいますか、それを非常に高くとっておるか、低くとっているか、しかも町の中小企業煙源までそれを及ぼしているかどうかということでございまして、われわれといたしましてはその辺について、口幅ったいようですけれども、環境庁の吉田先生の費用効果分析は間違っておる、こう考えておるわけで、その点で〇・〇五以上のものが限界点である、こういうことでございます。

細谷治嘉日本社会党

○細谷委員 時間がありませんので、もう質問しませんけれども、産構審とか中公審とかいろいろ出てきた、その基本的なデータについてもいろいろな疑問が投げかけられているわけです。私はお聞きしまして、西村さんの努力——論文は読んでおりませんけれども、大変敬意を表しているのです。敬意を表しておりますけれども、せっかく疫学的な、毒性的な、統計学的な結論を出した、ところが、多いところでは〇・〇二だ、そうでないところは〇・〇三でいいんだ、だから全体として突っ込めば〇・〇三だという形、これはやはり学者としては少し飛躍があるのではないか。さらに、複合汚染というからには二次汚染というものと、これが複合汚染ですから、これがどういうふうに疫学的に、統計学的に評価されるのか、こういう点についても詳細お聞きしたい、こう思っておるのです。業界の方の話を聞いてしまうと、もうあなたの方の〇・〇三というのが仮に妥協した線であってもこれはだめだと言っておるのですから、そうしますと、産業というのは、コストの問題、投資の問題、それはやがて消費者にかかるよ、だから国際競争力からいってだめだよ、だから人体の関係、健康なんて構わないんだ、こういうふうにしか受けとれないわけですよ。これではやはり公害問題というのは進まないと思うので、ずばりいきますと、一体鉄鋼は幾らにしてもらったらば一番国民に迷惑がかからぬと考えておるかという数字をお示しいただければ一番いいわけですけれども、そこまではちょっとおっしゃらぬで、雲をまいたような話でありますけれども、もう少しやはり公害的な観点から人との関係、人の健康というのを、地球より重いのですから、そういうことを配慮していただきたいということを要望して、時間がありませんから、終わります。

山形栄治日本鉄鋼連盟立地公害委員会委員長

○山形参考人 いまの先生のお話で非常に重要だと思いますのは、産業界が国民の健康を全然考えないで、やれコストとか、やれいろいろな経費とか、そういうことで考えているというのは、私がるる申し上げましたように、そういうことは絶対ございませんで、われわれとしては、健康を保持する範囲内で考えてくれ、だから健康を保持するのがどの辺であるか、これは学問的にも中央官庁の行政的にもいろいろとこれから議論されると思うのですが、産業界が健康を全然無視してほかのことを考えているんだという御理解がもしございますれば、これは非常なる誤解でございますので、ぜひそういう誤解を解いていただきたい、重ねて申し上げておきます。

島本虎三日本社会党

○島本委員 一言だけです。西村参考人に。  先ほど〇・〇三ppm、こうおっしゃったのは、前に私が言った、アメリカ式にいろいろと三段階制に分けて、それが許認可の対象にもなるし、同時にこれは補償請求のそういうような一つの基礎にもなるし、差しとめのそういうような一つの基礎にもなるし、いいところは残して、悪いところはよくするという、こういうような三段階の規制を込めたいわば〇・〇三ppmという意味ですか、そうでなくて漠然とした、いまの鉄鋼業界のような考え方の上に立って妥協できる範囲、こういうような点ですか。この点だけはきちっと詰めておかないといけませんので、無理にお願いしますが、無理に答えてもらいたいと思います。

西村肇東京大学工学部助教授

○西村参考人 学問的に言えば〇・〇三ppm以下に保てば健康が保てるだろう、それ以上であればどうなるかわからないという線であります。〇・〇三というのは。それでよろしいでしょうか。

島本虎三日本社会党

○島本委員 それでいいかといったって……。

西村肇東京大学工学部助教授

○西村参考人 〇・〇三ppm以下にする必要があるし、それ以上であれば多分健康に影響が出るだろうということであります。

島本虎三日本社会党

○島本委員 ちょっと時間が過ぎましたので、これ以上なにですが、これは環境基準のことを聞いているのです。環境基準には日本式のやつとアメリカ式のやつとEC関係のやつ、いろいろあるということはおっしゃったからわかるわけです。同じ基準でもアメリカの場合と日本と違うということで、いま日本の点を考えたら〇・〇三ppmと出たから、それはアメリカ的な規制も含むいわゆる補償の一つの基準にもなる、あるいはまた一つの許認可の対象になるというような意味を含めたこういうような考えの〇・〇三ppmかどうかということなんですが。

西村肇東京大学工学部助教授

○西村参考人 先ほど申し上げましたように、これはたとえば新しい事業を行うときの一つの許認可の目安になると思います。

島本虎三日本社会党

○島本委員 終わります。

久保等日本社会党

○久保委員長 次は、古寺宏君。

古寺宏公明党・国民会議

○古寺委員 非常に時間が限られておりますので、参考人の方々に一通り御質問を申し上げますので、簡単にお答えをお願いしたいと思います。  最初に、山形参考人にお尋ねしたいのでございますが、中公審の大気部会専門委員会の報告に対しまして、今回の指針は国際水準とはかけ離れた厳しい数値となっている、こういうような談話が前に発表されております。また、さらに今回のクライテリアにつきましても、科学的な根拠がない、こういう理由で批判をされておるわけでございますが、山形参考人がお考えになっておられます科学的根拠ということはどのようなことを指しておられるのか、お尋ねをいたしたいと思います。  さらに、鉄鋼連盟等におきましては、NO2の環境基準について、欧米並みの年平均値〇・一ppmにしなさいということを主張しておられますが、これは現在の一日平均値に換算いたしますと、現行の約五倍になるわけでございますので、こういうような環境基準の緩和によって国民の健康が保護できるというふうにお考えになっておられるのか、この二点についてお答えをいただきたいと存じます。  柴田参考人にお伺いをいたしますが、今回の二酸化窒素の環境基準の改定、見直しの手続の中におきまして、環境庁は中公審に諮問をしないようでございますが、この点についてどのようにお考えになっておられるか。さらにまた、環境基準の改定に当たりまして、安全率の中の長期暴露の点についてどのようにお考えになっておられるか、二点についてお尋ねをしたいと思います。  西村先生にお尋ねしたいのですが、環境庁の自然有症率のとらえ方と先生のお考えが違うようでございますので、その点についてお尋ねをしたいと思います。  なお、今回のクライテリアの指針値について、先生のお考えになっておられることと環境庁がお考えになっておられることでは大分開きがあるようでございますが、その点の相違についてお答えをお願いしたいと存じます。

山形栄治日本鉄鋼連盟立地公害委員会委員長

○山形参考人 お答え申し上げます。  一番最初の、十分科学的であるべきだということを申し上げましたが、これは産業界といたしましてNOxの有症の問題とか、NOxに関連する科学的知見が必ずしも十分でないということは先般存じ上げているとおりでございます。われわれは、科学的根拠が一〇〇%ないからしたがっておかしい、こういうことを申し上げているつもりは決してないのでございまして、われわれの申し上げている科学的なという意味は、従来のSOxとかそういう汚染物質と違いまして、NOxには非常に特殊性がある、これは地中のバクテリアの活動とか火山活動とか稲光がなったりするような自然界で発生するものが、これは九〇%に相当すると言われておるわけでございます。こういうふうに自然界からのものが非常に多いということが一点でございます。  それからもう一つは、これは燃焼すれば必ず出る物質でございますので、先ほど来申し上げましたように、日常生活の室内で、台所とか居間とかそういうところからも非常に多量のNOxが出ておる。たばこ等は千何百ppmというものが出ると言われておるわけでございます。こういうふうに発生源が非常に多様化しておりますので、戸外の大気中のNOxだけを対象に環境基準等を考えるのでなく、広くそういう全般の観点を踏まえてやっていただきたい。言葉はちょっと足りないかもしれませんけれども、こういうのを科学的に総合的にやっていただきたい、こういうことでございます。  それから、国際水準との関係でございますが、先ほどの各国の水準が一日換算で大体〇・一ppmでございまして、この〇・一というのは一日平均でございますので、現在の日本の〇・〇二の五倍でございます。日本の環境基準というのは非常に厳しいわけでございます。もちろん、くどくど言いますように、われわれはこれが人間の環境、健康に関係ありますれば、どんなことでも守らなければいかぬというたてまえはるる申し上げているとおりでありますけれども、われわれのいま聞いておりますところでは、一応国際水準が〇・一で、これで各国は人間の健康が保持できる水準と考えておる、国際的な合意ができているのじゃないかと私は思っているわけでございます。もちろん日本的ないろいろな特性が若干あろうかと思いますけれども、一応国際的には一日〇・一で健康が保持できる、こういうふうに合意が成り立っているのじゃないかと私は考える次第でございます。

柴田徳衛東京都公害研究所長

○柴田参考人 環境基準と申しますものは、言うまでもなく国民の健康保護、それから生活環境を保全するための長期的な目標値でございまして、短期的な政策課題にとどまるものではございません。したがって、さらにこの環境基準というものを決める場合には、私は、二次汚染、複合汚染あるいは自然の生態系、こういう問題も広く考えて、そして長い目で見た本当の人間の健康、快適な生活環境、それを国民の間で広く考え、理解し、そして決めていき、それに向かって突き進んでいくもの——ただいまも山形参考人からも発言がありましたけれども、経済的、技術的に当面できない、だからその線に下げようというのでは、この事態の発展というものは決してない。自動車の排ガス規制のときにも、いろいろ私自身体験したのでございますけれども、目標を高く設定して、それに向かって技術あるいは経済的な発展を遂げていこう、こういう姿勢があって初めて環境基準というものは高く立てる意義があり、また、それを堅持すべきものだと思います。  こう考えてまいりますと、公害対策基本法の二十七条で中央公害対策審議会についていろいろ規定してございますけれども、その趣旨にのっとって、国民にとって一番大事なこういう——この問題といいますものは、単に二酸化窒素にとどまらずにあらゆる環境基準という問題に影響は大きいと思いますし、もしこれを緩和するとすれば全く新たにあしき先例を開くということにもなると思いますので、こういう重要、基本的な事項といいますものは、中央公害対策審議会にぜひ諮問していただいて、広くいろいろな角度から論議を進めていただきたい。先ほど言いましたような複合汚染であるとか生態系あるいは安全率——先ほど御質問ございましたように、特に私が憂えておりますのは長期的低濃度の暴露でございます。これはなかなか一年、二年で結果は出ないのでございますけれども、しかし低濃度にわずかずつむしばまれていって、十年、二十年後に取り返しのつかない大きな被害が健康に生じてくる、こういう問題は専門家の間で十分討議していただきたいと思います。こういう問題も、当面はすぐ結論は出ないかもしれませんが、安全率というところにそれを入れていっていただいて、そしてぜひこの審議を広く尽くしていただきたい。ただいままでの前例を見ましても、こうした環境基準の問題は公害対策審議会で大いに論議を経ていただいておりますので、ぜひそういう道を通し、広く環境、生態系あるいは長期の低濃度の暴露の問題、こういう問題も十分安全率と申しますか、念頭に入れてこの基準設定という問題を進めていっていただきたい、こういうわけでございます。

西村肇東京大学工学部助教授

○西村参考人 自然有症率の問題でありますが、端的に言いまして環境庁の自然有症率三%という考え方は方法的に間違っていると考えます。  自然有症率をはかるためには、疫学調査の対象にしたのと同種の集団、たとえば家庭の主婦を対象にしたのなら家庭の主婦を対象にし、それから全く同じ調査要項に基づいて調査をすべきだと思います。ところが三%という自然有症率は、以前、都の男子の職員を対象にした健康調査から出された有症率でありまして、それを全く対象の違う家庭の主婦のデータにも適用する、それから多分アンケートの方法も違う、シチュエーションも違うときに適用するのは間違いだろうと思います。最も正しいのは、かなり大きな集団、四百人なら四百人という集団を日本じゅうあちこちにとりまして、できるだけ汚染されていないと思われる地域について有症率の調査をし、信頼の置ける一番低い値をもってその自然有症率とするのが論理的に正しいと思います。現在の場合は、環境庁の調査では全部で五都市——六都市ありますが、富田林を除かないといけませんので五都市と申し上げたのですが、どちらでもいいのです。その中の一番有症率の低いところのデータをとればよろしいというのが論理的な帰結であろうと思います。ただし、そうしますと一%以下の値になってしまいます。私はその値はとりませんでした。というのは、統計的に見まして、その値一つだけで自然有症率を一%と考えてしまうのは危険があると考えたからです。これは少し緩くなりますけれども、低濃度地域と言われる三地域の平均をとりまして有症率を決めました。それが二・一七%という値であります。これは環境庁の値とかなり違っております。  第二点は、専門委員会が出した年平均にして〇・〇二から〇・〇三という判定基準と、私がかなり譲ってこの程度のと言いましたのが年平均にいたしますと〇・〇一五という値であります。この値には開きがあります。  私の方の値は、先ほど申し上げましたようにその内容ははっきりとしておるわけであります。それに比べまして環境庁が出しました〇・〇二から〇・〇三という値は、論理的に、あることからロジカルに帰結をされたということではありませんで、そういうデータを総合的に判断してこの値を得たというふうになっております。その間になぜそうなったのかということについて、私は十分納得はできません。多分大きな原因の一つは、自然有症率の三%という値を外から持ってきて使ったということにも原因があるように思います。そのデータからの結論としては、私は自分の出した値の方が正しいし、そういう場で何回でも争っていくことが必要であれば争えるものだと思っております。

古寺宏公明党・国民会議

○古寺委員 山形参考人にお尋ねいたします。  先ほどの続きでございますが、これは三月二十三日の日経産業新聞に載っているわけでございますが、今回の新指針がそのまま環境基準となるなら、われわれは強い危機感を抱くし、それなりの決意を持つ考えである、冷静に考えようとしてもこんな指針を出されてはヒステリックにならざるを得ない、新環境基準の告示までに働きかけを各方面で行う考えだ、こうお話しになっておられますが、それなりの決意ということとお考えとはどういうことであるのか、先ほどから、非常に大事な健康を保護する立場でいろいろ公害対策をお進めになるということでございますが、働きかけを各方面で行うというのは、その後どういうような働きかけを行ってこられたのかお伺いしたいと思います。

山形栄治日本鉄鋼連盟立地公害委員会委員長

○山形参考人 私は詳細に覚えておりませんけれども、われわれは環境庁が見直しをしていただいたということに非常に期待を強く持っておりましたので、もうちょっと国際的な水準に近い感じのものが出るのではないかという期待が余りにも強かったものですから、そういういろいろな表現が出たのだと思いますが、具体的な表現はよく覚えておりません。  ただ、いまの言葉の中で、各方面にわかっていただくためにいろいろと働きたいということは、それはたしかでございまして、われわれはいち早くそのクライテリアの答申に対しますわれわれの考え方、これは鉄鋼連盟だけではございませんで、経団連としてもまとめまして、関係の中央官庁の方々、大臣等に対しましても、われわれの真意をよくわかっていただきたいということで、陳情書をつくりまして各方面に動いたということはたしかでございます。そういうことでございます。

久保等日本社会党

○久保委員長 次に、中井洽君。

中井洽民社党

○中井委員 民社党の中井でございます。大変御苦労さまでございます。  時間がございませんし、すでにもうほとんど出尽くしたような気もいたしますので、あるいは重複になるかもしれませんが、それぞれの方々に簡単にお尋ねをしたいと思います。  最初に、山形参考人にお尋ねをいたします。  先ほどからお話を聞いておりますと、健康を守るために産業界は、やらなければならないことはやるのだという形で熱心に御答弁をされているわけでありますが、それと同時に、お話を承っておりますと、平清盛ではありませんが衣の下によろいがちらちらというような感じもいささかないわけではございません。産業界あるいは鉄鋼連盟として、今回出された指針というものを、本当に科学的に信頼できないのだ、このようにお考えになっているのかどうか。あるいは過去五年間、環境基準の中でなかなか達成しにくかった、その産業界からの大きな原因は、技術的、費用的な面じゃなしに、その〇・〇二ppmという基準が科学的に信用できなかったのだ、こういうことで達成できなかった、このようにお考えなのか、その点についてお尋ねをいたします。

山形栄治日本鉄鋼連盟立地公害委員会委員長

○山形参考人 お答え申し上げます。  達成しにくかったのは事実でございまして、これは達成できなかったわけでございますけれども、先ほど来申し上げましたように、われわれもすぐそういう研究組合をつくったり、防除技術の基金をつくったり、それから各社でも全体合計しますと百億ぐらいの研究開発をしておりまして、何とかしてできないかということで、低NOxバーナーなどは確かに実現できたわけでございますけれども、一番問題でございます焼結炉から出てきますダストの多い、クリーンでないガスについての脱硝技術というのは、遺憾ながら現在まで達成できておりません。今後もこれは非常にむずかしいのではないかという感じがいたしております。研究は続行いたすつもりでございますが、われわれは最初から科学的に〇・〇二がおかしいから何もしないということでございませんで、これは国がお決めになった基準でございますので、できる限りそれを実現するように研究を続行したわけでございます。  ただ、もう一つ非常に大きな問題は、この脱硝技術といいますのは、いま試験的に若干各地でやっておりますけれども、非常に膨大な用地が要りまして、既存の工場の中でその用地を確保することが非常にむずかしいというのが一つと、それから空き地があるわけでございますが、空き地までガスの配管をずっとやりますと、途中で当然のことながら温度が非常に下がってしまうわけでございます。それをもう一回温度を五百度ぐらいか三百度ぐらいか上げないと、触媒との関係で非常にまずいことが起こりますので、非常に長い配管をやって、そこでまた加熱をして触媒にかけるというようなことも考えると、現在の既存の用地で、ほとんどの工場でなかなかむずかしい。したがって、われわれとしては、低温でうまく働くような触媒をいま関係方面にも頼みまして共同研究を進めております。こういうものができますれば、それは一つのあれだと思いますが、そういうことでございまして、御理解願いたいと思います。

中井洽民社党

○中井委員 西村参考人にお尋ねをいたします。  どうも先生のお話あるいはそのシステム解析という学問について、私は一向わかりませんであれなんですが、率直にお考えになって、今回中公審の専門委員会の方々がお出しになった指針、答申、ここで盛られたデータあるいは判断、そういったものは、国際的なNOxの学問の中でトップの、最高水準のところまでいっているのだとお考えになりますか、それともどこかに先ほどお話しになったような大きな欠陥があるのだ、こういうふうにお考えになっておられるのか、どちらでございましょう。

西村肇東京大学工学部助教授

○西村参考人 今度の専門委員会がお使いになりましたデータそのものは、まさに世界最高のものであろうと思います。ただ、そのデータに基づいた結論には、いささか承服しかねるところがあるというのが私の結論であります。クライテリアが〇・〇二から〇・〇三の値、これは年平均でありますが、〇・〇三という値はどうしても出てこないだろう。先ほど申し上げましたように、〇・〇一五からどんなに大きく見ても〇・〇二ということで、下限の値はまあまあ納得できる限界でありまして、〇・〇三という値は決してデータから出てこないということだけを申し上げたいと思います。

中井洽民社党

○中井委員 柴田参考人にお尋ねをいたします。  柴田先生も今回の答申を十分科学的なものだというふうに考えられるかどうか、一考としての立場からで結構でございますが、お尋ねをしたい。  それからもう一つは、東京都だけに限って言えば、この五年間、NOxの規制というものがどのように数値的に効果を上げてこられたのか、あるいはなかなか達成できなかったとしたら、どんなところに原因があるのか。先ほどからるるお話が出ておったように、固定発生源のそれぞれの規制、あるいは移動発生源についても、五十三年規制ですからこれからあらわれてくる、バス、トラックは五十四年でありますが、これがまた出てくるという形でありますが、それをしてもなかなかむずかしい。そのときに、そういうことを見越して、東京都として都市政策あるいは道路交通政策、そういった意味での総合的な政策の中で、NOx対策というものをお進めになっているのかどうか、そういった点についてもお教えをいただきたいと思います。

柴田徳衛東京都公害研究所長

○柴田参考人 まず前者でございますけれども、二酸化窒素の人の健康に対する影響という意味での専門委員の研究、私は大変御苦労でよく詰めていただいた、こういう気がしております。  ただ問題は、それにさらに多くの要因を入れないと、判定基準をそこではお出しいただいた、次に環境基準というものを考える場合には、人と指している場合に、弱者はどうなんだろうか、健康影響と言っているけれども、さらに長期を見た場合はどうだろうか、さらに環境基準を考える場合には、先ほど申しましたような二次汚染、複合汚染あるいは動植物生態系への影響、それが回り回って人体へまた影響が出てくる、こういう問題をぜひ加えていただかないと、環境基準の問題は論じられないし、それをぜひ考えていただきたい、こういうことでございます。  それから二番目でございますけれども、率直に申しまして、いわゆるSOx、亜硫酸ガスあるいは粉じん等々に対しましては、最近の七、八年ないし十年間、見るべき成果が大いに上がったと思いますけれども、窒素酸化物に対しましては非常に困難が多い。そして自動車の走行の規制、これは東京都の場合でございまして、これは特に全国の自治体でもいろいろ特色のあるところと思いますけれども、自動車の走行規制であるとかあるいは中小企業の対策等々は、あわせて進めていかなければならないと存じますが、しかしその前提として、何といっても一番その源泉になる発生源、これに対する規制というものはぜひこれから進めていっていただきたい。  世界で一番不幸な公害の被害というものを日本はいろいろ味わったわけでございますけれども、ぜひこの環境基準というものを、いままでのは大変意味深い値だと私は思いますので、それを目指してどこまでも環境の改善、技術の改善、これを一歩一歩突き進めていきたい、そういうところでございます。

中井洽民社党

○中井委員 柴田参考人、済みませんが、私がお尋ねしたのは、東京都がこの五年間、NOxの規制でどのぐらい数値的に下がってきているのか、そういうことであります。下がってこなかったら、何がむずかしかったのか、こういうことであります。

