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80回国会衆議院1977/05/10

法務委員会 第14号

発言数
61
登壇者
8
会派数
6
開催日
1977/05/10

会議録

上村千一郎自由民主党

○上村委員長 これより会議を開きます。  社債発行限度暫定措置法案を議題といたします。  本日は、本案審査のため、参考人として、東京大学教授鴻常夫君及び日本公認会計士協会会長宮坂保清君の両名に御出席を願っております。  この際、参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  参考人には、御多用の中を本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。  当委員会におきましては、本案について熱心な審査を行っているのでありますが、本日は、特に深い御見識を有せられる両参考人から忌憚のない御意見を承り、もって本委員会の審査の参考にいたしたいと存じます。何とぞよろしくお願い申し上げます。  なお、初めに鴻参考人から十五分程度御意見をお述べいただき、その後に両参考人に対し委員から質疑がありますので、さよう御了承をお願い申し上げます。  それでは、まず、鴻参考人にお願い申し上げます。

鴻常夫東京大学教授

○鴻参考人 鴻でございます。  この委員会で御審議になっておられる社債発行限度暫定措置法案について、私は、参考人として、最初に意見をまとめて申し述べます。  この法案は、その提案理由にありますように、「最近の経済状況にかんがみ、株式会社の長期安定資金の調達を容易にするため、」この時期に、社債の発行限度を引き上げる措置を講じようとするものであります。また、提案理由説明の方にもありますように、「社債権者の保護を図りつつ、社債の発行限度を拡大する」措置を講じようとするものでありまして、この法案は、社債の発行限度の法規制としましては、現行商法よりも格段に合理的であると認められますので、私は、この法案に基本的に賛成であることを初めに明らかにしておきたいと存じます。この方が、これから私が申し述べますところを御理解いただくためにも便宜ではないかというふうに思われるからであります。  御高承のように、現行の商法二百九十七条は、一般の株式会社について、社債は、その資本及び準備金の総額または最終の貸借対照表によって会社に現存する純資産額のいずれか少ない方の額を超えては募集することができないというふうに規定しております。そして、この規定は、明治三十二年に制定された現行商法典の起草に当たりまして、ベルギー法、イタリー法あるいはポルトガル法の例にならったものだというふうにされておりますが、その趣旨は、会社債権者、ことに社債権者、それも特に、すでに発行されておる社債の所持人の利益の保護のためには、会社に現存する資力以上に巨額の固定債務を負担するのを抑制する必要があるというふうに考えられたものであります。しかし、現行商法の定める社債の発行限度は、多分に形式的でありまして、行き過ぎであるという批判が早くからなされてきております。それはどういうことかと申しますと、社債の発行限度を資本及び準備金の総額で制限したのでは、企業の担保価値を最小限度にしか利用することができないからであります。会社に現存する資力以上に巨額の固定債務を負担するのを抑制するというのならば、社債権者の担保となるべき会社財産なしに社債を発行することを制限すればいいわけでありまして、そのためには、社債の発行限度として会社の純資産額の方のみを基準とすることで十分とも言えるわけであります。現にその趣旨の提案が学者によってなされております。しかし、翻ってよく考えてみますと、果たして社債の発行限度を資本及び準備金の総額や純資産額の範囲に限るということが絶対に必要なことなのかということがそもそも問題であります。現行商法の二百九十七条のような立法は、外国の立法例としましては、いずれも、古い立法か、新しい立法でも、それを引き継いだだけの立法にのみ見られるところでありまして、この種の新しい立法は、その例が全く見られないところであります。現時では、先進国の中ではわずかにイタリーの法律があるだけという状況でございます。のみならず、社債の発行限度を現行商法の規定のように法定すれば、それだけしておけばそれで社債権者の保護として確実かといいますと、決してそうではないのであります。この制限は、社債の発行の際の制限にすぎません。社債を発行した後まではこの制限は及ばないという、きわめて不徹底なものなのであります。さらに、そればかりではなく、商法二百九十七条の定める発行限度内で社債を発行している会社が、その後に金融機関等から個別的な借り入れをすることによりまして、どんなに多額の債務を負担することも商法上はその会社の自由でありますし、また、その会社が他の会社の債務を保証するといったことも法律上は全く自由というわけですから、結局、現行商法の定める社債の発行限度というものは、社債権者の保護としては、規定の表面から受け取れるほどには実質的なものではないということになるわけであります。過度な起債に対する歯どめとしまして担保面の制約というものとディスクロージャー、開示制度の強化によって行うのが望ましいということを経済界でも言っておりますが、この意見は、いま申しました限りでは、ポイントをつかんでいると言ってよいのでありましょう。社債の発行限度の拡大を認めるべきかどうかという法律論のポイントは、私の考えますところ、社債投資家の実質的な保護になる担保面の制約とディスクロージャーの強化をいかに保障し、これを実現し得るかということにかかっていると言えるわけであります。これらの点の裏づけとなる手当てがあるならば、社債の発行限度それ自体は、欧米先進国と同様に、これを法定しないという立場に切りかえてもよいはずのものと考えられるのであります。  以上が、暫定措置にもせよ、私が社債の発行限度を拡大しようとするこの法案に基本的に賛成する理論的な基礎であります。  次に、この法案が、担保付社債、転換社債及び外国で募集する社債に限って、商法二百九十七条の定める限度額の二倍の範囲内まで発行できることにし、しかも、同条の制限を超えて発行される担保付社債を公募するに当たりましては、その社債券の募集または売り出しについて、証券取引法の本則であります大蔵大臣への届け出を義務づけ、社債発行会社の内容を公示させることにしているわけでありますから、実質的に見ても、先ほど申し上げました担保面の制約とディスクロージャーの強化という両方の面で、社債権者の保護の点について、いやが上にも慎重な配慮を加えていると言えると存じます。  以上の点から見ても、この法案は、実際的見地からいっても、社債権者の保護の面で、社債の発行限度を拡大するに当たっての裏づけとなる手当てとしては、十分に念の入った法規制となっていると考えられるわけであります。この点が私がこの法案に基本的に賛成すると申しました実際的な理由であります。  以上で、この法案に対する私の基本的な考えを申し述べましたが、ところで、この法案は社債発行限度暫定措置法案という名称になっており、第一条の規定の中に「当分の間」という文句が入っております。この法案の内容が暫定措置となっておりますのは、提案理由説明にもありますように、法制審議会における会社法の全面改正についての今後の審議の結果、商法青九十七条の規定の改正が予想されるからでありまして、その意味で、会社法の全面改正の実現までの間の暫定という趣旨を示すものでありますが、同時に、会社法の全面改正を待てない緊急性がある改正であるということが内包されており、また、社債の発行限度についての根本の考え方の相違が人によってあるにもかかわらず、緊急改正の必要があるという認識では一致したがゆえの妥協的な内容のものでもあるという趣旨が込められているものとも見ることができるように思います。この点におきましても、この法案は、急激な切りかえを避けた慎重な立法と評することができるわけでありまして、私は、この法案の内容が暫定措置であるという点にも賛成いたしたいというふうに存ずるわけでございます。  この法案は、わずかに四カ条でありますが、これが法律として成立し施行されることによりまして、企業の長期安定資金の調達が円滑になり、企業の設備投資の活発化につながり、ひいては企業の財務内容の改善、景気の浮揚及び雇用の安定をもたらす一つの重要な支柱となるものと考えております。また、そうなってくれることを私は強く期待しているわけでございます。  大変簡単でありますけれども、以上をもって、この法案に対する私の意見の陳述を終わります。  参考人としての意見を述べる機会を与えられましたことを、委員長初め委員の皆様に感謝いたします。どうもありがとうございました。(拍手)

上村千一郎自由民主党

○上村委員長 これにて参考人の意見の開陳は終わりました。     —————————————

上村千一郎自由民主党

○上村委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。横山利秋君。

横山利秋日本社会党

○横山委員 ただいまのお話、短い時間ではございますが、まことにごもっともなお話だと思います。要するに、前段として、鴻さんが資本及び準備金の総額で制限をするよりも、会社の純資産額を基準とすることが妥当ではないか。あるいはまた、発行した後借り入れをしたり保証をしたりしたのでは何にもならぬではないか、何のための基準だ。こういう趣旨のお話がございました。まことに妥当な指摘だと私も思います。  しかし、いまの二つの御指摘は、今度の改正法をもってしては基本的な改善はできない。担保つきで発行した社債それ自身については担保がついているからいいようなものの、それ以前に発行されております既発行の社債権者に対しては、むしろ担保を取られるからマイナス要因になる、こういう結果を招来すると思われ、お話は、むしろ、その担保付社債以前の既発行の現状及び欠陥がこの法案でますますマイナス要因となって、御指摘がかえって悪くなる、御指摘がますます鋭くなる、こういうことになるのではございますまいか。この点についてまず御意見を伺いたいと思います。

