法務委員会 第2号
- 発言数
- 143 件
- 登壇者
- 16 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1977/03/11
会議録
○上村委員長 これより会議を開きます。 この際、理事の補欠選任に関する件についてお諮りいたします。 去る三日理事沖本泰幸君が委員を辞任されましたので、現在理事が一名欠員になっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○上村委員長 御異議なしと認めます。よって、委員長は、沖本泰幸君を理事に指名いたします。 ————◇—————
○上村委員長 法務行政、検察行政、国内治安及び人権擁護に関する件並びに裁判所の司法行政に関する件について調査を進めます。 この際、法務行政等の当面する諸問題について福田法務大臣から説明を聴取いたします。福田法務大臣。
○福田(一)国務大臣 委員各位には、平素から法務行政の適切な運営につき、格別の御尽力をいただき、厚く御礼申し上げます。 この機会に法務行政に関する所信の一端を申し述べ、委員各位の深い御理解と特段の御協力を賜りたいと存じます。 私は、昨年十二月、当委員会において就任あいさつをいたしました際に、若干申し述べたところでございますが、法務行政の使命は、法秩序の維持と国民の権利の保全にあると考えております。特に内外ともに困難な問題が山積しているこの時期におきましては、国家社会の基盤ともいうべき法秩序が厳然として維持され、国民の権利がよく保全されていることが肝要と存じます。私は常にこのことを念頭に置き、全力を傾注して国民が期待する法務行政の推進に努めてまいりたいと存じております。 以下、私が考えております当面の重要施策について申し述べます。 まず第一に、法秩序の維持についてであります。 最近の犯罪情勢を見ますと、おおむね平穏に推移していると認められるものの、公務員による汚職事犯が多発化する傾向にあり、近時、国あるいは地方公共団体の行政の最高責任者らによるこの種事犯の発生を見ましたことは、まことに遺憾にたえないところでありますが、いわゆるロッキード事件につきましては、東京地方検察庁において、去る一月三十一日、同事件に関連してそれまでに判明した犯罪容疑のすべてについて処理を終わり、現在、公訴を提起した者の公判立証に全力を挙げているところであります。しかしながら、なお捜査本部を存置しておりますので、今後、本件について特段の事情の変化が認められる場合には、さらに解明のため必要な措置をとるものと考えます。そのほか、暴力団相互間における銃器使用の殺傷事犯が各地で発生しているほか、不況を反映した各種財政経済事犯が増加する傾向にあるなど、今後警戒を要すべき点が少なくないと思われるのであります。 私は、このような情勢に対処するため、検察態勢の整備充実を図り、適正妥当な検察権の行使に遺憾なきを期し、もって法秩序の維持に努めてまいる所存であります。 一方、立法の面について申しますと、まず、いわゆるロッキード事件再発防止策についてでございますが、その再発防止は、政府として方策を検討すべき範囲が多岐にわたりますので、関連する分野において、広範にわたり検証がなされるべきものと考えます。法務当局といたしましては、その方策の一部として、刑法における収賄の罪の規定を整備することを検討いたしております。また、ロッキード事件を初め国際的な犯罪の情勢にかんがみ、各国との間に逃亡犯罪人引渡条約を締結することが必要と考えておりますが、さしあたり日米犯罪人引渡条約について、引き渡し犯罪の種類の拡大を中心とした早急な改正を行うため、外務省とも協議して、その作業を進めております。 次に、刑法の全面改正につきましては、目下、事務当局において政府案作成作業を進めているところでありますが、刑法は最も重要な基本法の一つでありますから、広く国民各階層の意見を考慮しながら、真に時代の要請に適応した新しい刑法典の実現に努力いたしたいと考えております。 また、少年法の改正につきましては、法制審議会少年法部会において六年余にわたる審議が続けられた結果、昨年十一月、同審議会に対しさしあたり速やかに改善すべき事項につき中間報告が行われ、目下、同審議会においてこの中間報告をもとに審議中の段階であります。同審議会から答申がなされましたときは、その趣旨を十分尊重し、できる限り速やかに改正の実現を期する所存であります。 なお、犯罪被害補償制度の立法化につきましては、現在、事務当局において、諸外国の立法例やわが国の犯罪被害者の実態などについて調査、検討を行うとともに、補償の要件、範囲、額、手続等について、他の補償制度との均衡をも十分に考慮しながら、その具体的な内容を鋭意検討いたしております。 第二は、犯罪者及び非行少年に対する矯正及び更生保護行政の充実についてであります。 犯罪者及び非行少年の改善更生につきましては、刑務所、少年院等における施設内処遇と実社会における社会内処遇を充実強化するとともに、これら相互間の連携を一層緊密にし、その効果を高めてまいる所存であります。 そのためには、まず施設内処遇につきまして、創意と工夫を加えながら、被収容者個々の特性に応じた分類処遇を推進し、さらに、被収容者の生活環境の改善を図るとともに、社会復帰に役立つ職業訓練、教科活動等の充実を期したいと存じます。 なお、監獄法の改正作業につきましては、目下、法制審議会におきまして、順調に審議が行われているところでありますが、同審議会の答申を得た後、できる限り速やかに法律の改正案を提出いたしたいと考えております。 一方、社会内処遇につきましては、保護司、更生保護会その他の民間篤志家との協働態勢のもとに、一層の保護観察機能の充実向上に努め、犯罪者等の円滑な社会復帰を図り、もって、犯罪のない明るい社会を建設するよう、今後とも格段の努力を払ってまいりたいと存じております。 第三は、民事行政事務等の充実についてであります。 民事行政事務は、登記事務を初めとして量的に逐年増大し、また、質的にも複雑多様化の傾向にあります。これに対処するため、かねてから種々の方策を講じてきたところでありますが、なお今後とも職員の増員を初めとして、関係法規の整備、組織・機構の合理化、事務処理の能率化・省力化等に意を注ぎ、適正迅速な事務処理体制の確立を図って、国民の権利・利益の保全と行政サービスの向上に努めてまいる所存であります。 また、最近の経済状況にかんがみ、株式会社の長期安定資金の調達を容易にする必要があるため、当分の間社債発行限度を引き上げるとともに、これに対応する社債権者の保護措置を講じるための法律案を提案した次第であります。 なお、強制執行及び競売の手続の改善の施策につきましては、かねてから法制審議会において検討されておりましたが、去る二月二十三日の総会において、強制執行法及び競売法を統合した民事執行法(仮称)案要綱が決定され、即日答申がありました。目下関係局において法案の立案中でありますが、速やかに成案を得て国会に提出したいと考えております。 次に、人権擁護につきましては、人権擁護委員制度の一層の充実を図り、地域社会と緊密な連絡をとりながら、より効果ある人権擁護活動を推進するとともに、近時社会の各分野で、自己の権利のみを主張して他人の権利を顧みない風潮が見られ、日常生活の中にもこれに基因すると思われる人権問題が多発する傾向にあることにかんがみ、啓発活動の重点目標を「人権の共存」と定め、お互いに人権を尊重し合うという精神の普及高揚を図ってまいる考えであります。 第四は、訟務行政の充実についてであります。 国の利害に関係のある争訟事件は、近年、社会情勢の変化に伴い、依然として増加の傾向を示すとともに、その内容もますます複雑困難の度を加えておりますので、昨年には従前の機構を改め、官房訟務部を廃止して訟務局を設置いたしましたが、今後ともなお一層事務処理態勢の充実強化を図り、この種事件の適正円滑な処理に遺憾なきを期したいと存じております。 第五は、出入国管理行政の充実についてであります。 わが国の出入国管理行政の基本法である出入国管理令の制定以来、四半世紀が経過いたしましたが、この間、国際交流の拡大に伴って、わが国への出入国者数は飛躍的に増加し、また、在留外国人の活動内容が多様化するなど出入国及び在留管理事務はいよいよ複雑困難の度を加えるに至っております。このような諸情勢に対処するため、できる限り事務の合理化・能率化を図り、外国人管理行政の適正かつ円滑な運営に努めてまいる所存でありますが、現行の出入国管理法制についても、従来の経緯を勘案しつつ、根本的かつ総合的な再検討を進めてまいりたいと存じております。また、外国人登録法につきましても、かねてから外国人の負担軽減と市町村の事務簡素化のための改正が要望されておりますので、慎重に検討を尽くしたいと考えております。 さらに、近隣諸国とわが国との経済格差を背景とした不法入国及び不法残留の防遏と摘発並びに資格外活動の規制については、関係省庁の協力を得て、遺憾のないようにいたしたいと考えております。 最後に、法務省施設の整備改善についてであります。 現在、法務省が所管している施設は、庁数、延べ面積ともに全官庁庁舎の約三分の一を占めておりますが、その半数は老朽、狭隘、あるいは戦後の粗悪材を使用した施設でありながら、従来、他省庁に比してその整備が最もおくれており、日常の職務遂行にも支障を来している実情にあります。 法務省といたしましては、職員の執務環境の改善と事務処理の適正化を図るため、そのうちから特に法務局の支局、出張所及び検察庁の支部、区検等いわゆる中小規模施設で老朽狭隘の著しい施設の整備を、昭和五十二年度を初年度とする五カ年計画により実施してまいる所存であります。 以上、法務行政の当面の重点施策について所信の一端を申し述べましたが、その他の諸施策につきましても、委員各位の御協力、御支援を得まして、その解決に努力する所存でありますので、どうかよろしくお願い申し上げます。
○上村委員長 この際、委員長から申し上げますが、昭和五十二年度法務省関係予算及び昭和五十二年度裁判所関係予算の説明聴取につきましては、関係資料をお手元に配布してありますので、これをもって御了承を願います。 ————◇—————
○上村委員長 次に、内閣提出、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案及び証人等の被害についての給付に関する法律の一部を改正する法律案の両案を議題とし、順次趣旨の説明を聴取いたします。福田法務大臣。 ————————————— 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案 証人等の被害についての給付に関する法律の一部を改正する法律案 〔本号末尾に掲載〕 —————————————
○福田(一)国務大臣 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について、御説明いたします。 この法律案は、裁判所における事件の適正迅速な処理を図るため、裁判所の職員の員数を増加しようとするものでありまして、以下簡単にその要点を申し上げます。 第一点は、裁判官の員数の増加であります。これは、地方裁判所における特殊損害賠償事件、会社更生事件及び差止訴訟事件の適正迅速な処理を図るため、判事補の員数を十五人増加しようとするものであります。 第二点は、裁判官以外の裁判所の職員の員数の増加であります。これは、地方裁判所における特殊損害賠償事件及び会社更生事件、家庭裁判所における家事調停事件並びに簡易裁判所における民事調停事件及び道路交通法違反事件の適正迅速な処理を図るため、裁判所事務官の員数を五人増加しようとするものであります。 以上が裁判所職員定員法の一部を改正する法律案の趣旨であります。 何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますよう、お題いいたします。 証人等の被害についての給付に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。 この法律案は、今国会に警察庁から提案されました、警察官の職務に協力援助した者の災害給付に関する法律の一部を改正する法律案において、傷病給付の新設により協力援助者に対する給付の充実が図られること等にかんがみ、証人等の被害についての給付制度においても、被害者に対する給付の充実を図ろうとするものであります。この法律案による改正点は、次の二点であります。 第一は、傷病給付を新たに設けて給付の改善を図ろうとするものであります。現行法では、負傷等は治ったが、なお廃疾の状態にあると認められる者に対しては、その程度に応じ障害給付が支給されることとなっておりますが、長期間にわたり療養する者の中には、療養給付、休業給付の併給を受けているものの実質的に廃疾の状態にあると認められる者もあり、このうち廃疾の状態が重い者に対して療養給付とあわせ、現行制度による休業給付にかえ傷病給付を支給することとするものであります。 第二は、現行法では、国は、被害者が療養給付開始後三年を経過しても負傷または疾病が治らない場合、一時金としての打ち切り給付を支給することにより、療養給付、休業給付を打ち切ることができることとなっておりますが、この打ち切り給付を廃止し、被害者の負傷または疾病が全治するまで療養給付、休業給付を行うこととするものであります。 以上が証人等の被害についての給付に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨であります。 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
○上村委員長 これについて趣旨の説明は終わりました。 ただいま説明を聴取いたしました両案中、証人等の被害についての給付に関する法律の一部を改正する法律案の質疑は、後日に譲ることといたします。 —————————————
○上村委員長 お諮りいたします。 本日、最高裁判所矢口総務局長事務取扱、勝見人事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認することに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○上村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 —————————————
○上村委員長 これより裁判所職員定員法の一部を改正する法律案の質疑に入ります。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。羽田野忠文君。
○羽田野委員 今回の裁判所職員の増員は、裁判官十五名、裁判官以外の裁判所職員五名、合計二十名ということになっておりますが、その増員で十分でございますか。
○矢口最高裁判所長官代理者 当初相当数の増員を要求いたしたわけでございますが、その後における充員状況あるいは補充見込み等を勘案いたしまして、いま御指摘のような数字になったわけでございまして、もちろん絶対に満足であるというわけではございませんが、本年度の増員といたしましては一応満足すべきものではなかろうかと考えております。
○羽田野委員 欠員の状態についてお伺いしたいのですが、関係資料の十六ページ、「下級裁判所の裁判官の定員・現在員等内訳」、これを見ますと、判事の欠員が非常に多い。高等裁判所三十七名、地方裁判所十五名、家庭裁判所四十二名、こういうふうに判事の欠員は合計九十四名となっておりますが、どういう事情で判事の欠員がこういうふうに多いのか、そして、今後この欠員は十分に補充される見通しがついておるのか、こういう点について御説明を求めます。
○勝見最高裁判所長官代理者 昨年の十二月現在で、御指摘のとおり相当数の判事の欠員がございます。 簡単に経過を申し上げますと、昭和四十九年におきまして判事の退官者が九十名ほどございましたが、その際、判事補から判事に任官する者が五十人程度でございまして、その年に約四十名の欠員の増加がございました。五十年、五十一年両年度におきましても、判事になる資格を有する判事補の数より退官者の数が上回りまして、さらにふえまして、先ほど御指摘のとおりのような欠員状態を生じているわけでございます。 ことしの判事任命の予想といたしましては六十五名見込むことができますので、ことしの四月十五日現在におきましてはこの欠員が五十三名に減る見込みでございます。ことし判事補から判事になりますのは十九期の判事補でございますが、二十期、二十一期はさらに七十五前後の者が判事になることが期待できますので、来年の四月十五日現在あるいは再来年の四月十五日現在におきましては、相当数欠員が減りまして、ただいまの見込みとしては、再来年の四月十五日現在では欠員が三十台になるというふうに見込んでおるような状態でございます。
○羽田野委員 大体、見通しの御説明がありましたが、何と申しましても裁判所の中心は裁判官、特に判事が一番重要な役割りを果たしておる。しかも、この判事の給源といえば、あるいは弁護士からの希望者もありますが、非常に少ない状態である。となると、判事補をそのつもりで採用していかなければならないということでございますので、そういう長期計画のもとで判事の欠員をなくすようにできるだけ配慮していっていただきたいと思います。これは答弁は要りません。 その次に、裁判官以外の裁判所職員ですが、これも同じく資料の十九ページを見ると、「裁判官以外の裁判所職員の定員・現在員等内訳」というものがあります。これを見ますと、書記官は百十六人欠員、事務官の方では三百八人といわゆる定員より実員の方が多い過員という数字が出ておるのですが、これはどういうことでそうなっておるのか、どちらかを改めなければいかぬのじゃないかと思いますし、この書記官、事務官の欠員、過員を調整するような方法等はないものか、そういう点について御説明願います。
○勝見最高裁判所長官代理者 資料にお書きしましたように、書記官の欠員がありまして、反面、事務官の過員を生じているという状態でございます。 まず書記官の欠員について御説明申し上げますと、年度当初におきましては書記官が充足される状態になっておりますが、やはり十二月現在に至りますと、その間の書記官からの退官者あるいは事務官への転官者等がありまして、どうしてもこの程度の欠員に相なっている状態でございます。 次に、事務官の過員でございますけれども、実は現在の身分が事務官でありまして、将来書記官になるべく書記官研修所に入所している者が約二百八十ございます。その分だけいわば過員の状態となっておるわけでございます。そのうち大体書記官研修所から毎年百八十程度の人が書記官に任命されますので、その時点では事務官の過員が解消に近い状態になるというようなことでございまして、実は裁判所の書記官養成の機構と絡みまして、このようないわば御指摘のような状態になっているわけでございます。裁判所書記官につきましては、やはりある一定期間の研修を受けさせまして、やはり高度の能力といいますか、資格を与える必要がありますので、どうしてもこのような状態に相なっているという次第でございます。
○羽田野委員 終わります。
○上村委員長 次に、横山利秋君。
○横山委員 いま付託されております法案は申すまでもないことでございますが、法務大臣の所信表明がございましたので、若干の時間、法務大臣福田さんに、法案とも関連をなるべくした形において、ひとつ御意見を伺いたいと思います。 いま所信表明を聞きまして、一言足らないところがあるではないかということがまず第一に痛感されるのであります。初めよければ終わりよしという言葉がございます。あなたのお名前の福田一、初めがよかったはずなんでありますが、ちょっと就任早々初めが悪い。そのことについて一言ぐらいここに触れて、このロッキード委員会、私もロッキード委員でございますけれども、ロッキード委員会の発言、それから予算委員会の発言、その終結の問題等について、本来のあなたの所管委員会の法務委員会において発言をされる際に、一言ぐらいこれに触れられて釈明をされ、法務大臣としてわれわれに対して所信を披瀝をされることが当然ではないかと思うのでありますが、どこ吹く風かというような顔をして、いきなり「この機会に」「所信の一端を申し述べ、」とおっしゃるのはいささか意外でございます。御意見はどうですか。
○福田(一)国務大臣 過般のロッキード委員会並びに予算委員会で私の発言が問題となって戒告の決議をいただいたことは、私としてまことに遺憾に存じておるところでございまして、遺憾の気持ちは十分に持っておるのでございますが、これが私の所信表明に抜けておるからといって、遺憾の気持ちがないわけではもちろんございません。十分にその点は配慮をいたしておるつもりでございますので、その点ひとつ御了承を願いたいと存じます。
○横山委員 どこにこれが入っていますか。特にロッキードについては、「去る一月二十一日、同事件に関連してそれまでに判明した犯罪容疑のすべてについて処理を終わり、現在、公訴を提起した者の公判立証に全力を挙げているところであります」ということで、さらりと、済みましたよという雰囲気ですね。この遺憾の問題は、要するに国会の衆議院議長並びに参議院議長、ロッキード委員会の決定、そういうものに対してあなたが反旗を翻したと見られたところに問題があったわけですね。国会軽視、こういうところに問題があったのであります。したがいまして、本委員会の開催も審議もそれによって渋滞し、おくれて、きょうが初めてなんであります。きょうは一体何日だと思いますか。これほど渋滞をして、そして委員長も、委員長というのは法務委員長です、やきもきして審議の促進を図っておられる。そういう点について、あなたがこの国会の決議なりあるいは今後のロッキード問題を含めた国会の要請に対して十分の誠意を披瀝するのは、本委員会で初めて発言されるあなたの当然の言葉だと私は思うのでありますが、改めてその点について御意見を伺いたい。
