法務委員会 閉会後第1号
- 発言数
- 145 件
- 登壇者
- 8 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1977/09/22
会議録
○委員長(中尾辰義君) ただいまから法務委員会を開会いたします。 委員の異動につきまして御報告をいたします。 去る九月十九日、宮本顕治君が委員を辞任され、その補欠として上田耕一郎君が選任されました。 ―――――――――――――
○委員長(中尾辰義君) 検察及び裁判の運営等に関する調査を議題といたします。 質疑のある方は順次御発言を願います。
○寺田熊雄君 刑事局長にお尋ねをしますが、成田事件の際に発生しました東山薫さんの死亡事故について千葉地検が公務員暴行陵虐致死罪として捜査になっておられるようですね。いままでの刑事局長のお説明ですと、千葉地検の検察官六人、それから他の地検からの応援の検事が九名、事務官が九名と、大変な布陣で不眠不休で捜査をしておりますという御答弁でしたけれども、その後四カ月以上の日時がたっております。その後どういう捜査の状況になっておるかお伺いをいたしたいと存じます。
○説明員(伊藤榮樹君) ただいま御指摘の東山氏の死亡事件につきましては、ただいまお話しのように、事件発生の翌日から鋭意捜査を続けておるわけでございます。ただ、お尋ねの中に、特別公務員暴行陵虐致死罪というようなお話がちょっとございましたけれども、現在検察庁で事件として立てております罪名は、氏名不詳者に対する傷害致死被疑事件ということで捜査をいたしております。すでにこの前の国会の際にも御説明申し上げましたように、千葉地検としては何としても事案を解明したいということで鋭意努力を続けておるわけでございますが、まことに残念ながらいまなお最終的な結論には到達しないという状況でございますが、なお最終目標に向かって一生懸命捜査をしておると、こういう状態でございます。
○寺田熊雄君 先般の刑事局長の御答弁によりますと、これは五月三十日ですね、千葉医大の木村教授から死因に関する鑑定書が提出されたということを聞き、私もその鑑定書のリコピーを入手いたしておりますけれども、それによりますと、大体東山薫さんの死亡原因は警察官の発射した新型ガス弾の命中によるものであるということがほぼ推定できると思います。その後、千葉地検の方から、さらにその点の疑惑を解明するために木村教授のもとに若干のポイントについて質問をなさったようですね。それに対しても木村教授から検察庁に回答が来ておるようであります。その回答書も私入手して詳細に検討をしてみましたけれども、それによりますと、その点の解明は一層明らかになったように思うのですけれども、検察庁としましては死因の点についてはほぼ検察官としての心証はとっておられると思うのですが、その点はいかがでしょう。
○説明員(伊藤榮樹君) まず最初にお断りいたしておきますが、現在、木村教授の鑑定書及びこれの補足説明書といわれるもののコピーが一部に出回っておるということは存じておりますが、これは木村教授の手元にあった鑑定書などの控えのコピーのコピーのコピーだろうと思います。そういうわけでございますから、その出回っております。ものの実質的内容が検察庁が受け取っております。鑑定書の内容と同じかどうかという点については確定的なことはちょっと申し上げられないわけですけれども、出回っておるものが本物と全く違うと言えばうそになりますし、一致しておると言えば捜査の内容を明らかにすることになりますから、その点はしばらくおくといたしまして、現在出回っておりますそのコピーによりますと、御指摘のような所見が述べられております。 で、問題は、捜査の一番の重点は犯人はだれかということを特定するわけでございまして、ガス弾ならガス弾というものが犯罪を犯したわけではございませんので、そういう関係で実際に東山氏にこの何らかの外力を加えた者はだれかということを鋭意詰めておるわけでございますが、何分非常な大ぜいの人が取り調べの対象になっておりまして、かつそれぞれに記憶あるいは観点が異なるような状況がございまして、そういう意味で相当時日を要しておる、こういう状況にございます。
○寺田熊雄君 まきにおっしゃるように、その鑑定書並びに付属書類が検察庁の手元に提出されたものと同一かどうかという点のあなた方が確証はお持ちじゃないかもしれないけれども、われわれがその鑑定書並びに付属書類の書面を読めば、それが本物であるかにせものであるかというようなことは経験上容易に理解できることです。ですから、あなたがおっしゃったように、前段の、私どもが持っておる木村教授作成の鑑定書並びにその付属の書面があなた方の持っておられるものと違うと言えばうそになるというそのまさにうそになるという方に該当すると思うのですよ。それでそうした書面によりますと、死因はほぼ確定できたというわけですから、そうすると、残るところは被疑者の特定になりますね。これは刑事局長がみずから六月七日の当委員会の答弁で、これは特定しなければならないし、特定できると思いますという自信をお示しになったわけでしょう。私もこの事件が非常にそういう点でも困難だということは理解しております。警察官がこの事件をやすやすと犯人をあなた方に差し出すというようなことは、これは期待すべくもありません。それだけにあなた方のお仕事がきわめて困難だということはよく理解していますけれども、しかし、これはあなた方でなければ日本国じゅう何人もなし得ない仕事です。しばしばいままでも事件というものは、それがなし得ないために、やむを得ず民事訴訟でその問題を解明していく、国家賠償で解明していくという方法がとられておるようですね。しかし、願わくばやはり黒白は明らかにしてもらいたい、それがあなた方のお仕事なんですね。 ここで、刑事局長、もう一度お伺いしたいけれども、その黒白は明らかにしなければいけないし、犯人は挙げなければいけないけれども、現在の時点でもなおかつあなたはその犯人を特定できるという自信をお持ちですか。
○説明員(伊藤榮樹君) 私自身捜査に従事しておるわけでありませんが、千葉地検の検事正以下の検察官、検察事務官の力量、それから事案の性質等からいたしまして、これは前回お答えしましたように、だれが外力を加えた人であるかということは明らかにしなければなりませんし、また、検察の力によれば明らかにできるべきものだと思っております。 ただ、一点、捜査の内容を細かに申し上げるわけにまいりませんけれども、すでに外部にあらわれた事情についてだけで申し上げますと、たとえば、東山さんの御遺族等から出されました告訴告発あるいは民事訴訟における御主張と、いま出回っておりますコピーの鑑定結果と申しますか、というものとの間にも矛盾があるわけでございまして、その一点からもおわかりいただけるかと思いますが、なお捜査は深く掘り下げていく必要があろうと思っております。
○寺田熊雄君 被疑者の特定はしなければならないし、またできると思っているという御趣旨に伺いましたけれども、どうでしょう、あとどの程度の時日を要するでしょうか。あなたはこの事件について検察庁が最終的な決定をなさるまでになおどの程度の時日を要するようなお見込みでしょうか。
○説明員(伊藤榮樹君) どうも捜査というのはいわば水ものでございまして、どの程度というお約束はもちろんできないわけですけれども、私の過去における経験等からいたしまして、やはりあと数カ月かかるのじゃないかと思っております。
○寺田熊雄君 数カ月ということになると、公判を維持するに足る証拠、これをしっかりと把握するまでにかなりな難作業が見込まれるというふうに理解できますが、これは起訴、不起訴いずれに傾くか、現在まであなた方が検察庁からの御報告を基礎に、事案の性格などを全体を見て、どのようにあなたはいま見ておられますか。
○説明員(伊藤榮樹君) 起訴の方針で捜査をするとか不起訴の方針で捜査をするというようなことは厳に戒めなければなりません。現在、検察では虚心坦懐に外力を加えた人を割り出そうということで努めておるわけでございまして、その目標に到達した時点において諸般の状況がわかってまいりますので、そこで冷静、客観的に処分を決めることになると存じます。
○寺田熊雄君 検察庁の捜査の問題に関しては以上でとどめますけれども、いま刑事的な観点と並んで民事訴訟が提起されていますね。これに対しては、あなた方は、必要欠くべからざるもの、他の資料によって代替し得ざるものについては裁判所の審理に協力するというたしか御答弁だったように思いますね、いままで。これは今後もそういう方針でおいでになるわけですね。また、いままでに何らかの協力を裁判所から求められたということがありましたか。
○説明員(伊藤榮樹君) 検察としては、当該民事訴訟につきまして裁判所から協力を求められたことはないようでございます。 で、前段のお尋ねでございますが、私どもとしましては、現に捜査中の書類につきましては遺憾ながらしばらくお待ちいただくより仕方がないと思いますが、一応の検察の結論を出しました上では、お尋ねのように、代替性のないものにつきましては、民事訴訟上の重要性を勘案しまして、御協力する方向で従来からやっておりますので、この事件につきましても、もしそういう事態になれば、一般的な方針で対処することになろうと思います。
○寺田熊雄君 最後に大臣にお尋ねしますけれども、私どもがなぜこういう事件について御質問申し上げるかと申しますと、いかなる場合でも権力の乱用は慎まなければいけない。それが歯どめをかけませんと、今度はやはり国民の方からそれに対するまたいろいろ抵抗などが必然に起きてきます。そうして、国民と政府の権力とがそうした闘争を繰り返すということはどうしても国民にとって不幸なことです。ですから、権力の行き過ぎがあった場合はやはりそれはきちっとその点の始末をしなければいけない。それをなし得るのはいまのところは裁判所と検察庁ですが、とりわけ刑事的な問題については検察庁しかないわけですね。ですから、この点についてはその責任を深く御自覚になって、事案の本質を解明するという点で熱意を示していただきたい、精力をそれに十分用いていただきたいということを私ども願っておるわけです。大臣はその最高にいらっしゃる方ですから、その点についての御決意を最後にお伺いしたいと思います。
○国務大臣(福田一君) ただいま寺田さんのお話がございましたいわゆる権利の乱用といいます。か、職権乱用があったということは決して好ましいことではございません。したがって、これは極力この実相を調べて、そうして今後そういうことがないようにしなければなりません。ただしかし、事が、こういうことが起きることについて、相手といいますか、そういう大衆行動にも一つの越軌があるというか、良識を超えるようなものがあれば、こういう面もやはりひとつできるだけ慎んでいただきたいということは私としては考えておりますけれども、いまあなたのおっしゃった、警察なり何なりが権利を乱用することがあったとしたならば、これはどうしてもはっきりさせるべきものであると、そういう意味で私は刑事局なりあるいは検察なりが十分努力をいたしておると考えておるわけでございます。
○寺田熊雄君 くどいようですが、国民の側に越軌行動があった場合にそれを法律に照らして必要な処置をとるということの必要を私どもは決して疑いませんし、それが悪いと言っているわけではありません。しかし、その際に国家権力の側が興奮してしまって、そしてその権力を乱用して不必要な殺傷行為をするということ、これは厳に戒めなければいけないということです。どうも何か大臣の場合は、まあ感情に走ってはいらっしゃらぬと思うのですけれども、越軌行動をした方に対するやはりふんまんがあって、権力の行き過ぎに対して何かこう弁解するような傾きがあるのです。が、それはどうでしょうか、いかがですか。
○国務大臣(福田一君) 私がそういう誤解を与えたとしたらそれははなはだ遺憾でございまして、そういう意味ではないのであります。私が申し上げたのは、いかなる場合にも取り締まりをするというような場合においては警察官は冷静でなければいけませんし、その場合にいわゆる冷静を欠いたような行動があったとしたならば、これは当然権力を持っておる者の義務として私は十分に反省もし、また今後そういうことがもしあったとしたならばこれは反省もして、今後そういうことのないように極力努力をいたさなければならないということでございます。ただ、これはお互いにやはりそういうことが常軌を逸するようなことがないようにして問題の解決を図っていくということが言うなれば民主主義の原則ではないかということを私は申し上げたわけでございまして、力でもって物事を処理するということは、できるだけ避けるようにしたいという前提をただ申し上げたと御理解を願いたいと思うのであります。
○寺田熊雄君 これからも検察庁がこうした問題について、鋭意事案の真相の解明に努めてくださるように強く要請申し上げて、この質問を終わります。 次は、刑法の改正についてお尋ねをいたしたいと思います。 わが国は、統一的な刑法典を持っているわけです。これは国民生活に非常な影響を持っておるので、これの改正というものは大変な難事業で、これは通常国会の百五十日の会期にこれに対して徹底した調査、審査をするということは非常に困難でしょう。統一法典全体を見るというのはなかなか私どもにとっても容易な作業じゃありません。何か承りますと、大臣は、そういうふうな観点を踏まえて、新しいアイデアを最近打ち出されたということが新聞紙上に伝えられておりますね。これは大臣の御責任として私ども理解できないことはないと思うのですけれども、その伝えられる内容が非常にまちまちであります。与野党が共同で見直すとか、超党派の研究会を設置するとか、衆議院の法務委員会の中に小委員会を設けるとか、これは事前審議方式であるとか、衆参両院の法務委員会内に小委員会を設け、つまり合同の小委員会とするとか、これはさまざまな報道がありますので、われわれとしてもつかまえにくい。ここで、大臣、あなたの斬新なアイデアについて十分御説明を願いたいと思います。