柴田徳衛東京都公害研究所長

○柴田参考人 年によって気象条件等も加わりましょうが、全体として余り下がってきておりません。主たる原因は、東京都の場合には、大工場がかなり疎開しておりまして、自動車の部分がかなり大きい。そして乗用車に関しましては今後恐らく規制が進んでまいりますので、改善の方向が出るかと思いますけれども、大型のトラック、ディーゼル車等々でいろいろ困難が残るのじゃないか。恐らく三分の二ないし八割、その間ぐらいは自動車ということでございます。しかし、これは全国あるいは神奈川県とか千葉県等ではまだ事情が異なるようでございますし、そちらではまだかなり工場の比重が大きいのではないかと思います。

中井洽民社党

○中井委員 もう一つお尋ねをいたしますが、先ほどからお話の出ております幼児あるいは老人、弱者、こういうことでありますが、たとえば私自身は一日八十本ぐらいたばこを吸うわけでございます。私の家には七十二歳の病気の老人と四つの子供といるわけであります。部屋の中のそういったものに対する国民一人一人の考えというもの、啓蒙、あるいは室内で、病気の人は特に——これはNOxというのか、室内の空気ですね、そういったことに対する学問というのはかなり進んでおるのでしょうか。

柴田徳衛東京都公害研究所長

○柴田参考人 御質問でございますけれども、たとえば、たばこを何本飲めばがんの発生率がどうなるかというふうなのをもし学問研究としますと、まだなかなか発がん性の問題などはこれから究明するところが多いのではないかと思います。  ただ、いま御質問のございました室内汚染の問題でございますが、もちろん室内もきれいにこしたことはないわけでございますけれども、全国の有症率というのを見ますと、もし室内汚染の比重が大きいとすれば、冬期暖房の非常に多いところとか、あるいはたばこを吸う人の非常に多い部屋というところが有症率が多くなるかと思いますけれども、学問的に言いまして、まだそこまでの有意差はないのではないか。室内の場合には単体と申しますか、たとえば、たばこを吸えば、それから出てくる有害ガスという形になりますけれども、屋外の場合には、有害物質が非常に多数合成されていると申しますか、あるいは複合されているという問題がございますし、それから、われわれが生活をする以上、屋内の場合はめいめいでいろいろ対策ができるかもしれませんけれども、屋外の場合には個人では対策が立たない。こういう意味で、いわゆる一般の大気と言いましょうか、屋外の大気を清浄にするということは、今回の場合にも大変意義が大きい、大事なことではないか、私はこう思うわけでございます。

中井洽民社党

○中井委員 ありがとうございました。

久保等日本社会党

○久保委員長 次に、東中光雄君。

東中光雄日本共産党・革新共同

○東中委員 山形参考人にお伺いしたいと思うのですが、先ほどの意見陳述の中で、NOx対策に鋭意取り組んできた、ずいぶん莫大な費用も要っておるということを言われたのでありますが、これは防除技術あるいは脱硝技術対策あるいは脱硝技術開発、いろいろあるのだと思うのですけれども、そうしてまた、大学なんかへも研究助成金を出しておるというお話でありました。それはやられておるのだと思うのですが、同時に、環境基準自体を緩和させるということについての研究やら助成やらということをずいぶん精力的にやってこられたのではないかと私は思うのですが、この「わが国のNO2環境基準」というパンフレットを見ましても、ここで環境基準を見直すべきだ、あるいは現行環境基準に基づき行き過ぎた規制の強行は見合わせるべきです。あるいは国民の経済生活に与える影響も十分に配慮すべきだ、この三つの提言が出ておりますけれども、こういうことについての研究といいますか、あるいは助成というのはどの程度やられておるのか。昭和五十年六月でしたか、公衆衛生関係学者を含めて鉄鋼連盟のブレーンスタッフ会議を開いたというふうに言われておりますが、どの範囲でどういうふうな環境基準緩和のための研究助成をやってこられたのか、お伺いしたいと思います。

山形栄治日本鉄鋼連盟立地公害委員会委員長

○山形参考人 ちょっと詳細に欠けるかもしれませんけれども、われわれとしましては、四十八年に〇・〇二ppmという環境基準が設定されましてから、すぐこれをやるということはとても不可能だということで、研究開発とかなんかもやったわけでございますが、あわせて、各地方で非常な混乱が生じまして、環境基準というのは、日本ではあくまで行政の長期の目標なのでございますけれども、これは各地でやはり住民の方々の御意見も声が大きくなるのは当然だと私は思いますけれども、これが規制値として考えられるようなことがありましたことも、この事実は否定できないと思うわけでございます。  それで、現在の環境基準の〇・〇二というのがどういうものであるのか、非常に厳しいのだということはみんなに、産業界としてもわかっていただかなければならぬということで、経団連に公害関係の、そういう全体の意見を取りまとめる協会を、経団連が基金を出しましてつくっておりますので、そこに関係者も集まっていただきまして取りまとめたのが、いま先生のお持ちの資料でございます。  それから、鉄鋼業界といたしましても、別途絶えず、これはそれぞれの会社はみな共通性がございますので、横で意見を交換するような機構がございますが、それはそういう意味で一回、現在のクライテリアが出ましたときも、すぐそれに対する意見を述べるとか、そういうことの業界としての一つの機構がございます。  大体そんなような動きでございまして、そこに膨大な資金を投入して年がら年じゅう何かやっているというような性格のものではございませんで、大体において、あることが出ましたときに意見を取りまとめるというのが主たる動きでございます。

東中光雄日本共産党・革新共同

○東中委員 技術開発についてずいぶん資金を投入し、大学への助成もしているということを、金額まで言われましたので、こういうことについて、要するに基準自体に対して緩和させるための研究やら大学への助成やら、学者、学会なんかへの、あるいはその他の働きかけやら、そういうところへどの程度の助成をされ、どの範囲で動いてこられたのかということをお聞きしているわけです。

山形栄治日本鉄鋼連盟立地公害委員会委員長

○山形参考人 申しわけありませんけれども、具体的な数字は私ちょっと知りませんけれども、それは、先ほど言いましたように、どちらかといいますと、産業界内部の有識者の集まりの研究システム、それから思想の統一等の機構でございますので、それに何か金を助成するとか、そういうことではないと、私、存じ上げておるわけでございます。

東中光雄日本共産党・革新共同

○東中委員 公衆衛生関係の学者を含めて——だから、学者ということになれば、呼びかけられて、それでスタッフの会議を持ってということになったら、助成なり研究費なりというものを出していくのが普通だと思うのですけれども、その点をお伺いしておるわけです。それはわかりませんか。

山形栄治日本鉄鋼連盟立地公害委員会委員長

○山形参考人 私の方は、決して意図的にあれしているのではございませんで、たとえば、私がいま思い出したのでは、北里研究所の、先生の名前は忘れましたけれども、その先生のグループに、疫学調査的に動物実験を主にした、それをまた疫学的にどうつなげるかというような、これは学問的な研究でございますけれども、それに対して、たしか三、四千万円出したことは記憶いたしております。

東中光雄日本共産党・革新共同

○東中委員 いずれにしましても、非常に混乱が起こった、やるのは困難だという状態で、そして、基準そのものに対してそれを緩和する、見直せという結論が出てくる、そのための調査、研究あるいは助成というふうなことを鉄鋼連盟なりあるいは財界でやってこられたと言わざるを得ないわけです。このパンフレットにも書いてありますが、現在、環境基準を達成している地域はきわめて少ないわけです。現行の環境基準達成の見通しはいまのところ立たないという状態だと思うのですが、この時点で環境基準を今度の見直しと同時に緩和の範囲をもっと広げるということでありますが、これをやったら実際に企業側にとってはどのような結果を生むというか、企業側の対応はどう変わってくるのですか。環境基準を緩和すれば環境基準が達成されてしまう部分がどんどんふえてきますね。そういうことによって企業側はどういうふうに現実に結果が出てくるか、どういうことを考えていらっしゃるのかということをお聞きしたいのです。

山形栄治日本鉄鋼連盟立地公害委員会委員長

○山形参考人 この環境基準は、環境庁がこれからお決めになることで、どの程度になるのか私わかりませんけれども、これは健康を保持する範囲内でお決めくださるのだと思います。ただ、現在でもNOxにつきましては設備ごとに規制がされております。これは、排出量、ノルマル立米当たりの何ぼということで、現在、私の記憶では工場から排出される七十数%が規制の対象になっておりまして、それぞれそれを設備ごとにチェックされ、また守っておるということでございます。私、環境庁の方がどうなさるのか知りませんが、恐らく妥当な線で新しい環境基準ができましても、それを保持するために現在の設備別の規制というのは当然に残ると思うわけでございまして、われわれといたしましては、むしろそれが機種別に追加されるのではないかと思っておりまして、それは各工場としては、ボイラーなり加熱炉なりそれぞれを、従来または従来にも増して規制を守っていくということになろうかと思いますので、緩和という言葉は悪いのですが、環境基準が緩和されたら途端に現在の設備別の規制がなくなってしまうということではなく、むしろそれは付加されて規制をされ、また、厳守していくということになるのだと私は思います。

東中光雄日本共産党・革新共同

○東中委員 今回の指針値でも、経団連も鉄鋼連盟もそうでありますが、厳し過ぎるということですから、これ以上にそれを緩和すれば全国的にはほとんど環境基準達成ということになってしまうわけですが、そうしたら、現在やっている規制以上の規制はもうしなくてもいい、だから、研究も開発ももちろんほとんど要らなくなってくる、こういうことになるわけですね。それで、現在の環境基準達成のためには排煙脱硝が必要ということでありますけれども、今回の指針値どおりとしても全国的には五〇ないし八〇%のところで達成ということになりますから、この指針値ではもうあとどの程度の規制が必要なのか、特に排煙脱硝というふうなことについて具体的にどう考えていらっしゃるか、お聞きしておきたい。

山形栄治日本鉄鋼連盟立地公害委員会委員長

○山形参考人 これは、私からとても答えられないところもあるので、環境庁の方でどういう基準をお決めになり、それに基づいてどういう規制をしていくかということは、環境庁の局長から御答弁願わぬと、私はとんとわからないのですが、私の言いますのは、現在、設備別に規制されておりましてもなかなか達成ができてない。したがって、この緩和という言葉ですが、よしんば緩和されましても、今後、設備別の規制の強化なり総量規制というような考え方なりいろんな規制の仕方を環境庁の方ではお考えだと思うのですが、鉄鋼に即してみますと、先ほど言った焼結炉の排煙脱硝というのは非常にむずかしい問題でございますが、当然に今後も研究を続行していかざるを得ない。これはどのくらい緩和されるか知りませんけれども、緩和されたらそれはもうやめるのだということではございませんで、今後も続行し、そこから成果を上げてできる限りの対応をしていくという考えでございます。

東中光雄日本共産党・革新共同

○東中委員 時間がございませんので、柴田先生に、いま山形さんのお考えの中で、現在の環境基準の達成を強行しようということになれば国民経済から見て大きな損失だ、こういう基本的な考え方があるわけですが、それについてどう思っていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。

柴田徳衛東京都公害研究所長

○柴田参考人 私は、実は、二年前になりますか、自動車の排ガス規制というときに、国会でもいろいろ意見を言わせていただいたのでございますけれども、そのとき業界から非常に強く言われましたことは、技術的に不可能である、できっこない、それから、もし強行すれば費用が大変かかる、当時で六千億でございましたか、それからさらに、それを強行すればコストが上がり、価格が上がって、失業が、何か大変詳しい計算が当時出たようでございますが、直接九万七千人でしたか失業が出る、これは日本の経済の基幹産業であるからして、関連した鉄鋼以下次々と不況が来て日本経済に大変な破滅が来る、柴田、おまえはそういう日本の国民の経済を考えないのか、こういうようないろいろ御意見がそこで出たのでございますけれども、しかし、環境基準というのは国民の健康、環境を守るものである、決して下げてはならないという非常な強い主張をそこでしまして、そして、現状はできない。だからその線に基準を決めるというのでは絶対に日本の環境はよくならない、高く掲げて国民の健康を守る線を堅持して、それに向かっていくべしという運動が進みまして、そして非常な技術的な成果が初めて出て、さらに燃費もよくなり、大気汚染に大変いい意味での一歩前進があった。そして、その後、私の理解する限りでは、コストというものも、ほとんどそのために自動車の価格が上がったということを聞きませんし、これがむしろ非常に好評で、いわゆるセールスポイントといいましょうか、皆五十三年度規制クリアーというようなステッカーをつけて自動車が走っているということは、それだけ売れ行きが上がった。海外から私のところにも非常に問い合わせが来るのでございますけれども、こういう技術開発ということを通し、それに対する投資、技術研究というものを通して初めて、個々の企業はいざ知らず、日本経済全体としては本当の発展がいくのではないか。それを節約し、削ってきた、そしてコスト切り下げ、生産第一、輸出第一としてきたところに現在の日本経済が袋小路に次々と入っていく、こういう問題なのではないか。これを一つの次の日本経済の発展の大きなてこにしていただきたい。そして、先ほど申しましたように、複合汚染、二次汚染というような国民の健康ということを考えますと、現在の環境基準というものは大変意義深い、確保すべきものである。それをどこまでも堅持して、それに業界も進んでいただきたい。もちろん、きょうこの場でということは困難が多いかもしれませんけれども、目標は高く掲げて、どこまでも追求していただいて、それを通してむしろ経済の発展というものがある、自動車関連のところで私自身見ていてそのことを大変痛感した、こういうわけでございます。

東中光雄日本共産党・革新共同

○東中委員 時間がございませんので、終わります。

久保等日本社会党

○久保委員長 次に、工藤晃君。

工藤晃新自由クラブ

○工藤(晃)委員(新自) まず山形参考人にお聞きをいたします。  ただいまいろいろ御説明を伺っておりました中で、幾つかお聞きをしたいと思うことが浮かんでまいりましたので、その点をお聞きしたいと思います。  まず第一番に、山形参考人のおっしゃったポイントの中で、健康を保護し得る範囲の中で他のものとの整合性を考慮したNO2対策をしてもらいたいという御発言がございました。そういうことになりますと、健康を保護し得る範囲というものが問題になると思うので、この定義がはっきりしなければ、結局は他のものとの整合性を図れと言ってもできないのではないか。なぜならば、この問題は、すべて人の健康というものを第一義に考慮しながら対策を講じなければならないという大義がございますので、あなたのおっしゃっている健康を保護し得る範囲というものが少なくとも科学的に証明されていくということがなければ、あなたのおっしゃっている持論を推進することはむずかしいのじゃないかと私は考えるわけでございます。そういうことについて、逆に健康を保護し得る範囲というものを設定し得るものは何かないかということで、この中公審の答申などを見ましても、またいろいろな参考人のお話を伺いましても、一部分を主張することはできても、すべての健康に対する総合的な結論を出しているものは何一つないわけです。そのかわりに動物実験をしてみたり、あるいは時期的な問題をつかまえてみたり、短期のもの長期のものとかいろいろなことをやっておられる努力は非常に多としながらも、果たしてこれによって人体に及ぼす影響を証明し得るかということについては、私ははなはだ未熟であるという結論にならざるを得ないのでございます。  それからまた、特にこの問題は、条件的に設定する条件が非常にむずかしいという気がするわけで、条件をそろえることもむずかしいだろうと思います。まず、検査の手段がまだまだ未完成であるということ、また測定する環境条件をそろえることがなかなかむずかしい、個々別々であるということ、それから、複合汚染を含め人体に及ぼす影響の追求がまだまだ未熟である、こういう条件の中で出てきたデータをもって無害である、有害であるということを論じることは、まだまだ時期が早いのではないか、私はこういう感じを持つわけでございます。  そういう意味において、確かに山形参考人のおっしゃるように、そういうものをすべて含めて、そういうものが解決された時点においては当然、こういうことを御主張なされることはもっともな理屈につながると私は思いますけれども、現状態においてはこの発想は通用しないのではないかと私は考えるわけでございます。そういう点で、あなたのおっしゃる、健康を保護し得る範囲が決定できればこういうことを考慮してほしいという御意見について、もし現在こういう状態でないとすれば、あなたはそれに対してはどのような御意見をお持ちになるか、ひとつ私に聞かしていただきたい。  もう一つは、健康というものの概念というか条件をどう、どこに設定するかということですね。たとえば、先ほどもおっしゃっておりましたが、柴田参考人がおっしゃったように、弱者を基準に置いて考えるのか、あるいは非常に健康であり、すべての反応に対して非常に抵抗性を持っている、対抗性を持っているという人たちを中心に物を考えるか、ここによって大変大きな開きが起きてまいろうという感じがするわけでございます。  たとえば、この答申の二十二ページにこう書いてございます。「我が国各地の成年を対象とした疫学的調査の結果から、環境大気中二酸化窒素濃度の年平均値〇・〇二−〇・〇三ppm以上の地域において、二酸化窒素濃度と持続性せき・たんの有症率との関連があると判断される。」、こういうふうに書いてございまして、現在の問題でも、やはりこういうものだけを見ても相当いろいろなところで有意の差が起きてくるだろう。たとえば都市と過疎地における場合にも、十分有意の差が認められるんじゃないかということもあちこちデータに出ておるようでございます。そういう問題が一つございますので、健康を保護し得る範囲というものの条件をまず決めなければならぬが、これは恐らく現状においては決められないんじゃないか、そういう感じがしておりますことについての御回答をいただきたい。  二番目に、たばことかあるいは厨房、こういう室内の汚染を注目すべきであるという御意見がございました。それからまた自然発生源についてもたくさんあるんだから、こういうことについても考慮しなければいかぬので、そういう意味においては、工場から排出されるようなものだけを注目されては困るというふうな感じの御意見がございました。これも確かに必要だけれども、特に室内の汚染については留意すべきである、こういう御意見のようでございましたけれども、これについても私どうも、果たして室内発生源がそれほど大きな影響を与えているのかどうかということに対していささか疑問を持つわけなんです。ということは、たとえばたばこを吸う人は、大都会の方がたくさん吸って田舎の方は吸わない、そういうこともないだろうし、厨房の燃焼も、田舎でも都会でもなさるでしょう。いまは暖房もなさるでしょうし、いろんな条件からいけば、室内汚染の条件というものは都会と田舎においてはそう変わりない。しかしながら、大都会における大気汚染によって起きるぜんそく患者その他こういう公害病対策についても明らかなごとく、屋外の発生源の濃度の高いところには必ずそういう患者さんの密度が非常に高いという比率から考えまして、室内汚染というものがそんなに重要な影響は与えていないのではないかというふうに類推されますので、その点について、ひとつ御意見を伺いたい。  まず、この二点をお伺いいたします。

山形栄治日本鉄鋼連盟立地公害委員会委員長

○山形参考人 お答え申し上げます。  健康保持の範囲内というのは、先生のおっしゃいますように、現在の世界的な知見でもなかなか、NOxと人間の健康、また病気の有症性との関連というのはむずかしいと思いますけれども、先般来、環境庁がクライテリアの専門委員会を活動させまして一年間、専門の先生方の御検討の結果が出たわけでございます。われわれとしましては、何はともあれ、いま日本でやれます一つのやり方としてはこれ以外にないのじゃないかと考えておりまして、現在その答申が出ました段階で、健康保持というものを環境庁がどうお考えなのか、それに基づいて、その範囲内においてほかのものの条件との接点をどこに求めるのか、そういうことで、ぜひ納得のいく線をお出し願いたい、こう思っておるわけでございまして、純粋な学問的な観点からの健康保持というものがどういうものであるかということにつきましては、先生のおっしゃいますように、現在まだ非常に不十分な点があると思いますが、それは行政的にはやむを得ないのではないか、こういう考え方をとっております。  それから二番目の、室内の汚染の問題でございますが、これは私も、室内の個々の厨暖房器をどうするかというような問題につきましては今後の問題だと思います。地方と大都会と共通ではないかということでございますが、やはりこれが一種の、バックグラウンドと言っては語弊があるかもしれませんが、自然界と室内の汚染がバックグラウンドになってその上に固定発生源と移動発生源の汚染が上乗せになっておるので、その辺が問題だと思うわけでございまして、室内のものは全く無害であってというのじゃなくて、その上に何が乗るか。その上のものだけを解決しても、室内問題というのは、長期的にはなかなか問題を含んだ大きな問題ではないかと私は理解いたしておるわけでございます。

工藤晃新自由クラブ

○工藤(晃)委員(新自) 時間がありませんので、多くを聞くわけにいきませんが、先ほどの、そういうバックグラウンドのお話が出ましたけれども、私は、やはり日本全国、条件的に大体同じであろう室内の汚染について注目をする、その上にいま屋外の問題をという主と従の関係を、やはり屋外を主にすべきであって、室内の問題にテーマをすりかえるということはちょっと話の論理がおかしいと思う。その結果を論じなければならぬというふうに私は感じるわけで、なぜならば、いま申し上げたように、条件的にはそういうことがはっきりと証明されていくではないかということで申し上げているので、やはり重点は、屋外のそういう発生源を今後ともどうよくしていくかということが行政上の重要なポイントであって、そういう弱者と言われる人あるいは健康と言われる人の問題まではこれは行政的にはやむを得ないというふうな考え方では、私は公害の防止にはつながらないと思います。逆に言えば、弱者に対してどう保護するかということが一番公害の重点にならなければならないことでございます。そういう意味で私は申し上げました。  最後に一点お聞きいたしますが、山形参考人おっしゃるように、緩和されることを期待されておられるようでございますけれども、もしそういうものが緩和されたとすれば、あなたは、大気汚染の改善に産業界は大いにそれが役立つというふうに御判断になっておられるのか、その点、一点だけちょっとお聞きをしたいと思います。

山形栄治日本鉄鋼連盟立地公害委員会委員長

○山形参考人 私は、先ほど来申し上げておりますように、人間の健康保持がわが国民にとって最も重要な問題であるという認識でございまして、緩和という言葉でございますが、これは、あくまで健康を保持できる範囲内に環境基準というのは設定されるべきであるという基本概念でございまして、健康保持に問題があるものについて、そこを少しトーンダウンしていまのむずかしい経済界のためにやる、そういうことはいささかもやるべきでない、あくまで健康保持の原点を忘れずに環境基準を設定、運用せられたい、こういうことでございます。

工藤晃新自由クラブ

○工藤(晃)委員(新自) もう時間がありませんが、ただ一点だけ、柴田参考人にお聞きいたします。  最近は、光化学スモッグの発生状況というのは、とみに改善されておりますか、それとも、前と比べて余り変化がありませんか、その一点だけひとつお聞きをいたします。

