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80回国会衆議院1977/02/22

予算委員会公聴会 第2号

発言数
47
登壇者
14
会派数
4
開催日
1977/02/22

会議録

坪川信三自由民主党

○坪川委員長 これより会議を開きます。  昭和五十二年度一般会計予算、昭和五十二年度特別会計予算及び昭和五十二年度政府関係機関予算、以上三件について公聴会を行います。  この際、御出席の公述人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  公述人各位には、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。昭和五十二年度総予算に対する各位の御意見を拝聴し、予算審議の貴重な参考といたしたいと存じますので、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただくようお願い申し上げます。  次に、御意見を承る順序といたしましては、まず木下公述人、次に渡辺嘉藏公述人、続いて渡辺省吾公述人の順序で、お一人約二十分内で一通り御意見をお述べいただき、その後委員からの質疑にお答えを願いたいと存じます。  それでは、木下公述人お願いいたします。

木下和夫大阪大学名誉教授

○木下公述人 昭和五十二年度総予算について、公述人としての私見を申し上げます。  私の公述は、明年度における税制改正案を中心として申し述べまして、歳出予算につきましては税制改正に関連する部分についてのみ触れることといたしたく存じますので、さようお含みおきくださいますようお願いいたします。  さて、明年度の税制改正案の内容は、所得税について各種所得控除の引き上げにより負担の調整を行いますとともに、他方において、利子配当課税の特例の見直し等の租税特別措置の整理合理化を進め、交際費課税を強化したほか、印紙税、登録免許税等の税率の引き上げを行う点などから見まして、わが国の国税体系の中期的な見直しの展望に立ちつつ、急速な変化に伴うところのさまざまの摩擦要因を回避しながら徐々に見直しを具体化する初年度の改正案としては、おおむね妥当であると判断をいたします。  さて、その後、新聞報道等によりますと、国税所得税の減税規模をさらに拡大して一兆円台とすべきであるという意見をめぐって、当委員会における最も重要な係争点になっていると承っております。  私の承知いたします限りでは、一兆円の所得減税を主張される場合の政策目的、次にその政策の有効性、さらに税制のみならず予算の総体から見た立論の整合性等の見地から若干の疑問を感ずるところがございますので、この点について、いささか詳しく私見を申し述べたいのであります。     〔委員長退席、栗原委員長代理着席〕  第一の問題点は、一兆円所得減税の政策目的についてであります。  すなわち、大幅減税が所得税について行われるべきだと主張されますとき、それは景気浮揚、そして恐らく個人消費の増大を目的としていると推察されます。そこで、当面の日本経済の状況に関する客観的な判断を基礎にいたしまして、果たして個人消費を大幅に増大させることを目的とする需要調整策が正しいのか、また必要であるのかという点がまず検討されねばならないと思います。確かに、昨年から引き続いております景気の中だるみに対して、強力な景気刺激の必要性を主張される意見もございます。しかし、私の判断では、目下の情勢はわが国が低成長経済の定着するまでの移行過程のさなかにあるのであって、景気回復の姿が高度成長期のそれとはきわめて異なってきているために、回復の足取りは必ずしも順調でないと判断をいたしております。また、事実、景気は上昇過程に間違いなくあるのであって、ここで強い刺激を与えることは今後の経済運営にとって決して好ましいことではないと考えます。この意味で考えますと、新年度予算における公共事業費の対前年比二一・四%の伸びと申しますものは、国民所得計算ベースで見ますと、政府固定資本形成の伸び率約一六%に相当するわけでありまして、この増加とあわせ考えるべき国税、地方税初年度計四千三百二十億円に上る個人所得課税中心の減税は、歳入歳出両面における景気刺激としてこの程度で十分あるいは十分過ぎる措置だと判断をいたしております。  その理由の中から重要な点を申し上げます。  現在のところ、最も望ましい政策はモダレートな景気回復であります。わが国の経済の現況は、一部の人々の言うように危機的状況にあるとは考えないからであります。  さて、減税と政府支出増加とを通ずるいわゆるフィスカルポリシー、狭義の景気刺激のための財政政策、安定のための財政政策の手続は、理論的には一九四〇年代以後に主として米国で開発された手法でございます。その背景には、いわゆるケインズ経済学的な諸条件が置かれております。しかし、わが国の現状あるいは先進工業国の現状における経済環境は、この基礎、前提に立って理論を進めることが具体的には必ずしも正しくないものとなっております。その理由はなぜか。すなわち、生産設備あるいは労働供給にゆとりがあって、また原材料の不足もないという状況、すなわち供給面に制約条件がないという環境におきましては、物価上昇をもたらすことなしに景気浮揚に役立たせ得るという理論的背景があるわけであります。しかし、このような状況が、さらに石油危機以後の物価と賃金との状況をあわせて考えますと、いま述べましたような供給面における制約条件はますます厳しくなっており、かつ生産物価格を引き上げようとする動機はきわめて多様になっております。恐らくこういう環境のもとにおいて物価を上昇させることなくして景気を刺激し、かつ、どの程度の成長率まで持っていくことが具体的に可能であるかという点になりますと、わが国の一部における論調あるいは多くの学者、エコノミストの主張というのはかなり誇張が多い、かつ、その意見については必ずしも良心的な意見ではないと私は感じるのであります。別の言葉で申し上げれば、財政手段によって有効需要を増大させましても、それは短期的には生産や雇用の増大をもたらすかもしれませんが、しかし一両年後には物価の上昇を刺激する可能性あるいは賃金、物価の悪循環を生じる可能性がきわめて強いのであります。また、これを抑えるために政策を発動するということになりますれば、再び不況が再発する恐れがきわめて多いのであります。  第二の問題点は、以上述べましたような理解に立つといたしましても、政治的判断という立場からは、減税と財政支出増加との組み合わせば国民一般に歓迎されるだろうという判断が成り立つかもしれません。確かに政治的意思決定のむずかしさというものは、長い目で見た国民の利益を中心にかなり厳しい政策を打ち出すか、あるいは当面目先の拍手を受けるかといういずれかの道を選ぶというきわめて困難な課題を持っていることは私もよくわかります。  ただ、ここに政治家がいかなる判断をしたかという実例といたしまして御参考に供したいのは、すでに物価上昇率がわが国よりはるかに高いイギリス、しかも本年一月の失業者は百三十四万と伝えられるイギリスにおいて、カラハン首相が昨年九月二十八日、英国労働党大会で行った演説の一節、あるいは景気刺激を強要するところの米国政府に対して、西独社民党のシュミット首相がこの一月二十四日に反論を加えたその内容というものを見てみる必要もあろうかと思います。すなわち、カラハン首相は次のように言っております。「減税と政府支出増大とは経済の中にインフレ要因を持ち込むことであって、それに続く結果は失業の増大である。」という言葉であります。また、西独は御承知のように、物価の上昇の点においてはわが国よりすぐれております。昨年十一月の消費者物価の上昇率は三・七%にとどまっておりますが、しかし失業率はすでに本年の一月において五・五%に達しておる状況にあります。この状況のもとでシュミットはどう言っておるかといいますと、「西ドイツはいかなる形態にせよ、税制による景気刺激策はとらない。一九七五年の所得税減税の経験が示すように、消費者は減税の結果貯蓄を行い、消費をふやすようなことはしない。」とまで言っておるのであります。  さて、第三の問題点はいわゆる物価調整を行って、実質可処分所得を維持するという政策目的から大幅減税を主張する意見についてであります。  固有の意味の物価調整は、所得税負担をインフレの影響から遮断することを目的とするものでありますから、課税最低限だけでなく、本来は税率適用所得階層区分、いわゆるインカムブラッケットでありますが、これを物価上昇率に等しい割合で拡大することが最も重要な措置であります。そして、その上で所要税収の確保を図る必要があるという問題を考慮いたしまして、各ブラッケットに適用される税率を変更するという措置が加わるという二段の手続が必要であります。この第二段の手続が必要となります理由は、税率を据え置いてブラッケットの調整を行います場合には、所得税制に組み込まれておりますところのいわゆるビルトイン・スタビライザーの効果を弱めるというその結果、税収の著しい低下をもたらすからであります。  以上のように^物価調整の固有の存在理由及び考え方というものを前提いたしますと、これらの措置の結果、特定の所得階層に属する人々の租税負担は従来より増加する場合があり得る、また所得税収総額については増収になる場合が大いにあり得るのでありまして、固有の意味の物価調整が必ず常に減税に結びつくものではございません。  このような見地に立って、従来わが国で行われてきた課税最低限の引き上げを主とする物価調整は、その長所と短所が半ばしております。すなわち、その長所の方は、所得税の累進性を強化したという点にあります。欠点の方は、先進諸国に比べてわが国の課税最低限の引き上げが実質的にもかつ名目的にも最も高かったために、これらの諸国に比べて所得税収の伸びが強く抑えつけられる結果となったということでございます。  これに関連して申しますと、いわゆる戻し税方式をとれば個人消費刺激効果が強いと考えておられる人々があります。しかし、これは私の議論からは賛成できません。また重ねて、一時的、臨時的な減税にすれば、財源問題との関連をそれほど重大に考えずに済むし、他方消費促進効果が大きいという主張をなさる向きもございます。これらの議論は理論的には立証できないと思います。  すなわち、戻し税方式による臨時的な大幅減税というものは、一見したところ消費の刺激のためには最もよいように見えますが、税務行政上の問題を離れましても、個人の消費を決めるところの個人消費関数はいわゆる税引きの所得である可処分所得によって決まる部分と、将来の所得すなわち予想される所得によって決まる部分とから構成されております。その限りにおきまして、とりわけて一時的、臨時的な減税をやった場合は、前者、すなわち今期の可処分所得を増加させることにとどまるのでありまして、後者の方、すなわち将来の所得あるいは予想される所得については消費刺激効果はゼロでございます。この点、多くの計量モデルに基づくシミュレーションを見てみますと、このような消費の動きの予測というものは余り考慮されておりません。この意味では、むしろインフレ率を抑えて、かつ将来の所得に対する国民の期待というものを増すような政策が実は消費を高めるというここ数年間の実績あるいは経験的事実の方が私は説得力があると思います。また、現在提案されております戻し税方式を検討してみますと、どうも納税額とは無関係に行われるような印象を持ちます。そうであるならば、もはやそれは減税という言葉で説明することはできません。それはまさに社会保障の現金給付でありまして、むしろ財政支出面の問題だと言わざるを得ないのであります。  第四番目の問題に移りますが、一兆円減税の財源問題でございます。いままでのところ、減税財源をどこに求めるかにつきましては、集約された意見というものを手に入れることができませんので、したがって次の点を指摘するだけにとどめさしていただきます。  その一つ。景気刺激を目的とする減税は、それと同時に歳出の増加をあわせて用いた場合に効果は最も大きくなります。したがって、景気を強く刺激したいと仮定いたしますれば、現在のわが国の財政につきましては赤字公債を上積みし、発行する方法が効果は最も大きいというのが理論的には正しいのであります。問題は、巨額の累積赤字を抱える財政運営において、このような方策が中期的あるいは長期的に望ましいかどうかの検討が残されております。これは次に第五の論点として後で申し上げたいと思います。  こういう赤字公債を上積みするという考え方とは全く逆に、行政費の節約や財政支出削減によって減税財源に充当するという考え方は、これは財政による景気調整手段に全く逆行するものでありまして、この点は賛成できません。念のために、私は行政整理の簡素化が必要でないと申しているのではありません。  二つ目の問題は、減税財源を不公平税制の是正に求めるという意見についてであります。  まず、いわゆる不公平ないしは不公正という言葉の持つ内容が現在きわめて多様にかつムード的に解釈される傾向が強過ぎるのではないかと思います。  課税の面で公平という問題を議論いたします場合には、すべては問題を個人の段階に還元して行われるべきであります。たとえば法人税は、一般に生産物の買い手、原料資材の供給者、労働者、株主等にさまざまの形でその負担が転嫁されるというのは、現在のところ学界では一致した意見でございますが、税負担がこのように終局的に個人レベルに帰着するところで公平か否かの判断をすべきであろうと思います。たとえば企業特に大企業が不当に優遇されているという意見があり、また現に残されているところの租税特別措置の中でも不公平が残っておるという議論が非常に強く主張されますが、現在残されておる租税特別措置のすべてが不公平という言葉で割り切れるかどうか、大いに疑問があります。また、昨今では、租税を一種のペナルティーでもあるかのような考え方が非常に強くなっておりますが、私はペナルティーと租税とは全く性格を異にするものだと思います。  およそ課税の公平を議論いたします場合には、恐らく同額の所得を受け取る人には同額の課税を行う、異なる所得を受け取る人々の間には所得が大きい人ほど多額の課税を行うという考え方が基礎になるべきであります。ところが、一般にはそうではなくて、同額の所得であっても、勤労による所得には資産による所得よりも軽く課税しろという主張があります。この主張は、いま申しました公平の基礎論からは出てまいりません。そこでは公平という要請からではなくて、たとえば勤労による所得に相対的に軽く課税することは、勤労意欲を刺激することが望ましいというような資源配分上の政策判断が入ってこなければこういう議論にはなり得ないのであります。  また一方、異なる所得には異なる課税という考え方は、現実には、御承知の累進課税方式を採用するということになります。この場合、いかなる累進度が最も望ましいか、所得がふえるにつれて税がどの程度ふえていくことが最も望ましいかにつきまして、真剣に正面から検討するという場合には、恐らく意見の一致は期待できないと思います。  以上のように、課税の公平について議論をいたします場合には、主観的判断が大いに介入いたしてきますので、真にすべての人々を納得させるような合意に達することはほとんど不可能であります。そこへまた前に指摘いたしましたように感情論が入り込むならば、議論は果てしがないとさえ思うわけであります。  また三つ目の問題でありますが、わが国の税制の今後のあり方を考えます場合には、国際的取引や国際的交流が密接になればなるほど、諸外国の税制との関係を無視できないような状況になりつつある点であります。  目下のところ、法人税の実効税率は、諸外国とほぼ並ぶようになりました。個人の所得税について見ますと、二千万円ないし三千万円の間ぐらいの所得から上の高所得につきましては、英国を除いて先進諸外国よりも高率の税が適用されていることは皆様御承知のとおりであり、かつ中所得以下の所得層については先進諸国よりも低い負担であることは、これは否定できない事実でございます。こういう税制における負担の実態というものを前提にいたしまして、外国との税制の大きなギャップができる。すなわち、あるところには非常に大きな負担をかけるというようなことは、これはヨーロッパで最近行われておりますように、たとえば資本逃避というものを誘因するおそれが、実は誇張した議論ではなくて、大いに考えられるのであります。  また、課税の公平を議論いたします場合、歴代の税制調査会の会長を嘆かせているところのいわゆる社会保険診療報酬の課税標準の特例の問題が国会における議論では余り取り上げられていないという問題、また不公平の一つの大きな柱であると言われておりますクロヨンと言われる問題、すなわち所得の種別によって所得把握に開差が出てこないようにする方途というものが、むしろ積極的に議論さるべきではないだろうかと思います。これは総合課税主義を徹底化するという公平論の中心課題として最も重要な問題ですが、現在の税務行政に対して、この把握の公平さを要求するのは無理な注文だと思います。その能力を超えていると思います。そのためには、米国などですでに久しく採用されているような納税者番号制度の採用が不可欠だと思いますが、多くの方々はこれに反対されます。まして、総合課税を強く主張する、公平論を強く主張される方が納税者番号制度の採用に反対されるならば、私は何をか言わんやであります。  さて、四つ目の問題に移らしていただきます。減税財源を法人税の重課に求めようとする意見についてであります。  この意見が主張いたします増税措置は、細かい多岐にわたる措置を伴っておりますが、要するに法人特に大企業を中心として法人税の負担をふやそうという考え方であります。  確かに、大企業を中心とする法人税の増徴と所得税の減税という組み合わせば、表面的にはこれは広くアピールするように思われます。しかし、私の考えでは、経済の望ましい安定は適度な成長の維持であって、その成長の原動力は、三千万を超えるところのサラリーマンの大部分がその職場としその所得を得ている民間企業における発展、特に設備投資の適度の増大に求められなければならないと思います。とりわけて、目先の問題ではなく、中長期の日本経済のあり方を優先させて考えるという立場に立ちますならば、現在他の先進諸国で講じられている措置と同じように、民間設備投資の水準をいかにして望ましい高さまで持っていくか、そのためにはどういう方策があるかをむしろ検討すべきであると考えております。法人税の増税は、恐らく確実にいま申しましたような設備投資意欲を喪失させる、失わせる、弱める方向に作用しますでしょう。したがって、また景気回復とは逆行する方向に作用するでありましょう。また、法人に重課して所得税減税に回せというのは、むしろ経済の深い絡み合いを理解しない素朴な心情に訴えるという効果はあるかもしれません。しかし、前に述べましたように、法人税の一部が実は生産物価格の上昇となって転嫁される可能性は、これは非常に強いのであります。すなわち、いま申しました法人税における増税と所得減税とをかみ合わせるという議論は、最も簡単な財源調達法のように一見見えますけれども、実は一国の資源を生産的投資から引き揚げて、消費的支出により多く振り向けようとする政策だと言えるのであります。また、新しい成長軌道へ乗せる道であるとは言い得ません。むしろその結果、雇用不安及びインフレ圧力をもたらす政策だと言わざるを得ないのであります。  最後に、第五の問題点に移ります。均衡予算主義あるいはできるだけ早く財政を健全化させたいという方針が、時に財政エゴだと非難されるという問題をめぐっての議論であります。  この財政エゴだという意見によりますと、いま赤字が巨額になったとしても、そのために成長率を高めることができれば、赤字は数年後には税収増加によって相殺されるから心配は要らないという考え方であります。いわゆる近代経済学者や計量経済学者にはこの意見が多く見られます。  しかし、これらの意見は、財政の実態について余りに無視し過ぎておる。すなわち現在及び今後の日本経済における財政運営は、彼らが述べますような筋書きに沿って答えが出てくるような状況にあるのではありません。すなわち昭和五十年度の三兆五千億円の税収不足の後遺症は、歳出の伸び率、とりわけて新規の施策を強く抑制できると仮定いたしましても、今後十年程度の期間内に治るような病状ではございません。この病状は基本的には実質成長率の低下によるものであり、また現在の租税構造の特殊性に由来するものであると考えております。  そこで現在の税制をそのままにしておいて変更を加えず、このように長期的な赤字から脱出し得る条件を探すとすれば何があるか。現実的な税収の所得弾性値を前提といたしまして計算をいたしますと、名目成長率が年々同じ率でふえるという場合を仮定いたしまして、連続表示で一七%あるいは一八%を少なくとも超えることが不可欠の条件であります。この場合、もちろん潜在成長力をどのように見るかにもよりますけれども、仮にGNPデフレーターは少なくとも一〇%以上となる状態を意味するのであります一なぜならば、名目は一七であり、実質がせいぜい七であると仮定すれば、GNPデフレーターは一〇%になります。少なくとも一〇%以上のGNPデフレーターの上昇が必要であるということであります。もっと具体的に一つの例を申しますと、GNPデフレーター一〇%の上昇は、たとえば卸売物価約七%の上昇及び消費者物価約二二%以上の上昇でないとつじつまは合いません。すなわち多年度ないし中期的に予算は均衡すればよいではないかという主張は、確かに理論としてはそうであっても、わが国の現実には、いま申しましたような非常なインフレを前提としない限り、絵にかいたもちにすぎないのであります。  また財政による景気調整政策は、御承知のように、不況期には歳出増と減税、好況期ないしはインフレ期には歳出減と増税という左右相称の政策の総体を指しております。ところが、不況期における減税と歳出増はだれも反対する人はおりません。しかし、インフレ期あるいは好況期における増税と歳出減とにはどのような障害があるか。これはむしろ皆様の方が御承知かと思います。  そうしますと、諸外国でも実は程度の差はあれ似たような状況であればこそ、景気の状況において特定の時期に減税と歳出増をかみ合わせ、特定の時期には増税と歳出減とをかみ合わせるという政策がなかなかとりにくいがゆえにこそ、税制及び歳出面におけるいわゆるビルトイン・スタビライザーに頼らざるを得ないという議論になっておる事情もおわかりかと思います。  財政の専門家の間では、当面の政策のあり方については、かなり意見が分かれております。しかし今後、中長期的にわが国が福祉を中心として歳出をふやしていくという必要がある限りは、中長期的には相当程度の租税負担の増加が必要であるという点においては、財政の専門家の間にはかなりの意見の一致を見ております。この点から申しますと、現在、減税の幅を大幅に、大規模にする、そして赤字を非常に大きく拡大するということになれば、それだけますます後年度に必要な増税の幅は大きくなるという結果が生まれることを認識しなければならないと思います。  明年度の租税負担率は、国民所得に対して、国税、地方税合わせて約一八・二%になると言われております。また所得税の課税最低限は、標準世帯の給与所得者で二百一万五千円になります。いずれも欧米先進国に比べて一般的負担が低いのであります。ただし、先ほど申しましたように、二千万円を超える所得税の部分については、イギリスを除いて最も高いということは、ここでつけ加えておかなければなりません。そして現在の税制のもとでは、景気が回復したとしても財政の経常収支になお大幅の赤字を計上せざるを得ない状況にあることは御承知のとおりであります。  このような財政収支の構造は、公共部門の活動に対する国民の費用分担が諸外国に比べて低いという事実を否定するわけにはいかないのであります。また今後、福祉関係を中心として歳出を伸ばしていくとするならば、現在の状況に加えて税負担をふやさざるを得ない。もし福祉の上昇を望まないならば、これは税負担はあるいは低下してもいいかもしれません。また、このような状況は、高度成長期に税収の三分の一以上も法人税に依存してきたという従来の税収構造が低成長とインフレとの作用をもろに受けて、その結果税の比重が非常に低下したという事実も見逃してはならないことでございます。  以上、述べましたような、大きく分けて五つの問題点を考慮いたしますときに、現在主張されております大幅減税論に対しましては、私は強く反対の意向を表明したいと思います。  終わります。(拍手)

