法務委員会 第4号
- 発言数
- 195 件
- 登壇者
- 12 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1977/03/24
会議録
○委員長(田代富士男君) ただいまから法務委員会を開会いたします。 検察及び裁判の運営等に関する調査を議題といたします。 まず、さきの委員会で御報告いたしました鬼頭史郎にかかわる議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律違反被疑事件に対する不起訴処分につきまして、法務省当局から説明を聴取いたします。石山公安課長。
○説明員(石山陽君) 本件に関します告発に基づきます東京地方検察庁の捜査結果につき御報告を申し上げます。 昨年の十一月十三日、当委員会から当時京都地方裁判所判事補鬼頭史郎に対しまして、本院のロッキード問題に関する調査特別委員会委員長と当委員会委員長の連名で、それぞれの委員会を代表して告発状が最高検検事総長あて提出されました。 右告発状の事実の要旨は、そり前日、本国会内において開催されました右両委員会の連合審査会におけるいわゆるにせ電話事件の審議に際しまして、証人として喚問されました右鬼頭元判事補が正当な理由なく宣誓を拒んだというものであります。 右告発状は即日東京地検に移送、受理されまして、同地検においては鋭意捜査を遂げました結果、去る三月十八日、本件告発事件につきましては、同日付右鬼頭に対しまして別途いわゆるにせ電話事件に関し軽犯罪法一条十五号違反として渋谷簡易裁判所に公判請求処分がなされたこととの関連におきまして、不起訴処分といたしました。すなわち、宣誓拒否罪の規定を設けておりますいわゆる議院証言法の四条によりますれば、証人が民事訴訟法第二百八十条に定めます刑事上の訴追を受けるおそれがあるときは宣誓を拒むことができるものとされております。ただいま申し上げました鬼頭元判事補に対しますにせ電話事件の捜査の結果、同人が真犯人と認定されるに至りましたので、まさに本件の場合は宣誓当時右鬼頭が刑事上の訴追を受けるおそれがあったと客観的に認められますので、法律上の観点から本件につきましては犯罪は成立しないものという認定のもとに不起訴処分にいたした次第でございます。 簡単でございますが、右捜査経過につき御報告申し上げます。
○委員長(田代富士男君) 以上で説明の聴取は終わりました。 引き続き、本調査の質疑を行います。質疑のある方は順次御発言願います。
○佐々木静子君 それでは、ただいまの法務当局の御報告を伺って、それに対する意見、あるいはこれに関連して昨日の鬼頭判事補が弾劾裁判所で罷免判決を受けたことに関しまして質問をいたしたいと思います。 まず、最高裁事務総長に伺います。この二十年ぶりと言われる現職裁判官が弾劾裁判所で罷免の言い渡しを受けた事柄について、最高裁当局としてどのように考えておられるか、まず述べていただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) いま佐々木委員からお話しのとおり、ここ二十年間二千数百の裁判官が訴追を受けることなく公正さにおいてそれなりに国民の信頼を得てまいったわけでございますが、今回一判事補の心なき行為により罷免の判決を受けることになりましたこと、最高裁としても深刻に受けとめておる次第でございます。 今回の事件は、鬼頭元判事補の個人的な職務外の行為に関するものでありますが、裁判官の身分を有する者が政治的に色彩の強い行為に加わったというふうに言わざるを得ないわけでありまして、裁判官の姿勢において国民の疑惑を招くに至りましたことをまことに遺憾に存ずるところでございます。裁判所といたしましては、今回の罷免の判決が裁判官の職にある者に対して、かりそめにも公正中立をなおざりにすべきでないというお話と厳粛に受けとめまして、今後とも裁判官一人一人がお互いに戒め合って、弾劾裁判所の判決の要請にこたえて国民の裁判所に対する信頼を回復するように努めてまいりたい、かように考える次第でございます。
○佐々木静子君 裁判官を任命するのは政府になるわけですけれども、法務大臣とすると昨日の罷免判決を受けてどのようにお考えになっておられますか。
○国務大臣(福田一君) 厳正公平、不偏不党の立場に立って正しく法を運用していかなければならない裁判官が、このような事件を起こしたことにつきましてはまことに遺憾と存ずる次第でございまして、将来かかることのないようわれわれとしても十分注意をいたさなければならないと考えておる次第であります。
○佐々木静子君 ただいま刑事局から鬼頭判事補を当委員会から告訴した件について不起訴にした理由を御説明ございましたが、この軽犯罪法違反事件で三月の十八日に渋谷簡裁へ起訴されておられるわけですが、その起訴状の内容を御説明いただきたいと思うわけです。
○説明員(石山陽君) それでは、公訴事実の要旨について御説明申し上げます。 本件の軽犯罪法第一条十五号違反という容疑のもとに公判請求されました公訴事実の要旨は、鬼頭元判事補は、検事総長でないのに昭和五十一年八月四日ころ東京都渋谷区にあります前の内閣総理大臣三木武夫氏の自宅に電話をかけ、同人に対しまして検事総長の布施であるというふうに称しまして、いわゆるロッキード事件に関連しまして、外国為替及び外国貿易管理法違反等によりまして現に勾留中でありました田中角榮元内閣総理大臣の処分等につきまして直接裁断を仰ぎたいというようなことを申し向けるなどいたしまして、検事総長である官職を詐称したという事実でございます。
○佐々木静子君 これは最高裁当局に伺いますが、この時点においては鬼頭史郎は現職だったわけでございますが、現職裁判官が刑事訴追を受けたというような例はいままであるわけですか。あるとすれば何件、どのような事件があったわけでございますか。
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 現職の裁判官が刑事訴追といいますか、起訴を受けたのは今回が初めてでございます。
○佐々木静子君 それで、また法務省に伺いますが、この軽犯罪法違反の被疑事実でございますが、これは弾劾裁判所に対する訴追請求の中には、いわゆるこの起訴事実の内容に関するものについては含まれておらないわけで、いわば公的な機関においてこの刑事訴追において初めてこの鬼頭が電話をかけた本人であるという認定を検察当局がされておられるわけですけれども、どういう理由からそのような認定をなすに至ったのか、その間の事情を、これは公判の維持に差し支えのない限度において御説明いただきたいと思うわけです。
○説明員(石山陽君) なかなかむずかしい御質問でございまして、ただいま佐々木委員から、最後におっしゃいましたように、本件につきましては実はまだ公判を請求したばかりでございまして、近く公判が開始されるという前提でございますので、いわゆる具体的事件の捜査に関する秘密の問題以外に裁判所に事前に予断を与えないという考慮も当然必要であるという事件でございますので、多くを私から申し上げるのは適当でないというふうに考えておりますが、まあ抽象的に申し上げまして、本件につきまして鋭意東京地検が捜査を遂げました結果各種の証拠を集めましてその認定の結果、検察としては鬼頭元判事補が本件にせ電話事件の犯人であるということを信じ、認定をして起訴するに至ったものであるという程度しか現在は申し上げられないことについて御理解をいただきたいと思います。
○佐々木静子君 これは公判維持の必要上何もかもおっしゃれないということはよくわかりますが、しかし、単なる刑事事件ではなしに、これはやはり政治的にも非常に大きな、これだけ国民が関心を持った件でございますから、やはりもう少しこの電話をかけた本人であると認定した内容についてお話しいただきたい。たとえば、現在進行中の田中角榮氏らに対するロッキード事件などについては、まだ公判自身は始まったばかりでございますけれども、しかし、その被疑事実の内容についてはかなり国会の中でも論議され、また新聞報道などにもある程度のことは出ているわけでございますから、少なくともこの国会においてはもう少し具体的に御説明いただきたいと思うわけです。
○説明員(石山陽君) 同じような答弁になっていささか恐縮でございますけれども、あえて申し上げますならば、具体的な事実の内容について御説明申し上げるのはいかがかと思いますけれども、本件につきましては、マスコミ等に報道されました政治的な問題になっておるという契機につきましても十分東京地検は配慮をいたしました上ですべての人証、物証等につきましては、たとえば捜索、差し押さえを実施するというようなこともございましたし、関係者の取り調べというようなことからの集めました資料に基づきまして本件が間違いないものというふうに認定をいたしたわけでございまして、その詳細等につきましては逐次これから始まります公判におきまして、いずれ検察官から裁判所に提出される資料の開示によりまして明らかにされていくものではないかと、かように考える次第でございます。
○佐々木静子君 これは新聞報道などによりますと、あるいは他の委員会などの調査によりますと、今国会における、この鬼頭氏は、たとえばこのテープを持参して新聞社の方に、新聞の論説委員と出会ったときにも本人が自分でかけたということを何度か言っておる。またその対話の録音テープも何本かあるというふうに、これは他の委員会などでもそうした話が出ているわけでございますが、そうしたものが検察庁の中で任意提出あるいは押収されているのかどうか。そのあたりはいかがでございますか。
○説明員(石山陽君) ただいま佐々木委員御指摘の、その後に鬼頭元判事補が本件のにせ電話のテープなるものを読売新聞社に持ち込んだというような点につきましては、すでに弾劾裁判所の罷免事由の主たる理由になっておるわけでございまして、これはいわゆる検察がこのたび起訴いたしました軽犯罪法違反の事実とは直接関連はございませんが、ただいまおっしゃいました点も含めまして周辺事実につき当然検察としての捜査はなされたものというふうに聞いております。
○佐々木静子君 この起訴事実に関連してのテープでございますが、自分が電話をかけたのだということを新聞関係者に述べ、かつ新聞関係者がその点について口頭あるいは電話で幾たびか確認し、かつそのテープが存在しているということが新聞報道、その他巷間伝えられておるわけでございます。また確かな筋からもそういうことがあったということも私どもも聞いているわけでございますけれども、そうしたテープ類が、だから電話のテープじゃなく、本件電話そのもの、にせ電話のテープじゃなくて、にせ電話をかけたのが自分であるということを言っておったのを聞いた新聞関係者が録音をとってある、あるいは電話でのやりとりを録音にとってある、そうしたものが検察当局に押収されているのか、あるいは任意提出という形で検察当局、捜査当局にあるのかどうか、それを伺っているわけなんです。
○説明員(石山陽君) いま佐々木委員から最近のいろいろとマスコミに報道されました鬼頭判事補の当時の言動等についての御指摘がございましたが、鬼頭判事補はそのマスコミの報道の調子を見ましても、常に言うことが大変くるくると変わられるという点がございまして、私どもが承知している範囲におきましては、必ずしも、検察におきましての捜査に際しまして、鬼頭判事補が自分がにせ電話の犯人であるということを認めたやには伺っていないわけでございます。それによりますので、私どもといたしましては、できる限り、それらの鬼頭判事の、もちろん当時話を聞いたと言われる人につきましては、関係者として参考人の事情聴取を行うことは当然と考えておりますので、その範囲におきましては、ただいま御指摘のような点を含めまして当時捜査は尽くされたものというふうに考えております。
○佐々木静子君 それでは、この点についてもっとお伺いしたいんですが、時間の関係もありますから別のことに移りたいと思いますが、まず最高裁に伺いますが、昨日の弾劾の判決、これは最高裁の方にもう送達になり受理されたわけでございますか。
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 昨日、弾劾裁判所の方から裁判書の謄本の送達を受けました。
○佐々木静子君 事務的には、そうなりますと、最高裁とするとどういう事務手続を今後なさるわけでございますか。
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 身分の変動につきましては、特別の発令というようなことはいたさなくてもよいと考えておりますが、先ほど申し上げましたように、昨日正式に謄本の送達を受けましたので、来週の裁判官会議に御報告いたしまして、さらに内閣に通知をするという段取りに相なると考えております。
○佐々木静子君 具体的にそれでは鬼頭氏の在職しておった下級裁判所の方には事務手続というものは別になさらないわけなんでございますか。
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 下級裁判所に対しましては、弾劾裁判所の方からも正式に送達があると聞いております。私どもの方から電話で大阪高等裁判所、京都地方裁判所に対しまして伝達いたしました。
○佐々木静子君 この判決があって、具体的な処置と申しますと、まず実際上は鬼頭判事補に対して、最高裁当局あるいは京都地裁においてはどのような処分と申しますか、どのような事実行為をとられることになるんですか。
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 正式な行為といたしまして、先ほど申し上げましたように、身分上の変動は裁判の宣告によって効果が発生するというふうに考えておりますので、いわば正式な行為として特に本人を呼び出して伝達するというようなことを考えているわけではございません。
○佐々木静子君 これも新聞の報ずるところによりますと、本人は、この弾劾裁判は無効である、したがって自分は任期切れまで京都地裁の判事補であると、裁判官のバッジもつけて任期切れまで裁判官として行動するというふうなことを申しておるようでございますけれども、その事実行為というのは、結局、どういうことを裁判所としてなされるのか。たとえば、宿舎なども出てもらわなければならないだろうし、その他いろいろなことも事務的なことがあると思うんですが、どういうことが裁判所と鬼頭元判事補との間に行われるのか、そのことを伺っているわけです。
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 具体的に宿舎の件のお尋ねでございますのでその点について申し上げますと、国家公務員宿舎法によりますと、身分を失った場合にはその失った日から二十日以内に貸与を受けている宿舎を明け渡さなければならないことになっております。例外規定はございますが、原則は以上申し上げたとおりでございます。 なお、具体的な措置といたしましては、法定の明け渡し期限内に、京都地裁の所長がいわば宿舎の管理に当たっておるわけでございますが、法律上の問題はさておきまして、この定期異動の際に後任者がまた京都に参るわけでございますので、その後任者の発令が四月一日付という予定でございます。遅くとも法定の明け渡し期限、数をいま計算いたしますと四月十二日限りということに相なりますが、 〔委員長退席、理事宮崎正義君着席〕 法定の明け渡し期限内に明け渡しをするよう本人に伝達したいというふうに京都地裁の所長が申しておるようでございます。
○佐々木静子君 そのほか、弾劾裁判によって鬼頭氏が受ける不利益、一度かいつまんで簡単に御説明いただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 罷免の裁判の効果につきましては、佐々木委員すでに御承知のことかと存じますが、法曹資格を失うということに相なります。なお、不利益という点でございますが、国家公務員等退職手当法による退職手当は罷免の裁判を受けた場合においては支給を受けることができないことになっておりますので、退職手当の支給がないという不利益があるというふうに考えております。
○佐々木静子君 鬼頭元判事補の場合は、弾劾裁判所の方に訴追された途端に職務停止になっていると思うわけでございますけれども、事実上は、当委員会でも幾度かお尋ね申し上げましたように、本件問題が起こって間もなく、事実上裁判官としての職務は行わせておらなかったというふうに伺うわけですが、それまでに担当しておった事件というのは、主として民事事件のように聞いておりますが、何件ぐらいあったのか。特に単独で行っていた民事事件数を御説明いただきたいわけです。
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 事実上職務を行わなくなった時点におきまして、民事事件の手持ちが約二百件あったようでございます。
○佐々木静子君 その二百件は現在どのように処理されておるのか。
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 京都地裁における他の裁判官が手分けしてやっているというふうに考えます。
○佐々木静子君 これは他の裁判官が引き継いでおられるでしょうが、私ども、一新聞報道などの状態から見ますと、恐らく、事実上職務をとらないというようになった時点からはもう全く担当事件に携わっておれるような状態ではなかったと思うわけでございますが、それでは、これは更新手続で次の裁判官に引き継がれているんだと思うんですが、いわゆる事務引き継ぎなどはできているんでしょうか、どうなっているんですか。
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) その点は十分京都地裁において考えて処理をしているというふうに考えております。
○佐々木静子君 これはやはり、二十年に一度という、しかもまた裁判制度始まって以来初めて現職裁判官でこれだけの大きな重大問題で刑事訴追を受けるというふうなことが起こっているわけですが、この裁判を受けている人の立場に立ってみたときに、その直前まで自分の大切な事件が鬼頭氏の手元で担当されそれが後日他の裁判官に引き継がれている、そういうふうな状態のときに、果たしてその裁判が担当者に納得のいく気持ちを与えるかどうか。そのあたりについて、形式的には更新手続によって合法的に処理されてはおると思うんですけれども、国民の裁判というものに寄せる信頼、もっとこれは広い意味で考えないといけないわけですが、これを一番狭く解釈したところで、つい最近まで鬼頭氏によって審理され、かつそれが次の裁判官にあのあわただしい状態の中で引き継がれてそして判断を仰ぐという状態の問題について、もう少し何か最高裁当局として、これは司法権の独立に関することなのでむやみやたらと最高裁とすると干渉することはできないと思いますけれども、そのあたりもう少し国民の納得のいくような説明が必要なのではないか、いかがでございましょうか。
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 佐々木委員御指摘のとおり、このたびの鬼頭元判事補の事件が起きましたことに関し、裁判所一般に対する信頼感というものは非常に損なわれたということはもう否定できないところであろうかと存じます。なお、具体的な事件を引き継ぎまして、現実に後の方がやっておられると思いますが、その点は事件を引き継いでおられる裁判官が十分お考えいただいて審理されているというふうに私どもは考えている次第でございます。確かに御指摘のように事具体的事件の処理のことでございますので、最高裁判所の事務当局から具体的な指示というようなことはもちろんなし得べくもございませんけれども、先ほど申し上げましたように、それぞれの担当裁判官が十分その点をお考えになって処理されているというふうに私どもは信じている次第でございます。
○佐々木静子君 話がもとへ戻りますが、最初に事務総長にお伺いしたんですが、この鬼頭判事補というふうな人の出現によって裁判に対する国民の信頼が損なわれたということに対して深く遺憾の意を表明されたわけでございますが、ただ私ども考えますのに、本件のにせ電話事件及びこれに関連する件は、これは確かに非常に政治的な重要問題であり、こうして大きな問題としてマスコミでも国会でも、また国民の多くの関心を集めたので、この弾劾というようなところに事が進んだわけでございますけれども、この鬼頭氏一人をとらえてみても、これがいままでがまともな行動をとっておったのが、このにせ電話事件前後から、あるいは網走刑務所をめぐる問題などから突如として、特異な政治的信条なのかとも思いますが、こういう行動に出たというのであれば、これは本件は非常に異常な特異な事件であったというふうに処理できるわけでございますが、この鬼頭氏自身を見てみても、これは日弁連の調査によりましても、過去十年間ほどの裁判官生活の間に非常に問題が多い、実にいろんな裁判官としてあり得べからざること、また、著しく信用を損うような行動がこれは続出しているわけでございますね。これはたまたま鬼頭氏のにせ電話の問題が起こり、大きく国民の前に鬼頭氏というものがあらわれ、かつ本人が非常に異常な行動、言動が多いために、これはということで調べたところがこれだけいろんなものが出てきた。しかし、これも考えてみると、にせ電話事件というふうな問題が起こらなければ、これは恐らく非常に変わった裁判官であると、あの裁判官のところへいけばやりにくいと、大変困るというふうなことでありながら恐らくこの弾劾、罷免というところまで来ずに、恐らく予定どおりいけば終生裁判官をされたのではないか、そういうふうなことを考えると非常に裁判所のあり方といいますか、司法そのもののあり方ということになりますが、特に裁判所の裁判官に対する教育、育成の問題というものが大変に大きな問題としていま改めて提起されてきたのではないかと思うんですが、そのあたり事務総長とするとどのようにお考えになるわけでございますか。 〔理事宮崎正義君退席、委員長着席〕