○国務大臣(福田一君) いろいろの報道が伝えられておることは事実でございますが、私、この問題についてそういう御疑問がございますので、少しく御説明をさしていただきたいと思うのであります。 この刑法の全面改正については、昭和四十九年の五月に法制審議会が改正刑法草案を答申したことはあなたもすでにもうよくおわかりを願っておるところだと思うのであります。現在、事務当局におきましては、国民の各界各層の意見をこれについて聞きまして、そして中間の検討結果において代案をも作成して、これについての意見を聴取しながら政府案作成のための作業を進めておることは、御案内のとおりでございます。 ところで、刑法のような、いまあなたもお話しがございましたが、国民の生活に深いかかわり合いのある国の基本法の全面改正につきましては、国民大多数の合意を得る必要があり、また改正の実現を図るには、その基本的な部分については軽々に修正すべきではないものの、細部については広く意見を伺って、ある程度柔軟な姿勢で対処すべきであるというのが私の考えでございます。具体的にどれをどうするとかこうするとかという言葉はいまだかつて一言も申し上げておりません。言うなれば広く意見を伺って、ある程度そういうことについては柔軟な姿勢で臨むべきであるというのが私の考えであります。その意味において国民の総意を代表する国会においてこの問題について真剣な検討をいただくことは、今後における政府案の作成についてきわめて望ましいことと考えております。しかし、私はそれをやっていただきたいということを申し上げたことはございません。幸い衆議院の法務委員会を中心に刑法全面改正について検討を行う機運があるやに伺っているのであります。そのような際には、最大限の協力を惜しまないとともに、その御論議に対し虚心に耳を傾けたいと考えるのが私の考え方でございます。
○寺田熊雄君 大変用心深い御答弁だと思います。がね。広く意見を伺って柔軟な姿勢をとるということをまず伺いたいのですが、これは、大臣、いままで法制審議会の議を経た改正刑法草案が出ております。それからいわば代案と称せられるものが法務省から昨年発表せられました。そうした内容に対して、国会に提出する刑法の改正法案、これは法務省案にこだわらずに、大衆の意見、国民の意見を取り入れて政府案をつくりましょう、こういう御趣旨と承っていいわけですね。
○説明員(伊藤榮樹君) 若干の経緯がございますので、まず私から御説明申し上げます。 ただいま御指摘のように、改正刑法草案が発表されましてからいろいろ各界各層の御論議がありまして、それらを踏まえまして昨年の六月に刑法全面改正についての検討結果というのを発表しておるわけでございます。ところが、この検討結果を発表しましたことが世上やや間違ってとられておる向きがあるのではないか。それは、法務省が検討結果におきまして若干の点について代案を提案いたしました。この代案の線が法務省のいわば俗な言葉で言うと譲り得るぎりぎりの線だというふうな御理解が一般的に流れておるのじゃないか。そうだとすれば私どものまさにPR不足でもあろうと思いますが、この検討結果の発表の際に一応の代案を示し、その他の事項については改正刑法草案の規定のままでいいと思うと申しましたのに続けまして、次のように申しておるわけでございます。「右の検討結果は、現段階における一応の考え方を示したものであって、代案を作成した部分についてもその他の部分についても、最終的な政府案の作成に当たっては、今後における各界からの意見及び批判を十分に考慮する。」というふうに述べておるわけでございまして、各界各層の御意見を十分承って検討材料とする、そのもっともいい方法の一つが国民の総意を代表しておられます国会における御議論であろう、こういうのが私が大臣から伺っておりますお考えでございます。まことに私も同感でございまして、いままでたとえば非常に片寄った議論がお互いにかみ合わないままなされてくる傾向があったのがこの基本法の改正問題についての一つの不幸な現象であったろうと思うのでございます。そういう意味におきまして、十分御議論をいただいて、それでその中から大臣が仰せになりましたようないわゆる柔軟な姿勢でまた虚心な気持ちで取り入れるべきものは取り入れて、そして国民の大多数の意見を反映した刑法をつくっていきたいと、こういうふうに考えて私ども作業さしていただいておるわけでございます。
○寺田熊雄君 刑事局長の御説明を伺うと、最初の出だしの方は何か余りそう譲歩するものじゃないぞという固い姿勢が伺われて、その終わりの方になるとやはり各界の意見を取り入れて柔軟な姿勢をとるという大臣の御説に非常に賛成するんだという、これはまあ政府案を作成する場合に柔軟な姿勢をとるということ以外には考えられないので、だからやはり結局はいままで発表された草案や代案にはどこまでも固執するものではないと、反対があれば十分その点を考慮して政府案をつくりましょうと、そういうふうに理解してもいいわけでしょう。
○説明員(伊藤榮樹君) 基本的にはただいま御指摘のような姿勢で臨みたいと思います。ただ、この際ということでいろいろな反対意見が出て草案の骨子が崩れてしまう――全体としてのわが国の刑罰体系、恐らく現在罰則を有する法律等は八百以上あると思いますが、それらに全部響く問題でございますので、そういう刑事政策の根幹に触れるような点は一部の反対があるからといって譲ることはできないと思いますけれども、その余の問題点につきましてはできる限り最大公約数と申しますか、最小公倍数と申しますか、そういうようなものを見つけながら私どもも政府案の作成に当たりたいと思っておるわけです。
○寺田熊雄君 局長、いまおっしゃった草案の骨子、刑事政策の根本に触れる点というのは何です、具体的におっしゃってください。
○説明員(伊藤榮樹君) この骨子と申しますものは、ただいま私は骨子という二字で申し上げたわけですけれども、言うはやすくなかなか御説明は困難なことはおわかりだろうと思います。何が骨子に触れるかと、こういうことになりますれば、現在のこの刑法草案を貫いております基本的な姿勢、たとえば総則関係の規定をごらんいただきますと、やはり責任主義というようなものを貫いております。たとえば一部に言われておりますような北欧系の責任を論じないで社会防衛的な立場で刑罰あるいは保安処分を一本にするような考え方、こういうような考え方を取り入れるということになれば、もちろん骨子に触れてまいります。さらに、今日合理的な理由があって処罰の対象とされておるような犯罪類型、これを改正の過程にいわば便乗するというような形で不可罰にしていくとか、これは一つ二つの例でございますが、いろいろなことが考えられると思いますけれども、そういった点が一、二の例を挙げれば根幹に触れてくるのではないかというふうに思っております。
○寺田熊雄君 総則の責任主義から言いますと、これは保安処分はもう責任論を離れて一に社会防衛的なものでしょう。あなたのおっしゃるその骨子に触れるということをいま伺いますと、刑事政策の根幹に触れるという問題を伺いますと、結局、保安処分の規定は譲れないというような問題に帰着するように思いますが、どうでしょうか。
○説明員(伊藤榮樹君) いまだ各方面の御意見を十分承りつつ政府案を確定する作業をしておる段階で、私が軽々なお答えをするのはどうかと思われますが、私個人の気持ちといたしましては、草案の一つの刑事政策的なポイントは保安処分であろうと思っております。ただ、この保安処分の問題についてはさまざまな誤解がございまして、私どももう少しあらゆる機会をとらえて御説明しなければならぬと思っておりますが、御指摘がございましたので私個人の気持ちを率直に申し上げれば、保安処分というものはやはりどうしても必要なものじゃなかろうかと思っております。
○寺田熊雄君 これは、大臣、広く意見を伺って国会で真剣な検討をしてもらう、幸い衆議院の法務委員会で全面検討の機運があると聞いているというお話がございました。大臣のお聞きになっている全面検討の機運が衆議院の法務委員会にあると聞くという、その聞く全面検討の機運というのは衆議院法務委員会のどういう方面にどういう方法で検討するというふうにお聞きになっていらっしゃるのでしょうか。
○国務大臣(福田一君) 法務委員長の上村さんがそういうようなお考えを持っておいでになって、一、二の方に相談してみたところが、場合によってはやってもいいじゃないかというようなことを言っておられるというわけでありまして、確定したこととして申し上げたのではございません。したがって、私は機運があるという言葉で表現をさしていただいたわけでございまして、決まったというわけでもなければ、私の方からそれはぜひやってくださいと申し上げたわけではございません。ただ、草案が決まってから三年も四年もたっておるのにそのままにしておくということはやはり考えなければならないので、事務当局の方はいろいろの形でまた意見を聞いておる。しかし、国会は何といっても全国民の意見を代表して物事を審議する場所でございますから、そういうことでそういう機運が出てくればそれはありがたいことである。しかも、各党各派の人が入っておいでになりますから、そこでいろいろお話があり、あるいはまた外部からもいろいろ御意見でも聞いていただくというような形があったとすれば――これはどうされるか知りませんよ。私は運営の仕方まで伺っておるわけではございません、まだ。まあこれは結構なことであるというのが私の考え方でございます。
○寺田熊雄君 これは衆議院法務委員会におきましても、個人的なものであればそれは政府案の作成に取り入れてもらうというような可能性は全くないわけですから、やっぱりそれは公的なものでなくちゃいけないでしょう。公的なものといいますと、どうしても何か法務委員会の通常の審議を離れてそれを専門に検討するというようなものが当然考えられるわけですがね。やっぱり、大臣、あなた具体的なものは全く考えてないとおっしゃるのだけれども、大臣の構想の中にはあるんでしょう。こうあってほしいというようなそういうものが大臣のアイデアの中にはあるのじゃないでしょうか。事前審議方式というか、まあそれを事前審議方式と言うとちょっと語弊があるかもしれないけれども、つまり法制審議会の刑法部会のようなものが国会にあって、そして政府案の作成に何らかのまあその採否は別として寄与をしてほしいとか、あるいは刑事局長の言われたような誤解があるから誤解を解く機関にしたいとか、そういうふうなものがやっぱり大臣の構想の中にはおありじゃないでしょうか。ただ、何にもなくて、衆議院の方に機運があると聞いたと、できれば協力したいというような漠然たるものだと、あれほどまでに具体的なものが報道せられるはずがないと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(福田一君) 報道のことについて私は御批判を申し上げるつもりは全然ございませんが、たとえば商工委員会とか文教委員会とか各委員会において問題を検討するような場合がいままででもございますね、法案がなくてもそういうことをひとつ検討しようというようなことがありますね。だから、私はそういうようなものがあれば、それは結構なことであるという考え方を申し上げておるのでありますが、私が法務大臣としてこうしてくれとか、ああしてもらいたいとかということを言いますと、これはかえって問題の本質を誤って誤解を受けるおそれがあるわけであります。したがって、私が積極的にそういうことを申し上げるということはいたすべきでないと私は考えておるわけでありまして、法務委員の立場からお考えをいただければ刑法改正という問題はこれは非常に重要な問題の一つである、法務委員会においては一つの重要な問題である、そういうことについて御相談をされ、あるいは協議をするようなことをされるということは私は結構なことである。そういうようなお話があれば、そういうような空気があれば、そういう機運があれば結構なことだというのが私の一般的な考えでございまして、あえて法務委員会の問題だけをとらえて言っておるのではございません。私は、国会における各委員会の運営のやり方において、この種のやり方は、いろいろの問題について非常に困難であった場合に、そういうようなやり方をすることは望ましいのではないか。刑法問題だけを取り上げておっしゃっていただくと、かえってこれは誤解を生ずるおそれがある。私はやはり議院というものは国民の意見を代表する大きな公的機関であるという意味合いにおいては、そういうことで御勉強をいただくことは望ましいことではあると思いますけれども、それを私から発議いたしますというと誤解を招くおそれがあると思います。私はそういう気持ちはいまのところございません。
○寺田熊雄君 まあわれわれが大臣と衆議院の法務委員長との間のそうしたいままでのお話し合いというものを余りせんさくするのはどうかと思いますけれども、大臣としては、あれですか、衆議院の上村法務委員長から何らか具体的な構想というものはお聞きになっていないのですか。ただ漠然と全面検討の機運があると聞いている、上村さんが一、二の委員と話し合っているという程度で、余り具体的な構想を上村さんからお聞きになったというわけではないのですか。というのは、新聞紙上では、大臣が上村さんや永野さん――自民党の法務部会長などとどこどこでお会いになって、何回会ったというようなことまで報道されておりますから、どちらからそういうイニシアチブがとられたかということは別として、ある程度の具体的なものがあるように考えられるのですが、その点はありのままにおっしゃっていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
