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80回国会衆議院1977/03/18

大蔵委員会 第11号

発言数
136
登壇者
16
会派数
5
開催日
1977/03/18

会議録

小渕恵三自由民主党

○小渕委員長 これより会議を開きます。  所得税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  ただいまより、両案について参考人から意見を聴取することにいたします。  本日御出席をいただきました参考人は、税制調査会会長小倉武一君、同志社大学教授大島正君、名古屋市立大学教授牛嶋正君、全日本労働総同盟生活福祉局長小寺勇君、日本大学教授北野弘久君の各位であります。  この際、参考人各位に一言申し上げます。  参考人各位には御多用中のところ御出席いただきまして、まことにありがとうございます。本委員会におきましては、目下、所得税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関する法律の一部を改正する法律案を審査いたしておりますが、両法律案について、参考人各位のそれぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願いいたします。  なお、御意見は十分ないし十五分程度にお取りまとめをいただき、その後、委員からの質疑にお答え願うことにいたしたいと存じます。何とぞよろしくお願い申し上げます。  それでは、まず最初に小倉参考人からお願い申し上げます。

小倉武一税制調査会会長

○小倉参考人 私、ただいま委員長から御紹介がございました税制調査会長の席を汚しております小倉でございます。     〔委員長退席、山下(元)委員長代理着席〕 したがいまして、税制調査会のことを中心に少しお話を申し上げたいと思います。特に参考になることは余りなかろうかと思いますが、ちょっとお耳を汚したいと思います。  税制調査会、ただいまの調査会は、昭和四十九年十月に時の総理から、「社会経済の進展に即応する税制のあり方」いかんという諮問を受けまして、四十九年それから五十年、さらにまた五十一年というふうに答申をしてまいったのでございますが、昨年はちょうど、もう一昨年の暮れからでございますが、昭和五十年代前期経済計画というものの策定があり、あるいは国会に参考資料として政府の方から提出されました財政収支見込みの試算というようなものもございました。そういうものを前提にする限りは、少し長期的と申しますか、中期の経済計画をある程度頭に置いて、これに即応するような税制のあり方を考える必要があろうということ、その審議を実はいたしたわけであります。もう昨年の暮れも少し押し迫る十二月に入るまでそういう審議をいたしてきたわけでございます。できれば本年度、五十二年度でございますが、五十二年度の税制のあり方にも、この中期税制のあり方についての考え方が参考になればというふうなことで急いでまいったのでございますけれども、何しろ項目も非常に多うございまするし、また経済の事情も必ずしもよく展望ができないということもございまして、十二月に中期税制のあり方については中間報告をいたすということにとどまったわけであります。  中期税制のあり方につきましては、税制調査会としましては一部会、二部会というふうに分けまして、一部会は所得税等を中心にし、二部会では間接税あるいは資産税といったようなものを中心にして審議をしてまいったわけでございますけれども、以上のようなことで、各部会の部会長から総会に報告するということで、次には五十二年度の税制のあり方に移ったわけでございます。その結果、すでに御承知と思いますが、税制調査会といたしましては、今年になりまして一月に入りまして答申をいたして、それで調査会としての会合はとりあえず終わりました。自後、調査会は開催いたしておりません。  そこで、五十二年度の税制改正についての考え方でございますけれども、一つは、ただいま申しましたような中期税制のあり方というようなことを考えてみますと、わが国の財政、したがいましてまた税制のあり方ということについては、どうも根本的に考えてみる事項が多い。というのは、いわゆる高度成長時代のように税収の確保が比較的容易に、また自然増収が相当期待できるというようなことはなかなかもう期待できなくなる。むしろ減税ではなくて増税ということを相当考えなければならぬ事態ではなかろうかということは、中期税制のあり方を審議している途中、どうも大方の委員がそういうことについて理解を深めてまいったというようなこともございまして、五十二年度の税制改正についての審議については、そういうことが一つは背景になったかと思うのであります。  そこで内容でございますが、そういうような次第でございまするので、大幅な税制の改正というわけには五十二年度はまいらないだろうということは一つの前提的な気分であったわけでございますが、しかし、景気の状況というようなことを考えてみますと、どうしてもここで景気を一段と浮揚する必要があるということから、大幅減税というようなことがもうすでに巷間言われておりまするし、政党の方面でもそういう御主張もあらわれておるということでございまするから、まずそういうことが大きな議題になったことは申すまでもございません。  そこで、これは所得税を中心にする減税の問題になるわけでございまするけれども、この所得税につきましては大幅減税、俗にいう——俗にいうと言ったのでは失礼でございますかもしれませんが、一兆円の減税ということがもうすでに言われておりましたのでございますが、そういう大幅の減税、それからそこまではいかなくとも、いわゆる物価調整減税という程度のことは考えたらどうか、こういう御意見、あるいはどうもこういう財政の状況だから、物価は上がっているけれども、やはり国民ないし納税者にはまたことしもがまんを願わなくちゃならぬのではなかろうか、こういう御意見と、分けてみますればそういうような三通りの意見がございました。いろいろ審議をいたしました結果、どうも大幅減税というわけにもまいらないから、せめて最小限度必要な物価調整減税というようなことに所得税を考えたらどうか。したがって、また、それに関連しての住民税ということを考えたらどうかということになったのが一点であります。  もう一つは、租税特別措置の整理合理化の問題でございます。これは一昨年の税制調査会でずいぶんいろいろと考え方、項目等を整理いたしました結果、ある程度の整理合理化に一歩を踏み出したわけでございますが、五十二年度はそれに引き続いてさらに合理化を進めるということで参ったわけでございます。その中心になりましたものの一つは利子配当課税の適正化でございますけれども、そのほか、交際費課税の強化等を内容といたしたわけでございます。  それから、新しく増税をお願いするというものについては、法人税あるいは所得税にはこの際触れられないけれども、景気対策であるとか中期税制のあり方等と余り関連がなしに考えられるものといたしまして、印紙税と登録免許税については、背後にある負担力のことを考えて、若干の引き上げを図ったらどうかというふうなことが主として答申の内容になっております。  なお、これは昨年あるいは一昨年に引き続きでございますが、社会保険診療についての特例措置につきましての是正方ということをさらに重ねて答申をいたしたわけでございます。  以上のようなことが五十二年度の税制に関する税制調査会の答申でございますが、承るところによりますと、国会におかれましては、各党御相談の上、所得税の減税についてさらに三千億ということがお決まりになって、その関係の法案がやがて御審議になるというふうなことでございますが、税制調査会として、そのことについて特にその後、会を開いたわけでございませんし、特に私からコメントといいますか所見を申し上げる筋でもございませんが、税制調査会としては、調査会の答申の最小限度の物価調整のための減税がぎりぎりだろうというようなことを考えておったことを申し添えておきます。  なお、今後、五十二年度に入りますと、再び中期税制のあり方について検討を進めなければならぬと思いますが、国会方面でのこの所得税の減税の上積みについては、今後の中期税制のあり方についてできれば支障のないように、一年限りのことにしていただいた方がよろしいんではなかろうか——そういうように承っておりますが、その方が調査会といたしましての審議の関係においても好都合かと存じております。  簡単でございますが、以上をもって私の冒頭の陳述は終わりたいと思います。どうもありがとうございました。(拍手)

山下元利自由民主党

○山下(元)委員長代理 次に、大島参考人にお願いいたします。

大島正同志社大学教授

○大島参考人 私、ただいま御紹介にあずかりました同志社大学の大島正でございます。  本日、参考人として、今度の所得税法の一部改正について何か意見を述べろ、こういうことでございますが、私は専門が文学でございます。税法のことなんかは、素人としては素人なりの理解がございますけれども、専門家ではありませんので、そういうことは避けたいと思います。  委員長、十五分ぐらいよろしいですか。

山下元利自由民主党

○山下(元)委員長代理 そうですね。

大島正同志社大学教授

○大島参考人 いまから半まではいいですね。(笑声)ちょっと皆さんに笑っていただかないと、どうも素人ですから……。  新聞社で勝手に言っているのですけれども、いわゆるサラリーマン税金訴訟というふうに言っておりますが、本当は訴状はそういうテーマではないわけなんです。租税というものは、私、前々から考えておりましたことは、国政の基礎である。ところが、どこの国の小説あるいは詩、そういうものを見ましても、かなり古い時代から苛斂誅求というようなものに対する激しい怒りがあるのですけれども、どういうわけか、わが国の文学作品には非常に乏しいのであります。たとえば、一番古いところでは万葉集のあの山上憶良の「貧窮問答歌」がありますけれども、あれはどうもびしょびしょした感じで、ただああ情けないというだけなんですね。大体、あれよりももっと先の中国の詩経になりますと、「伐檀」というようなああいう有名な詩の中には、租税に対する、要するに貢ぎ物でございますね、これに対する恨みというものが非常に強くあらわれている。どうも日本の作品にはそういうものがない。源氏物語には、もちろん恋愛観はありますけれども、税金のことは余り出てこない。徒然草にもありませんし、枕草子にもない。ところが、ヨーロッパが近代国家になってまいりますと、たとえば、皆さん大抵若いときにお読みになったろうと思うのですけれども、ディケンズの小説や何かには、一体税金はどこへ使われているのだとか、あるいはおざなりな社会福祉施設なんというのは、これは一体どうじゃというような大変に鋭い批判が出てまいります。これは「オリバー・ツイスト」なんというのもそうでございますね。しかし日本人はなぜそうなのか。やはり水田耕作民族なので、連れもて行こうらというような感覚があるのじゃないか、だから租税は取られるものであって、取ったものがどういうふうに配分されるとか、そういうふうな感覚がわれわれは伝統的に非常に薄いのじゃないかというようなことを漠然と考えておりました。  ところが、私はしがない私立大学の教師でございますが、三月十五日になりますとちょっぴり申告をしなければならぬ。何かよけいなものが、原稿料がちょろちょろとあったりしますと、申告をしに参ります。そうしますと、税務署の窓口における行政というのは、これはどう考えてもでたらめだな、これは税務官僚をやってこられた方が何人かおられると思うのでまことに失礼でございますけれども、そう感ずることが非常に多いわけです。これは後でまた質問されたら話す機会があると思いますけれども、そういうことが非常に多いので、一体租税というのは何かということを一遍抜本的に考えてみる必要がある。民主主義の先進国型の一番権威というのはやはり最高裁の判例であるだろう、これが私がやるものについてどうあらわれてくるか、ただ主文が問題ではなくて判決理由の方がこれは問題なんだからひとつやろうというので、私は法律の専門家二、三人と語らってやった、こういうことでございます。  世間は、新聞記者はいろいろ物を知っている人もあるし、知らぬ人もいるわけですが、私のことをドン・キホーテなんということを言っておりますけれども、私はドン・キホーテではございません。ドン・キホーテというものの非常なこっけいさというのは、自分が正義漢だと思ってやったことが思わず他人に迷惑を与えてしまった、まだ私は他人に、国民に迷惑を与えていないと思いますので、私はドン・キホーテではないのであります。大体これはドン・キホーテのような顔をしておりません。みんな私のことをドンチョ・パンサというふうに呼んだりするわけでございます。  その訴状の中には、必要経費という項目、それと捕捉率それから特別措置というのを三つ、三本立てにしたわけでありますが、これに対しては、これははしょって申しますけれども、大体あの膨大な判決を読んでいただいたらわかるのですけれども、ほとんど裁判所は認めております。ただ憲法判断だけ避けた、これが結果であったわけで、いまだに大阪の高裁でそのままずっと続けておるわけでございます。  そこで私非常に感じますのは、税金が公平であるか不公平であるかということを、その訴訟をずっとやっているうちに感じましたことは、まず公平、不公平というのは垂直的に見る場合の——これは庶民感覚で申す場合でございますよ、垂直的に見る場合、たとえば特別措置だとか、たとえば医師のああいう優遇措置とか、そういうようなもの、あるいは大企業に対する優遇措置、これが庶民の中にはね返ってくるんだという、こういう感覚。それからもう一つは水平的に見た場合に、事業所得者とあるいは農民とかという者と比べますと、給与所得者というのはブルーカラーとホワイトカラーとを問わずに、やはり非常に不公平な措置を受けている、こういうふうに感ずるのは、これは実感としてあるわけでございます。証人としてこの捕捉率のところは三国町だとかあるいは和歌山県の印南町の住民たちですね、これは給与所得者を中心としたものでございますが、そういうのを挙げても、小さい町では如実にこれがはっきりとあらわれてきておる、こういうふうな水平思考と垂直思考両方からくる不公平感覚というものはなかなかぬぐい切れない。ですから、所得税法の一部を、たとえば扶養控除を三万円上げても、それによって日本の給与所得者の不公平感覚というものはそうぬぐい切れるものではない。特に最近のようにあのロッキード事件だとかああいうようなものが表面化して、日本の大蔵官僚というのはどうも黒幕だとか政治家には非常に弱いんだな、これを如実に感じますと、やはりどうしても承知できなくなる、こういうようなのが実際の感覚ではないかと思うのです。  一口に申しますと、この給与所得者には給与所得控除というものがございますけれども、これが一体どういう性格を持つものか、私の裁判を通じましてもこれは国側の方で明快な回答をしておりません。そして、しかも私が訴訟を起こしてから以後、いろいろなふうに、その給与所得控除に対する考え方というものは二転、三転するというようなろうばいぶりであった、これはいいかげんにやられているのだ、こういうふうに私は思うのであります。  もう一つは源泉徴収でございますが、これは、源泉徴収のところは私どもの訴訟の中には入れませんでした。月ヶ瀬事件というもので一応最高裁の判決があるということで、これを総評の方で続けてやっておられるものですから、わざとこれは省いたわけでございますけれども、この源泉徴収というようなものは、要するに庶民の税痛というような感覚を麻痺させる、税痛を麻痺させるということは、非常にオーバーな言い方をしますと政治の腐敗を非常に早く招くんだ、こういうふうにさえ私は思うのであります。投票権だけ国民が持っているからそれで主権在民だとは言えないのでありまして、税金を納めることによって、それがいかに使われるか、そういうことを、自分の払った税金が何に使われているか、その痛みを一つ一つみんなが感ずるようにならなければ日本の国政というものはよくならない。  たとえば大蔵省の方は、こういうふうな源泉徴収でなくて確定申告をみんなやるようにすると徴税費がかかるというふうに必ずおっしゃいますけれども、いまだって、源泉徴収のああいうような仕事だってみんな事業場が肩がわりをしているわけですから、そんなにたくさん徴税費がかかるわけはない、これは工夫いかんによって防御できるものである。  また私は、税金というものが取りにくければ取りにくいほど政治家はしっかりしてくるんだ、ここに多くの国会議員の方がいらっしゃいますけれども、税金が取りにくくなったら皆さんの顔はもっともっと利口な顔になられるんじゃないか、こんなふうにさえ思うので、いまだって利口な顔をしておられますよ、私なんかよりはるかにりっぱな顔をしておられる、しかしもっとりっぱになるのではないか、こういうふうに思うのであります。これが要するに主権在民というものの本体ではないか、そういうふうに私は思うわけでございます。  それで、また底辺の部分に法律どおりに非常に厳しい。たとえばこの税金は一体雑所得になるのかそれから給与所得になるのかというふうに考える場合でも、疑わしきは納税者の有利にというような原則が底辺の部分に対しては通らない、中小企業者に対しても同じではないかと思うのです。そういうような非常におかしげなところがあるのでありまして、こういうものが抜本的に考えられなければ不公平感覚というものはなくならない、私はこんなふうに思うわけでございます。  そして、たとえば私が非常に不思議だなと思いますのは、所得というものは幾つかに分けて書かれております。給与所得、雑所得だとか、あるいは山林所得とか、そういうふうに分かれて、十幾つかになっておりますけれども、いまのこの非常に変化の激しい社会情勢の中に、それだけで済むのかどうか。たとえば給与所得といったって、業種によって非常に種類が違うわけなんです。これを十把一からげにして給与所得控除でくくってしまうというところに非常に残酷さがある、こういうふうに私は痛感をしているわけでございます。  確かに、京都裁判所の判決にありますように、われわれ給与所得者というものは、ボーナスを入れますと十四同税の先払いをするわけでありますが、あの判決文の中では、二百万で仮に夫婦と子供二人というような標準家庭をとると、給与所得者以外の者に対して、郵便貯金のあの利子で計算すると、安く見積もっても一年に千四百六十六円損をしている、こういうふうに裁判所は判断をしているわけです。ところがそれは僅少である、こういうふうに言うわけですが、私はそうではなくて、僅少であっても取ってはならぬものは国民から取らない、これを返してやる、そういうふうな非常に不利をこうむっている国民のためにこれを考えるというのが国政の基礎ではないか、こういうふうに非常に痛感をしているわけでございます。  まだ言い足りぬところがたくさんございますけれども、ちょうど半になりましたので一応打ち切ります。(拍手)