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) まことに佐々木委員御指摘のとおり、今回明るみに出ました鬼頭元判事補の今回の行為はいわば私どもの想像を絶した行為でございまして、これは弾劾裁判所なり、あるいは検察当局を経て刑事裁判所なりで処理される問題でございますが、それに伴っていろいろ明らかになりました彼の行動につきましては、これは私どもとしてもまた別個の観点から十分に今後の対策等も考えなければならないと、かように考えておるわけでございます。 弁護士会からもいろいろお話がございますが、これはいわばその都度、たとえば弁護士会からお話がございますれば、それなりに対応ができたかとも考えられるわけでございます。もっとも訴訟指揮となりますと、なかなかこれはそれ自体をとらえてどうするということもむずかしい問題でございます。 それからまた、海外へ無断で旅行しておったというような点につきましては、またそれなりに私どもの司法行政のあり方を考えてまいらなければならぬ点もあろうかと思います。 さような点を含めまして、今後判事補の指導、育成については十分な検討を重ねてまいりたいと、かように考えるわけでございます。
○佐々木静子君 いま、海外に無断で旅行しておった、あるいは京都の地裁へ名古屋という遠隔の地から通勤しておった、そのために開廷時間がほかの裁判所よりおくれておった。そういうふうな問題について、これも新聞報道によりますと、この監督官庁の責任者が処分を受ける方針であるというふうに報道されておるわけでございますが、この鬼頭判事補に対する監督者という立場でどういう人がどのような処分を受けるようになるのか、その点についてわかっていらっしゃれば述べていただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) ただいま御指摘のいわゆる監督責任につきましては、今月末をめどに十分慎重に検討さしていただきたいというふうに考えておるわけでございまして、具体的にどなたをどういう形でということは、この段階では答弁を差し控えさしていただきたいと思います。
○佐々木静子君 先ほどの御答弁で海外旅行のことが出ておりましたので、その問題に関連して伺ったわけですけれども、私は、むしろ問題の本質は、判事補がこれは監督官庁の許可を得ないで海外に旅行したということも決してよくないことではありますけれども、そういうふうな問題は形式的なことであって、もっとこの鬼頭問題についてとらえなければならないのは、この裁判そのものについての、裁判官という人が、こうい三人がまず裁判官に任命されたこと、そして、また、かつ十年間も裁判所の中でぬくぬくと、ぬくぬくという言葉は非常に適切でないかもわからないけれども、ともかく十年近く人を裁いておったということ、それを最高裁当局なりあるいは直接の監督官庁において、監督の裁判所においてそれをそのまま温存しておった。その裁判の本質そのものについてもっとメスが入れられなければならないと思うわけです。これは単に無断で海外に旅行したとか、あるいは遠方の地から通勤しておった、これは私は、先ほど申しましたように、そのために開廷時間が非常におくれておったということは国民に非常に大きな迷惑をかけているということだから、私はこれは十分に考えていただかないといけないけれども、むしろ裁判のあり方とか本質とかいうようなことについて、もっと最高裁当局は考えていただかないといけないと思うわけです。特にいま、時たまたま昨日から新任の裁判官の採用についての面接の試験も始まっているというふうに聞いておるわけでございますけれども、私は、どうしてまずこういう人が裁判官に任命されたのか、そしてまた、それと反対に在野法曹として非常に有能だと思う人が、とかく裁判所から冷い目で見られてこれがふるいにかけられ、そしてこういう人がぬくぬくと裁判所に採用されて、かつ、いわゆる裁判所の中でもエリートとまで言わなくても非常に順調なコースを歩んで十年近く裁判所に裁判官としてタッチしておった。まず私は、その任命の点において非常に問題があるのではないかと思うわけです。これは突如として任命するんじゃなくて、やはり二年間の司法研修というもののあり方までやはり考えなければならないのではないか。非常に形式的な判断の中で裁判官というものが任命されている。それが非常に恐ろしい影響を与えてくるのではないか、たまたまこれはこういうにせ電話という全く特異な問題から端を発して、国民の前にこういう裁判官がいるということがはっきりしたわけですけれども、しかし大なり小なりここまで変わった行動というものは少なくても一般の世間から見て相入れない、受け入れられない、常識を全く逸脱したまた徳性の面においてきわめてどうかと思われる、そういう人が大勢の裁判官の中に一人ならずもっとおるということは、これはまあだれしも思っていることだと思うのです。 そのあたりで、まず、いまさしあたっての問題として、新任の裁判官の採用について最高裁はどのように考えておられるのか述べていただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 確かに佐々木委員御指摘のとおり、まず採用について非常に重要な問題があるということでございます。確かに結果的ではございますけれども、十年間鬼頭元判事補が在官していたこと、その在官中に次々と明るみに出ましたいろいろな事実関係等々につきまして、十分私ども反省しなければならないというふうに思っている次第でございます。 なお、判事補を新しく採用するにつきましては、抽象的、一般的には、とにかくすぐれた方に来てほしいというのはもう申し上げるまでもございませんが、それをいかにして私どもが認識して採用していくかという問題になりますと非常にむずかしい、事実上の問題といたしましては非常にむずかしいことではありますけれども、先ほどお話の中にございましたように、特に研修所における修習態度、その他もろもろのデータを十分私どもに知らしてもらいまして、それを基礎にして採用していくということを考えております。ここ数年といいますか、最近になりまして修習生に対するその種の、教官のあるいは意見とかその他の意見といいますか、あるいは実務修習における意見とか、相当詳しく書いていただいておりますので、その種のデータをもとにいたしまして、できるだけ優秀な人を採用したいという方針でいっているつもりでございますし、将来ともその方針でまいりたいというふうに考えておりますo
○佐々木静子君 その、いわゆる優秀なんですけれども、鬼頭判事補など、論文などを拝見しておりますと、確かに優秀なんです。ですから、そういう意味での優秀をまた採用していただくということに対して国民の一人として非常に心配するわけなんです。ですから、裁判所がまず優秀という基準を、もっと裁判官として、人間として通用する者かどうか、普通の人間としての徳性を持った人間であるかどうか。その特異な能力というものは、それはすぐれた人であればあるほどいいには違いないけれども、それが、いわゆる裁判所の枠の優秀というものがすでにゆがんでいるのではないか、それを非常に心配するわけです。いまうわさによれば今度の新任の裁判官の中にも数名の、たとえば青法協に所属している修習生がおるということも聞いておるわけでございまして、いままでそういう方々が、優秀でない、また研修所の暴言があったように、もう女性は家庭へ帰れ、そういう者は優秀でない、そして鬼頭氏のような——確かに優秀です、形式的に見たときに、そういう人が裁判官としてなるということは、これは今度のことは裁判所も大変な迷惑をかけたわけですけれども、そこまで至らずとも、多くの一般人である国民が非常にいままでも迷惑しているケースが大変にあるわけですね。今度の裁判官の新任について、これは大体いつ決まるのか、また大体どういう見通しなのか。もしわれわれがそのりっぱな裁判官であると信じ、かつ最高裁からのいままでの基準から見れば優秀でない、たとえば青法協であるから優秀でない、あるいは婦人であるから優秀でないと、そう言われるような基準でまたもや裁判官を任命されるというふうなことになれば、これは第二、第三の鬼頭問題が必ず発生するということを申し上げたいわけですが、大体次の新任裁判官はいつ決まるのか、また見通しについてお述べいただきたいわけです。
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 先ほど私が申し上げました優秀であるということにつきましては、単に法律知識だけの問題ではございませんで、裁判官としてやっていっていただくためのいわば裁判官適性と申しますか、そういうことも含めてのすぐれた人ということでございます。 なお、青法協問題について言及されましたけれども、従来最高裁としてお答えいたしましたように、青法協に所属しているということだけで任官を拒否するということはしておりません。その辺をひとつ御理解いただきたいと存じます。 なお、本年度の採用の予定でございますが、現在のところ四月八日に予定しております。 なお、先ほど女性の裁判官希望者について言及がされましたけれども、本年度は三名希望をしております。
○佐々木静子君 それでは、本当に国民のためにりっぱな裁判を行ってくれる裁判官を養成していただくよう特にお願いし、あと一言だけ触れておきたいと思いますことば、昨日の裁判官会議で、このたび新たに外国人に対して司法修習の門を開かれたということに対して、私どもも大変に敬意を表し、特に在日韓国、朝鮮人など、非常に在日外国人の今後人権問題について、そういうふうな面でもいま外国人、その立場に立ってまた人権擁護活動ができる法曹というようなものも非常に求められているのではないか。ちょうど非常に最高裁の今度の外国人に対して司法修習の門戸を開かれたということについては、時宜を得た措置で、当然のこととはいえ、遅きに失したと申し上げたいところもあるのですが、非常に結構なことであるというふうに思うわけでございますが、その間の経過あるいは今後の見通しあるいは司法研修に対して今後どのように外国人司法試験合格者を取り扱っていこうかというような事柄などについての展望を事務総長からお述べいただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) いまお話のありましたとおり、昨日、金氏につきまして、日本の国籍を有しないということを理由として不採用にすることはしないと、したがって昨日から採用のための手続に入るという裁判官会議の議決をいただいたわけでございます。 で、つとに御承知のとおり、一二十年近く前から国籍というものを修習生採用の要件といたしておりました。それに対する御批判はまたあろうと思いますが、実際問題としてさような方針を過去約二十年とってまいったわけでございます。で、今回とにもかくにも金氏につきまして、国籍を有しておられないけれども採用の方向で手続に入るということになりましたことは、まあ言葉が妥当であるかどうかわかりませんが、いわば百八十度の方針転換になるわけでございまして、こういう大きな問題について対処いたします場合には、私どもとして、やはりそれなりに慎重な態度をとらざるを得ない。そういう意味におきまして、何分ことしの場合は研修所入所の時期も迫っておりましたので、とりあえず金氏についての議決をいただいたわけでございますが、来年度の採用までにはまだ若干の期間がございます。その間に各方面の御意見も十分伺って、適正な方針に進むように今後努めてまいりたいと、かように考えておるわけでございます。
○委員長(田代富士男君) この際委員の異動について御報告をいたします。 本日、塩見俊二君及び町村金五君が委員を辞任され、その補欠として中村太郎君及び佐藤信二君が選任されました。
○委員長(田代富士男君) 引き続き、質疑を行います。
○寺田熊雄君 私も鬼頭元判事補の問題についてちょっとお尋ねしたいと思います。 いろいろ調査をいたしますと、鬼頭元判事補が右翼的な思想の持ち主であるということはほぼ間違いないように思います。今度の参議院選にも立候補するということを本人も申しておるようであります。そのバックに御承知の笹川何がしなる右翼がおるというような情報もあるわけであります。かなりそういう者との接触も深かったようなんですが、そして、いま佐々木委員からも御質問がございましたけれども、もう少し司法行政上の、人事行政上の指導監督を怠らなかったならば本件のようなことは避け得たんではないかという気もするわけです。かなりの知識人が、鬼頭君が右翼的な思想を持っておったためにとかく甘やかされて、そしてその人事行政上の指導監督というものが非常に手ぬるかったという批判をしております。これは事務総長も御存じだと思いますけれども、こういう批判に対しては事務総長としてどういうふうにお考えでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 弾劾裁判所の裁判員であられます寺田委員におかれましては、あるいは訴追委員会の資料その他私どもの承知いたしておらない資料もごらんになっておるかと存じまして、あるいは私ども十分そこまで知らない面もあろうかと思いますが、鬼頭君の思想がどうであるかということにつきまして、私どもそり十分に承知しておるわけではございません。ただ、今回の行動なり、あるいはこれに関連して明るみに出ました行動については弁解の余地のないところでございます。で、これをもう少し早く知り得なかったかという点、私どもとしても大いに反省をいたしておるわけでございます。ただ、寺田委員つとに御承知のとおり、判事補とは申しましてもやはり独立の裁判官でございます。単独の事件を処理するにおきましては完全な独立自由を持ち、またそれに伴って、身分上その他にもそう上からのやかましい指導ということについてはいろいろ問題があるわけでございます。当然これは職務上の問題と一般私生活の問題とで分かれてこようかと思いますが、またこの私生活の問題につきましてもどこまで、たとえば所長において目を光らせることができるかということも、やはりなかなかデリケートな問題があるところでございまして、しかしながら、かような事件が起きました以上は、やはり私どもとしてもそれなりに今後十分対処してまいらなければならないと、今回の事件を大きな反省材料と考えなければならないと、かように考えておるわけでございます。
○寺田熊雄君 重ねてどうも追及するようになって非常にお気の毒なんですけれども、いまのイデオロギーの問題、右翼的な思想だというそのイデオロギーの問題を離れましで、佐々木委員が御指摘にもなりましたけれども、徳性の問題について非常に私ども問題のある人物だということを感じます。それは、昨日の弾劾裁の判決にもうたわれておるところでありますけれども、弾劾裁の方には本人がみずから電話なりあるいは書面なり口頭で召喚手続を所管している弾劾裁事務局職員に対して第一回の公判期日には出頭いたしますということを約している。これは法律的に言うと、仮に鬼頭君の言うように召喚手続に瑕疵がありとするも、実際はないんですけれども、仮に瑕疵がありとするも、責問権の放棄になるということは明らかでありますし、また道義的に言っても、自分が約したという事実がありながら出頭しない、しかも、出頭しないだけでなくして、さらに召喚手続の違法を盛んに唱えるという、まあ、非常に徳性においてどうかと思われる点があります。また、訴追委員長の公判廷における釈明によりますと、訴追委員会における陳述を録音したテープ、それをまたさらに反訳いたしました供述調書、それには、参って署名をいたしますということを約しておったようです。それにもかかわらず、何回も呼び出しがあったにもかかわらず来ない、そして、もちろん署名捺印もしない。ですから、そういう前諾を一向重んじない、約束を破って恬として恥じない、そして相手を論難する。徳性においてそればもう裁判官として不適格だということはもうそれだけで明らかなんですね。そして、謀略電話であるということを知りながら、謀略の相手方が多少うろたえておる、それを攻撃する。謀略を是認して平然としておる。これはもう徳性の面では問題なく不適格だと言わなければいけない。それから、事務総長がおっしゃったようになかなか人間の思想というものはわからないということはよくわかります。また単純なる上司の主観でそういうイデオロギーや主観をはかられては非常に困るんですけれども、しかし、いま佐々木委員がおっしゃったように、また事務総長も是認されましたように、無断海外旅行という問題もあったようですね。それから、私は、これは名古屋で直接調査の結果わかったのですが、名古屋で一時判事補として在職しておったようですけれども、そのときに、自分が妻子のあることを隠して若い弁護士の女性と結婚の約束などをして情交を重ねておったようですね。そういう事実があったようです。それから、バス会社から、乗客として乗っておった間に負傷したということで多額の金員を取ったとか、北海道へ行くときに日航の社員と羽田で大変なトラブルを起こしたとか、あるいは大阪地検へ行ってその捜査に介入したとか、平素強引な訴訟指揮をしたとか、数え挙げますと枚挙にいとまのないくらいいろいろな異常な事実があるわけですよ。それで、これは、精神病学者に聞いてみますと、精神異常ではないんだけれども、精神病というものではないんで、異常性格の中に入るということを言う精神病学者があるんですね。それを長い間一緒におった上司が気づかない、あるいは監督責任のある上司が気づかないというようなことがあるだろうか、私どももそのように疑問に思うわけです。私は、あえて上司を処分しろなんということばこの際求めるものではないんです。ただ、そういう点で全く人事行政が生きていなかった、死んでしまっておったということだけは疑えないと思うんですね。これはやはり事務総長深く考えていただいて、もっと生き生きとした人事行政が行われるよう、それはいま言ったように右翼に甘く左翼に辛いというような中正を欠くものであってはならないので、本当にあなた方のおっしゃる公正で、そして人間の徳性に重きを置いた人事行政が生きるようにそれをひとつ考えていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 私ここに昨日の弾劾裁判所の判決を持ってまいっておりまして、いま寺田委員からお話のございましたこの判決の第三項の「法律上の判断」というところに記載されております事項、私ども謹んで拝読したわけでございまして、きわめて同感するところが多い印象を——私、個人でございますが、持った次第でございます。ただいまのお話も裁判官の思想と申しますより、むしろ徳性と、いうようなお話と伺ったわけでございますが、私たまたま先ほど無断海外旅行の点を例示いたしましたために佐々木委員からも御指摘があり、いま寺田委員からも御指摘がございましたが、これはいわば非常に外形的にとらえやすいものであり、何人にも異存のないものであるという意味で例示したわけでございまして、決してそれだけが問題であるという気持ちで申したつもりではございません。今回、一連の手続で明らかになりました鬼頭元判事補の性格というものが裁判官にはきわめて適しないものであるということは、私どもも現在の時点においては重々心得ておりますが、しかしながら、過去においてそれをどうしてとらえられなかったかというおしかりを受ければ、これは甘んじて受けなければなりませんけれども、しかし事実において最高裁当局においてはそのうちのごく一、二のものしかつかんではおらなかったわけでございますし、そういう人事行政上のパイプを通じてもきておりませんし、また弁護士会、その他からの知らせもなかったわけでございます。しかしながら、いま寺田委員御指摘のとおり、人事行政というものはもう少し心してやらなければならないという点については全く私どももそのように考えるわけでございますが、ただ何としましても相手は裁判官でございますから、人事行政と申しましても、またそれなりに行き過ぎになっては問題になろうかと思います。その辺のところに私どもとして慎重に、しかしながら国民の信頼を裏切らないように善処してまいらなければならない、この点は十分事務当局でも話し合っており、また裁判官会議におかれてもさようにお考えになっておる次第でございまして、今後できる限りのことはやってまいりたいということで御了解いただきたいと思うわけでございますp