鴻常夫東京大学教授

○鴻参考人 横山さんの御質問にお答えをいたします。  今度の法案にありますような形で、担保付社債等を現行の商法二百九十七条の限度を超えて発行するような場合には、既発行の無担保の社債権者といいましょうか、あるいはさらに考えていけば広く会社の債権者全部、そういうことになるかと思いますが、そういうものに対する関係で、より不利にといいますか、一層悪い経済的条件に置くことになるのではないかという点の問題の御指摘であったかというふうに思いますが、これは純理論的に考えまして、横山さんの御指摘になった点は確かにあるのではないかと思います。しかし私は、最初の一般的な意見の中でも申し上げましたように、またいま横山さんの御質問の中にも出ておりましたように、これは企業あるいは株式会社が、社債の発行の方法によって資金を調達するか、その他の方法による資金の調達、先ほども言及いたしました金融機関等による借り入れ、これは最近といいますか大口融資規制等もありまして、そういう面の制約もあるかと思いますけれども、資金調達の方法のいかんによって結果が違うという問題ではないかと思います。  また、横山さんの御指摘にあった点が、特に既発行の無担保の社債権者の立場からいってどうかという点に重点があるといたしますと、これも無担保の社債というものが今日非常に多く出ておれば、御指摘の点は非常に重要な問題になってくるかと思いますけれども、現実の問題としてはそういう例はそう多くないといいますか、例外的な場合であるというふうに考えられるのではないかと思います。  私は、この二百九十七条が、制定当時、今度の暫定措置法案に見られるように、これから発行する社債について担保面で制約をつけるとかディスクロージャーを強化するというこれだけで二百九十七条の問題が全部解決するという、そういう立法趣旨でできた規定だとは考えておりません。しかし、先ほどの一般的意見の中でも申しましたように、既発行の社債権者の保護を考える場合にも、二百九十七条のように、社債の発行限度を法律で制限するという形で制約するのが、商法の規制として一般的に合理的なものであろうかどうかという点に問題があるのではないかというふうに考えておりまして、そういう意味で、今度の暫定措置法案の行き方というものには賛成していいのではないかということを申し上げたわけでございます。したがいまして、横山さんの御指摘の点は、私は、全く問題がない、理論的に考えて問題がないということはないと思いますけれども、実際的にはそう不都合はないのではないかというのが私の理解でございます。

横山利秋日本社会党

○横山委員 私も指摘し、かつ鴻さんが指摘した既発行の社債権者に実際的には被害がそうないという点については、恐らく意見が一致すると思います。ただ、しかし、理論的にはおかしい。理論的には、あなたが御指摘をくださったように、資本及び準備金の総額の制限、純資産額の制限、そういう制限をして社債の発行を認める現行法、その現行法は会社に現存する資力以上に巨額の固定債務を負担することを抑制する、私はそのとおりだと思うのでありますが、そういう制限規定を置いておいて、発行したら後はどんなに借金してもいいよ、保証してもいいよという、現行法の理論的な矛盾を鴻さんは鋭く指摘された。あなたの論文を拝見いたしましても、そういう感じがするわけです。しかし、実際的被害が仮に少ないとしても、それはおかしい。なるほどそうだと私も思ったわけであります。なるほどそうだと思っておるところへ、その限度額の中にある担保を担保として担保付社債を発行するとなれば、いまある現行法の論理矛盾をますます深めることになるのではないか、こういう判断をせざるを得ないのであります。そこを、そういうことについてでなくて、それらのことを含めて、過度の社債起債の歯どめをどこに求めるかという点について、いまお話によれば、担保面の制約、ディスクロージャーの強化というところにお話があったように思いますが、そこのところはどうも理論的にふっ切れないものを感ずるわけでありますが、重ねて御教示を願いたいと思います。

鴻常夫東京大学教授

○鴻参考人 横山さんの重ねての御質問でございますので、重ねてお答えをすることになるわけでございますが、横山さんの質問のポイントは、先ほど御指摘のありました点、すなわち現行法の矛盾を今度の暫定措置法がさらに深めるのではないかというところに一番ポイントがあるように承ったわけでございます。私が申しましたことが、社債の発行限度を、既発行の社債権者を特に考えまして、その利益を守るために資本及び準備金の総額なりあるいは純資産額というもので抑えておるというのが現行法の立場でございますけれども、今度の暫定措置法案のように、これを含めて何らかの意味でこれを拡大する、あるいは徹底すれば撤廃するということを考えましたときに、それは法律のそういう意味の厳格な規制を外したままですべて問題がないという趣旨にもし受け取られたとしたら、私の言葉が足らなかったわけでありまして、先ほど社債権者保護のための裏づけとしての手当てとして担保面の制約とディスクロージャーの強化ということを申しましたが、担保の問題は、社債権者保護のために万一の際に備えて担保をつけなければならないような会社は当然社債の発行に当たって担保をつけるべきである、しかしまた、十分な担保があるにもかかわらず、法定の社債発行限度というものがあること、そのことによって合理的な企業の資金調達が制約されるというようなことになるということは、果たして商法が社債の発行を含めまして社債に関する法規制をするに当たって合理的な規制の仕方と言えるのだろうかというふうに考えているわけでございます。  しかし、この担保の面を、しからばどういう場合にはそれをつける必要があるかとか、あるいはつけなければ社債の発行というものが健全とは言えないかという点を判断するのは、経済界、とりわけ担保の面については、日本の社債制度の発達の初期から今日に至るまで担保の問題についての豊富な経験を持っている受託銀行というものの妥当な運用を同時に考えなければ、問題が残るだろうというふうに私は考えております。その意味におきまして、横山先生の御指摘は、いま担保の面についてだけ申しておりますけれども、現行法の矛盾を深めるという点は、そういう実際面における運用の面においてより厳しいものが要求されるということは当然に出てくることではないか。それなくしては、横山先生の御指摘になったような点というものの問題性というものが全くないとは言えないと私考えておるわけでございます。それからまた、ディスクロージャーの強化の点につきましても、本来、こういう社債といったようなものは、株式あるいは中間的な転換社債というものがございますけれども、そういうものを通じた投資対象となっている証券でございまして、こういうものにつきましては、今日証券取引法が一般的に証券発行の届け出制度というものをとっておりますので、担保付社債について、証券取引法が、昭和二十八年の改正でしたか、当分の間これを適用しないとしている点自身、これは一般的に再検討してみる——結論がどうなるかはまた検討の結果といたしまして、そういう点は検討の余地ある問題として残っていることかと思います。そこで、暫定措置法案が、一口に言えば、社債の発行限度を二倍にする機会に、そういう点の再検討もあわせてするといういき方も考えられないことではなかったかと思いますけれども、そういう点を検討すれば、先ほど申しましたこの暫定措置法案の目的とする緊急的な改正であるという点と抵触をしてくることもあるということで、そういう点は今後の検討に残したのではないかと思います。  横山さんの御指摘は、既発行の社債権者の保護ということになりますと、既発行の社債それ自身の発行に当たって、今後発行される社債について、本来は、いま横山さん初め私どもが検討しているような点を十分検討した上で発行するということが理論的に考えますとあってしかるべきことかと思います。しかし、現実にそういう点は十分に検討がなされないで、いわばイージーゴーイングな社債の発行がかつてなされておったという前提に立ちますと、あるいは横山さんの御指摘になった点は確かに現在でも問題としてあるだろうということになるかと思います。しかし、私の考えておりますところは、商法の社債に関する保護の規制のやり方としましては、今度の暫定措置法案が言っているような、社債の発行限度は必ずしも資本及び準備金の総額または純資産額には限定しない、過度な社債の乱発といったようなことは別の手当てで社債発行の妥当を期するといういき方の方が、法の規制としては合理的なのではないかという基本的な考え方の上に立って、意見を申し上げたということでございます。

横山利秋日本社会党

○横山委員 恐縮ですが、私に与えられております時間が大変少ないものですから、連続してもう二つだけ御意見を伺って終わりたいと思います。  一つは、この法案の根幹をなす問題として、自己資本と他人資本の問題でございます。本委員会、大蔵委員会あるいは商工委員会、ここ数年来、わが国の自己資本と他人資本については、カラスの鳴かぬ日があってもその話が出ない日はないと言われるほどに議論がされておるわけでありますが、そこで、与野党を通じ、また政府を通じ、常に一致いたしておりますのは、自己資本がわが国は少な過ぎるということであります。もう鴻さんは十分その点は御存じでございますから、数字をあえて申しません。その自己資本を充実しろと政府も与党も野党もわが国企業に苦言を呈しておる段階です。そのときにこの法案が出て、要するに、銀行から借りると金利が高い、それから増資をするとまためんどうくさいし銭もかかる、社債が一番安上がりだ、そしてこれは準自己資本であって自己資本に準ずるのだ、こういう論理が通俗的にまかり通っておる理論です。現実もそうだと私は思います。けれども、そのことが、いかにこれが準自己資本だと言ったところで、しかし借り入れには間違いない、そして担保付社債へ走ることによって増資がかえって誘導されるのか、それとも抑制される結果になるのかと言えば、私は、増資よりも担保付社債の道ができたのだからネコもしゃくしもそれをやることは決まっているではないか、だからわれわれが言っておることと逆行するではないかというのが第一の私どもの疑問でございます。  それから第二番目の質問をこの機会にしておきたいと思いますが、中小企業の問題でございます。ちょっとこの法案から外れますけれども、これは中小企業には、この間、縁もゆかりもないと言ったら、いやそうじゃないのだ、中小企業でも担保付社債を発行しています。縁故社債でやっていますと言うのですが、それとは多少違うのですが、この機会に御意見を伺っておきたいのでありますが、要するに、弱小会社が、厳格な株式会社法の規定を遵守するにたえず、いわゆる見せ金の株金払い込みによって会社を設立する。いわゆる名義株主をつくって一人会社の実をおさめる。三番目に、株券を発行しないで株式を転々譲渡せしめる。四つ目に、株主総会を開かないでこれを開いたように偽装する。結局は、本来その資格がない中小企業が株式会社の名に幻惑されて形態をとるにほかならない。社会的信用がある、税金対策が調子がいいということで、わが国ほど株式会社の多いところはありません。この点についても、結論として二つの方法がある。法規を守らざるを得ないような措置をとるという方法がある。逆に、緩和して遵守可能なようにする。二つの方法があると思うのです。会社法は、先ほどお話しになりましたように、これからいよいよ審議が軌道に乗っていくわけでありますが、そういうところで中小企業の株式会社は一体どうあるべきかという点について御意見を伺いたい。以上、二点です。