栗原祐幸自由民主党

○栗原委員長代理 どうもありがとうございました。  次に、渡辺嘉藏公述人にお願いいたします。

渡辺嘉藏岐阜県中小企業団体中央会常任理事

○渡辺(嘉)公述人 私は、中小企業者及び広く一般の、その中小企業に働く労働者、そういう働く国民的な立場から、昭和五十二年度の国家予算について、二点にわたって意見を申し上げたいと思う次第であります。  まず第一は不況対策ですが、これはいまさら私が申し上げるまでもなく、あらゆる国内、国外の重要な政治課題がこの景気回復にあることは言をまたないわけですが、それがために、政府も本予算では、景気回復をより一層確実なものとするため公共事業費について拡充すると述べられまして、それの所要の予算をそれぞれ公共事業を重点に、道路、港湾、橋梁等の大型プロジェクト事業を重点に景気対策を講じておられるのであります。それの経済効率も当然有効であることは言をまちませんが、しかし私どもの立場からこれを見ますと、まずそれは土木建設業に偏重した回復策であるということが一点、言えるわけであります。第二番目には、大型プロジェクト事業には、しからばそれらの土木建設業の中でも中小企業と言われる人々は、なかなか仕事そのものに入り込めない、そういう欠陥を持っておるわけであります。今日の景気はあらゆる業種においてその購買力の低下を来して不況に苦しんでおるのが実情であって、一土木建設業のみを対象にした回復策というものはどうしても隔靴掻痒になり、あるいはまた、風が吹けばおけ屋がもうかるというような幾つかの段階を経なければ、時間的なものを経なければ、全体的な購買力の向上というところにならないのではないか。だから、緊急かつ当面の対策としては欠陥があるのではないか。  今日の不況は、国民総支出の五〇%を超えておりまする個人消費の購買力低下より生じたものであって、私どもの実感からいくと、繊維、衣料品から、あるいはまたくつ屋さんも駄菓子屋さんもスーパーまで、あらゆる産業において不況の波をもろに受けておるわけでございまして、特にドル・ショック以来三年にわたるこの不況は、いままではどうにか企業内で食いつないできたところの中小企業等についても、昨年以来の不況、特にこの一、二月の冷え込み、あるいはまた三月の納税期等をピークといたしまして倒産が激増すると予想せられるのであります。  岐阜県のような中小企業の多いところの実態を申し上げますると、昨年度では百五十六件の倒産がありました。本年度は約二百件が予想され、一月においても十六件の倒産をいたしました。岐阜県の倒産は平常指数で年百件としたものでございます。百件を超えるとピークとしたものでございますが、この岐阜県の指数は全国に置き直しますと大体一%の地位を占めておりまするので、全国的に見ますと昨年度一万五千件、本年度は二万件を想定させる数字でございます。  一般国民の購買力低下を百貨店の売り上げの前年対比で見ますると、四十九年度が前年対比伸び率が一八・九%であったものが、五十一年度のそれは八・六%と激減をいたしておるのであります。これは五十年、五十一年におけるところの低い賃上げ率並びに少額のボーナス等々による影響も否定できませんが、同時に四十九年度におけるあの大型減税、平年度化いたしますと一兆七千二百七十億に上るあの大幅な減税による購買力刺激も軽視することはできないと思うのであります。  岐阜市におきまして百人前後の従業員を持った二つの企業の源泉税を参考に申してみますると、ある縫製加工業で九十九人の従業員を持っておるところですが、四十九年度は一人当たり五万三千九百十九円の源泉税でございました。これが五十一年度においては八万一千百二十三円と上がっております。あるいはまた過誤納で還付を受けました人は、四十九年は六十五人でありましたが、五十一年になると四十九人に減っております。あるいはまた総合業種で比較いたしますと、四十九年度は一人当たり十万六千九百九円の税金が五十一年度は十二万四千百五十八円と上昇し、過誤納で還付を受けた者は四十九年度に五十一人、六十万五千九百二十九円の総額を還付を受けておりましたが、五十一年のそれは三十九人、三十七万一千百六十九円と減少いたしております。このように税金の戻りは減り、納税額そのものは上昇いたしておるわけでありますが、こういう実態は今後の政策立案の場合に多くの示唆を与えておると思うのでございます。  すなわち、景気対策は公共事業一本やりというものではなくて、あらゆる産業に波及効果を及ぼすであろう減税による購買力の刺激という波及効果の方をより重点的に考えるべきではなかろうか。特にこの減税に当たっての方法についても、今度の政府のとっておられる三千五百億の減税が控除の引き上げ等々に置かれておるわけでありますが、そのような減税効果はどうしても年末調整あるいはまた翌年度の三月十五日の確定申告のときに効果をあらわすものでありますので、もちろんそれはその月々の源泉税においても効果はありますが、大きな効果はそのときしか期待できません。私どもが生活実感として味わうことは、源泉税がいわゆる年末調整によってごぼっと返ってきたときのあのうれしさ、この返ってきた金によって何か女房のシャツでも子供のおもちゃでもひとつ買ってやろうかというあの気持ち、これはやはり国民全体が持っておるものだと思うわけです。こういう生活実感から考えましても、この減税の方策は、戻し税方式が今日の景気対策には最も効果が期待できるのではなかろうか。それがために、いま申し上げましたようなそういう五十一年の重税といいますか増税の実態から考えて、少なくとも本年六月に五十一年分の戻し税的な考え方で一定額を国民に還付するというような措置、あるいはまた年末調整でそれをまた調整するというような措置、こういうことを行うことによって、この所得税一兆円減税の断行による景気回復策は個人消費の拡充によって全産業に効果をあらわすものであると考えて、私ども強くこれを要望する次第であります。この財源については、第三点で申し上げるつもりです。  次に、この不況対策の第二点といたしまして、航空自衛隊で有名な各務原市、私どもの地元ですが、あそこで昨年末に高井理研株式会社という中小企業が倒産したのであります。この会社は、資本金千五百万円、従業員六十人、代表者は高井三郎という方で、ほうろう浴槽や自動車の部品を生産いたしておったのでありますが、この会社がなぜつぶれたか。これは大手プラントメーカーの手塚興産が昨年十月五日不渡りで倒産をいたしました。これはもうすでに御承知のとおりですが、この手塚興産と高井理研との間に六千二百万円に上るいわゆる融通手形と称されるものが数年前から交換をされていたのであります。大手の上場会社がまさか融手を出しているとはだれしも想像できないのでありますが、この六千二百万円の高井理研への融手が十月五日に不渡りになったのであります。高井理研はその翌々日の十月七日に文字どおり関連倒産をいたしました。そしてこの手塚興産は五十一年十二月二十一日に会社更生法の適用を受けまして救済され、目下更生手続中であります。高井理研は全資産を競売に付され、従業員はなけなしの退職金で離散し、完全に消されようといたしておるのであります。  ここで問題は、第一番は、上場大企業が平然と融通手形と称されるものを乱発し、小企業を巻き込んで関連倒産をさせておるという実態、第二番目は、この高井理研の担保は、市中銀行が一番抵当で取りまして、二番を商工中金が取りまして、三番目には大手の商社が取っておる。この実態の中から、商工中金のその担保は川崎岐阜協同組合の組合金融による転貸しであったわけであります。それがために同協同組合は商工中金への返済と無担保の状態のために、商工中金は一円も損をいたしませんが、協同組合がこれをまるっきりかぶる、こういう結果が出ておるのであります。  協同組合は、言うまでもなく、中小企業が協同いたしまして中小企業を文字どおり守るためにお互いが相互扶助で組織いたしたものであります。ところが、このように市中銀行も商工中金も傷がつかず、協同組合を構成しておる中小企業と該当の中小企業そのものと二重に泣かされる、こういう結果であります。そして大企業は会社更生法の適用を受ける。中小企業は文字どおり冷えていく。こういう制度を改めるとともに、いま申し上げました商工中金が組合金融を通じて転貸しをするときには、当然これは商工中金もその一半の責めを負う意味において、協同組合と商工中金は同一順位の共同担保に入れるというような措置が必要であると思うのであります。  これがためにも、関連倒産防止のためにいろいろの施策を講じておられるのでありまするが、はなはだ実効が伴っておりません。この際、中小企業も救済できる措置並びに関連倒産防止のための具体策をこの予算編成を通じて講ぜられるべきであると思うのであります。  第二は中小企業対策ですが、今年度の中小企業対策予算を見ますると、昨日の公述人の中でも述べておられたのですが、私はちょっと観点が違うわけですが、総額千八百二十四億の中小企業予算が組まれておりまして、前年対比で一六・四%の伸びをいたしております。しかし、この中で大蔵省所管の分がありまするので、これを除きますると千三百三十七億、これが中小企業庁の所管であります。これは、伸び率を前年対比いたしますると一一・八%でございます。予算全体の伸び率が一七・四であることと比較いたしますると、あるいはまた物価の上昇等を差し引きますると、文字どおりこれでは中小企業予算は伸びておらない。横ばいである。これでは、新しくスタートされた福田内閣は、中小企業に対するまさに切り捨て的な冷や飯予算と言わざるを得ないのであります。中小企業庁はもっと中小企業のためにがんばってもらいたい。要求額千四百十一億、この満額とっても一七・九%でございます。今後修正、補正等によってこれの充足をお願いをいたしたいと思います。  続いて、先ほどの関連倒産等との関連で、中小企業対策として手形保険制度の創設を要望したいと思うのであります。かねてからこの件は通産省でも検討されたのですが、まだまだ日の目を見ておりません。今日のような史上空前の不況、倒産のもとにあり、先ほど申し上げた手塚興産の関連によるところの中小企業の倒産等からお考えいただいても、今日中小企業は、手形をもらってもその手形は果たしてどういうような手形であろうか、回り回ってきますると、その手形そのものの性格が全くわからなくて、まさに薄氷を踏む思いで信用取引を行い、営業を行っておるわけであります。それがために、この際いろいろな問題点はあると思いまするが、この手形保険制度を英断をもって創設をせられたら、これらの信用取引は安定かつ順調に運営できるのではなかろうか。  一つの私案として申し上げまするならば、その手形割引をする場合に、その半額までを強制保険という形で保険料を徴収し、この保険制度によって事故のときには補充する、その残額については任意保険制度にしておいて、必要によって民間等でこの保険制度を生かしていく、こういうような方法を講ずるならば、この手形保険制度は必ず今日の不況下における中小企業に対しては、あるいはまた不正手形の防止あるいはまた関連倒産の防止等には大きな歯どめの作用を来すものと考えられます。かような意味合いから、この手形保険制度を早急かつ実効を持たしてお進めいただきたいと思います。  並びに中小企業分野確保に関する施策であります。これはかねてから強調されておるのでありまするが、今年度予算要求の中には、中小企業庁は七千三百万円要求せられたが、三千六百万円と半分以下に削られておるのでございます。やらにゃいかぬ、やらにゃいかぬと言われておりながら、やらぬうちに、過去は個人企業のシェアであったパン屋さんでも、清涼飲料水でも、牛乳屋さんでも、いまではパンはフジであるとか敷島であるとか山崎であるとかという大手が独占し、あるいはまた清涼飲料水は、私どもの地元にもたくさんのラムネ屋さんがあったわけですが、すべてこれがコカコーラとなり、ペプシコーラ、キリンレモン等に押されて、いまでは消滅をいたしております。牛乳でも、明治、森永、雪印というような大手に占められております。今後予想されるものに、生菓子、もやし、豆腐、クリーニング、軽印刷、紙器、縫製加工等々が侵害される危険を多分に持っておるのでございます。この際、業種指定を入れたところのこの中小企業分野の確保については早急に措置を講じないと、もはや中小企業は完全に下請になるか、そうでなければ消滅するか以外に道はないと思うのであります。  あわせて、これら中小企業の育成政策として近代化、高度化の施策を講じてこられたのでありまするが、これらの近代化、高度化、そして協業化してきたところの中小企業者は、今日の不況の中で大変な苦しい金融情勢のもとにありまするので、これの据え置き期間二年間をもう二年ほど延長するというような政策を講ずるべきであると考えるのであります。総体的に雇用労働者の六割を超える中小企業におけるところのこの施策ははなはだ貧困の一言に尽きまするので、今後これの拡充、充足を期待いたしたいのであります。  第三番目には、税収における問題点であります。  これは幾多の公述人も述べておられまするので、いろいろな意見はあると思いまするが、私の見る限りでは、私のこの問題について二十数年携わってきた実感から申し上げますると、法人税が個人事業所得税より総合的に有利である、それがために個人事業所得者が個人経営から法人成りをどんどんしていくということは、これは周知の事実であります。いまは個人申告所得税と法人の比較をする時間の余裕はありませんが、法人税一つについて見ましても、いろいろとこれについても問題はあります。政府におきましては、法人税はすでに徴収の限界に来ておる、こういう御意見もあり、法人税を増徴することは資本蓄積を鈍らせ、経済活動をバックさせるものである、こういういろいろな御意見もあると思います。またこの法人の性格等につきましてもいろいろな意見があることは否定できません。しかし、今日の日本の法人税法を見てみますると、この税率は、七百万円以下の所得の場合——もちろん一億円以下の資本金とかいろいろな制約はありまするが、それを一応抜きにいたしましても、七百万円以下の所得には二八%の税率、それ以上の所得に対しては四〇%の税率、後は天井知らずの一律課税になっておるのでありまするが、今日の法人の実態はもはや過去の一部の中小企業におけるような法人即個人、自然人の延長というような、そういうものではなくて、完全に法人が法人を構成し、法人格が自然人を支配しておるという、こういう実態は否み得ないと思うのであります。三井物産の社長が益田孝さんであろうと、あるいはまた池田芳蔵さんであろうと関係なく三井物産は存続をいたします。まさに法人は手段ではなくて目的そのものに近い状態にあると言えるのであります。それがために法人の実体に課税するという観点から、現行の法人税法は個人所得並みの高額累進税率を適用すべき時期が来たのではなかろうかと思うのであります。  かつて大蔵次官でありました吉國さんの計算によりますると、しからば日本の法人税は外国に比してどのような地位にあるかということについての実効税率をあらわしておられるのでありまするが、これによりますると、日本の法人税は実効税率において三百五十万円以下の所得者は三四・六六%、三百五十万から七百万においては三六・四五%、七百万円以上は四九・四七%であると計算をしておられます。それがためにアメリカのそれと比較いたしますると、アメリカの七百万円以下の所得は実効税率二七・二%、七百万から千四百万円までは二九・〇二%、千四百万円を超えると五二・六八%であると述べておられるのであります。こういうふうに考えてまいりますると、この法人税率は小法人、小所得者ほど日本においてはアメリカに比して重税であり、高額になるほどアメリカに比して低額であるということが明らかになっております。この際、法人税の税率は、七百万円以上一律四〇%というこの据え置きを少なくとも千五百万円以上は四五%、二千五百万円以上は五〇%に引き上げ、七百万円から千五百万円の間は配当軽減税率の手直しをする必要がある。とともに、留保所得に対しましては、中小の法人のみに現在は控除後に一定の率で法人税の加算を取られておるのでございまするが、少なくともこれは、自己資本の形成能力の弱い中小法人の留保課税はむしろ廃止すべきである、そして逆に大法人の留保所得こそ課税の対象にされるべきではなかろうか。あるいはまた、配当の二重課税排除に伴う各種の措置は、この際当然これらの考え方から全廃すべきではなかろうか、かように考えるのであります。  これらの財源によるならば、冒頭に申し上げました一兆円所得減税の財源は十分にこの法人税で賄い得るとともに、この法人税がこのような重課になった場合には、果たして社内留保を見合わす、あるいはまた経済成長にブレーキの役目を果たすであろうか、あるいはまた法人税の転嫁が雇用者になされるのかあるいはまた物価になされるのか、いろいろな論議はあると思いまするが、私どもが携わっておりまする企業の実態から、こういう法人税率を出しても、決して設備投資をこれによって忌避するような状態では断じてあり得ない。このことを私どもは実際の経営の実態から申し上げる次第であります。  最後に、これら中小企業の集合体として組織化政策の中から生まれました企業組合というものがあるのでありまするが、この企業組合については一般法人並みの法人税課税が行われておるのでありますが、これは根拠法そのものから考えましても、あるいはまた制約等から考えましても完全に協同組合的な性格を持った法人でございます。これの本質的な実体から、これの課税は当然特別法人扱いが妥当であると考えます。それがために、さきの参議院の大蔵委員会におきましても、この種の企業組合には特別法人扱いをすべきであるという請願が採択をされておるのであります。この際、これらの請願の趣旨に立ちまして、政府は一日も早く企業組合の特別法人扱いを実施すべきであると考えるのであります。  以上、三点にわたりまして意見を申し上げましたが、この際、緊急かつ不可欠な課題として、景気回復のための一兆円減税を初め、中小企業育成並びに中小企業救済の諸施策を講ぜられることを強く要望いたしまして、私の意見にかえます。  以上です。(拍手)