○寺田熊雄君 これは事務総長の御答弁になったことを私どもも信頼して今後の人事行政にまちたいと思うんですが、ただ私どももやはり司法の分野に比較的長くおりましてたくさんの裁判官を見ております。やっぱりスケールは鬼頭よりはずっと小さいけれども、同じような、徳性の面でどうかなと思われる裁判官が現実にいるんですね。一つの例を言いますと、たとえば、自分の子供が交通事故の被害者になった。そうすると、加害者の運転手を自宅に盛んに呼び寄せて、その人物を使役していろいろハイキングに行く、何回もそれをやるというような実例も実はあるのです。ただ、そういうような場合に、これは罷免に値するというようなことまではとてもいかないでしょうけれども、やはり、そういう場合には罷免までいかない方法で自発的な退職を求めるとかあるいは裁判の実務に関係のない何かポストにつけるとかしませんと民衆、大衆、国民が非常に困るわけですね、そういう徳性の裁判官に裁判されては。そういう点については人事局長どんなふうに考えられますか。
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) ただいま具体的な例といたしましてお話をお伺いした次第でございますが、私どもにそのような報告を現在のところいただいておりませんが、もし寺田委員御指摘のような裁判官があるとすれば全く徳性に欠けると言いますか、裁判官として適格性を疑われるに十分であるというふうに考えます。また正当に御指摘いただきましたように、その程度といいますか、その種の事案について訴追の申し立てをして罷免というようなことに相なるかどうかは確かに非常にむずかしい問題でございます。しかし、私どもといたしましては、やはり、同僚あるいは上司という言葉を使って、いかどうか問題であろうかと思いますが、同僚、先輩の方々はその種の事案が当然わかるはずでございますので、わかりましたならばまさに先ほど総長から申し上げましたように、自粛自戒することがまず先決問題だろうと思います。さらにアドバイスを聞かずしてその種の行動をとり続けるのでありますればその上の措置ということも考えられますし、この際裁判官として不適格であるからその後の身分上の、自分の身の進退を考えよというようなことも当然出てこようかと思います。御指摘のような事実があるといたしますると、まさに私どもといたしましてはいわば大いに反省しなければならないことでございますので、その種の事案につきまして、先ほども申し上げましたように、十分各裁判所と連絡を密にいたしまして、その種の事案がなくなるように努めたいというふうに考える次第でございます。
○寺田熊雄君 それから現実の裁判官に対する人事行政面で事実上私どもが経験するのですが、たとえば青法協に所属している裁判官、これは徳性においてきわめて高い優秀な裁判官、能力もまあ抜群と言っていいのではないかと考えられる裁判官、それが僻遠の地に飛ばされてしまう、現実にあったんですがね。そうして余り徳性においてもどうかと思われる人、そうして能力も大したことないというのが大都会の方に配属されるという例を現実に私ども見ているわけです。本当にやはりそういう青法協とか何とかというようなことで差別するということは実際にないですか。その点お疑いするわけではないけれども、正直におっしゃっていただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) もうすでに御承知のとおりと存じますが、全国に裁判所が多数ございます。また、定期異動といいますか、やはり人事の交流ということも必要でございますので、たとえば、判事補の場合でありますと、三カ所を経験していただくという一応の原則で異動を行っているわけでございます。その中で御指摘のようなケースがあるのかも存じませんけれども、私どもといたしましては、青法協に属しているということだけでその人に対して不利益な取り扱いはいたしておりません。
○寺田熊雄君 最後に一つだけお尋ねして質問を終わりたいのですが、まあ佐々木委員もこれは御質問になりましたところでありますけれども、やはり司法研修所の修習の問題なんです。これはかつて女性の修習生に対する差別的な発言ということで問題になったときがありましたが、これはずいぶんいろんな議論がありまして、いまはそれも是正されたというふうに承って、大変結構だと思うんですが、ただ一つ、ただ比較的問題になっていない発言が、当時の司法研修所事務局長ですか、その人の書いたものの中にあるように思うんですがね。それは、若い職員、若い裁判官なり裁判官の卵が上司の家を訪れるときは手みやげぐらいは持っていけというような、そういう指導があったように思うんですが、御存じでしょう。これはまあわれわれの昔、司法部に籍を置いた者から言うととんでもないことで、上司が部下をおごるということはあっても、部下が上司に物を贈るなんというのはあってはならないことだし、こんな卑しいことはないですね。その点少し司法研修所の教育の任に当たる者、それをまた教育する必要があるんですね。どう思われますか。
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) ただいま御指摘の点は、いわゆる修習生心得というパンフレットの中の一くだりであろうかと存じます。実はこの修習生心得というパンフレットは、毎年新しい司法修習生が入所いたしますと、司法研修所の事務局長から、いわば研修所生活の全般につきましてガイダンスを行うわけでございます。例年行ってきたわけでございますが、その際、これはやはり印刷に付した方がいいだろうということで、昨年の三十期の司法修習生に対して初めて配付したものでございます。その中身は、十分ごらんいただけますとおわかりいただけると存じますけれども、まあ、いわば修習生というものは、先ほど御指摘のように、法曹の卵といいますか、やっぱり法曹としてのいわばプロとしての覚悟をしてほしいと、まあ最小限度の心得だけを書いたものというふうに私ども考えるわけでございます。たまたま手みやげの話も出ておるわけでございますが、事務局長限りで、つくりましたパンフレットにつきまして、確かに相当でない部分もあるように思いますので、この際、御指摘のような点も含めまして、十分再検討の上、その点は司法研修所において、訂正といいますか、改める用意があるというふうに御理解いただきたいと存じます。
○寺田熊雄君 終わります。
○宮崎正義君 京都地裁の前判事補の鬼頭史郎のことにつきまして一時間余にわたりまして当局としての姿勢をただされているわけでありますが、先ほど事務総長が、昨日の弾劾裁判所における判決の文をお持ちだということでございますので、開いていただけばよろしいかと思いますが、しまいの方から順に四枚目の前段の方に、これはもう結論の方になっております、私がなぜこれを申し上げるかと言いますと、ここにいままでのやり取りの答弁が一切尽きると思うんであります。したがって、今度はそれをどう監督指導して、先ほど法務大臣の御答弁にありました公正中立の立場で、不党不偏というような答弁もございました、それをやることについても、もう一度昨日の判決の文を改めて深くその脳裏に、歴史に刻み込んでおいていただきたい、そういう意味で改めて申し上げるわけであります。 けだし、職務を怠り品位を汚す行状があるなど徳性において指弾せられる要素を持つ裁判官や、政治的偏向を有し深く政治にかかわりあう裁判官によっては、到底、良心に従い法律に忠実に準拠する公正な裁判を期待することができず、裁判の求める法秩序の維持はもとより、憲法上の要請たる基本的人権の保障や社会正義の実現も危うくせられるからである。 以上のような憲法及び法律の規定をふまえて、被訴追者の前記行為を判断すると、それは検事総長の官職を事実上詐称し、まことしやかに虚構の事実を告げて一国の総理大臣を欺罔し、不当極まる指揮権発動の言質を引き出そうとする陰険な政治的謀略を是認し、進んで、これを公表せしめることにより時の内閣に打撃を与えようとするなど、恐るべき政治的策動にかかわりあえるものであって、ただに、道徳的に非難せられるべきものであるにとどまらず、余りにも深く、政治の問題に関与したものというべく、国民の信頼に背き、甚しく裁判官としての威信を失墜せしめた行為というほかはなく、弾劾法第二条第二号による罷免事由に該当する。 と、このようにございます。そこで、「職務の内外を問わず、裁判官としての威信を著しく失うべき非行」と裁判官弾劾法の第二条第二号にございます。この問題で昨日は事務総長が談話を発表されております。この件については先ほどからいろいろ問題を提起されて話が進められてまいりました。ここに事務総長は「鬼頭判事補の個人的な職務外の行為に関するものであるが、」先ほどもこのことをおっしゃられました「裁判所としてまことに遺憾にたえない。罷免の判決は、裁判官の職にある者に対し、かりそめにも公正中立をなおざりにすべきでないことを求めたものと受けとめ、裁判官一同、自粛自戒して国民の裁判所に対する信頼を回復するよう努めたい。」こういう談話を発表されております。この中の「職務外の行為に関する」ということ、これは当然弾劾法によるところの「職務の内外を問わず、」この点になるわけです。したがって、訴追委員会をやっているときもそうでありますが、弾劾裁判を開廷しているときもそうでありますが、鬼頭氏は前日及びその当日在京しているわけです。この当時はまだ罷免されてない、現職のままであるというように報道されているわけですね。前日またはその当日上京して、そしてしかもいろんな文章を書いて、先ほど御答弁にもありましたように、くるくる変わっていくような問題提起の文章等を書いて置いておかれたというようなこともございましたけれども、そういうふうな現職の裁判官が、そういう日常活動についてさっきからも盛んに論議されておりますけれども、なぜ監督指導というものがなされなかったのかということが私は不審でならないわけです。この点についてどうお考えですか。
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 判事補の指導育成ということは、裁判所としてきわめて大事なことでございまして、私ども折に触れ会同その他におきましてそういう問題を取り上げて検討いたしておるわけでございますが、今回のような事件が起こってみますと、まだその点において努力が足らなかったというおしかりを受けても甘受せざるを得ないと考えます。ただ、先ほど来繰り返し申し上げておりますように、裁判官と申しますものは、やはり普通の行政官と違いまして、一応独立の職権を持ち、身分保障を持ったものでございます。それであるだけに一層自粛自覚していただかなければならないわけでございますけれども、これを上部機関といえども、たとえば最高裁なり高裁といえども、やはりこれに対していろいろの指導監督をいたしますにつきましては、その裁判官の地位というものについての十分な配慮を持った上でないとならないのではないか。この点は従来法務委員会においてもしばしばそういう御注意も受けてまいっておるわけでございまして、今回のような事件が起きますと、確かに私どもその点で行き届かなかった点があることを、先ほど来申し上げておりますように、反省いたしておるわけでございますけれども、今後の指導育成につきましても、そういうことをも十分念頭に置きながら、しかしながら、また国民の信頼を裏切らないように努力してまいりたいと、かように考えておるわけでございます。
○宮崎正義君 鬼頭氏の行動については自由かもわかりませんけれどもですね、訴追委員会開会のときもそうでありますが、現実に上京したりして、職場をその当日、あるいは当日はこれは開会の日ですから訴追委員会に出ると言えばそれっきりなんですが、その前日とか、あるいはその前の前の日に出ているとかというふうなときに、自粛自戒といま御答弁がありましたけれども、なぜ、そういうふうなことを本人にお会いになっておやりにならないのかなあと、そういうふうな点も現実問題としてあるわけです。そういう手の打ち方ができてしまってから申しわけないと、今度こんなことをしたくはありませんといいながら、現実、やってきたこと自体についての当局としての手も打ってないということ、それを私は大きな一つの言葉で取り上げれば怠慢というふうにしか考えられないんですがね。その点を私は聞いているんです。
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 弾劾裁判所が独立の地位をもって手続をお進めになっておる点につきまして、私ども意見を述べることは差し控えたいと思いますが、ずっと私どもの調査の段階から通しまして、鬼頭元判事補のこれに対する対応の仕方にきわめて当を得ないものがあったということは、私どもとしても十分感じておるところでございまして、前に国会等でお調べになるような段階において私どもそれなりのサゼストを彼に対していたしたこともないではなかったわけでございますけれども、ただ、訴追になりました後におきましては私どもの手をいわば離れてしまったような存在でございまして、私どものたとえばサゼストなり指示なりというものを聞かない状態になったわけでございます。一例をとって申し上げますれば、住所が二つありますので、その一方から一方に移る場合には必ずこれを届け出るようにというような指示もいたしてございましたが、必ずしも十分に行われていない面もあったように、若干不正確かもわかりませんが、聞いておりますが、そういうようなことでございまして、本来ならばそういう指示に従わなかった裁判官に対しては分限処置なり注意処分なりをするわけでございますが、すでに訴追になっております者に対してそれ以上の厳しい処置がなかなかむずかしいわけでございまして、私どももいわばそういうことを見守っておらざるを得なかった、この点はいま宮崎委員御指摘のこともごもっともでございますけれども、その段階ではそういうことであったというふうに申し上げざるを得ないわけでございます。
○宮崎正義君 訴追をしたからもうそれで私の手が切れている、それは確かにそういう意味においてはそうかもわかりません。しかし、その以前に問題もあったわけです。その以前に問題があって、最高裁としてのあり方というものについて、事後の問題、以前の問題に及んであるわけです。ですから、そういう自粛自戒をする前に、みずからが自粛自戒をさせるような自粛自戒をしなければいけないということを私は言うているわけですね。その点について今後の問題として大きく反省をされるべきだということを申し上げておきますけれども、ただ遺憾であるとかまことに恥ずかしい問題であるとかというだけで済まされないことなんですから、今後の問題としてどんなふうな指導監督をするのか。先ほどの御答弁によりますと、裁判官としての単独の処理をしていく立場の上からくだいて言うならば、そう大して介入もできないみたいな御答弁でございますけれども、具体的にどんなふうな指導監督をしていこうとされるのか、この点についてひとつ御答弁願います。
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 細部にわたりますればあるいは人事局長から答弁させた方が適当であろうかと思いますが、いまお話のありましたように、まず第一段には、各裁判官がみずから反省し自粛自戒するということであろうと思いますが、同時に、私どももそれなりにそういう方向に指導してまいると。そのごく一端といたしまして、すでに新聞等で御承知かとも存じますが、この一月に高裁長官事務打ち合わせがございました際に、いわば私どもの方の通達ということでなくて、高裁長官の方におかれて裁判官の休暇とか私事旅行等についてある程度の申し合わせをされて、そういう方向で、少なくとも旅行等でもどこへ行ったかわからないというようなことにならないようにしていこうという、そういういわば自粛の空気があらわれておるわけでございます。こういうふうに裁判官の側からそういう声が出てまいりますことが最も好ましいわけでございますが、なお、最高裁当局におきましても、そういう方向に向かって、よく現場の裁判官諸君と話し合いながら国民の信頼を得る道を探してまいりたいと、かように考えておるわけでございます。
○宮崎正義君 現場の職員の人たちと話し合っていきたいということなんですけれども、具体的に、どう言いますかね、地域別といいますか方面別といいますか、ブロック的な考え方を持たれて、そうして指導、教育、育成、そういうものに関する方法、考え方といいますか、そういうものを明確にして、今後の司法権の確立というものに対する行き方というものをはっきりしなければならぬ。こういう事件が起きて、問題が起きてからでは遅いわけですから、問題の起きる以前に、人格形成というもの、人間形成というものに対する心構えというもの、それについて事務総長及び法務大臣に伺って、この問題は私は終わりにいたしたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 先ほど来各委員からいろいろ御指摘がございました。裁判所におきましては、従来から判事補につきましてはほとんど毎年あるいは一、二年置きぐらいに司法研修所におきまして研修をいたしておるわけでございます。そういう場合におきまする研修の内容がどうしても法律知識中心になりがちでございます。もっとも教養的な面も十分やっておりますけれども、そういう点におきましても具体的に、前向きに検討してまいりたいと、そして先ほど来の御指摘にこたえたいと、かように考えるわけでございます。
○国務大臣(福田一君) 御案内のように、こう余りかた苦しいお答えになって恐縮なんでございますけど、裁判所というものと法務省というものとは、御案内のように裁判所は司法行政に属している事項でございますから、私が佐々木委員にお答えをしたような考え方を一般論としてはもちろん持っておりますけれども、今後これをどういうふうに裁判所がやるべきであるかとか、どうしなければならないとかいうような具体的なことについては、これは発言は差し控えさしていただきたいと思います。ただ、国民は何といっても裁判官を信頼して、そうして司法行政というものに対する大きな期待を持っておるわけでありますから、そういう意味合いにおいて、やはり十分に裁判所関係の方々が反省をしていただければありがたいと私は思っております。
○橋本敦君 この鬼頭問題につきましては、まあ言ってみれば一国の総理大臣を欺罔して謀略電話をかけ、時の内閣の総辞職までねらったとさえ考えられる重大な謀略事件であったわけですが、今日この時点で鬼頭判事補が罷免をされ、一方軽犯罪法違反によって起訴をされると、そしてその他は不起訴、こういった状況で見ますと、国民の立場から見ればこの事件の背景には一体何があったのか。果たしてこの事件が鬼頭本人の個人的な行為にのみとどまると、こう考えられるのか。数々の疑惑や疑問が多く残されたままではないか。この問題について私はそういう立場で質問をさしていただきたいと思います。 まず第一に、鬼頭に対する軽犯罪法違反の起訴ですが、先ほどお述べになりました起訴の被疑事実の要旨を拝見しますと、鬼頭氏が、検事総長でないのにその名をかたって八月四日ごろに南平台の三木総理あてに電話をかけたと、こう記載されている。この四日ごろというのは二日なのか、三日なのか、四日なのか、五日なのか、七日なのか。四日ごろというのは事実の特定として検察庁はもっとはっきり特定できなければおかしいのではないかと思いますが、この点はまずいかがですか。
○説明員(石山陽君) 委員、御指摘のように、八月四日ということを明確に証拠上立証するという場合におきまして、公訴事実の記載例といたしましては、その八月四日午後何時何分ころというふうに明確に記載する場合は当然あるわけでございます。その場合に、いま申しましたように時間まで特定できるならば午後何時何分と書いて、ころ、は要らないではないかというのと同じ問題になるわけでございますが、ここで書きましたのは、要するに四日であるか三日であるか、その点が不明確であるという趣旨では恐らくなくて、八月四日当日の時間内においてという趣旨を、時間的な多少アローアンスを入れまして、ころ、という表現で記載したのではないか。また、一般的に申しまして、このような起訴状の記載の仕方は、私どもの実務の経験におきましてもよくありがちであるというふうに一応お答えさしていただきたいと思います。 なお、私がいま申し上げますことは、突然の御質問でございますので、現地にどのような意図で書いたかを確かめた上での答弁でないことについて御容赦を願いたいと思います。
○橋本敦君 三木総理大臣にとっては恐らく、その政治的生涯でいろんな電話があったにしても、総理であるときにこのような指揮権発動を強要するかのごとき電話に出会ったというのは、生涯忘れられない異常な出来事であったに違いありません。だから、三木総理自身がその電話が何月何日何時ごろかかったかということが特定できないほど記憶があいまいだということは、これは想像を絶します。だから、関係人として重要な三木さんの証言、その取り調べからもこの事実は特定できなければこれはおかしい。これはもう常識の問題ですね。そしてまた、それだけではなくて、稻葉法務大臣も当委員会において、三木さんからその電話があったという事実はその直後に聞いておるということをおっしゃっている。だから、その稻葉法務大臣がお聞きになったという事実から、稻葉法務大臣も何日に電話がいつごろあったかということは十分お知りになり得る状況のもとであった。 こう考えますと、私は、この起訴状に八月四日ごろという記載があること自体が、いま御説明があった通例の記載ということと解釈できない何かあいまいなものがあるのではないかという疑問を持つんです。そうではなくて、八月四日であったことに間違いがないと検察庁はこれは証拠上断定し得るとして書いて、八月四月なんだという趣旨なら、はっきりその点をお答えいただきたいんですが、もう一度御答弁いただきたいと思うんです。わからないなら次回にもう一遍聞きます。