山下元利自由民主党

○山下(元)委員長代理 次に、牛嶋参考人にお願いいたします。

牛嶋正名古屋市立大学教授

○牛嶋参考人 いま紹介にあずかりました牛嶋でございます。  初めに、こういうところで意見を述べさしていただく機会を与えられましたことを感謝しております。  一兆円減税をめぐるこれまでの国会審議及び国会の外での論議を振り返ってみますと、今後の長期税制を考えていく上できわめて重要な問題が三点ほど提起されているように思われるわけです。  その第一点は、低成長のもとでの経済運営において、税体系はこれまで以上に景気調整機能を持たねばならないだろうという点でございます。  その第二番目は、長期税制の確立に当たって必要と考えられる増税のための税源をどのような税目に求めるべきかという問題であります。  そして、その三点目は、低成長経済のもとでも所得税の減税のあり方、言いかえますと、これからも予想される税の自然増収をいかに配分していくかという問題であります。  以上、減税論をめぐる三つの問題点は一兆円減税の決着がどのようにつくにいたしましても、今後長期税制の方向づけに深く関連を持つと思われるだけに、十分な論議を尽くしておく必要があるというふうに考えております。  そこで、私もこの三点に問題をしぼりながら見解を述べさしていただきたいと思います。  先ほども大島先生からお話が出ておりましたが、私も先日一納税者といたしまして確定申告をしてまいりました。私の場合主な所得源泉は給与でありますけれども、ほかに原稿料あるいは講演料等の雑収入が若干ありますので、毎年確定申告をしております。そして、ことしの場合でございますが、申告書の記載を終えまして出てまいりました税額を見て、昨年に比べまして大幅な増額になっていることに驚いてしまったわけでございます。金額ではちょっと申しにくいところもございますので、伸び率で説明さしていただきますが、所得金額でございますが、五十年分を一〇〇といたしまして私の場合五十一年分は一二九でございました。二九%の伸び。少し働き過ぎたのではないかというふうに思っておりますが、ところが税額の方でございますが、五十年分を一〇〇といたしまして実に五十一年分は一七一まで伸びております。もちろん所得税構造の累進性を考えますと、この計算結果については何ら問題はないと思いますが、一納税者といたしましては、やはりこの税額の大幅な増加というのは非常に大きな負担であります。しかもこの所得の伸びの中には少なくとも八ないし九%の物価上昇分が含まれているわけでありますから、これに対応する税額の増加分は一層われわれの負担感を大きくしているわけでございます。  それで、財政学者としての立場を離れて、一納税者としての立場から率直に申しますと、税体系に景気調整機能を持たせる問題や、今後の増税の財源問題を議論する前に、とりあえず物価上昇に基づく実質的な税負担の増加分については調整してほしいというのが率直な気持ちでございます。すなわち、物価調整減税は経済情勢のいかんにかかわらず実施すべきではないかというふうに考えております。初めに指摘いたしました三つの問題に関連して言いますと、これは低成長のもとでの税の自然増収の配分のあり方の問題と関連するわけでございます。  税の自然増収分のうち、どれだけを減税に振り向けるべきかというルールにつきましては、いろいろな基準が想定されます。たとえば、全体の租税負担率をできるだけ一定の水準に維持することに努め、租税負担率の引き上げに当たっては、税制改正を通じて明確に納税者の納得を得た上で行うというルールがひとつ考えられるわけでございます。この場合には、自然増収のうち租税負担率を引き上げる分だけ減税に振り向けるということになるかと思います。  いま一つの減税方法といたしましては、物価上昇による増税分を減税するというルールでありまして、いわゆる物価調整減税の基準に基づいて、私なりに五十一年及び五十二年の減税額を計算してみたわけでございます。すなわち、まず「申告所得税の実態」というデータがございますが、これに基づきまして、税収関数を推計いたしまして、そこから所得税の税収弾性値を推定いたしました。私の計算結果では、現行の所得税制の税収弾性値は一・七〇でございます。いま五十一年の予想物価上昇率を九%、五十二年の物価上昇率を八%といたしますと、先ほどの税収弾性値を用いて計算いたしますと、物価上昇による所得税の増収分というのは約七千億になります。この減税額は先ほどのルールで申しますと、この七千億を減税に振り向けるということになるわけでございますが、これまでの議論の中では見かけない数字でございますが、減税ルールを確立するという問題を考えた場合、一つの根拠を持つものというふうに考えまして、ここで提案したいわけでございます。したがって、先般与野党の間で取り決めのありました三千億の上積みに対してさらに五百億を上積みするということがここから求められるわけでございます。  次に、減税財源が問題になるわけでございますが、これを考えていくに当たりましては、景気調整機能とそれから今後の税源問題とに密接に関連してまいります。すなわち、税源の確保の方法によりましては、減税が持っております景気調整効果が完全に相殺されてしまうということも考えられるわけでございますし、また、財源確保の方法は、長期税制の確立のために必要な増税をどのような税目に求めていくかという問題に大きな影響を与えるものと考えられるからであります。  とりわけ所得税減税と企業課税強化との結びつきにつきましては、慎重な検討が必要であるというふうに思います。それは企業課税の経済効果、特に企業の投資効果に対する抑制効果は大きいと考えられるからであります。したがって、一方で所得税減税を行いながら、その税源を企業課税強化によって埋め合わせていくといたしますと、場合によっては消費需要が伸びても投資需要の回復がさらにおくれるという景気対策上の問題を残すおそれもあるわけであります。  景気対策の観点から申しますと、すべての減税財源を借り入れによるということが有効的であると考えられますが、私は、ここでは所得税及び企業課税を含めまして、現行の税制が持っておりますさまざまな不公平要因をできるだけ排除し、調整し、そして長期税制確立のための条件づくりを行いながら、それに伴って出てまいります税の増収分を減税財源に充てていくといったような方向づけを提案したいわけでございます。  所得税減税が景気刺激策としての効果を十分に発揮するためには、減税財源と同時に減税の実施方法と減税の実施時期とが重要な意味を持ってくるように思います。  まず実施方法につきましては、所得控除方式とかあるいは税額控除方式、この中には戻し税方式も含まれると思いますが、そういうものが考えられますが、特に給与所得等の源泉徴収分につきましては、所得控除方式よりも税額控除方式の方が税負担の軽減の実感がはるかに大きいというふうに言えます。ただ、税額控除方式の場合、徴税費に当たる減税実施費用が相当高くつくという問題があるわけでありますが、たとえば五十一年分の納税額に応じて概算で税の戻しを行って、五十二年分の年末調整あるいは確定申告でもって調整を行うというふうな方法を考えて、できるだけ費用と時間を節約するような形で税額控除方式をとるべきではないかというふうに考えております。  また、実施時期につきましては、できるだけ早い時期に実施する方が効果的であります。こういった減税議論がさめてしまった後で減税が行われても、それは景気刺激効果としてはそれほど有効には作用しないんじゃないかというふうに思われます。技術的には不可能かもしれませんけれども、たとえば年度の初めにいずれの家庭でも出費がかさむわけでございますが、そういうときに戻し税方式で減税が行われますと、かなり大きな刺激効果を持つことが期待できるのではないかと思います。  以上、最初に説明いたしました三つの問題についての意見を述べさせていただきましたが、後の質問のところでまたこれについて補足さしていただきたいと思いますが、とりあえず、以上報告を終わらせていただきます。(拍手)

山下元利自由民主党

○山下(元)委員長代理 次に、小寺参考人にお願いいたします。

小寺勇全日本労働総同盟生活福祉局長

○小寺参考人 同盟の小寺でございます。  私は、私の組織の勤労者の立場から、税制改正につきまして三つの主たる角度から御意見を申し上げまして、御検討をいただきたい、こういうふうに思っております。     〔山下(元)委員長代理退席、委員長着席〕  まず第一点は、勤労者の負担軽減という問題であります。  勤労者の税制を軽くするということになりますと、最初に税制調査会の会長が申されました委員の圧倒的多数と変わる意見、こういうことになるわけでありますが、私どもも、もちろん現在の経済の状況あるいは財政の状況は一応承知いたしておりますし、さらに赤字国債で問題になっています本年度三十兆、あるいは五十五年に五十兆が見込まれる、こういったことから増税が避け得ないのではないかという議論が多いことも承知をいたしておるわけであります。しかしながら、そういう議論も、国の財政ということでありますから大切だとは思いますが、現実の勤労者の生活実態もひとつ十分に御注意をいただきたいというふうに思うわけであります。  実は、勤労者の立場からいたしますと、御承知のように、経済低迷によりまして最近賃金上昇はぐっと抑制されておりますし、他方インフレも、一けたすれすれというところにまでは抑えられてはおりますけれども、依然として高い状況であります。それに加えまして増税ということになりますと、悪条件のはさみ打ちということになってくるわけでありまして、税の納入割合でお考えいただきますと御承知のとおり、勤労者の納税割合というのは他に比較しまして圧倒的に現在は高くなっておりまして、トーゴーサンとかクロヨン以上の乖離をいま見せております。したがいまして、勤労者としてはじみちにまじめに納税をしておるわけでありますが、それに加えまして、先ほど申しましたような悪条件が絡んでおります。そこで、私ども自身も実質賃金の向上に見合って税負担がどうあるべきかという議論になりますと、この議論を避けることはできないというふうには思うわけでありますが、少なくとも実質賃金を引き下げるという方向で増税が行われるということになりますと、勤労者の生活自身が、現在でも先ほど申しました状況でありますが、これから先一層深刻化してまいるということを懸念いたさざるを得ないわけであります。そこで、少なくとも適正な税ということを考えていただく場合には、インフレ抑制の問題、それから賃金政策の問題、これらを勘案して総合的に整合していただくということが必要なのではなかろうかというふうに思います。  しかしながら、そうしたことはかなり慎重な議論が必要でございますし、時間もかなり必要かと思いますので、当面の問題としましては、二つの角度からこの第一の問題についての検討を煩わしたいというのが私の考えであります。  第一は、現在ございますところの各種控除を適正な額に引き上げていただきまして、現在所得控除方式になっておりますのを税額控除方式に切りかえていただく、こういうことが一つ必要ではなかろうか。それから第二番目に、給与所得控除率を引き上げていただく。これも重要な問題だと思います。ただし、この場合には、その反面で上限額の復活というものを考えていただいても、その点は結構ではなかろうか、こういう考え方であります。税額控除方式に切りかえることが妥当ではなかろうかという目的の主たるところは、この控除方式によりましても累進性は高めていくというところに主たる目的を置いておりますので、その点は一言だけ申し上げておきます。  それから次に、第二の観点でございますが、これは先ほどから両先生からいろいろ御指摘されております不公正税制の是正という問題でありまして、私どもは特に納入割合についての改善措置を何とか進めていく方法はないものかということをまず考えていただく必要があろうと思います。それに続きまして、やはり等しからざるを憂えるという観点が税負担についての国民的合意を得るためには必要でございますので、そうした観点から、第一番に、現在ありますところの各種の特別措置を全面的に見直していただく。廃止ということは申し上げませんが、全面的に見直していただく中で公正化に努力をしていただきたい。それから第二番目に、それとも若干関係がございますけれども、企業課税を適正化していく必要があるのではなかろうかというふうに思っております。たとえて言いますと、前者の分野では価格変動準備金の取り扱いあるいは特別償却の取り扱い並びに税制調査会の方ではすでに前から出されていますところの医師優遇税制の取り扱い、こういったものがとりあえず特に速やかに検討されていい性質のものではなかろうか。さらに後者の立場から考えますと、貸倒引当金の問題がございますし、交際費の課税強化の問題もあろうかと思います。そうした点を公正化という立場からぜひ御検討を煩わしたい、こういうふうに思う次第であります。  第三の観点でありますが、これは私どもは福祉税制の推進というように呼んでおります。財政の減収額が苦しくなってまいりますし、それによりまして税負担という問題の増加傾向ということを考えてまいりますと、どうしても重点配分ということが大切でありますし、重点配分の方法としまして目的税的な分野としての福祉税制の推進ということがもっと大胆にされていいのではなかろうかというのがこの第三の問題でございます。  たとえて言いますと、障害者の控除の引き上げの問題がありますし、老年者につきますと老年者控除とか老年者の扶養控除という問題もございます。それから、たとえば勤労学生控除というのがいまございますが、年齢としてはその時代に並んでいますところの勤労未成年者の問題がございます。そうした勤労未成年者の控除あるいは教育費の控除の新設、こういった点も問題点ではなかろうかというふうに考えておるわけであります。それからさらに第二の分野としまして、福祉税制の推進では年金課税の問題とか退職金課税の問題がございます。私どもは、年金につきましてはむしろ非課税措置を考えていただいてもいいのではなかろうか、こういうふうに思っておるところでありますが、なかなか税制の玄人筋からの問題が提出されまして混乱しておるわけでありますが、その場合でも少なくとも年金所得者が実質的に税金を負担をしなければいかないというふうなことがなくなるような控除の引き上げというものを大きく考えていただく。本人が働いている場合には、その所得と年金との総合課税ということに当面落ちつくとしましても、年金についての控除額を大きく引き上げてもらう、そういった必要があるんではなかろうかというふうに思いますし、退職金課税につきましても現行よりなお再検討して引き上げていく余地があるのではなかろうかというふうなことを考えておるところであります。  以上申しました三つの観点から、実は私どもは税制改正を要望をしておりますので、以上申し上げまして私の意見を述べさしていただいたわけであります。(拍手)

小渕恵三自由民主党

○小渕委員長 次に、北野参考人にお願いいたします。

北野弘久日本大学教授

○北野参考人 日本大学の北野であります。  私、本委員会におきましてもしばしば意見を述べておりますので、きょう申し上げますことも特に新しいことではなくて、かねてから主張していますことを重ねて申し上げるというふうになると思います。ただいま大島さんの裁判の話出まして、私も大島訴訟の法律家側の鑑定証人の一人として御協力申し上げておりますのですけれども、大島先生がおっしゃいましたことは私の意見でもありますので繰り返さないでおきたいと思いますが、その点、最初に申し上げておきたいと思います。  今回の税制改正案におきまして、人的控除の引き上げでありますとか租税特別措置の整理合理化が予定されております。この点につきましては、私としては特に異論がございません。  ただ、この機会に一兆円減税の問題につきまして簡単に所見を述べておきたいと思います。  私は法律学の専攻でありますので、法律上の観点から申し上げたい、こういうふうに考えております。  景気刺激策としまして減税がよいかとかあるいは公共投資がよいかということが論議されておりますけれども、私としましては、景気刺激策の問題とは切り離しまして減税問題を論議すべきでありますし、また論議することができるのだ、こういうふうに考えております。と申しますのは、税制の社会的な不公正というものがインフレによって拡大されるのであります。そしてそのような税制の社会的な不公正自体が、実はインフレをさらに助長するという、そういう関係がございます。このように考えていきますと、インフレによって拡大される税制の社会的不公正を、低所得層を中心とする一兆円減税を行うことによって少しでも是正するということが必要になってきます。現下のインフレにおきましては、一兆円程度の減税は景気刺激策の問題とは別に行われなければならないということになってきます。  この財源としまして、現行税制の社会的な不公正を少しでも是正すれば足りるわけであります。すなわち不合理な租税特別措置を整理したり、あるいは大企業を中心とする企業課税の合理化を行う、たとえばその方式としまして大企業の課税の累進税化を行えばさしあたりよろしいのでありまして、そのための一つの手段として会社臨時特別税のようなものをこの際もう一度導入してみるということが考えられると思いますが、ともかく税制の社会的な不公正を是正すればおのずと財源が出てくる、こういうことを申し上げたいと思います。  なお、現代資本主義のもとでは大企業に対する課税につきましては、どうしても所得課税、インカムタックスのレベルだけでは制度的にも行政上の面からいきましてもその不公正というものを完全にキャッチすることができないという、そういう限界がございます。どうしてもそれを補うために資産課税のレベルの徹底化が必要になってくると考えます。私としましては、さしあたり土地を中心とする企業の固定資産税のあり方を合理化すべきであると考えております。東京都が提唱しておりますような固定資産税の不均一課税という考え方は、こういった観点からも十分に評価できるのではないか、このように考えております。  一兆円減税の方法でありますけれども、所得控除の方法ではなくして、一定の所得階層の者につきまして税額控除の方法によって行うべきであると考えます。かねてから現代資本主義のもとでの恒常的なインフレに対処するために、私としましては通常の人的控除の引き上げや税率の緩和等とは別に、恒常的な税法制度としまして物価調整控除制度を設けるべきであるということを提唱しております。この控除はその本来の物価調整という観点からいきましても、また高額所得層に有利にならないようにするという観点からいきましても、所得控除の制度とはしないで税額控除の制度として設けるべきであります。  具体的に申しますと、毎年の物価上昇度に応じまして毎年のその控除税額を決めていくということになります。毎年の物価調整控除額は、いわば政府のインフレ阻止のための一層の努力を喚起する意味を持つものでありまして、その意味ではこの制度自体がインフレ阻止のためのインセンティブ、誘因措置であると考えることができると思います。今回問題になっております一兆円減税は、このような物価調整控除制度の考え方に従って実施されるべきであると考えております。  これに関連しまして非納税者世帯もインフレによって生活が圧迫されますので、物価調整に見合う生活補給金というものを支給する措置が必要になってきます。このためには予算の修正が必要になってきます。内閣の予算提出権と国会の修正権との関係が論議されておりますけれども、内閣の予算提出権を重視する立場から申しますと、国会の予算修正権には一定の法律的限界が存在する、国会は新しい項目の設定はできないという考え方が示されております。この考え方は憲法学上は、予算問題というものは本来行政権の問題であるという古典的な理論を基礎にしております。しかし、この考え方は、財政議会主義を強調します日本国憲法のもとでは妥当でないのでありまして、最近の憲法学の理論としまして、予算というのは予算という名称の一種の法律である、レヒツザッツであるという考え方が示されているのでありまして、いわゆる予算法律説というものが、わが国の憲法学のもとで、日本国憲法の解釈論としてすら主張されているのでありまして、このような考え方に従いますと、少なくとも法的には国会の予算修正権には限界がないということになってきます。この機会に、財政権というのは本質的には行政権の一部であって、国会の予算議定権はあくまでそのような行政権への参与にすぎないという、先ほど申しました古典的な法理論は一刻も早く廃棄されるべきであると考えるのであります。以上は法理論的な見解でありますけれども、運用上は、国会としましては、内閣の予算執行の立場を考えまして、その予算修正というものにはおのずと節度があってしかるべきであると考えます。ともかく、インフレのための生活補給金を支給をするための新しい項目の設定ということは法的にも可能でありますし、また、ただいま申しました運用上も一定の節度の枠の中にあると考えるのであります。  以上の問題を別な観点から若干サポートいたしますと、私はかねてから、日本国憲法のもとでは、租税の法的概念というものはタックスペイヤーのサイドに立って、租税の徴収面と使い道、使途面とを統合した概念として構築されるべきであるということを主張しております。つまり従来のわが国の租税概念というのは、租税の徴収面と使い道、使途面を峻別する論に立っておりまして、税金の使い道の問題は租税の問題ではない、タックスペイヤーの問題ではない、税法の問題ではないという論理が、わが国の法律学に支配的であります。しかしそういう考え方はこの際検討されるべきでありまして、歳入、歳出を統合しました租税概念というものを憲法理論的に構築することができるのでありまして、そのような考え方に立ってこれからの政治のあり方を考えるべきではないか。先ほども申し上げました非納税者世帯に対する生活補給金の支給というのは、実質的にはこのような新しい租税概念を具体化、実現化するものとして憲法理論的にも十分に評価されねばならないと考えておるのであります。  次に、時間がありませんので、一つだけ給与所得課税に関する問題について申し上げておきたいと思います。  給与所得課税につきましては、現行の給与所得控除制度自体に問題があります。これは大島訴訟で争われている点でありますけれども、給与所得控除というのは、政府の説明によりますと、もっとも政府の説明はしょっちゅう変わっておるのですが、これは昭和三十一年の政府の臨時税制調査会の答申でなされました説明でありますけれども、それによりますと、給与所得控除というのは一般に概算経費控除の分、第二番目に勤労性控除の分、三番目に把握控除の分、キャッチする控除ですね、第四番目に利子控除の分、この四つのファクターからでき上がっているという説明がなされてきました。  もっともこの説明は、大島訴訟が提起された後は御説明の仕方が若干変わっておりまして、この控除のうちのどれにウエートを置くかについては政府筋の説明が動揺しているのでありますけれども、かつては、昭和三十一年以来こういう考え方がとられてきたのであります。わが国の政府の説明がしょっちゅう変わるというのは、わが国の税制の立法過程におきまして、立法事実、憲法学上レジスレイティブファクトと申しますけれども、そういう憲法学上の立法事実という観念がきわめて希簿である。ある税制上の措置をサポートする社会科学的な事実は何であるかという詰めがきわめて乏しいのではないか。そのことがこういった政府の説明の動揺になってあらわれておるのではないかというふうに考えるのであります。しょっちゅう変わるのでありますが、同じその国が法定によっても違ってくる、そういうことがあるのです。  ともかくその四つのファクターがあるという前提で議論していきますと、この四つのファクターをそれぞれ税法上、独立した控除項目とするのが望ましいのであります。そしてその上で、最初に申しました概算経費控除分につきましては、給与所得者の必要経費の実態に即しまして一定額を法定する。この法定は、できることなら、給与所得の類型ごとに四つないし五つの類型に分けまして金額を法定するということが望ましいと思います。同時に、税法におきまして実額控除制度を設ける。そしてその際、所得税法におきまして、給与所得の性質にふさわしい必要経費概念をはっきりと規定するということが必要になってきます。  その必要経費の概念として論議すべき問題がたくさんございますけれども、一つだけ申し上げておきますと、昨今、サラリーマンの固定資産税額は非常に増大しております。その固定資産税額のうち一定部分を給与所得の必要経費概念に含めることが検討されてよいのではないかというふうに考えております。もちろん、土地であるとか家を持っていないサラリーマンが支払う地代、家賃のうちの一定部分も、同じく給与所得の必要経費概念に含めることは、十分に学問的に成り立つと考えております。そして納税者は、そういった法定控除額というものと実額控除額とのいずれかを選択するということになってきます。  なお、この給与所得控除額につきましていろいろ申し上げたいことがたくさんありますが、現行制度は頭打ちの制度を採用しておりませんが、この頭打ちの制度がないのは合理的な根拠がないと私は理解しております。一般に勤労のために必要な経費というものは、特殊な職務を除きましては、収入金額の多寡に応じてそれほど変動はないと考えられるからであります。収入金額が一定の限度以上になりますと、それはほぼ固定化する傾向があると見てよいからであります。給与所得控除額というものを法定する以上は、立法技術的には頭打ちにすべきであるということになってきます。  あと一、二分ほどいただいて終わりにしたいと思いますが、源泉徴収制度の問題にちょっと簡単に触れておきたいと思いますけれども、源泉徴収制度というのは、収入金額の把握を容易にする、あるいは徴税や納税を容易にするというさまざまなメリットが存在します。しかしこの制度につきましては、立法論的に改善すべき余地が非常にたくさんあるのでありまして、たとえば源泉徴収の段階では徴収緩和の措置が不徹底である、あるいは、個々の源泉徴収行為自体の違法性につきましてサラリーマンがどのようにして争うのかということについての権利救済制度がきわめて不備であります。  また年末調整を受けるかどうかという問題につきましては、私は、これは現行法のように強制すべきではなくて、現在は一定額以下のものにつきましては年末調整を強制いたしておりますけれども、これは納税者側の選択に任せるべきであるというふうに考えております。理論的に非常に大事な問題でありまして、申告納税制度というのは、憲法理論的な観点から申しますと、国民主権主義、主権在民主義の税法的な表現であると考えることができるのでありまして、その意味におきまして、年末調整を強制しないで国民の申告権というものを制度的に国民の側に留保せしめることが望ましいわけであります。それから源泉徴収制度の一番大きなデメリットは、源泉徴収を受けるサラリーマンに対しましてタックスペイヤーとしての意識を希薄ならしめるという点がございますが、そういう観点からいきましても、年末調整を受けるかどうかはサラリーマンの選択制に任せるということが望ましいのではないか、このように考えております。  大体時間が来ましたので、まだ申し上げたいことはたくさんございますけれども、後ほど質疑応答の段階で申し上げたいと思います。  どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)

