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80回国会衆議院1977/03/01

社会労働委員会 第2号

発言数
177
登壇者
21
会派数
6
開催日
1977/03/01

会議録

橋本龍太郎自由民主党

○橋本委員長 これより会議を開きます。  労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。枝村要作君。

枝村要作日本社会党

○枝村委員 労働大臣の所信表明について質問いたしたいと思います。  大臣の所信表明は、いつものことでありますけれども、その国会に提出される法案を中心にいつも行われておるのであります。それは大変結構だと私は思います。しかし、石田労働大臣は、歴代労働大臣の中でも最も経験豊かで、そして大物と評されている人であります。それだけに、単に提出される法案を中心にしただけの質疑ではなくて、もう少し広範な意味で大臣の所信をひとつ伺っておきたいと思っておるわけであります。特に福田内閣の中で三木派に属されておりまして、先ほど言いました大物でありますから、それが労働大臣という人事になったということは、そこには今日の情勢の中での何か一つの大きな目的があるのではないか、こういうように私なりに勘ぐるわけであります。それは、単に私だけではなくして、国民の中、とりわけ労働界あるいは企業経営者の中でも、そういう意味で特別な関心を寄せておるのではないか、こういうふうに思っておるのであります。  それは、いろいろ理由はありますけれども、その中の大きな一つのそういうふうに見る理由は、今日の低成長下、不況、インフレという世の中におけるいわゆる労働運動、経営者にすれば経営の問題、これなどはきわめて複雑でかつ困難であるというようにみんなが認識しておるのであります。それだけに、政府や資本に対するまた一方の労働者側の要求はきわめて深刻になっておると思います。ですから、まかり間違えれば、このままの状態で進むと、資本主義の体制を揺るがすだけの力を労働者は持っておりますので、いつそれが爆発するかもしれない、こういう状態が当然予想されてくる、そういう深刻な世の中であると思うのです。そのような時代に、先ほど言いましたように、福田内閣の労働大臣として就任された石田さんでありますから、それだけにその任務はいままでよりも一層私は重いものがあるのではないか、また、それだけにその地位というものは重要である、こういうふうに国民や、とりわけ労働界や企業経営者の方々は見ておるのではなかろうか、こういうふうに思っております。  また、これは一つつけ加えておきますと、もし政局に一大事変が起きたとするならば、石田さんの一つの政治信念からしてその大きな一翼を担うような立場に立たされるのではないかという、これは期待と不安と入りまじったものが今日の政局の中ではある。そういう石田さんの福田内閣に占める労働大臣でありますから、とりわけ、私がいま言いましたような期待感が入りまじってあるのではないか、このように見ておるのであります。  そこで、一般的に福田内閣はタカ派かタカ派でないか知りませんけれども、そういう人々が相当おるようであります。その中で石田労働大臣は、やはりハト派と言われております。そのハト派的な考え方を基調にしていまからの労働政策や労働行政をどういうように求めていかれるのか、この点をひとつ聞きたいのであります。  そこで第一には、私はやっぱり労働者の基本的な諸権利を守る、これが大事だと思います。これは単にそういう一つのポーズをとるだけでなく、深刻にそういうように受けとめていく、同時に、今日のいろいろな労働諸情勢の中を見ますと、やっぱりすべての権利がある程度侵されていきつつある、守られるどころでなく、侵されていくような現状もありますから、この権利の回復を労働大臣の力でやってもらいたいと思うが、その基調は、やはり何といっても平和主義に徹せねばならぬと思うのです。そうして紛争などは未然に発生を防止するように努力する。石田さんは三池の大争議を、当時の労働大臣として大きく力を加えてああいうように収拾された経験もありますし、その力もあるのでありますから、そういうふうにして、そして具体的には不当労働行為などがどんどん発生しておりますから、そういうふうないわゆる前時代的な労働情勢、経営者の考え方その他を直していくように努力していってもらわなければならぬのではないか、これが第一だと思うのです。  それから第二は、労使間の問題については、常にやはり労働者の側の立場に立って処理するという根本思想を持っていただきたい。だからといって、いたずらに労使の問題に政府が、権力そのものが介入することはやはり避けた方がいいのではないか。  私は、こういう二つの期待を持っておるのでありますが、労働大臣はどのようにお考えになっておるか、これをまず第一にお聞きしておきたいと思います。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 私は、二十年前に初めて労働省をお預かりいたしたのでありますが、そのときはちょうど日本の経済が戦前の水準にようやく戻ったばかりの時代でありました。それから戦後労働問題というものが大きく取り上げられましたけれども、まだこれについての一般的認識が非常に希薄であり、あるいは偏っておったような時代である、そういうものを背景といたしまして、私は、まず第一に、その当時、主として農家の二、三男の就職問題というものが非常に重大化しておりましたので、雇用機会の増大、それから第二には、やはり規模別賃金格差の縮小、それから第三番目には、労使のよき慣行の樹立というものを目指していくということを、この委員会で申し上げた記憶がございます。  これらは不十分ではあります。たとえば規模別格差を縮小するために最低賃金制というものを実施するときに、使用者側からの非常な抵抗がありました。しかし、これはやはり順次前進をしてきていると思っております。  それから雇用問題は、その当時の雇用問題は経済の成長によって処理されてまいりましたが、しかし今度は、それにかわって再び低成長下における雇用問題というものが非常に重要になりました。  それから第三番目の労使のよき慣行の樹立、いまお触れになりました権利の確保、基本的な勤労者の人権、ただ、これは私どもが守っていくべき立場、勤労者の生活の維持向上と福祉の増進、それから権利を守るということ、これと実際上の運営に当たっての公益上との問題がございます。  それから、常に労働者の側に立つべきだというお話でございますが、労働省というのは、人間だけを扱っておる唯一の役所でございますので、いま申しました趣旨に基づいて勤労者の生活の維持向上、福祉の増進という立場で行動をしていくということについては、私も毎度参りましたときに、そういう趣旨のあいさつを省員にいたしておるわけであります。ただ、紛争の処理について一方の側に立つというよりは、これはやはり労使の間の中立的立場に立ち、労働条件その他については労使の話し合いによって解決をしてもらおう、こういうことがやはり労働省のとるべき立場であろう、こう考えております。  私の今回の就任あいさつは、提出した法律案に主として重点を置かれたという御批判でございますが、その提出した法律案そのものが、いま労働行政のぶつかっております重大な問題でございますので、そこにどうしても重点を置かざるを得なかったわけであります。  それから、よき労使の慣行の確立ということ、これもいまの使用者側の不当労働行為あるいは労働団体の交渉に当たっての暴力行為というようなものが数多く出てはおりますけれども、しかし、この二十年を顧みますと、争議行為による稼働日数の喪失はだんだん少なくなっております。また、労働災害による死傷者、特に死者の数は非常に減少いたしておるわけであります。  一歩一歩前進をしていっているものとも思いますが、一番困難であり、むずかしい雇用問題、特に産業の構造の変化に伴う雇用問題の処理ということを最大の課題として取り組んでまいりたいと思っております。

枝村要作日本社会党

○枝村委員 所信表明は、その国会に提案される法律案を中心に出されることに私は批判をしておるのではなくして、それでいいと言うのです。ただ、あなたはやはりそれよりまだ広範なお考え方を持っておられるという意味で聞いたのですから、誤解のないようにしていただきたいと思います。大体そのような答弁で私は一応納得いたします。  そこで最近、労働側と政府と使用者側で懇談会か何か持たれたときに、労働者側から、常設機関か何か知りませんが、交渉の機関ですか、対話の機関を設けたらどうかという提案がされたようであります。これに対して私は是非は言いませんが、その後、石田労働大臣がそういう提案に対して消極的な発言をされたとか何か聞いておりますが、その真意をひとつ伺っておきたいと思っております。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 これは始まりの新聞報道の方が間違っておりましたものですから……。     〔委員長退席、戸井田委員長代理着席〕  あの産労懇の場で宮田氏から、そういう種類の会合を開いて、そして実効を上げていくような方途を考究すべきではないか、こういう御発言があった。新しい機関をつくれという御発言はなかった。それから労働側として各団体の意見の統一をして持ち出されたものでもなかったのであります。これに対して使用者側から、そういうことを行うことには異議がないと、こういうお話がございましたので、各出席者一人一人の御意見を私の方の役所として聞いてまいりました。  大体三つに分かれるわけであります。一つは、別の独立した機関をこしらえろ。一つは、この産労懇の場で小委員会をこしらえて運営したらいいじゃないか。第三番目は、その産労懇の運営の仕方、いま月に一回ですが、御飯を食べて一時間ぐらい、それでは身の入った議論ができないから、二カ月に一遍でもいいからもっと時間を長くかけてゆっくり話し合うようにしたらどうだ。こういう三種類の意見があったわけでございます。  この間の産労懇の場でそういう報告をいたしましたが、そのうち第一の部門については、いま特に予算委員会等で社会党の委員の方々から、いもゆる審議会、懇談会、諮問機関というものが多過ぎる、各官庁合わせると二百何十とかあるそうで、これを整理すべきではないか、こういう議論が非常に強く出されておりますし、政府も行政の簡素化を目指して、八月いっぱいをめどに行政改革の基本案をつくるというときでありますから、別の機関を新設するということにはそういう制約や意見がございますよということを、その会合でも私は申しましたし、それから新聞記者等にも言ったのでありまして、そういうような方向で、いわゆる産労懇のあり方のようなものをもっと強化して、共同のコンセンサスを得られるような方途を講じたいということについては私は何人にも劣らない。ただ、別の機関をつくるという提唱をされたという記事が新聞に先に出てしまったのです。これは間違いなのです。これは宮田さん自身もこういうことは一つも言ってない。そこで、そういう誤解を生んだので、そういう場所をこしらえ、時間をかけていろいろな問題——産労懇でもいろいろな結論を得て、それを実行に政府をして移さしたこともたくさんあります。だから、そういうような運営の仕方をしたいということについては、私は何人にも劣りません。

枝村要作日本社会党

○枝村委員 わかりました。  次に、雇用、失業問題について少し質問しておきたいと思います。具体的には同僚の安島議員が行いますので、私は、大筋における問題のみを伺っておきたいと思うのです。  景気回復のために政府はいままでしばしばてこ入れをされました。しかし、私ども見ると、依然として雇用情勢は大きく変わっていないというように見るわけです。確かに努力のかいはあって、生産は回復しつつありますし、それから雇用労働者の減少も大分とまってきたような傾向にあるのでありますが、しかし、われわれが希望しております増大の方向にはなかなか到達しようとしていないのであります。そういう意味で、失業者は依然としてやはり百万前後ですか、維持しておるのではないかというように思っております。  一体このような情勢はどこにその原因、理由があるのか。政府は確かに一生懸命やっておるような一つの施策をとっておりますが、依然としてそういうふうになっておるのは一体どこに原因があるのか。あるとすれば、どのような対策をいまから労働省を中心として政府が行わなければならぬのか。今度出されますいわゆる雇用安定資金、この制度のようなものもその一つでありましょうが、それだけではどうにもならぬということも当然お考えになっておると思うのです。  ですから、私の質問したいのは、いろいろの人人が集まって知恵をしぼってやる、最終的には財源の問題なんかありまして突き当たるかもしれませんが、いろいろ知恵をしぼって、当面緊急な問題について処理するとか、あるいは抜本的に将来に向かってどうするというようなこと等をあわせて、いま言ったような方法でお互いにいい対策を立てようじゃないか、このように考えております。  そこで、去年の国会で四野党が共同提案いたしました雇用及び失業対策の緊急措置法、これを出してやりましたけれども、その当時長谷川労働大臣は、これも一つの参考として検討すると言われておりましたが、どうも検討された覚えもないようだし、その後、総選挙のためにそれは廃案という形になりましたので、今度新たに社会党は、雇用保険の改正案として、そういういままで出したものを含めて、さらに解雇規制法案を単独で出すという用意をしております。  あるいは他の野党も、そういう問題に対して真剣に取り組んでこられると思いますから、そういうものを、これは野党が言っているのだからというようなことでなくして、やはりそれらを含め、労働界の連中の意見も聞きながら、石田さんはやっぱり大物、やり手でありますから、真剣に取り上げてその対策を立てていただきたい、こういう大筋のお伺いですが、いかがでございましょうか。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 最初のお尋ねの現在の雇用情勢、こういうふうになった原因はどこにあるのか、これは何と申しましても、不況の期間が非常に長く続いた。いままでも景気の変動はありましたけれども、不況というのは、せいぜい一年か一年半くらいでもとへ戻ったのですが、今度は三年過ぎてもなかなかもとへ戻らない。それからもう一つは、人不足の時代に合理化が非常に進んでおる。それからもう一つは、使用者側が景気の前途に対して確信を持てないために、いわゆる求人マインドと申しましょうか、そういうものがなかなか起こってこない。現状は、昨年暮れで実数で九十二万、有効求人倍率で〇・六二くらい。これは一番多かった昭和四十八年の一・八四ぐらいのときに比べると三分の一くらいに減っております。それから実勢を比較してみますと、求人の実数においては昭和三十九年、四十年程度の状態にあるわけであります。しかも、石油ショックを契機といたしました構造の変化に応ずる転換措置というものがまだ十分に行われているとは言えない。進行中であります。私は、そういうことが原因をなしているものだと思います。しかもなお、これから構造変化に応ずる転換というものはだんだんと進んでまいりますから、これに応ずる失業防止を、あるいは雇用確保の施策を懸命にやらないといけないというので、鋭意努力をいたしまして、それぞれその関係の予算額を増額いたしますとともに、新たに雇用保険法の改正をお願いしておりますのも御承知のとおりでございます。  それから、野党の四党の提案されました四党提案でございますが、まだ十分自分としては検討しておりませんけれども、前任者、前々任者の長谷川君が検討を約し、それに基づいて労働省側としても検討をいたしておるところでありまして、その点についての問題点その他は政府委員からお答えをしたいと思いますが、私は、これから新たに提案をしていただきますならば、今後の施策に十分参考にさしていただきたい、こう思うのでございます。  ただ、基本的に、法規制が前進をいたしますということは、私は、実効を上げ、摩擦をできるだけ少なくするという上において問題があると思う。たとえば定年制の延長という問題を法規制でにわかにやるといたしましても、現在の五十五歳定年というのは、いまの日本国民の平均寿命から考えれば、これは企業の社会的責任を全うしているゆえんでない、こう私は思います。しかし、長い間の人事管理の継続であり、また賃金原資、配分の問題でもあるわけであります。したがって、そういうことをやりやすいようにするための環境づくりが必要でありますし、一体同一企業内で定年を延長することが中高年齢層の就業ということについて効果があり、その人たちが幸せであるかどうかということも考えなければならぬ。たとえば、定年は延長されたけれども降格をせられると、きのうまで命令しておった者に今度は逆に命令されなければならぬというような問題も生じます。したがって、そういうことは、法規制よりも、実効ある措置をできるだけ講じまして、そうして経営者の社会的責任というものの自覚を促しながら効果を上げていく方がいいだろうと、私はこういうふうに考えておる次第でございます。

枝村要作日本社会党

○枝村委員 今日のこういうふうになっておる理由もいろいろあるです。それは、おれの力では及ばぬという外因説もあろうし、自然説というものはないでしょうけれども、それは確かにそのとおりなんですけれども、しかし、どうも起きたことに対して労働省とすれば後追い的な行政的措置をする場合が多いのですけれども、政府はそうでなくして、そういうのを起こさせないように全体の政策として取り組んでこなくちゃならぬし、そのためにいままでもしばしばてこ入れされたと思うのです。ところが、てこ入れをされて確かに実効が上がったと私も認めますけれども、いろいろだ理由はあってもきわめてテンポが遅い。いままでつぎ込んだ資金なんか一体どうなっているのかというような問題なんかも、きょうは時間がありませんけれども、詳細に調べていかなければならぬと思うのです。今度のことしの年度の予算の問題でも、多くの人が指摘しておるように、実際あれだけの投資をしても一体どうなるかという心配がそういうところから出てきておるのだと思います。  これはひとつ問題を預けておきまして、労働省としては後追いできわめて残念なことであっても、現に出てきた失業者やその他をどういうふうに救うかという点についてやはり深刻に考えなければならぬ。その場合には、法規制をして、それがかえって逆な立場になる場合も考えられぬことはないのですけれども、いま大臣も言われたように、行政的な措置によって当面の救済を、完全にするところまでいかぬにしても、そういう不安にあえいでいる人たちを守ることができる手立ては幾らでもあるはずでありますから、そういうことをやってください。そのためにいまわれわれが出そうとしておる、また過去に出しましたそういうのを大きく参考として検討しろということを言ったのでありますが、その点については、あなたも今度出されればということを約束されましたので、ひとつ期待をしておきたいと思います。  それから、賃上げの問題ですが、いつの春闘でもこれが中心になって、さらにそれを取り巻く政治的な課題も抱えて国民春闘と名のってやっておるのでありますが、やはり中心は労働者の賃上げだと思います。この問題について一言だけ石田労働大臣にお願いしておきたいのですが、このような不況下になりますと、賃上げを死活の問題として労働者が重要に考えるのは、きわめてあたりまえのことです。ところが一九七五年、七六年は、御承知のようにそういう時代背景もありますが、結局低賃金で抑えられてしまった、そういうふうに労働者は理解しておるのです。そういうふうになったのは、社会経済のそういう状態の中で当然なことであるかもしれませんが、私どもが考えますと、いまの福田総理大臣と長谷川労働大臣が賃上げ抑制のための大キャンペーンを五十年から五十一年にかけておやりになりました。これは異常なほどそういうしつこい態度をとられました。そしてそれに呼応するかのように経営者陣も企業側も団結して労働攻勢に立ち向かってきた。労使の間で賃金の問題を解決するのはあたりまえのことなんですけれども、いま言いましたように、その時代には政府のお二人が中心になってそういう政府主導型の賃金抑制が展開されて、それがみごとに実を結んだと、こっちが言ってはおかしいのですけれども、なった。労働者側は大きく後退した、こういう状態になっておるのです。これはやはり労働界の中ではそういうふうに認識をする者が多いわけです。ぼくらもその当時この委員会あたりで、労働大臣に、そんな介入をするな、こういうことをきつく詰問したことがあります。しかし政府側は、そんなことをした覚えはない、こういうことを言っておりますけれども、現実にはいろいろな場所で賃金抑制の提言がされておるわけです。  そこで、石田労働大臣になって、また今日の情勢の中で、やはりそういう考え方を引き継いで賃金抑制のために政府、労働大臣が一役買って問題に介入してくるのかどうか。先ほどあなたがおっしゃいましたように、こういう問題は、あくまで労使の対等な立場における自主解決が中心でありますから、政府などそういうものに介入しない、こういうふうにおっしゃいますでありましょうが、それを本当に身をもってやってもらいたいと思います。むしろ逆に、不当な賃金抑制をする者に対しては、労働者の権利や生活を守るという立場から、労働省が反対に、そういうことはいかぬじゃないかという行政指導をすることが正しい労働省のあり方ではないかとも私は思っておりますだけに、どうもまた懸念されるようでありますから、石田労働大臣の、賃金抑制指導はしないならしない、労使の自主交渉に任せて賃金というものは決めるべきだ、こういうふうな意思があるならばはっきりと言っていただきたいと思っております。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 私が承知している限り、当時の福田副総理と長谷川労働大臣のやられたことは、物価安定、物価上昇率の抑制という努力、これは当然のこととしてやられたと思うのです。しかし、賃金決定に当たって、あるいはガイドライン提示に当たって政府が干渉したものとは受け取っておりません。  それから私自身は、無論賃金問題は労使が自主的に決定すべきものである、こういう考え方はいまに始まったことじゃない、労政をお預かりして二十年間続いておる私の基本的な信念でございます。絶対にいたしません。

枝村要作日本社会党

○枝村委員 そう信じております。  次に、労働基本権の問題について伺っておきたいと思います。  今日では官公労働者だけでなく、民間の労働者を含めて労働基本権が保障されていないばかりか、侵害される事例が大変多いような気がするのです。それは単に労使の紛争の中で力関係によって起こる事件もあります。しかしそれと同時に、いわゆる刑事事件として国家権力が労使の間にあるいは正常な労働運動に介入するケースもふえておるような気がするのです。たとえば、ことしの一月九日の福岡県教組の幹部の逮捕事件なんかがあります。これは時間がありませんので言いませんけれども、この中に直接関係のある県教組側の幹部だけではなく、県評また関係のない人を、何にもしないのに威力業務妨害とか、いわゆる暴力行為をやったとかいうような、そういう罪で不当に逮捕して拘禁し、そうして起訴の段階まで行ったかどうか知りませんが、そういう騒ぎをしておる。こういうふうに見てまいりますと、これは労働省がそこまでとは言われぬかもしれませんけれども、労働者の基本的権利の侵害が限りなくいろいろの形で行われておるということについて私は非常に危険を感じます。そういうのがどんどん許されておれば、民主国家とか平和国家という国の存立の危機というものにやはりなってくる、こういうふうに憂えておるのであります。  きょうは、そういう具体的な問題については申し上げませんで、特に三公社五現業のスト権の問題について少し尋ねておきたいと思います。  この問題については、公共企業体等基本問題会議なるものがずっと取り扱われています。これはおととしの十二月にそういう方向になったのでありますが、一体この会議がいまどういうふうに動いておるのかということを一向聞いた覚えがありません。それから労働者側も、この会議に対しては基本的に不信感を持っております。第二の専門懇だというような見方をして、原則的にはこういうものは解散してしまえ、こういう要求に立っておりますから、この会議がどっち向くかそんなこと知ったものじゃないということになるでありましょうけれども、政府はつくったのですから、一体どういうふうな動きをしておるのかということが私は知りたいのであります。それをひとつ簡単に答えてください。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 私も、公共企業体の労働者諸君のいわゆる世間で言うスト権について、私自身の個人的見解はむろん持っております。しかし、これはたとえば自主交渉能力の問題、経営形態の問題、それから当然法律改正を伴わなければなりませんから、そういうことの処理の問題等多岐に分かれておるわけでありますので、御承知のごとく、いま中山伊知郎先生が主査になって協議を進められております。したがって、そういう段階において私どもが物を言う立場ではないのでありますが、その懇談会がどういうぐあいに運営されているかということは、いま政府委員から答弁をいたします。

青木勇之助労働省労政局長

○青木政府委員 先生御承知のとおりに、一昨年の十二月一日に政府声明が出ました。翌一月二十日に政府が関係閣僚協議会を設置するという方針を決めました。たしか七月だったと思いますが、委員の任命をいたしまして、三つの懇談部会を設けておりまして、現在まで約三十八回会議をやっており、それぞれ問題点のヒヤリング等をいま行っておる段階でございます。

枝村要作日本社会党

○枝村委員 それは非公開でしょうな。だから、われわれは一つも聞いたことがないから、何も動いてないと思って言ったのですが、非公開でやっているのでしょう。(「密室か」と呼ぶ者あり)まあいい、それは。(笑声)  それで問題は、今後のスト権回復に対する大臣の所見をできれば聞きたいのです。あなたは、自分の考え方はあると言われておりますが、いま言ったように、懇談会に任せておるから、その結論が出るまではわが方はその意見は言わぬというのがいままでの通例なんです、大臣の答弁として。しかし、石田さんはちょっと違うのですから、堂堂とここで言えるなら所信を言ってもらいたいと思います。  このスト権の付与の問題は、あなた一番よく知っておるように、七五年春闘の先駆けで、当時の三木前総理大臣がみずから言い出した問題なんです。スト、処分、ストという悪循環をひとつ断ち切りたい、そして近代的な労使関係を打ち立てたいと三木さんが言い出して、それがきっかけでスト権の問題が政治日程に上ってくるのです。そして長谷川労働大臣も、それを受けて、いつですか、一九七五年十月二十一日——その以前の国会で、そういう悪循環は今回限りにしたいということをこの委員会で言明しておるのです。それから、いま言いました日に、三公社の総裁までが条件つき付与論を世間に発表する、こういうところまで進展してきたのであります。これはよく御承知のとおり。ところが摩詞不可思議な問題ですけれども、その問題が自民党の党内の派閥争いの道具に利用されて、いろいろな不手際もありましたけれども、結局全部つぶされてしまう、こういういきさつがあるのです。  ですから、それはそれとして、経過としてお互いに承知をしておればいいのですから、それがあったからといって、じゃあ三木さんが考えておる本心をそのまま眠らせるわけにはいかないと思うのです。そしてそのために近代的な労使関係というものが永久に打ち立てられるようになれば、これほどよいことはないのであります。  だから、石田労働大臣がどういうふうにスト権の問題についてお考えになっておるか、あるいは今後どのように努力して、少なくとも三木前総理が提言されたことが実現されるように努められるかどうか、こういうふうに私はお伺いしたいのでありますが、答えにくかったらこれは仕方がありません。しかし、あなたは福田内閣の中の一番重鎮であります。思い切って物が言える立場にあなたはあると思うのです。政局が今度大変動するかもしれぬ、どうなるかわからぬが、そのときにはその一翼を担う、あるいは先頭に立たれてあなたが動かれる立場にあるかもしれませんので、将来を私は希望しながらあなたに一言聞いておいた方がよいのではないかと思って聞くわけです。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 大分おだてられているようですが、確かにごらんのとおりずうたいはでっかいし、体重も重いことは確かでございますが、同時に、この内閣の一員でございます。  実はストライキ、処分の悪循環、これを断ちたいということは、これも二十年来の念願でございまして、公労法三十五条の付加と相まって三十二年、ちょうど私は官房長官をしておりましたが、当時の岸首相と当時の社会党の委員長であった鈴木茂三郎氏とが会談を行いまして、そして仲裁裁定の完全実施を約束いたしまして、それが今日までずっと続いておるわけでございます。  それから、ILO八十七号条約の批准も、これは私の時代にやったものでありまして、そういう方向へ向けての努力はこれからも惜しむものではございませんが、福田内閣の一員として、内閣が委嘱をして審議をいただいておる過程において、私がこれ以上のことを申し上げる立場にないことは御了承いただきたいと存じます。