○説明員(石山陽君) 私も、ただいま申し上げましたように、八月四日の下に、ころ、というのがついておりますのは、慣用的な表現であるのか、あるいはその日時が特定できないのかという点につきまして定かに承知しているわけではございませんが、私が先ほど個人的に感想を述べましたということに尽きるわけでございますが、もしこの点につきまして必要があるとされるならば、これは将来公判段階におきましては逐次裁判の過程を通じまして明らかにされることをもって御了承願いたいと存ずる次第であります。
○橋本敦君 そういう一般的な話では、私は疑問を解消するための質問としては納得できないんです。事柄の性質からいいまして、こんなことが特定できないということはあり得ないことだと国民も考え、私も考える。だからしたがって、いずれ公判段階で特定しなきゃならぬのはあたりまえですが、いま当法務委員会において、謀略電話がかかったのを八月四日なのか、それとも四日と断定できない何か証拠上あいまいな事情があるのか、これははっきりすべきですよ。ですから、この八月四日であるというように断定をしている、しかし記載の方法としてこのように書いたんだという答弁なら理解できますが、これはよくわからないけれども、いずれ公判段階でという御答弁ならば、私は再度調査を求めたいのですが、いかがですか。
○説明員(石山陽君) 再度また御質問がありますれば、それまでにおきまして私どもにおきまして必要の調査はもちろん遂げることはやぶさかではございませんが、一般的に申し上げまして、先ほど私が申しましたところは、慣用的なことではないかと申し上げた答弁に尽きるわけでございまして、恐らくは、この関係につきまして私がそのように推測をいたしました理由をあえて申し上げますならば、本件につきましては、八月四日ころにかかったという報道はただ伝えられておりまするが、それに対しまして、これまで私どもが現地から伺った報告によりますると、それを明確に日時のずれとして否定する報告は受けていないという事実からさように推測をして申し上げたという次第でございます。
○橋本敦君 三木総理と稻葉法務大臣がロッキード委員会やあるいは法務委員会でおっしゃったこととの関係でいけば、果たして四日であるのかどうかについて疑問があるから私は聞いているんですよ。というのは三木総理は、この電話がかかって、そして早速閣議の後で稻葉法務大臣に話した、稻葉法務大臣も閣議の後で聞いた、これは一致しているんですよ。ところがその当時の閣議の日程を見ますと五日には閣議ない。三日に閣議があった。だとすれば二日だということもお二人の証言からは出てくる可能性があるんですよ。ここらあたり検察庁お調べになって二日でないということは言えますか。
○説明員(石山陽君) ただいまのところ、二日であったかなかったかということにつきまして、東京地検あるいは捜査当局から上級庁を通じましての報告、それによって四日でなかったという意味におきます特定があったという報告には接していないと先ほど申し上げたところで御了承いただきたいと思います。
○橋本敦君 残念ながら、この重大な起訴の問題について、時日の特定ということで、国政調査で私が聞く上では非常にその点の御答弁の準備が私は不足ではないかと思うんです。仮に二日でないということがはっきりしているならいいんですよ。だけどいままでの疑惑で、二日であるということの疑惑も三木さんと稻葉さんの話からあり得るから私は聞いているのです。二日だとすればどういうことになるかといえば、鬼頭氏は香港に行って日本にいないんです。だとすると、鬼頭がかけたということが一体具体的にどういうことによって断定されるかという新たな検討の問題が生ずるわけですね。そういう重大な問題があるので、私はこの起訴状記載の時日についてお伺いをしているわけです。この点は一向にはっきりしませんから、また改めて機会を見て聞くし、また公判でも明らかになると思います。 さらに問題は、捜査の観点から聞きたいんですが、指紋がしばしば証拠能力がある問題として裁判所でも採用されるし、捜査上もこれが利用されてまいります。指紋の証拠能力あるいは証拠価値上の効率というのはきわめて高いということは一般的に評価されておりますが、声紋鑑定というのは、いままでの捜査科学ないし捜査経験上どの程度の確率があるものだと言われておりますか。
○説明員(石山陽君) 声紋の証明力と申しますか、信用性と申しますか、これに関する御質問だというふうにうかがいますので、それにつきまして申し上げますが、私ども専門家では実はございませんので、明確にパーセンテージでどのようかと言われますと、いささか答弁に窮するわけでございますが、たとえて申しますならば、現在の捜査科学におきましては、指紋、十指分類法による指紋照合結果に対する信頼度はほほ一〇〇%に近いということを申し上げて差し支えないかと思います。その意味におきましては、いわゆる指紋の鑑定結果ほど信用性が高いものというところまでは達していないが、ある程度の相当な証明力はあるものというふうに私どもも聞いておる次第でございます。
○橋本敦君 その相当な証明力というのが、指紋の場合は一〇〇%に近いという。パーセンテージで言えば、どのくらいだという御認識ですか。
○説明員(石山陽君) 専門家ではございませんので、全くの受け売りをいたします。あるマスコミ等の報道によりますと、八〇ないし九〇%といわれた記事が掲載されておった記憶がございます。
○橋本敦君 そのマスコミの記事の記載を私は聞いているんじゃなくて、検察庁自身がどれくらいと考えておられるかですから、これは答弁になりませんね。——わからないならわからないで結構ですよ。
○説明員(石山陽君) 検察当局が、その鑑定書につきましての信用度につきましては、これは公訴提起処分をなすに当たりまして証拠価値の判断の問題として当然捜査上調べは遂げていると私は確信いたしますが、現在、検察当局が集めました証拠についてどのように個別の証拠を判断しそれによって公訴関係の事実を立証しようとしているかというふうな立証計画の内容になりますると、これはまさに捜査の秘密そのものになりますので、これは公判の段階において検察の立証活動における陳述をごらんいただくより仕方がないというふうに思うわけでございます。
○橋本敦君 最初、検察庁は軽犯罪法違反での捜査を開始するときに被疑者を特定しないで、被疑者不詳事件として捜査を開始をされた。これは客観的にはっきりしている。そして本件においては、鬼頭氏は、自分が電話をかけたというのは読売新聞編集委員に言ったという一定の事実はあるけれども、その後は一貫して自分ではないと否認をしている。しかもそれだけではなくて、テープを借りた人がさるお方から話があった、いろんな意味で自分一人でないことをにおわし続けてきた。そして今日検察庁は、鬼頭が電話をかけたということをこれを断定をして起訴されたんだけれども、私はこの起訴が間違っているとかいいとか言うのではありません。私が言いたいことは、果たして・この電話をかけた関与者が鬼頭一人であったと断定し得るか。そうではなくて、他に関係者があったという観点での捜査、これを遂げてもらわなければ、私はいままでの鬼頭が言っておったあれこれの言明から見ても、事件の大きさから見ても、単に鬼頭のとっぴな、全くとっぴな、一国の総理をだますというような単独犯行と見るという見方は甘過ぎるのではないか、こういう観点を持ってお聞きしているんです。 そこで聞きますけれども、いままでの捜査を遂げた結果、この電話謀略事件に関与した人間は鬼頭以外にはないと検察庁は断定しておられるのか、その点はどうですか。
○説明員(石山陽君) にせ電話事件関係につきましては、たびたび申し上げますよう、現在公判を請求した段階でございまして、今後の立証活動において全容を明らかにするという問題でございますので、おのずからその予断排除の原則から、申し上げる事項に限りがあるという状況はぜひ御理解を前提としていただきたいと思います。しかしながら、現在までの現地当局の報告等を徴しまして、本件につきまして鬼頭にいわゆる刑事捜査上共犯として捜査をしなければならない、あるいは捜査を遂げた結果共犯が認められたという趣旨の報告には接しておらないということだけを明らかにさしていただくことで御了承願いたいと思います。
○橋本敦君 その点について私はもっともっと徹底的な調査あるいは捜査を要求したいと思いますが、話を変えまして、この弾劾裁判所の判決文の中にも、あれこれ出てまいるわけですが、まさにこの電話をかけた目的というのが、これは当時の政治状況における政治的重大な陰謀であったということは読み取れるし、そしてまたそういうことであることは間違いがない。そういう中でこのにせ電話テープが報道させる目的をもって持ち込まれ、結果において報道されたということになりますと、この弾劾裁判所の判決がたとえばこう言っておりますが、これが報道されるということになれば検察庁の事件処理が公正を欠くという疑惑を生ずることばもちろん、三木総理大臣もまた政治的思惑を秘めつつロッキード事件の究明に努めるごとく誤解せられて云々とあります。まさにそうだと思います。そういう意味では、このにせ電話録音テープが持ち込まれ、そしてそれが報道されたということは、これは三木総理の名誉、一国の総理の名誉を著しく傷つけたという結果を招来したものと私は思いますが、その点の御認識は検察当局はいかがですか。
○説明員(石山陽君) ただいま委員御指摘のとおり、にせ電話事件がもし仮にマスコミ等によりまして過って報道されることによってそれが三木前内閣総理大臣の個人的名誉にもゆゆしい影響を及ぼす問題であるということになることにつきましては、当然検察庁も客観的な認識を持ち、その点に関します配慮も十分考慮した上で本件の起訴不起訴を決定する要素に勘案したものというふうに考えております。
○橋本敦君 私の質問に対してもう少しフィットする形で答えていただくならば、結果的に読売新聞は慎重な配慮の上で報道したわけです。読売新聞はこれを報道するという趣旨について、それをみずから明らかにして、これはやっぱり公益上の必要性があるというそういう新聞社独自の判断でやったと、こういうことを明らかに新聞社は知っているわけですね。私は、そういう判断があるにしろ、これが現に公表された、持ち込まれたその結果に基づいて公表された。公表する趣旨は新聞社が独自の判断を加えた、それはよろしいですよ。だけれども、結果的に公表され、一国の総理ともあろう人が長々とこのようなにせ電話事件に取りかかわって、しかも一定の疑惑を招きかねないような部分もあるではないかということを追及され、結果的に三木総理の名誉は現に侵害されている結果が生じていると、こう見ていいんじゃないかと、こういう質問です。どうですか。
○説明員(石山陽君) 客観的に見まして三木前総理大臣に対しまする個人的名誉が損害されたという点につきまして、先生の御認識もまことにごもっともでございます。ただ、本件におきましては、幸いなことに、内閣前総理大臣でありました三木先生も、当委員会に御出席になりました際に、私はこの件については政治的なにおいがあるということを考えたので、要するに半信半疑ではあるけれども、努めてそのような口実をとられないようにということは考えて善処をしたというふうに御説明になっておられますので、主観の差はあるかもしれませんが、三木先生からはその後名誉棄損としての告発あるいは告訴等もございませんでしたし、これをどのように検察庁は受けとめたかということはその点の事情も勘案して考えねばいけない問題だと思うことを申し上げたわけであります。
○橋本敦君 三木総理から名誉棄損での告発がなければ名誉棄損罪ということについての適用を考慮する余地はありませんか。そういうことはないですね。
○説明員(石山陽君) 私がいま申しましたのは、たまたま事実関係としてそれが出てないというのを一つの例示で申し上げただけでございまして、もとより橋本委員おっしゃるとおり、親告罪におきまして告訴なければ捜査が開始できないという事態がないことは御案内のとおりでございます。
○橋本敦君 したがって、私が言うのは、私は一国の総理の名誉を深く傷つけたという認識においてあなたも私も一致している。私は単に軽犯罪法違反ということでなくて、これはまさに大きな政治的目的を持った政治的謀略事件である。結果において一国の総理の名誉を侵害をしたという事件ですから、これは私は鬼頭がこの謀略電話をかけたと断定するならば、単なる軽犯罪法違反というような軽微な事案にとどまらないで、まさに一国の総理に対する名誉侵害を行川たという意味で、名誉棄損罪の適用について検察庁は再度慎重に考慮し、必要があれば名誉棄損罪で追起訴をするということも含めて検討するべきだと、私はこう考える。法務大臣の御所見はいかがですか。
○説明員(石山陽君) 事務的な罰条の適用問題に関すると思います。まず事務から最初に失礼ですがお答えさしていただきたいと思います。 橋本委員のおっしゃる点につきまして私も個人的には十分共感できる点が多々あるわけでございますが、本件はいわゆる内閣前総理大臣でありました三木武夫先生の自宅にかかりましたにせ電話のテープがそのままの形で暴露されまして、三木さんがこのような形でもって政治的ないわゆる裁断を下した、そのことがいわゆる俗に伝えられる指揮権発動の問題だというようなことで伝えられるとしますと、これはまさに大きな名誉問題にも発展しかねまじき情勢であったと思います。先ほど橋本委員もおっしゃいましたとおり、本件につきましては結果として名誉を棄損した結果になっておると、こう表現にありましたとおりで、これは、よく鬼頭の弁解その他は別といたしまして、読売新聞社におきまして、いわゆる公益性の見地からにせ電話をかけた男がおるという点を主として報道するためにこのような記事がなされたものというふうに私どもは受けとめておりますので、その点におきまして三木前総理大臣の名誉棄損ということが主たる目的であり、主たるいわば社会的な影響であると見るべきであるか、あるいはそうではなくて、鬼頭元判事補のきわめて奇怪な個人的行動を非難する材料として報道されたものであるか、こういう点をあわせて勘案しなければならないものというふうに私は理解するわけでございます。
○橋本敦君 重大な問題がひそんでいるわけですよね。まさに鬼頭の個人的な奇行としてこういう電話をかけたというそのことの問題を中心において、そして軽犯罪法違反だけで処理をしている。そういう問題もさることながら、読売新聞が報道した趣旨については私はさっき述べたとおりそれは了解できると言ったですよ。客観的に一国の総理の名誉が傷つけられている。しかも電話をかけた目的は弾劾裁判所が判決で認定しているように、まさに政治的謀略ですよ。こういう事案を単に軽犯罪法違反で済まして、そして現に刑法上の適用の余地が全然考えられないでもない、多々共感するところがあるとあなたがおっしゃる名誉棄損罪の成否について改めて慎重に検討するという態度を検察庁がとらないことについて私は疑問が残りますよ。法務大臣いかがですか。私の議論お聞きになってどうお考えになりますか。
○国務大臣(福田一君) 私はどうも法律のことは詳しくないんで恐縮なんですが、大体、しかしまあ名誉棄損罪というのは親告によって取り調べをするとか処置をするものであって、まあ、この場合においては三木前総理はもちろんそのようなことはされておらないわけであります。ということになりますと、そういう相当なやはり政治的な影響があったというようなことば恐らくあり得るということを考えて、そのことの問題も配慮のうちに入れて私は検察はやはり調べたと思います。これは私、聞いているわけじゃないけれども調べたと思います。しかし、そこまで、名誉棄損だというところまで踏み切ってこの問題の処理をしない、軽犯罪法ということで処理をしたと、こう私は考えておるわけであります。
○橋本敦君 私はそういうような問題について、法務省当局もあるいは三木総理も含めてかもしれませんが、この事件を鬼頭個人の事件に矮小化するという、そういう方向へ行っていることにきわめて不満だという意味で問題を提起したわけです。きょうは時間がありませんからさらに先に進まねばなりませんが、この鬼頭氏が宮本委員長の資料を網走刑務所から持ち出した件についても、鬼頭氏自身が程田所長との会話をテープにとるという異常な行動をとったということは、これは何を意味するか。これは私は鬼頭氏自身はあの身分帳を閲覧するという行為が、これが厳重に保管されている秘密をみずから見るということであり、裁判官の権威の圧力、こういうものを加えて自分が見たということになってはならぬということで、将来自分が不法行為を問責されるということについて、そういうことがないように十分の警戒をもってわざわざテープを隠しどりをしたという、こういう意図に基づく行為だと見るのが当然だと思うんですね。そうでなければ研究のためと称して行って身分帳を見せてもらうのに程田所長との会話をテープで隠しどりするなんていうことを普通の人間は考えませんよ。信義にも反しますよ。私は鬼頭氏自身にそういう後めたい意図があったからわざわざテープをとって、そして周到な用意の上にこの身分帳を閲覧したと見る。これが当然正当の見方だと思いますが、この点について矯正局長はどうお考えでしょうか。
○政府委員(石原一彦君) 鬼頭前判事補が網走刑務所に参りました際に程田所長に全く内密でテープをとっていたということを聞きまして私も驚いたのであります。橋本委員御指摘のように、信頼関係に基づいて見せてもらったんだから資料は言えないというようなことを鬼頭氏はかつて言ったことがありますが、その信頼関係に基づいているならばテープなどをとる必要はないわけでございまして、刑務所側からいたしましても、まことに穏当を欠く行為であるというふうに考えておりますo
○橋本敦君 だから、したがって矯正局長が最初中間報告をされた状況は非常に変わってきた。むしろ逆に言えば程田所長はどうぞどうぞと会議室まで用意して、そして写真どうぞおとりくださいという状況がかえって明らかになってきた。こうなりますと、私は法務省当局の責任は鬼頭のそういう悪意あるないは別にして、法務省当局が当然秘匿すべき秘密の書類を一裁判官に職務上重要な正当な理由があるなしにかかわらず、これをやすやすと見せたという意味においての責任は私は重くなってくると思いますが、この点についての責任について現在どうお考えでしょうか。
○政府委員(石原一彦君) 昨年十月下旬、ここで御報告申し上げましたことと局面が一変いたしまして、当時におきまして真相を究明できなかったことを私も心残りに思っているのでございます。で、二月一日に鬼頭前判事補が訴追委員会においてテープを提出したということを聞きまして、早速程田前所長を呼んで事情を聞きました。その当時にはテープの内容を私どもも知りませんでしたので概略的な調査しかできなかったのでございますが、二月二十日に新聞報道によりましてその一部が出ました。さらに二月二十七日か八日と記憶いたしますが、別の新聞にやや範囲の広い、テープの内容の記事が出たのであります。そこでさっそく程田所長及び南部課長を調べようと思ったのでございますが、当時訴追委員会におきましては、すでに調査が開始されており、東京地検におきましても捜査をしているということでございましたので遠慮しておりまして、実は今週の初めから再び調査を開始いたしました。本日も南部課長を北海道から呼んで事情聴取をしているところでございます。来週中には私どもの調査を終えたいと思っているところでございます。すなわち前回御報告申し上げたことと異なる事情が出ましたので、再調査を現在行っているというのが私どもの現状でございます。
○橋本敦君 その再調査に関して私はお願いをしておきたい。なぜ、やすやすと、どうぞどうぞというような状況になったのかを厳密に調べていただきたい。そしてその以前に矯正管区の森さんのところに鬼頭氏が電話をかけております。森さんから程田さんに一体どういう話があったのか、これも内容を厳密に調べてもらいたい。そしてそういう矯正管区の森さんの話があれば、身分帳という秘密にすべき書類を法務大臣なり、あるいは本省の許可なくして見せるというような行為がなぜやすやすと行われたのであるか、この点についても私は疑問に思う。そういう点も改めて矯正局長としてこの鬼頭判事に見せるに至った経緯の全容について詳しく調査をして報告していただきたいと思いますが、それはお願いできますか。
○政府委員(石原一彦君) 昨日までに程田所長からある程度の事情は聞いておりますが、まだ調査の全容を御報告申し上げるには至っておりませんので、ただいま御指摘の点も含めまして、今後調査を続行したいと思っております。