栗原祐幸自由民主党

○栗原委員長代理 どうもありがとうございました。  次に、渡辺省吾公述人にお願いをいたします。

渡辺省吾日本証券業協会会長

○渡辺(省)公述人 日本証券業協会の渡辺でございます。  本日は、昭和五十二年度の政府予算案につきまして意見を申し述べよとのことでございますので、いささか所見を申し述べて御参考に供したいと存じます。  初めに、景気の現状を私どもどう見ておるかという点につきまして申し上げますと、わが国の経済は、昨年年初以来長期にわたる不況を脱却いたしまして、輸出の好調を背景として立ち直りの兆しを見せてまいりました。しかし、その輸出の増加が設備投資、個人消費などの内需の拡大に必ずしも順調に結びつかなかったこともございまして、景気は昨年後半以降いわゆる中だるみの現象を呈するに至っております。こうした状況下にありまして、わが国経済は対内的には雇用面の改善がおくれる、企業倒産が増加する、投資マインドが沈滞化するといったような問題を生ずるとともに、対外的には輸出依存度が高まりまして、これについてEC諸国を初め海外諸国からの批判を生むに至っておるわけでございます。  さらに、今後の情勢を見ますると、EC諸国の輸入規制、OPECの原油価格の引き上げなどの影響もございまして、経済の前途は必ずしも楽観を許さないというふうに考えております。国内における雇用面の改善等の諸問題の解決を図りますとともに、わが国経済が厳しい国際経済環境のもとにありまして、国際協調を図りながら世界経済の発展に寄与してまいりますためには、国内の需要を喚起し、景気を着実な回復軌道に乗ぜていくことが目下の緊要の課題と存じます。  一方、物価面を見てみますと、消費者物価はこのところやや強含みに推移しておりますけれども、卸売物価の方は、本年一月にはマイナス〇・一%ということで、一年七カ月ぶりに前月比でマイナスになるなど、総じて安定的に推移しておると思います。  したがいまして、今後の経済運営におきましては、引き続き物価動向に注意を払っていく必要があることは申すまでもございませんけれども、それにも増して、景気の着実な回復及びそれを通じて国民生活の安定化を図っていくことが強く望まれると存じます。  このような観点から五十二年度の予算案を拝見いたしますと、厳しい財政環境のもとにありまして、景気の回復と国民生活の安定化という当面の重要課題にできる限りの配慮がなされており、総じて適切なものと私どもは考えます。  まず、一般会計予算の規模を見ますと、約二十八兆五千億円と前年度当初予算に比べて一七・四%の伸びとなっております。これは五十一年度予算案の対前年度比一四・一%増を上回るものでございます。  特に、需要創出効果の大きい公共事業費につきましては、二一・四%増と大幅に伸びておりまして、今回の予算案が景気の回復に重点を置いているということがよくうかがわれるわけでございます。こうした公共事業費の拡充は、住宅、下水道、環境衛生設備等、国民生活の基盤となる社会資本の整備を推進するものでございまして、資源の適正な配分を通じて国民生活の質的向上を図るという観点からきわめて望ましいものであると存じます。  さらに、今回の予算案におきましては、社会保障の充実、教育、中小企業の近代化等々国民の福祉の充実のための緊要な経費につきまして重点的に財源が配分されているほか、資源エネルギー対策の充実や経済協力の推進等、時代の要請にこたえる施策が講じられていると存じます。  また、地方財政の運営に支障がないように特段の措置がとられておりますことは、地方財政安定化の見地から適切なものと存じます。  一方、歳入面について見てまいりますと、国民の負担の軽減を図る見地から、三千五百三十億円の所得税減税が行われることとなりましたことは、今日のような厳しい財源状況のもとにおけるだけに大いに評価できることと存じます。  しかし国債につきましては、国債依存度は前年度の二九・九%から二九・七%と若干減少いたしましたものの、発行額は八兆四千八百億円と前年度に比べまして約一兆二千億円の増加となっております。このような国債の大量発行が続きますことは、財政の健全化の見地からは好ましくないものであることは申すまでもございませんが、景気の着実な回復を図ることが緊急な課題であることにかんがみまして、これもやむを得ないものと思われます。  以上、今回の予算案は、わが国経済の当面する困難な事態を乗り切っていくために総じて適切なものと考えられます。  次に、予算の運用、執行について意見を申し上げたいと存じます。  企業の業績は、全体的に見ますと昨年三月期以降回復基調を見せてきておるのでございますが、これは昭和四十八年秋のオイルショック以降の、かつて例を見なかった深刻な不況の体験を通じて企業が血のにじむような合理化努力を重ねた結果であろうかと存じます。しかしながら、前にも申し上げましたとおりわが国経済は、昨年後半以降中だるみの現象を呈しております上に、輸出産業の好調に比較して、内需不振の影響を大きく受けました基礎資材産業はいまだに低調を続けておりますように、業種によって景気回復に跛行性が見られるのでございます。  このような事情を考慮いたしますと、予算の早期成立が何よりも強く望まれるところでございます。さらに、予算の執行に当たりましては、支出の効果があらわれてくるまでに、御承知の相当のタイムラグがあることを考慮いたしますと、早目早目に適切な措置を講じてくださいますように、十分な御配慮をお願いいたしたいのでございます。  また、年度当初から国債の円滑な消化を図ってまいりますためには、予算と表裏一体をなしております財政特例法案につきましても、早期成立が特に望まれるところでございます。この点は、昨年特例法案の成立がおくれまして、国債の発行が年度当初から計画的に行われず、景気の中だるみに輪をかけたということにもかんがみまして、特に強くお願いしたいと存じます。  反面、景気の回復に伴いまして、企業の設備投資等を中心に民間の資金需要が増大してまいりました場合には、いわゆるクラウディングアウトの問題が生ずることも懸念されるところでございます。そのような事態が生じないように、きめ細かな御配慮を強く要望いたします。  次に、国債問題について意見を申し述べさせていただきたいと存じます。  昭和五十年度から国債の大量発行が行われ、国債引き受けシ団による市中消化額は、昭和五十年度には額面ベースで四兆五千百億円、五十一年度には補正後で六兆四千七百億円に上っております。このため、市中金融機関による国債の保有額は、昭和四十九年度末の一兆九千億円から五十一年十二月昨年末には八兆九千七百億円というふうになりまして、また個人等の保有額も急増しておるのでございます。今後も引き続き大量の国債が発行されますと、その発行残高もまた急増してまいりますので、わが国経済の健全な運営を図る観点から、政府におかれましても適切な国債管理政策を確立されることが特に望まれます。この点につきましては、今国会におきましても多くの先生方からその緊要性を強く御指摘になられておりますことに対し、心から敬意を表する次第でございます。  国債管理政策を、私ども国債引き受けシンジケート団を構成する者の立場から見ました場合、国債の円滑な市中消化を維持すること、なかんずく、個人消化の促進を図ること、この点が第一点、及び国債の流通市場を整備すること、この二点が特に重要であると存じます。  国債の個人消化の額は、昭和四十年度に長期国債が初めて発行されまして以来、昨年末までに一兆九千四百億円、通算いたしまして発行額の一〇・七%になっております。申し上げるまでもなく、国債の個人消化は非常に重要な意義を持っていると存じます。すなわち、安全かつ有利な国債は個人の保有する金融資産として最適なものであると同時に、国債の個人消化は、金融の繁閑に余り影響を受けない安定的な保有層を拡大することでございますし、またひいては流通市場にも好ましい影響を与えるものと考えられます。私ども証券界におきましては、この個人消化のために努力を重ねてまいった次第でございますが、その間、国債が国民各層の間になかなかなじんでもらえず、個人消化が困難であった時期もございました。  しかし、昨年来個人消化は着実な増加を見せまして、市中消化に占める個人消化の割合は五十一年度には本年の二月、今月までに一四・一%というふうに上昇しております。これは、長年にわたる証券界の地道な努力に加えまして、一昨年末、金利改定が行われましたが、そのとき国債の発行条件が相対的に改善されました。このことも影響しております。さらには少額国債の非課税制度あるいは当局の国債に対する積極的なPR、これらの原因が相まってこういう効果を発揮したものと思います。  しかしながら、今後当分の間、国債の大量発行が続かざるを得ない見通しであることを考慮いたしますと、個人消化の促進にとどまらず、円滑な市中消化を維持してまいりますためには、今後さらに次のような点について格別の御配慮をいただくことがぜひとも必要であると存じます。  その第一は、発行条件の弾力化の推進でございます。国債が個人の投資対象として十分魅力あるものとなり、また、市中消化の大宗を占める金融機関におきましてこれが安定的な資産運用の対象となるためには、発行条件を弾力化して流通市場の実勢を十分反映したものとする必要がございます。  このような観点から、一昨年末における、先ほど申し上げました金利改定の際に、国債の発行条件の相対的な改善を見ましたところでございますけれども、今後もなおその改善に一層御配慮をいただきたいと存じます。  第二は、発行形態の多様化でございます。国債が国民の金融資産の中核といたしまして広く各層に保有されてまいりますためには、国民のニーズに応じた各種の国債が発行されることが望まれます。この点につきましては、一昨年来、国会におきましても、国債の個人消化促進等の観点から御議論をいただいたわけでございますが、本年一月には、中期割引国債の発行を見るに至りました。これは、まさに画期的なことでございまして、今後とも、期間の多様化の一層の推進を含め、積極的な施策が望まれるところでございます。  国債流通市場の整備は、国債管理政策の重要な一翼を担うものでございます。国債発行残高の累増に伴いまして、国債の流通高も増大し、その流通市場の整備は、国債に対する国民の信頼を確保する上からも緊要な課題となっております。証券界におきましては、国債の取引所における売買仕法の改善、国債の個人向け担保金融の実施等々、流通市場の整備のため諸般の改善を行ってきたところでございます。しかしながら、国債を欧米諸国におけると同様、公社債流通市場における代表的な有価証券として定着させるためには、発行条件の弾力化、発行形態の多様化と合わせまして、国債整理基金による買い入れ消却の弾力的な運用や、日本銀行による機動的な国債オペレーションの実施、さらには流通金融の拡充等の諸施策を推進していただくことが肝要であろうかと存じます。  政府におかれましては、国債管理政策の適切な運営について一層の御配慮を払われますよう、重ねてお願い申し上げる次第でございます。     〔栗原委員長代理退席、委員長着席〕  最後に、私が常々考えております企業り自己資本充実と国民の資産形成の問題について若干申し上げたいと存じます。  御承知のとおり、わが国の企業の自己資本比率は、昭和三十年以降一貫して低下傾向をたどっております。全法人について見ますと、昭和五十年度には一三・九%にまで低下し、わが国の戦前の水準に比べましても、あるいは諸外国の自己資本比率に比べましても非常に低位にございます。経済の高度成長期におきましては、このような状態にありましても余り大きな問題は生じなかったのでございますけれども、昭和四十八年のオイルショックを契機とする厳しい経済不況を通じまして、借入金依存の企業経営の脆弱性が表面化いたしまして、自己資本充実の重要性が認識されるに至っているのでございます。今後わが国の経済が安定成長に移行していくにつれまして、その重要性は一層高まってくるものと思われます。自己資本の充実につきましては、資本市場政策だけではなく、金融政策、租税政策等広範な施策とも関連する問題でございますが、私ども証券界におきましては、資本市場の振興に直接の責任を負う立場から、この問題に真剣に取り組んでまいりたいと考えております。  この観点から、今後、時価転換社債や優先株等証券発行の多様化といったような問題に取り組み、また、流通市場の改善等に努めるとともに、特に、個人株主にふさわしい環境づくりのために地道な努力を重ねてまいるつもりでおります。  これに関連いたしまして、配当課税のあり方について、ちょっと申し述べさせていただきたいと存じます。  配当につきましてはもう御承知のとおり、利子と違いまして、支払い段階で法人税が課税されて、その残りが個人の手元に配当として支払われるものでございますから、これに再び所得税をかけますと二重課税となってしまいます。この点を調整するための措置としてわが国で行われておりますのは配当控除方式でございますが、西ドイツではことしから二重課税を排除する新しい方式をとりましたが、こういう制度に比較いたしますと、わが国の制度はなお不十分なものでございます。個人株主育成の見地から、この点の前向きの検討につきまして関係者の間で強く要望されていることをこの機会に申し述べておきたいと存じます。  次に、国民の資産形成の問題でございますが、国民所得の増大に伴いまして、国民の金融資産の保有額は着実に増加しているところでございます。このような状況にありまして、国民の金融資産選好は、従来の流動性、安全性中心から、収益性の高いものへと徐々にそのウエートを移してまいるものと思われます。特に、最近国債の個人消化が増大していることから、今後は、国債を契機といたしまして有価証券になじみを持つようになる個人投資家が増加してくるものと考えられます。  私ども資本市場に携わる者としては、市場を通じて国民に提供される有価証券が、できる限り魅力あるものとなるように努力してまいる所存ではございますが、同時に政府におかれましても、国民の資産形成を多様化し、かつ、促進するための諸施策を充実されますようお願いいたしたいのでございます。  以上をもちまして私の陳述を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)     —————————————

坪川信三自由民主党

○坪川委員長 これより各公述人に対する質疑に入ります。  質疑は、お一人答弁を含めまして十分程度にお願いいたします。公述の諸先生も、さよう御了承おき願いたいと思います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小林進君。

小林進日本社会党

○小林(進)委員 十分でございますから、簡単な質問にとどめますが、まず木下先生にお伺いいたしたいのでございます。  大体、自由主義経済というものは、なるべく国家の保護も国家の干渉も受けないで自由濶達に、自由そのままの言葉のとおり経済活動を行う。しかるにわが日本の今日は、国家独占資本といいますか、自由の名において非常に過分な国家の保護を受けているわけであります。税制、金融、あらゆる面において保護を受けておる。でありまするから、人によっては、これくらい日本の企業が国家の保護を受ければ、それはどんなに能力がなくても利益を上げるのは普通だというのが外国、特に先進国等から日本に行われている一般の風評であります。この問題は先生のいまのお話の中で、法人税の増強は設備投資を弱めて日本の経済の浮揚をさらに弱めるというお話があったのだが、当面は確かに先生のおっしゃるとおりかもしれませんけれども、自由主義の名において、世界先進国が余りにもねたましく思うくらい過分な国家の保護を受けている日本のこの企業、経済のあり方が一体正しいのかどうか。その意味において私どもは、社会党でありまするけれども、少しだけでも手直しをしようとすると強力な反撃を受けてなかなかそこまで至らないのでありますけれども、純学問的な立場でこの点をひとつお教えをいただきたいと思います。  それから第二番目は、経済、いわゆる景気浮揚のファクターでありますけれども、これはやはり個人消費が六〇%なり五〇何%なりを占めておりまして、財政投融資だとか個人の設備投資などというものは二〇%弱あるいは一五%何ぼと言われて、本当に冷え切った経済を浮揚するには、何といってもやはり個人消費が一番直接効果があると言われているのが、いままでのわれわれが受けた常識であったわけでありますが、たまたま、何でありますか、公共投資か減税かということになって、やはり個人の消費、個人の購買力というものがそう景気浮揚には影響がなくて、やはり公共投資だというふうにどうも議論がすりかわっているような感じがいたしまするが、こういう点もひとつ率直にお教えをいただきたいと思います。  第三番目には、私は渡辺先生にお伺いをいたしたいのでありまするけれども、不況対策として公共事業に投資をするのが一番いいという意見があるけれども、これはどうも建設に偏重をしているではないか、あるいは大企業中心で中小企業の入る余地がないではないか、こういうふうなお言葉があった。これは私どもが常日ごろ実は感知感得をいたしておるところでありまして、政府は公共企業対策だといって、四国−本州の橋を二本かけるとか一本かけるとか三本かけるとかと言うけれども、あの橋が何本になりましても、わがふるさとの方にはいささかの影響もありません。何にもありません。それは本当にわれわれが走っている、生活に直結している田舎の村道だとか部落道だとか、あるいはわが町の下水とか、あるいは保育所とか幼稚園とか、あるいは公園をつくるとかという方向へこの公共投資が個々に細かく、漏れなく、潤沢に流れてくれば、確かに出かせぎなどという、こういうどうも妻子眷族を泣かせてふるさとを後にするというような悲哀の形もできぬでいいのでありまするけれども、こういう点をどういうふうにお考えになっているのか。私はいま少し突っ込んでお話を承りたい。  それからおっしゃるとおり、大企業が倒れると関連の下請企業が全部ぶつ倒れていく。そうすると、大企業だけは何とかという法律で借金を押さえたり、管理人が出たりして、これは救済されるが、それ以下のものは全部切り捨てになって、だれ一人これを助けてくれる者がないという、これが実情であります。これはあるいはわれわれの武藤委員からもお話があるかもしれませんのでこの程度にいたしておきますが、こういうへんぱな破産企業の救い方、どうすれば一体こういう不公平が直せるのかということをひとつお教えをいただきたいと思うのであります。  なお、渡辺先生にお伺いしたいのでありますが、ちょっと時間がオーバーいたしますので、この程度で終わっておきたいと思います。

木下和夫大阪大学名誉教授

○木下公述人 簡単にお答えさせていただきます。  第一の問題点は、わが国が自由主義経済であって、その実態が国家独占資本主義と称すべきものであるという御規定でございますが、私は、いわゆるここ近年のツイーシャンク以来の国家独占資本主義論というのに通暁いたしておりません。したがって、イデオロギー的にどのように解釈するかは別といたしまして、企業保護、過度の保護を非難なさるならば、何もそこまで持っていかれる必要はないわけでありまして、自由主義経済においては必ずその後ろに、社会における共通の利益あるいは社会における秩序を保持すべきであるという議論だけで、私はかなり説得力はあるのではないかと思います。  ただ、戦後のわが国が全く破産の状態から今日まで来ました場合、ある種の政策的な税制の実行が国益にかなうという面は、これは全部を否定することはできないと思います。事実、私も含めて、少なくとも終戦後より私自身の生活水準は上がってまいりましたし、逆に下がった方がおられると主張されるかもしれませんが、一般的に見て上がったのは、そういう外国から悪口を言われます日本株式会社がこれをもたらしたのではないかと思います。今後、低成長に向かって次第次第に、いわば過度に保護をしておったものを撤廃していくということはお説のとおり必要だと思います。しかし、ここで急激に企業憎しという発想は、私はとらないのであります。  それから第二の問題点は、先ほど御指摘の議論は、個人消費の比重が有効需要の中で、少なくとも国内の有効需要の中で比重が高いから、これを刺激するという発想はとり得ないかという御議論でございますが、実はここ五、六年の国民総支出の内容を見ていただきますと、一番減少率が高かったのは企業設備投資でございまして、個人の消費支出の減少というのはほとんどございません。全体のウェートとしては、企業の設備投資の比重が非常に大幅に減少した。できればこれを高めたいという議論があるわけでございまして、私も、税制ではなくてほかの方面でこれを高めることができないものかという意見を、先ほどちょっと申しましたけれども、私は、現在、さしあたり国内の有効需要項目を民間部門においてことさら刺激するという方策は、消費支出についても企業の設備投資支出についてもそういう立場はとらない、そのかわりに、公共部門で政府の支出の比率を高めていくというのが望ましいであろうという考え方を持っております。  以上でございます。

渡辺嘉藏岐阜県中小企業団体中央会常任理事

○渡辺(嘉)公述人 お答えになるかどうか、ちょっとよくわからぬのですが、いまの第一の、公共事業がしからばわが村に、わが里に関係あるかどうかということですが、私どもの実態を一つ申し上げますと、ある大きな橋の発注がありました。そうしたら、その橋を大手が受けまして、四つ窓をくぐって四番目の人が実際の仕事をやっておる、こういう実態です。五%ずつピンはねすれば、一割五分はその間に消えておるわけですね。それで橋をやる人は、二割ピンはねをされた実態で工事を請け負っておる、こういうようなのが実態であると思います。それがために、今後におるこの公共事業は、これはもう予算から削ることはできないかと思いますので、これを実際に仕事を進める場合には、当然考えられることは、いろんな部門ごとにおける分離発注の問題、ですから建具は建具であるとか、官公需その他分離発注の部分がすでにありますけれども、これをもう少しきめ細かく分離発注をしていくことではなかろうか。  それからもう一つは、中小企業がアメリカ等においては一定の枠を官公需の中で占めまして、そしてそれを実際に中小企業庁その他が窓口になって発注をしておるそうですか、そういう施策等が必要ではなかろうか。  それから第二番目については、中小企業は切り捨てられ、大企業なりメーカーは会社更生法で救済を受けるわけですが、私どもの地元でも、やはり会社更生法の適用申請をいたしました企業が、これは負債総額が少ないからということで却下されたわけです。こういうことなんです。そうすると、借金を多くして負債総額を大きくした方が救われるか、こういう逆説も出るわけですが、これはどちらかといいますと、日本経済全体に与える影響等から判断して会社更生法が運営されますので、そういう妙な逆説的な言い方はいたしませんが、しかし、中小企業もこの会社更生法の中で関連して救済される制度をとっていただく法律的な措置が今後必要ではなかろうか。  それから、そのほかには、先ほど申し上げた保険制度等によって、手形保険等を創設していくことによって信用取引等の安定化を図っていく必要があるのではなかろうか、こういうふうに考えておるわけです。  それからもう一つは、先ほどの高井理研が倒産いたしましたときなんかでも、情報収集等について、中小企業にも情報提供してやる必要があると思ったことは、手塚興産が十月五日に不渡りを出してつぶれるぞという情報を東京の大手のメーカーが一番最初にキャッチをいたしますと、そうすると高井理研へ殺到いたしましたのは、三菱ホーロー、伊奈製陶、豊田織機というような大手は十月の五日の日にどっと来て、素材、半製品を引き揚げていっておるわけです。それから、手形交換期日の六日を過ぎて七日に不渡りが表面化して、みんなが行ったときには、大手が引き揚げてしまっておりますから、何にもない、こういうことなんです。ですから、大手はそういうような保護も受けながら情報網も多分に持っておりますので、実に機敏に債権保全を的確におやりになる。こういうような点についても、今後、情報網等については何らかの機関を設けてやるとか、あるいはまた債権負担の公平を図るとか、そういう措置が必要ではないか、こう考えております。  以上であります。

小林進日本社会党

○小林(進)委員 どうもありがとうございました。

坪川信三自由民主党

○坪川委員長 武藤山治君。

武藤山治日本社会党

○武藤(山)委員 最初に証券業協会の渡辺会長にちょっと御意見を承っておきたいと思います。  一つは、自己資本比率が日本は大変低い。銀行借り入れに依存している率が高い。しかし、いまの大企業の資産保有の内容を見ると、特に土地でございますが、国土庁の表示価格と現実の簿価の間には大変な乖離がある。この間もここで指摘したのですが、坪十円あるいは坪六百六十六円、そういう安い製鉄所の土地などを三百万坪ずつも保有している。そういうのが自己資本比率を高める上で再評価をすると、これはかなり改善をされるわけですね。だから、まず自己資本比率を直すためには、そういう固定資産の再評価というのが必要なのではないだろうか。日本の財界の大御所として、そういう点についてはどうお感じになるか。これは大ざっぱな質問でありますが、御見解を承りたいと思います。  それからもう一つ、国債発行がどんどん累増しまして、四十九年度末は九兆六千六百億が残でありますが、その後の三年間で、今度五十二年度末は三十一兆七百億円になるわけですね。三年間で三倍以上国債がふえるわけでありますが、これをいまの制度のまま続けていくことはもうほとんど不可能に近い状態で、いろいろな弊害が出てくるような気がします。したがって、発行に歯どめをかける、あるいは国民の資産保有として魅力を持つ国債にする。いろいろな観点から見た場合に、なし得る方法は、もうイギリスやアメリカのように流通市場で国債の値づけをしていく、これ以外に名案はないのではないか。そのためには短期国債、中期国債、長期国債等多様化を図る、会長さんもそう先ほどおっしゃっておりますが、この流通市場の問題は、もう昭和四十一年の国債発行初年度目から大変議論されて、当時の福田大蔵大臣も流通市場の整備を早急に図ると答えておるにもかかわらず、今日できない。なぜできないのだろうか。ネックは何なんだろうか。これは証券業の立場から見た場合のネックあるいは銀行側から見たネックあるいは御用金調達的な大蔵省の立場、それぞれ利害が衝突する部面もあると思うのでありますが、やろうと思えば流通市場の整備は可能だ、十年以上の期間があったわけでありますから。どういうところにネックがあるのでしょうか、それをひとつお聞かせをいただきたい。  第三は、個人消化を図ることが一番望ましいことは、もう論を待ちません。しかし、個人消化にも限度があって、一四・一%といういまの売れ行きは大変いい。しかし、これをずっと持続できるものだろうか。八兆四千八百億の国債発行のうち証券界が引き受けできそうなシェアはことしはどのくらいになるのだろうか、一五ぐらいまでいくのだろうか、どうだろうか。そういうような点の見通しについてちょっとお尋ねをしておきたいと思います。  それから次に、中小企業の方の渡辺さんにちょっと一問だけ。  中小企業問題は非常にむずかしい。独占がどんどん強化されていく過程では、中小企業が間引きをされ、倒産をされるのはやむを得ないという考え方が一方にあります。しかし、中小企業の立場に立てば、日本の生産の五〇%を持ち、あるいは輸出においてもかなりのウェートを占めている中小企業をそういう弱肉強食の原理に放置をしておくことは相ならぬ。中小企業問題をどうするかというのはやはり国家的大問題であります。  そこで、これからの中小企業を本当にどういう形にすることがいいのか。関連倒産防止やあるいは倒産防止基金という新しい制度をつくるのがいいのか。それとも、転業資金、転業方策というものを政府が徹底的に立案をして、中企業の場合には転換を勧める、小企業と零細企業については協業化を勧める、そういう二つの柱で総合的に中小企業対策というものを立てるのがいいのか。現在の軒数をできるだけつぶさないで手当てをして温存するのがいいのか。私は、いま大変むずかしい議論になっておると思うのであります。政府・自民党の政策を見る限りにおいては、低成長経済への移行の過程における倒産状態はやむを得ないという見解のように私は感じます。これらの問題をどう解決するかということで、もし現場でこういう方法がこれからの道ではないかという指針がありましたら、お示しをいただきたいと思います。  最後に、木下教授でございますが、四十分間延延と演説をされまして、学問的論理としては一つの哲学であり、否定をするものではありませんが、やはり現状というものをもっと認識をしてもらわないと、論理がなかなか政治家が論ずる参考にならない。  たとえば、いまの日本の法人税の税負担というのを西ドイツと比較をしてみても、西ドイツは実質税負担が七〇%を超えていますね。ところが、日本の資本金百億以上の会社の実質負担は三四・三、十億から百億の企業は三四・七、五千万から一億のところは四七・一。これは四十八年の実態調査であります。そういう実態を見ると、大蔵省の発表なんというのは全然信用できないのですよ。  そういう点をもっと現実を踏まえて——先生もこれから増税が必要だということを述べておるわけです。私たちも同感であります。個人から増徴するか、法人にウエートをかけるか、これがやはり大問題だと私は思うのであります。これからの健全財政への移行の手だてとして、重税を、個人によりウエートをかけるか、法人によりウエートをかけるかというこの選択の場合に、一体木下さんはどちらを選択をなさるのか、これをひとつお聞きしたい。  第二は、われわれは企業憎しで不公平税制を改革しろなどと言っているのではないのでありまして、国家国民的立場に立って不公平税制というものを改革せよと要求している。  たとえば高額所得者の給与所得控除も、前は六百五十万で頭打ちだったのですよ。それがいまは全部一〇%を必要経費、いわゆる給与所得控除を無制限に、何千万、何億の所得者も一〇%の必要経費という形をとっているわけですね。こういう改正が二年前に行われた。これなどもう全く資産所得者優遇じゃありませんか。  そういうような不公平税制の改革というものを当面、最も国民は期待していると思うのでありますが、やはり設備投資優先、企業優先という考え方で当分行くべきとあなたは考えるのかどうか。  第三番目には、政府の五十二年度経済見通しの民間設備投資や個人消費の伸びというものを考えた際に、五十二年度予算で果たしてそれが実現可能だろうか。いまのような状態で稼働率が八七、八%、年度末で九四程度というのが企画庁の発表でありますが、こういう状態で一体民間設備投資が政府見通しのような状態になるのかどうか。そういうような点についても、ひとつ学者としての立場から、もう一回簡単に御見解を聞かしていただきたいと思います。