枝村要作日本社会党

○枝村委員 まだいまから国会は続くのですから、じわりじわり今度は聞いていきたいと思いますから、ひとつそのつもりでおっていただきたいと思います。  それから、時間がありませんので、公労法十六条の仲裁裁定の取り扱いについてちょっと簡単に聞いておきたいと思います。  ことしの春闘も、昨年のような情勢にならぬとも限らない懸念がありますので聞くのですが、この仲裁裁定の取り扱いは、ここ二、三年は大体承認案件という形式的な形で国会に提案されてばっと通っていく、それは一つの政府のそれに対する忠実な完全履行の姿勢をあらわしておったと思うのです。それ以前はもちろん議決案件として出されたこともありますけれども、それだけやはり世の中が進んで労使関係、政府との信頼関係が保たれてきたと思うのです。ところが、去年になって突然ああいうふうにいままでの承認案件をやめて議決案件として取り扱うようにしてくるということに対して、われわれは大変な不信感を持ち、せっかくのいい正常なルールがここにおいて破られるということになる、しかもその背景には、国鉄運賃の値上げ等が政治的な取引にされてこの仲裁裁定が取り扱われようとされた、そういういきさつもあるわけです。われわれ野党は断固これに反対したのですけれども、そういう形で取り扱われるから、結局いままでのルールを破って議決案件という形で国会に提出することになったのだと思います。ことしも国鉄運賃の値上げやあるいは法定主義の緩和の問題が出されてくるのですけれども、石田労働大臣時代になったのだから、そういう問題と取引させるような愚かなことはやめてもらいたいと思います。  それで、財源の問題と関係ないことはありませんけれども、仲裁裁定の完全履行というのは、そういうものと取引されるほどお粗末なものではないのです。これはスト権のかわりに仲裁裁定制度ができた。ですから、労使の間の賃金紛争、そして仲裁裁定が、第三者機関にかけて法的にばっと権威のあるものを出された場合に、それが他の至らぬ政治道具にされるなんというのはけしからぬ話だと思います。石田さんはそんなことは毫もおやりにならぬと思いますが、一応また心配の種がことしの春闘を通じて出てくるような可能性もありますので、ひとつお伺いしておきたいと思います。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 まず、岸さんと鈴木委員長との約束のときは、仲裁裁定は完全に実施する、そのかわり違法な争議行為はしない、こういうことがお互いの中でできておるのです。ところで、そのお互いの中にできておったものが、その後三、四年間くらいは続いたと思うのですが、ところが、その次に今度は言葉が変わり様子が変わって、まただんだん出てきて、三十九年か四十年くらいになると、今度はスト宣言ということが堂々とやられるようになったわけであります。三十二年に鈴木茂三郎さんと岸さんとの間に約束ができて、そのときの裁定は、やはり議決案件として出したわけです。いまお話のように、それでずっと続いておって、今度は承認案件に変わったのですが、私自身も、むしろ議決案件でそのままいっておったものを承認案件にどうして変わったのかそのことが不思議だった。  それから、名前がどうあろうと承認案件で出れば不承認という立場もあるわけなんで、別に処理の仕方を変える必要はないように私は思う。  それから、去年議決案件として出したとき、私は、運輸大臣でございまして、当の責任者の一人でございます。しかし、交換条件とか取引材料という考えは全くないのであって、もうどうにもこうにも国鉄の財政が毎月、毎月五百六十億円くらいの赤字の累積、それこそもう節約に節約を重ねなければならないという、文字どおり逼迫した状態にありました。しかし私は、この仲裁裁定の完全実施というものをあっせんし、処理をした当の責任者として、この精神は、これは公労法の精神でありますので、したがって、これを貫く決意であります。

枝村要作日本社会党

○枝村委員 もう時間がありませんけれども、承認案件、議決案件というのは、政府の態度として大変違うのです。これは大違い。ちょっと言いますと、承認案件だったら、政府が提案すると委員会で質疑、討論省略、本会議にかけてばっと通る。議決案件というものは、これを通してくださいますかとくるのですから、質疑やら討議やらみなやるのですよ。手続上全然違う。しかし、それはそれとして、大臣の意思を聞きましたから、ひとつそれでやってください。  もう少し時間がありますから最後に一つだけ。  政府関係の特殊法人の統廃合、整理、これが五十年十二月三十一日に閣議了解されておる。それに基づいていま作業が進められておるようでありますが、その当時対象になったのは十八事業団だと思うのです。それをもっとさらに拡大してきますと、国民世論としても、天下りの受け皿みたいな事業団やら、それから役にも立たないようなものを置いておくのは国家財政のためにもよくない、こういう意見があることもよく知っております。わが党も、この統廃合、整理が全然だめだというような態度はとっておりません。ただ、そこにおる従業員、職員の雇用の不安、雇用保障というものを無視して統廃合するということであっては、これはわれわれ労働者の生活権を守るために許されぬわけであります。いまからどうなるかわかりませんが、少なくとも労働大臣としては、こういう問題については、いま私が言ったようなことをやはり前提にいろいろと対応策を立てていただかなければならぬのではないか、いまから用意しておいてもらわなければならぬのではないか。  それから、もう一つ明確に言いますが、そういう事態が起きたときには、そこの労働者を再就職させるような雇用保障というものを何らかの形でやはりとってほしい。もし不幸にして離職しなければならぬ人たちに対しては、離職対策を、これは法律を制定してでもいいですから、炭鉱離職者とか駐留軍離職者だとか、これは民間の企業ですから、そういうものをつくるように検討して、そういう人たちに対する離職者対策を立てておく必要はないか。そういう思い切った施策を通じながら、いま言ったような政府関係の至らぬ事業団体はどんどんつぶしていくならいかれればいい、こういうふうに思っております。私どもは、ああいう法人、事業団は天下り官僚の巣になっているのですから、こんなものはその意味ではつぶした方がいいと思っておりますけれども、いま言ったように、労働者がおりますからそうはいかぬ、こういうふうに考えておりますが、その点について、ひとつ所見を聞きたいと思います。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 具体的な話し合いはこれからでありますから、どの程度の範囲に及ぶかということは、まだちょっと見当がつきません。しかし、審議会とか諮問機関とかという部門に限りますならば、これは総枠の予算で九億円未満です、八億円台、したがって、人員等もこれは数が知れておるわけであります。そういう者に対しては、配置転換で処理はできると思いますが、事業団となりますと、かなりの人数を抱えているところもございましょう。そういう者に対する配置転換その他で処理ができない者につきましては、むろん再就職のあっせんのほか、万般の処置をとるのが労働省の責任だ、こう思っております。

枝村要作日本社会党

○枝村委員 質問を終わります。

戸井田三郎自由民主党

○戸井田委員長代理 次に、川本敏美君。

川本敏美日本社会党

○川本委員 社会党の川本敏美でございます。  先輩の枝村議員が労働大臣にいろいろ御質問をなされました。私は、新米でございまして、もう子供の時分から、石田労働大臣が石橋湛山の青年将校でがんばっておられる時分から名前は聞いておった。労働大臣は一体どういう人だろうと思って、いろいろ本を読んでまず石田研究をやったわけですが、先ほど枝村議員がおっしゃったように、昭和三十二年の二月二十六日ですか、この社労委員会で労働大臣就任のあいさつをしておられるわけであります。そのときにおっしゃったことは、先ほどおっしゃったので申し上げませんが、今度の労働大臣としての施政方針のこの間の御説明と、考えてみますと三十二年二月の就任あいさつと、中身が違っても課題は変わっていない、こういうところにいま日本の労働行政の一つの貧困というものがあるのではなかろうかと思うのですが、もう労働大臣も四回目で、自民党きっての労働行政の第一人者で実力者だと思うのです。だから私は、石田労働大臣を大きく信頼をしておるのですが、従来ずっと議事録等によって調べてみますと、どうもこの委員会や国会で政府が約束したことが本当にそのとおりに守られてきておるのかということについて、私は一つの疑念を持っておるわけなんです。そこで、その実力第一の石田労働大臣にまずお聞きしたいのです。  この社労委員会や国会で政府が答弁して約束したことは、事、ほかのことは別として、労働行政については、私は責任を持ってそれは実現をするのだ、お約束は守るのだという、そういう気魂を込めた決意のほどをまずお聞きしたいと思います。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 私は、いまから二十年前にここでお約束と申しますか、所信を表明した方向についての努力は、私が責任を持つたびごとに点検もし、前進もされたつもりであります。ここでお約束したことを守るのはもちろんでありますが、同時に、約束できないことはいたしませんから、その点もひとつどうぞ御了承のほどをお願い申し上げます。

川本敏美日本社会党

○川本委員 それでは、この間の施政方針の中でも、労災職業病の問題について、特に職業がん等、重要な問題があると言っておられますが、後ほど私は、そういう問題について触れたいと思うのですが、その前に、ちょうど昭和五十年の十二月十八日の衆議院の内閣委員会あるいは昨年五十一年五月十八日の同じく衆議院の内閣委員会で、わが党の和田貞夫議員が提起いたしましたいわゆる特殊部落地名総鑑、この問題から発生してきておる現在の就職差別といいますか、採用の差別といいますか、そういう問題について、私は、少し労働大臣に見解をお聞きいたしておきたいと思うわけです。  私は奈良県なんですが、奈良県でことしの一月の十四日に、東京に本社があります理研計器奈良製作所というところで、いわゆる第三の部落リストといいますか——部落リストについては、その当時の内閣委員会で和田貞夫議員が質問しておるのに、部落地名総鑑、これが企業防衛協会から出ておる。あるいは全国特殊部落リスト、これが労政問題研究所から出ておる。さらにその後、全国特殊部落リストという第三の地名総鑑が労働問題研究所から出ておる。さらに大阪府下全部落の一段リストというのが、これまた労働問題研究所から出ておる。現在までで総数百四十三社がこのリストを買い入れておるということが法務省等で明らかにされておると思うのですが、この問題に関連して、その第三の部落リストと言われるものを、奈良県にあります理研計岩奈良製作所というのが購入した。この問題で一月の十四日に確認会が桜井市役所で持たれたのですが、私もそれに出席してきたのですが、当初法務局等の調査では焼却したとかいろいろ言っておったのが、最終的にはやはりそれは最後まで持っておって、こういう答弁をしておる。「桜井市内に在住した時、市内にある被差別部落があり、また「こわい」ところであると聞き知っていたというのである。そこでチラシを見て市内の被差別部落をはじめ、県下の部落の所在について「確認するために」購入した。しかも、操業を開始してから採用した社員についても、部落民であるかどうかを確認するために社員の履歴書と部落、ストをチェックして、そして事あるごとに見開いて点検した。」こういう答弁をその確認会でしておるわけです。  いわゆる地名総鑑とか部落リストというものは、一にかかって就職差別に利用するために購入したものであるということは間違いないと私は思うのですが、その点について労働大臣はどのように判断されておりますか。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 そういう事犯があったことは、実物は見たことありませんけれども、報告で聞いて承知しております。それから、それを見た瞬間に私が第一に感じたことは、これはけしからぬことだということであります。就職差別というようなものが行われるなんということは、労働行政以前の問題、基本的人権の問題に係る問題だと思うのでありますので、そういうことについて、そういう措置が現実に行われないような行政指導を命じておきました。したがって、そういう具体的へ例について職業安定局長からちょっと説明いたします。

北川俊夫労働省職業安定局長

○北川政府委員 この件に関しましては、関係の業界、それから行政の主体でございます地方の自治団体に対しまして、各省の事務次官から連絡をいたしますほか、安定局長名、それから私の方の担当の責任者でございます参事官名をもちまして、今後のこの問題についての正しい対処の仕方について指示をいたしておりますほか、これに基づきまして購入いたしました企業に対しましては、各都道府県ごとに各省の出先機関と共同で啓発を行いますほか、安定所を通じまして、それらの企業の選考採用の実情を点検いたしまして、そのような誤った方向がとられないように厳重に指導いたしております。  指導の結果につきましては、まだ詳細総括ができておりませんので何とも言えませんが、ただ研修を行っております現在の段階では、たとえば重役、ときには社長、副社長等も積極的に出てきて研修に参加する等、従来人事担当者だけに任せるというような、おざなりの態度から一歩抜け出て誠意が見られる、そういうふうに考えております。

川本敏美日本社会党

○川本委員 奈良県におきましては、五十年にも差別事件が十九件明らかになっただけでも発生しておるわけです。さらに五十一年には十六件ですか、発生しておるわけです。昭和四十四年ごろに奈良県の地方銀行であります南都銀行が、部落の子弟をなかなか採用しないということで部落解放同盟といろいろ話し合いをして、最終的に協定書までつくったという事例があるのですけれども、最近でも奈良の交通機関をただ一つ独占している奈良交通が同じようないろいろな問題を起こしておるわけですけれども、そこらで見られることは、いま研修と言われましたけれども、たとえて言いますと、採用試験のときに作文を書かす。「私の家庭」とか「私のお父さん」というような題の作文を書かしておる。そうしたら若い子供は、そこで突然そういう題を出されたら、正直に自分の家庭を書き、自分のお父さんの姿を書く。そういうものを見ると、企業側はこれは部落の子供かどうかということがわかるわけです。そういうように就職差別をやるようにだんだんと高度化してきておるわけです。地名総鑑を買ってそれでチェックするというのは、一番単純な例でございまして、さらにそれが高度の就職差別に今日発展しつつあるわけです。  そういうようなことを、いま言われた研修とか啓発とかいうようなことだけで完全に根絶することが果たして可能なのかどうかということについて、私は大きな疑問を持っておるわけなんです。労働省としては、いまおっしゃいましたその啓発と指導の行政だけでこの就職差別というものを根絶することができるという自信と確信をお持ちなのかどうかということについて私は聞きたい。

北川俊夫労働省職業安定局長

○北川政府委員 先生の御指摘の点、私も非常に共感するところがございます。ただ、この問題に関しましては、単にそういう研修あるいは講習会を行うほかに、安定所の窓口におきましても、人を採用するのにはその職業に最も適合した人、仕事をこなせる人を採用する、そういうたてまえであるから、家庭環境がどうであるとかあるいは出身地がどうである、そういうことは選考基準には入れない、そういう人の選び方等につきましても懇切な指導をいたしております。さらにまた、そういう履歴書の様式等の改正を行うなど、じみちに指導の積み重ねを行っております。私は、この問題は、そういう指導を根強くといいますか、しんぼう強く繰り返すことによって、企業全般のこの問題に対する理解あるいは認識を深めるということが基本的に差別問題をなくす一番大事なことであって、そのことをやはり繰り返し繰り返し行政努力として積み重ねて、それを積み重ねることによってこの問題は解消し得る、そういう信念でこの行政を進めてまいりたいと考えております。

川本敏美日本社会党

○川本委員 そういうふうにおっしゃいましたけれども、私が先ほど申し上げた奈良交通の労働組合なんかは、いま抗議をしておるのですけれども、会社は採用を決定したら、まず戸籍抄本を出せと言うわけです。戸籍抄本の中に本籍地が入っておるわけです。いわゆる採用を決定してからでも本籍地を要求してくるわけです。それも南都銀行と同じように非常に高度な就職差別を行っている、配置も考えておるというようなことを如実にあらわしておると私は思うわけです。  だから労働省としては、そうすると就職差別をなくするために、たとえて言えば新規採用のときに、現住所はいいけれども、本籍地まで書かなければいかぬというような、そういう現在の大会社がやっておる状態については、それをなくしていく。本籍地の戸籍抄本を出す必要があると思いますかどうですか。

石井甲二労働大臣官房長

○石井説明員 労働省といたしましては、採用選考の段階におきまして、たとえば履歴書とかあるいは高等学校の統一応募書類といったようなものにつきまして様式を決めておるわけでございますけれども、いわゆる本籍地につきましては、都道府県の名前だけで決めてもらうように指導いたしておるわけであります。

川本敏美日本社会党

○川本委員 そこで、先ほど労働大臣が言われましたように、この問題は、まず基本的な人権にかかわる問題である、こういうことですが、これは昨年五月十八日の内閣委員会における和田貞夫議員の質問のときにも、当時の稻葉国務大臣が答弁しておられるわけです。「新憲法施行後三十年になってなおかつ人権擁護に関する諸立法がかくのごとくルーズであるといういい実例であると私は思います。したがって、法秩序の維持、人権擁護を担当する法務大臣として、まことにこれは職務を果たしておらぬなという気がいたします。したがいまして、御趣旨に沿うて人権擁護立法の整備をも含めて早急に検討したい、こう思います。」と、こういうふうに答弁しておられる。  きょうは、法務局の方からもおいでをいただいておるはずですが、この法務大臣の当時の答弁に基づいて、今日法務省ではどのように立法措置について検討しておられますか、ちょっと参考までに。

宮本喜光法務省人権擁護局調査課長

○宮本説明員 人権擁護制度ができましてから、もう間もなく三十周年を迎えようといたしております。その間、いろいろ社会情勢の変化もございまして、現行の人権擁護制度それ自体が対応できるのかできないのかという、いま見直しの時点に立ち至っておるというふうに考えております。したがいまして、人権擁護局あるいはその下部組織の権限等も含めまして、あるいはこの種差別事件が発生した場合により適確な何か処理ができるような立法措置ができるかどうかということを含めて現在検討中でございます。  ただ、一つ問題がございますのは、人権擁護機関に強制力を与えるというような形での権限付与ということを考えますと、現在の人権擁護制度の根幹に触れる問題でございますので、その点だけは慎重に対応していきたいというふうに考えております。  いろいろな差別事象に対する立法措置ということについては、現在総理府の同対室を中心にいたしまして関係各省が集まって寄り寄り検討中でございます。

川本敏美日本社会党

○川本委員 どうも法務局は、法務大臣の答弁と大分違って、なかなか前向きで取り組んでいないように私はいまの御答弁をお聞きして感じたのです。  そこで、やはりこの種の問題については、労働大臣、憲法第十四条で「すべて國民は、法の下に平等であって、人種、信條、性別社會的身分又は門地により、政治的、経濟的又は社會的関係において、差別されない。」云々という規定がある。こういう規定のほかに、もっとそういうことを規定されたのがあるかなと思って考えてみますと、労基法の第三条とか職業安定法の第三条にいろいろこういう均等待遇とか差別をしないという意味の規定があるわけです。これは労働基準法の場合は、採用した、雇用した労働者に対して、職業安定法は安定所が紹介するに当たって均等待遇をするのだ、こういう趣旨の訓示規定であって、就職の採用時におけるこういう差別を禁止するというか、均等待遇をするのだとか差別取り扱いをしないとか、こういうような法律が、憲法の十四条を受けたそういう規定がどこにも現在ないわけなんです。  そこらあたりに、こういう就職差別を売り物にした本が売られたり、あるいはそれによって会社が就職差別をやったりということで、部落の若い青年が本当に憤りを感じ、中には自殺もするような悲惨な差別事象を全国的に多発させておると私は思うわけです。  そういうようなことを考えた場合に、やはりここらあたりでこの憲法十四条を受けて、就職の採用時に差別をしてはならないという立法措置が必要なのではないかと私は思うわけなんですが、その点について労働省としてはどう考えておられるのか。

北川俊夫労働省職業安定局長

○北川政府委員 憲法十四条の規定といいますのは、他の法律の規定がなくとも、その趣旨を十分徹底をすべき義務がわれわれ行政官庁にはあると思っております。その精神にのっとって従来行政指導をいたしておるわけでございまして、私たちは、先ほど先生にお答え申しましたように、行政指導によって趣旨の徹底をいたそう、むしろいまの段階でそういう法規制をすることが、かえって差別意識を呼び起こす危険もありはしないか、そういうような懸念も持っております。ただ、先生の御指摘の趣旨もございますので、慎重に検討さしていただきたいと思います。

川本敏美日本社会党

○川本委員 いまのお答えでは、私としてはなかなか納得できない。ということは、啓発指導で行政を推し進めるだけで、先ほど申し上げたように、この就職差別をもう抜本的になくしてしまうという方向に向かうのだ、あるいはなくすることができるのだ——これは完全でなければいかぬわけですね。少しずつよくなっておりますというようなことでは、この問題は賃金とか労働条件とかの問題と違って納得できる問題ではない。基本的人権にかかわる問題なんですから。だから、法で規制してでも、罰則をもってでも就職差別をしてはならぬという規定をこさえない限り、同和地区部落三百万の将来ある若い青年が、このことのためにたくさんの国家的な損失を起こすような事態になっておると思うのです。このことについて、ひとつ前向きに検討をしてもらいたいと私は思うわけです。  さらに、総理府にもこの際お聞きしておきたいと思う。  同和対策事業特別措置法が昭和四十四年に制定されて、昭和五十三年いっぱいでもうその十年の期限が来るわけです。私は、少なくとも同和対策事業特別措置法が制定された当時と今日と、こういう部落地名総鑑等で様相が一変してきておる中で、同和対策事業特別措置法というのは、地方自治体に対する財政的援助を中心にしたものだと思うのですけれども、そこで事業という言葉を抜いてでも、同和対策特別措置法というような法律の中であるいはこの就職差別をしてはならぬというような訓示規定を入れていくことも必要なのではないか、考えられていいのではないかと思うのですけれども、それについて総理府の方でどのように検討しておられるわけですか。

今泉昭雄内閣総理大臣官房同和対策室長

○今泉(昭)政府委員 御承知のように、昭和五十四年三月末をもちまして同和対策事業特別措置法は失効するということになっておりますので、その問題を今後どうするかという問題を含めまして、ただいま先生の御発言になった問題につきましても慎重に検討してまいりたいと思っております。

川本敏美日本社会党

○川本委員 最後に労働大臣に、この問題についてもう一度見解をお聞きしておきたいと思う。  こういう問題は、法務省にも内閣にもあるいは労働省にも、多岐にわたるいろいろな問題を含んでおる。だから、これが個々ばらばらに対処されておるのでは、この問題は立法措置を講ずるまでの過渡的方針としてもなかなか進まないと思うのです。だから、労働省が中心になって、少なくともこの就職差別をなくするための対策本部的なものを労働省に設置して、そして関係省庁と連絡協議をしながら強力に進める方途を講じてもらいたいと思うのですが、それについてひとつ御意見をお聞きしておきたいと思います。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 これは現在ばらばらと言うよりも、総理府の対策室が中心になって各省と連絡をとりつつやっているわけでございます。私も、いまお話を伺っておりまして、戸籍抄本をとる必要が、本籍というものが一体どれだけの価値があるかということをつくづく痛感をいたします。そういう点について検討はしなければならないと思っておるのであります。徴兵でもあるときなら別として、いまの時期に本籍というものを企業が知っておく必要がどこにあるのかちょっと私は疑問で、そういう点でも検討させたいと思っております。

川本敏美日本社会党

○川本委員 それでは、時間がありませんので、この問題については一応そのくらいにして、また後日に触れたいと思うのです。  そこで、先ほどの労災、職業病の問題に関連して、私は、早くから問題になっております白ろう病の問題についてお聞きをいたしたいと思うわけです。  これについても、いろいろ調べてみますと、従来から国会の質疑で何回かこの問題が出ておるわけです。その中で、いままでの国会で論議されました点を調べてみますと、前の国会で昨年の十月に、村山先生が白ろう病の問題についてこの社労委員会でいろいろ質問されておるわけです。それから昨年の十月二十八日に参議院の内閣委員会で、当時民社党の中村利次議員がやはりこの問題についても質問をしておられるわけです。  その議事録を読んでみますと、労働省の溝辺説明員が答弁をしておるわけですけれども、四十年に職業病として白ろう病は認定をされて、四十五年には労働省から通達が出ておる。チェーンソーの使用は一日二時間、週五日間を限度とするという趣旨の通達が労働基準局長から出されておるわけですけれども、この通達が権威あるものかどうかということに対して、専門家の意見を聞いて決めたものだから非常に権威のある行政通達だということだった。そうなると、一日二時間、週五日を限度とすれば振動病は起こらぬということに解釈すべきですねと念を押しておるわけですけれども、「現在までの振動障害にかかった人の発症の状況その他を勘案いたしまして、基準に示された作業が確実に行われている限りにおいてはまず起こらないであろうということで通達をしました。」というふうに、もう一度労働省は確認をしておられるわけですが、この点について、今日でもこの通達がそれでいいのだという確信をお持ちですか。

桑原敬一労働省労働基準局長

○桑原政府委員 お答えいたします。  チェーンソーによります振動障害の防止の問題は、私どもいろいろやっておりますが、労働時間だけで十分であるかということにつきましては、やはり十分でないのではないか、こういうふうに思います。たとえばチェーンソーそのものの加速度がどうなっているかという問題もございますし、あるいは二時間ということも、チェーンソーの操作時間が連続してどのくらいかという問題もございます。やはり健康診断を適時適切にやって、おかしいなという者につきましては時間を短縮していく、そういう総合措置をしながらこの問題を取り扱っていかなければ振動障害の完全な防止はできないと考えております。したがって、二時間の問題につきましては、現在の私どもが考えられる一番りっぱな専門家にお集まりいただきまして、その限りにおきましては、現在でも生きておると思っております。ただ、振動障害防止につきましては、総合的な対策を立てていかなければならぬ、こういうふうに考えております。

川本敏美日本社会党

○川本委員 私ども奈良県も、御承知のように、いわゆる吉野林業という言葉に象徴されるよいうに、全国の民有林地帯のメッカだと私は思っておるわけです。全国的にこういう問題について見ましても、奈良県の山林というのは、一ヘクタール当たりの保有材積そのものも非常に高いわけです。全国的には一ヘクタールで七十五立米の木材を蓄積しておるのですけれども、奈良県では杉とかヒノキであれば一ヘクタール当たり大体百五十六立米、特に中心の川上村あたりに行くと、二百九十三立米という全国一の民有林の木材の生産地帯でありまして、昭和四十五年の国勢調査で見ますと、奈良県で林業専業の山林労働者は大体六千六百五十人くらい出ておるわけです。そして全国的に見てみますと、全国ではざっと二十二万人の山林労働者がおって、そのうち民間の山林労者が約十五万人前後、あとは国有林関係というような分布になっておるようですけれども、振動病については、国有林で現場の作業員六千人と言われる中で大体三千人ほどが白ろう病にかかっておる。民有林では現在まで労働省が認定したのは、五十年度末でわずかに九百人前後だと言われておるわけですけれども、林業労働者の数から対比していくと、民有林にはもっと多くてあたりまえである。現在では潜在化しておる。そういうことについて、私は、自信を持ってこれは潜在化しておると思うのです。  昭和五十年の二月十五日に、私どもの吉野郡川上村で林重義さんという造林作業員がこの白ろう病を苦に自殺をしたのです。プロパンガスのゴムホースをくわえて死んでいた。それは遺書が残っておったわけですけれども、その遺書にはどういうことが書いてあったかというと、余りに正直者で一生懸命働いてばかをみた、私が死んだら山に埋めてくれというような趣旨の、いわゆる白ろう病を苦にしたことがはっきりとわかるような遺書が残っておったわけです。現在この白ろう病という病気が労働者を自殺にまで追いやるほど深刻な事態になりつつあることを考えるときに、私は、いまの御答弁のように、一日二時間で一週五日でというその規定で十分なのだという考え方は、この際改めてもらわなければいかぬのじゃなかろうかと思うわけです。  そこで、林野庁の方では、全林野の労働組合と協議をしてですけれども、もっと細かいチェーンソーの操作の協定が結ばれておるわけですね。一日二時間、一週五日という程度ではなくて、何分間使ったら何分間休めとかいろいろな規定を持っておられると思うのです。全林野の場合にはそういう細かい規定がなされて、民有林の場合にはそういうことは労働省としては措置しようとしない。この点について労働省はどのように考えておられるのか。私は、どうも民有林における白ろう病というものを軽視し過ぎているのではないかと思うのですが、その点についてもう一度お聞きいたしたいと思います。