○橋本敦君 なぜ、そういうことを申し上げるかと言いますと、鬼頭氏は森氏に電話をする、あるいは程田所長に電話をするというような場合が表面に出ておりますけれども、鬼頭氏自身はそういう電話でお願いをしたという以上にテープまで持ち込んで会話を取るぐらいですから、したがって北海道へ出張公判で出張する際に網走へ行くということをかねてから意図しておったことは間違いない。だからかねてから彼は周到な準備をしていた疑いがある。だとすれば、単に電話でお願いするというだけでなくて、どこかからの紹介状を持っていくとか、あるいはもっと鬼頭氏に見せようという気に森氏も程田氏も含めてなし得るような、そういう資料なり何らかの用意をして行ったのではないかと私は疑っているのです。そういうことも含めて調査をしていただくことをお約束できますか。
○政府委員(石原一彦君) 鬼頭前判事補が北海道へ行く前に法務省矯正局、あるいは矯正管区に運動をしたというような証拠は現在までにはっきりはいたしておりません。むしろ鬼頭判事補が北海道に行ってから電話をかけましたところ、矯正管区の了承をとってほしいというような話があってかけたのだということに事実は確定できょうかと思います。しかしながら、せっかくの御指摘でございますので、ただいまの点も含めましてさらに事情聴取をしたいと思っております。
○橋本敦君 なぜかと言いますと、この問題に関して香川民事局長が新聞に鬼頭問題に関してお話になった記事を私は読んだ。鬼頭氏は訟務検事になりたいということで申し出たけれども採用にならなかった。その申し出たことについて当時の平賀裁判官、飯守裁判官の推薦があり、しかも不採用になったということで香川民事局長に飯守、平賀氏がクレームをつけるというようなことがあったということが香川民事局長の談話として新聞に出されておる。きょうは香川民事局長いらっしゃいませんから真偽のほどは伺いませんよ。伺いませんが、鬼頭の行動には彼の一連のグループ、あるいは系列と見られる人たちの動きがないと判断するのは、私は軽卒だと思う。表向きいま局長がおっしゃったように行く前に何らかの話はなかったかもしれないが、何らかのものを何らかの形で用意していた疑いを私は持っているので、それをはらす意味で全部お調べ願いたいということをお願いしているわけですね。 さて、この鬼頭氏が手に入れた資料が、法務省が断定されたように一部が民社党の春日委員長が東京新聞に発表した資料と同一であり、松本明重の日共リンチ事件という本に記載されたそれとほぼ同一であるということが、これがはっきりしてきた。そうなりますと、あの身分帳は、鬼頭以外には法務省として、あるいは刑務所としては見せていないということがこれははっきりしているわけですから、鬼頭からそこへ流れたということは、これは推定として万人の認めるところであります。この関係についてどういうように流れたかということについて、この点については矯正局長の方で調査は進んでおりますか。
○政府委員(石原一彦君) 橋本委員御指摘のとおり、昨年十一月下旬におきまして網走刑務所に保管されておりました鬼頭に送付した筆写物が発見されました。その結果御指摘のようなことになったのでございますが、私どもが確定いたしましたのは、昨年の一月二十九日づけ東京新聞に載った写真版は筆写物の写しと同一である、なお松本明重氏編著の日共リンチ殺人事件にある刑の執行停止上申書並びに診断書の部分につきましては、筆写物の誤りそのものがそのまま転載されている等の事情から筆写物を原稿としてつくられたものというふうに、これも断定いたしました。しかしながら、文芸春秋の立花論文に使われておりました資料につきましては、引用文が少ないのでこれは断定できないというところまではっきりいたしております。 ところで、その経路でございますが、御承知のとおり鬼頭前判事補は最初から自分としては流していない、絶対に流していないということを言っておりまして、調査の方法が非常にむずかしいのであります。しかのみならず、私どもがいたします調査は、主たるものは刑務所職員の職責を問う観点及び矯正行政の円滑かつ適正な運営を図る観点から調査いたしまして、それを国政調査に御協力申し上げまして、できるだけ全容をはっきりさせ、御報告申し上げているのであります。したがいまして、鬼頭判事補をめぐる直接の周辺につきましては私どもの調査の及ぶ範囲ではないのでございまして、しかのみならず、当時からすでに御指摘の方々が、自分たちはそのような資料を鬼頭判事補から直接もらったものではないというような言明がございましたし、任意調査におのずから限界のあることを考えますと、私どもで調査をかりにいたしましても、本当の真相が明らかになるというところまではいかないのではないかということでございまして、そこまで調査をいたす考えは持っておりません。
○橋本敦君 捜査の観点から伺いますが、もし鬼頭が公にするつもりはないと言いながら手に入れて、そして公にする意図で初めからあったとか、そして公にする意図でこの資料を松本明重氏あるいは春日氏に流したのだということになれば、これは国家公務員法違反の秘密を開示したという罪に該当するという問題についてはどうお考えですか。−該当するかしないかだけ、時間がありませんから。
○説明員(石山陽君) 要するに欺罔によるそそのかし罪が成立するかどうかということに関する法律判断と思いますが、やはり、簡単に申しますれば具体的事実の認定いかんによって成否は論ぜられるということにしかならぬと思います。
○橋本敦君 だから成立する可能性があるわけでしょう、事実いかんでは。
○説明員(石山陽君) はい。欺罔によるそそのかしというのも理論的にはあり得ると思います。ただ、多くの場合そそのかし罪というのは、表示が何であるかということで、内心の意図が何であったかというよりも、その表示自体にそそのかし力があるかどうかということが主たる法律問題になろうと思います。その点が一つ問題点だと思います。
○橋本敦君 それと、彼自身が出版を、あるいは公にすることを目的とする人に、その目的を了知してこれを渡した行為は、これは国公法百条という関係にはならないという判断ですか。
○説明員(石山陽君) おっしゃるとおり犯罪の成否と関係のない事後の流れということになろうかと思います。
○橋本敦君 しかし、いわゆるそそのかし罪が成立する可能性があるとすれば、犯罪の事後処理や情状に関しますから、これは調べねばならぬということは間違いありませんね。
○説明員(石山陽君) 犯罪が成立するというふうなことになりますれば、一もちろん起訴、不起訴を決定する情状として周辺事実その点を合わせて含めるのは当然でございます。成立しない場合にはそこまで及ばぬ場合がございます。
○橋本敦君 だから、したがって、捜査の観点を、いま言った国公法百条のそそのかし罪ということの可能性があるということを突き詰めていく中でその成立が可能性があるという判断ならば、捜査の観点から言えばこれは調べねばならぬことの一つになるんですよ。これは捜査の論理上当然なんです。しかし、それが全部いまやられていない。私はこの点については重大な不満を持つ。私は改めてこの点について犯罪の成否を厳重に調査する、捜査をするということを局長に改めて要求したいんですが、このそそのかし罪について、あなたがおっしゃったそういう理論的な問題、事実関係、この事実関係は、捜査当局は、程田所長との鬼頭が盗み取りしたテープ、これも聞いて、そして石山局長の調査結果も参考にしてもう一遍改めてこの点の調査をやるという必要があると思いますが、どうですか。
○説明員(石山陽君) 局長に格上げしていただきまして非常に……。(笑声) 申すまでもなく、犯罪の成否というのは、法律的に立つ場合にはそれを前提にいたしましてその共犯の有無であるとか、あるいは周辺的な背景事情を調べるというのが捜査の常道であると、これはもう先生よく御案内のとおりだと思います。ただ、本件につきましては、これもすでに明らかになったことでございますが、去る三月十八日に、本件に関しまして民間の方四名の方から昨年の十二月十三日本件につきましても告発がなされておりますが、これらにつきましても、捜査を遂げた結果いずれも不起訴処分に相なっておるということをつけ加えて申し上げます。
○橋本敦君 そういう点が私はきわめて不十分だということを、再考を促しておるわけなんですよ。また、知って聞いているんですよ、時間がないから。 そこで法務大臣、もう私の持ち時間終わりましたので最後に伺いますが、これは、私は、裁判所が裁判行政という観点で責任があるという面だけではなくて、一国の総理にこのような謀略電話をかけたという事案が発生をした。しかも、鬼頭氏の行為は、いまの網走刑務所問題という法務省直接の所管にかかわる重要な行政事務管理という面についても重要な責任がある。あるいは大阪へ行って捜査介入したという重要な事実もある。私は、この点について、法務省当局は法務省当局としてこの事案の真相と、そしてこれの全面解明ということでさらに努力をしていただいて、まさにこれは国会と国民を騒がした事件ですから、この問題については法務省として責任のある調査結果報告を国会になさってしかるべきだと、私は強くそのことを希望しますが、法務大臣それをやっていただけますか、御所見を伺って質問を終わります。
○国務大臣(福田一君) まあ、いろいろ当局との間、政府委員との間の質問応答を承っておったわけでございますが、法務大臣としては、私はやはり検察を全面的に信頼をするという立場に立って検察に対して、しかも具体的な問題についてこうしなさい、ああしなさいというようなことを述べることは、これは私は差し控えるべき立場であると思っております。そういうような調査報告にいたしましても、それはそういう観点に立って調べなければ調べができないと思うんでありますが、この問題の、特に網走問題については、これはもう先ほど局長も言っておるように、これは調べて御報告を申し上げるということになっておりますから、これはそのとおり了承いたしますけれども、他の件につきましては、これは一応いままでの段階においてそれらの問題も含めて検察は十分に検討をしてくれたものと私としては信じておるわけでございまして、網走以外の問題について調査報告を申し上げるというお約束はちょっとここではいたしかねると存じます。
○橋本敦君 納得できませんが、またの機会に、時間がありませんから……。
○下村泰君 私は庶民的な感覚でいろいろのことを質問させていただきたい。専門家じゃございませんので……。 まず一番疑問を持つのは、今度の鬼頭元判事補の今回までの行動半径を考えると、一体、判事補のもらっている給料であれだけの行動ができるのだろうか。都内へ来れば一流ホテルへ泊っている。しかも、だれしもが考えられないようなあの電話をかけた。それは電話をかけるということはだれでもかけられましょう。ところが、たまたま三木総理大臣という方が電話魔である、電話がお好きであるというそういうところをちゃんと見抜いて電話をかけた。しかも、ああいうことは一人でやれるということは私らにはとても想像つかないことなんです。自分が判事補という身分を考え、その結果がどう出てくるかということを考えたならば、あれだけ知能犯的な人間のことなんだし、自分の行く末ぐらいのことは考えていると思う。してみると、自分の身の安全、後ろががけでなくて、落ちても下にちゃんと救助網、網があるというような状態でなければああいう行動は私はとれないと思う。私ら庶民が考えてそう考える。専門家であるべき検察庁も当然そのぐらいのことは考えておると思うんですけれども、今度の渋谷の簡裁の裁判が始まったときに、その背後関係とかあるいはそれに関連してそういったようなことが解明できるのかどうか、それをまず伺わしてください。
○説明員(石山陽君) いまの御指摘は、まことに、冒頭におっしゃいましたとおり庶民の感覚として当然の疑惑であるというふうに私どもも受けとめます。それにつきまして、当然、これまでの捜査の過程等におきましては、刑事事件の範疇として犯罪の成否とそれに関する背後関係の捜査ということは当然のように東京地検において尽くされたものと思います。ただ、それ以外におきまして、その本人が、たとえば、冒頭御指摘のように不当な生活を享受しておるというような問題につきまして、その資金がどこにあるかというような点が犯罪との結びつきにおいて疑いがありますれば検察庁としても当然捜査いたしたわけでございましょうが、これまでのところ、その点に関しどのような解明がなされたかについての報告には接しておらないというのが実情でございます。
○下村泰君 いまも申し上げましたように、とにかく言うていることが非常に大きなことを言う。たとえば、福田内閣は私の一言でふっ飛ぶとか、あるいは永田町に親友がおるとか、あるいは国会周辺にはおれをカバーしてくれるやつがいるんだとかというようなことばもう新聞記事にもごろごろ書かれているんですね。そんなことを本人が言う原因がどこにあるのか。これ、何にもなければそれだけの言葉が吐けるはずがないと思うんですね。ですから、そういうことが果たして今度のその裁判で出てくるのかこないのか、そこのところをちょっと聞かしてください。
○説明員(石山陽君) 私もいま下村委員御指摘のような言動が鬼頭元判事補の言葉としてマスコミ等で報道されたことはよく承知しておるわけでございます。それで、これらの言動は、いわゆる鬼頭元判事補自身の個人的な性格に基づく奇異な言動にすぎないのか、あるいは一つの刑事訴追という場に立たされた者の最後の虚勢と見るべきものであるか、あるいは深い自信があり裏づけがあっての発言であるのか、これらにつきましては現在のところ私もつまびらかにいたしておりませんが、必要の部分につきましては、もちろん、今後の公判廷で逐次検察官の立証活動の中で事案が解明される部分は解明されるものというふうに考えておるということだけしか現在ではお答えできかねる次第でございます。
○下村泰君 私は、この鬼頭元判事補というのは功罪があると思うんですよ。一つは、もちろん新聞、マスコミにも報道されておりますとおり、あるいは庶民の感覚から見て、ああ裁判というのはいいかげんなものなんだなと。で、裁判官にあんなやつがいたんじゃ当てにならないなと。これは庶民感覚で、もうそれは寺田総長のような高い地位にいらっしゃる方はわからない。人事局長もおわかりにならぬと思う。この第一線で働いている警察官はこれはどれだけの余波を食うか、皆さん御存じですか。三億円の事件が発生したときに、駐車違反、あるいはスピード違反、駐・停車違反、こういうことで最前線のお巡りさんが違反者に対して接する場合、てめいら、そんなことをしている暇があったら三億円の犯人をつかまえろ、ばかやろう、こういうことを言われた。やってられないんですよ、仕事を。今度も同じことなんですよ、こういう事件が起きると。おまえのところの親元がなってねえじゃねえかとか、おまえのところの源がなってねえじゃねえか。親方何やってんだ、ばかやろう。こういうことを言われるんですよ、現場の人たちは。そういう一線で働いていらっしゃる方たちの御苦労というのは、恐らく総長も人事局長もおわかりにならぬでしょう。これが罪の方です。じゃ、あの人のいい方はどうか。あんな当てにならねえ裁判官が裁判所にいるんだったら悪いこともできない、これは大変なことですよ。みんな罪犯さなくなりますよ。こういう勲功を立てた人です、あの人は。見方によってはそういう見方ができるわけです。これはいかに裁判所に対して信用がなくなったかということです。これは恐ろしいことだと思うんですね。これに対して事務総長どういうふうにお考えですか。
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) いま下村委員の前段におっしゃったいわゆる罪の部分、これが私どもとしても非常に恐ろしいと申しますか、気にかかるところでございます。そういう形で国民の一般の方々から裁判所が信頼を失うようなことになりましては、近代民主国家の基本が崩れるわけでございます。で、私どもは多少能力は至りませんでも、常に自粛、自戒して私生活をも含めまして外から何らの批判も受けない者でありたいと、みずから努力しておるつもりでございます。まあ事務総長高い地位でわからぬだろうとおっしゃいましたが、そういうことば決してございません。私も判事補からやってまいりました。つい先ごろまでは高裁で裁判をやっておりました。そういう場に出て来られる当事者の方々のお気持ちというものは十分わかっておるつもりでございます。そういう意味におきまして、私どもなりに努力しておるつもりでございますし、また鬼頭以外のすべての裁判官がそういう気持ちで今日までやってまいったことを私は確信いたしておるわけでございます。ただ、そう申しましても、一人の不心得者が出ますと、みんなそうであろうというふうに言われますことがまことに情けないわけでございますが、今後絶対にかような間違いを起こさないように相戒めてやってまいると言う以外にはないと、かように考えるわけでございます。
○下村泰君 下手すると、あの鬼頭元判事補に判決受けた人間が、おれは有罪だけれども、あいつがやったんだからおればひょっとしたら無罪じゃねえかと、こんなような感じも持つんですよ、庶民というものは。 で、そういった人たちがつくられてくるこれは司法修習生心得、先ほどお話に出ましたこれ、ちょっと拝見しました。私も軍隊生活の覚えがありますが、あの軍隊の内務令の中に第二の天性となさしむるを要すという言葉がある。つまり、恐らくこの司法修習生もこの研修所に入っているときに、将来は裁判官として法の番人になるべく第二の天性をここでつくられるんじゃないかと思うんですけれども、どうもこれ読んでいると、言葉はやわらかいんですが、えらいどうも押しつけがましいところがたくさんある。たとえば、「講師、教官、実務修習指導者等に対するエチケット」「大講堂における外部講師の講演の際は、特に礼を失することのないよう注意すること。」、そんなことは子供だってわかる。「居眠りは、無礼の最たるものである。講演が終ったときは拍手するのが礼にかなう。」、これ一体幾つの人間に言うているんですか、これ。これは「講演が終ったときは拍手をするのが礼にかなう。」と言っても、おもしろければ拍手しますよ。自分のためになる、ああいい話を聞いた後なら心からお礼の拍手をしますよ。くだらない話を押しつけられたら、居眠りはしても拍手はできませんよ。二番目は飛ばして三番目です。これが非常に気になる。「教官の自宅又は事務所を訪問するときは、社会人としての礼節に欠けることのないよう注意するとと。」、こんなことはあたりまえのことなんですよ。その後が気になるんですよ。「他人の家を訪れる場合、手土産を持参し、適当な時刻に辞去するのは、当然の配慮であり、事後に、感謝の意を表するあいさつを忘れないことも大切である。」、これ何ですか。この「他人の家を訪れる場合、手土産を持参し、」というのは。その前に、「教官の自宅又は事務所を訪問するときば、」、これ教官のところへ行くときにも手土産を持っていく。その手土産の内容によっては、あのやろう、いいやつだと思われたくて持っていくんですか、思わせるように持っていくんですか。それとも上のやつは、これ収賄の意味でやっているんですか、これ。こういうところが私わからぬのですがね。これちょっと説明してください、これ。
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) まさに御指摘のとおり、ここに書き上げてございますことは社会人としての最小限度のエチケットであろうかと存じます。その相手が何歳のどういう者であるかというお尋ねでございますが、大学を出まして司法試験を通りましたいわば一人前の司法修習生でございます。ただ、このような形であらわれました前提といたしまして、修習生の中にはやはりこの最低限度のエチケットもよく心得ていない者が現実にあるわけでございまして、そういう少数の者と言いますか、その者に対して、いわばある意味では非常に押しつけがましい形にはなりますけれども、最小限度のエチケットを指示するという趣旨で書き上げてあるものでございます。 ただ、先ほど御指摘のように、表現において、あるいは内容において必ずしも適切でない部分もあろうかと思います。その点につきましては、十分、はっきり改めていくという方向で考えている次第でございます。
○下村泰君 それば、まあこれは改めなければしようがないでしょう。 で、「右に述べたところは、実務修習の場においても通用する。なお、この際、実務修習中、特に留意すべき事項について付言する。」というのがあって、そのおしまいの(4)項のところに「実務修習中のいわゆる「夜の修習」については、これを期待するような態度を示したり、これを当然のことと考えるようなことがあってはならない。」。何ですか、この「夜の修習」というのは。「これを期待する」とはどういうことを期待するんですか。わからない、僕には。御説明を願いたい。
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 実務修習に参りまして、具体的に弁護士修習でありますればある弁護士さんのところに配属されるわけでございます。現実にあると思いますけれども、そのついた先生方に夜一杯飲ませてもらう機会もあろうかと存じますが、そのようなことについて修習生の方からいわば要求がましいことをやるようなことがあっちゃいけないという趣旨のいわば心得でございます。