○福田(一)国務大臣 横山さんの御指摘の、いわゆる国会の権威を重んずるべきである、こういう御趣旨については、私は決して反対の気持ちを持っておるわけではないのでありまして、そういう点では、私が十分この機会にそれを申し上げなかったというのは、不行き届きというか、遺憾である、けしからぬ、こういう御指摘、御注意でございまして、その点は十分反省をいたしてまいりたいと存じます。
○横山委員 その反省は事実行為をもってお示し願うことを期待してやみません。 第二番目に、所信表明を拝見をいたしまして、あなたお気づきかどうか知りませんが、この表明の文章の大半が、懸案のことを並べたにすぎないという感じがするわけであります。たとえば、例を申しましょうか。刑法の全面改正が出ています。これはもうずっと数年前からの問題である。少年法の改正が提起されておる。これもまた言われて古い問題であります。犯罪被害補償制度、われわれの要求でありますが、一向緒についておらない問題であります。監獄法の改正、これまた言われて長年たつ問題であります。それから保護司、更生保護会等の問題、これも更生保護基本法の物の考えが始まってより長年にわたる問題であります。それから最後に出入国管理令の問題、私ども反対もある、反対もあるが、これも数国会を経て、いまなお問題として残っておる問題であります。あなたの所信表明の大半が従来の懸案の問題を羅列したにすぎない。失礼な話でありますが、何らの新鮮味がないと私は思う。あなたの任期中にいま申し上げたこれらの懸案の問題が相当の前進をするという決意と用意があってこれをおっしゃっておるのであるか、それとも、懸案の問題だから一応羅列していく、こういうつもりでかくも多数の懸案の問題をお出しになっておるのであるか、どちらでございますか。
○福田(一)国務大臣 従来法務省関係において皆様方が御指摘をされ、また法務省としても重要であると思う問題点につきまして、私の所信を申し述べておるのでございまして、もちろん所信を申し述べます以上は、できる限りこれが実現に努力をすることは当然でございます。
○横山委員 お言葉ですが、意味がよく私にはわからないのであります。まあ懸案の問題だから一生懸命やるから一応ここへ書いておいたというふうにお話しのようでありますが、それにしても、法務大臣としてこれから長らくおやりになるかどうかわかりませんけれども、少なくとも一、二、三、四、五、六つ私はあなたの所信表明から指摘しました。いま私が長年の経験から言いましても、この六つの問題を一年や二年で国会に提案されるかどうかすら疑いを持つ。いわんや、国会へ提案されても、率直に言いまして、それが一国会で成立するかどうかも疑いを持つ。そのくらいの懸案の問題であります。したがいまして、そういう問題をこの所信表明の大半を費やして羅列をされたという意味が私にはよくわからないのであります。それとも、法務大臣として、よし、おれの在任中にこれらの諸懸案を解決をしてみせるというお気持ちがあってならば恕すべき点があると思うのでありますが、そういう意味が特にあるのですか。 それはお答えを後でひとつ願うとして、私はもう一つ言いたいのでありますが、法務省というのは非常に腰の重いところであります。法制審議会を通す、あるいはまたいろいろな方面でアンケートをとって意見を聞く。経済官庁と違いまして、非常に腰の重いところであります。腰の重いということは、経済法令と違いまして、この種の問題については慎重を期すということは結構なことだと思う。結構なことではあるけれども、商法の改正がようやく昨年実現したわけでありますが、それなるがゆえに社会の非常な発展、変化に即応し切れない、こういうことが常に考えられる問題であります。だから、今度、刑法の改正で、一部草案から抜いて贈収賄罪を取り上げる、内容のいかんを問わず。つまり、刑法の全面改正を待てないから一部取り上げて緊急に措置をするという感覚、その点については私は了としています、内容は別ですけれども。その意味で、私がいま六つの懸案を取り上げましたのは、これらの全面的な実現を待っておったのでは、とても移り変わる社会情勢に即応できませんよということです。むしろ私は、この所信表明の中で、これらの指摘をいたしました長年の懸案の問題を、それはそうであるけれども、懸案であるけれども、やるべきこと、やらなければならぬことは抜いてでも重要な点を重点的に実現をする、私はむしろあなたがそうおっしゃるかと思っておったのですが、それらしいものは片りんも出てきません。そのことを私は指摘したいのでありますが、どうお考えでございますか。
○福田(一)国務大臣 ただいま横山さんもお話しになったように、いま懸案になっている問題を申し上げたのは、私は、積極性がないという意味よりは、やはりそれぞれの問題についてはいろいろの経緯もあり、また研究すべき問題もあると思います。十分皆さん方の御意見も聞いて処置をいたしてまいりたいと考えておるのでございまして、軽々にと言うと言葉が過ぎるかもしれませんが、すぐに問題をこう処理するとかああ処理するとかいうようなことを言うことは、私の態度としてはいささか軽率ではないか。法務大臣として就任をいたしましてまだそう日もたっておりません。非常に博識な、またこの法務委員会においても重鎮として仕事をしておいでになるあなたのようには十分な認識がまだないこともまた事実でございます。その認識もないままに、軽々しくと言っては恐縮でございますが、あわてて、この問題はこう処理します、この問題はどうしますということを言うことは、いささか軽率のそしりを免れないのではないか。したがって、こういう問題がございますが、こういう問題については今後一生懸命取り組んで、その実現あるいは改善に努力をいたします、こういう意味で問題を申し上げたわけでございまして、この点はひとつ御理解を賜りたいと存じます。
○横山委員 ぜひひとつ、私がきょう申し上げました点を御記憶を願いたい。つまり、この所信表明は六項目にわたって懸案の問題を羅列したにすきない。それをあなたは在任中に全馬力をかけて推進をするというのであれば、それもよし。ところがなかなかそれができないとするならば、その全面改正を待つまでもなく、当面なし得ることについて重点的にひとつ鋭意あなたの精力を注ぐ。そのどちらを選ばれるか、また両方を選ばれるかは別として、所信表明でおっしゃったことについて注文をつけておきます。これが第二番目でございます。 次に、訟務行政についてお触れになりました。この点が裁判と関係がございますので、両者に伺いたいと思います。 「国の利害に関係のある争訟事件は、近年、社会情勢の変化に伴い、依然として増加の傾向を示すとともに、その内容もますます複雑困難の度を加えておりますので」そこで昨年「官房訟務部を廃止して訟務局を設置」したとある。この訟務局の状況を聞いてみますと、お話によれば八五%は国が勝って、一部勝ち負けのつかないのが八%、国の負けたのが七%の傾向である、こういうお話であります。詳細の数字は聞いておりませんが、そういうことであります。 そこで一体法務大臣、訟務局を設置いたした場合に、内閣委員会で議論になったわけでありますが、私は局長にも申し上げたのですが、この際あなたに、訟務局の機能並びに法務大臣としての心構え、そういうものについて聞いておきたいと思うのであります。 国民が国を相手に訴えたことについて、訟務局及び法務大臣として、国を代表して争うわけでありますが、その国というのは一体何か。つまり権力としての国であるか、多数の国民を代表する国であるかということであります。つまり私の言いたいのは、国を代表して訟務局なり法務大臣が国民を相手に争って、勝てばいいというものじゃないでしょうと言いたい。勝てばいい、国民が自分を相手にしてきた、だから仕事上訟務局、法務大臣は、総力を挙げて国を守って、国民の訴えを粉砕して、勝てばそれで任務が済んだというふうにお考えであろうか。また必然的にそうなる傾向があると思うがどうかという点なんであります。その点はどうでしょう。私も弁護士出身でありませんので、常識的に物を言う。あなたも良識豊かな政治家としてお答えを願いたい。
○福田(一)国務大臣 ただいまの問題は、もうごもっともな御指摘でありまして、国が訴訟の被告というか、そういう立場に立って訟務局が仕事をいたしておるのでありますが、しかし訟務局の立場として、また法務大臣として申し上げますならば、法律に基づいて、しかも社会情勢その他も十分認識した上で、正しい主張をいたしていくのが訟務局の立場であると思うのでありまして、勝つことが目的でやるということでは、私は十分にその機能を果たし得ない、いわゆる権力の乱用につながるおそれがあると思っておるのであります。
○横山委員 ところが、法務大臣を相手に争われる場合もあるけれども、所管の厚生大臣あるいは文部大臣というしかるべきところが訴訟の実質的当事者になる、そこを法務省が国を代表して被告になって争う、そういう場合に、法務省として、これは勝ち目がないから和解しろとか、おりよとか、あるいは国が一審判決で負けた場合に上告を勧めるとか、そういう場合がよくあるわけですね。勝たなければならぬ、国が負けてみっともないということですね。ですから、私の言いたいのは、いろいろなケースがあるのですが、国を相手にして訴えられた場合に、それは国が間違っている、文部省間違っている、厚生省間違っているという勧告をすることがあるのか。上告はやめよと言う場合があるのか。それから、最高裁で敗訴になった場合に、敗訴になって行政の改善をする責任というものは一体だれが持つのか、私は法務大臣ではないかと思うのであります。法務大臣が国を代表して争って敗訴した、そういう場合に、文部行政にあるいはほかの行政大臣に対して、これはあなたの方を改善しなければならぬと言うて、あなたが閣僚の中の責任者としてそれを強く勧告するということは当然あなたの責任ではないかと思うのですが、いかがですか。
○福田(一)国務大臣 御指摘のとおり、先ほども申し上げましたが、われわれが被告の立場に立って、国の代弁者として訟務行政をやることは、決して勝つことが目的であってはならないのでありまして、やはり良識の範囲において主張すべきところはこれを強く主張するということも必要でございましょう。しかし、その結果において、裁判が一審において国側が敗訴する、二審あるいは最高裁で敗訴するというような場合がありますれば、これは当然いま御指摘になったように、文部関係のことであれば文部大臣に対して、また厚生関係であれば厚生大臣に対して、各省に対して、各省大臣に対して、その判決の趣旨を尊重して行政に十分反映するように措置をとってもらわねばならないということを申し述べることは法務大臣の義務であると考えております。
○横山委員 それではひとつあなたから事務当局に指示して、私が報告を受けましたのは国が敗訴をしたのは七%だそうでありますが、数としては少ないが、国が敗訴した問題、それに対して行政がどういうように改善されたかという結果、それを一遍当委員会に資料として御提出を願いたいと思いますが、よろしゅうございますか。
○貞家政府委員 例はたくさんございますので、網羅的にということはむずかしいかと思いますが、御希望に沿えるようにいたしたいと思います。
○横山委員 民事事件ばかりでなくて、刑事事件があるわけですね。いまはあなたが自分の所管外の各省の問題について問題を提起いたしました。今度はあなたの所管の問題であります。ずばり言えば刑法二百条の問題であります。最高裁は、尊属殺について違憲である、こういう判決をいたしました。この点について直ちに法務省は、当時三局長の連名で、違憲判決を受けて、刑法二百条を実質的に不適用にする、こういう趣旨の、そういう言い方が適当であるかどうかはわかりませんが、起訴理由その他について変更をすべき通達を出しました。恐らく最高検もおやりになったと聞いておるわけであります。したがって、刑法二百条は今日実際上空文化しておるわけであります。私が確かめましたところ、あれ以後従前の刑法二百条の解釈に基づく起訴は検察陣はしていないであろうし、それから裁判所はまた最高裁の判決を受けてその判決の趣旨に基づいた刑法二百条の運用をしておるだろうと、これは推測をされておるわけであります。細かいことはまたいずれ改めてそれぞれの所管に聞きますけれども、私の推測は多分間違いないだろうと思います。そこで、法務省は田中法務大臣の際に、省議をもって刑法二百条及び傷害致死等を改正する決心をされ、本委員会においても私どもの質問に対してその趣旨を言われたと記憶しております。ところが、自由民主党の内部で年来にかけてこの話がまとまりません。この間も理事会で苦情を言ったわけでありますけれども、まとまりません。法務大臣みずからが先ほどの御答弁をまず第一に実践をされるのが、刑法三百条に関する違憲判決、そのことでありますが、法務大臣のお考えを伺いたいと思います。
○福田(一)国務大臣 尊属殺の問題につきましては、御指摘のような経緯がございまして、法務省としてはこれを実現すべく改正を考えておることはもう御承知のとおりでございますが、しかし議院内閣制ということでございますからして、やはり与党の意見も十分尊重をし、あるいは聞く必要がございます。それがまた議院を重んずる、立法府を重んずるゆえんの一つにもなるかと思うのでありますが、そういう意味合いで、与党との間に話を詰めて実現するよう努力はいたしておるのでございまして、長く努力はいたしておるのでありますが、なお今日まで十分な理解を得ることができないということであります。したがいまして、その改正案の提案がおくれておるということはまことに遺憾でありますけれども、私としてはできるだけこれを提案するように、与党内の空気を取りまとめるよう努力をいたしたいと考えておるところであります。
○横山委員 端的に伺いますが、あなた自身はどうなんですか。あの当時の田中法務大臣の意見は、きわめて明白に最高裁の判決を尊重し、そして二百条を初め関係条文の改正を図る、こういう所信でございます。あなた自身は法務省が一たん決心したその改正の趣旨に賛成でございますか、どうなんですか。
○福田(一)国務大臣 私がこの席でこの態度を明らかにすることは、かえって与党の意見を取りまとめる意味において——いまあなたがおっしゃるのはこの問題についての態度をどうするかということでありますから、もうすでに法務省はそういう態度を決めております。その趣旨に沿って協力を求めるようにいたしておりますというのでありますから、もうすでにお答えをしておったと私は理解をしておるので、重ねてはっきり言うことによって、問題を前進させないようにすることは意味がないんじゃないかというか、そういう意味合いにおいて私はお答えをしたつもりであります。
○横山委員 自民党の同僚委員、よく御記憶をお願いしたいと思う。ついては、今次刑法改正が提案をされる。ここ数日来自由民主党内部でずいぶん議論が行われておるそうでございまして、賄賂罪の公民権停止をも含めて刑法一部改正の自由民主党の内部の調整がついたかに書かれております。しかし、このロッキードの問題の防止の措置としては、野党側としては、きわめて不十分である、賄賂罪の公民権停止の問題についてもまだまだ十分ではない。執行猶予がついたときでもと言うのですけれども、裁判の判決が最高裁まで争えば、田中角榮に至っては私は十年戦争だろうと思うのですね。その間は何ともならぬということにもなりましょうし、そう考えますと、この内容についてもずいぶん疑義がございますし、私どもとしてはさらにつけ加えたいいろいろな問題がたくさんございますし、それから刑法の部門とかあるいは公職選挙法の部門だけではなくて、もっと広範な措置が必要だ、こう思っているわけであります。 しかし、それはそれといたしましても、刑法の改正を提案するならば、当然のことのように刑法二百条を初め関連法規の改正が一緒について出るべきである。したがって、あなたが法務省の前に決まった趣旨に賛成であり、与党と早く煮詰めたいとおっしゃるならば、時間を急いで、刑法一部改正の中で、ロッキードの防止の問題とともに、尊属殺の問題についても同時提案をなさるべきだと思うのですがいかがですか。なぜこんなに言うかといいますと、いま言いましたように、刑法二百条は空文化されているのですよ。あっても守られていないのですよ。最高裁が判決をした。しかし行政当局は刑法二百条も普通のとおりにやっておるというならばまだしものことだ、刑法二百条は実現されていないのです。空文化されておるのですよ。三局長の通達はいまでも生きているんでしょう。大臣は御存じないかもしれませんが、三局長の通達はいまでも生きておる。その通達によって起訴もされており、判決もその後されておる、私はそう信じておるのですが、間違っているなら言ってください。そうだといたしますならば、まさに刑法二百条はまるっきり空文化されておるのですよ。それをいつまでほかっていくのですか。こんなおかしなことはないと私は思うのであります。どうですか。
○福田(一)国務大臣 私は、裁判の場において最高裁が決められた尊属殺に対する方針は一応そのまま適用されておるというか、その精神によって運用されておるというか、裁判が行われておると思っております。それはあなたの御指摘のとおりだと思っております。そうではございますが、それならばすぐにやったらいいではないかというお話でありますが、一方におきまして、尊属殺というものは一般の殺人の場合よりは重く刑を科すべきである。あるいはこの尊属殺の問題が起きてきたのは、刑が確定しておるというか、無期か、何といいますか、非常に限定された罪になっておるというところに問題があるのである。だから、この点は直さなければならないけれども、しかし、死刑とか無期とかというものでなくて、ある程度の刑を科するということにしてはどうかという意見もございまして、それらの問題がまだ煮詰まっておらないというのが現実の姿であります。法務大臣としては、法務省が決めた方針でありますから、これを変更するという意味で申し上げておるのではございませんけれども、そういう意見が与党内に相当強い。強い意見があるということでありますので、何とか話を煮詰めて、法務省の方向に持っていけないものであろうかという意味で努力をいたしておる、こういうことを申し上げたわけであります。
○横山委員 そこで、私の注文の刑法の一部改正を国会に上程される場合に同時提案できるように、その中に含まれるように、速やかに与党内部を煮詰めて、場合によれば見切り発車をして提案をしてもらいたい。本委員会に提案されれば与野党の間で話し合いが行われる。そして、与党の話も新聞を通じて聞くだけでございますから、ここで与党の皆さんの中に異論があるならば、堂々と尊属殺のあるべき姿、刑法のあるべき姿について公開して議論ができる。だから、与党の話がどうしても煮詰まらないというならば、努力をしてなおかつ煮詰まらないとするならば、見切り発車をして、法務省の意見どおり刑法の一部改正の中に入れて出してもらいたい。あとは国会の審議に任してもらいたい、そう言っておるのですが、いかがですか。
○福田(一)国務大臣 先ほどもちょっと申し上げたところでありますが、議院内閣制をとっておりまする関係上、やはり与党の意見というものをわれわれとしては十分尊重をして処置をする必要があると思っておるのでございまして、この点は御理解を賜りたいと思います。
○横山委員 そういうことになると、先ほど私がずっと円陣を張って詰めてきた意味が何もなくなってしまうんですよ。国が敗訴した場合、判決で行政の改善が示唆された場合、すべてこれ与党の意見を聞かなければできませんよという防護壁をそこにつくってしまわれるかっこうになるわけです。私があなたに大原則としてお願いしたことは、法務省はただ勝てばいいということではないはずだ。負けること、上告をやめさせること、そしてまた敗訴した場合に、法務大臣として行政官庁に対して改善を勧告すること等を大原則としてお願いをして、あなたはことごとく了承をされた。ところが、そのあなたの所管の問題になったら、与党の議論があることに籍口して私の言うことを聞いてくれぬ。私が言っているのも、煮詰めなさい、努力をしなさい。けれども、もうあれから何年たつか、いいかげんにしてもらわなければいかぬ。だから、煮詰めて、どうしてもいけなければ見切り発車を許してもらいなさい。与党のフリーハンドは認めましょう。そしてここで大っぴらに議論をしましょう。あとは国会に任せなさい。法務省が、田中法務大臣以来この尊属殺についての意思統一がされておることは与党で知らない者はない、国民で知らない者はない。だからそれはそれでいいではないか、こう言っているのですが、お聞き届けにならぬですか。
○福田(一)国務大臣 お気持ちは十分にわかりますが、私といたしましては、やはり与党の意見も一応調整した上で出すようにいたしたいと思っております。
○横山委員 初めも悪いがまん中も悪いね、これはまあしかし、そこでお聞きの羽田野さん、あなたようく聞いておってちょうだいよ。だから、あなたにも言いたいけれども、私が言っている意見をあなたも法務部会でひとつ御披露くださって、そして法務大臣にフリーハンドを認めるようにひとつ努力を願いたい。 委員長にもお願いしたいのであります。 委員長、あなたも私の意見を十分お聞きくださったのでありますが、委員長として、国会の権威もかけて、これを放てきすることは許されない問題で、刑法二百条は空文化されておる。これをどうするかということは、いつまでも放置していい問題ではないと思うのでありますが、羽田野さんからはお答えができないでしょうから、委員長から所信を承りたい。
○上村委員長 いま横山委員から、いろいろと御質疑の過程で御意見が述べられております。私も他のいろいろな会合の場でこの重要性はよく承知をいたしております。いずれ理事会その他で協議をしながら進めていきたいと思います。