鴻常夫東京大学教授

○鴻参考人 御質問の点は二点で、第一の点は、まさにこの暫定措置法案の問題と関係して、あとは一般的な御質問かと思います。  第一の、自己資本と他人資本との関係、特に、今日強く叫ばれ望まれておる自己資本充実ということにとって、今度の暫定措置法案というものが望まれる増資を抑制する心配はないかという点でございます。私は、この資金調達に当たりまして、どれだけの条件があるときには資本増加あるいは新株発行の方法によらないで社債を発行するのか、発行する側の企業にとってメリットがあってそちらの方を選ぶのか、あるいはまた逆の条件とはどういうものかということにつきまして、そういう意味でのコーポレーションファイナンス、そういう会社金融と申しますか、財務的な面のことについては、専門の関係でつまびらかにいたしませんが、やはり社債の利率とか株式に対する配当率、一般金融機関の金利水準といったようなものの関係のいかんによっては、これはまた理論的には横山さんの御指摘になるような点が絶対にないとは私申し上げられないかと思います。しかし、社債の発行限度をこの法案のように二倍まで暫定的に上げるということが、ストレートに自己資本の充実あるいは望まれる増資をいたずらに制約することになるという問題ではないのではないか。また、自己資本の充実のやり方というものもいろいろ考えられることかと思いますが、現在は転換社債みたいなものもやはり社債の発行限度で制約をされるということでありまして、将来の自己資本の充実というものを現在転換社債でやるという場合にも社債の発行限度の制約というものがかぶってくるという点だけは、少なくとも、今度の暫定措置法案は若干でもそこを自己資本充実の方の道もひとつつくっているという面もあるかと思います。  御質問の第一点に対する私の理解といたしましては、ある経済的な条件というものを与えましたときに、横山さんの御指摘のような点、心配というものが絶無だとは考えておりませんが、一般的に今度の暫定措置法案が自己資本充実の妨げになるとか、望まれる増資を抑制するということには必ずしもならないのではなかろうかというふうに考えております。  それから第二点の、中小企業の会社形態というものをどういうふうに持っていくべきかという点は、今日の会社法の現代的課題の最大のものと言ってもいいんじゃないかと思います。これだけということではございませんけれども。そうして、厳格な法規制をしている株式会社法はとても守れない、あるいは守るにはある程度知ってなければいかぬわけでありますが、そういう点についての十分な知識もない、そういう人々によって株式会社形態というものも利用されているということも現実かと思います。法律の制度としましては、横山さんも質問の中で御指摘になりましたように、やはり中小企業にとって、ある意味では大企業と同じような恩典というものを与えつつ法の規制は緩和する、しかし緩和した限りにおいては必ず守ってもらうというような会社形態というものを、会社法の制度の中で、商法の規定として用意しておくということが一番望ましいことではないかというふうに私は考えております。株式会社形態をとる限りにおいては、それを守らなければそういうものの存立を認めないということを幾ら中小企業に言いましても、すでに現在数十万というその種の中小企業の株式会社が存在しているときに、これは実効性という点から言っても問題があるのではないかと思います。そういう点で、現在法制審議会商法部会において、会社法の全面改正の中で、将来の株式会社の法規制としまして、大会社ないし公開会社というものの規制を整備するとともに、中小企業に合ったそういう会社法というものがどういうものであるかというものを、同時に今度の会社法の全面改正の中で解決しようということで審議をしているわけでございますけれども、これもなかなか問題点が多くて、全体の検討を終えるにはかなりの期間を要するということかと思いますけれども、到達点といいますか目標といたしましては、横山さんが先ほど挙げられた二つのやり方のうちでは、後の方向でこの問題を解決すべきものなのではないかというふうに私は考えております。

横山利秋日本社会党

○横山委員 ありがとうございました。

上村千一郎自由民主党

○上村委員長 次に、長谷雄委員。

長谷雄幸久公明党・国民会議

○長谷雄委員 本日は御苦労さまでございます。私は与えられた時間が短いものですから、二、三しか質問できないと思いますが、初めにお尋ねしたいのは、株式会社が物的会社の典型として株主及び会社債権者の保護という点から、会社財産の確保、充実、これが最大の問題であるということは商法学者がひとしく指摘するところであります。したがって、資本調達の方法としても、他人資本によらずに自己資本によるべきである、これは株式会社法の定理でもあるわけでございます。先生が書かれている書物にもそのように御指摘がございますが、他人資本というのは、いずれにしても、担保の有無あるいは返済期限の長短にかかわらず、必ず返済しなくてはならないということがはっきりしているわけでございます。そうしますと、この今回の法案は、商法学者の通説でもあり、しかも先ほど申し上げましたように株式会社法の公理、定理とでも言えるようなこうした資本充実の原則から見て、著しくもとるものではないか、こう考えるわけですけれども、その辺は商法学者としての参考人の御意見は、どのようにお考えでございますか。

鴻常夫東京大学教授

○鴻参考人 長谷雄さんの御質問の点は、商法の基本的な原則が資本の充実ということを言っているときに、こういう形で社債発行限度を拡大する、発行の枠を広げるということが、そういう他人資本の量がふえるということが商法の基本的な考え方と矛盾をするあるいはもとるということになるのではないかという御質問、御指摘だったかと思います。しかし、商法の方の資本の充実という点は、先ほど横山さんの御質問の中に関連して出てまいりました自己資本の充実という意味での資本充実というのとは、どちらかと言うと、それは経済的な意味での資本の充実であり、商法の原則としておる資本の充実というのは、資本が何によって構成されるかという点について商法に細かい規定がございますけれども、基本的には、投資家である株主の払込金というもの、これは会社が最小限度保有しなければいけない。これは会社債権者にとっては、いざというときの唯一の担保財産でもあるということで、これをみだりに減らしてはならないという趣旨のことでありまして、それを超える他人資本というものを持つことが、商法の原則、基本的な考え方というものに矛盾するとかもとるということは法律的にはないのではないか。自己資本の充実ということは、私も今日の日本の株式会社においてはきわめて喫緊の要請であるというふうに考えておりますが、他人資本というものを資本及び準備金の総額、あるいは純資産と言ってもいいですけれども、そういうものに必然的に限定しなければならないという問題には必ずしもならないのではないかというふうに考えておるわけでございます。

長谷雄幸久公明党・国民会議

○長谷雄委員 全く逆なことをお尋ねしますが、今回は社債発行限度の制限を緩和して倍にしようということでございますが、もし仮にこの社債限度の制限を撤廃するとした場合、社債権者の保護、あるいは社債権者に与える影響、あるいは発行市場、流通市場、そうしたものに与える影響というものは、私はかなりあるのではないかと思うのです。そうした場合に、果たしてそうした問題が円滑に処理されるかどうか、またそれを受け入れるだけの周辺の諸制度というものが整備されていると考えておられるかどうか、その辺をお伺いいたします。