○国務大臣(福田一君) 私は、法務大臣といたしまして、刑法改正草案が四年前にすでに一応決まっておるのに、そのままほうっておいていいとは、そのままにしておくということは法務大臣としての職責を十分に果たしておるとは考えません。したがって、これを何とか処理をしなければならない。また、私はやはり大臣としての義務があると考えております。 そこで、そういう場合において、いろいろこれについては意見がございますから、また世論もございますから、そういうことも十分に考えていかなければならないという意味で事務もまた一つの草案をつくっていろいろ聞いておるということでありますが、それは何かやはりそれだと役所がこうつくった案じゃないかというようなまた反発も出てくるおそれがある。そうすると、本来の刑法改正をやらなければならないということについては、やはりもっと公権的な国会あたりでそういう話があれば一番望ましいことではございます。しかし、それを私が積極的に言い出すということは、いかにも何か無理してでも通そうというような意思に取られると私はこれはプラスにならない、マイナスになると思います。したがって、こういう問題をほうっておくわけにはいかないじゃないかと私は思っておるんです。まあひとつ皆さんよく考えてみてくださいという話をしたことはございます。それは新聞に出ておるとおりでございまして、四年も前に決まったのに法務省としていろいろやってはおるけれどもそれでまとまるというような空気にもなっていないようであるし、こういう点については皆さんひとつ十分御考慮、御配慮を願いたいということを申し上げたことは事実でございますけれども、たとえば委員会において何かつくってくださいとか協議機関をどうしてくださいとか、そういうことを言った覚えはございません。何かひとつ十分にお考えを願いたいと。まあ出られた人は専門的な方ですから、専門的とか法務に非常に関係のある方でございますから、そういうことから一つのヒントみたいなものがあって、法務委員長が二、三の方に諮られたのではないかと私は思っておるわけですが、法務委員長からこうしてこうしてこういうものをつくりますという具体的なお話を承ったことはございません。しかし、いやしくも国会は政府と違って独立の機関でございますから、その国会においてこういうことをしたいというお考えがございますれば、これに私はどういう形でそれができようとも反対する権限もなければ、そういうことをしてはならないのだと思うのでありまして、そういうことがあればそれに従って御協力申し上げるというのが政府の立場であると、こういう考え方で望んでいきたいと思っておるのでございます。 まあこれも新聞で伝えるところによりますというと、参議院でもそういうようなお話も一部にあるようなことが新聞に、これは新聞でございます。から誤解をしていただいては困るのでございます。が、とにかく国会でおやりになることについてわれわれがそれに異議を差しはさむというようなことをする考えは毛頭ございませんので、その点はひとつ十分御理解を願いたいと思うところでございます。
○寺田熊雄君 刑事局長、刑事政策の根幹に触れる問題の一つとして保安処分の問題をあなたはおっしゃったわけですが、各論の中で非常に議論になっておる幾つかの点がありますね。私は正直に言って、個々の点をとらえればプラスの規定もあると思いますよ。たとえば現行刑法の二百条が明らかにこれは草案にはないわけですね。もちろん代案にもない。それから最近はやっている人質を取って強要するというような問題についてもやはり新しい規定を設けようとしている。個々の点をとればそれはプラスの面もないわけではないけれども、しかし害悪の方が若干目立つものだから、また保安処分などは御承知のように戦前の予防拘禁の暗いイメージが私どもから言って消えてないものだから、議論にならざるを得ないわけですね。ですから、そうした刑事局長のおっしゃる誤解を解くことも必要だろうし、もしそれが妥当なものであるとするなら、われわれのそうした暗いイメージというものを取り除いていただかない限りは御賛同はできないということです。それから公務員の機密漏示罪であるとか、それから企業秘密漏示罪であるとか、私どもから見るとなかなか受け入れがたい規定が各論の中に盛られているわけですけれども、代表的な最も議論の強いものは各論の中ではこの二つかもしれない。これは刑事局長としては譲りがたい線なんだろうか。これはやはり国民の意見を広く伺って柔軟な姿勢をとりたい、そしてそれを草案の中に生かしたいという、その姿勢の中に入っちゃうものだろうか、あなたの個人でもよろしいが、承りたいと思います。
○説明員(伊藤榮樹君) いま具体的な問題について御指摘でございますが、この検討結果の報告におきましても、その最後になお主要な問題点というのを列挙しておりまして、ただいま御指摘の事柄はいずれもその主要問題点の中に入っておるように思いますが、これらにつきましていま個人としてでもいいからどう思うかとおっしゃいましても、どうも刑法の全面改正というような重要な事項につきましていささかでもバナナのたたき売りのような感覚をもってお答えをするというようなこともいかがかと思われますし、御指摘のような問題を含めて、たとえば先ほど来大臣がおっしゃっております国会における機運、それが盛り上がりましてそういう場で御議論があるというようなことにでもなりますれば、まさに虚心にそれらの御意見を伺って、それぞれの御意見の論拠とされるようなところを十分吟味いたしまして、そしてよく考えさしていただきたい、いささか抽象的で恐縮でございますが、そういうつもりでおります。
○寺田熊雄君 それでは刑法改正については以上の点にとどめまして、次は、警察庁とそれから外務省、それから入管の局長にお尋ねしたいことがあります。 まず警察庁に承りたい。外事課長来ておられますね。私どもいままでしばしば金大中事件に関して御質問を申し上げたのだけれども、いままでの政府の答弁ですと、外交的な決着はついたけれども犯罪の捜査は続行すると、そして特段の新しい事実なり証拠が挙がればその外交的な決着というものもまた再考の余地があるというようなことになっておるようですね。そうすると、もうすべてが警察庁の犯罪捜査の推移にまつということのようですね。私もこの八十国会の予算委員会でこの問題をお尋ねをしたのだけれども、それからまた数カ月の時日がたっておるので、その間に金炯旭証言が飛び出したり、新しいいろいろな資料が出てきたのだけれども、その捜査に何か新しい進展があったかどうか、まずそれをお伺いしたい。
○説明員(城内康光君) お答えいたします。 金大中事件につきましては、私どもが警視庁におきまして鋭意捜査を続けているわけでございますが、ただいま御質問にもありましたように、その間内外でいろいろな情報があったわけでございます。たとえば六月二十二日の金炯旭氏の証言もその最たるものであったわけでございます。警察といたしましては、そういう事柄につきましても十分な関心を持ちましてつぶさにそういったものを検討いたしまして、その中に私どもの捜査を進展させる何らかの手がかりがないかということをつかむ努力をしていたわけでございます。で、金炯旭氏の証言がありました後に、いろいろな報道もされておりますけれども、つぶさにそういうものを検討しておるわけでございます。しかしながら、捜査の観点から見ますと、そういったものはどうも残念ながら私どもの捜査を進展させるものたり得なかったと、つまり証明力のある事実をつかむには至らなかった、こういうことでございまして、特に本日その後の進展として新たに申し上げるべき点は残念ながらないわけでございます。
○寺田熊雄君 金炯旭証言は、政府は伝聞証言として簡単にその証拠能力というものを否定し去るわけですけれども、公判廷においての伝聞証言が全く証拠能力がないというわけではないので、ことにその金炯旭に語った人間が現実に金大中事件に関与をしたとみずからその点を金炯旭氏に告白をしたんだということになると、これはかなりな信憑性というものを持つわけです。だから、これを一概に伝聞証言だなんと言って否定し去るということになると、これはむしろ何か政治的な要素というものが強くそこに生きているような感じさえ持つわけです。もしそういうような疑いがあるならば、なおさらあなた方は金炯旭氏にその話をしたという当時の金在権公使、これにやはり当たってみる必要がある。福田さんなんかも接触したいなんということを言っている。鳩山外務大臣もそういう答弁をなさったことがある。そうすると、あなた方としては、鋭意捜査という中には、当然、金在権との接触、この証言を求めるという作業が何よりも優先して入ってこなければいかぬわけでしょう。そういう努力をしておられるのだろうか。
○説明員(城内康光君) お答えいたします。 ただいまの御質問にもありましたように、金炯旭氏が金在権氏から聞いたということが中心になっているというふうに理解されるわけでございまして、私どもといたしましては直接金在権氏から事情を詳しく伺いたい、こういう気持ちを強く持っているわけでございまして、そういう考え方に立ちましてすでに外務省に対してそういうことの実現方につきいろいろとお願いをしているわけでございます。
○寺田熊雄君 まあお願いをしていることはわかるのだけれども、それがいままで全く功を奏していないのですか、何らのきっかけがつかめないのだろうか、その後の経過をちょっと伺いたい。
○説明員(遠藤哲也君) いまの外事課長の御答弁のとおり、警察からの依頼を受けまして、金炯旭証言がございましたのは先ほど説明のとおり六月二十二日であったわけでございますが、七月の早々にアメリカの国務省に対しまして、実は日本としては金在権から任意の事情聴取を行いたいと思っておる。ついては、アメリカ国内におる人でございますから、アメリカの政府としてはそういったような任意の事情聴取をすることに同意をしてくれるかという点が第一点。それから第二点としまして、もしそうであれば金在権さんの任意の事情聴取でございますから意向を聞いてもらいたい。この二点をアメリカ国務省に対して申し入れを行ったわけでございます。それに対しまして、八月の十七日、これはワシントン時間でございますが、八月の十七日、アメリカの国務省の方から在米の大使館の方に返事がございまして、その返事も二点あるわけでございますが、まずその第一点は、アメリカ政府としては、日本の関係当局が来て金在権さんから任意の事情聴取をすることにつきまして問題はない、反対はしない、それが第一点でございます。ついては、金在権氏にどうだということの意向を確認した。確認した結果は次のとおりであった。その第一点といたしまして、金在権さんとしては日本の関係当局の事情聴取に応ずるべき義務というか、必要はないと思う。しかしながら、あえてこれに反対することもしない。第二点といたしまして、しかしながら、いま金在権氏の家族がアメリカで新しい生活を設定しようとしていることでもあり、そのパブリシティを与えられることにつきましてはいやなんで、アメリカ国内での事情聴取に応ずることには反対である。こういうふうな返答が八月の十七日に参ったわけでございます。 そこで、それでは私どもの観点はなるべく早い時期に金在権氏からの任意の事情聴取を行いたいと、こういうことでございますから、そこで再度アメリカ国務省を通じまして、それでは一体金在権さんはいつごろアメリカから海外に出るつもりなのか。それから第二点といたしまして、それじゃその場所の問題も含めてどういうふうな条件が満たされれば事情聴取に応じてくれるのか。こういう点をアメリカ国務省を通じて、いま金在権氏の意向を照会しておるところでございます。現在までのところ、金在権氏からの返答はアメリカ国務省を通じてはまだ寄せられておりません。 以上が現状でございます。
○寺田熊雄君 いま、何かその事情聴取についてそれが公になっては困るという意味でしょう、パブリシティがどうのこうのと。それはアメリカ国内では困るが、よその国ならばいいというのは、それはどういう意味を持つんだろう。よその国でだれもわからずに行って隠密に事情を聴取されるならいいという意味でしょうか、どういう意味なんだろうか。
○説明員(遠藤哲也君) 先生御指摘のような点につきまして、私も、金在権氏の意向でございます。から、これはこうだということは申し上げられないのでございまして、先ほど申しましたように、その点も含めまして一体どういう条件あるいはどういう場所でなら日本の事情聴取に応じてくれるのかということをいま聞いておるところでございます。
○寺田熊雄君 それはやっぱりアメリカ国務省を通じて聞いておるわけですね。
○説明員(遠藤哲也君) そうでございます。
○寺田熊雄君 それじゃまあその点は鋭意連絡をとって、その連絡がとれ次第、警察庁の担当官が金在権氏が同意し得る場所へ飛ぶわけですね、警察庁として。そういう準備はできておるのですか。
○説明員(城内康光君) 先ほども御答弁いたしましたように、私どもはぜひとも金在権氏から直接話を伺いたい、こういうふうに考えておりますので、条件が満たされれば、私どもとしてはできるだけ早い機会にどこへでも参って話を伺いたい、かように考えているわけでございます。