○横山委員 その次に、所信表明の中で人権擁護についてお触れになりました。この人権擁護のくだりは、率直に言うと何にも中身のない空文だと私は思います。特に法務大臣から、このくだりについてここに力点があるというお話があったら、具体的な問題があったらお伺いしたいのでありますが、非常に作文的なものであります。 この間も人権擁護局長にいろいろとお話を伺いました。私はあえて言ったわけであります。啓発に始まり啓発に終わる、いいようではありますが、いまの法務省の人権擁護の方針は何ら積極性がないように思いました。訴えがなければそれを取り上げない。法務省が人権について積極的に乗り出すことはまずないということであります。これではまことに遺憾千万と言わなければなりません。国際人権規約は、昨年三月二十三日に発効いたしましてちょうど一年になります。また人権擁護委員法ができてから来年は大体三十年になります。年を経るに従って、法務省の人権擁護に関する姿勢は旧套を墨守し、日々消極的になっているということを私は痛嘆いたしておるわけであります。日本は、発効しておるのではありますが、今日まで国際人権規約を批准しておりません。そして、国連創立以来人権問題に関する条約は十八も採択しておりますが、日本が締結したのは、人身売買売春搾取禁止条約、婦人の参政権に関する条約の二つだけであります。一体政府の中で、人権を常に盾にとり、人権について国政の中で反映をせしむるべき責任はだれでありましょう、法務大臣だと私は思いますが、違いますか。そうでしょう。法務省は人権擁護に関してかくも消極的、他省に対してその批准なり実行について促したということを聞いたことがありません。 かかるときに、カーター大統領が人権の問題について、アメリカの外交政策というよりもカーター政権の基本政策として打ち出しました。まことに鮮やかなものがある。もちろんアメリカ自身に、それじゃ黒人問題を初めとして人権が本当に尊重されているのかという問題が残ってはいます。残ってはいますけれども、新大統領が人権外交を自分の基本政策として打ち出した高い理想、及びそれを単なる言葉でなくして次から次へと行おうとしていることは、まことに見上げるものがあると思うのであります。 それを受けて、同じ福田でも総理大臣の方の福田さんは、何を思いけん、適用で立場が違う、大統領の言っていることは、日本は別の角度で考えると、きわめて冷淡な態度を示しました。まことに遺憾千万と言わなければなりません。ここで、同じ福田でもおれは違うぞ、おれは人権擁護の責任者だという立場をあなたは堅持なさるべきときである。その発言の機会をあなたに差し上げようと思うのですが、いかがですか。
○福田(一)国務大臣 大変御配慮をいただいて恐縮に存ずるのでございますが、いまの日本の立場としては、福田総理の言うておる考え方、あのくらいのところがまずまずいいところではないかと私は思っております。これ以上申し上げるとかえってあれになりますが、私たちは、自分はどの程度の力があるか、またどの程度の影響力を持っておるかということも十分考えて発言をいたしませんと、外交上非常に大きないろいろの問題が起きるだろうと思うのであります。そういう意味合いを含めて、人権尊重は結構、それはやらねばいけないということではありますけれども、アメリカのカーターさんのように思い切って言えないところにわれわれの苦心があろうかと思っております。
○横山委員 そのお答えはよくわかりませんね。カーター大統領のアメリカの立場と日本の立場と一体どこが違うのでしょうか。かつて金大中事件が起こりました際に、当時の法務大臣は田中さんでしたか、田中さんは断固として、検察陣に対して金大中の捜査を督励し、私はこれについていささかもひるまないと発言をされた。それから、当時の副総理の三木さんも閣議の中で、これは人権問題として見逃しのできない問題だと発言をされて、国民の中で高く評価をされたわけであります。その後、政治的な妥協があった。しかし、その妥協は、金大中氏の身の安全、出国の自由を含めて、日本政府が言質をとった、こういうことで了解が国民の中にされたわけであります。とったと信ぜられるから、それで政治的な妥協が行われたと国民は考えておったわけであります。ところが、その信ずべき理由は何ら根拠がなかった。金大中氏は依然として韓国に軟禁された状況である。しかも、次から次へと他の法律によって追起訴されておる状況である。日本におった学生が韓国へ行ったら、反共法で死刑を宣告される。なるほど、韓国籍の学生ではあろうけれども、長年日本におった人間である。アメリカのカーター大統領は、韓国から米軍を撤退するという思い切った政策に出ておる。なおかつ、韓国の人権抑圧の傾向について、カーター大統領が外務大臣と直接さしで警告を発しておる。これほどの思い切った施策について、どっちへもつかぬような態度で、日本は立場が違うと言う。一体何が違うのですか。どういうところがアメリカと日本と対韓政策について違うのでありますか。アメリカと韓国の言うことをいつも足して二で割るということなのでしょうか。どっちの顔もうかがうということなのでありましょうか。その間、日本には人権問題の配慮の余地はないとおっしゃるのでありましょうか。韓国ばかりじゃありません。日本の国内においても、韓国のKCIAが全国的にあちらこちらばっこしておるということは、すでに金大中事件で明らかなとおりであります。そういう点で、七十万の朝鮮人諸君が日本におる、この日本政府と、そういう条件がないアメリカとの違いというものは、消極的に解するべきではない問題で、積極的に解する問題だ。人権の問題は、単に日本国内の、日本人だけの問題ではなくて、日本国内におりますあらゆる外国人をも含めて尊重されなければならぬことは当然だと思いますが、恐らくあなたもその点については同意見だと思う。そうだとしたら、われわれは立場が違う、日本の立場で適用を考える、その日本の立場というのは一体何ですか。足して二で割るのですか。人権の存在の余地がないというのですか。その点を明らかにしてもらいたい。あなたは法務大臣で人権擁護の責任者ですよ。
○福田(一)国務大臣 御案内のように、アメリカの大統領が言っておられるのも主として金大中事件を中心にしての警告を発しておられるのだと思いますが、日本におきましては、当時田中法務大臣が主張されて以来、私も国家公安委員長をいたしておりましたが、警察当局としては真剣に犯人の捜査に当たっておるわけであります。私はこれはゆるがせにすべきでないということを当時申しておったのでありまして、かなりの程度まで警察当局は調べをいたしておるのでありますけれども、まだ最終的な結論が出ておらないというか、まだはっきりしない部分、解明されない部分が相当多いのでございます。そういう段階でございまして、日本においては、人権問題というだけではございません。これがもし事実でありとすれば、これはわれわれとして国権を侵されたという意味の重大な問題が、人権問題以上の問題があるわけであります。したがいまして、犯罪捜査がいま進められておる段階においては、人権問題、韓国を中心にしていった場合の人権問題について、カーターさんと同じような立場をとることはむずかしいのではないか。私は、実はまだ総理にそのことで意見を聞いておりませんから、法務大臣は総理の一応の——一応というか、総理の管轄下にあるわけでありますから、監督を受けておるのですから、総理と御協議を申し上げた上でなければ、ただいまのあなたの御質問にお答えすることはできないと思いますけれども、これは私の想像でございますが、そういう点も含めて総理は発言をしておるのではないかということを申し上げておきたいと思うのであります。
○横山委員 言葉の端をとるようですが、はしなくもあなたがちょっと言われたことが気になります。あなたはいま、検察当局を督励して捜査をさせる、そのことが人権問題以上の問題だとおっしゃいましたね。言葉の端をとるようですが、私とは全く見解を異にしております。刑事事件とかそういう問題以上の問題が人権の問題だと、私は逆に考えているわけです。あなたは、検察陣を指揮する人であると同時に、私がくどく言っているように、人権問題の責任者であることを任じてもらわなければ困ると言っているのですよ。人権問題というのは、法に触れる触れないの以前の問題である。私があなたにくどく注意を喚起しているのは、いまの法務省の人権擁護局を中心にする仕事のあり方というものが年々歳々低下している、啓発に始まり啓発に終わるという仕事の仕方であって、積極性がない。私は、カーター大統領がやったことをすべて何から何まで、アメリカの国内事情も含めて、いいと言っているわけではない。しかし、日本において人権問題を一番注意をしてもらわなければならぬのは法務大臣なんですよ。それをあなたはお仕事の上で厳に生かしてくださいよと言っているわけです。ロッキードの今度の問題で、世間の皆さんは、前の稻葉さんと違って、どちらかと言えば福田さんはロッキード隠しに役割りをまた一枚果たす人ではないかという疑惑を持っているのですよ、正直に言いますがね。あのことは、あなたの人格なり、あなたの法務大臣としての姿勢について、私は大変マイナスであったと思います。それはあなたの所信もあるでしょう。あるでしょうけれども、私もロッキード委員会のあのときに居合わせてみて、まずいことをおっしゃった、もしもそういう現実的議論の必要性があるときであるならば、その現実はいかに処理すべきであるかという時点においておっしゃるならばまだしものことだ。それを予防線のように、聞きもしないのにあなたはおっしゃっている。そういうことで、野党はもちろんでありますが、国民がすべてと言っては語弊がありますけれども、あなたの法務大臣としての言動にいささかの疑いを持ったわけです。私は法務委員として、それが杞憂に終わることを望みたい者の一人です。だから、その意味でも、カーター大統領の発言と福田総理大臣の発言と——あなたはなるほど総理大臣の指揮下といいますか、閣僚の一人ではあろうけれども、事人権問題については、なぜおれに意見を聞かないのか、こういう立場をこれから堅持してもらいたいと思うのであります。事人権問題についてはおれがまず言う、こういう立場を常に保ってもらいたいと思うのであります。各省のすべての人権問題あるいは条約の批准、議定書の批准、そういう問題については改めてあなたが見直してみて、事人権については法務大臣の発言を尊重してもらいたいという立場をとってもらいたいと私は言うのです。 だから、この抽象的な、日本の立場は違う、日本の立場で適用を考えるという、わけのわからないことであるならば、あなたが総理大臣に聞かなければわからぬようなことであるならば、総理大臣も幅がある答弁であるとするならば、人権擁護の責任者として、あなたが法務大臣としては具体的にこう考えるということがあるべきなのが当然ではないか。そう私は言っているのですよ。いかがですか。
○福田(一)国務大臣 私は、あなたの御忠言を十分に尊重いたしたいと思いますけれども、まあ総理の発言はプレスクラブにおいて質問に対して答えられたことでありまして、どういう発言があるかは恐らく予想もされておらなかったかと思うのでありますが、いずれにしても、総理としては何か考えがあられたというか、アメリカのカーター大統領と同じようなことを言うことは——私は先ほどあなたに申し上げた、事実上、いま警備局が中心になって捜査を続けております。捜査が続いて、もし不法に金大中を連れ出したということがはっきりいたしますと、これは日本の国内から自分らの国の人を日本の国権を侵して連れ出したという意味で、これは人権問題もさることながら、非常に大きな問題があると私は存じております。この両者を考えてみると、その点も一つ考えさせられるのではないか。もしもっとそんたくをすれば、日本と韓国との間は、地理的にも経済的にもまた政治的にも非常に密接な関係があるということもあるでしょう。何をどういう意味であれを言われたかしらぬが、もし私がプレスクラブでああいう質問を受けたら、同じような答弁をしただろうと私は思っておるのでございまして、その意味ではまことにあなたの御期待には沿えないかもしれませんが、そういう答弁が一応無難ではなかったかと私は思っておるわけであります。
○横山委員 人権について発言するときに、無難な発言というものはないのですよ、人権を尊重するというならば、一本くぎを刺すということなんですから。人権が抑圧されおる、日本人であれ他国民であれ救済をするという意味で人権問題があるわけです。人権問題について無難な発言ということはないのですよ。私はきょうあなたに予告もなしにこういう話をしておるのですから、あなたも心の準備が足らないかもしれぬ。しかし、福田総理大臣といたしましても、プレスクラブで質問を予知できなかったということはありません、そんなことは。これだけ連日大きなカーター大統領の人権問題が出ておるときに、総理大臣として、法務大臣として、その問題についてみずからの対処の心構えがないということはおかしいですよ。ですから、ひとつあなたにお願いをしておきたいのですが、総理と一遍話し合われるというわけであります。私の注文もおわかりだと思います。次回にひとつこの問題について、あなたの心の準備もしていただいて、日本政府として、カーター大統領に基づく人権問題について、私がきょうあなたに注文をした法務大臣の一般論としての人権問題について準備をしていただきまして、御答弁を改めていただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。
○福田(一)国務大臣 承知いたしました。
○横山委員 最高裁に聞いてほしいと思うのでありますが、交通事故の賠償訴訟の判決であります。ここに東海交通遺児を励ます会が四十八年、四十九年に調べたもの、その前にまた四十年と四十一年に調べたもの、それが整理をされております。その整理されましたものを概括的に申し上げますと、空判決——空判決というのは、判決で幾ら被害者に払えと言ったのが空になった、実行がされてないという空判決が、前回三七・五%から二一・二%とほぼ半分に減った。被害者の救済は一歩前進した。しかし、依然五人に一人が泣き寝入りをしている実情にある。空判決は、全くもらえなかった場合と一部しかもらえなかった場合があるが、全くもらえなかった理由は、加害者が行方不明二九・五%、加害者に支払い能力がない一八・二%、加害者の会社が倒産したが一一・四%。一部もらった場合は半分以下が八三・三%、こういう事情にあるわけであります。その人たちが、「訴訟を起してよかったか」という点について、「よかった」と答えた人が四十八、四十九年度で四九・三%、それは判決の場合です。和解の場合は五九・二、平均して五五・七。それから「今後の裁判への要望」として、「訴訟提起から判決までもっと早くしてほしい」というのが、四十八、四十九年度の統計では、判決をもらったものが四二%、和解が三八・九%、計四〇%。「公的機関で裁判によらないで判決できる方法があればよい」というのが、四十八、四十九年度で判決三二・五、和解三二・六、計二二・六。「弁護士費用を安くしてほしい」というのが判決一九・九、和解二一・五、計二〇・一、「その他」が判決五・五、和解七・〇、計六・四%。要するに、交通事故で被害を受けた人が、何とか生活維持のためにも損害賠償のためにも裁判というものを通じてやっておるのでありますが、この空判決が余りにも多過ぎる。「体験を通して裁判をどう思うか」というものに対して、圧倒的に多いのが「費用と日数がかかりすぎる」、また一番大きいのは「逸失利益や慰謝料の認め方が低くすぎ被害者は“ひかれ損”に終わる」というのが三〇%台であります。「いろいろ批判すればあるが現状ではまあまあだと思う」というのが九%台、「弁護士が不勉強だったり余り熱心にやってくれない」というのが六%台、「裁判官が交通のことをあまり知らない」というのが六・六%、「過失のとり方が大きすぎる」というのが六・五%等、裁判に対して数々の不満と苦情を訴えておるわけであります。 その点について、裁判所として、交通裁判ばかりではないわけでありますが、交通裁判のような問題についてもう少しこの訴えの裁判の促進、それから現実的に空判決に終わらないような方法、それは賠償金額を必ずしも下げろと言っているわけではないのですが、判決を出せばいいということではもちろんないのでありますけれども、この統計についてどうお考えでございますか。
○矢口最高裁判所長官代理者 交通裁判の実情につきまして、裁判結果の分析、それから交通裁判を受けた方々の裁判所に対する御希望、裁判に対する御希望等、いま詳細横山委員から御指摘がございました。御指摘のとおりの状況にあろうかと思います。 この空裁判ということでございますが、せっかく救済の裁判をいたしましても、加害者側に資力がないとか、あるいはそれが会社等であります場合に倒産をしたとかいうことによりましてその実効を上げ得ないということのありますことは、非常に残念なことでございます。ただ、いまも御指摘ございましたように、十年ほど前を見てみますと四〇%近いいわゆる空判決がございましたのが、最近では約半分の二〇%余りということになってまいっておりまして、その点は非常にありがたいことだというふうに考えておりますが、率直に申しますと、この点につきまして、私ども裁判所ではこれの実効を上げるようにするということにきわめて厚い壁があるわけでございまして、今後とも、やはり社会保障的な面と申しますか、相互扶助的な面ということで、任意保険等の限度額の拡大といったような面に頼らざるを得ない面がきわめて多いわけでございます。ただ、ただいまも御指摘ございましたように、判決で終わったものと和解で終わったものとを比べてみますと、和解で終わりましたものの方が、いわゆる権利の実現と申しますか救済の実現ということではきわめて実効が上がっておるようでございますので、現在裁判所といたしましては、全国の裁判官に、交通事件というものの特殊性、技術的な面も含めまして、これに迅速に対処できるというような意味において、一般的な研究といったようなことを進めてまいります傍ら、大都市の裁判所には交通特殊部を設けまして、事件を受け付けた場合には、これを一刻も早く和解、話し合いの方向で解決させるということで努力をいたしておるわけでございます。和解というのは、決して足して二で割るという意味でもございませんし、金額を少なくするという意味ではございませんが、加害者にもその趣旨を十分理解させて、一刻も早い実効のある救済という意味において、和解の方向に持っていくということに努力をいたしておる、これが現状でございます。
○横山委員 裁判所において、この空判決の状況を一回裁判所側で、できるには限界があるとは思いますけれども、いまお話しのように裁判の促進だとかあるいは和解だとかいろいろあるから、それは裁判所側においても、この空判決問題についての実情の調査、それから改善できる方法等を一遍ひとつ十分検討してほしいと思うのであります。ところが裁判所側ではどうしても限界がある場合がございます。 そこで、最初のお話にもなるのですが、判決があってもそれが履行がされないという問題の裁判所側の限界については、行政側でひとつ念査をすることができないかということなんであります。そのためにはいろいろな方法があると思います。たとえば、この問題提起をした人は、裁判所が和解の履行を加害者に勧告できる制度を採用したり、あるいは賠償公団による立てかえ払いをしたり、不履行者の労役による支払い制度を提案したり、被害者を見捨てる悪質加害者に対しては免許更新をストップしたり、企業には運送免許を取り消すなどの厳しい制裁を訴えておる。また任意保険の強制加入か保険会社の企業努力による保険料の値下げ等が必要視されると言われています。私は、これもまた法務省として裁判の判決が空に終わっておるという状況について、どこのセクションが適当であるかわかりませんけれども、裁判の判決が空に終わっておる、それをどうするかという点について、各所管庁、運輸省なりあるいは関係各省に対して注意をし、勧告し、改善をさせる必要性が法務省にも存在するんではないか、こう思いますが、大臣いかがですか。
○福田(一)国務大臣 ただいまの御質問につきましては、ごもっともな御意見だと思いますが、詳細については民事局長からお答えさせます。
○香川政府委員 いわゆる空判決の問題でございますが、これは空判決に終わる事例というのが先ほど最高裁から御答弁のように年々少なくなってきておりますが、その原因は、一つは判決の場合には一時に多額の損害賠償金の支払いが命ぜられる。御承知のとおり、保険によってカバーされるのが死亡の場合で千五百万になっておるわけでありますが、三千万円というふうな提害賠償あるいは多きに至っては五千万円というふうな判決の出ることがございますが、加害者の方も一時的にさような損害賠償額を支払う能力がないというふうなこと、あるいは強制執行いたします場合でもそれに見合う財産がないというふうなことで、さようなことが大きな原因でございまして、したがって、最近の傾向といたしまして、人身事故の交通事件が御案内のとおり昭和四十六年と五十年を対比いたしますと三割ぐらい減っておりますけれども、逆に、訴訟提起の件数よりも調停、和解に持ち込む件数が年々増加しておりますのも、つまり、判決で一時金を支払うということでは加害者の方にその能力がない。したがって、長年にわたっての割賦弁済と申しますか、さような方法の方が実現の可能性が強いということで、これは一つの知恵ということになるのかもしれませんが、調停に持ち込まれて、その結果がうまくいっているということに相なっておると思うのであります。で、各省いろいろ関係する問題があると思いますけれども、一つは、任意保険でいわゆる強制保険をカバーすることをもう少し行政指導的にふやしていくというふうなことが一番効果があると思うのでありますけれども、これにもやはり限界があるというふうなことで、率直に申し上げまして、決め手になる改善策というのは私ども知恵がなかなかそこまで行かないのでございます。 で、この問題は、たしか昭和四十三年のいわゆる交通事故の業務上過失致死傷の刑法改正の際に当委員会においての附帯決議もございまして、空判決の問題を解決できるように検討しろということが言われておるわけでございますが、先ほど申しましたように、今日までなかなか決め手になる手当てが講ぜられていないのはまことに申しわけないのでありますけれども、一つは、当面して何がしの役に立つということとして、いままで実行し、あるいはいま考えておりますのは、先ほど申しましたように調停事件で解決するというのが、加害者の資力との調整の問題で役に立つことでございますので、調停法の改正によりまして、被害者の住所地で調停ができるというわずかながらの便宜措置も講じておりますし、先日法制審議会で決定いただきました強制執行法、競売法の関係の改正法案要綱でも、一つは、強制執行いたしましても、迅速にしかも高くといいますか、なかなか時価で物を売りにくいといううなことがございますので、この面の改善を図ることによって、これは交通事件ばかりではございませんけれども、執行を容易にして債権者の満足のいく範囲を拡大しようというふうなことも考えておるわけでございます。それ以上にさらに改善する措置があるかどうか、今後鋭意検討させていただきたいと思いますけれども、ただいまのところは、さような程度でございまして、今後ひとつ十分努力してまいりたい、かように考えるわけであります。