鴻常夫東京大学教授

○鴻参考人 今度の暫定措置法案は、先ほどもちょっと妥協的な内容のものであるというふうに申し上げたわけでございますが、いまの長谷雄さんの御質問の、もし社債の発行限度に関する商法の規定を完全に廃止して、こういう現行のような制度を完全に撤廃したときにどうなるかという点になりますと、私は、やはり切りかえに当たってはいろいろな問題が出てくるだろうというふうに思います。  また、単にそういう切りかえ時だけでなしに、先ほども一般的な意見の陳述の中で申しましたように、あるいはそれを補足した先ほどのお答えの中で申し上げましたように、この社債の発行というものを実際に運用する企業の側あるいは受託銀行の側あるいは引受証券会社の側というものにおきまして、社債権者の保護というものを十分に考えた対処の仕方というものが要求されざるを得ないのではないか。また、それは単に関係者がそういう点を配慮し努力するということではなしに、そういう運用を可能ならしめるあるいは保証するような、そういう商法の周辺のといいますか、関連した法令の整備というものも必要になってくるのではないかというふうに思うわけでございます。  そういう点で、長谷雄さんの御質問にありましたように、二百九十七条の規定の完全撤廃をしただけということを前提にして事を考えるといたしますと、いろいろ問題が出てくる。それは切りかえに当たって当然予想されますし、単に切りかえ時だけでなしに、一般的な制度の運用としても多多問題があるかと思いますけれども、もし二百九十七条の規定というものを、私の基本的な立場は撤廃するということも将来の方向として考えていいのではないかというふうに考えておりますけれども、そういうことを具体的な形で問題にしようとするときには、十分にそのことから出てくるような影響というものに対する配慮というものを、あるいは法令の上での手当てというものも必要になってくるかと思います。  この点では、やはり企業の発行する社債というものが、企業の財務内容あるいは将来の見通し、これは経済全般の動向とも関係するかと思いますけれども、そういう点について的確にその証券のいわば価値というものを判断し評価できるような専門家の発達、今日それは受託銀行や引受証券会社に多くを負っているわけでありますけれども、さらにそれ以上に、発行される証券そのものの価値というものの的確な分析というものができるような専門家というものが多く出てくることということが望まれ、期待されるということもあるのではないかというふうに考えております。

長谷雄幸久公明党・国民会議

○長谷雄委員 先ほどの一般的な意見の陳述の中でもお話がありましたが、社債発行について限度を設けている立法例は古い立法例である、新しい立法例では、先進国ではまれである、こういう御指摘がございましたが、いまの御説明を伺っておりますと、発行限度それ自体を撤廃した場合に、その切りかえ時だけでなくてその後にもいろんな問題が予測される、こういうことでございますが、そうしますと、外国のそうした立法例、つまり制限を撤廃している立法例にはそれなりの裏づけというものが当然あるわけでございます。そうしますと、現在この法案で限度を二倍にするという問題でございますが、そのときに当たって、担保つきあるいは外債の問題、そうしたいろいろな手当てがあるようでございますが、これで果たして十分かどうかということがいまやはり一つの論議になるわけでございます。その点については、私どもも完全に十分であるというぐあいには考えていないわけでございますが、その点について御意見はいかがでございましょうか。

鴻常夫東京大学教授

○鴻参考人 この立法例についての言及がいま御質問の中であったわけでございますけれども、社債の発行限度というものを商法やそれに当たるような法律でもって決めていない、まあ先進諸国の大部分はそうでございますけれども、その際に、それから出てくる社債権者保護のための手当てをどうしておるかということについては、外国のやり方は必ずしも一様ではないと言えるのではないかと思います。特に、現在の日本の商法が、先ほどこの規定は、ベルギーとかイタリア、ポルトガルというようなことを申しましたが、全体としまして一口に大陸法系の立法でありまして、そうして特に戦前はそうであったということが言えるのじゃないかと思いますけれども、ドイツ、フランス等におきましては、この社債の発行について、それが社債権者の保護を害さないという意味においては、銀行が大きな役割りをしているのではないかというふうに考えております。これに対してアメリカは、御承知のように、証券取引の面での規制というものがきわめて厳格でありますけれども、同時に、実際の運用に当たるアンダーライターの立場にある証券会社というものの社債権者保護への取り組み方というものも、ちょうど大陸法系の諸国における銀行に匹敵するような役割りを果たしているのではないかというふうに思うわけでございます。それで十分でないということになりますと、かなり巨額な社債の発行については、すべて国のといいましょうか行政庁のコントロールに服さしめるという考え方になっていくかと思いますけれども、一定の範囲でドイツ、フランス等はそういうことも決めておりますけれども、社債の発行はすべてそうだということではなしに、かなりの額のことを考えているわけであります。  そういう意味におきまして、現在、日本において社債の発行限度を二倍にしたというときに、そういう点で不安はないのかという点は、当然検討しなければならない問題であるという点は、長谷雄委員の御指摘のとおりかと思うわけでございます。そういう点は、私も法制審議会の商法部会に委員として加わっておりまして、そこでの審議の過程におきましては、ほかの委員とともに、当然そういう点についての確認をした上で案の取りまとめをし先に進むということをしてきたつもりでございますけれども、この点の見通しについて、いま長谷雄さんの御心配になっている点は、私としては、余り大きい、つまり今度の暫定措置法案で企業の資金調達の合理化を暫定的に図るということと比較いたしましたときに、その心配の方が大きいというふうには考えておらないわけでございます。

長谷雄幸久公明党・国民会議

○長谷雄委員 どうもありがとうございました。

上村千一郎自由民主党

○上村委員長 次に、正森委員。

正森成二日本共産党・革新共同

○正森委員 それでは、私から聞かしていただきますが、社債発行限度暫定措置法ということでございますけれども、商法二百九十七条だけでなしに、商法全般にも絡んでまいりますので、そういう立場で少し聞かしていただきたいと思います。  まず第一に、商法の二百九十七条の従来の規定というのは、社債権者の保護という意味ももちろんございますけれども、釈迦に説法でございますが、昭和二十五年までは社債の発行というのは株主総会の権限になっておる、それを機動性を発揮するために取締役会の権限にすると同時に、発行限度を設けて、無限に発行はできないようにするというかっこうでの株主の利益の保護も図る面もあったというように言われているわけですね。そこで、株主保護という観点から見ますとどういうようにお考えですか。

鴻常夫東京大学教授

○鴻参考人 正森さんの御質問の趣旨は、今度の法案というものが株主保護の見地からいってどういうことになるかという御質問でございますが、ちょっといまの御質問の中で、私の聞き違いでなければ、何か昭和二十五年の改正で、それまで社債の発行が株主総会の権限としてそこで決議がなければ発行できないものを取締役会で発行できるようにしたときに、何かその発行限度の点で特別に厳格にした、その見合いでそういう改正が二十五年に行われたかのごとくお話しになったように伺ったのですが、それはそういうことではないのではないかというふうに私は考えておるわけでございます。しかし、それは基本的な点は発行限度を拡大するということと株主保護との関係ということかと思いますから、その点をお答えいたしますと、株主保護のやり方として、一つ形式的な保護としまして株主総会の決議あるいは特別決議がなければ社債の発行は認めないというやり方、これを昭和二十五年改正前に日本の商法がそういう立場をとっておったことは正森さんの御指摘のとおりでありまして、これも一つの保護のやり方でございます。しかし、この点も、諸外国の立法例としまして、ちょうど発行限度の問題についてと同じように、古い型の立法にはそういうものが残っておりますけれども、先進国は、株主総会の決議を常に要求するというものは余りない、原則として取締役会の決議で発行できるというのが、これはやはり投資証券である社債の発行というものの手続としましては、機動的な処理ができるようにするという必要から、大方の立法例はそういうことをやっているかと思います。  そこで、正森さんの御質問は、せめて発行限度の方で他人資本というものがふえることがないようにという点を、そういう抑え方をする必要というものがそれだけ出てくるのではないかというお考えからの御質問かと思います。その点は、万一ということを考えたときに、株主の利益を保護するためには、少しでも社外に発行されている他人資本、債券というものの量、金額が少ない方がいいということはそのとおりでございます。ただ、当該企業といたしましては、自己資本調達の形ではなしに他人資本である債券の発行という形で資金調達をする方がメリットがあるという判断の上に立ってやることであり、そのことによる利益を株主も受ける、この株主の受ける利益と、万一の不利益、メリット、デメリットというものをどういうふうに比較考量するかという問題にかかってくるわけでございます。取締役会だけで発行できるということならば、株主はそれに対して発行の事前の段階において意見を述べる機会がないではないかということになるかと思います。しかし、商法としまして、取締役会の決議で発行できるということは、これはたてまえでありまして、もしその企業の株主が取締役会に社債の発行など任されないということであれば、定款でそういう取締役会の社債発行権限を制約するということは何ら差し支えないのではないかと思います。一般的な制度としてはそうでございますけれども、現在の定款にそういうようなことを定めてない多くの会社にあっては、株主の利益の保護というものがそういう面でどうなるかという点は、おっしゃるとおり全然問題がないとは思いません。しかし、やはり株主として受ける利益と不利益のバランスということで問題を考えていくべきではなかろうかというふうに考えております。

正森成二日本共産党・革新共同

○正森委員 ありがとうございました。  持ち時間が十分しかございませんので、御意見を承りながら簡潔にというように失礼なことを申して申しわけございませんが、よろしくお願いしたいと思います。  私も株主総会の決議にしろということを言うているのではないので、一定の限度が必要ではないかという意味で発言しているわけです。  もう一点伺いますが、社債権者の保護の意味では、一部の社債で行われております財務制限条項をディスクロージャー以外にも取り入れるということが必要ではないかというように思いますが、この点についての先生の御意見はいかがですか。

鴻常夫東京大学教授

○鴻参考人 私、先ほど担保面の制約というものとディスクロージャーの強化ということを申しました。そのときの広い意味で担保面の制約ということにつながってくるかと思います。しかしこれは、財務制限条項というものを社債の発行条件の中に入れるということはきわめて重要な問題であること、正森さんの御指摘のとおりでございます。ただ、一般的に言えば、やはり物的担保をつけるということも、財務制約条項をつけるということも、当該社債の発行に当たって具体的に考えて、その必要が大きい、万一が心配されるというときには、その社債の発行に関係する受託銀行にしてもアンダーライターの立場にしても、そういう点を発行会社に強く要求するということが社債権者の保護につながるのではないか。そういう意味で、この点も今度の暫定措置法案のような法律が施行されたときには、そういう関係者のそういう意味での努力、慎重な対応というものが強く望まれるのではないかというふうに考えております。