○下村泰君 実にどうも情けない話で……。しかし、こういうことを書かなければ本当にそれを期待して口に出すばかがいるんですか、だけれども。こんなことは私は考えられないと思いますがね。 こうやってみますと、たとえばこの司法修習生心得、これを読んでみますと、確かにそれは頭がいいんです。それは私より確かに頭がいいでしょうよ、国家試験をパスしてここへ来る方なんですからね。そうすると、ペーパーテストでは確かに頭がいいかもしれないけれども、それじゃ人間として心の豊かな人は一人もこれでは育ってこないということなんです。この間のある新聞で、国立大学協会が医学生を全部調べた。国立大学に関しての医学生。ですから医学部もあれば医大もあるだろう。十人に一人は医者として適さない性格を持っている、こういうことがちゃんと言われておるんです。じゃ、どういう性格を持っているかというと、ミュージシャンですからいわゆるバンドマンとか、そういうものには適した性格があるけれども、医者には向かない。十人に一人、百人では十人になっちゃいますよ。そうすると、こういういわゆる司法修習生の中にもそういう性格を持った人は僕はいると思う、当然。途中で適正検査というのはないんですか。
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) まさに正当な御指摘かと私考えます。ただし、修習生として採用した者につきまして、いわば先ほど寺田委員でございましたかしら、いわば精神鑑定といいますか、というようなことまで行わなければならないことになりますと、これまた非常に大問題でございます。私どもといたしましては、修習生の採用の際に十分考慮さしてはいただいておるつもりでございますが、やはり研修所における二年の教育の場において、一人前の法曹として巣立つように育て上げる以外にそのほかに方法はないというふうに考えておる次第でございます。 なお、下村委員御指摘のどおり、この書き上げられております内容につきまして、まさに子供だましと言われてもあるいは間違いではないような部分がございますが、はしがきにございますように、このようなことがもちろんあってはならないわけでございまして、ぜひ最小限度の一人前のプロを養成しているわけでございますので、法曹としてプロフェッショナルな、一人前のプロフェッショナルとして最低限度の心得を書き上げているものでございまして、恐らく大多数の人にとっては言わずもがなのことであろうかと存じますが、やはりこの種のことを心得ていないばかりに、せっかく修習生になりました地位を棒に振るような事例もあったわけでございますので、十分その点は私ども重々承知の上でこのパンフレットを配付しているような実情でございます。 なお修習生のいわば養成、教育につきましては十分御指摘のような点について留意していきたいというふうに考えております。
○下村泰君 私はこの心得のこれ全部悪いと言ってません。この中にいい部分もあります。これは司法修習生に限らず、私はプロ野球の方が好きなので、よくフロのチームを訪ねて話を伺いますけれども、確かにこういったエチケットに関することは、修習生に限らず、いま日本全部のこういう年齢の人たちにはないということは事実なんです。ですから、別に司法修習生ばかりが悪いというわけじゃないと思う。この中に書かれていることは決して悪いことばかりじゃありません。けれども、せっかくこうしたものをお出しになるならば、この日弁連の理事会でもこういうのが出ておりますけれども、この最後の方に「各教官と十分審議されねばならないことはもちろん、法曹三者の意見を徴すべきものである。」と、そうした方がよかったと、そうしてあってほしいという希望がここに書かれております。ですから、やはりこういうものをお出しになって人間を形成し、しかもこういう人たちが大きくなって、日本の裁判権というものを駆使して法の秩序を保とうという人たちを育てるところなんですから、第二第三の鬼頭が出ないとは限りません、現在の状況では。ですから、第二第三の鬼頭が出ないようにするためには本当にどうしたらいいか。先ほどからお聞きしておりますと、皆様方の通り一遍の自己反省の言葉だけでは、とてもとてもこの問題は解決すべき問題ではないと思います。こういったことを含めて大臣どういうふうにお考えでしょうか。
○国務大臣(福田一君) 大変ごもっともな御意見で、一般のものから見ましたら確かにおっしゃるような御疑問があると思います。私は修習生に与えるこの文書などは当然改めるべきものだと思っております。こういうことはもう当然改めるべきものだと思いますが、ただ私この機会に一言だけ申し述べさしていただきたいと思いますことは、確かに鬼頭事件などが起きて、非常にこれは国民の皆さんには一種の不信感はある意味で与えたことはあなたの御指摘のとおりだと思うんですけれども、私は実は自分でそんなこと言うとおかしいが、法務大臣になんてなろうと思ったこともないんでありますが、法務大臣になって法務省など行ってみたり、検察へなど行ってみますと、まことにみんなまじめなのばかり多いんで実はいささかこちらの方が辟易しておるというのが実情でございます。世の中には善人ばかりはおりません。やはり悪い者もおります。悪い者が一人おるからあとは全部悪いというような印象は、これはお互いに持つべきではない。私は、もちろんそれだからといって、いまの法務省の中が、あるいは裁判所の中が全部りっぱだなんというようなことをもちろん申し上げるつもりはございませんが、こいねがわくば、いま先ほどあなたがおっしゃったような御忠言をしばしばわれわれに与えていただいて、そうしてそういうことのないように、まあ、言うと、善導していただくというか、指導をしていただければ非常に幸いである、こういう感想を述べさしていただきたいと思います。
○下村泰君 大変ありがたいお言葉でした。もっとも、こういう法の番人をやっていらっしゃるような方ですから、みんなかたいのはあたりまえですけれども、あの建物自体がかた過ぎますから、木造にしたらかえっていいんじゃないかと思います。かたいのは結構ですけれども、やはりどこかに人間の潤いと言いますか、豊かな情操というものをお持ちになるような人間をつくってくださることをお願いして私の質問を終わらせていただきます。
○委員長(田代富士男君) 本日の調査は、この程度にとどめます。
○委員長(田代富士男君) 次に、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。 質疑のある方は順次御発言願います。
○寺田熊雄君 若干お尋ねしたいんですが、現実の裁判事件の処理を見てみますと、たとえば審理に非常に長い年月を有する裁判事件がございますね。いままでにも汚職事件、それから非常に困難な事件など多々ございましたが、今度ロッキード事件がそういう類型の一つになると思うんですが、従来も、たとえば帝人事件など補充判事など一人置いて審理が終わるまでその判事を交代させない、ずうっと同一の判事で最後まで審理を遂げるというようなこともございました。その逆な例もあるわけですが、こういう世間が非常に注目する重大な事件などは担当する裁判官を最後まで交代せしむべきではないと考えておるんですが、これは最高裁が直接所管するのではなくて、高裁長官の権限かもしれませんが、一定の方針はやはりあなた方が御指導になる余地があると思うんですが、その点いかがでしょう。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 御指摘のとおりでございまして、事件にもよりますし、それを現実に担当しておられる方の年齢、境遇等の問題もございますが、原則としてこの種の事件については構成を変えることなく終結まで持っていっていただきたいと、そういうふうに考えております。現実の問題としても若い方ですと定期の異動がございますが、これまでもしばしば事件処理のために異動を延伸するというようなことをやりまして、専門的に申しますと更新というようなことをしなくて済むように配慮をしておるつもりでございます。
○寺田熊雄君 これは現実に一生懸命にやっておられる裁判官に対しては大変失敬なことになるのかもしれませんけれども、御承知のように、いままでたくさんなされました政治的な事件、汚職事件など、詳細に判決などを読んで私どもは感ずる問題ですけれども、被告人、弁護人などが非常に証拠の証明力を減殺するためにいろいろなテクニックを使う。まあ、ロッキード事件などはもう始まってんじゃないかと思うんですが、証人に働きかけて真実を証言しないように大変な努力をしているような印象さえ持つわけですが、ああいう裁判事件を担当する裁判官というのは、ある程度やはり職務上の経験を積んだ人でないと無理じゃないかというような印象を持つんですけれども、その点いかがでしょうか。やはり非常に未経験な判事補でも、構成上左陪席になっておればやむを得ないと言われるんでしょうか。その点お考えになる余地はありませんか。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 確かに御指摘のとおりに考えていくべき問題だと思います。現在の裁判所法は、未経験と申しますか、経験の浅い判事補は単独で裁判ができないのはもちろんであるというふうに規定しております。で、その精神というのは、できることなら合議体を構成する場合にも、本当に一人前の裁判官、いまの規定でございますと判事でございますが、判事三人で構成しろというのがその精神であろうかと思われます。ただ、御案内のような裁判官の充員状況でございますので、現在のところはその合議体の中に未特例の判事補を一人入れることは差し支えないと、こういうふうになっておるわけでございまして、法のたてまえそのものとしては三人とも一人前の裁判のできる人で構成しろと、そういうところをねらっておるものと考えておるわけでございます。 ただ実際は、御案内のように、未特例の判事補の教育というようなこともございまして、人員の関係ということもございまして、原則としてはむしろ左陪席は未特例の判事補で構成しておるというわけでございますが、ただ、ただいま御指摘になりましたような大事な事件等につきましては、実際問題としては左陪席の判事補も、五年以上の特例のついておる判事補を充てておるというのが現状でございまして、ロッキード事件等特に二、三の部で処理いたしておりますが、その二、三の部いずれも左陪席は五年以上の職権特例がついておる判事補をもって充てておる、こういう状況でございます。
○寺田熊雄君 これは一昨日の質問の際に出たことなのですが、私も初めてびっくりしたのですが、速記官の欠員が二百名もあるということのようでした。これはもし私の聞き違いでしたならば御訂正をいただきたいのですが、二百名あって、それを毎年、今度は部外任用を始めたので、四十名ずつ充足していくことになったので、やがては解消せられるであろうというような、これはたしか人事局長のお答えだったかなと思うのですが、これがもし真実だとしますと五年かかりますね。道理で私どもが非常にデリケートな訴訟事件で速記官をお願いしたいということを裁判長に要請をいたしましても、速記官が足りませんというようなことで渋られる。こちらも強引に押して結局はつくというようないろいろな問題がありますが、それがかなえられない場合もあるわけですね。これは次長、もう少しがんばって、何も四十名と限らなければならない理由はないわけですから、もう少し早くこれを充足して、やはり公正な裁判というもの、これはもうあなた方が何にも増して希望しておられるところでしょうから、またこれが国民の要求でもありますから、もうちょっと早く充足するように努力願えませんか。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 前回の当委員会で人事局長が二百名余りの欠員があると申し上げたことばそのとおりでございます。正確に申しますと、現時点で二百十二名の欠員ということでございます。 それでこの充員の問題でございますが、実は速記官の定員ができましたのが数年前、九百三十五名という定員ができましたが、これを補充していくということが種々困難な問題があるわけでございます。かつても御説明申し上げたことがあろうかと思いますが、速記官として採用をいたしますのは、大体、高校を卒業したあたりのところでございます。で、いろいろの適性検査もやりまして、一応、適性であるというふうに認定をして速記研修所に入れるわけでございますが、実際にこれをやらしてみますと、かなりの脱落者が出てくるということでございます。その年によって違いますので、一概に何割とかいうふうには申せませんけれども、多いときには二、三カ月やってみて、とてもこの方には無理だというような方が十名前後も出てくるときがあるわけでございます。そういたしますと、その人たちが高校を出て四月に研修所に入りまして、二、三カ月であなたは向かないからもうやめてくださいと、どこかよそへ行ってお探しなさいというのは非常にお気の毒でありまして、何とかやはり裁判所のその他の部門で吸収してあげなければいけないということが出てまいります。で、そういう観点から実は一時かなり長い間、部内から速記官の希望者を募集するということをやったわけでございます。部内から募集いたしますと、仮にあなたは向かないからということになりましても、それじゃもとの職場に戻してもらおうかということで、案外そういった方を吸収していくのに便利でもありますし、そういう速記官の入所者を出した前の庁も、前から勤めておった人だから帰ってくるなら温かく受け入れようというようなことになって、その辺のところがスムーズにいくということがあったわけでございます。ところが、部内から募集するということをやりましてもかなり無理がかかってまいる。欲しいところの職員、たとえば大阪に非常にたくさんの速記官が欲しいと、こういたしましても、大阪の人が入ってくれるとは限らないといったような問題が出てまいりますので、これは部内から募集するということもかなりそれはそれでむずかしいということで、結局のところ、部内募集をいたします限りはせいぜい二十人前後の希望者しか募れないというような状況が続いてまいりました。その結果、欠員数が非常にふえてき、いつまでたっても定員が埋まらないということで、現在も二百名を超して欠員を抱えておると、こういうことになったわけでございます。 で、これではいけないというふうに考えまして、昭和五十年、一昨年でございますが、一昨年から部外募集にもう一度踏み切ることにしたわけでございます。で、一昨年は部外から大いに募集をいたしまして約千五、六百名の応募者がございました。それから昨年、本年と、こう三年になったわけでございますが、本年の応募数を見てみますと、大体八百人前後の応募がございます。しかし、結局のところ、この受験者はかなり少数になり、さらに第一次の合格者ということで百人前後の人が一応第一次の合格をいたしました。で、それから適性検査をいたしまして、結局のところ、合格して採用するということになったのがことしは四十二名ということでございます。この四十二名の・中には部内者は五名しか含まれておりません。三十七名、大部分は部外者でございます。しかし、この四十二名もちょうど私どもが入所させるということを決めました時点では、まだこちらに来たいという意向でございましたけれども、その後、大学を受かったとか、あるいは他の官庁、会社等に行ったというようなことで辞退するというような状況が二、三名あるいは四、五名でございますか、ちょっと正確ではございませんが、出てきておるような状況でございます。私どもは、そういうような経過をたどりまして、何はともあれ四十名の線は確保したいというのが、これは精いっぱいのところでございます。ただ、これから先、二、三カ月の間に、第二次適性といいますか、実際一カ月二カ月やってみまして、どうしても向かない、あるいは手の指等に気がつかなかった欠陥というものがあるというようなことで脱落をしていく人がやはり数名はまた出てくるのではないかというふうに考えております。そういう状況で速記官を養成いたしておるわけでございまして、できるだけ多数の人に応募してほしいとは考えておりますが、極力やってきておるわけでございますが、当初の応募状況、その人数も必ずしもそう多くはないということ、そして第一次、ともかくも試験を受けて合格し、次のふるいをかけられる者の数は相当数減ってくるということで、その四十名という数はそう簡単にはふやすことのできない数ではないか。で、一方この養成の問題も、二年間相当な努力をしていただかないと追いつけないような技術の習得に困難な面があるようでございまして、この四十名という数をできるだけふやしていくということは考えておりますけれども、欠員がそんなにあるから百人二百人と採っていくんだというふうには簡単には申し上げかねる、そういう実情があるわけでございます。
○寺田熊雄君 事情はよくわかりましたが、何となくまだ納得できないですね。なぜ、そういうふうに四十名程度しか採れないのか。それはまあ千五、六百名の応募者があって、その中から四十名採ったというのだからして、まあ、きわめて試験が厳格であったということはわかりますね。だから適性を求めて合格者を得ることが非常に困難だということもわかりますが、それならば、もっと応募できるような手だてがないのだろうか。たとえば待遇などをもっと上げて、それによって応募者をふやすとかいうようなことも可能なのじゃないかと思いますが、そういう点のお考えはないのですか。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 待遇の面でございますが、国会にも速記の方がおられますが、そういった方々の受けておられる待遇といったようなものを基準にいたしまして、まあ、まさるというふうに申し上げると、これは失礼かもしれませんが、決して劣らないだけの待遇というものをいたしてきておるわけでございます。結局のところ、この一つの難点というのが、実は国会で速記をなさっておる方は、この国会の委員会、本会議という特殊の場で、日本にただ一つの場所でございます。ところが、私どもの方の速記は日本全国でございまして、九州の方にも北海道に行ってもらわなきゃいけない、あるいは東北の方にも中国に行っていただかなきゃいけないといったようなことがございまして、なかなか、それほどのことをしてまで何も遠くへ行かなくても、仙台の方なら仙台で就職すりゃいいじゃないかというようなことも一方にございまして、需給の関係と申しますか、その後における任地の関係等から言いまして、よくよく調べれば調べるほど、必ずしも応募しないでというようなところがあるのではないかという気がいたします。それ以外の個々の待遇でございますと、決して劣ってはいないというふうに現在のところは考えております。
○寺田熊雄君 まあ、あなたのおっしゃることには間違いがないと思いますけれどもね。ただ、私どものいままで見てきたところでは、たとえば外国の裁判所の速記官、これはアルファベットを用いる速記で、日本の特別な速記のような困難さはありませんね。比較的目をつぶってどんどんやってしまって、平然とやれるようなものです。素人でもたやすく習得できる。それでもなおかつ十分置きぐらいに交代していくのを見ることがありますね。国会の速記官の方々、これは何分でやるのか、やっぱり十分ぐらいじゃないかと、間違いかもしれぬが、そんな感じを持つんだけれども、ただ裁判所の速記官は、長いのになると二時間ぐらいやるのがありますからね、一人で。だから、そういう労働の密度から言いますと、やはり待遇面で劣るという結果になるんじゃないでしょうかね。これは結局速記官の人数ということにまた逆戻りするけれども、何かやはり速記官ということに、そういう地位に魅力を感じさせるようなものを持たせる必要があるんじゃないでしょうかね。いわゆるその労働の密度についての調査をなさったことありますか、いかがですか。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 確かに御指摘のように一回の立会時間が、当委員会等で拝見しておりますところに比べまして長いことは事実でございます。そういう意味から、それを人数が足りないからだろうとおっしゃられますと、確かにそういった面はございます。ただ、それを一週間とか一カ月というふうにとってみますと、立会時間というのは決してそう多くはない、十分その辺は配慮をいたしておるわけでございます。大体、現在平均では、全国平均をとってみましても、ある程度数の少ないところはまばらなときがございますが、東京等一定の人数のおるところの平均をとってみましても、大体一週間立会時間は百二十分、いわゆる一週間で二時間というような立会時間でございまして、一回の時間数は確かに御指摘のように長くなる場合もあるようでございますが、一週間の立会時間というものはその程度のもので、決してそう過剰な負担ではないというふうに考えております。