柴田徳衛東京都公害研究所長

○柴田参考人 表面では減っているようでございますけれども、これは気象条件でございますね。昨年でございますか、長雨とか、こういうような気象条件でありまして、基本的な状況というもの、特に先ほど申しましたような植物被害という方から見てまいりますと、決してこの事態は改善されてない、むしろ憂うべき事態になっている。特にこれは、先ほど、よく海外との比較がございましたけれども、欧米先進諸国は緯度がきわめて北の方でございまして、日本は緯度が相当南になっている、こういうような点で、国際比較をする場合でも特に注意が必要かと思います。

工藤晃新自由クラブ

○工藤(晃)委員(新自) 時間が参りましたので、残念ながら西村参考人にお聞きすることはできませんでしたが、また時期を改めてお聞きしたいと思います。  終わります。

久保等日本社会党

○久保委員長 以上で午前中の参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚くお礼申し上げます。  この際、午後一時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後一時六分休憩      ————◇—————     午後一時三十二分開議

久保等日本社会党

○久保委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  二酸化窒素に係る環境基準に関する問題について、午前中に引き続き参考人から御意見を聴取いたします。  ただいま御出席をいただいております参考人は、東京大学医学部教授前田和甫君、日本弁護士連合会公害対策委員会委員真鍋正一君及び全国公害患者と家族の会連絡会代表浜田耕助君の三名の方々であります。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただき、まことにありがとう存じます。参考人の皆様にはそれぞれのお立場から、どうか忌憚のない御意見をお述べくださいますようお願い申し上げます。  なお、御意見の開陳はおのおの十五分以内に要約してお述べいただき、その後、委員の質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、前田参考人からお願いいたします。

前田和甫東京大学医学部教授

○前田参考人 ただいま御紹介いただきました前田でございます。よろしくお願い申し上げます。  私は、二酸化窒素の指針を導くもとになりました疫学調査の手法についてのことと、それから、大気汚染物の一つとしてのNO2、二酸化窒素でございますが、現実の大気汚染、これは複合汚染でございますが、の影響を考えていきます場合のNO2の寄与する程度、そういうことに関しまして御意見を申し上げさせていただきたいと存じます。  まず最初に、疫学手法のことでございますけれども、先日、五月十日、参議院におきまして、当委員会と同じ公害対策及び環境保全特別委員会が開かれまして、参考人として出席されました公衆衛生院次長鈴木武夫先生が、たまたまその日新聞に掲載されました私の大気汚染の疫学調査についての投稿が話題になり、御意見を述べられております。そのときの議事録を私、最近手に入れまして拝見いたしまして、鈴木先生は、私が新聞に投稿いたしました意見をいささか誤解をしていらっしゃるのではないか、さように思いますので、まずその点から訂正させていただきたいと存じます。  お持ちでない方もいらっしゃろうかと思いますが、私は手元にそのときの議事録を持参しておりますので、朗読させていただいてよろしゅうございましょうか——議事録の八ページの四段目「参考人(鈴木武夫君)」というところでございます。   いまの前田先生のお書きになったものは、一般論といたしましては私はそうありたいと思います。で、わが国を含めて、世界各国で、それまでの疫学調査というものは、現実には行うことは非常に困難でございまして、行っておりません。いまのお話のハーバードの問題は、フェリス教授といわれる方でございまして、私の友人でございます。二年前からその話は聞いております。   それで、結局、いまそこでお挙げになりましたアメリカの疫学調査というものは、集団的な取り扱いと同時に、個人の取り扱いも同時にやろうとしているわけです。したがいまして、CHESSというのは、これは私たちの言葉を使わせていただきますと簡単にチェススタディーというのですけれども、チェススタディーの方は人口集団としての取り扱いを取り扱ったものでございまして、決してそれがおくれているとかおくれていないとかいう問題ではなくて、疫学の内容をさらに拡大するという意味でフェリス教授がその研究を始められたわけです。かような議事録でございます。  私が、その鈴木先生が誤解をしていらっしゃると思いますことは、チェススタディーは先生がおっしゃっていらっしゃいますが人口集団を対象として、フェリス教授の方は個人診断をしている、そして両者を総合して初めて理想的な疫学調査ができるという御意見のようにうかがえる点でございます。個人診断を主体とした疫学調査などあり得ようはずがないと私は思います。また、個人を調べずに集団の影響のみを調べるなどということは、私には理解ができません。  せきをし、たんを出すのは個人でございます。個人の一人一人を調べて、それをまとめて、集団同士、たとえば東京と大阪とを比べる、かような手続をとるわけでございます。  フェリス教授の調査は、確かに、個人について詳しく汚染物の暴露量を調べることを進めておりますが、これは鈴木先生が同じ機会——同じ機会と申しますのは、やはりこの同じ委員会のときでございますが、そのとき申されております。恐れ入りますが、再び議事録をちょっと読ませていただきます。前の方でございます。三ページの三段目、最初からでございます。部分的に読ましていただきます。  そして理想的な——これから先余り言葉をやさしくできませんので専門の言葉を使わさしていただきますと、量−反応関係というものの資料がありますならば、これはもうその資料から実は指針も基準も出てまいります。 かようにおっしゃっております。  この量−反応関係を論ずる量の方を調べるために、個人に——これはある地域の調査の対象となっております全部の人ではございません、大体一都市千五百人から千八百人ぐらいの規模の御調査をフェリス教授は進めていらっしゃいますが、その対象者の中から大体数十人程度に個人モニター、これは個人の汚染物の暴露量を調べる測定器でございますが、それを持ってもらって、さまざまに変わる個人の行動状況のもとで汚染物暴露量を検討しておられます。これはいろいろな生活、行動様式を幾つかに類型化し、それぞれの汚染物暴露量を調べていく。そして最後に、類型化したグループごとに健康影響と汚染物暴露との関係を統計的に処理するという、そういう順序だと聞いてまいりました。量−反応関係の量をできるだけ正確にしようということでございます。疫学調査におきまして、量の方が、反応の方についても全く同じでございますが、不正確だと話にならない、そういう考えでございます。決して個人の診断のために詳しい個人別の調べをしているわけではございません。  それから、話題をちょっと変えまして、チェスということがいま出ましたので、それについてもう少しお話しさせていただきますが、アメリカにおきますチェススタディーについて言います。詳しいことに関しましては後ほど御質問でもいただければ、そのときお答えさしていただけるかと思いますが、簡単に申しまして、一九七七年、昨年でございますが、アメリカのEPA、これは日本の環境庁に当たるところでございますが、その大気汚染関係の研究についての報告、これは論文というものではございませんで、業務報告のたぐいでございますが、それに、チェスのチェの字も全く出てまいりません。私は、その業務報告を見まして不審に思いまして、アメリカに行きましたとき、それから国内に、先輩でその関係に非常に詳しい方がいらっしゃいますので、お尋ねしたことがございます。その結果わかりましたことは、次のようなことでございました。  チェスの報告、これはたくさん報告がございますけれども、一番重立ったものは、一九七四年に硫黄酸化物についての詳しい報告が出ております。結論は、その時点での米国のSO2の環境基準をより厳しくせよとのものでございましたが、その報告作成の段階で不明朗なことがあった、その報告書作成の責任者が都合のよいように原稿に手を加えたということが新聞に書き立てられまして、問題になりました。それで、ほってはおけず、連邦議会の下院で証人の喚問が行われ、調査が行われました。その喚問の結果の結論は灰色でございましたが、確かにデータから科学的に導き出せる範囲以上のことを七四年のレポートは言っているけれども、手を加えた証拠はないということで終わりました。そのとき、そのレポートをまとめた当の責任者はEPAをやめております。  このようなことがありまして、けちがついたとでも申しましょうか、EPA関係者はすっかりチェスという言葉そのものにいや気が差したように見受けられます。また、そのゆえもあってか、一九七四年のただいま申し上げましたレポートで取り上げられておりますより厳しくせよというものは、取り上げられずにそのままに終わっているというふうに理解をしております。  現在EPAで、先日この会で鈴木先生も御紹介されていらっしゃいましたチャンプ、そのほか、これは略語でございますが、クリーンそれからクレバー、これは詳しいことについてはまた御質問があればお答えさせていただくことができるかと思いますが、その研究計画が進められております。いずれも現実には複合しております大気汚染物の人体影響を、人の志願者での実験、それから研究班が町に出かけていきまして被験者の精密な暴露汚染物の測定と、生理学的な検査を実施しております。非常に詳しい研究でございます。ただいま申し上げました前者、出かけていって暴露汚染物を調べるのがクリーン、そして後者がクレバーでございます。  これでチェス、疫学のことは前半を終わらせていただきまして、後段、一番最初に申し上げましたNO2の役割りや寄与というようなことについて簡単に意見を申し上げさせていただきます。  先ほども申し上げましたチェスについてのスキャンダルめいた話はともかくといたしまして、現在アメリカで進められております研究計画は、ある範囲の地域に居住する人の汚染暴露量を地域内の一、二の汚染物測定局の測定結果をもって充てる、それをもって個人の暴露量とみなすという方法、これがチェスの方法でございます。それから、特定の汚染物、NO2でもSO、でも何でも同じでございますが、汚染物の判定条件を導き出せないとの反省に立って始められたものでございまして、先ほどちょっと触れましたが、チェスはこの誤りを犯したために表舞台から消えてしまったことを、繰り返しになりますが申し上げさせていただきます。今回、私も参加いたしました専門委員会の答申の判定条件の導き出しの基礎となりましたわが国の疫学調査は、すべてこのチェス方式であるということをつけ加えさせていただきます。  専門委員会の答申の文言に大気汚染の指標としてのNO2とありますが、私の理解では、NO2についての答申を求められ、種々の欠点を含む疫学調査から総合的に判断してNO2に着目し、指針を出したのでありまして、NO2が大気汚染の主役であるという意味ではないと私は思っております。  私のところ、実験室、研究室でございますが、実験室の中でただいまNOxをはかっております。私の実験室は都内の主要幹線道路から八十メートルほど離れたところに建っております建物の二階でございますが、その道路側に面した方の側では、室内よりも常に室外の方がNOx量は高値に出ております。実験室のドアをあけまして、廊下をはさんで向かい側にもう一つ部屋がございますが、そちらの向かい側の部屋でだれかがたばこを吸いますと、向こうのドアをあけておきますと、途端に廊下を通してこう入ってきまして、その実験室の中のNOxの量がはね上がります。また、実験室の中でガスでお湯を沸かし始めますと、二分ぐらいたちますと、その前の五倍ぐらいにNO2が増加いたしてくることを確かめております。このように、われわれの日常生活の中でわれわれみずからがNOxを発生しているということ、これは従来からの研究でも多数言われておりますけれども、私、最近みずからそれを実験いたしまして、いまさらながら、われわれ自体がNOxを出して、その中で生活しているということの感じを深くいたしております。人の志願者による実験、これは専門委員会の答申の参考文献としても採用された中に入っておりますが、NO2を吸入させまして影響の出てまいります量は、常に大気中のNO2量の三から五倍、それから、これは外国の実験でございますが、ぜんそく患者を使っての実験でも、大気中の量の二倍以上の量が出て初めて影響が出てくるというような実験でございます。これは、先日の答申にもそれが引用してございまして、また着目いたしました十四項目の知見にも採用されております。このような事実から、NO2は、私、非常に重要なコントロールすべき大気汚染物質ではありますけれども、大気汚染の主犯としてきめつけるというのはいささか言い過ぎではないか、かように思っておる次第でございます。  これで私の意見を終わります。

久保等日本社会党

○久保委員長 ありがとうございました。  次に、真鍋参考人にお願いいたします。

真鍋正一日本弁護士連合会公害対策委員会委員

○真鍋参考人 日本弁護士連合会公害対策委員の真鍋でございます。  私ども日弁連は、今日の課題につきまして五月九日に意見書をまとめました。そして同月十八日に各方面に提出いたしたのでありますが、その間、同月十日に、意見書作成を担当いたしました委員の峯田勝次弁護士が、すでに参議院の公害対策及び環境保全特別委員会におきまして、参考人としてその趣旨と大要を述べております。私は、その経過を踏まえまして、若干の意見を述べさせていただきたいと思います。  日弁連の公害対策委員会は、その中に大気汚染問題を中心として調査研究を行うべく第一部会を設け、さまざまの問題に取り組んでまいっております。昨年度は公害健康被害補償法の運用状況の調査と、騒音、振動を取り扱う第三部会との共同によりまして道路公害の実態調査を実施し、それを中心課題としてまいりましたけれども、本日の二酸化窒素に関する中公審審議に重大な関心を持って、その経過を見守ってまいっておりました。ところが、これが本年三月二十二日の答申におきまして、それまでの判定条件に関する報告というのが突如として環境基準の改定を求める答申というふうに入れかわったことから、その手続経過に疑問を持つことになりました。そして重大な関心を持つようになったわけであります。  この急変がいわゆる年度末に起こった関係で、私ども連合会の取り細みは少しおくれたわけでありますけれども、これについて若干の検討を始めますと同時に、すぐにいろいろな疑問点が浮かび上がってきたわけであります。と同時に、この変化と申しますのは、実は従来の環境行政そのものが、これで産業偏重、人権軽視の方向に大転換をしようとしているそのあらわれではないだろうか、こういう疑念がわいてきたわけであります。そしてその疑念は、さらに検討を続けるとともに非常に高くなってきたというのが私どもの実感でございます。  そこで、非常に重大な問題と考えまして、私どもは、この問題を、その重要な意味合いを広く知っていただきたいという希望から、一般市民を対象にしまして、六月三日に連合会におきましてこの問題をテーマとしてセミナーを開き、多数の参加を得たわけであります。  さて、言うまでもなく、環境基準というのは、国民の健康保護と生活環境保全のための長期的目標であります。それゆえに、その設定並びに改定策及び環境保全特別委員会におきまして、参考人に当たりましては、長期的な見通しのもとで、国民の健康保護と環境保全を最大の課題として、十分な科学的検討を経て判断されるべきものであるということは言うをまたないと思います。  公害対策基本法が制定される際の基礎となりました昭和四十一年十月の公害審議会の答申は、その旨を明確に述べております。当時この問題をめぐりましてさまざまな議論がなされ、また公害対調査と、騒音、振動を取り扱う第三部会との共同策基本法の九条が成立したわけでありますけれども、その後にその一部改正を経て現在に至っておるわけであります。そこで、その間を通じて、一貫しまして、それは今度の問題でよく言われておりますように「維持されることが望ましい基準」なのであります。将来にわたる長期的な計画によって到達すべき目標であったわけであります。  環境基準についてのこのような考え方は今日広く定着していると思いますけれども、現在の二酸化窒素環境基準改定問題をめぐっての政府並びに環境庁の考え方は、このような考え方からともすれば逸脱しようとしているのではないかというふうに思われるところが多々あるわけであります。  一つ、六月五日に環境庁の大気保全局の発表されました「二酸化窒素に係る環境基準について」と題する文書がありますけれども、そこにおきまして、答申を踏まえて、「人の健康を保護するうえで維持されることが望ましい基準」という法の趣旨にのっとり、行政の責任において、判断を示す、こういうふうにしておりますが、その中で、安全係数についての項においては、この指針は「その濃度レベル以下では、高い確率で人の健康への好ましくない影響をさけることができる」濃度であり、少なくとも科学的判断からはこれ以上に厳しくする理由はないと合意されたとして、安全係数の導入を排除することを明らかにしておるわけでありますけれども、そういうふうな考え方で安全係数を捨てると同時に、「望ましい基準」という考え方ではなくて、必要最小限度の基準という考え方にくみすることを明らかにしたものではないかと思われるわけであります。  そのような考え方というのは、今日までの環境基準についての考え方を根本的に転換するものであり、とうてい、ひとり行政庁の責任においてなすべきものであろうかどうか、そうではないということは明らかであると考えております。  次に、環境基準改定作業という側面から、今回の中公審答申の問題点に関して述べてみたいと思います。  すでに各方面からの指摘もあり、私どももすでに述べました意見書において明らかにしましたように、専門委員会の報告、中公審の答申、そしてそれを受けた環境庁の一連の動きの中に、重大なすりかえが見られるのであります。  六月五日の環境庁の発表によりますと、大気部会が専門委員会報告を受け、答申案を作成するに当たり、この判定条件、指針をもとに、行政の責任で環境基準改定につき検討する旨説明したというふうに述べておりますけれども、そこでさえも、つまり、そこの大気部会においてさえも、それが十分真剣な討議がなされなかったということは、いまや広く知られた事実ではないでしょうか。まして専門委員会においては、この問題はあいまいな形で、それらしい説明がなかったわけではないようでありますけれども、なお、環境基準を改定するということはまじめには取り上げられてはいなかったようであります。このような状態で、一片の答申がありましたからといって、環境基準の改定について専門家の検討を経たということになるのでしょうか。  こんなやり方は、環境基準の改定ないし設定に当たって従来やってまいりましたやり方を捨て去り、専門委員会の意見を無視する慣例をつくるということにつながるものとして、基本法の精神に反すると厳しく非難されてしかるべきではないかと考えます。  次に、答申の中身についてでありますが、私どもの意見書の後で表明されました。さきの六月五日の環境庁の発表によりますように、指針の一時間値〇・一ないし〇・二ppm、年平均値〇・〇二ないし〇・〇三ppmというのは、決して専門家が冷静、公正な科学的論議の末に導かれたものではないということはよく聞かされておるわけであります。  それは、初めに〇・一それから〇・〇二としてそれぞれ提案されたものが、特に産業構造審議会委員を兼ねる委員の方々からの反対発言が契機となりまして、激しい議論の末に生まれた妥協的な数値であるというふうに聞いております。  また、この疫学的調査に基づくものとして主張されております〇・〇二ないし〇・〇三ppmの数値に対しましては、その後、各方面からきわめて多くの批判、反論が投げかけられておりますけれども、それにもかかわらず、環境庁は、こういった批判に対して、全く検討した形跡もなく、ただこれを聞き流して、もっぱら中公審を隠れみのにした形で事態を処理しようとしておるように思われるというのは、非常に残念なことだと思います。  さらに、安全係数をめぐる問題も同様であります。ことに専門委員会報告自体が、その終わりの項におきまして、近年の研究の進歩と知見の集積を認めながらも、なお不確定、未分明の因子を抱え、今後の課題の少なくないことを明記しておるわけであります。  これは、たとえば二酸化窒素が硫黄酸化物に比べて肺深部における障害が多いと考えられているにかかわらず、その資料が十分に上がってこない、疫学調査にもあらわれがたいとされていることなどを考えるときに、環境庁の態度は非常に重大な切り捨ての論理を含むということになるのではないかというふうな心配が大きいわけであります。  なお、さきに述べました手続的な問題に関連することですけれども、この報告、答申が環境基準に関する問題ではない、単に判定条件に関するものであったということから、当然のことではありますけれども、これをもって環境基準改定の資料とすれば、従来、環境基準の設定並びに改定に際しまして同時に答申のありました達成期間であるとか、中間目標についての答申が欠落したままで、行政庁が恣意的にこれを決めるというようなことになる点も、行政のあり方として非常に重大な転換期を迎えるという意味での問題点を含んでいるように思います。  公害対策基本法は、その目的として、「国民の健康を保護するとともに、生活環境を保全すること」と定めておるわけであります。この規定がこのようになるまでのいきさつはいろいろあったようでありますが、それはともかくといたしまして、現在はそうなっておるわけです。経済の発展は、ここでは国民の健康を保護し、生活環境を保全した上で図るべきだと、これはもう図らなくていいということではない、当然図るべきだということでありますけれども、それらを保全した上で図るべきだというふうになっておるのではないかと理解しております。  環境基準も、当然にこのような観点で定められるべきものだと考えられます。それが九条の「維持されることが望ましい基準」と表現されていると理解することができるのではないでしょうか。それゆえに、この基準が常に適切な科学的判断を加えられ、必要な改定がなされるというのも、このような観点からのものと考えなければならないと思われます。  ところが、今回の改定作業は、いま述べましたように、この観点からは幾つもの疑問点を残しておるわけであります。  今日まで、わが国でこの環境基準を緩和するよう求めてきた動きというのは、私どもが意見書に指摘しましたとおり、もっぱら産業界からのものであるわけでありますが、その根拠とするところは、さらに環境基準を緩和しても健康の保護、環境の保全に十分であるというような議論ではございませんで、経済、技術的な要求、それから尺度の違う外国との対比、さらに科学的解明の不足を理由にして緩和を求めるというものであります。  このような要望に沿った基準の緩和が、さきに述べましたような、特に手続的に不備を含んだ、慣例を無視したやり方で進められているというふうに考えるときに、この改定は一体何を目指したものであるか、何をねらったものであるかということは、決して、乱暴だとは言いながら、推測にかたくないのではないでしょうか。このような疑念を晴らすために、ぜひ手続的にやり直しを求めたいわけであります。  それで、少し僭越ではございますが、私どもは、この問題の改定作業を続けるという前提で考えますと、まず中公審に対して環境基準の改定に関する諮問をするということから始めるべきではないかと考えます。  その諮問は、現在の科学的知見に基づいて環境基準を改定する必要があるのか否か、もしあるとすればその数値は何ほどであるか、こういうふうにするべきではないでしょうか。  そしてさらに、私どもは非常に重大なことだと思いますが、中公審の委員を改めていただかなければならないのではないでしょうか。現在の人員からすれば、少なくとも日本弁護士連合会推薦の委員を数名程度は入れていただきたい、そういうふうに考えております。その上で作業を進めて決すべきものではないかと考えております。  そして、私どもの意見というわけではございませんが、私の個人的な意見になると思いますが、その作業の結果、現在の環境基準を緩和すべきであるというような結論に到達するためには、少なくとも二つの場合があり得ようかと思うのであります。  現在、公害患者がなくなっていないという状況を前提にいたしまして、仮にいろいろな詳しい調査から、すでに大気汚染による患者が減少しつつあるということが認められ、その傾向をトレンドすれば近い将来に問題が解消する見通しが立ったような場合、そのような場合には、あるいろいろな条件のもとで緩和というのが考えられていいのではないでしょうか。それからまた、そうでない場合、たとえば大気汚染による患者は必ずしも減少はしていなくとも、二酸化窒素以外の物質によるものであるということが解明され、そしてさらに、二酸化窒素を原因とする部分が減少しているということでも解明されるようでありますれば、その問題となりました原因物質についての環境基準ないしは規制基準の設定及び強化とワンセットとして環境基準を緩和する場合、そういった場合には許されるのではないでしょうか、そのように考えております。  このような考え方というのが本当の意味での科学的な態度ではないのでしょうか、私にはそのように考えられるわけであります。  そのようなわけでございますので、どのような解析をなされるか。解析することは非常に大事なことだと思いますけれども、その上でも、なお、現に患者がふえ続け、さらに減少しそうもないという状況をまず踏まえて考えなければならない。そうでありますれば、何の代替案もとらないままに現在の環境基準を緩和しようということは、結局科学というものを利用した形での経済的な要求が前面に出てきたものだというふうに考えなければならないのではないかと思います。  このような視点から、ぜひ現在の環境基準改定作業はもう一度やり直しをしていただきたいというふうに考えます。  以上でございます。