坪川信三自由民主党

○坪川委員長 渡辺公述人、簡明にお願いします。

渡辺省吾日本証券業協会会長

○渡辺(省)公述人 できるだけ簡明にお答えしたいと努力いたします。  武藤先生の御質問、第一問は、自己資本比率が非常に悪いとおまえは言うが、もし企業が土地を再評価すれば——企業の土地の持っている含み益とでも申しましょうか、含み資産とでも申しましょうか、そういうものを計算に入れればそんなに自己資本比率は悪くないのではないか、それをも含めて再評価についておまえはどう考えるか、こういった御質問かと存じます。  先生の御指摘のとおり、いま土地の値上がりが非常に激しいということもございまして、土地の持っておる再評価益、評価益といったようなものは非常に大きゅうございまして、もしそれを仮にやったとしますれば、私の個人的な想像も含めまして、自己資本比率は三〇%ぐらいになるかと存じます。それをいたしましてもアメリカの五〇%以上といったような比率には達しません。  しかしながら、この土地の再評価の場合には——これも私の個人的な感じですが、建物とか機械設備の再評価でございますと、これは償却という形を通じましてその企業にリターン、返ってまいりますし、償却ということは耐用年数があるということでございまして、再取得の場合の準備ができるということになります。ただ、それをいたしますと、製品価格の中に償却費が上がってまいりますので、物の値段を上げるという形にはなります。ところが、土地の場合には、確かに御指摘のようにその評価益ができまして、それがある意味の自己資本の中に入りますけれども、これは償却ということがございませんので、確かに比率はよくなりますが、経済的な効果なり何なりは少し違いますので、私はいささか問題があるかというふうに思います。しかし、御指摘のように、それをいたしますれば、自己資本比率は確かに向上いたします。これが第一点でございます。  それから第二点の、これは流通市場の整備の問題でございまして、五十二年になると国債は三十二兆円になるぞ。急速にふえていくので、それに対して、昭和四十一年国債が初めて発行されたときから流通市場の整備がいろいろ言われておるが、それがなかなか進まないネックはどこにあるかというような御質問だったかと思います。  これも御説明すれば非常に長くなりますが、先ほど私の陳述の中にも、流通市場を整備しなければならないということは強く主張しておりますので、先生の御意見と全く同じなんでございますけれども、むずかしいところはどこにあるかという点で申し上げますと、現在は国債は取引所取引になっておりまして、取引所では国債千万円まで、百万円単位でございますから百万円から千万円までは、取引所で売りがあれば買いがそれに対等するという形で売買が行われております。しかし、これは主に個人とかそれから保険会社とか、そういったところでございまして、この売買は、行われますと、その出来高、値段、そういうものを公表いたしておりますので、一般の方々もいま八分利付の国債は何円であるということがおわかりになるように、標準値段と申しまして証券業協会でもこれを公表しておりますので、皆様に周知徹底するということでございます。  しかし、問題は、それ以外に、先ほども申し上げましたが、国債の九〇%は金融機関が持っておるわけでございまして、この金融機関がもし売りに出すということになりますと、流通市場には大量の国債があふれてくるということだろうと存じます。しかし、いままでのところ金融機関の持っております国債は非常な大きな額、先ほども約九兆円に近いと申し上げましたが、これはときどき日本銀行のオペレーションによりまして吸い上げられておる。日本銀行はそれによって成長通貨を供給しておる。これは金融政策の方の問題でございますが、そういうことが行われておりました。したがいまして、金融機関はこれを市場に大量に売れば、当然値崩れも起こりますから、売買損失も起こるということもございまして、このオペレーションに依存していたと言うと言葉は悪うございますが、オペレーションによって手持ちの急増が防がれておったということでございます。  しかし、国債が、先ほども申し上げましたように、五十二年度にかけてさらに八兆何千億といったような額で出てまいりますと、日本銀行のオペレーションもいままでのように行われるかどうかという点については問題がございます。そこで、仮にいまの残高九兆円がさらに急増するというようなことになりますと、また、ことに先ほどもクラウディングアウトのことを申し上げましたが、民間の資金需要でも出てまいりますと——話が前後しますが、いままではオペレーションと同時に資金需要が比較的少なかったということもございまして、国債を売らないで、金融債だの地方債だのそういうものを売って銀行は資金ポジションを改善していた。それから、資金需要も少ないから、そういったような売らなければならない事情も急迫したものでなかったというようなこともございますが、五十二年度にかけてはその情勢が変わってくるのではないかという心配がございます。  そこで、それをも含めまして国債の流通市場をどうすべきかという点につきましては、私どもやっております証券業協会でも、委員会をつくりまして目下検討しておりまして、大体そのあれができておりますけれども、今日まだ申し上げるには少し早いかと存じます。  しかしながら、たとえば縁故地方債というのがございまして、これが市場性がないという議論が非常にあったのでございますけれども、二年ほど前からその市場に営々として努力してまいりまして、今日かなりの市場ができておりますが、同じように国債につきましても、そう大量のものが一度にどっと出てくるということであれば、これは市場は受け入れ切れませんが、そうでなければ、これを消化する方法は、人間の知恵でございますから、みんなで工夫すればできるのでございます。ただ、どっと出てくるような場合を考えますと、これはやはり日本銀行のオペレーションですとか、あるいは国債整理基金というのがございますから、これが買い出動いたしまして過当な値下がりを防ぐようなそういうこともできますし、また証券会社がディーラーと申しまして、市場でそれを買いまして手持ちする、そうしてだんだんとそれを市場に売っていくというようなことをするためには、流通金融制度をつけ加えればこれもできますので、いろいろそういった知恵を働かせれは、流通市場の整備も来年の問題を控えて可能であろうかと考えて、いまそれに取り組んでいるところでございます。  それから、余り長くなりますのでその程度にいたしますが、三番目に、個人消化は最近一四・何%になって非常にいいそうだが、これが、五十二年度はふえるけれども、続けられるかという御質問でございます。  もちろんその環境にもよりますけれども、四十年以降、私ども証券界は、先ほど申し上げましたように、約一〇%を超える消化をしております。五十二年度につきましても、証券界のコンセンサスは一〇%を消化しようということでまとまっておりますので、過去十年の経験を生かしましてこれも達成できるというふうに申し上げ、その努力を続けさしていただきたいと思います。  以上でございます。

坪川信三自由民主党

○坪川委員長 渡辺公述人、簡明に願います。

渡辺嘉藏岐阜県中小企業団体中央会常任理事

○渡辺(嘉)公述人 中小企業の問題は、実際問題として複雑多岐にわたっておりますので、一言にして言うということはちょっと無理だと思います。  それで、先生おっしゃったように、転業並びに転換等についてどうしたらいいかとのこともありましたが、転業そのものがすでにそのシェアをだれかに奪われたという結果なんですね。ですから、そのシェアを奪われないようにまずしてやることが大事じゃなかろうか。もちろん、先ほど申し上げたラムネに例をとりましても、民間の小企業でやっておるラムネよりもキリンレモンがやっておるラムネの方が、公害問題でも衛生的にでも量産的にでも、いい有利な面を持っておることは事実です。また、一般消費者が買う場合でも、何何飲料店のものよりもキリンレモンを買う、こういうものはあると思うのですね。  ですから、そういう総体的な消費の嗜好等も考えるときに、じゃ中小企業はどうしたらいいのか、じゃ中小企業は要らないのかどうか。しからば、先ほどもちょっと申し上げたように、建築現場へ行きますと、何々組の大手が受けましても、実際に働いておるのは、何々組の人は監督がおるだけで、あとはだれもおらないのですね。全部、現場の働いておる連中は三番目か四番目の下請がやっておるというのが実態なんです。ですから、そうすると中小企業なしには今日の日本経済は成り立っておらぬということも実感としておわかりいただけると思います。  そのような意味合いから、私どもまず考えますることは、中小企業が今後生き残るには、やはり事業分野の確保等は最優先して考えられなければならぬのじゃないか。それから官公需等におけるところの分離発注。それとともに、中小企業自身がしからばどうするかという点につきましては、やはり技術の向上と設備の近代化は不可欠です。これによって付加価値の高いものを生産する必要がある。  そこで、それの協業化というものがいま通産省でもうたわれておるわけですが、この協業化は、一概にやりますと大変なやけどをするわけなんです。どうしてかと言いますと、協業化することによって、いままでの個人企業の持っておりました独創性と、うちじゅうが取っかかって、女房も子供も取っかかってやっておるという、こういうのが払われちゃって、何と申しますか、妙な言い方なんですが、八時間労働の一つの、自宅と工場が分離することによって生ずるデメリットが多く出てしまって、協業化は一概に成功することはあり得ない場合が多いのです。それがために、それらの企業はいやでも下請化していきます。大企業がそれら協業化したものを吸収してしまう、こういう結果も生じておりますので、当面中小企業には、まず零細企業等に対しましては、設備の近代化と技術の向上のための施策が必要であり、それがための利子補給等には重点が必要ではなかろうか。  それから、ある程度の中企業等になりますと、小から中ぐらいになってきますると、やはり協同組合等で相互扶助等を行いながら金融等についても相互金融を行っていく、こういうことが必要ではないか。しかし、これも一つ間違えますと、先ほどの例で申し上げましたように、商工中金等の転貸しを受けてやりますと、商工中金だけが担保を取りまして、組合は担保が取れないようないまの実態ですね。法律ではなしに実態ですから、それらはやはり同時担保にしておくという、そういうような施策を講じながら、組合金融等を図りながら中企業は協同組織によって乗り越えていくべきではなかろうか。  そのほか、いろいろ申し上げたい点はあるわけですが、時間もありませんので、かいつまんだ点を申し上げ、どうかひとつ先生方の方においても実態をよく見られた上で、きめ細かい施策をお願いいたしたい、こう思うわけです。

木下和夫大阪大学名誉教授

○木下公述人 簡単にお答えいたします。  現状の認識で、政治家としておまえの議論は受け入れられないと、ほぼそれに近いような議論でございましたが、それはもう私の職業上仕方がございません。  ただ、このようなギャップはどこの国でもあることでございます。ただ私は、イギリス労働党のキャラハン首相と西独の社民党のシュミット首相が最近どういう発言をしておるかを御参考のために申し上げただけであります。  それから第二は、法人に対する実効税率の比較でございますが、これは西独について実効税率が七〇%と言われましたけれども、私が知っております西独の実効税率は、年七百万円超の部分について計算をいたしますと四九・〇五でございます。わが国はそれに比較して四九・四七でございまして、西独は今回法人税の改正をいたしましたけれども、私の資料ではお説のような七〇という実効税率は出ておりません。(武藤(山)委員「四十八年だよ」と呼ぶ)いいえ、私のは現在の時点におけるあれでございまして、過去のことは申し述べるいとまはございません。  それからその次は、個人の給与所得の控除でございますが、これを青天井にしたという点、これは当時私も実は煮え切らぬ思いをいたしました。しましたが、事実各国の所得税における高額所得者の税負担を見てみますと、御承知のようにイギリスを除いては二千万円から三千万円の間ぐらいから以上の所得層については、あるいはこの数字は三千万円に近いかもしれませんけれども、その辺が実はこの青天井の恩恵を受けている人たちですが、その人たちの実効税負担は諸外国より高いということは事実であります。日本より高いのは英国だけでございます。  それから最後は、今度は学者としての意見を述べろとおっしゃいましたので、政治家的センスを全く考慮なしに私自身の意見を申し上げますが、民間設備投資を増加しようと言ったって方法がないじゃないかという御趣旨だと思いますが、私は、今日の時点で税制で法人税を減税などすることによって積極的にこれを回復することが有効であるとは思いません。何か方法を考えていただきたいということを先般申しましたのですが、恐らくこれが沈滞しております大きな理由は、経済の先行きに対する業界の非常な不安の念が一番大きいと思います。  それから第二には、産業構造の変化というものに対して、うまくこれを誘導していけば私は民間設備投資はふえる可能性があると思いますが、実は残念ながら政治的判断というのは既得権の擁護あるいは産業構造を余り変えない方が望ましいという御判断をなさいますから、これは理屈がございますが、そのことがまた民間設備投資の沈滞に結びついておるのではないかと思っております。  以上でございます。

坪川信三自由民主党

○坪川委員長 広沢直樹君。

広沢直樹公明党・国民会議

○広沢委員 時間の制約がありますので、一、二点お伺いいたしたいと思います。  まず、木下公述人にお伺いいたしますが、景気が順調な上昇過程にある、したがって、いま政府の行っておる対策で十分であるかのような公述をなされましたですが、これに対していろいろな見方はあろうかと思います。それが正しいとか正しくないとか言う前に、私は、景気対策の基本的な問題として、この長期にわたる不況が続いている段階においてはやはりそれぞれの役割りにおいて打てる手は打つべきではないか、こういうふうに考えておるわけであります。公共事業を中心に五十一年度も景気対策が政府においては図られてまいりましたが、公述人も指摘なさっておりましたように、五十一年度の景気はいわゆる当初において輸出が非常に急増した、そういったところに原因がある。ほかの経済の関連指標を見ておりますと、余り顕著な動きはありません。非常に上がったり下がったりという気迷い状態がはっきりと出ておるわけであります。したがって、五十二年度の方針も一応公共事業中心になっているわけでありまして、これが全然効果がないとは言いませんが、やはりそこに一つの不安がある。いまもお話がありましたように、気迷い状態があるということは、企業の先行きに対する非常な不安があるから伸びていかないのじゃないかということが一つの原因ではないかというお話もございました。私もまさしくそうだと思うのですが、したがって、公共事業中心の景気対策というのは、言うまでもなく、いままでの過程においてもそうでございますが、景気を引っ張っていく役割りがある。景気を上昇させていくための、引き上げていく役割りがある。減税の問題については、むしろ景気を引っ張るというよりも景気を支えていく、こういう役割りがあると思うのです。ですから、景気対策として同時的に公共事業がいいか減税がいいかという二者択一で物を考えるべきじゃないのじゃないかという考えがございます。したがって、その公共事業がいろいろな原因で五十一年度も問題がございましたけれども、あらゆる手が打たれたわけですが、それも十分な効果を上げ得なかった、したがってわれわれはやはり減税を主張しているわけであります。  その景気を支える役割りの減税というものはいま必要であるとわれわれは主張しているわけでありますが、公述人におかれてはその必要はいまはないだろう、いまのが適正であろう、こういう御判断をなさっておりますので、景気対策の上から基本的に考えてもう少し御意見をお伺いしたい。政府の施策が適切であるということは渡辺公述人も同じような御意見でありましたですが、少しその点の心配がございますので、これは時間の関係もありますので木下公述人にお願いしたいと思います。  それから、渡辺公述人には、確かに指摘されておりましたように倒産、これが非常に史上最高ということを記録するぐらい大変な状況にございます。中小企業の育成問題については、今国会でも問題になっております大企業と中小企業の分野調整の問題だとか、あるいは下請代金支払遅延防止法の改正の問題だとか、官公需の中小企業に対する枠の拡大だとか、こういう問題がございますのですが、公述人のお話の中に、倒産防止策を適切に講じてもらいたい、これは緊急課題で、いまの当面する問題であります。特にどういった手を、具体的に直ちに打ってもらいたい、予算関係上の問題も指摘なさっておられましたが、そういう代表される立場としての、一言で言えというのは非常にむずかしい話でございましょうけれども、それに対する見解をもう一歩聞かしていただきたい、このように思う次第でございます。

木下和夫大阪大学名誉教授

○木下公述人 まず第一に、景気の情勢判断の見方が正しいかどうかよりも、その前に問題があると御指摘がありました。それは恐らく政治的な配慮ということだろうと思いますが、御質問の内容は非常に経済的な判断を中心にしておられますので、その線に沿ってお答えをいたします。  打てる手は打つべきだという点については、私も全く同感でございます。ただ問題は、減税の規模と減税の方法と減税のタイミングという三つにかかっておりまして、それが悪くすると行き過ぎ、それからまた、悪くすると所期の効果を上げ得ないということを申し上げたつもりでございます。  それから、五十一年度、輸出が急増した後景気がいわばポーズといいますか停止をいたしておるというような状況につきましては、残念ながら私の印象は、いろいろな理由もございますが、財政法特例法案の成立の遅延、国鉄、電電の値上げのおくれはかなりこれに貢献をしておると私は思います。  それから、本来経済的な危機を訴えるのは財界の特有性でございまして、相当調子がいいときでも危機だ危機だとおっしゃる向きがあるわけでございますから、私どもは冷静に見て、いまの状況はそれほど危機であるとは思わない。少なくとも先進工業国に比べてはわが国はまずまずうまくいっているというふうに思います。ただ、公共事業支出は景気への牽引力があり、引っ張る力があり、減税は支える力があるというふうに非常に文学的表現をなさいましたが、これは短期的に公共事業が効果があり、中長期的には減税が効果がありましょうというお話だと思いますが、私は当然この問題をかみ合わせて議論すべきであって、今回の予算案でやや行き過ぎとは思いますけれども、あの程度の公共事業と国、地方合わせて四千三百二十億でございますか減税は、まずまずいいのではないかという判断を下したわけでございまして、私もこの間の組み合わせを前提にしてお話を申し上げております。  減税が必要だとおっしゃいますが、物価調整減税と言われるもののあり方がどうであるかは別にして、減税は私は認めます。しかし、なぜ一兆円という減税でなければならぬのか。たとえば、三千億でなぜいけないのか、五千億でなぜいけないのか、また、二兆円ではなぜいけないのかという問題について、実は私には確信が持てないものですから、迷っているわけでございます。  それから、もし一兆円の減税をなさいまして、一年かあるいはそれ以上たちまして、物価の上昇率がもし八%以上になったというようなことがあったら、少なくとも私のぜいではないと思います。