○横山委員 いろいろ申し上げたいことがございますが、時間がございませんので、鋭意ひとつ国会の附帯決議を尊重して検討してもらいたい。 最高裁に伺いますが、金敬得君のことであります。すでに恐らくどの諸君も御存じだと思いますが、金敬得君は韓国籍のまま司法修習生として採用されるよう最高裁に要請をしています。最高裁は、従来、修習生になるならば帰化してもらいたいということを裁判官会議で決めて公告をしておるのでありますから、その分においては、金敬得君の要請は裁判官会議の決議の再検討を要請しておることになると思います。考えてみますに、日本において南北両朝鮮人の諸君がたしか七十万人に達しています。七十万人の朝鮮人諸君が今日日本の経済社会の中で、地域社会の中でそれぞれところを得て活動をしておる。もちろんそのかなりの部分が低所得階層にある。国籍の違いというものはさまざまな点で不便な点がある。そしてまた、それなるがゆえに争いが起こる、日本人との間に故障があり、あるいは朝鮮人同士の間に争いがある。そういうときに、韓国人である弁護士がおってほしいと思うのは、けだし国民的な感情から言っても当然ではないかと思われる。裁判官になる、検事になるというならばこれはまだ検討をしなければならない多々の問題があるけれども、弁護士になりたいということについて、どうしてもこれを否定しなければならない積極的な理由が一体あるだろうかということを私は考えるわけであります。もちろん、日本人が他国に行って弁護士なりあるいは公認会計士なり税理士なり、そういうことをやる事例はそんなにはないと思うのでありますが、それでもやはり例は存在する。この際、裁判官会議を開いていただいて、弁護士になるというのであるならば、金敬得君の司法修習生の受験を認むべきではないか、そう考えますが、いかがでございますか。
○勝見最高裁判所長官代理者 外国人の司法修習生採用につきまして、ただいま横山委員御指摘のとおり、公告の中で、日本の国籍を有しない者は選考をしないという趣旨の公告が出ております。問題は、まさに御指摘のとおり裁判官会議の決議をいただきまして公告しているものでございます。改めてこの公告の問題につきまして裁判官会議で御検討をいただくつもりでおります。現に一回は開いていただきまして、さらに資料等を集めまして、なるべく早期にこの問題についての結論を出していただきたいというふうに考えている次第でございます。
○横山委員 時間がございませんから、大変重要な問題をちょっと抽象的に聞くんですから、そのつもりでお答え願いたいのですが、きょうは弾劾裁判所が開かれて、鬼頭判事補が出席しておるかどうか知りませんけれども、とにかく鬼頭判事補の問題はまさに一世を揺るがした大問題であり、裁判官にもそういう人がおるのかということで、裁判官に対する認識が国民の中でかなり変わったと思われるわけであります。そういう点から、裁判官の日常生活、日常の諸問題について、国民はもとよりでございますけれども、マスコミが非常に追跡調査をするという時代に入りました。そこで新聞にも、勤務中のゴルフだとか、あるいは宅調制度だとか、あるいは鬼頭が外国旅行をするのに無届けで行っておったとか、そういうことがいままではまあまあと思われておったものが、改めて裁判官の執務のあり方というものについて社会の注目の眼が注がれるに至ったのであります。一体、鬼頭判事補という者が、この厳しい司法試験を受けて判事補になって十年、まあ裁判官としての仕事をしておるわけでありますが、そういう鬼頭判事補のような体質の者が一体裁判所の中で生まれていく体質というものがあるんだろうか、そういう者が途中で何かチェックが——まあチェックをしろと言うと少し問題があると思うのでありますが、そういう者がどうして出てくるのであろうか、また出てきた後についての裁判所側の反省というものが一体どうなっているのだろうかという点について、国民は多分に一つの疑問を投げかけておるわけであります。事は重要な質問でございまして簡単にはお答えができることと思いませんけれども、また後刻伺うこととしても、一応の御意見を伺っておきたいと思います。
○勝見最高裁判所長官代理者 御指摘のとおり、鬼頭判事補の問題につきましては、現在、弾劾裁判所で審理中でございます。私どもといたしましては、厳粛な気持ちでその結論を待っている次第でございます。 鬼頭判事補の行為につきましては、私どもといたしましては、いわば思いも及ばないと申しますか、そのような行為であったと思います。また職務外の行為であったわけでございますけれども、現職の裁判官がこのような行為をしたことによりまして、ただいま御指摘がありましたように、司法に対する国民一般の信頼というものを相当程度にいわば傷つけたものというふうに思います。この事態につきましては、私どもの事務総長が国会でも申し上げておりますとおり、事態を深刻に受けとめまして深く反省しているというところでございます。 なお、最高裁判所長官名で罷免の訴追請求をいたしておりますけれども、先ほど横山委員御指摘のとおり、裁判官の身分につきましては非常に厚い保障がございまして、私どもといたしましては最大限の重い措置であるということにつきまして御理解をいただきたいと存じます。 なお、裁判官の職務のありようにつきましては、私どもといたしましては、この問題は起きる前から問題として考えておったところでございまして、昨年の当初ころからやはり裁判官の執務の問題というものをもう少ししっかりしなければならないのではないかということで、高裁長官の事務打ち合わせあるいは高裁長官所長会同等におきましていろいろ御議論をいただきました。先ほどの御指摘のような事件もありまして、ことしの一月に高裁長官の事務打ち合わせの席上におきまして、裁判官の休暇等に関する問題について、お互いにもっとけじめをつけようではないかという申し合わせをしていただきました。このことを下級裁の所長にもお願いいたしまして、現在、全国の下級裁判所におきまして休暇等の取り扱いについてはとにかくはっきりけじめをつけて、休むときは休むという形をとりたいというふうに考えておる次第でございます。いずれにいたしましても、この事件を契機といたしまして、自粛自戒して今後かかることがないようにいたしたいというふうに考えている次第でございます。
○横山委員 同僚委員の御質問もございますし、後でお答え願う問題、また質問ができなかった問題はまた後刻お許しを願って質問を継続することにして、私のきょうの質問はこれで終わります。
○上村委員長 次に、日野市朗君。
○日野委員 私は、主として裁判所の方に、定員法の改正の問題についていろいろ伺ってまいりたいと思います。 毎年、定員法の改正案が提案されまして、その都度同じような質問をせざるを得ない。私も、今回の定員法の一部改正の法律案の関係資料をちょうだいいたしまして、またかという思いを抱きながら、非常に裁判所にとって好意的な質問をこれから行いたいと思います。私もずっと法律実務をやってまいりまして、いつも考えているのですが、これは裁判官は少ない、それに関連する裁判所は書記官、速記官、事務官、これも全面的に私は少ないという感覚をいまだにずっと持ち続けておりまして、この考え方が変わろうとはちょっと思えないのであります。私は弁護士をやっておりまして、民事事件なんかを担当いたします。きょうあたりに次回の期日の指定を受ける、それが証拠調べ期日で、大体尋問時間が四十分というようなことになりますと、では次回は九月何日なんという指定が裁判長の方からなされますと、傍聴席の方がざわざわとするのが非常に耳につきます。こういう状態を見ておりまして、私は、現在の裁判の進みぐあいというものは、決して現在の社会経済の進展状況、これと見合うものではないというふうに思わざるを得ないのであります。つまり、これからの日本の社会の中で、裁判に頼っていったのでは物事の解決にならないという風潮が日本の国民の中に出てくる、これを私は非常に憂慮せざるを得ないのであります。 それで、そういう私の基本的な考え方に立ちまして、今回の定員法の一部を改正する法律案を拝見いたしまして、裁判所はまたしてもこの程度の要求しか現実にしていない。その予算の要求をこの程度しかしていない。そして、人員の増加をこの程度しかしていない。またこうしかできなかったという背景について若干知りたいと思います。 そこで、恐らく八月ごろに予算の概算の要求というものを上げておられるのではないかと思うのですが、その際どの程度の人員の増を計画されたのか、そしてどの程度の予算の増を計画されたのか、これについて概略伺っておきたいと思います。
○矢口最高裁判所長官代理者 毎年予算の要求をいたしますに当たりましては、やはり私どもも一つの理想を持ちましてその理想をできるだけ早く実現していきたいという観点でやっておるわけでございます。ただ問題は、やはり現実、充員状況等の関係がございますので、それは余りにも遠い理想でございますと、どうしてもその実現のためにある程度の日時を要するということになるわけでございます。そこで御指摘の当初要求人員でございますが、当初本年度の増員の要求といたしましては、裁判官それからその他の職員をひっくるめまして百七十名の要求をいたしました。その内訳は、裁判官が三十三名でございまして、その他の職員、これは書記官、家裁調査官、事務官等でございますが百三十七名、合わせて百七十名の要求をいたしたわけでございます。しかし、最終的には先ほど御指摘のような裁判官十五名、事務官五名ということの増員に終わったというのが実情でございます。
○日野委員 裁判官の補充にいたしましても、また書記官の補充にいたしましても、また速記官の補充にいたしましても、これは一朝一夕にはできない。つまり、それぞれ研修の期間がありまして、すぐに増員しようと思ってもなかなかできないということは周知のことであります。それであればあるほど、なお将来の裁判所のあるべき姿ということを考えますと、本当に現在の当面する問題、これだけを糊塗するといいますか、当面どうしても足りない、これだけは補充しなければどうにもならないという数字だけではなしに、もっともっと強い態度で予算を要求し、より多くの人員を確保するように努力していかなければならないのではなかろうかというふうに思っているわけであります。その点についていかがでしょう。
○矢口最高裁判所長官代理者 決して安易に現実と妥協しようということを考えておるわけではございませんで、いま御指摘のように最大限度の要求をいたしておるつもりでございます。ただ、一例を申し上げてみますと、裁判官の場合でございますが、これは日野委員十分御承知のように、判事に相当数の欠員を抱えておりますが、在野法曹等の中から判事に任官していただくという方はほとんど皆無に近い状況でございます。長年の経験からいたしましても、いい在野法曹の方々にどんどん来ていただきたいという希望は強く持っておりますが、現実にはそういう事態には立ち至っていない。といたしますと、判事の給源というものを、非常に迂遠なことではございますが、判事補に求めざるを得ないということになります。判事補を増員いたしまして、それが現実の判事になりますには十年の日時を要するわけでございます。しかし、私どもとしては、そういう迂遠な方法ではありますけれども、事裁判官に関する限りはまず判事補の増員ということに重点を置いていかなければいけない。これがことし十五名の判事補の増員ということをお願いしておる理由でございます。十五人というのは確かにそう多い数字ではございませんが、これはここ数年来の判事補の任官者、これは八十五名、八十四名、七十九名というふうに過去三年間任官者があるわけでございまして、本年度も八十人近い任官希望者があるように聞いております。そういった人たちの現実の任官希望と欠員の状況といったものを勘案いたしまして、そういった任官希望者を全員採用するに足る数という意味でセットしてきたものでございます。実はこれ以上は仮に予算要求をいたしましても空に終わるわけでございまして、現在判事に相当数、百人近い欠員を抱えておる。ただそういった予算要求さえすればいい、予算上の増員さえすればいいということにはならないのではないかという観点から決められた数字でございます。 それから一般の職員でございますが、その中で一番裁判と直接の密接な関係で問題になりますのは書記官でございますが、これも現在の書記官の定員ということと裁判官の数、特に特例以上の裁判官、この特例以上と申しますのは御承知のように一人前に裁判のできる裁判官でございますが、そういった人たちとの関連で考えてまいりますと、大体一人に三人ぐらいの書記官の割合になっておるのでございます。それからまた書記官の立ち会い回数といったようなものを全国調べてみまして六、大体一週間に一・三前後の回数の立ち会いということになっておりまして、現状におきます限りにおきましては、書記官数としても一応満足すべきものではないかというふうに考えております。 日野委員正当に御指摘のように、一人の書記官を養成するにも実は相当の訓練が必要でございまして、そういった面で書記官の養成ということも計画的に逐次層を厚くしていく必要があるということでございます。現在、事務官の中には書記官資格を持っておる人が相当数ございますが、これも裁判所の特殊性からいたしまして、どうしてもそういう人を事務官陣営にも置いておかなければいけないということから来るものでございます。結局のところ、特殊な事件というものがございます。そういう事件に当てるということで相当数の事務官を実は本年度も増員をいたしたわけでございますが、あるいは御質問が後ほどあるかもしれませんけれども、政府一般の方針としての計画的な削減ということもございまして、差し引きいたしまして、実は一般職の事務官としては五名の増員にとどまった、こういうものでございます。 それで、私どもも、増員をすべきものであり、またする余力があるという時代を認識いたしますれば、決してわずかな数の増員で満足することはいたさないつもりでございますが、現段階におきましては、これをもって一応満足すべきものと考えた次第でございます。
○日野委員 私もなまじ内部のことを知っておるものですから、余り強いことも言えないのですが、いろいろ御質問申し上げたいと思います。 いま在野法曹の中からなかなか希望者が出てこないというお話もありました。また、私は、大学の先生方の中からこれは補充してもよろしいのではないかというふうにも考えるわけですが、現実にはこういう方々はなかなか裁判官におなりにならない。これは給与の面も一ころに比べればかなり改善されてきているとは思うのですが、裁判官という職務の特殊性、十分に公正に迅速に裁判ができるように裁判官一人一人がそういう状態になっていなければいけないという点から考えますと、給与とか、そのほか官舎の問題とか、場合によったら転勤の問題なんかも考えますと、そういうことに十分手当てがなされていない。特に、裁判官ということになりますと、公正ということから一般の人とのつき合いも思うようにいかないというところなんかもございます。そういう窮屈さなんかもございますが、そういった点が解決されないと、在野の方や大学の先生方は裁判官に任官されようという気持ちにはなかなかならないんじゃないかというふうに思うのです。そういう点を改善していこうというような方針を長期的に考えておられるかどうか、そこいらをひとつ伺いたいと思います。
○勝見最高裁判所長官代理者 先ほどからお話がありましたように、判事の給源ないしは判事補の給源というものはまさに限定されております。ただいま御指摘の在野法曹からの裁判官任官につきましては、数字を申し上げますと、五十一年度において弁護士から判事に採用された方が、それから判事補に採用された方が一人ございます。また五十二年度において、判事採用予定の方が一人おります。それから学者からの採用でございますが、四十四年度に三名、四十五年度に一名、五十年度に一名、まさにこのような一けたの数字でございます。私どもといたしましては、優秀な、すぐれた弁護士の方、学者の方が裁判官になっていただくことについてはまさに歓迎すべきことだというふうに考えておりますが、御指摘のとおり、いろいろそれぞれの個人的な御事情もおありでしょうし、それから任地の問題、それから弁護士さんの場合には特に収入の問題、執務環境等についての隘路が確かに数多くあるわけでございます。 しかしながら、一方任地の問題だけを仮に取り上げてみますと、現在全国に大小の裁判所、また相当ないわば僻地まで裁判所が置いてある。ここにおられる裁判官が十年も十五年もいていただくわけにいかない。当然そこに異動というものを考えなければならないわけです。現に、今年度の定期異動を計画させていただいておりますけれども、相当数の人が動かなければ人事の異動をやることができないということが他面にあるわけでございます。その辺につきましては、十分御理解をいただいた上で裁判官になっていただくほかはないというふうに考えております。 なお、収入、給与の面につきましては、先ほども御指摘がありましたが、公務員として裁判官の報酬を見た場合には、決して劣ってはいない。むしろ相当優遇されているというふうに言わざるを得ないと思います。しかし、一方弁護士さんの場合には、もっともっと多額の収入を得ておられる方があるということでございまして、その辺のところもなかなか実現がむずかしい。これを飛躍的に、現在の裁判官の報酬を仮に二倍とか二倍半とかということにしたらどうかというような御意見でございましたら、これはそこまではとてもいかない。やはりいまの報酬の体系をできるだけ努力して上げていただくように私どもは努力するというのが限度だろうと思います。 なお、具体的に官舎の問題あるいは役所における執務環境の問題等もございますが、これはあくまでも関係当局とともに十分手当てをいたしていくつもりでございますけれども、急に在野及び学者の方から裁判官におなりいただくというのもなかなかできがたい状況にあることをひとつ御理解いただきたいと思います。
○日野委員 いま給与の問題なんかも出ましたけれども、これは外国の裁判官の例を見ますと、日本の裁判官のように細分化をしないで、そして非常に高い給料を出す。そのかわり、余り昇給はさせないというシステムをとっておられるところもあるように私聞いているわけですが、これはもう根本的に行政官なんかとは考え方を変えて、裁判官というのは完全に別なのだというふうに取り扱って、かなり給料を高くしていくということを考えてもいいんではないかと思うのですが、いかがでしょう。
○勝見最高裁判所長官代理者 外国の裁判官との比較の問題でございますが、ただいま御指摘の非常に多額であるという国は、恐らく法曹一元を完全にとっておる英米法系の国の問題であろうと思います。それから大陸法系のたとえば西ドイツの例をとってみますと、裁判官の報酬は戦前の日本の裁判官のように行政官とほぼ同列であるというふうに私どもは認識しておる次第でございます。 わが国の司法制度を、特に裁判官の任用という面からどういうふうに位置づけるかという問題になりますが、この点につきましては、御承知の臨時司法制度調査会におきまして、法曹一元をどうやって実現するのか、しないのか、実現の方法について具体的にどうするかという問題を討議していただきまして、御承知のような結論が出ているわけでございまして、その中に給与の改善につきましても御指摘があったわけでございます。現実の問題として、これも日野委員十分御承知のように、在野からの登用あるいは任官希望者も少ないという現状は、どうしても事実上はもうキャリアシステムでいかざるを得ないというのが正直なところでございます。キャリアシステムに乗って裁判官を任用していくといたしますと、その報酬についても、やはりそう飛躍的な増額が望めないというのが現状であろうかと思います。 しかし、現状とても、先ほど申し上げましたように、一般の行政官と、具体的に任官年次、それから経験年数等を比べていただきますと、決して劣るということではなくて、むしろ相当大幅な比率で多額な報酬ということになっておりまして、現在のところ、この報酬体系を根本的に変えるということを検討しなければいけない問題でございますけれども、具体案として、私どもとしてこうあるべきだというようなことを用意しているような現状にないことを、また正直なところ申し上げておきたいと存じます。
○日野委員 キャリアシステムでこれからもいかなければならないだろうということはよくわかるわけでありますが、そうしますと、キャリアシステムの一番根本といいますか、始まりのところですね、補給源ということになると、どうしてもこれは司法修習生の段階から考えていかなければならない。そうすると、司法試験の採用人数をもっと大幅にふやしてもいいのではなかろうかということが考えられるわけでありますが、この点について、司法試験の合格者をもっとふやすというお考えを具体的に持っておられないか。これは法務省の方になろうかと思いますが、お尋ねいたします。