桑原敬一労働省労働基準局長

○桑原政府委員 国有林につきましては、林野庁が事業主の立場に立っておられるかと思います。民間の場合は林業災防という会を持っておりまして、これは民有林関係の事業主団体が結成をいたしておりますが、この災防団体で自主的な災害防止規定をつくりまして、いまお話しのような労働時間とかいろいろ細かな規定を設けて、それによって災害防止に努めております。私どもは、監督行政におきましては、この災害防止規定に基づきまして十分な監督指導をしながら、民有林の振動障害の防止に努めておるようなわけでございます。

川本敏美日本社会党

○川本委員 それが十分であれば、私は、こういう事態は起こってこないと思うのです。たとえて言いますと、奈良県では、昭和四十八年に検診したのが六百七十三人で、有所見の数が二百二十七人、四十九年には五百三十六人を検診して百四十人、五十年には実に四百七十五人を検診して百九十四人、その有所見率というものは四八・八%なんです。検診した人の約二人に一人が白ろう病にかかっておる、あるいはその疑いがある、こういう検診結果が出ておるわけです。あの通達が守られておったら、四十九年、五十年になってこういうふうにどんどん有所見者がふえてくるということはないはずなんです。労働省は、通達さえ出しておけば、そのとおり守られて白ろう病はなくなると思っておられるのですか。その点についてもう一度お聞きしておきたい。

桑原敬一労働省労働基準局長

○桑原政府委員 私どもといたしましては、特に健康診断をきちっとやっていただくということが、やはりこの問題の解決のポイントだということで、巡回健康診断を年々対象をふやしてやってきております。そういったことで、結果的には有所見者がふえてきておるわけでございますが、私どもといたしましては、そういう厳粛な事実に基づきまして、さらに監督指導を続けてまいりたいと思っております。

川本敏美日本社会党

○川本委員 私は、通達行政ではなしに、やはり立法措置をしてこれを守るという義務を事業主に背負わさぬ限り、白ろう病を根絶することはできないと思うわけなんです。そういう点について、やはり林野庁がいまやっておられるようなもっと細かい規定をする。チェーンソーは連続五分以内使用して十五分以上休むとか、刈り払い機は連続十五分使用したら三十分以上休むとか、あるいは一年に最低一カ月以上休む期間をつくるとか、やはりそういうようなきちっとした規定をつくって、これを立法化して事業主に義務として背負わさない限り、この問題は私は解決しないと思うのです。そういう点について、立法措置を前向きで考えるお気持ちがあるかないか、ひとつお聞きしたいと思います。

桑原敬一労働省労働基準局長

○桑原政府委員 この振動障害の防止の問題につきましては、いろいろ立地条件その他実態が多岐にわたっております。したがって、私どもといたしましては、これはやはりできるだけ足を使って私どもが具体的な問題に応じながらきちっとした行政指導をしていくことが一番早道でございますし、またこの問題は、やはり山奥の中の問題でございますので、事業主それぞれが本当の意味においてきちっとした災害防止体制を組んでもらう、こういった国と民間とが相呼応してきちっとした協力体制をつくっていかなければなかなかその解決はむずかしい。したがって、いきなり法律だけでいけますかどうか、その辺については非常に疑問を感じておるようなわけでございます。

川本敏美日本社会党

○川本委員 時間がありませんので、ちょっと先へ話を進めてみたいと思うのです。  そこで、基準局は五十一年の六月二十八日に基発第四百九十四号、振動障害の治療についてという通達を出しておられますね。私どもの奈良県では、御承知だと思いますけれども、私の住んでおります町の大淀町の町立大淀病院の土生という院長さんが専門家会議にも出ておられる、非常に熱心な白ろう病の先生としてがんばっておられるわけですけれども、私は、地元の病院のことですからよく知っておりますけれども、今度出たこの通達の内容を見ると、通達の中に治療方法が非常に具体的に書かれてあるわけですね。振動障害の治療についてということで書かれてある。内容を見ますと、理学療法とか運動療法とか温泉療法とか薬物療法とか、その他の療法としていろいろ治療の仕方を細かく指針として出しておられるわけです。ところが、私のところの地元の大淀の町立大淀病院にはそういう施設が何もないわけですから、遠いところからそういう病院まで通院して治療を受けに行くのですが、あるいは一週間に一回の人もあるし、二週間に一回の人もあるし、一カ月に一回しか来れぬ人もある。来たら大きなかばんにいっぱい詰められるだけ薬をもらって帰る。しかし、これを飲みなさいと言われて持って帰ったって、それを飲んだら、またその副作用で胃が悪くなるとかいうようなことで、なかなか労働者は飲もうとしないわけです。  ですから、こういういわゆる治療についての通達を出されても、この治療の通達どおりに治療ができると思っておられるのかどうか。理学療法も温泉浴もパラフィン浴も、いろいろなことをやれと書いてあるけれども、やろうにも施設がなければやれぬわけなんですから、その点についてはどのように考えておられるのですか。

桑原敬一労働省労働基準局長

○桑原政府委員 山林労働者に対します医療施設との対応の仕方は非常にむずかしい問題でございます。私どもといたしましては、基本的には労災病院がございますが、これは各県全部ございません。三十四しかございませんが、それをやはり補うように委託病棟をつくっていく。しかも、大分完備してまいりましたけれども、そういった労災病院委託病棟に白ろう病の治療ができるような機械を整備していく。五十二年度も五億ばかりの予算を組みましたが、さらにまた、民間の病院にもそういった治療の機械がお貸しできるように、五十二年度予算で二億計上いたしておりますが、そういったことで、やはり僻地でございますので、なかなか病院が対応できないという問題があって、私どもも非常に苦慮いたしております。  基本的には、この問題は労働省だけではどうもできないということで、農林省、厚生省、労働省、この三者で連絡会議をつぐって、特にいま御指摘の医療施設との関連をどう対応していくかということについていま一生懸命やっております。そういった非常な僻地に置かれております治療問題をどうやっていくかということで苦慮いたして、また一生懸命やっておりますが、先ほどお話のございました、その通達一片出しただけでこの問題解決するとは全く思っておりません。その治療指針につきましては、ややもするとやはり治療方法が不統一でございますので、できるだけ医者の方々に白ろう病に対応した治療が十分できるような一つの指針を出しましたけれども、その指針が完全に行き渡るためには、やはりお話しのような医療施設をどうかみ合わせていくかということでございます。これにつきましては、いま申し上げましたような連絡会議で早急に対案を出していきたい、こういうふうに考えております。

川本敏美日本社会党

○川本委員 この間も、科学技術庁で振動障害の発生機序に対する研究とかいうのがなされておるということを聞きましたので、ちょっと科学技術庁に聞いてみたのです。機序とは一体何かなと、日本語なかなか私はわからぬわけですが、聞いてみたら、振動病発生のメカニズムという意味なんだとこういうことです、機序という言葉は。なかなか日本語というのはむずかしい。メカニズムと言うてもらった方がわかりやすい。それで、またそういうところから見ると、白ろう病というものの発生のメカニズムすら解明されていないという現段階にあるのではないかと思うのですが、その点について私から言えば、発生のメカニズムがわからずに対症の治療の方法がどうしてわかるのか。ましてその治療の方法について一片の通達を出しておいて、それで労働省は事足れりとしておるけれども、片一方で人の命というのは山よりも重いわけです。通達出したから白ろう病が治るわけじゃない。治療の機関が整備されてない、機器が整備されてない、理学療法をやれと言ったって理学療法の設備もない、温泉浴やれと言ったって温泉浴の設備もない、こういう状態で、ただここでそういう答弁をされても、私は、現場を見ておる一人として、なかなか納得できるものではないわけです。  そこで、労働大臣にもひとつぜひお願いをしたいのですけれども、こういうように、いま民有林の白ろう病でも奈良県が一番多発地帯だと私は思うし、まだまだ潜在化しておりまして、これから検診が進めば進むほど、三千人ぐらい奈良県の民有林だけで白ろう病の患者がおるのじゃなかろうかと言われておるわけです。だから、そういう状態の中でやはり専門病院の一つぐらいはつくってほしいという要望も地方の自治体、県や町にもあるわけです。そういうようなことを踏まえたならば、そういうものを大急ぎでつくっていくという前向きの姿勢があってしかるべきだと思うのですけれども、その点についてひとつお聞きしたい。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 私の郷里も、民有林はあんまりありませんが、国有林野の非常に多いところでありますので、白ろう病のことについてはよく知っておるつもりでございます。これはチェーンソーが初めて採用されたのが昭和四十年ごろじゃないかと思うのですが、それ以後直ちにこの問題が起こってまいりまして、御指摘のように、なるべくそういうことが起こらないような規制、一つにはいまの時間規制、もう一つには起こらないような機械の開発ができないか。機械の開発、使用もすでに始まっているように聞いております。それから治療方法を指定しても病院がなければ何にもならぬ、病院の施設その他は、民間の病院にその施設がなければしょうがないじゃないか、そのとおりでありまして、本年度予算でとりあえず北海道に白ろう病を対象とする労災病院の建設をすることになりました。逐年進めてまいりたい。特にその白ろう病多発地帯を対象といたしまして、年次を追って拡大をしてまいりたい、こう思っております。  一方、同じような状態のカナダとか北米とかソビエトとかそういうところで、これは私の仄聞でありますが、治療技術がかなり進歩しておるということをよく聞きます。そういうものの視察研究というようなこともさしたいと思っております。

川本敏美日本社会党

○川本委員 奈良県から北海道まで治療に行くわけにはいきませんので、やはり早急にそういう施設を多発地帯に重点的につくっていかない限り、通達だけでは私は治らないと思いますのでお願いしたいと思います。  そこで、さらにちょっとこの生活問題について、いわゆる検診時の賃金の補償とかあるいは労災保険で休業の補償等についてお聞きしたいと私は思うのです。  これも先輩の質問を調べてみますと、昭和四十九年の四月二十五日に参議院の社会労働委員会で矢山有作議員が質問しておられるわけです。それに対して、いわゆる休業補償というのは、国有林の場合は全部賃金の一〇〇%が支給される。ところが民有林の場合は、六〇%プラス二〇%で八〇%しか補償されていない。それも、いよいよ休業に入る直前の六カ月から一年ぐらいは、仕事ができたりできなかったりというようなぶらぶらした状態ですから、平均賃金も非常に下がっておる。そうなると、休業補償が非常に少ないために、認定されて患者だとされると、今度は休業補償だけでは生活できないというような問題があって、検診を受けようとしない、こういうような悪循環が起こっているわけです。  だから、休業補償を一〇〇%出すということが非常に大切な問題ですけれども、この矢山議員の質問に対して政府側は、渡邊健二政府委員が「林業面につきましてもいま先生御指摘のごとく事業主に、労災が改善されましてもさらにその上に事業主としての努力をできるだけするよう指導してまいりたいと存じます。」こういう答弁をされておるのですが、これはどんな指導をされたのですか、ひとつお聞きしたいと思います。

桑原敬一労働省労働基準局長

○桑原政府委員 御指摘の国会の御質問の後、私どもの方といたしましては、通達を出しまして、指示をいたしておるわけでございます。  八〇%を超えるいわゆる休業補償の上積みをどうするかという問題は、基本的には労使のお話し合いで決まることでございます。ただ、この問題に関連していろいろなトラブル、摩擦が起こってはいけませんので、そういった面については、十分出先において指導をしなさい、こういうような通達をしております。そういうことで進めておるわけでございます。

川本敏美日本社会党

○川本委員 先ほどからお聞きすると、通達、通達とおっしゃるのですけれども、それが地方の労働基準局長の手元でとまってしまっておったのでは何ら実効は上がらぬ。私が全国的に、その通達に基づいて全国の労働基準局がどういうふうに対処しておるかということを調べますと、北海道の労働基準局長だけが、これに対する協力要請という形の文書を各事業主に流しておるわけです。「基本的には賃金収入の低下をできるだけ防止することに配意をするとともに、次の点に留意した指導を行なって、労使の十分な協議のもとに対応策を講ぜしめること。」というこの基準局長の通達をそのまま下部に出しているのは、ここだけなんです。ほかはまだどこも流していない。  先ほどからお聞きしますと、全部通達を出しました、通達を出しましたということですが、通達を出して、それで全部が終わってしまったのでは困る。通達を出したときからが始まりでしょう。それから、それをいかに実現さしていくか、実行に移していくかという努力がなされない限り、私は、ここで幾らいい御答弁をいただいても、これは絵そらごとに等しいと思うわけです。  だからひとつ、そのことについて、実際ここで参議院の矢山先生に対する答弁で言われました一〇〇%上積みさせるという努力、指導を現実にどうされたのかということについて、次の機会にまたお聞きしたいと思いますので、それまでに十分御努力をいただいておきたいと思うわけです。  そこで最後に、もう時間がありませんので一言だけお聞きしておきたいと私は思うのです。  先ほども申し上げましたように、私の奈良県というところの民有林は、全国一位だと私は思っておるのですが、その私どもの奈良県で、奈良市にあります国立の教育大学の家政学の教授で清水キワという教授がおられる。この方が昭和五十年の四月三十日に「過疎地の家計に関する一研究」という論文を発表しておられるわけです。日経新聞にも載っておりましたので、あるいはごらんいただいた方があろうかと思うのですけれども、その中を見てみますと、大塔村というところは人口も少ない小さな村ですけれども、村の全人口の中で、世帯数はわずか四百戸余りなんですが、その中で三百十四名が山林労働者、そのうちで二百五十五名が専業の山林労働者であるということで村民の九八%。「昭和四十五年国勢調査統計による村内林業従業者中、専業及び兼業の山林労働者は九八%に達する」というふうに言っておられるわけです。  さらにその中で、白ろう病の問題にもいろいろ触れられておるわけです。「山林労務の種類、職業病、労働災害」という中で「山林労働者が慢性の腰痛を訴えている。また伐採用自動鋸は手鋸の二十倍以上の能率を上げるが、それの使用時の振動は毛細血管の血行障害をおこし、手指がしびれ、激痛を伴ない、白蝋状となるので白蝋病とよばれている。進行すれば筋萎縮、心臓障害をおこし廃人になってしまう人がたくさんいる。」ということをここで記述しておられるわけです。  そして一番最後に、これは家政学の先生ですけれども、この家政学の先生が、一番最後のところで結びの言葉としてこういうことを言っておられるわけです。「朝は四時から夕方の七時までも精魂をかたむけて働き、稼働不能日の労働分を取りかえすのである。時間的にも、仕事量の上からも、正に過重かつ危険な労働といわなければならない。このような労働があればこそ三百年あまり山を維持しつづけて来た。日雇という、資本面からは一見合理的であり、労働力を維持するという生活面からは不合理な賃金形態は、決して産業振興に寄与するものではないことが、僻地山林労働者については特に強調されてよい。」私は、これをひとつ林業対策あるいは日本の労働対策の中で取り入れてもらいたいと思うからこの研究をしたのだ、参考の一助にしてもらいたいということを最後に言っておられるわけです。  まさにそのとおりで、いま白ろう病が民有林でたった九百人しか出ていない、奈良県においても三千人もおると言われながら二百六十何人しか出てこない、その原因は何かというと、白ろう病だと認定されると休業補償では生活できなくなるわけですね。さらに一日二時間、週五日以上働いてはいけないと言われても、働かなければ出来高払いの賃金ですから食えないわけですね。そういう山林労働というものの前近代性、こういうものがいまの白ろう病を大きく進行さす原因になっていると思うわけです。  だから、そういうことを考えましたときに、少なくともいまの山林労働者の雇用の安定あるいは労使関係の近代化、そういうことをまずやらない限り、白ろう病を撲滅することはできないのじゃなかろうかと私は思うのです。  労働基準法でも時間とか休日労働とかいうことについては、山林労働者は除外するという規定があるのは御承知のとおりです。労働基準法は昭和二十二年九月にできたものですから、チェーンソーもなければ集材機もなければ、架線の機械もなければフォークリフトもなかった時代です。だから、そういう時代の法律をそのままいいものとして三十年たった今日まだ放置しておるというところにも一つの問題があるのじゃなかろうかと思うわけです。  私は、まずそういう点について、一つは農林省、林野庁の方にもお聞きしたいと思うのですけれども、やはり林業振興という立場から考えても、あるいは山村振興という立場から考えても、現在の林業労働の実態をそのままに放置しておいていいと思うのかどうかということをまずひとつお聞きしたい。  さらに労働大臣からは、労働基準法の改正とかあるいは林業労働を近代化するための特別の立法をするとか、そういうようなことについて必要と思われるかどうか、その点最後にお聞きしたいと思うわけです。

穂積良行林野庁林政部森林組合課長

○穂積説明員 いま先生お話しのように、林業におきましては、林業の季節性あるいは事業の規模が零細であるというようなことからしまして、労働条件等でいろいろと改善すべき面があると私どもも考えておる次第でございます。このためには、まずもって林業の経営基盤の強化ということが前提となりますので、従来から林業構造改善事業その他の施策を講じてまいっているところでございますが、林業労働そのものの改善というようなことにつきましても、今年度からは新たに林業労務改善促進事業という補助事業を開始いたしておりまして、主要な林業地域に労務改善推進員、林業につきましての労務改善を進める指導に当たる推進員を配置する。この人たちが各事業体を回りまして、雇用関係の明確化とかあるいは社会保険制度への加入促進、さらには振動障害に関します対策の徹底などを指導するような活動をさせることにいたしております。その他、今後、振動障害の対策の徹底のためにいろいろと工夫をこらすことといたしております。  五十二年度におきましては、新たに、一つにはチェーンソーマン、全国でおよそ四万五千から五万の人がこのチェーンソーを使っておると見られておりますが、これを三年間に、労働省さんと相談をいたしまして、一方で労働安全衛生法に基づきます事業主への義務としまして特別教育をさせるという制度を前提としまして、それが施行されるまでの間に、経過期間中に特別教育を徹底するというようなこともやってまいりたい。年間一万五千人程度この特別教育を私ども補助事業としてやってまいりたい。  それからもう一つは、先ほど労働省さんの方からお話がございましたように、チェーンソーの時間規制を単に一日二時間にとどめろというばかりじゃなしに、そのチェーンソーの振動ができるだけ小さいように目立てなどをよくし、エンジンなどを整備して使うというような、機械整備の面でも十分留意して使うようにしなければだめだ、そういうようなこともありますので、このチェーンソーの目立てを中心としまして指導の徹底を図るように、これもまず指導員の養成からしまして補助事業を開始して、この面でも徹底を図ってまいりたい、こういうことでいろいろと対策の前進を図っているところでございます。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 労働基準法は、御指摘のとおり、昭和二十二年にできて、いまではもう三十年の歳月を経たものであります。これは当然見直しをしなければならぬものでありますので、いま労働基準法研究会で見直しの作業をいたさせているところであります。  白ろう病、特に民間の労働者と雇用主との関係、これは非常に零細な雇用主と一人親方的な労働者との結びつき、これを何とか組織的なものにして、そして条件を整え教育もする。出来高払いだから二時間と言われたってついよけい働く、休めと言われても休まない、こういうことの起こりがちの状態というものも、そういう組み合わせができれば、たとえば荷役労働とか建設労働の場合のような組み合わせができないものだろうかということは毎度考えているところで、さらに検討、研究をさせたいと思います。

川本敏美日本社会党

○川本委員 これを労働大臣見てやってください。これは奈良県の大淀の労働基準監督署長の書いたものです。その人が自分でそういうものを一生懸命書いて配って、白ろう病撲滅のために努力をしておるわけです。そういうような一生懸命やっておる人がおるということもやはり評価をしていただきたい。また、この本もその監督署長が書いたのです。奈良県林業の危機は白ろう病の撲滅にあるのだとその中に書いてあるわけです。その人たちのそういう気持ちをそのまま労働省が心としてやっていただきますように、ひとつ要望して私の質問を終わりたいと思います。

戸井田三郎自由民主党

○戸井田委員長代理 次に、安島友義君。

安島友義日本社会党

○安島委員 社会党の安島友義でございます。  先輩の枝村委員の方からいろいろ問題が指摘されまして、若干私の質問が関連する部分もございますが、よろしくお願いしたいと思います。  不況の克服、インフレの抑制、雇用の拡大等、深刻な問題を抱えている中で七七国民春闘がいま展開されておるわけであります。労働行政はまことに重大な局面を迎えております。私は、こうした経済環境を背景に、以下、大臣の所信をお伺いしたいと存じます。  労働需給の低下傾向の中において、大臣は、インフレなき完全雇用をいかに達成、維持するかこそ当面の最大の課題であるとこの委員会の冒頭の所信表明にて述べられましたが、私もこの考え方には全く同感であります。少なくとも従来のいろいろな施策が、失業発生後の対応に重点が置かれ、後追い的なものであったことは否むべくもございません。雇用の確保を主眼とした今回の予算は、その姿勢において十分評価できると考えます。しかし、幾らたてまえがりっぱでありましても、それが実効を上げなくては何にもならないと考えます。  そこで、政府がこれまで力を入れてきた、また、これからも力を入れるであろうと思われます問題の中で、まず第一には、中高年齢者の雇用促進、これは昨年の十月の国会で成立しました中高年者雇用促進特別措置法等に基づく雇用率制度、第二は定年延長、中高年層を対象とした定年延長奨励金等による延長でございます。二つのこういう法に基づきまして、あるいは奨励策に基づきましていろいろ雇用の安定確保、特に中高年層を対象にした雇用問題に力を入れると言われるわけでありますが、一につきましては、これはまだ法律ができたばかりでございますから、にわかにいまの時点で実効が上がらぬと言うのは早計かもしれませんが、私は、今日のこの厳しい経済環境の中において、ただ単に、法律が成立してからまだ日が浅いというような期間的な問題にとどまらず、今後の展望を踏まえましても、この法律が何ら企業に対する拘束力を持っていないというような点から、果たして実効が上がるかどうかはきわめて疑問があると考えます。  それから二については、私の知る限りでは、この定年延長奨励金なるものは、今日までそれほど利用されていないというように考えますが、大臣が所信表明で述べられましたこの二つの事柄から中高年齢層の雇用の安定確保が得られるものかどうか、まず第一にお伺いしたいと思います。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 今回の雇用情勢の悪化を招いた原因は、言うまでもなく非常に長期にわたる不況、これが第一でありますが、第二は、やはり石油ショックを契機として起こってくる産業の構造変化、その構造変化の結果として労働力の職域の移動というものが行われる、そういうことも雇用情勢の悪化に影響していると思う次第であります。したがって、われわれとしては後追いではなくして、この構造変化というものによる労働力の転換というようなことは、将来まだ続く、拡大していくという観点のもとに安定法の一部改正をお願いしているわけでございます。  それから、定年及び中高年者の雇用について、いまの促進法のような助成措置だけで効果が上がるのだろうかというお話でございますが、私は、それなりに効果を上げつつあるのじゃないかと思っております。たとえば五十五歳定年を今日でもなお続けておる事業所数は五〇%ちょっと、ところが六十歳に延長したものはだんだんふえまして、いま三〇%強になってきております。大企業は下請、小会社等へ移転をさせますので、どうも定年延長の実効が上がっていないということでございますが、これとても、この五年の間に一一%から一九%くらいまで上がっているわけであります。  そこで、それではまだ不十分だから、むしろ身体障害者に対するような強制力を持った措置を講じたらどうだ、こういう御意見でございますが、身体障害者と違いまして中高年層にはだれだって必ずいっかはなるわけなのであります。そういう種類の就職問題と非常に特異な不幸な状態にあられた人に対する問題とを同一視点から考えることが、まず第一に適当であるかどうかということが一つであります。  もう一つは、仕事の種類によりまして、非常に年をとった人の働く場所と若い人でなければならないような仕事の種類もあります。それから定年を延長していまの五十五歳より先の人たちの問題、これは降格をさせたり何かすると、定年は延長するけれども、月給はそれ以上上がらせないというような場合がある。そういう場合は、同じ企業の中にいた方がその人にとって果たして働きやすいのだろうかどうか、これも考えなければならぬ問題だと思います。私どもいまいろいろ調べて……(「それはよけいな心配だ」と呼ぶ者あり)いや、それは労働側からもそういう意見が出ている。実際問題として、きのうまで命令をしておった人に今度はあしたから使われなければならぬということがあったら困る。そういうようにいろいろケースが違うのです。  そこで、たとえば交通公社あたりで最近検討しておりますのは、仕事の種類を老人でやれる方の仕事とそうでない仕事とに分けて、そして老人でやる方が適当な分を別会社にして、その別会社へ定年になったら移っていく、こういう検討をしているところもあります。また、日立造船あたりで最近やっておりますのは、いわゆる単能者を多能力を持たせるような訓練をしていって、若いときの単能労働力というものを、年をとってもやれるような他の労働力に変えられるような準備を早くからやっているところもあります。  そういうように多種多様でありますので、法律的にこれを規定するよりは、まず第一に、経営者の社会的責任というものを呼び起こしていって、それから第二には、助成措置によってその社会的責任の実施を可能ならしめるように努力をしていく、この方が私は実効が上がるし弊害も乏しい、こう考えておる次第でございます。

安島友義日本社会党

○安島委員 答弁の中には納得しがたい点もございますが、次に進みます。  私は、六十歳定年の法制化が今日の状況の中では必要ではないかという観点に立って、次に大臣の御見解をお伺いしたいと思います。  労働省の行政指導にもかかわらず、五十年一月現在、最新の資料が出ていないのもどうも問題だと思いますが、それは別としまして、六十歳定年制を実施している企業は、いまも触れられましたが、全体で三二%。この中で従業員五百名以上の大企業と言われるところは二〇%以内でございます。この統計数で見る限り、まことに奇妙なことでございますが、どうも小さな規模ほどいかにも制度として定年延長が行われているかのような形になっております。これは、はなはだしく実態とは異なるのではないかと私は思います。いわゆる定年制延長としての制度的なものというよりも、むしろどちらかといいますと、中小企業、零細企業がすべての面でどうしてもしわ寄せを受けるような環境に置かれておりますから、結局その高年者層を中小企業が抱え込むような形になっているのが実態ではないかと考えますが、いかがでしょうか。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 まず、六十歳定年制というものについての私どもの考え方を申し上げます。  五十五歳定年というものは、もう明治時代に端を発したもので、いろいろな文献もございますが、ある人は明治十八年に日本郵船ができたときの規則の中で、五十五歳になったら進退伺いを出せという文句が出たのが初めだと言う人もあるし、また、いろいろなことを言う人がありますが、考えなければならぬことは、そのときの日本人の寿命が四十三歳であったということでございます。いまは七十歳をはるかに超えておる。そのときに依然として五十五歳定年制を実施するということは、わが国の人口構造その他から考えてこれは適切なものでない、これが基本的な考え方であります。したがって、六十歳に定年を延長するような指導をいたしております。  しかしながら、これを一挙にいたしますのには、長い間の人事管理の体系から直していかなければならない。一方において、若い人々の昇進とか勤労の意欲というものを阻害するようなことのないように、人事管理というものの体系から考えていかなければならない。それから賃金原資の枠や仕分けの問題も考えなければなりません。したがって、これを一挙に法的規制によって直すというようなことは、私は、にわかに賛成しがたいのであります。その理由その他につきましては、先ほど申し上げました。  それから第二の、中小企業と大企業との定年延長の制度実施の問題、これは統計上は誤りはございませんが、推察いたしますのに、大企業は関連した子会社その他に転換させやすい、そういう点がやはり定年延長の伸び率が悪い大きな原因ではないか。つまり本社においては定年を延長しないが、定年以上に達した人たちについては子会社等に移す、こういうようなことがしやすい条件にある。それから、やはり中以下の企業等においては人間的つながりの問題も無視はできないのじゃないか、こういうふうに考えております。