小渕恵三自由民主党

○小渕委員長 以上で参考人からの御意見の開陳は一応終わりました。     —————————————

小渕恵三自由民主党

○小渕委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。沢田広君。

沢田広日本社会党

○沢田委員 社会党の沢田広です。諸先生には大変忙しい中、貴重な御意見を拝聴させていただきまして、厚く御礼を申し上げます。  委員長にちょっとお伺いをいたしますが、こういう意見は政府それぞれ担当機関は聞いておられるのであろうかどうか、その点ひとつ確かめておきたいのですが、どうですか。

小渕恵三自由民主党

○小渕委員長 現在、政府側からも山内審議官初め、大蔵省より聴取のため出席をいたしております。

沢田広日本社会党

○沢田委員 せっかくおいでをいただいて、それぞれ該博な経験あるいは知識をわれわれに参考に提示していただく。ここにおいでをいただくのは個人であって個人でないのでありまして、言うならば国民の代表としておいでをいただいたわけでありますので、われわれも謙虚にこれを聞き、またこれを謙虚に生かしていく姿勢がなければならないと思うわけであります。また特に、われわれが生かすという立場と同時に、政府側がそれをどう生かすかということもきわめて大切な要素でありますので、そういう意味において、政府側にも時に触れて答弁をしてもらう場合がありますので、念のため最初に申し上げておきたいと思います。  各先生方にお伺いはばらばらになりますが、その点、ひとつお許しをいただきたいと思うのです。  まず最初に、大島先生にお伺いをいたします。非常に貴重な訴訟を大変長い間御苦労をなさって行われたわけでありますが、税の公平について、現在の心境を含めながら現状についてどうお考えになっておられるか、私の与えられた時間は四十分でございますので、その点も御考慮の上御回答をいただきたいと思うのであります。

大島正同志社大学教授

○大島参考人 お答えになるかどうかわかりませんが、もう一度繰り返すことになるかもしれませんけれども、先ほど私申し上げましたように、公平、不公平というのは、われわれ庶民が考えます場合に、垂直的な思考とそれから水平的な思考の二つがある、こういうふうに申し上げます。それで、一つ、これは私の体験でございまするけれども、私は教師でありますので、大学では奨学金の支給をやります。そのときに、これは誤解のないよう聞いていただきたいのですけれども、普通給与所得者というものが公平、不公平という感覚を持つ場合には、まず水平思考を先にやります。隣の業種ということをまず考えるわけです。それで奨学金の支給の場合に、給与所得者の場合は、これは私がちょうど学生主任をしておりましたころで、いまから十二、三年前でございますけれども、三等郵便局長の子弟ぐらいでも、これは税金から逆算するものですから、奨学金をもらえないという場合が出てくるわけでございます。ところがほかの業種のものでありますと、たとえば地方の駅前で五、六人、人を使って商売をやっているというような子弟、それから相当のビニールハウスを持っているような農民の子弟、こういうものに三つに分けて仮に奨学金を与えるというような場合が出てくるのですけれども、その場合に、このもらったものをどう使うかということを私一遍ずうっと聞いてみたことがあるんです。そうしますと、三等郵便局長の子弟、これは非常に印象に残っておりますが、すぐ授業料を納めると言うんですよ。ところがほかの業種の場合だと、スキーに行きます、もう一つはなはだしいのは、背広を買います、こういうふうに生活の実態というものがそこからぱっと出てくるわけですね。これはやはりそういうものが無視できないのですよ。  それと、その次に来るのが、さっきも申しましたように、最近の例で言いますと、皆さん耳にたこができるほどでまたそんなことを言うかとおっしゃるかもしれぬけれども、ロッキード事件のようなああいうものが起きますと、その肩がわりをわれわれがやっているんだというようなことを庶民が考えるのは、これは当然だと思うのであります。この二つだと思うのです。

沢田広日本社会党

○沢田委員 以上の点に関連をいたしまして、今度は小倉先生と北野先生にお伺いをいたすわけでありますが、小倉先生は今回の答申に当たって、大島先生の訴訟の判決文をお読みになられたり、あるいはこの答申を反映することにどのような配慮をされたか、その点ちょっとお伺いをいたしたいと思います。

小倉武一税制調査会会長

○小倉参考人 私、判決文そのものは読んでおりません。新聞に当時出たものなり、あるいは先ほどのお話のようなことに似たようなことはお聞きしております。  それから、調査会をどういうふうにやったかという御質問でございますが、税制調査会では、源泉徴収なりあるいは給与所得控除について議論があることは無論でございますけれども、特に給与所得控除についてのいわゆる頭打ちという点についての御意見は、私どもも、委員会でしばしば議論になったところでございます。ただし、この源泉徴収の是非については、税制調査会で深く論議されたという記憶は私にはございません。以前、私が余り関係してなかった時代にあるいはあったかと思いますけれども、私が税制調査会に参加した後は、特にそのことについて審議されたという記憶はございません。

沢田広日本社会党

○沢田委員 少なくとも、総理大臣の諮問を受けて税制調査会が答申をするのに、判例を全然考慮しないで出すということは、その職務を全うするという上に立って軽率のそしりを受けるのではないかと思われるのですが、その点いかがでありましようか。

小倉武一税制調査会会長

○小倉参考人 あるいはそういう御批判があるかと思いますが、事実申し上げたことでございます。なお、そういう御注意がございますれば、あるいは今後税制調査会としても遺漏のないような審議ということは当然考えられてよいのではないか、こう思います。

沢田広日本社会党

○沢田委員 これはそのような程度の軽いものではないと思うのですね。判決文にこういうふうに書いてあるのです。これは特に租税特別措置法の医師の関係でありますが、要点だけ申し上げますと、「当該租税特別措置の直接の政策目的が総合的な経済政策の観点から考え合理的意義を有しているか否か(政策目的の合理性、斉合性)、その政策目的に対して当該租税特別措置が政策手段として有効であるか否か」括弧して若干ありますが、「等の諸点について慎重な検討をなすことを要すると解すべきである。」そして「医師または歯科医師の受ける社会保険診療報酬にかかる必要経費(率)の実態の詳細を知るに足りる証拠がなく、その点は不詳であるが、七二%の経費率は一般の常識に照らしても極めて高すぎるものであり、税制調査会の累次の答申においても、実際の経費率は七二%より相当低く、医師相互の間でも、内科、外科等の専門別により、あるいは個人経営と病院経営との規模別によりかなりの差異があると指摘されているところである。したがって、実際の経費が七二%を下回る場合、その限度において所得税の特別減税が行われているに等しいものであり(この特例による減収額は、昭和三九年度九〇億円、昭和四三年度一四五億円とかなり大規模である。)、また、この特例による受益の程度は一様でない状態である。」     〔委員長退席、山下(元)委員長代理着席〕 その最後にずっと参りまして、「一点単価もたびたび引上げられ、医師等の所得が相当大幅に増加して、すでに昭和三九年当時ごろ以降はこの特例を存置しておくべき必要な事情が、ほとんど解消しているものであり、かつ、この特例の経費率は実際に必要と目される経費率をかなり大幅に上回わり、他の納税者との間に税負担の均衡を害する結果を引き起こしているものである以上、この特例は、すでに昭和三九年当時ごろ以降より、これを存置すべき合理的根拠を失っているものと認めるべきである」このように判決文は出ている。これはどう思われますか。

小倉武一税制調査会会長

○小倉参考人 判決文について特にどうこうと言うわけにもまいりませんが、社会保険診療の報酬についての税制上の特例措置については、税制調査会としては、是正すべきものであるというふうなことになっておりまして、その方針といいますか、そのことにはこの数年来変化がないと思っております。

山内宏大蔵大臣官房審議官

○山内政府委員 税制調査会の事務局をやらしていただいております立場から、ちょっと補足的に御説明さしていただきたいのでございますが、いま委員御質問の給与所得控除の性格あるいは額、そういったものに関連をいたしました議論といたしましては、現在の小倉税制調査会になります前、東畑税制調査会のころまでは、これは非常にしばしば重要な問題点として取り上げられた経緯がございます。大島訴訟だけがこういう議論を出しておったんではなくて、その当時、それに進むべきいろいろな御意見がございました。  そういうことを背景といたしまして……(沢田委員「時間がもったいないですから、結構です」と呼ぶ)そういうことでございましたが、その後は比較的そういう問題というのは少のうございますのは、一つは、その当時に比べまして、給与所得控除の額が非常に大幅に引き上げられたということで、問題が必然的にある程度解決したということでございます。  それからもう一つは、大島訴訟の問題が四十九年におきまして裁判所で判決が出まして、国の主張が認められたということで、司法的には一応の解決が出たということ、この二点があろうかというふうに考えております。

山下元利自由民主党

○山下(元)委員長代理 只松委員より関連質疑の申し出がありますので、これを許します。只松君。

只松祐治日本社会党

○只松委員 時間がありませんので、いま小倉さんの答弁についてだけちょっとお伺いいたしますが、税制調査会というのは政府の重要な諮問機関でありまして、ここでいろいろと討論をいたしますと、いや、税制調査会に委嘱をいたして調査中です、結論が出るまで、これはもう政府側が決まって使う言葉ですね。そういう重要な責任を負われるあなたが、いま答弁をなさって、速記録を見ておりませんからよくは……、あるいは必要があれば今後見るかもしれません。大変になめたといいますか、失礼なというか、不勉強というか、言葉がなされておる。国民がこれだけ一生懸命でやって、そしてその一つの問題として大島訴訟が行われておるわけでございますから、そういう問題についてはやはり謙虚に勉強なさったり、本を読まれることが必要だと思うんです。  また税小の問題は、私税小のあれをやっておりますから、税小においでいただいて、そういう問題については徹底的に論議をいたします。きょうはそういう問題について、とにかく大変重責を担っておるあなた、ほかの大学の先生とは違います。その方がそういう軽々しい発言をされることは、私は、きょうは論争ではありませんから、取り消しまでは求めませんけれども、注意をして発言をしていただきたい、そして十分関心を持っていただきたいということを要望しておきます。

山下元利自由民主党

○山下(元)委員長代理 要望ですね。

只松祐治日本社会党

○只松委員 お答えがあれば言ってください。なければ……。

小倉武一税制調査会会長

○小倉参考人 特にお答えというわけでもございませんが、源泉徴収の問題につきましては、これは先ほど大島さんのお話にもありましたように、納税者意識という点から言うと、確定申告に当然踏み切るべきじゃないかという、そういう有力な意見があるということは十分私承知しておりますし、それは非常に傾聴に値する意見であるというふうに存じております。  しかしながら、それを税調でどう取り扱うかということになりますと、これは会長でございまするが、何を論議するかを私一人で決めるわけにはまいりませんので、その点だけはひとつ御承知おき願いたい、こう思います。

沢田広日本社会党

○沢田委員 大変申しわけございません、北野先生ちょっと……。  判例というものの取り扱いを、税調としては、今後いろいろな訴訟が行われるであろうと思うんですが、三権分立の今日でありますが、いわゆる判例が出れば、その判例に基づいてそれぞれの税制の過ちを是正していくということは、この三権分立のたてまえからして当然の措置ではないかと思われるんです。その後、そういうことはもう一顧だにしない——これは憲法違反ではないという判決が出たことは事実です。そのことは、私も否定はしません。しかし、その判決文の中に、少なくともこれは解消するべきである、こういうふうに規定づけられたものを否定していく態度というのは、三権分立そのものを否定することになるのではないかと思うんですが、その点いかがでしょうか。

小倉武一税制調査会会長

○小倉参考人 お尋ねの趣旨が私、理解がしにくいのですけれども、最終判決が出て、現在の立法なり解釈論について問題がございますれば、当然これは税制上の問題としては改正すべき点は、政府はむろんのこと、税制調査会でも恐らく論議の対象になり、議題に供すべき筋のものであるというふうに存じております。

沢田広日本社会党

○沢田委員 次に北野先生。大変お待たせして申しわけありませんが、いまの租税特別措置法のこの裁判に関係をされました関係者の方といたしまして、私もそれ以外のことについてたくさん拝見させていただきまして、判決文の中にいろいろな示唆をされているものがあるのですが、不公正是正についてこの判決文は何を今日われわれに教訓として物語っているか。大変むずかしい質問になってしまったのでありますが、簡潔に、税法上どういう点が問題点に残されたのか、もしお答えいただければ幸いだと思います。

北野弘久日本大学教授

○北野参考人 お答えいたします。  非常にむずかしい問題で、一時間レクチュアしても足らないような大きな問題でございますが、先ほど税調の会長に対する御意見が出ましたんですけれども、私かねてから先生と同じような考え方を持っておりまして、日本の税調のメンバーは、学識経験者はほとんどエコノミストでありまして、税制の問題はもっぱら経済上の観点しかとらえないという。法律学者は、通常は一人も入っておりません。ですから、人権論とか法律論とか憲法論という観点から税制を再構成するという発想はないのでありまして、したがって重大な国民の人権に関する問題として出されました京都地裁の判決すら、税調で公式には恐らく、委員に配付されたかどうか知りませんけれども、現にこれは係属中でありますので、会長先生はもっぱら経済学者でありますけれども、当然読むべきでありまして、ですからこれは政府の立法過程における問題として人権感覚の希簿、人権の欠落、こういうものがあるのではないかと思います。私も、実際の経験としてよく承知しておりますけれども、日本の税制の立案担当官は、多く大学では法律学をやったんですけれども、実際立案するときはもっぱら経済理論しかやらない、法律論をやる人は二流の人物であるという、そういう意識が大蔵官僚にございまして、それが今日こんなわけのわからない税制をつくっておるという一つの大きな原因であります。たとえばドイツの税法などを読みますと、人権上の観点から見ますと、当時実額控除制度というものを税制で保障すべきであるということが出てくるのですけれども、それを大島訴訟が提起されるまで気がつかない、こういうことであります。  裁判所の判決は、一口に申しますとそういうことを政府に反省を迫っておる。結論は違憲ではないと言っておりますけれども、判決理由中におきましてわりとほとんど同じような認定を行っているのでありまして、ただ裁判所は二つの顔を持っておりまして、判決理由中では最近の法律学の成果に賛意を表する、しかし結論としては、憲法上の判断の点では政治的な判断を加えまして結論を避けるという、そういう二元的な二つの顔を出しております。しかし判決理由中の判示事項は、と言っていいと思いますけれども、われわれの考え方を全面的に支持しておると言っていいと思います。  私は、租税特別措置のあるものにつきましては、ただいま御指摘の医師の社会保険診療報酬については特にそうでありますけれども、かねてから立法裁量の枠を越えたものである、立法裁量あるいは立法政策の枠を越えた学問上全く合理性のない、憲法十四条が予定する不合理な差別に該当するものであるということを言っております。そういったことは裁判所も恐らく頭に置いてただいま御指摘のような判決理由を書いたのだと思います。  大事なことは、われわれとしましては納税者の立場に立って税制論を展開すべきである。それは結局言葉をかえて申しますと、憲法論の観点から税制論を再構成することだと思います。私は、憲法学をずっと追求していきますとおのずと税制上のあり方が決まってくる。ただ日本の憲法学者は税法学を勉強しておりませんので余り議論しておりませんけれども、今後憲法の各理論を個別の税制上の問題について立ち入って検討していきますとおのずと税制の方向は決まってくる、恐らく政策論議が入ってくる余地は非常に少なくなってくるのではないか、財政学者が出る幕が余りなくなってくるのじゃないかということを私は考えておりますけれども、そのことを京都の裁判所がきわめて抑えた形で、しかも鋭く国民に訴えておる、こういうふうに考えております。

沢田広日本社会党

○沢田委員 続いて北野先生、大変恐縮でありますが、大島先生とお二人にお伺いしますが、経費控除には老後の安定というものを含めるということが妥当と考えられますかどうか。これは一つの例なんでありますが、労働の再生産、一般の勤労者、これは後で小寺さんにもお伺いしますが、先生にもお伺いしますけれども、いわゆる経費控除の中には労働者が自分の労働を提供して労務の代価として賃金を得る、その賃金を得ることによって自分の家族を養い、同時に自分の老後の生活の保障を得る、当然そういう義務的なものを持っている場合のこの経費控除の中には、将来の老後の安定、現在の社会保障制度の未熟成の段階においては将来の老後の安定の経費まで本来ならば経費控除として認めるべきではないか、こういう意見もあるわけでありますが、これらの点を含めながら、現在の経費控除というものについてどういうふうにお考えになっておられるか、これは大島先生と北野先生にお伺いいたします。  それから、捕捉率については先ほどお伺いいたしましたけれども、これは端的に現状のこの捕捉率の矛盾の点についてお考えをお伺いいたしたいと思います。

大島正同志社大学教授

○大島参考人 それではもう一度しつこいのですけれども、その捕捉率について私が実際に経験したことを申し述べます。  私が教えております学生の父兄にはいろいろな業種の人がおります。たとえばそういう人、まあわれわれの大学では小学校みたいに父兄会というのがあるのですけれども、そこへ集まってくる父兄が私に、あなたはいろいろなことを裁判で言っておられるけれども、あれは本当ですね、自分が実際に事業をやってみてそう思います、給与所得者は本当に気の毒だ、自分のところに雇っている五人か六人の従業員も本当に気の毒に思う、こういうのが大半でございます。それから私がよく学生を連れて食事に行く、これは京都の目抜きのところにある小料理屋でございますけれども、われわれが月に一回か二回行けるようなごくささいなように見えるところなんですが、そこのマダムというのは宝石気違いなんです。それで、ほかの客がいないときに私の目の前にぱっと五本の指を出すわけです。ダイヤがはまっているのです。これ幾らに見えますか、さあ二、三百万円ぐらいかなあ、冗談でしょう、一千万ですよ。そして首に何かロケットみたいなのをかけている。これ八百万だと言うのですね。はあ、君のところはずいぶんもうかるんだなあ、それはそうですよ、ここ十年間京都の一番目抜きのところで自分が事業をやっておって、年収七十万で通るんだと言うのですよ。いいですか、年収七十万ですよ。だから私はそれを聞いたときに、ああ、あなた方いいですね、大いにそれでおやりなさい、余りいい政治をしてくれてないのだからそれくらいあたりまえかもしれませんねと。私は、クロヨンというふうに言っておりますけれども、これは決してそこからたくさん取れというようなことを一遍も言ったことはないですよ。本来ならば税金なんというものはよく考えてみるとそういうものかもしれないですね。収入を把握して何%かでぱくっとかけるというような、個人の零細な企業だとか個人からそうむやみやたらに取るものでは、あるいはないのかもしれない。それが真実であるかもしれないのです。それで私はそのおかみから、あなたいろいろ言われるのはもっともですねというふうに言われたことがあって、ちょっとショックを覚えたことがある。こんな例はとりたてて申しますとまだまだあるのですよ。  それと非常におかしいのは、どこそこ協議団——その当時はまだ不服審判所がなくて協議団と言っていた時代ですが、中部地方の協議団の人から、名前は書いてありませんでしたけれども、あなたの主張は全部正しいのだというような手紙が来たことがある。こういう手紙は、幾つか残しておりますが、まだかなりあるわけです。それで私はそういうような意味で、こういうような捕捉率の不公平というのがやはり一番給与所得者には頭へぴんとくるのだ。それから垂直的な思考に移る。  そしていまお尋ねのありました老後の問題でございまするけれども、なかなか実際にはそれすらもできない状態にある。物価の上昇、インフレ、それで少しぐらい貯金しても全部それが飛んでしまう。つまりやろうにもやれないというのが現状ではないでしょうか。