○賀集政府委員 司法試験のことにつきましては、先ほど御発言のありました横山委員も、司法試験は厳しい試験であるという言葉を出されましたけれども、確かにいまの司法試験は、たとえば昨年度を例にとりますと合格率一・六%、これは六十人に一人という数字になりますけれども、そういう難関中の難関になっております。そのためどういう現象が起こっておるかといいますと、大学卒業後も受験勉強を続けた人に有利でありまして、在学生には不利になっている。そのため、相当優秀な学生でもそういうむずかしい試験は敬遠する、そして一流企業等への就職の道を選ぶということが最近しばしば指摘されているところでございます。そこで、合格者をふやし合格率を高くし司法試験を相対的にやさしくせよ、そうすれば若くて優秀な人の司法試験離れという現象も解消し、司法修習生の絶対数も増加いたしまして、その結果裁判官になる分母——分母といいますのは司法修習生から裁判官になるわけでございますから、その分母の数も大きくなり、ひいては裁判官志望者も増大し、裁判官不足も解消するのではないかということになりまして、日野委員の御指摘は長期的展望に立ったまことにごもっともな御指摘のように思われます。 ただ、ここでぜひとも御理解いただきたい点は、司法試験というのは、重要な職責と高い社会的地位を与えられる法曹となる人を選ぶのでございますから、その合格者の決定に当たりましては質の低下を絶対に来してはいけない、これが至上命令といいますか、そのように十分な配慮がされなければならないということも申すまでもございません。最近の合格者が、受験者の数が年々増加しておるにもかかわりませず大体五百人前後というところに落ちついているのは、やはり一定水準以上の人が年によってそれほど差がないからだろうと思われます。私どもは、法曹たるにふさわしい一定水準をどうしても維持しなければならない、このように考えております。若くて素質のある優秀な人を引き入れるために合格者の数をふやしてはどうかという声が一方にありますが、他方、合格者の質の低下を絶対に来さない、一定水準だけはどうしても維持せよ、こういう相矛盾するような要求を前にいたしまして、昨年度は短答式試験の合格者をかなりの数ふやしました。そしてできる限り多くの方に論文式試験を受けてもらうようにいたしました。その結果は、初年度でありました関係でしょうか、必ずしも期待どおりの結果というところまではまいらなかったのでございますが、このような方策も含めまして、司法試験制度の適切、妥当な改善方法を見出すために、私どもといたしましては、関係各方面から意見を聴取するなど真剣に調査研究及び検討に取り組んでおります。司法に御理解のある日野先生からも随時適切な御意見を寄せていただければ幸いであると考えております。
○日野委員 もう午前中の時間がありませんので、午前の最後に一言だけ、私の意見めいたものになりますが、大体司法試験受験者というのは、大学教育を受けて、いま六十人に一人という大体の比率なんですが、大学教育を受けたということは一応それだけの能力があるということですね。六十人に一人が六十人に二人か三人くらいになっても差は余りないのではなかろうかという考えを持ちますので、私としてはぜひとも司法試験の合格者をもっとふやしていただきたい。もしこれをふやすということであれば、いまはだれもいなくなってしまったが、きょうここにおられる方はだれしも異存のないところだと思いますし、国会なんかでも恐らく異存のないところだと思いますので、そちらの方にも鋭意これから御努力をお願いしたいということを一言申し上げておきたいと思います。これはお答えをいただくまでもなかろうと思います。 委員長、これで午前の質疑を終わりたいと思います。
○上村委員長 午後二時三十分より再開することとし、この際、暫時休憩いたします。 午後零時三十五分休憩 ————◇————— 午後二時四十一分開議
○上村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 質疑を続行いたします。日野市朗君。
○日野委員 定員法の一部改正の法律案の資料によりますと、第一点としまして裁判官の員数の増加、そしてその員数の増加の理由として、「特殊損害賠償事件、会社更生事件及び差止訴訟事件の適正迅速な処理を図る」、このように一応記載してあるところでございますが、私は、これらの事件の処理というものも大変なことだし、非常に多くの労力がかかる。これも大変大事であるということも非常によくわかっているのでありますが、それにもましていわゆる(ワ)号事件と言われる中で、余り報告事件にもならないようなごく普通の通常事件でございますね。これの処理というのが、これらの特殊損害賠償事件や会社更生事件のように世間の注目を集めるような事件とは違って、非常に平凡な事件、これの処理がうまくいくかいかないかというようなことが、裁判所に対する国民の信頼という関係からは非常に大事なことであろうと思うのでございますが、いかがでございましょう。
○矢口最高裁判所長官代理者 御指摘のとおりだと思います。
○日野委員 そこでお伺いいたしますが、これらの特殊事件以外の通常の事件、これについては従来から国会でも何度か問題になっているようでございます。それで、いつも大体裁判官一人当たりの適正事件数というものが問題になっておりまして、ずっと速記録なんかをながめてみますと、これについての質疑が毎年定員法の関係で行われているというのが常のようでございます。ここでは昭和四十九年三月二十六日の参議院法務委員会で佐々木静子参議院議員が質問して、最高裁の田宮総務局長がお答えになっているわけでありますが、ここにこのようなことを言っておられる。「裁判官の適正負担件数がどの程度が適当かということは、結局は審理期間をどの程度にセットするのが理想的かという問題ともからむのではないだろうかというふうにも考えられるわけでございます。」「民事では理想的な審理期間はどのくらいであるか、刑事ではどのくらいであるかというところから逆算すると申しますか、そういうふうな形で一人当たりの負担件数という、あるべき負担件数というものは考えられないかというようなことについて目下いろいろな角度から検討」いたしております。このような記録がございます。 そこで、大体民事事件というのはどの程度の審理期間にセットするかというようなことは、これはもう各事件によって多様でございますけれども、おおむねどの程度で処理をしたいのだというような一応のめどをお持ちかどうか、お聞きしたいと思います。それから、民事、刑事それぞれどのくらいの負担件数が適当と考えておられるか、一応検討した結果からお答えいただきたいと思います。
○矢口最高裁判所長官代理者 当時お尋ねがございました際にも、前総務局長がいろいろの角度からお答えを申し上げておるのでございますが、実は私どももどの程度のものをもって理想とすべきかということについては、いろいろな角度から検討すればするほど的確な答えが得がたいという状況でございます。一般的に見てみますと、戦後事件が非常に多い時代がございましたが、そういう時代は、どちらかといいますと事件が多いために心ならずもおくれたというような状況があったようでございますが、大体世間の事件が落ちついてまいりまして、コンスタントな状況になってまいりますと、それと並行いたしまして個々の事件がむずかしくなってきたということがございます。ただ、いま御指摘の(ワ)号事件というのは、これは裁判所関係者から見ますと一番平均をあらわしておる事件ということになりますので、やはり一件一件の質が非常にむずかしくなっておるというようなことも考慮に入れまして、現状を見てみますと、大体民事事件の一審事件では十五、六カ月というところで片づいておるということでございます。ただ、この平均審理期間と申しますのはあくまで平均でございますので、御承知のように欠席判決も含まれております。欠席類似の一、二回で済んでしまう判決も含まれておりますので、常識的に考えまして、双方が四つに組みまして争うということになりますと、この審理期間というものはもう少し延びておるのではないかと思います。私、いま直ちに幾らくらいが理想であるかというようなことはとうてい申し上げるだけの結論を得ておりませんが、この平均審理期間が真に平均審理期間であるということが一つの目標ではないだろうかというふうに思います。ということは、争いのない事件あるいはそれに準ずるような事件は除きまして、なお大体一年半前後で終結するというようなところが一つの目標ではないかと現在考えておりますが、なかなかこれはむずかしい問題でございます。民事事件は、やはり主張、立証を尽くすということも必要でございますし、場合によってはある程度の時間をかけるということによって妥当な解決というものが出てくる場合も御承知のようにございますので、なかなかむずかしい問題ではないだろうかというふうに考えております。
○日野委員 大体一年半ぐらいが一つの目途であろうということですが、現在各地の裁判所で、実際一年半くらいで終わっている事件が大体平均的だというふうにはわれわれは考えられない。確かにその中には欠席判決というようなもの、即日で終わるというようなものもありますから、そういうものを平均値で入れれば大体そんなふうになるのかなとは思うのですが、現実には、われわれの感覚といたしましては、とうていこのようなものではない。そしてわれわれが民事事件を受任するにつけても、依頼人にこんなことを言うのは非常に心苦しいのでありますが、これは裁判でやったってだめだよ、裁判はあきらめて別の方法によりなさいということを勧めざるを得ないというような実態が実際はあるわけでございます。そしてまた、御承知のように、損害賠償については示談つきの保険というようなものが売り出されて、裁定委員会のようなものができたり、また場合によっては建設省の紛争処理の調停機関を利用したりというような形で、だんだん裁判離れをしていくような傾向が若干出てきているように私は感ずるわけでございます。そういう事態は、裁判所が国家機関として果たすべき役割りということを考えますと、決して好ましいものではないというふうに私は考えざるを得ないのでございます。こういう点につきまして、裁判所側はそういった現象についてどのように考えておられるか、その根本的な考え方についてちょっとお聞きしたいと思います。
○矢口最高裁判所長官代理者 事件の適正な処理ということと関連いたしまして、やはり迅速な処理というものが必要であろうと私ども考えております。迅速ということを申しますと、何か早ければ早いほどいいんだ、しりをひっぱたいてできるだけ早く判決をするようにすればいいんだと考えておるのかというような反論があるわけでございますが、決してそういうふうに考えておるわけではございません。別の言葉で申しますと、迅速と適正を組み合わせた答えとしましては、急ぐべきものは急ぐ、それからゆっくりやるべきものはむしろもっと時間をかけてやるという、そのえり分けをやるべきだということであろうかと思います。このえり分けを一つ誤りますと、国民の裁判に対する信頼というものはなくなってしまいまして、国民がそっぽを向いて、いま御指摘のような別途のやり方による事件解決というものを求めていってしまうようになってしまう、それが一番恐ろしいところでございます。ただ、現在、迅速な処理ということにかなりの力を入れておることは事実でございますが、それは適正を踏み外すことなく、限界までぎりぎりの迅速な処理という考えでございまして、結局のところ、非常に言い古されておる言葉ではございますが、この二つのどれが欠けても裁判所というものは成り立っていかないと思われます。また国民の信頼というものは、この両輪の上に乗っかって初めて成り立つのだというふうに根本的には考えております。ただ、具体的な問題になりますと、裁判官の転勤が多過ぎる、あるいは部の構成の変更が多過ぎる、いろいろな問題があろうかと思います。そういった点については、今後できるだけ事件第一主義を中心といたしまして施策を行っていきたいと考えております。
○日野委員 いまのお答えは非常によくわかるわけでありますが、そういったもろもろの憂慮すべき事態というものも、結局は裁判官不足に大きく起因しているのではないかと私は思うのです。第一線で裁判実務に当たっておられる裁判官は、本当に日本の公務員の中では最も勤勉で最も優秀な人たちであろうと思います。そしていろんな努力をしておられる。符に地方に参りますと、非常に多くの事件数を抱えててん補に悩まされ——悩まされと言うと若干語弊がありますが、てん補で各地に赴き、しかも迅速に裁判を進めるということでいろいろ努力しているのでありますが、そういう姿を見ておりますと、これらの地方の裁判所の裁制官の皆さんに非常に負担が重くなってきているのではなかろうかと私は思うのであります。私なんかの知っている事例でも、民事事件が終結してから判決が出てくるまでにかなり長期間を要するというような例なんかもございますし、このような負担が過重だというような声が、第一線といいますか、現場といいますか、そういったところから最高裁の方にもかなり上がっていると思うのでありますが、そういうことに対する最高裁側のお考え方はいかがでしょうか。
○矢口最高裁判所長官代理者 いろいろの把握の仕方ということもあろうかと思われますが、現在、民事で申しますと年間大体百七十件前後というものを負担しておるということになろうかと思われます。刑事も大体同じぐらいでございますが、ただ刑事の方は比較的短期間に処理ができるようでございますので、問題はやはり民事事件であろうかと考えております。 ただいま御指摘の結審後判決が非常に暇がかかっておるという問題、これは事件の審理というものが両当事者の御協力がないとスムーズにいかないということとは違いまして、全く裁判所にだけ責任としてかかってくる問題でございまして、結審をしたが判決が書けないということは実はあってはならないような状況でございます。しかし、実際には、一定の合議をいたします、あるいは腹づもりをいたしまして結審をいたしましても、さて書き出してみますとそこがうまく書けないというようなこともございます。うまく書けないということは、結局は十分審理が尽くされていないということにもなるわけでございまして、そういうことがないように審理をして、そして結審をすればできるだけ早く判決するということ、これはもう当然そうしなければいけないことでございますが、ただ、ものによっては、十人の方が十人ともどなたが判決を作成されるといたしましても相当な期間がかかるものもございますが、往々にして、よく原因等を調べてみますと、たまたま転勤の時期にぶつかったとか、たまたま健康を害されたとか、あるいは場合によってはややいわゆる準備不足であったとかいうようなことがあるようでございまして、それが全部とは申しませんけれども、そのように結審後相当の期間がたっておる事件があるということから、直ちに裁判官の不足というふうに持っていけるかどうか、その点についてはやや疑問を持っております。 いずれにいたしましても、裁判官のような仕事は、そう根を詰めて一年じゅうやることのできるものではございませんので、適当なレクリエーションと申しますか、元気を回復する期間、そういうものの余裕を見て裁判官というものの数を決めていかなければいけない。そういうことから見ますと、裁判官はやはり今後もスローペースにはならざるを得ないかと思いますが、ふやしていく方向で努力したい、現在のところはそういうふうに考えております。
○日野委員 裁判官の方々の御苦労非常によくわかるのですが、実際もっとふやしてやらなければ、これからますます裁判官のなり手がなくなっていくのではなかろうかということを非常に憂慮しているわけであります。裁判官の皆さんも、それぞれ工夫をされながら、審理を合理化したりそれから証拠調べも迅速にできるようないろいろな工夫を最高裁側もやり、それから個々の裁判官の方々もやられるというような努力をしていることはよくわかるのですが、ややもすればその努力が訴訟関係人から受け入れられなかったり何かする場合もございます。たとえば、証拠調べについて、極端に時間を制限して、その時間が来ればそれ以上の尋問はもはや許さないというような訴訟指揮が行われたり、また調書でマル、カケルによる調書を作成したり、そういう調書の簡略化なんかもやるというような、これはいろいろな工夫もあるのでありましょうが、そういうことになってくると、必ずしも訴訟関係人の納得も得られないのではなかろうかというような形で推移しておる例が幾らかございます。これは、調書の簡略化とか証拠調べの時間の極端な制限、これなんかについてもすでに最高裁もご承知のはずでございますから、これらに対する反応をひとつお聞かせいただきたいと思います。
○矢口最高裁判所長官代理者 確かに事件の手持ち件数がふえますと、当事者の方で、もう少しあれも立証したい、これも立証したい、周辺事情等についてもいわゆる間接証拠として援用するための尋問が必要であるということがあろうかと思います。そういったものを訴訟指揮という名のもとに整理するというようなことがないわけではないようでございますので、私ども会同等の機会には、真に必要だと認められる証拠というようなものについて、単なる時間の制約等の問題から打ち切ることのないようにすべきである。やはり民事においても必要なことは真実の発見でございまして、そのことのために必要な証拠調べは大いにやるべきであるというふうに話しておるわけでございます。ただ、ともしますと、原告申請の証人数名、被告申請の証人数名というのをまず全部調べましょうということで、全員をまんべんなく、アクセントなく調べる。双方の証人を調べ終わると、まだ主張、立証はありませんかということで、ないと言われれば結審をする。しかしその場合に、事件の真の紛争がどこにあるかといったようなことの把握が必ずしもできていないというやり方というものがないわけではないわけでございまして、やはりもう少し、同じ申請の証人でございましても数名の証人が一律に重要であることはないわけでございまして、場合によっては、特定の証人に非常な時間をかけて真相究明を行う。また場合によっては、当事者尋問を証人調べの中間において行うというような工夫というものが必要じゃないか。ですから、そういう工夫によって生かした時間を一番大事な証人の慎重な審理に充てる、そういう方向で努力をしていくべきではないだろうか、そういったことも考えておるわけでございます。
○日野委員 裁判官の不足ということは、特に支部の方に参りますと、それから来る支障が非常に著しいかと思います。たとえば、刑事事件でも即日で終結したいということで、弁護人、被告人打ち合わせて、在廷証人まで用意して支部に赴いたところが、もうきょうは時間がいっぱいだから冒頭手続までにしてくれというようなこともよくございますし、保全処分の申請などを行うにしても、この日は裁判官はどうかということをまず事前に打ち合わせてから赴く。または裁判官、忙しくてしようがないから、本庁の方に出してくれないかというような口吻が支部の方から漏らされるというようなことも間々ございます。 そこで、裁判官が常駐していない支部及び簡裁、これがどのくらいでございますか、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。これは甲号の場合は大体合議体が構成できるようになっていなければならないわけでございますから、そういう点も含めて、裁判官が常駐していない、または何人かはいても十分なだけの数を保有していないという裁判所がどのくらいございますか。
○矢口最高裁判所長官代理者 現在裁判官が全然常駐していない庁は、甲号支部一カ庁、それから乙号支部百カ庁、簡易裁判所百六十八という数字でございます。甲号支部の一カ庁というのは沖繩の石垣支部でございまして、非常に事件数が少のうございます。宮古支部、これはすぐ隣の島でございますが、宮古支部と石垣支部の両方兼ねておるということで処理をいたしております。甲号支部に裁判官がおりましても、確かに御指摘のように合議事件ができるはずでございますから、最小限度三名いなければいけない筋合いでございますが、事件数が非常に少ないところに三名置きますと、かえって行かれる方も御迷惑ですし、能率も逆に上がらない。それよりも最小限度の裁判官を置いて、必要があれば本庁からてん補するということの方が質的にもいい裁判官を得られるというような状況もございますので、現在そういうことで三人未満の甲号支部の庁というのは三十五庁ございます。これは石垣も含むわけでございます。二人おります庁が二十四庁、それから一人の庁が十庁、先ほども申しました石垣という不在の庁が一庁、全部で三十五庁、こういうふうな状況になっております。
○日野委員 極端な言い方をすれば、裁判官というのは本当は裁判所に待ち構えていて仕事をしてもいいんじゃないかと私なんかは思うのですよ。これが現状はどうかというと、もう仕事に追い回されて、記録を包んだふろしき包みを抱えてふうふう言っているのが実は裁判官でしてね。私たちは、こうあるべしと思う裁判官というのは、もう裁判所にいて国民からの訴えがあり次第いつでもそれに即応できる、こういう裁判官が本当は理想なんじゃないかと思うのですが、いかがでしょう。裁判所側はそうお考えにならないでしょうか。
○矢口最高裁判所長官代理者 確かにいろいろなその他の問題を考慮外にいたして考えてまいりますと、御指摘のとおりであろうかと思います。 それから、私ども、大都会の現代の裁判官——大部分の裁判官はそうでございますが——のいまのような仕事の量と申しますか、そういったものがこれでいいんだというふうに考えておるわけのものでもないことは、先ほど来のお答えでおわかりいただいておるんじゃないかと思います。ただ、実際問題といたしまして、現在相当へんぴなところにも裁判所がございまして、そこに行うていただくということは、これは裁判官に行っていただく側としてはまことに忍びない点もあるわけでございます。弁護士さんでございますと、事件のときそこへおいでになって、後は都会にお住みになっておってそれで済むわけでございますが、裁判官は、そこに行って、子供の教育もしなければいけないというようなことがございまして、そういう面から、事件が年間に数件しかないようなところにも必ず置かなければいけないということまではどうもいろいろお願いいたしかねる面もございます。もちろん数の足りないという面も、そういう意味ではございます。