安島友義日本社会党

○安島委員 どうも大臣の御見解はかなり実態認識にずれがあるように考えられます。高度経済成長から低成長時代と言われるような今日の状況に突入しているわけですが、主として大企業の場合は高年齢者層の賃金体系その他いろいろな問題がありますが、賃金、一時金あるいは退職金等の負担を軽減しようとあらゆる手段を講じていることは御承知のとおりであります。水は低きに流れるというたとえがございますが、今日のような体制あるいは経済環境の中では、その結果、系列企業あるいは下請企業へと必然的にしわ寄せされているわけでございます。ですから、統計上は小規模経営のところほど高年齢者の雇用拡大に積極的であるかのように数字では出ているわけです。これは統計のとり方にも私は問題があるように思いますが、いわゆる定年制延長という制度上あるいは国策、政策としての問題と、いま実際に出ている数字というものは余りにも離れ過ぎているように思われます。やはりこの実態を明確に把握しないと、どうしてもこの質疑はすれ違いに終わると思うのです。  続いて申し上げます。  私は、今日のような厳しい経済環境の中で行政指導による定年制延長や高年齢層の雇用拡大ということは、きわめて困難であり限界があるという判断に立っているわけです。むしろ当面は、全部ということが無理であるならば、大企業を対象に六十歳定年の法制化に踏み切るべきと考えます。また、このことによって今日の政策不況の犠牲を最も受けているような中小企業に、これ以上しわ寄せがないように労働行政の面からも考えるべきであり、これが真の雇用安定策につながると思いますが、いかがでしょうか。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 事業にはいろいろ雑多な種類があるほかに、先ほどから何度も申し上げました理由に基づきまして、画一的な立法措置によってこれを処理するということは——処理する段階がもし来るといたしましても、それぞれの企業の人事管理の面、そのほか労使関係の交渉による原資配分の面、そういう点において十分協議をなし土台をつくる、もしやるとしてもそういう土台をつくることが必要だ、こう考えます。  それから、中高年齢層を雇い入れることがしわ寄せになるという認識では、中高年齢層の問題は解決しない。やはり職業訓練や何かを通じて中高年齢層でりっぱにやれるのだ、四十三歳のときは五十五歳の人はおじいさんかもしれないが、平均寿命が七十歳を超えているときは五十五歳は壮年であります。そういう意味で、それに適した仕事につきさえすれば、十分それだけの働き、生産性を上げ得られるものだ、私はこう考える。  それから、中小企業の方が多いというもう一つの理由は、要するに大企業で定年になった人が子会社その他に移るということも一つの理由としては考えられるかもしれません。

安島友義日本社会党

○安島委員 次に、マクロとしての雇用拡大について、五十二年度予算で労働省は一つの目標を立てているわけです。完全失業者を五十一年よりも五%減らして百万人にするという目標でございますね。この目標につきましては、私は、次の諸点からまたどうも問題があるように考えます。  まず、先ほどもちょっと触れましたが、定年延長の奨励による雇用の確保策が困難であるということ、二つには、景気浮揚策の実効化が余り期待できないこと、三つ目には、造船、繊維等構造的な不況の長期化が続いていること、四つ目には、国際競争の激化に対処した企業合理化が一層進展していること、このような情勢から雇用の拡大に逆行する要因が非帯に多うございます。したがって、これらの情勢を踏まえて、失業者を少なくとも前年度より減らすという目標達成にはどのような見通しと根拠を持っておられるのか、お伺いしたいと思います。

北川俊夫労働省職業安定局長

○北川政府委員 いま先生おっしゃいました来年度の完全失業者百万というのは、政府の五十二年度見通しの掲げました数字の御指摘かと思います。五十二年度におきます経済の浮揚につきましては、先生おっしゃいますように、たとえばECを中心とする輸入規制の問題あるいは今後進むであろう産業構造の変革の問題、中高年に対するいろいろの雇用面での障害、御指摘のとおりかと思います。ただ、来年度の経済見通しとしましては、すでに成立しました補正予算、さらにいま御審議をいただいております予算等で、公共事業その他積極的に浮揚政策を政府としてはとっておるところでございまして、経済成長で言いますれば、本年度が五・七%に対しまして来年度は六・七%の伸びを予定いたしております。したがいまして、失業者は本年度の実績見通しでは大体年間百五万と見通しておりますけれども、GNPが一%伸びますけれども、いまおっしゃいましたような経済面、雇用面での暗さ、さらに加えまして、最近は生産が伸びましても、企業が減量経営という面から求人控えを非常にしており、慎重である、そういう点も加えまして百五万という見通しをいたしておるわけでございまして、われわれとしては、雇用面では決して楽観をいたしておるわけではございませんで、この程度の完全失業というのがほぼ適正な見通しではないか、こう考えております。

安島友義日本社会党

○安島委員 三菱銀行の調査によりますと、五十一年九月末決算の各業種売り上げの中で上位百十一社について調べてみますと、五十一年三月に比べまして二千五百四十四億、七〇%の増益となっております。この増益の中で人員減による利益は何と三百六十三億、約二万人の人減らしを行っているというのが数字的に出ているわけでございます。つまり、先ほどからも指摘されておりますように、企業競争の激化で、労働省が言われるようないわゆる雇用の安定は、行政指導等ではもはやどうにもならないということがこの数字からも明確にあらわれているわけでございます。したがって私は、いままで申し上げましたように、もっと積極的な施策を講じなければ、幾らたてまえがりっぱであっても、その見通しは非常に暗いものだということを指摘せざるを得ません。  時間の関係から先に進ませていただきます。  次に、雇用安定事業として政府は当初これは雇用安定基金ということでございましたが、これが何か説明によりますと、大蔵省との折衝の過程で名称を資金と変えたということでありますが、どうも幾ら説明を聞きましても、これは単なる名称変更ではない、性格が変わったのではないかという疑問が出てくるわけでございます。この問題が関連するかどうかわかりませんが、労働四団体の統一要求といたしましても、現下のこの雇用不安の情勢の中で労働省が前向きの姿勢を出しているのは大いに歓迎するけれども、もっと実効を上げるためには、枝村委員も指摘しましたけれども、いろいろな階層が知恵を出し合って対処する、そしてせっかくの前向きの事業も、この運営を誤ったのでは何にもならない、そういうことを正しく運営するためにも、少なくともやはり三者構成による委員会というふうなものを設置して、この事業の円滑、公正な運営を図るべきではないかという、この統一要求の問題とも関連しているように思われるのでございますが、この点についてはいかがでしょうか。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 基金というものが資金という名前に変わったのは、何のために名前をわざわざいじくらなければならぬのか、私は、その性格が変わったものだとは思いません。ただ、その折衝の報告は聞きましたけれども、私も、どうもわけがわからぬし、忘れてしまいましたので、折衝に当たった者に説明をいたさせます。  それから、この基金及び事業の運営に当たっての四団体の要求はよく承知いたしております。そしてその線に沿ってできるだけ効率の高い運営をしなければならぬと思っておりますが、新しい制度をこしらえるよりは、やはり現在雇用安定審議会というものがあるわけでございますから、その雇用安定審議会の中での運営に当たっては御要求の方向へ向かっていきたい、こう考えております。

北川俊夫労働省職業安定局長

○北川政府委員 いま先生御指摘の基金から資金へ変わったことにつきまして、折衝に当たりましたので、その点御説明をいたします。  性格的には、大臣申しましたように一切変わっておりません。と申しますのは、基金と称しておりましたときから、雇用安定事業として不況のときあるいは構造変化のときに企業がいろいろ行います休業あるいは訓練等に対して集中的に助成する、そのために普通の平常時に資金枠を設けまして一定資金を積み立てる、こういう構想でございますけれども、今回の雇用安定資金につきましては、そういう構想が全く引き継がれておって変わっておりません。  ただ、どうしてこういう名称の変化を起こしましたかは、これは従来財政上の慣用の例といたしまして、こういう場合には基金でなくて資金というものを使うという財政当局の非常に強い主張もございまして、法制局等のお話もございましたので、名称を変えたものでございます。と申しますのは、基金と申しますのは、たとえば海外交流基金のように基金を積み立てまして、その基金は使わずに、その基金から生ずる果実を運用していろいろの事業を行う、これを一般的に財政的な制度では基金と申しておるようでございます。今回の場合は、われわれの場合は、資金を積み立てて、その資金を不況時には集中的に使ってしまうという取り崩しを考えておりますので、資金という名称が財政的制度としては適当である、こういう考えに基づいたものでございます。

安島友義日本社会党

○安島委員 この事業資金の原資は雇用保険でありますが、今回、企業負担を千分の〇・五ですか、引き上げてこれに充てるという構想でございます。つまり、これまでもそうですけれども、企業の負担というのは当然でございますが、企業の負担で企業を助成する、しかも、事業内容も実質的にはすべて当該企業が計画し、法に合致するように申請すればよいという性格ですね、見てみますと。どうもこれでは全くすべてが企業中心で、いわゆる労働行政としての主体性というものが一向に不明確である。雇用安定と銘打つからには、人の回しで相撲をとるような行政では、先ほどからも指摘しておりますように、実効が上がらぬではないか。  この点は、時間の関係から、余り問題が大き過ぎて、これ以上深追いしませんが、どうもこの辺に歴代の自民党政府の労働行政、言うなれば、昔の殿様の農民に対するような生かさず殺さず的な労働行政の性格が浮き彫りされているように私には思われます。しかし、この問題はこれ以上深追いいたしません。(石田国務大臣「言いっ放しにされるのは困るな」と呼ぶ、笑声)時間の関係もございますから……。  次に、最賃法についてお伺いしたいと思います。  五十年の三月、四野党共同提案という形で国会に上程され、以来二年を経過しているわけです。五十一年の五月に政府は全国一律最賃制というものも含めて中央最低賃金審議会に諮問をしたわけでございます。これまで委員会は精力的に検討を進められているというように伺っておりますが、これは二年をめどに一応結論を出すということになっておりますと、この期限で言いますと、ことしの三月ごろにはそろそろ結論が出てもよい、少なくとも今日段階では中間報告があってしかるべきだ、こういうふうに思われますが、簡単で結構ですから、現在の状況についてお伺いしたいと思います。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 先ほど自民党の労働政策がどうだこうだというお話がございましたが、このお金を使うときは労使の合意が必要なんですから、労働側の参加は当然の要件になります。  それから、いまのお話の最低賃金審議会は、今月の終わりまでに小委員会の答申が出る予定でございます。

安島友義日本社会党

○安島委員 私も、十年ほど前に地方最賃委員というものを経験しまして、いかにこの今日の最賃法というものが実際の目的、趣旨に沿っていないかということを痛切に感じました。時間の関係上、余り多くを申し上げられませんが、たとえば高度成長時代と言われたときのように労働力が逼迫している場合には、主として中小企業ですが、この決められた最低賃金では人が集まってこないので、ほとんど高く決めた。それは結構でございますが、そういう情勢にもかかわらず、最低賃金が低く決められているというのは、業者間協定によって、最も不安定な企業と言うと言葉が悪いですけれども、そういう事業主の意見というものが非常に大きな影響力を持っている。ですから、決まった最賃が必ずしも実態をあらわしていないという状況が続きました。今度は逆に低成長時代を迎えますと、この最低賃金が最高賃金になり、そして中には最低賃金以下のところで人を使っているというような事業所も数多く見られるわけでございます。こういうことも踏まえまして、どうしてもやはり全国一律最賃制というものに踏み切る時期にもう来ているのではないか、このように思われます。  また、労働省の資料等を見ますと、この最賃法の実施後かなり全国的な平準化が進んでおる。つまり南九州や東北の一部の県を除いては、かなりこの最低賃金の決定額が平準化されている。このことは、昔よく言われました全国最賃を決める障害がもうなくなっているように思われる、問題は、いわゆる政府の態度いかんにかかっているのではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 最低賃金法の歴史というものは、皆さん御承知のとおりで、私は、業者間協定のときから関係をしてきたのでありますが、いま御指摘のように平準化が行われてきておること本事実であります。昨日私は、大阪でそういう労働関係の報告その他を聴取いたしましたけれども、日本で一番高いのが大阪です。昨年決められた最低賃金だと、かなりな事業所が最低賃金法に抵触する状態にあることも知っております。しかし、これは守ってもらわなければならない。全国一律の最低賃金制というのは、最低賃金に対する国民的理解が非常に乏しい時期、実は業者間協定であったが、これを実施しようといたしましたときに、各種の中小企業の団体から私に寄せられた反発というものは、毎日こんなに手紙が来るくらいなものでありました。そういう状態のときから全国一律の最低賃金ということが叫ばれておったわけでございます。すでに平準化が行われておることも事実でございますが、いま申しましたように、そういう状態は最低賃金審議会の人たちもよくわかっているはずでございますから、そういう点を踏まえた御検討がなされ、その御報告が三月に行われるものと考えております。

安島友義日本社会党

○安島委員 いま大臣も触れられたのですけれども、労働省からいただいた資料によりますと、五十一年度、御指摘のように大阪が一番高く、一日の最低賃金額は二千二百六十四円でございます。地域別最低賃金の平均値をこの最高の大阪と比較しますと、平均値は二千百二十二円、百円ちょっとくらいにまでもう縮まってきているのでございます。それから今度は最低と言われる東北等の一部の県、これは千九百円で、こういう低い決め方をしているところはきわめて特殊な例でございます。農業県、いわゆる工業化がほとんどまだ進んでないようなところでございます。そういう点からは、全国一律の最賃というものを決めるべき条件は十分整っている、そういう観点からも指摘しておきたいと思います。  次に、私が特に先ほどから触れておりますいろいろな厳しい国際、国内の経済環境の中で、公正競争の原則に徹すべきである、全国一律最低賃金制というのは、そういう意味において今日非常に重要な意味を持っているのではないかという観点に立って、若干大臣の御見解を伺いたい。  例としまして、カラーテレビがアメリカ、造船西ドイツ、小型自動車イギリス等で日本製品に対する締め出しというか批判が非常に強うございます。時間がございませんから私も多く申し上げませんが、私自身も七、八年前、労働組合の役員のときに、アメリカでカラーテレビのダンピング問題で関係方面と折衝をした経過がございます。もちろんあの日本製品の規制というものは、それだけの理由ではございませんが、やはり日本の労働組織が企業別に組織されている、それから経済の発展、成長が余りにも驚異的であるというところから、私たちよりも外国の専門家の方が日本の実態をいろいろ研究されておりました。産業の二重構造とかあるいは低賃金構造とか、そういう点を非常によく研究されておりました。これらの産業、業種に共通しているのは、社外工が非常に多い、あるいは外注依存度が高い。そして先ほどから指摘しておりますように、どうしても中小零細企業というものは、いろいろな面でのしわ寄せを受け、いわば吹きだまり的な状況に置かれている。そういう中でどんどん物がつくられ、輸出がどんどん拡大してきている。こういう点からも今日、この最低賃金制というものの重要性が改めて考えられるべきではないかと私は思います。  それから、もう一つの点は、中小零細企業の場合は、不況が深刻化して、非常に矛盾しているわけでございますが、受注競争が一段と厳しくなって、割りに合わない受注値であっても、操業をしないわけにいかないので、かなり無理をした形で受注競争が行われている。その結果、先ほども指摘しましたように、それが非常に低廉な労働力というふうなところにどんどん流入していくような実態がございます。したがって、そういう国際的にも国内的にも不当な競争を防止する、特に勤労者の最低生活を保障するという趣旨、目的からしても、歯どめをかけるために最低賃金法というもの、しかも、全国一律のそういう最低賃金法というものが非常に重要ではないかというふうに思われますが、いかがでしょうか。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 全国一律の最低賃金の法制化あるいは実施等の問題については、先ほどもお答えを申し上げましたように、平準化が行われているという事実は私もよくわかっております。しかし、いま最低賃金審議会で小委員会を設けて検討しているのでありますから、その結論が出る前に私がとやかく言うべき立場にないということを御理解いただきたいと思います。  それから、西ドイツとアメリカ、イギリス、いわゆる欧米諸国の自動車、カラーテレビあるいは船等に対する日本の輸出自制を求める声が非常に強まっておることも無論よく承知しております。しかし、これが日本の低賃金によるものであるということになりますと、今日わが国の賃金水準は、アメリカは別といたしまして、イギリスや西ドイツ、フランス等に比べると決してそう低いものではありません。しかし、中核体である大もとの企業、それを取り巻いております縁辺労働、下請企業、そういうものの賃金あるいは労務管理あるいは労働条件との間に非常な格差がございます。  これは安島さん御記憶かどうか知りませんが、私が一番最初に労働大臣をいたしましたときに、あなたの方の会社で下請に対してそれぞれ系統的な指導をしてもらう、それから元請の下請に発注する価格決定に当たって、元請会社の賃金と非常に格差の大きいような賃金を原価計算の基礎にしないように、そういうようなことをモデルケースとして日立にやっていただくことで、私が日立製作所まで出かけまして、そういう制度をつくってもらったことがございます。そういう御指導を、ちょうど二十年になりますから御記憶でないかもしれませんが、そういうことをこれからやっていって、縁辺労働あるいは下請企業の労働条件の維持に努力をいたしたい、こう思っております。

安島友義日本社会党

○安島委員 日本の賃金が諸外国と比べて遜色がないというのも、これまた実態を正確に見ていない。大企業等の平均水準ならば大臣の御指摘もある程度理解できますが、全体を含めて、特に産業の二重構造と言われる、先ほどから強調しております一日の最低賃金額、行政指導を積み重ねてもなお今日、一日の最低賃金額が大阪で二千二百六十四円、これを大体稼働日数二十五日として一体幾らになるのか。もちろん最低賃金だけで全体賃金をどうこう言っておるわけではございませんが、こういう賃金の実態からも、私は承服できません。  最後になりますが、七七国民春闘について大臣の御所見をお伺いしたいと思います。  もちろん賃金は労使間で自主的に決定することは当然であります。本年は労働四団体が統一して一五%以上、一五%と言った方が適切かもしれませんが、そういう水準是正を要求しているという特徴点がございます。また、政府に対しては雇用の安定、大幅な減税等、政策、制度上の要求を行っているわけであります。この背景には、不況下の物価高、雇用不安という基調が依然として解消されず、また一昨年、昨年と二年続いて消費者物価上昇を下回る賃上げに終わり、勤労者の生活が極度に圧迫を受けているという情勢があるわけでございます。  したがって、今後の推移によっては重大な局面を迎えることも予測されるのであります。これらの事態にならないように、事前に適切な措置を講ずることは、これは介入、干渉というよりも労働行政上当然ではないか。もちろん大臣がこの前述べられたのは、どう考えても行政指導の域を脱しておると思います。余談はさておきまして、もちろんここでは特に触れませんけれども、九%と言ったとか言わないという話でございます。これは介入と言われても仕方がないのでございます。私が言っておるのは、今日の現下の情勢にかんがみ、労働省がやはりその立場から問題が起きないように十分適切な処置を講ずることが必要だという観点に立っているわけでございます。  特に五十一年度の政府の予算との関連で見ますと、国民総生産は名目で昨年が一三・四%に対して五十二年度は一三・七%と見込んでいます。この根拠の中に、主だったものだけを取り上げますと、民間設備投資の伸びを一二・二%、個人消費支出の伸びを一三・七%と見込んでいます。先ほどから私は、雇用の安定や今後の労働行政の進め方について、いろいろな問題を提起しましたが、これらの問題とも無関係ではございません。どうも政府の経済の見通しあるいは今度の予算は、これまでも見通しについては比較的高目に見ております。三菱経済研究所等は実質成長率を六・一%と見込んでおり、住友経済研究所の場合は四・九%ぐらいしか見込んでいない。したがいまして、これはどうも数字的につじつまを合わせているように思われますが、そのことはさておきましても、一兆円減税という問題を踏まえるいわゆるわが党を初めとする野党側と政府の予算委員会等における論戦の経緯等からしても、冷え切ったこの景気をいかに浮揚させるかという方策の中には、いわゆる勤労者の購買力を高めるということも重要な施策である。言いかえるならば、この個人消費支出一三・七%という伸びを見込むとするならば、少なくとも労働団体が要求している最低の一五%程度を認めなければ、数字的にも消費支出の伸びとかいろいろな点で政府が言っているようなつじつまが合わないように思われます。  五十一年度の消費者物価上昇率も、どう考えても福田さんが言われたようなことではおさまりそうもない。そういうような状況、あるいは一方、今度は別な面から政府が言うように五十二年度の経済見通しがこのとおり達成されるとするならば、少なくともいわゆる実質成長分ぐらいは勤労者に還元されてしかるべきではないか。  また従来は、定期昇給というものは、一般に言われる物価上昇等による目減り分の補てんという意味での賃金要求というものと性格からすると別だということ、むしろこれは政府や経営者側が今日までいろいろ強調してきたわけでございますが、最近になりますと、みんな困ってきたものですから、込みにして考えているわけです。いままで政府や経営者が言ってきた基調をどこかに置き忘れたような形で定昇込みの考え方を持っているわけでございますが、定期昇給というものの性格からしますと、これは本来、純然たるいわゆる消費水準を是正するための賃上げとは区別すべきではないか。こういう点からも一五%という要求はきわめて妥当であると考えますが、大臣の所見をお伺いしたいと思います。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 初めにお断わりいたしておきますが、九%とか九・何%とかということを、私はどこでも言った覚えはございません。  それから次には、これは何度も繰り返しておりますが、賃金は労使の自主交渉によって決定すべきものだと思います。したがって、これに影響力を及ぼすような発言は政府としては差し控えるべきだと考えます。  ただ、定期昇給とベースアップとの問題は性質が違うということは、私もそう思います。定期昇給はやめていった人のがぐるっと回るのでありますが、ベースアップは賃金原資の増大を意味するものでありますから、そういう意味においては違うと思いますし、新聞記事等で定昇を含みとかなんとかという数字は出ますけれども、そういうような物の考え方を、われわれの側からそういう発言をしたりした覚えはございません。

安島友義日本社会党

○安島委員 まだいろいろございますが、時間が来たようでございますから以上で終わりますけれども、最後に申し上げたいと思います。  もっといわゆる労使関係の安定を図る、あるいは先ほどからの質疑応答の中で大臣が述べられたように、真の雇用の安定確保、最も労働行政の権威者と言われ、自他ともに認められておる石田労働大臣の、これらの問題に対する一層適切な指導あるいはその実効が上がるような施策を心から念願いたしまして質問を終わります。ありがとうございました。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 誤解を招きますので、御激励その他ありがとうございますが、しかし、私が権威者と自他ともに許していると思われたのでは、これは私、困りますので、私は全くの微力でございますから、御指導、御鞭撻のほどをお願い申し上げます。

戸井田三郎自由民主党

○戸井田委員長代理 この際、休憩いたします。午後三時再開することといたします。     午後零時五十一分休憩      ————◇—————     午後三時九分開議

斉藤滋与史自由民主党

○斉藤(滋)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  労働関係の基本施策に関する件について質疑を続行いたします。草川昭三君。