久保等日本社会党

○久保委員長 ありがとうございました。  次に、浜田参考人にお願いいたします。

浜田耕助全国公害患者と家族の会連絡会代表

○浜田参考人 ただいま御紹介いただきました全国の公害患者の会連絡会の代表の浜田でございます。  東名高速道路、阪神高速道路、それに国道四十三号線等を初めとします全国の都市を中心とした自動車公害、このことによります窒素酸化物の被害は、これ以上放置できる限界まで達しておるということでございます。  昨年十二月の大気汚染調査によりましても、環境基準を達成しておる地点は七百九十八地点中わずか九%でしかない。こういったひどい状態の中で、大気汚染のために公害病認定患者が、現在、全国で六万七千人を超えております。この一年間だけの数でも八千人が増加しておるわけでございます。潜在患者を数えますと、百万は優に超すという数字でございます。  大阪の場合、硫黄酸化物が環境基準に近づいてきたと言われておる中で、ここ二年間、五十一年度は七百名、五十二年度は五百名という新規の認定患者がふえておるわけでございます。東京都の例を申しましても、指定地域でない四区、中野、杉並、練馬、世田谷、そういったところでは都の条例で救済をされておりますが、そういうところにも認定患者が一万人もいる。いまや、大気汚染、それは窒素酸化物を主たる原因とする複合汚染以外の何物でもないというふうに言えると思います。  しかるに、環境庁は、このような被害というものを無視して、二酸化窒素の環境基準を二倍、三倍に緩和しようとしております。しかし、環境基準の見直し、その矛盾については、衆議院、参議院、そういった両議院の公害特別委員会等の審議の中で、欺瞞性というものが暴露されてきているとおりであります。  西淀川区の公害被害の現状でございますが、昭和三十年代、その時期より急速に増加いたしまして、高度経済成長につれ、二十年を過ぎたいまもなお被害は続いております。当時、昼日中でもちょうどきょうのようなぼんやりとした雨曇りのような日が毎日続いたわけでございます。太陽を仰ぐにも昼の日中見えない。夜になれば美しい夜空というものが見えない、そういう状態というものが私たちの地域では、二酸化硫黄の濃度が年平均値で約〇・一ppmというひどい数値が七年間も続いたわけでございます。被害が出ないというのが不思議な状態でございました。  そういうために、中には長年の闘病の末、苦しくて、死ぬ間際でも息をするにも息ができない、声を出すにも声が出せない、自分の夫の手にすがって、苦しいと言い残して死んでいった婦人もおるわけです。私も全国の公害患者の代表をしておりますけれども、全国で二人のうちの一人、もう一人は川崎の斎藤さんでございましたが、その人はもうすでに亡くなられておられません。こういった大気汚染に対する被害、亡くなった者はもうそれでしまいということでなしに、そういったことに対する責任というものは生きておる私たちが持たなければいけないと思います。  子供の例を見ても、小学校の低学年の子供が、発作で苦しくて畳をかきむしるのです。それが毎日の発作のために畳に穴があいてくる、自分のつめは削られてしまう、つめの間から血がしたたってくる、そのために畳が鮮血に染まったような形でそのまま残る、こういうひどい状態が私たち日々に経験してきたことでございます。  そういう結果、現在、西淀川区の公害病認定患者は五千六百七十六名、死亡者三百三十九名でございます。現在では、大気汚染濃度が二酸化硫黄から二酸化窒素に変わりまして、五十一年度でも二酸化窒素の汚染濃度は、年の平均値で〇・〇四七ppmを記録しております。これは御承知のように、国の環境基準から言いますと五倍、六倍に当たる数値でございます。  また、区内を走行しております自動車台数は、一日の総数は三十数万台でございます。これは一日じゅう、昼、夜、時を分かたず、洪水のようにごうごうとうなっております。地響きを立て、煙突のような形で排ガスがまき散らされております。周辺の学校等は学習権すら奪われておるというのが実態でございます。  二十数年やむことなく堆積された公害被害、その上、全住民の息の根を絶たんばかりに、いま建設強行中の阪神高速道路、大阪−西宮線がございます。これは全幅二十六メートル、六車線、一日走行十二万台という予想をされております。これでは大公害源が必至と私たちは見ておるわけでございます。なお、その上、大阪湾岸線まで計画実施に運ぼうとしております。  日本一の多数の公害認定患者を発生させ、その上、道路公害、それで二重、三重にも大気汚染で毒されておる私たちは、これ以上、現在問題になっております二酸化窒素の環境基準まで緩和される、こういう状態の中では、もう私たちの地域では母親は子供が産めない、このような苦しいことを子供たちに二度させたくない、こういうふうな気持ちをみんな持っておるわけでございます。環境庁、政府のそういった国民にとり危険な行政によって、いまにも環境基準の緩和が差し迫っております。私たちはこういった状態は放置できません。断じて環境基準の緩和というものは許せません。環境庁の言う科学性に基づきということは一体何なのでしょうか。見直しの理由に本当になっているのでしょうか。二十年間苦しんできた私たちが、やっと硫黄酸化物そのものから解放されようとしたいま、またぞろ二酸化窒素、こういうものに毒されていくということは、いやされない傷口、そういったものを生づめでかきむしられる、このような思いが私たちいましておるわけでございます。これは悪魔のようにさえ私たちは思っております。政府、環境庁のこういった悪政を私たちは看過しておるわけにはいきません。財界、企業、そういったところの言い分だけを聞いておる政府、環境庁の姿勢は、あの日本の悲劇の象徴として四大公害裁判の歴史が如実に証明をしておると私は思います。  二酸化窒素の被害というものは、いまや全国の住民をどれだけ苦しめているものであるか。千葉、川崎、四日市、堺、水島等のコンビナート群において、また日本の自動車沿道に住む住民は三千万と言われております。そういった国民が、いろいろな形で被害を受けておるということは、日本の国民の大多数が被害者であると言っても言い過ぎではないと私は思います。もし仮に環境基準が緩和され、年平均値〇・〇二ないしは〇・〇三になる、これは一体何をもたらすことになるのでしょうか。公害規制というものがその数値で必要なのでしょうか。いま苦しんでおる患者は一体どうなっていくか。現実問題、具体的な問題を考えるときに、私たちは恐ろしい気がするわけです。環境基準が緩められる、そうするとほとんど環境基準以下ということに現状がなっていく、それでは政府も企業も責任がない、こういう状態になると思うのです。  しかし、重症患者を抱えておる私たち地域、この被害者の声は何か。毎日の発作で苦しい、せめて夜だけでもゆっくり休みたい。ところが、こういった重症患者は大の字になって寝るようなそういった気楽な姿では寝れぬのです。まくらを自分のひざに置き、そしてそれを抱えながら発作をこらえて壁にもたれながら仮眠をしておる、こういう苦しい苦しい毎日、生きておるのがつらいという毎日の生活をしておるわけでございます。四十過ぎた男性でも、もう少し健康になればということを望みながら生きてきたけれども、もう四十過ぎても健康になれない。その人はとうとう結婚すらできずいま独身でおるわけでございます。その人の願いは何か。自分はこれからどうしていったらいいのだろうか、親が亡くなったら自分はどうしていったらいいのだろうか。いま一番社会的に責任を果たし、活躍しなければいけないような人たちが、子供が頼っているようなこと、それしかいま願えないというのです。朝起きれば早く病院に行って早く注射を打ってもらう、一日二回、三回、それだけが日課なんです。そういうのが重症の患者のいまの姿でございます。  子供たちの場合をとってみましてもそうです。毎日毎日同じように鼻血が出てくる、出るととまらない。地域の人はそういう子供を何と言っておるか。鼻血人間と言ってあしらっておる。そういう人たちはまさに差別だと言って怒っております。子供たちにしても、公害で苦しめられている上にそういうふうにいやしめられておるわけでございます。  きょうはここに、きのう患者がどうしても持っていってくれと言うて私に持ってきたビワを持ってきました。これはしなびてこうなっておるのではないのです。きのうもぎ取ったところなんです。生き生きとしておるわけです。ところが、実るべくするこのビワが、どんな木もこういうふうな状態になるわけです。これは樹木だけの被害ではないのです。人間と無関係と言えるのでしょうか。人間で言えばもう十八か二十、いまみずみずしくビワは実っております。ところが楽しみにつくったビワがこういう状態にしかならない。これは国道四十三号線のそういう沿線の人たちの植えているビワであるわけです。二酸化窒素がどれだけ被害を大きくしておるか、そういう被害というものは人間にも無関係でないというふうに私は思うわけでございます。  まだまだ道路沿線の中ではいろんな被害を受けております。私も小学校の教師をしておりますけれども、たまたま一年生の廊下を通ったときに、一年生の子が一人しょぼんと教室におる。ぼくどうしたのと聞いてやると、ぼくぜんそくでしんどいんや。みんなはにこにこと運動場で元気に遊べるとき、体育ができるときでもその子はできない。また、遠足に行ってわずか三百メートルほどの山をふもとまで登ったときに、しんどいと言ってくる子がおる。どないしたのと言ったら、ずっとぜんそくが続いておってよう登らぬと言う。わずか三百メートルぐらいの甲山、これは小学生、幼稚園の子がすいすい登る山なんです。それが五年生の子でも登れないというふうに、子供たちは苦しんでおるわけでございます。また、城内小学校というのが四十三号線沿いにございますけれども、そこの学校では千名の在籍中二百数十名が公害病の認定患者になっております。私の勤めておる学校でもそうです。昨年、大阪府の医師会が児童に対する健康調査をいたしました。その調査の結果では、私のとこの学校の四百名ほどの在籍児童数の中で百二十三名が鼻かぜをよく引く、引くと治らない、こういうふうに被害を訴えておるわけでございます。子供たちの学習権を守らなければいけない国が、どれだけそういう子供たちの学習権を守っておるか。この被害というものは身体的にもあらわれ、身長なども平均して小さいというふうに言われておりまして、これは社会問題というふうに思います。  環境庁の年平均値〇・〇二ないしは〇・〇三Pppmを指針値とする、この数値ですら、いま相当数の疾患があるということは、データの中でも明らかであります。NO2の専門委員会の鈴木武夫委員長もこのような参考人としての意見の中で、現行環境基準の日平均値〇・〇二ppmは緩和する必要がないと言明しておるわけでございます。  私たち被害者は、全国で同じように公害で苦しんでいる何十万という被害者と、今回の環境週間において、今年は第三回総行動デーというものを実施いたしました。六月五日のときには環境庁長官ともじきじきに会い、私たちの被害の実態を訴えてきました。その中で、なぜ長官は現行の基準を緩和する必要があるのか、被害者をどのようにしようとしておるのか、まずそれを考えてくれというふうに私たちは追及しました。そういうふうな形で、総行動デーの中でこの二酸化窒素の環境基準緩和絶対反対というふうな特別決議も上げ、そしていま全国の一千団体から署名を集めておるわけでございます。  最近では、この問題に対する全国民的な反対の世論が高まる中で、東京都、大阪府におきましてもこの環境基準緩和に対する反対の意見書が上げられております。総評においても特別決議がなされて、社会党、公明党、共産党、総評からなる全国公害連絡会、ここでも反対決議を上げております。  私たちは、こういったときにこそ自発的にこの全国の大気の問題をもっとリアルに調査しなければいけないということで、自発的な測定運動をやっております。これは全国で十万カ所という膨大な個所の数値の測定を現在やっておるわけでございます。私たちはこういった被害者の立場から断じて二酸化窒素の環境基準の緩和に対して反対するものでございます。  政府なり環境庁そのものが企業本位、そういった中で住民に犠牲を強いる、そういったことがはっきりしておる今日、このような公害対策特別委員会等で、二酸化窒素の環境基準の緩和の告示がまさに迫り、最後の切迫した山場にあるいま、私たち被害者の苦しみを真に親身になって御理解いただきまして、御審議をいただきますことをお願い申し上げまして、私の発言を終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。

久保等日本社会党

○久保委員長 どうもありがとうございました。     —————————————

久保等日本社会党

○久保委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。林義郎君。

林義郎自由民主党

○林(義)委員 参考人各位には御多忙中、また遠くからお越しいただきましてありがとうございました。心から御礼を申し上げます。  順番でやればいいのですが、前田先生にたくさんお聞きしたいので前田先生のものは後にしまして、浜田さんにお尋ねします。  実は、環境基準の問題というのをいま議論をしておりますが、この環境基準の問題というのは、人の健康を保持するにおいて望ましい基準をつくっていこう、こういうことでございまして、お話を聞いておりますと、被害が大変たくさんある、これは環境濃度に関連をするのでしょうけれども、その話とは違うのだということを御理解の上でいまの御発言があったというふうに言っていいのでしょうか。その被害の問題は公害健康被害補償法に基づいていろいろやられなければならない問題である。環境基準の問題というのはそうじゃなくて、明らかに国のいろいろな施策のゴールである、目標である、こういうことでございますから、論理的には全然違うものであるということは御存じなんだろうと思いますが、その辺はどうなのでしょう。

浜田耕助全国公害患者と家族の会連絡会代表

○浜田参考人 先ほど申された人の健康に望ましい基準、それを考えておるのだ、その立場で私は発言をしております。

林義郎自由民主党

○林(義)委員 それから、真鍋参考人ですが、手続的にやり直せ、こういうふうなお話でございました。中公審の審議をもう一遍初めからやり直したらどうだというふうなお話でございますが、弁護士さんですから法律には非常にお詳しいのだと思いますけれども、いまのやり方であると手続的に瑕疵があって、決定されたこと自体が無効であるとかというような話になるのでしょうか、どうでしょうか。この辺をまず端的にお尋ねしたいと思います。

真鍋正一日本弁護士連合会公害対策委員会委員

○真鍋参考人 説明は十分でなかったかもしれませんけれども、先生の御質問のように、公害対策基本法の規定からいいまして、必ずしも現行のままでやったら手続的に違法であって無効になるというふうには考えておりません。ただ、従来の環境基準設定に当たってのいろいろな経過、慣行がございます。これは行政手続としては非常に大事なものではないかと思うのですけれども、それを変える、しかも、中身的に非常に簡単な変え方でなくて、かなり大きな問題を、この問題自体だけじゃなくて、その問題の背景にある非常に大きな問題を含んでおるということであれば、行政の正しい運用ということから言えばやり直す——やり直すという言い方がいいかどうかちょっと問題があるかもしれませんけれども、そういうふうにしていただきたい。

林義郎自由民主党

○林(義)委員 やり直しをしろということは、無効であるからやり直しをしろというのが法律論だろうと思うのですね。適切な行政手続が踏まれたかどうか、これは行政手続ですから、一〇〇%適切であったかどうかというのは私は行政判断の問題があると思うのですが、いまのお話を聞きますと、どうも手続的には違法ではない、しかしながら十分尽くしたかどうかという点については問題がある、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。

真鍋正一日本弁護士連合会公害対策委員会委員

○真鍋参考人 ちょっと最後のところを聞き損ないましたので……。

林義郎自由民主党

○林(義)委員 手続的に全く違法であり、かつ手続的には無効な行政行為であったということではないということだと思うのです。しかし、それであるならば、行政手続いろいろやるときに、十分であったとかパーフェクトであったとかというものではなかった、こういうふうに先生の御意見を理解してよろしゅうございますか。

真鍋正一日本弁護士連合会公害対策委員会委員

○真鍋参考人 ちょっとお答えいたしにくいのですけれども、少なくも私が終わりのころに少し御指摘申し上げた二点については諮問がない。だけれども、それだからといって無効、それでもやはり無効とは言えないだろうとは思いますけれども、しかし、科学的にということを環境庁御自身がおっしゃっておられる。とするならば、やはり科学的な裏づけというのはとられるようにされる方がいいのじゃないか。やり直しという言い方、どういうふうに申し上げるといいのか知りませんけれども、改めて諮問をされても、従来の答申との間で必ずしも手続的に矛盾は生じないのでそういう形で続けられる。実質上はやり直しになるのかもしれませんが、そういうことがいいのじゃないかと思っております。

林義郎自由民主党

○林(義)委員 若干手続論争みたいな話になりますから論議はやめておきます。  前田参考人にお尋ねしますが、中公審の答申の指針を踏まえて環境基準を設定する場合に、一定の安全率を掛ける必要があるという意見が出ております。けさもそういった御議論が地方自治体の公害関係を担当しておられる方から出されましたが、環境庁はその必要がない旨の見解を表明しておられますね、これについて先生の率直な御見解を賜りたいのです。もし必要でないということになるならば、その根拠はどういうことになるのかということ。  それから、三番目の問題は、疫学調査等から指針を導く過程におきまして、病人、子供、老人等への配慮がどうも余りされてないというような話がけさほどありました。しかし、これは当然にあったのだろうと私は思いますが、これらについては一体どういうふうに考えるのか。  以上三点、まず先生にお尋ねします。

前田和甫東京大学医学部教授

○前田参考人 お答えさせていただきます。  ただいまの第一点の安全率を掛ける必要があるのじゃないかという点でございますが、これは非常にむずかしいというか議論の紛糾する点でございまして、専門委員会の中でも大変に勉強いたしました。そして、勉強いたしました結果、結局、結論的には恣意的なものである——恣意的というのは決してでたらめ、いいかげんというわけではございません、諸般の事情を考慮してある数値を選ぶというようなものであるということに合意がつきまして、したがって、たとえば百分の一にするのがよろしいのか、十分の一でよろしいのか、あるいは二分の一でよろしいのか、あるいは全然掛けなくてよろしいのかというようなことまではとても合意ができませんでした。  ただいま御質問の点でございますが、申しわけございません、疫学調査から安全率でございましたですか、御質問の第一点の、安全率を何に対して必要であるかないか……。

林義郎自由民主党

○林(義)委員 疫学調査に対して一定の安全率を掛ける必要があるという意見が出ておりまして、その辺についての御見解を賜りたいということでございます。

前田和甫東京大学医学部教授

○前田参考人 一般論といたしまして申し上げますと、たとえば疫学調査から導き出した指針値に対して安全率は要るとか要らないとかということは私は申せないと思います。私は、先ほどの意見開陳の際にも申し述べましたように、専門委員会に参加いたしましたので、今回私どもが答申いたしました指針値のもとになっております疫学調査、引用もしております四種類のわが国の疫学調査でございますが、その疫学調査のもとではということに限ってお答えさせていただきたいと存じますが、あの疫学調査は、答申をごらんいただきますとおわかりいただけると存じますけれども、主として四種類の疫学調査でございますね、環境庁が行いましたいわゆる複合大気汚染調査、俗称六都市というやつ、それから宮崎医科大学の常俊教授が大阪を中心としてなさいました疫学調査、岡山県南部の疫学調査、千葉大学の吉田亮教授が行いました千葉県を中心とした疫学調査がございます。これはそれぞれ対象が非常にさまざまでございます。ちょっと文献を参照しないと不確かかと思いますが、私の記憶では、岡山県南部の疫学調査のうちの一部の資料には、六十歳以上の老人を主体として調査をしているものがございました。ですから、この中にはただいま御指摘の老人を主対象とした疫学調査、つまり資料が出ております。  それから、多少一般的なことを申し述べさせていただきたいのでございますけれども、一般的に疫学調査と申しますものは、たとえば、ただいまのように六十歳以上の老人に限るとか、あるいは子供に限るとか、ぜんそく患者だけに限るとか、そのようにしていたすものではございません。一般的には、これは多少専門的な用語を使わせていただきますと、ランダムに、無作為に抽出するものでございます。実際問題といたしまして、ただいまお名前を挙げさせていただきましたような先生方が行っております調査は、非常に時間もかかり、むずかしいものでございまして、学問的に正しくランダムに選ぶというようなことは実際上困難だと思いますけれども、原則としてさようでございます。ですから、ランダムに行われているものなら、老人も含むのであろう、病人だけは恣意的に外していないだろうというのが一般的な解釈でございます。ですから、一般論的に申すのはむずかしゅうございますが、あえて申し上げさせていただきますと、それがそういう形で特に六十歳以上の老人のみを対象とした、ぜんそく患者の子供だけを対象とした疫学調査であると断ってあれば別でございますが、さように断りがない以上、一般的な疫学調査の対象の選定が行われたというふうに考えますと、非常に広い範囲である。したがいまして、これからは一般的なことから特に先ほどお許しいただきました四種の疫学調査に再び戻ってのことでございますけれども、この四種の疫学調査は、そのように幅が広い。それから、特に特定の階層であると断ってないから一般性は保たれているであろうと思いますもので、私は、それらから安全率を掛ける必要はないと思います。  これは多少余談でございますけれども、先ほど申し上げました安全率のことについて大変勉強いたしておりましたときに、非常に御経験の深い先生から、疫学調査というものは非常にシャープであり、いろいろな病人も何も含んでおるのだ、だから、たとえば生理学検査をするということよりも大変シャープに、だから、疫学調査からは安全率は要らないのだというふうに、大変経験の深い先輩の先生から教えていただきました。  ですから、一点、二点でございますね、先生の御質問の疫学調査一般及び特殊に関してのお答えは、大変不十分で申しわけございませんが、半分一般で、後半の方は、特定のものに関しては安全率は必要がないだろうと思います。  それから、もう一つよろしゅうございますか。ちょっとつけ加えさせていただきます。  その答申にも書いてございますが、総合的に判断いたしております。私が新聞に投稿いたしました文言では「諸般の状況にもとづく決断」でございます。これは確かに同じ意味だと思います。ですから、「諸般の状況にもとづく決断」であろうが、あるいは総合的な判断であろうが、いろいろなことを含んで決めたものでございまして、その決めた判断の中には、いわゆるよく言われます安全係数に類するものも十分に含まれていると、私はかように判断しております。