○日野委員 非常に遠慮をなさった御答弁であろうかと思うのであります。私は、先ほども言いましたように、裁判官というのはもっと伸び伸びと、もっと余裕を持って仕事ができるという、心理的な余裕も公平な裁判という観点から見ますと裁判官にとって必要なことではなかろうかと強く考えているわけなんでございます。 それで、いまちょっと裁判官不在の庁についての数を伺ったわけでありますが、これが充足されるまで、現在定員法の改正案が出ていますが、このペースでいったらもういつまでかかるのか、場合によってはこれは不可能ではないかというふうにさえ思わざるを得ないのですが、どうなんでしょう、これはいわゆる総定員法ですね、行政職の方々の定員の削減ということがあるのですが、それに対する気がねとか、行政庁、つまり政府の側と裁判所の側とそういった点についての何か合意事項でもあって定員をふやせないというような事情はございませんのですか。
○矢口最高裁判所長官代理者 裁判官の増員ということに関連いたしまして、いまお尋ねのような問題は一切ございません。むしろ私どもは、私どもが必要とする裁判官の数というものは、お願いすれば必ずお認めいただけるというふうに確信をいたしております。それだけに私どもも責任を持ちまして、充員の見込みがない場合にただ数だけを多くお願いするということをしない。そういう意味で本当に一〇〇%の責任を持って毎年の増員要求というものをさせていただいてきておるという状況でございます。ごらんいただけばおわかりいただけるかと思いますが、判事補の数にいたしましても六百何名というのが定員でございます。で、十年間でございますから、七十人採りましても七百名の定員が要るわけでございます。七十五人採りましても、まあこれは途中減耗がございますから七百五十ということにはなりませんけれども、それに近い数が要るわけでございます。毎年復活折衝のときには大体その年の裁判官希望者といったような数も把握できますので、できるだけ多くの優秀な方に来ていただきたいということを前提にいたしまして、判事補なら判事補の定員のあるべきところまで、可能なところまでこれを徐々に上げていきたいということは考えております。決して政府あるいはその他のところに遠慮をして少ない数でお願いしておるという筋合いのものではない、これだけは御了解をいただきたいと思います。
○日野委員 裁判官の問題から、今度は書記官、調査官、速記官について若干伺いたいと思います。 今度は書記官五名という枠でございましたね。私はこれなんか見ても非常に少ないなと思いますし、いままで裁判官について伺ったところはほぼ妥当するであろうかと思いますから、今度は速記官の問題について伺っておきたいのですが、速記官の試験での倍率はどの程度になっておりましょう。
○勝見最高裁判所長官代理者 正確な数字を持ち合わせておりませんが、八倍から十倍前後というふうに考えております。
○日野委員 現在、速記官の定員から不足しているのはどの程度になっておりますか。
○勝見最高裁判所長官代理者 二百余名でございます。
○日野委員 速記官というのは、記録の正確性、そういうことから言うと、かなり重大な役割りを果たしておられる方々であろうと思うのです。それでそれだけの不足が出ているということはかなりゆゆしい問題だというふうに思うのですが、どういうところにふやせない原因があってそれだけの欠員が生じているとお考えになっておられますか。
○勝見最高裁判所長官代理者 すでに御承知かと存じますが、速記官は相当高度な技術を要します。かつ一通りの法律知識も必要でございます。その養成につきましては、御承知のとおり、書記官研修所に速記の養成部がございまして、そこに入所させまして相当なトレーニングをやって初めて一人前の速記官に仕上げるわけでございますが、書記官研修所に入所いたしましても、中途において、適格性がないというようなこともありまして、脱落者といいますか、そういう人も相当出てまいりまして、一人の速記官を養成するには相当ないわば素質と時間を要するわけでございます。端的に申し上げますと、なかなか速記官が養成できないというのが現状でございます。 これも御承知かと存じますが、従前はいわゆる内部採用でやってまいりましたけれども、内部採用だけではとても充足できないということで外部採用に踏み切りまして、現在採用試験を行って養成をやっております。それにつきましても、やはり客観的な数字といいますか、制約がございまして、徐々ではございますけれどもこの欠員が減少しつつあるというのが現状でございます。
○日野委員 仄聞するところによりますと、最近、速記官の方々からの勤労条件に対する不平、不満が非常に強まっているように伺っております。つまり、給与なんかも四段階に抑えられていて、余り出世といいますか昇進していく夢がなくなっているとか、速記官制度が発足した当時はかなり優遇されるというような一応夢があった。それが最近の現状ではそういう夢もなくなったということが言われているわけでありますが、そういう点について裁判所の方では掌握しておられるでしょうか。
○勝見最高裁判所長官代理者 まず、速記官の待遇の問題でございますが、御指摘のとおり速記官補は七等級でございまして、それ以上、六、五、四というふうに昇格をいたすわけでございます。一方、速記官の待遇に関しましては、ほかの職種に比べまして相当優遇しておりまして、その結果、他の職種と比べますと、比較的若い年齢層で四等級になりまして、しかも四等級の期間が相当長くなっている者が出てまいっております。そのようなことから、いわば上の等級を設けなければならないという必要性が生じまして、昭和四十九年度以降、三等級獲得に努力してまいっております。四十九年度以降、三等級の暫定定数をある程度認めてもらいまして、五十二年度におきましては、そのうち一部本定数を認めてもらうことになっております。 先ほども申し上げましたような情勢でございますので、今後とも三等級以上の等級獲得に努力いたすつもりでございますが、一方、等級が高くなります場合に、単に経験年数が長くなれば当然に上の等級にすることにもならないわけでございますので、これをどういうふうに処遇していくかということで検討しておるような状態でございます。
○日野委員 速記官というのは非常に神経を使う仕事であろうかと思います。法律的な知識をある程度持ちながら、証人等の発言を漏れなく速記する、そしてそれを反訳するということで、非常に神経を使う仕事のようでございますが、特に妊娠中の女子速記官なんかに対する配慮は、特別の配慮をしておいでになりましょうか。
○勝見最高裁判所長官代理者 女性の産前産後のことに関しましては、裁判所職員についても人事院規則が準用されておりまして、産前六週間、産後六週間のいわば特別休暇が認められておるわけでございまして、この制度を守っております。
○日野委員 速記官というのは養成に非常に時間がかかる、つまり養成に非常に金のかかる職種だと思うのです。それだけに既成の速記官というのは大事にしなければならないというふうに私は考えているわけなんですが、私の手元にある資料によりますと、妊娠期間中にも立ち会い時間が軽減されなかったという例が、これはアンケートの結果ですが八〇・七%に上っているとか、妊娠中で産休に入る直前まで立ち会いが停止してもらえなかったとか、また妊娠中に証人尋問の出張をさせられたというようなかなりのケースの報告が私のところにあるわけなんでございます。こういう例を見ますと、もっと速記官に対する思いやりがなければならないのではなかろうかというふうに思うのですが、いかがでございましょうか。
○勝見最高裁判所長官代理者 ただいまお示しのデータは、どういうことのデータか、必ずしもつまびらかにいたしておりませんけれども、各庁におきまして、各速記官の具体的な事情に応じて、それなりの手当てはしておると思いますが、少なくとも最小限度、先ほど申し上げました法律で定められた就業制限期間といいますか禁止期間といいますか、その点については十分遵守しているはずでございます。
○日野委員 これは裁判所が意識的に、妊娠中の速記官に仕事を強いたり、それから産休中にも呼び出されて反訳をさせられたという例の報告もここにあるのですが、そういうことを意識的にやっておられるとは思わないのです。お互い速記官同士で、忙しくてしようがない、妊娠中で悪いけれども何とかこれだけの仕事を手伝ってもらえまいかと、決して悪意をもってやっているというように私考えているわけではないのですが、やはり手不足という点からそういう事態がややもすれば生じているのではなかろうかなというふうにも、私もずっと速記官の方とのおつき合いを通じてそんな感じがするわけですが、そこいらも厳重に、これはやはり産休に入ったら仕事はさせない、それから忙しくてもできるだけ妊娠中の方なんかをかばってやったらいいのではないか、こういうような指導はしておいでになるわけでしょうか。
○勝見最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘のような事実があるとすれば、大変遺憾なことでございますので、十分指導したいと思います。ただ、産前のいわば就業制限期間につきましては、御承知のとおり、予定日よりも早く出産するということがありますので、いわば逆算いたしまして、結局出産以前六週間以内に仕事をしてしまうというような結果に相なっているようなケースもあるいはその中にあるのではないかと思いますが、しかし、ただいま御指摘のようなことにつきましては、十分配慮いたしたいというふうに存じます。
○日野委員 大体私の質問するところはその程度で終わりたいと思います。ただ、私がこうやって見ておりましても、裁判所に対する国家予算の割合というのは非常に少ないと思います。外国の例等とそう簡単に比べられないのですね、組織も制度も違いますので、そう簡単には比べられないのでありますが、私は、裁判所はもっと大胆に予算を請求されていいのではなかろうか。もっと大胆に裁判官も書記官も速記官もふやす。それから設備をもっとりっぱなものに数多くふやしていくというようなことを大胆にやられてもよろしいのではなかろうかというふうに私は考えます。そして、そのような裁判所の司法体制の強化のためにこれからお進みになるのであれば、これにも協力することはやぶさかではないわけでございまして、ぜひとももっと大胆に、司法の他位の強化、国民の信頼を得るための司法の強化というものに御努力をいただきたい。それに対しては協力するにやぶさかではございませんということを申し上げまして、私の質疑を終わりたいと思います。
○上村委員長 次に、沖本泰幸君。
○沖本委員 本日、法務大臣から所信表明がございましたので、最高裁判所に裁判所職員定員法に関する御質問の前に、まず、福田法務大臣の所信表明に従った御質問をとりあえずしておきたいと思います。 今後一年間にわたる大臣の法務行政に関するお考えをお述べになったわけでございまして、一つ一つの問題点につきましては、今後同僚議員からもいろいろ細かく御質問することになるとは思いますけれども、とりあえず所信表明の中の数点についてお伺いしたいわけでございます。 まず、刑法の全面改正についてのところでございますが、「目下、事務当局において政府案作成作業を進めているところでありますが、刑法は最も重要な基本法の一つでありますから、広く国民各階層の意見を考慮しながら、真に時代の要請に適応した新しい刑法典の実現に努力いたしたいと考えております」こうお述べになっておるわけでございます。 刑法の全面改正問題については、それぞれのところでいろいろお考えも述べられており、いろいろな議論が出ておるわけでありまして、この問題についてはまた深い議論もあるわけですが、お述べになった中に、「広く国民各階層の意見を考慮しながら」とあるわけでございますが、これはいま作業中ということでございますから、国民各階層、どういうふうな階層の方、どういうふうな方法で意見をお求めになって、それはどういうふうな形で作業の中で考慮に組み入れられていっておるか、この点について先にお伺いしたいと思います。
○安原政府委員 御指摘のとおり、大臣から所信表明として、各界各層の意見を聞くことは、刑法という国民の日常生活の基本のルールを決める法律としては当然のことでございまして、そういう意味におきまして、昨年の五月に法務省としての一応の中間発表ということで、それまでにもいろいろ新聞、雑誌あるいは公に意見を聞く会等で寄せられました各界各層の御意見を聞きながら、一応法務省として聞くべき、こういうふうに修正してもよいのではないかということを考えた数点を含めまして、一応法務省事務当局としての中間発表をしたわけでありまするが、さらに念には念を入れるという意味におきまして、この中間発表をした法務省の一応の考え方について、当然のことといたしまして、この法律の適用に直接当たる法曹界あるいは警察あるいは裁判所というようないわゆる専門家の方々から意見を聞きますとともに、新聞、雑誌等に寄せられております一般の国民の方々の意見等をも含めまして、それこそ文字どおり各界各層の意見を聞いて最終案をまとめたいというふうに考えておりまして、さしあたり、専門家の意見を聞くということで、今月ごろから高等検察庁所在地の大都市、仙台、広島、大阪等におきまして、直接法の運用に当たられる専門家の意見を聞く会を催したいというふうに考えております。
○沖本委員 これは教育刑になるのか、刑罰が重くなるのか、重罰刑が重なってくるのか、いろいろな議論が沸騰しているわけですから、いま私たちがいわゆる一般の刊行物なり何なりというところで目に触れるような内容のものが刑法全面改正の中に十分反映していくという形で取り入れられていき、国民全般が憲法に従って十分補えるだけのものになってほしいことをできれば期待はするわけなんですが、その点は後からどうこう言うことのないような御配慮が十分あってしかるべきではないかと考えるわけでございます。 次に、「新しい刑法典の実現に努力いたしたいと考えております」ということなんですが、現在の刑法は新しい憲法に従ってできておるというふうに解釈するわけですけれども、これがさらに新しい刑法典の実現に努力するということになりますと、どのような理念がその根本になっていくのかということが考えられるわけですけれども、そういうものはどういうものが当たるわけでしょうか、その点をお聞きしたいわけです。
○安原政府委員 結局、新しい刑法典と申しますか、刑法はそれぞれの時代の要請に応じまして、現在の刑法におきましても緊急を要するものについては逐次改正を重ねてきたわけでございまするが、しかし、何と申しましても、七十年の昔につくられたものが基本でございまして、まず表現形式から言いましても文語体を口語体にしてわかりやすくするというようなこと、あるいは新憲法の理念でございます個人の尊重というようなことから、暴力的な犯罪については厳しくというような点で個人の尊重ということを考えていくというようなところ、それから時代とともに刑罰思潮というものは変化がございますのでそれを取り入れていく、また新憲法の基本であります罪刑法定主義という意味におきまして、何が罪になりどういう刑が科せられるか、罪刑法定主義ということ、つまりわかりやすい刑法をつくっていくというようなことにも新しい配慮が加えられつつあるというようなことでございます。
○沖本委員 少年法の改正について「できる限り速やかに改正の実現を期する所存であります」こうあるわけでございますが、これに対しては各種団体から反対の意見もありますし、いろんな運動もあるわけですけれども、そういうものがあり、また日弁連の委員の方もやめていくというような事態もあったわけで、そういう中に、これから見ると、「速やかに改正の実現を期する」とありますので、いつごろこれが出てくるのか、その辺をお教えいただきたいと思います。
○安原政府委員 これまた非行を犯した少年の取り扱いに関するきわめて重要な法律でございまするから、いろんな御意見を十分に参酌しながら、その意見にこたえ得るような案をつくらなければならぬというふうに肝に銘じておるわけでございます。法制審議会の総会におきまして、ことしの二月ですでに二回審議が続けられておりますが、私どもいつその御答申がいただけるかもわかりませんので、もしその御答申がいただけますならば、その答申を尊重した線に沿って法案をつくるということでございますが、ただいままだ審議中でございますので、いまお尋ねのいつごろということは申し上げかねます。
○沖本委員 それから、少年法にも関係するわけですけれども、「犯罪者及び非行少年に対する矯正及び更生保護行政の充実について」という点で、「犯罪者及び非行少年の改善更生につきましては、刑務所、少年院等における施設内処遇と実社会における社会内処遇を充実強化するとともに、これら相互間の連携を一層緊密にし、その効果を高めてまいる所存であります。そのためには、まず施設内処遇につきまして、創意と工夫を加えながら、被収容者個々の特性に応じた分類処遇を推進し、さらに、被収容者の生活環境の改善を図るとともに、社会復帰に役立つ職業訓練、教科活動等の充実を期したいと存じます」こう述べられておって、施設の内容なり取り扱いがいろいろと改善されていくというふうに理解できるわけです。よく聞くわけですけれども、ここから出された人がちっともよくならない。また戻っていく。戻っていく理由には、社会的に一般社会がいま冷たいという問題もあり、さらにやっぱり施設内の人手なり何なりというようなものが十分でないために、そこからいろんなギャップが生じていくというようなもろもろのことがあるわけですけれども、そういう点についてはどういうふうにお考えになっていらっしゃるかという点を伺っておきたいわけです。
○石原(一)政府委員 現在、少年院におきます運営の基本方針は、少年の健全育成を図るために矯正教育を徹底するということであります。そのためには、まず私ども考えておりますのは、社会内処遇との連携ということであります。刑務所の場合も同じでございますが、少年院におきましても、少年院における教育で完結するものではない、できるだけ早く社会復帰をさせるために、社会内処遇、特に保護観察との連携を高めるということが必要であるということで、現在鋭意その方面の施策を推進しているところであります。 ところで、中に入った者がよくならないではないかというお話がございますが、私どもは必ずしもそう思っていないのであります。ただ、はっきりした数字を申し上げることができないのには一つの理由がございます。と申しますのは、少年院を出ました者につきましていわゆる追跡調査をするということを徹底いたしますれば、再犯率あるいは少年院処遇におけるやり方の適否、あるいは効果があるかないかということがわかると思いますが、特に少年の場合には人権を尊重しなければなりませんことから、少年院を出た後、そして保護観察も済んだ後においてどういう状態であるかということを調査するということがきわめて困難な点があります。しかしながら、現在までの数字でまいりますと、たとえば刑務所なり少年院に入った者について、前に少年院に入れられたことがあるかどうかという点を調べてみますと、一一%ないし一二%であります。細かい数字でありましたらまた申し上げますが、一二%台から一一%台にだんだん少なくなっております。一方、裁判所の統計を見ますと、新しく家庭裁判所で受理いたしました事件のうち、少年院に前に送ったという前歴のある者は一〇%以内であります。そういう点から見ますれば、少年院を出たことにより再犯も少ないし、効果が上がっているというふうに思っております。 問題は、ただいま御指摘のように職員等の問題がございます。実は昨年末現在におきまして少年院の収容現員は約二千八百でございます。職員も実は二千八百いるのでございまして、いわゆるマン・ツー・マン方式による教育というものができるというぐあいに私どもは考えております。しかしながら、ただ数字だけで申し上げるわけにはいきませんので、少年院の職員の質を上げていかなければならない、質を上げるためには待遇もまたよくなければいけないということで、私どもは、その両面から研修あるいは成績のよい者の採用に今後とも努力していきたいと思っているところでございます。
○沖本委員 こういう問題だけで取り上げてみても、一日がかりでいろいろ議論しても問題もあり、具体的にそういうところを十分見せていただいて、私たちも力を合わせてこういう問題の解決に当たっていかなければならないと考えますし、やはりこういう人たちが少なくなることが日本の社会をよくしていく一番大きな根本原因になっていくわけですから、ここだけがよくなったから日本じゅうの社会や青少年がよくなるとは限らないわけですけれども、一つ一つのところから充実していただいて、そういうところを出た人は、一般社会の青少年より社会なり何なりにより責任を感じる、より一層よくなっていくというような人たちをつくってもらわなければならない。そのために多くの税金をかけてやっていただくということになるわけですから、少年法の改正と相まって、この辺は十分検討していただきたいと思うわけです。細かい点につきましてはわが党の同僚議員の方が勉強していらっしゃいますから、また時間を変えてお伺いしたいと思います。 それから次は監獄法の改正作業という点があるわけですけれども、これはもともと刑法全面改正のスタートがこの辺から出たと私は素人考えで理解しているわけですけれども、両方あわせて十分御検討いただきたいと思います。 それで、同じように保護司あるいは更生保護会という点についてでございますけれども、これも同じように社会内処遇という点ですけれども、大臣が後の方で述べていらっしゃる人権擁護委員制度の一層の充実という点の中で、「近時社会の各分野で、自己の権利のみを主張して他人の権利を顧みない風潮が見られ、日常生活の中にもこれに基因すると思われる人権問題が多発する傾向」だと、これは一つの社会傾向でもあるわけですけれども、同じようにこういう一つの時代相を反映する社会相の中から出てくる更生保護を受けていく人、あるいはその保護司のいろいろな世話を受けていく人たちに関してくることになるわけですけれども、いつも私は言っているのですが、ここにも「民間篤志家との協働態勢のもとに、」ということがうたわれているわけですけれども、保護司あるいはこういう仕事に携わっていただく方はほとんど御年配なんです。いろいろ犯罪を犯した人とか見てもらわなければならない人たちの現在の社会の中における一般の状態を考える目というものが相当古いということになると、罪を犯してこれから更生していく人たちと、物の考え方、観察の仕方に大きなギャップが出てくることは事実なんですね。そういう点を考えていきますと、ちゃんとした連動がないわけです。そういうことのために、単に形の上だけこういう方々がおっても、実際面でその効果を上げるということは少ないと考えるわけです。たとえて言えば、大臣がお触れになった他人を顧みないような社会風潮なり、文化とか音楽とかいろいろな社会現象に対する考え方等に対してどういうお考えを御当人がお持ちになって社会を見ていらっしゃるか、そういう人たちを観察なさっていかれるか、こういう点について、十分な検討なり、教育なり、PRなり、あるいはお考えが違っている場合は、いまはこういう時代なんです、全般的にこういうものでありませんかというものがちゃんと持たれなければ十分でない。むしろ逆行してしまうということになると、そこから出てくる報告なり答えなりは違ったものになってきますから、その点現状としてどうなんでしょうか。