北野弘久日本大学教授

○北野参考人 将来の老後の安定のための支出は経費なのかどうかという御質問でありまして、非常にむずかしい問題であります。恐らく立法論として御質問あったと思いまするのでお答えいたしますけれども、私はやはり給与所得の場合の必要経費の概念というものと、通常の事業所得の場合の必要経費概念は違ってしかるべきであると考えております。  したがって、そういう観点に立って将来どういう必要経費概念を所得税法で確定するかということは、今後いろいろな学問の研究成果を駆使しましてはっきりさせるべきだと思うのでありますが、ただ将来のための勤労に必要な経費の範囲でありまするけれども、たとえばしょうちゅうですね。昔のニコヨンと呼ばれる人たち、ああいう人にとってはその日の一ぱいのしょうちゅうを飲む、あるいはビールを一ぱい飲むということは、まさにあすの勤労のための必要不可欠なものでありますので、その程度のものは私はやはり将来今後の社会通念に従って必要経費概念に取り込んでいいのではないかと考えます。ただ一般的には、日本の、あるいは世界の多くの国の税法上の必要経費概念としましては、実定法的には収入を得るために必要な経費であるというふうな言い方をしております。ただ、収入を得るために必要な経費というのは勤労の場合と通常の事業家とは違ってくるとは思いますけれども、どの程度まで違うのかということは非常にむずかしい問題がありまして、将来の老後の安定というようなそういう側面のものは必要経費概念の中に一般的に入ってこないんじゃないか、ものによっては入ってくる。ただ、勤労所得につきましては、租税理論上アーンドインカムあるいはレーバーインカムと呼ばれるものでありますので、所得の質が一般の所得と違うわけですね。所得の質的な担税力が低いのであります。そういう点を考慮しまして、私先ほど申しましたように、必要経費の問題とは別に、給与所得特有の控除としまして勤労性控除、給与所得の持つ勤労性所得の特質を考えた、担税力の減殺要素を考えた、そういう特別の控除を法制化する、それによって将来のための勤労者の生活の安定に資する、そういうことが考えられていいんじゃないかと思っております。

沢田広日本社会党

○沢田委員 ダブったら大変恐縮ですが、先生、時間の関係がありますので私もダブってちょっと先生方に質問させていただきます。小寺先生、ちょっと関連して、お隣にお座りになっているので、マイクがすぐそばですから、また続いてお願いいたします。牛嶋先生にもお願いいたします。  小寺先生は、税の不公正の分野について、当然勤労者の生活を守るために税金というものがわれわれの生活に大きな負担になっている。公共料金を含めて、これは間接的な税金という収奪の形で行われている。とすると、やはり労働組合としても当然政治的な分野にこれは介入し、あるいは政治闘争というものを深めていかなければならない、そのいう必然性というものを持っておられると私たちは理解をいたしておりますが、その点に対するお考えと同時に、福祉に充てる目的税というものの点について何かお話がありましたけれども、福祉というもの、これはどういう意味の福祉をここではおっしゃっておられるのか。福祉に充てる目的税は将来考えるべきだとおっしゃられような気がいたしますが、その点の福祉とはどういうものについての目的税としてここでお話しになられたのか、その二点についてお答えをいただきます。  大変申しわけございませんけれども、牛嶋先生にも続いてお答えいただきたいのですが、先生は、結論的には物価調整減税というものは、私たちの簡単な受けとめ方とすれば、労働基準法上の超過勤務手当の割り増し金みたいなものだ、いわゆる物価インフレにしたのは政府の責任で、二五%の割り増しを払え、もっとうんと夜勤勤務をしたら五割を払えと同じように、物価調整減税は、インフレを抑えていくためにも、当然インフレに相当して見合ったものの減税は行っていくべきではないか、こういう御説だと思うのであります。そういうことと受けとめてよろしいのかどうか、その点ひとつお答えをいただきたいと思います。お答えいただいた後、小倉先生に最後にお答えいただくことがありますので、ひとつその時間も残しながらお答えいただきたいと思います。

小寺勇全日本労働総同盟生活福祉局長

○小寺参考人 最初の第一点のところ、ちょっと内容を私理解しにくかったわけですけれども、同盟としましても当然政治活動が必要であるということは全面的に肯定しておりまして、ただ、ストをそれについてやらないというだけでございます。  第二の税制と福祉の問題なんですが、たとえば現在の福祉政策の中の主たるもの、たとえば年金とか健保を見ました場合に保険システムが多いわけでありまして、他国におきましてはむしろナショナルでやっておるところもございます。そういった接点として、むしろ福祉の問題というのは税制でとらえるかあるいは保険でとらえるか、こういった問題はあるわけですけれども、現状のわが国の状態からいきますと、どちらが正しいかという議論をしておるんでは時間だけかかりますので、そこで私どもは、むしろ直接的に税制に導入できる福祉の内容というのは、たとえば老年者で見ますと、老年者が働いておると直ちにまた給与所得が増す。そこで老年者控除というものをもっと考えなくちゃいかぬとか、あるいは働いていない老人に対しての扶養の控除率も控除額も現状で果たしていいのだろうかどうか、もっと大きくしなくちゃいかぬのじゃないかとか、障害者の場合も同様に、もっと控除というところで福祉という観点からの思い切った見直しをするとか、そういった控除の必要があるのじゃなかろうか。そういうことを御検討いただいたらどうか、こういうことを申し上げておるわけです。

牛嶋正名古屋市立大学教授

○牛嶋参考人 先ほど物価上昇による増税分と申しましたが、もし所得税構造が比例課税でございますと、この問題は起こってこないと思うのです。私、先ほど計算の結果を申し上げましたように、実は税収弾性値が一・七ぐらいでございます。そうしますと、いま物価による名目的な所得の増加が一〇%ありましても税負担の方が一.七倍、一七%ぐらいふえるわけでございまして、その差額の七%については調整すべきだというふうなことで申し上げたわけでございます。

沢田広日本社会党

○沢田委員 小倉先生にお伺いいたしますが、先生は先般新聞の発表によりますると、この調査会の発表は一回ぐらいの会合で皆つくったのだ、こういうふうに発表されております。一つの項目について一回ぐらいしか討議していない、やはり同じ問題で二、三回は議論する必要がある、こういうふうにおっしゃっておられますが、その程度の討論でこれを発表されたものなんでしょうか、お伺いいたします。

小倉武一税制調査会会長

○小倉参考人 お尋ねの新聞の報道でございますが、どういうことに関連してそういうことになったのか、私必ずしも定かでございませんが、税制調査会の答申に即して申しますれば、答申ができるまでに各項目一回しか審議しないということは全くなかった次第でございます。多分税制調査会の速記録などは役所の方から国会にお配りになっているのじゃないかと思いますが、それをごらんになれば、そういうことはないということはすぐにおわかりになると思います。

沢田広日本社会党

○沢田委員 いや、日経の松田論説委員との対談の中で、小倉先生が松田さんの質問に対して、「それはなかなかむづかしい。資産税、所得税、法人税、消費税というように分け、それにまたそれぞれの項目がある。だから一つの項目について一回ぐらいしか討議していない。やはり同じ問題で二、三回は議論する必要がある。」「一部会、二部会の中間報告をするときに総会があっただけで、報告の結果を討議する時間はほとんどなかった。だから大方の意見はこうだと一言でいうのは無理があります。」こういうことで中間報告を出された、こう言っているのですけれども、そのことを否定なされるのですか。

小倉武一税制調査会会長

○小倉参考人 中間報告のことでございましたら、いまお読みになりましたのは大筋間違っておらないと思います。たくさん項目がございまするし、一部会、二部会がございまして、総会は最初のときと最後の一回ですから、部会に出席にならなかった方は総会のときの報告だけを聞いたというようなことで、しかも論議する時間は十分なかったというようなこともございまするし、これは部会に属されてしょっちゅう部会に来られた方は、部会の所属の事項については必ずしも一回ということではなかったかと思いますが、達観して言うと、お話しのようなことで間違っているとは申しません。これは中期税制の中間報告のことでございます。

沢田広日本社会党

○沢田委員 これは五十一年の十二月二十日ですから、その中間報告の前なんであるから、いま国会に出されているものであることには間違いないでしょう。

小倉武一税制調査会会長

○小倉参考人 国会に出されておりまする所得税なり特別措置法等の改正と全く無関係ではございませんけれども、現在国会に提案されておる税制に関連する税制調査会の審議及び答申は、いまお尋ねのこの中間報告が出た直後に始めまして、去年の十二月からことしの一、二月にかけて審議をしたものでございます。

沢田広日本社会党

○沢田委員 じゃ、しつこいようでありますが、先生、この後何回くらいやられたのですか。この十二月二十日以後一項目について一回だ、その後何回やられたのでしょうか。

小倉武一税制調査会会長

○小倉参考人 この項目はおのずから違うわけです。中期税制のときの中間報告で審議した項目と今回の提案になっておる税制についての審議とは項目が違いまして、これは多少は連続がございますが、そう連続のないものもございます。たとえば印紙税だとか登録税については相互連続性がないというようなことでございます。暮れから一月にかけてですからそう何回というわけにもまいりませんが、総会はたしか二回ばかり、それから起草委員会もございましたから数回はいたしておると思います。

沢田広日本社会党

○沢田委員 この結果を見ますと、この判決文の三項に対しまする取り扱い、それからいままで開かれているこの税制調査会の経過を見ましても、大変恐縮な言い方でありますが非常にいいかげんな報告ということに評価せざるを得ない。これは非常に無責任な報告をされたのではないかと思うので、もう少し国民の税制を考えていただくならばより慎重に、大変給与は少ないのかもわかりませんしあるいは報酬が少ないのかもわかりませんしあるいは日程がお忙しい方が多いのかもわかりませんけれども、それならば委員をかえるなり何かをして、これはやはりもっとまじめに、もう少しりっぱな、毎日でも国会に間に合うようにもう少し実のある——抽象的にあっちだかこっちだか八方破れのような言い方をして報告をされるということは、国会を混乱に陥れるための報告というふうにしか評価をすることができないような報告がなされていることは、はなはだ遺憾であると思います。  今後十分この点はひとつ御注意をいただくようにお願いをいたしまして、私の限られた時間もございません、諸先生方には大変貴重な御意見を賜りましたことを重ねて厚くお礼を申し上げ、先生方の御意見も今後、拳々服膺とまではいくかどうかわかりませんけれども、十分に私たちも努力することをお誓い申し上げまして質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

小倉武一税制調査会会長

○小倉参考人 お言葉を返すわけでもございませんが、ちょっと税制調査会の中期税制についての中間報告の趣旨と違うお考えをお持ちのようでございますので申し上げますが、いろいろの意見がある段階で世の中に発表する、そして税制調査会以外の方々の意見も今後反映していきたいということで、要するに中途半端の段階で、その段階までに出た問題、それからそれについての各種の意見を発表するということが目的であったわけでございますので、Aと言えばある人はBと言うようなことになっておる内容そのままを、何らかの御参考にということで発表することにいたした次第でございます。

山下元利自由民主党

○山下(元)委員長代理 保岡興治君。

保岡興治自由民主党

○保岡委員 自由民主党の保岡興治でございます。時間も三十分と限られておりますので、主として小倉会長に、税制調査会会長としてというか、個人的な見解でもいいですから、もう少し先ほどの陳述に加えて詳しいお話を伺ってみたい、このように思います。  先ほど小倉会長の方からもお話がありましたが、昨年五月の政府の五十年代前半の経済計画に基づいて財政収支試算というものを政府が改定して出してきたわけであります。それを見ますと、五十五年度に赤字国債をゼロにするということで試算をしてありますが、税収が五十二年度十八兆七千九百億であるものが、五十三年度になると二七・四%、五十四年度には二一・九%、五十五年度も大体同程度で、三年後に三十五兆五千八百億と、税が二倍近くなるという試算がされているわけであります。これはいろいろな説明によりますと、税の自然増というものを入れてもなお五、六兆円ぐらい財源が足りない、こういう重大な財政の危機になっておる。これに対してまた、桜田日経連の会長の桜田試案というものも出ていますが、これなどは、この見通しでも大変だということで、さらに五十五年度には二兆円の赤字公債が残るというような苦しい見通しもある。このような状況でこの財源というものについてはっきりした見通しを持っていない。わが国の置かれている国際的な激動の時代の進むべき道、国のあり方という基本にかかわってきて、国全体が破産をして国民が大きな痛手を後世に負う結果になりかねない、こういう重大な事態になっておると考えられるわけでありますけれども、この点について、税制調査会において、会長として財政のあり方の基本についてまずどのように考えておられるか、少し詳しくお伺いをしたいと思います。

小倉武一税制調査会会長

○小倉参考人 ただいまのお尋ねの財政に関しまする収支の試算五十二年度のものを私ども税制調査会の委員も資料の送付を受けておりますが、まだこの内容についての説明は承っておりません。ただし、この前のこの前身になるような五十一年、昨年に出ました財政収支試算につきましては税制調査会でも正式に御説明があり、これを頭の中に入れながら中期税制のあり方を検討するということにいたしておりますので、基本的な考え方は今回の試算も余り変わっていないのじゃないかと思いますが、しかし、一年新しくなっておりまして、その間非常に大きな違いが出ておりますのは、昨年拝見した試算よりはわが国の財政はさらに一段と深刻な事態になっておるという認識を新たにいたしておるのであります。  何でも、いまお尋ねのございましたように、五十五年度になりますと公債金収入の大部分、七割ぐらいですかが国債償還になってしまうことにもなるようでございまして、他方、しかし税収が見込まれておるのは、五十年度から五十五年度まで年率二〇%を超えるような税収の増の見込みが立っておってなおかつそうなのでございますが、しかし、税収の見込み自身が試算でございますが、恐らくかような税収を上げることはなかなか容易なことではないということで、税制調査会の皆さんどのようにお考えになっておるか、まだ承る機会はございませんけれども、恐らく各委員深刻に受けとめて、いかにただいまの財政を考え、またこれに即する税制のあり方をどうしたらいいかということについては、それぞれお考えになっているのではなかろうかというように感じております。

保岡興治自由民主党

○保岡委員 オイルショック以来の現象でありまして、それ以来急に国債依存度が上昇してきている。この上昇度合いを見ても、日本が来年度三〇%近くということですが、先進諸国いずれもこの影響を受けて、多少なり国債に依存しているのですが、日本の程度に比べるとまだまだ非常に軽い。日本の場合は極端に依存度が高いように思われるのです。そういう状況にあって、先ほど来税の負担感あるいはどういう徴税や税制のあり方がいいかという、税の負担を受ける国民の側からの、税金を納める側からのいろいろな感じ方、そういうものに的確に対応する税制はどうあるべきものであるかという観点からの御意見としていろいろ参考になる御意見もありますけれども、国全体が倒れてしまえば、これは国民全部の生活の基本が破綻に瀕するわけですから、やはり税収というものの財源の根拠はわれわれ真剣に考えておかなければならない。オイルショック以来の現象ではあるけれども、これは私は、全世界が第二次世界大戦以後だんだんナショナリズムが高進してきて、結局は一段階で発展途上国と先進諸国家の決定的な戦争が始まったのではないだろうかと思うのです。むしろ発展途上国が先進諸国家のルールを打ち壊し、そこに新しい、自分たちが参加した秩序を求めている激動の時代に入った。だから、資源がなくて貿易立国をしている日本としては一時的な現象としてこのオイルショック以来の財政状態の事態をとらえてはならない。これからがむしろ、五年、十年大変な事態になってくるのだという認識がなければならない。したがって私は、ロッキード事件が昨年いろいろ大変な状況になった、しかしそれをきちっとすると同時になお税制のあり方などはそういう感じ方、感覚的な受けとめ方以上にもっと財政全体の健全化ということについても重点を置いて、国民に理解を求める、思い切ったことをやらなければならぬ事態に来ている、こういうふうに感ずるのです。  そういう観点から不公正な税制の是正とかあるいは歳出面の経費の節減、合理化、これはいずれも重要でありますから、あるいは徴税の不公正、こういったものも徹底して具体的な施策をとらなければならないとは思います。しかし一方において、いま会長がお答えになった、あるいは税制調査会からの答申にも、そのうちいずれ一般的な税の引き上げをしなければならないという御意見などは、もっと早目に具体策を出して、先ほど会長が言われたように、それで決定案というわけではないのですから、早くたたき台を出さなければ大変なことになる、そういうふうな感じ方がするのですが、そういう観点からこの具体化についてどのように考えておられるか、それをお伺いしたいと思います。

小倉武一税制調査会会長

○小倉参考人 お尋ねでございますけれども、多少私見になりますが、一九七三年から今日にかけての様子を見ますと、どうも時代が変わってきた、経済の様子が非常に変わってきた。その変わりようというものは財政の支出の面にもまだ反映しておりませんし、また財政収入の方にもまだ反映してない、両面ひとつ根本的に考え直す必要があるのではないかという気が率直に言っていたすわけであります。  支出の面はさておきまして、収入の面につきましては、税制が主でございまするけれども、この税制のあり方について、いかにあるべきかということを、先ほどもちょっと冒頭申し上げました中期税制のあり方ということで、昨年の後半、主として後半でございますが、精力的に実は審議をいたしたわけであります。問題点もいろいろ出、各方面の意見もある程度出てまいっておるのでありますが、その後なお、たとえば国会におきまする御論議なども、今国会等で必ずそういう問題についていろいろ出るに違いないわけでございますので、行政当局の方で、国会で出ました御意見あるいは問題点の御指摘等も審議に反映するようにいたしまして、できるだけ早い機会にひとつ、いわばたたき台と申しますか、御参考になるようなものを提示いたしまして御意見も承り、さらに固めてまいることが必要かと思うのであります。ただ、わたる範囲が法人税から所得税あるいは消費税あるいは新しい付加価値税といったようなものも審議の対象にあるいはなるかとも思います。あるいはまた富裕税とかそういうようなことも問題になりましょうし、また特別措置についての整理合理化というようなこともさらに進める必要があろうかと思いますが、どれを重点的に取り上げ、全体の税制上のバランスをどうとったらいいかということについて、御質問、お尋ねのございましたように、できるだけ早い機会に審議に着手し、また早い機会に一応の大筋の結論みたいなものを得て、御批判を得て、さらに審議を進めるというようなことがよろしいのではないかというふうに私個人としては考えておる次第であります。

保岡興治自由民主党

○保岡委員 会長個人の御意見でもいいですから、もう少し詳しくお話を伺いたいと思うのです。  いま出てまいりました中に富裕税というのが一つありました。よくちまたに、賛否両論いろいろありますけれども、これだけの税収を確保する税目としては、一般消費税というか、付加価値税を導入する以外ないのではないだろうかということが言われております。これはやれる政治状況にあるかとか、あるいはやるについて先にいろいろ解決しなければならない問題があるとかいう議論とはまた別に、将来の税のあり方の一つの課目としても、前に発表された長期の財政見通しの中にも、付加価値税については十分考慮に値するというような意見があったと記憶しておるのでありますが、付加価値税の導入についてどういうふうに考えておられるか、それをお伺いしたいと思います。

小倉武一税制調査会会長

○小倉参考人 付加価値税のことでございますが、税制調査会では、かつて付加価値税の導入について積極的に検討すべきであるという結論を出したことがあるわけでございます。これは私も承知をいたしております。その後、付加価値税の導入ということにつきましては、自然増収もたまたま非常に多く得られたというような時が続きまして、具体的な導入についての検討は必ずしも十分進んでいなかったように私は承知しております。しかしもう付加価値税の導入がいいか悪いか、こういう一般論、考え方の時代は過ぎまして、具体的に、導入するとすればどういうことを行政的にあるいは徴税上考えなければならぬのか、また、経済的には、導入するとすればどういう時期がいいのか、またしたがって物価に及ぼす影響はどういうことになるのだろうかとか、中小企業の関係はどういう便法があるのだろうかとかいったようなことを少し具体的に詰めまして、これは導入すると決めてからやるのではなくて、導入するかしないかを決める前に、そういう実務的な面まで含めた検討をした上で、さてこういうことなんであろうか、どうであろうかということを、そのときの経済あるいは政治事情もお考えの上に御判断願う、その上で導入するかどうかということを決定願うということがいいんじゃないか。税制調査会では、ただ筋論だけで導入すべし、導入反対ということを言っておる時期はもう過ぎたような気が実はしております。