草川昭三公明党・国民会議

○草川委員 公明党・国民会議の草川でございます。  最初に、私、初めて本社会労働委員会で発言をさしていただきますので、何かと失礼なことがあるかもわかりませんけれども、先輩の各位の皆さん方からよろしくお引き回しのほど、お願い申し上げる次第であります。  最初に、先般大臣より、今後の方針について適切な御方針がございましたが、当面する労働行政の最大の課題は、インフレなき完全雇用をいかに達成するかにある、このように抱負が述べられておるわけであります。私も同感でございます。私は、今日ほど日本経済にとって労働問題が重要な局面を迎えているときはないと考えるわけです。特に、産業優先、資本蓄積重視から、生活を大切にし、福祉重視への転換が時代的な要請になっておりますし、その実現はいまや国民的な急務の課題とさえなっておるわけであります。こうした情勢は、衆議院における特に保革伯仲の情勢を背景に、労働側の方の場合にも春闘等を初めとしていろいろな運動が起きておるわけでございますが、政策や制度の改革へ具体的な展望を持って、新しい視点からの労働運動も始まっておると私は思うわけであります。それだけに、非常に従来と違った意味での労働行政の対応策が基本的に必要ではないだろうか、私はこう思うわけであります。特に、その能力に応じた職を確保し、憲法に保障された生活水準を確保するところの完全雇用というものを国是として、これを積極的な労働行政の柱にしなければならないと思います。  しかし、現実の労働行政というものを見ておりましても、ヨーロッパ諸国に比べてかなりおくれておる点があるのではないだろうか。あるいはまた、わが国の雇用増加率も高度成長のわりにはきわめて低いわけでございますし、ここ十年間等の数字を見てまいりましても労働人口は横ばいであります。絶対的な労働人口というのはふえてないわけでございまして、五千三百万人台の横ばい状況でございます。  賃金と物価の問題が非常に悪循環だと、ここ数年間言われておりましたけれども、そんなことを言っておる間にむしろインフレと失業が高まってまいりまして、スタグフレーション現象というものが非常に顕在化をし、労働者の消費生活水準は低下し、需要の減退はさらに経済の長期的な停滞を招いておるわけでございますし、実際上の犠牲のしわ寄せというのは下請に集中をしておるわけであります。いわゆる零細企業に集中をしていくわけでございますから、私は、今後の労働問題というのは、従来のような結果に対する後手後手の対応策ではなくて、事前の前倒しの対応策が必要ではないだろうか、こう思うわけでございまして、その対応の基調というものは、ヨーロッパでも定着をしつつあるところの参加の思想ではないだろうか、こう思います。特に、政労使の話し合いを基礎に不毛の対立を避けなければならないし、不信を信頼に置きかえるというところの、人間味のある血の通った労働行政というものをいまこそ私は打ち立ててほしいと要望するわけであります。そして特に、行動の成果、結果の成果というものを未組織の底辺にまで広げていくという、幅の広い視野がこれまで以上に必要であると思いますけれども、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。  特に私は、午前中に北川職安局長が社会党の方の御質問に対して、失業について年間百五万程度を予想しておる、基準にしておるというような御発言があったのではないか、こう思っております。これからもいろいろと政府の高道な方針が出るわけでございますけれども、年間の失業を百五万程度と常識的に役所の方が認めておるということでこれからの労働行政を基本的にやられるならば、これは大変な問題ではないだろうか。ですから、私は不用意なお言葉の揚げ足を取るというつもりはございませんけれども、基本的な視点でございますので、一度最初に大臣から明確な御答弁をお願い申し上げたい、このように思う次第でございます。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 午前中の議論にもございましたが、今度の、現在われわれが当面いたしております雇用行政というものは、基本的な背景は、これは無論言うまでもなく石油ショック、それからその前に起こりました物価騰貴、そういうようなものの処理をめぐっての比較的長期にわたる不況、これが非常に大きな原因ではなかろうかと思います。これまでも何度か好不況を繰り返してまいりましたが、そのときの不況期間というのはせいぜい一年か一年半で済んだのが、今度は非常に長い。しかも、もう一つは、それを通り越しましてもなお、厳しい現実の前に産業の構造変化に対応する努力をしなければならぬ。必然的に産業構造の変化というものは起こっているわけです。こういう状態を踏まえまして、雇用の確保ということが最大の課題だと私どもは認識をしておるわけでございます。  この最大の課題を乗り切りますためには、やはり労使の間の相互の信頼関係——われわれが直面しております日本経済の現実というものは一つでありまして、幾つかの現実があって、前提があって、そのうちのどれを選ぶかという選択をするのではなくて、一つしかない。その一つのものについての双方の理解の接点を求めていかなければならないと思います。しかも、資源に乏しいわが国が今後国民生活の水準を維持し、向上させていくのは何によるかといえば、人の力による以外にはない。人の力は、一つには個人の能力の開発でございますが、もう一つは、集団として、組織としての人の力の発揮を待たざるを得ず、この場合にはやはり基本になるのは労使の相互の信頼でございます。したがって、後手後手に回ることなく、情勢の推移を予見しながら適切な対策をとってまいりたいと思っておる次第でございます。  今次予算の編成に当たりましても、たとえて申しますと、八月時点で概算要求をしたときには造船の問題について特別の取り扱いを要求はしていなかったのであります。しかし、私が参りまして、この造船に対する対策も特別に行うように指示をし、措置をいたしました。  それから、百五万という数字について、北川局長の発言に対して御批判がございましたが、私どもはそれは、一%程度に失業率を抑えておくということがいわゆるフルエンプロイメントの状態を一実現するための希望的数字であろうと思います。先ほどから欧米諸国との関係を列挙されまして、日本の労働政策というのは欧米諸国に比べるとおくれているという御発言がございましたが、このスタグフレーションの中にあって、失業率は日本が一番低いわけであります。低いわけでありますが、それを招来し、維持できるのは日本独特の雇用制度、これは終身雇用制度が柱になっておる。しかしこれは逆に過剰人員を抱えているということにもなるわけでありますので、景気の回復等がおくれたりいたしますと抱え切れなくなる事態も想定しなければならぬわけであります。そこで、景気の回復というものを基調としながらも、物価の騰貴をできるだけ低い水準に抑えて、そうしてそれによって、これからの計画の中でそれでは失業者をどれくらいに見て計画を立てて立案するのか、現実的にはどれが一番達成し得られる数字なのか、またわれわれが対応し得られる限度なのか、こういうことを考えて先ほどのような御説明を申し上げたものと思っております。

草川昭三公明党・国民会議

○草川委員 先ほどの完全雇用の実態がどうあるかという問題に入っていくわけでございますけれども、その前に、石田労働大臣が就任されましてから、特に昨年の十月から造船業、なかんずく下請に対して非常に柔軟な弾力的な対応策を立てられたということについては、私どもこれは深く敬意を払いたいと思います。また後ほどその点については少し触れさせていただきたい、こう思うわけでございます。  そこで、雇用の実態というものについていまもお話があったわけでございますけれども少し中身に入っていきたい、こう思うわけであります。  私は、今日のような低成長下におけるところの雇用構造というものが、従来の雇用構造からずいぶん変わってきておるのではないだろうか。一口で、中高年齢層の頭でっかちの雇用状況にもなっておるわけですし、そこにまた失業発生率が多くなってきておるのではないだろうか。いろいろな点があるわけでございますが、正しく把握せずして、従来どおりの失業統計だけをつかんでおりますと、いわゆる今日の現場の実態からかなり遊離をするのではないだろうか、こういうのが第二番目の私の実は質問の基調になるわけです。  そこで、まず総理府の統計局にちょっとここでお伺いをしたいわけでございますけれども、過日総理府の統計局の方から、昨年十二月の完全失業者が九十二万人に減少したという発表を新聞で私は承ったわけであります。雇用面から判断をすると特に景気は着実に回復しておる云々と、総理府統計局の見解がこれは新聞で出ておるわけであります。私はその新聞記者会見に立ち会ったわけではございませんのでお伺いをしたいわけでございますが、そのときに、完全失業者数が減少し、〇・八時間程度、これは毎週でございますけれども、残業時間がふえておるから、製造業の方も非常に上向きの状況だということが出ておるわけでございますが、その点はどうなんでしょうか。まずそこをお伺いしたいと思います。

水谷弘総理府統計局調査部労働力統計課長

○水谷説明員 完全失業者数は、去年の八月百三万、九月百一万、十月百万、十一月九十七万、十二月九十二万と、わずかながら少しずつ減少しております。季節調整済みの趨勢でも同様に、この五カ月間続けて減少しております。

草川昭三公明党・国民会議

○草川委員 それで結構でございますけれども、そのときの新聞で、総理府統計局は雇用状況が明るい方向に進んでいることは間違いないと見ておる、というような各新聞の報道がなされておるわけです。  続いて、実は同じくこの労働省の方からの統計数字では、労働省が一月の二十五日に発表しましたところによると、高失業傾向は依然と続き、特に求人倍率で、労働省の方は全国の公共職業安定所の新規求職者数を調べた季節調整値を含めまして、有効求人倍率は〇・六となり、十一月の〇・五八よりわずか改善をされておるけれども、求人の方は相変わらず落ち込んでおるし、これは特に冷害等の影響で非常に後退をしておるというような数字発表をなされておるわけでございます。いわゆる〇・八七、有効求人倍率で〇・六二、前月の〇・六三に比べると低下をしておる。これは寒波の影響等もあるけれども、四十年不況時の四十一年の一月〇・八三以来の低率で、明らかに長期低迷を予想しておるのではないか、こんなふうな言い方でいわゆる一般市民の方々に報道がされておるわけであります。  同じ失業というもの、雇用というもので、片や総理府の方からは若干上向きではないだろうかという数字が流され、あるいはまた労働省の方からは依然長期低迷だ。あるいはまたその他の報道等を見ておりましても、たとえば大企業では、先ほども午前中大臣からのお話もございましたけれども、関連企業への出向ということ、あるいはまた転籍だとか新規採用の手控え、不採算部門の分離独立で、いわゆる減量経営の方針をとっておるわけでありまして、下請、中高年齢に対する非常に厳しいしわ寄せがあります。あるいはまた繊維だとか電気炉メーター、平電炉メーカー、化学、精糖などでの業種では不況カルテルの結成への動きがあるわけでございます。減量経営なるがゆえに人員増を手控え、生産が多少ふえてもそれを残業で補うわけでございますから、先ほどの総理府の統計のような数字にはね返ってきます。またそのほか、帝国興信所等の一月の企業倒産等の数字を見てまいりましても、一千万円以上の倒産件数が千二百八十五件、負債額も二千億を超えるわけでございまして、対前年度の件数比率は一九・二%と、こうふえていくわけです。額でも五二・八%とふえていくわけですから、一般的には景気というのは非常に問題がある、こういう情勢の中であります。  特にこれを造船産業の場合なんかについて調べてまいりますと、四十九年と五十一年との雇用状況を調べてまいりますと、いわゆる正規の従業員の比率は約十二万名でございますけれども、四十九年と五十一年の間でわずか千五百人しか減っておりません。自然減、新規採用の手控えという数字ではないだろうかと、こう思います。ところが下請企業の場合、造船産業の下請というのは非常にむずかしいわけでございますが、約九万名いたわけですが、二万三千人の減少になっておるわけであります。  明らかに今日の不況というものは、私がいま長長と申し上げたことを結論的に言うと、いわゆる下請に不況の犠牲というものが一番寄っておる、ここが非常に大切ではないだろうか。  そしてまた、統計局の方では失業者の数が減っておるというような数字の裏づけとして、女子の場合のいわゆる離職状況というのは、同じくこれは総理府の統計局の数字を見ましても、一たん失業いたしますと七六%が非労働力化をするわけであります。早く言うならば安定所の窓口に来ないわけですね。隠れてしまうわけです。特に日本的な特徴であるところのパートタイマーだとかあるいは内職だとか、そういうところの数字を入れますと、日本の潜在失業者というものは膨大なものがあるような気がしてなりませんけれども、こういう点の本当の実態をこれからどのように把握をされていくのかというような点等についても、ぜひお伺いをしておきたいことだと思います。  また、下請解雇の実例を見ましても、同じ下請の中でも特にそのしわは中高年齢層に寄っていくわけでございまして、五十八歳から六十四歳までの数字を見ますと、対前年度でも六・四%もそこにふえております。六十五歳以上だけでは約倍にふえていくわけでありまして、いわゆる反社会的な構造変化というものが明らかに雇用構造の中で出てきておる。そこへ視点を当てていただいてやっていきませんと、ただ単純に安定所の門をくぐる人たちの数字の捕捉だけで、特に私が先ほど国の国是にしていただきたいという完全雇用の問題を、従来どおりの発想で対応策を立ててもらっては困ると思うわけです。困るというよりも、何らか改善を提議したいわけであります。その点についてひとつお答えを願いたいと存じます。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 いまのお話しの、いままでの労働統計の問題、私どもはやはり失業の発生が一番強く出てくるのは一、二、三月だと思っているわけであります。そういう意味におきましても、それから安定所の窓口でとらえました有効求人倍率にいたしましてもいまあなたがおっしゃったとおりの比率であります。そこへいま言ったように一、二、三月、特に三月は失業発生率が高い月でございますので、雇用の情勢について決して楽観をいたしておりません。  それから、造船を中心としてのお話でございましたが、私はここへ来るまでは運輸省におりましたものですからよく承知をいたしております。特に下請の離職者に対する処置は、労働省といたしましても諸般の具体的施策を講じております。後で安定局長から説明をいたさせます。大手の方は自分の企業の中で配置転換が可能でありますが、下請あるいは中小の造船所に至っては、これは中小の造船所は造船以外はできないのですから、しかも対ECの関係等もありまして六五%程度を目指して縮小していかなければならぬ、こういう過程にもございますので、特別の配慮を必要とするものと考えます。  ただ、各企業が中高年齢者の仕事の場所を見つけるためにいろいろな工夫を始めました。たとえば業務の中で中高年齢層でできる業務、それを分離をいたしまして、新会社をこしらえてそこで吸収するというようなこと、あるいはまた単能労働者、一つのことしかできない労働者が幾つかの技能を持つように会社に勤務中にやるというふうな工夫をし、そしてそういう工夫によってつなぐ。したがって一概に、子会社へ移すということは悪いとはちょっと言えないことだろうと思うのです。特に、先ほどからも、午前中も何度も申しましたが、人事管理体系が長く続いて今日に至っておりますので、それを一遍に五年間延ばしますと若い人々の意欲をそいだりいたします。また、五十五歳で今度は降格させるようなことをいたしますと、その人は非常に奇妙な立場に立たされる。そういう点で幾つかの事例を私どもの方でもつかんでおりますが、そういう種類の努力をしていることを一概には否定はできない、こう考えております。

草川昭三公明党・国民会議

○草川委員 続いて私は、非常に特殊というのですか、われわれが特別な配慮をしながら現実を見なければいけないということでございますけれども、山谷というのが東京にございますけれども、山谷地区というのは一番底辺の雇用状況が一番顕著に出るところではないか、こう思うのであります。そこでの実情を調べてまいりますと、あそこは一番景気のしわが早く出るところではないだろうか、こう思いますが、昨年に比べて約二〇%ぐらい仕事が少なくなっているわけであります。特に、長期契約といいましても月に稼働が一番長い方々で十二・五日しかございません。そして行き倒れというのですか、凍死をして、仕事がなくて死んでいくのがことしになってから十七人も見えるわけです。現状では全く無情な死ではないだろうか。いま私どもも一般的ないろいろな諸要求等あるわけでございますけれども、あの実情というものは、とにかく住む家なし、あるいは仕事なしというので、朝晩炊き出しなんかが行われておるという、まさしく高度工業国家においては信じられないような状況というものが現実にあるわけであります。  私はそこでいろいろな問題で調べてまいりますと、大変恐縮でございますが、一九六〇年、ですから十七年近く前に大臣が山谷友の会の会長をなすってみえるということを実はそこでたまたま聞いたわけであります。いわゆる有名人、著名人がずいぶん集まられて、山谷というものを何とか本当に人間味のある立場から考えなければならぬじゃないかということで、会長をなすってみえるということを私は発見をしたわけであります。これは非常にいいことをやっておみえになったわけでございますが、なぜそれが定着をしなかったのか。私は、その都度思いつきで山谷対策なんかをやるから非常に不信を買っておる点があると思うのでありまして、大臣に新たになられたわけでございますから、十七年前の山谷友の会の会長をやってみえる大臣が改めて山谷地区を見て、もう一度日本の今日の現状の中からあれをどのように解放をしていくのか、解決をしていくのかというようなお考えがありましたらお聞かせ願いたい、こういうように思います。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 東京の山谷、それから大阪の愛隣地区、ともに全く底辺の人たちでありまして、いま山谷友の会のことが出まして、なぜいまやめているのかというお話でございましたが、実は十五年ぐらいやりました。始まったのはいま御指摘の一九六〇年じゃなくて、もうちょっと前なんであります。昭和三十二年に私が初めて労働省へ参りまして、ああいう地区の視察をしておりましたときに私の旧知の者が山谷に住んでおりました。これはキリスト教徒でありまして、非常に熱心に山谷地区の人たちの世話をし、相談に乗っておったわけでございます。それから一方、あそこのいわばドヤ街の主人たちの中にも、自分たちが金を出し合って何か改善の道を講じたい、こういう意向が動きましたので、知名人、有名人を積極的に誘ったわけではないのです、参加をしてくれる人は無論拒まなかったのでありますが、たとえば共同食堂の経営とか、あるいは巡回診断、これはNHKと朝日新聞が協力してくれまして、かなり定期的にいたしました。この巡回診療を定期的にやって、初めのときはずいぶん疾病を発見したのでありますが、その後だんだんと疾病の発見率が減ってまいりましたのはやはりそれだけの効果があったものだと思うのであります。しかしそれが、実はその中に住んで世話をしてくれておった男が死んだわけです。かわりの人を見つけられないかと思って私もずいぶん探してみたわけでありますが、あそこに住んで世話をするという人はなかなか見つけにくい。そこで東京都の方に仕事を移管をいたしまして、そうして東京都の方でそれをいろいろやっていただいておるものと思っております。まだ就任して間がないし、何しろ朝から晩まで予算委員会に座っていなければいけませんからまだよう訪ねないでおりますが、近く訪ねていくつもりでございます。

草川昭三公明党・国民会議

○草川委員 いまの大臣のお話をお聞きしまして、私も非常に賛意を表しますから、ぜひそういうような機会をつくっていただきたいことを要望を申し上げておきます。  次に、やはり景気調整のしわの問題が中高年齢にいくということをさらに深めていきたいと思うわけでございます。  午前中にも定年という問題が出ました。労働界の方からも定年の延長ということが出ましたが、大臣からのお話がございましたのでそれは結構でございますが、現実の運営の中で定年前の研修制度というものがあることはもう御存じのとおりだと思うわけであります。ところが、その定年前の研修に関する調査というものがほとんどない。これは労働省にもないわけでございまして、私たまたま、社団法人で中高年齢者福祉管理協会というのがございまして、そこで資料をもらってきたわけでございます。ここも余り詳しい調査はしているわけではございませんけれども、それでも各企業の労務担当者に、現在、定年前約五年ですけれども、そういう社員を対象に定年後の再就職に役立つような独自の研修をしておるかどうかと問うたところが、八二・四%がしてないという答えを出しておるわけであります。そして、こういうような制度があることを知っておるかというような問いに対して、よく知っているというのはわずか十六でありまして、二三%しかない。聞いたことがないという管理者は約二割近い数字があるわけでございまして、結局、定年の問題ということがこれから非常に社会問題になってくるわけでございますが、職業再訓練の問題についてもほとんどこれは絵にかいたもちというのですか、もうそのままに放置をされておるような状況じゃないだろうか。ですから私は、この定年前研修に関するこの制度というものを、せっかくあるならばもっとこれを充実することを行政側の方では積極的に取り上げていただきたいし、各都道府県には労政事務所というものがあるわけでありますけれども、この労政事務所の役割りもほとんど情報収集ということが中心でございまして、現在ある制度を具体的に展開するということについては非常におくれておる点があると思う。これは要望でございますが、ここらあたりをぜひひとつ積極的にお考え願いたいと思うわけでございます。  そこでひとつ、この中高年齢なり年輩の人に犠牲が寄らない方法は一体ないものかどうか。アメリカの場合は、御存じのとおりレイオフ制度というのがあるわけですから、若い人の方が失業が多いわけでございます。アメリカの場合、ちょうど十年ほど前になりますけれども、連邦法で年齢差別禁止法、これは私、正確な名前かどうかあれでございますが、一口で言えば、年齢差別で、年をとるがゆえに解雇しては相ならぬという連邦法があるわけであります。私はこの話を聞いたときに非常に興味を持った、という言葉は悪いわけでございますけれども、労働界の方からはたまたま大量解雇制限法案というような要望も出ておるわけでございます。私は、大量解雇制限法案というものが現実にできれば一番いいわけでございますけれどもなかなかむずかしい問題があると思うのですが、少なくとも年齢差別によって解雇をするというようなことをしないとか、あるいは採用というようなことを差別をしないという基本的な原則のようなものを、これは理念として大臣がいまからあらゆる機会に訴えられて、ひとつ日本の雇用構造が変わっておるということを現実的に直されていくような方法をとられたらどうなんだろうか、こんなようなことを考えたわけでございますが、大臣の御見解をお伺いしたいと思うわけでございます。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 今度の雇用問題の一つの特徴は、鉱工業生産が上がってまいりますと有効求人倍率もずっと上がってくるのが従来の慣例でありますが、今回はそれがそうはいかないところに一つの特徴がございます。それからもう一つは、求人の構造と申しましょうか、求人側の意向と求職側の意向とがつり合わない。そこでこの後の方をやりますためにはどうしても訓練が必要であります。そこでその訓練の充実に力を尽くしているつもりでございますが、実はきょう昼過ぎに私のところへ郷里のある程度の事業者がやってまいりまして、定年の延長ということを考え、中高年齢層を長く働かせるために、保養所のようなものをこしらえてそこの管理というような仕事をさせていきたいと思うのだが、一体労働省としてどういう援助組織があるのか、そういうことを聞いてきました。私の比較的懇意な者でさえそういうことを聞いてくるのですから、制度が何かあるらしいということは知っているのですが、どういうものがあるかということは意外に知らないわけであります。そこでまず、現在の制度の充実もさることながら、その制度があるということをいかにして知らせるか。一つには、私の印象としては種類の数が多過ぎるのです。なるべく暗記してみようと思うのですけれども、暗記し切れないくらい多過ぎる。これはやはりそういう点で整理をしていかなければならぬと思っております。  基本的に、中高年齢者が離職するということと社会保障制度とが年齢的につながらなければいけない。そういう意味で、無制限に年齢による差別というようなものを撤廃する、法律で年齢による解雇を禁止するということには問題があると思いますけれども、少なくとも社会保障とつながるような時期まで働けるような効果ある措置をとっていきたい。これは私の労働政策の一つの基本だと思っておる次第でございます。

草川昭三公明党・国民会議

○草川委員 時間がございませんので、いまの中高年齢の問題なりそれから例の年齢制限法案等については少し突っ込んでいきたいと思うのですけれども、また別の機会にぜひお願いを申し上げたいと思います。  続きまして、いわゆる春闘の問題でございますが、これはもう大臣が午前中におっしゃられたとおり労使双方の基本的な問題ということで、これは当然でございます。しかし、私は日本の労働経済というものから考え、日本の国の経済というものから考えますと、雇用労働者の総数からいっても、どの程度に新しい賃金水準が落ちつくかということはどうあろうと重大なる関心を持たざるを得ないと思うのであります。その場合に特にこれから中心になりますのは、日本というのは生産をした物を外国に輸出をするという意味での面と、もう一つは国内需要をどんどん広めていくという、この二つの流れというものがうまくかみ合わない限り国の経済というのは成り立たぬと思うわけでございまして、その点で私は、働く勤労者の方々が一五%という最低の要求を取り上げられるということは、今日のインフレをカバーしてなおかっ余りある購買力をその中に入れるという視点から見るとずいぶん控え目な要求ではないだろうか、こう思っておるわけでございますので、消費の正常な回復を促す意味においても、私はぜひ、政府が賃上げ率を生産性の範囲内におさめるべきだというような立場をとらないように、いろいろな意味での啓発をやっていただきたいことを要望申し上げておきたいというように思うわけであります。  特に労働側の方としては雇用あるいは減税、物価、全国最賃などの制度要求というものを非常にたくさん強く打ち出されておみえになるわけでございますけれども、現実に政労交渉の場というものが私は昨年に比べて非常に少ないような気がしてなりません。特に昨年の場合は現在の総理が経企庁の長官として副総理でおみえになりまして、物価上昇率という問題を非常に強く訴えられまして労働側との話し合いの窓口に実はなってみえたのではないか、こう思います。そういう点では、物価上昇率というものに対して今度八・二%というものが守られるかどうかについては、いろいろな報道等を見ましても、政府もほぼあきらめかけてみえるのではないかという意見があるわけであります。しかし、この八・二%という物価の一つの指標というものが崩れるならば、この春の春闘というものは状態が相当変わってくるような気がしてなりません。そういう意味でひとつ問題点をしぼりまして、物価上昇率というものが果たして指標どおりにおさまるものかどうか、大臣の御見解をお願い申し上げたいわけでございます。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 これは直接私の所管でないことは十分よくおわかりいただけると思います。しかし、勤労者の実質的生活水準を維持するためには物価の安定ということが一番根本でございますので、そういう意味において物価の趨勢というものに当然強い関心を持ち、物価安定についての諸施策の実施についてしばいば閣議等において発言をいたしてまいりました。先ほども政府はあきらめているんじゃないかというお話がございましたが、今年、年が明けてからの物価の上昇率というのは、公共料金等の値上がりも無論ありますが、一番大きなのは豪雪に基づく野菜類、魚類、そういうようなものの値上がりであります。特に野菜の影響、果実の影響が大きい。したがって天気の回復を非常に願っておったわけでありますが、御承知のようにこの一週間ぐらいから非常に温暖な、今度は少し暖か過ぎるのではないかと思われるくらい変わってまいりました。そういうことによる蔬菜類、生鮮食品の価格というものを考えて期待をしておるわけでありまして、決してあきらめておるわけではなく、その達成のために努力をいたしておる次第であります。

草川昭三公明党・国民会議

○草川委員 私は、この春の春闘を前にして、たとえば大臣は閣議で物価問題についてもっと積極的な意向というものをどんどん発言していただいて、いわゆる物価を安定させるという中で本当に勤労者の方々の基本的な収入を確保するという面の、労働行政というのですか、そういう視点からの発言をこれからもどんどんしていただきたいと思うわけであります。  特に私はいまから申し上げたいのは、実はヨーロッパの場合、経営参加という問題がしばしば話題になってきておるわけであります。私最初に参加の問題も触れたわけでございますけれども、日本の場合は企業ごとの独自なユニークな労使協議制というものが非常にうまく運営をされておるわけでございますので、単なる経営参加がいいとかどうのという問題は別といたしまして、これは当事者のお話でございますからわれわれがどうのこうの言うことではないわけでございますが、しかし、少なくともヨーロッパの場合には、西ドイツでもあるいは英国でもそれぞれ労使の関係が日本と違った意味で、真の意味での対等というのですか、そしてまたそれが法的にかなり裏づけをされて、経営側に対する非常に強い制限として参加をするいろいろな法律もあるわけでございますし、そういう世論もあるわけであります。そういう点について、いまの石田大臣は従来から日本の労働運動についても非常に前進的な先取り発想がお強い大臣でございますがゆえに、少なくともここらあたりで参加というような問題についての御発言というものが、慎重なるが上でも結構でございますけれども、そろそろ出てもいいのではないだろうか、こんなような感じがするわけでございますが、御見解を賜りたいと思います。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 ドイツの合同決定法、またそれが改正されました新合同決定法がドイツの労使関係の安定に大きな役割りを果たしているということは承知いたしております。ただ、これは一つには労働組合のあり方に違いがある。日本は企業別組合でございますが、向こうは職能別組合であります。もう一つは、半世紀以上の歴史を積み重ねたものでありまして、にわかにそのまま、あるいはそれに似たものを日本の現状のうちに取り入れられるかということになりますと問題がございます。また労働団体の方でも、合同決定法に近いものを行うべきだという労働団体もございますし、それには反対だという強力な労働団体もあるわけであります。そこで労使協議制というものをできるだけ充実さしていく方向へ持っていく。私はいつも二十年前といまをいろいろ比較して考えるのでありますが、二十年前には非常に拒否反応の強かった層が、これではだめなんだ、要するに勤労者や労働組合はやはり企業経営のパートナーとして考えなければならぬという発想が生まれてきております。関西等におきましてはそういう労使の交渉、話し合いというような組織体もでき上がっているわけでございます。日本の場合、やはり何かの形でパートナーシップを双方が認め合うというところへ持っていきたい。労働組合の歴史というものを回顧すると、やはり最初は要するに阻害され、アウトサイダーの扱いを受けてきた。二番目は、アウトサイダーの扱いは受けていることは受けているけれども、力によって法律的権利をだんだんと獲得していった時代。第三番目は、やはり近代社会の構成員としての責任を分担する時代へだんだん移ってくる。そういう第三の段階へ日本は入りつつある、そういう感触を私は労働団体の人たちと接触をしているうちに受けますし、使用者側と接触をしているうちからもそういう感触が得られるのであります。これを力といたしまして、そういういい労使の慣行の樹立に具体的な前進を示したい。  それから、前内閣、昨年度に比べて労働側との懇談が少なくなったというようなことでございますが、これは、産労懇などはきちんと開催をしております。前回は福田総理は国会のために出られなかったのでありますが、その前は福田総理は依然として出席をされております。それから実はあしたも一つございますし、しばしば会っておりますので、そういう点の意思の疎通は十分果たしております。  ただ、制度要求の問題でございますが、この制度要求は国会マターのことが非常に多いわけであります。そういう国会マターに属することについて政府が直接的に回答をするというのは不適当であろう、こう考えております。