渡辺嘉藏岐阜県中小企業団体中央会常任理事

○渡辺(嘉)公述人 端的に言えという話ですが、先ほど冒頭に申し上げたように、この中小企業対策、非常に複雑多岐なんですが、ただ、言い得ることは、中小企業対策も一つの政府レベルといいますか、国、県、市等のレベルに乗ってまいりますると、非常に官僚的な施策になってくるのです。先ほど申し上げたように、中小企業というものは、生活実態、経営実態の中から経営と生活をやっておるわけですね。ですから、理論的にかくあるべきだ、かくあらねばならぬというような理論よりも、実際こうやらざれば何ともしようがないじゃないかというところからやっておるのが実情ですね。ですから、冒頭に私ども考えますることは、いつも国あるいはまた県等で中小企業対策として出てまいりますると、いろいろな手かせ足かせがついちゃって、制約の方が多過ぎて実効が伴わない点がたくさんあるわけですね。だから、私はいつも言うのですが、政府機関にも県の機関にも、おまえたちはチェック機関かと言って怒るのです。本当の育成ではなくて、チェックばかりやっておる。ですから、設備貸与公社一つ取り上げても、組織化対策で生まれた企業組合を対象にしないとか、何かチェックばかりあるということですね。こういう点は改めていただかないと、実態に沿った中小企業対策はできない。ですから、先生方もひとつ、ここで立案したものが実際の現場でどう生きておるかということを把握していただく必要があるのじゃないか。  そこで、具体的には、一つには会社更生法は、中小企業等はいま実際には受けておりません。しかし、中小企業でも実際に受けるべきだと思うのです。だから、その中で当然借入金等のたな上げをして、そしてそれの利息等を何らかの形でたな上げすれば、かなりの企業が救済できます。現在支払い利息率が企業等によっては五%を超えておるところはたくさんあるのですよ。そうすると、何のためにやっておるかさっぱりわからない。一億の売り上げを上げて五百万の利息を払っておったのでは、これは何をやっておるのかわからぬのですよ。ですから、そういうところからいやでも高利貸しの方向に走っていくのです。ですから、この際、そういう実態の中から、中小企業でもやむなく倒産に追い込まれた場合には、会社更生法に準ずるような救済措置を講ずるべきではないか。  それから第二番目には、先ほど申し上げたように、手形を発行人が振り出すわけですが、もらった方としては、全く銀行から振り出しただけのもので担保も何もない、単なる信用と経験だけでこの手形を信用して交換しておるわけなんですから、この際、手形保険制度は——自動車その他における事故でも保険制度がある。手形事故について保険が何もなしに、ひっかかったらまる損で、貸し倒れ準備金あるいはまたその他の償却の引き当てがあるだけというようなことでなくて、これはやはり保険制度をもって、少なくとも手形を割り引くときには保険制度が活用できるというような措置を講ずれば、必ず銀行が割り引くときも慎重に割り引きますし、あるいはまた手形流通についても裏づけがありまするので、信用交換が順調にいくのじゃないか。だから、手形保険制度はいろいろ問題があると思いますが、ぜひこれは実現をしていただきたい。  それから第三番目には、情報機関なんですが、情報機関が中小企業の場合には一歩も二歩もおくれておりまして、先ほど申し上げたように、倒産といったときに行ったら何もないというのが実情ですから、せめてこれは各局単位あたりにこういう情報機関を何らかの形で持たれるべきではないか。  それから、それと関連してですが、倒産いたしましたときには、完全に債権者会議に一任されてしまって、公的機関その他は何も介入をいたしません。この意味においては、今日の経済界においてはあるいは妥当だと思いますが、しかし、これを債権者一存に任しておきますると、大企業は人が派遣できますが、中小企業は債権を持ちながらも人が派遣できないので、結局何も取れなくなるという、債権者会議の中でも配分等において不公平が生じておるのが実態なんです。それがために、この間に仲介できる何らかの機関等を公的に設けていく必要があるのではなかろうか。  それから最後に、今日の中小企業を救う一つの道としては、先ほどから民間設備の拡大等によって景気回復を図るべきだという御意見もあるわけですが、今日持っております民間の設備はかなり膨大なものがあるわけです。むしろこれが完全操業しておらないのが実態だと思うのです。これはいわゆる消費購買力がないからなんです。ですから私は、民間設備の拡大によって景気の回復を図るということはかえっておかしいのであって、買う者がないのにつくる人はないわけですから、むしろ消費拡大に重点を置いていただければ、必ずこれによって中小企業は救われる、景気回復策であるということは断言できると思うのです。  以上です。

坪川信三自由民主党

○坪川委員長 以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位には貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十七分休憩      ————◇—————     午後一時六分開議

細田吉藏自由民主党

○細田委員長代理 休憩前に引き続き、会議を開きます。  この際、御出席の公述人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  公述人各位には御多用中にもかかわらず、御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。昭和五十二年度総予算に対する各位の御意見を拝聴し、予算審議の貴重な参考といたしたいと存じますので、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただくようお願い申し上げます。  次に、御意見を承る順序といたしましては、大熊公述人、和田公述人、前川公述人、森口公述人の順序で、お一人約二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただき、その後委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、大熊公述人にお願いいたします。

大熊一郎慶応義塾大学経済学部長

○大熊公述人 五十二年度予算案に関連いたしまして、私の財政に関する考え方を述べさしていただきます。  五十二年度予算も引き続き大量の公債、国債発行に相まつ予算となっているわけでありますが、ここで、私といたしまして、特にこの際、財政の規律という問題をもう少し真剣に考えるべきではなかろうかということを痛感する次第であります。財政の規律は、かつて高度成長の時代に一つの均衡予算主義という形であらわれておったわけでありますが、今日、均衡予算への復帰というものが当分不可能であるとしても、やはり何らかの形で財政膨張への歯どめというものを考える必要があるというふうに考えるわけであります。  これまでのわが国戦後の財政の歩んだ道を考えますと、均衡予算主義、それから昭和四十年以降建設公債の発行、さらに最近は特例公債を発行し、公債がまさに一般会計の三〇%になんなんとするというような状況になってきたわけであります。当初、公債を昭和四十年に発行いたしましたときも、建設公債ということで、それが何らかの歯どめになるというように考えられておったのでありますが、その後公債の発行は依然として年々行われてきたわけであります。公共投資が建設公債で賄われることは、現在の世代と次の世代との間の負担の公平を考えても当然であるというような考え方が一部にはあるわけでありますが、公共投資が年々拡大をしていく、一定のテンポで年々拡大していく以上は、世代間の公平という見地から言っても、どれだけが税でどれだけが公債の負担割合が望ましいかということは実は決められない。全部税で行ってもいいはずであります。さらに、公債の発行が所得の好ましからざる再分配を生むということもすでによく周知の事実だと考えられるわけであります。  ここでわれわれは、このような財政の膨張の歯どめを考える理由はどこにあるのかと申しますと、それは今後のわが国財政の長期的な傾向といたしまして、この公共サービスの増大による財政支出の増加傾向というものは避けることができないわけであります。すでにアメリカもそうでありますが、わが国も一次、二次産業に比較してサービス産業の比重が最も高い先進国になっているわけでありますが、このサービスの中で最も重要かつウエートが大きいのは公共サービスであり、その中には行政サービスも含まれ、あるいはそのほか医療サービス、教育サービスというような重要なサービスのウエートがますます大きくなり、これを賄う財政支出も長期的に増大をする傾向があるわけであります。したがいまして、これに伴って租税負担率も長期的に上昇をせざるを得ないという傾向を持つことは、これはやむを得ない状況ではないかと考えられるわけであります。  このように財政が長期的に膨張をすることについて、一体それを無際限に許すべきかどうかという問題があるわけでありまして、第一に、そのように必然的に長期的に公共サービスが増加する以上は、やはりその財政支出を効率的に行う、歳出の効率化をまず考えに入れてこの長期傾向に当たらなくてはならない財政当局の重要な課題であり、そのためには、今日のように年々の予算がきわめて硬直化いたしまして、毎年既定経費に一定の増し分が加わっていく、このような方式に反省をする必要がある。これは財政当局者の最も反省を要するところではないかと考えられるわけであります。  それからさらに、第二番目として、これはしばしばアメリカなどでも減税あるいは増税の法案が議会に提出されますと、減税案であれ増税案であれ、必ず議会の附帯決議として財政支出の節約が付随しているのでありまして、財政支出が次第に膨大になってまいりますと、むしろ国民の側からは財政膨張への歯どめとしての減税が要求をされてくるということも必然的なことだと思うのであります。財政支出をふやすよりも減税をせよ、つまり財政支出の膨張が決して効率的ではないというような観点から、そのようなむしろ膨張の歯どめとしての減税という要求が必然的に出てくるわけであり、これに対する対処というものもまたきわめて重要なことでありまする。  さらに第三に、現状のように、また当分このような状況が続くといたしますと、やはり公債の発行に対する何らかの歯どめが必要になり、それは単純に一般会計予算の何%という数字だけでこの歯どめを理由づけるというわけにはまいりません。むしろ今後公社債市場の自由化、公社債市場を育成し、金利を自由化することによっておのずからそこに公債発行の節度が生まれる、公債発行の歯どめが生じるという方向に向かっていくべきものと考え、これはやはり財政並びに金融政策の今後の重要な課題であり、また緊急の課題であると考えられるわけであります。  それで、今日減税か公共投資かということがしばしば問題に上ってまいるのでありますが、この減税か公共投資かということの真の問題意識というのは、これは財政支出の膨張かそれとも減税かという問題、繰り返しになりますが、そういうところにあるというふうに私は考えるのであります。  さらにそれに関連をいたしまして、景気刺激の政策としての公共投資か減税かということに対する考え方を若干つけ加えさせていただきたいと存ずるのであります。  今日の議論は、公共投資も行う、また減税も行うというような問題ではなく、やはり公共投資を行うのかそれとも公共投資を減らして減税を行うのかということが当初に述べました財政の規律の中で考えられるべき問題であるというふうに私は考えるわけであります。  しばしば乗数効果というものが取り上げられ、公共投資の方が減税より乗数効果が大きい、あるいは減税の方が長期的に効果が大きいというような議論がなされておるわけでありますが、通常、乗数効果を問題にいたしますときは、これは当初の刺激だけが問題でありまして、後はどちらも限界消費性向に基づいた同じ乗数の波及効果ということになるわけでありまして、当初の刺激の違いであるというふうに考えられるわけであります。  それからもう一つ、第二番目に考えに入れなくてはなりませんことは、私どもが財政政策の効果を、特に景気対策としての効果を議論する場合には、国民が長期的にこの経済の行方あるいは租税負担率の行方というようなものについてどういう考え方を持っているかにも依存をするわけでありまして、経済審議会の経済計画にもありましたように、もしこの財政支出の長期的な増加傾向に対応をいたしまして長期的な増税が予想をされるということになりますと、減税の消費刺激効果はそれだけ削減をされるわけでありまして、つまり将来所得税が増大をするというのであるならば、その場合減税はもっぱら貯蓄の方に回ってしまうということになるわけでありまして、やはりこの乗数効果を考えます場合におきましても、国民が長期的に経済のどのような状況を予想するのか、あるいは増税を覚悟しているのかどうかということに依存をするというふうに考えられるわけであります。  第三番目に特に私が強調をいたしたいことは、公共投資か減税かということよりも、両者ともいわば財政の赤字によって賄われているわけであります。その場合、この財政の赤字は国債の発行によって賄われるわけでありますが、ここで財政の民間経済に与える重要な効果と考えられますことは、財政が毎年、特に今日では昭和四十年以降十数年にわたって公債を発行し続けている。公債の発行は、それが民間の金融資産の増加に結果としてなるわけであります。このような年々の公債の累積が民間の金融資産の累積であるといたしますと、そのような民間の金融資産の増加が経済にいかなる効果を持つのであるかということを十分慎重に配慮に入れなくてはならない。その民間金融資産の増加が国債で増加をするか、あるいは数年後に日銀の引き受けに回って通貨で増加をするかは、これは若干影響の異なるところでありまして、たとえば国債の民間引き受けが今日金融政策上クラウディングアウトということで、民間投資を圧迫しはしないかということが心配をされておりますが、一方、それが通貨の増発で賄われれば、そこにまたインフレへの危険というものも当然ひそんでいるというふうに考えられるわけでありまして、私がむしろ強調いたしたいのは、公共投資か減税かと申しますよりも、このような財政赤字の累積が経済の金融情勢に及ぼす影響というものを十分考慮に入れるべきである、これが強調すべき点だというふうに考えるわけであります。  最後に、今後のあるべき財政の姿というものを私は考えてみたいのでありますが、先ほど長期傾向として述べましたように、公共サービスの増加傾向というものにはまずどのように対処すべきであるか。第一は、当然財政支出の効率化が図られなくてはならないわけでありますが、第二番目には、それに応じて当然増税ということも考えられるわけでありますから、国民の税負担の公正化というものを徹底的に追求して、できるだけ公正な税負担というものを実現をしていくということが必要であり、それが増税への道になるわけであります。  三番目に、この公共サービスの負担を単に税のみに負担をさせるかどうかという問題でありますが、やはりそこではこの税のほかに——また税と申しますのは今日ではもっぱら直接税でありますが、直接税のほかに公共料金、また一種の公共料金であります間接税、それからさらにこの公債の発行、この三者の間でどのように適正に負担をすべきかということを考えに入れなくてはならない。つまり、税とそれから利用者の負担する公共料金とそれから公債発行による民間貯蓄の利用、この三者の適正化をいかにして図るかということが問題かと存ずるわけであります。  さらに第二点といたしまして、今後の、それならば景気調整としての財政政策はいかにあるべきかという問題でありますが、私は、この財政政策の効果というものを余り過信をしてはならないのでありまして、何でもかんでも財政政策によって景気が回復されるというようなことは、これにはおのずから限度があるという考えであります。もし財政によって景気調整を行うなら、これは基本的には一定の税制を維持しつつ、景気の変動に対応した税収の変化によって景気の安定を図る。しばしばビルト・イン・スタビライザーと言われておる効果にもっぱら依存をするのが望ましいというわけであります。  さらに、自由裁量の余地もなくてはならない。やはり、ときには景気が過熱をし、ときには景気が意外な落ち込みをするというような場合には、やはりある種の自由裁量的な措置が必要でありますが、今日までわが国で行われてきたこのような景気調整策というものには一つの反省が必要である。それはやはり、私どもは、もう少しそうした自由裁量的な景気調整の財政政策として間接税に重点を置いた政策を行うべきではなかろうかということであります。長期的な租税負担が増加をするというもとでは、所得税減税がもっぱら貯蓄に吸収をされてしまうということも考えに入れますと、やはり間接税というものの税率を適当に上げ下げするというような形の操作というものが景気対策の財政政策の中の一環として考えられるべきではなかろうかということであります。  私は最後に、日本経済の着実なる発展というのは、民間投資による生産キャパシティーの着実な増加と、それから個人消費の着実な上昇にまつところが最も大であるべきであるというふうに考えるわけであります。このような着実な成長、それから所得の分配の公平というものを念頭に置いた財政運営が行われるべきでありますが、同時に、財政がなし得ることとなすべきことというものが何であるかということを明確にしていくということが、今後のわが国経済の運営にとって重要であるという私の考え方を申し添えまして、公述人の話を終わらしていただきます。(拍手)

