外務委員会 第20号
- 発言数
- 206 件
- 登壇者
- 16 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1977/06/09
会議録
○委員長(寺本広作君) ただいまから外務委員会を開会いたします。 まず、委員の異動について御報告いたします。 本日、安永英雄君及び渡辺武君が委員を辞任され、その補欠として羽生三七君及び小笠原貞子君が選任されました。 —————————————
○委員長(寺本広作君) 前回に引き続き、北西太平洋のソヴィエト社会主義共和国連邦の地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(衆議院送付)を議題とし、質疑を行います。質疑のある方は順次御発言を願います。
○小笠原貞子君 まず最初に、漁業量の拡大と操業水域問題についてお伺いしたいと思うんですけれども、長期間の交渉、まことに漁業者にとっては毎日毎日がやせる思いでの長い交渉でございました。ようやく妥結したと、しかしその内容は北洋関係漁業者にとってはもう大変な予想もつかないという厳しさに、私も何度もその関係業者と話し合いをしておりますけれども、この国会に立っておりまして考えているよりも本当に深刻な状態だということで衝撃を受けているということを特に察知していただきたいと思うわけです。しかし、彼らにすれば交渉期間中じっとがまんしながらも、領土では譲ってくれるなと、国益のためにはわれわれは休漁しても何とかがんばるんだからと、実に耐え抜いてきたという、その何と言うのですか、その心情というのに私も本当にこれはこたえなければならないというふうに思うわけです。 しかしその大変厳しい漁獲量そして水域を見ましたときに、一体われわれは何のためにこうやってつらい思いしてがまんしていたんだと、それはがまんしてきただけに心からの怒りの声になって、私なども行きましてもぶっけられてくるわけです。もちろん、鈴木農林大臣大変御苦労になったということは私も重々承知しておりますけれども、その御苦労の上に立ってこの北洋関係漁業者に対しての率直なお気持ちですね、私また方々歩きます。鈴木さんは一体何やってんだと、これは外務大臣にも伺いたいんです。鳩山外務大臣も大蔵官僚から今度外務大臣になられて、魚の漁民というものにはだで接するという機会もなかったと思いますし、また暮らし向きなどもとてもとても毎日を心配している者とは全然かけ離れているというような中でございますけれども、この深刻な打撃を受けている漁業者に対していま一体どういうお気持ちでいらっしゃるか、まずその御所信のほどを伺わせていただきたいと思います。
○国務大臣(鈴木善幸君) 今回の日ソ漁業交渉は大変長期にわたり、またきわめて苦渋に満ちた困難な交渉でございました。しかしこの間、戦後初めてと言ってもいいほど国論が一本に結集をし、また超党派の御支援、御協力を賜り、かつ、ただいま小笠原さんからお話がありましたように、関係漁民の諸君が耐えがたきに耐え、忍びがたきを忍んで、歯を食いしばって最後まで結束を乱さなかった、このことに対しましては、交渉に当たっておる当事者としてまことに感謝にたえないところでございます。 しかし、その結果につきましては、特にこの漁獲量の問題につきましては、私もソ側の予想を超えた厳しい態度、また、代表団の諸君も水産庁長官以下不眠不休の折衝をやったわけでございますけれども、結果としては関係漁民の諸君の期待にほど遠い結果に終わったということはまことに申しわけがない、私自身大変残念に考えておるところでございます。 しかしこのことは、すでに御承知のように、二百海里時代というのは過去の実績、伝統的な実績を尊重するということよりも、沿岸国の管理のもとに余剰原則、自分の国でとって余りがあればこれを分与してやると、こういう基本的な立場に立ってのことでございまして、漁業水域につきましても各魚種別の割り当てにいたしましてもきわめて厳しいものがあったわけでございます。しかし、それによりまして関係漁民の諸君には大きな減船その他の余儀なきに至る窮状、窮況に追い込まれるわけでございますから、政府としてはこの減船の問題、あるいは乗組員諸君の離職また転職の問題、あるいは関連企業等のこれによる大きな打撃、影響に対しまして、その実態をつぶさに把握をいたしまして早急に救済措置を講じてまいりたい。また、二百海里時代に取り組む漁業の新しい体制を確立をしたい、このように考えておるところでございます。
○国務大臣(鳩山威一郎君) 今回の日ソ漁業交渉が国民の皆様方に大変な御心配と御激励を賜って、やっと九十日に近い交渉になって妥結をいたしたわけでございますが、その間におかれまして国会の超党派の先生方の御応援もいただいて、その交渉の結果がやっとできたわけでございますけれども、その結果が漁業者の皆様方には大変な負担になるような結果であるということは大変残念に思う次第でございます。これからが漁業政策としては大変な、また鈴木農林大臣御苦労なさらなければならないわけでございますが、政府全体といたしまして、二百海里時代を迎えました今日の厳しい事態に対しまして、政府全体といたしまして漁業者の立場に立って対処をいたしたい、そういう考えでございます。 なお、今後のいわゆるソ日交渉、それから来年度以降の、まあ全体的には暫定でございますけれども、長期的な交渉がございます。これらを控えまして、漁民の方々になお厳しい事態が続くと思うのでございますけれども、皆様方に大変な御心配をいただいた、そういう気持ちを本当に胸に抱いて折衝に当たりたい、こういう気持ちでおります。
○小笠原貞子君 大変御苦労だったと思いますけれども、鈴木農相が予想を超える厳しさというふうにおっしゃって、確かにそうだったと思うのですけれども、それを裏返してみれば、予想というのが、まさかここまでくるとは思わなかったという点で、やはりいまの時代に対しての政府の見通しというものが甘かったのではないかということは一般に言われているわけなんですが、その予想を超えると一口でおっしゃったけれども、それに関して農相としてはどういうふうに反省をしていらっしゃるか、その点も一点お伺いしたいと思います。 それから、確かに実績主義よりも余剰の原則ということが言われているわけですけれども、そこで具体的にお伺いしたいのですけれども、海洋法会議においても、伝統的な漁業国や魚種の調査及び確認に著しい努力をした国については経済的な混乱を最小にする必要があるというふうに考慮されるということが書かれているし、その趣旨だと思うのですね。そういうことから考えて見れば、私は特に北洋の場合を考えますと、その資源の調査及び確認に著しい努力をしたというのはまさに私は日本だと思うのです。それだからこそ父祖の権益を守れ、血と命をかけて守ってきたというふうに言われると思うのですね。そうすると、まさに著しい努力をしたのが日本であって、ソビエトはやっていないとは言えないけれども、むしろ日本が先輩国としてソ連に対して漁獲方法などを教えたということを私は事実として認めなければならない。これはもう強調すべきだと思うわけですね。そうしますと、文字どおり北洋漁業者に対しては経済的混乱を与えているわけだから、この経過措置が五年というふうに、何とか時間があれば経過措置として考えられるけれども、まさに急にこれだけの削減をされたということでは非常に大きな問題にならざるを得ないと思うわけです。 血と汗で築き上げた、先ほども言ったように、北洋漁業の実績尊重という漁民の声というものは、国際的にも二百海里体制のもとでも当然考慮されてしかるべきものだと思うわけです。この点についてどう考えていらっしゃるか。単に実績尊重ということだけでは確かに通用しないという時代になったことはもう私も重々承知しているわけですけれども、漁業資源の保存とその最適利用を前提とした上で、その上では実績尊重というのが当然考慮されるべきだというふうに考えるわけです。そういう点から見て、日ソ交渉の中でどのように大臣は具体的に北洋における日本のいままでの努力というものが、海洋法会議でこう言われているという中でどのように主張されてどういうふうな反応があったのか、その点についてお伺いしたいと思うのです。
○国務大臣(鈴木善幸君) 予想を超えた厳しさであったということを端的に申し上げたわけでございますが、これは一方相手国のソ連側の事情というものも大きく働いておったと思うわけでございます。 御承知のように、ソ連邦もわが国と同じように、またわが国以上に遠洋漁業によって立っておる国でございます。それがこの二百海里時代に入りましてアメリカ、カナダあるいはEC、ノルウェー、アイスランド、これらの関係国から厳しい漁獲規制を受けておる、何一ついまのところまとまっていないというぐらいに厳しい立場に追い込まれておる。イシコフ大臣の説明をもってすれば、どうもこの状態でいくと六百万トンぐらいの削減を余儀なくされるのではないか、したがって、その各海域における船団の配置がえというものを深刻にいま検討しておるんだと、そうするとこれらの浮いてきたところの船団を北西太平洋のソ連の二百海里内に投入をするということになれば、ほとんど余剰というものがないぐらいとれるのであるが、日本の百年に及ぶ伝統的な漁業実績というものもわれわれはよく知っておる。また日ソ友好という大局に立って、この際日本に対しては特別な考慮を払っておる、こういうことを申しておるわけでございます。ソ連の言っていることが一〇〇%そのとおりとは私は必ずしも言えないかもしれませんけれども、ソ連邦の今回の二百海里時代における追い込まれておる窮状というものも十分わからぬわけではない。 一方わが国としては、いま小笠原先生が御指摘になりましたように、むしろ北洋の漁場というのは日本漁民が開拓をしたこれは漁場である。また、今回余剰原則というようなことでソ連が言っておるにしても、この資源問題というのをわが方でも非常に大事に考えてはおるけれども、一遍に急激な漁獲の激減ということは、これは関係業界に対しても大変重大な問題である、大混乱を起こす。またその雇用問題、失業問題、いろんな問題を引き起こす。関連企業に及ぼす経済的な打撃も大きい。であるから資源の保存、適正な漁獲ということは日本も真剣に考えておる問題であるから、一遍でなしに徐々にその資源に見合った漁獲量ということについては十分わが方でも考えておる。であるからこの際急激な漁獲量の大削減というようなことは絶対に避けてもらいたい、こういう基本的な立場でるるわが方の立場も説明をし、その理解を求めたところでございます。 しかし、とにかく結果的には六三%ないし四%程度の実績に対する割り当てに終わった。こういうことで、アメリカの八九%に比べますとこれは大変厳しいものになったわけでございます。しかし関係漁民の諸君の窮状を考えますと、私は大変不満でもあり、関係漁業者の今後の操業の問題や、それによって起こるところの救済の問題、これは政府としても真剣にひとつ考えなければいけない、こういうように私考えておるところでございます。
○小笠原貞子君 確かにソビエトも一千万トンのうち六百万トン削られると、大変だというところで、大変なんだと理解するのはいいんだけれども、私聞いておりまして、ソビエトは大変だから、だからといって日本に迫ってくる、そうすると結局弱い者のところにみんなしわ寄せいってしまうわけですよ。だからその辺のところで、あなたのところは大変なんだけれども、やっぱりそれを急速に、一遍に減らすというようなことがないように、少なくとも経過的な措置というものを考えてもらうというところでも、本当に一生懸命努力なさったと思うけれども、もう一つそこのところで、やはりソビエトも、あなたの国は社会主義の国ではないかと私らは言っているわけですよ、自分のところが大変だから、大変なことはおまえにというふうにしわ寄せされるんじゃあなたの国もちょっとおかしいじゃないかと言えるぐらいに毅然とした日本であってもらいたい。そこがないからやっぱり大変だと言われて押されてくるという弱さというのを、——首振っていらっしゃるけれども、具体的にはそうならざるを得ないのではないかと、そう思うわけです。 そこで、漁獲量と許可隻数というのが、百八十四隻が北転船の場合は十五隻ですか、に減らされたと、これは大変に大幅な削減と、しかもその操業区域が北転船の場合——もう頭に地図入っていらっしゃると思います。千島、オホーツク海側の最北端の本当にちょっとの囲い込みの中でしかありません。ここの囲い込みの中だけでは十五隻認められたとしても、これは機船漁業組合の方々とお話ししたんだけれども、実際これだけの区域だったら一、二隻が限度だというふうに、実際漁業やっている者が言っているわけです。それで、これは私がもらってきて、大きくすればよかったんだけれども、大臣の頭には入っていらっしゃると思いますけれども、まさにカムチャツカ半島の北緯五十五度くらいまででも非常に大きな船が入っていて大きないい漁場になっているわけですね。それがわずかにこういう小さい囲い込みになってしまったということで、この地図で分布しているのを見ましても、これは大変なことなんだと。五千トンから一万トン、最も魚群の厚いと言いましょうか、このカムチャツカ半島水域、これは五十度から五十三度というふうになっているわけですね。ここにいままでも実績があるし、これでは北転船にここのところ削られたら、全くいろんな理屈つけても、北転船は死ねということになっちゃうという結果になるわけですよね。 そこで、ひとつ考えていただきたいんだけれども、衆議院でも津川議員の質問にお答えになったと思うんですけれども、これでは余りにもひどいじゃないか、ここで実績があって、そしてこれだけというのは余りにひどいじゃないか、もうちょっとここのところを考えるというような操業区域の手直しというのはやるというふうなお答えにも聞いておりますけれども、その辺の見通しと御努力というのはどういうふうに考えたらよろしいんですか。
○国務大臣(鈴木善幸君) いまのスケトウダラを中心とする底魚の操業海域の問題でございますが、ソ連の幹部会令その他の規則によりますと、北緯五十三度以北には一切外国漁船を入れない、こういう国内法があるわけでございます。しかしその国内法は別として、五十度線というものを強く打ち出してきたわけでございます。わが方としては資源の専門化、過去の実績、いろんな点からいたしまして、五十度線ではいま御指摘のように操業が非常に困難である、せめて五十一度だけでも認めてほしいということで最後まで折衝をいたしました。私もこの問題につきましてはイシコフ漁業大臣と最後の折衝もしたわけでございますが、この問題については、とにかく今回はこのことでひとつ、もう方針を曲げるわけにいかない、こういうことで、残念ながら今回はこれでのまざるを得なかった。私は基本協定、来年度以降の協定の際におきまして、クォータの問題、操業水域の問題、こういう問題につきましてはさらに十分時間をかけて、そしてソ側の理解と協力を求めたい、そういう強い交渉をこの問題についてはぜひやりたい、このように考えておるところでございます。 なお、これに関連いたしまして申し上げるわけでございますが、北西太平洋の底びき網、沖底並びに北転船、これの操業につきましては、スケトウダラが当初ソ連の原案では四万九千トンという大変な厳しいものであったわけでございます。これをどうしてもいまのようなわが国の実情からいたしまして、他の魚種等で漁獲量をある程度削減をしてもスケトウをもう少しふやさにゃいかぬということでがんばりましてこれを十万トンの台まで持っていった。しかし、それにいたしましても大変な削減になるわけであります。 こういう実情にかんがみまして、北海道の中小漁船、零細な諸君の沖底にはできるだけの漁獲割り当てをしたい。北転船につきましても、アメリカ水域の、アメリカのクォータの中から、いままでとにかく大型トロール船等が主として操業しておりました北西太平洋は沖底と北転船、それから遠隔の漁場であるところのアメリカ水域には大型トロール船、こういうようなことで分野を決めまして、そして北転船につきましては、その北西太平洋の漁期が終わった後で、まあ裏作的といいますか、補完的にアメリカの海域に入れると、こういう方針で来たわけでありますが、こういうような状況に相なりましたので、アメリカ海域におけるところの大型トロールとの漁獲割り当ての調整等も私考えまして、今後できるだけ北転船の稼働隻数もふえるように対処していきたいと、こう考えておる次第でございます。
○小笠原貞子君 ここにありますのは「北西太平洋のソ連邦沿岸に接続する海域における外国の漁撈実施暫定規則」、ソビエトの規則というのがあるわけなんで、これをいただいて読ませていただきました。この地域における「外国の漁撈実施」というと、これは日本が主になっておりますから、当然わが国に対する規制だと、そういう規則だと読んでいいと思うんです。ここの「操業規制措置」というところの十三条にこう書いてあるわけですね。「次の水域では如何なる漁業操業も禁止される」と。そして(a)のところに「北緯五十三度以北のオホーツク海」と、こういうふうになっているわけです。いま大臣は五十一度までは延ばしてほしいというふうにおっしゃったということだったけれども、このソビエトの規則でいっても、五十三度以北は外国について禁止区域というふうにしているけれども、五十三度までは書いてないわけですね。そうすると当然この五十三度までというのが先ほどから言いましたように非常に魚群の厚いところだということなのです。そうすると向こうの規則でも五十三度までは操業できるというふうに読めるわけですから、この規則からいっても今度ソ日漁業暫定交渉に当たって、また長期協定の交渉の中で、これを見てもこう言っているんだから根拠があると思うんですけれどもね。そういうことで努力していただきたいというふうに考えるんですけれども、これとの関係ですね、これ五十三度以北が禁止になっているから五十三度まではこの規則でいってもとれるというふうに読むのがあたりまえじゃないか。そうすれば当然それは根拠がある、五十三度まで延ばせということに根拠があると思うわけなんですね。スケソウの漁期が本格化するのは冬場になりますから、来年の一月からの漁獲量というのが非常に大切になってくるわけなんですけれども、この点についてはどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
○国務大臣(鈴木善幸君) 先ほども申し上げたように、ソ連の国内法で北緯五十三度以北は外国漁船には操業させない、これを裏返すと五十三度までは入れてもいいと、こういうことにはなっておるわけであります。しかし、今回のやつは五十度ということで非常に強い厳しい態度をとってきたわけでございます。そこで、おまえさんの方の国内法が五十三度だから五十三度まで認めろということは、これは実務者の段階で夜を徹して議論をした問題でございます。そこで最後に私は、せめて五十一度だけでもひとつ認めてほしいというのが最後のイシコフ大臣との折衝であったという経過を申し上げておるわけでございますが、今回はとにかくこれでこのソ側の案というものを変えるわけにはいかない、こういう強い態度で今回の交渉ではついにこの壁を打ち破ることができなかった。しかし、いまの小笠原さんおっしゃったような事情は十分承知の上で交渉もずっとやってきておるわけでございますから、今後の基本協定等の締結に当たりましては、そういう問題をさらに時間をかけ、また強力に折衝をしたい、こういうことを申し上げておる次第でございます。
○小笠原貞子君 この「外国の漁撈実施暫定規則」というのは、ソ連二百海里実施の日より発動しているというわけですね。したがって、日ソ漁業交渉の当初からこの規則に基づいてソ連側は日ソ漁業協定の操業区域の設定を、初めのころはそう主張していたと思うのです。この規則は操業禁止区域を定めているけれども、操業を認められる区域という、今度は釣り堀と私たち言ってるんですけれども、囲い込みされた釣り堀のような形になっていないわけですね、この規則で、二百海里の実施された段階においては。そうしたら、今度の協定のような釣り堀のような方式を主張してきたというのは一体いつの時点かということですね、伺いたいのは。そうしてそのときに、日本側はいまいろいろ御努力されたけれども、やはり根拠としてはあなたの方はこう言ってたじゃないか、それなのにこういうふうに囲い込むということについての根拠はあるんだという点での主張はどのようにされたか、その点具体的にお伺いしたい。
○政府委員(岡安誠君) まず先生御指摘のこの暫定規則の性格を申し上げたいわけでございますが、ここにございますとおり、これは外国の漁労一般に適用がされるというような規則でございます。私どもはこの規則の存在は当初から知っておりました。これも実は大変問題であるということで私ども意識いたしておりましたけれども、まずソ連の提案が具体的にございましたのは、やはり暫定協定の一条、二条、八条等が決まりましてイニシアルができるというような段階後、具体的に提示があったわけでございます。一言ちょっと申し上げておきたいわけでございますけれども、五十三度以北、これは先生御指摘のとおり十三の(a)に「北緯五十三度以北のオホーツク海」、これはすべて漁労を禁止するということになっておりますが、今回ソビエトとの間で約束いたしました海域は、特に一の海域、それから五の海域、一の海域はツブでございますけれども、五の海域はカニ、これにつきましては五十三度以北でございますけれども、われわれはソ連との間で漁労を認めさせたということにはなっております。したがって、ソ連側もこの暫定規則そのままを日本に適用しているわけではなくて、やはり日本がどうしても必要なものについては暫定規則の例外も認めるけれども、またソ連側として一応五十三度以南はいいと言っているけれども、ソ連が指摘しておりますのは、資源の問題並びに沿岸零細漁民と言っておりました、ソ連側の沿岸零細漁民との調整その他があるので、今回はどうしてもツブとカニ、これは例外ですけれども、それ以外の漁労については五十度以北まで海域を拡大することができなかった。私どもたとえば第六の海域その他につきまして、当初提案よりもずっと北の方へ延ばしましたけれども、どうしても五十度の壁は突破できなかったということでございます。
○小笠原貞子君 なお、北転船に対する割り当てとか再調整というようなことをいまもおっしゃいましたけれども、もう少し具体的に、もう相当問題が煮詰まってきていますから、来年度以降の配分も含めて中小漁業者が守られるように具体的にもう少し何かお考えになっていらっしゃるかどうか。基本的な考え方というのはわかったんですけれども。
○国務大臣(鈴木善幸君) 先ほども申し上げましたように、北西太平洋の海域につきましては今後の基本協定交渉におけるクォータとの関係もございますが、まず中小漁船である沖底びき網漁業、これを優先をして考えていきたい、こう存じております。その次は、北転船がどれだけこの北西太平洋の海域で操業できるか、この問題も基本協定の際における交渉の結果を見て考えなければならない それから、一方アメリカの二百海里水域内におけるクオータの再配分の問題でございますが、この点につきましては、遠洋の航海にたえ得るような大型トロール船、これはぜひ沿岸国の二百海里に制約を受けない公海上の新しい漁場の調査開発というものを、これを国の財政負担も相当考えまして積極的に私進めたい、こう思っております。そういう方面に大型トロール等をどれだけ転進させることができるか、そういうものと見合いながら、来年度におけるところのアメリカ海域における北転船のクォータ並びに稼動隻数というものを総合的に考えていきたい、まあこういう基本的な考えで臨む所存であります。
○小笠原貞子君 基本的な考えとしてはそのようにしていただかなければなりません。まあそれはまた追ってお伺いしていきたいと思います。 次に、韓国漁船の操業問題についてお伺いしたいんですけれども、農林大臣、昨日私の質問に答えて、韓国は二百海里法の適用除外としても、特別の政府間協定を結んで、少なくともわが国の漁業規制措置を守らせるとおっしゃいました。この前の二百海里法のときにも、それは必ずそういうふうにするから大丈夫だとおっしゃいましたけれども、その後韓国側とどのように交渉をなすっていらっしゃるか、また、まだでしたらどういう準備、具体的なプログラムというのをお持ちになっていらっしゃるか。
○政府委員(岡安誠君) 韓国との政府間での交渉は、この前海洋二法御審議いただきました際に御報告申し上げたところでとまっております。私どもの今後のスケジュールは、ごく近くに私ども外務省と相談いたしまして、水産庁といたしましては担当課長を韓国へ派遣をいたしたいというふうに思っております。この前の政府間の話し合いで煮詰まらなかった点を早急に煮詰めたいというふうに考えておるわけであります。
○小笠原貞子君 この前、二百海里法のときも韓国の問題については、特に北海道なんか具体的に非常な被害が出てると、そして二百海里法で適用除外ということになってて、これでは大変なんですと、私もるる実情をお話しして、早急に手を打ってもらいたいということを申し上げたわけなんですけれども、その後も非常に被害というのがふえている。北海道に帰りますと、もうテレビなんかでもこの韓国船の問題大きく取り上げておりますし、まあ道の調べでは、この四月に八件、約二百万円だったのが、五月には四十八件、八件から四十八件にふえています。そして金額も十一倍ですね、二千二百万円と、まあ十一倍にもふえているわけなんです。六月の四日にはオホーツク海で百三十隻の漁船が乗り組んで沿岸漁民が韓国船退去せよと、これ以上おれたちの海を荒らすなと、これも大きく報道されておりますけれども、海上デモまで行っているわけなんです。そうしますと、もう一日一日非常に被害というのがふえているわけなんです。これは政府間協定でしっかりやりたいとおっしゃるけれども、その日程ですね、延ばされれば延ばされるだけ、一カ月の間に金額で十倍というような被害が出てくるわけです。二百海里法も七月一日から実施ということになるわけです。だからもう少し、もう日にちありません。七月実施の時期までにきちっとその交渉というのをやっていただかなければならない。そして北海道の近海のトロールやオッタートロール禁止区域、日本が禁止しているというところの規制措置というものをソ連はもちろん韓国船に適用するということになると思うんですけれども、それは必ず韓国船に適用させるということで、この前もおっしゃったけれども、再度確認いたします。そこのところはきちっとお答えいただきたい。七月一日実施になるとすれば、もうきょう六月九日ですから、だからもう二十日しかありません。お忙しいのはわかっているけれども、具体的に大体いつごろをめどにそれをきちっとやるかという点についてお伺いをしたいと思います。
○政府委員(岡安誠君) 先ほどもお答えしたと思いますけれども、担当課長、これはもちろん近く、来週中にも派遣をいたしまして、この前の継続の政府間交渉を行わせたいと思っております。その内容は、御指摘のとおり、私どもも、わが国の沿岸漁船がみずから課しております制限等につきましては、韓国漁船もこれを守ってもらうという線で交渉をいたしたいというふうに思っております。