草川昭三公明党・国民会議

○草川委員 では、第四番目の問題にかわりますが、現在、ECの特に対日輸出制限に対する非常に厳しい状況があるわけでございます。EC、欧州共同体の特に外相理事会等では日本との貿易問題を議題に取り上げまして、特に造船、ベアリング、農産加工品等の貿易紛争が一段と問題になってきておるわけです。造船なんかでも、七八年までにはかなりの操業度を下げて、削減計画を立ててようやく了解を得るというような状況に落ち込んでおります。  ところが、この対日強硬政策の先頭に立っておるのを、英国でもあるいは豪州でもアメリカでもよく調べてまいりますと、すべてとは言いませんけれども、現地の有力な労働組合が対日輸出制限の先頭に立っておるわけであります。彼らとしての雇用問題としてこれを取り上げておるわけでございますが、よくいろいろなお話を聞きますと、日本の労使関係というものについてずいぶん誤解を持ってみえる国々の労働組合もたくさんあるわけであります。  その中で一つ、ILO条約の未批准を非常に強く叫ぶ組合もあります。現在のところ、ILO条約の基本的な百号あるいは百十五号、百三、百二、たくさんあるわけでございますけれども、国際的な関心をもっと理解をするためにも、ILO条約の未批准の問題を、やはり早期にこれは承認をしていただいていくという方法というのが非常に大切ではないだろうか。  それからまた、海外の場合、この政労使という問題について国の立場に立っての対応が非常に活発でございますので、私どもも、いま産労懇等のお話がございましたが、それなんかを非常にうまく伸ばしていただいて、海外の組合の方々にも日本の実情が伝えられるような、いろいろな意味に活用されたらどうなんだろうか、こう思うわけであります。  特に日本の場合、レーバーアタッシェ制度というのがあるわけでございますが、いわゆるお役人が中心、これは当然なんです。ところが、アメリカのレーバーアタッシェなんかを見ておりますと、必ずしも役所育ちではなくて、ユニオンリーダーの先輩の方々がずいぶんレーバーアタッシェとして国際交流をなされるわけですね。しかも一カ所に非常に長期間、何年か滞在されてレーバーアタッシェとして運動をされるわけであります。私は特に日本とこれからの東南アジアとの関係等を見ますと、労働行政はそういう意味でのレーバーアタッシェの運営について再検討されたらどうなんだろうか、こう思います。  また、昨年の十一月三十日に、実はこれは外務省の招待でアメリカのAFL、CIOの幹部が数名日本にやってきておるわけです。昨年の十一月末といえば総選挙の直前でございまして、政治的情勢が非常に落ちつかないところでございますので、当然労働組合関係の方々とも落ちついた意味での交流というものはなされていないわけでありまして、これは国際的な問題ですから言葉を控えますけれども、非常に失望をして帰られたというような実は報道を私どもは聞いておるわけでございます。海外からのリーダーがお見えになるなら、なぜもっと、本当に個人的な家庭にまで来ていただいたり、あるいは団地の中に来ていただいて、食事等を出して、日本のたとえば自動車産業の労働者はこういうところに生活をしておるのだとか、あるいは金属産業の労働者はしかじかかくかくだというような交流をしてこそ、本当の意味での現状というのがわかると私は思うのです。そういう点では、外務省の余り連続的な接待があったために、かえって逆に日本の労働組合というものは一体どこが本当の水準かわからぬと言って帰られたというような話を私どもは聞くわけでございますが、ひとつ真剣な交流ということをぜひ御検討願いたい。これは主として要望になりますけれども、このようにお願いを申し上げて、時間がございませんので次へ進んでいきたいと思います。  これはもう簡単で結構でございますが、次は指定校制度の問題でございます。  実はこれは教育という面からの方が大切ではないだろうかと思うわけでございますが、学歴偏重ということが非常に重要な問題になっておりまして、教育のゆがみというものの基本的な問題になっておるわけでございますが、この前文部大臣の方から労働大臣に、企業の大学卒の新規採用に当たって、出身校にかかわらない、本人の資質と能力が公平に問われるように、指定校制度というのをなくするように働きかけをしてもらいたいというのが発表されております。私も全く同感でございますが、しかし、これは言うはやすし、企業側のサイドに立ってみれば、それこそ全国の人にどういうように募集をするのか、それこそ武道館で入社試験をやるような経費はとても持てぬというような話、これまた私よくわかるわけでございます。でございますけれども、また問題は、その会社を受けたい、たとえば技術的に非常に優秀だからその会社に入りたいというたとえば指定校外の学生がいたとする。しかしそれは受験資格が与えられぬわけですから、逆に言えばこれは憲法上の基本的な人権にわたる問題にもなってくるわけでございます。でございますから、私は、これから将来の労働、雇用構造からいいましても、大学卒業生の失業者というものは必ずふえると思うのですね。大学卒業生の失業者の増加ということを含めて、就職試験の公開というようなことも問題提起として出していただきながら、ひとつ大臣の方から具体的にどのように企業側に指定校制度の撤廃を働きかけられるのか、ぜひお伺いしたい、こういうように思うわけです。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 私が初めて労働省へ参りましたころから大学の新設が急速に進みました。現在、短大、専門学校を入れますと千五校ございます。この中で四年制の大学だけでも四百幾つある。私はそういう傾向に進むだろうということを考えました。そして、恐らく昭和六十年になりますと大学卒業生の数と昭和四十年ごろの義務教育終了で社会へ出る人の数とがちょうど入れかわってしまう、そういう事態が当然考えられましたので、大学の新設は本当に内容を充実させて、名前だけじゃない、中身もそれにふさわしいものをつくるならいいけれども、富士山が九州にあるようなことを言う程度の大学卒業生じゃ困るわけでございますので、文部省に対してそういう点で注意を促したことがございます。そうしたら文部省からは、教育と就職とは別だ、こう言う。それは別なことはよくわかっております。一般的な教養水準を高めていくことはよくわかっているのですが、それは教養水準が高くなったというだけで満足しないで、必ず職場を求めます。そういう場合、現在の状態では求人と求職とはまだバランスがとれておる。だが中身が違うのです。つまり、求人側は販売職とかサービス業とか、こういうものを求めます。求職側は事務職、管理職というような管理部門というようなものを求めていくわけで、それで非常に差が出てきているわけです。いまはそれで済みますが、これから先は当然それで済まなくなります。しかも、今日の求人構造は、百万前後の失業者がいるといいながら、一方において技能労働者の不足は七十万を超えておるわけです。そういう状態を背景といたしまして、東京都周辺では、私どもの職業訓練所で受講している者のうち大学卒業生で受講している者の割合が全訓練生の中で一七%を超えております。それから昨日大阪で事情聴取いたしましたら、やはり一五%ぐらいの数字に上っているわけです。こういうことでありますので、求人構造の現状というものを踏まえた教育内容にしてもらうことが肝心だと私は思うのです。  ただ、いわゆる排他的指定校制度、卒業した学校の先生その他が十分に技能を認めて、そして就職試験を受けることを期待しているのに、自分の企業で指定していない学校だからというだけの理由をもって受験の機会を与えぬ、こういう排他的な指定校制度というものは排除していかなければならぬと思うのです。といって、希望する者全部にやれといったら、いまお話しのように武道館でやらなければならなくなってしまう。しかも全国から集まってくるということになると大変旅費もかかる。そういう現状も踏まえて考えなければなりませんが、排他的に、自分の方で決めた条件に合う学校でないものは受けさせない、こういうことはないように行政指導をしていきたい。こういう激しい指定校制度は、ちょっと後で政府委員から数字を挙げて答弁をしてもらいたいと思いますが、それほど大きい割合ではないように思います。

北川俊夫労働省職業安定局長

○北川政府委員 いま大臣の御指摘のように、特定の学校以外は受験もさせない、それから採用もしないというようなことで昨年度指導をいたしましたのは十四、五会社でございます。業種としましては金融、商業関係が多いようでございますが、いま大臣御指摘のように、今後こういう厳密な意味の排他的な指定校制につきましては、その廃止につきましてすでに日経連に要請をいたしておりますし、事業主団体の雇用問題の協議会でございます中央雇用対策協議会でさらに指導をして、その趣旨の徹底に努めたいと思います。

草川昭三公明党・国民会議

○草川委員 では、ぜひそれはまた行政指導という以上の大臣としての働きかけを要望して、次に移りたいと思います。  時間がございませんので簡単にお伺いをしますが、実は雇用基金の問題でございます。近々に具体的にまた本委員会でも論議になると思いますが、この基金の問題について各種の審議会の方からいろいろと答申案等が出ておる中で、雇用政策というものは大局的見地から総合的に体系的に立てられるべきであって、安定事業のみの役割りでは疑問だという非常に鋭い指摘が、特に制度審だとかいうところから出ておるわけです。これが私はこれからのこの基金の運営等についても基本的な命題になってくると思います。特にまた労働側からも、午前中にも御発言があったと思いますけれども、具体的な実施、運営について、従来の審議会と違った発言の場、あるいは意見が反映されるような委員会制度のようなものをひとつぜひつくってもらいたいという非常に強い要望があったと聞いております。しかし、現実的には今日まで、それは過日のお話のように審議会でどうだろうということで終わっておるわけでございますが、私は、従来の労働行政というものがどうしても現場から浮いた後手後手になる可能性というのは、職訓の実績等についても現実にあると思うのですよ。ですから、私はぜひ基本的にはそういうことをお考え願いたいという要望をまず第一にしながら、実は当初千分の一という提案があったわけです。どうも使用者側の方の反対で〇・五、半分になるわけです。バナナのたたき売りではございませんけれども、基本的な行政をするのに、一気に、当初考えておった予算の半分でどうだろうという非常に荒っぽい考え方で、果たしてこれだけ大臣が高通ないろいろな抱負を述べられておることが実際はこの基金運営で救うことができるかどうか。  それからまた、これは後ほど造船の実態等も時間があれば触れさしていただきたいわけでございますけれども、失業の状況なり、産業ごとによってずいぶん違うわけですね。いま必要な下請労働者、この未組織というのは山ほどいるわけです。ところが、これが七月からできるのか十月からできるのか知りませんけれども、もうそれから先だということになりますと、実際は一番早くしわが寄って困っておる弱い下請労働者というものはどうしても救われぬような状況になってくるわけで、私どもは、逆にこれは遡及して対応策を立ててもらいたいというような声を実際ずいぶん聞いておるわけでございます。そこらの点について、時間が来ておるようでございますので、ごく簡単にひとつお話をお願いしたいと思います。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 この法律が施行せられる前の雇用問題に対する措置は、それぞれ現在の制度の積極的活用によってやっておるつもりでございます。特に造船の下請等については業種を指定いたしまして特別にやっているつもりであります。  また、この運営をできるだけ円滑にやっていく。この法律の背景をなす基本的な考え方の前提は、要するに産業構造の転換を求められる、これは必至だと思う。そういう状態にできるだけ雇用不安を生ぜずして対応できるようにしよう。したがって、雇用安定資金等の活用についても労使の同意ということを前提としておるわけであります。そういう意味で、法律上そういう前提を置いておりますので一方的な運営というものはできない。それじゃ全体の運営についても別の審議会をこしらえたらどうか。しかし雇用安定審議会というのが現にあるわけなんですね。そういうものの上に屋上屋を重ねることが現在の行政改革に対する国民的要望に合うか合わないか、これも十分考えなければならぬ問題であると思っておる次第でございます。

草川昭三公明党・国民会議

○草川委員 どうもいろいろありがとうございました。  最後に、大臣から造船のお話がちょっと出ましたので、本当にこれは最後の要望でございますが、実は造船の場合は明らかに下請不況でございまして、現在の調整給付金あるいは職業訓練制度等の問題につきましても、従来の産業別分類でいきますと造船産業の下請という産業分類はないわけでございますので、それぞれの船舶修理業の中の具体的な職種指定で運営をやっておるわけでございます。そこで包括的に造船産業の下請という意味での産業別分類をぜひとってもらいたいという要望があるわけでございます。これはすでに商工委員会等でもそのような御発言がなされておりますけれども、従来の産業別分類ではなじまぬということで却下されておるようでございますが、運輸省からは総括的にしてもらいたい、こういう要望があるようでございます。でございますので、現実に下請不況で困っておみえになるわけでございますので、弾力的な運営をぜひとっていただくことを心からお願い申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。

斉藤滋与史自由民主党

○斉藤(滋)委員長代理 和田耕作君。

和田耕作民社党

○和田(耕)委員 きょうは最初の社会労働委員会でございますので、労働大臣の御所信と申しますか、今後の基本的な幾つかの考えについてお聞きしたいと思います。  昨年のいろいろな経済の経過を拝見しておりますと、福田さんはいまは総理で事実上政策の中心におられるわけですが、昨年は副総理として経済企画庁長官を兼ねるという形で、私も何回も福田さんに御質問申し上げたりしたこともあるんですけれども、四月ごろから五月ごろの福田さんの答弁は非常に確信を持って、秋、つまり去年の暮れには日本の経済は花が開いていく、稼働率にしても九〇%を超していくという、本当に確信を持った答弁をなさっておられたのでございますけれども、八月が過ぎて九月ごろになってくると何かおかしくなってくる。ロッキード問題で党内のいろいろなごたごたもあったと思いますが、それよりも何よりも、経済について次第に確信を失ってきたようないろんな発言が見られるようになってきた。今度の場合も、去年の暮れあたりはこの四月ごろになれば日本の経済も明るくなるだろうというようなことも言っておられたけれども、きょうの日経等によりますと、二月、三月でも生産の状況その他の景気指標は全部が停滞模様で、そう明るい見通しはできないというような見通しがあるわけなんですけれども、労働大臣は、日本のいまの景気の問題、これは政府のいろんな施策を無論含みまして、どのような基本的な見通しを持っておられるのか。これは雇用という問題、一番大事な問題でございまして、それについてのはっきりした一つの見通しを持っておられないとなかなか政策が的を撃つことはできないと思いますので、大臣の景気の見通しについての率直な御所信を承りたいと思います。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 昨年の五月ごろまでの情勢というのは、改めて申し上げるまでもなく輸出が意想外に好調に伸びたことを背景としておったわけであります。しかし、それはまず第一に強力な抵抗に出会います。それから日本の国内の物価抑制策の余波を受けた国内だけの原因による不況というものも出てまいりまして、中だるみ状態が続いて今日に至っていると判断をしております。  しかし、これからどうか。私は、そう華々しい上昇というもの、つまり昨年の二月、三月に見せたような上昇というものは、これはもう相手も締めてかかっておりますからなかなかむずかしい。しかし、五十一年度補正予算の早期発注、それから五十二年度の予算、できるだけ早く成立していただきたいのでありますが、もう一つは早くから、三月のうちから、予算成立後間髪を入れずこれが執行できる準備を各官庁にしてもらう。このことは雇用の確保の上から非常に重要でございますので、いま私もしばしば閣議等で発言をいたしまして、私の方もいま職業安定局が中心となりまして、この予算成立後早く発注する。たとえば設計その他の準備なんというものはいまのうちやっておく。こういうことをやることによって、従来は大体早くて五月ごろにならなければ実際支払いが行われないという、こういうことでは困りますので、そういう処置をとってまいりますならば、次第にいわゆる中だるみ平行線状態から上向きを期待できるんじゃないか。しかしながら、非常にむずかしい要素もそのほかにございます。雇用問題を解決するためには、どうしてもやはり景気のある程度の上昇というものを背景にしませんと、ただ給付金や補助金や何かだけでは解決しない。そういう意味で、強い願望と期待を込めてそういう方向への経済の展開というものを考えておる次第でございます。

和田耕作民社党

○和田(耕)委員 きょうも私、ある組合の大会に午前中出てきたんですけれども、賃上げの要求の問題を討議をしておるわけですが、昨年までの状態とは全く違いますね。私ども同盟傘下の組合、あれは大きな組合なんですけれども、かなり、つまり慎重だといいますか、そしていろんな企業によっての差別を認めた議論を盛んにやっておる状態なんです。これは、たとえば春闘でどれぐらいのベースアップを実現するかどうかわからない問題なんですが、何も労働大臣のお答えをひっかけてなんという気持ちは一つもないのですが、春闘としてもなかなかむずかしい。かなり需要を刺激するものとしてはなかなかむずかしいような状況にあるわけで、減税というようなことはそういう意味で一つの景気指標のかなり即効的な指標になり得るとお考えか。あるいは春闘と見合いにしてそういう点をどういうようにお考えになっておられるか。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 減税の波及効果というものを決して認めないわけではございません。ただ、私どももう一つ考えておかなければならぬと思いますことは、現代の状態を克服するために子孫に負担を残していいものかどうか。公共事業でありますと、景気回復の刺激になると同時に、それで行われた事業が子孫に残るわけであります。そういう点をやはり考えなければならぬのじゃないだろうか。  それからもう一つは、消費を刺激するということは景気回復にとって必要なことは言うまでもない。しかし、その消費の刺激ということが日本の置かれている現状で果たして適当なんだろうか。むしろ、資源の乏しいわが国においては物を大切にするという空気の醸成の方が大切、それを忘れてはならないのじゃないだろうか、こう私は考えるわけであります。  減税のもたらす景気刺激の効果、それから勤労者諸君の実質的な低下というものはないようにしなければならぬと思います。しかし、これ以上おしゃべりをしておりますと、いわゆる春闘の問題にもう一遍入ってくる。これはやはり私どもが関与すべきものでないし、和田さんの御指摘のように、非常に社会契約的な議論、それから先ほどもちょっと申しましたが、近代社会の構成員、一員としての責任の自覚、そういうものが次第に感ぜられるようになっておりますので、ひとつ法を犯さず、大衆に迷惑をかけず、そしてわが国の経済の実情を踏んまえた解決を期待いたしておる次第でございます。

和田耕作民社党

○和田(耕)委員 私もいま大臣がおっしゃるように、節約という問題は資源有限時代の現在、考えなければならない重要な要素ではあると思いますけれども、しかし、節約ということを重要な要素として考えるようになると、景気の刺激ということとは全く逆の働きをなしてくる、これも否定できないことなんですね。つまり、このジレンマは今後とも日本の経済、先進諸国全部の経済を覆っておるジレンマの一つだと思うのですけれども、こういう問題はどういうふうにして打開できるかどうか、あるいはしなければならぬのかどうか。  ここでひとつ質問の模様を変えまして、大臣、先進諸国のいろいろなタイプがあるわけですけれども、皆、スタグフレーションと言われる矛盾とかいまのような問題とかを抱えておるのです。そしてそれぞれ全力を挙げて対策を講じておるわけですけれども、うまくいっている国とうまくいっていない国があると思うのですが、うまくいっている国はたとえばどういう国がうまくいっているとお思いになるでしょう。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 これはあるいはちょっと問題が外れてしまう議論になるかもしれませんが、数年前にノーベル賞をもらったオーストリアの経済学者にハイエクという人がある。これは初まりから、いわゆるケインズ流のフルエンプロイメント、そしてそれを達成するためにはある程度のインフレーションは仕方がないのだ。これはルーズベルトのニューディールなんかの考えの背景をなしていたわけであると思う。これに対して非常に深刻な批判を浴びせておった方でありまして、ノーベル賞をもらった論文も、要するに、これからはいわゆる自然原則的なものあるいは自然科学的方法というものを追求するだけでいくならば、そしていままでの道だけを望んでいくなら、これはインフレかフルエンプロイメントか、どっちか択一を迫られるのだ、こういう議論を展開しておられたのであります。議論としてはそれは成り立ち得るので、ごもっともな点があります。しかし、それでは第一次世界大戦後のあの深刻な不況、そして失業者が町にあふれる、治安が非常に乱れてくるという状態のもとに、それを救ったのはだれかと言えば、やはりケインズ学派だったろうと私は思うのです。今日、その時代に果たした役割りを否定して、二者択一を迫られてきて、両方とも達成なんかだめなんだということは、学者は言えますけれどもわれわれは言えません。これは何とかしてその調合点を見出していくのがわれわれの仕事でございます。  したがって、インフレなき完全雇用の実現というものを目指さなければならぬ。それから、そういう場合にいわゆる消費刺激、従来のケインズその他のいわゆる近代経済学の考えておる考え方でございますが、資源のない日本の現状において、同じような形における消費刺激でないものを見出せないか。たとえて申しますと、この間私は、私の個人の事務所から労働省へ来る途中の自動車で、道にくつ直しの看板を見ました。今日デパートでもくつ直しをやるようになった。やはりこういう意味での、いわゆる、簡単に言えば修繕屋が繁盛するような消費刺激というものが必要なんじゃないだろうか。それから、同じ生活の充実を求めていくのでも、物を消費しないで生活の充実を図っていける方途を見出すべきじゃないか、こう私は実は考えているわけでございます。

和田耕作民社党

○和田(耕)委員 そういうふうな御意見もありますけれども、最近、日本は国際的にもっと品物を買いなさい、売ってもうけるだけじゃやがて行き詰まりますよということを各方面から言われている。もっと買うということは、いろいろな必要な資源、石油だとかいろいろなものは別として、その他のもの、食糧とか衣料とか、つまり悪い言葉で言えばもっとぜいたくをするようにということを求められている。これをやらないと日本の輸出はとまってしまうというようなことがあるので、いま大臣のおっしゃるような節約、資源の再生ということは非常に限度がある。特に日本の置かれた状況から言えば限度がある。これは本当に私はごくわずかの幅しかないという感じがするのですけれども、そうなればその道もなかなかむずかしい問題になってくる。  よく世間で、西ドイツはうまくやっているという話がある。イタリアは非常にまずいという話があるのですけれども、これは大臣、西ドイツとイタリアの違いというのはどういうふうなところにあるだろうか。日本はどういう点を注意しなければならぬかという意味から、西ドイツとイタリアの、うまくいっている国とまずい国であるとすれば、どういうところに原因があるのか、その点をひとつお教えをいただきたい。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 そのうまくいっているということを、どういうことを基準にうまくいっているかということで答えは大変違ってくると思うのです。たとえば通貨が安定しているという安定度が高い、あるいは失業率が低い、あるいはまた争議による労働喪失日数が高いか低いか、そういうような見方によって非常に違うと思います。  他の経済的要因については、これは私がお答えすべき筋のものでないと思いますが、争議による労働力の稼働日数の喪失が一番少ない国は西ドイツでございます。ちょっとここに書いたものがございますので御参考にしてみたいと思うのですが、西ドイツは一人当たり〇・〇〇四日です。フランスが一人当たり〇・一九一日、それから日本が〇・二六五です。イタリアに至りますと一・四二六となっているのであります。つまり労使関係の不安定、これはこれがはっきり示しておると思うのであります。ちょっとフランスが案外なところに来ておるのは意外でありますが、これがやはり経済にも響き通貨にも響いておる。イギリスとイタリアは非常に悪いが、西ドイツとアメリカと日本は比較的いいと言われておりますが、ただ労働稼働日数の喪失という点から言いますと、アメリカは〇・六五ぐらいになりまして必ずしもよくない。  それからもう一つは、労使の安定の背景をなしているものは何かということになりますと、やはり合同決定法とか勤労者財産形成政策の成功というものが大きな役割りを果たしているんだろうと思うのです。勤労者財産形成政策は、実は昭和三十九年に私が三度目に労働省に参りましたときに検討を命じたものでございます。今日まだ十分だとは申せませんけれども、貯金残高は一兆一千二百億円に上っております。ただ残念なことには、財形住宅貯蓄の方は予算枠も消化されないで残っておる。これは手続に複雑な点、無理な点、むずかしい点があります。そういう点の改善に努めていきたい。  ただ、合同決定法やあるいは新合同決定法と同じことを日本でやれば同じような効果が上がるだろうかということになると、違ってくるような気がいたします。それは、日本の場合は企業別組合でございます。それから労働組合の全国組織が幾つかに分かれておるわけです。ところがドイツの場合は職能組合で全国組織が一本。これはアメリカもそうです。こういう点に違いがございますし、先ほど午前中にもお答えを申しましたが、何しろ五十年前からこの発想が生まれて育ってきたもので、その歴史の積み重ねというものも考えなければならぬ。そこで日本としてはいまの労使協議制というものの充実を図っていくのが適当ではなかろうかと考えている次第でございます。