○寺田熊雄君 その次に、この問題に関連してアメリカ下院のフレーザー委員会が大変なエネルギッシュな活動をしておられる。そして、七月の二十四日には、園田官房長官に対して、在日韓国人の趙活俊さん外三氏のアメリカヘの招請、それに再入国の許可を与えるように協力してほしいという電報を打っておるようですが、これはその前にそういう三人の人にフレーザー委員会の主席調査官のロバート・ベッチャー氏のサイン入りのレターが来ておるようですが、これは、法務省としては、公のものでないと、フレーザーさんのサインがないじゃないかというようなことで余り重きを置かなかったようですが、このフレーザーさん自身の電報というのはいままでの新聞報道では正式な外交慣例に従った要請でないということで拒否されたというふうに報道されていますが、その拒否の理由は、いま新聞報道にある正規の外交慣例に従った要請でないという一点にあったわけでしょうか、これはいかがですか、外務省でもあるいは入国管理庁でもどちらでもよろしいから。
○説明員(吉田長雄君) 最初、ただいま先生のおっしゃいましたベッチャー氏から、その問題の三人の韓国の方にアメリカへ来て非公式にお話を聞きたいということの手紙が参りましたそうでございます。そして、官房長官にフレーザー委員長から電報が来たというのは、その手紙を確認するという電報でございます。したがいまして、これは外交チャネルを通じました正式な日本政府に対する要請ではございませんで、したがいまして政府としてはまだ正式なものとは受け取っておりません。
○寺田熊雄君 正規の外交チャネルを通じたものであれば応ずるという御趣旨に承っていいんでしょうかね。いま、そうじゃないのでというお話があったから、裏返しにすれば正規の外交チャネルを通じた要請がフレーザー委員長からあればそれは考えてよろしいという趣旨に承ってよろしいですか、いかがでしょうか。
○説明員(吉田長雄君) これは要請があった場合にその内容等具体的に検討いたしまして、いずれそのときに結論を出すということになると思います。
○寺田熊雄君 何かその後頻々と、フレーザーさんが正規の外交チャネルを通じて要求すると決定したとか要求する決意であるとかいうような報道がなされますから、その可能性はきわめて高いように思えますが、当然これは日本の主権が侵害された、まあ政府はその点を御否定になるんだけれども、しかし少なくも客観的な事実としてはそういう形が残っていますから、これはきわめて特別なケースと見ていいわけですね、日本の主権に関連する特別なこれはケースである。そうすると、できるだけそうしたアメリカの事情聴取には応ずるべきだと思うのだけれども、この点は入国管理局長、やっぱりそういう前向きの姿勢で取り組んでもらえるかどうか、いかがでしょうか。
○説明員(吉田長雄君) いまさっき御答弁いたしましたように、具体的に内容を見てみないと前向き、後ろ向き、いろいろなことをこの段階で申し上げるのもどうかと思います。
○寺田熊雄君 この点、最終的な決定権は大臣がお持ちですから、大臣としてはいかがでしょう。こうした正規の外交ルートを通じてそうした要請がアメリカの国家機関からあればやはり私は応ずべきだと思いますが、いかがでしょう。
○国務大臣(福田一君) いま管理局長が申し上げたように、具体的になった場合に判断すべきでありましょうが、一般論から申し上げますれば、戦後出入国管理令というのができておりまして、それにはちゃんとこの規定がございます。こういう条件を具備した場合に出国を認め、入国を認めるというような条件がございます。だから、そういうことに当てはまるかどうかということをやはりその場合に検討をいたさなければならない。私としてはやはり法律を守るということが私の義務ではないかといま考えておるわけでございます。
○寺田熊雄君 入国管理局長の御趣旨は外交ルートを通じて来た書面の内容を重んずるような、それによって考えるという御趣旨のように承るし、法務大臣の方は、いまの出入国管理令の条文に該当するかどうかというような、そういう何か余りしゃくし定規のように承るので、そこのところがちょっと質問者としては疑問に思いますがね。これはやはり大所高所から考えていただかないと、出入国管理令の条文がどうだとかそういう余り細かいことにこだわってはどうでしょうかね、いかがですか。
○国務大臣(福田一君) それはまだ具体的になっていないから管理局長はいま申し上げたようなお答えをしたのだと思いますけれども、私は法務大臣という立場から言えば、出入国管理令は法律でございます。その法律に従って対処するのが私の任務であると、このように考えておりますから、どういう形で何が来るかわかりませんが、それをそのときに照らしてみて、法律に反すると、法律等は無理だというようなことになりますと、先ほどはしなくもあなたが仰せになりましたけれども、いわゆる国の自主権の問題に関係があることだからということを先ほど仰せになりましたが、その問題ともにらみ合わせながら態度を決定しなければならない、かように考えております。
○寺田熊雄君 これは出入国管理令の当面の最高の主管者である入国管理局長がおられますからこの際特に承りたいのだけれども、出入国管理令とその下にある施行規則を丹念に読んでみると、別段いままで反対の論拠になっていた理由といいますか、韓国政府発行の旅券云々というような問題は絶対の要件ではないように思うのですがね。だから、便法が――もちろん法務大臣のおっしゃるように法を無視してという趣旨ではありません。しかし、現行法の範囲内で再入国の許可を与えるということは可能なように思いますがね。だから私は申し上げる。この点、局長、いかがでしょうか。
○説明員(吉田長雄君) 具体的にならないとはっきりわからないと申しましたのは、そういう点も含めてでございまして、いろいろな場合があり得るわけでございます。技術的に考えましても。したがって、一概にどうだこうだとここで議論はちょっといまの段階でできないことを御了承願います。
○寺田熊雄君 大臣、いま局長がお話しになりましたように、絶対に現行法上できないという問題じゃないので、これはいまの出入国管理令やその施行規則などを丹念に読んでみますと、よしんば韓国政府発行の旅券がなくてもこれはやはり便法がある、つまり再入国の許可を与えることが可能であるというふうに、私どもは現行法の解釈として可能だと思うのですよ。ですから、もしそれが可能であれば、頑強に許可を与えることを拒否するというのは、何か韓国政府に気がねをするということに尽きるのではないか。それは、それこそわが国の自主性というものを損なうわけで、わが国の主権に甚大な影響のある事件について新しい事実が得られるかもしれない、そういうアメリカの国家機関の作業に対して協力を与えるということには、そんな遠慮なさる必要はないと思うのですよ。ですから、その点は前向きにお考えをいただきたいということが私どもの強く御要請するゆえんなんです。これは、大臣と局長、もう一度その点についてはっきりとした御答弁をいただきたいと思うのです。
○国務大臣(福田一君) 私はその法律の解釈あるいはそういう便法適用のやり方でそういうことができるのかどうかということは、全然ないとは思っておりません。たとえば赤十字が何らかのあれを発行するとか何とかいうような便法はあるわけでありますが、その他の方法によってあり得るかどうかということについてはまだ決断は下しておりませんけれども、概して私は否定的な考え方を持っておることは事実であります。これは申し上げていいかどうかわかりませんが、アメリカの場合においては、外国人が永住をいたしております。場合の出入国は政府の権限で無条件でできるようになっております。日本の法律は、一応旅券というものがちゃんと、旅券が必要であると、当該外国人が所属する大使館の旅券というものが必要であるというのが大前提になっておるわけであります。これに対して例外として何らかほかに措置があるかもしれませんが、前提はそういう旅券というものが一番大前提になっておるわけでございますからして、その場合において、まあどう処置すべきかということになりますというと、私はやはりその法律を守っていくのが正しいのではないか。特にアメリカが占領時代につくられた法律でございます。この法律は。その法律をいままで改正する話がありましたけれども改正ができないで今日に至っておるということもあなたは御存じのとおりでございまして、もちろんこの問題をテーマにして改正案が出たわけではございませんが、そのままずっといままで慣行上行われておるわけでございます。したがいまして、その法律に基づいて私としては態度を決めていくのが私の任務であると、かように考えておるわけであります。
○寺田熊雄君 そういう条文の解釈はやはり私は専門家である事務当局にお任せになった方がいいと思うのですよ。先ほども入国管理局長はそういう可能性というものも否定できないので、そういうことを総合して手紙が来てから考えるというふうにおっしゃったわけですから、大臣が否定的な見解を打ち出したのでは事務当局はもうそれに従わざるを得ないわけです。どうでしょうかね。それはやはりそういう法の問題は事務当局の専門家にお任せになって、大臣はやっぱり大所高所から政治的な意見こそ御決断になるべきなのであって、法の解釈をいきなり大臣が打ち出すというのはいかがでしょうかね。むしろ出入国管理令施行規則の第二十四条、それから第十八条二項、管理令の二十六条第一項などを総合しますと、あえて旅券というものは絶対の条件ではないように思いますがね、現行法の解釈として。この点は、局長、いかがでしょう。
○説明員(吉田長雄君) 旅券またはこれにかわる文書となっておりますが、問題は旅券が出ない場合にそういう文書をちゃんとわれわれのところに持って来てくれるかどうかの問題でございます。
○寺田熊雄君 局長のおっしゃるそういう文書というのは、具体的にはどういうものを指しますか、証明書です。
○説明員(吉田長雄君) たとえば、アメリカへ行きたいというなら、アメリカ大使館がここで外人旅券を出すとか、それから渡航証明書を出すとか、こういう方法でございます。
○寺田熊雄君 いま局長が御答弁になりましたように、大臣、法の解釈はやはり事務当局にお任せになりまして、そして大臣はこれもアメリカの国家機関の要請にこたえるべきか、それが国益にかなうかどうかという非常に政治的な問題について大臣の前向きの御決断というものを私どもは要求いたしたいと思うのです。どうぞ、そういうふうに大臣に御処置をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(福田一君) だから、そういうものが出た場合に考えなければならないことでございます。それを最終的には考えなければならないことですが、これはやはり主権の問題と若干関係がありますし、アメリカの国会が要請されれば日本の政府はそれに従わなければならないかどうかというような問題も出てまいりますね、その場合においては。アメリカ政府の要請ではございません。その場合には外交チャンネルでお互いに話をすればいいが、たとえば日本の国会でものを決めてそしてアメリカにそれを要請するというような場合、いろいろの場合が今後国際慣行上出てくるだろうと思うのです。そういうことも調べてみます。と、いろいろのことが考えられるわけであります。が、私はやはりアメリカの国会が要請されても日本の法律にちゃんと適応するものでなければこれは望ましくないことになる。しかもアメリカの政府自体がそういうお考えであるかどうか、アメリカの国会がそういうことであってアメリカの政府がどういうふうに考えておられるかどうかということもまだ何も出てきておらないわけであります。からして、この段階において私はこれにこうであるああであるということをはっきり申し上げることはできない。その意味では入管局長の言っておることが正しいのであります。正しいのでありますけれども、日本の国の主権をやはり守るということは私の任務の一つである。その場合に、事に応じて処理判断をいたさなければならない。こういうふうに考えております。
○寺田熊雄君 これはまあある意味で議論のようになりますが、大臣のおっしゃる主権という意味が私にはわかりません。むしろ金大中事件は日本の主権が侵害された事件なので、私どもはそう理解していますよ。そうでしょう、日本の国内から他の何びとかがですね、私どもはそれは韓国の官憲だと思いますけれども、法秩序を無視して国外へ拉致したわけですね、強制的に。まさしく日本の主権が侵害された事件です。ですから、そういう問題に対するアメリカの調査に協力するということが何で日本の主権を侵害するようなことにつながるのでしょうか。まさにそれは逆だと思いますよ。ですから、何かその認識をむしろ改めていただかなければいけないので、しかもアメリカの国務省の方は日本の外務省を通ずる警察の金在権元公使に対する捜査に非常に協力しておりますわね。向こうはこちらに協力する、こちらは何か協力することが日本の主権の侵害になるかのごとき大臣の御答弁はまさに反対じゃないでしょうかね。むしろそういうお考えこそ韓国政府に気がねした、日本の誇りを捨て去るようなものにつながるのじゃないでしょうか。これはもうよほどお考えを改めていただかなければいけないと思います。が、いかがでしょうか。
○国務大臣(福田一君) すでに日本の警察は金大中事件についていろいろ調査をしたが、ある程度までははっきりしたけれどもそれ以上はわからないということになっておるのでありまして、はっきり金大中事件というのが不法に行われたということが明らかでございますれば、いまあなたのおっしゃったことはごもっともな御意見であると思うのでありますが、それについてはまだ結論がついておらないわけでございます。その結論のついておらない問題について処理をいたす場合においては、私はやはり日本の立場というものも十分考えてやるべきではないか、これが私どもの任務ではなかろうかと、かように考えておるわけでございます。いまあなたのおっしゃったように、もうこれは非常に間違ったことをしたということが警察の方で取り調べがきっちりできておりますれば、これはもちろん韓国に対しても抗議を申し込まなければいけませんし、あらゆる意味においてやり方が違ってくるだろうと思います。しかし、その点がはっきりしない段階におきましては、私はいま申し上げたようなことも十分、すなわち主権の問題も十分考慮して処置をいたさなければならない、これがわれわれの任務である、かように私は思っております。