林義郎自由民主党

○林(義)委員 先生は中公審の答申の作成にも一緒になってお当たりになったのですからお尋ねしますけれども、「本専門委員会は、地域の人口集団に疾病やその前兆とみなされる影響が見い出されないだけでは十分ではないと考え、更にそれ以前の段階である健康な状態からの偏りについても留意した。」という表現がありますね。この「健康な状態からの偏り」という概念は、いままで当公害委員会で私も長年議論をいたしておりました、トレラブル、ディザイアラブル、アクセプタブルというふうな医学的な概念がございますが、その概念とは違った「健康な状態からの偏り」という概念を用いたということは、医者の方に聞いてもどうもよくわからないというふうなお話もありますし、一体これはどういうことなんだ、この辺は先生、どういうふうにお考えでございますか。

前田和甫東京大学医学部教授

○前田参考人 お答えさせていただきます。  この件に関しましては、先ほど私が意見を開陳させていただきましたときに、読み上げて参考にさせていただきました五月十日のあのときにも、鈴木武夫参考人がやはりその点について御説明していらっしゃいます。ちょっと手元にございませんので、記憶でございますが、たしかあのとき鈴木先生は、新しい概念である、こういう新しい概念を当専門委員会が創出、創設と申しますか、つくり出したことを自分は非常に誇りに思っておる、こういう概念は、いろいろ議論はあろうが、時間をかけて定着することが望ましい、さように発言なさっていらっしゃるように、私その議事録を読んで記憶しておりますが、私は、審議の過程なりあるいは答申されました内容について、私もその審議に参加した者として個人的な見解を申し述べたくないのでございますが、ただいまの御質問のように概念的なことでございますので、個人的な意見を申し述べさせていただきますと、これは鈴木先生もおっしゃっておるように、大変新しい概念でございまして、あのとき何となくみんなわかっちゃった、論議してはっきりとコンセンサスを得たのではなくて、何となくわかっちゃった、そして、そのこと自体は——概念そのものでございますね。非常に結構なことでございます。鈴木参考人も申し述べておりましたが、五段階に三角に分けて切るあれでございますね、そのうちの三番目をさらに二つに切って、配慮を尽くしたのでございますから、そのこと自体はもう結構なことなんで、どうも議論を詰めていくと、何だかわからないことが残るけれども、何となくわかっちゃった、そんなような次第でございます。  それで、私、私見で具体的にちょっと例を申し上げさせていただきますと、たとえば、全然病気も何もない人がランニングをいたします。そうすると、当然呼吸数もふえますし、脈搏もふえます。ところが、そのランニングをやめて休みますと、たとえば五分も休むと、息も脈搏ももとに戻る。これが普通でございますね。もしここにたとえば光化学の警報が出ている、そのもとで走ったとすると、ふだんは五分間で息が静まり脈搏も落ちつくのに、それが倍の十分ぐらいかかった。だけれども、十分かかったけれども、もとどおりおさまって何でもなかった。翌日何か残ったということが何にもない。こんなのが、これは私見でございますけれども「健康からの偏り」じゃないか、そんなふうに思っております。

林義郎自由民主党

○林(義)委員 もう一つ、長期暴露の指針の提案部分がありますが、「種々の汚染物質を含む大気汚染の条件下において、二酸化窒素を大気汚染の指標として着目した場合、」ということが書いてありますけれども、ここでの「二酸化窒素を大気汚染の指標として着目した場合、」というのはどういう意味なのかということなんです。というのは、先ほどちょっと話がありました複合汚染との関係の問題は一体どういうふうに考えられるのかということであります。  と同時に、もう一つ、長期暴露の指針値を年平均値〇・〇二から〇・〇三ppmと幅で提案しておられますが、この幅というのはどういう意味なのか。要するに、この幅の中であるならば上限、下限を問わず医学的、生物学的には全く同じであると考えていいのだろうと私は思うのですけれども、何か違うところがあるのかどうなのか。この辺につきまして、先生の見解を承りたい。

前田和甫東京大学医学部教授

○前田参考人 大変むずかしい御質問でございまして、正しいお答えあるいはその点だれからも異論の出ないようなお答が申し上げられるかどうか、私、自信はございませんが、私の考えを申し上げます。  恐れ入りますが、後段の方、幅の点でございますね。幅と申しますのは文字どおり幅、たとえば手のひらのこの幅でございますね。そして、先生の御質問は、幅の中ならば医学、生物学的に全く同じと考えてよろしいかという御質問だと思いますが、それがまことに論理的に相矛盾することで、私、むずかしいと思います。と申しますのは、これだけ幅があるのだ、全く同じだというのは、たとえば針みたいなのがある、この針がこっちへ行ったり、こっちへ行ったり、これは全く同じだ、これは論理的に何とも矛盾することで、むずかしいのでございますが、幅を持って指針を出しました、その経緯から御説明申し上げますと、先ほども申し上げましたように、あれは先生御承知のように、長期目標がございます。これは四種類の疫学調査をもとにしております。これはいろいろなところでございます。ですから、それぞれ慢性気管支炎の有症率の増加が見られるところを手がかりとして、それと二酸化窒素の濃度というものを並べてまいりますと、ある疫学調査では〇・〇二からそのような傾向が見られた、また別の疫学調査では〇・〇三であったというふうに、ばらばらでございましたもので、増加が見られたという、そこを手がかりとする以上、その四種類のものがどれとどれかということはちょっと記憶にございませんが、あるものでは〇・〇二、あるものでは〇・〇三、したがって、これはたとえば足して二で割るなんということをするよりも、幅で示す。つまり、あるものは〇・〇二、あるものは〇・〇三ということの方が正直である、こういうことだと私は了解しております。

林義郎自由民主党

○林(義)委員 先ほど先生からチェススタディーの話がありましたね。先生もアメリカへ行って、いろいろと向こうの疫学等の話をしてこられているようでございますが、アメリカが、クリーン、クレバー、こういうお話がありましたが、この辺もう少し詳しく御説明いただかないと、どうもよくわからないので御説明いただきたいのと、アメリカでは環境基準をつくるときにも日本と同じように、疫学、医学その他、学者の方々が集まって環境基準〇・一というものをつくっておられるのだろうと思うのですね。アメリカだから、勝手にえいやっとやったわけでもないのだろうと思うのです。したがって、いまチェス方式をアメリカでは使われていないというふうな話でありますが、アメリカでの疫学の使い方と日本での疫学の使い方とどういうように違うかということと、それから、先生はその方の御専門ですから、これから一体どういう形で疫学が発展をしていくものだろうかということをお尋ねしたいのです。  というのは、環境基準は常に科学的に見直しをしていかなければならないということが法律に書いてございますから、そういった意味で、学問の進歩は当然に取り入れていかなければならない。今回の環境基準の話にいたしましても、四十七年にやったときよりは確かにいろいろなデータも出てはおりますし、いろいろな調査もありましたし、それから、その後における科学というか学問の進歩もあったと思いますから、そういった形での今回の改定になったと私は考えているのです。どなたかがおっしゃるように、決して財界がどうだこうだというような話ではない、環境庁はそこまでは落ちてないのだろうと思いますから。私は、そういった科学的という意味で、一体学問がどういうふうになっていくのか、この辺につきまして先生の御見解を承りたい。

前田和甫東京大学医学部教授

○前田参考人 先ほども申し上げましたが、現在アメリカでEPAを中心として行われております。疫学調査だけではなくて、大気汚染の健康影響の調査研究のことについてちょっと御説明させていただきます。  先ほど、クリーン、クレバーと申し上げたわけでございますが、クリーンというのはクリニカル・ラボラトリー・エバリュエーション・アンド・アセスメント・ノクシャスサブスタンスの略語でございまして、何と訳すのか定訳があるわけではございませんが、有害物質の臨床検査的評価と再評価、要するに評価でございます。  それからクレバー、これはクリニカル・ラボラトリー・エバリュエーション・アンド・バリデーション・オブ・エピデミオロジカル・リサーチの略でございます。これは疫学調査を臨床検査的に評価し、かつそれをバリデーション、確認すると申しますか正確にすると申しますか、そういうものでございます。つまり疫学調査、先ほど引用させていただきました、先日の鈴木武夫参考人の「個人」というようなことに当たるのじゃないかと思いますが、疫学調査で調べたものをさらに詳しく調べるという非常にめんどうな調査なんです。ですから、クレバーの方にはエピデミオロジカルというのが入っております。ですから、これは疫学調査だというふうに呼んでよろしいかと思います。その他は大気汚染の健康影響の調査でございます。  先ほども申し述べましたように、一九七〇年から七四年まで、チェス、コミュニティー・ヘルス・アンド・エンバイアランメンタル・サーベイランス・システム、地域社会の健康と環境との監視システムということでございまして、まさに疫学そのものでございます。これの一番の問題点は、先ほども私、意見開陳のときに申し上げましたように、かなり広い地域内、現在それは二マイルということで残っておりますが、二マイルの地域内にありますいわゆる固定ステーションの測定値をその範囲の人の個人の汚染暴露量とみなすという形で持っていった、これが誤りだ、正しくないということで、それが第一の最大の反省点だと思います。  それから、もっと細かいことは、健康影響の方でございますね、それのとり方もいろいろ問題になっております。いろいろなやり方がございますが、代表的なものは問診法、いわゆるBMRC、これは日本の調査もそれが主体でございますけれども、問診して、せきが出るかたんが出るかというあれでございますが、それをインタビュー、面接をしないで、主なやり方は——全部とは申しません、一部でございますが、面接をしないで質問書を配って回答してもらって集めるという、これがどうも信頼性が足りないということがもう一つの論点だと思いますが、先ほど申しました二つ、汚染の評価の方とそれから固定の廃止。  それで、学問の進歩ということでございますけれども、私、今後の進歩がいかようになるというような大それたことはとても申せないのでございますけれども、この点は、先日も鈴木武夫参考人もお認めになっていらっしゃいますように、ともかく個人の暴露量、生活パターンが全く違います。それから窒素酸化物に関しましては、私、この部屋の中は恐らく一ppmぐらいになっていると思います。そしていろいろな職業歴もございます。生活歴もございます。全くバックが違います。そういうようなことも評価したらどうだろうかということ。これは医学的に考えまして全く当然のことでございますね。これを疫学という形で、鈴木先生は集団と個人というようにすることはなかなか困難だからできないのだ、だからいままでやらなかったのだ、本当に理想的なことをいまやっているのだ、だから、これからそういう理想的な調査の結果が出てくるのは望ましいとおっしゃっております。まさにそのとおりでございますが、私の考えは、そういう完璧かつ理想的なものが完成するまで待っているということはいけないということでございまして、できることからやっていったらよろしいのじゃないか。ですから、地域の一、二の汚染測定局だけではなくて、いろいろな条件、たとえば道路の近辺であるとか地形によって——先ほど参考人のお一人が自分たちではかっているとおっしゃいましたが、昨年の環境週間にも東京近辺で多数の方がはかっておられまして、私もそういう方々のお話を聞いたことがございます。そこでも、そういう方々の直接の御体験としては、ちょいと建物があると裏と表で全然違うのだ、それから、ちょいと丘があると全く違う、非常にさまざまである。ですから、そういう地形等を勘案して、いわゆる衛星測定局でございますね、そういうものを調査する測定局を最低限度、たくさんは要りませんが置いて調べる、そしてそれを総合的に判断して、汚染、いわゆる量−反応関係の量の方を、完全とは言えないけれども、そういうものを置くことによって一歩でも二歩でも進むのじゃないか、これが今後の合理的な学問的な道だと思っております。それ以外にないと思っております。

林義郎自由民主党

○林(義)委員 どうもありがとうございました。

久保等日本社会党

○久保委員長 次に、島本虎三君。

島本虎三日本社会党

○島本委員 まず、参考人の皆さん、きょうはどうも御苦労さんでございます。ちょっと言葉が滑るようなことがあるかもしれませんが、その点あらかじめ御容赦願いたい。できるだけ気をつけるつもりです。  まず、浜田参考人にちょっとあらかじめ伺いたいのでありますが、先ほどからいろいろな報告がありましたが、いわば窒素酸化物を大気汚染の原因物質と考える、NO2の被害あり、そして沿道国道の三千万人の被害者、大多数が被害者である、したがって、これはもう緩むべきではない、こういうような趣旨のように承ったわけであります。学者ではもちろんございませんでしょうし、研究室に閉じこもっているわけではございませんでしょうから、そういうことじゃなしに、患者という立場から、どういうような現象がいま皆さんを痛めつけているのか、どういうような状態でこのNO2の環境基準を改めるべきじゃないと言うのか。先生の方では、二酸化窒素は大気汚染の主犯ではない、こういうようにさえ言っているのでありますが、この点、具体的にどういうような現象が身に感じられますか、この点、ちょっとお伺いいたします。

浜田耕助全国公害患者と家族の会連絡会代表

○浜田参考人 顕著な例としましては、先ほど申しましたように、子供が鼻血をよく出す。その鼻血が四日も五日も続いてとまらないというふうなことです。しかも、自動車沿道に住んでおる児童がほとんど同じような現象を起こしておるということでございます。もっとひどい人になりますと、これは三十歳で娘さんでございますけれども、頭が痛い、頭が痛いということで寝たきりである、そういう症状になってしまっておるわけです。私は、こういう人は、これ以上ひどくなったらノイローゼを通り越し、精神的なものまで破壊されていくのではないかという深刻な状態を迎えるのではないかというふうに思っておるわけです。具体的な問題といいますと、顕著な例としてはそういうことからお考えいただけたらと思うわけです。これはまさに二酸化窒素そのものの被害というふうに考えておるわけです。

島本虎三日本社会党

○島本委員 ありがとうございました。  いまのようなことでありますが、これは自分が体験した報告だと思うのであります。  前田先生、先生がおっしゃったように、大気汚染の主犯はNO2ではない、こういうようなものといまのこれとどう結びつきましょうか。

前田和甫東京大学医学部教授

○前田参考人 ただいまの、浜田参考人でございますか、自動車沿道の被害の実態のお話でございますね。これは実際の御見聞というか、御接触なさった上のお話でございますから、この点に関してはまさにおっしゃるとおりで、非常にお気の毒なことだと思います。  私、そのようにNO2が影響がないとは一言も申し上げておりませんで、主犯ではない、主原因ではないだろうということを申し上げました。確かに重要なものでございますが、主原因ではない。ただいまの御参考人の実例につきましては、自動車沿道の三十歳の大変お気の毒な患者さんのことにつきましては、私、自動車沿道というのは現場を存じませんので詳しいことは十分わかりかねるかと思いますけれども、振動もございましょうし、それからほこりもございましょうし、それから自動車でございますから、窒素酸化物はもちろんのこと、ダストでございますね、煙、それからトラックは御承知のようにディーゼルでございますから、そういう煙、炭化水素に基づく黒いほこり、それからそれに含んでおります。特に硫酸ミストでございますね、つまり化学式で申しますとSO3でございますね。そういうものがディーゼルの灰の中には大量に含まれているというようなことは、化学の専門家の方々からこのごろようやくそれの測定技術が開発されたということでいろいろ論文などが出ておりますが、まさに複合的な影響でございまして、私、主犯はむずかしかろう、さように思います。一般大気汚染、自動車沿道ではないところにお住まいの方の影響とそれから自動車沿道での、ただいまの御教示のような例とではかなり違うんではないだろうか。自動車の排気ガスの中に含まれます煙やらミストやら——ミストと申しますのは、ほこりに水分がくっついているものでございまして、その水分の中にかなり酸が入っておるというようなものが自動車の排気ガスには多うございますから、そういうものがかなり大幅に影響しているだろうというふうに考えます。お話しのような方、もちろん窒素酸化物は影響はしているわけでございますが、その部分であろう、そういうふうに考えております。

島本虎三日本社会党

○島本委員 私もよけいなことを言わないつもりです。あなたは、大気汚染の主犯でない、こういうようなことをこれによってはっきり言っているんです。私は、もうそれ以外のことを言っていないんだから、あなたが先ほどこの問題についてはNO2は大気汚染の主犯ではない、こういうようにおっしゃいましたから、そのことの例をとって、いま大気汚染の主犯ではないとするならば、いまのような現象はということで浜田参考人の具体的な例証を聞いたわけです。それ以外のことを言っていないのです。  それで、なおかつ伺いたいのは、今度はやはり前田先生にちょっと伺いますが、NO2の基準の緩和というのが問題になっているわけです。そうなりますと、環境基準の設定であるとか、またこの改定、こういうようなことに対しては、先ほどちょっと出たけれども、当然留意しなければならない問題点に安全係数があるのじゃないか。ことに専門委員会の報告に携わったように伺いましたけれども、その指針の基礎となっている健康の影響に関する知見というのは一般的な地域人口集団、こうでございますね。そうなると、私のような頑健な者もいるわけです。先生のような方もいるし、弱い方もおられるのじゃないか、平均的にそれを見るのじゃないか。こうなりますと、中には今度は病人であるとか老人であるとか乳幼児であるとか、あるいはまた妊産婦であるとか、社会的にもあるいは医学的に見ましてもいわゆる弱者と言われるこういうような人たちを大気汚染の影響から保護するためには安全係数というものの導入というような考え方は不可欠じゃないだろうか。それでなければ、丈夫な人たちの方が見られて、それより弱い人が影響をもろにかぶった場合には、その基準というものは弱い人を助けるためにならぬじゃないか、こう端的に思うわけでありますが、しかし、この導入については先生のはっきりした意見は、言ったかもしれませんが、まだ私伺っていないのであります。そういうようなことと、現行の環境基準のほとんどは安全係数が見込まれているのじゃございませんでしたでしょうか。というのは、二酸化窒素、二酸化硫黄、浮遊粒子状物質などの環境基準設定の際にも用いられて、いずれも安全係数として最低値が付加されて決められている。この窒素酸化物の場合も当然そうあってしかるべきじゃないだろうかというのが私の考えでありますが、ことに医学的、社会的ないわゆる弱者と言われる人たち、その点に合わせて健康の保持、環境の保持というものを考えるのが最低の基準ではないだろうか、こう考えるのでありますが、この点はいかがでございますか。

前田和甫東京大学医学部教授

○前田参考人 お答え申し上げます。  ただいまの先生の御質問に関連しまして、先ほどのことにちょっと触れさしていただくことをお許しいただきたいのでございますけれども、私、最初の意見を申し上げましたときに、主犯でないとは申しませんで、その主犯というのは言い過ぎであろうというふうに申し上げたはずでございます。  ただいまの安全係数の問題でございますが、この件に関しましては、先ほど参考人のお一人が六月五日に環境庁が出されました安全係数についての見解を引用されておりましたですが、あの中に、先ほど林先生の御質問のときにもお答えしました、「健康からの偏り」という新しい概念を創設してまで健康を保護しようという形で指針を導き出したものでございまして、高い確率でもってそういう新しい概念に基づく健康からの偏りを保護しよう。ですからこのステップの中に先生御指摘の安全係数は、これは論議のさなかではビルドアップという言葉を使いまして、もう十分含まれておるという言い方をしておりましたが、十二分にビルドアップされていると思っております。  具体的には、たとえばある指針値が出された、安全係数は五がよろしい、だから五分の一にしろという御意見あるいは御主張かと思いますけれども、委員会の審議に参加した過程の経験に照らしまして、ただいま申し述べました、それから先ほど林先生の御質問にもお答えいたしましたように、さらにそれを論議をすれば全く切りがないと思いますが、これが結局何となくわかっちゃって、そして合意いたしましたのも、俗に言う安全係数をビルドアップすることになるということが、みんな合意をしたその理由だ、それは私見でございますが、私はさように思います。  ですから、動物実験等でそこから導き出します場合には、確かに安全係数を掛ける必要——これはまた逆の意見もございます。人間の方が動物よりも、たとえば肺臓もボリュームがはるかに大きいんだ、人間の方がはるかに強いんだ、小さい動物から導き出された数値に安全係数を掛けるどころか逆に上げてもいいんだというような意見を言っている、あるアメリカの学者もいらっしゃいますが、これはそれぞれの受け取り方の事情がございまして、だからわが国でもそれを早速採用しろというようなことにはならないかと存じますけれども。  それから、先生後段の御指摘の、自分のような丈夫な人はともかく病人はどうするかという点についてでございますけれども、これは非常にむずかしい問題でございまして、一般論として町に病人がいっぱいいる、それから参考人のお一人のおっしゃった、患者の実際の状況について安全係数云々ということ、これは私、少し議論の場が違うのじゃないかと思うのでございます。と申しますのは、確かにそういう本当にお苦しみの方々は、私は制度のこと等は余り詳しく存じませんが、まさに必要ならば十分な医療を提供し、かつ十二分な手を尽くすべきである。私どもが審議いたしましたのは指針を科学的に判断するということでございまして、基準値を云々するということは、私どもの審議の過程では話題にはなりましたが、いやそうじゃないんだ、これは指針であって絶対に基準を導くものではないのだ、われわれにはそれは諮問をされてないのだということを繰り返し繰り返し合意をして審議をしてまいりました。ですから、先生の御指摘のように、基準を導き出すときには安全係数云々ということはちょっと場面が違うということと、確かに病人や弱い方はたくさんいらっしゃいますけれども、この方々を守るということと、それから、現在可能な科学的な知見から先ほど申しましたようなビルドアップをしたものを含んで総合的に判断して導き出したということとは、ちょっと議論がかみ合わないのじゃないか、私はこのように思います。  安全係数を掛ける、あるいは安全係数が必要であるということ自体は、場面を違えてはっきり条件を設定して、そのことだけで議論いたしますと、決してどんな場合でも安全係数は要らないのだと申し述べるつもりはないのでございますけれども、参加いたしました審議の過程からでは、そういうことでございます。

島本虎三日本社会党

○島本委員 指針であるからそんなことはやる必要はないのだ、とするとこれは環境基準ということで、それをもとにしてやるとしたら、もうどこか外れているような気もしますが、やったのはあくまで指針なんですね。そうでございますか。

前田和甫東京大学医学部教授

○前田参考人 はい、指針を導き出した。それで、その指針の中にも安全係数……(島本委員「いや、それだけでいいです」と呼ぶ)ちょっと御質問の趣旨がわかりかねたものですから……。