和田耕作民社党

○和田(耕)委員 これはあしたも予算委員会で他の関係の大臣と一緒のところでいろいろお聞きをしたいと思っておりましたけれども、私は、いまの状態はスタグフレーションと言われる言葉そのものだという感じがするのですけれども、これは大臣いかがでしょう。つまり、不況の中の物価高とか、あるいはデフレとインフレとの共存だとか、いろいろな表現で言われておるのですけれども、今度の予算をつくるにしても、ちょっと刺激しようとすればインフレを心配しなければならない、物価高を。減税の問題なんかもいい例なんですけれども、といって中途半端では景気刺激にもならない。景気そのものもよくならない。そういう立ちすくんだ状態がいまあると思うのです。スタグフレーションそのものだという感じがするのです。  ある学者によりますと、スタグフレーションというものはGNPがマイナスになるという条件が必要だということを言う人がおりますけれども、これは形式的見方であって、いまのように、昨年七兆三千億、今年は八兆五千億という事実上赤字国債をあれして、大きな財政投資をしてなおかつこういう状態だという状態は、まさしく不況の中の物価高というように言われるに値すると思うのですけれども、このスタグフレーションという問題、どうしてこういう状態に、化け物みたいな状態になってきたのかという問題を考えてまいりますと、これはやはり経営者の中でいわゆる寡占といわれる状況がある。寡占の状況ですから、不景気になったら本来品物の値段は下がるべきところを寡占という一つの独占体でもってある程度値段の下がることを下支えをするという要素が一つある。これは無視できない要素だと思うのですね。もう一つは、労働組合が非常に強力になりまして、不景気になれば労働賃金は下がっていくかもわからないという状況を、下がらさないだけでなくて何ぼか引き上げていくという強力な働きを労働組合がやっている。この要素が一つ重要な要素である。もう一つは、政府が、不況になれば公共事業や何やいろいろなことをやって、そして需要をつくり上げて景気の後退を防いでいく。この三つの要素はいままで大きな効果をそれぞれ持ってきたし、労働者や国民の生活をレベルアップしてきた非常にプラスになる政策であったと思うのですね。この寡占というのは悪名が高いことばかり言われておるのですけれども、ある景気を維持するという面から見ればある働きを持ってきたと思うのです。ただ、この三つの要素がいままでは、ずっと高度経済成長ではうまく働いてきたけれども、こうなりますと逆にマイナスになってきて、結局この三つの要素が相乗効果でもっていまのこの何ともならないお化けみたいなスタグフレーションを生み出したというふうに私は思うのですけれども、こういう考え方は間違っておるんでしょうか。あるいは政府のいまの全体の経済指導の立場から見てどのようにお考えになるでしょう。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 スタグフレーションというのは、学者のつけた、われわれ学校で習った経済学には全然出てこなかった言葉でございます。その原因については、私はやはり御指摘の要素がかなりあると思う。しかし、その御指摘の要素は、今日の時点になると責められることではあるけれども、その政策が実行された時点においてはやむを得ないことがあったんじゃないだろうかと思います。たとえばニューディール、これは膨大な失業を救済するために結局赤字国債を発行して、それによってテネシー・バレー・オーソリティーのような巨大な開発を行った。そしてそれを契機として消費力を高めていく。一方において社会保障の充実と労働組合の公認ということをいたしました。したがって、そのことによって景気が回復し、失業がなくなると同時に、そういう状態を持続することができた。いわゆる底辺の購買力が安定をしましたから持続することができた。したがって、資本主義社会につきものであると言われた恐慌、不況というようなものはなくて済んだ。これはその時点においては私は功績があったと思うのです。それをいまになってみて、あのときああいうことをやりやがったのは悪いんだと、いまになって三十年、四十年前のことを攻撃することは私は間違いだと思う。そういうものが定着し始めてきた。それは、先ほどのハイエクの話じゃありませんけれども、必然的に今日の事態を招いたということは言えると思う。  もう一つは、六〇年代という年代はみんな経済の成長競争に明け暮れて、全部が過剰な設備を抱え込んだ。そして先進各国は、石油は無限に手に入る。しかも安く手に入る。そうしてペルシャ湾の新しい油田の発見を契機といたしまして、自分が売りつけるものはどんどん年々高くして、買う方は供給力の過大を盾にとって安く買いたたいた。それに対する反発が当然生まれるわけで、それが設備の過剰を露呈さした、資本投下の過剰というものを露呈さしたものだ、こう私は考えるわけであります。したがって、それを産業や経済の面から見れば、もっとぜい肉を取って落とさせろ、こういう議論が当然出てくると思うのですが、私はそこにやはり新しい理念が当然生まれてこなければならぬ。新しい理念というのは何かと言えば、企業者、使用者というものが、自分の企業が安泰でありさえすればいいというのではなくて、やはり自分が生きている国の人々に平等に雇用機会はできるだけ広く与え、そしてできるだけ条件をよくする社会的責任をあわせ持たなければならないんだということが要求される時代になってきた。  先ほど答弁は要らぬとおっしゃったので答えなかったのでありますが、例の雇用安定資金の一%を〇・五%にする話、乱暴にバナナのたたき売りみたいにやったと、こうおっしゃいますけれども、実はこの問題に一番抵抗を示したのは中小企業であります。負担増に耐えられない。したがって、中小企業と大企業との間に保険率を違えろ、こういう要求が非常に強かった。しかし、そんなことをやりますと、私どもの方でお預かりしている保険制度だけでなくて、保険制度全体に影響してまいります。そういうところででき上がった妥協でございますので御承知をいただきたいと思います。  それから、いま設備の過剰を抱えながら、しかも、ヨーロッパなんかに生じております状態は設備の単なる過剰だけではなく非能率なものをそのまま抱え込んでおる。そういう状態を考え合わせて相互の理解を求めていきますのには、やはり労働組合側からの呼びかげというものもあるいは必要だと思いますので、労働協会では公労使の代表をしばしばヨーロッパやアメリカに送って、できるだけ理解を求めておるのでありますが、いままでの規模では思った効果がありませんので、もっと効果のあるような方途を見出したい。  スタグフレーションというのはやむを得ずに来たものではあるが、さっきも申しましたように、学者がどう言おうとそれは勝手でございますけれども、あるいはまた正しい面があるかとも思いますが、われわれは、インフレか完全雇用か、どっちかを選べというようなわけにはまいりません。そういうつもりで労働行政の運営に当たりたいと思います。

和田耕作民社党

○和田(耕)委員 私がいまスタグフレーションの原因をいろいろお聞きしておりますのは、つまり、何とも矛盾のかたまりのような形になっているいまの経済、しかも国民としても何とかこれを上に持ち上げていかなければならないという要請を持っておる、この場合にどうすればいいかということを考える場合に、何が原因なのかということを考えないと的確な方策は出てこないわけですね。その意味で、どういうところに原因があるのかということをいま御質問申し上げておるわけですけれども、仮に、寡占化した経営者の状態という、とが一つの原因であり、また労働組合の強力な交渉力というものが一つの原因であり、そして政府の財政政策、不況対策のいろいろな政策が原因であるとすれば、この三つの要素がお互いにけんかをしたのでは、この怪物をますます手に負えなくすることになるのではないかと思うわけですね。したがって、この三つは、自分たちが生み出した怪物なんですから、これを料理するためには、自分たちの自主性は無論しっかり持たなければいけないけれども、やはりこの悪い面がのさばらないような形で押さえるためには協力する必要がある、相互理解をする必要があると思うのですね。  そういうふうに考えてまいりますと、政労使という議論がこのごろ大分やかましいのですが、この議論は単に政治家の思いつきだとか組合運動家の思いつきだとかいうようなことではなくて、こういうふうな状態に発展してきた経済に対する基本的な姿勢をその中に見出すことができないのかどうか、このことをお伺いしたいと思っているわけですよね。そういう意味で、政府と労働組合と経営者が、先ほど言ったような性格を持っている三者が適当な形の意見を調整する機関——これで何もかも決定していくことになりますと、役所は要らないわけですし、また決定するような性質の機関でもないわけです、お互いにたくさん解決できない、調整できないような意見をみんな持っているわけですから。しかし、それにしてもこの三つが何とか意見の調整を図っていかなければ怪物を退治することはできないということですから、しかるべき方法でこれの三者の調整関係を真剣に考慮する必要がありはしないか。これは労働大臣の諮問機関がどうのこうのということではなくて、政府の全体的な運営の問題と関連してこの問題を考えてみる必要がありはしないか、こういうふうに思うのですよ。これは労働大臣だけの問題じゃないと私は思います。しかし労働大臣の守備範囲が一番大きい、労働組合という問題を持っているわけですから。いかにお考えでしょうか。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 この間、前回のもう一つ前の産労懇で宮田委員からの御発言の趣旨も、いま和田さんからのお話と同じ趣旨の御発言でございました。これについては、使用者側も、それから出席しておりました福田総理も賛成を表せられた。いまこれを、どういうものでどういうふうにして運営していくかということを、各界の意見の調整をしておるところでございます。  大別いたしますと三つございまして、一つは、別の機関をこしらえろ。それから二番目は、産労懇の中から小委員を設けて、その小委員でいろいろ話し合ったものを産労懇に持ってきて、そして政府の運営に進言するようにしたらどうだ。それから第三番目は、産労懇の会合というものは時間が短過ぎる、回数を減らしてもいいから時間をもっと長くして、これをゆっくり篤とやろう。いずれにしましても日本の置かれております一つの現実というのは変わりはないのでありますから、しかも日本だけではないわけなんで、そういう状態を処理していくためにはこの三者のコンセンサスを得た方向を進めていく以外にないのだ。これはこっちに行く、これはこっちに行くといったらとてもどうにもならない、こういう認識では一致しておる。  そこで、これから賃金決定の場を迎えるわけでございますから、それが済んだ後で、その三つ出ている結論の中で共通の場を見出していこうではないかということで前回はお別れしたわけであります。ただ、第一の問題については、これは行政整理の問題等もありまして、新規に機関を設けるということには問題があろうかと思います。それから宮田さん自身も、機関を設けろとはおっしゃっていないわけであります。

和田耕作民社党

○和田(耕)委員 先ほど西ドイツの共同決定の問題にお触れになられたのですけれども、あの問題の最後の詰めの段階のことを思い出してみますと、経営者ラインもあの法案には大変不満なんですね。労働組合の方も共同決定のあの案に対しては大変不満なんですね。しかも二つの当事者が相寄らざるを得なかった。結局通してしまった。こういうところにこの問題のむずかしさと、しかも、これを採用できる政治の諸条件というのは非常に困難な問題があると思うのですね。しかし、これはぜひとも必要だという気持ちでこれに取っかかるのか、あるいは何かうるさいことを言うやつがおるからここらあたりで適当に、ごまかすわけじゃないだろうけれども、軽く考える考え方で対処するのでは非常に違ってくると思うのですね。こういう問題についてなおあした関係の閣僚の方もお願いしておりますので、ぜひとも話をもうちょっと進めてみたいと思っておるのですけれも、私がスタグフレーションとかいろいろなことを申し上げている意味も、構造的に見て、そういう三者がつくり出した怪物を三者の協力なしにはもう征服できない。比較的うまくやっているのはドイツで、スタグフレーションをうまくこなしているけれども、イタリアの場合には全くこれがうまくできていないことが破滅に瀕するような状態になっていやしないか。日本は悪くするとイタリアよりもっと悪くなる状態がある面があると私は思うのです、国際的な問題、資源の問題等から考えると。そういう問題をぜひともひとつ真剣にお取り組みを願いたいと思うわけでございます。  きょうは労働大臣の今後の労働行政の基本的な姿勢に関連して御質問をしたわけでございまして、ありがとうございまいた。

斉藤滋与史自由民主党

○斉藤(滋)委員長代理 浦井洋君。

浦井洋日本共産党・革新共同

○浦井委員 労働大臣はこの間の二十二日に当委員会で所信表明を述べられたわけです。そこで「労働者の福祉の増進を図るため手厚い対策を講じることこそ、今日の労働行政が果たすべき責務である」こういうふうに言われている。そこで私はきょうは、労働者の生命と健康を守るべき労働省の災害補償と安全対策についてひとつ質問をしてみたいと思います。  まず、具体的な事例を申し上げたいのですけれども、ことしの一月に、三菱重工神戸造船所で働いているところの斉木福右衛門さんなど七人の労働者が職業性難聴障害として九級から十四級に認定をされ、労災補償の給付が行われることになった。三菱重工神戸造船所では職業性難聴による労災補償が行われるのは今回が初めてである。いま労働者の中で非常に大きなセンセーションを巻き起こして、どんどんと、おれも耳が遠くなったのだということで労災認定が出されようとしておるわけであります。  問題点はたくさんあるわけなのですが、調べてみますとこういうことがある、聴力障害の認定というのが、騒音作業を離れた時期、こういうふうにされておって、たとえば就業中に一つの耳が全く聴力がなくなったような場合でも障害認定したい、こういうような不当な扱いを受けておる。だから聞こえる間は補償しないのだ。騒音職場で働いておる労働者の難聴というのはこれはもう仕方ないのだ、そういうようなやり方がいままでやられておったというふうに見ざるを得ないわけでありますけれども、これについてひとつ局長なりの見解をお伺いしたいと思うわけです。

桑原敬一労働省労働基準局長

○桑原政府委員 お答えをいたします。  難聴の問題につきましては認定基準がございます。この認定基準は、専門の方々にお集まりいただいて基準をつくっておるわけでございますが、当面やはり難聴につきましては治療方法がないというのが、一般の職業病と違いまして一つの特徴ではないかと思います。したがって、ある事業所にお勤めいただいて、途中で耳が遠くなってこられる、その時点で、確かに一つの障害ができますから認定するということも一つの方法かと思いますけれども、私どもの専門家の御意見を聞きますと、たとえば最終的にその職場を五十五歳程度でおやめになるときにだんだんとひどくなってくる。したがって、早目に障害等級を認定いたしますと低い等級に決定せざるを得ないというような難聴の特徴が出てまいりますので、私どもの行政の取り扱いといたしましては、最終の騒音職業から離れられるときに、御申請に基づきましてその認定をし、適正な格づけをしていく、こういうような取り扱いをしているようなわけでございます。

浦井洋日本共産党・革新共同

○浦井委員 国としての考え方はそういうことだろうと思うのですが、それでは少し筋が通らぬのではないか。やはり労働者の気持ちとしては、仕事をしている間にも認定してほしい。あるいはそこでまた増悪すれば再認定をして、その差額を一時金としてでも支給してほしいというような意見も現場の労働者からあるわけです。だからそういう点をよく考えて、やはり認定の制度というものをもっと充実させなければいかぬのではないかというふうに私は考えるわけです。  それからもう一点の問題は、今回の三菱重工神戸造船所における労災認定というのが、申請者が八人あった。ところが一人が基準外になって残り七人が認定された。ところが、これをよく見ますと、五十年九月に新基準ができた。その新基準のできた直前、十六日前に退職をしておられる方があるわけなんです。新基準では九級となるのに、旧基準が適用されて十一級になる。あるいは、一人は基準外だと申し上げたわけですが、この方も五十年の四月に退職をされて、新基準がもし適用されたならば十級に該当する。しかし現実には一銭も一時金はもらえない、こういう結果になっておるわけなんです。これは大臣もよく御承知のように、障害補償が七級以上といいますと年金が支払われる。こういう場合には新基準になるとさらにより有利な等級になるということになっておるのに、一時金の場合は補償もされない、こういう不合理な点があるわけなんです。こういう点はやはり改善すべきではないかと私は思うのですが、これは局長から、それから後で少し大臣から決意なりを伺っておきたいと思う。

桑原敬一労働省労働基準局長

○桑原政府委員 確かに御指摘のように、難聴の認定基準につきまして、一昨年の九月一日から新しい認定基準をつくりまして内容の改善をいたしたわけでございます。この認定基準につきましては、労働省令をつくりまして、その附則に経過的な規定を入れているわけでございます。したがって、新基準につきましては、九月一日以降に新しくそういう障害が起こった方について適用する。つまり、八月三十一日以前のものにつきましては旧基準によるというように省令できちっと書いてございますので、これは法律が新しく変わる場合には常にあることでございまして、この点についてはどうもいたし方がない、こういうふうに考えるわけでございます。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 いまお話しのように、十六日か十五日しか違わないのに片方は有利な扱いを受ける、片方は不利な扱いを受ける、これはまことに同情にたえないわけでございますが、といって、いま局長の説明のとおり、どうすればいいかということになりますと、非常にむずかしい厄介なことにもなりかねない。また運営に幅を持たせますといろいろな弊害が逆に出てまいります。しかしなお検討したいと思います。

浦井洋日本共産党・革新共同

○浦井委員 そこで、この労災認定された七人ですが、七人のうち五人は以前は三菱重工神戸造船所の本工であったわけです。かなり年を経てから下請の企業に移った。いずれも作業場は三菱重工の構内であるし、仕事も同じだ、職場環境も同じだ、こういうことである。その人たちに話を聞いてみますと、本工のときも下請企業に入ったときも、聴力検査、特殊健康診断、これを受けた記憶が余りない、こういうことなんですよ。法で定められておる特殊健康診断について労働省の方は、大分前ですが、三十一年五月十八日、基発第三〇八号によって、騒音作業についての特殊健診を行うこと、こういうふうになっておるわけなんです。これは調べてほしいと私お願いしておいたのですが、この神戸造船所で特殊健診が行われておる実情は一体どうだったのか、その調査した結果を報告していただきたいと思います。     〔斉藤(滋)委員長代理退席、中山(正)委員長代理着席〕

桑原敬一労働省労働基準局長

○桑原政府委員 三菱重工の神戸造船所の元方の従業員の方と、それに付随しております下請の事業所の労働者の方と二つございますが、元方の三菱重工神戸造船所の方は、一般健診、特殊健診、いずれもやっておられるように私どもは情報を得ております。特に聴力検査につきましては、特殊健診でやればより詳細なことをやりますので、一般健診との関連は大体そこで両方満足できると思います。問題は下請の事業所におけるもので、たしか六十幾つくらいの下請が入っておるようでございますが、いま出先で調べさせておりますけれども、最終的な報告はまだ入っておりませんが、どうも十分な健診がやられていないような情報が入っております。さらに私どもは出先を督励いたしましてその事実の確認を急ぎたい、必要によっては十分な指導をしてまいりたい、こういうふうに思います。

浦井洋日本共産党・革新共同

○浦井委員 大臣、聞かれたとおりであります。下請はやっておらない、元方はやっておるというようなニュアンスのお話でありますが、私が調べたところではほとんどやっておらない。一般健診といいますか、これはまああるグループごとにローテーションを組んでやっておるかもわかりませんが、現に長年働いた本工の人たちも、数年に一回やったことがあるかどうか、そんな記憶なんだ、こういうことであります。これが大臣、日本でも屈指の造船所である三菱重工神戸造船所の聴力検診の実態であります。これを今後一体どういうふうに指導、改善の措置をとっていくのか、ひとつ具体的にお伺いをしたいし、大臣にお尋ねするのですけれども、せめて予防、早期発見の特殊健診を法制化する。いまは行政指導というかっこうで強制力がないわけでありますから、これを法制化するように国としてはやはり努力をすべきではないか。これは当然の話でありますが、局長と大臣、ひとつ……。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 健康診断は強制実施をいたしておりますものですから、たとえ一般の下請といえどもやっていないのは違法でございますから、これは厳重に実施させるようにしなければならぬと思います。  それから、この聴力の検査という特殊健診は行政指導だそうでありますが、いまお話を伺っておって、そんなに悪くなる前に何か予防措置みたいなものが講ぜられないものかどうかということも考えますし、それから影響の度合いも、これだけ大きな企業でございますからやれるわけだし、会社の病院だってあるわけだし、ちょっと不可解な感じがいたします。いま局長から伺いますと、特殊健診もローテーションでぐるぐるやっている模様でありますが、そういうものが多発しそうな職域、これは難聴に限らず、職域において多発しそうなものに対する特殊健診の強制力を持たせた実施というようなものは、やはり検討を要する課題だと思っております。

桑原敬一労働省労働基準局長

○桑原政府委員 大臣が御答弁いただきましたことで大体十分かと思いますが、特に下請につきましては、六十以上も入っておりますので、結局はやはり元方がもう少し責任を持って、もちろん私どももやりますが、元方がそういった下請の安全衛生については責任を持つという精神が安全衛生法にございますので、この精神にのっとって元方を十分指導しながら、このたくさんの下請の従業員の方たちに、特殊健診を含めて、健診が行われるように十分指導してまいりたい、こういうふうに思います。

浦井洋日本共産党・革新共同

○浦井委員 これはぜひ特殊健診の法制化の努力を大臣にしていただきたいと思うので少し実情を述べたわけですが、どうも騒音に関する労災認定のあり方が、騒音作業に従事する限り聴力の低下は避けられないから離職するまでは認定しないという、どう言いますか、労働者の聴力がつぶれても仕方がないんだ、つぶせるだけつぶしてしまうというようなやり方というのは、私は許せないと思う。しかも、予防対策も何ら講じておらないということなんです。だから、たとえば産業衛生学会でも昭和五十年三月三十一日に騒音についての「許容濃度等の勧告」をしておるわけなんですから、やはり特殊健診を法制化してきちんと実行していくということと同時に、労働条件を低下させないようにこいつを防ぎながら、しかも就業時間の制限であるとかあるいは適切な職場の転換、こういうことをやって、労働者の聴力を守る対策を一日も早く実行すべきではないかと私は思うのですが、この点についてひとつ答えていただきたい。

桑原敬一労働省労働基準局長

○桑原政府委員 難聴の予防につきましては、関係法令に基づきまして一応の体制ができております。たとえば作業場の騒音を測定すべきであるということ、あるいは騒音が広がるについてそういった隔壁を設けることとか、あるいは耳栓等の保護具をつけることなどがございますが、いま先生の御指摘のように、もう少し総合的にこういった騒音対策を講ずべきではないかという御意見につきましては、私どもも十分今後検討してまいりたい、こういうふうに思います。

浦井洋日本共産党・革新共同

○浦井委員 大臣、予防基準というものがないわけなんですよ。こういうものを、やはり学者の先生方にもお願いをし、関係者や専門家が集まってこれをつくるような努力をぜひ早急にやっていただきたいと思うのですが、大臣どうですか。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 これは、なってしまってから労災で補償するということではなくて、ならぬようにするということが一番肝心でありますから、そういう特殊健診、それから防具の使用とか騒音の規制とか、そういうようなものを強制力を持たせてやれるような検討はぜひしなければならぬと思っております。それからそのために、私は素人だからわかりませんけれども、この辺から先に進ませると後で取り返しがっかなくなるという基準は当然必要だろうと思いますが、どういうことが基準になったらいいのか、私は全くの素人だからわかりませんけれども。

浦井洋日本共産党・革新共同

○浦井委員 一日も早く具体的な施策が前進をするように一応期待しておきたいと思うのですが、いいですか。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 それはぜひ検討して進めたいと思いますが、私たびたび労働行政をお預かりしているので、労働安全衛生の問題についてあれしますと、なかなか、防具をつけるとかなんとかというようなこちら側の期待と合わないことが多いのです。たとえば安全帽をかぶれと言っても、近ごろはどこでもかぶるようになりましたけれども、二十年くらい前までは安全帽というものがあることさえも知らないで、だからそういう点の自覚というものもあわせて促していかなければならぬのじゃないかと思っております。

浦井洋日本共産党・革新共同

○浦井委員 大臣、この難聴を防ぐ具体的なやり方として耳栓があるわけです。この耳栓は最近はかなり発達をしまして、高い音は防ぐ、低い日常会話はそのまま交わせるというようなものが、値段は四、五千円までであるわけなんです。これはつけておっても別に日常の作業に不便はないわけなんです。こういうものを企業の側でそういう騒音職場にはちゃんと支給する。企業の方でやる気があって金を出せばちゃんと防げるわけなんです。だから、その辺をひとつよく検討をして、早急に日の目を見るようにしていただきたい。このことを一応期待しておきたいと思うのですが、よろしいですか。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 結構です。

浦井洋日本共産党・革新共同

○浦井委員 それから、この問題の最後ではありますけれども、いま労災認定が行われた。ところが、大臣御承知のように、労災保険における費用負担のあり方としてメリット制だということで、労働保険徴収法第十一条によって、業務災害を発生させた事業主の負担が重くなる、こうなるわけなんです。ところが、たとえば例を申し上げますと、今回認定を受けて一時金をもらった人でありますが、明治四十四年生まれのその人は、昭和九年から昭和四十三年まで三菱神戸造船所の本工であったわけです。そして四十三年から五十一年の七月まで今度は下請企業に移って、同じ作業を同じところでやっておった。そして五十一年の七月に退職をしてから今回労災認定された。それでこのメリット制で、最後の八年間余り働いたこの下請企業の方に保険料が加重される、こういうことになるわけなんです。この七人の人は大なり小なりそういう経緯をとっておるわけなんです。本来これは三菱重工で働いていた労働者なんです。だから、やはり下請の事業主だけに保険料の負担増をかぶせるというのはちと不合理ではないか、当然元請としての、元方としての三菱重工の責任でこれはやらなければならぬのではないか、こういうふうに考えるのが当然だと思うのですが、この点についてはいかがですか。

桑原敬一労働省労働基準局長

○桑原政府委員 御指摘のように元請と下請の関係は非常に密でございますから、御指摘のようなお考えもあるかと思います。やはり元請の責任でもって、こういった難聴その他の職業性疾病が起こらないようにするという責任を元方に十分持たせるということはまず基本だと思いますし、そういう行政指導あるいは監督をやってまいりたいと思いますが、御指摘の、第二の人生で、定年退職されて下請においでになりますが、確かにそこで出る労災の費用はメリットで下請の方がかぶらされますけれども、これを元請なり、そのもと、発生した事業所に追跡して持っていくということになりますと大変技術的にむずかしい問題がございます。非常に労働者の移動も多うございますし、それは理屈に合っているようでございますけれども、実際問題として非常にむずかしくて、現実には、補償せられる費用についてはその最終的な職場で負担していただくというようなことで処理せざるを得ないのではないか、こういうふうに思っております。

浦井洋日本共産党・革新共同

○浦井委員 大臣、技術的にむずかしいということで済まされる問題ではない。先ほどからの論議でありますように、造船は不況そのほかの問題をいろいろ抱えておる。それのしわ寄せば全部下請企業にいっているわけですね。そこへまた、長年、三十年も三菱重工で働いた労働者が、最後の三年ほど下請で働いて労災認定されたら、そこに保険料が加重される。これは大臣、やはり何とか考えなければいかぬと思うのですね。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 確かに、片一方は三十四年間働いた、片方は三年間、それで三年間の方がみんなかぶらなければならないというのは私も非常に不合理に感じます。ただ、実際問題の運営上、どういうところに技術的にむずかしいところがあるのか私はまだわかりませんけれども、それはよく聞きまして、もうちょっと納得できるような方法を見出したい、また見出さなければならぬと思います。職業病の取り扱いの一番むずかしいのは、その原因と結果との間に非常に時間がかかるということにあるわけなんで、交通事故みたいに原因が発生したら結果がすぐ出てくるならいいのですが、その場合の企業の責任のとり方というものはいまのまま放置しておいていいとは言えないと私は思いますので、どういうところがむずかしいかよく聞きまして、検討さしていただきたいと思います。

浦井洋日本共産党・革新共同

○浦井委員 ひとつ大臣、政治家として、これは技術的な問題、行政技術の問題にすりかえてしまうんでなしに、政治的に考えていただきたいということを要望しておきたいと思うわけであります。  それから次の問題でありますが、これも職業病の問題であります。  昨年ですか、七十七国会で労災保険法が改正をされた。そこで長期傷病給付にかわる傷病補償年金になったわけですね。それが本年四月から施行されることになっておる。議事録を見ておりますと、この労災法の改正の際に当委員会では附帯決議をされておるわけなんです。それを読んでみますと、「政府は、次の事項に関し所要の措置を講ずべきである。」一の項に「傷病補償年金制度の運用にあたっては、特に頸肩腕症候群、むち打ち症、腰痛症等の職業性疾病患者の療養の実情に即して、適切に行うよう努めること。」こういうことが特に申し述べられておるわけなんです。現在労働省の中で政省令の改正の準備がされておるようでありますけれども、大臣御承知のように、いま読みましたような疾患の患者というのは療養に長期間を要する神経系統の病気だ。だから、これらの職業病患者というのは、基準法の第八十一条の打ち切り補償に当たるとされておるところの新しい制度である傷病補償年金の対象になると、今度は労基法十九条の解雇制限による保護が治療開始後三年間でなくなってしまう、こういうような矛盾といいますか、厄介な問題になるわけであります。  そこで私要望をしたいのは、いま準備がされておる、年金給付を行うところの廃疾等級とは一体どのように定めようとされておるのか。また、患者たちが要望しておりますが、そういう患者が従来どおり職場復帰の保障が確保されるように措置されておるのか。その辺についてひとつ労働省の御意見をお伺いしたいと思います。