○寺田熊雄君 大臣のおっしゃることを前提にいたしましても、いま日本の警察が鋭意捜査を続行するというそういう作業をしておられるわけでしょう。大臣御自身がそれには協力するということを八十国会の予算委員会で私の質問に対してお答えになっていらっしゃるのですよ、そうでしょう。この金大中事件の問題に関して警察が鋭意捜査をしておる、それは法務省としても絶えず検察庁が連絡をとってそのことには協力をするということをおっしゃっていらっしゃる。それならば、そういう一連の作業がアメリカで行われている場合に、アメリカ側も日本の捜査に協力しているというそういうお互いの関係の中で、こうして法務大臣がひとりそれをいやいやなさるのでしょうか、むしろそれは進んで協力して実体を明らかにする、それに協力なさることが日本の警察がそうした実体を明らかにする作業に役立つことじゃないでしょうか。だから、どうしてもわからないのですよ。大臣はどうしてそんなにいやがられるのか、もっと虚心坦懐にこの問題を見ていただきたいと思います。いかがでしょうか。
○国務大臣(福田一君) 私は決してこだわるつもりはございません。日本の政府として、日本のいま警察が一生懸命調べておる、まだはっきりしないというこの事実を踏まえて処理をいたしてまいるわけでございまして、それがはっきりいたしますればもちろんわれわれとしてはアクションを起こさなければならないし、その他の問題についても考え方を改めなければならないかもしれないと思っておりますが、いまの段階においてそういうことをすることが正しいかどうかということについては、まだ具体的に問題が出てこないからです。けれども、一般論的に考えれば、私はそういうふうにはっきりした筋道が立たないうちにとやかく申し上げることは差し控えたい。すなわち、それは認めましょうと、こういうような意味のことを言うことは差し控えたいというのがいまの考え方でございます。
○寺田熊雄君 いや、大臣ね、こだわらないでください。いいですか、いま、入管の局長は、現行法上そういう外交旅券がなくても、他の証明書でそれが法的に充足される場合があるということをおっしゃるわけですよ。だから、そういうものがあれば法律上少しも差し支えないとおっしゃるから、そういう条件が満たされた場合に大臣がなおかついやいやをなさるような御答弁をなさるから、そうあるべきではないでしょうと、法律的に少しも差し支えない場合にはアメリカのそうした正しい目的に御協力になってもいいじゃありませんかといま私が申し上げておるわけですよ。おわかりいただけるでしょうか、いかがでしょう。
○国務大臣(福田一君) こういう問題は疑義を起こさしてはいけないので、具体的な事実、具体的な行動がとられたときに処置をいたすべきものであると私は考えておるわけであります。いま言った入管局長がそういう場合ということを申したわけでございますが、そういう場合に全然日本の立場を考えないでオーケーと言う場合もあるかもしれませんし、やはりその場合でもこういうことは困りますという自主性というものは、ある程度法律の条文を見た場合においても、全然もうその場合はすぐオーケーと言えるかどうかという問題もあります。やはり具体的な問題として提示された段階においてわれわれとしては考えるべきである、こういうことであって、いまの段階においてそれは認めますと、すぐに認めますと、こう私からはお答えはいたしかねると、こういう意味合いを含めて申し上げておるわけであります。
○寺田熊雄君 時間が参りましたから、大臣、余りこの問題で水かけ論みたいになってもいけません。ただ、大臣が余り最初否定的におっしゃったから、否定的なようなニュアンスを持って御答弁になったので、それは間違いでしょうと申し上げたわけで、大臣が一概にオーケーとは言えないという――一概にオーケーとは言えないというのと否定するというのとは非常にニュアンスが違いますからね。だから、私は、日本の自主性というのは、むしろ韓国政府に気がねをしないことの方の自主性を大臣がお考えいただきたいと思うのです。そういうことで善処していただくように御要請申し上げて、きょうの質問を終わります。
○国務大臣(福田一君) 私は韓国政府に気がねなどは一切いたしません。そういうつもりで物事を申し上げておるのではないので、私としてはその場に応じて考えなければならないことであります。けれども、しかし、先ほどあなたもお話しになったが、日本の主権に関係のある部面が、問題が出てくる、疑義が出てくる可能性もありますから、軽々にいまここでわかりました、そうしますと、こういうようなことは申し上げかねるということを強く最初申し上げておったわけだと御理解を賜りたいと思うのであります。
○上田耕一郎君 金大中事件について質問したいと思います。 レイナード証言に続くKCIA元部長の金炯旭証言、それからアメリカ下院のフレーザー委員会の調査でも、金大中事件がKCIAの犯行だということが一層裏づけられたと思います。いまそれを認めようとしないのは、加害者の韓国政府と当の被害者の日本政府といわばエクセプトツーだと、そういう感じさえ私はします。二月二十二日の参議院予算委員会で、私の質問に対して福田首相が、刑事事件の成り行きによっては政治決着をつけ直すこともあり得るということを答弁されました。わが党は先日訪米調査団を派遣いたしましたけれども、その調査結果を踏まえながら質問したいと思います。 金大中氏の原状回復、それから犯人の処罰、これを一日も早く実現するためには、改めて事件の全貌と政治決着の経過、こういうものを洗い直すことが国会の大きな責任であり義務であると私どもは考えます。 まず最初に、事件そのものについて態度をお伺いしたいのですが、この事件の刑事事件としての性格、それから時効ですね、時効は大体何年と考えておられるか、この点について。
○説明員(城内康光君) 金天中氏拉致事件につきましては、私どもは事件が発生しました段階で、ほぼ確実にあり得る犯罪形態ということをとらえまして、逮捕監禁略取事件として捜査をしておるわけでございます。逮捕監禁につきましては時効は五年、それから略取につきましては七年ということでございます。 しかし、私どもは他の罰条に触れる可能性というものを初めから排除しているわけではございません。たとえば、いろいろな可能性として申し上げますと、逮捕監禁にさらに致傷がつく場合とか、あるいは金大中氏の供述の中にたとえば物がとられたというようなくだりもあるやに聞いておりますが、そうすれば、強盗あるいは強盗致傷傷害、それからまた殺人未遂の可能性、予備の可能性・暴力行為の可能性、あるいは出管令の可能性、あるいは現場の遺留品の状況などから銃刀法違反、そういったいろいろなあらゆる可能性というものを想定し、しかし予断に立つことなく捜査を進めてまいる、こういうことでいるわけでございます。
○上田耕一郎君 いま大分罪名をお挙げになりましたけれども、それを聞いただけで相当な大事件だということがはっきりしていると思うのです。殺人未遂の場合には時効が十五年ですね。私ども調査団がアメリカに参りまして各関係者と会いましたが、フレーザー委員会のスタッフを初めアメリカ側は例外なく殺人未遂事件だと、それを前提としてこの金大中事件を考えている。私どもが会いました朴政権やKCIAに近いある人は、なぜ殺人計画とみなすかと、なぜ殺人計画を立てられたかについて事情を話してくれました。これは西ドイツの有名な拉致事件がありました。あれが国際的に大問題になって、西ドイツに十七名一年たって帰さざるを得なかったということから、金大中氏を再び日本で拉致事件を引き起こすと一層大問題になるというので殺人した上にその死体を絶対に出てこない方法でおもりをつけて海に沈めてしまう。そうすると蒸発事件になるわけですね。グランド・パレス・ホテルから出て八月八日にどこかへ行っちゃった、行方不明だ、そうすると永遠のミステリーということにして政敵を抹殺しようという計画であったということが明らかになりました。捨てていないというふうに言われるのだけれども、金大中氏が記者会見で述べたこと、それから韓国政府を通じてとった供述書の中にも、おもりをつけられて船の上から沈められようとしたということがあるわけですから、当然、殺人未遂事件、時効は十五年ということで調べなきゃならぬと思うのです。先日の予算委員会の理事会で、警察庁の山田官房長は、とにかく時効というものがあるのでなかなかむずかしいんだと、限られた時間でやらねばならぬというようなことを言っておりますけれども、五年とか七年とかいうことでやりますと、もう四年たっていますからね。そういう点で私はあくまでもこの事件の重大な性質から、きっちり殺人未遂事件だという腹構えで捜査していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○説明員(城内康光君) 先ほど御答弁いたしましたように、私どもは捜査する立場でいろいろな事態、可能性というものを想定しながら、しかし、はっきりしているものというところで逮捕監禁略取ということで捜査をしているわけでございまして、たとえば海中に重い物をつけて投ぜられようとしたというようなことの供述があるということは知っておりますけれども、そういったものは今後の捜査においてはっきりと裏づけられるべきことであろうと思います。 それからまた、時効のことでございますが、犯人が日本国にいない場合は時効の停止ということもあるわけでございます。また、事件の性質が、たとえば殺人の予備であるとか未遂であるとか、あるいは傷害であるとか、そういうようなことが明らかになりますれば、それはまたそのときに事件の発生時点から年限を勘定すればいいということでございまして、先ほどの繰り返しになります。が、はっきりしているもので予断を排してやっているということでございます。
○上田耕一郎君 この事件は、それは金大中蒸発事件、殺害事件として計画されたものですけれども、幸い金大中氏は命が助かりました。なぜ命が助かったかというと、金大中氏自身が述べておりますように、飛行機、ヘリコプターが飛んできたということによるものであります。私ども、八月十一日に調査団がフレーザー委員会と懇談した際、ベーカー調査員はソウルで金大中氏自身から聞いた話ということで次のように述べています。金大中は船の上で縛りあげられ、海に投げ込まれる状況になっていた。そこへ飛行機かヘリコプターが来て、ラウドスピーカーで殺すのをやめろと言った。そのために韓国内に連れて行かれたということだというのであります。この飛行機ないしはヘリコプターについて、アメリカの元朝鮮部長のレイナード氏も、アメリカのものではないということを述べております。それから金炯旭氏は、日の丸がついていたと、そう述べております。やっぱりヘリコプター、飛行機が飛んできて、そのことでそれを契機にして金大中氏が海に投げ込まれるのが中止されたという事実はきわめて明らかで、その意味ではこの飛行機は金大中氏の命を助けるという上で非常に大きな役割りを果たしたものであります。このヘリコプター、飛行機について、これまでの捜査で一体においも煙も全くないということなんですか、改めてお聞きします。
○説明員(城内康光君) この飛行機あるいはヘリコプターというようなことにつきましては、私どもはすでに報道で承知いたしておりまして、これまでに民間機あるいは公有機含めましていろいろと調査をしたわけでありますが、結論から申しますと、その飛行機を、そう言われている飛行機というものを特定するには至っていないわけでございます。 たとえば、これに関連します。ただいまラウドスピーカー云々ということも御質問にあったわけでございますが、金大中氏の韓国政府、外交チャネルを通じましての供述の中でも、飛行機ということはありますけれども、そういったことには一切触れられておりません。「しばらく眠り、覚めた瞬間「飛行機だ」という声を聞いた。」というのがあるわけでございます。それからまた、金大中氏自身が日本の報道記者に対しまして自身の発言の録音報道をしておりまして、私どもそれを実は注意深く聞いていたわけでございますが、このように申しておるわけでございます。「船員が飛行機という話をしました。」――ちょっと途中を省略いたしますが、「飛行機が飛んだなと思ったんです。そちらを見ると赤い炎がピカッピカッとこういう感触を受けました。私は或は精神のせいか本当にそういうのがあったのか全く判らない」と、こういうことを日本の取材の報道員に対して録音で言っておるわけでございます。ですから、ここにはそのラウドスピーカーということには一切触れられていない。 それからまた、日の丸ということでございます。が、ただいま読み上げましたように「ピカッピカッ」ということになりますと、どうもこれは夜、もしこれが本当であるとすれば夜である。そうすると、日の丸というのは見えるのか見えないのか、そこら辺もいろいろと問題になる。しかし、まあいろいろと情報がありますから、そういうものは将来の捜査の中でこなしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