正森成二日本共産党・革新共同

○正森委員 学者の間では、わが国の商法が、社債の受託会社を社債権の管理の委託を受けた会社というようには規定しないで、社債募集の委託を受けた会社というように規定しておりますために、受託会社の権限等に非常に不十分な点がある。一方わが国の法制は社債権者の集会というふうなことを考えておるわけですが、それには非常に手間がかかるという意味で、アメリカ法などに比べて不十分であるというふうに言われておりますが、この点については先生はどうお考えになりますか。

鴻常夫東京大学教授

○鴻参考人 いまの御質問は、社債制度の一般的な問題にかかわることかと思います。日本の商法——これは担保付社債の方の担保付社債信託はまた別でございますけれども、日本の商法の方の社債の募集の委託という制度は、これは比較法的に見ましてもやや特殊な制度であるということはそのとおりでございますし、また、今日そういう制度がわが国において行われておるには、それなりの歴史的な沿革というものもありたというふうに思われるわけでございます。しかし、会社法について全面改正ということを考えている今日、私の社債法の本などでは広く社債の管理という言葉を使っておりますけれども、その社債の管理の方式というものがいかにあるべきかという点については、やはりこれまた、いまお話のありましたアメリカ法ももちろんでございますけれども、大陸法の進んだ国々におけるそういう処理なども十分検討した上で、実質的に社債権者の保護が図られるようなものに改めていくべきであるというふうに私は考えておるわけでございます。

正森成二日本共産党・革新共同

○正森委員 最後に一問だけ伺いたいと思います。  産業構造審議会の報告によりますと、現在社債の発行枠の総額は八兆七千億円だそうです。そのうち発行済みの合計が六兆円で、発行余力が二兆七千億円だそうでございますが、一部の企業ではもう九〇%以上発行しておるというようなことで、枠の拡大が必要だ、こう言われておるわけですね。しかし、これを二倍にいたしますと、発行枠が十七兆四千億ということになりまして、発行済みのものなどを引きましても約十兆円前後の発行枠ができる、こういうことになるのですね。それで、社債の引受先を調べてみますと、一般事業債については約二五%が個人で引き受けられているだけで、その他は金融機関で引き受けられているのですね。そうすると、七兆から八兆円が金融機関で引き受けられるということになりますと、いまたださえ大口融資規制などで中小企業や一般の住宅関係の融資が逼迫するというように言われておりますときに、これは社債を発行し得る会社というのは、現在でも二百三十五とか、あるいは枠を使い切っておるのは百に満たないとか、非常に優良な大企業ですね。そうすると、中小企業とか一般の庶民に対する資金のクラウディングアウトという状況が起こってくるのではないかということが心配されるわけですが、その点はいかがでしょうか。法制上の問題だけでなしに金融上の問題も考えてみる必要があるのではないか、こう思うのですけれども。

鴻常夫東京大学教授

○鴻参考人 いま御指摘になりました点は、最も重要で、かつむずかしい点かと思います。特に金融機関が巨額の社債の所持人であるというような形になっているのは、これはいろいろな金利の条件等との関係があるかと思います。しかし、社債というものは、他人資本と言いましても、普通の借入債務と違いまして、そのまとまった額の債権あるいは債務というものを均等割りにいたしまして、それを証券化して、それが広く大衆といいますか、そういう者の余裕のある資金による投資の対象になるということが社債制度の本来の姿でありまして、そういう意味では、現在の社債制度の運用というものが、法の理想と言いましょうか、制度本来のたてまえどおりには働いていない、使われていないという点、そのこと自身に大きな問題はあるかと思います。  いま正森さんの御指摘になりました点は、そういう状況がさらに拍車がかかって、中小企業等に対する金融機関の貸し出し余力というものに影響してこないかということでございます。これも私、金融の問題について専門外で自信を持ったお答えができるわけではございませんけれども、私は、二倍に限度を引き上げたからといって、その枠いっぱいに企業が社債を発行するというふうに考えるとすれば、そのこと自身が問題なんであって、枠を広げるということと、いかなる範囲で社債を出すことが企業の資金調達のやり方として合理的であるかということは、発行する企業及びそういうことについての発行に当たって専門家の立場で関与する受託銀行や引受証券会社というものとで、十分その点を慎重に検討した上でリーズナブルな額に社債の発行をとどめるということでなければならないのではないかというふうに考えておるわけでございます。

正森成二日本共産党・革新共同

○正森委員 ありがとうございました。

上村千一郎自由民主党

○上村委員長 次に、加地委員。

加地和新自由クラブ

○加地委員 最後でございますので、あと十分ほどおつき合いをお願いします。  先生の先ほどの御意見を聞いておりましても、現在よりはましだ、理想までには届いておらぬけれども現在よりはましだからという御意見のように思います。私もおおむねそのように思います。  いかにして日本の社債制度、公社債制度というものが会社経営なり産業面において有効性を発揮するかということについて、ひとつお教え願いたいのでございますが、その一つは、現在の難点としては、新しく増資をするよりも、いわゆる銀行から金を借りた方がいい、あるいは社債の方がいいというように、自己資本の充実を妨げておるのに税法上の問題があると思うのです。いままでにも、昭和三十六年ごろに配当金に対する軽課措置、配当金に対して軽く税金を課するという制度もありましたし、それから資本構成を改善した場合の法人税額の特別控除措置の実施等も四十一年から四十四年ごろにもありましたし、また時価発行の増資とか時価転換社債の導入ということについても税法上の配慮がなされたと思うのですが、それらはいずれも不十分であったように聞いておりますけれども、先生の御研究では、税法上のネックとしてはどういう点を緊急に改善すれば健全な自己資本充実ができるか、あるいは社債制度が確立されていくかという点について、御意見をまず承れればと思います。

鴻常夫東京大学教授

○鴻参考人 加地さんの御質問も、私、商法を専攻しておりますが、税法の方の専門家でございませんので、御期待にこたえるようなお答えはできないわけでございますが、社債制度の面での税制をどういうふうに変えた方がいいかというのは、将来の問題としていろいろ検討すべき点があるかと思います。しかし、現在の問題は、むしろ社債に対応する株式の発行の方についての税法上の扱い方の方に問題があるのではないか。たとえば、いま、他人資本をやたらにふやさないで、自己資本の充実だということで、優先株制度みたいなものを出したらどうかというような議論があり、現に発行事例も見ているわけでございますが、やはり優先株の内容をいかに社債的なものに近づけて——優先株というのは、御承知のように社債と株式の中間でございますから、そういうふうな社債に近づけた内容のものにしても、しょせんは優先株は株式であって社債ではないということから、株式としての税制面の適用を受けるということで、なかなかそういう優先株の発行というものも普及ができないという点の方は、いろいろ問題になっているように聞いております。  社債についても、税法上、企業にとってなお考えるべき点はあるかと思いますが、これはまた税制全般の問題に関係することで、さしあたり社債の税制をどうすべきかという緊急な問題は必ずしもないのではなかろうか。将来の問題としては、税制面でも企業の長期安定資金調達手段としての社債の発行について、それにふさわしいような税制というものにするということが望ましいことは御指摘のとおりでありますけれども、さしあたっての問題というのは、はなはだ不勉強かもしれませんが、私承知しておりません。

加地和新自由クラブ

○加地委員 今回、法律で二倍の枠ということになりましても、先ほどお答えになり要したように、これを取り扱う金融機関なり証券会社なりあるいはまた引受幹事会社などで起債会というものをつくっておりまして、公共債などを優先して、その残りが一般事業債の方に回ってくるというように——法律が変わっただけで、資金調達が必ずしも円滑にいくものとも言えないようでございますし、あるいは外国先進国と比べて、日本の公社債市場というものがまだまだ未発達であるという言葉をよく聞くのでございますけれども、今回の法律の改正とあわせて、暫定法案となっておるということは、いずれ近いうちに先進諸国に負けないもろもろの制度が確立されるということを予定されておると思うのでございますけれども、日本の公社債市場は、現在緊急にどういう点を改善しなければならないのかという点につきまして、先生の御意見を賜ればと思うのでございます。