保岡興治自由民主党

○保岡委員 私も、先ほど申し上げたような理由から、これは導入するかどうかということを決定する前に、いろいろ欠点もあるでありましょうから、それを是正する方法が具体的にどういうものがあるのかというようなことをいろいろ検討した上で、国民に早く示して理解を求め、そして選択を求めていかないと、あれを先にやるべきだ、これを先にやるべきだという議論では、先ほど大島参考人も言っておられたように、税の負担感、そういったものからいくと、単にそれを感覚的にとらえる。国民としてはできるだけ税が軽ければそれにこしたことはないという感情はもっともでありますから、そういった感情に押し流されることがないように、できるだけ早い機会に具体的な案を国民に示すべきである。大方の検討をする必要がある、そのように考えますので、よろしくお願いを申し上げたいのですけれども、この付加価値税については、ヨーロッパ諸国ではもうすでにEC諸国でやっておるということでありますが、そのEC諸国の付加価値税のあり方について、うまくいっておるというふうな御認識があるのか、あるいはどういう問題点があるというようなことを考えておられるか。これはまだ会で審議をしたわけではないでしょうから、会としての意見はお述べになれないと思いますが、会長御自身の御意見を聞かせていただければ幸いだと思います。

小倉武一税制調査会会長

○小倉参考人 私も詳しく存じておるわけでもございませんが、ヨーロッパ諸国、ECを中心とした諸国は付加価値税を導入しておりますが、大体においてうまくいっているというふうに聞いております。     〔山下(元)委員長代理退席、委員長着席〕 ただし、これは見方によって違うわけでございまして、たとえば、日本の中小企業の方々が向こうへ行って調べてこられると、やはり中小企業等についてはECでもいろいろな問題があるんだといったようなことを指摘される向きもございまするし、そういう報告書も一部いただいておることもございますが、大体においてはうまくいっておるという評価でございます。したがって、また、日本に大幅の増税といいますか、増税による増収を考えなければならぬ場合には、付加価値税が最も有力な一つの考え方ではないかというふうに私どもも考えておるわけでございます。  ただし、ヨーロッパ諸国と日本とは少し事情が違う点がございまして、これは釈迦に説法になるわけでございますけれども、経済構造が違うということになるのでございましょうか、あるいは中小企業、零細企業のウエートが違うということになるのでございましょうか、そういうことがございます。  それから、もう一つぐあいの悪いことは、これはEC諸国も導入の時期は国によって無論それぞれ違うのでしょうが、どうも時期として、毎年小売物価が一割近い程度に上がるというようなことが去年、ことしを見ますと想定されるわけですが、そういう時期には、これは必ずしも適当でない。もう少し物価が安定をするといったようなことがいいんではないかということが考えられるわけであります。  もう一つございますのは、間接税あるいは消費税といいますか、そういうことに従来比較的なれておった国と余りなれてない、日本のように戦後直接税中心でいきまして間接税のウエートが非常に低い国と、フランスのように間接税が付加価値税というような税制に切りかえる前から非常にウエートがあって、所得税よりは間接税というのが国民的な合意が得られやすいといったような、どうもそういう雰囲気といいますか国民的な感情もあるというようなこともあるようでございまして、その辺の国情の違い、経済の違いというようなものもやはり考えてみる必要があると思います。

保岡興治自由民主党

○保岡委員 財源のあり方として、直接税、法人税ないし所得税に、今度これからどれだけ増収をして得る余地があるか、その点についても十分検討しなければならないと思うのですが、付加価値税あるいはその他の、いまお話しのいろいろな検討をするについても、その点の限界ということもまたよく検討しておかなければならない。  そういう観点から、ちょっと大まかな質問になりますが、直接税の面での増税の余地、限界というものについて、御意見を伺いたいと思います。

小倉武一税制調査会会長

○小倉参考人 これは外国と比較するだけが能ではございませんけれども、欧米諸国と比べてみると、これは政府の資料でございまするが、アメリカを除くと日本は直接税のウエートが非常に高いことになっております。これは恐らく間違いがないの。やないかと思いますが、地方税を入れるということになりますと、これはアメリカでは州の税金がどうもよくわからぬようでありますが、間接税は主として州の税金になっているようでございますので、恐らく連邦だけの税を比べてみるとアメリカの方が直接税は高いですけれども、日本の地方税、それはアメリカの州の税金を入れると、日本とアメリカとは肩を並べてどうも直接税のウエートが高い国になっておるのではないか。  先ほどからも所得税の減税のお話、御意見もございましたけれども、そういう御意見もあるほどに、所得税にさらに負担をお願いするというのは、どうもこの国内の事情あるいは外国との比較からいっても、ちょっとむずかしいような気がいたします。しかし、どこかにこの税源を求めなければいかぬというような場合に、所得税は全然頭から考えないというわけにもこれはまいらぬかと思いますが、ただいまのところそんなような気持ちでおります。

保岡興治自由民主党

○保岡委員 法人税についてはいかがでございま  すか。

小倉武一税制調査会会長

○小倉参考人 法人税については、これはいろいろ御意見がありまして、もっと法人の方から、企業から税金をいただいた方がいいのではないか、あるいは法人にも累進税率を適用してみたらどうかというような、いろんな御意見があるようでございますが、どうもいまの経済事情からいいまして、企業に余り大きな負担をかけることは、景気の対策上好ましくないというような時期がまずいまのときとしては問題になろうかと思います。また、私詳しく存じませんが、法人にどういうふうに累進税をかけるのかというようなことになりますと、これまた個人と違いますからいろいろな問題があって、簡単に片づく問題ではないのではないかという気がします。それから、法人の実効税率を外国と比べましても、日本が特に低いということでもなさそうでございまして、これもなかなか法人税に大きく税負担をお願いできるというふうに直ちに結論はどうも出にくいような気が実はいたしております。

保岡興治自由民主党

○保岡委員 そうすると、いまお話しのような直接税に対するいろいろな問題もあり、また時期が適切でないとか、いろいろむずかしい問題があるだけに、増税を賄うその税目ということについては、やはり先ほどの新税の創設ということが非常に重要な意味を持ってくるのではないか、こういう感じがするのです。ところが、先ほどお話しの付加価値税というのは非常に逆進性が強いという欠点がある。それにはいろいろ方法もあって是正もできる余地もあるのでしょうけれども、制度としてこれで捕捉できない、新税というのですか、たとえば先ほどお話しの担税力の一つの指標になっている資産というものに着目して富裕税を考えるということなんでしょうか、そういった面での新税も考えて公平な課税をする、あるいは富の集中を抑制するというような観点からの公平を確保するお考えもあるかに先ほど聞いたのですが、その点についてはもう少し具体的にどのように考えておられるか、お伺いしたいと思います。

小倉武一税制調査会会長

○小倉参考人 新しく財源を求めるといいますか、税負担を国民にお願いするために新しい税源を求めなければならぬというようなことについては、私どももそのような気持ちでおるわけでございます。  では具体的にどういう税目でそれを考えるのかというようなことになりますと、これまた税制調査会として十分審議もしておりませんから、税制調査会で大体こんなようなことを考えておるというものをいま申し上げるわけにもまいりませんが、いまお話しのような付加価値税あるいは付加価値税を含めた一般的な消費税ということが、一つの大きな新しい税源のあり方を示す言葉として浮かんでくるわけでございます。ただ、国民全体にできるだけ税負担をお願いするという場合に、一つの税目だけでお願いするということは実際問題としてなかなかできにくいし、税負担の公平ということも考えなければならぬというようなこともあるかと思いますので、補完的な意味といいますか、あるいは補足的な意味において他の新税についても配慮をして、できるものは考えるということが必要かと思うのであります。  ただ、富裕税といいますか、資産税みたいなものでございまするけれども、これは何か西ドイツでは実行しておるように聞いておりますが、資産ということになりますと、実際把握がなかなかむずかしいそうです。その点で、税制の上では公平になっても徴税上非常に不公平なことになってくる。同じ財産家であっても財産の中身によって、把握のしやすい財産としにくい財産によって非常に不公平が出てくるということが当然予測されるというような欠点もございます。無論どんな税金でもいきなり徴税がうまくいくようなりっぱな税制はありませんので、年月を重ねてりっぱにしていく、徴税上も不公平のないようにしていくというようなことが必要かと思いますが、そういう問題も実はあるのではないかという気がいたしております。  なお、新しい税源としては地方税のことも考えなければなりません。地方自治の方も財政状況は非常に苦しいので、税制のあり方をどうしたらいいかと考える場合に、国税との関係をどう考えたらいいかというようなことも当然考えなければなりませんので、なかなかこれは一刀両断にこういう税制でこうやったらよろしいということを即断するわけにはいかないようなことに相なっておろうかと思いますが、それだけにできるだけ早い機会に衆知を集めて先ほどお示しのような試案というようなものをつくるように努力することが必要かというように考えております。

保岡興治自由民主党

○保岡委員 もう時間も参りましたが、結局政府の改定財政収支試算を見ましても、かなりの経済成長を見込んであるわけです。そうすると、予算の成立がおくれたりいろいろなことでなお不確定要因もありますから、景気が後退をして成長が確保できないというようなことになっていると、なおさら大変な事態になってくる。時間がないのでほかの先生方にはお伺いする時間もなくて恐縮でございましたが、国債依存というものが非常に慢性的に続いていくという、先ほど会長が言われたように、国債費そのものに莫大な国債発行をしなければならぬようなことになって、国全体が破産をしてしまうというような危険な事態になっておる。これはお互いに先ほどの不公正税制の是正あるいは経費の節減、歳出の合理化、こういったものも真剣に考えると同時に、やはりできるだけ早く、会長も言っておられるように、新しい税制の中期のあり方というものについてはできる限り具体的に早く明確にしていただくのが国民にとって利益につながる、こういう大事な時代に非常に大事なことである、このように考えますので、よろしくお願いを申し上げる次第でございます。  以上をもって質問を終わります。

小渕恵三自由民主党

○小渕委員長 大島弘君。

大島弘日本社会党

○大島委員 日本社会党の大島弘でございます。制限時間がございますので、総論とそれから所得税関係と措置法関係、三つに分けまして重点的に質問いたしますので、ひとつ重点的にお答えいただきたいと思います。  まず総論でございますけれども、先ほど小倉参考人が、フランスなどは非常に間接税が多いと。これは事実でございましょう。しかし私たち考えますのは、大体アングロサクソン系、イギリス、ドイツ、あるいはアメリカも含めまして、アングロサクソン系はわりかた直接税を中心にしている。これに対してラテン系のフランス、イタリアというのは、主として安易な間接税に流れやすいということは、よく言われていますように、アングロサクソン系の国々では、一たん国会を通って法律になったものはあくまで神聖だ、守らなければならないという基本的な意見がある。ところがラテン系の国民につきましては、どうせ国会はお祭り騒ぎをしておるのだから、そんなものは聞く必要はない、それよりも安易な間接税で酒やたばこでいけ、こういうことが多いと思うのですが、小倉参考人としては会長としてではなく個人的に日本人はどちらの部類に属するのであるか、あるいはまたどちらに属する方がいいのかということについてちょっとお尋ねしたいと思います。

小倉武一税制調査会会長

○小倉参考人 これはなかなかむずかしいお尋ねでございまして、私もいまの英米系とラテン系の国民の性格といいますか、あるいは文化的な背景といいますか、あるいは歴史的な事情が若干違っておるということは承知しておりますが、詳しくは存じておりません。しかし文化的あるいは歴史的な背景の違いが税制にも反映しているということは恐らく事実だろうというふうに思います。アングロサクソン系の方で直接税が重点的であり、ラテン系は間接税が中心になっておるというのも、これは先生のお話しのような結果かと思うのです。  ところで両方に比べて日本は一体どこにあるのだろうか、これはちょっと簡単には申せませんけれども、どうも戦後はどちらかと言うと、英米系に近いような状態に税制上なっておるわけでございます。しかし国民の気分なり感情なり文化が英米に近くなっておるかと言うと、必ずしもそうも断言できませんが、戦後はアメリカの影響もいろいろな関係によって強いですから、多少とも英米系の影響の方が強い。そっちの方に近いと言ってもあるいは間違いではないのじゃないかという気も実はいたします。

大島弘日本社会党

○大島委員 あなたの先ほどの御意見を伺っていますと、どうも今回の五十二年度の税制改制に対する答申、これはあなただけでなくあなたが会長としておつくりになられたのでございますけれども、今回のわが党が反対しているこういう流通税、つまり印紙税や登録免許税のような方に税源を求めていく、あるいは前の質問者のに対しましては、法人はもうこれ以上限度いっぱいだ、所得税もちょっと困る、ならば一体今後の税源をどこに求めてしかるべきなのか。つまり、現在政府の一部にもありますように、企業にこれ以上増税すれば雇用不安が生ずる、したがって求めるところはもう付加価値税しかないのじゃないかというような意見もあるのでございますけれども、あなたはどういうふうにお考えになられますか。果たして法人の担税力というのはこれが限界であろうかどうか。過去年率にして十何%成長した日本が、一人当たり国民所得いまだきわめて低いというようなときに、一体その蓄積した留保分はどこに入っているのか、そういうこともあわせまして法人にこれ以上担税力があるかないかということを、あなた個人の御意見を伺わせていただきたいと思  います。特に大法人について。

小倉武一税制調査会会長

○小倉参考人 先ほどこれも申しましたけれども、実はそういう問題がまだ検討がついていないというのが税調としての全体の中身だと思います。とられ得られるところ、あるいは協力を願えるところ、あるいは出していただけそうな負担力のあるところというのは、必ずしも企業であればできそうだという結論にもすぐなりませんし、個人所得であればできそうだということもありませんし、あるいは一般消費者ならば一般消費税的なものでひとつ何とか協力願えるのだということにもすぐにはなりません。  そこで、一体どうしたらいいのかということが税制調査会に今日与えられている使命で、四苦八苦しているというような実情かと思います。しかしどちらからか協力願って税負担をがまん願うということの必要性は、これまた一方において疑う余地がどうもなさそうな気もいたします。そこで、それぞれ企業の方も個人の方もあるいはお金持ちの方もといいますか、それぞれひとつ応分の協力を願うということにするのか、あるいは企業の方がさらにもっと担税力があるからそこにひとつ一般よりはよけいに負担をお願いした方がいいのではないかというようなことをこれから審議をする、その前の段階までは一応粗ならしにはいろいろな議論が出ましたので、その後のことを検討するのがどうもこれからの非常にむずかしい与えられた税制調査会に対する課題ではないかという気がいたしております。  まだ、どれに重点を置いてどうやるべきかということは税制調査会としては考えておりません。ただし、先ほど御議論もございましたように、どうも一般消費税的なものを考えないとほかに有力な税源がないのじゃないかという意見も有力にあることは否定できないと思います。

大島弘日本社会党

○大島委員 ここに実は古い本でございますけれども、有斐閣の「租税法概論」という座談会の本がございます。これは前の大蔵次官、国税庁長官の平田さんや白石さんあたりが書いているのですが、租税特別措置法のできたいきさつ、簡単に言いますと、平田さんはこういうように言っております。とにかく外部からの圧力が物すごい、こういう要素があって結局この制度ができたのだ。そこで必要がなくなったら少なくとも勇気を持ってやめる、こういうことが必要じゃなかろうかと平田さんが言っているわけです。  私は後ほどまた申し上げますけれども、まずこういう政策優遇的な税制の改正、それからさらに非政策的な税制の改正、多分にこれは改正する点があると私は思うのです。そういう点をひとつお含みの上、たとえば毎回毎回の税制改正の答申について、措置法の漸次整理合理化を図るとありますが、果たしてそれが——ここに大蔵省の資料で租税特別措置による減収額累年比較として四十三年から五十二年までずっと租税特別措置が行われたものでどれだけ減収しているかということのトータルがございますが、五十二年は四千四百四十億、四十七年は四千五百七億、四十八年は四千六百四十五億とほとんど平行線をたどっておる。こうして見ると、措置法の整理統合なんということはほとんど行われてないことはこの表を見てもおわかりだと思うのでございますけれども、その点はいかがですか。

小倉武一税制調査会会長

○小倉参考人 これはいまお示しの数字のこと、そのとおりだと思います。これにはまた、しかしいろいろ事情がございまして、政策税制的なもの、その必要があった時期は無論ありますけれども、これは他方においては多少ずつは整理をしてくる、しかしまた新しい政策的な要求が起こってきて新しい特別措置も追加しなければならぬというようなことも若干ございまして、そこで多少差し引きが行われる。それからもう一つ、やはり全体の経済の規模あるいは税収の額もふえてまいりますから、中のウエートといたしましてはまたこれは多少ずつは減少してくるということになっているには違いないと思いますが、絶対額自体はそう顕著にはいまお話しのような表にはなっておりません。しかし特別措置等で受けておりますいわゆる不公正税制の是正については、これは役所の方もまた税制調査会の方も非常な努力をしているというだけは申し上げられる、こう思いますし、今後もまたそのつもりでおるのであります。

大島弘日本社会党

○大島委員 努力をされても結果があらわれていなければ税というものは何にもならぬので、その点ひとつ、今後十分御慎重にやっていただきたい。特に措置法というのはもう海外にまで有名な法律でございますので、その点、この法律につきまして真剣に取り組んでいただきたいということをここで要望いたします。  第二点に所得税関係です。先ほど大島訴訟につきましていろいろ論じられたのでございますけれども、御存じのとおり給与所得控除というのは百五十万なら四〇%、百五十万−三百万まで三〇%、三百万−六百万二〇%、以下一〇%、こういうふうになっておるわけでございます。これは実は北野教授にお伺いしたらいいかと思うのでございますけれども、この給与所得控除の性格というのは、大島訴訟にも関連しまして、私は大きく分けて三つあると思うのでございます。まず一つは必要経費であるということ。それから第二点は、これは少し、租税法律主義から非常におかしいのですけれども、一般の事業所得は捕捉できないから認めるのだといういわゆる捕捉率の不足に基づく控除。それから三番目には、私はいわゆる勤労所得と事業所得を見ると、事業所得というのは何らかの意味において資産が残っていく、ところが勤労所得というのはその人が死ねばそれまでだというような意味で、勤労所得を事業所得よりも重く見なければならない。ドイツ的な考え方でございますね。アメリカは勤労所得と事業所得に余り差をつけておりません。ドイツはこれは大分差をつけておりますのですが。こういうふうなことが考えられるのでございますけれども、この給与所得の理論的根拠というのはどのように教授は解されていらっしゃいますですか。いろいろありますけれども、どの要素が一番大きいのか。

北野弘久日本大学教授

○北野参考人 これは政府の説明を見ますと、いまおっしゃいました三つのものに加えまして利子控除、つまり源泉徴収によって早目に取られておりますので、その間の調整を行うというインタレストの分の控除もございますですね。その分を含めますと四つになるわけです。利子控除も非常に少ないわけですから特に説明する必要はありませんけれども、私はやはり中心としては、現行法の給与所得控除の多くは必要経費の部分であろうと考えております。ただ、将来の方向としましては、おっしゃるような勤労性控除部分を独立した控除項目として設置すべきであるということを言っておりますし、把握控除というのはこれはまさに自殺的な問題になってくるのですけれども、現実に長年にわたってサラリーマンとその他の所得者との間にはアンバランスがありますので、これは恒常的なアンバランスでありまして、しかもそのアンバランスの程度がきわめて著しいという、そういう関係にありますので法的に手当てをする必要があるのだということで、把握控除というものを大変不名誉でありますけれども所得税法に書くという、これは世界に例がないと思いますが、そういうものを書くほどまで勇気を持って税務行政に努力してほしいと思いますけれども、その把握控除をなくする方向で徴税行政を公正にしていただきたいと思いますが、その把握控除を立法化する。そして残ってくるのは本来の給与所得控除である概算経費控除部分である。これは私はやはり実額控除と概算控除の法定化したものとの選択制にすべきであるということを考えております。  それで、現行法の多くがこの概算経費控除部分だとしますと、恐らく御質問の趣旨は、頭打ちをなくしたのはおかしいじゃないかということだと思います。これは四十何年かになくなったのですが、これはおかしいのでありまして、所得のふえるに従って必要経費を固定化いたします。そうするとふえません。ですからある段階になりますとやはり頭打ちをしなければいけないというふうになってきますので、現在の頭打ちのない制度は高額所得者に有利であるということで、非常に問題があると私は考えております。