○小笠原貞子君 ぜひ早急におまとめいただきたいと思います。 それでは次に、今度非常に大きな問題、心配されているのは安全操業の問題になるわけなんです。それに関して拿捕保険の問題、安全操業の問題に関してお伺いしたいと思うわけです。 いままででしたら、ここはとってはいけないという禁漁区というのがあったのを、今度は、先ほど言いましたように、ここでしかとってはいけないというまさに釣り堀のような囲い込みがされているわけですよ。そうすると、非常に拿捕ということが具体的に心配になってくるわけなんです。やっぱり一生懸命に、そこから出ないと思っても、潮の流れとか、一生懸命に操業している間にちょっと出たというような場合には、相当やっぱりそこから出ていって拿捕されるという危険もあるということは予測されるのですけれども、その辺はどういうふうに見ていらっしゃるか、私は非常に危険がふえるんじゃないかということなんです。そういう囲い込みの釣り堀の中に行くときはいいんですよ、お魚とってないから、網もちゃんと畳んであるから。だけど、行って今度帰ってくるとき、魚積んでいるというような状態になったときに、いままでもいろいろ聞いてみると、いやそんなことないと、その線から出てなかったというけれども拿捕されたと、こっちに言わせればあらぬ疑いをかけられるというような、行きはよいよい帰りはこわいということで非常に心配になってくるというような点が出てくるわけですね。そういたしますと、こういう安全操業を確保するためには、きちっとした方針を持って臨む必要がある。決してこれは漁業者の不注意などという、個人的に努力はしてもらわなければならないけれども、それで解決できるものではない。そういう点についてどういうふうに考えていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。
○国務大臣(鈴木善幸君) 拿捕保険の問題につきまして、一部新聞紙上に拿捕保険を中止するというようなことも検討しておるのではないかという報道がなされておりますが、拿捕保険はこれを廃止するという考えは持っておりません。これは今後も拿捕保険は、この制度は竪持していきたいと、こう思っております。 なお今度は、幹部会令の適用を受ける海域へ入りますためには、ソ側の発給する許可証の交付を受けなければならない。また、今度の協定によるいろいろの規制というものを遵守しなければならないわけでございます。もし規制に反するようなことになりますと、許可証の給付、交付自体も停止を受けるとか、いろいろの厳しい措置が適用されるわけでございます。したがいまして、関係漁民の諸君につきましては、拿捕保険の問題もあるにはあるにしても、許可の取り消しを受けるというようなことになりますと、もう操業それ自体がもうできなくなると、こういう厳しい状況下にあるわけでございますので、政府としてもこの違反に問われることのないように行政指導その他も十分やってまいりますし、関係漁民の諸君にも一層注意をしていただいて、そしてそういうような事態の起こらぬように今後努力をしていきたいと、こう思っております。
○小笠原貞子君 私も新聞で読んで、そんなことは全くないと言われたのにあれだけ新聞で大きく取り上げられたということは、やっぱり何かそこに煙があったんではないかということで、漁民も非常に今度の場合心配しているわけですね。私たちも外国との漁業操業協定を無視して拿捕されたのにも保険でカバーしてやるなんということは考えていない。しかし今回非常に、さっきも言いましたように、囲まれた中での仕事だからということで大変心配して、まあ絶対にないということなのでそういうふうに理解したいと思います。 そこで、拿捕保険はいままでどおりということになるわけですけれども、先ほど私が言いましたように、今回安全操業なんかについて非常に危険が伴う、拿捕の危険もあるという中で、いままでの拿捕保険についてこのままでずっと引き継ぐというだけのことか、それともやっぱり一般保険のように掛金に対する助成というようなものも考えるというふうに、この際積極的に拿捕保険の問題をお考えになっていらっしゃるかどうか、その御見解伺いたいと思います。
○政府委員(岡安誠君) 拿捕保険の運用につきましてはいま大臣がお答えしたとおりでございまして、私どもはこれを中止その他のことは一切考えておりません。ただ先生も御指摘のとおり、国と国とで約束いたしました協定に違反するような操業について、これを拿捕保険の対象にするということは私どもはいたしかねるわけでございます。 いま御質問の点は、拿捕保険につきまして従来も掛金等については国庫負担をいたしておりませんが、そのとおりかという御質問でございますけれども、これも先生十分御承知と思いますけれども、掛金等につきましては累年低下さしております。たとえば拿捕保険、いわゆる拿捕保険と言われております特殊保険について申し上げれば、三十八年程度一万円につき一カ月十円だったのが現在は五円ということに非常に低下をしておりまして、実質的に掛金を払う方々についての負担という点については、もう過重であるとかいう問題ではないというふうに思っております。したがって、私どもこの特殊保険等につきまして国庫負担を導入するという考えはございません。
○小笠原貞子君 それから安全操業の問題なんですけれども、富山県の漁業者から政府に要請があったと思うんですけれども、位置の計測、はかる問題ですね、今度、特に先ほど言ったように囲い込まれた、自分はここでやってたんだという位置を計測する場合に、これが日本の、自分の船の計測器では操業区域内だということを主張しても、向こうは、いやおれの方は違うんだと。この計測器の問題なんですけれども、一体これはお互いに食い違いかないように統一した——日本の方が進んでいるんでしょうか、日本の方が正確だと漁民の皆さんはおっしゃるんだけれども、ソビエトに言わせると、いやはみ出しているということになるんだけれども、この計測器の問題についてきちっと日ソ間でも話し合いをしておかなければ水かけ論になって、やっぱり弱い者が連れていかれちゃうということになると思うんですけれども、その辺のところ富山県から要請が出ていると思いますが、どういうふうに御検討なすっていらっしゃるか、お考えを伺いたいと思います。
○政府委員(岡安誠君) 従来から対ソビエトのみならず、これはアメリカを含め諸外国の間でいろいろ拿捕その他の問題ありまして、位置の争いというものは非常に残念ながらあるわけでございます。これが計測器が違うことであるのか、それとも実際に、これはお互いにどっちかがうそを言っているのかよくわかちない。はなはだ残念ながらわからない点がございます。しかし、万一計測器が、そういうものが違うということがあってはこれは非常におかしい話でございますので、私ども、具体的にどういうものを使っているから問題があるのかという点等、もし非常に問題があるならば、これは当然相談をいたしたいと思いますが、しかしそれ以前に、やはりお互いの主張、これが非常に食い違っておるんで私ども非常に頭を悩ましておる点でございますが、これは徐々にそういうことのないように、また私ともも——まあ釣り堀とおっしゃいましたけれども、これ実は図にすると非常に小さいんですけれども、非常に大きな海域で……
○小笠原貞子君 いままでから見たら……
○政府委員(岡安誠君) さようなわけで、これはやはり争いが起きるようなそういう操業は極力避けると、これが一番大事だろうというふうに思いますので、そういう点も十分留意をいたしたいと思っておる次第でございます。
○小笠原貞子君 どっちか、私は日本の漁民がうそをついているとも思いたくないし、またソビエトがうそをついているとも思いたくないと。具体的に計測器の問題でそういうトラブルになるんだということを漁民が実際に言っていますから、だから、そういうふうな計測器の問題についても一度検討していただきたいということ、それはよろしゅうございますか。
○政府委員(岡安誠君) 検討さしていただきます。
○小笠原貞子君 それじゃ貝殻島のコンブの問題についてお伺いしたいんですけれども、民間協定で安全操業ということで非常にあそこは安心して操業しておりました。十四年間御承知のようにたっております。根室市の歯舞地区に出かける漁民にとっては、もうまさにこれ生活そのものにかかっているものなんですけれども、今度の協定でソビエトから全然だめだということになりまして、まあ非常に、時期が時期でございますから、六月十日の解禁ということなんで、もう本当にこれ零細ですから、これにかけているということから見て非常に大変な問題になっているわけです。いままで衆議院などでの政府の御答弁伺ってみますと、ソ連のわが国の領海内操業要求との絡みで政府としてソ連に要求できない、民間レベルで進めてほしいというふうにおっしゃって、きのうの本会議での質問では、政府としても一生懸命に援助したいというふうに前進してきているわけですけれども、零細漁民の苦しみを救うということから考えれば、これはもうまさに政府の責任ではないかというふうに考えるわけで、この点再度、本当にいま深刻に悩んでいる漁民たちに政府の責任で安心できるように、というふうにお答えをいただけると思うんですけれども、いかがですか。
○国務大臣(鈴木善幸君) これは衆議院の委員会でもまた当委員会でも繰り返しその間の事情は御説明申し上げておるわけでありますが、日ソ協定、今度はソ日協定、基本協定、この問題でわが国の十二海里内の操業はこれは絶対にさせない、こういうことがソ日協定でも基本協定でも私はイシコフ大臣とも話がついておりますから、これをはっきりと具体的に実証をさせる。沿岸漁民全体に、今後は外国漁船は領海内の操業は一切できないんだと、こういうことを実証をし確保するということがまず大事なことだと、こう思っております。そういうような問題の処理等十分推移を見ながら、この高碕達之助先輩が御苦労なさって、関係漁民と一緒になって実現をした民間の協定、これはひとつ民間協定として今後も再開できるようにという努力を政府としてもあらゆる角度から支援をして実現に持っていきたいと、こう考えておりますし、それができるまでの間における関係漁民の生活の保障等につきましては十分考えていきたい、こう思っております。
○小笠原貞子君 このコンブ協定というものの経過を見ますと、私は、本当にこれこそ日ソ友好のかけ橋という性格を実に示していると思うわけなんですね。いま農林大臣もおっしゃいましたように、千島周辺水域で拿捕がものすごくたくさんになって大きな社会問題になりました。三十二年の六月に政府が、漁民の安全操業の確保のために四島周辺の十二海里内での小規模漁業及びコンブ採取を認めるようと政府がソ連大使館に申し入れたということから、この協定、民間協定にまで発展しているわけですね。政府がまずソビエト大使館に申し入れたと、そして三十七年の日ソ漁業交渉に臨んだ今度また河野農林大臣とそれから大日本水産会のいまおっしゃった高碕会長が、当時フルシチョフにまで会って、せめて零細なコンブ採取だけでも認めるようという要請をされている。その後の高碕会長の経過ずっと見ますと、非常にもう零細なコンブ漁民の立場に立って、大変な熱意を込めての具体的な行動をされているわけです。そして三十八年六月十日、貝殻島におけるコンブ協定が成立したと、こういう経過を私もいろいろ聞かせていただいたり、その当時の資料読ませていただきまして、このいまに至る民間協定というのは実現のために政府も非常に積極的に具体的な努力、働きかけをしていらしたということをはっきりさせなければならないと思うのです。それで、いま鈴木農林大臣おっしゃいましたわが国十二海里内にソビエト入れないよという原則は絶対貫くと。これとの絡み合いで向こうとの交渉という、絡み合われるものではないという点もはっきりしておかなければならないと。 つまり、歯舞十二海里内操業問題というのは歴史的に見ても決して同列に扱えるものではない、いまおっしゃった領海内操業問題と、という点を私は大事に抑えなければならないのではないかと、そう思うわけですけれども、いまちょっと大臣の発言の中で十二海里内にソ連を入れないという原則と、歯舞の十二海里の中へ入るコンブ協定の場合との絡み合いがちょっと何かはっきりしなかったんですが、その辺のところ、再度お伺いしたいと思います。
○国務大臣(鈴木善幸君) この点はいろいろイシコフ大臣との会談の際におきましても、わが方がこの領海十二海里法、この立法の経緯並びに趣旨からいたしまして、絶対に十二海里の中に入れないという主張を強くいたしまして、とうとう最後にはイシコフさんもおりたわけでございますが、そういう際に、コンブなんか入れているじゃありませんかというようなことをちょろちょろ出すんです。これはこの際この問題を余り深追いをすると、この十二海里の問題については、はっきり入れるということをこの協定の第二条に入れなくとも、今後両政府間で協議をするという、検討をするという窓口だけは、窓だけはあけておこうではありませんかと言って、第二条の第二文というやつを持ち出してきた。これもわが方としては幾ら今後協議をしても、わが方の十二海里の中へ入れることば断じてないわけでございますから、そういう協議、検討をするなどという第二文も私はこれを拒否した、まあこういうような経緯がございます。 そういうようなことでございますので、ソ日協定並びに基本協定で、はっきり十二海里の中に入れないということが定着をし、はっきりした時点におきまして、北方四島はわが国固有の領土であるという立場に立ちまして、この安全操業の問題というのはそういう時期を見て強力にやりたいと、こういう考えでございます。私は、その間における関係漁民の諸君の生活の問題等につきましては、政府として責任があるわけでございますから、十分めんどうを見ていきたいと、こう思っております。
○小笠原貞子君 この協定の前文の中に、「日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の善隣関係と協力とを増進し強化することに寄与することを希望し、この協定を締結する」というふうに書かれていて、私はなるほど文字どおり日ソ友好のかけ橋と言われていたその役割りを果たしてきた大事な協定だなあと、そう思ったわけなんです。そういう意味で考えていきますと、いまの問題じゃなくて、私が言いたいのは、従来の協定延長の際、二年おきだったのが一年おきになってまいりましたけれども、この協定延長の際には議事録の中で、「協定の有効期間終了後、新協定の締結又は、この協定の延長の可能性に関する問題を審議し得ることに合意した」と、七五年の延長協定にこう書かれているわけなんですね。ところが昨年の場合、議事録の中で、ソ連側が七六年にモスクワで、七七年にコンブ採取のための協定を政府間で結びたいということを主張してきた。ここで初めて政府間で結びたいという主張をし、日本代表団はそれは困難だとして一致しなかったというのが七六年の段階で出てきて、七七年に当たってそういう政府間協定を向こうが言い、こっちは困難で、民間でやりたいというところが出てきたと。そして、そういう問題が出たということに対して一致しなかった。しかし、このソ連側見解を日本政府に伝達すると書かれているわけなんです。だから、当然いまこういう問題が起きなくても、こういう新しい政府間でやろうじゃないかという問題を提起されて、そしてそれは伝達されて知っていらっしゃるわけです。そうすると、その問題についてどのように対処をされたか。今度いきなりばさっと切られたからこれは大変だというのじゃない、やっぱり伝達されていたはずだと思うのです。それについてどういうふうに対処、御検討なすっていたか、お伺いいたします。
○国務大臣(鈴木善幸君) ソ連側がどういう意図でこの民間協定、十幾年も続いて円滑にいっておったこの協定を政府間の協定なり何なりに移そうという意図は定かでございません。時あたかも、もうその当時からこの日本の三海里を十二海里にせにゃいかぬ、こういう問題が国論として関係漁民の間で強く出てきておったと、まあそういうようなこと等もございまして、私はソ連の考え方がどこにあったのかというようなことも、政府としては慎重にその辺のことを検討しておったということでございます。今回とにかく向こうが三海里と十二海里の中で操業しておったものを、今度は十二海里の外での操業しか認めぬと、こういうことになるわけでございますから、これらの問題はやはり相関連しておるものとわれわれは見なければならないというような事情もございますので、この十二海里問題を私は確信を持ってソ日協定、基本協定で具体的にそれを関係漁民の方にお示しができると確信をいたしておりますが、そういう大きな問題を処理いたしました段階において、このコンブ協定の問題は政府としてもできるだけの努力をすると、こういうことで御理解を願いたいと、こう思います。
○小笠原貞子君 まあそういういきさつはわかりました。 で、いよいよ今度ソ日協定になるわけだし、この二百海里というのは線引きが実施されるという段階ですから、この水域こそ、特にまさにコンブ問題については特殊ないままでの日ソ友好のかけ橋としての役割りを果たしてきたということから、これは何としても復活させてコンブをとらせるという実現のために努力していただきたい。コンブがとれないから生活の補償を何とかしますよというのではなくて、現地の漁民なんかももう本当に補償より先にコンブをとらせるようにしてくれというのが最大の希望ですし、私は当然だと思うわけですよね。まあ政府が努力をしてくださるというんだけれども、六月のあしたですね、解禁になって出るのは。そうすると、もう九月ごろまででございましょう。そうしたら一体ことしどういうふうな展望があるのか。一生懸命にその協定の中で皆さんが交渉なさるときに努力をなさることはわかるけれども、具体的なめどとして、展望として貝殻島のコンブについてはどのように見ていらっしゃるか。そこのところもうちょっと。
○国務大臣(鈴木善幸君) 私は先ほど来申し上げるように、ソ日協定、基本協定、これではっきり十二海里問題は決着をつけたいと、こういう考えを持っておりますものですから、ことしの操業については政府が正面切ってこの問題を交渉すると、どうもずるずる向こうのまたぞろ引っ込めたやつを持ち出してくるようなことに相なりますと事態が混乱をいたしますから、ことしの場合は関係漁民には本当にお気の毒だけれども、十分な救済措置を講じつつ、基本協定後、来年の操業時期までの間にこの問題について政府としても民間と一体になりまして最善を尽くすと、こういう趣旨を申し上げておるわけであります。
○小笠原貞子君 無理言っても相手があることだから、おっしゃるとおりになろうかと思いますけれども、零細漁民一戸当たり大体二百万円からの収入になっているわけですね。いまのお話ですと、ことしはちょっと無理だということになります。そうすると、この貝殻島のコンブ業者についての救済というのは具体的にはどういう形になるんですか。
○国務大臣(鈴木善幸君) 先ほど来申し上げておりますように、関係漁民の諸君がこれによって収入が減ると……
○小笠原貞子君 なくなる、減るんじゃなくて。
○国務大臣(鈴木善幸君) コンブだけで生活しているわけじゃありませんから、その他の漁業もあるわけでございますが、少なくともコンブの採取ができなかったということによって生ずるところの損害、そういうものにつきましては政府としてできるだけのことをしたいと、こう考えています。
○小笠原貞子君 まあだから、できるだけなんですよね。いまこれから補償問題聞きますけれども、きのうも私代表質問やっていて、もうお答えになったんだけれども、内容としては非常に具体的には何にもお答えになってないのと同じだと。極力努力をいたします、できる限りということで、枠があってできないということになったらもう全部帳消しになっちゃうようなことで、大変不安を持っております。 具体的に今度休漁、減船の補償問題についてお伺いしたいんですけれども、ニシン刺し網業者の場合は三月、鈴木・イシコフ会談で三月中の操業中止ということが言われて、その後三月十五日から再開された交渉でいまかいまかと待っていた。本当に一日でも早く、たった一日でもいいからニシンとりたいというのがあのときの希望でした。しかし、結局もう漁期はなくし、全面禁漁という最悪の事態となった。 そこで、補償の問題でまずニシン刺し網業者についての補償問題についてどう考えていらっしゃるか。ニシン刺し網に限って伺っていきたいわけですけれども、全面禁漁が確定して日も経過しているわけですから、もう相当具体的に準備もされていると思うんですけれども、きのうの答弁では大変まだ基本的な考え方なので、もうちょっと具体的にお考えがあれば伺わせていただきたいと思います。
○国務大臣(鈴木善幸君) 私から基本的な考えを申し述べて、個々の具体的な魚種、漁業についての問題、あるいは関連企業の問題は長官の方から答弁をしてもらうことにいたします。 私は、できるだけ政府として救済あるいは補償に準じた措置を講じたいということを申し上げておるのは、とかくできるだけということになりますと、財政当局、財政上の事情ということが大きく作用してくると、従来そういうぐあいに見ておるわけでございます。しかし、私は申し上げておりますように、国の財政、一般会計から何千億というものを一挙に出すということはできない。そのために補償が中途半端、救済が中途半端になるということではいけないということで、政府から二、三百億ぐらいの基金は出してもらうにしても、特殊の法人をつくってそれに財投等から要るだけの金はとにかく出してもらう。そうして五十二年度以降一般会計から三年なり五年の間でそれを穴埋めをしてもらうというようなことまで実は考えておる。できるだけというのは、財政上のその財源の制約を受けないで、これだけのものをやらにゃいかぬというものはやりたい。そのためにそういう仕組みも考えておるということで、私のこれに対する取り組む姿勢、熱意というものは御理解いただきたいと、こう思うわけでございます。 なお、個々の問題につきましては水産庁長官から申し上げることにいたします。
○小笠原貞子君 後で具体的な問題聞きます。 ニシンについては三、四月分、五月分と、二回にわたって緊急に必要な経営資金という形で融資が実施されたわけですけれども、少なくとも補償措置が確定するまで、このつなぎ的な緊急融資の性格から考えると、そうすると六月分という形で継続という形が考えられるのかどうかということなんです。それから融資といっても、全面禁漁で当てがなくなるわけだから、融資だけではもうどうしようもない、やっぱり補償という形で考えなければならない。その辺のところ、四月、五月出て、六月補償が決まるまで継続して融資ということを考えていいのか、補償という形できちっと考えて、最後にはいただけるのかどうか、その辺のところを。
○国務大臣(鈴木善幸君) 緊急つなぎ融資をしたわけでございますが、これは償還の期限等もその際はあったわけでございますけれども、これは当然償還時期等は延長いたします。と同時に、ニシンのように明確になっておりますものは、これは早急に本格的な救済措置を講じてまいる。前に、オホーツク海の抱卵ニシンの出漁直前における禁漁という事態が起こりました際に、私は当時党の総務会長をやっておりましたが、私はあの際責任を持ってこの救済措置は十分にやったつもりでございます。ニシン業者の諸君も、よくあそこまでやってくれたということをいまでも言っておるのでありますが、そういう先例もございますから、そういう対策をできるだけ早くやりたいと、こう考えます。
○小笠原貞子君 六月分として継続ということ……。
○政府委員(岡安誠君) 先般融資いたしましたのは、いま大臣からもお話しのようにつなぎということでございまして、ある程度交渉がどうなるかわからない、その交渉がはっきりするまでは、ニシン業者側といたしましても準備をしておりますし、それから乗組員も雇っておるということもありまして、つなぎ的措置を講じたわけでございますが、もはや残念ながら抱卵それから索餌並びに以南ニシン等につきましても、これは出漁ができないということにはっきりいたしておりますので、これはもう減船をしていただくしかない。 そこで、減船につきましては早くこれは対策を講じまして、つなぎということよりもやはり減船に対する救済措置をなるべく早くいたすという方向で私どもは指導をいたしております。
○小笠原貞子君 早く補償にやってもらいたいんだけれども、それがそうしたら六月中には補償がきちんとできるかという保証がないわけでしょう。そうすると、四月、五月は継続してもらったけれども、六月の融資というものは考えられるのかどうか。つまり補償がきちっと全般を見て整理できるまでつなぎ融資を継続するのかどうかというのが私の聞きたいことです。
○政府委員(岡安誠君) つなぎ融資は、先ほど申し上げましたように、すでに準備した出費がありまして、それらの手形を落とさなければならないとか、それから船員を継続して雇用せざるを得なかったので、その給料の支払いが必要であるとかいうような要因がございまして、つなぎをいたしたわけでございますが、すでに残念ながら先ほども申し上げましたように、これらが出漁できないことになりましたので、先ほどの仕込み資金等につきましては決済が済んで、それから船員等につきましてもそれぞれ手当が済んでいるとするならば、今後どういう金が必要であるかということですね、これはやはり別途考えなければいかぬので、三月なり四月と同様の融資が必要であるかどうか、これは別の問題だと思います。それよりもむしろ救済を一日も早くやりたい。先般大臣がお答えいたしておりますように、今月中には基本方針がはっきりいたしますので、それによって具体的に御相談をして、なるべく早く決着をつけたいというふうに思っております。
○小笠原貞子君 次に、減船による補償なんですけれども、きのうも私、共補償ということを考えていらっしゃるのかどうか、共補償という問題についてお伺いしたんですけれども、具体的にお答えをいただけなかったわけなんですけれども、いままでのような減船だったら共補償である程度やっていける。しかし、今度は大変な減船になるから残った残存で共補償できるような能力もない。行ってたくさんの漁獲量を上げてきて、みんなの分を賄えるというような状況にもないという中で、非常に深刻に考えているんですけれども、この減船の補償というものを国の責任で大丈夫やりますというふうにおっしゃっていただけるのか。やっぱり共補償という形で、わずかに残ったところにまたそこに大きな負担がかぶせられるのかというところが問題なんですね。 私も、ちょうど減船の割り当てが来たときに釧路に入っていたんですよ。そして、どの船を削るかというとき、話し合いなんかで解決つきません。解決つかないもんで、それで船主に、みんな集まってどの船を減らすかなんて言ったときにも、みんなこわくて引けないというわけね、最後にくじ引きにしたんだけれども。もうくじ引きにしても、このくじ引きで自分の船は出られなくなる、乗組員のことも考えていったら全然引けなくなった。それで漁労長におまえくじ引き引けということで、漁労長がくじ引き引いた。それで残ったのもほっとすると一緒に、減船の対象になる船というのは本当にそこは男泣きに泣くというような大変な深刻な状態になったわけですよ。だからまさに去るも地獄、残るも地獄というようなそういう状態の中。そこで共補償なんということで、残存者にはそれだけの力が出せないですね、決められた漁獲量の中ですから。だからがばっととってきて補償するなんという、共補償に回すというような能力もない。そうすると、どうしても共補償なんということばいまは考えないで、国の責任での補償ということでやってもらわなければならないと思うんだけれども、その辺についてはいかがお考えでありますか。