桑原敬一労働省労働基準局長

○桑原政府委員 先生の御指摘の長期傷病補償年金は、昨年の改正で長期傷病補償給付が変わったものでございます。いままでは長期傷病補償給付一本で、休業補償が出て治療をしていくというかっこうでございましたが、やはり重い方は重いなりの保護をしなければならないということで、長期傷病補償年金ということで一級から三級に分けまして、特に一級については手厚い年金を差し上げる、こういうふうになったわけでございます。したがって、解雇制限の関係の規定は、長期傷病補償給付についてもございましたけれども、長期傷病補償給付の名前が年金に変わっただけでございまして、解雇制限の規定との関係は従来と全く同じでございます。したがって、今回の法改正に伴って解雇制限の規定が特に緩やかになったとか、特にこの機会にそういう解除を発動するんだ、そういうことは全くございません。  それからまた、一級から三級の年金の内容は、非常に病気の重い方でございます。労働不能ということで省令を書きつつございますが、四月一日から施行いたしますけれども、御指摘の頸肩腕症候群みたいな方は大体お働きできる程度の方でございますから、まず年金に移るはずがないと思います。したがって解雇制限規定との関係は出てこない、こういうふうに私どもは考えております。したがって、今度の法改正に伴って何か解雇が促進されるのではないかと一部御心配の向きがありますけれども、それは全く誤解でございまして、全くいままでの制度と変更はない、こういうふうに御理解いただきたいと思います。

浦井洋日本共産党・革新共同

○浦井委員 廃疾等級にひっかかるほどではないので、いままでと一緒で、やはり短期給付でやっていくということですね。

桑原敬一労働省労働基準局長

○桑原政府委員 ケース・バイ・ケースによりますけれども、現在恐らくいまお話しのような方は休業補償でやっているのじゃないかと思います。だからそういう方は、特別に医者が診間違えれば別として、それは軽い方ですから、そういう方が年金に行くはずはございません。また、年金に行って手厚く保護すべき対象の方ではないのではないか、こういうふうに考えますので、恐らくそういう御心配はないと思います。

浦井洋日本共産党・革新共同

○浦井委員 それからもう一つ、現在そういう人たちは職場復帰訓練中の人がかなりあるわけです。こういう人たちにも、今度の制度の改正によって解雇規制がいままでどおりに適用されるように、こういうことで理解していいですな。職場復帰訓練中の人……。

桑原敬一労働省労働基準局長

○桑原政府委員 職場復帰訓練期間中の方、恐らくそういう方は通院で療養されている方だと思いますが、全くいままでと取り扱いは変わりません。

浦井洋日本共産党・革新共同

○浦井委員 そういうことだそうで……。  それから最後に、これもあるいはレアケースかもわかりませんけれども、今度の法改正によってこういうような心配も出てきておるという話であります。頸肩腕症候群などの業務上の認定が監督署へ上がる、そこで簡単に済めばよいんですけれども、不服申し立てでもやると審査官のところで一年以上はかかる、さらにもう一つ中央へ行って審査会にかかるとかなり長期にわたる、こういうことになるわけであります。こういうかなり認定までに時間がかかった場合に、業務上ということで認定が決定されるのと同時に、もうすでにその患者にとっては初診から三年過ぎてしまって、非常に困ったというケースも出てくるおそれがあるわけなんです。だから、症状の把握を過去にさかのぼって行うというふうに労働省の方は言われておるわけなんですけれども、その場合に、一年半日とかあるいは二年目というふうに画一的にその時期を区切って、そこでこの症状は重い、年金に該当するんだということになると、この解雇規制の適用ができなくなるおそれがある、こういう心配をその人たちはされておるわけなんです。  だから、私要望したいのは、一つは、不服申し立てがある、長いことかかる。やはり労災認定は早く決定をするようにすることがこれは大前提であろうと思う。それからもう一つは、決定がたまたまおくれたことによって患者の職場復帰の権利が侵されないように、この制度の運用について弾力的といいますか、慎重にやっていくべきではないか、こういうふうに私思うわけなんですが、まず局長に御意見をお伺いしたいと思います。

桑原敬一労働省労働基準局長

○桑原政府委員 労災補償の考え方は、もちろんその傷病を治し、また障害が残れば適正な障害補償をするということだけではなくて、やはりできるだけ早く職場復帰していくということが私は最終の目的ではないかと思います。そういった考え方でこの労災保険制度を運用していきたいと思っております。  御質問のたとえば、いまのお話ですが、四年目ぐらいのときに業務上外の認定が行われた。まさかそういう場合はほとんどないと思いますし、私どもはできるだけ認定基準を具体的にいたしまして早急に決めるようにいたしますが、もしそういうレアケースの場合を仮定いたしましても、その時点において年金かどうかを決めるのではなくて、私どもが今度制度をつくりましたのは、一年半たったところでその病気が年金に値するように重いのかどうかということをまず考えてみるわけなんです。二年半さかのぼるわけですね、一年半ですから。そこで見て、年金に対応するならば年金にしてあげます。それから、不服審査が決まった四年目のときの傷病の実態が、もしそのときに軽くなっていたということであれば、それは年金からその四年目のときに一般の休業補償に移しまして療養をしていただくということで解雇制限とは関係なくなるということで、意識的に年金をつけるのではなくて、そのときどきの症状の程度に応じて、重い方は年金、軽い方は療養補償でいく、こういう運用はやってまいりますので、御心配のような、何か解雇制限の規定を緩めるためにこの運用をする考え方は全くございませんことを御理解いただきたいと思います。

浦井洋日本共産党・革新共同

○浦井委員 大臣、やはりこういうような形で新しいタイプの職業病がどんどん出ていって、その患者は非常に言うに言われない苦しみを味わっておられるわけです。そういう点で私その一端の制度的な矛盾みたいなものをきょうはお聞きをしたわけでありますが、ひとつできるだけ患者の実情に即して、患者の要望を受け入れるようなかっこうでの施策を立ててほしいし、また運用にもその立場に立って幅を持たせ、弾力的に運用していただく、このことを私は期待したいと思うのですが、最後に一応大臣の決意をお聞きして、私の質問を終わりたいと思います。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 職業病対策はやはり労働行政の柱でございまして、実は昭和三十五年にこの役所におりまして、石炭の離職者、石炭産業のいわゆるビルド・アンド・スクラップの時代、このころはたしか一時金の給付であったのであります。そうすると奥さんがもらっておいてどこかへ行ってしまうという事例がしばしば生じた。したがって、一時金をやめて、本人にずっと続けられるような制度の改正をいたしました。運営に当たりまして、こちらの説明でわかっていただいた部分もありますし、それから私が聞いてもどうも納得がいかない、おかしいという部分もあります。事務的に困難な問題がありましても、私が聞いてもおかしいと思うことはやはりおかしいのでありまして、そういう点を改めるように努力をいたしたいと思います。

浦井洋日本共産党・革新共同

○浦井委員 終わります。

中山正暉自由民主党

○中山(正)委員長代理 工藤晃君。

工藤晃新自由クラブ

○工藤(晃)委員(新自) 新自由クラブの工藤晃でございます。  質疑に入らしていただく前に、大臣に大変長時間の質疑でお疲れでございましょうけれども、私が最後でございます。与えられた時間も短うございますので、しばらくの間ひとつよろしくお願い申し上げます。与えられた時間が大変短うございますので、お答えは簡潔明快にしていただければ結構だと思います。  最初、失業問題についてお聞きいたしますが、現在、失業者が百万、こういうふうに言われておりますけれども、統計のとり方の相違とか、あるいは稼働率八〇%前後などから類推いたしまして、潜在失業者を加えますと実際はその倍になるのではないかというふうなことも言われておりますが、その実態についてどうお考えになっていらっしゃいますか。大臣からお答えいただきたいと思います。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 先ほどからお聞きと思いますけれども、これだけ長い間不況が続いたのに、欧米各国に比べると失業率が少ないわけで、少ないのは、わが国独特の終身雇用制に守られているわけであります。それに守られていて少ないということを裏返しにしますと、企業の方は過剰な人員を抱えておる、こういうことになります。その過剰な人員を抱えているのが潜在的失業、こういうことになりますならばかなりの数に上る。しかし、これは景気の回復と制度の運用で防いでいけるものだ。たびたびいままでこういうことに出っくわしましたけれども、防いでいけるものと考えております。

工藤晃新自由クラブ

○工藤(晃)委員(新自) それでは先を急ぎます。  最近、労働側の経営参加は世界的な傾向だ、こういうふうに言われておりますが、わが国におきましてはこの問題に対してどのようにお考えになっていらっしゃいますか。一言で結構です。この問題はさきの問題と重複しますけれども、一言お答えいただきたいと思います。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 世界的な傾向と申しますか、先進各国でいろいろな形で試みが行われております。成功しておると言われるのが先ほどから出ておる西ドイツでございますが、先ほどお答えをいたしましたように、そのまま日本に導入するというのには問題点が多い。これは、私は労使協議制の内容を充実し、これの拡大を図っていくということで労働者の経営参加の実現を図りたいと思います。

工藤晃新自由クラブ

○工藤(晃)委員(新自) それでは次に、労災保険の問題について三つほどお聞きいたしたいと思います。  現在、労災で診療いたします場合に、時間外の診療につきましては、その医療従事者の時間外手当あるいは診療担当者の分を含めまして、そういう診療報酬体系が労働条件にかなった体系になっていない現状がございます。たとえば百点未満の外科的手術などは昼間やるのと同じことになっておる。あるいはまたそれよりか高い報酬を要求するような手術などでも約二割ぐらいの増加しかつけられていない。これでは、患者側に立ちますと、いま盛んに問題になっております時間外の診療の拒否の問題、あるいは特に労働災害の場合には緊急を要する場合が多々ございますが、そういう場合の対応としてはなはだお粗末になってまいります。それからまた、社会福祉の立場あるいはまた社会資本の蓄積なんという立場に立ちますと、医療サービスというのは大変重要なことでございまして、こういう面からこのサービスが低下いたしますと人命にかかわってまいります。それでございますので、特に医療従事者の労働条件の改善というのはいまや焦眉の急になっております。ところが、そういう診療報酬体系の中にはそういうものは一切含まれてきてないというのが現状でございますので、これは緊急な課題として、そういう二面から考えましてぜひとも改善していただきたい。これは現場の声でございます。一つはまた、この医療従事者というのは健康保険制度のいわば犠牲者になっております。特に医療関係労働者の待遇は普通の一般産業に比べましても非常に悪うございます。そういう意味も含めまして、ぜひひとつよろしく御改善のほどをお願い申し上げたい、こういうふうに考えます。その点について……。

桑原敬一労働省労働基準局長

○桑原政府委員 診療報酬の体系につきまして、一応労災につきましても健康保険に準拠をいたしておりますが、先生御指摘のように労災医療の特殊性というのがございます。特に、夜遅く抱え込んでこられるとか、あるいは傷病の部位が非常に汚染されているとか、具体的な一般の私病と違った点がございますので、たとえば、一般に健康保険は一点十円でございますけれども、労災は十二円ということにして二割アップいたしておりますし、リハビリテーションその他につきましても、健保だけでは問題があるという問題意識を持って進めておりますし、今後とも、労災診療体系につきましては労災医療の特殊性に着目して、さらに整備を図ってまいりたい、こういうふうに考えます。

工藤晃新自由クラブ

○工藤(晃)委員(新自) ただいまも二割アップだというふうなお話がございますけれども、現在の物価高に比べますとそういうものではとてもじゃないけれども——たとえば手術にしましても、医者だけではできないので、介護者を含めますと四、五人の陣容を抱えなければいけない。それで手術三十分といたしますと、その前後一時間ずつくらいはどうしてもそれに対してかからなければいけない。そういう労働条件というものがほとんど完備されていないので、特にいまの診療報酬体系が低うございますから、二割ぐらいのアップではどうにもならない。現実においてそういうものでは一切そういう問題に対する障害を解除するものにはなってない。ですから、ぜひともそういう点も御考慮いただいて、現実にそういう問題を解決できるような手段、方法をお考えいただきたい、こういうふうに思います。

桑原敬一労働省労働基準局長

○桑原政府委員 さらに改善に努力をいたしたいと思います。

工藤晃新自由クラブ

○工藤(晃)委員(新自) その問題についてひとつ大臣、それが必要だというふうにお考えであるならば、具体的にいつごろから改善いただけるか、もし御回答いただけましたらありがたいと思いますが……。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 妙な表現かもしれませんが、労働省と医師会とうまくいっておりまして、いまの問題、看護婦不足とか夜勤とかの問題と絡んできますので、検討はいたしたいと思っておりますが、医師会との関係もせっかくうまくいっておるので、調整していきたいと思います。

工藤晃新自由クラブ

○工藤(晃)委員(新自) その問題は大いに期待して、一日も早く御改善いただけるように要望いたしまして、次の問題に入ります。  いまの医療の問題に関連いたしまして、いまもおっしゃいましたように、健康保険法に準拠して労災の医療制度が考えられておる。ところが、労働者の人権、すなわち人命の尊重あるいは早期職場復帰を目的といたしました労災におきましては、私病である健康保険とは全く性格が違ってまいる場合も多いし、それからまたいまの健康保険は中身が大変評判が悪うございます。決して人命を尊重されたような診療内容ではない、体系ではないというふうに言われておりますので、少なくともそういう問題も現在社会的に大きな課題にたっております。そういうものに準拠していつまでもそれが直らなければこっちが直らないというのでなくて、悪い見本に準拠するのじゃなくて、そういうものを逆に引っ張っていくような新しい制度を労働省として独自に開発、お考えいただけるような、そういうお考えはございますかどうか、ひとつお聞きいたしたいと思います。

桑原敬一労働省労働基準局長

○桑原政府委員 御指摘のように、労災補償と申しますか労災医療と申しますか、これはできるだけ病気が出ないように事前に予防をやっていく、あるいは病気のメカニズムを十分研究するとか、あるいは不幸にして病気が出ました場合にはきちっとした治療、補償、それから最終的にはリハビリテーションをきちっとしていくということに、やはり一般の私病と違った役割りがあるのではないか。特に予防と最終的な職場復帰についての役割りというのは相当大きいのではないか、こういうふうに思います。それで労災保険制度といたしましては、予防につきましてはいろいろな手だてをやっております。たとえば産業医学総合研究所を労災の方から金を出してやるとか、あるいは産業医科大学をつくって産業医の養成をするとか、あるいは最終的な社会復帰の場合の、脊損センターみたいなものをつくりましてリハビリテーションの充実を図っていくとか、そういったいろいろな手だてをしながら、先生御指摘のように私病と違った形で労働者の健康について積極的にやっておるつもりでございますけれども、さらに御指摘がございましたように努力をいたしてまいりたい、こういうふうに考えております。

工藤晃新自由クラブ

○工藤(晃)委員(新自) お答えとしては満足できませんので、改めてもう一遍お聞きいたします。  確かに予防も大切でございますが、そういう治療の問題が現在目の前にございます。これがいまの健康保険制度そのものに準拠しているというところに、医療の本質から踏み外したところで治療がなされているという点を指摘したいのです。だから問題はあっちこっち部分的に手直ししてもどうにもならない問題で、これは健康保険制度も全く同じなんです。だからそういう意味において新たな抜本的な、医療の本質を踏まえた制度を労働省として将来お考えになるかならないか。このまま準拠されながら改善するとおっしゃるのか、あるいはそういう問題を労災は独自にそういう制度をつくりながらおやりになるのか、そこら辺の見解をお聞きしたいと思います。

桑原敬一労働省労働基準局長

○桑原政府委員 医療の問題につきましては、非常にむずかしい、深遠な問題がございますので、一労働省だけで基本的な問題に取り組むことはいかがかと思いますが、しかしその問題意識を持ちまして、労災医療については労災医療なりに勉強いたしてまいりたい、こういうふうに思います。

工藤晃新自由クラブ

○工藤(晃)委員(新自) 健康保険の場合にはいろいろ管掌がたくさんございまして、それがあやのごとくなっておりますからなおさら解決がむずかしい。しかし、労災の場合には労働省主管一本でございます。それからまた、いままで盛んに、きょうも問題になりましたように、産業構造の変化に伴う職業病もどんどん新しい分野に入り込んでくる。あるいはまた将来ともに化学薬品その他において起きてくる職業病も出てまいりましょう。そういうものを含めて、いままでのようなじん肺だけを考えていればいいというような時代はとっくに過ぎてしまった。特に新たな難病対策というのは職業病の中から生まれてくる場合も多かろうと思いますので、そういうものを含めてやはり将来のビジョンづくりが必要だろう、こう思うのです。とにかくいままでどおりにやっていけばいいということではとても問題にならない。だから、やはり政治は先取りでございますので、そういうビジョンをぜひおつくりいただいて、新しい制度を抜本的におつくりになっていただいて、それに逆に健康保険制度が準拠していくというふうな形になっていただくことを希望いたしたいと思います。それについてひとつ御回答を……。

桑原敬一労働省労働基準局長

○桑原政府委員 御鞭撻いただきましたけれども、私どももそういった労災医療のあり方についてはさらに前向きに取り組んで、労働者の生命、健康を守ってまいりたい、こういうふうに考えます。

工藤晃新自由クラブ

○工藤(晃)委員(新自) 大変お答えが抽象的でございまして納得できませんが、時間がございませんので先に参ります。  不況の荒波が確実に現在押し寄せてまいっておりますが、現在、労働行政は一歩誤れば大きな社会不安の要因になってまいります。ひとつ真剣に勇気を持って実行していただきたいと思いますけれども、特にそのあおりを真っ先に受けるのが社会的弱者の層でございます。それに対してきめの細かい配慮をすることはもちろんでございますので、その前提で答えていただきたいと思いますが、この社会的弱者という身障者あるいは寡婦、このような方々がこういう不況のあおりで失業問題に直面される場合に、特に労働省はまず第一番にそういうところへの配慮が必要だろう、こういうふうに考えております。それで、それに対して具体策がございましたらひとつお聞かせいただきたいと思います。

北川俊夫労働省職業安定局長

○北川政府委員 身体障害者につきましては、御承知かと思いますが、昨年十月から身体障害者雇用促進法を施行いたしまして、雇用率を一・五%と決めております。したがいまして、それに達しない企業につきましては、月一人当たり三万円の負担金を支払っていただく。それを原資といたしまして、雇用率を達成しておる企業あるいは身体障害者の雇用促進に協力をしております中小企業に、報奨金もしくは調整金というものを支給する。あるいは、そのための特別の身体障害者雇用促進協会というものを先日、二月の二十五日に発足をいたしまして、今後民間の有識者の協力も得まして、身体障害者雇用促進につきましては一段と努力をいたしたいと思っております。  寡婦につきましても、先生おっしゃるように、これからの低成長の雇用情勢の中でやはり深刻に問題を抱えるところでございまして、私たちも新しい施策の中で、実態調査あるいは能力開発センターの新設、さらに寡婦が一番問題になりますのは無技能であるがために雇用がされないという点もございますので、新たに、訓練所に入った場合の訓練手当の支給、それから訓練所を出てからの雇用奨励金の増額等の措置をいたしたいと思います。

工藤晃新自由クラブ

○工藤(晃)委員(新自) それではちょっとついでにお聞きいたしますけれども、身体障害者雇用促進法の中に精神薄弱者が除外されております。これはやはり社会的公正を欠くんじゃないかと思うのですが、その点についていかがでございますか。

北川俊夫労働省職業安定局長

○北川政府委員 この法律をつくります際に、精神薄弱者をどう扱うかということにつきましては非常に関係者の間で議論がされたところでございます。ただ、いま直ちに身体障害者と同じに扱うにしましては、精神薄弱者の適職に関する調査研究が必ずしも十分でない、あるいは精神薄弱者の雇用促進についての企業側の認識が不十分である、その二点につきまして今後さらに行政ではその浸透を強めるということを条件といたしまして、身体障害者雇用促進法の一部、たとえて言いますならば、適職に関する調査研究、職業紹介、職場適応訓練、納付金の減額等々につきましては身体障害者と同様の規定を適用することにいたしておりますが、その他の部分につきましては、先ほど申しましたような適職の研究、あるいは認識についての業界の理解の浸透ということを待ちまして、さらに身体障害者と調整がつくように努力をいたしてまいりたいと考えております。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 実は私、昭和七年に精神薄弱者の施設で働いておったことがある。この問題については多少経験もあり、何冊か書物も書いたんであります。これは、身体障害者の場合は外から見てわかるんですね。ところが精神薄弱者というのは、IQを一体どこに置くかということによってこれは非常に違ってまいります。たとえば知能指数で八〇から九〇というのは、これは境界線児と言われておる。その境界線児をわざわざ境界線児と言うことが適当であるかどうか、これは何%雇用せいと言った場合に。それからもう一つは、その知能検査を行うのに、子供の場合の知能検査は楽です。しかし大人の場合は、第一次世界大戦のときにアメリカで徴兵をいたしましたら非常に知能の低い人がたくさん集まってきたので、当時コロンビア大学の心理学の教授であったターマン博士が軍隊テスト法というものをこさえた。しかしこれでも大人の検査というのは非常にむずかしいのです。それから、知能検査、いわゆるIQテストが普遍的になっておればいいのですが、なっておってもどこからを精神薄弱と見るか。世間で外から見ておって普通のとおり働いておると思っておる人を、わざわざ精神薄弱児とレッテルを張ろようなことが適当かどうか、こういうところに私は問題があると思う。現に精神薄弱児で知能指数六〇以下の、一見してわかる人たちだけを使って白墨をつくったり、あるいは下請ではありますけれどもかなり精密な機械をつくったりしてくれておる事業所もあります。近くでは大田区とか川崎なんかにもある。私、見たことがございます。そういう点をひとつ御理解をいただきたい、こう思うのです。

工藤晃新自由クラブ

○工藤(晃)委員(新自) よくわかります。問題点の困難な点はよくわかりますけれども、そのまま放置していいという問題ではございませんので、社会的弱者、身障者あるいは精神薄弱者、こういう者に対しては、医療とかあるいは教育あるいは雇用、こういう問題が一致しないとそういう方々の救済には不完全でございますので、ぜひひとつ御努力いただきたい。  同時に、先ほどの問題に返りまして、時間がございませんので簡単で結構でございますが、雇用促進を私はお願いしたわけではございませんので、そういう身障者とかあるいは寡婦、社会的弱者ですね、こういう方々がまず第一番に首を切られてくる。一番最初に切られるのはそういう方々がまず対象になってくる。そうするとどうしてもそういう方々は救済を求めてくる。たとえば寡婦の場合には母子寮へ何とか入れてくれないかというふうなことになってまいろうと思います。そういうことに対して、労働省としては具体的にそういうものを予知して対策をお持ちかどうかということをお聞きしたかったわけです。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 寡婦の就職の問題というのは、むずかしい点は二つあると思うのです。一つは家庭環境があります。つまり子供を持っているという。これについてはやはり託児所の充実、これを地方の自治体で、あるいは企業でやろうとする場合は実際に補助対象といたしております。もう一つは職業経験がない。技能がない。これはやはり訓練をしなければならぬと思います。  しかし、産業転換に当たって、寡婦であることを理由に、あるいは身体障害者であることを理由に真っ先に馘首する、そういう非人道的事態は全力を挙げて阻止する決意でございます。

工藤晃新自由クラブ

○工藤(晃)委員(新自) いまおっしゃいましたように、保育所の増設、完備、あるいは母子寮の完備、こういうことが問題になってまいろうと思います。ところで、私が調べました範囲におきましては、社会福祉施設費でございます。これは五十年、五十一年、五十二年を対比いたします。そうすると、厚生省の方からの統計でございますが、これは社会福祉施設費がすべて含まれておりますので非常にグローブなことでございますけれども、一応申し上げますと、五十年が三百四十一億、五十一年が三百七十六億、五十二年が三百九十五億でございます。そうして五十年、五十一年の前年度対比は一一〇%、五十一年、五十二年が一〇五%でございます。逆に落ち込んでおります。こういうものから見ますと、そういう社会的弱者がまずそういう不況のあおりを食ってくるであろう、そういう者を救済するための対策が、こういう予算の面から見ますと講じられてないのじゃないかという感じがいたしますけれども、その点について一言お答えいただきたいと思います。

森山眞弓労働省婦人少年局長

○森山(眞)政府委員 寡婦の問題は、いままで特に母子福祉法によりまして厚生省がいろいろな対策をやっておられました。御指摘のような問題があるかもしれませんが、私どもの方では特に、いま大臣から御説明申し上げましたように雇用を促進するということにおいて家計を助ける、そしてりっぱに生活をしていけるようにしていきたいということの方面から手を打っていこうということで、先ほど申し上げたような措置を新しく五十二年度に新政策をふやしましてとっていくというつもりでございます。厚生省の方の保育所あるいは母子寮、その他寡婦に関する福祉政策の担当の責任者とも十分連絡をとって今後ともやってまいりたいと考えております。

工藤晃新自由クラブ

○工藤(晃)委員(新自) ぜひそのようにお願いしたいと思います。  それから最後に、指定校制度を廃止しない企業に対しましては何らかの処置をするべきかどうかということに対して見解をお聞きいたしたいと思います。

石田博英自由民主党労働大臣

○石田国務大臣 企業側、事業所側から言えば、従業員の採用というのは慈善事業じゃありませんから、それぞれ過去の長い経験に基づいて、いままで自分の欲する人材を一番たくさん得たところを指定していくということは企業側にはあると思います。ただ、それが固定してしまって、しかも排他的になって、ほかに有能な人があり希望者があるのに、それをその指定校の卒業生でないという理由だけで排他的に排除していくという風潮は望ましくない。したがって、これについては行政指導をやっていくつもりでございますが、しかし現在、短大と専門学校を含めると千五校もあるのです。そして四年制の大学だけで約五百近く、四百何十校とある。そんなものを自由自在に試験を受けさせるということになると大変なことになってしまいます。そういう事務能率の問題もあるわけであります。ただ、さっきも申しましたように、排他的なことは避けさせるように行政指導をしたい。しかし強制力を持たすことは問題がある。それから学校差の存在というものもこれは否定できない。公平を要求する前に、公平を要求する土台である学力水準というものを持つことが先決だ、私どもはそう思っております。それから、大学生の就職問題でも、みんなが大企業へ行きたがり、しかも管理部門、事務部門に入りたがる。ところが事業所の方から言えば、販売部門、サービス部門に人が欲しい。このギャップが非常に大きい。特に、中小企業などの大学卒業者を雇ってみようかという気持ちはかなり強まっておりますけれども、そこにギャップがある。そのギャップをだれが埋めるか。くじ引きで決めるわけにはいきません。やはりどうしても試験というものは必要であり、その事務処理能力に限界がございます。ただ排他的な問題だけは私は好ましくない、こう考えております。

工藤晃新自由クラブ

○工藤(晃)委員(新自) 時間が参りましたので私の質問はこれで終わりますが、大変時間が短かったので十分な御回答を得られたとは思っておりません。その点につきましては今後またおいおいちょうだいいたしまして煮詰めてまいりたいと思います。  大臣、長時間、大変お疲れさまでございます。御苦労でございました。これで終わります。

中山正暉自由民主党

○中山(正)委員長代理 次回は、明後三日木曜日午前九時五十分理事会、十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時五十四分散会

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