○常井政府委員 仰せのとおり、保護司の平均年齢は六十歳をやや上回っておりまして、考え方あるいは行動力において必ずしも十分でないところがございます。かてて加えて、この変動の激しい青少年の心理を理解するということはただでさえむずかしい時代でございまして、年齢の差がそれをさらに困難にしておるという実情でございます。 その対策の一つといたしましては、現行の枠内でいたしておりますのは、青少年の保護観察対象者が参りました場合に、まず二カ月は保護観察官がこれを受け持ちまして、いわば処方せんをつくりまして、その後その処方せんに従って処遇しますように保護司に引き渡すということでございます。 それからもう一つは、さらにそれも困難と思います場合には、直接処遇と申しまして、保護観察官が最後まで引き受けてめんどうを見るというシステムも採用しております。 また、保護観察官と保護司の協働態勢でございますが、処遇の分類をいたしまして、協働態勢ながら保護観察官が重点を置かなければならないもの、それから平等ないし力を抜いていい協働の仕方というようなもの、協働のやりようで対処もいたしております。 しかし、仰せのように保護司の年齢が老齢化しておるという現実に対処いたしましては、新任のときに推薦を保護観察所長がいたしますが、そのときに年齢の点を吟味する、あるいは再任の際におきまして、青少年の心理の理解力あるいは行動力、熱意、そういう点をさらに吟味いたしましてチェックするというような努力をいたしております。 また、協力組織といたしまして、御承知と思いますが、BBSというグループがございます。全国に約八千人おりますが、この人たちの友だち活動を通じまして、若い対象者には若い世代をというような人的資源の利用もいたしておりますが、大変処遇が困難になり複雑になっておるという事態に対処いたしまして、さらに研修あるいは保護司の採用の仕方について考慮を重ねてまいりたいと思っております。
○沖本委員 大臣、これは全体を通じて言えることじゃないかと思うのですね。たとえば一般家庭でこのごろは、子供がおる場合テレビ一台ということはめったにない。一台だとチャンネルの取り合いが現実に大人と子供の間にあるわけです。そういう社会相ができてきているわけですね。そうかと思うと、ボーイフレンドやガールフレンドと車に乗って飛ばすというのは、それが非行とは言いかねるような社会情勢で、そういう一般社会の青少年なり社会人の傾向なりを十分分析していってそれに対応したものができてこないと、ただ部分的に問題点を考えて、年間を通じて活字になる内容のものを出しているにすぎないということに終わってしまう傾向があると思うのです。ですから、法務省の中でそういうものを十分分析していきながら、各方面に反映していけるようなものにしていかないと、法務省内に閉じこもって一つのパータンのものが打ち出されていくという傾向が出てきたのでは、完全な法務行政が実行されるとは言えないということになるわけですから、その辺は、やはり社会に通じたものを御検討いただいて、対応できるだけの予算なり人員なりというものを十分確保していただく。それから保護司なら保護司についても、年齢層が高まっているということ自体は、やはり同じところにとどまっているということなんですね。同じような人が推薦されながら同じ傾向で物が考えられていっているということになるわけですから、その点はお考えになっていただきたいと思います。これは所信表明だけについて申し上げているわけですから、この程度にとどめておきます。 次に、出入国管理令についてですけれども、大臣のお述べになったお言葉の中に「従来の経緯を勘案しつつ、根本的かつ総合的な再検討を進めてまいりたいと存じております。」ということが載っているわけですけれども、この「根本的かつ総合的な再検討」とは何を指すのでしょうか。
○吉田(長)政府委員 たとえば出入国手続の簡素化という点で申しますと、現行の出入国管理令のもとにおいては、査証の必要がなく一時的に上陸できる場合は船舶に限っているわけでございます。これは船中心の時代にできた法律でございます。その後飛行機が発達いたしましたので、飛行機に乗ってきた人もいままで船に乗ってきた人に対して扱っていたと同様な便宜を与えるようにするとか、そういう便利に、簡素化を図っていくということを考えております。それから、たとえば短期滞在者が多いのでございますけれども、九十日以内ぐらいの短期に滞在する人については、そういうカテゴリーを設けて、いままで事前のクリアランスで非常に時間をとっておりましたのをもっと簡素化していくというふうなことも考えております。また、戦前から日本におられました中国の人とか朝鮮半島出身の人の法的地位というものもできるだけ安定化させていきたい、こういう問題を具体的に考えております。
○沖本委員 いまおっしゃったようなことは、従来この管理法を出すということで、いや出させない、出すという議論がここで主に行われて、そういう行程の中でいろいろ議論されたところなんですけれども、私たちは、先進国扱いを受けるわが国が、昔のアメリカの移民法に従った管理令であるということは好ましくない、ちゃんとした法律があるべきであるということなんで、結局はその内容ということになってきますから、そこでいろんな注文がついて、法務大臣が管理法をお出しになっても、いつも反対運動が起こってつぶされてしまうということのないような内容のものをつくっていただきたい。それをつくるためには、やはりここで述べられている「根本的かつ総合的な再検討」というのが、どういう内容の再検討か、総合的なものが織り込まれるのかということが私たちの関心事なんですね。ですから、朝鮮民主主義人民共和国に籍を置く方々なり、韓国籍の方々、あるいはそのほかの諸外国の方々の諸権利が、いまおっしゃったとおりできるだけ擁護されていくような内容であり、あるいは時折、ある部門では非常に緩やかなんですけれども、ある個所だけが急に厳しくなっている内容があったり、そういうものをもっと検討していただきたいということになりますので、いま作業中で今度法律が出るのか出ないのか検討を尽くしたい、こういうふうになっていますから、そのうちに出てくるのだと思うわけですけれども、やはり私たちは、反対の方に回らないで全会一致で賛成できるような出入国管理法が出ることを望んでいるわけですから、そういう方向で御検討いただきたいと思います。 最後なんですけれども、五十二年度を初年度とする五カ年計画で、法務省内の全官庁庁舎の約三分の一を占めておるような老朽、狭隘、あるいは戦後の粗悪材を使用した施設なり何なりというようなものをこれから十分整えていくということを大臣はお述べになっていらっしゃるわけです。裁判所の方でも同じことは言えるわけですけれども、ところによってはまるきり昔の代官所か何かをほうふつさせるようなところで、国民が出入りするのにためらうというふうな内容ですね。あるいはまた、こんなところで登記書類の閲覧なり何なりというようなものが行われておるのかと心配するようなところも、視察の都度見せつけられるわけです。それが今度合同庁舎の中に入るとか、あるいは新しい予算ができて、でき上がるときには今度は一挙に冷暖房の施設というのができてくるわけです。だから地獄から天国へ上がったようなことになるわけです。そうすると、同じ俸給をいただいている職員が、片一方では寒冷、焦熱の中で職務に従事しながら、片一方では快適な職務が遂行できるということになれば、一番人権を重んじなければならない法務大臣が一番人権を冷遇しているという結果が出てくるわけです。そういうものを乏しい中から五カ年計画でいろいろとおやりになるわけなんですけれども、やはりそこで一番しわ寄せを食うのは、一番悪いところで勤務に当たっている人ということになるわけですから、そういう面、勤務時間の都合であるとか手当が違っているとか、何かそこで不公平がないような内容の職務条件、勤務条件というものをつくっていただくということができ上がるまで大事じゃないかと思うのです。そういう点はいかがですか。
○枇杷田政府委員 ただいま御指摘ございましたように、法務省関係の施設が非常に悪いものが多うございます。特に法務局の支局、出張所、検察庁の支部、区検などが劣悪な状況にあるものが多うございますので、先ほど来話が出ております五カ年計画をもって整備したいということで、明年度から第一歩が踏み出せるような予算措置がただいまの政府原案の中では組まれておるわけでございます。 ところが、御指摘のように、劣悪な環境のままでまだしばらくは過ごさなければならないという職員もございますので、備品の整備をするとか、あるいはことに法務局の出張所の一人庁などでは、職員も一人しかおらないということから、奥さんが実際上いろんなことをしていただくというふうなこともございますので、いわゆる奥さん手当と呼んでおりますが、一人庁事務補助経費というのも明年度は従来の二倍半の予算が予定されておるわけでございます。 それから小さな庁でございますと、日ごろの執務環境が悪い上に宿日直勤務の回転も早いというような負担も加わりますので、そういうものも機械警備に切りかえて宿日直勤務から解放するというふうな措置も明年度大幅に取り上げるという予定にいたしております。そのほか、先ほど申し上げましたけれども、能率備品であるとか、あるいは職員のための備品であるとかいうものも大幅に整備をして、できるだけ職員が快適な状況で執務ができるようにすると同時に、また申請人の方々にも御不便をかけないような庁内の整備を図っていくつもりでございます。
○沖本委員 いままで述べましたことは、ただ、大臣の所信表明をお伺いして疑問に思う個所をちょっと触れてみただけということになりますから、詳細な点につきましては同僚議員が後ほどいただく時間を十分使って詳細に御質問したいと思うわけですけれども、そういう点についてひとつ、たとえば施設の点は、いま申し述べたようなところで案外法務省が一番人権を無視しているということが結果的に出ているというのがあるわけですから、十分端々のことは目が届かないことが多いわけですから検討していただいて、ただ単に一年に一回私たちが委員長のお供をして視察して見つけてきて、ここはああだこうだと御指摘申し上げるところだけが改善される、あるいはその辺がいろいろと検討されるということでなしに、やはり十分御調査をいただいて、そういう点ができるだけ少なくなっていくようにお計らいいただきたいと思います。 それでは法務省の方は結構でございますから、裁判所の方へ移らせていただきます。 午前中に横山先生から御質問があったのですが、私たちも疑問に思いますので、最初に、司法修習生の国籍の制限ということでございますが、けさほどの横山先生のお話であらかた尽くされておるわけですけれども、最高裁は、修習制度は法曹人を国費で養成している、修習生は兼職禁止、秘密を守る義務、公務員に準じた給与支給など、実質的には公務員と変わらないような点を、日本の国籍を有しない者は削除するという点の理由として挙げられているということになるわけですけれども、諸外国ではこういう例がないという点は新聞も指摘しているのですね。そういう点もあるわけですから、少なくとも在野の法曹資格を外国籍の人々に開放するというのは、やはり国際社会の一員としての立場で考えなければならない問題だと考えるわけですけれども、この点についてはいかがですか。
○勝見最高裁判所長官代理者 午前中横山委員にお答え申し上げたとおりでございますが、裁判官会議におきまして十分検討させていただきたいと考えております。ただ、ただいまおっしゃいました諸外国に例がないということでございますが、私どもで十分調査しておりますけれども、もとよりのことでございますけれども、外国の制度と比べます場合に、修習ないしその後の研修といいますか、そういう実態につきまして、果たして諸外国がどんな制度をとっておるかということが前提になっておりますので、ある外国で全然そういうことがないということで当然にわが国でもそうしなければならないということにはならないというふうに考えておりますけれども、いずれにいたしましても、諸外国の例も十分参照いたしまして裁判官会議において検討させていただきたいというふうに考えておる次第でございます。
○沖本委員 三権分立の中の司法権でございますから、独立して十分その城を守っていただき、公平な迅速な裁判をしていただかなければならないわけですから、そういう点はもう十分お持ちになっていただきながら、なおかつ裁判所たりといえども国民のための裁判所であるという点もやはりお考えになっていただいて、国民が疑問を持ったり、国民が納得できないというような点は、国民を十分理解をさせる点に立つとか、あるいは国民の考えているところをやはり十分検討して、なるほどとお考えになれば、やはりそれに応じたような内容のものを御採用いただくという点はやぶさかでない、こういうことも十分ごしんしゃくいただきたいと考えるのですね。そういう点からも、これは一般紙が社説で取り上げているわけですから、社説というのは一つの国民の考え方を代表して言っているということになります。また、私たちがここで述べることも、国民が疑問に思うことをいろいろ国民の立場からお伺いしているということになり、そういう問題について国民が最高裁と接触できるのは当委員会が唯一の場所であるという点もお考えをいただきたいというふうに私たち考えるわけですから、裁判官会議で十分検討するということでございますから、それもひとつお考えいただきたいわけです。まあ皮肉った言い方になるわけですけれども、ちょうど鬼頭問題が起きましたから、その前の流れは司法の独立という問題で矢口人事局長時代すったもんだここで議論やったわけですし、それが済んで静かになったようなところにぽつっと大きな問題があり、何を考えるにしても、いま弾劾裁判所で鬼頭問題がかかっておるというような世の中の状況の中から物を考えますと、何でもかんでも疑問に思って国民の目がそういうところに進んでいく、こういうことにもなるわけですし、そういうことを基本にして、またそういうところをチャンスにして、裁判所の中を国民にある程度わからせてあげる、理解させるというふうな場所にもひとつお考えいただきたいわけですね。ですから、司法修習生ということになると、何だ、鬼頭さんみたいのができるのかなと、こう一発で考えるというふうなことになりますから、そうではないんだ、公平にその制度が生かされており、裁判所の方としても公平にこういう問題を扱っておるというふうなところに立った物の行き方でお願いしたいわけです。 これは同じように引っかけたと思われては困るのですけれども、去年もこの点が問題になって、いろいろと話題になったわけですけれども、これは去年のお答えで済んでいるのかどうなのかということになるわけですけれども、これは二十八期任官拒否に反対する会の告発という形でここに出ているわけで、これは去年当委員会でいろいろ議論が出たところです。そこで、その中に「強引な事前の任官辞退勧誘」という題で、「現在の裁判所では相当強い訴訟指揮が要求されるが、君に向いていないのではないか。」、またある教官は、「女性は結婚・出産などのため任地その他で困ることが多い。裁判官になるのはどうかな。」またC教官は、「君は成績が悪い。今から任官をやめたらどうだ。」あるいはD教官は、「「私達がこうやって事前に意見を言うから、今まで任官拒否が少なかったのだよ。」と暗に辞退を強要。」ということで、「数多くの任官希望者が悩み抜いた末、次々と任官を断念せざるを得なくなり、修習生の間で重大な問題となった。」また、「「裁判官は優秀でなければならない」「可・不可といった成績が少しでもあったら裁判官希望者としてふさわしくない」と「成績」を強調する。優秀な裁判官は誰しもが望むことであろう。しかし最高裁・研修所当局のいう「成績」とは、即日起案に象徴される「迅速な事務処理能力と判例・判決の形式に関する知識」であり、それ自体専ら官僚的「質」を意味しているのである。」「また、成績を強調することにより任官希望者が起案、二回試験の準備に埋没せざるを得ない状況を最高裁は作りあげている。その結果、任官希望者が、修習生間の自由な交流や研究会活動に参加することが極めて困難になっている。」こういう点がここに述べられているわけですね。一方的な問題だけで私は申し上げるわけじゃないのですけれども、一つの不満あるいは問題点として指摘してきているということになり、ひっかけるといえば、こういうことがあるから変な人が出てくるのと違うかというところに議論を引っ張っていきたくなるようなことにもなるわけですね。 そういう点もあるわけですから、人事の問題は、この前矢口さんは、いや、このことはもう絶対にみんなに心配させたり疑問を持たすようなことはしない、公正にちゃんとやっているから任しておけ、最高裁を信じてくれ、こういうことのやりとりだったわけです。そういうことになるわけですから、やはりある程度国民の中にわかるような、どういうものか私わかりませんが、再任なりあるいは新任をする場合の資質の内容が、ある程度国民が公平だな、こう理解ができるような内容のものが公にされるとか、こういう場所である程度のものが発表されておって、わかるような何かの御発表があっていいのじゃないかというふうにも考えますし、後から御質問しますけれども、そういうものが裁判官の配置の問題とか、定員の関係だとかというところに皆いくのではないだろうかということで、結局は司法の独立というお城の中に閉じこもってしまって、そこだけでがちっとなってしまっていて、われわれがさわったり見たりするすき間もないようなところにあって、どんなに疑問を持ってもそれは疑問なりで突っぱねられてしまうのではないかという危惧があるわけですね。そういう点についていかがですか。
○勝見最高裁判所長官代理者 大変御質問がいろいろございましたので、もし私答えを落としましたならば御指摘いただきたいと存じますが、まず、金敬得氏の問題でございますが、ただいま御指摘がありましたように、各新聞の社説それから当委員会における御議論、御意見等につきましても、裁判官会議に御報告申し上げまして慎重に検討さしていただきたいというふうに考えております。 次に、司法修習生に対するいわば逆肩たたきといいますか、という問題についてでございますが、一般論として申し上げますれば、どこの社会でも同じであろうかと存じますけれども、すぐれた後輩をたくさん欲しいということは、私どももう申し上げるまでもないわけでございます。一方、教官は、自分のクラスを持って修習生の指導に当たっているわけでございますので、修習の終了前におきましては、いわば職業の進路指導というものも当然あってしかるべきであろうかと存じます。ただ、その際に、ただいま御指摘のような形で、どのような形で行われているか、私どもつまびらかになし得ませんけれども、やはり自分のクラスの具体的な修習生について真摯な態度で進路指導をしてくれている教官は確かにあろうかと存じますし、その際に、いわゆる逆肩たたきというようなことがあるいは言われているかもしれませんけれども、それが一種の実質的な新任拒否を最高裁の指示に従ってやっているというようなことでは決してないのでありまして、そこはひとつ教官の良心的な行動だと私どもは信じている次第であります。 なお、司法の独立をいわばかさに着ましてすべてのことが秘密裏に行われる、あるいは国民の前に公開していないのではないかというような御批判でございますが、ここで主として問題になりますのは人事の問題ないしはそれに類する問題が多かろうと存じますが、やはり事、人事の問題に関しますと、どうしても委員会の席上においてもなかなか申し上げかねる面もあるわけでございますので、その点はひとつ御理解と御了承をいただきたいと存じます。私どもといたしましては、国民の当委員会の席上でできるだけのことはお答え申し上げているつもりでありますし、今後ともそうしていきたいというふうに考えております。