鴻常夫東京大学教授

○鴻参考人 ただいまの質問の点も、社債制度の全般にかかわる大きな問題でありまして、また現に日本の公社債市場が抱えている問題を御指摘になったというふうに思うわけでございます。日本の公社債市場が欧米の先進国に比べて未発達だと言われているものにもいろいろあるかと思います。一口に公社債市場と言いましても、発行市場、流通市場、大きく分けられるかと思いますけれども、とりわけ日本の流通市場というものは貧困であるということは、これは率直に申し上げられるのではないかと思います。発行市場の方についても、欧米先進国と比べてどうかという点になりますと、これも比較のむずかしいところでありますが、流通市場を比較した場合よりは、未発達と言わないでもいいのではないか。最近はまた、いろいろ海外の企業、さらには公共的な機関が東京を資本市場として資金を調達するということも行われ、漸次多くなってきているようでございますけれども、恐らく公社債市場の未発達ということが一口に言われますのは、流通市場というものが本格的にないということで、そのはね返りが発行市場の問題にも及んできているという面がもちろんあると思います。そういう意味で、いかにすれば、本来、有価証券というものとして債券が存在して、それはいつでも市場で現金化、換価できるということによって、投資対象としての妙味を持っているはずのものが、流通市場というものが十分に発達していないということでは、その面のよさを生かし切れていないということになるわけでありまして、私は、いろいろなネックもあると思いますけれども、また、この二十年来、時に及んで流通市場というものの定着といったようなことが叫ばれておりますけれども、思ったようには行っていないという点、これも御指摘のとおりでございますけれども、今後大いに検討すべき問題ではないかというふうに考えております。  それから起債会あるいは起債懇談会なんかで公共債優先、で、事業債が残った枠をどういうふうに配分するかという形で運用されているように私も承知しているわけでございますが、これはまた単なる社債市場にとどまらない、全体としての国の財政等とも関係するむずかしい問題でありまして、この点もそれぞれ合理的な範囲でどちらが優先だというようなことも、時にあっては必要なことがあるかもしれません。一般的な制度としては、それぞれが合理的な範囲で資金の調達をするというのが、本来望ましい姿ではなかろうかというふうに考えているわけでございます。

加地和新自由クラブ

○加地委員 最後に一問だけ。この法律は、最初の案では九年間ほどの時限立法の案であったように伺っておるのでございますけれども、やはり先生のお考えでも、これは完全ではない、いまよりはましだというものからいきますと、中途半端なままで日を送るということは好ましくないのであって、一定の無理でない日限を切る方がいいように思うのでございますけれども、先生のお考えはどうでございましょうか。

鴻常夫東京大学教授

○鴻参考人 この暫定措置法案が「当分の間」ということで、最初の案、いかなる段階でありましたか、確かに十年間に限るという——約十年でしょうか、に限るという考え方があったことを承知しているわけでございます。  たしか、これは昨年でございましたか、国会で成立しました電気ガスの方の特例法と、一般株式会社の社債発行限度の特別な措置とをそろえるというような趣旨もあって、初めそういう考えがあったのではないかというふうにも思うわけでございますが、こういう暫定措置だからといって、必ずしも何年ということに限らなければならないということでなしに、「当分の間」として、もし幸いにして、この法案が暫定とされた理由として説明されておる会社法の全面改正の方が、大方の期待以上に審議が促進されまして、早い時期に社債全般を含めて新しい制度というものがまたこの国会で審議されるようなことになるならば、これは十年と限っておったからといって、前に出してならぬということはないと思いますが、そういう期待を込める意味で「当分の間」というふうにすることも、それなりの意味があるのではないかというふうに考えておるわけでございます。  また、この暫定措置法案にしないで、そういう意味での恒久的な制度というふうにするということになりますと、やはりいろいろな考え方の妥協としての立法ということもあるかもしれませんが、私、学者の立場では、もう少し理論的な立場で、矛盾がないといいますか、そういうような形の立法の是非ということも一度は検討すべきことなのではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。

加地和新自由クラブ

○加地委員 どうもありがとうございました。

上村千一郎自由民主党

○上村委員長 次に、鳩山委員。

鳩山邦夫無党派クラブ

○鳩山委員 三分ということで、一言だけ伺っておきますが、発行限度につきまして、商法二百九十七条が、資本及び準備金あるいは純資産額のどちらか少ない方というふうに決めておるわけでありますが、私はその意味がいまだによくわからないのでございます。純資産額イコール資本プラス準備金プラスアルファ、これを剰余金と呼ぶこともあるかと思いますが、そのように解釈してよろしいのでございましょうか。

鴻常夫東京大学教授

○鴻参考人 この問題については、商法の問題でございますけれども、きょう御出席になっておられる宮坂先生の方がより的確なお答えができる問題ではないかと思うわけでございますが、ただいま鳩山さんの御質問の点は、やはり資本及び準備金の総額というものと純資産というものは、いわばそれを決めていく基礎が違うわけでありまして、純資産の方が資本及び準備金の総額よりもはるかに多いというのが今日の企業の大部分だろうと思います。しかし、非常に経営がまずくなっているようなところで、資本及び準備金の総額にはるか足らない資産しかないという倒産寸前のといいましょうか、そういう、これまででしたら資本減少の手続を考えなければならないような企業も多い。そういう意味において、ある程度それが見合うということが望ましいことでございますし、自己資本の充実というようなことはその点を考えた問題だろうと思いますけれども、その額そのものは、両者で必ずしも必然的に一致するような性格のものではないというふうに考えております。

鳩山邦夫無党派クラブ

○鳩山委員 ただいまの先生のお話、計算の仕方が違うということでありますが、先生のお答えをいただいても、一応純資産額イコール資本プラス準備金プラスアルファと解釈してもいいと私は思うわけでございます。したがって、普通このアルファというのはプラスである場合がほとんどであると思います。現在社債を発行しております二百三十数社の中で、アルファがマイナスであるという例があるかどうか、それをお聞きしたいのと、またアルファがマイナスであるような場合に果たして社債の発行を許していいものだろうか、それだけお答えいただきたいと思います。

鴻常夫東京大学教授

○鴻参考人 私もただいまの御質問の点、記憶が正確でないというのか、初めからつまびらかにしてないのかという点問題があるかと思いますが、もしこの暫定措置法案が成立して社債の発行枠が広げられれば、合理的な資金調達として社債の発行がこの際いいのだからということで発行したいと思う企業で、純資産の方が資本及び準備金よりも少ない、つまり鳩山さんのお話でプラスアルファがマイナス勘定になっているという企業はまずないのではないかというふうに推測をいたしておりますが、これはつまびらかでございません。

鳩山邦夫無党派クラブ

○鳩山委員 どうもありがとうございました。

上村千一郎自由民主党

○上村委員長 鴻参考人には、御多用のところ貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。どうぞ御退席ください。(拍手)     —————————————

上村千一郎自由民主党

○上村委員長 次に、宮坂参考人に対する質疑を行います。横山委員。

横山利秋日本社会党

○横山委員 本委員会は商法の改正につきまして歴年審議をいたしておりましたし、また本委員会ばかりでなくて、大蔵委員会、商工委員会等々におきましても、会社と商法、またそれに関連いたしまして共通的に公認会計士の諸問題についてもしばしば討議をしてきたところでございます。今日、公認会計士に対する社会的な期待、また公認会計士自身が持っております社会的な責任、これはきわめて大きなものがございまして、私どもは、国内におきます大企業を中心にいたしまして、公認会計士の監査の状況が適切であることが、近代社会におきます経済に寄与するところがきわめて大きいと痛感をいたしておるところでございます。  本委員会は、先般この担保付社債に関連いたしまして、公認会計士の問題について政府側と質疑を交わしました。その際、政府側が公認会計士につきましての問題について答弁をいたしたのでありますが、その答弁が、やや政府側の意見でございまして、公認会計士協会及びその運営、監査のあり方についての批判的な内容があったわけであります。したがいまして、本委員会としては、宮坂会長においでを願いまして、一体その指摘はどうなのかという点についてただすべき道義的なものを感じまして、きょうおいでを願ったわけでございます。短い時間でございますからどうぞ簡潔に、いろいろお答えを願いたいと存じます。  まず第一に、私が最も問題にいたしましたのは、公認会計士審査会に政府から出されました「公認会計士制度の見直し」なる文書についてであります。この文書はいろいろと問題点を指摘しておりますが、特に私が指摘をいたしたいのは、協会運営の適正化という内容であります。この「協会運営の適正化」の項を見ますと、文書をもって、協会の運営が適正でない、そしてまた指導が適正ではない、こういう数々の問題が指摘をされています。私は、少なくとも日本公認会計士協会のあり方を政府がかくまで具体的に論ずることは、言うならば、言葉は適切ではないかもしれませんが、なめたやり方だ、またこういう文書を出される側の立場はなめられたものだ、ここまで私は痛感をいたしておるわけであります。政府側と公認会計士協会とのあり方がこういうような関係では困る、そう思っておるわけでありますが、まず宮坂会長から、いわゆる見直し問題のうちの協会運営の適正化に関連して御意見を伺いたいと思います。