○国務大臣(鈴木善幸君) いまお話がありました点につきましては、漁獲量も相当減らされておる。また燃料費、資材費あるいは船員の給与その他も上がっております。そこで、確かに経営は苦しいわけでございます。しかし、漁業の種類別によりまして一様でございません。イカであるとか、ツブであるとか、サンマであるとか、そういうようなものはおおむね過去の実績が確保されておる。しかし、操業海域等の制約は出てきておる、そういうものもございます。そのために減船等もある程度やらにゃいかぬ。しかも一割か五%程度の減船で済む業態もございます、そういうようなこと。それから一般に漁獲量が減ったということで浜値がやはり幾らかよくなってきておるという事情もございます。でありますから、総体的に経費の増高、それから漁獲したものの販売をした浜値等による収入の問題、経営全体を見て、しかも減船の率がわりあいに低く済んだというような業態もあるわけでございますから、全部共補償というものはもう廃止しちまうのだというようには考えておりませんが、業態の中の経営の実態というものをよくにらみ合わせながら、基本的には政府としてこういう国際情勢の激変、政府の責任で今回の交渉がなされたというような事情等も踏まえまして、その点は納得できるような政府の措置は講じていきたい、こう考えます。
○小笠原貞子君 次に深刻なのは、みんな深刻なんですけれども、漁民は直接問題にぶつかるからまだいろいろと考えられる。しかし、数も多いし、非常に深刻という点では水産関連業者の問題なんです。もうこれも本当にもろに今度の問題で被害がかかってくるわけですから、これについても本当に救済対策というものに力を入れていただきたいと思います。いろいろ対策をやっていただいているということの形では一応整えられつつあるというふうに思いまするけれども、やっぱり実情を見ますと、決してそんななまやさしい対策ではやっていけないというような実情なんです。 北海道の北洋関連水産加工場というのは非常に多くて、道水産部が去る四日発表したのを見ましたけれども、水産加工場の操業状況というので調査を見ますと、千百八十八工場中休業中が三百三十一、七百五十四工場が操短、通常に稼働しているというのは千百八十八のうち百三工場にしかすぎないというような状態で、これも重々文字の上でもいろいろ陳情などもお受けになって御承知だと思いますけれども、こういうような状態の中で、五月も引き続き原料が入るという見込みがございません。これが非常に苦労しているというところで、政府の対策というものをどの程度まで考えていただけるのか。四月二十八日に北洋加工業者に総枠で三十億の緊急融資というものを実施されているけれども、これは四月分でございますね。そうすると五月分の緊急融資は当然実施するというふうに考えていいのか、その辺のところをお伺いしたいと思います。
○政府委員(岡安誠君) 確かに四月、五月と操業をいたしておりませんし、六月につきましても、この協定を御承認いただきまして批准書の交換、許可証の給付を受けて、それを配付してから出漁ができるということでございますので、魚に依存しております加工その他の関連企業、非常な打撃をこうむっていることは承知をいたしております。一応のつなぎ対策は閣議で方針を決めまして、御承知のとおりとりあえず三十億、四月分でございますか、やりましたけれども、その以降の分につきましては、現在取りまとめてなるべく早くできるように、現在検討といいますか、準備をいたしている最中でございます。
○小笠原貞子君 最後の方ちょっと聞こえなかった。
○政府委員(岡安誠君) 五月分につきましては現在検討して、できるだけ早くやりたいということでございます。
○小笠原貞子君 この補償問題お金がかかるわけで、農林省非常に努力していらっしゃるというのはわかるんですけれども、大蔵省としてもうちょっと実情をわかっていただいて、いままでかつてないことなんだから、これらの融資について考えを積極的に示してほしいと思うんですけれども、大蔵省の財布の締め方がちょっときついようなんで、もうちょっとその辺、本当に漁民の立場に立って考えていただきたいと思うのですけれども、いかがですか。
○説明員(古橋源六郎君) 財政当局は税金を国民から預かっておるものでございます。その支出に当たりましては、常に厳正に使うというのがわれわれに与えられた使命でございます。しかし、今回の漁業交渉の結果被害を受けられました漁業者の方々、あるいは離職を余儀なくされる船員の方々、こういう方々に対しましてのいろいろな救済対策につきましては、いま関係省庁において真剣に検討されているところでございます。その方々のよく実情を伺いまして、適切な措置をとると、こういうふうに考えております。
○小笠原貞子君 なかなかしっかりした御答弁で、緩むのかどうかちょっとわからないんですが、本当にこれは決して国民がそこに使ったからといって文句言うような筋でない。やっぱりもう国の責任でこういう被害を受けているんだという立場に立って、なお御検討いただきたいと思うわけです。 時間ももう余りなくなりましたので、具体的に伺いたいんですけれども、この間、私何回目かに釧路に行きまして、水産加工業者のまあ社長さんだというんだけれども、社長さんなんというものじゃないです。本当に仕事着を着て、そして働いているお母さんたち、おばさんたちと一緒に私のところに話しにいらっしゃいました。ここは御承知のように公害規制で全部前処理なんかというのが公害のために——大楽毛の前処理センターという大きいのがあるのを御承知だと思いますが、そこに引っ越さざるを得ないということで、公害規制に協力して入った方なんですけれども、その大楽毛の前処理センターに入るために、権利金が二百七十万円なんです。そして設備投資に千二百万円かけた。そして昨年十二月にまた千八百万円減価償却なんかしなきゃいけないというのでかけたというわけなんですね。そして現在どうなっているんだと聞いたら、やりくりしても借金が一千万残っているという状態なんです。それで三月末から御承知のように仕事がない。それで従業員は四十四人なんです。ここはほとんどやっぱり婦人が多いですから、そのお母さんたちがいらしたんだけれども、半分の臨時の二十二人というのはやめていただいた。しかし、残った従業員についてはやっぱり払わなきゃならないというんで、月四万五千円というお金を出していらっしゃるわけ。一千万の借金を抱えて、そして原料が入らないから仕事がない。一体そのお金をどうして四月、五月分を払ったんですかと聞いたら、そのおばさんたちを乗せて連れていくマイクロバスとか、トラックというようなものを売って、やっと四月、五月というものを食いつないできた。しかし、そういう本当に苦労しているところが、お金を借りたいと言って借りに行っても、建物そのものは、前処理センターの大きい建物を借りて入って、権利金が入っているだけだから、担保がないと言われて借りられない。まあ担保があるくらいだったら借りなくても済むというわけなんですね。 こういうふうに具体的に調べてきますと、この加工業者というような方たちの借りられるということが、非常に枠が狭まっているわけなんですね。その辺について、本当に困っている加工業者について借りられるように考えていただかなければならない。そして今度利子が漁業者と比べて一%、三%高いという点も問題だし、一企業当たりの限度枠が少なくて役に立たないというような声もたくさん出ました。それから償還期限も六カ月ということなんで、六カ月で原料魚が入ってくるなんという見通しがない中では、六カ月というのはとてもじゃないけれども、これは融資されてもどうにも助けにならないというように、非常に具体的に小さい、本当に生きられないというようなところの加工業者や関連産業について、そこまでちゃんとカバーしていただけるような、そういう制度、金融、枠というものについてどう検討されているかという点で、時間がないからもう一つ続けて具体的に伺いますけれども、中小企業信用保険の倒産関連特例保険の適用魚種というのがあるわけですけれども、これについて三月、四月対策として、一応ニシン、スケトウダラに限定されておりますけれども、それ以後の事態で、サケ・マス、タコ、カニなど日ソ漁業交渉の結果影響の出るものについて、適用魚種を拡大するということが当然だと思うんですけれども、その点について考えていらっしゃるかどうか、どのように検討されているかどうかということをお伺いしたいと思います。雇用調整給付金について、六月一日から九業種からツブ、毛ガニ、ズワイガニ、イカナゴ関連までに拡大されたというような状態ですから、この点から見ても、当然私がいま言ったような中小企業信用保険の倒産関連特例保険の適用魚種というのも拡大していただけると思うんですけれども、その辺のところはいかがでございますか。
○説明員(松尾成美君) 幾つかの問題御質問ございましたが、まず信用保険の問題でございますけれども、これは先ほど水産庁長官から御答弁がありましたように、関連中小企業が主力をなします水産加工業についての融資について、五月分についていま御検討中というお話がございましたけれども、これとの平仄がございますので、この辺、対象魚種の問題を含めまして融資の方の方針が固まり次第、それとあわせてこちらの方も早急に措置をするつもりでおります。 それから、いろいろと融資面に当たりまして具体的な問題になりますと、実際の実行上いろいろむずかしい問題があるという御指摘がございましたけれども、この点につきましては、実は私どももそれぞれの機関には、現在の融資制度の中で極力実情に即した運用をするようにということはすでに指導しておりますけれども、相談の窓口以外に札幌、仙台の両方の通産局に北洋漁業関連中小企業臨時対策室というのを設けておりまして、個別の窓口で、またなかなかうまくいかないというときにはそこへ持ち込んでいただく、そこでまた三機関なりあるいは道といろいろ御相談しながら個別問題を極力解くように努めていくということをやっておりますので、そういった面も御利用いただけるというふうに考えております。
○小笠原貞子君 そういうところに御相談に行けばいいわけですけれども御相談に行きましたら、いま言ったように担保がないというようなとき、信用枠の保証も、必ず枠を信用保証してもらえるのかどうか、そういういま私が聞いたような人たちもそこへ相談に行ったら、何とか生きられるということになりますか。
○説明員(松尾成美君) 先ほどのケースの場合でございますと、すでに御相談があったのかどうか、ちょっと私実は存じませんので、出先の方が具体的にどうお答えしたかということを承知いたしておりませんが、たとえば国民金融公庫でございますと、これは担保は必ずしも要しませんで、無担保で三百万まで保証人だけで融資するというようなこともやっております。これはそれぞれのケースによりますけれども、相当御利用いただいているという例もございますので、非常に大きな金額ですとこれはなかなかそう簡単にまいりません。とりあえずつなぎが要るという場合に、そういったものも御利用いただけると思います。すでに問題が起こりましてから五月までの一カ月ぐらいの間に、全体の機関で三十五億ぐらいの申し込みがありまして、その中の十七億ばかりの数字、これが国民金融公庫ということでございまして、小口のものを非常にたくさん扱っております。一つ一つの問題に即して考えますと、何とか対応していけるんじゃないかというふうに考えております。
○小笠原貞子君 それじゃ具体的にまた聞きまして、おたくの方に具体的に行きますから、そのときはちゃんと助けてもらえるように、大丈夫ですね。具体的な問題で持っていきます、いっぱいそういうのがあるんですから。 それでは最後になりますけれども、特に私きのうも申し上げましたように、解雇された女子作業員、女の人が多いわけですね。その中で母子家庭の母親が全体の一割に当たる百九人という数が出ているわけです。この人たちの約半分というのは、雇用保険の適用も受けず、さしあたっての生活をどうしていいかわからないというようなことで問題になっているわけです。こういう人たちに対して、技能習得仕度金とか応急生活資金の活用とか、まず年輩も年輩なんですね。だからこういう人たちがどうしてここのところ生きていけるかというような道を教えていただきたいと思います。 そして最後に、きのう自治体に対しての問題、いろいろ財政運用で考えていくとおっしゃいましたけれども、具体的に激甚災害に準じた特例の財政援助というようなことも考えていただけるのか、その辺最後に具体的に自治体への対策を伺わせていただいて終わりにしたいと思います。
○政府委員(岡安誠君) 御指摘のとおり、今回の漁獲割り当ての削減等によりまして直接の漁業経営者、漁船乗組員のみならず関連企業また関連企業に従来雇用されておりました方々、また臨時的に雇用されておりました方々に対する影響等も相当甚大であるというふうに私ども考えております。 そこで私ども、大臣からも申し上げましたように、今月中に基本的な方針をやはり樹立いたしたいと思っております。関係省庁とも十分打ち合わせなければ先生御指摘の点等につきましては、私からいま直ちに的確にお答えができないわけでございますけれども、そういうことも十分頭に入れまして、救済措置が十分に行われるように措置をいたしたいというふうに思っております。 また、自治体等にも非常に財源その他の点で困っているところが生じているということも聞いておりますので、これは自治省とも早急に打ち合わせてまいりたいと思います。
○小笠原貞子君 もうちょっと具体的に自治体の方は考えていらっしゃらないんですか。
○政府委員(岡安誠君) 具体的には、自治体の場合には財政収入その他がどうなるかということ、それからまた自治体にいろいろ、先ほど申し上げましたような救済対策もお願いしなければならない面もあるわけでございますけれども、あわせて自治省とも相談してまいりたいというふうに思っておるわけでございます。
○田渕哲也君 まず、鈴木農林大臣は非常に長期間にわたりまして御苦労さまでございました。非常に苦労されたわけでございますけれども、今回の日ソ漁業交渉というものは非常に難航したわけであります。しかも、その難航した背後には領土問題が絡んでおるということは紛れもない事実であります。 まず、この領土問題に対する日ソ両国の主張の相違点というものを端的にお伺いをしたいと思います。もちろん今回の交渉でその主張をされたわけでありませんけれども、その背景にある日ソ両国の領土に対する考え方の食い違いというものが交渉を難航させた原因である、そういう観点に立って、日ソ両国の領土に対する見解の相違点というものをまずお伺いしたいと思います。
○国務大臣(鈴木善幸君) 交渉の中で、この背景にございましたところの北方四島の領土絡みの問題、私が受けた印象等を申し上げ、純然たる領土問題としてのわが方の立場等につきましては外務大臣の方からお願いをしたい、こう思います。 今回の交渉が長期かつ困難な交渉であった背景には、いま御指摘の北方四島の領有権の問題、戦後未解決の問題、これがありましたことはすでに国民の皆さんも御推察ができておるところであろうと思います。 イシコフ大臣は、直接のそういう高度の政治問題を担当しておる大臣ではございませんから、はっきりした表現では物を申してはいないわけでございますけれども、現実にソ連邦がこの北方四島は支配し施政を行っておる、この現状、現実というものを基礎にして漁業問題としてわれわれはひとつ協定交渉をやろうではないか、これがイシコフ大臣の終始変わらざる態度でございます。解決済みか、こういうことは申してはおりません。しかし現状、この実態、これは一つ動かしがたい事実であるんだから、これを踏まえて協定を結ぶ以外にはないではないかと、これが終始一貫したイシコフ大臣の態度でございます。現にソ連が北方四島を占有し、支配し、これに施政を行っておる、この現実、この現実を前提としてお互いに純然たる漁業問題としてひとつ話し合いをしようではないかというのが基本的な姿勢であったと、こういうことでございます。 しかし、わが方としてはこれに対して一九七三年の田中・ブレジネフ会談で戦後未解決の問題である、今後この問題は平和条約交渉において解決をせらるべき高度の政治問題である、であるから、戦後未解決の問題ということを前提としてひとつ交渉やろうではないかというのがわが方の立場でございます。そこに非常に食い違いがあったということが相互の間のこの問題を処理する間における最大の争点であったと、こう申して差し支えないと、こう思います。
○国務大臣(鳩山威一郎君) ただいま鈴木農林大臣がお答えになりましたとおりであろうと思います。領土問題につきましてわが方が四島一括返還という要求をいたしておりますこと、そのことにつきまして、根拠のない不当な要求であるというようなこと、あるいは領土問題としてはもう未解決の問題とは考えていないんだと、こういうような態度であるということでございます。
○田渕哲也君 今度の交渉で北方領土周辺の二百海里の線引きを認めたわけです、ソ連側の。これはこの区域におけるソ連の主権行使を認めたことになるわけですけれども、これを認めた理由は何ですか。
○国務大臣(鈴木善幸君) これは御承知のように、ソ連の最高会議幹部会令の適用海域を明確にして、その中における水産資源に対するもろもろの規制の措置を講ずる、そういう前提に立っての手続等を決めるというのが今度の協定の目的でございます。 そこで、この二百海里漁業専管水域という交渉をするに当たりましては、対アメリカの場合にも同様でございますが、この二百海里専管水域の水域の設定というものを頭から否定をしてかかった場合におきましては、これは漁業交渉にも入れない、一隻の操業も認められない、こういうことになるわけでございます。 ソ連の場合におきましても、幹部会令の適用を受ける海域というものを閣僚会議決定等によって具体的に明示をしておる。これを否認する立場におきましては、あるいは閣僚会議の決定を直せ、幹部会令を直せと、こういう注文をつけるということではこれは交渉ができない。逆に今度はソ日協定におきまして、わが方におきまして国権の最高機関である国会が御決定なさったところの漁業水域に関する暫定措置法で海域は定められておる。また領海域、こういう相手国の国内法、これを頭から否定をしてかかったのでは、これは交渉にも何にもならぬわけでございます。もう入り口で問題にならない。 そこで、これは純然たる漁業規制に関するところの水域の設定であるということをわが方としては認めて、そのかわり、領土絡みのこれは線引きになるわけでございますから、第八条というものを設定をして、そして同時に第八条について、相互の間の諸問題についても、いずれの国の政府の立場及び見解を害するものとみなしてはならない。これではっきり漁業問題と領土問題を切り離すという明文化ができた時点において、第一条の問題もこれを承認をした。だから第一条の問題を先に認めて、第八条というものを後に決めたものではない。これは最後までセットで、第一条問題、第二条問題そして八条問題、八条問題で話がついて初めてセットをした、こういう経緯になっておりますし、私はそれ以外に日ソ協定交渉を進める道はなかった、このように考えております。
○田渕哲也君 ソ連の最高幹部会令あるいは閣僚会議の決定の線引きを認めなければ交渉に入れない、その事情はよくわかるわけです。それから、いわゆるこれからのソ日協定、これでソ連がわが方の二百海里の線引きを認めなければこれまた交渉に入れない、これはよくわかるわけですけれども、私は線引きということは、ただ単に地図の上に線を引くことをいっているわけじゃないと思うんです。線引きというのは何を意味するかというと、その競合する地域内の管理権、裁判権、いわゆる主権の行使をどッちがとるかというのが線引きなんです。お互いに架空の線を引いてみたところで、それは地図の上に鉛筆で線を引くのと変わらないわけで、そういう意味で、この北方領土周辺においてはソ連の主権を認めたということになるわけです。 衆議院の六月五日の外務委員会で、領海については認めないという答弁を、これは中島条約局長ですか、二百海里の水域で拿捕される、これはソ連の漁業協定に従いやむを得ない。ところが、四島周辺のこの領海であるがためにこれを拿捕されるということは認められない、こういうことを言われておりますけれども、この主権の行使を二百海里の線引きで認めておきながら領海を認めないというのは、これはどういう根拠になるわけですか。
○政府委員(中島敏次郎君) まず最初に御理解をいただきたいと存じますのは、先生がその四島周辺に主権の行使を認めたとおっしゃっておられるわけでございますが、恐らく先生のそうおっしゃられるときの根拠は、協定にありますところの主権的権利の行使ということ、また、その根っこにありますところのソ連の幹部会令におきますところの主権的権利の行使という表現がまず問題になっておるのであろうと存ずる次第でございます。 そこで、この主権的権利とは何かという点がまず問題になるわけでございますが、この点につきましては、これはいわゆる領土、領海に対する主権というものとは性質の異なるものであるというふうに私どもは理解いたしております。要するに二百海里の漁業水域におけるところの水産資源の探査、開発に関して必要な権利を行使し、その資源の有効利用を図るということに必要な限りでの規制を行うということが、この漁業水域の本体でございまして、これはわが暫定措置法における観念でもあり、アメリカの法律、または海洋法の考え方でもあるわけでございます。その規制のための権限の総体を主権的権利という表現でただいまの海洋法におきますところの草案には表現されておりますし、ソ連の幹部会令はその言葉をとってきたものだというふうに考えております。そういう意味で、主権的権利という言葉を使ったことによってソ連の主権を認めたということには必ずしも直ちにならないという点をまず指摘さしていただきたいと存じます。 そこで、いま農林大臣から御指摘がありましたように、四島の周辺の二百海里の漁業水域に関しましては、ソ連側が現実の漁業の規制を行っておるという事実があるわけでございまして、その事実を前提にしてわが方の漁業者の入漁を確保するというのが、今回の交渉の最大の眼目でございまして、その限りで四島の周辺の漁業水域においても、他の漁業水域におけると同じような漁獲の手続及び条件を定めたものがこの協定であるということになるわけでございます。 そこで、ただ問題は、わが国がこれら四島に対して、これはわが国の領土であるという領有権主張を堅持いたしておりまして、そのような現実的な取り決めを行うことによって、わが国のその領有権主張の立場が害されるというようなことがあってはならない、それは平和条約交渉においてあくまでも追求されていくべき問題であるということで、その立場が害されることがあってはならないということで、第八条に留保を設けて、そのようなことにならないということを明確にいたしたというわけでございます。 他方、四島がわが国の固有の領土であり、その周辺の領海がわが国の領海であるという立場は変わっておりませんので、その点については、従来の事態は一向にこの協定によっても変わっておらない。その限りにおいて、ソ連側が彼らみずからの領海だと考えて規制を行っておりますところの四島周辺の領海において、わが方の漁船がいわゆる領海侵犯というようなかどで逮捕されるというようなことがあれば、それは認められないという従来のわが方の立場は依然としてこの協定によっても変わっていないということを先般申し上げた次第でございます。
○田渕哲也君 確かに、二百海里の線引きを認めたことは、全面的にソ連の主権を認めたことにはならないかもわかりません。限定的にそのソ連の主権の行使を認めたということになると思うんですね。そのソ連の主権の行使を認めた理由は、現実にソ連がそこの施政権を持っておると、そういうことに基づいているのではありませんか。だからやむを得ず認めたと。
○政府委員(中島敏次郎君) お言葉を返すようで恐縮でございますが、わが国は四島に対してソ連が施政権を行使することを認めたことはないわけでございます。遺憾ながら現実に彼らがあそこを占拠し施政を行っておるということは事実でございますけれども、日本国として彼らがあそこで法律的な権利としに施政を行うことを認めたことは決してないわけでございまして、わが国の立場は、彼らがあそこにおるということは、法律的根拠なくして占拠を続けておるという意味におきまして、不法な占拠であるという事態は依然として変わっていないわけでございます。
○田渕哲也君 もし彼らがそれを不法な占拠であるとするならば、限定的にせよ主権の行使を認めるというのは非常に大きな矛盾ではないかと思いますが、いかがですか。
○政府委員(中島敏次郎君) 限定的にもせよ主権の行使とおっしゃられたことの意味は、先ほど来私が御説明していることを御理解いただけておるというふうに存じますけれども、それをあとどう表現するかという問題かと思いますが、いずれにせよ、わが方がこれら四島がわが国の固有の領土であるという立場自身をいささかも損なってはならないと、これは平和条約交渉において解決されなければならない問題だということが肝要でございまして、そのことは第八条によって明確に留保されておるということだと思っております。
○田渕哲也君 ソ連側が最高幹部会令とか閣僚会議決定で線を引きます、それは向こうの勝手ですからこれはいいんですよ。これについてとやかく言っているものではない。われわれがそれを認めなければ、不法だと言っておれば、それは認められないと言えばそれでいいわけですけれども、現実に今回の日ソ漁業協定では、向こうの言い分に基づいた範囲の中の、われわれが不法だと言っておる範囲の中において裁判権、管理権、そういうものを含む漁業管轄権を認めておると、これはやっぱり矛盾じゃないかと思いますが、いかがなものですか。
○政府委員(中島敏次郎君) 先ほど農林大臣からもお話がございましたように、ソ連がその四島の周辺の彼らの漁業水域と称するところにおいて現実に漁業の規制を行っているのが実態でございます。そこで、それを否認してかかると、それを変更せよという主張において交渉を行うとすれば、わが方の漁民がそこで漁業を行うことができないわけでございます。漁業のあそこにおける、その周辺におけるところの操業を確保せんとすれば、その実態の上に立って現実的な取り決めをせざるを得ないと、しかし、その際にわが方の基本的な立場が害されないようにしておくことが必要であるということを申し上げているつもりでございます。
○田渕哲也君 ソ連があそこを占有しておる事実というのは、これは変わらないわけです。だから、われわれが幾らそこは領土だと言っても現実にはソ連が占有しておる、それはそれで仕方がないと思うんですね。ただ、何らかのかっこうで日ソ間でその既成事実を認めるということをしてはいけないと思うんです。いままでそういうことはなかったわけでしょう。既成事実を日ソ間の合意で認めたということはなかったわけでしょう。今回は、それがいかなるものにしろ、全面的なものでないにしろ、一部のものにしろ、その既成事実を認めたことになるのではないか、この点を私は言っているわけです。