○上田耕一郎君 これはまことに奇妙な話で、殺人計画が中止されたと、これは非常にいいことなんですけれども、そこで主役を演じた飛行機について、日本の警察庁でもって、日本で起きた事件で、幾ら調べてもいまのところまだ特定できないという話ですけれども、先ほど五年、七年の時効でもちろんやめるつもりはないというお話ですので、息長くこれを捜査してほしい。ただ、長いだけじゃなくて、しっかりした体制で太く長くやる必要があると思うんですね。 それで、この飛行機、ヘリコプターがとにかく飛んだという事実は金大中氏の証言で明らかなんですが、これが飛んだことについては背景が当然あると思うのであります。当然外交的、政治的背景がある。日本の上空を何ら法的措置をとらないでやみで飛行機が飛んだわけはないわけで、そういう点で、この背後にある外交的関係、日本政府が私は当然役割りを果たしていたに違いないと思います。レイナード元朝鮮部長は、一月十四日、わが党の橋本議員に対して、これは電話インタビューで、金大中氏の誘拐をめぐって日米両国政府が大使館レベルで東京とワシントンにおいて協議したのを初め、当時の米国務省スナイダー極東担当次官補と法眼晋作外務次官が協議したと、こう述べました。これは国会でもわれわれ質問いたしました。今回われわれ調査団がアメリカに参りましていろいろな方と会いましたが、その中の専門家の一人が、当時、アメリカのキッシンジャー大統領補佐官、ちょうど国務長官になる直前の時期ですけれども、キッシンジャー大統領補佐官も金大中の命を救うために努力したという事実を初めて述べてくれました。この人はこう言っています。金大中が拉致された数時間後に私はそれを知った。直ちにキッシンジャーに電話した。彼は驚いた。彼は事件をまだ知らないでいた。私は彼に韓国のKCIAは金大中を殺すつもりだと思うと語った。彼は積極的に反応して、あらゆる手を尽くして命は救うようにすると言った、というのであります。キッシンジャー氏が大統領特別補佐官当時、これはアメリカ外交で非常に大きな役割りを果たしていたことはもう言うまでもありませんし、この元朝鮮部長のレイナード証言と今度われわれが得た証言、キッシンジャー大統領補佐官が金大中の命を救うために、直ちにその当日ですよ、昭和四十八年の八月八日です。数時間後ということですから、動き始めた、動くことを約束したということは、この点でアメリカ政府が金大中氏の命を救うためにあらゆる外交的努力を尽くしたということを改めてはっきりさせていると思うのです。 それで外務省にお聞きします。八月八日に事件が起きてヘリコプターが飛ぶまで、この一、二日、二、三日の間ですが、当時アメリカ政府及びその機関から、日本政府、大使館あるいは何らかの政府機関に対して、金大中氏を救い出せと、少なくともとにかく殺害を阻止しなきゃならぬという問題に関連して何らかの外交的接触、要請はなかったのかどうか、この点についてお伺いします。
○説明員(遠藤哲也君) いま先生の御質問の点でございますが、そういうことは全くございません。
○上田耕一郎君 全くなかったという答弁です。そうしますと、たとえばレイナード元朝鮮部長、当時の朝鮮部長ですからね、日米両国政府が大使館レベルで東京-ワシントンで協議した、こういうことも全く否定するわけですか。
○説明員(遠藤哲也君) そういう事実はございません。
○上田耕一郎君 ないという答弁があったと確認しておきます。これは将来さらに問題になると思います。 それでは、韓国政府、その機関、これは情報ルートも含めてですけれども、そういうものがなかったかどうか。と申しますのは、アメリカ側はソウルの大使館が直ちに韓国政府にこの問題で要請をしたそうです。そうしますと、韓国政府は、アメリカ側からのそういう強い要請、金大中事件に対する抗議、命を救わなきゃならぬという要請に対して行動を起こしたかもしれない。そうします。と、韓国政府は、事件はいまだ日本の中で進行中なんですから、日本政府に金大中氏救出のために手を打ってほしいという要請があったのではないかと思いますので、韓国政府、その機関、情報ルートも含めて、一切この問題についての外交的接触その他がなかったかどうか、これもお伺いします。
○説明員(遠藤哲也君) その点もございません。
○上田耕一郎君 こうしますと、もう非常に奇怪なことになります。日本政府並びに日本政府の機関が、アメリカ政府あるいは韓国政府と金大中の救出について何らの外交的接触はなかった、何らの申し入れも受けてなかった。ところが、現実にはヘリコプター、飛行機が飛んでいるのであります。そうして殺害されようとした金大中氏は助かっているのであります。こういうまことにミステリーじみたことがなぜ進行しているのか。これは私は政府は何も言いませんのである糾弾をしたいと思うのですが、わが調査団がアメリカ側と会いましたところ、金大中問題について最もよく知っているのは日本の政府だ、すべての真相を知っているのは日本の政府だ、日本で起きた事件、それがただ隠されているだけだと、そういうのがアメリカ側の見方でした。だから、アメリカに来て金大中事件の真相を探るとこれはもちろんいろいろ事実や資料や出てきますけれども、一番よく知っているのは日本の政府だということであります。日本の警察だということであります。ところが、肝心のこの部分についても、全くいかなるヘリコプターがどこの命令で政府は何も要請も受けないで、とにかく事実は残っていると。そうします。と、日本政府は何らの要請も受けないでヘリコプターないしは飛行機を飛ばして金大中を助けたのかということが一つの可能性として残りますけれども、これは私もいままでの経過から言いましてもほとんど考えられない。こういう問題について、ではどの方向でこの飛行機問題について捜査しようとしているのか。事実は飛んでいるわけですから、皆さん方は、この問題について、これまでの調査結果を踏まえて、どういう仮説、どういう方法、これを想定して捜査しようとしているのか、はっきりお答え願いたい。
○説明員(城内康光君) 船の上を飛行機が飛んだということでございますが、この飛行機がこの事件に関係があったのかなかったのか、そういうことを判断する段階では全くございません。私ども先ほど御説明いたしましたように、それなりの捜査はしておるわけでございますが、金大中氏を拉致したと言われているその船がどういう時間にどういうところを通った、そういう位置関係も不明でございますし、例を挙げて大変恐縮でございますが、たとえば大阪湾だということになります。と、伊丹空港を発着する飛行機もあるわけでございまして、あるいは、そうでないまた別なところであるのかもしれませんし、そういうところが基本的なことが不明であるのでよくわからないという点もあるわけでございます。しかしながら、そういうこと、連行ルートのことに関しましても、今後の捜査の中ではっきりとさせていきたい、こういうふうに考えております。
○上田耕一郎君 連行ルートのことをいま言われましたが、これもまことに粗雑な話で、きょうの赤旗をお読みになっていただいたでしょうか。きょうの赤旗の一面に竜金号のルートをはっきり書いてある。これは関門海峡を通った時間まで明らかにされているわけです。赤旗の記者がこういうものを調べて、竜金号の瀬戸内海を通ったと、それからいつどこを通過したかということまで明らかにできるのに、なぜ警察が船のルートまで明らかにすることができないのか、これは全くサボタージュとしか言うことができないじゃないですか。
○説明員(城内康光君) 冒頭明確に申し上げておきますが、金大中氏を拉致したという船、これを警察はまだ特定するに至っておりません。 いま御質問にありました竜金号というものも、当時、大阪、関西周辺から出入りしたということでいろいろ私どもが捜査の対象にいたしました三十六隻のうちの一隻でございます。この船のいろいろな停泊の状況とか、あるいは出航の状況とか、そういうことから見まして、私どもとしてはある程度の容疑というものを持って捜査をしておるわけでございますが、断定するには至っていないということでございます。そしてまた、それぞれの船の運航のルートなどにつきましても、私どもはこれまでの捜査でそれを把握すべく努めてきておるわけでございます。きょうの赤旗の朝刊に出ているような、少し私どもの認識とは時間の点でちょっと違いますけれども、関門海峡を通過したというような事実はつかんでおります。しかし、だからと言ってそれで連行ルートがはっきりしたということでも必ずしもない。というのは、文明子女史の本年二月十四日の発表、それなどを見ますと、あるいはその後の文明子の発言であったかもしれませんが、ともかく文明子女史は太平洋へ出ているということをおっしゃっているわけです。それからまた、金炯旭氏は、瀬戸内海である。いろいろな可能性ということを私どもは考えながらなおはっきりさせてまいりたいと思います。
○上田耕一郎君 三井警備局長は、たとえばことしの八月五日に捜査当局の見解の中で、これは国会でもこういうことを述べたことがありますが、連行船として竜金号の可能性はあるとはっきり言っているのですね。三十六隻調べてこの中で最も可能性が強いのは竜金号だということはもう警察の調べで明らかなんで、竜金号については、じゃルートはわかっているけれども、金大中を連れていった船かどうかはわからぬ、だから金大中を連行した航路はまだわからないというようないいかげんな答弁でこういう問題を済まされては困ると思う。結局、警察の言うことを聞いていると、何もかもよくわからぬ、可能性はあると。もう四年たっている。そういう態度が、これだけの国際的な大事件、日本における主権侵害と金大中氏の自由侵害の大事件をいまだにあいまいにさせている根本問題だとして指摘糾弾しておきたいと思います。 金大中事件は、金大中氏に対する人権の侵害事件であると同時に日本の主権侵害事件であります。法務大臣にお伺いしたいのですが、外国大使館館員が犯罪を犯したとき、一体どういう場合に日本の主権侵害になるのでしょうか。
○説明員(遠藤哲也君) まず、その主権侵害というのは、結局、当該国のいわゆる同意なくしてその国で公権力の行使がある事態だろうと思われるわけでございますが、それでは公権力の行使は何かという点でございますが、これは、一般的に申しまして、ある国家の機関が法令に定める権限に基づいて行う命令的、強制的ないし権力的な性格を持つ職務行為であるというふうに公権力の行使を考えておるわけでございます。 そこで、それでは、御質問の、ある大使館の館員のある特定な行為について、それが公権力の行使であったかどうかというその認定に当たりましては、その大使館員の行為が国の行為であったかどうか、それが問題になるわけでございまして、大使館員のいわゆる全く私的な行為であれば、これはその公権力の行使ということには当てはまらないと、こういうふうに考えております。
○上田耕一郎君 韓国大使館員であった金東雲については、すでに質問があり、それからリュックサックを買った店の少年店員の証言があり、それからエレベーター内での目撃者があり、犯人の一人であることは確定的だと思いますけれども、現在どう考えていますか。
○説明員(城内康光君) もちろんその真犯人であるかどうかということは裁判の結果を見ないとわからないことでございますが、捜査段階では連行犯人の一人であるというふうに考えております。
○上田耕一郎君 劉永福副領事については、その容疑についてはどうでしょうか。
○説明員(城内康光君) 劉永福副領事が本事件に関連したかどうかということについては、私どもは把握しておりません。
○上田耕一郎君 全く容疑は持っていませんか。
○説明員(城内康光君) 御承知のように、劉永福副領事の車がホテルからの金大中氏拉致に使われた疑いがある。しかし、これを積極的に裏づける資料はないわけでございますけれども、末尾の番号が二〇七七であったということでその車が使われた可能性ということは私どもは考えております。が、これまでの捜査で劉永福副領事自身が本件にどのように関与していたかというようなことについては私どもは把握していないということでございます。
○上田耕一郎君 容疑が残ることだと思います。 二千二百十号室に前夜から宿泊していた畑中金次郎ですね、この人はフロントでも顔を見られており、マッサージ師もとっているわけですが、この人について金炯旭氏はたとえば尹英老大使館員だと述べていますけれども、畑中氏についてはこれまでの捜査はどうでしょうか。
○説明員(城内康光君) 結論の方から申し上げますと、まだこれまでの捜査で畑中金次郎を割り出すに至っておりません。 それから金炯旭氏が尹英老氏であるというようなことを言っておられることは私ども承知しております。
○上田耕一郎君 否定はできますか、はっきり尹英老氏ではないということが。
○説明員(城内康光君) 余りはっきりしないことを申し上げるということは適当でないと思います。が、しかし、せっかくの御質問でございますので私どもの考えておりますことをちょっと申し上げたいと思いますが、どうも尹英老氏とはちょっと人相、風体などにおいて違うのではないか、むしろ消極に私どもはこれまでのところで考えております。
○上田耕一郎君 尹英老参事官については、人相、風体と比べて違うというと、あとたとえばフレーザー委員会が七名の実行犯人として発表しておりますけれども、ここで挙げられている在日韓国大使館員尹英老、金東雲、柳春国、洪性採、白哲鉱、劉永福、これらの人と人相その他類似している人がおりますか。
○説明員(城内康光君) 手元に詳細な資料を持ち合わせておりませんが、これまで名前の出ましたすべての人について人相、風体がとれているというわけではございません。ただいま尹英老氏と畑中金次郎との同一性のことについて私が若干申し上げたのは、たとえば尹英老氏は非常にすらりとした細身でございます。しかし、どうも畑中金次郎氏は、目撃者等の証言によりましても、そういう細身のタイプではないと。むしろがっちりしている方であるというようなわりあい見やすいメルクマールがございますので、そういうことを申し上げたわけでございます。