細田吉藏自由民主党

○細田委員長代理 どうもありがとうございました。  次に、和田公述人にお願いいたします。

和田八束立教大学教授

○和田公述人 和田でございます。  本日は、昭和五十二年度予算に関連いたしまして若干お話をさせていただきたいと思います。  最初に、全般的な問題につきまして意見を申し上げまして、次に、いわゆる減税問題について少し述べさせていただきたいと思います。  五十二年度予算につきましては、景気回復と財政の健全化というこの二つの目標が掲げられているようであります。現在の経済問題につきましてはいろいろと意見のあるところでありますけれども、私は、現在、財政あるいは政策的にこの経済問題に対処する考え方あるいはあり方としては、やはり循環的なものよりも構造的なもの、あるいは分配的な側面というものが重視されなければならないのではないかというふうに考えているわけであります。  現在、確かに経済は困難な状況あるいは局面が多いということは否定できないわけでありますけれども、これを考えてみますと、単に景気が落ち込んでいる、あるいは成長率が鈍化しているということだけではなくて、むしろそれよりも大企業による中小企業の圧迫でありますとか、あるいは老後の問題、教育の問題に見られますような社会的な不安が依然として大きいという問題、それから税制に見られますように社会的不公平あるいは社会的不公正が非常に大きいという問題、それからさらに、物価上昇が依然として続いている、こういうさまざまな不安なり矛盾なりというものが経済に大きく覆いかぶさってきているわけでありまして、これに対して財政が何をしなければならないかということになりますと、ただ単に景気を刺激して成長率が上がればそれでいいという古い考え方ではなくて、福祉を拡大して公共サービスを拡大していく、そしていま申し上げましたようなさまざまな社会的な不安でありますとかあるいは矛盾を除去していくということが重要な目標でなければならないというふうに考えるわけであります。したがいまして、景気刺激によって成長率を高くするといういわゆる成長本位の政策ではなくて、福祉型財政に変えていくということが依然として今日重要な目標でなければならないのではないかと思うわけであります。そうして、その福祉型財政によってさまざまな社会的アンバランスを解消していくということが重要ではないか。したがいまして、減税にいたしましても公共投資にいたしましても、その目標とするところが単に景気刺激による成長率の上昇ということのみを主要な目的としているということに対しては批判されなければならないのではないかと思うわけであります。  しかも、政府案によりますと、公共投資がかなり重視されているわけでありますけれども、これは経済に対する効果という点がかなりあいまいなままに、主として財務的な立場といいますか、つまり財源的な立場、公共投資であれば建設国債によって賄い得る、こういう財務的な立場が非常に強く見受けられるように思うわけでありまして、公共投資拡大政策につきましては、一層財政構造の改革をおくらせるものであるというふうに判断せざるを得ないわけであります。  もう一つの財政健全化という問題も、いま申し上げましたような従来の高度成長型の財政から福祉型の財政に転換させるという目標と両立するものであります。  二、三申し上げますと、たとえば税の不公平を是正するということを徹底的に行いますれば、大企業への課税の強化ということになるわけでありまして、それによって税収が増加するということであります。つまり、税収入がふえることによって財政の健全化が図られる。そしてまた福祉面に対する支出を拡大していく。そしてそのためにさまざまな制度的な改革を行う、社会保障制度あるいは社会保険制度等の制度改革なども含めて行うということになれば、従来のような公共投資重点の財政を組みかえることによって財源的な余地がそこに出てくるということになるわけであります。  また現在の財政問題につきましては、国、地方の財政関係が非常に重要なポイントになっているわけでありまして、これまでのいわば集権型の財政から分権型の財政へ切りかえるために税を大幅に地方へ移譲する、あるいは補助金を整理して国、地方の財政関係を改めて地方の自主性を高めるということにすれば、これまた国家財政の方にも財源が出てくるということになるわけであります。  財源的に制約されている、あるいは財源がない、あるいは税収が鈍化しているというふうなことが現在の財政問題になっておりまして、そしてこれが国債の累増を招いているわけでありますけれども、財政の体質なり構造を変える、あるいは税制を改革するということによって、こうした問題は打開することができるわけでありまして、財政健全化が達成できるということになるわけであります。したがいまして、財政の福祉充実への転換ということと財政健全化ということとはおのずから両立する問題であるというふうに考えるわけであります。こうした視点で五十二年度の予算は考えるべきではないかというのが私の意見であります。  その次に税制と減税問題ということに触れておきたいわけであります。  現在の税制問題では何が重視されなければならないのかということにつきましては、私は二つの点があると考えているわけであります。一つはインフレによる負担の調整ということが重要である、もう一つは税の不公平を是正することが重要である、この二点であります。  現在物価上昇が依然として続いているわけでありますが、こういう状態のもとでは税負担、特に所得税の負担でありますけれども、所得税の負担は自動的に増加することになり、そのことによって所得は実質的に減ることになるわけであります。したがいまして、こうした実質所得を維持するということを考えるならば、おのずから毎年税負担の調整をすべきであるわけであります。したがいましてこうした調整は、言葉の正確な意味から言いますと、減税ではなくて調整というふうに言うべきであるわけであります。今日この調整の問題も減税という問題に含めて言われておりますために、今日では税負担の割合は諸外国に比べてもそれほど水準として高くはない等の意見もあるわけでありますけれども、その問題と、現在インフレのもとで調整すべきであるという問題とは全く違った問題であります。税負担水準が適正であるかどうかということはそれ自体として議論されなければならないわけでありまして、私は、単純に諸外国との比較で高いとか低いとかと言うことはできないと思うわけでありますけれども、その問題とこのインフレ下における調整とは違っているというふうに言わざるを得ないわけであります。  このインフレによる調整の問題といいますのは、わが国だけではなくてOECD加盟各国におきましても、今日では各国ともインフレが激しくなっておりますので、非常に重要な課題として取り上げられて、インデクセーションの問題等も含めて議論になっているところであります。したがいまして、わが国におきましても、インフレ下あるいは物価上昇下においてはどのような形で調整をすべきかということにつきましては真剣に検討されるべき問題であり、一定のルールをつくるべきであります。つまり、物価上昇がどれぐらいあればどれだけの調整をすべきかということについては、今後長期的はルールをつくるべきではないかというふうに考えるわけであります。五十二年度につきましても、五十一年に物価上昇にもかかわらず調整が行われていない、また五十二年におきましてもかなりの物価上昇が予想されるということから言いますと、調整をすべきことは言うまでもないところであります。  また、この物価上昇は単純にすべての階層に同じように影響を及ぼすのではなくて、非常に不平等な影響を及ぼすわけでありまして、物価上昇による配分の不均衡という問題が出てくるわけで承ります。端的に言えば、低所得者ほど物価上昇によるマイナスの影響が大きいということでありまして、この税の上からの調整もこうした配分の不均衡を是正するという観点をもう一つつけ加えるべきであります。  こうした観点で、税財政の専門家などで国民税制調査会という会をつくっているわけでありますけれども、ここで昨年の十二月二十一日に五十二年度税制改正に対する提言という提言を行ったわけであります。私はそこの事務局長をしているわけでありますが、ここでそうした物価調整の目的に沿って、個人所得税につきましては本人三万円、配偶者一万五千円、扶養家族それぞれ一万五千円、四人世帯の標準でありますと七万五千円になるわけでありますけれども、これを税額控除方式によって減税すべきことを提案したわけであります。この提案は、今日の物価上昇下で、昭和五十年において年収入三百万円台の所得者でありますけれども、この辺の税負担の増加が昭和五十二年になりますと七万円近くになるわけであります。これは年一〇%ずつ所得が名目的に上がったものとみなしてそういう計算になるわけでありますが、それを一〇〇%調整することができる。つまり、大体年収入三百万円程度で四人世帯というところ以下の層が一〇〇%調整されて、それ以上になりますと次第に調整の度合いが少なくなるという形になるわけであります。このようにしてインフレによる調整を果たすだけではなくて、先ほど申し上げました物価上昇による配分の不均衡も調整するという二つの目的を達成できるものとして、税額控除方式による減税を主張したわけであります。  それから第二番目に申し上げました不公平是正ということでありますけれども、この不公平是正は現在、税制では非常に重要な問題ではなかろうかと思います。従来のわが国の税制は、一言で言いますと貯蓄投資優遇型といいますか、個人所得課税では貯蓄をきわめて優遇し、それから法人関係は投資を優遇するという制度になっており、その目的に沿ってさまざまな特別措置が設けられており、あるいは企業税制がつくられていたということでありますので、今日ではこの特別措置を再検討し、企業税制を再検討するということが非常に重要であります。  二、三例示的に問題点を挙げますと、一つは個人所得課税であり、利子配当優遇措置であります。さらに有価証券の譲渡所得等のいわゆるキャピタルゲイン課税に対する実質的な非課税制度を改める、こうした内容での貯蓄優遇税制を廃止するということが不公平是正の一つのポイントであります。  それから企業税制におきましては、準備金を縮少する、特別償却を廃止する等を中心とした特別措置を廃止するということが必要であります。  その次には法人税制でありますけれども、法人税制につきましては法人実在説的な立場に立ったいわゆる法人利潤税に切りかえるべきでありまして、このもとでの法人に対する累進課税の必要性があります。その他法人につきましては交際費、広告宣伝費等の課税を強化すべきであることは言うまでもないところであります。  そのほか個人所得課税におきましては、今日、所得だけではなくて資産における不平等も大きくなってきておりますので、富裕税を創設する。富裕税につきましては法人に対する財産税も含めて考えるべきである、このように考えているわけでありますが、いずれにいたしましても、今日貯蓄投資優遇を基軸とした優遇税制によってきわめて税制が不公平になってきているということから見まして、いま申し上げましたような点を中心として税制の改革を行うべきではないかというふうに考えるわけであります。  今日いわゆる一兆円減税が問題になっているわけであります。この点につきまして私見を申し上げますと、今日の減税問題は、その目的としては物価調整に置くべきだというのが私の意見であります。物価調整に置くべきであるということは、先ほど言いましたように、物価上昇下において所得税においては何よりも負担の調整を図るべきであるということから言いまして、今日さしあたり行わなければならない税制の問題としては、物価調整があるということであります。  先ほど国民税制調査会の提案につきまして若干御披露したわけでありますけれども、もう一度申し上げますと、四人世帯で大体七万五千円というのを提案したわけであります。これで試算をいたしますと、減税総額はほぼ一兆円になるわけであります。したがいまして、一兆円と言いますのは物価調整で行うべき減税規模ということであります。  もちろん減税自体が経済に対する一定の効果を持ち、それが景気刺激的な効果を持ち得るであろうということは、当然予測できることでありまして、そうした面も考えなければならないわけでありますけれども、私は現時点ではそれはむしろ副次的な効果であり、主要目的としては五十一年、五十二年分についての物価調整ということを中心に置くべきであるというふうに考えるわけであります。  その方式でありますが、この方式につきましても、先ほども触れましたように、税額控除方式が妥当であるというふうに考えるわけであります。同じ物価調整をいたしましても、たとえば従来の減税のやり方あるいは昭和五十二年度予算における政府の減税案というのは、いわゆる所得控除の引き上げによる課税最低限の引き上げになっておるわけでありますけれども、このような所得控除の引き上げでありますと、せっかく調整をいたしましてもその効果は非常に不平等にあらわれてくるわけであります。試算によりますと、たとえば政府の減税方式によりますと、二百万円の夫婦子供二人の四人世帯でありますと一万一千円の所得税減税になるわけでありますが、これが一千万円の収入の四人世帯になりますと三万六千円という数字になるわけであります。このように所得控除の引き上げというのは下に薄く上に厚いという不平等な減税になるわけでありまして、せっかく調整を図ってもその効果は逆になってしまうということであります。  そしてまた同時に、先ほど物価調整減税のねらいとして所得配分の不平等を是正すべきである、こういう目的もあるということを申し上げたわけでありますけれども、こういう目的からすれば全く逆になってしまうということであります。  これに対して税額控除方式で言いますと、下に厚く上に薄い、こういう減税の形式になるわけでありまして、物価調整のねらいからするときわめて妥当なものである、こういうふうに考えるわけであります。もちろん税額控除の方式というものが全面的に採用されるわけではなくて、現在の所得控除部分も残るということは言うまでもないことでありまして、所得控除の持っている欠陥は当然残るわけでありますけれども、これは過渡的なものとしていたし方ない、長期的には所得控除のあり方が再検討されなければならないことは言うまでもないわけであります。たとえばスウェーデンなどのように所得控除を採用するにしても、所得による頭打ち方式というふうなものを採用しているわけでありますけれども、こういうふうなことで所得控除が所得の上昇部分には及ばないというふうな装置をつくっていかなければならないことは言うまでもないわけでありますが、こうしたものができるまでの過渡的なやり方としては税額控除方式でそれらの欠点をある程度是正することができるということであります。  それからまた同時に、収入一千万円以上の層につきましては税率を一〇%引き上げるというふうな付加税を考えることも必要なことでありまして、そのことによってさらに一層低所得者への減税効果を強めるということが必要だろうと思うわけであります。  で、この減税に対する財源でありますけれども、これは私は不公平税制是正による税収増をもって充てるべきである、また充てることができる、こういう考え方であります。細かい話は省きますけれども、国民税制調査会で先ほどの案を実現するための財源として試算したところによりますとほぼ二兆三千億円ぐらい、これはかなり控え目に見たわけでありますけれども、控え目に見て二兆三千億円ぐらいの増収があるということでありますので、一兆円の物価調整をしてもなお財源的に余力が出てくるということになるわけであります。あるいは東京都が昨年出しました不公平税制の是正と財政構造の改革、こういう提案の中では約二兆六千億円の増収が見込まれるというふうに計算をしているわけであります。計算の仕方によって幾分差は出てくるわけでありますけれども、現在の不公平税制を大きく再検討するということでかなりの税収増があるということは確認できるのではないかと思うわけであります。  それからもう一つ、戻し税方式ということが議論になっているわけでありますけれども、この戻し税方式が活用されるのは、主として年内減税において有効であろうと考えているわけであります。私たちの国民税制調査会でも、昭和四十八年のいわゆるドルショックの狂乱インフレのときには、直ちに年内減税をすべきである、その減税方式は直ちに戻し税で行うべきであるということを提案して、その後も年内減税については戻し税方式を主張してきたわけでありますけれども、いまだに実現されておりません。このようにすでに支払われた税金を、年度内といいますか、年内の物価上昇を勘案し、その年内の自然増収の中から減税をするという場合には、戻し税方式は非常に有効であり、今後も政府の物価上昇見通しを上回って物価上昇があったという場合には、年末に戻し税方式による減税を年内においてもする。いままでの減税は年度当初においてしか行われていないわけですけれども、この年内追加減税を行うことが非常に重要であろうかと思いますが、その場合には戻し税方式を活用すべきであろうと思うわけであります。  今回問題になっておりますのは、今後の五十二年分の税制でありますので、おのずから年内減税の場合とは違っているわけでありまして、戻し税といいましても、いわゆる概算払いになるわけでありますので年末になると思うのですが、年末に調整を最終的にはする。たとえば六月なり七月なりに戻し税を行ったということになりますと、年内にもう一度調整をするということになるわけでありまして、技術的にはやや煩瑣なところがあると思いますけれども、実行できないものではないというふうに考えるわけであります。むしろ私は、今日戻し税方式が主張されるのは、実質的な考え方としては五十一年分の調整であるというふうに考えたいわけでありまして、そうであるとすれば、三月におきましても四月におきましても直ちにこの五十一年分の調整という意味合いで戻し税方式による減税を行うべきではないか、そうしてそれを五十二年分において年末に調整すればいいのではないか、こういうふうに考えているわけであります。同時に経済に対する刺激的効果も考えるとするならば、早ければ早いほどいいわけでありますので、早期に実施すべきではないか、こういうふうに考えるわけであります。  そしてまた、税額控除方式と戻し税方式とが何か矛盾するような、あるいは対立するような意見もあるように聞いているわけであります。これは新聞などの報道でありますので正確にはわかりませんけれども、そのように聞いているわけでありますが、これは矛盾するものではないわけでありまして、税額控除方式は減税の方式でありまして、先ほど言いましたような目的と効果を持つものであり、戻し税方式は、その減税の金額、減税額をいかに配分するかというやり方の問題でありますので、レベルの違った問題ではなかろうか。したがいまして、税額控除方式で減税をして、その減税分を返すときに戻し税で返すということになるわけでありまして、これは両立可能な問題である、こういうふうに考えているわけであります。  いずれにいたしましても、今日財政の上ではいろいろ重要な問題がありますけれども、税制の問題と言いますのは、財政構造の改革にとりましてもあるいは国、地方の財政関係の問題から言いましても、社会的な公平なり公正を実現する上にもきわめて重要な問題でありますので、税制改革に対して積極的な方向を打ち出されることを強く希望いたしまして私の意見にかえさせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)

細田吉藏自由民主党

○細田委員長代理 どうもありがとうございました。  次に、前川公述人にお願いいたします。

前川一男全日本労働総同盟書記長

○前川公述人 同盟の前川でございます。  昭和五十二年度予算案について、特に私は、予算説明の中で経済情勢、財政事情にいろいろ触れられておりますが、原則としてはそのことを理解できるという前提に立ちまして、一部修正をお願いしたいという生々しい三つの問題につきまして特に御配慮をお願いしたい、そういうように思います。  第一番は雇用問題でありまして、特にその中の定年延長にかかわる問題であります。それから第二番目は、いわゆる税制改正、特に減税問題を中心として申し上げてみたいと思います。それから三番目には、政管健保の一部改正にかかわる問題について触れたいと思います。  まず第一の雇用問題でありますけれども、現在の経済情勢の中で、政府はいわゆる雇用面の改善のおくれというものを重要事項として指摘をいたしております。ただ、具体的な対策を考えてみますと、その基本的な姿勢が不十分なのではないか、そういうように思うわけでございます。私どもが雇用の改善を図り、先々は完全雇用の達成をしていきたいという方向性をとる限りにおきまして、前提としては景気の回復、安定的な成長路線の追求を待つことは当然でございます。しかし、それだけではなくて、雇用情勢の改善を図って完全雇用を達成していくというためには、あわせて雇用改善のための政策の国としての柱をより明確にして、それを全国民、全企業に訴えていくという姿勢が必要なのではないか、そういうように思うわけでございます。  私は、柱は二つであるというように思っております。その二つの柱というのは、第一は定年制の最低六十歳までの延長であります。直ちにできなければ、定年制の延長でなくても再雇用などを含んでも結構だと思います。第二は雇用安定資金の創設であります。この二つを具体的な施策の柱としまして諸問題に対応していくということでなければ、私はとうてい何年か後に完全雇用を達成することはできないと考えております。  いわゆる不況時に対する対応と職業転換の対策につきましては、今回国会に政府から提案をされております雇用安定資金の新設がございます。これは私どもとしては評価をしたいと思っております。ただ、その中身の運用であるとかあるいは財源の確保の問題についてはさらに充実をしていただくようにお願いをしたいと思います。  そこで、二つ目のいわゆる定年制に関する問題ですけれども、いま特に雇用問題について焦点をしぼって考えなければいけないのは高年齢層の対策であろうかと思っております。それは単に失業対策ということではなくて、もっと国全体として一歩進んで定年制延長の基本的な精神にのっとって積極的な姿勢をとるべきなのではないかと思います。現在労働省などの資料によりますと、この雇用問題の特徴的なもの、特に定年制に関連して特徴的な内容というのは、たとえば五十五歳から五十七歳ぐらいの定年制をとっているところが圧倒的に多いこと、しかも特に大企業の場合にそれが多いということでございます。すなわち大企業が若年の定年制にいまでも甘んじているということであります。現在千人以上の企業におきましてはほとんど全部が定年制をしいているわけであります。ところが、五千人以上の企業におきましては、六十歳定年をとっているところは大体一〇%台しかございません。さらにまたもう一つの特徴点としては、小さい企業の場合でありますけれども、たとえば百人未満の企業におきましては、定年を定めていないところが大体三五%ないし四〇%あるわけであります。これも中身を決めていないから、たとえば六十歳以上も働いてもらっているというところもありますし、内容によっては大変複雑なところもあろうかと思いますが、それが現状なのではないかと思います。しかも職業訓練などにかかわって、現在のいわゆる雇用問題の一番重要な問題になっているのは中高年層であって、特に高年層が滞留をしてなかなか仕事が見つからないというのが現状ではないかと思うのです。  こうして考えてまいりますと、日本全体の国の政策として、いわゆる日本じゅうのすべての企業は、まじめに働く人々の雇用を最低六十歳までは保証するという体制を一日も早く完成をすべきなのではないかと思います。そのために、これは労使関係の問題などもありますから国として具体的なことをぴたり決めるわけにはまいりませんけれども、国会としては定年延長促進法の制定を行っていただくとか、あるいはまたそれが事実上大変無理があるということであるならば、私は国会におきます特別の決議をしてもらって、その考え方の方向性について国の内外にアピールをしていただきたい、そういうように考えているわけであります。  いま申し上げましたことは、最低六十歳までの雇用保証を確立をするための社会に対する国としての環境整備、そういうものに結びつくような方針をぜひとも取り上げていただきたいという意味合いであります。しかも現在、年金制度の問題が社会保障の問題として将来の構想について年金懇等において検討がなされておりますけれども、年金の受給開始年齢を、現在の六十歳に対して将来を考えた場合には老齢化時代に対応するために六十三歳あるいは六十五歳に伸ばしていきたいという考え方が大変に強くいま出ているのではないかと思います。そういう将来の社会保障の中の年金制度の改革にとっても、私は定年制問題並びにそれに関連をした事項というのは大変重要かと思います。  もちろん具体的な内容については労使の協議で決定をすべきものでございます。私はそういうことが具体的に日本の中全部で完了する時期を、昭和五十五年度までにひとつ方向づけをしていただきたいという気持ちであります。昭和五十五年度までに日本の企業で最低六十まで雇用が保証される意味合いというのは、政府が決定をしましたところのいわゆる前期経済計画の最終年度を指しているわけであります。  現在、定年延長奨励金あるいは継続雇用奨励金、その他いろんな対策が予算上も出てきておりますけれども、いま申し上げましたような対応の仕方というものが、もっと具体的に国としてアピールをしなければ、その成果というのは十分に上げることができないだろう、かように考えているわけでございます。  第二番は、税制改正、特に減税問題を中心として申し上げてみたいと思います。  五十二年度は、景気の回復を着実に、しかも持続的なものにしたいと今度の予算説明では経済企画庁が言っているわけでありますけれども、そのための予算措置は公共事業関係費の充実にしぼっているわけでありますけれども、それだけでは長期安定成長路線を確立する政策としては当面不十分なのではないかと思っております。したがってこの際、国民消費支出の増大にもぜひとも目を向けていただきたい。そして公共事業も、あるいは減税などを含めまして、多面的な政策をこの際重視をすべきなのではないかと考えます。     〔細田委員長代理退席、栗原委員長代理着席〕  物価調整減税を含めまして、私は一兆円程度の減税をぜひ考えていただきたいと思いますが、昨年、昭和五十一年度の景気を支えてきた要因の中で最大のものは、五十一年度だけで見れば、輸出の問題がありますし、さらに、私はやはり実質消費支出の問題があったのではないかと思います。この実質消費支出というのは、総理府が発表しております家計調査速報によってこれを所得階層別に分析をいたしますと、現実には所得の低い階層ほど大変に伸び率が高くなっているというのが現状であります。たとえば、昨年の七月から九月という第三・四半期をとってまいりますと、いわゆる五分位法による第一分位のところ、所得の一番低いところでは、前年同期に比較をして二三・二%、いわゆる実質の消費支出が伸びております。しかし、一番高い層におきましては、逆に前年同期に比較をしまして一七%のマイナスになっているということが出ているわけであります。大体、第一、第二、第三・四半期ともにほぼそれに近い傾向が実際には総理府の資料によっても明らかになっているのではないかと思います。いわゆる低い所得の階層に対して、減税を考えるならば、重点を置くというのは当然であろう、かように考えます。もちろん個人消費支出を伸ばしていくための源泉というのは、減税だけではなく賃金も当然あるわけであって、主に賃金、減税であって、それは可処分所得の関係なのではないかと思います。  以上の考え方を基本にいたしまして、具体的に若干のことを申し上げてみたいと思います。  政府の方から提案されておりますいわゆる物価調整減税としての所得税減税、これらについては、その提案内容に第一にまず賛成を申し上げたいと思います。  それから、五十二年度分の特別の減税の措置として、いま申し上げました物価調整減税、これを含めて合計で一兆円程度の減税の趣旨を生かして、国会におきましては最大限の努力をぜひともお願いをしたいと思います。もちろん一兆円というものは、数字の上では絶対的なものではないということは当然でありましょう。  そこで、それらの減税を行う場合の取り扱いの問題が一つは焦点に上がっております。戻し税の方式であるとか税額控除方式とか言われております。私のもその中の一つに入るのかとも思いますけれども、私は、人的控除の方式をとらざるを得ないだろうと考えております。しかも、人的控除方式をとって、さらに所得、家族構成別による軽減額の頭打ちをとらざるを得ないのではないかというように考えております。所得が多ければ多いほど、そういうものに累増して大変に軽減額が多過ぎるという状態は避けなければいけませんので、やはりどこかで頭打ちをしていかなければならないと思うのです。頭打ち軽減額は、私は所得五百万円以上については軽減額を同額にするようにしてはどうだろうかと考えております。五百万円という根拠は特別にありませんが、サラリーマンの、比較的高勤続の古い人たちが、税込みでたとえば二十九万四千円という数字を出しました。ボーナスを含めて十七カ月といたしますと、これは約五百万円になりますので、サラリーマンの比較的古い高額の人ぐらいのものを中心にして、いわゆる年額所得五百万円ぐらいのところに線を引いて、それ以上の所得階層であっても同額にしてはどうだろうか、かように考えます。もちろん、これは家族構成別に出さなければならないと思いますし、事務的には十分できると考えております。  この理由はいろいろありますけれども、やはり今日の段階における全体の公平というものを考えざるを得ないのではないかと思うのです。理想的なものと私は思っておりません。しかし、現行におきます税制の制度がある限りにおいて、それがやはり基本的には尊重されなければならないのではないかと思います。その上に立って、私どもは、たとえば低い階層に対して相当程度の配慮を払うとか、そういう条件を満たしていくためにはこういう方法が最もいいのではないかと一つの私案を考えた次第でございます。  財源の問題ですけれども、私は、結論として申し上げるならば、どうも赤字国債の発行を考える以外にはないような気持ちがいたします。行政改革であるとか、不公平税制改正による増税であるとか、新税の検討等も物の考え方としてはこれは考えることができるのであります。ただ、これを時間的に短時日の中でやることが果たしてできるだろうか。あるいは、今日まで税制問題を扱ってきた税制調査会なり、あるいはまたその中におきましては大蔵省が中心になって、たとえば一つの増税を行う、減税を行う場合であっても、その関係方面に対して可能な限りのいわゆる理解の手続をとっている現状を見た場合に、短時日ではとうてい困難だろうという気持ちがしているわけであります。したがって、五十二年度分についてのプラスアルファという財源というものは、いわゆる政府予算が全部で二十八兆五千億円程度でありますから、仮に、ほぼまるまるこちらが申し上げている意見の一兆円に近い減税をしたといたしましても、それはいまの提案されている予算の大体二%程度のもののようなことになるわけですから、財政的にもいろいろ原理原則としては問題があるにいたしましても、何とかがまんをせざるを得ない、こういうところなのではないかと思うのです。私は、むしろ最大の課題というのは、財政事情の今日の困難というものをどうやって克服をしていくのか、そして早期に健全化を図っていくための抜本政策は一体何であるのかということについて、これは本年度以降の大変重要な課題として、お互いに腹を決めていかなければいけない、そういうことが最も大事なのではないかと思います。  この二番目の税制問題の終わりに一言申し上げておかなければいけないことは、実は租税特別措置の中で、社会保険診療報酬課税、これがいわゆる不公正是正の一つの問題として上がってから久しくなります。いわゆる政府の税制調査会からは三年間にわたって連続して答申をしております。しかも、一遍に廃止をするという方式ではなくて、やや暫定的な色彩を持った答申を三年間連続して行っておりますけれども、いまだ政府税制調査会に対していわゆる十分な説明もなされないままにそのまま放置されているというように私は感じているわけであって、これはやはり五十二年度においては解決をしていくという最善の努力を尽くしていただくことを望みたい、こういうように考えます。  次に三つ目は、政管健保の一部改正についてでございます。  いわゆる政府の提案しております社会保険費の中で、傷病手当金の支給期間の延長、標準報酬の引き上げ、賞与に関する特別保険料の徴収、患者の一部負担の引き上げなどが提案をされております。ところが、二月に開催をされました社会保険審議会では、とうとうこれは意見を一本にまとめることができないで、両案のいわゆる併記をして答申をするという以外にはなかったようでありますし、けさの新聞を見ますと、社会保障制度審議会においても相当の批判が強く出されていると承っているわけであります。こういったような状態で、果たしてこの種の相当のやはり財源に関係をした改正というものが国民的な理解が得られるのかどうか、私は大変疑問だと思っているわけであります。昨年の五月に政府が決定をした前期経済計画の二十九ページを見てみますと、給付と負担の対応関係については国民の合意が必要であることをまず前提にしておりますけれども、審議会ですらいま言ったような状態であって一体どうして国民の合意が取りつけられるという判断に立つのか疑問であります。あるいはまた、費用負担面については受益、負担能力に見合った公正かつ適正負担、制度間の不均衡是正というものを前期経済計画では基本的な柱として主張いたしております。果たしてその方向に沿っているのかどうか、大変に問題の多いところであります。したがって、今回のいわゆる政管健保の一部改正については、内容について見た場合には財政対策に少し傾斜をし過ぎているという、そういうようにとらざるを得ないわけであります。せっかく傷病手当金のようないい内容のものも出てきてはいるんですけれども、余り評価がされないというそういうもとをつくっているのではないだろうか。  たとえば家族療養給付にいたしましても、現在は被保険者本人の十割に対して家族は七割の給付になっております。私は、これは一遍に十割にということは無理であったとしても、なぜ一体七割プラスアルファというそういう前向きの姿勢がとれないのか。たとえば欧米諸国の先進国においても、いわゆる家族と本人の療養給付がこんなに差のあるところは聞いたことがございません。こういう問題点があるのではないかと思うのです。あるいはまた付添看護婦、差額ベッドの問題なども保険外支出ということになっております。病気をして、差額ベッドで大体一日平均三千円ぐらいと言われておりますし、付添看護婦も一日五千円ぐらいのところが多いと言われているわけでありますけれども、こういう問題についても、保険外のものであるということで結局は本人が泣き泣き困っているということで一体いいのかどうか。そういうことを考えた場合に、いわゆるこの健保問題というのは、高い水準の進歩する医療を安心して受けられるという、いわゆる長期的な目標であるところの前期経済計画の線に沿って、たとえこれは漸進的であったとしても抜本政策を打ち出して、そしてさらにそれに関連をする費用負担を含めて、そういう意味での財政構造というものを再検討すべきなのではないだろうかと思います。その場限りでしのいでいこうという対策というのはなかなかこれは受け入れられることができないと思います。したがって、今回の政管健保の一部改正については基本的には余り賛成ができないということを申し上げたいと思います。  以上で私の意見を終わりたいと思います。(拍手)