○政府委員(中島敏次郎君) 仰せのとおり、この協定に定める限りにおいて、ソ連側が漁業に関する規制を行うことは認めておるということでございます。
○田渕哲也君 したがって、これを認めなければ魚がとれないという現実的なことはよくわかります。これがいわゆる魚か領土かという一つの論議だと思うんですね。 それで、いまの御答弁を総合すると、若干領土問題では矛盾を生じたけれども、魚を確保するためにやむを得なかったと、こういう解釈になるわけです、総合すると。そういう解釈でいいわけですか。
○国務大臣(鈴木善幸君) この点は、条約局長からもるる申し上げ、私が御質問に対して冒頭お答えをいたしましたように、第八条の問題と一体的にこの問題を処理した、この第八条において相互の関係における問題につきましても両国政府の立場及び見解を害するとみなしてはならない、この八条とセットにして初めて今回の協定が成り立ったということで、明確な領土問題と切り離しておるということを、領土の問題について向こうの主張を全面的にわが方が認めたものではないということ、こういうことを明確にいたしましてこの協定がなされたと、こういうことに御理解を願いたいと思います。
○田渕哲也君 第八条では確かにそういうことは書いてありますが、これはいわゆる玉虫色の表現でして、このことについて日本の領土の主張権を向こうが保障したことでもなんでもない。いわゆる領土の問題については、いままでの平行的な主張をそのまま認めたにすぎないわけです。だから、ここの第八条に書いてあることは、領土についてはプラスでもマイナスでもないと私は思うんです。ただ、領土について私は後退したというのは、やはり主権の行使を認めたことではないかということを申し上げておるわけです。したがって、一歩領土で後退の感というのは、これは客観的に見て否めない。私は、これをやはり挽回する道はソ日協定の決め方いかんによると。 それで、政府が言われておるように、ソ日協定で日本の主権に基づいた線引きをする。問題はその線引きだけじゃなくて、もう少し日本の主権というものの存在をこの地域で主張しなければ私は相打ちにはならないし、いかに八条があっても領土問題で後退したというふうな印象というか、そういうことになるのではないかと、このように考えるわけですが、いかがですか。
○国務大臣(鈴木善幸君) 私は今度の交渉で、この戦後未解決の問題を、わが方固有の領土であるということを明確にしながら、明確というか、そういう主張の方向にこの漁業協定でわが方に有利にするということは残念ながら私としてはなかなかできない。少なくとも、今後の領土の交渉なり、平和条約交渉にわが方の立場を害したり、また支障を来すようなことがあってはいけない。これだけはきちっと踏まえてやったわけでございます。 まあ玉虫色ということを田渕先生がおっしゃるけれども、もともと両国の主張が一致してないわけでありますから、玉虫色がこの北方四島の現状でございます。それ以上にこれをわが方の色で塗りつぶすようなことを漁業協定でひとつやれと、こういう御要求がありましてもこれはなかなかできない問題です。要は、この漁業協定はこういうことで結ぶけれども、それは今後の平和条約交渉等においてはいささかもわが方の立場を害してはいけないということを明確にしたと、これでひとつ御了承を賜りたいと思うんですが。
○田渕哲也君 私は玉虫色を非難しておるわけじゃないわけです。もともとこれは日ソの領土に対する立場が違うわけですから、両方が合意する文章となれば、これは玉虫色にならざるを得ない。これは四十八年の田中・ブレジネフ会談の共同声明においても、これはやはり玉虫色なんですね。未解決の問題を解決する、この未解決の問題の中に領土が含まれるのか含まれないのか、これについては双方の見解が違う。同じようにこの第八条も玉虫色です。だからこれはこれで仕方がないと思うんです。 問題は、やはり双方の見解の違う場所において既成的な事実を認めたと、これはやはり非常に大きな問題ではないかと私は思うんです。だからソ日協定でどこまでこれを挽回できるか、どこまでカバーできるか、これが非常に大きなポイントではないかと私は思うんですね。いま伝えられておるように、ただ単に線引きをして、それで二百海里法の十四条で適用除外する、こういうことではいけないのではないかという気がしますが、この点についての御見解はいかがですか。
○国務大臣(鈴木善幸君) この問題は私はいろんな努力をしてみたわけでございます。五月二日に海洋二法をつくっていただいた。これを踏まえて、七月一日からわが方も実施されることであるから、双務協定として一緒にひとつ処理したい、あるいは日ソ協定の交渉とソ日協定の交渉を同時並行的にやりたい、こういうようなことでいろいろ苦心をしたわけでございますが、結果的には、一体ソ連として日本の水域に入っていって、十二海里の中には入れないということになると採算がとれるかどうかもわからない、まだソ連としての方針は決まっていない。であるから、この際はやはり日ソ協定の残されておる問題、一条問題、二条問題等、その延長線上の交渉でやるほかはない、こういうことでソ日協定を同時に並行交渉をするということに至らなかった。そこで日ソ協定が先にでき、ソ日協定が今月から交渉が始まる、こういう時間的なそこに時差が生じてきた。 要は、いま田渕先生が御指摘のように、わが方の漁業水域に関するところの暫定措置法あるいは領海法、これが今後のソ日協定の大前提でございます。これを向こうが頭から否定をしてかかってくるということでは、ソ日協定はこれは交渉にも何にもわが方は応じるわけにいかない。要は、これから線引きされておる、暫定措置法ですでに線引きされておるわけでありますから、その中の運用の問題でこれをいかように扱うかということが今後のソ日協定の交渉における重要な課題である、このように考えております。私は、そういう際におきまして、国会の御論議、御意向等も十分お聞きしておりますから、そういう点も踏まえて最善を尽くしてまいりたい、こう思っております。
○田渕哲也君 私は、ソ日協定は、あと漁業の問題だけ決めればいいということでなくて、いま言ったその領土問題についていままでちょっと押されておる。これをやはり押し返すチャンスじゃないかと思うんです。だからソ日協定についてはその辺をもっと強い態度で臨んでもらいたい。 それに関連して、ソ日協定の交渉はこれからですけれども、わが国の領海法、二百海里法の実施時期とソ日協定の期日的な関係はどうなりますか。
○政府委員(岡安誠君) 領海法並びに漁業水域法の施行につきましては、法律に定められておりますように五月二日に成立いたしましたので、二カ月以内ということになっておりますので、現在私どもは七月一日から施行いたしたいというふうに考えております。普通であるならば、当然七月一日までにわが国の漁業水域内において操業したいと考えております外国人漁船は、わが国と国際協定その他を結ばなければ私どもは許可証の発給はできないわけでございますので、ソ連との間におきましても六月中にソ日協定の締結に向かって交渉を進めるという話になっておるわけでございます。
○田渕哲也君 ソ日協定の締結は、六月中にできる見通しはありますか。
○政府委員(岡安誠君) 先般の鈴木・イシコフ会談におきまして、ソ連側としましては中旬ごろまでにソ日協定の日本案の送付を受けたいということを申しまして、それを見てからわが国との交渉の期日その他の申し入れがあるというふうに考えております。どのくらいかかりますか、これはやっぱりやってみないとわからない問題であろうというように考えております。
○田渕哲也君 先ほど申し上げましたこの主権の線引きの問題、わが国の二百海里法に基づく線引きの問題並びに競合しておる地域のその主権の主張、こういうもののやり方によってはこれはなかなか簡単にはまとまらないと思うんです。もしソ日協定が六月末日までにまとまらない場合はどうなりますか。
○国務大臣(鈴木善幸君) 私は、日ソ漁業協定交渉におきましてあらゆる角度から相互の主張、相互の立場、相互の見解というものをぶつけ合ってとことん議論をしたわけでございます。十分ソ側の考え方、わが方の考え方というものも向こうは理解をしておるというようなことでございますから、ソ日協定の交渉において同じような問題が延々と蒸し返されるというようなことはなくなってくると、私はそういうぐあいに理解をいたしております。問題は、田渕さんも御指摘になりましたように、北方四島絡みのこの水域の運用の問題等が焦点になろうかと、こう思うわけでございます。 そこで、六月中にこのソ日協定ができない場合にはどうするかというお尋ねでございますが、この点につきましては、ソ側も三月一日から二百海里の漁業水域というものが設定をされ、その規制が行われておると、こういうことでございましたが、交渉中ということで三月いっぱいは猶予をしてもらった、従前のとおりの操業を認めてもらったと、こういう事情もございますので、そういう点も勘案をいたしまして、暫定的な措置等について、その場合においては考えざるを得ないのではないかと、こう思っております。
○田渕哲也君 相互的な関係から言うと、ソ連の方も一カ月間の猶予期間があったんだから、こちらも一カ月間の猶予期間を認めてもいいではないかと。これは理解できるわけです。ただ問題は、そのときの領海内操業はどうなるのか、この点はいかがですか。
○国務大臣(鈴木善幸君) わが方も三月中の暫定措置の段階におきましても、ソ連の領海十二海里の中で操業さしてもらったことはないわけでございまして、私どもは、今回の協定は領海の外百八十八海里の漁業水域内の操業の問題を協議をする、協定を結ぶ、その交渉が時間的に間に合わなかったということでございますから、その百八十八海里におけるところの操業を暫定的にどうするか、こういうことを考えるべきだ、こう思っております。
○田渕哲也君 私は、いままでは日本が非常に日ソ漁業暫定協定の締結に当たってはこちらは全く出漁できない期間が長引けば長引くほど打撃が大きくなる、非常にせっぱ詰まった立場にあったと思います。今度のソ日協定は、この話し合いが決裂して日ソ協定にまで影響を及ぼすようなことがあると大変ですけれども、そうならない限りは少々おくれようとわれわれには余り関係がない。関係がないと言えばなんですけれども実害はない。むしろ困るのはソ連の方だということになってくるでしょう。そうすると、その主権の問題について私はやっぱりとことんがんばるべきだと思うんですがね。いいかげんなところで妥協して——私は八条があっても八条はこれ相互の問題ですからね。相互の立場を害さない、立場または見解を害さない。これがあるからこちら側が一方的に譲歩することはないんですよ。向こうも譲歩してもいいわけです。向こうも譲歩しても向こうの立場を害さないということですから、この八条があるからこっち側はどんどん後退していいということにはならないんで、特に八条があっても私は現実的にその既成事実に基づく主権というものを認めてしまったということは一歩後退である、だからそれに対する何らかの巻き返しを考えなければ、私は領土問題で日本の立場が不利になると思うんです。この点についてどうお考えですか。
○国務大臣(鈴木善幸君) 国会で御決定をいただいた漁業水域に関する暫定措置法あるいは領海法、これでわが方の方針というものははっきり枠組みされておるわけでございます。私ども今後交渉に当たりましてこの暫定措置法なり領海法の立法の諸規定、こういうものをはみ出して行政府が勝手なことができるというようには考えておりません。これは国会の御決定になった枠内でしか政府はこの交渉ができないわけでございますから、それを堅持して努力をしてまいる考えでございます。
○田渕哲也君 それから、ソ日協定が行政協定になるのかあるいは国会の批准を必要とする条約になるのか、これもいろいろ論議されておるところですけれども、私はやはり日ソ協定と対になるものである、ワンセットで考えるべきものであるということが一つ。もう一つは、いま言ったように領土に絡む問題があるわけですね。これの決め方によっては日本の領土に対する主張の後退につながりかねない。したがって、私は当然国会の批准を受けるべきだと思いますけれども、この点についての御見解はいかがですか。
○国務大臣(鳩山威一郎君) いわゆるソ日協定を国会の承認にかけるべきであるという御意見、衆議院においても承ったところでございます。この協定が日ソ漁業協定のいわば裏である、こういうことから、表もかけたんだから裏もかけろ、こういうお話でその点ではまことによくわかるわけでございます。ただ外務省といたしましては、どういう協定は国会におかけをするか、どういう協定は行政府限りの協定としてお認めいただけるかという、いわば従来からの基準というものもございますものですから、今回の協定、これはでき上がらなければわかりません。おかけするということになる場合が多いかと思いますけれども、その点はいまこれから交渉に入る段階でございますので、今日の段階といたしましては協定のまだその方針もこれ国会終わりましてから打ち合わせに入る段階でございまして、協定をつくる前からこれは必ず国会の御承認が必要なんだということは申し上げる立場にないことを御了解いただきたいと思います。
○田渕哲也君 ただ私が先ほどから言っておりますように、この協定が領土に全く無関係なものでないということはお認めになりますね。日本の領土権に対して非常に大きな影響を持つものであるということは認められるでしょう。この点はいかがですか。
○国務大臣(鳩山威一郎君) その点はただいま農林大臣も仰せられましたけれども海洋二法、漁業水域に関します暫定措置法並びに領海法、こういうものが厳然としてあるわけで、その範囲内でしか私ども行政機関は動けないわけでございますから、したがいまして、問題はその海洋二法、この施行をどうするかという問題になろうかと思うのでございます。したがいまして、これは協定の内容によるということは日本の漁業者、この場合は漁業者になろうかと思いますが、日本の国民にいろんな負担をかけるというようなものである場合にはそれはおかけをしなければならない、こういう考え方でおるわけでございまして、今回のソ日協定が当方の希望するような事態で解決が図られる場合におきましては、必ずしも、国会の御承認が必ず必要であるということではない。そういう場合もあり得るということを現在の段階では御理解を賜りたいと思います。
○田渕哲也君 海洋二法というのは国内法ですからね、問題はソ連との交渉で日本の主権に基づく海洋二法をどこまで認めさせるか、これが私はソ日協定の一つの課題だと思うのです。だからそのままソ連が認めてしまえばかけなくてもいいかもわかりません。ということは、北方領土を含んで日本の管轄権、裁判権まで向こうが認めてくれればかけなくてもいいですよ。ただ少しでもへこむということになると、これは日本の主権の問題にかかわるわけですから、当然これ国会の批准を受けるべきだと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(鳩山威一郎君) その点につきまして、あるいは農林大臣からお答えいただいた方がいいかもしれませんが、国会のお決めいただいた法律の枠内でしか私どもは行動できないわけでございますから、その枠内におきまして外国との協定を結んだ場合におきまして、これは必ず事前の御承認がなければ協定ができないと、こういうものでもないのではないかと、これだけを申し上げているので、絶対に御承認はいただきませんということをいま申し上げているわけではないのでございます。
○田渕哲也君 私は、ソ日協定の領土に対しての重要性というものを認めていただきたいわけなんです。枠内と言うけれども法律には十四条、あれ政令で適用除外できるわけでしょう。だからそれは法律的に言うならば、それだって枠内ということになるかもわかりません。しかし、その十四条の適用の仕方によっては領土権に対するわが方の主張の後退になる。これは非常に重要なことだと思うんです。だから私は、日ソ協定でわが方はあそこでやはりへこんでいるわけですから、それは実際にソ連が占有していることはこれは事実関係、事実関係と双方の間で合意事項をつくるということは別の問題です。少なくともへこんだ合意事項をつくったわけですから、それに対応するソ日協定については、どこまでこっちがそれを押し返せるかという問題を含んでおるわけです。だからやってみないとわからないという問題じゃないんで、これは当然国会の批准が必要な問題だ、そういう認識がないとソ日協定で領土問題で押し返すことなんかとうていできないんじゃないですか、いかがですか、この点は。
○国務大臣(鳩山威一郎君) ソ日の問題でそのような特定の区域につきまして、そのようなことを日本政府として認めるというようなことになればお話しのとおりだろうと思います。
○田渕哲也君 認めることがあればということですけれども、日ソ協定では一応認めたわけです。漁業についての管轄権は認めたわけです。双方が主権を主張し合っているところにおいて、少なくとも漁業についての管轄権は日本は認めたわけです。だから今度はソ日協定で日本がそこを放棄するとなると、これはやはり領土に関係する一つの合意事項になるわけです。直接領土に関係なくても主権の行使に関する合意事項になるわけです。だからこれは私はどういうふうに決まるかは別にして、日ソ協定と全く矛盾した協定ができるわけがないですからね、当然かけなければならないと思いますけれども、どうなんですか。
○国務大臣(鳩山威一郎君) 繰り返しになって恐縮でございますけれども、ソ日協定の内容というものは、これから相談をいたしまして内容を決めて交渉に入るわけでございますから、協定の条文におきましていまおっしゃるようなことが、私どもとしては協定でそのようなことを書かなければならないというふうに、必ずしもまだそこまで詰めてないものでございますから、したがいまして、いまの段階におきまして協定は必ずおかけいたしますと、この協定自身が領土に絡む規定を含むものでございますと、こういうようなことはいまここで申し上げられないということを申しておるのでございます。
○田渕哲也君 それはおかしいと思うんですよ。政府がいままで言ってきたこともそうでしょう。線引きの相打ち論ということを言ってきたわけです。線引きの相打ち論を言う以上は、ソ日協定でそういう線引きの問題が入ってくる。線引きの問題というのは、ただ単に地図に線を引くわけじゃなくて、国の主権に関する問題が入ってくるわけですよ。それがやってみないとわからないというのはおかしいんじゃないですか。
○国務大臣(鳩山威一郎君) やってみないとわからないという面も確かにございますけれども、この日本の、先ほどの海洋二法というものは、これは農林大臣もおっしゃっていますように、ソ日協定の場合におきまして当方が主張をいたしますことは海洋二法が前提であると、海洋二法の少なくとも二百海里の問題につきましては暫定措置法、暫定措置法の施行される海域と、こういうことを日ソ協定の第一条と同じような趣旨のものを定めたいというのがいまのところ漠然と考えているところでございます。しかし、内容自体をまだ政府として決めておらないものでございますから、いまここで、必ずいつまでに御承認をいただかなければならないのでございますということをいまここで申し上げられないということを申しておるのでございまして、したがいまして、この協定上におきましていまおっしゃいますように、特定の地域につきまして特定の措置をとるようなことが協定に入ればこれは問題であろうと思うのでございます。これから方針を決めるものですから、現状におきましてこの問題はまだ検討さしていただきたいということを衆議院でも御説明申し上げてきたのでございまして、したがいまして、決定的なことを申し上げているのではございません。御承認をいただくべきであるという結論が出るかもしれませんし、その辺はなお政府として検討さしていただきたいということを申しておるのでございます。
○田渕哲也君 時間がなくなりましたので、最後にもう一度確認だけしておきたいと思いますが、ソ連側が最高幹部会令並びにその閣僚会議の決定で線引きをして、しかもそれはソ連の主張どおり日本に認めさしたわけですね、漁業については認めさしたわけです。それで日本はそれを認めるのにちょっと抵抗があったから第八条という規定を設けたということでしょう。それで、今度はこちら側が海洋二法によって線引きをしてそれをソ連に認めさせる番になるわけです。この場合に一部の地域が重なっているわけでしょう。それでこの場合にこちらの主張どおり向こうが認めるということは、これは日ソ漁業協定と矛盾するわけです。だから日ソ漁業協定がある限りは、こちらの線引きをそのまま向こうに認めさせるわけにはいかない。どこかで適用除外をせぬといかぬわけです。だからいま大臣が言われたけれども、どこかで、特定の地域で適用除外とかそういうことがあるならば批准も考えなければならないと言われましたけれども、そういうことになるのはこれは当然明確なんじゃないですか。もしそれがないとすると、日本の海洋二法に基づいてソ連に対しては例外規定を設けない、となると、この日ソ漁業協定と完全に矛盾するわけです。だから大臣の発言の趣旨から言うと、当然批准をしなければならないということになるわけですよ。そういう理解でいいわけですね。まあそこまでは言えないかもわかりません。だから海洋二法について、こちらの線引きについてソ連に対して何らかの例外規定が設けられるならば国会の批准を求める、そういう理解でいいわけですね。
○国務大臣(鳩山威一郎君) まだ結論を出してないものでございますから、すっきりした御答弁ができないのでございますけれども、この本年内のアメリカとの漁業につきましては、これは行政取り決めでやっておるのでございます。国会の御承認は来年度一月以降の日米の漁業取り決めにつきまして御承認をいただいたと、こういうわけでございまして、ソ日の関係がこれから相談成りまして、この実施の時期がいつからになりますか、それは交渉してみなきゃわからないわけでございます。そういうことで、内容次第によりまして、本年度内限りの措置が国会の御批准がなければ行政的な取り決めもできないかということになりますと、私はそうはいまここで言えないのではないか、来年度以降はまた長期の取り決めにつきまして御承認をいただかなきゃなりません。この年内の交渉がおくれた場合にはわずかの期間になるかもしれません。しかし、その期間におきます行政的な措置が全くとれないということをいまここで申し上げるのはいささか時期が早いと思いますので、したがいまして、余りすっきりしないことを申し上げているのでございますけれども、そういうことで、場合によっては御承認をいただかないで行政府に任された権限の範囲内でごく限られた期間内の措置が全くとれないとは、いまここで申し上げられないということでございまして、内容次第によりまして決めさしていただきたいということを繰り返して申し上げているのでございます。
○田渕哲也君 最後に一言だけ。 先ほど特定の地域で適用除外を決めるとか、そういう例外措置がある場合は当然批准をすべきものだ、そういうお考えでいいわけですね。海洋二法の適用についてソ連に対して例外措置を認める場合には批准すると、それはいいわけでしょう。
○国務大臣(鳩山威一郎君) どのような内容になりますか、いまわかりませんのでございますが、いまおっしゃいましたような趣旨はよく心得まして当たりたいと思います。検討するに当たりまして、いまのようなことを十分考えまして検討さしていただきたいと思います。
○田渕哲也君 終わります。
○委員長(寺本広作君) 午後二時まで休憩いたします。 午後零時四十三分休憩 —————・————— 午後二時開会
○委員長(寺本広作君) ただいまから外務委員会を再開いたします。 午前に引き続き、北西太平洋のソヴィエト社会主義共和国連邦の地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(衆議院送付)を議題とし、質疑を続行いたします。質疑のある方は順次御発言を願います。
○羽生三七君 最初に漁業に関する問題を一問だけお伺いしまして、それから後は、ソ連に関係するその他の問題について、私の見解を述べながら御所見を承りたいと存じます。 最初の漁業問題というのは、これはすでに多くの方から述べられたことでありますが、日本が漁業実績を強調して国際世論に訴えることで現状維持を図ろうとしておる、これが政府の外交の基調をなしていることが問題ではないか。ところが、海洋自由の原則あるいは秩序が全く崩壊しているにもかかわらず、その条件で繁栄してきたこの遠洋漁業、まだこれにしがみつこうというような漁業政策が残存しているんではないか。要するに、海洋自由の原則が大きく崩れたという現実を直視して、新しい時代にふさわしい政策を樹立すべきではないかと思う。これが一点であります。 もう一点は、新聞報道によりますと、これは報道をそのまま読みますが、これからの「ソ日協定」交渉の最大の争点の処理について1四島周辺は線引きせず、韓国、中国寄りの水域と同様、二百カイリ法第二条に基づく適用除外水域とする2線引きはしても、同法第一四条によって取り締まりや、だ捕など規制措置をとらない「規制除外水域」とし、わが国の漁業主権を事実上放棄する3「ソ日協定」を国会承認の必要のない「行政協定」とし、「日ソ協定」より 〃格下げ〃して「日ソ協定」でのソ連線引きの方を「ソ日協定」の日本の線引きより優位におく」と、こういう見解を政府首脳が示唆したと述べております。もし事実そういうことがあるとするならば、今後の長期基本協定に重大な影響を及ぼすことになると思いますが、そのようなことはあったのかないのか、また起こり得るのかどうか、この点だけを最初に先ほどの問題とあわせてお伺いをいたします。