○上田耕一郎君 いや、この六名の中に畑中氏が入っているという可能性もありますか、人相、風体その他から言って。
○説明員(城内康光君) 可能性ということで私どもの勝手な推測を申し上げるのは控えさしていただきたいと思います。
○上田耕一郎君 どうもはっきり可能性はないという返事がないことは、この六名の大使館員の中に畑中金次郎という人物に似た人相、風体の人がやはり一人、二人はいるだろうということであろうかと思いますが、そういうことですか。
○説明員(城内康光君) 六名の名前が挙がっておるということは知っておりますが、それらの人たちがどのように本件に関与していたかということを把握するに至っておりません。そのことをはっきりと申し上げておきたいと思います。
○上田耕一郎君 いや、そう言っているのじゃなくて、六名の名前はフレーザー委員会が発表しているので、その人相、風体は警察も知っているはずなので、畑中氏と似ている人がいるかどうかと。犯人かどうかと聞いているわけじゃないんです。似ているか似ていないかということを捜査結果を教えてくれと言っているんです。
○説明員(城内康光君) 先ほども申し上げましたように、すべての方の、これは主として外交官の方でございますけれども、すべての方の人相が私どもにわかっているわけではございません。繰り返しになりますが、いろいろな可能性というものを私ども踏まえて今後捜査をしていくということを申し上げたいと思います。
○上田耕一郎君 まことに何も調べてないということだと思いますね。日本にいた韓国大使館員でKCIAの疑いがきわめて強くてこれだけ名前が挙げられている人の人相、風体、写真もまだ全部は知らないと、これで四年間調べたということになるのですか。まことにけしからぬ話だと思います。在日韓国大使館だけでなく、在米韓国大使館のKCIAも日本に来て事件に参加したという疑いがあります。われわれの調査団に対して、アメリカ側のある人々は、次の四人の在米KCIA、すべてアメリカの在米韓国大使館の館員ですけれども、その名前が挙がっております。李相浩公使、本名は梁斗元ですが、崔洪泰参事官、朴正一二等書記官、林奎一大佐、このうち李相浩公使は西ドイツ拉致事件の実行責任者であります。国会で以前これが問題になったときに、朴正一二等書記官については来日しているという答弁がありましたが、この四名について、その後の捜査で、当時事件が起きた前後来日していたことがあったかどうか、これは入国管理局長にお伺いします。
○説明員(吉田長雄君) ただいま御質問の四名のうち、朴正一につきましては、朴正一は一九三七年九月二十四日生まれでございますが、職業欄は外交官でございます。昭和四十八年七月十一日に羽田に入国いたしまして、七月十二日に出国しています。また、同年八月七日に羽田に入国し、八月八日に出国しております。その他の三名につきましては、全部いま電算機に入っておりまして、いま動かしておりますが、きょう午後にしか結果が出ないのであります。
○上田耕一郎君 それでは、結果が出ましたらお知らせ願いたいと思います。 フレーザー委員会のスタッフたちは、わが党の調査団に対して、金大中事件について収集した資料と証拠は委員会の調査が終わると全部公表される予定だと、そう申しました。 それからフレーザー委員会が集めた証拠、資料によると、金炯旭証言を打ち消すものは一つもないということを述べております。先ほど私は六名に触れましたが、金炯旭証言による六名、フレーザー委員会も発表したのですが、これは金炯旭証言によるだけでなくてわれわれの得た証拠とも一致しているということでフレーザー委員会が発表したものであります。この六名中、なんと五名は在日韓国大使館員であります。参事官が二人、一等書記官が二人、二等書記官が一人、それから副領事が一人であります。それから四名については、これは明らかにKCIAでありますが、アメリカから四名が日本に来たといわれております。これはわれわれもまだ一人しか来日の証拠はつかんでいない。きょう午後いただけるということです。特に、李公使は、西ドイツ拉致事件の現地指導者であります。 さらに、事件をもう一度振り返ってみますと、実行犯人が六名、自動車は二台であります。アンの家、モーターボート、船によって釜山まで連行している。どれ一つを見ても先ほどの話の個人的な私的な犯行であり得るはずはないのです。これは韓国国家機関の介入であることはまことに明白であって、金東雲その他の本当に私的な個人的な犯行だというようなことは全く考えられないと思いますけれども、どう思われますか。
○説明員(城内康光君) この事件は、私ども、非常に複雑な韓国の政治情勢を背景にして発生した政治的色彩のきわめて強い事件であるというふうに判断しておるわけでございます。それだけに、警察といたしましては、もちろん捜査本部にはいろいろなニュアンスの犯人像が情報的に寄せられているわけでございますが、政治的な色彩が強ければ強いだけ私どもといたしましては推測を排して事実を積み重ねて客観的に事案の真相を解明するという努力を積み重ねてまいるつもりでおるわけでございます。
○上田耕一郎君 もうこの四年間にまことに後退であります。事件当時、九月五日、二階堂官房長官は、記者会見で、捜査事実に基づいて今度の事件に韓国政府機関が関与しているという事実を確認せざるを得ないと、政府の官房長官が九月五日にはこう記者会見で述べている。四年たつと何が何だかわからなくなる、こういう政府の後退ですね。これはまことに心外であります。当時の田中伊三次法務大臣は、九月十三日、参議院法務委員会で、私的な個人的犯罪としてこんな犯罪が起こり得るか、この犯罪は職務的な犯罪じゃないか、国家の公権力の指示を受けなければ行えない犯罪ではないか、政治的には証明が要らないものである、そう述べている。現法務大臣はいかがです。か、どう考えますか。
○国務大臣(福田一君) 私は、ただいま警察庁の者が申し上げておるように、現在調査中でございまして、これが明らかになった段階においてそのように認めざるを得ないと思いますが、いまの段階で断定することは私としてはできません。
○上田耕一郎君 かくのごとき驚くべき後退を自民党内閣は遂げているのであります。 もう一度警察にお伺いしますが、この金大中事件がKCIAによる犯行だと言われている疑惑について、これを全く否定するのかどうか、この点だけをお伺いします。
○説明員(城内康光君) 私ども、これまで、KCIA――韓国中央情報部ですね、による犯行の可能性までも否定しているということではないわけでございます。私どもはいろいろな可能性というものを織り込んだ上でいろいろな想定に立って捜査を進めてまいるということを繰り返し申し上げているのであります。
○上田耕一郎君 いままでの答弁でも、たくさんの可能性を持っているだけで、一つもその可能性を現実に調べる追及はしていないということが明らかですけれども、少なくともKCIAの犯行であり得る可能性は否定していないということは確認しておきたい。 なぜこういうふうに後退しているかということについて、私は日本の警察に出されている疑惑に移りたいと思います。当時の高橋幹夫警察庁長官は、昨年の八月、これは国会で取り上げられましたけれども、警察官友の会の教養講座で、KCIAの犯行であることは間違いないと、金東雲を以前からわしは知っていたと、こんなことをする男だと思っていなかったけれども逆手をとられたなどと述べました。これも国会で問題になりました。新たに金炯旭元KCIA部長は、事件の起きたときの八月一日に、神戸の領事の金哲煕を含む三人の写真を金在権公使に見せて、こういうことはするなという警告をしたと証言しました。金公使はあわててこの金領事を白哲鉉一等書記官に交代させたと、そういう証言がありますが、重ねてこういう事実は全くないのかどうかお伺いします。
○説明員(城内康光君) 金炯旭氏が、六月二十二日のフレーザー委員会における証言で、警視庁が韓国中央情報部のメシバーなる者を尾行して写真を撮り、警視庁がまた金在権公使を呼んで警告したというようなことを申しておることは知っておりますが、繰り返しはっきり申し上げますが、そういった事実は全くございません。
○上田耕一郎君 ところが、四十八年の事件が起きた直後、これは恐らく捜査当局が新聞記者に漏らしたか話したか、オフレコという形かわかりませんが、話したことだと思いますけれども、同じような事実が新聞で報道されております。たとえば八月十四日付の共同通信は、高橋警察庁長官は韓国大使館の金在権公使と弄大使館員の二人に対し金大中氏誘拐計画があると警告を発していたと、そういう情報が流れているという新聞報道がすでに当時の八月十四日に流れているのであります。新聞に載っているのであります。だとすれば、この高橋警察庁長官の奇怪な行動についての金炯旭氏の証言は、金炯旭氏の創作ではないじゃありませんか。
○説明員(城内康光君) 事件が発生いたしまして間もなくの国会におきまして、やはり社会党の先生からだったと思いますが、警察に対しまして、その高橋前長官が金在権氏を事前に呼んで警告したというような論議があったということを私は記憶しておりますが、その後の国会におきましても明確に申し上げておりますように、そうした事実は全くないのであります。
○上田耕一郎君 金大中秘書の趨活俊氏、先ほど寺田委員の質問の中でも出てまいった人ですけれども、先日九月十五日に開かれた国民大法廷で証人に立ちまして、次のように述べました。八月の九日の午後六時に捜査本部が設けられたと、それから十数時間後の翌日の昼ごろ、八月十日私は捜査本部で事情聴取をされたと。この趨活俊氏が事情聴取をされたわけですが、すでにそのとき警察は金大中が来日してから泊まったすべてのホテルの名前、それから泊まったときの仮名ですね、これをつかんでもうリストにしていたと、そう証言しました。これは新聞その他でも趨活俊氏が何回も繰り返したことですけれども、捜査本部ができて十数時間後にもうホテル名から何から全部警察が知っていたということは、日本の警察が金大中氏の問題について来日以来ずうっと実は事前に調べていたと。そうなると、KCIAの問題についてもかなりの情報その他を持っていたのではないかという疑惑を裏づける一つの問題でありますけれども、来日以来金大中氏の動向、したがってまたその金大中氏をねらっているKCIAの動向について何らかの動きを知っていたと考えられます。が、どうでしょう。
○説明員(城内康光君) 事前に警察が金大中氏の動向、所在などを知っていたかということでございますが、私どもは事前に全く知らなかったわけでございます。金大中氏が入国いたしましたのは七月十日でございますが、私どもは七月十二日になってそれを知りまして、銀座第一ホテルに係官が参って確認をいたそうと思ったのですが、そこにはおられないということで、私どもは金大中氏の所在というものを知っていないわけでございます。 それから御質問の冒頭に超活俊氏のお話が出たわけでございます。このことにつきましては新聞等で私どもは承知しておりますけれども、これは趨活俊氏から事情聴取を八月十日にいたしたわけでございますが、趨活俊氏に対して係官が金大中氏の宿泊状況を尋ねましたところ、金大中氏の宿泊先は転々としていたので具体的に覚えていないけれども、金大中氏の警護に当たっていた二人の人の名前を挙げまして、その人たちから聞けばよくわかるだろうということで、それから私どもの方の係官が名前を挙げられたお二人の方からいろいろそういうその間の事情を聞いて、それをまた私どもの足でいろいろ確認をして、そして宿泊の状況を把握したということでございます。また八月十二日には再度趨活俊氏から事情聴取をしておりますけれども、その際同氏から金大中氏の宿泊先をみずから書いたメモなどをいただいて私どもの確認の一助としていたといういきさつがあることを御説明しておきます。
○上田耕一郎君 いまの答弁は、私がきのう警察庁のある方から聞いたことと全く食い違っている。この方は、私が聞いたところ、もう徹夜で全部ホテルを調べたんだということを言いました。いまの答弁は、その方の私に対する話とも、また超活俊氏の私は誠意をもって改めてこのことを証言するということを言った証言とも全く食い違っている。 私は、こういう経過から見ても、非常にやはり疑惑がある。高橋幹夫当時の警察庁長官については、先ほどの金在権公使に対する警告の疑惑もありますし、金炯旭証言によれば、秘密の警察同士のKCIAとの協力協定まで結んで判を押したというきわめて重大な証言さえ出ております。私は委員長にこの高橋幹夫氏をこの委員会の証人として喚問することを要求したいと思います。
○委員長(中尾辰義君) ただいまの上田君の高橋君の件につきましては、理事会で諮ります。
○上田耕一郎君 私は、政府に対して、この金大中氏とそれから金東雲氏、これから直接事情を聴取すること、それから金東雲氏については身柄の引き渡しを韓国政府に要求すること、こういうことを望みたいと思います。 金大中氏は、言うまでもなく当の被害者本人であります。先ほどのはラウドスピーカー問題もありましたが、いままで政府は韓国政府に頼んで金大中氏の供述書をもらっているということです。しかし、それでは足りません。日本の警察が実際に日本で調べた証拠に基づいて金大中氏から事情を聴取する必要がある。いまだにアンの家もどこだかわからぬ、どの船に乗せていかれたかわからぬ。わからないことばかりであります。しかし、金大中氏自身に日本の警察が調べたいろいろなことを詳しく聞けばアンの家についてさらに詳しい証拠も出るわけでありますし、当然金大中氏に対する詳細な事情聴取が必要であろうと思います。 それから金東雲については、先ほども答弁がありましたように、裁判が終わらなければわからないということですけれども、加害犯人の一人である、連行犯人の一人だということは明白だという答弁がありました。指紋というのは、当時の田中伊三次法相によりますと、地球の人口三十二億人いるけれども、その中で一つとして同じ指紋はないという答弁があったほどであります。あれだけの証拠がそろっているのになぜ金東雲を起訴しないのか、それからまた、なぜ韓国政府に身柄引き渡しを要望しないのか。 金大中氏に対する事情聴取、それから金東雲に対してなぜ起訴しないか、また身柄引き渡しを要求しないのか、この点についてお伺いいたします。