栗原祐幸自由民主党

○栗原委員長代理 どうもありがとうございました。  次に、森口公述人にお願いをいたします。

森口親司京都大学教授

○森口公述人 京都大学の森口であります。  以下で、私は五十二年度予算原案に関して、日本経済を運営するマクロ経済的観点から意見を申し述べたいと思います。  五十二年度は日本経済にとって、振り返りますと、五十年度の三%成長、五十一年度の五%台の成長、この後を受けまして、いよいよ日本経済を中期的に見て望ましい七%程度の安定した、かつ均衡のとれた成長経路に乗せるためにきわめて重要な年ではなかろうかと思います。  政府の予算原案に盛り込まれました財政政策は、政府の五十二年度経済見通しに示されている実質国民総生産の六・七%成長というものを実現すべきものとして十分であるかどうかという点がキーポイントだろうと思います。この点につきまして結論から先に申し上げますと、私が京都大学の経済研究所で開発しておりますマクロ計量モデルでチェックしてみますと、政府見通しとほぼ同じ想定のもとで、日本経済の成長率は政府見通しを約一%下回るおそれがはなはだ強いという結論を得ましたことをまず御報告したいと思います。  このような経済成長率はといいますと、大体五十一年度の日本経済の成長率とほぼ同じでございまして、したがって、そのまま五十一年度の日本経済の抱える問題が五十二年度に持ち越されてしまうということになるんじゃないかと思います。つまり依然として高い失業率、特に中高年層の雇用不安が高いという状況、さらに企業の倒産率が高いという状況が国内の不均衡状態として持ち越されるわけであります。また対外的な不均衡の状態も継続するわけで、このことは、つまり対外的な不均衡と申しますと、わが国からの外国に対する輸出超過のことであります。これは対外的な摩擦を一層強めるおそれがある。こういった意味で、国内及び対外、この両面で不均衡が継続するおそれがあるということを申し上げたいと思います。  次に、財政赤字に関して若干混乱した議論が行われているように思いますので、ここで私の意見の基礎をなしておりますマクロ経済分析の基本について簡単に申し上げたいと思います。  日本経済をある望ましい活動水準で維持していくためには、そのような活動水準のもとで発生します家計部門からの貯蓄ですね、これを何らかの形で吸収するという必要がございます。たとえば、それは民間企業部門であってもよろしいし、政府部門であってもよろしいし、それからまた理論的には外国部門であってもいいわけです。外国部門と申しますのは海外への債権の増加という形、言いかえますと国際収支の黒字が累積するというような形で国内の貯蓄の供給を吸収するということも可能ではございます。しかし現状で見ますと、国際収支の黒字を累積するということが望ましくないということはもはや周知の事実であると思われます。また企業部門は、現在のように経済が低迷し、そして将来の見通しが立ちにくい状況のもとでは、設備投資を積極的にやろうということはとうてい期待できません。そういたしますと、六〇年代の高度成長期のように法人企業部門が家計部門の貯蓄の供給を吸収するということも期待できないわけであります。としますと政府部門がこれを吸収するしかない。このことが、私たちの呼んでおります高貯蓄経済における均衡の論理ということでありまして、この点については十分に敷衍する時間もございませんので、お手元にお配りしております。私も一員としてまとめました政策構想フォーラムの昨年十二月発表の提言をごらんいただければ大変ありがたいと思います。  次に、政府部門が貯蓄の超過供給を吸収するやり方についてどのような方策があるかということを申しますと、第一は建設公債の発行を行う、それによって資金を調達して公共投資を行うということが可能です。次に第二の方策としては、赤字国債を発行いたしまして、それによってバランスをとりながら所得税その他の減税を行うということが可能であります。現行の財政法のもとでは、この両者は、つまり赤字国債の発行と建設公債の発行ということは一応峻別されてはいるわけですが、マクロ経済分析の観点から考えますと、家計部門からの貯蓄を吸収して、これによってマクロレベルで貯蓄と投資のバランスをとる、そして経済を望ましい活動水準に維持しようとするという点では全く基本的に同じことなのであります。またさらに、現行制度のもとでは、郵便貯金を通して吸収されます貯蓄、これを財政投融資の方に回すということも、財政部門の資金の超過需要を満たすという意味では、あるいは国民の貯蓄を財政部門が借りるという意味では同じであります。  次に、政府の予算原案をマクロ経済分析の観点からどの程度不足しているかということをやや立ち入って申し上げたいと思います。  お手元に配付しております政策構想フォーラムの昨年暮れの提言では、財政政策の望ましい規模として、予想される消極的な財政方針に対してやや積極的に、一兆円の所得税の減税、これに加えて公共投資の一兆円の追加といったようなことを提言したわけでございますが、これを今回の政府予算を国民所得勘定に翻訳した上での数字と比較してみますと、まず総額で一兆一千二百億円足りないのではないか。つまり、これだけ追加されなければ六・七%成長は無理ではないかと思われます。その内訳は、公共投資で四千五百億円ほど足りません。所得税減税では五千七百億円ほど足りません。また経常支出の方でかなり抑えられておりまして、やはりこれも一千億円は足りないのではないか。つまり、合計しまして一兆一千二百億円ほど不足しているものと判断いたします。  それで、五十二年度予算原案は、公共事業関連費の増加率を二〇%を超えるというところまで持ってまいりまして、その点の努力は認められるのですが、地方財政を見ますと、これは予算の原案と直接関係がないのですが、マクロの経済分析の観点から言えば無視できないわけです。で、地方財政の逼迫状態が継続しておりまして、地方公共団体の単独事業というものは余り期待できないのではないか。この点は五十一年度と状況は余り変わらないと考えられます。そういたしますと、マクロ経済全体としての政府部門の資本形成にどれだけの支出が可能であるかといいますと、前年度比でやはり一五%台の上昇率が実現し得るかどうか、これも少し怪しいのではないかと私たちは判断している次第であります。  そこで私は、政府予算原案に対してもう少し追加的な財政の拡大を実施する方向で希望を述べさせていただきたいと思います。追加的な拡大をどのような方向で行うべきかということも問題になります。ここで当然公共投資対減税、所得税減税の問題、昨日来私に先立ちまして公述人の方々からいろいろ御意見が出ておりますが、私もこれに参加したいと思います。  まず、公共投資の拡大なのですが、これにつきましては、景気に対して即効性があるという理由で、所得税減税に比べて財政当局がこれを好む傾向がございます。しかし、次のような限界がある。三つほどございますが、その点を指摘いたしたいと思います。  まず第一に、財政支出の急速な拡大というものは特定地域への公共支出に集中しやすい。それからまた特定の期間に集中しやすい。つまりスムーズにならされたような形で支出されないで、ある時点に集中してしまう。地域的または時間的にこれが集中しやすい傾向がございまして、これが経済にボトルネックを発生させてインフレーションの引き金を引くという可能性がございます。  第二に、公共投資は、その効率的な実施のためには相当程度の予備的な調査、また綿密な実施計画の練り上げというものが必要だと思うのですが、そのような練り上げを終えた公共支出のプロジェクトが十分に財政当局のポケットあるいは引き出しの中に用意されているかどうか疑問であるように思います。そのような用意がない限り、公共投資の急速な拡大というものは不効率を生じやすいです。不効率といいますと、たとえば土地買収への多大な支出をやってしまう。土地の買収に金を使いますと、実はこれはマクロの経済効果から言いますと大きな漏れを生じます。漏れといいますのは、たとえば土地の保有者に何千億かのお金が——まあ、一人当たりにはそんなに行かないと思いますが、お金が行きますとほぼ完全に貯蓄に回ります。そうしますと、それはもはや乗数過程にあらわれないで、マクロの経済活動水準を刺激するという効果が失われます。それからまた、場合によっては汚職が多発するということも否定できないのではないかということは、過去のいろいろな実績から私は感じる次第であります。  第三に、公共投資、特に政府が現在強調しております生活関連型の公共投資の実施ということは、一〇〇%国の支出によって行われるよりは地方公共団体の負担の必要なものあるいは単独事業として行われるべきもの、こういったものから成っているように思いますが、そのような公共支出の実施を国がどこまでコントロールできるかということが問題であります。五十一年度の経験に照らしますと、結局五十一年度の予算では景気刺激的な財政政策を予算の中にかなり織り込んだのですが、ふたをあけてみますと、地方レベルで非常にその実行がおくれた、これが五十一年度の日本経済の景気回復の足を引っ張った一つの有力な原因であると思いますし、そのような要因は五十二年度にもやはり強く残るんじゃないかということであります。  それから、公共投資の持つ限界の最後のもの、第四の点といたしましては、公共投資は特に景気回復をねらうために、いわゆる前倒しという形で財政年度の前半に重点を置いてたくさん出してしまおうということを行うわけですが、まあ、それによって景気が順調に回復すればよろしいのですが、数カ月の間そのような財政支出をがんばってみても、いまのような企業の設備投資マインドのもとでは、そこからすぐに景気回復が始まるということは楽観的に過ぎる見方ではないかと思います。つまり、年度の後半に行きますと、再び中だるみが生じないという保証はございません。  以上が公共投資に関する限界点でございます。  これに対しまして所得税の減税についてはどうかと申しますと、それは景気に対して即効性がないとか、大部分が貯蓄に回ってしまって乗数効果が小さいとか批判がございますが、私は、所得税の減税については三つのメリットがあるということを確認したいと思います。  まず第一に、所得税減税の効果は国全体に均てんいたします。そしてボトルネック・インフレーションのようなものは引き起こす心配がございませんし、物価上昇を加速する危険は公共投資を拡大する場合に比べてはるかに少ないと考えられます。  また第二に、この所得税減税を低所得層を中心に実施すれば——これは必ずしも減税と限らなくて、いわゆる負の所得税という形で、納税をする余裕のない低所得者層にも振りかえ支出のような形でお払いするといったようなことも含むわけですが、そのようにいたしますと、貯蓄を通しての乗数効果の減殺ということは恐れるに足りないのではないかと思われます。  それから第三点として、景気への即効性は、確かに私たちの京都大学のマクロモデルで実験をしてみても、所得税減税をした第一年度においては、同じ程度の公共投資を行った第一年度と比べますと、マクロ経済に及ぼす効果はやや小さいということは否定できません。数字に直して言いますと大体三対二という違いがございます。大きい方が公共投資の影響でございます。ただし、これには限定があるのです。どういうことかと言いますと、同じ一兆円の公共支出、同じ一兆円の所得税の減税ということをやっても、所得税減税については、確かに個人個人の所得の中から二〇%以上が、あるいはその前後が貯蓄に回るという漏れがございますが、公共投資についても、現在の平均的な数字から言えば約二〇%が土地の買収に回りますからこれは漏れてしまう、こういうわけです。ですから、三対二という乗数効果は、この土地の買収費による漏れというものを勘案いたしますと、第一年度においても五対四、公共支出五に対して所得税減税の効果は四ということで、それほど大きな差がないということが言えるわけであります。そして第二年度になりますと、これは五十二年度の予算について意見を述べる私の任務を越えているわけですが、それが実はきわめて大事でありまして、第二年度になりますと、所得税の減税効果は、この土地買収に伴う公共支出の乗数効果の減少ということを勘案いたしますと、公共投資の効果を上回るという結果が出ております。  以上のような理由から、私は、必要な財政の追加的刺激、これは一兆一千億と評価いたしますが、このうち所得税減税と公共投資の拡大の組み合わせが望ましいというふうに考えます。ただし、公共投資の拡大は、国が行うのではなくて、地方自治体の単独事業の拡大を中心として行う。こうしなければ、本当のところ生活関連の公共投資というのは実行できないと思うのです。そしてそれを促進するために地方債の起債枠の拡大を行うということが望ましいのではないかと思います。このことは直接国の予算に関係がないわけでございますが、国の予算としては、私は約六千億円程度の所得税減税幅の追加的拡大というものが望ましいと考えます。  以上が私の意見の主要な内容ですが、以下赤字国債発行の拡大に関して幾つかございます論点について私見を述べて、私の意見の公述を終わらしていただきたいと思います。  まず、所得税減税を実施するのについて、財源を赤字国債の発行以外に求めようという議論がございます。これは、財政政策をマクロ経済の、あるいは日本経済の運営という観点から考えますと、はっきり言って誤りであります。もちろん財政政策は、目標としては、マクロ経済の安定ということだけではなくて、負担の公平とかその他の目標を持っておりますが、少なくとも現時点では、マクロ経済を五十二年度どういうふうに運営するかということが焦眉の問題でございますから、その観点からいたしますと、先ほどの高貯蓄経済下の均衡の論理というところで申し上げましたように、財政当局としては、どれだけの財政の赤字幅を維持するかということが大事なわけでありまして、それを縮小するような方向あるいは拡大させないで一方で財源を取って他方で減税をするということは、自分の血を取って自分自身に輸血をするような感じがいたします。  それから、これに関連するもう一つの論点といたしまして、国債発行の増大に伴って国債費の増大率が大きい。たとえば五十二年度はそれが四〇%になろうとしております。このこと自体が財政の破綻の証拠であるかのように言う議論がございます。しかし、これももともとわが国の国債残高が小さいということから生じている一時的な現象でございまして、より中期的に見れば、国債費というものは、国民総生産のある一定の水準、たとえば三%とかその程度に収束していくべきものであり、そしてそのような状況では、国債費の増加率もほぼGNPの増加率に見合うというようなところに落ちつくはずでございます。これは中期的と申しましたが、より長期的にと申し上げた方がいいと思います。  次に、五十二年度予算を越えて、一点だけ私の意見を述べさせていただきたいと思います。  それは減税の効果についても述べましたように、景気と財政政策との関連から言いますと、一年一年区切りまして、その一年間において何をするかというような、やや近視眼的な財政政策の運営というものをそろそろ反省すべきではなかろうかということであります。たとえば海の向こうのカーター政権の今回の財政政策は、ツーイヤーズ・パッケージ・プラン、つまり、二年間の効果をにらんだ財政政策のプランでございまして、一年目の終わりでどうするかとかそういったことをそれほど気にしていないのであります。それと同じように、わが国に関しても、たとえば五十二年度の予算の評価を五十三年度の末に焦点を合わせて評価するといったような態度が必要ではなかろうかと考える次第であります。民間企業の設備投資の促進ということから言いましても、やや長い目で財政政策の運営を考える必要がございます。政府が真に意図していることを、長い期間にわたって安定した形で景気拡大政策を行う、ステディーな財政政策の運営をやる、そういう気が本気であるということをはっきりと示す必要があるわけで、そういたしませんと、非常に低迷しております民間企業部門の設備投資マインドというのは回復してこないのじゃないかということに留意すべきであろうと思います。  最後に、インフレーションと赤字国債発行との関係でございますが、これも赤字国債の大量発行即インフレーションだと、やや短絡的にこれを同一視するのは誤った考えであろうと思います。現在の低水準の設備の稼働率から判断いたしましても、適切な通貨供給政策の維持に努めますと、需要インフレーションを避けるということは十分可能であろうと思います。また、需要の拡大とともにその競争促進のための政策を強力に進めるということをすれば、コストプッシュからの圧力に対してもかなり抵抗が可能であろうと思います。     〔栗原委員長代理退席、委員長着席〕 こうすることによって初めて日本経済をスタグフレーションの危険から救い出し、中期的に見て望ましい成長経路へ持っていく糸口が開けるのではないかと思います。  御清聴ありがとうございました。(拍手)

坪川信三自由民主党

○坪川委員長 どうもありがとうございました。

坪川信三自由民主党

○坪川委員長 これよりおのおの公述人に対する質疑に入ります。  質疑は、お一人答弁を含めまして十分程度にお願いをいたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。武藤山治君。

武藤山治日本社会党

○武藤(山)委員 最初に、森口教授にちょっとお尋ねいたしますが、四人の先生方は、大体私が聞いている範囲内におきましては、私どもがやや同調できるような良識的な減税に対する態度のような気がいたします。中身については、細かい数字はお互い出しておりませんから、その点はよくわかりませんが、大方の考え方としては、やや私は了承できる、同感の方々が大部分でございます。  森口先生の政府経済見通しは、恐らく現実は一%ぐらい低目になるのではないか、こういうお話がございました。私どもも、いまの政府の当初予算では景気はさほど上昇しないという見解に実は立っているわけでありますが、なかなか専門的な計量計算をするとなると、われわれの手に負えないものですから、先生は、そういう計算をした結果、一%ぐらい下回るのではないかという数字を申しておると思いますので、いま政府案の中のどういうファクターが、どの要因が特に見積もり過多である、あるいは見積もり不足であるという点、民間設備投資の見積もりが多過ぎるというのか、あるいは個人消費の伸びが一三・七は多過ぎるというのか、そういうような点の現実との乖離しそうであるという見込みですね、見込み違いが生まれるかもしらぬ、そういう点を御指摘いただければありがたいと思います。  それから和田先生は、負の所得税についてはきょうはお触れにならなかったわけでありますが、これはどちらかと言えば社会保障的な問題で、特別給付金とわれわれも名づけておるわけでありますから、ここで論述しないという気持ちもわかるのでありますが、いま野党が論議しておりますことは、所得税納税者と同時に所得税を賦課されない非納税者に対しても、ひとつここで一人頭四千五百円、標準世帯で二万円程度戻してやったらどうだろうか、特に昨年度減税なし、物価は異常に上がった、本年度の状況も、これから石油の値上げを初め電力料金、ガス、多くのものが値上げされるに違いない、そういうことを予想すると、所得税を納税しない人たちに対してもこの際配慮が必要ではないのか、こういう考え方から、実は非納税者に対する特別給付金ということを主張しているわけであります。この問題について和田先生の見解はいかがでございましょうかという点をお尋ねしておきたいと思います。  それからもう一つ和田先生にお尋ねしたいのは、問題は、所得税を納めている人と納めていない人に戻せという要求でありますから、最も効率的で最もスムーズにいくのはどこの機関でどうすることが一番いいと考えるか。私どもはいま、市町村役場を通じて地方自治団体の台帳でやることが最も合理的かという議論もしているわけでありますが、その辺についての御見解を聞かしていただけたらお聞かせをいただきたいと思います。  最後に大熊教授に、公債発行についての御意見を述べられておりますが、公債発行についての歯どめというのは一体どういう仕組みにすることが最も望ましい歯どめだろうか、この点が一つ。それから国民が将来的展望を持てないまことに不透明な社会である、そういうところが民間設備投資が伸びないとかいろいろな原因になると思うのでありますが、政府の五十年代前期経済計画による試算、税の問題、国債の問題、こうやっておりますが、健全財政を確立するという立場に立つ財政計画というのはどうあるべきであるか、この点の二点を大熊先生から御指摘いただきたいと思います。

森口親司京都大学教授

○森口公述人 御質問にお答えします。  政府の経済見通しがどのようなプロセスでつくられて、どのように年度の後半に修正されてきたかということについては、いろいろと数値の事実もしくは傾向がございますが、五十二年度の日本経済についての政府見通しについても、ほぼ過去と同じような傾向が見られるのではないかと思うのです。まず、GNPの項目から言いますと、個人消費と民間設備投資の見込み方がやや高過ぎるということであります。一方、輸出の見通しはやや低い。これはなぜかと言いますと、輸出について余り大きく見込みますとすぐに外から反響が来るということを心配しているらしいと私は判断いたします。輸出を低くいたしたままですと、なかなかGNPは高くなりませんから、そのかわりに民間設備投資あるいは個人消費を少し高目にしないとつじつまが合わないということです。それからもう一点、物価の方に関して言えば、いつも実際よりも低く見ている。よく言えば、目標を高く掲げて努力するという言い方も可能かと思うのですが、実際は最もありそうな事実というものを認識してそれに隠し立てしないで立ち向かうということではなくて、やや古い話になりますが、大本営発表的な意味合いを持っていたように私は考えざるを得ないのです。物価上昇率を低く見ますと実質の経済の伸び率というのは高く出ますから、その辺から約一%の差が出るという判断でございます。