島本虎三日本社会党

○島本委員 いまお答えの中で、安全係数の問題で、討議をした際にこれは指針だからそういうようなものはやる必要がないのじゃないかということでやらなかった——そうじゃないのですか。

前田和甫東京大学医学部教授

○前田参考人 いえ、違います。さように御理解いただきますと、大変私の言葉が足りなくておわび申し上げます。  指針を導き出す過程の中においても、安全係数とは何であるかというふうに十分勉強もいたしまして、それでもし安全係数を掛けるとしたら具体的にどのような数値を出したらいいかというようなことも合意いたしましたけれども、導き出した指針の中に実際の数値を出さないで、先回の鈴木参考人もおっしゃられましたように、ビルドアップすることによって安全係数が含まれている、ですからその指針の中にも安全係数が含まれていると、審議に参加しました者の一人として私は了解いたしております。

島本虎三日本社会党

○島本委員 まことに御高邁な御意見、ありがとうございます。やはり先生はいろいろとこういうようなことで勉強されているのがよくわかりました。  それで、東大の疫学教室でいままでに発表してきた大気汚染の健康影響調査に関するものがございましょうか。それと、NO2の影響、こういうようなものがあったならば、その点ちょっと勉強したいので、発表してもらいたいと思います。

前田和甫東京大学医学部教授

○前田参考人 お答え申し上げます。  私自身は、私の主宰いたします教室においては一昨年までNO2はもちろんのこと、大気汚染の疫学は、参加あるいはそれを実際にしたことはございませんでした。ところが、あれは七六年、一昨年でございますね、たまたまWHOのNO2のこれは俗称クライテリア委員会と申しておりますが、そこに委員としての委嘱を受けまして、それから私及び私の教室で勉強を始めました。  それで、御質問の、すでに発表したものは一つ、それからこの九月、札幌で行われます大気汚染学会に発表するものがもう一つございます。  一つは、昨年の福岡で行われました大気汚染学会で発表したものでございまして、これは先ほどもちょっと触れさせていただきましたが、住民の方々が俗に言うNO2の簡易測定器をもって多数はかっていらっしゃいますが、その住民の方々がみずから測定なさった測定値と、それからまた住民の方々がみずからその健康影響の調査をなさっていらっしゃいましたのを、その方々の御依頼によりまして私のところで集計、分析、解析をいたしまして、昨年の大気汚染学会で、これは学会発表でございますが、発表いたしました。  それから、この九月に発表予定のものは、やはり同じく簡易測定器を用いまして、私が先ほどからたびたび申し上げましたように、個人の暴露量を正しくはかるということが今後一歩でも二歩でも疫学調査を前進させるもとだと思っております関係で、それを用いまして、簡易測定器がどの程度いわゆる個人測定用として使い得るかどうかということの基礎実験をいたしておりまして、もちろんある一定の限られた条件でございますが、その中では使い得るだろうという結果が出ましたので、その基礎実験の結果をこの九月の札幌学会で発表する予定でございます。

島本虎三日本社会党

○島本委員 ありがとうございました。その程度であったということはよくわかったわけですが、なお十分読ましてもらいたい、こういうふうに思うわけであります。  なお、真鍋参考人、いまいろいろ事情も聞いておられたと思いますが、環境庁の最近いろいろな意見軽視のあらわれということで、六月五日のNO2の環境基準についてのいろいろな参考意見の開陳があったわけであります。いろいろおっしゃったことは、私どもは以前から、おたくさんの方から出された連合会のこれをよく読ませてもらっているのであります。  この中で、中公審の委員を改めたらいいのじゃないかということを、弁護士も入れると言ったので一笑を買ったようでありますが、私はそうじゃないと思う。もっと内容から検討した方がいいのじゃないかという意味に私はとったわけでありますが、多分そうだろうと私は思うのであります。  そういうようなことからして、いろいろわれわれにも具体的な指摘があって参考になりました。それを環境基準の見直しとしてもしやるならば、達成期間がないじゃないか、中間目標もないじゃないか、こういうような御指摘がありましたし、参考にもなるわけであります。いままでいろいろ意見が出されて、この皆さんの意見とともに、過日参議院で集中審議がございましたが、その中で、鈴木参考人からの意見、これが中心になっているようでありますが、この意見に対して日弁連はどう思いますか。

真鍋正一日本弁護士連合会公害対策委員会委員

○真鍋参考人 おっしゃっておられました鈴木参考人のいろいろな御意見を全体としてどう評価するかということでございますか。

島本虎三日本社会党

○島本委員 そのとおりでございます。

真鍋正一日本弁護士連合会公害対策委員会委員

○真鍋参考人 私、その後あの意見書を、逐一全部詳細に検討したわけではございませんけれども、全体を一読して、われわれがその意見書をまとめる際にいろいろ聞いておったことと対応するような御意見であって、やはり非常に正しいことをおっしゃっておるのじゃないか、そういうふうに理解しております。

島本虎三日本社会党

○島本委員 よくわかりました。  この後、補足質問が岩垂君からある予定でありますので、これでやめます。  どうもありがとうございました。

久保等日本社会党

○久保委員長 岩垂寿喜男君。

岩垂寿喜男日本社会党

○岩垂委員 前田先生にお尋ねをいたしたいと思いますが、五月十日の参議院の公環特で、鈴木委員長が、今度の「委員会は環境基準を諮問されたのでもありませんし、環境基準を答申した覚えもございません。」というふうにはっきりおっしゃっておられますが、いま前田先生も同じ意味のことをおっしゃっておられましたが、そのとおりだと理解してよろしゅうございますか。

前田和甫東京大学医学部教授

○前田参考人 はい、よろしいと存じますが……。

岩垂寿喜男日本社会党

○岩垂委員 そうしますと、指針値という議論が導かれる過程で安全係数がビルトインされているという何とない認識があったとおっしゃいましたけれども、クライテリア、指針値というのは環境基準とは違いますから、環境基準を実はつくっていく過程で安全係数というのは当然議論されてくるだろう、つまり、もっとはっきり言うと、時間がございませんから簡単に言ってしまいますが、「健康からの偏り」という日本的な解釈を、先生がさっきおっしゃったことも含めて議論されたわけでしょう。そうしますと、安全係数がビルトインされているという認識は少しおかしいように思うのですが、その点、いかがですか。

前田和甫東京大学医学部教授

○前田参考人 その最後の部分、先生がおかしいのじゃないかとただいまおっしゃいましたですね、それの理屈と申しますか、どういう論点——恐れ入りますが、ちょっと最後の部分をもう一回……。

岩垂寿喜男日本社会党

○岩垂委員 つまり、環境基準を議論していく過程で、指針に対して安全係数をどうするかという議論が当然あるわけですね。つまり、指針を出すそれ自体に安全係数がビルトインされているという認識は、全体の委員の共通の認識になっているかどうかということを、それでは改めてお伺いをしたいと思います。

前田和甫東京大学医学部教授

○前田参考人 全体の委員云々とおっしゃいますと、私、そういうことで聞き直して、あるいは聞きただしたことはございませんので、ちょっとお答えしかねるのでございますが、私はそう思っております。  先ほども申し上げましたように、いろいろな不十分な疫学調査から割り出した、これは先生ただいま御引用になりました五月十日のあれにも鈴木委員長がそうおっしゃっておりますので、私はそれはそう思っておりまして、ほかの何人かの方々もさようじゃないかと想像いたします。

岩垂寿喜男日本社会党

○岩垂委員 朝日新聞の五月十日の「論壇」を拝見いたしますと、前田先生がチェススタディーのことに関連をして述べておられるわけでございますけれども、しかし、「この方法から特定の汚染物の判定条件を導きだすのは、科学的な結論というよりは、諸般の状況にもとづく決断にほかならず、私も長い審議の過程でのこの決断に従わざるをえなかった。」というふうに書いてございます。  この結論に先生はどんな御認識で御賛成なすったのか、どうも大変立ち入って恐縮ですが、簡単にお述べいただきたいと思います。

前田和甫東京大学医学部教授

○前田参考人 まさにその点が、安全係数がビルトインされて新しい概念を創設した、そういうことが好ましいことであるから、私としては疫学調査は、これは専門の人から——それから、先ほど島本先生からの御指摘のように、大気汚染の疫学調査そのものの経験も少のうございますが、疫学一般的なことからいっていろいろ——それからチェスのことがただいま御指摘がございましたが、チェスが不十分であるということを、先ほど林先生の御質問に関しても、その状況に関しても、私はあえて申しますとこれはなれの果てと言ってよろしいかと思うのでございますが、そういうことを御説明申し上げたのでございますけれども、そういうようなことがありましても、いま先生が御指摘になりましたビルトインされている、それから、不十分であるけれどもこれで決めようじゃないかということが、そこがまさに「諸般の状況にもとづく決断」、これは私の表現でございますが、それから五月十日に鈴木先生がおっしゃっております「総合判断」、私はこれは同義であるというふうに思っております。

岩垂寿喜男日本社会党

○岩垂委員 そうしますと、その最後の締めくくりに「合理的で正しい結果をうるためには、費用と時間をかけ、なによりも結論をムリに急がぬ根気が必要なのである。」と書いてございます。この意味は、今度の議論の中で先生がこの指針を、あるいはクライテリアの判定を行っていく過程で、合理的でないというふうに理解される、それからもっとはっきり言いますと、たとえば先生から御指摘いただいたアメリカのフェリス教授、それらの問題でも、アメリカでさえ二十年もかかって基礎的な大気の状況を調べた上で、さらに十年計画でその方向を導くように努力をしている。いま五年たったけれどもまだ結論が出ていない。その理由は、鈴木先生がこれは国会で述べておられることですが、その理由を先生は存じているけれども、ここは学会でないから申し上げない、こう言っている。つまり先生が言っている合理的で正しい結論を得るためには非常に長い期間と費用がかかるということはお認めになりますか。

前田和甫東京大学医学部教授

○前田参考人 お答えいたします。  先生御指摘になりましたここに書いてある、鈴木先生は理由を承知しているけれども言わないとおっしゃった、その中間報告が発表されてないということですが、この点は今日との間にちょっと事情の違いがありますので御説明いたしますと、私のところに、正式に、たとえば専門的な学術雑誌に発表されているというものはございませんが、その発表の原稿、それから内部資料のようなものを頼んでおきましたので多数届きました。これはその測定の結果だけでございます。それから、健康影響の方についてはまだ何もデータを出しておりません。  ですから、そのことについてフェリス教授のところで中間報告もまだない、その理由は知っているけれども言わないと鈴木先生がおっしゃっているところ、私どういうことかちょっと存じないのでございますけれども、そのレポートといいますか結果は、その測定に関しては多数出ていて、私いただいておりますということをつけ加えておきます。  それから「費用と時間をかけ、」云々ということでございますが、まさに私そのとおりでございまして、それは疫学調査を完全にするにはそうだということでございまして、その環境基準を云々とかそれから行政判断を云々とか、そういうことに関しては全然私触れたつもりはないのでございます。ですから、疫学調査一般のことについて申し述べただけでございます。

岩垂寿喜男日本社会党

○岩垂委員 疫学調査一般をもうちょっときちんとしなければ、実は行政判断もあるいは環境基準を導き出す合理的な基準も、率直に申し上げて出てこないわけです。そうでしょう。疫学調査の方法が不十分でございます。したがって、それが不十分なままで環境基準の見直しというようなものをやることは、国民の健康とか生命とかということを大事に考えれば考えるほど、もうちょっと時間をかけて一生懸命研究をして、これはいま言ったように長い期間がかかると思うのだけれども、その上で考えても遅くはないのではないか。先生のこの最後の結びの言葉は、私はそういう意味が言外に含まれているのだろうというふうに読んで実はお尋ねをしたわけなんですが、それとは違うのですか。

前田和甫東京大学医学部教授

○前田参考人 お答えさせていただきます。  先ほども島本先生、それからただいまの岩垂先生の御質問にお答えいたしましたように、私が「決断」と申しましたことは、結論を出さなければならぬ委員会という立場から、審議の過程から申しまして、確かに私がそこに書きました、また先生がお読みくださいましたように、十分な時間をかけてやってこそ本当のことができる、それは先生の御解釈のとおりでございます。しかし、それでは十年かけてよろしいのか、二十年かけてよろしいのか、私、その辺の事情というのは必ずしも十分存じておりませんけれども、先ほど申し上げたことにまた戻らしていただきますが、新しい概念を創設した、それからビルトインした、だから、そういうことで、十分、安全側に不確定なものであるから、より安全側にそれを導き込んだということで、私委員会の席ではそれに従ったわけでございます。ですから、先生ただいまお持ちの私の投稿論文の趣旨と、それから私が従ったということとはそういう関係にございまして、私の主張のように、全部疫学調査を五年も十年もかけてやれということとは——疫学調査そのこと自体は先生の御理解のとおりでございますけれども、私が決断に従って、それに参加してそれを閉じたということとはそのような関係にございまして、これは必ずしもそういう意見だからこういうふうになるということとは関係がないというふうに御理解いただければ幸いでございます。

岩垂寿喜男日本社会党

○岩垂委員 もう時間がございませんからやめますが、どうも先生、ちょっとこの文章の中で飛躍がございます。率直に申し上げて。というのは、疫学調査が不十分だ、もっとりっぱなものにしなければいかぬ。私は、フェリス教授が十年かかってということだから日本でも十年かかってということを申し上げているのではないのです。しかし、長い時間と費用をかけてきちんとした疫学調査をやった上で、その上でやはり環境基準を改めるのなら、そういうりっぱな、合理的な、先生のお言葉をおかりすれば「合理的で正しい結果」というものに裏打ちされた環境基準の見直しというものが必要ではないか。そこがきわめて不十分なままに駆け足で環境基準を改めていく、緩和していくということは、どうも先生は、いままでの疫学調査、日本の方式、チェススタディーが非常に不十分だ、やり直さなければいけない、さっきのお言葉では大変厳しいことを言われましたけれども、こんないいかげんなもので環境基準を手直しされたら、これはかなわぬわけです。そうでしょう。先生の学説が正しいとすれば、フェリス教授の方法が正しいとすれば、そのことをきちんとやって——先生はいま研究を始めた、九月の学会で発表なさると言っていらっしゃる。それならそれで、そういうものをきちんと集積した上で、国民が納得のできる、先生の言葉に従って言えば科学的で合理的な疫学調査の方法と結果を見て環境基準の見直しをすればいいんじゃないですか。私は、先生のおっしゃっている時間とお金をかけてというのはその意味だろう、こう思って聞いたところが、どうも先生それとはちょっと違う。そこでちょっとおかしくなってしまうのですが、時間が来ましたから、やめます。  以上です。

久保等日本社会党

○久保委員長 次に、古寺宏君。

古寺宏公明党・国民会議

○古寺委員 最初に、前田先生にお尋ね申し上げます。  ただいまもお話がございましたが、この昭和五十三年の五月十日の朝日新聞を拝見いたしますと、今回の指針値につきましては「科学的な結論というよりは、諸般の状況にもとづく決断にほかならず、私も長い審議の過程でのこの決断に従わざるをえなかった。」こういうふうにお述べになっておられます。先ほどからの先生のお話を承っておりますと、わが国の疫学の問題あるいは今回この結論を出すに至った道程において、一方では先生は非常に疑問を持っておられながら、一方では「この決断に従わざるをえなかった。」、従った、こういう非常に矛盾したお話をなさっておられるわけでございます。  そこで私が先生にお尋ねを申し上げたいのは、この答申の最初の方に「政府においては、この報告を参考とし、現在の二酸化窒素に係る環境基準について、公害対策基本法第九条第三項の規定の趣旨にのっとり、適切な検討を加えられたい。」こういうふうに述べておられます。そうしますと、このクライテリアの指針値に基づいて新しい環境基準の見直しの検討をしなさいということを中公審が意見として述べておられるわけです。  そこで、先ほどから何遍も出てまいったわけでございますが、今回の指針値は十分な安全率を見込んだものである、また先生は含んでおる、こういうふうにお話しになっておられます。そうしますと、この答申の指針値を一つの土台として新しい環境基準を検討する際には、安全率という問題については先生はどうお考えになりますか。

前田和甫東京大学医学部教授

○前田参考人 先ほどの島本先生それから岩垂先生の御質問のときにお答えしました以外のことでございましょうか。この中公審の答申の中に書いてある、これでございますね。そして同じお答えを申し上げればよろしいんでございましょうか、ちょっと申しわけないのですが……。

古寺宏公明党・国民会議

○古寺委員 それではもっとはっきり申し上げますと、新しい環境基準は、ただいまの岩垂先生の御質問にもありましたが、先生のこれでいきますと、費用と時間をかけて合理的な結果を出してからNO2の環境基準を決めるべきであるというふうに受け取れる文章になっておるのですが、先ほどからのお話を承っておりますと、早く環境基準の検討をすべきだというように承ったように記憶しているのですが、まず先生は環境基準を改めるべきであるとお考えになっておられるのかどうか、そこをお尋ねします。

前田和甫東京大学医学部教授

○前田参考人 その最後の、改めるべきであるかどうかということですが、現行の環境基準一時間値〇・〇二ppm、これは先ほど島本先生から非常に厳しい御指摘をいただきましたように、私自身はNO2を含め、大気汚染の疫学調査の経験はまだ非常に浅うございますが、審議に参加し、大変に勉強をさせられまして、その結果から、ただいまは私なりに相当勉強をしたつもりでおりまして、その関係の文献やら、かつて四十七年に環境基準を導き出したときの資料、それからその後五年間に出ております資料、その新しい資料を勉強いたしました結果、この〇・〇二というのは変更されてしかるべきであろう、新しい知見に基づいて変更されてしかるべきであろうというふうに思っております。ただし、それがどういうふうに変更されてしかるべきかということは、ここに書いてあります大気部会のことでございますから、私がここで私の意見を申し述べることは遠慮させていただきたいと存じます。

古寺宏公明党・国民会議

○古寺委員 その結論を出すに至ったチェス方式につきましては、先生はまだ不十分である、あるいはアメリカにおいてはこれは現在は名前すら出てこない、こういう点からいきますというと、わが国の現在の疫学のデータにはまだまだ今後改善すべき点が十二分にあるというふうに理解してよろしゅうございますか。

前田和甫東京大学医学部教授

○前田参考人 そのとおりでございます。十二分とおっしゃるのが余りにも表現が幅が広過ぎると申しますか、大き過ぎまして、私、先ほど岩垂先生でございましたか島本先生でございましたか、そのときお答えしましたように、一歩でも二歩でもできることから進めていこうということで、改善すべき点はある。ただ、先生がおっしゃる十二分というのをどういうふうに考えて、どこまでの範囲かちょっとわかりかねますので申しわけないのでございますが、とにかく改善すべき点があるということはそのとおりでございます。

古寺宏公明党・国民会議

○古寺委員 環境基準の問題については、これは無理に先生からお聞きするわけにまいりませんので、一応ここで打ち切ります。  次に、真鍋先生にお尋ねをしたいのですが、先ほどからいろいろ前田先生のお話等を承っておりますというと、今回のクライテリアの指針値の中には十分な安全率が見込まれておる、こういうふうにお話があったわけでございますが、日弁連の方からいただいた資料を拝見いたしますというと、非常に先生の御答弁とは食い違いがあるように考えるわけでございますが、この点についてどのように真鍋先生はお考えになっておられるか。  もう一つは、今回の環境基準の改定に当たって、環境庁がなぜ国民の合意を得られるような民主的な手続を怠って環境庁だけでもって環境基準の改定を行おうとしているか。しかも、それは、今月中に発表する予定が諸般の事情によりまして来月上旬に持ち越されてはおりますが、非常に環境庁が急いでおられるようでございますが、この点について、日弁連はどのようにお考えになっておられるか、承りたいと思います。

真鍋正一日本弁護士連合会公害対策委員会委員

○真鍋参考人 私ども意見書を発表します際にいろいろ勉強したわけです。もちろん医学的な関係での専門家ではございませんので不十分なところはあろうかと思いますけれども、しかし、私どもが私どもなりの知識で、またいろいろな専門家の方の御意見を伺って勉強したことから、先ほどの前田参考人がおっしゃられた、安全率については十分に資料の段階でビルトインされているというような点について、私どもなりの疑問を申し上げるとしますと、一つは、疫学調査は、先生自身もサンプリングの段階でランダムサンプリングがされてないというような御批判もあったわけですけれども、その点でのランダムサンプリングをするかどうかということだけでなしに、さらにその標本を選び出すときのいろいろな誤差の問題についての配慮がされていない。これはたしか参議院で塚谷参考人が主張しておられたことじゃないかと思いますけれども、そのようなことも一つは問題であろうと思いますし、それからまた、疫学調査に基づいてデータを整理されて数字がどういうふうにして出てくるかというと、平均的という言い方ではおかしいのですけれども、ある回帰曲線に収斂させて、そこで数字を操作して考えられるわけですね。国民の健康を保持するということでは、先ほど来いろいろ御質問もされておられましたけれども、国民あるいは人口集団の中の弱い者に対する配慮が必要なのではないか。それはそういう形での回帰曲線に収斂してそういう数字操作をするということでは、必ずしも出てこないのじゃないか。その辺の問題もあるのではないか。  それから、一言、先ほどの前田先生の御発言に対して私、ちょっと疑問に思っておりましたのを申し上げますと、検討の基礎にされました疫学四調査の中の調査対象というのが、六十歳の老人を対象にしたのがあるというふうにおっしゃっておられるのですが、私どもの理解する限りでは、あの四調査の中にはそのようなものはない。五十九歳までというのがある。これは私どもの意見書の中にそれぞれ末尾に参考として書いてありますのでわかっていただけると思いますが、そういう点や何か考えますと、やはりもう一度、先ほどの老人に対する配慮というふうなことが生き返ってくるのではないかと思います。  それからもう一つは、報告書自身が、さっき私申しましたように、終わりの項で不十分であるというふうに述べておる、不分明なところがあると述べておる、そういうことに対するカバーという意味も含めて、当然に安全係数に対する配慮は必要なんではないかというふうに考えております。  それから、環境庁が国民に対する合意の手続を非常に不十分なまま改定作業を進めようとしておられるのはどうしてかということ、これは私どもではわからないことなので、わからないということは、やはり求める側の力に押されたと考える。現象としては考えるのが妥当だと思うのですが、本当はそうかどうか、それはわかりませんけれども、少なくとも外からはそう見えるということは言えるのではないか、つまり、緩めてくれという側の要求に押されたと少なくとも見える。そうであるかどうかは別にしまして、そういうふうに思っております。