○説明員(遠藤哲也君) 金大中事件の経緯につきまして、一九七五年、もう二年以上前でございますけれども、一月二十二日に、韓国政府から口上書が寄せられまして、金東雲の捜査結果及びその処分状況につきまして日本側に通報してきたわけでございます。日本側としましては、口上書の内容が日本の真相究明上必ずしも十分じゃないということであるとしましても、韓国側が金東雲元駐日書記官につき捜査の結果、嫌疑事実を立証するに足る確証は見出し得なかった、したがって不起訴処分にはした、しかしながら公務員の地位剥奪という行政処分としては最終的な措置をとった、こういうことをあわせて通報してきたわけで、韓国側としては一つのけじめをつけたものとして日本側としましてはそれなりに評価し、それと同時に、一九七三年十一月に金国務総理が来日し、事件の発生につきまして遺憾の意を表明した、こういうことをあわせ考えまして、日本政府としては、この事件捜査につきましてはこれ以上韓国側に申し入れを行わない、行うことは適当ではない、こういうふうに日本政府が判断したわけでございまして、この観点からいま申したような金東雲及び金大中も含めまして事件捜査につきましては韓国側に申し入れを行うことは適当でない、こういうふうに判断をしておるわけでございます。
○上田耕一郎君 警察側としては、いまの措置に対してどうなんですか、やむを得ないとお考えですか、非常に残念だとお考えですか。
○説明員(城内康光君) そういう外交的な決着の問題について警察がいろいろと論評する立場にはございません。
○上田耕一郎君 福田法務大臣、いまのを聞いているとおかしくありませんか。先ほど、あなたは、寺田委員の質問に対して、フレーザー委員会から趙活俊氏ら三名の出国の要望に対して日本の自主性の問題があると。アメリカの国会が何を決めようが日本の法律に合おうが合うまいがさらに自主性がある、そういう観点から検討すると言われましたね。今度はどうですか。金東雲という明確な犯人の一人、日本の警察があれだけ調べて、少なくともこの金東雲については指紋から何からびしっとそろっているのに、韓国側の政府の口上書は一体どういうことですか。調べたけれども個人の犯行という証拠がないと、しっかりしたあれがないと。それで韓国側としては打ち切ると。それからそれに結びつく外交的決着がつけられたのだけれども、それで日本側としてはいまの態度はこれはやむを得ないという態度のようですけれども、それと先ほどのあなたの自主性ということと明らかに矛盾するじゃありませんか。フレーザー委員会の方に対しては、つまり、金大中事件の解明に熱心な側に対しては大いに自主性を発揮して、金大中事件を覆い隠そうという韓国政府のことに対してはまことに唯々諾々として自主性を放棄する、こういう矛盾をお感じになりませんか。
○国務大臣(福田一君) ただいま外務省側が申し述べたことによって解決するということを決めたわけでございますから、これはこれでわれわれはそれを承認するというか、認めておるわけでございます。一方はすでに解決済みの事件であり、片一方はこれからの問題でございますからして、私は別途の考慮があったからといって何も矛盾はしておらないと思います。
○上田耕一郎君 それはまことに言葉だけの言い方で、これの矛盾はあなたも内心はお気づきのことだろうと思います。あなたが自主性を盛んに強調するアメリカ側は、たとえば朴東宣のアメリカの国会議員買収事件問題についてはっきり起訴をいたしまして、朴東宣の身柄引き渡しを韓国政府に対してあれだけ強く要求しているじゃありませんか。それから私は先ほど当時の田中法務大臣の引用をしましたが、もう一度この問題についても引用したい。事件直後の八月二十四日の衆議院法務委員会で、田中伊三次法相は、どうしても金大中を帰してくれない場合においては捜査官を派遣して捜査を繰り返す、こういうことをやる以外にないということまで述べているのであります。警察側としては、この金東雲の身柄引き渡しその他あるいは捜査官の派遣について外務省側に重ねてこの段階でもう一度要求することを検討するというつもりは全くありませんか。
○説明員(城内康光君) 国と国との関係でございますので、それは外務省において取り決めがなされたということでございますので、そのように受け取っております。
○上田耕一郎君 もう時間が大分たちましたのでそろそろ私は結論に入りたいと思いますが、金大中事件を改めてわれわれ国会がその全貌とその後の経過を洗い直さなきゃならぬということは私の短い質問の中でもほぼ浮かび上がってきたと思う。事件が発生した直後約一カ月間はかなり日本の警察は調べました。積極的に調べました。国会の答弁でもかなり積極的な問題点が浮かび上がってまいりました。ですから、先ほど私引用しましたように、九月の五日には二階堂官房長官でさえ、さえという言葉を私はあえて使いたいのです。が、記者会見で、捜査事実に基づいて今後の事件に韓国政府機関が関与しているという事実を確認せざるを得ないとまで述べているのであります。また、九月の新聞は、六人の犯人について名前まで大体割り出したということを一斉に報道しているのであります。ところが、四年たって可能性ばっかりでまだ何にもわからぬ。結論は出ていない。公権力の犯罪であることもうやむやである。金東雲という明確な犯人、これについての起訴もしない。それから身柄引き渡しの要求もしない。捜査官をも派遣しない。韓国政府の態度は、最初は恐らく金東雲の個人的な犯行であろうと言った。その後その犯行である証拠さえないと。まあ監督の責任ぐらいはあるだろうということで民間人に格下げになったんですけれども、そういうことでけりがついちゃった。それで幾ら追及しても具体的に打てる手も打とうとしないのであります。その答えとして出てくるのは、政治的に決着がついたと、もう外交上けりがついたということであります。 ですから、問題は、結局、田中内閣、三木内閣、それから福田内閣、この歴代の三代の自民党内閣の金大中事件に対する政治姿勢、韓国朴政権政府との政治決着、それを支持する姿勢そのものに入ってくると思います。この点でいまの幹事長の大平氏の田中内閣外務大臣当時の参議院外務委員会での答弁を私はまず紹介したい。大平外務大臣は、四十八年九月十一日、「政治的解決ということばですが、これは事実の解明を抜きにいたしまして解決するというようなことは私は許されぬと思うのでございまして、解明を踏まえた上で納得のいく解決をしたい」と。つまり事実の解明なしに政治決着はしないということを大平外務大臣が参議院の外務委員会ではっきり答えているのです。ところが、どうですか。解明なしに政治決着をしてしまったじゃないですか。そのため、金大中氏は当然現状回復されなければならないのに、いまだに獄窓で呻吟しているのであります。西ドイツの政府は、西ドイツ拉致事件に対して韓国に対する経済援助まで打ち切ると、国交まで断交することもあり得るという強い抗議で、一年後に十七名全部取り返している。全く月とスッポンじゃありませんか。金大中夫人は、最近、日本の政府が西ドイツの政府のようにやってくれていたら、金大中、私の夫はいまや自由の身であっただろうということを嘆いているのであります。 この政治決着については、田中内閣当時の第一次決着と、三木内閣当時の第二次決着があります。この第一次決着、これが行われるきっかけになった十一月二日の田中・金鍾泌会談、これを私は問題にしたいのですけれども、当時田中首相は朴大統領の親書にこたえる朴大統領あての返書を金鍾泌氏に渡しました。その内容を公表したいと思いますが、外務省、どうでしょう。
○説明員(遠藤哲也君) 十一月二日に田中当時の総理大臣より朴正煕大統領あての親書が出たわけでございますが、この要旨でございますが、ちょっとお読みいたします。「金大中氏事件により、日韓両国間の友好親善関係に一時わだかまりが生じたことは、誠に遺憾なことでありました。日本政府としては、この事件の筋の通った、内外に納得の得られる解決を希求してまいりましたことは御高承の通りであります。この度、韓国側において、所要の諸措置を執られたほか、特に金国務総理をわが国に派遣され、貴大統領自らの遺憾の意を親書にしたためられ、友好関係増進への期待を申し越されたことは、多とするところであります。これにより、本事件に外交的な決着をつけ、日韓関係の公正かつ順調な発展という両国民共通の願いが達成されることを切に祈ります。」以上です。
○上田耕一郎君 私は親書全文を資料として要求したのですけれども、いまの要旨しかもらえなかった。当時の新聞にもこの要旨しか発表されていない。全文はなぜ発表できないのですか。
○説明員(遠藤哲也君) これは両国間の外交文書でございますから、全文発表ということは差し控えさしていただきたいと存じます。
○上田耕一郎君 それでは、外交文書で発表しないと申しますので、韓国国会で金鍾泌氏が戻りましてからこの報告をしております。その記事が一九七三年十二月四日付の世界週報に載っております。この中には非常に重大な文章があります。金鍾泌首相は国会でこう述べている。これに対して、田中首相から、「韓日両国間に増進されていっている」-かぎつき引用です。親書をそこを読み上げたわけだ。「韓日両国間に増進されていっている友好関係を慶賀するが、金大中氏事件が起こったことは、自分としても非常に遺憾にたえないと思う。」次が問題だ。「しかし韓国大統領の、国際間にありうる刑事事件によって両国間の友好に少しでも亀裂があってはならないという高見にはまったく同意見であり、そうならないように最善を尽くす」と、こういう文書があるんです。つまり、両国間に起きた刑事事件によって友好は亀裂されちゃならぬと、よし賛成だと、刑事事件は全く別において友好関係をやろうと。だから、政治解決、政治決着が全く優先です。ところが、この刑事事件というのは、金大中氏を殺そうとして、自由を侵害して、しかも日本の主権を侵害しようとした大事件なんです。両国関係の友好はこの事件の解決を除いてないじゃないですか。日韓両国間の関係を彼らが主権侵害で破壊しようとしている。この問題を、主権侵害をよそにおいて、これを全く別において政治決着しようと、こういうとんでもないことを田中親書は書いてある。それを喜んで金鍾泌首相自身が国会で読み上げているんですよ。私は、田中首相のこういう重大な書簡ですね、あなた外交関係と言われたけれども、向こうの国会でも公表されて、日本の雑誌でも載っているんですから、少なくともこの部分を含む田中首相の朴大統領あて親書をこの委員会に資料として提出することを要求いたします。
○委員長(中尾辰義君) 理事会で検討します。
○上田耕一郎君 だから、この第一次決着がまことにとんでもないことでやられたんですよ。私は、二月二十二日、福田首相に聞いたんです。刑事事件が新しい発展があった場合には政治決着をやり直すことはあり得ると。これは田中首相のこの親書とは違うことは明らかです。田中首相のこの親書は、刑事事件がどうあろうと、とにかく政治決着しちゃおうと言うんでしょう。しかし、福田首相は、政治決着をも刑事事件の発展によっては見直すということをはっきり言ったんです。いまや刑事事件そのものについては内容は多く次々と事態が明らかになっている。フレーザー委員会も近く集めた資料、証拠を終わり次第発表すると言っている。わが日本でも、もう皆さん方は平気な顔をして否定しようとしているけれども、当時の新聞を見てごらんなさい、当時の国会答弁を見てごらんなさい、山のように事実が明らかになっているんです。それをひた隠しに隠そうとしている自民党内閣の姿勢そのものに大問題がある。第二次決着のとき、社会党の小林進委員の質問主意書に対して三木内閣は答弁書を出しました。驚くべきことが書かれている。「我が国において、外国の公権力の行使により、日本に居住する日本国民及び外国人の基本的人権が侵害されたような事例は承知していない。」「政府としては、韓国中央情報部部員が日本国内に存在し、かつ活動を行っているとの事実はは握していない。したがって、特別の外交措置を執るという問題は生じていない。」まことに恥ずかしい文章です。あなたは、先ほど、KCIAの犯行である可能性も否定していないと言った。ところが、それよりももっと後退している。基本的人権が侵害された事例は承知していない、KCIAが活動していることについては事実を把握していない、何らの外交的措置をとる問題は生じていない、これが三木内閣の第二次政治決着です。こういうことを日本の国会としてそのままにしておくことは私は許されないと思います。金大中氏に対しても、世界の世論に対しても、自由と人権の問題に対しても、日本の国民に対しても、日本の国会としては決して放置しておけない。 もう時間が参りましたのでこれで終わりますけれども、われわれは、政府の責任を追及し、金大中氏の原状回復と犯人の処罰、この問題の徹底解明のために国会としての努力を評価したい、そのことを申し述べまして、質問を終わります。
○委員長(中尾辰義君) 本日の調査はこの程度にとどめます。 ―――――――――――――
○委員長(中尾辰義君) 委員の異動について報告をいたします。 本日、鳩山威一郎君が委員を辞任され、その補欠として北修二君が選任されました。 本日はこれにて散会いたします。 午後零時四十八分散会