宮坂保清日本公認会計士協会会長

○宮坂参考人 ただいまの横山議員の御質問に対しまして、感謝いたします。  いまの協会の運営についてでございますが、私はこう考えるのでございます。このような指摘を受けたということにつきましては恐縮しておりますが、協会は一生懸命やっておるのであります。会社や役所のように完全なる上意下達のできる組織ではございません。全部責任のある会員から選ばれた役員が、それぞれ自主的にやっているのでございます。御心配していただくことは、意をよく含みましてこれからも精進していきたいと思いますが、事務的な運営につきましては、どうぞ協会の方にお任せ願いたいと思うのであります。  施策的な問題につきましては、これは監督官庁のことでございますので、疑義があって見直し論が出たと思うのでございます。そこで協会の考え方の基本的なことを簡単に三十秒ほど申し上げたいと思います。  特殊法人たる日本公認会計士協会は、公認会計士という資格で会員を登録しているのでございます。個々の公認会計士によって成り立っているのでございます。その目的は、言うまでもございませんが、監査業務の改善、進歩を図るため、会員の指導、連絡及び監督に関する事務を行い、公認会計士の使命と職責にかんがみその品位を保持することにあるのでございます。したがいまして、公認会計士個々人がこの目的を達成するために各事業を行うものでありまして、特定に偏ったそのような方策は協会としては持つべきでないと私は考えます。  そこで、そのためには、まず第一に、会員全員が監査業務に従事することを達成しなければならない。したがいまして、制度の見直し論に対処するに当たりまして、この基本的な考え方を出発点として私どもは考えていろいろと処置したのでございます。

横山利秋日本社会党

○横山委員 私の質問はひとつ具体的にわたるわけでありますが、その前に、国会の意思というものについて、宮坂会長御存じではありましょうけれども申し上げておきます。  商法の一部を改正する法律案に対する附帯決議の二項、「会計監査人の独立性を確保するため、その選任方法等について適切な方途を講ずること。」もちろんこれは政府に対する附帯決議でございますが、第四項に、「監査法人の育成・強化を図る反面、個人たる公認会計士の業務分野についても行政上適切な措置をすることとし、もって活動分野の調整をはかるものとすること。」になっています。特にこの第四項を私ども立案いたしました趣旨は、大監査法人、小監査法人、個人たる公認会計士の業務分野についても行政上適切な措置を講ぜよということは、それぞれ所を得さしめよ、つまり大監査法人のみにこの仕事が集中することのないように、大は大、中は中、個人は個人というふうに活動がそれぞれ行われるようにして、もって活動分野の調整を図るものとする、こういうことなんであります。  ところが、この見画しの中の指摘に、新しく金融機関が監査対象に選ばれましたとき、公認会計士がいわゆる五行制限をしたことはけしからぬとか、あるいは五十一年三月十日日本公認会計士協会理事会において決議された「会員が、三社を超えて金融機関と監査契約を結ぶこととなる場合は、金融機関監査契約調整幹事会に届け出て、その裁決を求めなければならないこととすべきである。」というような趣旨につきましても、大蔵省がいささかいちゃもんをつけたやに聞いておるわけであります。  それで、大監査法人、中監査法人、小監査法人、個人たる公認会計士、このそれぞれの業務活動分野の調整を図るという私どもの国会の趣旨については、公認会計士協会としては了とされておるわけですか、この趣旨に沿っていらっしゃるわけですか、簡単にお答えを願いたい。

宮坂保清日本公認会計士協会会長

○宮坂参考人 いまの御質問は、銀行の五行制限に関連しての附帯決議の問題でございます。まず五行制限に関しまして三点にまとめて申し上げてみたいと思います。  その一点は、特定の監査法人に予想外に契約が集中してまいりますと、その膨大な予想監査日数を考慮したときに、それら監査法人の監査消化能力を超えるおそれを生じてきたと考えました。これは銀行監査調整幹事会が非常に資料を取り寄せ細かな検討をして進めたものでございます。そのまま放置しますと、期待された十分な監査を実施し得ないかもしれないというものを考えまして、公認会計士監査に対する社会の信頼を損なうこととなるおそれが多分にありはしないだろうか、そういう意味で、その当主的な解決策としましていわゆる五行制限を行ったわけでございます。  また、横山議員からの御指摘のように、商法の一部を改正する法律案等の附帯決議が、昭和四十八年の七月三日でございますが、この衆議院法務委員会において決議されました。それにのっとりますと、五千三百名の公認会計士で監査法人に所属する会員は約四分の一でございます。千六百名程度の方がこれに参加しております。監査法人以外の四分の三に当たる会員、これをどのようにしていったらよいかという思想を基本にいたしまして、いまの第一点を加味した——個々の公認会計士、これにつきましては共同事務所もあれば個人事務所もありますし、監査団というものもございます。監査に携われるような機会をつくっていこうというふうにしたのでございます。  第三点は、この結果、銀行監査のそれぞれの契約をした人は、質も上がり、制度の発展を目指して現在監査を実施しております。五行制限が行われるときの協会が発信した文書が手元にございますが、これも内容証明では出しましたけれども、ここにはっきりとその趣旨を書いてあるのでございます。簡単でございますからちょっと読んでみます。これは急所になりますので……(「余り関係ないことは……。」と呼ぶ者あり)それでは省略いたします。  以上、そういうことでやったのでございます。

横山利秋日本社会党

○横山委員 簡潔にお答えくださって結構でございます。  そこで、企業の監査をする上において、先般私が本委員会で指摘をしたわけでありますが、本年の一月十四日の読売新聞に、公認会計士協会の近畿会が灰色決算を内部告発をしたという問題が出ております。そこで、この間政府委員に対しまして、この問題についての見解を求めました。私は、公認会計士協会が自己の会員の行った監査が他の手によって、つまり大蔵省へ行ったらそれは粉飾だと言われたり、あるいはまた他の団体から非難をされるようなことがある前に、公認会計士協会みずからが常に監査状況を調査し、念査し、研究し、あるいはまた、間違った監査があった場合にはみずからの手で摘発をする、そういう自主調整、自主統制が好ましい、こういう立場をとっております。その意味では近畿のこの——新聞に言う内部告発という言葉が適当であるかどうかわかりませんが、その手段、方法についての多少の議論はあるにいたしましても、これは協会本部及び地方の会が、そういうことについて私の趣旨に沿うような活動機能を持つことが必要ではないか、こう考えておるのでありますが、その点についてどうお考えですか。

宮坂保清日本公認会計士協会会長

○宮坂参考人 近畿会の問題がきっかけになっておりますが、近畿会では毎年二月に研究大会というのを行っております。これは近畿会の研究部が主催でやっておりまして、もと近畿三会といいますか、今度は五会といいますか、五つの地域会が合同したのでございますが、このたびは「粉飾決算−その実態と教訓」ということでやったわけでございます。昨年は「公表財務諸表のニーズとその対応」、また「ディスクロージャーの意識の実態調べ」、その前は「商法監査について」、それぞれやりまして、その研究の資料をそれぞれに送っておったのですね。その送った先から新聞社へ行きまして、新聞社の取材となって、このように新聞に出たのでございます。本部としましては、その新聞にどのような形で出たかということを調査いたしました。これはいま申しましたようなことで、資料として出されたものでございます。その調査の結果を本部の方にも知らせてまいります。本部の協会としましては、監査委員会と会計制度委員会とでそれぞれの監査の検討などをやっております。また審議室がございます。いずれにいたしましても、これらの機関をもう少し拡大して統べていきたいと考えております。  なお、新聞紙上に出ておりましたような固定資産の売却、有価証券の売却関係につきましては、もうすでに会計制度委員会では四十五年の七月に中間答申を発表しております。また監査委員会では四十六年七月に出しております。現在、この二月に行われた近畿会のそれを受け取りまして、本部ではさらにこの内容を検討しているところでございます。これは会計制度委員会と監査委員会で共同調査をしております。  なお、いま御指摘のように、それぞれの財務諸表については、健全な会計処理ではないかもしれないが、違法とか不当の会計処理ではないことを協会でもはっきりと断定しております。  以上でございます。

横山利秋日本社会党

○横山委員 宮坂さん、時間がございませんので、なるべくそのものずばり……。  私があなたに質問をいたしておりますのは、近畿会を契機として、公認会計士協会それ自身が、いまあなたのお答えによれば審査会だとか規律委員会だとかがあるそうでございますが、公認会計士協会本部及び地方みずからが、他や官庁に指摘されることなく、この監査状況についての調査、念査あるいは摘発、統制、それらについてもう少し百尺竿頭一歩を進めた方法ができないか、こう言っておるわけであります。  それから、先ほど五行制限の問題でもお答えになりましたが、要するに、金融機関が被監査対象に選ばれたならば、それまでは一致結束をしておった公認会計士協会が、獲物に群がるオオカミのように、お得意さんをとるために争うような印象を与えたのは大変よくないことだ。そういうところに、政府が言うところの指導調整能力に欠けたる点がないか、こういう指摘が生じてくるわけなんであります。ですから、本部会長としてのそういう点についての決意なり、本部の体制について、率直に御意見を伺いたいと思います。

宮坂保清日本公認会計士協会会長

○宮坂参考人 いま御指摘のことでございますが、本部協会といたしましては、前向きに、第一番目の社会に対するアピール、技術的な問題についての前向きな開発というような問題について、大いに審議室あるいは監査委員会などを強化し発展させていきたい、そういう社会のそれにこたえようと考えて決意しております。