○寺田熊雄君 まあ、私も正直なところ調査して、一週間何時間の労働である、あるいは一カ月何時間の労働であるということを、一そういうデータを持っているわけじゃありませんけれども、いまあなたのおっしゃった、結局結論的には、どうもやはり二百十二名の欠員を充足していくのに大体四十名が最大限度である、これ以上はもう不可能だという結論になったような感じですね。でも、これは何とかやはり工夫してもらわないと、五年間はやはり裁判の事務に現実に支障があるわけでしょう。これは速記官だけじゃなくて、裁判官もそうでね。これは後でまた質問するつもりなんだけれども、もうちょっとこれは何か考えてもらわないと、もうしょうがありませんという結論になってしまうんじゃ困るから、どうでしょうかな。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) しようがありませんというふうに申し上げるのは本意ではございませんで、何とか充足していきたいということは考えておるわけでございますが、ここ三年間三回外部募集をいたしまして、先ほど申しましたように、当初は千六百名ほどの希望者があったわけでございます。去年は少し少のうございまして、五百名前後の希望者でした。ことしは八百人ぐらいの願書が提出されたわけでございます。そういった方をセレクトしてみての感想を申し上げたわけでございまして、これはまあ来てもらえるならば、合格ライン以上の方がたくさん来てくれるならそれはそれでもう非常にありがたいわけでございます。三年間の経験からくる見通しと申しますか、そういったことを申し上げたわけでございます。ただ、速記と申しますか、逐語訳と申しますか、正確な記録の重要性ということは、これはもうよくわかっておりますし、そういう要求が減少するものとは考えておりません。ますますそういう要求がふえてくるだろうと思います。とりあえずのところは、やはり全国的に考えました場合に、ややもしますと機械的に速記を使ってしまって、結果論ではございますが、要らなかったと思うようなところに速記をつけて、本当に要るところにつけてないといったようなこともある程度の割合であるようでございます。そういったところに、本当に要るところにつける、要らないところは充足するまではがまんしていただくというようなことも考えて、事件処理の面からの御要望にできるだけ端的にこたえていけるようにしたいというふうには考えております。
○寺田熊雄君 くどいようなんですが、次長ね、これは千五、六百名の応募者があったという、結局それをもっと拡大する方法を考えると、そこで待遇改善ということをひとつ私持ち出してみたわけでありますが、あるいはそういうかっこうの職があるということをまだ知らない人があると思いますね、各卒業者、高校の。そこで少しかっこうもしくは待遇の面で、国会の速記者の皆さんにも劣らない待遇であるというならば、労働の密度もそれほど高くない、したがって、待遇がいいのだというならば、これはやはりもう少しPRなさって、たくさんの応募者が出るようにそういう面の努力をなさったらどうです。その点いかがです。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) そういった点もさらに努力すべきものだと考えております。現在でもいろいろやっておりますし、ある意味では職員組合なんかも大いに協力をしてくれておるわけでございますけれども、景気が停滞しておると申しましても、高校出当たりのところは進学率が非常に高くなったというようなこともあるいは影響しておるのではないかと思いますが、即座に就職するという方の割合が減ってきておるというようなこともございまして、なかなか適正な応募者を得られないということでございます。裁判所、いわゆる初級職試験というものに該当する方を募集しておりますけれども、初級職試験と申しましても、結局は短大あるいは大学を卒業されたような方が応募しておられるということで、高校だけで就職していこうという方の数が非常に減ってきておるということも一つの原因であろうかという感じもいたしております。
○寺田熊雄君 どうも何か局長の方は、結局結論的にはしようがないことになりますね、あなたの結論じゃ。それじゃどうも結局どうなってもだめなんですということになってしまうんで、どうなってもだめなんですといったんではどうもおかしいでしょう。そうじゃないですか。だから、何とかやっぱりあらゆる手だてを講じて、もうちょっと早く充足するように努力をなさらなければ。まあ、大学出でもいいですよ。短大出でもいいですよ。私どもは大学出や短大出からことしなんかでも就職を頼まれて、世話するのにも非常に困っているわけです。だから、魅力のある職場であるならばもうちょっと何とか応募者があると思いますよ。そういう面でどうですか、最善を尽くしていると言われるのか、最善を尽くしているんじゃなくてやっぱり努力する余地があると言われるのか、どうなんですか。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 決してあきらめておるということではございませんで、もう努力をしてできるだけ早く充足しなきゃいけないということは、大前提として当然のことであるということで考えておるわけでございます。ただ、ここでいやもう来年がんばりますと申し上げることば非常にたやすいのでございますけれども、なかなか実際問題として私どもの経験から埋めていきにくいと。それは一人でも二人でもよけい採っていきたいというふうには考えております。ですが、この二年間の速記の練習でやっておるところを見ますと、ほとんど宿舎に帰りましても夜遅くまで自習をみんながやっておるわけでございまして、あの努力を見ておりますと、やはりある程度の適性のある方でないと、これはかえって御本人のためにも申しわけないというような感じもする。それほどにあの技術を習得するということははた目で見るほどたやすいものではないようでございまして、あるいは機械を使った——日本語であるということの、何と申しますか、非常なハンディキャップというものを、機械を使うことによって何とか克服していきたいというふうにしてあの速タイプによる日本語の速記というものを始めたわけでございますが、そういったものがこれでよかったんだろうかということを反省したくなるほどにむずかしい、習得にはむずかしいもののようでございます。で、そういった観点から、一挙にたとえばこれを来年は六十人にしろ八十人にしろ百人にしろとおっしゃられましても、そういたしますと申し上げかねる面がございます。努力は、もうできるだけの努力はいたします。
○寺田熊雄君 まあ、あなたが、できないことを約束するということが、裁判官のあなたは出身だから、なかなかできにくいんだろうけれども、もうちょっと努力してくれないと困りますよ。まあきょうはこの程度にしておくけれども。 それから、過去やはり政府の方針に従って三次にわたって職員を五百名削減したという御答弁だったように思うんだけれども、これは一昨日、これはどの程度、どの分野からどの程度減員さしたのか、これをちょっと明らかにしていただきたい。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) そのように前回お答えをいたしたわけでございますが、過去十年間でとってまいりますと、一番多くやはり削減をいたしましたのが地裁関係でございまして約二百名、それから簡裁関係で……
○寺田熊雄君 地裁は幾らですって。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 正確に申しますと百九十七名ということでございます。簡易裁判所で百八十八、家庭裁判所で六十六、検察審査会で五十と、そういうようなことで、過去十年間に五百十六名の削減をいたしました。もちろん最高裁判所、高等裁判所も少数ではございますが削減をいたしております。
○寺田熊雄君 大体削減した分野はわかりましたが、職種はどうなんでしょう。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) これはいずれも裁判を直接担当しております部門ではない司法行政部門の事務官でございます。
○寺田熊雄君 次に、裁判官の問題に移りますが、裁判官の欠員が九十四名あるという、そういう御説明に伺ったのですが、これは私の聞き違いだったらこれもまた訂正していただきたいんですが、これも速記官の欠員と同じように非常に困ったことで、審理の促進を叫ぶ最高裁としては、第一線の裁判官にむちうつのでなくして、司法行政面の自分の責任というものをやはりおろそかにしながら第一線の職員に盛んに叱咤激励しているという感じを持つんですね。これもやはりあれじゃないですか、日本の裁判官の地位がやはり低いということに私は原因があると思う。占領時代の方がかえって裁判官の地位が高かったという非常に何か不思議な現象がある。あのときは、裁判官の、高裁長官とかいうのは別だけれども、それ以外の裁判官の最高のランクにおった人は、行政官庁の事務次官よりたしか上だったと思いますね。それが、いつの間にか、同じか逆転かしてしまった。ですから、いまだに、裁判官の中で優秀な連中が弁護士へ転身するというのが後を絶たないわけです。これはよほど考えていかなきゃいけない。何か待遇、ノミナルなサラリーを上げるということも一つはありますけれども、それ以外にやはり、私ども行政官庁の飯も食っているわけですわね。いろいろな面で実質的な待遇の差があります。このごろ、裁判官もいわゆる宿舎というものが支給されている。私どもが戦前勤めておったときは裁判官に宿舎なんていうものは全くなかった、だから逐次改善されていることは認めるけれども、具体的な例を出して恐縮だけれども、たとえば自動車の使用であるとか、部下職員の数であるとか、いろいろな面でやはり実質的な待遇は劣っていますね。もう少し司法行政の任に当たる人はそういう細やかな配慮をしていかなければいけないのじゃないかと。どうですか。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 裁判官の御経験をお持ちの寺田委員からの御指摘でございまして、両方をごらんになった御感想として率直に承りたいと思っておるわけでございますが、確かにサラリーだけが待遇のすべてではございませんで、やはりそれに伴うもろもろの設備、人的物的設備、そういったものもこれはばかにならないものでございます。宿舎にいたしましても、現在裁判官に関する限りは一〇〇%充足いたしておりますけれども、といって、全部が全部もう非の打ちどころのないりっぱな宿舎かと申しますと、全国五カ年計画あるいは十カ年計画で直しましても、直し終わったごろにはもとの宿舎がまた傷んできておるといったような状況もあり、そういった点でまだまだ至らないところがあることも事実でございます。 ただ、もとへ戻りまして、いわゆる俸給、給与だけをとってみますと、御指摘のような変遷がないわけではございませんけれども、現在そう悪いものではない。むしろ近時いろいろなことで裁判官というものを国民からお認めいただく、そういったお認めいただいておる度合いというものはだんだんと高くなってきておるのではないかというふうにも思っておるわけでございますが、なお欠員を多く抱えておるということの、やはり私どもが努力をしなければいけない面というものは十分認識をいたしております。ただ、この九十四名の欠員、これはそのとおり間違った数字ではございませんが、ある意味ではここ二、三年の一番底のところだというふうにお考えをいただきたい。と申しますのは、これまで戦前の方が定年で退官される方が非常に数が多かったわけでございます。ところがことし、去年あたりから定年退官者が減ってまいりまして、たとえばことしの四月から来年の三月までをとってみましても、信じられないほど少ない数の定年退官者というふうなことになってまいっております。で、その結果は、これは前回にも人事局長が申しましたが、この九十四名の欠員が来年の四月になりますと五十三名に欠員が減ってくる。大体四十人ほど判事がふえてくる、こういう状況になってまいります。判事がふえてくるということは二面、特例上の判事補もまたその面でふえてくるということでございます。ここ二、三年になりますと、ピーク時の欠員というものが大体十数名ぐらいの範囲にとどまるほどに充足されてくるという可能性も一あるわけで、私どもはそのときを非常に楽しみにいたしておるわけでございますが、この九十四名というのは悪条件が重なった下のピークだというふうに御認識をいただきたいと思います。
○寺田熊雄君 これで私の質問を終わりますが、どうも次長の御答弁を伺うと、最後に、ただ、という何かいろいろ断りみたいなものがついて、結局、最初の答弁を否定するような結果に事実上はなっちゃうのですね、あなたのは。だから、そういう、何というか、良心的だというまあ御批判も出たんだけれども、それはわかるけれども、やっぱし万難を排して蛮勇をふるって欠陥を補っていくという努力をなさるように希望しておきますからね。
○宮崎正義君 最初に、裁判所の職員定員法の一部を改正する法律案の理由として、「下級裁判所における事件の適正迅速な処理を図るため、判事補及び裁判官以外の裁判所の職員の定員を改める必要がある。」という提案の理由でございますね。そこで、予算案を総体的に見て、国の予算から、どの程度の、裁判所が予算を占めている率といいますか、裁判所が自分たちのやろうとすることを充足するための予算が年々国の予算に対するどういうふうな推移をもって今日きているのかということをお伺いをいたしたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 昭和二十四年、というのはある意味で戦後の一つの時期でございますが、そのときの裁判所予算と国の予算総額との割合は〇・五九八%ということでございました。昭和四十年をとってみますと、その割合は〇・七六一%ということでございますが、四十五年になりますと〇・六一五%ということで、現在、明年度御審議をお願いしております裁判所予算の国の予算に対する割合は〇・五一八%ということで、そういったような経緯をたどっております。
○宮崎正義君 非常に下降状態に来ているわけですね、下降状態に。いまお話がありましたように。二十四年は〇・五九%、以下、五十二年度の予算の要求でいきますと〇・五一八%ですかということにいま御説明がありましたけれども、こういう状態をどうお考えになっておられるんですか、予算処置をする立場の上から。また、現実の問題として、裁判所の職員の定員の問題と充足の問題とを考え合わせてこれでいいのか悪いのかということを率直に聞きたいんですがね。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 非常にむつかしいお尋ねでございますが、予算の金額を見てまいりますと千四百七十八億というのがことしの概算要求金額でございまして、昨年千三百七十一億でございましたのがそういった増加をいたしておるわけでございます。 国の総予算と——私からもう申し上げるまでもないことでございますが、やはり高度経済成長といったようなことで土木事業とかそういったことに、あるいは福祉事業といったようなことに非常に多額の費用が払われております。そういった関係上国の予算総額に対して裁判所の予算というものが占める割合そのものは確かに御指摘のように低下いたしておりますが、この裁判所の絶対金額そのものは逐次充足をいたしてきておるわけでございます。ことしの千四百七十八億というのは、それでもう完全におまえは満足かとおっしゃられれば、それはお金のことでございますからまだまだ多くても十分使い道はございますが、この千四百七十八億というものは、これで十分やっていけるというふうに考えておる金額でございます。
○宮崎正義君 それでは現在の物価高騰の時代を考えて、この価格というのは、金の値打ちというものは違ってまいりますね。それに対するどのような案分率、比例配分等をお考えですか、満足だとおっしゃるんですけれども。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 満足と申し上げました趣旨は、お断り申し上げましたように絶対満足という趣旨で申し上げるわけではございませんが、まあ、過去の経験と、あるいは物価の上昇といったようなことを加味いたしましても、これでやっていける金額であるということでございます。同じ金額だけを見ましても率直に申しますと、人の関係では人件費が多くあればいいわけでございますが、人件費を幾ら多くとりましても使えない金額ではしようがないわけでございます。予算の、いいか悪いかということになりますと、その中で物件費、旅費とか庁費といったようなものの占める割合といったようなものが非常に重要でございますから、いろいろな観点から考えてみまして、五十二年度これで十分やっていけるというふうに考えておるということでございます。
○宮崎正義君 全体的な問題からすればいろんな問題点ありますが、時間の関係がありますのでこの問題はまだ後に、一般のときにでもいろいろ話をしてみたいと思いますが。 私は簡裁の方のことだけを最初少し取り上げてみたいと思いますが、簡易裁判所の受件件数の民事と刑事の問題等について主なる事件の内容がどんなものであるのか、またそれが、その事件の内容のものについて増加傾向にあるのかないのか、そういった点を御説明を願いたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 恐縮でございますが、お手元に改正法案関係資料というのをお持ちいただいておるかと思いますが、この資料の二十三ページをごらんいただきたいわけでございます。 この資料の二十三ページには、四十八年から五十年この三カ年間の簡易裁判所の民事、刑事の事件の新受件数が掲載されてございます。これをごらんいただきますと、たとえば五十年で申し上げますと民事では訴訟の第一審事件が五万六千件、督促手続というのがございますが、それが十九万件、それから調停が四万二千件というようなことで民事の全部を合わせますと六十二万件という数字が出てございます。また刑事は、一般刑事の略式事件が四十万件、それから道路交通法の略式事件が百七十六万件、一般訴訟事件が三万四千件と、その他を入れますと二百五十六万件というような形で出ておりますが、この三カ年をお比べいただきましても、やや刑事においては増加傾向を示しておりますが、民事はほとんど横ばいの傾向であるということが申し上げられるかと思います。
○宮崎正義君 そうして、いまのこの資料によりまして、簡裁の判事の現在員が七百七十八名となっておりますですね、一名欠員で、そうですね。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) はい。
○宮崎正義君 そこで私は単純計算をしまして、いまの御説明のありましたその受件件数の三年間のトータルですね、三年間のトータルは三百十八万七千三百四十二件ですね、これ二つを足しますと、そうなりませんかね。それを三年ですから、三で割ると百六万二千四百四十七件ですかな、そうですね、そうなるんじゃないでしょうか。これを現在の七百七十八名で割りますと、一人当たり千三百六十五件と、これはごく単純計算をやったわけですよ。ですから、これが一人当たりの受け持つ件数と実際面の件数とどんなふうになるんでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 簡易裁判所の取り扱っております事件のトータル件数は、この二十三ページにあり、いま申し上げたとおりでございますが、なかなか宮崎委員御指摘のように、これを全部同じウエートに見まして、人数で割るというようなわけにはいかないものと考えております。たとえば訴訟事件でございますと、どんなに簡単な事件でも、即決ということはほとんどございませんですから、少なくとも二回の法廷を開くということでございます。それに反しまして略式の請求事件でございますと、一人の裁判官が一日に二百件ぐらい処理することは不可能ではないわけでございます。二百件処理ということになりますと、年間一人の裁判官が、五万件の処理ができるというような数字が出てまいります。これはいろいろの問題がございますが、現在のところ簡易裁判所におきます裁判官の手持ち件数というものは、いま御指摘のようなウエートにおいてはならないと。ただ、これを大体民事事件に換算いたして考えてまいりますと、百件余りの裁判官の負担、年間の負担になるというような結論が出ておるわけでございます。
○宮崎正義君 ですから、それは私承知の上で申し上げたんですが、単純計算してそういうふうになるんだと。 それからこの資料の二十四ページに、いまお話がありました民事が百件余りだというふうにおっしゃられましたけれども、民事の方は五・六カ月ぐらいはかかると。それから刑事の方は三・四カ月ぐらいかかると、こういうふうになってきますと、この関係はどんなふうになってくるんですか。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 御指摘のように、いわゆる処理期間というものはかかっておりますが、これは事件の平均の数字でございまして、もう少し民事にいたしましても刑事にいたしましても、この平均審理期間というものを下げていかなければいけないんじゃないかというふうに思います。ただ、最近それぞれの事件のやはりむずかしさというものも確かに加わっておるように感ぜられますので、これを下げていくのは容易ではないかと思いますが、もう少し努力をして下げていくようにしなければいけないというふうに考えております。