○沖本委員 最初の間はきわめて一般的な疑問について申し上げるわけで、私自体が詳しいことを事務的に知っているわけでもありませんから、自然にこうわいてくる疑問についてお聞きするわけで、裁判官が優秀な後輩を持ちたい、それは当然だと思いますけれども、同じように国民の立場から考えますと、優秀であるかわりに偏向的な人ができてもらっては困る。きわめて柔軟な考えを持って公平に物を見ていただき、公平に内容を聞いていただいて、公正な裁定を下していただく方が必要だ。こういうことになれば、やはりいろんな社会事情に通じ、全般に通じるような柔軟なお考えをお持ちの裁判官の誕生を望むということになるんじゃないか、そういうふうに思うわけですね。ですから、勝見人事局長を前に置いて言うのは非常に悪いのですけれども、国民的にじっと考えてみて、鬼頭判事補に判決をもらった人はいまごろどう考えているだろうなというものが出てくるわけですね。あんな方は特殊な方であってめったにおるわけではないけれども、現実にああいう方が誕生していることは事実であったということにもなり、あの人を動かした背景的な方もいたようにいろんな記事の中からうかがえる点も、事実か事実でないかはそれは別にいたしましても、あるということになると、やはり十分な身分の保障が与えられるかわりに、柔軟な公平な考えを持つ裁判官の誕生をより多く求めるのが国民の立場であるということになりますから、いまここに出ているようなものを私たちは活字で触れますと、そういう話を聞くと、ぎょっとなって聞くようなことになるわけです。去年も問題になりましたけれども、お酒の席上で教官がいろいろ女性におっしゃったということもあるわけで、矢口総務局長のお口にかかると、皆その方が本当だなというふうに聞いているうちになってしまうんですよ。その辺を国民の前にある程度わかりやすいような形で最高裁というものをこういうような場所でおっしゃっていただいて、わかるようにしていただけたら国民としては非常にありがたいことだ、こういうふうに考えるわけでございます。それは私の意見でございます。 さて、こういうことを伺うのですが、三年に一回ぐらいずつ裁判官の任地がかわるということがあって、いわばいろいろな事件を担当して、ちょうどその任地で脂が乗って、さあこれから手がけようというときにぱっとかわるということで、結局その都度、そのしわ寄せが国民に来ているのじゃないかという面が一つ。 もう一つは、法務省も同じことを——法務大臣がおるとき言ったらよかったのですけれども、前の法務大臣がここにいらっしゃるからいいわけなんですが、検事さんにしても、裁判官にしても、優秀な方が最高裁とか法務省の本省に割かれるわけですね。その方は実際に第一線には当たっていらっしゃらないということになると、それじゃ第一線で担当していらっしゃる方は優秀でないのだろうかということになるわけです。最高裁の方で、矢口総務局長の頭の中でくるくるっと人員の配置が終わる、そういうことがあるのと違うだろうか。これは素朴な考えなのですが、そういう点についてはいかがですか。
○勝見最高裁判所長官代理者 まず、人事の異動の問題でございますけれども、御承知のとおり、裁判所の場合は僻地にまで裁判所がございまして、しかも事の性質上等質の裁判官が配置されることが要請されているわけでございます。もちろん忙しい大きな裁判所あるいは比較的暇な裁判所の差はありますけれども、裁判官としては等質な者がいなければならないということが要請されるわけでございます。その意味で、勤務条件、勤務地におけるいろいろな生活環境等の問題もありまして、ある一定のところに長く置くこと自体のメリット、デメリットの問題がやはりうらはらの問題になろうかと存じます。私どものいまの任用形態、また現実の裁判所の状態から言いますと、どうしても異動を行わざるを得ない。それが三年が適当かどうかは、あるいは御批判のあるところだと思いますし、現に転任の際に事件の関係である程度の停滞を来すことも否定し切れない面がございます。先ほど申し上げましたように、反面、それをいつまでも長く一定の個所に置くことのデメリットもございますので、そこのところを勘案しながらやっているつもりでございますが、将来とも判事補、特に十年の間の三カ所の異動につきましては、いまのような形でやらしていただきたいと考えておりますし、やるつもりでおります。 次に、法務省なり事務総局との問題でございますが、これも毎度御指摘をいただく点でございますけれども、特に優秀であるから法務省あるいは事務総局ということではございませんで、事務総局なり法務省なりで裁判官としての経験を積んでいなければならないということを要請されるポストが相当数ございますので、そちらの方に割愛しているという事情にあるわけでございます。しかし、事務総局のすべてのポストを裁判官のいわば有資格者で占める必要はないわけでございまして、そういう資格、素質を必要としないポストにつきましては一般職の職員を充てていることはもうすでに御承知のとおりであろうかと存じますし、何も事務総局にいわゆる有資格の人をたくさん抱え込んで、そのために一般の裁判事務が遅滞になるようなことをしようと思っているわけでもございませんし、今後もいたすつもりはございませんが、やはり最小限度の者は、私ども充て判と称しておりますけれども、どうしても必要であろうと考えておる次第でございます。
○沖本委員 いま人事局長がおっしゃったように、あながち裁判官をそれに充てなくてもいいのだ、事務的な問題の場合にはほかの事務職員の中からそれに充てていくということになるわけですが、同じように事務官なり書記官なりの中からそういう別の場所にお使いになっていく、そして結局は定員が不足していく、実際の裁判が行われるについては、それがほかの人に大きな仕事量になってかかっていくという人員配置にならないか。なっているという指摘も日弁連あたりからあるわけですね。アンケートの中からもそういうものが出てきておりますけれども、そういう点についてはどういうお考えでいらっしゃるわけですか。
○矢口最高裁判所長官代理者 司法行政の事務と申しますのは、これは改めて沖本委員に御説明申し上げるまでもないわけでございますが、やはり裁判というものがわかってないとそのおぜん立てができないという面がございます。そういう面で、第一線の業務に十分習熟しておる方の中から必要な人員を割いて、裁判官も司法行政に使っておりますし、また書記官の方々も事務局の方向に使っておる、こういうふうでございます。実際のところ、一般職で申しますと、書記官の資格を持っておられるような方が相当数事務局におりますが、こういう方々も決して事務局に行きっきりということではございませんで、また立ち会いの仕事の方に戻っていただくということで、それはそれで批判があろうかと思いますが、現在ジグザグの任用コースと申しますか、そういう方向をとっておるわけでございます。 この資料の中の十九ページでございますが、現在員と欠員の状況がございます。それをごらんいただきますと、書記官のところに百人ほどの欠員がございます。一方、事務官のところに、三角で書いてございますが、三百人ほどの過員があるという状況でございます。トータルいたしまして百三十名の欠員と相なっております。これは午前中の当委員会で人事局長が御説明したところでございますが、書記官研修所に入っておるような人たちが三百人近くおるということで、この事務官の過員が出てきておるわけでございます。一たん書記官研修所に入りますと、その人はいわゆる事務局の仕事はもうしないわけでございまして、そこを卒業いたしますと書記官の方に転用されていく。ただ問題は、一度書記官になりましても、またある時期には事務局の方の仕事に戻ってくるということもございます。そういう複雑な経路をたどっております。現在のところ書記官の欠員百十人ぐらいということは、決して書記官の充足を怠っておるというわけでもございませんし、また裁判所職員の全体の問題として見た場合にも、数年前には全体の欠員が三百名近くございましたが、現在その半分以下の百三十名ということになってまいっております。この点は今後も鋭意充員に努めまして、名実ともに職員の充足をいたしていきたい、現在のところはそういうふうに考えておるわけでございます。
○沖本委員 昨年も私、簡裁の中のことについて、大阪の弁護士会がシンポジウムでやって調べたものの内容からいろいろ引いて御質問したわけです。この中でも、結局、簡裁のことを述べられているわけですけれども、簡裁一つ挙げて地裁に当てはめていけばある程度の想像はついていくことになります。それとは別に、なかなか明かしていただけないそうでございますが、去年もこれはお伺いしたかとも思うのですが、東京の簡裁の裁判官数が十名で、民事訴訟一年間の処理件数五十年度で一人当たり五百八十二件、民事訴訟事件の現在の手持ち件数一人当たり百四十二件、刑事訴訟事件一年間の処理件数一人当たり二百九十三件、同じ手持ち件数が百十三件、こういうふうなメモをいただいたわけですけれども、同じように、こういう点から見ると、一人当たりの処理件数の内容が非常に多いということになりますが、一番多い東京とか大阪の地裁の一例をお引きになっていただいて結構でございますけれども、年間の裁判官数と一人当たりの処理件数をお教えいただけたらと思います。
○矢口最高裁判所長官代理者 東京の例で申し上げてみますと、東京地裁の本庁でございますが、特例以上の裁判官、すなわち一人前に裁判ができる方々の年間の受ける件数、それは当然処理件数に当たるわけでございますが、それから大体手持ちにどれくらい常時持っておるかという件数を申し上げてみますと、大体年間平均の処理件数というのは百六十件前後でございます。また手持ちいたしております件数は二百件をちょっと切るというような状況でございます。これが民事の事件でございます。また刑事の事件は、年間大体百五十件を処理いたします。また平均手持ち件数は七十件ほど、こういう状況になっております。
○沖本委員 それで、いま御発表のこういう処理件数で、一人の裁判官に対する負担というものは、御経験なりあるいは最高裁の一番御担当の立場として、これで十分なのか、負担が重過ぎるのかという点はいかがなんですか。
○矢口最高裁判所長官代理者 その点の御質問にお答えを申し上げるのは実は非常にむずかしいわけでございまして、やはりある程度の個人差もございますし、また同じ人間でも、率直に申し上げて年齢による差というものもできてまいるわけでございます。一概にこれくらいがいいということは申し上げかねるわけでございますけれども、私自身の乏しい経験から申しましても、民事事件でございますと、二百件から二百五十件の負担件数というものは、ある意味では、処理の能率という点だけから見ますと大体妥当なところではないか、むしろ手持ち件数がそれより下がりますと、なかなか処理の能率が上がらなくなるということがございます。しかし、手持ち事件が少なければ、その分、かゆいところへ手も届くということにもなりますし、また一件一件につきましては審理を十分にできるということにもなりますので、この点も一概には何とも申し上げかねる。ただざっと見まして、二百件前後の手持ちであるならば、前よりも、むしろ二百件を少しオーバーしたぐらいの手持ちであるならば、大体いいところではないかというふうに思います。また、処理件数も百七、八十件というものは決してそう大変な件数ではないと考えます。 ただ問題は、先ほど数字を挙げて申し上げたところはあくまで平均でございますので、その平均というところに問題があろうかと思います。そういう平均数字が出るということは、それよりもかなり多くの手持ちを持っておられ、多くの処理をしておられる方もあるということを示しております。そういうことになってまいりますと、一部の方の中にはやや負担が重過ぎるという方も出てくるのではないかということで、この辺のところはなかなかむずかしい問題であろうかと思いますが、一応出てまいりました数字としては、そう無理のない数字ではなかろうかというふうに現在思っております。
○沖本委員 いわゆる公正、迅速な裁判を国民は求めるわけですけれども、そういう立場からしまして、国民の要求に十分こたえられる裁判所の現在の必要な人員、そういうものはどれぐらい必要なのか。それに対していまはどれくらい——予算の関係もあるでしょうし、裁判所の機構なり、いろいろ御都合はあると思います。それよりもまず大事なことは、国民の求めるものに対してこたえ得る配備、人員ということになりますし、またそれだけの方なり、不足しているならいる状態で、その方々が十分に休養がとれるような状態で裁判を扱っていらっしゃるのかどうか、その点をお伺いしたいのです。
○矢口最高裁判所長官代理者 あるべき裁判官の数というものを、抽象的に、その時を離れまして設定するということは、これもまた非常にむずかしい問題のように存じます。 ただ、終戦後新しい裁判所が発足してまいりまして三十年を経過したわけでございますが、そういった時の流れから見てまいりますと、私どもは、これまでの歴史は日々生起してくる事件というものを一生懸命処理した三十年であったというふうに申し上げて差し支えないのではないかと思っております。しかし、どんなにできる人でも、三十年、十年一日のごとく事件処理に朝から晩まで取り組むということになりますれば、そこには一定の休養というものを必要とする、元気回復のため新しい転換というものを必要とすることは当然考えられるところでございまして、ようやく修習生の中からの裁判官の希望者の数も、徐々にではございますがふえてきております。そういった判事補の充員、そしてそれは来るべき裁判官の充足にもつながってくるわけでございますので、今後はそういった点も加味いたしました、長続きのする、しかも日々新たな態度でもって執務に取り組めるというような方向での体制の強化というもを考えていきたいと思っております。
○沖本委員 いまのお答えですと、これからだんだんふえてきたらそういうところまでいくんじゃないか、ということは、裏返すと、いまはそうではないということが言えるのですが、別の面から、書記官とか事務官とか速記官あるいはタイピスト、こういうような人たちの方からの問題点を拾っていきますと、持ち帰りがたくさんあるという問題、東京の方のアンケートからいくと、約八〇%の人は持ち帰っているというアンケートが出ているのですね。これはそこの立場の人からの報告だけですから、われわれは実態がわかるわけじゃないのですけれども、そういうものも出ていますし、そういう人たちのいろいろな問題点を総合していくと、いや、それはそこらだけの問題なんんだというふうにお答えになれば、それじゃその裁判官の一人の仕事に対して、いろいろと下へ全部おりていっているということになりますし、それから、そういう人たちのいろいろな問題点が言うとおりあるのだ、問題点があるのだということになれば、それは集約すると、裁判官のところに問題が起こってくるというふうなとらえ方ができるわけですね。そういう点から申し上げておるわけで、余りもう時間がなくなってきたので詰めていけないから、またほかの方にやっていただこうとは思いますけれども、結局はいろいろな地裁のそういうふうな問題点が今度簡裁へずっとおりてきているということで、去年は簡裁の問題でいろいろ申し上げたわけです。 そこで一例を申し上げますと、たとえば職業病について、これも去年いろいろ申し上げましたけれども、十分にその点御配慮いただいておるのかどうかということなんです。たとえば民間ですと、頸肩腕症候なら、そういう症状にかかった場合は医者にかかって一時休養させておいてまた職場復帰させるなどならしていく期間をとってあるわけですね。その間ちゃんと補償が十分されていっているというシステムがとられているわけです。ところがいろいろなデータを見させていただきますと、五十一年十一月十一日現在で、昭和三十二年からの公務災害補償審査請求事件の調査表というものから拾っていきますと、四十四年からずっと頸肩腕障害が出てきているわけです。そして四十八年には、速記官で東京地裁では十四名、事務官で一名、これは審理中ということになっているのですけれども、判定からいくと公務上と認定されていない。ほとんど公務外になってしまっているということで、伺ってみますと、三十二年に平塚の簡裁廷吏一名が脳溢血で公務上と認定された。これは宿直中宿直を抜けて出ていって脳溢血にかかったので、その抜けていった理由は裁判官の方の月給を届ける途中だったということで公務にしていただいた。そのほかは公務の認定がないということなんですね。ほかの公務員の方は人事院の方へいろいろ審査を請求するけれども、裁判所の場合は最高裁ですべて賄っていらっしゃるということになるわけなんで、一般社会でも非常に、現在人権問題から職業病というものは真剣に考えられていきつつあるわけです。特に速記とかタイピストとかいうふうな人たちはかかりやすい。また社会的にもこの病気が非常に重視されていっているということになるわけで、私がもらった資料からいきますと、公務中というのは一切もう認められていない、ほとんど認められていない。それは医者の診断なり何なり諸条件がついてはっきり本人が公務中であるという断定ができないというようないろいろな条件もあると思いますけれども、これはどこかで腕詰めたとか、用事で公務を行っている間に車と衝突してというようなはっきり見えるものではありませんから、そういうところで病気になれば、それだけほかの人がその仕事を受け持たなければならぬという事態が起こってくるわけです。こういう面が十分しんしゃくされないとやはり問題になってくるということになりますが、この点いかがですか。
○勝見最高裁判所長官代理者 職業病につきましてその対策は私どもの所管でございまして、そのための施策を十分講じておるつもりでございますが、不十分な点がありましたらなお一層推進いたしたいと存じます。 現実に公務外か公務内かの認定の数字を挙げられたわけでございますが、特に裁判所職員の場合でございますので、書痙、それから腱鞘炎、頸肩腕症候群、この三つの点だけについて申し上げますと、昭和四十年以前から五十一年までの数字でございますが、認定件数が合わせまして七十二件のうち、公務上と認定した者が三十三、公務外と認定した者が三十九、このような数字に相なっておるわけでございます。先ほど御指摘の数字は、災害補償審査委員会の判定についての数字かと存じますが、これは当局側が公務外と認定した者についてのいわば不服審査の結果のことであろうかと存じます。これは先ほどの書痙等の病気だけでなくて、一般の傷病も含めてでございますが、その件数だけで言いますと、判決結果といたしましては、三十二年から四十六年までの件数で、十四名不服審査申し立てに関する判定結果が出ておりますが、そのうち公務上と認定された者が二名、外と認定された者が十二名でございます。恐らく御指摘の数字は、いわば災害補償審査委員会の判定結果についてであろうかと存じますが、その前の認定につきましてはそのような数字の対比になっておりませんので、この際申し上げさせていただきたいと存じます。
○沖本委員 もう時間が余りないので突っ込んだことをお伺いできませんが、もう一点、これは労働基本権というものについて言うことになりますけれども、昼休みの休憩時間中に職員が職場で集団的に話し合うことを禁止した例があるということを聞いているわけなんです。それから、いろいろなことで組合の人たちが外から講師を呼ぶと、庁舎内での会場は使用させない。それから、同じように会場を使用させない例として、青年部や婦人部に貸さないという例が出ているのです。その反面、持ち帰り仕事が八〇%あるということを申し上げましたけれども、同じように昼間の休憩時間に仕事をやっているというのもパーセンテージで出ているわけです。そういうこともいろいろあるわけですけれども、裁判所だけは別なんだというお考えがあるのじゃないか。あるいは最高裁ではそうではないけれども、そのほかの地裁なり何なりというところになると、所長の権限で、皆お諮りになりますから、そうすると、やはり所長のお考えなり何なりというものがそういうものを許さないということで、行政なり何なりという仕事が一面あるのだということよりも、やはり所長さんの感情上の問題でこういうものが許されないということが起こっているのじゃないかということに考えられるのですけれども、そういう実例を述べてきておられるわけですが、こういう点についてはいかがですか。
○勝見最高裁判所長官代理者 職員組合に対しまして、庁舎をいかに利用させるか、させるとしてどの程度の利用が許されるかという問題につきましては、いわば庁舎というものはあくまでも役所の公務のための施設でございますので、組合に対する便宜供与に当たるわけであります。便宜供与が高じますと、いわゆる不当労働行為としていわば禁ぜられておるところでございますけれども、そこの点が具体的なケースとしてなかなかどこまでが便宜供与なのかという問題が出てこようかと思います。裁判所におきましては、御指摘の婦人部あるいは青年部に対しましては従来庁舎の利用を許さなかったところもあったわけでございますが、昨年の六月、前人事局長と組合との交渉におきまして、青年部、婦人部に対しては貸すことにする、しかしその利用目的はあくまでも組合の目的の範囲内であるということ、かつその婦人部、青年部が組織内のはっきりした組織であるということを前提として貸すという方針を打ち出されまして、全国にその指示をしておるわけでございまして、昨年の六月以降はその種のことは消滅しているというふうに私どもは考えております。
○沖本委員 私の乏しい経験なんですけれども、いろいろ地裁の方を勉強に回らしていただくと、しばしばそういう話題が出てくるのですね。まあ真偽のほどはわかりませんけれども、いろいろじっと聞いていると、先ほども申し上げたように、裁判所というのは神聖侵さざるところであって、そういう者が集まったりいろいろやったりするのはおかしいんだというふうな、所長さんはそういう感情をお持ちではないかということから、やってはいけないということになるんじゃないかというふうに考えられるのですけれども、やはり基本的な労働権、基本的な人権というものは認められているわけですから、そういうふうなことになってくると、神聖な裁判所であるというところを離れて、勤務時間外にはいろいろなことが労働者は職場においてできるんだというふうなことをもう一度見直していただいて、その点働いている人が納得できるような対応の仕方をしていただくことが大事じゃないか。それは労働条件にもつながってきますし、やはり働く人の意欲にもつながっていく。反感を持って働いていたんじゃいい仕事ができるわけありませんし、その点十分今後よく御考慮していただくことが必要ではないかというふうに考えられます。 時間もたちましたので、きょうはこれで終わらせていただきます。ありがとうございました。
○上村委員長 次回は、来る十五日午前十時理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午後四時五十三分散会 ————◇—————