古寺宏公明党・国民会議

○古寺委員 もう一度、前田先生にお尋ねをいたしますが、そういたしますと、「健康からの偏り」という新たな分類の中に十分な安全率というものが包含されている、こういうような先生のお話のように承ったのですが、そういたしますと、その点についても、科学的な結論というよりは、「諸般の状況にもとづく決断」によってそういうふうに先生はおとりになっておられるわけですか。

前田和甫東京大学医学部教授

○前田参考人 私なりに先生の御質問をそしゃくさせていただきますと、「健康からの偏り」という新たな概念をつくったというようなことが十分な安全率を含んだということと理解しているのかということですね。先ほども先生方の御質問にお答え申し上げたときに申し上げましたように、新たな概念を立てて、そこで決断をした、まあ不見識な言葉でございますが何となくわかって合意をしたということと、いわゆる安全率を掛けるということは、先ほど、ちょっと違うことだ、かみ合わないということを申し上げましたけれども、しいて申せば、そういうふうにより新たな概念を立ててみんな何となくわかって合意をしてまでも、そういうよりよい方に持っていったわけでございますから、しいて申せば、いわゆる安全率を掛けるという取り扱いと同じであろうと私は考えておりまして、先ほど、かみ合わないということで、表現が少し不足でございましたけれども、ただいま古寺先生の御質問でそのように追加、補足させていただきたいと思います。ですから、先生の御質問に本当に手短にお答えいたしますと、ただいま申し上げましたような筋道においては、さようでございます。

古寺宏公明党・国民会議

○古寺委員 もう一つお尋ねしますが、環境庁の自然有症率を三、四%ととらえておりますが、これは正しいと先生はお考えですか。

前田和甫東京大学医学部教授

○前田参考人 お答え申し上げます。  これもまた繰り返しになりますが、先ほど島本先生の御質問にお答えしましたように、私自身は大気汚染下においてのそういう広範な疫学調査をやったことがございませんので、私の経験から、三%あるいは四%が正しいか正しくないかということは申し上げることができないのでございますけれども、多数の文献を読み、かつ外国のものもいろいろ参照いたしますと、都市化が進行いたしますと非特異的な慢性呼吸器疾患は必然的に増加いたしております。ですからこれは、近代化と申しますか都市化と申しますか、そういうもののごく必然の現象でございまして、これは日本だけでございません。世界じゅう、いわゆる産業化した、発達した国々はさようでございます。ですから、これは私見みたいなことで申しわけないのでございますが、非特異的な慢性呼吸器疾患がびまんしておる、中には、御参考人のお一人からお教えいただきましたようなことがあることは現実でございまして、恐らく外国も同じような例がきっとあるだろうと思います。ですから、そういう非特異的慢性呼吸器疾患の一般的な増加に対して、私、もともとの出身は公衆衛生学でございますが、公衆衛生対策として広くそれを救済というよりも対処すべきだ。かつて結核が非常に国内に蔓延しておりましたときに、結核医療費の公費負担、結核予防法の中にそういう制度を取り入れまして、あれは非常に輝かしい成果をおさめましたことは先生も御承知と存じますが、それと同じような形で、大気汚染の地域に居住していようがいまいが、ただいまの健康被害補償法——あるいは被害補償法の手続は本人の、患者さん方からの申請によって審査し、認定しという手続でございますね、そのような手続を経るという制度でなくて、むしろかつての結核のように、広く国民一般に、特に都市において国民一般に蔓延している対処すべき疾患として広くそれに対応すべきものであるということを考えております。これは、増大している非特異性、非特異的慢性呼吸器疾患の対応に対して私がかねがね思っている私見でございます。  それから、御質問の要点の三、四%、私、これはいろいろやってみますと、わが国では、いろいろな先輩の方々がなさった疫学調査の結果から、三、四%というのは一応判断する、ふるい分ける線として採用されておりますが、この三、四%という数値そのものも、先ほど申し述べましたようないろいろなこと、個人の暴露を調べるという解析のもとからでは、あるいは変わるのではないだろうか。諸外国どこを見ましても、いわゆる自然有症率、これは日本だけの言葉でございまして、ほかにはございません。その自然有症率が三、四%、私、行政的に措置するのに、あるいは先生方がいろいろ制度をお考えくださる中においてはそれは結構だと存じますが、学問的と申しますか疫学的と申しますか、そういう点から考えますと、三、四%に固執することは今後どうなるかわからぬ——申しわけございません。先生は固執というようなことをおっしゃっていらっしゃらなかったので、これは私の言葉でございますが、その数値、これがもう絶対、何と申しますか、これを上回ったら直ちに何か対応すべきである、そういう動かしがたい数値であるというふうには、研究と申しますか、行政的とかあるいは制度創設という意味からではございませんが、研究面からは今後変わるのでないだろうかと思っています。ちなみに申しますと、ロンドンでは、その関係の類似の疫学調査を見ますと一〇%くらい出ております。これが大都市においてあたりまえな数値だとは私は思いませんけれども、例として御紹介申し上げますと、そのようなことが出ておりますから、私の意見としては、正しいか、正しくないかというばしっとした御質問に対しては、経験の不足ということから、お答えはちょっといたしかねるのでございますが、今後あるいは、先ほど岩垂先生から大変おしかりをいただきましたような合理的な、それからいろいろ個人の暴露を調べる疫学調査が進行いたしますと、これが変わるのじゃないだろうか、あるいは五%なり六%なり、そういう上がった形で研究者の間でコンセンサス、合意が得られるのじゃないか、あるいは常識になるのじゃないか、そんなふうに私は推察いたしております。  なお、先ほどのお答えに誤りがありましたので、ちょっと御訂正させていただきたいと思います。

久保等日本社会党

○久保委員長 どうぞ。簡潔に願います。

前田和甫東京大学医学部教授

○前田参考人 私がさっき、疫学調査で六十歳以上の云々で、こちらの参考人から誤りという御指摘がございましたが、私はここに持っておりまして、確かに私の誤りでございまして、岡山県の南部の調査は四十歳−六十歳、ですから、こちらの参考人の御指摘が正しゅうございます。私の誤りでございます。ただし、ほかの調査では、四十歳以上男女全部というのもございますから、その中には、先ほど私がお答え申し述べましたように、六十歳以上も含まれていると一般的には私は考えた、さような次第でございます。

古寺宏公明党・国民会議

○古寺委員 時間ですから、終わります。  どうもありがとうございました。

久保等日本社会党

○久保委員長 次に、中井洽君。

中井洽民社党

○中井委員 参考人の皆様、御苦労さまでございます。時間がございませんので、簡単にお尋ねをしたいと思います。  初めに、浜田参考人にお尋ねをいたします。  浜田さんがお述べになったことは、私は、公害病患者の皆さんのお考えとして、そのとおりであろう。また、浜田さんのお述べになったことに何一つ逆らうわけではございませんが、少し率直な御意見をお尋ねしたい。  おっしゃったことの大半は、NOxということじゃなしに、大気汚染全体に対する怒りであろう、こういうふうに私は考えるわけであります。先ほどお見せをいただきましたビワの問題も、あるいはどこのビワのことか知りませんが、前田先生のお話のように、NOxだけということじゃなしに、全体的な複合汚染、大気汚染の結果であろうか、こういうふうに考えるわけであります。これからも科学技術あるいは医学がどんどん発達をしていく。その中で五年に一遍あるいは十年に一遍、そういったデータ発達をもとに環境基準あるいは指針というものをどんどん見直していく、これはあたりまえなことであろう。その見直した数値をもっときつくしろと言えば、そこをきつくすればいいし、もっと緩やかでいいということなら緩やかでいい、こういうふうに考えるわけであります。私どもは、それ以外に判断をする材料というものはなかなか持たないわけであります。しかし、患者さんの皆さん方の率直な心境として、先ほどのお話は、もう絶対、基準というものは、どんな数値があらわれていようと緩めたらだめなんだ、こういうことであるのかどうか、その点についてお答えをいただきたいと思います。

浜田耕助全国公害患者と家族の会連絡会代表

○浜田参考人 私の発言が、窒素酸化物全体というような面としてかなり受け取られたと言われておりますけれども、やはり現時点では、あくまでも二酸化窒素にかかわる環境基準そのものについての意見という、本日の参考人としての主題から私は出発しておりますので、その点を踏まえて発言はしたつもりでございます。  それからなお、この基準でいくべきだと言われておるのかどうかというふうな点でございますけれども、私たちの被害というものは、いまでも深刻な状態がある、全国で認定患者が六万七千人だ、しかも、この一年で八千人もふえておるというこの問題を本当に環境庁が考えるならば、まずこれをどうするかと考えてほしいと思うのです。なぜ見直しをしようという動きが出てきておるかということに対しては、私たちは納得ができない。まず患者のこういった、本当に深刻に、いま生きておる、苦しい、このことをまず治していただきたいと言っておるのです。長官との六月五日の話の中にも私はそういった意味のことを言っておるわけなんです。見直しをするということよりも被害者という問題を考えるということが先ではないか、もし本当に見直しというものを考えるならば五年おくれていかぬのか、その五年のうちにまず患者を減らしなさい。そういう中で科学的にはこうなってきた、だから患者の皆さんこういう点では本当に信用してもらえぬか、こういう話をしてほしいと私は言っているのです。なぜいまあわてるのか、その点から考えたら、いかに科学的であるというようなことをいろいろな点で言われても、それはいま見直しをしようということに対しては私たちは素直に受けられないということですので、現行の環境基準をそのままにしていただきたいというのが私たちの願望です。

中井洽民社党

○中井委員 次に、真鍋参考人にお伺いをいたします。  私はわからないのでありますが、日本弁護士連合会公害対策委員会という形の委員会は弁護士さんばかりの集まりであるのかどうかということが一つ。  それから、今度の専門委員会の答申が結論的にちっとも科学的じゃないし専門的でないとおっしゃられたように私は聞いたわけでありますが、それの科学的根拠というものを幾つかお示しをいただければありがたい。  それから、先ほど、中公審に答申をし直すべきだ、しかもその中公審のメンバーも変えろ、そしてメンバーの中に弁護士さんの公害対策の方を数人入れるべきである、このようにお言いになったのはどういう根拠なのか、私はちょっとわからないのであります。それについても、中公審というのは弁護士さんの公害対策の審議会の人が入っていなければ弁護士会としてお認めにならないのかどうか。冗談でおっしゃったのだったら冗談で結構でありますが、その点をお願い申し上げます。

真鍋正一日本弁護士連合会公害対策委員会委員

○真鍋参考人 簡単に答えられることから順番に申し上げます。  まず日本弁護士連合会の公害対策委員会ということでありますが、公害対策委員会は、連合会というのは弁護士法に基づいて創設されるということで、その連合会がいろいろな活動をする中で、会則の中では人権擁護委員会であるとかあるいは司法修習委員会であるとかというのがあるわけですけれども、そういった各種の委員会の中の一つとして公害対策委員会というのが設けられているわけです。したがいまして、その委員というのは全国各地の単位弁護士会から一人以上ずつ選出されて構成している委員会である。もちろんある意味では私ども日本弁護士連合会名で意見書を出しておりますので誤解をしていただきかねないような形ですので、おわびを申し上げるのですけれども、本来的には連合会の理事者の諮問機関という形でございまして、私どもの意見を理事者が理事会で承認して、そして連合会の意見として外へ発表されておるわけです。ただ、内容的には公害対策委員会での検討がほとんど全部であって、それに若干の説明を加えて体裁的な意見が述べられることがあるということです。  三番目の中公審のメンバーの問題についてなんですが、いろいろな行政機関に各種の審議会が持たれております。その中に法律家が必要であるとかあるいは法曹資格のある者が必要であるとか、いろいろなことがあって、法制審議会その他いろいろなところで弁護士が委員にされておる例がたくさんあるわけなんですけれども、そういう形で、日本の公害行政のあり方について連合会としてわれわれはわれわれなりに弁護士という立場で、人権擁護するという立場でいろいろな活動をし、意見を述べておる。そういう意味で活動しておるわけでありますから、広く一般的な人を集める、有識者を集めるという意味での審議会をお持ちになるのであれば、この中央公害対策審議会もそういう趣旨であると思いますけれども、法律専門家としてすでに学者の方は何人か入っておられますけれども、在野法曹としての弁護士は現在入ってはいないわけです。これは、従来各種の審議会に、法律的な問題が幾らかでも絡む問題については連合会から委員を推薦して入れていただくようにということは各方面にお願いしておる。そういう考え方の一環として申し上げたわけでございます。認めるとか認めないとかという点は、これは別に私どもが申し上げることではないと思っております。  それから個別に御指摘申し上げるのは、私、答申が専門的でないとか科学的でないとかということを、必ずしもそういうふうに断言したつもりではございませんけれども、専門委員会報告、それからそれに基づく答申、それの扱い方、ことに環境庁の方が専門家の意見であるとして報告書をお扱いになって、それですべて専門家の意見は聞いたのだというPRをことさらにおやりになっておられる。あの六月五日の発表というのにはそういうふうに書かれておるわけなんですけれども、そういう観点から見ますと、やはり科学的とは言いながらいろいろ問題点があるということを御指摘申し上げたわけでございます。どこがというふうには申し上げにくいのですが、先ほど少し申しました、本当に解明され尽くしたのかということであれば、報告書自身がお認めになっておりますように、解明され尽くしてはいない。そして結論を出しておられる。それにもかかわらず、それで安全率を掛けないということは、いかにも科学的な態度としてはおかしいと思うのです。だから、科学的にやるのではなく、行政庁が行政裁量でやるのだとおっしゃれば、筋道としてはそれは通る。適当かどうかは別だと思いますけれども。しかしそういうことはおやりにならないし、おっしゃってもいらっしゃらないし、また、されるのは適当でもないと思います。ぜひそれは科学的な方法にのせてほしい。  もう一つの点は、NOxが、NO2だけが原因ではないとおっしゃるのであれば、だけが原因でないものは何か、やはりお探しになるべきじゃないか。真犯人が出てこないと再審を認めないということじゃございませんけれども、やはり何かそういうものをお探しになって、そしてそれの規制と合わせればよくなるという見通しが立った上で緩和されればどうでしょうか。人の健康、生命というのは非常に大事なものだということは広く承認されておる。最高裁判所の判決にもそんなことを書かれた部分があったわけですけれども、そういう大事なものを冒すかもしれない可能性があるような行政というのはやはりお避けになられたらいいのじゃないか。特にNO2の環境基準については、いままでなかったのじゃありません。すでにあるわけなんですね。これを緩めるには緩めるだけの本当の意味での確信というか、だれもが納得するような証明がされたという段階でおやりになってはどうでしょうか。この点は、先ほど前田先生が、委員としての考えじゃないようですけれども、おっしゃっておられた、十年かかっても五年かかっても疫学調査をきっちりやるべきだという考え方とそんなに違わないことを私ども考えていると思っております。

中井洽民社党

○中井委員 前田先生にお尋ねをいたします。  私どもは専門家じゃありませんので、お聞きすればお聞きするほどむずかしくなるので、大変はしょった聞き方をさしていただきますが、こういう大気汚染全体あるいはNOxの解明に関する科学は、いわゆるいまの〇・〇二ppmという環境基準をつくったときの科学と、今回、先生方が専門委員の中でデータあるいは学問としてきちっと一つの結論を出された科学的な根拠あるいは科学の進歩というものは何倍ぐらいになると、非常にお答えにくいかもしれませんが、御判断をされておりますか。

前田和甫東京大学医学部教授

○前田参考人 お答えさしていただきます。  何倍という量を正確にお答え申し上げるのはちょっとむずかしいかと思いますが、たしか五月十日の鈴木参考人の御意見の中に、四十七年のときに比べて五倍ぐらいもふえているというようなところがどこかにあったように記憶いたしておりますので、まあそんなところじゃないかと思います。私自身勉強いたしましたところで申し上げさしていただきますと、まずNO2及びNO、つまりNOx全体でございますね、それの測定技術が格段と進歩してきているということでございます。それに引きかえまして、私、先ほどから委員の先生方から新聞の投稿のことをいろいろとおしかりを受けておりますが、疫学調査の方は、それほどベースは変わっておらないということでございますね。そしてようやくいろいろな反省のもとに立ってああいうことが行われたということを指摘したわけでございまして、物理的な測定方法というのは、これはまことに短い時間で進歩いたしますが、人間を相手としたものはなかなか時間がかかる。  それから私、ちょっとよけいなことかと存じますが、つけ加えさせていただきたいのは、従来のいわゆる広い範囲の疫学調査の中でも、それを非常に経験をお持ちになっていらっしゃる方々が、従来の方法に加えて比較的最近開発し、使われることになりました末梢気管支の、要するに肺の奥の方でございますね、肺の奥の方の早い時期の機能の変化を検出する器械、それの期待されている器械を実際に使っていろいろ御研究、御調査を始めていらっしゃいますので、間もなくそういう検査器械を使っての結果が出てくるのじゃないかと思って期待しておりますし、そういう御経験の深い方々のそういうお仕事を拝見した上で、私もいろいろ機会がありまして、またそういうことが可能でございましたら、そういうものも購入してみずからもやってみたい、そんなふうに思っております。

中井洽民社党

○中井委員 先ほど先生おっしゃられたように、参考人の方々と全く学問というのか、違った立場での御発言になり、また午前中にもいろいろな参考人の御意見を聞き、その中で今回の専門委員会の答申の基礎となった学問、先ほど先生のおっしゃったようなデータ、そういったものは世界最高である、こういう御意見がほとんどでございます。ただ一つ、同じ東京大学の工学部の助教授の西村さんが、システム解析の中で、解析上、今度の専門委員のあれを分析すると、まあまあ指針として、環境基準として〇・〇三ppmにすべきだ、こういう結論を自分は学問上出したのだ、こういう御開陳がございました。しかも、その学問上の違いは、先ほど話の出ました自然有症率を全国、いわゆる汚染をされていない地域三カ所の平均二・一七で掛けたのだ。この答申の場合には三ないし四%という形でやっておられるけれども、それは間違いである。ここだけがいろいろな方の御意見の中で、答申の部分に対して御異議があった。あとの方のいろいろな議論は、この答申を受けて、それをそのまま環境基準とするのかあるいは安全率を掛けるのか、あるいは先ほどの浜田さんのお話にあったように、いま見直しをするのか、しないのか、こういう議論であろうかと私は思うのであります。そういった意味で、もう一度重複になりますが、自然有症率三ないし四ということでいいのだ、二・一七というのは、少しいまの学問上から言ってどうか、こういった点についてお話をいただきたいのと、それから、私の理解でまことに申しわけないのですが、そういった問題あるいはデータ不足、いまの科学では、ひょっとしたらわからないというようなことを全部含めて、総合的に安全率というものは見てあるのだ、こういうお言葉でありましたが、その〇・〇二から〇・〇四という幅が、幅ということ自体も一つの安全率、総合的な判断の中であるというふうに判断をしていいものかどうか。その点についてお答えをいただきたいと思います。

前田和甫東京大学医学部教授

○前田参考人 お答えいたします。  ちょっと順序を逆にして申し上げますが、〇・〇二、〇・〇四という幅で出したということが、先生の御指摘のとおり、私はそういうふうに考えております。先ほどほかの委員の先生にお答えしたときと同じでございます。  それから西村先生の、私、一、二の論文を存じております。それから二・四という数値の根拠、ちょっと私存じませんけれども……(中井委員「二・一七ではないでしょうか」と呼ぶ)二・一とか四とか、要するに三より低いということですね。これは、なるほど、そういう数値も出る場合もあるかと存じますけれども、私どもの委員会では三から四ということで、そこで決めた。そこを一つのスクリーニングのそういうところへ線を引くラインとした。それで三から四ということを先ほど古寺先生の御質問に私答えたように、私自身はそのこと自体、諸外国と比較した上で、これは日本の従来のいろいろなシステムと申しますか取り決めあるいは積み重ねた上でそうなっているものだというふうに理解しております。  それからちょっとつけ加えさせていただきますが、西村先生がシステマチックに云々の件、これは私の意見でございますが、先ほどもちょっと申しましたが、いろいろ調査者が違い、地域が違い、対象も違う、いろいろなデータをみんな一緒にして、そして非常に複雑な統計解析あるいは数学解析をするということは、そのもともとのデータがそういう複雑な統計解析になじまないのではないかというふうに私は思っております。いろいろまた先生方からおしかりを受けるかと思いますが、先ほど申しました合理的云々ということに立ち戻るかと存じますが。

中井洽民社党

○中井委員 ありがとうございました。

久保等日本社会党

○久保委員長 次に、東中光雄君。

東中光雄日本共産党・革新共同

○東中委員 前田参考人に最初にお伺いしますが、参議院の公環特で、先ほど来出ております鈴木委員長が、専門委員会の「付言」の当初の案には、今回の指針値は「影響が出現する可能性を示す最低の濃度レベルであると判断される。」、こうあったそうでありますけれども、そうだとしますと、専門委員会の段階ではこの指針値について、これが「影響が出現する可能性を示す最低の濃度レベル」、こういう考え方で一応まとまったのではないかというふうに思うのですが、それでよろしいのですか。

前田和甫東京大学医学部教授

○前田参考人 影響が出現する最低のレベル、鈴木参考人の御意見というのは、その〇・〇二、〇・〇三というその中の最低だから、〇・〇二云々というそういう点に関してのことでございましょうか。申しわけありませんが、初めの方、ちょっと一部聞き取れなかったのですが……。

東中光雄日本共産党・革新共同

○東中委員 今回の指針値が、「影響が出現する可能性を示す最低の濃度レベルであると判断される。」こういうふうに初めの案にあった。当初の案ですね。

前田和甫東京大学医学部教授

○前田参考人 「付言」でございますか。何でございますか。

東中光雄日本共産党・革新共同

○東中委員 専門委員会の「付言」です。

前田和甫東京大学医学部教授

○前田参考人 別についておりますね。大変恐れ入りますが、それがどういうふうに変わっているということでございましょうか。

東中光雄日本共産党・革新共同

○東中委員 そういうことで合意があったのかどうかということです。ないのに「付言」でそういうのが載っているわけがないですから。一応そういう「付言」が当初案にあったということを言われているから、それについては合意があったのでしょうねということを確認しておるだけです。先生、御存じなかったら、しようがないです。