横山利秋日本社会党

○横山委員 簡潔におっしゃったのですが、どうぞそれが具体的に近い将来体制として強化されるように……。その意味では、大蔵省の指摘がこういう文書で公式の場面に出すようなやり方は言語道断だと思うのですけれども、やはり火のないところに煙は立たないという感じは免れがたいところでございますから、内容的に本部の指導調整能力というものが充実されて、毅然とした公認会計士協会の運営がされるよう期待してやみません。  その次の質問は、この附帯決議にも関連をいたしますけれども、私はこう考えていますがどうですか。  まず第一に、それぞれ所を得せしめるということの第一に、外国の監査法人を認可するか否かという問題が歴年の問題になっています。私は、今日の日本の公認会計士協会の大監査法人といえども、まだまだ国際的な力が必ずしも十分でないから、外国監査法人を認可したならば国内の市場が席巻されるから、まだ早い。  第二番目には、その意味では、外国の監査法人と日本の監査法人とが対等平等に、すでにモデルがございますように、対等平等な立場で監査協定を結んで提携をするということが第二番目。  第三番目には、この見直しの文書の中にもあるわけでありますが、速やかに国内の監査法人の認可基準を緩和すべきだ。緩和をして、よく言うのでありますが、鉄砲を持っておったらカモがいなくてもひとつ商売を許せ。つまり、いままでは大蔵省は、お客様がいなければ監査法人は認めないという立場であったけれども、お客様がいなくても、資格を持ち監査法人としての体制を整えておるならば認可すべきであるという、監査法人の認可基準を緩和すべきであるというのが第三。  第四番目には、個人の公認会計士の業務分野を拡大いたしますために、先般も総理府から来てもらったわけでありますが、政府、地方自治体に関連する公益法人並びに民間の公益法人についての監査基準というものを速やかに決めて、それを逐次政府の直接指導、財務指導よりも公認会計士の間接指導に渡すべきである。  そういう点を私は歴年主張しておるわけでありますが、これらの点について会長としてどうお考えでございますか。その点をひとつ簡潔にお答え願いたいと思います。

宮坂保清日本公認会計士協会会長

○宮坂参考人 第一点の、外国公認会計士の認可はまだ早いということでございますが、御説のとおりと思います。ところが、この外国公認会計士の監査法人化には、従来日本に事務所を開いている外国の公認会計士、監査法人に移行しない方々との関連、こういうものをはっきりしませんと、名義貸しのような形になってしまう。これは早くするとか遅くするとかいう意味と基本的に違うものでございます。そういうものをやはり整理していただく、これが基本でございます。それから、早い中にも国際的に日本の公認会計士が発展する必要がありますからその力をつける。たとえいまのような名板貸しその他が整理されましても——そのような意味で横山委員のそれに賛成いたします。  二番目の対等平等の業務提携については、これはそのとおり賛成でございます。  三番目でございますけれども、監査法人の日本の認可基準の緩和の問題でございます。確かに、契約云々について言わないで、いわゆるだれでも許したらどうかということを基本にして、ただここでしなければならないことは、監査の充実でございます。それは審査機構というものでございます。私は、監査法人だけが審査機構を持つと思っておりません。これは個人でも共同事務所でも監査団でも、その仕事をするということになればそれぞれのものを持つはずでございます。そういう意味で、緩和は私は大賛成でございます。  ただ、一点お願いしておきたいことは、大きな会社はだから監査法人だということはやめていただきたい。そういうようなことはやはり平等でいくべきであるということを申し添えておきます。  第四点でございますが、公益法人その他についての問題でございます。これは分野調整といいますか、附帯決議で、大きい監査法人も個人もというような意味合いのそれが含まれていると思いますが、どうぞこのような法律が出るときには、何か法律の中または附帯決議でもよろしゅうございますから、個人の公認会計士の尊重をうたっていただきたい、そういうようなことをお願いしたいと思います。  また、これに関する監査基準、監査方法等の問題について早目に手を打て、全くごもっともな御意見でございます。そのように考えております。  以上でございます。

横山利秋日本社会党

○横山委員 一つ聞きにくいことを聞くのですが、監査報酬の問題でございます。  私のいまの実感を申し上げますと、公認会計士が、私を監査人として雇ってくれ、委嘱をしてもらいたいということを会社に申し出る、その申し出る弱みというものがあると思うのであります。何か、聞くならく、監査報酬についてはあなたの方で一定の基準があると思いますが、結局は、それは売り手と買い手の関係で、会社と公認会計士協会ないしは監査をする公認会計士及び法人との商取引になっておるという感じがしないではありません。  一方、監査日数についての一定の基準があるわけでありますが、これまた、そんなにたくさんやられては困る、おれのところは、大蔵省から日銀から税務署から、それから公認会計士から、あらゆるところで年がら年じゅうやられているんだから監査日数を減らしてくれ、いやそれではこちらは自信が持てないから監査日数をふやしたい、そういう実際の論議があるようであります。  そういう中で、監査報酬というものが一体どう決められたら望ましいのか。一体、売り手と買い手、会社と公認会計士の間の自由裁量に、手打ちに任されるものであるかどうか。これを税理士あるいは司法書士あるいは弁護士等の報酬と比べてみますと、公認会計士の報酬というのは、どうも売り手と買い手に任されておるような気がする。他の人たちは、政府が認可する、あるいは弁護士会は弁護士会できちんとした統一したやり方でやる、もちろんそれに若干のニュアンスはあるにしても、弁護士の方は比較的統一された基準というものがあるが、公認会計士のいまの報酬のあり方についてはどうもその辺がすっきりしないような気がしてならない。一体報酬制度のあり方というものはどうあればいいのかという点について、御意見を伺いたい。

宮坂保清日本公認会計士協会会長

○宮坂参考人 報酬のあり方でございますが、その前に、会員がそれぞれのところへ競争で行ったということも大きな原因ではないか、こういうようなこともお話がございました。  よい監査をすれば報酬が上がる、こういうようなことを言われますけれども、私はそう思いません。公認会計士は、十分な監査を実施する日数と、それに見合う報酬がなければ、やはりりっぱな監査に進むことはできない、後継者を育てることもできない、そういうふうに考えます。  それならば、そのような醜い契約の取り方をどうしたらいいのか。これについては、協会は、もし懇請の問題が具体的に見つかるならば、厳しい姿勢をもって当たるようにいま進めております。  また、契約の報酬の決め方の問題でございますが、これは当事者でそれぞれ利害関係があるだけでやっておるということ自体の問題と、弁護士さんと比べられたのでございますが、公認会計士の監査が法定監査に偏っているわけですね。任意監査がたくさんできてくればこういうことはないのです。言うならば、医者でも弁護士でもそれぞれ決められた以外に任意の仕事という、いわゆる決められた以外のものがたくさんあるわけです。こういった意味で、公認会計士の監査というものをもっと社会的にPRする、そのためには、もちろんいい監査をすると同時に、官民ともにやはりその方に進めていかなければならないと思うのでございます。  なお、契約の報酬の定め方の問題につきましては、できれば、いまの当事者間のほかに、学識経験者とかあるいはそれぞれの関係者が入っていただくとか、そういったものをつくっていただくとか、あるいは別にそのような報酬調定というような機関をつくっていただくということは——弁護士や医者と比べて、いま日本においては法定監査を任されておりますから、公認会計士の位置づけはもっと社会的なんでございます。そういう意味で、何かそういう機関の設置ができればと願っているものでございます。

横山利秋日本社会党

○横山委員 最後に、せっかくおいでになりましたからには、本法案についての御意見を伺わなければなりません。  先ほどから鴻参考人と私どもの質疑の中でお気づきのように、問題点は数々ございます。しかし、詰まるところ、本法案の意図するところは、担保つきの社債ならば制限を緩和して倍にするということについて、それは日本企業の最も欠陥であります自己資本が少な過ぎるという、われわれがかねて議論をいたしておりましたことについて逆行するのではないか、いやそうではない、それは準自己資本と考えるべきだ、それがこの法案が通過をしたならば、増資の傾向が減る、いや誘導して増資の道を開く等々の議論があるわけであります。もちろんそのほかにもたくさんの問題がございまして、当委員会は慎重な審議をいたしておるわけであります。公認会計士協会は、会社、企業の監査に当たって、これらの点については十分御経験がおありだと思いますので、本法案についての御意見を伺いたいと思います。

宮坂保清日本公認会計士協会会長

○宮坂参考人 本法案に対して御意見を申し上げます。  自己資本の充実ということについて、日本企業が官民ともに非常にこれを進めてきたわけでございます。本法案はそれに対して反しているということを言っても否めない事実だと私は思うのであります。しかし、諸外国の状態を見ますと、このような担保がついているものについては限度を決めないで行われている、こういう情勢、また現在の日本におきましても、自己資本の増資に優先株というのがございます。この優先株にもいろいろな優先株がございます。むしろ社債の性格を持つような優先株もあるのでございます。そういうところから考えますと、よくはないけれども仕方がないだろう。特に増資に対して阻害があるかないかというのがポイントでございますが、いろいろとそういうところを基本に置きまして、よくはないが現在ではやむを得ないだろうというふうに私は考えております。

横山利秋日本社会党

○横山委員 質問終わります。

上村千一郎自由民主党

○上村委員長 以上で参考人に対する質疑は終わりました。  宮坂参考人には、御多用の中を長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  次回は、明十一日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時二十一分散会

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