大島弘日本社会党

○大島委員 そこで、ひとつこういうことを税制調査会なりあるいは政府で考えていただけないかと思うのでございます。  実は、今回の税法改正によって二百何万までがもう非課税になってしまっている。しかも、国民の所得は相当上がっている。それならば、大体三百万から六百万とか、こういう中間層の給与所得控除をもう少し引き上げる必要があるのではなかろうか。そうして、その理論的根拠は、やはり事業所得、正確に申しますと資産と勤労所得の合体所得といった方がいいだろうと思います。この事業所得と勤労所得との違いは、本人が死んでしまえばそれまでだというような点にあるのだから、もう少し引き上げてしかるべきではなかろうか。そうして、よって失う財源を今度は超過累進税率で考慮する。いまはどうか知りませんが、アメリカはたしか九一%までいっておったと思うのでございます。現在の頭打ち制度による日本の不公正税制をそういう意味で是正する、税率の刻み方をもう一度考える。それからもう一つおもしろいのは、いまでもそうかもしれませんけれども、アメリカの超過累進税率は、一般の累進税率と未成年者の累進税率と二段階に分かれております。これは日本で言えば、一般の累進税率と、それからたとえば未成年者あるいは身体障害者、そういう者を特別税率としてやや低くする、そういうふうなことで税収の捕捉をするということはいかがでございましょうか。

北野弘久日本大学教授

○北野参考人 後の方の質問は、要するに未成年者の税金を安くすべきであるという考え方についてどう思うかということですね。先ほどどなたかがおっしゃいましたように、勤労学生控除ですね、そういうものもありますので、それと同じような趣旨で、やはり未成年者で働いておるという人については特別の配慮をすべきであるというふうに考えます。  それで、所得税を考える場合に二つの側面を考えるべきであるということを前から私は言っているのです。一つは所得の量的担税力を把握すべきである。そのためには総合課税を行うべきであるということになってきますけれども、同時に所得の質的担税力を考えるべきである、そういうことを前から言っておりまして、近代所得税というのは、二つの要素をいかに調整すべきであるかという観点に立って税制のあり方を考えるべきであるということを言っております。勤労所得はおっしゃるようにまさにレーバーインカムでありまして、カフカが書いておりますように、これは大島先生の御専門でありますけれども、あの小説は学生時代読みましたのですけれども、非常に有能なセールスマンが虫になるのです。うろこができるのですが、そうすると自分の肉親まで自分を相手にしなくなってくるのです。つまり不治の病にかかったために、いかに有能な人であってもだれも相手にしなくなる。つまり勤労所得というのは非常にそういう危険を背負っているのでありまして、その人の体だけが唯一の資本であるという所得でありますので、事業所得あるいは資産所得などと違って、所得の質的な担税力の低さを考えるべきである。これにつきまして、給与所得控除の中にそういった分を含めておるとするならば、おっしゃるようにその点の配慮をして給与所得控除を上げるべきでありましょうし、特にそういったことの要請は必要経費の面からと、いまいった所得の質的担税力という両方の面から、中間層のレベルには重要であろうと考えております。

大島弘日本社会党

○大島委員 それで、いま申しましたように、先ほど同盟の生活福祉局長の参考人の御意見にもありましたように、中間層の給与所得控除を引き上げる、そのかわりその不足分は何らかの形で補てんする。たとえば、いま言いましたように、アメリカは現に百万ドル取れば九十一万ドル税金に持っていかれておるわけですね。そういうような方向で減収分を補うということにつきまして、最後に小倉参考人の御意見を個人的で結構ですから聞きたいと思うのです。

小倉武一税制調査会会長

○小倉参考人 大変貴重な御意見で、拝聴しておったわけでございますが、私個人といたしまして、これはあんまり税制当局には通用しないのでございますが、やはり勤労所得と事業所得と資産所得の間、この三つには税制上少し区別をした方がいいのではないかという漠然たる気持ちを持っております。同時に、それをどう具体的にするのかということについての着想まではいかないわけですけれども、そういったことと一脈通ずるような御意見で、恐らく中期税制のあり方を考えます場合などに、いまお話しのような中間所得者層についてどうするかというようなことについても大きな課題になるかと存じます。

大島弘日本社会党

○大島委員 最後に、問題の措置法でございますが、措置法といえば、何か法律にごちゃごちゃ書いてあるむずかしい法律だとか、あるいは頻繁に変わる法律だとか、あるいは隠れたる補助金だとか、あるいは西ドイツの学者が言っていますように、日本で誇るものは富士山と道路の悪いのと租税特別措置法だとまで言われているこの悪名高い措置法につきまして、若干御質問申し上げます。  私はなぜこれほど措置法についてやかましく言うかといいますと、いろいろの点でこれは話にならない。先ほど平田元次官が書いていましたように、もともと昭和二十年代の終わりに、外部からの陳情によってその場当たりにできた法律なんです。そういういきさつを持っている法律でございますね。まず第一に不公正がはなはだしいということです。医者の不公正は言うまでもございません。私は弁護士でございますので三割も認められていない。医者は七割認められている。同じ自由業の弁護士と医者がこのように違うなどということは、これはもう問題にならない。それから、第二番目には、中小企業者はほとんど潤っていないということです。と申しますのは、日本の中小企業者は五十人未満の事業所をとらえてみますと、日本は全体の四〇%ですね。アメリカに一六%、西ドイツは一二%しかないわけです。圧倒的に中小企業が多い。しかも、その中小企業の中でも、小でもない、いわゆる零細というのが圧倒的に多い。機械も持っていない、その他生産設備もほとんど持っていない、こういうものが圧倒的に多いのにかかわらず、ここにも大蔵省の資料がございますが、事項別分類としまして、まず一は貯蓄の奨励等、二環境改善等、三資源開発の促進等、四技術の振興等、五内部留保の充実等、こういういろいろの項目を挙げておりますが、この中で果たして零細企業、中小企業が潤うような項目がどこにあるかということでございます。その点はいかがでございますか、小倉参考人ひとつ。

小倉武一税制調査会会長

○小倉参考人 いまのお示しの表でございますが、これは大企業と中小企業あるいは零細企業と適用がどういうことになっているのかということについて、私しさいな資料を持ちませんし、なかなかそこはむずかしいところではないかと思います。この特別措置は、あるいは先生はそういうお尋ねでなかったかと思いますが、よく大企業だけが潤っておって中小企業はあんまり縁のない法律だ、こういうふうに理解されておるような傾きもあるように思いますけれども、考え方といたしましては、特に大企業に偏しておるのだというふうなことを私どもは考えておるわけではございません。もしそういうものが項目によってございますれば、これは御指摘願って今後の緊急な研究課題にしたい、こう存じます。

大島弘日本社会党

○大島委員 それでは、御指摘によって一つだけ私は申し上げたいのでございます。この中に原子力発電工事償却準備金というのがあります。いま原子力自体の安全性、それから地域住民の反対、これは日本のみならず外国でも起こっているわけでございます。こういうものに税制があえて先取りして特別償却を求めるというのはいかがなものでございましょうか。しかも、九電力は膨大な内部留保を持っているわけでございます。こういうような危険な、まかり間違えば全人類の破滅ともなりかねないような原子力に対してなぜ特別償却を与えるのか、これについてひとつ御説明をいただきたいと思います。

小倉武一税制調査会会長

○小倉参考人 これは先生の方がよく御承知で、私、お答えするのは実はおかしいのですけれども、原子力ないしは原子力発電についてはいろいろ考え方があり、基本的に違うような印象を持っております。したがって、この税制につきましても、原子力発電の償却についての準備金などにつきましても、これは原子力発電についての基本的な考え方いかんによって非常に違ってくる性質のものかと思いますが、いずれにしましても、お話しのように日本だけではなくて、原子力発電についての国民感情といいますか、あるいは住民の反応というようなものが近ごろあちらこちらで大分やかましくなっておるようでございます。西ドイツあるいはオランダなどについてもそういうことを聞いておりますので、その辺は税制上これを一体どういうふうに織り込めるのかどうか、直ちに御返事はできませんけれども、この特別措置全体にわたる中で、ひとつ今後も研究、検討を重ねていく課題かと思います。

大島弘日本社会党

○大島委員 個々の内容についてただせば、すこぶるおかしなものが圧倒的に多いと思うのでございますが、時間の関係上これはまた後ほどといたしまして、今度はいまの政策税制のほかに、非政策税制、つまり当然損金に落ちるのだけれども、余りにもひどいと思われるものが私は相当あると思う。法人税法施行規則による銀行の貸倒引当金、これは今度千分の五になるようでございますけれども、実際の貸倒率と比べまして、ゼロが一つ多いというふうな実情に対して……(「二つばかり多い」と呼ぶ者あり)二つ多い。しかも九月決算、三月決算の申告トップレベルにはほとんど銀行が出てくるというようなことでございますね。こういうことにつきまして税調会長としてどういうように思われますか。

小倉武一税制調査会会長

○小倉参考人 これはお話しのようなこともございまして、税制調査会でも、たしかこれは政令事項であったかと思います。政令事項でございますが、昨年の答申で、審議の中でこの引き下げ方について政府に要請しておるということであります。今回さらに、ことし下げるのも昨年の審議の結果でございますが、なおこれまた過大ではないかというお説がおありのようでございますが、今後ともなお検討を重ねていく必要のあるものかと思います。  もっとも貸倒引当金、都市銀行と地方銀行あるいは相互銀行、信用金庫と、それぞれ違いまして、その辺をどう考えるかということもございますし、銀行、そういう金融機関については一般の製造業と違った資産内容といいますか、そのようなこともございまして、信用の基礎を固めるということからいうと、やはりある程度の準備金というものがなくては困るというようなこともございまして、その辺をどのように織り込むかということは引き続き検討を要する課題かと思います。しかし、一応千分の五にするという目標はそろそろ達成されることになりましたので、その次の段階の問題として検討をするということになろうかと思います。

大島弘日本社会党

○大島委員 退職給与引当金につきましても同じことが言えると思うのでございますけれども、いずれにしましても商法上、企業会計原則上損金に算入することは否定できません。しかし、それが過大であるとかなんとかいうのではなくて、けたが違うということをここで私は申し上げたいのです。これは政令事項ですから、もちろん政府側の責任も大いにあるでしょうけれども。  そして最後に、先ほど申しましたように、これも私の私案でございますけれども、措置法は隠れたる補助金だと言われている。そこで、北野教授にお伺いしたいのでございますけれども、隠れたる補助金と正式の補助金、正式の補助金であるならば、たとえば毎年歳出予算に上がって、利子補給幾ら、毎年国民の審議にさらされる。ところが、一たん税制でこういうふうに隠れたる補助金をされますと、改正以外はまずまずそのまま国会にあらわれてこない、国民の前にあらわれてこないということになるわけですね。そうしますと、この隠れたる補助金である措置法というものは最も質が悪い、税法上私はこう見るのでございます。それならばこの際不公正をやめて、公正にして全廃する。そのかわり必要であるならば、それを歳出の補助金に計上したらどうなのか。もっとも全廃という言葉は訂正いたしますけれども、たとえば少額貯蓄の利子等の非課税とか、こういう一般庶民が潤うものは、これは本法に組み入れるなり何なりしてその他は全廃するということで、必要があれば歳出予算として補助金で計上したらどうかということにつきまして、教授のお考えはいかがでございましょうか。

北野弘久日本大学教授

○北野参考人 私は、この問題は法律案の観点から十数年来主張しておることでありまして、全くおっしゃるとおりであります。  隠れたる補助金というのは一番悪質でありまして、国民の目をごまかすのでありますので、憲法の財政議会主義、憲法の八十三条、八十五条に違反する疑いがあるということを年来主張しております。つまり、目に見える補助金であれば国会の審議を受けまして、国民の賛意を得て支給するわけですが、隠れたる補助金は実質的には国会の審議を受けないわけです。税法に書いてあるだけでありますから、新日鉄が幾ら補助金をもらったかだれも知らないのでありまして、国会は一々審議しておりません。最もアンフェアな、民主主義の考え方に反する補助金でありまして、もしどうしても必要があるならば、日本は資本主義国家ですから、国民の同意を得まして、賛意を得て補助金に計上しましてフェアにやりなさいということを私はかねがね主張しておりまして、日本では余りにも大蔵省主税局が働き過ぎる。主計局の仕事であるということを年来主張しているのですけれども、主計局がやるべき仕事を主税局がひそかにやっておる、こういうことであります。ですから、企業の隠れたる補助金というものは、これはぜひどんどん予算に計上していただきまして税法からなくしてもらう。われわれが考えております特別措置というのは、社会政策の観点からの減税措置というのは特別措置じゃないわけでありまして、産業政策の観点からの減税措置が学問上の特別措置に当たるわけです。これははっきり区別されまして、社会政策の観点からの低所得層に対する優遇措置であるとか、あるいは先ほどおっしゃいました少額貯蓄に対する非課税ですね、ああいうものは本法に組み入れましてきちっと整理する。  それから先ほど貸倒引当金は政策減税ではないとおっしゃいましたけれども、そういうふうに一般には言う人もおりますけれども、私は、多くは政策減税である。貸倒引当金の多くは評価性引当金の枠を超えておる。第一、銀行は貸し倒れることはほとんどないわけでありますから、それを貸倒引当金という形で計上することは、現実には一種の政策的な留保を認めておるということになりますので、これは会計学上からいきましても、理論上考えられます評価性引当金の枠を超えておる、政策減税と見ていいんじゃないかと考えております。

大島弘日本社会党

○大島委員 時間もございませんので締めくくりでございますけれども、重要な役割りを担われる税制調査会の会長といたしましてぜひお願いしたいのは、先ほど言いましたように、総論部門では決して安易な大衆負担に流れやすい間接税中心のラテン系的な税制にならないように、これはぜひお願いいたしたい。先ほど言いましたように租税特別措置の全廃、必要であるならば予算に計上するというふうな方法も考えられないことはないというようなこと、そういうようなことで、わが国の今後の税制のあり方として、あくまでも直接税中心というような方向でひとつ進んでいただきたい。これはわが党の政策でもありますし、安易な流通税ないしは間接税的なものに流れては困るということを申し上げたい。  それから第二の給与所得の関係でございますけれども、中間層、三百万以上というような者につきましては、もう少し給与所得の控除を考える必要があるんじゃなかろうか。そのかわり、それによって減る財源としましては、超過累進税率的な方向でも考えられないことはない。  それから三番目に措置法でございますけれども、これほど悪名高い措置法につきまして税調の意見は毎年逐次整理統合する。少しも整理統合されてない。さっきの数字で見てもわかる。だからこれからはもうそういう文句をやめてもらって、もっと堂々と、やめるべきものはやめる。私は必要あればやったっていいと思うのです。国益として必要であるならば堂々とやったらいいと思うのです。そういうようなことで、いわゆるぬるま湯的な法の改正、しかも少しも改正になっていないというようなことにつきまして、今後税制調査会としてどういうふうに対処するかということをひとつ真剣に考えていただきたいことをお願いしまして、私の質問を終わります。

小渕恵三自由民主党

○小渕委員長 坂口力君。

坂口力公明党・国民会議

○坂口委員 参考人の皆さん方には大変お疲れのところ恐れ入りますが、引き続いてよろしくお願いを申し上げます。  まず最初に、牛嶋参考人からひとつ先にお願いをしたいと思いますが、先ほど先生は減税論をめぐる三つの問題点を御指摘になりました。その中で、低成長の経済運営と景気調整減税という問題をまず最初に挙げられました。そのほか、長期に見るときの増税をどうするか、それから税の自然増収というものをどう配分するかという、ざっと三点についてお触れいただいたと思いますが、時間の関係もありまして、その中で第一の問題点、特に低成長の経済運営と景気調整減税、この点さらっとお触れをいただきましたので、ひとつもう少し詳しくお話を承りたいと思います。

牛嶋正名古屋市立大学教授

○牛嶋参考人 先ほども説明いたしましたように、これからの低成長経済の運営に当たりましては、これまでの支出政策と申しますか、公共投資だけではなくてやはり税体系にもそれなりの景気調整機能を持たせていかなければならないんじゃないかというふうに思っているわけです。先ほどの議論もありましたが、たとえば中期財政収支表を見ましても、その前提というのは安定成長を前提にしているわけでありまして、低成長になればなるほど安定成長を維持するということは非常にむずかしいわけでございます。そうなりますと、当然税体系に景気調整機能を持たせていかなければならないわけでございますが、その場合、先ほどから今後の租税体系のあり方といたしまして、所得税かあるいは間接税かというふうな議論がありますけれども、私はこれからは従来のそういった議論ではなくて個人課税、これは主として所得税でございますが、それと企業課税との税体系における構成の問題というふうな議論に移っていくんじゃないかというふうに思っているわけです。それで企業課税という場合には、単に法人税だけじゃなくて、私はもう少し広い概念を使っておりまして、先ほど出てまいりました付加価値税も含めまして企業課税と言っておりますが、今後は直接税、間接税というふうな議論じゃなくて、企業課税対個人課税といった形の租税論が展開されていくんじゃないかというふうに思うわけです。  それと関連いたしまして、それじゃ税体系に景気調整機能を持たせる場合に、所得税である個人課税でいくのか、あるいは企業課税を通じて景気調整機能を税体系に持たせていくのかという議論になるかと思いますが、私は私見になりますけれども、三つの理由で長期的に考えた場合には企業課税を通じてこの景気調整機能を税体系に持たせていったらどうかというふうに考えているわけです。  その三つの理由と申しますのは、所得税の消費需要に与える効果よりも企業課税の投資に与える効果の方がどちらかといいますと強いというふうに考えられる点であります。それからもう一つは、現行の所得税に含まれております不公平な要因というものは早急に是正していかなければなりませんけれども、本来的にはこの所得税というのは安定的な構造を持っている方が望ましいというふうに私は考えているからであります。それからもう一つの点は、所得税の場合、今回のように景気を刺激する場合には有効であります。と申しますのは、減税政策でもってそれを行っていくことはできるわけでありますが、今度は景気が過熱していってそれを抑えていくというふうな場合、所得税の場合は増税政策をとっていかなければならないのですが、その場合に果たして所得税における増税政策がとり得るか。それに対しまして企業課税の場合には、景気のそういった動向に対しましてシンメトリカルに増税も減税も行い得るといったような弾力性を持っているというふうに思われますので、企業課税を中心にした景気調整機能を税体系に付与していったらどうかというふうな見解を持っております。

坂口力公明党・国民会議

○坂口委員 いまお聞きしました三つの理由、その中で所得税について安定的な構造ということを先生おっしゃいましたが、その安定的な構造とおっしゃる意味を、もしよろしければもう少しつけ加えていただきたいと思います。

牛嶋正名古屋市立大学教授

○牛嶋参考人 たとえばこれまでの所得税減税を見てまいりますと、ある場合には二兆円減税みたいなことをやったりしているわけでございますが、私先ほども申しましたように、自然増収の中で所得税の減税にどれくらい振り向けていったらいいのかという、そういった自然増収の配分のルールというふうなものを考えてみますと、先ほども申しましたように物価調整減税的なことを私は考えているわけです。そういった物価調整的な減税のルールから申しますと、二兆円減税とか一兆円減税が過去に行われたときには物価の上昇以上の課税最低限の引き上げがあったんじゃないか、それが現在にまたツケが回っているような感じが私はするわけでありまして、所得税の課税の公正というふうなものを考えますと、やはり税の構造というのはできるだけ安定的な方が望ましいというふうに考えております。

坂口力公明党・国民会議

○坂口委員 今回の一兆円減税の議論の中でも福田総理がよく指摘したことでございますが、現在の状態の中で減税というものを行うとそれが全部貯蓄に回ってしまう、だから公共投資の方が景気刺激効果としては非常にいいのだという議論をなすったわけであります。私も、現在の社会経済構造の中で、また現在の政策の中で減税をすれば、なるほど貯蓄に回るということもこれはうなずける一面あるわけでございますが、しかしパイの大きさが余りもう大きくならなくなった現在の低成長下では、福祉との絡みというものが大きな問題になるだろうと思うのです。現在の福祉のあり方と税制の問題というのは、これは切っても切れない一つの関係にあるというふうに私どもは考えているわけでございますが、現在の福祉体制というものとそれから現在の税制というものについてお考えがございましたら、牛嶋参考人と、それから小寺参考人も福祉局長をしておみえになりますので、御意見がございましたらおつけ加えをいただきたいと思います。