前田和甫東京大学医学部教授

○前田参考人 先ほども、お答えになるかどうかわからずにまことに申しわけないのでございますけれどし、諸先生方の御質問に私がお答え申し上げましたように、〇・〇二、〇・〇三ということは確かに幅であるということはいろいろ問題がございますけれども、それが影響があるというか、慢性気管支炎が増加をし出す最低のレベルである、そういうふうにあったと思いますが、ちょっとそれがどう……。ただいま「付言」を持っていますから、見させていただいてよろしゅうございましょうか。

東中光雄日本共産党・革新共同

○東中委員 それじゃ、いいです。時間が余りないものですから。

前田和甫東京大学医学部教授

○前田参考人 いまこれをいただいてわかりました。申しわけございません。お答えいたします。  私は専門委員会に出ておりまして、この「付言」というのを何度も何度もいろいろ意見によって訂正いたしました過程がございますけれども、私はその最終的な専門委員会での「付言」の原案、それのみ承知しておりますから、それをただいまいただきますとそう書いてありますから、そうだと思います。変わったとか変わらないとかということに関してはちょっと私、記憶というか、そういう場面にタッチしておりませんのでお答えしかねるのでございます。原案は確かにそのとおりで、私が承知しておりますのは、専門委員会で最終的に出てきた「付言」の文言は確かにそのとおりでございまして、それが変わったか変わらないとかいうことに関しては、私、ちょっとわかりかねるのでございますが……。

東中光雄日本共産党・革新共同

○東中委員 時間がありませんので進みますが、さっきから出ておりました安全率の問題でありますけれども、安全係数、安全率が含まれておると参考人は理解をしていると。しかし専門委員会としては、含まれておるということでの意思の確認というものはされていないわけですね。その点はどうですか。

前田和甫東京大学医学部教授

○前田参考人 お答え申し上げます。  改めまして、これは安全率を含んだものであるという確認は確かに私、記憶にございませんが、先ほど来たびたび諸先生の御質問にお答えいたしましたように、また繰り返すようになって恐縮でございますけれども、新しい概念をわれわれだけで——先生方はぜひその点御想像あるいは御同感いただきたいのでございますけれども、学者なんというのは、私みずからそんなことを言うのもまことにおこがましいのでございますけれども、その端くれといたしまして、新しい概念をつくり、かつ新しい言葉をつくるということは非常におくれてございます。それが一般的で、ほかの諸先生方は皆さんそうだと思います。そういう中で、それが一般的な通例でございますが、そういう一般的な通例なり傾向であるにもかかわらずそういうことで合意したということは、先ほど来たびたび申し上げましたような、よりいい方向であろうという形で合意をいたしたのでございまして、それで安全率がビルトインされているというふうにお答え申し上げましたが、いま先生御指摘の、それはそういう新しい概念をつくること即安全率を掛けるものである、あるいは安全率を掛けると同じ効果をあらしめるためにこういう新しい概念をつくるのだというような形での意見の交換と合意はいたしておりません。

東中光雄日本共産党・革新共同

○東中委員 結局、安全率のかわりでもなければ、とにかく新しいものをつくったということだけであって、委員会としての合意あるいは見解の一致というものは確認はされていないというふうにお聞きしたのであります。  それともう一つ、科学的な、合理的な結論というのと、それから諸般の状況による決断というのでは、これは大分違うのですね。だから、その決断をされた「諸般の状況」というのはどういうものなんですか。

前田和甫東京大学医学部教授

○前田参考人 お答えいたします。  前問について私がお答え申し上げましたことを御想起いただきたいのでございますが、非常に憶病であるにもかかわらずそういうものに踏み切ったことが私の諸般の状況における決断の内容とおとりいただいてよろしいかと思います。  つまり、もうちょっとつけ加えさせていただくと、よくわからないのだけれども、そういうふうにぐっと下げるということでございますね。こういう三角形がございまして、下からだんだんに、従来は五段階でございますけれども、それを三段階までこうして、その下をとるということですね。これは先ほどから繰り返しておりますように新しいことである。それを踏み切った、それを合意——合意と申しますとまたおしかりを受けるかもしれませんが、少なくとも私は了解したということに関しましては、私の決断の一部でございます。  お答えになりましたかなりませんか……。

東中光雄日本共産党・革新共同

○東中委員 よくわかりませんね。「諸般の状況にもとづく決断」と言えば、普通はどういう状況、どういう要素が状況になっておるのだということなんですけれども、根拠のない同意だから、それを「諸般の状況にもとづく決断」という表現をされているというのだったら、それはまたそれとしてお聞きするわけでありますけれども、そこのところがどうも言われていること自体がよくわからないのです。時間がありませんから、その点を指摘しておきたいと思います。  あと真鍋参考人と浜田参考人にお伺いしたいのですが、環境庁は、環境基準を変える必要性、見直しの必要性ということで、この前、当委員会で裁判は自由だと言いながらも、現在の基準を境として差しとめとか道路をつくってはいけないということが起こっている、いまの環境基準値が事実上訴訟や住民運動の根拠となっているのがまずいという趣旨のことを言っているのですけれども、裁判を担当される法律実務家として、あるいはまた住民運動をやっておられる立場から、こういう見解についてどのようにお考えになるか、お伺いしたいと思います。

真鍋正一日本弁護士連合会公害対策委員会委員

○真鍋参考人 確かにそんなことをおっしゃっておられて、環境基準が準受忍限度とかそんな表現がどこかに出てきておったような気もするのですけれども、実際、裁判でいろいろそういうことが争われておることも事実だと思います。ただ私、本日、実務家ということですが、連合会で公害対策委員会としていろいろ議論してきたことを踏まえて、連合会の代表という趣旨でできるだけ発言しろということですので、そういうことで申し上げさせていただきます。  先生御質問されたように、裁判で原告代理人が何を基準にするかはまさに自由だと思います。恐らく原告代理人たちは、現在の公害状況も踏まえて考えてみまして、現在設定されておる環境基準が達成されても本当に被害が完全になくなるかどうかは大変疑問に思っているのじゃないでしょうか。本日はNO2についての環境基準が中心課題でありますが、それはさておきまして、ほかの各種の環境基準について考えてみるとやはりそうなのではないでしょうか。  騒音についての環境基準なんかでも、特に道路沿いの環境基準に対する批判は非常に多いし被害がたくさん訴えられておる。もちろんそれも達成されておりませんけれども、達成されておると言われておるようなところでも訴えが出てきておるような状況で、被害があると認識されておるということだと思うのです。しかしそのことはそのことで、基準のあり方としては別だと思います。環境基準がそういう形で裁判に利用されるから、それに合うように合わせるというのであれば、またそれはそれで、環境基準でなしに基準を設定されることは、行政としてできないことではないのじゃないかと思います。だから、健康保護、環境保全のために維持することが望ましい基準というふうに基本法が定めておる環境基準をそこまで引き上げるというのは、理屈としては本末転倒ではないかというように考えるわけでございます。

東中光雄日本共産党・革新共同

○東中委員 先ほどに引き続いて浜田さんにお尋ねします。  窒素酸化物を地域指定の要件としろということで要求をしてずっと運動をされてきておるわけですが、この要求が受け入れられないままで今度の環境基準の緩和が行われるというような動きになっておる。これは先ほどの問題とあわせて患者さんなりあるいは公害についての住民運動をしておられる皆さんがどういうふうに感じておられるか、その点をお伺いしたいと思います。

浜田耕助全国公害患者と家族の会連絡会代表

○浜田参考人 まず、環境庁の方が、私たち被害者が裁判をしておるとか、差しどめをしておるというふうな理由に使われておるというふうな点での問題でございますけれども、初めの意見の中で申しておりましたように、私たちは二十年も苦しみ続けてきておるわけでございます。そういう苦しい状態から解放されたいというのは当然人間の願いだと思うのです。しかし、現在その二の舞を演ずるように国道四十三号線の真わきの西淀川区に今度大阪−西宮線を建設しておるわけです。これは先ほども申しましたように、全幅二十六メートル、六車線で日に十二万台走ると言われておるわけです。いま患者が、現に五千七百名おる。そのところにだれがしてそういうふうなことを考えられるだろうか。これは人道的にも全く許されない問題だろうと思っているのです。そういうやむにやまれない、言って見ますと、西淀川区の住民は絶望的ですよ。私たちは喜んで裁判を提起したのではないのです。それ以外にだれが救うのですか。暴れたい人もいます。自暴自棄になっている人もいるわけです。橋脚の上に上って抗議をしている人もいるのです。限界を超したこの状態に対して、まだ環境庁なり行政がそれに対処していこうとしない。そういう断末魔に追いやられた中で、せめて裁判でこれの責任をとらしたいということで私たちは裁判を起こしておるわけでございまして、NO2の環境基準そのものとは何ら関係のないことなのです。何とかして厚く住民を救っていただきたい、それが願いであるわけなのです。いま私がなぜしゃべっておるのか、私の頭の中には五千七百、全国で言うたら七万人の患者がすがっておる姿が見えるわけです。何とか助けてくれとこの間の六月五日の環境週間でも一級患者が来ておったわけですよ。いまその患者は発作で毎日苦しんでおるのです。みんなが心配して早く入院せいと言うけれども入院もしない。あれから何日もたっておるのです。その患者がわざわざ東京まで陳情に来ておるこの苦しさを私たちは知っていただきたい。  先ほども言っておりました、あの三十になる娘さんが、頭が痛い、頭が痛い、それだけで寝ておる、この状態というものは気が狂ってくる状態であると思うのです。たくさんの被害者が、とてもたまらない状態で生きておるわけです。いま二十になる娘さんが寝たきりで苦しんでおるのです。両親はいま必死になって交代で看病しておるわけです。その看病でもう疲れ切っておるのです。しかも、補償法で手当てがあると言いますけれども、差額ベッド代は支給されていない。その請求が月に何万円と来ておるのです。その家庭ではどういうふうにして生きていったらいいか。こういうふうな苦しみの中で私たちは生きておるということであるので、どんなことがあってもこの二酸化窒素の緩和というものは許すなと言いたいのが被害者の声であります。  また、NOxについての要件を地域指定の中に入れたらというふうなことは、当然深刻な問題として出てきておるわけです。西淀の例をとっても、二酸化硫黄は環境基準に近づいた、〇・〇五ppmに近づいたと言う。しかし七百名、五百名という被害者が年間ごぼごぼ出てくるというのは一体何が原因しておるのか。いまそういう中で苦しんでいる人がたくさんいるということを考えて、これを速やかに要件に入れていただきたいというのが患者の切実な願いであるというふうにお受け取りいただきたい。それが環境庁に対して私たちの要望しておる趣旨でございます。

東中光雄日本共産党・革新共同

○東中委員 時間ですから、やめます。

久保等日本社会党

○久保委員長 次に、工藤晃君。

工藤晃新自由クラブ

○工藤(晃)委員(新自) ただいままで、被害者の方から切実な訴えを聞かしていただきました。何とかこういうことに対して一歩でも解決の道への模索をしていきたいと切に願う次第でございます。  まず第一番に、中公審の答申に参画された前田参考人にちょっと聞いてみたいと思うのですけれども、「指針の提案」というのがこの答申の二十五ページのところにございまして、「以上の動物実験、人の志願者における研究、疫学的研究などの成果を総合的に判断し、本専門委員会は、地域の人口集団の健康を適切に保護することを考慮し、環境大気中の二酸化窒素濃度の指針として、次の値を参考とし得ると考えた。」こういう形で出された数字が年間平均値としては〇・〇二ないし〇・〇三Pppm、こういう数字が出ております。これを一日平均に直しますと〇・〇四から〇・〇六というふうな形になろうと思いますけれども、これは現在の環境基準の一日平均〇・〇二に比べますと倍の数字になるわけです。  まず第一番に、これは「健康を適切に保護することを考慮」するというところが一番ポイントだと思うのです。私は、平均値を緩和することが「健康を適切に保護すること」につながるのかどうかということをはなはだ疑問に思うわけでございます。また、前段の答申を通覧いたしましても、どこを見ても、これが緩和をしなければならない、してもよろしいという証左になっているとは思えない、すべて疑問のかたまりの中から出てまいりました数字のように思うわけでございまして、こういう点について、何をもって「健康を適切に保護する」という前提に立った数字が出されたのか、その点を簡単に御説明をいただきたい、かように思います。

前田和甫東京大学医学部教授

○前田参考人 お答えいたします。  諸先生からたびたび御質問のありましたことに私がお答え申し上げましたことと同じようなお答えになってしまうかと思うのでございますが、「適切に保護する」これは言葉は非常に簡便でございますけれども、「適切に保護する」ということの意味合い、説明が、先ほどから申し上げていたような事柄でございまして、科学的なデータをいろいろ検討し、そしてその結果として導き出すという作業の過程では、ここに表現されておりますような表現に落ちついたわけでございます。先ほど来、私が諸先生にお答え申し上げましたように、多くの手順を凝縮してこういうふうになったのでございまして、先生御指摘のいろいろ疑問のかたまりであり、これで「適切に保護する」とは思えないとおしかりでございますけれども、この文言と申しますか、この答申の内容は、それこそ長いいろいろな審議の過程から最終的にこういうふうに凝縮したことでございますので、さようなおしかりをいただきましても、私としてはこれ以上ちょっとお答えしかねるのでございます。まことに申しわけございません。

工藤晃新自由クラブ

○工藤(晃)委員(新自) わかりました。  ただ、長期の低濃度の、要するに前田参考人もおっしゃっているように、健康に及ぼす影響を含めて疫学調査もまだ未熟だ、まだまだいまからやらなければならないというふうなことでございますから、当然これが十分であるという前提に立たれたものとは思えないわけでございます。そういうことを考えますと、午前中からもいろいろ言われておりますけれども、これは健康に及ぼす影響の調査がまだまだ足りないんじゃないかという意見も大変多うございまして、もっともっと基準を厳しくしていく、あるいは規制を厳しくしていくという方向へもっていった方が、健康を守るという立場からすれば当然そういう形になるべきではなかろうかという感じも片一方にあるわけでございます。  そういう点も含めまして、一方においては生き証人でおられる公害患者と家族の会連絡会代表の浜田さんが切なる訴えをされておるんで、これが十分だというふうなことは一言もおっしゃっていないし、これを緩和されることはやめてくれ、こういうふうな切なる願いもあるわけでございます。その中で日本の環境行政がどういう方向へ進むべきかということは重要な問題だと思います。少なくとも緩和の方向へ進むのか、あるいはもっと規制を厳しくしながら、国民の健康保持ということに対して環境行政というものがこれからもよりシビアな形で対応していくということの方へ向かうかという一つの大きな分かれ目がこのたびの答申をめぐる質疑だろう、こういうふうに考えておりますので、そういう意味においても、まだまだ疑問点が残されている点を非常に重視して、現段階において、こういう状況の中で基準緩和の方向へ進むことが適切であるかどうかということに対しての浜田参考人の御意見を改めて簡単にお聞きをいたします。

浜田耕助全国公害患者と家族の会連絡会代表

○浜田参考人 いまお尋ねになったことは、いまの環境基準が緩和の方向に進むということが適切であるかということに対するお答えでございましょうか。そういうことでいいわけですか。

工藤晃新自由クラブ

○工藤(晃)委員(新自) 反対の立場に立っておられますけれども、そういうことに対していままでずいぶんそれは困るという御意見でございますけれども、改めてあなたが何かここで一言、御自分の御主張をしていただきたい、こう思ってあれしたわけです。

浜田耕助全国公害患者と家族の会連絡会代表

○浜田参考人 どうもありがとうございます。  先ほど来申しておることは、被害者の切なる願いというものは、まずもとの体に戻していただきたいということが切なる願いであるわけなんです。しかし、先ほどから私がるる述べましたように、二十年たったいまでもなお公害に脅かされておる、そういった現状を反省するという方向で環境庁が考えるということでなしに、なお、そこに逆なでするような形で四十三号線の阪神高速道路の建設を強行してくる。なおかつ、その上に二酸化窒素の環境基準を緩和しようというふうなことが今回出てきておるというふうなことを考えましたときに、なぜいま環境庁がこの二酸化窒素の緩和ということを真剣に、しかも、もう一つは早急に考えなければいけないのかという理由が私はわからぬというわけです。本当に早急に対策というものを考えるならば、第一に何を考えるかということを考えたときに、被害者の救済というものを考えていただきたいと言っておるわけなんです。  結論は、しかもそういう上に立って五年でも十年でもかけて本当に規制を強めていくと言われておりますけれども、それであれば、規制を強めた結果を現に示していただきたいというのです。その時点に立って見直しを考えていくということであれば、私たちも考えられるというわけです。しかし現時点であれば、患者を見殺しにするような状態に置きながら緩和だけを強行していこうというようなこの現状というものは、私たちは何としても理解ができないということでございますので、どんなことがあっても緩和を許すようなことを避けていただきたいというのが私たちの願いであります。

工藤晃新自由クラブ

○工藤(晃)委員(新自) 健康被害を受けている方々の切なる願いをいまお聞きしたわけでございますが、こういう状況の中で前田参考人に同じ質問をもう一度させていただきたい。  こういう状況の中でやはり緩和していくという方向へもっていくのは、参考人としては妥当なのかどうか、あるいはもう少しこういうものについての十分な疫学調査あるいは被害に対する救済、そういうものを含めてもっともっと将来にこの問題を残した方がいいというふうにお考えになるか。いや、もうそういう問題は別の問題だから、この問題はこの問題として、やはり出した数字に対して環境基準をそういうところへ改定していく、この方がいいというふうにお考えなのか、そこのところだけを簡単にお答えいただきたいと思います。

前田和甫東京大学医学部教授

○前田参考人 お答え申し上げます。  先ほど来の浜田参考人の御意見を伺っておりまして、その現状をお伺いして胸のふさがる思いでありまして、さような方々に対しまして、しかるべく適確に手を差し伸べるということは全く異論はございません。  この点につきましては、ただいまの工藤先生の御質問に関連して、ちょっと外れますがお許しいただきたいと思います。どなたでしたか、忘れて申しわけなかったのでありますが、公衆衛生一般の対策として、そういうふうに大都市どこでも非常にふえている非特異的、ぜんそくを含めてそういう疾患の患者たちの医療行政あるいは公衆衛生行政としての医療対策を早急に立てるべきであるということを、私は先ほど申し上げたかと存じます。  先ほどの浜田参考人の御意見の中に、被害補償を受けておっても差額ベッドは出ない、だから大変な負担になる、こういうことは、私の私見として申し上げました、そういう呼吸器疾患を、被害補償法だけではなくて別途な対応で、被害補償を受けていても差額ベッドを払わなければならないということがないように、国の行政あるいは施策として立てるべきであるという私見をもう一回繰り返させていただきます。  それから、工藤先生がおまとめになりました、現実はこういうことがあるのだ、おまえも聞いたろう、それでも、基準を緩和する云々ということは別途なものだからそのとおり考えるのかという御質問に関しましては、私のお答えさしていただきたいことは、私は審議に参加いたしまして、まことに長い間かかっていろいろ苦労もいたしました。そしてようやくのことでこういう形を導いたものでございまして、ですから、ようやくこうやって導き出したこの数値を慎重に尊重してもらいたいというのが私のお答えでございます。果たして先生の御指摘のところにマッチするかどうかわかりませんが、お許しいただきたいと存じます。

工藤晃新自由クラブ

○工藤(晃)委員(新自) 聞きたいこともたくさんあるのですけれども、時間がなくて……。  ただ、お伺いいたしましたところ、先生は公衆衛生の御出身のようでございます。公衆衛生というのは、病人をどのように治療し、どのように手厚く看護するかという問題よりも、病人を発生させないためにどうするかという、予防は治療にまさる最高のものだということを身をもって御経験なさっておられる先生でございますから、特にそういう現在発生している病人をどう救済するかというよりも、そういう病人を二度と再び発生させないようにするためにどうするかという観点からお考えをいただくのが当然ではなかろうかというふうに私は考えているわけでございます。もう一つ、どうしても聞きたいことがございますので、この問題はこれでやめます。  この指針の数値の〇・〇二から〇・〇三ppm年間平均という数字でございますけれども、午前中の柴田参考人がおっしゃっておりましたが、光化学スモッグの発生を抑止するためには、NO2が〇・〇二ppm、それからノンメタン炭化水素が〇・三一ppmですか、数字があるいは私、間違っておるかもしれませんが、とにかくNO2だけは〇・〇二ppm、この数字以下に抑えなければ光化学スモッグ発生の抑止にはつながらないんではないか、だから、どうしてもその〇・〇二ppmというものを重視したい、そういうふうにおっしゃっておられたと思います。しかし、今度の数値の中で見ますと、これは一口平均にしますと〇・〇四から〇・〇六ppmになります。そうしますと、指針に出された数字というのは、光化学スモッグの発生に対する御配慮も一緒に含めて出されたのかどうか、その点ちょっとお伺いしたいと思います。

前田和甫東京大学医学部教授

○前田参考人 お答え申し上げます。  先生御指摘の東京都の、五月三十日でございましたか、あれの資料は私も読みました。私、大気化学のことについては余り詳しくございませんので、東京都の実験が正しいものかどうか、あるいは柴田参考人が御主張なさったことが本当にその大気の中で起こるかどうか、ちょっと私お答えする資格がありませんし、わかりません。  ただ、あれを拝見しますと、とにかく実験室の中でそうしたことが起こったということで警鐘をお鳴らしになったということでございますので、なお厳しくするという御意見でございますが、実験はなお追試が必要ではないかというのが私の率直な考えでございますが、専門ではございませんので、これ以上お答えすることは御遠慮させていただきます。  それから、光化学について云々したかということ、これについては、諮問を受けましたのが二酸化窒素についてのことでございましたので、多少話題にも出ましたけれども、光化学のことについてのことは特に積極的に論議いたしておりませんでした。

工藤晃新自由クラブ

○工藤(晃)委員(新自) これで最後にします。  光化学スモッグに対する配慮はしていない、こういう御発言でございましたけれども、光化学スモッグは人体への影響がないという前提に立つならば、それも結構でございますけれども、これが大変人体に影響があるということであれば、これは参考にして出されなければならない数字だと思うのですが、そういう点だけを御指摘申し上げて、私はこれで終わります。

久保等日本社会党

○久保委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。  次回は、来る七月五日水曜日午前十時理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十四分散会

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