○国務大臣(福田赳夫君) これからの漁業問題は新しい世界の体制を踏まえてやるべきじゃないかと、こういう話でございます。私はまことにもうごもっともなお話だと、こういうふうに思います。いままでともう漁業に対する考え方を根本的に変えて、そして新しい体制に対しまして新しい施策を持たなけりゃならぬと、こういうふうに考えておるわけであります。 二百海里時代になりますこの瞬間におきまして、わが国の、たとえばソビエトの二百海里水域あるいはアメリカの二百海里水域、漁獲量は確かに減るんです。減りますけれども、羽生さんもおっしゃるように、頭をかえて二百海里新時代に対応すると.いうようなことになりますれば、私調べてみたんでありますが、わが日本のこの二百海里水域というのは三千八百二十八平方キロ、そういうことです。これに比べまして、ソビエトは四千四百五十一平方キロ、これは数字においてはソビエトのこの漁業水域の方が大きゅうございますが、しかし、御承知のようにソビエトの方は北極洋に面しておるわけです。本当に漁業水域として使用し得る水域というものはかなり私は少ないんだろうと、こういうふうに思います。新しい時代において、四方を海に囲まれましたわが日本の立場というものはそう私は弱い立場じゃないと。このわが日本の新しい二百海里の水域というものをフルに活用するという構えがこれからの私は日本の漁業対策のかなめにならなきゃならぬだろうかと、こういうふうに思います。 同時に、漁業外交というものを思いを新たにして展開をしなきゃならぬ。また、魚類の国民の使用態様、こういうものにつきましてもいろいろの工夫をしなきゃならぬだろう、こういうふうに思いますが、総合的に事を考えるときに、そう私は暗い側面ばかりじゃないと思います。新しい時代に対応した新しい施策を持って臨んでいきたい、そうして明るい漁業事情を展開をいたしていきたいと、かように考えております。 さらにソ日協定につきまして、第一に、わが方はわが方の線引きを四島周辺に引くのかと、こういうお話でございますが、この暫定措置法においてすでに線引きは行われておるわけでございます。そういうふうな状態でありまして、新たにこの四島に対しまして線引きをするという必要はないと、こういうふうに考えておるわけであります。 また、線引きはするとしても、それを政令において除外をするんじゃないかというお尋ねでございます。この点につきましては、これはわが方が暫定措置法によって線引きを行った、またソビエト側におきましてもすでに線引きを行っておる。そうするとあすこがダブるんです。四島周辺においてはソ側の水域とわが方の水域とがダブる。そのダブる水域におきまして双方がいかなる操業をするかということが問題になってくるわけでありますが、その操業をどういうふうに規定するかということになりますと、今日の状態におきましては、遺憾ながらソビエト側があすこで実力的な支配を行使しておる、こういう実態もこれは私は無視することはできないんだろうと、こういうふうに思うわけでございますが、それと関連いたしまして、線引きはした、したが、さて、その日本側の権益をどういうふうに行使するかということにつきましてソビエト側とこれは相当ややこしい交渉問題が残ってくると、かように考えております。 それから、ソ日協定はこれを行政協定とし、したがって国会の審議に付せず、日ソ協定をソ日協定に優先させるとの情報があるがどうかというようなお話でございますが、ソ日協定が日ソ協定に優先されるというようなことは考えておりません。これはどこまでも同じ地位、立場に立つものであります。ただ、国会へ付議するかどうかという問題、いろいろ国会で御質問がありまして、これは新たに外国に対して義務を負うとかあるいは国民に対しまして義務を課するとか、そういうようなことがなければ国会に付するということもいたさなかったということを申し上げておるわけであります。しかし、このソ日協定、これは恐らく新たに権利義務を生ずるようなそういう性格なものじゃなかろうかといま見ておりまするけれども、まあしかし、これは政治的に大きな問題でありますので、また皆さんの御意見等も伺った上、国会に対してどういうふうにお願いをすることにするか、それをその時点で決めてみたいと、かように考えております。 —————————————
○委員長(寺本広作君) この際、委員の異動について御報告いたします。 本日、矢野登君及び高田浩運君が委員を辞任され、その補欠として坂野重信君及び岡田広君が選任されました。 —————————————
○羽生三七君 ただいまの点は今後の御努力を期待して次の問題に移ります。 次の問題は主として領土問題でありますが、実は、今度の日ソの漁業交渉で領土問題に悩まされたことがいかに大きかったかということを、これは政府当局のみならず、国民の皆さんが痛切に感ぜられたと思います。そして皆、口を開けば領土問題と言う。領土の重要な問題であることはわかっておりますが、そう簡単に解決できる性質のものではない、非常にこれはむずかしいものであるということを、私がしばしばのソ連の訪問で体験をしてきた事実を御紹介申し上げて、意見を交えながら発言を続けたいと思います。 最近になりますと、この領土問題を皆気楽に論議しておりますが、鳩山内閣によって日ソ国交回復ができる以前、その当時、そんな気楽な議論は全然できなかったんです。 実はこれは昭和二十八年でありますが、マレンコフ・ソ連首相が、日本がイニシアチブをとるならば日本と講和条約を結ぶ意思があるという意味の発言を最高会議でいたしました。それは第何回国会でしたか忘れましたが、その国会の最終日の前日であります。私は翌朝登院すると、すぐ、本会議の緊急質問を求めました。国会の最終日であります。いまならとうてい考えられないことでありますが、当時はそれが許されて、私は本会議の議場で、直ちに日本もこれにこたえるべきだと、そういう要請を政府にしたことがあります。 続いて二十九年に、モロトフ外相が、安保条約があるもとにおいても日ソが平和条約を結ぶことに異議はないという、こういう発言をいたしましたので、その翌日の外務委員会で直ちにこれを問題にして、当時の外相、岡崎外相でありますが、速やかにこれに対処するよう——これを吉田内閣時代です、申し上げたことがあります。 それから二十九年に鳩山内閣が誕生いたしました。私は質問というよりも、当時鳩山首相をしばしば激励をいたしました。保守合同で大野伴睦、三木武吉氏が民主党、自由党両方に分かれて、日ソ国交回復是か非かで保守合同が非常に難航するときで、鳩山さんは非常な苦労をされて、私、激励をしました。委員会で鳩山さんは声涙ともに下って非常に感激されて、答弁をそれ以上続けることのできないような劇的な場面もありました。そしてそれに続いて、重光さんが副総理・外務大臣となって日ソ交渉を担当したわけであります。その間に松本俊一氏が全権としてロンドンで交渉しましたが、交渉が漁業問題等も絡んで途絶して一時帰国なさった。そこで私は、その間、どうしたならばこの日ソの国交回復ができるかということについて自分なりの考え方をもう機会あるごとに本会議、委員会で発言をいたしました。 その当時、重光副総理・外相が首席全権となって日ソ国交回復のため訪ソされることになった。その三、四日前に、私は院内の政府委員室で重光外相と二人きりでひざを交えて意見を交換いたしました。私の意見は、歯舞、色丹で平和条約を結ぶ、国後、択捉は他日極東に平和か訪れ——安保条約という言葉は使いませんでしたが、他日極東に平和が訪れ、外国が軍事基地として利用することのない条件ができたときに交渉の対象とすると、留保条項であります。留保条項なんというものは簡単に通るものではありませんが、私は素人でありまするから、そういう素人なりに考えを述べました。これは二人きりの話でありますが、重光さんは、全く同感だと、今度は必ず妥結、調印して見せますと。私もそんな重大なことを簡単に言ってくれるとは思いませんで、驚きました。これはもちろん秘密だということで、当時の鈴木茂三郎委員長に電話で報告しました。そうしたら鈴木委員長は、そんな重大な問題を一野党議員にしゃべるはずがないと、もう一度確かめろと言う。しかしこの種の問題を、先ほどの話はうそか本当かなんと確かめられるはずのものではありません。 ところが、たまたま出発の直前に赤坂のプリンスホテルの旧館で私たち参議院外務委員は全権一行の壮行会を開きました。終わった後、私は重光全権に、先日の話を信頼しておりますよ、勇気を持ってやってくださいと言った。重光さんは私の手を握って、羽生さんにうそは絶対言いません、必ずやって見せますと、こう答えられました。日本の外交史、特にソ連外交史を読むと、重光さんは最後まで反対だった、モスコーへ行って急変したと、どんな外交史にも出ております。しかし、出発する前にすでに私にそういう意向を漏らされた。歯舞、色丹で平和条約を結ぶ、国後、択捉は他日極東に平和が訪れて外国が軍事基地として利用することのない条件のできたときに交渉の対象とする。これはいまの社会党の意見と私の意見とは違います、違いますが、当時の大変な引き揚げ者をどうして帰国させるか、漁業問題どうするか、貿易をどうするかというそういう厳しい条件の中では、これが私は日ソ国交回復の一番ベターな道であると信じて重光外相に進言したわけです。 そういうことがありましたが、御承知のように向こうへ行って折衝した結果、やっぱり四島一括返還でなければだめだという党議が決まって、そして鳩山総理、河野農相が全権となって訪ソして、日ソ共同宣言による国交回復が実現したことは御承知のとおりであります。 その後、昭和三十九年に成田さんが書記長時代、成田さんを団長とする訪ソ団の一員として私ソ連へ参りました。そしてソビエトのミコヤン副首相、それからスースロフ、ボノマリョフ氏と、特にスースロフ、ボノマリョフ氏はソ連の最高の理論的指導者であることは言うまでもございません。ナンバーフォーと言われておりますが、実際上はこの人がほとんど理論的指導をやっておる。三回時間をかけて会談をいたしました。そこで成田さんが、領土の返還を求めたときに、それは解決済みであると、そういう答えでありました。そこで私が、では情勢が変化したときにはどうでありますかと。この情勢の変化というのは、安保条約の解消を指しておるわけであります。そうしたら、ミコヤン、スースロフ、ボノマリョフその他グリシン、ずっと並んでおる首脳部が、よくも一致したというほど異口同音に大きな声でノーと、こう答えました。座が白けてしばらく沈黙が続きました。 こういう状態がありまして、それから私どもはフルシチョフ首相を訪問いたしました。このフルシチョフ首相はこういうことを言いました。「日本は資源がなく、土地は狭い。それが日本を鍛えて発展を促した。日本で革命が成功すれば、われわれのように困難はしないであろう。しかし、日本の労働者階級を援助するために、戦争する意思はない。革命は各国がそれぞれの立場でやればよい。戦争は絶滅しなければならない」、こう発言して、後から続いて領土問題へいったわけですが、ソ連流の革命を考えておったことはこれはわれわれは賛成できませんが、しかし、そのために戦争してはならないという考えは、このソ連のそのときの首相の考えは私はいまでも同感であります。 領土問題につきましては、南千島は、これは北方領土という言葉でなしに、「南千島は戦略上必要なものであるが、経済的には価値がない。いずれ時期が来て客観情勢が変化すれば、また、みなさんが力を持てば」——これは政権のことだと思います、「みなさんが力を持てば解決は可能と思う」と、こう明確に答えました。これはフルシチョフ首相の領土問題に対する見解であります。 そこで、いよいよ三週間の滞在を終わって帰る前の日に日ソ共同声明を発表することになったんです。そこで、私たちの共同声明にはこうなっております。「会談において社会党使節団は領土問題についてその見解を率直に述べた。ソ連共産党代表団は、ソ連政府が前に出した声明の精神にもとづいて説明を行った。両者は今後、平和共存の前進と、日ソ両国が隣同士にふさわしい友好関係をあらゆる分野で前進させる過程の中で、両国間に新しい接近を生み、平和条約締結を可能とする条件をつくり出すべきであることを確認した」と、こういう声明のこれは一部でありますが、私の承知しておる限り、日本の政府あるいは政党の間で領土問題というのを共同声明の中に、日ソ共同声明の中に入れたのはこれがただ一つだと思います。前の晩の打合会に——これは余談でありますが、迎賓館で、ホテルでなしに迎賓館におりましたが、おい、隠しマイクがあるぞと、共同声明の打ち合わせをやりましたが、隠しマイクがどこかにあるぞと、いやあったって構わないじゃないか、むしろわれわれの言うことがわかった方がいいんではないかというような冗談も私は申しておりましたが、いま申し上げたとおり、フルシチョフ首相は、そういう客観情勢が変わればこれは解決は可能であると明確に言い切りましたし、また、領土問題を共同声明の中に盛り込むことができたわけであります。こうして三十九年の訪ソのときの領土問題はこういうことでありました。 その次に、河野議長とともに、これは四十七年だったかと思いますが、ソビエトを訪問いたしました。河野議長か最初に——先ほど申し上げたフルシチョフは私どもが帰国した直後失脚いたしました。それこそすぐ後に失脚いたしました。 それから、先日最高会議幹部会議長を失脚したポドゴルヌイ最高会議幹部会議長、これに昭和四十七年一月河野議長と訪問した際に会見いたしました。河野議長は、時間はどのくらいいただけますかと言いましたところが、無制限でいきましょうと、こう答えたわけです。そこで河野議長が、さあ羽生さん始めてくださいと言われた。外交問題全部私に任したわけです。そこで私は、アジア安保の問題から、全欧安保の問題から、あるいは核兵器の問題から、いろいろやりまして、領土問題に触れました。しかし私は、領土問題でけんかに来たわけではない。親善友好の御招待をいただいて訪ソしたのである。しかし、日ソの間では二十年も前に、十数年前に共同声明で国交回復ができながらなぜ平和条約ができないのか。それは言うまでもなく領土のためである。日本のことわざに、後のカラスが先になるということわざがある。恐らく日本と中国との方が先に平和条約が結ばれるであろう。それは言うまでもなく領土問題であるから、もし本当に平和条約を結ぼうと思うならばこの問題が片づくことが重要であるし、この問題が片づくならば日ソの善隣友好はさらに一層深まるであろうと、こう私はポドゴルヌイ最高会議幹部会議長に申し上げました。 そこで、ポドゴルヌイ議長は、解決済みという言葉は使いませんでしたけれども、懸案をなお残しながらも平和条約をぜひ結びたいという強い意向の表明がありました。懸案を残しながらもという、解決済みという言葉は使いませんでしたが、そういうあれがございました。 そういうことで、ポドゴルヌイ議長と話をしたのでありますが、その後もシュペチコ極東第二部長、いまインドネシア大使ですが、この人ともやはり同じような趣旨をもって会談をいたしましたが、いかに領土問題についてソビエトの意思がかたいかということがよくわかりました。さらに、ソ連共産党中央委員会の対日責任者と非常な長い時間をかけて領土問題だけにしぼって懇談をいたしました。しかし、そのときの答えはこの席で申し上げることをはばかります。そのほか私、トロヤノフスキー前駐日大使、これは十数回会っております。とにかくそのほかの人ともずいぶん会いました。そして率直に領土問題を言いましたが、いかにむずかしいかということを身をもって感じたわけです。 これは単に——確かにソ連は大国主義的なところがあります。中国の言うように、覇権主義と言われてもなるほどと思われる節も確かにあります。しかし、そういうことがあるにしても、実際にはソ連が、たとえば全欧安保会議で現状固定を確認しておる。国境の変更ということはないことを全欧安保会議で確認をしておる。でありますから、どこかを一つ動かせばソビエトが第二次世界大戦の結果取得した領土全部に影響することになる。だから重要なことになりますので、日本の北方領土についてもそう簡単に譲るものではないということがよく私はわかったような気がいたします。しかし私は、領土問題を放棄しようというんではありません。ただ事あるごとに、どんな問題にも領土問題領土問題といっておることが問題の解決の道かというと、私はそうは思わない。ここ一発というときには領土問題一本にしぼって徹底的にやらなければならぬときがあるかもしれない。しかし、経済問題や貿易問題やその他の問題で一々領土問題を持ち出すようなやり方は、外交としてきわめて拙劣である。かえって当面の問題にマイナス、失う点がかえって多い。だから領土問題は、明けても暮れても持ち出すんではなしに、領土問題を簡単に片づけようというんではありませんが、それはここ一発というときに十分時間をかけてやるべきものであると、そう思います。これは私の三十年の間、二十数年外務委員をやってきて、特にソ連と接触する機会が非常に多かったので感じた経験を申し上げたわけであります。 それから、もう一つは日中平和条約でありますが、これについては覇権問題でソ連がいろいろな意見を差しはさんでおります。しかし、日中平和条約についてソ連に横からかれこれ言われる筋はないと思います。これは日本の自主性において堂々と日中平和条約を結べばよろしい。ただ、覇権条項については、これは中国が言ったからそのとおりにしなければならぬということはないと思う。普遍的一般原則として覇権問題、世界いかなる国の覇権も認めないという普遍的一般原則を条約の中に織り込むことに私は異議がありません。ただ、ある特定の第三国と思われるがごとき表現をもってその条約の中に覇権問題を入れることは、これは差し控えた方がよろしい。というのは、ソ連は、この覇権問題で中国がソ連を攻撃しておることから、いま中ソ間が非常に険悪なことになっておりますが、この中国と平和条約を結んで仲よくするのはいいが、そのためにソ連を敵に回す、そしてますますそれがエスカレートしてくる。中には軍事力をもっと強めろなんていう議論も出てこないとも限らない、エスカレートしていった場合ですね。そういうことは決してとるべき道ではない。あくまで、たとえば日中平和条約の場合、覇権条項についても、それを入れる場合においても、日本、中国の双方の自主性において完全に一致した場合においてのみ正しいことになる。ソ連に対しては、それは日本の自由であると、あなたの国を敵視するものではないということを明らかにして、そして時期が来れば適当なときになるべく速やかに日中平和条約を結ぶべきであろうと。それからソ連に対しては、これは日本の将来の平和と安全のために絶対にこれを敵国に回してはならぬと、これは私の日本の平和と安全に対する基本的な認識であります。 最後にもう一つだけつけ加えさせていただきたいことは、核兵器の廃絶であります。 私はソ連に参りましたときに、一九六六年でしたか、はっきりしませんが、コスイギン首相がジュネーブ軍縮委員会にメッセージを送って、ソ連が核兵器を持たない国を先に攻撃することは絶対にないと、そういうメッセージをジュネーブ軍縮委員会に送ったと。そのメッセージの精神は今日もなおかつ生きておるかどうかとポドゴルヌイ最高会議幹部会議長にただしました。その精神は生きております、こう答えました、ポドゴルヌイ氏は。それからポリャンスキー現駐日大使にも私はこのことを申して、このジュネーブ軍縮委員会に送った、核兵器を持っておる国が持たない国を先に攻撃することは絶対にないと、それをさらに進めて核兵器の廃絶にまで持っていくように最善を尽くせと。これは必ず本国に伝えますと、責任を持って本国に伝えますということでありましたが、特に、平和憲法を持ち非核三原則を持っておる日本としては、私はかっこうの、しかも世界最初の被爆国である日本、これはこういう発言をするに最もふさわしい地位にある。だから、核兵器の廃絶問題について日本が国際的に貢献するような今後努力を、日本の政府としても野党としてもぜひやりたいし、やっていただきたい。 これを申し上げて、私のはこれは質問ではない。私の経験を通じての、あるいは体験を通じての、主観的でありましたけれども見解を申し上げ、総理に申し述べまして、総理の御意見を承れば幸いと思います。 これをもって私の発言を終わります。
○国務大臣(福田赳夫君) ただいまは羽生さん、政治生活三十年を通じて、特に困難な日ソ領土問題、この問題に大変な御努力をされたと私は深く敬意を表する次第であります。 これから日ソ領土問題にどういうふうに取り組んでいくべきかという御提言、また日中平和友好条約、この締結についての御所見、また核兵器廃絶についての御見解、これはもう非常に私は貴重な御証言というように受けとめ、重要な参考資料にいたしたいと、こういうふうに考えますが、特に最後の核兵器廃絶につきましては、私はこれはもう考えるとか何とかという問題じゃありませんと思います。これは羽生さんの御所見のとおりにわが国は振る舞うべき問題であると。私は現にそういうふうな振る舞いは始めておりまするし、今後さらに私のこの主張を世界に向けて展開していきたいと、かように考えております。 大変どうもありがとうございました。 なお、先ほどちょっと私、二百海里水域につきまして、その広さにつきまして日本、ソ連の数字を申し上げましたが、けたが違いましたので訂正さしていただきます。 日本は三百八十万平方キロであります。ソビエトは四百四十五万平方キロでございます。どうも申しわけございませんでした。
○羽生三七君 先ほど申し上げた、領土問題は重要であって返還を求めるのはいいが、事あるごとに領土問題、領土問題だけ言っておってもだめだと。それはタイミングを見てやるべきで、一つ一つの日ソ間の問題に領土問題をくっつけてはだめだという、この問題についての御感想を承っておきたいと思います。
○国務大臣(福田赳夫君) 大変この問題は貴重な御所見と思います。もうとにかく三十年羽生さんが営々として努力いたしました、その結果にじみ出たそういう性格の結論であるということでありまして、私といたしましても十分その辺は心得てまいりたいと、かように考えます。
○小柳勇君 時間がわずかしかありませんので二問だけ質問いたします。 第一は、今度の漁業交渉にも総理みずから乗り出して、ただいまのお話の領土問題、あるいは日ソ平和友好条約、あるいは漁業の問題など、農林大臣と一緒になって解決に当たられるべきではなかったかという点が一つです。もう一つは、昨晩自然承認いたしました日韓大陸だなの問題で、総理の今後の内閣首班としての国の方向に対するお考えを聞いておきたいと思います。 第一の問題でありますが、五月の中旬の山場で鈴木農林大臣が再三苦悩しておられたころ、五月十七日の午後一時からのソ連の大使館の記者会見で農林大臣がこういうふうに言っておられます。福田総理の親書がタイムリーであった、したがってこの解決はよい方向に向かうであろうと。そのときに福田総理の親書がちょうど届いた、これがどれだけ力になったかわからぬというようなことを言っておられます。この親書が、その後園田官房長官がこちらで記者会見されてもなお発表できませんでした。したがって、もう協定も成立することでありますから、この福田総理大臣の親書なるものはどういう意向であったのか、この点が一つであります。これは鈴木農林大臣からお聞きいたします。 そこで、この大事な時期に総理の親電が大きな力になったと。私はかつて、いま羽生さんもお触れになりましたが、鳩山総理大臣が、昭和三十一年にあの不自由な体でみずから河野農林大臣と一緒にソビエトに参られまして、共同宣言方式による国交回復をなされました。また、田中元総理大臣は、それから十七年ぶりの昭和四十八年に、ブレジネフ書記長の招待ということではありまするが、日ソ両国間の平和条約締結の意図を持って訪ソされました。この元お二人の総理の行動は、当時のわれわれの考えからはすばらしく映りました。保守党の、自民党の総理であった両総理大臣がみずからソビエトに参られまして、国民の先頭に立ってソ連との平和条約の締結なりあるいは国交回復に全身全霊を尽くされた。したがって、今度の交渉でも、福田総理みずから飛んでいって、農林大臣と一緒になって、領土問題も含んで漁業問題の将来のために解決に当たられるべきではなかったか。今回の交渉、大変農林大臣御苦労されました。ただ、その結果が、五十年実績に比べまして四〇%近くの減少です。しかもそれは、来年、これからの本交渉で前進する可能性があるかというと、ありません。ないと答弁で聞いています。言うならば、日本の漁業あるいは日本のソ連との外交では一つの大きな境目ではなかったかと考えるわけです。したがって、この点について農林大臣と総理大臣から御答弁を願います。
○国務大臣(鈴木善幸君) 五月交渉におきまして、私は、五月の二日に国会で御決定を願った海洋二法をバックにいたしまして、また盛り上がる国民世論、さらに超党派の御支援、漁業者の諸君の一糸乱れざる団結、これを背景にどうしても五月交渉で決着をつけたいということで、最後の努力をしたわけでございます。それまで戦後未解決の問題という北方四島の問題が背景にありまして、これは解決済みだということはソ側は言いません。イシコフ大臣は、戦後三十年ソ連がこの地域を支配をし現在施政も行っておるこの現実の上に立って交渉をすべきではないか、こういうことでございます。わが方としては、一九七三年の田中・ブレジネフ会談、戦後未解決の問題である、こういうたてまえを堅持しまして、あらゆる角度から交渉をやったわけでございます。どうしてもこれは平行線で結論が出ません。そこで最後に私は、第八条の今回の協定で出たような提案をしたわけであります。この問題は純然たる漁業問題としてこれを解決すべきであり、その趣旨を第八条によって明らかにしようではないか、これが最終的な提案でございます。これがソ側に受け入れられなければ私は席をけってこの交渉を打ち切るという決意で出したわけでございます。 そういう際におきまして、福田総理からブレジネフ並びにコスイギン首相あてに電報をもって親書が届いたわけでございます。その親書の内容をイシコフ大臣は、ただいま政府の最高首脳の方からそのコピーが届いたと。それには、日ソ友好の大局に立ってこの問題は処理しなければならない、また、これは純然たる漁業問題としてこれをやるべきであるという福田総理のその点を二度繰り返して読みまして、これでいきましょう、この精神を踏まえてやるならばこの問題は処理できるということをイシコフ大臣も言いまして、私の最終的な提案、第八条のあの修正案というものを向こうが認めるようになった。このことを私は記者会見におきまして、非常にタイムリーに総理から親書が最高首脳に届いた、これによって道が開けた、迷路を脱却することができたということを申した、こういうことでございます。 なお、今後のわが国の漁業政策につきましては、先ほど総理からお話がありましたように、いままでの沖合いから遠洋へという政策を再吟味をいたしまして、そして日本列島周辺の資源を積極的に維持培養し、育ててとる漁業、これを中心とした日本の新しい二百海里時代の漁業政策というものを再吟味をしこれを展開していきたい、このように考えております。
○国務大臣(福田赳夫君) 今回の日ソ漁業交渉に臨む政府の基本的な方針は、これからの日ソ関係ということを考えてみると決して暗い展望ではない、一つ一つ友好裏に片づけていく、経済の問題にいたしましても、貿易の問題にいたしましても、あるいは文化交流、人的交流、いろんな面で友好な日ソ関係ができるはずだ、そういう友好関係を樹立するというそういう流れの中で解決したい。これが第一点。 それからもう一つは、そうは言うものの、領土問題というむずかしい問題が日ソの中には横たわっておるわけであります。事領土問題の話し合いということになりますと、これは相当時間がかかることを予想しなければならない。しかるに一方においては、漁民が、あしたかあさってかと言って出漁の日を待ちあぐんでおる。この漁民の立場というものも考えなければならぬ。そうしますと、どうしても領土は領土、また漁業は漁業と、この二つの問題は截然と分けて交渉しなければならぬ、この二点がわが国の基本的な考え方であったわけであります。 いま小柳さんは、おまえモスコーへ出かけていって交渉したらよかったじゃないかというお話でありますが、私が出ていくということに相なりますれば、これはもうどうしたって領土の問題に話が入っていくわけであります。これは、百日交渉というようなことを言う人がありますが、そういう程度で片づく問題であるかどうか、相当私は厳しい問題ということを考えておりますので、政治的な問題としてこの問題は処理しないで、農林大臣がソビエト側のイシコフ漁業相との間で漁業問題だけの問題として詰めることが妥当である、こういうふうに考えましてあえて私が出向くというようなことはいたさず、それじゃ領土の問題だから外務大臣がというようなことも考えられる次第でございまするが、外務大臣が行っても同じことだ。そこで、一時この問題の行き詰まりを見たその際に、何とかしてこの問題を打開しなければならぬ、そのためにいろいろ考えまして、領土問題なんかに直接かかわりのない官房長官、これを私の親書を持参してモスコーへ派遣するということが妥当である、こういうふうに考えまして官房長官の訪ソということになった次第でございまして、私は決して領土問題、これの解決を避けておると、こういうわけじゃございませんけれども、先ほど羽生さんからもお話がありましたように、非常にこれはむずかしい問題です。そう一挙に片づくという問題じゃないという前提に立ちまして、あのような漁業相だけの間の交渉ということにゆだねることが妥当であるという見解をとった次第でございます。