○宮崎正義君 いまの御答弁の中にありました、非常に内容がむずかしくなってきた。ただ単に、訴訟の問題とか、督促の問題とか、公示の問題とか、和解だとか、この字句だけでぽんぽんと出されておりますけれども、相当困難なものがあるんですね。農地法が変わりまして土地の旧地主に戻して、今度はまたそれを現在住んでいる者がどうしているこうしているなんというような問題等もこれはいっぱいあるわけですね。だからそういう簡単な御説明だけでは、どうも私は数字で割ったみたいな行き方じゃいけないんじゃないか、という意味から、単純な計算方法をするとこうなるんだけれども、実際はそうじゃなくて、その内容についてはこういうものが一番難点としてあるんだと、こういう問題が一番処理としてはたやすいんであり、こういう問題は処理が困難だ、その件数が年々ふえてきているんだという、そういうことを一番最初に私はお尋ねをしたわけなんです。ですから、もう少し一つか二つの事例を挙げられて、下げていくという問題についてのお考えを伺いたいわけなんですよね。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 一番お尋ねの点に的確にお答えできるものが土地の境界の訴訟であろうかと思います。土地境界の訴訟というのはしばしば簡易裁判所に出てまいりまして、これを判断いたしますのに非常な困難を感ずるという事件がございます。件数としてはそう多いわけではございませんが、場合によっては、山奥の山林の境界争いといったようなものが出てまいりますと、これを処理いたしますのに、検証に行くにいたしましても天候に左右される、年の半年は雪に埋もれて山には行けないといったような状況がございまして、困難を来たしておるということはそのとおりでございます。で、そういう事件になりますと、これはもう平均何カ月という問題ではございませんで、ものによりましては十年以上もかかっておる、−二十年近くもかかっておるといったような事件もございます。で、こういった事件がございます反面、通常の貸金の事件でございますとか手形の事件でございますとか、そういったものになりますと、これはもうきわめて技術的に処理することも可能であるというような事件もあるわけでございます。 で、私どもは、いま、この事件が何カ月かかっておる、そしてそういった種類の事件をどの程度まで審理期間を下げるように努力すべきかということを端的に言えというお尋ねでございますが、そういった訴訟の種類によって細分された事件ということになりますと、またこれは別途よく調査をいたしまして御報告を申し上げたいと思います。いまここで申し上げる数字を持っておりませんが、大部分の事件は大体適正に処理されておる。そして、いま申し上げましたこの境界争い、土地に関する事件、あるいは家屋の明け渡しの事件、そういったものが簡易裁判所においては特に長くかかっておる。こういう事件は、これはもう事件の個々の性質によりますので、一概にただ早くすればいいというものではないかと思いますけれども、何とかもう少し早くやれないかと。で、そのことのために、実は場合によっては簡易裁判所でやるということが不適当ではないだろうか、むしろそういう事件は、これはむつかしいと思ったら、すぐ地方裁判所に回してもらった方がいいんじゃないかというようなことで、機会をとらえまして、何かこう簡易裁判所から地方裁判所に回しますと、自分が能力がないと思われはしないだろうかというふうに裁判官が考えられて、そういうふうな事件を回すことをちゅうちょされるというような面がないでもないようでございます。機会あるごとに、それは決して能力がないということではなくて、むしろむずかしい事件を簡裁から地裁に移すということは、その判断を的確にずるということは能力のある証拠なんだというようなことまで申して適正に事件を処理していくというふうなこともやっておるわけでございます。
○宮崎正義君 私はいまそれを次に申し上げようと思いましたが、言われましたので……。 抱え込んでいるやつがだいぶあるのですね、私の伺うところでは。いまの総務局長の御答弁の点についてより積極的にひとつ進めていくように希望を申したいと思います。 それから簡易裁判所における司法行政事務の簡素化で、能率が上がったので減員をしているといいますけれども、その簡素化した、あるいは能率化したという点と現状のものとちょっと合わないように私は思うのですがね、この点についての御答弁を願いたい。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 減員をいたしますということにつきまして、先ほど寺田委員のお尋ねにもお答え申しましたとおり、そのことによって裁判部門が影響を受けるということは絶対ないようにということの配慮をいたしてきております。で、簡易裁判所でその減員をしたといいますのも、実際のところはごく大都会のところの、たくさん人数のおるところの合理化でございまして、複写の機械を入れるとか、計算機を入れるとか、そういうようなことをいたしまして手の事務の合理化ができる、その範囲内における減員でございまして、そのことによって司法行政事務に支障を来たすということは絶対にないようにという配慮をいたしてきたつもりでございます。
○宮崎正義君 法務大臣にお伺いして私の質問をやめたいと思いますが、寺田委員の欠員、定員の問題でやりとりをやっておられる内容についてちょうどお留守でございましたので、いかに欠員に対しての考え方が正直的であるか、良心的であるかといいますか、総務局長の答弁、実に私とすれば消極的にしか受け取れないのですが、この問題については、もう私は福田法務大臣も、全くの、法律的には私は余りどうのこうのとおっしゃっておられますけれども、自民党内の実力者であり、私は法務大臣として大きく期待をしている大臣のお一人なんですが、そこで定員欠員問題等につきましては、法務大臣の任期中に明確化して、もう少し速記官の問題でも、応募の問題、いろいろありますでしょう。また裁判官の欠員の問題が九十四名で、来年は五十四名になるから、四十名の人間がふえれば、それに対する特例の問題も出てくるから充足できるんじゃないかというような御答弁もありましたけれども、とにかく九十四名が裁判官、人が欠員をしている。それらの考え方からあわせまして、この今回の事件等も考え合わしてみても、いろいろな諸問題が、まだきょうは具体的な一般の所信表明に対する質問じゃございませんので、定員法の問題ですから詳しくは申し上げられませんけれども、時間がありませんので、それで大臣が、大臣の任期中にはかくするのだという御決心を伺って私の質問を終わりたいと思います。
○国務大臣(福田一君) ごもっともな御指摘だと思うのでございます。私も実は予算の編成が済んでから法務大臣になったわけでございますが、予算を見て、どうもいかにも消極的というか、そういう感を非常に私は深くいたしました。これは一つは、ほかの役所ですと、まあ、何か支援団体のようなものがございましてね、予算のときには大いに協力してもらえるんでありますけれども、法務省というところにはそういうような団体というか、支援団体が余りないものですから、ないのもあるということが一つ。それから、もう一つは、やっぱり、まあ法務省の人には怒られるかもしれぬが、予算のときにも私言ったんですけれども、武士は食わねど高ようじではだめだと。やっぱり食ってちゃんと仕事するようにせにゃだめなんだということを実は言ったわけでありますが、そういう意味で、いままでの、これが非常にある意味ではいいところなんですが、消極的な面がいささかあるように私は存ずるんです。また、しかしそこにまた法務省とか、あるいは裁判所のいいところがあるんですけれども、どうも私はそこいらはいまの時世から見て、もう少しやはりこう積極的にやらにゃいかぬなあという感を深くします。 ただいま御指摘のあった定員の問題その他につきましても同じように、あなたと同じような気持ちで見ておるわけなんでございますが、ちょうどもう予算も済んだ後でございましたんでありますが、そこまで命が続くかどうかはわかりませんけれども、そういうことがございましたならば、ひとつ大いに御趣旨を体して努力をさしていただきたいと、かように考えております。
○橋本敦君 裁判機能の充実、あるいは裁判所全体が国民の権利を守るという立場に積極的に立つという観点では、私は今度の法案については、もっともっと、問題になっている速記官、裁判所書記官、あるいは裁判官の増員が必要だと考えているわけです。いずれにしても、この法案に多少の改善ということで努力されておるという趣旨で賛成をする立場で若干の問題、質問をさしていただきたいと思うんです。 いまも簡裁の問題が出たんですが、私も実はこれが気になっておりまして、もともと簡易裁判所というのは最も国民に密着した、国民が自分の権利を守り、権利紛争を解決する身近な裁判所という理念で発足をしているわけですが、果たしてこの簡易裁判所がそういう国民の期待なり司法の民衆化という理念で出発したことにこたえているかどうかという点になりますと、この機会にいろいろ検討すべき問題が私はあるように思っているわけです。そういう中で、この法案の説明書を拝見いたしますと、たとえば十五ページに、人員の簡素化、削減ということで、(6)には「簡易裁判所における司法行政事務の簡素化、能率化に伴う減員」ということで、減員問題が簡裁の職員ということに的を当てられている。そこで、果たしてこれでいいかどうかという疑問を私は持つものですから、若干お伺いをしてみたいと思うんですが、まず最初に現実に簡裁独立庁というところで何名の職員がどういう形で働いておられるかということを知るために、法務省にも調査資料をお願いしておるんですが、たとえば独立簡裁の一般職員が四人以下の庁数が全体の独立簡裁の中で現在何%ぐらいになっておるか、まずこの点はいかがでしょうo
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 簡易裁判所の四人以下の職員を抱えておる庁ということで申し上げますと、現在四人庁が四十九、三人庁が百十四、二人庁が三十という形であります。
○橋本敦君 そこで、この問題なのは、資料によりますと、二人しか職員がいない簡易裁判所が、昭和四十一年が二十であったのが、四十六年が二十一、五十一年になりますと三十にふえる。三人しかいない庁が四十一年九十二であったのが、四十六年百四になり、五十一年は百十四にふえていく。つまり二人庁、三人庁の数がふえる。四人しかいない庁が昭和四十一年に六十五であったのが、いま四十九に減っていると。こういうことを見ますと、簡素化ということで、一四人しかいない庁から人数を割いて、そして二九庁、三人庁、これもふやしていくと。どういう関係になるのかわかりませんが、要するに問題は、二人庁、三人庁がずっとふえてきていることですね、四人庁が減っていく中で。これはどういう行政上の方針でこうなってきたのでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 一般的には二人庁、三人庁はできるだけやめていきたいという一方の方針があるわけでございます。ただ、まあ四人庁が減ってきておるというところでおわかりいただけますように、できるだけ有効に人間を配置していきたいということでございますが、いかんせんこの二人庁、三人庁といったところの事件量というものがどんどん減ってくるわけでございまして、そういった方を独立簡裁に置いておくよりは、職員御本人の希望といったようなことをして、できるだけ大きい仲間のおるところへ置いてほしいというような御希望等も十分にしんしゃくして、現地が人員の配置をいたしました結果がこういうふうに出てきておるわけで、特にこの二人庁、三人庁をふやしていこうというようなことで考えておるものではないわけでございます。しかし、それにいたしましても、余りにも二人庁等事件数が少なうございまして、その結果、こんなにいなくてもいいじゃないか。自分はいなくて、それよりも近くの支部へ置いてほしいと、あるいは本庁に自分を配置してほしいという職員等の希望、そういったものを十分考えた結果がこういう形になって出てきておる。結果論としては、二人庁、三人庁はやめたいという私どもの大きな方針に反するようでございますが、現地の所長方の御意見を伺いますと、こうしてもらって十分それでいいんだということ、そういう結果がこういう数字になって出てきておる、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
○橋本敦君 そこのところに検討すべき問題があるわけですね。統廃合ということで、将来二人庁、三人庁あるいは事件数の減った簡裁をなくしてしまうという方針があるなら、これはまあその方針としてまた論議しなくちゃなりません。事件が減ったからといっても、裁判所ということで国民からいつどのようなアピール、訴えがあるかもしれないということで、やっぱり国民にサービスをするという観点で裁判所は常にそういう考え方でなくちゃならないわけですが、たとえば二人庁になりますと、この日弁連の簡易裁判所問題について編さんした資料を見ましても、法廷が開かれているときば書記官の資格を持っている庶務課長なら庶務課長であっても、書記官の資格を持っている人が法廷に裁判官と一緒に入る。あと一人しか職員は残っていないということになりますね。で、その一人がほかの用事をやっていれば、もう全然国民が来ても、電話があっても応待できないということも起ってくる。こういうこともあるわけですね。私は、まあ、この簡易裁判所の機能としてもう一つ大事なのは、国民が司法書士なり弁護士なりという手を煩わさないで、自分が裁判所へ行って自分の申し立てることを口頭でアピールをして、そうして口頭で受理してもらうという簡易性ね、これなんかも私は司法の民衆化という意味では大事だと思うのですね。 ところで、こういう口頭受理ということが実際どの程度行われているかというと、これは調査はむずかしいですが、ほとんどこれはないんじゃないだろうか。ほとんどないということの原因には、その配置定員職員が少ない、十分に親切にサービスできないという要因があるのではないだろうか。また、そのことを積極的に進めましょうという裁判所の方針も本当に真剣になかったのではないだろうかという気がするのですが、ここらあたりはいかがでしょう。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 非常にむずかしいお尋ねでございまして的確にお答えできますかどうか、非常に危惧の念を持つわけでございますが、裁判所として現在のところ簡易裁判所を積極的に整理統合していきたいという考えは持っておりません。御指摘のように、やはり簡易裁判所というのは、何も、少々暇だから人間の効率的使用という観点からやめた方がいいんだと、そういうような考えは全然持っておりません。むしろ学識経験のある裁判官が、長らくいろんなお仕事をなさった方が、相当の余裕を持って常時おってくだすって、いま御指摘の口頭申し立て等あれば、その暇に飽かしてと言うてはいけませんけれども、暇を十分使って懇切丁寧に審理してあげる、場合によっては口頭申し立て等も十分聞いてあげる、そういう方向に持っていくべきものだということは、私どもよく考えておりますし、その点については橋本委員と全く同じ考えでございます。ただ、実際の問題といたしまして、昔はこの職員の定着ということがあったわけでございます。その村あるいはその町の裁判所にお勤めになると、一生そこに勤めていようというようなことがあったし、またそれで満足して職員は働いてくれたわけでございます。しかし、こう時世が進歩してくると申しますか、変わってまいりますと、仮にそういうつもりで独立簡裁にお勤めになっても、役所の中の事情がわかってきますと、もう二、三年たったから、おれを乙号支部にやってくれないか、おれを本庁に入れてくれないかというような希望が出てまいるわけでございまして、その希望も決して無理からぬもの、それはそれでかなえてあげなければいけないということが一方ではございます。と、それをかなえてあげることは、希望どおりにしてあげることでございますから、たやすいんでございますが、そうしますと、そのかわりの穴埋めを本庁なり甲号支部なり乙号支部から持っていかなきゃいけない。今度はそれは行くのはいやだと、この気持ちも近時のいろいろな状況から見ると無理からぬところがあるわけでございます。こういった人事異動の困難さといったようなものが、これは単なる俸給の問題でございますとか、そういったことと関係のない問題として出てくるわけでございます。ことに子弟の教育といったようなことでも、独立簡裁のあるところよりは、せめて甲号支部のあるところ、せめて県庁所在地、みんなそこに行きたいというふうに考えてまいります。庶務課長すら非常にいにくいという状況が一方で出てくるわけでございます。この辺の矛盾をどう解決するかということが今後の課題でございます。 それからもう一つ、先ほど二人庁が三十と申しましたけれども、その事務量を見てみますと、その三十のうちの二十庁までは民事訴訟事件を取り扱っていない庁でございます。したがいまして、当然民事訴訟はゼロでございますが、仮にその区域の訴訟というものを想定いたしましても、その中の八庁までは年間の民事訴訟の新受件数が一けたでございます。一けたということは十件未満だということでございます。また刑事事件について見ましても、三十庁のうちの二十八庁までが年間の新受事件が一けたでございます。で、ひどい庁になりますと、五十年度では年間新受がゼロという庁が十一庁もございます。そういう状況を見てみますと、幾ら二人では少ないと申しましても、そこに三人四人という職員を配置するということは、現地の所長方としてはできにくいと、事件があれば、それは君行ってくれということは言えるんですが、事件もこんな状況で、なぜ行かなきゃいかぬのですかと言われると、行ってくれということが非常に言いにくいと、そういう状況がございます。さらに、御承知と思いますが、宿日直の廃止ということを断行してまいりまして、こういった庁の宿日直ということは一切やめるという方向できておりますので、そういう観点からの職員配置の必要性というものも実はなくなってきておる、そのことがその地域の住民の方にあるいは御迷惑をかけておるという面もあろうかと思います。何とか考えなければいけないと思いますが、現状はいま申し上げたような状況であるということもひとつ御認識をいただきたい。
○橋本敦君 いま簡裁問題にとってもう一つ大きな問題は、非常に人口流動が激しいということで、思い切った過疎化していくという地域もあれば、簡裁ということで、もともと予定している以上に人口が急増いたしまして、そこの簡裁はもう大変な事務量になってくるという現象が一方で生まれているんですね。これは国土全体の開発情勢からそうなってきている。私の住まっている大阪でも、周辺の簡裁で、たとえば伊丹だとか尼崎なんということになると、大変なことになってくるわけですね。そこのところを流動的に有機的に事件状況を見ながら思い切った職員配置をやる、少ないところは最少限のやっぱり職員で簡裁機能を守るという観点でやる、こうなりますと、私は簡裁の書記官定員が現在ではやっぱり全体としては不足するのではないか、こういうことを心配しておりますが、これを増員されるというような来年度以降の見込みはありませんか、簡裁機能の充実という観点から。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 簡裁の書記官が法廷に入ってしまった場合に、留守番がいないじゃないかという御指摘は、あるいはそういうところもあろうかと思います。ただ、いま申しました年間せいぜい二十件前後の事件であるといたしますと、そこに二人の書記官を置くということは、これは書記官の養成に非常な国費を要する、また高い資格を設けておるというようなこととの関連におきまして、これも困難ではなかろうかと思います。現在のところ、簡易裁判所に限りまして申し上げますが、裁判事務そのものに書記官が不足するということは、私はこれはないというふうに確信をいたしております。そういうところがございますれば、十分調査いたしまして、できるだけ早い時期に万難を排して書記官を埋めていくということは、これはもう至上命題でございますので、いたすつもりでございます。
○橋本敦君 私は、きょうは時間がありませんから、以上のような指摘ということにとどめますけれども、抜本的に簡易裁判所ということの機能を国民サイドから見て、裁判の民衆化、そしてまた調停機能の強化ということ、これも大事ですね。私の経験から言っても、民事事件で裁判所の法律判断を仰がなければどうしてもならぬという事件は本当に少なくて、和解調停で解決すればいい事件が圧倒的ですね。だから、そういう機能の強化というようなことを考えますと、今度は簡易裁判所裁判官の常駐裁判所が少ないということも検討しなければならぬ、こういうこともありますので、今後簡易裁判所の充実ということに特段の御配慮をお願いして、きょうのところは質問を終わります。
○委員長(田代富士男君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(田代富士男君) 御異議ないと認めます。 それではこれより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います、 〔賛成者挙手〕
○委員長(田代富士男君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(田代富士男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 本日はこれにて散会いたします。 午後一時五十九分散会 —————・—————