牛嶋正名古屋市立大学教授

○牛嶋参考人 私、実はいま租税のいままでの研究をちょっとまとめつつあるわけですが、そのテーマといたしまして福祉税制の財政学あるいは経済学というふうなタイトルをつけてみたいというふうに思っておるわけでございます。福祉税制というのは何かということでありますが、私は税制を考え、税体系を考えていく場合に、いろいろな判断基準があるわけでありまして、それはこれまで財政学者なり経済学者が租税原則という形で提起をしてきたわけでございます。それを整理していきますと、私の考えでは大きく三つぐらいの判断基準といいますか、評価基準があるように思います。  一つは、課税の公正であります。税制はいつでも課税の公正を満たさなければならないということで、先ほどから大島参考人から出ておりました水平的な公平あるいは垂直的な公平というふうな議論も出てくるわけでございます。それからいま一つは、これはアダム・スミスの時代から言われていることですけれども、最小徴税費の原則、できるだけ徴税費を安く、そしてまた単純な形の税制が望ましいという考え方が一方ではあるわけでございます。それから、きょうの陳述の中でも申し上げましたように、税体系に対しまして、今後は景気調整機能を初めとしたいろいろな経済政策というふうなものが、その役割りとして課せられていくのではないか、こういうことであります。  ところが、この三つの判断基準を全部満たすような税目というのは、先ほどからの議論の過程でも明らかなように、ないわけでございます。一方の基準を満たす税目というのは、また他方では非常に問題になる。たとえば、所得税を取り上げまして、所得税の中で課税の公正というものを追求していきますと、どうしても徴税費が非常に増高していくというふうな問題があるわけであります。そうなりますと、結局その三つの基準をどういうふうに組み合わせていくか、そしてどれを優先的に満たしていくかということになるわけですけれども、これからの福祉税制のあり方としましては、やはり従来の経済政策的な基準ではなくて、課税の公正というものを第一に考えていかなければならない。そしてそのためには、多少徴税費がかかってもそれを実行すべきだというふうに私は考えております。それを、先ほどは長期税制確立のための条件づくりというふうなことで表現させていただいたわけでございます。

小寺勇全日本労働総同盟生活福祉局長

○小寺参考人 私の場合は、理論的なお話よりもむしろ実際的な面から御説明することになると思います。  私が最初に申し上げましたのは、税制の中で、ある意味で目的税的な要素があってもいいのではないか、その目的税的な要素というのはまさに福祉ということであっていいのではないか、こういうことを申し上げたわけなんです。  それは結局、われわれ勤労大衆にしましても、税負担をする際に、たとえば弱者のために必要な税金が必要な部分として出ていくということであれば、比較的国民的な合意が得やすい。ところがそうでない方向、たとえば企業とか特別措置という方向に税金が多く使われていきますと、とても国民的な合意というものは得られない。ですから、国民的な合意を得るという方向で行きますと、福祉ということで出されていく面が、税制であってもいいのではないかと考えて申し上げたわけですが、実は、具体的に私どもとしては非常に多様な作業をしておりまして、時間がかかりますので省略したわけですが、先ほど申し上げましたのは、私どもの作業の中のほんの一部で、たとえば障害者の場合でも、普通の障害者と特別障害者をどうするか、あるいは寡婦控除もありますし、老年は先ほど言ったように二つ、扶養の場合もありますし、老年者控除の問題もあります。それから、勤労学生控除の問題もありますし、視角を変えますと、たとえばいま住宅貯蓄控除というのがありますが、財形と住宅貯蓄控除ということを考えますと、法律で勤労者の財産形成を図るべきであると言いながら、片一方では財産形成が目減りをしておる。にもかかわらず住宅という長期のもので、七年ぐらいでも、一〇%とすると、これは単年度にしますと二%にもならない。そうすると、住宅貯蓄控除を引きましても、それから利子を足して相殺をしましても、長期には財形にならない。そういうところは非常に問題がある。そういうことをもっと福祉税制できちっととらえるべきじゃないですかということを実は言いたいわけです。

坂口力公明党・国民会議

○坂口委員 そこで小倉参考人にもお聞きしたいわけでございますが、先ほどからいわゆる中期税制の議論の過程の話が幾つか出されておりまして、お聞きをしたわけでございます。私も最終的な結論のパンフレットは拝見をしておるわけでございますけれども、その過程でどういうふうな御議論をなすっているかということについては、私読ませてもらっていない一人でございますので、あるいはその辺のところ、大変幼稚な質問になるかもしれませんけれども、お許しをいただきたいと思います。  今後の税制を考えていきます場合に、いま申しましたように低成長下で、しかも福祉面を充実させていかなければならないという一つの命題があると私は思いますし、また、政府の出しております昭和五十年代前期経済計画の中にも、程度の差はございますけれども、そのことの主張がございます。  そこで、先ほども今後の税制のあり方について、現在存在いたします税制の改革を中心に行くか、それとも現在あります税制の改革ではもういかんとも仕方がない、現在の税制以外に新税を考えて、そこに財源を求めていくか、税制面から参りますと大きく分けてそういう二つの議論があるだろうと思うのです。そこで、私先ほども申しましたように、まとまりましたこのパンフレット等を読ませていただくと、最終的な結論だけしか出てないものですから、その辺の議論が中間でなされているのかどうかということがわかりにくいわけであります。先ほど小倉参考人から付加価値税等のお話もちょっと出ているわけでありますが、その辺の税調におきます議論の過程におけること、あるいは小倉参考人御自身の御意見になってもいいと思うのですけれども、どのような議論がされているかということを少し承りたいと思います。

小倉武一税制調査会会長

○小倉参考人 お尋ねでございますが、中期税制に関係をすることだと思います。税制について既存の税目をどうするということ、それを中心にして、たとえば所得税についてもう少し累進税率を上げたらどうかとか、一千万円以上の所得のある人については付加的な所得税をお願いしたらどうかとか、こういった種類のものと、現在の税制ではないけれども、新しい税目を立ててみるというようなことはどうか、こういう両方ございまして、中期税制のあり方としてはこの両面にわたって審議をいたしておるわけでございます。  したがいまして、所得税、それから住民税もありますが、法人税、それは現在あるわけでございますが、現在ないものとしては、いまお話しのようなたとえば付加価値税その他の一般的な消費税、あるいは富裕税、あるいはどういうふうに観念したらよろしいのですか、土地の再評価税とか、もっと広げれば資産再評価税というようなこともあるかもしれませんが、そういった新しい税目について考えてみる、あるいはそういう税目と関係なく、たとえば、さっきもちょっと似たようなお話が出ていたかと思いますが、景気調整税制というようなものを考えたらどうかといったようなこともございまして、景気の浮揚したときは少し税金をいただいておいてためておくといいますか、不景気のときは税金は下げる、あるいは税金がよけい集まったときにためたものを景気の悪いときに使うということによって景気の刺激を図る、こういったような意味での景気調整の税制といいますか、そういったようなことも含めましていろいろ審議をいたしてきたわけです。まだ、所得税についてどうする、あるいは消費税についてどうする、あるいは付加価値税等についてどうするとかいうことについての結論めいたものはございませんで、一つ一つのことについて甲論乙駁というのが昨年十二月までの現状でございまして、その結果を踏まえてこれから少しずつ集約いたすというようなことにいたさなければならないというような気がいたしております。

坂口力公明党・国民会議

○坂口委員 先ほども牛嶋参考人からこの景気調整減税の話が出まして、牛嶋参考人の場合には、いわゆる企業課税の中で主に調整機能を果たすべしというお話があったわけでありますが、税調においての議論の中ではどうですか。やはり企業課税を対象としての話なんでしょうか。それとももう少し全般に広げての話なんでしょうかということをお聞きしたいのが一つ。  それから、この景気調整減税ということは、これができ上がるかできないかは別として、今後非常に議論の的になる一つのテーマではないかと思うわけであります。できるならばこの議論をより発展をさせていただきたいとも思うわけでありますが、今後のスケジュール等で問題になりそうかどうか、その辺のところをもしもお聞かせいただければあわせてお聞かせいただきたいと思います。

小倉武一税制調査会会長

○小倉参考人 景気調整の税制のあり方についてはまだ深く論議いたしておりません。むろんこれは企業税というようなものが中心になっての景気の調整ということを考えるだろうと思いますが、しかしほかの税目について考えられぬこともないわけでございます。ただ、減税ということだけで考えれば、いまはちょっとぐあいがいいような感じもいたしますけれども、考え方としましては、景気のいいときにはたくさん税金をいただいて、そのかわり景気の悪いときには税金を圧縮する、そしてまた景気のいいときにためておいた金を使うという非常に結構なような話なんでございますが、下げる方はいいけれども、さて景気がよくなったからといって上げるということにはなかなかすぐならぬのじゃなかろうかという御議論がある。それから、そういう措置をするということは、租税は法律で決めるというたてまえがある、それを、上げたり下げたりするのを行政当局にある程度任すことになるわけでございまして、たとえばそれは憲法上認められるものであるかどうかというようなこともございます。それから、先例としましてはドイツに似たような制度があるようでございますが、この運用を見ると、どうもそううまくは運用されていないのではないか、こういうような紹介などもございまして、なお十分検討を要する事項になっておるようなことかと思います。まだ結論は得ておりません。

坂口力公明党・国民会議

○坂口委員 法律化するかどうかの問題は、法律の中でも私はやっていけると思うのですが、その点、北野参考人、何か御意見があればお聞かせいただきたいと思います。

北野弘久日本大学教授

○北野参考人 租税方式の問題ですね。それに限定して申し上げますと、やはり政令、省令でやるわけにいきませんので、これはきちっと法律で、国会の審議を受けてやるということでしょうね。

坂口力公明党・国民会議

○坂口委員 引き続いて小倉参考人にお聞きをいたしたいと思いますが、先ほど福祉税制という言葉を牛嶋参考人がお使いになったわけでありますが、税調でいろいろ御議論をなさいますときに、もちろん税制調査会でありますからもらう方の議論が主であることは当然でございますけれども、しかし現在の財源の使われ方、いわゆる予算の執行というそちらの面も、これはうらはらでございますから、やはりこの現実をながめての税制でなければならぬと思うわけであります。その辺のところ、たとえば現在の福祉面なら福祉面のおくれ、そういったものをどう反映させるかというような議論もなされているのかどうか。  それから、もう少し具体的に言いますれば、たとえば年金なら年金という問題がございます。年金制度も幾つかにばらばら分かれておりまして一本化されておりませんけれども、その年金制度を充実させていきますために、たとえば一般会計の中からそこに繰り入れるという行き方のときの税制と、そうでなしに、それはもう全然関係なしに、ただ積み立てだけの、別途積み立てた中の年金を育てていくという場合と、これはおのずから税制にも影響してくることだと思うわけであります。その辺の議論は税制調査会の中でなされているかどうか、ひとつお聞きをしたい。

小倉武一税制調査会会長

○小倉参考人 税金の使われ方の問題は、御質問にございましたように、税制調査会プロパーの仕事ではございませんので、個々の問題について深く論議されることはございません。ただ、二、三年前と違いまして、二、三年前までならば税制調査会は減税のことさえ論じておればよかったわけですが、昨年からそうはいかなくなったのでございまして、やはり減税ということもございましょうが、大筋としては増税ということを考えざるを得ないような羽目になっておるわけでございます。そうなりますと、今度は逆に一体税金はうまく使われているのだろうか、もっと節約はできないだろうか、あるいはもっと福祉に重点を置いたらどうか、これは当然そういう議論は出てまいります。税制調査会でもそういう議論は出てまいりますが、どうしても総論にとどまるわけでございます。中身に入りましてどうこうというわけにも税制調査会としてはまいらぬ次第でございます。ただこれは今後どういうような議論が行われるか存じませんが、たとえば目的税的なことになりますと、福祉を目的とする特別の税源ということになりますとこれは支出と税金とが結びつくようなこともあり得るわけでございまして、いまのところはそういうものは必ずしも税金としてはないようでございますが、新しい課題としては議論になるかと思います。

坂口力公明党・国民会議

○坂口委員 時間が参りましたので、これだけにさせていただきますが、ぜひその辺の議論も今後重ねておやりをいただいて、幅広い議論の中で税制をひとつお考えいただきたいことをお願いしておいて、終わりにしたいと思います。どうもありがとうございました。

小渕恵三自由民主党

○小渕委員長 永末英一君。

永末英一民社党

○永末委員 本日は、参考人には御多忙のところいらしていただきまして、民社党を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。  さて、二、三の問題をお聞きしたいのでございますが、先ほど小寺参考人は、勤労者の負担を軽減するためには所得控除より税額控除、課税控除の方がよろしいという旨のお話がございましたが、その辺をひとつ詳しく御説明をしていただきたいと思います。

小寺勇全日本労働総同盟生活福祉局長

○小寺参考人 私どもが申し上げています勤労者の課税軽減の問題といいますのは二つありまして、これは片一方だけを切り離すという性質にはなっていないわけですけれども、一つは先ほどの議論で出ておりましたように、給与所得控除率の引き上げということ、これは当然考えてもらう必要があるのじゃなかろうかということで、いろいろ別途財源から考えましても、大体中所得層辺も含めて一〇%くらいの控除率引き上げを行ってもらったらどうだろうか、こういうことが一本ございます。それに加えまして、実は所得控除よりは課税控除にすべきではなかろうかということを、むしろ人的控除の方向から申し上げておるわけです。この人的控除の方向で課税控除に切りかえていただきますと、先ほどの給与所得控除をよけましても、大体一番手厚く修正がされますのが五百万ぐらいなところでありまして、それに次ぎまして六百万から三百万、この範囲の課税額がかなり低くなってまいりまして、しかも上にいくほど、たとえば七百万ぐらいにいきますと一挙に低減額が半減していく、こういう数値になります。そこで、私どもは上薄下厚の累進制を高めるというためにはこうした所得控除よりは課税控除の方が妥当ではないのですかということを申し上げておるわけであります。これが入った事情も、実は税金を大きく安くしておりますよということで、それを少し誇大化するために課税控除であったものをわざわざ所得控除に引き上げて、たとえば課税控除で二万円ですよと言うと非常に小さい、ところが所得控除で二十六万円ですと言いますと高く聞こえる、そういったような少々政治的な意図がぼくは感じられます。そうではなしに、真にそうした人的控除を所得階層のために考えるとしたならば課税控除の方が妥当ではなかろうか、こういうことを申し上げておるわけです。

永末英一民社党

○永末委員 小倉参考人、いま小寺参考人からそういう意見が出ましたが、税調はこの辺の問題をどういう角度から論議しておられますか。

小倉武一税制調査会会長

○小倉参考人 所得税につきまして、特に給与所得になると思いますが、税額控除を導入したらどうかという御意見、これは税制調査会でもございました。特に五十二年度の所得税減税についてはその方がいいのではないかという御議論は税制調査会でもございまして、大分論議をいたしたのでございます。ただ税制調査会では、減税ということを考えます場合に、一年こっきりの減税ということはまず一つは考えなかったのであります。したがいまして、現在の所得税の組み立て方は所得控除にもなっておりますので、その所得控除の上にさらに今度は税額控除をくっつけるということになると、異質なものがくっつくことになる。将来一体どっちに税制を持っていくのだろうか、所得控除でいくのか、税額控除でいくのかということも不分明なままに恒久的な制度に入れることはどうも早急には間に合わない。早急に間に合わないと申しますのは、どっちによるかによって、無論先ほどお話しのような見ばも違いますけれども、同時に所得階層に及ぼす影響も違う、したがって累進に及ぼす影響も違ってくるというようなことになりますので、その辺を深く検討しなくては、早急の間につぎ足しをするように税額控除で所得税の減税をするというのは適当でないだろう、今後慎重な検討には値をする、こういうような結論であったわけです。

永末英一民社党

○永末委員 この税額控除の場合は、いわゆるストレートに担税力と見合っている考え方ではないかと思うのですがね。ところが、所得控除にいたしますとある理屈があって立てるものですから、大島参考人が提訴しておられるような、いわゆる給与所得者の、サラリーマンと称せられる階層の所得の認定に当たっていろいろ問題が生じておるのではないか。大島裁判というのは、ある意味で、いま小倉参考人が言われましたように、なるほどわが国の税制が所得控除でやっておることはそうですが、その辺のやはり一つの転回点と申しますか、そういう問題提起をしているのじゃないかと私は思うわけです。  さて、大島参考人に伺いたいのですが、あなたがああいう提訴をされまして、もっとも反論するために国税庁側、大蔵省側はいろいろなことを言っていますが、生活あるいは仕事をするについてのサラリーマンの必要経費、そういうものについて、大蔵省は百配慮しなければならぬとすればどの程度配慮していると思いますか。どの辺に矛盾があるとお考えですか。

大島正同志社大学教授

○大島参考人 私は、そういう配慮は余りないと思うのです。つまり、大蔵省のお役人と個人的に話をしますと、それはそうだというふうにおっしゃるわけですよ。ところが、大蔵官僚というのは集団の場になりますと徴税技術が先行する、そして個というものは埋没してしまう、私はそういうふうに思います。これは、日本人の中に個の尊厳というような——私はヨーロッパ的なアナーキズムだとか個人主義を言っているわけではないのですけれども、やはりそういうような核になる個というものの尊重の仕方が、そういう哲学が欠けていると思うのです。確かに大蔵省のお役人の方は優等生であります。ただし、天才とか秀才というのは余りいらっしゃらないのではないか。優等生ですから、どうもそういうふうになりがちである。そういうところがみごとに抜けている。だから、何だかわからないのですね。給与所得控除なんて言ったって、それじゃ答えてみなさいというふうに裁判で言っても、ころころ変わるわけで、みんな含まれているのだと言ってみたり、わからない。それから、人間の尊重というのがどうもすぱっと抜けたようなところがあるのではないか。そういうふうに私は感じております。

永末英一民社党

○永末委員 私も、所得計算で所得控除する場合に、いろいろな必要経費がどうかということが問題だと思う。たとえば野球の選手は身体強健でなければならぬ、こういうことが前提になりますと、リポビタンDを飲んでも必要経費に入る。サラリーマンも病気してはたまらぬからリポビタンDを飲んで、入るかというと入らぬわけですね。そうすると、同じ人間でこの社会で生活をしておりながら、大蔵省的判断の物差しに当てると、なぜ片方の人間は必要経費であり、片方の人間は入らぬか。給与所得控除の中に当然リポビタンDが入っておるかどうか知りませんけれども、もう少し具体的に、日本の経済を支えている大部分の人間がサラリーマンだとするのなら、その生活の実態に即して必要経費部分というものの考え方を導入すべきではなかろうか。私もよくわかりませんが、給与所得控除、基礎控除とどこからどういうそろばんをはじいたかわかりませんが、昔できたものを毎年いろいろな要望に従って一万円とか二万円とか三万円とか引き上げてきておるのが現状でございまして、もう少し理論的にこれを考え直す必要があるのではなかろうかと思いますが、大島さんはどう思われますか。

大島正同志社大学教授

○大島参考人 私、そのとおりだと思います。マスでとらえる、集団として人間をとらえることも必要なんでしょうけれども、そうじゃなくて、集団は個の集合体である、そういうふうに私は考えてほしい、もう少し人間論の勉強をしてほしい、こういうふうに思うのです。  私、これは大蔵省の関係の方にこっそり聞いた話なんですけれども、エリート官僚というのは、たとえば社会福祉施設なんかでも無料のところを余り見せない。あれを見せると興奮して予算を削れなくなるのだというようなことを私直接に聞いて、そうかな、えらいもんだなと言ってびっくりしたことがあるのです。つまり、私はもう少し人間として見てほしい、訴えたいところはそういうところなんです。やはりそういうところでは興奮してほしいのです。

永末英一民社党

○永末委員 税金を取る場合には、所得あるところ税ありみたいな感じでどうもお役人は税を取っておるのではなかろうか。人間として見ますと、たとえば先ほど小寺参考人が申しましたように、勤労未成年者の問題、われわれが昔々学校で勉強しましたときは、税金を払う、税金の使い方について政治に参加してきたのが歴史、いわゆる民主政治の始まりだと教えられましてそう信じておるのですが、わが国の勤労未成年者はすぐに税金は取られますけれども政治に参加していない。人間の権利、政治に参加するそういう権利という点から個人にもう少し眼を向けますと、その辺の問題も考え方があるのではないかと思いますが、所得があったら税金を取るのはあたりまえだ、未成年者だって株を持っておったら税金を取られるというような考え方をするわけですね。違うわけだな。勤労している人間と何もしないで株をたまたま遺産でもらったからそれで税金を払っているというようなのとは違うとぼくは思うのですが、先ほど小寺参考人は勤労未成年者の税金の問題を取り上げられましたが、お考えがあればお聞かせ願いたい。