○小柳勇君 時間がなくて、はしょって結論だけ先に出ましたものですから、少し唐突に聞こえたでしょうけれども、三月からの日ソ交渉で、たとえば農林大臣は向こにおられるのにイシコフ漁業相は旅行して、本当に話し合われたのは向こうのイシコフ漁業相が帰りまして二、三日であの漁獲量が決まっているという実態も聞いています。したがって、日ソ平和条約を中心にして、いわゆる日ソの友好を進めたことによって話がとんとん拍子にいったということも鈴木農林大臣は記者会見で言っておられます。初めの間はソ連の方が懐疑的であったと、日本のたとえばあの海洋二法を急遽法定いたしたことにつきましてもそうでありましょうが、懐疑的であったけれども、日ソの友好が理解され認識されて、その上でこの交渉が妥結に至ったということも農林大臣は言っておられる。したがって、あの親電についてはお話しになりませんけれども、たとえば領土問題あるいは日ソ平和友好条約の、いわゆる前向きの方で総理が真意を吐露されたのではないかと推測するわけです。そういうものが力になって今度の交渉が最後の妥結を見たと。であるならば、困難なこれから基本協定に入っていくのでありますから、早くみこしを上げて日ソ平和条約にも総理がみずから乗り出していって、それを中心にして漁業の問題も解決すべきではないかと、こういうことを前もって言っていま質問すればよかったんでありますが……、そこでもう時間がありませんものですから、日中平和条約についてもお聞きしておきたい。 われわれは日中平和友好条約についてもこの国会で決議がなされると思っておった。ところが、二、三日前、総理が関西の財界とお話しのときに、前向きか後ろ向きかわからぬような発言がございました。やるのかやらぬのかわからぬような非常にあいまいな答弁でありました。これは総理の性格によるでしょうけれども、そのときに福田さんこれはつまらぬなと思いました。やっぱりやるとなったらやると、田中さんがみずから飛んでいかれたようにやると、そういうことが一番大きなこれからの総理に期待するものだと私ども思っておるわけです。 そこで、いまの日中平和友好条約にも関連いたしまして、日韓大陸だなの批准の問題の後の始末を、総理の見解を聞いておかなけりゃなりません。私は、この国会では衆議院で三年間も、廃案になり継続になった法律でありますから、少なくともこの国会、いま海洋法会議もあっていますし、あるいは日中関係も非常に微妙である、また朝鮮民主主義人民共和国の代議員団もこちらに来たというような情勢の変わりようでありますから、少なくともことし一年のこの国会は可決を見送るべきだという見解で外務委員会の席を汚しながら一生懸命に勉強してまいりました。 しかし、残念ながら衆議院で会期延長で自然承認がなされた。あとまた特別措置法が出ますから、このときにまた論議はいたしますけれども、日中平和友好条約の問題なりあるいは朝鮮民主主義人民共和国との交流なり、特にカーター政権が生まれてからの日本と近隣諸国との関係も変わっていかなければならぬと思う、朝鮮半島の平和統一の問題もございますから。そこでこの日韓大陸だな協定が自然成立されて、これから五十年間あの九州の西部の海を探査されるわけです。魚も減りましょう。沿岸漁業もだめになりましょう。底びき網も支障を受けるでしょう。そこで、これからこの協定が成立しまして、日中関係なり朝鮮民主主義人民共和国とのいわゆる外交関係、及びこれから実際実務する実務協定を審議して、これから探査なりあるいは採掘に入ります、そういう企業間の指導も、当然これは政府も責任がないとは言いませんが、まず近くではこの特別措置法の審議をするために、たとえば韓国には韓国の国内法で、きのうも質問がありましたけれども、汚染法も十分でないとかいろいろ問題がございますから、外交関係の資料なりあるいは国内関係の資料なり、十分に国民の前に資料を出されて、特別措置法の審議にも協力されるし、また外交関係にも、この協定は一院しか決定できなかったということも、一つの何といいましょうか、プラスになるかマイナスになるかわかりませんけれども、プラスの方向にお考えになりまして、この協定が成立するのでありますから、正しく協定が生きていきますように措置してもらいたいと思うわけです。 したがって、日中平和条約に対する問題及びこの大陸だなの今後の扱い、内閣の首班としての総理大臣及び自民党の代表としての総理大臣の御見解をお聞きしたいんです。
○国務大臣(福田赳夫君) 日韓大陸だな協定の実施、これにつきましては、お話しのように国内法がまず先行するわけであります。まあ、実施段階に移りますればこれはもう海洋汚染をしては相ならぬ、これはもう当然のことであります。また漁民の立場、これもよく考えながらやらなきやならぬと、これも当然のことであります。同時に近隣諸国の立場、これには十分配慮しながらやってきておりまするが、この上ともそういう配慮を十分にしてまいる、御所見のとおりに注意深くこれを実施いたしたいと、こういうふうに考えます。 それから日中問題、これは一九七二年の日中共同声明によってもうレールが敷かれておるんです。完全なレールが敷かれておる。そのレールを忠実にわが国としては守っていけばよろしいと、こういうふうに考えておるわけでありまして、あの共同声明に従って逐次実務案件は解決され、いま残っておる大きな問題といいますと、まあ平和友好条約と、こういうことになっておりますが、これも両方の条件が満足される、立場が満足されるというような状態でなるべく速やかにこれが締結に至るということを私は念願をいたしております。そういう考え方のもとに日中問題では対処していきたいと、かような考えでございます。
○秦野章君 総理にお伺いするわけですけれども、福田内閣が今度の対ソ漁業交渉について、魚は魚、領土は領土と、まあこういう方向で戦略というか戦術的な進め方をされたと、ソ連側はどうだったろうかというと、これは言うまでもなく、だれが考えても日本の北方漁業というものは、伝統的にもそれからまたかなりの量的な問題からいっても、日本にとってきわめて重大な権益であるということは向こうはよくわかっているわけですね。 そこで魚か領土かと、背に腹はかえられぬといったようなところをねらって、魚でがまんしなければ領土でちょっとがまんせにゃいかぬようにさせるぐらいの、私はやっぱりそういう腹があったと思うんですよね。これは私は当然の常識というか、やっぱり外交にはある程度のそういった威嚇というか、力というか、そういうものが伴うというのは歴史の原則みたいなものですから当然だと思うんですけれども、そういう背に腹はかえられぬようなところをねらって、かなり強力な対日外交をねらったと思うんです。それに対してわが方は、魚は魚、領土は領土だと、こう切り離して、そして結果としては国民の方に、やっぱりこれは魚だといっても領土なんだということで、領土問題についてかなり色濃い認識を与えたということは、戦略的に私は今度の外交はかなりそういう意味においては収穫があったと思うんです。領土領土と言っても、さっき羽生さんの言われるように簡単に片がつく問題じゃない。しかしときたまは、この領土問題というものは非常にむずかしくて非常に困難な問題だということを、まさに民族的苦悩であるということを植えつけることは、政治の立場としては非常に大事なことである。私はそのことには今度のは戦略的には非常に成功であったというふうに思うんですよ。 しかし、そんならまあ全然問題がなかったかというと、問題がなかったかどうか、私はそこでひとつ、今回のこの暫定協定に関連してこの委員会の論議の中でもいろいろ質問なんか出てきた問題なんですけれども、一つは、この二百海里問題についてアメリカがとにかく海洋法会議に先がけて二百海里をやることについては困るといって、日本はアメリカの姿勢に対して抗議もいたし、いろいろ働きかけをした。しかしその努力が足らなかったじゃないか、もっとやればアメリカの二百海里の宣言を何とか海洋法会議まで抑えることができたんではないかという御意見もずいぶんあった。政府はこれに対して相当の努力をし、それ相応の努力をしたがだめだったということがこの委員会の経過でございます。私も、正直言って海洋法会議でできるまで、日本が言ったからといってアメリカが、大統領選挙があったとかいろんな原因があると説明はされますけれども、アメリカがアメリカの国益を考えたときに、日本がやいのやいのと言ってもやっぱり聞かなかったであろうと、こう私は思うんですけれども、総理もそうお考えになりますか。
○国務大臣(福田赳夫君) 海洋法会議が開かれておる際でありますので、通常の状態でありますればアメリカもああいう早急な措置はとらなかったかと思われるんです。ところが、すでに二百海里という動きが始まってきちゃった。そういう中で、アメリカの漁民の立場ということをアメリカは考えざるを得なかったんじゃあるまいか。ずいぶんわが方におきましても努力はしたんでありまするが、ついにそれが実ることができなかったと、これが率直なところでございます。流れが南の方から始まっちゃった、そこにアメリカ国民が非常に関心を持ち出した、それにアメリカ政府は背を向けることができなかったというのが実情じゃないかと私は考えております。
○秦野章君 今度は一方ソ連の方ですけれども、ソ連の二百海里宣言というものは、日本の側では、あるいはソ連はまあやらぬのじゃないかと、世界の情勢をながめてみて、アメリカがやったからすぐにやるということはせぬのじゃないかという期待感もあったけれども、やっぱり突如として昨年の十二月十日ですか、二百海里宣言をやった。これもまあソ連のことだから、外務省に聞けば事前の情報はとれなかったということでございますけれども、これもやっぱり防ぎのつかなかった問題ではないかと。これはアメリカ以上に防ぎがつかなかった問題だろうと、こう思うんですね。 そうしますと、ここでひとつ私感じますことは、アメリカもソ連も、アメリカは日本の言うならば近い友人でありますけれども、しかし自分の国益を守る、国民の利益を守るということについては、アメリカもソ連も、日本が若干犠牲になることはしようがないのだという国家の一種の冷厳な生存の法則といったようなものが超大国でもあるのだということは、私は二大超大国の日本が犠牲になったとまで言っちゃ言い過ぎかもしらぬが、しかし犠牲になることもあり得るという、これはまた今度の問題だけじゃなくて、歴史の教訓の中からもそういうことがしばしば言えるのだけれども、やっぱりアメリカの国益、アメリカの世界戦略、ソ連の国益、ソ連の世界戦略、こういう二大国の世界戦略の中に日本が生きるということの非常にむずかしさというものを、今度の漁業問題で感ずるわけですよ。このことから、国家と国家の利害の対立というものは、非常に残念なことですけれども、国家を超える国際的権威がまことに非力でありますから、いかに協調と平和を唱えても、なかなか国家生存の法則みたいなものが強く働く。ところが、超大国がそいつを働かせると非常に飛ばっちりの被害が大きいということなんですが、私はアメリカは同盟国で、ソ連とももちろん友好にやっていかなければいかぬけれども、同盟とか友好とかということはすっ飛んでしまうというようなこともあり得るということを今度の問題でもちょっと感ずるわけです。 そのことから、私は総理にひとつきょうはぜひ考えていただきたい問題は、われわれことしの予算のときもそうだったんだけれども、外務省の——これはそういった超大国の犠牲になったりなんかするようなことがいいというわけはないんです。あらゆる外交努力をすることによって、つまりかなり歴史の流れみたいなもので防ぎとどめることができないものもあるけれども、努力の可能性ということを考えたときには、結局外交能力という問題になってくると思うんですね。ソ連のたとえば二百海里が間際までわからなかった、ソ連という国はやっぱり明かさないから、日本みたいにあけすけに全部新聞に出てしまうようなところと違うのだけれども、なかなか大変なことだと思うんですね。 これは一つの例なんですけれども、今度のこの問題の教訓から、われわれはほかの国々との関係でも、あるいは東アジアの平和の問題にしても、やっぱり外交の問題というものは安全保障の問題なんだということでもあるから、日本の外交の能力というものを高める一つの方法として、いかにもこの前の予算のときも問題になったんですけれども、外交官の数が非常に少ないんですね。外交官の数が非常に少ない。時間がありませんから、私はこっちから一方的に外務省の資料で言いますけれども、総理はもう御案内と思いますけれども、たとえば主要国の外交官の数で、日本は三千人、本省と在外を含めて三千人。ドイツは日本の倍、アメリカが三倍、フランスも倍、カナダもイタリアも日本よりはるかに多い。総理がよくおっしゃるように、アメリカと日本とドイツは経済については世界の牽引車だと、三つの国は世界の牽引車であると。まさに経済ではそうだと思います。しかしまる裸の経済で世界に進出していったときに、どういうような反撃を受けたり、アニマル的な方向で批判をされるかということは、もうすでにいろいろ出ているわけですから、経済の力の牽引車も結構、海外進出も結構だけれども、それがまさに国際協調と政治のきわめて巧妙な誘導のもとに進出していかなきゃならぬと思うんですね。これはかなり在外公館その他の活動というものが期待されなきゃならぬ。そういう意味において、こんなひどい貧弱な外交陣容ではとてもそういったような方向ができないのじゃなかろうかと思うんですよ。ドイツの半分でフランスの半分で、日本は人口からいけば倍だし、世界の間口の広がり方、アジア、ヨーロッパ全部広げてみて、こういうことでは非常に心もとないことではないのかということをつくづく感ずるのですけれども、しかもこれから資源のない日本ですから、いろいろなナショナルプロジェクトを国際的にも組んでいくといったようなことになったときに、民間ベースでだけ行けない。いろいろ国家の誘導というようなことを考えていったときに、外交の役割りというもの、国際経済外交というか、そういう経済だけということではない時期に来ていると思うんですね。だから、ひとつぜひこの問題は総理の決断で、行財政改革というものがあるわけです、行財政改革には総理は非常に御熱心と承っておるわけでございますけれども、減らすところは減らすのだけれどもふやすところはふやすんだというのが行財政改革の、少なくとも定員問題についてはそういう理念でなければならぬと思うんですね。減らしさえすればいいんだ、あるいは役所の局とか課は減らしさえすればいいんだというのが行財政改革ではなかろうと思うんです。 この前、実はアメリカ局を南米と北米を一緒にしているなんというのは戦略的に非常にまずいわけですよ。ぜひこれはアメリカ局を分けろということは、かなりわれわれのみんなの意見だったんですけれども、やっぱり行財政改革があるから公式的にいまの時期にあらずということでペシャンとやられちゃった。そういうことがあるんですけれども、行財政改革の積極的な面の最も高い優先順位で外交陣容を強化する、こういうことは私どもは絶対に必要であると思う。なかなか国際間の生存の法則というものは厳しいと思うんですが、これについて総理はどういうふうにお考えになりますか。
○国務大臣(福田赳夫君) お話しのとおり、わが国は丸腰というような体制で世界に立ち臨んでおるという国でありまするがゆえに、外交の持つ機能というものは非常に私はわが日本では貴重なものである、こういうふうに考えます。その機能をどういうふうに充実してまいりますか、御所見もあるようでございますが、五十三年度予算、そういう段階で論ずべき問題だと、こういうふうに思いますが、その際には十分御説も頭に置きながら対処していきたいと、かように考えます。
○秦野章君 私らが言っても総理はどこまで聞いてくれるかわからぬけれども、御所見もあるだろう、確かに私の所見なんだけれども、これは私だけじゃなくて、かなりコンセンサスがあるんですよ。この日本の外交の列国との比較において。たとえばモスクワに在住する外交官の陣容というものを各国別に見ても日本は大変劣勢です、もう数字言いませんけれども。それはソ連のような国でも、やっぱり活動いかんによってはある程度情報だってとれるし、活動の能力も違ってくると思うんですよ。だが、ひとつ総理の決断がなければこれはできないんですよ。特に行財政改革なんというものはいままでできたためしがない。言ったようなことはほとんどできてないでしょう。行管庁長官がどこまでやられるか知らぬけれども、あれは恐らく総理大臣級の政治能力でやらないとできない。役所のセクショナリズムも強いし、それはなかなか大変、これは総理自身がそんなことは釈迦に説法で申しわけないんだけれども、しかし、今度の外交を見てもやっぱりそういう教訓を導いた方が、私は非常にこれは必要なことだと思うんで、重ねて総理、ひとつ今度の予算に臨んではこの日ソ外交というものを——というのは、いま一つはこういうことがあるわけです。 さっき羽生先生もいろいろおっしゃっていましたが、ソ連の問題は領土問題、領土問題と言ったって片が簡単につかない。私もきのうは外務大臣に質問したのですけれども、領土問題については少なくとも一九五六年の日ソ正常化以後、ソ連の言動は、ソ連の領土に対する発言は後退している、後退的徴候があると政府も答弁したわけです。もう領土問題は解決しているというような意見まで首脳部から出ている。初めはそうじゃなかった。日本は二十年来同じことを言っているのだ。それは確かに同じようなことを言っている。日本が同じことを言っていても、向こうが変わってくればその二つの距離は近くなったか遠くなったかと言えば遠くなったわけですね。これは総理も認めざるを得ないと思うのですよ。そして今度の漁業問題で双方の立場は害されないということの中に、領土の問題も害されないということが非常にかなめだと思うのだけれども、しかしだんだん遠くなっているということについて、いままでの日本の立場は害されないと言っているのはきわめて主観的なものだと思うのですよ。ソ連はソ連の立場がある、日本は日本の立場がある、その立場の差があるということの存在だけは認めないわけにはいかない、いいか悪いかは別として。そしてその差が縮まったかと言ったら広がっているのですよ。きょう時間ありませんから言いませんけれども、今度のこの暫定協定でも、少なくとも領土問題についてはいままでと同じだったと言っているのはこっちの話であって、今度ソ日協定その他が出てきますけれども、少なくともいままでだんだん遠くなっていたものが近くなるのじゃなくて遠くなるというのが私は冷厳な見方だと思うのですよ。そういうようなことを考えますと、対ソ領土問題なんというものは、領土領土と言ったってなかなか片づかぬ。そこで迂回的ないろいろな外交というものはソ連に対してはしていかなければいかぬということをきのうも言って、外務大臣も全くそうだというふうに言っておられるのだけれども、やっぱり相互依存の度合いを拡大するとか、あるいはまた柔軟な迂回的な外交路線、たとえばソ連の衛星国である東ヨーロッパ、東ヨーロッパあたりとも日本はもっともっと接触を深めていく。これはここに数字も出ているのだけれども、東ヨーロッパは七カ国が日本に大統領とか総理とか大臣は各国全部来ています。日本は行っていませんよ、外務大臣なんか。総理も行っていませんよ。三木さんが一遍行ったのか、あれも在野で行ったのでしょう。向こうから来るけれども、こっちは忙しいから行けないというようなことでは私はうまくない。やっぱり後ろが大事ですよ、ソ連の後ろ側が。そういう迂回戦略というのか、広範なそしてソ連圏全体の中と日本との相互依存度を高めるというようなこともやるというと、これはやっぱり専門外交官の力というかそういうものをふやしていくということが非常にあるのじゃないかと思うのですよ。 そういうことも含めて、長期に見て私はいまの日本の外務省が戦後の形をちっとも拡大しないできているということは非常な劣勢であって、これは安全保障なんだ、いまや安全保障は軍事というものよりもこういった角度が非常に強くなっていることはもう御案内のとおりですから、改めて総理にその決意のほどをいま一遍承りたいと思う。
○国務大臣(福田赳夫君) 日ソ領土問題は先ほど羽生さんからもお話しありましたが、そう簡単なものじゃないと思うのです。ですからこの問題、ある案件が出てきた、その際論じ合うというようなことがかえってその案件の処理を傷つけるというようなことにもなりかねない。そういう立場から今度の日ソ漁業交渉も、領土は領土、魚は魚、こういうような立場で臨んだわけでありますが、この領土問題は非常にむずかしい問題であるだけに、やはりいま御指摘のように環境づくり、これは非常に大事だ、こういうふうに思うのです。ですから、日ソの問題は漁業問題でも漁業大国という立場で、これは利害関係が非常に一致する面があるのです。ですから漁業交渉もなだらかにひとつ決めていきたいし、またこの貿易の問題でもどんどん伸びておる、これも伸ばしていきたいし、またシベリアで共同開発だと、こういう案件もありますので、これも進めていきたいし、まあ日ソ間の問題、そういう幅広い立場から処理していきたいと思いますが、同時にいま御指摘の東欧諸国、これはわが国の首脳の訪問等が少のうございますが、これは日本と東欧諸国との接触という面から見るとかなりのものがあるんです。つまり財界の方々ですね、これはかなり往来をいたしておる。経済で立っておる日本とすると、そういう面が強くなるということは、これはまあ自然にそういうことも理解さるべきだと、こういうふうに思いますが、それはそれといたしまして、日ソ問題というものはただ単に領土問題というだけでこれを取り上げるわけにはいかない、幅広い見地で取り上げていかなけりゃならぬということは全く私は御説に同感でございます。まあそれにいたしましても、外交機能を強化せよと、こういう御所見と思いましたが、この点につきましてはさらに検討し努力をしてみると、かようにお答え申し上げます。
○秦野章君 関連するんですけれども、行財政改革の理念は、必要なところもふやす、必要でないところはつぶす、トータルとしてはなるべく減らすと、単純に言えばこういうことでいいと思うんですが、総理の御見解どうですか。
○国務大臣(福田赳夫君) 御所見のとおりと心得ております。
○秦野章君 それでは最後に、ちょっと重なるんですけれども、今度の漁業協定で領土問題について日本の立場は害されてないと、領土問題を含めて従来の日本の主張というものは、そういう角度が政府から言われているわけですね。しかしこれは、あんまり単純に言うのは、今度ソ日協定がどういうふうにできるかしりませんけれども、とにかくいやおうなしに領土が絡んでいるのは国民がもう知っているんですから、これはうまく知らしてもらったと思っていいと思うんですよ、これは非常に。しかし、そのことは非常にむずかしい問題なんだということで、非常にいまの世代に担わされた日本民族のかなり苦悩に満ちた問題なんだ。政治というものはそもそも苦悩に満ちた問題だけれども、そういう認識というものが、つまり、領土問題は気軽な問題じゃないとさつき羽生さんはおっしゃったけれども、そういう苦悩に満ちた問題だというかっこうが、それは戦略的には私はうまくいったと思うんですよ、大体は。だけども、しかし、非常に苦悩に満ちた問題であるというかっこうというか、その真相の姿を国民にやっぱり示してもらっていく方がいいんだと。わが国の立場は害されないなどと簡単に言うけれども、そう害されないだろうか。害されないように努力したんだけれどもまだまだ問題が残っているんだというのが私は現状じゃないかと思う。ソ日協定でとういうふうな——二百海里と十二海里の問題で日本はああいう法令をしきましたけれども、それはどういうふうな形でおさまるかというような問題まだ未解決でこれからの問題ですけれども、それはやっぱり、魚だから実績だ、余剰だというような問題じゃなくて、領土の絡んだ非常に苦悩に満ちた問題であるという、そういう政治的な形相が政府に出た方が私はいいと思う。総理いかがですか。
○国務大臣(福田赳夫君) 今回の交渉で私どもは領土問題についてのわが方の主張が害されたと、こういうふうには思っておりません。明快に領土は領土、漁業は漁業という措置になったと、こういうふうに理解をしております。しかしいまお話がありましたように、この領土問題というものは、これはそう簡単に片づき得るようななまやさしい問題ではない、こういう認識はまたこの交渉を通じまして新たにしたと、こういうようなことかと思います。今後の日ソ間に横たわるこの領土問題、これの困難性、そういうものにつきましては率直に国民にこれを訴えて理解を求めなけりゃならぬと、こういうふうに考えます。
○塩出啓典君 それでは、時間もございませんので、答弁の方も要点のみで結構でございますので、お願いをいたしたいと思います。 いよいよきょうの本会議で、鈴木農林大臣を初めとして多くの方が大変御苦労をされて締結されましたこの日ソ漁業暫定協定が国会の承認を得るわけでありますが、総理として、率直に今回の一連の交渉の経過を振り返ってどういう所感であるのか、やはりなかなかソ連は予想以上に領土問題については厳しいと、こういう感じを持たれたんではないかと思うのでありますが、その点はどうでしょう。
○国務大臣(福田赳夫君) この問題につきましては二つの側面があるわけです。一つは領土の問題であり、一つは漁獲量の問題である。 領土の問題につきましては、とにかく最後の瞬間におきましてわが方はわが方の主張を貫き通した、こう申し上げて差し支えないわけでありまするが、この交渉の過程全域を見まして、領土問題というものは、これはなかなか前途険しい道であるということを痛感をいたしておる次第でございます。先ほど来るる申し上げているとおりでございます。 それから漁獲量の問題につきましては、これは量といたしまして私ども自身これを不満とするところがあるわけでございます。しかしまた翻って考えてみますと、海洋新時代というものがやってきておる。ソビエトもアメリカの水域から締め出しを食う、またECの水域からも締め出しを食うと、こういうような立場に置かれております。わが国もソビエト水域で非常に多くの漁獲量を失うと、こういうことになる。これはもう、私は常々資源エネルギー有限の時代が来たと、こういうことを申し上げ、また海洋にもそういう流れがもう始まってきておるというふうに申しておりますが、いよいよ現実の姿において海洋にそういう流れが出てきたということを痛感をいたすわけであります。そういう歴史の新しい時代に即応して、そうしてわれわれはわれわれの進むべき新しい道を求めなけりゃならぬという感を深ういたす次第でございます。