和田八束立教大学教授

○和田公述人 御質問のところですが、なかなかむずかしい問題もあるのではないかと思います。  負の所得税につきましては、まだどういうふうな負の所得税が妥当なのかということにつきましては、日本では十分に研究されておりませんので、今後の問題だと思います。いずれにいたしましても、こうした負の所得税の考え方というのは、今後導入する方向で検討すべきものであろうと考えるわけであります。  そこまでいかなくても、納税者につきましては一定の税額控除方式等による減税に対して、特別給付金という形で非納税者に対しては調整の恩恵を波及させるようにしてはどうかという考え方につきましては、私は賛成であります。  ただ、どういうふうにするのかということになりますと、私どもの国民税制調査会では、社会保険料で軽減するように、社会保険料の負担に対して一定の還元をするというふうな考え方を出したわけであります。社会保険料もいわば広い意味での租税と考えられますのでそれでいいと思うのですが、それ以外には、たとえば間接税を一定の非課税ライン以下の層に対しては還元する、あるいは公共料金で軽減するということが考えられると思います。ただ、間接税とか公共料金は、どれだけ支払ってどれだけ軽減するか、あるいはどういう層に対してどういうふうにするのかということにつきましてはむずかしいわけでありますので、きわめて大まかに特別給付金という形で給付をするということによってこれにかえるということになろうかと思いますので、どのような考え方をとるかはいろいろあると思いますけれども、今日言われているような負の所得税的な考え方を導入するということにつきましては賛成であります。  それから戻し税という場合にどうするのかということで、一つのお考えとして、市町村を窓口にした戻し税方式というお話があったわけでありますが、この辺になりますと私はよくわかりませんので、いろいろ御研究された方がこれで一番いいということで実施されれば一番いいのではないかと思います。そのほか、サラリーマンにつきましては源泉徴収になっておりますので、企業で戻し税を行って、さらに年末調整等もそこで行われているわけでありますので、企業を窓口にするということでも可能だろうというふうに思います。市町村がそれだけの事務能力もあり、特別な超過負担等もなくてできるということであれば大変結構ではないか、こういうふうに考える次第であります。

大熊一郎慶応義塾大学経済学部長

○大熊公述人 公債発行の歯どめについての御質問でございますが、先ほど申し上げましたように、やはり国民のコンセンサスを得た上で、税と公共料金とそれから民間貯蓄の借り上げ、どのような割合が適正かということをわれわれ考えていく必要があるのでありますが、しかしもう一つ、これは前期経済計画の中にも書いてございましたように、金利の自由化というようなことが述べられております。これは今回ばかりではなく、これまでのわが国の経済計画の中ではたびたび述べられておるのでありますが、それが実現されておりません。やはり公債発行の大きな歯どめとなりますものは一そうした公社債市場において自由な外債の取引が行われるということがまず前提になるというふうに私は考えております。  それから前期経済計画と健全財政の考え方でございますが、私は、もちろん健全財政というものをやがて回復すべきだというふうに考えております。ただ、この前期経済計画におきましては、現行の税制をもとにして、そうして若干増税をするということで五年間に赤字公債を解消するという形をとっておりますが、どうもGNPに対する税収の弾力性の見積もりが少し高いのではないかということを考えますと、現状ではこの五年間で赤字財政を完全に解消するということについては悲観的であり、だからこそ先ほどから規律というものを強調しているというところでございます。以上。

坪川信三自由民主党

○坪川委員長 広沢直樹君。

広沢直樹公明党・国民会議

○広沢委員 最初に森口公述人にお伺いいたしたいと思いますが、五十二年度の政府見通し六・七%の成長を実現するには、五十二年度予算原案では不十分である、こういう御意見でございます。いまも質問がございましたけれども、そこで、五十一年度は五・七%の見通しが一応達成できるのではないかということを政府が言っておるわけであります。しかしその中身は、輸出云々の問題もございましたが、実際のはだ身に感ずることは、これで景気が十分回復していない、数字の上の五・七ということだけではこれは言えないと思います。そこで、六・七%になると実際に景気が回復してきたというふうに敏感に感ずるような状況になるのかどうかという問題と、それから、計量計算では現在のままでは一%下がるのではないかと申されておりますけれども、実際に一兆円減税、後の方でも申されております。それによってその一%が補いがきくものなのかどうかという問題が一つあります。  それから、もう一つ重ねてお伺いしますが、今後中期的にあるいは長期的に、この見解も述べられておりましたので、お伺いいたしますが、適正なGNPの水準というのは、大体いまの経済情勢から考えてどの程度が適正であるとお考えになっていらっしゃるのか。  それから、第五番目にありました国債の問題についてでございますが、長期的にはGNPに見合う増加率に国債発行の状況はなるだろうというお話でありますけれども、財政の健全な運営の情勢から見て、GNPに見合う国債発行というものが適正なのかどうか、あるいは国債の依存度というものはもっと下げるべきなのかどうなのか、その点についての所見をお伺いしたいと思います。  それから大熊公述人に一つお伺いしたいと思いますのは、景気対策として公共投資あるいは減税も、こういうわけにはいかないぞというような意味の公述がございました。やはり政府支出として、景気対策を根に置いて考える場合においては、この二者択一で考えていいものだろうか。財政事情はあると思いますけれども、景気対策という観点からとらえた場合に、そういうとらえ方でいいものだろうかということでございます。確かに今度五十二年度予算では減税も一部盛り込んでございますが、しかし、私どもはこの三千五百三十億、いわゆるミニ減税と言われているものの効果というのは果たして那辺にありやという疑問を持っておるわけであります。したがって、景気対策の上あるいはそれ以外のいろいろな効果が減税にはございますが、やはりやるならばもっと的確に景気の上にもあるいはいままでのひずみを是正する上にも効果がある減税の仕方をしなければならないと思います。  そこで、財源の問題が云々になるわけでありますが、財源に触れる前に基本的な考え方をひとつ聞かしていただきたいということと、財源に触れると、財源の出しようというのはいま検討されておりますので、いろいろ御意見があろうかと思いますが、その前提になる一つの考え方としてひとつ御意見を聞かしていただきたい、このように思います。

森口親司京都大学教授

○森口公述人 御質問にお答えいたします。  まず、減税の効果ですが、一兆円の減税をして政府の言っている六・七%まで達するのかどうかということでございますが、これはあくまでマクロモデルで、それもいろいろ欠点が率直に言ってございますが、マクロモデルで計算した限りの結果について申し上げますと、大体一兆円の減税を追加いたしますと、さしあたって五十二年度でGNPの成長率は実質で五・七から六・五、つまり約〇・八%上昇いたします。したがって、これではまだ足りないということは明らかですが、私が先ほど申し上げました中では、減税だけではなくて、地方自治体レベルでの公共投資をあと四千五百億円ほど追加していただきたいということでありまして、これを入れれば恐らく七%に達するのではないかというふうに思います。  次に、第二点でございますが、中期的に見て日本経済の望ましい成長率は幾らであるか、これにつきましては、私も属しております政策構想フォーラムが、昨年の四月に第一回の提言を発表いたしましたその中で、中長期的な日本経済の可能なあるいは望ましいいろいろな制約をややきつい目に課した上で、どの程度の成長が可能であるかということを探った結果によれば、少なくとも、さしあたって五年ないし十年間は六%台の成長は可能であるということであります。制約をきつく見ておりますから、たとえば石油の輸入価格の値上がりが今後それほどではないというふうにいたしますと、七%も可能であるということになるわけです。  ただ、中期の望ましい成長率の問題を議論する場合に御注意いただかなくてはいけない点は、それはいつも現在存在しております労働力の供給と、それから現在あります生産能力をフルに利用しながら成長を実現していくという望ましい経路に乗った場合の成長率であって、そのような経路に比べますと、現在の日本経済の位置は、少し、一〇%近く下に位置しているわけですね。ですから、望ましい経路に乗れば、そこで六%台、六・五%でも何とかやっていけると思うのですが、そこに乗らない前から五・七というふうなことでは、いつまでも低迷するわけです。国内の不均衡な状況というのは継続するわけで、さしあたって私は七%以上の経済成長率が続いてもいいのではないかと思っておりますことをつけ加えさせていただきます。  最後に、GNPに見合う国債発行というのはでか過ぎるではないかという御質問ですが、私の言葉が足りなかったのでありまして、GNPと同額の国債発行があっていいということを申し上げたのではなくて、現在国債発行残高が小さい残高から出発していますので、たとえば一般会計の三割近い国債発行をやりますと、その分がストックに加わる、その増加率は四割だということですね。次第に残高がふえてまいりますと、この率は減ってまいります。そして残高がGNPに占める比率というのはたとえば二割とかということになって、これは六〇年代のケネディのころのアメリカ経済、つまり黄金時代と言われていたころのGNPと国債残高の比率とそう違わないわけです。そういった比率にいずれ収束するわけで、現在の一時的な非常に高い比率をとってきて、これで財政は破綻したかのように言うのは短見であるということを申し上げたわけであります。

大熊一郎慶応義塾大学経済学部長

○大熊公述人 私の公述の中で、減税か公共投資かということが二者択一であるかのような印象を与えましたことは、まことに申しわけありません。減税か公共投資かというのは決して二者択一ではなく、私の考えでは、やはり減税、公共投資のほかに大事な公共サービスもあれば社会保障もあるわけであります。  問題は、このような財源不足と言われる低成長の経済になりますと、財政の主な目的であります公共サービスの提供、所得の分配の公正化、それから景気対策という三つの要求に対して、非常に厳しい予算の配分をせざるを得ないという状況になってきているわけであります。問題は、そうした中で私が申し上げたのは、景気対策のみでこうした二者択一的議論を行うべきではむしろないのであって、そのほかの財政政策の本来の諸目的等も十分考慮した上で行わなくてはならない。ただ、それには制度的にいま急に変えることのできないものも多々あるわけでありますので、やはり本来は財政というものも、この制度を長期と申しますか中期と申しますか、予算の時期に限られずに、もう少し長い期間をとって制度の改善、特に税制の改善、それから予算編成のあり方というものを考えることをできるだけ早く始めるべきだ。そうして財政も単年度予算に限られずに、中期的な展望を持った予算のあり方というものをつくっていくべきだ。その中で、景気対策も分配の公正も社会サービスの提供も考えていくべきだ。何から何までが一挙に低成長の中で、小さなパイの分け合いという形で出てまいりますので、非常に困難だとは思いますが、やはりいま申し上げましたようなことを真剣にこれから考えていかなくてはならない時期であるということを申し上げたいと思います。

坪川信三自由民主党

○坪川委員長 大内啓伍君。

大内啓伍民社党

○大内委員 まず、大熊先生にお伺いをいたします。  ただいま先生は公共事業か減税かという印象を与えたとすればまことに申しわけないというようなお話がございましたが、先生は、公共事業か減税かという二者択一の問題じゃなくて、もっと財政の規律の問題であるとおっしゃっていたように理解いたしますが、そこで、一つお伺いいたしますのは、御存じのように、昨年来相当の物価上昇がなお起こりまして、今度の政府の減税の姿勢といたしましては、物価調整減税でいくんだということで、三千五百億円余の減税がなされておるわけでありますが、国民の側から言いますと、やはり物価被害というのは相当に達しておりまして、大体一〇%近い上昇であるとすれば、国民所得対比で大体九兆円ぐらいの実損が起こっているわけで、また国鉄その他の公共料金関係でも、総計二兆五千億ぐらいの損害が実は国民の側に起こっている。そうしますと、もちろん公共事業か減税かという二者択一でない問題があるわけでございますが、昨日も実はある先生から本当に物価調整という意味で減税をやるとしても、大体独身者で百万円、四人世帯で二百三十万円から二百四十万円ぐらいの減税が必要なのではないかというお話がありましたのですが、先生はこの点については、どういうふうに考えておられるか、お伺いいたします。  それから、それと関連いたしまして和田先生にお伺いをいたしますのですが、先ほど、五十一年分の調整として戻し税をお考えになったらどうかというお話ございまして、その戻し税の手続について、武藤山治先生からいろいろ質問が行われましたが、それは皆さんで一番いいという方法をお考えになったらどうかということでございますので、実はこの戻し税の問題、むしろ手続論が非常にむずかしくて、この政策を採用し得るかどうかという一つの議論に立っておるわけでありますので、なおそういう点について、お考えあればお伺いをしたいし、あるいはなければその点は結構でございますが、物価調整のための減税というのはどういうことなのか。つまり、どういう措置がとられた場合にそれは物価調整減税と言い得るのか。それは何らかの学説的な定義があるのかどうか。もしあるとすれば、ひとつお教えを賜りたい。  つまり、物価調整減税というのはきわめて安易に叫ばれておりまして、それぞれ叫んでいる人々によってその基準が全く違うのでございます。ですから、その点について一つの御見解があればお伺いしたいし、大熊先生もあわせてその点御見解があればお伺いをしたいのでございます。  それからもう一つ重ねて大熊先生にお伺いしたいのは、景気に対する財政の対応として、ただ財政支出をふやしていけばいいということじゃなくて、やっぱりもっと根本的には税収の変化という問題が非常に大事な問題で、これを検討しなければならぬ。私はこれは全く同感でございます。  たとえば、一九六七年に西ドイツが財政硬直化に悩みましたときに、一つの重要な政策としてこの問題が取り入れられたのでございます。そうしてそれは一般の所得税の弾力性をとっただけじゃなくて、設備投資に対する金融という面でも非常に弾力的な面をとったことは御存じのとおりなんでございます。  そこで、その税制の自由裁量の中で間接税というものの操作が必要なんじゃないかということを先生御指摘になりましたのですが、それは具体的にたとえばどういうことをお考えになっているか。つまり、現在の間接税の中でそれをどういう動かし方をすればよろしいのか、その辺についてお考えがあればお伺いをしたいのでございます。  それから前川同盟書記長にお伺いをいたしますが、定年制の重要性という問題を指摘されまして、特にそれは雇用あるいは年金という面からきわめて有効な措置であり、これからの人口老齢化の中にあって、定年の延長の重要性を強調されましたが、これは私ども全く同感でございます。特にこれからの日本の完全雇用というものを考え、またこれからの年金給付というものを考えてまいりますと、六十歳への定年延長を官民を問わず自主的に実施していくということは非常に重要な問題だと思っております。その意味でその御意見に敬意を払うものでございますが、ただここで一つ問題があると思われますのは、最近幾らか緩和されてきたとはいえ、日本の賃金というのは御案内のとおり年功序列賃金でございます。したがいまして、高齢者を雇用していくということが普遍化してまいりますと、大企業の場合はある程度救済できると思うのでございますが、特に中小の企業においてはこれが経営にとって相当負担になってくる。したがって、この賃金と定年制の問題というのは、やはり切っても切れない関係にあるように思われるのでございます。ですから、たとえば一定の年齢になった場合にその賃金はストップするとか、あるいはスローダウンしていくとか、何らかのそういうことをあわせてお考えになっているのか、その辺の御指摘がなかったように思うのでございますので、その辺をぜひお聞かせいただきたいと思っております。  以上でございます。

大熊一郎慶応義塾大学経済学部長

○大熊公述人 物価上昇が実質所得へ被害を与えるということはまさにそのとおりでありますが、ただ物価の上昇、インフレーションというものが挙げて政府の責任で生じたものではないわけでありますので、したがって、これはやはり私は物価調整減税というものの意義が、これはむしろそうした実質所得の減少に対して政府が何らかのある程度の援助をするという程度の意味ではなかろうか。所得の目減りをすべて減税によって補償するということではないというふうに私は考えます。  そうして、むしろインフレーションの問題というのはすぐれて所得分配の問題でありますから、税の公平という観点を十分に監視をしていくということが必要だと思います。  で、課税最低限に関してでございますが、わが国の所得税課税最低限は絶対額で国際比較をしますと、すでにかなり高いところにまいっておるわけであります。したがいまして、今後の税制の改正ということは、一体どこに中心を置くべきかということは、先ほどから負の所得税の御意見も出ておるようでありますが、課税最低限以下の人たちとのバランス、それから課税最低限以上であって、しかも非常に教育あるいは老齢者の負担というようなものに金のかかる世帯というものにどういうふうにきめ細かな新しい税制を持ち込むかということが重要だと私は考えております。  それから、税収の変化による景気の調整でございますが、過去、高度成長の時期を通じて大幅減税が繰り返され、これが実質的な消費の伸びを通じて高度成長を下支えしたことは認めるわけでありますが、逆にそのために、このような、何と申しますか税収を一時たな上げすることによって景気を抑制するというような景気調整策というものが十分にとられなかったというきらいはあるわけでありまして、やはり先ほど私がビルト・イン・スタビライザーと申しましたのは、そうした税収の自動的な変化に依存をするような景気対策をもう少し考えるべきだということであります。そうしてその際、私は自由裁量政策の中に間接税ということを申しましたが、少なくとも今日の物品税を一時的に上げ下げすることによってかなりの効果があると同時に、やはり今後はこの税収全体の落ち込みをカバーするという意味も含めまして何らかの新しい間接税を考えるべきである。それは付加価値税を含めて売上税的な性格のものであろうということを申し上げて、お答えにさしていただきます。

和田八束立教大学教授

○和田公述人 戻し税の手続の問題で御質問がありましたけれども、私は、五十一年分について戻し税を行うとすれば、これは結局年末調整あるいは申告調整の繰り上げ概算調整というふうな意味合いになるであろうと思うわけであります。したがいまして、やはり現在の納税の窓口といいますか、サラリーマンであれば企業といいますか、事業所といいますか、そういうところになるでしょう。それから申告納税者であれば、予定納税などをしておりますので、税務署等が直接その窓口になるということが常識的に考えられるわけでありますけれども、市町村等がその窓口になるということも、ほかに問題がなければ可能ではないか、こういうふうに考えるわけであります。  それから物価調整減税でありますが、これは結局言うなれば税負担率といいますか、税負担率を実質所得ベースで維持する、一定に抑えるということでありまして、所得が変化する場合に、税負担率が実質的には変わってくるわけでありますので、実質所得ベースではどうかということでこの調整を行うことだろうと思います。この点につきましては、OECDでも報告書が出ておるわけでありますけれども、たとえばデンマークあるいはカナダ、オランダ等では自動的調整、いわゆるインデクセーションですけれども、こうした方式を採用いたしまして、諸控除につきましては実質価額で修正する、それから税率表につきましては所得部分を実質所得基準で修正する、こういうことを一定の物価上昇にリンクさせて行っているということでありまして、それに類似したやり方といいますのは、法律等の規定によりまして行われている国というのはフランスとかスイス等で見られているようであります。しかし、実質所得を何で見るのか、あるいは修正する場合の結局インデクスなんですが、これを何でとるのかということにつきましてはなおむずかしい問題がありまして、消費者物価指数というのが一番わかりやすいのですけれども、消費者物価指数は所得の名目的変化というものを正確に反映しているわけではありませんので、かなり近いということで言いますと、生計費指数とかあるいは時間当たりあるいは月当たりの給与ベースというものに基礎を置いた指標というものが望ましいわけであります。しかし、これらにつきましてはまだ十分に活用できるだけの指数というものがわが国ではないわけでありますので、具体的な議論ができないわけでありますが、デンマークなどでは一九七四年に時間当たり給与ベースに置いた指数を開発して用いているようであります。以上です。

前川一男全日本労働総同盟書記長

○前川公述人 まず第一には、私が申し上げました趣旨は、いわゆる定年延長制、そして平たく言えば再雇用を含む。結論的には、昭和五十五年度までに日本じゅうの企業が最低六十歳まで雇用を保障できる体制をつくるための社会環境を果たす役割りを国会にお願いしたい、そういうことで申し上げましたので、その観点から定年制と賃金問題、これに一言触れてみたいと思います。  日本の賃金の場合には、一般的に年功序列賃金という言葉が大変によく使われております。実態から見ますと、確かに年功的な要素を取り入れているのが一般的な賃金の体系でありまして、恐らく年功的な賃金のないというのは、むしろ例外的なもの、あるいは大変に問題のある賃金の体系なのではないかと私は考えております。ところが実際には年功的な賃金とはいいましても、一般的な意味では、たとえばそれと並行して職務給的な体系その他を取り入れているところも現在では大変に多いわけでありますから、したがって個々の企業の労使関係で決めた賃金体系から見ますと、年功的な要素の大変に強いところと、それほど強くないところの二通りあると思うのです。そして年功的な要素のそれほど大きくないところのいわゆる定年制というのは、私はむしろ定年を、たとえば現在五十七歳であればそれを六十歳ぐらいに二年がかりぐらいで引き上げるということは、そんなに困難は賃金との関係ではないのではないかと思う。ところが、年功的な要素が大変に強過ぎるということになって、定年制をそのまま当てはめるということになれば、なかなかこれは問題点があります。したがって、私は、たとえば賃金を場合によっては頭打ちをするとかあるいはカーブを寝せていくとか、そういう方向をとるということはごく自然なのではないかということを申し上げたいわけです。  それから再雇用方式を含むということで私は申し上げました。したがって、再雇用方式の場合には、一たん定年になって、そして新たに全員が採用される、こういう方式ですから、当然賃金のあり方は新たな検討はされるべきでありまして、それらの問題はすべて企業の労使関係の実態に即して労使で決めるべき問題である、かように考えております。

坪川信三自由民主党

○坪川委員長 以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位には、貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  これにて公聴会は終了いたしました。  次回は、明二十三日午前十時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時十九分散会

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