小寺勇全日本労働総同盟生活福祉局長

○小寺参考人 同盟としましては、勤労未成年者控除というものを当然勤労学生との関係もあって新設すべきだ、もう一つ、参政権の問題がありまして、選挙の方の一票を投ずるのは二十歳からということになりますから、その間は、女の子は十五歳から仕事をして、そして勤労所得税を払っている、もしも十九歳ぐらいで四年でやめますと、政治参加をしないで税金だけは四年間納めて下がる、こういう問題があります。ただし、税制の方へこれを持ち込むとややこしいというふうに思いまして、実は遠慮をして、むしろ十八歳までにできれば一票を投ずる資格を与えなさいという法律改正を望む、十八歳以下については控除をはっきりしなさい、こういう方向を打ち出したいぐらいに実は同盟としては考えております。

永末英一民社党

○永末委員 いまの問題について、税調は議論として取り上げられたり、あるいは取り上げようという御意思はございますか。小倉参考人。

小倉武一税制調査会会長

○小倉参考人 最近は特にこの問題は取り上げられていないと思いますが、いつも所得税の課税最低限を論ずる場合に、夫婦と子供二人というのが基準でありますが、その際、独身の場合はどうだとか、独身の特に勤労者の場合はどうであるとかあるいは寡婦はどうであるかというようなことがいつも議論になりまして審議されておることは事実でございます。同時に、特に勤労未成年者については、投票権の問題もあるようでございますが、それは税制調査会としては一応別にしまして、他の所得階層と比べて特に不公正なことになっておるということでございますれば、これは恐らく審議対象にすべきことであろう、こう存じます。

永末英一民社党

○永末委員 この源泉徴収の制度が導入せられて以来、いわゆる源泉納税者というのは知らぬ間に取られているわけですね。しかし、民主国家の基本的な、国家と国民の関係を結びつけている最も重要なものはこの税金ですね。やはり納税者が国を支えているんだ、この意識を持ったときにその民主主義は私は強くなると思う。それを一番弱めているのはこの源泉徴収システムですね。その一つの際立った例が、いまのように税金は払わされておるけれども国の政治には無関係だという勤労未成年者の問題。私は、いま小倉参考人が、課税最低限の議論をする場合にこの問題も入ってくる、こうおっしゃったが、その見方が問題じゃないか、つまりお金の分量だけのことをやっておる。そうじゃなくて、やはり税調というのは国の基本に関する問題を扱っておられるんだから、そういう角度から問題の提起をしてみる、そういう議論をしてもらえないものでしょうか、いかがでしょう。

小倉武一税制調査会会長

○小倉参考人 これは、そういうような納税者と政治参加という関係については非常に重要なことでございまするから、むろんそれぞれの方はそういうことも含めて審議されておるのかと思いますが、直接政治参加と税金の関係をどうするということまでは深くは余り審議したことがないのじゃないかという気がいたしますけれども、これは私が関係していないときにあるいはそういうことが論議されたのかもしれません。  お話の趣旨は、恐らく納税者は納税者としての意識を持つような税制なり徴税の仕組みを考えたらどうか、知らぬうちに税金を納めておるようなことになっているらしいというのでは困るじゃないか、こういう御趣旨のように拝聴いたしたわけでございます。  これは先ほどからも御議論ございますようになかなかむずかしい問題でございまして、なるほど国民として納税者としての意識を持っていただくためには、申告をし、そして申告の結果どれくらい税金がかかるのだということがわかって、そして税金を納めるというようなことがはなはだ民主的で納税者あるいは国民としての意識もいいようになるということ、これは私もそのように思いますけれども、他方、それによって今度は税金を納める方がどれくらい手数がかかるか、あるいはまた、税金をもらう方がどれくらい手数がかかるかというようなこともありまして、なかなか早急に、私、皆さんの御意見のように納税者意識高揚あるいは自主申告というのがいい、源泉徴収は困るのだ、こういうふうにすぐにはどうもいかないような気が実はいたすのであります。

永末英一民社党

○永末委員 私はいますぐに源泉徴収をやめて申告納税にせよと言うておるわけではないのでございまして、つまりわが国における納税意識の問題、逆に言えば脱税の問題も、これはいまのようなこういう種類の税金には余りないのですが、そういう意識があるということは、やはり国を支えているのはおれたちなんだ、それは何でストレートにやっているかというと税金でやっている、こういう気持ちを持たさなければならぬ。大島裁判というものはサラリーマンの側における国民の国家意識の目覚めだとぼくは思っているのですがね。そういう問題だと思うのです。  さて、時間がございませんので、最後に小倉参考人に承りたいのですが、減税より増税を考えねばならぬ。増税というのは国民のこういう社会層の中でどういうものが担税能力があるとお考えなんですか。増税と言われる限りは、ここに担税能力があるとお考えだと思うのですが、どういうものなんでしょうか、その担税能力を持っておるところは。

小倉武一税制調査会会長

○小倉参考人 これは深くまだそこまでは私個人としても税制調査会としましても検討はいたしておりませんが、一部——一部と言ってはこれは失礼になるかと思いますが、たとえば企業課税というようなものはもう少し厚くして、そちらの方から相当税金がいただけるんじゃないかという御説もあるわけです。これは恐らく企業によってもいろいろ違いまして、こういう景気の状況ですから、非常にいい企業と赤字で何ともならない企業といろいろありまして、一律にはまいりませんが、企業の中にはなお税負担にたえる、さらに重い税負担にたえるものがあるということは、これは否定できないと思います。  それからまた、今度は所得税でございますが、所得についても、一般的に所得税の負担を増徴するということについては、これは恐らく国民の全体の方、賛成をされないと思いますけれども、その中にもやはりもう少し所得税の増徴にたえられる方もおられるんじゃないかと思いまするし、それからまた、所得税について諸外国と比較してみると、まあ諸外国と比較するのがいいかどうかわかりませんけれども、欧米諸国と比べると、日本の所得税の負担は日本の国民所得の水準と比べてどうも高くない、むしろ低いんじゃないか、そういうようなことが役所の関係の資料で、これはごまかされちゃいかぬというおしかりを受けるかもしれませんけれども、そういう資料もございます。そこで増税を考えられる場合に、増税に応じていただけるところがなさそうだというわけにはいかない、どうもあるんじゃないかという構えでもって、多少は無理してでもあるんじゃないかという構えでもって事態を調べ、この財政の難局の解決に多少とも寄与できるようにするというのが、大筋としてのこの一両年の税制調査会の役割りじゃないか。これは国民の皆さんから恨まれる役割りかもしれませんけれども、どうもそういうような運命にいまの税制調査会の諸先生方はなっておるんじゃないかという気が実はいたすのであります。

永末英一民社党

○永末委員 税制調査会が運命論にまで立ち至りましたが、本日はありがとうございました。

小渕恵三自由民主党

○小渕委員長 荒木宏君。

荒木宏日本共産党・革新共同

○荒木委員 参考人の先生方には大変御苦労さまでございます。きょうは、それぞれのお立場から貴重な御意見をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。  せっかく伺いました御意見が聞き流しになりませんように、大蔵省に一言確認をしておきたいと思いますが、お述べいただきました御意見の中に、税制調査会の委員さんの構成について、憲法学者あるいは税法学者の委員さんが少ないのではないか、こういう御意見がありました。専門委員の先生の中にはそういった方もいらっしゃるかのように思うのですが、私も委員さんの御経歴はつまびらかにいたしませんけれども、しかし、第一部会、第二部会、三十名の委員さん方の中には確かに少ないというふうな感じがいたしますので、大蔵省の方でその点参考人の御意見をしかと踏まえて、直接の庶務所管は総理大臣官房審議室でありますが、責任者の方に、趣旨に沿うように検討方を取り計らう用意があるかどうか、伺っておきたいと思います。

梅澤節男大蔵省主税局総務課長

○梅澤説明員 ただいま荒木委員御指摘のように、税制調査会は、調査会令によりまして、委員は内閣総理大臣の任命事項になっております。  現実に、現在、御指摘のように、専門委員の先生の中に幾人か法律関係の先生に御参加願っているわけでございますけれども、先ほど来、いわゆる総会に御参加になる委員の方々の中に憲法を含めた法律学者の委員を加えるべきではないかという御審議の経過は私どもも拝聴いたしておったわけでございますけれども、先ほど申しましたように、内閣総理大臣の任命にかかわる事項でもございますので、私ども事務当局が本日ここできちんと責任を持ったお答えをする立場にないということは御了承賜ることにいたしまして、当委員会でそういう議論の経過があったということは、関係部局に伝達をいたします。

荒木宏日本共産党・革新共同

○荒木委員 本年の十月が任期と伺っておりますので、せっかくの御意見、審議が具体的な形で生きるように、せっかくの御努力を期待しておきたいと思います。  さて、北野参考人にお尋ねをいたしますが、憲法論の立場からの税制論議、こういった御意見を伺いました。不公正税制の是正ということにつきましての憲法論的な意義と申しますか、あるいは論拠と申しますか、もし補足してお述べになることがございましたら、御意見をお聞かせいただきたいと思います。

北野弘久日本大学教授

○北野参考人 時間がありませんので簡単に申し上げますと——どうも法律論というのは長くなりますので、どうしても法律論理を大事にいたしますので、御了承願いたいと思います。  アダム・スミスの昔以来、租税原則として平等原則と言われております。もっとも、平等原則と申しましても、ワグナーの場合とスミスの場合は違うのでありますけれども、もっぱら財政学のレベルで従来言われてきましたが、私は、日本国憲法のもとでは、応能負担とか平等原則というのは憲法上の原則であるということを二十数年来主張しております。憲法十四条の法規範的意味として応能負担という原則が出てくる。これは明治憲法にはできなかった概念でありまして、新憲法によって初めて構成できる概念である、こういうふうに考えておりますが、不公正税制を是正するということは、まさにその憲法の平等原則であります応能負担の要請を満たすことになる、こういうことになってきますので——住民税の問題をきょう申し上げようと思ったのですが、住民税は所得税と違うのだ。ですから、所得税の課税最低限よりも住民税の課税最低限が低くなってもやむを得ないのだ、むしろその方が住民税の応益課税という考え方でいって望ましいのだという考え方を自治省筋では言っておりますけれども、これは間違った議論であります。その議論は憲法のどこからも出てきません。憲法は、国税、地方税含めまして応能負担、能力に応じて平等であるということを要求しておりますので、これは国税、地方税問わないわけでありまして、仮に地方税で負担分任ということを考える場合には、憲法上は、能力に応じて負担分任すればよろしい、こういうことでありますので、住民税についての均等割の思想であるとかその他、所得と違うのだという議論は憲法学上全然出てこないということを申し上げたいと思います。  それから、不公正な税制を是正するということは、さっき大島委員からも御質問がありましたときに申し上げましたように、日本国憲法が最も強調しております国会の財政に対するコントロール、財政議会主義あるいは財政立憲主義、この考え方からいきましても非常に大事な問題でありまして、隠れた補助金という形で租税の優遇措置を与えるということは、これはまさに憲法が要求しております財政議会主義を放棄しているということでありまして、国会の国権の最高機関というその観点からいきましても大変な問題である。ですから、不公正税制を是正することは財政議会主義の復権であるということにもなります。  それから、憲法二十二条の営業の自由、これは権力からの自由ということでありますけれども、あの市民的な、古典的な営業の自由の概念に従いましても、実は、巨大企業に対しまして本来取るべき税金を取らないということは、憲法の予定する営業の自由の侵害である、つまり税制の面から企業の独占化、寡占化を促進するということでありまして、これは独占禁止法を待つまでもなく、一連の経済立法の考え方に反することでありますし、憲法論上、古典的な憲法二十二条の考え方にも反する。つまり権力が巨大企業のステータスを税制の面から補強している、企業の寡占化、独占化を助成している、そういうことでこれは憲法二十二条の観点からも問題がある。それから、地方税のレベルにつきましては、不公正税制というものは、憲法九十二条、九十四条の自治体の財政権を侵害する、そういう観点からも憲法理論的には考えられる、こういうことを申し上げたいと思います。

荒木宏日本共産党・革新共同

○荒木委員 どうもありがとうございました。  そこで、そうしたことも踏まえて、実際の訴訟という形態を通して不公正ということに垂直的な問題提起をされました大島参考人にお尋ね申し上げたいと思います。  先生の提起されましたあの訴訟につきましては、社会的にいろいろな方面から反響が寄せられたと思うのでございますが、御印象に残っております特徴的な各界各層の意見なりを御紹介いただければありがたいと思います。

大島正同志社大学教授

○大島参考人 私が一番はっと思いましたのは、国税局関係のお役人から来た投書でございました。これは名前はわかりませんけれども、決してだれかが、たとえばどこかの商社の人が協議団という名前を使ってよこしたとは思えないのです。これはどの地方から来たのかというのを申し上げますと、後でその人が非常に不幸になられると困りますので申し上げかねますけれども、こういうのが何通ぐらいありましたか、五、六通あったのじゃないかと思います。それから、私ども述べておりますところの捕捉率の問題だとか特別措置の問題、必要経費の問題などについても、そのとおりだというふうに書いてある、これははがきのものもありましたし、手紙で来たのもございます。それからもう一つ、非常に実感がこもっておったと思いますのは、どこの商社かわからないのですけれども、そこの人の奥さんがよこしたものでございまして、何に使われるかわからないこの高い税金、特にボーナスのときに非常にこたえる、一体これはどういうふうに使われているのだろうか。こういうのを、いまここに持ってきておりませんのでうまく内容を説明することができないのですけれども、そういうのが非常に印象に残っております。ただし、ひやかしの投書は一通もありませんでした。

荒木宏日本共産党・革新共同

○荒木委員 ありがとうございました。  時間の関係がございますので、牛嶋参考人、小寺参考人も御意見をお伺いしたいのでございますが、御遠慮申し上げることにいたしまして、最後に小倉参考人にお尋ねしたいと思います。  税制調査会の審議は申すまでもなく総理府の設置法、税制調査会令によりまして、税制の基本問題を審議、調査する、こうなっておるわけでありますが、同時に、そのときどきにおける政策課題、そうしたこととの関連もまたきわめて重要であろうかと思うのです。いま政府の大きな方針といたしまして国会でも総理がしばしば言明されるところですが、資源有限時代ということを繰り返して指摘をされておられます。私は税制と資源問題、資源配分機能ということが税の持つ機能の一つとしても指摘されておりますけれども、主たる面は資源政策、エネルギー政策として論じられるところがありましょう。同時にしかし、税制度の持つ資源との関連ということもまた看過できない側面を持っておると思うのです。  従来そうした場合に、省エネルギーあるいは省資源というような政策目的のもとでの優遇税制、優遇と言いますよりも誘導税制と言いますか、抑制税制と言いますか、そうした間接コントロールがとられておったように思うのですが、ただ経過を振り返ってみますと、たとえば償却制度一つとりましても、御承知のように昭和三十六年には平均約二〇%の期間短縮、三十九年に同じく二〇%、四十一年には建物中心に一五%、四十三年にはホテル業などを中心にいたしまして同じく約一五%、四十三年以降は四十七年度を除きましてもう歴年短縮ということが続けられてきました。大体概数でありますけれども、十数年前に比較をしてほぼ半分以下に短縮をされている。その上にまだ特別償却という制度が、ずいぶんとふえてまいりました。私、先日調査をして一覧表をつくってみてびっくりしたのですけれども、そうしたこの特別償却が、あるいは普通償却の短縮が、なるほどその都度個々の問題につきましては政策目的ということで部分的には整合性はあると思うのです。しかし、全体として見まして資源浪費ということに大きく結びついている面はありはしないか。浪費というのが一方的な言い方だという説があるとしますならば、そのことが早期取りかえ、つまり機械設備、資産の早期取りかえというふうな面から、今日資源有限というふうに政府が言っておられることに照らして非常に大きな関係があると思うのです。御案内のように日本経済調査協議会では、こうした耐用年数を一〇%、二〇%、三〇%延長すればLNGあるいは原油がどのぐらい節約できるかというふうな試算も進められておりますし、また特別償却の面でもそうしたことが大いに言えようかと思います。  そこで、税制調査会におきましても、そうした側面からひとつ論議を深められることがいまの経済情勢、社会的な要請、また政府みずからが言明をしておられるところにもいささか沿うゆえんではないかと思うのですが、ひとつ御存念を伺いたいと思います。

小倉武一税制調査会会長

○小倉参考人 別に総理が言われるからというわけでもございませんけれども、確かに省資源あるいは資源を循環して使う、リサイクリングといったようなことが必要な時代にもうすでに入っておるわけでございまして、省資源なり資源の有効な利用ということについて税制上寄与できるというようなことでございますれば、いまお話しのように、耐用年数を延ばすとかあるいはものによっては短くするとかいろいろあると思いますが、十分これは今後の税制上検討を要する事項かと存じます。

荒木宏日本共産党・革新共同

○荒木委員 そこでもう一言関連して伺っておきたいのですが、従来の手法でありますと、省資源、省エネルギーという目的、政策課題のために、たとえばそれに沿う設備、機械に特別の措置をとる、こういう手法がかなり一般的であったかのように思うのです。特別償却の問題が論じられる都度、それぞれ個々の政策目的はあります。しかし、おおよそ掲げられる政策課題のない時代というのはないのでありまして、そうしたものが掲げられない政治というものもまたないわけでありますから、個々の政策課題ということをその都度、中身は変わりますけれども、掲げていき、それに特別の措置をとるということは、なるほどミクロ的には整理合理化ということは行われていきます、あるいは少し縮めたりあるいは標目を変えたり。しかしマクロとしますと、中身変われど特別の措置自体は変わらず、むしろふくれるといったようなことで、そうしたことについては、これは無利子の援助金だとかいろいろなことが言われておりますけれども、続けば、つまりエンドレスに続けば、もう実質的には免税と同じことで、決して繰り延べということにはならぬわけであります。先ほど参考人がおっしゃった、一昨年でございましたか、整理合理化、またその後引き続いて進められておるということでありますけれども、同時に、いま申しましたような観点で、マクロ的にどういう効果を及ぼしていくかということを、少し時代もさかのぼって、高度成長と言われた時代の十数年ですね、ちょうど転換とも言われておるわけでありますから、そうした論議もひとつ税制調査会で進めていただく必要もあるのじゃないか、こう思います。  時間の関係がありますので、その一点と、もう一言、同時に、先ほど例として償却問題、特別償却含めて申し上げましたが、これらの物価への影響、言うまでもなくコストを構成しておるわけであります。それもまた一つの討議部門として取り上げていただくことも必要なことではないか。試算によりますと、減価償却費、五十年度で資本金一億円以上の分が約四兆四千億でございますが、そうした償却費用の低減によってコストの引き下げになるということは、筋道から言えば御理解をいただけると思うのであります。もちろん全体の景気との兼ね合いがありますし、それから実質的に企業増税になることについての幾つかの論があることは十分承知しておりますが、いま申しましたマクロ的にひとつ特別の措置を見直すということ、それから物価との関連もひとつ十分吟味していただくということについてお考えを伺って質問を終わりたいと思います。

小倉武一税制調査会会長

○小倉参考人 お話のように高度成長時代から安定成長といいますか、低成長時代に移り変わるということになってきたわけでございますので、恐らくこれはいろいろこれまで政府で講じてきた経済政策について、財政支出の面からあるいは収入の面から両面にわたって検討しなければならぬことがずいぶん多かろうと思います。ただいまお示しの償却費についても個々の機械設備を指定してこれについては特別償却を認める云々というようなことが従来の特別措置の指標であったかと思いますが、お話のようにマクロ的に償却の問題なんかでもいまの安定成長に移るときにいかにあるべきかというようなこと、そしてまた物価問題のやかましい折から、物価問題にも寄与するにはどうしたらよろしいかということは、確かにこれから十分審議検討すべき事項かと思います。

荒木宏日本共産党・革新共同

○荒木委員 時間が来ましたのでこれで終わります。どうもありがとうございました。

小渕恵三自由民主党

○小渕委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、御多用のところ御出席の上貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  次回は、来る二十二日火曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十二分散会

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