○塩出啓典君 確かに、わが国の領土の主張は貫かれたと政府は言われるわけでありますが、しかしうちが貫いたといっても、向こうが引っ込んだわけじゃなしに、向こうも貫いたわけで、そこがやはり玉虫色になっておるわけであります。しかしこの領土問題そのものは、向こうは玉虫色じゃなしに、こちらにソ連に有利に押しつけてきょうとしたわけですから、それを玉虫色にすることができたことだけで一つの成功なんだと、こういう御答弁をどなたか衆議院でされておったけれども、私はそれが本音で、やっぱり玉虫色であるのはやむを得ないと、現状においては、総理はそう理解していますか。
○国務大臣(福田赳夫君) つまり領土問題につきましては、ソビエト側におきましてもソビエトの主張というものがあり、わが方においてもわが方の主張があり、これが相対立しておるわけなんです。それが対立のままでこの協定で何らの影響されるところがなかったということになる。具体的に申し上げますと、これはあの北方四島ですね、あの四島に対しましてソビエトの水域もできればわが方の水域というものもできる、そういうことをもって玉虫色であると、こういうふうに言われるならば、まさにそれは玉虫色なんでありますが、結局領土問題についてはお互いの立場、主張というものがこの協定において影響されるところはなかったということでおさまっておると、こういうことでございます。
○塩出啓典君 そこで、これからソ日協定が結ばれようとしておるわけでありますが、当然ソ日協定も、このわが国の漁業水域に関する暫定措置法に基づく二百海里の線引きと、そういうものをある程度の前提条件としていくわけですから、したがって、そのソ日協定も先ほど申したような意味では玉虫色にならざるを得ないと、そう理解してよろしいですか。
○国務大臣(福田赳夫君) ソビエトはソビエトの手続によりましてこの四島周辺にも二百海里水域を引いたと、こういうことになっており、それをわが方はこれを是認したと、こういうことになっておりますが、わが方はわが方としてわが方の二百海里水域というものを暫定措置法でもうすでに引いておるわけであります。そこで両方の水域というものが重なり合う、そういう状態が出てくるという、そういう意味合いにおいてあの四島周辺は玉虫色の解決だと言う人がありますれば、それもそういう意味においては別に否定する必要もないと、こういうふうに考えております。
○塩出啓典君 そこで、このソ日協定を交渉する前提条件は、いわゆるわが国の二百海里の経済水域のラインを認めるということが前提条件になるわけですね。それが向こうが乗ってこなければ交渉は決裂をするという、そういうニュアンスに受け取っておるわけでありますが、鈴木農林大臣等も、当然、この日ソ漁業協定のその話し合いの中にソ日漁業協定のその一番基礎になる前提条件等についてはある程度のやはり話し合いは行われておるんではないかと、ある程度の合意というものはできておるように理解していいのかどうか、この点はどうでしょうか。
○国務大臣(鈴木善幸君) この点は、イシコフ大臣が近くソ日協定を締結をするための交渉を始めよう、できるだけ六月に入ったならば早い機会に日本側のテキストをわが方に示してほしい、それを検討した上で二十日前後には東京において交渉を始めようと、こういうことで合意をしておるわけでございます。 私は、五月二日に海洋二法ができまして、五月五日に第一回の五月交渉の会談を始めました際に、わが方が新たに海洋二法を制定をしたと、これを前提としてソ日協定の交渉をやろうということを申し上げて、いま申し上げたように六月からその交渉を始めようということでございますから、ソ連側もわが方の海洋二法というものを前提とした交渉に臨んでくると、このように考えておるわけでございます。
○塩出啓典君 そこで、先ほど総理大臣は、わが国の北方四島を含めて二百海里の線が引かれておるとおっしゃいましたが、これは厳密に言えば政令で指定した日にちが来たときに初めて引かれると、こういうことですね。まだ政令は日にちは来てないんじゃないかと思うんですが、そのときになれば全部引かれる、そういう意味でございますね。
○国務大臣(福田赳夫君) もう法律で引いちゃったんです。もし除外するという地域がありますれば、除外地域を政令で指定する、こういうことであります。
○塩出啓典君 わかりました。 そうすると、この除外するための政令というのは大体いつごろ出すか。これはソ日協定とは関係なしに出すんじゃないかと思うんですが……。
○政府委員(岡安誠君) 漁業水域に関する暫定措置法の政令につきましては、来週中にはこれを制定をいたしたいということで準備をいたしております。
○塩出啓典君 私は、その政令には北方領土という言葉は含まれてないんじゃないかと。もう大体準備できていると思うんですが、そのように理解しているわけですが。
○政府委員(岡安誠君) これは先般もお答えしたと思いますけれども、現在事務的に準備中の政令は、先般の国会の御審議の際に提出いたしました政令規定見込事項というものを中心にいたしまして現在検討をいたしておるわけでございます。
○塩出啓典君 だから、北方領土に関する言葉は入っていますか。
○政府委員(岡安誠君) 検討中の案ではまだ入っておりません。
○塩出啓典君 入っていないですね。 そこで、この日ソ漁業協定の場合はいわゆる北方周辺にソ連側の漁業に関する線を引いたわけですね。それを第一条で認めて、そして日本側は第八条においてこれは魚だけなんだと。それをソ連側は、これは魚の線になっているけれども、領土の所有権、領有権に対するソ連の立場は変わらないんだと、こういうようなわけで、両方がそれぞれ自分の都合のいいように解釈をしてそれぞれ理解をしたわけでありますが、しかし、ソ日協定の場合は、ちょうどその裏返しということはできないわけですね、結局。そういう点で、政府としてはそのあたりをどういうように解決をしようと考えているのか。第一、日本にとって漁業だけの線も結局北方領土は引けないと。そのことを絶対ソ連は認めるわけがないし、また認めたら混乱すると思うんですが、そういうことははっきりしていると思うんですが、どうでしょう。
○国務大臣(福田赳夫君) これは、先ほど申し上げましたようにもう暫定措置法で線は引いてあるんです。政令を出すというのは、除外をするとすればその政令でこれを除外すると、こういうことになるわけです。 さてそれで、この問題を北方四島についてどういうふうに考えるかと言いますれば、ソビエトはもう線引きをしたと、わが方も線引きをしたと。まさに四島周辺においては線引きがダブるわけであります。ダブった中で一体いかなる操業をするかという実際問題が起こってくるわけであります。その実際問題をどういうふうに処置するかということがソ日協定でもまた問題になってくる、こういうことでございます。実際問題としての処置の仕方でございますが、非常に残念なことでございまするけれども、これは、今日ソビエトがあの四島周辺についての実力的支配権を及ぼしておるわけなんであります。そのことを、これをはねのけて通るということもまたむずかしい問題であります。それをどういうふうに処置いたしますか、これがこれからのこの両方の水域のダブった地域の実際操業をどうするかという話し合いになってくると、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
○塩出啓典君 ソ日協定は、いま北方四島周辺の操業とおっしゃいましたけれども、ソ日協定そのものの内容は、これは北方四島周辺の操業云々ということは入らないわけでしょう。実質的な内容はやはり日本のいわゆる太平洋岸であると、そう私は理解しておるんですが、そうですね、外務大臣。
○国務大臣(鳩山威一郎君) ソ日協定でやはり問題になりますのは、適用水域をどうするかということであろうと思われます。その点につきましては午前中もお答え申し上げましたが、わが方といたしましては、わが方の漁業水域に関する暫定措置法並びにその政令によって規定される適用水域というふうに表現をされる、これが日ソ協定の回し考え方の規定になるだろうと。それから先のことはちょっとまだ交渉しないとはっきりしないと、こういうことではないかと思います。
○塩出啓典君 いろいろこれ考えてみると、本当にむずかしい問題ですね。やはり現在わが国はすでに北方周辺にも二百海里の線を引いておると。しかしこの法律を読んでみても、どこにも北方四島という言葉は入っていないわけで、日本政府はそう解釈をしている。しかし、ソ連側は結局北方四島に二百海里の日本側の線が引かれているということは認めていないわけですね。しかしわが国は認めておると。そういう形での玉虫色の妥協でないと、実際これはもうそれ以上の解決は、領土問題を解決しない限り私はあり得ないんじゃないかと。したがって、当然この北方、わが国の水域に穴をあけるというようなことも、穴をあけるということは、もともと日本の水域なんだと、そこに穴をあけるということですからね。そうなると、やはりソ連政府としても非常に私は今回の交渉の姿勢から見てもそこまでも認めないんじゃないか。であるならば、当然この領海、水域法によってわが国が引いていると、ソ連はそれは認めない。というのは、これにも北方領土の言葉は入っておりませんし、そして政令にも入っていない。そういう形の解決しかなかなかむずかしいんじゃないかと。私は率直にそのように考えておるわけでありますが、この点差し支えなければ御意見承りたいと思います。
○国務大臣(鈴木善幸君) 先ほど来総理が申し上げておりますように、ソ日協定はわが方の海洋二法、特に漁業水域に関する暫定措置法の線引きがすでになされておるわけであります。この海洋二法というものをソ側が認めるという前提に立って初めてわが方はソ日協定の交渉に応ずる。これを頭から否定してまいりました場合は、国権の最高機関である国会が御決定になった法律に抵触するわけでございますから、わが方としてはこれに対して交渉もできない、こういう立場にあるわけでございます。 そこで、問題はあのダブるところの海域における実態の面における運用上の問題、これがいろいろ出てくるわけでございます。私は、日ソ漁業交渉に当たりましてもそういう点を十分配慮いたしまして、北方四島沖合いの海域だけについてクォータを定める、こういうことはいたしませんでした。これは全千島を対象とした海域を設定をして、その間における各魚種別のクォータをどうするか、こういうぐあいにいたしておるわけでございます。 なお、特に北海道等の中小漁船につきましては、個々の漁船にクォータを与えるのではなしに、漁業組合の団体ごとにクォータを与える。また、許可証の申請手続等においてもそのような措置をとっておるわけでございます。また、ソ日協定におきましても、許可証にしてもクォータにしても、私は北方四島沖合いのクォータを特に設定をする考えは持っておりません。これをわが方の海域を幾つの海域にいたしますか、これから具体的に決めてまいりたいと思いますが、たとえば北海道沖までのクォータとか、三陸、金華山沖までのクォータであるとか、そういうような決め方。あるいは許可証につきましても北方四島だけの許可証とか、そういうようなものは、日ソ協定でもそういうことになっておりますから、これも許可証の発給につきましても、あの海域がぎらつくような形でなしに、全体としてわが国の法律、政令で定められる適用をやってまいる。こういう運用上の問題につきましては、日ソ双方においていろいろ実態に沿うように考えておるというようなことでもございますので、実際上の運用面につきましてはそのような考えで対処してまいりたいと、こう思っております。
○塩出啓典君 時間もありませんのでこの問題はこの程度にいたしたいと思います。 次に領土問題につきまして、鳩山外相が訪ソされると、そういう点で外相は三日の外務委員会では、八、九、十月ごろ訪ソしたい。総理は六日の衆議院外務委員会では、いわゆる本協定が締結された後に行かしたいと、そういう点の食い違いがあるわけでありますが、この点がどうなのか。 それと、まあどういう意味で本協定成立の後がいいというのか。やはり時期も非常に大事じゃないかと思うわけでありますが、私はいままで総理の御見解は、魚と領土問題は別であると、このようにお話を承っておるわけでありますが、そういう点で本協定の後がいいという、どういう点からそういうことをおっしゃっておるのか、承っておきます。
○国務大臣(福田赳夫君) まあ本協定の締結に当たりましても、これは交渉の態度といたしまして領土は領土、漁業は漁業、こういう態度をとらざるを得ない、こういうふうに私は思うんです。そういう際でありますので、鳩山外務大臣が訪ソするということになりますと、これは領土は領土、魚は魚という問題と絡まりを生ずるおそれがあるのではないか、その辺を実は心配をいたしまして、大体基本協定の締結後が適当ではあるまいかと、こういうふうに考えておるんです。おるんでありますが、しかし先方の都合もあることでございまするから、こっちだけで交渉の日時を決めるわけにはまいりません。ですから、まあこの先、先方ともいろいろ打ち合わせをいたしまして、そういう配慮もいたしながら適当な時点で鳩山訪ソということを決めたいと、こういうふうに考えております。
○塩出啓典君 それから日中平和友好条約の問題でありますが、先ほどもお話がありましたように、最近の総理の姿勢は少し後退の印象を与えておるわけであります。この締結をやる気があるのかどうか、またこの締結がソ連に対する影響はどのように総理は考えておられるのか。それから第三点は、この締結に至るわが国の条件と申しますか、それはどういうものであるのか。これは差し支えなければ述べていただきたい。それから最後に、覇権条項を本文に入れるということは総理自身としてはどう考えておるのか、その決意はされておるのか、この四点をお伺いします。
○国務大臣(福田赳夫君) 私は、日中関係は大変いま円滑に動いておると、こういうふうな認識でございます。私の基本的な態度といたしましては、これは日中共同宣言、これを忠実に履行するという一語に尽きるわけでありますが、私はこの態度につきましては中国側においても理解をしておると、こういうふうに思います。 まあ後退しているじゃないかなんというようないまお話でございますが、別に後退しているわけじゃありません。この日中平和友好条約の締結の問題は共同声明で残されておるただ一つの問題でありまして、前々から申し上げているんです。日中双方の満足し得る状態を早くつくり上げまして締結したいと、こういうことでございます。 それから、日ソ関係と日中平和友好条約との関係いかんと、こういうお話でありますが、日中平和友好条約の問題、また日ソ間の問題、特に平和友好条約に対比いたしますれば、日ソ平和条約の締結と、こういう問題がありますが、これは両々別々の問題である。絡ませてという考え方はいたしておりませんです。 それから、日中平和友好条約を締結する場合の条件はどうか、あるいは覇権条項をどうするかというお尋ねでございますが、この問題は、私の見解をまだ申し上げる段階にきておりませんし、生煮えのことを申し上げることはこの友好条約の早期締結、そういうことにかえってこれは支障があるんじゃないかということで、ひとつこれは御勘弁のほどをお願い申し上げます。
○立木洋君 総理、私から申し上げるまでもなく、千島列島等領土の返還の願いというのは全国民的な悲願であるというふうに考えるわけです。すべての国民が千島列島の返還を願っておると思うんです。しかし、この念願というのはただ単に日本民族だけの念願ということだけではなしに、これは国際正義に基づくものでもありますし、また国際的な民主主義の原則に立脚したものでもあるというふうに考えております。同時にまた、これは今後将来とも日ソ両国の友好をしっかりした基礎の上に固めていくという問題にもなり得るのではないかというふうに考えているわけです。先ほど総理が言われましたように、領土問題の解決というのはきわめて困難であるし、いろいろとむずかしい問題があるというふうにお話になりました。もちろん、いかなるどれだけの情熱がありましても、単なる情熱では解決することができませんし、また数多くこの問題を話し合ったからといって解決することができないということも総理は御異存ないだろうと思うんです。 昨日も私は鳩山外務大臣にお尋ねをして、私の所見を述べたわけですけれども、やはり領土問題を解決するためには、いままでこの問題のよって至った歴史的な経緯とその事実を正しくしっかりと踏まえながら、また同時に、どこに解決しなければならない問題点があるのか、これを理論的にも研さんを深めてそれを取り除いていく努力をしなければなりませんし、そして何人も納得させることのできる論理の展開をわれわれがしなければならないだろうと思うんです。同時に、適切な時期を踏まえてこの問題に対する全力を投入するという外交交渉の時期、タイミング等々も重要であろうかと思うんです。この点については、きのう鳩山外務大臣は基本的には賛成の御答弁をいただいたわけです。 そこで、私はこの問題について次の三つの点で総理にお尋ねしたいわけですが、第一点は、本会議の席上、総理は御答弁の中で次のように述べられました。歯舞、色丹の二島返還というような段階的な形はとりたくない、二島が解決しても後に不安が残るという趣旨のお話がありました。これはどういうような根拠でそういうふうな御見解をお述べになったのか。これは総理も御承知のように歯舞、色丹は北海道の一部でありまして、これは千島ではございません。そして、一九五一年九月のサンフランシスコ条約の中でもアメリカの代表ダレスが、いわゆる千島には歯舞は含まれないという趣旨の発言をされたのに対して、ソ連の代表もそれに異議をはさまなかったということも明らかであります。また、一九五六年鳩山元総理大臣がソ連と交渉され共同宣言を結んだ中で、両島の返還ということが平和条約の締結によってというふうにうたわれたのも、こういう経緯を踏まえたものだと私たちは考えるわけです。ですから、まず第一に、本会議で答弁された総理のお考えとその根拠。歯舞、色丹の返還を求めるということを第一段階にするということが道理の通った解決になるのではないかというふうに考えるわけですが、その点についての総理のお考えをお尋ねしたいというのが第一点です。
○国務大臣(福田赳夫君) 日ソ領土交渉の中で歯舞、色丹というものはなるほど特殊な歴史を持っております。つまり、平和条約ができてから後の状態でも、これは鳩山総理大臣がモスコー訪問をする、その際の共同宣言、これにおいて平和条約ができたらその後歯舞、色丹は引き渡しますと、こういうことになっておるわけで、そういうような意味においては特殊な歴史を持っておりますが、わが国は歯舞、色丹だけが固有の領土ではないと、こういうふうに考えております。固有の領土としては国後、択捉までを含めたものである、こういう見解を持っております。その見解を持っておる中で、歯舞、色丹の返還だけで平和条約を結ぶというようなことになりますれば、わが国が国民的悲願として求めておるところの国後、択捉の返還、これに対する手がかりというものがなくなるじゃありませんか。そういうようなことを考えますと、これは国後、択捉、これを含めての四島一括返還、これ以外に私は考える道はないと、こういうふうに考えておることを申し上げたわけであります。
○立木洋君 平和条約の締結の前に、それなら歯舞、色丹だけを返してもらうというふうなお考えはございませんか。
○国務大臣(福田赳夫君) いずれにいたしましても、わが国は四島一括返還ということを、これを国民的悲願であるというふうに考えておるわけなんです。これを実現したい、そういう際に、小さな一部の二つの島を返すということになりますと、まあ大きな国後、択捉と、こっちの方の交渉の手がかりが非常にこれは脆弱なものになるのじゃないか。そのことを心配してるんです。ですから、二段と言われる二段階論というのがありますが、二段階論はとらない、一括四島返還だと、これを堅持してまいる考えでございます。
○立木洋君 私たちの見解については後ほど述べたいと思います。 それからもう一点は、四島一括返還ということになりますと、いわゆる北千島に対する日本民族としての領有権というのは永久に放棄することになるのではないだろうか。これは大臣も御承知のように、北千島というのは私たち日本の国が武力で奪取した領土でもございませんし、樺太千島交換条約で平和的に日本の領土になったものでございますから、これは歴史的に言っても日本の領土であるはずです。ですから、あの問題になっておりますヤルタ協定の問題を引きましても、あれは領土不拡大の原則に矛盾するということもきのうの外務省の答弁でもございました。そうすると、私たち日本民族が武力によって手に入れたものでない北千島、これを永久に放棄するということになるのは、私はきわめて遺憾ではないかと思うんです。当然固有の領土という条件とは、北千島はまた交換条約で手に入れた領土ですから、これは歴史的な経緯から見て違いはございますけれども、やはり全千島を日本の領土として返還を求めていくという立場がやはり私は基本的になければならない。それを解決するためにどう段取りを経ていくのかという問題が考えられるべきではないだろうかと思うんです。 いまのお話によりますと、いわゆる四島一括返還だけだということになりますと、北千島を永久に放棄してしまう。そうするとヤルタ協定、これは私たちはこのヤルタ協定というのは国際的な正義の立場に反しておるものであるというふうに考えております。将来いずれかの時期にはこれは正されなければならない。国際的な民主主義の原則の立場から言いましても、これは正されるべきであるというふうに考えておるわけであります。きのうの外務省のお話を聞きましても、北千島の問題に関して、いわゆる日本の領土であり、この問題に対しては明確な御答弁をいただくことができなかったわけですけれども、そういう日本の領土を永久に放棄してしまうような形になる四島一括返還というものはやはり検討されなければならないのではないだろうか。少なくとも北千島に対しても将来ともわれわれが返還を請求できる状態というのは考えておく必要があるんではないかと思いますけれども、総理の御見解はいかがでしょうか。
○国務大臣(福田赳夫君) 私は北方領土問題についての共産党の考え方、これはよく承知しております。おりますが、しかし、もうすでに北千島はこれはサンフランシスコ条約において放棄しちゃったんです、これは。これをソビエトに対して放棄したわけじゃ別にありませんよ。ありませんけれども、とにかく日本としてはその領有権を放棄しちゃったんです。この条約を破棄するという以外に、この失われたというか、放棄したその領域の回復を求めるという手はないわけですが、さあ、あれだけのいきさつを経て締結されました平和条約を廃棄すると、しかもこの平和条約が締結されたことによりましてわが国は平和社会に参加し、今日の隆盛を見たと、あの平和条約というものは尊重しなけりゃならぬ。そういう立場のわが国として、平和条約を破棄する、そういう行動は、これは国際社会における信義上もとり得ざるものであると、こういうふうに考えます。もちろん、それは戦には負けた、負けたが領土を狭められるということは残念なことですよ。これは残念なことだと思いまするけれども、すでにこれは条約で放棄を明らかにしたことでありますから、いまそれを云々ということは妥当でないと、かように考えております。
○立木洋君 戦争で負けたんだから仕方がないというふうにおっしゃいますけれども、私たちは、やはりあのヤルタ協定が国際的な正義の立場から見て正当なものであったのかどうなのか。いまの大臣のお話によりますと、やはり北千島はサンフランシスコ条約で放棄したと、だからもうやむを得ないというふうにおっしゃいますけれども、そうすると国際正義に反する、つまり武力で手に入れたものでない領土は取り上げるべきではないというあのカイロ宣言、あるいはポツダム宣言等々の内容から見て反しておるのがヤルタ協定であります。そうすると、やはり国際正義の立場から見て正しい立場を主張していくということは、私は国際的な正義の立場で外交を貫いていく上で必要だと思うんです。福田総理が、失礼な申し方かもしれませんけれども、いつまで総理をなさっておるかわかりませんが、しかし、福田総理の時代に北千島はもう完全に放棄してしまった、もう将来、未来永劫請求しないんだという態度をとるということは、私はさらに汚点を残すことになりはしないだろうかということを強く御忠告申し上げたいわけです。 同時に、私は先ほど言いましたサンフランシスコ条約でいわゆる放棄してしまった、きのうの外務省の当局の方にお尋ねいたしましたけれども、あの二条(c)項で放棄したのは当然なことなんだろうかと言って私はお尋ねしました。そうすると、当然というふうにはお答えになりませんでした。やむを得なかったと、あの当時の状況からしてやむを得なかったことだというふうに考えておるというふうに話をされました。私たちがこの問題について検討いたしましたところ、サンフランシスコ条約の二条(c)項をいわゆる国際的に破棄を通告すべきではないか。もちろん、私たちはサンフランシスコ条約二条(c)項の破棄通告ということが決して単純なものではないし、これはきわめて困難な問題も伴うということもよく理解しております。しかし、私たちが本当にこの領土問題を正しく解決するために、その根本的な阻害の基礎になっておる二条(c)項の問題これを避けて通ることは私はできないだろうと思うんです。私たちはこの問題について検討いたしましたところ、いま一九六九年条約に関する条約という問題が国連で議論になっております、もちろん、まだこの条約は採択されておりませんが。しかし、この条約の検討されている内容といいますのは、国際的正義に反する条約や条項に関してこれを是正する権利があるということを国際法一般でも認めるというものです。つまり先ほど申し上げましたように、領土不拡大の原則に反するヤルタ協定に基づいて、そして千島列島を日本から、日本の固有の領土であり、あるいは北千島は日本の歴史的な領土である、これを日本から取り上げてしまうということは国際的な正義から見ても正しくないし、ましてやカイロ宣言の内容から見てもこれは反するものであるということは、だれをも否定できない事実だろうと思うんです。そうであるならば、私たちはこの問題に関して政府がただ困難を回避するというお立場ではなくて、本当にこの二条(c)項を破棄する可能性があるかどうか、私は真剣に検討していただきたい。そして本当にこの千島問題を解決するネックになっておる点を何としても取り除くという点で私は全力を尽くしていただきたいということで二条(c)項の問題を、特にその点の御検討をお願いしたいわけですが、その点については総理いかがでしょうか。
○国務大臣(福田赳夫君) 立木さんはヤルタ協定のことを言われますが、わが国が権利義務としてかかわりを持つのは、これは平和条約なんです。平和条約でもう明確にわが国は千島、つまりいわゆる北千島です、これを放棄している。この条約を廃棄します、そういうような挙に出るということは、私は国際社会の中で平和に生きていくというわが日本として、これはまあでき得ざることである、こういうふうに考えているのです。お気持ちはよくわかりますが、しかし、政府の立場として考えるときに、平和条約はあくまでこれを尊重しなきゃならぬという立場でございます。
○立木洋君 私は、この問題についていま総理大臣がそういうことは非常に困難だし、やる立場にはないというふうにおっしゃいましたけれども、私は、重ねてこの問題を全国民的な悲願の問題として、そして国際正義の立場を貫くという観点から、そうして日ソ両国の友好をしっかりした基礎の上におくという観点から、この問題は私は真剣にお考えいただきたいと思うのです。いま、その問題についてそんなら検討いたしましょうというふうな答弁はなかなかできないと私は思いますが、今後とも常にお考えいただいて、どうしたらやはり千島列島全体が日本の領土に返還することができるのかということを、やはりいままでの歴史的な経緯を踏まえて、そして本当に国際的な正義を貫く、理論的な研さんの内容を深めていただいて、その検討をしていただくことを重ねて私は要望したいと思うんです。 それから次に、水産省の設置の問題については、いま当面そのような考えはないというお話がございました。水産庁としての仕事については、これは省に格上げするという問題についてはいろいろな問題をまた伴うだろうと思います。しかし、二百海里の時代に当面をいたしまして、やはり今後ですから私は、いわゆる四面海に囲まれておる日本として、海洋国日本として、今後の水産関係の問題ということはきわめて重視しても重視するにし過ぎることはないだろうと私は思うんです。そういう観点から、私は、ただいまそういうふうにするというお考えがないにしても、将来においてはやはりどうするかということは考えていただきたい。そして本当にいろいろなこういう対応する問題については、先ほど外務省の問題では他の委員からも話がございましたけれども、本当にがっちりとした陣容をとらなければ、具体的な仕事を進めていくのは関係省庁でございますから、ですから、私は水産庁を水産省に格上げするということを未来永劫に検討しないというお考えではなく、将来においては検討するという御答弁をぜひともいただきたいわけでありますけれども、その点についての総理の御所見を賜わりたいと思います。
○国務大臣(福田赳夫君) 私どもは行政機構の改革ということを考えておりますが、これは何も減らすはかりが——ということてございます。必要なところは増強をしなきゃならぬわけでありますが、ただ、水産省の問題になりますと、これはやっぱり食糧は統一した組織の中で包括的に運営していくということが必要ではなかろうか、こういうことだと思います。そういうようなことから独立した水産省を設ける、それはいかがであろうか、こういうような感じがいたし、私がこれ検討しますというようなお答えを申し上げますと、何かそういう考えもあるのかなというような印象を与えますので、検討いたしますと、こういうふうには申し上げませんが、まあ水産行政の機能はこれは強化する必要があると思います。しかし、省を独立して設けるということにつきましてはこれは消極的な見解である、かように御承知願います。
○立木洋君 いま直ちにそういう御答弁がいただけるとは思いませんが、やはり二百海里の時代が到来いたしまして水産関係の仕事というのはきわめて重要になってまいります。日本の基幹産業としても、日本民族の生きていく食糧の問題の一環としても非常に重要な問題でございますから、私は手おくれにならない時期にやはり検討はしていただきたいということを重ねて御要望申し上げておきたいと思うんです。 それから次には、日本漁業の再建の基本的な方向の問題についてでありますけれども、三百海里時代に直面いたしまして、遠洋漁業を適正に進めていくと同時にいわゆる沖合い、沿岸の漁業というものも重視していかなければならないという点については総理も御異存ないだろうと思うんです。ただ、この内容を見てまいりますと、沿岸漁業の整備開発事業の内容、五十一年度から七年間で二千億円の事業費が投入されているというふうになっておりますし、その漁場整備が十二万平方キロの漁場整備を行うという内容のものになっているわけです。ところが、水産庁の計算でお聞きいたしましても、当面の技術水準で整備開発が可能な浅海水域の面積は一千二百万平方キロ、まさに千倍にも上る広さが対象にされておる。同時に、七年がかりではまさにその一%という面積にしかならないわけです。ですから、いままで百年河清を待つというふうな話がございますけれども、しかし、これでは七百年もかかるというふうなことになるわけですから、この沿岸漁業整備開発事業の見直しをやって、年に二千億程度のやはり国費を投入しやっていくことが私は必要ではないだろうかというふうに考えるわけです。この問題について、この沿岸、沖合い漁業のいわゆる開発の問題に関して、その事業の内容を見直し、積極的に進めていくという点について総理はいかがお考えでしょうか。
○国務大臣(福田赳夫君) 海洋新時代と申すべき時代が来たわけでありまして、その中で沿岸漁業、これはまあわが国は島国でありまするから非常に広大な水域を沿岸に持っておるわけであります。この開発ということが非常に重きをなしてくる、こういうふうに考えております。そういうことを中心にいたしまして新しい体制をしがなければならぬ、こういうふうに考えておりますが、長期的な総合的な計画を立てまして鋭意新時代に対応してまいりたい、かような考えであります。
○立木洋君 じゃ最後に、今日の日ソ漁業交渉が長期化しまして、漁民の方々や水産関係者の方々にいろいろと大変な事態が生まれているわけで、補償の問題について最後にお尋ねしたいと思うんです。 いままで何回か本会議あるいは本委員会においてもいろいろ御答弁いただいたわけですけれども、いわゆる減船に見合った適切な救済措置というふうなことできわめて抽象的な——具体的な内容がどうもはっきりしないという点があったわけです。漁業関係者の点につきましては非常に重大な事態にあるということは、もう時間がございませんので私はくどくどと申し上げませんけれども、これは私たちがここで考える以上に大変な事態になっておるということが多くの当委員会の委員の方々から切々と述べられているわけです。ぜひその議事録もお読みいただきたいわけですけれども、その中で特に私は、いわゆる減船する者に対して残る漁業者が補償を行うという、つまり共補償の制度ですね、これではなくて、やはり何としても積極的に国が補償を行うという基本的な観点をしっかりと確立していただきたい。自主的な減船であるならばいざ知らず、今回のような状態によって起こった悲惨な事態でございますから、いわゆる補償金の負担に関しては、魚をとりに行く人々も、また減船をしなければならない人々も、ともに大変な事態に立たされているわけです。こういうことを十分にお考えいただいて、共補償制度ではなく国の責任において補償するということを明確にしていただきたいと思うんですが、最後にこの点についての総理の御見解をお聞きして私の質問を終わりたいと思います。
○国務大臣(福田赳夫君) 減船でありますとか、あるいは離職でありますとか、いろんな影響が今回の日ソ漁業交渉の結果出てきておるわけであります。これに対しましては、緊急を要するものはすでにその緊急対策として手を打っております。しかし、基本的に総合的な対処をしなければならぬと、こういうふうに考え、鋭意その対策を検討しておりますが、今月中ぐらいにはその大節を決めたいと、こういうふうに考えております。 共補償をどうするかという話ですが、これは減船その他影響の度合い、そういうものにもよることで、一概に共補償は一切いたしませんとここで私言明することを差し控えますが、とにかく最大限の対策を講じたいと、かように考えておる次第でございます。
○田渕哲也君 今回の日ソ漁業交渉はまだ完結しておるわけではありません。ソ日協定さらには長期協定が残っておりますから、それがすべて終わらないといまの段階で総合的な評価というのはできにくいかと思います。しかし、いままでの交渉の経過を考えてみますと、私はソ連側がとっておる態度というものは決して友好的な態度とは思えないわけです。二百海里というものを設定しましたけれども、これは私は非難するつもりはございません。世界全体がこの二百海里時代に突入しつつある、そういう中で、ソ連もわが国と同じようにみずから望んで二百海里を設定したわけではないと思います。これはやむを得ないと思いますけれども、私はソ連の態度が友好的でない、これは次の二点を挙げたいと思います。 まず第一は、こういう新しい秩序に変わる場合も、できるだけ相手側の事情というものを考慮しながら漸進的に行うべきである。急激な秩序の転換というものは必ず国際的な摩擦と緊張を激化するわけであります。ところが、ソ連はきわめてドラスチックな要求をわれわれに押しつけてきた。その結果として何万何千という人の職業を奪い、また千隻を超える減船のやむなきに至らしめておるのであります。これが第一点である。 それから二つ目の点は、四月以降われわれの操業できない状態にしたまま交渉に突入したということであります。これは言うならば漁業に従事する人の生活を人質にして交渉に臨んでおるわけで、こういうやり方というものも私は決して友好的な交渉の態度とは言えないと思います。 この点についての総理の見解をまず求めたいと思います。
○国務大臣(福田赳夫君) 今回、ソビエト側のとった措置が両国の国交関係上の立場から見て友好的であるか非友好的であるか、こういう点になりますと非常にデリケートな問題でありますので、なかなかお答えしにくいわけでございまするが、きわめて厳しい態度であったということははっきり申し上げることができると思います。
○田渕哲也君 総理の口から非友好的であるというような言葉はなかなか言いにくいと思いますけれども、私は客観的に見て決して友好的とは思えない、このように思うわけです。われわれもソ連の二百海里設定のやむなきに至った実情、あるいはソ連の国の食糧事情、こういうものの厳しさはよく理解しております。だから、やがてこのソ連の二百海里水域においてはソ連に優先権というものを与えていかなければならない、これは当然だと思いますけれども、しかし、われわれに急激に打撃を与えた、それに対する対応の時間的余裕も何も与えない、こういう態度はきわめて非友好的である、このように断ぜざるを得ないと思います。しかし、われわれがそういう立場に追い込まれながら、なおかつ、ソ連に対して有利な立場に立って交渉できない、ここに私は非常に大きな問題があると思うんですね。今回の交渉の結果は恐らく日本国民として満足のできないものだと思いますけれども、これ私は決して衝に当たられた鈴木農林大臣初め、政府の担当の方々が悪い、その責任であると言うつもりはありません。日本の国がソ連に対して有利な交渉的立場を持ち得ない、つまりバーゲニングパワーがないということなんです。これが決定的な背景であって、私は、ソ連というような国を相手に対等に交渉するにはもう少し外交的に有利な立場を確立しなくてはならない、このように思うわけですけれども、この点についてどう考えられるか。また、ソ連に対するバーゲニングパワーとしてはどういうものが考えられるか、これについての見解をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(福田赳夫君) 私は、この日ソ両国の関係というものは、これは展望して見るときにそう悪い暗いことではないと、こういうふうに見ておるわけであります。私は、展望を傷つけるというようなことになりますれば、これは日本にとりましてもよいことではないし、またソビエト連邦に対しましてもこれはよいことではないと、こういうふうに思います。そういう中で、おのずから日ソ関係というものの進み得る余地というものが出てくるんじゃないか。いまバーゲニングパワー、バーゲニングパワーと、こういうふうなお話をされまするけれども、バーゲニングパワーというようなそういうような意味合いから言いまして、この日ソ両国の関係を傷つけたくないと、こういうお互いの立場、これがいわば双方のバーゲニングパワーとでもいうべきものではあるまいか、そういうふうに考えております。
○田渕哲也君 私はそういう理念的なものはよくわかります。ただ、そういう莫然としたものが交渉力にはなり得ないと思うんですね。これは一般的な国際的な道徳としてそういうことが言えても、それがすなわち交渉力には結びつかない。私は、日本がソ連と対等の武力を持てなんと言うつもりは毛頭ありません。日本が平和外交を進めるに当たって、私は少なくとも今度は経済協力というものが一つの相手との交渉を有利にする立場をつくるんじゃないかと思うんです。ただ、いまのソ連に対する経済協力のあり方は決してそういう面から見て好ましくない。ソ連側がこの問題についてどう言うかというと、経済協力というけれども、これは相互の利益のためではないか、日本の企業がもうけたいからやってきているんじゃないか、こういう言い方をするわけであります。だからもう少し、これは単なる企業の利潤追求のべースだけに任さないで、やはり国としての国策としての経済協力という政策を立てなければならない、このように思いますけれども、いかがですか。
○国務大臣(福田赳夫君) 日ソ両国の友好関係という中には、やはり私はお話しの経済関係ですね、これも大きく入っておると思うんです。しかし、バーゲニングパワーということを田渕さんがおっしゃるから私回りくどいことを言うんですが、さあ日本が資金を出す、シベリアがそれによって開発される、これがつまりいわゆるバーゲニングパワーとしての働きをそれ自体として持つかどうかと、こういうことになると、私はややいわゆるバーゲニングパワーという意味においては疑問を持ちますので、そうじゃなくて、経済協力というようなことも一つの要素といたしまして日ソ友好関係、これを両方が持つと、ソビエト連邦といえども、日本という国を非友好な立場に置くということは、私はこれは非常に不得策のことであるというふうに考えておるというふうに思うんですよ。その辺に通俗の意味におけるバーゲニングパワーといえばそういう要素があると、こういう見解でございます。
○田渕哲也君 これは対ソ連の問題だけではないと思いますね。これからいよいよ資源ナショナリズムがますます盛んになる。そういう中でわが国が資源がない。やはりわが国の国民生活を守る上には資源を提供してくれる国、そういう国との関係を常によくしておかなくてはならない。 それから、外交というものはやっぱりしょせんはギブ・アンド・テークだと思うんです。こちら側がとるばかりではこれは交渉力が非常に弱いわけです。だから、そういう意味で私は日本の外交の基本政策というものをもう一度見直すべきではないか。確かにこれからは武力そのものが交渉力になるという考え方は間違いだと思います。それにしても、それ以外に何があるか。わが国は幸いにして軍備に割くウエートが非常に少ないわけでありますから、それならその分をもっと経済協力に回せないか。やはり国民がそのために多少の負担をしても、そういうことをやっていくことが将来の国民生活安定のためにプラスになるのではないか。軍備はGNPの一%だ、経済協力もそこそこのものだ、それじゃあやっぱりいけないと思いますね。軍備にウエートを割くのが少なければ、それを幸いとして他の国に対する経済協力なり、そういう面でやっぱり国際的に貢献していくという面がなければ、いざというときの外交交渉力はなくなるのではないか、この点はいかがですか。
○国務大臣(福田赳夫君) 事を日ソ関係に限ったということでなくって、わが国が全世界に向かってのあるべき姿勢は何だと、こういうことになりますると、いまお話しがあったように、私どもは軍備は持たない、持たないだけに余力ができる、その余力を世界の平和と繁栄のために協力していくということ、これは私は、日本の世界に臨む姿勢の大きな一つの柱でなければならぬ、こういうふうに考えます。
○田渕哲也君 あと余り時間がありませんから、二点ばかり質問をしますけれども、先ほども質問したんですが、これから行われるソ日協定の交渉です。これがまだ行政協定にするか、国会の批准を求めるか、これからの推移を見なければわからないという答弁ですけれども、総理に確認をしたいと思います。もしこの中に領土ないしはわが国の主権に影響する部分が含まれるならば、当然国会に批准を求めるべきだと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(福田赳夫君) 私は条約、協定の扱いの一般論を申し上げておるんですよ。ソ日協定に限らず、新たに外国に対し義務を負担すると、あるいは国民に対して義務を課するとか、そういうようなことがこの協定に織り込まれるということでありますれば、これはもう文句はありません。これはもう国会の審議に付さなければなりませんけれども、一般論といたしまして、協定ができた、その協定で新たなる権利義務の関係が出てこないんだということでありますれば、これは国会の審議に付さない、政治的裁断によって決められるべきものだと、こういうことを申し上げておるわけなんです。 さて、ソ日協定がどういう内容になるか、これはまだ予断を許しませんけれども、いま私が見通しておるところでは、新たなる権利義務の関係というものは出てこないんじゃないか、そういうふうに思います。思いますが、重要な案件でございますので、これを国会の審議に付するか付さないか、それは皆さんの御意見等も聞きながらその時点で判断をしたいと、そのように考えております。
○田渕哲也君 私は、国民の権利義務に関係することだけに限定されるものではないと思いますね。たとえば国の領土権とか主権とかというものに何らかの制約を与えるなら、それは当然批准すべきです。この点についてお答えいただきたい。 それから、時間がないから一緒に言いますけれども、漁業の転換というものがこれから必要になります。これは一つは、やはり国民の水産たん白資源、食糧資源の供給確保の面から再検討すべきである。漁業政策の転換ですね。そのためには漁獲量の魚種別、地域別の長期予測に基づいてどうして必要な国民の食糧供給を確保するか、こういった面が一つ。 それから漁業に従事する人の職業、どのように転業していくか、同じ漁業間で転業するという場合もあるでしょうし、他の職業に転業する場合もある。 それからもう一つは設備の問題です。漁船をどうするか、あるいは漁業設備がどうなるか、こういうことを考えますと、当然これに対する予算措置というものが必要になってまいります。こういうことも含めて、私は少なくとも漁業転換の長期計画を立てるべきである、三カ年計画とか五カ年計画を早速つくって、予算措置も講じてやっていかなくてはならないと思いますけれども、これに対する総理の見解をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
○国務大臣(福田赳夫君) いまソ日協定でわが国のこの領土権に関する問題が出てくればどうかというようなお話でございますが、先ほどから申し上げているとおり、権利義務の関係が新たに出てくると、こういうことになれば、これはもう当然国会の御審議を経なけりゃならぬわけでありまするが、その中で、領土権なんという問題はもう最大の問題でありまするから、事領土権に影響があるような問題が出てくるということでありますれば、これはもう文句はありません。もう政治的判断とか何とかという問題じゃなく、当然国会の審議に付さなけりゃならぬ問題である、そういう見解でございます。 なおまた、転業だとか減船だ、この救済だとか、そういうような対策については、新たなる立場で総合的に深く検討をしなけりゃならぬ問題であると、こういうお話でございますが、そのとおりに考えております。これは今月中に漁業交渉によってこうむる被害、これに対してどういう対策をとるかということを大筋を決めるという方針でございます。
○田渕哲也君 漁業政策を転換する長期計画をつくるべきだ、三カ年計画とか五カ年計画とか、それを早急につくるべきだと。
○国務大臣(福田赳夫君) それもそのとおりに考えております。
○委員長(寺本広作君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。 これより討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。 北西太平洋のソヴィエト社会主義共和国連邦の地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定の締結について承認を求めるの件を問題に供します。 本件に賛成の方の挙手を願います。 〔賛成者挙手〕
○委員長(寺本広作君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(寺本広作君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 —————————————
○委員長(寺本広作君) 次に、請願の審査を行います。 第二八四号反覇権条項を明記した日中平和友好条約の即時締結と批准に関する請願外六十件を議題といたします。 まず専門員から説明を聴取いたします。
○専門員(服部比左治君) 今国会中、外務委員会に付託されました請願は、お手元の表のとおり全部で六十一件でございます。 まず二四八号は、日中共同声明の覇権反対の条項を明記した日中平和友好条約の即時締結を要請するものであり、次の二九九〇号と三七九〇号も、日中平和友好条約の早期締結を要請するものであります。 次に四七五号は、戦争犯罪及び人道に反する罪に対する時効の不適用に関する条約を日本も締結されたいというものであります。 次に一九一二号は、国会が核兵器の完全禁止協定の実現を各国政府と国連に求める決議を行われたいというものであり、次の一九三二号は、日本からの核兵器、核部隊等の撤去、核積載の艦艇.航空機の寄港、通過等の禁止、非核三原則の立法化等を要請するものであります。 次に四一三八号は、来年開催される国連軍縮特別総会が核兵器全面禁止条約の締結等を主要議題として、効果的な決定を行うよう政府が積極的に努力することを求めるものであり、最後の四九五七号は、一九五九年以来北朝鮮に帰国した人々の中に約六千名の日本人女性が含まれておりますが、その大半は行方不明であり、便りのある者でもまだ一人も里帰りをしていないので、これら日本人妻の安否の調査及び里帰りが一日も早く実現するよう図られたいというものであります。 以上でございます。
○委員長(寺本広作君) 速記をとめてください。 〔速記中止〕
○委員長(寺本広作君) 速記を起こしてください。 第二九九〇号日中平和友好条約の早期締結に関する請願外一件は、議院の会議に付することを要するものとして、内閣に送付するを要するものとし、第二八四号反覇権条項を明記した日中平和友好条約の即時締結と批准に関する請願外五十八件は、保留と決定することに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(寺本広作君) 御異議ないと認めます。よって、さよう決定いたしました。 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(寺本広作君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 —————————————
○委員長(寺本広作君) 次に、継続調査要求に関する件についてお諮りいたします。 国際情勢等に関する調査につきましては、閉会中もなお調査を継続することとし、本件の継続調査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(寺本広作君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 なお、要求書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(寺本広作君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 —————————————
○委員長(寺本広作君) この際、委員会を代表いたしまして、このたび御退任になります伊藤五郎君と羽生三七君の長年にわたる外務委員としての御活躍と御労苦に対しまして、感謝の気持ちの一端を申し述べたいと存じます。 伊藤君は、衆議院議員、次いで本院議員として二十四年の長きにわたって在職され、この間、外務政務次官として活躍されたこともありますが、本院では、沖繩及び北方問題に関する特別委員長を経て、昭和四十八年には外務委員長に選任され、その職責を果たされた後、今日に至るまで外務委員として、終始委員会の円滑な運営のため多大の御協力を賜ったのでございます。 また羽生君は、昭和二十二年の第一回参議院議員選挙に当選されて以来、三十年の長きにわたって在職されましたが、農林委員長をお務めになった時期など初期の数年を除いて、今日に至るまで一貫して外務委員または理事として御活躍になりました。この間、本委員会では、日ソ国交回復、安保条約の改定をはじめとし、数々の重要案件を審議してまいりましたが、羽生君は常に高邁な識見に基づいた論議を展開され、委員会の権威を高からしめるために多大の貢献をされたのであります。 このように、熱心な御態度で委員会をお支えくださった伊藤君と、余人をもってかえがたい論客である羽生君のお二方が去られることは、委員会として惜しみても余りあるものがございます。お二方とも、一層御健康に留意されますよう祈念いたしまして、感謝の言葉といたします。(拍手) 小柳君から発言を求められております。小柳君。
○小柳勇君 ただいま委員長からお二人に対するねぎらいのお言葉がございましたが、委員長御自身も今回御退任の由伺っておりますので、私は、委員一同を代表いたしまして、委員長に一言はなむけの言葉を申し上げたいと存じます。 委員長は、昭和二十八年本院議員に当選され、昭和三十二年から翌年にかけて外務委員長をお務めになりました。 委員長御在任中は、インドネシアとの平和条約と賠償協定を処理され、また、原水爆の禁止に関する決議案の趣旨を本会議で説明されて、全会一致可決を見たのであります。 委員長は、熊本県知事を三期お務めになった後、再び本院議員に当選されましたが、一昨年は本委員会の理事として活躍され、昨年末以来、二度目の外務委員長の重責を担われたのであります。 言うまでもなく、今国会の外務委員会は、日韓大陸だな協定をめぐって幾たびかむずかしい局面に逢着いたしましたが、よく指導力を発揮されてこれを乗り切り、最終日の今日は、全国民の関心の的である日ソ漁業暫定協定が滞りなく承認されて有終の美を飾られましたことは御同慶にたえません。 委員長の御苦労を心からねぎらいますとともに、一層の御健康をお祈りいたしまして、はなむけの言葉といたします。(拍手)
○委員長(寺本広作君) 本日はこれにて散会いたします。 午後四時四十一分散会